第051回国会 法務委員会 第8号
昭和四十一年二月十八日(金曜日)
   午後一時三十二分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 濱田 幸雄君 理事 井伊 誠一君
   理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君
      唐澤 俊樹君    佐伯 宗義君
      四宮 久吉君    田中伊三次君
      馬場 元治君    濱野 清吾君
      神近 市子君    山田 長司君
      田中織之進君
 出席政府委員
        法務政務次官  山本 利壽君
        検     事
        (刑事局長)  津田  實君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      鈴木信次郎君
  委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      岸  盛一君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局
        長)      矢崎 憲正君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局刑事局
        長)      佐藤 千速君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政に関する件
 法務行政及び検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政に関する件並びに法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田長司君。
○山田(長)委員 私のこれから伺おうとする問題は、実際に問題にぶつかってみて、検察審査会法の内容について、こんな形でよいものだろうかどうだろうかという実は疑問を持ちましたので、きょうは御質問を申し上げるわけであります。
 実は社会党の綱紀粛正委員長という立場におきまして、一億二千万の横領事件のあった近江絹絲の問題に対して、これを政治献金という問題において告発をいたしました。ところが、たまたまこれが横領であると思って提訴いたしましたところが、横領でないというので却下になった。横領でなければ、いずれにしても金額が明確になっておるのであるから、これは業務上の特別背任であるのじゃないかと思って、このことでまた訴える段階になりました。ところがこれもどうも不起訴になってしまうというようなことで、それならばこれを明らかにしようというので、検察審査会に書類の提出に至りましたところが、これまた却下になりました。ここでこの検察審査会法なるものを通読いたしてみますると、どうしてもこのままの状態でおいたのでは、実際に検察審査会法なるものは有名無実ではないかという結論に私は達したのであります。そこで、この検察審査会法の内容を数点伺いまして、さらにそのあとでこれに対する改革案があるのかないのか、こういうことにまで質問を申し上げてみたいと思うのでございます。
 検察審査会の委員は選挙人名簿の中から選んで、法律知識のない人でもこの委員になれて審査の衝に当たるようでありますが、半年でかわってしまう、半年ごとの交代で、専門家の出した結論をしろうとの人たちが審査をして、これで一体正確な審査ができるというお考えでありますか、どうですか、まず最初にこの点を伺っておきます。
○津田政府委員 ただいまお尋ねの検察審査会の趣旨でございますが、検察審査会におきましてはただいまお尋ねのような委員の選び方になっておりますし、その任期も六カ月ということはお話のとおりでございます。しかしながら、元来検察審査会というのはわが国に特殊の制度でありまして、一応は大陪審の制度を模したものということが考えられるわけでございます。しかしながら、この検察審査委員そのものは、検察審査会法の第一条にありますように、「民意を反映せしめてその適正を図る」ということであって、一般民衆の方々に参与してもらうという趣旨にできておるわけであります。そういたしますると、この任期を長くいたしますると固定いたしまして、それが一種の委員会、いわばボードのようなものになる、そういうものは少なくとも民意を反映する上において適当でないという意味におきまして、比較的短期間において交代をするということであります。御承知のようにわが国にかつてございました、現在は停止になっておりますが陪審法では、事件ごとに陪審員がきめられるわけであります。アメリカにおきます大陪審につきましても、短いものは一カ月で交代するということになっております。そういう趣旨におきまして、これを任期を長くいたしまして固定化するということは、かえってそれが一つの固定した機関になってしまうという欠点がございますので、現在においては六カ月ということになっておるわけでありますが、この六カ月の現行制度は、相当なものであるというふうに私どもは判断いたしておるわけであります。
○山田(長)委員 まことにただいまの御答弁はもっとものように伺われますが、それでは審査委員に選ばれた人たちの、しからば内容的なものを見ましたときに、日雇いでかせいでいる人もあれば、産婆さんもあり、あるいは床屋のおやじさんの出る場合もあるし、あるいは大工さんの出る場合もあるということで、この選び出された審査委員というものはまことに種々雑多であります。その種々雑多な人たちが、しからばこれらの重要な職責を認識されて出ていって、ほんとうにその仕事に当たれるかどうかということについて、審査会の事務局の人に伺いますと、最近では日当が七百円くらいしか出せないので、いま民間の日当あるいは手当というものは千五百円から二千円ももらえる。大工の場合なんかは二千円以上の手当が出るということで、実際は選び出されても出てこないのがほんとうなんだ、無理もないことだというふうなことを漏れ伺ったのでありますけれども、実際にいま局長が言われるようにまじめに審査の衝に当たるならいざ知らず、それが経済的にも、出てくることによって損をするというようなことであれば、――これはほんとうに法の精神に徹して出てきてくれるならば問題はないのです。それは経済的な見地に立ちましてもなかなか出てこられないというのが実際の姿のようです。その点については、みんな出てきて、ほんとうに法の精神にのっとって審議に応じてくれるものと局長は思いますか。
○津田政府委員 この検察審査会の委員というものの選び方は先ほどお話のとおりでございますが、したがいまして、いわば検察審査員になるということは一つの国民的義務ということにはなると思います。でありますけれども、やはりこの審査事務に具体的に従事している期間は、現実にその方々の本来の仕事ができないわけでありまして、収入上の問題もありますので、これを保障するということは当然考えるべきことだと思いますし、現に旅費、日当につきましてはその規定があるわけでございます。その額が適当かどうかという問題になりますが、これはまあ一般の裁判所へ出ます証人その他鑑定人、そういう者の日当等と一応比較して考えるべきものだというふうに考えておりますので、現在その額につきましては、あるいは適当でないというお考えもあろうかと思いますけれども、この面は予算との関係もございますので、ただいま私のほうではちょっと申し上げかねる次第でございますが、いずれにいたしましても、国民的義務と考えておやり願うというたてまえでできておるものというふうに考えております。
○山田(長)委員 裁判所のほうの方にも、ただいまの問題、先ほどの問題等についてちょっと御答弁願いたいと思います。
○佐藤最高裁判所長官代理者 検察審査会制度につきまして、十分な御理解のもとにいろいろ御心配を賜わってまことに恐縮に存ずる次第でございます。先ほど来の御質問の件につきましてお答えを申し上げます。
 最高裁判所の刑事局におきましては、検察審査会制度につきましては、これをお世話するという立場で従前処理してきておるわけでございますが、まず、先ほどの改正問題について申し上げますと、この問題につきましては施行以来当刑事局におきましても非常に慎重にかつ相当な時間をかけまして取り組んでまいったわけでございます。そしてこの任期を一年にすることにつきましては、かつて検察審査金審査員でございました人たちに対しましてアンケート等も徴しまして、いろいろな角度からこの問題を従前検討してまいったわけでございます。この任期一年とすることにつきましては、まず事件処理の能率という点から申し上げますならば、なれた人が処理されるということから申しまして、一年であるということが好ましいのでございまして、現に検察審査会の事務局の職員の人たちは、一年に延ばしたほうがいいのではないかという意見を述べるのでございます。ところで、現に審査員になられる方々の立場において、はたしてそれでは六カ月を一年にしてどうかという点をあわせ考えなければならないと考えるのでございます。これにつきまして、現に審査員を経験された方々に対するアンケートをとりますと、その御意見はちょうど相半ばいたします。一年のほうがいいという御意見、六カ月でいいという御意見、相半ばいたすわけでございます。現に、私もかつてこの審査員であられた方々のある集まりに出ました際に、いろいろ聞いて回ったのでございますが、やはり同様に、相半ばするというような御意見を拝聴したわけでございます。でございますので、事務能率の点から申しますと、なれた人がいい、したがって一年がいいということが言えますが、現に審査員で出られるという方の都合、その犠牲という点を考えますと、必ずしも当然に一年という結論にはならないように思うのでございます。なお、審査事件の平均の審理の期間というものを統計上見てみますと、六カ月以内で処理されておるのでございまして、このような点をあれこれ考えますと、現在の六カ月の任期ということでいいのではなかろうかと現在のところ考えているわけでございます。
 それから、審査員の日当の点について御心配をいただいているわけでございますが、これにつきましては、法律上の手当といたしましては、一般の訴訟事件の証人の日当に合わせるという措置が法律上とられているわけでございまして、したがいまして、千円が限度である。実際の日当を申し上げますと、これを時間で区切りまして、審査に要した時間、すなわちその日に拘束されました時間というものに合わせまして、支給の基準というものを一応つくりまして、これは全国二百四カ所の審査会におきまして、あまりに運用がばらばらになっては好ましくないので、参考にそのような支給基準というものをお示ししているわけでございます。私ども、もとよりこの最高額千円というものが、決して十分な日当であると毛頭考えておらないのでございまして、一般の記入等の日当、これの増額と相まちまして、今後も日当の増額については大いに努力し、これを増すという覚悟でいるわけでございます。
○山田(長)委員 たいへん、半年が一年になればいいというような意見が出たりしてもっともらしい印象を持たないわけでもないのでありますが、実際に法律のことを全然知らないたとえば産婆さんが行ったり、床屋の人が行ったり、大工さんが行ったり、あるいは左官屋さんが行ったりして、しかも専門家が審理して結論を出した裁判案件というものを、これらの人たちによってそれを審査し直すといってみても実際できるものではないと思うのです。つくられた法の精神というのは、これは全くだれも法律を理解されているという見地においての法律だと私は思うんですよ。そこで、ただいまの御答弁によりまして私は疑問を持ちますのは、この審査が、三月、六月、九月、十二月と、この各十五日に開かれるというふうなことのようであります。特別な事情によっては、さらに必要があるときにはこれを開くことを認められているようでありますけれども、実際に法律の知識もない者が、半年半年に交代され、おそらく会議の運営すらもわからないのではないかと私は思うんですよ。その人たちが集まって、しかも日当は、自分たちが一日かせぐ半分にもならない形で出ていく。おそらく、これは疲れに出ていくようなことで、一ぺんくらい様子を見るために行くかもしれないけれども、なかなかこれは実際問題として、専門家が判決をおろした、そのあとをどうするかというこの検察を審査するという衝に当たる人たちが、手当が少なかったり、法律の知識がなかったり、そういう人たちが集まって、それでその結論は、これらの人たちの中から責任者が選ばれて結論が出ることになると思うのでありますけれども、そんな結論を重要視して考えるところに問題があると思うのですよ。一体、これは法律の専門的知識を持たない人が集まって会議を開いてみたって、たいした意義を私は感じないのです。そういう点で、もっとこの内容を、法律知識のある者が集まって協議をするようにするとか、あるいは専門的知識を持たれた人たちを顧問にしておくとか、何かこの間においてもっと適切な措置が講ぜられるべきものと思いますが、この点はいかがですか。
○津田政府委員 先ほども申し上げましたように、この制度は、公訴権の実行に関しまして、民意を反映して適正ならしめるという趣旨でできておる。したがいまして、これに専門家を持ってくるということは、いわば別の機関を設けるということであります。これは立法、司法、行政のほかに、第四の機関を置くということであるとも考えられるわけでございます。その点は非常に問題であるということになると思うのです。したがいまして、本件につきましては、一般の民衆の方々が、あるいは法律の知識のない方もたくさんおられるでしょうが、そういう方々がこの内容を審査するというところにやはり意義があると思うのです。もしも法律的な必要があれば、この規定におきましては、相当と認める専門家の専門的助言を求めることもできるわけであります。したがいまして、そういう意味における助言の扱い方もできるようになっておりますので、この審査会の性格そのものはあくまでもそういう民衆参加という形で進むのが、この法律の精神であるというふうに私どもは考えるわけであります。
 日当の額につきましては、これは最高裁判所の予算概算要求の額によっておるわけでございますので、現在は政令で日当は定められておりますが、最高裁判所の概算要求の額に従って政令を定めておるということになっておるわけでございます。したがいまして、現在の日当額についての御意見は、最高裁判所のほうから申し上げるのが相当だと思います。
○佐藤最高裁判所長官代理者 審査員の日当につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもも予算上のこの額を増加するについて、法の改正を求めるという努力は、今後も十分続ける覚悟でおるわけでございます。
 それから、先ほどの検察審査会制度の本質に触れる御質問、つまりしろうとだけがこういう審査をしていてはたして利点があるかという趣旨の御質問と承りましたけれども、そもそもこの検察審査会制度というものの特色をいかにとらえるかということが問題であろうかと思うのでございます。法律上の知識につきましては、審査員はしろうとなのでございますから、もとより検察官に及ぶべくもないのでございますが、当該事件につきまして、それが起訴価価ありやいなやという市民的な感覚をそこに反映させるという点におきまして、この制度の特色があるのであると私は考えているのでございます。でございますから、最も適当な例をとって考えますと、証拠はあって、公訴を維持することは可能であるけれども、起訴価値がないと検察官が考えて起訴猶予にいたしたような案件について見ますと、それにつきましては、起訴するかどうかという起訴価値の問題について、審査員が先ほど申しました市民的な感覚を反映されてその判断を加えるというところが、この検察審査会の最も特色が出るところであろう、かように考えているわけでございます。しかも、この制度は、全国二百四カ所ございまして、それぞれの地域社会におきまして独立した各審査会を持っている、かような構想でございます。そこに何らの手を加えざるところの、二十歳以上の国民が関与していくというところ、そこがまさにこの民主的な特色を発揮しているものであろうと思うのでございます。でございますから、事件の能率的処理というものは、それがために犠牲になるということはやむを得ないところかと思いますが、他面に、そのような民主的な制度のじみちな発展という点から申しますと、そこにこの制度の特色がむしろあるのではなかろうか、かように思うわけでございます。
○山田(長)委員 ただいまの御答弁を伺っておりますと、法律的な専門家の知識も必要でなさそうですし、それから日当等の問題についても、予算のことでなかなか思うにまかせないというような意味のことでありますが、私はこれについては、委員の人にはやはり資格を必要とするのではないかと思います。意味のない人が出ていっても、実際に自己紹介をしたぐらいで、あとは食事して帰らなければならないような事態で、事務当局者が裁判の結果のプリントを渡すぐらいで、あまり審議もなくいつも終わってしまうというような意味のことも聞きました。一体それでは、せっかく設けた制度の趣旨に反する気がします。そうすると、これについて改革をしようとする御意見もいまのところ持たなければ、あるいは運営上のことについての疑義等についても、何か斬新的な案をお持ちにならないのでございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 もちろんこの制度の改善につきましては、私ども発足以来熱心にこれを検討してまいっておるわけでございます。何らその改善の必要がないということを申し上げる趣旨では毛頭ございません。制度の本質につながる問題につきましては、いろいろあれこれ比較考量すべき問題があるというふうに考えるわけでございます。
 そこで、この制度をいかに改善すべきかという点につきましては、私どもも意見を持っておるわけでございます。それを申し上げて御参考に供する次第でございますが、まず、検察審査会が起訴相当の議決をいたしまして、検察庁にその謄本を送付いたすわけでございます。これが公訴権の行使について再考を促す趣旨にほかならないわけでございますが、その場合に、その後検察庁におかれまして、そのとった処分を検察審査会に通知なさるという点については、何らの規定もございません。検察審査会制度というものを尊重するということから申しますならば、起訴の勧告に対しまして、その後いかようなる措置をとられたかということを審査会のほうにお知らせくださってしかるべきところではなかろうかと思っております。審査員の人々も、検察庁のほうから何らの返答に接しない場合には、自分が非常に熱心に審議をいたしまして、せっかく議決をしたのに、何らの反応がないということについては、はなはだ割り切れない気持ちを持っておるのでございまして、これはもっともなことだと思うのでございます。もとよりある検察庁におきましては、非常に詳細なる返事をよこされるところもございます。起訴相当の勧告に対しまして、結局は起訴しない、不起訴を維持するという結論をとられましても、その理由を詳細に書いて審査会のほうに通知してくださるという検察庁もあるわけでございます。しかしながら、すべてがそうであるとは言い切れないように思うのでございます。それで先ほど申し上げましたような審査員の気持ちというものは、十分にこれは尊重に値する問題だと思うのであります。これは何も法の改正までまたなくても、運用でおやりいただけることではなかろうかと私どもは考えるのでございます。これにつきまして、そのようなお取り扱いを法務省におかれましてもお考えいただくことが考慮に値する事柄である、かように思うのでございます。
 それからもう一点でございまするが、刑事訴訟法の二百六十条によりますると、不起訴の処分をいたしました場合に、告訴人等に対してその処分の通知をするという規定がございます。その際に不服であれば検察審査会に申し立てることができる旨をもあわせて通知してある。この点につきましては、私ども何も検察審査会の事件がいたずらにふえるということを望むのではございませんが、利用し得べくして知らないために利用できない人がいるということを心配するのでございます。
 以上、申し上げました二つの点につきましては、何も事柄が検察制度の本質を左右するというような問題ではないと思うのでございまして、またあえて法の改正までもいかなくても、運用において十分お考えいただける事柄であろうかと思っておるのでございます。この点については、法務省におかれましても慎重に御検討をいただきたい事柄であると思っておるわけでございます。
○山田(長)委員 ただいまの御答弁に、さらに私はつけ加えてお願いしたいと思いますのは、委員の資格の問題についても、ただいまの御答弁等から見ますると必要ないような感じを持ちますが、私はこの委員の資格の問題につきましては、やはり一応は法律的な知識を持った者が必要とされるのではないかと思いますけれども、この点も一般の民意をただすために法律的知識などはない、一般常識における結論でよろしいというお考えでございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げましたように、その問題につきましては、私どもも従前非常に熱心にその問題を追及し、検討してまいったわけでございまするが、現在までの運用状況を見まして、そのようなスクリーニングと申しますか、特定の方を選び出して審査員にするということは、この制度の本質から照らしていかがなものかという疑問は依然として抱いているわけでございまして、なおこの問題について、十分に引き続き検討したいと思っておりまするが、現在のところはいま申し上げたとおりに考えているわけでございます。
○山田(長)委員 一つの事例を申し上げて御参考にしたいと思いますが、たまたまある地方の審査会の委員が婦人ばかり選ばれておる。それは珍しい例だと思うのでありますけれども、しかもそれが全く法律知識のなかった人たちばかり出ている委員会があったそうでありますけれども、最近の婦人の知識の向上等から勘案いたしまして、それでもいいのではないかという結論になるのではないかと思われますが、あなたのお答えによりますと。しかも若い御婦人ならばいざ知らず、御年配の人が比較的多かったというそういう形で、一体専門家が裁判上出した結論に対して、さらに公平を期した意見が出るというふうにお考えでございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど本制度の特色について申し述べたところに関連いたすわけでございますが、タッチのしかたがやや違うのではないかと私は見ているわけでございます。すなわち法律を適用して、本件がどうであるか、こういうふうな見方よりも、むしろ先ほども申しましたように、はたしてこれが起訴価値があるかどうかという点、そういう点に民意を反映させるというところにこの制度の特色があるのだ、かように理解をしているわけなのでございます。この点から申しますと、先ほど申しましたように、なおこれについて特別な能力のある人というものを別な操作によって選び出す、スクリーニングをして、その中から審査員を選ぶということの必要性はあまり考えていない、むしろそうしないほうが、無差別に選び出すということにしておくほうが、本制度の民主的な意義、特色というものがあるのではなかろうか、おことばを返すようでございますが、現在のところそういうように考えているわけで、なおこの点について引き続き検討してみたいと思っております。
○山田(長)委員 終わります。
○大久保委員長 神近市子君。
○神近委員 いまの問題で一番私どもが直接頭にくるのは、審査会が問題になったところでは、ラジオ商殺しの事件の問題がございます。あのときに二人の少年の自白によって、何とかという奥さんが十何年かの刑にいま服しているのですけれども、あの子供たちが帰ってきて、二十歳くらいになって、自分たちが誘導されて自白したのだということを自首したり、自分で謝罪広告を出したり、いろいろなことをして、そうしてなるほどということで徳島の審査会は、これは取り上げるべきだ、再審に付すべきだということを決議して、それを申し立てたことがあったのですけれども、これがほとんど無視されて――世論というものを反映するために検察審査会というものがあるのでしょう。検察官の頭が裁判ばかりやっていらっしゃると、固定化してきて、十分民意を反映することができない、そのために審査会というものができている、そうしてはっきりした冤罪だというような証拠が出て、あの子供たちが二人とも自分たちの自白はうそだったということを自首して出て、そうして裁判所にも警察にも行って、謝罪広告を出したり、いろいろな手続をして、審査会で取り上げて、なるほどそうだったかということで勧告をしたというのが取り上げられなかったということは、一体どういうことなのか。私は、あの制度の、いま山田委員からの批判が、この一つの例で、まるで何かの道具に、法律にあるからつくってあるんだというだけの用しか果たしていないということになると思うのですけれども、その点どうお考えになりますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 検察審査会制度につきましては、まさに仰せのとおりのところに特色があると私も考えておるわけであります。それでいまの仰せの趣旨は、結局検察審査会が起訴相当という議決をした場合に、それに検察官が拘束されるようにしたらどうか、こういうふうな御質問の趣旨と承ったのですが、それでよろしゅうございましょうか。
○神近委員 いいえ、違います。それに拘束さるべきだということは私は申し上げておりません。徳島事件のように、ラジオ商殺し事件のように、もうその地域全体がなるほどと考えたから、それが検察審査会に反映して、これは再審に付すべきだということを申し立てた、それが取り上げられなかったのはどういうところに理由があるとお考えになるかということをお尋ねしたのです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 それにお答えいたしまする前に、検察審査会が起訴相当の議決をいたしました場合に、それがどのように扱われているかということをまず御説明さしていただきたいと思うのでございます。
 検察審査会制度施行以来、統計によって見ますると、検察審査会が起訴相当である、あるいはその程度の調べで不起訴としたのは不当であるという趣旨の議決をいたしましたものに対しまして、検察庁がその意見をいれまして起訴をされたというものは一八・三%にのぼっております。それから起訴相当の意見がありましても、なお検察庁のほうで不起訴を維持されたというパーセンテージを見ますると、約八〇%にのぼっておるわけでございまして、この数字の上からながめますると、起訴相当あるいは不起訴不当という議決がそのままの姿において起訴という形に反映しているとは言い得ないのでございます。それが先ほども申し上げましたいわゆる本制度の特色といたしまする起訴猶予と、証拠はそろっているけれども、起訴価値がないというふうな、そこの観点の相違において処理されておりまする場合と、なお証拠関係を検討いたしまして、検察官が結局証拠関係から起訴を維持できない、再度考案しても起訴を維持できないとされた場合も相当あろうかと思うのでございまして、一般にこのような制度がありまする以上は、そのいたしました起訴相当の議決というものは、相当これは尊重されねばならないところだと思うのでございまするが、実情におきましては、以上申し上げたようなことになっておるわけでございます。
○小島委員 ちょっと関連して聞きたいのですが、検察庁で不起訴にしたが、審査会で起訴すべしとなったときに、検察庁のほうでそれを取り扱って、引き続き不起訴にするということを考えたときに、その理由というものは審査会には何も通知する必要はないんですね。必要ないのですが、審査会のほうからすれば、起訴すべしと言っておるのに、また不起訴になっちゃったという点についてどこでどういうわけでそうなるのかということについては、審査会のほうは知りたいという気持ちは多分に持つと思うのですが、説明は実はできないということになっておるのですか。何か不起訴にした者の秘密を外に漏らしてはいかぬというようなことでしないのか、どういうことなんでしょうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 その点につきましては、先ほど制度の改善の問題で意見を申し上げたわけでございますが、起訴相当の議決があった場合に、検察庁がそれに対して処理をなさる、結局不起訴を維持して起訴しないという場合に、その理由を検察審査会のほうに通知すべしという規定はございません。ただ、運用といたしまして、懇切丁寧にその理由を付して審査会のほうに通知してこられる検察庁もございます。ただ、全体的に見ますると、必ずしも全部がそうではないということで、審査員の気持ちとしては、そこに割り切れない気持ちが残るわけでございます。運用の問題といたしまして検察庁のほうで、さような場合には審査会のほうに通知をなさることが好ましいということを先ほど申し上げた次第でございます。
○坂本委員 ちょっといまのに関連して。
 いろいろの問題があると思うけれども、時間がないから一つだけ私はお聞きしておきたいのは、山田委員が申されたのは、根本的の問題もあるけれども、まず運用の問題で、検察庁で一年あるいは二年かかって調べて不起訴に決定した。それに対して今度は告訴人が審査会の申し立てをした。その際に、検察審査会でわずか六カ月の委員の期間で、はたして検察庁が調べた程度あるいはそれ以上の調べをして起訴すべきか、この不起訴にしたのは不都合かというような結論を出すことは不可能ではないか。特に全然法律の知識のないような、もちろん助言者はあるでしょうが、六カ月、六カ月でかわったら、引き継ぐにしても新しく、新しくなるから、結局ほんとうの検察審査会の審査はできずじまいに終わるのではないか。りっぱないい制度があるけれども、実際これは運用ができないのじゃないだろうか。こういう運用の面についての一つの御質問ではなかろうかと私は聞いていたのですが、そういう点いかがでございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 その御心配の点につきましては、発足以来私どもは検察審査会の事務局の職員が、検察審査会の独立を害せずして、しかもいかに事件を早く全体的に把握されて判断をなさりやすくするかという、これはじみな仕事でございますが、非常にまた大事な仕事でございます。その点につきまして実は心を砕いてまいりました。事務局の職員としての仕事の改善と申しますか、くふうと申しますか、それについて発足以来いろいろと助言をし、資料も提供してまいっているのでございます。
 そこで、各審査会の事務局職員は、あるいは図解を用意し、事件の記録を謄写いたしまして、また専門助言者の知恵も借りまして、事件の全貌を正確に審査員が把握されるようにする。その点につきましては、その運用の充実ということを期しまして、施行以来つとめてまいっておるわけでございます。検察官のされまする処分とかかわりなしに、全く新しく検察審査会が捜査をするという形ではございませんので、検察官のされました処分というものを事務審益するという形であろうと私ども思うのでございまするが、従前に捜査の記録の摘録をつくり、先ほど申し上げましたようにいろいろ図解もしということで、早く事件の全貌を正確に把握されるという点につきましては、従前もこの点に特に重点を置いて指導を続けてまいっておる次第でございます。
○山田(長)委員 私はもうばかばかしくなって質問をやめようと思ったのですが、もう一点お答え願いたいと思うのです。
 大体審査員なるものが、選挙人名簿のどこからだれということでなくてあっさり出してきて、それで審査員ができて、その審査員が、さっき申し上げましたように大工さんとか、左官屋さんとか、床屋のおやじさんなどそういう層が出てくるわけですよ。その人たちが、専門家の検事や判事が判断して結論が出たものが、しかも実際にややこしい事件が、そんなしろうとに簡単に判断ができるとお考えになっておるとすれば、私はたいへんな間違いであると思うのです。そんなに簡単に判断できると考えるならこれは苦労が要らないのです。実際に出ていって説明を聞いたって、何だかちんぷんかんぷんでわからないというのが私はほんとうだと思うのです。それはわかりっこないですよ。実際にしろうとで法律知識の少しもない人が出ていって判断しろといったって、その判断自体だって私は間違いがあろうと思うのですよ。だからこんな形で言うけれども、世間でいわゆる検察不信の声が起こっているのですよ。そういう声が今日なきにしもあらず。だから、どうしたって検察審査会なるものにりっぱな権限をやはり持たせなければ、人間の処理していることでありますから、間違いが絶対にないなんということはないのですよ。ですから、判断に狂いなからしむるためにやはり改革すべきじゃないかという結論が出て、私はきょうの質問に及んだわけなんですよ。一体その判断が全くのしろうとに――裁判事件なんというのは、全くややこしい事件がたくさんあるにかかわらず、あなた方は正しい判断ができるとお思いになっているのですか。もう一点、この一点を伺います。
○佐藤最高裁判所長官代理者 この制度の本質の問題にからまるわけでございますが、先ほど来申し上げておりまするように、この事件の見方と申しまするか、起訴価値ありやなしやという点についての市民の市民的な感覚というものをそこに反映させるという点がこの制度の特色であると考えるわけでございまして、全く検察官と同じ平面に立ちましてこれを見るというのとは、いささか違うのではなかろうか、かように私どもは理解しているわけでございます。でございますから、いわゆる官僚としての検察官のものの見方というものが、市民的なものの代表でありまするそこの機関の検察審査員のものの見方と、同じ事柄につきましても異にすることもそれはあり得るわけでございます。そこに市民的な一つの感覚を反映するという特色があるのである、かように思うのでございまして何も同じ法律的な事柄を同じ平面に立ってこれを判断するということではない、かよに思っておるわけでございます。
○山田(長)委員 どうも私どもには、検察当局の考えていることと別な角度から判断することはいいのですが、その判断をするのに、実際にこれはどう考えてみても法律知識の何らない人が判断する判断というもの、その判断が、しかも選挙人名簿の中から選び出された人たちなのでありますから、おそらくそれは想像できないような、自分で一つの意見をすら持たないような人すら出てくる危険があるわけですよ。事務当局の人たちは、公平に事件の内容というもの、あるいは裁判の結論というものをお話されるに相違ないと思いますけれども、それにいたしましても判断がそんなに正確にできるということは考えられないです。しかも半年、半年でかわってしまうんですからね。とにかくその短かい歳月の間に、正しく判断をおろす知識が生まれると考えるところに、私は間違いがありはせぬかという危惧を持つわけですよ。ですから、検察当局が裁判所当局と別な角度でしろうとらしい判断をおろせというけれども、その判断をおろすのにおろしようがない人たちが出てくるわけですよ、大勢の中から選び出された人たちの中に。そうすると、中に非常に間違ったボスが出ますと、そのボスの意見によって左右される危険がありはせぬかという危惧を待つのです。この点はどうも裁判所当局のおっしゃられることは私理解に苦しむわけで、一定の知識を必要とされる資格を条件とした、判断をおろせる人たちが必要ではないかという結論を私は持っておりますが、その判断を出す人たちによって、その判断の内容が違ってくるんですよ。だから、何も検察当局の向こうを張れというわけじゃない、向こうを張った判断を下せというのではない。少なくとも一定の資格を持って、法律知識がある人たちで、社会通念、一般常識を持たれた人たちがありはせぬかということなんです。その人たちがおろす判断を結論として出すべきじゃないかというのです。どうも非常に高邁な知識をお持ちになっていらっしゃる人たちですから、法律知識をだれもみな持っているようにお考えで、それで、一般常識で判断を下せるというお考えだと思うのですが、ここに私は制度の根本的な改革が必要とされるのではないかと思いますから私は申し上げておるのです。どんな人たちでもみなりっぱな判断がおろせるというお考えですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 もちろん私は、だれでもりっぱな判断ができるというふうに考えておるわけではございません。法律的に暗いことはむしろ当然な人たちであろうと思うのであります。そこで、その知識を補充し助言を与えるために、専門的な助言者の意見を聞くことができるというふうにこの法も規定をいたしておるところであろうと思うのであります。それで、これらの助言者を活用することによりまして、複雑な事件をシンプルな形にできるだけ引き直すということによって、そのなまの事実について審査員の意見を反映させる、そういうようなことはこの専門助言者というものの活用のしかたによりまして、これは可能であるのではないか、かように思っているわけであります。
○田中(織)委員 関連してお尋ねしたいのです。検察審査会の制度について、場合によれば法改正をやって、この制度の設置目的をさらに完全に実現できるように根本的な検討を加えておるということであるならば、いま山田委員から指摘しておる審査会の委員の選任についても、あるいは法律知識のない人の判断のほうが公平な正しい市民的な感覚というものを発揮できるという議論も、私にはわからないことはないのでありますけれども、問題は、山田委員が指摘するように、一年も、あるいはそれ以上もかかって検察官が取り調べて結論を出したものに対する一種の不服審査、検察官の処置に対する異なった民間の判断を反映させるために設けた制度であるといたしますならば、根本的な法改正にあたっては、審査員の選任についてもある程度の法律的な知識、先ほども申し上げるように、極端な――山田君が言われたように、ある裁判所の審査員が、ある期間においては全員が婦人であったというようなことは、いささかこれ常軌を逸するのじゃないか、そういうふうなことについては刑事局長はお答えになっておらないから疑問が出てくるわけなのですが、私は根本的な法改正のときには、当然そういうことについても配慮すべきじゃないかというのが一点。
 それからもう一点は、検察審査会から、検事が不起訴にしたのは不適当だ、それは起訴を相当とするという愚見、議決をしたものを受け取った検察庁が、それを起訴するか不起訴にするかについては、検察審査会に同等する義務規定はない。検察庁によったら、起訴を相当とする議決があった場合に不起訴を維持したというような場合には、相当詳細な理由を回答しておるところもあるけれども、それは運用に待たなければならぬのだという考えなのですけれども、いまちょっと法を見てみますと、三十二条で、いわゆる一事不再理の原則が掲げられておるのです。一たん検察審査会で議決のあったものについて、検事が不起訴処分をしたものに対しては、重ねて審査会の活動を要請することができない。この積極的な規定を設けているたてまえから見たら、私はなおさら検察審査会の議決と異なって不起訴を維持したというような場合には、やはり審査会にはっきりとした理由等の回答義務を、むしろ法律に定める必要があるのではないか、こういうふうに考えるのですが、その点は法改正の中で当然考えるべき問題ではないかというのが私の言う第二点なのです。
 それからもう一点は、検察審査会が起訴相当だという議決をしたもののうちで、不起訴決定がくつがえされて起訴されたものが一八%で、八〇%は不起訴維持になっておるという点は、やはり審査会を設置されておる――先ほど山田君の議論の裏の面から見て、何ら法律的な知識がない人ではあるけれども、やはり市民的な感情からして、これは起訴すべきではないか。起訴すべきではないかということは、いわゆる公的な立場から、法益を保護するという立場から、刑事責任を追及すべきだという市民の芦だと思うのです。したがって、その審査会の議決がそのまま取り上げられて起訴処分になる。いわゆる法益追及の立場で刑事責任が追及される端緒になるものはわずかの一八%だということは、この制度を存続する上から見れば――私は、法律の運用の面で検察当局に考えてもらうべき問題だという、裁判所の内輪に対するきわめて控え目な答弁のように承ったのでありますけれども、この制度を存続する以上は、やはり検察審査会の結論というものについてはこれを尊重するたてまえを――もちろん検察審査会の結論を真剣に検討してからの結果でありますから、それだけの裁量権を与えなければならぬことは、法律の専門家にゆだねておいてもいいという面もありますけれども、こういう制度を設けておる以上は、やはり素朴な市民的な結論というものを尊重するたてまえを、法改正の場合には何らか義務的ではないにしても考慮する必要があるのではないか、こういうふうに考えるのです。
 以上、三点について率直にお答えを願いたい。
○佐藤最高裁判所長官代理者 まず、第一点の婦人だけの審査員であるという現象でございますが、あまりそういう事例はないと思いますが、しかし全然ないとは言いきれないわけで、そのような構成になるということは、むしろ無差別に抽せんで行なうというところの結果から生ずることであろうと思います。女性だけであるからいけないかということでございますが、いかがなものでございましょうか、直ちにそういうことが言えるかどうか。たとえば陪審なんかの運用を見ましても、アメリカなどの実情ではかなり婦人が多いのでございます。それは年配の婦人が多いのでございますが、これは比較的ひまであるということ等の事情から、婦人の構成員がかなりいるというように陪審員も構成されるわけでありまして、婦人のみによって構成されるから直ちにその審査会が問題であると言い得るかどうか、こういう疑問を持つわけでございます。
 それから、検察審査会の議決送付を尊重することの問題でございますが、もちろんこの制度があります場合に、その議決送付を尊重することは好ましいことであろうと思います。ただ法律上完全な拘束力を持たせるということだけが唯一の方法ではないと思いますので、先ほど申し上げましたように、起訴相当の議決に対して結局不起訴を維持するという場合には、その事由を当該検察審査会に通知するというような方法によりましても、この議決の尊重というものは担保されるところであると思うのでございます。私が運用でと申しましたのは、何も法改正は避けてという趣旨ではございませんで、少なくとも運用でもやれることであるという意味で申し上げたので、法の改正、それから運用の問題、双方含めまして、この点については法務省側におかれましても十分に検討していただきたい、かように思うのでございます。
○田中(織)委員 最初にお伺いしましたのは、検察審査会の審査員の選任の問題について、法改正を行なう場合に考えるべき問題が現行にはあるのではないか、こういう立場で申し上げておるので、たとえば審査員の任期が六カ月で更新するというようなことになっておる。したがって、六カ月やそこらの間に、検察官が一年もあるいはそれ以上もかかって出した結論に正しい判断ができないじゃないか、時間的にいって。また、いろいろな証人を呼んだり何かするような権限は与えられています。また必要な証拠であるとか書類であるとかいうものは、審査会に出さなければならぬという義務づけはありますけれども、それに基づいて事案を判断する人が何しろしろうとであるというところに問題があるので、委員の任期の問題、あるいは審査会の委員の選任の問題についても、機械的な抽せんで、たまたま女の人ばかりであった、女の人ばかりの審査会だから間違った結論が出たとはだれも言っていない。しかし、そういうような場合には、何か場合によれば片寄った結論が出るのではないかという疑念をいわば男性の側に与えないとも限らない。したがって、それは法改正のときに、選任の方法について何か考えるべき問題があるのではないか。これは裁判所のほうではなくて、この制度そのものの所管をしておるということで、裁判所に設置するということになっておるけれども、法務行政の一端だということであれば、法務省の行政担当者からお答えをいただいてもいいと思うが、法改正にあたっては、委員の選任あるいは委員の資格というようなものについて、再考を要する事態に現在なっておるのじゃないかという立場からの質問なんですから、そのことにはずばりお答えになってもいいのではないですか。いかがですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 仰せの趣旨、よくわかりました。私どもの当面の見解というのは従前申し述べたとおりでございますが、なお、この問題につきましては十分反省をいたしまして、引き続きその線に沿って検討を続けさしていただきたい、かように思います。
○濱野委員 関連。田中さんのお話と重なるかもしらぬが、私は、法文に規定してなくても、一たん検審にかかったら、その結論は当然検察庁に回るのでありましょうが、検審の議決とそれの反対の方向に進まなければならぬという事案については、これは検察庁は検審にその事情を報告する責任を運営の面においてやってくださるのが一等いい。そうでないと、私は検察の責任も果たせないんじゃないか。検察庁に権威を持たせるならば、そのほうがむしろ法治国家としては適当である、こういうふうに私は考えております。これが一点。これは規定がなくても、運営の面でそうすることが可能だとあなたがおっしゃるのでありますから、これは法務大臣とよく相談して、検察当局の権威を維持する上においても、この議決をした検審には報告をする。あなたの説明だと報告するところもあるし、しないところもある、こういうお話ですが、必ず検審の議決に対する反対の意見があった場合には検察庁の回答を与える、こういうふうにすれば政治的な起訴であるとかあるいは不起訴であるとかいうようなこともなくなり、検察当局に対する権威が維持できるのではないだろうか。それからこれについてはっきりした――きょうでなくてもよろしゅうございますから、法務大臣と相談なすって、事務総長とも十分よく相談なすって、――検察庁の権威維持のためにもそれは必要である。しかもこのことは一つの制度でありますから、制度の運営上重大なポイントでもあり、それから先ほど刑訴の二百六十条ですか、これを引用してもこれは当然のことであります。私どもは常識的にそう考えているわけです。
 それからもう一つは、しろうとが出て云々という話がありました。私どももそういう印象を持つのでありますが、しかし第一審で有罪になっても第二審で無罪になるようなことがある。これは検審に関係はございませんけれども、そういうむずかしい事案がないではない。ですから必ずしもしろうとだから云々ということは言い切れない。くろうとがそこに参加しておっても、あるいは一八%の検察庁と反対の実績もあがるかもしらない、またあがらないかもしらない。ただ民主的にやろうとすれば、やはり検察庁の責任だけはそういう意味において持ってもらいたい。よってもって検察当局の威信というものを維持していく。裁判所や検察当局が威信がなくなったら、法治国家はもはや骨抜きでありますから、私の希望、お願いでありますから、どうぞ法務大臣とよく相談されて事務総長ともよく相談されて、次の機会にこのことをお願いしたい、これだけであります。
○大久保委員長 いまの濱野君の発言に対しては了承されますね。
○佐藤最高裁判所長官代理者 御意見ありがとうございました。私どもも今後とも先ほど来いただきました各御意見を十分に検討をいたし、なお法務省にも御連絡をとりまして、本制度のよりよき発展のために努力いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
○大久保委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 私は、鈴木忠一司法研修所長の昭和四十年十一月二十九日の司法研修所講堂における第十八期生に対する日本の法曹ということについての講話の疑点について、若干お尋ねしたいわけであります。
 これにつきましては第五十一回国会におきまして、当委員会において横山委員から昭和四十年十二月二十二日と十二月二十四日の両度にわたっての質疑がございましたが、重要な講話で、実質的には訓示と修習生は言っておりますが、重要な内容がたくさんございまして、われわれとしてはこれにまだ納得できませんから、その点について御質疑を申し上げたいと存ずるわけであります。
 そこで、その前にお聞きしておきたいのは、司法研修所の指導教育について簡潔に根本的のことでけっこうですから、まず承っておきたいのであります。
○矢崎最高裁判所長官代理者 ただいまの坂本委員の御質問の御趣旨でございますけれども、実際に行なっている講義の内容について申し上げればよろしゅうございましょうか。どういうような講義なり修習生に対して教育をいたしているかというようなことについて、大体のアウトラインを申し上げればよろしゅうございましょうか。
○坂本委員 司法修習生は将来裁判官、検察官、弁護士となる者の指導機関である、こういうふうに考えますから、その精神的面と申しますか、そういう方面と実際やっておられる実際面と、大きく二つに分けて簡単でけっこうでございますから……。
○矢崎最高裁判所長官代理者 まず、いまお話のございました大きな精神面での事柄でございますが、それは司法修習生に関する規則に大体そのポイントが書かれてございます。それによりますとこの四条に「司法修習生の修習については、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない。」こういうようにほんとうの根本的な目的について規定してございます。要するに司法修習生の修習は、法律実務家、言いかえますと、裁判官、検察官、弁護士というようになるべき者、そういった生きた法律家をつくるための修習生であるということがまず第一点。それから司法修習生の修習は、要するに実際に法律を適用するその専門家となるための修業だということが第二点。それから第三点は、司法研修所が単に裁判官だけの養成機関ではなくて、検察官あるいは弁護士だけの養成機関でもなく、広く法律実務家を養成するための機関であるということについて規定いたしておるわけでございます。要するにそういうことのために、裁判所法の中でも、司法修習生は非常に機密にわたる刑事ないし民事、もちろん行政事件を含みまして、それについての合議の傍聴も許されることに相なっております。また司法修習生は、その修習の面で知り得た秘密については絶対にこれを漏らしてはならないという制限を受けているわけでございまして、司法研修所の中では司法修習生を自分の身内の者、いわばほんとうの自分の後輩というような面から見まして、ほんとうに弟を養成するというようにざっくばらんな雰囲気で、ただいま申し上げましたような目的のために修習をさせているというのが精神面での申し上げたい面でございます。
 それから実際面におきましてはどういうことになるかと申しますと、まず前期と申しまして、四カ月間司法研究所で修習をさせます。それからその後に、今度は実務修習と申しまして、裁判所、検察庁、それから弁護士会に修習生を委託いたしまして、そしてそこで修習をさせることに相なっております。その期間は、御承知のように、裁判所は民事と刑事がございますので、民事四カ月間、刑事四カ月間、それから弁護士会ではやはり四カ月間、検察庁では四カ月間、都合合計いたしまして、一年四カ月間を実務修習をさせることと相なっております。それが済みましたあとに、また全修習生を全国から司法研修所に集めまして、四カ月問後期の最終の仕上げの修習をさせるということになっております。そして大体のアウトラインを申し上げますと、民事と刑事と、それから弁護と検察、こういう四つの類別に分けまして、一つの組を五十人といたしまして、その五十人につきましては、民事の裁判官出身の教官、刑事の裁判官出身の教官、それから民事の弁護士出身の教官、刑事の弁護士出身の教官、それから検察官の出身の教官、都合五十人に対しまして五人の教官がこれに当たりまして、個別的に非常に一生懸命修習さしている、こういうのが現状でございます。
○坂本委員 よくわかりました。そこで司法研修所の所長の権限、職務権限と申しますか、それは、これも簡単でけっこうでございますが、いかがなものでございますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 原則といたしまして、司法研修所の研修のこまかい点は教官会議できめることに相なっておりますけれども、それ以外の研修について必要な事項は、研修所長がこれをきめることにいたしておりまして、研修の企画、重要な事項を定めるには、必ず教官会議の議を経てきめる、こういうことになっております。そうして教官会議は司法研修所教官で組織いたしまして、司法研修所長が議長となってこれをまとめる、こういうことに相なっております。結局は、最高裁判所の監督に属するわけでございます。
○坂本委員 そこでお聞きしたいのは、この所長は、一期からずっとありまして、いま十何期かあると思うのですが、一期からずっと各期の全部に対して講話と申しますか、公に言えば、内容は訓示的なものなのかどうかよくわからぬのですが、そういうようなのは、各期生に対して何回ぐらいやるのですか。その点いかがですか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 実ははなはだ申しわけございませんけれども、何回ということは、確実に申し上げることは、十分調べてでないと申し上げることは実はできないのでございますが、しかし大体二、三回は講話をしているようでございます。しかし、ただいま仰せがございましたような訓話というようなむずかしいものではございませんで、要するにただいま申し上げました司法修習生というのは、いわば自分たちの後継者というように見ておりますので、ざっくばらんに言いたいことを言って話をするというのが講話の実質的な内容のようでございます。
○坂本委員 そこで研修所長の講話はテープレコーダーに毎回とって保存してある、さらにまた速記録でとってある、こういうふうに聞いておりますが、その点いかがですか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 ずっと昔からそういうようにしてあるというようには私も聞いておりませんですけれども、最近の分につきましては、テープレコーダーによりますか速記によりますか、ともかく内容について全部逐一逐語的にできるような資料は保管されているというように聞いております。
○坂本委員 念を押すようですが、最近はテープレコーダーにとって、それがずっと研修所に保存してある、こう聞いておりますが、そのとおりでございますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 最近の分のものについては、そうであろうと思います。
○坂本委員 この四十年十一月二十九日の講話についてはいかがでございますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 それについてはテープレコーダーあるいは速記等によって逐語的に翻訳できるような用意はあるようでございます。
○坂本委員 そこでこの十一月二十九日の鈴木忠一氏の所長講話については、日本の国民は法曹についてどのように考えておるか、第二は、裁判官についてはいかなる評価がなされておるか。第三は、検察官に対する評価はどうか。第四は、法律学者に対する評価。第五が、結論みたいなふうになっておるのですが、これについて私の手元にあるのは、それは全部でないだろうと思うのですけれども、また、横山委員が質疑された点もやはり同じようなものじゃないかと思うのです。そういたしますと、この五項目については、われわれから考えまして非常な重要な発言があるわけであります。時間がありませんからここに申し上げませんですが、この発言については法曹一元の問題、あるいは弁護士会のあり方、弁護士の問題、それから裁判官、検察官の問題、ひいてはこれは横山委員の質疑にも出ているようですが、わが日本社会党に対する発言については、国会での社会党のような三百代言的な発言がそれである、こういう点があるわけであります。しかし、やはりこういう点も、最初から最後までの論旨と、それから前後の総合的の勘案をいたしませんと、にわかにこれを誹謗だとかあるいは侮辱だとか、あるいはこれは不都合だとかという判断も容易に下せないだろうか、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、ここに日本社会党に関する問題については、いま申し上げましたような重大なることがあるわけですから、やはりこれも前後の点を、また最初からどういうふうな論旨で所長が言われたかということを考えなければならないと思うのです。しかしながら、われわれとしては非常に重大に考えております。また、時間がないから申し上げませんけれども、弁護士会のあり方についても、それから弁護士そのものについてもいろいろとあるわけでありますから、私はこれの質疑をいたします前に、ぜひひとつ委員長にお願いをしまして、ただいま御答弁にありましたようにテープレコーダーがあるはずでございます。そのテープレコーダーを資料として本委員会に提出を願いまして、これは日本社会党の問題でもあるし、全国の日本弁護士会の問題でもあろうと思うわけでありますから、ぜひひとつここでそれをお聞きしまして、その上に立っての徹底的な究明をしなければならぬ、私はこういうふうに考えます。本日のところは、ここにあります資料も、これは間違いではないだろう、こう思いますけれども、このテープレコーダーをお聞きして、その上でこの問題の審議に当たりたい、こういうふうに考えますが、委員長の資料の点についてのお取り計らいをお願いして、それをお聞きしたいと思います。
○大久保委員長 ただいま坂本泰良委員からの発言につきましては、次回の理事会において協議いたしたいと思います。
○坂本委員 それではそういうふうなお取り計らいを願いまして、そして、やはりその上でないと、御質疑をするのもそのほうがいいと思いますから、本件についてはこの程度にいたしたいと思います。
 もう一つ、これは人権擁護局長にお伺いするのですが、全日本港湾労働組合名古屋支部の全検分会というのがあるわけです。その組合員の問題につきまして、昨年の二月係長――その組合では係長も組合員になっておりますが、係長三名が食堂の二階で軟禁をされたというような、そのほかにもあるかわからぬけれども、そういうことを中心としまして人権擁護の申し立てを名古屋法務局にいたしておるわけでございます。この点について御調査になっただろうと思いますが、その結果を承っておきたいと思います。
○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の事件につきましては、昭和四十年すなわち昨年の一月二十九日に全港湾労組名古屋支部専従職員白井治良という方から名古屋法務局に申告がありまして、名古屋法務局におきまして調査の上、同年の五月二十六日に排除措置としてその決着をつけたものであります。
○坂本委員 排除措置といいますと、どういうことですか。
○鈴木(信)政府委員 人権事件につきまして申告がありました場合に、いろいろ調査をいたしまして、その調査の結果の処置の一つの方法でありまして、たとえば刑事事件になると思われます場合には告発をいたします。それから、人権を侵犯したと思われる者に対し、あるいはその者を指導しもしくは監督する者に対しまして、文書で必要な勧告を行なうのを勧告といいます。それから、相当と認める官公署その他の機関に対して文書で侵犯の事実を通告することを通告といいます。それから、侵犯者またはその者を指導しもしくは監督する者に対して、その反省を促し、善処を求むるため、口頭で事理を説示するのを説示と言っております。それから、いまの排除措置でありますが、これは、その前に五というのがあるのですが、これは省略いたしまして、六というので、「前各号に掲げるもののほか、関係者に対する勧奨、あっせんその他侵犯を排除するため相当と認める措置をとること」これを排除措置、こういうふうに言っておるわけでございます。
○坂本委員 そこで、これは結局どういうことになるわけですか。
○鈴木(信)政府委員 それでは事件の経過を概略説明さしていただきたいと思います。
 まず、申告事実の概要でありますが、これは社団法人日本検数協会名古屋支部海上作業第一課作業係長の渡辺三千夫ほか二名が、同支部の就業命令に違反したため、同年の一月十二日から二月二十二日までの間、毎日支部内の一事務室にとじ込められまして、支部側幹部から反省せよ、それがいまの仕事であると言われまして、特定の執務も行なえず、同支部の従業員との面談も禁ぜられ、もってその自由を奪われ、文部から私的制裁を受けた、こういう申告事実でございます。
 それにつきまして調査いたしました結果を申し上げますと、この支部では昭和三十九年、すなわち一昨年十月に機構改革を行ないまして、従来あった配置課という課を廃止しまして、同課に勤務しておりました被害者、すなわち渡辺三千夫ほか二名を海上作業第一、第二、第三課の各係長に配置がえをしたのであります。ところが、この被害者らは、この措置を不服といたしまして、同係長としての就業を拒否いたしましたので、やむなく支部側はこれに対して就業命令を出した。しかし、これも拒否されるところとなりましたため、支部側の幹部は同人らにその反省の機会を与えるために右支部の二階の部屋、すなわち調査室に入室して再考を促したものであるというのでありまして、その被害者らが閉じ込められたと称する部屋、これは同支部の二階にある調査室で三坪の洋室になっております。周囲は普通の事務室用の窓があり、中央にはテーブル一卓、それからいす数脚の附置がされた普通の事務室でありまして、入室していた期間中は、外部に通ずるドアに別にかぎがかけてあるというわけではない。外出しようとすれば自由に出入りできる状態にあったわけであります。そして入室状況は毎日午前八時から午後五時まで、昼食時一時間の休憩、用便のために室外へ出る自由は許されていたわけであります。入室中は同室内のいすにすわって反省することを命ぜられていたわけでありますが、その出退時刻は他の一般職員と全く同様に定時に行なわれていたわけであります。
 それからこの部屋には新聞雑誌類の設備はなかったわけでありますが、被害者三人いたわけですから、この三人の間の談話は自由に行なわれたわけであります。それから、その被害者らの状況を監視するために職員が一日数回見回っておりましたけれども、被害者らの雑談をしいて注意するほどでもなかったわけであります。
 以上のような調査の結果でありまして、支部側で入室について、被害者らに対しまして強制的な行動に出た形跡も認められず、同室の構造も普通の事務室であり、昼食時の休憩、用便のための外出も認められており、被害者相互の会話も特段これを抑止されているという状況ではなかったわけであり、外部との遮断もなければ、出退時も他の職員と同じである等の事情から考えまして、私的制裁あるいは軟禁というまでの事実を認めることはできないが、ただ入室反省、この部屋に入れまして反省させるというのには、この期間がいささか長い。すなわち一月十二日から二月の二十二日までいささか長い点が問題になりますので、人権尊重の上でこれははなはだ好ましくない状況である、こういうふうに認められたわけであります。
 なお、それではなぜ排除措置にしたかという点でございますが、申告がありましたのは昭和四十年の一月二十九日、それから調査に着手いたしましたのが昭和四十年の二月一日でございます。そして、この調査に着手いたしました結果、二月の二十二日にこういう状況は排除されたわけであります。
 なお、申告者の白井治良という方から五月の十九日になりまして、この調査室における閉じ込めの状況はすでに終わっておる、それからその後、この三名につきましては係長から一般職員に降格させられたわけでありますが、この懲戒処分の是非につきましては裁判所の裁判によって判断されておるということで、名古屋法務局に対しましてこの調査は打ち切ってもよいという申し出がありましたので、結局法務局の調査開始によりまして、こういった被害事実はなくなったということで排除措置という措置をとったわけでございます。
○坂本委員 いま詳細に御報告を聞きまして、これに対してはなお調査についてのいろいろないきさつ等もあるようですが、これはまたの機会に譲りまして、本日はこれで打ち切りたいと思います。
○大久保委員長 前回の神近委員の倉地事件についての発言につき、政府の報告を求めます。津田刑事局長。
○津田政府委員 前回お尋ねの倉地健治に関する事件の現況は以下のとおりであります。
 この事件は、昭和四十年四月十日都内千代田区麹町所在の麹町マンションにおきまして、言論時代社経営者倉地武雄が同人の三男倉地健治により殺害された事件でありまして、この事件は東京地方検察庁におきまして、同年四月二十七日倉地健治を尊属殺人、強盗殺人事件として送致し、捜査を遂げました結果、同人に対する容疑が明白になりましたので、昭和四十年、昨年五月十五日、前記同罪名により東京地方裁判所に起訴いたしまして、現在公判係属中であります。
 公訴事実の要旨は、被告人は倉地武雄の三男として生まれ、昭和三十九年末ごろから同人の経営する言論時代社に勤務して、週刊新聞マスコミの配達等に従事していたものであるが、日ごろから右実父武雄との折り合いが悪く、感情の対立がありましたところ、最近に至り遊興にふける等素行が乱れて仕事をなまけるようなこともあったので、武雄の怒りに触れ、再三いたく叱責されていたため、同人に対し激しい憎悪の念を抱くに至っておりましたが、小づかい銭に窮しました結果、同人を殺守して所持金品を強奪しようと決意しまして、先ほど申し上げました麹町マンションの言輪時代社事務所において、目をさました同人を、格闘の末あおむけに押し倒し、馬乗りになって同人の頸部を締めつけ、さらに所携のアイスピックでその胸部十七カ所を刺すなどして心臓及び肺臓に達する刺創を負わせ、よって即時同所において同人を失血、血液吸引による窒息死亡に至らしめ、殺害の目的を遂げ、同人所有の現金二十万八千円、腕時計一個ほか二件を強取したものであります。
 そこで、この事件につきましてはなお被害者が週刊マスコミを発行して、諷刺記事等暴露記事を掲載していたというようなことから、政治的背景を持った事案ではないかという疑いもありましたので、共犯者の有無につきましては慎重に捜査を遂げましたが、結局本件公訴事実は、いまほど申し上げましたとおり倉地健治単独の犯行であることが確認された次第でございます。
 以上でございます。
○神近委員 いま少年の非常な堕落というか、そういうことが婦人の団体、議員の間で問題になって、いろいろ協議されたことがあったのです。そのときに、少年のこの悪化はどういうところから出てくるかということで、事例をあげるとたくさんございます。ですけれども、私がこの倉地の問題――あれっきり、一本の千枚通しで人を殺すことができるかどうかということ、それから少しばかりの金のお小づかいがなかったということのために親を殺すというほど、われわれの少年は悪化してしまっているかというようなことで、この問題の調査をお願いしたのですけれども、特にこの問題の背景に何か違ったものがあるのじゃないかというようなことを私に感じさせました投書がここにきたのです。それで問題をちょっと調査したほうがいいのではないかというのでお願いしましたのですけれど、結局、そのとき発表された事犯だけしかいま出ていないのですね。裁判あるいは調査はどの程度まで進んでいるか。そして親を殺した子供というものに対する処罰、それも単純にお小づかいがなかったということのために親を殺す、こういうことが行き渡ったら、どなたかおっしゃったように、日本の民族はどうなるんだというようなことに私はなると思うのです。
 ほかにもたくさん材料はございますけれど、ともかく一つの案件として私が疑惑を持ちましたのは、投書が来ました。これは国士館学園「教育を守る会」というところから来ているのですけれど、倉地武雄という人が殺される二日ばかり前にちょうど委員会の廊下で会いまして、何か話がありそうな顔で一緒に食事をしたことがあったのです。この国士館大学の変な状態を話して、それをいま調べているところだというようなことを言われたので、私がはっとして、実は御発表ないものですからお願いしたわけです。この問題は少年の非常な悪化と関係ないことはないと思うのです。ですからもう一度私は御調査を願いたい。この学長の柴田という人が体育学部の教授の医学博士の佐藤英夫という人をステッキでなぐって、そして重傷を負わせて一一〇番が行って、全治二カ月の重傷を負わせたということが一つ。これが東京地裁にかかっているはずでございます。これがどの程度調査が進んでいるか。これは三十九年の十月のことですから、もうとっくに調べが行き渡っていると思います。どういう程度のものだかということ。
 それからもう一つ、この学校はちょっとおもしろい学校でございまして、選挙権銀行クラブというのがあるんだそうで、そして学生をみんなそれに入れようという、年額二百円ぐらいの会費ですけれど、生徒をみんなそれに入れようという尽力をしているだけでなく、何か学長に権限があるそうでして、何でもちょっとよそ見をしたり、何か言うことを聞かなかったりするといきなりなぐるとか、あるいはけるとかというようなことが始終行なわれて、そして停学とか退学とかいうのをやられる。そしてその停学や退学が元に戻るには、この選挙権銀行クラブの会員をふやしてくる。たとえば五人連れてくる、あるいはもうしかたないから、友人ではできない場合は親類やおじさんやおばさんに泣きついて、その二百円を持ってくる。そういうようなことで退学も停学も許されるというふうなこと。それからともかく教授会議というものは一切ない。生徒の処分あるいは教授の身分、そういうものはみんな学長のほとんど独裁権だそうです。それで教授会というものはほとんどない。それでこういう状態では学校で教育というものが行なわれるはずはないじゃないかということの批判をしたところの三上弘之、それから佐藤嘉祐、この二人の人がまた解雇された。昨年の十一月の初めだそうです。解雇されたこの人たちはどういうことで解雇されたというと、玉川学園に友だちを就職させたわいろとして九十万円要求した、こういううその、事実のないことを口実にしてこれを首を切った。それでこの不当解雇の提訴があっております。これも東京地裁でございます。これもちょっとどういう状態まで、事実であるかないかということを調べていただきたい。
 それからさっきどこかの研修所の所長の講演ということが問題になりましたけれども、この人も非常に独断的な講演が好きで、それで昨年の三月十五日、大学卒業式の場で、講演がたいへん長い人で、二時間くらいやるんだそうですね。二時間も三時間も非常に変な講演をやる。そうすると学生が――皆さん、この委員会を見ていても、ちょいちょいとお立ちになるのは、お手洗いにお入りになるんだと思うんですよ。それでたくさん何百人、何千人という生徒でしたら、二時間も三時間も講演を聞いていたのではそういうことが起こる。それで騒然となって、休憩とかなんとかいうことを要求した。そのことを非常におこって、その監督の責任でまた二人の教授が首になっている。これもやはり地位保全の仮処分の申請を東京地裁にやっております。ですからこの三つの案件、五人の教授がかってに首をこういうように切られたということ、これを東京地裁で一体どの程度本気になって取り上げておいでになるか、あるいは変なところだからタッチしたくないというので引き延ばしておいでになるか、その進捗状況を私は伺いたいと思います。そしてそのあとでいろいろ少年の感化、不良化という問題ではまた御勘案いただきたい、こう考えるのでございます。
○津田政府委員 ただいまお話しの国士館の事件、刑事事件につきましては、ただいま手元に資料がありませんが、現在どうなっておるかということを調査いたしまして御説明いたします。
 なお、あとの二つの事件は民事関係の事件でございますので、これはちょっと私のほうでは調査をいたしかねるわけで、事実上わからないわけではないかもしれませんが、私のほうは調べるとすれば検察庁を通じますけれども、さようなことをいたしますことは、何か民事事件に介入するんじゃないかという疑いを受けるおそれがありますので、この事件はあるいは裁判所のほうの民事局にでも御調査を御依頼願えればけっこうだと思います。
 それからなお先ほどの倉地の事件は、現在は湘南病院で倉地健治を精神鑑定中でありまして、本日鑑定留置が終わりまして東京拘置所に移管される予定であります。現在まで、昨年の七月八日から六回公判が開かれておりまして、ほぼ検察官の立証は済んでおります。今後の見通しといたしましては、三月初旬ごろこの精神鑑定書が裁判所に提出されると思われますので、判決は三月の中旬または下旬になるのではないかというように見通されるわけでございます。これはあくまでも見通しでございますので、わかりません。したがいまして、検察官の立証は一応終わっておるということであります。
○大久保委員長 次会は、来たる二十二日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十九分散会