第051回国会 社会労働委員会 第5号
昭和四十一年三月一日(火曜日)
   午前十時十六分開議
 出席委員
   委員長 田中 正巳君
   理事 小沢 辰男君 理事 藏内 修治君
   理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君
   理事 伊藤よし子君 理事 河野  正君
   理事 吉村 吉雄君
      大坪 保雄君    熊谷 義雄君
     小宮山重四郎君    地崎宇三郎君
      中野 四郎君    西村 英一君
      西岡 武夫君    松山千惠子君
      粟山  秀君    山村新治郎君
      淡谷 悠藏君    滝井 義高君
      辻原 弘市君    八木 一男君
      長谷川 保君    本島百合子君
      吉川 兼光君    谷口善太郎君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 小平 久雄君
        国 務 大 臣 安井  謙君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (人事局長)  増子 正宏君
        労働事務官
        (労政局長)  三治 重信君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      村上 茂利君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      有馬 元治君
        労働事務官
        (職業訓練局
        長)      和田 勝美君
 委員外の出席者
        労働事務官
        (大臣官房総務
        課長)     道正 邦彦君
        専  門  員 安中 忠雄君
    ―――――――――――――
二月二十四日
 委員滝井義高君辞任につき、その補欠として加
 藤清二君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員加藤清二君辞任につき、その補欠として滝
 井義高君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月二十五日
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第九五号)
 戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法案
 (内閣提出第九六号)
同月二十六日
 最低賃金法の一部を改正する法律案(吉川兼光
 君外一名提出、衆法第一七号)
 性病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九九号)
同月二十八日
 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法
 の規制に関する法律を廃止する法律案(吉川兼
 光君外一名提出、衆法第一八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
○田中委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
○吉村委員 きょう私はたいへん長い間問題になっておりまして、しかも今日なお国際的にも国内的にも相当議論をされておりますところのわが国の最低賃金法の実情、これに対するところの政府の考え方、こういったものについて労働大臣の責任のある答弁をお願いをしたい、こう思っておるわけですが、この最低賃金の問題に入る前に、これとは全く異質のものでありますけれども、職業病関係の問題について、職業病の中の、これも未解決になっておりますところの職業性難聴、これのその後の労働省の取り扱い等について初めにお伺いをしておきたいと思います。
 それで、この職業性難聴で非常に社会生活の面で困っている人の人数あるいは現在の政府のこれに対する対策、こういったものを概括的に事務当局のほうから御説明願いたい。
○村上(茂)政府委員 御承知のように、難聴には災害性難聴と職業性難聴といわれるものがございますが、いずれにいたしましても、聴力が衰えまして、労働生活ないしは社会生活に不便を来たすということになるわけでございますが、この難聴について、いわゆる災害補償をどう行なうかという問題があるわけでありますが、御承知のように、労働基準法施行規則第三十五条の十二号の規定によりまして「強烈な騒音を発する場所における業務に因る耳の疾患」という条項がこの難聴についての補償を定めたものであるというふうに考えておりますが、いわゆる職業性難聴として業務上の疾病に該当するものの数はどの程度あるかと申しますと、三十七年におきましては五十四件、それから三十八年におきましては七十五件、三十九年におきましては二十九件という件数が職業性難聴として報告されております。ただ、これは、いわゆる業務上の疾病として認められる程度のものでございますが、その底には、数多くの労働者が、難聴が進行しつつある過程の状態において残されておるわけであります。一体どれくらいあるかということでございますが、最近の数字は残念ながら手元にございませんが、難聴の問題が大きく取り上げられました昭和三十三年の当時におきましては、騒音作業に従事する者の数は約八万人、その中で抽出調査をいたしました結果、聴力の度合いを十五デシベルから八十デシベルまで数等級に分けまして調査をしたことがございます。もちろんその分布は騒音職場における勤続年数その他との関係もございまして一律ではありませんけれども、一般に勤続年数の長いほど難聴の度合いが進行しておるというような判断が持たれております。そのような状態でありますが、問題はどの程度の聴力の状態から、いわゆる職業性疾患として補償の対象にするかという医学的な基準が確定せずに、三十一年以来この問題は検討してまいりましたが、だんだん結論に近づいてまいりました。しかし、最近に至りまして、厚生省におきまして障害等級を再検討するための研究会が設けられておりますので、労働省に設けました職業性難聴専門家会議の結論と、厚生省の障害等級研究会の研究とをどう調整せしめるかという問題がございます。いわば最後の調整段階に来ておるというのが現状でございます。
○吉村委員 基準局長、前の経緯も御存じだと思うのですが、難聴についてはいまあなたが少し触れましたように、昭和三十三年ですか、二年でしたか、労働省の中に専門家委員会を設置をして、その後、専門家会議と名称を変えましたけれども、現在どの程度までをこの労災の適用にするか、こういうことで検討なされておったはずです。私は一、二回このことを問題にしまして、去年の国会においてはこの専門家会議の結論が十年にもわたって出ないということは変ではないか、労災法の第一条の精神からいたしましても、そういった職業病的なもの、あるいは労働者の災害等については、できるだけ迅速にこれを補償をするということでなくてはならないという精神から見ても、十年間にわたって結論が出ないということはむしろ怠慢ではないか、こういうことを指摘をしましたところが、ときの労働大臣は石田さんでございますが、その際の答弁によりますと、労働省としてはこの専門家会議の結論というのは近く出ますという話だったのです。近くというのは一体いつなのか、こう聞いたら、あと一週間くらいで出ます、こういう話であったのです。それは、私が実はこの問題を取り上げるということがわかったのでそういうことをやったんではないかとすら私は極言をしました。しかし、いずれにしましても長い間検討した結果専門家会議としてはその結論というものを出す段階に入りました、こういうことでございますが、私のその後の調査によりますると、その答弁もまたうそであったということが明瞭になりました。大体専門家会議というものの結論というのは出されていない。いまの基準局長の答弁においてもまたしかりである。こういう状態で、一体国会に対する大臣の答弁あるいは言明というものが、あなた方の都合によるかどうかは別にしまして、そのまま放任されておる、こういうことでいいのかどうかという一つの問題と、いま一つは、こういった問題についていつまでも放置をしておくというのは、一体何か意図があるのかどうかというふうに私は疑わざるを得ない、こういうふうに考えるのでありますけれども、去年の大臣の言明、それからこの際には和田さんだったと思いますけれども、明確にその点は答弁をされました。近くこの専門家会議の結論は出ますという話でありましたけれども、いまの局長の話によると、それらしいものもまだ出ていないようでもありまするし、あるいは最終の段階に入りつつあるということはどういうことを意味するのか私もわかりませんけれども、その専門家会議の結論は出たのですか出ないのですか。出たとすれば一体どういう内容のものなのですか。
○村上(茂)政府委員 ただいまおしかりをいただきましたが、難聴の問題は、災害性難聴ですと業務起因性がきわめて明確ですから業務上の認定は容易でございます。しかし、長年騒音職場で働いておるうちに耳が聞こえなくなるという場合に、老人性難聴とどういうふうに見分けるかとか、それから聴力をだんだん失いつつあるというときに、普通の障害ですと、治療をして症状が固定した段階でとらえて障害補償を行なうのですけれども、職業性難聴の場合は、どのような状態を聴力障害の固定状態と見るかという問題になりますと、非常にむずかしくて、学者によっても説が分かれておるのであります。そうして、労働者自身の状態をとらえてみますると、確かに家庭生活には不便を感ずることは疑いありません。しかし、びょう打ち工等が現実に労働する場合にはほとんど支障なくやっておられるというような現状もございまして、ほとんど定年近くまでおつとめになって、やめるときに職業性難聴の問題が出てくる、こういうケースが多いわけでございます。したがいまして、一般の障害のように、けがをして、治療をして、そうして大体症状が固定して障害補償を行なうという段階と違いまして、ほとんどが退職近くになりましたときに障害補償の請求をしてくる。しかも、治療すると申しましても、ほとんどこれは打つべき手がないというような状態でございまして、そういったいろいろむずかしい問題もございますので、専門家の研究もなかなか結論が出にくかったということでございます。そこで、いま結論が固まったのかどうかということでございますが、労働省の職業性難聴専門家会議におきましては、大体案はまとめつつあります。しかし、御承知のように厚生省には日本オーディオロジー学会というそういった聴力関係の専門家の学会がございまして、学会の意見も徴しつつ、さらにまた厚生省における障害等級調整問題研究会の動向も考えて、いわば労働省の難聴専門家会議だけが独走しないよう、関係方面と連絡をとりつつ結論を固めたい、こういうことでやっておるわけでございます。したがいまして、結論は大体まとまったのかと申しますと、まだ労働省として発表の段階に至っておりませんが、大体の案はまとめまして日本オーディオロジー学会、それから厚生省の障害等級調整問題研究会でそういった案を非公式にお見せして調整をはかる、こういった段階にきておることは先ほど申し上げたとおりです。
○吉村委員 局長、騒音性の難聴、その他の特殊な薬品を使用する職場で働いているために難聴になる、幾種の種類があるだろうと思うのです。一番問題となるのは、外傷によらずに耳が遠くなるということについて、それが騒音性によるのか、その人の体質によるのか、いろいろ問題が分かれてくることは明らかと思います。そういう問題があればこそ専門家の委員会を設置したのでしょう。そうでしょう。したがって、専門家の委員会のその検討の中には当然学会の意見とかそれぞれのその権威の方々の意見とか海外の経験とか、こういうものを取り入れた上で結論を出すようにつとめていますというのがいままでの答弁だったのですよ。そして、その検討の結果が、昨年の二月の段階で、近くこの結論が出ますというのがあなた方の回答だったのです。石田労働大臣は十年もこの問題についてかかっておるととは遺憾でございますという言明までいたしました。いまあなたの答弁を聞きますと、労働省としての専門家会議の意見はまとまった。けれども、これから学会や専門家の意見を聞くということであるならばこれもまた十年かかるかもしらぬということになるのです。大体、専門家や学会の意見を聞くなりあるいはその中に当事者の考えも入れながら今日まで検討してきたというのがいままでの作業の経緯じゃなかったのですか。労働省としてだけ検討しておったということでは、いままでの答弁によれば、ないはずです。いまのあなたの答弁は従来の答弁とだいぶ食い違っておる。よくここは検討した上で的確な答弁をしてもらわなければ困りますよ。
○村上(茂)政府委員 実は、三十三年の調査をした当時は、私は労災補償部長で、専門家委員会をつくりましたときも私は労災補償部長でした。この経過は私大体承知しておるのでございますが、昨年二月石田大臣が答弁されたということでございますが、その後にも結論を急ぐべく昨年の三月三十一日に研究結果報告並びに問題点の締めくくりの討論をやっておりまして、さらに詰めるという意味で、五月六日にさらに検討しておるという段階で、御承知かと存じますが、厚生省のほうで新たに障害等級調整問題研究会を設置された、これはその後に生じた問題でございます。そこでせっかく厚生省に障害等級の調整問題の研究会をつくりまして各種の保険において行なわれておる障外等級のアンバランスを調整しよう、とこういう問題が提起された。したがいましてこれとの関連を見たい、こういうのでありまして、先生御承知のように、職業性難聴で補償せよという場合には、両耳が聞こえなくなった場合に八十デシベル以上の場合は四級だとか七十デシベル以上は六級とかそういう聴力度合いによりまして障害等級の差が四級、六級、七級、一耳を喪失した場合には、九級、十級、十一級、こういうようになってございますが、それが今度は厚生省のほうで障害等級表を調整されますが、それにどうはめるかという問題が出てまいります。その根っこになりますところの等級表に違いが生じますと、従来の八十デシベル以上は四級だ、こう言っておりましたものが四級かあるいは三級になりあるいは五級になるという変更がもしありました場合には、八十デシベル以上という基準を設定いたしましても実用にならない、こういう問題が生じますので、まあ申し上げますならば、ほぼ結論が出かかった段階において厚生省の障害等級表の調整問題が出てきた。そこで難聴の等級表のあり方をどうくっつけるかということと関連しまして何十デシベルといったような度合いの基礎が動いてくるという問題もありますのでおくれておる、こういうことでございまして、決して適当に答弁をして誤ったなにを申し上げておるといういうふうには私ども考えておりませんが、できるだけ手だてを尽くしまして作業を進行せしめたいと考えておる次第でございます。
○吉村委員 大体難聴の問題については、労災補償法の十一級までしか正直なところ適用がない。その十一級というのは六十デシベル以上の障害だ、こういったことになっているところに問題があって、該当の高音の作業に従事をしておる労働組合のほうからも労働省のほうに対しては再三このように改正をしてもらいたいという話はずっと前からあったはずです。そういう要請に基づいて検討をされただろうと私は思うのです。あるいは労働省自体もこのままでいいとは考えていなかっただろうと思うんですよ。非常に長いことかかっていることは実に問題だというふうに私は今日まで指摘をし続けてまいったのですが、いまの局長の答弁によりますと、先ほどの答弁から少し前進をしたように私も受け取っています。先ほどの答弁では、何かこれから学会の意見を聞いたりあるいは専門家の意見を聞いたりというふうな趣旨の答弁のように承りましたから、それでは困るというふうに私は申し上げましたが、その作業段階を終わってどの等級に該当せしめるか、こういう作業に入っている、こういうふうに理解をしてよろしいというわけですか。
○村上(茂)政府委員 さようでございます。ただ、先ほど申しましたように、障害等級の立て方自身が他の社会保険との調整で将来動く場合には、たとえばいま先生御指摘のように、一耳の場合十一級であるならば六十デシベル以上というようなことを申しておりましても、将来もしこの十一級が変わったという場合には新たに何デシベル以上をその当該等級にするかという問題が出てくるわけであります。そこで根っこになる基礎になるところの障害等級表が動くか動かぬかというのを見定める問題が一つあるということでございまして、現状であるならば現状の労災補償の障害等級表を使いまして、何等級は何デシベル以上といったようないわゆる認定基準の問題につきましてはほぼ成案を得ておるということでございます。
○吉村委員 どうも少しこまかい点に入って恐縮ですけれども、六十デシベル以上については適用するというのがいままでのやり方であったでしょう。ところが、六十デシベル以上というのは大体どういう程度の人かというと、とにかく耳のそばに口をおっつけてしゃべらなければだめだという程度の人なんですよ。そういうことではいけないということで、関係の労働者から出されておるのは大体二十五デシベル以上ぐらいから適用してもらいたい、こういうような話があったはずですよ。そういうことに基づいてこの専門家会議は発足をしあるいは検討されたと思うのです。二十五デシベル以上から適用するかどうかという問題については、いろいろ専門家の間にも御意見があるでしょうから、私はそれには直接は触れません。ですから、いまあなたの答弁が、現行の六十デシベル以上というものをこの等級表が変わった場合にどう適合するかということでやっているとすれば、これはたいへん困る問題なんです。大体どの程度からこの職業性難聴として該当せしめていくかということの検討を今日までなされておった。それも一つの検討の中身であったと私は理解をするのです。ですから、専門家会議の結論というものがどういうふうに出たのか私は知りませんけれども、結論らしいものが出て、次の作業の段階に入っているとするならば、大体どの程度から適用していくべきか、そういうことがきまれば、この等級表に――これは十一級以下は耳の障害については適用がないのです。だから十四級なら十四級まで該当せしめていけば当然にして、二十五デシベルになるかあるいは三十デシベルになるかは別にして、もっといまよりも多くの人がこの労災補償を受けられるということになる。そうならなければいけないだろう、こういうふうに私は考えておるのですが、結論の出方が、出るには出たけれども、現在のこの等級表というものが変わった場合にどう当てはめるかという検討だけなされているのだということであれば、これはたいへん問題なんです。私が先ほど言いましたように、もっと広範囲にどこから適用するかということも含めて検討したはずなんだから、それについて結論が出たとするならば、一体これは何デシベル以上ということぐらいまで出たのですか。
○村上(茂)政府委員 大体出ておるのでございます。私が申し上げたのは、なぜおくれているのかという点について――これは去年の五月の六日に大体成案は得ておるわけです。現在の等級表に応じまして何デシベル以上をその当該等級表に当てはめるかという作業は、昨年の五月段階でもうほぼ完了に近づいておるわけであります。ところが、それじゃなぜいままでおくれているのかというおしかりをいただきましたので、それは将来どう動くかわかりませんけれども、厚生省に障害等級調整問題研究会というのができたので、その動きを見ております、その関係でおくれていますということを申し上げたわけであります。したがって、等級表が変わるかどうかというのは全く仮定のことでありまして、これは変わらぬかもしれません。従来の継続した作業はほぼ完了しておる、こういうことでございます。
○吉村委員 何デシベル以上適用ということになったのですか。
○村上(茂)政府委員 これはまだ専門家の段階で発表を見合わせたいということで、実は中央労働基準審議会などでも、専門家会議の結論について報告を求めるべきではないかという意見も若干ございましたが、もう少しお待ち願いたいということで、待っていただいております。
○吉村委員 先ほどの局長の答弁は、何デシベルから適用するかということが一応きまったので、あとは障害等級適用委員会の作業に入っておるという答弁だったでしょう。だとするならば、一体何デシベルから適用がきまりましたか、それはまだ発表の段階ではありません、こういうことでは何のためにいままでやってきて、何のために十年もかけてきたのかわからないことになるのじゃないですか。あるいは関係の人たちが期待しておった答えにはならないということになりませんか。そして発表してみたところが、従来どおり六十デシベル以上でありました、当該のこの障害等級表が変わるために作業をやりましたということになったとするならば、これはたいへんなことになりますよ。検討した上で結論が出たというのであるならば明らかにできない問題じゃないでしょう。
○村上(茂)政府委員 その委員会のつくりました案をいま手元に持っておりませんので、不正確なことを申し上げるのはいかがかと思いますので差し控えさしていただきたいと思います。学術的ないろいろな条件もついておりますし、いま手元に資料がございませんから、申し上げるのを差し控えさしていただきたいと思います。いずれにしましても、大体成案を得ておりますが、ただ専門委員会の立場もございますし、国会という公の場で発表することを専門委員会のほうでどういうふうに考えるか、そういった問題もございますので、ここで申し上げるのははなはだ申しわけございませんが……。いま手元にその委員会の案がないということと、それから委員会側の考えもあると思いますので、また別に御連絡申し上げるのは別といたしまして、いまはちょっと差し控えさしていただきたいとお願い申し上げる次第であります。
○吉村委員 局長のいまの発言は、私はちょっと重要に思うのです。国会の場だから、それは専門家会議、専門家等の意見もあるから発表できない、こういう趣旨のお話がございましたね。なぜ一体国会でこれを秘密にしなければならないのですか。専門家にどういう影響を与えるというのですか。国会で発表するということが、出た結論に対してどういう悪い影響を与えるのですか。あなたのほうでいまこの場所に資料がないからもう少し時間を待ってくれというなら話はわかりますよ。しかし、あなたはいまの答弁で二つのことを言いましたね。資料がいまないということと同時に、国会の場で発表することは専門家に対しても云々という、そういう趣旨の答弁がありましたね。だとすれば、私はたいへん問題だと思う。これはそれほど影響があるのですか。国会ですら明らかにできないという理由は一体何ですか。
○村上(茂)政府委員 先ほど申し上げたとおりでございますが、要するに大体の案はまとまっておりますけれども、専門委員会と申しますのは、中央労働基準審議会と労災保険審議会と両審議会の合同検討という意味で、両審議会から委員が出されまして難聴専門家委員会というのがつくられたわけでございます。そこで委員会といたしましては、案を公にする段階としては、まず両審議会に結果を報告して、そうして両審議会のほうからは、審議会がどう取り上げるかという判断を求める、そういうふうな手続になっておりますので、私としましても、両審議会を通じて専門委員会をつくり、御検討を願っておった。審議会のほうも知らないというような状態で、審議会の委託を受けて専門委員会で研究しておったといういきさつがございますので、それを考慮して先ほどのような御答弁を申し上げたわけであります。しかし、いま即刻申し上げられませんのは、その案が手元にないからというふうに申し上げたわけでございます。
○吉村委員 それはすなおに答弁を撤回したらどうですか。いまあなたが、資料がないからしばらく待ってくれ、こういう趣旨に了解してくれというならば、私はそれで了解すると言っているのですよ。あなたが先ほど言ったことは、とにかく他の専門家等に与える影響があるから国会の場では答弁できない、こういうことを言っていますから、それは問題だというのですよ。それはいままでのあなたの答弁を聞いてみましても、とにかく昨年の五月の段階で結論が出たというのでしょう。しかも専門家会議なるものは労働省だけでつくられたものではないはずですよ。審議会の中のその専門家も含めてつくられたことも私は知っておりますよ。そういう中で出た結論がなぜ一体審議会の専門家の人たちにまずいからということになるのですか。私はもう少し問題の本質というものを明らかにしていく必要があるだろうと思うのです。私が言っているのは、とにかくこの難聴のために約四十万の方々が非常に悲惨な生活をしておる。それはいま高音性の職場で働いている人々が八万人だとか言いましたでしょう。それが何年間と続いてきておれば、当然その数は相当な数になると見なければならないのです。しかもその高音性の難聴であろうと、そういうことによっていま非常に不自由な生活をしておる人は、ある統計によると、四十万人もある。これはいつかテレビでも発表になったはずです。しかし、私はその数字は、的確なものというふうに理解をしているのじゃないのですよ。必ずしも正しいというふうに理解をしておるものではありません。しかし、相当多数の人たちが、この難聴によって不自由な生活をしいられておる。ですから、労災法のたてまえからすれば、非常に欠点がある。不十分な点がある。こういうことに気がついて、専門委員会というものを設置して、今日まで検討してきた。ようやくその結論が出たとするならば、その結論を早く知らせてやるくらいのそういう温情味があってしかるべきではないですか。しかも、国会の場においてそれが発表できない、そういうことであるとするならば、私はこれはたいへんな問題だと思うのです。いま手元に資料がないからちょっと待て、こういうことであるとするなら、あなたが最後に答弁をしたそういう趣旨であるとするならば、その資料をできるだけ近い機会にこの委員会に発表をしてもらう、提出をしてもらう、こういうふうにしてもらいたいと思うのですが、いいですか委員長、これは。
○村上(茂)政府委員 御趣旨に沿うようにいたしたいと思いますが、ただ先ほども申し上げたとおり、専門委員会では決定はしていないのであります。ほとんど案はまとまっておりまして、成案を得つつあるという段階で決定いたしましたものならば、これは申し上げるのでございますけれども、ほぼ結論を得ておるが、決定してないということで、先ほどちょっと誤解を生ずるような答弁をいたしまして恐縮に存じておりますが、ただいまの御趣旨に沿うように私ども善処いたしたいと思っております。
○吉村委員 御趣旨に沿うように努力するということは、沿えない場合もあるということですか。私はそんな答弁ならば、いままでと同じ答弁だから必要ないですよ。委員長、これはひとつお願いします。とにかく先ほど来の質疑応答を聞いて委員長もおわかりのように、専門委員会の結論は出た。したがって、障害等級適用委員会というものを設けて、どういうふうに適用するかという検討の段階に入ったというふうにあなたは明確に答弁された。だとするならば、この結論は出ているというふうに理解するのが当然でしょう。だとすると、この結論について、この委員会に発表をしてもらいたい。その資料を提出をしてもらわなければいけない、そういうことになってくるのではないですか。ところがまだ最終的な結論は出ません、いまになってそういうことを言われることは、私は不穏当な答弁だと思います。委員長、ここはひとつその資料を委員会に提出をするように、私は正式に要求をします。
○田中委員長 後刻理事会に諮って結論を得たいと思います。
○吉村委員 大臣、私はいま難聴の問題について申し上げましたが、難聴という専門的な問題について大臣から意見を聞こうとは私は思いません。問題なことは、この難聴の問題について専門家会議が設置をされたのは、いま答弁をされましたように昭和三十三年です。国会で私が問題にしたのはこれで三度目です。言いかえますと、三年目です。去年の石田大臣当時においては、専門家会議の結論が十年もかかって出ないことはきわめて遺憾でございまするので、近くこれは出ることになっております。近くというのは一体いつかと言ったら、これは一週間後だ、こういうふうに言ったのですよ。それから約一年がたちました。いま経過を聞いてみたら、結論は出たという話でございます。たいへんけっこうなことでございます。しかも、その作業に入ったのは去年の五月だという、五月以降の会議はなかったようでありますから、五月ごろで、あとはそれぞれの、それこそ専門家同士で打ち合わせをしているんだと思うのです。ここで私が大臣に見解を求めておきたいのは、一体どうしてこういった問題がいつまでもいつまでもかかるのか、外国に例がない問題ではないのです。外国でも難聴の問題等については相当研究をされて、すでに労災の中で適用されている国が非常に多い。ですから、日本でも当然に問題になっておった。ところが、それが十年間も放置されておった。しかも国会で問題になって以降二年間も、すぐに結論が出る出ると言いながら、これまた非常に事務が渋滞をしておる、こういうようなことでは、私は国民がやはり政府の公約なり、あるいは大臣の言明というものについて信頼感を持たなくなってくると思うのですよ。国民が大臣の答弁だとか、政府のやり方について信頼感がなくなったとするならば、これは政治というものは決して発展もしていかない、こういうことにならざるを得ないと思うのです。そこに政治の不信の最も大きな原因があると私は思うのですよ。これは一つの例ですよ。私は次に一つの例を出しますよ。そういうような事柄について、一体労働大臣はどうお考えになっておりますか、これは非常に多くの労働者が関心を持って見詰めていた問題なはずです。どうです。
○小平国務大臣 難聴の問題についての先ほど来の御質疑、私もよく拝聴いたしておりました。そこで、いまのお尋ねは、大臣等がここで御答弁申し上げたことがそのとおり行なわれないのは政治不信の基ではないか、こういうことに対する見解を求められたわけでございますが、原則としてはもちろん私は先生のおっしゃるとおりでございまして、いやしくも大臣が責任を持って方針その他についてここで御答弁申し上げたことは、それは極力実行さるべきである、かように私も存じます。もちろんその間、その間と申しますか、その後というのが適当かもしれませんが、非常な何か情勢の変化等が生じたというようなぐあいで、必ずしもある時期の大臣の言明したとおり実施いたしかねる、むしろそうでないほうを選んだほうが適当だという場合も、私は全然生じないとは限らぬと思います。そういう例外的な場合は別として、先生の御主張は私もまことにごもっともだ、かように存じます。この難聴の問題について、私も率直に申しまして、はなはだ申しわけないのですが、石田前労働大臣が一週間ぐらいで結論が出るというのか、そういう答弁を申し上げたということを、実は私も承知しませんでした。しかし、先ほど来の御説明でも御理解いただいたと思いますが、なかなか医学的にむずかしいとか、あるいは測定方法がむずかしいとか、いろいろ理由はあったと思いますが、いずれにしてもこの問題に関する限り、前石田労相の答弁どおりに事が運んでおらなかったということは、私どもはなはだ遺憾に存じます。しかし、だいぶ時日も経過しておるようでございますし、今後厚生省関係のほうとの調整ということに相なるのだろうと思いますが、厚生省とも十分ひとつ連絡をとって、できるだけすみやかに、最終的な結論が出るようにこの上とも努力をいたしたい、かように思います。
○吉村委員 それでは職業性難聴の問題についての質問は一応私は終りますが、ぜひひとつ、長い懸案でもありまするし、非常に悲惨な生活をしいられておるわけですから、そういう方々の要望にこたえて、そしてできるだけ早く、かつできるだけ多くの方々がこの労災補償の適用を受けられるようなそういう作業を進めてもらうように特に強く要望しておきます。
 いま大臣からも所信の表明がありましたので、ひとつ事務当局のほうでも、ぜひ大臣の答弁の趣旨に沿って、早急に、結論といいますか、この適用ができ得るようなそういう措置をとってもらうようにしていただきたい、こう思います。
 それで、次は最賃法の問題について少し質問したいのですが、大臣も就任以来相当の日時がたったわけでございますけれども、まず現行最低賃金法について感じられていることをひとつこの際明らかにしていただきたい。
○小平国務大臣 まず、当面の問題としては、現行の最賃法の運用上、先生も御承知のとおり、これが実施にあたりましては大体いわゆる業者間協定というものを中心にしてやってまいったのでございますし、また、その最低賃金の目安につきましても、一昨年十月の中央最賃審議会の答申に基づいた目安でやってまいってきた。それからもう一つは、四十一年度末までを目標にして重要対象業種について五百万人を目標に推進すべきだ、こういうことで大体推進をいたしてまいったわけですが、従来の目安というものが最近における賃金の上昇等の状況から見まして必ずしも適当でないということで、本年二月に入りまして、この目安を改むべきである。こういう御答申をまたいただきましたので、労働省としては、とりあえずはこの新しい目安に沿うて最低賃金を改定していく、こういうことに努力を払おう、こういう方針でおるわけでございますが、この現行最賃法自体がどうであるか、こういうことについてもいろいろ御意見のあることを私も承知をいたしております。
 現行の最賃法につきましては、これが制定の当初におきましては、ILOの二十六号条約等にも適合するものである、当初こういう見解で発足をいたしたように承知をいたしております。が、しかし、さっきも申しますとおり、現行の最賃法は、業者間協定ということが基になりまして、業者側にだけ認可の申請権を認めておるというようなことからいたしまして、ILO二十六号条約の第三条でありましたか、それにどうも適合せぬのではないか、こういう見解も相当強力にある、こういうことでございました。立法の当時におきましては、なるほど申請は業者のほうからされるが、しかしこの最賃審議会等は三者構成であって、そこの認可ということにもなるのであるから、二十六号条約にも適合する、こういう見解であったようですが、いまも申すとおり、その後、いやそれは二十六号条約には適合せぬ、こういう御主張もだいぶ強く出てまいった。そういったような関係もございますし、また最賃審議会においても、四十二年度以降の最賃法のあり方については基本的にあらためて検討すべきだ、こういう御意見もかねがねございましたので、私は昨年六月に就任をいたしました直後、その間のいろいろな事情を事務当局から聴取いたしましたので、それでは早急に将来の最賃法のあり方について基本的に御検討願うということがよろしかろう、こういうことで八月に、将来の最賃法のあり方について御検討をお願いをいたしたのでございます。
 その検討にあたりましては、最賃制というものがもちろん労働者諸君にとりまして重要な問題であることは申し上げるまでもございませんが、また同時に国民経済的な面から考えましても、これまたきわめて重要な問題であることはあらためて申し上げるまでもございません。同時にまたその間、これは全国一律、全産業一律制という御主張もございますし、あるいは産業別がいいのじゃないかとか、あるいは地域別というものも考慮するのがいいのじゃないかとか、いろいろ御主張がおありのようでございますから、そういういろいろな御主張を含めて一つずつ御検討願いたい。また外国の関係、特にILOとの関係なども含めて御検討をいただきたい。こういうことでお願いをいたしてきたわけであります。
 ところが、御承知のとおり、先般の予算委員会におきまして、どうもILO二十六号条約との関係がはっきりしていないじゃないかという八木委員あるいは多賀谷委員等のお話がございましたので、その際も申し上げましたとおり、では、その点がはっきりしていない、こういうことであれば、現行の最賃法がILO二十六号条約に適合するようにひとつ御検討いただきたい、こういうことで重ねて中央最賃審議会にお願いしましょう、こういうことを申し上げましたので、さっそく二月の十九日に、あの予算委員会で申し上げましたとおりの文言をもって、「将来の最賃法が条約に」――「条約に」というのは二十六号条約にということでございますが、「適合するよう、答申を賜わりたく、お願いいたします。」こういうことで重ねてお願いを申し上げたわけでございます。
 以上が、大体のいきさつであり、また私の考えておるところでございます。
○吉村委員 大体きわめて大ざっぱに経緯を述べられたのですけれども、労働大臣として最賃法とは今日の段階でいかなるものでなくてはならないのかということについての自信のあるお答えを私は期待をしたわけですけれども、単にそういう経緯の説明だけにとどまったわけです。私は、労働問題ばかりではありませんけれども、最も大切な事柄はやはり人間、特に為政者が国民から信頼をされる、そういう日常の言動がないと、すべての問題はうまくいかない。特に労使の関係についてはその感が深いことは言うまでもないと思うのです。日本の最低賃金法ほど労使の不信感というものを増大させたり、あるいは労使の関係というものを不安定にさせたり、今日また不安定にさせたものは私はないだろうと思うのです。ですから、この現行最賃法が昭和三十四年に国会に提案をされて以降、国会の中における議論あるいは外におけるいろいろの情勢、こういうものを見てまいりますると、私の判断では政府はILO二十六号条約に適合するところの最賃法というものを制定する意思は、正直言って私はなかったと断ぜざるを得ない。それはその後の政府のILOに対する折衝のあり方あるいは労働団体に対するところの対応のしかた、こういうものの中できわめて明瞭に浮き彫りされてくる。このように私は考えます。
 そこで、そのことを振り返って考えてみますると。大臣もすでにそういう点は調査をされておると思いますけれども、もしこの最賃法が国会を通過したならば直ちに二十六号条約によるところの推進をするのか、こういうことに対して批准をするという言明を当時の労働大臣倉石さんはされています。その際、わが党の委員が指摘をしましたものは、この現行の最賃法のままの姿ではILO二十六号条約に抵触をする、したがって、批准はできないと思いますよということをきめて明快に論じて、政府の態度の変更を迫ったはずでありますが、その心配はない、絶対にこの現行最賃法で批准ができる、こういう答弁を政府はいたしました。しかし、その後の経過は御存じのとおりで、政府のほうから積極的にILO二十六号条約批准の姿勢というものを示し得なかった原因は一体何かということを考えてみまするならば、これは現在の労働大臣は知らないと思います、あるいはすべての大臣が知っていたというわけではないだろうと思うのです。しかし、労働省のこの仕事に携わっておった当時の役人の方々は、この現行最賃法でILO二十六号に適合するかどうかということは、私はわかっておったはずだと思うのです。ところが、抵触はしませんということを強弁しながら、非常に国会の内外に紛糾だけをもたらしてしまっておる。労働団体等からもこの最賃法は最賃法の名に値しない、こういうことで中央、地方に設置されておりますところの審議会の委員の選考、選出等にあたっても大紛糾を来たしたことは御存じのとおりです。その後の状況をずっと見てまいりましても、常にこの最賃法という問題が労使の間で紛糾の種になっておる。労使の関係を安定させるという役割りは何ら果たしていない。そればかりか、最賃法が本来目的にしなければならないところの労働者の生活安定というものには決してプラスをしていない。むしろ業者の恣意のままに労働者の賃金というものがきめられる。したがって、日本の低賃金というものの温床的な役割りしか果たしていない。こういうことで、労使間というものがこの最賃法をめぐって常に紛糾が絶えなかったということは、今日明らかになっていると思うのです。そういう経緯を経ましてどういう状態が起こったかといいますると、労働省のほうではILOに対して、正式かどうかは別としまして、この現行最賃法が二十六号条約に適合するかどうかの照会をしたということも今日の段階では明らかになりました。ところが、向こうからの回答については何ら発表されておりません。しかし、いままでの本会議あるいは予算委員会、そういう中におけるところの政府当事者の答弁から推察でき得ることは、現行最賃法が二十六号条約に適合するかどうかについて照会をし、その回答も得ていることは明瞭ではないかと私は考えるのです。その結果、現行の最賃法についてはもはや二十六号条約には適合しないということを判断せざるを得なくなったというのが、今日の政府の姿勢ではないかと思うのです。ですから、いま大臣が答弁をされましたように、現行最賃法については二十六号条約に適合するように再検討してもらいたいという諮問をせざるを得なくなったということが、この間の経緯をきわめて明確に示していると見なければならぬと思うのです。私がここで申し上げたいのは、野党の意見だからといってむげに退けておったからこういうような紛糾の種になってしまっておる。しかも政府にとってはこれは大黒星でしょう。最初は、この現行最賃法で二十六号条約の批准ができます、しますと言明をした。ところが今日の段階になって、いろいろの経緯を経ましたけれども、二十六号条約には抵触をするということを皆さん自身も考えざるを得なくなってしまった。いわば見通しも何もない、そういう中で単にこの最賃法というものを制定して表面を糊塗したにすぎない。それだけで済んだからいいと思うのですけれども、労使間の紛争の種をまいて今日なお紛糾をしておる。こういうことについては、政府全体として責任を明らかにしなければならないほどの重大問題である。現在の小平労働大臣は前のことについて責任が負えない、こういうことであるかもしれませんけれども、政府全体として政府の不明について非は非として明らかにして、初めて国民の信をかち得ることができる、こういうことになるのではないかと思うのです。そういう点で、私はこの現行の最低賃金法というものが非常に間違いの多いものであったというわが党の指摘の正しさがここで明らかになった、反面、政府の不明というものが今日の段階で明瞭になった、こう見ざるを得ないと思うのですけれども、私がいま申し上げたことに対して大臣の見解はどうですか。
○小平国務大臣 ILO二十六号条約と現行最賃法との関係でございますが、これは先生も御指摘のとおり、あるいは先ほど私からも申しましたとおり、これが制定の当時におきましては、労働省はILO二十六号条約に適合するものという見解は確かにあったようでございます。しかし、その後どうも二十六号条約に抵触するのだという御意見も相当強くなってまいっておるししますので、今回適合するようにひとつ御検討いただきたい、こういう諮問をしたわけであります。
 そこで、先生御指摘のように、政府側が不明であった、社会党の御主張が適切であった、こういうお話でございますが、実は率直に申して、多分にそういうふうにとられそうな、何といいますか、空気とでもいいますか、があることは私は決して否定しません。しかし、そうかといって、それではいまのが二十六号条約に全然もう抵触するのだ、こういう結論が、実はまだはっきりしたわけでもないようでありまして、政府側もILOのほうに非公式には照会をいたしたわけでありますが、ILO事務当局からは明確な返事もまいらなかったということのようであります。それで、実はその辺、一体どういうことなのだろうと私自身も実際疑問を持ちまして、いろいろ事務当局の話を聞いたのですが、ILOの事務当局というのは、条約の解釈権といいますか、そういうのは、これはまあ正式の話でしょうが、ないのだそうですね。そういうことですから、ILO事務当局も、日本の現行の最賃法は二十六号条約に抵触するという、はっきりした回答もおそらくできかねるのじゃないか。そういう実情ではないか。しからば、政府が現行の条約は二十六号条約に適合するという確信があるならば、かりにそういう確信に立って批准をするということになったら、一体どういうことになるのかといいますと、これは条約適用委員会というのがILOにある。いや、いまのではだめなのだという提訴がかりにあれば、最終的にはILOとしては条約適用委員会等で問題を出す、そういう機構に相なっておる。ですから、かりにそういう運び方をすると、日本はせっかく批准をしたがどうもこれはILO二十六号条約に適合しませんよ、かりにそういう判定でも受ければ、これは日本政府としてもはなはだ対外的にも面目がないことになる。そういうことも当然考慮しなければなりませんから、この段階におきましては、いままでのいきさつはいきさつとして、このILO二十六号条約に適合するということを疑いのない姿で、批准するなら初めからすることが対外的に考えましても適当であろう、私自身さように実は考えておるのであります。そういう見地から慎重を期して、今回中央最賃審議会のほうに、適合するようにぜひ御検討いただきたい、こういう諮問をいたしておる。私はこういう、いま申したような考え方に立って諮問を申し上げておる、こういうことでございますので、ひとついままでのいきさつはいきさつとして、御了解をいただきたいと思うわけでございます。
○吉村委員 いまの労働大臣の答弁が十年前に聞かれたならば――いや十年前じゃなしに、三十四年当時ですから、十年前にはなりません。三十四年当時にそういう答弁をしておれば、私はいまここでこういうことを問題にしない。対外的な条約の批准についての国内法の手続というものは、条約に合致する、批准し得る国内法を整備をするという方針で事に臨んでいるのが、日本政府の条約に対するあり方です。それは一貫しているはずですよ。いま小平労働大臣の時代になってそういうことになったはずではないのです。ですから、そのことを裏書きするように、第三十一回国会の社会労働委員会において、倉石労働大臣はそのことを明確に答弁をしております。読んでみましょうか。小林(進)委員「かりにこの政府原案の最低賃金法案が両院を通過いたしました場合には、労働大臣は最低賃金決定制度の創設に関するILOの二十六号の批准をおやりになる考えがあるのかどうか、お伺いいたしたいと思うのでございます。」倉石労働大臣「本法案が成立いたしました暁においては、なるべく早く批准の手続をとりたいと思います。」こういうふうに言っております。これは当然のことだと私は思うのです。わが国の条約に関する法制定についての考え方からすれば当然だと思うのです。ところがその際、先ほども申し上げましたように、すでにわが党の議員が指摘をしたのは、この最低賃金法がILO二十六号条約の中で抵触する部分、特に業者間協定、こういうものが抵触するはずです。抵触をするおそれあり。賃金決定については、直接その仕事に携わっておる労使が対等の立場で協議をするという条件が必要になっている。ところが現行最賃法はそれがない。ですから、これは明らかに抵触すると指摘をしておるのに対して、強弁に強弁を重ねて、だいじょうぶだと言ってこれを通したのはその当時の政府なんです。小平さんではないですよ。その当時の政府はやはり自民党の政府なんです。いまだに続いているのです。だから私はここで申し上げたいのは、あなたは先ほど、空気としては社会党さんの言ったようなことでございましたという、たいへん弁解がましい、半分肯定半分否定のような、そういう言いわけがありましたけれども、非は非として率直に認めたらどうですか。そのほうがすっきりしていいと思うのです。小平さんの時代になってから、政府はこの最賃法というものが二十六号条約に合致しない、こういうことに気がついたので、したがっていままでの政府のとってきた態度は間違いでありました。不明は天下におわびをしますと言うのが何が恥ずかしいことがあるのですか。恥ずかしいことはないはずです。結果的にはそうやっているのです。いろいろ言いわけがましいことを言っておりますが、結果的にはあなたのほうはそうやっているのです。先ほどの答弁によりますと、予算委員会の質問に対する答弁どおりに、二月十九日に中央最賃のほうに、二十六号条約に合致するような案をつくってもらいたいという、そういう諮問をしましたということは、言いかえると現行最賃法が抵触するおそれあり、こういうことを感じられているからでしょう。もっと極端な言い方をしますと、おそらくILOとの非公式接触の中で、現行最賃法ではとても問題にならないという回答をあなた方は得ているはずだ。ところがこの接触の内容については、政府はがんとしてこれを公表しない。公表したほうがむしろ問題ははっきりするのです。しかし公表しない。公表しないけれども、あなた方の態度全体の中で、だれもこれは疑う者がないほど明らかになっていることは、あなた方自体が、現行最賃法では二十六号条約に合致しないということをお認めになったということになるのではないか、こう思うのです。私は社会党がその当時指摘したことが正しかったんだと言って宣伝するという気持ちはありません。しかし、為政者の側、行政府の側としてのあやまちというものは明確にしなければ、これからもまた国民の不信を買う問題が再三出てくる。そういうときにはやはり不明は不明としてわびる。そして新たな角度に立って問題を前進させる、そういう姿勢と態度がなければ国民の信頼をかちとることができない。労使関係は人と人との問題ですから、不信感があってはだめなんです。だから、そういう点から考えてみても、私はこの際率直に、現在までの政府の非というもの、不明というものを明らかにしたほうがよろしいのではないか、あいまいにしないほうがいい、こう思うのですが、どうでしょうか。
○小平国務大臣 私もあやまちをあやまちとして率直に認め、改むべきは改めていくということ、そういうものの運び方というのは、私も個人的には大体そういうことが好きなのでありますが、この問題については先ほど来申し上げておりますように、どうもいまの最賃法というものがこれでもう二十六号条約に適合するのだという見方をなさる方も中にも――中にはというか、政府は当初そういう考えを持っておったし、今日でもなおそういう考えの方もあるようでありますし、一面これは適合しないのだ、こういうお考えの方ももちろん相当ある。こういうことで、事実どっちが妥当なのか、この点についても私自身正直に申しますが、どちらが正しいのかと言われて、いやどっちかが正しいのだと申し上げる確信は実際私にはございません。いろいろそういう御議論もありますし、あるいはILO当局からも明確な回答をもらっておらぬ、また、回答を出し得ないという事務局のお立場のようでございます。そういうこともありますから、この際そういう疑わしいことにいつまでもとらわれておるということも私自身もいかがかと思いますから、なるべく早くひとつそんな疑いのないような案をぜひ検討していただきたい、こういうことでおはかりをいたしておるわけでございます。政府としても、条約との関係においては先生御指摘のとおりのいきさつでございますが、また最賃制というものが、先ほども申し上げましたが、とにかく国民経済との関係あるいは特にわが国に非常に多い中小企業との関係等いろいろ問題もありますので、条約を批准するようにという目標はあくまでも目標でございますが、一面またわが国の実情というものにも十分考慮を払わなければならぬし、そういう実情に立って、いわゆる実効のある最賃法、こういうことも当然考えに入れなければならぬことであろう、こういうことで、ここらのことを総合的に審議会のほうでも御検討を従来から願ったことと思いますが、特に今回の諮問においては、そういう実情にも即し、かつまたかねがねねらいといたしております二十六号条約にも適合するようにぜひひとつ検討してください、こう言っているわけでございます。先ほど申しましたような過去のいきさつというものがいかにも判然としない、何か割り切れぬ事情にあることははなはだ遺憾でございますが、過去は過去といたしまして、この段階に立って、わが国の実情がこの二十六号条約にも適合するようなそういうりっぱな案の御答申を私としては早急にいただきたい、かように願っておるところでございます。
○吉村委員 いまの大臣の答弁は、いままでの予算委員会における八木、多賀谷両委員と村上基準局長とあなたと総理大臣、このやりとりの関係から考えてみますと、私は、たいへん後退をした答弁をしておると思うのです。もちろん表現の違いですから受け取り方にもよるかもしれません。あの予算委員会が中断をされて、そしてあなたが最終的な答弁をせざるを得なくなった事情については、ここでその事態を再現をして議論をする必要は私はないと思うのです。ILO当局と日本政府との間に非公式な接触があった。これはいまもあなたが認められております。しかし、その非公式な接触の経緯については、国民はつんぼさじきに置かれて全然知らされていないのですよ。知らされてはいませんけれども、しかし向こうに行っていろいろ事情を聞いたりその他の接触をわれわれの側でした経過によりますと、現行の最賃法のままでは非常に問題がある、疑義がある、抵触しておる部分がある、抵触ということばがきついとしますれば疑義がある、こういうことをあなた方はお認めになったと思うのです。お認めになったからこそ二十六号条約に合致し得るようなそういうものを答申をしてもらいたいという諮問をする、そういう公約をなさったわけでしょう。ですから、いままでの答弁の趣旨からしますと、現在の最賃法というものは非常に問題があって、労使紛糾の種になっておった。こういうような事柄をここで一挙になくしていかなければならない。こういうことで、本来ならばあなた方自体が最賃法のあるべき姿について案を示して諮問をする、そういう姿がなくてはならない。ところがいまだにそういうこともなされていないで、白紙で二十六号条約に合致するものを、こういう言い方をしているだけだと思うのです。
 それから、いまの大臣の答弁によりますと、日本の国情に合致した云々、こういうことでございます。日本の国情に合致した、そこにあまり視点を合わせると二十六号条約に抵触する、こういう結果になったんでしょう。この最賃法の提案の趣旨説明等から考えられるところは、そういうところにあまりに重点を置き過ぎたためにこういう結果になっているのです。だから、いまの答弁というものは後退をしておるというふうに印象としては受けるのですが、ここで確認の意味で承っておきたいと思うのは、現行の最低賃金法そのままでは、あなた方としては二十六号条約を批准し得る、こういうような自信はないのでしょう。
○小平国務大臣 現行の最賃法で二十六号条約を批准して適合しているという判定をILOが最終的になさるかどうか、そこについての自信があるのかないのかと言われれば、そこに疑問があるから、いまこうして先ほど申しましたとおりおはかりをいたしておるのです。
 それから、先生はじめ社会党の諸先生が非公式にやはりILOに当たられていまの最賃法では疑義がある、こういうことであるということは再三伺っておりますので、そういう点にもわれわれはすなおに耳をかして、やはりそういう御議論もいろいろあることであるから、いまのままでかりに批准をして、あとになってからどうも適合せぬと言われるようなことは、先ほど申したとおり日本の政府としても面目のないことですから、そういう心配のないような最賃法をぜひ考えてほしい、こう言っているわけです。今日の段階としては、いま確信があるのかと言われれば、私は確信があると積極的に申し上げられませんし、いろいろ御議論があるので、私どもとしても実際困っておるので、その辺が積極的にいまのままではだめなんだと私が言ってしまうわけにもいかないし、これはとにかくなるべく早く御答申をいただきたい。せっかく諮問中でございますから、私はりっぱな案が御答申いただけるものと大いに期待をいたしておるわけでございます。私が予算委員会で申し上げたこととあるいはことばはそのとおりではないかもしれませんけれども、別段私の気持ちなり考え方なりは後退をしておらぬつもりで私は御答弁申し上げておるわけでございます。
○吉村委員 とにもかくにも現行の最賃法がILO二十六号条約に適合するかどうか、批准条件に合致するかどうかということについて疑義があると思う、したがって、適合し得るものをつくりたい、こういう意向になった、こういう話ですね。そういう意向で作業を進めておる、こういうことでございますね。
 それで次に、お尋ねしたいのは、本来でありますならば、この種の諮問をする場合には、労働省自体が自信を持って、これならば二十六号条約にも合致をし、しかも日本の国情に沿うところの最賃法である、そういう草案といいますか、そういうものを付して諮問をするのが通常の姿だと思うのですけれども、今度の場合には白紙の諮問をしているというのには、何か特に考えられている点があるのですか。
○小平国務大臣 各種の諮問機関、審議会その他の名称でずいぶんたくさんございますが、そこにはかる際に、政府側でこういう案ではいかがでしょうか、こういうはかり方ももちろんありますし、それが実際問題として数が多いでしょう。しかしまた、問題によりましては必ずしもそうではなくて、こういうことをしたいのだがどういうふうにしたらよろしゅうございますか、どういう案がよろしゅうございますかと、いわば白紙の状態で御諮問を申し上げるということもこれは全然なくはない、私はそう思うのです。ですから、詰問のしかたとしては、大体二つの場合があると思うのです。後者の具体的な例といたしましては、たとえば、私どものほうの労働省の関係といたしましても、これは総理府に置いてあるわけですが、雇用審議会ですか、これなどに対しましても、雇用情勢に応じてどういう策をとったらよろしゅうございますか、こういう一種の諮問をいたしまして、それに対して、先般こういう点を審議して、こういう方針でという答申がございましたので、それを受けて労働省のほうで雇用対策法というようなものを立案いたしまして、それからいま、さらに重ねてその大綱について雇用審議会におはかりをいたしておる、法案の大綱ということで、あらためてまた重ねて御審議をわずらわしておる、こういうことでございまして、このように初めから案を具して諮問する場合、それから問題によってはむしろ審議会の委員の方々の自由な御検討によって結論をちょうだいする、この両者があるわけでございまして、問題の最賃法につきましても、再三申し上げておるように、あるいは先生御自身がよく御承知のとおり、最賃制の方式として全国あるいは全産業一律方式とか、あるいは地域別がいいとか業種別がいいとか、いろいろな御議論がございますししますので、こういういろいろな御主張を含めて、ひとつ基本的に御検討をいただきたい。これはあらかじめ労働省のほうからこれがいいのだ――いいのだと言わぬまでも、この案でと具体的な案を出してということになりますと、やはりある程度、審議会の、これもまた空気というとおかしいかもしれませんが、ある程度やはり、役所はこう考えているのだなという印象を少なくとも与えるでございましょうししますから、非常に重要な問題であるだけに、しかも審議会は三者構成でございますから、ここで十分まず話し合っていただくということが、最賃制そのもののたてまえからいっても、一方的に役所があまり具体的な案を出すというよりもむしろ最賃制の本来のあり方からいっても、労使ともにおられるし、第三者もおられるので、そういう場で十分これをまず話し合ってもらうということのほうが適切であろう、こういう見解に立って、案をあえて示さずにその御検討をお願いいたしたい、こういうことであります。
 私の考え方は、以上申し上げたとおりであります。
○吉村委員 大臣はきわめてざっくばらんな人のようでございますけれども、さすがに国会運営に携わっておるものだから、なかなかしっぽを出さない、そういう妙手を心得ているようでございますけれども、労働問題、労働行政の最高責任者ですから、もう少し自信を持って事に当たってもらう、そういう姿勢が必要だと私は思うのです。小平さんは、この後ずっと労働大臣をやっていないかもしれません。このごろの内閣は約一年ぐらいで大臣の首が飛ぶようでございますから、この一年間を無事に過ごせばいいというふうに考えていないとも限らぬ。がしかし、それでは迷惑を受けるのは、国民の側なんです。政府全体として将来についての責任を持っていくという、そういう態度がなくてはならない。その態度の中で最も大切なことは、労働行政の責任者として、すべての問題について自分の見解というものをやはり責任を持って明らかにし、実施をしていく、こういう姿勢が一番必要だと思うのです。先ほどの大臣の答弁によりますと、現行の最賃法が二十六号条約に抵触するかしないか、そういうことについても十分にはわからないというような逃げを打ちました。
  〔委員長退席、伊藤(よ)委員長代理着席〕
しかし疑義はあります、こういうことでございますけれども、あなたが労働行政の責任者であるとするならば、あなたが知らなくたって、スタッフはたくさんいるはずだ。こういうことについて責任の持てる答弁をする、そういうことがどうしても必要じゃないかと思うのです。今度の諮問のしかたについても全くしかりです。最賃法の問題は、他の諮問事項と異なると私は思うのですよ。何といっても労使関係の中で、あるいは日本の将来の問題についてきわめて大きな影響を与える、そういう問題であることは、いままでの経緯を見ても明らかなはずなんです。そういうことについて、労働行政の責任者であるところの労働大臣が諮問をするのに、あなた方の考えで、あなた方のいいようにつくってください、こういう無責任な態度は、私は許されないと思うのです。労働省としてはかく考えます、こうすれば今日の日本の諸情勢に合致し、しかもILO二十六号条約にも抵触をしないと思います、こういう草案があってしかるべきだ。出すのが当然の責任であり、義務であると私は思うのです。だから、今度の問題について白紙で諮問をするというあり方は、きわめて不見識な責任回避の態度というふうに考えておるのです。これは村上さん、どうですか。
○村上(茂)政府委員 最低賃金審議会に対する従来の諮問の例を見ますと、たとえば、昨年八月に諮問をいたしました際には、最低賃金制のあり方について基本的検討をお願いするというような形、あるいはその前は三十八年でございましたが、今後における最低賃金の進め方をどうするかという諮問のしかた、諮問の例をとっておるわけでございます。つまり事柄が労使に直接関係があり、かつ内容的にいろいろ問題があるということでございますから、できるだけ幅広い立場から御検討いただくというのがかえって適切ではないかというような立場から、最低賃金審議会に関する限りは、いま申しましたような形で諮問した例が多いということでございます。先ほど来大臣から御答弁ございましたように、最低賃金制のあり方自身についてもいろいろな御意見があるわけであります。そういう観点から各種の意見があるということを前提にして基本的な検討をお願いしたい、こういう立場をとっておるわけでございます。
○吉村委員 大臣、私は再三申し上げますけれども、この種の問題については労働大臣としての見解、考え方、こういうものを明らかにしないで白紙で諮問をしても、この問題はまとまらないと思いますよ。三者構成の中で、しかも意見が対立する非常に複雑な日本の情勢の中で、労使の意見、あるいは公益委員の意見が一致をするというようなことは予想できますか。いまですら、この最賃法の運用の問題についての諮問ですらてんやわんやしておったはずですよ。しかも、根本問題でしょう。根本問題について白紙で、諮問をしてまとめられると思いますか。全く私はこの態度は、労働省の責任回避そのものだと思います。ほかの問題ならいざ知らず、最賃法の問題でこれだけ議論をしておって、そうして労使の紛争の種となっておって、ILO二十六号条約に抵触する疑義がある、抵触するかもしらぬ、そういう問題になって国会で追い詰められて二十六号条約に適応するようなそういう最賃法をつくってもらいたいという諮問をする。その際に、労働行政の最高責任者としてはかくかく考えますというその草案がない態度というのは、きわめて私は無責任だと思う。
○小平国務大臣 先生のお考えからすれば、今回のような諮問のしかたが労働大臣として無責任である、こういう御見解になられるかと思いますが、私はさきにも申しますとおり、この最賃制の問題というものは、もう先生も御指摘のとおり、労使間できわめて重体な問題でございますから、またわれわれの立場からいたしますならば、そういった重大な問題であればであるだけ労使間で十分議を尽くして、何らかの妥当な結論を得てはしい。私どもは、これはひとり最賃問題ばかりでたく、一般的に労働問題というものは、そういう考え方に立ってやっておるわけでございますので、重要な最賃についても、労使間にそれは利害が対立すればするだけお互いの意見というものを十分練っていただく、しかもさきに申すとおり、これには公正な立場の第三者も委員としてお入りになるのでございますから、そういう中で全体としてどういう方途を選ぶことが一番妥当かという公正な結論が出てくるもの、またぜひ出していただきたいものと、私はさような立場からあえて、もうくどくどしく申しませんが、労働省の案というようなものは出さずに答申をお願いした、御検討をお願いした、こういうことでございます。先生のように無責任だとおしかりを受ければ、これは先生のお立場からはそういう御見解になられるかと思いますが、私の気持ちとしては別段責任を回避しているというような気持ちはないので、本来、労使問題というものは話し合いによってやってもらうことが一つの筋だ、私はさように確信していますので、そういう立場からしてもお願いをしておる、こういうことでございます。ひとつ御了解を願いたいと思います。
○吉村委員 簡単に言って、あなたの態度は時間かせぎですよ。それは一貫しておるのですよ。あなたはどうあろうと労働省の官僚陣の中で、最賃法の問題については時間かせぎをしていこうという態度が一貫している。三十九年の春闘の際に大橋元労働大臣は何と言いましたか。全国一律の最賃というものを基礎にして四十年の年末から開かれる国会に提案をしたい、こういう答弁をいたしたことを御存じでしょう。存じておりませんか。
  〔伊藤(よ)委員長代理退席、澁谷委員長代理
  着席〕
○小平国務大臣 いま手元に大橋元労働大臣の速記を用意しておりませんではなはだ申しわけありませんが、私の承知しているところでは、先生お示しのような、なるべく早くやりたいということは確かに申し上げたようでございます。私もできるだけ進度を早めるように、せめて一年くらいは短縮するようなことも考えたい、こういうことを申しましたし、そういう趣旨で申し上げておりました。その後石田前労相の場合に――これは手元にございますが、昨年五月の四日に春闘の共闘委員会に対して、「将来の最賃制のあり方については、全国全産業一律方式、産業別・職業別方式などいろいろの考え方があるが、これらを含めて、わが国の実情に即して実効のある制度を中賃で考えてもらいたい。」こういう見解を文書で表明されておるわけでございます。そういういきさつでございまして、今日の事情から申せば、大橋元労相が一年くらい短縮してやりたい、あるいはただいま開かれておる国会ということになると思いますが、この法案等もできれば提案をいたしたいというお気持ちであったろうと思います。しかし現実の姿としてはさようにいっておらぬということは非常に私も遺憾というか残念に思いますが、しかしそうかといってことさらこれは時間かせぎで引き延ばしている、こういうととは事務当局にもないと私は信じております。もしそういうことでございますならば、こうして基準局長も同席しておるのですから、そんなけちな考えはやめて、できるだけ審議会のほうにも御勉強いただいて、こういった長年にわたる問題はなるべく早くどんどん片づけていく、こういう方針でやるように私は事務局に――特に基準局長がいるのですから、基準局長にこの場で厳命してもけっこうですし、私はそういう態度で進んでまいるつもりでおります。
○吉村委員 官僚陣が遷延策をとっていないとすれば、大臣が早急にやりたいということであるとするならば、これはうしろであやつっている自民党のほうがあるいは遷延策をとっているのかもしれない。私は言いたくないと思ったのですが、実はILO二十六号条約に合致するかしないかの議論の当時、すでにその当時労働省の最高スタッフに澁谷さんもおったでしょう。それから齋藤さんもおったでしょう、こういう方々は、いまや与党の大国会議員として活躍をされておるのですが、当時は現行の最賃法で抵触をしないと言ってがんばってきた組だと思うのです。おそらくこの方々は抵触することを知っておったと私は思うのです、専門家ですから。ですけれども、自民党の政策の関係もあったかもしれません。いまに至って大問題になってそうしてかぶとを脱がざるを得ない、こういう状態に立ち至ったわけでありますけれども、いま大臣がお認めになりましたけれども、前の労働大臣である大橋さんは、全国一律最賃というものを基礎にして、そしてできるだけ早い機会に現行最賃制を改正したいという答弁をした。ところが昭和四十年、昨年の段階においてはどうであったかといいますると、これは実は私が本会議において石田労働大臣に質問をいたしました。大橋労働大臣当時においては現行最賃法を改正したい、こういう意向の表明があったけれども、石田さんになって以来この態度が後退をしたのではないか、こういう私の質問に対しまして、そうではございません、いろいろのことがありまするので、という趣旨の答弁をしましたけれども、それでもなお全国一律最低賃金制を含めた最低賃金法の根本的な検討と改正を行ないたいと考えています、こういう答弁を本会議で石田さんはなさっておるのです。だとしまするならば、それらについての労働省の見解というものがあってしかるべきである。このように考えておったのでありまするが、その後における総評を中心とする労働代表と石田前労働大臣との会見においてはどのようなことが述べられたかといいますると、四十年の年末に開かれる国会においては提案をするという、そういう大橋元労働大臣の言明というものは、大橋さんの願望である、こういう表現に変わってきました。続いて今度は最賃制についての大臣の見解については、中央賃金審議会において見解を述べます、こういう約束をされておるはずです。ところが諮問をしたところの中央賃金審議会において、労働大臣はこれまた何ら労働大臣としての見解を表明していない。先ほど村上基準局長が、そこで少しく話をしておったようでありますが、ここで述べられたものは、いわゆる最低賃金法というものがどういうものでなくてはならないのかということについては一言も触れていない。単に現在の日本の情勢に適応した云々、こういうことが述べられているだけでございます。したがって、いま中央審議会のほうでは基本問題小委員会のほうで検討されているという段階でしょう。そこでは一体何一つ今日まで議論もされていないでしょう。一つも進んでいない。進んでいない段階の中で、今度は、ことしの国会で予算委員会で追い詰められて、二十六号条約に抵触をしない、そういうものにしてもらいたいという諮問をしたという経緯をたどってきておるのです。ですから、この経緯から考えてみましても、単に時間をかせぐというために大臣の答弁、大臣の言明というものが変わったり、あるいはいろいろな紆余曲折を経て今日に至っておる。一貫して流れておるものは現行最賃法というものは改正をしていく熱意が労働省の中にないということが明瞭なんです。ところがいま小平さんの段階になって、私は熱意を持っているというふうに言われるけれども、そのことばと実質が伴っていないじゃないですか。白紙で諮問をしておって、この問題がまとまるというように考えること自体が私はおかしいと思うのです。いつころまでにこれをまとめられますか。労働行政の最高責任者として見通しがあるでしょう。白紙で諮問をする以上は見通しがなくてはならない。いつころまでにまとめてもらいたいというくらいの意思表示があってしかるべきだ。一体いつころまでにまとめるつもりですか。
○小平国務大臣 審議会にいつごろまでに答申を求めるかというお尋ねと思いますが、先生も御指摘のとおり、この問題は非常にむずかしい問題だと私は思うわけですよ。ですから、いま私が今年一ぱいに求めますの、来年何月までに求めますのとうっかり言うと――これは初めからそういう期限をいつまでといっておりません。諮問についてもすみやかに、こうお願いしているわけで、そこに私どもの気持ちが出ているわけでございまして、具体的にどうもいつまで、こういうことになると、これは審議会にお願いしているのですから、実際それまでに出なかったときにはまた吉村先生にお小言をちょうだいするということにどうしてもなるわけです。私はあえて逃げるわけじゃございませんが、先ほども申したとおり、審議会のほうにもお願いしてできるだけすみやかに御答申をいただきたい。審議会のほうでも小委員会をおつくりになられて、つい昨日もこの小委員会をお開きになったようでありますし、また三月中に二回か開いてやろう、こういうことに昨日おきめになったそうでございまして、審議会のほうでも非常に熱意を込めてやってくださっておりますから、むずかしい問題ではございますが、私はそう先生に時間かせぎにやっているのだというお小言をちょうだいするほどでなく済むのではないか、こう思っていま大いに審議会に御期待申し上げておるわけでございます。
○吉村委員 なるほどすみやかに答申を得たいというそういう諮問をしております。同じことにならないだろうと思いますけれども、難聴の問題一つで十年かかっているのです。最賃法の問題は初めから労使の間に意見の対立がある問題、しかも今日なお紛糾の種になっている問題国際的にも注目をされている問題、こういう問題ですよ。この小委員会の構成は十五名だと思います。最賃法の問題については、労使の代表がここで意見が合致をするというようなことを私は容易に期待できないと思うのです。ですから、私が指摘しておるのは、こういった問題について、労働行政の最高責任者として、二十六号条約に合致せしむるためには、現行法のどことどことどこが問題だと思います――なぜ私がそれを言うかといいますと、ILOと非公式に接触したのはあなた方でしょう。国民の前には全然発表もしないで、非公式に接触しているのはあなた方自身のはずですよ。だとすれば、どことどことどこが抵触するか、疑義があるかということを知っているのはあなた方自体のはずです。ですから、こことここをこのように直せばILO二十六号条約には合致する、日本の情勢に合致せしむるためにはこういうふうにしたい、こういう意見も政府としては当然持つでしょう。その意見の表明なくして、そうしてまとめてくれということは、それは問題の解決を遷延させるだけになってしまう、このように私は思うのです。
 事務当局にお尋ねしますけれども、ILOとの接触の過程、その他のいろいろの調査の中で、現行最賃法が二十六号条約を批准するにあたって大臣が疑義があると表現をするその疑義というのは一体どことどこですか。
○村上(茂)政府委員 先ほど来お話がございましたように、ILO二十六号条約関係で疑義があるという問題提起がなされましたのは、労働側が中心になって、業者間協定を目しまして、ILO二十六号条約に違反するのではないか、こういう問題提起がなされましたことは御指摘のとおりでございます。労働省といたしましては、これまた御指摘のように、当初はILO二十六号条約に適合するという見解をとっておったわけですが、しかし反対意見もあることでございますから、これをできるだけ疑義がない、反対の御意見がないという状態で問題を処理するのが適当ではなかろうかという考え方から、非公式にILOに照会したのは事実でございます。これは前にお答え申し上げたとおりでございます。しかしながら、先ほど大臣からお答えございましたように、ILOとしては明確な回答をなす立場にない、こういうようなことからいたしまして、現在に至るまで明確な回答は得ておりません。したがいまして、問題は依然として残っておるわけでございまして、政府側としては、業者間協定にしましても、イニシアチブは業者間協定としてとられますけれども、最低賃金そのものは三者構成の最賃審議会で意見を聞いて検討した結果決定する、しかも告示されましたものが最低賃金でございまして、業者間協定はイコール最低賃金ではない、審議会のふるいを経て、告示をされて最低賃金になる、こういった手続をとっておりますので、関係労使の御意見も聞くという仕組みになっておるのじゃないかというような考え方は依然としてあるわけであります。そういう観点から、ILO二十六号条約に適合するかいなかの問題もございますけれども、一方においては、国内における基盤と申しますか、最低賃金制度のあり方なり進め方が現実に非常に問題だという観点から、三十九年十月の中央最低賃金審議会の答申をいただきまして、業種を選定し、目安を定めまして、それに適合するように指導してきた、それで二月の十九日にはさらに答申がございまして、目安を変えて引き上げたわけであります。そうしますと、業者間協定とは申しますが、業者が任意に金額を決定するのではなくて、もうきめられた目安の中にはめるという、いわば職権決定的な実質を多分に加味しているのではなかろうかというような認識をだんだん持ってきておられるようであります。そのような過程におきまして、ほんとうの任意の業者間協定から実質は職権決定的な方式にだんだん実質を備えてきた、しかも実効性あるものになってきた、そういうような現状を踏まえまして、最低賃金制の基本方針をどうするかというような問題提起が昨年八月になされたわけであります。一方においてはILO二十六号条約に適合するかいなかについて議論がある、一方においては国内における最低賃金制普及の基盤を醸成するという実態とILO条約の形式との両面からアプローチいたしまして、この際中央最低賃金審議会で両々相まちまして御検討をいただきたい、こういうことでございます。また、最低賃金審議会におきましては、一方においては全国全産業一律方式を主張する立場もございますし、一方においてはILO二十六号条約に適合するかいなかというようなアプローチのしかたもございます。いろいろな御意見があるわけでございますが、なかんずく日の当たらない産業なり中小企業の低賃金層を一体どういうふうに把握して、どう対処するかといったような問題もございまして、いろいろな御意見があるという実態を踏まえまして、審議会で御検討をお願いしているような次第でございます。
○吉村委員 私の聞いておることは、ILO二十六号条約に適合するような、そういう案を答申をしてもらいたい、そういう諮問をいまあなたのほうは白紙でしておるわけでしょう。
  〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕
だから適合しないかもしれぬところの条項は一体どこなのかということがなければ、そういう諮問のしかたをする必要はないでしょう。だから、それは抵触ということばがもしあなた方としてあまり意味が強いとするならば、抵触するかもしれない疑義のあった点は一体どことどこなんですか。業者間協定だけですか。
○村上(茂)政府委員 これは先ほど大臣が申し上げたとおりでございまして、ILO二十六号条約の中で、特に第三条の第二項、日本流に言いますと第三号になりますが、「関係のある使用者及び労働者は、国内法令により定める方法及び程度において、最低賃金決定制度の運用に参与するものとする。ただし、いかなる場合においても平等の数及び条件によるものとする。」この条項がいわゆる業者間協定で一番問題になるのではなかろうか、こういうふうに指摘されております。
 先ほど私ちょっとくどく申し上げましたのは、審議会では最低……。
○吉村委員 それはいいのです。
○村上(茂)政府委員 それでは省略させていただきます。
○吉村委員 家内労働の関係はどうなりますか。
○村上(茂)政府委員 家内労働につきましては、条約の第二条で「いずれの産業又は産業の部分について、特にいずれの家内労働の産業又は家内労働の産業の部分について、前条に掲げる最低賃金決定制度を適用するかを決定する自由を有する。」という条文がございます。最低賃金制度との関係におきまして、家内労働に対しても同様な制度の適用、こういう問題があるわけでございます。この点につきましては、御承知のように現行最低賃金法においても、最低工賃制度を最低賃金審議会という機構を通して決定する方式がございます。
○吉村委員 現行最賃制の中にも最低工賃の条項がありますけれども、これは少し関連してきますが、家内労働法は制定する意思は持っているのですか。
○村上(茂)政府委員 昨年の十二月に臨時家内労働調査会から家内労働の実態分析をいたしました報告書が労働大臣に提出されております。その報告書にあわせまして臨時家内労働調査会の見解なるものが示されまして、この調査会において法制定をも含めた家内労働対策を検討すべきであるという旨が示されているわけであります。そういう見解の方向に沿いまして、今後法制定問題も含めて家内労働対策の審議検討をいただく、こういう方向で進めるようになると存じております。
○吉村委員 次に現在の最賃法というものがどれだけ日本の低賃金の温床的な役割りを果たしているかということを、実は数字をあげてなお大臣の見解等を承るつもりでおりましたけれども、予定の時間等もございますから、そのことについてはあとに譲ることにしたいと思っております。
 最後に申し上げたいことは、今度の諮問のあり方については、何といっても労働省の見解、労働大臣の考え方というものを審議会のほうに御提示をして、そうして審議をしてもらう、そういう態度がないとするならば、これはいつまでたっても問題は解決しないことになるであろう、こういうふうに私は思います。しかし、そうではないというふうにあなた方は強弁をされますから、だとしますならば、一体いつごろを目途としてこの答申を得ようとするのかということについても、すみやかにという表現だけで明確な回答がない、こういう状態です。これでは最賃法というものを改正するためにILO二十六号条約と合致をするように改正をしてもらいたい、すみやかに改正の答申を得たいという、そういうことを事務的にやったとしても裏づけというものが何にもないのではないか、こういうふうに私は考えるので、すみやかにというのは一体いつごろを期待しているのですか、その点くらいは明らかにできるでしょう。
○小平国務大臣 ただいまお尋ねの、審議会の答申の時期をいつごろと期待しているのか、こういうことでございますが、その点は、先ほども申し上げましたが、なかなか問題が問題であり、先生の御指摘のとおり非常に重大な問題でございますから、諮問を申し上げるについて、これをあらかじめいついつまでにと、こういう時期を切って答申をお願いをするということはどういうものであろうか、私どもはそういう気持ちでございます。これはまた、お前はいつごろ期待しているのかということかと思いますが、これもなかなか具体的にいつごろと、こういうことを申し上げることは、いま現に検討をお願いしておるし、まあどうであろうか、私どもは率直に申してそういう気持ちであります。しかし、すみやかにやってほしい、こういうことはもう再三申し上げておることでございまして、正式にももちろん申し上げておることでございます。先ほども申し上げましたが、審議会のほうでもそういうおつもりでやってもらうし、また従来の経緯にかんがみましても、とにかく審議会の答申というものが、四十一年度末まではまあいまの法で極力普及をして、こういう答申が前にあったわけですね。その後の将来のあり方についてはさらに基本的に検討すべきだ、審議会御自身が前にそういう答申をなされておるわけでありますから、その辺との関連で、おのずから審議会のほうでも従来の答申のいきさつ等も考慮の上で、しかもなおかつ私どもがいま、すみやかに御答申をいただきたい、こう言っているのですから、そうおくれるというようなことはないのじゃないか、私はそのように期待いたしておるわけであります。
○吉村委員 私は、普通の問題であれば普通の諮問のしかた、すみやかにでけっこうだと思うのですよ。この問題は前からの経緯があるということです。大橋さんの時代にこのようにしたいという態度の表明があり、石田さんの時代で若干それが後退をし、あなたの時代になって、今度は明らかに二十六号条約に合致するようにという諮問のしかたをされておるのですよ。こういう経緯をたどった問題なんです。しかも、労使の間で非常に紛争の種になっておった問題、国会の中でも年じゅう問題になっておった事柄です。しかも、ことしはいわゆる春闘の中で総評が最低賃金制の抜本的な改正を目ざして大きな闘争の目標に掲げておられることもあなたは御存じでしょう。そういった問題について、政府が重要な問題だからといって白紙で諮問をしておって何らの意思表示もしないで諮問をして、あと近いうちに答申は出るでしょう、こういうことで一体満足できますか。労使の関係というものが安定すると思いますか。たとえ実現をしないまでも、私としては在任期間中に答申を出させるとか、出せるように努力をするとか、問題点を提示をしてできるだけ議論を早めるようにしたいとか、こういうような熱意に燃えたところの行動というものが伴わなければいけないと思うのですよ。大臣、ひとつ、あなたいつまで大臣をやっているか私わかりませんが、衆議院の予算委員会であれだけの答弁をして――まあ追い詰められたから答弁をしたのだと思いますけれども、いずれにしてもあれだけの公約をして、とうとう二月十九日に諮問をしたという段階に入っているわけです。また、この諮問の結果というものがどうなるかということを多くの労働者が見守っておる、こういう実情にある。その成り行きいかんによっては春闘ではあるいはそう問題にならないで済むかもしれない。労使の関係というものは何も紛争を起こすことだけが能ではないのです。だとしますならば、やはり大臣としてはこの諮問の答申というものはいつごろまでに出るように期待をし、それに沿って努力をしていく、このくらいの答弁ができないで一体どうするのですか。
○小平国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、いま先生御自身がおっしゃるように、私もいつまで大臣になっておるか、私自身わからない問題でございます。したがって、うっかり在任中にやるようなことを申しますと、お前いつまで大臣をやっているつもりだと言われても返事のしようがありませんから、私はそういう不確定なことを期限を切るわけにはまいりません。先ほども申しますとおり、とにかく四十二年度以降の最賃制のあり方については、これは基本的に総合的にという表現があったかと思いますが、検討すべきだということを審議会自身が前に答申をなさっているのですから、私はそこが一つの話のめどというか、おのずからそういうことに相なるのではなかろうか、まずいまのところ私は率直に申してそういう気持ちを持っておるわけです。そうかといって、ひとつそれまでには必ず出してくださいとあまり期限を切るというようなことは、これは権威者が集まっていることですから失礼にもなりかねませんし、そういう点で私は私の気持ちをあらわす意味で、とにかくすみやかに、こういう諮問をしたわけなんで、この点は先生に繰り返し追及されましても、どうも私がいつまでに、こういま申し上げるわけにはいかぬと思いますので、どうぞその点は御了承いただきたいと思います。
○吉村委員 全くあいまいもことして、きょうのお天気みたいなもので、さっぱりわからぬわけですけれども、少し明らかになってきたのは、四十二年度からはそういう従来の答申の趣旨からしてもそういうことに自然になっていくであろう、こういうことは前の答弁よりは前進しておる。ですから同じことをやりとりしているわけではない。やはりあなたのほうがそういう責任感というものを感じて、きわめて良心的な方ですから、やはりそういうふうになってきたと思うのです。しかし、これでもあなた方は一年間うそをついたということになるんですよ。大橋労働大臣の当時はこの国会に提案をしたい、大体衆議院に八分どおりかかった、そういう答弁をしておるわけですから、それでも一年くらいおくれているんですよ、いまのあなたの答弁では。だから、私はあなたに申し上げたいことは、あなたの時代になって、とにかくこれを一歩でも二歩でも前進をさせた、こういう形をとらなければならぬ。あなたがあすこで言明をしたということは、そういう裏づけがなくてはならぬはずだ、こう思うんですよ。いつまで大臣をやっていられるかもちろんわかりません。わかりませんけれども、少なくともいつごろまでに法制化させる、そのためには答申はいつごろまでに得なければならない、こういうことについては事務的に大体予測がつくはずです。ずいぶんめんどうな問題だ、めんどうな問題だとおっしゃるけれども、めんどうにしているだけですよ。問題点は明らかになっている。今日までの議論の中で問題点は明らかになっておる。期限の点についても先ほど局長が答弁されたとおりです。だとするならば、問題はあなたのほうの態度いかんによってはスムーズにきまる問題ですよ。これは労使の審議会の議論にだけまかせておいたのではいつまでたっても落着はしないであろう、こういうことを私は心配するのです。重ねて答弁を強要するようになりますけれども、四十二年度の国会においては法制定は必ずするということを言明できませんか。
○小平国務大臣 そうおっしゃられても、四十二年度からは間に合うように新しい法律をつくる、こう明確に私がいま責任を持って答弁申し上げる確信はありません。率直に申し上げます。しかし先ほど来申しますとおり、審議会も前々からそういうお気持ちでそういう趣旨の答申もなさっておられることですから、そういういきさつから考えましても、審議会御自身が前にそういう答申をされているわけですから、そういう点も十分お含みの上に、審議会としては審議を急いでくださることであろう、かように御期待を申し上げているわけです。
 それから労使の関係、私は、やはり先ほど申しましたが、最低賃金という問題も、確かに労使間の大きな問題ですから、まずその方々でよく話し合いをしてもらうということ、それから特に、委員の方にはそれぞれお立場もございましょうが、しかし単に使用者側であるからとか、あるいは組合側であるからとか、そういうその立場にあまりにとらわれずに御諮問申し上げておるような線に大体沿われて、話し合いの上にぜひ結論を出していただきたい、私は、さように期待をいたしておるわけであります。かりに話がつかぬというようなときに、それで一方的に労働省がやれば、また役所が押しつけたというようなことも、これはいまの時代ですから、そういう御議論もまた成り立つわけであって、そういう意見をまとめていただくために審議会がもともとあるのですから、そういうところで十分議を尽くしていわゆる大局的な立場と申しますか、そういうことでぜひ結論を出していただきたい。そうすることがまたその後の法の運用のためにも一番望ましいことだ、私はかように考えておるわけでございます。
○吉村委員 同じ議論になりますからやめなければなりませんけれども、少し贖罪の気持ちを持ったらどうですか。三十四年制定当時からわが党の指摘というものが、いまや現実のものになってあらわれてきておる。政府もいまになってようやく認めて、それでILO二十六号に抵触をしないような、合致するような最低賃金法というものをつくろうという意図になった。それでもう五、六年労働者側としては損をしたんですよ。しかし、それは賃金の問題だけではないんです。最低賃金法のあり方のいかんによっては多くの影響を日本の労働運動なり、あるいは労使関係に与えるはずです。労使の関係というものをこれほど紛糾させてその種をまいておったのは政府自身じゃありませんか。いまようやくにして気がついたとするならば、できるだけ早くこの作業を進めるくらいの気持ちがなくてどうするんですか。その気持ちの一端として、労働省としてはかく考えるという案を提示するのがほんとうであろう。こういうふうに言っても、それは何らすることない、すみやかにということはいつになるかわかりません、審議会で四十二年度からといままでもいっておりましたから、そのくらいになるでありましょう、そういうようなことで、いままでの最賃法に対する政府のとってきた態度というものについて、あなた方は責任を感ずる、そういう態度ではないと私は思うのです。もっと自分たちのとってきた態度について責任を持って、そしてこれでいいと思ったら出してもらったらよかったのですよ。出せないというところには抵触する、疑義がある、いろいろな問題があるから出せなかったのでしょう。そのために大きな紛糾をし、紛糾の種をまいたりあるいはいまだにそれも続いておる。こういう状態に立ち至っているのですから、あなたが大臣の間に、できるだけ早くこれを――大体私としては目安はこのくらいの時期で答申を得るように努力をする、こう言ったとしても、その熱意と行動が一致をすれば私どもはあとから追及はしませんよ。そこをあいまいもことして責任回避をしておこうという姿をそのまま継続しようとするから私は食い下がらざるを得ない、こういうことになるのです。しかし、ここでこれ以上追及してもあなたはきっと答弁しないでしょう。私は脅迫罪だなんと言われたくないからあとは言いませんよ。言いませんけれども、しかしほんとうはそうであるということだけは認識してもらわなければいけない、そう思いませんか。
○小平国務大臣 同じく自民党内閣がやってまいったことに違いございませんが、私は昨年六月に就任をしまして、最賃法関係のいきさつ等も報告を受けて、それでもう八月には審議会にたとえ白紙といえどもこの諮問を申し上げ、さらに先般予算委員会で問題になりましたので、それももう旬日をおかずして、国会での御論議、御指摘でございますから、それを十分尊重して直ちに審議会におはかりをした、こういうことで、これらのことをお考えいただきますならば、私がどういう気持ちであるいはどういう態度でこの問題に取り組んでおるかということは御理解いただけるのではないか、私は少なくともそう思っているわけです。私から言うとまたお小言をちょうだいするかもしれませんが、私は少なくともそういう気持ちで真剣にこの問題と取り組んでいるわけでございまして、これ以上、先ほどから何回も申し上げましたから、どう申し上げていいか実は迷っているわけですが、これで私の考え方というものは御了解いただきたいと思います。
○吉村委員 いまの大臣の答弁は、はっきり日時、あるいはその目途とするところは明示しませんけれども、いままでやってきたことをもって了察をしてくれ、こういう話でありまして、もうこれ以上あなたは言明はできないと思うのですが、いまのあなたの答弁で、私としてはあなたが在任中にとにかくそういう方向につとめる、こういう理解をしておきたいと思います。
 それから、これはあまり長くなると困るのですが、こういう場合には在任中というのは一応想定をしながら言わなければならぬ。これはたいへん失礼でございました。まあ慣行に従って言うことですから。
 それから基準局長、あなたのほうはむしろ経緯を御存じのはずですから、大臣がいまきわめて良心的な答弁、良心的な態度をもってこの問題に対処をする、こういう答弁の趣旨でございますので、できるだけこの審議会の審議が早急に軌道に乗って、長い懸案事項というものが現労働大臣の在任中に解決の方向に向かうように全力をあげてもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。終わります。
○田中委員長 吉川兼光君。
○吉川(兼)委員 労政局長に伺いたいのですが、ILO条約は現在百二十三くらいあったと思いますが、そのうち、わが国が批准をしておる条約の数はたしか二十五でしたか、その条約は何号と何号であるかを内容はいいから御答弁願います。
○道正説明員 順次申し上げます。第二号、第五号、第七号、第八号、第九号、第十号、第十五号、第十六号、第十八号、第十九号、第二十一号、第二十二号、第二十七号、第二十九号、第四十二号、第四十五号、第五十号、第五十八号、第七十三号、第八十号、第八十一号、第八十七号、第八十八号、第九十六号、第九十八号、以上でございます。
○吉川(兼)委員 そのほかにも実は批准をしてよろしい条約が相当あると私は思いますが、いま日本政府で続いて批准しようとしておる条約があるかどうか。それから、このように大部分の条約がいまだ批准されておらないのはどうした理由に基くものであるか。もっともアメリカなんかは日本より少ない批准しかしていないと思いますが、わが国はもっと批准すべきだと思います。しかるに批准の数が加盟諸国の水準に比べて少ない。それはどういう理由に基づくのか、簡単に大臣から聞いておきたい。
○小平国務大臣 わが国のILO条約の批准の状況でございますが、それぞれいま御説明申し上げたとおりでございますが、数の点から申しますと、大体各国の批准数の平均程度にわが国も批准をしておる、こういうことに相なっております。
 それで、ただいまのところこういった条約は批准することがどうであろうと問題になっておると申しますか、話題になっておりまするものは、社会保障に関します百二号条約、それから強制労働に関する百五号条約、均等待遇に関する百十一号条約、これらが主として話題にのっておるわけでございまして、昨年六月にILO八十七号条約の批准書を寄託のために私がILOに参りましたときにも、非公式でございますが、ILOのジェンクス事務局次長から、いま申しました百二号あるいは百五号、百十一号等の批准をなるべく早くやってほしいというようなお話がございました。そこで私は、自来関係各省とも打ち合わせをさせまして、これらの条約ができるだけすみやかに批准のできますような状況にいくように努力をいまいたしておるところでございますが、まだ今日の段階におきましては、遺憾ながら確信を持ってこれらの条約が直ちに批准できるというところまでまだ国内法が整っておらぬ、こういうことでございます。なお引き続きひとつ努力をいたしたいと思います。
○吉川(兼)委員 わが国の批准数が各国の平均であると言われるのは、私は賛成ではありませんが、それはそれとして、この際ちょっと聞いておきたいことがあります。それは、先般大争議の行なわれました海上労働者に関することであります。海上労働に関するILO条約で日本で批准してないのがたしか二十一ぐらいあったと思いますが、そのうちで、実は使用者側と労働者側で海上労働条約並びに勧告の懇談会というものが昭和三十五年に持たれており、これには会合のつど、主管の運輸省から船員局長であるとか、労政課長、労働基準課長というものも参加して、そうして海上労働に関する条約の内容を検討しておるようでありますが、そこですでに条約二十三――これは海員の送還に関する条約です。それから条約六十九号、これは料理人、つまり船内で使役する料理人の証明条約でありますか、それから条約百十三号の漁船員の健康検査に関する条約というものがありまして、これらは懇談会の審議の中では、労使はもちろん官側、つまり運輸省船員局あたりでも当然批准されるべきだとし、批准への用意として国内的にもいろいろな法的処置をやってしかるべきだという回答が出ておるそうですが、これは御存じであるかどうか。
 それから、いま大臣が御答弁されたようなILO条約の批准に関して関係各省とお打ち合わせをしているもので、それはたいへんけっこうなことだと思うのですが、たとえば、いま私が申し述べた海上労働に関するILO条約の批准または批准準備については、主管の運輸省あたりとどういうように連絡し、かつ批准への努力をしているか、この際聞いておきたい。
○三治政府委員 海上労働の関係の所管は全部運輸省専管の所管になっております。それから、条約の関係の批准の可否とかどうとかいう問題については、外務省条約局のほうでやっておりまして、私たちは陸の関係で、厚生省とか農林省とか、ほかの省と陸の条約につきましては連絡がありますが、海のほうは直接運輸省がやっていることで、私たちは入っておりません。せっかくの御質問でありますけれども、海のほうのものだけはちょっとごかんべん願いたいと思います。
○吉川(兼)委員 そうすると、労政局長のところではこの問題は全然あずかり知らないというふうにお答えなさるのですか。
○三治政府委員 労政局は八十七号条約の関係でずっとやったものですから、いかにもILO条約の関係はずっとタッチしているようにあるいはお考えかもわかりませんが、労働省におきましては、条約関係のことは外務省、それから関係各省との連絡は官房の国際労働課のほうでやっておるわけでありまして、八十七号とか九十八号の労使関係の条約は直接内容について労政局がタッチしておった、こういう関係でございますので、御了承願いたいと思います。
○吉川(兼)委員 いかにも典型的な官僚的御答弁に接しましたが、いやしくもあのような海員の大争議のあったあとにもかかわらず、所管事務でないとはいえ、一応日本の労働行政をあずかる当局として――もちろん海上は別になっておることは私も存じております。だから先刻来、主管の運輸省と言っているではありませんか。それにしても、ILOという大きな関連の問題であるので、もう少し内容的な答弁が望ましかったのですが、やむを得ないでしょう。ただ、同じ労働省の中で、労政局長だから官房総務課のことはあずかり知らないように聞こえる御答弁はいかがなものでしょうか。
 そこで総務長官がお見えになりましたから、この際総務長官にお伺いしておきたいのでありますが、それは、昨年の六月、ILO八十七号条約が批准されました際に、たな上げになりました関係国内法に関してでございます。その後たいへん発足が手間取ったようでございますけれども、ともかく公務員制度審議会というものが発足をし、審議の点ははなはだ遅々としておるように、見受けておりますが、公務員制度審議会にいま付託されておりまする関係国内法の審議の状況、どの程度進んでおられるか、いつごろまでに審議が終わるお見通しであるか、そういう点についてお伺いいたしたいと思います。
○安井国務大臣 お話しのとおり、公務員制度審議会の発足は、私ども予定していましたよりややおくれましたが、十一月初めに発足をいたしまして、今日まですでに八回だと思いますが、非常に熱心に御審議を願っておる状況でございます。御承知だと思いますが、諮問案につきましては、これは内閣総理大臣から諮問いたしておりまして、これは公務員及びそれに類似の職員の労働関係の基本に関する問題全般、こういう非常に広い範囲の諮問をお願いしておるわけでございます。しかし同時に、ILO八十七号条約の発効の期限が六月には参ります。それまでには、いま別に期限を定めるべしと法律で定められておりまするいわゆるたな上げ条項につきましては、おのずから日限があるのだから、これについては特に、別に早急な御答申を願いたい、こういう趣旨を答申の中へ盛っておるわけでございます。審議会とされましては、そういう趣旨もお含みの上で今日まで御審議をいただいておるわけですが、最近までの審議状態は、運営の方法あるいは基本的な問題の扱い方、いわゆる労使といいますか、それぞれの主張をそれぞれ並べられまして、いま討論をされておる状況でございまして、またいわゆるたな上げ分については、いままでの段階では直接には触れておられないということでございますが、これは次会あたりからそろそろ本論に入られるということで、私ども近くその分については答申をいただけるものだと思って、それを待っておる次第でございます。
○吉川(兼)委員 ただいまの御答弁はいわゆる関係国内法の審議につきましては、六月十四日の八十七号条約発効の期限とにらみ合わせて、その面だけは期限つきで御答申を願いたい、こういう諮問のしかたをしているということですか。
○安井国務大臣 はい。
○吉川(兼)委員 それはよくわかりますが、何しろ審議の模様を私はつまびらかにいたしておりませんけれども、労使の間で議論が相当紛糾するように予想される面もあるようでありますから、このような予想が間違っておればけっこうなことですけれども、もし六月十四日の条約発効までの間に関係法規に関する審議会の答申が出なかったような場合に六月十四日の条約発効とそれに対する国内法の整備ということはどうなるのでしょうか。その際には政令か何かで関係法整備を実施するようなことを考えておられるのかどうかお伺いしておきたいと思います。
○安井国務大臣 実は私ども、まだこれから相当期間が、六月中旬まで三カ月以上もございますので、この審議会で結論を出していただくということをもっぱら期待をいたしておるわけでございます。しかし、六月十四日にこの条約が発効いたしますれば、当然この国内法というものは何らかの形で同時スタートしませんと、これはいろいろ行政事務上にも支障ができますので、そのときには国内法は、どういう形であるかは別にしまして、当然発足をすべきものだ、きちんとここで公布すべきものだというふうに私どもは心得ておるわけでございます。しかし、まだ三カ月有余もあるわけでございますから、これが紛糾してどうなるであろうこうなるであろうというようなことを、いま政府側があらかじめ予測して、こうするああするということをきめることはいかがであろうかと思っておりまして、目下のところ、政府としては、国内法と発効は同時出発すべきものだという考え方は強く持っておりまするが、具体的に将来の措置をどうするかにつきましては、まだきめておらぬという状況であります。
○吉川(兼)委員 責任のある政府としましてはそういうふうに考えることは、御無理がないと思います。ただ審議会はその発足のときから相当時間を食っておりますし、なるほど六月十四日まではまだ三、四カ月の時間はありますけれども、たな上げ条項の中には相当労働組合側で注文を付している法律もあるわけでありますから、審議会が紛糾して、条約発効に答申が間に合わなくなった場合を予想して、政府はそのときの用意はしているのであろうと推測します。同時発足ということを強く考えておるということばには、その裏の意味が読めないわけでもありませんが、ここは国会の場でございますから、そういうふうなあいまいな答弁では困ります。たな上げ国内法と条約との同時発効を強く考えておる立場として、もし審議会の答申が間に合わなかった場合はどうするのか、その考えをこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
○安井国務大臣 せっかくの仰せでございますが、先ほど申し上げましたように、まだ相当期間がございますので、この審議会へ全面信頼をして、そういう時間的なリミットもある問題についてはぜひ早急に御審議、答申をいただきたいということを、再三繰り返しておりますので、いま、通らなかったらというようなことを私どもで具体的に考えて、何かの機関できめるというようなことは、これはこの審議会に対しましても御無礼に当たることだと思いまして、いまのところそういうものを協議してどうするということをきめていないという段階でございまして、もう少し将来になりまして何かもっと詰まってくれば、これはそれなりに考えなければならぬ問題も出てこようかと思う次第でございます。
○吉川(兼)委員 それでは、御答弁の中の同時発足を強く考えておるというところを私は確認してこれ以上の御答弁は求めないことにしましょう。
 それでは、総務長官は御退席いただいてけっこうです。
 それから、労働大臣がいないので、労政局長にお伺いしておきたいのですが、スト規制法の廃止問題であります。御承知のように、電気産業と石炭鉱業の労使関係がこの法律の制定のおもなる対象でございますが、かつての電源ストあるいは保安要員の総引き揚げなどというような激烈な争議手段は、最近ではもう影をひそめたといっていいと思うのでございますが、こういうような労使関係の現状を労政局長はどういうふうに御認識になっておりますか。
○三治政府委員 スト規制法以来、このスト規制法に抵触したというような労使関係また労働運動が現実に行なわれたことはないというふうに心得ております。
○吉川(兼)委員 そこで、わが党はこのスト規制法の廃止を従来しばしば国会に提案をしておるのであります。今国会にも提案をいたしておるわけでございますが、いま局長の御答弁にもありましたように、今日の電気産業、石炭鉱業の労使関係の実情から見まするならば、私はスト規制法というものはもはやいわば盲腸のごとき無用の長物化していると思うのでございます。つまり労使の自主性と責任のある行動に期待するという意味におきまして、良識を信じてこの規制法は早急に廃止すべきではないかと考えますが、これに対する当局の所見を伺っておきたいと思います。
○三治政府委員 大臣答弁の御質問だと思いますが、従来政府が答弁してまいりましたように、確かにこのスト規制法以来法に抵触するような事実はないようでありますし、そういう議論もまたこの前の電気事業法の通過の際、附帯決議で廃止の方向で検討するようにというふうなことも政府としてはいただいているわけなんですが、ただいまのところ、この禁止は、大体これがもしも行なわれた場合には国民経済にあるいは国民生活に回復すべからざる打撃を与えるような行為となるので、そういうような行為についての禁止はいま直ちに廃止するという考えにはなかなかいかないというのが現在の立場でございまして、これについて今後どういうふうに処置するかというような問題については、事務当局として検討を命ぜられている次第でございます。
○吉川(兼)委員 いまの御答弁とは私は見解を大いに異にいたしますが、その問題はそのくらいにしておきましょう。
 それでは職安局長にお伺いします。雇用対策についてでございますが、最近におけるわが国の出生率の低下はフランス以下と先日も政府の何かの委員会の答弁にあったようでございますが、このような人口構造の老齢化といいますか、さらに一面におきましては進学率が上昇いたしまして、つまり中卒だけで、新規の学卒労働者であった者が最近はほとんど高等学校までの教育を受けるということになりまして、そういうこと等からきます新規学卒労働者の減少ということが原因して、いわゆる労働力不足の基調で、今後の労働市場が動いていく、こう思うのでありますが、政府は現在及び将来の雇用情勢をどういうふうに見通しておるか、長期的な面と短期的な面とに分けて、簡単にお答えいただきたいと思います。
○有馬政府委員 短期的な面におきましては、御承知のように最近の不況に伴いまして雇用情勢は停滞をいたしております。雇用の伸びも頭打ちでございますし、それから完全失業者の数も五万程度前年比でふえております。しかし全体といたしましては、今日までのところさほど大きな影響は出てまいっておりませんので、景気の回復の速度と関連いたしまして、私どもといたしましてはやや警戒すべき点はございまするけれども、景気が予定どおりに回復いたしましたならば、さほど心配する必要はないのじゃないか、こういうふうに考えております。
 また長期的に見ますと、先ほど先生の御指摘ありましたように、学卒供給が激減をする、それから産業界における技能労働者の不足が依然として続いておるというようなことを基調にいたしまして、将来は労働力の不足基調に移行する、こういうふうな見通しをもって今後の雇用対策を樹立してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
○吉川(兼)委員 いま御答弁の景気回復の時期でありますが、政府では大体本年の秋ごろ、こういうふうに言っておるように思いますけれども、職安当局ではこのいわゆる政府の見通しに対してどういうふうに見ておるかということをお伺いいたします。
○有馬政府委員 私どもは経済企画庁を中心とする政府全体の景気の見通しを基礎にいたしまして、若干景気の動向と雇用の情勢はズレがございまするので、このズレを前回あるいは前々回と対比しながら、今回の場合にどれくらいのズレ込みが出てくるだろうか、こういうことを各方面から検討しながら私どもの当面の雇用対策を考えておるわけでございますが、大体上期はかりに経済の回復きざしが見えてまいりましても雇用の情勢は停滞ぎみに推移せざるを得ない、まあ下期以降漸次回復をしてくるのではないか、かような情勢判断をいたしております。
○吉川(兼)委員 景気の回復と重要な関係がある企業の整備、ないしは企業の動向について何か安定所あたりで集めた統計のごときものがあるのじゃないですか。それを伺っておきたい。
○有馬政府委員 企業の整備状況につきましては、御承知のように二つの資料がございますが、一つは興信所の調査によります倒産の状況でございます。これらについては先生すでに御承知かと思いまするので、わがほうで調査をしておりまする整備の状況について申し上げますと、昨年の四月以来十一月までの推移でございますが、大体月平均整備件数といたしまして三百四、五十件出ております。整備の人員といたしましては一万二、三千見当毎月出ております。この企業整備の調査は、先ほど申しました企業の倒産の調査とは調査のねらいが違いますので必ずしも一致いたしませんが、私どもとしましては、倒産の有無にかかわらず、人員の整理を行なった、全員解雇をする、あるいは部分的な解雇をするというようなものを企業整備といたして調査をいたしておりますが、これも悉皆調査ではございませんので、大体の最近の趨勢を把握するのに役立てるために調査資料でございます。
○吉川(兼)委員 中高年齢者の雇用問題でございますが、これはわが党はこの国会にも法律案も出しておるわけでございますけれども、政府におきましては、雇用の最も困難な、たとえば身体障害者や中高年齢者に対し、政府、地方公共団体等への雇用の状況とさらにその促進をどういうふうにやっておるか、こういう点を伺っておきたい。
○有馬政府委員 雇用対策上最も重視しなければならないのは、御指摘のように、身体障害者及び中高年の雇用促進でございます。身体障害者の雇用促進につきましては、御承知のように、三十五年に雇用促進法ができまして、雇用率の設定という制度をとっておりますが、この雇用率が、民間の場合には現場の労働者を中心に一・一%、官公庁の場合にはホワイトカラーを中心にしまして一・五%、こういう雇用率が設定されておるわけでございますが、三十五年以来、鋭意この雇用率の達成に努力いたしまして、今日ではおおむね官公庁におきましても、民間におきましても、雇用率を達成をいたしております。したがいまして、今後の問題といたしましては、最近の雇用情勢の移り変わりに従って、身体障害者の雇用率もさらに引き上げる必要があるのじゃないか、こういうような角度で、目下審議会において検討をいたしております。
 それから第二点の中高年の雇用の促進でございますが、これは最近の不況下にありまして、非常にむずかしい問題でございますが、政府といたしましては、一昨年の九月の閣議決定に基づきまして、官公庁の中高年齢者の雇用促進方針を決定いたしました。これによりますと、中高年の職場として適する職種を三十四職種選定いたしまして、それぞれの職種について雇用率を設定をいたしまして、三年計画でもってこの雇用率の達成に努力をする、こういう方針を決定いたしたわけでございますが、今日までのところ、トータルにおきまして、これは職種別に雇用率の目標が設定されておりますが、一番高い雇用率としましては九五%、その次が八五%、それから第三のグループが六五%というふうな目標率を設定いたしまして、それぞれ現状はこの目標率を数%ずつ下回っておりますが、三カ年間にこれらの目標をそれぞれ達成してもらうということで、目下努力中でございます。非常に困難なことではございますが、関係各省の御協力を得て、ぜひ三年間に、この目標率を達成してまいりたい、かように努力しておる状況でございます。
○吉川(兼)委員 雇用率を定めてその達成に努力しているということはよくわかりますが、この際一思いに雇用義務を法定するようなお考えはありませんか。外国にも多少の例はあるようでありますが……。
○有馬政府委員 雇用義務を課するという法制は、各国におきましても、身体障害者等のごく例外の場合を除いては、法制的には確立されておりませんので、私どもも、今後の雇用情勢の推移いかんによりましては、身障者の雇用対策といたしまして、あるいはそういった義務雇用の制度を考えなければならぬ場面も出てくるかと思いますが、当面の問題といたしましては、義務を課するということではなくて、努力目標としての雇用率の設定ということで、十分対処をしていけるのではないか、かように考えております。
○吉川(兼)委員 それから、新卒就労の問題、これは大学の場合を入れてでありますが、採用試験を七月とか八月とか、非常に早期に争ってやる傾向が、近年特にひどくなってきたように思います。これに対しましては、日経連でさえ批判的のようだし、労働組合側にもこのような情勢で進むとすれば、遂には戦時中の動員計画みたいなものになるのじゃないかという懸念もあるようでありますが、こういう事態に対して、当局はどういうふうに考えておるのか、何か特別に対策を考えておるかどうか、その点を聞いておきたい。
○有馬政府委員 求人と求職のアンバランスが相当出てまいっておりますので、私どもとしましては、中学、高校、大学、それぞれの種類別に、採用の時期を、文部省とも相談をいたしまして、全国的に時期を一定にしていきたい、かような考え方で、中卒については、御承知のように、一月以降、降雪地域は十二月から、高校については、これは非常に守られておりませんが、十一月以降ということになっております。
 この高校の問題につきましては、これが教育に及ぼす悪影響も相当著しいものがありますので、青田刈りの弊害をぜひ是正していきたいという考え方で、昨年から、八月以前の青田刈りはとりあえず控えてもらいたいということを求人者側に呼びかけまして、従来の四月からの青田刈りの弊害は、昨年来是正されてきつつございます。さらに、本則の十一月に戻って採用時期を厳守してもらうという努力を今後も続けてまいりたいと思います。
 大卒の問題につきましては、これは非常にむずかしい問題がございまして、日経連を中心とする求人者側の再三の自粛申し合わせにかかわらず、今日においては、採用時期が厳守されていないという実情でございますが、これもできるだけ採用の時期を厳守していくように、求人者側を今後とも指導いたしてまいりたい、かように考えております。
○吉川(兼)委員 先日の大臣の所信表明演説の中で、雇用対策法案を提案したいということを述べておったように思いますが、今日に至るもまだ提出されていない。この法案が提出のおくれておる理由、それから大体提出になることは間違いないと思うが、その時期はいつごろであるか伺いたい。
○有馬政府委員 私どもが立案いたしました雇用対策法は、御承知のように昨年の十二月の二十七日に総理府の審議会から出されました雇用の答申に基づきましてこの対策法を立案いたしたわけでございますが、その際、対策法については総理府の雇用審議会の諮問に付してもらいたい、こういう御要望が総評をはじめ労働側にございまして、私どもは予算編成を経て一応政府部内の成案を得たものですから、この成案を雇用審議会に正式におはかりをいたしまして、現在雇用審議会において小委員会をわざわざ設置いたしまして、慎重に審議をいたしております。私どもとしましては、この法案が予算に関係する法案でありますだけに、できるだけ早い機会に国会へ提出したいということで、審議会にも審議の促進をお願いいたしておるわけでございますが、何せ各側にいろいろな意見がございますので、この意見を審議会において調整をして、審議会としての結論を出すという態度でございますので、なお若干の日時がかかると思います。私どもとしましては、できるだけ早い機会に国会へ提出して、国会においてさらに御審議を願いたい、かように考えているわけでございます。
○吉川(兼)委員 それでは職業訓練局長に伺います。
 労働力は不足基調であるといわれる今日の雇用情勢のもとにおきまして、技能労働力不足の情勢は今後も続くものと考えられますが、四十一年度の職業訓練計画の内容なるものをこの際お聞かせいただきたい。
○和田(勝)政府委員 昭和四十一年度におきましては、私どもといたしまして、公共職業訓練について申し上げますと、いわゆる新規学校卒業者のための訓練――養成訓練と言っておりますが、これは四万六千二百九十五人、それから中高年を主としてやります職業の転換に伴う転職訓練七万三千九百七十人、それから身体障害者の職業訓練が千四百人、それから職業訓練の指導員の養成訓練が四百八十人、その他七十人ございまして、合計十二万二千二百十五人、これが公共職業訓練でございます。このほかに事業内職業訓練がございまして、労働省で認定をいたしておりますものでは大体八万三千ぐらいの規模で行なわれております。
○吉川(兼)委員 公共職業訓練の施設を拡充整備することはもちろん大いに必要でありますが、同時に、いまお話のありました事業内職業訓練に相当の力を入れるべきじゃないかと考えるのであります。それを実現いたしますためには、当然大幅な国庫補助が必要になってくるわけでございますが、この事業内職業訓練に対する補助について四十年度から今年度の四十一年度にかけてどういうふうな改善が行なわれていますか。
 それから、それで十分と思っているかどうか、それもあわせて……。
○和田(勝)政府委員 事業内職業訓練につきましては、全体としては先ほど申しましたように約八万三千くらいの規模でございますが、大企業については自分自身の力でおやりいただける面が多うございますので、特に国から補助するというようなことではなく、技能労働者の不足の目立ちます中小企業に対しまして、その職業訓練に対する運営補助をいたしたいというのがかねてからの考え方でございます。事業内職業訓練に対して国が運営についての補助をいたします直接の対象は、中小企業が共同で職業訓練をおやりになりますときに、その共同でおやりになる団体に対する国の補助をいたしております。これは昭和四十年度におきましては、五万人の訓練対象人員を予定しておりましたが、四十一年におきましては七千人をふやしまして、五万七千人の訓練のための補助予算を計上しております。金額にいたしますと、七千万円でございまして、それほど大きな額ではございません。これでは、もちろん全体の技能労働者の不足から見て非常に足りないわけでございます。これにつきましては、実は事業内職業訓練全体につきまして、今後の技能労働者の不足とのかね合いでなお相当広範にわたって検討すべきものが多いように思います。そういうような観点で、四十一年度はとりあえずいま申しましたような予算でございますが、将来の問題としては広い範囲で検討いたしまして、事業内職業訓練についての基本方策とでも申しますものを四十二年度以降については考えさせていただきたい、かように考えております。
○吉川(兼)委員 それでは当局としては四十一年度の状態では決して満足するものではないということなんですね。それならけっこうだと思います。新局長の張り切っている姿勢に大いに期待いたしましてこの程度で質問を終わります。
○田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十八分散会