第058回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号
昭和四十三年三月十三日(水曜日)
   午前十一時四十六分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 久野 忠治君 理事 渡海元三郎君
   理事 福田  一君 理事 島上善五郎君
   理事 岡澤 完治君
      奧野 誠亮君    菅  太郎君
      高橋 英吉君    永山 忠則君
      松澤 雄藏君    松野 頼三君
      山下 榮二君    伏木 和雄君
 出席国務大臣
        自 治 大 臣 赤澤 正道君
 出席政府委員
        自治省選挙局長 降矢 敬義君
 委員外の出席者
        議     員 島上善五郎君
    ―――――――――――――
三月十二日
 政治資金規制に関する請願外二件(中澤茂一君
 紹介)(第二四二二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正す
 る法律案(島上善五郎君外二名提出、第五十七
 回国会衆法第三号)
 公職選挙法改正に関する件
     ――――◇―――――
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 島上善五郎君外二名提出の政治資金規正法及び公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。山下榮二君。
○山下(榮)委員 政治の重要なことは言うまでもないのでありますが、特に政党政治においては、党が議会制民主政治の基盤であることも、これはもう論をまつまでもないことだと思うのであります。したがって、政党の活動というものは、公明正大で、かつ、清廉潔白でなければならぬのであります。しかるに、一昨年、田中彰治君の事件発生以来、日本の政界を黒い霧でおおったことは、皆さん御承知のとおりであります。これに対して政府のほうでも、政界の浄化、綱紀粛正等を中心として政党の政治活動の公明化をはかるとともに、選挙の公正を期するために、昨年は解散をされ、国民にその所信を明らかにされて投票が行なわれたのであります。それと同時に、政府は、かねて選挙の粛正を行なうために選挙制度審議会をつくられて、選挙制度審議会にあらゆる選挙制度に対する諮問を行なってきておられるのでございます。選挙制度審議会は、これにこたえるためにいろいろ苦心をされて、その答申を行なわれてまいっておるのであります。
 いま私がお伺いをせんと思いますのは、島上善五郎君外数名の方々から提案をされております政治資金規正法に関する問題でございます。島上君の提案は、拝見いたしますと、おおむね答申案に沿うた法案であると想像をいたすのでありますが、島上さんのこの提案の経緯あるいは答申案とのかね合い、いかようにお考えになっておつくりになったか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
○島上議員 ただいまの山下委員の御質問にお答えいたしますが、御指摘のように、一昨年来の黒い霧発生以来、政治資金の規制に関する強い世論の要請がありまして、選挙制度審議会は、他の一般の選挙運動の改正と関連のある問題ではあるけれども、他の改正を待つまで放任しておけない状態である、緊急に措置しなければならない、こういう認識に全員が一致いたしまして、特に昨年の四月七日に、切り離して緊急に措置すべき事項として答申したのが「政治資金の規正等の改善に関する件」であります。私たちは、もちろん選挙制度審議会設置法に従いまして、政府がこれを尊重しなければならないと義務づけられておりまする関係もありますし、その前の総理のしばしばの答弁や国民に対する公約等もありますので、政府がこの答申に忠実なる法改正案をすみやかに出すものと期待しておりましたが、答申後二カ月たって出されたものはかなりの骨抜き法案でございました。そのいわゆる骨抜き法案すらもが、特別国会においては廃案になった。このときに選挙制度審議会は緊急総会を開いて、総理の出席を求めて、ごうごうたる非離の声を総理に浴びせた、こういう状況でございました。総理も、成立しなかったのはまことに遺憾であるから、次の国会には必ず出して成立をはかると、こう審議会の緊急総会で答弁しておりましたが、ついにその次の国会にも、その次の国会にも提案しませんでした。
 そこで、野党三派、すなわち日本社会党、民主社会党、公明党の三派で、そういう事態の中にあってどうすべきかということを寄り寄り協議いたしました結果、政府の提案をじんぜん待っておるということができない。答申の趣旨に沿うためにも緊急に立法化をはかるべきであるという点において意見が一致いたしまして、さっそく立法化に着手し、前国会に提案し、今国会に継続審議になっておりますような案を野党三派として提案することにいたしたのであります。
 答申の中には、たとえば「おおむね」ということばが入ったり、そのまま法律にするには不適当な文言も多少ありましたので、そういう点を十分検討しながら、しかし、答申に最も忠実な案をということを念頭に置いてつくりましたのが本案であります。ですから、私どもは、三党共同提案にかかわる政治資金規正法の改正案は、答申に最も忠実なる案である、こう考えております。欲を言えば、この答申にもまだ不満な点がないではありません。山下委員も御承知だと思いますが、選挙制度審議会が発足した第一次の審議会においては、政治資金はすべて個人の献金に限るというきわめて明確な答申を出しており、第二次審議会においても重ねてそのことを確認しておるわけでございますから、そういう点から見ますれば、五年をめどにという点においては明らかに後退しております。しかし、せっかく選挙制度審議会においてほとんど全会一致の状態できまったことでありますから、私ども、その若干の後退は過渡的な措置といたしまして認めることにいたし、いま申した、五年後にはすべて献金は個人に限る法改正をさらにすべきであるという前提に立って、答申に最も忠実に沿うた案を提案しておる次第であります。
○山下(榮)委員 提案の経緯、お考えの点はわかったのですが、ここで自治大臣にちょっと伺いたいと思うのですが、いま島上君の答弁の中にもございましたように、政府は過般、政治資金規正法を提案されたのであります。骨抜きにいたしましても何にいたしましても、一応提案をされました。しかし、これが廃案となっておることは御承知のとおりであります。今期国会に出されるやに伺っておりますが、それは答申に沿うたものであるかどうか。一昨年の黒い霧以来、政界が浄化され、あるいは綱紀が粛正されたかと、こう思っておったところが、相も変わらず大阪のタクシー汚職事件が起き、官界は官界でそれぞれ目に余る不正事件が起こってまいっておるのであります。こういうときにこそ、政治家みずからが範を示して、正しい姿勢を世間に示すことがいかに必要であるかということを痛感いたすのであります。政府みずからが諮問をした諮問委員会の答申を尊重して提案されることは当然のことであろうと想像するのでありますが、一体これに対して政府としてどういう取り組みをし、一体いつごろ提案される予定になっておりますか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○赤澤国務大臣 政治の姿勢を正す、あるいは政界を粛正するということは、現下の政界の状況からいたしましてみなひとしく考えておるところであります。総理もそのことはたびたび口にされまして、また党に対して、そういう強い御要求もあっておるわけでございます。今度、選挙制度審議会の一環としての特別委員会で資金規制ということで一つの答申が行なわれまして、それをもとにいたしまして前々国会で政府としては一つの提案を試みましたけれども、不幸にしてそれが廃案になってしまった。しかし、自後引き続いて、やはりこの答申の線に沿うて、そうして政界の粛正を目ざして政府のほうでは成案を得るべく急いでおりますけれども、いろいろ大体御承知のとおりの事情がありまして、おくれおくれしております。しかし、私としてはなるべく早い機会に成案を得て出したい。先般も党内の方が、三月三十一日までには必ず出すのだということを言っておられる。私も実はもっと早く出したいという気持ちを持っております。この点では十分山下さんの御期待にこたえなければならぬと思っておりますが、ただ、ただいま島上さんもお触れになりましたけれども、政治の姿勢を正すということは、根本はやはり政治家個々の良識と申しますか、自覚にまつほかはない。どんなりっぱな規正法をつくりましても、それを犯す者は犯すわけでございます。そこで、私どもは、やはり一つの指針として、政治家というものは少なくとも政治資金は使う面においてこうあるべきだという、そういった将来を展望してりっぱな案をつくりたいとは考えておりますけれども、しかしながら、現状というものは、それぞれの党の体質と申しますか、こうなったのにはなかなか根深いわけもあるわけでございますので、私どもは、やはり段階的にと申しますか、段階的にということは何もよほど答申の線から後退をするというわけではありませんが、やはりいろいろな点を考えまして、そして忠実に行なわれるという姿の法案を提出したい、かように考えておる次第でございます。
○山下(榮)委員 島上議員は先ほど、理想としては党費と個人の寄付で政党の費用はまかなっていきたい、しかし、現在の段階ではそれはまだまだほど遠いことであるから、その他の寄付もいまのところでは考えざるを得ない、こういう答弁のように思ったのでありますが、大臣は一体、政党運営として、その費用というものの理想をどういうところに置いておられるのでしょうか。政党の運営に対しては、やはり政党の近代化ということを自民党のほうでもうたっていらっしゃるようであります。したがって、政党運営に対する資金というのはいかようになければならぬ、この答申案が理想的なものである、いやそうじゃない、もっと理想的にいかなければならぬとか、そういう辺の大臣の理想がどこにあるか、ひとつ伺いたいと思います。
○赤澤国務大臣 政治資金の規制のしかたは、何も答申にあるこれが万全だとは私は考えておりません。それぞれ別の角度から、もっときつい規制のしかたはいろいろあります。答申と全然別個の形でやり得る道はあると私は考えております。だからこそ、いろいろな議論が私たちの党内にも出ておるわけでございますが、ただ、いま新聞によく議論の内容がそれぞれ出た形になっておりますのは、ただ水道のじゃ口を締めるように資金源をひねって、二千万、五十万といったような形ですればそれで済むのかという問題も、これはやはり根本的な問題であると思います。
 さらに根本を申しますならば、例の車の両輪論になるといって非常に攻撃は受けましたけれども、選挙制度審議会に対する諮問の内容は、選挙区制その他選挙制度の根本的改善をはかるための方策を具体的に示されたい、これが毎回、五次に至るまで同じ諮問がされておる。選挙区制その他の選挙制度の根本的改善は何を意味するかと申しますと、一番同士打ちの選挙をやっているためにこういう乱れが起こっておるのであるという考え方です。日本を除いた他の外国の諸国は、先進国であれ後進国であれ、こんな中途はんぱな選挙制度をとっている国はないわけでありまして、少なくとも下院に関しては、これは地域代表ですから。ですから、このことを中心にして長年かかっていろいろ検討はせられたけれども、一本にしぼられた結論が出ていないことは御承知のとおりです。方向は示されております。しかしながら、先般の第五次審議会で一本にしぼれなかったことはたいへん残念です。ですから、そのときの答申にありますように、まず前提は金がかからない選挙、政党本位の選挙をやるということ、これが前提である。前提であるということは、資金規正法の答申の際にも、また先般の第五次審議会の最終答申の際にも明記されてあります。
 しかし、去年の秋以来突発的に起こりました不祥事件、こういうことを放置いたしますと、やはり政治が国民の信頼を失うことになる。政党政治が国民の信頼を失うことになりますと、これは議会否認に通ずるわけでございますので、私どもとしましてはまずこれを何とかきちっとした形にしなければならぬ。審議会の御判断もそうでございまして、そのために特に審議会の内部に自発的に特別委員会をつくられまして、それでこの政治資金の規制にどういう方法があるかという検討が始まりました。これはおととしの暮れごろからだったと思いますが、三月ごろにかけて、約三、四カ月の間、この問題が議論されて、結論として先般の答申になったわけでございます。一応学識経験者の方々が中心でこういう案をつくられましたので、これは私は一つの方向を示す、また一つの方法であろうという認識に立っておりますから、次に成案を得る段階におきましては、十分この規正法の内容というものを参考といたしまして、これを骨組みとしていま成案を得る努力をしておる最中でございます。
○山下(榮)委員 聞きたいことはたくさんありますが、時間も多くないようでありますから、多くを聞くことは、いずれ正式に政府から法案等が提出されてからのことにいたしたいと存じます。
 ただ、ここで一つ、二つ伺っておきたいと思うことは、島上議員の提案の中にも、過般の政府提案の中にもあったと思うのですが、労働組合の政治献金、これが会社、法人等と同じような取り扱いを受けておるように立案されておるように思われるのであります。これはとんでもない間違いではないか、私はこう思うのですが、会社の場合は会社利益の中から相当の献金をしている。労働組合の場合は、労働者が、月給袋に入る、いわゆる勤労所得税を控除されたあと残りの中から組合費として拠出している、こういうところから、これは完全な個人寄付だ、私はこう見ても差しつかえないじゃないかと思われる節もあるのですが、これを会社、法人等と同一視されておるという理由は一体どこにあるのですか、これをちょっと島上さんに伺いたいと思います。
○島上議員 これはいま御質問の中で御意見もございましたが、私は全く同一視すべきものではないと思うのです。御承知のように、労働組合の場合は、たまたま組合費の中から出す場合もありましょうけれども、その多くは組合員個々のいわゆるカンパですね、臨時のカンパで出す場合が多い。しかもこれは、組合の定められた機関で民主的に討議した上で出す場合が多い。ところが、会社の場合は、株主に配当すべき利益の中から重役が、かってにと言っては言い過ぎかもしれませんが、事前に株主に相談をして出すのではなくて、重役が出す、こういう形ですから、株主に配当すべき利益金という、その金の性質も違うし、出し方も違う。ですから、会社、法人と労働組合とを同じように、同じ次元で扱うということには、私どもも実は異論があるのです。しかし、その異論については、選挙制度審議会においても性質が違うという意見は出されたのでありますけれども、審議会の学識経験者の多数の人々は、そういうことになると会社、法人その他の団体についてもいろいろと性質の異なる団体も出てくるから、それを区別してやるということにもなかなかめんどうがあるから、この際政党の資金はすべて党員及び個人の献金でまかなう、そういうものの考えの上に立って、ただし、一ぺんにやると多少混乱や政党活動に停滞を起こすおそれがあるから、それは五年後をめどにしてそういうふうにする、それまではひとつ、多少内容の意味が違っても、すべての団体の寄付を五年をめどにして禁止するという前提に立って、それまでは同じような扱いにしようではないか、こういう意見が大勢を占めておりましたので、労働組合は違うという意見の者もそれに同調したというか、譲歩したというのか、そういう形でまとまったわけであります。ですから、これはあくまでもものの考えとしては、党費及び個人献金でまかなうべきものだ、それを早急にそういう理想に到達するように、五年をめどにという表現を使っておりますが、もし三年間にできればなおさらいいわけでありますが、そういう思想の上に立って審議会ではきめた、こういういきさつがあります。私たちは、先ほど御答弁申し上げましたように、答申の内容の個々について議論いたしますればいろいろ意見もあるけれども、この際、答申尊重という大きなにしきの御旗を掲げて法律をつくることが世論にこたえるゆえんでもあるし、国会で通過成立をはかるにもはかりやすい、こういう見地から各個の項目についての意見はしばらくこれを捨てて、いわゆる小異を捨てて大同につくとでも申しますか、そういう形で労働組合も同じように扱った次第であります。
○山下(榮)委員 時間がないようですから、あと一問ずつ伺いたいと思います。
 島上さんにもう一つ伺いたいと思っておることは、この法案の中に書いてあるのは、政党と政党以外に寄付をする場合を規定されておるようであります。政党以外ということになると、後援会その他の政治団体であろうと私は想像いたします。自民党をはじめ社会党、民社党、それぞれ党の近代化を叫び、いま申されておるような理想的な費用で政党の経営が行なわれるようにお互いが苦心をいたしておるのであります。それにこういうことをしますと、後援会その他を助長せしめることになるのじゃないかという心配を持つのですが、これに対してはいかようにお考えになっているか、島上さんの意見を伺いたいのが一つ。
 最後に、大臣に伺っておきたいと思います。それは、いま新聞等で伺いますると、選挙の自由化に関する法案が近く提案になるやに伺っておるのであります。選挙をもっと明朗にして、自由化するということはきわめて必要なことであります。しかし、それと政治資金規正法というのは、うらはらの問題であると私は思うのであります。そういう関係からこれを同時に提出なさるのか、とにかく選挙の自由化だけを先にお出しになるのか。自由化だけを先に提出されるということになりますると、ちょっと片手落ちのような感じがいたすのであります。いま申し上げましたように、選挙の自由化というものは、政治資金規制と相兼ね合ってうらはらの立場でものを考えなければならぬのじゃなかろうか。自由化自由化といいましても、自由化にもやはり限度がなければいかぬ。選挙はお互いが公正に争わなければなりません。そういう関係からこの両案をどう提出をなさるのであるか、最後に大臣のお考えを伺っておきたい。
 この二間だけで質問を終わりたいと思います。
○島上議員 政党のほかに政治家個人及び後援会も認めておるのは、かえって助長することになりはしまいかという御心配、ごもっともです。私どもも、献金は政党一本であるほうが一番すっきりして、そしてそれも、さっき申しましたように個人献金に限るということが一番すっきりすると思いますが、選挙制度審議会が政党とさらにもう一つの、それぞれ政党一つについて一つの資金収集団体を認め、これは政党と同じ扱いをしておりますが、そのほかに後援会及び個人の献金をも認めたというのは、理想に近づくための過渡的な措置として認めたものである、将来いつまでもそういう形ではなくて、過渡的な措置として認めたものと解釈をして、むしろこれはいまの政党に対してはたいへん思いやりのある措置だと思うのです。しかし、後援会や個人の場合は政党のように活発に活動するわけではありませんし、政党本位の選挙の方向を目ざすためには資金も政党中心でなければならぬわけですから、そういう意味で政党は二千万円までであるが、後援会や個人の場合は年額五十万円をもって最高とすると、その点ではかなり開きのある規制をしたわけです。
 これは御質問になかったことで余分なことかもしれませんけれども、最近新聞の伝えるところによれば、この五十万円はきびし過ぎるから、一口五十万円にして十口までよかろうじゃないかという意見が伝えられておりますが、そういうふうにゆるやかにするということはいけないと思います。これはやはり、できれば五十万円が二十万円でもいいわけですけれども、これも一応答申に「おおむね五十万円」とあるものですから、答申を尊重する意味で五十万円というふうにしたわけです。あくまでも将来は政党一本で献金は個人、こういう思想の上に立った、過渡的な措置という理解の上に立って出したわけであります。
○赤澤国務大臣 お答えいたします。
 提案の順序についてのお尋ねでございますが、選挙制度審議会の第五次のものが答申が出ましたので、車の両輪、三輪、四輪、五輪などといろんなことが言われておりますけれども、私は、本来同時に提出することが一番望ましいと考えております。しかし、何輪かと申しますことは、一つは区制の問題であるとか、あるいは運動方法の問題、さらに参議院の制度の問題、それからさらに政治資金の問題、こういうものが同時に出ることが一番望ましいと考えておるわけですけれども、成案を得る過程ではいろいろ御案内のとおりの関門もございまして、そういうところに一日も早く成案を得たいと努力しております。反面、この国会は時間が非常に少ないものですから、文字どおり一日も早くと思って努力しております。しかし、たびたび申し上げるとおり、いつ幾日出しますということをなかなか申し上げられぬ状態ですが、今国会にぜひ間に合わせたい、しかも成立を期したいという考え方には変わりはございません。ですから、大体の推測で順序から申しますと、ひょっとすると自由化のもの、つまり公職選挙法の改正がちょっと先になるかもしれませんけれども、やはりほとんど時を同じくして規正法のほうも出したい、かように考えております。
○山下(榮)委員 それでは、いろいろありますけれども、いずれ後日に譲ります。
     ――――◇―――――
○小澤委員長 次に、公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。伏木和雄君。
○伏木委員 若干の時間をいただいて質問させていただきたいと思います。
 今日の議会制度が多数決で行なわれている以上、その議院を構成するところの選挙が、公平かつ公正でなくてはならないことは当然であります。そこで、この選挙の公正という上に立って、最近起こった一つの選挙について若干伺ってみたいと思います。これは山梨県の勝山村村長選挙のことですが、投票日以前に過半数が不在者投票を終了してしまったという、常識ではちょっと判断のできないような選挙が行なわれたようであります。こういう常識で判断のできないような選挙が現実に行なわれているという点について、自治大臣は御存じかどうか、御承知だったら御説明願いたいと思います。
○降矢政府委員 御指摘のように、山梨県の勝山村におきましては、不在者投票が過半数をこえたという事例を承知しております。
○伏木委員 過半数というそれがどういう状態か、数字的におわかりだったら教えていただきたいと思うのです。どのような状況であったかを説明していただきたい。
○降矢政府委員 県の選管に問い合わせましてわれわれの承知した状況を申し上げますと、人口二千七十人、有権者は千二百三十六人、投票率は、村長選挙が九八・三%、村会の補選が九六・一二%、不在者投票は、千二百十五人の投票者中八百四十三人でありまして、投票者に対します割合が六九・三八%でございます。
○伏木委員 いま局長の説明によりますと、投票者は千二百十五人、そのうち八百四十三人、約七割が投票日以前に投票を終了してしまった。われわれちょっと考えられないような選挙が行なわれている。これは今日の選挙制度、選挙運動自体に何か問題があるのではないか、私はこのように感ずるわけですが、こうした非常識な選挙が行なわれている、このこと自体について、大臣はどうお考えになっていらっしゃるか、御説明願いたいと思います。
○赤澤国務大臣 まことに前例のないことでございまして、どうしてそういうことになったのか、もっとよく調査してみなければいかぬと思っております。しかし、この選挙が違法に行なわれたかどうかということは別問題でございまして、不在投票ということは、所定の手続をし、条件を満たしてさえいればできるわけでございますので、違法でない場合は、これは何と申しますか、たいへん選挙の啓発が足りなかったと言うしかしかたがないと思います。
○伏木委員 私はいま、これが違法であるかどうかということでなくて、きわめて常識を欠いた選挙である。したがって、これが、大臣いま御答弁になりましたように違法でない、法にかなっているとすれば、こうした非常識な選挙が法にかなうように行なわれる今日の選挙制度、選挙運動自体に何か欠陥があるんではないかというふうに感ずるわけです。ですから、私がいまお伺いしていることは、これが合法的であるということによって、今度は選挙の新戦術しとて、こういうことが全国的に行なわれるような事態が起きないとは言えないわけですが、そうしたことに対して大臣自身はどうお考えになっているか、御所見を承りたいと思います。
○赤澤国務大臣 まさかそんなことが起ころうとは想像もできませんけれども、ただいま申しましたとおりに、選挙がいかなるものであるかということの認識を深めるという意味での選挙民の啓発指導というものは、もっと十分に行なわれなければならないと考えます。
○伏木委員 私はこの問題につきましては、今日の選挙制度自体ですね、いま話題にのぼっております戸別訪問の禁止、これが大きな問題になっているのではないか、このように理解するわけです。ともすれば封建的な郡部におきましては、一部の部落の有力者の意のままに選挙運動が行なわれている。これは否定できない事実であります。このように法の欠陥と申しますか、本来自由にすべき点を無理に規制して、言ってみれば戸別訪問の禁止自体は、従来の封建制度によってつくられた支配体制を何とか保持していきたいという点で、この戸別訪問が禁止されている。そういうところから、一部の有力者の意のままに選挙が動かされていく。こういうところに最も大きな原因があるのではないかと思います。したがって、最近この戸別訪問の問題につきましても、選挙制度審議会において答申をするというような段階に来ておりますし、全国の選管あるいは裁判所等においても自由化を強く叫ぶようになっておるわけです。こうした欠陥は、合法的に行なわれたからそれでいいというものでなくして、何とかその欠陥を取り除き、公明なる選挙が行なわれるようにしていかなければならない、私はこう理解するものでありますが、大臣のお考えを承っておきたい。
○赤澤国務大臣 不在者投票を制限したりあるいは禁止したりすることはできるわけのものではございませんので、やはりその必要のある人が一定の条件を満たせば認めざるを得ないということは、言うまでもないことであります。ただ、一部の有力者が何か圧力をかけてなにするという問題があると、やはり選挙の啓発指導に大きな関係があるわけです、ただ不正に行なわれたということが、たとえば不在者投票をやりました場合に、投票紙に何かしるしがついておったとか、あるいは何か圧力によって、秘密であるべき選挙というものが自由に投票、候補者を記入できるはずのものが、何かそういったことで圧力が加えられておったなんということがあれば、これは言うまでもなく大きな違反でございます。単に不在投票に何か条件をつけるということは、これは私は法律的に申しまして無理があるんじゃないか、かように考えるわけであります。
○島上議員 ただいまの不在投票の点について、ちょっと関連質問したいと思います。
 七割も不在投票をするなどということは、これはもう普通常識上考えられない。前例もないことですね。そういう常識的に考えられない、かつて前例もないような不在者投票が行なわれたということについては、私は違法の疑いもあるだろうと思うし、かりに違法でなくとも、もう巧妙な、すれすれの脱法行為ではないかという疑いを持つわけです。その理由は、みんな一律の同じような理由ですか。それとも各個それぞれ違う理由で不在者投票をされておりますか。それがわかりますか。
○降矢政府委員 不在者投票の理由でありますが、業務の場合は出かせぎとか行商、あとは御案内のとおり結婚式とか温泉旅行とか出産手伝い、法事、そういう理由が証明書に書かれたものでございます。なお、補足して申し上げますと、この地方は織物行商が多くて、二月から三月にかけまして、織物の販売と集金のために外に出る者がきわめて多い地帯だそうでございます。
○島上議員 私が聞いているのは、その不在者投票を申し出た理由、たとえば行商が非常に多いから、大部分が行商を理由にして不在者投票をしたものであるか。いま並べ立てた理由、幾つもありますが、その幾つかの理由、みんな別々の理由で申し出て不在者投票をしたのであるが、その内容がわかったらという質問なんです。
○降矢政府委員 いまの事由は、証明書ないし証明書に書いてある事由でありますが、詐偽投票、つまり当日いるべきである、あるいはそういう事由で当日いるべきその市町村内にいない、しかし、実際はおるのだ、こういう意味における詐偽投票で逮捕状の出ておる者は四名でございます。
○島上議員 これはもっと十分に掘り下げて検討しなければならぬものを含んでおると思うのです。これはもう、ただの不在者投票ではないと思う。おそらくは、これだけの大量の不在者投票を、かなり組織的、計画的に選挙運動のために利用しようという、そういう考えから行なったものではないかと思いますので――きょうは、私もこまかく質問する時間も準備もありませんから、これ以上聞きませんけれども、この次の機会までに、いま私が指摘しておるような点について、もっと詳しく自治省において調査しておいていただきたい、こう思います。
○伏木委員 参考までに局長に聞いておきたいのですが、前回の衆議院選挙において、ここは投票率がどのくらいで、不在者投票がどのくらいあったか、おわかりになっておったら伺いたいと思います。
○降矢政府委員 いま承知しておりませんので、次回までに調べて御報告申し上げます。
○伏木委員 それでは、後ほどこの問題については伺うこととして、私は、前回の選挙と比べて地域的な、あるいは生活条件による問題でないということは、あとで資料をいただけば明らかになってくると思います。したがいまして、この問題についてはこの程度にしておきたいと思いますが、先ほど申し上げました選挙の運動に欠陥があるのではないか、本来の選挙の公平を欠いてしまうような今日の選挙運動自体に、私は問題があると思います。したがって、選挙運動の自由化が叫ばれておるわけですが、最近、自治省等の見解を伺いますと、戸別訪問につきましては、制限つきで戸別訪問を許可するという、こういうような問題が出ております。しかし、この制限つきも、二十人や三十人のワクにとどめるというのであれば、従来と一向変わりがないと思います。この戸別訪問禁止につきましては、憲法の二十一条にうたわれている表現の自由を明らかに逸脱するものではないか、私はこう考えます。
 これは従来から申し上げてきた点ですが、実はきょうの新聞に、和歌山県の妙寺簡易裁判所で開かれた公職選挙法違反の裁判の判決の問題ですが、この裁判所で安倍裁判官は、戸別訪問違反の被告に対しまして、公職選挙法の戸別訪問で罪に問うのは憲法に認められた言論表現の自由を侵すものである、こうはっきりと打ち出しました。従来、こうした戸別訪問につきましては条件つきで無罪の判決があったものを、今回の判決は、全面的に憲法二十一条の立場から、無条件でこれを無罪としている、こういう判決が昨日あったようであります。このように、今日、全国の裁判所が戸別訪問の緩和をいっております。また、昨日の裁判におきまして、憲法二十一条の精神から戸別訪問は無罪であるとはっきり断定を下しているわけです。それに対して、いま自治省が考えている制限つきの戸別訪問という問題は、私は大きな問題があるのではないか。かりにそういう法律をつくっても、裁判所においてどんどん無罪にしていくことになると、この選挙法自体が憲法に違反するものであるという点が明らかになってくる、私はこう考えるわけです。したがって、これは基本的な問題として、もう一回自治大臣の御見解を承っておきたいと思います。
○赤澤国務大臣 私も選挙制度審議会には終始その席におったわけでありますが、現実にこの取り締まりがたくさんあって、そうして何かちょっとした行動でも法に触れはしないかという恐怖感に満ちた、こういう陰惨な選挙は改むべきものである、もっと開放的にやるべきものであるという圧倒的な議論があったわけでございます。しかし、戸別訪問については、やはり人数だの、時間だの、一応制限しなさいということが答申に書かれてあるわけですが、その議論の内容は、夜分おそく人のうちを訪問されると選挙民も困る面もあるだろうし、また多人数のものが戸別訪問をすれば一つの威圧を加えることになるかもしれぬ、そういうこともあるいは起こらないという保証はないじゃないか、いろいろ議論がありました。ただ、野放しの戸別訪問というものはいまの段階においては弊害も伴うから、将来段階的にそこにいくとしても、今回は若干制限をつけるということに落ちついたわけでございまして、私、いま伏木さんの読まれた裁判所の判決というものは読んでおりません。あとで見せていただきたいと思いまするけれども、これはやはり法案作成の過程においては根底に関する問題でございますので、その判決の内容等は十分検討していきたいと考えております。
○降矢政府委員 ただいまの和歌山の判決に関しましては、私はある新聞で簡単にけさ承知したわけでございますが、いままで最高裁等に参りました戸別訪問の事案もありますので、簡裁の事案だけで直ちに事を処理し得るかどうかということは、なおわれわれも検討いたさなければならない問題だと考えております。
○伏木委員 いま大臣からお話がありましたし、時間もないようですからこの程度にとどめたいと思いますが、戸別訪問、選挙運動自由化につきましては、あくまでも憲法第二十一条の表現、言論の自由があるということをよく銘記されまして、そうして今後の法案作成に当たっていただきたいと思います。
 私のところでありますと、有権者が大体百三十万人おります。立候補者が大体七人から八人おりまして、一人三十人ということは、百三十万の有権者に対しまして、わずか二百人程度が単に選挙を自由に行なえるということであって、これは私は、選挙の自由化に向かっての一歩前進というような見解にはならない。制限はある程度やむを得ないにしても、もっと大幅にできるのではないか。これでは、本来、今日まで議論されておる選挙の自由化というものが、一歩前進したということには、道理の上から考えましても、数の上から考えましても、全然問題にならないのではないか、こう理解するわけですが、自治大臣の今後のお考えをもう一回承っておきたいと思います。
○降矢政府委員 いま、いろいろ答申に従って議論しておりますが、かりに三十人といたしましてもこれは腕章の数でございまして、回転することは当然考えられておりますので、いま伏木委員の申されたように――と言うと語弊がありますけれども、固定しておるという考え方でなしに、街頭演説と同じように、異なる人が腕章をつけることによって回転をいたすという考え方で、いまわれわれは立案しておるわけでございます。
○伏木委員 いまのそういう議論になると、また議論が続いてしまうわけです。選挙運動の日数は限られております。どんなに回転をよくしても、腕章は限られているわけですから、そんなにぐるぐる回しても日数が限られております。それは選挙運動以前からやるというなら、相当大幅な人が腕章を持って交互にできるということはあるとしましても、日数が限られております。しかも職業を持っている人は時間で制約されます。したがって、もし局長の言のようなことであると、つとめ人等は全然その戸別訪問ができる資格に入らなくなってしまう。職場から帰ってきたわずかの時間、しかも夜おそくはやめさせるということであれば、わずか限定された時間の中に――局長はどういうお考えかわかりませんけれども、腕章を持ち回れば何人でもできるじゃないかということは、あまりにも単純な算術計算にすぎない、現実をあまりにも無視しているのじゃないか、こういう議論が出てくるわけです。したがって、私が先ほどから申し上げていることは、あくまでも憲法二十一条の表現の自由がだれしも平等に行使できるように、こうなくてはならないということを申し上げているわけです。
 時間がありませんのでこれでやめますが、大臣におかれても先ほどの御答弁を吟味されまして、今後法案の作成に当たっていただきたい、強く要望しまして、私の質問を終わります。
○小澤委員長 本日は、この程度にとどめることにいたします。
 なお、次回の委員会は、来たる二十七日に開会いたしまして、本日の理事会の決定のとおり、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を議決いたしますので、各党においてそれぞれ御準備をお願いいたします。
 これにて散会いたします。
   午後零時四十三分散会