第051回国会 法務委員会 第39号
昭和四十一年五月二十七日(金曜日)
   午前十時四十一分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
   理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君
   理事 濱田 幸雄君 理事 井伊 誠一君
   理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君
      鍛冶 良作君    四宮 久吉君
      田中伊三次君    神近 市子君
      山口シヅエ君    山田 長司君
      横山 利秋君    志賀 義雄君
      田中織之進君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 石井光次郎君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (内閣総理大臣
        官房審議室長) 高柳 忠夫君
        法務政務次官  山本 利壽君
        検     事
        (刑事局長)  津田  實君
        海上保安庁次長 岡田京四郎君
        高等海難審判庁
        長官      藤枝  盈君
 委員外の出席者
        警  視  長
        (警察庁保安局
        防犯少年課長) 今野 耿介君
        厚生事務官
        (環境衛生局環
        境衛生課長)  柳瀬 孝吉君
        専  門  員 高橋 勝好君
    ―――――――――――――
五月二十七日
 委員森下元晴君辞任につき、その補欠として鍛
 冶良作君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員鍛冶良作君辞任につき、その補欠として森
 下元晴君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 裁判所の司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 私は、昨年の八月二日の夜中に起きましたアメリカ船のアリゾナ号と日本の明興丸の衝突事件がありまして、その衝突の際には、アリゾナ号は衝突したことを知りながら大破した明興丸をそのままにいたしまして、そして目的地の、あれはフィリピンですか、そちらに航行を開始しましたから、残された大破をした明興丸はたちまち沈没したのでありますが、当時の乗り組み員は、一名生存者があっただけで、あと全部死亡するという、こういう大事故が起きたわけでありますが、まず、その事故の起きた状況並びに死亡者は何名であるか、それから、それに対する対策はどうなっておりますか、海上保安庁のほうと、さらに検察庁に対しまして、その後この衝突事件の問題についてどういうふうに捜査され、八月でありますからすでに十カ月以上になっておりまするが、どうなっておるか、この点の御報告をまず伺いたいと思うわけであります。
○岡田政府委員 アリゾナ号と明興丸の衝突事件につきまして、まず事件そのものの概要から申し上げ、さらにその後当庁のほうでとりました処置についてあわせて御説明申し上げるというふうにいたしたいと思います。
 事件の起こりましたのは昨年の八月二日でございます。衝突の発生時間は午前二時九分と考えられます。場所は、下田の東北東約十三海里付近の公海でございますが、陸地からの最短距離、距岸で申しますと大体六・二六海里の地点になります。衝突しました船は日本の明興丸と、それからアメリカ合衆国の船のアリゾナ号でございます。明興丸は衝突後沈没いたしまして、乗り組み員は十九人でございましたが、一名が重傷、九名が死亡、九名が行くえ不明となっておるのであります。
 衝突事故発生時の状況について申し上げますと、事故を知りました経緯は、第三管区海上保安本部は、昭和四十年八月二日の午前三時三十八分にアリゾナ号の船長から、八月二日の午前二時九分、北緯三十四度四十三・五分、東経百三十九度十三・八分の場所で漁船らしきものと衝突し、捜索中との緊急通信を受信いたしております。その緊急通信を受信いたしました第三管区海上保安本部は直ちに巡視船「げんかい」を現場に急派するとともにアリゾナ号に対してその旨、及び現場において引き続き捜索に当たるように協力方を要請いたしております。
 事故現場での処置は、巡視船の「げんかい」が参りましたが、その当時は濃霧の状態でございましたが、現場付近でアリゾナ号と会合いたしまして、両船でもって明興丸の捜索を続行いたしたのでありますが、視界不良のために発見できず、その後アリゾナ号は、同日の午後一時ごろに一たん現場を離脱したのでございます。
 その後二日の午後三時ごろにアリゾナ号の代理店を通じて、事情聴取のために本邦もよりの港に入港するように要請をいたしております。その船から八月三日の午前十時ごろ横浜に入港する旨の回報がございまして、事実同日の十時四十五分には横浜港に入港いたしております。そこで入港いたしました「アリゾナ号」につきまして八月三日から四日にかけまして、横浜の海上保安部によりまして船長以下四名について参考人としていろいろな事情を聴取いたしました。これが当時の模様でございます。
 その後海上保安部といたしましては、明興丸のただ一人の生存者でございます。二等航海士の町田末義さんにつきましていろいろ事情聴取いたしております。また別途損傷ブイ等の実況検分あるいは付着しましたペイント、あるいは標識灯のガラス破片等、いろいろの証拠品につきましていろいろな事実調査をいたしております。ただこの鑑定等に相当時日を要するようなこともございましたが、事実関係につきまして大体の一応の調査はいまほぼ終わっているところでございます。
○坂本委員 まだお聞きしたいと思いますが、いまの御説明では一番肝要なのは衝突の原因ですね。アリゾナ号の過失あるいはいろいろな事故によって本件の衝突事件が発生したか、あるいは明興丸のほうにそのような原因があったのか、その点いかがですか。
○岡田政府委員 衝突の原因でございますが、これにつきましてはいろいろの事実に基づきまして一応の調査をいたしておりますが、これにつきましての最終的なものは海難審判庁のほうの、海難審判の結果を待つということになろうかと思うわけでございます。
○坂本委員 海難審判のほうはどうなっていますか。
○藤枝政府委員 お答え申し上げます。
 事件の概要につきましては、すでにいろいろ説明がございまして、省略させていただきますが、私のほうの事件の処理状況につきまして申し上げます。
 私のほうの検事に相当する理事官が事件発生以来事実の内容につきまして調査をいたしまして、証拠の収集を大体終わりまして、昭和四十年十一月三十日に横浜地方海難審判庁に事件を申し立てております。その場合に、明興丸のただ一人の生存者二等航海士町田末義を受審人といたしまして、審判開始をしております。
 横浜地方海難審判庁におきましては、理事官の申し立てに基づきまして、昭和四十一年の五月十九日に第一回の審判を開廷いたしました。その後補佐人のほうから一証拠の提出の申請がありまして、大体事実の審理は終わりまして、次回は七月六日に開廷の予定でございます。弁論及び論告を終って結審となる見込みでございます。
 なお、昭和四十一年の五月十九日の第一回の開廷におきましては、生き残りである受審人の二等航海士の町田末義という者は、当時の遭難におきまして負傷いたしまして、自来入院中でありましたが、ようやく車いすに乗って法廷に出たような実情がありまして、そのために早期に審理をしたい予定でありましたが、病院における御本人の事情によりまして多少おくれまして十九日となった次第でございます。
○坂本委員 裁判のことは私詳しいけれども、海難審判のことはあまり詳しくないわけです。海難審判に回す際には、海上保安庁としては、いかなる原因があるということで回されたか。
 それから、海難審判は、いま聞いただけでは、町田を調べて、補佐人の弁論があった、こういうことを聞いたわけですが、町田を被告人として海難審判の過失とかなんとかの審理をやられるわけですか。その際には、一番問題はアリゾナ号と思うのです。アリゾナ号は大きい貨物船であって、明興丸は千トン以下の小さい船なんですね。それをほうっておいて、そうして海上保安庁の緊急通報か何かによって海上保安庁が出動されておるわけです。そしてさらにアリゾナ号が翌々日かに横浜に入っておるんですね。そして船長以下から事情聴取しているのです。そこでやはりなまなましいときに、事故の原因はどこにあるんだ、アリゾナ号があれしているならば、逮捕するとか調べるとかしないと、単なる事情聴取では済まないと思うのです。九名の行方不明、九名の死亡者、こういう事故に対しては、これは殺人事件の問題ですから、そういうことについて衝突の原因が一番重大になってくると思うのです。その点をもう少し詳しく御説明願いたい。
 それから海難審判庁で、ただ町田一人の関係について審議をやっておられるかどうか、アリゾナ号の問題はどうなっておるか、その点をもう少し詳しくお聞きしないと、いまの御説明だけでは理解できぬわけですが、この二つについて御説明を願いたいと思います。
○岡田政府委員 海上保安庁の調べと海難審判庁のほうの関係は一応無関係でございます。海難審判庁が海難審判をおやりになるのは独自におやりになったのでございます。こちらから送ったからどうということではございません。
 それから海上保安庁のほうが事件の起こりました当時にどういう調べをしたかということでございますが、この点につきましては、海上保安庁が事件としての捜査と申しますか、こういう観点からの捜査につきましては、実は米船のアリゾナ号につきましては裁判管轄権が、これは公海で起こった事件でございますので、日本側にございません。したがいまして、先ほど申し上げましたような一応の事情聴取というのは、あくまでも実際の当面事情をできるだけ参考として聞くという立場に立って聞いたわけでございます。
 それから日本側の汽船の明興丸につきまして、この船の側に過失があったかどうかというようなことは、一応捜査の段階においては調べなければならないわけでございます。ただ船長以下直接の操船の責任者の人がなくなっておられますので、これについては参考人として、生存しております二等航海士について聞く以外にないというふうな点が実際上の困難性を伴っておる、こういうのが実情でございます。
○藤枝政府委員 お答え申し上げます。
 先ほど一方的じゃないかというような御意見がございましたが、私のほうといたしましてはあくまでも原因解明でありまして、一方的な審理ということではございません。アリゾナ号に関するいろいろな資料も収集しての後の理事官の申し立てだと存じますので、アリゾナ号に関するいろいろの内容についても、若干の理事官としての確信を得て後の申し立てでありますので、審理の対象に入っておると存じます。
○坂本委員 それじゃ海上保安庁でアリゾナ号を調べてどうだという結論が出ておるのでしょう。そしてどういう理由に基づいて海難審判を請求するかどうか、こういうことになるのでしょう。日本の刑事事件については、警察、検察庁が調べて、そうして検事が起訴をして、裁判をする、こういうことになるわけですが、海難審判の関係はそういう司法権の独立に基づく厳格な問題はないにしても、衝突の原因はどこにあるのか。アリゾナ号が悪いなら悪いと――明興丸は一人しかいないから、これはあとで調べた、こういうような関係になっているのですから、その点はもう少し詳しく調べて、その調べた結果はどうなってそれを海難審判に回したか、その点をもっと詳しく説明してもらわなければわかりませんよ。
○岡田政府委員 先ほどちょっと申し上げたと思いますが、海難審判のほうは、海難審判の理事官と申しますのは、海難審判庁のほうに付置されております。海難審判の理事官が独自の見地で調べて、いわば検事のようなかっこうでの審理の対象にするわけでございます。したがいまして、その点につきましては、海上保安庁のほうからの調べをまって初めて理事官が動き出すというものではございません。
○坂本委員 そうしますと、アリゾナ号が横浜に帰ってきた。それを調べたのは海難審判の理事官ですか、その点いかがです。
○岡田政府委員 これは海上保安官が当時の事情を調べております。
○坂本委員 そこで、海上保安官が調べたそのもっと詳しい状況と結果を知らせてください。
○岡田政府委員 いま海上保安官と申しましたが、海上保安官と理事官のほうと、両方それぞれの立場で調べております。当庁のほうでそのときに調べましたのは、アリゾナ号の船長等から航海日誌あるいはコースレコーダーの記録の写し等について調べております。ただその際に一番根本的なことは、米船アリゾナ号の船長は、裁判管轄権は、今度の事件については公海で起こったことであって、日本側にないのであるからということを言いまして、詳しい核心に触れることについて十分な調べに応じるということは、全部についてその場で直ちに行なうということはできない状態でございました。
○坂本委員 できないと言うけれども、しかし調べなければ実際はわからぬでしょうが。だから公海における裁判権がなくても、やはり任意にあれしてもらうような方法があると思うのです。日本でも何も強制捜査が主でなくて、任意捜査が主であって、いろいろの拒否権があっても、その拒否権を主張せずに陳述する場合はたくさんあるわけです。日本の検察庁なんか、拒否権があることを強制的に調べるというようなことはたくさんあるわけですが、ただ、公海で起きたことでございます、アメリカさんでございますといってただうわべを聞いたばかりですか。少なくとも調査をする以上は、どういうものがあって、どういう気候で、どういう状況で、そしてその原因はアリゾナ号にあるとかないとかいう点は、少なくとも出港を許しておるのだから、それまではやはり海上保安庁として調べなければ、その任務は遂行できないと思うのです。いまあなたの御説明を聞くと、ただ船長等からは、航海日誌を見た、コースレコーダーの記録を見た、これくらいのことで、あれですか、海上保安庁はアメリカの船長なんかはおそるおそるで何も聞かないのですか。私はもう少し――公海上であるからというのは言いわけであって、そんなものは、向こうがひどく拒否した場合はやむを得ない場合もあるでしょうが、そうでなかったら、もう少し日本船員のために、明興丸のために、もっと専門的の知識を披瀝して調べるが当然だと思うのです。その点いかがですか。それとも何もせずにやったのですか、責任問題じゃないですか。
○岡田政府委員 その当時におきましてどれくらいのスピードで走っていたかとか、レーダーはそのときどうであったかというふうなことについて、一応の調べはいたしておりますが、それらにつきましては当時の一応の事情の調査でございまして、正式には日本における海難審判、あるいはアリゾナ号につきましてはアメリカ合衆国の海難審判というようなこととの関連もございますわけでございます。したがって、船長の供述につきましても、その当時決定的なものが得られるというわけにはなかなかまいらない点があったわけでございます。
○坂本委員 そういたしますと、当時事情を聴取された際には調書か何かをつくられましたか、その点いかがですか。
○岡田政府委員 まず一番もとになりますのは、このアリゾナ号と明興丸が衝突したらしいのでございますが、それがほんとうに衝突したものであるかどうかということのための、ペイントその他を調べてのいろいろの事実調査がまず一つございます。そういった関係の調査並びに先ほど申し上げました航海日誌等、こういったような事件関係の調書というものを調査のときにとっておるわけでございます。
○坂本委員 事実調査がやはり一審大事と思うのです。事実調査の結論がどうなるかというのが一番大事であって、それにその事実調査を正当づけるためとか、あるいはうそを言ってはいないかというようなことの裏づけ捜査にするのに、この航海日誌とか速度とかレーダー、こういうのがあるわけですね。そういうのがあるかどうかという点と、それからもう一つはああいう大きな船にぶつかって小さい船が大破しておる。これは検察庁刑事局長来ておられるが、大体こういう場合、大きな船が無理に衝突して小さい船が大破したというような一応の見込みが最初あるだろうと思うのです。そういうのはどういうような考えでやったのか。ただアメリカさんの船だからおそるおそるやって、はれものにさわるようなことで、ほんとうの捜査をしていないのじゃないかという疑問を大きに持っているわけです。これは私だけでなくて、明興丸の遺族の方なんかでも、その点に非常に疑問を持っておるから私はしつっこく聞くわけです。そこでこの場合はいわゆる検事がつくるような調書みたいなものはないにしても、やはり事実調査の記録があると思うのです。その記録があるかどうか。その記録をいまどうしておられるか。その点いかがですか。
○岡田政府委員 捜査当局の立場で、これは主として明興丸のほうに焦点を当てたものになるわけでございますが、もちろん関連しましたアリゾナ号についての調査事項も加えまして、大体調書ができておるわけでございますが、ただ、これの具体的な内容ということになりますと、まだ捜査の途中ということもございまして、なお引き続き、いま事実の調査に当たっておるわけでございます。
○坂本委員 海上保安庁のほうに聞きますが、理事官も一緒になって調査をしておられるわけですが、その場合の記録などはどうなっているか。それは現在あるか。どこにあるか。その点、いかがですか。
○藤枝政府委員 お答え申し上げますが、いま理事官のほうで一応調査いたしまして、大体証拠を集めましたら、先ほど申し上げたように審判庁に事件を申し立てるわけでございます。その場合に、理事官が調べた記録は審判庁のほうへ全部回すわけでございます。審判庁はその記録をもとにいたしまして、先ほど申し上げた事件関係者を集めて審判を開廷いたしまして、そして事実を審理するわけでございます。いまお話しの記録とか書類とかというものは海難審判庁で持っております。
○坂本委員 そこで、海難審判庁が審判をするにあたっては、いろいろ証拠がなければならぬわけですね。しかし、それについて海難審判の理事官は調査をしているか。どういう結論を得て審判に回したか。あるいは報告書等があると思うのです。あるいは海難審判を請求する、いわゆる、例は悪いかもしれませんが、裁判に対する起訴状とか、そういうようなものがあると思うのですが、そのほうの意見はどうなっておりますか。
○藤枝政府委員 私のほうでは、理事官が調べた内容につきましては、詳細に調べた結果、理事官としまして、この事件を申し立てて原因解明ができるという確証を得たものを審判庁に申し立てております。したがいまして、理事官から審判庁に回った場合には、理事官としましては、この事件は原因がわかっておって、解明できるという自信があっての申し立てでありますから、理事官は、何も自分でもわからぬようなものは申し立てはしません。調べ上げて、大体自分が確信を得た後において出す、こういう経緯になっております。
○坂本委員 そういたしますと、その理事官の意見は大体どうなっておりますか。書面になっておれば、私はあとで書面を拝見してもいいと思うのですが、しかし、書面になっていても、海難審判を要求する要点は二、三しかないと思うのですが、そういう点はいかがになっておりますか。
○藤枝政府委員 審判事件の内容につきましては、門外には出しておりませんので、残念ながら内容については、われわれ、御説明はできかねるかと思います。
○坂本委員 それはいかなる法の根拠に基づいて秘密にしておられますか。それを教えてください。
○藤枝政府委員 審判法に基づきまして、事件が解決するまでは外へ出しておりません。従来も出しておりません。
○坂本委員 その法の根拠は。根拠がなければできないでしょう。
○藤枝政府委員 これは審判法の中にあるので
 す。
○坂本委員 審判法のどこにありますか。
○藤枝政府委員 申し上げますが、海難審判法という法律がございまして、この法律の第三十一条に、ちょっと読んでみますと、「理事官は、事実の調査及び証拠の集取については、秘密を守り、関係人の名誉を傷つけないように注意しなければならない。」そういう理事官の調査上の義務を与えられておりますので、従来、私どもは、事件が完結するまでは外部には絶対に出しておりません。
○坂本委員 そこで、理事官が調べるというのは、刑事訴訟法による検事の調べと同じだと思いますが、その検事の調べの段階においては秘密であっても、海難審判になって、裁判になって、そこに証拠に出さなければならない。そうするとそれは公開で、審判法の三十一条は、これは私はいまはよく調べておりませんが、これは理事官が調べる捜査中の秘密であって、しかも、海難審判に回って、補佐人がついて弁論をしたという段階になれば、これは公開しなければならぬと思うのです。ですから、いまあなたのおっしゃる秘密というのは海難審判にはないと私は思うのですが、もしあれば、それは審判手続法によって別にあればあると思うのですが、その点はどうですか。
○藤枝政府委員 申し上げます。
 補佐人は、そういうものは、一件記録を当事者として見る権利があるのですが、その他の者は権利はありません。受審人といえども見せておりません。関係人にも記録は見せておりません。補佐人は見る権利があるのです。補佐人は一件記録を謄写もできます。
○坂本委員 その法の根拠はどこですか、やはり三十一条でやるのですか。
○藤枝政府委員 そうでございます。
○坂本委員 その点は私は疑問があるのですが、あとで検討してみます。
 そこで、海難審判においては、裁判は秘密になっているのですか。公開になっているのですか。どうなっているのですか。
○藤枝政府委員 海難審判は、公開の席上で、口頭弁論でやりますから、あくまでも公開であります。秘密じゃありません。
○坂本委員 そこで、口頭弁論で、公開の席上でやる際に、理事官の調べているそういう書類は全部出ておりますか。その点はいかがですか。
○藤枝政府委員 記録の中に全部入っております。理事官の調べた内容は、記録を見れば全部わかるわけであります。
○坂本委員 そうすると、裁判は公開になっているわけですね〇公開になっておれば、そこに、いまのあなたの御発言によると出ているというわけですね。そうするとそれは、公開で、口頭弁論でやれば、一般に公開しなければならぬと思うのです。だから、三十一条の理事官の秘密の問題は解消していると私は思うのです。これをたてにとって、秘密にして見せないというようなことはできないと私は思うのですが、その裁判の方式として、そういう関係書類を裁判に出す場合において、原本を出すのですか。あるいはリコピーにして写しを出すのですか。その点をまずお伺いしておきたい。
○藤枝政府委員 お答えいたします。
 この審判記録というものには、理事官が調べた一切の内枠その他の証拠書類、あるいは審判延で尋問をした内容についての語録があります。したがいまして、そういうものは一件記録として全部一冊に入っておりますので、公開の弁論の席上ではいま申し上げたような尋問があるわけでありまして、次々とやっていくわけでございます。それで補佐人のほうからの尋問もありまして、そういうものが全部記録に入っておるものでございますから、それ以外のものは何もありません。したがいまして傍聴ということもできますし、傍聴しておれば問答しておる内容がみなわかります。だから私たちのほうはそういうものを事前に外へ出すということはやっておりません。口頭弁論のときに審判廷で傍聴される分には一向差しつかえない、そうしませんと事件の内容がわかりませんし、傍聴されれば事件の内容がはっきりするわけであります。御質問の件は、そういう記録を前もってみんなに公開できぬかということであろうと思いますが、事前には絶対にそういうものは出しておりません。
○坂本委員 ちょっと私の質問が悪いかもわからないが、私の質問は、すでに海難審判が開始されて、そうして公開で口頭弁論をやっておられればそこに書類を全部出すわけですね。出しておると、これは公開と同じであるから、少なくとも国政調査における場合においては、三十一条の秘密であるから言えないということはできないのじゃないかと私は思うのですが、あなたのほうの誤解じゃないですか、その点いかがですか。
○藤枝政府委員 私のほうでは、口頭弁論のときにいろいろ口から出ることばを聞く、というのは審判延で傍聴人に聞こえるわけでありますから、書いてある一件記録の内容を一々皆さんに説明することはないのです。それでもしそういう意見があれば、弁論、論告というところで一応発言してもらいまして、そしてそれはその次の審判期日に裁決する、こういうやり方でいっております。記録を前もって皆さんに見せるということは私どもやっておりません。
○坂本委員 書類を見せないということについては、私はわかります。しかしながら、国会でわれわれの質問に対して、秘密であるからそれは言えない、一般に出していないということは行えないのじゃないか。すでに裁判になっておれば、これは通常の裁判は刑下訴訟法に基づいて、裁判に出ておる、いわゆる公開の席上にその書類も出た以上は、私はやはりその内容等について聞かれたら言っていただかなければならぬというふうに思うわけなんです。したがって、海難審判に回されて裁判中で、すでに補佐人の弁論も終わったというような段階にあれは、これはもうそこに全部出ておればその内容について、二、三指摘して聞かれた場合はお答え願うのが至当じゃないか、こういうふうに思うわけなんです。きょうは時間がありませんからこの次にいたしますが、その点は私も検討しますけれども、もう少し検討してもらいたいと思うのです。私はこの審判法三十一条の理事官の秘密だけでは納得できません。どういう裁判の関係になっておるか、これはひとつ検討しておいてもらわなければならぬと思うのです。
 そこで、時間がたちますから留保して先に進みますけれども、アリゾナ号に関する調査は昭和四十年八月三十八日外務省を通じて依頼した、こう資料にございますが、それに対するアメリカ政府からの回答は参っておりますか、どうか。
○岡田政府委員 これはまだ先方から回答が参っておりません。
○坂本委員 次に「昭和四十年十月十五日在ポートランド日本領事官から米側が行なったアリゾナ号船長等に対する、尋問状況の速記録(日本領事館が作成)の送付を受けた。」これは送付を受けられたのですが、この内容等についてはやはり先ほどの三十一条の関係で国会でも答弁できない、こういうことになりますか、それはいかがですか。
○藤枝政府委員 これは従来から私たちは審判記録というようなものの公開は全然やっておりませんので、かつて南海丸という船の遭難事件がございまして、国会で論議がされましたが、そのときも内容については説明はできないということで終わっております。
○坂本委員 では、そういう前歴があるわけですから、その南海丸のとき見せられなかった法的根拠は、やはり先ほどの海難審判法三十一条が基本になるのですか、そのほかにあるのですか、その点いかがですか。
○藤枝政府委員 これは理事官の記録だけにつきましてはそういうことを申し上げます。一件記録というものにつきましては、内容の公開はできません。したがいまして、私たちはいずれこれは審判の結果裁決書というもので結論は出します、それを見ていただければ、事件はどういう内容であるか、いずれに過失があるかどうかという詳しいことは裁決書において申し上げることになっておりますので、それに至るまでの途中の経過における説明とか、それの公表とかいうことは一切やつておりません。したがいまして、裁決書を見ていただければ事件の内容ははっきりするわけでございます。
○坂本委員 その法的根拠はどこかというのです。何条にあるかというのです。あなたはただ、いままで見せぬから見せないと言うけれども、その法律上の根拠がなかったらできぬと思うのです。どういう法律の何条に基づいてそういうふうに公開しないのですか。
○藤枝政府委員 いまちょっとはっきりした内容についてはわかりません。刑事訴訟法関係と同じで、そういうものは見せぬということです。
○坂本委員 刑事上の裁判は刑事訴訟法に基づいてやっておることは私も理解しておりますから聞くわけですが、海難審判のほうはわかりませんから、あるいは刑事訴訟法が適用になっておるかもわからぬと思うのです。しかしそうするならば適用する根拠の法律がなければならぬ。あなたたちは公開しないしないと言うけれども、やはりどういう法律に基づいて、何条によってこれは公開できないか、あるいは国会における答弁ができないかということは、すべて法的の根拠に基づかなければならぬと思うのです。ですから私は、きょうは時間がないからその法的根拠だけを承っておきたい。もし法的根拠がないのにそういうかってなことをしているなら、これは許されないと思うのです。その点いかがですか。
○藤枝政府委員 先ほど申し上げたように、私のほうは、三十一条はあくまでも秘密を守らなければいかぬというたてまえからやっておりますので、それを引用してやっております。
○坂本委員 あとで田中さんの関連質問があるそうですから、私のだけ急いで終わらせていただきます。
 先日いただきました資料によりますと、いま申し上げました、外務省から米国政府に対してアリゾナ号の調査を依頼した、その調査はまだきていない、それから在ポートランド日本領事館から米側が行なったアリゾナ号船長らに対する尋問状況の速記録ですね、これの送付は受けた、その前にも、汽船明興丸については、同船の唯一の生存者である二等航海士町田末義より事情を聴取した、こういうことになっておるのですが、以上により一応の調査を終了したが、横、浜地検と協議の結果、取り扱いの慎重を期するため、海難審判の結果を見て態度をきめる方針である、こういうことなのですが、この点はいかがになっておりますか。これは海難審判のほうと検察庁のほうにお聞きしたいと思います。
○津田政府委員 この事件は、事件直後横浜の地方検察庁におきましても、先ほど海上保安庁からお話しになりました証拠物との関係についての捜査に参与しておりますが、この事件の捜査主体は横浜海上保安部であります。そこで海上保安部におきます捜査の結果送致に一致するということになりますれば当然送致されるわけでありますが、その送致がありまして、横浜地検としては本格的な捜査をいたすということを考えておるのですが、これは私はただいま初めて聞いたのですけれども、海難審判庁のほうで審判をやっておられますので、その結果を見て海上保安庁で送致をするということのようでありますので、おそらくそれを待って送致があって、それから検察庁の捜査になる、こういうことになると私は思っております。
○坂本委員 海上保安庁のほうはどうなりますか。いま海難審判の結果を見て態度をきめる方針であると言われたが、それはどういう方針であるか。横浜地検と協議の結果、取り扱いの慎重を期するため、海難審判の結果を見て、態度をきめる方針である。それは審判の結果が唯一のあれになるというのですが、この態度をきめるについてはどういうような方向をとられるのですか。その形式の問題を承っておきたい。
○岡田政府委員 いまの御質問の形式というのが、ちょっと私わからないのですが……。
○坂本委員 海難審判の結果、あるいはそのほかにどういう理由があって横浜地検と相談してその結果をきめられるかどうか、その形式というのは要件の問題なんです。
○岡田政府委員 海上保安部としましては、この事件につきまして、横浜地検の指示を仰ぎながら調査をいたしておりまして、送致につきましての、ほぼそういう段階に近づいているのじゃないかというふうなところまではいっているわけでございますが、これは海難審判のほうの全部の終結を待ってということではございませんが、進行の状況も参考の一つにはしながら、近く送致の問題をきめたい、こういうふうなことでございます。
○坂本委員 津田刑事局長にお伺いしたいのは、昭和四十年の八月五日の朝日新聞ですが、本件の衝突の問題について、アリゾナ号が横浜にきて出港した点について非常に世論がわいて、アメリカの船だからかってに許して出したんじゃないか、また一説には、アリゾナ号には南ベトナムにいくところの軍需物資をたくさん満載しておった、その船が横浜に何日も泊まっておると、それがわかると困るというので早期出港を許したのだ、こういうような話があるわけですから、そういう点についてもまた聞きたいと思っておりますが、その八月五日の新聞に「「公海条約」で引止められぬ、津田実法務省刑事局長の話」として「公海に関する条約には加害船の属する国だけが衝突事故の刑事裁判管轄権をもつ、と規定されている。日本はまだこの条約に加盟していないが、加盟国は三十数カ国に及んでおり、すでにこの条約は一般的にいって国際法上の慣習法になっているとみていいのではないか。今度の衝突事故は厳格にいってどちらの船が加害船なのかはっきりしない点もあるので、裁判管轄権が日本にあるのかアメリカにあるのかはいえない。また、同じ条約では船舶のだ捕、抑留は捜査の手段として行う場合でも、船舶の旗国の当局以外はできないとされているため、アリゾナ号を強制的にとどめることはむずかしい。」こういう新聞記事があるわけなんです。この点の見解はこれと変わりないかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。
○津田政府委員 ただいまお読みになった新聞記事の趣旨は、現在でも間違いございません。ただ別途若干つけ加えて申し上げますと、本年の三月三十一日に和歌山の有田市の沖でやはり同様の衝突事件があったわけです。これは加害船と申しますか、それはアメリカの貨物船でありますが、加害船か被害船かそれはわかりませんが、とにかく沈没したのは日本側の船であります。この事件につきましては、これは日本の内水であるという法的解釈のもとにおきまして、神戸地方検察庁においていま捜査をいたしております。そういう意味におきまして公海に関する条約あるいは内水に関する問題は、全部国際法に基づいて現在検察庁としては取り扱っておるわけでありまして、このアリゾナ号の事件がかりに日本の沿岸を去る六・数海里の地点であったということがはっきりいたしますれば、これは公海上の問題でございます。いまの有田市の沖は、これは沿岸から遠いのでありますけれども、これは別途瀬戸内海の内水の一部であるという意味におきまして、日本側に管轄権がある、こういうことで主張いたしております。この点はアメリカ側におきましても、アメリカの総領事館等も中に入っておりますが、日本側の刑事手続の調べを受けさしておりますので、その点は法律に基づいてはっきりした処置をいたしたいと思います。
○坂本委員 きょうはこの原因その他の点について、海難審判等についてお聞きしたわけですが、私がこの事件を取り上げて当法務委員会でやりたいのは、人権の問題と、これに関連して死亡した人に対する処遇の問題が放任されておるのではないか、こういうふうにも考えましたからで、私の調査したところによりますと、海員組合の遺族年金というのがあるそうですか、この遺族年金の中から、私の調査しました死亡者のこの人は上中邦興と申しまして、その人のお父さんが上中常次と申しまして七十三歳ぐらい、お母さんがクニさんで六十五歳ぐらい、この人は熊本県の方なんです。それでこの遺族年金によると、お父さんの常次さんは四十一年二月、ことしの二月からこの年金を受領することになって、年金が二十三万円である、こういうのがどういうふうな関係になるかという点と、それから死亡のときの諸経費が、いわゆる葬式代ですが、これが約四万円、それから行方不明の間の俸給が、三カ月か四カ月らしいのですが、その俸給が会社から出た。それから所持品喪失料として五万円、これだけだそうなんですね。私は、公海であるからこれは結論がまだ出ておりませんが、アメリカ側にその原因があるならば、これはやはりアメリカ側にその損害賠償を請求してしかるべきだと思う。それから明興丸の過失があったような場合については、これは外国船と衝突しておるのだから、公海の場所だといって放任するわけにはまいらないと思います。刑事問題もずっとまだ途中にあるようですが、徹底的に究明をしていただくことが第一。
 それからこういう行方不明になった、あるいは死んだ方、大体ほかの方も同じだと推測しますけれども、これだけでは済まないのじゃないかと思っています。それでもっと法的の支給方法その他がありはしないか、これはやはり国会としてははっきりしてやらなければ、海員の方々に対するところの今後の問題等についても重要なことであるし、もっと考えてやらなければならぬじゃないか、こういうふうにも考えますから、その方法等についてはもう少し御所見も承るし、こちらも検討いたしましてやらなければならぬ、こういうふうに存じておりますから、どうぞひとつこれは十八名のいわゆるもう死んだ人ですね、行方不明は死んだと同じですから、この十八名の方々の遺族に対してどういうような方法をとるか、こっちの船が沈んでおるからアメリカのほうが正しい、死人に口なしといって――ただ一人しかいない。聞くところによるとアリゾナ号のほうでは日本人は全部死んじまっているのだから、その原因はわからないのだ。だからかってなことを言って責任のがれをしているんだ、こういうようなことも言われておるわけですから、これはやはり海上保安庁としては十分ひとつそういうのではないということも明瞭にすべきだ、こういうふうに考えますから、そういう点についても御検討をいただくことを要望いたしまして、私のほうも検討いたしますから、次回に譲りまして、本日は私の質問はこれで打ち切りたいと思います。
○田中(織)委員 坂本委員のいまの質問に関連して二、三お尋ねいたします。
 いま刑事局長の関連した答弁で、和歌山県の有田市沖の問題は、沿岸からかなり離れておるけれども内水であるという面で、裁判権は日本にある、こういうことで現在神戸地検で捜査中だということですが、この場合の、アリゾナ号が沈没せしめた下田沖の場合に、向こうは公海だと言っておるのですけれども、その場合の公海というのは陸上から三海里説をとっているのですか、六海里説なんですか。その点はいかがでしょう。
○津田政府委員 現在のわが国におきましては、領海三海里説をとっております。
○田中(織)委員 それはまあそれぞれの国で違うわけなので、この問題が、たまたま日韓条約で韓国側が六海里、あるいは李ラインの問題等のことになると、公海の範囲の問題が、大きな国際上の争いがある問題であるという観点から見て、この場合に日本が三海里説をとっているという立場になると、ちょっと離れたところだ。ところがわれわれの疑問に思いますのは、沈没したのは二時九分過ぎである。ところがアリゾナ号から海上保安部への連絡は約一時間十分経過した三時二十分ごろだというふうに岡田次長は先ほど説明をせられたと思うのです。したがって、海上保安庁の船が現場へ到達するまでには、アリゾナ号は一時間十分という間に現場を離れておった形跡があるのではないかという問題も、これは未解決の問題だと私は思うのです。この点については、私の記憶では鍛冶良作委員から、その事件の直後に領海の範囲はどうなんだというような関係について質問もされておると私は思うのです。したがって、その後の調査の関係からいたしまして、はたして公海上の事故であるが、沈没せしめた原因がいずれの側にあるか、常識から見れば、アリゾナ号はほとんど船体に傷も受けていないということだということであれば、やはり大きな船が、ぶち当てたんじゃないか、こういうような常識的な判断もされるわけなんです。先ほど坂本委員の質問に対しては、四日に横浜港に引き返してもらって、任意の取り調べは海上保安庁並びに審判庁の理事官、ともにやられているというのですけれども、その記録がまだ調査中だとか、完成をしておらぬというような形では、私、いささか海上保安庁として、日本の船舶の安全保護にあたらなければならぬ立場から、たまたま不幸にして起こったこういうような事件については、いささか処置において怠慢のそしりを免れないのではないかと思うのでありますが、この点は坂本さんがなお海難審判法の法律的な解釈の点から見て、関係書類の重要な問題についての法務委員会への提出等の問題については保留されましたけれども、だれが考えても、どうもこの問題については、一般国民としては割り切れない気持ちを持っているだけに、私は特別に出してはならない――これは常識的にいって公開の裁判に類する審判が開始されて、一応審理が終わっているという段階に、一般に、町へ出すわけでもないのです。国会の国政調査の点から見て、海難審判庁の機構は現在のままでいいのか、あるいは公海の範囲というものを、日本が、この場合はアメリカにとっては都合のいいような三海里説をとっていることが至当であるかどうかというような、国政に関する問題に関連をする問題なんですから、その間の事情を明らかにするために資料として提出することを求めるということは、これは国会側として当然のことだと私は思いまするので、この点はいま申しましたように、少なくとも横浜へ引っ返してきてから任意にしろ調査したアリゾナ号の関係者が、衝突なりあるいは沈没の原因について否定しているなら否定している、あるいはその点があいまいであるならあいまいである形のものを、やはり国会の審議の参考のために提供していただかなければならぬと思うのでありますが、その点は海上保安庁並びに海難審判庁ともにどういう御見解を持っておるか、承りたいと思います。
○岡田政府委員 本件につきましてはまだ刑事事件の捜査の段階でございまして、刑事訴訟法との関係もございますので、当然これは非公開であろうと思います。したがいまして、この扱いにつきましては、やはりもう少し日を待って、海難審判等の結果によっておきめいただくというふうにお願いしたいと思うのでございます。
○田中(織)委員 いまの点について海難審判庁にもお答えを願いたいと思いますが、もう一点は最後に坂本さんが御質問になりまして、いま刑事事件だから海難審判の結果を待って海上保安庁から検察庁へ送致するならば、横浜地検で捜査の段階に移るという意味のことを言われたのです。しかし沈没の原因、責任が日本側にあるという場合に、生存者の二等航海華の刑事責任の問題が私出てくると思うのです。したがって、それ以前の問題が解決をしなければ、沈没させたのはどちらに責任があるのかという点が解決しなければ、刑事事件として取り上げられるかどうかということについての問題が残ると思うのです。しかし一面私は現在の段階においては、やはり沈没させた責任がアリゾナ号側にあるのじゃないかという一まつの考えというものが残っておるから、海難審判の結果に待とう、こういうことではないかと思うのです。海上保安庁が海難審判庁なりあるいは法務省との間で審判の状況を見た上で検察庁へ送致しようという点については、これは生存者として航海士の刑事責任があるという観点でやられるのか、その点はいかがですか。あわせてお答え願いたいと思います。
○岡田政府委員 現在当庁が捜査しておりますその一番直接の刑事事件としての被疑者という形になりますものは、明興丸の船長、これはなくなっておりますけれども、結局船長についてそれがあるかないかということが直接の刑事事件の対象になるものでございます。現在生存しております二等航海士につきましては、いろいろ参考人としての供述を求めるという立揚に立って現在のところ捜査をしている段階でございます。
○藤枝政府委員 先ほど申されました理事官の調査中の記録につきましては、先ほど申し上げたように公表はしておりませんが、理事官としましては一応事件を調査しまして、自分だけの確信、大体この事件はこういう方向じゃないかという確信を得て申し立てるのでありまして、これは審判にかかって、審判をやってみなければ理事官の調査した内容が正しいかどうか、つまり原因はそれでいいのかどうか、理事官の考えておる原因であるかどうかということは審判をしてみなくてはわかりませんので、これは審判法にはっきり原因は裁決をもって出すと第四条にうたわれておりまして、理事官の調査は単なる事件の解決に持っていく一つの中途の事項でありまして、理事官の調べたこと即原因である、原因はこうだということは申しかねると存じますので、あくまでも裁決によって結論ははっきりするわけであります。したがいまして、理事官の段階においては単なるこれは理事官個人の見解でありまして、それが即原因である、理事官の調べたことがこれが原因であるということは、審判をしてみなければわかりません。そういう意味で理事官の調査内容というものは事件そのものについてのきめ手ではないのであります。
○田中(織)委員 その点については、いまの海難審判庁長官の答弁では私ども納得はできません。理事官が審判を求めるということは、刑事事件における検事の起訴のようなものだというしろうと的な理解がされておるのは、全く理事官の主観的な意見だというようなことで審判が開始せられるかどうかということの御決定がなされるということになれば、審判制度のあり方についても私は問題があろうかと思うのであります、これは法務委員会の所管かどうかは別問題として。そういう意味で、この点については坂本先生も勉強されて次会に保留されておりますから、私もその点については質問を次会まで保留いたします。
○大久保委員長 横山利秋君。
○横山委員 大臣が十二時半ごろにお帰りだそうでありますので、売春防止法並びに少年法に関しまして、私と神近委員並びに山口シヅエ委員、三人から大臣に、これだけはおいでになる間に聞きたい問題だけに整理をいたしまして御質問をしたいと思います。
 第一に、一昨々日でありましたか、政府主催の売春防止法制定十周年記念式典が行なわれました。そこで総理大臣が式辞を朗読されたものによりますと、かかる観点からも今後も法律制定の精神にのっとり国民とともに相携えて売春防止対策に対処してまいる、かたいいわゆる決意を披瀝されたのであります。しかるところ、一例をあげるのでありますが、最近週刊雑誌等におきますこの種の問題は、全く言語道断の状況を呈しています。私が入手いたしました特異な例として、週刊文春の「赤線復活論者のメッカ初島新地」と題する特集の中に、あろうことかあるまいことか、尼崎中央署の倉田稔保安課長の言、並びに村上信光署長の言に至っては言語道断といわなければなりません。署長は、「つぶせというのなら簡単ですよ。機動隊を出して、辻々に立たせれば、客が入れないから一度にギャフンとなる。しかし、そうすれば悪質な業者になって町なかへもぐりますよ。つぶすなら、全部すくって海へ捨てるより仕方ないですな。警察は何をやっていたのかといわれると、困っちゃう。正々堂々、正面から論陣をはられたら、こちらはお手上げだな。こういうことは全国一せいにやれという世論になれば別だが、初島だけつぶすのも不公平だし、目にあまるものだけ取締ってきたら、十年間で日ましに良くなっちゃった。困るんだなあ。初島はいいところだとほめられればほめられるほど、こっちは内心忸怩たるものがある。理解のある警察だと、女の子たちはいうしねえ。しかし、業者は必要悪を最良の形で利用してもらおうとしてるし、あの種の業者としては良心的ですよ。女の値段も努力すれば手がとどく金だ。若者がそれで勤勉になったり、貯蓄という習慣がついたりすれば、いいことではないか。若者が恋愛しようとしても、恋人を五人つくるやつもいれば、一人もできん者もいる。その連中が変質者になるよりいいかもしれない。そんな気もするんですよ。わたしの性格としては、法もあることだしキチンとけじめをつけたいんだが、まあいまは時間待ちだな。どうも尼崎は正面すぎていけない……」これは記者がとった談話でありますから、全部本人がそう言ったとは思われないでしょう。しかし、この文体を流れる精神というものは何たることだ、こういう感じがするわけであります。いやしくも警察署長並びに保安課長、並びにそこの派出所の交通巡査に言わせれば、「ここへくる人は、みんなこれしにくるだけやから、別に害もないしねえ。むしろ変な暴力団が入りこまないか、見張ってるわけで、正直いうと、初島新地の用心棒、番犬みたいなもんやねえ、ぼくらァ」こう言っている。何ですか、これは。総理大臣が十周年に言っていることと、現地における警察官並びに署長が考えていることの間に、格段の相違がある。これは一体どういうふうに考えたらいいか、政府を代表して法務大臣から御答弁願います。
○石井国務大臣 いまのお話は、初めて私は横山君から聞くわけで、いまここにもあるわけであります。そういうことをそのとおり言ったかどうか知りません。それに近いようなことが何かあったかもわかりませんし、なかったかもわかりませんが、これはどうもそのままを前提として論ずるわけにはいきません。
 いずれにいたしましても、さっき十周年の記念の式典をやった問題からお話しになりましたから申し上げたいのでありますが、売春防止法をやりまして十年間、その十年間の実施のあとを、ちょうど十年という機会に振り返ってみますると、どうもあなたがおっしゃったように、この一部分の初島新地の問題だけでなく、全面的に見まして、非常な効果があがって、もうしばらくすればこういうふうな法律も要らぬくらいになる、りっぱなものだと言えるような情勢にあるとは私も言えないと思うのでございます。どうも残念な状態でございます。この間から私どもが考えておりますことは、統計的に十年間のあとを振り返ってみますると、数字的にはこの事犯にひっかかってくる者は減っておるというようなことが出てきましても、その性質がだんだん悪らつになって、法をもぐっていくというような状況が多くなってきておる。取り締まりの方法にもっといろいろなくふうをこらしてやっていかなければいけないのじゃないかということを考えます。ちょうど十年というこの式典をやった機会が一つの機会でございますから、こういうときにひとつみんな心を新にして、どういうふうに進んでいくかということを関係各機関が話し合って、さらに効果をあげるような方向に進んでいきたい。いまあなたの読まれたように、一つのところでやっておってはどうもうまくいかない、全面的にならどうだというようなことばがありましたが、そういうふうな考え方を持っておる者がどこかにないとは言えないと私は思うのであります。そういう考え方があるんだろうと思います。おれだけ悪者になったってしかたがないというようなことは、えてして人の考えやすいことでございますが、そうあってはならないと思うのでございます。この際、ひとつみんな力を合わせて話し合いを進めようというようなことをこの間から申し上げておるのでございます。だんだんそういうふうな方向に進んでいきたいと思っております。
○横山委員 これは売春取り締まりについて、検察陣並びに警察陣の士気が弛緩している何よりの証拠です。やったってしょうがないという、腹の中にその気持ちがあるから、この表現をもってするならば、清潔な売春が行なわれておるからそれを守ってやるという立場です。警察みずからが、暴力団から遮断するということを口実にして、売春の営業を防護しているという立場です。私は初島新地の問題を取り上げると言ったのでありますから、警察庁もこの週刊文春並びに現地の事情はお調べになったと思う。この週刊文春に関する調査はどういうことであったか、警察庁から御答弁願いたい。
○今野説明員 ただいまの御質問でございますが、実は私どもも御指摘の週刊文春を見まして、非常に驚いたわけでございます。いやしくも取り締まり当局におる者の発言としてはとうてい考えられないというようなことでございまして、さっそく地元のほうに照会を出しまして、一体どういう状況のもとにあのような記事ができたのかというようなことを調査したわけでございます。過日現地のほうから一応報告が参っておりますので、現在までに判明いたしております段階におきまして御報告申し上げたいと思います。
 まず、具体的な話した内容に入ります前に、現地の実情がどういうふうなことであるかということにつきまして、簡単に御説明申し上げたいと思います。(横山委員「結果を簡単に言ってください」と呼ぶ)結論だけをまず申し上げますと、結局文春の記者が参りまして、こちらの考えでございますけれども、赤線復活論者の町尼崎というふうな一つのテーマをルポ記事として出したいという意向のもとに訪れてきたように見られるわけであります。したがいまして、後ほど詳しい御説明をいたしたいと思いますけれども、一応あらかじめ筋書きのようなものを用意してまいりまして、関係者の発言をある程度断片的に取り入れたり、あるいは記者が質問したものに対してこちらが積極的な否定、肯定の態度をしないでおりますと、それが当人の肯定的な答えになっておるというようなことがございまして、必ずしもその記事で取り上げられておりますような、警察官が言ったことをそのまま正確に伝えておるものではない、むしろきわめて歪曲された形において伝えられておるというふうに現在までのところは見ておる状況でございます。
○横山委員 いかに歪曲されておるといたしたところで、この文体を流れるすべてのものの考え方が百八十度変わらなければならぬ。百八十度歪曲されておるならともかくとして、この派出所の巡査そのほか名前がきちんと書いてありまして、某署長とか某課長とか書いてないのだから、少なくともこれに類することは言っておるはずです。この初島新地ばかりでなくて、最近新聞、雑誌あるいはテレビ、映画、あらゆるところをとうとうとして流れるあんまの問題なり、あるいはトルコぶろの問題なり、いま現実にそういう問題があるということを大臣は御存じのはずでございますね。また警察庁も知っておるはずですね。それにもかかわらず、検察陣並びに警察陣が全力をあげてこの法を守らせるというような気持ちがないことを痛感せざるを得ない。この倉田稔課長の言を言えば、「食糧管理法がいまも存在するからといって、現在ヤミ米の取締りをやったらもの笑いでしょう。売防法の精神も、初島の場合、食糧管理法におけるヤミ米みたいなところがありませんか」、こういうものの考え方です。こういうものの考え方ではとてもわれわれは納得するわけにはいかない。歪曲されておるといったところで、この村上署長や倉田稔保安課長のことについて、全然警察庁としては責任を負わないのか、こういう誤解を与えたようなことを言ったことについてその責任を追及しないつもりであるか、放任するつもりであるか、お考えを伺いたい。
○今野説明員 いま申し上げましたように、後ほど御説明申し上げたいと申しましたのは、どういうふうなやりとりがどういうふうなニュアンスのもとに行なわれたかということを申し上げたほうが御理解いただけると思いまして、先ほど申し上げたのでございますが、結論だけとりあえず申し上げたわけでございます。
 それで、いま申し上げましたようなことで、われわれのほうとしましては、現在までの調査によりましては、必ずしもそういったようなニュアンスで言ってないというふうに見られるわけでございまして、したがいまして、むしろその記事が非常に事実に反するとか、あるいは真相を伝えていないというようなことであるならば、これはまあわれわれのほうでどうこうしろという筋合いの問題ではないかもしれませんが、現地の当局におきまして、関係者なりあるいは県警といたしまして、あるいは記事の取り消しを求めるとか、あるいは訂正を求めるとか、あるいはさらに進んだ措置をとるというようなことも検討されるのではないか、こういうふうに考えております。
○横山委員 検討されるのではないかどころではない。この記事が間違いなら、堂々と名前があがって、全国に週刊文春が送られており、警察の考え方はこのような考え方らしいという影響はきわめて甚大ですから、取り消しをさせるなら取り消しをはっきりさせなさい。本人にそのような誤解を与えた責任があるというなら、はっきり処分をさせなさい。お約束できますか。
○今野説明員 そのことにつきましては、全く御指摘のとおり同感でございます。したがいまして、検討の結果措置をとるということであればとるでございましょうし、あるいはさらに調査の結果、けしからぬというような問題が本人たちについて出してまいりました暁には、御指摘のような措置をとることも当然考えられると思います。
○横山委員 けっこうな答弁です。ぜひそれを実行してもらいたい。
 それで、大臣に少年法について、いらっしゃるうちに一、二点伺いたいのですが、法務省が今度の少年法について構想を発表されました。これはきわめて重要な発表でありまして、大臣の真意を伺いたいのであります。
 第一は、私がずっと調査をいたしました、並びに政府側の統計をとりましたところ、ここにありますのは、総理府中央青少年問題協議会並びに警察庁保安局防犯少年課の少年非行の実態に関する調査結果報告書でありますが、この調査結果の要約を見ますと、まず最近の特質としては十六、七、いわゆる今度の構想の中の少年ベースの犯罪が激増しておって、十八、九というところは横ばいないし低下の状況にある。これはもう発表以来ずっと各方面の意見が出ておるのでありますが、それ以前にも出ておるのでありますし、また最高裁のものの考え方もそのようであります。しかるところ、この少年の犯罪が激増しておるからということが根底となって青少年法が出ておるのでありますから、この辺は一体どういう考えであるか、真意の捕捉に困難なんです。問題の中心は十六、七、それから中学生、それから中都市というところに問題の焦点があるというのが統計的な数字であります。ところが、今度の構想は十八、九、そこに問題がすりかえられておるという感じがいたすのであります。それは一体どう考えたらいいかというのが第一であります。
 それから第二番目は、今度は一案でなくして別案も用意をされて、弾力性あるものの考え方のようであります。これはなかなか民主的なやり方だと私も賛意を表したいと思うのですが、今後どのようにこの構想をお進めになるおつもりであるか、世論を聞くとおっしゃるのだが、世論はどういう方法で反響を見ようとするのであるか、二点について法務大臣の御意見を伺いたい。
○石井国務大臣 第一番目の問題について申し上げます。私どもが考えましたいわゆる青年層というものでありますが、これを一つ特別に少年というものから離して考えるという見方。これはこの層については、いまおっしゃったように、数においてはほとんど増してないじゃないか、それを特別にいろいろむずかしいことを考えぬでもいいじゃないかとおっしゃいますが、この層では実例をごらんくださればわかりますように、やはりこれらは知恵がついていく年ごろでございますから、またその心持ちの非常な変化をする年ごろでございますから、悪質な犯罪を犯す傾向が非常に多いという年齢層になっておるのであります。犯罪の数から申しますと、十六、七歳ごろが一番多いというようなわけでありまして、私どもいろいろな点から、そういうような点をあちらこちらから検討いたしまして、いまのような行き方にしたが一番実際に適するのではないか。十数年間の実施いたしました結果において、いまの少年法が一番いいかどうかということを考えますと、非行少年を正しい方向に導いていくのにはいまのでは少し現状に即しないのじゃないか、それにはどうしたらいいかということを考えた結果、今度のような改正案を出したというようなわけでございます。
 第二のお尋ねの問題でございますが、第二の問題を出しまして、それじゃどちらを出すか、どちらも賛成があった場合はどうするかというような、多数決できめるとかいう問題じゃないのでありますが、皆さん方にも御意見を聞きますし、各方面の意見を聞きます間に、どういうふうな方向かというものがだんだん出てくると思うのであります。私どもは大体前からこの少年法の改正につきまして複数で出すということを申しておりました。同じようにして、どちらかをお選びくださいといって出すのはあまり知恵がなさ過ぎる。何かわれわれがこのほうがやはり重きを置いて考えられるのではないか、しかし、こういう考え方もある。しかし、まだほかに皆さんの考え方があればそれもおっしゃっていただきたいという心持ちで出したのが今度の出し方でございます。私どものほうは、第一案のほうがいいんじゃないかと考えております。しかし、第二案のほうがよろしいという声が非常に多くて、これが強ければ、私どもは第一案に固執する考えはもちろん持っておりません。皆さん方の意見を聞いて、また最後には法制審議会にもかけます。そういうようなことをして最後には成案を得たい、こういうふうに考えております。
○大久保委員長 神近市子君。
○神近委員 私は、大体において、大臣の先日の記念日における祝辞と、それから売春防止法に関連したことをお尋ねしようと思うのですけれども、いま少年法の問題が出ましたから御参考までに申し上げておきます。
 いま大臣も十六、七歳ということをちょっとお話しになりましたけれども、ハーバード大学の調査室で年齢層別にいろいろの調査をしております。それにちょうど同じ問題が出ておりますけれども、七歳が超野蛮人、それから十五、六、七歳は近代的野蛮人というような定義をして、その対策をどうするかということが研究されておる。私はこれはまた聞きでありましてここにメモしてありますけれど、その研究に参加しておる学者のお名前もわかっておりますから、少年法をおやりになるときは一応研究結果を御参考になさったほうがいいのではないかということをここで申し上げておきます。
 いま参議院に売春防止法の改正案が出ております。四月の二十八日に大臣は参議院においでになって、そして売春防止法の改正は考えないという御返事をなさっておりますが、私はさっきからこの記念日の御講演といろいろ考え合わせて――きょう持ってきて横山委員にもお目にかけようと思っていた「宝石」という雑誌に、梶山季之という人が日本の赤線復活の状態を非常に詳しく、何人かで手分けして行なった、その記事が百枚ぐらいの原稿でございますけれども、出ております。いま尼崎郊外のお話が出ておりますけれども、あれどころでない。手がつけられない。悪質な業者と暴力団とががんじがらめに女を使って、搾取している。その実態を見ますと――防止法では私ども反対だったのですが、その前年の国会で売春処罰法というのを提案して、そして自民党の方々からも――私は全部はお名前を覚えておりませんが、星島二郎さんとか、宮澤胤勇さんとか、そういう方々の御賛成をいただいた、そして自民党の中でも御論議が行なわれているときに業者からの妨害が出まして、審議は大体終わりましたけれども、御賛成は得られなかった、そしてもっといい案を出すからというのがあの防止法で、私ども社会党は反対の御提案をしたのですけれど、キリスト教の婦人矯風会あるいは救世軍のような方々が、もういままで七十年この問題に取っ組んできているのだから、ぜひこれを橋頭堡として通してくれというようなお話だったので、賛成した、こういういきさつがあるのです。今度の改正案というのは、その処罰法に大体似通った両罰主義、女を罰すると同時に、買った者も罰するというのが一つの精神なんです。だけれど、大臣は四月の二十八日に参議院で、この防止法の改正は考えない、いまのままでいいというふうなことを言っておられます。それはこの記念日の祝辞で人権の問題とか、あるいはこれをもっと推進するというような意味のことをおっしゃって、重要性を考えているということをおっしゃっているのと私は食い違うと思うのです。「宝石」に載っている梶山季之の記事をごらんになると、福岡、大阪、それからどこか北陸のほうも三、四カ所手分けして実態を見ていますが、暴力団がそこに非常にはびこっている、悪質業者がどんなに搾取しているかということが私はおわかりになると思う。そうすればどうしても次善的な一つの方法として、両罰主義、買った者も罰せられるというようなことを考えていただかなければならない。初島の問題はまだ良心的ということでいま横山委員が問題にしていますけれど、まだ女を助けている、女の収益を搾取する側が非常に削られているというので、福岡あるいは大阪市内、そういうところよりもまだいいのかなというふうな感じを持っているのですが、私はその点で、この改正案をぜひ推進させ、あるいは継続審議にでもしていただいて、両罰ということをひとつ考えていただかなければならないのじゃないかと思うのですけれど、大臣はいかがお考えになりますか。改正案は取り上げないというようなことを最終的に決意していらっしゃるのかどうか。
○石井国務大臣 いま神近さんがおっしゃったとおりで、その前として、さっきも横山さんのお尋ねに答えたように、私もやらなくちゃならぬことはほんとうにたくさんあると思うのでございます。ちょうどこの十年の記念を機会といたしまして、警察関係その他、関係の機関とよく相談をいたしまして、もっと行政の面で取り締まる。私はいまあなたのおっしゃったようないろいろな事実がたくさんあるだろうと思います。そういうものも、私は現行法でやっていける問題がたくさんあると思うのです。それをまずやるべきじゃないか、こういうふうに思います。法はまだこしらえて十年でございます。もっともおっしゃることがいかぬとは私は申しませんが、まだ法を改正する前に私どもはやるべきことがあるので、この際は、改正しろとおっしゃればまだちょっと待ってください、その前に私どもやる仕事がございますからやりますということを申し上げておるということに御了承願いたい。私どもも努力をいたします。
 それから前段におっしゃっていた先生のことは、あとで意見を承ります。
○大久保委員長 山口シヅエ君。
○山口(シ)委員 大臣に関連してお伺いしたいのですが、私は少年法の質問は後日に回さしていただきまして、ひとつごく簡単に根本的な問題をお伺いしたいと思います。
 大臣は売防法が通りました当時をいろいろ振り返っていただけば思い出されることだろうと存じますけれども、たいへん紆余曲折を経ましてようやく通りました法律で、当時は憲法にうたわれますところの人権尊重の見地からこの問題が取り上げられまして、この法律が通過いたしましたらば、公娼として森を売っておりました人たちが勢い散娼となって町に散ってまいりまして、その散娼を更生させたい一心で、私たちはこの更生問題に非常に熱心に取り組んでまいりましたけれども、なかなか完全な裏づけができませんものですから、そういう問題も解決を見ないままに、取り締まりはいわゆる売春をさせる宿を眼目にして行なわれてまいりました。それから街娼、町をうろつく娼婦たちの取り締まりというような状態で終わってきております。この売防法が通りますときに、私たちは、決してこれが完全な法律でもなければ、これによって売春婦は一掃されるという自信も持っておりませんでした。むしろこれはざる法である。裏をかかれて危険な状態になってくるのではないかという心配を今日までし続けてまいりましたところが、やはり現状はそういう結果になっております。しかし当時は、売防法というものが世界的に、単独法として設けられている国はなかったように思います。これが刑法によって諸国は取り締まられていたように私はいま覚えております。そして売春禁止関係の法律のなかった国は、中南米の一部でありますところのコスタリカという場所と、欧州のトルコ、この二つだったように私は覚えておるのでございますが、曲がりなりにも文化国家として、背伸びをしてでも形を整えたいというのが私たちの考え方で、国際的な体面もありましたので、急いでこういうような形のものを通過させていただきましたけれども、つくづく私は今日までその経過を顧み、また検討してみますと、日本の社会情勢では、完全にこの法律を生かすことがなかなかむずかしい。それから世の中に女と男がある以上は、性の問題は非常にむずかしい問題であって、なかなか解決を見ることができないのではないかというような考え方を私は持ち始めてまいっております。そこで大臣が売春防止法に対してどんな考え方を持っていらっしゃいますか、いわゆる根本的なお考えでございますね。こういうものを、もちろん大臣としてではなく、男性の一人としてお考えをお漏らしいただければ、たいへん私、参考になります。
 それからただいま横山委員がお読みになりましたのを、私もちょっとはす読みしたのですが、週刊文春の記事は、売防法の裏をかいたまことによくできている記事でございます。私、これはとても参考になります。一般の人たちの考え方を代表しているような感じもいたしますし、それからこの記事を書いた記者そのものが非常に裏をかいて、いわゆる男と女の問題をうまくまとめてここにわかりやすくつづったというような感じがいたします。そこで、この文春に出ております内容は、いま横山委員から説明がございましたので、これと、それから私がいま御質問申し上げました根本的なものの考え方と含めて、大臣からお答えがいただければたいへんしあわせだと思っております。
○石井国務大臣 私は、この売春防止法は生かしていきたいと思っております。ということは、私は、売春というものが、いまお話がありましたが、性という問題、人間というものがある限りにおいて、こういう暗い面が起こってくるということも考えられます。しかしそれがあるからといって、それを認めて野方図にしておっていいものではないことは当然のことだと思います。そういうことのないような、少なくとも少なくなっていくような社会をこしらえ上げていくということが、われわれみんなの共同の努力しなければならぬ目標だと思います。そのためにはいまのお話の中にもございますように、いろいろなこれにたかって生活をしようというような人、またその人たちをあやめて生活をしようというような者等があることは断じて許すべきものではないというようなことで、もっと強く取り締まられることは当然のことであります。そういう面においては、私どもももっと力を入れるべきではないか。現実の問題として、私どもももっとやらなくちゃならぬ問題として考えております。そしてこういうふうな方向を、それならばこういう規定が必要だということにするならば、神近さんもさっきおっしゃったように、この際いままでやったものをああも直したら、こうも直したらということは当然考えられますので、どんなものでも法が出ればこうも直したいということは、翌日からでも出てくると思いますし、またひとつ大事な法として考えよう。十年間もやったということでは、十年間でございますが、法としてはあまり長い経験のないものでございます。その法はその法としてもっと生かして使うのが私どもの責任でありますから、そのほうも考えたい。この十年の機会に努力してやりたいというのが私どもの考え方でございます。
 もっとお話し合いもしたいのですが、はなはだかってでございますが、旅行をいたしますので、これで失礼させていただきます。
  〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
○神近委員 大臣にもっと聞かせておこうと思ったのですけれども、時間がとれたのでたいへん長くなったのですが、いまの状態なら、この日本民族というものはある程度弱小化されていく民族になる。どなたか百年か二百年あとには、日本民族というものは――そういうようなことをおっしゃったことがあったのですけれども、いま非帯に悪質の性病がはやっている。早期顕症梅毒といいまして南から来たらしいのですけれども、それがいまある人によれば三百万、千葉大学の何とかいうお医者さまによると大体五百万、これが非常に悪質の梅毒をかかえている。そこで五百万ということになりますと、これはこのままほうっておいたら非常なふえ方になる。医療の問題でもこれはまたいろいろ問題があると思うのですけれども、そうすれば梅毒にかかった女が生んだ子供は――男の人もでしょうけれども、大体精薄になることが非常におそろしいのです。そしていま五百万ですけれども、あしたはまた七百万になるかもしれないし、千万になるかもしれない。そういう人たちを考えると、日本の民族の非常に大きな部分が精薄というようなことに――それは度が違うかもしれないけれども、ともかく頭が変になった民族となれば、日本民族の将来というものは、私はこれも大百にぜひ聞いていただきたかったのですけれども、これは非常におそるべきもの、いまあの梶山季之のものを読んでごらんなさい。あれを見ると大体民族の将来はわかっているような、ある程度見きわめたほうがいいのではないかとさえ私は考えているくらいなんです。それで防止法の処理のむずかしさ、そしてそこに官僚主義が入ってきて、いま問題になったところでも同じであります。法律が非常に不自由な、常識で考えていいとか悪いとかはっきりわかるものか法律の規定があるためにできない、そういうような変なものがいまの日本を占領している。
 一つの例をあげますよ。どういうところに私がそういう問題を感じるかというと、官邸の裏にトルコぶろができる。あれが困るということ、あれももしできたなら総理官邸なんかどこかにお移しになったほうが私はいいと思う。ともかく、売春を国営にしろとかなんとか梶山季之は言っているけれども、官邸のそばにトルコぶろがあって、そこで売春が行なわれる、これはちょっと考えると、国営に非常に似たようなものになるということから、あそこは困るということは、みんな考えていたのです。官邸のそばに、同番地ですから、個人のトルコぶろをつくられては困るということはよくわかって、そして千代田区役所でも、東京都でもそれを何とかやめさせたいということをずいぶん考えたのですけれども、それはできないのですよ。公衆浴場法ですか、それから衛生基準や建築基準、そういうものに合っていれば、これをやめさせることができない。これの一番おしまいに、浮揚という千代田区の建築課長のお話が出ています。現場は官邸と同番地ですが、商業地域になっているので、たとえバーとかキャバレーなどの風俗営業でも押える根拠がないのです。法律がないと言うのですね。それでこれを押えましたけれど、どうしても、この日限が過ぎると職務怠慢になるおそれがありますから、しかたなくてそれを許可いたしました。常識でだれが考えても、総理の官邸と同番地にトルコぶろ――売春ということはもうはっきりわかる。個室が二十あるのですから、わかっている。それでも押えると――常識ではみんな、役人も市民もわかっているのですよ。それを法律のために許可を与えなければならない。監督ができない。職務怠慢というような逆の――職務怠慢はもうあらゆるところで行なわれている、それを逆に、職務怠慢になるからといって建築を許可しなければならぬ。その点で次官はどういうようにお考えになるか。もう官邸はどこかにお移しになる、尾崎会館ですかにかえたらということもひょっとどこかに出ていましたけれど、そういうことをどういうふうにお感じになるか、ちょっと伺わせていただきます。
○山本(利)政府委員 ただいまのトルコぶろの設置と官邸との問題については、私はいままで調べたり詳しく聞いたことがございませんが、もしそういうものが官邸のすぐそばにできるということになると、これはまことに遺憾なことだと考えます。そして現在の日本の法律ではそれを阻止することができないということで、万一そういうものができ、それが売春の仲立ちをするとか、売春行為の根城になるというようなことであれば、それはいまの売春防止法等によって厳重に取り締まるべきだと考えます。先ほど来、男と女がある限りにおいて、性の問題から売春ということは非常にデリケートなものだというような御発言もあったわけでございますが、婦人が春を売るということは、根本はやはり生活からきておるのではないかと私は思うのです。そのことをしたいがためにするというのが主でなくして、どうにも経済的に困る。自分の生活をささえるためにやはりそういう道におちいっていく人が多いと思うのでございますから、これはやはりそういう面からも、政府といたしまして、また国民全体といたしまして防止をはかっていかなければならぬ。ことにそういう弱みにつけ込んで、そのひもとなり、あるいは血を吸うような行為をするような人間こそ、私は厳重に取り締まるべきだと個人的には考えておるわけでございます。先ほど大臣の答弁のように、現在の法律でも十分にそれを生かして取り締まっていくならば、相当の効果をあげ得るものだと思っておるのです。ただ遺憾ながら、それがいろいろな事実からうまく取り締まりができていないということであるならば、その方面において、今後は当局は十分力を尽くすべきであって、この問題については、いろいろな面から研究し、慎重にはかっていかなければならぬ。現在議員立法として提案されておりますような問題についても、いろいろ私は傾聴すべき点があると思いますが、すぐに多数の人の賛成を得がたい点かと思うことは、やはりその相手方を取り締まることが非常にむずかしくて、場合によっては、人権擁護の問題から、その罪を犯した者を新たに法律で罪人ときめるならば、それをあばくために、そうでない者も非常な迷惑を受けるというような点もあって、また人権問題ということもやかましくなりますから、こういう新しい法律とか、さらに進んだ、現在の法律を改正しようとする場合には、慎重の上にも慎重を期して、研究の上にしなければならぬ、こういうように考えるのでありますが、売春行為そのものは、私はこの人間生活における非常な悪だと考えますから、これをあらゆる面から防止することを考えていかなければならぬ。法律によって取り締まれる面においては、十分にこれは取り締まらなければならぬ。
 もう一つは、国民全体、あらゆる面で、これは売春問題だけでなしに、その他一般の社会の面において、社会を浄化しようというならば、これはやはり国民全体の文化性を高めるということが、私は根本の問題だと考えるわけでございます。でございますから、いまの神近委員のいろいろな御発言も、非常にとうとい御意見だと考えますから、現在ございます法律によりましては、今後各機関と連絡を密にいたしまして、これの防止につとめると同時に、いかに売春ということが悪いことか、しかもその発心によって民族を滅ぼすかもわからぬような病気が国民の間に広まるということは、日本民族として遺憾なことであるから、こういう行為はすべきでないというような根本的な思想を広めるために、社会教育においても、あるいは学校教育においても、その他国民全部が寄って努力すべき問題であると、かように考えます。
○横山委員 関連。回りくどい話をするよりも、神近さんの言う総理大臣官邸のそばのトルコぶろはどうなったのですか。起工はしたのですか、せぬのですか、おわかりだったらお答えを願いたい。
○高柳政府委員 私、直接担当しておりませんので的確ではございませんが、まだ起工したとは聞いておりません。
○横山委員 許可はおりてない、そうですね。それなら、さっきの法務大臣もああ言うのだから、法律がなくたって運用でできることが幾らもあるということから、政務次官もそう言うのですから、許可しちゃだめですよ。許可したら、あなたの言うこと、大臣の言うこととはまるきり違うのですから。どうですか。政務次官は許可しない方針である。それは法律以前の問題ですよ。あなたの言う、また法務大臣の言うような意味から言うならば、許可できませんよ。お答えを願いたい。
○山本(利)政府委員 許可とか不許可という問題は、やはり法律に沿うたことでございますから、私がここで、これは絶対に許可できないとか私個人としては許可すべきでないということは考えますけれども、法律的に許可を阻止することができるものかどうかということは、さらに私どもは検討もしますし、でき得る限りこういうものは許可しないように努力してみたい、かように考えます。それ以上のことはいま申し上げられません。
○横山委員 私は、神近さんも山口さんも言っているように、法律を改正しろ、両罰規定でやれ、足らざるところは法律を改正しろという立場です。しかし政府側の言い分は、これは現行法でもやれることは幾らでもあると言っている。私は、あるけれどもサボっておるという立場です。法律をそのまま十分に運用してない、サボっておるという立場です。けれども大臣やあなたがそこまで言うならば、法律以前の問題として、法律はそうであるけれども、行政運用として総理大臣の官邸のそばにトルコぶろができるなんということは、国民の常識が許さぬから、許可しないように、やり方は幾らでもあるはずです。本人が辞退する方法は幾らでもあるはずだ。それをやりなさいと言っている。だから、結果として許可をしないようにしなさい、こう言っているのですよ。お答えを願いたい。
○山本(利)政府委員 お互いに気持ちはよくわかっておるわけでございますが、法的にいって、これから売春宿をいたしますといって届け出たものならば、これは一ぺんに不許可にすることはできますけれども、ふろをやりますといった場合に、それが実際にふろを開いて、トルコぶろであろうと普通の浴場であろうと、それを開いて、そこで売春行為をした場合においては、これは取り締まることはできましょうけれども、おふろを営業しますという願いが出たときに、それを許可しないということができ得るかどうかということは、これは法律のたてまえから考えてみなければならぬ。何かほかの方面から、ほかの理屈とか法規とかに照らしてこれは許可できないということがはっきりするならば、当然そう扱うべきだと考えますけれども、いま言ったようにこれは社会的な常識として国内にトルコぶろがたくさんあって、そこでいかがわしい行為をしておるところが調べてみたら相当あるかもしれません。ところが、全部そういう行為をしておると断定することもまた非常にむずかしいことでございますから、だから正しい許すべき看板をもってその申請がなされた場合に、それを不許可にするという場合には、やはりそれ相当の理由がなければこれは不許可にするということも非常にむずかしい問題でございます。法律に基づいての申請をした国民の権利というものを、ただ常識的に考えて、これはたぶんおまえたちは売春宿をするであろうから許可しない、いや私どもは一切いたしません、こういうような議論になると水かけ論になってしまいますから、その点は許可しないような何か法的にも理由を見出し得るかどうかということを研究してみなければならぬ、かように申し上げるわけでございます。
○横山委員 あなたは、私の言うことがよくわかってない。だれが世の中にトルコぶろをやって売春をやりますという人がありますか。だからこういうことは許可不許可の基準にならないのです。私どもが、国民が、また世論として言っているのは、総理大臣官邸のそばにトルコぶろがある。売春宿になる可能性もあるけれども、トルコぶろだということですね。官邸のそばにトルコぶろということが常識に合わないというのです。それは光春法以前の問題でもある。
 それから、法律に違反しなければ何をやってもいい、しかたがないという考え方がいかぬ。官邸のそばのトルコぶろということがよくない、国民常識が許さぬ。法律以前の問題だから、常識的な問題だから、もし政府か旭当でないという――適当ですよ、適法でなく。適当でないという気持ちになるならば、いかようなりともこれは辞退させるいろいろな方法があるはずです。それをやれというのです。
○山本(利)政府委員 繰り返すようですが、結論の、目的とするところにおいては横山委員の思いも私の思いも食い違っていないということを前提として言うのでありますけれども、法律以前の問題としてものを処理する場合には、あらゆる問題が、いろいろなときにそういう法律以前の問題として許可不許可ということを決定することができるならば、いろいろな他の問題についても、法律以前の問題だとして扱かわれ、これはその反対側からいえば、政府が都合のいいようにすべての許可不許可をはからう危険性が起こるという懸念もまたここにあり得ると私は思うのです。だから、あくまで許可不許可ということは、やはり法に基づいて、これこれだから許可することはできないとか、あるいは裏面工作として、法律にあてはめる前の問題として、官邸の近くにそういうものができるということは、どうもいまの世論からいって思わしくないから取りやめてもらいたいという、普通のことばで言えば政治的工作が行なわれて、相手方が納得する場合においては、これはまことにけっこうなことだと私は思うわけでございますけれども、この場所において法律以前の問題であるとか、法律にかかる問題であるとかいうふうに議論する場合においては、一応私の申し上げるようなお答えしかできないということを御了承いただきたいと思うわけでございます。
○神近委員 私は、女のほうの側から何でも御反問に答えますから、男の人の、刑事局長でもどなたでもいいから一つ伺いたいのです。
 さっき申しましたハーバード大学の調査によりますと、今日の人間の性交の形は、一億年から二億年かかって出てきたものだそうです。それで、いま進化論を読み返してみるひまがなかったので、これは非常に常識的になりますけれども、結局一億年とか二億年とかいうのはアメーバからの生物の成長過程をさしていると思うのです。そしてそのときの神様だか自然だか知らないけれども、それは生物をふやすということに力点が置かれた。今日でもアフリカや中近東に行けば十人とか十二人の子供を持っている。日本だってまだそういう人たちはいます。だけれども、これをどういうように――ともかく日本なんてもう過密の国家になるのですから、これを何とか考えなくちゃならない。そこへ性欲過剰というようなものが出て、経済的な問題ももちろんからんでおります。そして適当な年齢になって家庭を持てない、まあ恋人ができないというのがなるんだそうですけれども、私は男の方々の生理というものがわかりませんので、一体性欲というものはどうしても押えることのできないものかどうかということを、男のお役人の方々どなたでも、刑事局長に伺いたい。青春期にこれを処理することはできないものかどうか、もしできないとすればそういう悪質の性病を散らしたり、あるいは女を――梶山季之のものを読めば、その周辺に、これを金もうけに使う人たちが、悪質の業者、それから暴力団が出てくる。
  〔大竹委員長代理退席、田村(良)委員長代理着席〕
私はその点で、男の方々の性というようなものは一体どう処理できるのかということ、これはこれから出てくる青少年の問題にもからまってきますから、ともかくわれわれの内蔵しているそういう性というようなものが、一億年あるいは一億五千万年あるいは二億年かかってきたものだとすれば、これはどういう方向に持っていったらいいか、どうしても青春期にはけないという場合には頭にくるとか、生理的な異常を起こすとか、勉強ができないとかいうような状態が起こるのですか。男の方々からどなたでもよろしいからひとつ伺っておきたいと思います。
○山本(利)政府委員 私からお答えいたします。
 それは、男性全体としてどうかということは言い得る問題でないと思います。これは、私も含めまして、ここに政府側として出ておりますような男性は、みな自分の良識によって性の問題もコントロールし得ると思います。けれども、これは教養の差によって、たくさんな人のことでございますから、その人個人個人によってその問題は起こり、それをコントロールし得るか得ないかということが起こるのでございまして、ここで、男性はどうもコントロールし得ないものであるとか、絶対にコントロールし得るものであるとかということは御答弁いたしかねる問題かと考えます。
○山口(シ)委員 ただいま神近先生に御質問を譲りましたのでちょっと間があいたようでございますけれども、私は、先ほど政務次官がお答えになりましたお答えの内容について、さらに質問したいと思います。
 先ほど大臣に、私が、この世の中に男と女がある以上は、性の問題が非常にむずかしいから、売春の問題は解決つかないだろうかという内容のことを含めて御質問申し上げましたときに、お答えになりましたのが、いや、いまのこの法律を行政面に十二分に生かすことができれば、この売防法というものは売春禁止に近いような役を果たすだろうという内容のお答えだったと思います。それから、いま政務次官がトルコぶろのことについてのお話の中でも、やはりやりようによっては、法律の生かし方によってはこれは成果があがるんだということが御答弁の底に流れていたように思います。しかし、この法律が通過いたしましてもう十年たっておりますが、いまだにこのような状態、というよりむしろ潜在的な悪い影響を来たし、ただいま神近委員の質問の中にございましたように、悪質な梅毒、性病も蔓延しておるという結果を生み出しております。また、売春婦があとを断たないのは経済問題が大きな原因をなしておるということも政務次官の答弁の中にございましたが、それも事実でございます。そういたしますと、大臣のお答えも政務次官のお答えも何を結論になっているかというと、政府の怠慢を……(「弁護のためだ」と呼ぶ者あり)弁護よりも怠慢のためにこの法律が完全に生かされていないのだということを結論づけたような気がいたします。そういたしますと、大臣も政務次官も、それじゃこれから、この法律のままでよいから、売春婦の問題を解決すべく一そう努力をするのか、また、いままで非常に怠慢であったからこれに対しては反省しなくちゃならないのか、まことに失礼な質問でございますけれども、その点をはっきりさせていただきたい。
○山本(利)政府委員 山口先生の御質問の中でもはっきりしておったと思いますが、人間に男女の性別がある限りこの性の問題は非常に複雑微妙なものであるというその性の問題と、そして売春を防止するという問題とは、関連はもちろんございますけれども、また別個の問題だと思います。われわれも、現在の売春防止法ができましたときにも、これは一進歩であると喜んだわけでございます。しかし、法律ができさえすればその方面における改善が直ちにできるものではございません。もちろん長い間の努力と経験と反省とによって漸次できるものでございますが、この問題は御承知のように非常に複雑な問題であるだけに、なかなかむずかしい。だから、当局におきましてもそれぞれの第一線の機関の者は努力しておると私は思うのでございますけれども、それが非常にむずかしい問題であるだけにこぼれる点も非常に多いわけでございます。これは弁護するために申し上げるのではございませんけれども、性の問題だけでなしに、そこに経済の問題がからんでまいりまして、売春行為をさせることによってまたみずからの生活を助けようとする者もここに出てまいるわけでございますから、法を巧みにくぐろうとする点もございます。また、戦争前にはいろいろ臨検等のこともございましたけれども、いまでは人権擁護の観点からそういうような手段もとることができませんので、この点について御熱心な方々からいうとまことに歯がゆいことであろうと思うのです。私も歯がゆい一人でございます。でありますから、私は現在の立場からして、第一線の各機関の者が怠慢であったということは申しません。一生懸命で努力はしておりますけれども、皆さん方からごらんになったら怠慢と見えるほどのいろいろな欠陥もあったかもわかりませんから、その点は皆さん方の御意見なりいろいろ御提供いただきます事実を材料といたしまして反省して、今後とも努力を続けていきたい。法というものはさらによりよいことがあるならば改正するにまたやぶさかであってはならぬわけでございます。けれども、改正するにあたってはそれが改悪となってはならぬということもまた重大な問題でございます。
  〔田村(良)委員長代理退席、委員長着席〕
でございますから、先ほど申し上げましたように、いま議員立法として改正案等も出ておりますけれども、それを確実に実行するにあたってはこの人権擁護の問題等も非常に起きやすい問題でございますから、これはさらに研究するといたしまして、現在の法でもまだ御指摘のように努力しなければならぬ点がたくさんございますから、今後、懸命に第一線で努力してもらうようにわれわれのほうでもそれを督励をいたしますし、われわれも研究を続けていきたい、かように存ずるわけでございます。
○山口(シ)委員 たいへん政務次官に切り込むようでくどいようでございますけれども、もしお疲れでしたら環境衛生課長さんでもけっこうです。ちょっと私政務次官のお答えがわからないのです。それは、結局対策というものは、過去の経験だとか体験だとかいうことを顧みまして、そういうものを参考にして講じられるということでは、もういまの非常に変動の多い社会では間に合わないと思います。この世の中はいわゆる時代がしょっちゅう変わっておりますから、過去にこういうことがあったとかいままでこういう前例があったとかいうことを基礎にいろいろ対策を応じていくことは、もう政治としては近代的ではないと思うのです。いわゆる対策というものはもっと近代化されていなくちゃいけない。言いかえるならば科学的でなければいけないと思うのです。
 そこでただいま神近先生が御質問なさいましたトルコぶろの問題ですけれども、いまトルコぶろの大半でいわゆる売春が行なわれておるという統計が出ておりますね。トルコぶろで売春が行なわれておるという私たちは見方をしておりますが、ではその点は、環境衛生課長さん……。
○今野説明員 トルコぶろの実態につきましては、昨年の三月から九月までにわたりまして一斉に全国調査をいたしたことがございます。その結果に基づきますと、当時の全国のトルコぶろの数が五百四十四軒ございまして、そのうち百三十六軒の店において、まあ売春防止法違反ばかりではございませんけれども、その他のいろいろの、児童福祉法の違反であるとか、あるいは職業安定法の違反であるとかいったような法令違反が行なわれておるわけでございます。
○山口(シ)委員 そうでしょうか。私たちの考え方は、トルコぶろはそんな割合で売春宿をして生きてきているという考え方をしておりません。トルコぶろというものは大半が売春を兼ねて行なうことによって繁盛しているんじゃないか、営業が成り立っているんではないかという見方をしてきております。そういう見方からいたしますと、私たちの考え方は、もうトルコぶろというものができればそこで売春が行なわれるんだという考え方のもとに、防止という考え方からいけば、そういう科学的な計算の上からトルコぶろをつくらせないこと、いわゆる既成事実をつくってしまいますと、その中で行なわれますことが取り締まりにくくなりますから、いわゆる後手後手、どろなわ式の対策ではいけない。もっと前進したものでなくてはならない。それでなければ、こういうむずかしい問題は取り締まることができないんだという考え方でおりますけれども、政務次官などはその点についてどうお考えでございましょうか。トルコぶろに対しての取り締まりはむずかしいです。トルコぶろをやってはいけないということは……。しかし、その中で事実売春が盛んに行なわれている。私、いまの統計はとても信じられないことですけれども……。
○山本(利)政府委員 いまのお話でございますけれども、非常にむずかしいということを山口委員もおっしゃっておられますとおりに、それが必ず売春宿であるということを証明できないわけでございます。中にはやっておるのもある。そのパーセンテージが、ほとんどのところはやっておるであろうという推測、その推測が当たっておるかどうかということはこれは別問題でございます。けれども、それを取り締まります場合、あるいは法律をもってその設置を禁止します場合には、それが科学的に証明せられなければ、ただからだの慰安といいますか、疲れをときほごすためにふろをするのだというたてまえから届け出が出ましたときに、ほとんどのトルコぶろがそういう行為だからそれは許さないということにはなかなか持っていきにくいわけでございます。私自身はトルコぶろがなくても一向差しつかえございませんし、そういう疑惑のあるようなものは私は絶対してもらいたくない、それは腹一ぱいでございますけれども、これは法的に考えます場合に、これを禁止するということが非常にむずかしい、かように考えておるわけでございます。
○神近委員 いま話がだいぶおもしろいところへそれましたけれども、私はさっきトルコぶろの問題を持ち出して、千代田区の担当の人が、どうも法律があってこれを拒否することができなかった、それで何とか延ばしに延ばしたけれども、半年か何カ月かともかく許可をやっとそこまで引きずってきた、だけれども、その日限が切れると職務怠慢になるというので、まあ許可をおろしたという建築課長ですかのお話を私は出しましたのですけれども、今度は同じように、法律があるためにこの悪質な行為が行なわれている。ともかく「宝石」の梶田季之、この人は赤線を復活しろと言う。それほど悪質な人でないように思うのですけれども、反語として、反論としてあんなことを言っているのじゃないかというように感じられるのです。それで福岡も一件ひどい。福岡というところは変なところでございまして、暴力団の発生地のような日本のいろいろの問題をかかえているところですけれども、そこの福岡の状態を見ますと、タクシーの運転手が、連れていくために大体千円か五百円もらうのです。そうすると、事務所のようなところがありまして、そこからまあ女を指名したりする。それから旅館に行く。旅館は旅館業者としてお泊り客だからちっともなにはないというふうな態度。そのかわり陰ではチップとかあるいはお茶代とかいう名前で相当の金をとっている。いまその本をちょっと忘れてきましたが、大体三分の一くらいのお金しか、五千円払う人があれば千二百円くらいしか女の手には渡らないように、べったりタクシーの運転手、それを連れていく暴力団のような人、それから旅館業者、そういう者に搾取されている。私どもが見れば、一体警察はこういう普通の、東京から行った記者がはっきり見ることのできるものを見て見ぬふりをしていらっしゃるのか。法律が防止法ですから、現場を抑えることができない、そういう意味で。私は刑事局長はおわかりでしょうから、一体どういう規制があって、どこが一番不自由か、それをひとつ考えていただきたいと思うのです。法律があるために、逆に現実に目の前で行なわれているのに手が出せないというところに、私は今日の矛盾があると思うのです。私はさっき申し上げたように、いまの状態でほっておかれれば、われわれ日本民族というものは長くは持たないというふうなことを考えるから、これは真剣に考えていただいて、防止法のどこの規制のためにこの取り締まりができないか、あれほど明らかに――まあ大臣がおっしゃったように、防止法ができたときは五十万人、それが三十五万か三十万に一度落ちたことはあります。だけれども、それがもっと悪質化されていま行なわれているというところに問題があろうと思うのですが、どこが規制となって、ジャーナリストが行って全部を見ることのできるものを警察が見られないということは、どこに取り締まりの隘路があるか、お考えがあったら伺いたいと思うのです。
○津田政府委員 現存私どもの考えといたしましては、現在の売春防止法につきまして、そのもの自体にはほとんど欠陥はないというふうに考えております。ただ、たとえば相手方になった男性を処罰しないという問題になりますと、これは別でございます。その点はいろいろ御議論のあるところでありますし、私どもも意見があるわけですけれども、それは別といたしまして、たとえば現在の売春防止法の五条でありますとか、あるいは周旋その他管理売春の問題にいたしましても、これは規定そのものにはそれほど欠陥があるとは私どもは考えておりません。しかしながら、問題はこれを取り締まって――取り締まるということは、結局これを事件といたしましてこれの違反者について有罪の判決を受けさせる。さらに進んでこれは石井の判決で懲役なら懲役をつとめさせるということにならなければ、目的は達せられない。もっともこういう規定のあることによって、そういうことをやめようということで、そういう意味の、何と申しまするか、防止的な意味はもちろんこの規定にはございますけれども、現実にこの規定を犯した者に対しましては、いま申し上げましたように、やはりこれを処罰していかなければならない。そうすると、処罰する場合の隘路が何であるかということが問題でございます。その場合の隘路は、これは私どもも非常に事情を痛感するものでありまして、これは現在の刑事訴訟法との関係におきまして、いかなる証拠をもってさような事実を立証するかという問題に帰着するということになりますね。そういたしますると、事柄が事柄でありまして、隠密の間に行なわれるということでありまして、なかなかこれについてのその現実の事態を立証するだけの証拠、これを法廷に持ち出して証拠立てるだけの証拠がつかみにくいという問題がある。たとえばたくさんうろうろしているとかなんとかということでありましても、それを逐一追及をして、逐一それに見合う証拠を得なければ、単にその辺を歩いておっておかしいとかいうようなことだけでは、とうていこれは検挙することもできませんし、またそのことだけでこれを処罰することもできないという、いわば捜査技術上の問題あるいは法廷における立証技術上の問題が、この売春防止法の励行上に非常に障害があるというふうに考えられるわけでございまして、先般もこの問題について参議院等でいろいろ御意見がございましたが、私どもとしてはその捜査技術、立証技術の点のくふうをいかにするかということの検討を尽くしておるということを申し上げておるわけでございます。
○神近委員 それでさっきも大臣のおいでのときに言いましたけれども、いま参議院に提出されている改正案は処罰法に変える。それを読んでみると――いまその改正法を持ってきておりませんけれども、ともかく処罰法的なものにしようということなんですけれども、刑事局長はいまの取り締まりの防止法では証拠をつかめないと言われる。疑わしきは罰せずですから、そういう意味で的確な証拠を握ることができない。疑わしきを罰するというようなところまでこれは持っていかなければ、なかなか目的を達することができない。法律は防止ですけれども、ただ防止するだけでなく、これをなくしようというところにまでいけば、いまいろいろの事例が出ておりますけれども、この法律を改正して、取り締まりのしよい――たとえばあの問題が出たときに現場検視を志賀さんが非常に反対したのです。私もよく覚えておりますけれども、それで現場検視がいまできないというところに問題があると思うのですけれども、理事局長は今度の改正法案で取り締まりが楽になる、あるいはもっと検挙が容易になるとお考えになりませんか。
○津田政府委員 ただいま提案されております売春防止法の一部改正につきましては、いろいろ問題点があると思いますが、あの改正案によりまして、まず第一に相手方を処罰するという問題がございます。これは私どものほうの見地から申しますと、現在、ただいま申し上げましたように、証拠収集が非常に困難であるということにさらに輪をかけてこれを困難にするのではないかということでございます。現在たとえば五条違反その他管理売春等ございますけれども、その相手方となった客と申しますか、それを中心にしていろいろ証拠を収集するということでございます。ところが、今度はその客も犯罪になるということになりますと、これは客自体の協力が得られないと見なければなりません。客自体、これに自白を強要するというわけにはもちろんいかない。客自体が犯罪になる、そういう問題からして、かえって現在の五条あるいは管理売春の摘発を困難にするのではないかということでございます。
 それから先ほどお話がございましたが、たとえば売春をしていたと疑わしい者は、臨検ができるというような規定を設ければいいじゃないかということですけれども、そういうことは対象を売春に限るといたしましても、現在のたてまえとしてはやるべきではないと思います。これは何に利用されるかわからぬというようなことを考えます場合に、あるいは他の一般的な基準から考えまして、一般的に売春に対しては臨検ができるのだというような規定を置くことは適当でないと思いますから、あくまでもこれは令状主義によりまして、必要であれば令状を得て捜索をするなり何なりするということでなければならない。そういたしますと、今度は裁判所の令状を得るためにどういう資料が要るかという問題になり、やはりそこでいろいろな資料が必要であります。その資料をまず収集しなければ捜索も差し押えもできない、こういう問題になる。そういうような先ほど来申し上げましたようないわゆる捜査技術上、立証技術上の困難が、売春防止法の徹底的な処罰ができないという一つの大きな理由であると考えます。したがいまして、売春法は、たとえば相手方を処罰する問題とかあるいは管理売春の構成要件を拡張するというような問題は、そのこと自体によりましていろいろな副産物と申しますか、かりに構成要件をゆるくするということは一体刑罰法として適当であるかどうかというような問題が出てまいるという難点が出ておりますので、この改正案に対しましては、現段階におきましては、政府としては賛成申し上げることが困難である、こういうことになっております。
○神近委員 中国の問題についてちょっと読みましたけれども、大体罰しないでも、その住宅の近くの地区に名前を公表すると書いてありましたね。それが罰の一つの形になる。何もその地区に行かなくてもいいから、もしここで売春をしたというはっきりした事例があるならば、その姓名を発表するということはどうなんですか。まあそうなるとひっかかる人がたくさん政治家の中にあるとかなんとかって書いてありますけれども、その姓名を発表するということ――売春の行為、それはどこででもいいですよ。トルコぶろでもいいし、飲み屋でもいいし、料理屋でもいい。どこかでそういうことが起こった場合に、姓名の発表ということを人権の侵害ということに考えられるか。私は、その場合は女の人権がほとんど無視されているんだから、その程度は、買いに行った男の人の名前を出すということは、そんなに不当なことではないと思うけれども、それはいかがですか。
○津田政府委員 これはなかなかむずかしい問題だと思います。まずいまおっしゃいました質問の第一段階として、売春をした、あるいは売春の相手方となったという事実を確定しなければならない。これはただ私が見たんだからもう確実だというようなことではいけない。公に売春をした、その相手方になったという事実を確定しなければなりません。その事実を確定するには、やはり事実を確定する機関が要るわけです。これがかりに行政機関だといたしますと、いや、さような相手となった覚えはないということになりますれば、これはどうしても行政訴訟なりで最後まで争うという道をつけなければならない。そういたしますと、最高裁判所までいって、初めてその人が相手になったかどうかということが確定する、こういう事態になるのです。その上でその人の名前を発表するかどうかという問題になりますと、そういう名前を発表するということは、これは一種の名誉刑ということの問題にもからんでまいります。そこでそういう名誉刑を置くことが適当かどうかということに問題があるわけであります。したがって、私どもの部内でも選挙制度調査の関係で、腐敗防止の意味におきまして、腐敗を行なった選挙民あるいは候補者を公表すればいいじゃないかという議論があり、イギリスにもあるということが言われておりますけれども、この問題はやはりいまと同じように、その腐敗があったかどうかという事実を最後まで確定するのは、どうしても日本の現在の制度でありますと、最高裁判所までいかなければ最終確定はできないということになります。そういたしました上で、腐敗者の氏名をかりに出すということにいたします場合には、一体それだけのことがすべての腐敗事件にできるかという問題がありまして、この問題は非常にむずかしい問題であるということを検討いたしたことがございます。事柄は非常に違いますけれども、問題の手続面では全く同じことになるので、その面におきましてはたいへんむずかしいことになるのじゃないかというふうに考えられます。
○神近委員 時間がないとおっしゃるので、この問題は、いまに青少年の問題が出てきますから、またそのときによく論議しようと思うのですけれども、たとえば赤線のような地区に出入りする人、これは女を買ったとか、買わないとか、ともかくそこへ足を踏み込む人の用事を一々確かめるということはできないものですか。私は法治国家ということにいま疑問を起こしているのです。民族がひょっとしたら非常に弱小なものになる。いまのままなら、もう日本国民はほんとうに弱小民族におちいってしまう。そうなれば、あの赤線の区域のところに、入り口にいて、そこへ出入りする人に、何の御用でしょうかというようなことも聞くことができないというなら、旧制の封建的なときのほうがずっといまよりましだと考える。私は自由というものがそこまで守られなくちゃならぬということはないと思うのですけれども、これは議論になりますから、ともかく皆さんは、この面では、モンゴル民族が弱小化したと同じようなルートをわれわれは行っているということ、それを頭に入れて――どうでもいいなら私はもう見切っています。どうでもつぶれる民族かもしれないと考えております。ですからそれはかまいませんけれども、ともかくせめて改正案くらいはいろいろ御検討いただくほうがいいのではないかということで、私はさっき大臣にも申し上げたのですけれども、どうかその意味で、何も罰したいことはないのです。だけれども、民族を救うためには、多少の人権の侵害もしようがないじゃないかというのが私の考え方でございます。どうか改正案というものが幸い出ているのです。それは参議院のおばあちゃんたちがなんということをよくおっしゃるのですけれども、ほんとうに将来を考えれば――私もちょっと行き過ぎかなというふうに批判的なんです。それで協力しないというので、参議院の方からはおこられているような私でありますけれども、私はこれをもっと恒久的な面から見る必要があるというので、それよりも性病対策――もうフランスでは十四歳以上の処女はいないというような状態、これは売春じゃないですよ。合意による性交というようなことが出ています。アメリカでもそうらしいし、いまに日本でもそうなるでしょう。そのときに何よりもこわいのはやはり性病じゃないかというので、いま五百万の性病者をかかえて、医療法をどうするか、これが検査をどうするかということが問題じゃないかと思うので、売春法をあまり熱心にしないというのでしかられているのでございますけれども、そういう意味で、ほんとうにあしたの日本というものを考える場合には、もっとまじめに、法律の何条がどうだからとうということの議論はかりでなく――だから私は六法全書というものに敵意を持っているのです。もっと常識でわかるようなことが、その法律の制約のために行なわれないというところに今日の近代国家の嘆きがあると思うのです。あの福岡、大阪、あるいは北陸のあの状態は、読んでいただけば、どこに何があるかということはわかると思います。梶山という人はそればかり書いている、アメリカにも行って何か買ったとかいうことを何かの週刊誌には書いている。悪意で防止法をぶっつぶせという意味なのか、これではだめですよと言とておるのか、そこのところははっきりわかりませんけれども、ともかく改正法が出ているのですから、ひとつ熱心に考えていただきたい、これが私のお願いであります。
○山本(利)政府委員 ただいまいろいろ御意見ございましたが、現在参議院に出ております議員提案による法案の内容も含めまして、この問題は先ほど来相当時間をかけていろいろな点から論議された問題でございます。それだけに複雑な問題でございますから、この上とも慎重に各方面にわたって検討していきたい、かように思います。
○大久保委員長 次会は来たる三十一日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十七分散会