第052回国会 外務委員会 第3号
昭和四十一年八月十二日(金曜日)
   午前十一時九分開議
 出席委員
   委員長 高瀬  傳君
   理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君
   理事 永田 亮一君 理事 穗積 七郎君
      綾部健太郎君    稻葉  修君
      宇都宮徳馬君    菊池 義郎君
      小坂善太郎君    田中 龍夫君
      野田 武夫君    野見山清造君
      細田 吉藏君    森下 國雄君
      石野 久男君    岡田 春夫君
      黒田 寿男君    帆足  計君
      松井 政吉君    松本 七郎君
      加藤  進君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 石井光次郎君
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
 委員外の出席者
        法務政務次官  井原 岸高君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      八木 正男君
        外務政務次官  田中 榮一君
        外務事務官
        (アジア局長) 小川平四郎君
        外務事務官
        (条約局長)  藤崎 萬里君
        厚生政務次官  松山千惠子君
        厚生事務官
        (援護局長)  実本 博次君
        通商産業政務次
        官       宇野 宗佑君
        通商産業事務官
        (通商局長)  山崎 隆造君
        専  門  員 吉田 賢吉君
    ―――――――――――――
八月一日
 委員愛知揆一君及び前尾繁三郎君辞任につき、
 その補欠として福田篤泰君及び小平久雄君が議
 長の指名で委員に選任された。
同月二日
 委員小平久雄君辞任につき、その補欠として正
 示啓次郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
 委員池田正之輔君、内海安吉君、増田甲子七君、
 岡良一君、松平忠久君及び川上貫一君辞任につ
 き、その補欠として細田吉藏君、田中龍夫君、
 綾部健太郎君、石野久男君、松井政吉君及び加
 藤進君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員綾部健太郎君、田中龍夫君、細田吉藏君、
 石野久男君及び松井政吉君辞任につき、その補
 欠として増田甲子七君、内海安吉君、池田正之
 輔君、岡良一君及び松平忠久君が議長の指名で
 委員に選任された。
    ―――――――――――――
七月二十二日
 在日朝鮮人の帰国協定延長に関する請願(田中
 彰治君紹介)(第六五号)
同月二十三日
 米国原子力潜水艦等寄港反対に関する請願(川
 上貫一君紹介)(第一五一号)
 ベトナム戦争反対に関する請願(林百郎君紹介)
 (第一五二号)
は本委員会に付託された。
同月二十九日
 一、国際情勢に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
七月二十五日
 沖繩の即時返還等に関する陳情書(島根県大原
 郡大東町議会議長晴木親久)(第二一号)
 在日朝鮮人の帰国協定延長に関する陳情書外一
 件(新潟県中頸城郡清里村議会議長笠尾昊文外
 一名)(第二二号)
 ベトナム戦争の平和回復に関する陳情書(福岡
 県議会議長永露政夫)(第七四号)
 日本の非核武装宣言に関する陳情書(糸魚川市
 議会議長後藤菊之助)(第九二号)
 中国、朝鮮等近隣諸国との自由往来実現に関す
 る陳情書(小樽市議会議長前野留治郎)(第一一
 二号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
○高瀬委員長 これより会議を開きます。
 この際、田中政務次官より発言の申し出がありますので、これを許します。外務政務次官田中榮一君。
○田中(榮)説明員 今回、外務政務次官を拝命いたしました田中榮一でございます。
 今後何ぶんよろしく御指導のほど、お願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
○高瀬委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。菊池義郎君。
○菊池委員 石井先生にお尋ね申し上げますが、社会党の諸君の質問が長過ぎますので、私は簡潔明瞭なサンプルを示して差し上げたいと思います。
 北朝鮮技術者の入国の許可について、韓国ではたいへんな騒ぎが起こりまして、これは日韓条約の基本方針に反するものである、あるいは国土統一の努力を妨げるものであるといったような決議までも超党派の決議としてやっておるのでございますが、これに対するところのわが政府の態度、これについてお伺いしたいと思うのでございます。
 つまり、日本は、日韓条約を締結するにあたりまして、韓国政府の実力の及ぶ範囲、すなわち三十八度線をもって韓国の領土とするというように考え、向こうのほうは朝鮮半島全土をもって朝鮮の領土とするというふうに考える、そういったような考えの食い違いからして、こういったような問題が起こるのではないかと思うのでありますが、こういうことについて、日本の政府といたしましては、どういう措置を考えておられるのでありますか、お伺いしたいと思うのでございます。
○石井国務大臣 北の朝鮮のほうから、日本に商売上の問題で技術者がやってこようという問題でいま問題が起こっておるわけでございますが、昨年の夏ごろに、私は、国会において質問がありました場合に、政治問題に関係なくて、たとえば商売の上の問題でその商売に関連してこういうふうな技術者が来るというようなもの、あるいは学問の上の問題、それからスポーツに関連する問題というような場合には、特にこれが政治に関係ないということが明らかであった場合には、そしてこれをケース・バイ・ケースでよく研究をいたしまして、そうして許す方針をとっていきたい、それが政府の考え方だというてお答えをしたと思います。しかし、実際上においては、昨年からことしまで、私、法務大臣になってから一ぺんもそういう問題を許したことがなかったわけでございます。今度東工物産というのから、前から出ております。数年前から出ておりました願いを取り上げまして、どうするかということで、政府部内でいろいろ相談をいたしたのでございましたが、これはただいま申しました線からいいますと、政治上には関係ない。その来る人を個人的によく見て、もし日本に来て政治的な行動をすれば、その日からでもあるいは日本から帰ってもらわなくちゃならぬということになるかもわからぬが、そうでない場合には差しつかえないではないかというのが、私ども入国関係から見れば、そう言えるというような見方でございます。そういうふうな立場からいたしまして、政府部内でいろいろ相談いたしまして、大体もうここいらでこの問題を、長い間の三年間もかかった問題であるから、この問題一つが残っておるから片づけたらどうであろうということで、これに許す方針で調べにかかっておった途中でございます。
 ところが、そのことが漏れまして、いろいろないまあなたのおっしゃるような問題が韓国であったようでございます。私自身に直接には関係ないものでございますから、直接にいろいろな策動はございませんでしたけれども、いろいろな声はよく伝わってまいりました。外務大臣にはいろいろな声が直接にいろいろ伝わっておると思います。これは外務大臣からお答え申すのが一番いいと思いますが、そういうようなこと等がございまして、日本の立場から考えまして、今日の情勢下においてそれを許すことは適当なりやいなやということを、もう一ぺん考えてみるべきじゃないかというようなことになりまして、ただいまのところ、今の時点においては許すべき状態ではない、もう少しこれは見送るということにしようということになったわけでございまして、ただいまは許さない状態に置いておるというわけでございます。
○菊池委員 見送るということは、これは時宜に適したやり方であると考えておる次第でございますが、この問題でもって、向こうのほうでは、北朝鮮の技術者を入れるということは、結局日本が北朝鮮という一つの独立国家を認めることになるのだというように考えて、騒ぎを起こしておるらしいのです。それが向こうの野党のほうの韓国政府に対する責め道具になっておるようでございます。こういう点について、向こうに対してどういう通知を出したのでございますか、この点をお伺いしたいのであります。
○石井国務大臣 韓国はどういうふうに考えておられますかということ、それに対してのお答えは、外務大臣が見えましたから、外務大臣からお答え願うのが一番適当かと思うのでございますが、私どもといたしまして、政府といたしましては、四囲の事情からいたしまして、いろいろむずかしく回りくどく申さぬでもいいのでありますが、日本と韓国と長い間かかってようやく結んだ日韓条約に、一年もたたぬうちに大きなひびが入るようなことをしてはならないじゃないかというようなことが、一番手っとり早い説明になると思うのでございますが、そういうふうな考量で、この問題は話せばわかる問題ではないかというのが私どもの考え方でございます。外務大臣から向こうのほうには十分話はしてあったはずでございますが、なお今後とも重ねて、あらゆる機会によく話をいたしまして、了解を得るような行動をしていただくことが両国間の関係をよくするゆえんじゃないか、あまり無理をするんじゃないというのが、平たいことばで申せば、そういう心持ちでございます。
○菊池委員 外務大臣にお尋ねいたします。なお、私の持ち時間は至って短いのでございますから、簡単にお答え願いたいと存じます。
 ただいま石井先生から一通りの御答弁がございましたが、まだわからない点がございます。先ほど申しましたように、韓国のほうでは、この北鮮の技術者を入れることを最初許容したということについて、日本は北朝鮮という独立国家を認めておるんじゃないか、認めておる証拠であるといって、韓国の野党は韓国政府を責め立てておるのでございます。これに対して外務省はどういう通知をしたのでございますか、それをお伺いしたい。
○椎名国務大臣 通知を出したとかいういまのお話でありましたが、それに該当するような事実は私存じません。北鮮は、日本は認めておりません。
○菊池委員 一たん許可して、これを延期するということは、日本政府の不見識を暴露したようなものでございますが、しかしながら、国際情勢の変化によりましてこちらの態度をきめる、これは当然だと考えておるのでございます。融通のきくことは当然でございます。
 それと、在日北鮮人の北鮮への帰還協定の問題について外務大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、これについて外務省、厚生省、それから法務省の三省の意見が食い違っておる、それでまだきめかねておるということでございますが、新聞に発表されたところの三省の意見を別々に見てみますというと、私は厚生省、外務省の意見だったらどちらでも賛成でございます。法務省の意見にはちょっと賛成しかねるのでございますが、今日までにどういうふうにこれはきまったのでございましょうか。まだきまってないのでございましょうか。どうでしょう。お伺いしたい。
○椎名国務大臣 北鮮帰還の問題は、これは人道的な見地から開始された問題でありまして、事それ自体に対する考え方は変わっておりません。ただ情勢が非常に変化してまいりましたので、これに対してこの際いろいろ考えなければならぬ点があるのではないか。つまり、相当な国費をこれに費やしておる、帰還の希望者が非常に激減しておるというような現状にかんがみて、これに対して考える余地はあるのではないか、こういうふうになってきておりますが、その方法論の問題に関して、法務省、外務省、厚生省、それぞれいろいろ意見がありますが、これをできるだけ調査したい、こう考えております。
○菊池委員 わかりました。
 それからまた、タイ、マレーシア、フィリピンの三国で構成しておりますところのアジア連合の外相会議からベトナムの和平問題について日本も会議に参加しろという要請があったということでございますが、日本も、これに対して快諾の返事を出したということが伝えられております。われわれもけっこうであると考えておりますが、日本としてこの際もうちょっと向こうに条件をつけて、これの実際の効果をあげるにはアジアだけの諸国が集まったってだめだと思う、もうすでに中共やハノイのほうではそっぽを向いておるという状態なんですが、それで、この戦争に関係しておる国々の、たとえば英国、フランス、ソ連、カナダ、ポーランド、こういうところにも呼びかけるべきであるということを日本のほうからも突っ込んでいったらどうかと私は考えておる。こういう呼びかけをじっとして受けるなんということは、もうすでに日本の外務省の怠慢である。こういう会議には日本がすべからく主導権をとって、こちらのほうから先に呼びかけるべきであると私は考えておるのであります。賛成の意を表すると同時に、実際の効果をあげしむるために、これらの欧州諸国、あるいはカナダ、そういうところも参加せしむべきではないかということを言ったらどうかと考えておりますが、そういう点についてどうお考えになりますか。
○椎名国務大臣 これはもともとフィリピン、マレーシア、タイの三国外相の会談において、アジアの問題はアジア人の手で解決すべきである、われわれが最も大きな責任を持っておるのであるからして、この際政治形態のいかんにかかわらずアジアに広く呼びかげて、そうして当事国の和平を促進するような呼びかけに参加を求むべきである、こう言っておるのでありまして、アジアというものに限定し、そうしてアジアである以上は政治形態のいかんを問わないというところに新しい意義を求めて日本もこれに参加する決意をしたわけであります。アジア以外の方面にこの際呼びかけるということは、これは新しい問題でありまして、これはこの問題の延長として考えるべきでは私はないと思う。なお、日本といたしましては、いまさような考えを持っておりません。
○菊池委員 もう一つ外務大臣にお伺いしたいのでございますが、日米安保条約の延長について自由主義陣営内に二つの意見があるのです。一つは、黙っていても自然に延長する自然延長論と、それから今後さらに十年の期限をつけて安保条約を締結すべきである、この二つの意見がありますが、日本政府といたしましてはこの二つのうちのどれに御賛成でありますか、あるいはまた独自の意見がございますか、お伺いしたいと思います。
○椎名国務大臣 それぞれ私はよりどころのある意見だと思っております。米・タイあるいは米・比、米・韓、それらの条約が初めから自動延長式で一年の予告をもって条約から脱退するということが留保されておる。もう初めから自動延長式の条約であります。日本はこれと違って、初め十年の期限ということにして、その十年が過ぎれば今度は一年の通告で脱退することができるということで、その通告をしなければいつまでも、こういうことになるわけでありますが、七〇年に一応十年の期限が来た場合に再び期限を明記する条約にするか、それとも自動延長式にするかということは、これはどちらにもそれぞれ理由のある考え方でありまして、この点につきましては情勢の推移というものに応じて十分に研究してきめたい、こう考えております。
○高瀬委員長 帆足計君。
○帆足委員 ただいま問題になっております朝鮮人帰国協定の問題でございますが、先ほど外務大臣がお答えになりましたように、この問題は、党派を越え、イデオロギーを越えた人道の問題として数年前カルカッタ協定を赤十字間に結びまして、朝鮮からの帰国出迎え船が参りますと韓国側を刺激いたしましていろいろ当時妨害行為が行なわれましたが、これが公正に行なわれ、自由意思で行なわれるということを保証いたしますために意思確認の手続をとりまして、国際赤十字並びに日朝両赤十字にその事業を進行させるような方式をとりましたことは御承知のとおりでございます。私は当時、この問題を超党派的な課題と考えまして、いまはなき自民党の前副議長岩本信行氏に御協力いたしまして、互いに提携いたして、この事業に御協力をしてまいりましたので、実務にも通暁しているものの一人でございます。
 そこで、今日帰国者に対して圧力を加えられはしないかという疑問に対しては、国際赤十字及び日本赤十字が、赤十字センターにおいて三泊四日の休息期間を置きまして、そしておのれの意思に反して、または錯覚におちいって帰国されるような方は、いつでもそれを取り消すような便宜も与えられておりますことは御承知のとおりでありまして、先日、警察庁外事課長並びに公安調査庁第二部長も、この問題に関する限り比較的円滑にいっておって、何ら帰国事業をやめるような理由は公安上からは問題がないということを証言された次第でございます。だとするならば、外務大臣は、ただいま内外情勢の変化も考えねばならぬと申しましたけれども、人数が多少減りまして、ただいま年に二、三千人。何ぶんにも六十八万の在日朝鮮人の諸君が日本に住んでおりますので、自然に年二、三千の方が、環境の変化により、また子供が大きくなり、老後の安住の地を見出したい、青年は学校に行きたい、そこでふるさとに帰る人たちが二、三千人継続しておる状況であることも、先日の外務委員会において確認されたのでございます。だとするならば現在の帰国協定をとりあえず続けることが、私は一番常識的な、他意ない方法と思いますが、外務大臣は情勢が変化されたと言いますけれども、お尋ねしたいのですが、それはやはり韓国の圧力を顧慮してのととでございましょうか。または、帰国者の数がいまは二、三千人になっておりますが、専門家の推定によりますと、やはり毎月二、三百人くらいは――夏と冬は減り、春と秋は気候がよいですから帰国者の数がふえるのが常態になっておりますが、毎月二、三百人、少なくとも百人以上の帰国者がおるわけでございます。また、不景気の状況になりますと、それが急激にふえまして、月五百人にも達することはいままでもしばしばございます。したがいまして、外務省において御考慮になる状況の変化というものは大体どういう点にありますか、お尋ねしておきたい。もし専門のことで大臣が御都合が悪ければ、アジア局長からでもけっこうでございます。
○椎名国務大臣 人数もずっと減ったということ、それからこれを開始したときと違いまして、帰還協定に基づく帰国の方法によらなくとも、帰国するという方法がほかにも比較的容易に発見ができるということもございましょう。それからまた、ただ帰国したいというその欲望を満たすのが一体人道的かどうかということになる。誘われるからちょっと行ってみようか、帰ってみようかというような――まあ親が待っている、それから、一緒に暮らさなければならぬ同胞が別れ別れになっているといったような、きわめて人道的な意味の高い、そういうような問題は、大体においてもうこの数年間に相当薄らいできておるというようなこともございましょう。いろいろこの問題の内容を分析して、情勢の変化によって、いつまでもこれに国帑を費してこの方法を持続しなければならぬかどうかというような問題については、もう再検討の時期に来ておるというようなことがしきりに言われておるのでございまして、この問題については、まだここではっきり申し上げる段階にはございませんけれども、相当これは再検討すべきである、こう考えております。
○帆足委員 ちょっと北朝鮮に帰ってみようなどという人がおるとは、私不敏にして聞いたことがございませんが、一たん帰国しますと、いま南北間には三十八度線がありますし、渡航の往来の自由も制約されておりますので、それを覚悟の上でふるさとに帰るということであります。たれか故郷を忘るべきでありまして、他国で轗軻流離の生活に苦しんでおる人たちが自分のふるさとに帰るわけでございますから、私は事態は相当切実なものであると思っております。
 そこで、外務大臣の言われるように、最初に比べますと、帰国者の数は、何しろ約十五年の間帰国の道がなかったのですから、ダムのようにたまっておりまして、月に多いときは三千人、四千人と帰国をする時代もありました。しかし、赤十字御当局の努力によりまして、常時平静のうちに、自由意思で平和のうちに帰れるようになりまして、いまは自然の状況で、谷川の水が順調に流れるように、月二、三百人が帰るという状況でございます。月百人以上の帰国というものは常時の流れとして、また不景気になりますと急にふえる、そしてまたしばらくすると二、三百人に戻る、こういう状況を続けておりまして、これは政府が圧力を加えたのでなくて、自然の情と自然の環境にまかしたのでありますから、私は正しく行なわれておると思うし、国際赤十字もそのように観察いたしておるようでございます。それを極端に、状況が変わった、もうごくわずかのものであるというようなことには、現状ではなっておりません。月に百人を切るということは、自然あり得ません。春と秋は二百人をこしております。冬と夏は百人をこすという状況でありますが、それよりさらに少ないというような状況を、だれか統計学者か社会学者からでもお聞きになったでしょうか。これはうわさ話であると思いますが、厚生省当局でことし帰る朝鮮人の方々の統計があると思いますが、伺っておきたいと思います。
○実本説明員 北朝鮮の帰還希望者で、六月一日までに帰還しようとして日赤の窓口を通じまして申し込まれておりますのは、いま正確な数字じゃございませんが、約四千人ということになっております。
○帆足委員 ただいまの厚生省当局の御答弁のようでありまして、現在のところ赤十字におきましては――皆さまが将来官職をおやめになって穏棲の地をどこに見出すかということが早急にきめがたいように、朝鮮の諸君も二年先、三年先にどういうふうにするかということは、景気の状況とか、子供の成績とか学校の状況とかで自然にきまりますから、早急にきめがたい。そこで赤十字も、一年の見通し、半年の見通し、正確には三ヵ月ごとの統計をとりまして対策を立てておる状況でございまして、ただいま援護局長の言われたような数字が、現在動いておる数字でございます。したがいまして、外務大臣は情勢の変化と申しましたけれども、まだ情勢の大きな変化はございません。何ぶんにも六十万の在日朝鮮人の方が各種各様の職業におりますために、自然に年に二、三千人の帰国者が出る、それが、帰国の便が定期船があり、また韓国側からの妨害がなく、またいずれの側からのこれに対する抵抗がなければ、自然にまかしておけばいいことです。しかるに帰国するということになりますと、出迎え船が許可されず、また乗ろうといたしますと、これは強制力によるものではないかという疑いなどがありまして、争奪戦が起こりますから、そこで国際赤十字及び日本赤十字が中に入りまして、いかなる圧力もなく、赤十字船、すなわちノー・パッセンジャー、ノー・カーゴの船でこれを送っておる。私は、政府当局が非常に御苦労になって、国際赤十字まで来ていただいてやっておる仕事でございますから、これは非常に順調にいっておるものと思っておりますが、今日この段階になって、あとの対策までおきめにならずにもたついておりますのは、韓国政府の内政干渉なり圧力が再び盛り返したからではないか、韓国が圧力を加えたから赤十字に頼んだ仕事を赤十字がおやめになりますと、またあとで収拾がつかなくなることを心配するのでありますが、韓国側の圧力に多少なりともお困りになっておるのでしょうか、その点伺っておきたい。
○石井国務大臣 この帰還問題について、韓国側からの圧力等によって考えておることは一つもございません。
○帆足委員 事実問題として圧力があることはよく伺っておりますけれども、両大臣におかれましては、そういうことよりも人道の問題を第一義としておられる、こういう意味に私解釈いたしまして、もしほんとうにそうであれば、御同慶の至りであります。だとするならば、ただいま援護局長の言われたような帰国の数字でございますから、かりに打ち切るといたしますと、年に二、三千人に達する帰国者に対して現在経費がかかると言いましたけれども、帰国船の費用は大部分、すなわち帰国船、出迎え船そのものは全部朝鮮赤十字が支払っております。日本側としては、センターの費用と輸送費の一部を受け持っておるだけでございまして、朝鮮人の諸君は、国内においては非常に貧窮の方が多いので、多額の生活保護費も必要でございますから、経費の点からいえば、差し引きいたしまして別に日本政府の負担になっていないことをもう一ぺん再認識をお願いしたいのでございます。
 だとするならば、経費の問題にあらずして、これに最も適切な、合理的な方法をということを御考慮くださっておるならば、もう少し早目に御研究なさってもよかったであろうものの、先日の外務委員会においては、各局長ともお一人の御意見もなく、大体その方向でけっこうであるという御答弁でございました。しかるに、きょうの十二時をもって一応の回答期限、すなわち協定継続かどうかという回答期限が来るわけでございまして、関係者が憂慮するのは、私は当然のことだと思うのでございますが、かりに御研究なさって、別な方程式でいくとしますならば――先日ある不謹慎な官僚が、香港を通っていけばいいじゃないか、ナホトカを通っていけばいいじゃないかというような暴言を吐きまして、そうしてこの事業に尽瘁しておる方々に非常に不愉快な感じ、また不安を抱かせました。まことに遺憾なことでございます。香港航路、ナホトカ航路というようなことが出ますのは、これはどういう意味でございましょうか。地理学の初歩の知識すらないお方と話をしなければならぬことは、学歴詐称であるかどうか、まず学歴から調べて話をしなければならぬ結果になりますから、そういう冗談ごっこではなくて、まじめな話として、かわりにどういう案を考えて現在御研究なさっておるのでしょうか。外務大臣、お答えを願います。
○小川説明員 どういう方法があるかという点を含めまして、現在関係各省で検討しているわけでございます。
○帆足委員 その一端をお漏らしください。他のどういう方法があり得るか。私も皆さまともどもに、これは超党派的な課題と思っておりますから、多少考慮の余地のある代案があるならば、比較検討するというのならなんでありますが、あるのはただ空気ばかりである。空気を相手にして、そして時間をかせいでおるとすれば、世論は、ははあ、これはやはり再び韓国の圧力が加わった、まことに遺憾なことであると思わざるを得ないのでございます。たとえばどういう代案が具体的にありましょうか。空気だけでございますか。
○小川説明員 具体的にはっきりした案がございますれば、本件はもう少し早く進んでいると思いますが、その具体的にどういうことができるかということをいま検討しているわけでございます。特に具体的にただいま申し上げる段階ではないと思います。
○帆足委員 申し上げる段階ではなくて、申し上げる内容がないということは、先日の外務委員会におきまして、全局長御出席の上でもう検討済みのことでございます。残っているのは、ただ韓国との政治関係が残っているだけでございまして、その他残っているのは、ただ空気だけでございまして、空気を相手にして何度論議しても、結論のつかないのは当然のことであると思います。まことに遺憾なことであると思っております。
 この際、委員長並びに外務大臣に聞いていただきたいことは、最近ある次官が、大臣はお飾りにすぎない、政務次官はシャボン玉のごときものである、局長は命令すればその意見はどうでも変わるということを言ったとかいうことが伝えられまして、私どもは、それはあまりいい発言ではないと思いました。外務委員会の速記録も読まないような事務次官はやめていただきたい。従来事務次官というものは、忙しいからとの委員会に来て時間を費やすことをお控え願って、職務に精励していただきたいということで、ここへお呼び出しをしないのであって、もしそういうことであるならば、今後は事務次官を一カ月に一回くらいは呼び出して、外務委員会の空気を吸わせていただきたい、こう思う次第でございます。この外務委員会といたしましては、ほとんどある特定の問題、たとえば貿易とか人道とか、それらの問題につきましては、超党派的な空気が非常に強いのでございまして、こういう問題に対しましては、政治的雑音なしに、また各政党もあまり考えずに、互いに協力し合おうという精神にあふれている場所でございます。したがいまして、もし国会というものを尊重される気持らがおありといたしますならば、前回の外務委員会の速記録なりにせめて目を通していただけば、もうほとんど論議の余地のなかるべきものだと思います。アジア局長は、ただいま非常に良心的なお答えをなさいましたから、私は深く追及をいたしません。官吏には官吏服務規律というものがありまして、官庁の仕事にはおのずからルールと規律があるわけでございまして、それ以上のことは大臣が責任をとるべきものでありますから、追及をいたしませんが、さらに困難な点は、現在円滑にいっているこの赤十字方式をこわさなければならぬ、またはちゅうちょしなければならぬという意見は、椎名大臣が一般論として言われたこと、これは傾聴に値します。ことしとりあえず一年赤十字方式を続けるとおきめになっても、来年は来年の状況によって、また実情に即して超党派的に赤十字の意見を尊重しながら、最善の策があるならば他の方式でいくこともけっこうだと思うのでございます。しかし何も別に意見もなくて、あるものはただ空気ばかりで、実情を知らない人が、別な勢力の圧力によってこの問題に干渉して、そうしてしろうと意見が戦わされるという傾向があることはだれしも認めるところでございまして、先日の外務委員会においても申したように、イグノーランス・ノー・アーグメント――知らないことはあまり言わないほうがよろしい、やはり知っている人を中心として問題を提起してもらいたい。したがいまして、赤十字、厚生省または入管局長またはアジア局長など、比較的この実情に触れている方々の意見を中心としておまとめになるならば、これほど時間を空費することはなかろうと思うのでございます。
 そこで、きょう十二時に一応期限がまいりますが、これに対して外務大臣はどのように手を打つお考えでございましょうか。この仕事をこわさないように御配慮をお願いするという気持ちで御質問申し上げるわけでございますから……。
○小川説明員 原則的に申し上げますれば、御指摘のとおり本日が回答の期限でございますが、先ほどからお話のございましたように、結論が出ておりませんので、とりあえず延長のことについての回答は待ってもらうという処置を赤十字のほうから連絡していただくように依頼してございます。
○帆足委員 これは御承知のように、赤十字としては非常に良心的にお仕事をおやりになり、厚生省もよくわずかな経費でもって、しかも効率をあげるように心され、朝鮮の諸君が石で追われるような気持らでお帰りになるのでなくて、朝鮮の友よ、お元気で、さようなら、こういう気持ちで送っておるような次第でございます。しかるにいまだに回答ができない。もうきょう期限が来ることは一年前からわかっておるのに、私は職務怠慢であると思うのですが、外務大臣、結論をお急ぎになるおつもりがありましょうか。また来年、再来年帰る人たちがこれに対して不安を抱きますことは当然でありまして、すでに二千名からのことしの秋、来年の帰国者が心配して、またその親戚、友人が心配して東京に集まって集会を開き、政府に要請をしておる現状であります。私はこれは当然のことであると思いますが、こういう不安な事態を長く放置しておきますことは好ましくありませんので、早くその回答をおきめになることが必要であると思います。また国際赤十字にわざわざ来てもらっておるわけでありますから、国際赤十字の委員長とは私は長い間じっこんの間柄でございますから、よく事情も存じております。その方々に対してもまことに失礼なことだと思うのでございます。政府としてもいろいろ御事情もありましょうけれども、なるべく早く結論をお出しになる、すみやかに結論をお出しになることが礼儀にかなうことであると思います。また新潟の帰国協力会の会長は自民党の方で、前市長でありまして、この方は先日もこの功績によりまして藍綬褒章もいただいたことも先日の委員会で申し上げたとおりでございます。こういう事業の性質から政治的雑音に負けていつまでもきまらないという印象を与えることは望ましくありません。したがいまして、すみやかに両大臣のお話の結論をまとめていただきたいのでございますが、一体所管の大臣はどちらでございましょうか。御所管の大臣から御答弁を願いたい。主管官庁はこの問題にはありませんですか。すなわち責任を負う官庁です。
○椎名国務大臣 三省共管でやっております。できるだけ結論を急いで、御迷惑を少なくするように取り計らうつもりでございます。
○帆足委員 最後に、それではとにもかくにもことしの十二月以後の帰国者は三カ月前に申請をせねばならぬ、赤十字社としても、いま申請を受け付けていいかどうかも迷っておる。ところが御承知のように、十二月に帰る人たちはもうほとんど仕事をたたんで、家屋敷を売り払っておるのです。また運転手さんでしたら、一年前に社長に言って、私は来年の春ごろ帰りますから、それまでかわいがってください、こういうふうに言っておるわけです。そういう事情がありますから、二、三千人、四、五千人の帰国希望者、その家族の方がいま赤十字に押しかけてきて、そうして政府の決断を迫るというのは、私は情において忍びないところである、きょうも私はそこへ参って皆さんに事情を話して、そしてこういう国際情勢の中のできごとであるから隠忍自重してもらいたい、しかし必ず日本政府は皆さんの御希望にこたえるであろう、こういうあいさつをせねばならぬと思っておるわけでありまして、関係者も非常に憂慮いたしておりますから、どうか人道の仕事、赤十字の仕事としてお取り扱いを願いたい。なるべくすみやかになどということでなくて、なるべくなんて言いましても、すみやかにと言いましても、半年もすみやかでありますし、一カ月もすみやかでありますから、その辺のところ、速急にという意味でございますか、それだけを伺えれば、みな安心するでありましょうから、速急によい結論を出すということで、ちょっとお答えを願いたい。
○椎名国務大臣 まあ、ことばだけで御満足をされるならば……。
○帆足委員 ことばだけでは満足しません、真心が入っておらなければ。
 ちょっといまのことばは取り消していただいて、ことばだけでなくて、帰る方々が困らないように、不安を抱かないような意味における結論を出していただく……
○椎名国務大臣 そういう実質上の意味において、できるだけすみやかに処置したいと思います。
○帆足委員 それではせっかく御善処のほどをお願いいたします。
○高瀬委員長 穗積君。――穗積君に申し上げます。法務大臣から退席の申し出がありますので、法務大臣に対する質疑をまずお願いいたします。
○穗積委員 いま委員長のお話しのとおり、実はこういう重要な緊急な問題でございましたので、私は総理にも出席していただくべきことの経過であるというのでお願いいたしておきましたが、きょう御出席がありません。ところが、しかも伺いますと、両大臣とも時間が非常に制限されて御出席というようなことでございますので、はなはだ不満足でありますけれども、特に法務大臣の御事情も考慮いたしまして、法務大臣に対する質問をまとめて先にお尋ねいたします。
 そこで、総理はおられませんけれども、石井さんはこの北朝鮮の技術者の入国問題について所管大臣であるとともに、自他ともに副総理をもって認じておられるようでありますから、ひとつ大所高所に立って、政府を代表して御答弁をいただきたいと思うのです。
 第一にお伺いいたしたいと思いますのは、お話しのとおり三年越しの問題でありまして、それは申しません。その結果、七月十五日に内閣はこれを入国せしめるということを決定なさいました。あと入国申請の手続問題を事務当局と代理申請者との間ですり合わして、それが完了したら直ちにビザを発給する、こういうことで幾たびか御回答をいただいておったわけです。そのすり合わせは七月二十八日に所管の最高責任者である八木入管局長と代理申請者東工物産株式会社代表者との間で完了いたしまして、翌日、二十九日に一切の合法的な必要な手続は完了しておるわけです。そこで、石井さんは一日になりまして、これはきまったことであるから、なるべく早く発給をする、おそくも今週中には発給するということを言われたのに、突然予想に反しまして八月五日御決定になったわけですが、八月五日の御決定というのは、これはまず第一、そこからお尋ねいたしますが、これはさきの十五日の内閣の決定を変更するものではなくて、発給を延長するだけのお取りきめでございますかどうか、それを最初に伺っておきたいと思います。
○石井国務大臣 そのとおりでございます。
○穗積委員 そうでありますならば、お尋ねいたしますが、およそどのくらいお延ばしになるのか、お延ばしにならなければならないと判断をされた事情なり原因は何でございますか。
○石井国務大臣 それは先ほど申しましたように、ただいまの国際情勢から考えましてあまり好ましい情勢ではない、これを許せば、平たく申しますと、日韓関係がおもしろくなくなっていけないというような考えのもとに、これは延ばしたほうがよかろうということに関係大臣の間に話をいたして、延ばしたわけであります。方針は変わっておりません。
○穗積委員 お延ばしになる、大体の延長の期限のめどはどのくらいでございますか。
○石井国務大臣 それはただいまのあなたのお話の中にありましたように、今週は許すだろうというような情勢になっておった際にまた延ばすような情勢も起こったというようなことでございますから、情勢というものはどういうことで変わるかわかりませんが、いつごろに許すかというようなめどは、何日までといま見当をつけておるわけじないのでございます。情勢がいい状態になれば許すということを考えておるわけでございます。これでいいかげんなことに終わらすということなく、両国の間に話し合いがスムーズになるように、スムーズにいかぬまでも、少なくも了解し合うような心持ちになる状態になったときと思うております。これに外務大臣が懸命な努力をしてくれるはずでございます。そのときになって許したい、こういうことでございます。
○穗積委員 続いてお尋ねいたします。
 漏れ承りますと、法務省御当局は、決定の実施を延期することに必ずしも積極的賛成ではなかった、そして延ばすにしても、この八月の十日前後に韓国の国会がある、十五日に独立記念日がある、それが済んだならば発給してはどうかという御意見が、まず大臣はじめ事務当局の大体の御判断であり、佐藤総理も大体同じような御意見であって、きまったことはやめるわけにいかぬし、やるなら早いほうがかえって両国間の混乱を少なくして、早く解決する道である、こういうふうな御判断であったというふうにわれわれは漏れ聞いております。大体そういうようなこともいままでの検討の中で出たことと思いますが、それに対して石井法務大臣のお考えを伺っておきたい。
○石井国務大臣 いろいろ考えのうちに出たり引っ込んだりしたものがあるわけでございますが、どういう点においてどうだというはっきりしたものがあるわけじゃないのでございます。いろいろな諸般の情勢を考慮して、ことばとして出せばそういうことばにならざるを得ぬのでございます。どういうことがどうであった、こういうことがこういうふうであったということを申し上げて、いかにもひとりよがりのような、自分だけいい子になるようなことを申し上げるわけにはいかないのでございます。政府はみんな一体となって相談し合って、一体の声としてこれを許すということになった。今度もみんなが相談し合って話をきめたものでございまして、だれが賛成して、だれが反対したというものはないのでございます。
○穗積委員 続いてお尋ねいたします。
 八月五日の決定は、基本原則においては七月十五日の決定と何ら変わったものではない、従来の入国せしめるということに対する基本の方針を確認しておる、こういうふうに理解いたしますが、そうでありますならば、これに関連いたしまして二つのことをお尋ねいたしますから、一括してお答えをいただきたい。
 第一にお尋ねしたいのは、韓国側のいろいろな圧力、あるいはいやがらせ、場合によれば内政干渉、あるいは業者に対する威嚇、これらのものが行なわれておりますが、そういう情勢の変化があっても、この入国をせしめるという基本の原則は取り消したり変更したりするお考えはないと思いますが、その点をまず第一に明確にしておいていただきたいわけです。と申しますのは、これは外務大臣にもあとでお尋ねいたしますけれども、これを決定してから初めて韓国からの何らかのリアクション、あるいは日韓間における多少のフリクション、これがあるということはもう計算済みなんです。そのことは佐藤総理もわれわれに言われたし、それから内閣を代表して橋本官房長官もたびたびわれわれに言われておるところです。したがって、今後多少のリアクションがありましても、これは変えるべき性質のものではないというふうに当然考えますが、多少のあわ立ちがありましても、この基本原則そのものを変えるか変えないか、変えないのが当然だと思いますが、念のためにもう一ぺん伺っておきます。
○石井国務大臣 基本原則は、再三各方面の関係者から言明しておるとおりでございまして、変わりはございません。今後とも変わらないと思うております。ただそういうことを申しましても、しゃちほこ張ってばかりおるか、これはそうではないのでございます。そういうことが実現するためにもよく話し合いをすることが大事なことは御承知のとおりでございます。できるだけひとつ話し合いをしてもらって、そうして笑ってこの問題が解決されるような域に達することを私どもは期待しておるわけでございます。
○穗積委員 次に、関連してお尋ねいたします。
 それは、韓国からこの入国を延期または取り消すべきであるということを再々言ってきておりますが、常に言われることは、一番基本の問題は、日韓条約第三条で確認をしておる大韓民国は朝鮮全半島における唯一合法の政権であって、したがって、これとの間に国交回復した日本としては、北朝鮮の政権または国民との間における政治的な接触あるいは交流、これはすべきではないということを終始言っておるわけです。したがって、これは私どもの国会の審議における経過からいきましても、政府、佐藤内閣の説明からいたしましても、少なくとも韓国側の条約に対する誤解である、われわれからいえば、これはいわれなき不当の抗議である、こういうふうに私どもは考えますが、そうでありますならば、これは八月一日から始まった一週間の間にやればフリクションが多いけれども、延ばせば円滑に実施ができるという性質のものではないと思うのですね、基本の原則がそういうととろへ向こうはいっておる以上。そうでありますならば、これは後に外務大臣には詳しく実はお尋ねするつもりでございますけれども、石井法務大臣は所管大臣として内閣で決定してもうあと石井法務大臣の裁決によっていつでもできるという事務手続まで進んだわけですね。したがって、それらについての石井法務大臣の御理解ですよ。韓国側の申し入れば誤解または不当な申し入れである、こういうふうに理解して対処すべきだと思うのですが、その点についての大臣の御認識を伺っておきたい。
○石井国務大臣 条約上の解釈問題は、法務大臣というよりは外務大臣からあれしていただくほうがいいと思いますから、外務大臣にあとでやっていただきますが、韓国側がどうおっしゃるか知りませんが、私どもはこの問題をここで一応踏みとどまりまして、しかし方向はこのとおり、きめたとおりでございますと言っておりますことは、その間にできるだけの話し合いをして、日本と韓国との間のいろいろな問題、こればかりでなく、いろいろな問題がこれから仲よくしていく上にも起こるにきまっておる、これはその一つだと私は思うのであります。こういう問題を、理屈はおれのほうが通っておるのだからと言ってぽんぽんやってしまって、けんか腰になってばかりやるべきものでもないので、時間がかかってももう一ぺん踏みとどまって、二へんも三べんもよく話し合ってみるということで、ひとつ円満なところへ――まあまあ十分われわれ満足はせぬけれども、それならしかたないというところまで来てもらうように話を進めてもらいたいという心持ちでおる、そういうつもりでございます。
○穗積委員 いま言いましたように、日韓基本条約の一番中心の第三条の解釈にかかわる問題ですから、相手は時間をかけて話しても、これは納得ずくで円満にいくなんということは期待すべからざるものであって、この際は、日本の国益、日本の条約に対する解釈の立場からいけば、こういうことは正当な立場に立って日本側の条約に対する解釈を――すなわち日本側は北朝鮮のオーソリティを認める、それとの間においては現在は白紙である、しかしながらその他の経済、文化、人事の交流についてはケース・バイ・ケースで前向きにやっていく、こういうことが第三条に対する政府の解釈であったわけですね。そうであるならば、相手が納得するまで待つのだといったら、永久にこれは円満妥結ということは不可能なことです。どうなさるつもりですか。もし相手が聞かなければ、情勢の変化と称して七月十五日の入国せしめるという決定を取り消すつもりであるかどうか、その点をもう一度、くどいようですけれども、大事な点ですから、法務大臣に伺っておきたいと思うのです。
○石井国務大臣 話し合いがつかなければ取り消すということは考えておりません。同時に話し合いを続けていくつもりでございます。あなたのおっしゃるように、この問題はもう意見の相違なんだからほっぽって、こちらだけ片づけてしまったらどうかということは、国際間の問題はそうはいくとは思いません。かつ、日韓の間の問題というものは十年かかって懸命にわれわれが努力して結んだ日韓条約です。そういう問題にこの一つの問題でけんか腰になって、そうして相別れ、おまえはおまえ、おれはおれというようなことにまですることはない。もっとおとならしく話し合いをしてやっていく、そういう時間を少しかすというだけの余裕を持っていきたい、こういうのが私どもの考えでございます。
○穗積委員 大臣、私はむやみにけんかを売れということを一言も言っておりませんよ。こういう基本条約の解釈、原則についてははっきりしておかないといけないのです。そういうことで、そのときそのとき相手がかってな解釈をし、あるいは、善意に解釈しても、誤解に基づいて言いがかりをつけてくれば、何も自主的な外交方針は立たない。実行はできないということになるおそれがありますから、したがって、これはき然たる態度をもって早期に話し合って解決すべき問題だ。元来、そういう点がわれわれ気になったので、昨年の日韓の国会審議の場合には慎重審議でやるべきだと言ったのに、佐藤さんは慎重審議の看板をみずから踏みにじって強行採決をされて、一番大事な点を審議未了のままにこれを通してしまったからこういうことになっておるのです。何も私はけんかを売れということを言っておるのではありませんよ。基本条約の問題、基本原則の問題ですから、き然たる態度をもって早期に解決することこそが一番望ましいことである。この一技術者の入国問題に限らないことですよ。だからそれをまっ先に早期にき然たる態度をもってやるべきだというふうに考えますが、石井さんのお考えはどうですか。のらりくらりと話し合い、話し合いと言って、そんな態度が一体わが国の自主外交の正しい態度でありましょうか。大所高所に立っての御意見をもう一ぺん伺っておきたい。
○石井国務大臣 私は、日本の総理大臣がこの問題の解釈について述べたことは、この際話し合いと言って、曲げようと言っておるのではありません。その筋は通すべきだと思う。通すために話し合いをしていく、こういう意味ですから誤解のないように……。
○穗積委員 その基本の態度については了解いたします。ただ問題は時期の問題なんです。それで、実は私どもの観察しているところでは、これは早期解決のほうがかえって混乱を少なくするゆえんであるという判断を政府の中でも持っておられる方が非常に多いわけですけれども、特に外務省が言を左右にしましてこの問題を延期し、あるいは場合によって延期することによって自然蒸発をさせたいというような策動もしておるわけですね。だからそれにつきましては、おもに原因は、時期を決定するものは外務省にあるというふうに私どもは判断いたしております。これは大体間違いないところだという判断をいたしております。ですから、ここで一ぺん外務大臣の御意見を伺うべきですけれども、そうしておりますとあなたのお時間に差しつかえいたしますから、これはあとで外務大臣にお尋ねすることとして、あなたについての問題を先にお尋ねをしたいと思うのです。
 それは、一番大事なかなめは、次に問題になるのは、御承知のとおり、朝鮮側の当事者と仮契約を結んでおるのはわが方では東工物産、それから代理申請をしておるのも東工物産であります。東工物産のみであります。そこでいろいろな韓国側のはなはだしく非常識な内政干渉、圧力あるいは脅迫とすら思われるような圧力に屈して、その契約を執行するための協力者の一部であった呉造船は自発的に引き下がったわけです。ところがこの執行についてもう一つの協力者である東邦ベスロンは引き下げるということを意思表示をいたしておりません。特に代理申請者であり契約の責任者である東工物産は、これは国際信義にかかわることであり、日本の業者として国際的な信用にかかわることである、威信にかかわることであるということで、いわゆる政府が言うような韓国側の誤解または不当な理由による言いがかりがあろうとも、これはあくまで執行するんだという態度でおるわけです。そうでありますならば、ここで法務省にお尋ねいたしておきたいのは、東工物産が代理申請者です。この東工物産が多少時間が延びましても、あるいはいろいろな圧力がありましても、あくまでもとの契約上の信義誠実の原則は貫くのだ、こういうことでありますならば、この代理申請なるものは法律的に見まして有効である。したがって政府の方針も変わらず、東工物産の代理申請も引き下げないということでありますならば、それのみをもって私はビザを発給する条件は整い、政府としては発給しなければならないというふうに解釈をせざるを得ません。それが正しい態度であると思います。私の感想をつけ加えまして大臣のお考えを伺っておきたいのです。
○石井国務大臣 いまおっしゃるのは、東工物産からいま出しておる東邦ベスロンですか、それとの関係がそのままであれば、そのまま時期が来たら許すということに変わりないだろうなとおっしゃることですね。(穗積委員「そうです」と呼ぶ)そのとおりです。
○穗積委員 実は、実情も御存じのとおりですけれども、韓国大使館が不当な内政干渉をいたしまして、そうして東邦ベスロンに直接あるいは金融機関その他の商事会社を通じて不当な圧力を加えております。それで今日まで非常な苦しい思いをしながら国際信義に反してはいけない、これは一商社あるいはメーカーの会社の信義の問題ではなくて、日本の国際貿易における重要な信義の問題として、権威の問題としてがんばっておるわけです。多少の動揺があったことは事実でございます。そうでありますならば、私がお尋ねするのは、東工物産が契約の責任者で当事者であり、代理申請人であるわけです。これが引き下がらない以上はこの申請は有効である、政府の原則に従って処理しなければならないというふうに解釈すべきでありますが、そのとおりでございますね。
○石井国務大臣 あなたのどういうところに――私の言うたのは何か違うのですか、あなたのおっしゃるのと私の言うておるのと。いまの東工物産が東邦ベスロンをもってそれを北鮮のほうに売るということで願い出ているのでしょう。その関係で出ておるのだから、それは変わらない、圧力があるけれども変わらない、それが出ておる限りは、ある時期が来たら許すだろうなとおっしゃるんですね。――そのとおりです。御心配なく。
○穗積委員 私の聞いておるのはこういうことなんです。東邦ベスロンは、動揺しながら、現在の時点においては変わっていない。しかしながら、もし不当な圧力に屈して、これが万一変わったときに、そうなると東工物産としては責任上下請をかえることは自由なわけです。したがって東工物産が引き下がらなければ、この代理申請はあくまで有効である、こういうことなのです、私の言うのは。
○石井国務大臣 それは、東工物産に許して、東邦ベスロンが引き下がらぬとあなたはおっしゃっていたが、引き下がるかもわからぬ。引き下がっても東工物産には許せとおっしゃるのですか。おかしいじゃないですか。何もないのに、東工物産には何も見るところはないじゃないですか。工場を見るんだから、工場を見るものが出てこなければ許すところがないじゃないですか。東工物産は商売の会社です。商事会社です。これは先のことだから、先のことにしましようや。私、いまの状態において出ているものは、そのままにおいてはっきり言っています。
○高瀬委員長 穗積君に申し上げます。法務大臣の退席の時間が迫っておりますから、どうぞ簡単に。
○穗積委員 それは、私は法理的に言っているだけのことなんです。法理的に言っているのであって、下がることを予想して言っているのではないのです。東工物産と東邦ベスロンで――大臣、これは一問ですからよく聞いてお答えください。東工物産と東邦ベスロンと抱き合わせにおいてのみこれは許すべき問題であるというのではなくて、もしその下請である東邦ベスロンが途中でかわるようなことがあっても、そのときに契約の責任者であり、代理申請者である東工物産が、同様の契約を履行することのできる能力を持った他の下請会社をあらためて選定すれば、ここでその申請は有効である、そういうことなのです。
○石井国務大臣 それはいまただ抽象的なお話を承っても何ともお答えしようございませんけれども、そういうものが出てくれば、今まで好意的に私ども見てきましたが、何も悪意的にこれを見ません、見ませんが、実際問題になってから御相談をいたします。そういうことになります。それはそういうことだ、こういうことを許すということをはっきりここで申し上げる筋はないと思います。これは現実に出てこなければ……。
○高瀬委員長 急いでいるから簡単に願います。
○穗積委員 ちょっと待ってください、それは大事な点だから。――それは契約の自由は、わが国においては政府が干渉すべき問題ではないのですよ。民間同士の自由の契約になっておるのです。それは資本主義の原則ではありませんか。そのときに契約を結んだ責任者は東工物産である。それからそれに対して協力する下請工場は、それは状況によって、あるいは条件によって変更することは自由でありましょう。そういうことはあり得るじゃありませんか。それに対して政府が干渉したら……。
○石井国務大臣 ちょっとお待ちください。いま出ておりますのは東工物産である、こういう会社の工場をここへやってみたいということ、それに対して向こうの技術者が来ることを認める。これはケース・バイ・ケースにおいて認めているわけなのです。原則的にどういうものがどうだといって認めるなら、ケース・バイ・ケースに認めるということばは出てこないわけなのです。だからこれはケース・バイ・ケースの問題になります。かわりますれば、これは別の問題になります。ケース・バイ・ケースとして、しかし前にそういうことがあったのだからそれに近い心持ちで見るということは考えます。しかしこれはケース・バイ・ケースの問題として、はたしてそれだけの値打ちがあるものかどうかということを考えるかもわかりません。まあ、たいがいはあなたの御希望に沿うかもわかりませんけれども、いまの場合に、それは当然だ、東工物産に何でもいいというわけで入国を許すかどうかは、その場にならないとわかりません。
○高瀬委員長 穗積君に申し上げます。あまり個人的な、私語的な話にならぬでください。
○穗積委員 法務省は法理的に解釈しなければいけないでしょう。だから東邦ベスロンにかわる具体的なものが出たときにそれを審査することは許されましょう。しかしながら入国の申請は東工物産がやっている。
○高瀬委員長 石井法務大臣の退席を許可します。時間の関係があるから……。
○穗積委員 大臣、逃げないでください。
○石井国務大臣 局長を残しておきますから。またあなたとゆっくり懇談します。
○穗積委員 では局長から、純法理的に御答弁をいただきたいと思います。
○八木説明員 私どもは、今度の入国問題というのは、東工物産が代表して申請しており、また北鮮の機械輸入公社との間に代理して仮契約をしました合成繊維のプラント輸出の問題があり、それが仮契約の済んだあとは、向こうの技術者が日本の関係工場を技術的な立場から見て安心して商談ができるというための入国、そういうように初めから理解しております。そこでいま御質問にございましたいろいろな点を私どもあちこちから耳にして聞いております。また関係者も直接呼んで二人だけで話しておりますが、いま大臣の申しました点を私なりに解釈して申し上げれば、東工物産が申請しておりますそれに対して許可をするということの決定が政府として七月十五日に行なわれたわけでありますが、次に問題になっております東邦ベスロンがいわゆるおりるとか、おりないとかいうことがしきりにうわさが出ておるようであります。おりるということのことばの意味でありますが、この計画は、東工物産という会社が全体をまとめて契約した、そのプロジェクトの一番大きな比重を持っておるのが東邦ベスロンの持っておる技術でございます。もしその技術を東工物産に提供しないということになりますと、これは初めから話ができませんから、それはプラント輸出をしたくてもその輸出はできない、物理的にできないと思います。そうじゃなくて、今度は東邦ベスロンを含んでその他幾つかの会社がプロジェクトの具体的な機械の部分をあちこちで分担してつくるわけです。先生が先ほど申されましたそういう下請的な機能の範囲において、東邦ベスロンが何らかの事情で辞退するといっても、それは幾らでもほかに会社がございますから、われわれとしては何ら問題はない。大臣がそういう点は心配ないとおっしゃったのは、私はそういう意味だと解釈します。もしそうじゃなくて、東邦ベスロンが、何かの理由で、たとえば三年間の契約のために非常に大きな犠牲を払わした東工物産であっても、あえてその損害を見越してでもどうしてもおりる、おりるというととは自分が技術を提供しないということになりますれば、それは東工物産と東邦ベスロンとの間に民事契約上の問題も起こりましょうし、また先ほど御指摘のありましたように、日本の産業界の国際的な不信という問題も当然伴うと思いますが、ただ入国問題としては、その場合には対象が消えてしまうわけでございます。私は関係者にたびたび言っておることは、そういう事態になるとするとわれわれとして非常に困る、立場上からいっても、政府があれだけ検討した上で許可を出したというのは、あなた方がその契約を実現するという前提でその許可を出しておるのだと言っておるので、あなた方がかってに急に変わったといって取り下げられては困るということでそれとなく聞きましたが、私に対しては向こうの責任者は、そういうことはあり得ない、物理的にも可能なことだということをしきりに言っておりまして、その辺になりますと、契約と申しますか、そういう経済面のことになりますと、入国問題は別になると思うのです。
○穗積委員 八木局長の原則的な御理解についてはわれわれ了解いたします。その原則に立って今後も依然として貫いていただきたいということを強く要望いたしまして、今度は外務大臣にお尋ねいたします。
 先ほどからお話しのとおり、韓国側からの多少のリアクションがあるということはもう当初から計算済みで、それをつぶさに検討した上でこれをやったわけです。しかも韓国側の言っております理由なるものは、先ほど申しましたように、基本条約第三条の唯一合法政権の問題に対する解釈について、それをたてにとって、われわれが国会で政府の方針として伺ったところとはおよそ違うものを理由にしてきておるわけですね。したがって、私はここで二つのことが言えると思うのです。第一は、日本があらゆる情勢を検討して、これが国益に合致するものとして、七月の十五日の決定をしたのに、手続は二十九日で完了しておる。にもかかわらず、これをなぜ延ばすということのこそくな方針をとったかということは、第一番にわれわれが強く言いたいことは、韓国側の圧力に日本外交は屈して、そして自主性のない、権威をみずから破るような態度に出たはなはだ遺憾な事件ではないか。これはこの事件一つに限りません。今後韓国との交渉の中で、経済面におきましても、あるいは文化、人事の交流、あるいはまた漁業問題につきましても、陸続としてこういう問題が出てくるわけですね。したがって、外務大臣にお尋ねいたしたいのは、こういう一体自主性のない、韓国側の圧力に一方的に屈するような態度というものが、はたして日本外務省に許されていいのかどうか。これは単に自民党の外務省ではないわけです。国際的な日本国民全体を代表する外務省であるべきでありますから、こういうような自主性のない、権威をみずから破るような態度というものは誤りであるというふうに私は考えます。その点について外務大臣は一体どういうふうな理解によってこれをお延ばしになったのか、その点の御心境を伺っておきたいのです。
○椎名国務大臣 これは法務大臣とも相談をして意見が一致して、基本の方針は変えないが、現実に旅券を発給するということは、この際情勢が思わしくないからこれを延ばそう、こういうことにしたわけでありまして、別に韓国の圧力に屈したというようなものではありません。
○穗積委員 圧力に屈したのではありませんか。
 それじゃ、続いてお尋ねいたしましょう。韓国側が中心の理由にしておるものは、基本条約第三条の解釈についてであります。これは、国会においてもたびたびわれわれがお尋ねをし、政府は繰り返してこのことを幾たびか韓国の解釈とは違った解釈を、これを貫くのだ、心配はないのだ、だから通してくれということを言われたわけですね。この韓国側の言い分と解釈、あるいはこれに対する反対の理由になっておるこの第三条の解釈は、これは誤解であるか、あるいは不当な申し入れであるか、いずれかであろうと思うのでありますが、その点について外務大臣のはっきりした御答弁をもう一度お願いしておきたいのです。
○椎名国務大臣 韓国は日韓基本条約をきめたたてまえから、日本がこのようなことをできないようになっておるというようなことを国内的に何か説明しておるようなふうに伝え聞くわけでありますが、韓国がこの第三条をたてにとって、これは日韓条約の違反である、だから北鮮の技術者入国は許すべきでないという主張はひとつもしておらない。ただ、事そのものをつかまえて、そして、それは困る、困ると、こういうことを言っておるだけであります。だから、第三条を理由にして主張しておるのじゃありません。
○穗積委員 そんなことはありません。われわれの見たり聞いたり、報道の報ずるところは、すべて一番中心のよりどころは、第三条に対する解釈ではありませんか。アジア局長、どうですか。
○小川説明員 ただいま大臣のおっしゃいましたとおりでございまして、韓国が、われわれとの折衝において主張しておりますのは、国民感情でございます。韓国の国民感情に触れるから何とかやめてもらいたいということを言っておるのでございまして、そのいろいろな付帯的なものとして、たとえば第三条だとか、あるいは北鮮と貿易することが韓国と敵対しておる北鮮の戦力を増すとか、そういうことを言っておりますが、主として韓国が言っておりますのは、韓国民の北鮮に対する国民感情であります。
○穗積委員 それでは伺っておきます。これは条約局長から伺うのを、それを大臣が確認をしてもらえばいいのだが、基本条約第三条の解釈については、韓国の解釈は誤りですね。
○藤崎説明員 韓国が第三条をどういうふうに解釈しておるかということは、正確な文言について申しませんと、また誤解を生むおそれがありますが、日本政府がこれまで申しております解釈が第三条の解釈としては唯一の正しい解釈であるというふうに少なくとも私どもは確信いたしております。
○穗積委員 それでは日本政府の解釈の統一見解をここでもう一ぺん明らかにしておいてもらいたい。
○藤崎説明員 この基本関係条約第三条は、国連決議一九五(III)の趣旨、すなわち、第一に、朝鮮人民の大部分が居住する部分に対して有効な支配と管轄を及ぼす政府が確立されたこと、第二に、この政府は、国連監視下に行なわれた自由選挙に基づくものであること、それから第三に、この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であること、こういう国連決議の趣旨をそのまま確認したものでございます。したがいまして、わが国と北鮮との関係というようなことについては、何ら触れておらないというわけでございます。
○穗積委員 そういたしますと、第一にわが国も六三年の第十八回総会における決議には参加しておるわけです。これは前年の第十七回総会の決議を見ましても、ここから、朝鮮民主主義人民共和国という名前がちゃんと国連の決議の中に出ておるわけですね。それを十七回総会でも確認をし、日本も参加いたしました十八回総会においても、これを確認しておるわけであります。したがって、三十八度線というか、停戦ライン以北を管理する朝鮮民主主義人民共和国の存在することは事実これを認め、そのオーソリティーを認める。それと日本との間の関係については、日韓条約によって何ら拘束せられるものでない。その経済、文化、人事の交流その他の接触については、ケース・バイ・ケースにこれをやっていく。これでよろしゅうございますね。
○藤崎説明員 休戦ラインの北側に一つの政権がある。事実の問題としては、そういうことは否認しないわけであります。それといかなる接触を持つか、交流を持つかということは、この基本関係条約第三条とは直接関係のないことである。こういうことでございます。
○穗積委員 大臣、お聞きのとおりです。お聞きのとおりでよろしゅうございますね。
○椎名国務大臣 よろしゅうございます。
○高瀬委員長 穗積君、あと五分間しか外務大臣の時間がありませんから……。
○穗積委員 そうすると、韓国側の解釈というのは、根本的に誤っておるわけだ。しかも常に国民感情といい、国会における説明といい、あるいは政府が国民を納得させたいままでの言動の中には、同じ条約文章でありながら、一つの文章でありながら、それとはうらはらの違った解釈をやっておる。それが今度の入国に対する抗議の基本的なものになっておるわけです。こういうようなものを、この際多少時間を延ばしてやりましても解決すべき性質のものではないのですよ。したがって、これは韓国の国会でも言っておるように、日韓両国政府の間でこういう具体的な問題以前の問題としてもう一ぺんよく交渉すべきである。そうして両国間における統一解釈というものを明確にしておくべきである。これはこの事件のみならず、今後陸続として起きる諸般の問題についてことごとく関連があります。適当な機会に必ず統一解釈を取りつけるということの必要を私は感じますが、大臣はそれをおやりになる腹があるかないか。
○椎名国務大臣 先ほども申し上げたように、入国問題の大きな理由として、韓国政府の管轄権の問題が全朝鮮半島に及ぶといったような問題を表面に出して日本に抗議しているのじゃないのです。いま小川局長が言ったように、韓国国民の感情が絶対に許さないのだ、こういうことを言っておるのです。この管轄権問題すなわち第三条問題というものを日本に持ち出していないのです。よそで言っているけれども、日本に対しては持ち出していない。であるからして、相手にしようにもしようがないわけです、向こうがそういうことを言っていないわけですから。
○高瀬委員長 穗積君、簡単に願います。
○穗積委員 時間の御催促でありますから、続いて簡単にお尋ねいたします。
 佐藤総理並びにあなたが、技術者入国問題に関して親書と称するものをいままでわれわれの知っておるところでは三通出しておられるわけであります。それは韓国の国会でも問題になっておる。これは秘密のものではないということを向こうでも言っておる。そうであるならば、これはわが国の国会においても当然公表さるべき性質のものであると思います。このことについて、私はこの問題の起きましたときに、事前に当委員会におきまして、政経分離原則は北朝鮮には適用をしないとか、あるいはまたその他の今後日本の外交の自主性と自由を拘束するような文書を出さないということをあなたは確答なすったのです。そういうわけでありますから、これは至急に当委員会において発表していただきたいのです。いかがでございますか。
○椎名国務大臣 陳謝の書簡は出しておりません。それから外交文書は、相手に出した書簡ですからむやみに発表するものじゃない。たとえその写しであろうと、かってにこういうものを出しましたということは外交慣例上やらないことになっておる。ただ差しつかえない程度において内容は申しますが、これはもう決していままでの方針に反するものではない。ただ政府の従来の方針のワク内において文書をしたためたというものであって、その以外のものを約束するとかいうようなことは絶対ないということだけは申し上げられます。書簡そのものは公表はできません。
○高瀬委員長 穗積君にちょっと申し上げます。パキスタン大使との午さん会のお約束があって、もう退席しなければなりませんから、したがって石野君の質問も今回は割愛していただかざるを得ません。
○穗積委員 何を言っている。それはあなた、約束が違うじゃないか。
○高瀬委員長 先ほどから申し上げておるとおりですから……。
○穗積委員 それでは一括してお尋ねいたします。
 まず第一に、韓国大使館を中心とする韓国側の日本業者に対する内政干渉が非常に行なわれておる。これは接触することはあり得るのですよ。しかしながら、日本の政府が国策として決定したこの入国許可の問題を事実上くずしてしまうようなことは、明らかな内政干渉でしょう。これは先月二十二日の外務委員会において、私もお尋ねをいたしました。それで小川アジア局長は、そういうことはさせない、調査をした上、適当な処置をとりますと言った。同じ二十二日の大蔵委員会において福田大蔵大臣は、調べた結果、銀行に対するいささか行き過ぎの接触があったように思う、これははなはだ遺憾であるから、外交ルートを通じて韓国側に注意をさしておる、こういうことを言われたわけです。その材料は、必要であれば私どもの調べたところでも枚挙にいとまないほど多数な材料があります。それをその後調べてどういう処置をされたか、今後どういう処置をとられるつもりであるか、明らかな内政干渉だと思うのですが、これについてお尋ねをしておきたい。
○椎名国務大臣 前からもお話ししてありますが、日本がアメリカにおいて日本品の輸入防遏、それの綿布問題の運動をやったり、あるいは議会においてそういう問題が取り上げられるというような場合には、日本の出先大使をはじめとして、あらゆるこれの通過をはばむような運動をしておったわけであります。でありますから、その任国において行なわれることに対して唯々諾々として何でもあのとおり従わなければならぬというような、そういう動きは各国とも大公使はしてないと私は思う。またそういうことを制限すべきじゃないと思う。ただ、いま御指摘になりましたように、行き過ぎはどうもいかぬ、こういうことはよほど微妙なことでございまして、われわれのほうからも、韓国大使館のほうに対してとかく誤解を受けるようなことは慎んでもらいたいということは、一再ならず注意をしております。
○穗積委員 それに対して、相手はどういう態度をとりましたか。
○椎名国務大臣 ですから、そういうことにならないように注意を喚起しておる、こういうわけであります。
○高瀬委員長 時間がありませんから、簡単に打ち切ってください。
○穗積委員 それでは最後に、先ほど帆足委員がお尋ねをいたしたことに関連をして、二点だけ一括してお尋ねをしますから、結論だけでよろしいから明確にしていただきたい。
 実は帰国協定は期限が十一月十二日で、その三カ月前、きょうですね、実は延長するかどうするかということが合意に達するはずになっておるが、先ほど来の御説明のとおり、これが回答が出ていない。そうであるならば、これが延びましても本協定の延長に法律的には影響のないものだと理解いたしますが、その法理解釈を伺っておきたい。
 それからもう一点は、先ほど外務大臣は終戦処理の事件のように言われましたが、それであるならば、ある一定の期限を置いてその期間でやる、あまり長期間にわたるというのは国際的にも非常識だ、こういう御発言があったのです。ところが日本と朝鮮人との関係は、交戦国間の終戦処理の問題とは違うのですよ。半世紀近くの間の植民地支配からずっと累積されてきた問題であって、在日朝鮮人の立場というものは、そんな交戦国の国民の終戦処理事件とは違うのです。単に人道上の立場という問題だけでなくて、もう一つ重要な認識は、交戦の相手国の国民の帰国の問題と終戦処理問題とは事の性質が根本的に違うということです。この二点を私は明らかに認識をしていただいて、これは帆足委員が言われたとおり、可及的すみやかに本協定の延長に支障のない態度方針をきめ、それに支障のない時期に早く回答をしてもらいたいということを申し上げます。
 これに対して大臣から一括してお答えをいただきたい。
○椎名国務大臣 法理解釈の問題は条約局長に譲りまして、第二の点は、別に終戦処理というようなことを私は申しておりません。できるだけすみやかに解決するようにいたします。
○高瀬委員長 石野君、五分間だけ、簡単に。
○石野委員 外務大臣にお尋ねします。
 先ほど来、帆足、穗積両委員から聞いていることで、どうも帰国の問題にしても、入国の問題にしてもつっかかるところは、やはり日韓条約の第三条に関係しているようです。そのことについては、いま帆足委員からいろいろ聞きましたので、私ども一般に国民という立場で、どうも今度の問題で解せないのは、たとえば帰国協定の問題について、これをいま一年間延長するとか、あるいはまた赤十字精神に何か改定を加えたり、あるいはそれを廃止しなければならぬような理由として、この帰国協定があった場合、日本はどういうように損が出てくるのか。この点がどうもわからない。この帰国協定をこのまま残しておいたらどういうふうに国の損があったり、あるいはまたわれわれにとって不利益が出てくるのか、そういう点がどうも明確にならない。いま政府が三省間でいろいろ意見の調整中であるとか、あるいはそれに対して帆足君がしつこく聞きましたことについての代案等も何も用意されていないままで、いま混迷しておるという理由がどこにあるかちっともわからない。だから外務大臣からひとつ、この帰国協定を何か持続することが不利益になったり、あるいは国のために非常に不利になるということは、こういうところと、こういうところと、こういうところだということを、明確にこの委員会でお聞かせいただきたい。
○椎名国務大臣 そういう特権を与え、それからそのために国費を費しておるという必要はだんだん薄れてきておるという情勢にかんがみて、この問題を処理しなければならぬというのが関係方面の強い意見でございます。
○石野委員 いまの大臣の、帰国の問題について特権があるということについては、赤十字の人道上の立場から出ているのであって、外交上というよりむしろ人道上の立場でしょう。それから、国費の問題については、どの程度国費が要るか、その点について大臣から直接伺いたい。
○椎名国務大臣 経費の問題は事務当局からお答えいたしまして、私、約束がありますから失礼いたします。
○高瀬委員長 退席してけっこうです。
○小川説明員 経費の問題は厚生省が担当しておりますので、直接にはお答えできませんが、私の承知しておるところでは、約九千万円程度と存じております。
○石野委員 大臣にかわって局長が答弁するそうですか、特権というけれども、帰国の問題についてはどういう特権があるのですか。在日朝鮮人に対して、いま国交が正常化されていないで、しかも二十年間も自分の祖国と行き来ができない、しかも帰ることも許されない、何が特権なんです。外国に在留するところの外国人の正常な権利であって、特権でも何でもないんじゃないですか。どういうところが特権なのか、そこのところをはっきり政府の考えをお聞かせ願いたい。
○小川説明員 大臣が特権と言われましたのは、私どういう意味か直接に伺っておりませんからわかりませんが、おそらく帰国のために特別の赤十字間の協定ができて、便宜が与えられておるということであろうと思います。
○石野委員 いや、これはもう大臣がいないからどうにもならないけれども、こういう局長の答弁などというものは答弁じゃないですよ、実際問題として。ばかにしておる。ぼくはこれはだめだと思う。やはり佐藤内閣の外交上に持っておる信念といいますか、こういうものは全然ないんだということをここに明確にしておる。これは先ほど来言っておるように、帆足、穂積両氏からも言われたように、自主性のない外交の端的なあらわれだと思うので、私はこれ以上もう聞きません。
○高瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十五分散会