第051回国会 法務委員会 第4号
昭和四十年十二月二十四日(金曜日)
   午前十時四十二分開議
 出席委員
   委員長 濱田 幸雄君
   理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
   理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君
   理事 田村 良平君 理事 細迫 兼光君
   理事 横山 利秋君
      大坪 保雄君    唐澤 俊樹君
      木部 佳昭君    小金 義照君
      四宮 久吉君    千葉 三郎君
      中垣 國男君    馬場 元治君
      濱野 清吾君    前尾繁三郎君
      森下 元晴君    井伊 誠一君
      麻生 良方君    田中織之進君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 石井光次郎君
 出席政府委員
        法務政務次官  山本 利壽君
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 鹽野 宜慶君
        検     事
        (民事局長)  新谷 正夫君
        検     事
        (矯正局長)  布施  健君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      八木 正男君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局総務局
        長)      寺田 治郎君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局
        長)      矢崎 憲正君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局給
        与課長)    武居 二郎君
        専  門  員 高橋 勝好君
    ―――――――――――――
十二月二十四日
 委員賀屋興宣君、早川崇君及び西村榮一君辞任
 につき、その補欠として木部佳昭君、大坪保雄
 君及び麻生良方君が議長の指名で委員に選任さ
 れた。
同日
 委員大坪保雄君、木部佳昭君及び麻生良方君辞
 任につき、その補欠として早川崇君、賀屋興宣
 君及び西村榮一君が議長の指名で委員に選任さ
 れた。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第四号)
 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第五号)
 法務行政に関する件
     ――――◇―――――
○濱田委員長 これより会議を開きます。
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。横山利秋
 君。
○横山委員 最初に、一昨日の理事会並びに委員会でお尋ねいたしましたが、鈴木忠一氏が全国の裁判官並びに弁護士、検事の司法修習生数百人の会合におきまして、法律家を侮辱し、国会議員をばかにし、社会党のわれわれを侮辱した発言をされたことについて調査をお願いしておきましたが、その結果を伺いたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 さっそく昨二十三日、当委員会の休憩の時刻に、鈴木司法研修所長に最高裁判所事務総長室にお越しいただいて、人事局長立ち会いの上でいろいろと事情を伺いました。しかるところ、要するに、修習生の諸君に法律家としてこうあるべきだということを話した際に、たとえば修習生の諸君が弁護士会に行けば、弁護士会では裁判所や検察庁のことをいろいろと批判するだろう。また検察庁に行けば、裁判官やそれから弁護士会のことについていろいろ批判もするであろう。また裁判所に行けば、裁判官は弁護士や検察官の諸君についていろいろ批判するであろう。とかく法律家というものはそういうような弊害におちいりやすいので、われわれそういうことについて十分反省もしなければならないし、また自分自身もうっかりすると、そういうような弊害におちいらないとは限らないということを述べられました際に、一昨日横山委員から御指摘のあったような、そういったような発言をされたようでございます。しかしながら、もとより御本人としては、社会党について批判というような気持ちは毛頭ないわけでございますが、そういうような発言はあったようでございます。
○横山委員 社会党に対してそういう気持はないと言いながら、社会党はそうだよ、みんな国民はそう思っているよ、ということは、明らかに社会党に対する侮辱ですよ。本人はそれを言って、それを申しわけないと言っているのか、言わないと言っているのか、どちらですか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 昨日事務総長室での鈴木所長の話では、この法案審議の際に、国会でそういった点についていろいろと御心配をかけたのは申しわけない、自分がそういった趣旨のことを言ったのは非常にまずかったというように申しておりました。どうぞ御了承お願い申し上げたいのでございます。
○横山委員 理事会におきましては、与党側委員より、もしそれが事実だとしたらそれはまことに遺憾なことだ、適当な機会にそれは本人をして釈明さしたほうがよいという御意見があり、私はそれに同調したわけでございますが、聞いた者は私どもではなくて、全国数百名の司法修習生が聞いた。その司法修習生が、立場の相違はともあれ、いかがなものであろうかというふうに感じたのが事の始まりでありますから、その数百名の司法修習生に対して釈明をされる機会をお持ちになるのであるかどうか、その点をお伺いしたい。
○矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま修習生の諸君はちょうど冬休みに入りまして、もうあと二日くらいでそれぞれ故郷に帰るなり休むなりする段階に入っております。そこで、お正月早々、一月の中旬ごろに全員集まる時間があるそうでございます。ただいま横山委員からお話しのとおり、鈴木研修所長において全員集まりの機会に十分釈明し、訂正するというように申しておるわけでございます。
○横山委員 そういうふうにしていただけばまことにけっこうだと思います。しかし、この機会に一言申し上げておきたいと思いますのは、私は本人は知りませんけれども、同僚各位から聞いたところによりますと、鈴木忠一氏は平素そういうようなことをあまり言うような男ではないがという意見があるわけであります。そういうまじめな人が、そういうような公式の場でそういう発言をするということは、これはどうも腹の中にあったものがふいと出たという感じがやはりするわけであります。もしそうだとするならば、ひとり鈴木忠一氏のみならず、司法行政に携わる人も十分戒心をしなければならぬ問題である。個人の思想、信条は、それは私そうとやかく申しません。中には社会党の好きな方もあるのであるからそう申しませんが、いやしくも公の職名を持ち、公の会合の場所でみだりに国会を批判し、あるいは政党を批判するということは、常識上あり得べからざることだ、こういうふうに考えるわけでありますが、今後かかることのないように、ひとつ善処をしていただきたいと思うのであります。政務次官の御意見を伺いたいと思います。
○山本(利)政府委員 ただいま横山委員の御意見まことにごもっともでございまして、私も同感でございますので、今後さようなことのないよう各方面に対して十分注意いたしたいと存じます。
○横山委員 それでは次に、きのうちょっと残したことについて伺いますが、本委員会は先般執行吏の事務の改善について、法案と合わせてきわめて強硬な附帯決議をいたしましたが、承われば本年度執行吏の中の会計事務の一切を裁判所へ移す。それに伴って裁判所の定員を増加するという要求を大蔵省にされておる模様であります。このわれわれのいたしました附帯決議と、事務の移管並びに定員の要求とは、どういう関係を持って律せられておるのか、伺いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員のお話の点でございますが、執行吏の制度の改善の問題は、これはもう長年この法務委員会でもいろいろお話をいただいておる問題でございまして、裁判所といたしましても、たいへんに苦慮しておる問題でございます。昨年の国会において、この法務委員会でお話の附帯決議をいただきましたことも、私どもの肝に銘じておる点でございますが、法務省におかれましては、かねて法制審議会でこの執行吏制度の根本的改革の問題を御検討いただいておるわけでございまして、私どもも全面的にそれに協力してと申しますか、むしろ私どものほうから積極的にお願いして、いろいろ御検討いただいておるというような次第でございます。その点につきまして、これはまだ結論が出ておりませんので、どういう方向になるかわかりませんけれども、むしろ従来では、これを根本的に改革して、いわば俸給制の公務員にするというような考え方が強かったわけでございますが、そういう考え方に基づいて施策するにつきましては、これはなお相当の年月を要する。また基本的にそういうことがいいかどうかという議論もむろんございます。いろいろそういう点で検討すべき問題を多々かかえておりますが、しかしながら、この改革の問題は、一日もゆるがせにすることができないので、当面、応急と申しますか、現在の時点において最も好ましい制度を持っていきたい、こういうことで法制審議会におかれても、いまそういう面からの御検討をお願しておる段階のように承知しておるわけでございますが、それに関連いたしまして、予算の面におきましても、いわばそれと相表裏する形の要求をいたしておるわけでございます。
 私、直接の所管でございませんで、所管の民事局長が本日参っておりませんので、私の承知いたしております範囲で申し上げますので、あるいは不正確な面があるかも存じませんが、一つには、従来執行吏の待遇というものがたいへんに悪い。これは手数料制をとっております関係で、これの待遇をよくしようといたしますと、おのずから手数料の大幅な増額ということにならざるを得ないわけでございます。しかしながら手数料の大幅の増額ということは、これは非常に国民の、いわば当事者の負担において執行吏の待遇の改善をはかるというような面もございますので、むろんこれを全然なおざりにもできませんが、ここに重点を置くこともやはり問題ではないか。そういうような点で、さしあたりは手数料の点は一応それといたしまして、国庫の補助金をひとつ増額していただくということで、いま予算折衝をいたしておるわけでございます。現在はきわめてわずかな年額で二十一万八千円程度の補助金でございますから、言うに足りない。補助金と申しましても、これは世の中で普通にございます補助金とは全然違うことはつとに御承知のとおりでございまして、つまり手数料収入の足りない場合に、ここから補助をするという形の補助金でございますから、全員が受けておるわけではございませんが、少くともその金額は収入として確保されている。これが現在二十一万八千円にすぎないわけでございますが、これを三倍に近い六十六万三千円となりますならば、月額五万円程度になりますので、一応執行吏の生活の安定も得られるのではないかというような点から、この国庫補助の金額の増額ということをいわば重点にいたしておるわけでございます。
 そして、そのねらいといたしますところは、現在、先般の国会でもいろいろお話しいただきました、いわゆる執行吏代理というものの立場が、私どもから言えば言いにくいことでございますが、目にあまるものがあるというお話がいろいろございまして、この執行吏代理というものをなくするという目標で、そのためには執行吏の希望者が多くなければならない、それには待遇改善の必要がある。こういうことから、今度かりに六十六万三千円という全額が認められますれば、これは簡易裁判所の庶務課長とか、あるいはそういうクラスの人の中からも十分希望者が出得る状況になるわけで、そうすれば、自然この執行吏代理というものは使わなくてもよくなる。むろん執行吏代理の中の優秀な者はさらに執行吏に引き上げていくという面もあるわけでございます。そうして本委員会でお話しいただきました執行吏の代理というものをなくして、執行吏の本職一本にして、厳正な執行をしていく、こういうことをいわば第一の重点にしておるわけでございます。
 その次に出てまいりましたのが、先ほど横山委員からお話のございました経理事務をある程度裁判所のほうでかぶると申しますか、引き受けるという問題、あるいは監督を強化するという問題。これが一つの予算事項としていま大蔵省とお話し合いをしておるわけでございます。その中の先ほどお話のございました経理事務の点は、何と申しましても現在執行吏が非常に疑惑を受けておりますのは、直接金を受授して、みずからこれを保管しておる。これは国家の事務であるにかかわらず、そういうやり方をしている点に非常に疑惑を受けますので、そこをもう少しすっきりさせる。むろん手数料収入の前提がございますから、収入は執行吏に入るわけでございますが、その受授その他を裁判所の所定の手続きでやっていけば、少くとも世の中の疑惑は免れるのではないかというようなところから、こういう施策を考えておるわけでございます。
 同時に、これは現在でございますと、ことにたとえば東京のような役場では相当大勢の会計事務担当の事務員と申しますか、これを雇わざるを得ない状況でございますが、それがある意味では国のほうに肩がわりするという面においては、執行吏の一種の待遇改善にも間接的にはなるわけでございます。しかし、ねらいはあくまで会計事務を適正にして、世の中の疑惑を避けたいということでございます。
 そうして三番目に、一般的な権限事務を強化する。かような三本立てでございますが、しかしながら私どもとしては最重点は執行吏の待遇改善の補助基準額の増額という点に置いておるわけでございます。その施策はひいては執行吏代理というものの存在をなくしていこう、こういうねらいを持っておるわけでございます。
 現在いまの時点において改善方法として考えておりますのは、大体以上のようなことで、それは応予算の要求の形であらわれておる、こういう状況になっておるわけでございます。
○横山委員 先般きわめて強硬に各委員からも指摘され、附帯決議となりました際に、御注意を申し上げておいたのでございますが、根本的改善はなかなかむずかしい。だからといって遷延することは許されない問題であるから、全力をあげて根本的改正に向かうようにくれぐれも申し上げたのでございますが、いまお話を伺う分においては、まだ一歩を進めたにすぎないような模様でありまして、私はまことに遺憾なことだと思います。いわんや定員が認められなければ、あるいはこの補助の増額が認められなければ、またもとのもくあみになるという情勢であると考えますときに、さらに最高裁なり法務省においては格段の努力をされんことを要望しておきたいと思います。
 次に、法務省に伺うんですが、きのういただいた「刑務官の定員及び実員調」並びに「看守の勤務年数別の実質給与」、この表をいただいて感ぜられることが二、三あります。私が指摘をいたしましたのは、最近において刑務所、拘置所、少年院から脱獄が非常に多いと社会世論が指摘しておるのでありますが、その点から考えますと、この定員並びに現在員表を見ますときに、看守は定員よりも現在員のほうが二十一名くらい多い。つまり定員を充足しているではないか。それなのに一体なぜにうまくそういう脱獄が防止ができないのか。一体定員が足りないという問題であるかということが第一であります。
 それから第二番目にお伺いしたい点は、この実質給与を拝見をいたしますと、他の役所に比較をいたしますと、超過勤務手当がわりあいに多いように思われる。ということは、この超過勤務ということが平常業務になり過ぎておるのではないか。逆にことばをかえて言えば、定員が足らないということが、この超過勤務手当の実績から言い得られるのではないか。超過勤務手当がこのような最低四千円、最高一万一千円程度平均実質支給をされておるということになりますと、もはやこれは超過勤務でなくして、ノーマルに支給されておるとなれば、生活費の一部に入ってしまう。そういう生活形態になってしまうということになると、この超過勤務手当を減らすということは、各人の生活状況から言って、非常に困難なことになる。したがってノーマルな給与の支給のあり方ではないではないか、こういう感じがいたすわけでありますが、この脱獄等が最近非常に多いということについての事情、並びにいま指摘いたしました二点について伺いたい。
○鹽野政府委員 ただいまいろいろ御指摘をいただきました点につきましては、矯正局から御説明申し上げますが、ただいまこちらに参る途中でございますので、多少時間をお許しいただきたいと思います。
○横山委員 鹽野さんでは御答弁ができないと、こういうわけですか。
○鹽野政府委員 ……。
○濱田委員長 田中君。
○田中(織)委員 今度の裁判官及び検察官等の給与改定に関する法律案についてでありますが、与党の大竹委員あるいは同僚横山委員等よりそれぞれ質問が出ておりますから、端的に伺いますが、私どもきわめて不満に思っている人事院勧告の特に実施の時期の問題については、額はあるいは勧告のとおりかもしれませんけれども、五月実施が九月実施ということで、半年のずれが出てきておると思うのです。その意味から見れば、これは毎年のことでありますけれども、人事院勧告を尊重しているということにはならないと思うのであります。その点については、裁判所及び法務省、ともに人事院勧告の、特に実施時期の問題については、これは当然大蔵当局との間に折衝しなければならぬ問題ではありますけれども、どういう態度で大蔵省と折衝したのか。他の諸君からも触れられておる問題でありますけれども、このままに見過ごすわけにいかない問題なんで、あらためて伺っておきたいと思います。
○鹽野政府委員 今回の給与改定の実施時期につきましては、給与改定の全般の問題として、人事院の勧告とのずれがございますことは、御指摘のとおりでございます。ただいま御審議いただいております裁判官の報酬につきましては、人事院勧告にはそのまま出てはまいっていないわけでございます。この点はすでに御承知のことと思います。人事院勧告におきましては、一般職につきまして勧告がなされているわけでございまして、その実施期日が御指摘のような期日で勧告されているわけでございます。その一般職の給与改定につきまして、政府におきましては種々検討の結果、九月というふうに定めたわけでございまして、私どもの担当しております。ただいま御審議を願っております裁判官の報酬、検察官の俸給の改定は、人事院の勧告に基づきます一般職の給与の改定、それを基準にいたしまして、今回の裁判官の報酬及び検察官の俸給の改定という取り扱いをいたしましたので、一般職の期日に裁判官、検察官の給与につきましても実施期日を合わした、こういう結果になっているわけでございます。
○田中(織)委員 一般職の公務員と違うことは私も承知しているのです。一般職の公務員の給与改定に関する人事院勧告実施の時期と、裁判官なり検察官なりの問題を合わさなければならぬという法的な根拠はどこにあるのですか。私の聞くのは、あとにも伺いますけれども、いろいろ裁判の長期化対策その他の関係も含めて、裁判官あるいは検察官等については特別な給与体系を立てなければならぬというようなことも、本委員会からも言われてきているし、臨時司法制度調査会からの答申の中にもそういうものが盛られておるようなこの段階において、一般職について九月だからそれに時期を合わしたということだけでは、裁判所当局にしても、あるいは法務省の当局にしても、それはもちろん法務省の関係は政府の行政機構の一部局でありますけれども、裁判所の関係においては、特にその点については独立した立場で独自の給与体系を立てなければならぬとさえすでに決議をされて、具体的な作業を進めておる段階であまりにも芸のない話じゃないか、こういう立場から伺っておるので、せめて実施の時期をさかのぼるというようなことについて大蔵当局と折衝されたことがあるのかどうか。われわれは本案に対する態度を決定する上において、裁判所当局なり法務省当局の熱意をわれわれが認めるかどうかということによって、賛否の態度に影響してくる問題ですから伺っておるわけです。
○鹽野政府委員 御指摘の点、まことにごもっともなことと存ずる次第でございます。もちろん裁判官の報酬につきまして、その改定の時期を、一般職の改定の時期と合わせなければならないというような法律上の理由はないわけでございます。その点は、まことに御指摘のとおりでございます。私どもの考えましたのは、裁判官の報酬、それから検察官の俸給につきましても同様でございますが、昨年度の改定の際にかなり大幅な制度の改定を行なった次第でございます。これはすでに御承知と存じますが、先般の臨時司法制度調査会におきまして、その御意見の中にこの給与の改善についていろいろ提案がなされておりましたので、それを基礎といたしまして検討の結果、昨年の給与改定の際にかなり各種の大きな改定をいたしたわけでございます。そこでその後引き続きまして、さらに裁判官の報酬、さらには検察官の俸給につきましても、従来と違った考え方で給与の改善をしていく。いわゆる独自の給与体系というものを求めるべく努力し、検討を続けてきたわけでございますが、何ぶんにも従来からの懸案でもございまして、そう短時日にその結論を狩ることができない状況でございますので、昨年の大改正のあとでということにもかんがみまして、今回の改定は一般政府職員の例にならって、いわゆる対応金額スライド制をとりまして、一般職の同額のものが上がるだけ裁判官、検察官についても上げていくという機械的な給与改定にとどまるという方針をとった次第でございます。今回このような方針をとるにつきましては、最高裁判所の御意見も十分に伺いまして、御相談の上今回の給与改定としてはこのような措置をとろうという結論に達しまして、かような法案を御審議いただくことにいたした次第でございます。
○田中(織)委員 まだ二回にわたる答弁の関係からは、私どもがバックアップしたいという点について、裁判所なり、あるいは法務省当局の大蔵当局との折衝が、これは給与に関する予算折衝の問題だけじゃなくて、全体の問題にも響くので、同様なことなので、委員会としては超党的に法務省あるいは裁判所をバックアップしておるんですが、その点はまた伺うことができないのを非常に遺憾に思うわけであります。
 そこで今後の問題になりますけれども、やはり一般職と違った特殊な職務内容を持っておるし、また一方は、ほんとうの意味における司法権の独立という見地から見れば、やはり特に裁判官につきましてはそれに相応するところの待遇、したがって、給与体系なども率直に申し上げれば、一般職とは違った特別な体系をもって給与を定めてもいいのではないかとすら考えておるわけでございます。その点については、これは前からのかなりの懸案でございますけれども、当局において独自の、あるいは司法官の特殊性を織り込んだ意味の給与体系ということについての作業は、ある程度進行しておるのかどうか、その点について伺ってみたいと思います。
○鹽野政府委員 ただいま御指摘の裁判官につきましての独自の給与体系につきましては、先ほど申しました臨時司法制度調査会におきましても、独自の給与体系を樹立すべきであるという意見をはっきり提出しているわけでございます。したがいまして、政府といたしましてもこの裁判官の給与の体系を、一般の職員と違った独自のものにしていくということにつきましては、引き続いて研究を続けているわけでございます。しかしながら、臨時司法制度調査会におきまして、裁判官の給与は独自の給与体系であるべきだとしながら、その審議の過程において、その独自の給与体系がいかなるものであるか、いかなる構想に基づくものであるかということを示していないのでございます。結局、それは学識経験のある方々がお集まりになって、二年間御検討いただいた結果でも、具体的にどういうものがこの独自の給与体系であるかということをお示しいただくことができなかったような、非常にむずかしい問題でございます。私どもその後引き続いて最高裁判所と協力して、検討、研究を続けております。現在のところいまだかような構想であるというところまで具体的に申し上げる段階に立ち至っていないわけでございます。したがいまして、臨時司法制度調査会におきましても、その独自の給与体系を樹立すべきであるとしながら、そう簡単にその独自の給与体系というものを発見することはできないであろうという考えのもとに、その独自の給与体系の樹立に至るまではその趣旨を体して、現行の制度を改善していくべきだという具体的な改善案を打ち出しているわけでございます。その具体的改善案に基づきまして、先ほど申しましたとおり、昨年裁判官の給与につきまして相当大幅な改善をいたしたわけでございます。ただ、臨時司法制度調査会の提案いたしました具体的な制度のうち、なお実現していない点があるのでございます。それは一つは経験豊富な裁判官、検察官のために現在の号俸よりも上に号俸を積み上げるべきだ、それが経験豊富な裁判官、検察官のための給与改善に資する、こういう趣旨の提案がなされているわけでございますが、その分につきましては昨年の給与改定の際に、裁判官の認証官とそれからそうでない裁判官との間の開きが非常に近づいておりましたので、その間にただいま申しました経験豊富な裁判官のための給与の段階を入れるということが非常にむずかしかったので、その点だけが見送りになっております。その点につきましては、いずれ認証官クラスの裁判官の給与は改定される。したがって、一般の裁判官との間にある程度の金額の開きができるというような事情になりました場合には、この臨時司法制度調査会の意見の趣旨によりまして、新しい号俸を上に積み上げていくというような方策を講じたい、かように考えている次第でございます。
○田中(織)委員 独自の給与体系を立てるということは、一般職との関係も出てまいりましてなかなかむずかしいことだと思うのでありますが、いまお述べになりました特殊な号俸の設定といいますか、積み重ねといいますか、そういうようなことは、これは私いまの給与体系の中でも実現可能な道だと思いますので、そういう独自の体系が成案を得るまでの過程においても、特に臨時司法制度調査会等の意見に盛られている点については、今後ひとつ格段の努力を願いたい。そうでなければ裁判官を増員をする、特に全電通の労働組合から出した訴訟の関係から、むしろこれに対する裁判所側の、電々公社の御都合だけを伺って、期日さえきめないという態度に対して、きのう横山委員から鋭く追及されましたが、やはりそういう新しいケースが出てまいりますれば、勢い裁判官の増員ということについても特別に考えなければならぬ事態に相なっておるのだということも考えなければならぬと思います。裁判官のいわゆる給源ということばもきのう関係政府委員から使われておるので、私どももその点はよくわかります。しかしひとつにはやはり私は、給与の関係が、給源を確保するという面において大きく響いてくるという点は、いなめない事実だと思うのです。そういう観点からも、ただ単に給与だけの問題で私は裁判官を志望する人が激増するというふうには考えませんけれども、これはやはり一つの裁判官の地位を引き上げる道だと思いまするので、特に給源確保という観点から見るならば、判事の下の関係等につきましては、やはりずいぶん問題が残っておる。現在の給与体系の中においても改善すべき問題が含まれておる。そういうことで毎年大学で法律を専攻して出る卒業生が相当あるわけです。それでいて裁判官なりあるいは検察官という、いわゆる司法官としての希望者が少ないというようなことは、やはり最高裁判所なり法務省が真剣に考えなければならぬ問題だと思うので、その点には特別にひとつ考慮を払ってもらいたい。これはあえて答弁を要求いたしません。
 それからこの法律は裁判官と検察官に関するものでありますけれども、横山委員からの要求に基づいて出しました拘置所の職員の給与の問題、特に看守あるいは看守部長でありますか、それらのなにが出ていますが、勤続三十五年というような、これは数は一名か二名のようでありますが、それでも十万円にはるかに及ばないような給与総額であるというような点、これは一般職でありますけれども、やはり問題があるんではないか。その点は先ほど横山委員が例の執行吏について質問をされたのと同じ意味で問題がある。そういうようなことが最近刑務所からの脱獄なり逃亡する者が多くなったということの理由であるというふうには見たくありませんけれども、やはりこれらの諸君は全く日陰の仕事に従事をしておるわけでございます。先般理事会で予算の説明を伺いましたが、法務省関係の歳入の関係になっておりまする刑務所のいろいろの収入の面が相当の金額に上っておる点から見まするならば、こういう拘置所、刑務所等の関係の、これは一般職の職員ではありますけれども、これらの諸君の待遇の問題については、やはり法の厳正なる執行という観点、またいわゆる刑余者がそのつとめを通じて実社会へ復帰していくために、特別に刑余者との間に接触を持たなければならない非常に聖なる仕事だと私は思うが、そういう人に対する待遇が、昔から刑務所の看守だという形で、社会的にもあまり評価されない立場に立たされておるんですが、そういう関係の諸君の給与については、これは一般職の関係でありまするけれども、特に法務省関係においてお考えをいただかなければならぬ問題じゃないだろうか。それから裁判所の書記官、あるいは検察関係の事務官これはもちろん全司法の労働組合があり、われわれにもいろいろ訴えてまいりますけれども、やはり裁判所なり、あるいは検察庁という役所の性格から見て、私、これらの労働者に認められておる組合活動というものは、他の公務員の諸君よりも著しく制限をされてきておると思うのです。その意味において、待遇の問題についても他の公務員、あるいは公共企業体――これは別に企業機関ではありませんけれども、やはりいろいろそういうところにも、特にいま国民すべてが要望しておる裁判の迅速化というような点からは、下積みになって働いておるこれらの諸君の待遇の問題が当然大きなエネルギーに実ってくるものではないかと私は思うので、その点については上の裁判官なり検察官に対して、特別の配慮をしなければならぬと同時に、あるいはそれ以上に私はこれらの諸君の待遇を考えなければならぬ問題ではないかというふうに考えるのでありますが、この点について当局のほうではどういうように配慮をされているか、伺いたいと思うのであります。
○布施政府委員 お答え申し上げます。
 その前にたいへん恐縮なのでございますが、提出いたしました資料の「刑務官の定員及び実員調」というのがございます。これに明らかな誤記が一点ございますので、御訂正をお許し願いたいと思います。それは全体の計というところでございます。そこの現員欄で一万四千三百二十になっております。これは二十一の誤りでございますので、訂正をお許し願いたいと思います。
 ただいままことに御理解あるおことばをいただいて恐縮いたしておるのであります。御指摘いただきましたように、刑務官の仕事は下積みの仕事でございます。のみならず危険にもさらされておるという状況でございます。しかも組合はないというような関係もございまして、それだけに私どもといたしましては、その待遇が他に比較して悪くならないようにということは十分注意して努力しておる次第でございます。
 刑務官の俸給につきましては、公安職俸給表(一)というのが適用されております。この公安職俸給表(一)の俸給金額は、一般職の行政(一)の俸給表に比較いたしまして、大体平均して一三%高い給与になっておる次第でございます。したがいまして、他の一般職に比較しまして、刑務官が特に落ちるということはないのでございまして、その点は御理解をお願いいたしたいと思います。
 なお、超過勤務手当等がございます。超適勤務等に対しましては、一般は大体十時間程度と存じますが、公安職俸給表の(一)の適用を受けます刑務官につきましては、月一人平均三十二時間という超過勤務手当が認められております。そのほかに手当といたしまして、刑事作業手当というのがございます。これは支給対象人員につきまして一人月平均五百四十円程度のようでございます。かような手当があるわけでございます。
 そこで、何年たっても上に上がらないという問題を御指摘になったわけでございますが、その点につきましては私どもといたしまして、いまは看守は七等級ということになっております。その一つ上の六等級等への昇格と申しますか、その定数を獲得いたすべく努力いたしておる次第でございます。一つ上にまいりますとその最高額がずっと伸びていくわけであります。七等級で頭打ちの者も六等級にまいりますとさらに上に進むことができるというような状況にあるわけでございます。そのような点で今後とも待遇の改善につきましては努力いたしたいと存じております。
 なお、待遇の面におきましては、宿舎の手当等につきまして努力いたしておる次第でございます。宿舎も現在のところ大体入居希望者の数に対しましては七九%程度の充足率を見ておるわけであります。これはさらに努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
 次に、最近におきます逃走事故、これはまことに世間を騒がせて遺憾であると存じて申しわけなく考えております。ただそれが刑務官の待遇との関連でどうであろうかという御配慮をいただいたわけでありますが、そのような点が全くないとは申せないと存じますけれども、最近の逃走事故を年次を追って件数を見てみますと、昭和三十八年から申しますと、三十八年は三十三件、四十一名という数でございまして、それが三十九年になりますと三十件、三十六名、本年は十二月の二十二日現在、その後はございませんので本日現在と申し上げてもよろしいかと存じますが十七件、二十二名という数でございます。これは昨年に比較いたしまして、数といたしましてはかなり減少しておるわけでございます。このような点から考えまして、私どもといたしましてはいまのような待遇面から、それが大きな原因となって逃走事故が起きておるというふうには考えない。やはり拘禁施設を預かります刑務官といたしまして、さらに注意をしなければならない点があるのではないか、またわれわれ当局者としても考えなければならない点があるのではないかというような観点で見ておる次第でございます。御了承願いたいと思います。
○田中(織)委員 横山委員からあと御質問があるようでありますから、私は昨日来各委員、特に神近委員等から強調されている裁判の長期化対策の問題に関連して実は伺いたい問題が一つあるわけです。特に刑事事件の関係につきましては、これは裁判官の面だけではどうにもならない問題が私はあると思うのです。特に検察側が一体にならなければ裁判の長期化対策ということにはならない面が私は出てきていると思うのです。それは特に刑事訴訟法のいまのたてまえの問題でありますが、公安事件等の関係から見ますると、公安事件がほとんど例外なくでありますけれども、公安事件等から出ました刑事事件につきましては、検察側は公判の期日がきまりましても、起訴状だけで、一切検面調書も何もかも、弁護人に謄写も認めないといういわゆる起訴状一本主義、これは刑事訴訟法がそういうたてまえになっておるので、先輩に聞きますと、終戦直後いまの刑事訴訟法ができるときにも問題になったということでありますけれども、そういう形で出てまいりますから、かつて本委員会の委員でもありました楢橋渡君の事件等についてはずいぶん長期にわたっておりますが、裁判の数もやがて三百回になるのじゃないかというような状況なんです。私はやはりその意味で、これは裁判所のほうではどうにもならない問題だし、刑事訴訟法についても考えなければならぬ問題を含んでおると思うのでありますが、そういう面で実は刑事訴訟法の法改正の問題、これは同時にいわゆる弁護士の調査活動、弁護士の調査権というようなものがアメリカ等ではかなり法的に確保されておるようでありますけれども、そういうようなものは日本の弁護士法の関係、弁護士諸君には与えられていないわけです。したがって、強制捜査する権限は検察庁だけが握っておるだけに、いわゆる確定するまでは被告も検察官と同等の立場で防御権が認められておるというものの、きわめて防御権が実質的に制約されておる。そういうふうな関係が勢い刑事事件についての裁判の長期化になっているという点は私はいなめない事実だと思うのです。この点については、あるいは最高裁判所は規則の制定の権限を持っておるのでありまするから、訴訟指揮の観点から見て、私は新しい規則の制定ということも可能だと思うのでありますが、最高裁判所もその点についてはまだ具体的に動いているようには私は見ないのであります。最近特に刑事事件の関係においても裁判の長期化が問題になる。それは十分調査なり審理を尽くして真実を発見するという、きのうもどなたかが答弁になっていた点はよくわかりますけれども、私はやはりこの点は裁判所も検察側も一体にならない限りは裁判が促進をしない結果になると思うので、きょうは最高裁総務局長もお見えになっておられるから、この点についてはすぐお答えがいただければけっこうですが、なければ御相談をいただいてもけっこうだと思うし、この点については検察側の元締めとしての法務当局についても、もちろん検事のそういう権限は法によって認められておるわけでありますが、私はやはり裁判の権威を維持しながら裁判を迅速に処理するという道はないことはない。問題はそこにまで進めなければいけない。ただ施設を拡充するとか、裁判官なり検察官の人員をふやすというような形だけでは、国民の待望している裁判長期化を解消することにはならない面があるのではないかというので、この点は問題を投げかけて、あと法務行政一般について時間があれば質問することにいたします。
 一応、私の申し上げた点について、最高裁判所なりあるいは法務省のほうで、何か御意見があれば述べていただきたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 もっぱら担当をいたしております刑事局長が参っておりませんので、私で承知いたしております範囲で申し上げたいと存じます。
 まことに御指摘のように、いわゆる公安事件、それから選挙違反事件、それから贈収賄事件等につきましては、証拠上のいろんな問題点、それからまた当事者の訴訟活動の点等からいたしまして、他の一般の事件に比べますと非常に審理がおくれているのが御指摘のとおり現状でございます。しかし、そのおくれておりますのは、要するにほかの事件に比べまして証人数が非常に多うございまして、またその証人について、主尋問、反対尋問等が相当長く行なわれ、詳細に意を尽して行なわれるというところに、一つのまた原因があるわけでございます。ただいま主としてお尋ねになっておりましたいわゆる証拠の開示の問題、これはまことにむずかしい問題でございまして、この証拠開示の法律をつくるべきか、あるいは規則をつくるべきかという点につきましては、従来刑事裁判官会同におきましてもいろいろと議論が出ておりまして、ブロック会同――ブロック会同と申しますのは、高等裁判所管内を中心とした裁判官の会同でございますが、その席上においてもいろいろと論議され、また中央会同におきましてもいろいろと論議されている点でございまして、最高裁判所の事務当局におきましても、その規則の制定については法務省あるいは弁護士会と数年前からお打ち合わせもありますし、実際にまた検討も続けて、現在もその点について十分いろいろな資料等を集めまして、検討中ということを申し上げることができると存じます。
○横山委員 田中さんから刑務官については質問がありましたから、時間の関係で矯正局長に二つばかりお伺いをしてとどめたいと思います。
 一つは、きのう申し上げたように、拘置所へ行って死刑囚に会って感じたこと、あるいは外国を回って感じたことでございますが、日本の死刑囚に対する統一的な扱いの基準というものがないように思われる。この間犯罪白書をもらいましたが、その中で、どなたがお書きになったかわかりませんが、死刑囚の扱いの点に触れて、死刑囚の未決における扱いの基準について何か法律をもって定めるべきではないかという意見が出ておりましたが、その点をどう思われるかという点が一つであります。
 それから、刑務所、拘置所を見て感じましたが、監獄法と現状との矛盾であります。監獄法は、ずいぶん昔の法律並びにそのころの国民、政府のあり方をもって律せられまして、きわめて人権無視な点が多いのであります。しかし、いま現状は、実際問題としてそれだけではうまくいかないので、ある程度人権を尊重したやり方をとらざるを得ない。さりとて、そこがどういうようなやり方でやればいいのか、いろいろと議論があるようであります。したがって、監獄法の改正ということがとかくの問題になっておるのでありますが、その監獄法の改正はどのような検討が行なわれておるのか、この二点についてお伺いをいたします。
○布施政府委員 まず第一点の死刑囚の処遇でございますが、これは監獄法の規定によりまして、未決に準じた処遇ということがございます。そこで、死刑囚につきましては未決に準じて処遇いたしておる次第でございます。統一的な処遇というものはその点であるだけでございまして、ほかにはございません。ただ一般的に、刑の執行を待つ者は、非常に心情不安定な点がありまして、その心情安定に役立つようにということを考えまして、一般の未決よりも処遇が寛大になる場合もありますし、あるいはその心情を害するおそれがあるような書信の授受、それから面会というようなものは、ある程度制限される場合もございます。原則といたしましては未決に準じた取り扱いをしております。
 それから第二点の監獄法改正の問題でございますが、御承知のとおり監獄法は非常に古い法律でございまして、改正の問題が戦後からいろいろと論議されてまいったわけでございます。ところが、この監獄法と申します法律は、その規定が非常に抽象的でございますし、弾力性に富んだ表現を持っておりまして、具体的な事項は省令等にゆだねておりますところから、収容者の処遇に関しましては、国民の基本的人権を尊重する憲法の規定に抵触ぜず、むしろこれにのっとった運用が可能であるということから、今日まで延びておるわけでございます。その間、昭和二十八年には、矯正局におきまして改正の準備に着手し、三十一年、局の一応の要綱の原案をつくり、それに基づいて省内関係局と協議してまいったのでございます。その後、三十三年の十二月になりまして、矯正局、本省関係の部局、あるいは検察庁、在京の刑務所長などを委員とする改正準備会というものを置いて、いろいろと調査、審議してまいりました。しかし、御承知のように現在刑法の改正作業が行なわれております。すでに法制審議会で審議の段階にある状況でございます。そこでは刑に関する根本問題、刑の種類、それから保安処分その他の根本問題が論議されておりますし、死刑というものは刑の執行まではどういうふうな性格であるのかといったような問題もあるわけでございます。それらの根本問題が解決を見ませんことには、それを受けて処遇いたします施設の法律としての監獄法、これを簡単にいじることができないという状況でございますので、一応現在の段階では、刑法の改正の作業におきます状況をにらみ合わせながら、ここ半年余りそちらのほうを見て、監獄法の作業は一応中止という形になっておりますが、刑法の改正作業の進展に伴いまして、監獄法の改正も当然考慮されていかなければならない、かように存じます。
○横山委員 時間の関係上――あなたはいやというほどわかっておると思うのですが、私も初めての体験でありましたから、ヨーロッパの監獄や日本の監獄を見て、同僚諸君とともに痛感したことなんでありますから、聞いていただきたいと思うのでありますが、われわれが自由な世界で自由にふるまい、自由にしゃべっておることと、それから拘置所や刑務所の中で囚人を監視し、そして勤務しておる人の心情、並びに勤務されて監視をされておる入の心情というものは全く別世界、全く別な次元で判断をしてやらなければだめだと思うのであります。私が東京拘置所長に会い、竹内被告にあったときの一つの問題点は、せめて獄屋の中のガラスを一つは透明ガラスにしてくれという要求を掲げて、所長がそれじゃというわけで一つだけ透明ガラスにした。それによって窓から外が見えるということは、どんなに別な感情を竹内にもたらしたかということを所長が話をしてくれたわけです。あなたは未決に準ずるのだから、それが基準になっておるからといえば、われわれの世界ではああそうか、こういうことで済むわけです。それでは未決に準ずるということは一体どうなるのか、透明ガラスがいいのか、それとも透明でないガラスのほうが囚人に適するのかということが、けんけんがくがくとして半日もかかって議論されて、ようやくそれじゃ一つだけ透明ガラスにしてやろうかということになっておるのが、拘置所、刑務所なりの死刑囚の問題であると思うわけです。そこで、私はこの死刑囚に対する基準というものが、それほどガラス一枚をどうするかということが、議論が長らくされなければならないほどの問題なのだから、犯罪白書の中にも、死刑囚に対する一つの何か基準があってしかるべきだという問題が検討された結果が私は出てきておるのではあるまいか、だから未決に準ずるなんということはちゃんと書いてあるのはあたりまえのことなんだから――しかし、別な世界の次元の問題として検討をしなければならないんではないかと、私も考え、犯罪白書の中でも指摘をしておるようなわけですから、そういう意味で御説明を願わなければいかぬと思うのです。
 監獄法についても同様なんです。なるほど、刑法が早案の中にあるんだから、そいつがきまらなければ何ともならないという点はわからぬでもないけれども、現にいま勤務しておる人たち、人権尊重ということと脱獄を防止をするということのその矛盾というものは、常に日夜、ある意味では戦々恐々としてやっておる。先般来あなたもごらんになったと思うのでありますが、週刊雑誌に載りました「石の叫び」ですか、あれが非常に国民大衆の中で読まれて、あらためて獄屋につながれる人々、それを監督監視をしておる人々、そうして死刑になる直前の雰囲気というものを読んで、なるほどそういうものかということを大衆の中に知らしめたあの著者の――あれは東京拘置所に勤務しておった人ですか、その人の功績というものは実に私は大きなものがあると思う。ああいうようなことや、あるいはテレビやラジオを通じて国民の前に最近反映をしていることを、ひとつ職責にあるあなたとしては十分に活用して、別の世界、次元におられる、ガラス一枚がずいぶん問題になっているような状況について、実情に適したような改善をしていく必要はないか、こういうのが私の意見なんです。その点を十分ひとつ勘案をして善処をお願いいたします。
○布施政府委員 御指摘のような点につきましては、今後十分いろいろの事情を聞きまして、改善できるものから改善していきたいと存じます。
○横山委員 それでは法的地位の問題で大臣に質問をいたしますから、関係外の人は御退席願ってけっこうです。
     ――――◇―――――
○濱田委員長 それでは、これから法務行政、検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
○横山委員 日韓条約は衆参両院を一応通過をいたしました。しかし、この条約並びに協定は、安保条約の場合と遠いまして、実際現実的行政行為をもってこれから動き出しますがゆえに、きわめて具体的な問題が山積をいたしていると私は思うわけであります。特に委員会において論争の中心の一つとなりました法的地位の問題につきましては、格別大きな、しかも具体的な問題がこれから軌道にのぼってきますがゆえに、私ども審議をいたしました一人として、かなりその発生いたします諸問題について不安と憂慮を禁じ得ないところがございます。
 そこで、きょうはきわめて事務的に数多くの問題を、できるだけ私の意見を交えないでお伺いをいたしたいと思いますから、そのつもりでひとつ事務的にお答えを願えればけっこうなのであります。ただそういいましても、私の願うことは、私どもがかねてから希望いたしておりますように、なるべく国内において紛争を避けたい、同時にまた窓口において円滑な事務が進行するようにありたい、同時にこの協定について不満を持ちあるいは衆望を持っている人々については、なるべく国内の安定、われわれ共同社会の秩序のためにもひとつ善処をしてやってほしい、そういう希望を持っていることは言うまでもないことでございますから、その希望をお含みの上で事務的にどんどん答えていただきたい、こう思うのであります。
 まず第一の御質問は、永住の申請をいたします際に、本人が陳述書を提出し、日本政府が、在日韓国大使館になったと思うのでありますが、大使館に回答を求め、そうして大使館から回答が来たら、陳述書だけの提出方式をもってしてもよろしい、こういう内容になっていますが、もしそうなら、なぜ一体最初から証明書を出せと言わないのか、陳述書だけでいいというなら、陳述書だけで処理ができないものか、その辺の事務的な整理は一体どういうことになるのか伺いたい。
○八木政府委員 今度の法的地位の協定は大韓民国国民の一定の資格を持った者に与えるということでございます。そこで、永住を申請した人間がまず第一に韓国の国籍を持っているということが証明されたければならないわけでございます。旅労であるとか、国籍証明の文書を提示することができる人間はそれでけっこうでありますが、御存じのとおり、大多数の在日朝鮮人というのは、日本人として日本に住んでおるうちに、ある一定の日に自分の意思とかかわりなく外国人となったという経緯がございまして、当然その大部分の者は、旅券とか国籍証明書のようなものは持っていないと想像されます。そこで、申請があった場合に、そういうような人は旅券、国籍証明書を提出できませんので、自分は韓国民であるという陳述書を出す以外に道はないわけであります。そこで、そういうものを提出されたときに、それを私どものほうで調査いたしまして、その国籍について確証がないと思った場合には、これを韓国の大使館等に問い合わせまして、この陳述書に言っているとおり、本人は韓国民であることに間違いはないかということを確認させるというのが趣旨でございます。
○横山委員 その陳述書を市町村なり区役所へ出すわけでありますが、今度の法律によれば、提出書類の成立が真正であるかどうかを審査することになっている、こういうことを区役所が事実上できるであろうかどうか、居住地に居住しているかどうか、提出書類の成立が真正であるかどうかという審査の義務を区役所、市町村役場に課しておるわけですね。そうでしたね。
○八木政府委員 これは、永住の申請があった場合に、審査して許可するのは法務大臣であります。ただ、この申請者はある一定の市町村に居住しておりますので、その者の居住状況を一番正確に承知しているのは市町村でございますから、その者が市町村の窓口に申請をしましたときに、この人間は確かに申請者本人である。そして確かにここに住んでおるということは、その市町村役場に外国人登録原票というのが備えつけてありますが、それに照らし合わせれば明瞭になります。その後、その申請について内容的に調査いたしまして、資格があるかどうかということの決定をするのは、私どものほうでございますので、ただ本人が現実にそこに住んでいるということの確認、その申請者が確かにその本人に間違いがないということの確認だけを市町村に依頼しているわけでございます。
○横山委員 いまここに私その法律を持ってこなかったのですが、たしか、私の記憶によれば、居住地に居住しているかどうか、提出書類の成立が真正であるかどうかの審査の義務を課しておると思うのです。あなたのおっしゃる外国人登録票は、なるほど区役所にあるけれども、それは申請し、届け入れられたいろいろな人のものを整理したというものにすぎない。戸籍簿と違うのです。だから、医役所は、それらについて間違いであるかどうかを、いつも確かめていないのです。そろでしょう。だから登録原票といっても、本人が届け出たものを受け付けて整理をしたもの、それと照合するにすぎない。法律の要請しておる居住地に居住しているかどうか、提出書類の成立が真正であるかどうかということは、あなたの言うことによれば区役所ではしないわけです。それを、もしも法律の命ずるところによりますと、ほんとうに居住地に居住しているかどうか、書類の内容がほんとうに適正で真正であるかどうかを確かめるということは、区役所にたいへんな義務を課しておる。ほんとうにそういうことを要求しておるのか、たいへんな事務ですよ、こう言っておる。
○八木政府委員 ことばが足りませんでしたが、われわれが市区町村にお願いしておるのは、ただいまの御質問にございましたように、本人の出した申請書に記載してある事項が、区役所に置いてある登録原票の記載と同じであるかどうかということだけでございます。
○横山委員 それは国会を通過した法律の内容、条文とは違いやしませんか。あなたの答えているのは、外国人登録原票と照合して間違いがないということだけだ。ところが、条文はそうはいってないように思うのですが、そこに関係の条文があったら読んでください。
○八木政府委員 入国管理特別法の第二条でございますが、「許可の申請は、居住地の市町村の事務所に自ら出頭し、当該市町村の長に、法務省令で定めるところにより、永住許可申請書その他の書類及び写真を提出して……」(横山委員「第二条四項ですよ」と呼ぶ)第二条の四項は、「市町村の長は、第一項の書類及び写真の提出があったときは、前条の許可を受けようとする表が申請に係る居住地に居住しているかどうか、及び提出された書類の成立が真正であるかどうかを審査したうえ、これらの書類及び写真を、都道府県知事を経由して、法務大臣に送付しなければならない。」
○横山委員 あなたの言うことと違やしませんか。
○八木政府委員 いや、それでいいと思います。というのは、本人が提出した書類、たとえば写真でありますれば、それは見ればわかりますし、登録証はその市町村が発行したものでありますから、これの内容についても市町村は知っているはずであります。申請書の内容が原簿に書いてある記載と同じであれば、それで真正ということになりますから、それで全部済むと思います。
○横山委員 それはちょっとおかしくはないですか。ぼくは別に意見を提出するわけじゃないですが、あなたは先ほど、事実問題として外国人登録原票と照合して、間違いがなければいいとおっしゃったが、外国人登録原票というものは、本人が申請したのをそのまま整理していったにすぎないのであって、それが真正であるかどうかについては、区役所が責任を負っておるのじゃないですかと言っているのです。だから法は、居住地に居住しているかどうかということをほんとうに確認をしなければいかぬというところまで要求しておると感じられる。「提出された書類の成立が真正であるかどうか」ということも、間違いなくうそ偽りを書いてないだろうなということを確認するために、本人が申し出たところを整理したといわれておる外国人登録原票と照合したのではいかぬのじゃないか。ところがそれでいいのだと国会で言われるならば、この第二条四項の解釈はこういう解釈でよろしいということを、通達をもって流してもらわなければ、市町村は非常な義務を課されますよ。これはいいんですね。
○八木政府委員 御質問の趣旨が、私よくのみ込めないのですけれども、先生のおっしゃるのは、市町村に備えつけてある登録原票の内容は、本人が言ったものをそのまま書いただけだから、そこにうそがあるかもしれない、しかしそれをうそかどうかを確かめずに、申請した書類に書いてある文句と同じことが原簿に書いてあるから、そのまま真正として出すのだ、そういう点でございますか。――そういうことになりますと、結局われわれとしては、本人の申請に基づいてつくってある登録原票を真正なものとして見ておりますので、それにもし疑わしいことがあったとすれば、終戦後二十年の間にそれがわからなかったような虚偽があったかどうかという点だろうと思います。そうしますと、全朝鮮人について、一々登録原票に記載してある内容はうそを言っているのじゃないかということを調べることになりまして、それは私どもはちょっと必要はないと思います。
 それから登録原票に記載してある内容は、いつ日本に入ってきて、どこに住んでおる、住所はどこに移転したとか、職業は何であったというような点でございますから、そういう点は一応原簿に記載してあるものがみんな真正だと見ていいと私は思うのです。
○横山委員 それじゃ原簿と照合して、間違いがなければいい、この法律はそういうことを命じておるというあなたの御説明でいいというふうに私も理解します。
 それから、「提出された書類の成立が真正」ということはどういう意味でしょうか。書類はあれとこれとが必要であるというその必要書類の形式をいうのか、内容をいうのか。「成立が真正」というのはどういうのです。
○八木政府委員 「書類の成立が真正であるかどうか」というのは、本人がその書数をつくったかどうかという意味のことと了解します。
○横山委員 「提出された書類の成立が真正であるかどうか」ということは、本人がつくったかどうかである、それだけですね。
○八木政府委員 そのとおりでございます。
○横山委員 それならば、私は前からこの文字は、「成立が真正であるかどうか」ということは、ふしぎなことばだと思っておるのですが、本人が書いたかとうかということだけである。――とうやって確かめるのですか、本人が書いたかどうか。本人が書かなかった場合にはいかぬのですか。在日朝鮮人で、本人が字の書けない人はたくさんおりますね。そうでしょう。本人が書かなかった場合にはいかぬと言いたいのですか。
○八木政府委員 そういうわけでございませんで、もちろん字の書けない人は代書でよろしい、それよりほかないわけであります。
○横山委員 それなら、本人が書いたか代書であるか、それだけ確かめればいいという意味と解する、こういうわけですね。
○八木政府委員 本人が申し立てて、本人が書けない、無筆の場合には、当然代書人に番かせるわけでありますから、そのときにうそを言って書いてあれば別でありますが、百分のいろいろな要点を正しく代書人に帯いてもらった場合には、本人が自分で書いたと同じように扱ってよろしいと思います。
○横山委員 実に妙な答弁ですけれども、これはあとになってから、ここで私が念を入れているのですから、あとになって市町村に出された通達が、いまお答えの文書と違ったようなことをお書きになったり追加されたりしたら、承知しませんよ。いいですな。
○八木政府委員 けっこうです。
○横山委員 妙な答弁だと思うが……。
 では次は、申請書を提出いたしますと、私の解釈するところによりますと、たとえば市町村役場、東京なら区役所ですか、役場から県を通じ、法務省へ来るわけですね。法務省へ来て、法務省からまた県を通じ役場へ行って本人に通達される、こういうルートですね。
○八木政府委員 そのとおりでございます。
○横山委員 その交付期間を、いつまでに交付されるということを明確にしてもらいたいというのが、市町村の希望の一つなんです。私これはもっともだと思う。これはもうあなたも御体験だと思うけれども、とにかく窓口の紛争が絶えないのは、もう来ましたか。まだ来ません。あいつに来たじゃないか、わしになぜ来ないという、その応接事務にいとまがない。それに誤解、中傷なんかを呼んで、たいへんな状態であります。大体私も一、二体験をしたことがあるのですけれども、区役所には――いま言われたようなことであるならば、これはきわめて簡単な事務だ。ところが、実際はそうでなくなってくると私は想像するのです。県庁はこれは全くのトンネルですね。法務省へ来る。法務省で、実際は書類審査だけですね。それがずいぶん時間がかかる。返って本人に通達するまでにずいぶん時間がかかるから、窓口としてはこの許可書の交付期限を明確にしてもらいたいという希望がありますが、どうですか。
○八木政府委員 確かにそういう希望があろうと思います。われわれとしても、できるだけ窓口が困ったり混乱を来たしたりしないように、できるだけ迅速に処理していきたいと思っております。
○横山委員 そういうことを言っているのじゃないですよ。いつまでに大体申請をされたら、二カ月なら二カ月、三カ月なら三カ月内に回答するという期限を明示してやってもらいたい、こういうわけです。
○八木政府委員 私もそうしたいのでありますが、これは事実上不可能だろうと思います。と申しますのは、一体どのくらいの数の人間が申請してくるかわかりませんし、これを今度形式的な書類審査だけでも、実は法務省の地下室に一ばい積んである一次から八次までの登録の原簿を、全部一人一人について照合しなければなりませんし、それから、さらに疑義があった場合には、個人個人について調査しなければなりません。調査と申しましても、書面で返答を要請するようなものを関係者に送る。それに対してすぐに返事がくるかどうかも保証がございません。そこで期限を切るということはいたさないつもりでございます。
○横山委員 そういうことで紛争を招くと思うのですよ。いまの御説明は、ごもっともなようではあるけれども、それはてまえがってな話であって、申請をされた人及び窓口、その気持ちもくんでやらなければだめだと思う。法務省はそういう点については、この入管事務なりいろいろな事務において、私ども耳にするところによれば、非常にかって過ぎる。お役所本位過ぎる。きのう登記の問題についても区役所と法務局との比較をしたのですが、非難ごうごうです。あくまで役所の事情、役所のかってということだけで処理をし過ぎるという非難が一番強いところなんです。ですから、私はかりにどうしてもいま予想がつかぬとしても、内部事務としては一定の基準というものを置いて、いついつまでも放置さるべきではない。もしも判断に苦しんで、ある期限以上たったものについては、すぐ上司に移せというような内部基準でも設けて、事務の促進というものをおはかりになるべきだ、こう考えるのですが、どうですか。
○八木政府委員 ただいま先生のおっしゃったとおりのことを、私すでに部下によく言っております。
○横山委員 言っておるというのは、内部基準があるのですか。
○八木政府委員 そのとおりでございます。
○横山委員 内部基準の事情を一ぺん説明してください。
○八木政府委員 提出された申請書につきまして、第一次から第八次までの記載が全部そろっておるもの、そういうものはその場で許可書をすぐ出す。それから間に切れているもの、これは、たとえば一次から八次のうちで一回なり二回なり抜けているものがあります。そういうものについてはその期間の事情を調査する。それから、たとえばいま申しました調査でありますが、一応われわれの持っております登録写票、これを全部使って克明に調べます。そういうようなことを、あらゆる手段を尽くして徹底的に処理をする、そうしてわれわれの想像しておりますところでは、大体過半数の申請はそれほど手間はかからずに済むと思います。ただ、いろいろ予算の問題などございまして、私ども一月の半ばごろから発行いたしますけれども、一月から三月に至る本年度中に全然人間の増員ができない。そこで、そういった点の能率の問題。それからこういうような仕事を初めてやるわけでありますから、どのくらいの分量の申請が始まるかが全然想像がつきませんので、そういう点を考えますと、普通の書類の申請を右から左にさばくような簡単な時間ではもちろん済まないと存じます。
 ただ御指摘にありましたように、こういった官庁の事務というものは、不親切であるという点は私ども十分反省はいたしますけれども、今度の協定によって永住権を与える場合には、彼らは外国人として非常に有利な待遇を約束されるわけでありますから、いやしくもそこに誤りがあってはならない、資格のない人間が認められるようなことがあってはならないということを常日ごろ同時に言っておりますので、簡単にやるということと、慎重にやるということと、一見矛盾のようでありますけれども、私どもの持っております資料に照会する限りにおいては、それは両立できるものと自信を持っております。したがいまして正直な話、何カ月くらい、申請があったら許可できるかということは、来年のたとえば一月から申請が始まって半年くらいたてば、大体申請を受けてから許可が出るまでにどのくらいかかるか、それも内容的にいって大体どんなような類型のケースであれば何カ月くらいとかいうことが申し上げられるだろうと思うのですけれども、まだ全然万事を想像でやっている段階でありますので、数字で何カ月とかいったようなことを明示する時期ではないかと存ずるわけでございます。
○横山委員 それではあなたの慎重にして能率よくという状況が、新しい年にどういう進展ぶりを見るか、その事情によってまたひとつ意見を申し上げたいと思います。
 その次は、入籍の問題なんでありますが、私この間池上さんの「法的地位200の質問」というものを見ました。その中で、一番誤解があると思われるが、というところで書いてあることに、身分関係に基づく誤解として、まず前提としてこういう法律解釈なんだということで、婚姻の問題を取り上げていますから、民事局長の関係だと思いますが、まずこの池上さんの解釈に差しつかえないかどうかをお伺いします。「1、正式婚姻の夫婦。イ、夫が韓国人、妻が日本人の場合。この場合、婚姻の日(結婚届をした日)が平和条約の効力発生(一九五二年四月二八日)以前なら妻たる女性は韓国人であり、平和条約発効後なら妻たる女性は日本と韓国の二重国籍で、日本の法律上日本人として取扱われる。韓国人としては取扱われない。口、夫が日本人で妻が韓国人の場合。婚姻の日が平和条約発効前なら妻たる女性は日本人であり、その後であれば韓国人である。日本人の妻になっても帰化しなければ日本国籍を得られない。2、内縁関係の夫婦。内縁関係の成立時期が何時であっても、国籍には変動がない。しかし、問題が多いのは此のケースで、夫婦になったのだからということで、1と同じように考える者が多いをしなければどんなに式を挙げたり宴会を開いても法律上は内縁に過ぎない。3、親子の関係。前記イ、の夫婦の子は免れた日が何時であっても韓国籍であり、前記ロ、の夫婦の子は生れた日の如何に拘らず日本国籍である。」この法律解釈が基礎になつでいろいろな問題が議論になるわけですが、この池上さんの法律解釈は間違いはございませんか。
○新谷政府委員 いろいろこまかい夫婦関係あるいは親子関係につきましての国籍の変動についての御質問でございますが、ただいまお読みになりました内容のように大体なろうかと思います。
○横山委員 そこでお伺いをしたいのですが、日本人妻の場合ですね。日本人妻が非常に多い。どのくらいあるか、そちらのほうではいまおわかりになりませんか。
○新谷政府委員 ちょっとこれは私どものほうではわかりかねるわけであります。
○横山委員 私の承知しておるところによりますと、韓国国籍法は、何年でありましたか、最近改正されまして、日本において婚姻をした韓国人は六カ月以内に日本の国籍を離脱しなければ韓国国籍を取得することができないという改正をいたしております。それは御存じでございましょうね。
○新谷政府委員 承知しております。
○横山委員 そのために、日本においてすでに正式婚姻をした多くの人が、六カ月の期間を経過したために韓国国籍を取得できないということがあり得ることを御存じでございますか。
○新谷政府委員 ちょっと御質問の趣旨と私の理解いたしておりますところが多少のニュアンスの違いがあるように思うわけでございます。韓国の国籍法によりますと、日本人の女子が韓国人と婚姻いたしますと、その婚姻ということの事実によりまして、当然に韓国の国籍を取得するようになっているわけであります。ただその場合に、日本の国籍がそのまま残っております。したがいまして、韓国人の妻となりました日本人につきましては、日本の国籍と韓国の国籍と二重国籍という結果になるわけでございます。ただいまお話しの六カ月以内に日本の国籍を失いませんと韓国の国籍を失うというふうに韓国の国籍法でなっております。したがいまして、二重国籍になりました日本人妻が日本の国籍の離脱の手続をいたしませんと、韓国の国籍をせっかく取得しながら、その六カ月経過後に失ってしまう、こういうことになるわけでありまして、その結果は、結局日本の単一国籍ということに戻ってしまうわけでございます。それは非常に不都合じゃないかという御質問の御趣旨ではないかと思うのでございますが、韓国の国籍法によりますと、さらに日本の国籍法と同じように韓国への帰化の手続もございます。ただしかし、ただいま御質問のケースとしましては、そういった日本人妻は、おそらく韓国人の夫と一緒に日本で居住していると思うわけでございます。そういたしますと、わが国籍法でもそういうふうになっておるのでございますけれども、居住関係が五年以上という要件がございます。これは韓国に五年以上居住しなければできないわけでございますので、その要件を満たさないという結果になって、帰化の原則の規定には該当しないという結果になるわけでございます。ただし、ただいまのように六カ月の期間内に日本の国籍を失いませんでしたために韓国の国籍を失った、一度韓国の国籍を取得しながらそれを失ったという場合には、さらに韓国の国籍法によりますと、国籍回復の手続というものが規定してございます。したがいまして、その国籍回復の申請をいたしますれば、帰化の要件とは別個にその回復が許されるのではあるまいか、このように考えております。
○横山委員 先般、私の手元にありますのは北海道の人なんでありますが、この御主人が、朝鮮ですから、韓国籍ではないわけですね。その人の奥さん及び子供はもちろん日本人であります。それを奥さんが入籍をしたいということになって、国籍離脱を申請いたしましたところ、これは外務省から民事局へ尋ねられたと思うのです。民事局の回答だったと思いますが、 いま手にありませんが、その回答によれば、いまお話しのように、もう六箇月をこえておるから韓国国籍法によればこれはだめなんです。あなたのお答えの前段ですね。だめなんですという回答をされて、この日本人の奥さんは籍が御主人のところへ行けなかった、こういうわけであります。ここで矛盾が起こりましたが、あなたのお話のように、さらに国籍回復の手続ですか、そういうことをするのが一つの方法であるということはわかりました。しかしもう一つの問題は、これは韓国の人ではないわけです。いわゆる朝鮮の人なんです。朝鮮だから北鮮人民共和国ですね、その人に韓国国籍法を適用する。民事局の回答によれば南北いずれかにかかわらず朝鮮半島出身者については韓国国籍法を適用して解釈をし、却下したということはどういうわけですか。
○新谷政府委員 ただいまの御質問は夫が韓国人でない朝鮮人で、その妻子が日本人の場合にその国籍関係はどうなるかという御質問でございます。これは法律問題としましても、また実際上の取り扱いとしましても、私ども事務担当者としましては非常にむずかしい問題でございます。いろいろ配慮を加えておるつもりではございまするけれども、いろいろな矛盾があるいはお気づきになるかとも思うのでございます。そこで、これをまず理論的にこうなるということをひとつ申し上げてみたいと思うのであります。
 夫が韓国人でない朝鮮人、端的に言いかえますれば、北鮮の人ということになるわけでございます。北鮮には北鮮で、やはり韓国と同じようにその地域に行なわれております国籍法規というものがあるようでございます。これは私どもまだ正式に確認はできませんが、非公式に私どものほうで入手いたしております資料によりますと、北鮮の国籍法によりますと、韓国の国籍法とはだいぶん事情が違っておるわけでありまして、たとえ北鮮の人が外国人と婚姻いたしましても、ことにその妻が外国人の場合に、当然にその外国人が北鮮の公民資格を取縛するということにはなっていないわけでございます。この点が韓国の場合と非常に大きな違いであろうと思います。韓国の場合でございますれば韓国人になるのでございますけれども、北鮮の場合には、日本人の女が朝鮮人と婚姻いたしましても、法律上は北鮮の公民資格は取得しない。したがいまして、その場合にあくまでも日本人としてとどまるということになるわけでございます。しかし、その北鮮の国籍法規によりましても、帰化に相当する処分があるようでございます。申請すれば許可を受けて北鮮の公民となることができるという規定がございますので、その手続を踏めば向こうの国籍を取得する。そうなりますと、日本の国籍法上、自分の志望によりまして外国の国籍を取得した場合に該当いたしますので、そういう場合には日本の国籍も当然失ってしまう、こういうことになるわけでございますが、しかし、実際問題として、そういう手続がとれるかどうかということが、まず第一に問題でございます。
 それから、ただいま申し上げましたように、婚姻というものは、これは国際私法上の問題でございまして、一応国籍法規とは関係なしに、北鮮人が夫でありますれば、向こうの法規によって婚姻が行なわれるわけでありまして、行なわれました結果、依然として日本人であるということになりますと、先ほど申し上げましたように、これは日本の単一国籍でございます。これは日本の国籍が離脱できないわけでございます。日本の国籍法上は、二重国籍を持っております場合に、日本の国籍を離脱できるということになっておりますので法律論から申しますならば、ただいまのような場合には国籍の離脱が許されないことになるわけです。しかし、せっかくそういった人と婚姻して北鮮国籍を取得したい、こう言っている人でございますので、そこのところを何とかうまい理屈はつかないかというので、事務当局としましてはいろいろ腐心をしたわけでございます。そこで、ただいまのように、特にこれは北鮮だということを明確にされますと、理屈の面から言いますと国籍の離脱はできなくなりますので、私どもの実際の扱いとしましては、そこは区別しない。朝鮮人ということでもう少しおおらかに考えてみたらどうか。せっかく国籍を離脱して北鮮へ行きたいという人があるわけでございますので、これについては南北というふうなことをそれほどせんさくしないで、おおらかに考えてもいい。同時に、その先方の国籍法規はどうしたらいいかということになるわけでございますが、北鮮だということを言いますれば、北鮮の国籍法規ということになるのでございますけれども、そこは一応目をつぶってし、まおうということになりますれば、韓国の国籍法規が適用があるものだと一応こちらで観念いたします。そういたしますと、二重国籍になっておるような形になるもんですから、それなら日本の国籍の離脱を認めましょう、こういうことになるわけでございます。ただしかし、韓国の国籍法規によりましても、先ほど御説明申し上げましたように、六カ月という問題があるわけでございまして、六カ月以内に日本の国籍を離脱いたしませんと、向こうの国籍を失ってしまうという矛盾が出てくるわけでございます。そこで本来ならば、北鮮の国籍法によれば国籍の離脱はできないのでございますけれども、便宜そういうふうに考えまして、離脱ができるようにという扱いをしておるわけでございます。この扱いの中で、たまたま韓国の国籍法に六カ月というあの問題がひっかかってまいりますので、その場合にはこれはいかんともいたしがたい。むしろ北鮮の人と婚姻いたしました日本人女子につきましては、そこまで私どもとしては有利に解釈して取り扱いをしておるつもりなんでございますけれども、六カ月という問題がある以上は、これは北鮮の人でありましょうとも、あるいは本来の韓国人と婚姻いたしました者でありましょうとも、いずれにいたしましてもこれは法律上不可能になるのではないか。もともと北鮮の人については、理屈の上では国籍離脱ということは認められないということになりますので、そこは私どもとしましては、扱い上は本人の希望、あるいは立場を十分考慮してやっておるつもりではございますが、ただ六カ月というのがいかにも目につくように御理解なさるのじゃないかと思うのでございますけれども、それはそういう趣旨ではございません。ただいま申し上げましたように、これは本来理論上は不可能なことじゃないかと思うのでございますけれども、そういう扱いをしておるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
○横山委員 そこで相談なんですが、あなたのおことばのとおり善意で考えてみて、何とかいい知恵はないかという意味においてやってみたけれども、六カ月にひっかかってだめなんだ、こういうことなんでありますが、いま私の推算するところによりますと、万をこえる日本人妻が北にしろ南にしろおられる。南であっても、いまの話の六カ月問にひっかかる。特別の方法を持たなければうまくいかぬ。特別の方法はそんなに簡単にうまくいかぬ。したがいまして、もうすでに婚姻はしておるけれども、六カ月以上たっているという人のほうがいま圧倒的に多いのです。そうすると、日本におります朝鮮人諸君で相当な資産を持ち、また営業しておる人たちも多いのですが、その人たちの日本人妻は、遺産の相続ということがどうにもうまくいかぬということになっておるわけです。税法では相続税の適用は、たしか内縁関係ではだめであります。夫が死んだ場合に正当な遺産相続者とは言えないということになるのです。したがって、私も知り合いの人に、あなたどうしておるんだと言って聞きますと、日本人妻の名義に不動産なんかはときに変えておる。そんならあなたが先に死ぬとは限らぬから、奥さんが先死んだらあなたは相続できないということにもまたなるわけです。遺産相続それから譲与でもそうでありますが、遺産相続についていい知恵があったらひとつ聞かしてもらいたい。
○新谷政府委員 これはむしろ国籍の問題と申しますよりは婚姻の問題でございます。正式に夫婦になっているかいないかということなのでございまして、国籍が韓国と日本、あるいは北鮮と日本というふうに夫婦が別れておりましても、法律上有効に婚姻が成立しておりますれば妻たることには変わりございません。したがいまして、夫が死亡して妻に相続権が認められておりますれば、相続権は当然法律上はある、こう言えるわけでございます。北鮮の相続法規を私は実は存じませんのでどういうふうになっておるかは存じませんけれども、韓国について申し上げれば、これはかつての日本の旧民法時代と大体近い戸主相続というのと財産相続と二つございます。これはいずれも国籍の変動にかかわりなく妻が相続権を持っておりますので、夫の死亡後その財産を相続することができるわけでございます。北鮮につきましてはおそらく韓国以上に夫婦平等の立場をとっているのじゃないかと思いますので、夫が死亡しますれば妻にも相続権が与えられておる、このように考えるわけでございます。この場合におきましても、先ほどの国籍離脱の場合と同じように、特に北鮮だとこうおっしゃいますと法規もわからないし、相続関係がどうなるかということが実は明確でないのでございます。ただしかし、そこまであまり詮議だてしないで、ただ朝鮮だということでございますれば、韓国の相続法によりますとおおむね日本の旧民法と同じようなたてまえになっておりますので、相続につきましてはそれほど問題はなかろうと思うのでございます。あるいはそういったせんさくをしないということであれば、比較的容易に相続の手続ができるのじゃないか、このように考えます。
○横山委員 それでは次に八木さんにお伺いしますけれども、委員会で佐藤総理並びにあなたの答弁をあとでもう一ぺん見返してみたわけでありますけれども、南から北へ移りたいということについていろいろと委員会の質問のしかた及び答弁のあり方についての紆余曲折がありますから、もう一度あなたの実務的なお考えを事務的にお伺いしたいのです。つまり南から北へ国籍を移動したいという場合には、どういう場合には何とかしょうというのであるか。あなたの御答弁の中には、たしか私の記憶するところによれば、まさに肺腑をつくような神聖なものといいますか、あるいは親子関係きわめて複雑で、こればかりは事情もっともであるとか、二、三の例をあげてお見えになりましたが、あらためて、こういう両国会を通過した今日、総理もあなたも絶無ではない、こういう点については考えようということを言われておった気持ちを想起して、まあ配慮も含めて、南から北へ善処し得るのはどういう範疇に属するものであるか、伺いたいと思います。
○八木政府委員 ざっくばらんに申し上げますと、私としては実はただいま先比の御質問に対して、こういうことを申し上げるのは失礼かもしれませんが、実はある一定の例示的な基準のようなものを申し上げないほうがいいと思っております。と申しますのは、いろいろの事情がございまして、これが一つの政治運動になっております面が現在ございますので、これをあまり明確な表現で、こういう場合には必ず改正になるというようなことになりますと、今度はそれを政治目的に使われて、それこそある市長のごときは、この間私のところに来て泣かんばかりにして陳情してまいりましたが、これはもうテント張りで市役所の構内に交代で詰めかけておって、朝から晩まで市長に面会を続けられる、そこで仕事は何にもできないのだといって嘆いておるわけであります。
 そこで、私としまして考えておりますのは、先生の御質問に対して端的に明確にお答えできることは、本人の韓国というふうに記載が行なわれた陰に実は間違いがあった、書かれてはいけなかったという事情が判明したという場合と申し上げるほかにないと思います。具体的に申し上げますれば、たとえば韓国の国籍証明の文書、たとえば国民登録証といったようなもの、そういうものを持っていないのに、自分は韓国人だ、だからここに韓国と書いてくれといったような場合には、当然登録されていない人ですからそれは書きかえていいと思います。それがほとんど明確に申し上げることのできる唯一の理由だろうと思います。しかし実際にはたいした数ではありませんけれども、その人のいろいろな事情を十分に同情的に考慮して、それは何とか書きかえてやろうというときは、私どものほうで、市町村から出てきた書類に対して一方的にこっちから許可をするというふうにいたしております。これはいろいろ例がございまして、たとえばお嫁に行った婚家先が全部朝鮮と番いてあった、自分だけが韓国と書いてあるので、その辺一帯の住民が朝鮮と載っているので、しょっちゅういじめられるというような場合には、これはやかましくいえばかってに書きかえてはいけないのでしょうけれども、そういう場合は私ども気の毒だったら書きかえてもいいと言っております。それから、あるいは子供が生まれて出生届けを人に頼んだ。さっきお話のあったように、文盲が非常に多いわけですから、自分で届けを出せなくて、出生届けを人に頼んだという例が非常にございます。そういうときに、国籍欄に、かってに韓国と書いてしまったというような例もあるようであります。そういうように、いろいろな事情がございますので、一がいに例示的に書きかえを認める場合といったことを規定しないほうが、私はかえって実情に合っているのではないかと思います。ただ心がまえとしては、これはいろいろこの人たちの立場を考えれば、なるべく同情的にやってやったほうがいいということは十分考えておりますので、常日ごろ局内の担当者にはそのことをよく周知させておりますので、できる限りそれに応ずるという方法でやっていると思います。
○濱野委員 ちょっと関連質問をします。いまのあなたの答弁、これは非常にデリケートな問題ですから私申し上げたくないのでありますけれども、実は私のほうにもそういう区役所のトラブルが起きておるようであります。それであなたのお答えの根拠というものは、何か過失があって書き違えたとか、いろいろな事情があった場合には、あなたのおっしゃいましたようなそういう措置を好意的にとっていこう、こういうお考えですか。
○八木政府委員 市町村の窓口に陳情がありましたときに、その窓口の人が、これは気の毒だから何とかしてやりたいという事態を感ずれば、当然われわれのほうへ書類としてあがってまいります。私のほうでは、こういう理由があるから許可するというような許可の形はしませんで、何の何がしのケースについては書きかえを認めて差しつかえないという返事だけいたします。その陰にどういう配慮がなされたかというのは一切われわれ限りの問題であって、別にそこに明記された基準があるわけではございませんので出しておりません。ただ、その実際の考え方をざっくばらんに申し上げれば、何かそこに、初めの記載に誤りがあったということならば、なるべく応じてやろうというわけでございます。
○濱野委員 私の承っておるのは、そういういろいろな事情を聞いてみて、非常に気の毒だ、人道上の観点から見て、これは同情すべき余地がある、そういう場合には、ただいまあなたのおっしゃいましたような善処をするのか、それとも記載その他に過失があったということをあなたのほうで認定した場合に、あなたのおっしゃいましたような処置をとっていくのかどうか、非常にデリケートな問題だし、国際的紛争があらためて起きる危険性があります。ですから私は、そこはむしろはっきりさしておいたほうがいい。そこまでおっしゃるならば、はっきりさしたほうがいい。そう言わずに、あなたのほうで同情すべき点があり、また人道的にそうすれば自然である。そういうような場合ならば、むしろそういうことはおっしゃらないほうがいいんじゃないか。おっしゃるからには、何らか法律的な根拠がなければならない。私はそう考えているのでありますが、どっちですか。
○八木政府委員 それでは、私のお答えとしては、むしろ言わないほうがいいというお考えのようでございますが、私もいま申しておりますように、返答には、どういう理由で許可するという理由は一切書いておりません。と申しますのは、人道的というのは非常に誤解されることば――誤解というか、乱用されることばでありまして、私どもと当事者との間に、書きかえることが人道的に合うかどうかということは、一致するとは限りませんので、われわれの限りでいろいろな配慮から直したほうがいいという確信を持った場合に直すことを許す、そういう立場を一貫しておるつもりであります。
○濱野委員 それならばそれで、私は、議会で論議しないほうがよろしい。これは必ず国際的な紛糾が出てまいります。御承知のとおり韓国はああいう考え方ですし、北鮮は北鮮でああいう考え方ですし、国内も実は二つに分かれている。ですから、これは、むしろ横山さんも、そんなことは質問も何もなしにして、そうして役所のほうにまかしておくというようなことのほうが、どう考えてもいい。私は、法務大臣がいませんから、きょうはそれを言ってもしかたありませんけれども、私が法務委員長時代に、オリンピックであの選手を日本に再入国させようとした。何名でしたか、忘れましたけれども、社会党の人も御承知のとおりであります。二十人か三十人のオリンピックに出る選手、すなわち北鮮に国籍を持っている日本の大学等にいる選手、この選手を一応本国で選考させて、それを再び日本に帰すこと、このことを私はいいと思った。これは世界的な祭儀でありますし、また、今度日本で初めてやることですし、さらに人種を越えてのオリンピックでありましたから、とにかく、日本国に勉強している学生を朝鮮に帰国せしめ、その国で選考さすべきだと強く主張したことがあります。この程度のことは国際的行事だけに、そういう取り扱いをすべきであるということを当時の法務大臣にも話して、いろいろあっせんしました。社会党の諸君もそうしてやるべきだ、これは普通の事情とは違うんだ。――ところが、これが、法務省の壁がかたくて、そのことさえもできずについに延びてしまった。そして、御承知のとおりあの事件を引き起こした。ところが、あれは一時的なオリンピックの問題でございますから、時が過ぎれば一切パーになってしまっております。しかし、ただいまの横山さんの質問と八木さんの御答弁というようなものは、法理論からいえばたいへんにむずかしい問題であり、人情論からいけば際限のないことである。しかも、国内には二つの団体があって、これが常にその問題を論争をしている。しかも南朝鮮の韓国の感情というものは、御承知のとおりである。北鮮は北鮮で、やはり逆な感情を持っている。そういう中で、こういう委員会であなたの答弁のようなことを聞きますと、何か妙な空気がそこに燃え上がってくる。むしろこれは、質疑応答でなしに、役所におまかせになったほうが人道的であり、また実際的である、そう思うのですが、どうですか。八木局長、やれますか。これは大きな問題になってきますよ。
○八木政府委員 この前、いわゆる国籍欄の記載に関する政府の統一見解というものが出まして、あそこに、韓国という国籍欄の記載は国籍をあらわすものだという統一が行なわれたわけであります。そうしまして、国籍欄の記載の変更をもし認めるとすれば、当然さっき申しましたように、誤りがあったために韓国と記載がされたという場合以外は、国籍でありますから、日本がかってにかえたりなんかするわけにいかない。さっき横山先生の御質問に対して、私は――重複はしますが繰り返して申しますと、明確に規定できる場合というのは、その韓国という記載が行なわれた背後に誤りがあったという場合だけであります。それ以外の場合に記載を書きかえに応ずるということは、ほんとを言えば、国籍というような重要問題を軽々しくもてあそぶことになりますので、実は申し上げたくはなかったわけですが、しかし、人道的配慮ということも、やはり――私のほうで個々のケースについて検討した結果、変更する場合があり得るということでございます。
○横山委員 とんでもないところで水をぶっかけては困る。
 私は、きょうは私の根本的な意見は別といたしまして、窓口で紛争を少しでも避けるために――あなた方の意向というものが窓口ではちっとも通じない。そして人形のように書類を整理せよと言っているだけで、その人形のようにといわれている人が一番国家権力の代表者としてものを言わなければならぬという窮況にあるから、そこのところは、もし配慮すべき点があるならばひとつ配慮もしてやってもらいたいと、私どもの立場は別として、紛争を避けるために言うておるわけですから、そいつを、妙なところでチャチャを入れて、言わぬほうがいい、聞かぬほうがいいということになると、国会は何も言わぬほうがいいということになる。
 次の質問に移ります。この北鮮政府の国籍証明書というものの性格でございますが、政府は、北鮮政府とは国交の回復がないのであるから、これは公文書と認めるわけにいかないという立場、一応それはそれなりにやむを得ないと思う。しかし、それは公式文書と認められなくとも、少なくとも、事実問題として、この何がしは北鮮人民民主主義共和国の公民であるというような書類を持ってきた場合に、そんなものはわしは知らぬ、そんなものは受け付けぬと、事実問題として言い得るであろうかどうかという点について、私は多分に疑問を持つものです。それで、あなたはどこの国民ですか、私は北朝鮮の公民です、そんなら証拠を持っていらっしゃい、証拠の方法はどうしたらいいですかというたら、あなたのほうはお困りになるでしょう。少なくとも北朝鮮の公民であるという、北鮮政府が証明書をかりに発行した場合においては、これは国交回復しておるといないとにかかわらず、これは公法上といっても、ある意味では司法上の問題ではないと思います。だから、公文書でないにしても、事実問題として考えるべき余地がありはしないか、こう思いますが、どうですか。
○八木政府委員 これはほんとうの法律問題でありますので、私そのほうの知識、十分でございませんが、一応私ども考えておりますのは、国交のない国の公文書というものは、全然ただの紙切れにしか値しない。国籍の証明文書とは見られないという点でございます。それに北鮮の場合について申しますと、御承知のとおり北鮮の憲法によって、国籍法ですか、要するに朝鮮人は全部朝鮮の公民であるということが書いてある。そうしますと、もしそれを裏がえせば、韓国人は全部北鮮の国民であるということになります。そこでそういう日本と国交のない国の政府の公文書と認められないという形式的な理由のみならず、実質的にもその内容が現実に合わないということでございます。
 そこでもし本人が北鮮の国民であるということを日本政府に認めてくれといわれましても、私どもとしてはそれはできないので、ただできることはその人が韓国民でないということ、それがもし証明できるならば認めることはできると思います。しかしそれが韓国民でないというだけで、いわゆる北鮮の国民であるということまでは認めることはできないと思います。
○横山委員 しかし相手の立場も考えて、それでは逆に質問しますけれども、あなたは北鮮の公民であるという証拠を持ってきてくださいと言われたときに、どうすればいいのですかといって聞いたら、あなたはどう答えますか。どういうものを証明すれば、とうずれば私を――私は北鮮政府の公民であると思っておるけれども、あなたは認められないというならどうすればいいのですか、といって聞いたら、どう答えますか。自分の立場ばかりでなくて、人の立場も考え、そのあなたの議論でいえば、南朝鮮人の中で北鮮籍を主張する人は、日本におる限りにおいては、いまの佐藤政権が続く限りにおいては、未来永劫自分の国籍を証明する方法もなくて、そしてまた何ともしょうがないという立場に置かれることについて、少し国際的にもおかしいとは思いませんか。どうすればいいのですか。
○八木政府委員 結局国交のない国に住んでいる人、その国の人は、そういうことは何ともしかたがないと思います。ただ実際生活の面で、日本に住んでおる外国人に対しては、日本は特別に差別待遇をしているわけじゃありませんから、その人たちが特にどこの国民であるということを立証しなくても、一向生活の上で問題はないわけでございます。そこで、北鮮の国民であることを証明すると申しましても、私どもは北鮮という国を承認していないものですから、北鮮の国民という観念がないわけでございまして、しいて申しますれば、朝鮮人ではあるけれども、韓国籍がないというだけのことしか意味がないかと思います。
○横山委員 私はかつてヨーロッパへ参りましたときに、おまえ中国人かと聞かれて、善意で聞かれたのですが、私は非常に感情を害しました。私は何も中国人、中国という国がきらいではない。しかしながら、私は日本人だというのに、善意であろうとも、おまえ中国人かと言われて、かっとなったことがあります。これは生活に支障がないからいいじゃないかということと、国民たる自尊心、人間としての生存の基盤とでも申しましょうか、お互いに日本人ということは、これは国交未回復の国のどこへ行きましょうとも、おれは日本人という一つの概念、誇り、信念、人生観というものはお互いにあるわけであります。私はあなたに、むしろそういう点から気の毒だと思わないか、何か方法があると思わないか。あなたに、あなたは朝鮮人かと言われ、あなたむっとする。週刊雑誌でさる女優、さる何々、あれもあれも朝鮮出身らしいと言われて、その芸能人がみんなおこったということは、あなた御存じのとおりだと思う。生活に支障がないだけでは済まされぬ。人間的本然の感情というものを、あなたは無視し過ぎているではないか、私はそう思います。きょうは議論をするつもりではないのですけれども、南から北へ、北から南へということについても、あなた方は法律論にとらわれ過ぎているではないか。おれは韓国はいやだ、おれは北鮮の人間なんだ。おれは北鮮はいやだ、おれは韓国の人間なんだということを、法律論、技術論で左右してしまうというところにどうもおち入りやすいあなた方のものの考え方について、私はいかがかと思う。ですからその点については、ものの考え方の基盤があるいは違うとしたら、もう言いようのない話でありますけれども、そこは少しお考えがなさ過ぎはせぬか。人間としての基本的な、自分の生きるよりどころ、民族としてのよりどころ、そういう点をあまりにもあなた方は没却してやしないか、これは私の意見でございますが、違うところがあったらお答え願いたい。
○八木政府委員 先生のおっしゃることよくわかります。私も別に、日本におるある特定の朝鮮人が、自分は韓国民ではない、おれは北鮮人民共和国の国民だという強い意識と誇りを持つことは一向差しつかえないことでありまして、それをわれわれは一切干渉する気はございません。
○横山委員 意見になりますから次の問題に移りますが、永住権申請にしろいろいろなものにしろ、許可、不許可の場合は、その不服の異議申し立てばどこで取り扱うのですか。
○八木政府委員 「外国人の出入国又は帰化に関する処分」というのが、行政不服審査法第四条第一項第十号にあるそうであります。したがいまして、外国人の出入国という項目に在留が入りますので、行政不服の申し立てばできないということでございます。
○横山委員 法務省の許可、不許可――永住権についてもそうでございますね。許可、不許可の決定があったら異議申し立てば全然方法がないということでございますか。
○八木政府委員 入管令の上ではさようでございます。ただ不許可になった場合に、行政訴訟を起こすというのは行政事件訴訟法によってできるということでございます。
○横山委員 裁判で争うよりほかに方法がない。この点はいかがなものでしょうかね。永住権申請についてはいろいろな問題が起こってくると思うのです。あなた方の措置について、慎重に、しかも迅速にやるという先ほどの御趣旨なんでありますけれども、万間違いがないと言い切れないと思う。おそらく区役所、県、法務省、法務省からまた各県の入管へこれを調べろということを言われて、入国審査官、入国警備官ですか、それが調べる。調べてまた本省へ連絡をする。本省、県、区役所、こういうようにずうっといってまたずうっと帰っていくわけですね。そういう審査に最終決定をするのは、書類審査になるわけでありますから、間違いがないとは言い切れないし、しかも非常に複雑な問題がつきまとうと思うのでありますが、これについて裁判以外に方法がないというあり方について少しいかがなという感じがするのですが、どうなんでしょうね、これは。
○八木政府委員 もちろん法律上はそういうことでございますけれども、問題は不許可になった人でしょうから、その理由を納得できない場合には当然聞いてくると思います。その段階で事実上区役所のほうに間違いがあったかなかったかの調査はできると思いますけれども、しかし私どもは、先ほど期限の問題のとき申し上げたように、迅速というのは確かに必要でありますけれども、それよりも慎重にやる必要がある。慎重にやるということを具体的に申しますと、協定に書いてあるような条件、それに該当しているかどうかということの判定でありますから、実際問題としてはほとんど終戦後引き続いているという点だけが問題になってくると思います。その点についてわれわれとしては、それが立証できない場合、できるだけの調査をした上でやりますので、調査そのものに間違いがあった場合でなければ、まずわれわれの手落ちのために不許可になったということは考えられないと思います。そういう手落ちのために不許可という場合には、行政訴訟で救うという方法で処理するほかにないのじゃないかと思います。
○横山委員 あなたのおっしゃっている点は、一般の行政事案と外国人とは違うのだからということはわかりますけれども、数十万の人が永住申請をする、その事務がたいへんなことだ、またその調査もたいへんなことだということを考えますと――また事実上区役所から不許可の通知がいった場合に、ああそうですかと言うて区役所へもう行かないという人間はおそらく一人もないと思うのです。区役所は、そういう場合においては、異議申し立ての機能は区役所にはございませんからと言って追い返せということになるわけですね。いやなら裁判をやってくださいということですね。そこのところは、一つには区役所の窓口の諸君のことを考える場合、不許可になって、ああそうですかと――タクシーの免許だとかなんとかと違いますから、そういうことを考えます場合に、異議申し立ての機能というものが全くないという点については、これは一考なさる必要がありはしないか、そう私は考えるのですが、どうですか。
○八木政府委員 確かに御指摘の点がないとは言い切れないと思いますので、よく検討いたします。
○横山委員 その検討される場合に考えてほしいのは、不許可の場合にはこれは直接入管で扱う、区役所ではそういういろんな事務をさせるということは適当ではない、もし御検討されるならば入管で直接扱う、少なくともそういうふうにさるべきであろうと思うのです。これは御検討を願いたい。
 それから次の問題は、本来地方自治体としては、この種の問題は国の問題であるから区役所、市町村ではやりたくない、事実自分のところは何の権限もない、それにもかかわらず、あらゆる紛争を一手に引き受けるというばかげたことはない。かてて加えてその予算は全くくれないというてかんかんになっておるわけです。これはお聞きになっておると思うのです。私の手元に六大市から資料を寄せてきておりますけれども、これによりますと、たとえば私の名古屋におきましては、国からの委託金が二百十六万円、それに比べて過不足足らない金が千五十六万、支出総額は千二百七十二万、支出決算の約一六・九%しか配付を受けてない。横浜市に至っては支出総額の六・五%しか国からの委託金を受けていない、こういうのであります。これは何か聞くところによりますと、一時間一件ということで、居住外国人登録の事務をやる人数をかけた金額で一人当たり幾らというふうに割り出されているそうでありますが、あまりにもこれはひどいじゃないか。これだけ本来の  入管も一時そういう意見があったのでありますが、入管の仕事として全国的にこれはやるべきであって、地方自治体に移すべきじゃない、移すなら移すように権限を与うべきであるにかかわらず、権限は何も与えないで、ただロボットのように、書類を受け取ったらこっちへ回してくれということだけでは、失礼な話ですが、踊らさせておいて、予算は名古屋が最高でありますが一七%、横浜に至っては六・五%、こんなばかげたことはないという憤慨が強いのでございます。ですから、今回の問題につきましても、きわめて非協力です。各都市はこの種の問題について非協力、いやがっておる。大体外国人登録事務というようなものについては、担当をされる人としては、失礼な話だけれども、これは何のうま味もない話ですよ。ただ外国人ということで、先ほどあなたのお話のように、親切に、問題のないように扱わなければならぬということだけやって、何のあれもない。その上予算は少ない、各裁判所から呼び出されて、そして落ち度がないかを追及されたりなんかする、全くいやがっておる。せめてこういうようなところにどうしてもやってもらいたいというならば、もう少しあなたも予算をつけてやったらどうか。あなたのさっきのお話によれば、最初の受け付け事務はほんとうに外国人登録原簿と照合すればいいのですよといっておるけれども、私はそのとおりやってもらいたいと思うけれども、実際はそうもなるまいと思っております。この膨大な仕事を押しつけておいて、こんなばかな予算をつけるということは、あなたのほうはちっとひどいじゃないかと思うのです。その点はどうですか。
○八木政府委員 確かに御指摘のとおりでありまして、できるだけの努力はしたつもりでございますけれども、結局こういう少額の査定しかできなかった、非常に申しわけないと思っております。しかし今後機会あるごとに実績をもとにして予算の獲得に努力していきたいと思っております。
○横山委員 これは日韓、日韓といって騒いでいるときに、この問題ぐらいなら、一〇〇%あなたも主張さるべき立場におり、そして主張してもだれも反対をする人はないと思います。いま何といいますか、問題の焦点に乗っている人じゃありませんか。しかもあなたが日韓の際に、各委員の話によれば一番率直に誠実に責任を感じておるという答弁もされて好意を持たれておる。そうとしたら、あなたがもしこの仕事をいやがっておるのをさせるためにはどうしてもこれだけのことは必要だといえば、それは大蔵省だって、本省内部だって、そう反対する者が私はないと思う。まさに日の当たるところで正当な要求がし得る立場にありながら、なぜ一体こんなばかげた予算を押しつけているのか、この点はもう少し――あなたも統一見解に血眼になって、やるべきことを忘れておるのではないかという感じまでいたしまして、私は市町村を代表して強くあなたをしかりおきたいと思うわけであります。
 政務次官、お聞きのとおりでありますが、予算折衝の中で最善の努力をしてもらいたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○山本(利)政府委員 まさに横山委員の仰せのとおりでありまして、今回の措置によって、いろいろの窓口では事務が相当ふえるのではないかということを各地で懸念しておることは、私もよく承知しておりますので、予算折衝にあたりましては、できるだけの努力をいたしたいと考えております。
○横山委員 ちょっと話が変わって恐縮でありますが、日韓の委員会でも問題になって、ちょっとことばを触れたのでありますが、台湾出身者はそのままになっておりますが、法的地位は今後どういうことになりましょうか。
○八木政府委員 法律百二十六号はそのまま生きておりますので、とりあえずは在日中国人の在留は法律百二十六号でまかなっていくつもりでございます。それからいままでのところ、中国政府から在日中国人の法的地位について話し合いたいという申し出を受けたことはございませんので、当分はこの法律で処置していくことになっております。
○横山委員 外国人登録のうちで、中国という国籍欄に記載されております者が相当数おります。私の承知しておるところによりますと、一九六五年六月現在、中国人一万六千四百三十六名、ほとんど大陸出身者であると聞いておりますが、そのようでございますか。
○八木政府委員 そのように了解しております。
○横山委員 そこでいう中国というのは符号でございますか、国籍でございますか。
○八木政府委員 中国というのは中華民国でありまして、たとえば、具体的な法律は忘れましたが、中華民国の法律の中にも、中国の国籍というような熟語が出てまいります。中国ということばの意味については、われわれとしては本来中華民国という意味というふうに理解しております。と申しますのは、外国人登録が始まりましたのは昭和二十二年でございまして、一九四七年でございますか、その前から日本に来ております中国人は、台湾人を除きますれば、みんな中国本土から来た人たちであります。そのころ大陸本土にあった中国といえば、すなわち中華民国でございまして、外国人登録が最初に行なわれたときから、中華民国の国号を中国と表示することになって、それが現在まで続いております。
○横山委員 そうすると一万六千四百三十六人のほとんど、大陸出身者の、外国人登録の中国は台湾政府の意味である、こういうことをおっしゃるわけですか。
○八木政府委員 要するに、最初の外国人登録の際にあった政府は、中準民国しかないわけでございます。そこの中華民国の国民であるという意味で、中国という名前で記載されておるわけであります。現在の中共と国民政府と両方に分けた場合に、個々の中国人が、どっちの政府に対して心の中に忠誠心を持っているかということは、それからではわかりません。
○横山委員 その人たちの心意の事情を聞いているのではないのです。政府としては、この中国は、一体台湾政府の国籍と考えておるのか、中華人民共和国の国籍と考えておるのか、それとも符号と考えておるのか、いまのところは何も見当がつかないから使っているのか、政府の見解を聞いておるのです。
○八木政府委員 中華民国の国籍であります。
○横山委員 全部大陸出身者であるにかかわらず、それは全部台湾政府の国民であるというふうに政府としては考えておる、こういうわけですか。ずいぶん矛盾があるじゃありませんか。
○八木政府委員 この人たちは、中華民国国民という身分で戦前日本に渡航してきて、ずっと住みついている人たちでございます。したがって、もし中華民国の国籍を離脱したことになれば、中華民国人ではなくなるわけであります。
○横山委員 これはずいぶん議論がありますけれども、省略をいたします。また機会を改めて一ぺんこれは大いに議論いたしたいと思います。
 それから、区役所に、外国人発録原簿が三年ほどの切りかえにおいてあるのですけれども、三十七年以前は全部本省に引き上げられましたね、あれはいかなる理由ですか。
○八木政府委員 私、その事情をよく存じておりませんので、さっそく調べましてお答えいたします。
○横山委員 これは次長からも聞いて承知しておることなんです。区役所の外国人登録原簿は、三年ごとの切りかえの際に、三十七年以前の分は全部、法務省が送ってくれというわけでとってしまったそうです。したがって区役所には、三十七年以前の状況は、書類がないわけです。ないことによってまた問題があるわけです。いま切りかえが行なわれておるわけですね、今回また区役所から原簿を引き上げられる予定がありますか。
○八木政府委員 個人でまだ存じておりませんので、さっそく調べます。
○横山委員 それでは、法務省の内部には、全国約六十万の在日朝鮮人の外国人登録原簿というものはありますか。
○八木政府委員 原簿を市町村が調製いたしまして、その写しをつくって都道府県と法務省とに送っております。それが、策一回登録から現在まで、全部法務省の入国管理局にございます。
○横山委員 そうしますと、出生、婚姻等々の届けが区役所に出ますね。その写しはことごとく法務省に送付され、法務省では六十万の朝鮮人の外国人登録原簿に挿入し、訂正し、追加しという仕事を全部やっているわけですか。
○八木政府委員 そのとおりでございまして、そのために非常に膨大な手間と時間がかかって非常に困っておりますけれども、そのとおりでございます。
○横山委員 私はその話を聞いて、事実驚いたわけです。それだけの業務量と、六十万の在日朝鮮人の原簿を持っておる。それに対して、生まれた、死んだ、結婚した、何したというのが、全国の区役所から集まってきて、それの加除、訂正を本省で一々間違いなくやっておる。したがって、いついかなるときといえども、法務省へ、何がしという朝鮮人の外国人登録原簿に間違いなく記入されておることを知りたいといえば、法務省では直ちにそれがわかるということにあなたは確信を持っていますか。
○八木政府委員 私としては確信を持っております。
○横山委員 あなたとしてはというお話ですが、役所として、本省としては、ずいぶんむだなことをしておる。どこの省にそんな仕事をしておるところがあるだろうか。私はあえて言いますが、むだなことだ、つまらぬことだ、こんなことを本省がやらなければならぬものかどうか。しかも三十七年以前のものを送ってくれというのは一体どういう理由であったか、私は疑うのであります。おそらくや、自分のところではとてもその書類の加除、訂正ができない、区役所にあるものを一ぺん、古いものでもいいから引き上げて、それで間に合わせようという便宜手段ではなかったか。こういう仕事のやり方について、根本的に考え直す必要がありはしないか。今回でもそうですよ。区役所から県を通過する。県は何のために通過するのか、私はわからぬ。区役所から市役所を通さずに県へ持ってくる。県で何をやるか知らぬけれども、県はトンネルで本省へ来る。本省で膨大な、数十万、何十万か、一ぺんに出るかどうか、それはわかりませんけれども、数万と一応仮定して、数万の審査をする。審査しても、ずいぶんもう一ぺん念を入れなければならぬ問題が出てくる。もう一ぺん各地の入国管理事務所へ送り返す。そこで入国管理事務所からの入国審査官、警備官がそれを調べる。調べるについてまた区役所へ行く。そういうことをやって、また今度結果を本省へ送り返す。本省でまたそれを審査する。審査して今度は県を通じて区役所へ行く。区役所で不許町をする。私の言うような異議申請をかりに便宜手段として取り入れるならば、また区役所にやる。この往復はたいへんなことになる。どうしてそんなばかげた仕事のやり方をするだろうか。もしも必要であるならば、本省には大まかな総括表でも置くだけにとどめるべきではないか。六十万の原簿を持っておって、どうしてもそれが必要だという積極的な理由はあるだろうか。常に加除、訂正に、それだけの人間を擁して、間違いなくやっておるという、それだけの必要性は一体どういうところにあるだろうか。審査をどうしてもやらなければならぬというならば、現場の入国管理事務所に原簿を置かして、そこである程度の仕事をやらせて能率をはかるべきではないか。どうもその点につきまして、私は入国管理事務所へ一、二回、横浜も行ったし名古屋も行ったのでありますが、入国管理事務所の仕事のしつぷりというのはあまり感心しませんよ。そういう点について、機構について、あなたのほうは権限を下部に移してもっと迅速に仕事のできるような体制をこの際考うべきではないかと思いますが、どう思いますか。
○八木政府委員 確かに御指摘のようなことがいろいろあると思います。最近いろいろ改善も考えまして、カードそのものも分量的にもふえますし、索引その他でも非常に手数がかかりますので、マイクロフィルムか何かでとって小さくして、なるべくスペースを小さくするといったような形の事務能率化をやっております。ただ何と申しましても、こういうものを、たとえば地方入管に全部分けるといいましても、また分けるものを新しくつくらなければならぬとかいろいろございますので、そう急に徹底的な改正というものは困難ではないか。入管には全国のやつがそろっておるということが必要なのではないかと思います。どういう形で保管をし、それに加除、訂正をしていくかということについて、多分にこれからも改良の余地はあると思いますが、しかし根本的に、全国における朝鮮人のカードは、全部一カ所に集まっておるということが必要な面も多分にありますので、入管としてもこの保管をしていく制度は続ける必要があると思います。
 それから、先ほど御指摘のありました古い登録の原票を回収したというお話でございますが、私よく事情を聞いておりませんが、たとえば市町村などが非常に古くからのものがかさばって置き場に困るので引き取ってもらいたいという希望があったケースもあるそうであります。ただし、それだけの理由かどうか存じませんけれども、しかし私どもは常に相当な人数をさいて、登録写票の事項の変更を、常に記載を現実に合わしておりますので、別に市町村の原票をもらわなくとも、十分正確な、一番新しい事実を盛った写票が入管に全部そろっておると存じております。
○横山委員 こういう質問が出るとは、あなたも予想しなかったかもしれませんけれども、答弁が精彩を欠いておると思います。ただ、私が申し上げたことを一ぺんとくとお考えを願いたいと思うのです。私ども、入国管理局の仕事がこれからたいへんになるだろうと思います。入国管理局の仕事というものは、たいへんいろいろな国際関係もあり、ただ法務省だけで処理することのできない問題もたくさんありますから、それは一がいに簡単にはいきますまいけれども、先般法務大臣不信任の理由の一端に私はあげたこともございますけれども、これは入国し出国する最終の責任者が法務省であり入国管理局である。にもかかわらず、最近の情勢というものは、すべて外務省や、あるいはまた通産省、あるいは内閣官房長官がものを言っておる。こんなばかげたことがあるか。法務大臣は一体何をやっておるのだ。法務大臣に聞いても、うん、私はまだそれを聞いておらぬというような話がしばしばある。竹内次官に聞いてみましても、うん、そういうことを官房長官がおっしゃったそうですなという話がずいぶん多い。
  〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕
これは日韓並びに日朝という特殊な問題でありますだけに、政治的な問題でありますだけに、ままそういうこともなしとはしないけれども、どうも最近はいつもそうです、という感じがいたしまして、私は法務大臣に対して不信任の一つの理由にしたのであります。したがいまして、この際ひとつ、入国だとかあるいは出国だとか、こういう問題については、もう少し法務省としてもき然たる態度を持って、おれの言うことを聞かずに官房長官がいろいろなことを言うたりなんかということは避けてもらいたいというだけの権威と実績を持たなければ、私は法務省は法律上の権限だけあって、単なる全くの事務官庁におちいってしまう、こういうふうに痛感をするわけです。そのためには、入国管理局としても大いにひとつこれからたくさん山積する仕事のために、根本的に、今日までの経緯にかんがみて、新情勢に対処し得るだけの機構の改革なりあるいは人員の整備なり、あるいはいろいろな事務能率改善のための機械の導入なり、あらゆることをやって、われわれの負託にこたえていただかなければいかぬのではないか、こういうふうに私は痛感をいたしまして、ずいぶんいろいろな点で御質問をしたり、いささか注文を強くいたしたわけでありますが、御勘案を願いたいと考えるわけであります。
 ずいぶん長い聞いたしまして昼めしも抜いておりますので、一応法的地位に関する質問もこの程度にとどめたいと思います。
○鍛冶委員長代理 この際暫時休憩いたします。
   午後一時三十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後八時五十一分開議
○濱田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、おはかりいたします。両案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、両案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○濱田委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。井伊誠一君。
○井伊委員 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました二つの法案に対して反対の意思表示をしたいと思います。
 それは、この案件は、本来人事院勧告によりましてその施行の期日は五月の一日となっておるのであります。しかるに、本法案においては九月の一日とこれがなっておる。われわれはこの裁判官の報酬あるいは検察官の俸給については、人事院勧告に基づいてこれが直ちに行なわるべきことを常に政府に対して注意をしておったのであります。このたびもまた人事院の勧告の趣旨から、政府の一般職俸給の改定をするにあたって、裁判官の報酬あるいは検察官の俸給も、ともに五月一日からこれを行なうべきことを言っておるのであります。しかるに政府は、ただその財政のやりくりというだけを理由にして、かよう九月の一日からの施行をやっておるということは、この二つの報酬と俸給の問題も、他の一般職の俸給に比べて決してそれは正当なものではない、こういうことを考えておるので、これがために人事院勧告によるものを尊重すべきことを常に警告しておったのであります。ゆえにわれわれは、ただ財政のやりくりのためにこのことが日を延ばされるということは、これはとうてい許しがたいところ、こう考えるのであります。われわれは五月が九月に延びるこのことによって、それらの人たちが受けるところの損害というものを非常に重く見るのであります。だんだんこういうふうにおくれてまいりましたその結果は、これが与えられるときには、すでに物価の上昇によって、それは何にも上げられないと同じようなことに相なるのであります。私どもはこのことについて、単にその単純なる時日の変更ということだけでこれに反対するものではない。これは裁判官並びに検察官に対するところの給与の上に非常な損失を与えるということになるのみならず、この人事院勧告というものをかようにゆえなく、それがほんとうに権威のないものとして、こういうものが一個の査定によって変更されるということがしばしば繰り返されるのであります。われわれはこれに対してとうてい賛成することができないのであります。これがすなわちわれわれがこの両案に対して賛成のできない、反対をする理由であります。皆さん方の御賛成を得たいと思うのであります。
○濱田委員長 大竹太郎君。
○大竹委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。
 裁判官、検察官の給与につきましては、さきの臨時司法制度調査会の答申は、現行給与の改善をはかるとともに、その制度の改善について検討を加えるべき旨を指摘しておるのでありまして、昨年の国会におきましては、初任給の引き上げ、特別調整額の本俸への繰り入れ等によりまして、答申の趣旨をくみ入れて、その一部の改善、合理化を行なったのでありますが、給与制度の改善そのものは、依然として後日に譲られたのであります。
 昨年、当法務委員会におきましては、法案の採決にあたり、早急に裁判官、検察官の給与制度について、臨時司法制度調査会の意見を尊重し、その優遇策を樹立し、すみやかにこれを実施すべき旨の附帯決議をつけたのであります。
 御承知のように、政府は今国会において、人事院の勧告に基づき、一般の政府職員の給与の改正に関する法案を提出しておるのであります。
 今回の改正案は、裁判官、検察官の給与についても、一般政府職員の例に準じてその改善を行なおうとするものであって、現行の給与制度のもとにおける措置としては相当のものであり、またさきの当委員会の附帯決議の趣旨にも沿うものであります。その意味におきまして、私は本改正案に賛成の意を表するものであります。
 しかしながら、裁判官、検察官の給与制度については、臨時司法制度調査会の答申並びに当法務委員会の附帯決議の趣旨に沿うて独自の優遇策をはかり、その実現を早急にはかるべきでありまして、当局はその点について、なお一そうの考慮を払われたいことを最後に付言する次第であります。
○濱田委員長 これにて両案に対する討論は終局いたしました。
 これより採決いたします。
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○濱田委員長 起立多数。よって、両案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、おはかりいたします。
 ただいま可決せられました両案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
  〔報告書は附録に掲載〕
○濱田委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後九時二分散会