第063回国会 法務委員会 第29号
昭和四十五年八月十二日(水曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 小澤 太郎君 理事 鍛冶 良作君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 福永 健司君 理事 畑   和君
   理事 林  孝矩君
      石井  桂君    江藤 隆美君
      河本 敏夫君    島村 一郎君
      中村 梅吉君    永田 亮一君
      羽田野忠文君    中谷 鉄也君
      青柳 盛雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局捜
        査第一課長   田村 宣明君
        警察庁警備局警
        備課長     赤木 泰二君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務省民事局長 新谷 正夫君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        外務省条約局長 井川 克一君
        文部省管理局長 岩間英太郎君
        運輸省航空局技
        術部長     金井  洋君
        最高裁判所事務
        総長      吉田  豊君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  矢口 洪一君
        法務委員会調査
        室長      福山 忠義君
    ―――――――――――――
委員の異動
八月四日
 辞任         補欠選任
  松本 善明君     青柳 盛雄君
同月十二日
 辞任         補欠選任
  黒田 寿男君     中谷 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  中谷 鉄也君     黒田 寿男君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政に関する件
 法務行政に関する件
 検察行政に関する件
 人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 吉田最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。吉田事務総長。
○吉田最高裁判所長官代理者 先般、東京高等裁判所長官に転出されました岸前事務総長のあとを受けまして、去る七月、最高裁判所事務総長を命ぜられました吉田でございます。
 御承知のように、憲法は法の支配の確保と基本的人権の擁護という崇高な使命を裁判所に負託しております。その責務は重大だと存じます。私どもは裁判所の使命を達成し、国民からますます信頼される裁判所とするようあらゆる努力を尽くしたいと存じます。幸いにして、法務委員会の皆さまの深い御理解と力強い御支援によりまして司法制度の充実がはかられてまいりましたが、今後とも一そう御支援を賜わりますよう切にお願いいたしまして、簡単でございますが、私のあいさつとさせていただきたいと思います。(拍手)
○高橋委員長 裁判所の司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
  〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
○鍛冶委員 前国会において航空機の強取等の処罰に関する法律が制定せられました。せっかくできた法律でありまするがゆえに、この法律をして十分効果をあらしめねばならぬと考えるのはわれわれ国会議員だけでないと考えます。ことに、この問題はひとりわが国の問題だけではなくて、世界全般にわたる大問題だと考えますので、この点について法務大臣並びに各関係官庁の方々に意見をただしてみたいと思うのであります。
 第一番に承りたいのは、本法が制定されました後においても、世界じゆうで相変わらず航空機の奪取犯罪が行なわれておるようでございます。私の見ました新聞においては、ニューヨークのジャンボ機の奪取、それからチェコスロバキアにおける親子三人しての奪取犯罪、それからポーランドにおいても、これは失敗したようだが、乗っ取ろうとしておる。こういうことがどんどん行なわれるということになると、わが国のこの法律の権威だけでなく、世界全般の人類に対して不安を与えるものだと考えまするので、よほどわれわれも考えてこの問題に当たらなければならぬ、こう考えます。
 そこで、この法律ができた後においても、各国で起こっておりますこの犯罪について、調べておられる担当運輸省、もしくは外務省であろうと思うが、詳細にお聞きいたしたいと存じます。
○金井説明員 お答えいたします。
 ただいま先生御指摘のとおり、航空機の不法奪取に関する法律が制定された後もひんぱんに起こっているではないかということでございますが、確かにそのとおり起こっておりまして、本年六月以降、中南米において、これはキューバその他を含めまして五件、それから共産圏諸国、これはチェコとかポーランド、これを含めまして四件、それからアメリカ三件、中近東、これはアラブ、イスラエル、これが三件というふうに起こっております。そして行く先は、そのうちキューバが五件、アラブ諸国が四件、そのほか二件というふうに依然として起こっておることは事実でございます。それからパン・アメリカン航空の、ジャンボ旅客機は、これは新聞報道程度でございますけれども、八月二日にキューバに強制着陸をさせられましたけれども、六時間後に乗客三百六十一人は無事マイアミに帰ることができたということでございます。しかしながら、確かに御指摘のとおり、依然として頻発しておるということは事実でございます。
○鍛冶委員 これは、まことに遺憾千万だと申さなければなりません。
 そこで承りたいのは、一九六三年九月十四日に締結せられた航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約でございまするが、これは現在効力を発生しておるのでありまするかどうか、これが第一。発生しておるとすれば、どの国とどの国が入っておるのか、まずその点を承りたいと思います。
○井川説明員 第一点のいわゆる東京コンベンションは、昨年の十二月四日に発効いたしております。わが国は、ことしの国会で御承認をいただきまして、引き続き加入いたしました。わが国につきましては、八月二十四日に発効いたします。したがいまして、現在二十六カ国が批准書または加入書を寄託しているわけでございます。
 その国を申し上げますと、現在の締約国は、アイスランド、ブラジル、カナダ、中華民国、デンマーク、エクアドル、ガボン、ドイツ、イスラエル、イタリア、象牙海岸、日本、マダガスカル、メキシコ、オランダ、ニジェール、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポルトガル、サウジアラビア、スペイン、スウェーデン、連合王国、アメリカ合衆国、上ボルタの二十六カ国でございまして、先ほど申し上げましたように、わが国については八月二十四日、象牙海岸につきましては九月一日に発効することになっております。
○鍛冶委員 そこで承りたいのは、この条約の効力が発生してからも相変わらず奪取事件が行なわれていると思われるのですが、条約発効後行なわれたことに対して、条約国間でこれに対して何か条約に基づく執行が行なわれているかどうか。行なわれているとすれば、どのようなことが行なわれているか。特に私の聞きたいのは、犯人の引き渡しについてはどのようにしているか、この点をひとつ詳細にお述べを願いたいと思います。
○井川説明員 ただいま申し上げましたとおり、この条約が発効いたしましたのは昨年の十二月四日でございまして、その後現在までの間、この締約国の間で、この種の事件が発生したということは、私たちは承知いたしておりません。
 また、この条約は、いわゆるハイジャック防止問題に関します国際協力の第一歩を定めたものでございまして、いわゆる犯人引き渡しというふうな義務の規定もございません。このハイジャックの防止に関します国際協力をもっと強めなければならないということは、世界じゅうの世論となっております。したがいまして、ことしのモントリオールにおきます国際民間航空機関におきます協議の結果といたしまして、本年十二月にオランダのへーグにおきまして、特にこのハイジャックの防止のための条約というものをつくるという会議が開かれることになっているわけでございますが、この条約におきまして、さらに詳細なる国際協力のあり方が規定されることになり、わが国といたしましても、この会議に積極的に参加いたしまして、この種国際協力の実をあげるための条約をつくるということに積極的に参加するということになっているわけでございます。
○鍛冶委員 私は、この条約をいま質問するために、詳しく読んでみたのですが、第十六条の一「締約国において登録された航空機内で行なわれた犯罪は、犯罪人引渡しに関しては、当該犯罪が行なわれた場所のみでなく当該航空機の登録国の領域においても行なわれたものとみなす。」2が「1の規定の適用を妨げることなく、この条約のいかなる規定も、犯罪人引渡しの義務を設けるものと解してはならない。」これは特別に義務を設けるものではないが、引き渡しの適用については、すべていずれの国も、出た国も着いた国も、それぞれ行なわれたものとして取り扱わなければならぬというのですから、それぞれのことをやらなければならぬと書いてあるものだと思うのですが、それでは、この規定は効力はないのですか、いかがですか。
○井川説明員 御指摘のとおりに、第十六条一項、二項の規定がございまして、この犯罪人引き渡しにつきましては、犯罪がいかなる場所において行なわれたかを確定することがまず第一に重要でございまするけれども、その場合、この条約におきまして、航空機内犯罪につきましては、その場所は「登録国の領域においても行なわれたものとみなす。」というのが第一項の規定でございます。この条約第十六条一項の規定によりまして、犯罪人引き渡しの義務というものをつくったというわけではない。このことは第二項との関係においてはっきり明示されているというふうに私どもは解釈しておりまするし、それが本条約のつくりましたときの公定の解釈だということでございます。
○鍛冶委員 この規定によって特別に義務を負わせるということはないのだが、引き渡しということについては、両方の国は登録国の領域においても行なわれたものとして取り扱わなければならぬというのだから、犯罪人引き渡しについては、義務としてはどうかは知らぬが、いずれの国においてもこのことは実行できるようにしなければならぬと、これは書いてあるものだと思うが、そうじゃないのですか。いかがでしょうか。
○井川説明員 御存じのとおり、この条約はいわゆるハイジャックそのものの防止ということを直接の第一の対象とした条約ではないわけでございまして、十一条にハイジャックに関する規定もございまするけれども、一般的に申しまして、この条約は、題にもございますとおり、「航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約」でございます。この条約の趣旨から、もろもろの不法の行為が行なわれた場合に、従来からあまり確定されておらなかった、たとえばそういうふうな犯罪がどの場所において行なわれたかということを国際的に確定するというふうなことも大きな意味を持っておるわけでございまして、その意味から第十六条の趣旨が入っているわけでございます。したがいまして、その犯罪地の場所の確定というものがただいままではその登録国の飛行機内で行なわれたものはどうであったか、どういう犯罪、どこの国の犯罪になるのであるかということを第十六条が確定したものでございます。登録国における犯罪であるということを確定したわけでございまして、そのこととこの犯罪人引き渡しということとは直接の関係が実はないわけでございます。
 ただ、確かに御指摘のとおり、そういう意味からいたしまして、この条約はいまだに不備なる点が多いのでございまして、先ほども申し上げましたヘーグにおける本年十二月の新しいハイジャック防止条約におきましては、この引き渡しの問題もその草案におきまして直接に取り上げられておりまして、たとえば航空機のいわゆるハイジャックという行為は、締約国間の現行犯罪人引渡条約中の引き渡し犯罪に当然含まれるものと見なされるというふうな規定が、新しい協定案にはあるわけでございます。したがいまして、この東京条約におきましてはまだその段階に達していないということでございます。
○鍛冶委員 私は、いやしくもここにこういうととが書いてある以上は、引き渡しに関しても実行のあることを前提として書かれてあるものと思うのですが、これはその程度にしておきましょう。
 いずれにいたしましても、これから条約を改正するとしても、この問題はひとり一国だけの問題ではなくて、世界人類全体に対する犯罪だと私は思うのであります。したがって、この条約に効力があろうがなかろうが、また、この条約に加盟しておろうがおるまいが、こういう犯罪は世界人類共同の力をもって、協力をもって防止しなければならぬものだと思うが、日本の外務省なり法務省なりもその考えであるのかどうか。その考えであるとするならば、世界全体に対してもそのことを深く表明してしかるべきものではないかと思われるのですが、法務省並びに外務省からの御答弁を願いたいと思います。
○小林法務大臣 ただいまの御意見には全く同感であり、さような意思表示もいたすべきである、かように考えております。
○井川説明員 法務大臣のおっしゃったとおりだと外務省としても思うわけでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、この国際協力の重要性からいたしまして、わが国といたしましても新しいハイジャック防止条約の際、できるだけ――日本は「よど号」という非常に不幸な経験を持っておりますので、その経験を生かしまして、このハイジャック防止のための国際協力体制が完備するように努力いたすつもりでございます。
○鍛冶委員 そこで申し上げたいのは、わが日本において、この法律をつくりましたが、この法律をつくった動機は「よど号」の奪取事件であったと思うのであります。しこうして、この法律はできましたが、いまだに「よど号」の犯人が日本に来ておらぬようである。したがって、この法律の適用はない。これはつくったわが日本としてはまことに遺憾しごくのことでもあるし、また、考え方によってははなはなだ不名誉なことでもあろうと考えられるのですが、この点に関して「よど号」の犯人をぜひとも日本に引き取って、日本のこの法律に照らしてしかるべく処罰をするように手を尽くさなければならぬものだと思うが、わが日本の法務省ではそれをやっておられるかどうか。やっておられるならば、やったがどうである、またもしやられないならば、どういうわけでやらないのか、この点をひとつ法務大臣から伺っておきたいと思うのであります。
○小林法務大臣 犯罪人の引き渡しは、これはもう外交関係でありますので、法務省としては職責上当然これの引き渡しを求めたい、かように考えて外務大臣にも申し入れておって、その処置は外務省におまかせをいたしておるところでございます。
○鍛冶委員 それでは、外務省ではどういうことをやっておられるか、ひとつ承りましょう。
○井川説明員 この点につきましては、前国会におきましても愛知外務大臣がお答えになっておられまするけれども、この犯人の引き渡しにつきましては、やはり種々のきわめて機微なる問題が多いわけでございまして、犯人の引き渡しを要求いたしまする方法あるいはその実現の可能性云々ということを慎重に検討していきたい、したがって、いましばらく事態を見守っていきたいというふうにお答えになっておるわけでございまするけれども、外務省といたしましては、現在、愛知大臣が前国会で申されました御答弁の趣旨を変えておらないわけでございまして、いまだに慎重に検討し、見守っておるという段階でございます。
○鍛冶委員 引き渡しを受けなければならぬものだ、また、世界人類の立場からいうても、これを実行して、かようなものに対しては厳罰をもって当たる、そしてかような犯罪の絶滅を期さなければならない。日本だけではない、世界全体がそうだ、私はかように思うのですが、慎重を期さなければならぬというのはどういうわけなんですか。そういうものは日本の立場からも主張せなければならぬし、世界の立場からも主張せなければならぬ。ここまで考えてくれば、私は主張のしかたはいろいろあると思う。私は、外務省に対してこうしなさい、ああしなさいということは失礼ですから申しませんが、しかし、あなた方のほうでただ慎重にやらなければならぬ、慎重にやらなければならぬと言ってどんなことをやられるのですか。ただ慎重だけでやらずにおったんでは、いつまでたったって効果はあがりませんよ。どのようにやっておるのか、承っておきたい。
○井川説明員 ただいま申し述べましたとおりに、本件はきわめて機微な問題でございます。まず第一に国交がございませんし、その上に現実的にはたしてそのような具体的な可能性があるのかどうか、また先方がどのような意図を持っているかどうか、また、もしそういうふうなことになりましても、現実的にどういうふうな引き渡し方法があるのであろうか、あるいはその他機微な問題が非常に多うございまして、また、いわゆる政治亡命的なものになるかどうかというふうなことからいたしましても、確かに法務大臣御指摘のとおりでございます。また鍛冶先生御指摘のとおり、わが国においてこれを処罰すべきは当然のことでございまするけれども、ことに現在おりまする北朝鮮との関係におきましては、いろいろ機微な問題を含んでおりますので、直ちに具体的な方法をとるという段階に達していないということを申し上げる以外にないということでお許し願いたいと思います。
○鍛冶委員 方法については外務省でとくと研究してもらいたいからこう申すのです。私に言わせれば、なるほど国交のない相手方であるから直接やることはできないかもしらぬが、北朝鮮に国交を持っておる国でわが国と国交のある国はさがせばあるだろうと思う。これを通じてやるのも一つであろうかと考えます。こういうことは外務省にとくと考えてやってくださいと言うよりほかないんだが、私がいま特に申し上げたいのは、先ほど来言うように、これは世界人類に対する犯罪でございます。しこうして、世界人類全体がこれを防遏せなければならぬと考えてもおろうし、したがって、これに対してつとめなければならぬ重大な問題だと思うのです。ここまで考えてみますると、日本との国交のあるなしにかかわらず、国際連合もあることですから、こういうものは国交のある国に早く引き渡してこれを処罰させなければならぬ。それでなかったらますますこういう犯罪が起こる。こういうことを国際連合などに訴えれば、当然これは国際連合として主張すべき問題だと思うのです。
 そういう問題であると思うのに、何かそういうことまでもやられないほどの慎重にせなければならぬものがあるのか、私にはわからぬからいまこの質問をしたのですが、外務省ではそこまでお考えになりませんか、いかがですか。
○井川説明員 こういう犯罪は世界人類に対する犯罪であるという御指摘の点につきましては、外務省といたしましても全く同じことを考えておるわけでございます。ただ先ほど来申し上げますとおり、機微なる問題をいろいろ含んでおりますので、いわゆる決断というものがまだ下してなくて、その状態を見守っているんだということを申し上げている次第でございます。
 いずれにいたしましても、この種の事件というものは国際協力ということがなければ解決できない問題でございまして、しかもまた、直ちに全部のこの種の事件の犯人を引き渡すということだけでは解決できない。これは政治亡命ということを含んでおりますので1私は「よど号」事件について申し上げているわけではございませんで、一般的に申しまして政治犯罪の問題とか政治亡命の問題、ことに政治犯罪については引き渡しの対象にならないというふうなこともございまして、問題はいかにしてこの種の事件の発生を防止し得る国際協力体制をつくるかということにあると思うわけでございます。
 その点につきましては、先ほど来申し上げておりますとおりに、国際民間航空機関におきまして一生懸命その新しい条約案の準備が進められております。わが国もきわめて積極的にこの小委員会にも小委員として参加をしているわけでございます。たとえばその草案におきましては、ハイジャックということを犯罪として規定しておるとか、あるいはハイジャックを行なった犯罪人を犯罪人引渡条約あるいは一定の条件のもとに引き渡すか、あるいは引き渡さない場合にはその締約国は犯人を起訴処罰をすべきであるというふうな規定が草案の中に設けられているわけでございます。したがいまして、この条約ができますと、加盟国はハイジャックが起こりますれば、その犯人が到着いたしますとそれを引き渡すかあるいは自国内で起訴処罰しなければならない、こういうふう汁規定になっております。このようなことからいたしまして、そういう犯人が処罰されないという重態をなくならしめることによりましてこのハイジャックというものを防止するという国際協力の段階がさらに進むわけでございまして、このような方法を通じましてこの国際協力の実をあげてハイジャックを防止するように一歩一歩前進するということが、現在外務省で考えておることでございます。
○鍛冶委員 まことにどうも私は遺憾だと言わなくちゃならぬと思う。いま私の申しますように、わが日本のこしらえた法律の権威をあらしめる意味においても、法務当局においてもあらゆる手段をもってこの引き渡しのために検討し、実行せられてしかるべきものだと思う。
 次いで、国際法上国交がないから云々というようなことがあるならば、世界的の犯罪なんだから、世界人類が協力してこれを防遏せなければならぬ。したがって、その犯罪人を処罰すべき法律がある以上は、その国から要求があったら直ちにこれを引き渡すべきものであるということを、法務当局並びに外務省から世界に向かって宣言せられてしかるべきものだと私は思うのであります。ぜひさようなことをしてこの法律を権威あらしめてもらいたい、こう思うから私はこの質問をしたのですが、まず法務大臣にそういうお考えがあるかどうか。私の考えが間違っておるかどうか。もしそういうお考えがあるならば断々固として私は世界に向かってこれを主張してもらいたい。これは法務大臣に対する私の質問です。外務省も、実は大臣来られればなんだが、責任を持って私はこの点をやってもらいたいと思う。めんどうも何もありゃしません。これは世界正義のために主張するのです。世界人類に対する犯罪ですよ。だから世界の何人といえども、世界の何国に対してもこれは堂々と主張してしかるべきものだと私は思うのです。この点、私の考えが狂っておるかどうか、もし狂っておらぬとするなら、それに対してあなた方のほうでやってもらわなければならぬと思うが、やる御意思があるかどうか、これを承りたい。両方から確答を得たい、かように考えます。
○小林国務大臣 ただいまの問題に関する鍛冶委員の御意見は、私はまことにごもっともなことだとかように考えて、同感でございます。したがって、いまのようなことはもう当然なことでありまするが、さらに注意を喚起するために適当なことをひとつ相談をいたしたい、かように考えます。
 実はこのハイジャック、先般の「よど号」の犯人につきましては、これはもう時効が中断をいたしておりますので、いつまでたっても処罰の対象になる。これはもう当然なことでございまするし、また、あの事件に対する共犯者等はいま起訴をいたしております。その際、北朝鮮に向かった者の人定、人も全部はっきりいたしましたので、同時に起訴する、こういう問題もありましたが、これは起訴しても二月かで効力を失う、こういうことでございまして、その効果も実は時効が中断しておる以上はそれまでのことをすることもなかろう、こういうことで、同時起訴という考え方がありましたが、これは中止をいたしております。
 いずれにいたしましても、先生の御意見は私は当然なことであり、また私どももそれに応じた措置をとるべきである、かように考えております。
○井川説明員 外務省といたしましても、ただいま小林法務大臣がお述べになりましたことと全く同じ意見を持っておるわけでございます。
 ただ、国際的にこれを見ますると、「よど号」事件を離れまして一般的に申し上げまして、先ほど来申し上げておりますように、やはりこれは国際協力の具体的な方法という、そういうふうなものをいたさなければ現実的にはなかなかむずかしい問題があるわけでございます。先ほど来ちょっと触れましたけれども、たとえば中南米諸国におきまするハイジャックの問題につきましては、非常にいわゆる政治亡命、政治犯罪というものの例が多いわけでございまして、そういう場合には国際法上第一義的にそれが政治亡命であるか政治犯罪人であるかということをきめますのはその入ってきた国であるわけでございまして、そうなりますると、犯罪人引き渡しというものができないということになるわけでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますとおりに、国際協力の具体的な実をあげるために、たとえば先ほど申し上げました新しい条約案におきまして、登録国あるいはその犯人が行った国において確実に処罰するというふうな、国際的にどこでも処罰されるということによりまして、このハイジャックというものを防止するというふうなことがまた非常に現実的なハイジャック防止の解決の方法にもなるわけでございます。ただ、冒頭に申し上げましたとおり、この事件に関しまする根本的な考え方につきましては、外務省といたしましても、ただいま小林法務大臣がお述べになりましたことと全く同一の意見を持っておるわけでございます。
○鍛冶委員 私はいまの答弁では満足できません。そんなことを言っておったら、この法律は、効力の発生はできないことになります。逃げていった、犯罪を犯した、そしてとらえられるのはいやだから亡命を願います。そうするとこれは亡命であるからこれを渡すわけにはいかぬ。すべてがそういうことになる。それではこの犯罪を防遏するということが不可能になります。だから、こういう犯罪を犯しながら亡命だといって通るものではないと私は思うのです。そこになるとだいぶむずかしいことだから、ここでは私は議論はいたしませんが、そういうことを言ってちゅうちょしておるようなことでは、この法律は実行ができぬから私は申すのです。どうあってもこの犯罪を防遏せなければならぬと考えて、そういう言いのがれを許さぬ。世界人類の犯罪者である。ゆえに、各国ともに世界人類がかかってこれを防遏せなければならぬという主張をせられてしかるべきものだ、私はこう言うのです。それをどうも亡命者だからといってやられぬからというならば、私の言うことは通らぬことになる。この点は、いま法務大臣は明らかにそういうつもりであると言っておられるが、もし外務省がそうだということになるとすると、私はたいへんな問題だと思う。きょうは大臣の来られなかったことは私ははなはだ遺憾とします。あなたは事務的のお答えであろうから、いまの私の言ったことをひとつ大臣に伝えて、いずれもう一ぺんあらためて聞きまするから責任ある答弁をしてもらいたい。私はそういうことではいかぬと思うからこの質問をしておる。少なくとも日本でこういう法律をこしらえた以上は、どうしてもこの法律を効力あらしめる。したがって、世界の犯罪者である者をいかなる国といえどもこれをかかえてその犯罪国籍のある国に渡さぬということは、世界条理の許さぬことである。このことを堂々と主張して要求し実行せらるべきものだ、かように考えるからそのとおりひとつ実行してもらいたい、こういうことを申し上げて、これに対する違った考えがあるならば、またその他御意見があるならばいずれ伺うことにして、きょうは私の質問を終わりますから、どうぞひとつとくと御考慮の上で御返答願いたい。
○井川説明員 ただいま鍛冶先生の御意見、愛知外務大臣にそのままお伝えいたします。
 ただ私、「よど号」事件が政治亡命であるということを申し上げたっもりは全くございません。中南米における例を引いて申し上げたつもりでございます。
○鍛冶委員 私は、世界のことも言うが、「よど号」のことに対して言いたいからこれだけのことを言っておるのですよ。みな亡命だといって逃げられてはたいへんだと思うから、この点もう一ぺんあらためてひとつ御研究願いたいと思う。
○小島委員長代理 畑和君。
○畑委員 私は、若干時間をとると思いますが、二つの問題について御質問をいたしたい。
  一つは、三菱重工業の長崎造船所、それから広島の作業所、この二つの従業員がいま懲戒解雇になっておる事件につきましての警察当局の処置の問題について質問したい。それからもう一つは、福岡の学校法人であります福岡電波学園の紛争の問題について質問いたしたい。
 この二つでございますけれども、まず最初に、先ほど申しました三菱の社員の労働者の懲戒解雇の問題について概略を申しますと、長崎造船所の社員の労働者三名が、このほかにも参加をしたそうですが、例の一〇・二一の東京での集会デモに参加をした。そのうちこの三名が逮捕をされたのでありますが、その三名のうち一名が起訴になり、二名が起訴猶予になった。それからまた、広島のほうでは起訴が一名で、不起訴が一名、そのほかに逮捕された人もございますが、行政処分につきましては、懲戒でなく、広島のほうでは減給というような処分になった人たちもおります。これらは両方関連をいたしております。しかも両方とも結局本社が東京の三菱重工でありますので、そういった関係でひとつまとめて問題にし、質問をいたしたいと思っておるわけであります。
 実はこの問題について、そこに参加をしたということが、そして逮捕されたということが理由になっておるわけでありますが、その唯一の証拠というか、それが実は会社の勤労部長の照会に対する警察関係からの回答文書、この回答文書が唯一の会社側の懲戒事由の証拠になっておる、こういう事件でございます。それで、いま長崎のほうの問題につきましては、民事訴訟を起こしておりまして、懲戒解雇無効の確認を求める本訴と同時に、仮の地位を定める仮処分の申請が出されておりまして、これまた裁判中でございます。広島のほうにつきましては、仮の地位を定める身分の保持のための仮処分はすでに原告側、すなわち労働者側の勝利に帰しておりまして、本訴のほうが進行中、こういう状態でございます。
 そこで、訴訟中はしなくも――その前から会社側は、懲戒委員会というのがあって、そこに労働者側の代表も出ておりますけれども、そこの席上で提示をされたのでありますが、さらにまた、それが訴訟の段階において、証拠として会社側から提出をされておる、こういうことなんであります。
  〔小島委員長代理退席、鍛冶委員長代理着席〕
 それで、この事件というのはそれだけのことでございますが、それだけに問題がきわめて大きい、かつてこういう例はないのであります。こうした労働者がこういった統一行動等に参加をして逮捕された、懲戒等の処分になることは、例はあるのでありますけれども、その中で、その事由の唯一の証拠がそうした警察関係からの回答文書、これによられる、依拠しておるのはおそらく初めてじゃないかと思うのです。それだけに事重大であると考えますので、もっぱら警察庁のほうだけに質問を集中いたしたいと思うのです。ほかの、労働者の労働関係のほうは、実はある程度労働省側にも同情的というか、理解を示した態度でありまして、労働基準法上におきましては、御承知のように、解雇につきましては、予告解雇、一カ月前の予告あるいは一カ月分の給与を払うことによって解雇するというやり方、それが一つあります。同時にまた、即時解雇というものがありまして、これはそれ以外にいろいろ不当な事由があるということで、予告手当は必要ない、要するに一カ月分も払わないでよろしいという即時解雇があるわけであります。ところで、会社側の懲戒解雇というのは、労働基準法上にいう二つのうちの一つの即時解雇に当たるとしても、懲戒解雇になると退職金ももらえない、こういうようなきびしいものでありますが、労働省のほうでは、一カ月分のものをもらえないというような即時解雇の見解をとっていない、そして一カ月分の金を払う、すなわち予告解雇に当たるというような処置をとっておるわけであります。この点についても、会社側といろいろあったようでありますが、会社側はその点を取り下げておるわけであります。労働省側の意見も聞いて取り下げておるということになると、会社側のほうがそれを認めたということになっておるわけであります。労働省関係のほうについてはそういうふうになっておる、労働法上はその程度のものである。ところが、会社側としては懲戒解雇をもってこれに臨んできておりまして、労働者側からも出ております懲戒委員会におきましても、強硬にこれを押し切って、それでとうとう懲戒解雇ということになっておる。そのあとは、私が先ほど申し上げましたような経過で、現在訴訟中というようなことになっておるわけであります。
 ところで、私が問題にしようとしておるのは、先ほどもちょっと触れましたけれども、警察庁の回答文書であります。一体これはどういう根拠に基づいて出したものであるかということであります。この点について検察庁のほうにも実は照会を出しております。三菱本社から警視庁のほうに出した照会と大体時期を同じくして、四十四年十一月に照会を出しておりますが、検察庁では二人の起訴状の部分だけを回答して、それ以外は回答しておらぬのです。起訴あるいは起訴にならない人の分については、その後東京第一弁護士会の会長を通じて、例の弁護士法三十二条の二、この条項によっての照会に対して、長崎の三人について問い合わせて、地検はそれを拒否しております。ただ起訴猶予か、嫌疑なしかということについてだけ答えて、それ以外は答えられないということで、さすがに地検のほうではそういう処置をとっておられるのであります。ところで、警視庁のほうでは、四十四年の十一月の三菱本社からの照会に対して、不起訴者三人について回答をいたしておるわけであります。それからまたさらに四十五年の六月、長崎弁護士会長を通じて、長崎稲佐署長に対する照会に対する回答をやはり署長名で出しておる。三人の家宅捜索の模様、状況、押収文書、その内容、写真があったら写真をつけてなんて出していますが、それに対して、写真はさすがに出してないけれども、どういう文字でどこがどう消してあるかということまで、押収文書の内容まで稲佐署長が回答をいたしておる事実があるのであります。問題はそれであります。
 この警視庁の回答と、それから長崎稲佐署長の回答でありますが、一体これは刑事訴訟法上許されることかどうかということ、あるいは警察法上許されることかどうかということが、きわめて問題だと私は思います。許されないものだというふうに私は考えております。基本的人権の擁護ということもあります。警察法第二条にもその辺のことが書いてあるはずです。第一条でも、個人の権利、自由云々と、警察法の第一条、第二条に私はそれが出ているはずだと思います。そのほかに刑事訴訟法の四十七条にも触れると思う。同時にまた、それが国家公務員あるいは地方公務員の各秘密保持の問題にも触れると思うのでありますが、その辺のことについて、まず警察庁から事実関係について御回答を願いたい。大体のことは私のほうで知っています、私のほうでもみんな書類は入手しておりますから、まず第一に御回答願いたいと思います。
○赤木説明員 ただいまお尋ねがございました件は、昨年の一〇・二一闘争に際しまして、東京都の新宿区戸塚町かいわいにおきまして、反戦集団といわれる集団が中心になりまして、凶器を準備して集団的に過激な暴力行動を行なったという事案が発生いたしましたが、その際、この集団に加わって公務執行妨害、凶器準備集合罪あるいは傷害罪などの容疑で、警視庁の警察官に現行犯逮捕されました三菱重工業株式会社の従業員について、会社側及び地元の弁護士会−長崎でございますが、弁護士会からの文書照会に対しまして、警視庁、長崎県警察からそれぞれ文書照会に対しまして回答をいたした件についてであろうと思われますが、まず警視庁の関係について御説明申し上げます。
 これは昨年の十一月二十五日付で、ただいま牛生のお話のございましたとおり、三菱重工業株式会社勤労部長名をもちまして、警視庁の公安第一、課長あてに、文書で、逮捕されました者のうち、起訴猶予処分になっております三名の従業員につきまして、逮捕の月日、逮捕の場所、逮捕の理由などについて照会がございました。この会社側の照会に対しまして、警視庁では、関係の被疑者がすでにこの照会以前の十一月十二日に起訴猶予処分になっておるというようなことから、逮捕の日時、場所、逮捕理由要旨などについて、二十九日付の文書で公安二課長名で回答いたしたものでございます。
 次に、長崎県の関係について申し上げますと、これは本年の六月二十二日付で、長崎県の弁護士会長名で、長崎県の稲佐警察署長あてに、文書で、弁護士法第二十三条の二に基づいての照会がございました。その照会事項は、警視庁の嘱託に基づいて亀屋利明、山口利之助、山口明彦にかかる凶器準備集合罪等の被疑事件で、令状による捜索をしたことがあるかどうか。あれば、一として、各被疑者別に捜索した日時、場所。二、各場所別に発見された証拠品の明細。三、欠勤届けまたはこれに類する表示の書面の有無。四、右三の証拠品の内容(もし写真撮影等しておればその写しを送付願いたい)。五といたしまして、押収証拠品の送付先。以上のような内容のものでございました。
 この照会に対しまして、稲佐警察署長は、弁護士法二十三条の二に基づく弁護士会長からの正式な手続による照会でありますことから、捜査上の問題、それから被疑者その他関係者の名誉を害しないかどうかという両面から検討した上、支障がないと思われる事項について、六月二十六日、署長名で文書回答をいたしております。
 その文書回答の内容でございますが、これは警視庁からの依頼で令状による捜索を実施したことがあるということが第一。それから各被疑者別の捜索といたしましては、亀屋利明関係は、四十四年の十一月四日、本人の自宅及び長崎造船所第一機械工場内本人使用のロッカー、山口明彦関係につきましては、四十四年十一月六日、長崎造船所飽の浦寮内の本人居室及び長崎造船所第一機械工場内H棟内の本人使用のロッカー、山口利之助関係は、四十四年十一月四日、長崎造船所第一機械工場内本人使用のロッカー。三番目に、捜索によって発見された証拠品は、山口明彦の居室から「欠勤届」と記載した同人名義の紙片一枚を発見した。その他の場所からは証拠品等は何も発見されていない。四番目に、欠勤届けにつきましては、ノート用紙に横書きで、「欠勤届 不当な権力の弾圧により出勤できません。私としては出勤し、職務につく意思があるのですが、残念ながらできません。よって、十月二十三日より釈放されるまで欠勤いたします。昭和四十四年十月二十一日 山口明彦」という趣旨のものであります。五番目に、押収証拠品の送付先は、四十四年十一月八日付で警視庁田無警察署長あてに送付した。
 以上が会社側あるいは弁護士会長からの照会に対する警察からの回答の内容でございます。
○畑委員 そういう照会の文書が来、またそれに対してそういった内容の回答をした、この事実は争いがないわけです。
 ところで、先ほども申し上げましたように、警察法の第二条の第二項、これには、「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その責務の遂行に当っては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない。」こういうふうに、警察法にもまず第二条で書いてある。私はこれにも抵触すると思いますが、どうでしょうか。個人の人権を守る、不偏不党かつ公平中立でなければいけないということになります。ところが、片方は会社ですよ。何とかして首を切ろうとする、片方は弱い労働者、そういう間において不偏不党あるいは公平中立といえるかどうか。さらにまた、個人の権利及び自由−いまそれが唯一の証拠で首を切られようとしている、こういう点について人権の保障、個人の権利及び自由の干渉にわたってはいかぬ、そういった権限を乱用してはいかぬということが書いてある。これにも触れると私は思う。結局、照会があったから回答した、こういう簡単な考えですか。それともこの程度ならばよろしいと思ってそうやったのか、簡単に照会があったから出したというのか、その辺はどういうことでしょうか。
○赤木説明員 私ども警察では、職務を遂行するにあたりましては、警察法の二条に書いてありますように、不偏不党、公平中正を旨として仕事をしなければならないのは先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもそういう気持ちで仕事に当たっておるわけでございます。それからまた、犯罪捜査を行なうにあたりましても、常に捜査の秘密を厳守いたしまして、捜査の遂行に支障を及ぼさないように注意するということとともに、被疑者、被害者その他事件の関係者の名誉等を害することのないように、慎重に配慮していかなければならないと思っております。
 捜査の内容に対する照会の取り扱いについてでございますが、一般的には被疑者あるいは被害者、その家族、その事件の関係者というような方々からの照会が多いわけでございまして、そういった際には、私どもといたしましては、その犯罪の種類とかあるいは性質、態様、それから捜査の進展状況、さらに問い合わせの意図なども具体的に考えまして、相手方にそれを答えることによりまして、その後の捜査に支障を及ぼすことはないかどうか、あるいはまた、被疑者その他の関係者の名誉を害するようなことがないかどうかといったような点について十分考えました末、適当と認められます場合には、差しつかえのない範囲内で最小限度の答えをするようにいたしております。
 この件につきまして申し上げますと、一〇・二一闘争というのは、当時国民一般が非常に大きな関心を引いた事案でございまして、その概要につきましては、すでに当時新聞あるいはテレビ等で広くかつ相当詳細に一般に報道されていたことでございます。それからまた、照会者側で、すでに照会の対象者がこの一〇・二一闘争に参加いたしまして、警視庁に現行犯で逮捕されておるという事実は承知しておるようでございまして、その者の名前をあげて逮捕月日、場所、逮捕理由等の問い合わせがあった、それから警視庁に対して照会されました当時の対象者三名につきましては、いずれもすでに起訴猶予処分が決定いたしておりまして、一応の捜査も終了しておったということがうかがわれるのでございますが、こういうふうに一応検察の処分も終え、事後の捜査についても格別の支障はないという見通しの上で、それからまた、照会者側も内容についてはすでに承知した上での確認的な問い合わせであるというようなことなども考えまして、これに答えても格別被疑者の名誉等をそこなうものではないというようなことも判断されましたので、先ほど御報告しましたような回答をいたした次第でございます。
 それからまた、長崎の場合でございますが、長崎の場合は、一応弁護士法の二十三条の二に基づくところの、公務所に対する適法な照会事項でございますので、私どもといたしましてはその内容がわれわれのほうの所管に属するものかどうか、あるいは先ほどと同じように捜査の秘密に当たらないかどうか、あるいは被疑者、関係者等の名誉を害するおそれはないかというような点をやはり慎重に考えました末、先ほど御報告したようなお答えをした次第でございます。
○畑委員 いまの答弁によりますと、照会があったからそのままうっかり出しましたというのではないらしい。相当考えての上で出したというような御答弁だった。それだけに私は問題だと思う。しかもそうした照会の意図が何であるかというようなことまでいろいろ考えてやったというのですね。ところが、照会する人は三菱重工業の勤労駅長ですよ。労働者の取り締まりをやっている勤労部長だ。それが、労働者が反戦の闘争に参加をしたということについて照会したからには、その意図がどこにあるかということはわかっているはずです。われわれ委任を受けている弁護士にすら警察のほうは内容をなかなか明らかにしませんよ。本人に聞けばわかるのですが、それもこういう事件については、接見禁止だとかなんとかいって、時間の制限があってなかなか聞くことができない、非常に制限されている、こういう状況である。いわんや警察なんかが教えてくれるはずはなかなかないのであります。それであるのに、それをいま言ったような、どんな意図に基づくものかということを承知をした上でやりましたという、そういうことも考えてやりましたというに至っては、私は非常に人権の擁護ということに欠けるところがあったと思うのです。それはもう待ってました、これを唯一の証拠にする。逮捕されたことはなるほどわかってますよ。ところが、公式の文書があなたのほうから回答されていれば、それを理由にして懲戒委員会でやりますよ。現にそうなんだ。実際に闘争に参加をして、しかも逮捕をされなかったある執行委員がいるそうだ。労働組合上もっと身分の高い人だ。その人が懲戒委員会に出て、おれも行ったのになぜおれをやらぬのだ、それでこっちをなぜやっているのだということを言ったそうだが、これは一つの笑い話になるけれども、それくらいで、とにかくその現場に行って大いにやった人については何ら証拠はない、片一方については証拠がある、その証拠というのはすなわちあなたのほうの回答文書です。その回答文書が唯一の証拠になっておる。そういうことであるから、照会の意図がどこにあるかということについて深く思いをいたすならば、あなた方は、秘密の保持ということは別におくといたしまして、人権の擁護ということ、個人の名誉ということを盛んに言われるが、それをなぜ考えなかったのか。これは私は非常に重大な問題だと思います。これはひとつ大いに考えてもらわなければいかぬ。これは初めてのケースですから、これは今後も何度もあっちゃ困る。あとでその話は詰めますけれども、これは非常に問題だと思います。
 それから弁護士会の照会ですが、弁護士会は裁判所からも検察庁からも独立で別の機関であるから、ここでたまたま別に質問する人がいないからしかたがないんだけれども、この弁護士会のほうも私は軽率だったと思うのだ。なるほどあなたのほうはそういうことで逃げるでしょう。公務所への照会ということ、法律上も弁護士法にあるから、その弁護士法に基づいての照会だからということで回答しましたということだと思う。これはこれで弁護士のほうの、弁護士会長が実は私はけしからぬと思っている。先ほど私は弁護士法の三十二条と言ったが、二十三条の二の間違いですが、弁護士法二十三条の二には、「弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があった場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。」こういうことになっている。弁護士会長は、所属の弁護士会が照会の申し出をしてきても、これを断わることができるのだ。申し出が適当でない、まさにこういう場合は適当でないと思うのです。こういう適当でないと認めるときは、これは拒絶することができると、こう書いてあるわけですね。ところで、まあこれをしなかった。しなかったところか、長崎の場合は――ここで質問する相手がいないですから、別に質問するわけじゃないけれども、よく聞いておいてください。こういうことがあるからあなたのほうもよく注意しておいてもらいたい。長崎の場合などは、長崎の弁護士会の会長というのは、三菱の長崎造船所の使用者の顧問弁護士なんです。顧問弁護士個人が、おそらく弁護士会長にあてて願いを出した。その結果に基づいて公人たる弁護士会長が照会した、こういう手続はおそらくとっておるでありましょう。しかしながら、同一人ですから何でもできる。この点が私は弁護士会のほうに文句を言いたいと思うのですが、拒絶することができるんだけれども、本人だから拒絶するどころじゃない。何でもできるわけだ。しかも三菱の顧問弁護士だ。しかも懲戒解雇のおそらく相談相手に当時からなっておるに違いない。なっておるからこそ会社の命を受けて、そうしてこうした弁護士法の二十三条の二を脱法的にくぐって利用してそれでやったに違いないと私は思う。それほどこの法規はうっかりすると乱用される。あなたのほうは照会されたからこの法規に基づいてしたんだからということで責任はないということだろうが、しかし、現実にはそういうふうな手段でこれが使われておった。で、あなたのほうはそれにまんまとひっかかってというか、そのとおり回答したということになるのでありましなうけれども、こういう問題もあるのであります。いわんやそういう点で、警視庁の場合などはそういった申し開きはできないと私は思う。結局、秘密の保持ということ、これは公の、要するに国家権力としての秘密の保持だと思います。それは刑事訴訟法にもそういう立場から、御承知のように刑事訴訟法にそのあれが書いてありますね、四十七条にあります。この四十七条によりますると、訴訟記録というのは公判開廷前に公表してはならぬ。ただし、例外は若干あります。その例外というのは、国会に対する報告とか、そういうことだと思う。それ以外は原則としては公開してはならない、こういうことになっている。あるいは弁護士がこれから始まる公判が開会する前に訴訟進行の便宜として、相手方の検査官のほうが訴訟書類をどうぞ弁護士さん見てください、こう言って出す、こういう場合はそれに当てはまると思うのでありますが、それ以外には秘密の保持という立場から刑事訴訟法の四十七条からもそれができないことになっている。これはあなたのほうは訴訟書類じゃなくて、訴訟記録の中からの抜き出しですけれども、私は捜査した以上はやはり刑事訴訟法に基づいて捜査するのだから、刑事訴訟法のこの四十七条がやはり類推適用、準用されると私は思うのですが、その点はいかがですか。
○赤木説明員 ただいまご指摘がございましたように、刑訴法四十七条との関連でございますが、警視庁の回答文書につきましては、単に逮捕時の事実をごく簡単に記載したにすぎないものでございまして、これが直ちに訴訟に関する書類の内容を公にしたというような性質のものとは考えられないわけでございます。
 なお、今回の回答につきましては、御指摘のこの四十七条の規定の趣旨につきましても、十分私どもといたしましては慎重な配慮をして取り扱ったっもりでございます。
 なお、この長崎県の稲佐警察署長から弁護士会長あての回答につきましては、一部差し押え物の内容等にも触れておる点もございまして、これにつきましては、先生のおっしゃいますとおり、なお慎重に検討を要すべきものではなかったかとも思われるのでございますが、しかし、本件の内容につきましては、先ほどお話もございましたけれども、弁護士法の規定に基づく成規の照会であったということを考え合わせますと、やはりこれまた必ずしも四十七条に違反するとは私ども考えておりません。
○畑委員 長崎の場合、稲佐警察署長の場合、これはあなたのほうでも内容について押収証拠の文書ですか、欠勤届けというこれの文書、これの相当こまかく状況を説明したのを回答しておる。これはどうもいささか適当でなかったと思うということだが、最後に弁護士会からの照会だからそこで免責をされる、こういう御答弁のようだったですね。
 それはそれとして、そうすると、いまの欠勤届けの問題などはあなたのほうでも相当反省をされていることだと思う。これなどは相当いまの懲戒委員会でも問題になって、裁判でも問題になっておるところです。これはもう相手のほうがよく知っておるのですよ。相手のほうの手元にすっかりその状況があるのですよ、公文書によって、回答によって。こっちは知らないのですね。しかも、その証拠物を返してくれ、こう言って何回も請求しても、起訴猶予になっても、その証拠物を返してくれない。何度か足を運んでようやく返還になった。こういうことですが、その前にもずっと前に向こうのほうにはちゃんとそれと同じ内容のものが、もう、写真をとったわけじゃないけれども、横ワクでどう書いてどうなったかと書いてある、文章までがすっかり書いてあるわけだ。こういうことは私はきわめて不都合だと思う。こっちはなかなか返してくれない。これは捜査が終了すれば返すのがあたりまえで、そういった本人に属するものは返すのが当然だ。訴訟法上にも公判が終結前といえども返すべきものは返せということが書いてあるが、これは公判ではないのだから、起訴にならないのだから、なおのことだ。これはすみやかに返すべきものだ。こっちに返さないのに向こうは知っているのだ、こういうことは非常にぐあいが悪いと思う。この点はどうでしょうかね。この点、向こうはよくわかっておるのだ。本人には返してくれない。
○赤木説明員 この事件は事件として取り扱いましたのが警視庁の田無警察署でございます。それから捜索をいたしました現場ば長崎県の稲佐警察署でございます。ただいま先生のお話の資料の返還等に手間どりました点につきましては、そういった事情もあったことかと私は考える次第でございます。
 ただ、先ほど御指摘のございました弁護士会に対する回答でございますが、これは私どもといたしましては、ことしの六月二十二日に照会がございまして、それに対しまして二十六日付で文書回答をいたしておるものでございまして、それ以前にも実は数回、これは口頭で問い合わせがございまして、口頭でお断わりしてございますので、記録が残っておりませんので、何月何日と正確に申し上げかねるわけでございますが、そういうお断わりしておる事実もございまして、それ以前に出しておるということはございません。
○畑委員 なかなか証拠書類を返してくれない理由として、共犯者の関係があるから返せない、こういうようなことだったそうだが、その点どうですか。何も欠勤届けなんというのは共犯に関係ないでしょう。それはどういうことでしょうか。そういうことだったというが、そこまで承知してないですか。
○赤木説明員 その点詳細には検討いたしておりませんでしたので、後刻お答え申し上げたいと思います。
○畑委員 そうするとあなたのほうでは、この程度のものはこれからも照会があったら出すというのですか。会社の勤労部長あたりから照会があったら出すという考えなのか、それから、これからはやめるということなのか、あるいはやるのはやってももっと慎重にやろうというのか、個人の人権等考えてやるというのか、その辺どうでしょうか。
 しかし、くれぐれも考えてもらいたいのは、会社内で起きたことでも何でもない。外で起きたことなんですね。会社と労働者との契約に何ら関係はない。欠勤届けは出しているのですから。それを、外のことを、会社から照会があったからというので回答をするということは、これは企業と権力との癒着だといわれてもしかたがない。これはよほど注意してもらわぬといかぬと思うのですよ。そういうことがあるから、会社側からということになったら、意図がどこにあるかという点を十分に配慮して、人権の擁護ということでやってもらうのは当然だと思う。刑事訴訟法の法規の問題には当たらぬというようなあなたの考えのようだけれども……。
 それは別としても、人権の尊重という警察法に書いてある法律の趣旨からしても、そういう場合には、会社側等からの照会があったときには回答しない、私はこういう態度をとってほしいと思うのです。一つは政策的な問題でもありますね。もしあなたが、やればやれるんだ、しかしながら、こういうことは考慮して、これからこういう会社側の照会等については出さぬ、こういうことなのかどうか。やれると思うから、会社側から来たってやるんだ、こういうことなのか、その辺ひとつはっきりしてもらいたい。実はこれは非常に重大なんですよ。
 この点も、これは広島の場合だけれども、一般の社員に会社で配った「社員四名の懲戒処分についていきさつをお知らせします」という会社側が書いた文書で、「現行犯として最も権威ある公的機関である当局の証明があり、これにより本人達の行為は明白であります。」こう書いてあるのですね。あなたのほうだって現認した人は間違いかもわからぬですよ、逮捕したときに。裁判によってでなければわからない。最後には起訴猶予だったんだから。起訴された場合でも、裁判で判決がどうなるかわからぬ。そういう場合にあなたのほうで出している回答、相当内容はひどいものですよ。いろいろな罪名を全部並べ立ててありますよ。照会のことだけしか言ってないけれども、鈴木範雄君という場合なんか、逮捕の理由は「反戦集団の闘争に参加し火炎ビン、石塊等を準備して集合し、火炎ビンや石塊等を投げるなどして警察官の公務の執行を妨害したものである。」これは起訴猶予だったんですよ。ほんとうにこういうことをやったのなら、起訴猶予になるはずはないと思うのです。それで逮捕罪名は、公務執行妨害、傷害、兇器準備集合罪、放火未遂、道路交通法違反、暴行、一つ例をとってみてもこういうことですね。これが会社当局の手に入ったら鬼の首でも取ったようなことですよ。だけれども、御承知のように最後は裁判にならなければわからぬ。それまでは無罪を推定されるということになっておる。それだけに人権を擁護するようにいまのあれはできておる。これを十分気をつけてもらわねばならぬ。これは唯一の証拠で、会社が文書をばらまいておる。「最も権威ある公的機関である当局の証明があり、」こうなっておるので、これはすっかり利用されておる。利用されたと思いますか。そうでないとすれば、あなたたちのほうがまさに会社側と癒着しておる、こう言われてもしかたがないと思う。これは非常に私は問題だと思います。
 そういう点でどうですか、先ほど冒頭に聞いたことですが、基本的には一体どういう考えをしておるのか。そろそろ時間が来たから、次の質問があるのでくくりたいのですが、どう考えておるか。
○赤木説明員 私企業における労使関係等の民事上の問題について警察が介入してはいけないことにつきましては、先生がただいまご指摘のとおりだと思います。
  〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕
ただ本件の場合は、一応照会者側がすでに事実を知っていて、それについての確認的な問い合わせということで、これに対して回答したものでございます。もう一つは、弁護士法に基づく照会で回答したということでございまして、このことで直ちに民事的な内容に不当に関与したとは考えておりませんけれども、御指摘もございましたので、今後ともこの種の照会につきましては一そう慎重に検討いたしまして慎重な措置をとってまいりたいというふうに考えております。
○畑委員 慎重に対処をするということですが、会社側等からこういう際に照会が来てもそうした関係に関与することになるから、それに利用されるようなことがあってはならぬから、これからやめる、こういうことは言えませんか。これは非常に重大だと思う。しょっちゅう行なわれたらかなわぬですよ。この点、官公署からの照会なら別だけれども、明らかに会社の勤労部長、会社側から処分の問題と予想されるような、たいていそうですよ。そういう場合には警察法第二条もこれあり、今後はそういった照会に対しては返事をしない。大体わかっておるらしいと言ったって、逮捕されたのだったら逮捕されましたということだけでいいじゃないか。それ以上言うからいま言ったようにいろいろな犯罪の名前まで書いてある。だから、これは鬼の首でも取ったように言いますよ。その点が問題だ。だから、これから会社側の照会については、こういう事例については一切やりません、こういうことは言えないですか。どう
 ですか。
○赤木説明員 先生のただいまおっしゃった点なども含めまして、慎重に配慮してまいります。
○畑委員 これはあなたのほうの秘密の保持という点もあるし、同時にまた、個人の人権ということ、特に私はそのあとの問題がむしろ重大だと思う。初めのほうの場合につきましては、秘密の保持というので、場合によっては国家公務員法の第百条あるいは地方公務員法の第三十四条、秘密を漏らした場合にはこういうものによって処罰をされることもあり得るわけです。そういう規定もあるんだから、これは慎重にやってもらわなければいかぬと思う。あなたの答弁では私は満足をしませんけれども、しかし、そうでなくとも警察権力と企業との癒着ということがいま問題になっておるんだから、公平無私でなければならない警察でありますし、しかも人権を擁護すべしということになっておるんですから、その点はやめるということを言ってほしいんだが、あなたもどうもそこまでは言い切れないらしい。十分配慮してやります、それだけでは不十分だと私は思う。しかし、これで押し問答していてもしかたがない。少なくともいま言ったことは最大限に実行してやってもらいたい。こういうことが今後国会で問題になるようなことがないように、私も十分監視しますから、ひとつその点十分に気をつけてもらいたい。時間がありませんし、次の問題がありますから、この問題の質問をこれで終わります。
 第二の問題といたしまして、福岡電波学園の問題について質問をいたしたい。まず、概貌を申し上げまするにちょうど便宜と思いますので、若干時間がかかりますけれども、朝日新聞の七月六日の報道、これはこちらの関東のほうにも出ているか出ていないかわかりませんが、これは西日本の版でありますが、それを便宜読み上げまして、事件の概貌をまず申し上げたいと思います。
 「学校法人としては全国でも異例の破産宣告をうけ破産管財人による管理を受けてから、この七月で満二年を迎えた福岡市下和白の福岡電波学園で、こんどは付属の電波高校の教師たちが「破産財産の管理をすべき管財人一派が仕事を怠るばかりか、教育現場に勝手に口を出して学園を混乱させている」と十六人が連名で国会に請願する準備を進めている。さらに管財人に批判的な債権者の間で「破産宣告は、大口債権者と管財人とがたくらんだ学園乗取り」という声が上がっており、債権者の委任状を集めて管財人らを追及する動きもからんで、学園騒動はいよいよ広がりそうな雲行き。破産宣告後も、同学園では福岡工業大、同短大、福岡電波高三校の学生、生徒約二千五百人の授業が続けられており、父母たちの間に不安の表情が濃くなっている。」こういう見出しでありまして、そして「電波高校教職員有志として、十六人の連名で出される請願書はすでに作成され、近く地元国会議員の手を経て衆参両院議長に提出される。内容は「教育権が管財人の手で侵されている」というもので管財人らが校長を勝手に任命、教職員の首切りを行なっている、としている。また債権者の管財人追及については、このほど管財人批判債権者の間で「債権者代行委員会」が作られ、六月末集会を開いて1二人の破産管財人と五人の監査委員の即時解任2文部省が選んだ仮理事は認めない、の二点を決めた。「破産宣告後二年にもなるのに、膨大な報酬を受取るばかりで、管財人本来の仕事である財産分配の業務を怠っていることは、道義的にも許せない」という理由。福岡電波学園は四十二年三月、不渡手形を出して倒産、四十三年七月二日に破産宣告を受けた。弁護士の江口繁氏らが破産管財人となって処理に乗出し、同月末開かれた第一回の債権者集会で、学園を存続させることを満場一致で決めた。ところがこのあと、学園の経営に当る理事の法律的解釈について管財人側と前理事との間に見解が分れ二年の間対立してきた。「学園の破産と同時に当時の理事は失格する」という見解をとっている管財人側は、文部大臣に仮理事の選任を依頼、先月末、日本船舶振興会会長笹川良一氏ら五氏が選ばれた。これらの仮理事は学園の再建策として、新たな理事を選任して債権者と強制和議に持込む方針で、今秋までには法人の再認可にこぎつけたい、という。これに対して桑原玉市氏ら破産当時の理事たちは「学校そのものが存続しているのだから、理事は失格していない。学校教育にタッチする権利はあるはずだ」と主張して、対立を続けていた。そこへ今度の仮理事選任。桑原氏らは「文部大臣の私学への不正介入」として反対、さらに教師の請願問題がからんで紛争は再び表面化した。同学園の債権者は約千四百人。江口管財人らを非難している「債権者代行委員会」は七百人の委任状を集めたといっており、先月末の債権者の集りは七十七人が集まった。「この破産は、財産評価を低く見つもり、負債を水増しして、裁判所に認めさせた。いわば破産処置をとり、当時の理事たちを追出すやり口。大口の債権者と管財人とが仕組んだ巧妙な乗取りだ」といっている。また管財人、監査委員らが受取った報酬については、古池氏らは「破産宣告いらい三月末までに合計千三百二十五万円にのぼる。管財人のなかには七百万円近くも受取ったものがいる。裁判所が認めたといっても、破産学園からこんな巨額な報酬をとるのは道義的に許せない」といっている。一方、大部分の教職員も当初は管財人側についていたが、昨年三月、六人の電波高教師を管財人側が解雇して以来、反管財人色を強め、電波高校では、管財人が任命した校長、教務部長をボイコットして職員会議による学校運営を進めているという。」こういう概貌であります。
 これは便宜朝日の記事を読み上げたものでありますが、学園の破産の問題というということで非常に注目も集めておりますし、非常に紛争が長引いており、確かに困ったものだというような感じがするわけであります。基本的に、学校法人と破産の問題というのは、どの場合でもこれは非常に深刻な問題になり得る可能性がある。普通の経済的な会社などの場合におきましては、事はしごく簡単であります。けれども、事教育に関して、学生を多数かかえておるという本件のような場合には、私はきわめて問題が深刻になり紛糾をすると思うのであります。しかもこの福岡の電波学園の場合におきましては、いろいろ不信感が手伝って、お互いに二派に分かれていろいろやっておるようであります。管財人側と旧理事側と、こうした二つの側に分かれて深刻な争いをやって今日まで来ておるようでありますけれども、こういった学校法人や何かに対する破産というものは、最初の破産宣告そのものをよほど慎重にやってもらわなければならぬのじゃないかと私は思うのです。ほかには、各種学校では破産の問題があるというふうに私は聞いてますが、大学の場合に破産までいった例はこれが初めてではないかというふうに聞いておるわけでございます。非常に深刻な問題になっておるのでありますけれども、教育の問題と破産による経済的な解決を本旨とした破産法の趣旨、それとがどうもうまくいかない。当然のことであると思うけれども、それがこの学園の場合にあらわれたと私は思うのでありますけれども、この点について少し各方面に聞いてみたいと思います。
 まず第一は、私は破産を宣告するについてもっと慎重であってほしかった。慎重にやったのではありましょうけれども、相当これだけの財団としては破産宣告を急ぎ過ぎたというような感じがいたしておるわけであります。しかも資産と負債との関係、はたして債務超過となるかどうかということも私は非常に大きな問題になると思うのでありまして、結局債務超過ということで破産ということになったのだと思うのでありますが、この評価の問題についても相当両者に見解の違いがある。評価をするについて、ただ一カ所だけに評価をさしておる。三十億、二十億というような大きな破産財団について、鑑定人が一カ所だということは私は問題があると思う。しかも鑑定人として選んだ人が管財人――そのときは管財人はいなかったのでしょうが、管財人と同じビルにも住んでいるというような関係もあるようでありまするし、しかもその破産の宣告になる前に実は理事の執行停止の仮処分があったようでありまして、それで、それの理事の代行者に裁判所から選ばれた人が、その後、破産になってから破産管財人になった。こういうことも一つある。それからまた、この事件を担当した裁判官が、破産管財人になった人のところで弁護修習をしたというようなこともいろいろ勘ぐられるところにもなっておるようです。こういう問題についていろいろ旧理事側でも疑惑を持っております。それで訴追の申し立てがあったりなどしたと聞いております。
 そういう問題について、基本的に裁判所の側――まあ裁判に関係がありますから、あまり内容に立ち入ったことは言えないと思いますけれども、こういう問題に対する裁判所側の基本的な態度、学校法人やなにかの問題についてですね、それについてひとつ見解を承りたい。
○矢口最高裁判所長官代理者 ただいま畑委員から御指摘の問題は非常にむずかしい問題でございまして、ことに破産の申し立てをされたものが学校法人ということになってまいりますと、御指摘のように教育の問題と、破産というものがあくまで債権者の債権の回収ということを公平に行なうという観点から設けられた制度でございまして、あくまで経済的な債権者の平等と申しますか、公平ということを主眼としてそういった結末をつけるということの手続でございますので、学校のように過去にも歴史を持ち、また現在も多数の学生、生徒をかかえ、日々教育をしていかなければならない、将来にわたっても新たな生徒を募集し、これを学園に迎えなければいけないというような組織にこれを適用いたします場合には、非常に問題が多いわけでございます。
 裁判所といたしましては、そういった点は、単に一般の経済団体でございまする株式会社等が債務超過あるいは支払い不能になったといったような場合と異なって、格段の諸般の配慮をなすべきものであるということは一般論として御指摘のとおりでございますが、具体的な事件ということになりますと、本件御指摘の点は現在福岡の地方裁判所に現に係属しておる事件でございますので、この事件についてとかくの意見を私どものほうで述べるということは遠慮さしていただきたいとは思いますが、一般論といたしましては、御指摘のように、各般の配慮をなして慎重な態度をとるべきであるということは考えておるわけでございます。
○畑委員 そこで、先ほど申し上げましたように、いろいろ疑心暗鬼というか、えらい長い対立でありますからいろいろなことを言うておるわけでありますけれども、これは私は旧学校側といいますか、旧理事側の話を聞いてはおりますが、一々これを申し上げたり、あるいはまたそれに対する意見を求めたりなどはいたさないつもりでありますけれども、どうも本件の処理を見まするとやはりこんがらかることが相当あったと思っておるわけです。大体一番最初に不渡りが出た、その不渡り自体について理事の間において若干の対立があった、そういう関係もあって、その不渡りになった関係が、資金がほかにあったのに、資金をその理事が別のところに置いておいて、それだから――一千何万円かの不渡りだそうですけれども、それは当然落ちていいはずのものを、それがほかに隠されておったということで、まず片方がトリックだ、こう言うわけです。それが最初の始まりで、それからあといろいろ任意の債権者の集会となり、そのうちにまた今度は一方のほうから、いまの執行部、すなわち理事者側に対する職務執行停止の仮処分が出て、それにかわりの代行者が裁判所から選ばれた。その選ばれた代行者がさっきも言ったような裁判官と修習の先生あるいはその教え子だというような関係もあったようだし、そうしているうちに今度は破産になって、破産も結局学校側に言わしむれば、そうした人たちがまた破産申し立てをさせる人にそういう人を選んでさせた、結局破産以外には学校の再建はあり得ないということ、しかも学校の再建というのは結局はやはり学校を継続していく、こういうこと。したがって、それを考えますると、結局強制和議でやること以外にはないわけです。だから破産の宣告と同時に強制和議、それでいくのが当然だと思うのだが、そこでその強制和議をやるについて、和議の当事者として、その理事者としてだれがなるかということの問題で実は紛糾をしておる模様であります。それが非常にいま、最後には根本問題になっておると思うので、この点について、それまでは破産管財人が学長を首切ったり何かした、これは私はできないと思うんですね。破産管財人はそれだけの権能はないはずで、もっぱら破産の目的の範囲内においてだけの選ばれた財団の代理人であって、教育関係の学長を首切ったり何かすることはできないはずだ。それをいろいろやったからなお紛糾しちゃったわけで、最後には結局仮理事の選任ということになって今日に及んでおる。その仮理事の選任の問題が法律的に相当問題があると私は思う。その点について私はお聞きしたい。
 民法の五十六条、それと私立学校法がこれを受けておりますが、理事が欠けたる場合には、紛糾のおそれがあると認めたときには、普通の場合には裁判所が請求あるいは申し立てによって仮理事を選任するということになっている。それを私立学校法が受けて、それが準用され、ただし裁判所でなくて、所轄庁が利害関係人の申し立てあるいは職権によって仮理事を任命するというふうに、私立学校法ではなっておるわけです。しかし、実は私はこの場合、この規定というものは普通の状態における場合のことではないか、破産によって民法の関係の委任関係が終了した、破産になったんだからその委任を受けておる人は委任関係は終了するんだという民法の規定でございますが、それによって欠けたということの場合ではないのではないかと思う。その証拠は、破産法上の強制和議の提供その他にもいろいろ出てきます。和議の提供者が理事であることは明らかです。そのときの理事は一体どの理事だということになれば、破産者自身が自然人の場合においては自然人そのものですから、私は法人の場合においては、破産宣告当時の理事だと思う。その意味では理事は全然資格を喪失したんではなくて、ある意味においては存続しているんだ、そして強制和議が成立をすれば、そしてそれが認可をされれば、認可をされたときに初めてまたその理事が理事として継続する、こういうことだと思うのです。特に学校法人においては、私はそうだと思う。ほかの場合ならば、人数が足りないということで、とりあえず裁判所に願って仮理事を選任してもらう、そして法定の理事会を開いてその理事会がやる、そしてあとの本理事というのは、結局会社の場合でありますれば、株主総会を招集してそれを選任するのです。社団法人の場合でも大体そうでしょう。ところが、財団法人の場合、しかも学校法人の場合につきましては、その選ぶ人がいないわけですね。あるいは仮理事が本理事を選ぶんだという説をなす人もありますけれども、私はそうじゃないと思う。したがって、この民法五十六条の規定、それと私立学校法の規定、これは私は、平常の場合の問題であって、破産の場合の問題ではない、かように基本的に考えております。それをこのたび文部省では利害関係人の申し立てに従って仮理事の選任をした。ここでさらに紛糾をしているというふうに私は思うのです。この辺は裁判所はどうお考えでしょう。まず裁判所に伺いたい。どういう解釈ですか。
○矢口最高裁判所長官代理者 一般の株式会社等の場合において、会社が破産をいたしました場合に、理事者である取締役が当然その職務を失うものであるか、あるいはいわゆる破産によってその身分、能力を奪われた――財産の管理、身分の範囲内においてのみその権限を失い、その他の範囲、いわゆる基本的組織関係の範囲においてはなお理事として資格を存続し得るかどうかということは、一般の学説上非常に問題のあるところでございます。畑委員は後者のお考えをお持ちのようでございますが、そういった考えと、いやそうではないという考えは、学説といたしましてはいずれも有力に唱えられておるというふうに私ども承知いたしております。ただ裁判所の判例といたしましては、昭和四十三年三月十五日に最高裁が傍論ではございますけれども、民法六百五十三条の規定から、いわゆる株式会社と取締役の間は委任の規定によるのだ、それから民法百十一条にまいりまして、委任者あるいは受任者が破産した場合は、委任は終了するという規定がございます。そういう規定の関係で、一応会社が破産した場合は、取締役は当然その権限を失うということを、傍論としてではございますが、述べておるわけでございます。で、この具体的な事件におきましても、福岡の地方裁判所はそういう立場をとったのではないかというふうに推測されるわけでございます。私、担当の裁判官に対しまして、その点の明確な御意見をお聞きしたわけでもございませんので、あくまで私どもが報告を受けました範囲内での推測でございますが、畑委員と見解を異にする見解を採用したのではないか、このように考えます。
○畑委員 実は裁判所は、別にこれに対してまだ判断をしてはいないように私は思います、そういう場合がまだ出てきませんので。ただ法務省のほうに意見を言ってもらいたい、登記関係がありますから。法務省のほうで登記関係での回答文書あるいは通達、そういうものにいまの判例が引用されておるということだ。その辺、法務省のほうはどうお考えですか。
○新谷説明員 先ほどの問題は、裁判所の民事局長がお答えしたのと同じ考えを持っております。行政当局といたしましては、最高裁判所におきまして、ただいま御説明のありましたように、破産宣告と同時に取締役、言いかえれば法人の理事者でございますが、この地位を当然に失うということになりますれば、その前提に立って行政事務を取り扱う必要があろう、かように考えまして、御指摘の昭和四十四年の十一月の通達を出したわけでございます。結論的には、裁判所の見解と同じである、かように申し上げたいと思います。
○畑委員 まあ学説もいろいろある、また判例につきましても逆の判例が前にあった、そう私は記憶しておるのです。そうすると、あれでしょうかね、いままでずっと、本件の場合におきましても、最近までは、いままでの理事を、理事としての資格はないとしても、文書の取り上げその他、裁判所でもそういうあれで扱っておるのですね。いままでずっと扱っておるのです。そういう事実は、それではどうするのだということになるのですね。いままでそれで扱ってきておるわけです。その問題が、もしそうでないという見解、いまのような見解をとれば、裁判所は相手にしなくていいのだが、相手にしておるのですね。そういった矛盾も実はあるわけです。そこで今度は法務省の通達がもとで、それにヒントを得たか、管財人側というか、監査委員というか、それが文部省のほうに仮理事の申請を出した。それで文部省が選任をしたということになっておる。この点、文部省は来ておりますか。
○高橋委員長 見えております。
○畑委員 文部省、ひとつこのことも含めて、いきさつ等についてお聞きしたいと思います。
○岩間説明員 ただいままでのいきさつにつきましては、いま先生からもいろいろお述べになりましたとおりでございまして、たいへん不幸なことでございますが、二年半ばかり前に福岡電波学園が破産の宣告を受けました。それ以来、こういうごたごたが続いているわけでございます。
 学校の紛争を見てまいりますと、先生もご記憶だと思いますが、名城大学の場合、それから、最近解決しました学校もございますけれども、十数年、まだ訴訟が続いておるところがございまして、理事者の間でもいろいろごたごたがございますと、感情的なことがあって、非常に問題が解決しにくくなるという点は、先ほども御指摘があったとおりでございます。私どももそういうふうに考えているわけでございます。ただ、私どもとしましては、そういうような理事者間のいろいろな感情的なもつれというものについて、一々両方の意見を聞いておりますと、どうも実際にはわからなくなってしまうということでございまして、文部省といたしましては、特に福岡電波学園の問題につきましては、非常にりっぱな大学でございまして、この破産という不幸な事態を出しました場合には、これは将来、大いに伸びていく可能性があるということでございますし、また現在、多数の教職員、学生をかかえておるわけでございまして、そういう意味から申しましてこういうふうな事態を一日も早く脱するということに焦点をしぼりまして進めていく必要があるのではないかということでございます。
 ただいまの仮理事の選任につきましては、これは法務省のほうにもいろいろ御意見を承りまして、私どものほうで仮理事の選任をしたわけでございますけれども、私どもとしましては、実は一年以上も前に管財人のほうから仮理事の選任の申し出がございまして、ずいぶん長い間、それを放置しておったというふうなことでございますけれども、これは、仮理事を形式的に選任をいたしましても、実質的にそういうふうな情勢になければ問題は解決しないというふうな文部省的な判断でもって、それをおくらしてきたというふうな事情がございます。たまたま、先ほど先生からちょっとお話がございまして、なおごたごたが続いておるというふうなことでございまして、実態は多少そういう点はあるかと思いますけれども、大勢といたしましては、債権者もあるいは学校の教職員もそれから学生も、その大部分が紛争の収拾というものを非常に熱望していまして、この機会に仮理事の選任をして、問題の解決を一歩進めるということが学園再建のめどになるんじゃないか。あるいはこれが成功しない場合もあるかもしれませんけれども、さりとて、こういう機会をのがしては、もう再建するめどというのはかなりあとにならなければ発見できないんじゃないかというふうな判断に基づいて、仮理事の選任ということに踏み切ったわけでございます。
 法律的な問題は、ただいま法務省、裁判所等からお話をされたとおりでございますが、実態としては、私どもはそういうふうな情勢判断をいたしまして、ここでひとつ問題を進めてみようということで、仮理事の選任に踏み切りました。今後の推移をなおしばらく見守っているというふうな実態でございます。
○畑委員 各当局にお尋ねいたしたいんですが、結局、一番基本的な問題は、最近の転機となったものは、いま言った仮理事の選任の問題だと思う。それだけにまた非常に紛糾していると私は思う。ともかく、営々としてあれだけの学校にした人は、やはり何といっても理事長であり、学長である桑原さんという人である。それはいろいろ人によって差がある。あるいは独裁的だという批評もあるかもしらぬ。あるいはまた、仕事を広げ過ぎて、設備の過剰投資になっちゃって、そうしてあっちこっち借金をつくっちゃったというようなことがもとだと思うのですが、しかしながら、やはり私立学園というものはそれだけの特色がなければならぬ。それというのは、やはり創立者あるいは理事長、学長、こういった人たちの努力の結果、そうした一種の特殊のカラーを持っているんだと思うのです。そういうことであるから、これを単純に経済問題として、破産の申し立てがあったからこれを何とか解決しなくてはならぬ、こういう形でやるといかぬ。同時にまた、こういう問題は、旧理事の手によって強制和議で解決するという方向と、それから、どうしても言うことを聞かぬから、新しい理事を選任するにはどうしたらいいかでずいぶん苦心して、いまのやり方をやったのでしょうが、そうなるとますます、いままでの旧理事長の努力ですか、これを一方的に踏みにじるということになるだけに、非常に片一方は追い込まれる、こういうことであろうと私は思うのであります。
 そういう点で、私は、破産と私立学校、問題は非常に深刻で、むしろ私立学校等につきましては、破産法を別にして特例なんかを設けて、これは立法論でありますけれども、これを特別な法規を私立学校についてだけはつくる必要があるんじゃないか、こういうふうに思う。それでなければ、こういう問題は次々と起こると思います。そうして長いこと紛糾する。一体学園かどうか区別がつかなくなってしまう。学園だけにかえって深刻だ、父兄が、債権者が。この問題などは、無担保債権者は大体、旧学校長、旧理事長を支持しているようですね。それから父兄も、やはりどうしてもそうなるんでしょうか、支持しておる。学校の先生も、若干のあれはあるけれども、破産管財人に命ぜられた人は一部おりますけれども、そうでない人たちは、特に首切られたような関係もあって、最近ではほとんど旧理事側についておる、こういう話も聞いておる。そういう状況ですから、そういう状況であるところへ、さらに首をすげかえればいいんだという形でもっていく。それがたまたま、裁判所あるいは法務省の見解、それに便乗したと言っちゃ語弊があるかもしらぬけれども、それによって文部省のほうで仮理事の選任をしたということが、法規の解釈とからんで、私はいまでも先ほど申し上げましたような考え方に立っておりますから、そういうことでますます事態を深刻化させた、かように思うのであります。その点、むしろ旧理事のほうの手によって強制和議をさせるという――一度やったやつが失敗した。しかし、その方向のほうが私はよかったのではないか。いままで営々として築き上げた旧理事関係の人たちは非常な未練があると思いますね。だから、それだけに抵抗する。おまえはもう財産がない、おまえは委任関係が終了したんだ、破産になったんだからおまえやめろ、ということでは済まされない。特に、子供たちがいる、父兄もいるということだと思う。
 そういう点で、私はやはり先ほど言ったとおり、破産法の中に別にそういうものに対する特別規定を何か考えておく必要はないかというような実は問題提起を考えておるのでありますけれども、ともかくこうした問題について、教育とそういった破産という私法の問題、それとの調和――文部省もいろいろ苦労したと思います。いろいろ陳情に行った人たちも多いわけです。政治家その他が相当入り乱れている。旧学校側にはあまりいないようですけれども、管財人側というか、そちらのほうには相当おって、だいぶ各省に圧力を加えたというような様子も見えないでもない。そうなると、やはり追い込まれますね。いろいろ問題がさらに紛糾する。こう考えますので、この辺私は何とかうまく解決をする方法はないか。それは片方をぶちのめすだけじゃ、とても問題は解決しない、かように思うのです。初めからこの問題はどうも問題が多かったようですね。裁判官の問題もこれあり、破産管財人の問題もこれあり、政治家がまつわっている、財閥がいろいろ関係しておる、こういうような関係もあって、学校がいい学校だけに施設がなかなかいい、それはいまの旧理事長、学長の私は功績だと思うが、同時にまた、借金もたくさんつくったことは失敗でもあった。そこへつけ込まれて学校乗っ取りと言われてもしかたがないような、やはり動きが相当あった。それに各省が力をかしたということになると、私はぐあいが悪いと思うのですね。私はその点を実は心配いたしておる。やっぱり学校は学校で、できるだけいままで営々として築き上げた人たちの手腕というか、そういうものを認めて功績を認めて、そこでうまく解決する方法でいかないとぐあいが悪いのじゃないかというふうに痛切に実はこの事件を聞いて考えたのであります。
 きょうは少し質問を申し上げたのでありますが、時間が来たようでありますので、私の意を十分尽くさないのでありますが、一応最後に考え方を申し述べて、その点については特に皆さんちょっとお答え願えますか。一言だけでけっこうですから、御見解を述べてください。それで終わります。
○新谷説明員 法人の財産を一般的に換価処分をし、債権者に満足させるという破産法上の問題と、学校教育というものがからみ合ってまいりますために、この問題の解決はなかなかむずかしい問題があろうかと思うわけであります。文部省におかれましても、鋭意円満に解決できるようにという期待のもとに、いろいろの努力をなさっているようでありますので、この十分な解決がはかられることを、私どもも陰ながら期待をいたしておるわけであります。
 法律的な制度の問題といたしましては、学校法人についての破産法の適用問題につきましては、確かにいま仰せのような問題もあろうかと思います。しかし、学校法人といえども破産手続によって財産を整理清算する必要のある場合もあるわけでございます。したがいまして、一般的に申しまして破産法の適用を排除するということは、これは行き過ぎであろうかと思うわけであります。しかし、学校法人あるいは学校教育という観点から、文部省のほうであるいは特別の何かほかの方法を検討になるということもあるいは考えられるのではあるまいかという気はいたします。しかし、これは法務省として私のほうから申し上げるのは、いささか行き過ぎだろうと思いますので、私どもとしてはこの程度の答えにとどめさせていただきます。
○矢口最高裁判所長官代理者 この種事案の処理のしかたにつきましては、十分の配慮をいたしましても、なお配慮が十分過ぎるということはないものでございます。具体的なこの事件は、もちろん担当の裁判官は、鋭意この点を考慮して努力いたしておると存じますが、一般的な問題といたしましても、今後会同等の機会を通じまして、なお一そう関係方面とも十分の協力を行ない、なおかつ教育ということの重要性というものをいささかもそこなうことがないように運用していくよう格段の配慮をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
○岩間説明員 ただいま法務省の局長からもお話がございましたように、あるいは先生から御示唆がございましたように、経済問題によりまして学校法人が危機に立った場合に、会社の場合でございますと会社更生法というふうなものがございますが、それに対する事後の措置が不十分であるということは御指摘のとおりでございます。これにつきましては、今後立法的な措置も含めましていろいろ検討してみたいというふうに考えておる次第でございます。ただその場合、こういうふうな場合は先生も先ほど申されましたようにいままで一件でございまして、今後こういうことが起こらないことを私どもは非常に強く希望しておるわけでございますが、こういうふうなことがおいおい出てくる可能性が強まるということになりました場合には、当然そういう立法的な措置も考えていかなければいけないのではないかということでございます。
 それから、先生の桑原さんに対するいろいろな御判断、私もそれに対しましては同感でございます。創設者というのは非常に努力をして、しかもりっぱな大学をつくったという点、その点は非常に高く評価しなければならぬと思います。反面、破産というふうなまれに見る事態に持っていったということにつきましては、これは本人の責任と申しますか、そういう点もあろうと思います。学校紛争を見まして一般的に考えられますことは、学校紛争の渦中におる者が手を引かないと、どうも学校紛争は一般的になかなか解決しにくいというようなことがございます。そういう意味から申しまして、私どもは学校に対する愛着というもの、それからいままでの功績というもの、そういうものは十分認めるのにやぶさかではございませんけれども、しかし、もう少し高い立場、大きな立場から一時手を引いていただいて学校の再建をはかるということについて度量を示していただくということも、これは学校の再建ということには非常に大きな役割りを果たすのではないかというふうな感じがしているわけでございます。
 いろいろ判断をいたしまして、これしかいまのところ方法がない。また、競売の申し立てというふうな緊急の事態がございまして、そういう意味から申しまして、私どもも今回の措置をとったわけでございますが、ただいま先生からもいろいろ御指摘いただきましたような点を十分考えながら今後対処していきたいというふうに考えております。
○畑委員 各関係当局のお話を聞きましたのですが、本件の場合につきましても、実は理事長あるいは学長の桑原さんという人はどういう人かよく詳しくは知りませんけれども、個人破産にかけられているんですね。それでその学校の財産がその人の名前で買ってあるものがあったらしいのですが、実際はまる裸なんです。しかも破産になってからもうすでに二年、その前が一年、合計三年、無一物ですね。普通の破産の場合なんかには、例の給与でその人を食わしていく制度もありますね。給与を出す場合も自然人の場合なんかありますが、しかし、この場合には個人破産までかけられている。これはやはり意図的にやられたに違いないのであります。とうとういままで住みなれた家までこの間追い出された、こういうように聞いております。あまりにもいままでのあれと違い過ぎるものだから、最後まで追い詰められてきゅうきゅうという目にあうということで、同情する人も相当おるわけです。それだけに相当社会問題になっておるわけであります。
 したがって、これをただ押しつぶしてしまうというやり方、強い権力によってやってしまうというようなやり方は、私は好ましくない。この辺をひとつ文部省で十分考えないといけない。そうでないと、私学への文部省の不当介入だ、最近はそういう心情すら持っておるようでありますから、よほどその辺を十分に考慮して、前学長あるいは前理事長等、そういった人たちが何とか満足できるように――満足はできませんでしょうが、どうやら何とかできるような形の解決を、その顔を立てる解決をしないとりっぱな解決じゃない。こう一方的に法によってやってしまう、これは道じゃないだろうと思う。そのことだけつけ加えまして、今後の善処をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
○高橋委員長 中谷鉄也君。
○中谷委員 昭和四十四年度の犯罪白書は、「犯罪の動向と犯罪者処遇をめぐる諸問題」という副題がついておりまして、例年のごとく公務員犯罪についての一項を設けているわけでありますが、その犯罪白書の記載によりますと、特に公務員の職権乱用の罪についての検察庁の受理件数が最近激増していることを記載しております。そういう点から一つの具体的な事件ではありますが、お尋ねと、そうして要望をしておきたいと考えます。
 大臣が御出席いただいておりますので、簡単にできごとのあらましを最初に申し上げますが、先月の二十八日、和歌山地方検察庁の検察官の指揮を受けた検察事務官が、午後五時過ぎに嶋紀海夫という確定判決を受けました、収監の対象となった人を収監するという職務の執行をされた。その後、和歌山北署にその収監場所が一応指定されて、同人が翌二十九日の午前三時すでに死亡して、和歌山県立医科大学においては、その医学的な死亡の原因は脳内出血、脳挫傷ということで死亡している、こういうできごとであります。
 そこで、まず刑事局長にお尋ねをいたしたいと思いますが、収監にあたって何らかのトラブルがあって、刑事被告人あるいは確定判決を受けた人が死亡するというふうなできごとが最近法務省においてはありましたかどうか、七月二十八日嶋紀海夫以外にそういうことが続発しているのでしょうか、それとも毎年何件かそういうできごとがあることなのか、それともこれは希有なできごとなのか、この点をまず最初に局長から御答弁いただきたい。
○辻説明員 ただいま御質問のございました、検察庁の職員が被告人の収監に際しまして、刑事的な事件が起きたというような事例は、私の承知いたしております限り、ただいま御指摘の七月二十八日の和歌山のケースのほかには、少なくとも最近数年間はない、少なくとも報告は受けてないというふうに考えております。
○中谷委員 なるべく主観を交えないで質問をいたしたいと思います。
 嶋紀海夫というのは、組員、前科何犯か持っている人。当員が数回弁護したことがあります。ただ、だからといって――私が質問をしなければならないと思ったのは、人の命の尊厳、そうして公務員の職務の適正、そういうような問題が、私はやはり重い問題だと考えるわけであります。
 そこで、問題を確定さしておきたいと思いますけれども、和歌山県立医科大学の法医の主任教授である永野教授の解剖の結果、後頭部に三センチぐらいの円形の血腫があり、頭蓋骨に亀裂が入っていた。医学的な死因でありますけれども、死因は、平面のかたい物体で強く打った、強打による脳挫傷と脳実質内出血という解剖結果で、この医学的死因については全然問題にはなっていない、そういうことで確定していると思いますが、その点、刑事局長さん、いかがでございましょう。
○辻説明員 ただいま御指摘の嶋紀海夫さんの死亡にかかる事件につきましては、この嶋紀海夫さんの実父の方から、和歌山地方検察庁の検察事務官を、特別公務員暴行陵虐罪ということで告訴がなされております。また、この不幸な事故がございました直後に、和歌山地方検察庁におきましては、この告訴とは別に、和歌山地方検察庁の検事が事件を認知したということで、被疑者不詳に対する傷害致死事件ということで事件を立件し捜査に当たっておるわけでございます。この二つの事件は結局同じ事件になると思うのでございますが、これについて現在和歌山地方検察庁におきましては鋭意捜査中でございます。
 ただいま私、その捜査の結果をこの席で申し上げる段階に達していないのでございますが、私どもが現在まで報告を受けております限りにおきまして、この嶋紀海夫さんの死因は、和歌山県立医大の法医学教室の解剖結果によれば、脳内出血に伴う脳挫傷、この傷が起きた器と申しますか成傷器は、表面に微細な凹凸を有する硬固な平面状鈍体による強い打撲作用によって生じたものであろう、法医学教室の解剖結果はこのようになっていると承知をいたしております。
○中谷委員 刑事局長に、捜査中の事件でありますので、その点についての問題を避けながらお尋ねをいたしたいと思いますが、新聞の報道によると、私の見るところ、検察庁のほうにも若干の混乱があったように思われます。検事正の談話は次のようになっております。「ドアに体当たりしたり屋根から飛び降りたなどのさい頭を打ったのではないか、」これが談話の趣旨であります。なお別の新聞報道によりますと、検察事務官が灰皿でなぐったという事実はないという否定的な談話を発表しておられます。
 そこで、鋭意捜査をしておられるということでありますが、死因は、先ほど局長のほうからも御答弁がありましたように、平面のかたい物体の強打による脳挫傷と脳実質内出血ということになっておりますが、要するに収監をいやがった嶋が自動車の荷台の上に乗って走り去ろうとした、その後その荷台から検察事務官及び司法警察員及び司法巡査などが、遺族の訴えによれば、荷台から、手錠とそれから足にも捕縄をかけられた状態の中でアスファルトの舗装した路上にほうり出された際に後頭部を強打したというのが告訴の趣旨だと思われる。この点については、だから結局ありとあらゆる面について捜査をしておられるということになるのかどうか。たとえば、灰皿でなぐった事実があるのかないのかとか、ドアに当たったのじゃないかとか、あるいはまた屋根から落ちたのじゃないかというふうなことで捜査をしておられるのか。それとも場所がほぼ確定をしてまいりまして――地元ではもうほぼ確定をしている。要するに自動車の荷台からほうり投げられたのかどうか、これはもうすでに捜査の焦点、中心課題になっていると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
○辻説明員 実は本件、先ほど来申し上げておりますように、現在刑事事件として特別に、和歌山地方検察庁は部内職員に関する事件でもございますので、次席検事を主任検事といたしまして現在鋭意捜査中でございます。もちろん捜査の常道といたしまして、いろいろな考え得る場合、場合を考えまして、あらゆる面から捜査をいたしておることと存じておるわけでございます。現在のところ、やはりこの解剖の結果というものが死因に閲する一番大きい資料でございますから、おのずからその点を中心に捜査をしておるとは思いますけれども、あえてそれに限らず、各般の面から捜査をしておると考えております。
○中谷委員 それじゃ、あと大臣にも要望いたしたいと思いますが、捜査の公正ということについて、これは和歌山検察庁の検察事務官について傷害致死事件あるいは刑法百九十五条あるいは百九十六条の事件が成立するかどうかという事案であります。そういうことを遺族は主張いたしていろわけであります。
 そうすると、本件についての捜査の対象となっている人、要するに被疑者とされておる検察事務官、司法警察員、司法巡査の数はこの機会に御答弁いただけるかどうか、それが一点であります。
 いま一点は、捜査の公正ということについて、次の二点だけひとつ明確な御答弁をいただきたいと思うのです。
 一つは、次席検事が主任となって捜査をしておられるということでありますけれども、むしろ本件のような場合については、大阪高検において事件を捜査さるべきではなかろうか。部内事件であるので、検察官の捜査についての不信頼を云々するわけではありませんけれども、そのことが結局検察自体としても捜査の公正を確保することにならないのかどうか、これが一点であります。
 いま一点は、あくまで本件については捜査の原則、常道、ルールに従って捜査しておられるということでありますけれども、傷害致死事件の疑いということになれば、事案は強制捜査されるべきものが本来われわれの常識であります。しかし、捜査は任意捜査が原則だという原則もある。だから、捜査の内部、詳細にわたらない、答弁できる範囲において、やはり任意捜査が行なわれておることの合理的な理由について、私はこの機会に御答弁をしておいていただきたいと思うのであります。本来常識的にいえば強制捜査さるべき事案である。それが検察事務官であるから、司法警察員であるから、司法巡査であるから、傷害致死の疑いがあったとしても任意捜査であるということになれば、これは検察の信頼をつなぐ道にならないだろうと思うわけであります。その点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
○辻説明員 ただいま御質問の第一点でございますが、被疑者の数を何名にしておるかという点でございます。この点につきましては、嶋さんのほうからの告訴状は、和歌山地方検察庁の職員一名をあげられまして、そのほか数名という、和歌山検察庁の検察事務官外数名ということになっております。
 それから、先ほど私が申し上げました傷害致死事件として別途に検事認知として立件したということについては、この嶋さんがなくなられましたのが七月二十九日の早暁でございますが、同日に直ちに検事正といたしましてはその収監の事情というようなものは全く知らない状況におきまして、ともかく警察の留置場におきまして収監された者が原因不明のことで死んだという事態を重視いたしまして、この被疑者がどういう範囲のものであるかどうかということは全然知らない状況におきまして、ともかくこれを刑事事件として調べようという強い決意のもとに立件をしたものであろうと思うのであります。その後おいおい事情がわかってまいりまして、結局この事案というものは収監に際して起きたものであろうと思われる蓋然性が強くなってまいったわけであります。現在は収監に関して起きたということに中心を置きまして、関係者全員をそれぞれ調べておるという段階でございまして、被疑者を何名ということに特定しておるわけではございません。
 それから第二点は、この種の検察庁職員にかかわる事件については、本件の場合は次席検事が特別に主任検事になっておりますが、これでは検察の公正が保たれないのではないか、むしろ本件の場合は大阪高検の検事が調べるべきではないだろうかという御指摘でございます。この点につきましては、従来検察庁の部内職員にかかわる事件、きわめてまれな場合でございますが、こういう場合には通常その庁の次席検事が特に慎重に調べるということで、むしろ次席検事が主任検事になって調べるのが例が多いわけでございます。まれにはただいま御指摘のように、関係の高等検察庁の検事が特に調べるというケースもないではございませんけれども、やはりその庁の事情に精通しておるという面、あるいは土地の事情に精通しておるというような面、いろいろな点からいきまして、当該庁における最も責任のある検事が調べるという原則で調べておるわけでございまして、この観点から捜査の公正あるいは処理の公正を期しておるというふうに考えておるわけでございます。
 それから第三点の、傷害致死事件となればこれは原則として強制捜査をすべきではないかという御指摘でございます。この傷害致死ということばでございますが、これは私ただいま申し上げましたように、何ら事態が明らかでない状況におきまして、ともかく検事の認知、この嶋さんがなくなったという段階で傷害致死、かような罪名をつけたわけでございまして、傷害致死というものがまず確実になっておって、それから事件を調べていくという場合ではございません。ともかくこの嶋さんの死因というものを解明するという一つの方法といたしまして、傷害致死とその段階において罪名を考えまして立件をいたしたということでございますので、本件の場合に傷害致死というものを前提にして調べておるというわけでも必ずしもないわけでございます。かような意味におきまして、本件の場合に傷害致死であるから強制捜査をすべしということは、必ずしも当てはまらないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
○中谷委員 私のほうから大臣に一点だけ同趣旨の要望をしておきたいと思います。
 捜査の秘密ということ、これは大事なことだと思いますが、そういうことになってまいりますと、答弁等もくつの上からかぐようなことに相なってくるわけでありますが、本件についての、このできごとについての起こった場所というものは和歌山市の町のまん中で、車に乗って逃走したこの確定判決を受けた嶋紀海夫が、赤信号になったために、荷台に乗って、車がとまった。そうして車が何台か交通渋滞を来たしてきたというようなときにパトカーがそれに追いついて、荷台の上に警察官それから検察事務官などが飛び乗って、そこで手錠と足に捕縄をかけて、そうしてその後、遺族の訴えによると、路上にほうり出した。結局ほうり出したという行為が暴行に当たるのではないかということでありますが、問題は目撃者が、これは一般の事件と違いまして、非常に多い事件であります。白昼、結局交通渋滞を来たしておって、何事かといって大ぜいの人が見ているところで行なわれた事案、だからそういうことがなかったという主張もあるでしょうし、またそういうことがあれば目撃者は、私が目撃をしたと言って名乗り出ている人も相当あります。そういうことで事案といたしましては、私がここで根掘り葉掘りあまり局長にお聞きしなくても、捜査が公正に行なわれる限り、事案の真相というものは必ずしも確定をすることが困難な事案ではないわけであります。ただしかし、特に大臣に私御答弁をいただきたいのは、やはり捜査が公正に行なわれるということ、ことに検察事務官の事案、しかもそれがやはり検察の監督責任にも発展をしてくる事案だと私は思います。そういう点で特に大臣のほうから、これは屋上屋を重ねることになるかもしれませんけれども、捜査の公正と厳正な捜査、そうして迅速な捜査ということについての御答弁をいただきたいと思うのであります。
 何べんも申し上げますけれども、前科何犯かある組員であります。しかし、父親の美雄という人の談話が出ておりますけれども、これは私はつくりごとをした談話ではないと思いますが、「悪いことをして世間を騒がせたことはおわびをするが、死ぬような逮捕の仕方をしなくとも……。」というような談話が出ておる。遺族の気持ちとしてはそういうふうに思い込んでいるわけです。あるいはある新聞では、一日も早く収監状が出ているのだから出頭するようにと言っておった、しかし本人は年をとった親に苦労をかけまいと思ったのだろうか、気のやさしい子供だったのにこんな姿になるということは、親としては耐えられない、こういうふうに言っておるわけであります。そういう点についてひとつ大臣から御答弁をいただきたい。
 私、きょうは二十五分程度で質問を終わりたいと申しましたので続けて質問いたします。
 この点についてはひとつ刑事局長のほうから御答弁をいただいて、同時に大臣からも今後の検察行政のあり方として私は御答弁をいただきたいと思うのですが、要するに、たとえば私きょうここに警察官実務提要というものを持ってまいりました。その中にはたとえば逮捕術教範というようなものがあります。要するに検察事務官の仕事というものは検察官と同じように捜査権を持っているといっても、結局、これは非常に雑な言い方でありますけれども、やはり机の上の捜査の仕事が私は多いのではないかと思うのであります。そういう点で、この場合にも警察官が補助者としてついていっているようでありますけれども、本来正当に、そうしてたくみに逮捕をする、収監のための逮捕行為に及ぶというようなことについてなれていない。したがって、トラブルがあったために興奮をした、したがって結局ほうり投げたというような場合だって私はあり得ると思う。そういうことになってまいりますると、本来逮捕する能力のないといいますか、そういうことの技術に習熟していない、そういうふうな人たちということになると、そういうことに習熟していないために、私の見るところ、本件の場合とは言いませんけれども、かえって法に反したような乱暴な行為に及ぶ場合だって私はあり得るだろうと思うのです。検察事務官のこの種の事案は希有の事案だということでありますけれども、収監という行為は検察事務官が検察官の指揮を受けてやっておるようでありますけれども、そういう逮捕等についての訓練等は受けているのかどうか。もしそういうことでないとするならば、私は捜査中でありますから軽々に主観的なことは申し上げないと言いましたけれども、これは目撃者があまりにも多い事案であって、私なりに本件についての見通しはすでに持っているというようなことになってくると、かりにある結果が出た場合には、そういうことについて指導、修練、教育を受けなかったということについては、検察事務官自体もある意味における非常に問題をはらんでいるのではないか。率直にいって、ある意味においてはそういうことの教育を受けなかった点における被害者ではないかということも私は言えるのではないかと思うのです。これらについては今後一体どうされるのか、この点についてひとつお答えをいただきたい。
 いま一つ、これは警察のほうの御答弁をいただいた上で大臣に御答弁いただきたいと思うのですけれども、本人が顔と頭が痛いということを逮捕された直後訴えているわけです。そして医者に見せている。ところが、そのお医者さんというのが、小児科と内科の看板をかけているお医者さんだ。脳内出血で死亡したという結果をとって云々するわけではありませんけれども、結果論から言うなら、当然そういう場合の常識として、頭を打った、それがどういうかっこうで、たとえば手をすべらしたのだとか、本人が飛びおりたのだとか、あるいはある目撃者が語るように、検察事務官と警察官が両手両足を持ってコンクリートのところへほうり投げたんだという、いずれにいたしましても、そういうもので打ったという事実については想像できる状態なんだから、当然専門医に見せておいたならばという、一つの教訓が私はこの場合には残ったと思うのであります。それらの点について、今後どういうふうに指導されるのだろうか。こういうふしあわせなできごとについての大臣からの御答弁をいただきたい。
 まず警察に、お医者さんに見せたといわれるその経過をひとつ御答弁をいただきたい。その場合に、刑事局のほうで、検察庁のほうでも医者に見せたんだという事実があるなら、その経過をひとつまとめて御答弁をいただきたい。
 いま一つは逮捕の問題。そしてやはり本件については私は大臣から人権の擁護という観点とそして捜査の公正という観点。何としても、どんな人であるとしても、人の命が失われている。しかもその関係者は公務員の職務の執行によって失われたんだ、こういうふうに言っているということは、決して私は事は軽々にさるべきではないと思う。こういう点でひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○辻説明員 ただいまの嶋さんの死亡に至るまでの間に、検察庁としてお医者さんに見せたかどうかという点でございますが、現在私どもが報告を受けておりますところによれば、この嶋さんが収監される途中に所要の手続のために検察庁に連行されておるわけでございますが、その際に数回軽い嘔吐をされたので、関係の検察事務官は、直ちにこれを和歌山の警察署のほうに連れていきましたときに、和歌山の北署でございますか、直ちに関係の方に医師の診断を受けさしてくれというふうに依頼をいたしました。そうして警察のほうでこの診断をされたときに、関係の職員が、検察庁の職員も立ち会っておったというふうに聞いておるわけでございまして、検察庁自体としてはお医者さんに見せてはいないわけでございますが、直ちに警察に連絡をした、そしてお医者さんの診断を依頼したという事実でございます。
 それから第二点の、検察事務官と逮捕技術の問題でございますが、御承知のように、令状の執行に当たります職員といたしましては、刑事訴訟法では検察事務官のほかに司法警察職員、場合によっては監獄官吏ということになっておるわけでございます。いずれも令状の執行をするわけでございますが、実際上の運用といたしましては、先ほど中谷委員の御指摘のように、検察事務官の性格ともからみまして、現在検察庁におきましては、おおむね、たいへん相手方が物理的な力を行使してくるというようなことが予想されます場合には、むしろ検察官のほうから司法警察職員にこの執行をお願いするという形をとっております。検察事務官が検事の指揮を受けて執行いたしますのは、物理的な抵抗とかそういうものがおおむね予想されないという事案の場合に検察事務官がやっておるというように、大まかにいいまして区分をして、この執行事務に従事をいたしておると思うのでございます。検察事務官そのものといたしましては、大きな検察庁におきましては逮捕術の修練ということも、警察にお願いして、これはたいしたものではございませんが、講習というようなこともやっておる庁もあります。和歌山地検の場合には、そういう講習を具体的にやったということはいままで報告に接しておりませんから、おそらくやっていないだろうと思いますけれども、これは各庁によりまして具体的に警察にお願いして逮捕術を修練しておるという事例もあるわけでございます。いずれにいたしましても、検察事務官はその性格にかんがみまして、大体物理的抵抗の予想されない場合に令状の執行に当たっておるというのが現状でございます。
○田村説明員 警察におきまして医者に見せた経緯について申し上げます。
 七月二十八日の六時ごろ、和歌山地検から和歌山北署へ留置の依頼がございまして、七時ごろ護送をしてまいったのでございます。そこで和歌山北署におきましては、収監状をよく見まして、その際、この護送してきた者は逃亡のおそれがあることと、頭部を打っておる模様で、吐くかもしれない、状況によっては医者に見せて差しつかえがない。これは警察の身柄でございませんので、独断で警察が措置するということはいたしがたいので、そういうふうな状況によっては医者に見せることは差しつかえないというふうなことになったというふうに思われますが、そういうふうなこ!で引き継ぎを受けまして、それから所持品の預かりその他の若干の手続がございまして、留置場のほうに入れたわけでございますが、入房直後若干嘔吐をいたし、すぐ横になりましたので、直ちに担当者は刑事課長に報告をしまして、地検の身柄でございますので、地検に連絡すると同時に、七時十五分ごろに医者の往診を求めたのでございます。
 それで、このお医者さんは、先ほど中谷先生の御指摘では内科、小児科の看板をかけておるお医者さんだというように言われましたが、そのとおりでございまして、ただ本人は大学では内科を専攻した医者であるというふうに聞いておりますけれども、当日非常に込んでおりましたが、急いで来てもらうようにいろいろと催促をいたしまして、八時半ごろに医師が署に参りました。その前に、八時過ぎに地検からも検察事務官の方が来て、この診察に立ち会ったわけでございます。それで医師の診察の結果は、このまま眠っておればだいじょうぶである。当時、普通に眠っておったそうでございます。頭を打っておるようだが、眠っておればだいじょうぶである。ひとつシャツを脱がして頭を冷やすようにということで、注射を打って帰っていった。ここで医師の指示どおりシャツを脱がせ、頭部を冷やすという措置をとったわけでございます。
 その後、平静に眠っておったわけでございますけれども、二十九日の二時過ぎに、高いいびきをかいて、異常ないびき声がありましたので、状況をよく見ますと、どうも呼吸も若干乱れておるような様子でございますので、直ちに当直主任から地検にも連絡をし、また先ほどの医師にも連絡をいたしまして、車で医者を迎えに行きまして、二時五十分ごろに診察を受けたわけでございます。それで、これは危篤状況なのですぐ入院をさせろということで、消防署の救急車の出動をお願いをいたしまして、三時八分に署を出発して二十分ごろに和歌山医大に到着をいたしたのでありますが、二十五分ごろ同病院の医者が診察をしようとしたときはすでに死亡をいたしておった、こういうふうな経過になっておるのでございます。
 先ほど御指摘がございましたように、結果的に見ますと、当時直ちに脳外科の専門医等に見せておくという措置をとっておけばより万全な措置であったろうということは、結果的に見て申されるかと思いますが、まずこういうふうな場合に警察としてとるべき第一の措置としては、内科のお医者さんであれ、とにかく専門家である医師の診察を受けさせ、その指示に従って措置をとる。その場合に、これはかくかくの事情で直ちに大学病院ということであればおそらくそういう措置をとっておったろうと思いますけれども、とりあえず第一には医師の診断を受けてその指示に従うということが普通の措置だろうと思います。ただいまの御指摘にもございましたように、今後とも特に留置人の健康問題については慎重に取り扱いまして、異常があるというような場合には直ちに、できるだけすみやかに医師の診察を受けさせる。その場合に、今回の場合のように頭部を打った疑いがあるというような特別な場合には、警察側においてもその状況を医師に話しすることはもちろん、その場合に何らか医師に進言と申しますか、そういうことがし得るような状況がわかっておりますればそういうふうな進言をする、そういう指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○小林国務大臣 あらゆる場合において人命を尊重することはもう当然なことでございまして、御趣旨のように運ばなければならぬ、こういうふうに考えます。
 また、この事件は非常に遺憾な事件でございまして、関係者が部内者である、こういうことのために、とかく世間から仲間をかばう、こういうふうな目で見られがちな事件である、かように思いますから、さようなことのないように私も十分注意をして、公正であるように、こういうことを私は部内にも注意を促し、この事件の捜査については私も続いて公正であるように十分な関心を持ってまいりたい、かように考えております。
○中谷委員 じゃ、私は質問を終わりますが、刑事局長に一点だけ申し上げておきたいと思いますが、要するに遺族が言っているのは、悪いことをしたのは全く子供が悪いのだけれども、死ぬような逮捕のしかたをしなくてもよかったじゃないか、こういうふうに言っているわけです。たとえば、この私の引用しております条文が当たるかどうかわかりませんけれども、「犯罪捜査規範」の百二十七条には「戒具の使用」という条文がございますが、それによりますと、逮捕した被疑者が逃走するようなおそれがある場合において、必要があるときには手錠を施さなければならないとか、しかも手錠なんかはめた場合には過酷にわたらないように注意するとともに、つとめて大ぜいの人の目に触れないようにしてやらなければならない、こういうふうに書いてあるわけであります。要するに、自動車の荷台の上で、大ぜいの人の見ているところで、手錠と足に捕縄をかけて、そうして地上から一・二メートルということで、自動車の高さといっておりますけれども、一・二メートルといいましても、自動車のまわりにはボデーがあるわけですから、荷台の囲いがあるわけですから、二メートル以上本人を高く差し上げて、そうして路上へほうり出したというふうに、目撃者のうちで語る人がいるわけであります。これは、そうだとすると、全く残酷だと思います。私、その検察事務官をよく知っておりますけれども、もしそういう行為が目撃者の語るとおりであるとすれば、刑法百九十六条、公務員が暴行によって死に至らしめた場合に当たるとなっても私はやむを得ないと思う。かりに地元の検察庁のほうで、一部でいわれているように、落としたんだ、あるいはまた、本人が自分で飛びおりたんだというふうなことを−最近はそういうことを言う人は目撃者の関係でほとんどおらなくなりましたけれども、だとしましても、手錠をはめられ、足に捕縄がかかっておる全く無抵抗の状態、抵抗し得ない状態、そんな者がとにかくまっさかさまに落ちていったということになれば、ただごとでない結果が生ずるだろう。要するに、手足が自由であってこそ、人間、本能的に自分のからだを防ぐことができますけれども、そういうふうな状態、抵抗できないといいますか防げない状態で、手足のないかっこうで落ちていっているわけですから、頭を強打するというふうなことは、これはもうあたりまえのことなんです。そういうふうな場合に、本人が頭が痛いと言っておるから警察に連絡して医者にかけてやれというふうなことの、私はやはり、人権感覚の問題点というのはかなりあると思う。私は、やはり収監にあたっての行為、ふなれという点もあったけれども、かえっていきり立ってこういう行為に及んだのも、基本にあるのは人権感覚の欠如ということにあるだろうと思うのです。捜査もほぼそういう一点に、私たちの見るところ、しぼられてきたようでありますけれども、そういう点についても、ひとつあらためて検察内部における人権感覚というものが1私は先ほど犯罪白書を引用させていただきましたけれども、無理な告訴もあるでありましょうけれども、特別公務員に対する告訴、告発が激増してきておるということとの関連において、私は私自身も若干関係し、また私がかねてから知り合いの人間の、もう死んだ人間でありますけれども、問題を取り上げたわけであります。そういう点で、捜査の公正ということと同時に、あらためて検察内部の人権感覚というものを喚起をしてもらうという観点で捜査をしていただきたい。この点についてひとつ御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
○辻説明員 本件の捜査につきましては、厳正、公正にその捜査を尽くしていきますよう、私どもの立場におきましても、検察に対して十分連絡をさせていきたいと考えます。
○中谷委員 終わります。
○高橋委員長 青柳君。
○青柳委員 いまから二十一年前に起こりました松川事件、これは戦後の刑事事件の歴史の中で、きわめて特色のある大事件でございました。二十名の無実の者が起訴され、しかも死刑あるいは無期の懲役が一、二審にわたって言い渡されるというような大事件でございまして、この被告らが十五年目に最高裁で無罪の判決が確定して、一応その無実は明らかにされたわけでありますが、なぜこのような起訴が行なわれたのかということについての疑問というものは、すべての人々の共通したものだったと思います。この根源を追及するという意味ももちろんありまして、同時に、刑事補償法による、無実の者に対する補償だけでは十分でない、若い青春を無にしたことに対する犠牲を補償してもらわなければならないということで国家賠償の訴訟が行なわれ、そしてこの捜査あるいけ起訴、さらには一、二審の有罪判決というようなものにどういうあやまち、あるいはもっと強く言うならば不正がひそんでいたかということが追及されたわけでありますが、技術的な面からいえば、損害賠償でございますので、これは一審で勝訴いたしまして、国側が控訴した結果高等裁判所で二審が行なわれて、最近に、おおむね一審どおりの、元被告側の勝訴が出たわけであります。そしてこの十五日が大体上告期限の終了となっているわけでありますが、それに先立って国側では上告をしないということを内定して、そして確定した請求金額を任意に支払うという意思表示を、代理人を通じて行なったようでございます。これで松川事件はすべて終わったというような印象がないわけではございません。新聞の報道などでも、これで終わりか、というように述べているのもございます。しかし、私どもはこれですべてがはたして終わったと言えるだろうかどうかということについて大きな疑問を持っております。
 そこで、法務大臣にもお尋ねいたしたいのでございますけれども、なるほど無実の者が無罪になり、そしてこれを逮捕し、起訴し、そして長い間苦しめたことに対する補償もおおむね判決の上で出された、だからもういいんじゃないかということではなくて、そもそも国家賠償の訴訟を起こしたほんとうの意味というのは、こういうスキャンダルと申しますか、人権じゅうりんの捜査あるいは起訴、それから一連の裁判手続、そういうものを行なった者の責任、その公務員の責任というものはどうなるのか、国家賠償で物質的な補償をしたからそれでもういいんだということで、はたして人権を守るということに一貫したものと言えるかどうか、ここだと思うのであります。私どもは、被告になった人たちもそうでございますけれども、私ども国民といたしましても、この関係当局の人々の責任というものは、これが法律的にいって犯罪行為になるならば犯罪行為として追及されなければならないし、また、あえて犯罪でないといたしましても、その公務員としての政治的なと申しますか、責任というものは追及されていかなければならないんじゃないか。そうならなければ、無罪になった、損害を払った、それでもう万事オーケーだということであるならば、再びこういうあやまちが繰り返されないという保証はないということになるわけであります。
 松川事件は、御承知のとおり、もう発生したその当初から、時の政府当局では、増田官房長官が、思想的な背景のある事件であるというふうな、何らの合理的な根拠に基づかずした発言が行なわれ、そして捜査当局がその線を重視して見込み捜査を始めていった。そうして容疑者と思われる者を別件で逮捕して、そして強制あるいは拷問、そういう方法によって虚偽の自白をしいていった。そういう中でいわゆるでっち上げが行なわれたわけでございます。これに関係した捜査関係員というものは、司法警察職員はもちろんのこと、検察職員もそしてまた裁判官も関係しているわけであります。ですから、その数は非常に多いわけでありますが、そういう人たちの責任というものは個人的にも全然国として追及しない。すなわち、上級下級の関係にある法務省のほうでその部下であるところの者、あるいは警察庁でその部下であるところの当事者を取り調べるとかいうような、いわゆる綱紀問題としてあるいは懲罰問題として取り調べるということもやられているように見受けないのであります。もちろん、これにつきましては松川の弁護団が、またこの法務委員会でも政府側に対して質問をいたし、追及をいたしました。これは記録にも残っていることでございますけれども、当時は刑事局長であった竹内現最高検検事総長、またその前に法務省の事務次官にもなられたわけでありますが、何べんにもわたって、もし不正があるならば適当な措置はとる、そのための調査も厳重に行なうというようなことを言明しておられるわけでありますが、一体こういうことについていままでどういうことがやられてきたのか、さらに今後この問題についてどういう措置をおとりになる方針でおられるのか、それをまず最初に承りたいと思います。
○小林国務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、いわゆる松川事件につきましては、従来、検察庁の関係者に法令違反あるいは職務上の義務違反はない、こういうことでやってまいったのでありまして、今回の民事判決によりまして、検察官の公訴に過失があるやに認定されたのでございますが、これはもう私が申すまでもなく、あくまでも民事法上の過失、こういうことでありまして、個々の検察官の職責、責任を問うような法令違反ないし職務上の義務違反とは別個な問題でございまして、これらについてこの際特にわれわれが特別な手だてをとる、こういうふうな考え方は持っておりません。
 実は昨日、私どもは松川事件の判決に対しては上告をしない、こういうことを内定いたしましたが、この趣旨そのものにつきまして必ずしも私どもは不満がない、こういうわけではありません。しかし、とにかくもう二十何年もたった問題であり、このことを早く終結させることがやはりわれわれの考えるべきことであろう、こういうことで上告をしないということにいたしたのでございます。ことに一、二審判決におきましては、あるいはこの事件が警察、検察のでっち上げである、あるいはこれを起訴する前の逮捕、拘禁等についていろいろの問題がある、こういう第一審判決であったのでありますが、第二審判決におきましては、起訴前等のいろいろの事項については特別の判示がなかった。このことはわれわれとしてももとより適当な判断である、かように考え、また、起訴後のやり方について云々の問題はあったのでありますが、とにかくそれらについても必ずしも私どもは心情的に承服するわけではございませんが、いま申すような、事件が非常に長くて、世間にも非常な迷惑をかけている、この辺でひとつわれわれも終結すべきである、こういうことでやっておるのでございまして、これからいまお話しのような個々の検察官の責任追及をするというふうなことは、いま私どもは考えておらぬ、こういうことを申し上げておきます。
○青柳委員 先ほども申しましたように、この無実の犠牲者である松川事件の被告並びに関係者の人たちは、国の行為として、国権の発動としてなされたもろもろの検挙あるいは捜索並びに起訴、公判というような一連の行為に対して、非常な憤りと不満を持っていたわけです。そして、当面降りかかった火の粉を払うという意味におきまして、無実を明かすために奮闘して、十五年目に無罪が確定したわけでございますが、引き続きその責任を追及するいろいろの方法があると思うのです。たとえば職権乱用罪とかいうような形でその刑事責任を追及するという方法もございましょう。しかし、それはいまの制度のもとでなかなか十分なる効果を発揮することが困難であるということは、現実問題としては−理論問題としては別でございますけれども、公正であるという立場をとっておられるとしても、自分の部内の者が犯罪の容疑者として告訴されてきたときに、真剣にその捜査が行なわれるかどうかということを期待することは非現実的な場合もあり得る。そこで国家賠償という形で問題を究明していこうということになったわけです。もちろん、同時にその個々の公務員を個人的な不法行為者として、その賠償責任を追及するという方法もあるわけでありますけれども、しかし、国家賠償制度というものがあって、そして個々の人に対する損害賠償が判決の上で出ても、資力がなければから手形になる、そういう場合をも考えれば、国を相手にすることが一番確実に賠償を得る道であるということ、これも常識でございます。だから、双方をあわせて被告にするということも、考えて不可能ではないのでありますけれども、裁判所の見解などを見ますと、国家賠償で追及できる場合には個々の行為者を個人的に追及することはできないというような判例あるいは解釈があるものですから、勢い個人的な責任追及という形にはならずに、国の責任ということで、しかも物質的な賠償を求める、謝罪広告を求めるとか、その責任を何か別な形で追及するということはできない。しかし、金をもらえばいいのだという物取り的な意味でこの訴訟が行なわれたわけではないのであります。この訴訟自体は、したがって不法行為があったかなかったか、その不法行為の原因は故意であるか過失であるか、違法性があるかどうかというところに限られるわけでありますけれども、原審の判決では、これは明らかに故意というものが伏在しておったということをうかがわせるような判断であったわけです。われわれは、この原審の判決がもっと明確に、証拠を隠したりあるいは自白を強制して虚偽の供述をとったり、その他証人に出て偽証を行なったりというような、いろいろな行為をほんとうは一審判決が出して、明らに故意があるんだというふうにいえば、もっとはっきりしていたと思うのであります。ところが二審のほうは、その点をさらにぼやかしまして、そして過失があるということは明白だということで、いわば当事者を免責するような判決になった。これはわれわれ自身としても非常に不徹底なものだと考えるわけです。いま大臣のお答えでは、不満な点もあるけれども、長くなるからこの辺でというお話でございましたが、私どもは、長くなるからおしまいにするからいいじゃないかということでは済まないんで、やはり監督責任をお持ちになる大臣とされては、こういう判決がえんきょくではあるけれども責任を問うたわけです。なぜそういう責任を問われるようになったのか、手落ちはなかったか、そこに職務違反はなかったか、あえて言うならば、犯罪的な行為がなかったのかというところまで突っ込んでみる必要がおありになるんじゃないか。そういうことをやれば、今後の捜査あるいは公訴提起に萎縮を来たし、いわゆる士気を阻喪させてはいけない、だからこれは手控えておくということであっては決していけないと思うのです。そういう方法によって決して人権は守ることはできないと思うのです。
 だから、重ねてお尋ねいたすのでありますけれども、損害賠償という形で片づいた、だから、刑事責任のほうは別に裁判所でも言ってないし、自分たちも考えてないから、もうこれで不問に付すんだということで済ませるということは正しくないんじゃないかということをわれわれは考えるがゆえに、再び繰り返してお尋ねをいたしたいと思います。
○小林国務大臣 法務、検察当局といたしましては、原審の判決について非常に納得いたしがたい、こういうことで控訴をいたしたということは、当局がやったことに法令違反とかあるいは義務違反とか、こういうものがない、こういうことからいたしておるのでございまして、かような趣旨からいたしますれば、この問題全体について、われわれ法務省として判決全体についてやはり将来にわたって参考として十分考えていかなきゃならぬ、こういうことでありまして、具体的に個々の人の責任を追及する、こういうふうなことは私はいま考えておらない。しかし、この問題全体についてみながひとつ反省というと私は語弊があると思いますが、考えてみなきやならぬ問題である、かように考えております。
○青柳委員 理事会のほうから、二時に大臣は退席されるというお話がありましたから、簡単に、関連してもう一点だけお尋ねします。
 当然に疑問を持たれるのは国家賠償でございます。賠償法の第一条の第二項、故意または重大な過失があった場合には求償権があるということになっている。本件では七千六百万円余り利息を合わせるともっとになると思いますが、そういう金は国民の税金から払われるわけです。納税者とすれば、自分たちは何もそんな税金を払わなければならぬような責任はないんだ、ひとえに国の役人が不心得なことをやったためにそれだけの税金を持っていかれちゃうんだ。被害者のほうは、だれからもらっても同じようなものかもしれないけれども、しかし、被害者としても、国民の税金からもらってのうのうとしているというわけにはなかなかいかない。自分自身も納税者でもあるわけです。したがって、この求償問題を一体政府としてはどう考えるのか、これは「故意又は重大な過失」とあるから、故意がないというのはこの判決でもうかがわれる。しかし、重大な過失があると言えるか、軽過失であるのか、これは十分研究しなければならぬ問題だと思うんです。したがって、この点について、いやこれもやらない、もうやった連中に賠償を求めたら気の毒だからやめてしまうというようなことであるのか、やった人々というのはたくさんいるわけであります。現にこれは余談でありますけれども、今度アサヒ芸能という週刊誌が、私が松川事件の真犯人だというのを出しましたところが、新聞記者が取材に参りまして、そこにおられる辻刑事局長にもいろいろ談話を求めたようでございますが、辻さんは松川事件の真犯人というのはやはり被告だと思っている、確信を持っているということをこの東京新聞には書いてあるわけであります。こう書いてある。「しかし松川事件に関しては、法務省は起訴後の立証段階で手落ちがあったとはいえ、元被告たちが犯人であるとの確信をいまも変えていない。」という趣旨を述べられ、私が松川事件の真犯人だと言っている中島辰次郎という人が言っていることは問題にならぬ、こういうお話でありますが、こういう態度ですと、しかも辻さんは松川事件では主任検事の一人として三、四名の被告の自白を調書におとりになった方であります。したがって、依然として法務省がこの問題については求償権のことについても考えない。国とすれば、当然国を代表する立場で法務大臣があるわけですから、当然のことながらこの問題は研究しておられるはずだと思うのであります。この点はいかがですか。
○小林国務大臣 これは事件そのものについてそれぞれの担当者がどう思うか、どういうふうに信じているか、それは個人の問題はあります。しかし、裁判所が確定判決で無罪にしたといえば、これに従うのが当然であるから、個人の考えがどうであっても、これに従うということでありまして、当時者としてはいまでもあのことは間違っていなかった、こういうふうに思っている人があるということは、これはやむを得ません。
 したがって、私どもはこの事件については、いま申すように、たとえば過失があったというふうなものに対して求償をするというようなことは必ずしも適当でない、これがもう明らかに重大な過失あるいは故意、こういうふうな問題があれば当然いまのような求償の問題も起こってくると思うのでありますが、この事件に関しては、検察当局にしても判決には従うが、それが真実であるかどうかということについて個々人が疑いを持っておるとか、こういうようなことはある程度やむを得ないというふうに私は思うのでございます。したがいまして、これを控訴をしたりあるいは上告せんとしたりするものは、やはりそこに裁判の結果に納得しがたいものがある、不満である、こういうことがあるからして控訴もいたしたのであります。したがいまして、これらの方々はそれぞれこの判決について思うところはあろうと思いますが、私どもが表面的に見て、法令に違反したり職務上の義務違反があった、こういうふうには考えておらない。こういうことからいたしまして、求償問題については、この際、これを提起するということは考えておらない、こういうふうにひとつ御了解願いたいのであります。
○高橋委員長 青柳君、もう時間ですので……。
○青柳委員 辻さんにだけちょっとお尋ねいたしますけれども、東京新聞がこういう報道をしたことは、何かあなたがおっしゃったことと違っておりますでしょうか。もし違っていないとすれば、やはり法務省の刑事局長というような地位にありながら、なおかつ、あの確定した判決に従わないんだというような、個人的におなかの中で考えている分にはともかくといたしまして、公務員として、しかも重要な地位にあられる方が不特定多数の人々にわかるような形で、こういう信念なるものを表明していってそれでよろしいのかどうか、それは場合によっては名誉棄損罪にもなるんじゃないかというようなことを考えておられるかどうか、それだけはお尋ねしておきたいと思います。
○小林国務大臣 いま私が申したように、個人的にはいろいろ考えはあり得る、しかし、刑事局長が公人としてああいうことを言うことは、私は必ずしも適当でない、こういうふうに思います。
○青柳委員 終わります。
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○高橋委員長 去る七月、裁判所、法務省関係施設の整備状況等を調査するため、本委員会から北海道に委員を派遣いたしました。
 その調査の結果について報告書が提出されております。この報告書を本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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 〔報告書は本号末尾に掲載〕
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○高橋委員長 本日は、これにて散会いたします。午後二時十三分散会
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