第063回国会 地方行政委員会 第26号
昭和四十五年五月十六日(土曜日)
    午前十時七分開議
 出席委員
   委員長 菅  太郎君
   理事 小澤 太郎君 理事 大西 正男君
   理事 砂田 重民君 理事 古屋  亨君
   理事 山口 鶴男君 理事 岡沢 完治君
      亀山 孝一君    永山 忠則君
      安田 貴六君    豊  永光君
      井岡 大治君    阪上安太郎君
      山本弥之助君    桑名 義治君
      和田 一郎君    門司  亮君
      青柳 盛雄君
 委員外の出席者
        警察庁長官   後藤田正晴君
        警察庁長官官房
        長       富田 朝彦君
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        警察庁刑事局保
        安部長     長谷川俊之君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        公安調査庁調査
        第一部第四課長 徳永  功君
        文部省社会教育
        局審議官    林部 一二君
        通商産業省重工
        業局重工業課長 秋山鑑一郎君
        通商産業省化学
        工業局保安課長 佐賀新太郎君
        運輸省海運局長 澤  雄次君
        運輸省海運局参
        事官      須賀貞之助君
        海上保安庁次長 林  陽一君
        地方行政委員会
        調査室長    川合  武君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十三日
 辞任         補欠選任
  井野 正揮君     華山 親義君
  細谷 治嘉君     土井たか子君
  横路 孝弘君     阪上安太郎君
    ―――――――――――――
五月十三日
 一、地方自治に関する件
 二、地方財政に関する件
 三、警察に関する件
 四、消防に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 警察に関する件(旅客船乗っ取りに関する問題
 等)
     ――――◇―――――
○菅委員長 これより会議を開きます。
 警察に関する件について調査を進めます。
 瀬戸内海における定期旅客船乗っ取りに関する問題について警察庁から報告を求めます。警察庁高松刑事局長。
○高松説明員 先般瀬戸内海における定期船「ぷりんす丸」乗っ取り事件の大要について御報告申し上げます。
 昭和四十五年五月十一日の午前零時ごろに、山口県山陽町の国道沿いで交通取り締まり中の警察官が追い越し違反の乗用車を発見いたしました。これが取り調べの結果、福岡市内での盗難車ということがわかりましたので、三名を検問所に同行する途中に、いきなり一人の被疑者が猟銃を持ち出しまして、そうしてさらにナイフで警察官の胸部を刺して、自動車を奪って逃走したという事案がございました。
 続いて、五月十二日午後一時五十六分ごろに、広島市尾長町の山中にライフル銃を持った二名がいるという通報が民間人からございまして、直ちに緊急配備をいたしましてこれを捜索しておりましたところが、二名の被疑者を見つけまして、それを逮捕すべく通りかかった軽四輪自動車をとめて乗り、途中十メートルぐらい手前で警察官がおりまして、そうしてそれを逮捕しようとしましたところが、その自動車に対して、いきなり一人の被疑者が猟銃を突きつけて車に乗ろうとした。そこで警察官が猟銃を捨てよというふうなことで一回威嚇射撃をやっておりますが、その際に逆に、拳銃を出せ、捨てろということで非常に態度を硬化させて、運転手の生命にも危険が感ぜられる状況になりまして、やむなく警察官は拳銃を自動車の荷台に投げ込んだところが、被疑者は運転手に猟銃を突きつけて、さらにこれを運転して、発進したというのが、第二の事件でございます。
 さらに第三に、同日の午後三時二十五分ごろ、広島市立町の銃砲店に被疑者があらわれまして、家人に拳銃を突きつけまして、ライフル銃二丁、猟銃一丁、実包三百八十発を強奪して、人質、車両をその場に放置して逃走しました。
 引き続いて午後四時五十八分ごろに、市内の県営宇品桟橋にあらわれまして、猟銃を発射しながら桟橋に停船中の瀬戸内海汽船株式会社の「ぷりんす丸」に乗り込みまして、船長ら乗り組み員及び乗客を脅迫して人質とし、そうして同船を強制出港いたさせました。この船は、呉沖それから音戸を経て愛媛県に入りまして、午後九時四十二分ごろに高浜港に入港いたしました。この間、被疑者の家族を岡山県から呼び寄せるなどして、説得をしようといたしましたが、被疑者は犯行を断念しませんで、同港で乗客全員三十三名、乗り組み員一部四名を降ろして、そうして五月十三日午前零時五十八分同港を出発いたしまして、今治のほうに向かいました。今治港の沖合いからさらにUターンして北上し、午前八時五十五分、再び宇品港の県営第四番突堤に接岸いたしました。
 警察側としては、あくまで説得による解決を目途に、引き続き宇品港に着くまでの航海の途上においても、また宇品港においても、肉親や警察幹部による説得を続けてまいりましたけれども、被疑者は、これに応ずる気配はなく、逆に待合室や一般の自動車あるいはパトカーなどを目がけて発砲し、あるいはまた、その近親者の乗っている巡視船に対しても発砲するというふうな状態になりまして、事態が非常に険悪になりましたので、九時三十分、射撃によって逮捕する場合も考慮して、ライフル銃要員を配置いたしました。九時五十分、説得による逮捕が全く困難であると判断される状況になりましたので、九時五十二分、射撃要員をして発射せしめました。銃弾は被疑者の胸部に当たりまして、甲板上に倒れました。それを直ちに県立病院に収容いたしましたが、同十一時二十五分出血多量で死亡するに至ったというのが、この事件の概要でございます。
 なお、山口県の事件の際に共犯者一名、それから広島に入りまして尾長町の事件の際に共犯者一名、二名とも少年でございますが、これを逮捕いたしまして、川藤展久という被疑者が最後に一名残ったわけでございます。
 大体以上のような状況でございます。
○菅委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤太郎君。
○小澤(太)委員 最初に、お断わりしておきたいと思いますが、私の質問は、政府を追及するという立場ではなしに、今後このような事件が起こらないように、起こった場合の対処をいかにするかということをともどもに検討、研究したいという立場から、質問を申し上げますので、そういう意味でひとつお答えをいただきたい。第二点は、時間が制約されておりますので、簡潔に、要を得た御答弁を期待したい、このように思います。
 さて、いわゆる海の乗っ取り事件、川藤に関するこの事件につきまして、ただいま局長から説明がございましたが、この事件につきまして、まず、発端から犯人が船に乗り込むまでの間にとりました警察の措置につきまして伺いたいと思います。
 今回の事件につきましては、警察もたいへん苦労されて、全力をあげて、またあらゆる限りの努力をされたことと思います。その間に警察官の負傷という犠牲も出ておりまして、私は、この点につきましては、警察の努力を多といたしますけれども、一般に国民の側に立って見ますと、何かそこに至るまで――犯人が船を乗っ取ってついに射殺される、そこまでエスカレートしていくまでの過程において、何かもの足りないものがあったのじゃないか、警察側においても、もっとやるべきことがあったのじゃないか、このような感じを国民が持っていると思います。また警察御当局も、この経過については十分に検討し、反省をされ、今後の参考にされる点が多々あったと思います。
 そこで、まず後藤田長官から、船に犯人が乗るまでの間の警察の措置について、どの点について検討を加え、今後十分に考慮しなければならぬということを警察として考えているかということを、具体的に伺いたいと思います。
○後藤田説明員 まず最初に、今回の事件がライフル銃による狙撃、その結果、犯人の死亡ということで結末がついたわけでございますけれども、私は、罪は罪、人は人という考え方から、命を落とした犯人はもちろんのことですが、親御さんあるいは家族の方の心情を考えまして、まことにお気の毒な結果であった、こういうふうに感じていることを率直に申しておきたいと思います。
 ただ、事件全体を通じて見まするならば、私は、今回の結末はやむを得ない結果であった、かように考えておるのでございます。
 そこで、御質問の点でございますが、事件の捜査は、うまく解決した場合といえども、また事件の捜査がうまくいかないという場合はなおさらのこと、いずれの場合におきましても、結果として反省すべき点は、いかなる場合にでもあるわけでございます。そういうような意味合いから、今回の事件について、率直に私の将来への検討事項という観点でお答えをいたしたいと思います。
 まず第一の山口県における交通検問の際の警察官の処理の問題でございますが、結果として見るならば、あの際にテレビのアンテナを収納する袋の中に折りたたみの猟銃を入れ後部座席に隠しておったようでございます。この点について、いま少しく徹底をした検索ができなかったであろうか、これは、やはり将来の一つの問題だろうと思います。ただ、この事件、しからばほんとうにそれは欠点であったのかということで考えますと、これはもともとが交通の追い越し違反ということから発展をしてきております。そういうような点から考えますと、この際の処置としては、私は、当該警察官に手落ちがあったというわけにはまいらない。しかし、捜査上の反省事項としてわれわれは考えなければなるまい、こういう意味合いでございます。
 第二番目の、広島県内に入ってからの反省事項といたしましては、小型四輪の運転手を人質として警察官が脅迫を受けて、せっかく威嚇射撃をしながら目的を達成できないのみならず、拳銃をとられてしまったということでございます。この拳銃をとられたことは、これまた私は、当時の状況ではやむを得ないことであった、こう思いまするけれども、一体猟銃を持っておるような犯人――二名でございますが、功をあせって一人で立ち向かったというところに、一体どんなものであろうか、これはまた将来私は考えなければなるまい、こう思います。
 その次の問題は、猟銃店に入ってから宇品に停泊中の「ぷりんす丸」乗船までの間の時間が一時間あまりございます。この点についての警察の犯人捜索、こういう点について反省の要がなかったのであろうか、多少地域的に犯人捜索の場所の判断が誤っておったのではなかろうか、こういうふうにも思いますが、いずれにいたしましても、緊急配備の配備地点、配備の警察力、緊急配備せられた警察官の警戒のやり方、こういうような点についても、私は、やはり将来の反省事項ではあるだろう、こう考えております。
 ただ、先ほど冒頭申しましたように、私はいろいろの段階において将来の参考にしたいと思いますけれども、結果としては、私はやむを得ざるものであったというふうに考えておるのだということだけは申し上げておきたいと思います。
○小澤(太)委員 長官の反省事項としてあげられたことは、おおむね私の考えておることと一致いたします。なお第一点の、山口県の場合に、追い越しをした車、それをとめて質問をしようとした場合、この際に所持品の検査と申しますか、それができておったならば、このようなことは行なわれなかったであろうというお話でございます。
 そこでお尋ねしたいのですが、警察官職務執行法によりますと、追い越しをした者をとめて質問をする場合に、その所持品を検査する権限が警察官に与えられておるかどうかという問題であります。身体検査は、これは逮捕された者でなければできないと明確に書いてありますが、その点はいかがでございましょうか。
○後藤田説明員 警職法二条でやろうとするならば、私はやれると思います。ただ問題は、先ほどちょっと申しましたように、この種の軽微な事案でそれをやるのがいいのか悪いのか、こういった問題がございまするので、やはり結果論としてしか論じられないであろう、こう思います。
○小澤(太)委員 私は、ここに問題点があると思いますので、今後十分に研究をしていただきたいと思います。交通事犯だけで所持品の検査ができるということは、これは警職法から申しまして、少し無理だと思うのです。もし無理でなければ、これができるというように解釈を統一するなり、あるいは警職法についても研究するなり、警察官に対する指導もしなければならぬ。一々所持品を検査されたのでは、これはたいへんなことになります。この点が非常にむずかしい。したがって、あの当該警察官が所持品を見なかったということは、警察官の失態ではないと私は思うのです。今後の指導をどうするかということを真剣に研究していただきたい。これが第一点であります。
 それから、いろいろございますが、緊急捜査の配備等に対して手落ちがあった、十分でなかったという反省は、私はもっともだと思います。たとえば山口県で起こった場合に、汽車に乗って広島へ逃げた。ほかのところは非常に検問をやかましくしたけれども、停車場の、しかも宇部市の停車場の検問が不十分であったのではなかろうか、あるいはまた銃砲店でライフルを取って海に行くということ――おそらく空港や停車場は警戒したでしょうが、この港の手配が手薄であったのではないか、こういう点。一例をあげますと、そうであったかどうかわかりませんが、そうといたしますと、もっとこの捜査を綿密に総合的にやるということは、これも日ごろの訓練でございましょうが、気をつけていただきたいと思います。この点について長官のお考えを承りたいと思います。
○後藤田説明員 この事件発生以来、山口県、広島県、それぞれの時点で相当数の警察官を配備し、相当数のパトロールカー等による警戒等の処置もし、また検問等もやっておるのでございますが、結果としては、ただいまおっしゃったような点について、私はやはり将来の検討事項である、こう考えております。
 ただ、ここで申し上げたいと思いますことは、従来この種の緊急配備で一体どれくらいの容疑者が緊急配備線にひっかかるかということでございますが、過去の例では大体三〇%でございます。七〇%は網の目を抜けるというのが実態でございます。したがいまして、私どもとしては、緊急配備をする以上は、やはりその緊急配備線にできるだけ多く犯罪容疑者がひっかかるようなやり方、つまり緊急配備の実績を向上さすようなやり方、これについて一そう検討の要がある、こう考えております。
○小澤(太)委員 警職法を制定するときには国会でもたいへんな混乱が起きました。またたいへん混乱のうちにあれが制定されました。その後世の中はだいぶ変わってまいりまして、予想もしないような犯罪が次々に起こってまいります。警察官の職務執行につきましても、この社会、犯罪の傾向の態様に応じて考えなければならぬのではないかと私思うのです。軽々にこれを改正しろということではございませんけれども、この点について、いわゆる警察官の職務執行について今後どのようにやっていくのか、時代に適応するかどうかということについての御検討、御研究をお願いしたいと思います。これはその方向でやっていただけると思いますから、御答弁は要りません。
 時間がございませんので、次に移りたいと思いますが、これは通産省にお願いしたい。
 銃砲刀剣類所持等取締法、これは警察、それから武器等製造法、これは通産省が所管されております。
 そこで伺いたいことは、今回犯人が使いましたライフル、あれは一体何になるのでしょうか。猟銃なのか、そうでないのかということです。
○秋山説明員 お答えいたします。
 いま御質問の件は、猟銃でございます。
○小澤(太)委員 猟銃でありますから、これは銃砲刀剣類所持等取締法第四条第一号によって、「狩猟、有害鳥獣駆除又は標的射撃」こういうことで、許可を受けて使用できるということでございますね。
 もう一つ伺いたいのですが、武器等製造法で申します猟銃というのは、これは武器には入らないのですね。
○秋山説明員 いまの件でございますけれども、武器には入りません。
○小澤(太)委員 それでは、ライフルは武器ではないということでございますね。
○秋山説明員 さようでございます。
○小澤(太)委員 それから、警察官職務執行法上武器というものには猟銃が入るのでしょうか、ライフルが入りますか。
○後藤田説明員 私どもが武器と申しますのは、性能上当然人を殺傷するに足るものを武器といいます。いま一つは、用法上、使い方いかんによっては人を殺傷し得るものも武器、こういう観点でございます。したがって、ライフルは、私どもは武器と理解をいたしております。
○小澤(太)委員 これはまた通産省にお願いしたいのですが、猟銃が武器でない、ライフルも武器でない。猟銃のたま、弾丸、これは何になるのでしょうか。
○佐賀説明員 弾丸に含まれております火薬は、いわゆる火薬類取締法上の火薬でございます。
○小澤(太)委員 私が聞いておるのは、猟銃弾は武器であるかないかということを聞いておるのです。
○秋山説明員 お答えたします。
 いま御質問の武器と猟銃との関係でございますけれども、私がライフルは武器ではなくて猟銃と申し上げましたのは、武器等製造法におきましては、便宜上、武器と猟銃と両方分けて書いてございまして、その「武器」の中には、武器等製造法二条に定義がございますが、その中に、「この法律において「武器」とは、左に掲げる物をいう。」とございまして、「銃砲」(産業、娯楽、スポーツ又は救命の用に供するものを除く。)ということで、銃砲が入っております。それから第二に、「銃砲弾」いま申し上げました(銃砲用のものをいい、発光又発煙のために使用されるものを含む。)こういうことで、抜けております銃砲に使います銃砲弾は、武器ではないということになっております。
○小澤(太)委員 そうしますと、武器等製造法でいう銃砲に使う銃砲弾、これは武器に入っているわけですね。入っておりますね、法律に書いてあるとおりですから。ところが、猟銃は別に書いてあるわけです。十七条に書いてありますね。猟銃弾は一体何になるかということです。私の聞いているのは、猟銃でない武器、その一つである銃砲、そしてその銃砲に使う弾薬は、これは第二条第二号に「銃砲弾」として武器として掲げてある。ところが、猟銃については、その猟銃弾に対して何らの規定がない。したがって、これは何らの法律的規制を受けずに製造ができ、保管ができるように解釈されるおそれがある。これをどういうふうに考えておられますか。
○秋山説明員 お答えいたします。
 いまの御質問、まことにごもっともでございますけれども、武器等製造法におきましては、猟銃の弾丸は取り締まりの対象になっておらない。これは火薬類取締法のほうの対象になっているわけでございます。
○小澤(太)委員 そこで、今回の事件は、銃砲店における銃砲並びに弾薬の保管のしかたに問題が一点あると思います。今回のように容易に店員をおどかして二丁のライフル銃をとり、また多数の銃弾を持って逃げることができるということは、これはたいへんなことだと思います。このような実情に対しまして、警察当局は治安上の見地からどのようにお考えになっておられるか、聞かしていただきたいと思います。
○長谷川説明員 お答え申し上げます。
 猟銃等の弾薬につきましては、これを施錠のある堅固なものに保管しなければならないというふうに、通産省令でもたしか規定されていると思うのでございますが、私ども特にこれまで銃砲及び火薬の取り締まりにつきましては力を入れて、最近におきましては年二回防犯指導ということで、それぞれの銃砲店にお伺いをしまして、そういう保管の状況等につきまして安全に保管をするように指導をいたしているところでございますが、しかしながら、そういう銃砲火薬店等もいろいろの形態がございまして、必ずしも十分でない点もあるわけでございます。今後通産御当局とも協議をいたしまして、より一そう安全に保管できるように努力をいたしたいと思います。
○小澤(太)委員 ただいま猟銃につきましては、その保管について通産省と協力して十分にそれを点検をし、監視をしていると言われましたけれども、先ほどの通産省からの御答弁によりますと、猟銃弾は弾丸でない、武器でもない、武器等製造法によるところの取り締まりの対象にもなっていない、したがって製造、保管についての特別の法令がない、ただ火薬についてということだけでございます。一体ライフル銃、あのような精度を持っているライフル銃、百メートル離れて必ず人を殺傷する能力を持ち、三百メートル、五百メートルの射程があって、そこでその遠い物体に必ず当てる、こういうことができるようなものを、単に猟銃として武器としての取り締まりの外に置き、かつ、それに使用する弾丸が何らの法の規制を受けない、こういうような法制上の欠陥があるのではないだろうか。警察官がかりに猟銃弾の保管について、これは武器等製造法によって立ち入り検査ができますけれども、猟銃がない、あっても保管のしかたがよろしくない。なるほど錠をかけるということは施行規則の第七条にちゃんと書いてあります。書いてありますけれども、対象にならないものをどうしてやれるか、こういう欠陥が私はあると思うのです。
 それからさらにまた、そのようなライフル銃と銃弾とを同じ店で簡単にとれるように置いておくということ、これまた取り締まり上重大な不安があるんじゃないかと私は思います。こういう点について、もう一度警察当局と通産省御当局の御答弁を求めたいと思います。
○佐賀説明員 お答えします。
 銃弾につきましては、火薬類取締法上の関係で、武器であるとかないとかという性格にかかわらず、これはいわゆる火工品というふうな見地から、その製造、販売、流通、貯蔵等につきまして、一貫して法律の規制をいたしております。
 特に貯蔵の関係でございますが、普通、火薬の販売店では、実包としまして、いわゆる散弾とライフル銃、それから詰めかえ用の火薬あるいは銃用雷管というふうなものを販売いたしておりますけれども、こうした火薬類の貯蔵は火薬庫においてするということが原則になっております。火薬庫につきましても、メーカー、製造業者それから販売業者の場合で、それぞれ一級、二級、三級等の格づけを持った火薬庫においてやる、しかもその火薬の管理につきましては、国家試験によって資格を取得しました取扱保安責任者を選任しましてこれが監督するというふうな義務づけを行なっておるわけでございます。
 ただ、販売店におきます銃弾関係につきましては、たまの数量――この数量と申しますのは、現行法上四千発となっておりますが、数量を限って火薬庫以外の保管場所に貯蔵することを例外的に認めている。この場合、この貯蔵場所というのは、火災並びに盗難の防止に特に留意せよというふうなことで、こうした場所に限定されておりまして、通常はスチールのロッカーとかあるいは金庫等に保管するということになっております。その場所につきましても、特に都道府県知事の指示する安全な場所でなければならぬというふうな規制を加えておる次第でございます。
○小澤(太)委員 私の伺っているのは、そういうことでなしに、猟銃弾について伺っているのです。猟銃弾は中に火薬が入っていますから、火薬類取締法で取り締まる。なぜ武器であるところの銃砲弾とことさらに区別して、猟銃弾を武器等製造法の中で何ら触れていないということはどういうことなんだろうか。ライフルのたまのように、武器と何ら変わらないところの人を殺傷する能力を持っているもの、この点について私は現在の法制の欠陥があると思う。この法律について通産省は将来これを改正して、現在のような、ライフル銃がどんどん使われておる、かってに使われるというおそれのあるものを、保安上の、治安上の立場から猟銃弾もまた銃砲弾と同じような規制をすべきであると思いますが、そういう考えはございませんでしょうか、どうでしょうか。
○佐賀説明員 私の御説明が若干舌足らずであったかと思いますが、私は、単にたまに含まれている火薬だけをという意味で申し上げたわけではございませんで、あくまで猟銃弾と申しますのは、普通散弾であり、ライフル弾も含まれると思いますが、たまとしていろいろの規制の内容を申し上げたつもりでございます。
 なお御質問にございました、たまと鉄砲との販売を同時にやることについては問題があるではないかというふうな趣旨でございますが、確かに現在の全国の様子から見ましても、千二百余りの銃砲火薬店のうち両方売っているというのがその約六割でございます。したがいまして、この二つを分離するというふうなことにつきましては、このような異常事態の犯罪を防止するについて、やはり多少の効果はあるというふうなことでございますが、ただ、今回のような非常に異常な事件の防止のために、この販売店の営業の一部について何らかの制限を加えるということによって、大多数の善良な使用者に非常な不便をかけるということについての功罪はどうであろうかというふうな問題もございますので、この点につきましては、御趣旨のようなことも考え合わせまして、今後慎重に検討を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○小澤(太)委員 そこで、私は提案したいと思うのです。
 まず第一点は、猟銃としてライフルを使う、ライフルは猟銃である。それならば、その猟にふさわしい程度の性能、機能を持ったものという程度に制限することはできないだろうか。三百メートル、五百メートル離れて人間を殺すことができるようなものを猟銃として無制限に許していいかどうかという問題が第一点。
 第二点は、やはりライフルのたまを猟銃弾として、法律上もこれの扱いについてはまことに厳格さを欠いておる。治安上の見地からやはり銃砲弾と同じような扱いをすべきである。と同時に、ただいまちょっと申しましたように、銃砲の保管については、これが直ちに使用できないように、銃砲店に並べておくときにはいろいろなことをやらしておるということを聞いております。あるいはまた、たまの保管についてもやらしておりますけれども、これは行政上の指導であって、これに対して、実行していない場合に、これを法律上処罰するような規定があるのかないのか。ないとすれば、これを実行させるようなことを法律上考えるべきではなかろうか。
 それから保管の問題でありますけれども、同じ銃砲店でたまと鉄砲を一緒に販売させずに、別のところで販売させるようなことはできないだろうか、こういう点について検討していただきたい。このことを申し上げまして、この問題の質問を終わります。
 次に、運輸省の方にお聞きをいたしたいと思いますが、今回の船の乗っ取り、これは予想される事情でございましたか、あるいは予想しなかったのかどうか。とにかく突発的な事柄であったことは事実でございます。そこで、先般成立いたしました航空機の強取等の処罰に関する法律、これに船舶を入れておきましたならば、最初政府が考えておられましたように、船舶を入れておいたならば、今回の事件に対する対処法律ができておったんだ、こう言われるかもしれませんけれども、御承知のとおり、あれは航行中の航空機でありますから、航行中の船舶に対してはそのようなことは言えるかもしれない。しかし、今回は停泊中の船舶に強引に乗り込んできてこの運航を支配したということでありますから、あの法律に船舶を入れたということだけでは、今回のには適用されないのでありまして、航空機と船舶とはその機能上、またその運航の態様その他非常に違っておりますから、今回の事件に照らしまして、今後何らかの立法措置を必要とするかどうか、どのように考えておられるか、この点を聞かしていただきたいと思います。
○澤説明員 お答え申し上げます。
 先般の「よど号」の奪取事件のあと、例の特別法案が起草されましたときに、運輸省といたしましては、船舶についても同様にこれを規定してもらいたい、こういうことを関係省に申し出たわけでございます。これは船舶につきまして、最近におきましてもこういう奪取の事例が実は相当あるのでございます。それでそのように関係省に依頼いたしましたが、船舶は非常に種類が多くございまして、トン数も非常に違いますし、それから旅客船、貨物船あるいは漁船等ございますので、あのような倉卒の間にいきなり船舶ということで入れることは若干無理がある。それで、これはさらに関係省で詰めまして、そして最近の機会においてあの航空機の特別法の改正法案を国会に提出しよう、こういうことで関係省の意見がまとまったわけでございます。
○小澤(太)委員 その法律の改正案の内容としては、どういうことを考えていらっしゃるのですか。
○澤説明員 大体船舶の種類を限定いたしまして、航空機の強取に関する特別法にそのまま入るのではないか、このように考えております。
○小澤(太)委員 法律はそのようなことを計画しておられるというのでありますから、できるだけすみやかに改正法の提案をお願いいたしたいと思いますが、さて、法律でなしに、その前の、そのような乗っ取りをする可能性のあるお客さん、これを見分けるのはなかなか困難だと思いますが、事前に予防するような措置としては、どういうことをお考えになっておられるだろうか。
○林説明員 主として情報入手の場合についてでございますが、挙動の疑わしい者あるいは武器を所持している容疑のございます者について、早期発見につとめるように努力いたしております。
○小澤(太)委員 たいへん名答弁をされました。どういうふうにして努力をしておられるかを聞いておるわけです。努力をしておらぬことはないと思います。
○林説明員 いままでは外国へ逃亡する可能性のある犯人につきまして、そういう者が乗る可能性のあります航路につきまして、海上保安庁で情報入手につとめておりまして、そのような場合に、特に乗船地に保安官を配置しまして監視するあるいは挙動不審の者を注意して監視するというよううなことを行なっておったわけでございます。実を申しますと、今回のような瀬戸内海の宇品−今治航路につきましては、海上保安庁の現在の人員等の体制の関係もございますが、十分な監視体制をとることはできなかった点、深く反省いたしております。
○小澤(太)委員 私が伺っているのは、今後どのような具体的な措置を考えておられるか。それからまた、この予防について保安庁、警察あるいは船会社、それぞれその責任を持たなければならぬと思いますが、一体どこが中心となってその措置をどのように講ずるものであるか。警察庁長官、ひとつそれを聞かしてもらいたいと思います。
○後藤田説明員 一応の境界は陸上犯罪と海上犯罪、こういうことになっておりますが、この種事案は、いずれにいたしましても両庁が平素から十分に協力をやるということでなければとうてい防げないことだと思います。
 そこで、まずこの種事案の発生予防の手だてでございますが、この種の犯人を大きく分けて考えますと、政治的な理由によるものが一つございます。いま一つは、犯人が逃亡の手段としてやるという場合がございます。いま一つは、精神異常者による犯罪。大体こういう三つぐらいの類型に分けられると思います。したがって、それぞれの類型を頭に置きながら予防措置を講じなければなるまい。しかし、いずれにいたしましても、事実問題としては、私は非常にむずかしい問題だと思います。そこでまず第一段階は、何といいましてもこの種の事案防止のためには、情報の段階で一つは処理をする、こういうことでなければなりません。いま一つは、飛行機であれば飛行場、船であれば港、この段階で、要するに水ぎわで防ぐ。これはたとえば空港警察の問題もありましょう。あるいは港であるならば、私どもの立場でいえば、水上警察の機能充実の問題、こういうことが考えられるのじゃなかろうか、こう思います。そしてその際に、まずいずれにいたしましても人とそういった凶器類との分離ということになろうかと思います。これがなかなか言うべくしてむずかしい。というのは、いずれにいたしましても犯罪の予防さえできればいいわけですが、犯罪の予防ということは何といいましても即人権との関連が出てまいります。したがって、こういった点で私どもがとる的確な手段というのは実は非常にむずかしい。したがって、それがためには各種の器材の開発以外に、実際問題としては人と凶器の分離ということはむずかしいのじゃなかろうか。こういう点についてはしかし私ども十分将来検討せねばならぬ。一たん発生をいたしますれば、何といいましてもこれは被害者の救出が第一、第二は犯人の早期検挙、こういうことになろうかと思います。と同時に、私ども通常、検挙にまさる防犯なし、こういうことばをよく使いますけれども、やはりこの種事案については、やれば損なんだ、どうしてもつかまるのだというだけの捜査能力を向上する、これは何といっても必要であろう。最近の各国の例、また日本におけるこの種犯罪の発生状況から見て、ハイジャックの問題であるとかシージャックの問題であるとか新しい犯罪でございまするので、国民の期待に沿うようにできる限りの緊急な措置を講じてまいりたい、かように私は考えております。
○林説明員 ただいま警察庁長官の御発言にもありましたとおりでございますが、きめ手を発見することは非常にむずかしゅうございます。私どもは主として海上における法令の励行、犯罪の鎮圧を担当しておりますのですが、この種事犯に対しましては、やはり先ほど申し上げましたような監視体制の強化がまず第一でございますが、それでももう一つ発見することが困難な場合が非常に多うございます。それからさらに、海上保安庁自体の力だけでは不十分でありますので、関係の海運会社その他の関係当局と協力いたしまして、講習会なども開きまして対策を講ずるという体制をとっております。さらに、船会社に対しましては、船長がおりまして操船をいたしております船橋でありますが、そこへの入り口に必ず施錠する、かぎをかけておいて犯人が外部から入れないようにするなどということは現に指導をいたしております。それ以外に、物理的にハイジャッキングを困難ならしめるような方法につきましてもいろいろと考えておりますが、どうももう一つきめ手がございません。私どものほうでいろいろと専門家を動員して研究し、民間のお知恵も拝借しておるような段階でございまして、ここでお答えするようなはっきりした具体的な対策、これといったような対策がないのが現状でございます。
○小澤(太)委員 船長には、船員法による職権とまた別に、司法警察官としての職務を執行することができるようになっておりますね。しかし、船長の実際の力からいって、海のハイジャックをどうすることもできぬと思いますけれども、たとえば持っておる所持品の船内における検査等、そういうことはできるのですか。もしできなければ、そういうこともできるようにする必要があるのじゃないだろうか。あるいは新聞紙によりますと、運輸当局のどなたかの発言で、あるいは保安官を乗せることも考えるということを言っておられた。しかし、保安官をどういうふうにするのか、そういう考えはおそらくないと思いますけれども、もしあるとすれば、どういう考えで、鉄道公安官のようなかっこうでやるのか、そういう点もひとつお考えがあれば、お示し願いたいと思います。
○林説明員 武器その他の危険物を持っております疑いが非常に濃い者につきましては、これを船内で捜査することも可能でございます。しかしながら、事実問題といたしまして、全国の多数の旅客船航路の一隻一隻の船内でこれを行なうということは、飛行機と違いまして、携帯手荷物の量も大きゅうございますし、非常に困難なことだと思います。
 それからさらに、海上保安庁が海上保安官を警乗させるという第二の点についてでございますが、これは先ほど警察庁長官の御発言中の分類にありました一部の航路、たとえば特定の外国へその船をハイジャッキングして持っていく可能性の濃いような航路につきまして、さらにまた特定のそのような可能性の濃い時期につきましては、すでに実施いたしております。しかしながら、現在の海上保安庁の人員をもちましては、とうてい今回の航路のような旅客船航路を含めまして、警乗を鉄道公安官のように行なうということは不可能でございますし、現在のところはそこまで手が回っておりません。
○小澤(太)委員 どうも対策が政府には具体的にはない、非常に苦慮しておるということが察知されるわけであります。
 そこで、最初に御答弁がありましたように、特別の法律の制定あるいは先般の航空機の強取に関する法律の改正案ということを早急に考えていただかなければならぬと思いますが、「よど号」の事件以来、人質にするという犯罪がどんどん出てまいりまして、今回の事件を含めて六件になるそうであります。いろいろその犯罪の態様は異なっておりますけれども、関係のない人間をつかまえてそれをたてにいろいろな自分の要求を通そうとするきわめてひきょうであり、悪質な犯罪でございますが、世間では、この人質を用いる犯罪については、それに対する刑罰を重くしてこれを防ぐ、こういうような必要があるという意見が多いのであります。私も、可能ならば、現在の刑法その他の法令によってもこの人質に対する犯罪を予防し、取り締まり、かつ検挙処罰することが十分にできないならば、これに対する特別の法律も考えていいのではないか、こう思うのですが、法務省ではどういうお考えでしょうか。
○辻説明員 人質に関する犯罪と申しますが、これはどういうふうに考えていいのかどうか、いろいろ千差万別あろうかと思うのでございます。一応私どもは、何らか不法な行為を遂行する目的で、その手段として他人を自分の実力的な支配に入れる、こういう一つの行為、これがいわゆる人質犯罪ということになろうかと思うのでございます。そういたしますと、大体先ほど御発言がございましたように、現行刑法におきましては、かような場合にはおおむね監禁罪が成立する。御案内のとおり、監禁罪は法定刑が三カ月以上五年以下でございますが、これは大体の場合適用されるわけでございます。さらに、こういうのは場合によりますと、すでに重大な犯罪を犯してそれの逮捕を免れるためにやるというような場合には、本来すでに犯した犯罪というものについてもまた刑罰法令が適用されますから、非常にこの法定刑が軽いというわけではないと思うのでございます。
 ただ、しかし、先ほど来御指摘のように、全然関係のない多くの人を監禁状態に入れる場合でございますとか、あるいは非常に凶悪な武器を持っておりまするとか、あるいはその監禁状態が非常に長くなります場合とか、こういう場合は、あるいは現行の刑法の規定をもっては法定刑が軽いという御批判ももちろんあろうかと思うのでございます。かような問題につきまして、新しい立法の必要があるかどうかということは、すでに私どもは検討し、研究をいたしておる段階でございます。
○小澤(太)委員 だいぶ与えられた時間が迫ってまいりまして、最後に、私はたいへん重要な事柄でございますが、伺っておきたいと思います。
 これはまず警察庁長官に伺いたいのでありますが、あの川藤、犯人ですね。これを結局射殺したことであります。射殺せざるを得なかったという理由をひとつ明確に示していただきたいと思います。
○後藤田説明員 今回のこの事件の最終の段階は、まさに警職法第七条に規定をせられておりまするところの条項、これを発動せざるを得ない緊迫した状況下に相なったと思います。そういうような意味合いから、第七条では正当防衛あるいは緊急避難、あるいは懲役三年以上の凶悪な罪に該当する犯罪を犯した者の逮捕にあたって他に全然手段がないといったような場合に、武器を使用して、そしてその場合に危害を与えることもやむを得ず、こういう規定がございますが、その規定によって事態を処理する以外他に方法がなかった。こういうことでライフルの狙撃を命じ、それによって犯人を撃った、こういうことでございます。
○小澤(太)委員 私が伺っておるのは、犯人を撃たざるを得なかった緊迫した事情ということを伺っておるわけです。
○高松説明員 この犯人が、最初に「ぷりんす丸」に乗り込んで宇品桟橋を離れますときに、非常に銃を乱射いたしました。それで追いかけて行きました広島南署の益原警部補が胴を撃ち抜かれまして、いま危篤の状態でございます。それから高浜に入りましてからも、あの夜に非常に銃を撃ちました。ここでも二人ばかりけが人が、軽いけがですけれども、出ております。広島でさらに一名民間人が耳を――民間の人のところへかするというふうな状況がございました。それから夜、高浜から広島に向かいます途中、海上保安庁の巡視艇に対して数十発たまを撃っておる。正確に数はわかりませんが、三、四十発近いたまを乱射しております。それから再び広島に戻りましてからも、八時五十四分から最後の九時四十七分までの間に十八発撃っております。陸上に撃ったものもあれば、海上保安庁の船に向かって撃ったものもある。陸上のものは、パトカーにたまが当たっておるものもありますし、
  〔委員長退席、古屋委員長代理着席〕
それから自分の肉親、説得のために乗り込んでいる自分の父親や姉のいる船に向かっても撃つ。所轄署長が警告を発すれば、そのマイクのほうに向かって撃つ。警告あるいは説得を聞き入れるというふうな状況は全く見られない。その上に、共犯者である、前に警察でつかまった未成年者をここへ連れてこい、警察の責任者が連れてこい、いやならここで撃ち合いをやる。最後まで自分は戦うんだ。説得など聞くつもりがあるならば、最初からこういうことはやらないんだというふうなことの非常に語気の強い状況でございました。
 それで、このまま放置すればどのような事態になるかもわからない。たまも非常に持っております。銃砲店から取ったたまと最後に遺留して残っていたたまを比較いたしますと、百十一発たまを撃った勘定になります。そういうふうな状態でございまして、ライフルは御承知のように、威力の非常に強いものでございます。二千メートル近くまで飛んでいく。そういうふうな状態もございまして、非常に状態が緊迫いたしました。説得の可能性もほとんど皆無というふうに考えられました。これを逮捕するためには狙撃もやむなしというふうに判断したわけでございます。
○小澤(太)委員 金嬉老逮捕に非常に苦労されまして成功した高松刑事局長のことでございますから、今回の事件につきましても慎重に検討をし、その結果の判断であるということは、私もそのように思いますし、またその判断がおそらく正しかったであろうということも思うのであります。しかし、世間には撃ち殺さなくてもよかったのじゃないかという意見がかなりあります。あの場合に、どうしても射殺しなければならなかったのか。警察の意図は、そうでなしに、犯人の抵抗能力を奪うということが目的であったのか、その点についてひとつはっきり伺いたいと思います。
○高松説明員 私どもは銃を使用します場合にも、抵抗を抑止してこれを逮捕するということが目的でございます。ただ、ライフルの射撃自身も非常にむずかしゅうございました。結果的には思ったようになりませんでしたけれども、そういうつもりでいたことは事実でございます。ただその場合に、ライフル自身の性能からいって、あるいはそういう不測の事態が起こり得るということは十分に考え、起こり得てもやむを得ない場合もあるとは思いましたけれども、しかし、われわれの銃器の使用は、あくまでも第一は犯人の抵抗を抑止すること、こういうふうに考えております。
○小澤(太)委員 この場合に方針としては、この際犯人に危害を加えるということもやむを得ないということにきまったと思いますが、どういう時点をとらえて、どこで引き金を引くかというその判断あるいはそれを指揮するのはだれに責任があったわけでしょうか。
○高松説明員 私も松山へ海上保安庁長官とともにあの晩に飛んでいきまして、自後ずっとフォローしてまいりました。広島の時点も須藤県警本部長と一緒におりました。
 それで現地におりました広島県警の幹部からは、状況が非常に悪い、何とかこれは処置をしなければ困るという意見の上申がございました。それで須藤県警本部長は、自分で状態をもう一回見る、見た上で自分で判断するということで、県警本部からすぐに現場に向かいまして、そしてそこから私に対しても、銃器使用やむなしというふうに判断するという連絡をよこしておりました。そういう状態で、大体そういうふうに銃器の使用がやむを得ないというふうに考えたのは、大体九時二十分ごろではなかったかと思います。そういう状態でございます。
○小澤(太)委員 私が聞いておるのは、銃器使用やむを得ないということを判断したこと、これはだれがしたかということじゃなしに、それは伺いましたからわかりましたが、いつ引き金を引くか。だから、その撃った責任といえばなんですけれども、かりに責任があるとすれば、それは加川巡査部長であるのか、撃てということを命令した者であるのか、そこのところを聞きたいのです。
○高松説明員 現地における県警本部長が捜査一課長に対して、銃器を使えということを指示しております。捜査一課長は大阪府警から参っております満尾という警部補に対して、チャンスを見て撃つということを指示しております。満尾警部補が自分の部下である加川巡査部長を配置につけて、そして時期を見てこれを撃った、こういうことでございます。
○小澤(太)委員 そこで、その時期は、現場の射手でありました加川巡査部長が適当であると思って引き金を引いた、こういうことですね。
 ところが、これは朝日新聞の五月十四日の記事でありますが、「無理だった精密な照準、銃撃した巡査部長語る」こうありまして、「現場の指揮官、満尾久警部補からそ撃の命令を受けて十秒ぐらいして引金を引いた。その直前まで犯人は腰から下がドアの鉄板部にかくれる位置に立っており、照準は上半身にあてていた。はずすとどんなことになるか予想もつかず、足をねらうのが最善だが仕方がなかった。距離が約八十メートルあり、テレスコープは倍率四倍で、その視野に犯人の頭からヒザぐらいまでがすっぽりはいるので、肩、腕などを正確にねらうのは無理だった。」と言っているのです。射手が肩や腕あるいは足をねらって抵抗を阻止する措置を――この方はオリンピックか国体か何か知りませんが出た人で、非常にりっぱな射手だそうですけれども、それでさえ非常に自信のない、無理だったというその時点において引き金を引かしたということはどうだろうかと、私ども実は心配するわけです。もっと手や足を撃てる時点、八十メートルのところですから――ほとんどこの人は百メートル離れたところから十センチ直径のものに必ず一発で当てるという腕がある人だという。日ごろ的をねらって練習するときと違って、人の命を殺すか殺さぬかの重大なときですから、心にも動揺があったと思いますが、しかし、なぜその点をもう少し指導できなかったかということが私ども思われます。
 それからもう一点は、いろいろ説得をさせるために、犯人のおとうさんとねえさんが呼びかけたそうですね。それに向かっても発砲した。実際それはそれをねらって撃ったのかどうか知りませんが、そこでこれはもはや普通じゃないという判断をされたそうですが、この犯人は前の晩眠っておりませんね。非常に疲れておると思うのです。それで疲れておるときに、もう少し待てばもう少しいい状態になりはせぬかと思われることが一つ。それからもう一つは、もし撃ちそこなって、負傷の程度が軽ければ手負いになって、そして船長以下の乗り組み員の生命をそれこそ危機におとしいれるという可能性が十分にあるわけです。ですから、撃つとなると、十分に抵抗の能力を落とすというそのことができ、かつ本人の命を奪わないということ、そういうことが必要である。こういう点を考えますと、はたしてあのときに引き金を引いたのがいいか悪いかということについては、これは十分私は考えなければならぬ問題だ。もう少し時期を待って、疲労したところで何か措置はとれなかっただろうか。あるいはまた、もう少しからだが、全身が出てきて撃てるときに撃つべきだったろう。現場の緊迫した状況がわからないから、私がここでそういうことを申し上げるのはいささか的がはずれているかもわかりませんが、とにかく重大犯人であっても人の命であります、人の子であります。父親の見ている前で子供が撃ち殺されるのであります。
 私が最初に伺ったのは、そういう事態において負傷をさせて抵抗力をなくしてから逮捕しようと思っていたのか、ほんとうは一発で殺そうとしたのか、そこまで疑って悪いかもしれませんが、状況判断としてそういうことを疑ってもやむを得ないように思うのです。こういう点についてどうお考えになるか伺いたい。
○後藤田説明員 射撃をしたときにはもちろん、先ほど局長から申しましたように、警察官の武器の使用はいかなる場合においても抵抗力を抑止する、こういうことが眼目でございます。したがって、撃つ瞬間から射殺をするという目的で撃ったものではございません。しかしながら、これまた先ほど局長からお答え申し上げましたように、やはりライフルを撃つという場合には、場合によるならば相手は生命を落とすかもしらぬという予測は当然いたしておりました。これは当然やむを得ないことだろうと思います。
 そこで、撃った時間がいま少し待てぬのか、疲労もするではないか。ごもっともな御質問でありまするけれども、待てるくらいであるならば銃は撃ちません。したがって、私は、あの時期において射撃したことはまさにやむを得ざるこれまた正当なる射撃命令であり、また射手の行動であった、かように考えております。
○小澤(太)委員 時間がございませんので、そろそろ質問を終わりたいと思いますが、その判断は警察当局がされたわけですね。その判断がはたして正しかったかどうかということについて、それをさらに有権的に判断する機構が国にあると思うのですが、たとえば検察がこれを十分に捜査し調べて、最後には裁判所においてその決定をするという手段があると思いますけれども、それはどういうふうになっておりますか。これは法務省の刑事局長から伺いたい。
○辻説明員 警察官がその職務の執行にあたりまして人の死傷の事態を引き起こしました場合には、従来から検察庁におきまして、検察の立場から、その職務行為が刑事上の免責に当たるかどうかという点については慎重に調べております。今回の広島の事件につきましても、同様に広島の地方検察庁において調べておるわけでございます。
○小澤(太)委員 そういう措置がとられ、結論が出ることを期待いたしておりますが、警察の措置が今回の射殺ということについて私は適当でないとは申しておりません。長官が自信を持って言われるとおり、やむを得ざる唯一の、絶対絶命の場合においての行動だ、かように考えておりますけれども、私がおそれますのは、この事態はそれとしても、警察官の武器使用の問題がこれから心理的に警察官にいろいろな影響を及ぼしはせぬかと思うのです。たとえば、これは事態が違いますけれども、五月の十四日の夕刊に出ておりますが、東松山市で警察官が、何かけんかをして逃げておる五人の者に対して、これを追跡して、百キロぐらいのスピードで逃げる車をとまれ、とまらないから威嚇射撃のつもりでタイヤを目がけて撃った、そのピストルがそれて、一発は、乗っておった――犯人になるかどうか知りませんよ、その被疑者の頭とかをかすめてけがをさした。驚いてとまったときに、今度は二人の青年が逃げ出した、それを今度は追っかけていってまた一発、とまれと、撃つぞと言ってはおりますけれども、撃ってひざを撃ち抜いておる、ひざに傷を与えておる、こういう事件が起こっておりますね。これは私はどういう判断でやったのか、どういう状況でやったのかよくわかりません。また非常に重大な犯人であったかどうかもわかりません。しかし、もう翌日にはこのような銃器の使用がきわめて安易に行なわれているのであります。こういう気分がだんだん広がっていくということを私は非常に懸念するわけです。これについてのいきさつを聞くわけじゃございません。警察庁の態度としてひとつお考えをいただきたいと思います。
 そこで、時間もございませんから、最後に申し上げたいのは、この事件をいろいろ検討いたしますと、最初に申し上げましたように、立法上、行政上いろいろなこれから措置すべきことがたくさんございます。捜査の問題、あるいは法律的にいえば警職法の問題もあります。武器等製造法の問題もあります。それから銃砲刀剣の所持法の問題。ライフルを無制限に猟銃としていいかどうか、銃砲刀剣等の所持に関するあの法律には、刀剣等については長さとか何とかいろいろ書いてありますね。持っていけないものをちゃんと規制してあるでしょう。ところが、猟銃についてはライフルが、あのような威力を持っているものが何ら無制限でかってに売られておる、こういう問題。それからたまの保管の問題あるいは乗っ取り事件の問題とか、いろいろ問題を含んでおると思いますので、政府当局におかれましては、ひとつ真剣に各省連絡を十分とって研究をしていただきまして、できるだけ早い機会にその成果を国会に持ってきていただきたい、このことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
○後藤田説明員 お説の警察官の銃器使用による犯人の逮捕の問題が、こういったことを契機にして心にゆるみができてくるという心配がありはしないかというお話でございますが、私も同様のことを警戒いたしまして、厳重にその点については部内の局長会議においてさっそく注意をいたしますと同時に、昨日の管区局長会議の席上におきましても、この点については絶対に誤りのないようにと、従来からの銃器使用についての警察の方針といささかも変わったところはない、例外中の例外の措置であるということを十分一線に徹底をさせろ、ことに若い警察官が今日たくさんおりまするので、なおさらそういう点についての教養を間違うなということを注意いたしてございます。
 また、本件を契機としていろんな御質疑がありましたような検討事項、これらについては、私ども政府関係各省とも十分連絡をとった上で検討してまいりたい、かように考えております。
○古屋委員長代理 阪上安太郎君。
○阪上委員 私は瀬戸内海の客船乗っ取り事件について質問いたしたいと思います。すでに多くの質問がなされましたので、私は特に狙撃を命じた須藤博忠君でありますか、これは広島県警本部長、それからライフル銃で犯人あるいは被疑者川藤展久といいますか、これを銃撃した大阪府警射撃班の加川巌巡査部長の警察官職務権限の行使が適法であったかどうか、こういったことについて、しぼって御質問申し上げたいと思います。それから同時に、犯人の川藤の逮捕について、進展していく犯罪、これに対する予防措置が十分であったかどうかというようなことについてお伺いしたいと思うのでありますが、あとの部分は時間の関係上、山口君にお願いすることにいたします。
 そこで、こういった事件は、アメリカ等外国と異なって、日本においてはライフル銃で警察官が犯人を射殺したということはおそらく初めてだと思います。そして射殺の瞬間のテレビ放送により茶の間にストレートに入っていったというのも、これは初めてだろうと思うのであります。少なくともわが国においては初めてだと思います。したがって、国民のショックは非常に大きい。そこで私は、この際、真にやむを得ざる警察官の行為であるやいなや、これを明白にする国会の責任があるんじゃないか、このように考えるわけであります。そこでお伺いいたしますけれども、この件については、警察庁と法務省にそれぞれ見解を伺いたいのであります。けれども、たいへん時間もかかることでありますので、最初に警察庁にお伺いいたしますから、法務省のほうでは、警察庁の考え方と異なる考えであるというような場合に発言をしていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、狙撃を決定したのはいつかという問題であります。いま小澤委員が質問された問題でありますが、それとその協議は一体どこで行なわれたのか、その態様はどうなっておるか、どういう形で行なわれたか、こういうことを伺いたいと思うのであります。新聞等の報道するところによりますると、宇品から出て、高松へ行く、そしてこれを追跡する、そういった船の上で撃ち殺してしまえというようなことばが出ておるのでありますけれども、一体どの時点で、どういうふうに御決定になったのか、そこのところを警察庁長官からひとつお伺いしたい。
○後藤田説明員 この事件の発生直後に現地広島県警から警察庁に速報が入りました。それを刑事局長から私が報告を聞きました。そこで、直ちに関係の局課長を集めまして、状況はまずどういう状況だということを聞いたわけでございます。そこで私は、そのときにこういう指示をいたしました。これはともかく乗客を無事救出をする、これを基本として考えろ、それがためには、何よりも粘り強い説得をやれ、したがって、その説得をするのにはだれがいいのだといえば家族がよかろう、こういった手配もすぐにやれ、しかし報告を聞くと、銃を五丁持っておる、たまは三百八十発持っておる、こういう状況では、最後の瞬間には、場合によるならば、武器使用による逮捕以外に方法はないかもしらぬぞ、したがって、そのときに手がないといったのでは、これは被害が広がる一方だから、武器の準備もしなさい、こういう三点を指示いたしました。ところが、それと同時に、船をともかく宇品でとめろ、そして説得をやれ、金嬉老と違いまして、目標が動くわけでございますので、至るところでたいへんな事件が起こる可能性がある、したがって、ともかく動かすなよ、こういう指示もいたしました。ところが、宇品ではとめられない、すぐに船が出てしまったということですので、瀬戸内近県及び福岡県、北九州、こういう方面すべてに手配をする、そうして警察官には防弾用の装備を緊急に手配をしろ、こういう指示をしたわけでございます。そうして夜の十二時前だったと思います。さらに私は、警察の説得は忍の一字でやれ、決してあせってはいけない、こういう指示をいたしました。そういうことで、したがって、ライフルの準備は、私のそういう指示に基づいて――福岡県警及び大阪府警にしかこれはございません。そういう意味で、それを広島県あるいは愛媛県、これに手配をさしたわけでございます。
 この私の基本方針を受けて、高松刑事局長は現地に臨んだわけでございます。以後現地でそれぞれの指示があったわけでございますが、これにつきましては、刑事局長からその瞬間ごとの御報告を申し上げます。
○高松説明員 松山の高浜桟橋に着きましてから、先ほども申し上げましたように、彼は非常に乱射をやりました。ちょうど岡山の下津井港から海上保安庁の巡視艇に本人の父親と姉に乗船してもらいまして、説得のために高浜に向かいました。大体その到着予定時間が夜の十二時、二十四時ごろの予定でございました。それが着きましてまだ上陸しない前に、給油をしろ、給油をすれば乗客は解放する、こういうことで給油を始めまして、給油が終わって乗客が出ました。それから船は出ていったわけです。その船が出ていきました際に、海上保安庁の巡視艇に私ども狙撃班の者も乗せまして、あとを追尾してまいりました。当時の私どもの判断としては、どこへ行くのかわからない。今治の方向へ向かっておりまして、それがさらにUターンをして、今度は通常の航路でない大三島の方向に向かっておる。その行く先については、まことに判断に苦しみました。一番心配いたしましたのは、たとえば警察力の非常に手薄な港に上がる、そういうところで民家に押し入ってそこであばれるというふうなことになった場合に非常に困るというふうな頭で、狙撃班あるいは広島から来ておりました機動隊が、一隻の民間船をチャーターして、これのあとを追っておったわけであります。
 いまお話の、途中で撃つというふうな話が、これは確かにそういう声が乗っておった者の中でちょっとあったようでございます。これは私どもは、いけないということでとめました。
 それで、説得をもっとやれということで、非常に近くへ寄ると、彼は盛んに撃ちました。船も非常に近寄れなかったのですけれども、いろいろごくふう願って、船のマイクを使って家族の説得をずっと続けました。そういう状態を続けながら宇品桟橋に再び戻ってきたわけでございます。そこでも、家族の乗っておる船を説得に近づけますと射撃をされます。それから、本人の学校時代の先生とかあるいは友人とかで、説得したいという申し出のあった方もございました。それらも至急来てもらうようにいろいろ手続をいたしておりました。いろいろ手を尽くしてみましたが、そういうことをやっておりますうちに、先ほど御説明申し上げたように、非常に銃撃もなかなか激しい。それから、船は、桟橋についておりますけれども、もやいもとってあれば、いかりも入れていない、いつでも動けるというふうな状態でございました。それから、先ほどの、逮捕している共犯の身柄をよこせ、会わせろというふうなことも、船の船員からのこっそりの電話によりますと、どうもこれは連れ込んで一緒に逃げるつもりのように見受けられるというふうな判断を船の者もしておりました。そういうふうないろいろの状況がございました。特に、射撃が、十八発というたまを撃っておりますけれども、そういうふうな状態からいきまして、もう最後の方法よりやむを得ないというふうに判断をいたしましたのが、先ほど申し上げました九時二十分ごろであったと思います。
○阪上委員 警察官は、警察法の六十三条で、これは警察の場合は上官の指揮監督を受けてその職務を行なう、こういうことになっておりますね。そして、現場に上官がいるときは、当然それはその上官の指揮による。現場に上官がいないときは、これは警察官独自の判断になっていくと思いますが、平素の勤務において、上官から指揮監督を受けていることに従って法律によってその手段を行使する、こういうことになると思うのでありますが、私、伺っておりますのは、いま言われたように、警察庁長官はそういう態度を示された。そこで、現場に行かれた高松刑事局長ですか、これとの上下の関係とかその指揮とかいう関係については、どうなっておったんでしょうか。
 それから、これは時間がありませんから、簡単に伺っておきたいんですが、平素、こういったことについてどういう監督を教えていられるのか、指揮をしておられるのか、中に何かあるのかどうか、そういうことをちょっと伺っておきたいと思います。
○高松説明員 現場における最終判断をやるべき者は警察本部長でございます。私は現場に参っておりましたが、法律的に本部長を指揮命令する権限はございません。指導助言という立場にございました。
 それから、そういう場合の判断はだれがやるかという問題につきましては、状況によって非常に違いましょうけれども、私は、その本部長がそういう重大な問題については自分で決定を下すべきだと思います。それから、本部長がどうしても現場に遠いとか、行けないとか、いないというふうな場合には、やはり県のそこの刑事部長とか捜査一課長とか、そういう当面の上級の警察官がその判断をやるべきだというふうに思い、かねがねそういうことで私の系統の部面に対しては大いに指導をやっております。
○阪上委員 しかし、先ほど言いましたように、やはり最終の判断というものは警察官がやることになっておる。この場合、上司がおるから指揮した、こういうことだと思うのであります。こういったものをきめるときに、いまのお話では、県警本部長限りできめていいのですか。あなたの場合に、私は善意の助言をする、アドバイスをするにとどまるんだと言っておられます。したがって、あなたは、最後に撃つときにはおまえの判断でやれよ、こういうふうに助言されたんじゃないかと私は思うのですが、そのとおりでありますか。
○高松説明員 私が申し上げましたのは、法律的な権限というものは警察本部長にある。たとえば私と須藤本部長と意見が違った場合に、須藤君は私の意見に従う必要はない。しかし、この問題については、私と須藤君は意見は一致しておりましたし、その意味では、私自身にもこれは大いに責任はあると思います。ただ、法律的な問題としての最終決定権者はだれであるかということになれば、それは県警本部長の責任である、こういうことになろうかと思うのであります。
○阪上委員 そこで、次にお伺いしたいのは、この狙撃をしたという根拠法規は、先ほど言っておられたように、警察官職務執行法の七条である、こういうことになっておりますが、警察権限の行使についてはいろいろな法規があると思うのでありますが、それだけでございますか。
○高松説明員 この問題につきましての根拠法規は、職務執行法七条でございます。
○阪上委員 さらにお伺いしますが、警察法によりますると、第二条で、その乱用にわたることがあってはならないという規定がございますが、この職権乱用ということに対する概念、考え方、これはどういうふうにお考えになっておりますか。
○高松説明員 警察官職務執行法第一条の第二項には、「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。」こういう規定がございます。それで、意味するところは、こういうことで職務執行法によっていろいろな手段をとることが認められていても、それは必要な最小限度にとどめるべきものである、それを、認められていることをいいことにして拡大していろいろやるということは許されない、こういう法の趣旨であろうと思います。
○阪上委員 それから、次に、この警職法の第三条で「精神錯乱」ということがいわれておるのでありますが、この「精神錯乱」というのはどういう状態をいうのですか。
○富田説明員 第三条にいいます「精神錯乱」は、いわゆる気違いと、こういうふうに解釈をいたしております。
○阪上委員 気違いなら気違い、こう書けばいいのでありまして、「精神錯乱」と書いてあるのは、いささか少し狭義に過ぎるじゃありませんか。「精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者」こういうふうに法は規定しておりますね。したがって、精神に異常のある者、これは当然だと思うのでありますが、それから医学上の精神病者、これは気違いですか。あるいは強度のヒステリー患者、強度の興奮状態にある者、その他社会通念上精神が正常でない者、このくらいの幅を持って考えることが必要なことじゃないでしょうか。どなたからでも、警察庁のほうからでもお伺いいたしたい。あるいは法務省のほうからでもお伺いいたしたい。
○富田説明員 ただいま気違いと申し上げましたのは、一つの例を端的に申し上げましたが、いま御指摘のように、精神錯乱ということばを厳密に解釈をいたしますと、精神に異常を持っておる、その意味におきましていわゆる医学上の精神病者あるいは強度のヒテスリー患者、その他社会通念上精神が正常でない、こういう者を含むと解釈をいたします。
○阪上委員 あの射殺が行なわれたあとで、県警本部長が、これは新聞の報道するところによりますと、本人は非常に精神の混乱の状態にある、非常に危険な行為を起こすおそれがあるというような意味のことを言っておられるのでありますが、これは警職法三条のこの精神混乱状態、これに該当するものでしょうか。
○高松説明員 高浜から以降、船長がときどき――高浜でもそうでありましたが、宇品桟橋に戻ってきましてから船長はときどき出て、われわれのほうに彼の要求を伝えたり、あるいは船長自身の意見を述べたりということで連絡が何回かございました。そういう連絡を受けての話では、彼は精神錯乱とかそういう状態では全くない。ただ、非常に興奮はしておりますが、精神異常になったとか、精神錯乱というような状態ではなかったと思います。
○阪上委員 しかし、先ほど精神異常のある者云々とこうありまして、それが精神錯乱だ、強度の興奮状態にある者、こういうことになっておるのですが、それはそういう概念であるということならば、これは当然精神錯乱状態じゃないですか。
○高松説明員 やはり非常に人間冷静である場合と、非常に興奮する場合と、感情の起伏が非常に強い、いろんな状態があるわけでございますが、私どもは、本人は精神錯乱の状態におちいって、むちゃくちゃなことをやるというふうには判断いたしません。たいへん興奮しやすい、それからたとえば船を近づければいきなりぶっ放すというやり方をしまして、非常に興奮はしているというふうな感じは強く受けましたけれども、そういうふうに考えておりました。
○阪上委員 なかなかその辺ははっきりしないのでありますが、もし精神錯乱ということになりますれば、これは当然この三条の保護を受けなければならないということが一つあると思うのです。
 それから、同時に他人に危害を及ぼす犯罪を起こしたということも事実でありましょうから、そうしますと、これは捜査の手続もあり得るわけなんであります。こういうふうにその捜査の手続と保護とが競合する場合、こういう場合にはこれはどういう措置をとるべきなんでしょうか、その点について……。
○高松説明員 三条の保護の場合には、三条一号にございます「精神錯乱又はでい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者」ということ、精神病者であっても、それがほんとうに気が狂って猟銃を乱発して人を殺すということになれば、当然犯罪捜査による手続によるべきものであるというふうに考えます。
○阪上委員 大体その辺のところを伺っておいて、警察官職務執行法第七条について逐一御質問申し上げますが、ひとつ簡単にお答え願いたいのです。
 まず最初に、武器の使用の要件及び限界についてどう考えておられるか、この点をひとつお伺いしたい。
○高松説明員 武器使用の要件につきましては、この七条に規定するところでございます。「犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める」「場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」一般規定でございます。その次に「刑法第三十六条若しくは同法第三十七条に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」逆に、武器を使用してしかも人に危害を加える場合は、正当防衛の場合、緊急避難の場合、それから左の各号の一に掲げてある場合、これに限られる、こういうことでございます。
○阪上委員 そのとおりなんであります。そこで、武器の使用は、通常の警察権限の限界を越える警察急状権というのですか、あるいは警察緊急権というのですか、そういった態様であると、こう一般的にいわれておりますが、この七条の場合は、これは行政上あるいは司法上のいわゆる行政警察とか司法警察、この両目的を通じて警察官が実力を行使するということが認められているわけですね。そうですね。しかしながら、その限界を明らかにするためには、何かそこに原則がなければいけないんじゃありませんか。この点無原則のままでそれでいいのでありますか。そういう説もあるようでありますけれども、どうなんでしょう。警察のお考え方はどうでしょう。
○高松説明員 行政警察、司法警察を問わず、警察法によりまして警察の責務とされていること、その警察の責務の遂行について、この七条の規定に従って武器の使用ができる、こういうことに理解しております。
○阪上委員 よく警察の四原則ということを言われますね。この前の警察官職務執行法の改正のときにも非常に取り上げられ、問題になったのであります。そういった原則というものは頭に置く必要はありませんか。もちろん七条では警察緊急の場合にはこれは認められておりますけれども、それだからといって、そういったものを頭に置かないということであってはいけないのではないかと思いますが、どうでしょうか。これは警察権行使の上から非常に重要なポイントと私は思うのですが、どうなんです。
○高松説明員 いわゆる警察比例の原則、たとえば正当防衛の場合における、何といいますか、相当性の原則というふうなものは、これは当然に働くことだと思います。
○阪上委員 そこで、相手が幾ら凶悪犯人であっても、射殺をするということは通常の比例原則では許されないのじゃないでしょうか。どうなんです。
○高松説明員 その犯人が従来まで百十一発にも及ぶ乱射乱撃をずっとやり続けてきておりますこと、さらにたまが残っておりまして、今後それを続けた場合に危険度が非常に高い、それから説得の可能性もほとんどないあるいは全くない、親きょうだい自身に対してもたまを撃つ、こういうふうな状態になってまいりまして、そういう場合における銃器の使用はやむを得ないというふうに判断したわけでございます。
○阪上委員 そこで、この警職法七条には、「自己若しくは他人に対する防護」こういうことが規定されておりますが、今回のあの狙撃はそれによるのでありますか、もちろんそれだけではないでしょうけれども。
○高松説明員 この七条の規定における正当防衛に該当するというのが一つ。それからもう一つは、そこの各号の一にあります「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者にする警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由がある場合。」この二つに該当するというふうに考えております。
○阪上委員 この場合の「自己」というのは警察官ですか。
○高松説明員 警察官でございます。
○阪上委員 それは単なる警察官じゃありませんね、職務を執行している警察官個人でしょう。
○高松説明員 そのとおりであります。
○阪上委員 そこで、いま正当防衛が出たのでありますが、今度の狙撃は、正当防衛ですか、緊急避難ですか、どちらなんです。
○高松説明員 正当防衛であると考えております。
○阪上委員 緊急避難ではないのですね。
○高松説明員 緊急避難ではないと思います。
○阪上委員 緊急避難と正当防衛とどう違うのですか。
○辻説明員 お答えいたします。
 警察官職務執行法はもとより警察の御所管でございますので、私の立場から申し上げることは適当かどうか疑問でございますが、私どもは、先ほど来御説明ございます警察官職務執行法の七条でございますか、このうちで、危害が発生する場合もやむを得ないという意味といたしまして、刑法の正当防衛もしくは緊急避難に該当する場合、それからこの一号、二号に当たる場合、これだけのことが書いてあるわけでございますけれども、これらの要件に該当いたします場合は警察官の正当な職務行為であるということになりまして、刑法の三十五条の「法令又ハ正当ノ業務ニ因リ為シタル行為」に当たる、こういうことで刑事上の免責がされる、かように解しております。
○阪上委員 そこで、正当防衛の場合には保護される法益というものが列挙されておりませんね、それから緊急避難の場合においては明確にこれが列挙されておる、こういうことなんであります。そこでまた、法益の権衡比例、この原則が正当防衛のほうであまり明確でないが、法益権衡の原則が緊急避難のほうでは非常に明文化されておる。それから一つは、不正の侵害に対する行為が正当防衛であって、それから危難に対する行為が緊急避難だ、こういわれておりますが、ほんとうに緊急避難はこれに該当しませんか、今度の場合は。
○辻説明員 私どもは今回の事件の具体的な事情を存じませんので、今回の事件に当たる確たる見解は申し上げることはできないわけでございますが、一般論といたしまして、刑法の正当防衛と緊急避難の違いはどこかという御指摘に対しましては、御案内のとおり、刑法の三十六条の正当防衛におきましては「急迫不正ノ侵害ニ対シ自己又ハ他人ノ権利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ之ヲ罰セス」こういうことで、侵害が急迫不正であるということと、自分の権利を防衛するためやむことを得なかった、この二つが正当防衛の要件でございます。これに対しまして刑法の三十七条の緊急避難は、これまた御案内のとおり「自己又ハ他人ノ生命、身体、自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ已ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ其行為ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ之ヲ罰セス」この場合は、危難は正、不正という問題はございません。一般に危難を避けるためという、危難のほうの価値判断は全然ないわけでございます。そういうときに、自分のほうの生命、身体、自由もしくは財産を守るためにやる行為でございまして、その場合に、危難を避けんとしたる害の程度と自分の危難から生ずる害との程度の相当性といいますか、均衡性がなければいけないというしぼりがかかっておるわけでございます。これが一般に正当防衛と緊急避難の違いでございます。
○阪上委員 相違はわかるのでありますが、これについてどちらに該当するかということを私は聞いておるのでありまして、これは警察のほうからひとつ重ねて伺います。
○高松説明員 私どもはこの事犯はまさに急追不正の侵害であるというふうに考えますし、そういう意味で、これは正当防衛に該当するというふうに考えております。
○阪上委員 そこで、この問題について、射殺の瞬間をNHKがとらえて放送いたしております。それによりますと、あの時点において犯人は無抵抗の状態にあったということが言えると思うのです。というのは、武器は持っていなかったのじゃないか、片手を手すりに置いて、そうして右手でありますか、双眼鏡を持っておる、こういう状態でありましたが、これは警職法七条によって、たとえ無抵抗の状態でもこれはかまわない、こういうことになるんですか。
○高松説明員 撃ちました一時点をとらえれば、そういうおっしゃるような事態だと思いますけれども、しかし、それまでに至る近接した時間の前の状況を考えますと、実力をもって抵抗しているわけでございます。したがって、職権の行使はできるというふうに考えました。向こうがたまを撃っている瞬間でなければ、こちらは撃ってはいけないんだということには、私はならないと思います。
○阪上委員 警職法七条の武器使用は、いま言われたような解釈であることについて、非常に私は疑問を持つのであります。いままでずっと抵抗を続けてきた、しかし、武器を使用した時点では抵抗してない、これに対して武器を使用することができるのか、この問題なのであります。
○高松説明員 その前からずっと武器を使用し続けてきている、しかもたまもあとかなり多数残っている、今後もまだまだ続くであろう、こういうことが客観的にも私は十分判断できる状態だったと思うのであります。こういう時間の流れの中で、たまたま撃った瞬間には撃ってなかったということです。前にもあとでもそういうことをやる可能性が大いにあった。たとえば前はやっておったけれども、銃を捨てて出てきた、そういうときは、前に撃っていたから今度は撃っていいということにはならないと思います。しかし、前にもあとにもその可能性が非常に強い、本人が一服したらまたずっとやってくる、こういう一つの時間的な流れを考えました場合に、それは一つのものとして判断することが当然であろうかと思います。
○阪上委員 そうしますと、今回ライフルを用いたということは、いままでやってきたあらゆる犯罪、それの積み重ねの上でライフルを撃ったんだ、こういうことですね。
○高松説明員 少くとも説得を始めて以来、それに対する彼の反応、態度、それから彼の反抗ぶり、こういうものから総合して判断をしたわけでございます。
○阪上委員 狙撃が行なわれ、本人が倒れ、そして病院へかつぎ込まれる。その直後いろいろな形で報道人がアンケートをしておる。その中で、船員は、非常におとなしかった、全くわれわれはそういう人身に傷害を与えるような危険を感じなかったということを言っております。それが一つ。それから、これはまあ感情的な発言でありましょうけれども、あそこまでやる必要はなかったんではないかというようなことを言っております。一方、とうとうくたばったかというようなことを言っている分子もおる、こういうことでありますが、この場合、危険という考え方は、桟橋その他に大勢の群衆がおったというようなことでありますけれども、これは避難をさせてやれば、その危険は防止できたんじゃないか。したがって、危険は起こらなかったんじゃないか、こういうように考えるのですが、それらの点ではどうお考えですか。
○高松説明員 ライフルの射程距離は、二千メートルから三千メートルに達します。そういう危険な状態にありましたので、できるだけ群衆を整理して遠ざけるようにいろいろ努力もいたしました。しかし、報道人は、たとえばああいうテレビをとれるような位置から動かない。それから、ほかの群衆も、あの県営桟橋や待合室の付近からどうしても全部を排除することは不可能であった、こういう状態であります。二千メートル、三千メートルでは、もし跳弾が飛べば、やはりそこを通行する人はけがをされる率が非常に高いと思います。
 それから人質の船員の問題でございますが、どういう気持ちでそういうことを言い、あるいはその談話を聞いた人がどういう意味に受け取って書かれたのかは私はわかりません。それらの人についてもいろいろ調書もとっておるはずでございます。それを見なければ私にはよくわかりません。ただ、たとえばこの前ありました金嬉老事件の場合にも同じようなことを言われたことがあります。しかし、それはあとで調べますと、実質はかなり違っている。やはり相当な恐怖心を持っていたことは間違いない。ただ、いつかわからぬが、自分らはじっとしていれば助かるであろうという感じはお持ちのようでしたけれども、やはりどうなるのか、だれかがどうかしたら変なことにならないか、恐怖心は非常にお持ちだったようです。だから、そういうときのいろいろな心理と、それが今度は無事だということがわかったときのいろいろな人の心理というものは、私はやはりさまざまだろうと思いますが、ただ、額面どおり、全くこわくも何もなかったというお気持ちではおそらくなかったというふうに感じます。
○阪上委員 それから、いま一つ伺っておきたいのは、この狙撃した巡査部長でございますか、これは相当な防衛策を講じて八十メートル近くのところにおった、こういうふうに考えられるのであります。したがって、これは自己の危険というようなものは感じてなかったように思うのですが、この点はどうでしょうか。
○高松説明員 たてを並べたり何かはしていたようでございます。間から撃ったという形になっていたようでございます。
○阪上委員 自己の危険を感じておったかどうかなんですよ。
○高松説明員 やはりこちらの銃の届くところは向こうの銃も届くわけでございますから、やっている者は必死だと思うのです。
○阪上委員 それはどっちも届くことはきまっています。
 それから、肉親に対して発砲したと言うけれども、これは威嚇射撃ではないか、空中に向かってやったというふうにいわれておりますが、その事実認定はどうなのでしょう。
○高松説明員 空中に向かったものもございます。地上に向かったものもございます。それが地上にあったパトカーに直撃しているものもございます。
○阪上委員 他に手段がないという認定でありますが、先ほどから伺っておったのでありますが、ほんとうにこれは他に方法がなかったのですか、手段がなかったのですか、その点はどうでしょうか。
○高松説明員 いろいろ考えました。それからいろいろ迷いました。しかし、もうあととるべき手はほとんど考えられないという状態であったと思います。もし説得の可能性なりあるいは説得の効果なりというものが期待できるような状態であれば、私はもっともっとあそこで説得行為をやったろうと思います。それは県警本部長も同じだと思いますけれども、たいへん考え、悩んだあげく、最後にやむを得ないという気持ちになったわけでございます。
○阪上委員 先ほど小澤委員からも質問がありましたが、武器の範囲ですね。ライフルは、これは通産省は別の考え方であって、別の法規に基づいた考え方を言っているのでありますが、これについては後藤田長官は、やはり武器でなくても、その使用の態様によっては、使い方によっては武器である、こういうふうに言っておられる。警棒もみなそうだと私は思うのでありますが、このライフルの使用規程というようなものは持っておられるのでありますか。拳銃その他についてはあるようでありますけれども。
○後藤田説明員 警察のライフルの装備は、金嬉老事件のあとで、現にああいった犯罪が起き、しかも国内に三万数千丁のライフルが出ておる、また、一般に市販もせられておる、したがって、この種事案の発生が予想せられる。そういう際に、警察官の職務執行上どうしてもこの程度の武器は必要であろう、こういうことで警察法の規定による小型武器ということで、全国で二十五丁でございますが、装備をし、一銃について二名ずつの射手の訓練をいたしておったのでございます。それが一昨年の金嬉老事件のあとでございますが、昨年装備をしたわけでございます。
 そこで、そのときに私ども協議をいたしまして、拳銃については部内に使用規程をつくっております。こういう規程をライフルについてもつくるのがいいのか悪いのかということの検討をいたしました。ところが、拳銃については十七万五千の警察官すべてが常時携帯をしておるというような意味合いから、拳銃の保管、使用その他細密な規定をつくっておく必要があるわけでございますが、二十五丁のこのライフルについて、この種の規程を設けることが武器使用についてどういう影響を与えるであろうかという点が問題になったわけでございます。そこで、むしろこれは訓練につきましては十分な危険性がございますので、これは内部でしっかりした通達でやらなければなるまい。しかしながら、具体的な使用については、そのときどきの状況によりまするけれども、やはり県警本部長の判断なくしては使わせないということの一つのしぼりをかけよう。県警本部長は、そのときにはもちろん私に事前に了承を求めてくるということは、これは内部の実際上の運営として当然そうなるわけでございますが、そういったしぼりをかけた上で置いておいたほうがいい、一般的な規定はつくらぬほうがよかろう、こういう判断に立ったわけでございます。したがって、今日そういった警察官の拳銃使用規程のような規程はつくってございません。これも今後、はたしてそれをそのままにしておくのがいいのかどうかということは、私はいま一度検討はしたいと思っておるのでありますけれども、何ぶんにも一般規定としてライフルというものに内部規程をつくると、それが一体どういう心理的影響を一般の警察官に与えるであろうか、この点の多少の危惧の念を今日いまだに持っておりますが、いずれにせよ、その点については検討はしてみたい、こういうふうに思っております。
○阪上委員 拳銃の使用については非常に厳格な規定を設けている。しかし、ライフルについては数も少ないことだし――それから先がちょっとわからないのですよ。一般の警察官に対して非常に危惧を与えるというのですか。そういうところは別に極秘ではないでしょうから、ひとつほんとうのところを言ってくださいよ。なぜそういうことを隠されるのですか。
○後藤田説明員 もちろん訓練をやっておりますので、極秘ではありません。極秘ではありませんが、そういう一般規定をつくることが、今日拳銃について武器使用について非常にきびしい規制をやっておるわけでございまして、したがって、武器そのものについての考え方が警察官の気持ちの中で、ライフルを使うのだということがややゆるみになってきはしないだろうか、実はこういう心配を当時したわけでございます。
○阪上委員 わかりました。しかし、訓練をやっておられるのだから間違いない、こういうように思いますけれども、その点はひとつさらにいまおっしゃったように、検討していただきたいと私は思います。
 それから、ライフルは警察法六十七条に、いわゆる警察官が所持を認められている小型武器というものは、その中にライフルは入るのですか。
○後藤田説明員 警察法の小型武器というのは、法律的に申しますと、個人携帯可能な小型の武器、こういう定義でございます。したがって、従来はそれは拳銃である、こういうことに考えておりましたが、そういう法律上の見解が一つ。いま一点は、私どもは、武器というものは相対的なものである。したがって、警察が装備をすべき武器は、相手方の武器との相関関係において、これをどうにか制圧し得るに足りる程度のものでよかろう、こういう考え方でございます。そういうような意味合いから、ライフルの犯罪が出てきたといったような時点において、ライフルの装備は、きわめて少数でございますけれども、必要であろう、こういうことで小型武器の範囲に入るという観点で、今日持っておるわけでございます。
○阪上委員 おっしゃるとおりに、警察が装備を強くすれば犯罪もまたそういう形で対抗してくる、エスカレートしてくるということは考えられます。同時に、犯人のほうでそういう凶器をどんどん使うというような形になれば、また逆のエスカレートもあるわけです。そこで、携帯をすることができるものであればということになれば、軽機関銃あたりはどうなんですか。将来そういうことは考えられるのですか、どうなんですか。
○後藤田説明員 私は、いま言った武器は相対的な関係で解釈、運用としていくべきものだ、こう考えておりますので、今日の時点において機関銃が警察の小型武器に入るのかといえば、今日の時点においては、私はそれは入らない、こういう観点でございます。
○阪上委員 そうしますと、私は別に警察を責めておるわけではないのですが、一歩おくれて警察は装備するということになりますか。その点どうですか。思い切って言ってください。
○後藤田説明員 私は、警察の装備は、こういう武器に限らず、すべてあとを追っていくべきものである、こういうように考えております。
○阪上委員 もう時間がだいぶたちましたので結論を急ぎますが、次に法務省にお伺いいたしますが、こういった事実認定の中でこの事件をどういうふうに処理されていくおつもりですか、ちょっと伺いたいのです。
○辻説明員 先ほども小澤委員の御質問に対してお答えいたしましたとおり、警察官がその職務の執行にあたりまして、人の死傷を惹起したという事案に対しましては、従来から検察におきまして刑事上の免責事由に当たるかどうかという点は調べております。今回の広島の事件も同様でございまして、現在広島地方検察庁において調べておる状態でございます。
○阪上委員 それで昨晩の新聞報道によりますると、これは一部の新聞でありましたが、札幌の何か弁護士会ですか、団ですか、これが検察に告訴しておるということでありますが、そうなると、これはどうなんですか。この起訴をするしないもやはり今後きめられるわけですか。
○辻説明員 私も昨日の報道で、札幌の二人の弁護士の方が、今回の警察官の行為に対しまして特別公務員の暴行とそれから来る致死、それから殺人というようなことで、告発をなさったということを報道で承知いたしたわけでありますが、現在までのところ、その告発状は広島地方検察庁にはまだ届いておりません。かりに告発状が届きました場合には、検察庁といたしましては、告発がありますと、それを一つの契機にいたしまして、その事案を調べる。これは義務的に調べなければならないということになるわけでございます。
○阪上委員 最後に、各関係省にお伺いいたしますが、今回のあの射殺でありますが、狙撃の瞬間がNHKのテレビに乗って茶の間に入ったということであります。これに対して、まず文部省は、国民に与える影響からして、このことは好ましいことであるか、好ましくないか、こういった点についての見解。同じく警察庁長官からも伺いたい。法務省からもひとつ伺っておきたい、こういうふうに思います。お答え願いたいと思います。
○林部説明員 お答え申し上げます。
 この件につきまして、一般的に申しますれば、茶の間にテレビを通しましてこの事件が報道されたことに対して、国民、特に青少年等に与える影響は大きいと思います。その観点からは、必ずしも好ましいとは考えておりません。
○後藤田説明員 報道自由との関係で、まことにお答えのしにくい問題でございますが、あえて個人的な見解を申し上げますると、私は好ましくない、かように考えております。
○辻説明員 ただいまの警察庁長官の御答弁と同様に考えております。
○阪上委員 法務省は、捜査その他の関係から、ああいった報道は、そういう面から見ればむしろ事実が明確に出てきていいと思うのですが、やはりいま言われたようにお考えですか。
○辻説明員 犯罪の捜査をいたします場合の証拠収集の問題と、それからこういう報道によります一般の国民に与えます影響の問題と、これの利害の考量の問題であろうと考えておる次第であります。
○阪上委員 以上で質問を終わります。
○古屋委員長代理 関連の申し出がありますから許します。小澤太郎君。
○小澤(太)委員 先ほど十分な時間をいただきながら、また関連の質問をいたしまして申しわけございませんが、阪上委員の御質問に関連をいたしまして、多少ふに落ちないところがありますので、御質問申し上げます。
 というのは、第一点は、警職法の第七条の問題でございますが、今回犯人に危害を与える決意をいたした。そしてそれはこの法律の第七条の何によってそのような決定をいたしたかということに対する御答弁でございますが、私は、これはただし書きの正当防衛、緊急避難ではなしに、第一号によってやられたものと理解しておりますが、今回の場合は、まさに「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役」云々に該当する、こういうことだと思います。この正当防衛につきましてはいろいろ議論がございまして、もちろん警察比例の原則というものは適用されておる。御承知のとおり、あのメーデー事件の判決では、民事ではありますけれども、射殺したことが警察比例の原則に照らして、これは敗訴いたしております。武器の使用が適法でない。しかし、その事態とはこの事態は違うわけですから、私は第一号によられたものだと思います。これにももちろん警察比例の原則は考慮されるべきだと思いますけれども、問題点は、警察官において信ずるに足りる相当な理由の存在する場合、この一点にあるのではないか、こう思っておるのですが、その考えが正しいかどうか。これを適用される場合に、どの法条によりやられるかということは、当然あなた方は検討されたと思いますが、いまの御答弁は、どうも緊急避難か正当防衛かわからない。それが第一点。
 第二点は、さっき落としたのですけれども、射撃する場合に、たとえば、救急車、お医者を用意しておられたかどうかという点。
 それから法務省には、このただし書きの一号で適用したという場合に、これがすぐそのまま刑法三十五条の正当行為として処罰の対象にならぬとお考えになるのかどうか。先ほどの御答弁では、そうでなしに、さらにその行為がまさに警察官において信ずるに足る相当な理由があるかどうかの検討をした上で処置をしたい、こうおっしゃったと思いますけれども、多少先ほどの御答弁とニュアンスが違いますので、念のためお伺いいたします。
 これだけです。
○高松説明員 私、先ほど申し上げましたのは、このただし書きの正当防衛と、いま御指摘になりました「他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。」この二つに該当するというふうに考えております。
 それから救急車の問題は、これは桟橋に着く前に電話がかかってきておりまして、向こうから狙撃されるおそれも非常にあるわけであります、犯人の側から。それで救急車はすでに用意してございました。
○辻説明員 私は先ほど、警察官職務執行法七条の、危害が生じてもやむを得ないという場合の要件といたしまして、正当防衛、緊急避難、それから一号、二号とあるわけでございますが、このいずれかに該当し、かつ七条の前段の一般規定、これに該当するならば、それは警察官の正当な職務執行であるということで、刑法三十五条によって刑事上の免責を受ける、かように法律問題として考えておるわけでございます。今回の事件がそれに当たるかどうかということにつきましては、広島地方検察庁で調べることになる、現に調べておるわけでございます。
○小澤(太)委員 それで先ほどの札幌の弁護士が告発した点ですが、その告発があるとなしにかかわらず、当然検察はこの捜査に当たるということだと思いますが、どうですか。
○辻説明員 そのとおりでございます。
○小澤(太)委員 終わります。
○古屋委員長代理 山口鶴男君。
○山口(鶴)委員 だいぶ小澤委員の質問も長かったし、またわが党の阪上先生が詳細お尋ねをいたしましたから、私はきわめて簡単に済ませたいと思います。
 まず警察庁長官にお尋ねしたいと思うのですが、今回のこの事件に際しまして、いわゆる犯人が射殺をされた。それではこれを命令したのはだれかと申しますと、須藤県警本部長である。射撃をいたしたのは加川巡査部長だ。そして警察庁の刑事局長は当時現地におもむいておりましたが、これは助言をしたんだ、こういうお話でございました。
 そこでお尋ねしたいと思うのですが、そういたしますと、警察法第五条二項に警察庁長官の権限が規定をしてございます。警察庁長官はその所掌事務については、都道府県警察を指揮監督する、こうなっているわけですが、結局今回のような事案は、警察庁長官が指揮監督する、いわば警察法五条二項の各号に当たる条項ではないか。したがって、警察庁長官としては、刑事局長をして助言をさせたんだ、こういうふうになると思いますが、それでよろしゅうございますか。
○後藤田説明員 先ほど刑事局長がお答えしたのは、法律上の観点からあのような答えをしたと思います。法律上はまさにあのとおりでございます。私が報告を受けたときに云々の処置を命じたと言っておるのは、警察内部における通常の仕事の実際的なやり方を申し上げたわけでございます。したがって、法律的には広島県警本部長が責任を持って処理をした、こういうことになりますけれども、実質上の平素の仕事の運営からまいりまして、私自身それに関与をいたしておるわけでございます。
○山口(鶴)委員 実質上仕事の内容については関与しているが、法律的にいえば、私が指摘したとおり、文字どおりこれは県警本部長の権限である。阪上先生も指摘しましたが、警察官は上司の命令を受けてその職務を遂行する。その場合の上司というのは、したがって、警察法第四十八条にいう都道府県警察本部の本部長であるという形になるわけですね。
 そこで、私はこの際指摘をしたいと思うのですが、現在の警察制度は自治体警察、府県警察であります。確かに警察庁という組織はありますが、これは全国的な警察に対してもちろん指揮監督すべき問題もありましょうが、それは制度上その他の問題であって、具体的な行動等につきましては、当該都道府県の公安委員会の管理のもとに、当該都道府県警察本部の本部長が実際に指揮をして警察行動に当たるということだと思います。いま阪上先生からいろいろ警察官職務執行法の七条の問題に触れてお尋ねがありました。私ども国会は、当然この警察官職務執行法を制定した委員会でもありますし、そういう意味では警察官職執行法がどう適正に運用されておるか、当然これは私ども問題にしなければならぬと思います。ただその場合、それでは具体的にこの警職法七条の規定に対して今回とった措置が妥当かどうかという議論になりますと、これは法律的に当然その行為を命じたのは本部長であるということになるわけでありますから、その場合は警察庁はあまりこだわることなく、当委員会が要求した場合は、当該都道府県の県警本部長を参考人としてでもけっこうでありますが、地方行政委員会に出席をさせるということについてはもっとフランクにあるべきだと私は思うのです。この点、長官のお考え方はどうでしょうか。
○後藤田説明員 都道府県の本部長は国家公務員でありますけれども、当該都道府県警察の長でございます。そういうような意味合いから、当該都道府県議会においていろんな事柄について直接答弁の衝に当たるべきもの、国会に対する点につきましては私どもが当たるべきもの。したがって第一線の諸君をここにお呼びになることは、これは国会がおきめになることでありますが、私の立場からは御容赦を願いたい、こういうことであります。
○山口(鶴)委員 国会は警職法の運用に関して責任を持たなければいかぬと思うのです。私ども地方行政委員会は特にそうだと思うのです。しかし、現在の警察法の機構からいきまして、問題になる行為を命令したのは当該都道府県の本部長であるという場合は、しかも警察庁長官、刑事局長はこれを助言をしたという立場にあるわけでありますから、当然阪上先生が指摘をされたような具体的な事項について正確に論議をするということになれば、やはり国家公務員でもあるし、また警察法のたてまえからいって、その行為を命じた本部長に来ていただくことが最も適切だと私は思うのです。御容赦をいただきたいというお話でありましたが、私はその点は何もそうこだわることはない。私が申し上げたように、警察法の本部長の立場というものと、それから私ども国会が警察官職務執行法が適切に運用されているかどうかを議論をするということをかね合わせるならば、当然本部長が来ることが妥当だと私は思うのです。まあ長官にお尋ねしても同じようなことを言うのじゃないかと思いますが、この点は、私の考え方を十分配慮いただきまして、今後地方行政委員会において委員長にひとつ適切に処理していただくことをお願いいたしておきたいと思います。私どもとしては、当然本部長に当委員会に出席いただくことを要求をいたしておきたいと思います。
 それから次にお尋ねしたいのは、長官のお話を聞いておりますと、今回の措置もやむを得ぬ。それから小澤委員が警職法第二条についても触れられました。この二条でもって、山口県で初期に起きました事案の際に所持品の検査が可能かどうかという問題でありますが、それより以前に私どもの承知している範囲では、佐世保の事件等におきましては、もう警察は積極的に所持品の検査をやっているわけですね。むしろそういうところから警職法二条の問題を、所持品検査までできるとして堂々と今日までやってまいりましたのが警察庁ではないかと私は思います。それから、阪上委員が最後にお尋ねになりました機関銃等の問題ですが、これも確かに、あとを追っかけるという長官のお話は聞きましたけれども、相対的にいわば携帯可能なものが小型武器だということになれば、これはやはりどんどんエスカレートする可能性というものがあるのじゃないか。私はそういうところに、現在の警察が十分注意していただかなければならぬ点があるのじゃないかと思います。これについては先ほど、あとから追っかけるのだというお話がありましたから、これ以上申し上げようとは思いませんけれども、この点は先ほどの小澤委員の論議ともかね合わせて、私どもの考え方を申し上げておきたいと思います。
 次にお尋ねしたい点は、ライフルの問題でありますが、武器等製造法では猟銃とライフルを区別している、また警察では小型武器にライフルが当たる、こういうことであります。今回の事件は、最終的に五丁の銃を犯人が持っておったわけですね。そこにあれだけ問題が大きく拡大をする根拠があったと思うのです。個々の山口県あるいは広島県の当初の段階というものを考えていけば、私は五丁の武器というものを犯人が手にすることは防げたのじゃないか。その点が一番今回の事件では遺憾だったと思います。特に問題は、広島で警察官の拳銃を略取しましたあと、銃砲店に入りましてライフルをさらにとったわけでありますが、この間今日までライフルを使った凶悪犯罪というものが相当あったわけですね。私は当然、緊急配備をするとすれば、当該銃砲店は広島市随一の銃砲店だったと聞いておるわけです。そういうところをまさに一番先にやはり警戒しなければならぬのじゃないかと思うのですが、この点は一体どうだったのですか。
○高松説明員 ライフルをとられた時点におきまして、発生場所が広島市の一番東の北でございます。その地域に対して緊急配備を集中して、県下全般やったわけでございますけれども、特にそれを集中してやっていたという状態でございました。拳銃と猟銃とを両方持った犯人でございますから、やはりこちらもかなりの数を持っていかなければ対抗できないということでやったわけですが、犯人はその網の目をくぐって広島市の中心部にあらわれてきた、こういう形でございました。
○山口(鶴)委員 当初猟銃を持っていましたね。それから拳銃をとった。しかし、そのときは実包をそう多数持っておったわけじゃないでしょう。問題は、広島の銃砲店でライフル二丁ですか、同時に実包三百発以上をいわばとった。そこでこの犯人のいわば装備というのが急速にエスカレートした、こういうかっこうになるのじゃないですか。ですから、十一日深夜、山口県下で交通違反として船木巡査部長がハンドルを握りながら連行したというところは、これはまさに一つの大きなミスだと私は思いますが、このミスも大きな問題でありますが、同時に、次の広島の当初一一〇番に連絡がありましてとった措置もたいへん手落ちだと思いますけれども、とにかく事件がこれだけ大きくなった一番の焦点というのは、やはり広島県の銃砲店でたくさんの実包をとった、ここにやはり一番問題があると思うのです。こちらに対しては全然警戒はしていなかったのですか、この銃砲店に対しては。
○高松説明員 その点、具体的に承知しておりません。いずれまた調べてみます。
○山口(鶴)委員 渋谷で少年がライフルをたくさん撃ちまくって大きな問題を起こしたことがありました。いまの局長の答弁は、遺憾だと私は思うのですね。一番事件が大きくなったその銃砲店に対する警備がどうであったか、実態を承知していないということでは、これは問題にならぬじゃありませんか。それこそがむしろ事件を拡大した一番のポイントだと思うのです。その前の二つもありますよ。しかし、一番大きな問題はそこじゃありませんか。その実態を承知していないというのじゃ、話にならぬと思うのですね。
○後藤田説明員 いまの高松君の答弁でございますが、おそらくまだわかってない、こう事実をそのままお答えしたと思いますが、これは調べるまでもないです。警察官は当該銃砲店に配備はしてなかった、これはもう事実明らかだろうと私は思います。したがって、そういうような意味合いにおいて、先ほど来私が申しますように、緊急配備の際の配備の個所、配備の警察官の数、配備した警察官の具体的な活動の要領、こういうような点について、結果的な判断ではございますけれども、将来の教訓事項として十分検討して、この種事案の予防に遺憾のないようにしたい、こういうように考えます。
○山口(鶴)委員 いまの長官の御答弁のほうが正直だと思うのですね。刑事局長さんの御答弁は、どうも私は率直に遺憾に思いました。私は、これは結果論でありますから、これ以上申し上げませんが、今後緊急配備をする場合に――渋谷の事件もございましたし、金嬉老の事件もございました。犯人がライフルを手にしたときに相当大きな事件に拡大するというのが過去の率直な例だと思うのです。そういう意味では、今後の緊急配備におきましては、やはり銃砲店の警備というものは万全を期していただくということが必要であるということを私は申し上げておきたいと思うのです。
 さて、そこで通産省がおられますからお尋ねしたいと思うのですが、お話では、いま全国に猟銃が五十九万八千二百八十七丁ほど、四十四年末であるそうですね。ライフルが、先ほどのお話ですと、三万数千丁全国に出回っておる。所持せられておるライフルがそのくらいあるということだろうと思いますが、そういう状況だそうであります。「猟銃等」と武器等製造法に書いてありますが、私は日本国内において狩猟でもってライフルというものがはたして必要なのかどうかということを考えざるを得ないわけであります。確かに猟銃というものも場合によっては必要でしょう。しかし、現在日本において、二千メートルから三千メートルの射程距離があり、人を殺傷し得る能力を持つそれだけのライフルというものが、はたして日本国内の猟銃としてこれはなじむのかどうかということですね。この点のお考え方は一体どうでしょうか。
○秋山説明員 いまの御質問、非常にむずかしい問題でございまして、国際的にライフルが狩猟用に使われていることは事実でございます。わが国におきまして、はたして狩猟用、これは職業用もございましょうし、またレジャー用もあると思いますけれども、どの程度の性能のものが必要であるかということにつきましては、私ここで軽々に申し上げかねるかと思います。農林省で御所管になっております鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というふうなものもございますし、この運用をどういうふうにされるかという御解釈もございますので、いろいろこれから慎重に検討させていただきたいというふうに思います。
○山口(鶴)委員 農林省も関係あるということですが、警察もこのライフルについては小型武器だ、こういっておるわけですね。警察として所管外にわたるかもしれませんが、日本内地の猟銃としてライフルがなじむかなじまないか、また将来これらの問題については、関係省庁、通産、農林、警察、このような省庁が検討するという気持ちはありますか。
○後藤田説明員 ただいま通産省からお答えになりましたように、現実問題は、これはなかなかむずかしいのです。しかしながら、私の立場から申しますれば、今日、この狭い国土でこれだけの人口稠密な国で、しかもライフルを使わなければ狩猟の目的が達成せられないといった動物がおるのか、こういうようなことを考えますと、私は今日ではライフルは必要ないのではないか、これは私個人の考えでございます。
○山口(鶴)委員 個人の答弁というのではなしに、いまや私はそういうことを関係省庁集まって、これだけの時間があったわけですから検討すべき段階にあると思うのです。きょうは大臣だれも来ておりませんから、ぐあいが悪いから聞きませんけれども、少なくともこれについては検討すべきである、こう私は思います。その意向をこの際申し上げておきたいと思います。
 それから保管でございますが、武器等製造法における販売業者、それから火薬類取締法におけるところのいろいろな規定があるようであります。
  〔古屋委員長代理退席、委員長着席〕
警察に立ち入り権もあるようであります。しかし、これが実際において相当粗漏であるということが、今度の場合も考えられないことはないと思います。当該の銃砲店は、相当これらについては模範的に警備をしておったというお話ではありますけれども、この際、火薬類取締法、それから武器等製造法の販売業者等に関する規定、これらを一応整備をする必要もあるのではないか、かように思います。
 警察庁にお尋ねしたいと思うのですが、運動具店あるいは銃砲店等の保管が現実において十分であると考えているのかどうか、それから火薬類、実包の保管について戸外貯蔵等の設備基準が不十分ではないのか、それから火薬類販売業者による火薬類、実包の譲渡違反というものが現にあるのかないのか、相当譲渡違反というものがあるのか、またこういったものを是正するとすれば、どのような法的規制が必要であると考えるか、この点お尋ねしておきたいと思います。
○長谷川説明員 お答え申し上げます。
 銃砲店、火薬店におきます銃器や弾薬等の保管につきましては通産当局とも連絡をいたしまして、私ども防犯診断ということで毎年指導をいたしておるところでございまして、逐次よくなってまいっておる状況ではございますが、私どもの目から見ますると、現状でもなお改善しなければならない点は相当あるというふうに考えております。
 なお、法的な面につきましては、現在一応の規定もあるわけでございますが、それらにつきましても今回の経験等にかんがみまして、さらに詳細に規定していく必要もあるのじゃないかというふうなことも考えておるところでございまして、関係省庁とよく協議をして改善策を検討いたしたいと思っております。
 それから、お尋ねの火薬類の譲渡違反が多いかどうかという点でございますが、この点につきましても、逐次よくなってまいっておるわけでございますが、本年の一月から三月までの間に、私どもの承知しておるところでは十二件ございまして、関係の被疑者三百八十三名を検挙いたしておるような状況でございまして、こういった点につきましても一そう強力な取り締まりをしていかなければならないと考えております。
○山口(鶴)委員 時間もあれですからこれでやめたいと思いますが、先ほど委員長がおりませんでしたので、この際申し上げておきたいと思います。
 特に今回は取り締まりの不備な点等問題でございますが、同時に今回射殺をいたしました件につきまして、警職法七条の運用がはたして適切かどうかという問題につきましては、実際に警察法のたてまえからいけば、警察庁長官というのは助言しかできないので、実際に判断を下したのは県警本部長でありまして、そういう点から警察庁のほうはいろいろ難色は示しているようでありますが、私どもとしてはこの問題が一番重要でもありますので、今後これを究明するために県警本部長をぜひとも本委員会に呼んでいただきたいという希望でありますことを委員長に申し上げ、また理事会等であとで御相談をさしていただきたいと思います。
○菅委員長 御希望として承っておきます。
 桑名義治君。
○桑名委員 先ほどからこまごまと質問がございまして、多少重複する点もあるかと思いますが、その点につきましては、まだまだ私のほうで十分な納得がいっておりませんので、お尋ねをしておきたいと思います。
 まず、今回の事件は、射殺された凶悪犯とはいいながら、犯人自身にも当然人権があるわけでございます。この点について警職法第七条の正当防衛が適用されるというようなお話もございました。これは一応法の上からいけばこういうような適用になるかとも思いますが、このようないわゆる正当防衛になるか、あるいは緊急避難に当たるか、あるいは警職法七条の項目に該当するかという、いわゆる一般的な基準をどのように考えているのか、これは個々の問題として把握していかなければならないと思いますが、この点についての所見をまず伺っておきたいと思います。
○後藤田説明員 先ほど来お答えいたしておりますように、銃器使用による犯人の逮捕ということは、警職法七条によって許されておることではありますけれども、これを具体的に発動するということは警察としては例外中の例外である、こういう基本の方針でやっております。今後もそれを続けてまいりたい。
 具体的な場合、それがどうだということになると、幾らこれは基準をつくりましても現場というものは千差万別だろうと思います。したがって、そういう基本方針のもとで、拳銃を持っておる者には拳銃の使い方、いかなる場合に使うかということ、ライフルの訓練を受けておる者にはライフルの使い方、使う場合、それぞれ十分平素から教育訓練を徹底する、これ以外になかろう、こういうように思います。
○桑名委員 その点につきましては一応了解をしたことにいたしまして、次に移りたいと思いますが、今回の事件が発生をしまして世論が最もおそれておりますことは、先ほどからも質問がございましたが、いわゆる人命軽視、この問題が一番心配をされているようでございます。先ほどからの質問の中にも、その後警察官が発砲をしてけがを負わしたというような事例をあげまして、そうして質問をされておったわけでございますが、この問題に対しまして、このライフル銃の訓練を受けている五十人の人々の出動に対して、ある一定の法的な処置あるいは規制というものを設けておくことが、すなわちそういった世論の不安に対する対策に大きな影響を及ぼしていくのではないか、このように私は思うわけでありますが、この点についての長官の所見を伺っておきたいと思います。
○後藤田説明員 最近世間一般に人命軽視の風潮があるということは御指摘のとおりだと思います。まことに遺憾な現象だと思います。それだけに私どもの正当なる職権行使もなかなか困難になってきつつある、これもまた事実でございます。しかし、私どもは先ほど来申しますように、いかなる場合においても武器使用による逮捕という手段は最後の最後の手段である、こういうことで通してまいりたい、こう考えております。
 出動の基準等については、先ほどお答えいたしたとおりに、現場の県警本部長の命令、しかし、その本部長は事前に私の承認といいますか、法律上の意味じゃありませんけれども、事実上の意味で承認を得た上で、万やむを得ないという事態にならなければ使わさない、こういうことにいたしております。
 なお、そういった基準を文書でつくるかどうかといった点についても、先ほどお答えいたしたとおりであります。
○桑名委員 この射殺問題が起こりましていろいろと新聞紙上におきましても各界からの意見が出ております。当然だという方もおられますし、あるいはみせしめのために非常によかったというような意見もございますし、あるいは酷な処置であったという意見もございますし、あるいはその中に、将来の歯どめ――いわゆる射殺するという風潮が広まる危険性の歯どめになるようなものが何かはしい、そういうような意見が非常に多いわけでございます。いまの長官の答弁の中には、県警本部長にその職権はあるけれども、それは法律的な問題であって、実際の運用については相談を受ける、こういうふうな明確な答弁があったわけでございますが、しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、国民一般はそういうふうな答弁があったからといって、これを是とするものではないと思います。やはり何らかの歯どめになる形があってこそ、初めて安心をするのではなかろうか、このように私は思うわけでございますが、あくまでもこれはいまのような状態のままでいかれるのか、あるいは将来文書で歯どめの規制を何か設ける意思があるかどうか、その点もう一ぺん伺っておきたいと思います。
○後藤田説明員 御承知のように、この事件発生以後、何といいますか、いわゆるみせしめ論あるいは抑止論といったような議論をしておる記事を見ます。私は、これは絶対にそういうことでは相ならぬと、私自身はかたく考えて、部内にはその趣旨で徹底をいたしております。警察の本来的な任務は、あくまでも犯人を普通の形で逮捕してこれを送検をし、法廷に送って法の裁きを受けさせるというのが基本でなければなりません。したがって、みせしめ論であるとか抑止論なんというものは、私は絶対にとらないところでございます。
 それから、何か形で示したほうがいいじゃないか。これは確かに私、先ほどお答えしましたように、検討したい、こうお答えしたわけですが、先ほど言いましたように、警察官の武器というものの一番強いのは拳銃であったわけです。それよりさらに強いライフルというものがあって、それについて一般的な規定をつくった場合に、一番強いと思われておったものよりもっと強いものがあるといったようなことで、拳銃に対する影響がどうだろうか、そこが実は昨年来私どもが検討したところでございます。これらもあわせまして、形のものにするかどうかということは研究をしてまいりたいと考えております。
○桑名委員 三月の三十一日に「よど号」の事件が発生をしたわけでございますが、その「よど号」の事件以後今日まで、この「よど号」の事件を入れますと七件起こっておりますが、これらの問題はいずれも人質というひきょうな、非常に凶悪な手段を用いてこの犯罪が発生をしているわけでございますが、これも警察当局が学生問題に対する態度よりもこの種の事件に対するいわゆる弱腰の態度が問題であるというような意見もずいぶんあるわけでございます。犯人たちは、現在人権尊重というこの問題を、あるいはまた人間尊重というこの貴重な問題をさか手にとって犯罪を引き起こしているわけでございますが、この種の問題に対して今後も続発をするというおそれは十二分にあるわけでございます。ちなみに、昭和三十六年から「よど号」事件までが十二件、ところが三月三十一日から今日までの間のわずかな日数の中で、約一週間に一回ぐらいの割合で今回のような事件が引き起こったわけでございますが、このような人質の犯罪に対する警察の処置、どういうふうに処置をしているかというそういう具体的な処置に対しての検討がなされているかどうか、この点を伺っておきたいと思いますし、それからこの種凶悪犯罪に対して、何らかの法的な処置なりあるいはまた法改正なりを考えておられるかどうか、この点については法務省に伺っておきたいと思います。
○高松説明員 御指摘のように、最近非常に人質をとるという犯罪が急増いたしました。ここずっとしばらく大体年間二件ないし三件ぐらいの発生であったものが、ことしはすでに現在まで七件発生しておるということで、私どももこの傾向に対してはたいへん憂慮いたしております。
 これに対する対策でございますが、こういう種類の事件は、人間を人質にとってやるという非常に卑劣な犯罪ですけれども、それだけにこちらも非常に対処しにくいところがある。いろいろ従来からの経験にかんがみましてあれこれ検討はいたしておりますが、捜査としては非常にやりにくいものでございます。基本方針は、申すまでもなく、人命の安全を確保する、人質になっている人の安全な救出をやる、それから一般の人その他にも被害をかけない、それから犯人もこれをすみやかに逮捕するということを前提にいたしまして、そのケースによってできるだけの力を注いでこれの解決に当たってまいるということでございます。ゆっくり時間をかけてじっくりと説得をやる、説得をあくまで基本にしながら事件の解決をはかるということを根本の原則にして当たってまいりたいと思います。
 人質罪をつくったらどうかという議論も、金嬉老事件のあとからいろいろ関係の向きには出ております。ちょうど身のしろ金目的の略取誘拐罪が、略取誘拐が非常に行なわれたあとで刑法で新設されましたが、それと同じような考え方で人質罪といったようなものの新設はできないだろうかというふうなことも私どもも検討している段階でございます。
○辻説明員 いわゆる人質事犯と申しますか、これについての立法を考えているかどうかという点につきましては、先ほどもお答えいたしたとおりでございますが、私どもは、俗に人質事犯といわれておりますのは、自己の不法な目的を遂行する手段として他人の身体、自由を自分の実力支配下に置く、こういう事案がいわゆる人質事犯だと思うのでございます。これにつきましては、現行刑法のもとにおきましても、かかる事案についてはほとんど例外なしに監禁罪の適用があるわけでございます。現在の監禁罪は法定刑が三月以上五年灯下ということになっておるわけでございまして、これでは、このいわゆる人質事犯のうちで非常に事案の悪質な重大なものについては法定刑が低きに過ぎるのじゃないかという御批判もあろうかと思うのでございます。たとえば多数の人を長時間監禁するとか、あるいは凶器を持っておるとか、こういう事案につきましては特にこの法定刑が軽いのじゃないかという御批判があるかと思うのでございます。私どもはそういう点を十分検討いたしまして、何か監禁関係の加重類型というものを考える必要があるのではないかという観点から現在研究をいたしております。
○桑名委員 次の問題に移りたいと思いますが、東京条約の批准に伴う各種法律の法改正が行なわれたわけでございますが、このときに船舶が除外されました。この船舶が除外されたおもな理由というのは、緊急性からというような理由が云々されているわけでございますが、この種の問題が起こった以上、当然今後運輸省としてもこの対策を考えておられると思いますが、運輸省はこのいわゆる船舶の乗っ取り事件に対する処置としてどのようにお考えになっていらっしゃるか、あるいはその対策を考えているとするならば、いつをめどにして、どのような対策を考えているか、その点伺っておきたいと思います。
○須賀説明員 お答えいたします。
 先般の「よど号」乗っ取り事件がありました以来、船舶の乗っ取りということも考えられるということで、四月の初めに私のほうから各海運会社に対しまして、その防止措置等について万全の措置を講ずるように指導を、通達を出しておりますが、その際にも、もし乗っ取られた事件が発生した場合に、乗客の安全を確保するため、船長はじめ乗務員に、どのような措置をとるべきかということについて具体的なマニュアルをきめて措置されたい、こういう通達を出しておるわけでございます。
 それから、航空の刑事特別法につきまして船舶が除かれたということにつきましては、先般来、できるだけすみやかな機会にこの法律に船舶も入れるということで検討をしていきたい、こういうことになっておるわけでございます。これは、先ほどうちの局長から申し上げましたように、船舶と申しましても、大きな船から小さな船まで、あるいはまた、漁船、貨物船、それから河川、湖沼にある船もあるわけでございますので、非常に法技術的にもむずかしいという問題もあるわけでございます。
 それから、これに対する対策、法的な措置というものはできるだけすみやかにこれを行なうということでございますが、これに対する、具体的にどういうことを指導すべきかということについては目下検討中でございまして、できるだけすみやかに検討したい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○桑名委員 この問題につきましては、過日の国会におきまして総理も答弁をしておりますが、次の国会までに何とかというようなお話が新聞紙上にも報道されております。この点について、運輸省はその総理の答弁に従って作業を進めておられるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
○須賀説明員 そのつもりで研究しておる次第でございます。
○桑名委員 「よど号」のときにも、いわゆる警察の措置が一々犯人に聴取されておった、こういう問題が過日の委員会におきましても問題になりまして、警察当局といたしましても、今後反省の材料にしていきたい、こういう反省もなされたわけでございますが、今回の事件につきましても、やはり同じように、この問題が聴取をされておった。そして、一々その問題が犯人を大きく刺激していった。これが犯罪をさらに大きくさした原因にもなっているという考え方も一応されているわけでございます。この点について、今回の事件に対しまして、マスコミ等の協力を要請したものかどうか、この点についても伺っておきたいと思います。
○高松説明員 事件の発生に伴いまして、関係の広島、愛媛、それから中国管区警察局あるいは四国管区警察局というふうなところで、報道陣側に対して、犯人を刺激するというふうなことを、ひとつ極力自制していただきたいという申し入れはいたしました。具体的にどういう内容のものが流れたのかよくわかりませんけれども、犯人のいる船にはラジオもテレビもあると思いますので、その辺を考えまして、これはかなり早い時期に申し入れをいたしております。
○桑名委員 この種の問題と関連をいたしまして考えられますことは、先ほどから、犯人の射殺された現状がテレビで報道されたことに対して、これがいいことか悪いことかというような問題が質疑されたわけでございます。このような、いわゆる凶悪犯がすべて若者によって引き起こされているということは、これはもう当然なことでございますが、今後、この問題は教育の問題として大きく考えていかなければならないし、あるいはまた、テレビの影響、映画の影響というものは無視できないものがあると思います。こういった問題に対して世論もいろいろと批判をしておるわけでございますが、この種の問題に対して文部省としてはどのような措置を講じ、どのように考えているか、その点について伺っておきたいと思います。
○林部説明員 このような事件を再び起こさないためにも、基本的には青少年に対しまして自主的な判断をしっかり持ってもらうような、そういう方向で教育を進めてまいりたいと思っております。テレビや映画等の情報を自主的に選択する選択能力を養い、また、それを批判的にながめて、自分の責任において行動ができるように、そのような点を主眼といたしまして青少年教育を進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
 また、一方、テレビあるいは映画等の影響というものが確かに懸念されますわけでございますので、文部省といたしましても、放送事業者、また映画製作者――テレビ、映画の社会的な影響は非常に重大でございますので、それらの製作者側において節度ある態度でこれらの製作あるいは放送に当たられるよう、強く期待をいたしておるわけでございます。
 放送につきましては、昨年の三月、社会教育審議会の答申におきましても、放送の公共性にかんがみ、一般の放送局がその放送番組の質の改善に努力をする、あるいは内容の充実した品位の高い番組をできるだけ豊富に提供していただくように、それぞれ要請をいたしております。また、各放送局に置かれておりますところの放送番組審議会あるいは放送番組向上協議会、映画につきましては映画倫理委員会がございますが、それぞれその機能を十分に発揮されまして、良識をもって自主的に規制されることを望んでおるわけでございます。
 政府におきましても、一昨年の十二月には、総務長官名をもちまして、映画、出版等事業者団体に対して自主規制の強化に関する要望をいたしたような次第でございます。そのような観点から、このような問題が今後起こりませんように、教育の面からもこれを進めていく所存でございます。
○桑名委員 先ほどからいろいろと質問いたしましたが、いずれにしましても、この種の問題は、ただ単に刑罰をきつくするとか、そういう規制の問題で解決のできる問題ではないと思います。先ほどからライフル銃の販売についての、あるいはこの使用についての問題が論議をされたわけでございますが、これらも、ただ警察と通産省の関係だけではなくて、やはり教育上の問題も、当然これは考えていかなければならないわけでございます。そういった意味で、今後この種の問題が発生しないよう、全力をあげてこの問題に対処をしていただきたいことを要望しまして、終わりたいと思います。
○菅委員長 門司亮君。
○門司委員 私はごく簡単に一つ、二つだけ聞いて、あとは岡沢君から少しお聞きを願いたいと思います。
 最初に聞いておきたいと思いますのは、この事件の発生したいろいろな原因だとかなんとかがあるだろうと思いますけれども、この事件に関連して私がいま考えておることの一つは、こういうライフル銃のようなものあるいはその他の猟銃などにしても同じことでありますが、あるいは刀剣類にしても同じことでありますが、持っているものは全部登録しなければならないようになっておる。ところが、それを求めようとするときには何らの証明も要らないということになると、売るほうも、商店等においてもやはり店頭に飾るようなこともありましょうし、あるいは保管場所というのが容易に奪取されるようなところにも――保管というよりもむしろ陳列されているんじゃないかというようなことが考えられる。今度の場合も、私そういうことが一つの原因じゃないかと思うのですが、警察当局はどうなんですか。一たん手に入れたものは登録しなければならないようになっておる。ところが、手に入れるまでの経路というものは何らの証明も要らない、だれでも行って買えるんだという、こういう点について何か新しいお考えでもありますか。
○長谷川説明員 お答え申し上げます。
 猟銃を買う場合におきましても、公安委員会の許可がありませんと買えないことになっております。
○門司委員 許可がなければ買えないことになっておるが、その許可の範囲ですが、これは私の知っている範囲でもかなりどうかと思われるもの、あるいは年齢的には、御承知のように、空気銃が云々されたこともありますし、いろいろ問題になったことはずっと経緯はありますが、そういう場合に、公安委員会との関係で容易に証明書等が出される。公安委員会はほとんどこれを拒否する権限を持っておりません。そうなりますと、取り扱いの上で安易にこういうものが取り扱われておるという危険性があるのではないか。もう少しそれらの問題を充実していただく必要がありはしないかということです。持ってしまってからどんなに厳重にやかましいことを言ったって、手に入ることが容易であれば、これはどうにもならないということです。結局商売人は売るのが仕事ですから、うちにありますよといって看板を掲げておいて、あと、だれかがこの間の新聞にも書いておったけれども、金庫の中にでもしまっておけばいいだろうというけれども、私は商売人はそうはいかぬだろうと思うのです、売らなければ商売にならないのでありますから。時間の関係がありますのでこれ以上お話はいたしませんが、ひとつそういう点十分考慮しておいてもらいたいということが一つ。
 それからもう一つは、いままで論議になっておりますいわゆる職務執行法の七条の中にある武器の定義であります。この武器の定義は、この法律の制定されました二十三年当時の会議録を読んでみますると、武器とは何ぞやということ、これは一向はっきりしてないですね。いわゆる武器の中には、使用によって多少表現も違いますが、凶器であるとか、銃器であるとか、あるいは兵器であるとかいうようなものも、武器の概念としては一応入りはしないかと思われる。そうすると、この法律の七条の武器の概念というものは、一体どこまでエスカレートしていくかということである。二十三年の法律の制定当時の政府の答弁あるいはその当時におけるわれわれの概念としては、大体この場合の武器というのは、拳銃と警棒ぐらいとしか考えられておらなかったのである。そうして金嬉老事件や何かが起こって、ここにライフルまで持つように、これはおそらく政令か何かと思いますが、そういう形で出てきてしまう。そうすると、これがエスカレートする危険性がないとは限らない。こういう問題を私はもう少し厳格にするというか、厳重にするというか、というような問題がやはり法律の面から見て必要ではないかということでありまして、したがって、長くお聞きをすることは避けたいと思いますので、この七条にいう武器の概念とは一体何であるかということ、それからもう一つは、七条にいう正当防衛というものについては、警察官の場合の正当防衛というのは、基本的にはあくまでも犯人を逮捕するということが先ほどの御答弁のように原則である。といたしますならば、どういう正当防衛の事態であろうとも、犯人の命をとるというようなことは警察官としてはやはり十分慎むべきではないか。これは一般の人にそんなことを言ってもなかなか通用しないかもしれない。しかし、警察官は警察官としての武器の携帯もいたしておりますし、それから一つの任務もございますしするので、その辺のことについて何かお考え等があるなら、ひとつあわせて御答弁を願っておきたいと思います。
○後藤田説明員 七条にいう武器は、先ほどお答えいたしましたと思いますが、本来機能的に見て人を殺傷するに足りるもの、いま一つは使い方によっては武器になるという用法上の武器と、二通りあると思います。警察が七条で考えておりまするものも、警察法にいう小型武器、したがって、それは最近までは挙銃であった、今日は一部ライフルを備えておる。しかし、仰せのように、こういった警察の装備というものは相手方との関連において、しかもそれはあとを追いながらその段階で相手をとにもかくにも制圧できる限度にとどめるべきである、こういう観点で私どもはおるわけでございます。
 なおまた、七条によって生命を奪うということは厳に戒むべきである、こういうお話でございますが、ごもっともでございます。私どもはやはり射殺ということが目的ではございません。あくまでもその場における、合理的に判断をして、必要最小限の手段で相手方の抵抗力を抑止する、抵抗力を押えるという限度で武器も使うべきものである。しかしながら、銃器を使わざるを得ない場合もあると思うのですけれども、銃器を使うという場合においてもそういう意味合いにおいて使うわけですが、銃器の性格上、場合によるならば犯人が死に至るということもあり得ると思います。したがって、それだけにやはり火器の使用というこは警察としては例外中の例外として考えるべきものである、こういうふうに考えております。
○門司委員 もう一つ聞いておきますが、いまの御答弁はきわめてあいまいでありまして、これはだれでもそういうことは言うことなんです。この武器と凶器の境、一体凶器とは何ぞやということ、これはもう使用によって違うわけであります。普通の鉛筆を削る小刀でも、人を刺せば凶器になります。そういう解釈になるわけであります。私が聞いているのはそういうことでなくて、武器の限界というものと、それから武器の使用というものについては、私はもう少しはっきりした定義があってもよかったのじゃないかということ、それは先ほど小澤さんからもちょっと質問があったかと思いますが、射殺をしたということ、ところが新聞その他を総合して、またきょうの答弁等を聞いてみますると、どうしても上半身を撃つようなかっこうのときに発砲しているようなことがいわれておる。上半身を撃てば、必ず当たりどころによっては――おそらく上半身はどこに当たってもまごまごすれば命がなくなることはあたりまえのことである。そういうときはたとえ上司から命令で撃てと言われても、やはりどうしても警察官としての立場から考えた射手の判断がなければならないと私は思う。今度の場合でも、一体そういうことが考えられなかったのかということである。何か上半身しか撃てないような状況にあったときに発砲しているということになると、私は何も射手を責めるわけではありませんが、一体警察の訓練の中にそういう配慮が欠けておったのではないか。あの場合にもう少し考えられることがなかったかということです。これは長官の言うように、正当防衛だといっても、私は人を殺してもいいという理屈は、万やむを得ざる場合以外にはないのであって、戦争だって人を殺してもいいということではない。戦闘力をさくためにどういう兵器を使うかということであって、人を殺すから殺人兵器ということなんだけれども、考え方はそうなんでしょう。相手方の戦闘力だけをさけばそれでいいのであって、だから通り一ぺんのことでなくて、この事件についてはもう少し慎重に考える必要がありはしないか。そうして、一面これがみせしめになったとか、あるいはこれが契機になってどうとかというようなことでなくて、長官がさっき話したように、ほんとうに警察というものの存在、警察というものの価値というようなものが国民の良識の中に植えつけられていくというようなことでなければ、威力と圧力によっての平和というものは正しい平和じゃありませんで、必ずどこかにそれに対抗するものができてくるのであって、私はやはり警察制度の中のこの七条の武器の定義についてはもう少しはっきりした定義を持っていないと、おそらくこの次に凶悪犯罪が機関銃でも持ち出してきてがらがらやるということになると、それでは警察はそれに備える、いまの長官の答弁からいくとそういうことになろうと思う。警察がまた機関銃を持ってきてばらばらやるということになるとたいへんなことになると思う。その辺のかね合いについては、もう少しこの機会にお互いが真剣に検討していく必要がありはしないかということを考えますので、これは長官には答弁ができないかもしれませんが、さっきの答弁で気にかかるところがありますから、念を押しておくのであるが、相手方がそういうことでエスカレートしていけば警察の武器の定義というものもエスカレートしていくのかどうかということですね。これは非常にむずかしいと思いますよ。むずかしいと思いますが、やはり警察法自身というものをずっと見ていく場合に、この辺にある程度の歯どめというものがなければ――私は何も警察を憎んで言うわけじゃありませんけれども、実は七条にはこれを乱用してはならないということをくどく書いておるわけであります。しかし、乱用される危険性が出てきはしないかということ、それがこの間の威嚇発射――けがをさせたというあの場合でも、威嚇発射をさせなければならないほどの事態であったかどうか。犯人逮捕のためにはピストルを撃っていいのだという概念が若い警察官に出てくると、将来非常に大きな誤りをおかすと考えて、その辺のところをもう一言だけ、ひとつ御答弁を願っておきたいと思います。
○後藤田説明員 警察治安維持の基本的な心がまえについては、御質疑にいささかも異論はございません。
 もう一点の警察の武器について定義をはっきりしたらどうだ、こういうことでございます。しからずんば次第にエスカレートするではないか、こういう御意見でございますが、警察はそのときどきの治安を維持し得る最小限度の装備というものは必要であろう。したがって、法に定められておる小型武器の範囲内においては、相手方の武器との相関関係において装備すべきものはきまるであろう、こういうふうに考えております。しかし、先ほど来申し上げますように、現在の時点で私どもは機関銃といったようなことは毛頭考えておりません。
○門司委員 もう少し聞きたいことがあるのですが、時間がございませんので……。
○菅委員長 岡沢完治君。
○岡沢委員 私は、残り時間二十分しか民社党に与えられておりませんので、できるだけ答えを簡単にしていただきたいと思います。
 十三日の九時五十二分に加川巡査部長が狙撃をしたねらいの焦点がどこであったかということにつきまして、昨日の広島県議会の警察商工委員会におきまして、広島県警の須藤本部長は、「右腕をねらって撃った」「「犯人は錯乱状態であり、このまま放置すれば一般市民らにさらに被害が拡大する恐れもあり、暴走によって航行中の他の船舶にも危険を及ぼす恐れがある」と判断、そ撃以外に手段なしと考え、ライフル銃撃隊員に、犯人の急所をはずし、右腕をねらって撃ち、犯人が抵抗できないようにせよ、と命じた。」「射殺するつもりはなかった」とおっしゃっておられます。ところが、同じ本部長が同日、例の北海道の弁護士からの告発に関連いたしましての記者会見では「左腕から、肩をねらわし、殺害の意思はなかった。」と語られております。同じくまた本部長は、委員会――いま申します委員会というのは広島県議会における警察商工委員会で、開会の一時間前に須藤本部長は、「左肩をねらった」とおっしゃっておられます。五月十四日の広島県警の畑谷捜査一課長は記者会見で、「急所をはずし左腕から肩をねらった」とおっしゃっておられます。また同じ五月十四日読売新聞の座談会の記事では、高橋警察庁次長は「犯人の左肩のつけ根をねらって撃ったと思う」とおっしゃっておられます。大きな食い違いがあるわけであります。ことに広島県警須藤本部長の話は、北海道の弁護士からの告発を契機にして左肩から右腕に変わっておるわけであります。もちろん左というのは心臓の存在する場所であります。先ほど来後藤田長官が、警職法七条の精神をるるとお述べになっておられますし、またお答えくださるところを私は了といたします。しかし、警職法七条の例の規定はここで申し上げるまでもなしに「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」長官もお答えになっておるとおりであります。そうしますと、抵抗を抑止するということで十分でありまして、少なくともきき腕は一般に右のはずでございますから、右腕、右肩をねらうならまだしもわかりますが、この告発がある時点までは、本部長も広島県警の捜査一課長も、そしてまた警察庁の次長も、はっきりと左ということを指摘されながら、現在の時点におきましては右という答弁になっている。こういう大きな食い違いを感じます。この点についての事実を明らかにしていただきたいと存じます。
○高松説明員 県警本部長は捜査一課長に対して、急所をはずせという指示をしたそうであります。捜査一課長は大阪府警の満尾警部補に対して、できれば右半身という意味のことを申したそうであります。実際にあの射撃をやります場合に、手負いというか、抵抗力が弱まるという状態では結果は非常に危険でございます。したがいまして、あの場合でいいますと、やはり上半身ということになろうかと思いますが、大体そういうことで照準をして撃ったというふうに、私はけさほどももう一回確かめてみましたが、そういう報告を受けております。私のほうとしましては、急所は撃たない、たとえば頭部はねらわぬ、心臓はねらわないというふうなことは、前々から訓練にあたってもよく指導しているところでございます。
○岡沢委員 時間がございませんので詰められぬのは残念でありますけれども、事件直後の広島県警の一課長あるいは本部長の話と、その後の談話が違ってきておるということに対しては非常な疑問を感じます。まあ私は救いは、加川巡査部長が犯人が死んだということを聞いてがっくりされた、ほんとうに殺す意思はなかったのじゃないかということで救われますけれども、しかし、事件直後の記者会見等での警察側の御説明は、むしろ左肩あるいは左腕であるわけであります。心臓をねらったと言われてもしかたがない。またいまの刑事局長の御答弁の中にも、いわば手負いジシのこわさという意味のお話もございました。確かに、変なところを撃った場合に、かえって犯人がさらに狂暴性を発揮するということは重々考えられまして、きわめてむずかしいケースであることはわかりますけれども、この加川巡査部長をはじめとして五十名の狙撃隊員はいずれもすばらしい能力の持ち主だ、オリンピックの選手でもあったといわれ、八十メートルの距離でありますから、私はどうして右のほうをねらってもらえなかったか。特にきき腕は右であるということを考えた場合に、左腕をねらわれたという事件直後の警察当局の発言には非常な疑問を持つわけでございます。
○高松説明員 ちょっと申し落としましたが、けさほどの報告によりますと、その左肩という問題が出ましたのは、捜査一課長が記者会見のときに、ここだといって右手で左肩をこうやった。本人のつもりは右肩をと、こういうつもりであったというのだそうですが、右がきき腕なものですから、話をするときに右と左がそこで初めて何か違った形で出てきた。そのことはあとでも御説明をして一応そういう誤解はなくなったというふうに聞いております。
 それから加川部長は、私も事の終わった直後に会いましたけれども、涙を浮かべて非常に暗い顔をしておりました。
○岡沢委員 さらに詰めて聞きたいわけでございますが、時間がございませんので、次に移ります。
 五月十四日の全国刑事部長会議で長官は、刑事警察は戦後三度目の転機に立っているという御発言をなさっておられます。それは具体的にどういう趣旨かということが第一点と、それから三十九年以降減少していた刑事犯は、一昨年から増加の傾向にあり、しかも特異で悪質なものが多くなっている、それに対して検挙件数、検挙率とも年々減少している、これは社会の変化に捜査が追いつかなかったためで、都市化、情報化におくれぬように捜査体制を整備しなければならないということをおっしゃり、犯人逮補に全力を尽くすくふうを重ねておるという意味のおことばがございます。この辺をもう少し、具体的に率直に捜査のおくれを自認なさった上での御発言だし、これに対する対策もお持ちだと思いますが、たとえば訓練とか捜査資材の面等にも触れてお答えいただきたいと思います。
○後藤田説明員 先般の全国刑事部長会議の席上、御質疑のような趣旨の訓示をいたしたのでございます。三度目の転機と申しますのは、最近の検挙の成績が五四%程度になっております。あまり検挙成績を言うとまた弊害が出てくるという状態でございますので、注意はしなければなりませんけれども、犯罪の発生件数は大体横ばいでございます。ところが、検挙の成績が漸次低下をしてくるその主たる原因は、窃盗犯でございます。窃盗犯の発生件数、これが全体の成績に響いてくるのでございます。
 それが一点と、いま一つは、非常に最近は珍しい特異なしかも広域にわたったスピードの早い事件が続発をいたしております。こういった事件の検挙に至るまでの期間が漸次延びております。つまり捜査本部を設置して解決に至って、捜査本部解散までの期間が漸次延びておるということは、つまり検挙がそれだけに困難になってきておる。この原因はいろいろあるかと思いますが、私どもの立場から言いますと、やはり根本は都市化現象であろうと思います。つまり都市の匿名性ということが犯罪の発生にも影響しますし、同時にまた検挙も非常にむずかしくなる。都市生活者の多くは隣保の意識がない。ここ十年間で国民の六〇%は住居を変えております。したがって、都市居住者というものは隣にどういう人が住んでいるかすら知らないといったようなこともある。そういったことがあって、なかなか犯罪捜査の場合の聞き込み等が非常に困難になってきておる、こういったこと。また広域的になっておるとかあるいはスピード化しておるとかいったようなことは、これは通信、交通の手段の進歩の結果だと思いますが、こういった状況に今日の刑事警察がとにもかくにも一生懸命やっていることはこれは私の目から見ても間違いないと思いますが、ただ遺憾ながら、このままで放置すると西欧各国並みになりはせぬだろうか。日本の検挙の実績は今日世界一でございます。しかしながら、放置をしておくというと、どうも二十数%、三十数%程度まで漸次低下をするおそれがある。そういうような意味合いから、今日のこの都市化現象に対応するために、刑事警察の刷新強化をやらなければならぬ、それが戦後三回目の転機に来ておるのだ、こういう意味で申したのでございます。
 そこで、この対策でございますが、これは非常にむずかしいのです。しかし、やはり基本は今日のこの情報化社会あるいは技術社会に対応できるような警察の近代化、科学化ということを徹底してやらないと追いつかないのではないか。これが一点。
 いま一つは、やはり犯罪というものはでき得る限り犯罪発生の時期に接着した時間で検挙する、つまり現行犯あるいは準現行犯の段階程度の時期に解決する、事後捜査に追い込む事件をできるだけ少なくする、こういう意味での外勤警察あるいは自動車その他の諸器材の整備、機動捜査隊の拡充強化、いろいろな問題もあると思います。
 いま一つは、やはり何といいましても事後捜査に追い込まれざるを得ない事件というものは残るわけでございます。重要な事件になればなるほどそうなる。そうしますと、やはり基本は刑事の能力の開発、これをやらないことにはどうにもなるまい。そこで、刑事の採用、昇進、処遇、こういうような点について改善をやると同時に、徹底した教育をやっていく、こういうことも考えねばなるまいというようなことで、今日刑事局長に命じまして、でき得る限り早い時期までに成案を得るようにということで検討いたしておりますが、こういった点については逐次成案を得るものから漸次改善してまいりたい、かように考えております。
○岡沢委員 法務省にお尋ねをいたしますが、この事件が発生をいたしまして、五月十三日の参議院運輸委員会で佐藤総理自身がシージャックの防止法案について検討したいという御発言がございました。法務委員会でも同様趣旨の発言が法務大臣からございました。このシージャック防止について法的にどういう体制をとるかということにつきましては、二、三考えられると思います。たとえばこの六十三国会で成立いたしました航空機等奪取罪に船舶を加えるという方法、あるいは監禁罪に結果加重犯的に人を死に至らしめた場合等を厳罰に処するという方法、あるいは本日も問題になりました人質犯という特殊性をとらえまして、飛行機あるいは船舶についても、あるいは車の中でも、新幹線の中でもあるいはバスの中でも、場合によったらエレベーターの中でも起こり得るということを考えた場合に、やはり人質犯というものを特別の類型としてとらえて特別立法する方法、あるいは今度の六十三国会における航空機奪取罪と同様のシージャックの単独立法ということが考えられると思いますけれども、あるいはそのほかにもあるかもしれませんが、法務省としてはどういう方向でこの佐藤総理が御言明になりましたシージャック防止対策について法的な用意をされようとしているか、お尋ねいたします。
○辻説明員 ただいまのいわゆるシージャックを処罰できるようにする立法措置という問題でございますが、いろいろただいま御指摘のとおりの考え方があろうかと存ずるわけでございます。
 ところで、先般成立いたしましたいわゆるハイジャック法におきましては、何といいましてもその考え方がいわゆる乗っ取り犯と申しますか、犯人自身がやはりその交通機関というものを利用してどこかへ行くということが一つの眼目になっておると思うのであります。そういう観点からいきますと、いわゆるシージャックというものもそういう観点からとらえるならば、先般のハイジャック防止法と相似たような法形式というもので考えていかなければならぬと思いますが、先ほど来御議論になっておりますいわゆる人質犯というのは、そういう乗っ取りというようなものの、犯人自身が場所的に移動するというような問題は本来の問題ではなくて、自己の不法な目的を遂行するために他人の身体の自由を自己の支配下に置く、こういうことのほうがやはり重点になっておるのではなかろうかと思うのでございます。一がいに人質犯といいあるいはシージャックといい、いろいろ御議論といいますか、論議はあるわけでございますが、私どもはやはりその本質というものを十分見きわめていかなければならぬと思うのでございまして、乗っ取り犯的なものに重点を置くならば、この前の法案のような形になりましょうし、人質犯的なものに重点を置くならば、不法監禁罪の加重類型であるとか、そういうほうに重点を置いて考えなければいかぬと思うのでございますが、いろいろな以上の点を含めまして、私ども事務当局といたしましても現在研究中でございます。
○岡沢委員 こういう犯罪を防ぐのは、決して厳罰に処するだけが有効だとは思いませんが、教育問題その他いろいろ多角的に検討されるべき課題が多いと思います。ただしシージャック、たまたまこの事件のシージャックというのはわが国は四面海でございますし、いつどこでも起こり得る、飛行機の犯罪以上に私はこれが発生する可能性の多い事件であり、戦後の若者たちの風潮を考えました場合、非常に残念ながら今後も続発、流行が予想されるわけで、ぜひ法的な面でも立ちおくれのないようにお願いいたしたいと思います。
 今度の「ぷりんす」事件と「よど号」事件とは直接の関係はありません。ことに今度の場合は無計画、無目的、衝動的――「よど号」の場合は計画的に、一応彼らなりに主観的に言いましたら、政治目的があり、いろいろ違いはありますけれども、しかし、若者の無謀な乗っ取り犯ということで非常に類似性もあるわけであります。事件が起こったときに、これをどうして検挙するか、逮捕するか、危害をなくするかということも大事ですけれども、起こさないようにすることが一番いいわけなんで、そういう面では教育的な――大局的な背景もさることながら、やはり彼らの動きをあらかじめ予測できれば、今度の「ぷりんす」事件を言うわけではございませんが、今度の「ぷりんす」事件についてしいて言いますならば、特別な異常性を持った精神異常者とか、特別なガンを好む青年とかいうものをあらかじめチェックする方法というものもあると思います。しかし「よど号」事件に関連しまして、赤軍派等の場合を考えました場合、やはり彼らの動きをあらかじめ察知することがきわめて大切なことではないかと思います。五月十四日に赤軍派の残留幹部であります塩見孝也議長、長征軍の隊長の前田祐一を起訴されたようでございます。それに関連して、その捜査等を通じて彼らの計画が新聞等でございますけれども発表されております。いわゆるフェニックス作戦と称して第二次、第三次のハイジャック、シージャック、特に六月、七月ということを予定して、百名あるいはそれ以上の学生たちを北朝鮮やキューバに送る計画もあったと報ぜられておるわけでございます。その辺の捜査体制あるいは彼らの動き、最近の状況等について、私はこの種の犯罪の防止にきわめて密接な関連性があろうかと思いますだけにお願いをいたしたい。
 時間の関係で、あわせまして、九名の北朝鮮に入りました犯人たちの引き渡し要求についてはどういう御方針であるのか、要求をなさるのかなさらないのか、なさらないとすればどういう理由によるのか。今度の「ぷりんす」事件も、これは一つの推測ではありますけれども、「よど号」事件が成功したということが誘発的に「ぷりんす」事件を起こしているということを考えました場合に、犯人に対して処罰するということは、刑事警察の一つの使命でもあるし、また警察当局の責任でもあろうと思います。いろいろな事情があろうと思いますけれども、結局九名の犯人たちは無事に向こうで革命の準備をしておるというようなことにでもなりましたらたいへんなことであります。そういう意味から、この九名に対する犯人引き渡し――私はどう考えても彼らの行為は政治犯罪というよりは刑事犯だというたてまえに立つべきだと思いますだけに、その辺のいきさつ、事情、見通し等についてお尋ねいたします。
○辻説明員 先般の「よど号」事件に関連いたしまして、その犯行の謀議に参画したということで、赤軍派の塩見孝也及び前田祐一の二名につきまして、五月十四日、東京地方検察庁は東京地方裁判所に対しまして、北鮮に参っております九名その他の者との共同正犯という形で、このハイジャック事件を強盗致傷及び国外移送略取、同移送、監禁と四つの罪名をもって公判請求をいたしました。
 事ここに至りますまでには、ハイジャック事件発生以後警察及び検察におきまして乗客、乗り組み員の取り調べ、それから関係物証の検討というようなものを経ましてこの段階に達したわけでございます。
 そこで、先ほど公判請求に関しまして赤軍派のいろいろな計画というものが新聞紙に出たという御指摘でございますが、これは塩見及び前田の取り調べに際しまして、一部赤軍派としての計画というような供述が出たかに聞いておるのでございますけれども、検察当局としてはなおその信憑性といいますか、真偽については断言するに至らない、一つの情報として考えておる段階であろうと思うわけでございます。
 なお次に、ハイジャック事件の実行行為者九名につきまして、逃亡犯罪人の引き取りをやめるかどうかという問題でございます。この点につきましては、彼らに対する刑事責任を追及していくという立場からいたしますならば、当然これは引き取りということが考えられなければならないわけでございますけれども、逃亡犯罪人の引き渡しという問題は、御案内のとおり単に刑事手続といいますか、刑事責任の追及というだけの観点から決すべき問題ではないわけでございまして、事、国外事項といたしまして外交上の観点その他のほうもあわせて政府全体の立場から検討すべき問題であろうかと思うのでございます。特に、現在犯人たちがわが国と国交のない北鮮にいると考えられる状況におきましては、いよいよこの問題はその面からも検討すべき面が多いわけでございまして、現在のところこの謀議に参画した二名を起訴したというような次第でございます。
○菅委員長 公安調査庁のお話はいいですか。
○岡沢委員 できましたら……。
○徳永説明員 赤軍派のその後の動向でございますけれども、結局、東京地検で起訴されました塩見議長を奪還しようという動きもございますし、この塩見議長の釈放を要求するために、外国大公使を誘拐しようというような一応の情報もございます。まだ具体化はしておりませんけれども、これをどういうふうに彼らが具体化していくかにつきまして鋭意調査中でございます。
 それから大体六月は平和デモをやるということを言うておりますし、ことしの秋に武装蜂起をやるというようなことを言うておりますから、目下その動向を厳重注意しているような状況にございます。
○岡沢委員 時間が参りましたのでお答えはけっこうでございますけれども、法務省の刑事局長は、情報ということで軽くいなされました。しかし、特に「よど号」事件については、ある程度情報が察知されたにもかかわらず結局警察の手おくれがこの事件を起こしたという見方もできるわけで、公安調査庁からも御報告がございましたけれども、単に情報として軽くいなせないものがあるのではないか。十分警察、検察庁そして公安調査庁が横の連絡をとって、万全の対策を講じてほしい。特に謀議に参加したといわれる梅内恒夫等はまだ逃亡中と聞いておりますし、いま公安調査庁から御答弁がありましたように、要人を誘拐して塩見らの釈放を要求するということは十分に考えられるケースであります。諸外国におきましても、グアテマラの西ドイツ大使の事件あるいは大口総領事の事件、これは私は国際的な流行ということを考えた場合、赤軍派の連中が十分思いつく、しかも実行可能な犯罪ではないかと思う。ことに別に外国の大公使でなくても、日本の大臣等がねらわれる、あるいは後藤田長官のねらわれることもあり得るわけでございまして、そういうことのないようにあらかじめ手を打っていただくということ――打てる限界があるということは十分承知しておりますけれども、情報として甘く見過ごさないでやってほしいと思います。
 そして最後に、犯人射殺につきましては万やむを得なかったとおっしゃいました。私も大局的には肯定はいたしますけれども、先ほど申し上げましたねらった場所の問題、もう一つは、犯人が五月十一日午前零時十分交通検問、それ以後射殺された十三日の十一時二十五分――撃たれた時間は九時五十二分ですが、それまでの五十八時間、いわば犯人は緊張の連続であったわけで、疲れということを考えた場合、犯人の抵抗という点も考えて、もう少し射殺の方法でなしに、危険性を排除できる道はなかったかという感じも若干するわけでございまして、その辺も含めて今後の御参考にしてもらえたらと思います。質問を終わります。
○菅委員長 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時十一分散会