第058回国会 本会議 第23号
昭和四十三年四月十二日(金曜日)
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 議事日程 第十七号
  昭和四十三年四月十二日
   午後二時開議
 第一 議員穗積七郎君懲罰事犯の件
 第二 国家公務員災害補償法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 第三 製造たばこ定価法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 第四 酒税法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 第五 金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 第六 金属鉱業等安定臨時措置法を廃止する法
  律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 日程第一 議員穗積七郎君懲罰事犯の件
 日程第二 国家公務員災害補償法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 日程第三 製造たばこ定価法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第四 酒税法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第五 金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
 日程第六 金属鉱業等安定臨時措置法を廃止す
  る法律案(内閣提出)
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案(
  内閣提出)の趣旨説明及び質疑
 千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約
  の締結について承認を求めるの件
 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 船舶安全法の一部を改正する法律案(内閣提
 出)
   午後二時二十六分開議
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 議員穗積七郎君懲罰事犯の件
○議長(石井光次郎君) 日程第一、議員穗積七郎君懲罰事犯の件を議題といたします。
 穗積七郎君の退席を求めます。
  〔穗積七郎君退席〕(拍手)
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。懲罰委員長堀川恭平君。
    ―――――――――――――
  〔堀川恭平君登壇〕
○堀川恭平君 ただいま議題となりました議員穗積七郎君懲罰事犯の件につきまして、懲罰委員会の審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。(拍手)
 本件は、去る三月二十二日の本会議において、鯨岡兵輔君外四名提出の懲罰動議可決の結果、懲罰委員会に付託されたのであります。
 懲罰委員会におきましては、三月二十八日動議提出者の鯨岡兵輔君から提出の趣旨説明を聞き、四月四日本人穗積七郎君から身上弁明を聴取いたした後、四日、五日、九日と動議提出者の鯨岡君に対し質疑を行ない、また、五日、九日と本人穗積七郎君の出席を求め、質疑を行なう等、議員の身上に関することでありますので、きわめて熱心かつ真摯な態度で慎重審議を行なったのであります。
 かくて、九日質疑を終わり、本件につき懲罰事犯として懲罰を科すべきかどうか、及び懲罰を科すこととすれば、国会法第百二十二条に規定するいずれの懲罰を科すべきかについて意見を求めたところ、まず、藤尾正行君から、穗積七郎君の三月六日の外務委員会における総理に対する発言は、総理大臣の地位に対して礼を失したものであるばかりでなく、国会法第百十九条に規定する無礼の言であり、議会の尊厳と議員の品位を傷つけるものであるとの理由によりまして、本件はこれを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、三十日間の登院停止を命ずべきとの動議が提出されました。また、石野久男君から、穂積君の発言は、総理の答弁が、総理みずからが述べた愛国者という精神と相反するものであったので、愛国者の対語として売国者と言ったのであって、何ら侮辱的な意思のないことは明らかである。かかる発言を懲罰として取り上げることは、院内における発言の自由の確保という見地から言っても、承服しかねるとの理由により、本件は懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議が提出され、さらに曾祢益君から、穂積君の発言は、議院の品位並びに議会の権威から見て不適当である。法規に照らし、事犯の性質からいって、本人が遺憾の意を表し、陳謝し、取り消すことが最も妥当と考えるとの理由により、本件は懲罰事犯として、国会法第百二十二条第二号により、公開議場における陳謝を命ずべしとの動議が提出されました。
 次いで、以上の動議につきまして討論が行なわれましたが、ここにその要旨を申し上げます。
 まず、自由民主党の鍛冶良作君から、「国会議員は、お互いに国会の秩序を重んじ、その品位を保つべき重大な責務がある。これに反するがごとき行ないをなした者は、できる限り厳罰に処し、自後かかることのないようにお互いに相戒むべきものである。国会議員は、言論の自由を憲法上認められているからといって、国会の品位を傷つけ、秩序を乱すがごときことは許されない。国会法、衆議院規則にも秩序を守るべきことについて規定があり、特に国会法第百十九条には、無礼の言を用いてはならないと明記している。議論の内容がよいから何を言ってもよいのだということは許されない。ことに、内閣総理大臣に対して無礼の言がある場合には、ことさら重大である。この点からいっても、このたびの穂積君の発言に対して、厳罰をもって当たらねばならない。その懲罰の範囲についても、本人が改悛の情がないことから見て、国会法第百二十二条三号の三十日間の登院停止ということは、決して不当でないと思われるので、藤尾君の動議に賛成するものである。」旨の意見が述べられました。
 次いで、日本社会党の黒田寿男君よりは、「穂積君の、「佐藤総理は売国者である」という発言を罵言であり、品位を傷つけるという理由で懲罰動議を出されたが、これは罵言という性質のものではなく、その意思も全然ないことは明らかであって、同君は政治的評価の表現としてあのようなことばを使ったのである。このことばは、穂積君の政策論議の内容から論理的に導き出される政治的評価の表現であり、したがって、このことばは、同君の政策論議の内容、佐藤総理の政策批判の内容と切り離して考えることはできない。こういうものを議会の品位の問題として、懲罰の理由にすることは、はなはだ不当であり、議会のいわゆる品位の問題としてあげられるような事柄とは、次元を異にする高い政治的評価の問題である。したがって、こういうことばを理由として懲罰にすることは、理由にならぬことを理由にするものであって、穂積君を懲罰とすべきではない。また、議院には憲法に規定する自律権があり、国会法、衆議院規則には秩序についての規定があって、その中に品位条項があるが、これは議員の物理的行動による秩序違反に適用することは別として、発言に対し適用することは、特別に慎重を要し、ことに政治的内容の発言に対しては、原則としてこれを適用すべきでない。議員がその職責を十分果たすためには、議員の政治的発言は自由でなければならない。これは憲法、国会法、衆議院規則が保障するところである。穂積君の行なった政策論争中の一表現をとらえて、それが議院の品位を傷つけるものであるという理由で懲罰にすることは、懲罰権の乱用であり、議員の院内での言論の自由を議院みずからの手で取り上げようとするもので、議院の自殺行為である。ゆえに、石野君の懲罰事犯にあらずとの動議に賛成し、藤尾君、曾祢君の動議に反対する。」旨の意見が述べられました。
 次いで、民主社会党の曾祢益君から、「国会における言論の自由は保障されなければならず、特に多数派の横暴により、言論や思想を弾圧する道具に懲罰を悪用することは、最も強く反対するものであるので、本件についても懲罰事犯として取り扱う前に当該委員会において処理すべきことを主張し、かつ努力したにもかかわらず、穂積君並びに社会党側のいれられるところとならず、妥結を見るに至らなかったことは、まことに残念である。わが党は、沖繩返還についての佐藤総理の態度には反対するものであるが、このゆえをもって、総理大臣の公の立場における政策に対する政治責任の追及と、個人としての言動の動機に立ち入った道徳的価値判断とを、みだりに混同すべきものではない。総理なり、あるいは反対党の議員に対し、その政策の誤りのゆえに愛国者にあらず、売国者と断定することは、明らかに不当な独断であり、個人に対するいわれのない侮辱であり、議院の品位と議会の権威に照らして、断じて看過し得ざるところである。しかして、本件のごとき事犯については、事犯の性質が、主として個人に対する侮辱である面を重く見て、本人の陳謝が最も妥当であり、厳罰必ずしも適当でないと信ずるので、藤尾君の動議に反対し、また、石野君の動議にも遺憾ながら反対である。」旨の意見が述べられました。
 最後に、公明党の小川新一郎君より、「公明党としては、さきに本件を懲罰委員会に付することは、国会議員の身分、権威に対し、重大なる影響を及ぼすものであるので、慎重でなければならないとの見解のもとに、なお、外務委員会において収拾の機会を見出すべきであると考え、調停案を提出した。すなわち、売国者ということばは不穏当であるとの見解のもとに、これをみずから取り消し、遺憾の意を表明する。ただし、これは外務委員会の議事録に載せなくてもよいというものであったが、この調停案もいれられるところとならず今日に至った、売国者との発言そのものは不穏当であるが、問題発生の状態、その後の経過から見て、懲罰には値しないと考えられるので、藤尾君の登院停止、曾祢君の公開議場における陳謝には反対する。」旨の意見が述べられました。
 かくて、討論を終わり、採決を行ないました結果、多数をもって藤尾正行君提出の動議のごとく、本件はこれを懲罰事犯とし、国会法第百二十二条第三号により、三十日間の登院停止を命ずべきものと決した次第であります。以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。これを許します。黒田寿男君。
  〔黒田寿男君登壇〕
○黒田寿男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、穗積七郎君に対する懲罰に絶対に反対いたします。(拍手)
 以下、反対の理由と、穂積君の発言が懲罰に値しないその理由とをあわせて申し述べたいと思います。(拍手)
 去る三月六日の外務委員会におきまして、穂積君は、佐藤総理に対し質問中、佐藤総理は売国者であると発言いたしました。この発言が懲罰の理由とされておるのであります。右の発言は、沖繩返還問題を中心に穂積君と佐藤総理との間で行なわれました政策論争の中から出てきたものであります。穂積君は、沖繩が返還せられれば、当然非核三原則が適用せらるべきであって、核つき返還ということはあり得ないではないかと、こう述べたのであります。それに対しまして、佐藤総理は、白紙をもって臨むと、こう答えられた。これでは、ジョンソン大統領との会談において、佐藤総理は、米国側に、核つき返還の了解を与えておるものと疑わざるを得ないのであります。
 次に、沖繩返還後、攻撃核兵器であるポラリス潜水艦やB52の寄港や立ち寄りを認めますならば、それは憲法違反であり、総理が憲法を尊重するという以上、これを拒否すべきであるという穂積君の主張に対しまして、これまた白紙であると答えたのであります。これでは、ジョンソンとの会談の中で、寄港と立ち寄りを認める了解を与えているものと疑わざるを得ないのであります。
 さらに重大なことは、沖繩の基地自由使用問題につきまして、同じく総理は白紙論をもって答えました。基地自由使用は、直ちに、安保条約第五条の共同作戦行動の義務規定とつながり、米軍の一司令官の恣意的作戦行動によって、米国との共同作戦に引き込まれる危険がある。この危険からわが国の安全と平和を守る唯一の歯どめは、事前協議権の行使であります。沖繩の基地自由使用を認めるならば、事前協議権の放棄となるから、断じてこれを認めてはならないと穂積君が再度主張をいたしましたのに対し、佐藤総理は、これまた、白紙論をもってはぐらかそうとしたのであります。基地自由使用、事前協議権の放棄は、国家主権の重要部分であります防衛、外交権をアメリカの手に譲り渡すことになるのでありますが、白紙論にこだわるところから見ると、総理はこのことについての了解をもジョンソンに与えたものと疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 アメリカの核戦略体系への追随、ジョンソン一辺倒の自主性喪失の佐藤総理と、わが国の完全独立とアジアの平和を追求する穂積君との間に激しい政策論争が行なわれまして、その中から、「佐藤総理は売国者」ということばが出てきたのであります。それは佐藤総理の外交、防衛政策に対する高度の政治的評価の表現として用いられたものでありまして、両者の論争内容と切り離して、ことばから受ける感覚的印象のみで、これを無礼の盲あるいは品位損傷の言などと認めることは、理性の支配と言論自由のもとで、国会の場で働いておりますわれわれの断じて認めることのできないところであります。(拍手)
 なお、このことばは、佐藤総理のことばが誘い水になって出てきたという特殊な事情があったことを知る必要があります。あの日、佐藤総理は、ドゴール大統領の、自国の安全を他国の大統領のポケットの中にあるかぎに託すことはできないということばを引用いたしまして、このき然たる気概を持つ者が愛国者だといって、愛国者測定の尺度を示したのであります。その直後に、先に述べた論争が行なわれたのでありまして、佐藤総理のアメリカ追随、主権放棄の白紙論は、自国の安全を他国の大統領、いな、一司令官すらの恣意にゆだねることになるのでありますから、佐藤総理の尺度からはかりましても、それは佐藤総理の言う、いわゆる愛国者とはまさに逆なものとなる、そこをとらえて、穂積君は、売国者と表現したのであります。全くこれは学理的、論理的な表現をもって、佐藤総理の政策を評価したことばであります。このことをまず私どもは確定しておく必要があると思います。(拍手)そのことが大切であると思う。
 しかるに、このことばを、はるかに次元の低い、卑俗な、いわゆる無礼の言のごとく曲解いたしまして、それを理由に穂積君を懲罰に付しようとするのは、憲法の院内言論自由の保障をじゅうりんし、国会法の解釈を誤る、不法、不当の言論抑圧でありまして、断じてわれわれの容認することのできないところであります。(拍手)
 憲法が国会議員に保障いたしました院内言論自由の特権とはどういうものでありましょうか。国会においては言論が唯一の武器でありますから、その自由の保障は完全なものでなければなりません。憲法学の佐藤功教授は、これを次のように説明しております。「議会内において国政を批判し、または反対党を攻撃するにあたっては、個人の名誉を棄損する等の言論が行なわれることも避けられない。さればといって、これらの言論を抑圧しては議員の自由な活動を保障し得ない。特に政府が反対党の言論をとらえて、その刑事上の責任を問うこととなっては、議員の活動が不当に抑圧されることとなることは明らかである。そこで、これらの言論に対しても院外での責任を免除し、拘束を排除し、院内言論の完全な自由を憲法は保障したのである。」こう説明しております。これは憲法の免責特権について説明したものではありますが、この精神は、自律権の行使にあたりましても、特別に尊重せられなければならぬと私は考えます。(拍手)
 一方において、言論自由の保障とともに、他方、議院内部の秩序の保持も必要でありますから、憲法は、それを議院の自律にゆだねておりまして、その違反に対しましては、懲罰権の行使が許されております。ただし、議院内発言の自由は、免責特権をもって保障せられておるほどの完全なものでありますから、自律権の行使にあたりましても、この精神を尊重して、秩序維持に名をかりまして懲罰権を軽々しく行使して、憲法で保障せられた院内言論の自由を不当に侵害し、抑圧するがごときやり方は、断じて憲法上許されないところであります。(拍手)
 そこで、憲法の院内発言の完全な自由のもとで、なおかつ自律権によって規制せられる発言とは何であるかということを明らかにする必要があります。私は、国会法第百十九条がそれを示しておると思います。そこには「議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」こう規定されております。
 そこで、次に重要な問題となりますのは、国会法でいう「無礼の言」とは何かということであります。その内容のいかんは、議員の院内言論自由と重大な関係がありますから、これを正しく解釈することが、特別に重要な意義を持つと考えます。国会法でいわれております「無礼の言」の内容は、それが国会法上の用語であるということからいたしまして、憲法と国会法の条文内容に照らしてその解釈を定むべきものであることは当然であります。国会法は、その規定を見ますと、このことばが「他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」ということと並べられて示してありまして、この点から見ましても、この国会法にいう「無礼の言」とは、社会通念上、野卑かつ下劣な発言のことをさすのでありまして、同時に憲法の院内言論自由の保障の精神に照らしてみまして、院内の政治論争の中で、どんな激烈な政治的思想表現のことばが取りかわされておるというようなことがありましても、そのような場合の政治的発言を、このことばの中に含ませるべきではないと解釈すべきであると私は思います。(拍手)
 このような解釈のもとで、国会法の規定する「無礼の言」に該当して、それを懲罰の理由としたよい例は、あの吉田元首相の西村議員に対してなされました、ばかやろうという発言であります。国会法の規定で禁止されております。「無礼の言」というのは、具体的に申しますならば、このような野卑かつ下劣な発言をいうものでありまして、またこのような発言に限定せらるべきものであります。(拍手)この点が非常に重要であります。もしも政治的見解や政治的論争上の思想表現に対してまで、国会法規上の「無礼の言」の禁止を適用するならば、それは、このことばの不当な拡大解釈による不当な言論統制となり、憲法で保障されました院内言論自由の奪うべからざる特権を、議院の自律権の行使の名目によって、議会がみずから無視、じゅうりんすることになり、議院の自殺行為でありまして、(拍手)それが多数派による少数派の言論への圧迫として行なわれるようなことがありますならば、それは数による暴力であり、民主主義を装ったファシズムであるといわなければなりません。(拍手)私どもは、こういうやり方を断じて認めることができないのであります。
 今回、自民党が懲罰の理由としております穂積発言は、穂積君が院内発言自由の原則の上に立って、同君が佐藤総理の追随政策、自主性喪失、主権放棄の政策とみなしたものを、わが国の完全独立とアジアの平和を追求する立場から、高い政治的水準において政治的に評価したものでありまして、断じて無礼の言でも品位損傷の言でもありません。憲法と国会法と衆議院規則の上に立った堂々たる発言でありまして、断じて私どもは、このような発言に対し懲罰などをもって臨むべきではない、こう考えるのであります。(拍手)
 しかも、外務委員会の当日の経過を見ますと、外務委員長は、穂積君の発言に対して、秩序を乱し、または品位を傷つけるものとして、これを制止するようなことはなかったのであります。また、発言の取り消しを命じてもおりません。その後、速記録からの削除も、私、今日まで行なわれたようには聞いておりません。また、委員長の義務規定でありますところの懲罰事犯としての議長への報告と処分の要求もなされていないのであります。しかるに、自民党の有志議員諸君があえて懲罰動議を提出して、これを問題化したのであります。これは、最近の佐藤内閣の右傾化の流れに沿うファッショ化のあらわれでありまして、(拍手)多数をもってする少数派の言論への数の暴力の行使でありまして、私は、かようなやり方は憲法の言論自由原則に違反しておる、懲罰権の乱用であると考えます。こういうものは全く無効でありまして、私どもは、このようなやり方で穂積君に懲罰権を適用しようとすることは、断じて認めることができません。
 穂積君の発言がありましてから、今日まで、一カ月余りを経過いたしましたが、その間に、客観情勢の大きな変化があり、ジョンソン政策は、ベトナムでも、アメリカ国内でも、全世界的にも、音を立ててくずれ落ちつつあるのでありまして、穂積君の政策論の正しさがいまやますます明らかになり、佐藤総理の追随政策は、深刻な自己批判と根本的転換を余儀なくされつつあるではありませんか。(拍手)佐藤総理が総裁であるまさにその政党の中で、すでに一部勢力が新しい動きを示しつつあるのであります。
 問題のポイントは、だから、穂積発言をとらえて懲罰に付することにあるのではなくて、佐藤総理とその支持者の諸君が、穂積君の発言を自己反省の契機としまして、いままでの中国敵視を主軸とする佐藤・ジョンソン共同声明の線から、日中国交回復路線への転換へ、また、アメリカの軍事的利用を軸とする沖繩返還方針を改めて、民族固有の領土権の回復と、民族統一の要求に沿う返還路線への転換へ、また、ベトナム戦争協力政策の即時中止、こういう方向へと、従来のアメリカ追随の外交政策を根本的に転換して、わが国の完全独立、アジアの真の平和のための真剣な努力に向かって奮起することにあるのでありまして、これが穂積発言への自民党諸君の正しい対処のしかたであると私は思う。(拍手)その反省と転換なしに、ただ穂積君を懲罰に付して事足れりというような狭い量見を固執し続けていきますならば、穂積君の発しましたあのことばは、かえって広くかつ深く、国民の間に広がっていくのみであります。(拍手)
 この際、私は、自民党の諸君が、内外の大勢を達観し洞察されて、いさぎよく懲罰動議を撤回せられるよう勧告いたします。
 これをもちまして、私の討論を終えたいと思います。(拍手)
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 本件につき採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行ないます。議員穗積七郎君懲罰事犯の件委員長報告に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
  〔議場閉鎖〕
○議長(石井光次郎君) 氏名点呼を命じます。
  〔参事氏名を点呼〕
  〔各員投票〕
○議長(石井光次郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――開鎖。
  〔議場開鎖〕
○議長(石井光次郎君) 投票を計算いたさせます。
  〔参事投票を計算〕
○議長(石井光次郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
  〔事務総長報告〕
 投票総数 三百六十三
  可とする者(白票)        二百七
  〔拍手〕
  否とする者(青票)       百五十六
  〔拍手〕
○議長(石井光次郎君) 右の結果、議員穗積七郎君懲罰事犯の件は委員長報告のとおり議決いたしました。(拍手)
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 議員穗積七郎君懲罰事犯の件委員長報告を可とする議員の氏名
      安倍晋太郎君    足立 篤郎君
      阿部 喜元君    愛知 揆一君
      赤城 宗徳君    天野 光晴君
      荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君
      有田 喜一君    井出一太郎君
      井原 岸高君    伊藤宗一郎君
      伊能繁次郎君    池田 清志君
      石田 博英君    一萬田尚登君
      稻葉  修君    植木庚子郎君
      臼井 莊一君    内海 英男君
      浦野 幸男君    江崎 真澄君
      遠藤 三郎君    小笠 公韶君
      小沢佐重喜君    小沢 辰男君
      小渕 恵三君    大石 八治君
      大竹 太郎君    大坪 保雄君
      大野  明君    大野 市郎君
      大平 正芳君    大村 襄治君
      岡崎 英城君    奥野 誠亮君
      加藤常太郎君    加藤 六月君
      鹿野 彦吉君    賀屋 興宣君
      鍛冶 良作君    海部 俊樹君
      桂木 鉄夫君    金丸  信君
      金子 一平君    上林山榮吉君
      亀岡 高夫君    亀山 孝一君
      仮谷 忠男君    川島正次郎君
      川野 芳滿君    菅野和太郎君
      木野 晴夫君    木部 佳昭君
      木村 武雄君    木村 俊夫君
      菊池 義郎君    北澤 直吉君
      久野 忠治君    久保田円次君
      久保田藤麿君    鯨岡 兵輔君
      熊谷 義雄君    倉成  正君
      藏内 修治君    黒金 泰美君
      小泉 純也君    小坂善太郎君
      小峯 柳多君    小宮山重四郎君
      小山 長規君    小山 省二君
      河野 洋平君    河本 敏夫君
      佐々木秀世君    佐藤 文生君
      齋藤 邦吉君    齋藤 憲三君
      坂田 英一君    坂田 道太君
      坂村 吉正君    坂本三十次君
      櫻内 義雄君    笹山茂太郎君
      四宮 久吉君    志賀健次郎君
      始関 伊平君    塩川正十郎君
      塩谷 一夫君    篠田 弘作君
      島村 一郎君    正示啓次郎君
      白浜 仁吉君    周東 英雄君
      菅波  茂君    鈴木 善幸君
      砂田 重民君    砂原  格君
      世耕 政隆君    瀬戸山三男君
      園田  直君    田川 誠一君
      田澤 吉郎君    田中伊三次君
      田中 榮一君    田中 角榮君
      田中 龍夫君    田中 正巳君
      田中 六助君    田村 良平君
      高橋 英吉君    高橋清一郎君
      高見 三郎君    竹内 黎一君
      竹下  登君    谷垣 專一君
      谷川 和穗君    千葉 三郎君
      地崎宇三郎君    中馬 辰猪君
      塚田  徹君    辻  寛一君
      坪川 信三君    登坂重次郎君
      床次 徳二君    内藤  隆君
      中尾 栄一君    中川 俊思君
      中曽根康弘君    中村 梅吉君
      中山 榮一君    中山 マサ君
      永田 亮一君    南條 徳男君
      二階堂 進君    丹羽喬四郎君
      丹羽 兵助君    西岡 武夫君
      西村 英一君    野田 卯一君
      野田 武夫君    野原 正勝君
      羽田武嗣郎君    馬場 元治君
      橋口  隆君    橋本龍太郎君
      長谷川四郎君    長谷川 峻君
      八田 貞義君    濱野 清吾君
      早川  崇君    原 健三郎君
      原田  憲君    広川シズエ君
      福家 俊一君    福井  勇君
      福田 赳夫君    福田 篤泰君
      福田  一君    福永 一臣君
      藤井 勝志君    藤枝 泉介君
      藤尾 正行君    藤田 義光君
      藤本 孝雄君    藤山愛一郎君
      船田  中君    古屋  亨君
      坊  秀男君    細田 吉藏君
      堀川 恭平君    本名  武君
      益谷 秀次君    松澤 雄藏君
      松田竹千代君    三池  信君
      三ツ林弥太郎君    三原 朝雄君
      箕輪  登君    水田三喜男君
      水野  清君    湊  徹郎君
      武藤 嘉文君    村上  勇君
      村上信二郎君    村山 達雄君
      毛利 松平君    森下 國雄君
      森田重次郎君    森山 欽司君
      八木 徹雄君    山口喜久一郎君
      山口シヅエ君    山口 敏夫君
      山崎  巖君    山下 元利君
      山田 久就君    山中 貞則君
      山村新治郎君    吉田 重延君
      早稻田柳右エ門君    渡辺 栄一君
      渡辺  肇君    渡辺美智雄君
      斎藤 寿夫君    古内 広雄君
      松野 幸泰君
 否とする議員の氏名
      安宅 常彦君    阿部 昭吾君
      阿部 助哉君    赤路 友藏君
      淡谷 悠藏君    井岡 大治君
      井手 以誠君    井上  泉君
      井上 普方君    伊賀 定盛君
      猪俣 浩三君    石田 宥全君
      石野 久男君    石橋 政嗣君
      板川 正吾君    稻村 隆一君
      枝村 要作君    小川 三男君
      大出  俊君    大柴 滋夫君
      太田 一夫君    岡田 利春君
      岡本 隆一君    加藤 清二君
      加藤 万吉君    勝澤 芳雄君
      角屋堅次郎君    金丸 徳重君
      神近 市子君    唐橋  東君
      川崎 寛治君    川村 継義君
      河上 民雄君    河野  正君
      木原  実君    北山 愛郎君
      久保 三郎君    久保田鶴松君
      栗林 三郎君    黒田 寿男君
      小林 信一君    小松  幹君
      兒玉 末男君    後藤 俊男君
      河野  密君    神門至馬夫君
      佐々栄三郎君    佐々木更三君
      佐藤觀次郎君    佐野 憲治君
      佐野  進君    斉藤 正男君
      阪上安太郎君    柴田 健治君
      島上善五郎君    島本 虎三君
      下平 正一君    田中 武夫君
      田邊  誠君    田原 春次君
      多賀谷真稔君    武部  文君
      楯 兼次郎君    千葉 佳男君
      堂森 芳夫君    内藤 良平君
      中澤 茂一君    中谷 鉄也君
      中村 重光君    永井勝次郎君
      楢崎弥之助君    成田 知巳君
      西風  勲君    西宮  弘君
      長谷川正三君    畑   和君
      華山 親義君    浜田 光人君
      原   茂君    平林  剛君
      平等 文成君    広沢 賢一君
      古川 喜一君    細谷 治嘉君
      堀  昌雄君    松本 七郎君
      三木 喜夫君    三宅 正一君
      美濃 政市君    武藤 山治君
      村山 喜一君    森  義視君
      八百板 正君    八木 一男君
      八木  昇君    矢尾喜三郎君
      安井 吉典君    柳田 秀一君
      山内  広君    山口 鶴男君
      山崎 始男君    山田 耻目君
      山中 吾郎君    山花 秀雄君
      山本 幸一君    山本 政弘君
      山本弥之助君    米内山義一郎君
      米田 東吾君    依田 圭五君
      横山 利秋君    渡辺 惣蔵君
      渡辺 芳男君    麻生 良方君
      池田 禎治君    稲富 稜人君
      受田 新吉君    岡沢 完治君
      折小野良一君    河村  勝君
      小平  忠君    曾禰  益君
      田畑 金光君    竹本 孫一君
      塚本 三郎君    永江 一夫君
      西尾 末廣君    門司  亮君
      本島百合子君    山下 榮二君
      吉田 之久君    和田 耕作君
      有島 重武君    伊藤惣助丸君
      小川新一郎君    大野  潔君
      大橋 敏雄君    近江巳記夫君
      岡本 富夫君    沖本 泰幸君
      北側 義一君    小濱 新次君
      斎藤  実君    鈴切 康雄君
      中野  明君    樋上 新一君
      広沢 直樹君    伏木 和雄君
      正木 良明君    松本 忠助君
      矢野 絢也君    山田 太郎君
      田代 文久君    谷口善太郎君
      林  百郎君    松本 善明君
     ――――◇―――――
○議長(石井光次郎君) 穗積七郎君の入場を許します。
 ただいまの議決に基づき宣告いたします。
  昭和四十三年三月六日の外務委員会における議員穗積七郎君の発言は不穏当なものと認め、同君に対し、国会法第百二十二条第三号により三十日間の登院停止を命ずる。
  〔拍手、「反対、反対」と呼び、その他発言する者多し〕
     ――――◇―――――
 日程第二 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(石井光次郎君) 日程第二、国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長三池信君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔三池信君登壇〕
○三池信君 ただいま議題となりました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案の要旨は、国家公務員が公務上の災害により精神または神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるものについて、障害等級表第九級の障害補償一時金を支給するものとすることであります。
 本案は、三月一日本委員会に付託、同五日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、四月九日、質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。
    ―――――――――――――
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 製造たばこ定価法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 酒税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
○議長(石井光次郎君) 日程第三、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、日程第四、酒税法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
 製造たばこ定価法の一部を改正する法律案
 酒税法の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長田村元君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号。に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔田村元君登壇〕
○田村元君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 初めに、両案の概要を申し上げます。
 まず、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案は、最近における所得、消費水準及び諸物価の動向等にかんがみ、また、昭和四十三年度における財政収入の確保をはかるべく、製造たばこの小売り定価を改定するため、種類別、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり五円ないし十五円、パイプたばこについては十グラム当たり十円ないし二十円、葉巻きたばこについては一本当たり十五円ないし六十円、それぞれ引き上げる等、所要の改正を行なおうとするものであります。
 なお、小売り定価の改定は、本年五月一日から実施の予定であります。
 次に、酒税法の一部を改正する法律案は、最近における所得及び物価水準の状況にかんがみ、一部の酒類に対する税率を引き上げるとともに、あわせて所要の規定の整備合理化をはかることといたしております。
 すなわち、清酒特級及び一級、ビール並びにウイスキー類に対する従量税率をおおむね一〇%ないし一五%程度引き上げるとともに、ウイスキー類の特級に対する従価税率を、右の従量税率の引き上げに見合って引き上げることとし、また、新たに。ウイスキー類の一級及び二級の一部のものについても、昭和四十六年四月から従価税制度を導入することとするほか、酒類の定義の整備、未納税移出制度の簡素化等の措置を講ずることといたしております。
 以上が両案のおもなる内容でありますが、両案に対しましては、山中貞則君外二十一名より修正案が提出されました。
 修正案の内容は、いずれも施行期日を変更するものでありまして、原案において「昭和四十三年四月一日」と定められておりますのを、製造たばこ定価法の改正案につきましては「公布の日」に、酒税法の改正案につきましては「昭和四十三年五月一日」に、それぞれ改めようとするものであります。
 これら両修正案のうち、酒税法の改正案に対する修正案につきましては、国会法第五十七条の三の規定に基づき、内閣の意見を聴取いたしましたところ、水田大蔵大臣より、諸般の事情に照らして、やむを得ないものと考える旨の意見が述べられました。
 以上の原案並びに修正案につきましては、各般にわたり慎重な審査を行なった結果、去る四月九日、質疑を終了し、各案を一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して河野洋平君は原案並びに修正案に賛成の旨を、日本社会党を代表して村山喜一君、民主社会党を代表して竹本孫一君、公明党を代表して田中昭二君は、原案並びに修正案に反対の旨を、それぞれ述べられました。
 次いで、採決いたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案のいずれも多数をもって可決され、よって、両案はともに修正議決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(石井光次郎君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。村山喜一君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔村山喜一君登壇〕
○村山喜一君 私は、日本社会党を代表して、製造たばこ定価法の一部改正案及び酒税法の改正案並びにその修正案に対して、反対の討論を行なわんとするものであります。
 政府・自民党は、本年度九千五百億円も自然増収がある中で、従来の慣例を破り、自然増収の一定部分を減税に振り向ける方式を大転換し、たばこ定価の値上げと酒税の増徴を柱とする大衆課税増強をしながら、調整と称して、国民に生活苦と物価高を押しつける悪法を、多数決できめようとしております。所得税の一千五十億円の減税なるものも、物価調整と所得税の累進構造に伴う負担の累増を緩和するにすぎないものであり、税負担の軽減をもたらすものではなく、物価高と名目所得の増加によって、実質的には増税になるという不徹底なものでありました。その穴埋めとして、所得税も地方税も納められない生活保護者を含む低所得者層まで泣かせて、たばこの値上げ、酒の増税をはかろうとする佐藤内閣は、歴代の保守党政権の中で最悪の、血も涙もない冷酷な政府というべきであります。(拍手)
 明治以来今日まで、酒、たばこの値上げは、戦争とのつながりの暗い歴史を伴ってまいりました。いま佐藤内閣は、第三次防の強化によって、軍国主義体制を、アメリカの核のかさの中で固めようとしております。われわれは、この事実を無視することはできません。許すことはできないのであります。
 外にポンドショック、ドル不安、内には国際収支の赤字、忍び寄るインフレ、みずからつくり出した財政硬直化のそのしわ寄せを、すべて国民大衆に転嫁し、財界の反対する法人利潤税には一指も触れず、世界一といわれる租税特別措置の優遇はさらにワクを広げ、土地税制はたな上げにして、苛斂誅求の強化をはかる佐藤内閣は、余命幾ばくもないと、国民の名で警告を発したいと思います。(拍手)庶民大衆の税金に対する不満をいかになだめすかし、ごまかし、押えていくかというのが租税政策のかなめと心得ている政府・自民党に、悪税は滅び、税の公平の原則を貫く政治が、近く来ることを予言いたしておきたいと思います。
 悪法に反対する第一の理由は、物価を政府が率先して上げるということにあります。
 さきに国鉄定期運賃の値上げを強行した政府は、酒、たばこの間接税を引き上げる理由として、国民のふところが少しよくなって、酒、たばこ税の負担率が少なくなった、意図せざる減税となったので、調整をするというのであります。物価にはね返る分はきわめて僅少であるといっております。増税に伴う家計費へのはね返りは、別途百円亭主のふところから出されるので、実消費の四分の一しか家計簿にはあらわれてきません。閣議決定の四・八%の物価上昇分には、便乗値上げ分は少しも織り込まれていないにもかかわらず、これを阻止する有効な政策手段は、何も政府は持ち合わせていないことがはっきりしてまいりました。物価対策上の配慮は全然なされていないのであります。このことは、国民の生活を無視し、物価を引き上げる佐藤内閣の本質を暴露したものであり、断じて賛成できない点であります。
 第二の理由は、低所得者に対する思いやりがないことであります。
 もとより政府・自民党の租税に対する基本的なとらえ方は、負担の不公平を主張するのは貧乏人のひがみだ、うんと働き、貯蓄して、租税特別措置の恩恵に浴するよう出世しなさい、重税こそ勤労のインセンティブであると考えているのだから、十軒に一軒の割合にしか置いてない「バット」や「朝日」をとらえて、値上げはしてありませんとうそぶき、三級品の「新生」を二五%も値上げをして、涼しい顔をしておられるのであります。意図せざる減税をほっておくと、アル中やニコ中がはんらんするかもしれぬ。直接税を納められない六割の人間に対する課税を含めて、この際、庶民の健康のために増税をしようという官僚まで出てくる始末であります。国民の嗜好が上級銘柄に移ったからと称して、下級品の販売制限をやり、専売益金をふやすため、高級新銘柄品を売り出し、たばこ十本当たり単価を、法律の改正もやらずに十カ年に十円も上げてみせる巧妙な芸当をやってのけたり、「ニューリカー」とか「健康」とかの新酒を発売させて、値段をつり上げるやり口を許可したりするのであります。
 しかし、国民はいつまでもだまされてはおりません。これからは、仕事のいこいの一服にゆらぐ煙に六〇%は税金であることを思い出し、あすの労働の再生産のために傾ける一ぱいのジョッキに世界一高いビール税が入っていることを語り合うでありましょう。(拍手)
 これら庶民大衆こそ政治の主人公であることを忘れた政府・自民党に、近くきびしい審判を下すことは間違いありません。(拍手)いまでさえ二八・五%の支持率しかない佐藤内閣の命運は、ここに尽きたりというべきであります。(拍手)
 第三の反対の理由は、大衆課税を基本とする政府・自民党の租税政策を容認することができないからであります。
 自由資本主義の原則からいえば、税金は剰余価値からというのが当然であるにもかかわらず、いかなる資本主義国家でも実行されたことはありません。日本では、世界で例を見ないほど多種多様の減免措置を講じている特別措置法等によって、だれがどれだけ税金を負担しているかもわからぬまま、税負担の公平原則である総合課税主義はくずされ、資産所得者階層、高額所得者が優遇され過ぎておるのであります。
 一方、長期税制構想に見られるように、直接税を減らし、間接税に移ろうとする動きは強まっております。すでに印紙税、登録税、免許手数料等は、負担の適正化の名においてレールが敷かれ、たばこも専売益金を消費税に移行させようとしておりますが、酒、たばこの増税法案は、増税にとどまらず、売り上げ税を誘引する契機になるものであります。所得の再分配という、財政本来の機能を抹殺しようという暴挙を認めることはできません。
 最後に申し上げたいことは、日本の税制は、天下の秀才大蔵官僚と、政治のベテラン与党の合作でありますが、今回は、政府提出法案を自民党が単独で修正をし、みずからの手で四十億円の歳入欠陥を生ぜしめる異例の行為をとろうとしていることであります。まさに日本の議会史上に特筆すべきことが起こったのであります。
 みずからつくった法案をみずからの手で修正せざるを得なかったのは、日本社会党を中心とする野党の勝利であります。いな、野党の勝利というよりも、政府の不当な措置に対する国民世論の勝利であるといわなければなりません。(拍手)そのことは、佐藤内閣の危機であり、国民を無視する佐藤自民党政府に対する警鐘であります。
 しかし、修正案は、酒の増税をわずか一カ月分だけ実施時期を繰り延べるにすぎないものであるので、これに賛成することはできません。賛成すべきものでなく、むしろこの増税法案に与党の諸君がわれわれと同じく反対の立場をとられるよう要求するものであります。
 重ねて申しますが、全国民を代表するわれわれ国会議員が、この悪法に対して全員反対の意思を表示していただくことを心から要望いたしまして、反対討論といたします。(拍手)
○副議長(小平久雄君) 村上信二郎君。
  〔村上信二郎君登壇〕
○村上信二郎君 ただいま議題となりました製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、及び酒税法の一部を改正する法律案に対し、私は自由民主党を代表して賛成の意見を表明するものであります。(拍手)
 右の両案は、昭和四十三年度における税制改正の一環として、たばこの小売り定価の改定と酒税の税率の調整を行なおうとするものでありますが、これはさきに本院を通過いたしました所得税の減税等を内容とする税制改正四法律案と一体の関係にあるものであります。
 あらためて申し上げるまでもなく、昭和四十三年度のわが国経済を取り巻く環境は、内外ともにきわめてきびしく、この難局に直面して、わが国は一日もすみやかに国際収支の均衡を回復して、今後とも長期にわたる経済の安定成長を期するよう、適切な財政金融の諸施策を講じなければならないことは御承知のとおりであります。
 これがため、当面の財政政策としては、まず第一に、できるだけ公債発行額を縮減し、今後における健全な公債政策の基礎を築くとともに、における経済の推移に照らして、財政規模の抑制をはかることにつとめ、他面、長期的、構造的な問題として指摘されております財政の硬直化を打開しつつ、重点施策を果敢に遂行し、もって財政の景気調整機能と資源配分の機能の適切な運営に配意すべきものと考えるものであります。(拍手)
 このような内外の経済環境と現下の財政事情とを考慮いたしますと、昭和四十三年度において所得税などの減税を行なうことはかなり困難ではないかという観測や、むしろこの際、勇気を持って減税は見送るべきではないかとする意見まで有力視される経過もあったことは、皆さまもすでに御承知のとおりであります。
 ところで一方、わが国の所得税負担は、過去数次の減税措置にかかわらず、依然として重い現状であり、また、累進性のきわめて強いわが国の所得税制や、最近における急速な所得水準の上昇を顧みるときは、こうしたきびしい経済事情のもとにおいても、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減を最優先的に考慮することは、緊急の要務であるといわざるを得ません。ことに、給与所得者の、夫婦と子供三人世帯の課税最低限を、事情の許す限り、できるだけ早い機会に百万円に引き上げることは、わが自由民主党の厳粛なる公約であります。(拍手)したがいまして、今回政府がこの目標に沿って、昭和四十三年度においてその課税最低限を十万円程度引き上げることに踏み切ったことは、まことに英断であり、深く敬意を表する次第であります。(拍手)
 昭和四十三年度の予算案におきましては、以上のような種々の配慮により、歳入面における公債発行額の圧縮、所得税の減税や歳出面における重点施策の遂行などが予定されておりますが、昭和四十三年度に見積もられます税の自然増収額は、これら所要の諸施策をまかなうには不足を生ずると見込まれ、他の歳入手段によって財源を充足することも、これまたまことにやむを得ないところであります。したがいまして、かねてから税制調査会等において、所得や物価水準の上昇との関連において、従量税の負担率の調整をはかる必要が指摘されてきたことに顧み、たばこの小売り定価や酒の税率について所要の適正合理化をはかり、これによって歳入の充足をはかることとしたのは、まことにやむを得ない措置でありまして、なお、これにより直接税と間接税の比率を適度に保つことができた点については、きわめて意義あるものと認めるにやぶさかでないのであります。
 たばこ専売制度は、財政専売でありまして、今日までわが国財政に多大の貢献をいたしてきたのでありますが、最近においては、原料葉たばこの収納価格をはじめとして、その生産コストは連年上昇し、反面、たばこの小売り定価は昭和二十六年以来据え置かれたままでありまして、専売益金率は逐年低下を来たし、そのため専売納付金収入の伸長は急速に鈍化するに至っているのであります。さらに、最近における国民所得や消費水準の上昇、諸物価の動向等を考えると、昭和二十六年以来、たばこの小売り定価を据え置いてきたということは、ここに意図せざる減税が行なわれたということになるわけであります。したがって、今回たばこ小売り定価の改定に踏み切ったことは、現下のきびしい財政事情にあるこの時点におきましては、まさにやむを得ない措置と認めるものであります。
 もちろん、物価の安定が、現下の経済政策の最大関心事であるときにあたり、いたずらに価格の引き上げをはかることは、全くわが党のとらざるところであります。この意味におきまして、二級品及び三級品の引き上げ幅を、一級品の二分の一程度にとどめ、特に「ゴールデンバット」、「朝日」等の価格については、これを据え置く等、慎重な配意が払われていることは適切な措置と考えられるのでありますが、さらに今後におきましては、専売公社の経営の合理化を一そう進め、価格改定による利益が、財政の機能を通じて、適正に国民大衆に還元されるよう、期待してやみません。
 また、酒税の現行税率は、昭和三十七年の大改正によって設けられたものでありますが、酒税は、基本的には従量税であるため、その税率は、所得や物価水準の変動とは無関係に定額に据え置かれ、その結果、小売り価格の中に占める租税負担率は、物価水準等が上昇するにつれて、一般的に低下しており、他の諸税の負担との間においても、均衡を失っていると認められる点もあるところから、その税負担に調整を加え、実情に見合ったものにする必要があることは、つとに税制調査会等においても指摘されているところであり、今回の改正は、前述のたばこと同様、いわゆる意図せざる税負担の低下の調整を行なうこととしたものであると確信いたします。
 もちろん、酒税の増徴が一般消費者の負担増になることはいなめないところでありますが、今回の改正案におきましては、清酒二級、合成清酒、しょうちゅう等について、その税率を据え置くというきわめてきめのこまかい配慮がなされていることは、まことに適切妥当な措置と考える次第であります。(拍手)
 ところで、このようなたばこの小売り定価の改定と酒税の増徴を内容とします両改正案につきましては、最近のきびしい経済財政環境に照らし、また今後の健全な財政政策の運営に資するため、まことにやむを得ざる措置と考えられまするが、他面これら嗜好品に対する負担の調整は、結果として広く一般大衆に影響するところが少なくないものと思われますとともに、間接税等の改正は、いわゆる租税の逆進性に関連するものでありますので、政府におかれましては、これらの改正に至りました事情について、十分に国民の理解を得るようつとめられますとともに、今後とも所要の物価政策や財政全般の所得再分配機能について、格別の配意をするよう要請いたします。
 なお、これらの法律案が、当初目途としていた期日までに成立しなかったため、さきに大蔵委員会におきまして、施行期日を変更するための修正が行なわれましたが、善後措置として適切なるものと認める次第であります。
 以上の理由により、私は両改正案に賛成の意見を表明し、討論といたします。(拍手)
○副議長(小平久雄君) 岡沢完治君。
  〔岡沢完治君登壇〕
○岡沢完治君 私は、民主社会党を代表いたしまして、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、並びに酒税法の一部を改正する法律案の二案に対し、以下申し述べます理由から、反対の意見を申し述べてみたいと思います。
 なお、先ほど村山社会党議員のおっしゃいました反対理由と若干重複する点がございますけれども、それはそれだけ問題の正鵠を得ているからであり、われわれの反対理由の重要さを示すものであると御理解をいただきたいと思います。
 反対理由の第一点は、総理をはじめ大蔵大臣等政府関係者が、いかなるこじつけの理由をつけられましても、本二法案の成立は、物価問題の解決に逆行する結果をもたらすからであります。
 申すまでもなく、物価問題は、総理みずからが、佐藤内閣の最大の課題であるということをしばしば本院においても言明しておられるところであります。ところが、物価問題についての政府の当面の最高責任者であり、また現内閣の閣僚の中で、最も頭脳明晰といわれます宮澤経企庁長官ですら、本案に対する質問に関連して、この本会議場で、「この案は決して評判がいいということでないことは承知をいたしながら、一部の間接税の増徴に踏み切った」と、ことばたくみに述べておられますように、酒、たばこの増税、したがって、その値上げが物価の値上がりと無縁であるとは、まさか佐藤総理もおっしゃることはできないと思います。総理は、この点について、今回の値上げは結局財政の健全化をもたらし、同時に、長期的に見れば、必ず国民の要望する物価安定に寄与するという趣旨のことをおっしゃっておるのでありますけれども、これは幾ら何でも詭弁であり、強弁であると思います。国民ももちろん納得いたしませんし、将来も、事実はそのような結果には決してならないと信じます。たてまえと本音が違うという非難は、政治資金規正法改正問題を持ち出すまでもなしに、佐藤内閣に対する最も皮肉な、そしてまた最も正鵠を得た批判かと私は思うのでございますけれども、物価安定を最大の政治課題とされる佐藤内閣が、いわば公共料金の一種ともいうべきたばこ等の値上げをあえて断行されることは、口で物価安定をうたいながら、行動は、みずから物価値上げの火つけ役を買って出ておられるのでありまして、わが党が、本件両案に反対する
 第一の理由であります。(拍手)
 反対理由の第二は、一般大衆にとりましては、両案は、実質減税ゼロという名の実は増税になるという点であります。
 所得税減税千五十億、酒、たばこを中心とする間接税の増徴千五十億、差し引き実質減税ゼロというのが四十三年度予算の表面的な重要特徴でありますけれども、これは国から見て減税と増税が相殺されるということでありまして、国民の税負担に何らの変化がないという意味では、決してございません。直接税の減税と間接税の引き上げとでは担税者の範囲も違います。また、かりに同一人である場合でも、所得のいかんによっては、その税負担の増減に違いがあることは当然であります。実質減税ゼロといっても、特に政治が保護すべき低所得者層、なかんずく間接税のみの納税者にとりましては、増税を意味するものであることは明らかでありまして、われわれが、この両案に反対する第二の理由であります。(拍手)
 反対の第三点は、いわゆる間接税の性質から、当然に予見される問題でもございますが、先ほど、自民党の代表の方も御指摘になりましたように、その間接税の逆進性、ことに酒、たばこの値上げが、結果的に大衆課税になる点であります。
 収入に対する間接税負担の割合は、金持ちほど少なく、貧しい人ほど高くなることは、大蔵省の統計から見ても明らかであります。徴税の重要な機能の一つに、所得の再配分が考慮されるべきことは、ここで申し上げるまでもございませんが、今回の両改正案がこの思想に全く逆行するものであることは、これ以上論ずる必要はないと私は思います。これが、徴税制度の基本原則にまで背を向けて、佐藤内閣の不況対策の失敗のしわ寄せを一般国民大衆に転嫁する性質を持つ本両案に対し、われわれが反対する第三の理由であります。
 宮澤経企庁長官は、先月五日の本院における答弁におきまして、「今年度の予算編成に際し、内閣が当面した選択は、国債をさらに増発するか、所得税を据え置くか、あるいは間接税を据え置くかという三つのうちのどれかであって、結局、一部の間接税の増徴に踏み切った。」と述べておられます。われわれは、国債を増発することには、もとより反対であります。所得税を、減税もせずに据え置くことにも、当然反対でございます。しかし、だからといって、宮澤長官のおっしゃるように、間接税の増徴が選択すべき唯一の道だとは、断じて考えておりません。かの悪名高い利子配当分離課税の問題がございます。六千億にも達するばく大な交際費への課税の問題も残っております。産業向け電気ガス税の減免税の特例を廃止するだけでも年間二百五十億円の財源が返ってくるのであります。一方、専売企業の近代化、合理化によるコストダウンによって、税負担部分の増大をはかる道もございます。
 四十三年度税制において、酒、たばこが増税の対象としてねらわれたのは、私は、これが税金を一番取りやすい道だと考えたからだとしか考えられません。安易に取れるところから取る。納税者が気がつかないように取る。そして、うるさいところ、強い圧力のあるところは敬遠する。いなむしろ、当然取るべき税金まで、圧力団体関係を考慮して遠慮するというのが、私は、佐藤内閣の本質的な姿勢であり、その理由をここに見出すものであります。(拍手)
 私は、政治は、日の当たらないところにあたたかい手を差し伸べ、弱きものを助け、恵まれない人々にこそ親切なものであるべきだと考えます。ところが一方で、租税特別措置法という美名のもとに、高いところに土を盛る税制を堅持しながら、一方において、弱きをくじく間接税の増徴をはかろうとする本二法案にわれわれ民社党が反対する主たる理由がここにあるわけでございます。
 これをもちまして、私の反対意見の陳述を終わります。(拍手)
○副議長(小平久雄君) 山田太郎君。
  〔山田太郎君登壇〕
○山田太郎君 私は、ただいま議題となりました酒税法の一部を改正する法律案、及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案につき、公明党を代表して、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 本年度の税制改正は、課税最低限の引き上げなどにより、所得減税は、初年度一千五十億円となっておりますが、その反面、大衆の必需品である酒、たばこ等の値上げにより、同じく一千五十億円の増税が見込まれる結果、差し引き減税ゼロとなるのであります。これは、歴代保守党内閣の放漫財政の結果生じた財政硬直化のしわ寄せを、大衆課税によってすりかえようとするものであり、実質増税となるのであります。
 以下、具体的に問題点を指摘し、本改正案に反対するものであります。
 まず第一に、間接税の増税が、物価値上がりに拍車をかけることになる点であります。佐藤内閣は、発足以来、物価安定を公約しながら、四年間連続して公共料金を値上げし、さらに本年度に至っては、大衆の必需品となっているビール、酒、たばこをはじめ、その他公共料金を値上げしようとしていることは、佐藤内閣が、物価安定策に真剣に対処しようとしていないばかりか、政府みずから物価値上げムードをつくり、物価上昇のリーダー役をつとめているといっても過言ではありません。いわゆる政府主導型物価高騰といわれるゆえんであります。したがって、今回の酒、たばこの値上げは、明らかに物価政策に対する無為無策を暴露したものであり、大衆無視の経済政策であるといわなければなりません。しかも、間接税は、直接税と異なり、感覚的に税負担の意識が薄く、また税の徴収も簡単に行なうことができるのが特徴でありますが、政府がこれをねらった態度は、まことにこうかつ、狡知にたけたものといわねばなりません。
 このように、政府は、国民を欺瞞し、国家財政に占める間接税の比重を、次第に大きくしようとしていると、断ぜざるを得ないではありませんか。酒やたばこのごとき間接税の増税は、高額所得者も、低額所御者も、一律に課税され、逆進的性格を持つものだけに、消費者の税負担割合は著しく増加し、国民生活に重大な影響を及ぼすことになるのであります。
 第二は、酒、たばこの値上げの理由として、政府は、その税率が、所得並びに物価水準の変動と無関係に据え置かれているため、税負担が相対的に低下を来たし、他の租税との間に均衡を失していると認められ、価格を改定する必要があるといっておりますが、決して政府のいうように、税負担が低下しているとはいえないのであります。酒、たばこの税率は、高級品、奢侈品に比べて高率になっているのであります。
 一例をあげるならば、ダイヤの指輪は一六・七%、ゴルフ道具は二〇%、マージャンパイは一三%となっており、消費税全体から見ると、高級品や署務品ほど税率が安くなっているのを見ても明らかではありませんか。
 酒税については、昭和二十五年には、税収入は約一千五十億円であったものが、昭和四十二年度は、四千四百九十二億円と四倍に膨張しているのであります。また、酒類の消費量も、約一千四十石が八千六百石と、約八倍の増加となっております。特にビールのごときは、現在五〇・一%であるが、諸外国の税率に比較すると、西ドイツは八・七%、アメリカは一〇%の税負担であり、実にアメリカの五倍、西ドイツの六倍にもなり、世界の主要国で一番高いのが日本の酒税なのであります。
 また、たばこの値上げについては、長い間据え置かれてきたのであるから、政府は意図せざる減税と説明しております。ところが、昭和三十一年当時、たばこ十本当たりの平均単価は二十二円八十二銭であったものが、四十二年度には三十二円四十五銭となっており、十本当たりの平均単価では約十円の値上げになっているのであります。したがって、専売益金は、三十年度には千五百四億円であったものが、四十二年度には何と三千五百八十二億円になり、実に二倍強の増収になっているのであります。
 ところが、政府は、このような実質増収になっている点には触れないで、専売益金率の低下を理由に、国民からさらに税収奪を強行しようとしているのであります。これは明らかに、減税の恩恵を受けることのできない生活保護世帯や低所得者層はもとより、国民大衆を無視した増税政策であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 以上、国民の立場から見るとき、このような税制改正はどうしても納得できないのであります。しかも、本年度は、戦後最高といわれる約九千五百億円余の自然増収を見込んで超大型予算を編成しながら、政府は、財政硬直化を理由に、所得税の減税財源を、間接税の大幅増税によって補てんしようとしているのであります。財政の硬直は、自民党政府の放漫財政の結果であることは、万人の認めるところであります。したがって、このたびの税制改正は、政府・自民党の財政政策の失敗の責任を国民に転嫁しようとするものであり、断じて容認できないのであります。
 その上、大企業並びに不労所得者優遇の租税特別措置は、政策目的が一応達成された現在においても、いまだなお温存されており、また、交際費の損金算入による優遇策が講ぜられていることは、税の負担の公平を著しく欠いているといわなければならないのであります。
 要するに、間接税の負担割合は、明らかに逆進的傾向を示すものであり、およそ応能負担という租税の民主的原理からかけ離れており、その課税負担割合は、不合理、不公平なものであることは明白であると同時に、間接税の増税は、結果的にはきびしい大衆課税となることも明らかであります。いま、大衆は、高物価、重税にますます生活を圧迫されているのであります。国民大衆の怨嗟の声の一つは、実にここにあるといっても過言ではないのであります。自民党は、このことを知っておるのでありましょうか。大衆は、涙なき涙を流しておることを知っておるのであろうか。不況下の物価高、加えて実質増税という「大衆の犠牲において、政府は、一部大企業の保護に終始していることは、断じて許すことはできないのであります。
 政府は、ここにおいて、その政治姿勢を、大衆福祉の向上充実を基調とする施策に徹すべきであります。公明党は、この大衆福祉の実現のため、今後も政府を追及していくことを申し上げて、反対討論を終わります。(拍手)
○副議長(小平久雄君) これにて討論は終局いたしました。
 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第五 金属鉱物探鉱促進事業団法の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第六 金属鉱業等安定臨時措置法を廃止
  する法律案(内閣提出)
○副議長(小平久雄君) 日程第五、金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案、日程第六、金属鉱業等安定臨時措置法を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。商工委員長小峯柳多君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔小峯柳多君登壇〕
○小峯柳多君 ただいま議題となりました金属鉱業関係二法案について、商工委員会における審査の経過並びに結果の御報告を申し上げます。
 金属鉱物探鉱促進事業団法及び金属鉱業等安定臨時措置法は、ともに去る昭和三十八年、貿易自由化に対処して制定されたものであります。
 金属鉱物探鉱促進事業団は、設立以来、探鉱資金の貸し付け、広域調査及び精密調査等の業務を行ない、国内鉱物資源の探鉱に大きな成果をあげてまいりました。また、金属鉱業の合理化の推進も、金属鉱業等安定臨時措置法に基づく合理化計画等によって、相当の実績をおさめてまいりました。この間、鉱産物の国際価格が上昇に転じてきた事情もありまして、鉱産物の自由化はおおむね順調に実施されてまいりました。
 ところが、最近の金属鉱業をめぐる情勢は、本格的な開放経済体制の進行や経済成長に伴う鉱産物需要の急増、とりわけ海外鉱物資源に依存する度合いが上昇する等、大きな変化を示しておりまして、これに対応して、国内鉱業の国際競争力の強化と、鉱物資源の安定供給を確保することが重要な課題となっているのであります。
 金属鉱物探鉱促進事業団法の一部を改正する法律案は、このような実情に対処し、国内、国外における鉱物資源の探鉱開発を促進するため、事業団の従来の国内業務に、新たに海外探鉱資金の貸し付け、海外の地質構造調査、海外開発資金の債務保証等の海外業務を追加するものであります。
 また、金属鉱業等安定臨時措置法を廃止する法律案は、その廃止期限が昭和四十三年三月三十一日であり、貿易自由化による混乱を回避するという法律制定の目的も、一応達成されている状況でありますので、これを廃止せんとするものであります。
 両案は、去る二月二十四日本委員会に付託され、同月二十八日椎名通産大臣より提案理由の説明を聴取した後、四回にわたり参考人を招致する等、熱心な審議を行ない、四月十日に至り質疑を終わり、直ちに採決の結果、両案とも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、右両案の審議に関連して、鉱業政策の確立に関する決議が全会一致をもって行なわれましたことを付言いたします。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(小平久雄君) これより採決に入ります。
 まず、日程第五につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○副議長(小平久雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、日程第六につき採釈いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
○副議長(小平久雄君) おはかりいたします。
 内閣から、運輸審議会委員に鈴木清君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明
○副議長(小平久雄君) 内閣提出、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣宮澤喜一君。
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 海外経済協力基金は、東南アジアなどの開発途上にある地域における産業の開発事業に関し、必要な資金の貸し付けまたは出資その他海外経済協力の促進に必要な業務を行なうために設立されました全額政府出資の特殊法人でありまして、昭和三十六年に発足して以来、その投融資は漸次増大し、開発途上国における産業の開発に重要な役割りを果たしていることは御承知のとおりでございます。
 しかしながら、最近これらの地域の一部の国においては、外貨不足、著しいインフレ高進などにより、経済の安定がそこなわれるおそれが生じており、このような国は、経済の安定のために緊要とされる物資の輸入に必要な資金の供給を強く望んでおります。
 一方、わが国といたしましても、こうした要請にこたえることが、わが国の経済協力の実をあげるためにきわめて重要であると考えられますので、この際、基金の業務範囲を従来の開発事業への貸し付けなどのほかに、このような資金の供給にまで拡大することが必要であると考えまして、今回の改正案を提案いたしたのであります。
 次に、改正案の内容について申し上げます。
 改正の第一点は、基金の業務範囲の拡大であります。先ほど申し上げましたような趣旨から、東南アジアなどの地域の経済の安定に寄与するため緊要と認められる本邦からの物資の輸入につき、基金がこれらの地域の政府などに対して必要な資金を貸し付けることができるよう、目的及び業務の範囲を広げることとした次第であります。
 改正の第二点は、以上のような基金の業務の範囲の拡大に伴いまして、その事務の一部の委託先を従来の日本輸出入銀行のほかに、一般の銀行にまで広げることができることとした次第であります。
 以上が海外経済協力基金法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 海外経済協力基金法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(小平久雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。佐野進君。
  〔佐野進君登壇〕
○佐野進君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案説明のありました海外経済協力基金法の一部を改正する法律案につき、総理並びに関係各大臣に質問いたします。
 近年、発展途上国と先進国との経済的格差はますます拡大しつつあり、この格差を減少せしむるため、経済協力の拡充が要請されつつあることは世界的趨勢であります。わが国もアジアの先進国の一員として、その国力に応じ、相互の自立経済達成のため、有効なる援助を行なうことは、だれしも異存のないところであります。
 しかしながら、今回提案された基金法の内容並びにその背景を見るに、この目的と著しく相違し、アメリカの強い要請に基づき、そのドル防衛に協力し、アジアにおけるアメリカの経済援助の肩がわりと軍事的協力国の結束を強化するためのものであり、わが国内経済の現状において、国力以上の援助であり、今日まで多く指摘されたむだと腐敗をさらに拡大しようとしております。しかも、今回の改正案は、その目標をインドネシア援助に向け、賠償供与以後露骨にあらわれているインドネシアに対するわが国の非効率な援助をさらに繰り返さんとしております。特に、本改正宝がもし可決されるとするならば、現在行なわれつつある海外経済援助がますます安易に行なわれることになり、将来ゆゆしい事態の発生が予見さわるのであります。
 以下、私は次の四点について質問いたします。
 その第一は、わが国の海外経済協力が、わが国の自主的条件によるものでなく、アメリカの強い要請に屈し、核とドルのかさに守られる代償として、ドル防衛協力とベトナム戦争支援の一環として行なわれつつあることであります。
 このことは、佐藤内閣が組閣以来、対米協力の姿勢を強化するとともに、その援助費が飛躍的に増大していることを見ても明らかであります。すなわち、六六年度は政府ベース援助で一億八千五百万ドル、六七年度は三億九千五百万ドルに達し、六八年度は、一般会計から経済協力等二百二十五億円をはじめ、対外債務処理費、財投、輸銀を含め、四千百十八億円の巨額に達し、いまや、わが国経済に重大なる影響を与える結果となりつつあります。
 いま、とられようとしているアメリカのアジア政策は、ベトナム戦争政策転換に見られるごとく、行き詰まりを来たしているが、この際、日米共同声明に端的に見られる、わが国のアメリカと一体となった経済協力政策を改めるべきだと思うが、総理の所見をお伺いしたい。(拍手)
 次に、わが国の海外経済協力は、外務省が昨年八月作成した試案によれば、一九七一年で十三億六千三百六十万ドルと、毎年激増することになり、さらに再融資をすることになれば、その額は飛躍的に増大し、特にリファイナンスは、血税の乱費となり、国民の犠牲を強要するおそれがあります。外務大臣は、昨年六月、インドネシアに対する再融資に調印したが、今後もこの措置をとり続けるのかどうか、この際、明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、わが国の海外経済協力は、アジアをはじめ中南米、アフリカ等にわたっているが、近接する北朝鮮、カンボジア、中国等、アメリカの反共軍事協力国以外の国に対してどのような関係を持たんとするのか、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 特に、中国貿易については、その実績がいまやわが国経済にとって欠くことのできないものとなりつつあり、西欧先進諸国の積極的進出が行なわれている現在、これとの協力関係推進は焦眉の問題といわれており、政府内においても、吉田書簡にこだわらず、輸銀使用に踏み切るべきだと、積極的な意見が出ているのであります。佐藤総理は、いまこそ輸銀使用と日中貿易の拡大を決断すべきときと考えるが、その見解をお伺いしたい。(拍手)なお、海外経済協力基金は、これらの諸国をも対象国とするのか、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 第二点は、海外経済協力のわが国経済に与える影響とその対策についてであります。
 アメリカの輸入制限措置、特恵関税及び国内における国際収支の悪化、公定歩合の引き上げ、金融引き締め等、内外の悪条件は、いまやわが国の経済に対して重大な危機を与えようとしておるのであります。特に中小企業は大企業の圧迫、人手不足等の条件も加わり、その倒産数も飛躍的な増大を続け、いまや深刻な事態に直面しております。政府が海外経済協力や大企業対策に示した低利長期の資金を使用し、強力なる対策と援助を行なうならば、これら中小企業の立ち直りは決してむずかしくはないと考えるが、その決意をこの際お伺いしたいのであります。(拍手)
 さらに、発展途上国工業のための援助により生産される製品と、わが国製品との競合についてであります。すでに韓国、台湾、香港等の繊維、雑貨等と、わが国製品との競争が激化しつつある現在、今後これらの国に対する経済協力をどのように行なおうとするか、その対策をお伺いしたい。(拍手)
 第三に、今回の法律改正は、アメリカの強い要請により、インドネシア援助のためになされるものであることは、いままでの佐藤内閣の発言や行動によってすでに明らかであります。
 今日、日本の経済協力については、各界において根本的対策の樹立が強く要望されているとき、ただ一国の援助のみを対象として法律改正を行なうことは、日本国民の利益を裏切るものであります。(拍手)本年三月五日、ウィリアム・バンディ南アジア担当国務次官補は、下院外交委員会の聴聞会で次のように証言しております。「昨年、日本は南ベトナムと百十万ドルの医療援助追加協定を結び、インドネシアに対しては、アメリカと同じくインドネシアの海外からの援助必要額の三分の一を与えた。われわれは、ことしも日本がインドネシア必要額の三分の一を分担してくれるものと期待している。」さらに、ジョンソン大統領が二月八日下院に提出した海外援助特別教書によると、「インドネシアに対する援助を提供することは、確実にわれわれの利益にかなう。」と述べており、さらに、「日本の佐藤内閣は、アメリカと同額の援助を負担しようとしており、そのために、基金法の改正を提案している。」といわれておるが、そのような約束がアメリカ並びにインドネシアとあるのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、三月二十八日来日したスハルト大統領の日本訪問は、本年度援助額の確認を求めに来たものであり、同行したマリク外相は、帰国後の新聞記者会見において、インドネシア援助の約束について確認をとったと言明しているが、それは事実なのか、また金額は幾らなのか、この際はっきりと報告してもらいたい。
 さらに、大蔵大臣は参議院でわが党の委員の質問に答え、海外援助に予備費は流用しないと言明したが、補正予算を前提としない本年度予算との関連において、増加分をどこから支出するのか、この際明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 さらに、インドネシアの持つ債務は、一九六六年六月末現在、二十三億五千三百万ドルの巨額となっており、わが国の債権は債権国中きわめて少額であるにもかかわらず、債権国として果たした役割りは、債権国会議以前において三千万ドル、債権国会議後六千万ドルと四千五百万ドルの再融資で、最高の援助をしているが、その陰に、政財界の策動、特定商社の暗躍があり、この支払いを受けた大手十社の商社が、四十一年七月から四十二年六月まで約九千万円の政治献金をした事実が、わが党の木村政審会長の追求でほぼ明らかにされた。このように海外援助費が黒い霧のもとに乱用されつつあることに対してどのように措置するのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 第四点は、海外経済協力について、国会の果たすべき役割りと内閣の責任についてであります。
 現在、経済協力の大きな部分を占める円借款再融資等は、国会議決事項となっておらず、国会の権限は政府予算として提出された資金並びに国庫の配分の審議についてのみであり、その他一切の行為は政府並びに輸出入銀行、海外経済協力基金等にまかされ、その運用をはじめ、対象金額の決定、対象国の範囲の決定、供与条件の策定等はすべて政府の権限に属されております。このきわめて大きい政府の権限と、年々巨額に膨張する援助費に比較し、国会の権限はあまりにも微弱であります。この点を是正し、経済協力の取りきめはすべて国会の議決事項とすべきだと考えるが、その所見を承りたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、基金法は、第二十条第四号の貸し付けを受ける際、当該輸入につき日本輸出入銀行及び一般の金融機関から資金の貸し付けを受けることができるとしるされてあるが、その認定は、総裁以下少数の理事に一任せられることとなり、第二十三条の次に、その事務の一部を銀行に委託することができる条項とともに、きわめてルーズな運営を許す改正を行なおうとしております。国民の血税を、物品供与、低金利で使われる道を無限に広げることになるのは、基金法発足当時における審議の経過と、その後の実績に徴しても明らかであります。かかる乱用を阻止する歯どめは何によって行なうのか、この際明らかにしてもらいたい。
 次に、輸出入銀行との関係であります。基金は、もともと輸銀からその一部を継承し、輸銀の行ない得ない経済協力についてその役割りを分担し、その対象は開発事業と限定し、東南アジア・中南米、アフリカ等に援助を行なってきましたが、十分なる成果をあげ得ず今日に至っております。今回の改正によれば、さらに業務が複雑となり、目的が多元化され、開発事業より安易な海外経済協力の方向に力点が置かれることが予測されるのであります。したがって、この際、輸銀との関係を明確にするとともに、その業務の範囲につき、開発事業に限るべきであると思うが、どうか。なお、輸銀は今後物品援助に類する一切の業務を行なわないことときめ得るのか、明らかにしていただきたい。
 そもそも、海外経済協力基金は、アイゼンハワー大統領時代に始まったドル防衛に端を発しており、アメリカの金の加速度的流出に対比するがごとく、日本の賠償並びに経済協力が強化されてきているのであります。しかしながら、ポンドショックによる英国のスエズ以東からの引き揚げ、アメリカのベトナム政策の転換等、アジアからの撤退が予測せられるとき、わが国の開発途上国援助に対する視点も、また新たなるものが必要となりつつあります。いまこそ政府は海外経済協力について、法体系の根本的整理、わが国経済の実情に見合う経済援助、海外経済協力に関する行財政の整理等、地理的、思想的差別の撤廃、相互互恵、むだと腐敗のない海外協力を強力に推進すべきであり、さらにアメリカのドル防衛協力、ベトナム戦争支援、特定業者の保護、特定国に対する過剰サービスは、この際勇断をもって改めるべきものと思うが、総理の所見をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 佐野君にお答えいたします。
 わが国は先進工業国の一つといたしまして、従来から、発展途上国の経済的発展、経済的繁栄、これが世界の平和と繁栄に不可欠なものである、かような立場、その見地から、わが国はわが国の役割りを果たしてきた、かように私どもは考えております。したがいまして、今後とも、この観点に立ちまして経済協力を行なっていく考えでございます。
 また、ただいまアメリカからわが国が安全保障を受けているから、その意味の代償として経済協力をしているのじゃないか、あるいはまた、アメリカの要請によって日本は経済協力をするのじゃないか、こういうようなお話でございますが、そのいずれもが間違っております。私どもは、独自の立場、ただいま申し上げるような立場で経済協力をするのでございます。誤解のないようにお願いをいたします。
 次に、わが国の近隣の諸国との関係について言及されました。中共との関係は、在来どおり私は政経分離のこの原則のもとにおいて経済交流を続けていく、これがただいまの考え方でございます。ただいまこれを変える考え方はございません。
 また吉田書簡を引き合いに出されましたが、吉田書簡というものは、もともと政府の取りきめてはございません。したがいまして、これを緩和するとか、撤回するとか、そういうようなものではない。そこに吉田書簡の吉田書簡たるゆえんがある、かように御了承いただきます。したがいまして、輸銀の資金を使うことについては、私は、具体的な場合について、それぞれの場合においてこれを処理していくという、いわゆるケース・バイ・ケースにその資金を使う、こういうことを申しております。この方針もまた変わりはございません。
 また、北鮮あるいは北ベトナム等、いわゆる国交のないところの国々に対しまして、ただいまの基金、これを使うことができるのかどうかというお尋ねでございますが、こういう国に対して基金の業務が具体的にこういうところでは考えられないということは、これは基金の性質上御承知かと思います。お答えしておきます。
 次に、中小企業についてのお尋ねがありましたが、これは通産大臣からお答えいただきます。
 そうして今回の基金法の改正、この法律の改正案を提案いたしましたのは、申すまでもなく、商品援助、これを基金でも行なわせることがいわゆる経済協力の促進上有効だ、かように考えましたから、ただいま改正案を提案しておるのでございます。これは別にアメリカの要請にこたえたものではありません。また、アメリカと同額の援助をするためにこの法律の改正をしようとするものでもありません。また、アメリカやインドネシアに対しまして、さような約束をしてもおりません。この点もはっきり申し上げておきます。
 次に、インドネシアから、本年度の援助額につきまして要求のありましたこと、これは私も否定はいたしません。しかし、御承知のように、この国会ではたいへん審議がおくれておりますから、予算もまだもちろんできませんが、その基本的法律である基金法の改正も、きょうようやく御審議をいただくというような段取りになった次第であります。したがいまして、政府が幾ら行政的な権限を持っておりましても、国会から委任されたそういう権限はまだございませんので、インドネシアからの要望がありましても、インドネシアに対しての経済援助をどういうようにするとか、こういうような約束ができないのであります。したがいまして、今回は、珍しく共同コミュニケも出さなかった。こういう点で、この約束のなかったことをはっきり御了承いただきたいと思います。
 次に、インドネシアに対する援助が、政財界の暗躍があったり、あるいは一部商社の政治献金等につながるというようなただいまのうわさをなさいました。しかし私は、さような事実を聞いておりません。これははっきり申し上げておきます。
 私は、経済協力、これは今後とも十分効果をあげるように、一そう努力するつもりでおります。過去の経験にかんがみまして、それらの点で十分生かしていくつもりであります。
 最後に、私に対するお尋ね、これは独自で経済援助をやれ、こういうような御意見でございますが、そのとおりでありまして、私が冒頭に申しましたように、わが国独自の考え方からこの経済援助と取り組んでおるつもりでありますし、また、その場合におきまして、人種的な偏見なぞ毛頭持つものではございません。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
○国務大臣(水田三喜男君) 海外援助の支出についての御質問でございましたが、本年度における海外経済協力基金からの開発途上国に対する援助につきましては、現在審議中の本年度予算と関連して予定しております事業計画は四百四十億円でございます。したがいまして、今後の援助の支出はこのワク内において調整していくつもりでございます。
 予備費の支出をしないと申しましたのは、御承知のように、昨年度は、予備費において一千万ドルの無償供与をいたしました。こういう抱き合わせ方式は好ましくないというために、今回の法律改正を願った趣旨でございますので、できるだけこの予備費の支出ということを避けて、このワク内において調整支出をするという方針でございます。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇〕
○国務大臣(椎名悦三郎君) インドネシアに対するリファイナンスの問題について、私から答弁申し上げます。
 これは、昨年末までに期限の到来する債権分、すなわち約四千三百万ドルについては、すでにリファイナンスを行なっております。続いて本年中に期限の到来する債権分につきましても同様に繰り延べることに、昨年の十月、ハリにおける関係債権国の会議において了解がなされまして、これに従って、わが国はたぶん六、七百万ドルとなると思いますが、今年中に期限の到来するものが、これらのリファイナンスを行なうことになります。それから、明年あるいは明後年に到来するものについても、できるだけ好意的にこれを検討することにいたしております。
 それから、わが国の軽工業、特に繊維、雑貨等でありますが、これと競合するほどの力を持ってきた発展途上国、すなわち台湾、韓国、香港等に対する今後の経済協力はどうするつもりかという御質問でございましたが、これはもちろん、わが一国の中華の現状に照らしまして、これに悪影響の及ばないように配慮いたしてまいる所存であります。
 あとは大体総理から答弁がありましたから、これで失礼いたします。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
○国務大臣(宮澤喜一君) 輸銀は貿易金融の機関でございますし、協力基金は経済援助の機関でございますので、基本的に、やはり性格が異なっておる。貸し付けの条件、――期間でありますとか、金利でありますとかいうものも、今後とも従来どおり、おのおの異なったことでやっていくつもりでございます。
 それから、銀行に委託いたしますのは、書類の受け付けなどという事務でありまして、何か、判断を交えて決定をいたすような、いわゆる業務に属するようなものは、委託をするつもりはございません。(拍手)
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
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 千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 この際、千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
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○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。外務委員会理事田中榮一君。
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  〔報告書は本号(二)に掲載〕
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  〔田中榮一君登壇〕
○田中榮一君 ただいま議題となりました案件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 国際航海に従事する船舶について、その積載限度を、国際的に規制する条約といたしましては、一九三〇年に作成されました国際満載喫水線条約がございます。しかし、現行の条約は、作成後すでに三十七年余を経ておりまして、その後の著しい造船技術の進歩等に伴って、必ずしも実情に沿わない面があらわれてきております。このため、現状に即した新条約を採択する目的を持って、国際連合の専門機関である政府間海事協議機関の主催のもとに、一九六六年三月、ロンドンで開催された満載喫水線に関する国際会議において、この条約が採択されたのであります。
 この条約は、海上における人命及び財産の安全を確保する目的のもとに、国際海運に使用される船舶について、一定の構造上の要件を課し、この要件を満たす船舶には、所定の方式に従って計算される積載限度を指定するとともに、国際満載喫水線証書の携行を義務づけ、この証書を携行している船舶は、締約国の港湾内における取り締まり検査を、実質的に免除すること等を内容とするものであります。
 本件は、三月十九日本委員会に付託されましたので、政・府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
 かくて、四月十二日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
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○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
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 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 この際、内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。文教委員長高見三郎君。
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  〔報告書は本号(二)に掲載〕
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  〔高見三郎君登壇〕
○高見三郎君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、千葉大学の文理学部を改組して人文学部及び理学部を、愛媛大学の文理学部を改組して法文学部及び理学部を、それぞれ新設するとともに、茨城、大阪教育、香川及び高知の四国立大学に大学院を新設し、昭和四十三年四月一日から施行しようとするものであります。
 本案は、去る二月六日当委員会に付託となり、三月六日政府より提案理由の説明を聴取いたしました。審査の詳細につきましては会議録によって御承知を願います。
 かくて、四月十二日、本案に対する質疑を終了、次いで、谷川和穗君外三名から、本案に対し、この法律は公布の日から施行し、昭和四十三年四月一日から適用することを趣旨とする自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党共同提案にかかる修正案が提出されました。
 本修正案及び原案については、討論の通告がないため、直ちに採決に入り、本修正案及び修正部分を除く原案は全会一致をもって可決、よって、本案は修正議決されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
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 船舶安全法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
○山村新治郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 この際、内閣提出、船舶安全法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○副議長(小平久雄君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 船舶安全法の一部を改正する法律案を議題といたします。
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 船舶安全法の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
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○副議長(小平久雄君) 委員長の報告を求めます。運輸委員長大野市郎君。
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  〔報告書は本号(二)に掲載〕
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  〔大野市郎君登壇〕
○大野市郎君 ただいま議題となりました法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約を受諾するとともに、船舶の安全を確保するため、満載喫水線の標示を要する船舶の範囲を拡大し、さらに海難の予防並びに事故発生時の通信手段を確保するため、無線設備の設置を要する船舶の範囲を拡大しようとするものであります。
 本案は、二月十六日本委員会に付託され、二十八日政府より提案理由の説明を聴取し、三月八日より五回にわたり質疑を行ないましたが、その内容は会議録により御承知願います。
 かくて、本日、討論を省略し、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。
 なお、本法案に対して、船舶の海難の実情にかんがみ、海難防止対策の強化、内航船員の労働条件の改善等について、必要な措置を講ずべき旨の附帯決議を付することに決しました。以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        運 輸 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 田中 龍夫君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
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