第051回国会 法務委員会 第43号
昭和四十一年六月七日(火曜日)
   午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
   理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君
   理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君
   理事 細迫 兼光君
      賀屋 興宣君    鍛冶 良作君
      四宮 久吉君    田中伊三次君
      千葉 三郎君    早川  崇君
      神近 市子君    山口シヅエ君
      横山 利秋君    田中織之進君
 出席政府委員
        法務政務次官  山本 利壽君
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 鹽野 宜慶君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局民事局
        長)      菅野 啓蔵君
        専  門  員 高橋 勝好君
    ―――――――――――――
六月七日
 委員佐伯宗義君及び森下元晴君辞任につき、そ
 の補欠として鍛冶良作君及び賀屋興宣君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員賀屋興宣君及び鍛冶良作君辞任につき、そ
 の補欠として森下元晴君及び佐伯宗義君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 執行官法案(内閣提出第一四九号)
     ――――◇―――――
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 執行官法案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中織之進君。
○田中(織)委員 執行吏制度の改正の問題については、もちろん現行の執達吏規則が明治の早い時代の制定で、その間ほとんど改正が加えられていないという点から、実情に沿わない幾多の問題があるので、昨年執行吏の手数料の改正のときにも本委員会で附帯決議がつけられたことは私も承知をいたしておるのであります。今回提案されたものを見ますと、どうも従来問題にしておった執行吏制度の根本的な問題については、少し言い過ぎかもしれませんけれども、ほとんど触れていない、こういうように私は感じるのでございまして、そういう点から若干の質疑を行ないたいと思います。
 同僚諸君から、もうすでに数名の方が質問をされておりまするので、できるだけ重複は避けたいと思いますが、根本的な問題については勢いこの改正との関連で問題になるので、その部分については重複する点も避けられないと思いますが、あらかじめ御了解を得たいと思います。
 特に、執行吏制度の根本的な改正の問題といたしましては、いわゆる強制執行制度の問題との関係があるということは、昨年出された資料によりましても、昭和二十八年に法務政務次官から日弁連の事務総長あるいは執行吏の連合会、裁判所というような関係に意見を求められたときにも第一にその点に触れられておると思うのであります。私はやはりこの強制執行制度のあり方、いわゆる執行吏の権限の問題、あるいは強制執行体制の問題というものは、今度の改正の中には実質的にはそういうものは何も盛られておらないような感じがいたすのでございます。提案説明によりましても、抜本的な改正については、なお解決を必要とする種々の問題点があるということをうたわれていて、ただ従来の「執行吏」というものを「執行官」に名称を改める、それに伴ってもちろん執行吏役場の廃止であるとか、あるいは強制執行との関係におきますれば、従来執行吏に委任をしておりました事項が、裁判所を通じての当事者からの申し立てによりまして執行官が行動するという、この点だけが強制執行の問題の基本に触れておるだけで、しかもこの点は、この法律の公布以後実施までに六カ月の期間がございますけれども、多くの問題は当分の間、――執行吏代理の問題にいたしましても附則によってほとんど踏襲をされていく、こういう形では、やはりこの問題が古くから取り上げられて、本委員会においてもたびたび議論をされておる問題の解決には実質的には全然触れておらないことになるのではないかと思うのであります。そういう、この提案の説明でも述べられておる抜本的な改正について、この改正に盛ることのできなかった根本的な問題については今後どうされようとするのか、まず基本的な問題についてこれこれの問題が残っており、それについてはどうするかという点を、提案説明も伺ったのでありますが、その点については具体的にはお述べになっておりませんので、あらためてお聞きをしたいと思うのであります。
○鹽野政府委員 執行吏制度の根本的な改正、抜本的な改正ということが必要であるのに、今回の執行官法はその面に十分に触れていないではないか、今後どうするつもりかというのがお尋ねの御趣旨のように承わりました。田中委員の仰せになります根本的、あるいは抜本的改正というものが、はたしてどういうものをおっしゃっているのか、必ずしも的確に把握できないのでございますが、おそらく私どもが前々から申しておりました執行吏の給与体制をどうするかという問題が中心であろうと思うわけでございます。すなわち、現在の手数料制の執行吏を、純粋のと申しますか、俸給制の執行官というふうに切りかえていくということが抜本的な改正というふうにあるいはお考えになっているのかと存じます。御承知のとおりこの問題につきましては、先ほど御指摘のございましたように、すでに昭和二十八年に法務次官から関係各方面にこの問題について照会をいたしました。その結果裁判所、弁護士会、学界等からいろいろ御意見が寄せられたわけでございますが、そのほとんどがこの執行吏制度について改善を必要とするという御意見であったのでございます。その内容につきましては多少のニュアンスはあるにいたしましても、現在のままではいけない、改正を必要とするものであるという御意見であったわけでございます。
 そこで、翌年の昭和二十九年に法務大臣から法制審議会に対してこの問題について諮問がなされたわけでございます。自来長年月にわたって法制審議会で検討が進められてきたわけでございます。その結果、かつて昭和三十一年に、先般の補足説明でも御説明申し上げたと存じますが、この執行吏の制度は俸給制の執行官の制度に改めるべきだという基本的な検討の方向が打ち出されたわけでございます。その方向に従いまして法制審議会においても検討を進めてまいったわけでございますが、前にも御説明申し上げましたとおり、この制度をさように一挙に切りかえるということにつきましては、なお解決しなければならないいろいろの問題がある。たとえば現在の執行吏、執行吏代理の数よりも相当多くの職員をこれに充てなければならないであろう、そういたしますと、この仕事をさせるためにそれだけの数の有能な職員をすぐにそろえることができるかどうかということ、さらにはまた従来は手数料制で勤労意欲を刺激して能率の向上をはかっているという体制であったわけでございますが、完全な俸給制にいたしますとさような手段がなくなるわけでございますので、どういうような管理のしかたで能率の向上をはかっていくかということにつきましても、なお研究の必要があるわけでございます。そこで法制審議会におきましても、この問題は重要な問題であるからさらに引き続いて検討をしていこう、しかしながら問題はいろいろあるのであって、その根本的な改正、抜本的な改正が行なわれるまで現状をそのまま続けていくということは事態が許さないのではなかろうかということで、先般各委員に御配付いたしましたが、本年の三月に至りまして、さしあたって実施すべき改善措置ということで法制審議会の一部の答申があったわけでございます。その答申を基礎にいたしまして、今回の執行官法を立案いたしたわけでございます。
 その内容は、ただいま田中委員御指摘のとおり、自由選択制の廃止、役場制の廃止、あるいはまた金銭の保管を裁判所が行なうというふうな諸点の改正でございました。
 先ほど田中委員は、抜本的な改正を差しおいて今回の執行官法の内容はあまりたいした改正ではないではないかというふうな御趣旨の御質問のように承りました。この自由選択制の廃止、役場制の廃止、それから金銭の保管方法の変更ということは、七十年来続けてまいりました執行吏の制度といたしましては相当大きな改革なのでございます。なお、手数料制をどうするかという非常に大きな問題が残っておりますので、今回の法案の内容はあまりたいしたことはないというふうなお気持ちをお持ちになるのもごもっともかと存じますが、現在までの長年の執行吏制度の運用から見ますと、今回の法案に盛られておりますところも相当大きな改正であるというふうに私ども考えているわけでございます。
 そこでなお問題は残っておりますので、ただいま御指摘いただきましたように今後どうするかという問題でございますが、私どもといたしましては、もちろん今後さらに検討を続けて成案を得たいというふうに考えているわけでございます。法制審議会におきましても、今回の答申は一部答申でございますので、さらに根本的な改革に向かって検討を続けていくという作業が続くわけでございます。
 それから現在いろいろ執行吏制度の弊害と申しますか、不備と申しますか、そういうような面で取り上げられておりまする中には、ただ制度問題だけを解決したのでは十分でない点があるのでございます。これは御承知のとおり、強制執行の運用ということになりますと、制度を整備いたしますと同時に、手続法の整備ということも必要になるわけでございます。この面につきましても今後さらに検討をいたしまして、ただいま御指摘いただきましたような抜本的な改善策というものをなるべく早い機会に得たい、かように考えている次第でございます。
○田中(織)委員 私の聞き方がまずかったかもしれませんが、私も執行吏制度の基本的な、根本的なあり方の問題として、手数料収入による、いわば公務員であるかどうかという性格が、実質的にあいまいな形が強制執行という強権的な機関にあるというところに根本的な問題があるので、それをいわゆる報酬制による国家公務員としての明確な地位を指向する第一歩といいますか、そういう意味で今度の提案がなされておるという点は認めておるのであります。しかし振り返って、私専門家ではございませんけれども、はたしてその場合に報酬制の執行官という形にすることが、いわゆる強制執行体制というものを一元化するという点から見ていいのかどうかという問題も、これは深く掘り下げていけば議論のあるところじゃないかと思います。その点に関連した質問はあとで具体的に条文に基づいて伺いたいと思うのですが、私は最初にお答えを願いたいと思ったのは、二十八年に各方面に法務事務次官から照会をいたしましたときに、やはり強制執行の執行機関としての執行吏の地位の問題について三つあげられていると思うのです。一つは、執行の権限を執行裁判所に一元的に集中させて、執行吏をその補助機関とするという考え方。二番目は、執行の権限を執行吏に一元的に集中させて、執行裁判所にはその執行吏の執行処分に対する異議について介入することを通じて執行の適正確保に裁判所が関与するという問題、第三の問題は、やはり執行吏を一元的な執行機関とするけれども、むしろこれを思い切って裁判所から法務省その他の行政機関に属するような――これは執行吏制度の基本的なものにも触れてくると思うのですが、そういう三つの考えがある。これは、いわゆる強制執行体制としての執行吏の地位の問題についてこういう三つの意見を出されて、それに対する意見を求められたと思うのです。その点については、今度の改正ではいわゆる執行吏の権限の一元化という点については触れていないのではないか、こういう観点から申し上げているのです。もちろん強制執行の執行体制の問題に関連しては、いま部長がお答えになりましたように、民訴法なり競売法なり、破産法なり、そういうような手続法の改正の問題も当然伴ってまいりますので、大きな問題だと思うのでありますが、強制執行における執行吏の地位からいろいろな問題があるので、一般のいわゆる債務者あるいは一般の国民が執行吏に接するという場面における権力機関としてのあり方の点については、これはやはり執行吏制度の基本に触れる問題ではないだろうか、そういう点については今度の改正では触れていないのではないか、それは今後どういうようにされるおつもりか、こういう意味でお伺いをしておるので、今度の改正の点でいろいろまだ理解できない点については具体的にあとでお伺いいたしますから、最初にその点についてのお考えをいただきたいと思います。
○鹽野政府委員 先ほどは御質問の趣旨を十分に理解いたしませんで、見当違いなお答えをいたして申しわけございません。御趣旨がよくわかりましたので、その問題につきましてお答えをいたしたいと思います。
 田中委員御指摘のとおり、昭和二十八年に法務次官から関係各方面に意見の照会をいたしましたときに、その問題点として掲げられております中に、いまのような問題を指摘して意見を聞いているわけでございます。ただいまお話のございましたとおり、現在は執行裁判所と執行吏と二本立ての制度になっているわけでございます。これを私ども二元案というふうに申しております。これに対しまして、改正の意見を徴しましたときの問題点の中に書いてありますのは、現在が二元案であるから、これと違った一元案という問題があるんだということで、一元案をここへ掲げて意見を聞いておるわけでございます。一元案がまたただいま御指摘のとおり二つに分かれまして、執行吏を中心とした一元案と執行裁判所を中心とした一元案という二つの種類の一元案があるわけでございます。この点はもちろん私どもも検討をしております。私どもと申しますよりは、さらに法制審議会におきまして慎重な検討をいたしているわけでございます。ただ問題は、先ほど申しましたように、従来手数料制でやってきた執行吏を俸給制に切りかえるかどうかということが非常に大きな問題でございまして、この問題と一元、二元の問題とをからみ合わして検討が続けられてきたというのが実情でございます。
 そこで、先ほど申しましたように、手数料制の問題につきましては俸給制にすべきだという一応の方向が小委員会で出ておるわけでございます。それと関連いたしまして、法制審議会の検討の段階では、執行吏一元案という考え方がかなり強く出まして、はたして執行吏一元という制度になれば、形はどういうものになるであろうかということにつきまして、かなり突っ込んだ検討が行なわれているわけでございます。しかしながら、この問題はたびたび申し上げますように、手数料制を俸給制に切りかえるかという問題とからんで検討されているわけでございまして、執行吏一元案という形をとりますと、従来裁判所がやっていた仕事も執行吏がやる。したがいまして、それを俸給制の執行吏が一切引き受けることになりますと、これは人員の問題にもかなり大きく響きますし、それから仕事の重要性から見ましても、かなり法律知識の高い、経験の豊かなりっぱな職員がこの仕事に当たらなければならないという問題が出てくるわけでございまして、さような問題を検討してまいりました途中で、先ほど申しましたように、はたしてそれだけの職員を集めて充員することができるのだろうか、少なくも近い将来にそういう可能性があるのだろうかということが問題になりまして、その点が実は検討がその段階で一時ストップしているというのが実情でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、根本的に手数料制を俸給制に改めることができるかという問題を今後検討いたしますのと並行いたしまして、はたして一元的な考え方で進むのがいいのか、現在のように執行裁判所と執行官の二本立てでいくほうがより合理的であるのかという問題は、今後さらにもう一度再検討してみたい、かように考えている次第でございます。
○田中(織)委員 その点は、現在のように執行裁判所と執行吏、今度の法律改正で執行官の二本立てという現在の体制のまま進めるという点が明確になったと思うのでありますが、その点が私、法律の専門家でありませんからわかりませんが、強制執行という強権的な活動でありますから、そのもののあり方の点から、確かに、かりに執行官に一元化する場合に、現在執行裁判所が行なわれる仕事も執行官に一元化するということからくるいろいろな問題をあわせて考えなければならぬから、直ちに結論は出し得ない問題だという点はその点でわかりました。
 そこで、それに関連して、今度いわゆる執行官として、俸給制を目途とした方向へ執行官制度というもののあり方を展望して考えられたわけでありますけれども、いわゆる充足人員の関係から見て直ちに人も得られないという点も、提案説明の中で触れられておると思うのであります。手数料制度をそのまま執行官の収入に充てるわけでありますけれども、今度いわゆる執行吏役場というものを廃止し、裁判所に配属するという形で、六カ月後には執行官という形になるわけなのですが、その場合においても、人員の問題についてはどういうようなお見込みを持っておられますか。いただいた統計資料によりますと、局長もいま述べられましたように、本年の三月末現在のいわゆる執行吏と執行吏代理の数の問題が出ておりますけれども、四十一年の三月三十一日現在で、各裁判所に配属されておる執行吏の数は三百二十五、それから執行吏代理の数が二百四十五、それから執行吏職務代行者が二十四ということになっておるのであります。この執行吏数の三百二十五は、この統計資料の中にございます。これは別の目的で出されたものでありますが、一四ページの九にございます昭和三十年度以降国庫補助金受給執行吏数及び受給総額調の関係を見ましても、私の申し上げたいのは、執行吏の総数が昭和三十年三百二十八、四十年三百三十、この間に一番多かったのは昭和三十五年の三百五十四でございます。執行吏代理の数がこれと別にどういうように推移しているかという数字はございませんけれども、その点から見て、死亡あるいはやめていく人たちの補充にもこと欠くというような状況ではないかというふうに推察をされるわけです。したがって、かりにこの法律が通ったとして、六カ月後に執行官としてはっきり任命される者の数と、それから附則によりますと、従来執行吏であった者は、別に辞令がなくて六カ月後にそのまま執行官とみなされるという規定があるようでございますが、その関係から見て、一つはやはり人員の点から見て、執行吏というものを執行官に改めた場合の人員強化の面がどういうようになっていくというお見込みでありますか、まずその点を伺いたいと思います。
○鹽野政府委員 この執行官は御承知のとおり裁判所の職員でございますので、この法案が成立いたしまして法律が施行されたという場合に、あとの具体的な充員は裁判所のほうでおやりになることでございますので、その実情につきましては、後ほど最高裁判所から御説明があると思いますが、この法案を立案いたしました政府の考え方というものを先に一言御説明させていただきたいと思います。
 ただいま御指摘のございましたとおり、実は執行吏が年々減っているわけでございます。これは執行吏になる希望者が少なくなってきているということからくるわけでございます。なぜこういうふうに少なくなってくるのだろうかということにつきまして、最高裁判所ともいろいろ話し合ってきたわけでございますが、第一には、たびたび申し上げますとおり、この執行吏のやっております仕事が、御承知のとおり現在は手数料制、役場制で、実際には一つの私企業のような形で運営されているわけでございます。執行行為が何か債権者の個人的な代理人として執行行為をやっているのじゃないか、あるいはまたそのために債務者から不当に恨みを受けるとか、あるいはその結果一般人から何か軽べつの目をもって見られるというふうな、あまり人の好かない仕事であるということが一つあるわけでございます。これはいま始まったことではないので、戦前から執行吏制度につきましてはさような問題があったわけでございます。戦前におきましては収入が比較的よかったと申しますか、そういう面でカバーされておりまして、まあまあ希望者もあった、こういうことでございますが、戦後になりまして一般の人のものの考え方が変わってきたと申しますか、人にきらわれるような仕事に進んで当たるというふうな気持ちが一般にも減ってきたと思いますが、そういうような考え方がやはりこういう面にもあらわれてきて、こういういやな仕事にみずから進んでついていくというふうな希望者が少なくなってきたという問題が一つはあるように思われるのでございます。
 それからいま一つは、手数料制でございますので生活の安定というものが必ずしもないのでございまして、仕事がたくさんございますれば収入は非常に多い、こういうことになるわけでございますが、必ずしもそれが確保されるということではないのでございます。御承知のとおり非常に手数料の収入の少ない場合には国から補助金を出すということになっておりますが、現在までの補助金の額は、この資料にも掲げてございますように、年額二十四万二千円に達しない場合には二十四万二千円に達するまで差額を国から補助してやる、こういう形でございまして、月割りにいたしますと最低の保障が二万円にしかすぎないというのが実情でございます。したがいまして、そういうふうないやな仕事であり、しかも仕事を一生懸命やれば、事件があれば収入はあるけれども、必ずしもそれが保証されているわけではない。保証されているのはわずかに年額二十四万、月額にして二万円程度のものであるというようなところに問題があって、だんだん執行吏の希望者が減ってきたというふうに考えられるわけでございます。
 そこでこの法案を立案いたしますに際しまして、そういう問題点を頭に置きまして検討したわけでございますが、今回は手数料制を俸給制に一挙に切りかえるということはなし得なかったのでございますが、従来債権者の委任によって仕事を始めていたものを、裁判所に対する申し立てによって仕事を始めるということにいたします。いわゆる自由選択制ということをやめたわけでございます。それからいま一つは、役場制度をやめて原則として裁判所に勤務する、こういうことにいたしたわけでございます。すなわち俸給制には切りかえませんでしたけれども、全体の執行吏の執務体制というものについて公務員的な色彩を非常に強く打ち出しているわけでございます。そこで従来、執行吏というと、とかく変わった仕事というふうに人から見られていたわけでございます。その面が公務員的な色彩を強く打ち出して勤務の本拠も裁判所であるというようなことにし、さらに執行吏という名称を執行官というふうに改めるというようなことから、執行官というものに対する感じが従来とはかなり変わったものになるであろうということを一つは期待しているわけでございます。
 それから生活の安定、待遇の改善の面につきましては、その国庫補助の基準額を大幅に引き上げまして、今回の新しい法律に基づきます執行官というものにつきましては、新しい執行官に採用されるものにつきましては、この国庫補助の年額を六十二万二千円というふうに引き上げる予定でおります。これは政令で定めることになっておりますので、この法律が成立いたしました後に、政令でそのような手当てをすることを考えているわけでございます。ただし、現在の執行吏が自動的に執行官にすべて切りかえられる関係で、現在のものが自動的に切りかえられるものにつきましては、なお、国庫補助の額が二十六万四千円ということで、新しく執行官に採用されるものよりはかなり下回らざるを得ない、こういうことになっているわけでございます。こういうふうな面で、生活の安定ということも配慮いたしておりまして、従来よりははるかに執行官の希望者というものはふえるものであろうというふうに考えている次第でございます。
○菅野最高裁判所長官代理者 ただいま法務省から、御質疑の点につきましての法案の趣旨につきまして御答弁があったわけでございますが、この実施の面につきましては裁判所の責任でございますので、その面から御質疑の点にお答えいたしたいと思います。
 第一の点は、執行吏はただいま三百二十五名、これが御指摘のとおり三十五年を境といたしまして、年々減少の経過をたどりまして、のみならず、執行吏の年齢の高齢化ということが非常に問題のある点でございまして、ただいまの執行吏の年齢構成を見ますと、六十歳以上が五〇%をこえるというような状況になっておるわけでございます。裁判所といたしましては、執行吏制度の基本的問題の改善はもとよりのことでございますが、さしあたって、この執行吏の老齢化と人員の漸減、これに対する処置を講じませんことには、ついには現行の執行吏制度自体も崩壊の危うきに達するというようなまさに危機に達しておったのでございます。そこで、どうしても執行官として適性のある人を、むずかしい仕事、困難な仕事ではございますけれども、特にどうしても呼び寄せなければならぬ。その方策としては理想的には俸給制で、高額の俸給のランクがありますればそれは最も理想的であるかもしれません。しかし、先ほど来法務省からの話もありましたように、急に俸給制に改めるということは非常に困難もございます。と申しましても、人を吸収するためにもう来年、再来年を待つわけにいかない。今日ただいま何かの手を打たなければならぬという事態になりまして、法律の制度の上では現行法とさして変わりはございませんけれども、実質の上においてこれを変えていく、つまり補助金の制度を大幅に上げるという考えをもちまして、先ほど法務省から御説明がありましたように、現行の二十四万二千円にすぎない補助金を大幅に六十二万二千円というところまで持っていくことができる制度にしていただきたいということで、法律案を法務省にお願いしたわけでございます。したがいまして、裁判所といたしましては昨年度の予算要求におきまして、執行吏問題というものは従来とかく裁判所の中におきましても、それほど重要問題として取り上げられたということもなかったわけでございます。昨年度におきましては、裁判所の予算項目の中におきます最重点項目といたしまして最後まで大蔵省と折衝いたしまして、ということは、つまり裁判所として執行の重要性ということを十分に認識しておることはもちろんでございますけれども、それと同時に、先ほど申しましたような事態、それをどうしても乗り切らなければならぬというふうに、金額としてはごくわずかであります、しかしながら金額の問題ではなくて、人を呼ぶために必要な費用としての予算の要求を、つまりもう少し具体的に申しますれば、国庫の補助基準額の大幅な値上げというところを予算におきましては最重点項目として、最後まで努力してまいったような次第でございます。もしも本法案が通らないということになりますと、裁判所として考えておるところのこの目的を達することができなくて、執行吏制度の将来につきましてはなはだ危惧を感ずるわけでございます。そこで三百二十五人となっておるのは非常に足らないわけでございまして、裁判所といたしましては、ただいまのところ、少なくとも執行官として百名余の増員を必要とするというふうに考えております。これはもちろん執行吏代理制度を廃止するということにも関連いたしますが、その百名の増員をいたしまして、これを充員していくために一応待遇を改善いたしましたので、それによって充員のために最大の努力をいたしていくつもりでございます。
 代理の数がどうなっておったかというようなお尋ねもございました。その点につきまして申し上げますと、代理も、実は執行吏が減れば代理の数はふえてしかるべきものであるのでございますが、これも三十八年あたりから漸減の方向で、三十八年に二百九十三名おりましたが、先ほど委員から仰せがありましたように、ただいま二百四十五名というぐあいに代理も減っておる状況で、執行吏も減っておる、代理も減っておるという状況で、そういう面で執行の事務が十分に行ない得ない状況がだんだん出てきておるということを申し上げることができると思います。
○田中(織)委員 そういたしますと、端的に伺いますが、かりにこの法律が通って施行された場合、しかも六カ月の猶予期間、公布から施行までの期間をおいて、いよいよ執行官として発足するときの執行官の数というものは、どういうふうに裁判所なり法務省のほうでは押えられておるのですか。これは附則の関係から見れば、その六カ月を経過した時期に執行吏であった者は、辞令を用いずして執行官になるという規定がございますが、法律を制定されるのでありまするから、従来の執行吏がみなし規定によって、附則によって執行官に横すべりしていく者のほかに、新たに執行官として裁判所へ配属される者を予定しているのかどうか、その点を端的に伺いたいと思います。
○菅野最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、三百二十五名はみなし規定によりまして、六カ月後の施行の時期におきまして執行官になるわけでございます。しかしながら、先ほど私が申し上げましたように、三百二十五名という人数ではただいまの執行を能率的にやっていくに足る人数ではないわけでございます。なお百余名の人数を必要とするであろうという計算をしておるわけでございます。この補充を、施行後新しい任命資格によりまして補助基準額も上がって認められたこの新しい執行官を、あるいは裁判所の書記官の中、あるいは検察事務官の中、あるいはその他の方面、地方公務員であるとか警察職員であるとか、そういう方々の中から広く有能な方を極力求めまして充員していく。それが百名必要なんでございまするけれども、まずこれを三年の間にやっていきたい、補充していきたい、そういう考えでおるわけでございます。
○田中(織)委員 現在執行吏の任命規則というものがございますね。それによると、五級職以上の国家公務員の職にあった者を基準としておるというようになっておりますが、いよいよ法が施行された場合の執行吏の任命規則にかわるようないわゆる任命規則ですか、そういうようなものは今度はどういうふうになるのですか。その点がまた、先ほど盤野局長からお答えになったように、今度執行官の手数料収入のいわゆる国の補助の基準が現行の三倍近くうんと引き上げられるわけなんですが、その関係から見て、これは現行の五級職が六十二万ということになりますと、現在は何級職の給与に相当するのか私はっきりいたしませんけれども、その関係等はどういうようにお考えになっていますか。
○菅野最高裁判所長官代理者 六十二万二千円の補助基準額ということが予算上認められることになったわけです。ただし、これは新しい法律に基づきまして、新しい資格に基づいて任命される執行官について適用される額でございまして、いわゆる附則によって執行官にみなされる人につきましては、現在は二十四万二千円でございまするが、これが二十六万四千円程度に引き上げられる。これはわずかの引き上げにすぎません。そういう意味におきまして、新しい法律のもとにおきましては、従来の任命規則、これは七等級でございますが、これによって任命され、そして今回の執行官法で執行官にみなされる者と、今度の新法に基づいて出されることを予定しております任命規則、四等級相当の資格によって任命される執行官、これは先ほど来申し上げました六十二万二千円というベースの執行官ですが、これとの二本立てになるわけです。この点が執行の面におきましてもいわば一つのいやな面が出てくるわけでございます。しかしながら、この現行の執行吏におきましても、この法律が施行後制定することを予定しております任命規則、すなわち四等級相当という、そういう経歴を持っている人が相当数あるわけでございまして、現行の執行吏が一応はみなし規定によって二十六万四千円クラスの執行官になりますけれども、その中には新しい任命規則に照らしてその資格を持っている人が相当数あるわけでございますから、それをなるべく引き上げていくという方針をとりたいと思っておるのでございます。
 なお、任命規則と申しますのは、従来も、それから今後制定をしようと思っております規則も、いわゆる裁判所規則でございまして、その点がなぜ規則でできるかということは、裁判所法の法律の委任がありまして、それによって任命等の資格等は裁判所規則で定めるということになっておりますので、そういう法律上の根拠に基づきまして今後の執行官法に即した任命規則というものを裁判所法で規定していくつもりでおります。裁判所規則でつくるわけでございます。
○田中(織)委員 いまの御答弁を伺っておりますと、もちろん手数料収入でありますけれども、国の補助の関係から見れば、新たにこの法律によって任命資格を持って執行官として任命される者と、それからみなし執行官の中からそれにあてはまる者は今度の補助の基準に基づく執行官に引き上げていくということ、二本建てになるということですけれども、これも昨年のこの委員会に出された最高裁判所の事務総局調査による三十八年度の一人当たりの執行吏の純収入を夕べ繰り返して見ますと、東京が百六万九千九百三十六円、大阪は百二万百七十九円、名古屋百二十五万七千九百六十円、高裁のあるところでも福岡はうんと下がって七十一万六千三百九十円、広島が五十六万七千五百十二円と、こういうような形、これは従来のいわゆる自由選択による委任の関係から出てくるわけですけれども、こういう数字が出ているわけです。地方裁判所の関係では、前橋が四十万四千七百四十三円、和歌山三十九万百五十四円、盛岡四十一万八千円、旭川四十一万四千五百円、高松四十三万五千六百二十三円、これは三十八年度の一人当たりの純収入として数字が出されておるのです。こういうような関係と、今度新たに執行官として任命される者について、手数料収入年額六十二万二千円の補助率引き上げの予算的な措置との関係から見ても、なおでこぼこというものがあると思うのです。自由選択制ではなしに、今度の法律によるように、裁判所のほうで当事者からの申し立てに基づいて事務配分をする関係から見て、その関係で手数料収入というものがどういうように推移するだろうかというようなことについて検討されたことがございますか、お伺いいたします。これは同時に、いわゆる執行官に新たに人を得られるかどうかということに関連をしてまいることだというふうにも思うのでありますけれども、その点はそういうようなことを検討されたことがあるのかどうか、この機会に伺っておきたいと思います。
○菅野最高裁判所長官代理者 執行吏の報酬制度につきましてのむずかしさは、先ほどの完全俸給制か手数料制かということでございますが、もう一つは、御指摘になりましたように地方的に非常にアンバランスがあるというところに、この制度全体としてどういうふうに持っていくかというむずかしさがあるわけでございます。御指摘のように大都市では相当程度の収入があるけれども、非常に少ないところがあるわけであります。これをカバーするために、従来も補助金という制度でややバランスをとっておったわけでございます。そのバランスが二十一万とか二十四万とかいって非常に低いものであったわけでございます。これを改めるという点に、今度の補助金の引き上げということが一つの眼目としてあったわけでございます。これの額が必ずしも十分ではございませんので、所期の目的を十分に貫き得るかということにつきましては、多少の心配もないわけではございません。しかし、ともかくも従来に比べれば充員の上において大いに役立つ。実は充員の点で・困難を感じますのは、相当手数料収入があるところ、大都会等におきましてはそれほどの困難は実はないわけでございまして、手数料収入がごくわずかで、補助金を受けなければならぬ、それも二十一万程度の補助金でということがきまっておるところではとうてい人を得られない。それが六十二万二千円ということになりますれば、その補助金の制度が実際に適用されるというところはごくいなかでございます。まあいなかにおきましては、六十二万円で必ずしも十分じゃございませんけれども、最低の保障としてそれだけのものがあるということになれば、それによって地方におきましては充員が可能ではないかというふうに思っておるわけでございます。
○田中(織)委員 だんだん伺ってくればくるだけ収入の点でも幾段階もあるので、非常にむずかしい問題ではないか、こういう印象だけしか残らないのでありますが、六カ月という施行までの期間では、そういうことについて実施のほんとうの準備が整うかどうか疑問に思うのでありますが、まあその点はあまり時間をかけても何ですから次に移りたいと思います。
 執行官の受験に対する、あるいは任命してからあとでも当然でありますけれども、必要人員を確保するための修習制度、そういうようなことについては、これは裁判所の関係になろうかと思うのですが、どういうようにお考えになっておられるか、あわせて伺っておきたいと思います。
 それから、この点は横山委員が過般質問をされておりましたので、はっきりした答えが出たのかどうか、最後まで聞いていなかったのでありますが、今度はやはり、これも附則に従いまして執行吏代理はもちろん裁判所の許可が必要でありますけれども、臨時に執行官の職務を代行をできる附則があるようでありますけれども、執行吏代理というものは、これも一定の資格があってそういうようにきめられておるわけでありますが、そういうような人たちの中から執行官として引き上げられていく、そういうことでなければこれらの代理諸君の執務態勢の上にも影響を持とうかと思うのでありますけれども、この点は新たな任命規則との関係が出てまいりますけれども、いわゆる必要な人員を確保するという観点からどういうようにお考えになっているか、この二点をあわせてお答えいただきたいと思います。
○菅野最高裁判所長官代理者 修習制度につきましては、今後の執行官につきまして、これを強化するという方向に考えていきたいというふうに思っております。それから代理の執行官の引き上げ、これも受験資格等を緩和いたしまして、なるべく多くの人に代理から執行官になる機会をつくりたい。実際にでぎるだけ多くの人をその中に吸収してまいりたい、かように思っております。
○田中(織)委員 それから次に、これは私の理解できない点で、具体的な条文について三、四伺ってみたいと思うのでありますが、裁判所へ当事者から申し立てた場合に、どの執行官にその申し立て事項を配分するかということを、裁判所が行なうということになっておるのですけれども、これは、その裁判所に何人かの執行官がおるという場合に、あらかじめ一つの基準というか、準則というか、そういうようなものがあってやられるのでありますか、それとも申し立てのつど、どの執行官にこの申し立て事項は処理させるというような、そのつど決定をされるものなのか、その点はいかがでしょう。
○菅野最高裁判所長官代理者 裁判所が基準をつくるということでございまして、その基準に従って、あとは機械的に、事件がどの執行官にという分担がきまるというふうに考えておるわけでございます。
○田中(織)委員 それがいわゆる地方裁判所の定めに従ってやるという、この定めというのは、準則というふうに理解していいわけでしょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
○田中(織)委員 その場合に、申し立てを受理した裁判所で、その準則に従って担当執行官をきめられる事務、これは執行裁判所全体のことだということになるんですけれども、それを分掌される関係はどういうことになるでしょう。一々裁判所――裁判官ではないと思うんですけれども、あるいは執行関係の担当書記官であるというような関係で、具体的に執行官が行動に移せるような時間的な関係もあろうかと思いますが、そういうような関係は、事務的にはどういうように現実に処理されてまいるようなことになりましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 基準は、裁判所裁判官会議できめるわけでございますが、具体的に事件をどう受け付けていくかということにつきましては、これは事務の繁閑あるいは事件の多少によりまして、どこに事務を分配するかということがきまってくるわけでございまして、あるいはいわゆる訟廷関係の書記官とか、事務官、あるいは場合によりまして執行官、したがって執行官の補助としての事務員が実際の事務をとるということにもなろうかと思います。
○田中(織)委員 それから、やはりこれも第二条の関係の事務処理の関係でありますけれども、裁判所が執行官の個性に着目して、特定の執行官を指定して事務を取り扱うべきものとした場合は事務の分配は生じない、――これは裁判において執行官が事務を取り扱うものとされた場合の規定のようでありますけれども、「裁判所が執行官の個性に着目して」というその「個性」というのはどういうことなのか、この点は逐条説明書の七ページの最初に「個性」というのが二カ所出てくるのでありますけれども、執行官の個性によって事務の配分がきまってくるというようなことについては、これは一般のいわゆる当事者になりますけれども、申し立てた場合なり、あるいはこの場合はそういう場合ではなくて、裁判において執行官に取り扱わせる事務がきまった場合のことだと思うんですけれども、この場合の「個性」というのは、わかりやすくいえばどういうことなんですか。
○鹽野政府委員 御指摘のとおり、執行官に事務を配分する場合には、どの執行官でも同じように仕事が処理できるということがたてまえでございます。そこでただいまのような、執行官の個性に着目して特別の事務を取り扱わせるということは疑問だという御指摘でございますが、「執行官の個性」と申しますのは、私どもが考えておりますのは、別のことばで申しますと、「執行官の能力」というようなものを考えているわけでございます。たとえば、前回にもたしか御説明申し上げたかと思いますが、不動産の強制管理を行ないます場合に、管理人として執行官にその事務を取り扱わせるということがときどきあるわけでございますが、不動産の管理ということになりますと、そういうふうな事務になれている者と、必ずしもそうでないという者もございますので、そういう場合には、それぞれの執行官の個性と申しますか、能力と申しますか、そういうものを考えまして、裁判所が執行官を特定して命ずる、こういうことがあるわけでございまして、それ以外の場合には、執行官は同じ能力を持っているというふうに考えられるのが当然でございますから、先ほどの基準に従って事務分配が行なわれる、こういうことになるものと考えているわけでございます。
○田中(織)委員 いま具体的な例として不動産管理の場合をあげられて、その執行官の能力というふうに説明をされたのですけれども、現在の執行吏の扱う仕事の中から、たとえば最近多くなっている労働関係の問題、あるいはこれは労働関係とはまた違った意味において家庭裁判所関係の問題、そういうようなものを執行吏の現在のなにからはずすべきではないか、それぞれ別の執行体制をとったほうがいいのではないかという意見があるやに聞いておるのですが、特に労働関係の問題で、仮処分等の場合における執行官の能力というようなことも起こり得るのではないか。現在のように、そういうものを分離した形、別な形でやらずに、執行官によって労働関係の――あるいは先年の、たとえば三井三池の争議のときのような問題も、やはり執行官の能力の問題が起こり得るのではないかと私は思うのであります。そういう意味で、執行官の能力はすべて同一であるということが望ましいけれども、現実にはそういう差が出てくるということも、これはいなめない事実だと思うのです。それかといって、その個性というものにあまりにも重点を置く形になれば、端的なことばで言わしてもらいますれば、やはりへんぱな問題が起こる。そういうことで、これはあるいは執行官に対する除斥なりあるいは異議の申し立て、そういうような関係も出てくるかとも思うのです。その執行官の経歴の問題であるとか、そういうような関係から現実に起こり得ると私は思うのですけれども、その点はそこまでお考えになって、この条文が入っておるのでしょうか、いかがでしょうか。
○鹽野政府委員 一般的には執行官の能力は均一であるというふうに考えられますので、裁判所の基準に従って事務分配をされるべきものだと考えております。しかしながら現在まで実際問題といたしまして、先ほど例にあげました不動産の強制管理等につきましては、特定の執行吏にそれを命ずるということが行なわれているのが実情でございますので、そういうものにつきましては、執行官法になりましても、やはりそういう余地を残しておくということでかような規定をいたしておるわけでございまして、これがただいま御指摘のようないろいろな事件、各種の事件に広まっていくということは、私どもといたしましては考えていないわけでございます。
○田中(織)委員 その点は特に慎重にしていただかなければ、特に労働事件の関係については、他の民事事件とは別なやはり取り扱いをすべきものだという意見が――これは法曹関係の中にも意見が分かれていると思うのでありますけれども、私、いま見ますと二十八年の当時の清原事務次官からの照会に対する日弁連事務総長の回答文の中では、労働事件、家事事件については特殊な性質を帯びていることには異論がないけれども、現在の件数から見て、別個の機関を設ける必要はないというような意見が出ていますけれども、最近やはり労働争議等に関連して出てくる仮処分等で、問題が相当起こっておるわけです。そういう意味で、いま申されたように、これはやはり個性に基づいて執行官がきまるということをあまり広げないようにしていただかないというと、弊害が起こるんではないかと思って、御答弁をわずらわしたわけなんです。
 そこで関連して、これも強制執行制度全体のことで問題になるし、一つは従来の執達吏役場の関係で問題が出ているのですけれども、俗に立ち会い屋と言っている、こういう関係の問題は、もちろん現在の民事訴訟法によりますと、具体的にあるいは証人なり立ち会い人、差し押えに行って、成年の人がいない場合の、警察官であるとか、あるいは成年以上の人間の立ち会いを求めるという規定がありますけれども、仮処分の場合には、えてして執行吏に伴いまして相当な人員が繰り出されるわけなんです。
 具体的には本年の一月の二十七日の夜中から二十八日の未明にかけて、京都で文化厚生会館の管理権の問題で、私どもの関係しておる部落解放同盟の京都府連の関係と、部落問題研究所との間で仮処分問題が起こった。しかもそれが異例の夜間執行ということになったのであります。所轄の、川端署でありましたが、機動隊が約百名出動しているほかに、執行吏のほうでいわゆる立ち会いの名義だと思うのでありますけれども、約五十人の人夫を伴って来ているのであります。そのために、かつて本委員会の委員でありました坪野君が弁護士として私どもの関係の訴訟代理人として、その仮処分に反対の立場で結局現地で徹夜したという関係もある。あとで調べてまいりますと、その五十人の、暴力団と言うと語弊があるかもしれませんが、釜ケ崎の立ちん坊を連れてきているのですね。日当が二千円というのです。これは現在の場合においては、いわゆる執行吏の要請に基づいて、債権者のほうでその執行を確保するために、もちろん執行吏との間の話し合いで、そういう者を動員してきたのだと思うのであります。夜間執行の関係でありますから一人二千円ずつで、その人夫の費用だけでも十万円だ。これは仮処分申請者のほうでは、かつて裁判官であった青木英五郎氏ほか三名の弁護士が立ち会いました。私のほうの関係では坪野君ほか一名の弁護士が立ち会ったのでありますが、そういうような関係が、先ほど申し上げました三井三池の場合におきましても、執行吏に伴うそういう人員、あすこは炭鉱地帯でありますから町の暴力団であるとかいうような関係から、四山鉱では組合員が刺し殺されるというような問題が、これは強制執行に関連してでありますが起こっております。今度はこの法律によって執行吏は執行官ということで、より国家公務員である、ことに裁判所の職員であるという性格が明確になっての場合だし、法律によりますれば、そういう場合に威力を用いて抵抗があるというような場合には、警察官の立ち会いということが法で認められておるわけでありますけれども、現実にはそういう形で暴力団なり、あるいは釜ケ崎の立ちん坊というような、そういう日当目当てで、したがって何をやるかもわからぬ、そういう者を従来の執行吏は従えてやはり職務の執行をやっている、こういう実情があるわけなんです。したがって、この法改正にあたっては、当然そういうことはないように――これは従来はいわゆる債権者となる人たちから、債務者の立場からやる場合もあると思いますけれども、執行を申し立てた人間が費用を分担することになってきているから、勢い便宜的な、そういうことが起こるのでありますが、最近なまなましい問題としてそういうことが起こっておるわけなんです。今度はまさか裁判所でそういうものまで費用の予納だというような形のことは、法の上からは出てこないと私は思うのでありますが、現実には従来はそういうことをやっておるわけであります。また執達吏役場というものは今度は廃止になるからいいようなものでありますけれども、そこには競売屋であるとかいろいろな連中がおるところに、一つは執行吏制度改正の問題が出てきたので、今後はそういうような悪の温床にもなるという役場がなくなって、裁判所にじかで執務するということになっておるのですから、そういう弊害はなくなると思うのでありますが、そういうようなことについてまで当局はお考えになっておられるのかどうか、あわせて伺っておきたいと思う。
○菅野最高裁判所長官代理者 強制執行は強制力の行使でございます。そこに実力行使の面があるわけでございますが、これが整然として法の規制に従ってなされなければならないことは当然でございまして、従来とかくそういう面におきまして、不十分な点がなかったとは申し上げかねますけれども、今後役場が廃止され、裁判所の監督というものが直接的になってきたという点におきまして、そういう強制力の行使が整然と行なわれるという面におきましても、従来よりか前進した姿が出てまいるものと信じております。
○田中(織)委員 この点は、ことに私がいま具体的に申し上げた点は、特に立ち会い屋といっている部類に属するんではないかとも考えられるわけであります。そういういうものが連係を持っておるような関係が、今度は断ち切られるだろうという点が一般的にこの改正から推測をされますけれども、現実にはそういうことが今後とも起こらないという保証はないと私は思う。したがって、今度の改正の中ではその点は触れられていませんけれども、さらにそういう点についてはもっと実情を見きわめられて必要な規制をやっていただきたいという点をこの際要望しておきたいと思います。
 それから、まだいろいろ伺いたい点もありますけれども、時間も経過いたしましたので……。今度、従来執行吏が保管していた金銭を裁判所が扱うということにされたことが一つの改正の大きな点で、したがって執行吏の権限内に、あるいは占有に属されていた金銭の問題にまつわる不祥事件等がなくなるわけであります。しかし、気になるのは附則の第十条で、当分の間は必ずしも右の処置によることなく最高裁判所が別段の定めをすることができるようにした。こういうことになると、今度の改正によって、従来執行吏が直接していた関係の――もちろん債権の取り立て等で支払いを受けたものであるとか、費用等の問題についても、予納をすれば、その予納の範囲内で一つの免責があるわけでありますから、それらを裁判所が直接扱われることになったというけれども、この附則十条の、ごくしろうと的な解釈ですけれども、この点も最高裁判所が何か別な規則を設ければ、裁判所に保管しない、別な、従来に似たような取り扱いができるんじゃないかというような、一つの抜け穴というか、そういうふうに解釈できるんですが、その点はほんとうのところはどうなのかということ。
 それから附則の関係でしばしば「当分の間」ということが出ているのでありますが、およそどのくらいの期間を考えておられるのか。これは必ずしも法律が公布されてから施行されるまでの六カ月ということではない、別な期間のように解釈をしなければならぬのじゃないかと思うのでありますが、一体それは、少なくともあと根本的な改正というものが出てくるまでの間まだ何年か続くというような意味のものなのか。そういうような点から私が質問の最初に申し上げたように、一つは「執行官」ということにかえて、問題の多いこの執行吏制度の問題について手をつけてみたけれども、結局附則で当分の間は現状の執行吏代理の問題であるとか、あるいは事務職員の問題であるとかいうような形のものが引き続いて――まあ役場というものはないけれども、そういう一つの役場の体制がそのまま裁判所の中へ入り込むような結果になりはせぬかという心配が出てくるのでありますが、この附則の各条文に出てくる「当分の間」というのは、少なくともどのくらいの期間を考えられているのか。いろいろ準備等の関係もあり、次の改正の展望も持たなければなかなか時間を確定することはむずかしいかもしれませんけれども、ずるずると二年も三年もということになればせっかく手をつけたことの意義が減殺されるような気がいたすのでありますが、その点はいかがでしょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 仰せのとおり本法の附則には、いろいろのところに「当分の間」ということばを用いております。その中で代理の点については、先ほど申し上げましたように、まず三年の目途で代理というものはなくしていく方向で実際の問題を扱っていきたい。それから金銭の保管の点につきましても、これが仰せのとおり「別段の定め」ということになりますと、つまり従来どおり執行官が金銭を取り扱うという形がしばらく残る部分が出てくるわけでございますが、これは結局裁判所の会計職員の予算的手当てをいたしませんと、裁判所がこの事務を全面的に取り入れることができないためでございますが、その手当てをいたして裁判所にこの法律案の本則のとおり金銭保管の事務を取り入れることが三年のうちにできるようにいたしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 その他刑事送達手数料、退職金の問題につきましても「当分の間」という字句を置いておるわけでございますが、刑事送達手数料の問題はいろいろ困難な点がございまして、むしろ法律制度の問題でございますので、法務省のほうからお答え申し上げるのが筋かと思いますが、私どもの感じといたしましては、刑事送達の手数料の問題を解決するためにも二、三年の期間は要する。退職金の制度につきましてもいろいろございますが、やはりこの点もいろいろむずかしい点がございまするので、来年すぐということもあるいはむずかしいのではないかというふうに考えております。
○田中(織)委員 私の伺いたい点はまだほかにもありますけれども、これで終わりますが、最後に今度執行官にかわった場合の手数料について、最高裁に別途きめられる案が示されておるわけでありますが、見ますと現行とほとんど金額においては変わらぬと思うのですが、その点でいろいろの物価の関係等の事情を参酌して別に定めるということを提案説明でされたのですが、委員会の審議のために出された別に定める手数料の原案によりますと、現行とほとんど変わりがないのじゃないか。そういうことになれば、やはり手数料によって執行官の収入というものが確保されるという関係から見て――これはあるいは法律関係の方々にとってはそう上げられては困るという問題も出てくるのかもわかりませんけれども、しかし、執行官の収入が手数料によるという基本的な考え方である限りは、手数料の問題についても、最近の物価情勢等の関係から見れば、ある程度の増額というものは配慮しなければいかぬのじゃないか。最高裁から出されておる原案を見ますと、現行とあまり開きのないように見られるのですけれども、その点はいかがでしょう。
○菅野最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、今度の手数料規則案によりますと、現行の手数料と大差はないのでございます。これは一つには、昨年比較的大幅な手数料の値上げを訴訟費用等臨時措置法の改正によりましてお認めいただきまして、引き続きまして今年すぐこれを改正するというところまでの必要性を必ずしも私どもは認めなかったためでございますけれども、今後の物価等の変遷に伴いまして、手数料の額につきましては相当の、それに相応するような手当てをしてまいるつもりでおります。
○大久保委員長 井伊誠一君。
○井伊委員 委員諸君の質問によりまして、大体のところは終わっておるように思うのであります。したがいまして、私のお伺いすることはほんの数点のことになったと思います。
 この執行官の法が実施せられますというと、まず役場が廃止せられて、裁判所に一般の書記官と同様に勤務をするという、そういう体制になるということでありますが、廃止せられますところの役場の数は、伺いましたところによりますと全国では二百三十、出張所が三十四。このうちその役場が裁判所の庁舎外にあるところのものが六十七だというように承ったのですが、こういう二百三十もの、そのうちにいまの、裁判所の庁舎外にあるところの六十七、これも含めて全部廃止をせられたときに、この対象になるのは六十七だけ、こういうことに相なるわけでありましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
○井伊委員 その以外のまず百七十くらいの人たちは一応裁判所の庁舎の中に入るということでありますが、これに対するところの、何と申しますか、設備というか、そういうものは、庁舎の中であればこれは自由にその設備を建てることを許されるようなわけでありましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 いまの御趣旨は、裁判所の構内に入った執行吏の役場がなくなりまして事務室になりますが、そこに事務員等が自由に入っていけるのかという御趣旨でありますか。
○井伊委員 役場は廃止はされますが、庁舎のうちに書記官などと一緒にその席を持って事務をとる、こういうことでありましても、その役場という名称を使わないで、自費で裁判所の中へ執務するところの建物を建てる、そういうことは許されるのかどうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 それは役場を廃しますと同時に、裁判所の中に執務の場所をとり入れるという趣旨でございます。執行官が独立にそこに建物を建てるということにはならないのでございます。
○井伊委員 お考えは、そうしますと、従来のあるものはそのまま建物として認めるけれども、その以外の役場――役場と申しましても実際は、いま役場といっておりますものの、執行吏が自分の自宅を役場として使っておるというものも相当あるわけであります。こういう人たちが、今度いわゆる役場というものの廃止によって、裁判所のある一室であるか、あるいは一室のうちの一つの席であるか、その辺はこれは明らかでありませんけれども、とにかくここで書記官同様に執務をする、こういうたてまえだとすれば、いまのところ私が聞き及ぶところによりますと、この前お話しになりましたような、ごくわずかの者だけが困るというようなものではないようであります。かなりそれは数の上にも多いと見ておるのであります。現に私の尋ねました新発田の裁判所それから新潟の裁判所におきましては、新潟の裁判所のほうにおいては、執行吏のいるべき特別の部屋を今度の庁舎の中にも予定されていないようであります。それから新発田の庁舎におきましては、机は一個くらいあるはずだというお話であったからそういうことを聞いてみたのでありますが、その点については、いや実は定席はない、書記官だけで一ぱいになっておるからそういうあれはなくて、たまたま用があって来れば、あいておるところで書類を開いたり何かするけれども、実際はとてもそんなところにおられるものでないから、関係者と廊下のあたりでちょっと話をして引き揚げていって、役場といっている自分のうちで執務をする、こういう実情である、こういうことを言っておるわけであります。執行吏を執行官として、一つの公務員としての立場を厳重にするという意味合いにおいて引き上げられるという――私に言わせれば思いつきでありますが、その思いつきは私はけっこうだと思いますけれども、実際上その場所が与えられないのじゃないか。執行吏の事務は、一般書記の事務とは性質がよほど違っておるのであります。執行というものにからみます。それから対外的な、外での仕事が多いということでありますから、これにはやはり執行吏自体、決心とか強さとかなかなかさまざまの要素を必要とするのであります。その依頼者にしましても、また執行の相手といたしましても、これはたいへんなさまざまの変化があるのでありますから、それらの人が書記官と一緒に席を並べておいて事務がとれるというような性質のものじゃないと思うのです。そこがやはり特殊性である。よしんば、それが一人の執行官といたしましても、一人の書記官と、同じような机でもってやれるなどということは考えられないのです。別に説明などいたす必要もないことでありますけれども、執行官が自分で管理をいたします書類というものは、これは書記官のほうにいたしますれば別に裁判所としての倉庫を持っておって、そこに書類を入れるということがありますけれども、一人独立をしておる執行官が、裁判所のどこかに入って席を一つ持っただけでは――扱っておる書類や関係しておる書類、そういうものを保管する場所だけでも相当広いものを要する。これは先日東京の地方裁判所合同役場を視察いたしました際に、あの全体として百五十五坪くらいある延べ坪の中に倉庫が独立して、おそらく書類や物件などを入れるものであると思いますが、その倉庫が三カ所ある。そのほか執行吏の総務部といったようなところ、それから受付のほうの関係、それに専属する書類のたなであの部屋の中の三分の一くらいはふさがっているのではないかと思われる。あれがなかったならばあそこにもいられないかもしれない。独立の倉庫としてあるものでもそうでありますから。執行吏の周辺には、事務に関係した大きなものが付随してある。それを管理しなければならない責任がある執行吏が、裁判所のところにいま入ってもらっても、一つの机も実はないのだというようなところへそういう人たちの入るべき余地があるかどうか。これは明らかにそこに入り切れないのではないか、そういうふうになりましたときに、これは合同役場のようなところではそのままにしておかれるということでありますが、これはよろしいといたしまして、ことにそれは裁判所の庁舎の一部分というところにありますから、それはけっこうでしょうけれども、独立しておる人たちにとっては、もうやる方法がないのではないでしょうか。入るとすれば一体どうふうにしてその管理のものをあれするのか、裁判所の倉庫を直ちに使うことができるのかどうか。それはおそらくは裁判所の倉庫の中に一緒には性質上できないでしょう、また広さの関係上そういうものはないと思います。普通事件の扱った数、そういうものによって大体十年間書類を保存するという想定のもとにできておる倉庫、そういうようなもののところに新しく一世帯持ち込むことは私はできないと思う。どこへそういうものを持ち込むかという実際問題があると私は思う。それでありますから、これは監督の上からいえば、執行吏はその定まった時間に出てやはり出勤簿に判を押すということにはなろうと思うのでありますが、それはともかくとして、まずそれを受け入れるところの裁判所の執行吏受け入れの場所が、十分に用意されておるかどうかについて私は疑問を持っておるわけです。これに対しますお考えはいかがでありましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 全国で裁判所の数にいたしまして二百三十、役場の数にいたしまして出張所と合わせまして二百六十四ばかりの執行吏役場のうち、いまだ裁判所の庁外にあるものが六十七ほどあるわけでございまして、これを法律のたてまえから申しまして、裁判所の庁内に取り入れる措置をしなければならない。のみならず、現在裁判所の庁内に入っているといわれておる裁判所におきましても、その施設が必ずしも十分でないということは御指摘のとおりで、私どももその辺をたいへんに遺憾に思っておるのでございます。制度が変わりまして、役場がなくなったということになりますれば、そういう施設を設けるための予算要求の上におきまして非常にやりやすくなるわけであります。今度制度が変わったんだが、しかるに設備としては非常に貧弱だ、予算をつけてくれということが、この法律案が出ますと非常にやりやすくなりまして、それで、この法律をたてまえにいたしまして、私どもといたしましても極力施設の整備のための予算を獲得するということに努力いたしたい。裁判所といたしましても、先ほど申し上げましたように執行吏制度というものは必ずしも裁判所としての扱いとしても十分でなかった。今後はここに重点的に、予算の上におきましても力を注いでいくという体制が裁判所の中にみなぎってきております。必ずや、そういう施設の面におきましても、十分な予算のために裁判所が全力をあげて今後力を尽くしてまいることになるということを申し上げておきます。
○井伊委員 制度が変わればおのずから予算の問題で、それは予算でもってその準備をしなければならないと思いますけれども、実際といたしましてはずいぶんむずかしい問題が起きるのではなかろうか。予算の金額というものが大きくなるということだけではなくて、場所の問題からいえばいまの庁舎を拡張するとか、あるいは倉庫の問題なども出てくるでありましょうが、それがどこまで執務の上で広げることができるその予算を獲得するかということになると思うのですが、実はそれだけではない。いま申し上げましたのはごく広がらない面だと思いますけれども、一個の執行吏としましては、単に書類や何かだけではなくて、事務をとるということにいたしましても、これは事務の分配は裁判所のほうでされるのでありましょうけれども、そのものは単純に裁判所の配分の命令によってやるというふうになりましても、実際は配分をされたその事務をとるときには、裁判所の一般の窓口じゃなくて、やはり執行官の窓口というものが必要になってくると思うのです。裁判官の窓口は、その中に人がたくさん私は出入りするものと考える。書記官の場合は窓口を幾つかにしまして、それで事件の分類、民事とか刑事とかに分けてそれぞれ窓口が幾つもございます。それは通常の裁判所の場合でありますが、執行吏はそんなようなことだけでは用は足りないのです。それをやりましたならば、窓口の廊下のところでたいがいは書類を出したり指図を受けたりしておるところの、そういう裁判所のつくりであります。そんなところになったら、執行官の窓口をかりに設けましたところで、いまのあり合わせのものではどうにもならないと考える。私もそういうことをいまあれしたらば、執行官になって、裁判所の中に引き上げるということになった場合においては、ここの廊下ではどうにもなるまいと言ったら、これはたいへんなことでしょう、――これは想像しておるところでありますが、全体としてもやはり執行官の庁舎のうちではあるけれども、現在役場といっておるくらいの面積の部屋、そういうものがどうしても必要なものになると思うのです。それが、さまざまな事件の性質によりましょうし、経過の上の相手方も、それから申請をするところの側も、関係者がなかなかたくさんありますから、出たり、入ったりたいへんだろうと思うのです。それでその部屋が必要だということを考えられるのでありますが、そうなってきますというと、やっぱり引き上げてはみたものの、性質上は庁舎の一隅に一つの建物を建てるくらいのことが、まず必要になってくるのではないかというふうに考えられるのです。それも通ってみれば、予算の交渉に必要であれば話しやすくなる、こういうお考えでありましょうけれども、それはお見通しがあまりないのではないか。それは通れば、必要はわかってまいりますが、その点の予想などはなすったのでしょうか。執行吏がどのくらいの場所を要するか、そういう点はいかがでございましょう。
○菅野最高裁判所長官代理者 仰せのように、執行吏役場を廃止されましても、裁判所の中にそれを取り入れるということになりますれば、どちらに置きましても事務量は同じわけでございまするから、少なくとも現在の役場と同じスペースがなければ、役場を裁判所の中に取り入れたということにはならないと思います。したがいまして、予算の要求におきましては、倉庫等のいろいろの設備を含めた意味におきましての施設の予算要求をしていきたいと思っております。
 法律はまだ通りませんけれども、私ども昨年来その点につきましては努力いたしておりまして、いささか御披露できる程度のものは、たとえば大阪を昨年やりまして、大阪は実はひどかったものでございますから、それの反動といたしまして、プレハブの事務所でありますが、非常に環境がよくなりまして、当事者の執行吏の人にも非常に喜ばれております。先ほどお話しございました新潟は、ただいま新営のために仮設の建物を使っておるように聞いておりまするので、執行の関係でも非常に御不便をかけておるという点を承知いたしておりますが、新潟のみならず、全般的に今度庁舎が新営されますときには、必ず先ほど申しましたような趣旨の、執行館のためのスペースを確保するような方針を経理局の当事者もとっておるようでございまして、新潟も、新営の暁には、ただいまのような御不便はかけないつもりでおります。
○井伊委員 ただいまの点は、これは十分な注意をもって、執行が遅滞をしたり、あるいはある場合にはできないというような欠陥も生ずるというようなことのないように、御配慮を願いたいと思うのです。
 次に、監督の関係でありますが、裁判所がこの執行吏を監督をする、執行官を監督する場合でありますが、ちょうど先ほど田中委員からも御質問がありました中に、特殊の場合でありましょうけれども、労働争議の場合、ああいう問題が、――これは庁内に事務の配分が行なわれておって、そしてだれかそのところに執行官が担任をするということになるのでありましょうが、今後労働争議といったようなものはますます多くなるのではないか、私もそう考えておるのであります。そういう場合に、とかくやはり仮処分の問題などにおいて、その人を得るということがだんだんむずかしくなってくるのではなかろうか、労働問題、この管理権の問題で仮処分をしたという、お話しのとおり、そういうものは幾つもあるわけでありますが、これに対して、執行官が何ぴとが適当であるか、この配分はやはり監督権に関係すると思うのですが、それが実際におきまして、だんだんできなくなるという危険も出てくるのではないか、執行がそのとおり完全に執行官によってできなくなるという場合が生ずるのではないか。そういう場合に、従来ありますところの執行吏の場合でありますならば、この執行吏に頼んでも、これは辞退するものがあるわけです。どうもそういうものにはなれませんからというので、たいがい辞退をするらしい。そうしてその中に、ちょうど私らのところで執行吏の老練な人があって、その人がまた頭もいいけれども、度胸もあり、力をおそれない。やはり執行そのものを執行するのには、それだけの力を持っている人がおったのでありますが、その人も初めてのときはなかなかつらいところの立場に置かれたのであります。ところがその人のやり方が成功すると、これはもう非常に遠いところからでも、ただその人一人しかやれないというところで、その人をたよってくるということであります。そしてその人をして執行をさせる、こういうような実例を私も見ておるのであります。そういたしますと、これは役場を持った執行吏として、執行の依頼を受けても、実際いうと力がないといえばこれを無理に頼んだって効力がないものですから頼むことはしないわけです。力のありそうな者を頼むということは当然のことであります。そういうことは、裁判の執行をするという点から見るならば、まことに遺憾なことではありますけれども、能力のない者はしようがない。そこで避けまして、一人の人のところにのみそれが集中してくる、こういう事態が生じたのでありますが、そこにもまた特殊の場合であるがゆえに特殊の扱いをするというような事例も実は聞いておる。それは、いま御質問をするのには関係ありませんけれども、特殊な執行吏ということに世間では見ておりますから、これに対する報酬等も、報酬は報酬でありましょうが、やはり裏のほうに何かのあれがあるといったようなものが出てくる。これはもう希少価値でありますからそういうことが出てくる。今度これがみな裁判所につとめることになって、事務の配分がきまるということになれば、結局その執行のできふでき、成功するかしないか、そういうものはやはり裁判所の責任になると私は思うのです。配分をされたその事務を執行するところの執行吏が、行ってみるけれども結局できないということになれば、第二、第三の準備はいたしましょう、準備はいたしましょうけれども、かりにそれが執行できないような事態が起きてきたならば、結論は結局裁判所の責任になるのではないか。裁判所が判決をしておって、裁判所がその執行吏に対する配分のいかんによってその責任を負わなければならぬというような妙なことも考えられるようです。そういう事態は、何ごともそういうことが起きるというのではなくて、近ごろだんだん多くなりそうな労働争議における仮処分のごとき問題において私はそういうことを思うのであります。そういうふうになるということは、これはお考えにならないのでありましょうか、そういう場合であればどういうふうな処置をなさるのでありましょうか、その点をひとつ。
○菅野最高裁判所長官代理者 執行の適正を期するためには、一面において監督権の強化、ただいまの例で申し上げますれば、いたずらに執行をやめて帰るというような事態が生じないように監督権を行使しなければならないと思います。しかし監督権の半面は責任でございまして、今後裁判所が監督権を強化していくということは、一面においてそれについて裁判所が責任を負う。従来も責任がなかったということは申し上げられませんけれども、従来よりもなお一そう責任を負わなければならないということに相なろうかと思います。それによって執行が適正に行なわれることを期待したいと思います。
○井伊委員 執行吏は、執行官になるということについてはなおさまざまな新しい経験をしなければならぬと私は考えるのでありますが、それらの点はなかなか広範にわたって起きてくるものと考えますが、まずこの法律が施行されるまでの六カ月の間でなすべき準備というものを一応やった上で起きてくることでありますから、それはさらにその後の問題にならなければならぬと思うのでありますが、これもやはりお考えの上に十分置いてくだすって、そうしてそういう点の損と申しますか、しまいになるとしょい込んだためにたいへんな問題になるというようなことのないような御配慮をお願いをしておきたいと思うのです。
 それから私もう一つお尋ねしておきたいのは、執行吏代理は、特に裁判所が許可したところの人たちがその執行吏の仕事をやるということになっておるようでありますが、これから先の執行吏を採用するという場合には、やはり執行吏代理の人たちから採用するという方針でおられる、こういうふうに承りましたが、そういうことでありましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 なるべく多くの執行吏代理を吸収できるような施策をしていきたい。ということは、受験資格等におきましてもそう窮屈に考えないで、広く受験資格を認めて、執行吏代理が執行官になれる道を開いていきたい、かように考えております。
○井伊委員 執行吏代理というような人たちは、かなりの年数、経験を持っておる人たち、条件にも備わっておるような人たちでありますから、そういう第一の給源にしてはけっこうだと思うのですが、それらの人たちを入れましても当今の、地方のいままでありますところの執行吏のあり方、趨勢から見ますとだんだん減るという傾向を持っておるのであります。もちろん中央に集まるというそういう形のせいもありますけれども、大体地方におる執行吏は中央にくるというようなのは、東京の近接地帯ならば移住もできるかもしれませんけれども、離れているところの者はおそらくそれっきりで終わるものと私は考えるのです。それで執行吏の補充というものは、それぞれ現にやっているところの地方の執行吏は今度執行官となって入りますが、それだけでは非常に数が不足して、やがて――どうも老齢の人が大体多いのではないかと思うのです。そういう点から言いましても補充というものは早晩詰まってくるのではないか。そしてこれは十分に奨励をしてみても、それらの人はだんだん引退するような傾向を私見せていると思うのです。そういう場合に、今度新たに採用するところの基準というものは、これは試験がありましょうが、その基準というものは用意しておられるのでございましょうか。
○菅野最高裁判所長官代理者 先ほど田中委員からのお尋ねにお答えいたしましたとおり、新基準はやはり考えているわけでございまして、新任命規則によりましては四等級相当という格づけをしております。
○井伊委員 まだそれは構想の程度でありますから、なんでありますが、ほんとうに執行をするところの執行官、つまり執行吏はだんだん減る趨勢と私は見るのであります。中央に合同役場のできますのも、実を言うとやはりそういうところにあると思う。みずからはあまりやれない広範な事務をやるのに、経費だけで倒れてしまっては困るというので、合同の役場をつくって、そしてその下には実は執行吏の資格のないような人をたくさん使っておるという実情も、これは執行吏がたくさん出ておればそういう者も使われてこないのではないかと思うのです。これはしかし、今度は裁判所に帰属してまいりますから、そういうものは起きまいと思いますけれども、よっぽど執行官採用の基準というものを――これは大体言うと、公務員としての立場を厳重にして、監督を厳重にして、執行にあたっては適正、迅速にやれるような体制をつくろうというお考えのようでありますから、どうしてもその条件はきついので、一般の人は、才能はあるけれどもそういう試験を受けるというようなことになれば、もうそこに一つの関門がありますし、経験もそう深い経験を持っている人は次から出てこないのでありますから、どうしてもそこのところに無理があり、試験の標準もなかなかむずかしいのではないかというふうに私は思うのです。この者に対してはその望みがないというと、あらかじめその代理に書記官を使うという制度がありますが、あれを拡張していくというようなお考えはないのでありますか。
○菅野最高裁判所長官代理者 御指摘のように、代行書記官をふやしていくということによって事態をまかなうという方法も考えたことはございました。しかし、これは、やはり俸給制の執行官をふやすということに相通ずる面があるわけでございまして、むずかしさは同じなわけでございます。しかしながら、今回も代行書記官を置ける場合を法律の上でふやしていただきまして、代行書記官による執行吏制度の改革という面も多少は取り入れて趣旨の上にあらわれてくると思います。つまり、手数料制の執行官を一方においては原則としてふやしていく。ですが、しかし、それでまかなえない部分を代行書記官いわば俸給制の執行官で補っていくという面が今度の法律でも多少は出ておると思います。
○井伊委員 現在の書記官を代行させるようにしているのは、補いの点で考えているようなお考えなんですね。これを、書記官にならないものをふやしておいて、そうしてそれをだんだん執行官のほうに向けるといったようなお考えもないわけでありますか。
○菅野最高裁判所長官代理者 重ねて同じようなことを申し上げることになりますが、つまり代行書記官で事をまかなっていくということは、俸給制の執行官をふやすということと似ておるわけでございまして、そういう完全な公務員による執行ということを考えるわけでございまするから、その点において同じ面があるわけでございます。それで、その特色といいますかいい点はあるわけでございまするから、手数料制度を根本といたしております制度の中にも、できるだけそういう俸給制の公務員による執行ということを取り入れられる実情のある部面においては取り入れていこう、もう少し具体的に申し上げますれば、事件が非常に少なくて手数料制を前提としてはなかなか執行官になり手がないというようなところは代行書記官で補っていこうということでございます。
○井伊委員 なおお尋ねしたいこともありまするけれども、時間も超過しておりますし、私の質問はこの程度にさせていただきます。
○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
 次会は明後九日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十四分散会