第063回国会 予算委員会 第5号
昭和四十五年二月二十五日(水曜日)
    午前十時六分開議
 出席委員
   委員長 中野 四郎君
   理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君
   理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君
   理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君
   理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君
   理事 今澄  勇君
      足立 篤郎君    相川 勝六君
      赤澤 正道君    植木庚子郎君
      江崎 真澄君    大坪 保雄君
      大野 市郎君    大村 襄治君
      奥野 誠亮君    賀屋 興宣君
      川崎 秀二君    上林山榮吉君
      小坂善太郎君    笹山茂太郎君
      田中 龍夫君    登坂重次郎君
      灘尾 弘吉君    西村 直己君
      野田 卯一君    福田  一君
      藤田 義光君    松野 頼三君
      森田重次郎君    吉田  実君
      赤松  勇君    川崎 寛治君
      北山 愛郎君    久保 三郎君
      楢崎弥之助君    西宮  弘君
      細谷 治嘉君    相沢 武彦君
      大橋 敏雄君    坂井 弘一君
      松尾 正吉君    麻生 良方君
      河村  勝君    谷口善太郎君
      不破 哲三君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      保利  茂君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      山中 貞則君
        国 務 大 臣
        (国家公安委員
        会委員長)
        (行政管理庁長
        官)      荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣
        (北海道開発庁
        長官)
        (科学技術庁長
        官)      西田 信一君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 中曽根康弘君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      佐藤 一郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制局第一
        部長      真田 秀夫君
        公正取引委員会
        委員長     谷村  裕君
        防衛庁長官官房
        長       島田  豊君
        経済企画庁総合
        開発局長    宮崎  仁君
        科学技術庁原子
        力局長     梅澤 邦臣君
        外務省アジア局
        長       須之部量三君
        外務省アメリカ
        局長      東郷 文彦君
        外務省欧亜局長 有田 圭輔君
        外務省条約局長 井川 克一君
        外務省国際連合
        局長      西堀 正弘君
        大蔵大臣官房日
        本専売公社監理
        官       熊田淳一郎君
        大蔵省主計局長 鳩山威一郎君
        大蔵省主税局長 細見  卓君
        大蔵省理財局長 岩尾  一君
        大蔵省銀行局長 青山  俊君
        文部省初等中等
        教育局長    宮地  茂君
        文部省大学学術
        局長      村山 松雄君
        文部省体育局長 木田  宏君
        文部省管理局長 岩間英太郎君
        文化庁次長   安達 健二君
        厚生大臣官房長 戸澤 政方君
        厚生大臣官房会
        計課長     横田 陽吉君
        厚生省公衆衛生
        局長      村中 俊明君
        厚生省環境衛生
        局長      金光 克己君
        厚生省医務局長 松尾 正雄君
        厚生省薬務局長 加藤 威二君
        厚生省社会局長 伊部 英男君
        厚生省児童家庭
        局長      坂元貞一郎君
        厚生省保険局長 梅本 純正君
        厚生省年金局長 廣瀬 治郎君
        社会保険庁年金
        保険部長    穴山 徳夫君
        運輸省船舶局長 佐藤美津雄君
        運輸省鉄道監督
        局長      町田  直君
        運輸省自動車局
        長       黒住 忠行君
        海上保安庁長官 河君 一郎君
        労働大臣官房長 岡部 實夫君
        労働省労働基準
        局長      和田 勝美君
        労働省婦人少年
        局長      高橋 展子君
        労働省職業安定
        局長      住  榮作君
        建設省計画局長 川島  博君
        建設省道路局長 蓑輪健二郎君
        建設省住宅局長 大津留 温君
 委員外の出席者
        日本国有鉄道総
        裁       磯崎  叡君
        予算委員会調査
        室長      大沢  実君
    ―――――――――――――
委員の異動
 二月二十五日
 辞任         補欠選任
  松浦周太郎君     吉田  実君
  大橋 敏雄君     矢野 絢也君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十五年度一般会計予算
 昭和四十五年度特別会計予算
 昭和四十五年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○中野委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算、昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。麻生良方君。
○麻生委員 外務大臣、けさの新聞を外務大臣はごらんになったと思うんですがね。私の質問要項には入っていないんですけれども、今澄代表が、下田大使の件について委員会におはかりをして、本委員会に喚問要求をしているおりに、きょう下田大使が繊維規制問題について、政府の了承なく、私案を米側に提案をしたという記事が大々的に報道されています。その真相をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
○愛知国務大臣 繊維問題並びにこれに関連する下田大使の行動については、今澄委員の御質疑にもお答えをいたしましたとおり、政府といたしまして、何回かにわたりまして訓令も出しておりますし、またこれを補足する意見も出しております。これに基づきまして、十分に訓令の執行をし、かつ検討をして、日本側の立場というものはいろいろの角度から説明にこれつとめている。この訓令の執行についての態度については、私も全幅の信頼を置いているわけでございます。
 さて、その次にただいま御質問のけさの新聞でございますが、実は今朝ラジオでもそういうことが報道されまして、私、率直に申しますが、非常に驚いたわけでございまして、私から言いますれば、さようなことは考えられません。伝えられているニュースのソースなども私はわかりませんけれども、私といたしましてはさような事実はございません。また、そういうことを訓令以外にやっておるというようなことは、考えられもいたしません。というのは、双方の考え方というものが相当根本的に違っておる点もまだ解明されていないわけでございますから、そういう状態で、たとえば伝えられるような、妥協的な、かなり具体的に記事には出ておりますけれども、そういう段階にはまだ入るべき時期ではございません、将来はともかくといたしまして。したがいまして、現在さような事実はないし、私も承知しておりませんし、またそういう記事にはとらわれないで、政府としては規定の方針によって進んでまいりたい。さように考えております。
○麻生委員 通産大臣、あなたのほうからもワシントンにはそれぞれ出ていると思いますよ。このニュースについて、通産大臣、何かキャッチしておりましたか、事前に。
○宮澤国務大臣 全く聞いておりません。
○麻生委員 全く聞いていない。それから外務大臣は全くこれには関知しない。しかし、ここにニュー伊が出ておるわけです。とすると、このニュースが誤報であるか、あるいはあいまいなニュースソースを日本の新聞社が大々的に取り上げたのか、あるいはまた事実やったのか、この三つのうちのいずれかぎりないということになりますね。そう解釈してよろしいですか、外務大臣。
○愛知国務大臣 繊維問題は、私がいまさら申し上げるまでもございませんが、日本の関係の方々も非常に多いし、それから非常に心配されているわけでございます、私も憂いをともにするわけですが。したがって、今後どういうふうになるであろうかということについては、いろいろの希望や憶測やあるいは心配が非常にあることは、これは私否定できないと思うのであります。そういうところから、まあことばは練れませんけれども、ある種の端摩憶測も出てくることもときにはやむを得ないことかとも思います。たとえば、前にはやはりいろいろの筋から、ワシントンで沖繩問題交渉のときに総理が密約をされたのではないかというようなことが一時報道にもずいぶん出たことがございますけれども、この委員会を通じても明らかになっておりますように、そういう事実は全然ございませんわけですが、御心配のあまりそういうこともあろうかというようなことが伝わることもあったこともあるわけでございますが、やはり繊維業界並びにこれに関連される方々が、御心配のあまり、そういうこともあるのではなかろうかというようなことから、こういう記事にもなったのではなかろうかというふうにも、今朝来のことでございますから、私のいま受けた印象を率直に申しますと、そういうこともあるのではなかろうかと思いますので、私といたしましては、この問題の取り上げ方に今後ともますます慎重、真剣にやらなければならないし、また業界の方々、御関係の方々とも政府の立場というものも十分ひとつ理解していただいて、アメリカが要求しておりますのは御承知のとおりに自主規制ということなんでありますから、自主規制をかりにやるということになりましても、これは業界その他関係の方々の御納得がなければ誠意のある措置は日本としてとれないわけでございますから、そういう意味合いにおきまして、今後とも十分そういう方々と憂いをともにしながら、よく御相談をいたしまして対処してまいりたいと思っております。
○麻生委員 私も、これが誤報であることを願いますよ。願うけれども、かなり具体的なんですね。下田駐米大使は十九日のジョンソン米国務次官との会談で、繊維の対米輸出自主規制に関して、わが国が対案を出すことを前提としてその骨子を盛り込んだ下田私案を米側に提示をしたと、こういうきわめて具体的な発表になっているのですね。これは必ずしも米側からだけの発表だとは思われない節がある。外務大臣は、大使自身がアメリカにおける日本国内の記者会見の席上でこの種の発表をしたものと解釈されませんか。そうしなければ、こういうものは来ませんよ。私も何べんもアメリカへ行っておるし、ワシントンの記者クラブとも何べんも接触しておりますが、米側から出た一方的なニュースソースだけでこういう記事は送られてきません、きわめて具体的なことなんですから。その点については、まだ確かめられておらないのですね、大臣。
○愛知国務大臣 ただいま率直に申し上げましたように、私は、正確に言えば今朝七時以来その報道を知りましたわけですから、それらの点につきましてはなお一そうよく真相も調べたいと思っておりますが、現在のところ、そういうことはあり得ないと私は確信いたしております。
○麻生委員 大使の上司として大臣がそう考えられる御心情は、よくわかります。しかし、これは混淆すべきではないですからね。
 総理。いま大臣が言われましたように、全く訓令もしてない、また事前に相談も受けてない、にもかかわらず、駐米大使がもしこれが事実として一方的に私案を提出したとしたら、総理大臣、あなたはこの内閣の責任者として、しかもきわめて重要な事態、重要な事件、重要な繊維規制問題について、これが事実として下田大使が発表したとしたら、あなたはどういう御処置をとられますか。
○佐藤内閣総理大臣 いまいろいろの問題が想定されますが、先ほど外務大臣がお答えいたしたように、日本政府としては在来からの態度に変わりはございませんと、かように申しております。これをひとつ御信頼していただいて、われわれが方針を変えるとか、あるいはわれわれのいままでの考え方に修正が加わる、そして適当なときにそれを発表し得る、こういうことならば、それはそれとして御信用していただきたい。この段階では、ただいま外務省自身も別に変わった考え方をまだ持っておりませんと、かように申しておりますから、その事態を十分監視していただくということが望ましいことではないか、かように思います。いろいろの問題が交渉の途中におきまして起こるだろうと思いますが、やはり一つの筋がございますから、その筋がどういうようにこれから取り扱われていくか、これをひとつよく監視していただきたいと、かように思います。
○麻生委員 そうすると外務大臣、とにかく早急にこの事実をひとつ外務省を通じて調査を願いたい。そしてその調査の結果をきょうじゅうに、これは電話で判明できると思いますから、とっていただきたい。これが一つです。
 そして委員長。特に委員長にお願いしたいんですが、今澄理事から質問がありましたときに、下田さんは私は個人的にはよく知っておるが、とにかくときどき、気骨があり過ぎるのかどうか知らないけれども、全く一方的にいままでトラブルをかなり起こしておるのです。前国会においても喚問問題が大きな焦点になったことがある。こういう方ですから、やはり国会としても、この大使の意図が一体どこにあるのか、これは十分に知らなければなりませんから、今澄発言の中にありました下田大使喚問の件は、重ねて私からも喚問のお願いを申し上げて、理事会でお取り計らいを願いたい、これをお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
○中野委員長 後刻理事会にはかりまして適当に取り扱うつもりでおりますから、御了承願います。
○麻生委員 時間がございませんので、次に所定の質問に移りたいと思いますが、若干変更いたしまして、核防条約の問題について先に政府の見解をお尋ねしたいと思うのです。
 まず総理、これ私ははなはだ初歩的な質問ですが、調印をするということによって起こる国家的な責任、義務、そういうものをまず初めに明らかにしていただきたいのです。
○佐藤内閣総理大臣 おそらく調印は批准を前提とするだろう、こういうお尋ねかと思います。私どもも、この調印をするについては、将来当然批准、そういう問題に関連してくる。しかし、批准までの間に私どもがなお調印することによって話し合う機会も得られる、こういう利点があるように実は考えたのであります。まあ調印する以上批准だ、必ずそこの結論が出なくても、その調印から批准までの間にいろいろ取り調べること、それらのものでわれわれが納得がいけば初めて批准の問題になる、かように私は考えております。ことにこの核防条約そのものは、これは二国間の問題じゃございませんので、多数国がこれに加盟する、こういう関係であります。したがいまして、まず調印する、そういうことでただいまのような疑問点を明確にし得る権利が与えられる、こういうようなことも考えて、ただいまのように調印をした、こういうことでございます。
○麻生委員 総理、重ねてちょっとお尋ねいたします。そうしますと、調印してから批准までの間、わが国はこの核防条約についてどういう関係になるのですか、この関係は。見習い奉公に出たようなものなんですか。三カ月間の見習い期間を過ぎたら本社員にするみたいな話ですか。それとも一度嫁にやって、ぐあいが悪ければまた戻ってこい、こういうことなんですか。どうも私はよく納得できない。
○佐藤内閣総理大臣 いまあげられた例は適当でないと思います。まず結婚した、しかし、実際結婚はしたが、正式には十分了承がいかないから……、こういうように言われることは、ちょっと違うと思っております。この調印自身は、これはどこまでもまず調印したその場において、ただいま言うようにいろいろ私どもが確かめたい事柄がございますから、そういう点を明確にし得るかどうか、こういう問題で、これは全然調印しないで発効いたしますと、われわれが疑問に思っている点を明確にすることが非常に困難でございます。だから、ただいまの事実婚、それから正式結婚、こういうのとはちょっと違うから、この例は適当でないように思っております。また見習い奉公というようなものでもないこと、これはひとつ御了解いただきたい。ただ、普通には調印は必ず批准を前提にするものだ、かように考えますから、普通の状態なら、調印した以上、その次の段階の批准、こうなるのは、これは当然の議論だと思います。しかし、この問題は、非常に幾多の問題がございます。それらの詳細は外務大臣からお答えいたさせますが、いろいろ問題がありますので、ただ簡単に、調印したから批准だ、かような結論が出ないということ、これを御了承いただきたい。
○麻生委員 そうしますと、総理、それほど批准が重大な問題だ、批准までの間にいろいろ問題があるのだというなら、私どもの立場から見ますと、別にそう何も急いで調印することはなかったんじゃないかという考えが生まれてきますよ。これはそうでしょう。当然、調印するということは、意思関係としては批准するという意思を持った上で調印したのだ、こういうことになる。しかし、その批准までの、批准行為の意思関係の間にただすべき点、いろいろ条件があるのだということになれば、何も調印をそんなに急がなくてもいいんじゃないですか。なぜこれはお急ぎになったのですか。
○佐藤内閣総理大臣 実は、あまり急いでおるわけではありませんが、この辺で調印をしないと、われわれが確かめるその方法が非常に複雑になる、困難になる、かように思います。これが発効した後において日本が新たに加入する、こういうことでやることは困難だ、かように思いますから、まず調印しよう、そうして手続事務を進めていこう、こういうことでございます。
○麻生委員 まあその理由ばかりでもないのでしょう。ニクソンとお会いになって、おありになったのだろうと思いますが、まあそれはいいですよ、水かけ論ですから。
 そこで、外務大臣、少し内容の問題を詰めたいと思うのです。この核防条約の持つプラス面といいますか、これはいま言ったようにいろいろ問題があるが、意思としては調印したいという意思を政府は持っておる。その意思の根拠になるプラス面は何ですか。ひとつ簡単に御説明願いたいのです。
○愛知国務大臣 やはり大きく分けると二つになると思いますけれども、一つは、核の軍縮というか、究極的にはこういった核兵器というものを絶滅したいというのが、私は日本の民族的な要望ではないかと思います。そういう線に沿うて、昨年来軍縮委員会にも日本は参加することができたわけでございますが、これから国際政局の上で活動の幅あるいは場を大いに有効に活用するということについては、先般本議場でも申しましたように、過去の経過から申しましても、この条約の精神には賛成をして、そして日本としては、条約の草案の段階である程度日本側の要望も入ったわけでございますね、核軍縮の義務、あるいは五年ごとのレビューというようなこと、その他ある程度日本の意見も入ったので、一九六八年の国連総会では、この条約の勧奨決議に日本は賛成投票をいたした。こういう経緯もございますので、これはせめて署名をして、そしてそれを基礎にしてそういう面で大いに活躍をしたい。これはプラスの面に数えられると思います。
 それからもう一つは、原子力平和利用の問題でございまして、これはただいま総理からもお答えがありました点でございますけれども、現に今月、もうすでに国際原子力機関でもって今後この条約に基づいて制定せらるべきところの査察、保障の協定の相談などが始まっておりますが、署名もしていないということでございますと、日本の平和利用に対しての、少なくともヨーロッパ並みの平等の待遇を得たいという願望が達成できないうらみがある。こういう点もプラスの面ではないかと思います。
 幸いに、国際原子力機関では日本の権威者の発言や提案が相当の程度に尊重されておるようでございますから、これを大いに活用いたしまして、日本の国益を伸張あるいは擁護したい、こういう点がプラスの面として考えられると思います。
○麻生委員 もちろんその反面、日本にとっては非常に重要な問題があるわけですね。いわばマイナス面といった面があるわけですね。そのマイナス面と思われる点を簡単に御指摘していただきたい、もしあるとすれば。ないならないでけっこうなんです。いまのままのですよ。
○愛知国務大臣 これはちょっとお答えにならないかもしれませんが、むしろ今後にあると思うのでございます。たとえば核兵器保有国が非核保有国に対する安全保障に対してどういう態度をとるか、あるいはソ連のようなところが平和利用に対する査察について米英等と同調してくれるかどうかというようなこと、あるいはこの査察協定の内容が日本の主張するようなことになるかどうか。ならなければこれはマイナス面である、かように考えますので、この条約の性格から申しまして、先ほど総理のお答えもございましたが、まあ二国間の条約というようなものであれば、調印即批准ということは当然のことでございますが、この条約は多数国間の条約でもありますし、また査察や保障協定については、守るべき義務は条約で定められているけれども、肝心の守るべき基準がまだこれからきめられようとしているわけです。そういう性格の問題でございますから、批准をお願いするまでの間にこの利害得失、プラス、マイナスを十分勘考して、政府として適切と思われる態度をとって、国会の御審議をお願いするということに自信がついたらお願いをするということに考えるべきではないかと思います。
○麻生委員 外務大臣、核保有国の軍縮問題については、これは現状のままでやむを得ないとお考えですか。いまちょっと触れられておりませんでしたけれども、ちょっと……。
○愛知国務大臣 御承知のように、たとえば米ソ間でSALT交渉が進んでおりますが、これなどはわが国としても非常に重大な関心を持って見詰めているわけでございます。希望的にいえば、この成果が日ならずしてあがるというようなことになれば、全体のわれわれの希望に対しては数歩前進することになるのじゃないかと思われます。しかし、これは先ほど申しましたように、幸い軍縮委員会も今年の総会がもうすでに開かれたわけでございますけれども、それらの成り行きも見ながら、日本としては十分の主張をしてまいりたいと思っております。
○麻生委員 いま外務大臣が言われました今後の問題点についての詰めは、もう少しあとで具体的に詰めてみたいと思いますが、その前に、この核防条約については、国民世論の中にもいろいろな意見がありますね。総理、この間の西村委員長の答弁の中にも広く国民の意見も聞きたいということですけれども、特に原子力産業界においては、相当強い批判があるようですね。そういう点について、これは通産大臣、科学技術庁関係にもわたると思いますけれども、日本の民間産業、特に原子力のそういう方面から、これについていろいろ要望が出ておりましょう。その要望の内容を通産大臣なら通産大臣でもけっこうですし、あるいは防衛庁でもいいし、どこでもよろしいのですけれども、ちょっと御説明願いたいのですがね。簡単でけっこうです。
○西田国務大臣 核防条約に入ることによりまして産業界が心配をいたしておりますのは、査察のやり方いかんによりましては、商業機密が漏洩をする、あるいはまた産業活動が阻害をされる、こういうことがありはしないだろうか、こういうふうに心配をいたしております。わが国はアメリカから核燃料物質を受けておりますが、欧州諸国におきましても、ユーラトム諸国はやはりアメリカからこれを受けておりますが、査察のしかたが、われわれはIAEAの査察を受けておりますし、それからユーラトム諸国は自主査察をやっております。そこら辺の内容はまだ詳細わかりませんけれども、自由査察とそれから直接の査察を受けることによって差別扱いをされはしないだろうか、こういうようなことも産業界が懸念をしておる点でございます。
○麻生委員 それからもう一つ、総理、与党の中にも選挙前いろいろ意見を言っておる人がありました。それから中曽根防衛庁長官などもいろいろ見解を発表していたし、それから赤城代議士などもいろいろ新聞紙上で私見を発表している。だから、必ずしも政府全部がその時点で合意をしていたとは見られない節がありますけれども、別に私はそれを追及するつもりはありませんが、やはり閣僚といえども個人の意見をお持ちでしょうから、この際ちょっと防衛庁長官、それから特にあなた、いろいろ話題になる発言が最近多いものですから、最近のあなたのこの核防条約に対する見解を簡単に御説明願いたいのです。
○中曽根国務大臣 核防条約について私は慎重論を述べてきましたが、いまでもそういう気持ちを持っております。慎重論を述べましたが、しかし反対ではないと言っておるのです。これはやはり核実験禁止協定とかあるいは大気圏内核兵器使用禁止協定とか、国際的な緊張緩和への国際的努力の一つのあらわれで、日本もこの流れに沿って国際緊張緩和の方向に進むべきである。その意味においては賛成だ。しかし、いまの原子力平和利用の秘密保持等の点から見て慎重を要する。私は十月二十三日に朝日新聞に朝海元大使と論説を書いて慎重論を述べましたが、その中で言いましたことは、一つは沖繩返還問題とからめてはいけない。もう一つは、西ドイツの調印の態度を見守る必要がある。そして査察協定の内容について関心を持つ必要がある。そういうことを述べました。そして、しかしいずれそれらの問題についてわれわれの不安がなくなれば政府に一任すべきものであるが、政府は処理については慎重でやってほしいと、そう書いておきました。
 で、沖繩問題についてはこれはからめてありませんし、それから西ドイツも調印がすでに終わりました。そういう情勢を見て、最近の情勢を見ると、条約の成立が近いとか、あるいはもしこれが成立したあとに日本がこの問題に参加するというようなことになると、すぐ国会の問題になってきて、政府が向こうと内面的に交渉するという時間、余地が非常になくなる、事態が非常に急変してきたということを聞きまして、それではむしろこの際やむを得ず調印をして、査察協定について日本の発言を通すように努力したほうが日本としての国益に合致する、そういう総合的バランスを考えまして、私は調印に賛成をいたしました。しかし、批准につきましては、やはり慎重にすべきものであると考えております。
○麻生委員 それは、あなたのそういうお考えに従って賛成されたということはわかります。わかるけれども、いささか豹変のそしりなくもないですな。それは別にここで問い詰めるべき問題じゃありませんから、この程度にしておきます。
 そこで外務大臣、あなたがさっき指摘されました幾つかの今後に残された問題点を、政府は一体具体的にどういう方法で解決しようとしていくのかについて、少し詰めてみたいと思うのです。
 まず第一に、非核保有国の安全保障の問題ですが、これは国連の安保理事会では、「非核兵器国の安全保障に関する安全保障理事会の決議」、一九六八年六月十九日、こういうことを書いてあるのです。「核兵器の使用を伴う侵略行為の犠牲又はそのような侵略の威嚇の対象となった核兵器の不拡散に関する条約の当事国である非核兵器国に対して、直ちに援助を提供し又はその援助を支持する旨を表明した幾つかの国の意図を歓迎する」という決議ですが、これはどういう意味ですか。私はよく意味がわからないが、これっきりないのですね、いまの段階では。このほかに特にございますか、外務大臣。
○愛知国務大臣 そのほかに関係国が合意したものはないかと思います。そこで、しかしいま取り上げられましたその決議といいますか、申し合わせと申しますか、この趣旨はけっこうなことだと思うのです。その趣旨が守られるように、これが具体化されるようにどの程度に進むかということがこれからの問題であると思いますので、先ほど申しましたように、政府としても重大な関心を持ってこれを見守ってまいりたい、こういうふうに思っております。
○麻生委員 外務大臣、関心だけ持たれちゃ困るのだな。今後われわれも当事国になるのですからね、加盟すれば。だから、具体案を示してほしいのです。この程度で外務大臣は満足だというわけではないのでしょう。満足じゃなければ、もっと満足なものをどこかの機関でどういうふうにして取りつけるかという具体案を示していただきたいのだな。
○愛知国務大臣 具体案というのは、いま申しました米英ソ三国が合意しておる申し合わせの趣旨が具体的に実現できるようにというのが具体案になると思いますし、それはどういう場でこれから努力をするかというと、第一には、私は軍縮委員会であると思います。それからもう一つは、やはり国連自体の場におきましても、十分いろいろの、日本側として主張する場面もあり得ると思っております。
○麻生委員 先に進みます。
 もう一つ、査察の平等性について触れられましたね。これはなかなかやっかいな問題をたくさん含んでいるし、平和利用、軍事利用というのは、ある面では紙一重の接点もあるわけですから、なかなか慎重を要すると思いますが、政府は近く国際原子力機関に対して、査察の問題について何か具体的な交渉をする意図をお持ちですか。
○愛知国務大臣 この点については先ほどもちょっと触れましたけれども、正確な日にちはちょっと忘れましたが、今月すでに二十二日か三日からか、国際原子力機関でも、あらためてこの問題は討議の議題に出てきております。そうして、まずひとつモデル協定の案をつくってみようではないかというのが関係国間の話し合いでございますが、幸いにしてと申しますか、国際原子力機関の中に、専門家が日本からすでに参加いたしております。その日本の意見というものが相当の程度に信頼性を持っているように見受けられますので、今後の国際原子力機関における査察協定のモデル案の作成等について、日本の提案あるいは日本の意見というものが相当に取り入れられることに全力をあげていきたい、かように考えております。
 それから、先ほどもお話が出ましたが、現状はどうかというと、御承知のように国際原子力機関、IAEAに対しては日本が一番厳格な査察を受けることになっておりまして、これは非帯に厳重な査察でございます。したがって、現状を比較すればユーラトム諸国とにはかなりの差がございます。ところが、これはあえて日本だけではなくて、これから原子力産業というものがどこまで発展するかわかりませんが、現在日本が受けておるようなIAEAの査察のやり方からいえば、いかに国際機関のIAEAといえども、膨大な専門の職員と膨大な経費がかかるわけでございますね。ですから、世界全体の行き方からいたしましても、こうした査察については簡素化をする、それからまた、さらに関係国に対する信頼の度合いがそこに問題になってくると思いますけれども、そういう点からいって、世界的な趨勢としても、平和利用についての査察というものは、簡素化し合理化するということが私は流れとして考えられると思うのですね。ですから、そういう世界の流れの中にあって、日本のような徹底した平和主義の国という、これは私は国際的に定着しているイメージだと思うのですが、しかもそこで科学技術の学識豊かな日本的な見識というか知恵というものが、私は必ずものをいうのじゃないか、ここに大きな期待を持っておるわけでございます。
○麻生委員 この条約は、それはいろいろたくさんの国が加盟しておりますが、外務大臣、結局せんじ詰めると、ヨーロッパにおいては西ドイツ、アジアにおいては日本ということになるのですね。西ドイツの場合は、もう外務大臣御承知のような方法で、ある意味の直接査察ができない。しかし日本の場合は、これはなかなかそうはいかない。そこで、いま外務大臣が考えておられるような構想に発展するのだろうと思いますけれども、その外務大臣のいま描かれているような構想をいつ具体的にして、そして国民の合意を得て、それを国際原子力委員会ですか、そこに持ち込むおつもりですか。
○愛知国務大臣 ただいま申しましたように、もうそのスタートは切られつつあるわけでございます。その場合、先ほど科学技術庁長官からも話がございましたが、これは日本の原子力産業から申しましても非常に大きな問題でございますから、国内的にも十分そういったところのお知恵を借り、またそういう方々が御納得ができるようなフォーミュラを国内的にもつくり上げ、そしてそれを適切に国際機関に反映して、日本の望むような査察協定ができるようにする、こういうことにあると思います。問題はかなり技術的なことになろうと思いますけれども、何べんも申しますようで恐縮ですが、日本としては相当の自信と権威を持って主張できる素地は十分にあるのではないかと私は思っております。
○麻生委員 いま外務大臣が言われたような幾つかのこれからの問題点について具体的な構想を持って臨まれるわけですけれども、これらの政府が考える、これから要求する構想について、いま民間との間に協議する機関が設置されておりますか。
○西田国務大臣 この問題に関しましては、科学技術庁が中心となりまして、学者あるいは産業人、これらを集めました研究はすでにかなり以前から行なっております。さらにこれを強化いたしまして十分な対策を立てたい、かように考えておるわけでございます。
 なお、わがほうの考え方といたしましては、わが国は御承知のとおり原子力基本法もございますし、それから原子炉等の規制に関する法律もございます。したがいましてこれらによりまして核物質の規制、管理を行なっているわけでありますが、こういうようなそれぞれの国におきますところの管理制度を活用してする、こういうことも強く主張して、そうして査察の合理的なあるいは簡素化された査察を行なうように主張いたしたい、かように考えて、かなり研究を進めております。
 さらにまた、この査察技術の研究開発を推進いたしておりまして、人による査察、もちろんこれは人は必要でありますけれども、さらに各種の計器等を取り入れまして、そして査察の軽減をはかる、こういうことも研究を進めておりまするし、そういう主張を強くいたしてまいりたい、かように考えております。
○麻生委員 いま長官、その民間との相談する場を強化したい、こういうお話ですが、強化するといってもいろいろな強化のしかたがあるのですが、総理、この条約は単なる科学技術庁だけの所管事項じゃないはずですね。実に、いろいろな観点から見て、日本の国の将来のある意味の運命をきめるというきわめて重要な条約です。したがって、総理が国会の本会議の西村質問に御答弁になったように、やはりもう少し強力な諮問委員会をおつくりになって、そこで十分にいま外務大臣が言われたような問題、あるいは科学技術庁長官の発言されているような問題について検討する御意思はございませんか。
○佐藤内閣総理大臣 私の意向をお尋ねになるまでもなく、これから原子力時代になるだろう、かように考えますので、平和利用の面でわれわれがおくれをとらないように、さらにさらに十分の国内整備はいたさなければならない、かように思います。したがいまして、各界各層の方々の御協力がぜひとも必要だと思います。ただいまそういう意味の委員会をつくれということでございますから、そういう点について現存する機関で足るか足らないか、なおそういう点もよく考慮いたしまして、検討してみるつもりでございます。
○麻生委員 いままでは核防条約の中身についていろいろ今後の問題になる点を指摘をして取り上げたわけです。なお時間があればいろいろさらに詰めたい点もありますが、この程度にさせていただきたいと思いますが、もう一つ総理、この条約について私はきわめて高度の政治的立場から考えなければならない問題があると思うのですよ。そういう点についてもう少し見解をお尋ねしたいと思うのです。
 外務大臣、この条約は、総理が言われるように、単なる一国家と国家だけの間のものではない、こういうことですね。特に日本にとっては、現在のところ米国、ソ連ですね。そこで、当然このソ連の動向というものがこの核防条約について大きなウエートを占めてくるというのは論を待たない。そういう観点に立って、外務大臣、終戦後の日ソ間の国交状態というのは一体どうなっておるのかという点をちょっと説明をしていただきたい。簡単でけっこうです。
○愛知国務大臣 日ソ間の状況は、一言にして簡単に申しますと、年を追うごとに親善友好関係が増進してきているということは私は言えると思います。たとえば来月はいよいよ日航の自主運航が始まるわけでございますが、シベリア上空を世界のどの国よりも早く日本に開放した。これなどはその一つの証左と見てもいいのではないかと考えております。それから、先般も日ソ経済委員会、ことしはモスクワでございましたが、日本からりっぱな経済人が相当数訪ソしまして、経済協力の問題等につきまして具体的な結論あるいは計画についての決定はなかったにしても、相当両者の友好関係というものは増進したように思います。
 ただ一つ重大なことは、申すまでもございませんが、北方領土の問題でございまして、これについてのソ連側の態度というものは、私から言えば理解のできないほど厚い壁をつくっておる。政府としては、この友好関係をますます増進する意味からいっても、北方領土問題を話し合いで解決すれば、日ソ間の関係というものはほんとうにりっぱなものになるということで、今後ともこの問題の解決についてはできるだけ早く結論を出すようにソ連側に要請を続けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○麻生委員 いま外務大臣、ただ一つと言いましたが、そのただ一つのほうの最後の領土問題というのは、これは常識的に見れば最も重要な問題ですね。古今東西二国間の紛争のトラブル――つまりトラブルの原因というのは領土問題。これは、ある意味に解釈するならば、解決される方向にあるかもしれないが、しかし、ある意味に解釈すると、これはいつ両国間の最も激烈な紛争の発火点になるかもしれない。そういう火種ですよ、領土問題というのは。そうでしょう。そうなりますと、この日ソ間のいろいろな外交交渉の中で正規に取りかわしているのは昭和三十一年ですか、鳩山、ブルガーニンとの間に宣言されたあと、すぐ引き続いて松本・グロムイコ書簡が出ておりますね。この松本・グロムイコ書簡の中で、明らかに領土問題も含めて将来において平和条約を締結するように双方努力をしよう、こうなっておりますね。それが昭和三十一年ですよ。いま昭和何年ですか、大臣。
○愛知国務大臣 昭和四十五年でありますことはもう申し上げるまでもないところでございます。したがって、この領土問題については松本・グロムイコ書簡をお引きになりましたが、政府としては、これさえ解決すれば平和条約は直ちに締結をする、こういう態度で、昨年私自身が訪ソいたしましたときも、そこを考え方の基礎として強く折衝をいたしたわけでございます。引き続き、これはもう忍耐強くかつ国民世論の背景のもとに、何としても努力を新たにいたしたいと思っておるわけです。
○麻生委員 まあ私は意地悪く聞いたわけじゃないので、とにかくこの書簡が出てからすでに十数年。しかし、いまだにその問題の解決の目鼻はついてない。努力はしているが、ついてない。いま外務大臣は壁が厚いと言われた。そのとおりですね。
 そこで総理、この条約は、総理がしばしばここで言明されるように、国内において非核三原則の政策をとるということは日本国民の意思ですね。外国との間に取引して約束した問題ではないんだ。だからこれは外国の拘束を受ける必要はないんだ。われわれの意思として非核三原則をきめてきておる。しかし、この核防条約にわれわれが批准をするということになると、外国との間に、しかも最も有力な兵器について、ある国はそれを持つことを認め、ある国、つまりわが国はそれを持たないことを約束することになる。極端に言えば、総理と私との間に、あなたはピストルを持ってよろしい、私は持ちませんという約束を取りかわすのですよ、これは。持たない私が持っている総理にこの約束をする以上、総理と私との間によほどの信頼関係がなければ私はあぶなくて約束できませんね。そうでしょう。表向きはいいようなことを言うが、裏に回って何するかわからぬような総理では、私はこれはとてもあなたはピストルを持ってよろしいが、私は持たないとは約束できない。そういうことですよ、この核防条約というものの本質は。例が悪いかもしれぬが、これはそういうことだ。われわれはいまピストルは持っていないけれども、要するにソ連は核兵器を持っていいということをわれわれは認めるのですよ。米国と日本との間なら、いろいろありますけれど、まあ御信頼申し上げておると総理も言うのだから、私も別に米国に一日本国民としていま潜在的な不信感をそれほど持ってはいません。話し合いはできる国だと思っておる。しかしソ連はそうはいかない国である、これは国民の認識じゃないですか。たとえばチェコ問題を見ても、ソ連は何をしたか、こういう認識が国民にあるのですよ。そういう状態の中で、いまのように領土問題が解決してない。十数年かかってもそれができない。今後の見通しも立たない。こういう状態で、私は日本国民としてソ連を含んだ核防条約に調印することは断じてできませんね、これは私の意思としては。しかし、時の流れである、こう総理が言うから、私はその前提として質問をしているのだが、外務大臣、あなたがいまここで核防条約に対して決意をするときに、いまのソ連との関係というのは、私は将来の日本にとってはきわめて重要な要素になると思います。いままでそのことが議論されていない、この核防条約の議論の中には。条約の中身のことだけについての不平等性は言われているが、それさえ是正されれば批准してもいいのだという政府の見解である。しかし、私はそれでは納得できない。少なくともこれを批准するにあたっては、ソ連との間に信頼でき得る国交回復を前提とするという私の意見に、外務大臣どうでしょう、あなたは同感されますかどうですか。
○愛知国務大臣 御見識のある御意見を伺って、たいへん参考になるわけでございますが、一つは、先ほど申しましたように、たとえば問題を限定するようですけれども、米ソ間のSALT交渉の成り行きというようなものは、これは日本の立場からいいましても、あるいは将来の日ソ関係に関しましても、非常に注視をしていく必要がある、こういうふうに考えるわけです。
 それから、もう一つの角度は、これは安保条約との関係を私は当然考えてしかるべきではないかと思いますが、この核防条約におきましては集団安全保障というものを前提としておるといいますか、認めておるわけでございますね。したがって、この安保条約というものとの関連において見た場合におきましては、これは御質問と少しはずれるかもしれませんけれども、日本の国益の点から申しまして、しかるべきではないかと思う。こういうことなどいろいろ考えまして、必ずしもこの領土問題だけと結びつけて考えることが適当かどうかということについては、なお私にもとくと考えさせていただきたいと思います。
○麻生委員 それじゃ外務大臣、もう一つ問題を提起しましょう。いまソ連と中国との間にはどういう条約がありますか。
○愛知国務大臣 これもいまさら申し上げるまでもございませんが、中ソ友好同盟条約があって、これはまだ続いておる、そうしてわが国が仮想敵国になっておる、こういう条約がございますことはいまさら申し上げるまでもないところでございます。
○麻生委員 これは一九八〇年まで有効ですね。そうしますと、外務大臣、客観的に見て、ソ連と日本との間にはいま言ったように核兵器について条約が結ばれてくる、しかも直接な安全保障体制はないですね。そうですね、現在のところ。しかし、同時に中国とソ連との間には条約がある。しかもその条約は、明らかに日本を仮想敵国として設定されておる。そういうことになるのです。そういう最も好ましくない状態ですよ。これはソ連との間に領土問題だけが問題ではないという外務大臣のお答えのほかに、もう一つ私はこの問題があると思う。少なくともわれわれがソ連との間にこの条約を結ぶ以上は、ソ連が他の国との間に日本を仮想敵国として考えないという状態にならなければ、これはうっかり調印できないじゃないですか。どうなるのですか、これは。しかも中国は入らないのですよ、核防条約には。だから、万が一事態が起こって――日本及び日本に関連のある国とある。日本だけじゃないのだ、この仮想敵国は。そういうような状態になったときに、中ソ条約が発動してくる可能性がある。これは一体どっちが優先されてくるのでしょうね、核防条約とそれから中ソ同盟条約とは。しかも核防条約に安全保障の項がいまだに取りつけられてないとすれば、これは最も危険な状態に日本が置かれてくるということになりませんか。だから私は、日本とソ連との関係は、外務大臣が言われたように領土問題だけじゃないと言うのですよ。少なくとも、具体的にはこの核防条約に調印する、そして批准する以上は、ソ連に対して、中ソ同盟条約を破棄してもらいたい、あるいはその同盟条約の質的転換をはかってもらいたい、この具体的要求がなければわれわれは調印できないと思うのですがね。これについての見解をお伺いしたい。
○愛知国務大臣 まず核防条約について申し上げますと、確かに、持てる国と持たざる国との間の関係を固定するというところに基本的な問題があることは、これはもう否定のできないことでありますが、しかし、一方から言いますと、持てる国がこれ以上拡散をしないということがはっきりきまることは、これは一面においてはやはり核防条約の世界平和に対する一歩の前進ということも言えるかと思うのです。これが一つでございます。
 それから、この核防条約について政府声明を署名に際して内外に対して出したわけでございますが、これについては、核の軍縮あるいは安全保障全般についての政府の見解というものも明らかにしておりますので、それらも含めまして、先ほど来申しておりますように、今後の国際政局の動きの中で、わが国の国益を十分考えて措置をこれからしていかなければならないということに――考え方としてはいまおあげになりましたようなことも考え方の中に入れていく必要はあると思いますけれども、先ほど申しましたように、あるいはソ連との間においては領土問題についてこれを条件にするとか、あるいはまた中ソ友好同盟条約にお触れになりましたが、これとの関連づけをどういうふうにするかというようなことについては、もう少しとくと考えさしていただきたい。一つの御見識として承っておきます。たいへん貴重な御意見を伺いましてありがとうございました。
○麻生委員 どうも外務大臣からお礼を言われても困るのですがね。ソ連はこの間何か新聞の報道によると、日本においてこの条約の調印について消極的ないしは反対をしているものを取り上げて攻撃していますよ。他国のことについて攻撃するなら、やはり日本政府はソ連に対して、堂々とこの中ソ同盟条約的なものを何らかの形で質的転換をはかってもらいたいと外交折衝を通じて要求する、そのぐらいのことは私はできると思いますがね。領土問題は折衝中と聞いておりますから、これはおまかせをしておきます。われわれだけができることではない。しかし、この中ソ同盟条約の存在については、いままでわが国はあまり触れていない。安保条約の攻撃はソ連はしますよ。いや軍事同盟であるとか何であるとかいろいろ言う。しかし、事実上において中ソ同盟条約はもっとそういう色彩――これは完全な軍事同盟。しかも仮想敵国が日本である。その関連国である。これに対してやはりソ連に対して外交折衝を通じて改善していくという努力、この努力ぐらいは外務大臣されたらどうですか。その御意思はございませんか。
○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、中ソ友好同盟条約が条約としては厳として存在している。そして八〇年まで有効である。日本が仮想敵国になっているということはもう周知の事実であり、そして日本としてこれが愉快な存在でないことは当然でございますけれども、国際緊張の緩和という大きな立場に立って日本の国盛を伸長していこうという場合の外交上のいろいろの手を考えてまいります場合に、どういうふうにいまの御見識のある御意見を取り入れていくかどうかというようなことについては、十分ひとつ考えさしていただきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 外務大臣とただいまいろいろ意見を交換しておられるので、もうそれで事足りるように思いますが、ただいまたいへん重大な問題だと思っております。私どもが調印はしましたが、批准までの間にいろいろの点を十分御審議いただきたい、こういうことを申したのであります。その中にただいま言われるような、いま核を持っておる国、その国自身でこの核防条約に参加していない国が二つある。大体フランスの意向はわかりましたが、中国大陸の、中共の考え方はわからない。これが一つ。もう一つは査察の問題につきまして、英米ソと、こう三つ言われますが、米英ははっきりこの査察についての態度も明らかにしている。まだソ連はそこらが非常に不明確だ。こういう点も明確にする必要がある。ただいま各二国間の条約の問題がとやかく言われますが、これなぞは、まあそれぞれの国がそれぞれやるのでございますから、それまで内政に干渉しようとは思いませんけれども、私は国際条約、多数国の間で話をする限りにおいて、この核防条約、これは、核拡散はもうそれより以上ふやさないというその点はたいへんけっこうですけれども、しかし核を持っている国が特別な特権を振り回わすような状態は困る。したがって、それらのものもやはり公開の原則の方向に話がつかないのか。ここらにわれわれがこれから努力する点がある、かように思います。したがいまして、ただいま御指摘になりました点はそれぞれ最も重大な問題だ、かように思っております。
○麻生委員 そういう点をひとつ総理、外務大臣、十分に意を尽くされて、批准までの間にそれぞれの国民の意見を聴取をしていっていただきたい。
 そこで、最後の問題ですが、さっき外務大臣、五年ごとにレビューするという提案をわが国がしたというお話でしたね。ところで、これは調印をしていればそれに参加できるのですか、できないのですか。
○愛知国務大臣 これは条約に参加ということが前提であると思いますから、批准を寄託をして正式の加盟ということになってこの権利を行使することができる、かように理解いたしております。
○麻生委員 そうすると、ここに五年という――これはわが国が提案したのでしょう。そうすると、わが国が提案しておいて、五年たってその時期が来たというときに批准してないという状態があり得ますか。
○愛知国務大臣 これはもう別に考えてよろしいと思います。政治的な発言は大いにできると思います。
○麻生委員 そうすると、それには拘束されない、こう解釈してよろしいですね。
 そこで、最後の結論ですがね。総理いま言われましたように、この条約というのは、単なる核防条約としてだけ取り上げて論ずることはできない。これに関連して当然新しい安全保障のあり方が問題になります。世界のですね。それから、もう一つは、これは自主防衛の問題にも触れてくるわけです。いままで国内の政策として非核三原則はあるが、自主防衛という概念だけを取り上げれば、それは核を持つという点まで含めて自主防衛体制というものは考えられておるわけですよね。しかし、この条約は明らかに自主防衛に一つの限界を与えてまいります。つまり、国際条約において核兵器は持たない、その範囲における自主防衛体制だ、こうなってきますね。したがって私は、核防条約を論ずる場合には、この核防だけではなくて、いま申し上げた核防条約、それから新しい平和安全保障体制、特に核保有国と核非保有国との間における安全保障体制、それから、第三にはそれに見合う国内の自主防衛体制、これが三位一体になって初めて新しい一九七〇年代の世界的な平和体制の秩序ができ上がってくるわけですね。そういう観点から私はこの核防条約の問題を取り上げていただきたいと思うのですよ。
 ところで、そういう観点から、現行の日米安保条約だけにたよっているという状態では、もはやそれは間に合わなくなるわけです。ソ連の問題が出てきておる。それじゃ一体ソ連と日本との間にどういう安全保障を取りつけるべきか。そのためにもし日米安全保障の中に一つのネックがあれば、それもわれわれは虚心に取り除いていこう。そのかわりソ連と中国との間のこういうような条約上における好ましくない点は取り除いていこう。そして日本とソ連との間にも安全保障を取りつけていこうと、こういう構想がこの条約を論じてまいりますと示されてくるのですね。そういう意味で三位一体的な新しい平和体制、この上に立ってこの核防条約の問題をとらえていただきたい、これは私の要求と注文であります。それについて簡単に御所見を伺いたい。
○佐藤内閣総理大臣 要求と注文、つつしんで承っておく、かように申せばいいかと思いますが、そうでなくて、やはりただいま言われることが今日の世界の平和と繁栄、その基幹でございますから、私どもは十分注意しなければならない。私どもはアメリカと特別な関係を持っておりますが、そのアメリカがすでに米ソ間で特別な関係をつくりつつある。いま対立しておると見られる自由陣営、さらに社会主義陣営、その二つが提携して世界の平和と繁栄に寄与しようとしておる。このことを考えると、いままで私どもが選んできた道が間違いでないように思っておるのであります。したがいまして、私は、いまこの状況のもとにおいては特に考える事柄はあまりないのじゃないだろうか。いま言われます中ソ友好同盟条約の問題が云々されますけれども、他国間のことはあまり言わないほうがよろしい。言えば、だんだんまた議論が発展しますから、なるべく言わないで、私どもの日米安全保障条約というものが、これは攻撃的なものでない、これがわが国の防衛上必要な問題だ、この点を十分理解していただく。また、アメリカ自身がいわゆる世界的な侵略主義、帝国主義だというような批判がございますけれども、いい例が米ソそれぞれがただいま話し合っているじゃないか、世界の方向は、お互いに手を握る方向に向かっているのじゃないか、かように私は思いますので、この状況をさらに進めていくようにお互いに気をつけるべきじゃないだろうか、かように思います。私はまた、われわれが選んだ非核三原則、これは私、佐藤内閣として大いに自慢のできることじゃないか、かように思っております。
○麻生委員 安保体制についての議論はきょうは省略をいたします。いまのは私も聞きおくということだけにしたいと思います。
 次に、次の質問に移りたいと思いますが、いわゆる言論・出版の自由の問題について所信をお伺いしたい。この質問に入る前に、昨日私どものほうの国対委員長が発表されておりますように、とにかく最近この問題に触れますと、いろいろ好ましくないような電話がかかってきたり、あるいははがきが舞い込んできたりするのですね。はなはだ身辺穏やかならざるものがわれわれの同僚議員の中にもあるのです。こういう点については、私は、特に国家的な保護を求めようとするものではありませんけれども、やはり国家公安委員長、この種の問題についてもしかるべき措置をおとりいただきたいと思うのですが、現在どういうふうに考えておられますか。
○荒木国務大臣 お答え申し上げます。
 どんなふうに考えているかというお尋ねでございますが、事柄としては、きわめて低俗な、不届きしごくなことだと存じております。関係の警察本部からも一応の報告はあっておりますけれども、むろん、だれが何のためにやったかということはわかりません。わかりませんけれども、不届きなことであることには間違いございませんので、警護いたしますと同時に、犯罪の容疑もございますから、捜査中でございます。
○麻生委員 まあ、それはだれがやっておるのかわからないのですね、実際には。いろいろだめにするものもあるでしょうし、直接のものもあるでしょうが、ひとつ十分御留意をいただきたいと思うのです。言論・出版の問題に触れるとその種の事件が起こることは好ましくありませんから、そういう点はひとつ初めにお願いを申し上げておきます。
 そこで、出版取り次ぎ業に関する所管大臣はどなたですか。――もっと具体的に、日販、東販等、これは取り次ぎ業というのですよ。大臣、取り次ぎ業というのをあまりお知りにならないかもしれない。しかし、これは重要なことなんです。出版物を取り次いで小売り店に流す、出版屋から取り次ぐ、この業務をする所管大臣はどなたですか、と聞いているのです。
○宮澤国務大臣 おそらく、よそのどこにも属しませんので、通産省企業局であろうかと思いますが、これに関しての法令などは一切ございませんと思いますから、どう申しますか、事実上監督等の方法はないのではないかと思っております。
○麻生委員 通産大臣、つまらないところに出てきましたね。あなたじゃないのですよ。私は初め、あなたのところだと思っていたのです。そして通産省へ聞いてみたら、そうです、こういう答えで――いま日本出版取次協会というのがあるんですよ。大きな協会で、これは社団法人ですよ。通産省だと思ってお聞きしたら、そうだと言うので、調べた。そうじゃないと言うのです。どこを聞いてもわからない。とどのつまりは、文部大臣、あなたなんだな、これは。あなたは知っていますか、それを。
○坂田国務大臣 仰せのとおりに、社団法人日本出版取次協会は私の所管でございます。
○麻生委員 それなら、初めから出てお出になればいいじゃないですか。それじゃ、所管大臣も含めて御質問をしていきますから、大臣が直接お答えにならなければ、どなたでも担当官に答えさせてください。きわめて簡単なことをお伺いしておきます。
 それからもう一つ、出版業に関する所管は、これは通産大臣、あなたのほうですか。
○宮澤国務大臣 ちょっとはっきりいたしませんが、実はたとえば出版印刷などになりますと、近代化というような仕事は私どもの仕事になっておりますが、出版業そのものがそうであるのかどうか、まことに申しわけありませんが、私によくわかりません。
○麻生委員 困りますな、これは。これは一番重要な商売なんですよ。そうでしょう。言論・出版の自由ということをみんな口にして議論していますが、それがどこの所管にかかり、どういう業種であるかということをだれも知らない。そんなばかなことがありますか。実は私もあまりよく知らなかったのだから、あまり大きなことは言えませんよ。しかし、いまこれだけ大きな問題になっているのですから、それぞれ所管大臣はよく御調査願いたいと思うのです、この件については。印刷業はあなたのほうの所管ですよ。それから出版業と印刷を兼ねている業者もありますから、あなたのほうの所管業者もある。ところが、単に本を企画して出版して、印刷は印刷業だけに流す業種もあります。そうなりますと、これは文部省の所管になってくる。だから、なかなか多岐にわたるのですよ、この出版というのは。そういう意味でそれぞれ関係大臣にお尋ねをすることになりますから、しかるべきお答えを願いたいのです。現在、日本における出版業の数、どのくらいありますか。
○安達政府委員 現在、日本出版取次協会に入っておる取り次ぎの業者は三十九社でございます。
○麻生委員 取り次ぎ業者を聞いたんじゃないのですよ。出版業の数を聞いたんですよ。私の推定ですが、一九七〇年代ごろには、おおむね二千五百社くらいじゃないかと推定しております。それから、出版される書籍の、一カ月どのくらい出版されておるかということを御存じですか。本というものが一体一カ月どのくらいの種類出ておるものなのか。――時間が経過します。これも正確になかなか知りがたいのですけれども、一万六千冊くらい出るんですね。だから、日本におきましては、相当おびただしい書物が出版されておるわけです。これはやはり米英に比べても、出版物の数におきましては日本はトップクラスですよ。それほど出版事業というものは繁栄しておるわけですね。
 そこで、その年間の販売額も、これも私の推定ですが、一千数百億円にのぼる、こういわれております。ですから、この出版業というのはなかなか大きな業種なんですね。そこで、取り次ぎ店の数はいまお答えになられたようですが、その中の大手と称する取り次ぎがありますね。それはいま御答弁された政府委員ちょっと答えてください。
○安達政府委員 いわゆる大手というのがどの程度からということでございますけれども、たとえば東販とか、それから日販、それから日教販とか、そういうような会社がございます。
○麻生委員 大手五社というのは常識ですから覚えておいてくださいよ。日販、東販、栗田、大阪屋、中央社、この五社が大手五社と一般業界では呼ばれておるのですね。これが大手五社と呼ばれているのです。その中で、日販、東販が市場に占めている比率、この二つの社が扱う比率はどのくらいですか。
○安達政府委員 一つお断わりを申し上げたいと思いますけれども、私のほうでは、出版取り次ぎ業自体、そういう商行為の問題を問題にいたしていないのでございまして、私どものほうは出版文化の普及というような面で、この日本出版取次協会を監督しておるわけでございますので、たいへんお尋ねの問題に対して不確かなことをお許し願いたいと思います。
○麻生委員 そのとおりなんです。だから、そういう所管がいままでなかなか明らかになってないんですよ。この機会ですから――私はこんなことを質問して別にいじわるを言っているんじゃないのです。なかなか複雑なんです。いま言ったように、文部省が取り扱っているのは、出版普及、文化の面から取り扱っているので、業務については、これは通産省なんです。通産大臣、業務の関係はね。そういうことになりまして、これは私の推定でありますけれども、日販、東販で取り扱う市場は約六割を占めておる、こう一般にいわれておるわけです。
 そこで、問題の本質に触れていきたいと思うのですけれども、この言論・出版の自由という解釈についてですけれども、総理、一般論として言論を省いて出版の自由ということはどういうことを意味するか、総理御自身の見解をお伺いしたい。法的解釈はあとで。
○佐藤内閣総理大臣 いずれ法制局長官から答えさせたほうがいいかと思います。しかし私は、ただ出版しただけが、それで出版の自由、言論の自由、これで確保されたとは思っておりません。したがって、やはり頒布、そういうことまで含めてではないだろうか、かように思っております。
○麻生委員 法制局長官、ちょっと法的に御説明願いたい。
○高辻政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま総理が要領のいいところをおっしゃいまして、それに実は尽きていると思います。要するに、「言論、出版その他一切の表現の自由」と憲法に規定がございますが、お尋ねがそこに入っているかどうか知りませんが、印刷の方法であれ、その他の言論の方法であれ、いずれにしても表現の自由一切が保障されておる。そして、その表現の自由というのは、発表だけではなしに、いまもお話がありましたように、他人にそれが伝達される自由、これも当然に含まれておるというふうに解されているのが一般でございます。不備がありましたら、またお尋ねに応じてお答えいたします。
○麻生委員 そうしますと、総理の御答弁は間違ってなかったわけで、つまり、出版の自由というのは、単にわれわれが出版物をつくるまでの自由ではなくて、出版されたものが公正なルートによって国民の前にさらされ、国民が選択し得る自由、そこまで含められる、こういうことになるわけですね。そうすると、出版の自由という問題を論ずる場合には、その認識の上に立って論じないと、これは抽象論になります。
 そこで、問題はきわめて一般論なんですけれども、出版の自由が侵される、あるいは妨害されるという場合、要するに二つのケースが考えられますね。その一つは、それを出版されるまでの過程の中で何らかの圧力が加わって自由な出版ができなかったという場合、これが一つ。それからもう一つは、出版された出版物が正常な理由によらざる理由、つまり取り次ぎ店が持っている権限、営業上の理由あるいはその本が著しく公共の安寧を乱すであろう、風俗の秩序を破壊するであろうと思われる著書――この判定はなかなかむずかしいところでありますが、いわばそういうような理由以外の理由で取り次ぎを拒否された場合、この本は正常なルートによって市場に流されることが不可能になります。この二つの場合が出版の自由が侵された場合と想定してよろしいですか。
○高辻政府委員 いろいろ具体的な事例を頭に置いてのお話かもしれませんが、一般的に申し上げまして、印刷物が配給ルートに乗っかっている段階であろうと、これがその事前の印刷の段階であろうと、これは問いませんことは先ほど申し上げましたが、その頒布が国法上禁止されていないものについて国政の権力がその頒布を妨害するというようなことになれば、もちろん憲法に違反するということになるわけでございます。
○麻生委員 国政の権力が妨害した場合。もう一つありますね。それじゃ、国政の権力以外の何らかの圧力の場合はどうですか。
○高辻政府委員 通常憲法のことでございますために、たとえば憲法の十三条等をごらんになればわかりますが、「国政の上で、最大の尊重を必要とする。」というように、通常憲法というものは国政の基本に関する事項を規定しているというふうに解されておることは御承知のとおりであります。したがって、通常基本的人権が問題になりますのは、そういう国政の権力と国民との関係というのが出てくるのが典型的な場面でございます。しかし同時に、国民というものは、憲法によって基本的人権を与えられておりますから、私人の間ではどうでもいいという問題ではむろんございません。その場合にどうなるかというのは、やはり民事上あるいは刑事上の責任を問われるということによって国法のたてまえがとられているわけでございます。
○麻生委員 ちょっと話は飛びますけれども、これはどなたの所管かな、戦時中において言論統制が行なわれておりましたね。この戦時中の言論統制の機関は、これはどこだったですか。
○高辻政府委員 一般的には内務省でございましたが、私しかとその確認をしておりませんが、あるいは情報局がやった時代もあったのではないかというふうに考えております。
○麻生委員 それは主として検閲をするためにそこが所管したわけですね。その二つだろうと思います。そして、その所管する機関として日販が生まれましたね。これも事実だと思いますね。ところで、戦後この日販機構は凍結されていますね。凍結されたんですが、新しく、雨後のタケノコのように取り次ぎ業が起こってはいかぬということで、新しく取り次ぎ業の協会が生まれたのが、先ほど申し上げた取次協会なんですね。この協会の所管が文部省ということになっておるのですが、その中身を分析すると二つの面にわたってくる。一つは完全に文化行政の面、それからもう一つは商業行為、この二つの面にわたってくる。ところで一番大事なことは、凍結されたにもかかわらず、その資産がどういうふうに引き継がれてきたかという問題があるのです。
 これはちょっと、質問の前に私申し上げておきますが、この資産が凍結されたのではなくて、機関が凍結されたのでありまして、その資産はそのまま、いわゆる今日の日販に引き継がれてきておるというような状況になっておる疑いがある。したがって、当初から日販機構、それに分離した東販機構、この二つの機構は、戦時中における統制機関の資産をそのまま引き継いで、しかし、形の上においては戦時中の責任、つまり言論統制の責務がはずされて、新しい責任が負わされてきた、こういうことになっておるのですね。したがって、取り次ぎ業界において、この日販、東販がなぜ現在六割に近い市場を占有しているかという理由は、この辺から生まれてくるわけなので、自由競争の上に立って、日販、東販が今日の市場をかなり占有しているという状況ではない。したがって、出版界の上においては、日販、東販のウエートというのは非常に今日強い。そういう状況を念頭に置いた上で、質問に答えていただきたいと思うのです。
 そこで、取り次ぎ業のことについて通産大臣、今度は業務関係になるのですが、公取委員長でもけっこうなんですけれども、取り次ぎ業が、出版屋が出版をした本について取り次ぎを拒否する正当な理由とは何か、この点を御答弁を願いたいのです。
○谷村政府委員 一般的に申し上げまして、常に取引は、公正にかつ競争の条件のもとに行なわれるのが経済のために望ましいというふうにいわれるわけでございます。その場合に、もしいま御質問のように、ある取り次ぎ店が取引を拒絶したというようなときの理由が、たとえば先ほどちょっと御指摘になりましたように、自分の社是に反するような好ましくない出版物だからとかというふうな、正当な理由があればよろしいと思いますけれども、一般的には、そこにいわゆる他人を排除したりとか、あるいは無理やりに拘束をつけるとか、そういう独禁政策上不公正な取引方法という形においてできることはよろしくないというふうに思います。
○麻生委員 そうしますと、たとえば私が本を出した、その本を出した出版屋が取り次ぎ店に依頼をしたが、取り次ぎ店が正当な理由なくしてこれを拒否するということは独禁法違反の疑いも出てくる、こういう見解ですか。
○谷村政府委員 これは非常にむずかしい御質問でございますが、一般に取引は自由でございます。その自由なものに対して、不公正とかどうとかという観点から問題を見るわけでございますから、具体的な実態をよく見ませんと、一がいに何ともお答え申しかねます。本来、すべてのそういう取引は私人間によって自由なのに、公取なら公取という立場から介入するわけでございますから。
○麻生委員 そこには、公取委員長、御存じのように営業権というのがありますから、営業の自由ということもあるから、その本を取り次いでも、それが営業上のプラスにならないと判断をすれば、取り次ぎとしては好ましくない、つまり取り次ぎたくないという見解が出てくるのは当然だろうと思うのですよ。そういうような観点に立ちまして、要するに取り次ぎが書物を扱う場合は二つの扱い方があるのは、公取委員長御存じだろうと思いますが、一つは新刊扱いですね。これは新刊書として、注文がないけれども、取り次ぎ業が何部取り次いでやろうといって取り次ぐ場合、これは書店からの注文がない場合ですね。それからもう一つは、書店から取り次ぎに対して注文が来て、その注文に応じて出版屋から本を取り次ぐという、二つのケースがあるわけです。これが今日の取り次ぎ業を中心とした流通機構になっておるわけですね。したがって、この二つの道が閉ざされると、いかなる出版屋といえども、書物を出版してもそれは書店には並び得ないという結論になってくるわけですね。
 そこで公取委員長にお伺いをしたいのですけれども、いま申し上げた二つのルートが閉ざされた場合、しかも、それを閉ざした場合に、一社だけではなくて、少なくとも取り次ぎ業の大きな比重を占めると思われる業者が集まって謀議をして、その結果、ある書物に対して取り次ぎを拒否したという事実が出た場合、これは明らかに独禁法違反になりますか。しかも、その取り次ぎが占める比率は市場の半数以上を占めている場合・…――
○谷村政府委員 御質問の具体的な事実を調べなければ、何とも申し上げられないと思います。それ以上、いま直ちに違反になるとかならないとかいうふうには、ちょっと申せないと思います。
○麻生委員 ちょっと公取委員長、私はきわめて具体的な事実をあげたのですよ。私が出した本が新刊書扱いにもされない、しかし注文は来た、しかも各社が謀議をして、注文が来たにもかかわらず取り次ぎを拒否したという場合、きわめて具体的な場合です。
○谷村政府委員 市場に一切取り次がないというふうにして、取り次ぎ業者全部がかりにその本の扱いをしない、一切やらないというのが、たとえば不公正な取引方法として、もう営業を完全に妨害するのであるとか、あるいは排斥してしまうのだとか、そういうことでありますと、いわゆる独占禁止法第十九条の不公正な取引方法をとってはならないというのに該当するかもしれないと思います。それは事実をいろいろと調べて、どういう理由によって拒否したか……
○麻生委員 疑いがあるかと聞いておるのです。
○谷村政府委員 疑いはございましょう。
○麻生委員 それでけっこうです。疑いはあるということですね。
 それから、もう一つ公取委員長に聞きます。書物を出版した場合に、その出版された書物を広く国民に知ってもらうための方法としては、取り次ぎ業が出している種々の情報機関にそれを掲載する道が一つ、これは直接書店に流れます。もう一つは、一般広告によって、国民にその書物が出版されたことを知らしめる。この二つの方法きりありませんね。あとは原始的な方法、つまり一軒一軒注文をとって歩くということ以外にはない。しかし、今日の社会の中で、先ほどあげたような書店が数多くある中で、一軒一軒注文をとって歩くという方法はまず不可能です。そこで、この二つの道が閉ざされた場合、この書物は完全に店頭に並ぶこともできないし、国民の選択の前にさらされないということになりますが、どういう事実があるとすると、これは法制局長官、やはり憲法上の疑いは出てまいりますか。
○高辻政府委員 先ほども申し上げましたように、この憲法上の問題として取り上げる場合に、十分に御承知のことでございますが、先ほども例をあげました十三条の規定に照らしましてもわかりますように、国政の権力という強大なる権力と、国民という、それが持っておる権利との関係の問題として出てくるのが、通常の考え方でございます。しかし、先ほどもお尋ねがありましたように、そうでない場合は問題でないのかといわれれば、むろんそうではなくて、国民相互の間にそういう関係が生すれば、先ほども申し上げたことでございますが、刑事上あるいは民事上の責任追及の手段によって解決がはかられることになっておる。そういう意味で、第一段には国法の何といいますか、もっと憲法に身近の法律の問題としてまず第一にあがってくる。それが間接的に憲法に無縁でないことはむろんでございますが、申される状況のいかんによっては、そういう問題が生じることもあり得ると思います。
○麻生委員 公取委員長、もう一つ広告業のことについて聞きたいんです。
 いまわれわれは、自由に自分を広告する自由を持っていますね。これもある意味において、出版の自由に匹敵する自由だと思いますけれども、もし一社の出した出版物が、その広告が、先ほど申し上げたようないろいろな妥当ならざる理由、たとえば卑わいであるとか風俗上ひっかかるとか、あるいは誇大宣伝であるとか、そういう条件ではなしに、一方的に広告業から広告の掲載を断わられた場合、しかも、その断わった事例が一社だけではなくて相当数の各社、つまり広告における市場を占有していると思われる各社が謀議をして断わった場合、この場合はどうですか。
○谷村政府委員 具体的な事例について見ませんとわかりませんですが、一切、たとえば広告業界が横に連絡をとって、たとえばある業者を排斥した、ボイコットしたというふうなことに正当な理由がなければ、不公正な取引方法として間議される事件になるかとも思います。
○麻生委員 わかりました。
 もう一つ公取委員長にお伺いしたいことがある。今度は、出版業界の中で、ある出版社が出した出版物の取り次ぎをある取り次ぎ店に要請したところ、他の出版社から、その取り次ぎをすることは困ると言われ、そしてその取り次ぎをする場合には自分の取引は中止をする、しかも、その要請をした出版屋は、その取り次ぎに対して相当数の売り上げをあげている場合、つまり実績がある場合、この場合は妥当ですか、妥当でないか。妥当でないとすれば、どういう法律にかんがみて妥当でないか。
○谷村政府委員 これも具体的に、どういう状況のもとにどうであったかということによるかと思いますが、自分の競争者を排除するために、妨害するために、その地位をある事業者が利用して、そうして相手方に取引のたとえば条件をつけたとか、拘束を加えたとかいうふうな場合には、先ほど申し上げました不公正な取引方法を使ってはならないというのに該当するおそれがあるかとも存ぜられます。
○麻生委員 そうしますと、いま御質問をしました点は三つにしぼられるわけなんです。つまり出版の自由という基本的な問題に関して、先ほど総理が御答弁になりましたように、その出版物が少なくても正規の配給ルートを通して国民の選択できる状態に置かれることまで含めるとするならば、いま申し上げました幾つかの事例が事実あったとすれば、それは明らかに出版の自由が侵されていた――何も政府が侵したという意味じゃありませんよ。何らかの要因によって侵されていたと判断する以外にはありませんね。私は政府が侵したとは言うてない。もしいま申し上げたような、公取委員長が答弁したような事実があったとすれば、出版の自由はやはり侵されておった――いま侵されておるかどうかということじゃありません。あったとすれば、やはり侵されておったと総理もお考えになりますか。
○佐藤内閣総理大臣 自由営業の場合、これはいろいろの立場でいろいろの問題が議論されるわけであります。ただいま言われたように、一方的にそれが何かの圧力でどうゆがめられたんだ、かように判断できる場合もありましょうし、また、これは本来がわれわれの営業の自由だ、そういう意味から、ときには利益を無視しても取引をする場合もございますから、その辺はやはり民間の営業の自由、こういうこととも関連して考えていかないと、ただ単にいまのように、理論的にこう、どんどん進められて、公取委員長も答弁に困っておるんじゃないかと思いますが、私は、片一方で圧力を加えるとかあるいは特別の暴力をふるうとか、こういうことは厳に戒めなければならないし、これは個々にまた法的にも、それを救済する方法はございます。しかし、一方で営業の自由がある、また行動の自由もあるんだ、それも尊重しなければならない。そこらにそのむずかしさがあるんじゃないだろうか、私はかように考えます。
○麻生委員 これが総理、普通の商品なら、営業の自由というのは相当優先されてくると思います。しかし問題は、出版物となると、出版の自由という憲法との関連が出てくるわけですね。だから、営業の自由というたてまえと憲法の保障する出版の自由というたてまえとがどういう関連になるかという観点から判断をしないと、これは確かに結論は出しにくい問題だと思います。いま私が想定をした一つの事実は、普通の物品取引の場合を私は公取委員長に聞いているわけです。憲法の問題は聞いてないのです。普通の物品の場合でも、もしさような事実があれば、それは独禁法違反の疑いがあるという答弁を公取委員長はしているわけです。そこにさらに加えて、これが出版物であるということになると、その上にプラスをして、法制局長官が言われているような出版の自由との関連というものが新たに加えられてくるわけです。その比重がかなり重くなってくるわけですね。ですから、そういう点を総理もよく整理をしてお考えをいただきたいと思います。
 なぜ私がこういう問題をここで取り上げるかといいますと、それはたまたまいま一つの事件が起こっておる。その事件が単なる一商品の問題だけなら私は取り上げない。しかし、それを機会に、出版妨害事件ということが大きくクローズアップされています。国民は、この問題について一つの疑惑を持っている。と同時に、出版の自由とは何かという論争が起こるべきものである。いままでわが国はやったことがないんだ。そこで、私がここで提示しているのは、一つは出版界全体のあり方、いま御説明申し上げましたような日販、東販が市場の六割も占有し、しかも、その日販、東販が取り次ぎの書物に対して選択権まで持っておるということになると、出版の自由がそこで明らかに一つの検閲とはいかなくても、関門を通ることになります。したがって、そこで好ましくないと出版取り次ぎ業から判定をされると、その本はそこでシャットアウトされる。そのほかの方法によって店頭にさらすということは、今日の出版界はきわめて困難な状態にある。したがって、出版屋は、出版取り次ぎに対しては実にたいへんなみつぎものを持ってきます。私の事実として把握しているだけでも――何も特定な事例ではない。どんな本であろうと、出版されると、もうそれこそお百度を踏むのです、取り次ぎ業者に。何とか自分の本をひとつ取り次いでくれ、自分のところから出した本を受け入れてくれといって、お百度を踏んでおる。そのことは、必ずしも正常な流通機構とは言えない。そこで私はこの際に、出版界のあり方を問題にしたいと思うのです。一つはそういう意味で質問をしてきたわけです。
 そこで、私はもう一つ、いま申し上げた事例をあげたいと思う。先ほどから事例がない、ないという御答弁でしたから、事例をあげる。総理はこの本を御存じでしょう。総理もごらんになって、お読みになっているはずです。お読みになりましたか。ちょっと御答弁してください。
○佐藤内閣総理大臣 詳細には読んでおりません。前書き、あと書きは読みました。
○麻生委員 前書き、お読みになったですか。これは別に私が無理に強要して読めとは申し上げません。ただ、総理の常識的な判断で、この藤原弘達氏の書いた本が、世間に触れるに足らない書物である、俗悪な書物である、低級な書物である、あるいは何らかの形で法にひっかかる書物であるとお考えですか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申しますように、中身は読んでおらない、かようでございます。
○麻生委員 そうすると、中身を読んでないからわからぬとおっしゃるのですか。
○佐藤内閣総理大臣 批評の限りではない。
○麻生委員 いや、私は批評しろと言っているのじゃない。この本が出版された、これは事実ですね。この出版された書物は、先ほど総理のいう言論・出版の自由に基づいて、当然店頭に流されてしかるべき書物だとお考えかどうかという判断をお伺いしているのです。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま頒布されておるのじゃございませんか。
○麻生委員 頒布されて店頭に並んでおりますね。しかし、一時期において並んでなかった時期もあるわけですね。それは総理は御存じなくてもいいんですよ。そこで私は、この書物が一時期においてどういう理由で店頭に並ばなかったかということをほんとうは御説明申し上げたい。
 そこで私は、ここで委員長にちょっとお許しをいただきたいのでありますが、ここにテープがございます。このテープは盗聴のテープといういかがわしいものではないのであります。この本を出版をした出版屋と取り次ぎ店のしかるべき代表者との間に取りかわされ、しかも、ある理由をつけてこの取り次ぎを断わった内容がすべて出版屋の記録の上に保存されていたテープであります。私はこれを聞いております。この内容の中には、ある出版取り次ぎ業の代表者がかくかくの理由によってこの本を残念ながらお扱いしかねるということばが出ております。私は、ほんとうならこの席上においてその内容を全部公開をして、それがまず第一に独禁法違反にかかるのかかからないのかの問題、次に、憲法の出版の自由の項目に抵触するかしないかの問題について討議をしたいのであります。しかし、私も国会議員でありますから、むやみにこれを公開をして議論を起こしたいとは思わないのであります。したがって、私は委員長に提案をしたいのであります。この際、私がいままで質問したような、もしそれが事実であればと答弁をした事実は、私の資料の上においてはほとんどすべて一つの事実として疑いを持たざるを得ない点を私は指摘したいのであります。しかし、それを私は一つ一つここで取り上げて言うことは差し控えます。かような事実が、いま私が指摘したような事実があったのであります。しかも、その事実は記録として保存されておるのであります。
 したがって、かような事実があった以上、私は、これは単なる法律問題としてではなくて、この機会に出版業界全体のあり方に対して、国会は言論・出版の自由の立場からその真相を究明し、なおかつ将来かかることがないような適切な措置を講じていただきたい。しかもこの問題は一委員会だけに所属する問題じゃないことは先ほど御指摘したとおりです。各委員会にまたがる問題でありますので、予算委員会の中において私は特別調査委員会を設けていただきたい、これが委員長への一つの提案であります。
 それからもう一つは、この特別調査委員会において、現在の機構の代表者、取り次ぎ代表である日本出版取次協会の代表及びこの本を出版した出版社の代表、日新報道出版部の代表及びもう一つ、潮出版社の代表、著者である藤原弘達、この四人を参考人としてお呼びをいただいて、いま私が質問した事実について真相の究明をしていただきたいということを御提案を申し上げます。お取り計らいをお願いいたしたい。
○中野委員長 麻生君にお答えを申し上げますが、この問題については、一昨日社会党の赤松委員よりも要求がありまして、目下各党の理事間において話し合いを進めつつありますので、さらに理事会におきまして引き続き協議をいたしたいと存じておりまするので、御了承を得たいと存じます。
○麻生委員 いま委員長がお話しされましたような方法でぜひひとつ慎重にお取り上げをいただきたいことを要望いたします。
 続いて、いま少し時間が残りておりますので、次の質問に移りたいと思います。これはきわめて一般的な質問ですが、文部大臣にちょっとお伺いをしたいのです。
 大蔵大臣、これは質問要項に入っておりませんので、どうぞそのおつもりでお答えをいただいてけっこうなんですが、今度私学に対する援助、まだできてないようですが、新しい財団を仮定をして、私学援助ということに相当の予算を盛っておられますね。その予算の概要を、もし御記憶でしたらちょっと御説明していただきたい。
○鳩山政府委員 数字の点でございますので、私からお答えさしていただきます。
 私学の助成の関係につきましては、主体といたしましては、私立大学の経営費の助成を計上いたしまして、百三十二億二千万円でございます。前年度は、それぞれ中身としては私学の助成になる科目がございまして、それらが五十七億一千八百万円ございましたので、七十五億二百万円増額をいたした次第でございます。
○麻生委員 文部大臣、いま説明されましたように、今度相当の増額を予算の上に大蔵大臣は盛っておられるわけですね。私は私学出ですから、私学に対してもっと国が助成すべきだという基本的意見には全く同感であります。ただし、私はやはりその前に幾つかの問題点があると思うのです。その問題点の一つとして、私、きょうここにある大学のものがありますが、大学に入学をする時期に、まだ入学がきまらないのに、ある大学は寄付の要請をしておるのですね。そして入学以前に申し込み書を出せ、こういう要請をしているのですね。私は、その大学の名誉もあると思いますから、名前は申し上げません。またこの大学だけではないのであります。もうこれは常識化しておる。こういう入学時にからませて大学が寄付の要請をするということを文部大臣は好ましいと思っておられますか。
○坂田国務大臣 寄付金につきまして強制にわたるようなやり方をやっておるということは、好ましいことではございません。これはやはり是正すべきものであると考えておりますし、ことしから私学に対する人件費を含めました経常費補助が相当額計上され、御審議をわずらわしておるわけでございますが、そういうからには、その国の税金が正しく使われるようなことを前提として援助をやらなければならないと思っておりますし、ただいまのような、入学試験時期に際しまして寄付金等を強制をするというようなことは、好ましいことではないと考えております。
○麻生委員 この寄付には、文部大臣、あなた御承知のように、二つのケースがあるのですね。一つは、入学案内の中にもう初めから寄付をすべきものであると盛り込んで入学案内を出している場合、それから入学案内には出てないが、さて受験をすると封書が舞い込んでくる場合、こういう二つのケースがあるのですよ。前者のケースはやむを得ないのですか、どうですか。
○坂田国務大臣 その点に関しましては、一応私立大学に募集あるいは方法、金額等についてはまかされることにはなっておりますけれども、やはりこれもおのずとその常識を逸脱したようなことではいけないのではないかというのが私の考え方でございます。
○麻生委員 そうすると、問題になるのはあとのケースですね。いま好ましくないと文部大臣は判断された。しかし、もう一つのケースがあるのですよ。それは、文書にはならないにもかかわらず、口頭で寄付を要請される場合、関係各大臣の中に、もしそういうことに関係された方がおいでになるかどうか知りませんけれども、われわれもよく、これは率直に申し上げますが、国会議員に頼めば大学に入れるのじゃないかといって、入学試験時期には何人かから要請を受けると思います。そういう要請を受けられて、ふところの中に受験番号をお入れにならざるを得ない大臣も何人かおいでになるのじゃないですか。これは、私はやむを得ない、断われないと思う。しかし頼んだほうは、国会議員に頼めば入学ができるものと考えて、まあわれわれが橋渡しをする。ところが、橋渡しをするというと、いつの間にか今度は口頭である種の金額の寄付を要請されているということを、あとで知ってびっくりする場合があります。このケースもありますね。文部大臣どうですか。
○坂田国務大臣 従来そのようなことがございましたので、それを改めまして、いま先ほどお述べになりましたように、もし寄付金を取る場合は、明らかにそれを公開をして、受験をされる人たちもそれを心得て、そして取るということがいいのではないかというふうな指導をやっておる次第でございます。
○麻生委員 そうすると、文部大臣、初めのケースは文部大臣の指示、文部省の指示で各大学は入学案内に寄付を明記したということになるのじゃないですか。そうでしょう。そうですね。では、それは好ましいのじゃないですか、政府としては。
 そこで、問題を一つにしぼりますよ。まあ裏でやるやつはなかなか取り締まりがむずかしいと思うが、これはもう言語道断ですよね、そういうことを大学がやる限りにおいては。しかもそれが常識であるというに至っては、大学の権威いずくにありやですよ。ゲバ棒があばれるのはあたりまえですよ。それから第二の、こういう別な文書で出す場合、そういう通達をしたにもかかわらず、こういうものを出した。これは盗人たけだけしいというのですよ、こういう行為を。じゃあ文書にして大っぴらにやればいいだろうと言わんばかりじゃないですか、これは。入学案内には書いていない。本来ならやみで取るべきところだが、やみで取るとうるさいから、文書にして出せばいいだろうという、この盗人たけだけしい事件がある。これはこの大学だけではない。先ほど好ましくないと言われた文部大臣は、この私学に対して国が助成するという法案が出ているのを機会に、各私立大学に対してどういう善処方を具体的に御要望されるか、私はお伺いしたいのです。
○坂田国務大臣 いまの問題につきましては、最近私も新聞で承知をいたしたということでございまして、これからひとつそういうことのないように厳重に注意を促したいと思いますが、これから先、国立大学と私立大学を比べてみましても、あまりにも国の助成というものが、百数万人もいる私立大学に対してこれまでなかった。これに対して、やはり私学に学ぶ学生に対しても、教育、研究の質的向上をはかる意味をもちまして助成をしていくということは、これは好ましいことであると私は考えるわけでございますが、それにつきましては、私学振興財団、まだこれは仮称でございますけれども、この法案を御提出申し上げ、その際におきまして十分仰せのようなことについて手落ちのないような仕組みを考えてまいりたい、こう考えておるわけでございまして、いましばらくその具体策につきましてはお待ちをいただきたい。しかし、この国会におきまして御審議をわずらわし、また、この国会において通していただかなければならぬと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
○麻生委員 そうしますと、何らかの具体的な案を提示する、こういうお約束ですね。――ありがとうございます。
 それからもう一つ、あと二分ありますから。
 経理、これはある大学のごときは脱税で摘発されていますね。この経理について、いま各大学は全くばらばらですよ。おそらく政府といえども、これを掌握していない。英国のごときは国が助成をしても、その経理についてはまことにガラスばりですね、各大学は。そういう経理面についても何らかの処置を講じられる御意図はございませんか。
○坂田国務大臣 いま御指摘になりましたように、イギリスのUGCにおきましても、最近非常にUGCが取り扱う金がたくさんになりましたがために、会計検査院の検査を受けるということまでもいたしております。私どもといたしましても、これだけ多くのお金を私学に助成をいたします以上は、その経理基準等につきまして、やはり会計検査あるいは公認会計士を置かせるというようなもろもろの措置を当然考えなければならないと思っておる次第でございます。
○麻生委員 以上をもちまして、時間が参りましたので質問を終わります。ありがとうございました。
○中野委員長 これにて麻生君の質疑は終了いたしました。
 午後の会議は、一時より再開することといたします。
 この際、暫時休憩をいたします。
   午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時七分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 総括質疑を続けます。大橋敏雄君。
○大橋(敏)委員 連日の委員会でさぞやお疲れと思いますけれども、国民のための問題でありますので、しっかりがんばっていただきたいと思います。
 私は、内政問題、中でも特に社会保障問題を中心にお尋ねしてみたいと思います。
 わが国は、経済大国日本といわれるほど、いわゆる自他ともに許すだけの成長を遂げました。確かに自由諸国では第二位という偉大な成長でございますが、その反面、何と申しますか、国民所得は世界自由諸国の中では十九位という低い位置におります。ということは、いわゆる国は栄えて国民は貧乏だ、富国貧民の姿、こういう姿が出ておりますが、これはやはりわが国の社会保障制度、その姿勢そのものに私は問題があるのではないかと、こう考えるのであります。また、わが国の社会保障は医療保険中心型といわれておりまして、最近非常に医療偏重に対する批判の声が高まっているようであります。また確かに、四十五年度の政府の社会保障関係予算を見ますと、一兆円台の大台に乗り上げたとはいいますものの、その中身を見てまいりますと、それはほとんど医療費、半分以上医療費が占めているという中身でございます。また、わが国の国民所得に対する社会保障給付費の割合を国際比で見てまいりますと、日本は六%でございます。EEC諸国の三分の一です。北欧、英連邦諸国の二分の一程度の状況となっておりますが、文化国家の名にまことに恥ずかしい状態ではないかと私は考えるのであります。
 以上私が述べましたことについては、皆さまも十分御承知のはずと思いますが、ここでお尋ねしたいことは、まず、先進諸国に比べて大幅に立ちおくれておりますわが国の社会保障制度について、今後どのような構想を持って進まれるか、それが一つです。
 もう一つは、社会保障費の対国民所得比は、いつごろまでに何%までに引き上げていこうというお考えを持っておられるか。大蔵大臣と総理大臣にお願いいたします。
○福田国務大臣 社会保障費につきましては、ずいぶん努力をしておるわけでありまして、これは戦前の基準年次では実に一・四%を予算の中で占めるというような状態だったのです。それが、今日におきましては、予算の中における比率が一四%、実に十倍になるというような拡大ぶりでございます。
 これは今後国民所得との間にどうなるか。いまでは五・五、六%ぐらいになっているかと思いますが、これは高負担、高給付なんということもいわれますが、租税その他の保険税、その関係をどういうふうにとるかということと非常に密接な関係があるので、将来どういうふうにするかということは、まだ見当はつけておりませんけれども、社会保障につきましては、今後とも熱意を持ってやっていくということは、これは政府の一貫した方針でございます。
○大橋(敏)委員 いま、五・五、六程度だろうとおっしゃいましたけれども、それについてどの程度、いつごろまでに引き上げていこうというお考えがあるかどうか、これを聞いたわけですが、大体の大臣としての腹案といいますか、それでけっこうですけれども……。
○福田国務大臣 今後、この比率をどうするか、これは国民が社会保障に対してどういう負担をするかという問題と非常に関係があるのです。保険税的な負担を国民が大いにする、こういうことになると、この国民所得との関係は、比率において非常に上がってくるということになりますが、その辺もよく考えなければならぬ。ただいまはとにかく、いま御指摘もありましたが、医療費中心というふうな傾向もあります。医療費について抜本的な改正もしなければならぬ、そういう問題もかかえておりますが、まだどの程度にしたらいいだろうという見当はつけておりません。社会保障制度審議会なんかでもいろいろ御議論はされておるようでありますが、その負担関係とにらみ合わせながら、今後も社会保障政策についてはできる限りの努力をいたしてまいる、かように御了承願います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまので尽きていると思いますが、私は、お尋ねになるのは、やはり長期計画を持てということではないかと思っております。先ほど、自由陣営第二の国民生産力を持っておるその国が、個人所得では十九番と、こういうことでございましたが、これは私がもっと社会保障をやらなければならないというほうから説明をするので、その点を誤解のないように願いますが、十九位は世界の各国全部でございます。これを人口一千万以上の国だけについて見ると、日本の一人当たり国民所得、これは八番目でございます。またさらに、五千万以上の大国で見ると、日本の場合は五番目でございます。こういうようなことを考えると、日本の経済力に見合ったような国民生活の充実、発展をはかるべきは、これは政府の当然考えなければならない問題だ、かように私は思います。ただ、こういう事柄で経済発展がその芽をつまれるということでは困りますから、とにかく、経済発展をしながらさらに国民生活を充実、発展していく、こういうことでなければならないと思います。
 そこで、国としての長期計画は、いわゆる新経済社会発展計画、こういうものといま取り組んでおるわけであります。この経済社会発展計画の中で、社会保障あるいは国民生活保障の地位がどういうように位置づけられるか、これをとくと考えていただきたいと、かように思います。したがって、ただいま、一体何年でどうなるのか、こういうものを具体的にお示しすることはできませんが、私どもは、さらにさらに国力が増大すればするだけに、さらにまた国民の生産意欲を高めつつ、さらに発展を遂げて、そうしてお互いの生活の充実をはかっていく、そういう計画を進めてまいりたいと、かように思います。その詳細は、新経済社会発展計画、これにやはり盛らなければならない問題でございます。
○大橋(敏)委員 お察しのいい総理大臣ですので、私が聞かんとするところは、長期計画をつくれということだろう、まさにそのとおりであります。先ほど大蔵大臣のお話を聞いていましても、確たる計画はまだないと、こう言っております。実は、社会保障関係の権威者の話でありますけれども、わが国の社会保障の立ちおくれの大きな原因は、この長期計画がないことなんだ。ちょうどたとえて言うならば、羅針盤も持たないような船が太平洋を当てもなく航海しているようなものだ。非常に不安定だ。われわれ国民の立場からこれを言うと、逆三角形的な不安定な感じを受けるわけでございますけれども、私は、やはりこの社会保障自体の長期計画、少なくとも五カ年計画ぐらいはがっちり策定すべきである。話によりますと、参議院での総理大臣の答弁の中に、五カ年計画は組むというような趣旨の答弁がなされたと聞きますけれども、これはどうだったのか。この話は大体どういう話なのか。
 それともう一つは、もし社会保障関係の長期計画が組まれましたならば、その国会に対する年次報告を国に義務づけるべきであると、私はこう考えるのですが、それもあわせてお答え願いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 経済社会発展計画、これはどうも控え目だ、こう言って、過去の計画については御批判がございます。確かに、過去われわれがつくった経済社会発展計画、それを上回るものがございました。こういう計画をつくります以上、それがやはり現実に守られるような、その目的を達成できるような、そういうものであってほしいと思います。ただ上回ったからいいじゃないかというようなものではないと思いますので、これはそういう点で十分注意していくつもりでございます。新しい社会経済発展計画はそういう意味で立てられると、かように思います。
 事柄の性質上、五年よりも十年、あるいは二十年というような非常に長期にわたるものが望ましいと、こういうような説もございますが、しかし、何よりも、いま現在の状況で少なくとも五カ年ぐらいは、もっと実際に合い得るような、そういう計画が立てたい、かように思って、種々計画しておる最中でございます。たぶん、ただいまの社会保障の五年計画というのは、この社会経済発展計画、それと合わしての考え方ではないかと思います。
 それから、もう一つの年次報告をひとつやれ、こういうような問題については、まだもう少し検討を必要とするんじゃないだろうかと私は思いますが、さらにこういう事柄も皆さん方と話し合った上で結論が出てくれば、たいへんしあわせのように思います。
○大橋(敏)委員 厚生大臣にお尋ねいたします。
 いま総理あるいは大蔵大臣の答弁を聞いておりましたけれども、まだ確たる答弁はないわけですが、直接の社会保障関係の担当大臣として、あなたはこのような長期計画等に対する考えをどのようにお持ちであるか、お答え願いたいと思います。
○内田国務大臣 わが国の社会保障給付の割合、あるいはまた同じことになるのですが、振替所得の国民所得に対する割合というものが、先進のヨーロッパ諸国などに比べて数字的に現在低いことは、御指摘のとおりでございます。また私どもは、この割合を将来に向かってできるだけ引き上げるべく努力をいたすのですが、ただ大橋先生も御承知のように、わが国が社会保障制度を、医療保障につきましても、年金すなわち所得保障につきましても、整えましたのは、昭和三十四年から五年、ちょうど日本の経済成長の出発時点でございます。これも大橋先生からお話のありましたように、医療保障は国際的レベルまでいっているということでございますが、そのとおりでございまして、所得保障、年金のほうにつきましては、昭和三十四年から六年ぐらいまでの間に出発いたしましたけれども、いまだ本格的な年金を受けておる人々が少ないわけでございます。したがって、これはこのままの制度でいきましても、今後年をふるごとに年金受領者というものがふえてまいりますので、当然わが国の社会保証の金額は国民所得に対して上がってまいります。私は、むしろそういう所得保障なりあるいは医療保障については、日本は形の上においては世界の先進国並みのレベルまで来ているから、あとは年を追うごとに上がっていくので、これから先はいろいろな福祉問題あるいは国民の健康を保持するようなことについても、厚生大臣として意を配ってまいりたいと思います。
 ところで、現実の目標でございますが、これは総理からも大蔵大臣からもお話がございましたように、現在経済社会発展計画というものをつくっております。これは経済発展計画と言いませんで、特に経済社会発展計画と言っていただいているゆえんのものは、経済成長計画の中に社会開発の計画、すなわち公共投資と社会保障の計画をも加えていただくという趣旨が十分織り込まれているわけでありまして、この計画は遠からず大体の形ができるはずでありますけれども、その中におきまして、わが国の社会保障給付の向かうべき道を、これは私どもも計画の立案者の一人として参画をいたしておりますので、ある程度の形においてお示しすることができると思います。私は、おそらく今後五年か十年の間には年金の支給がふえますので、先発のヨーロッパ諸国にかなり近いような形の振替所得率あるいは社会保障の給付率があらわれてくるものと確信をいたしております。
 それから、年次報告の問題につきましては、これは厚生白書、これがいわゆる厚生行政年次報告として出されておりまして、これはたいへん親切に、ざっくばらんに詳しく出ておりますので、大橋先生御承知のとおりでございます。
○大橋(敏)委員 私は、年次報告を国に義務づけていくんだ、つまり内閣にその責任を持たせて公表していくことを言っているわけです。
 それから、いま社会保障の低水準が年金部門の立ちおくれにあると、こうお認めになりましたが、これについては異論はございません。しかし、年金部門の立ちおくれの中に、それと同じようにわが国の社会保障の低水準を招いているのに、児童手当制度の実現がありません。これについて私は少しお尋ねしたいと思います。
 この児童手当は、もうすでに天の声といわれるほど国民が待望しております。すでに各地方自治体も二百二十三カ所も実施しているわけです。これは財源が余裕があって始めたんじゃない。つまり、国がぐずぐずしてやらないものだから、しびれを切らしてやっているわけです。そういうわけでございますが、四十五年度から何とか児童手当が実施されるというような傾向であったので国民が待っていたわけですが、どうですか、厚生大臣の社会労働委員会における所信表明の中には、児童手当については一言も触れられなかったですよ。私は、自分の聞き間違いではないかと疑いました。しかし、そのあとで記録をたんねんに調べてみました。もし私が誤解をするということになれば申しわけないと思いまして、一字一句調べてみましたところが、千八百八十三字ございますが、その中に児童手当のことは一言も触れられておりませんよ。私は、このときにがっかりもするし、憤りも感じました。こういうことで、はたして厚生大臣は児童手当をやる気があるのかどうかと心配をしていたわけでございますけれども、二月の二十一日のこの予算委員会で矢野書記長が児童手当について質問した際に、総理大臣も大蔵大臣も、そして直接担当の厚生大臣も、はっきりと希望に満ちた答弁をなさいました。それを聞きまして一応安心はしましたものの、私はなお不安を感ずるものがあるわけです。
 それは、話はちょっと変わりますけれども、ことしの三月の一日から東京都の、これはわが党の都議会議員団が強力に主張して、それに動かされていよいよ児童手当が支給されることになったわけでございます。これとても東京都二十三区だけであります。あとは、三多摩方面等はそれには該当しないわけですね。これはやはり国が児童手当を実施しない限り、いつまでもこういう問題が残るんじゃないか、私はこのように思うのです。そこで、この際私は確認をしておきたいと思うのです。
 第一に確認したいことは、ことしの八月一ぱいに答申を出してくれと審議会に依頼をなさったということですが、それは明四十六年度予算の概算要求に児童手当を入れるという意思のあらわれである、こう理解したいと思いますが、これでいいかどうかという問題です。
 それから第二の確認は、答申が提出されれば、直ちに立法化に着手をするということでしょう、ということが確認の第二です。
 さらに、今国会の会期中に答申を受けるよう努力をしなさいと矢野書記長がさらに質問をたたみ込んだわけでございますが、それに対して厚生大臣は、審議会にその意を伝えるけれども、無理だと思うので、報告を聞いてその骨子を提示する旨の答弁をなされたはずでありますが、この点は特に大事なところであります。大切なところでございますので、これは答申が間に合わないという時点、そういうことがはっきりした時点において、大臣が審議会の経過、問題の報告を受けて、そしてその骨子を今国会終了までに国会に必ず報告いたします、そういう意味に解してよろしいか。このように私は解しているわけでございますが、間違いありませんね。
○内田国務大臣 児童手当の件につきましては、おおむね大橋先生がただいま御発言をなされましたとおりに私は考えております。ただ、概算要求ということばを使わないで、私はできるだけ早くこれを実行に移すために、八月までに答申をいただくことが厚生大臣としての私の予算をも含めたその後の段取り上、ぜひひとつそういうことで答申を願いたいということを申し入れております。
 それから、本国会中にできれば答申をいただくように、これも児童手当審議会のほうにお願いを申し上げておりますが、
  〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
それが不可能と思われますので、その場合には、その時点における……
○大橋(敏)委員 ちょっと、私が言ったことに対して、そうかそうでないか、答えてもらえばけっこうです。
○内田国務大臣 おおむねおっしゃるとおりでございますが、多少ニュアンスがありますので、いま申し上げたとおりであります。
 本国会の会期中にでき得る限りこれも答申をいただけるように努力をいたしますが、それが不可能であった場合には、私はその時点における審議会における審議の経過並びにどういう点が困難であるかというような、いろんな中身の骨子について取りまとめて御報告を申し上げる、こういう趣旨でございまして、今国会中に児童手当案そのものの骨子と、こういうこと、努力はいたしますけれども、そういう意味でございませんことは、これはひとつ御承知おきをいただきたいと思います。
 なお、もちろん法制措置につきましても、私は他の予算等の措置とあわせまして、でき得る限り早くこれが実現の方途を、予算ともども法律ともども、でき得るような努力を続けてまいることはもちろんでございます。
○大橋(敏)委員 厚生大臣、お疲れでしょうけれども、私がしゃべっているときは聞いておっていただきたいと思います。私は、何も中間答申を求めてその答申の骨子を示せと言ったわけじゃないですよ。あなたがこの前の委員会でお答えになったそのままを、私は記録を見てここに持ってきたわけです。そのとおりですかと聞いたわけですから、そうかどうかを答えてもらえばよかったわけです。
○内田国務大臣 前に私が答弁を申し上げました記録に沿ってのお尋ねでありますならば、そのとおりでございます。
○大橋(敏)委員 私は、きょう三つ確認をしたわけでございますが、厚生大臣は、そのとおりというお答えをしました。そのような答弁をやはり総理大臣も認められるかどうか、これも一日でけっこうでございます。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまよく伺っておりましたから、誤解はないと思っております。
○大橋(敏)委員 それでは次の問題に移りますが、移る前に一言言っておきますが、この児童手当については、こまかい問題が山ほどございます。一日も早くその骨子を出してもらって、その骨子が出た段階で私はそのこまかい点についてお尋ねしたいと思います。
 次の問題に移りますが、次は特に大蔵大臣にお尋ねいたします。
 それは、厚生年金、国民年金の積み立て金についてでございますけれども、この年金の積み立て金の管理運用についてでございます。この年金積み立て金は、すべて大蔵省の資金運用部に預けられて政府資金として一括管理されているわけでございます。この年金の積み立て金は、将来のいわゆる年金給付の財源として加入者から強制的に集められた零細資金の集積でございます。他の郵便貯金等とは根本的にといっていいほどにその性格は違うと思うのです。他の政府資金とは性格が違うと思います。この点、大蔵大臣はどう考えておられるか。
 その前に、この積み立て金がいまどのくらいになっているかということを、政府から提出されております資料を見てみますと、昭和三十六年度で五千九百六十四億、約六千億です。それが八年たちました昭和四十四年度で四兆円になっております。累積ですけれども、四兆円です。そして来年度の単年度だけでも、国民年金、厚生年金から積み立てられる金額が約一兆円近いものがここに出ておりますけれども、これは、ばく大な金でございます。
 また、昭和四十五年度の財政投融資原資見込みという資料を見てみますと、昭和四十五年度財政投融資原資見込み総額が三兆五千七百九十九億円、これを一〇〇と見まして、そのうちの七一%がいわゆる資金運用部資金になっております。その運用部資金の七一%の中に、厚生年金、国民年金の合計額が九千二百二十七億で三五%も占めておりますけれども、昭和三十六年以来今日まで運用については何の改善もなされていないのですね。
 したがいまして、積み立て金の特性にかんがみまして、これが運用にあたっては相当の配慮をなさっていいのではないか、私はこのように思うのですけれども、この点、いかがなものでございましょうか。
○福田国務大臣 相当の配慮はいたしておるわけなんです。大橋さんも御承知のように、財政投融資、これは予算とともに、わが国の国政を運営する上におきまして非常に重大な役割りをいたしておるわけですが、ただいま御指摘の年金につきましては、特に運用可能額からその二五%を還元運用、つまり還元融資というふうに特別な配慮をいたし、その年金の性格を尊重しておる、十分な配慮をしておる、かように考えております。
○大橋(敏)委員 先ほども申し上げましたように、昭和三十六年約六千億のものが現在四兆円にも達しているわけですよ。昭和三十六年当時ですら二五%です。そして今日まで何も改善されていない。しかも、その当時の社会保障審議会の出しております申入書を見ますと、「公的年金積立金のみならずすべての社会保険の積立金は総合的な基金制度のもとに管理運用すべきものである。とくに三十六年度予算編成にあたり見送られた公的年金の特別勘定は来年度予算においては必ず実現する必要がある。」特別勘定を設けろと、こうはっきりいっておるわけですけれども、二五%の比率も変わっていないし、特別勘定も今日まで設けられていない、こういう現実でございます。
 そこで、このように附帯決議や審議会のいろいろとした意見が出ておりますけれども、その最も強い要望は有利運用の問題、それから福祉還元融資の問題であると思います。そのためには資金運用部に年金の積み立て金に関する特別勘定を設けるべきである、私はこう思うのです。つまり、他の政府資金とは区別して管理運用すべきだ、こう私は思うのですけれども、その点についてはどうでしょうか。
○福田国務大臣 さような資金は、統合して統一的、総合的に運用するというところに妙味もあり、効果も出てくる。これは予算についても同じでございますが、社会保障目的税をつくって、これは社会保障だけに使うのだ、またほかの目的のために特別の財源を設定するのだというようなことになったら、これはいわゆる財政の硬直化そのものになっちゃう。財政投融資につきましても、まさに同様でありまして、あらゆる公的資金を集めてこれを公的に運用する、そこで初めて国家的に有効な働きのできることになるのじゃないか、さように考えておりまして、年金資金を財源とする分だけを取り離しまして、これを特別の用途に向けるという区切る考え方、これは賛成いたしかねます。
○大橋(敏)委員 昭和三十六年の「国民年金積立金等の運用方針」これは大蔵省と厚生省で申し合わせたもので、その中に、「財政投融資計画の策定に当っては、極力国民生活の向上に重点を指向するほか、特に年金資金等の使途については、国民生活の安定向上に直接役立つ住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業等に最重点をおき、特にその一部は」と、いろいろとこういってありますが、要するに、厚生年金、そして国民年金の積み立て金はやはり特別勘定として運用するのが至当である、これがよろしいという意味の申し合わせがなされておりますよ。これについてはどうです。
○福田国務大臣 精神としては、私もそう考えます。これはやはり社会福祉、また社会福祉に関連のあるものに十分な配意をいたさなければならぬ、そういうふうに考えますが、先ほど申し上げましたように、こま切れに目的別にそれを区分して運用するということでは、ほんとうに公的資金を運用するゆえんではない、かように考えます。
○大橋(敏)委員 まあ年金の積み立て金の管理運用、特別勘定の問題にせよ、あるいは運用利回りというものは、非常に将来の給付水準や保険料に影響するところが私は大きいと思うわけです。そういうわけで、昨今長期金利体系の改定の問題が出ております。話題になっております。すでに社債金利の決定を見ておりますが、早晩国債の利回りも改定されるやに聞き及んでおりますけれども、積み立て金の有利運用の点についてはどうお考えになっておるか。
○福田国務大臣 積み立て金は、これはもちろん有利にしなければならぬが、同時に、これは大事な金でありますので、確実という点もまた考えなければなりませんけれども、有利かつ確実というところで最大の効果をあげるように運用いたしたい、かように考えています。
○大橋(敏)委員 還元融資ワクの拡大についてもう一言触れておきたいのですが、いま二五%でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、国会においてはしばしば論議もされ、そうして附帯決議やあるいはいろいろと問題になっているわけでございますけれども、被保険者、加入者の福祉還元の趣旨という立場から考えた場合、先ほど、精神からいけばとおっしゃいましたけれども、そういう立場になれば、少なくとも二五%を三分の一まで拡大するという考えはないか。私はこれは当然だろうと思うのです、この程度までは。それはどうでしょうか。
○福田国務大臣 まあ、いま二五%なんで、この辺が精一ぱいかというふうに考えているのです。公的な資金需要も非常に多い、またそれを総合的に運用しなければならぬ。そういう際で、いまこの二五%を拡大する、これはいま考えておりませんです。
○大橋(敏)委員 とにかくこれは社会保障の充実という点から見た場合、非常に重大な要素を含んだ問題でございますので、それこそ慎重にこの問題と取り組んでいただいて、もっと有利な立場に立てるように配慮してほしいと思います。
 それでは、問題を次に移したいと思います。
 まず国民年金のことでございますけれども、国民年金の所得比例任意加入制が今度採用されております。先般の改正で夫婦で二万円年金だと、こう呼ばれておりますけれども、私は疑問でならないのであります。というのは、この国民年金の内容を見てみますと、定額部分八千円プラスの妻の年金額八千円プラスの所得比例四千五百円イコールいわゆる二万五百円。まあ確かに制度の上からいけば、計算の上からいけば、二万円でございます。しかしながら、実態は、極端にいうと、所得比例はことしからでございますから、それを入れて二万円ですから、いまから二十五年先にならないとこの平均的なものは受けられないということになるわけです。これはあくまでも任意加入でございますが、これはある程度家計に余裕のある人だけが加入できるということにもなるわけですね。さらに、この所得比例給付については二五%の国庫補助がついておりますけれども、これを考えていきますと、いよいよ所得比例に加入した者としない者とに大きな開き、いわゆる格差ができる、不均衡ができる、私はこう思うのです。なぜ、この所得比例制を、厚生年金みたいに強制加入にしないで、任意加入にしたのかということ、これをお尋ねしたいわけです。
○内田国務大臣 年金制度は国民年金と厚生年金が骨格をなしておりますことは、大橋さん御承知のとおりでございますが、厚生年金のほうを昨年の大改正によりましていわゆる二万円年金ということにいたしました。それに対応いたしまして国民年金のほうも、私ども厚生当局といたしましては、どうしてもこの給付水準を引き上げることを考えざるを得ない状態でございましたが、その際定額制のほうも掛け金の引き上げをいたしておりますので、それに加えて一挙に所得比例部分につきましても強制加入にすることは、私は、必ずしも国民の納得が得られるかどうかわからない、かようにも考えまして、とりあえず上にのせる所得比例部分につきましては、これは任意加入といたしました。ただし、これは厚生年金と違いまして、国民については雇用者がございませんので、国のほうが御承知のように四分の一、二五%の給付時の負担をいたす、定額部分につきましては、これも御承知のように拠出時三分の一を国が負担をいたす、こういうことにいたした次第でございます。しかし、これは第一段階でございますので、先ほども述べましたように、この年金が成熟するに従いまして、大橋さんのお説のように、所得比例の分も、これは第二段階の強制加入分として繰り入れるような措置ということも私は考えていく時期があるのではないかと考えております。
○大橋(敏)委員 大臣のお答えは非常に丁寧でございますけれども、時間の関係もありますので、私が聞いていることだけをすぽっと答えてもらえばいいです。
 国年の発展を期するためには所得比例制を採用するということは、これは当初からいわれていたことでありますが、しかし、私がここに疑問に思うことは、この所得比例の対象になるいわゆる適用対象員数、あるいはその段階的区分等がはっきり把握された上でこの制度を発足されたのかどうか、これについてお答え願います。――じゃ、時間がないので、これは、はっきり言いますと、おそらく私は、厚生省としては、なさらないまま、やられたのじゃないかと思うのです。つまり、このような任意加入でさっと入れられたということは、後々また問題も出てきますけれども、農民年金等々の問題もからみまして、こんな措置に出られたのではないかと私は疑問を抱くわけでございます。この所得比例制は当然強制加入にして、もしその保険料を納められない人に対しては、たとえばボーダーライン層あるいは低所得者に現在法定免除、申請免除という措置がとられておりますけれども、それをもう少しワクを広めて、それを適用なさるというような考えで強制加入にすべきである、私はこう思うのですが、この点はどうでしょうか。
○内田国務大臣 お説のように、強制加入にして、それに対して法定免除、申請免除の適用を行なうべきであるということは、御意向としては、私は承っておきますけれども、ただいまもお話がありましたように、とにかく二万円年金にするために任意加入ということで出発をいたしましたので、今後の課題として研究をさせていただきたいと思います。
○大橋(敏)委員 任意加入で入らなければ二万円にならぬじゃないですか。二万円年金といえないじゃないですか。だから、二万円年金にするためには、これに全部入らなければならぬというわけです。だから、強制にして、保険料をかけられない者には、法定免除あるいは申請免除等の適用を拡大した措置をとればいいんじゃないかと言っておるわけです。
○内田国務大臣 これは、もう大橋さん御承知のように、拠出制の年金でございまして、福祉年金とは違うものでございますから、所得比例部分を強制適用にして、しかも納められない者は幅広く法定免除、申請免除にするということも、私は一気にはなかなか考えられないことであろうと思いますので、たびたび申し上げますように、年金制度の成熟の過程において、一つの課題として考うべきことだと私は考えます。
○大橋(敏)委員 考えられないことであるとおっしゃいましたけれども、考えられるんですから、将来においてじっくり考えていただきたいと思います。
 それじゃ、福祉年金の問題でございますけれども、老齢福祉年金は、昭和四十一年、第六次の改定以来、毎年百円ずつくらい上がっている。最近二百円上がったこともありますけれども、これは物価の上昇、消費水準、こういう伸び率から見ると、いわゆる所得保障とはもういえない状態にあります。
 ちなみに、昭和三十四年の法制定当時には、老齢年金月額二千円でございましたけれども、その二千円の半額が老齢福祉年金、千円ということになったわけですね。そうして、いま十年間たったわけです。十年間たちました今日において、一方は八千円になりましたけれども、福祉年金のほうは、今度で二千円だという話でございますね。その計算からいきますと、その半分なら、少なくとも四千円以上にはすべきだと思うのですがね。その点はどうですか。
○内田国務大臣 わが国では、年金制を採用するにあたりまして、拠出制を原則といたしておりますことは言うまでもありませんけれども、しかし、昭和三十四年に国民年金制を採用いたしました際に、すでにある程度の年齢に達しておった人、加入しようにも加入できない人に対する便法として、御承知のとおり、福祉年金として無拠出の年金を発足させたわけでございます。したがって、原則としてはあくまでも拠出年金を本体として、これが今後だんだん増加をいたしていくもので、福祉年金は、いわばつなぎでございますし、まあ、今回二百円上げて月二千円になるわけでございまして、多々ますます弁ずですが、逐次上げさせていただくよりほかにないだろうということで、今後も、私どもはこの点を念頭に置きますけれども、一挙に上げることができないことは、これまたひとつ御了承をいただきたいと思います。
○大橋(敏)委員 いま大臣がお答えになられたとおり、この福祉年金は、ふえることはまずないと思うのです。しかし、現在二千七百二十七名の受給者がおることになっておりますが、このわずかな人たちに対して、金額を一挙に上げることはできないとおっしゃるならば、せめて所得制限を撤廃すべきだと思うのです。それこそごくわずかです。これについて、まず厚生大臣、それで返事が出なかったら、総理大臣にお願いしたいと思います。
○内田国務大臣 これも、福祉年金は無拠出でございますから、金額を一挙に上げないのと同じような考え方から、やはりその本人あるいはその家族に老齢者を扶養するような力のある者には、無拠出であるがゆえに差し上げられないというようなことで、所得制限を置いてあるわけでございますが、これも今回、御要望のとおりではございませんけれども、一定の家族数に応じまして、ある程度の所得制限の引き上げをいたしたことも御承知のとおりでございますので、これもまた状況に応じまして、逐次私は改善をしてまいるよりほかないと考えるものでございます。
○大橋(敏)委員 総理大臣、この福祉年金の対象者というのは、もうごくわずかでございます。金額にしても、今度上がって二千円でございますが、たいした金額でございませんので、これはむしろ所得制限等を撤廃して、お年寄りを救っていくべきではないか、こういうふうに思うのですが、この点はどうですか。
○佐藤内閣総理大臣 わが国の年金制度についていろいろの考慮を必要とする、さらに増額すべきものだ、こういう一般的な御批判については、私も同じような感じを持っております。しかし、現実の問題として、一挙にこれを拡大していくということはなかなか困難なことであります。その意味では、先ほど来厚生大臣が懇切に御説明しているこの趣旨で、私どもの政治の姿勢をいま正しておる、そういうのが現状でございます。
 なお、もちろん、こういうことを申しましたからといって、私は一切いまのままでいいと、かように言っているわけじゃございません。年金制度が成熟するに従ってだんだん金額がふえていく、かように御了承いただきたいと思います。
○大橋(敏)委員 それでは、農林大臣にちょっとお尋ねいたしますが、いままで国民年金の対象者としていた農業者の皆さまに、農業者年金というものがいま諮問されているわけですけれども、その要点を、簡単でけっこうですから、お話し願いたいと思います。
○倉石国務大臣 農業者年金の考え方には大別して二つございまして、一つは、御承知のように、農業規模を拡大してまいるためには、零細な農家の方で、農業として経営を営んでいくには不向きであると感じられる、そういう方々には、やはり規模拡大に寄与するわけでありますから、離農される場合に年金を差し上げよう、こういうのが一つで、もう一つは、国民年金は六十五歳から支給されるのでありますけれども、六十歳から始まって、先ほど来お話のございました国民年金の比例分の上に若干上のせをして、農業を守っていただく方々の老後保障に資そう、この二つの思想があるわけであります。
○大橋(敏)委員 いまお話を承りますと、離農者のためのものであり、また、農業者に対する老後の生活の安定云々ということでございますが、いまおっしゃっただけのことであるならば、私は、もう何も異論はございません。農業者年金そのものに対して異論をはさむものではございませんけれども、その内容について、運用面について、農地の売買とかなんとかがあるわけですね。この点が、いままでの年金体系から見た場合、非常におかしいんじゃないか、このように感ずるのですけれども、この点について厚生大臣はどう思われますか。
○内田国務大臣 ただいま農林大臣からお話がございましたように、農業者年金を始めましても、当初は、その人が六十歳になるまでは支給されません。したがって、拠出金がたまる一方でありますから、これの運用の問題が生ずるのでありますけれども、これの運用の方途の一つとして、この制度は、そもそも農業構造の改善、新農政との関連のためのものでもあるという趣旨から、余裕金の範囲内において農地の買い入れの制度が認められる、こう解すべきだと私は考えます。
○大橋(敏)委員 では農林大臣、私が先ほど聞いたのは、いままでの年金体系の姿から見て、農地の売買等をその年金基金からやるというのはおかしいのではないかねと、こう聞いたわけです。それに対して厚生大臣の答弁はちょっとはずれておりますので、農林大臣のほうから……。
○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、規模を拡大して、農業というものの経営を他産業に比べて劣らないようなりっぱな経営に体質を改善しよう、こういうことの過程の間に、離農しやすくしてあげるためには、これは日本だけが考え出したわけではなくて、御存じのように、ヨーロッパではもう長年やっておることでありますけれども、そういう土地の流動をさせるために、いまの年金基金という制度をつくりまして、そこで土地の流動化がしやすくなるようにその基金が運営をしようではないか、そういう考え方で基金ができているわけであります。
○大橋(敏)委員 農地の売買とか規模拡大のための農地取得の融資の財源手当てについてどう考えておられるのか、私はさらに聞いてみたいのですが、もし年金制度の積み立て金を活用するのであれば、将来年金の給付のための財源でありますので、その安全性、有利性、そういう点ちょっと不安を抱くのでありますけれども、この点についてはどうでしょうか。
○倉石国務大臣 御承知のように、これは営利事業をやるわけじゃございませんで、特殊法人で、掛け金をその基金に保管をして、それの運用をして農地の流動化をしやすくするようにということで、年金基金が発動するわけでありまして、法律のそもそもの目的、最初私が申し上げましたように、第一の目的が、規模拡大のために協力していただく方で、離農する人に対して――その離農というのは、土地を預けるか売却するかでありますから、そういうことをしやすくするように特殊法人の基金を設定するほうがいいではないか、こういう考え方であります。したがって、もう一つの目的である老後保障のほうにつきましては、ずっと続けて年金が出るのでありますから、その年金の取り扱いもその基金でやる、こういうのが目的であります。
○大橋(敏)委員 この問題は、いま諮問されている最中でございますので、私も次の委員会の場所でじっくりと審議してみたいと思っておりますが、これは、大体厚生省が主体になるのか、それとも農林省が主体になって運営されていくのか、その点はどうでしょう。
○倉石国務大臣 これから国会に提案して御審議を願う案は、農林、厚生両省の共管でやってまいろうと思っています。
○大橋(敏)委員 私は、いろいろとこまかい内容については後に回すとしましても、どうやら年金体系の姿から見た場合、ちょっとおかしい点も考えられますので、むしろこれは、それだけの余裕があるのならば、付加給付等を配慮したり、あるいは林業とか漁業、こういう第一次産業にもそのワクを拡大してやっていかれるほうがいいんじゃないかというような気持ちも持っておりますけれども、いずれこれは委員会でお尋ねすることにいたします。
 それでは次に移りますが、厚生年金の問題でございますけれども、これも二万円年金といわれております。ことしの十月で新規裁定者が出るわけでございますけれども、それを、いわゆる平均被保険者期間を見込んで平均して出してみると、こうなるというわけです。定額部分で九千七百三十四円プラス妻の年金額千円プラス所得比例九千二百六十三円、合計一万九千九百九十七円。なるほど約二万円でございます。しかし、ことしの十月に見込まれております新規裁定者は一体何人なのか、そしてその新規裁定者の中で二万円以上もらえる者は何人いるのかということを、まず最初にお尋ねいたします。
○内田国務大臣 御承知のとおりに、厚生年金を受けるためには、二十年間掛け金をして、しかもその事業場を退職して、第三の要件として六十歳以上である、こういうことになるわけでございますが、現在厚生年金の加入者はおそらく二千万人をこえております。それらにつきまして、ずっと実績を調べますと、ことしの十月に退職する人の在職期間、掛け金期間が二十四年四カ月になるということで、それをもって計算をいたしまして、いまの二万円年金というものが出たわけでございます。したがって、その二千万人の中から、現実にやめる人が何人ということは、かりにやめた場合にはそういう二万円になるということでございますので、現実の数字はおそらくはじいてはおりません。これはあくまでも計算上の数字である、このように御理解いただいていいのではないかと思います。
○大橋(敏)委員 私が、ある厚生省のそういう立場の方にお尋ねしましたところ、大体七千人程度ではないか、しかもその七千人のうちで、二万円以上もらえるのは約半数だ、三千五百人程度だ、あとは二万円に達しないのだ、こういうふうに言っておりました。
 大体、私の質問に対して厚生大臣の答えがどうもピントがはずれるのですけれども、時間がたちますので、お尋ねしたいことはたくさんありますので、次にいきますけれども、十月受給者ですらもそういう状態でありますが、ましてや既裁定受給者、もうすでに査定を受けて年金を受けてきた人でございますが、これも約三十万とか聞いておりますけれども、この既裁定の人たちは、一万円年金といわれていたときも平均八千円程度しかもらっておりませんでしたが、今回六割アップ程度の支給になるということですが、それでも一万二千円しかなりません。二万円にはならぬわけです。二万円年金とおっしゃっているのですが、この差額はどうなさるおつもりなんですか。
○内田国務大臣 これも大橋先生よく御承知のとおり、また御自身から御発言もございましたように、ことしの十月にやめられる人について計算すると二万円年金になるわけであります。したがって、すでに企業をやめてしまって、既裁定の年金を受けている人、そういう人につきましては、二十年掛け金を掛けた人はほとんどございませんで、厚生省の計算によりましても、おおむね経過措置としての年金を受けているにすぎない。たとえば十五年とか十年とかいうような、そういうような期間に、しかも、昔の安い給料を基準として、安い掛け金での年金を受けている。しかし、それをほうっておくことはよくありませんので、特別に新規裁定の年金の改定に伴って六割ぐらいベースを上げるというたてまえのもとに、昔の安い給料、標準報酬というものは切り捨ててしまったり、いろいろの本人に有利な計算をいたしまして、おおむね平均して六割くらい上がるという計算でございます。したがって、二万円にはなりませんけれども、既裁定の年金のもとから計算をし直して支給額を上げるということは、他の場合にはあまり例のない措置だと御了承をいただきたいと存じます。
○大橋(敏)委員 おっしゃるとおりですよ。六割程度のアップだというのです。だから平均一万二千円程度にしかならないわけです。二万円年金、二万円年金とおっしゃっているのです。確かに二万円年金にするために今度保険料が上がったわけでしょう。だから二万円は最低保障という立場で出てくるわけですので、既裁定着に対しても二万円まで引き上げるべきである。いま保険は強制加入じゃないですか。しかも政府が管掌しているんじゃないですか。政府の見通しが悪かったばかりに、こういうことになってきたわけです。だからこの矛盾といいますか、このひずみはひとえに政府にある。だから、私は、既裁定年金者に対しては何とか二万円程度になるまでは引き上げてやるべきだ、こう思うのです。
○内田国務大臣 これも大橋さんよく御承知だと思いますけれども、既裁定で年金を受けている人は新しい掛け金はいたしません。でありますから、したがって、それを二万円にするためには別の形の何かを無拠出で乗せるような形になります。でありますので、今度の二万円年金というものは、現在企業につとめておって、現在の標準報酬に基づいて掛け金をしている人についての計算で二万円になるが、たびたび申し上げますように、それにつれて既裁定のものについてもその恩恵を受けられるような特別の配慮をした。もっとも、これは厚生年金法にも国民年金法にも、御承知のとおり物価とかあるいは生活水準の変動の場合には財政計算をやり直さなければならないようなスライド制もありますので、そういうことに応じましては、既裁定のものにつきましても今後状況に応じた金額の引き上げをすることは当然であると私は考えます。
○大橋(敏)委員 いま大臣は保険料の値上げなどは考えません、それはあたりまえのことじゃないですか。これは、いまいわゆる被保険者は一ぱい一ぱいで保険料をかけているわけですよ。そこで、これは審議会の答申の中ですけれども、「国庫負担を社会保険に導入する場合を考えなおすについては、まず各制度における国庫負担に対する既得権的な考えを一掃し、つぎのような原則をたてるべきであろう。国庫負担は、最低生活水準を確保するために絶対的に必要とされる給付に対して一定水準の保険料が受益者の負担能力をこえるような場合、」いいですか、いわゆる被保険者の負担能力をこえるような場合、「あるいはインフレーションによる積立金の不足のように国以外に責任をもつものがない場合に行なわれるべきである。」要するに、今回の既裁定者に対しては、国以外に見てやる人がないじゃないですか。だから私は強烈に言っているわけです。私は、そんなことをあまり考えられませんというような言い方では、お話にならぬと思います。これは総理大臣、どうでしょうか。全然話にならないというようなことでないと思う。
○内田国務大臣 これは既裁定の年金受給者についてのお尋ねでございますので申し上げましたが、既裁定というのは、すでに年金額がきまって、現に受給をされている方であります。したがって、新しい掛金はいたさない人でございますので、ほっておけばいままでのままの低い水準の年金しか受けられないのを、今度はこれから新規裁定する者についてのたてまえを改めましたので、それに従って既裁定の方々についても利益を与える措置を講じましたということを申し上げておるのでありまして、それを二万円にしようと思いましても、そのためには特に国が別の国庫負担でもしない限り、積み上げない限りできないものである。しかし、これも申しましたとおり、今後の生活水準等に応じて、この年金につきましては少なくとも五年に一ぺんは再計算をいたしますから、そういう際に既裁定の方々につきましても考え直すような措置を講ずることはもちろんである、こういうことを私は申し上げておる次第でございますので、御了承いただきたいと思います。
○大橋(敏)委員 それでは総理大臣に結論的にお尋ねいたしますけれども、先国会において成立しました厚生年金あるいは国民年金、いわゆる二万円年金も、いままで論じてまいりましたように、必ずしも二万円が確保されたという状況でありません。要するにわが国の社会保障の水準を低下しているものに年金の立ちおくれが問題になっているわけでございますが、政府は今後年金制度の拡充をどのようにお考えになっているのか、これが第一点ですね。
 もう一つは、わが国の物価問題の重要性については、あらためて申し上げるまでもないわけですが、このような経済情勢のもとにおいて年金給付がいわゆる実質価値を維持できない、こういうことは私はよろしくないと思うのです。それを維持をしていかなければならぬのは公的年金制度としての当然の使命でございますので、政府として今後年金のスライド制等もお考えになっているのかどうか。この二点を、これは大蔵大臣も答えていただきたいと思います。
○福田国務大臣 物価の変動する際に年金の制度を動かすことは、これは非常にいろいろな困難があるわけでありますが、とにかくそういうことを考えましても、物価の安定にまず努力をするということが先決問題だと思います。
 スライド制というお話でございますが、スライド制をすれば年金は上がりますが、それに伴いましてまた物価のほうにもそういう影響を持ってくる。これは堂々めぐり、悪循環になっちゃう。物価の安定に努力しながら、しかし物価が現在安定をしておらぬ、そういう現実を踏んまえて適時適切な措置をとってまいる、これ以外に道はない、かように考えております。
○佐藤内閣総理大臣 わが国の年金制度、これは総額として少ない支給だ、こういうことは御指摘のとおりだと思います。いろいろくふうされるだろうと思います。
 そこでまず、年金と一口には言いますが、そのうちにはいわゆる無拠出年金、全部国庫で負担するものと加入者が負担する拠出年金と二通りありますから、別に政府は営利事業をやっておるわけではありませんが、しかし現実に政府の負担になる、こういうような場合には、なるほど年金のほうではつじつまが合いましても、他の面であるいは増税になるというようなことが出てくる、こういうこともありますから、いまの御議論は、やはり拠出制年金か無拠出制年金か、そこらも十分区別してお考えをいただきたい。また、わが国の年金制度並びに各種支給しておる政府の資金がいろいろな名目で出ておりますが、これも少し多過ぎやしないか、そこらに少し整理し得るものもあるのではないだろうか、かようにも実は思います。それらのこともひっくるめて、今日経済がどんどん成長しておりますから、それに見合うように国民生活は改善されるべきだ、かように思います。ただいま物価の問題について大蔵大臣からお答えをいたしましたが、とにかく物価を安定さすことが最も必要だ。しかし、安定の努力をしたにかかわらず、なおかついろいろの不都合が出てくるじゃないか、こういうような御指摘があれば、そういう点についてはそのつど適正なる改革、改善を加えていく、こういうことだと思います。
○大橋(敏)委員 時間がございませんので次に移らしてもらいますが、いま大きな社会問題になっております看護婦の問題についてでございますが、社会保障関係ですので厚生大臣ばかりになりますが、ひとつしっかりお願いしますよ。
 四十二年末で看護婦の数は二十五万三千人になっておりますが、これは人口十万人に対して見ますと、わが国は二百六十二人、アメリカは四百六十四人、イギリスは三百八十五人であります。非常にわが国は少ない。政府は昭和五十年までに四十八万にするという計画をお持ちのようでございますけれども、昭和五十年まであと五年しかないわけであります。約二十三万人の看護婦の養成をなさるというわけですけれども、一年間に約五万人という計算になりますね。一体どんな計画をもって看護婦の養成をなさろうとしておるのか、確保をなさろうとしておるのか、お伺いいたします。
○内田国務大臣 従来厚生省で発表いたしております看護婦の現在働いていらっしゃる人員、二十五万人ということでございましたが、ごく最近の調査がまとまりましたところによりますと、四十三年末で二十六万七千人でございます。これを四十八万人にふやすわけでありますが、それの方策といたしましては、まず公立養成所に対する整備費の補助金を、本年度といいますか、来たるべき年度の予算で増額すること、それから看護婦、准看護婦さんの学習資金の貸与額を拡大すること、また専任教員養成の拡充を行なうほか、新たに民間養成施設に対して、ちょうど私立学校の運営費補助と同じような構想でございますけれども、運営費の補助を行なうこと、こういうことを予算上、また制度上考えております。
 また、もう一つの制度上のことにつきまして、これもいずれ法案を出しまして御審議をいただくことになると思いますけれども、准看護婦の要請につきまして、高等学校卒業者につきましては、一年の養成をもって准看護婦の資格を与えるようなというか、准看護婦の国家試験を受け得る資格を与えるような、そういう方途をも打ち出したいと考えております。
 それからもう一つは、これはきわめて大切なことでございますが、看護婦につきまして処遇の改善にさらにつとめるつもりでございます。御承知のように、わりあいに国立病院あるいは国立療養所などに勤務の看護婦は、私設の病院等につとめられる看護婦さんよりも給与の水準がいいとされておりますが、これは昨年の人事院の勧告におきましても、一般公務員の給与のベースアップを上回る勧告を人事院からいただいておりますので、それらの面におきましても、ある程度の待遇改善はできましたけれども、これにつきましてはさらに今後尽力をいたします。
 また、夜間の看護手当というのがございます。これは夜勤手当とは別のものだそうでございますけれども、この手当につきましても、これを引き上げる、こういうようなことで、幾つかの方策を並行的に考えて、おっしゃるような看護婦充足の施策をとる、こういう段取りでございます。
○大橋(敏)委員 どうもいかぬですね。聞かないことまで答えなくてもいいですよ。私は時間がないですからね。
 総理、いま看護婦問題はほんとうに重大問題だと思うのですよ。この看護婦の養成について、あるいは確保について、政府としてはかなり計画を持っていますけれども、私は先ほど言いましたようなことでは、いままた大臣が答えられたような内容では、とても確保できないと思うのですけれども、総理はこの点についてどのようなお考えをお持ちなんでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたように、看護婦問題、これはまことに重大であります。医療制度の整備という点からも、最も得にくい人材を確保する、こういうことで厚生省もまた大蔵省もいろいろくふういたしまして、先ほどのような具体的な案を出したような次第であります。
○大橋(敏)委員 先ほど厚生大臣の説明の中には、潜在看護婦のことなどは一言も出てまいりませんでした。
○内田国務大臣 もうやめろとおっしゃるから……。
○大橋(敏)委員 よく言いましたですね。それではお尋ねいたしますが、では潜在看護婦についてはどうお考えになっていますか。
○内田国務大臣 この潜在看護婦、つまり御結婚をされた等の事情で看護婦の第一線を引かれた方方が相当あることは想像されておりますので、もう一ぺんこれらの方々の第一線復帰を考えてまいることは非常に必要なことだということで、たとえば、その再教育を目的とする講習会の開催などのほかに、ことにそういう方々はお子さん連れの方が多いので、病院所属の保育所、職場保育所というようなものも国が助成をして設置して、そうして子供連れで来ていただいて、潜在看護婦さんの第一線復帰を考えておる、こういうことが肝心の一つでございました。
○大橋(敏)委員 潜在看護婦の確保について、政府は四十四年度わずか六百人でございました。これは十二カ所で五十人ずつということだったのですが、本年四十五年度では二千三百人を予定なさっておるようでございますけれども、集まりますか。私は集まらぬと思うのです。いまの看護婦に対する待遇ではとても集まるものではない。第一、いままで二十五万人の潜在看護婦がいるということ自体、これが何よりの証拠です。いわゆる看護婦に対する待遇が悪いために去っていくわけです。とにかく、いま大臣は保育所か何か話がありましたけれども、確かにそれもあります。託児所あるいは育児所、そういうものも大事ですけれども、夜間勤務をするのです。夜間勤務をする人のために夜間託児所やあるいは保育所等も考えられますか、どうですか、この点は。
○内田国務大臣 夜間託児所についてやっておるところもあるそうでありますが、現実には非常に困難性もあるけれども、それを克服して、夜間託児所もぜひ続けて増設するようにしたい、こういうつもりでおります。いずれにいたしましても、これは非常に困難な問題を伴いますので、ぜひひとつ御協力をいただいて看護婦の確保を得たいと思う次第でございます。
○大橋(敏)委員 協力することはやぶさかでありませんよ。協力できるような体制をとっていただきたいと思います。
 そこで、看護婦さんの確保について、あるいは養成については、いろいろと問題がございますけれども、特に人事院が勧告しております夜勤の問題ですが、これは月に八回だ。実態は十回以上になっております。ほとんどの者がそうです。こういうことではとてもとても看護婦になり手はないといっても過言ではないでしょう。要するに、先ほど言いました四十八万の養成、確保というのは、私は絵にかいたもちではないか、こう思うのですが、それこそ机の上だけで論議するのではなくて、そういう関係者とよく対話をして、その中からほんとうの意味の看護婦の待遇問題、それを向上させて確保していかねばならぬと思うのです。
 実は、これは労働省にも関係いたしますけれども、関東の労災病院ですが、これがベッドが五百六十一あるのですけれども、十二月の十日に二病棟閉鎖になったそうです。看護婦不足ですよ。看護婦不足のために二病棟閉鎖になった。また三月の一日に三病棟閉鎖になる話を聞いております。すでに二病棟閉鎖したときも、ある意味では強制退院をさせておると聞いておりますよ。今度三病棟閉鎖になると、いよいよこれは問題です。つまり二百九十九になります。つまり遊休ベッドが二百六十二ということになるわけでございますが、これは、労働大臣来ていますね。この問題について報告してください。
○野原国務大臣 お答えいたします。
 関東労災病院の病棟閉鎖につきましては、看護婦の不足という事態、これが慢性化しまして、ついにある程度の病棟閉鎖のやむなきに至った。まことに残念でございますが、やはり問題は看護婦の不足という問題でございます。ただいまその方面から報告を聞きまして、まことに遺憾に思っております。これは看護婦の対策が最も重要であるというふうに考えております。
○大橋(敏)委員 看護婦不足問題はいままで論じたとおりでございますが、これはただ単なる看護婦不足ということで片づけられる問題ではないのです。労働管理の上からも今後しっかりとこういう問題に対しては取り組んでいかなかったならば、重大問題です。大きな社会問題になりますよ。とにかく看護婦さんのここの定員は百七十九名だそうですが、いままで年間六十名から七十名やめていかれるそうです。これも賃金体系のみならず処遇の問題等、とにかく看護婦問題は根本的に考えなければならぬときが来たことを十分認識していただきたいと思います。
 次に僻地対策ですね。僻地医療、このことについてお尋ねいたします。
 今度の予算を見てみますと、患者の輸送車が八十三台計上されておりますですね。これも僻地医療の実態から見た場合は、私は非常に疑問に思うのです。それは僻地問題はものがないというのじゃなくて、その場所に医者そのものが行かないという問題なんです。医師がないということです。かりに机上のプランで定員をふやしたとかあるいは医学部を増設、新設したとか、こう幾ら言ってみても、いま言いましたように、医者が行かない、行こうとしないのですよ。この問題について総理はどう思われますか。
○佐藤内閣総理大臣 御指摘のとおり僻地あるいは離島等におきまして、医者が行かない。これをいろいろ診療所等で特別にめんどうを見ましても、相当の待遇を与えながらも、なかなか定着しないというのがいまの現状でございます。私どもは、自治体等でそういうような離島あるいは山村僻地等の医療の機関の整備、これに非常に苦心しておる最中でございます。
○大橋(敏)委員 今度の予算で輸送車が計上されたけれども、はたしてそれが生きるかどうかという問題ですね。
 それからもう一つは、医者不足のために、町村では、ほんとうに無理して、四十万も五十万も報酬を出して、地域の住民の健康を考えているわけでございますが、政府もこのような状態をよく承知して、少なくとも三十万、四十万くらいの報酬を出して、僻地問題を本気になって解決していかなければ真の意味の僻地対策にならない、こう思うのです。これについてはどうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまのように医者の待遇もさることですが、特に交通の便をはかる。そういうことで、医者がやはり都会に集まっているから、そういうところに診療の機会が与えられるような方向、たとえば、離島等で飛行機あるいはヘリコプター等で患者を輸送するとか、あるいは山間僻地でいまのような患者輸送車を整備するとか、医者を定着さすことも一つでありますが、同時にそれと並行して、医者は都会に集まっているから、そういう病院を十分利用し得るようにわれわれがあらゆるくふうをすべきだ、かように思っております。ただいま総体といたしましていまのような二つの方向で考える。
○大橋(敏)委員 診療所の設置費は国が二分の一を補助しておりますが、医者の運営費に対してはゼロでございます。何にもないわけです。たとえば僻地施設は既設のものが現在四百十四カ所ですか。今回医務局分としては十三カ所考えられているようでございますが、合計して四百二十七でございます。そこで政府の予算を見ますと、今度の僻地対策の予算を見ますと三億八千万円でございますけれども、かりに医師の報酬を少なくとも三十万と見て年に三百六十万円です。これを四百二十七カ所にかけますと約十五億程度の金が必要になってきますですね。そういう計算の上から見た場合、現在の僻地医療対策というのはこれまた絵にかいたもち、机上のプランと言われてもしかたないと思うのですよ。こんな予算ではほんとの意味の解決にはならない。保険あって医療なしとよく言われますけれども、私は今日の医療皆保険下で、これは強制的にみんなが保険に入っているわけですが、都市の場合はある程度その恩恵を受けても、僻地の人は保険をかげながらも受けられない。これは医療の機会均等を妨げている最も象徴的な例ではないかと思います。
 さらにお尋ねいたしますけれども、今度国立病院の医師派遣協力費というのがついておりますけれども、大体派遣する医師はいるのでしょうかね。厚生大臣、どうですか。
○内田国務大臣 お説のとおり、僻地診療所をつくりましても、なかなか医者がいないものでございますから、国立病院の中で医師、看護婦をチームに編成をいたしまして、そういう僻地の診療所を回わらせるというようなことを現実にやらせております。さらにまた、親元病院のものを僻地の離れたしかるべき場所に設けまして、その親元病院から医者を乗せた車、いわば僻地回診車というようなものをつくって、親元病院の医者を回すことを条件にして僻地診療所をつくる、こういうようなことをやりまして、御心配の点をでき得るだけ円滑にやってまいりたいと考えておるものでございます。
○大橋(敏)委員 いま親元病院の話が出ましたですけれども、確かに親元病院はあるでしょうけれども、派遣する医師はいるのかどうかと聞いたわけです。いないのですよ。たとえば、私はある県の実態を調べてみました。その県は国保の直診が昭和三十年で九十三カ所あったわけですよ。ところが四十四年の今日わずか十三カ所に減っております。つまり八十カ所が休診になってしまっているわけですね。これは医師がいない、あるいは看護婦がいない、こういうことからこういう実態が出てきているわけです。これは現実の問題ですよ。親元病院、親元病院とおっしゃいますけれども、その親元病院それ自体に、はたして派遣できる医師が確保されているのかどうかという問題です。どうでしょうか。
○内田国務大臣 まあ医師の確保は全体的に問題ではございますが、親元病院に医師がおって僻地診療所のめんどうを見られるような、そういう話し合いがついたところに今回は僻地診療所をつくって運営しよう、また車も回そう、こういうようなことでございます。
○大橋(敏)委員 とにかく僻地医療の問題もこれは重大な問題でございます。医師やあるいは看護婦の確保にあたっては大英断をふるって、ほんとうの意味の対策を立てられなければ、これも禍根を残すのではないか、私はそう思うのです。最後に、この問題についての総理の決意をお聞かせ願いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いま御指摘のようになかなか医者がいない。相当の待遇をしてもなかなかいない。いま隣で大蔵大臣と私語しながらも、総理大臣級の俸給を払ってもなかなか医者がいないというのが現状じゃないだろうか。大臣級ではとてもないんだ、こういうことを実は私語しているような状況でございます。しかし、私は、片一方で、先ほども説明いたしましたように、交通の便をはかることによりまして、医師の往診、さらにまた受診、さようなことが変わってくるんじゃないだろうか。いままでのようにわざわざ山の中に、もうかごに乗る、そういう医者はいないでしょうが、自動車は行かない。あるいは自転車に乗る、あるいは馬に乗って診療に行くというような医者はもういなくなっているんだ。だんだん道がよくなっておりますから、病人のほうも出かけますし、またお医者さんのほうも相当遠方から出かけることができるようになる。また離島の場合なぞでも、ヘリコプターで急患が輸送されたという、そういう事柄をしばしば新聞紙上でも見ます。そういうことでいまの不足の状態を克服しつつあるのが現状ではないかと思います。
 私は、限られた予算ではありますが、ただいま申し上げるような意味で、各自治体と十分相談をいたしまして、自治体の実情に合ったそういう形でただいまの不便をなくしていきたい。そうして国民すべてが近代的な医療を受け得るような、そういう方向に万全を期したい、かように思っております。なかなかただいまの状態ではむずかしい状態であります。それは大橋君が御指摘になったとおり、また私が先ほど来繰り返して申しておりますように、私自身がいなかの山の中の出身でありますから、これらの点については十分苦労もなめておりますし、最近の実情等もよく知っておるつもりでございます。さらにお知恵も拝借いたしまして、十分それらの問題と取り組んでいきたいと思います。
○大橋(敏)委員 では次の問題に移りまして、母子保健の問題に入りますけれども、わが国の母子保健については根本的にこれも改めなければならない時期が来ているんではないか、私はそう思うのです。とにかく日本女性というものは非常に子供に対する熱烈なる育児本能を持っておりますが、そういう気持ちを逆用しまして、政策的にはほんとうに軽視されてきたというのが実態でございます。最近になりまして母子保健の認識がだんだんと改められてはきておりますけれども、胎教問題から妊娠、出産、育児という一連の問題に対して、国策上十分なる配慮と対策が必要ではないのか。わが国の母子保健法というものは、社会保障制度審議会も次のように指摘しております。「各部面に未熟不備不徹底な点が多く、」このようにはっきり――もう一回読みましょうかね。「各部面に未熟不備不徹底な点が多く、」云々といっております。このように指摘しておりますように、いまの母子保健法そのものは非常に貧弱なものです。有名無実といっても私は過言ではないのじゃないかと思います。
 ところで具体的な問題として出産給付についてお尋ねいたしますけれども、現行の健康保険法では、出産に対しては、保険者いわゆる本人に対しては、標準報酬の二分の一、それが二万円までに達しない場合、二万円未満の場合は二万円までは出す。家族の出産については一律一万円の現金給付がなされていることになっております。しかし、異常分べんで入院した場合は、他の傷病と同じように現物給付であります。ただし被保険者の場合は先ほどの手当が、いわゆる分べん費が半額に減額されるというような内容になっておりますが、出産の場合を考えてみますと、これは当然のことですが、妊娠に続いて起こる現象でございます。したがいまして、安全な出産を確立するためには、妊娠中の保健管理の徹底というものが私は不可欠ではないか、こう思うのです。にもかかわらず、現在の健康保険法からいけば、いわゆる保険の対象外に置かれているわけであります。最近、健康保険で現物給付をするのがいいのか、あるいはいわゆる現金給付ですね、どちらにするかという問題が論じられているわけでございますけれども、この問題は、私は論ずる前に、もうこのような出産に関する一連の問題あるいは母子の問題に対しては一切母子保健法で見るべきである、こういうふうに考えるわけです。つまり、根本的に考えを改めて、母子に対しては母子保険法で一切がっさい見ていくのがたてまえだ、このような考えを持っているのですけれども、厚生大臣はどうお考えになりますか。
○内田国務大臣 母子保健の重要性は、私ども大橋先生と全く考えを同じくするものでございまして、この問題は大きく取り上げられてまいってきております。そこで明年度の厚生省の重点施策の一つにもなっておりますのと、先般も社労でお話し申し上げたとおりでございまして、少なくとも妊産婦あるいは新生児などにつきましては、公費で健康検診をする範囲を広げていこうということで、かなり思い切った公費の診療の制度をとってまいる所存でございます。もっとも、ただいまお尋ねがございました分べん費を保険の現物給付にするなり、あるいは母子保健法をもって分べん費についても公費で処置すべきだということにつきましては、昨年ようやく、従来本人についても最高六千円というのを標準報酬の二分の一まで、最低限二万円というところまで分べん費の現金給付を上げたばかりでございまして、ただいま御提案の問題につきましては、今後医療制度の抜本改正とか、あるいは母子保健法の再検討の際私は検討いたしてまいりたいと思います。
○大橋(敏)委員 総理にお尋ねしますが、よく総理は人材の育成の話をなさりますけれども、私はほんとうの意味の人材は胎教からだと思うんですね。出産の前からだと思うんですよ。こういう意味からいっても、妊娠、出産、育児、この一連のものはもう切っても切れない関係でありますし、また、いままでの母子保健法の貧弱な内容では、とうていこういう問題は解決していきませんが、今後母子保健については、あるいは母子の保護については一切母子保健法で見ていくのがたてまえであるという私の考えに対して、総理はどうお考えになりますか、お尋ねします。
○佐藤内閣総理大臣 大橋君はまさか誤解があろうとは思いませんが、先ほど言われましたように、日本の国民くらい、また婦人くらいこの育児本能の熾烈な国民はない、非常に強い育児本能を持っておる、こういうことを言われました。私は確かにそのとおりだと思います。ところが、いま何もかも政府で見ろという、むしろ逆な方向へ行っているのじゃないのか。この育児本能が弱められるような方向に行っているのじゃないだろうかと思います。これは私の私見を少しゆとりを持って聞いていただきたいのです。と申しますのは、ただいまもう妊娠中、その辺から教育が始まるのじゃないか、こう言われますが、分べんをする、そうすると今度はだれがお乳を飲ますのか。母乳はほとんど使われてない。
  〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
哺乳器を与える人、それが子供から見ると一番なつかしいものであり、あの哺乳器自身がなつかしいような状況になっておる。いまの子供で私、一番気の毒に思いますのは、哺乳器の味は知っていても、母乳の味を知らない。それではたして真の幼児教育ができるだろうか、家庭の育児、そういうしつけがはたして可能か、実は私はこれを非常に心配しております。いまは母乳で育つということ、これはほとんどない。これはいろいろまた職業的環境もございますし、あるいは所得環境等もございますから、これがなかなかできません。しかし、牛の乳よりか人の乳のほうがいいことは、これは人間の子供であるだけに、はっきりわかっておると思います。しかしながら、それが牛の乳を飲む。そうして、その子供を保育所、育児所、託児所、そういうところに預けていく。そうして親はだんだんとその子供との縁は遠くなる。幼稚園に行く、それも幼稚園の保母まかせ、こういうようになって、せっかく言われた育児本能が、非常に強い母性愛、その母性愛を持っている、そういうことを言われながらも実際は逆な方向に行っている。私はここでいまの政府の態度がよろしいというのじゃありません。ただいま言われるように、母子福祉、こういうことでもっと私どもが真にめんどうを見なければならない点があると思いますが、何もかも一様にすることがはたしていいのかどうか、かように私は実は思うのであります。
 最近の形を見まして――ちょっと話が長くなって恐縮ですが、時間はオーバーしてもこれは私許してもらうつもりでございますから、ひとつお聞き取りをいただきたいのです。
 かつて社会革命をいたしましたソ連に出かけた人たちが、その保育所、育児所を見まして、たいへんけっこうだ、こう言って非常に感心した諸君があった。同時に、これではたして人間的なつながりがあるのだろうか、こう言って疑問を抱いた学者があったわけであります。ただいまソ連その国においても、いままでのような過保護の状態、これは国家としては考えられるか知らないが、やはり人間としてはどうも行き過ぎであった、かような反省があるやに私は伺っております。私はここらの点もとくとひとつ考えていただいて、そうして何もかも母子関係、これを全部政府の関係でめんどう見る、こういうことがはたしていいか悪いか、私ども人間としてやはり考えていかなければならぬのじゃないかと思います。しかしながら、いまわれわれの生活もなかなか楽ではございませんし、また国民一般の生活の実態等を見ますると、みずからめんどう見たいにも、めんどうの見れない方がたくさんある。そういう方に対して国家的な十分の保護を与える、これは当然のことだ、かように思います。したがって、おのずから限度のあることもやはり考え、本来の姿は一体どこにあるのか、国が子供を所有するのじゃないのだ、やはりおかあさん、おとうさんがめんどうを見るのだ、こういう姿に返らないとだんだんむずしかい世の中になってくるのじゃないか、私かように考えますので、率直に私の感じを申しました。
○大橋(敏)委員 いま親切丁寧な答弁をいただいたわけでございますが、時間が非常に迫っておりまして、いま総理大臣のほうから、時間延長を私のほうから委員長にお願いしますということだったのですが、了承してくれますですね。時間延長、お願いします。
 いま、より基本的な問題を出されましたのですが、この短い時間の中で論議する時間がございませんので、それはあとに譲るといたしまして、出産手当の問題、出産給付の問題を言っているわけですけれども、現在健康保険から現金給付として出ているわけですね。これはむしろ母子保健法の中から給付するのがたてまえではないか、このように改めるべきではないかと言っているわけです。それはどうかと聞いておる。
○内田国務大臣 昨日もお話しいたしましたように、非常に低かったものを二万円に健康保険の中で改めたばかりでございますので、この問題は今後継続して研究をさしていただきたいと考えます。
○大橋(敏)委員 要するに健康保険の中から現物給付していることがいいか悪いかということを研究させてくれというわけですね。そう解していいですか。
○内田国務大臣 いろいろこれは関連する問題がございます。母子保健法というものがございまして、母子保健のためにいろいろな施策をやっておりますが、御承知のように所得制限などがついておるものもございまして、したがって、これを直ちに私がいまのままの母子保健法のワク内に持っていくことがはたして出産をなさる御婦人のために便利であるかどうかというような点につきましてもあらためて研究をさせていただいて、保険制度と母子保健法との相関関係を検討させていただいた上で、処理をさせていただきたいと考えます。
○大橋(敏)委員 まあ研究なさるのはしっかりなさっていただきたいと思いますけれども、私がいま言わんとしていることは、健康保険で出産給付だけを現金給付しているということは、もういままでの保険の体系をくずしているじゃないですか。言うならば、これは差額徴収を認めているようなことですよ。これはおかしいのじゃないか。これは総理も聞いておっていただきたいのです。ですから、むしろ私はこのような出産給付は母子保健法で給付する姿になったほうが当然ではないのか、たてまえではないか、こう言っているわけですよ。どうなんですか、それは。
○内田国務大臣 たびたび申し上げているように、検討の課題にさしていただきたいと思います。
○大橋(敏)委員 もちろん検討の課題でけっこうですけれども、これはいわゆる政府がベッドの差額徴収を実際に禁じておりますよ。それを出産の問題についてはお許ししましょうといっている感じです。保険から現金給付をやるということはそうなんですよ。体系がくずれてしまっているじゃないですか。まあ、しっかり勉強なさるそうでございますので、あとで勉強の成果を次の委員会等でも報告していただきたいですね。お願いいたします。
 じゃ、時間がございませんので、老人問題に移りますが、とにかく老人の問題もこれから一九七〇年代の中心になるのではないかと思います。資料を見ましても、もうおそらくごらんになっていると思いますが、昭和八十年には六十歳以上が二〇・二%になるそうですよ。これはどえらいことでございます。また人口老齢化のスピードがこの表に出ておりますけれども、六十歳以上の人口比が八%台から一八%台に達するそのスピード、速さですね、諸外国との比例を見ますと、フランスが百七十七年かかったそうです。スウェーデンは百三年、イギリスは五十六年、ドイツは五十四年、日本は四十年です。つまり八%から一八%になるそのスピードですよ。わが国は四十年でそうなったというのです。ということは、ものすごいスピードで老齢化をしている。ということは、とりもなおさず老人対策を急げということです。これについて、政府は何か老人に対する基本的な、長期的な計画をお持ちであるかどうか。また、老人福祉研究所というようなもの、たとえば、私はある老人の専門学者の書いた本を読み、その学者と直接電話でお話をしたわけですが、総合研究所というものをつくらないと、ほんとうの意味の老人対策にならない、医学あるいは社会学、心理学、工学、理学、経済学などを含めた老人学の総合的な研究をしていかないと、今後の日本の老人対策は追っつかないであろう、こういうことを言っておりました。
 そこで、いま二つのことを尋ねましたよ。総合、長期プランを立てられる計画があるかどうかという問題と、総合研究所を設置なさる意思があるかどうかということですね。
○内田国務大臣 わが国の人口は急速に老齢化をいたしてまいることは、大橋先生御指摘のとおりでございまして、厚生省では、今後、この老人対策というものを厚生省に与えられた非常に大きな課題として研究をいたすプランを立てております。長期計画という数字上のものは、これははたしてつくるかどうか、いまのところ申し上げかねるところでございますが、ことにわが国の家族構成などの影響も考えて、老人問題が大きな問題となることについては、全く同感でございます。
 総合研究所につきましては、これもひとつ検討をさせていただきたい。研究所がいいか会議の形がいいかというような問題もございます。
○大橋(敏)委員 それじゃ総合研究所の設置についてはほんとうに強力に内容を進めてもらいたいと思いますが、現在、大学や病院に老人科というのを持っておるところは、いま日本では三つだそうです。東大、京大、もう一つどこだとか聞いたのですが、三つしかないわけですけれども、私はこれは当然設置する必要がある、老人科というのを病院やあるいは大学等につくるべきだという考えを持つのですけれども、それについてはどうお考えになるでしょうか。
○内田国務大臣 これは一つの社会科学あるいはまた衛生工学などの問題としてそういう科ができることは、私はたいへん望ましいことであると考えます。
○大橋(敏)委員 そのように努力していくべきであると思います。
 それでは、一月の答申が出ましたですけれども、その結果がどうなったか。つまり老人の就労問題、医療問題あるいは住居の問題、扶養者の問題と、柱としては非常にりっぱな柱が立ち、内容もきわめて前進的なものだと私は受け取っているわけでございますが、それがどのようになっていったか、簡単でけっこうですが、説明していただきたいと思います。
○内田国務大臣 老人対策につきましては、まず医師と看護婦を特に寝たきり老人の家庭に派遣をして、訪問健康診断をさせること。それからまた老人家庭へのホームヘルパーというものが御承知のとおりございますが、これをある程度四十五年度において増員をいたしますこと。またギャッチベッドと申しますか、特殊のベッドの貸与の幅を広げること等をきめましたほか、ことに税制の問題におきましても、大蔵大臣と協議の上、いままでの、親を養っているというような観点のほか、特に老人扶養控除の制度を税制上の所得控除から設けるようなことにも相なりました。さらにまた、現況から申しまして、御承知のように、寝たきり老人のめんどうを見る特別養護老人ホームというものの充足率が十分でないというようなことにかんがみまして、今回、明年度の予算で確保いたしました社会福祉施設の整備費のうちからできる限り多くのものをこの方面にもさいて、充足につとめてまいりたい、こういうような結論を出しておるところでございます。
○大橋(敏)委員 とにかくいろいろと報告なされましたけれども、私は特に言いたいことは、この中間答申の第一に、「老人の社会活動参加の促進」というのがございますが、これは要するにお年寄りに元気で働いてもらおうという、その促進の内容でございます。これについて政府はどれだけの対策をなさったか。これは労働省にもちょっと言いたいのですけれども、労働省関係には無料職業紹介所というのがございますね。これは従来日本全国に十六カ所しかありません。こういう問題についてはもう少し本気になってもらいたいと思います。
 それから、厚生省関係にも何か相談所がございますですね。これは今回ふえましたか。ふえたといってもたしか五カ所でしょう。そういうことではほんとうの意味の対策にはならぬと言うのです。というのは、いまこの相談所というのはものすごく期待をされております。要望されております。お年寄りに会って聞いてごらんなさいよ。その事情がよくわかります。ですから、こういう老人の就労問題については、意欲が十分あるのですから、それを受けて立つべき対策をしっかりと講じていただきたい。
 それから老人の健康診断の問題でございますけれども、六十五歳以上の老人がいま七百十万人おる。そのうちの六五%が対象になっておりまして、実際に受診する者はその三分の一だというわけですね。この実態を調べてみますと、診察を受けて病気が発見されることがこわい。つまり治療費等の問題もありますので、自己負担等が出てきますので、健康保険でいっても家族であれば五割負担しなければならぬし、あるいは国民健康保険であれば三割負担しなければならぬということで、せっかくの制度がありながら非常に診断を受けたがらないという現実があるわけですが、こういう問題についてどうお考えになるか。
 もう時間がございませんのであわせてお尋ねしますが、特にこうした老人の状態に対して、政府は老人の医療に対しては全額公費負担という考えに立たれないかという問題ですね。
 それともう一つは、老人に特にガンとか脳卒中が多いわけでございますけれども、これは長期療養になるわけで、多額の負担を余儀なくされているわけでございますけれども、ついには家とか土地を売り尽くして、そうして最後には生活保護におちいる。その保護に落ちてやっと国の援助を受けるということになっておりますけれども、少なくともこのようなガンとか脳卒中で倒れたような方に対する公費負担の制度をつくるべきではないか、私はこう考えているのでございますが、これは総理に直接答えてもらってけっこうです。
○内田国務大臣 先ほど寝たきり老人などに対する政府の対策について申しましたが、お話がございましたような、まだ元気でおられる老人に対して、大いにその励みを与えるということは、私は非常に老人対策として大切だと考えまして、お尋ねにはございませんでしたけれども、老人クラブなどに対する助成をふやしたこともその一つでございます。
 それから、お尋ねの老人に対する公費負担による医療につきましては、これも大橋先生御承知のように、これは医療保険の抜本改正というのが課題になっておりまして、その一つの保険のあり方として、これは老人その方からはこの保険料なしで、他の方面からの保険料の充当をもって無償の老人健康保険というものを設けるという案で、いま関係の審議会に諮問をいたしておりますので、その答申を待って、御趣旨と同じような形ができることを私は期待をいたしております。
 ガン、脳卒中につきましてもできるならば公費負担というような道を得たいと思いますけれども、精神病でありますとかあるいは結核、らい等におけるがごとき形では、いまなおその制度は存在をいたしておりませんので、これもあわせて老人医療の問題として、御意見のあるところを十分胸にとめてまいりたいと思います。
○大橋(敏)委員 老人医療については、とにかく全額公費負担という方向で全力をあげて検討を進めていくべきであるということを要望します。
 最後に総理にお尋ねしますけれども、一九七〇年代は老人対策の時代だといっても過言ではありません。実はアメリカで、大統領が主催してやっている白亜会議というのがございますね。これは国民会議といいまして、大体二千人から二千五百人程度の代表が集まって、大統領中心に会議を開いているそうでございますが、最近老人問題を中心とした白亜会議が三回持たれたことを聞いておりますが、非常に反響を呼んでいるそうでございます。いま申し上げましたような情勢、時代に入りましたので、総理大臣もそういうアメリカの白亜会議に似たようなことをお考えにはならないかどうか、これをひとつお答え願いたいと思います。
○内田国務大臣 まず私からお答えをいたしておきますが、アメリカの白亜会議のことについては承知をいたしておりますので、私は千人、二千人というような老人の各方面の代表者に集まっていただきまして、この問題を徹底的に討議するような、そういう会合をつくることにつきまして、厚生当局とただいまいろいろ検討をいたしておりますので、お含みおきをいただきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私にお尋ねでしたが、特に厚生省で計画しておるところがあったものですから、厚生大臣から答えさせました。
 大橋君のお話は、幼児から、幼児というよりももう妊娠中から年とって死ぬるまでのずいぶん長い一生に関するお話でございます。私はいわゆる人間性、それに基づいてものごとを処理していきたい、かように実は考えております。おっしゃることももっともの点もございますが、あまりにも国本位で、何もかも国家でやる、これはちょっと行き過ぎじゃないだろうか、かように思います。国の補助の足らない点は努力してまいりますが、やはりわれわれの家庭においても、母子の関係において、あるいは父子の関係において、その間で解決のできる問題も幾多あるだろうと思いますので、とにかく楽しい家庭がつくれるように今後とも努力してまいるつもりでございます。
○大橋(敏)委員 白亜会議みたいなものをやったほうがいいと思いますか。
○佐藤内閣総理大臣 やったほうがいい。ただいまその点は厚生省にあるということを申し上げたとおりでございます。
○大橋(敏)委員 もう一言、身体障害者のための総合基本法、大体前国会でいま一歩というところで成立の見込みになったわけですけれども、混乱のために流れました。また、議員間でいま一生懸命考えておりまして、おそらく今国会中にまた提出されて、そして成立するやに考えておりますが、もしその段階になりましたならば、各制度間の調整等もあることでありますし、非常に作業もあるわけですが、それをがっちり受けて立つ御意思があるかどうか、最後に一言聞いて終わりたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 各党共同で提出しようというお考え、そういうものが出てくればその際に十分審議いたします。
○大橋(敏)委員 では終わります。
○中野委員長 これにて大橋君の質疑は終了いたしました。
 次に、久保三郎君。
○久保委員 私はごく身近な問題を簡単にお尋ねしていきたいと思う。そこであまり身近な問題でありますから、総理に御答弁願うのもたいへん恐縮な問題もあろうかと思うのでありますが、御存じである限りはお答えをいただきたい、こういうふうに思っているわけです。
 まず第一に、交通災害に対する取り組みであります。交通災害ということ、これは御承知のように、交通事故といわれるもの、それからもう一つは特に大都市における交通の渋滞、それからもう一つは交通公害といわれる排気ガスあるいは騒音、こういう三つになろうかと思うのであります。最近多少の問題についてはやや前進があるのではなかろうかと思うのでありますが、しかし、だんだんふえてくる交通災害に対して、言うなら有効適切な手段というものがあまり見当たらないというか、実行ができないうらみがあろうかとも思います。これは別に政府だけの問題じゃなくて、国民全体としての問題だと思うのです。しかも、これは事故が起きてから、どうである、こうであるということで、後手に回った対策だけにいままでは追われてきていると思うのですね。だから、言うならこの交通戦争に対しては、わがほうより攻撃態勢に出るのが正しいのじゃないかというふうな言い方をする者があるが、そのとおりだと思うのです。そこで、それにはそれに応じた体制がなくちゃいかぬ。言うならば交通戦争というのでありますから――戦争にたとえるのはいやでありますが、一つのたとえでありますから、攻めてくる車中心の交通災害に対して、それじゃわがほうのこれに対する体制はどうかというと、防御体制も、指揮官は最近新進気鋭の総務長官がつかれまして、指揮官としてはたいへんいいのでありますが、残念ながら参謀が一人もいないのであります。参謀がいなくちゃこれは戦争になりませんで、指令を発する、命令を発するのでありますが、その命令がなかなか徹底しない。これは個々ばらばらに実はなっているというふうに見ていいと思うのです。これは山中長官が悪いのじゃなくて、組織が悪いということになると思う。
 そこで、私はまず第一に総理にお伺いしたいのは、行政改革というのは今日までいろいろやってきました。たしか四十三年でありますか、一省一局削減ということで実はやったのであります。これは局を部か何かに格下げしただけで終わっているわけです。こういうことじゃなくて、むしろ必要なものはつくる、こういうことだと思うのですね。そこで、交通戦争に立ち向かうためには、交通安全行政は一元的にやれるような仕組みを、少なくともこれだけはつくったらどうかというふうに思うのです。言うならば、交通行政全体を一つにたばねたほうがいいのでありますが、これは現在の官僚機構なり政府の力では非常にむずかしいのだろうと私は思っています。でありますから、交通安全の行政だけは、ひとつまとめたらどうか。山中長官のもとにでも、だれでもいいのでありますが、少なくとも参謀である者が立案からそれの推進から全部受け持つような体制でなければ、これは切れ者の指揮官が一人いても、どうにもならぬじゃなかろうかと私は思う。よってお尋ねしたいのは、そういう交通安全行政の一元化をひとつ考えてみたらどうですかということでございます。
○佐藤内閣総理大臣 交通安全の一元化ができればたいへんけっこうです。そういう具体案があればお示しをいただきたいと思います。
 ただいま私は、総務長官に中心になっていただいて、交通事故絶滅と取り組んでおります。しかし、これは、何と申しましても、国民総ぐるみでやらないとできないことでございます。自動車だけの問題でもないし、あるいは鉄道、あるいは空、船、あらゆる面にありますし、またこれだけ自動車がふえてきますと、何といっても、その自動車の通っている道も問題だろうし、そういうことで扱われる方その人にも責任がある、かように思います。総ぐるみ運動というものを展開してもう三年ばかりになります。しかしながら実績はほとんどあがっておらない。私はこのくらいむずかしいものはないと思っております。ただいまの機構を統一すること、それはできましても、事故をなくする、あるいは減らす、こういうことは非常にむずかしいことじゃないか、かように思うので、あらゆる機会に、ただいま久保君から御発言がありましたが、私もこれをほうっておいてはならない、かように思って、さらに国民総ぐるみ運動を展開する、その具体的な処置等についてお知恵も拝借したい、かように思っております。
 ただいままでのところ、それぞれの企業主体、また組合関係、またそれぞれの被害者あるいは学校当局、あらゆる面の方々がその会合に出てみえて、それぞれの立場から相談しておられます。私は、中身は最初よりはよほど変わってきたと思っておりますが、しかし、何といっても、車がふえるにしたがって事故件数はふえておりますから、数が減らない限り、実効があがったとはいえないと思っておりますので、この点でまことに残念に思っております。いい案はないだろうかとただいま模索しておる最中でございます。
○久保委員 いまの一元化は、たとえば警察庁にあるもの、運輸省にあるものを全部総理府へ持ってくるというのはなかなかむずかしいことだろうと思うのであります。しかし、これに対して総理府なら総理府の総務長官がやはり頂点に立って指揮ができるような形にある程度する。たとえば、いまの交通対策本部幹事会でありますか、そういうところで本部長指揮というか、やっておられるようでありますが、それはやはりはなはだしく微弱であると思うのですね。それから、総理は国民会議のことをおっしゃっていると思うのですが、年に二回、たくさんな人を集めて――やらぬよりはいいだろうと私は思っておるのであります、ちょっと口が悪いかもしれませんが。そういうことでありまして、これは運動としてはいいんですね。しかし、それは対策の一つであって、全体じゃありませんね。しかもそれは言うなら一つの宣伝ですね。普及というか――普及になるかどうかもわかりません、年二回でありますから。それで、春秋のいわゆる二季に、言うなら交通安全週間でありますか、ポスターをはって、何か人が少しよけい出てやっている。こんなことでは交通戦争に勝てるはずはないだろうと思うのですね。もっと――たとえば安全会議で取り上げられた問題が、それではことしの予算の中にどれとどれが的確に入っているんだろうかというと、これはあまり入ってません。時間がありませんから一々申し上げませんが、そんなに入っていません。入っていれば、いままでのしきたりで入っているだけです。そういうことだと思うのです。だからこれは決して悪口ではなくて、少し反省していただきたいと思うのですよ。それでもう一つ提案しますが、事故が起きたときに、たとえば最近の「かりふおるにあ丸」の事件では大騒ぎになってきた。「ぼりばあ丸」のときはそれほどでもなかった。そこで、結局今度総合の調査機関をつくるというのでしょう。全日空の飛行機が墜落したというので、今度は一つの委員会をつくった。これは事故があったつど、たとえば飛行機なら航空局の所属になって調査機関ができる、あるいは今度は船ならば船舶局が中心になってつくろう、こういうことではほんとうの事故の原因というのは探究できないんじゃなかろうかと思うのです。これは陸上事故の問題もそうでありますが、いまたとえば道交法一つとっても、車と人間がぶつかる、そうすると、大半は運転者の不注意ということで、道交法によってこれは処理される。ところが案外、御承知のように去年も問題になりました欠陥車の問題がある。あとから調べてみたらば車両の欠陥が原因であったという。だから事故の原因というのは、そう簡単に片づけちゃいかぬと思うのです。だからむしろこれはきちんと独立した機関で、ひとつ調査機関を設けておいたらどうだ。しかも独立した恒久的な機関としてやったらどうか。もっとも今度の予算の中では交通安全公害研究所というのが運輸省の付属機関に初めてできるようでありますが、これはこれでいいのであります。いいのでありますが、それとは別に事故の調査機関を独立機関として置くことをひとつ検討してみたらいかがでしょうかというのです。いかがでしょう。
○佐藤内閣総理大臣 いまの御提案は私どもも必要だろうと思います。それぞれの専門的分野がございますから、その専門的分野で十分検討していただくことは必要だろうと思います。ただ海難審判庁があるからということで、それと同様なものが直ちにできるとは私思いませんけれども、御提案まことにけっこうなことだろう。専門的なものを考えろ、かようにおっしゃること、十分ひとつ検討してみたいと思います。
○久保委員 わかりました。海難審判庁と同じ組織のようなものをつくったらいいだろうということではないのでありまして、総理がおとりになったような組織なり機関でいいと思う。ぜひ御検討いただきたい。
 それからこれは運輸大臣にお伺いしなければいけませんが、自動車の保安基準をもう少し外国並みに引き上げてきちんと整理したらどうかという考えであります。昨年欠陥車の問題等が出まして、いろいろ問題が出ましたので、この際そういうことを検討してみたらどうか、こういうことです。
 それからもう一つは、これはむしろ建設省になると思うのですが、道路五カ年計画が十兆何千億でやり始まるのでありますが、陸上、いわゆる道路上における交通事故は、人間と車がいま一番多いのであります。車と車の問題もありますが、まず第一、一番事故にならぬくふうは人間と車を別なところを通せばいいのであります。簡単な話ですね。しかも昔は家の中で遊んでいるとうるさいから表へ行って遊べという。そうですよ、この辺にいらっしゃる閣僚全部そうだと思うのであります。私もその口でありますが。ところがいまは表へ行って遊べということは死ねということなんですね。同じです、それは。東京のどまん中でそれをやったら、きっとそんなことになります。そういうことは極端な話でありますが、だから行政の上で、政策の上で、仕事の上で、人間と車を分離することにやはり徹底的に、集中的に予算とくふうをつけたらば、これは完全なんですよ。今度の五カ年計画の中では、幹線道路七千六百キロを中心にして、七十万キロの改築をやろうというのでありますね。けっこうな話であります。しかし、いずれもこれは、あとからお尋ねしますが、言うなら、人間の問題はさしあたりあとにして、車の問題ということであると思うのです。だから政策の中心を人間と車を分離することにひとつ置いてみたらどうか。
 それから学童の問題も、これはどなたが御答弁なさるかわかりませんが、学童の通学路の整備の法律がございました。いまもあると思うのですが、学童の通学路というのは、区域はどこかというと、校門からコンパスをかけて五百メートル以内が通学路になっておるのですよ。五百メートル以上からは大体子供は通っちゃいけないということになっておる。こんなことをいつまでもやったのじゃだめだと思う。だから家を出てから学校へ行くまでに車と会わないくふうをする。そういうのが幾らでも可能なんですね、やれば。可能ですよ。私の道路を直して通す。あるいはたんぼの道もあるでしょう、これも直して通す。多少は回り道になるかもしれませんよ。だけれども、命を守るためにはこれが一番いい、極端な話が。だからそういうくふうをひとつ考えてみたらどうかということであります。政策の中心に人間と車を分離する政策というか、そういうものはあまりないんじゃないかと思う。あまりないと言ったら語弊がありますが、多少歩道はつくるようでありますが、つくるとすれば横断歩道橋といって、人間が虐待される道をつくる。車がすいすい通って、人間がすいすい通れない。そういうのをもう少し考えてみたらどうか。経済も豊かになってきたし、佐藤内閣のもとでたいへん繁栄してきたのでありますから、その辺もやはり考えてみる必要があると思います。いかがでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 いろいろの問題がございますが、まず第一に国民会議で取り上げているのは、歩行者優先ということをまず取り上げております。歩行者を優先さす。そうして車は二番目だ、こういうことでございます。そうして、ただいま御指摘になりましたように、歩行者と車がぶつからないような状況はないかというと、ただいまの高架道路、高速道路といわれるものがいわゆる車だけ、これはもう歩行者はおらない。こういうように分離帯がだんだんできつつありますが、これもなかなか金のかかるところであります。ところが最近は、あの人の通らない高速道路が低速道路にしばしばなる。事故が起こる。同じ方向へ走っている、そこでやはり事故が起こる。これはいわゆる追突事故でございますから、これはもう確かに運転者自身に責任があると思います。こういう点が、まあ、あらゆる面でわれわれは事故を防ぐように、事故のないように、かようにはしておりますが、なかなかそううまくいかない。
 またもう一つ、これから話がどんなに発展するかわかりませんが、おそらく大都市において、市内でやはり車の通れない道というものが相当できてしかるべきじゃないか、あるいは右折禁止の場所、こういうようなものもあってしかるべきじゃないか、あるいは片道通行、こういうようなものもあってしかるべきじゃないか、あるいは時間帯を設けるとか、いろいろ制限を加えざるを得ないんじゃないか、かように私は思っておりますが、それらの点は警察当局でもいろいろ調べておるところでございます。ここらは警察にまかしたらうまくやってくれる、かように思っております。
○山中国務大臣 交通対策本部長の手元に参謀長がいないという話でありまして、御指摘のとおり、私のほうに権力があって私が各省の行政主管庁を引っぱっていくという機構に、実は率直にいってなっていないのです。各省庁、関係省のやっていることを総合調整する、その基本的な方針を定めてそれを実行してもらうという、私が預かっている形になっているわけでありますが、そこで先ほど来のお話につきまして、学童の問題等も含めまして、先般交通対策本部幹事会を開きまして、さらにこまかい実行上の問題点も詰め終わりまして、各関係都道府県、市に指令を出しました。その内容がございまするので、一部報道もされておりますが、あらためて公的に私の立場から御説明申し上げておきたいと考えます。
 第一点は、大都市における渋滞と死傷事故の発生ということに取り組むために、まず基本的には考え方を――アメリカにおいては自動車対自動車あるいは自動車自身の事故というものが五〇%近くを占めておりますが、日本の場合には人間と自動車、あるいは自転車に乗った人間と自動車というものの事故発生、死傷者件数というものが、ほぼ同率に近い、五〇%近い比率を占めております。
  〔委員長退席、細田委員長代理着席〕
ここではっきり私どもが認識しなければならない前提条件は、アメリカでは自動車のことを走る棺おけという表現をしておるやに聞いておりますが、日本では自動車は走る凶器であるという表現のもとにこれに対する対策を立てなくちゃならぬ。ということは、すなわち走る凶器から人間を守るのである、これが日本の交通対策の出発点である、かように考えたわけであります。
 そこで大阪において市長さんが実施されました一方通行というものが、調査の結果渋帯率にも非常に貢献し、あるいは死傷者の減少にも役立っておる事実がはっきりわかりましたので、第一には北九州市を含む七大都市、人口百万以上の都市を対象にいたしまして、幹線道路はほとんどでき得る限り一方通行ということを原則として実施する。この実施計画をいま各県に指令をいたしました。
 第二点は、七大都市並びにこれに準ずる人口八十万以上の川崎、札幌等がこれに入りますが、こういうところに対しまして原則的に幹線道路の右折を禁止する。これが第二点でございます。
 これらの二点を実行いたしますと、現在でも裏通りの細い道でいたいけな学童等が通過車両によって犠牲になっておる新聞記事等によく私どもは胸が痛むのでありますが、この一、二の一方通行、並びに右折を原則的に禁止することによって、派生的に裏通りの、現状でさえそのような問題のあるところに混雑が増加するという傾向を否定できませんので、第三点といたしましては、裏通りの細街路について徹底的な取り締まりを行なう。御指摘のありました二、三の点、すなわち学童等の通学する道路におきましては、時間帯を設けまして、その間通過車両と思われる大型車両、ダンプカーその他は通行禁止にする、あるいは一般の車両は十キロすなわち子供が飛び出した、ブレーキを踏んだ、直ちにとまったと言えるスピードの、ほぼ十キロ程度以下に落とすというようなことも配慮をいたしまして、細街路において不測の事故の発生を予防するという三点をきめました。
 各省は、御想像のとおり、予算が足りないとか、あるいはそのような計画は来年度予算には考えられていなかったんだとか、いろいろの抵抗はありましたけれども、やはり政治は、なしていけないことの悪と、やらなければならないことをやらないことの悪と、両面あると思いますが、私はこの交通事故の死傷者の激増を見まして、交通事故対策の基本的な条件は、やらなければ一日やらないだけそれは悪であると考えまして取り組みました。幸い各省庁が協力実行に誠意を示してくれておりますので、たいして権限も力もありませんが、気持ちの上では誠心誠意、御指摘のような方向に向かって努力を展開するということで、いまやっております。
○根本国務大臣 人間尊重の立場から道路の構築あるいはこの整備についてどういうことをやっておるかという御質問だったと思います。
 歩道、横断橋等の交通安全施設については、御承知のように四十四年度を初年度とする特定交通安全施設等整備事業というものがございます。三カ年計画でございます。これは道路管理者分が七百五十億、それから公安委員会分が四十六億でございます。そういたしまして、歩行者の安全確保のために道路管理者分の約八三%に当たる六百二十億円を計上しております。これば約五千キロの歩道でございます。それから約千二百カ所に立体横断施設を整備することにいたしております。なお、地方単独による交通安全事業におきましては、二千六百キロの歩道と約八百カ所の立体横断施設を計画しておるという状況でございます。
 なお、現在何といたしましても自動車の増加の率が予想以上に多うございまして、昭和三十五年約二百万台でありました自動車が、現在千五百万台、昭和六十年度には約三千五百万台と想定されておるのでございます。このためにますますこの交通戦争が激化するおそれがありますので、大体昭和六十年度を目標にいたしまして、完全なる道路が、自動車と人間が両方とも満足に交通できるような目標のもとに、これはもちろん鉄道あるいは航空機、海上その他みんな合わせて関係各機関と協議の上、目標を立てまして、その一部として従来の道路特別会計六兆六千億を四十五年度から十兆三千五百億円と想定いたしまして、そうして自動車専用道路をできるだけ多くつくるということがいま御指摘のような趣旨に沿うという考えで、これを進めております。
 なおまた、経過車両のために起こる事故が非常に多うございますので、都会地の国道でありましても、そういうところにも今度は有料のバイパス制度を設けていく、それから市町村道でありましても分離帯と歩道との設備を進めてまいる、こういうような指導をしておる次第でございます。
○久保委員 運輸大臣はまとめて答弁してください。各大臣たいへん丁寧な御答弁をいただいているんで、ちょっと時間がなんですから。
 運輸大臣にはあらためて申し上げますと、自動車の保安基準をもう少し引き上げて法制化したらどうか。
 それからもう一つは、海上交通法ですね、これは去年出すはずでありましたが、さたやみになっております。最近の海上における事故は御案内のとおり衝突事故が非常に多くなっております。しかも数が多くなってきた。そういうさなかでありますので、今国会はまだ始まったばかりでありますが、あらためて出すのかどうか、お尋ねをしたい。
 それからもう一つは、先般の太平洋上におけるところの海難でありますが、いわゆる大型汽船の場合の救命具については、漁船のような小さい船の救命具とは違ったものを必要としやしないか。たとえば救命膨張いかだにしても、荒天下においては、かなり大きなものであっても大洋の中ではあまり有効ではなさそうに実は結果から見られる。これはしろうとでありますから、そのとおりかどうかわかりませんが、いずれにしても救命ボートに乗りながら、海の底に沈んでしまったという痛ましい事故であります。こういう救命具の開発について検討を加える必要がある。
 それからもう一つは、これに関連して、先般海上自衛隊の問題を含めて救難体制についていろいろ問題があったようでありますが、もう少し海上保安庁自体の救難体制を強化する必要がある。いままでもそうでありますが、巡視船艇についても計画的にやっておられるようでありますが、これは海上自衛隊に比べれば微々たるものであります。なお航空機についてもそうなんですね。ですから、この際、従来からわれわれが要求しておりました飛行艇の一つぐらい配置するとか、あるいは荒天下においては着水不可能の場合もありますから、大型ヘリコプターをひとつ考えてみたらどうか。そういうのをぜひ考える時期に来たんじゃなかろうかと私は思うのであります。これは予算審議中でありますから、すぐそれは出しますという返事はできないんだろうと思うのでありますけれども、この間の総理の演説の冒頭は、人間の権利の上で一番大事なのは生きる権利ということであります。そうなると、やはりそれを最高目標にして政治をやっていただくということでありますから、これはぜひ考えていくべき筋合いのものであろう、こういうふうに考えます。
 それからもう一つは、これはタクシーのというか、特にタクシーばかりでなくて、自動車の任意保険についてであります。これは大蔵大臣の所管でありますが、ずっとまとめて御答弁をいただきます。任意保険を最近ずっと拒否しているんですね。拒否しているというのか、ていさいよく引き受けをしない。そこで、先般新聞にも載っておりましたとおり、大阪のタクシー業界では、言うならば、外人も来るので万が一事故があったときには、任意保険を掛けないままではどうも乗車をしてもらうわけにはいかぬ。ところが、引き受けを拒否されたんではとてもじゃないが、万が一のことを考えれば乗ってもらっちゃ困るということで、業者が乗車拒否に出ようかというのです。大体損保業界というのはどういう考えでいるのかわかりませんが、自動車保険については、御承知のように自賠責があります。これは車検のときに強制的に入らなければ車検が受けられません。でありますから、一般の保険と違って、これは宣伝費も何も要りません。勧誘も要りません。言うなら、あぐらをかいた――と言ってはたいへん語弊がありますが、その制度の上に乗っていけば大体うまくいくんですね。で、先般も料率は御案内のとおりそれぞれ引き上げた。われわれが望むところは、損保業界では業界としてやはり任意保険についてもっと積極的にやって、社会、公共のために尽くすというのが損保業界の任務だと私は思っているんですよ。自賠責の上にあぐらをかかれたんじゃ、かなわぬじゃないですか。だから、これは大阪の万博に関連しての問題でありますが、ぜひこの非を改めさせて引き受けをさせる。いままでもそうです。トラックなどもあまり引き受け手がないそうであります。これは料率が現状に合わぬというなら、公正な立場に立つ者に判断してもらう必要もあるでしょうが、まず第一に引き受けを拒否するなんというのは、とんでもない話だ、これをひとつ改めさせることを約束してほしいと思います。いかがですか。
○福田国務大臣 万博に訪ねてまいる外国人に対してタクシーが乗車拒否をするんじゃないかという心配のようですが、これはオリンピックのときにもそういう問題がありまして、それであのときは特別の料率をきめまして、まあつつがなくやったわけですが、今回も大体そのようでまいります様子でございますので、御安心願います。
○橋本国務大臣 どうも専門家の質問でありますから、なるべくわかりやすく、私もおわかり願うようにお答え申し上げようと思います。
 保安基準について、自動車の安全性の問題は、御承知のように昭和二十六年に制定されてから二十回にわたって改定しております。昨年の六月もブレーキ等の基準の改善を行ないましたが、おっしゃるとおり、これから技術開発に伴ってますます規制を高めていく必要があろうと思います。
 救難器具の問題ですが、実はせんだっての「かりふおるにあ丸」の遭難で私もその点を非常に危惧いたしまして、関係者にいろいろ事情を聞きましたが、私もしろうとでありまして、本式なところはよくわかりません。ただ、われわれしろうとが考えましても、せっかく救命ボートがあっても用をなさない。そこでアポロロケットが太平洋に落ちたときに使いましたああいうような救命ボートといいますか、自然にふくらむあれですね、これをひとつNASAのほうに照会をして、本式なものをつくってみてはどうだろうかというようなことをやっておりますが、この点については一そう努力をいたしたいと思っております。
 飛行艇の問題ですが、日本の飛行艇はなかなか進んでおります。進んでおりますが、問題はああいう荒天の場合ですね、はたしてこの飛行艇が救難に行けるかどうかという問題等がありますので、この点なお技術開発等について研究をした上で十分なる対策を講じてみたい、かように考えております。
 なお、外人客、今度の万博で外人客が相当たくさん来ることになっております。これに対して、何か大阪方面では外人客は拒否しようじゃないかというような一部の申し合わせがあったという話を聞きましたので、はなはだこれはけしからぬということで、せんだって厳重なる通達が、もちろんこれは大阪だけじゃありません、東京その他七大都市を含めて、外人の来る人だけでなく、日本人に対しても、いわゆる乗車拒否ははなはだけしからぬことでありますから、ことに値上げの直後のことになるわけでありますから、したがって、そのようなことのないように、もしそのようなことがあれば国辱問題ですから厳重なる処置をしますという、こういう意味の通達を出して、このようなことのないことを考えております。なお、いわゆる外人がことばがわからぬために、あるいはさようなことが起きてもいかぬということで、運転手には日英ガイドブックというものをつくらして、さようなことのないようにいたしたい。かように措置をとっておりますことを御了承願いたい。
 なお、保険の問題は、大蔵大臣のお答えがありましたように、運輸省といたしましても、臨時でもそのような措置ができないかということで検討を進めておりますので、その点も御了承願いたい。総理大臣から詳しくお話がありましたので、私はこの程度で御了承願います。
○久保委員 海上交通法はお出しになるかどうか。
○橋本国務大臣 海上交通法でありますが、御承知のように、二年ほど前からこの問題を現実に法案作成のために着手してまいりましたが、特にこの適用地域は、もちろん全国に及ぶわけでありまするが、主たる問題は瀬戸内海の問題が多かったわけであります。もちろん、これはその他の港湾関係でありますけれども、沿岸漁業の問題、沿岸漁業対策が本格化しなければなかなか困難、解決がつかないということで、この二年間各方面と折衝しておりますけれども、まだ最後のめどがつきませんが、しかし、現在の情勢から見て、いよいよ船がふえる、こういうことでありますからして、一日も早くこれが実現し、法案提出の運びに至るように努力いたしたいと思います。その間、航路標識あるいは航行指導、そういう方面によってできるだけ海上交通の事故が起こらないように最善の指導をしてまいりたい、かように考えておりますので、御了承願いたい。
○久保委員 万博の問題が出ましたから、通産大臣、この万博について一番問題なのはやっぱり足の問題ですね。これは警察も関係あると思うのであります。それからもう一つはホテル、宿屋の問題、これはどうなさるおつもりであるのか。間もなくオープンされるということでありますが、もうすでに修学旅行の子供たちは取りやめたものも出てくるという始末で、そういうさなかでいわゆる成算あってオープンできるのかどうか。一言だけでけっこうでありますから、通産大臣からお答えをいただきたいと思います。
○宮澤国務大臣 御指摘のように、いまの段階になりまして一番心配しておりますことは、その二つの点でございます。そこで、もうすでに宿泊対策協議会だとか、あるいは交通対策の懇談会だとか、関係府県一緒になりまして、もうほとんど連日のようにその会議をしておるようであります。
 宿泊につきましては、確かに名の知れました旅館、ホテル等はもう相当きついようでございますけれども、団体でなく個人の場合、あるいはその日にち等によっては必ずしもまだ一ぱいではないという状況のようであります。それから、いわゆる旅行のエージェントに関係していないところの旅館がかなりございますが、こういうところはいわゆる未協定旅館でございますけれども、まだ余裕があるように見受けております。そのほか対策協議会としては、民宿であるとか、お寺であるとか、そういうことも極力お願いをして、用意をしておるようでございます。
 交通のほうは、やはり一番問題になりますのは、祝日、休日等に地方からマイカーのラッシュがあるであろうという点でありまして、警察庁では三万四、五千台、あるいはそれより多いのではないかとピークを勘定しておられるようでございますが、そうなりますと、バスを利用し、地下鉄を使ってもらうということをしきりにお願いをしておりますが、地方からのマイカーが、ことに非常に混雑の日にせって来るということを何とかして防がなければなりません。始まりましたら、あらかじめ何日ごろは非常に込みそうだということをいろいろな方法で全国に周知をしてもらって、そういう日においでになってはお互いに不幸でございますから、なるべくマイカーで来られる人は、そういうピークにならない日を選んでいただくような周知対策も考えなければならぬではないか、こう思っております。
○久保委員 時間もありませんから、これは後刻別な席でまたお尋ねをしますが、大きな事故というか、事故一つ起きたらたいへんな問題になると思うのですね。そういう意味でもやはりオープンする前に詰めた計画というか、そういうものは万全の策をとっていかないとたいへんであろうというふうにわれわれも思っておるわけであります。一言申し上げておきます。
 それから次に、先ほどのタクシーの問題であります。最近料金値上げの問題がございますが、大阪はすでにこれは許可をしたんだそうでありますが、これは運輸大臣にお尋ねをしたほうがいいでしょうね。東京では三月一日から一部値上げを認めて、新しいメーターによる車と、古いメーターのままで換算表を持った車と、それから値上げを見合わせられた車と三様に走るそうでありまして、これはだれが何と言おうとも、どうも市民の立場からすれば、残念ながら受け入れられないだろうと思います。これはメンツにこだわることなく、この辺で値上げをやはり延期せざるを得ないだろうというふうに私は思うのであります。万が一どうしても値上げをしなければならぬというならば、少なくとも旧料金で走るという悪質な会社は、体質が改善するまで少なくとも営業は停止、こういうふうにする必要がありはしないか。いずれにしても、換算表を持ってやるにしても、走っているときのメーターだけなら昔もありましたから、あまりトラブルはないのでありますが、走らぬときの換算表というか、そんなものもあるのですね。深夜、渋滞、そんなのは換算表には載っかっていないのですね。だから、これはどうもトラブルが大き過ぎはしないか。だから、この辺でひとつ勇断をふるって、全業界の体質が改善するまでさらに延期、こういうことを考えるのが一番妥当ではなかろうかと思うのでありますが、いかがですか。
○橋本国務大臣 タクシー料金の改定は、昨年末方針が決定して、二月一日以降これを許可するという方針が決定しておったわけであります。その間の時間を置きましたのは、その間に会社、従業員等にお互いに新料金に応じ得るようなりっぱなものになれ、こういう意味で何カ月間の間を置いたわけであります。今度最近の交通事故の状況その他から考えて、人命尊重といいますか、交通事故、こういう点から考えましても、何としても業者並びに運転手の体質が改善されなければならぬということで、これらの内容調査については主たる官庁としては労働省にお願いをした、もちろん運輸省もこれに関与をいたしております。
 その結果、残念ながら、全く私は残念でありますが、――できれば一斉にこれは許可することが好ましいし、またそうあるべきものと私は考えます。ということは、久保さんは専門家でありますからして十分御承知のとおりに、業者の経営状態も必ずしもよくない。同時にまた、運転手の給料自身も決して高い給料ではありません。安いと言ってよろしいと思います。こういう状況から見ましても、ことに前回料金改定をする前に、四年間は上げないというような状態で、相当の年限を経ておる今日でありますからして、しかも運転手のような神経を使う精神労働をも加味した労働者でありますから、われわれといたしましては、できるだけ早くこうした政府の方針なり利用者の理解を得て解決をしていきたい、こう考えておったのでありましたが、ただいまお話しのように、一部はこれを認可することができなかった。そのために、ある意味においては御心配のようなことがあるであろうといわれておりますので、運輸省といたしましては、最善の措置を尽くしまして、あるいはPR、またポスター宣伝その他あらゆる方面、あるいは許可をされましたものに対しては許可証、ステッカーを張りつけるとか、あるいは賃金換算表を与えるとかというような方法をとります。
 また、たとえば一ぺんにこれが許可されましても、実はその新メーターを一斉にそのときにつけることはできないのであります、実際上の問題として。これは久保さん御承知のとおりに、新メーターをつけた場合は一応これを走らしてみて、その安全度を整えた上でこれを許可する、こういう手続をとりますからして、東京だけでも三万何千両という自動車を一日で新メーターに切りかえることはできません。したがって、ある意味においては、ほんの一部は新メーターがつけられる。私が着任した当時これを聞きましたところが、全部やるためには五カ月もかかるという話です。それでははなはだ迷惑をかけるからして、できるだけ早くこれを実現するようにというので、二カ月余で全部を切りかえることができるような準備をさせましたが、それにいたしましても、最初の日に新メーターで全部走ることはできないのであります。大部分は旧メーターを使わざるを得ない。こういう意味において、切りかえ時においては、自動車だけではありませんが、あらゆることについて一種のそうしたいろいろな複雑な問題が起きますけれども、できるだけ利用者にも迷惑をかけないように、かつまた、運転手自身も会社のほうも十分に心して、自分たちはいわゆる人命尊重、かつまたこのような機会を得たのであるからして、お互いの心がけの問題も十分に考えてもらいたい。人間としてよく考えて、お互いがトラブルを起こさぬようにということを各会社及び従業員各位に十分に運輸省からもこれが伝達並びに十分な接触を保っておりますので、私は、そのようなたいへんな混乱はなくて済むであろう、また済ましてもらいたい。これが業者並びに運転手及び利用者三者の利益になる、かように考えて、その方針で指導してまいりたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
○久保委員 お話は事務的にはそのとおりかと思うのでありますが、われわれの考えというか感触では、どうも理解がいかないですね。悪いものは大体動かすことがいけないんですよ。しかも、合格したと言うが、その中で、これは労働大臣にお尋ねしますが、この運輸省との間の相互の協定というか申し合わせによって、それぞれ立ち入り検査なり何なりやって、合格というかそういうものを通報されたのだろうと思うのでありますが、全部が全部そういうことができたのですか。おそらく全部が全部できたんじゃなくて、一部はそういうものをやらぬものが合格しているような話も、実はちらほら聞いているのであります。もっとも、数が多いから、基準監督署の監督官もそんなにあり余るほどいないから、これはたいへんむずかしいことだと私は前々から見ていたんです。だから、そういうものを出すのならなおさらのこと、これはやめたらどうか。やめたらどうかというのは延ばしたらどうか。
 それからもう一つは、まちまちでやられた場合に、何か抽せんか試験にはずれたやつが安くて、合格したのが高いなんというのは、お客のほうからいうと何かちょっと、どう説明していいのかわかりませんけれども、ちょっとどうも、何か変ですよ。だから、頭をかしげながら乗らなければならぬようなことをどうしてなさるのか。これはやっぱりおやめになったほうがいいのじゃないですかね。あとのためにも私はそのほうがいいと思うんですよ。
 これは、経営の実態、運転手の諸君の立場を考えれば、多少われわれもわからぬわけじゃありませんが、そういうまちまちの姿で無理をしてやるほどのことではない、こういうふうに一つは思うのであります。いかがでしょう、労働大臣、みんなチェックなさったんですか。チェックなさって合格ですか。
○野原国務大臣 タクシー料金値上げの問題につきましては、労働基準局におきまして二年ほど前から厳重に監査をしております。今回の対策につきましても、六十八カ所の事業所が実は労働条件その他で不適格であるということで、すでに改善命令を出したわけでございますが、その改善命令に適合した、良心的にやっていただくという確証がまだ必ずしも十分でございません。改善命令に沿いまして労働条件その他が整いますれば、その段階においてできるだけ早く許可しよう、こういうことになっておるわけでございます。
○久保委員 労働大臣のほうからも、何というか、十分間違いありませんというようなことが出ないのでありますから、やっぱりこの辺で少しお延ばしになったらどうですか。運輸大臣、そのほうがいいと私は思うんですよ。これは延ばしていったほうが一番だれにとってもいいと思うのです。これは政府にとっても評判がいいのじゃないですか。これをもしも強行して乗車拒否が出たり何かしたら、評判が悪くなりますよ。だからこの辺で――身近な話をしてたいへん時間をとるのは恐縮でありますが、せっかく閣僚がお並びでありますからお尋ねしているのでありますが、一ぺんお考えになったらどうですか、いかがです。
○橋本国務大臣 御注意ありがたく拝聴いたしましたが、ただいま申し上げましたような事情で、労働大臣も、労働条件の改善ができ次第早くこれを認めたいという方針であり、運輸省といたしましては、従来の既定方針に従いまして順次これを解決していきたい、かように考えております。
 ただ、これは久保さんにお願いするだけじゃなく、従業員及び利用者各位にも、やはり今日の交通事情から見てなかなかたいへんなことは私は運転手に対しても非常に同情心を持っております。これは「つばめ」という国鉄の機関紙ですが、あるいは久保さんごらんになったか知りませんが、最近私は対談をしましたが、国鉄の運転手諸君、従業員がほんとうに家族ぐるみで事故がないように、そうして無事につとめをするように祈っておる気持ち、それを私は感じて、何か胸にじんとする思いがしたのであります。かような気持ちでやはりタクシー運転手にも、業者にも対していきたい、かように考えております。
○久保委員 私は、ここまできて上げちゃいけないとは言いませんよ。上げることに決定したんですから、ただ、ふぞろいのままでやることはたいへん混乱が起きるから。しかも値上げしたあとで乗車拒否はなくなるのかどうか。なるほど労働基準局の審査にはパスしたけれども、実態は旧態依然とした事業体があって、運転者は歩合給で責め上げられるというようなことがもう皆無だというふうに保証がされない現況だと私は思うのです。だから、そういう意味でもう一ぺんお考えをいただきたい、こういうふうに思うのであります。
 時間もありませんから、私はそう頑強に言わぬで、ふぞろいだけは、そろえたらどうか。それから体質が改善できない、そういうものは、あるいは道路運送法に従って免許の取り消しをびしびしやったらどうですかね。いままでは乗車拒否があっても、たとえば労働条件の中で労働基準局から指摘されても、言うならば、道路運送法上は、何台かいわゆる営業を何日間停止というだけでしょう。私は、もっときびしくやるのがほんとうだろうと思うのですね。そうしなければ、労働条件なども改善できないと思うのです。どうかひとつお考えをいただきたい。総理もうなずいておられますから、ぜひ考えていただきたいと思う。
 それでは時間もありませんから、先へ参ります。
 次は、国鉄の再建問題でありますが、先般、国鉄から政府の基本計画に従って再建計画というか、そういうものが出てきている。政府が承認しましたね。その承認したものと政府の基本方針との二つについて、運輸大臣を中心にしてお伺いをしたいと思うのであります。
 まず第一に、客観的環境の整備ということで、これは国鉄を取り巻く客観的な条件ですね。その中で国鉄の基本計画というか、これには抽象的でありますが、いわゆる競争条件の問題あるいは公共負担、それから地方支線区の問題、こういうものは国の強力な施策のもとに改善していく、こういうことであります。言うならば、政府にげたを預けたかっこうであります。
 これについて一つ一つお伺いしたいのでありますが、まず一つは、競争条件を整えるというか、そういうことについてどういうふうに政府は考えておられるのか。
 それから、これに関係すると思うのでありますが、公共負担と一がいにいままでいわれておりました政府の政策を、国鉄の責任において実行していたものですね、こういうものの処理は、この基本方針によりますれば、逐次是正していく。是正していくというのはやめていくということなのか、それとも別な形で存続していくというのか、この辺はどうなのか。
 続けてずっとお尋ねします。一つ一つだと長い御答弁をいただくことになりますから、時間もたくさんありませんので、たいへん恐縮ですが、簡単なことですから、メモは要らぬと思うのでありまして、お尋ねしていくわけです。
 それからもう一つは、地方支線区の問題であります。いわゆる閑散線区といわれるものの処理について、国鉄財政再建推進会議では、具体的に八十三線区、二千六百キロを逐次道路輸送に転移していく、こういうことであります。このことについては、政府が国鉄に示した基本方針も、国鉄がきめた基本計画も、これはやはり抽象的であります。抽象的であることについて私はどういう考えをしているのかというと、これは去年の予算委員会でもお尋ねしたと思うのでありますが、地方では八十三線区、二千六百キロについて重大な関心を持っているんですね。そこで、何々線という具体的な線が出てまいりまして、これはいまだに消えていない。そうしますと、いつ何どきこれが消えるやら消えないのやら、これはわからぬ。そのために、たとえば一つのある線においては、企業の進出が計画される。ところが、鉄道の線路がなくなるかもわからぬというので、これは手控えになったという話もあるわけです。それから、身近な話では、これは笑えないたいへんなことでありますが、汽車も通らぬところへは嫁には出さぬというので、嫁の口が破談になったという話もあります。これは人権尊重の佐藤内閣にとっては、まことにたいへんなことであろうと私は思うのですよ。だから、この八十三線区、二千六百キロについては、あいまいもことしたままでいっては、どうかと思うのですよ。
 しかももう一つは、御案内のとおり、これは政府の書いた基本方針についてもそのとおり。これは国鉄には関係ないかしれませんが、国鉄は基本的な計画には書いてこないのが一つあります。それはいわゆる新線建設についてであります。片方で撤去するかわからぬといって、その先を建設していくというのですね。これは、なるほどお互い政治家として地元の利益ということになると、鉄道などは道路と同じように、あるいはそれ以上にたいへんな問題であります。だから、これは言いにくいことであります。言いにくいことでありますが、国鉄も再建をほんとうにまじめに、真剣に考えろというなら、いまある既設線区を撤去しようというさなかに、それと同じか、それ以下のものをつくろうというのは、だれが考えても、実際にもあまり通用しないことだと思うのですよ。もちろん、赤字線区であろうが何であろうが、鉄道でなくてはならぬものは鉄道にしたらいいと思うのです。これはそのとおりだと思う。採算が合おうが合うまいが、国鉄であるから、その線区の採算が合わなくても、鉄道でなくちゃならぬところは鉄道を敷いたらいいと思うのですよ。もちろん、開発のために必要なところは当然であります。ところが、そうでなくて、明治以来の鉄道敷設法によるところのいわゆる予定線までひっくるめて、言うなら自民党の外郭団体みたいなのがございます、新線建設期成同盟会というのがある。毎年予算時期になると、これは集会をやるようでありますが、これはもはや古いのじゃないでしょうか。佐藤総理、いかがですか。もう少しこれは考えたらいいと思うのです。予定線を入れてみんなやっているのです。調査線ももちろん、着工線はもちろんですがね。こういうことがいわゆる予算獲得にどの程度きき目があるか私にはわかりませんけれども、そういうことをやっている。そういうのを明確にすることが国鉄の再建の大きなねらいだと私は思うのですよ。佐藤総理は、交通、運輸については過去においては御経験があって、一見識を持たれておる総理大臣でありますから、しかも三百名の重みの上に乗っかって、やれないことはないはずです。この新線建設なんというのはきちんとしたらいいと思うのです。
 次に参ります。それは、運賃料金制度の合理化ということでありますが、いわゆる国鉄の運賃料金の合理化ということは、これは先般運輸大臣が談話か何かで発表したように、あるいは過去においても再建会議の意見書の中に載っていると思うのでありますが、線区別計算による運賃を設定するということも含んでおるのかどうか。いわゆる赤字線には赤字線に応じたところの運賃、黒字線は黒字線に応じたところの運賃で、合理的にこれをしていこうという一つの説があります。この間、あなたもそういう談話を発表したようであります。そういうものを含んでいるとするならば、国鉄のいわゆる経営形態というか、その目的というか、これはおのずから違ってくると思うが、これはどうですか。
 それからもう一つは、運賃値上げについてはどうなのか。推進会議では、あるいは昨年の国会における答弁では、この再建期間中、去年一回上げましたから、合計して三回の運賃は上げる予定であるという話が公表されました。今度のこの基本方針の中には、御承知のように「将来の運賃水準については、財政再建の進ちょく状況、物価その他の経済情勢を勘案のうえ、真にやむを得ない場合に限り、その改訂を図る。」と、こうなっています。これまた抽象的であります。去年は非常に具体的であります。これは抽象的だと思うのであります。しかも、国鉄のほうは一応の試算を出してきているようでありますが、この国鉄でいっていることはどういうことかというと、「将来の運賃水準の改訂については、政府の基本方針に定めるところによるものとする。」そうすると、これまた国鉄の再建計画というものは、運賃に関しては政府にげたを預けておる。政府の態度はどうか。
 それからもう一つ、これは運賃値上げをするかどうかの一つのきめ手になると思うのですが、「財政再建の進ちょく状況に応じ」というのが一つ、それから「物価その他の経済情勢を勘案のうえ、」――物価は、御案内のとおり上がってまいりました。来年度というか、四十五年度では四・八%に押えようというのですが、これは押えられないだろうというのが一つの見方であります。そうなりますというと、これは国鉄総裁にお聞きしなければなりませんが、財政再建の進捗状況は今日の時点ではいかがでしょうか。それによって政府は運賃問題について考えなければならぬだろうと私は思うのであります。それはそのとおり考えていいのかどうかというようなことであります。
 それから、ずっと聞いていきますが、これは運輸大臣になります。内航海運の貨物の輸送でありますが、これは運輸省というか、政府として国鉄と内航海運との間の協同一貫輸送というか、そういう体制はとれる見込みがあるのかどうか。御案内のとおり、内航海運は内航二法によって一つの輸送調整をしております。いまのところはやや安定をしているわけであります。そういう場合において、国鉄との協同一貫体制がうまくできるかどうかというのが、多少問題がありはしないかというふうに心配しております。総理、これは見込みがあるのかどうかというようなこと。
 それからもう一つは、これは国鉄総裁にお尋ねしなければいけませんが、駅業務の廃止と集約でありますね。こういうのは、この計画によりますれば、最終年度までに全体の駅の四割も、そういうものを減らしていく、こういうことがあります。これは基準というか、そういうものはいかように考えられているのか。それから年次計画でもつくってこれを進めていく考えなのかどうか、地元との関係はどういうふうに調整しようとするのか。
 それから、これは大蔵大臣にお尋ねしたほうがいいと思うのでありますが、再建計画も、いわゆる具体的な国鉄の計画も、それから政府が閣議決定した基本方針も、国鉄の投資規模は「三兆七千億円を限度」とすると書いてある。あまり見なれない文字の「限度」、限度というと、国鉄の投資は、いわゆる五十三年までの間に三兆七千億という限度で押えられるかどうか、押えていこうということなのか。いままでこういうものに、たとえば道路あるいは港湾、いろいろありますね、五カ年計画とかなんか。こういうものにあまり限度などということは書いてないですね。この限度の意味は何だろうか、こういうことです。
 それから最後に、これは国鉄の総裁にお尋ねしなければなりませんが、管理機構の簡素化というのは、どんなものをさしておられるのか。
 以上、大体七つか八つの点でお尋ねいたしましたが、たいへんわがままでありますが、結論だけお話をいただければけっこうだと思います。
○橋本国務大臣 たいへんいろいろな問題がありますが、足らぬところは磯崎国鉄総裁から補足説明をさせることにいたします。ただ、全体の理論の前提としてちょっと簡単に申し上げたいことは、いわゆる将来の貨物輸送というものを考えますと、われわれの私的な計算にいたしましても、最近の経済伸び率から見て、昭和六十年までには、大体計算は従来の二倍とか二倍半人っておりますが、おそらく三倍半くらいの貨物の輸送量になるのじゃないか。これはもちろん鉄道、トラック全部を含めまして、そういう経済成長、経済拡大、こういう点から考えますと、国鉄のになう輸送の上における役割りというものは、非常に重要性がある、重大である、国鉄を無視して貨物の輸送というものは考えられない。こういう意味で、国鉄再建計画というものが真剣に皆さんの手によって論議せられ、そして一応の案がまとまって、政府もこれを了承したわけであります。こういう前提に立ちますと、先ほどの第二番目の問題の、いわゆる赤字線解消の問題先ほど久保さんからは八十三線、二千六百キロというお話がありましたが、政府のほうではもちろんこの問題には触れておりません。これは国鉄の諮問委員会の数字であります。私は、ただいまの前提に立って考えますというと、もちろんだいぶ前からこういう動きがなかったわけではありませんが、今日の情勢において、これをトラック輸送なり道路にかえるべきものもないとは申しません。しかしながら、そうした将来の二十年なりあるいはもっと長い目で、日本の全国土の均衡のとれた経済発展、こういうものを考える場合においては、いわゆる従来赤字線といわれるものにつきましてももう一度再検討する必要がありはしないか。ただ、その場合において、その赤字を国鉄だけに背負わせるということでは再建計画に支障が来る、これをどうすべきかということは、これからの問題でもあると同時に、私はその点において、御承知のように、あるいは一部民営、あるいはそういうものを考える必要がありはせぬか。これらは運輸省自体が計画書を受け取りましたからして、これから具体的に検討してまいりたい。国鉄には国鉄の考え方がありましょうが、運輸省には運輸省の考え方がある。こういう意味において、いま直ちに八十三線、二千六百キロを廃止するという方針はとってはおりません。
  〔細田委員、長代理退席、委員長着席〕
 それからこれは久保さんのみならず、運輸関係の方々が非常に熱心におっしゃるいわゆるイコールフッティングの問題でありますが、おっしゃるとおり、一つの原則論として私はもっともだと思います。従来、今日のような国鉄のあり方がありましたのは、御承知のように、国鉄といいましょうか、当時は国営、官営でありましたが、輸送のほとんど独占的な役割りをしておった。したがって、競争原理をとる必要がなかった。その後においてトラック輸送その他が出てまいりまして、現在ではややもすればトラック関係の輸送のほうが、やや貨物の輸送量ではよけいになっております。将来はまた変わってくる。こういう点から見て、競争原理が確立されておらないという意味での問題があろうと思います。しかしながら、ただ国鉄の使命といいますか、国鉄の持っておるものは、やはり国家の輸送の大宗として、かつまた、国民生活に大きな影響を持っておる、こういう意味において、いろいろの制約を受けざるを得ない。これは国営事業の一つの役割りであろうと私は思います。しかしながら、従来の独占企業時代のいわゆる運賃制度のもとでそれでよいかといえば、これはこれから研究をし、かつまた、一部分は国鉄側もこれを申請をして、要求をしておるわけでありますからして、これらの問題も考えていかなければなりませんと思いまするが、その問題は重要な問題でありますので、なお慎重に検討を進めていきたい。
 運賃料金の合理化の問題。これは従来、国鉄もいっておりますが、対キロ運賃制度、キロによって運賃制度をきめていこう、あるいは場所によっては特別運賃制度を考えよう、こういうような考え方が国鉄再建の国鉄の申請書の中に含まれております。私もこの点については特に考えていかなければならぬし、かつまた、従来のような運賃制度のきめ方では、いわゆる合理化もできません。非常にこまかいといいますか、区分されたこういう運賃制度については、これは一考を要することであろうと思っております。なお、この国鉄再建の中で運賃値上げを予定しておるといっておりまするが、ただ、試算上の問題として二回上げる必要があるであろうという見解であって、政府は時の経済情勢及び国鉄自身の持つ経済諸問題、それらを勘案して慎重にこれは処理していきたい。また、再建計画の進み方にもよりますからして、それなどを十分に考えながらこれを処理していく考えであります。
 最後に、内航海運と国鉄の一貫輸送の問題、これは御承知のように、最近、沿岸、港湾にいたしましても、内航海運にいたしましても、いわゆる小型コンテナ化が進められつつある。これは将来の鉄道、道路及び外航海運の一貫輸送の大きな延伸になると思います。この小型コンテナ化の問題から考えまして、当然一貫輸送はある意味において考えなければなりませんし、関東地区と東北との間にこれが許可をいたしておりまして、この結果を見て、内航海運に対する影響及び一貫輸送の利便、こういう経済効率等を十分に考えた上で、慎重にこれは進めてまいる。これがために内航海運に大きな影響を与えることも好ましくない。しかしながら、コンテナ化の傾向はこれは一つの傾向でありますし、海、陸、空の三位一体の輸送体系を立てるということが将来の総合輸送の問題でありますので、それらを含んだ上で十分に検討してまいりたい、かように考えておる次第であります。
○福田国務大臣 国鉄の十カ年計画で、投資総額限度ということばを使ったのはどうかというわけですが、これは普通ならば、目途とかめどとか、そういうわけでありますが、何ぶんにも再建計画でありますので、じみに限度ということばを使った、かように御理解願います。
○磯崎説明員 ただいま運輸大臣から詳しい御説明がございましたので、私に御質問の点だけお答え申し上げます。
 まず過般の政府の基本方針は、私どもにとりましては、政府としては昨年委員会でおきめくださいました諸般の財政措置をそのとおりやっていく、あるいはほかの交通機関とのバランスのもう少しとれた総合交通政策をやってやる、あるいは建設線も再検討してやる、あるいは運賃制度の合理化もしてやる、非常に温情あふるる閣議決定をいただきまして、それに基づきまして、私どものほうといたしましても再建計画をつくったわけでございます。私どもといたしましては、政府がその再建の進捗状況に応じまして、いまおっしゃったことを具体化してくださることを切に望んでいる次第でございます。
 まず去年から始めました四十四年度からの財政再建計画の進捗状況でございますが、これはすでに新聞等で報じられておりますように、昨年運賃を上げていただきましたが、実は思ったほど収入があがっておりません。これは自動車の両数の増加、あるいは道路の進捗のテンポ、あるいは飛行機の整備等、非常に予想外に急激に伸びまして、それが私どものほうにはっきり実は数字であらわれております。その点今後再建計画の中で、まず第一の基本をなす収入の問題につきましては、相当私どもは努力しなければならない、こういうふうに思っております。
 それからもう一つは、ベースアップの問題でございます。これは前国会でも申し上げましたが、昨年度は実に一三%以上のベースアップになりました。今度の再建計画では、十年間を通じまして八・五%というふうに試算をいたしております。その試算にいたしましても、十年間でベースアップいたします総額が、定期昇給を除きましてベースアップの分だけが約二兆五千億でございます。それから、大臣が先ほどおっしゃいましたように、もし四十四年度、四十八年度、五十二年度と四年置きに運賃を上げたといたしまして、その上げた分だけが約二兆五千億でございます。すなわち運賃の値上げの分の額よりも、ベースアップのこの八・五%で計算した額のほうが多い、こういう現状でございます。したがいまして、今後国鉄財政の再建の進捗につきましては、いまの収入の問題とベースアップの率の問題が非常に大きな問題になってくるということを率直に申し上げておきます。
 それから第二番目に、駅業務の廃止、集約の問題でございますが、これは多少旅客駅と貨物駅と趣を異にいたしております。私どものほうで考えておりますのは、旅客駅のほうは現在約五千ございますが、これは駅はやめない。ほとんどやめるつもりはございません。これはどっちかと申しますれば、駅の職員をほかのほうに使いたい。と申しますことは、駅におります職員の大部分の者はたとえば信号機を動かしたりあるいはポイントを動かしたりいたしておりますが、それが機械化によりましてリモートコントロールができるようになりました。そうすると、そういう人間が要らなくなります。あとは切符を売ったり改札したりする人間でございますが、これは車内で売るとか、あるいは駅のそばの商店に売ってもらうということでもやれないわけではないわけでございまして、この点、私どもといたしましては、旅客駅につきましては、いわばバスの停留所のようにしたい。無人化と申しますよりも、停留所化いたしたいというふうに思っております。その際に、たとえば手小荷物の問題等若干問題がございますが、これは極力トラック等を使って、集荷、配達等をやりたい、こういうふうに考えております。
 それから貨物駅につきましては、現在貨物駅が約二千九百ございますが、この配置が大体四キロから五キロに一つ、これは明治初年の荷馬車時代の貨物駅の配置でございまして、現在トラックと道路が整備された以上、これを大体半分に減少することができるだろう、こういうふうに考えております。そのかわり、残りました駅は、設備をよくして荷役のコストを下げる、機械荷役をして流通経費を下げる、こういう方向で進むべきだと考えております。これはできれば年次計画を立ててやってまいりたいと思っておりまして、すでにことし各地方におきまして、若干ずつ地方の方々と御相談をいたしております。これは決してやみくもでなしに、十分地方と御連絡し、またあとの始末等も十分御相談した上でやめてまいりたい、こういうふうに思っております。
 それから最後に、管理機構の問題でございますが、これは再建計画の中にも書きましたとおり、私のほうは、いわゆる明治時代の全国画一的な管理組織はもうすでに時代おくれだというふうに考えます。したがいまして、ある地域、たとえば北海道とか九州につきましては、ほとんど本社の権限をまかせてしまう。そうして現地でもって何事でも大部分の仕事ができるようにする。それから、そうでないところにつきましては、中間の、私どもはいま支社といっておりますが、これを廃止してしまう。そうして思い切って簡素な、中間機構を省略した管理機構にいたしたい。それから、地方の遠いほうについては、思い切って権限を委譲してしまいたい。そしてそれがひいては私ども直接東京の本社の管理機構を簡素化するということにもなる。こういうことで、これはできれば半年以内に一部実行に移したいというふうに考えておる次第でございます。
○久保委員 総理、いまそれぞれお聞きのとおりでありまして、政府にげたを預けた幾つかの点、一番大事な点でありまして、それに対しては、運輸大臣から残念ながら明確な御答弁をいただけない。明確な御答弁をいただけないというのは、これはたいへん残念ですが、再建計画は国鉄のひとり相撲でやってもできるものではないだろうと私は思うのです。これはわれわれが、中には賛成するものもあるし反対するものもあるけれども、いい悪いは別にして、抽象的な再建計画なり、基本方針を何べん書いてみても進まないのじゃないですか。特に先ほど申し上げたように、新線建設などには明確な態度をやはり打ち出す時期じゃないですか。
 それから、公共負担の問題、競争条件の問題、こういうようなのは、少なくとも明確な回答を与えてやらぬ限りは、国鉄が出してきたこの計画では、何にも具体的なものがないと言ったらたいへん語弊がありますが、十年間に、先ほど大蔵大臣の、こういう計画だから、再建だから限度にしたのだというお話なんで、この三兆七千億と、職員の数を減らすという六万人の数と、それから大体駅の数が四割減る、駅の数と言っちゃおかしいが、いま総裁からお話があったような駅員の無配置ですか、そういうものとか、貨物扱いをやめるのは四割くらいあるとか、そういうのが具体的でありまして、あとはまあ大体具体的なものは何もないのですね、これは。一番大事なものが何にもないのです、これは。しかも、この法律で定められている政府の助成というものが、これはなるほどきめられたものは、もともと小さいからやむを得ないと思うのでありますが、何かどうもあれで政府の責任は終わったというふうに考えているんじゃなかろうかというふうに私は思うのです。いわゆる利子補給というのと孫利子ですか、それからあとは財投でめんどうを見てやるというようなことだけで、財投というのは借金でありますから、あとでみんなが返すということでありますから、別に多少金をくめんしてもらったぐらいのものでありますね。そういうことで、はたして再建できるのだろうかというと、私は国鉄だけの責任で再建をやるのは、職員も一生懸命になるというだけでは、残念ながらむずかしい、こういうように思うのです。総理、一言どうですか、国鉄再建問題に対して。
○佐藤内閣総理大臣 私の経験も、もう古くなってまいりました。久保君もまた同じ感じを持たれるだろう。最近の国鉄の悩み、これはよほど変わってきている。一時は、もう近距離輸送は、国鉄の負担ではないんだ、こういわれたときがありました。もう長距離輸送だ、こういうことをいわれたものでありますが、ところが逆に、ただいまは、近距離輸送こそ国鉄が担当すべきじゃないか。もう自動車は、この上どんどん都内に入ってこられちゃ困る、かように考えると、このほうが問題で、長距離輸送はむしろ飛行機のほうが大体まかなえる、そういうようにもなってきておる。あるいはまた、貨物輸送の面でも、私どもは最も大事な輸送だといって石炭輸送にずいぶん力を入れたけれども、そんなものは、いまもう、ほとんどなくなってきている。石炭がなくなったばかりじゃない。また貨物収入で取り扱い数量の多かった砂利輸送、そういうものもなくなっておる。よほど変わってきているのですね。だから、このどえらい変化というものをどういうようにわれわれが受けとめるか、これがただいま国鉄総裁からるる説明された再建計画、それがその骨子だろうと思います。
 私は、それで思うのですが、閑散な地方の駅などが、駅員無配置の駅になるという、これは、やはり地方の方としても不便はございましょうが、やはり国鉄再建のために、財政のためには、やはりしんぼうして協力するのが当然じゃないだろうか、かように思います。線区を廃止するといいながら新線を建設するじゃないか、こう言われるのもありますが、しかし、その新線を建設することによって、ただいま収益のあがらない線も、さらに収益のふえる場合もあります。あるいは短絡線、いわゆる連絡が完成するという場合もあります。したがって、新線そのものを否定するわけにはいかないと思う。まあ全部の問題について十分考えていかなければならぬと思います。そこで、これらの点は一がいにいえないということを御理解していただく。これは御理解、いまさらじゃない、これはもう久保君だから百も御承知だ、かように思いますので、その点は御理解があるんだ、かように私は思い、またそれこそ国内開発のためにも必要だ、新経済社会発展計画、これはもう社会経済開発計画、総合的なものを考えますので、これはもう国内を、ひとつ網をつくる、新しい交通網をつくる、こういうことが必要だろう。そこで国鉄の果たす役割りが大きいと思います。ただ私は、ひとつ沿革的なものではありますが、非常に国鉄に同情してやまないのは、いわゆる一般的国庫、国の負担において処理すべきものが、どうも国鉄の負担になっているものがあるんじゃないのか、そういう点が、これはいままでの沿革的な理由はあるにしろ、これらのものが順次改正されるべきだろうと思います。私はそういうことを考えながら、またやっぱり採算のとれるようにすること、いま最も多い近距離輸送を担当するとして、一番問題になるのはいわゆる定期だと思います。この定期券がとにかく原価を割っているというような、そういう運賃制度では、これは国鉄を幾ら鞭撻してもやってはいけないだろうと思います。したがいまして、これらの点に十分の御理解をいただくことがまず何よりも大事なことではないだろうか、かように思います。
 また、先ほど言われますように、六万人の職員の他に配置転換を考える、かように申しましても、まず組合側から反対ののろしが上がっている。組合も反対、また政府自身も本来なすべき事柄をしない、こういうようなことでは、私はなかなか国鉄の再建の道は、方向はきまっていても、まことに遠いのじゃないだろうかと思います。私はやっぱり国鉄は重要なる使命を持っておる、またこれはなければならないのだ、このことを考えれば考えるだけに、各面の御協力がぜひとも必要だと思います。
 私は先ほどの磯崎君の説明を聞きながら、磯崎君はほんとうに苦しい思いをしてこの問題と取り組んでいる、その苦衷を訴えているように思いまして、私、そういう意味に先ほど来の説明を聞いたわけでございます。
 一言お答えしておきます。
○久保委員 時間もありませんので、簡単にお願いします。
 総理が磯崎総裁の苦衷を聞いたというが、どうもいまの御答弁では、何か聞いていると、最後はそのとおりかもしれませんが、中身じゃあんまり聞いちゃいないのじゃないかというように思いますよ。
 それで総理、あなたのサインした閣議決定では、たとえば私が聞きたいのは、この新線建設ひとつ聞いても、こんなに書いてあるのですよ。この「在来の地方閑散線並びに現在建設中及び建設予定の鉄道新線については、国民経済的観点及び当該地域の実情等から再検討を加え、」これはあたりまえですね。ここまでは普通ですよ。「利用者の便益の確保に万全を期しつつ、道路輸送への転換が適切と認められるものについてはその転換を推進し、又はその建設を重点化する。」これを見て総理の御答弁をこれに合わせると、「転換を推進し、」というのは、これはいまある既設線を閑散線区で、「又はその建設を重点化する。」というのは、いまやっている、これからやろうとする鉄道の新線なのか、こういう錯覚におちいりますが、これは錯覚ですよね、あなたのおっしゃることは、いわゆる新線建設の中でも、必要なものはつくるが、道路で間に合うものは、そんなものは建設中でもやめなさいというのでしょう。そうですね。それをやっぱり早く選別しなければいけませんね、そのとおりに選別していないですよ、これは。それでどんどん建てているから問題がある。いずれにしても、抽象的な両方の文章だけでは、残念ながら再建は非常に無理だろうと私は思うので、一言だけつけ加えておきますが、これは一大勇猛心をふるって、この国鉄のげたをあずけたげたをまたぞうりか何かにはきかえて持っていってもらうほかはないですよ、これは。(「六万人賛成か」と呼ぶ者あり)六万人賛成かどうかは別にして、そういうことをおっしゃっちゃいけませんよ。六万人については、政府はげたをあずかっていないのですから、六万人についてはげたをあずかっていないのですから、げたをあずかったのはさっき運輸大臣が答弁したやつで何も回答にはなっておらぬ。佐藤さん、ひとつしっかりしてください。
 それから、これは大蔵大臣に。やっぱり公共企業体の近代化、合理化という問題で、専売公社の問題がございます。専売公社というのは国鉄と多少趣が違いますが、やはり対外的には、たとえば葉たばこ耕作者に対して強権を持っているのですね。それから販売人に対してもそのとおりなんですね。こういうものが一方的な、ただ企業的なサイドのみから合理化をやっていくということにはたいへん問題があると思うのです。これについて、公社というのは、公的な機関としてやはり耕作農民とかあるいは販売人とか、そういうものに責任を持たなければいかぬと私は思うのです。ところが、いまやろうとする、あるいはやりつつあるようでありますが、そういうものは、必ずしもそういうものを考慮に入れないままでやっているということでありまして、私は、この点やはり十分考えてもらう必要があると思う。
 それからもう一つは、ついこの間、三、四日前でありますが、専売公社の合理化で、結局職員の二交代で能率をあげていこうという新聞記事がありました。これは朝の六時ごろから夜の九時五十五分まで、これは二交代、深夜にまたがりませんけれども、朝の六時か六時前か知りませんが、大体そのころから一つ出ていく。おそ出は大体何時ごろに出るか知りませんけれども、出てきて、おそく帰るのは、大体十時ちょっと前に作業を終わる。労働基準法からいくと、婦人、女子労働者は、午後十時から午前五時までの間は深夜作業に携わってはいけないということになっているのですね。だから、これは当然基準法に基づいては合法的なんです。ところが、先ほど総理はいいことをおっしゃいましたよね、大橋君の質問に対して。長い御答弁、いわゆる母性愛についてお述べになりました、おっぱいの話まで出しまして。専売公社の職員というのは、大体女子の職員が多いのですね。なるほど労働基準法ではそれは抵解しませんけれども、そういうことをやって、はたしていいのかどうか。それから、パートタイマーの問題も、労働大臣にも関係がありますが、パートタイマーもだんだん、だんだん進んでまいりまして、いま申し上げたようなものも中には出てくるんじゃなかろうかと思うのです。
 そこで、注意してもらいたいのは、女子の労働については労働基準法で規制してあるから、それはそれでいい、まず百歩譲っても。しかしながら、家庭を持っている婦人に対する労働というのはおのずから限度があるということ。先ほど総理がおっしゃるように、家庭というもの、これはおやじもいるし、子供もいるのでありますから、そういうものを全然無視したところの労働というのは慎むべきである。できるなら制度化してもらいたいと私は思うのですね。そうでもしなければ、これはとどまるところを知らぬ。ところが、公的機関である専売公社が先にやろうというのであります。大蔵大臣、これは少し考えたほうがいいと思うのですね。いかがでしょうか。
○福田国務大臣 専売公社もこれは企業でありますから、世の中が近代化、合理化されておりますから、公社といえども近代化、合理化をしなきゃならぬことは当然であります。そういうので、昨年合理化計画を立てまして、これを推進しております。おりますが、これは職員に対しましてもよく御相談をし、また耕作者に対しましても御納得を願って、非常に円滑にこれを進めたい、こういうふうに思っておるわけです。特に女子職員についてのお話がありましたが、二交代制もその一環として考えておるのです。しかし、女子は女子で特別に大事にしなきゃならぬ、こういう事情もありましょうから、その実際のやり方につきましては気をつけていかなきゃならぬというふうには思っておりますが、二交代制をやるというこれだけはひとつ御了承置き願いたい。やり方は気をつけてやります。
○久保委員 特に二交代については御了承願いたい、大蔵大臣はこういうお話でありますが、専売公社という公的機関が――さっきの総理のお話からいっても、われわれは立場をかえても、当然だというふうに聞いていたんですよ、さっき。ところが、今度は大蔵大臣が、専売公社になったらこれはやむを得ぬ、うまくやりますからということですが、うまくやるといったって、やりようがないのじゃないですかね。私は、これは再考を願いたい、こういうふうに思います。
 それから、専売公社は安くてうまいたばこを国民にサービスするというのだそうですね。ところが、必ずしも安いか高いかわからない場合がある。うまいというのは大体定評がありますね、外国のたばこより。ただしこれは弊害があるのですね。いずれにしても専売益金を取って、納付金を政府に納める、あるいはたばこ消費税を地方に出すということですね。企業性というのは何だというと、安くたばこをつくるということだと思うのです。ところが、たばこはだんだん上がっておるのです。値上げはしませんよ、値上げしないで新銘柄をつくるのですよ。そうして、これは実質的には上がっておるのです。そうして今度は専売の益金というか、そういうものがどんどん、ことしはたしか九百億くらいよけいでしょう。よけいですよ、おそらく。そういうのは高い。それだけほんとうなら、消費者にサービスするのがあたりまえですよ。ただ、そういうことをやっていない。
 もう一つは、おもしろいですね、これは。肺ガンの問題があるのですね、心配なのは。私は肺病だけれどもガンじゃないですよ、まだ。ところが専売公社は、たばこを吸いなさいという宣伝には、来年度、四十五年の予算では宣伝費に二億三千五百万出す。たばこを吸いましょう――たばこを吸いましょうという宣伝が要るのかどうか、専売ですから。競争相手でもあってやっておるなら、大いに吸いましょうということ――どうなんでしょう、これは。しかもこれをやっていて、一番国民が心配しながら吸っている。そのたばこ、ガンになるだろうかという。そのガン対策についてはたったの三千万円しか出してないのです。こんな矛盾した経営というものはあるのだろうか。しかも農民や何かにもちゃんと御了解をいただいてと言うが、御了解なんかいただきませんよ、一方的ですよ、これは、言うなら。それから女子労働者だって、職員の連中だってうんと言いませんよ、佐藤さんと同じ考えをしているのですからね。やはり朝は家庭にいて、夜はやはり家庭にいて、昼間くらい出ていこうかということです。時間もありませんからその程度にしますけれども、これは早くいうなら、技術革新というのは世の中の進運でありますから、これはわれわれはとどめようなんでいうことはしません。考えていません、みじんも。だけれども、そこに働く者がそのために犠牲になったり、それから労働条件が低下したり、それから家庭が破壊されたり、あるいは自分の仕事がだめになったりというようなことでは、公正な立場の技術革新じゃないだろうと私は思うのですね。そういうものに対する配慮というのが必要だと私は思うのですよ。企業性追求、だから、言うなら、命と引きかえでもしかたがない。もう時間がありませんが、労災についてもきょうはお尋ねしようと思ったのでありますが、仕事をあげるためにはやむを得ぬということですね、これは危険な仕事にでも何にでも携わる。
 そこで、最後に趣をかえて、体育の問題を文部大臣にお尋ねしたい。体育の問題は、佐藤総理は、最近教育について非常に熱心で、演説をしますが、知育、徳育、体育という三つですね。あなたがおっしゃるのは、いつも徳育のほうです。そうですよ、しつけの問題を中心ですから。知育の問題は、これはまた別でありますが、体育の問題はどなたもおっしゃらない、からだをつくることについて。しかも、ことしの予算を見ますと、特に社会体育については幾らを盛っておるかというと、ここに文部省の予算があるので、これはおわかりだろうと思うのですが、参考のために言います。体育・スポーツの振興という予算は五十九億九千三百万なんであります。六十億ですね。ところが一番多いのは何かというと、札幌の冬季大会準備、こういうもので三十四億使っているのであります。これは半分以上です。使うなということじゃないんですよ。あまりにも均衡がとれないというのです。しかも、これはどういうことをやっているのかというと、たとえば補助金があります。体協に対しては、いわゆる社会スポーツの元締めとでもいう民間団体でありますが、体協には補助金を六千万円やります。日本武道館には八千万行くのです。これはおそらく武道館の建物のほうが大きいから、それでよけい出したのじゃないかというふうに思うのであります。体協の建物は原宿にありますが、小さいのでありますから。日本武道館に八千万出している。これは政界の連中もここには名を連ねているやに聞いているので、そういう関係で圧力が――圧力というか、運動が功を奏してこっちに行っているのか、まあ行くことについてはこれはけっこうだと思いますよ。ただし、体協に六千万で、日本武道館に八千万というのは、これはつり合いがとれない。それから学校体育団体には千五百万補助しています。ところが日本相撲協会には二千万補助している。これは、もっともこの間総理にごあいさつに来たようでありますから――それとはあまり関係ないでしょうね。そういうことでこの予算ができているのであります。しかも、どういうことをやっているかというと、スポーツ少年団をつくるとか、やっておりますが。大体いま一番必要なのは何だろうかというと、施設ですよ。もっとも総理以下全部の閣僚はスポーツについてはあまり不自由しておりませんね、実際は。体育については、ゴルフ場がありますから――いや、皮肉で言っているのじゃないのですよ、ほんとうに。これはけっこうな話です。やれる態勢というか、そういう環境にある方はそれなりにやはり長生きするために必要ですから、これは私はいいと思うんです。ゴルフなんかやっちゃいかぬなんとやぼなことは言いません。ただ、まことに残念ながら非行少年の問題も問題があります。あるいは年少雇用者の離転職が多いという問題もありますね。これは何だと聞くと、みんな生活に張り合いがないという。もっとも職業の選択の自由というか、そういうものもないのでありますが、いずれにしてもそういうものが多い。
 そこで、一般に公開されている体育設備というのはどんなものがあるかというと、これは読んで見ましょう、時間があまりたくさんありませんから。公営プールが七百三十カ所、それから野球場が五百七十、テニス場が四百六十、屋内体育館が三百五十、こういうものがスポーツのあれなんです。これは一般的に公開されている。そこで最近ボウリング場というのがあります。お金を払えば、これはできます。これは九百七十あります。それから皆さんがいらっしゃるゴルフ場は五百五十六あるのです。面積で一番広いのはどれかというと、ゴルフ場の五百五十六が日本の国土を一番よけいに使っている。これはりっぱなものです。
 そこで、私は総理にお願いと、提案を入れて文部大臣にお尋ねをしたいんだが、こういう現実に対してあなたたちはやはり少し反省してほしいと思うんですよ。しかも日本の国がりっぱになってきたというならば、いわゆる人間のからだをきたえていくということが必要。さっき老人対策の問題も出ましたが、特に、これからの若い者に対して、やはりきたえていくということですね。これは社会の連帯性というか、スポーツの中では協調性というか、そういうものが出てくると私は思うのです。別に私はスポーツの専門家でも何でもないですよ。そこで提案でありますが、来年から――もうことしといったって無理でありましょうから、ことしから施設を充実する計画を立てたらどうか。それは国ばかりじゃありません、関係の都道府県、市町村、みんな日本全体くるんでひとつ計画を立ててみたらどうか。いま学校にありますプールが少しずつ――私は水泳連盟の会長をしているのでありますが、やっとこのごろプールができてきたんです。しかし、地元の負担金もたいへんです、残念ながら。容易でないんですよ。だけれども、できるほうはまだいいんです。できない。だからこの施設をつくる計画と、指導者、これはいまこの予算の中にもありますが、体育指導員というか、そういうのが各市町村にありますが、これは辞令一枚もらっているだけで、あまり役に立ってもいません。これはやはりもう少し指導陣営というものを強化していくということ。それからもう一つは、体育のいわゆる組織というものをつくっていくのですね。そういう組織の中に、さっき言ったいなかから出てきた少年を組み込んでいってやっていけば、張り合いができる生活もおのずから出てくるのじゃないかと思うんですね。ひとつどうですか、よその国ではそれぞれやっているようでありますが、港湾計画とか道路計画とか、みんな五カ年計画だから、せめて五カ年で半分ぐらいやって、五カ年計画をつくりませんか。結論だけ提案しますがね。文部大臣からも一言お話しいただいて、総理からもお答えいただきましょう。
○坂田国務大臣 お答えいたします。
 健全な身体に健全な精神が宿るとは昔の人が言ったことばでございますが、今日科学技術が非常に発達をし、社会の構造がこういうふうになってき、そして都市集中、ともすると人間疎外ということが言われております。こういう中におきまして、やはり自然に親しみ、そして汗を流すと申しますか、知的教育だけでなく、道徳教育ももちろんでございますけれども、それと並び称せられるように体育、汗を流すようなことに、学校教育、社会教育はもちろん、おとなの職業についた人たちでもやるということは非常に大事なことであるというふうに思いますし、いま先生の御指摘になりましたことは、私は全く同感でございます。
 ドイツにおきましては、もう御案内のとおりにスポーツのゴールデン計画、これに対して十五年間にわたって五千億でございますか、最近また改めたようでございますけれども、そのような費用を投じて国民のからだを練成する、あるいは健康を維持するための努力をしております。わが国におきましても、これをやはりやらなければいかぬと考えまして、私のところの所管でございます体育審議会にも、そのようなことを踏まえて長期計画をいま練らせておるような次第でございます。確かに御指摘のように本年度の予算では先生の御期待に沿えないことはもちろんでございますが、今後とも格段の努力をいたしてまいりたい、かように考えております。御趣旨は全く同感でございます。
○佐藤内閣総理大臣 文部大臣からいま御趣旨は賛成だと。まず私どもが力を入れておるのが毎年開いている各県持ち回りの国体、国民体育大会、これでずいぶん各県の施設は整備されてきたと思います。それからまた、この前のオリンピックに際してプールをつくるようになった。これも海浜の学校までプールが持てるようになった。これもプールを一町村一カ所というような形で整備しつつありましたが、それももっとふやしてしかるべきだろう、かように思います。また、国際ジャンボリーもそのうち開かれることになっております。先ほどお話がありましたように、札幌のオリンピック、その施設は残るはずでありますから、これは末長く使われるだろう、そういうようにあらゆる機会にただいま言われるように、もっと体育、それに熱心に取り組む。そうして健康体と同時に健全な精神を養っていく、こういうことにしたいと思います。
○久保委員 それでは、文部大臣は私の提案に対して同感だという。調査もできるそうでありますから、来年はひとつそういう計画をお出しになるように、私は一市民としても申し上げたいと思うのです。
 それから最後に、時間もありませんから、これは労働大臣と文部大臣でありますが、年少者の離転職の問題で、一つにはこういう提案をしたいと思うのです。たとえば、中卒の就職者が都会に出てきて、幸い高校にでも行こうというような希望があって来ても、事業所の無理解というか、あまり理解がない。最近人手不足でありますから、なかなかそういうわけにいかぬということで、定時制にも行けない者もある。それから行こうとしても経済的になかなかうまくいかない者もある。そこで、やはり希望を持たせるというか、そういうことからいくならば、勉学の道をつけてやるのがやっぱり一つの政策じゃなかろうか。そこで中学卒業生の定時制に行こうとする者については、これは残業は一切禁ずるというか、やめてもらう、こういうことにすると同時に、せめて授業料というか学費の一部くらいは、これは公的な、国ばかりとは言いませんけれども、負担してあげるくらいの政策があってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
○野原国務大臣 勤労青少年の福祉につきましては、勤労青少年ホームあるいは体育施設等を全国の主要都市につくることになっております。特に、働きながら学ぶ青年に対しましては、勤労青少年ホーム等は日曜、祭日等もこれを開館しまして、利用の面をはかることにしております。
 また、最近せっかく就職しましても離転職が多いという現象は、卒業と同時に中学卒業の者は全員を適性検査いたしまして、できるだけ適切な職場についてもらうというようなこともやることにしております。
 また、定時制高校等に通う青年につきましては、福祉対策上、使用者の理解と配慮を促すため、中小企業団体に設置されておる勤労青少年福祉員の活動を促進しまして、働く青少年の福祉の運動等の機会を通じまして大いに勉学にいそしんでもらうということを考えております。
 同時に、青少年の残業、勤労時間の規制等につきましては、従来から労働基準行政の重点事項としてやっておるわけでございますが、このたび勤労青少年福祉法を制定いたしまして、今後の重要な政策として、特に青少年の問題と取り組む所存でございます。
○坂田国務大臣 中学校の段階におきまして、職業指導の面におきまして、われわれ文部省といたしましては、指導はやっております。やっておりますけれども、最近若年労働者が足りないということで非常に問題が多うございまして、なかなかその徹底が期せられないという実情にあることを率直に認めざるを得ないと思います。一段とこの面については努力をいたしてまいりたいと思いますし、また労働省ともわれわれ文部省と相談をいたしまして、都会に出て、あるいは就職をして、働きながら学ぶ人たちに対する指導もやっておるわけでございます。
 それから、まあ直接の関係はございませんけれども、勤労学生につきましては、たとえば国立学校におきましては、大学においては授業料の免除の措置も実はございまして、前期、後期合わせますと二万五千二百五十二件、また私立学校におきましても、それぞれそのようないろいろな措置もやっておるようでございますし、また税制上の優遇措置につきましても、勤労学生控除制度というものがございまして、ことしの予算案におきましても、たとえば所得控除額は、現在所得税につきましては九万円でございます。地方税につきましては七万円でございますが、所得税は十万円に、地方税は八万円に改善をする、あるいは勤労学生控除の対象範囲を、現行所得金額二十六万円以下を二十八万円以下というふうに改めるような予算の要求をやっておるわけでございます。
○久保委員 最後に一つだけお尋ねしたいのですが、これは労働大臣あるいは大蔵大臣になろうかと思うのでありますが、一つは、特に中高年齢層、その中でも出かせぎの労働者の災害というか、疾病も含めて多いんですね。そういうことに対して職安のほうでは、言うなら就労時に健康診断する、あるいは途中でも定期健康診断する、こういうことになっておるのだそうでありますが、実際は遠いところから職場に来る。そこで健康診断しても事態はおそい場合があるんですね。健康診断してみた。おまえは少し血圧が高いとか、心臓が悪いからこの仕事にはだめだと言われても、帰るすべがないのです、一つは。また求人側としても、これは帰せるはずのものではないんですね。ですから、むしろ労働行政の職業紹介行政の中で、紹介時において健康診断を国の費用なり公的な費用でやってあげて、そうしてその健康診断に基づいて適職をあっせんしてあげる、紹介してあげる、こういうふうにするのがほんとうじゃなかろうかと思う。というのは、いま出かせぎの中ではそういうケースが非常に多いんですね。それで悲惨な結末を告げている者もありますので、ぜひこれは御配慮をいただきたい、こういうふうに思うし、それからパートタイマーのようなものが、言うなら片手間――片手間と言ってはおかしいが、ある一定の時間行くのですね。ところが、税金の面では年間五万円ですか、所得があれば、総合所得といって総合課税の対象になる。あるいは年間二十二万円まで収入があれば、扶養者としての控除はなくなるということでは、新しい労働力を確保するというのに、そういうものが一つの政策だとするならば、たとえば租税特別措置法がある現在、そういう面にもやはり一つは考えていくのが政策じゃなかろうかと私は思うので、この二つについてお二人から御答弁いただきたい。
 以上であります。
○野原国務大臣 中高年齢の方々に対する紹介でありますが、これは求人内容の正確な把握、綿密な職業相談、あるいは適性検査、能力検査の実施というふうなことで、健康診断ももちろん入るわけでございますが、求職者の適性と能力の明確な把握が必要でありますので、必要に応じて実施しておるのであります。公共職業安定所において、現在職業紹介に際しまして、身体障害者など特定求職者に対しまして、必要と思われる健康診断、能力検査等を行なっておるわけでありますが、なお一般的な健康診断は事業所の責任において実施すべきものと考えておるわけでございます。
 なお、婦人労働につきましての御質問については、今後労働力不足の傾向は、ますます婦人の労力にたよる。したがってパートタイマー、その他たくさんの婦人労働力が必要とされるわけでございますが、そういうものに対しましては、婦人の特性を考えまして、働きやすい職場、そういった点では、実は託児所その他も十分に併置してもらうとか、あるいは夜間作業等はできるだけ避けるとか、いろんな面で婦人労働力を活用してまいりたい。また同時に、家内労働法を制定いたしまして、家内でやはりある程度の労働ができるようなことも進めてまいりたいといったようなことで、職業の婦人労働力に対しましては、婦人の対策を特に講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○福田国務大臣 パートタイマーの課税問題は、大蔵委員会でもいろいろいま論議があるんです。十分検討さしていただきます。
○中野委員長 これにて久保君の質疑は終了いたしました。
 午前の会議において、麻生君より外務大臣に対し、日米繊維交渉に関する下田大使の発言について、至急調査をし、本日中に本委員会に報告してほしい旨の御要求がありましたので、この際、外務大臣より報告を聴取いたします。受知外務大臣。
○愛知国務大臣 御報告申し上げます。
 今月十八日、アメリカの国務省におきまして、インテルサット国際会議代表者の招待のカクテルパーティーが行なわれました。その席上、下田大使がジョンソン次官と会いました際に繊維の話が出ましたので、下田大使より、米側第二次案は日本側として受け入れられないことを重ねて強調するとともに、従来からの日本側の基本的立場、すなわち、たとえば被害または被害のおそれのある品目を個別的に検討すること以外には考慮できないこと、また、米側第二次案にいう五年の期間は、そもそもこのような暫定的な問題を解決するには長過ぎること等を述べておいた由であります。
 以上のようなことでございますから、下田大使がジョンソン次官との会談で、いわゆる下田私案なるものを米側に提示したというような事実はございません。
○中野委員長 明日は、午前十時より委員会を開会し、楢崎弥之助君、大原亨君及び松尾正吉君の総括質疑を行ないます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十四分散会