第051回国会 法務委員会 第29号
昭和四十一年四月二十一日(木曜日)
   午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
   理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君
   理事 濱田 幸雄君 理事 坂本 泰良君
      鍛冶 良作君    四宮 久吉君
      濱野 清吾君    早川  崇君
      神近 市子君    田中 武夫君
      山口シヅエ君    山田 長司君
      山田 耻目君    横山 利秋君
      志賀 義雄君    田中織之進君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 石井光次郎君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁警備局
        長)      高橋 幹夫君
        検     事
        (民事局長)  新谷 正夫君
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      堀内 恒雄君
        通商産業事務官
        (企業局長)  島田 喜仁君
 委員外の出席者
        警  視  長
        (警察庁警備局
        警備課長)   後藤 信義君
        大蔵事務官
        (大臣官房財務
        調査官)    加治木俊道君
        日本国有鉄道参
        事
        (職員局労働課
        長)      八川 光男君
        日本電信電話公
        社職員局長   遠藤 正介君
        参  考  人
        (京都大学教
        授)      大隅健一郎君
        参  考  人
        (弁護士)   松本 正雄君
        参  考  人
        (十條製紙株式
        会社取締役社
        長)      金子佐一郎君
        参  考  人
        (東京商工会議
        所議員)
        (菱華産業株式
        会社取締役社
        長)      津末 宗一君
        参  考  人
        (証券団体協議
        会常任委員長)
        (日本証券業協
        会連合会専務理
        事)      阿部 康二君
        参  考  人
        (日濠株式会社
        代表取締役)  中島  徹君
        専  門  員 高橋 勝好君
    ―――――――――――――
四月二十一日
 委員森下元晴君、神近市子君及び山口シヅエ君
 辞任につき、その補欠として鍛冶良作君、山田
 耻目君及び田中武夫君が議長の指名で委員に選
 任された。
同日
 委員鍛冶良作君、田中武夫君及び山田耻目君辞
 任にっき、その補欠として森下元晴君、山口シ
 ヅエ君及び神近市子君が議長の指名で委員に選
 任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 商法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二
 七号)
 法務行政及び検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案について参考人より意見を聴取することとし、お手元に配付いたしました名簿の方方の御出席を願っております。
 この際、一言あいさつを申し上げます。
 参考人各位には、御多用中のところ、わざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございました。
 御承知のように、本案は、現下の経済情勢にかんがみ、株式会社の運営の安定をはかり、株式譲渡の手続を合理化し、さらに、資金の調達の方法を容易に、かつ適正にする等のため、株式の譲渡制限、額面株と無額面株との間の変更、株式の譲渡方式、議決権の不統一行使、新株発行の手続、新株引き受け権の譲渡、転換社債の転換請求等の七点にわたって改正しようとするものであります。
 本案は、いわゆる基本法の改正でありますとともに、経済界、一般投資家はもちろん、各界においてきわめて深い関心を持っておる議案であります。したがいまして、本委員会は、その審査に慎重を期するため、ここに各位の御意見を承る機会を持った次第であります。何とぞ、各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べくださるよう心からお願い申し上げます。
 なお、議事の都合によりまして、御意見は、最初御一人十五分程度にお取りまとめをお願い申し上げます。
 それでは、まず大隅参考人よりお願いをいたします。
○大隅参考人 今回の商法の一部を改正する法律案の改正の要点は、ただいま申されましたように七点でございますが、便宜上比較的問題の少ないと思われる点から私の考えを申し上げます。
 第一に、転換社債の転換でございますが、これは現在の商法におきましては、会社の事務負担を軽減する意味から、株主名簿の閉鎖期間中は転換の請求ができないことになっております。そういたしますと、わが国の多数の会社のように、年二回決算を行ないます場合には、一年のうち四カ月は、転換請求ができないことになりまして、転換社債の妙味が著しく削減され、したがってその発行が困難になることは当然のことでございます。その意味で、今回の改正案は、株主名簿の閉鎖期間中でも転換の請求ができることとし、ただ、その転換によって発行された株式については、当該株主名簿の閉鎖期間中に限り議決権がないものとするのでありまして、きわめて妥当な改正であると考えます。
 第二に、額面株式と無額面株式の相互転換を認めようとする点でございますが、現在無額面株式を発行しておる会社はごく少数でございますから、当面の問題としてはこのような改正をする必要は必ずしもないというふうにもいえるかと存じますけれども、しかし、商法が無額面株式を認めまして、しかも同一の会社が額面株式と無額面株式の双方の発行を認めております以上は、このような会社におきまして、額面、無額面の間の相互転換を必要とする事態が生ずることは当然のことでございまして、この点について現行法が規定をしなかったのは、やはり法律の一つの欠陥というべきでございまして、この点の修正をすることも妥当だと考えます。これによりまして、将来における無額面株式制度の利用が促進されるという利益があるものと考えます。
 第三は、定款により株式譲渡の制限を認めようとする改正でございますが、理論的に考えますならば、中小企業と大企業を分けまして、それぞれに最もふさわしいような会社形態を整備することが最も望ましいものと考えます。と申しましても、中小企業をすべて有限会社に追いやろうということではないのでございまして、株式会社の形態をとるにいたしましても、たとえば中小企業の会社につきましては、それに適当しない規定の適用をはずすような措置を考え、大企業の会社につきましては、現在よりも一そうそれに適合するような株式会社法の規定を整備するということでございます。しかしながら、このような改正は早急には実現困難と考えられますので、さしあたりの問題として、従来から中小企業の会社において要望されております定款による株式譲渡の制限を認めようとすることも適当であると考えます。これを認めるにつきまして、改正法案では、昭和二十五年の改正前の商法と違いまして、定款で株式譲渡の制限を認めることができるといった広い規定のしかたをいたしませんで、定款をもって取締役会の承認を要する旨を定めることができるという定めをなし得るようにしておる点も妥当であると考えます。株式譲渡の制限としては、これで必要かつ十分だと考えられるからであります。しかしながら、改正法案が、二百四条の二以下の規定におきまして、取締役会が株式譲渡の承認をいたしません場合に、会社に先買い権を認める非常に複雑な規定を置いておりますが、これにつきましては、株主の投資回収を保障しようという立法の趣旨はわかりますけれども、これほどまでに規定をする必要があるかどうか。また、このような規定を置きましても、はたしてそれがうまく動くものかどうか、いささか理論倒れに終わらないかという懸念を持たなくはないのでございます。もっとも、立法のねらいは、これがいわば一つの伝家の宝刀となりまして、取締役会もやたらには株式譲渡の承認を拒まないことになり、株主としても、あまり無理な主張をしなくなるのじゃないか、そういう点を考えているものとすれば、この規定の趣旨も理解できると考えます。
 第四は、新株引き受け権の譲渡に関する改正でございますが、株主の新株引き受け権が譲渡できることは、これは現行法でも認められておるところでありますが、その譲渡の会社に対する効力について議論がありますので、実際上新株引き受け権の譲渡は困難な状態になっております。しかしながら、新株発行にあたりまして新株引き受け権の譲渡が認められませんと、払い込み資金を持たない株主は親株を処分しなければならないということになりますし、またアメリカ在住の株主は新株の引き受けができない上に、しかも新株の引き受け権を譲渡してプレミアムを入手するということもできないことになりまして、外資導入の上にも支障を生ずるおそれがあると考えます。それゆえ新株引き受け権の譲渡を認めるという改正案の規定も妥当であると考えます。ただ、この場合に、そうであるといたしましても、ちょうど外資法や再評価積立金の資本細入法におきますように、新株引き受け権の譲渡ができるということ、その譲渡は会社の承諾によって会社に対抗し得る、こういう立法をするだけで足りるのではないか、こういうことも考えられなくはないかと存じます。しかし、たとえそのようにして新株引き受け権の譲渡を認めましても、その流通市場が形成されない限り、実は適正な価格をもって新株引き受け権の譲渡をするということは困難でありまして、先ほど申しましたような株主の利益保護の点は解決されないことになります。この点までも考慮いたしますと、今回の改正法案のような相当複雑な規定を置かざるを得ないことになると思うわけでございます。もちろん会社によりますと、株主に新株引き受け権を認めて新株を発行する場合におきましても、特に新株引き受け株の譲渡を認める必要のない場合が少なくありませんけれども、改正法案では定款または新株発行決議で新株引き受け権の譲渡を認めた場合に限って、法案の定めるような手続をとらせておるのでありますから、この改正で適当であろうと考えます。
 第五は、新株発行に関する二百八十条の二第二項の改正でございまして、これまで株主以外の者に新株引き受け権を与えるには株主総会の特別決議が要るとしておりましたのを改めまして、株主以外の者に対して特に有利な発行価額で新株を発行する場合には、株主総会の特別決議が要る、こういうふうにいたしますとともに、新たに会社は払い込み期日の二週間前に新株の数、発行価額、払い込み期日、募集の方法などを通知または公告して株主に知らせようとしておるものでございまして、この改正も適当であると考えます。これはいわゆる買い取り引き受けを適法化するものであるといわれておりますし、そういえるとは思いますけれども、しかし、ここで注意すべきことは、この規定は決して買い取り引き受けを無条件に認めようとするものではないのでございまして、新株の発行価額が公正な場合に限ってこれを適法化しようとするものでございます。法案はその趣旨で、特に有利な発行価額をもって発行する場合には株主総会の特別決議が要る、こうしておるわけでございます。もちろん、特に有利な発行価額とは何をいうか、こういう問題がございますので、この表現が適当であるかどうかについては議論の余地もあり得ると存じますけれども、しかし、これにかわる適切な表現方法を求めることはむずかしいように思われるわけであります。そして、もし実際界でこの改正により今後は安易に買い取り引き受けをすることができるというような印象を持たれるとするならば、私は、これは誤解であると考えます。この改正が実現いたしますならば、買い取り引き受けをする場合には、会社の代表者としては新株の発行価額が特に有利にならないかどうかに精神を集中いたしまして慎重な行動をしなければならないわけでございます。そうでなければ、取締役の責任を生ずるのはもとよりのこと、その新株発行が差しとめられる危険が多いからでございます。この点で払い込み期日の二週間前に株主に通知または公告によって新株発行に関する要点を通知させ、株主が新株発行の差しとめをする資格を持ち得るようにしておる法案の規定が大きな意味を持っておるものと考える次第でございます。あるいは、新株の発行価額が適正であるかどうかにかかわらず、買い取り引き受けそのものが不当であるという反対論もあり得るかと存じますけれども、現行法のたてまえからいたしますと、やはり資本調達の機動性を趣旨としておるのでありまして、買い取り引き受けそのものを否定する立場は認めがたいと思いますし、経済の要求にも合わないと考える次第でございます。
 第六は、議決権の不統一行使を認めようとする点でございます。信託財産に属する株式、ADRの発行されておる株式などにおきまして議決権の不統一行使を認める必要のあることは、すでに一般に承認されておるところでございます。ただ、そのような議決権の不統一行使が現行法のもとで可能かどうか、学説が分かれておりますので、その点を明らかにしようとするのが今回の改正であろうと存じます。そして、結論的に申しますと、私は、現行法でも議決権の不統一行使は可能であると考えておるものでありまして、このような改正案によってそれを立法的に明らかにすることは適当であると考えますけれども、改正案の規定としては、議決権の不統一行使が許される、これだけで足りるのではないかと存じまして、その他の規定は、ことに二百一三十九条ノ二の第二項の規定は必ずしも必要ではないのではないかと考えるものでございます。かりにこの規定を置くといたしましても、第一項後段の「理由」というのは、第二項で会社が議決権の不統一行使を拒否し得る理由と関連したものでなければならないと思うのでありまして、その点でいささか規定のしかたに足りないところがあるのではないかという感じを持ちますが、あるいはこれは解釈の問題で片づくことかと存じます。
 なお改正法案は、会社は株主が二人以上の代理人を総会に出席させるのを拒むことができるという規定を置こうとしておりますが、これも現行法のもとですでに同一の問題が生ずるのでございまして、必ずしも不統一行使を認めることと直接に関係のあるものとは考えないのでありまして、この規定を置くこともやはり多少疑問がなくはないように存じます。
 最後に、株式の譲渡方式を改めまして、裏書きの廃止をする点でございます。これにも私は賛成でございます。御承知のように、現行法では記名株式の譲渡につきましては、株券の裏書きまたは株券及び譲渡証書の交付によることになっておりますけれども、その裏書きまたは譲渡証書における品名捺印は実際には励行されておらないのでございまして、むしろ大部分が単なる捺印だけによっておりまして、法律上種々の問題を生じております。のみならず、その判こはどんな判こでもいいのでございまして、日常所用のものであることは要りませんし、また会社に届け出たものであることも必要でないのでありますし、さらに、たとえその印鑑が偽造でありましても、譲り受け人は善意取得をするわけでございます。しかも手形の裏書きと違いまして、株券の裏書き人はこれによって担保責任を負うわけではございませんから、譲り受け人としても譲渡人の用いる判こについては何らの注意を払わないのが実際であります。こういうことでありますから、株券の裏書きまたは譲渡証書を認めましても、株主の権利の保護には何ら役立つところはなく、むしろこれは単純な形式的な手続きになっているといっても過言ではなかろうと思うのでございまして、この点は証券会社によりますと、判こを忘れてきた顧客のために、印判屋の店頭におけるように多数の判こを用意しておるところもあるかに伝えられることがそれをうかがわせるものと存じます。もっとも、そうは申しても、判こについて持っておる国民の感情を無視することはできない、こういう議論もあろうかと存じますけれども、しかし、そのような国民の感情を考慮することによって、かえって株主に理由のない安心感を与え、その権利を喪失させるような結果になることは妥当ではなかろうと存ずるのでありまして、むしろ株券は金銭と同じであって、一たん失った以上回復の可能性はきわめて乏しいというその事実をありのままに示すことが、むしろ株主の保護になるのではないかとさえ考え得るように存じます。
 このような次第でございますが、いずれにいたしましても、株主の地位は、この裏書き廃止が行なわれるといなとにかかわらず、きわめて不安だということがいえるわけでございますから、その意味でここに特に株主の利益をはかる必要があるわけでございまして、それが改正案では株券不発行制度ないし株券の寄託の制度になってあらわれておると存ずるのでありまして、この点も妥当であると存じます。現在のように株式が大衆化しておるところでは、各個の株主が銀行や証券会社に株券の保管を委託することは困難でございますから、やはりこのような制度によって株主の地位の安全をはかることは適当であろうと存じます。あるいはこのようにいたしますと、会社の事務負担が増加するでありましょうが、しかしそれは、株主の利益のために行なわれることでありますから、それをいとう理由はないと存じます。また、一部には、この制度の乱用を憂える声もなくはないようでございますけれども、一たん不発行にした株券を再交付する場合には、会社は相当の手数料をとることができますし、再発行を要求された場合にも、何も即座に新株券の交付をする必要はないのでございまして、相当の期間内に交付をすれば足るものと考えられますから、乱用の点もそれほど心配するには当たらないのではないか、このように考えます。
 簡単でございますが、これが私の意見でございます。
○大久保委員長 松本参考人。
○松本参考人 松本正雄でございます。
 改正の七項目のうちで、第二の額面株式と無額面株式との間の変更については賛成でございます。また第四の議決権の不統一行使、これについても賛成でございます。それから第六の新株引き受け権の譲渡、これについても賛成でございます。それから第七の転換社債の転換請求、これについても賛成でございます。以上の四項目につきましては、日本弁護士連合会の司法制度調査委員会においても十分検討いたし、理事会においても承認せられて、それぞれ賛成意見が発表されております。
 問題なのは、第一の株式の譲渡制限、それから第三の株式の譲渡方式等、第五の新株発行の手続、これについては若干問題がございますので、意見を述べさせていただきたいと思っております。
 まず譲渡制限につきまして、当法務委員会に弁護士会の意見をかつて提出いたしましたが、それは、株式会社は公開性を持っていることが本質であって、この本質を曲げた改正をなすべきではない。もし公開性をやめて閉鎖的な会社にしようとするならば、有限会社の形態を利用すればよいではないかということであります。また、株式譲渡の制限がありますると、株式市場での取引が支障を来たしはしないか。次に、株主が投下した資本の回収が実際上困難になるのではないかというような点を懸念してにわかに賛成しておりません。ですが、この見解は主として理論的、観念的な考えの上に立っておるのであります。したがって、実際上の必要から生まれたといわれるこの改正案に対して、さして強い反対の意見が盛り上がっておるわけではございません。私個人としては改正案に反対ではございません。これはこの株式の譲渡制限ができるのはごく小さい会社、また資本的に特殊な関係にある会社、あるいは特殊な性格の会社、たとえば雑誌社というような会社であって、大きな上場会社にあっては、このような譲渡制限ということは実際上できないだろうと思います。株主総会の決議によって定款を変更するにしても、株主の過半数の出席を必要としておる案でございますので、そういうことは、実際上大会社においてはできないことでありますし、このような改正案は実際問題として差しつかえない、こう私は考えております。ただ、先ほど大隅先生もおっしゃったように、御承知のように株式会社の数は日本で六十万からあるということですし、そのうち上場せられておる会社は二千か三千にすぎない。株式会社の名前はあっても総会などやらない会社が大部分であって、小さい料理屋だとか旅館、小売り店等までも株式会社の名前を用いておる。これは税金の関係からと思いますが、これらについては、大会社と一様に考えるわけにはいかないということを、この改正案を拝見するに際してしみじみ思うのであります。
 なお、この改正案の二百四条ノ二から二百四条ノ五に、いわゆる譲渡の相手方を指定する手続がいろいろ規定されておりますが、いかにもめんどうくさいやっかいな規定になっており、実際の運用に際しては非常な困難が予想されるのではないか、こう思われます。
 次に、株式の譲渡の方式等に関して申し上げます。
 これに関しては、当法務委員会あてにさきに日本弁護士連合会から株券不発行に関する規定の新設はやめられたい旨の申し入れをいたしております。不発行についての規定には反対であります。その理由は「株式ヲ譲渡スニハ株券ヲ交付スルコトヲ要ス」という第二百五条の第一項の規定が原則として存在しておりまして、この規定が株券不発行の場合についても適用があります。不発行の場合について特別の処分方法が認められていないので、何だかすっきりしない一貫したものが感ぜられぬからであります。結局、この規定を置かれる譲渡方式を改正されるという根本の趣旨は、株券所持の危険防止というただこれだけのことでありまして、これだけのためにこの規定を新設するのはどうであろうかということでございます。現在でも株主のうちで株券をたくさん持っておる人は、それぞれ自分の信用する金融機関の保護預かりとか貸し金庫を利用して、みずから安全と思われる方法を講じております。一般大衆は、株式を所持しておるということ、しかも有形的なものにたよるという安心感ということ、また所持欲といいますか、そのような心理的なものがかなり作用しておるのではないだろうかと思います。無形の権利だけにたよるというほど、まだ国民一般の権利意識が普及していないのではないかと考える次第でございます。
 次に、二百五条の改正につきましてですが、株券の裏書き、または譲渡証書の交付を要しない、株券の交付のみでよいという改正案は、いろいろ議論いたしましたが、大体の方向としては差しつかえないではないかというのであります。しかし、私個人をはじめ一部の者には、どうも現在の状況では行き過ぎではないかという強い意見がございました。ただいま大隅教授のおっしゃったように、裏書きは三文判でもよい、何でもよいのだ、ただ形式にすぎないという説が有力な説でございますが、たとえ単なる形式であっても、そこに判を押すということに心理的な何ものかをわれわれは感ずるのであります。現に、一般の家庭に盗難事件があっても、現金は持っていっても株券は盗んでいかないというのが現状であります。また、紛失しても、現金ならなくなることが多いですけれども、株券はやはり発見しやすい場合が多い。何か株券は扱いにくいものであるということが、一般の人々に意識されているんじゃないかと思うのであります。それが今度、株券はお札と同じである、持っていけばそれでいいのだということがずっと普及しますと、盗難はふえるし、紛失も増加するという気がしてしようがないのであります。この改正案は、証券会社が多量の株券を取り扱われるのに非常にめんどうだし、お困りだろうから、こういうことができたのだろうと思うのでありますが、一般大衆の株主はそれほど改正を必要と感じていないのではなかろうかと思うのであります。
 次に、新株発行の手続についてでございます。法務省の民事局の御説明によりますると、株主にとって重要なことは、株主以外の者に対して有利な価額で新株が発行されて、株主の経済的利益が害されることであって、株主以外の者に対し新株引き受け権が付与されることではないとされております。しかし、この説明理由は、株式を上場している会社については納得ができまするが、株式の上場せられていない会社、すなわち株式の売買が自由にできない大部分の株式会社に通用するかどうか、たいへん疑問に思うのであります。日本弁護士連合会としては、特に有利な発行価額でなくても、株主以外の者に新株引き受け権を与えて取締役が自分のほうの派の勢力の強化をねらう不当な処置をとるおそれはないだろうか。あるいは、従来の株主が有していた株式の比例的地位が侵害されるおそれはないだろうかということで反対の意向が強いのでございます。その旨を表明しております。もっとも、あまりに不当なときには差しとめ請求も可能でしょうが、実際上この手続をとることは実務的に非常に困難を伴っております。私個人の見解といたしましては、株式が上場せられていない中小企業にとっては、この日弁連の見解もうなずけますが、株式の取引が市場でなされている大会社の新株引き受けについては改正案に賛成でございます。特に、端株とか失権株の公募については、こういうような改正案はどうしても必要であろうと思います。ただ、申し述べたいのは、「特ニ有利ナル発行価額」という規定でございますが、これは今後相当争いの種になることが多いことが予想せられる表現と思います。また、端的に申しますと、有利発行といいますと、株主にとって有利ということに常識的になっておるようでありますが、この法文をすなおに読みますと、会社にとって有利なのか、株主にとって有利なのかわかりにくいんじゃないか、こう読みとれると思います。
 もう一つ、改正案の二百八十条ノ二の第一項八号の法文についてでありますが、ここに「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ」とございますが、この「発行スベキモノ」とは、どうして「者」という漢字を使用されなかったか、あるいは特別な意味がおありなのか、ここいらの表現がどうもまずいのではないかと思います。「モノ」という場合に、これは金融機関とか得意先とか、そういうような特別の存在を指すのではないかと思うのですが、「者」という漢字にせられないで「モノ」と書いてあるのは、何か特別な意味があるのかどうかお尋ねをしてから意見を述べるべきであるかと思いますが、一応疑問を表明しておきます。
 以上、大体申し上げたとおりでございますが、一般的に意見を述べさせていただきますと、どうも法文がだんだんむずかしくなって便宜的な規定が非常にふえている。あまりこういうこまかい規定は商法典のあり方として望ましくないのではないかという考えがいたします。
 もう一点は、株式会社法の根本的改正についてお考え願えないだろうかという点であります。先ほど大隅教授も言われたように、大会社と小会社とがまるで性格が違うのですが、商法は一緒にして規定しているところにいろいろな矛盾が起きてきていると思うのであります。どうしても大会社と小会社とは区別して規定せられる必要があると、今度の改正案を見てさらにしみじみ思うのであります。
 もう一つ、最後に、今回の改正も一部改正でございます。戦後数回から商法は改正せられておりまするが、依然としてかたかなを使っておられて、そして文語体である。最近の二十くらいの若い人はかたかなを習っていないはずですし、文語体もそう習っていないはずです。商法典がますます一般国民に親しみの持てないものになってくる。これはたいへんな難事業でございましょうが、数年かかってもいいから、もう少し平易な法典にしていただきたい。この改正案に際して特にそう思いますから要望さしていただきます。
○大久保委員長 金子参考人。
○金子参考人 それでは、私から少しく所見を述べさしていただきます。
 本日は、商法の一部を改正する法律案につきまして、経団連の経済法規委員会の委員長という立場で所見を述べさしていただきたいと思います。同法案が一日も早く国会を通過いたしまして具体化するようなことは、前からお願いを申し上げておったところでございます。かねてから経済界におきましては、商習慣と商法とがかなりの懸隔を有しておりまして、経済界の実情に沿わない面がありますので、商法を早急に改正するように希望してまいったのもそのためであります。政府のほうでもこれをお取り上げになりまして、法制審議会の議を経てここに国会の審議にまで進展いたしましたことは、われわれとしてはたいへん喜んでおる次第でございますが、願わくは一日も早く法律としてこれが実現することを期待しているわけでございます。
 まず今回の商法改正案は、私ども経済界の要望に沿ってその改正内容がいろいろと組み立てられているように考えられるのでありますが、そのおもなるねらいといたしますところは、企業の資金調達あるいは外資導入に便ならしめるというところに重点が置かれているように思われます。国内の資金調達面を円滑に行ないますために、買い取り引き受けあるいは額面、無額面の相互転換等につきまして、商法上明文の規定を設けていただくことがまず第一の問題であります。また、外資の調達上不便を感じております面の改善のためには、転換社債の株式への転換請求を株主名簿閉鎖期間中も認めるということ、また、議決権の不統一行使を認めること、新株引き受け権の譲渡を認めることが第二の問題であります。第三は株式の譲渡方式を変えるとともに株券の不発行を規定する問題であります。その他、株式の譲渡制限の問題もございますが、これらにつきまして全般にわたって御説明申し上げる時間もございませんが、すでに大隅参考人、松本参考人からたいへん触れられておりますので、本日は重点をしぼりまして、二、三の問題について所見を述べてみたいと存じます。
 今回の改正案のうち、買い取り引き受けの問題に、私どもは最も重点を置いているのでございます。御承知のとおり、日本の企業の自己資本比率が著しく悪化しておる現状でございます。諸外国の企業に比しまして、はなはだ内部蓄積が低いのでありますが、どこに相違点があるかについて調査比較してみますと、資本積み立て金が著しく不足しておるということに気づくのであります。わが国の増資は株主に額面で割り当てるという慣行になっておりますので、プレミアムを獲得いたしまして資本積み立て金を増加させるという企業が少ないのでございます。これを改善するために増資新株を公募して株式市場価額に近い額で払い込みをさせることにいたしますれば、額面をこえる額はプレミアムといたしまして企業内に内部保留されるわけであります。このことによって生じました資本積み立て金は、金利負担も、配当負担も、税金もなく、したがって企業としては、最も負担の軽い資金コストで資本調達ができますので、企業の体質改善には非常に効果的であると考えられているのでございます。
 ただ、この場合に、公募新株をできるだけ高い価額で発行したほうが、当然のことながら企業としてはプレミアムがそれだけ多く入ってまいりますので、市場価額に近い、高い価額で売り出すということを当然ながら希望すると考えられるのでございます。しかし、市場価額は常に上下いたしますので、若干のアローアンスを設けておかないと、市場価額が公募価額を下回るようなことになりますれば、一株の払い込みもあるいは得られないという懸念を生ずるのでございます。そこにいまこの価額のきめ方については慎重にする必要があると思います。この公募新株の発行に際しまして、発行会社みずからが株式の引き受け人を直接募集することは、これは事務的に実情上無理だということが当然といえるのでございます。したがって、すでにもう慣行といたしまして、これを買い取り引き受けの形式をとっておるのが事実でございます。そこでこれを専門家であるところの証券会社に依頼いたしまして、発行会社にかわって公募新株の引き受け人を募集してもらっておるような次第であります。戦後この買い取り引き受けがもうすでに商慣習となっておりますが、この場合、証券会社は公募価額がかりに百五十円となっておりますれば、百五十円で発行会社から買い取り、一般にも同じ百五十円の価額で公募するわけでありますから、証券会社はこの面では値幅を見込む余地はないのであります。ただ公募の世話をした手数料を別に発行会社から受け取るということが考えられるのであります。
 この買い取り引き受けにつきまして、第三者に新株引き受け権を与えたことに解されますと、従来の慣習がくずれまして、企業の資金調達がその面で非常に困難になります上に、通常の株主割り当ての増資の際に生ずる失権株の処理にも不便を来たすようなことが考えられるのであります。現行商法上、株主に新株引き受け権が当然あるわけではないのでありますが、この公募新株の買い取り引き受けによって企業に資本積み立て金が充実すれば、企業の収益力も向上し、やがてはこの資本積み立て金を無償交付する等して株主に報いることができるものと確信されておるのでございますから、公募新株を市場価額を勘案いたしまして、特に有利でない価額で公募する場合、株主に不測の損害を与えることはない、むしろプラスになると考えられるのでございます。いままでこの問題についていろいろ御意見があったとすれば、それは、特に有利でない価額ということに多少の問題があり、これから発生したいろいろの問題も過去においてないとは言いがたいのでございます。しかし、この法律のごとく、特に有利でない価額であるならば、それは、この問題は、庶幾するがごとき運営ができるものと考えられておるわけでございます。特に申し上げておきたいのは、すでにこういう買い取り引き受けということが一般企業の慣習となって今日まで長く行なわれてき、また、行なわれんとするところに問題があることがこの実情に沿った一つの問題であることを申し上げておきたいと思うのでございます。
 次に、株式の譲渡につきまして、株券の交付によることとし、裏書きも譲渡証書も廃止するという点は、実は経済界の実勢に商法のほうで歩み寄るということであって、これにより株主に迷惑をかけることはないと考えておるのでございます。現行商法上、株券に捺印される印鑑は、会社へ届け出たものに限られるわけでもなく、また三文判でも押してあれば流通してしまうということはすでにお話があったところでありますが、株主が届け出た印鑑を押さなければ株式が人手に渡ることはないと考えている方が多くあるようであるとすれば、そのほうが危険なのであります。むしろ裏書き等を廃止して株券を渡したら株式が譲渡されるのだということを明らかに認識していただいたほうが、実情に合って、かえって安全性が高まるものと考えられるのでございます。
 もちろん、申すまでもなく、この場合配当等を受け取るためには、会社に対抗するためには、必ずこれを会社に届け出、おそらくや将来といえども記名株式でありますので、株式の裏に、現在会社の株式名簿に登録されている人がだれであるかということは明示されるようなことが行なわれるものと推定されるのでございます。しかし、その間の譲渡の間におきましては、いまのような裏書き制度の廃止が考えられていくものと存じます。この裏書きの問題を厳格にいたしますと、現在証券市場で流通している株式の流れがスムーズに行なわれなくなり、株主としても売却した代金の回収がおくれる上に、株式の発行会社としても株券の裏書きの連続を注意せねばならぬということのため、名義書きかえ上に相当な手数を要することを申し上げておきたいと思うのであります。したがって、現実に即しましてこの法律を通していただくことが望ましいと考えておるのでございます。
 最後に、転換社債の問題につきまして申し述べたいと存じます。
 ただいま外資調達のため外国で転換社債を発行いたします場合、日本のごとく株主名簿の閉鎖期間中に株式の転換を認めない法律体系では外国人の納得が得られず、外債発行にも支障を来たすものでございます。
 株式の市場価額が、あらかじめ定めておいた転換価額をこえた場合には、転換社債を株式に転換したほうが当然ながら有利であります。しかしながら、日本では年間に四カ月間も株主名簿の閉鎖が行なわれます。その間は転換ができないことになり、転換社債の妙味が薄れて外債発行に支障を来たすということを聞いておるのでございます。そこで、今回株主名簿の閉鎖期間中といえども株式への転換を認めるということになりますれば、企業として外債発行に大きくプラスするものと考えられるわけでございます。
 本日は、財界としてこの商法改正についていろいろと非常に研究をしていただきました東京電力の大屋氏、新潟鉄工所の笠原氏及び経団連の居林氏もここに来ておられますので、こまかい点について御質問がございますれば、終わりましていろいろ御回答申し上げる用意がございます。
 はなはだ簡単ではありますが、重点的に御説明を申し上げまして、本改正案が一日も早く可決、成立されることを希望いたしております。
○大久保委員長 津末参考人。
○津末参考人 私は東京商工会議所の議員をいたしておりますが、私の関係しております会社は、いずれも資本金五千万円以下の会社でございまして、その株式は証券市場には上場されておりません。これから申し上げることは、大体中小企業を経営しておる者の考えというふうにお聞き取り願いたいと思います。
 東京商工会議所は、商取引の実際に即応するよう商法の一部改正に関しまして 昭和三十五年一月以降三十七年二月、三十八年一月、三十九年二月、四十年二月というように、毎年のように商法の改正に関して要望いたしてまいりました。
 今回の改正点のうち、株式の譲渡制限の問題、株式譲渡方式の問題、新株発行手続の問題というような三つの問題については、二十五年に商法の改正がありましたあとに経済界にずっとありました問題であります。額面株式と無額面株式との変更の件というのは、これは法律の規定はございますが、実際に無額面株式を発行しております会社は非常に少なくて、これは経済界にとってはあまりたいしたものではありません。議決権の不統一行使の件、新株引き受け権の譲渡の件、転換社債の転換請求の件、この四つの問題は、わが国の産業界が資本を海外から迎えるためにいろいろと不都合を来たしておるところがございますので、この際、改正をしたり、あるいは従来不明確でありました点を明確にすることになったものであるように考えられます。
 第一の株式の譲渡制限の問題は、二十五年の改正以前では、会社の定款によって定めることができたのでございまして、今回の改正は旧に復するわけでございますが、これはもっぱら資本金の少ない中小企業の問題でございまして、五千万円とか一億円とかいう資本金と申しましても、これを戦前の貨幣価値にして考えてみますと、十万円とか二十万円程度のものになるわけでありまして、こういう小さい中小企業の会社におきましては、経営者個人に依存する度合いが非常に多いものでありますので、この株式の買い占め等がございますと企業の存立に大きい影響を与えるわけでございますから、定款によって譲渡制限ができるようにすることが妥当であると考える次第であります。ただ、証券の流通性の問題につきましては、これは大企業の株式の流通性の問題というようにまず考えてもいいのではないかと考えられます。証券市場における上場に際し、譲渡制限の定めのある会社の株式は、大体証券取引所においてごく特殊の、あるいは法律で特別に定められている会社というようなものについては上場されている例がございますが、譲渡制限のある株式というようなものは証券取引所において上場をいたしませんので、この問題についての心配、これによって株式の流通性がなくなる、阻害するというようなことは考えられない次第でございます。また定款に譲渡制限の定めのある会社で名義書きかえを拒否された場合、その株式所有者に対する保護の点も今度の法案には十分考慮は払われておりますから、この点ははなはだ妥当なものと考える次第でございます。
 ただ、法案の中で、第二百四条ノ三の二項でございますが、株主側の義務の履行を担保をするための規定がございまして、「最終ノ貸借対照表ニ依リ会社ニ現存スル純資産額ヲ発行済株式ノ総数ヲ以テ除シタル」もの、すなわち一株当たりの純資産額に、譲渡の目的たる「株式ノ数ヲ乗ジタル額ヲ会社ノ本店ノ所在地ノ供託所ニ供託シ且之ヲ証スル書面ヲ」第一項の書面に添付を要するものだとしているというのでございますが、これは純資産ということのほかに、拒否するほうの側に対して純資産だけということになりますと、これは重荷になるのじゃないか。上場されておる株式については収益力ということは相当考慮された上で株の価額がきまるわけでございますから、純資産だけをもって買い取ってやらなければならぬということに多少疑問を感ずる次第でございます。
 第三の株式譲渡の方式等の件でございまして、この改正もまことに実社会の状態に即応したものでありまして、戦後のインフレによりまして会社の資本金は一千億円に近い会社があるのにかかわらず、株式の額面はいまだに五十円の会社が大部分でございまして、自然流通場裏にあります株券の数量は非常に大量のものが流通場裏にある。このために、二十五年の改正によりまして株主が会社に届け出の印鑑と裏書き譲渡に使用した印影との一致は不要になっておるのが現状でございまが、さらに一歩を進めて裏書き捺印を要しないということにするものでございますから、これはもうさきに述べられました参考人の方々の御意見のとおりでございます。この点も賛成でございます。ただ安定株主という、つまり株をあまり動かさないというような株主を保護するために株の不発行ということが今回規定されておるわけでございますが、この点は私どもはなはだ適当な措置と考えておる次第でございます。ただ金子参考人からも申し述べられましたように、株券というものがつまり紙幣と同じようなものであるということのPRは非常に必要なことだと存ずる次第でございます。
 第五の新株発行の手続の件、これはおもに会社が証券市場で増資資金を調達する場合に起こる疑問点を明確にしたものでございますから、ことばの上でいろいろ疑問があるように松本参考人からもお話がございましたが、解釈の問題でいろいろあるのか、その辺は私ども法律家でないものですからわかりませんが、この規定でよろしいのではないかというふうに考えております。
 額面株式と無額面株式の変更の件、これは先ほど申し上げましたように、実際に無額面株式が発行されておる会社ははなはだ少ないのでございますから、その効用については私はあまり関心を持っておりませんので、意見はございません。
 それから第四の議決権不統一行使、第六の新株引き受け権の譲渡、第七の転換社債の転換請求という三つの点は、さきに申し上げましたとおりに、外資導入という問題が起こりましてからいろいろと不便を生ずるようになりました関係で、外国の法令、法律とわが国の商法との調和をすることが目的のように考えられますが、経済が世界を単位にするという方向に進んでおります点から考えますと、当然の改正と考えられる次第でございます。
 以上です。
○大久保委員長 阿部参考人。
○阿部参考人 阿部でございます。
 今回の商法の改正は一部の改正となっておりますけれども、他の参考人から述べられましたように七つの項目にわたっておりまして、そのすべてに精通することは実は非常に困難でございます。ただ、いずれも証券市場には非常に関係の深い問題でございますから、順を追いまして各項目について私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 第一の株式の譲渡制限でございます。これは先ほどもお話がございましたように、戦前には日本ではそういう制度があったわけでございまして、アメリカの占領以後そういうことができなくなって、日刊新聞についてだけいま残っておるようなことでございますから、もともとそういう必要はあったのじゃないかと思います。特に中小企業の場合にはせっかくりっぱな経営をしておっても、何かすぐに経営権を奪われたというような問題もないではないのでございまして、したがって譲渡制限そのものについては証券市場としましても特に反対を申し上げることはないと思います。ただ、証券市場の、つまり証券取引所に上場されている株式につきましては、これは投資家の保護なり取引の円滑をはかる上から言いまして、非常に問題があるわけでございます。実際は会社の都合で譲渡制限をおやりになるということになれば、取引所の上場基準はおそらくそういう場合に対処して改正されまして、譲渡制限のあるような株は上場をやめていただくということにならざるを得ないのではないかと考えております。また、現在上場されている会社でそういう問題が起きますと、いまの株券のままでは適当でございませんので、株券の回収というような問題も起きるのではないかと思います。実際問題としてそういうことができるかどうか、その辺はたいへん疑問に思っております。ですから国際的に資本の自由化が進みますと、上場会社の段階でもそういう必要が起きるかもしれませんけれども、上場されている会社についての譲渡制限は、いま申し上げたように譲渡制限をおやりになるなら、取引所の取引はまず困難になるということではなかろうかと思っております。
 それから第二番目の、額面株式と無額面株の転換の問題でございまして、現在無額面株はほとんど発行されていないのだから、別にたいした問題じゃないじゃないかという御意見もございますけれども、実は両方発行されている場合のことを考え、その転換ができないために、制度としてはりっぱに存在意義のある無額面株の制度が日本では育たないということもあると思います。私の記憶が間違いなければ、ニューヨークの取引所においては大体二八%から一七%くらいの無額面株があるはずでございます。これはやはり改正していただきましたほうがけっこうだと思います。
 それから第三番目の株式の譲渡方式の問題でございます。これはなかなか御議論があるかと思うのでございますけれども、ここでわれわれがはっきり認識しておきたいことは、まず、昭和二十五年の商法改正で印鑑照合の制度はやめたのだという事実でございます。法制的に言えばそういう事実がございまして、その後御承知のように戦後の証券の大衆化、民主化あるいは日本の経済の発展、そういうものに伴いまして、また一方通貨価値が下落したにかかわらず、株式の額面金額は古い会社については五十円が残っているということに関連しまして、株主の数が非常に多くなった。したがって株券の枚数が膨大になった。株式で調達された資金は総体的にいってそう多くはないのでございますけれども、株券の枚数がうんと多くなってしまった。株主も、大体三十九年ごろの延べの数字でございますけれども、千九百万人いるという状態でございまして、これはちょうど十年くらい前に比較しますと、おそらく二倍になっているのじゃなかろうかと思います。そういう株主がおります。また東京の取引所では毎日一億株前後の商いがある。その中で受け渡しをする株のうち、これは証券会社に聞きますと八〇%くらいのお客さんは株券は持っていかないで証券会社に預けてある。二〇%くらいの方は自分で保管の方法をお持ちでお持ち帰りになるかもしれません。今度いざ売るという段階になりますと、そこで譲渡の形式を整える場合が問題になってくるわけでございます。先ほど来いろいろお話がございましたけれども、受け渡しをします場合に記名捺印のある完全なものは非常に少ない。そして印鑑だけを押してある。その印鑑は会社で照合しませんから、いろいろなものがあらわれてくるということが想像されるのでございまして、今度こういう制度をとるから投資家が非常に不利になるということではなくて、現在すでに万が一盗難でもありました場合に、その株券はやはり簡単にほんとうの株主の手を離れてしまう危険があるわけでございます。むしろ現在そうなっていることを理解していただきまして、証券会社の事務をスムーズに運ぶこと、同時にこれは発行会社の株式事務にも関係することでありまして、それを実情に合うように今度改正されるということでございます。われわれとしては非常にけっこうなことだと思います。
 ただ、それではあまりに心配だということで、株券の不発行の制度を取り入れようとしておられますけれども、証券市場としましては証券の流通の円滑化が第一でございまして、またその場合には株券の顔を児ないと安心されない方もあるわけでございます。一たん不発行になったあるいは金融機関に預託されたようなものが、現実に株券がほしいという場合に、即刻株券になって戻ってくるようになっておりませんとやはりいけないのじゃないかと思います。この辺につきましてはまだまだ、証券会社だけではなくて、発行会社ともいろいろ協議しなくてはならぬ問題があるのじゃないかと思いますけれども、現状がもうすでに天文学的な数字になっている株券を扱っているのでございますから、この実情に合ったように今度は裏書きもやめる、あるいは譲渡証書も要らない、株券を交付することによって譲渡が完了する、そういうふうに改正をしていただくことば非常にけっこうなことであります。ただ、われわれ証券市場としましては、そういうことによって善良な投資家に不利にならないように研究しなければならない問題については、あらゆる角度から今後も研究を続けていきたいと思っております。
 第四番目に、議決権の不統一行使の問題でございます。御承知のように、日本の株式がADR、EDRというような形で外国人に所有されておることもございます。その場合には日本の株券を直接持っておるわけではございませんで、ある機関に保管されておる。それから国内的に見れば、投資信託というような制度を利用しまして、投資信託の場合には、株券は信託会社の名前になっております。実際の株式の所有者はほかにいるわけでございます。その場合に名前の出ているところしか議決権の行使ができないということは確かに不合理だと思われるのでございまして、これを分割して行使できる方法を認めよう、これもきわめて妥当な改正だと存じます。ただ、そうは申しましても、現実の問題として、証券会社からいえば、投資信託の場合に先ほど申し上げたように信託会社の名前になっておりますその株を信託会社に預けているのは各投資信託の委託会社でございます。そうしますと、委託会社と受託会社である信託会社との立場を考えますと、この不統一行使は実際どういうふうに運用されたら一番合理的であるかということをまだ完全に詰めておりませんので、これは早急に検討をしなければならない問題ではないかと思っております。
 第五番目に、新株発行の手続でございます。この新株発行の手続につきましては非常な議論もございますので、証券市場の実情を知っていただくことがどうしても必要だと思います。
 少しく御説明申し上げますと、会社が増資をする場合に、新株を発行します場合には、その新株の引き受け権をだれに与えるかということで幾つかの方法があるわけでございます。一つは、日本で一番多く行なわれておるのは、いまの株主に与える株主割り当ての方法でございます。その次には第三者に新株の引き受け権を与える方法、それからもう一つは、一般から募集する、いままでの株主でない人から新しく株主を募集する場合でございます。この場合に新株の引き受け権を与えられた者に対しての発行価額は有利であってもいいということは現在の商法では認められておるわけでございまして、一般に募集する場合には、その会社の株にプレミアムがついておるような場合、額面金額でよその人にやられては現在の株主は非常な損失を受けます。したがって、この場合には時価の――どこまでが時価かは問題でございますけれども、とにかく額面以上の値段で募集が行なわれることになるわけでございます。株主の割り当て、第三者の割り当て、それから一般から募集する、それを公募というわけでありますが、こういうふうに分かれます。
 その場合に、発行会社みずからが新しい、つまりいままでの株主でない一般の株主を募集されることももちろん不可能ではございませんけれども、実際問題としてできませんから、そこで公募の場合に証券業者が介在するという問題が起きるわけでございます。それなら証券会社がその公募に関与する方法はどうかということでございます。引き受けという方向が一つ、取り扱いという方向が一つあります。その引き受けをさらに細分化しますと、そこで残株引き受け、それから買い取り引き受け、こういうようなものに分かれるわけでございます。しかし、日本の法律用語も、商法と証券取引法で必ずしも統一されておりませんし、一般の社会で使われます場合でも、その辺がこんがらがっておるわけでございます。
 簡単に申しますと、商法でいう新株の引き受けをするという場合の「引き受け」とは、これはむしろ英語で言ったほうがはっきりするわけでございますが、サフスクリプション――たとえば何か寄付の申し込みを受けてそれに応じた場合、払い込む義務がある。同じように、株を申し込んで払い込みをする、それが商法で一般に使われておる新株の引き受けというときに使われる引き受けでございます。ところが、いま問題になるような買い取り引き受け、これはそれとは違う意味の引き受けなんです。アンダーライティングという意味の引き受けなんです。ですから、一口に引き受けといっても、一方においては株の申し込みを受けて、払い込まなければならない義務を負うという意味の引き受けと、もう一つは、買い取り引き受けというようなことばで表現されておりますように、証券業者が介在して、発行会社があって株式を募集する、社債を募集する、あるいは特定の大株主から株をもらって売り出すときに介在するというような形のときに、売れるだけ売ってみましょうというのは、先ほど申し上げたことばでいえば実は取り扱いになるのであって、証券会社の場合に引き受けるということは、売れるだけ売っていく、あるいは新しい株主なり社債権者を募集していって、売れ残った場合にはその残株を引き取るというのが、それがアンターライティングの意味の引き受けなのでございます。ですから、そのことばが混線しておりますと話がややこしくなります。
 それから、買い取り引き、受けというようなことばの場合に、買い取りということばにあまり力を入れますと、何かそのあとまた事情の判断がこんがらがってくるかと思うのでございますけれども、アメリカなどでも引き受けという場合に、パーチェスということばとアンダーライトということばと同じように使っております。ですから、証券市場でいう買い取り引き受けというのは、実際は請負募集のような、あるいは募集をしていって残った場合に引き取るというような意味でございます。実際からいうと、残株引き受け、あるいは買い取り引き受けも株式を公募するときの一つの型にすぎないのであります。
 そういうようなことで、証券市場としては公募の一つの方法としていまいわれておる賢い取り引き受けをずっと長い間やってきたわけでございます。これはおそらく昭和二十三年ごろ、いまの東京電力の前身の東京電燈が新しい株主を募集する場合に、非常に多数の応募者があって、一々申し込み書を出して希望者を募るということは手続上たいへんだったというようなあたりから、それならば発行されるものを、まず証券会社を介在さして、一応一括して証券会社の名前にして、そうしてそれを売っていくということをやれば非常に合理化されるんじゃないか。――ですからこの問題は、われわれの記憶からいいましても昭和二十年代からあったのでございまして、買い取り引き受けということばが契約面に出てまいりましたのは三十年を越して、あるいは三十五、六年だったかと思いますけれども、その前後にそういう事実は現実に行なわれてきておる。また、その間に商法の改正も二回、三回とあったわけでございます。実はわれわれは、それは一つの公募のやり方であって、それが新株引き受け権を証券会社に与えるんだというようなことは考えていなかったわけでございます。ところが、それに対して訴えを起こしまして、われわれの考えと違う見解が示されてきましたから、実はどうするかということについては、あるいは裁判の最終決定を待つという待ち方もありますけれども、それでは経済界の実情にも合いませんので、法律改正をわれわれとしても希望いたしました。発行会社としても、これを買い取り引き受けのような方法でやれば、先ほど申し上げたように、発行会社からいえば、証券会社にまず一括して引き取ってもらうわけです。証券会社の株になって大衆に売っていくということですから、事務も非常に簡素化されますし、したがって、手続は楽になるわけです。そうではなくて、一人々々応募者を募っていきますと、いまのように証券市場が大きくなりまして、大きい証券会社はたくさん支店がございます。その全部の数字を集計して、申し込み者がいなかったら、それなら残株引き受けというようなことになりまして、手数がたいへんだということだけでなくて、時間がかかりまして、発行会社の便宜からいってもこれは非常に同順になるわけであります。
 ちょっと途中で入れさせてもらいますが、文字が契約面にあらわれましたのは二十四年だそうでありますから、かなり古いわけでございまして、もちろんいまの訴訟なんかの起きる以前であるということでございますし、あるいはその後に商法の改正が何べんもあったということを御記憶いただきたいために申し上げたわけでございます。
 いまの賢い取り引き受けが問題になります場合に、買い取り引き受けも証券業務でございますから、証券業者が――引き受け業者は、証券業者がやらなければならないから介在する場合に、証券会社だけが何か特に利益を受けるような方法じゃないかという御疑問の方もいらっしゃるわけでございますけれども、その場合には、先ほど金子さんからもお話がありましたように、発行価額で公募するのであります。その間に証券会社が利ざやをかせぐ余地はございません。ただ引き受け業務を証券会社が証券業務としてやっております以上は、それに対する適正な引き受け料が支払われますことは当然なのであります。そういうようなことでだいぶ誤解もあるのじゃなかろうかと思います。しかし、今度の法律改正は、それにつきましてかなり進んだ回答を与えていただいたわけでございます。
 ただ、買い取り引き受けそのものについて非常に明快な何か決定をされたかということになりますと、これはもう少し研究させていただかなければなりませんけれども、今度は新株引き受け権を与えるのか与えないのかという議論は一応抜きにしまして、特に有利な発行価額でなければいままでのような方法がとり得ることになったわけでございます。ただ、ここで特に有利な発行価額とは何をいうかということについては、今後問題が残るだろうと思います。しかし、その場合に、今度の法律は払い込み期日前二週間にそういう募集の方法についても株主に通知する、あるいは公告するという手続をとってございますから、もし株主なり一般の投資家が、それは株主にとって不利だと思われればそこでとめる機会はあるわけでございます。ただ、そういう問題について、争いが今度は価額面で全然起きないとはいえないのでございます。その辺については、いずれ法律が通りますれば、証券業者としてはもちろんその趣旨に沿って、証券業務を営まなければなりませんし、あるいは監督官庁の指示もございましょうし、なるべく円滑にその法の趣旨が生かされるように努力しなければならないと思っております。
 次に、もう時間もありませんから、第六番目に新株引き受け権の譲渡につきましては、これは先ほどもお話がございましたが、一番は外資法の関係でございます。現在外資法については新株引き受け権の譲渡を認めておるのでございます。しかし、認められておっても、その新株引き受け権のマーケットがございませんために、実は円滑に動かないわけです。したがって、今度は、一般的に新株引き受け権のマーケットができるように、新株引受け権の譲渡を認めたことは非常に妥当だと思います。ただ、実際になりますと、これは先ほど申し上げたように、株券の数量が多くて発行会社も困りますときに、今度は新株引き受け証書、つまりワラントのようなものを発行するのかどうかというのが一つの問題になります。あるいは証券市場の立場からいえば、そういう新株引き受け権証書の売買をどうしてやるかということが、早急に解決を迫られている問題でございます。
 それから、最後に、第七番目の転換社債の転換請求のできる問題でございます。これは申し上げるまでもなく、転換社債が外国でたくさん発行される、国内でも転換社債が発行される、新たな情勢のもとに発行されようとしているわけでございます。この請求の名義に対して、実情に合った改正をされることはわれわれとしても賛成でございます。
 全体を通じまして、いろいろと証券市場としてはこの受け入れ態勢を、発行会社と相談し、あるいは投資信託の受託機関と相談し、いろいろあると思います。全般的にいえば、長い間われわれとしても希望していることが、ここで法案となるわけでございます。ぜひ皆さまの御審議をいただきまして、改正案が成立することを希望いたしまして、私の意見を終わらしていただきたいと思います。
○大久保委員長 中島参考人。
○中島参考人 参考人は、十五分という制限時間があることを実はわからなくて、相当広範囲の研究をしてまいりましたが、時間に制限がありますので、その一部を申し上げますので前後するようなことがありますが、御了承をお願いします。
 参考人は、商法第二百八十条ノ二第一項中の第五号の改正、第六号ないし第八号の新設、二百八十条ノ二第二項の改正について意見を申し上げます。
 まず、意見を申し上げる前に、先日いただきました商法の一部を改正する法律案参考資料三三五ページの左から四行目の一番上、(二)の下に「控訴人」とあるのは、「被控訴人」の誤りであります。参考人は、ここに判決正本を持ってまいりましたので、その訂正を要望する次第であります。参考人があえてこのような要望をいたしますことは、もちろん法務当局のお粗末なる態度を指摘することであります。すなわち、商法の一部改正をするきわめて重要な法律案参考資料に、控訴人と被控訴人の位置をあべこべに書くがごときは、また判決といたしまして権威を失墜するものでありまして、そう申し上げるのでございます。
 では、これから本案に対する意見を申し述べることにいたします。
 第二百八十条ノ二第一項第五号の改正案については、賛成であります。
 賛成の理由は、現行商法におきましては、「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」とあります。改正商法には「株主ニ新株ノ引受権ヲ与フル者」とあります。現行法の「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」の解釈は、株主ばかりでなく、株主以外のものも含むとされております。ところが、裁判上になりますと、しばしば異なった解釈をするものがありまして、そのために訴訟の進行を非常に妨げられる場合が生じ、参考人も、きわめてこの点は苦い経験を持っておるのでございます。この意味から申しまして、改正法案には明確に「株主ニ新株ノ引受権ヲ与フル旨」定めてあるので、この一点からしても賛成であります。
 第六号の新設法案に対しても賛成であります。
 賛成の理由は、現在においては、新株引き受け権の譲渡に関しては、特別法に定められている以外には規定がありません。けれども、現実においては、事実たる慣習に基づいて、発行日決済取引の方法によって行なわれております。しかし、実際に行なわれた数はきわめて少なく、現実から離れた形であります。ところが、今回新株の引き受け権の譲渡が立法化されようとすることは、まことに時宜に適したもので、賛成であります。
 第七号の新設法案に対しても、一応は賛成であります。
 賛成の理由は、第六号の新設法案と表裏一体をなすものであるから、法的にはあえて反対する理由は発見できません。ただ、実際界の意見をまとめますと、あまりにも事務が複雑化していて、法務当局が常に誇示している買い取り引き受けは、事務簡素化のためによい方法であるということとは完全に矛盾しているという批判が、非常に多いのであります。また、新株引き受け権証書の交付については、証券作成費が一枚につき三、四十円もかかりますので、経済的に大きな負担となります。この点の不満は想像以上に大きいものがあります。いわく、法務当局が実際界の現状を推察してくれないでいたずらに立法化されては、会社としてはたまらないというぐちをこぼしているのが圧倒的であります。
 第八の法律の新設については絶対に反対であります。
 以下、反対の理由を申し上げたいと思います。
 新設する第八号法律案によりますれば、「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ」を決すること、及び新株発行の目的となる諸事項を決することは、すべて取締役会の専権事項になっております。現行商法二百八十条ノ二第一項第五号の「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」の新設の際ですら、当時、大衆株主として脅威的法律であるとして、内心寒心にたえなかったのであります。けだし、新設第八号法律案は、現行第五号に比することのできないほど、株主の不利が露骨にあらわれておるものであります。かてて加えて、非常な危険をはらむものとして反対をいたします。
 新設八号法案によりますれば、新株発行の場合、やろうと思えば、株主に一株も与えないで、株主以外のものである証券会社に全部、しかも、特に有利な発行価額で発行する権限を取締役会に与えることになる、実におそろしい法案であります。しかも、「特ニ有利ナル発行価額」とは、考えようによっては際限のない有利な価額と解されます。そして、その「特ニ有利ナル発行価額」の裏を返せば、株主に際限のない不利を与えてもいいということを取締役会が決することができるのであります。
 元来、日本の株価構成原因は、民法九十二条の事実たる慣習を拡張類推して解釈し、かつ、これに便乗して行なわれている新株発行方法であります。すなわち、株主に額面価額によって新株を割り当て、株主は割り当て価額の払い込みを済まし、株主となってその新株を時価で売却し、額面価額と時価との差、いわゆるプレミアムを収得する。この妙味が前述の株価構成の原因となっております。したがいまして、米国の時価発行上のごとく、株価構成の原因が株主利益配当金、株式分割等の収益率に由来するのに比べますと、きわめて好ましからざる方向にあります。だからと申しましても、日本の場合、一挙に公募による時価発行を推し進めるとすれば、株主の損害は三兆円にも及ぶと推定されております。なぜならば、株価構成原因は、先ほど申し述べたとおり、プレミアムから株主配当金及び無償新株のいわゆる収益率に改革されるからであります。そうなりますと、現在二百円程度いたします株は一挙に七十円ぐらいに暴落をして、すなわち、二百円から七十円を差し引いた百三十円が損害となるわけであります。この集計が、ただいま申したとおり推定三兆円に達するのであります。このようになった場合、一体この膨大なる損はだれが負担するだろうか。もちろん国家は補償いたしません。してみれば、損を負担するのは、株式を保有する株主であります。株主といたしましては、みすみす大きな損を目の前にして、方法がよかろうが悪かろうが、そんなことを考える余裕はありません。すなわち、自己防衛の最高の手段として、現在の事実たる慣習によってプレミアムをかせごうとする以外に手段はありません。ここにいま盛んに叫ばれておる時価発行公募は、全くの絵にかいたぼたもちであります。ちなみに、ジャパン・ファンド副社長セガマン氏は、昭和四十一年二月二十一日、ホテル・オークラで、いま日本で時価発行して資金を集めようと思っている会社には、その資格もないし能力もないと語っておりました。
 以上詳述いたしましたことによりましても、日本の新株発行の姿は、それがよくても悪くても、現在の株主に新株引受権を与えて、株主にプレミアムをかせがせるという以外には道がありません。したがいまして、株主にとりましては、新株引受権こそは証券投資の唯一の目的で、目とも取りかえても痛くないほど貴直な存在であります。
 新設第八号法案は、ただいま申し上げましたとおり、株主にとりましては、最も貴重な新株引き受け権を株主に一株も与えないで、全部、しかも特別の安い値段で証券会社に発行することを、取締役会の決議だけで決することができるようにするというのであります。暴挙もはなはだしいと言わなければならないのであります。
 次に、新設第八号法案の「株主以外ノ者ニシテ」の正体をはっきりしておかなければなりません。民事局長は、本法務委員会で、同法案の「株主以外ノ者ニシテ」とは、株主を除いたすべての者で、特定の者を指さすものではない趣旨の答弁をされております。参考人は、この答弁に対してきわめて遺憾に存じます。いやしくも法治国家の法律案の立案作業の責任にあたる者が、その立案する法律案に内在して、その事物の実質を鋭く観察しないはずはありません。すなわち、新設第八号法案の「株主以外ノ者ニシテ」のベールをはげば、隠れもない証券会社がそこに出てまいります。すなわち、朝日新聞三十九年一月八日付の商法改正案と題する記事中には、商法第二百八十条ノ二第二項にいう株主総会の特別決議は、証券会社に一括買い取り引き受けの場合は不要である旨の規定を設けようとするものであるの趣旨を報道しております。また、日本経済新聞四十一年三月二十一日付の、「財界商法改正に期待」の記事中には、新株発行の際に、証券会社に公募分を一括して買い取り引き受けの場合は、株主総会の特別決議を不要とする立法化である趣旨の報道をしております。
 さらにまた参考資料二五ページ、「商法緊急改正意見」を提出した経済団体連合会は、同二七ページで、「条文上の疑義を解消するため商法第二八〇条の二第二項にいう株主総会の特別決議は、買取引受の場合には不要である旨を商法上、明文を以て規定されたい」と、きわめて率直に要望しておるのでございます。
 以上、立証いたしましたことにより新設第八号の「株主以外ノ者ニシテ」は、絶対的に証券会社であることが明確にされたと存ずるのでございます。
 次に、買い取り引き受けは、第二百八十条ノ二の第二項に規定してある「株主以外ノ者」であって、買い取り引き受けは証券会社に新株引き受け権を付与するところの新株発行であります。したがって、証券会社の地位は、証券取引法第二条第六項の「有価証券の発行に際し、これを売り出す目的を以て当該有価証券の発行者からその全部若しくは一部を取得する者」すなわちディーラーであります。その事実を明らかにするため、参考資料三二七ページ、東京高裁判決三三〇ページ右三行目からを引用いたします。「しかし他面買取引受において、応募者の有無にかかわらず、証券業者は約定数の新株を引受ける権利を有し、発行会社としては、新株を割当、発行する義務を負うものであろうか。この点についても約定書(乙第一号証)によって必ずしも明らかではないが、特別の留保がないかぎり、引受義務を負うということはこれに相応する株式の割当、発行をなすことを前提としているものと考えるところであるから証券会社は発行会社に対して、約定数までの新株の割当、発行を求めることができるものと認められなければならない。従って買取引受契約により発行会社においてかかる拘束を受けるものとすれば(単なる請負募集となすことはできないし、又この場合発行会社は割当の自由はないことになる)。証券業者は結局他の者に優先して新株を引受ける権利を有するものというべきである。そうすると商法第二八〇条の二、第二項にいわゆる「株主以外の者に新株の引受権を与える場合」に該当するものといわなければならない。山一証券株式会社においては昭和三五年一月一四日から同月一六日までの売出期間内に引受新株全部を売りつくしてしまったと主張し原審証人松沢助次郎、同星光一はこれに副う供述をしているが、原本の存在ならびに成立に争のない甲第一八号証の一ないし三九、一九号証の一ないし一七六に対比して必ずしも信用できない」とあります。そうして、右証人松沢は当時山一証券の株式課、引受事務課長であり、また星は被告大成建設の株式課長でありました。また甲第一八号証、同第一九号証はいずれも、大成建設が山一証券に買い取り引き受けさせた新株三百二十万株の山一証券に対する株主名簿であります。この二つの証拠によりますと、前記二人の供述はまっかなうそで、甲第一八号証同第一九号証の株主名簿によりますと、山一証券の買い取り引き受けた三百二十万株は、山一証券の権義で市況を見はからって、ぼつぼつと売っている事実が判明いたしました。また三百二十万株のうち四十八万株を山一第二オープンに時価で組み入れ、買い取り引き受け価額と時価の差益をもうけていた事実が明らかにされました。ちなみに大成建設の株価は、発行価額決定時は四百五十円、それに対しまして買い取り引き受け価額は四百円、また払い込み期日の四日後、昭和三十六年一月の大発会には五百三十五円と、実に買い取り引き受け価額より一株につき百三十五円という暴騰をしております。山一証券は一株につき百三十五円ももうけた上に、通常の手数料の三倍にも達する、一株九円の手数料を大成建設から受け取っております。このように買い取り引き受け上の証券会社は必ずと言っていいほど、ばく大な利益を獲得していることを付加申し上げ、後に申し上げる買い取り引き受け方法のきわめて拙劣な方法であるということの理由に援用したいと思います。
 次に「特ニ有利ナル発行価額」について意見を申し述べることにいたします。すなわち、参考資料三七ページから三四七ページにわたる訴訟におきまして、参考人はきわめて苦い経験を持っております。商法第二百八十条ノ三のただし書き「新株ノ引受権ヲ有スル者ニ対シ有利ニ之ヲ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」、また同法第二百八十条ノ十「著シク不公正ナル方法若ハ価額ニ依リテ株式ヲ発行シ」、また同法第二百八十条ノ十一の「取締役ト通ジテ著シク不公正ナル発行価額ヲ以テ株式ヲ引受ケタル者ハ会社ニ対シ公正ナル発行価額トノ差額ニ相当スル金額ノ支払ヲ為ス義務ヲ負フ」とあります。すなわち、以上の「有利ニ之ヲ定ムル」とか、「著シク不公正ナル方法」とか、「著シク不公正ナル発行価額」等の解釈については、当事者双方の異なった立場から、全く異なった、しかも飛躍的なものが発生し、訴訟の進行を著しく遅延する原因となっております。参考人はこのことではほとほと困窮した経験を有するものであります。新設第八号法案の「特ニ有利ナル発行価額」こそは、法が運用された暁には、その解釈がいわゆる環の端を求めるに比する怪奇に至らしめるもので、究極において法の権威を失墜する原因になるものと、私はいたくおそれて反対するものであります。
 次に、新設第八号法案の正体をはっきりしなければならない。これは証券会社に一括買い取り引き受けの合法化であります。してみれば、経団連を中心とする財界及び証券業界の主張している、いわゆる商慣習の再発効をねらっていることも当然といえましょう。はたしてそうだといたしますれば、該商慣習の基根となっている、発行価額が一〇%から二〇%時価より安いことを認容することの立法化であります。参考人は、買い取り引き受け価格が時価より一〇%から二〇%安い価額は、完全に不公正な発行価額であるということを強調し、その事実を次のごとく明らかにいたします。
 参考資料三一五ページ、東京地裁八王子支部の判決三二四ページ右から五行目「本件において右の新株引受権の付与を伴う新株発行の決議がなされたのは、当事者間に争なき事実関係によって昭和三六年一月九日となすべきところ、当時における被告会社の株式の時価が一株三七〇円であったことは被告の自ら主張するところであるのに、本件新株発行価額が一株三二〇円と定められたことは争のないところであるから、本件新株引受権の付与を町価によるものとして公正価額によるものとすることもできない。以上要するに、本件新株引受権の付与を株主総会の特別決議を要しない場合にあたるとすることはできない。」以上の判決は、発行価額と時価の差、一株につき五十円、すなわち時価に対して一三・五%低いことが不公正発行価額であると認定し、かつ、この不公正な発行価額は、第二百八十条ノ二第二項の手続を必要とするものであると厳格なる見解を示したことに、特に注意をしなければならないと存じます。
 次に、第二百八十条ノ二第二項を改正する法律案に対しても反対であります。反対の理由を次のごとく申し述べます。
 そもそも現行第二百八十条ノ二第二項の規定は、すでに申し述べましたとおり、三十年改正商法のときに、第二百八十条ノ二第一項に第五号を追加新設したことに伴う株主の利益保護の万全を期するために設けられた規定であります。すなわち冒頭に「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルニハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ」と強行法規の姿勢を厳と示した至厳なる規定であります。そして本条の法意は、第五号の取締役会権限拡張に対する取締役会の権限乱用防止であります。
 まず、改正法案の文面から意見を申し述べます。
 改正法案は、特に有利な発行価格でないならば、株主総会の特別決議を不要とし、また、その場合は理由開示も条件といたしません。一体その場合の特に有利と、特に有利でない発行価額とのボーダーラインを、どこで判定するのでしょうか。物理的に申し上げますれば、たとえば、紙一枚の差が特に有利か否かを判定する岐点となりましょう。それがまた、第二百八十条ノ二第二項の手続の要、不要を左右するものであります。さりとて、この重要なる判定をいわゆるどんぶり勘定的にまかせるとすれば、非常に不安定のものとなります。
 されば社会は、本改正法案を評して無責任きわまる、ひょうたんなまず的な改正法案であると申しております。そして、実際界はもちろんのこと、訴訟上におきましても、特に有利なる発行価額の解釈については、いよいよ複雑化し、ひいては訴訟進行上至大なる障害となることは火を見るより明らかであります。
 本項を改正する法律案は、新設第八号法案についてすでに参考人が詳しく申し述べましたとおりいわゆる証券会社の一括買い取り引き受けの合法化で、その場合は、第二百八十条ノ二第二項の手続を不要とする方向で、具体的に申し述べますれば、証券会社に時価より一〇%から二〇%安く新株を発行する場合は、取締役の決議だけで第一日八十条ノ二第二項の手続を不要とするの立法化であります。けだし、改正法案のべ−ルをはげば、そこに偉大な特権を授けられる証券会社の正体があらわれるのであります。ここに本改正法案は、社会をして、おとぼけとか、マジックとかの批判を湧出させる泉をつくっております。では、「特ニ有利ナル発行価額」すなわち第二百八十条ノ二第二項の制約の対象となる「株主以外ノ者」とは一体だれでありましょうかを明確にしなければならないと存じます。
 参考人がすでに申し述べましたとおり、本項の改正法案は、経団連を中心とする財界の強い要望に支配されましたことは、あらためて念を押すまでもありませんが、参考資料二五ページ、経済団体連合会の提出した「商法緊急改正意見」に、「商法第二八〇条の二第二項にいう株主総会の特別決議は、買取引受の場合には不要である旨を商法上、明文を以て規定されたい。」とあります。参考人の最もふしぎに存じますことは、本項改正法案は、ただいま申し述べました経団連の意見を全幅的に取り入れたことは全くこれを疑う余地がないのであります。してみれば、その意見どおり改正法案にそれを明文化してしかるべきであります。すなわち、証券会社が時価より一〇%ないし二〇%引きで一括買い取り引き受けをする場合は、第二百八十条ノ二第二項の手続を不要とする。しかし、そのような法案を作成し、公開するとすれば、社会の世論は絶対に承知いたしません。なぜならば、そのような規定は、すでに申し述べましたとおり、会社設立の趣旨と会社法制定の本義に逆行するはなはだしいものとなるからであります。しかしながら、中身はそれと全く同じであります。しからば、立法当局は完全に国民に対してぺてんを食わしているという事実が全く露見するものであります。このような法案は、株主を軽視、蔑視することはなはだしいものでございます。参考人は、買い取り引き受け方法こそは、資本調達上最も非なる方法であるから、すべからく排除しなければならないと申し述べ、その事実を次のごとく明らかにいたします。
 第一は、時価より一〇%から二〇%引きという不公正な発行価額で買い取り引き受け、しかも、普通手数料の三倍にも達する高額の手数料を受け取る、すなわち、会社と株主にとってきわめて不利な方法であります。
 第二は、買い取り引き受け方法の行なわれるときは、必ず市場が好況で、いわゆる株に羽がはえて飛ぶように売れる場合のみで、市況の低調時の新株発行には買い取り引き受けは全く行なわれません。むしろこのようなときの新株発行の場合は、証券会社の買い取り引き受け方法による協力こそ切望しておりますが、そのような場合は、証券会社は高見の見物で、手をこまねいていて協力はいたしません。この現実から申しましても、買い取り引き受け方法は、証券会社の一方的利益追求の目的のために案出された方法で、会社及び株主にとっては、まことに好ましからざる方法であります。
 ちょっと飛ばしまして、第五は、親引けであります。親引けと申しますのは、新株発行にあたり、参考資料三五五ぺ−ジから三六五ぺ−ジの間に登載されている買い取り引き受け契約の締結の際、要の極秘の契約が証券会社と発行会社の取締役間に締結することができるのであります。すなわち、たとえば、三百万株を時価より一〇%から二〇%低く発行価額を決定する代償として、そのうちの百万株を証券会社が発行会社の取締役に売り戻す方法であります。そして取締役は、適当の方法でその新株を売却して発行価額と時価の差益金を獲得できる方法であります。現行商法上の株式譲渡方法ですら、この実体は容易に露見されません。まして改正法案によれば、本人が自白しない限り絶対に露見いたしません。取締役のこのやみ取得はもちろん 脱税の対象物であります。それをあるいは旧株の払い込み金に充当することもありましょうし、ぜいたくな私生活の費用にも使われましょう。さらにまた、会社の表面に出せない交際費等に流用することもできる等の穴があるのであります。ここに買い取り引き受け方法はどうしても排除しなければならない重大な原因があります。
 第六は、買い取り引き受けは、株式の需給のアンバランスを招き、株価暴落の原因をつくります。すなわち、すでに申し述べましたとおり、買い取り引き受け方法は、証券会社の利益追求と発行会社の取締役の役得が得られる温床となっております。だから、それらの者にとっては、買い取り引き受けを少しでも多くしたいと念願することは人情のしからしむるところであります。すなわち、彼らにとっては、買い取り引き受けを多くすればそれに比例する収入があるからであります。これが大衆投資家のふところぐあいを考えない買い取り引き受けが盛んに行なわれ、昭和三十五、六年はその頂上に達し、当時の流行語「銀行よさようなら、証券会社こんにちわ」が盛んに唱えられ、いわゆる証券業界に岩戸景気と称するものが来訪したのであります。しかし、その中身は、膨大な過剰株式の横溢で、ダムがくずれたように株価は暴落し、ついに日本証券保有組合の設立となって、過剰株式のたな上げ措置を講じ、かつ、増資新株発行の停止あるいは制限等をして、かろうじて経済危機を乗り越えたことは、あまりにもなまなましい事例であります。もちろんこの悪因は、買い取り引き受けに由来しております。
 第七は、「財政経済弘報」第九八二号「会社ノート一八四」 「株式の公募方法を改善、大蔵省の方針」の記事の一部を次に申し述べまして、買い取り引き受けのきわめて非なる事実を明らかにいたします。「大成省は、株式発行会社と証券会社が随意契約によって株式の第三者割り当て(新規公開や公募増資)を行なうことは株価の公正化、公募の公平化に反し、大衆投資家にめいわくをかけるとして、この改善策を検討してきたが、」中略して、「市場への株式公開や株主以外の第三者割当て増資など、いわゆる株式の公募は、発行会社と取り扱い証券会社(幹事)の随意契約によって行われている。このため発行株式は発行会社自身が買い取って取り引き先にはめ込んだり(親引き)、幹事証券会社が同業者に分配したり(協会提供)して〃公募〃は実際面では有名無実になっている。またその価格も、時価の一〇%ないし二〇%引きというあいまいなきめ方がなされており、とくに新規公開株は公開時に証券会社の買いあおりで異常な人気を集め、公開前に割り当てをうけた特定の者だけが利益をうける半面、公開直後の高値で買った一般投資家が、その後の急落で損害をこうむる例が多く、問題になっている。」と書いてあります。
 参考人は、買い取り引き受けにはるかにまさる阪田方式があることを御紹介申し上げます。
 阪田方式と申しますのは、大阪のインキ製造会社、阪田商会が昭和三十六年中に行なった新株発行の一つの方式であります。すなわち、株主額面割り当て以外の分中の六十万株を、一株百五十円(額面価額は五十円)の発行価額で、商法第二百八十条ノ四に基づき、株主平等割り当てを行なったのであります。すなわち、買い取り引き受けの場合、証券会社にもうけさせる金額を株主に直接与えたのであります。このことは、株主利益保護の実際であります。また、この阪田方式によりますと、買い取り引き受けの場合の証券会社に支払う割り高の手数料を支払う必要がないため、会社はそれだけ経費が節約できます。また、手続はきわめて簡素化されます。すなわち、額面価額株主割り当ての分と右プレミアムつき株主割り当ての分の両方の株式申し込み証を一つの封筒に入れて株主に送付する。株主は、申し込み証提出と同時に、引き受け価額に相当する申し込み証拠金を払い込む。この事実は、申し込み期日(支払い期日前)に事実上増資は成立する。しかし、ただいま申し述べましたとおり、買い取り引き受けは、証券会社の利益と取締役の親引けの役得は失われます。そこで証券会社が盛んに阪田方式を批判し、とうとう阪田方式は、あとを断ってしまいました。その事実を「ジュリスト」第二三三号「株式公募の問題点」の内容の一部を申し上げ、その事実を明らかにいたします。
 「鈴木」――これは法制審議会の商法部会会長であります。
  鈴木 この前の共同研究のときに、いろいろな形の公募が出つつある情勢を見て、私どもの大体の考え方としては、株主に割り当てる場合に必らず額面で発行する必要はない。むしろ若干のプレミアムをつけた発行価額で、株主に割り当てる方向にいくのが法律的にも疑義がないし、また実際の取り扱いの上でも簡単で費用も要らないから、あらゆる意味で妥当じゃないかと考えたのでしたが、それに一番近い形が今最後にいわれた阪田商会のやり方だろうと思います。というのは、証券業者に引き受けをさせるという段階を省略して、引受権を株主に直接与えるという形なので、そこにほかのものと非常な違いがあるわけです。これについて証券業界にいろいろな批判があるということをただいまおっしゃいましたが、証券業界ではどういう批判をしているのですか。「竹中」――これは山一証券の社員です。
  竹中 現状では時期尚早というわけです。ちょっと法律論からはずれるかと思うのですけれども、(後略)
「三戸岡」――これは当時の日魯漁業の総務部次長です。
  三戸岡 (前略)阪田方式のときは、証券会社に相談する余地はなかったというので、証券会社が非難するということなのだろうか。
  竹中 非難というと強く聞こえ過ぎるのですけれども、やや時期尚早ではないかという批判といいますか……。
  三戸岡 額面を超える発行価額によって発行する新株を、株主に引受権を与えて割当てる方式がどうして時期尚早なのか判らない。(後略)と申しておるのでございます。
 アメリカでも、ただいま申し上げました阪田方式に最も近い時価発行株主割り当ての方法を行なっております。すなわち一九五二年中に行なったアメリカン・カン社の増資新株発行もその一つであります。アメリカン・カン社は、発行済み株式九十八万九千五百九十九株に対して一〇%の新株発行をいたしております。そして時価より一五・三%発行価額を安く、そして株主平等割り当てをしたのであります。ここに思い違いをしてばならぬことは、アメリカン・カン社が時価より一五・三%低い発行価額で発行したことを見て、買い取り引き受けの場合、一〇%から二〇%低いのは合理性があるという、すなわち経団連を中心とする財界、証券業界の主張は、とんでもない誤りを犯した考えとなるからであります。なぜならば、株主割り当ての場合は、時価より一五・三%低い発行価額で発行しても、その割り安分の利益は、株主が直接受け取るので、このことこそ真の株主利益の保護です。参考人が力説していることは、株主以外の証券会社が、株主の利する分を持っていってしまうから、それはけしからぬというのでございます。
 また、英国では、原則的に阪田方式とほとんど同じの株主割り当て時価発行を行っております。このことは、「日本経済新聞」四十一年四月十五日の「株式分割など盛ん、英国では株主割り当て」のところに、きわめて親切に、かつわかりやすく報道しております。
 結論的に申し上げます。ただいま申し上げました阪田方式による新株発行を行なえば、あえて商法を改正して買い取り引き受け方法を合法化する必要もなく、すなわち第八号法案を新設することも、第二百八十条ノ二の第二項を改正する必要も全くございません。また先ほど申し述べましたとおり、わが国の株価構成原因をプレミアムに求めることは邪道であります。ゆえに、それはどうしても改めなければなりません。しかしそれは急いではなりません。なだらかな勾配によって誘導していかなければなりません。それには、英国のごとく、すなわち阪田方式によって、もちろん額面価額を割ることは許されませんが、時価より二〇%も三〇%も底くなさってもいいのじゃないか。こういう株主割り当てをして、株主に妙味を味わわせつつ、時価発行の方向に誘導していくことであると参考人はかたく信じております。
 以下、委員さん方にまことに失礼なことを申し上げますが、株主総会の決議は、会社及び株主の公正なる利益を多数の株主によって決議することで、会社及び株主の不利なことが目の前に見えておるにもかかわらず、多数決で決議することは、多数決の乱用で、無効または取り消しの原因になると解されております。法律の成立におきましても、ある意味から申せば、帰一するところがあると存じます。どうかどんな小さい疑点でも、これを氷解するまで御審査を賜わりまして、ほんとうに国民の納得のできる法律をつくっていただきたいことを希求してやまない次第であります。
○大久保委員長 これにて参考人よりの意見の聴取は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○大久保委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。横山利秋君。
○横山委員 たくさんの参考人には、豊富な御経験をお話いただきまして、ありがとうございました。時間の関係で、私どもも十分意見の開陳をして、皆さんの御意見を承りたいのでありますが、それがあまりできませんので、二、三の問題にとどめまして御意見を伺います。
 まず東京商工会議所の津末さんにお伺いをいたしたい点がございます。それはほかの方にも聞いていただきたいのですが、私どもが考えますに、昭和二十五年における商法の改正は、資本と経営を分離し、株式会社の民主化の達成という根本的な立場を打ち出しました。そしていかなる方法をもってしても株式の譲渡を妨げ、制限を加えることはできないという立場をとりました。今回、定款できめれば、いかなる会社においても株式の譲り渡しの制限ができることになったのであります。津末さんのおっしゃるように、大きな会社には事実上むずかしいが、中小企業にこれが動いていくのではあるまいか。中小企業に会社荒らしやあるいは会社の乗っ取りなどがある、そういうことを防止するということに力点が置かれるのでありますが、問題は、だからといってこの商法の基本的な立場を百八十度も転換をするようなことまでの積極的な必要性があるであろうか。逆説的に言えば、こういうことによって無能な経営者、好ましからざる理事者、独善的な経営者の存在を不当に擁護するようなことになりはしないかということを私は恐れるのであります。会社乗っ取りや会社荒らしというものが生ずるには、生ずるだけの温床がそこにあることをまず考えなければならない。それは悪意のある連中がやることでありますから、それは大したことではないにしても、火のないところに煙は立たずということばがございますが、必ず経営が放慢か封建的かあるいは不安がある、そういうことを正すことのほうが実は必要なことではあるまいか、私はこういうふうに考えるのであります。中小企業の経営というものと商法を比較いたしますと、株主総会をやるということ自身がほとんどないのではあるまいか。専務がおむつを洗たくしておるという八百屋株式会社も実際にはあるわけでございます。そういう点から考えますと、私はこの譲渡制限という問題について、商法の基本的な方向、それから中小企業の民主的な経営という本来の力点をはずすおそれがあるのではないかと考えますが、あなたの御意見を伺いたい。
○津末参考人 いまの御質問のピントが私によくわからないのです。中小企業の経営の民主化ということはどういうことをお考えになっておるか。それから中小企業と申しましてもピンからキリまであるわけであります。ですから非常に小規模なものについては、民主化というても、大体株の引き受け手もないと思うのです。ですからこれは大部分は同族会社的な色彩が非常に多くて、それから出発したものだと思うのです。非常に業績があがった場合に、だんだん規模が大きくなっていくということでございまして、中小企業の株が非常に大ぜいの人に持たれておるというケースは非常に少ないのじゃないかと私は思うのでございます。ただ農地の問題なんかについて、相続とかというような問題があるわけでありますが、つまり相続税を払えなくていろいろなことに分割されていくというようなことはあると思うのです。そういうときにいろいろなトラブルが起こってくるというふうに考えられております。ですから問題は、初めに大隅先生がちょっとお触れになりましたけれども、規模によって商法というものがどういうふうにか変えらるべきじゃないかというようなお考えもあったようであります。これは法律がそういうふうに変わってくれば問題は別になるわけです。何十万という会社を一つの商法で規制していく場合に、流通性の問題とか民主化という問題と、中小企業の経営あるいは中小企業のあり方というような問題は、おのずから別に考えていくべきではないかと私は考えております。ですから中小企業というようなものを委員さんはどういうふうにお考えになっておられるのか、その辺を伺わないとちょっと御返事ができかねます。
○横山委員 私の申し上げたのは、株式の譲渡の制限が今度の改正の中にある。この譲渡制限を具体的に適用するというのは中小企業のほうに多いのではあるまいか、大企業では実際問題としてはそう行なえないであろう。中小企業に譲渡の制限をする理由は何であるか、会社荒らしや会社乗っ取りがあるからだ、こういうことになっているわけですね、あなたの立論は。まあ中小企業というものもピンからキリまであることは御存じのとおりです。ピンの話をしましたものだから誤解があったかもしれぬけれども、いわゆる中ですね。中の会社荒らしや会社乗っ取りがあるから譲渡制限をしたい、ということは、逆説的に言えばそういうことがあること自身に問題がある。だからそういう中企業の会社荒らしや会社乗っ取りを防ぐために譲渡制限をすることは、逆説的に言えば、むしろ無能な経営者や、好ましからざる理事者や独善的な経営者の存在を不当に擁護することになりはせぬか、こういうことを申し上げている。
○津末参考人 その点は私は逆に考えておるのでございます。経営者が株主から見て不当な経営をしておるという、つまりそういう場合は会社の業績があがらないという結果になろうと思うのです。そういう場合はむしろ買い占めとかなんとかいう問題は起こらずに、そういう会社のほうが極端に言えば不渡りを出して倒産するというような方向にいこうかと思います。そうじゃございませんで、例をあげて申しますと、陽和不動産という会社が、三菱のあれだけの土地建物を持っておって、当時資本金が三千万円だったですね。そこで乗っ取りというための株の買い占めなんという問題が起こったのでございます。大体においてそういう会社を乗っ取ろうとか株を買い占めていこうとかいう問題が起こる場合は、会社の業績が非常にあがっている場合に起こるのだと思います。そうしますと、先ほどちょっと申し上げましたけれども、中小企業の場合は小さいものから、仕事の性質とか経営というようなものがうまくいったためにだんだん大きくなってきたんです。その会社の事業というものは経営者に依存する面が非常に多いんじゃないか。そこでそういう買い占めとかその他の方法でその経営者の地位をゆさぶるというようなことがないほうが望ましいというふうに考えております。民主化という点は一向さしつかえないのだ。大きい株がある意図をもって動いてきたということを考えて、私はこういう問題はぜひもとに戻していただきたいというふうに考えております。会社の経営の悪い場合は、株主が指弾する前にもっとがたっといっちまうということのほうが先に考えられるわけです。
○横山委員 次は阿部さんにお伺いをしたいのですが、いわゆる一括買い取り引き受けの問題です。いろいろな意見はありますが、この中島さんの主張の中に、本来この商法の正当な解釈は、一括買い取り引き受けは商法二百八十条ノ二の二項に明白にこれはなっておる。事実、先般民事局長にその点をただしたのですが、やはり株主以外の者に新株引き受け権を与うるについては、取締役会の決議によるものでなく、株主総会の特別決議をもってその新株引き受け権の目的となる株式の云々云々を定めなければならないものという点については、法務省の見解は明白なんです。そこで、私は法務委員と大蔵委員と両方をしておるのですが、実務上の問題については、簡法が実際問題として履行されてない場合は、必ずしも少なくはない。ただ、それが違法ということが明白であることを承知の上でやっておったものか、あるいは違法であるかないかわからないという立場でやっておったものかということになるわけです。法務省の見解はきわめて明白に、二百八十条ノ二の第二項は、ここで立法理由として国会の議事録にも載っておるわけですから、株主総会の特別決議を必要とするということは明白なんですが、その点はどうなんでしょう。(「判決でもそうだ」と呼ぶ者あり)判決という同僚委員のお話でありますが、判決を引用するまでもなく、きわめて明白なことなんですが、それを承知の上でやっていらっしゃったことになりますか。
○阿部参考人 その点につきましては、先ほども一部お答えしたと思うのでございますけれども、買い取り引き受けということばが適当かどうかということはわかりませんけれども、一応そういうことばが使われたというのは昭和二十四年からだということでございまして、その当時はわれわれは、いま横山委員が御指摘になりましたように、明らかに法律に違反しているということを承知の上でやる考えは毛頭持っていませんし、それは募集の一つの方式だと思っていたのであって、もしそれが明らかに法律に違反しているならば、先ほど申し上げたように、その後に商法の改正が何回かあったわけでございます。あるいはその機会に御注意いただく機会もあっただろうと思います。当人たちはやっているうちにだんだん、残株引き受けから進んで買い取り引き受けのような簡便な方法がむしろ一番合理的な公募株の処理の方法だと思ってやったことであって、それが法律に明らかに抵触するというようなことになりますと、それを取り扱っている証券会社の信用を傷つけるだけではなくて、そういう株を扱う場合には、発行会社も大きい会社でございます。財界に対する影響も大きいわけでございますから、初めからそういうことが違法だと思ってやったということはないと私は信じます。
○横山委員 大隅先生にお伺いしたいのですが、ここで参考人の先生方の数多くの問題の焦点となりますのは、二百八十条ノ二の二並びに今回改正いたします「特ニ有利ナル」というこのことば、そこに相当焦点が置かれておるわけであります。いまいろいろお伺いしますと、「特ニ有利ナル」ということをきめても争いは起こる、これは皆さんお認めのようであります。それから争いが起こるのなら、現行法どおり株主総会ですべて特別議決を必要としてもいいではないか、どちらが適当かつ適切であろうか、今回株主総会の議決を経ずして「特ニ有利ナル」でやれば、一体「特ニ有利ナル」ということは、どのくらいが特に有利であるかということは、法律でないですから、おそらく行政指導ということになる。行政指導というものがどのくらいの拘束力を持っておるか、それは絶対拘束力というものはないものでありますから、国を相手取って、また国がこういう解釈をしたことはけしからぬというような新しい問題をここで提起するおそれがある。先ほど中島参考人のお話によりますと、大成建設の問題でありますか、これは常識を越えたような数字だと思うのですけれども、「特ニ有利ナル」ということをきめたことによって、新しい紛争を起こすだけの問題ではないか、それならば現行法でも差しつかえないではないか、より民主的ではないかという考えがあり得るのですが、この点について御意見を伺いたい。
○大隅参考人 ただいま御質問の点でございますが、現行法の二百八十条ノ二第二項は、株主以外の者に新株引き受け権を与えるときは株主総会の特別決議が要るとなっておりますが、この規定が買い取り引き受けの場合に適用されるのかどうか。言いかえますと、買い取り引き受けは証券会社に新株引き受け権を与えるものかどうか。そのことがやはり学者の間で議論になっておるのでございまして、これは最高裁判所がどういう立場をとるか、現在のところわかりませんけれども、その関係で、買い取り引き受けが適法かどうかということが、先ほど参考人からおっしゃいましたように、訴訟になっておるわけであります。では、それを改めて改正法案のように、株主以外の者に特に有利な発行価額をもって株式を発行するときは株主総会の特別決議は要らない、こういうふうにいたした場合におきましても、特に有利な発行価額とは何か、こういう点でやはり争いが起こり、また学説も分かれ得ると思うのでありまして、その点は現行法のままならば争いの余地はない、改正法のようになればかえって争いを生ずる、私はそういうことではなかろうと思います。そして現行法のようにはっきりと、特に有利な発行価額をもって新株を発行するときは株主総会の特別決議が要る、こういうことになりますと、先ほどもちょっと申しましたように、今後買い取り引き受けを行なう場合におきましては、その発行価額が特に有利かどうか、この点に会社の代表者としては神経を集中し慎重な取り扱いをしなければならないことになりまして、少なくとも従来よりもかえって買い取り引き受けを慎重に行なわせることになるのではないかと私自身としては考えております。ただいま、特に有利な発行価額というのは結局行政指導によってきまるのではないかといったような御発言のように伺いますけれども、行政指導というのはもちろん拘束力はないわけでございまして、たとえ行政指導によって一応特に有利でないとされた価額で発行されましても、やはり争いが起これば結局裁判所で決定されることになるわけでございまして、この特に有利な発行価額という表現が適切かどうかということは、私も先ほど申し上げましたように議論になると存じますけれども、それならば、これをもっと適当な表現に変えることができるかという点を考えますと、私自身がこれまで考えましたところでは、容易にそれが求められないということで、議論の余地はあってもこの程度でやむを得ないのではないか、そのように私は考えております。
○横山委員 大隅、松本両参考人に簡潔にお伺いしたいのですけれども、今回の改正は、裁判で判決があった、これはどうもいかぬぞということが、どうしても一つの機縁になったような感じがいたすのであります。その意味におきましては、いわば当面の問題となっておる点を商法の部分的改正に求めるということになるでありましょう。津末さんもおっしゃるように、本来、いまの商法が大企業からいろいろな株式会社に至るまで全部包含をして取りきめられ、そして事実上商法が守られていない部面もたくさんあるわけであります。いま当面喫緊の問題といいまして、先ほど私も百八十度の転換だと一つの例証をあげたのですが、そういう部分的改正を暫定的にいたします過程で、商法本来の目標、指導性、一貫した方向を見失うことがありはしないだろうか。これがどうしてもいまやらなければならぬものであろうか。大隅先生のお話のは、いい知恵が浮かばぬから、まあ次善策としてこれはいいではないかというお話のようでありますが、本改正案以外にまだまだ商法としては御検討願い、御意見を伺うべき実に多くの点があると思うのでありますが、ここで改正案を離れて商法の基本的な問題といいますか、時間が短くて恐縮でございますが、お考えの点がございましたら、ひとつ基本的な問題についてお聞かせを願いたいと思います。
○大隅参考人 ただいまのお尋ねの点につきましては、先ほどもちょっと触れましたように、私は、現在何十万とあります株式会社が、大小を問わず一律の法律によって規制されておるということははなはだ不合理だと思うのでございまして、どこで線を引くかは別といたしまして、大企業の形態としての会社と、中小企業の形態としての会社とをやはり分けて規定すべきであろうと存じます。その場合に、ややもすると中小企業は有限会社のほうに、こういうふうな意見もありますけれども、現在の有限会社法は、有限会社という名前があまり歓迎されませんし、またその規定自身も必ずしも十分だとは思わないのでございまして、考え方によれば、株式会社の名称は中小企業に譲って、大企業の会社はまた別の適切な名前があるならば名前をつけて、そして大企業にとってはそれにふさわしいような立法をすべきであろうと思っておりますし、それから中小企業についてももちろんそれに相当するような形態を考うべきだと存じております。
 それならば、その場合に具体的にどういう問題を考えるかとおっしゃいますと、いまここで一々申し上げるわけにはまいりませんけれども、たとえば株主総会、取締役会、代表取締役、監査役、この機関の問題を取り上げましても、実は現在の立法は種々の点で不適当ないし不備な点があると存じまして、やはりこれを大企業の株式会社を中心にして考えますならば、もっとやり方があると思うのでございます。たとえば株主総会について言えば、書面投票というようなことも考える余地はなくはありませんし、取締役会にいたしましても、取締役会、さらにその下の通常常務会と申されておりますけれども、そういったふうな機構も考えるとか、いろいろ問題の余地はあろうかと存じます。ただこのような立法作業をいたしますと、相当の知能を動員しなければならないことになりまして、現在のように貧弱な少数なスタッフ、ことに私ども学校の教師が片手間にときどき招集されるといったようなことでは、とうていできないことだろうと思うのでございまして、国会でもっとそういう方面に十分の御配慮をいただき、相当の時間をかけるならば、それも可能ではないかと私は考えております。
○松本参考人 ただいまのお話のように、事実上商法が守られていないということはもう現実のありのままの姿でございまして、われわれこの弊害は日常痛感しておるところでございます。先ほども申し上げましたように、六十万からある株式会社のうちで、上場せられておるのは二千から三千、数からいいますと一%にも足りない。資本の額からいうと、私調べたことありませんが、それはずっと違いましょうけれども、したがって、その数の点からだけいいますと、この二百八十条の二の改正も大部分の会社にとっては縁なき改正でございます。ただ現実の問題として、市場で株式が取引せられておる大会社の新株発行の際には失権株がたくさん出ますし、端株も処理しなければならない。この場合には今度の改正案のように一括して買い取りを認めるということ、そのことばはともかくとして、そういうような方向にきめる、これは実際上の必要からやむを得ないのじゃないか、こう考えております。全般的の問題として申し上げましたように、大企業と小さい会社、これを一律に商法の規定で律するというところにどうしても無理が出ますし、たいへんむずかしい問題でありましょうが、何とか皆さんのお力によって今後全面的な改正を御考慮願いたいと存じます。
○横山委員 最後に金子さんでも阿部さんでもどちらでもけっこうでございますが、先ほど中島さんか腹一ぱい言いたいことをおっしゃったようであります。親引けでございますね。その点について黙っていらっしゃるのもなんだと思いますから、中島さんの指摘されました親引けについて何か御意見があったらひとつ伺いたい。
○金子参考人 先ほど親引けの問題が出てまいりました。これは私どもの企業の立場といたしますれば、公募ということは、実際自分の企業そのものが直接これをやろうということになりますと、これはもうたいへんな手数がかかる。実際これを事実上やった企業はおそらくないのではないか。そこで先ほどお話のあった阪田方式のほうがいいとか、いういろいろの御意見もありましょうが、それは別といたしまして、現在の公募の考え方を企業が行なおうということになりますれば、勢い買い取り引き受けの形をもちまして、証券会社に一括これを依頼するということが実は長い間の慣習になっておりまして、企業は過去十数年間にわたってそれをやってきておるのが現実でございます。ただこれがいろいろの事情から商法違反であるという御指摘が出たために、この問題は企業がこのままでは容易にできなくなってしまうということでございますと、そこにこの問題について非常にトラブルが起こってまいりまして、いわば企業が何とかしてこれを従来どおりやらしていただきたいということで、私どもは特に強くこの問題を提案したわけでございます。
 そこで、その弊害の一つの例といたしまして、親引けというものが先ほど御指摘にあったのでございます。これはいろいろな広い範囲の問題でございまして、各企業ごとの問題で、私どもはこれを申し上げることはいかがかと存じますが、証券会社に一括いたしますと、証券会社にできる限りにおいてこれを公募の趣旨に沿って売りさばいていただくということがわれわれが期待しているところでございます。そこで、その価額はもうすでに会社の手を離れまして、この値段で、どなたにでも売っていただきたい、それで会社は満足する者のだという値段でこれを売りさばくのでございます。それをだれが買おうと会社側といたしましては知ったことではないわけでございます。たまたまその企業の新株でございますので、会社自体の関係者がぜひそれではこの機会に株を少しでも買っておこう、こういったような問題が出てまいりますれば、それは証券会社にそういうものを申し入れまして、そうして証券会社がそういうところに割り当てるということがあるといたしますれば、それは公募の一つの実質的な形と考えてよろしいのではないかと思います。そこで、ただいかにもそういったようなやり方が非常に有利である、つまりそれを買った者がもうかるのであるというようなことが前提とされておりますと、何かそこに黒い影がさしているように考えられるのでございますが、それはどなたが買ってもよろしいわけで、そのうち関心があるような会社関係者がそれをほしいといった場合に、それをまた証券会社がどこかへ割り当ててこれを処分しようという努力をする場合に、買い手があらわれれば特にそれを売るようになるだろうと思います。ただその場合に抽せんで売るとかあるいは厳格なやり方で売るということば、事実はなかなかやっておらないようでございますので、これは買いたい人にそれを売ってあげるという形になると思います。そこで私どもこの問題につきましては、今回特に有利な発行価額あるいは有利ならざる発行価額といったような問題を申しましたのは、そこにむしろ問題があるのではないか。つまりあまり時価よりも割り安であると仮定いたしますれば、そういう問題がさらに今後御指摘のように運営されたら、これは私どもの趣意ではないのであります。発行会社はできるだけプレミアムをよけいいただきたいという考え方であればこそ、これに発行価額をきめるのでありますので、売れない価額をきめるということは意味がございません。売れる程度においての最高の価額をきめるということが一般に考えられるとすれば、それが有利か不利かというような問題の境目になることは当然でございます。そこでこの問題をそのようにきめることによって、もしもそういったような問題があるならば、この際そういう問題を払拭するという意味で、抽象的であるようで、実際はこの問題は事実になると相当具体的な問題になると私は想像される。特に有利でない発行価額、それは適正価額ということになりますので、それをもって取引すれば親引けの問題もおのずから解消するのではないか。だから親引けと申しますことは、私どもの感触ではそのように考えておるのでございます。
○横山委員 時間の関係もございますから、多少意見がございますけれども、これで私の質問を終わります。
○大久保委員長 大竹太郎君。
○大竹委員 まず、中島参考人にお聞きしたいのですが、時間がございませんから簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
 長く御意見を承っておりますと、参考人の御意見は、株式増資をする場合には、値段のいかんにかかわらず、いわゆる株主以外の人に株式を割り当てるということは株主権保護の立場からいうと不都合じゃないか、いまの制度はそうなっておらないけれども、非常に株主の権利を害するやり方であって不都合じゃないかという御意見のように私伺ったわけでありますが、その点はいかがでございましょうか。
○中島参考人 そういうことはございませんです。要するに二甘八十条ノ二の二項のいわゆる特別総会の決議を受けて、そうしてその引き受け権を与えようということで、それを抜いていったのでは取締役の権限乱用もおそろしいものになる、こういう言い方でございます。
○大竹委員 次に阿部参考人にお聞きしたいのでありますが、これはこの中にはないのでありますけれども、証券会社で非常にたくさんの株を取り扱う事務の上から非常にお困りになっておるということで、私ども昔の金からすれば五十円を五百円にしたのでもそんなこと問題じゃないと思うのです。もっと、昔の五十円をいまに換算したらどれくらいになるかわかりませんが、そういうように法律の上で改正したほうがいいと思うのであります。私、率直に申し上げるのでお許しをいただきたいと思いますけれども、現在の手数料の立て方その他からいって、株式の額面を引き上げることに対しては証券会社あるいは取引所その他では非常に反対しておられるというようなこともお聞きするわけでありますが、その点はいかがでございましょうか。
○阿部参考人 ただいまのお尋ねの点でございますが、確かに戦前に比べまして物価が四百倍以上にもなっておるのに株式の単位が多くの会社は五十円だ、しかも定款に一株券の発行を確定してあれば、やはり五十円の株も用意しなくちゃならぬ。どう考えてもこれが実際のいまの経済単位に合っていないのじゃないかという疑問は持つわけであります。実はその問題につきましては、先年いろいろのくふうがなされまして、あるいは政府のほうでもお考えになりましたけれども、実際界となかなか調整がつきませんで現在まできているということでございまして、私個人としましては、やはり額面金額が上げられないならば、あるいは株式の発行株数についてもう少し合理化する余地があるのではなかろうかと思いますが、証券市場からいえば、そういう場合に、せっかく大衆が株式を買うようになった空気を阻害してはいけないという心配も一方にあるわけであります。
 それからいまの手数料から見ますと、やはり手数料というのは証券会社が健全な経営ができるような手数料でなくちゃいかぬと思うのでございます。その点からいえば、実は証券業界みずからも合理的な線を考えなくちゃならない。その場合に、どうしても手数料が少なくなるくふうを考えるということになりますと、事務量を減らさなくちゃなりませんから、その点でやはり株式の整理といいますか統合といいますか、いつの日かは考えなくちゃならない問題ではないかと思います。
○大竹委員 その次は津末さんにお聞きしたいのでありますが、中小企業においては株式の譲渡制限ができることになったわけでありますが、御承知のように、これにはなかなかめんどうな手続が必要なわけなんであります。しかしこれは、戦前においては何か総体の数の八〇%の会社が譲渡制限の規定をしていたというようなことを聞くわけでありますが、今度せっかくこういう規定ができましても、総会その他特別な決議が必要なわけでありまするので、手続がめんどうだということで結局やらぬのじゃないかというような気も私はしないわけではないのでありますが、これができたら、相当の会社はこれはいいあんばいだということで、さっそくみなこの手続をしてこの規定を応用するとお考えになりますか、どうですか。
○津末参考人 いまの御質問は、非常に小規模の会社で大体株式会社の形態をしておるということは、税金その他からくる面が非常に多いと思うのであります。ですから、そういう会社においては定款がどうとかあるいは総会がどうとか、商法上の税金対策としての株式会社が非常に多いので商法上の株式会社であるかどうかということは別でございますから、それは問題にならないと思います。大体私は四、五千万円から一億程度の会社が大体この問題の対象になるのではないかと考えられるわけでございます。そういう程度の会社では大体非常に発展性があるという見込みで、あまり遠くないうちに株式市場に上場する見込みがあるというような会社においては、これはやらないと思うのでありますけれども、同族会社ないしそれに近い、株主の少ない会社において、おそらく定款でこういう定め方をされるのじゃないかというふうに考えます。
○大竹委員 次に、金子参考人にお聞きしたいのでありますが、御承知のように、株式譲渡の方式の変わりましたのに対応しまして、株券の不発行または寄託の制度ができたのですが、これは定款でたしか反対の規定ができるということを御明示になっておったと思うのでありますが、そういうことはめんどうくさいからということで定款にみんな規定されたのでは、この利用価値というものがなくなると私は思うのであります。これは参考人お一人にちょっとお聞きしてもだめなんですが、一体どういうことになるのでしょうか。非常にこんなものはめんどうくさくてしょうがないから、定款でひとつこんなものをシャットアウトすることにしようという傾向ですか、それともこれは喜んでやろうという傾向ですか、その点をお聞きしたいと思います。
○金子参考人 ただいま御質問の問題は、確かに現在株主で非常に多量に株式を持っておられる方は、おのずから自己防衛をしているわけでございます。したがって、銀行の貸し金庫を借りてやっている方もありますし、また、御自分で安心感のあるような金庫に入れている方、いろいろございましょう。今度の株式の裏書きというものが廃止されまして、一応これができますと、お札のようなものだ。現在もそうなんでありますが、そういう感が深くなれば、皆さんの御関心も深くなって、それではいっそ株をもらわないでおいて、そして会社のほうでいわゆる登録と申しますか、不発行の形でもって、株主権というものを持って、必要があれば発行してもらう、こういうようなこともあわせて考えてやるということでございますので、会社側といたしますれば、おそらく私の想像でございますが、この問題は会社側だけからいえば、御指摘のようにかえって非常に仕事がふえる、トラブルな問題だと思います。しかしながら、これは株主サービスということがただいまいわれております。したがって、この問題は、会社がうちではそういうことをやりませんということを定款で定めるというようなことになりますれば――これはなかなかそうは言い切れない面が大会社としてあるのじゃないか。それは会社側として喜んでこれをやるかやらないかということになりますと、急に株がほしいとおっしゃる、また要らなくなったから預ってくれというふうになってくるかどうか、この辺のところは、想像はいろいろいたしておるのでありますが、会社側としては株主サービスという精神で、おそらくこれはやることになるであろうということを考えておるのでございます。会社側が非常にそれを喜んでこの仕事を引き受けるかどうかということになりますと、結局、それだけ仕事の量がふえるということだけは間違いございません。しかしながら、問題がここらにございますのは、相当に手数料という問題とからまっているのでございます。大きなものをたくさん持ってこられて、これをひとつ預かってくださいと言われた場合、会社がそんな保護預かりするような大きな金庫を用意するというのは、相当金がかかります。また、会社自体が大きな金庫をよそから借り金庫してやるという場合も、金がかかります。これは今後手数料の問題で、妥当な手数料をきめてこれを扱うことになりますので、御依頼なさる方も、その点はおのずから考えておいでになると思いますので、私はその面で相当な調整がとれてまいるのではないか、このように考えております。まず、いまのところとしては、私だけの気持ちからいえば、要するに株主サービスという精神がこの問題を相当円滑に解決するのではないか、このように思っております。
○大竹委員 最後に、大隅先生と松本先生にお聞きしたいのですが、これは先ほど横山委員の質問で大体お気持ちはわかったのでありますが、最後に念を押しておきたいと思うのです。やはり大きな会社、ばく大もないマンモス会社と、いわゆる八百屋、魚屋を一緒の商法によって規定するということは、いろいろな不都合が起きる、したがって、根本的に改正する場合においては、どういうことで線を引くかは別として、やはりこういうものは別の法律によって――将来根本的な改正をする場合においては、大きなものと小さなものとを分けた法律にするほうがよろしい、お二人ともそういう御意見だったとお聞きするのでありますが、そうお聞きしたことでよろしゅうございましょうか。
○大隅参考人 私は、ただいまおっしゃいましたとおりでございまして、大企業の会社と中小企業の会社とは、やはり別の、それぞれに適応したような立法をすべきものだと考えております。
○松本参考人 ただいまのお話のように、私も別の規制をなすべきものだ、こう考えております。
○大久保委員長 これにて参考人に関する議事は終了いたしました。
 参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をいただき、本案の審査に御協力くださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、ここに厚く御礼申し上げます。どうぞ御退席ください。
    ―――――――――――――
○大久保委員長 引き続き、商法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。田中武夫君。
○田中(武)委員 先日の質問に引き続いて商法改正について質問をいたしますが、その前に委員長にお願いを申し上げておきたいと思います。
 はなはだ身がってなことを申しまして、まことに相済みません。同時に、本会議がいつ始まるかもわかりませんし、私自体も実は党務で出かけなければならぬので、一時間ばかり質問をさしていたたき、その間質問が終わらない、あるいは答弁が終わらない、そういうときには、私はレギュラーの委員じゃありませんので、法案の取り扱いは委員会でやっていただいても、その後にまた機会を与えていただいて質問を続行する、こういう取り計らいをお願いします。
 そこで、まず最初に、先日私が質問いたしまして、政府のほうでといいますか、法務省のほうで若干答弁が保留になっておった点、どこだと言わなくてもいいと思いますが、その点について、その後検討しておられるならば、まずそのことを発表していただきたい。そこから入りたいと思います。
○新谷政府委員 前回御質問のございました点の中で、二つの点につきまして、さらに補足してお答え申し上げたいと存じます。
 まず第一点は、株式の譲渡制限の定めを新たに設けました場合及びその制限が設けられた後の問題といたしまして、株主が緊急に資金を必要とする事情があることがありますので、そういう場合に会社が即時に株式代金の一部を支払う等、株主の必要に応ずる措置を講ずべきではないかということが一つの点であります。前にもお答えいたしたところでございますけれども、株式の譲渡制限の定めを新たに設けるということは、株主の利益に重大な影響を与えることになりますので、改正案におきましては、既存の株主を保護いたしますために、株式の譲渡制限の定めを設ける決議におきましては、通常の定款変更の要件よりも厳重な要件を定めておりまして、さらにこの決議に反対する株主に対しましては、決議がなかったとすれば、その株式の有すべかりし公正な価額で買い取るべきことを会社に対して請求することができるというふうに定めてあるのでございます。改正法案はこのようにいたしまして、既存の株主の保護をはかっているのでございまして、これで十分ではあるまいかというふうに考えておるわけでございます。
 御質問のように、株主が緊急に資金を必要とする場合のあることも考えられるのでございますけれども、たまたま株式の譲渡制限の定めが設けられた時点におきまして、株主に資金の必要を生ずるようなことはきわめてまれにしか起きない問題ではあるまいかと思われますことと、万一このような事態が起きましても、ただいま申し上げましたように、株式買い取り請求権が認められている結果、会社と株主との話し合いが促進されて、株主の資金の必要が満たされると思われるわけであります。したがいまして、御指摘のように、会社が株主に対して代金の一部を即時に支払う等の措置を講ずることはいかがなものであろうかというふうに考えておるわけであります。
 なお、株式の譲渡制限の定めが設けられますときには、買い取り請求権を行使しなかった株主、またはその定めが設けられました後に株主となりました者は、資金回収の必要が生じました場合に、株式の譲渡について取締役会の承認を得られませんときは、改正法案二百四条ノ二以下に定める手続によって資金回収の道が講ぜられておるわけであります。このような株主はその株式を即時に売却することができないことを承知しているはずでございましょうし、他面二百四条ノ二以下に定めます手続が規定されていることによりまして、株主と会社との間の話し合いが促進されることも期待するわけであります。以上の措置をもちまして、株主の資金回収の必要性を保護するということにいたしておるわけでございます。
 それからもう一つの問題は、株式を自由に譲渡することができる現在の法制下におきまして、そのようなつもりで株式を取得しておる者が、後日の定款変更によりまして株式の譲渡制限の定めが設けられましたために、既得権を侵害されるようなことになるのではないか、これに対してどう思うかという御質問でございます。改正法案によりますと、株式の譲渡制限の定めの態様は、株式の譲渡につきまして取締役会の承認を要するということにいたしておるにとどまるわけでありますが、これは株式の譲渡を禁止するというものではもちろんございません。しかも譲渡につきまして取締役会の承認がないときは、第二百四条ノ二以下の規定におきまして投下資本の回収の道を講じておりますので、改正法案におきましては、適正な価額による株式の譲渡は保障されておるわけでございます。
 しかも株式の譲渡制限の定めを設けるにつきましては、発行済み株式総数の三分の二以上の賛成に加えまして、総株主の過半数の賛成をも必要といたして、一般の定款変更の決議よりも厳重な要件を必要とし、さらにこの決議に反対する株主には、決議がなかったとすれば、その株式の有すべかりし公正な価額をもって買い取るべき旨を会社に対して請求することができることにいたしております。
 以上の措置によりまして、株主の保護のために十分の措置が講ぜられておるものと、かように考えておる次第でございます。
○田中(武)委員 ただいまの御回答は、先日の御答弁を若干詳しく言った程度で、何ら前向きになっていない。おそらくそういうことは少なかろう、こういうことであろうが、先日も申し上げたように、法というものはあらゆる可能性を考えていくべきじゃないか、そういうことで私は提案したわけです。ただいまの回答ははなはだ遺憾です。しかし、時間の関係で議論はいたしませんが、こういうような考え方はできないのですか。たとえば緊急に必要とするような場合、所有株券を供託する、そのことによって会社は――額面高の何%かということはきめるとして、払うというようなことであるならば差しつかえないのじゃないか。そしてまれに一つくらいかもわかりませんが、そういうことで人命にも関するようなことがあり得ると予想されるのですから、そういうことに対する救済規定が必要ではなかろうか。
 それから第二の点につきましては、これはどうかと思いますが、商法二百七十二条の取締役の行為の差しとめ請求権というものが使えるか使えないか。
○新谷政府委員 最初の御質問の、緊急の場合に株券を供託いたしまして、それを会社のほうで相当と認める金額で一応引き取るという形にしたらどうか、こういう御意見でございます。
  〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
そういうことも考えられないじゃございませんけれども、特にそういう緊急の必要がある場合ということで法律に書くといたしますと、この判定が非常にむずかしいという問題が一つございます。それから一般的に、これは譲渡制限の場合だけに限らないと思うのでございます。譲渡制限をしなければならない会社といいますと、御承知のように同族的な会社、閉鎖的な会社が多いわけでございまして、そういった会社についても同じように考える必要があるまいか。また、そこまで参りますと、会社の自己株式の取得の範囲が広がっていくというふうな問題にもつながっていくのではあるまいかというふうに考えられるわけでございまして、そういう点の御意見も十分考慮に入れまして、さらに研究はさしていただきたいと思います。
 第二の問題でございますが、総会の決議についての差しとめでございます……。
○田中(武)委員 だから、そういうような考え方はできぬか。少数株主を保護するためにその行為を待ったというような、それは総会の――二百七十二条はそうなんですがね、インジャンクションの規定があるのですよね。だから、そういう考え方で――何かかってに譲渡をしておる。それは都合だけでやる。こういう場合に、既得権を侵害せられるという立場の者が、いわゆるそういった差しとめ請求権といったようなものを使うような考え方はどうか、こういうことです。
 第一点についても、私はあなたが言ったように、特に緊急な場合ということになればいろいろ問題があるということなら、あとで出てきますが、「特ニ有利ナル」というのと同じことで、そういう字句について問題があるから云々というなら、法律は全部そうでしょう。しかし、それは自然に、社会通念によって用語についての観念は成立していくんじゃないですか。したがって、そういう字句があるならば混乱を招くとかいうようなことでは、「特ニ有利ナル価額」ということばにも同じことが言えるでしょう。それは答弁にならない。そうでしょう。私は二百七十二条がそのままというんじゃないですよ、のような考え方のインジャクションの規定はどうか。
 もう一つは、株券を供託することによって、額面なんかは、全部じゃないです、半額でも何でもいいですから、さしあたり支払う、こういうことによって、そういったいつでも売れるんだと思っているのが禁止によって売れない。話をしたが、――私は大体話がつくだろうと思うが、つかないときを予想して、数項目にわたる規定を入れておるのでしょう。資金回収についての規定を数項目入れておるでしょう。ならば、そこまでなぜ考えられなかったか。少なくとも立法にあたっては、私は考え得られるあらゆる可能性について追及していかなければならないと思うのですよ。そうじゃないですか。万々なかろうというようなことではだめです。それなら法務省としての値打ちはない。立法のときにはあらゆる可能性を考える。私の言ったことが絶対にないとおっしゃるなら、それは下がりましょう。そうじゃないでしょう。あり得るのでしょう。この場合私の提案していることであるならば、これはほかのことにあまり、条文をさわったり、がたがたしなくとも済む問題なんです。そして、あり得るであろう緊急救済ということにできるんじゃないですか。もうこれ以上は議論はしません。お聞きの委員諸君、どうですか、今度の修正を考えませんかね。法律の専門家いかがですか。お答え願います。
○新谷政府委員 田中委員の御意見も、御意見としては十分拝聴さしていただいたわけでございます。譲渡制限の決議につきましては、特別に慎重な手続を踏みまして、このような規定を置いたわけでございます。そういうふうな差しとめの問題ということにつきまして、確かに御意見のようなこともあると思いますが、これは今後の問題として、もう少し研究さしていただきたいと思います。
○田中(武)委員 では、この点はその程度にしましょう。しかし、今度じゃなしに、この際ひとつ専門家の委員の方にそういうことを検討してもらいたい、こういうことを委員長に要望しておきます。
 次に、ちょうど質問が切れたところは、裏書き制度あるいは譲渡証書でなくて、交付だけで売買が成立する、こういう点だったと思うのです。そこで、もう一ぺん確認しますが、これは動産の売買の成立要件及び対抗要件とどこが違うか。
○新谷政府委員 二百五条の新しい規定は、株式を譲渡いたしますには「株券ヲ交付スルコトヲ要ス」と書いてございます。したがいまして、株式の譲渡というものにつきましては、譲渡行為という――これは契約でございましょう。意思表示と同町に株券の交付という要件が加わらなければ、株式の譲渡の効力が生じないわけであります。この二つが相まって株式の藤波の効果が発生する。一般の動産の場合におきましては、物の引き渡しが必要でございません。これは意思表示だけで、完全に所有権が移転することになります。したがいまして、物を引き渡すかどうかということは、第三者に対する対抗要件でございます。したがいまして、株式の譲渡の場合に物の交付が要件になっておりますのは、譲渡そのものの要件でございまして、これは対抗要件という趣旨ではないわけでございます。動産の場合には、物の引き渡しが対抗要件でございます。そこが、株式の譲渡と一般の動産の譲渡の場合の相違点であろうと思います。
○田中(武)委員 そうしますと、当事者間においては成立しておる。しかし、会社及び第三者に対して、交付だけで対抗要件が出るかということに対して、先日、会社に対しては株主名簿を書きかえない限り対抗要件はない、こういうことだったですね。そうすると、紛失とかあるいは盗難とかの場合に、A、B、C、Dと移ったときの占有者ですね、これの地位はどういうことになりますか。第三者に対する対抗要件を持っていますか。
○新谷政府委員 株式を紛失いたしまして転々と譲渡する、あるいは盗まれた株券が転々と譲渡いたしました場合に、株券の占有を失いました元の株主が、最後の善意取得者に対して、自分が株主だということを主張できるか、こういう問題だろうと思います。これは、善意取得者の保護は商法の既定によって、善意取得者が株式を取得するという規定かございますので、善意取得という事態が起きますれば、元の株主はその株主たる地位を失ってしまいまして、その株券が転々とすることによって、賛意で取得した新取得者が完全に株主になるわけでございます。したがいまして、元の株券を失った株主と善意取得者との関係では、対抗という問題ではなくて、その株式を取得したという法律効果によって決するわけでございます。
○田中(武)委員 そうしますと、この間もちょっと言いましたが、会社の株主名簿はAである。それが紛失あるいは盗難でB、C、Dと行った場合、一方Aは会社に対して紛失あるいは盗難届けを出しておる。ところが、あなたのいまの答弁ですと、Dが持ってくれば、これは書きかえなければいけないということになりますね。そうなんですね。
○新谷政府委員 Dが善意の取得者でございますれば、会社はそれに応じて名義の書きかえをするということになります。
○田中(武)委員 盗難届けなり紛失届けが出ている場合、善意であるか悪意であるかということは、会社にそれを調査する義務はありますか。
○新谷政府委員 これは株券の所持――従来の現行法によりますと、裏書きの連続ということによって、株券の占有者の資格が適法なものであるという推定を受けます。今回の改正によりますと、「株券ノ占有者ハ之ヲ適法ノ所持人ト推定ス」と、こういたしております。したがいまして、会社といたしましては、その推定をくつがえす明白な反証を持っておりますれば別でございますけれども、善意の取得者だと称する者が、株券を持ってきて名義書きかえを求めました場合に、会社側は、それをくつがえす証拠がなければ、名義書きかえに応じなければなりません。これに応じた場合に、会社の責任はそれで免責されることになります。新しい取得者が名実ともに株主として扱われるということになります。
○田中(武)委員 善意の占有者が所有者であると推定するこういう場合に、紛失描けを出しておれば、後になって、旧株主と会社の間にやはり紛争がありますね。そういう場合には、一体保証責任はどこにあるのですか。と申しますのは、紛失届けなり盗難届けを出しているという事実、これが来ていると、事実は会社はわかっているのです。そうすると、持ってきたものがA、B、C、Dと転々としておるだろうが、一応悪意と推定するのじゃないですか。盗難届けあるいは紛失届けが現に出ているのでしょう。
○新谷政府委員 盗難にかかりました者がAといたしまして、それが事故届けを出した。ところが盗んだBが、C、D、E、Fと、こういうふうに転々といたしました場合にC、D、E、Fは、Aが失ったものかどうかということは知り得ないわけでございます。したがいまして、事故届けが出ているということによって、C、D、E、Fの悪意であると推定することはできないと思います。
○田中(武)委員 そこにまた問題が残るし、あとで会社と旧株主の間に名義書きかえについての紛争が残るだろうと思いますが、一応この点はこの程度にします。しかし、実際の扱いにおいては何らか考える必要があるのじゃないかと私は思いますね。
○新谷政府委員 株券を紛失した場合に、いま仰せのように、事故届けを発行会社に出しておるようでございます。その場合に、事故届けのありました株式の扱いにつきましては、業界におきましても、いろいろ扱い方をそれぞれ定めておるようでございまして、その点は慎重に調査いたしまして処理しておるように私は聞いております。
○田中(武)委員 公告して失権するという方法はあるでしょう。それとの関係はどうなりますか。ところがこういう公告はあまり見てないということで、善意の取得者になりますね。
○新谷政府委員 非常にこまかい御質問になってまいりますが、紛失いたしました場合に、公示催告して除権判決を求める。それと善意取得者の関係、こういうことになるわけでございまして、これは確かにいろいろの場合を考えなければなりませんが、問題は確かにございます。
○田中(武)委員 問題があることはわかったのですから、この程度にします。これは、やはり行政というか、何か考えるべき点があることだけは確認できたと思います。
 次に、今度の改正によって交付ということでやる、これに関連しているだろうと思いますが、株主名簿にだけ登録しておいて、そして株券を発行しないという制度ができる。これは安定株主はそうだろうと思います。それから寄託制度というか、それも今度あるようですが、これは会社によると自分が判断するということで、たとえ改正になっても、定款でそんなことはやらないのだ、こういうことをいっておるわけですね。
 それから、そう考えた場合に、株主名簿だけで、株券を発行しない。そうすると株主名簿だけが唯一の権利の根拠です。いわば一つの登録機関のようなものだと思うのです。登録制度のようなものですね。そうすると、会社対株主というひとつの利害関係になる。一方だけがそういった権利を持って、片一方は登録だけで何も持ってないのです。そこで、登録機関というものを別に考える必要はないですか。そうでなければ、そういう場合、そんなことはあり得ないけれども、かってに変えられてしまったら、こちらは証拠がないのですね。そうでしょう。株主名簿に千株と書いてあるだけで、株券は持ってないのです。それが五百と、いつの間にか直っていたときはどうするか。それはあり得ないことはないと私は思う。しかも、この場合は、会社対株主は利害対立の関係に立っておる。一方にそれを持たすということでなく、何らかの機関による登録制度というか、登録機関、こういうものは考えられませんか。
○新谷政府委員 株券の不発行制度をとるかとらないかという最初の点でございますが、これは、先ほど金子参考人からたしか御質問に対するお答えがございましたが、確かに、事務の面から申しますと非常に繁雑な面も起きるかもしれません。しかし、株式会社という以上は、やはり株主のほ
 うをまず第一に考えるべきでありまして、こういった株主の不安を解消する措置が講ぜられているのに、むやみにこれを排除するということは、そう簡単にはできないことじゃあるまいかというふうに自分は考えるというふうに金子参考人は先ほどお述べになりました。私もその点は同意見でございます。
 それから、不発行の措置をとりました場合に、その者が株主であるということを確認できるのは会社だけであって、株主のほうは何らの資料がないのだから非常に不安定になるのじゃないかという御心配でございますが、これは、今度の新設のの二百二十六条ノ二の二項でございますが、これは第一項が、株券の所持を欲しない旨を会社に申し出ました場合の措置が書いてございまして、第二項に、この規定を受けまして、「前項ノ申出アリタルトキハ会社ハ遅滞ナク株券ヲ発行セザル旨ヲ株主名簿ニ記載シ又ハ株券ヲ銀行若ハ信託会社ニ寄託シ且共ノ記載又ハ寄託ヲ為シタル旨ヲ株主ニ通知スルコトヲ要ス」と書いてございます。これは、通知という形を法律上は定めましたけれども、実際問題として、領収書と通知を合わせたような形のものを発行会社としては出す必要があろう、またそうすべきであるとわれわれも考えまして、この措置を特にとったわけでございます。これによりまして、株主は、この通知書は株券ではございませんので、有価証券ではございませんので、転々といたす心配はございませんが、これがございますので、会社にそういうものを寄託している、あるいは不発行の措置をとっているということの証拠が残っているわけでございます。御質問のような心配はないのではあるまいかと考えております。
○田中(武)委員 一つの登録機関といいますか、それは、銀行もしくは信託会社がそういうつとめをする、それに対する証拠としては、会社が出す通知書によって挙証できる、こういうことですね。
○新谷政府委員 さようでございます。
○田中(武)委員 この決議権の不統一行使の問題ですが、これが一番明らかになるのは、たとえば団体の持っている株、それは、たとえば役員が十名おって、その行使については七対三に分かれる。その場合、七〇%が賛成、三〇%が反対というふうな場合ははっきりと不統一行使の基礎ができる。その場合に、少数のほうは会社に対して株券の買い取り請求ができるか、やった場合に、それは三〇%についてか、持ち株全体についてか、それが破れた場合ですね。
○新谷政府委員 ただいま御質問の意味、ちょっとお尋ねしたいのでございますが、団体が持っております場合と申しますのは、法人格がない団体で、その代表者のような人が信証的に持っておる場合……。
○田中(武)委員 信託は別です。いわゆる何々法人であるとか、何々協同組合だとか、何とか株式会社とかいう法人……。
○新谷政府委員 法人が持っております場合には、法人そのものが株主であり、同時に形式上株主名簿に記載されておるものでございます。したがって、その団体の構成員の各自がその株式を持っておるということではございませんで、団体そのものがその株式を持っておるわけでございますから、この場合には不統一行使はできますが、会社としては拒否できるということになるわけでございます。
○田中(武)委員 拒否できますかね。その団体の執行部とでもいいますか、役員会とでもいいますか、そこでこの行使について議論が分かれた、そして七対三になった、そういう場合。
○新谷政府委員 お尋ねの場合は、個人が持っておりまして、その個人が七、三でこの議案には賛成だというふうな場合と同じ問題じゃないかと思うのでございます。したがいまして、団体が持っておる株につきまして役員の意見が七対三に分かれたという場合にも、その団体そのものは……(田中(武)委員「だからそういうように行使しようとそこできめた……」と呼ぶ)行使しようときめまして、行使するには二百三十九条の二の第一項によりまして、三日前に会社にその旨を通知しなければならない。これが第二項の規定にまいりまして、その不統一行使をしようとする「株主が株式ノ信託ヲ引受ケタルコト共ノ他他人ノ為ニ株式ヲ有スルコトヲ理由トセザルトキハ」会社はその議決権の行使を拒むことができるとございますので、ただいまの場合には、他人のために株式を有することを理由とするものではございません。したがいまして、発行会社としては、その議決権の不統一行使を拒むことができる、こういうことになると思います。
○田中(武)委員 ちょっと待ってくださいよ。団体が持っておるんですね。名前は団体の名前になっておる。その場合に団体の意思を決定する機関が七対三に分かれた。そこで不統一行使ができるからというので七対三で行使しようじゃないか、こうきめた場合、会社はやはり拒否できるのですか。これは信託会社じゃなしに、普通の場合。
○新谷政府委員 普通の団体の場合を考えております。ただその団体の執行機関の意見が七対三に分かれたという場合でございます。そういう場合に七対三で不統一行使ができるかということでございますが、これは他人のためにその法人格を有する団体そのものが株式を持っておるものじゃございませんで、これは団体そのものが自己のために株式を持っておるわけでございます。したがって、執行機関の意見が七対三に分かれましても、その七対三に分かれた執行機関のために株式を持っておるのではございませんから、これは一般の個人の場合と同じになります。したがいまして、発行会社がそれを許せば不統一行使は可能でございますけれども、この第二項の規定に抵触いたしますので、その場合には発行会社は不統一行使を拒んでも差しつかえない、こういうことになります。
○田中(武)委員 では、その拒まれたとき、あるいは許されて行使して負けた場合、その三〇%の人たちが買い取り請求を出すということ、これはその株主が直接じゃないだろうが、やった場合、それはその法人といいますか、団体の持ち株全部に及びますか、その三〇%になりますか。
○新谷政府委員 ただいまの買い取り請求は、譲渡証券の定款の変更に関連しての御質問と承ってよろしゅうございましょうか。
○田中(武)委員 いや、一般の買い取り請求もある、だろう。
○新谷政府委員 一般の買い取り請求と申しましても、役員が七対三に分かれて役員がその買い取り請求をすることができないわけでございます。団体の株式でございますから、団体がその株式を売買する分には、これは一向差しつかえございませんけれども、その団体そのものでない役員が、その株式を買えというふうなことは言えないと思います。
○田中(武)委員 この不統一行使が役に立つのはこういう場合じゃないかと思うのだが、そうじゃないですか。それじゃ、この不統一行使ということを特に今度改正で入れるということは、どういうところに利点があるのですか。
○新谷政府委員 ただいまお話しのような、団体そのものが持っておる、団体と申しますか法人が株式を持って、株主名簿上もみずからが株主になっておるわけでございます。しかし、ここで特にこういう必要性が出てまいりました直接の動機は、投資信託の場合におきまして、証券会社が信託会社なり銀行に委託いたしまして、銀行が株式を保有しておるわけでございます。株主名簿上もその銀行が株主になっておりまして、株主は銀行のみでございます。ところがその銀行に委託いたしております証券会社は甲、乙、丙、あるいはそれ以上あるかもしれません。その場合に、株の取り引きは、甲なり乙なり内という証券会社の指図に基づいて銀行がやっておるわけでございます。しかし、形式上の名義人は、銀行そのものでございます。しかも、その投資信託の場合には、発行会社から出します配当金は、銀行を経由して証券会社のほうにまいります。したがいまして、的に株主としての利益を受けておりますのは証券会社でございます。そうしていまの投資信託の場合には、証券会社がこの議案に対して賛成という場合には銀行も賛成の議決権の行使をしてもらいたい、反対の場合にはそのようにしてもらいたい、こういうことになるわけでございます。ところが、甲、乙、丙とございますので、その意見が必ずしも一致しない。賛成の会社もあれば反対の会社もある。その指図にしたがって銀行が議決権を行使いたします際に、賛成が三分の二あるいは反対が三分の一というような形になって、不統一行使を行なう、こういうことでございます。
○田中(武)委員 いまの団体の持ち株の場合は、ちょっと保留します。こっちもちょっとその本を持ってきていないので……。
 それでいまの典型的な場合は投資信託会社だと思うのです。投資信託会社の場合は、おっしゃるように受託銀行が株主である。そうして甲、乙、丙というような証券会社といったようなものが預けてある。いままでならば、形式的にここで保有しておった、ところが甲、乙、丙が、それぞれ違った意見を持っておった、その場合に、それぞれの指示に従って入れる、こういうことのために変えたんだ、これは一つの不統一行使の典型的な場合だと思います。そこで、そうなるとするならば、実際金を出しておるのはいわゆる大衆投資家ですね。これは議決ということは重きをなさずして、むしろそれは利潤だけを考えておると思うんです。しかしこの場合はほんとうの投資家というものはたな上げするとして、そうしますと、証券会社が甲、乙、丙、それぞれ言っていくということによって、いままで受託銀行が形式的に行使しておったようなものが、今度は相当意識的な行使に変わってくる。こういうことは金融資本の産業資本への介入の道を強く広げてくるのじゃないか、こう思いませんか。
○新谷政府委員 むしろ金融機関のほうが証券会社の指図に従うわけでございます。したがいまして、いま仰せのようなことにはならないのではないかと思います。
○田中(武)委員 一般の投資家はつんぼさじきに置かれておる。そして証券会社が思うようにやるわけです。いままではあまりそうじゃなかった。そこで、証券会社の意識的な意見というものは入ってくるでしょう。それは産業資本への、産業界への――証券会社もこれは一つの金融資本でしょうな。これが意図的な配慮と言いますか、そのことによって株を上下させるというか、そういう意図的なものも出てくるのじゃないですか。これはあり得ると思いますが、そうじゃないですか。
○新谷政府委員 私、必ずしもそうはならないと思うのでございます。一般の投資家は、証券会社から受益証券を受けまして、その金の運用を証券会社にまかしておるわけでございます。証券会社はその契約に従いまして、受益証券に定めるところに従いまして、誠実にその金を運用する義務があるわけでございます。ですから、そのときどきの情勢に応じまして、現時点においてはこういう株式が有利だ、あるいは不利だということを判断しながら、その証券会社の責任において運用していくわけでございます。これも一般の投資家のために証券会社が活動するわけでございますので、特に証券会社がそういう介入的な行為をするということはあり得ないのじゃないかと私は思うわけです。
○田中(武)委員 ちょっと意見が食い違ったのですがね。結局、私の言わんとするところは、実際の投資家の意思は無視せられて、そして証券会社の意思というものが入ることによって、株が上がったり下がったりするという見通しをもって意図的に使用せられるのじゃないか……(「そういうことはあってもわからぬでしょう」と呼ぶ者あり)わからぬけれども、そういう道を開くのじゃないか。だから証券会社というか、金融資本の一つの産業資本への介入という道が開かれるのじゃないか、こう思うのですが……。言っていることはわかりませんか。
○新谷政府委員 わかります。
○田中(武)委員 それでは、意見を聞いておくことはそれでよろしいです。法律論じゃないですから。考え方の差だろうと思うのですが、そういうことはあると思うのです。いままでだったら、銀行が形式的に使うておった。ところが、いままでは銀行の意思なんですが、今度は証券会社の意思だから、証券会社が意図的に上場している株の上下ということを考えてやるという余地が出るのじゃないか、そういうことと、一方、ほんとうの投資している一般の投資者というか、株主というのは投資家ですね。これの意思とは逆なものが出てくるのじゃないか、こういうことを言っておるのですが、どうも食い違いのようですね。この点については先日も鍛冶委員がやっておったようですが、これも保留しておきましょう。
 私は、実は二時半ごろにはやめたいのです。あとたくさんありますが、きょうは一つだけ、わざわざ通産省の企業局長に残っておってもらったのですから、そこの点だけを伺っておきましょう。
 外資法の十七条の二の二項、この場合は、新株の引き受け権の譲渡は書面による会社の承諾がなければ対抗要件はない、こう書いてあるわけですね。今日までADRの制度についてはどういうふうに運用せられておりましたか。
○島田(喜)政府委員 ADRの運用等については、私はちょっとわかりかねるわけでございますが……。
○田中(武)委員 そうすると、これはどこでしょうか。
○島田(喜)政府委員 これはやはり大蔵省でございます。
○加治木説明員 外国でADR方式によって株式が保育されている場合、その親株に対して子株が割り当てられたときの引き受け権を特に譲渡できるようになっております。この場合は会社で引き受け権譲渡についての承諾書を発行いたしまして、それに基づいて引き受け権を譲渡することができる、こういうことになっておるようであります。
  〔小島委員長代理退席、委員長着席〕
○田中(武)委員 外資法はそのとおりなんです。ところが、実際はそうじゃないでしょう。外国、特にアメリカですが、アメリカでは株券そのものを動かさずに、ADRが発行する証券というのか、ともかくそれが回るのですね。新株引き受けの場合もそれだけが独立して……。だから今度そういうようなことにもなり得るような改正になりましょう。いままでけそれはなかったわけです。そういう新株引き受けだけが独立してアメリカで売り出されておったのでしょう。その場合、ADRは外資法十七条の二による承諾書を取らなければいかぬのです。ところが実際は取っていないでしょう。取っていますか。
○加治木説明員 この法律はADRの場合だけを対象に規定しているものではございませんで、外国株主に対して引き受け権譲渡の道を開いたわけでございます。ADRの場合ですと、ADRを現実に所有しているところ、これは大体銀行ですが、受託銀行がその新株の割り当てを受けた場合、当然受託銀行にいくわけです。受託銀行が自己の判断に基づいて新株を引き受けてもよろしいし、その新株引き受け権を譲渡して、金銭でもってADR財産に組み込んでもいいわけであります。それは現実にどの程度利用されているかということは、ちょっと私いま資料を持っておりません。
 それからADRの場合でない場合、外国の株主がこの法律に基づいて引き受け権譲渡の方法を利用しているかどうか。それについては私はいま実際の利用の程度を承知いたしておりませんので、もし何でしたら、あるいは国際金融局等では資料があるかもわかりませんので、調べまして御返事申し上げます。
○田中(武)委員 外資法十七条の二はADRだけについて規定しているのでないことはわかっているのです。どういう実際かということについては、東芝の例で見ました場合、外国人株主ば、四十年九月の有価証券報告書で、一千六百六十三人であり、そのうち一人がADRホルダー、すなわち名義人であって、一人の名義人であるのが約千八百人が含んでいる。したがって、外国人の株主の総数が三千四百余人で、その持ち株の比率はおよそ相半ばしている。東芝の場合はこういうことなんです。だからADRを通じて持っているのと、それから直接株主になっているのとは、東芝の場合は大体半々だといわれている。相当な利用があるだろうと思うのです。ところがこのADRのときば、あなたがおっしゃるように、外国の信託会社が株主になる。しかし実際は日本の銀行へ株券を預けているのです。そうして別にADRが何か証券みたいなものを発行して、それが流通しているのです。そのときに、新株引き受けの場合にやはりそういうものを発行して回しているわけです。それはいまから改正しようというのと同じようなかっこうがすでに行なわれているのです。しかも外資法十七条の二によると、会社の承諾がなければ対抗要件にならない。ところがほとんどがそれを取っていないというのです。そうしたら十七条の二の違反といいますか、これは大蔵省になるのか通産省になるのか知らないが、外資法を管理しておるところが知りながら見のがしておるといいますか、看過しておるといいますか、そういうように聞いておるわけなんです。それなら問題だと思うのですが、その事情はつかまれていませんか。
○加治木説明員 ちょっと私ただいま承知いたしておりませんけれども……。
○田中(武)委員 これはどこならわかるのですか。私の聞いておるところではそういうふうに聞いておるのです。外資法の十七条の二の違反がADRというところで公然と行なわれておる。違反というか、対抗要件を持たないものですね。私の見たところでは、東芝だけを見たのですが、半々ぐらいの率である、こういうふうにわかっておるのです。だから相当利用者がいる。しかも今度の改正がADR式といいますか、最初私は、一昨々日ですか質問したときに、アメリカ式観念による改正と日本的なものとがミックスしておると申し上げたが、アメリカ式な改正の一つだと思うのです。これは改正にあたって、ADRのそういう実態は法務省はつかんでおりませんか。
○新谷政府委員 ADRを発行いたしましたときに、書面による会社の承諾があるかないかというところまでは承知いたしておりません。
○田中(武)委員 そういうように私は聞いておるし、ある資料を持っています。したがって、それではこれは国際金融局で調べて報告していただきましょう。
 委員長、はなはだかってですが、最初に申し上げたように私も都合もございまして、まだだいぶ質問事項があるのですが、どうせ三時までやっても終わりませんので、法案の採決その他はレギュラーの委員におまかせして、法律が終わったあとといえば、葬式が済んでから医者話のようなことになりますが、あらためて当委員会において質問する機会を与えていただきたい、そういうことをお願いしておいて、きょうはこの程度にします。
○大久保委員長 本日の商法の一部を改正する法律案に対する質疑は、この程度にとどめます。
     ――――◇―――――
○大久保委員長 法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 本日は、ただいま問題になっておりますいわゆる春闘の問題に関連いたしまして、国鉄労働組合の福山駅の問題と、それから熊本の九州通信局で行なわれましたビラ張りの問題に関連する警察権の不当介入について御質問申し上げたいと思います。
 最初に、九州通信局の関係でございますが、九州通信局におきましては、大幅賃上げ、不当処分撤回問題にあわせまして、要員、勤務条件を中心とした地方統一要求を九州通信局に要求いたしておるわけでありますが、それに対して九州通信局長は組合との団体交渉には応ぜられない、組合は団体交渉をしたいということで問題が起きたわけです。これは四月の十五日の問題でございますが、九州通信局の玄関では早朝から会議用机でバリケードがつくられ――これは当局のほうからです。白腕章が人がきをつくり、職員証の呈示を求め入局させていたわけでございます。玄関の内外にいた白腕章は七、八十人くらいでありまして、通用門を含め約二百人くらい、小雨の降る中をかさをさして、白腕章をつけていない私服の公社職制は、付近の道路上に四、五人ずつ一組になってたむろしていたわけであります。これに対しまして、全電通におきましては、その一人が八時ごろから――玄関前のすぐ隣が熊木県の支部になっておりますが、その支部から宣伝カーで、この事態を招来せしめた局に猛省を求めてバリケードで職員の入門を妨害している行為をやめるよう流していたわけであります。そのころ、局玄関前にいた組合側は、地方本部役員五人だけであったわけであります。北署公安課員東田、東という方が、私服でここの中に来ておることが判明していましたが、玄関前、それから玄関踊り場付近には公社の私服が数十名いたため、だれが警察か、だれが私服か、全く判明しがたい状態でありました。私服警官数名はトランシーバーでひんぱんと連絡をとっていたのでありますが、組合の地方本部役員五人による抗議行動としてのビラ張りは、踊り場近くの手すりにビラ張りを始めましたから、公社の私服と白腕章がどっと五人の周囲に集まった。これは八時二十分ごろですが、ビラ張りが開始されると同時に、スピーカーをかかえてマイクを使い始めたけれども、その第一声はあまりに近距離のため声にならずにキーキー言っていたようなありさまであったのです。そうして私服の警察官と一緒になっておるものですから、組合員を挑発し始めたわけであります。そこで公社の畠山、この人は第一人事係長ですが、公社のピケに守られるようにして連呼して挑発をやめようとしなかったわけです。そういうような状態の中で、組合のほうでは、ピケを張って、そういうことをやめてもらいたいという抗議をしても、聞こうともせず連呼するので、半ばあきらめてこのビラ張りをしようとやったわけです。そこで畠山がビラ張りをしようとした耳もとに近づいて、ビラ張りはやめろとどなったので、これに対して、うるさい、やめてもらいたい、と顔と体を振り向けた拍子に、手に持っていたのりのついたはけが飛んじゃったわけなんです。それでそののりが畠山氏のレインコートと顔に少しかかったわけです。それだけのことがいわゆる問題でありますが、付近にいた北署の公安課長がみずから、逮捕する、逮捕だと言って、これは小官壮介という人ですが、小宮壮介氏の腕をかかえたわけです。それに対しては、踊り場付近にいた私服警官は、一時はあっけにとられていたほどであったのです。どうしてそういうことをするかと抗議しましたら、いや、逮捕だというので、熊本北署に強引に連行したわけであります。そこで組合の役員がその抗議をして、二、三分で玄関のところへ帰ってきますと、もうビラは完全にはいでしまってきれいになっておったわけです。
 小宮壮介氏がうしろを振り向いた拍子にのりのついたはけが落っこちて、その拍子に畠山人事係長のレインコートと顔にのりが少しかかった。それで公務執行妨害で北署に連れていかれまして、そうして公安課長みずからが取り調べに当たった。県警本部、検察庁に連絡をとり、指示を受けたら、これは公務執行妨害だ、実質はビラ張り行為そのものを、これはいわゆる器物損壊であるべきなのに公務執行妨害で逮捕しまして、引き続いて実地検証するというので、ものものしく北署から大勢やってきまして、しかも三時間にわたって行なわれたわけでありまして、ビラはもうすでに公社側の手で取り除いてあって、器物損壊ということは、見ようとしても全然ないわけなんです。そういうわけで逮捕されたわけですが、十五日はとめられまして、その翌日、十六日に北署は組合の地方本部にガサを入れまして、証拠品としてバケツ一個を押収して帰ったわけであります。そうしてさらに十六日とめまして、十七日の午前八時ごろ、身柄は北署から検察庁に移され、熊本地方検察庁は、検事勾留の請求をしたわけであります。その理由は、証拠隠滅と逃亡のおそれがあったわけですが、翌十八日の午後、勾留請求は裁判所から却下された。そこで検察側は、準抗告をしまして、その準抗告がいれられた、こういう状況にあるわけですが、組合と九州の通信局との間に団体交渉が行なわれないから、ついにビラ張り行為に出て、そしていま申しましたような畠山第一人事係長だそうですか、この方がそばに来て、ビラ張りをやめろと言うので、うしろを向いた拍子にはけが落っこちてのりが少しレインコートと顔にかかった。こういうことなんですが、ビラ張りだけにすればこれは軽犯罪ですから勾留できないと思うのです。また緊急逮捕も条件が整わないのじゃないかと思います。まず公社のほうから、なぜ団体交渉を拒否してビラ張り行為までやらせておるか、そこのいきさつをお伺いし、さらに、いまの逮捕の問題については検察庁のほうにお聞きしたいと思います。
○遠藤説明員 いまの事件につきましては、実はまだ詳細な報告をとっておりませんので詳細にはわかりませんが、私が口頭で受けました報告によりますと、いま先生がおっしゃったものとはだいぶ内容が違うわけであります。と申しますのは、御承知のように労働組合法上きめておる団体交渉というものは、電電公社と労働組合との間では正規の労働協約によりまして一定の手続をして行なうことになっております。その団体交渉は一定の手続のもとに当日も現在も行なわれております。いま先生のおっしゃった団体交渉というのは、名前は団体交渉でございますが、私どもは集団交渉と称しておるものであり、また労働組合の側からいうと、いわゆる大衆行動と称しておるものでありまして、正規の労働協約によってきめられた交渉委員以外に、私ども熊本で申しますと、現場の局がございますが、当日番に当たっておらない非番者を中心とする数十人の者が、正規の交渉委員でも何でもない人が、通信局長に会わせろ、あるいは、通信局長と交渉したいということで、俗にいう押し寄せてきたわけであります。したがいまして、私どもは、成規の団体交渉は、先ほど申し上げましたように、成規の手続に従って現に行なっておるし、そういういわゆる押しかけ、いわゆる大衆行動というものに対しては、団体交渉を要請されましても、これに応ずるわけにいかないという形で、そのトラブルが起こったわけであります。
 引き続きまして起こりましたビラ張りというのも、これも実態は、少しお話しいたしませんとおわかりにならないと思うのですが、私どもは組合の掲示板でありますとか組合の事務所にビラをお張りになることについて何も申し上げておるわけではありません。また、場合によっては公社の掲示板に、許可を得られてビラを張られることについてもとやかく言った覚えはないのでありますが、現在全電通という労働組合は、御承知のようにパルチザン闘争と称する闘争を指導しておりまして、一例を申しますと、ビラ張りと申しますが、電話局でありますとか通信局でありますとかにむちゃやたらにビラを張る、およそよその人から見ますと、まことに醜悪な姿になるまでビラをべたべた張るということを計画的にやっておるのであります。その一つでこのビラ張りを行なおうとしたのでありまして、それに対して庁舎管理権を持っております通信局の秘書課の者が阻止いたしましたことに対して、若干私が聞いておるのと違うのでありますが、ばずみでのりが飛んだとかレインコートにかかったとかいうものではなくて、明らかに――まあその場でエキサイトした状態でありますから当然予想されるのでありますが、明らかにのりを向こうから故意にぶち当てるといいますか、かけた、そういう状態であったように私は聞いております。
 なお詳細は、現在報告を書類でとっております。
○坂本委員 警察の意見はあとにしまして、いま職員局長のお話があったけれども、私も実はさきおととい県会議員の選挙をやっておるから行ったわけです。そこでちょっと要請を受けたものですから行ってきたのです。何でもビラ張り行為は朝行って二、三枚張っただけ、こういう状態にあったわけですが、その前の日から――この日、十五日が初めてじゃないかと思うのですが、それと、それから私服の警察官が公安課長をはじめ数名来ていた、そして大ぜいの組合員は、すぐ隣ですからそこの間の道路に一ぱいおった、こういうことですが、局のほうからもうすでに予定をして北署に出動といいますか頼んだかどうか、その点いかがでしょう。
○遠藤説明員 その点は、私も実はいま報告をとっておるところでございますので、詳細にはわかっておりません。
○坂本委員 このいわゆる集団交渉というのですか、これは九州通信局だけにとっておられるのですか、全国の各局にやっておられるのですか、その点はいかがですか。
○遠藤説明員 これは、労働組合の中央本部から、期日は忘れましたが、最近春闘にからみまして、いま申し上げたような大衆行動を強化するという指令でございますか指示でございますか出ております。それに基づいて全国的に行なわれておりますが、ただ場所によりまして、こういう激しいところと、そうでないいわゆる合法の中でやっておるところと、いろいろございます。しかし、全国的にはそういう指令が春闘の中で出ておるように聞いております。
○坂本委員 これは、しかし、集団交渉といっても、組合の隣なのだから、組合の事務所とかその付近に大ぜいおられたけれども、交渉は組合の代表者若干名と局長あるいはその他のポストの方に会いたい、こういう穏やかな要求ではないかと思うのですが、その点いかがですか。
○遠藤説明員 これは全くそうではありません。いまの通信局のそれは、私どものほうも大体どこでもそうなのでございますが、御承知のように中央で申しますと中央本部の交渉委員と私どもの本社の交渉委員というのが、相互に名簿を交換いたしておりますが、それと同じように、いまの九州の例で申しますと、九州電気通信局の交渉委員というものは、正規に相互に名簿を交換いたしておる交渉委員というのが労使双方にあるわけでございます。また、その下のいまお話しの支部も、それぞれ対応して支部の交渉委員と私どものほうの交渉委員が名簿を相互に提出しているわけでございます。その成規の団体交渉は、当日も現在も行なわれております。当日朝、集団交渉という形で要求を受けましたのは、その名簿外のいわゆる非番者を動員して行なわれる大衆行動として集団交渉を要請された、要求された、こういうことでございます。
○坂本委員 そのことはちょっと違うのじゃないですか。熊本では、組合から出ておる県会議員が一人と熊本の市会議員が二人おる。この三人が一緒になって、たぶんいまおっしゃったような団体交渉をする場合のメンバーで話し合いを持ちたい、こういうことだと私ども聞いておるわけです。そこで、これはいわゆる団体交渉としての要求ではないけれども、県会議員、市会議員が一緒になって、そしていよいよ局長と交渉するのは団体交渉のメンバーが一緒になってやるのであって、ほかの者は下に待たしておいてやる、そういうような交渉じゃなかったかと思うのですが、そういうことじゃないですか。
○遠藤説明員 最後の段階ではそういうこともおっしゃったかもわかりませんが、最初はそういうことではなくて集団交渉の要晴があったように私は聞いております。
○坂本委員 その前日、前々日はわかりませんけれども、当日の朝はすでに県会議員も市会議員も出ていて、そうしてこの代表といいますか、団体交渉のメンバーが一緒に、全然会わぬで困るから、ひとつ話のいきさつはまた別にしまして、面会だけはして話はしようじゃないか、こういうことを県会議員、市会議員を通じてやったのじゃないかと思うわけですね。そこで北署から公安課長はじめ私服の警官が数名来ておるというのは、これは局のほうで要請したから来ていたのでしょうか。その点はどうですか。
○遠藤説明員 この点は、先ほどもお答えしましたように、いまの段階ではまだ私知りませんので、現在調査をしておりますので、後刻お答えすることにいたします。
○坂本委員 穏やかということは、交渉の道筋ですからあれでしょうが、とにかく県会議員、市会議員が交渉をして、話し合いはしようじゃないか、それでその話し合いは県会議員がいったか、あるいは組合の代表の人がいったか知りませんけれども、そういう過程の中で、調査でわからないとおっしゃるからいたし方ないですけれども、しかし、そういう中で北署の公安課長はじめ私服の警官が数名行くということについて要請があったかなかったか、いまちょっとはっきりしませんけれども、どうも朝の八時半、最初出勤時間の際ですから、その際警察官がそこに行ったのがどういう関係で行ったのか、その点おわかりだったらお伺いしたい。
○高橋(幹)政府委員 その点についての報告がまいっておりませんけれども、この種の一般的な原則から申し上げますと、当局者側の管理者の要請によって出る場合と、それから、そうでなくて、そういう犯罪なりあるいは衝突の危険性があるというような場合には、予防上の見地から警察独自の立場で視察に出るという場合もございます。この場合は、私の手元に報告がまいっておりませんので、いずれの場合であったかここではっきり申し上げられませんが、一般論を申し上げますと、いま言ったようなことで出ております。ただ、ここの場合は、九州電気通信局の玄関付近でございますので、外部にやや該当するようなことでありますので、要請があってもなくても、警察はそれによって視察をするということは可能であるというふうに考えております。
○坂本委員 とにかく、この出勤時の際の、当局がバリケードを張っているわけですから、あるいは私は当局のほうから要請しておったかもわからぬと思うのですが、あるいはまた、そうでなくて、ビラ張りについての――これはあとで国労との問題もあるのですが、ビラ張り行為について、それを阻止するために警官が出動したのじゃないか。特に今度のこの春闘については――去年まではビラ張りについてはあまり問題はなかったのです。これは話がつくと組合のほうからも全部きれいに取った。はいでしまえば、器物損壊どころか、かえってきれいになる程度であったですね。特にこの九州の通信局は、れんがになっておりましたから、張っても、それをはいでしまえばきれいになるわけです。そういうような関係で、われわれが一番心配するのは、ビラ張りを軽犯罪として、そして張るとすぐはいでしまう、無効にするために局のほうでやる、それ警察が応援する。こういうようなことのように私も行って話をいろいろ――もちろん公社のほうでなくて、組合のほうから聞いたわけですが、どうもそういうふうに受け取れるし、全国的に何かこういうビラ張り行為からも徹底的に今度はやる、そうして春闘を弾圧してやれ、こういうのが警察庁から全国にいっているんじゃないか、こういう疑念があるのですが、その点はいかがでございますか。
○高橋(幹)政府委員 私ども始終申し上げているように、労働運動に不当に介入するということはごうも考えていないわけでございます。先ほど御指摘になりましたように、今度の春闘にあたって、ビラ張りを徹底的に検挙してしまえというようなことは、私のほうで絶対に申しておりません。それから、この場合は六時三十分ごろからすでに第一回のビラ張りが行なわれたようでございます。そうしてその際には、労組員は一たん引き揚げまして、当局側が直ちにそのビラをはがしたということでございます。御指摘になりました八時三十分からの行為は、再び行なわれたというときに、そのビラ張りに関連をして、先ほど御指摘になったような事実ではなくて、私のほうに報告がまいっております内容においては、二回にわたって係長の顔面や胸部にそれを投げつけた、こういうことになっております。その結果、それを公務執行妨害で逮補をした、こういうことになっておりまして、ビラ張り行為そのものを私どもが特別に対象にしてやるというということではなくして、ビラ張り行為は、あくまで軽犯罪法違反でございますので、その点については、私どもはそういうことではっきり分けて考えておりますので御了解を願いたい、こう考えておるのでございます。
○坂本委員 この問題は、とにかく一度ビラ張り行為をやったかどうか、その点はわかりませんけれども、とにかく当局のほうでバリケードを逆に張られて、そうして正面の玄関は締めてしまって、職員証を持った者だけ中に入れる、そういうことから積極的に当局からそうさしたときにできた問題であって、双方からマイクでやっておるので、それじゃというので、このビラ張りを始めたら、二、三枚張ったところで畠山人事係長が「ビラ張りやめろ」こう大声で言ったから、うしろを向いたら、それは少し違うのですけれども、私が聞いたところでは、はけが飛んでしまって、のりがついたわけですが、そこで間髪を入れず北署の公安課長が「逮捕だ」というので逮捕した。こういう現実を――あまりに警察側と当局側の芝居ができ過ぎているように思えるわけなんですね。そうして、しかもこのビラ張りだけでは逮捕せずに、公務執行妨害で逮捕する。しかし、公務執行妨害にしても、裁判所は、その検事勾留請求を却下しているわけですから、ほかの大きい犯罪については逮捕もしないし、暴力問題等も起きておりますけれども、やっていながら、なぜ春闘だけを警察は、ビラ張りからこういう軽犯罪として拘留、科料ですけれども神経質になってやるのか。そういう点が、正しい組合運動ということを口で言われますけれども、実際はなかなかそうはいっていないようです。そうはいっていないし、警察が来ておると、よけい挑発を受けるわけなんです。そうすると、局のほうでは、高みの見物だ、こういうことになるわけですから、そこでこの春闘に対する一方的の弾圧だ、こういうふうになると思うのです。こういう点は、春闘は今後どう発展するか、数日の問題になると思うのですが、やはりほんとうの軽犯罪のビラ張りから警察がついていって、そうして何かやればすぐとっつかまえる、こういう方法でやれば、これは組合のほうでは非常に士気を阻喪するということになる。まあそれが弾圧だというわけですが、そういうことがひとつないように、もっとやはり、春闘の問題は春闘の問題として、大きく中央を中心として地方もやるわけですけれども、そういう方面は、先ほど申しましたように、去年よりもっとビラ張りは峻烈になっているわけですから、ここはもう少し警察官の介入というのは、労使双方平等にやるべきだ、こういうふうに考えるわけですが、大臣の所見を承っておきたい。
○石井国務大臣 私から特にわざわざ申すこともないくらいなはっきりした問題だと思うのですが、労働問題に関してのいろいろな行動につきましては、私どもは非常に公平な立場でものを扱うべきものだと思っております。労使双方に対しまして、公平な立場で見ていく、したがいまして、一方に偏するような扱いをすることは絶対にない、また、あってはならない、これが当然のあり方でございます。そういうことに従いまして、間違いのないようにわれわれは絶えず努力しているわけなんでございます。
 いまのような問題等につきましても、私、その話を初めてここで聞きますが、坂本君のおっしゃるのと警察の砥うにいままできておる報告とでは、内容的にも多少違いがあるし、見方にもいろいろ差があるようでございます。そういうところを十分に調べて、間違いのないような、そして、はっきりした姿において法は正しく適用される。法は間違って適用されるべきものじゃない。適用するような法は、どんな場合でも労働者にだけ厳重に、あるいは使用者側である資本者の側に寛大であるというようなことがあってはならない。これは私ども当然のことだと思っております。政府はその方向でいままでもやっておりましたし、今後ともやっていく問題だと思っております。これから先も、こういう問題が、間違いを起こすような事件がいろいろあちこち起こってくるかもわかりませんが、起こってきた問題は取り上げて、公平に取り扱うということには私ども万全の努力をいたしたい、こういうふうに思っております。
○坂本委員 大臣は中央でそうおっしゃるけれども、現場にいくとなかなかそうはいかぬです。大体労働運動については、特に資本主義の現内閣では厳格であって、一般現場においては、どうしても法の不公平、弾圧、それが言われるわけですが、しかも今度は春闘という問題を控えてのはしりの勇み足も、ずいぶん警察で、あると思うのですよ。そういうことがないように、その扱う態勢が労使双方の解決に重大なる影響を及ぼすのですから、そういう点は、事実を調べてどうこう――法律の問題よりもその前の大きい問題があるわけですから、ひとつ十分注意してもらいたい。
 あわせて広島の福山駅の問題がありますから、その点の御質疑を山田委員からやりまして、なおあわせて政府の御所見を承りたい、そう思っております。
○大久保委員長 山田耻目君。
○山田(耻)委員 いまの、九州で起こりましたビラ張りの不当なる逮捕、弾圧、こういう立場で私たち見ておるわけなんですが、ケースはこれとかなりよく似ておりますけれども、軽犯罪の軽微な事件でございます。それでも著しく人権を侵害をしておる事件でございますので、どれだけ警察庁のほうに報告がきておるかわかりませんので、事件発生当時の状況を若干申し上げながら質問をいたしてまいりたいと思います。
 その前に、坂本先生のほうから御質問があったわけでありますが、御存じのようにことしも賃上げがかなり広範に、部分的にはかなり熾烈に展開をされております。激しい社会の中で人間として生きていくために、どうしても正当な手続に基づいた賃上げを得るという立場からの争議行為でございまして、今日のような政治、経済、社会の現状の中では、やむを得ない勤労者が到達をしていく次元であると私は考えております。しかし、例年のことでございますけれども、警察庁なり検察庁のほうの合同会議が開かれましたが、何らかの春闘に対する取り締まりの方針――いまの石井法務大臣は人格高潔な方でございますから、私はなされるとは思っておりませんけれども、過去の法務大臣の中には、ときには法務大臣みずからが取り締まりの方向を示された方もあったやに考えております。そこで、ビラ張りに対する具体的な取り締まりの指示はなかったかもしれませんけれども、春闘全般に対する警察庁の取り締まりの方針というものが、下部の県警並びに警察署に指示されておるかどうか、その点を一点お伺いしておきたいと思います。
○高橋(幹)政府委員 私どもは、先ほど御説明いたしましたように、労働争議に対する警察の立場というものは、御承知のことでございますけれども、今次春闘の問題についても、あくまでも労使双方で解決すべきものは労使双方で解決する。ただ、しかし、それに関連して違法な問題が出てきた場合においては、法に照らしてわれわれは法を適用していくという、従来の警察の立場を各府県の警察に指示をいたしております。ただし、これらの適用の問題については、いろいろな点について誤解なり、あるいは不当なことにわたらないようにということは、いつも申し上げているように厳重に申し伝えておる、こういうことでございます。
○山田(耻)委員 若干気にかかる御発言でございますが、できるだけ介入したくないけれども、一般諸法規に照らして違反事項がある場合には取り締まるという通知は出したというふうにも聞き取れるのでございますが、原則として労働運動というものは、組合法第八条にもございますように、民事、刑事の免責がございます。これは今日国際連合に加盟をしておる国の九九%が、官公庁労働運動を含めて民事、刑事の免責を取り扱っております。したがってILOでも、百五号の条約というものが今日七十カ国近く批准をされておりまして、警察権の介入等を含めた強制労働の禁止を明らかにいたしております。私は、これが社会立法として労働運動の原則だと思っておりますけれども、いまあなたのおっしゃっている労働組合の法に照らしての違反の事項というものは、どういう点をさしておるのか、その点少し原則と並べて明らかにしておいてほしいと思います。
○後藤説明員 一般原則は、労働組合法の第一条の二項にございます。これはここにございますように、「刑法第三十五条の規定ば、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」こういうのがございます。これは一般にあらゆる労働組合の労働争議、労働運動に適用されるわけでございますけれども、いま問題になっております国鉄の問題につきましては、これは申し上げるまでもなく、公共企業体等労働関係法の十七条によりまして、争議行為は一切禁止されておるわけでございます。これを受けまして、去る昭和三十八年の三月十五日には、最高裁の判決も下りまして、一般的に争議行為は禁止されております。公共企業体については、これは労働組合法の第一条第二項の適用を論ずるまでもなく、一切争議行為は違法である、こういう判決になっておると承知しておるのでございます。したがいまして、一般の労働組合でありましても、その正当な争議行為の範囲を逸脱して、あるいは正当な労働運動の範囲を逸脱しまして、それが何らかの刑罰法規に触れるという場合におきましては、これは警察の責任といたしまして当然捜査をする、こういうたてまえになっておると存じております。
○山田(耻)委員 おっしゃっているようなことは私承知をしておるつもりなのでございますが、まあ高橋警備局長もおっしゃっていましたように、いまあなたも課長として法律の立場を述べられたわけでありますが、まあ労働法の通念、労働連動上の通念として、暴力行為にわたる、こういうふうなことは、これは当然正当な労働運動とも認めませんし、そういうことまで含めて労働法で保護されるべきものだとは思っておりません。憲法二十八条でいっている勤労昔の団結権、団体交渉権その他の団体行動権というものの意味しているものは、そういう暴力行為を意味しているものだとは私も思っておりません。ただ、あなたのいまの概念の中に、今日日本で起こる労働運動というものが、公安上の立場から見ると、ややもするとそういうふうなトラブルが絶えず起こり得るのではないだろうかというふうな観念があるからこそ、幾つかの準備された出動体制が考慮なされるのではないか。そうであったとしたら、取り締まりの任に当たられる警察庁としても、私はもう少し現状をよく認識してほしい。今日日本に数多くの労働組合がございますし、幾つかの指導団体もございますけれども、少なくとも戦後二十年たった今日、労使との対決を暴力行為によって解決しようと計画をしておる労働組合は一個だにもございません。そういうことが前提に想起されて、警備体制をしかれるというあなた方の認識であったとしたら、まずその根本をひとつきょうは改めてほしい。人間同士でございますから、ときには激するあまりけんかをするということはあるでしょう。しかし、労働運動対経営者という対等の立場で相対峙する労働運動の過程では断じてあり得ない。その立場だけは、私は原則として、法を執行するものも、法を守るものも、相互理解が確立をされるところに法治国家としての原則もあろうし、今日のこういう経済悪化の状態の中で、ほんとうに苦しい、内職をしてもどうにもならないという労働者を多数かかえておる労働組合ですら、片りんだにそういう気持ちを持っていないと私は思う。この立場だけは原則として認めてやって警備体制をしいていただくということでなければ、あなたが法文の何条何条とお読みになっただけで、あなた方の立場が十二分に任務を遂行されるものとは私は理解しません。これは余分なことになりましたけれども、そういう立場で公安関係というもの、労働関係というものをながめておいていただかねばならぬということを前提にひとつきょうは特にお願いしておきたいと思います。
 そこで、いまから私が御質問申し上げる事件というのは、この三月三十日に広島県の福山市福山駅構内で起こった事件でございます。ビラを構内と電信柱に張ろうとした国鉄職員が無警告で逮捕されたというやり方であります。若干労働争議がビラを張るということの事情が起こってきた経緯を述べておきたいと思うのでありますが、御存じのように当該の国鉄労働組合というのは、昭和二十一年に結成をいたしまして、二十二年までは憲法に定めておる労働三権を保持いたしておりました。そうしてポツダム政令二百一号によりまして争議権がなくなりました。占領政策として奪いとられていったのでありますけれども、それから昭和二十五年公労法が制定されますまで団体交渉権すらもなかった組合でございます。ですから、みずからの生活の改善を求め、経済要求をするという基本的な勤労者の権利は存在していなかった。ところが、公労法の制定によりまして、団結権と団体交渉権は保障されていったのでありますが、さっき警備課長が御指摘のように、労働法上でいう団体行動権、俗にいう同盟罷業なりストライキ権は剥奪をされていきました。その代償措置として労使双方を拘束する仲裁制度が生まれてくるわけであります。ところが、公労法を施行されました初年度の昭和二十五年の仲裁裁定は、労使双方を拘束するストライキ権の代償制度であるといううたい文句で生まれた第三十五条の公労法の規定がじゅうりんをされて、仲裁裁定未実施というすべり出しから起こってくるのであります。これは皆さん専門家でございますからおわかりのように、その後東京地方裁判所でいわゆる違法であるという判決を受けまして、組合側が勝訴いたした事件がございます。組合側も御存じのように、国鉄労働組合というのはなかなか巨大な戦力を持っておりますだけに、非常に自主的な歩みを続けようとした組合であります。ですから腰が立っても実力行使に訴えることなく、法定闘争を通して、悪法といえども法であるという認識を持ちながら進めてきたわけです。そうして二十五年、六年、七年、八年、九年と五年間一度も仲裁が実施されなかった時代があるわけです。労働者の賃金は、他の公社、国家公務員と比べて非常に低下をしていった時代がございます。これは資料でいつでも証明できることです。そういうふうになってまいりまして、昭和二十九年から、これではもうどうにもならぬということで、一時間なり二時間の労働の提供をやめようじゃないか、ストライキということばは使っておりません、職場の中に集まって意見の交換をし合おうじゃないかという職場闘争の時代が昭和二十九年に起こってきます。この時代に皆さん御存じの初めて鉄道公安官と警察権の行使が生まれてまいりまして、昭和二十九年の十二月に初めて逮捕事件、刑事事件を構成するという立場の不当弾圧が生まれてきたのです。こういうふうなかっこうで国鉄労働者の権利を満たしていく、生活を高めていくという何らの手段も失ってきた国鉄労働者は、せめてビラでも張って自分たちの欲求が、現場管理者を含め国鉄総裁を含めて、意向が正しく到達をするようにという宣伝を兼ねたビラを張るという動きが起こってまいるのはそのころからであります。当時、国鉄当局はどういう態度をとっていたかといいますと、昭和二十八年暮れの、申し上げたような職場集会で公労法十七条の違反として十八条でいわゆる組合本部三役が解雇されることになったのであります。それは、当時解雇した国鉄当局の総裁、副総裁、理事なりの気打ちというものは、いまは正確に当時の気持ちを聞くことができますけれども、かわいそうな気がする、だからその後復職がなされておる人もいるわけであります。訴える手段を失っておる国鉄労働者に対して、あまりていさいのいいことではないけれども、ビラを張ることぐらいは国民、旅客に迷惑をかけることにならないから、まあ張ってくれとは言わぬけれども、張ったものば適当な方法ではがしたり、せめて張るならきれいに張るようにしようじゃないか、こういうふうなささやきもあるくらいの状態でございました。それから以後、近年の労働争議につきましては、私が申し上げるまでもなく、何か闘争すれば不当なる弾正を受け、公労法十八条に基づく解雇が続き、今日国鉄労働組合でそういう立場からの解雇を受けている者が二百四十名をこえております。このことが、さきの国会で問題になりましたILO条約八十七号批准に際してのILO本部に提訴した日本問題ケース百七十九号事件であります。この中には数字が示されている。日本における労働運動の中に関与してきた労働の側から見る不当の弾圧、それを一体国際労働慣行の中ではどうながめるのかという立場で、国際連合の一機構である国際労働機構のILOに提起されておる事件でございます。近来そういうところまで進んでまいりましたが、先般ドライヤー委員長が日本に見えまして、佐藤総理を含めて日本の官公庁労働者と政府の間には抜きがたい不信感がある。この抜きがたい不信感を解決していく道は何かといったら、政府代表者と組合代表者とで定期的に会談を持ちなさい。佐藤総理はそれをお受けになりました。そして今日続けられて、第六回を迎えた労使定期懇談会のあの前身がそこから生まれてきておる。
 その佐藤総理がお受けになったドライヤー委員長の報告の中で、次の一文があるのです。この労使の定期的会談の経緯と結果を国会に報告しなさいと書いてある。簡単なようでありますけれども、国会とは何か。憲法四十一条に定めておる国権の最高機関であるし、立法の府でしょう。その法律をつくり、法律の解釈をきちんと整理をする国会に、なぜ経緯と結果を定期的に報告しなければならないか。日本の労使間に介在をしている、政府と官公庁労働者の間に介在をしている不信感というものは、法律の中に問題があるんだという立場がドライヤーの指摘をした時点だというふうに、今日ではすべて常識的に理解をしております。
  〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
そのように、私はやはりビラ張りという行為が直ちに犯罪を構成をし、逮捕されていく――国鉄労働組合がそういう歴史をもって、ほんとうにすなおに育ち上がってこようとするこの素朴な組合の動きに対して、そういう逮捕、勾留という立場をある一事件を限ってでもとったという警察庁の認識というものは、一体どういうものなのだろうか、それをひとつ御説明いただきたいと思います。
○高橋(幹)政府委員 労働問題に対する一般的な原則なり考え方は、ただいま御説明のようによく了解しておりますが、私どもも労働問題について特別な目をもって警察権を行使するという意味のことはごうも考えているわけではございません。したがいまして、私どもはもちろん法を適用する場合において、その実際の実情なりあるいは実際の条件なりをよく勘案して法を適用していくということは、私ども常々考えていることでございます。御指摘になりましたような今度の事件につきましては、私どもといたしましては、特別にこれを目のかたきにしてどうこうせよということではなくて、この事件が発生いたしました結果について、私のほうとして軽犯罪法を適用してビラ張り事件を処理をしたということでありまして、何ら特別の他意を持っているということではございません。
○山田(耻)委員 高橋さんの御理解がまさに当日の現状に適合できるかどうか、これを私が読み上げてみますから聞いてください。
 三月三十日に、そのビラを張る指示を受けた約中名余りの者が、何班かに分かれてビラを張っていったわけでありますけれども、ちょうど逮捕されました高橋という国鉄の職員が、組合の事務所から二十メートルばかり離れておる電柱に二枚目のビラを張ろうとした。そうしたらうしろに、組合員でない私服のだれかが二人いて、張ろうとした高橋君の腕を両方からもぎ取るように引きつけて、そうして周囲にいた二、三人が、おまえだれか、何をするんだということで、氏名を聞きただそうとし、目的を聞こうとしたけれども何も言わなかった。そうして二人の私服の人間が高橋君の両腕をかかえるようにして、それから二百五十メートル離れておる福山駅前の派出所に連行していった。その途中、旅客のたくさんいるホームを通り、駅前の繁華街を通り、そうして派出所に連行していっておるのであります。その途中で組合の地方本部の役員なり、福山支部の役員が、一体おまえはだれかというきびしい追及に対して、そばに寄ってじゃまをすると公務執行妨害罪で逮捕するぞ、おれたちは警察の者だ。初めてそこで警察の者だと言ったけれども、当然、私服が逮捕するときには、警察手帳を見せてからの行為しかできないはずでございますが、手帳も見せてない。こういう状態で派出所へ連行されてまいりました。そうして派出所では、いま国鉄では夜勤をする人、それから冬外に出て雨が降っても仕事をしていく人が非常に多いわけでございますが、この人たちにアノラックといって上に着る外被のようなものを着せておりますが、高橋君はその外被を着ておったのでございますけれども、派出所に連行されて、まさに近いはぎのようにそのアノラックを引きぬがされて、ポケットに入っておるものをみんなさらけ出されて、その品物の中には、高橋君が国鉄職員であるという身分証明書を兼ねた国鉄乗車証、写真もついております。自動車の運転免許証、お医者にかかる場合の診療券、こういうものも全部そのときにひっぱり出されまして、高橋君が何者であるかということも承知ができていたはずであります。一体こういうふうな事情が――現地を私たちも事情視察をいたしました。いま私が申し上げていることが、ほとんど間違いなくそのとおりの事情として明らかにされておりますけれども、一体、警察庁のほうでは、この事情をどのように理解なさっているのか、それが逮捕する構成の要件を満たしておるのかどうか、この点についてひとつ御答弁願いたいと存じます。
○高橋(幹)政府委員 私のほうにまいっております報告によりますと、前日の二十九日にすでに、同駅内の跨線橋の側壁の内側に、当局側の警告を無視しまして、ステッカー約六百枚を張ったという事実がございます。したがいまして、その翌日についても、いま御指摘のようなビラ張りが当時予想されたわけでございます。そこで、私のほうにまいっておる報告によりますと、のりバケツ、はけ、ステッカー等を持った国労員十五、六名が参りまして、そうして電柱四本に四、五名ずつ分かれて順次ビラ張りを開始をした。これを見た警警官は、直ちに現場に急行いたしまして、国労員四、五名に対して、警察の者だが、ビラ張りをやめなさい、こう警告をいたしたところ、国労の方々から、ビラ張りが何で悪いというようないろいろな抗議があったように聞いております。
 なお、この警告の最中に、国労員の一人が、その柱にはけでのりをつけて、その上に他の国労員がステッカーを張ろうとしたので、なおやめなさいという警告を発しました。ところが、一名が――先ほど御指摘になりました高橋という人は加藤正人という人ではないかと思いますが、私のほうに報告がきておりますのは加藤正人三十七歳でありますが、その加藤は警察官のほうをちらっと見て、そのままこれを張りつけておったということで、同人に対して住居、氏名を尋ねましたけれども、同人は黙して何ら答えなかったということで、軽犯罪法一条違反の現行犯として逮捕いたしたということで、そのときに警察官の身分を表示しなかったのじゃないかと示う御指摘のようでございますが、私のほうにまいっております報告によりますと、警告に際しましては、警察の者だが、こういうことを言いましたし、また責任者と名のっておられる方がおったようでありますが、その氏名は私のほうも不詳でございますけれども、責任者と名のっておられる男の方に警察手帳を見せたということの報告がまいっております。したがいまして、私どもといたしましては、当時軽犯罪法の適用にあたりましての警察側の具体的な手続として、不当にこれを弾圧をしたというようなことではないと確信をいたしております。
○山田(耻)委員 高橋というのは、これはあなたでございます。間違いでございました。本人は加藤正人でございます。
 いまあなたのおっしゃっていることは、何とかして、やったことを正当にして、成立の要件を満たそうとする御苦心のほどはわかりますけれども、当時の現地の事情はそういうものじゃございません。一体、鉄道の構内に私服の警官がお入りになるときには、多数の旅客が乗降しておりますので、旅客と間違えて三倍の運賃を取られてもいけませんし、警察手帳を見せたからといって、無賃パスにはなりませんからね。だから、立ち入る場合には、営業でございますから、そういう配慮もございます。いま一つは、非常に危険でございますから、鉄道の構内に立ち入ることば、鉄道営業法でも罰則規定ができておるほど厳格にされております。そういうところに警察官がお入りになるときには、どういう手続をおとりになるのか、ここで一ぺん教えていただきたいと思います。
○高橋(幹)政府委員 原則論といたしまして、管理者と連絡をして入るわけでありますし、あるいは管理者の要請に基づいて入るということでありますが、この場合は、事前に駅長と連絡の上構内に入っておると私どもは報告を受けております。
○山田(耻)委員 どういう御連絡をなさったわけでございますか。
○後藤説明員 先ほど局長から御説明申し上げましたように、前日、三月二十九日に跨線橋の内側に数百枚のビラを張ったという事実がございましたので、同日、署の警備課長が駅長、公安室長と会っているようでございます。その席上で、きょうこんなに帳られた、あすもやるかもしれぬ、よろしく頼むというような話がありました。それで、私どものほうで聞いております報告では、同日、警部補以下九名の者がホームで見ておったのであります。その入り方は、入場券を買って入ったようでございます。しかしながら、いま先生御指摘のように、入場券はホームには入ってもよろしいでしょうけれども、ビラ張りの現場にという問題ではまたおのずから別個でございますけれども、現行犯罪であります場合におきましては、当然管理者の意思いかんにかかわらず、この場所に立ち入ることができるということが刑訴法のたてまえでございます。また、それができませんでも、前日そういう話があり、また当日重ねて駅長に会って話をしておるわけでございますので、また管理者側の承諾もあったというふうに私どもは理解をしております。
○山田(耻)委員 国鉄当局、八川労働課長以外にどなたかお見えになっておりますか。――いまの事件に関してどういう報告がきておりますか。
○八川説明員 大体においてただいま御答弁のあったような趣旨の報告がまいっております。ただいま警察のほうからのお話のような内容の報告がまいっております。
○山田(耻)委員 あなた、ここは国会ですよ。団体交渉をやっているような気でいては、だめですよ。岡山鉄道管理局長の書面、福山駅長の書面、ここにあるのです。だからそれはいいですよ。あなたのわからぬことはわからぬと言ったほうかいいですよ。ですから、警察庁のほうで言っていることとほぼ同じだなんて言っていると、今度あなた別の立場が出てきます。私はあなたに一つ苦言を呈しておきます。
 福山の派出のほうから二十九日、三十日、いまのビラ張りの件について鉄道管理当局と話をしたという事実はなさそうでございます。三十日の朝八時半、駅前派出の警部補でございましようね、大下という巡査がもう一人の巡査を連れて駅長室に来て、きのうはだいぶんビラを張ったようですね、きようも張るかどうかいかがでしょう。いや、きようも張るようなことを言っておった。それだったら、ひとつ私のほうで駅構内を回ってみたい――これは大下巡査のほうですよ。回ってみたいから構内に入れてくれ。ビラを張っている事実が現認できたら、これは軽犯罪という言い方を片側で言っておられるようでございますけれども、現認できたら駅長さんか助役さんに連絡いたしますから、駅長さん、助役さんのほうでひとつ処理をしてください。そうですか、それはたいへん御苦労ですな、ひとつ中に入って見てください。こういうふうに許可を与えた。許可を与えたから、一般で駅構内に立ち入る場合に行なう許可証を与えなかった、許可証は書かなかった、こういうふうに駅長は言っておるわけであります。こういう印刷も来ておるわけでございます。
 そこで、八川さんも記憶しておいてほしいのだけれども、岡山地方本部の組合の委員長と岡山鉄道管理局長並びに総務部長との間には、国鉄用地内に警官を入れて労働争議に介入をさせようとするときには、組合側とも事前に話し合いをして国鉄の構内でそういう不祥な事故を起こさないように、組合側も厳重に戒めると同時に、鉄道管理局当局側もそのような配慮をしてほしいという申し合わせができております。いま私が労働運動の原則一般をなぜ冒頭に申し上げたかというと、今日の国鉄労使紛争の中に警察官が介入をして、逮捕権を発動しなければならないような事件は起こっておりませんよ。品川の裸事件がいい例でしょうが、そういう事件は起こしていない。将来も起こらないでしょう。それだけのことは国鉄労働組合も厳重に自戒しておりますし、日本の労働組合全体も自戒しております。そういうことをやることによってどれだけ社会的信用を失うかということをよく承知しているからです。決して労働運動にプラスにならないと思っている。だから、岡山の地方本部の委員長と岡山管理局長とがそういう申し合わせをしたというのは、私は当然だと思う。よく気持ちがわかる。そういう気風一般が岡山鉄道管理局管内の職場のすみずみにまで、管理者まで含めて行き渡っているのです。だから、こういう不当な逮捕をするものだから、構内に入ってちょっと見てきます、ビラを張っておったら連絡しますよと言うから許可したら、入って逮捕して連れていってしまったと言うて、駅長も保線区長もおったまげて、派出所にもらい下げに行っておるじゃないですか。派出所に行ってみると、アノラックをぬがして、上着をぬがして、ポケットのものを全部出させて、総数三十くらい入っておりましたこまいものは全部取って、そうして証拠品として押収をして、そこで氏名もよくわかるのに、逃げも隠れもするわけじゃないのに、派出所から十時前本署から来たジープ三台に乗せて本署に連行していっておるじゃないですか。そうして駅長と保線区長とが本署にまたかけつけていって本人をもらい下げをして帰ってきている。ほんとうに予期せぬことだった、こういう述懐をしておるじゃありませんか。警察のおやりになったことの合法化を――高橋さん、さっき手続に間違いないと述べられておりますけれども、現地の起こっておる多くの意見というのは、一体警察というのはどういう警察になっていくのだろうか、事情を新聞が報じ、ニュースが報じて受けた地域の人々の感情の中に、ビラを張ったからというて逮捕されるような世の中になったのか、軽犯罪をきめておる項目、約四十項目ございますね、こういうものが全部ばしばし逮捕されていく世の中になっていくのだろうか、こういう警察に対する不信感を起こした事件でもあるのです。いま私が申し上げた事柄、特に鉄道管理当局の状態について、もう一度高橋さんの見解なり、八川ざん、あなたの見解も述べておいてください。
○高橋(幹)政府委員 その前にお断わり申し上げておきます。いまだかつて労働争議に関連して犯罪者が出ていない、こう仰せられておりますが、昨年の春闘の際にも非常に残念なことでございましたけれども、五十何件、七十何名の威力業務妨害あるいは公務執行妨害という事件が発生したことは御承知だと思うのでございます。私どもももちろんそういう点については慎重な配慮をいたしておるわけでございます。
 また、いまの事件にいたしましても、御指摘のようにやみくもに犯人を連れていってどうこうということではございませんので、一応現行犯人としてその場で同人を逮捕いたしましたけれども、そこで同人から住所、氏名、その他の点について何ら得られなかったということで本署で取り調べたわけでございます。そこで初めて身分関係と犯罪事実が、明らかになりましたので、御承知のとおり十一時五十分身柄を釈放をしておるということでございます。
 さらに、岡山管理局の中で、いわゆる管理者と組合側においてそういう申し合わせが出ているということは、私は残念ながら承知いたしておりません。したがいまして、その点についての私のお答えは何とも申し上げられませんけれども、もし私の立場でそれを考えますならば、そこで行なわれる労働争議というものについてむやみやたらに警察が介入するということであってはならないという意味でございまして、いわゆる争議に関連いたしまして法秩序無視ということがあった場合においては、これは警察として当然の立場として、法秩序無視の部分につきましては、厳格に法を適用しなければならないという基本的な立場で申し上げれば、そういう場合におきましても、私どもといたしましては、警察の立場で法を適用していくということでございます。ただ、しかし、この問題につきましての具体的な現場の処理の内容については私も承知いたしておりませんので、これ以上私から釈明なりあるいは説明を申し上げることは差し控えたいと存じます。
○八川説明員 私のほうもそういう取りきめが労使の間で行なわれておったというお話は、ただいま承ったのが初めてでございまして、そういうものがありますかどうか取り調べたいと思っておりますが、それ以外の問題といたしまして、一般論といたしまして、こういう不測な事態が構内で起こらないようにという意味で両者が話し合いをしたという意味であればよくわかると思います。具体的にそういう取りきめがあるということは、ただいま初めて承ったということでございます。
○山田(耻)委員 八川さんのほうは、あなたも労働課長をおやりになっておるからよくおわかりと思いますけれども、できるだけ不祥事件を起こさないように……。私は裏側から全部お話し申し上げてもけっこうだと思うのですけれども、警察が出動なされば、何べんか事前に打ち合わせをして、実力行使をされる前に全体の取りまとめをするという配慮をしてみたり、幾つかの実際の場面に即して取り扱いがなされておるということはあなたもよく御存じのとおりなんです。だから、私はそういうことを国会の場で取り上げてどうこうしようとする気は毛頭ございません。ただ、今日の国鉄の労使紛争の中で、直ちに刑事事件を構成していくというふうな事柄というものは、あってもならぬし、起こさしてもならないし、そういうことを労使双方はやっぱり厳粛に自戒する必要があるという立場から言っている。ただ、今度の場合は、これは高橋さん、あなたがおっしゃっていることばを――実は、私は警察権力というものはたいへんりっぱなものだと思いたいのですよ。思いたいのですけれども、こういう事件にぶつかると、日本の警察権力というものは一体どういう本体を持っておるのかという不信感がしみじみ出るのですよ。それは、いまあなたもおっしゃっていましたように、いわゆる話だけ伺っても、緊急逮捕の要件を満たしておるとは思えない要素があるくらい、事柄が事柄でしょう。しかも、鉄道構内の駅の中に入ってきて、ただいま私は歴史の一端をちょっと申し上げたように、労使紛争をやっておって、賃金問題を要求しておって、汽車をとめるストライキはできないし、やったら威力業務妨害と言ってあなた方は連れていくし、結局ビラを張るという闘争になってきました。ビラを張るということについては、当局のほうは張っちゃいかぬと警告をするが、それ以上のことは、お互いが済んでしまったら一緒に話し合いをしておる。いろいろな思い出を語りながら話し合いをして、はがしてあとをされいにしておる。この程度の事柄です。同じ鉄道の構内で経営者と労働者と二つに分かれておって、できるだけ労使の間もまとまっていく労使慣行を築き上げていく、これが正常な姿なんです。そこにあなた方が頼まれもせぬのに入ってきて、そうして二枚目のビラを張ろうとしたところを両腕をひっつかまえて逮捕していく。広島県警本部長の話ではないけれども、電柱でビラを張ろうとしたときが逮捕の着手である、派出所で逮捕を完了をしたという言い方をしている。これは一体何ですか。それほど警察というものは自由自在に人間を縛れるのですか。少なくとも人間でありますと、ビラを張っておったこの加藤正人君に対して、警察手帳を見せて、ビラ張っちゃいけません、あなた、何という人か。――少なくとも二回なり三回制止をし、注意を与えて、そうしてどうしても言うことを聞かなければ法に基づいて処理する道もあるでしょう、逃げも隠れもするわけじゃないのですから。国鉄で月給くれる以外に月給くれるというところはありませんよ。その人を、あとから調べてみますと、向こうのほうにいた人に対して手帳を見せて、警察の者だとは言われたという姿が出ていますけれども、逮捕された当人である加藤正人君に対しては、そういう警告も、制止も、身分を明かしたことも、名前を聞いたことも、少なくとも逮捕の着手に入られたと言われる時期にはないのですよ。その点は、派出所のやりとりでも明らかになっているのです。どういうやりとりをするか言ってみましょう。逮捕した理由を明らかにせよ。――これはほかの人がしたのですよ。建物にビラを張ったから逮捕したのだ。――第一線の警官は、ビラを張ったそれ自身が逮捕理由になっているのです。他人の建物とは一体何のことか、駅の構内はおれらの職場ではないかということを言ったら、おまえのものじゃない、あれは他人のものだ。こういうやりとりをして、管理者が駅長だから、駅長の要請なり申請があったのか。それはないと答弁しています。だれの命令か明らかにせよと言ったら、署長の命令だ。署長は転勤してきたばかりじゃないかと言ったら、上司の命令だ。こういうやりとりをしている。だから、逮捕の理由というのは、軽犯罪法の緊急逮捕の要件を備えておりません。ビラを張ったから逮捕しているのです。しかも労使紛争の鉄道構内の中で二枚目のビラを張ろうとした。しかも駅長がおったまげて、すぐもらい下げにいかなければならぬという気が起きた。これが一体正常な状態かどうか、局長、もう一ぺん言うてください。
○高橋(幹)政府委員 おことばを返してたいへん申しわけないのですが、ただいま御指摘になりましたような具体的、詳細な報告が私どもにまいっておりませんので、それらについてはいろいろお調べになった経緯もあるかと思います。ただ、私どもの当然の理解といたしましては、先ほど来私どもも申し上げておりますように、駅構内に立ち入るなり、あるいはそれらの事案を処理する上においては、駅長等に対する事前の連絡というものについては十分にしたものというふうに理解をしておりますし、あるいは駅長があとでもらい下げに行ったということも、私どもの解釈を申し上げれば、やはりそれは自分の関係者がそういう場合にあった場合においてはそういう態度をとることもあり得ると思いますので、その事前の要請というものが即ないものというふうに御判断をされるのはいかがかと思うのでございます。私どもは、当然そういう意味で事前の要請もあり、さらに事案を処理した場合におきましても、警察として当然警告をして、その警告の結果やめていただければそれは一番よろしいと思うのです。それは、御指摘のように、確かにやみくもにすぐこれを逮捕する、あるいは検挙するということではなくて、事前に十分警告をして、それによってやめていただくということを――われわれ警察としては、その事態をなくするということがあくまでも目的でございますので、それは私ども平素からそう申しているわけであります。ただしかし、警告を無視して依然としてそのビラを張るという行為があった場合においては、警察官の警告を無視するということはわれわれ警察官の立場としてもいかがかと思いますので、私どもといたしまして、当時の逮捕その他の手続に関しては、あるいは御指摘のような細部にわたっての十分配慮の行き届かなかった点があるかと思いますが、私どもにまいっております報告においてはいま申し上げたようなことでございまして、この問題について私自身が第一線を不当にかばっているというふうに誤解されては私も遺憾だと思います。私どもは、第一線の警察の執行について御指摘のような点がもしあるとするならば、もちろんそれについて自後十分注意をするということについてやぶさかでございません。私どもの現在受けております報告についてはいま申し上げたような点でございますので、この点御了解を願いたい、こういうふうに考えるのでございます。
○坂本委員 ちょっと関連して。軽犯罪に対する緊急逮捕の問題ですが、あのときは、二枚目を張ろうとしたら、こらっと言って両方からつかまえて、線路を渡って、そしてホームに上がって――私現地に行ってきたのですが、跨線橋があるわけです。跨線橋を三段ばかり上がったとき、橋を踏んまえて、何だ、放せ、公安室へ行くから放せと言って組合の分会長か何か組合の人が、それは放しなさいと言うのを無理にやって、こうやったら、一人の私服の警官が両方を持って足をかかえて、はしご段を上まで上がって、跨線橋を渡って向こうに行って、そして今度駅の表側に行って、人の多いところに引っぱっていった。私、無罪になった裸事件のとき、ちょうど法務委員会で、あれはとんでもないことだと言ったのですが、ふろ場からホームをずっとふんどし一つで連れていって、公安官の部屋に連れていった、あれと同じような状況なんですよ。ですから、これは何とあなたが言われても、軽犯罪に対する緊急逮捕の場合は、その場で逮捕する人が、おれは警察官だ、張ったら逮捕するからだめだぞと言って、なおやろうとするならば、そのときに逮捕を執行してもいいですけれども、そういうことをせずに、もう張ったからというので、連れていって、いみじくも交番では、ビラを張ったから逮捕したんだ。ビラ張りだ。何も警察官の指示も何もしていない。警察だと言って警察手帳を見せたのは、ずっと離れた別の組に言っている。ですから、これは何といっても、われわれの問題にするのは、こういうことで警察が出しゃばり過ぎて、出しゃばりも出しゃばり、もうその現場に行って、そうして無理やりに連れていって、それで本部長と一緒に警備局長もおいででしたが、それで、私、聞いたんです。大体緊急逮捕はどこでしたかと言ったら、派出所で終了だと言う。それで、どこで始めたんだと言うと、その始めたところがわからないわけなんです。そういうようなことが全国にあっても困るし、それに似たような問題が、九州に今度行きましたら、九州にありますね。のりを少しひっかけたかどうかで、公務執行妨害というのはつけたりで、ビラを張ったそれ自身に対してもう警察は逮捕する、こういう腹があるからそういうことが実際出てくるわけです。全くこういうことをされたら、何といってもこれは労働者に対する弾圧ですよ。ですから、緊急逮捕のこれは大きな問題だから、私なんかも一緒に調査に行ったわけですけれども、この点はやはり調査されて、もう今後絶対ないようにしてもらわなければとんでもない。そう思うから、関連質問でちょっとあれしたわけですが、それはひとつやってもらいたいんですが、どうですか。
○後藤説明員 どうも私どものほうで受けております報告と、両先生のおっしゃることが、だいぶ実は違うようでございまして、私どものほうで受けておりますのは、別に離れたところで言ったのじゃなくて、もう現に被疑者が逮捕されたその近くで、聞こえるところで、警察の者だと言って手帳を示して、警察の者だ、何でビラを張るんだ、こう言ったら、ビラを張るのが何で悪い、判例ではいいとあるじゃないか。こういうところへ張ると検挙するぞ、こう言ったら、のりをつけた人は逃げてしまったようでございます。ところが、この被疑者はちらっと逮捕した警察官のほうを見ましたが、そのまま警告といいますか、検挙するぞと言うのにもかかわらず張ったということでございますので、局長が先ほど申し上げましたように、警察官の面前で、やるなと言うのにやられてしまっては、どうもこれは何としても処置せざるを得ないということで逮捕した。それで、あなた一体どこのだれだ、こう言ったところが、黙秘しておる、こういうことでございますので、これは刑事訴訟法によるところの現行犯逮捕が可能である。軽微な事件でありましても逮捕する場合があり得る、こういうことでございます。それで、あとで取り調べの過程でわかったのでありますけれども、これは本署に行きましてからそのとおり供述をいたしております。そして、何であのとき住所氏名を言わなかったのかと聞きましたところが、いやそれはこういうことを聞かれても黙っていろというふうに指示されたので黙っていた、こういうことを本人が言っておるようでございますので、どうも現場でどこのだれであるかということを明らかにするということにはなっておりませんので、軽犯罪でありましても、面前で警告を無視されてやられましたし、現行犯逮捕の要件はそろっておりますので、そういうことになった、こういうことでございます。
○坂本委員 冗談じゃないですよ。私なんか調べてきたんだから。逮捕するなら逮捕する者に対して示さなければいかぬじゃないですか。ずっと二間か三間離れた先で手帳は見せておる。緊急逮捕は現場で聞かなければならぬでしょう。何もかも聞かずに、三人で人のおる跨線橋を連れていって、交番で尋ねておる。交番ではもう、さっきの山田委員のあれがあったように、身分証明か何か出しておるから、氏名なんかわかっておる。ビラ張りということで逃げたりしないから、絶対、軽犯罪に対するところの緊急逮捕の要件は二つあるのですが、二つとも満たしていないと思うのです。こんなのを何かいま修飾した答弁でごまかされるようでは、これはできないと思うのですよ。これはひとつ向こうの報告はそんなふうになっておるかわからぬけれども、実際はそうじゃないから、もう一回再調べして――再調べするまでもなく、これはあれでしょう。電柱の柱も駅構内の柱なんですよ。一般の柱でも何でもないです。だからそういう点は言いわけで済まされぬから、ひとつ絶対今後ないようにしてもらわぬと困る。あわせてその所見を聞いておきたい。
○高橋(幹)政府委員 確かに私のほうの報告の内容と先生方のお調べになった内容と非常に食い違っておるわけであります。この食い違いを、ここで私どもも主張し、先生方も主張されても、あるいは平行線になるかと思います。もちろん私どもも、その実際の事実というものを取り調べの過程なりあるいは捜査の過程で明らかにすることがやはり大事であります。したがいまして、私どもももちろん第一線の言うことをそのままうのみにするというような安易な態度をとるものではございません。したがいまして、ただいまのような、私どもの現在受けております事実は事実として御了承願って、今後もちろんこの種の事件のいろいろな処理のしかたというものについては十分私ども検討いたしたい。しかし重ねて申し上げておきますが、私どもはいたずらにビラ張りのみを弾圧するというような意図はごうも持っておりません。したがいまして、全国的にこの種のことを大いにやれと私どもは通牒を出してもおりませんし、むしろ街頭におけるビラ張り行為の取り締まりを適正にせよという意味で、いろいろ判例も出ておることでありますので、これらの点につきましては警備課長からも、だいぶ前でありますが、それらの取り締まりについての公正を保持するように通達をしております。したがいまして、私どもはそういうようなビラ張りのみを春闘に関連をして労働運動を弾圧するというような意図はごうも持っておりませんことを、重ねてひとつこの機会に御了解を願っておきたい、こういうふうに思います。ただしかし、先ほど来申し上げましたように、警察の労働争議、労働運動に対する立場については、私がしばしば申し上げたとおりでございます。
○山田(耻)委員 いま加藤君が警察でものを言っちゃいかぬ、黙秘を使えというふうに幹部から言われたというふうな言われ方をされておりますけれども、私はやはりものをでっち上げるのにしてもほどほどにしてほしいという気がするのですよ。加藤君が派出所で述懐しているでしょう。私は一ぺんも警察から制止されなかった。手帳も見せてもらっていない、張ったらいかぬ、張ったら逮捕すると言われるなら、私の五メートルか八メートルうしろに役員がおりますから、役員に相談に行きますよ……。この人は、皆さんのほうにも調査の身上が来ておるかもしれませんけれども、別に政党員でもないし、左翼の人でもない。純粋な国鉄の職員なんです。それほどこの問題というものは、やはり真実を正しく見てもらってないから、さっきから私たちが言っているように、これは不当なる弾圧であるという結論に結びつけざるを得ないような性格を持っているのです。なぜおまえ名前を言わなかったかと言ったら、ビラを張ったら縛られるのですか、それは知らんかった。だから、なぜ私だけがつかまえられたのですか、みんないるのに、ほかの人はみんな、なぜ縛ったか、なぜ縛ったか、つかまえたかと言ってたくさん来た。そんな者は全然相手にもせぬで、私だけを連れていったから、私は、なぜ私だけがやられたのか、どんな悪いことをしたんだろうかと思って返事するいとまもなかったと言っています。私は、素朴な一般市民が警察権を理由なく行使されたと思うときに、そういうふうな気持ちがすると思う。しかも派出所へ連れていかれて、アノラックを引き脱がされて、ポケットをさかさまに振るようにしてやられてごらんなさいよ。あなた方はそういう社会に生きておられるからおわかりにならぬかもしれぬけれども、一般市民社会に生きておる者にとっては、私はたいへんな心の苦痛だと思うのです。だからものを言わなかったのを、黙秘権の行使だと形づくって逮捕要件を満たしていくというのはやり方がひきょうです。いま局長おっしゃっていたように、ビラを張ったからということで逮捕する。労働争議をやるからといって不当に干渉するという気持ちはいままでもなかったし、将来もない、こういう気持ちの一端を述べられておりますけれども、しかし福山の事件を構成しておる背景を見ていきますと、駅長のところに二人きて、ビラを張っているようだから見てまわってきます、現認したら連絡をいたします。駅長も一人か二人入っているんだろうと思って、さあどうぞお願いしますと言った。ところが実際に駅の構内に入っておった人はちゃんと指揮者がついて八名入っているんですよ。一つのとりもの陣じゃないですか。私服の警官に指揮者までつけて八名も構内に入れて、一体何を視察する、何を一体駅長に連絡なさろうとしたのですか。このことを広島県警本部長にもいろいろ話をしました。そのことについては答弁がございませんでした。普通私たちは国会で仕事をしております。地方警察行政にも多少関係することがありますけれども、ビラを張った、あるいは軽犯罪に類するようなことで、指揮者をつけて八名もの大捜査陣がつくられていくということは、私は例を知りませんよ。たまたま春闘という一つの労使の賃金紛争の争いの中に、指揮者を含めて八名という人がビラ張りの現地を視察するというかっこうの中から生まれた逮捕事件、こういうものをつなぎ合わせてみますと、これは局長、厳重に警察の運営というものについて、詰めるところは詰めて検討していただきませんと、不必要な不信感を買いますよ。ビラ張りを駅長なりあるいは建物管理者に言って、指揮者をつけて、八名も十名も派遣したという例が過去にございますか。私も戦後二十年近く労働運動をやってきましたけれども、一度もぶつかったことはない。それほど最近の警察行政というものは、警察官職務執行法の五条というものとの関係の中で、どのようにみずからの職務を執行しようとするのか、予防なのかそれとも警告なのか、そういう措置を飛び越えて直ちに逮捕権を行使するのか、そういう疑惑すら持ちたくなる、そういう事件なんです。私は法律家ではありませんし、専門家でもございませんけれども、そういう疑惑を多くの福山市民が持つほど今度の事件というものは警察の明らかな行き過ぎである。しかも人権問題にまで発展する条件を備えておる。その過程における逮捕の状況、派出所においてアノラックを引きぬがすようにしてぬがして、みんなの見ている前で、ポケットをさかさまに振るようにしておる、そういう人権無視の状態というのがありますか。警察官職務執行法のどこにそういうことが書いてありますか。局長の答弁と、人権擁護局長の御意見もあわせてお願いいたします。
  〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
○後藤説明員 局長からあとで御説明があるかと思いますが、事実関係でございますので、私から先に御説明申し上げたいと思います。
 構内に入りましたのは、私ども聞いておりますのは、八名ではなくて、大下警部補以下九名であったようであります。九名はいかにも重々しいではないかというお話でございますが、先ほど局長からお話し申し上げましたように、前日すでに数百枚のビラを張っているという事実がございます。これは二人や三人ではなくて、相当多数の者が出てくる、こういうことで、やはり少数の警察官が出向いたのでは現場にトラブルが生ずるであろうということで、その程度の者が適当だと考えたものであろうと思います。現に、先ほど先生おっしゃいましたように、この被疑者を逮捕しましたときに、被疑者は足をふんばって、また付近におりました四、五名の者は執拗につきまとって派出所まで来ておるという状況でございまして、やむを得ず被疑者を警察までやっと連れてきた、こういう状況であったようでございますので、あながち九名は、こういう被疑者をとらえるのにきわめて大げさであるという非難はいささか――それは事実こういうことでございますので、やむを得なかったものと私ども考えております。少数の者が出て、逮捕時におきまして無用のトラブルを起こしました例は過去にもいろいろございますので、現実に逮捕されました者は一名でございますけれども、一名を逮捕するためには、九名はなるほどおっしゃるように多過ぎたと思いますけれども、現に当日ビラ張りに参加しました者は十四、五名でございますので、その程度の者はやむを得なかったものと考えております。それから派出所で捜索、身体捜検をいたしたわけでございますが、これは警職法にのっとりました逮捕時におきます身体捜検と申しますか捜索でございますので、これは法にのっとった適法行為でございます。ただ先生おっしゃいますように、四、五名の者が被疑者を奪還と申しますか、非難、攻撃のために派出所にまで来ておるという状況でございましたから、その見ている前でそういう状態であったかどうか、これは私ども承知しておりませんが、もしさようなことでありましたならば、これは適当でないと思いますので、今後十分戒めたいと思います。
○堀内政府委員 いまの福山駅構内のビラ張りの事件につきましては、私ども法務省のほうにとりましては、いままで現地の広島法務局でも申告もありませんので事件として取り上げておりません。本日この委員会へお呼びになりまして、初めて事情を警察につきまして問い合せまして、そして承知したようなわけでありますので、御質問のような点につきまして意見として申し上げることはまだできない段階でございます。
○山田(耻)委員 後藤警備課長の話を聞いておりますと、ビラを前日五、六百枚張ったから、大下警部補以下九名の大捜査陣をつくって駅構内に乗り込んで、翌日二枚張ったところを逮捕した、こういう一語に尽きると思います。警察官職務執行法のどこに書いてありますか。五条を読んでみまし上うか。軽犯罪を逮捕する場合には、さっきから坂本先生も言っておられるように、まず予防のための手続、制止を行ない、事前に警察手帳を見せて、そういうところへビラを張ったら逮捕されますよということを懇切丁寧によく伝える、一般の国民というものは法律に暗うございますから。知らなかったからといったって、法律は罰則の手をゆるめてくれません。だから法の執行をやっていく警察官というものは、そういう制止を行ない、事情をよく理解させて、それでも言うことを聞かぬというときには逮捕すべきでしょう。その道は許されておる。いまあなたがおっしゃっていたように、加藤君に警察手帳を見せて、逮捕された本人に対して警察手帳を見せて、制止をして、どうしても言うことを聞かぬから逮捕したというような言い方は広島県警本部長もいたしておりませんよ。一番現地の事情に詳しい県警本部長もそういうことを言っておりません。しかし、あなたのところに来た書面にはそう書いてあるというんだから、私はそれをでっち上げというのです。いずれはっきりはいたすことでございましょうけれども、私たちが少なくとも現地の事情を見、国会で追及するというときには、やはり物事に確信を持たなければ追及しませんよ。そういう立場で申し上げておる私たちの気持ちというのが、あなたの答弁によってはまるきり顔をさかさになでられているような気がします。だから高橋局長のおっしゃっているように、事情をしっかりと確かめていただいて、やはり手続、執行などに誤りがあれば誤りを正すということがいま一番私は大切だと思う。お互いに言ったことを意地になって押し通していくような警察行政が遂行されていくことは断固として許せません。誤りは的確に正していただきたいと私は思う。
 第二点の問題として、あなたが大挙捜査陣をしいたという理由の主因は、翌日たくさんビラを張った……。東京都内に、張るべからざるところにどんなビラが張ってあると思いますか。毎日大捜査陣を組んで歩きなさいよ。少なくとも憲法二十八条に基づく国鉄労働組合は、争議権、ストライキ権は奪われておるけれども、憲法二十九条の私有財産権に対比できる労使対等権は持っているのですよ。その労使対等権が法律の手続に従って、争いが最終の舞台である調停、仲裁に移行しようとするときに、しかも、国鉄当局との間では、団体交渉が当事者能力といういわれもなき理由で、団交権が否認をされておるという現状を片側でつくり出しながら、そうして下部で法律で禁止していないビラ張り活動を争議行為の段階で行なったということが、労働法上のたてまえからいくと、あなたの言う軽犯罪を構成するかどうかわかりませんよ。いずれこの問題は将来明らかにされていくべきものでありましょうけれども、国鉄当局がかっこうようビラ張ってくれよ、あまり不細工に張るな……。いま本社の労働課長が来ておりますけれども、国鉄本社の建物の内外にもべたべた張られた時代があるんです。かこっうよう張ってくれ……。わずか二日か三日、数日の間これによって争議権を奪われておる。労働組合の要求を通すための主張点がここにつながれていくのが……。一日も早くこのことを認めてやりながら労働争議を解決することのほうが、国鉄当局としては効果があるものだと理解したのかもしれません。だから争議が終わりますと、すぐ急いで労使双方一体になって今度ビラはぎをしているわけです。あときれいに掃除しておるわけです。ですから一般の状態の中に発生をしていく他人の建物にビラを張るという事態と――ストライキを決行して至大な被害を財産に与えたとしても、正当な争議行為である場合においては、民事、刑事の免責を受けておるという労働法の精神というものが、公労法にも受け継がれているけれども、八条で国鉄労働組合にはストライキ権がない。同盟罷業の権利がない。そのほかの団結権なり団体交渉権というものは厳然として対等の立場で残されておるのだ、こういう立場からあわせてながめてみましたら、前日に五百枚張りやがったから大下警部を先頭にひとつ大捜査陣を張ろう、こういうふうなことが事、労使関係に関する限り不当なる介入の性格を帯びてくる。しかも、それが問答無用式の逮捕権の行使をなさると、ますますその色彩を強めてくることになるわけです。私はきょうここで労使問題一般についてお話ししようとは思いませんけれども、現実に起こった福山事件というものは、そういう性格を背景として持っておる。全部じゃございませんでしょうけれども、そういう要素がきわめて濃い。いまの逮捕要件を満たしていく条件もそのとおりでございます。派出所の中における身体の捜査もそのとおりでございます。駅の中に入っていくという手続もまさにそのとおりでございますから、駅長、保線区長がおったまげてもらい下げに行く、こういう一連の事情をどうか正確にまずながめる努力を私はしてほしい。その努力で必ず私が申し上げた方向の結論に真実を見つけ出していただくことができると私は思う。その段階で誤ったことに対しては厳重な警告と手続をし、二度と正常な労使紛争に介入をしたといわれるようなことのないように、警察行政というものが完ぺきを期していただくように、特に私は鋭く、きびしくお願いしておかなくちゃならぬという気持ちでございます。
 これで私の質問は終わります。
○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
 次会は明二十二日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十六分散会