第051回国会 本会議 第19号
昭和四十一年二月二十五日(金曜日)
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  昭和四十一年二月二十五日
   午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、
  法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  及び相続税法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明及び質疑
 福田大蔵大臣の昭和三十九年度決算の概要につ
  いての発言及び質疑
   午後二時十九分開議
○議長(山口喜久一郎君) これより会議を開きます。
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 議員請暇の件
○議長(山口喜久一郎君) おはかりをいたします。
 議員西村関一君から、海外旅行のため、二月二十六日から三月二十二日まで二十五日間、議員池田正之輔君から、海外旅行のため、三月十一日から三十日まで二十日間、議員麻生良方君、同石田博英君、同加藤清二君、同木村武千代君、同佐藤觀次郎君及び同中曽根康弘君から、海外旅行のため、三月十四日から二十三日まで十日間、右いずれも請暇の申し出があります。これを許可するに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(山口喜久一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び相続税法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び相続税法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 政府は、昨年八月、経済の安定的成長に即応する税制のあり方とその具体化の方策につきまして、税制調査会に諮問いたしたところでありますが、昨年末同調査会から、当面改正を必要とする事項について、昭和四十一年度の税制改正に関する答申が提出されました。政府といたしましては、当面の経済情勢と、これに対処する来年度財政金融政策の基本的なあり方と関連し、この答申について鋭意検討を行なってまいったのであります。
 さきに私は、当面の不況を打開するとともに、経済の安定的な成長を確保し、あわせて家計にも企業にもそれぞれ蓄積を厚くすることができるよう、今後の財政金融政策の新たな展開をはかる旨所信を申し述べました。租税政策におきましても、その一環として、税制の持つ景気調整効果と経済的誘因を考慮しつつ、国民負担の軽減と、これによる生活の向上及び需要の喚起につとめるとともに、企業の体質改善及び強化をはかることが肝要であると考える次第であります。
 このような基本的な考え方に立ち、今回の税制改正の具体的方向については、特に次の諸点に配意することといたしたのであります。
 まず、家計におきましては、個人の所得税負担の実情に配意し、特に中小所得者の負担を軽減することに重点を置いて、所得税の各種控除を引き上げ、また、税率の緩和を行なうとともに、国民の適正な財産形成に沿った相続税及び贈与税の軽減と、健全な消費需要の喚起に関連の深い物品税の減税を実施することを主眼としたのであります。
 次に、企業におきましては、法人税率の引き下げによって、内部留保の充実をはかるほか、資本構成の改善、産業体制の整備、輸出の振興等に資するための諸措置を講ずることといたしたのであります。
 なお、中小企業については、その体質を一そう強化するため、中小企業の実情に即した特別な配慮を加えた次第であります。
 以上のような基本的考え方にのっとって行なう今回の税制改正による減税額は、国税で平年度三千六十九億円にのぼるのであります。各税につきまして所要の法律改正案は逐次御審議を願うわけでありますが、今回はそのうち所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、及び相続税法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。
 まず、所得税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。
 この改正案においては、さきに申し述べました考え方に従い、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減をはかることがその要点でありますが、そのため基礎控除、配偶者控除及び扶養控除を引き上げるとともに、給与所得控除につきましても、また、中小企業の専従者控除の控除限度額についても引き上げを行なうことといたしており、これらによりまして、所得税の課税最低限は、夫婦子供三人の標準世帯の給与所得者で、現在の約五十六万円から約六十三万円となるのであります。また、税率につきましても、課税所得三百万円以下の階層に適用される税率の調整緩和をはかることといたしております。なお、生命保険料控除及び寄付金控除における控除限度額の引き上げを行なうほか、所要の規定の整備をはかることといたしておるのであります。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案についてその大要を御説明申し上げます。
 この改正案におきましては、法人税率を引き下げることがその要点でありますが、普通法人の留保分に対する税率は二%引き下げるとともに、特に年三百万円以下の所得に対しては、資本金が一億円以下の法人について、その引き下げ幅を三%とすることにし、また、この税率の改正に準じて、協同組合等に対する税率も引き下げることといたしております。さらに、同族会社の留保所得課税につきましては、その控除率及び控除額を引き上げて、その負担軽減をはかるほか、所要の規定の整備をはかることとしておるのであります。
 最後に、相続税法の一部を改正する法律案について、その大要を御説明申し上げます。
 この改正案においては、中小財産階層に重点を置いて、相続税、贈与税の負担軽減をはかるため、次の措置を講ずることとしたのであります。
 まず、相続税につきましては、遺産にかかわる基礎控除を大幅に引き上げるとともに、相続人のうちに婚姻期間が十五年をこえる配偶者がある場合には、新たに遺産額から最高二百万円の特別控除を行なうことといたしております。この結果、課税最低限は、配偶者を含めて相続人五人の標準的な相続の場合には、現行五百万円から一千万円に引き上げられることになります。また、税率につきましても、その全般にわたり中小財産階層の税負担の軽減に重点を置きつつ、累進度を緩和することといたしておるのであります。
 贈与税についても、課税価格千五百万円以下の贈与財産階層に適用される税率を引き下げることにいたしております。なお夫婦間における財産の贈与につきましては、婚姻期間が二十五年以上の夫婦間におきましては、居住用財産の贈与が行なわれました場合、二百万円まで贈与税の課税が生じないよう、配偶者控除の制度を新たに設けることといたしておるのであります。
 以上、三法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(山口喜久一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。平林剛君。
  〔平林剛君登壇〕
○平林剛君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました所得税法、法人税法並びに相続税法の一部を改正する法律案に対し、これを総合的に問題点を指摘しながら質疑を展開しようとするものであります。(拍手)
 昭和四十一年度の税制改正は、本格的な公債発行という財政転換期における減税として、全く新しい条件下にあること、また、租税政策が財政の一環として積極的に経済政策的意図を加えていることに画期的な特徴があると思うのであります。しかし、何といっても、当面の経済不況を乗り切るために、佐藤内閣の税制が、蓄積ある企業とか、企業の体質改善という名において大きく企業減税重視に転換したことであります。これは、法人の留保所得に対する軽減税率の引き下げをはじめ、建物の耐用年数の短縮など、合計千七十七億円を集中したことで明瞭でありまして、この結果、国税における所得税減税と企業減税の割合は、昨年の約三対一を、ことしは七対五と拡大し、相対的に所得税減税の効果を薄めたことは何人も否定できないと思うのであります。(拍手)
 かくして、最近における物価の値上がり、所得格差の増大する中で、負担の公平という税制の基本的な原則は著しく後退し、所得税減税を優先せよという国民の期待は大きく裏切られたと思うのであります。
 政府の説明によりますと、国税、地方税を通じて、画期的な大幅減税三千六百億円も、所得税の減税額は、諸控除の引き上げと税率の緩和を含めて、平年度千五百五億、初年度、つまり昭和四十一年度においては千二百八十九億円と、タケノコの皮をはぐようにだんだんとやせ細っておるのであります。これを納税者の立場からながめますと、給与所得者、年収百万円、夫婦子供三人の標準世帯において、初年度一万一千三百五円、平年度でも一万五千円でありまして、一月に千二百五十円、一日に、たばこでいえばピース一箱、いこいは一個を買うことができないのであります。これでは、今後の物価上昇を、政府の見通しのとおり五。五%といたしましても現実問題として、消費者米価の値上がりや、国鉄、私鉄運賃、郵便料金の値上がりなどを考えますと、一体政府の減税は国民に何を与えたというのでありましょうか。
 政府は、これを戦後最大の規模、実質のある減税と宣伝いたしておりますが、第一に、昭和四十一年度の国税収入見積もりは三兆四千六十七億円、昭和四十年度補正後の三兆二百八十七億円に比べると、減税どころか、三千七百八十億円の増収ではありませんか。第二に、昭和三十二年、池田蔵相時代の一千億減税が、一兆円予算であったことを思うと、財政規模が四兆三千億をこえることしの減税を、実質的に戦後最大の減税と受け取るわけにはまいりません。いわんや、これを史上最大の減税、ゆとりのある家庭の実現と、見えすいた飾りのことばだけでは、佐藤内閣の評判が一向に高まらないのは当然のことであると思うのであります。(拍手)
 さてそこで、総理に対する第一の質問は、企業減税の重視と長期税制答申との関係についてであります。
 昭和三十九年十二月、税制調査会は、三カ年にわたる慎重審議の結果、わが国税制の基本的なあり方を答申しました。これによると、第一に、国民の税負担の現状から見て、今後も引き続き所得税に重点を置いて減税を実施すること、第二に、法人税は諸外国に比べて必ずしも商いとは認められないこと、第三に、租税特別措置などの優遇措置は、これを整理、縮小すること、などを柱にしておりまして、今回の税制改正は、この長期税制答申に重大な変貌を与えたものといわなければなりません。総理の明確な御釈明を求めたいと思うのであります。
 また、福田大蔵大臣は、この企業減税重視を否定しないばかりか、所得の源泉である企業を助けることは、今日の不況をすみやかに打開する当然の考え方と答え、あるときは、卵を生む鳥をこの際大いに肥育していきたいと述べておるのであります。しかしながら、この肥育される鳥こそ、自由経済の森に君臨し、好況期に過大な利潤の卵を生みながら、国民にははね返りの栄養も与えず、さて不況になると、体質改善を口実にして企業減税を要求する欲ばりな鳥ではございませんか。(拍手)
 私は、もし真に企業の体質改善をはからんとするならば、何でも政府におんぶして、経営悪化の責任を税制にたよる根性を立て直すことが肝要であると思うのであります。(拍手)政府は、このため、かえって年間五千三百億円をこえる交際費の乱費、三千五百億円の広告費のはんらんに対して、これを抑制する企業努力と損金不算入の割合を高める措置をとるべきであると思うのですが、いかがでございましょうか。
 まして、現在のように、設備過剰に基因する不況下において、いたずらに企業減税の拡大をはかりましても、それは大企業の利潤確保に血税を与えるだけで、一般においては波及効果の高い投資よりも、内部留保と借り入れ金の返済などに充てられるだけでございましょう。これを有効需要の拡大に向かうと期待することは、欲ばりな鳥を追いかけて、卵をほしがる狩人のように、正しい道と経済的効果を誤るやぶにらみの租税政策だと思うのであります。(拍手)もし、長期展望に立って、産業政策としての効果をねらい、企業減税の拡大を継続するのであれば、まさしく長期税制答申を無視して、税負担の公平を破り、税制の経済的効果を乱用するものといわなければなりません。総理、大蔵大臣に反論があれば承りたいと思います。
 なお、経済企画庁長官には、この際、当面の不況において、企業減税と所得税減税とどちらが有効需要の拡大に通じるか、お人柄を見込みましてお尋ねいたしますから、良心的なお答えをいただきたいと存じます。
 私ども日本社会党は、当面する国民の最大関心が物価の安定と並んで生活の安定と向上にあることにかんがみ、減税政策においても、直接需要拡大につながる勤労所得税、住民税の減税に重点を置いて、減税規模を初年度四千億円とし、課税最低限も標準世帯において八十万円程度まで引き上げることが必要であると思うのであります。また、このための財源は、大企業に対する租税特別措置の廃止、高額所得者に対する累進税率の強化等によることといたしております。総理大臣も、この際、国民総需要の半ばを占める個人消費を伸ばし、下からの最終需要の拡大、経済の安定成長をはかるため、所得税の大幅減税に切りかえる御意思はございませんか。
 福田大蔵大臣、あなたも、昨年一月、衆議院本会議のこの演壇において、自由民主党を代表し、「総理は、党総裁選挙に立候補の際、三千億減税の構想を発表されましたが、三千億などと申さず、さらに野心的な大減税を目標とせよ」と叱咤勉励されたことをお忘れでなければ、不況打開を所得税の大減税によって求められたらいかがでありましょうか。
 ところで、今回の減税によって、給与所得者に対する課税最低限は、標準世帯で年収六十三万円程度となりました。しかし、これによるも減税の実感はわかず、今後の物価上昇を思えば、とてもゆとりのある家庭を築くわけにはまいりません。試みに、平均国民所得に対する課税最低限の割合を税制調査会の資料で申しますと、昭和三十二年に五七・五%、昭和三十九年には四五・九%と著しく下がり、四十年で約四九%となりましたが、戦前の昭和九−十一年当時は、この割合が一九一%、つまり平均国民所得の二倍程度以上の層が納税者であったのであります。当時と今日では、事情が異なるにいたしましても、最近の納税者がかなり低所得層に広がっておることは厳粛なる事実であると思うのであります。
 政府が、もし生計費に課税しないというたてまえをとるなら、総理府の統計によっても人口五万以上の都市の標準世帯の平均生計費が八十万円になっておるのでありますから、せめて年間八十万円までは課税をしないというのが、私はこれこそ当然の考え方だと思うのであります。総理は、この課税最低限度額について、将来の目標として八十万円程度にすることを考えているとお答えになりましたが、この将来とは一体いつのことでありますか。また、総理は、明年度以降の長期減税の構想でもおありになってこの目標をお述べになったのであるか、単なる願望として数字を示されたのでありますか、明らかにしてほしいと思うのであります。(拍手)
 なお、課税最低限を引き上げるために諸控除を検討し、高校、大学に在学させる父兄の教育費が増加する傾向を考慮いたしまして、教育費控除あるいは学資金控除の新設をぜひ取り入れる必要があると思いますが、いかがでございましょうか。この問題については、文部大臣にも今日までの経過と御所信を承っておきたいと思います。
 また、大蔵大臣は、今回の所得税の減税千五百五億の中で、実質減税と物価調整に要する額とはどういう数字になるのか。昨年の所得税減税八百二億のうち物価調整は六百億円というように、この数字は実質的な減税の実体を立証すると思いますので、ぜひお示し願いたいと思うのであります。
 それから、最低生計費には課税していないという証拠として、評判の大蔵省献立のメニューはことしは物価高のためか発表しないという話がありますが、これはなぜでありましょうか。
 さらにお尋ねいたしたいことは、所得税における最低税率を八%より八・五%に引き上げた理由であります。政府は、今回の減税は中小所得者の負担軽減に重点を置いたと述べられました。しかるに、税率の緩和を課税所得三百万円の線に及ぼしながら、最低税率を引き上げて、税額にして百億円に近いものを低所得層からそれぞれ奪ったことは、私のどうしても納得しがたいことであります。(拍手)課税所得三百万円といえば、月に税込み三十万円程度の所得ある階層でありまして、四十年度の税制調査会資料によれば、この階層、すなわち所得二百万から五百万の所得者の四一・七%は配当所得者といわれておるのであります。昨年十月の大蔵省の税調提出資料では、課税所得四百万以上の所得納税者は約九万八千人でありまして、いま、かりにこの十万人程度の減税額を大ざっぱに計算をいたしますと、百十億見当になるのであります。納税者数でいえば〇・六%程度のこの階層、しかも、分離課税とか配当軽課の特典を十分に亨受できる高額所得者には相当の減税が行き渡るかと思うと、低所得層からは、最低税率を引き上げて、税額百億円を調整するとは、何という思いやりのない政治ではございませんか。(拍手)こういう減税は、史上最大の減税というより、まことに非情最悪の減税と思うのであります。
 こうしてわが国の納税人員は、昭和三十年度の千九十一万人から年々増加の傾向をたどり、昭和三十九年には倍増し、昭和四十度度には二千万人をこえ、今回の減税によっても一向に減少しないのであります。大蔵省が東京都内の法人を選定して行なっ実態調査によれば、なお高校卒業者の七二%は就職した翌年から税金を取られる現象が続き、昨年九月には、税金を取るのが商売の国税庁が、税制調査会に対して、近年税金を納める人や法人が激増して仕事の分量がふえたのに、税務職員の数がふえず、仕事に差しつかえていると悲鳴をあげる、まことに皮肉な状態に置かれているのであります。おそらく国税庁業務はその機能に相当の渋滞を来たし、大口脱税者の摘発も、大企業に対する適正課税の確認もとれないでいるのではないでしょうか、総理にその御感想を承りたいと思います。
 次に、私は、通達行政の弊についてお尋ねしたいと思います。
 昨年昭和四十年度の税制改正のおり、税制の整備等をはかるために、所得税法、法人税法の全文改正が行なわれましたが、改正法の中の政令委任事項が、所得税法においては二百六十六カ所、法人税法において百二十三カ所もあることが論議の対象となりました。租税法定主義は国民の権利であります。数額についてまで政令に委任することは、国会権能の縮小であり、通達行政のはんらんは、国税庁や税務署の権力乱用の批判を受ける結果となりましょう。このような傾向を是正することは、政府も積極的でほしいと思いますが、いかがでしょうか。
 また、法人税の転嫁問題について伺っておきたいと思います。
 今日までの税制調査会において、大企業の負担する税額は、これを価格によって大衆に転嫁したり、下請企業へしわ寄せしたり、また、租税特別措置による恩典で、その実効税率は相当低められておることが問題となっております。企業減税に対する批判の強いとき、私は、これに対する認識と、政府においても具体的調査を実施するよう要望いたしたいと思うのであります。総理、大蔵大臣の御見解はどうか。
 相続税法の改正については、基礎控除の引き上げ、税率の緩和など、平年度百五十億の減税で、高額所得者に対する所得税の減税とともに、資産階層にこの手厚い配慮は、政府に何らかの政治的においがあるよう感ぜられますので、その御意図をお尋ねする次第であります。
 最後に、私は、昭和四十二年度以降の経済見通しと、長期減税の財源について質問したいと思います。
 今回の減税政策が、公債発行という財政転換において可能となったことは申すまでもありませんが、もし政府の経済政策によっても景気の回復が順調に達せられない場合、昭和四十年度のような税収不足にならないまでも、歳入歳出のギャップは、今後の減税財源をどうして捻出するかの問題が残ると思うのであります。
 一説には、昭和四十二年度以降、公債発行が建設公債の範囲にとどまる限り、その増加部分は減税財源に寄与しないのではないか、との観測があることは御承知のことと思います。そうすると、国民の税負担の現状、今回の減税の不徹底の改善は一体どうなるのでございましょうか。
 総理大臣がいかに引き続き減税をすると約束されても、それは雪だるまのようにふくれ上がる公債発行によってのみ可能になるのではないか。しからずとすれば、私の主張のように、大企業に対する租税特別措置の廃止など、税負担の公平を実現しない限り、国民期待の大幅減税はあり得ないのではないかと思うのであります。(拍手)総理がもし長期減税の構想を明確にし得ないとすれば、その理由はこの点にあると思うのでございますが、お答えをいただきたいと思います。
 以上、細部にわたりましては委員会の審議を続けることといたしまして、私の質問はこれで終わることにいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 今回の減税は、申すまでもなく、税制調査会の答申に基づいて決定をいたしたのであります。この所得減税、企業減税、相続税の減税、その他物品税の減税等におきましても、おおむねこの答申によったものであります。この答申は、一昨年すでに政府に対しまして、長期減税計画を出しております。この長期減税計画と矛盾しないように、その線を守り、なおかつ、今日の経済実情に合った減税を試みたのでございます。さような意味におきまして、所得減税、同時に企業減税も行なうということであります。ただいま所得減税と企業減税の割合が七対五と、かように言われますが、私どもの計算では、所得税が六で企業減税が四、こういうことのように考えております。在来の例から申すと、所得減税がもっと大きくてもいいのでありますが、当面する経済情勢から申せば、企業減税もある程度この際に行なうということが望ましい、かように思います。
 また、所得減税においてのみ有効需要が喚起されるような言い方をされますが、企業減税の結果、事業自身も基礎が強固になり、企業意欲も出てくるのであります。そういう意味における有効需要の喚起というものはございますから、両者とも相まって今日の経済の不況を克服し、そうして発展への道をたどるものだ、かように御理解をいただきたいと思います。
 また、ただいまお話がありまして、所得減税に切りかえる考えはないか、こういうことでございますが、ただいま皆さまに減税案を御審議願うのでございまして、私どもは、これを所得減税一本に切りかえるような考えはもちろんございません。また、標準家庭におきまして、今回の減税で五十六万円から六十三万円まで、所得減税が家計を助けることになるわけでありますが、将来、最低課税基準を八十万円に上げよう、こういうことを申しておりますが、これは一体いつのことかということでございます。私は、所得減税の目標を八十万円に置く、これは近い将来においてぜひとも実現したいものだ、かように考えております。
 次に、法人税はいろいろかけても、これはいろいろ転嫁されるんだ、帰着問題等についての新しい議論を展開されております。これは全然新しい議論だ、かように私も思いますので、なお研究を要する問題ではないか、かように思います。
 次に、租税特別措置のあり方等についても御意見がございますが、ただいまの帰着の問題とあわせて、これらについても、経済の実情に応じた処置をとるべきだ、かように私は思います。私自身は、国民の税負担を軽くすることが今日の政治の一つの大きな目標だ、かように思っておりますので、今後とも減税には努力してまいります。したがいまして、四十二年以後の問題についてのお尋ねがございましたが、今回の減税並びに今後の減税等によりまして、経済はどんどん発展していくものであります。そういう意味におきましては、経済を定着したままでものごとを考えると、いかにも公債発行をしなければ減税の余地がないような結論になりますが、経済自身が発展してまいるのでございますから、減税の余地はもろちんあるわけであります。かような意味で、経済を発展させ、そして減税財源を見つける、こういうことでありたいと思います。四十二年以後の問題につきましては、ただいま正確な数字はまだできておりません。将来また何らかの機会にお話を申し上げることになろうかと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 税制改正にあたっては所得税の減税に中心を置くべきではないか、それが政府の施策、つまり需要喚起という面から当然のことではないか、こういうような御議論でございますが、私どもはしばしば申し上げておるのであります。政府が当面している問題は、需要喚起、景気対策だけではないのです。それはもとより非常に重大な問題ではございますけれども、同時に、この景気回復を通じて、経済の安定的発展のレールを築き上げていこう、こういう点もまた重大な問題であります。そういうような点から考えます際に、一定の財源がある、これを何に使うか。これは景気刺激だけの見地なら、私は公共事業に使うのが一番いいと思います。しかし、そうじゃない。私が申し上げるように、いま私どもは二つの問題に取り組んでおる。公共事業費の拡大もいたします。しかし同時に、所得税その他の減税をいたしまして、減税が景気に作用しないとは申し上げませんけれども、減税のねらいとするところは、所得税あるいは物品税なんかによりまして、需要の喚起ということも期待いたしますが、同時にまた、企業減税等も合わせまして、これから大事な国民の経済の安定、つまり家庭も企業も蓄積を持てるような状態にしていきたい、かように考える次第でございます。そういう見地から、所得税の減税も行ないます。これは大幅に行なうわけでありまして、ことにこの数年来期待をされ要望されておりますところの中堅階層の税率改正をこの際やる。また、課税最低限も六十三万円まで上がる。実質的な非常に大きな効果を持つ、かように考えております。いま、ピース一つしか減税にならぬじゃないかと申しておられましたが、これはおそらく百万円以下の小額所得者についてのお話と思いますが、その場合には、そのとおりです。しかし、その百万円以下の低所得者は幾ら税を納めておりますか。ピース三つしか納めていないのです。それが一つ減るのです。(拍手)それでひとつ御承知を願いたいのであります。
 また、長期減税構想につきましてどういうふうに考えておるかというお話でございます。政府といたしましては、今回、史上最大の減税をやったわけでございますが、しかし、今後とも国民の負担を軽減し、国民が自由に働けるような基礎づくりをいたしたい、さような考えでございまして、長期的に減税目標というものを追っていく。その方向としては、所得税につきましては、ただいま総理からお答えがございましたが、これはなるべく近い機会に八十万円の課税最低限を実現したい、かように考えるのであります。また、法人につきましては、いま配当軽課という問題があるのです。この問題もくるめまして、法人所得の適正なあり方というもの、これを検討していきたい。それから第三に、いま税制が非常に複雑になっております。これは国民の税制といえないような状態です。これを簡素化し、国民のものとするというような感覚、これをまた検討していきたい、かように考えておるのであります。
 今度、所得税は軽減になる。しかし一方において、昭和四十一年度には五・五%の消費者物価の上昇が予想される。所得税減税の効果を非常に減殺することになる。非常に私は残念です。残念でございますが、その調整減税はどういう数字になるかというお話でございますが、それを広く計算することがなかなかむずかしいことは、平林さんもよく御承知だと思います。しかし、非常に具体的な問題です。たとえば課税最低限、去年の課税最低限の実質を、ことし幾ら減税すれば維持できるかというような点について考えてみますときには、大体三百億円ぐらいであります。そういうようなことを考えますときに、今回の所得税の減税は必ずしも私は低いというふうには思っておりません。また、最低税率を八%から八・五%に引き上げるのは不穏当ではないかというようなお話でございます。しかし、これは課税最低限と関連して考うべき問題であります。また、税の執行上の手続というような見地からも考うべき問題でありまして、現に諸外国におきましては、大体最低税率は一五%から二〇%になっておる。大幅減税をいたします機会に、これを八・五%とするということは機宜を得た措置である、こういうふうに考えております。
 また、教育費控除等をやるべきじゃないかというお話であります。私も、その御意見、お気持ちはもっともだと思います。しかし、限られた財源である。限られた財源で何をするかというと、やはり諸控除の引き上げ、こういうことで課税最低限の引き上げを行なう、こういうことに結論せざるを得ない。ただしかし、御承知のように勤労学生あるいは身体障害者、こういう者に、特別に気の毒だというような事情のある者につきましては、控除の制度をとっておることは御承知のとおりであります。
 さらに、三百万円以下の所得者までの税率改正を行なうのは、これは不当じゃないかというお話でございます。しかし、今日もう三百万円以下といえば、これはわが国の国民の中堅階層であります。この中堅階層の資産形成、これはわれわれみんなが真剣になって考えていかなければならぬ問題である。さように考え、この数年来待望されておりました中堅階層の問題の解決をはかるものでありまして、決して不当なものではない、かように考えます。
 さらに、納税人員が減少しないじゃないか、それで税務行政をやっていけるかというような御質問であります。確かに納税人員はそう減少しない。戦前は七十万人か八十万人の所得税納税者が、今日二千二百万人になっている。これを今回の大幅増税によりまして、二千万人にまで持っていくのです、引き下げるのです。そういうことで、ただいまお尋ねのことは御納得を願いたいと思うのであります。
 また、税法に委任事項が多いじゃないか、確かにそういう面があります。そういう面がありますので、極力法律に盛り込むように努力をいたします。またこれは御審議を願うことにいたします。
 また、相続税が政治的にきめられたのじゃないかと言われまするが、いま標準家庭における相続税の課税最低限は五百万です。五百万じゃ、まあ五十坪の、あるいは二十坪の建物を持っておるという、そういう人に不時の事態が起こった際に、そのうちを売らなければならぬということになる。やはりささやかでありまするけれども、住宅くらい子供に残す、これは政府として考えることがあたたかい国民に対する思いやりである、かように考えるのであります。(拍手)今回は五百万円の課税最低限を一千万円までは税がかからない、こういうふうにいたした次第であります。
 なお、長期減税の財源をどうするか、これはなかなか重大な問題であります。ただいま総理からもお答えがありましたけれども、われわれはいま公債を一方においては発行する、一方においては大幅な減税を行なう、この二つの政策を並行してやっていく、必ず景気の回復が期待できると思うのであります。減税の財源は、今日国民に、また企業に、蓄積と繁栄の基礎を与え、そしてさっき御批判がありましたが、鳥を太らしてということは不当であるというお話でありまするけれども、所得の根源を養って、そしてこの長期減税の財源にする、こういうことであります。そういう所得の根源を養わずして、ただ単に国民の生計を楽にせい、これは縮小経済というものであります。私どもは経済の成長政策をとるのであります。(拍手)
  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
○国務大臣(藤山愛一郎君) 所得税減税と企業減税の乗数効果はどういうことであろうかという御質問でございます。
 乗数効果を正確に出しますことは、見方によってたいへん違っております。したがって、かりに過去の傾向をとりまして、過去の数字の上に立って試算をいたしてみますにしても、専門家によっていろいろ乗数効果が違ってまいります。たとえばある人は、個人が〇・九だ、そうして法人が一・六だ。またある専門家は、個人が〇・六だ、そして法人が二・四だ、こういうような試算をする人もございます。しかし、過去のデータでこれを判断いたしますことは、私は、本年の場合には相当危険があるのではないかと思います。と申しますのは、企業の投資力が非常に減退いたしておるのでございまして、したがって、過去非常に高度に成長しておりましたときのデータで、この乗数効果を出すことはむずかしいと思うのであります。したがって、現状の上に立って乗数効果を出すということは、ほとんど困難でございまして、われわれも、正確なことが判定しにくいというのが事実でございますが、過去の傾向から申しまして、必ずしも所得減税よりも企業減税のほうが乗数効果が低いという断定もいたしにくい、こう考えております。(拍手)
○国務大臣(中村梅吉君) 教育費の基礎控除について、その経過はどうなっておるかというお尋ねでございました。
 結論は、先ほど大蔵大臣がお答えしたとおりの状況でございますが、文教を担当しております文部省としましては、近年父兄の負担する教育費の現状にかんがみまして、何とか高等学校以上の学生、生徒の授業料について、所得の基礎控除をしてもらいたいという趣旨をもちまして、昭和三十八年以降、税制調査会が税制改革を検討するつど要望しておるところでございますが、現在の段階では、この授業料にもいろいろな格差がございますし、あるいは勤労学徒、青少年との関係等もありまして、そういういろいろな事情で、一般的な基礎控除の拡充によって対処するのが適当である。こういうような結論で、われわれの要望は達成せられていないのが現状でございます。今後とも十分検討してまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) あまりたくさんなことがありましたので、聞き漏らしました。
 献立のことは、初めて今席ここで承りましたので、私も、去年そういうことがあったのかどうか承知しておりません。ことしどうするのかも承知しておりませんが、いずれ取り調べまして、お答えをする機会を得たいと存じます。
 なお、交際費課税につきましては、昭和四十年度におきまして税制の改正をいたしまして、これを強化する措置をとったのであります。とったばかりでございまするから、、今後この推移を見まして、なお相談をしたい、考えていきたい、かように考えております。(拍手)
○議長(山口喜久一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 福田大蔵大臣の昭和三十九年度決算の概要についての発言
○議長(山口喜久一郎君) 大蔵大臣から、昭和三十九年度決算の概要について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣福田赳夫君。
○国務大臣(福田赳夫君) 先般、本国会に提出いたしました昭和三十九年度一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 昭和三十九年度予算は、昭和三十九年三月三十一日に成立いたしました本予算と、昭和三十九年十二月十五日に成立いたしました補正予算とからなるものであります。
 昭和三十九年度本予算は、財政金融上の諸施策を積極的に拡充し、農林漁業及び中小企業対策の推進、社会保障関係諸施策の推進、文教の刷新充実及び科学技術の振興、輸出の振興、社会資本の整備充実、地方財政の充実等の重要施策を推進するとともに、租税負担を軽減することとして編成されたものであります。
 なお、本予算成立後、給与改善に必要な経費、災害復旧に必要な経費、農業共済再保険特別会計への繰り入れに必要な経費、診療報酬の改定に伴い必要な経費及び食糧管理特別会計への繰り入れに必要な経費等について、補正予算を行なったのであります。
 昭和三十九年度におけるわが国の経済を顧みますと、年度の前半においては生産は依然として根強い増勢を続けたのでありますが、との間において、輸入が高水準ながら落ちつきを見せた反面、輸出が大幅な増加を示したため、国際収支は予想以上に早い立ち直りを見せ、年度の後半に入ると引き締めの効果の浸透が見られ、国内需要も落ちつきを見せるに至ったので、引き締め政策は、昭和三十九年末から昭和四十年度初めにかけて逐次解除されたのであります。
 このような経済の推移の結果、昭和三十九年度の国民総生産は二十五兆六千六百八十一億円に達し、前年度に対し一四・七%、実質一一・一%の増加と相なりました。また、鉱工業生産は前年度に比し一三・五%の増加となり、国際収支は、輸出の増加に基づく貿易収支の好転により、年度間の総合収支で三千四百万ドルの黒字となった次第であります。
 以下、決算の内容を数字をあげて御説明申し上げます。
 まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は三兆四千四百六十七億円余、歳出の決算額は三兆三千百九億円余でありまして、差し引き千三百五十七億円余の剰余を生じました。この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、翌年度、すなわち、昭和四十年度の歳入に繰り入れ済みであります。
 なお、この剰余金千三百五十七億円余から昭和四十年度に繰り越しました歳出予算の財源に充てなければならない金額四百二十一億円余、及び前年度までに生じた剰余金の使用残額六百九十六億円余を差し引きますと、二百三十九億円余が昭和三十九年度に新たに生じた純剰余金となるのであります。しかして、昭和三十九年度に新たに生じた純剰余金二百三十九億円余から地方交付税及び道路整備事業費の財源に充てられることとなる額六億円余を控除した残額二百三十三億円余の五分の一を下らない額に相当する金額につきましては、財政法第六条第一項及び同法附則第七条の規定によりまして、公債または借り入れ金の償還財源に充てなければならないことと相なるわけであります。
 以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額三兆三千四百四億円余に比べまして千六十二億円余の増加となるのでありますが、このうちには、昭和三十八年度剰余金の受け入れが、予算額に比べて千九十八億円余増加したものを含んでおりますので、これを差し引きますと、昭和三十九年度歳入の減少額は三十六億円余と相なるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入における減少額百九十六億円余、専売納付金における増加額六十三億円余、官業益金及び官業収入における減少額十五億円余、政府資産整理収入における増加額八億円余、雑収入における増加額百三億円余となっております。
 一方、歳出につきましては、予算額三兆三千四百四億円余に昭和三十八年度からの繰り越し額四百二億円余を加えました予算現額三兆三千八百七億円余から支出済み額三兆三千百九億円余を差し引きますと、その差額は六百九十七億円余でありまして、そのうち、昭和四十年度に繰り越した額は、前述のとおり四百二十一億円余であり、不用額は二百七十五億円余となっておるのであります。
 次に、昭和四十年度への繰り越し額の内訳を申し上げますと、財政法第十四条の三第一項の規定により、あらかじめ国会の議決を経て繰り越しましたもの三百九十八億円余、財政法第四十二条ただし書きの規定により、避けがたい事故のため繰り越したもの九億円余、財政法第四十三条の二第一項の規定により、継続費の年割り額を繰り越したもの十三億円余であります。
 次に、予備費でありますが、昭和三十九年度一般会計における予備費の予算額は三百億円であり、その使用額は二百八十三億円余であります。
 次に、一般会計の国庫債務負担行為について申し上げます。
 財政法第十五条第一項の規定に基づく国庫債務負担行為の権能額は六百四十五億円余でありますが、このうち実際に負担いたしました債務額は六百二十五億円余でありますので、これに既往年度からの繰り越し債務額九百九十二億円余を加え、昭和三十九年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額八百三十四億円余を差し引きました金額七百八十四億円余が翌年度以降に繰り越された債務額に相なるのであります。
 財政法第十五条第二項の規定に基づく国庫債務負担行為の権能額は三十億円でありますが、このうち実際に負担いたしました債務額は三億円余でありまして、そのうち昭和三十九年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額一億円余を差し引きました金額一億円余が翌年度以降に繰り越されたことに相なるのであります。なお、既往年度からの繰り越し債務額はございません。
 次に、昭和三十九年度特別会計の決算であります。同年度における特別会計の数は四十三でありまして、これら特別会計の歳入決算総額は六兆千四百八十億円余、歳出決算総額は五兆五千五百七十五億円余であります。
 次に、昭和三十九年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、資金への収納済み額は二兆九千八百九十二億円余でありまして、この資金からの支払い命令済み額及び歳入への組み入れ額は二兆九千八百十六億円余であります。したがって、七十六億円余が昭和三十九年度末の資金残額と相なるのであります。これは主として国税にかかる還付金のうち、支払い決定済みであって支払い命令未済のものであります。
 次に、昭和三十九年度政府関係機関の決算でありますが、その内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上、昭和三十九年年度の一般会計、特別会計、国税収納金整理資金及び政府関係機関の決算について、その概略を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 昭和三十九年度決算の概要についての発言に対する質疑
○議長(山口喜久一郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。押谷富三君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔押谷富三郎君登壇〕
○押谷富三君 私は、自由民主党を代表して、ただいま大蔵大臣から概要説明のありました昭和三十九年度の歳入歳出の決算報告に関連いたしました二、三の事項につきまして、この機会に政府のお考えをただしておきたいと存ずるものであります。
 御承知のごとく、憲法第九十条、財政法第四十条には、国の決算は、会計検査院の検査報告とともに国会に提出をせなければならぬことになっておりますが、この国会に提出をする取り扱いにつきましては、従来両院の決算委員会においてこれをなされてきたものでありまして、この慣行は帝国議会以来一度も例外のないものでありますが、今回これに対して本会議においてこれが概要を御説明になりましたことは、一大改革でありまして、決算の重要性にかんがみましてまことに適切な御処置と存じまして、われわれは与野党を超越してこれに賛成をいたしているような次第であります。(拍手)
 決算は、御承知のごとく、予算と表裏一体をなしている大切なものであります。この大切な予算の執行のあとを調べて、効率的に執行されているか、そこに不正がないか、不当がないかを調べるのであり、いわば大切な国民の税金の使い道を調べるのでありますから、もちろん重要なものであり、峻厳なものであります。したがいまして、ときには世間は、決算委員会は役人いじめをする場所であるとか、あるいはおかっぴきのような役人のあらさがしのように顔をそむける向きもありますけれども、これはたいへんなあやまちでありまして、われわれは役人の不正をつこうとするものではありません。役人の姿勢を正そうとするものであり、役人と国民との信頼をかたく強く結びつけようとするのが、決算委員会の目的であります。(拍手)こういう目的でやっているのでありますから、ときに誤解を生じますが、峻厳なものであります。
 さきに参議院の決算委員会において、大ぜいの人が車を連ねてある私邸に乗り込んで、家人の承諾を得たとはいうものの、その私邸内へ入って、家宅捜査か現場検証のまねごとをやったのであるが、これは許されません。国政調査に名をかりた個人のプライバシーの侵害であり、かようなことは、国政調査権が凶器となって個人の基本権を侵害したまことに醜い姿であって、衆議院の決算委員会においては、与野党ともにかようなことのないように特に戒めて、今日堂々と審査を続けているようなわけであります。
 こういうような考え方を持っている衆議院の決算委員会においては、単にこの不正であるとか不当であるとか、非能率であるとかを調べるだけではなくて、予算執行のあとを調べて、多角的な大きな反省を持ちまして、次の政治に対する建設的な意見を引っぱり出す場所が決算委員会であることを政府は御了承願わなければなりません。
 こうした大切な決算委員会でありますから、そこで政府においてはこの点を特に御認識になりまして、今回のごとくその取り扱いにおいて画期的な御処置に出られたことは、まことに敬意を表するものでありますが、今後の決算委員におけるわれわれの調査にあたりましても、ぜひとも政府は、いままでのように政府委員だけでお茶を濁すような協力ではなくて、政府みずから責任のある態度をもって決算委員会に御協力を願いたいと思うのでありますが、これに対する政府の御所見を伺っておきたいと思います。
 私は、決算委員会において従来取り上げてまいりましたいろいろな問題をここで一々論議しようとは思いませんが、しかし、その中において、非常に大きな問題として、国民の耳目を聳動したといえばオーバーでありますが、国民の視聴を集めたような大きな問題について、いまだ政府の御所見を伺っておらないものがあります。それは第五十国会においてたいへんな問題として喧伝されたことですが、それがいまだ政府から御意見を伺っておらない。問題は、国有財産の処分に関する問題でありますが、国有財産につきましては大蔵省が管理権、処分権を持っております。われわれは、おおよそ役人は、どこでも、だれでも、いつでも、いささかの役得も許されないものであって、役人がその地位を利用して甘い汁を吸おうなどということは最も軽べつすべきことで、断じて戒めなければならぬことと思いますが、大蔵省が、自分の所管内にある国有財産を、大蔵省の上の人々に、高級の官吏に処分されたとあれば、これは内輪でつうつうで、うまい汁を吸ったと国民に疑われてもいたしかたがありません。そこで決算委員会においてはこれを取り上げまして、政府から終戦後今日までの国有財産処分のリストを取ったのでありますが、このリストが出されたのは十四件であります。同時に調べました政府機関である専売公社から出されたのが七件で、合わせて二十一件です。終戦後大蔵省において処分をされたその処分件数は二十万件に及んでいる。二十万件の中で二十一件出てきたのですから、いわば一万に一つということになりますが、その一万に一つの問題でも、その内容を精査すればあながち不正とも考えませんけれども、しかし、ここに考えなければならぬことは、一万に一件の問題でも国民はこれくらいやかましいものである、国民の批判はこれくらいきびしいものであるということを日本の役人は痛いほど体験したということであります。これはぜひとも政府は十分の考慮をしてもらわなければなりません。
 世間の声の中には、国有財産は国民の税金につながっている財産であるから、国民財産である、役人のかってにされてたまるかという声が横溢している。こういう場合でありますから、政府はこの点についての考え方をしっかりしてもらわなければならぬ。いやしくも大蔵省の役人が、李下に冠を正したり、瓜田にくつあとを残すような愚かをしてはなりません。李下に近づかないこと、瓜田は大回りをしてくつあとを残さないような心がまえが必要でありますが、この国有財産につきましていまだ総締めくくりの御意見を伺っておりませんから、この際大蔵大臣から、国有財産処分に関するあの大きな問題について、大蔵大臣はいかなる反省を持ち、どういう考えを持っているかを、この席上から国民に知らせてもらいたいと存ずるものであります。
 もう一つだけ申し上げたいのは、これは過去十四、五年にわたりまして毎年毎年年中行事のごとく繰り返されてまいった問題があります。それは何か。衆議院、参議院の決算委員会、衆参両院の大蔵委員会が毎年やったのは何か。日本銀行の地下に眠っている供出ダイヤモンドがまだ処分をされておらないということである。その数量は十六万一千カラットという、まことに大量の宝石であります。これに対しての値段につきましては、また奇怪なことには、いろいろ評価が変わってきておるのでありまして、昭和二十六年には七十二億円に評価されたものが、昭和二十八年には六十一億円に下がっている。さらに昭和三十四年には七十億円に上がったものが、昭和三十七年には六十七億にまた下がっている。もう物価はまっすぐに上昇している。国の貨幣価値は下がっている。その中においてただ一つダイヤモンドだけが、もう二十四年ごろからずっと下がってきている。上がったり下がったりしているようなことでは、この管理にはおかしいことがないかと世間が疑うようなことも出てくるのでありますから、ここを考えてもらわなければなりません。
 いま一つは、この十六万一千カラットという大量のダイヤモンドは、当時の国情から、日本国民が国のために使ってもらいたい、国家のために尽くしたいという愛国の情熱がしみ込んでいる、ダイヤモンドであり、これを二十数年間日本銀行の地下に眠らしておっては日の目が当たりません。私は、この愛国の至情がしみ込んでいる、ダイヤモンドに日の目を当てることは、日本国民の愛国心に日の目を見せることになるのであるから、ここらでひとつ踏み切ってもらったらどうか。実は私の調査によりますと、この大ぜいの供出者の中から六百数十名が、ダイヤモンドを返してくれと政府に要求をしている向きがある。政府はこれに対して行政処分をした。その処分に対して異議を申し立てている。裁判にも移行しているものがあるのですから、それらを解決しなければダイヤモンドの処分が困難だという考え方もわかりますけれども、それは大ぜいの中、何十万の中の何人かでありまして、この何人かの処置によって、いま政府はなさなければならぬ大きな仕事をかかえているはずだ。国民の愛国心のしみ込んでいるこのダイヤモンドを処分して、その愛国心にふさわしい仕事を政府にしてもらうということは、これは必要なことであって、よもや社会党の諸君も反対はなさるまいと思うのであるが、どうですか。この際思い切ってひとつこのダイヤモンドを処分して、この財政窮乏のおりから、財政の一助ともなし、そうして社会保障あるいはその他の重要な仕事、社会福祉事業等、要求をされているいろいろな仕事に対してこのお金をお使いになるような処置をする。このダイヤモンドの関係につきましても、この議場を通じまして、一応、大蔵大臣あるいは総理大臣の御意見を伺いたいと存じます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 後ほど具体的な問題につきましては大蔵大臣からお答えをいたしますが、私は、決算事務が重要な国政である、この意味におきまして、政府もこれに積極的に協力すべきだ、この点は御指摘のとおり私も心得ておりますから、いままでも慎重審議されておりますが、どうか、あの慎重審議、同時にまた、この審査を通じての貴重なる予算編成上の御意見や、あるいはまた執行上の御意見を聞かしていただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま押谷さんから、決算審議、これをなるべく行政に生かせというお話でございますが、まことにごもっともであります。決算委員会における審議の状況は、政府におきましてもできるだけこれをその後の政策に生かしていきたい、かように存じます。また、責任者が決算委員会に出るようにせいというお話でありまするが、つとめてさようにいたしたいと存じます。
 また、国有財産の処分につきましていろいろお小言をいただきましたが、過去におきまして国有財産の処分に関し国民からいろいろの御批判を受け、また、決算委員会におきまして御批判を受けた。ただいま大蔵省におきましてもそういう点を十分反省いたしております。つまり、国有財産の処分について全般的にそのやり方を変えよう、こういう考えであります。いままでは、随意契約、指名契約主義でありますが、原則として競争入札、こういう方針でその適正を期していきたい、かように考えておる次第でございます。
 また、接収貴金属につきましてたいへん御心配のようでありますが、接収貴金属、特にダイヤモンドにつきましては、三十四年以来、被接収者への返還手続をずっとやっておったのです。大体それが終了いたしまして、いま手元にダイヤモンド十六万カラット残っておりますが、これは全部国庫に帰属をいたす性質のものでございます。それを昭和四十一年度から逐次売り払いして国の財源に充てたい。昭和四十一年度におきましては二万九千カラット、予算にも十四億六千七百万円、これが収入を予定しております。しかし、この売り払いは最も適正でなければならぬ。ことに評価についてお話がありましたが、決して評価が浮動しておるわけではないのです。評価というものは、そのときどきにおける、その時点のダイヤモンドの価格を示すものでありますので、決してこれが理由なく浮動するものではないのでありまするが、今回いよいよこれが売り払いを行なうにあたりましては、厳正なる評価を行なうために、また、ガラス張りでこれを行なうということにいたし、今秋から逐次これを実施に移していきたい、かように考えておる次第であります。また、これが実行にあたりましては、国会で決議のあることは承知しております。これを社会福祉――愛国心というお話がありましたが、社会福祉その他国民の最も要望する方面にこれを生かしていきたい、かように考える次第であります。(拍手)
○副議長(園田直君) 勝澤芳雄君。
  〔勝澤芳雄君登壇〕
○勝澤芳雄君 私は、ただいま大蔵大臣から御報告のありました昭和三十九年度歳入歳出決算外三件につきまして、日本社会党を代表いたしまして、総理並びに大蔵大臣に質問をいたします。(拍手)
 国の決算は、従来から単なる報告案件として、両院それぞれ別個に決算委員会に付託、審議されてきました。これがため、予算が国の活動を示す財政計画として、国会審議に重要なウエートを占めているのに、決算はその業績を示すものであるのにかかわらず、軽視され、審議の結果は、何ら国政に反映されぬままになっております。われわれは、この誤った決算のあり方を是正させるために、会計検査院にも、単に不正不当事項の指摘だけでなく、積極的に是正改善意見を求めるとともに、予算執行の適正、経済的効果、行政的成果についても審議を行ない、それを予算編成や執行に反映させ、行政運営の姿勢を正すべく、決算の重要性について、与野党決算委員協力して強調いたしてまいりました。
 その結果、本日、帝国議会始まって以来初めて国の決算が本会議で審議されることは、まことに画期的なことであり、決算の重要性がようやく再認識されたものとして、喜びにたえません。まず総理から、この際、決算の重要性についての御認識について、御所見を承りたいと思います。
 第二に、綱紀粛正についてであります。
 昭和三十九年度会計検査院の決算検査報告書によると、不正不当事項は六百六十四件、二十七億九千万円で、依然増加の傾向にあります。これは会計検査院で、全経理の約一割程度を実地検査した結果であります。人事院発表の昭和三十九年度国家公務員の汚職による懲戒処分は千八百四十三件、法務省の昭和三十九年国家公務員の犯罪は、収賄四百五十六人をはじめ千六百四十四人となっております。これらは官僚の特権意識による公共財産や税金、予算などの私物化、めくら判行政による責任の所在不明、許認可、補助金制度等の自由裁量権の幅が広過ぎること、人事院規則による官庁と私企業隔離の原則が有名無実であること等が官紀紊乱の原因であります。最近の建設省橋梁汚職、首都高速道路公団の汚職幹部に対する嘆願書事件、あるいは厚生省や日本専売公社における選挙違反による公民権停止中の元幹部の復職事件等はその一例にしかすぎません。
 私は、綱紀粛正については、特に政治の姿勢を正すとともに、従来のおざなりによる一片の通達でなく、高級公務員の倫理ともいうべきものを検討するなど、真剣な対策を講ずべきであると思いますが、総理の御決意を承りたいと思います。(拍手)
 第三は、国有財産の管理処分についてであります。
 国有財産管理と処分の実態は、戦後二十年を経過した今日においても、なお実態不明や不法占拠、無断使用など多数あり、大蔵省の普通財産においてさえ、実態確認されていないものが、昭和三十九年度末で十万件以上もありまして、毎年会計検査院から指摘されております。
 また、決算委員会の調査でも、東京大学検見川総合運動場がゴルフ場に使われていたり、神奈川県三浦半島網代湾海岸が、一部有名人に年間坪五十円で別荘地に貸し付けられていたり、多摩川の河川敷をゴルフ場に坪九円で占用させ、道路公団が橋をかけるのに坪三万円、総額三千四百万円の補償金を払ったり、愛知県の旧軍用地が払い下げ後一週間目に一億円ももうけて転売されていたり、あるいは大蔵省の高級官僚や日本専売公社役員の役得による国有財産の払い下げ等顕著な事例であります。これらは氷山の一角にすぎないのではないかと思うと、まことに憂慮にたえません。
 この際、特に大蔵大臣から、国民の疑惑を払うために財産管理処分の適正な取り扱いについて御所見を承りたいと思います。
 また、高級官僚や政府関係機関等の役員に対する財産処分は、今後一切厳禁すべきであると思いますが、御意見を承りたいと思います。
 第四は、決算審議の結果についてであります。
 大臣各位は予算を獲得するときは血眼になっておりますけれども、予算の執行や決算についてはまことに無関心過ぎるのではないかと思われます。会計検査院から不正不当事項と指摘されても、おざなりに済まされ、数年間放置され、責任者はいつの間にかえらくなっております。大臣は官僚に使われるだけで、使いこなすころには交代しており、官僚王国、不正者の天国といわれております。
 特に最近の決算を見ても、防衛庁では七十九万一円の戦車用部品トラスカバーを四百八十七万円で買ったり、国産品で間に合うのに外国品を買って、国産品愛用に逆行いたしております。
 郵政省では、昭和三十九年度も三千二百八十八件、二億六千九百余万円の郵便犯罪が発生いたしております。特に静岡七間郵便局では三千六十三万円、秋田の浅舞郵便局では千百九十万円、十数年間にわたって犯罪行為が行なわれておるのであります。
 建設省と国鉄による道路の立体交差化工事は、一カ所の相談が二年以上もかかり、道路ができても立体交差化工事がおくれているために十二億円もの工事が不経済になっておるのであります。
 厚生省の血液行政では、昭和三十九年全国の採血量五十九万リットルのうち、八六・五%が山谷や釜ケ崎などの日雇い労務者による売血であったことはまことに驚くべき事実であります。
 外務省の海外移住のための予算は、昭和三十九年度三十億円も使われておるのでありますが、移住実績は千百五人であります。
 東北開発株式会社は、昭和三十五年度決算で六千八百二十七万円の黒字だと報告されておりますが、決算審議の結果、二億八百万円の赤字であることが明らかになり、昭和三十九年決算では、資本金四十八億円に対し、累積赤字五十二億円で、資本金を食いつぶしております。
 国庫補助金等の不正や不当は依然として絶えません。しかも、単価は実情を無視したもので、地方団体の超過負担は、昭和三十九年度で千百四十三億円にもなり、地方財政を圧迫いたしております。
 以上は、ほんの一例でありますが、せめて各大臣が決算に重大な関心を持っていただきたいと思ってわざわざ申し上げたのでありますけれども、お聞き及びがないのはまことに残念なことでございます。私は特に大蔵大臣から、会計検査院の不正不当の指摘事項あるいは是正改善意見や、決算委員会の議決事項については、その責任の所在を明確にするとともに、予算編成にも十分取り上げるべきであると思いますが、御所見を承りたいと思います。
 第五は、公社、公団、公庫、事業団、その他の特殊法人等や補助団体についてであります。
 現在、公社、公庫、公団、事業団、特殊法人等は百以上もあり、乱立の傾向にあります。しかも、その必要性の乏しいもの数多くあり、この際根本的に再検討すべきであると思います。特に人事は、監督官庁の割り当てによる天下りで、局長は理事、事務次官は副総裁で、各省の出先機関にひとしい状態であります。給与は、民間の大ものという名目で、月四十万円、退職金は四年間で千二百四十八万円であります。監督は後輩、監事の権限は不明確、事業運営は監督官庁の指示のまま、結局高級官僚のはけ口をつくったようなものであります。
 私は、この際、公社、公庫、公団、事業団等の新設はやめるとともに、統合整理を積極的に行ない、人事、管理、運営等について再検討すべきであると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 次に、最近の決算を見ても、補助金、委託費による補助外郭団体は年々増加しております。昭和四十一年度、補助金、委託費総額は一兆二千億余円で、国の予算の三割を占めており、補助団体数は一万余に及ぶと推定されております。この補助団体の中には、何のために補助金を出すのか、その判断に苦しむものもあり、各省のなわ張り争いの予算獲得のために同じような団体がつくられ、行政の混乱と国費のむだづかいが行なわれております。特に内閣官房では、内閣の重要政策に関する情報の収集と調査の委託費が、新聞切り抜きにひとしい資料に払われていたり、外務省の日本国際問題研究所は、補助金、委託費をもらうためにつくられたものであると断言せざるを得ません。この際、特に大蔵大臣に要望いたしたいのですが、中央における補助外郭団体に対する補助金、委託費は大幅に整理すべきであると思いますが、その決意ありや、承りたいと思います。
 第六は、臨時行政調査会の答申についてであります。
 臨時行政調査会は、国民のための行政をつくろうと、昭和三十七年二月発足以来、二年七カ月にわたって二億円余の国費によって、わが国行政制度及び行政運営全般について調査、審議を重ね、昭和三十九年九月答申がなされました。その内容は、行政全般にわたり、まことに重要な指摘をされております。この答申について、政府の態度は、一応尊重するという立場をとりつつも、消極的であることはまことに遺憾であります。
 行政改革は国民の声であり、国家的要請であり、能率のよい政府をつくることは、政治の責任であり、これが実施のためには、強い決意と指導力を必要といたします。これこそ佐藤内閣の重大な任務であります。私は、総理から具体的実施への決意を承りたいと思います。
 最後に、決算委員会のあり方についてであります。
 伊藤博文公の帝国憲法義解には「豫算ハ會計ノ初トシ決算ハ會計ノ終トス議會ノ會計ヲ監督スルニ其ノ方法二ツアリ即チ一ハ期前ノ監督ニシテ二ハ期後ノ監督トス」云々とあって、予算と決算は、期前と期後の違いこそあれ、国家の会計を監督する二大支柱であることは、明治憲法においても明らかなところであります。いわんや、新憲法第四十一条において、国会を国権の最高機関と定め、第八十三条において、「國の財政を處理する権限は、國會の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とされております。
 しかし、従来から、決算については、ことばの上では重要だといわれながら、制度的には軽視せられ、形式的なものになりがちで、その結果、予算の執行がいいかげんに行なわれたり、国民の血税がむだづかいされてきたり、会計検査院の指摘も、おざなりに放任されてまいりました。このような決算軽視の原因は、決算が単なる報告案件として取り扱われてきたところにあると思われます。
 そもそも、明治憲法の起草の段階においても、国会における決算の議決によって政府の財政に関する責任が解除せられるという見解が強かったことは確かで、現に、決算はまず衆議院に提出すべきか、貴族院に提出すべきか、検討された文献があるのを見ても、決算を議案として扱うべきであるという意見があったことがうかがわれます。しかし、明治二十五年、第六回帝国議会に初めて決算が提出せられ、以来、報告案件として取り扱われてきましたが、その理論的根拠は不明確のまま今日に及んでおり、新憲法制定の際も何らの論議もされず、旧憲法の引き写しにすぎません。
 しかしながら、憲法で、決算は国会に提出すべしということは、憲法は、国会が決算を審議する権能と責務とを持っていることを予想しているものと思われます。したがって、審議の結果、国会が何らかの意思決定をするということも、憲法は容認しているものと考えられます。ゆえに、決算は、単なる報告案件としてでなく、議案として取り扱うことにより、国会の有する行財政の事後監督権が確立せられ、決算の審議が権威あるものとなり、これこそ国会中心財政主義の新憲法の精神に沿うものであると思います。(拍手)
 以上のように、決算のあり方は、実はわが国国会創始以来、七十年来の重大懸案でありますので、政府と国会が同一歩調でこの制度を改革するため、政府としても、関係機関による研究とか、審議会により検討させるとか、積極的な努力を払うべきであると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 勝澤君にお答えいたします。
 決算の重要性につきましては、先ほどもお答えいたしましたのでございますから、重ねては申さないことにいたしますが、国によりまして、たいへん決算に力の入っておるところがあります。たとえば、イギリスの国会などは、むしろ予算よりも決算に重点を置く、かようにまでいわれておるのであります。問題は、議決された予算が適正に執行されるかどうか、このことが最も大事だ。また、それが政策にかなっているかどうかというようなことでございますから、この決算の重要性、これは政府におきましてもよく心得ておるつもりでございます。どうか国会におきましても、決算がたいへん重要な問題だ、こういう意味におきまして、いままで同様に審議におきましても慎重であってほしいと思います。お願いをいたします。
 次に、綱紀粛正の問題についてのお話でございますが、行政を担当する者、予算を執行する者、これは申すまでもなく、国民に対して最大の、最善のサービスを提供するものでなければならない。奉仕して初めてその職責を果たすことができると思います。かような意味におきまして、公務員が身を慎まなければならないことは、申すまでもございません。しかし、過去におきまして、収賄その他忌まわしい事件が次々に起こりました。そのために、綱紀粛正が今日もなお必要だと、強く叫ばれておるのであります。申すまでもないことですが、国有財産は、これは国民のものであります。したがいまして、この国有財産の管理、処分におきましては、国民の利益になるように管理、処分すべきは当然であります。もしも、それらの点につきまして不公平な処置が行なわれるといたしますれば、これは糾弾されなければなりません。さような意味におきまして、私は、機会あるごとに、綱紀の粛正を叫んでまいりましたが、また、政治の最高責任者として綱紀の粛正についての全責任があるのでございますから、一そうつとめまして、国民の期待に沿うようにいたしたいと思います。
 次に、公庫、公団等の政府関係機関の設置についてのお話がございました。これらは、それぞれ国会の審議を経まして、必要であるがゆえに実はつくったのであります。しかし、御指摘になりましたように、乱設、みだりにこれをつくっておるというようなことがあってはならないのでありますから、今後とも設立につきましては慎重を期したいと私は考えております。本年、四十一年度の予算の御審議をいただいておりますが、この際公庫、公団等は一切つくらない、こういう決意をいたしまして予算を編成いたしましたが、しかし、各分野におきましては、やはり公庫、公団等、特殊なくふうをすることが望ましい、こういうようなものもございますので、必ずしも、絶対につくらない、かようにお約束するわけではございませんが、これは乱設にならないように一そう注意してまいるつもりでございます。
 また、お話にありましたように、でき上がった今日ある公庫、公団等におきましても、これが統合ができるとかいうようなことについては、一そうくふうすべきだ。これは、臨時行政調査会におきましてもさような御注意がありますから、政府はこれもよく心得まして、そうして可能なもの心簡単にするようにいたしたい、かように思っております。
 また、臨時行政調査会の答申の全般について、政府はできるだけこの趣旨に沿うように、まず簡易なもの、あるいはなし得るものから取り組んでまいるつもりであります。たとえば、政府の許認可の事項などは、事務的にも処理できるものでございますから、まず第一に取り上げたい、かように思います。
 行政改革というような基本的な問題になりますが、これはやはり十分検討いたさなければならないのでありますから、そういう意味で、政府はこういう事柄について慎重に取り組んでいく体制をつくりたい、かように思っております。
 最後に、決算のあり方についてのお尋ねでございましたが、私は、決算そのものは重要な事柄ではございますけれども、これを議案として扱うということは不適当だ、かように考えております。ただいま同様、報告案件として処理されることで十分だ、かように考えておりますし、また、決算そのものの性格から見ましても、報告案件として処理することが適当なり、かように考えておる次第でございます。
 その他につきましては、大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま大体総理からお答えがありましたので、重複いたさない部分をお答え申し上げます。
 会計検査院の批難に対しまして、その事項事項の責任を明らかにせよということでございまするが、私は全くこれは同感であります。そうすべきものであり、また、そうしていきたいと存じます。
 なお、その同じ批難に対しまして、その後の予算の編成に活用すべしというお話でありまするが、これもそのとおりと存じます。そのようにいたしてまいる考えであります。
 なお、補助金の整理につきましては、これまた御説のとおりに私は考えます。なかなか国政も広範になってまいりますので、思うようにはまいりませんけれども、補助金の整理につきましては、なお鋭意努力をいたしていきたい、かように考えます。
 最後に、国有財産の処分、これはもう厳格にやらなければならぬことは御説のとおりであります。今後は、従来の方式を、原則として一般競争によるという方式を採用する。もう随意契約だとか指名というようなことをいたさない、こういう方式で適正を期していきたいと存じます。
 高級公務員、公社、公団の理事等に対して売り払いをいたさないというふうにやるかという御意見でございまするが、それもそのようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(園田直君) 吉田賢一君。
  〔吉田賢一君登壇〕
○吉田賢一君 ただいま報告せられました昭和三十九年度一般会計、特別会計、政府関係機関の決算等につきまして、民主社会党を代表して、若干御質問申し上げたいのであります。
 先刻の各質問につきましては、勝澤君の分は、前半は同意見であります。また、押谷君の御質問につきましても、われわれ決算委員会の審議の過程におきまして、全面的に同感であったのであります。そこで私は、別の角度からこの決算の諸問題につきまして御質疑を試みたいのであります。
 第一は、総理もいま決算の重要性をイギリスあたりも引例して申され、また、事実そのように一般にもいわれるのでございますが、しかし、現実といたしましては、何しろ、国の収支のあと始末、二年ないし三年前の金の使い道のあと始末が実際決算でありまするので、重要ではあるけれども、とんと興味がない。言うならば、まことに、これほどじみな仕事はないのであります。したがいまして、予算におきましては、はなばなしい論戦が展開されますけれども、決算委員会は、御承知のとおりに、委員会の実情りょうりょうたるものであります。大臣が出てきて、行政責任としてとっちめられるような問題が起こっておるときには満員でありまするが、平素は一名ないし三名くらいが常態であります。このような、国会みずからが決算に対する態度まことに冷淡というのは、何でありましょうか。要するに、私は、第一の問題点は、国会みずからが、憲法に規定しておりまする財政の監督権の行使につきまして、その地位につきまして、厳格に反省するということに出発をせねばならぬのではないかと考えるのであります。(拍手)そこで私は、一体これはどうすればいいのであろうか、これについて一、二提案をいたしまして、総理大臣並びに大蔵大臣の御所見を伺ってみたいのであります。
 国会は、申すまでもなく、予算に出発して決算に終わるという、この財政処理におきまして、一体三十九年度の決算が四十一年に審査しなければならぬというようなこと、これを改めてはどうか。アメリカにおきましては、御承知のとおりに、連邦の会計検査庁が事件ごとに報告をいたしまして、そうして各常任委員会におきましてこれを審査いたします。報告書によりますと、一九六四年におきましては、たとえば朝鮮に対する援助資金等の調査なんかは、相当十字火的な辛らつな質疑等が行なわれたようでありますが、ともかくその年だけで、検査庁の報告を審査いたしました結果、連邦国民が利益となったものは三億ドルにのぼるといわれるのであります。これは要するに、そのつどそのつど常時検査的にやるからであります。そこで、わが国におきましても、二年ないし三年後にこれを国会が審議するというのではなくして、常時検査的に国会に報告し、これを審査の対象にするということにしてはどうか。もちろん、それにつきましては、若干会計検査院法その他の改正を必要といたしますが、ともかく、決算重視ということを、国会の運営の上におきまして、また行政面におきまして、また、その目的からいたしまして、これを明らかにする道は、常時検査的な体制を国会みずからがとるほかはないと思います。そこで、随時に審査し得る制度に切りかえてはどうか。要するに早期検査であります。この点につきまして総理大臣の御所見を伺いたい。これ以外に手がないと私は思っております。
 それからいま一つは、ここだけの問答に終わらずして、厳重に、決算の結果は、翌年の予算編成、次に来たるべき予算編成にこれを反映せしむるということを実行すべきであります。そこで、大体そのような方針である、決算の結果、検査院の意見を尊重するというのが、いまの大蔵大臣の答弁でありますけれども、しからば、昭和四十一年度予算において、昭和三十九年あるいはまた四十年、その前々年からの問題でありますけれども、国会において幾多の問題が指摘せられまして、各省の予算執行に対する批判、改善意見等が述べられているが、はたして、どのような角度で、どのような程度で、どんな内容でこれを予算に反映せしめたのであるか。でき得べくんば、その実績を具体的に御説明願いたいのであります。
 これは要するに、国会の立場に対する重大な反省をわれわれみずから求めつつ、内閣の行政とともに責任を分かって国の財政を担当していこうというためであります。
 第二の問題点は、会計検査院の権限尊重の問題であります。これまた憲法上明確であります。検査院法第一条によりましても、内閣に対し独立するということが明確になっておりますので、これはまた議論のないところのようでありますけれども、現実におきましてははたしてどうか、こういう問題であります。行政に独立というのは一体何を意味するのであろうか。憲法は立法、司法、行政、三権分立というのが、憲法学者の通説であります。はたして検査院の権限というのは第四権になるのであろうかどうか、この点については統一した見解は学者にはないようでありまするけれども、しかし、異例なことには、憲法上明確に検査院の地位を保護しておる。さらにまた、検査院法において、内閣に対し独立するということを明記しておる。あるいはまた、第九十回帝国議会の貴族院の憲法改正特別委員会における当時の金森国務大臣の答弁によりましても、検査院は行政府に独立するということを明確に答弁いたしておるのであります。等々、憲法制定の経過の事情にかんがみまして、私は、検査院の地位というものを品も重視すべきものであろうと考えるのであります。私は、本日この席に検査院長の出席を要求したのでありまするが、法律上不可能とかなんとかいうような見解のもとに、議運ではこれを採用しなかったらしいのであります。私は、国会に対しまして独立するという検査院は考えておりません。しかし、行政に対する独立の検査院は、同時に、国会に対しましては、行政と同じような立場において協力し得るような道を開かねばならぬ。ゆえに、この点につきましての法律の改正が必要であるならば、改正すればいいのであります。検査院長が当院に出席いたしまして、そして国民の代表の前に検査院の意見、検査の過程、結論等々についてこれを報告するということは、憲法の条章の趣旨を恪順するゆえんでないかと思うのでありまするが、総理大臣の御所見はいかがでありますか。(拍手)
 第三番目には、これは行政府の態度であります。政府の態度であります。これは私ども表裏一体の関係におきまして、決算審議上まことに重要な点であろうと考えるのであります。第一、大蔵省は、会計法四十六条によりまして、常時監査の権限を持っております。しかしながら、実績によりますと、昭和三十三年ごろからほとんどこれを行なっておらない。昭和三十八年、九年は全然検査を行なっておらぬのであります。一体その理由いかん。大蔵大臣の明答を求めたい。法律を無視するのではないか。
 また、行政管理庁は、行政の面から行政の実態、運営につきまして常時監査をしつつあります。また、検査院は、さきに申しましたごとくに、これまた常時検査の方法があって、千五百人の職員を動員して膨大なマンモス行政と取り組んでおります。なかなか手が届かぬらしい。そこで私は、行政部門の立場といたしましてこの国の膨大なる予算の執行の問題について検査、監査、監督といったようなことを、これらのそれぞれの機関が横の連絡をとりつつ総合的に運営していくという必要がないか。一つは休止しておる、一つは大き過ぎて手が回りかねる、一つは行政一本でやる、これが大蔵、検査院、行管の三者の立場であります。いずれもこれらをお互いに調整、総合いたしまして、横の連絡をとりつつ予算の執行に対しましてその適正を期し、効率的な執行を慫慂するというふうに持っていかねばなるまいと思うのでありまするが、とかく日本の行政の運営というものはばらばら行政でありまして、横の連絡調整が欠けておるということは、これは臨調の答申の結果をまつまでもなく、全国民の常識的に身をもって体験をするところであります。ゆえに、この角度からいたしまして、これらの三機関がそれぞれ常時横の連絡をいたしまして、そして財政執行につきまして十分なる監督の実をあげていくということが必要ではないか、これに対する総理並びに大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
 次は、補助金の問題であります。少し具体的の議論を展開してみたいと思います。以上は一般論でございましたが、具体的な問題といたしまして、決算の角度から考えましたときに、わが国の財政に対する批判、わが国の財政に対する疑問というものは山積いたしております。しかし、この本会議におきましては、その時間もないことでありまするから、二、三の点だけを指摘いたしまして、重要と思われる点を御答弁願いたいのであります。
 補助金の問題であります。補助金はあらゆる名目によりまして、あるいは交付金あるいは負担金、その他等々、要するに、何らの反対給付なくして国から給付金を受けるというのが補助金であります。かかる補助金というものが一体どういうふうになっておるのでありましょうか。まことにこれは重大な傾向にあることをわれわれは指摘しなくちゃならぬのであります。試みにここに数字をあげてみますると、三十九年には、七百六十六日で、八千九百四十六億円、一般会計であります。同時にまた、四十年は、一兆八百四十億円、四十一年度は、さらに上回りまして、一兆二千七十六億円という多額の予算が計上されております。臨調の報告によりましても、昭和三十八年度一般会計、特別会計、政府関係機関等の補助金を総合いたしますると、一兆五千八百七十九億円ということになるのであります。まことに膨大な数字であります。わが国の財政における補助金のウエートは実に大きい。種々さまざまの要請から補助金の需要が出ておることは、いまさら申すまでもありません。しかしながら、池田内閣以来、補助金整理に関しましては、すでに膨大なる答申が出ております。しかし、これに対しまして、具体的な、一貫した総合した補助金対策というものが、いまだ行政府からは示されておらぬのであります。まことに遺憾であります。これらに対する一般的な態度いかんということを、総理に承りたいのであります。あるいはこの点は大蔵大臣でもよろしゅうございます。
 そこで、いろんな問題があると思いまするが、私どもは、この補助金問題につきましては、臨調がかなり詳細な答申をいたしておりまするので、原則的にはそれらをあるいは採用すべきだと思いまするが、いずれにいたしましても、この補助金なるものがはたして効率的にほんとうに使用されておるのであろうかどうか。あるいはまた、補助金が効率的に使用されない、検査院は、毎年のごとく、膨大なる項目の補助金の不正、不当を指摘するのであります。なぜでありましょうか。原因はいろいろありましょうけれども、たとえば補助金を交付する時期が誤っておる。おそくて困る。おそければ、効果、効率が半減するということもいわれるのであります。あるいはまた、名目補助金というものがあります。百万円もらうために八十万円使っても、その村長さんは名村長になるというのであります。というような風潮が国民的な背景をなしておるということも、われわれは見のがすわけにはまいらぬのであります。
 もう一つは、御承知のとおりに、この膨大なる補助金はその手続がなかなかむずかしいのであります。手続が煩瑣なのであります。煩瑣な手続を経てやるということが、とかく効率を阻害する遠因になることは、申すまでもないのであります。
 こういったようなことをあれこれと考えてみましたときに、私どもは、補助金制度につきましては、ほんとうに取り組んでいかねばならぬと思うのであります。たとえば補助金を交付するときにおきましても、補助金を受ける地方公共団体におきましては、それはあらゆる施策、行政を行なっていかねばなりませんので、どうすれば適当な時期に補助金が受けられるか。また、補助金を更けることにつきまして、地方行政団体が、交付税あるいは特に特別交付税につきましては、もっと明確にこれが種類等を明らかにすることが必要ではないであろうか。一体補助金の項目を見てみますると、実に種々雑多でございます。八百、九百という補助金を、私も一ぺん、これはどんなものだろうと思って見たのでありますが、実にそれは何とも言えぬほどいろいろな名前が使ってあります。要するに、補助金というものの本性をもっと明確にし、その範疇、その概念を明確にし、そのものさしを明らかにするということが必要でないかと思うのであります。こういう点につきまして、便宜的ないろいろな名前を用い、いろいろと行なわれておりまするけれども、時期を誤らないこと、そしてまた、その規範を明確にすること、概念、範疇を明らかにするといったようなことが一つは前提になって、なるべく簡易、簡便にこれを与える、あるいはまた、これを定額化する。必要なものは定額化すればよろしい、一々煩瑣な手続は要らぬのであります。あるいはまた、無用なもの、非効率のもの、そういったものはどんどん切っていったらいいのであります。
 かくして、私は、補助金問題につきましては、一兆五千億円という膨大なる国民の血税を使っておるということを考えてみまして、この段階におきましては、真剣に取り組んでいくというきわめて大きな課題であって、この次の年からは補助金問題についてあのたくさんな検査院の批難指摘事項なからしめるように期待せざるを得ないので、この点に対する総理並びに大蔵大臣の御所見を伺っておきたいのであります。
 第五番目には、国有未利用資源の問題であります。この点は行管が三十八年に指摘いたしました。行管の指摘によりますと、国有財産の未利用のもの、これが、何と皆さん、公簿計算が二百四十一億円に達するのであります。公簿価格でありまするので、不動産時価にいたしますると三倍以上であります。三倍以上の国有財産が未利用のまま放置されておるというのが、普通財産管理の実態であります。普通財産の管理はとかくなおざりにされておるということは、長い間幾たびか国会におきまして決算委員会で指摘されたのでございまするが、この際、私どもは、このような膨大なる未利用不動産の普通財産がもっと有効に、ほんとうにこれが国民のものであるとするならば、総理のいわく、国民のものであるとするならば、適切に効率的にこれを活用し、あるいはまた処分をしてはいかがか。これを保管するものは、処分をすることはとかく遠慮します。そういうようなことではなしに、積極的な態勢で取り組む必要はないか。
 さらにまた、公社、公団におきましても、未利用ないしは不要の多くの財産を持っておるのでございまするが、こういった点につきましても、行管は進んで調査の対象に取り入れてはいかがか。
 私は、これらの諸問題は、わが国の国家の一般会計その他の財源確保の観点からいたしましても、重要視すべき案件であろうと思うのであります。七千三百億円の公債発行は、とかく異常なる一種の財政方針になりましたが、こういうときに、このような膨大なる未利用普通財産があるということに目を見開くということは、これはほんとうに決算を重視すべき国民の立場でなければなりません。
○副議長(園田直君) 結論を急いでください。
○吉田賢一君(続) 私は、一円の金も節約してほしいというのは、国民の声であろうと思います。こういう点にかんがみまして、私は、未利用普通財産の活用について御所見を伺いたい。(拍手)最後に一点申し上げて、御所見を伺っておきますが、国有財産の処分の結果、国有財産の処分につきましては、契約をいたしまするが、契約が不履行になるということがしばしばあるのでございます。こういったときに、適切な処置をいたしまして、解除するとか、あるいはまた、返還をするとかいうふうにいたしまして、もっと国有財産の管理、処分につきまして、明確に指示を与えまして管理適正を期することが必要であるのではないか。しかも、国有財産は、小さいようでありまするけれども、これは九兆何千億円というのが、三十九年ごろの国の普通財産の総計になるのでありますので、これらの諸問題を考えまするときに、いかに重要な課題であるかということがわかるのであります。どうか大蔵大臣におきましても明確なる御答弁を願いたいのであります。
 以上をもちまして、私の質疑を終わることにいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 決算を重視することは、もう先ほど申し上げたとおりであります。ただいま吉田君は、決算が大事なことはよくわかるが、三年前あるいは二年前の決算を見る、そのためにどうも興味がない、興味が少ない、かような実情にあるから、これで決算を大事にしろ、こういうためには、もっと早期に検査のできるような方法はないか、こういう御提案であります。私も、確かに大事なことではありますが、興味のない事柄だ、過去の、しかも二年、三年前のものを調べることは、ほんとうに興味のないことだろう、かように思います。しかし、決算委員会の面面が、それにもかかわらず、たいへん慎重に御審議をいただいておることについて、心からお礼を申し上げます。ただいま申し上げましたとおり、早期に検査のできるような方法、これは政府も、また国会も、ともどもに検討すべきことだろう、かように私は思います。
 次に、会計検査院、これは法律の第一条にも明記しておりますように、内閣から独立しておることは御指摘のとおりであります。だが、これも国会の審議に対しましてはもちろん協力すべき立場にある、かように思います。
 次に、予算の執行状況、これは大蔵省においてまとめておりますが、もちろん、事柄によりましては、必要ならば総理大臣がその実情を各省に対して徴することは、これは当然の職務だ、かように私は考えております。
 補助金並びに国有財産等についてお尋ねがありましたが、大蔵大臣からお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 大蔵省の監査が励行されていないじゃないかということでございますが、大蔵省の監査は、財務局が出先機関として随時やっておるのです。まだ徹底をいたさないかもしれませんけれども、今後とも督励していたしたいと存じます。
 なお、検査院や行政管理庁と連絡をよくせよというお話でありますが、ごもっともなことでありまして、これもつとめてまいりたいと存じます。
 なお、補助金を整理すべしというお話でございまするが、これは私も最も頭の痛い問題の一つでございます。各方面から補助金補助金という要求があるわけでありまして、昭和四十一年度におきましても、二十七の補助金を廃止しております。また、補助金の額を減額したものが五十四件あるわけであります。また、統合いたしたものが、三十九件のものを二十九件にいたしております。また、補助金に終期をつけることにいたしたものが八件と、そういうふうに努力はしておるのでありまするけれども、また、新しいものも相当、要請があるわけでありまして、この補助金の問題は、国会の御協力がなければ何ともいたしがたいのであります。この上ともよろしく御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
 国有財産の問題につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、今後は制度の改正も含めて、厳正を旨としてやっていきたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣福田篤泰君登壇〕
○国務大臣(福田篤泰君) お答えいたします。
 未利用の国有財産の利用問題でございますが、行政管理庁といたしまして、昭和三十六年に行政財産の監察を行ないまして、有効な利用につきまして適切なる勧告を行なった次第でございます。なお、昭和三十七年には、普通財産の監察を行ないまして、これに対する長期的な基本計画を立てるように勧告いたしました。三十八年には、官庁物品の監察を行ないまして、死過蔵品に対する予防並びに活用の措置につきまして勧告を行なった次第でございます。なお、これらは、御指摘のとおり、きわめて大切な問題でありますので、今後の改善につきましても極力推進する覚悟でございます。(拍手)
  〔国務大臣永山忠則君登壇〕
○国務大臣(永山忠則君) 補助金等合理化審議会の答申の趣旨に沿いまして、補助金の合理化もあわせて、これに伴う財源の再配分につきましては、近く地方制度調査会の審議をまちまして、実現に全力をあげたいと存じておる次第でございます。(拍手)
○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 永山 忠則君
        国 務 大 臣 福田 篤泰君
        国 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        自治省財政局長 柴田  護君
     ――――◇―――――