第063回国会 予算委員会 第8号
昭和四十五年二月二十八日(土曜日)
    午前十時八分開議
 出席委員
   委員長 中野 四郎君
   理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君
   理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君
   理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君
   理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君
   理事 今澄  勇君
      足立 篤郎君    相川 勝六君
      赤澤 正道君    植木庚子郎君
      江崎 真澄君    大坪 保雄君
      大野 市郎君    奥野 誠亮君
      賀屋 興宣君    上林山榮吉君
      坂本三十次君    笹山茂太郎君
      田中 龍夫君    登坂重次郎君
      西村 直己君    野田 卯一君
      廣瀬 正雄君    福田  一君
      藤田 義光君    松浦周太郎君
      松野 頼三君    森田重次郎君
      赤松  勇君    加藤 清二君
      北山 愛郎君    久保 三郎君
      楢崎弥之助君    細谷 治嘉君
      堀  昌雄君    相沢 武彦君
      小川新一郎君    坂井 弘一君
      広沢 直樹君    伏木 和雄君
      松尾 正吉君    河村  勝君
      塚本 三郎君    谷口善太郎君
      不破 哲三君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      保利  茂君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      山中 貞則君
        国 務 大 臣
        (国家公安委員
        会委員長)
        (行政管理庁長
        官)      荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣
        (北海道開発庁
        長官)
        (科学技術庁長
        官)      西田 信一君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 中曽根康弘君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)
        大蔵大臣臨時代
        理       佐藤 一郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制局第一
        部長      真田 秀夫君
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        経済企画庁調整
        局長      新田 庚一君
        経済企画庁国民
        生活局長    矢野 智雄君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省人権擁護
        局長      川島 一郎君
        外務省アジア局
        長       須之部量三君
        外務省アメリカ
        局長      東郷 文彦君
        外務省経済局長 鶴見 清彦君
        大蔵政務次官  中川 一郎君
        大蔵省主計局長 鳩山威一郎君
        大蔵省主税局長 細見  卓君
        大蔵省関税局長 上林 英男君
        大蔵省理財局長 岩尾  一君
        大蔵省銀行局長 青山  俊君
        大蔵省国際金融
        局長      奥村 輝之君
        文部省管理局長 岩間英太郎君
        文化庁次長   安達 健二君
        厚生省医務局長 松尾 正雄君
        厚生省保険局長 梅本 純正君
        厚生省年金局長 廣瀬 治郎君
        通商産業省通商
        局長      原田  明君
        通商産業省貿易
        振興局長    後藤 正記君
        通商産業省企業
        局長      両角 良彦君
        通商産業省繊維
        雑貨局長    三宅 幸夫君
        通商産業省鉱山
        石炭局長    本田 早苗君
        通商産業省公益
        事業局長    馬場 一也君
        中小企業庁長官 吉光  久君
 委員外の出席者
        国民金融公庫総
        裁       澤田  悌君
        中小企業金融公
        庫総裁     佐久  洋君
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      佐々木 直君
        参  考  人
        (商工組合中央
        金庫理事長)  高城  元君
        予算委員会調査
        室長      大沢  実君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  川崎 秀二君     坂本三十次君
  灘尾 弘吉君     廣瀬 正雄君
  加藤 清二君     川崎 寛治君
  堀  昌雄君     西宮  弘君
  楢崎弥之助君     山中 吾郎君
  坂井 弘一君     広沢 直樹君
  松尾 正吉君     伏木 和雄君
  小川新一郎君     近江巳記夫君
同日
 辞任         補欠選任
  坂本三十次君     川崎 秀二君
  廣瀬 正雄君     灘尾 弘吉君
  広沢 直樹君     坂井 弘一君
  伏木 和雄君     松尾 正吉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十四年度一般会計補正予算(第1号)
 昭和四十四年度特別会計補正予算(特第1号)
     ――――◇―――――
○中野委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十四年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十四年度特別会計補正予算(特第1号)、右両案を一括して議題とし、質疑に入ります。加藤清二君。
○加藤(清)委員 私は、この際、委員長のお許しを得まして、委員諸公の御協力を仰ぎまして、質問を試みたいと存じます。
 ところが、本日は予算委員会でございます。その予算委員会に肝心かなめの大蔵大臣がいらっしゃらないということは、まことに遺憾、画竜点睛を欠くでございます。ところがです。承れば代理大臣が指名されたとか、選ばれたとかいうことでございまするが、そのほどの状況はいかがでございますか。まず総理大臣にお尋ねいたします。
○佐藤内閣総理大臣 普通なら、ただいま仰せのごとく、予算委員会の審議でございますから、大蔵大臣がいないというわけにもまいりません。したがって、私は適当な、最もその代理をつとめるのにいい方が、元大蔵次官をやっていた経験もございますので、今回急に臨時代理を置くことにいたしまして、そういうことで発令をしたばかりでございます。どうぞよろしくお願いします。
○加藤(清)委員 それは決定でございますか。
○佐藤内閣総理大臣 どうぞよろしくお願いします。
○加藤(清)委員 それならば何をか言わんやでございます。話によれば、そのさきの大蔵大臣、インフレ政策のおかげでインフルエンザになったのではないかという話でございます。インフレで思い出すことでございまするが、けさの新聞が一斉に消費者物価の上昇が本年は六%を上回るであろうというております。これは、本予算委員会において四十四年度予算を審議いたしました場合にお答えになりました政府のお答えとだいぶ開きがあるようでございます。これでは国民に対して政府がうそを言ったという結果に相なりまするので、その辺のいきさつをまず明らかにしていただきたい。特に、六%を上回るということは、新大蔵大臣御案内のとおり、定期預金よりははるかに率が上でございます。これは国民感情に及ぼす影響も重大でございます。しかもなお、物価高に苦しむ低所得者層のことを考えますると、これはわれわれとしては放置することはできないわけでございます。よって、原因、対策をとくと承りたい。
○佐藤(一)国務大臣 ただいまお話がございましたように、一月の物価指数が、率直に申し上げまして、私たちが予想した以上に上がりましたのは事実でございます。御存じのような、昨年以来の生鮮食料品のうちでも特に野菜を中心とする値上がり、これがたいへん異常なばかりの値上がりでございます。私たちもこの値上がりには実は非常に頭を痛めておりまして、御存じのひでり、干ばつが予想外に長引いておりますことが非常な大きな原因になりまして、今回の特殊な値上がりをもたらしたものと考えております。この蔬菜を除きましたところの一般の値上がりは五%ちょっとでございますけれども、何ぶんにもこの野菜の値上がりが非常に異常でございます。私たちも実は見通しを考えますときにも、一体この干ばつがどの程度続くのであろうか、これはある意味において天候待ちのところもございまして、非常に苦慮いたしておるようなわけであります。二月、三月もあることであるからということで、一応政府としての見通しを、年間を通じての見通しをお出ししたようなわけでございますけれども、一月がこういう異常な値上がりということになりますと、どうしても三月までで終わるところの四十四年度の値上がりというものは、従来申し上げておりましたところの五・七%の見通しではなかなかおさまらなくなるんじゃないか、こういうふうに心配をしておるような次第でございます。農林省でも至急に台湾からタマネギを輸入したりやっておりますけれども、御存じのように、野菜については輸入がなかなかきかない性質のものでございます。そうしたこともございまして、これの対策に苦慮をいたしております。そうしたことで、ひとえに野菜の値上がり、これが中心でございますので、何とかこれに対して、出荷地に対する督励をさらに一そう強めまして――これは農林大臣の御協力も十分得た上で、対策は対策として極力努力をいたしてまいる、そういうつもりでございます。
○加藤(清)委員 四・八%が六%を上回るということはまさに二割以上の開きでございます。誤差でございます。来年度予算については五%台云々と答弁していらっしゃるようでございまするが、一体またことしもそうなるのではないかという国民の心配がある。なぜかならば、歴年経企庁が出され、大蔵省が出されまするところの景気の問題については、一度も当たったことがないからなんだ。すなわち所得倍増計画が十年計画が二年でダウン。次に行なわれました中期計画、これも五年が一、二年でダウン。今度の発展計画はどうかとながめてみると、またこれも同じようにダウン。ダウン、ダウン、ダウン、値段がダウンならばいいけれども、計画がダウン、ダウンでは、これは国民はついていかれないということになる。もっと信頼を高め、もっと権威を高める必要があると思う。そのために本年度の、というよりは、四十五年度予算における物価上昇率、これははたしてほんとうに政府の方針どおりいくものか、いかないものか。ここで確たる御答弁を願いたい。
○佐藤(一)国務大臣 いま加藤さんのおっしゃいました点ですが、四・八といいますのはこの四月から始まるところの四十五年度の目標です。そうして四十四年度は、これも御存じと思いますが、当初は五%の予定でありました。それが本年における野菜の値上がり等もありまして、これを先日の見通しでは五・七%、こういうように訂正したわけでございます。その五・七%は、さらに全体の最後の結末は、これは三月まで見ないとわかりません。しかし、非常に六%に近くなるおそれが出ていることは確かであります。
 問題は、いま御指摘の四・八%という来年の目標が、はたして君たちの言うように押えられるか、こういうお話でございます。まことに今日の日本における野菜生産の機構というものは、いろいろと基本的な問題がございます。ある意味においては、残念ながら天候待ちの要素が非常に多いことをいなめません。こういう点を徐々に直してまいらなければいけないのでございます。この来たるべき四十五年度におきましては、野菜のこういう特別な干ばつによる異常なる値上がりというものは、一応は予定しておりません。私もこれがそう長くまで続くとは信じておりません。いずれこれが二月、三月、天候もおさまり、そうして徐徐に需給のバランスが是正されてくると私は十分期待しております。いずれにしましても、来年度、野菜について異常な天候によるところの異常高がない限りにおいては、われわれも物価対策についても公共料金その他も押えるつもりでございますし、いろいろと努力をいたしまして、四・八%のところに持っていけるものと、現状においては確信をいたしております。
○加藤(清)委員 総理は歴代の総理大臣の中でも実に歴史に残るりっぱな名言をはかれました。沖繩が返らないうちは戦後は終わらない、そのことばを実行に移すために一生懸命がんばっておっていただいております。これは国民ひとしく期待をかけているところでございます。特に先般、あの沖繩の失業者に対して総務長官をはじめ一致協力の上、屋良さんもまた喜んでいただけるような対策ができましたということにつきましては、野党の私どもも敬意を表するところでございます。
 ところで、戦後はまだほかにもあるのでございます。それが繊維問題であり、繊維貿易問題であることは、総理みずからもこれに関連をしていらっしゃいまするから、いや、関連というよりは日ごろ御努力を続けておっていただけまするから、よく御存じのことと存じます。そこで、もう千載青史にりっぱな総理として残るために、もう一つの戦後を佐藤総理の手でぜひ円満に解決をしていただきたい、日本国民の納得する線で解決をしていただきたい。それは、やがて国民のためであり、国益のためであるからでございます。私もそのために前向きに、建設的な質問をしたいと存じます。この点について総理の御見解を承りたい。
○佐藤内閣総理大臣 オーバーな表現をしてまことに相すみません。正確に申せば、せんだっても申したのですが、戦後は一応終わった。一応ということばが要るかと思っております。ただいま御指摘になりますように、北方の領土はまだきまりませんし、また、ただいま貿易問題でいろいろの問題を起こしておりますし、また私どもの国の周辺を顧みましても、政治体制が違う国との間の国交はなかなか正常化されておらない等々、幾多の問題がございます。その中でも、ただいま御指摘になりますように日米間の問題、この日米間にしこりを残さないようにすることが何よりも大事なことだ、かように私も考えております。ただいま、それについてこの際に忌憚のない、しかも建設的な意見を述べよう、聞いてくれるか、こういうお話ですが、もちろんつつしんで承るつもりでございます。どうか御遠慮なしに御批判もいただき、また建設的な御意見は私どもの心から歓迎するところですから、どうぞ遠慮なしにおっしゃってください。
○加藤(清)委員 すでにこの日米間の貿易、わけても繊維の問題については、本委員会で数多くの委員が質問を試みておられます。それに対する政府の答弁はほぼ一致しているようでございます。その答弁、すなわち被害が証明されない限り規制に応じられない、この日本のずっと持ち続けてまいりました基本的態度、これには変わりございますか、ございませんか、いまの段階において。
○佐藤内閣総理大臣 いまの段階においては変わりございません。
○加藤(清)委員 外務大臣、通産大臣、いかがですか。
○愛知国務大臣 ただいま総理のお述べになりましたとおりでございます。
○宮澤国務大臣 総理の言われましたとおりでございます。
○加藤(清)委員 被害が証明されない限り、アメリカ側のマテリアルインジュリーが証明されない限り、自主規制を前提とした日本側の対策は当面考えるべきではない、このように関係担当大臣の意見は一致しているようでございます。
 そこで承りたいのですが、日本の繊維産業の規模はいま何ほどございますか。簡潔に概略御説明願いたい。
○宮澤国務大臣 前段の問題につき申し上げます。ガットで申しておりますとおり、被害または被害のおそれ、これがガットの原則でございますから、それを踏んまえて考える、こういうことでございます。
 繊維産業につきましては、直接従事する者が百九十万といわれておりますが、私ども百七十五万人ぐらいの規模、間接に関係いたします者は俗に九百万といわれておりますが、かなり大きな規模のものと思うのでございます。
○加藤(清)委員 私がお尋ねしました繊維産業の規模とは、日本の規模のことをお尋ねしているのでございまするから、次までにちょっと用意しておいてください。
 総理にお尋ねいたしまするが、これは新聞情報でございまするので確かではございません。あなたは大屋晋三さんに対して、繊維製品の対米輸出自主規制問題は、時間がかかっても筋を通すとお話しになった、こう出ているんですね。長引いても筋を通すと。これは各紙が一斉に出したところでございます。これは間違いございませんか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、大屋君といろいろ話をいたしました。申すまでもなく、日米間に最も国民的な関心の深い領土問題だって片づけておるのだ。このことを考えると、君たちの関係している繊維関係など、これを軽く見るわけじゃないが、国民的な感情から申しても大問題だ――そうしていまのように肩を張る態度はやめて、ひとつやはり話し合って早く解決したらどうか。しかし、それかといって、そう急ぐわけでもない。もちろんいま政府が考えているのは、自主規制なんだから君らが納得しない限り話がつくわけはない。政府に全部やれといえばこれは政府がやれるんですけれども、しかし政府がやるというわけじゃない。自主規制ということだ。その限りにおいては君らが納得しなければならない。やはり納得するのには筋が立たないと君らは納得しないだろう。そういう立場でものごとを相談してきめたい。こういうことを実は申したのです。その時間的な問題が云々されておるそこに重点があるよりも、あとの納得するというそこに重点が置かれておること、誤解のないように願っておきます。
○加藤(清)委員 先ほどの日本の繊維産業の規模……。
○宮澤国務大臣 先ほど申しましたが、従業員百九十万、事業所数十三万三千六百、出荷額四兆六千八百億円程度だそうでございます。
○加藤(清)委員 お聞き及びのとおり、日本の繊維産業は、斜陽という声にもかかわりませず、いまだ腐ってもタイと申しましょうか、日本の産業の根幹をなすことには変わりございません。
 それでは、繊維産業の総生産の金額、輸出金額等を……。
○宮澤国務大臣 出荷額はただいま申し上げました四兆六千八百億円、輸出金額はたぶん六九年で二十二億ドル前後、三億になっておるかもしれません、その程度と思います。
○加藤(清)委員 二十三億ドル輸出と申しますと、これまた百二、三十億に占めるその率は、これは何と申しましても日本産業の雄という何よりもの証拠でございます。その繊維産業がいま一致結束してこの問題に当たっております。国民のまた注目の的になっているわけでございます。しかるがゆえに、私は、くどいようでございまするが、きょうこの問題をひっさげて質問台に立ったわけでございます。私は、決してこれはくどいとは思いません。念には念を入れるほどりっぱな繊維ができると同じように、政策もまた念を入れたほうがいいと思うからでございます。
 さて、LTAとは一体何でございましょうか。
○宮澤国務大臣 これはもうよく御存じのことだと思いますが、一九五五年にいわゆるダラーブラウスの問題が起こりましてから繊維品目の規制をし、五六年に短期取りきめになり、六二年に綿製品についての長期取りきめになりました。その長期取りきめをさすものと承知しております。
○加藤(清)委員 ただいま日米の間に日本の繊維貿易の規制問題が起きて騒がれておりまするけれども、これはすでに経験済みのことでございます。すなわち、LTAにおいて苦い苦い体験をなめさせられたのは日本側でございます。ここにオキュパイドジャパンがあるということを申し上げているわけでございます。
 そこで、いま通産大臣は簡潔にこれをおっしゃられましたが、このことは外務省の方々もよく心得ていらっしゃることと存じます。もちろん、関係大臣や本委員会の皆さんは、毎年本委員会でこれが論議の対象になってまいりましたから、よく御案内だと思いますが、もう少しく歴史的発展的に述べていただきたい。
○宮澤国務大臣 一九五五年前後にわが国からのいわゆるワンダラーブラウスというものの輸出がアメリカに対して急増をした。当時アメリカの繊維産業が不況でございました。そこで、これを規制をすべきであるという問題が起こりまして、当時わが国の産業としても、綿業でございますが、多少そういう事実は、事実問題として認めたということが背景になりまして、まず四品目の自主規制を行なったわけでございます。しかるところ、翌年五六年になりまして、それを広げて短期の日米間の取りきめにすべきだという議が起こりまして、それに結果として応じた。その後、他の国々の関係もございまして、非常に長いこと交渉がございましたが、結局六二年に長期取りきめというものができて、これは六十四品目になったと思いますが、非常に広いカバレージの長期取りきめができ、二国間の取りきめがそのベースで行なわれて、まあこれはいずれ御指摘があるでございましょうから申し上げておきますが、これは綿製品に限るものであるというような、いろいろくぎをさしたはずの取りきめであったわけでございます。しかも暫定的なものであるということでございました。その後多少の改善はありましたが、その長期取りきめは何度か更改されて、今年の九月の末でございますか、さらに更改をするかしないかという問題が現在われわれの前にある、大体そんな経緯と思います。
○加藤(清)委員 私は最後にお述べになった問題を述べていただきたかった。それがいま私がここ一で質問する理由になるからです。LTAは本年九月期限切れになるのでございます。これを継続するかしないかということは繊維業界のみならず、日本の経済にとって、あるいはEECをはじめとする欧州諸国の貿易にとってたいへんな大きな影響を及ぼすからでございます。
 そこで、お尋ねいたします。外務大臣にお願いします。STAとは何でございましょうか。
○愛知国務大臣 政府委員からお答えいたします。
○鶴見政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまのSTAというのは、LTAとの対比におきましての短期の取りきめ、六一年のことかと存じます。
○加藤(清)委員 そのとおり。そのSTA並びにLTAが結ばれた原因について、ただいま通産大臣は、アメリカが不況であった、それを日本の業界も認めたとおっしゃられましたが、これは大きな間違いなんです。その当時取り上げられました、STAからLTAに至る間に、いわゆる表向きとするたてまえ論の原因は何だったでございましょうか。それが今日あるからです。
○宮澤国務大臣 私が不況だと申し上げましたのは、その一九五五年のダラーブラウス問題が起こりました当時の背景を申し上げたのであって、LTAまでのそれを申し上げたわけではありません。当時問題になりましたのは、いわゆるマーケットディスラプション、市場撹乱という問題でございます。
○加藤(清)委員 この際、総理大臣に関係のあることをお尋ねしますから、その前提を申し上げます。
 いま概略御説明になりましたが、この日本とアメリカの繊維貿易、それに対する規制の問題は、その発端は十五年昔にさかのぼるわけなんです。その間あなたも何回も関係していらっしゃるわけなんです。そこのところを聞いておるのですから。STAからLTAに変わったときに、通産大臣としてあなたは立て役者でいらしたはずでございます。それがいまだに行なわれておる。
 わが国の米国繊維輸出の歴史は、これはもう制限の歴史なんです。制限、制限、制限の歴史、それをいかにして妥協し、いかにして協力していくかというのが日本の立場だったのです。ワンダラーブラウスが安過ぎるからいけないと言い出されたのが一九五六年、このときに四品目だけだから協定は結ぶべきである、こういうことでのまされたのです。ところがこれ、しかも四品目にして期間は一年だ、こういうところから始まったのです。それで、それならばというので、いやいやであったけれども、あくまで暫定的ということできめられたら、確かに暫定的で終わったのです。しかし、翌年は名前が変わったのです。実体が残って名前を変えさせられた。翌一九五七年政府間協定という名前に変わっちゃったんです。綿製品四品目のこの対米規制、これが政府間協定と名前が改められて品目はふえて年数は五年に積み上げられたのです。それが終わるころ、一九六一年、五年たって終わるころにSTA、今度はまた短い期間の、ショート・ターム・アレンジメントでございまするからSTA。短い時間だと、こういうて、それで結ばれたわけなんです。そのときに佐藤さんは通産大臣。小坂さん、いらっしゃいますか。小坂さんが外務大臣でいらしたはずでございます。時のアメリカ大使は、皆さん御存じのとおりのライシャワーさんでございます。越えて一九六一年のおりにアメリカでケネディさんがセブンポイントの約束をして大統領におなりになりました。直ちに一九六二年綿製品協定の短い期間のものがロングに変えられた。そこでLTAとこう名前が変わったわけでございます。それからずるずると今日に来ておるわけなんです。LTAが結ばれましたおりにも、五年であるという約束であった。にもかかわりませず、これが五年たった一九六七年に満期切れとなると、また三年延長、こういうことになった。その間一九六九年、今度はアメリカの大統領はニクソンさんにかわりました。ところがまた、これはワンポイントかツーポイントかは知りませんけれども、大統領の立候補の場合にまた繊維業界と約束をなさった。越えて一九七〇年、ことしでございます。再々延長の期限切れでございます。こういうふうにだまされ、だまされて、最初小さかったものが今日では六十四品目、もっと細目になりまするというと、百四十品目の余の制限になっちまった。たった一年の短期取りきめというのがあれから十五年かかっておる。もういいかげんやめるべきときではないか。
 さて、これについて当事者、外務大臣、通産大臣、ことしの秋を迎えて、期限切れ、これをどうなさるおつもりです。国民一般は、業界はぜがひでも今度こそは三度目の正直をやってもらいたい、こう言うておる。
○愛知国務大臣 先ほども御指摘がございましたように、いま、さらに問題が大きくなっているわけですから、その中の一つとして今後のアメリカに対する折衝ということで考えてまいりたいと思っております。十分御意見のほどは尊重してまいりたいと思っております。
○宮澤国務大臣 いま外務大臣の言われたところで、私もそのとおりだと思います。
○加藤(清)委員 私の意見を尊重するというお答えでございまするが、尊重するということ、私の意見は国民にかわっての意見でございます。打ち切ってもらいたい、一年が十五年もごまかされてきたんだから、もうやめてもらいたい、こういう意見ですが、それを尊重するということは、そのとおり交渉の材料にする、こういうことでございますか。
○愛知国務大臣 ただいまも詳しくお述べになりましたように、現在のLTAというものができたときからの沿革、経過、それらの点は、過去の経験としてその中から十分に考え出さなければならない点がわれわれ日本側として大いにあると思うんです。そういう点を十分考慮の中に入れて、ただいままでもそうでございますけれども、今後もこれからの折衝等については、これを貴重な体験として国益を十分守るという点からいって御心配のないように、あるいは少なくするように、こういう姿勢で臨むべきである、かように私は考えております。
○加藤(清)委員 答えは簡単でよろしいのに…。はい、私は国民の声をそのまま交渉にぶつけます、そうしてその目的が達成されるように努力します、こうおっしゃっていただければ、私はこの問題はこれでやめようと思いましたけれども、何かほかにひっかかりがあるようでございます。あまりひっかかりがございますと、次のようなことを申し上げてみなければならぬことになります。
 それは御存じでございましょうが、最初の四品目からSTAに変わり、LTAに変わったときのいきさつを――おそらくこれは歴史になりまするから、日本の繊維産業史の一ページになりまするから、申し上げておきますが、一九六二年――「STAに基づく日米二国間交渉が一九六一年八月二十二日から東京で開かれることになった。会談の際は、米国政府代表とともに米国の業界及び労組代表が来日し圧力をかけた。また日本の関係各団体も「対米綿製品交渉協議会」を結成し日本政府との連絡に努めた。」、ちょうどきのう、きょうのような空気でございます。「会談は八月二十二日から九月九日まで続いた。日本側の条件緩和の要求に対して、米国側はSTAの原則から一歩も譲らず、交渉は八月中は膠着状態であった。九月に入ると米国代表の帰国期日切迫を口実に、ライシャワー駐日大使が小坂外務、佐藤通産両大臣をそれぞれ訪問し、交渉を早期妥結させるよう日本側の再考をうながした。日本業界は、日本側の主張が十分認められないまま政治的に交渉が妥結してしまった」。まだあとずっと続きます。途中抜きまして、「日本の要求をことごとくしりぞけたものであった。これに対して日本業界は対米綿製品交渉協議会を通じて、「妥結内容はきわめて不満足で、わが国の合理的主張が力で屈服せしめられたという感じをもたざるを得ない。」」、まだ続きます。
    〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
こういうことが今日にまで尾を引いているわけでございます。ここにいま結束して当たらなければならぬというので、関係業界のみならず、他の業界までが相呼応してこの問題と取り組んでいるわけでございます。次のところ、あなたのおっしゃった「市場撹乱の事実」、これはない、ないにもかかわらず、「あり」と通告してきたのです。あったのではない。「元来、一九六二年の日本の対米綿製品輸出はSTAに基づく日米二国間取極で日本の要望を米国が力で屈服させた規制枠が適用されており、日本がそれを守った結果が米国の市場を撹乱したとは全く理不尽ないいがかりであった。」「米国は日本の反論には全く答えず、」「結局、日本は米国の力の前に屈服」させられざるを得なかった。これがSTA、LTAの歴史の一こまでございます。ここにいかに……(「ちょうど今日の状態と似ておるじゃないか」と呼ぶ者あり)そうです。いかに国民の恨みが重なっているか。これはやがて政府に対する不信のみならず、アメリカに対する不信の念となる。そのことを憂えて、私ども議会人は、そのつど、日米友好を進めるために、日本政府ももろはだ脱いで正面から取っ組んでもらいたいものだと何度も要請をしました。それだけではございません。国会の中から選ばれた議員の代表が何度もかの地に渡りました。EEC諸国とも折衝を行ないました。そこでこれはよろしくないということをアメリカも認めているのでございます。そうでしょう。認めている証拠はLTA第一条にいわく、これはこれ限りである、他には及ぼさない、一条と重ねて六条にうたい込まれていることは、皆さん御案内のとおりでございます。なぜそれを押してまでもいまの交渉に応じなければならないのだろうか、国民のひとしく疑問とするところでございます。その疑問にこたえてもらいたい。
 そこでLTA、STAの結果、諸外国にどのような影響を及ぼしたかについてお尋ねいたします。外務大臣。
○愛知国務大臣 諸外国へどういうふうな影響を及ぼしたかということ、具体的にいろいろの見方もあろうと思いますけれども、それはそれといたしまして、今日の現時点におけるこの日米間の話し合いということにつきましても、関係国は異常な関心を示しておるということは、従来におきましても、いろいろの面で影響があったというか、あるいはこれに関連して諸外国としても考えなければならないというところがあった、その結果であろう、ここのところが大切なところではないかと思います。具体的な影響がどういうふうに諸外国であったかということについては、これは見方もいろいろございましょうから、的確に数字的にあげて御説明するというようなことは不適当かと考えます。
○加藤(清)委員 見方の相違じゃござんせんよ。そんなすれ違った答弁をしておって済むものじゃござんせんよ。きょうは、みんな国民が見ているんですよ。そんなもんじゃございませんよ。
 じゃ、通産大臣は、どう見ておるのですか。そんないいかげんなことをおっしゃると、こっちから言いますよ。
○宮澤国務大臣 一九五六年ころ、つまり事の発端のころでございますが、わが国の綿製品の輸出に、アメリカ側の輸入におけるシェアが七〇%ぐらい当時ございました。それが三年、四年ぐらい――一九六〇年ごろには、二五%ぐらいにまで落ちまして、今日までそのシェアは、ほとんど回復ができていない。と申しますことは、当時の発展途上国が、わが国の持っておったシェアを、いわば食いまして、大きなシェアを持つに至った、大まかに申しますと、そういう経緯であります。
○加藤(清)委員 これは、日本国内に及ぼした影響なんです。私がお尋ねしているのは、日本がLTAを締結する前から、十五年にさかのぼっていま説いておるわけなんです。その間に日本が、アメリカへ繊維を輸出している関係諸外国に先んじて約束を破って、そうして二国間協定、STA、LTAと持ち込んだので、欧州諸国、EEC諸国は、かんかんになってこれをおこった。私は、この委員会へ来て、このおこった一覧表を、そのときにごらんいただいたのです。そのときに認められているんです。なぜおこったか。今度もその問題があるから、ここに触れなければなりません。今度の問題に影響するから……。それは、どういうことかといえば、日本が不利を承知で二国間協定、STAときたのは、交換条件があるからである。オキュパイドジャパンを軽くしてもらいたいからである。しかし、英国もフランスも、もはやその交換条件がない。にもかかわらず、日本と同じように二国間協定を迫られ、同時に、それがLTAになってきた。とんだ迷惑をこうむった。ゆえに、ペナルティ、日本に対して。どうしたか、ガット三十五条第二項の援用でもって、日本の商品を例外措置で一人前扱いをしてくれない。差別待遇をしている。二国間で最恵国条約、友好条約を結んでおりながら、なお日本の繊維品以外の品物にまで制限を加えた。カナダのごときはいち早く百八十品目である。イギリスも百品目の余であった。イタリーのごときは三百六十品目である。その影響はそれで終わったのではない。今日なおそれが尾を引いて、いま六十四品目もの残りがあり、イタリーでも、たった一つを解消するのに、日本の自動車の輸入関税を下げなければいやであると言うて、交換条件を出してきておる。このことを言うておる。つまり日本は、交換条件を持っている、だから不利を承知でこれを結ぶんだ、けれども、その影響を罪もないわれわれが受けるのはごめんである、だからその影響分を日本で補ってくれというのが、EEC諸国をはじめとする英国その他の動向なんです。そのために、あとで日本の通産省は、このEEC諸国のペナルティ的措置を解消するために、たいへんな努力を続けた。歴代の繊維局長の精力の大半は、それに費やされていると言っても過言でない。こういう悪影響があるのです。なぜこんなことを言わなければならないか。歴史を知ってあすの方向の知恵にしたいからであります。あすの生活の知恵にしたいからであります。総理大臣、私が述べたこのことは認められますか。それともうそであるとおっしゃるなら、どこでもいいから突いてみてください。――総理に聞いている、ここのところは。
○宮澤国務大臣 過去に起こった事実の解釈でございますから、私から申し上げます。加藤委員の言われましたこと、私は、全面的に間違いだとは決して申し上げません。しかし、その後、一九六〇年の初めにかけまして、ヨーロッパ諸国がわが国に対して、今日まで尾を引いておりますが、持つに至りましたいわゆる対日差別のリストというものは、主として御承知のように、ガット三十五条の関係を撤回して、そうして通商航海条約を結ぶというような問題が起こりましたときに、われわれが、まことに残念なことでありますが、やむを得ず払った代償、それを今日まで縮めてきてはおりますけれども、そういうことが、やはり一つの大きな原因であった、私はこういうふうに考えております。
○加藤(清)委員 原因はいろいろありますよ。結果はいかがですか。――総理に聞く。結果を認めますか。私の一人芝居、サル芝居だと思われては、たまったものではありませんから……。
○宮澤国務大臣 結果は、御承知のように今日までおあげになりましたような各国の持っております対日リストを短くするために、毎年毎年苦労しているわけでございます。
○加藤(清)委員 総理、どう思われますか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねの問題は、先ほど通産大臣から詳細にお答えしたとおりでございます。ただ、いま問題になっている日米交渉の問題、これはお聞きになるまでもなく、もう先ほど来再度申しましたが、国会の決議がございましたし、もうそういうことでございますから、そのところで端的に、いろいろのことをお話しになるまでもなく、政府は国会を尊重するのかどうかというその一事ではないか、かように私は思っております。私どもは、二国間だけでものごとがきまる、かようには考えておりません。はっきり申し上げておきます。
○加藤(清)委員 二国間できまるのではなくて、二国間できめたという事実を、日本が諸外国に先んじてやったのだ、その結果、欧州諸国がペナルティときたのです。先んじてやったのです。今度もまた先んじてやろうとしていらっしゃる。アメリカがくみしやすしと見たのか、それともこっちが喜んで応じているのか。今度の問題に触れられたから、あとでゆっくり触れますが、今度の問題だって、関係諸外国はみな拒否しちゃってる。EEC諸国も拒否なんです。韓国、台湾、香港、ポルトゲス、全部拒否している。日本だけが相談の場に乗っておるんじゃないですか。だから、またLTAの愚を繰り返してはいけないから、ころばぬ先のつえを申し上げているわけです。ところで内地のインジュリーは、こんなことではございませんよ。
 そこで、その前に承るが、今度の会議でも、私は非常にふしぎなことがあると思っているのです。なぜかならば、アメリカのインジュリーはわんわん取り上げられて、ないところを何ぞ出せ何ぞ出せというかっこうなんです。アメリカにマテリアルインジュリーはない。高橋、ミッションの報告を待つまでもない。しかし、これが行なわれれば、日本に対して大被害があることは、これはLTA、STAで経験済みなんです。どんな被害がありましたか、通産大臣。
○宮澤国務大臣 過去のことでございますね。
○加藤(清)委員 そうです。
○宮澤国務大臣 それは先ほど申し上げましたように、対米輸出のシェアは一九五五、六年ごろほぼ七〇%でございましたが、それが二五%台に落ちたわけでございますから、これはもうそれから受ける損害は過去においては相当なものであったと申さざるを得ません。
○加藤(清)委員 日本の持っておりましたシェアは一九五六年以前――これは七〇%、七〇%とおっしゃっておりましたが、以前は八〇%の余あったのです。一九五六年のころにはワンダラーブラウス事件で騒がれた結果七〇%に落ち込んだ。それがいま、総理、ことし何%ありますか。二三%以下ですよ。ひどいものは一〇%以下に落ち込んでいる。ところがその間にどうなったか。その間に香港は三倍にも五倍にも伸びた、台湾も伸びた、朝鮮も伸びた、日本だけが減った、こういう状況です。たいへんな被害でしょう。その結果関連機械産業にまで影響した。もちろん労働者の首切りが行なわれた。被害の甚大さを思うべきですよ。それを繰り返してはいけない。それを二度と繰り返す必要はない。
 ところで、こういうふうにお話し申し上げておりますと、皆さんはよくおわかりでございまするけれども、国民一般の方におわかりいただけないかもしれない。
 そこで、どのくらい過酷であるかという実例をひとつ大臣御説明願いたい。同時に、先ほど二国間で云々とおっしゃいましたけれども、LTAに基づくところの二国間協定によって、日本だけが他の諸外国と比べて過酷な手かせ足かせをやられている事実がございます。それは二国間協定を読み上げたらわかる。比較対照してみたらすぐわかる。通産大臣、どうです。
○宮澤国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますから、わが国のシェアが非常に落ちまして、御指摘のように、当時の発展途上国のシェアが非常にふえた。そこで、わが国の関係の業界は対米輸出の激減によって相当大きな影響を受けたということでございます。
○加藤(清)委員 私はあえてこういうものをここへ持ち出したくないのでございまするけれども、具体的事実をお示ししないと、あまりにもけたはずれな過酷なことをやっているので、想像がつかないから……(物品を示す)どの大臣でもいいですから、ここの中から綿を抽出してみてください。綿のクォータが二億四千万とか二億八千万スクエアとかあるいは三億スクエアヤール、こう規定されております。ところで、その中に六十四品目の縦割り、四季節に分けての横割り、なおこういうものから抽出せよと言うのです。どうやって抽出するのです。
○宮澤国務大臣 それは御指摘になっておられますことは、ワクを非常にこまかくいたしてまいりますと、実際与えられたワクは達成できないという場合がありますし、また非常に窮屈で仕事ができないということで、その間のシフトをするというようなことが起こりましても、なかなか実際はそれはうまくまいりませんから、輸出するほうもいろいろ苦労をして、これならワクに当たらないであろうとか苦労をいたしますし、そういたしますと、制限するほうはその中に何か入っているというようなことになりまして、ただいまおっしゃいましたようなことに実際なってきたわけでございます。
○加藤(清)委員 これは何製品でございますか。(物品を示す)総理、受け取って見てください。物をとってみなければわからない。
○宮澤国務大臣 それからさらに及びますと、これが綿であるとかあるいは化繊であるとかいうことが、綿とは何であるか、化繊とは何であるかというような議論に発展をいたしまして、われわれがその範疇に入らぬと思われるものまでその範疇に入るというような議論にまで発展をしてくる、たぶんそういうことをおっしゃっていらっしゃるのだと思います。
○加藤(清)委員 かぐのごとく過酷なんです。これは日本の常識では金属製品なんです、ジッパーは。ところがあちらで見ると、これは綿製品で、目方に換算されるのです。前は綿だけだったからよろしゅうございますが、今度は合繊もウールもということに相なりますと、この毛は何ほか、まつげは何ほかということになってきます。裏側の裏生地は何ぼか。これを全部抽出せよ、こういうのです。そんなことができますか。だれもできない。できないだけじゃない。ところがやれと言われ、それを約束してまいりますと、税関はこれをやらざるを得ないのです。税関自体がその分析をする能力を持っていない。そこでめっそで、いいかげんに、これはだめだと言うてやられる。そうすると、これが輸出管理令違反になったりして、せっかく輸出で貢献しておきながら、輸出貢献産業のほうびの免状はもらえなくなり、その会社はやがて輸銀その他の恩恵的な融資も受けられなくしてしまったという具体的事実がたくさんある。やれぬことをやれと言うのだ。こんな無理な協定がありますか。
 それでは向こうのインジュリーがどのくらいあるか。大体日本からアメリカへ行っておりました最高時において、アメリカの国民一人当たりに分けたとすると、ふろしき一枚になりませんですよ。どうしてそんなものが影響がありますか。この際承っておく。通産大臣と外務大臣。特に外務大臣に承る。その当時の綿はアメリカの総消費量に対して何ぼあったのですか、日本は。あるいはアメリカの総輸入に対して日本の占めるシェアはどれだけあったのですか、何ぼあったのですか。
○愛知国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
○鶴見政府委員 当時の日本からの輸出綿製品のアメリカの輸入におきまするあいるいは消費におきまするシェアにつきましては、ただいまちょっと数字を手にいたしておりませんので、後ほどお知らせ申し上げたいと存じます。
○加藤(清)委員 そんなことでどうするのです、あなた。交渉にいま臨んでおるじゃありませんか。そんな何も知らずに交渉に臨んでおるからいかれてしまうのだ。だから組みしやすしということで、日本だけやられるのだ。コットンにしたってウールにしたって、日本よりイギリスのほうがはるかに多い生地じゃございませんか。それが素通りされて、日本だけやられているこの現実は何が原因であるか。かっこうだけとっておるからだ。具体的事実を知らずに。あとで調べる――冗談じゃない。今回、合繊の交渉が始まってから何年になるんだ。下田が失言を何べんもやってから、何回やっているのだ。だから下田の失言ということがわからないじゃないか。
○三宅政府委員 お答えいたします。
 私の記憶では、当時約六%ぐらいの輸入依存率であったと思います。なお御参考までに、現在問題になっております合繊は三%程度でございます。
○加藤(清)委員 何の三%か。
○三宅政府委員 プロダクションに対するインポートのシェアが三%でございます。
○加藤(清)委員 お聞き及びのとおり、アメリカの総消費量に対してわずか三%、それをしか輸入させないのですよ。ところが、その中に占める、三%に占める日本のシェアは何ぼです。
○宮澤国務大臣 三%に対するわが国の数字は一%余りでございます。
○加藤(清)委員 アメリカが総消費をいたします繊維、合繊を消費いたしますそのうち、輸入はわずかの三%です。ところでその三%のうち、日本が輸出して、それを占拠している占拠率はといったら、その三分の一です。したがって、いま最後の答えは、三%のまた三分の一ですから、通産大臣の答えたとおり一%ということになる。一%とは一体どれだけかといったら、三日分ということになる、そうでしょう。三日分かせいぜい四日分ということだ、一%ですからね。それでラッシュということが言えますか。どこにインジュリーがありますか。三%のうちの三分の一は一%。一%ばかり、三百六十五日のうちの三日分ばかりがどうして被害だのラッシュだのということが言えます。外務省はこのことを知らずに、ことばの翻訳だけ一生懸命になって、内容の実態を調べずに交渉しているのでしょう。知っとったら、この席で答えられぬはずはない。そんなしろうとが交渉しているものだからいかれてしまう。総理、どうします。
○宮澤国務大臣 まさにその辺のところが、私どもが主張している点でございます。
○加藤(清)委員 主張していらっしゃるそうですが、交渉の席で、一度か何とかおっしゃったのですか、そのことを。
○宮澤国務大臣 何度も申しておるわけでございます。
○加藤(清)委員 どこでおっしゃったか。
○宮澤国務大臣 それはもうわが国の大使館もよく知っておりますし、先方も実は知っておることでございます。
○加藤(清)委員 冗談言っちゃいけません。あなたの――それは固有名詞出しちゃ失礼だからやめますが、あなたの血の通った人もかの地にいらっしゃったわけなんです。このSTA時代に、私は向こうへも渡りました。ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズの編集長と会いました。ワシントン・ポストの編集長いわく。私はこのことを申し上げたんです。あなたたちはラッシュするの、あるいは幾何級数的に伸びるのとおっしゃるけれども、内容はこんなものですよ、しかし、日本側があなたたちから輸入しているものをそんな率で制限したらどういう結果になります、アメリカから、小麦も鉄鉱石も石炭も石油もウールの材料のシープも、何も買うことできませんよと言って、そこで映画のフィルムに例をとって、映画のフィルムを、日本のプロダクションが倒産するから困るというので制限しようとしたら、アメリカのジョンソン――大統領ではなくて、別なジョンソンです。これが来て、日本のオール生産以上メージャー九社の輸出が伸びたら、初めてクォータ制を引きなさい、それ以外にクォータ制を引くことは相ならぬ、こういうふうに言われた。こんなことでこれで平等ということが言えますかと言うたら、さあ通産大臣、初めて聞いた。なぜ日本のガバメントオフイスの方々はそれを言わないでしょう、なぜそれを言うてくれないでしょう。あとで喜ばれた、これは。だれから、こちらの弁護士のマイク正岡氏や、ステツオフィス、ダニエルオフィス、それらから喜ばれた。
 大臣、ここが大事なところだから聞いてくださいね。喜ばれた。なぜといったら、日本側を代弁して向こうで活躍しておってくれる弁護士がいらっしゃる。この人たちの言うことがあまりにも極端に聞こえるそうで、それで――アメリカ国籍を有する日本人だといわれているそうです。ところが、私が行ってほんとうのことを申し上げたら、弁護士は、さすがアメリカ国籍の弁護士は中間的なことを言っておったのだなということがわかったそうです。それで以後交渉に非常に楽になった、こういう感謝のことばがきた。アングロサクソンといえども、話せばわかる。いわんや大統領になられるような方々であれば、話せばわかる。それを話していないでしょう。数量のことまで言ったというのは、あなたどこの席で、どこでやったのです。そうしたら向こうは何と言ったか。冗談じゃないですよ。
○宮澤国務大臣 現在の問題とLTA当時のことを一緒に言われますので、少し問題が混雑いたしますが、先ほどおっしゃいました三%、私の申し上げました一%、これは現在の問題についてでございます。これはアメリカの農務省のほうの統計でございますから、その点については私はおそらくあまり争点はなくて、むしろ争点ということになりますれば、シェアの大小よりは伸びをアメリカ側が言いたいのではないだろうか。私どもはそれを承服しているわけではございませんですよ。そうではございませんが、先方が申しますことは、対前年比の伸びといったようなことを問題にするのではないだろうか。おそらく争点はその辺にあるのかと思います。
○加藤(清)委員 その問題はあとで論議することとしますが、この際ぜひ聞いておきたい。
 交渉の席でそれを言っている、それを言っているとあなたはおっしゃるけれども、最先端で交渉していらっしゃる人は下田さんです。吉野さんです。下田さんや吉野さんはこの根拠ともなる数字を御存じでございますか。外務大臣。
○愛知国務大臣 先ほど私も手元に数字を持っていなかったので、たいへんおしかりを受けましたけれども、そういう点については、先般来申し上げておりますように、十分の用意をして現場でも当たっておりますことは、これは現地での様子もよく御承知の加藤委員のよく御承知のところだと思います。
○加藤(清)委員 ここでそんな答弁をしたって、私はアメリカに友人がたくさんおりますからね。
 それじゃ、交渉した、発表したと言うなら、下田さんがいついかなる席でこの日本インジュリーを発表されましたか。
○愛知国務大臣 これも加藤委員よく御承知のとおりと思いますけれども、インジュリーを起こしているか、または重大なるインジュリーを起こすおそれがあるかということについて、当方から先方に対する資料の要求や説明を求めているという段階で、むしろ現在までのところは、原則論で相対峙しているということを率直に申し上げたらいいと思います。内容的にまだ――ことに日本としては自主規制について、たとえば何々の品目について応ずるなどということにまだ入っていないわけですね。ですから、現実的に、こういうものをやるとすれば、こういうふうな被害が起こるなどということを、現在の段階で申しますことは、これは折衝上からいっても、得失という点からいっても、十分お考えになっていただかなければならないところであります。
○加藤(清)委員 それは、外交はあなたのほうが専門家でございまするから、私はあなたにお教えをいただきたいのですけれどもね。大臣、交渉するときに、しかもこれは数字の制限をするのですよ。二国間協定とか、列国間協定とはいうものの、中身は何かというたら、数字の制限をされることですよ。その数字の制限をするというのに、その基礎ともなる数字がわからぬで、その数字は、当方の数字は一度も先方へ発表せずにおいて、それで、ただ向こうから言われるだけでこうやっておって、これで交渉になりますか。簡単な数学ですよ、こんなことは。特にこれは、もとは経済問題なんです。それを政治問題化しているだけの話じゃないですか。
 そこで、このLTAはガット違反なんです。違反すればこそ、別扱いにしている。日米友好通商航海条約違反なんです。なぜそんなものを結ばなきゃならぬのか。同時に、ケネディラウンドの精神に違反しているのです、これは。こんな違反の幾つも幾つも重なっているものを、なぜしなければならないのですか。ほんとうは、法務大臣にここらあたりで聞いておきたいところなんです。こんなに違反を重ねたら、これものじゃございませんか。なぜそれをしなきゃならぬ。いま田中理事から出ましたが、日米友好通商航海条約違反、十四条と、こう出てきております。日米友好通商航海条約は、最恵国待遇、内国人と同等の待遇ということが、各所に散見される。十二カ所もあるのです。それを、違反しておるということは明らかな事実である。こういうものは即刻やめるべきだと思う。同時に、即刻ができなければ、十五年もしんぼうして延ばされ、だまされてきたんだから、ようやく今度は期限切れが来たんですから、せめて三度目の正直で、今度は廃棄なさると国民全部が期待しておるのですが、さあ総理大臣、どうなさいます。
○宮澤国務大臣 これはいろいろ御議論もおありになるだろうと思いますし、私も多少の自分の議論は持っておりますけれども、とにかくLTAそのものは、協定によりますと、この取り決めは、綿製品貿易の完全自由化を目途とし、これに至るまでに生ずる混乱を関係諸国の協力によって防止しつつ、秩序ある貿易の拡大を確保することを目的とした暫定協定を定めたものであって、各国の有するガット上の権利、義務に影響を与えるものでないことが確認されておる。これが条約上の解釈でございます。
○坪川委員長代理 田中武夫君より関連質疑の申し出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中武夫君。
○田中(武)委員 簡単に行ないます。
 いま日米友好通商航海条約違反だということが出ましたので、念のために伺いますが、その第十四条の二項、本文では「制限又は禁止をしてはならない。」となっております。そしてただし書きのところで原則に対する特例があります。それはすべての第三国に同様な制限または禁止をした場合、同様な制限または禁止をされる場合となっておる。したがって、日本に言うてきておるような制限を、アメリカは他の第三国にも同じようなことを言っておりますか、どうですか。それと日米友好通商航海条約十四条二項の解釈のほどを、ひとつわかるようにお伺いいたします。
○愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、現在の段階では、要するにガット精神の中で、そして包括的規制というようなことを、かつ二国間だけで協定するというようなことは筋が通らないではないかというのが、われわれの考え方でございますから、かりに何らかの話し合いがまとまりましても、ガットのワクの中で、いま通産大臣からも読み上げられましたが、LTAのときもそうでありましたように、これはガット精神の中で――ガットの精神の中でということは、関係国も含めました取りきめの形にしなければならない。かりに何らかの形で話し合いがつく場合にもという前提でございますが、そのワクの中で処理しなければならない、かように考えております。
○田中(武)委員 そうしますと、ガットの広場においてこれを行なう。したがって、二国間協定は行なわない。もし行なうとするならば、日米友好通商航海条約の第十四条二項によってのそれぞれの手続が必要である。それがない場合は、二国間協定を行なわない、こういうように解釈していいですね。
○愛知国務大臣 いま私が申しましたのは、話の順序について筋を通さなければならないということを申したのでありまして、かりに何らかの話し合いがまとまるといたしましても、ガット及び日米通商航海条約との連係において、何といいますか、常識的に申しますと、説明のつくような形でなければなるまい。これは堅持したいと思っております。
○田中(武)委員 持ち時間内でございますので、私はまたの機会に私の質問を保留いたしまして、どうぞ。
○加藤(清)委員 今回の日米繊維協定と申しましょうか、何か繊維交渉ですね、目下のところ、その基礎となることを私は申し上げておりますが、その基礎となる一つのSTA、LTA、それについて廃棄の時期が迫っている。外務大臣も、通産大臣も、国民を代表して申し上げている私の趣旨を体して交渉に当たると、こう言っておられますが、私は国民の声は、一つ廃棄である。それを総理はどうされる覚悟ですか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、日本の国益に合致するように今後の交渉を続けていくつもりでございます。
○加藤(清)委員 コットンだけではございません。ウールがまたそれと同じような仕打ちを受けておるのでございます。もうこのウールにはコットンに積み重ねで、前にそういうことができているから、積み重ねでクォータ制。ASP、これも明らかに関税法違反です。ASPなんというものは、国際法違反である。それを課せられておる。おまけに従価税、従量税の併課をやられておる、これが実態でございます。しかし、このことは、総理もアメリカへ総理大臣になられてから最初の使節として行かれましたおりに、たいへん御努力をいただいたことを業界はたいへん感謝しているわけでございます。したがって、これはそれ以後の総理の指導よろしきを得て、いまだ被害を、少量ずつは受けているけれども、コットンのような大削減というようなこと、繊維構造改善にまで持ち込まれるというようなことはなく済んでおるわけで、これは国民ひとしく佐藤総理に感謝しておるところです。しかし、何といってもこの功績の第一は、それは毛麻輸出組合の猪崎会長のあの孤軍奮闘ぶりだと思います。これは逆にアメリカ人もイギリス人も感心しているのですから。
 だから、法律に違反するような行為があった場合には、相手がいかに強大であろうとも、これにからだを張ってぶつかっていくという態度は、何国人でもこれには敬意を表するようでございます。ひとつぜひ総理もそういう、ウールで見せられたようなあの態度をもう一度合繊の場合にもとっていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
○佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま言われる基本的な態度においてはもちろん賛成、また、その態度でなければ総理大臣はつとまらない、これははっきり申し上げておきます。
○加藤(清)委員 先ほどアメリカのインジュリーのカテゴリーをおっしゃられましたが、伸び率であるとおっしゃられましたね。そこでお尋ねしますが、ほんとうにインジュリーのカテゴリーは伸び率でございますか。もしそうだとするならば、伸び率はどのくらいが被害で、どのくらいは被害でないのですか。
○宮澤国務大臣 これは、誤解を加藤委員がなさるとは思いませんが、誤解を招かないように申し上げますが、私は、アメリカ側が腹に持っておる議論はたぶん伸び率ではないかということを申しただけでありまして、そのことを私どもが承認しておると申しておるのではございません。念のため申し上げておきます。
 そこで、一般に伸び率が非常に大きいという場合に、それが市場撹乱の要素になるか、ならないかということには、議論がございます。そうして、伸び率が大きいこと自身は、相手方にインジュリーを与える結果には必ずしもならない。何となれば、先方に全然生産のないものについて輸入の伸び率がふえるということは、あり得ることでございます。したがって、両方のことは観念的には分けて考えなければなりません。ただ実際の問題になりますと、被害または被害のおそれということそのものが非常に明確に数量的に定義されておりませんから、片方で多少企業に痛みがある、そうして他方で、あるその品物についての伸び率が相当毎年大きいというような場合には、あたかもその伸びたことが企業が痛んだということに直接の関連があるというふうに議論されやすい。両方のことはもともと観念的には区別できますが、実際問題としては区別できないので、その辺のところが議論になり得るのであろう、私はこう思っておるのであります。
○加藤(清)委員 外務大臣にお尋ねします。
 アメリカ側のインジュリーがあれば、これを検討しその相談に応ずるという態度が日本の態度でございます。しからば、今国会でもいろいろ論議が行なわれましたが、インジュリーとは何ぞやという問題については論議はかわされておりません。したがって私は、アメリカが申し込んでくるインジュリー、日本がこれをなるほどと、是と認めるインジュリー、その範晴を承りたい。外務大臣にお伺いします。――だめですよ、そんなことは。それは下田君がやっているのだから。
○愛知国務大臣 このインジュリーの資料等については、先ほども申し上げましたが……(加藤(清)委員「資料でない、範疇」と呼ぶ)いいえ、その前に、日本の国益としてその認定権をどういうふうに持つか、これはこちらの態度として、日本側が納得できなければなりませんですね。ですから、これは東京において通産省を中心にして先方の出しました資料等を検討しておるわけでございまして、先ほども申しましたように、その中身についての、これがインジュリーと見るか見ないかというようなことは、少なくとも現在までのところワシントンでやっているわけではございません。もちろんワシントンの日本大使館にも、これももうよく御承知のとおりに、通産省から来ておる人たちもおりますけれども、これは東京において十分に日本側が自主的な立場で判定をして、そうして足らざるところは追加資料を求め、また質問の事項もたくさんありますから、それらの点についてもさらに必要に応じては十分な機会と、人によってただすべきところをただそうというのが今日の私どもの態度でございます。
○加藤(清)委員 外務大臣、あなたは逃げることがうまいのですけれども、国民は、それを聞いておりますと、逃げ口上だと言いますよ。私はインジュリーの範疇を聞いている。あなたは手続を答えていらっしゃる。
 それで、時間が参りますので、じゃ、押し問答よりは、いままでアメリカがインジュリーと称して日本に提示してきた過去の実績は何かというところを私から申し上げます。
 それは一つは、チープレーバー、レーバーダンピングなんです。次は、輸入量と消費量の問題、次の問題は、これが先ほどあなたがおっしゃったところの伸び率なんです。ラッシュ、幾何級数的に伸びた、ラッシュした、ラッシュした、こうくる。そこで日本としては、その範疇に対してものさしを持つ必要がある。その範疇と、範疇のものさしを聞いておる。あなた、答えたい、答えたいとおっしゃるから、あなたどうぞ、通産大臣。
○宮澤国務大臣 一般にガットでインジュリーといわれますものは、ある商品が輸入された結果、その商品またはそれと密接な競合関係にある商品の数量、価格あるいはそれから生ずる収益、それに関係する雇用等々に相当の影響を与える、しかもその表に商品の国内消費に対する輸入の率がある程度のものである、こういう場合をインジュリーというと思います。
○加藤(清)委員 そこで高橋ミッションの報告にも関係がございまするが、米国の繊維総輸入及び対日輸入の動向、これは米国商務省の発表でございますから、向こうの資料でございます。この資料から見ますると、インジュリーはございません。毛製品のごときは一九六七年の前年度比は九三%なんです。一九六九年の前年度比は八七・二%なんです。これは減っておるのです。毛製品のごときは一進一退なんです。それは二年間で周期がくるからです。一進一退です。伸びていないのです。
 それじゃ、化合繊はどうか。化合繊も一九六七年は前年度比は七九%、減っておるのですよ。一九六八年の下期は確かに伸びました。一二七%、二七%増です。これは確かに伸びております。ところが一九六九年になって、この下期になりますと一二八%。二八%の伸び率なら日本の経済成長率より少ない。一六%程度でインジュリーだなどというのだったら、日本の経済成長率がインジュリーだということになる。日本の経済成長率と同じ程度輸出が伸びたからというたって、これで被害だの、これで罰則だのと言われたら、日本の経済成長は行なうことができないということになる。それだけ伸びた分は別なことで補うということならこれはわかる。発展途上国へ何とかするとかどうとか、それならわかる。しかし、一二%や二二%で、これがいけませんと言われたら、これは国際常識からはずれておるし、経済常識以下なんです。総理はどう思われますか。
○佐藤内閣総理大臣 どうもしろうとのぼくが一番くみしやすいと考えられたか、私の答弁を求められたのですが、私はしろうとですから。
 ただいま言われる、一口に化合繊といわれるが、そのうちでどういう品目が伸び、どういう品目が減っているか、ここらに問題があるんじゃないでしょうか。私は、いまの平均の伸び率そのものからいえば、これはたいした問題じゃないだろうと思いますが、非常にある品目がふえた、ほとんど倍にも近くなるとか、あるいは九〇%に近いとか、八四%も伸びたものがある。こうなると、これは一体将来どうなるだろうか。インジュリーを起こす危険はないか、そういうような問題がやっぱりあるんじゃないだろうか。全体の問題じゃない。全体の問題は先ほど言われるように、わずか一%だ。だから、それが全部ふえたからといって、倍になったからといって、たいしたことはない、かように私は思いますが、しかし、業界に与える影響というものは、その全体ではない、特殊なものじゃないだろうか、かように私は思います。これはしろうとの議論ですから、あまり気になさることはない。
○加藤(清)委員 しろうとではなくて、あなたは専門家です。最高の権威者でございまするから、私は敬意を表して、あなたの答弁を何よりも何よりも第一だと考えて、質問を続けておるわけでございます。そこで、この繊維がただいま防波堤になってささえをしている、これがひとつくずれたならば、日本からアメリカへ輸出されまする他の輸出品にたいへんな影響を及ぼすであろう、こういう憂いがございます。これは事実でございます。どう事実かを数字で申し上げます。
 アメリカの商務省並びにこれは大蔵省の統計でございます。そこで一体、日本からアメリカへは繊維だけでなくて、テレビ受像機が輸出されておるですね、これの伸び率はどれだけですか。ついでにテープレコーダー、電蓄、はきもの等々、どのくらいの伸び率ですか。
○宮澤国務大臣 このシェアの数字は持っておりますが、ちょっと伸び率を持っておりませんが、シェアでよろしゅうございますか。
○加藤(清)委員 じゃ、シェアでもどちらでも。
○宮澤国務大臣 アメリカの国内消費に占める日本からのシェアを申し上げますか。
○加藤(清)委員 さようでございます。
○宮澤国務大臣 鉄鋼が六・一%、金属洋食器が二二%、それからラジオが三三%、テレビ受像機が一七%、はきもの八・四%でございます。一九六八年でございます。
○加藤(清)委員 いま日本からアメリカへ輸出される品物で、アメリカの総消費量に対する日本の占拠率、それから総輸入に対する占拠率等々が問題にされようとしていらっしゃるので、私もその土俵に上がってものを申しましょう。
 繊維の伸び率が、あるいはシェアが百分の一でございました、さっきの話。化合繊は百分の一でございます。ところがピアノはどうかと申しますると、日本からの輸出に対する国内消費の占拠率は一〇・五%、テレビ受像機は一七・四%、テープレコーダーは八四・七%、電蓄は二四・六%でございます。一%でインジュリーとおっしゃるならば、三〇%から二〇%は何と言ったらいいんですか。だから、繊維が一%ばかしの占拠率でけしからぬとこういわれたら、あとテレビの一七・四%、テープレコーダーの八四・七%なんというのは、これは軒並みにやられるということなんです。それでよろしゅうございますか。だから、いまの問題は、オール産業が結束してこの問題に当たっている、こういうことでございます。総理、この問題、どう思われますか。
    〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
○佐藤内閣総理大臣 ただいま私どもも、経済、企業の国際化、こういうことと実は取り組んでおります。したがって、その方向から見ますと、特殊な品目について制限を加えるということは、これは大勢に逆行するものだ、かように思います。申すまでもなく、米国内においても、またケネディあるいはニクソン、その時代におきましても、その基本的な態度は変わっておらないと思っております。私どももそういう意味で特別につき合っておりますが、そこらに何か特別なものが、非常に問題になるようなものがあるのかどうか。そこらをもっと分析しないといかぬと思います。
○加藤(清)委員 もしその伸び率が幾何級数的であるからいけない、だからそれはインジュリーであるということでありまするならば、次に日本はたいへんなことになる。アメリカでやられて、今度は日本でやらなければならぬことが出てきておる。日本でやらなければならぬ。たとえば日本へ輸入されるところの絹織物、これは年間二五〇%に伸びておる。絹のノイル織物、これは二二七%なんです。何と一番ひどいのは、人絹の短繊維のごときは千六百四十倍に伸びておる。じゃ、日本はそれを輸入しておる相手国に制限をやらしますかということにならざるを得ない。列国間協定できまれば、そういうことになってくる。
 そこで、問題は伸び率だけで云々すべきものではない。それをやったら、及ぼす被害は重大であるという御認識をいただければそれでけっこうですが、佐藤総理いかがです。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申すように、自由貿易、それを保護貿易する特別な理由がある。保護貿易にせざるを得ないそのゆえんのものは、ただいま言われるように、インジュリーだけの一点できめるわけにはいかぬ、これはもう御説のとおりです。
○加藤(清)委員 この際、法務大臣にお尋ねいたします。いらっしゃいますか。
 被疑者の刑を決定する順序は、どういうふうでございましょうか。どういう順序、手だてが要るでしょう。
○小林国務大臣 お尋ねの趣旨がよくわかりません。刑を決定する順序が……。
○加藤(清)委員 もう一度申し上げます。たとえば、おわかりにならなければ例をあげましょう。三億円強盗事件、これが犯人だといってつかまえた。あれはこの間無罪釈放になりましたですね。これを犯人と確定して刑を執行する順序、手だてでございます。
○小林国務大臣 これはあるいは別件逮捕とかいうことについての……。
○加藤(清)委員 そんなことを言っているんじゃない。
○小林国務大臣 だから、よくわからないと、こういうふうに申し上げておる。お尋ねの趣旨がよくわからない。
○加藤(清)委員 被疑者を刑に処するには、刑事訴訟法――いま話が出ておりますね、田中さんのほうが専門家でございますから。その法律によって順序、手だてを立てて執行する、こういうことであって、かってに相手を罪人にしたり、かってに三億円事件の犯人にするということは、これはできないわけなんですね。
 ところで、私はここにきわめて不可解に思いますることがございます。それはたび重なる下田発言でございまするが、特にこの下田発言でふしぎなことが二つございます。愛知外務大臣がこの席で麻生氏の質問に答えて、二十五日、特別答弁をして、そんなことはあり得ませんとお答えになっている。各紙が一斉に書きました、特別答弁ですから。ところがその二十五日、時期を同じゅうして、下田氏はアメリカにおいてやはり記者会見をやっておる。あり得る記者会見をやっておる。その内容は、何と言っているか、読んでみましょう。向こうからの報道です。「規制方法などの全体的なことを決めてから品目別のことを決める際に被害論争をすればよい」もう一度読みます。「米側は日米側の被害の資料要求を拒否したが、これは「規制方法などの全体的なことを決めてから品目別のことを決める際に被害論争をすればよい」という考えがあるからだ。この点は「被害の実証を先決とする」と主張する日本側とどうしても歩み寄りができない。」ゆえにアメリカの言う主張に従うことが穏当である、こういう発言をしておる。それでこの内容を調べてみますると、日本側の主張は、被害調査が先で、被害があればこれに即応した規制法を検討すると、こういう考え方なんです。つまり有罪、無罪を先にきめて、有罪なら刑を何年受ける、罰金を幾ら受ける、証拠があって、ほんとうに悪ければ刑を受ける、こういう行き方なんです。ところが、その下田君の記者会見で発表したのを見ますと、被害の有無の検討はあと回しなんだ、自主規制のほうを先にしよう、こういうことなんです。それで何をきめるかといったら、まず期間だ、年限だ、こういうのです。それから伸び率にワクを設けることである、こう言っている。さっきから言うておる伸び率が被害だ、こう言っておる。次に基準年次だ、こう言っておる。いつの年を基準にして、いつから始めるかという、そっちのほうが先だと言っている。これは明らかに刑事訴訟法の被害を断定し、罪を着せる場合の順序、手だてとはまるっきり違った行き方を堂々と述べている。愛知外務大臣、あなたの国会における答弁ですぞ、座談会じゃありませんぞ。国会、国、最高権威の場所で述べていることとは違ったことを、同時刻に出先で述べておるような、こういう大使をあなたは忠臣と心得られますか。直ちに召喚すべきだと思うが、どうです。
○愛知国務大臣 その新聞の記事でございますが、下田君の記者会見における詳報は、私のほうへも直ちに入っておりますけれども……(加藤(清)委員「あなたが言ったあとですよ」と呼ぶ)いえ、そのあとも入っております。いわゆる下田私案なるものを提案したという事実は全くございませんし、それから、十八日云々ということについても、私が御報告したとおり、そのことをその会見でもあらためて再確認いたしております。そして、今後どういう点が交渉の問題点であるかというようなことについての質問に対しまして、こういう点が今後の問題であろうと、アメリカ側の想像されるような態度に触れて、談話といいますか質問に答えているわけで、そこのところが下田大使の意見のような形でその記事に登載されておるのでございまして、これを下田君の意見として、また訓令に違反している行動というふうには私は考えておりません。これは、前回にも申し上げましたように、アメリカ側の考え方あるいは推測するところは、こういう点に重きを置いているようであるという点に主眼を置いての談話であったようでございます。
○加藤(清)委員 それはいまから一週間前だったら、その答弁で私も納得しますけれども、そうじゃない。私は、その下田私案のことを言うておるのではない。その下田私案をあなたが打ち消しなさった。それ以後またぞろ下田君は記者を呼んで、わざわざアメリカ側の立場に立った発言をしている。日本の態度に否定的である。まさにこれは訓令違反といわなければならぬ。
 関連があるそうですから関連してどうぞ。
○中野委員長 田中君より関連質疑の申し出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中武夫君。
○田中(武)委員 簡単に申し上げますが、下田大使の言動がとかく問題になっております。したがって、いま加藤委員からも下田喚問の提案が出ました。先日も、民社党のほうからも、またわが党江田書記長質問にも出たわけです。そこで、外務大臣はいつも下田言動に対してしりぬぐいばかりをしておる。なぜそういうことが起こるのか。外相はなめられておる。こういうことでいろいろ聞いてみますと、昨年、佐藤さんがアメリカへ行かれました。そうしていわゆる沖繩交渉、日米共同声明とくるわけですが、そこで何か政治的な密約が繊維についてもあるのじゃないか、こういうことで、わが党の参議院第一陣の質問で松澤さん、衆議院では角屋君が申しました。これを佐藤総理は否定せられましたが、どうも否定せられればせられるほど疑わしいのが出てくる。いろはかるたに「頭隠してしり隠さず」というのがありますが、それはどういうことかといいますと、これも証拠を出せと言われてもないのですが、佐藤さんがお帰りになるときに、下田さんは空港へ見送りに行った。そこで何らかの指示をせられたようである。そして、おまえ、しっかりやれ、少なくとも一ぺん年内に繊維の問題に話をつけろ、もしここでうまくおまえやるならば、ハーグの国際司法裁判官におまえを推薦してやる、こういうことを言われたということを聞いたわけなんです。そのときはまさかと思っておったのですが、調べてみますと、田中耕太郎博士は、任期がきて帰られました。こうなると、どうも裏づけが出てくる。そこで、特命全権大使のようなつもりで下田君はおられるようです。したがって、外相が打った訓令に対しましても、総理はそれは御存じか、こういうような返電が来るということを聞いております。外相、なめられていますよ、あなた。
 そこで、そういうことについて、総理は否定せられるであろうが、総理にお伺いするのとともに、強く委員長に下田喚問を私も重ねて要求をいたします。
○中野委員長 御提案の件は、今澄君ほかの方よりも出ておりまするので、いずれ理事会において協議をするようにいたしたいと存じます。御了承願います。
○佐藤内閣総理大臣 さようなことはございません。否定されるだろうがということでございましたが、もう全然ございませんから、その点はひとつ私の言うことをそのまま額面どおりお聞き取りいただきたい。
○田中(武)委員 一言だけ。たまたま田中耕太郎博士の任期が来ておるということで、どうも裏づけがあるんじゃないかと思うのですよ。
○佐藤内閣総理大臣 実は、田中先生のあとに日本人を出したい、かように思いまして、いろいろ任期が来る前に事前工作をいたしたのですが、今回はどうもそのあとがまが日本からは出せない。こういうことで、これはたいへん私ども残念に思っておるような次第でございます。したがって、私がアメリカに行きましたその時期には、もうすでに田中先生の後任はきまっている、そういう状況でございますから、誤解のないようにお願いをしておきます。
○加藤(清)委員 与えられた時間がもう迫ってまいりましたので、私は次に提案をしたいと存じます。それはほかでもございませんが、この佐藤さんとニクソンさんとの会談で、どうも双方が理解の上において誤謬があるのではないか、そういう懸念がしてならぬということは、これは私一人だけじゃない。それでなければ、こんなに下田君が一人芝居をやるはずはない、こういうことでございます。だから、その国際司法裁判所説までが出てきて、栄転となればそれは喜んでかってなことをやるだろう。外相の言うことよりも総理の言うことのほうが上だから、それはそっちをとるであろうと、こういううわさになっていくわけなのです。そこで、いまそうでないと総理はおっしゃったのですから、それならそれで召喚すべきであると思う。証拠をここではっきりさせるということが、刑事訴訟法の立場からいっても、当然の帰結でなければならぬ。
 それから次に、提案でございまするから――時間を委員長が幾らでも許してくれれば別ですが、そこで提案として申し上げたいことは、いまここにいらっしゃる閣僚の皆さんは、思想が統一できておるようでございます。しかし、同じ政府部内において思想統一ができないということは、これはまことに残念でございます。波打ちぎわから向こうへの問題に対しましては、野党といえども一致結束して国難に当たるべきであると思うのです。にもかかわらず、政府部内においてそんな思想統一ができないでは困る。したがって、まず政府部内の思想統一をするためにも、下田は召喚すべきである、再教育をすべきである。次に、業界と政府との懇談、これも当然行なわなければならぬと思う。そこで、私は、総理の意思をニクソンさんと下田君にはっきりさせるために 召喚するか、はたまたあなたが信書を送るか、特命全権大使を派遣させるか。幸い吉野氏が帰ってくるようでございまするから、そこらとよく打ち合わせの上、至急以上私が提案したことについて実行に移していただきたい。
 次に、もう一つの提案でございまするが、アメリカが一年を十五年の長きに延ばして、またぞろ今度も延ばそうとしておりますが、それにはりっぱな国会のうしろだてがあり、業界の突き上げがあるからでございます。議会のうしろだてとはパストーレ委員会でございます。長きにわたってこの繊維問題についてアメリカでは特別繊維委員会、パストーレ委員会がございます。ここが音頭をとっておりまするから、歴史的にも数字の上にもいろいろよく検討が行なわれております。わがほうは、残念なことに、エキスパートとはいうものの、肩書きエキスパートであって、それが交代、交代をなさる。そのために交渉上不利を招く。相手はニーマーをはじめとする専門家なんです。ここらのことを考えますると、ぜひひとつ本委員会にもジャパニーズ・パストーレ委員会、これをつくっていただきたい。幸い自民党さんのほうにも特別委員会、福田さんが見える。それからわが党にもそれがある。民社党さんにも、おそらく公明党さんのほうにもつくられるでしょう。民社党さんのほうには現存しておるということでございまして、これを一つにするだけですから、これはもう簡単なことだと思います。ぜひこれをやっていただきたい。これについての総理の御答弁を……。
○佐藤内閣総理大臣 たいへん時間がなくなっておるところで申しわけがないのですが、私、少し、この全体について私の気持ちを率直に申し上げます。
 私は、冒頭に申しましたように、日米間において懸案事項を残してはならない、そういう意味で、領土の問題でも片ずいたんじゃないか、だから早く話をつけるべきだ、こういうことを実は申しております。この点では、ニクソン大統領と私との間にも完全に意見が一致しておる。しかし、二人とも専門家でございませんから、ニーマーやトレザイスその他のような専門家でないのですから、具体的な問題は取りきめができるわけがございません。私がいま非常に心配しておりますのは、過日もこの席でお尋ねがございましたが、この糸をつくっておる紡績会社はともかくとして、さらにそれから下の中小企業、そのようなところはただいま非常に不振の状況だ。そうしてさらに販売の方向までいくと、規制等になれば、一そう思惑上心配しておるだろうと思います。私はこういうような事柄を考えると、この問題に早く終止符を打つべきじゃないだろうか、かように思います。その終止符を打つのも一つのルールがあるのだ。それをいませっかく外務大臣も通産大臣も意見が一致してやっておる最中でございます。
 私は、いまのような状態で、ただ理屈があるからといって、ただその理屈だけで押しまくって相手がなかなか納得しないような場合には、弱腰をするというわけじゃございませんが、いろいろな案が出てくることもこれもまたやむを得ないんじゃないのだろうか。私はその局面を打開する、そういう意味で、相互の互譲の精神が発揮されればこんな好もしいことはないんじゃないか、かように私は思いますので、そういう意味で、とにかく早く問題を鎮静さす、そうしてわが国業界も先行きに見通しが立つような、そういう状態をつくることが、今日何と申しましても私は大事なことじゃないだろうか。それは私の責任でもある。かように私は感じております。
○加藤(清)委員 日本のインジュリー、もしこのことがアメリカの意向どおりに締結された場合に発生し得る日本のインジュリー、その中で、とりわけいまからわれわれ政治家が考えておかなければならぬ問題がございます。それは日本の繊維産業の構造からくる問題でございまして、文鎮型でございます。労働集約的製品がアメリカにたくさんにいっている。その労働集約的繊維製品はほとんどが中小企業なのです。幸い総理もそこに思いをいたしていただきまして感謝にたえないところですが、さればこそ、私も金融機関三公庫の総裁に来てもらったわけなのです。よく聞いてもらいたい、そうしてよく対策を練ってもらいたい。いますでに思惑買いや投げ売りやら、それはそのはずです、株と一緒で三品がございますから。したがって、流通機構にまで、同時にまた、労働者に及ぼす影響もたいへんでございます。だから、三月を控えて税金対策、株の配当等々と、資金需要が一斉に集中いたします。そのおりに、中小企業に対しては金融引き締めが緩和されておりませんから、ますます中小企業にしわが寄っていく、倒産は火を見るより明らかでございます。だからといって、この問題を、私は拙速をとうとぶとは言いたくない。じっくり考えて、被害をよく調べて、同時に、将来の平和産業、繊維産業、日本の国益、国民の意思の向かうところをよくキャッチなさってから手を打たれるべきであると思う。
 三公庫の方々にはお答えも願いたかったのですが、与えられた時間がございませんので、いずれこれは関係委員会においてきめこまかな質問をさせていただきます。ぜひひとつ総理、沖繩返還で功績をあげられたその功績が帳消しになりませんよう、ここにも一つ戦後があり、ここにオキュパイドジャパンがいま生きているのですから、これをひとつあなたの手でりっぱに解決していただきますよう要望いたしまして、質問を終わります。
○中野委員長 参考人商工組合中央金庫の理事長高城元さんには、たいへん雪の中をばわざわざおいでを願いまして、恐縮に存じました。
 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。午後の会議は一時より再開することといたします。
 この際、暫時休憩をいたします。
    午後零時十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時九分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。堀昌雄君。
 堀君に申し上げますけれども、佐々木日本銀行総裁は、二時に所用のため退席されたいとのことです。その点お含みの上、質疑を行なわれますようお願いいたします。
○堀委員 私は、昨年も予算委員会の総括質問で、総理との間に、幾つかの問題について問題提起をいたしましたし、それについては実は残念ながら、実行されたものもありますけれども、実行されないものがかなりあるわけであります。
 これはあとで実はゆっくり申し上げることにして、きょうの朝の新聞が伝えておりますように、消費者物価ぐんと上昇ということで、一月の全国の前年比が七・八%になったということを伝えております。同時に東京都の区部では、二月分で、これが八・二%にやはり前年比がなっておる。異常な物価上昇がここのところ続いております。私はきょうの質問については、金融、財政あるいは経済成長、社会保障と、いろんな問題を提起いたしますけれども、それはいずれもこの物価を中心として関係のある形で実は問題を分析し、そうして政府の見解を伺っていきたいと思います。どうかそういう意味では、お答えいただく皆さんのほうでも、まず物価との関連について伺っておるということを十分頭に置いて、ひとつきょうの質問をお聞きいただきたいと思うのであります。
 最初に、総理大臣にお伺いをいたしますけれども、総理の施政方針演説の中で、確かに物価の問題についていろいろと触れられておりますけれども、どうも私はその触れられておりますことが、わりにこまかいことにまで触れられておるわりに実は肝心のところがもう一つ弱いような気がしていたし方ありません。現在の物価が上がるという問題の中では、総需要の抑制が必要なのではないかということが一方でいわれておるわけでありますけれども、総理が、その総需要の抑制ということについてどのくらいきびしいお考えを持っておいでになるのか、その点からひとつ最初にお伺いをしておきたいと思うのであります。
○佐藤内閣総理大臣 御指摘になりましたように、物価の問題と取り組む、その場合に総需要、ことに予算編成、これが非常な影響を起こす、かように考えます。したがいまして、今回の予算編成規模等についてもいろいろ苦心したところでございます。それは、たとえば法人税の増徴だとか、片一方で減税をしながらもそういうものがある。あるいはまた、金融の面とあわしていろいろくふうをしておる。いまちょうど引き締めの状態でございますから、これなども総需要に関連を持つ。またこの予算が成立した暁においても、これらの実行にあたって、さらに時に経済の実情に応じた処置をとるから、前もって各省大臣はそれらの点もあらかじめ覚悟しろ、こういうような申し合わせまで実はしておる。こういうような点でおわかりかと思います。
○堀委員 実はさっそく予算の問題に入りたいのでありますが、先ほど委員長からのお話で、日銀の総裁が二時に御退席ということでありますので、とりあえず金融の問題を先にいたしまして、あとで予算の本論に入ることにいたします。
 佐々木日銀総裁が就任をされまして、きょうがおそらく国会で公式に発言をなさる最初の場所だと思うのであります。私はすでに十数年にわたって、大蔵委員会その他で、佐々木総裁が副総裁の当時から承知をいたしておりますけれども、金融当局としては非常にすぐれた識見を持って、きちんとした方だというふうに私は考えております。どうかひとつ本日以後の国会におきます御答弁においても――政府、たくさんそこに並んでおりますけれども、あまり政府を気になさらないで、日銀当局としての自信のある御答弁をいただきたいということを、これからたびたび佐々木総裁とは私、国会でお目にかかるわけでありますけれども、最初に特にお願いをいたしておきたいと思うのであります。
 そこで、最初でもございますから、いま私が申し上げました物価を中心としての日本の現在の経済の状態について、佐々木総裁から最初にひとつ一言お話を承りたいと思うのであります。
○佐々木参考人 ただいま物価の現状について、日本銀行としてどう考えておるかという意味の御質問だと思います。
 御承知のように、消費者物価のほうは、相当長い前から大幅な上昇が続いておりますが、幸いにして卸売り物価は、一昨年の暮れまで非常な安定をしておりました。これが日本の商品の国際競争力を強め、今日の国際収支の好調をもたらしたものだと考えております。ところが、昨年の二月から卸売り物価が上昇を始めまして、今日まで約一年間上昇を続けております。このことは朝鮮事変以後初めてのことでございまして、この問題を私どもは非常に重要視しております。
 問題は、この卸売り物価の上昇がどうして始まったかということでございますけれども、これは二つ原因がございます。一つは、海外における物価の上昇、これは各工業国がいずれもここ数年、六〇年代の終わりになりまして物価の上昇に悩んでおります。そういうことが国際的にお互いに物価高を移し合うというような形でだんだん進んできております。そういう影響が日本にも及んできておりまして、その証拠は、現在、日本の輸出物価並びに輸入物価が両方ほとんど並行して上がっておる実情からも判断できると思います。それからもう一つの問題は、国内における需要の強さでございます。これはここ数年相当高い経済成長が続いております。その結果といたしまして、労働力にもいろいろ不足の面が出ておりますし、それからまた設備の面につきましても、やはり相当な大きな設備の投資が行なわれる。そういうようなことがやはり総需要の中における一つの上昇の要素として働いております。そういうことで、最近の総需要の伸びが相当高い。そういうことが国内の物価引き上げの要因となっております。この二つの物価引き上げの要因につきましては、海外の分を遮断いたしますことは、これはなかなか困難でございまして、これはある程度日本の国内物価に影響することはやむを得ないといわざるを得ないと思います。ただ国内のほうの様相は、できるだけ総需要を押えていくという形で調節をしていかなければならない。そうすれば、世界の物価上昇の傾向の中で、日本がある程度コントロールした物価の上昇にとどめ得るということになるように思います。
 そういう意味で、去年の九月から実施いたしました金融引き締めも、あまり高い経済成長が続き、総需要の増大が激しいということをある程度ブレーキをかけたいという考え方で、最初に予防的措置というふうに申し上げたわけでありますけれども、ところがその予防ということばが必ずしもそのまま受け取られませんで、やはり最初のうちは、なかなか全体の総需要の調整ということに効果を及ぼし得なかったと思います。しかし、ことしに入りましてから、そういういろいろな措置の効果がやや実態的にあがりかけておるのではないか。こういう状況がどういうふうな効果を持ちますか、ここしばらく見詰めていけば、ある程度物価に対するわれわれの政策の影響もはっきりしてくるのではないか、こう考えておるのでございます。
○堀委員 いま総裁がお答えになりましたように、確かに昨年九月に始まりました引き締めは、最近としてはわりに効果をあげてきておるように思います。実は公定歩合のレートの引き上げ分については、ごく最近までに八一%ぐらい市中の貸し出し金利が追従をしてきておるというようなことは、これまでの引き締めの中ではわりに効果が、少なくとも金融面にはあらわれておると考えておるわけでありますが、実態面がどうなるかというところが、まだちょっとはっきりしないというところだと思います。そういうきわめてむずかしいときに、実は今度の予算が組まれたわけでございます。
 最近は、よくミックスポリシーとかフィスカルポリシーとかいわれます。きょうは福田さん御欠席でございますから、主として、かつて私がちょうど十年くらい前に大蔵委員会に参りましたときの大蔵大臣でありました佐藤さんと論戦をさしていただきたいと思っておりますが、同名の佐藤さんがおそらく補佐をすることでありましょうから、そこのところ、佐藤さんと申し上げては、ちょっとややこしくなりますから、総理と申し上げることにいたします。
 ちょうど私は、いまから十年前の昭和三十五年に大蔵委員会に参りました最初の大臣との質問で、実は、このフィスカリポリシーの問題を取り上げたわけであります。当時、大蔵大臣であった佐藤さんは、まだ時期尚早であるというお答えをいただいたわけでありますが、今日はそういう段階にまいりました。
 そこで、ミックスポリシーとかフィスカルポリシーとかいわれることは、私は、やはり金融と財政が相携えてお互いに補完し合うということでなければならないのではないか。私は、アメリカの問題については、私どもの考えの中にいろいろ違う点もありますけれども、しかしまたそういう政策については、きわめて私はアメリカの政策は割り切れておると思うのであります。今度の予算教書を見ましても、アメリカは御承知のような強い金融の引き締めをいま行なっておりますけれども、財政の面でも、財政の伸び率はわずか一・五%しか実はアメリカの財政は伸びていないということが、今度のニクソンの教書で明らかになっているわけであります。ところが、一体日本の財政はどのくらい伸びているのか。これをひとつ最初に企画庁長官のほうから、当初、当初で一体幾ら伸びたのか、ちょっとお答えをいただきたいと思うのであります。
○佐藤(一)国務大臣 堀さんもすでに御存じのとおりに、四十五年度のいま提案中の予算でございますが、これは一七・九%の伸びになっておるわけでございます。
○堀委員 実は、見かけは一七・九%でありますけれども、私は、どうも実質は一八%――まあ、一七・九五というのが正確だと思うのですが、一八%を少しこえているのじゃないかと思うのです。それは、こえておりますところは、今度のいま議案になっております補正予算、この中で、皆さんのほうは交付税を九百億余り計上しておられますけれども、その中に、本来は四十五年度で返すべき三百八十億円というのが先にこう出ていますね。これは本来は、四十五年に行くものでありますから、この三百八十億円というのは、実は本予算は、財政がふくらんでなかったらおかしいだろうと思うのです、本来は。その点はどうですか、企画庁長官、お認めになりますね。
○佐藤(一)国務大臣 三百八十億円を補正追加したことにつきましては、いまお話しのように、これはまあ政府といたしましても、当初の見込みに対して自然増収が相当に出てまいった。ですから、その自然増収によって、できるだけ早く地方財政のこともあるから償還しよう、こういう気持ちで償還をいたしたつもりでございますけれども、しかし、いま堀さんがおっしゃいましたように、その三百八十億円を四十五年の予算にプラスしまして、そうして伸び率を御計算になれば、当然一七・九をこえることになります。
○堀委員 実は、これは現実にもう組まれておりますからあれですけれども、比較をするとすると、一八%ぐらいに実はなるわけです。ほかにまだこまかい農業費の、本来これも四十五年に組むべきものが補正に入っています、そんなことはあとで触れますけれども……。
 そこで、一体アメリカは金融引き締めをやって、アメリカの物価上昇と日本の物価上昇は、ほぼ同じぐらいのところにいまあるわけですが、予算を一・五%しかふやさない。日本は一八%ぐらいふやしている。これはもう最近、長年にわたってこんなことはなかったわけですね。御承知のように、四十一年の不況からの脱出の予算のときがジャスト一七・九でありますか、でありますから、いまや日本は、不況から脱出ではなくて、総理がいまおっしゃったように、総需要を抑制しなければならぬのだ、こうおっしゃっていながら、口で言うこととやることは全然あべこべだというのが今度の予算の姿だと思うのですが、総理、これはどうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 少し酷評じゃないかと思います。御承知のように、今回も、先ほども法人税の話に触れましたが、その他にも、たとえば国債を減らしたとか、あるいは政府保証債を減らしたとか、これなぞは政府の努力のあらわれだ。これが多いとか少ないとか、いろいろ議論はあると思います。しかし、政府は極力やっておる。これらが一体何に基因しているか。これは結局問題は、わが国の社会資本が非常に立ちおくれておる。そういうところにいまの問題がございますから、一がいにこういうことを御非難をあまり強くされないようにお願いしたいのです。ただ、そこで、先ほども申しましたように、実施にあたっていろいろな弊害が出てくる、顕著になる、こういう場合にはどうするかという問題があるが、これはもう先ほどお答えしたとおりでございます。
○堀委員 いま総理が公債にお触れになりましたが、実は公債も、昨年は千五百億減らしたのです。今度は六百億ですから、これもちょっと減らし方が必ずしも十分だとは思えないわけでありますが、私は、何もただ規模だけのことを言うわけではありませんけれども、ただ、国民全体、それは経済界の人を含めて、予算の総ワクが非常に大きくなるということは、実際的な需要誘発の問題よりも、心理効果というものが私は非常に大きいと思うのです。さっき私が申し上げたように、アメリカが一・五%、日本が一八%というのは、これは確かに成長のベースの高さに相違がありますけれども、私は、やはりこれは問題がある、何しろ問題があるということだけは、総理にひとつ認識をしておいていただかなければならぬと思うのです、第一点は。
 そこで、実はそういう大きな予算を組まれて、企画庁のほうで経済見通しをお出しになっています。これはちょっと企画庁長官に伺いますが、ことしの経済見通しというのは、私がいまから伺ううちのどれに当たるか、ちょっとお答えをいただきたいのです。
 これは私は、長年にわたって、宮澤さんとも議論をいたしましたし、それから藤山さんともずいぶん長年、何回か見通し問題についてやっているわけですが、まず見通しというものの考え方には、政策運営をしないでほうっておいたらこうなるであろうという客観的なものというのが一つあると思いますね。二番目には、政府として、ガイドポストのように、何とかいろいろやってみてかくありたいという願望ですね、一つのガイドポストのようなものが一つある。もう一つは、政策運営を適切にやってこうするのだ、ここへやるのだという、これは私は三つあると思うのです。まあ、こまかく分ければいろいろございましょうが、原則的な分け方をすれば、見通しというのはそういう三つに入るんじゃないだろうか。ことしの見通しというのは、この三つのうちのどれでしょうか。
○佐藤(一)国務大臣 お答えいたします。
 その前に、いま堀さんのおっしゃいましたアメリカとの比較のお話ですが、私は、率直に申しまして、今度の予算というものは、少なくとも中立的である。中立警戒ぐらいのところが十分言えるんじゃないかと実は私も思い込んでいるのです。アメリカは御存じのように、八、九千億ドルのGNPで二千億ドルの歳出である。わが日本は、御存じのように大体GNPに対して一割の歳出です。御存じのいまのアメリカのインフレというのも、むしろ歳出に主要な責任がある、こう言われているくらいでございます。その点は、私は、日本とだいぶ事情も違いますし、そういう意味でいろいろ御批評もございますけれども、まあまあいいところじゃないか、実はこう考えているわけです。
 そこで、いまの御指摘の点でございますが、率直に言いまして、日本の経済計画は、性格が必ずしもはっきりしていないと思います。その中身を一つ一つとってみますと、たとえば政府の投資のように、具体的に予算その他と突き合わせて、いわば一つの指標となるというか、それが実行の基準になる性格のものもごくわずか入っております。そうかと思いますと、民間の設備投資にいたしましても、あるいは雇用者所得にいたしましても、いろいろと民間の成り行きまかせ、それをある程度見通しをつくってみる、こういう程度のものもございましょう。それからまた、ある程度、これは民間設備投資なんか、むしろその中間といったらいいかもしれませんが、ある意味においては、民間の経済の指標になるというくらいの性格の軽いものもある。そういうことで、御指摘のように、まさしく三つの性格を持ったものがまざっているように私は思います。総じてこれを評しますと、経済予測であり、見通しであるけれども、しかし、その中に一種の御指摘になったような、ややガイドライン的なものを含んでおる。そうして、またあるものについては、やはり政策の努力目標というふうなものも入っておる。一言にしてちょっと言い尽せない性格を持っておるように、私は思っております。
○堀委員 そこで、今度の経済見通し、これまでと比べて実は少し実態に近づいてきているんじゃないかという感じがいたします。ちょっと過去の例ですけれども申し上げておきますと、四十二年度には当初の見積もりが実質で九%だったんですね。ところが、実績では一一・六%に実質でふえた。その次が四十三年度でありますけれども、これが七・六%であった。実質ではこれが一・六%に実はふえた。この四十三年などというのはたいへんなふえ方であります。そういうふうなふえ方をしておるもとは、いまあなたもお触れになりましたが、民間設備投資が非常に大きな役割りを果たしてきておる。私は、何回かこの問題について委員会で論議をしてきたわけであります。
 そこで、今度の見通しでありますけれども、この今度の見通しというのは、現在金融引締め中でございますから、この引き締めがどこで解除されるのか、続いて全部年度の終わりまでいくのか、途中で解除されるかによって変わってくるわけですね。経済情勢は非常に変わってくる。あなたのこの見通しというのは、一体どこらで金融がゆるむという前提なのか。これは政策当局として当然考えておられることでしょうから、これを一ぺんお答えをいただきたいのです。
○佐藤(一)国務大臣 仰せのとおり金融引締め下におきまして、その引き締めを中心にして総需要の抑制をはかろう、こういうことでございますが、御存じのように、金融引き締めは大体半年くらいたたないと効果がはっきり出ない、こういうふうによく言われておりますが、目下のところの観測では、まだ金融引き締めの効果が十分出てきているというふうには言えない、こういう見方が相当多いわけでございます。私どもといたしましては、これからのその情勢を見まして、そうして設備投資というものがどの程度沈静化してくるか、民間の投資意欲というものがどの程度沈静化してくるか、そういうことをよく見きわめまして今後の方針をきめなければいかぬ、こういうふうに感じております。
○堀委員 いまの民間の設備投資の動向を見きわめるとおっしゃったんですが、これは何で見きわめるのですか。そのものさしは何ですか。
○佐藤(一)国務大臣 代表的なものですから申し上げましたが、もちろん先ほど佐々木日銀総裁もまさしく指摘しておられましたように、昨年から従来安定しておりました卸売り物価が相当上がってまいった、そして、結局それに伴いまして、通貨の増発も行なわれる。その他全般として物資の需要と供給が相当逼迫しつつある、こういうふうに推定されるものがたくさん出てきた。したがいまして、物資の需給の逼迫というものが極端になってはこれはたいへんである。卸売り物価等は、それの一つの重要な指標でございましょう。そうしたものをめどにして金融引き締めをやっております。そうして、この逼迫には民間設備投資の需要増というものが相当響いておる、こういう意味から申し上げましたが、やはり物価、特に卸売り物価に対してどの程度の効果を持ってくるか、そうしたことも重要な指標だと思います。
○堀委員 そこで、あわせてもう一つちょっと伺っておきたいのですが、政府の経済見通しの一つの問題点は、非常に輸出入額がどうも過小に評価されておるような感じがしてなりません。輸出の伸びが一四・六%、輸入のほうは一七・五%実は伸びを見られておるわけですね。そうすると、これは輸出のほうは海外的要因に原因がありましょう。しかし、輸入のほうは、これは国内の鉱工業生産に非常に関係があると思うんですね。そうしますと、この輸入の一七・五%というのは鉱工業生産はここでは一五%と見通されておるのですが、ちょっとここが乖離し過ぎているんじゃないか。輸入がこんなにふえるんなら、鉱工業生産ももうちょっと伸びてくるんじゃないだろうか、こういうふうな感じがするんですがね。この貿易収支の両方の問題、総合収支が十億七千万ドルとたいへん小さく実は出ているのですが、これがこういうふうに過小評価をされておるというのは、かなり早い時期に金融引き締めを解除しないと、こうならないんじゃないか。金融の引き締めをしておりますれば、当然輸出ドライブがかかりますししますから、国際収支は黒がふえるというのが一般的な経済の考え方だと思うのですが、どうもこれだけ見ると、いまおっしゃったように、卸売り物価が安定してから金融がゆるんだらいいんだなどというようなことにならないような見通しになっておると思うんですがね。ここは一体どうでしょうか。
○佐藤(一)国務大臣 御存じのように海外情勢というものの見方によってずいぶん違ってきますが、輸出につきましては、やはりわれわれといたしましては今後の海外情勢というものを手がたく見込んでいかなければならない、こういう感じを持っております。まあアメリカの景気の動向につきましては、アメリカのエコノミストの間でも議論が二つに分かれております。しかし、われわれといたしましては、ある程度のスローダウンも覚悟しなければならぬ、こういう感じがいたします。また輸入でございますけれども、鉱工業生産指数は、おっしゃいましたように一五%になっておるわけでございますが、これにつきましては消費需要も相当に強い情勢にございます。そうして設備投資も一七・二%に極力押えようとしておりますが、何といいましても全体としてのベースが相当高くなっております。伸び率は鈍化しておるようでありますが、ペースは相当高い。いわばいま去年からのこういう経済の逼迫状態というものは、これは一言で言うと、やや加速化されている傾向があると思うのです。私たちは、一方において自由化も今回相当に今年度中にも繰り上げて、輸入制限の撤廃等もはかろう、こういうようなこともいろいろとあわせまして、まあ一七%くらいは輸入がいくんじゃないか、こういう感じで申しておるのです。
○堀委員 まあ見通しの話でありますからあまり詰めたことを伺うつもりはありませんけれども、全体から見て十億ドルの総合収支の増加というのは少し少ない。いろいろと日本の円に関する話が出るものだから、政府側としては少し水をかけるためには、ことしはふえませんよというゼスチュアを示したのではないだろうか。しかし、ゼスチュアはいいけれども、現実にふえてくる問題は、これはやはりそれなりの対処をしなければなりません。いまあなたのおっしゃいましたこともそういうことになるのだと思いますけれども、やはり問題はここにあるのだと思います。
 そこで、日銀総裁にお伺いいたしますけれども、いまこういう経済見通しを政府が出しました。こういう経済見通しを政府が出して、しかし、さっき私が申し上げたように、予算のほうはなかなか大型であります。確かに法人税の引き上げ等が、多少は設備投資抑制に働くかもわかりませんけれども、最近までの民間設備投資の動向を見れば、アメリカもそうでありますけれども、やはり日本にも経営者の中にはかなりインフレマインドが定着してきているんじゃないか、こういう感じがするわけであります。そこで、引き締めをそう早く解除はできない、解除をしないと国際収支の黒字が今度はふえてくる、こういう二律背反的な問題にいま立たされておるのじゃないかと思うのですが、日銀総裁としては、これに対処する対処のしかたは、どういうふうにお考えになりますか。
○佐々木参考人 確かに、ただいま御指摘がありましたように、いまのような大幅な国際収支の黒字の中で金融引き締めをいたしました。これは、非常にむずかしいやり方でございます。日本としましては、初めての経験でございます。したがいまして、全体の需要を調整しなければ、国内の物価が上がる、それに対する対策と国際収支の黒字を適当なところに調整していこうという考え方とに矛盾があることは、御指摘のとおりだと思うのです。したがいまして、私どもも今度の引き締めの最初におきまして予防的ということばを、先ほども御説明申し上げましたが、使いましたのは、そういう点についての配慮があったのでございます。いまのように引き締めの効果の出方が最近になってやっといささかのものが感ぜられるという段階では、実は私どももこの引き締め政策を今後いかなるときに解除するかということについて、具体的な見当がまだつけ得られない状態でございます。ただ、各企業の四十五年度の設備投資計画は、普通大体二月から三月にかけて作成されます。その作成されます過程における企業家のものの考え方、そういうものをいろいろな機会にわれわれが直接伺っておりますので、そういうことから、来月一ぱいたちますと、四十五年度の設備投資計画というものについては、ある感じがわれわれの頭の中にできるのではないかと思っております。したがって、その四十五年度設備投資計画に関する限り、三月中にある程度の見当がつきますと、あとは、先ほども企画庁長官が言われましたように、総体の経済指標というものの足取りのある程度の落ちつきが得られるかどうかということによりまして、引き締め解除の時期というものは判断できるのではないか、こういうふうなことに考えております。
○堀委員 私は、いま非常にむずかしい点は、金融の引き締めということを人為的に行なわなければならないような日本の金融政策のあり方、ここに一番大きな問題があるのだと思うのです。私、これは毎年の予算委員会で総理に申し上げるのですけれども、私は社会党ですけれども、金利のようなものは自由化をすべきだというのが長年の主張であります。本来、資本主義の社会では、金利というのは需要と供給できまるのがあたりまえですから、現在のように需要が高ければ自動的に金利は上がるはずなんです。ところが日本では、実は管理金利にしてしまって、全然金利機能が働かない。金利機能が働かないから、しかたがないから、日本銀行は公定歩合操作だけではなくて、ポジション指導という名の窓口規制をいまやっているということになっているわけです。この一−三月は前年比五%しかふやしていないなんというようなことは、実は正常な金融政策じゃないですね。きわめて異常な金融政策を日本銀行はとらざるを得ない。そのもとは、金利が自由化をしてないことが、そういう人為的な政策をとらなければならぬ。そういう人為的な政策をとるから、どこではずすかということは、きわめてまた人為的になるからむずかしい。これがいまの日本の金融政策じゃないかと私は思うのです。昨年もここへ宇佐美総裁にお越しいただいて、公社債市場の問題から関連をして、ともかく長期金利の弾力化をやりなさい、こう申し上げました。そのあくる日、宇佐美総裁は記者会見で、長期金利の改定をやりたいと私の発言を受けておっしゃいましたけれども、当時の大蔵省はあそこでやっておけば実はここまで過熱しなかったと思うのです。それをやらないで五十銭にとめたのは、これは実は残念ながら大蔵省です。私は、少なくとも一円五十銭ぐらいはあのときに改定をすべきだ、そうすることが――あのときは実は事業債の買い入れ幅というのは三円七十五銭ぐらいで、現在これは六円近くにきているわけですから、あのときにやっておけばもっとモデレートな投資の状態もできていたのではないかと思うのだけれども、やることを適切なときにやらないというのが残念ながら日本の財政当局の判断だ、こういう気がしてしかたがない。
 そこで、ようやくことしは長期金利の改定を含めてやや弾力化されるような方向にあるようであります。たいへんけっこうなんですけれども、一体これについて総裁は大体いつごろをめどに――おっしゃっておるのはすでに二円では少し行き過ぎるだろうとおっしゃっている。私は昨年から一円五十銭ぐらいはどうしてもやるべきだ、こういう持論なんでありますけれども、幅の問題を含めて、一体いつごろからこれが行なわれることが望ましいと考えておられるか。これは大蔵省を含めて、政府当局のほうでも準備の都合もありましょうから、どちらからお答えいただくのがいいのか、ちょっと私もわかりませんけれども、ひとつ総裁から伺い、あとで大蔵大臣代理のほうから伺うようにしたいと思います。
○佐々木参考人 ただいまお話がございました金利に弾力性が必要であるということは、私全く同感でございます。いままで、とかくいろいろな金利がそういう市場の実勢と乖離しておったということも事実でございます。したがって、その乖離をできるだけ早く狭めていく、できればゼロにするということが最も望ましいことだと思います。
 今度の事業債の問題でございますが、事業債は、先ほども御指摘がありましたように、私二円まで上げることができるかどうか、ちょっと疑問に思っておりましたのですが、今度まとまりました話では二円ちょっとという感じのところまでまいりました。これは三月起債の分から実行されます。こういうふうに一番乖離のひどかった事業債、それから利付金融債、こういうものの条件の改定がきまってまいりましたので、今後それを基準にいたしまして、ほかの金利も徐々に改定されてくると思います。いまの公社債市場の状況というものははなはだ流動性を欠いております。われわれとしては、長年社債市場の正常化につきまして、何とか解決していきたいと努力しておりましたが、なかなかその実効をあげ得ませんでした。今度の改定が一つの機会になりまして、弾力性の回復ということができれば、非常にしあわせだと考えておる次第でございます。
○堀委員 いまのお答えで、たいへん私はこの問題については明るい見通しが出てきたと思うのです。私は文句を言うだけでなくて、ひとつだけちょっとほめておきたいと思うのは、ことしは大蔵省がようやくそこまで踏み切った。佐藤企画庁長官はこういう話をしておられますね、これはちょっとおもしろいので、私ちょっと線を引いておいたのですが、「問題は、その借金のしかたですよ。その仕組みを少し研究しなければいけない。それはどういうことかというと、結局今日は実質的に、公債を発行すると日銀引受け的要素が強いでしょう。この日銀引受け的要素が強いあいだは、公債発行は罪悪になってしまうのですよ、」「日銀引受け的要素」ということ、これはあとでちょっと御説明をいただきたいのですけれども、それから「そういう意味で、今度、政保債と合わせて一、二〇〇億円の減債が行なわれたということは、私はやはり一つのメリットであると考える。しかし、それは次善の策、やむを得ない策ですよ。これはいまいったように日銀引受け的であるから、そこを直せばいい」こういうふうにあって、「それを直すにはどうすればいいかといったら、思い切って国債条件を改定して引き上げる。利回りをよくする。これは長期金利改定の一環として当然出てくるけれども、国債の利回りを思い切ってよくして、アメリカのように市場に裸でほうり出しても国債に買い手がつく、」ようにしなければいかぬ。「ところが、いまでも大蔵省の連中は、特に理財局の連中なんか、そこのところは昔の明治憲法意識が強くて、国債だけは権力をバックにして特別安い条件でもいいんだという意識が強い。それは主計局は利払いがたいへんだから抵抗する理屈はわかるけれども、理財局が抵抗する理屈は本来ないのですよ。」と、こうきているわけですね。
 私は、本来抵抗する理由のない明治憲法的感覚の理財局が、今度岩尾さんが局長で思い切って踏み切ったということで、私はちょっと理財局を評価したいわけだけれども、あなたの口にかかったら、だいぶこれはひどいことになっている。そこであなたの言う「日銀引受け的」であるということは、これはどういうことですか。ちょっとこれを説明してもらいたい。
○佐藤(一)国務大臣 私が身軽なときに自由放談いたしたのを、えらいところで堀さんにつかまりまして、とんだことでありますが、まあよく言われておりますように、発行後の、一定の年数を経なければただいまのところでは日銀のほうではこれを引き受けておらない、こういう意味におきまして、いわゆる昔から言っている意味の日銀引き受けではない、こういう意味でございます。
○堀委員 だから「的」ということはインターバルがありますということでしょう。日銀引き受けだけれども、インターバルを置かないと日銀が引き受けないから、それが「的」なんだ、要するにやはり本質は日銀引き受けだということは、あなたもお認めになっていると思うんですね。
○佐藤(一)国務大臣 いや、そういうところで大蔵省はせっせと苦しいさいふの中から国債の減額を一生懸命やっておる、こういうことだと思います。
○堀委員 いや、いいのです、私は基本的にはあなたの考えと同じなんだから。要するに私の言いたいことは、国債だから明治憲法的感覚で安い金利で無理に押しつけようなんていう発想が間違っておるのですね。経済というのは本来合理性がなければいかぬのです。総理大臣、そうでしょう。経済を合理性なしに力づくでやっているのが日本の経済ですよ。よく金融機関の諸君が、国債を引き受けさせられてかなわぬと私によく言いますから、私は断われと言うのですよ。何も義務もなければ、法律で何も書いてないんだから、出すと言ったら、うちは引き受けませんと言って断わりなさい。しかし先生、断わったら、あとで何か仕返しされますからこわい。こういうことですね。力で経済が行なわれておる限り、私は合理的な経済の運営はできないと思うのです。だから、そうではなくて、国債を出したければ、みなが買うような国債を出せばいいのですよ。いまあなた九分で国債を出してごらんなさい。私なら最初にすぐ買う。ほかのものは全部やめて買う。いま御承知のように公社債投信というのが非常に売れていますね。最近証券問題の中では、ちょっと売れ過ぎて、これまたあとのことで心配があるけれども、なぜ売れているかといえば、七・四五%という利率が高いから、そして、いつでもオープンで換金ができるから売れているのです。国債が、もし八・五%でもいいですよ、もし市場で八・五%で国債が買えるのだったら、私はボンドオープンより国債を買いますね、そのほうが安心だもの。そうなってないところに日本経済の非常な矛盾がある。国債がそのくらいに腹をくくれば、日本の金利なんというのはさっと自由化ができて、あるべき姿に――あるべき姿にいったときに日本の成長が安定したモデレートな、日本の国力に見合ったものになる。いま背伸びしているのですよ。なぜ背伸びしているかといえば、ここで私は特に申し上げておきたいのは、物価が上がるということがいかに債務者利益をたくさん企業側に与え、預金者側に大きな債権者損を与えておるかということを、ちょっと私は具体的な数で申し上げておきたいと思うのであります。
 実はこれは正確度がやや欠けておるかもしれませんけれども、昭和四十二年末における個人の金融資産は全体で四十二兆あったのです。四十二年末四十二兆、これを推計をいたしました。過去における伸び率を大体あまり伸ばさないようにして伸ばしてみると、四十四年末の私の推計では、大体五十五兆個人の金融資産があるということになるわけです。この中で債権者損の出ないのは株式と投資信託の一部ですね。これは分けられませんから、投資信託も私は除きました。大体この年の株式その他を四兆、こう見て除きますと、五十一兆、約五十兆というのが国民の個人の金融資産です。この五十兆が、五%物価が上がりますと、国民は一年間に二兆五千億円個人の金融資産から失うわけです。その二兆五千億円国民が失ったものは、金を借りておる企業側が二兆五千億円債務者利益が出る、借金がそれだけ下がるわけですから。要するに、いまの物価上昇という仕組みは、物価上昇というメカニズムを通じて、国民の預貯金なり生命保険にかけておる金をいつの間にか知らないうちに全部企業側の借金の棒引きに使っておるというのが、これがいまの実情なんですね。かつて私どもは、資本家は労働者を収奪するということばを使いました。今日は、全企業、債務者が、物価上昇のメカニズムを通じて全国民を収奪しておるということが明らかになるわけです。私、昭和三十五年からこれを推計いたしてみますと、今日までに大体十四兆六千億円という債務者利益と債権者損が出ておる。国民がそれだけ損をしている。これが第一点ですね。
 こういう問題をモデレートにしなければならぬというのは、これは当然ではないでしょうか。総理大臣、いまのことは初耳かどうかわかりませんが、ことし一年間に二兆五千億円国民が損をする。税の歳入見積もりが昨年が一兆九千億ですから、ことしちょっといま見ておりませんけれども、二兆幾らかでしょうね。一五%ぐらいの伸びですから、二兆ちょっとこえるのでしょうが、一年間に国民が所得税で納める全部の額よりも貯金の中で失う貨幣価値のほうが大きいというのは、これはたいへんなことですよ。どうでしょうか総理大臣、これについてひとついまの金利の自由化を含めてあなたのお考えを承りたいのです。
○佐藤(一)国務大臣 いま堀さんの御指摘になった問題は、理論的におっしゃるとおりだと思うのです。われわれも、これにはいろいろの要件がありますから計算はできません。できませんが、ただ理論的にそういうことを言い得ることが可能である、これは言えると思います。そういう点は確かでございますけれども、私たちもそういう意味でもって物価の問題を取り上げているわけなのでございます。もちろん、それを野方図にしておくというわけのものではない、どうしても物価を最重点にするというのは、そういう気持ちが一番底にあるからやっておるわけでございます。考えてみますと、今日の日本の経済の高い成長、世界的に見ても他に類のないこの成長というものは、やはりそうした資金のメカニズムを前提にして今日まで実現されてきている、これは私は確かだと思います。しかし、その経済成長を同時にまた受けておる日本は、幸いに完全雇用に近い状態でございますからして、同時にまたそのたくましい経済成長によりまして、御存じのように急速な個人所得の増加が実現されておる。そしてその個人所得の実現を通じてそれを取り戻しておる。私はそういうことは十分言えると思います。
 しかし、いずれにしましても全体としてそういう点がありますので、私たちも何とか物価の抑制をやらなければいかぬ、こういう気持ちでおります。
○佐藤内閣総理大臣 物価の抑制は、ただいま臨時代理から詳しく申しておりますが、これをやらないことには、われわれは必要とする資金の獲得もなかなかできない。貯金すればそれだけ損をするのだ、こういうような御指摘ですが、私はそういうものが産業をささえておる基礎にもなっておる、かようにも実は思いますので、なかなか貯蓄性の高い日本国民、これを裏切らないように、そのためにはやっぱり物価を上げないようにすることだ、物価の安定こそ貯金もできやすい、そういうことになるのではないかと思います。
 ただ私、せっかくの御提案だが、金利の自由、これが極端になるととんでもないことだと思うのでございまして、これはもう需給の原則できめたらいいじゃないかと言われると、高利貸しをいわゆる承認されたように聞けますから、ここらはそういうことではないのだと思う。私はやっぱり適当に、政府という限りにおいては、その金利のあり方等についてある程度の標準を示し、あるいはそれが行き過ぎないように、ときに管理すること、これはもう当然ではないかと思う。世界的な国際的なただいまの金利の高水準の形にありながら、日本は比較的にそこまでいっておらないのも、現在のようなたてまえから来ておる、かように思います。したがって、全面的にその御指摘になったことを否定するのではございません。私は、ただいまのように、非常な物価の変動がある、これがいわゆるインフレという形になる、それだからこそたいへんだ、これはなかなか国民としての利益を確保し得ないのだ、かように思っております。佐藤君も国会の演説でそういう点に触れておりますが、私は、こういう状態が長く続くといわゆるインフレだ、現状そのものをインフレだと直ちに判断することは行き過ぎだ、かように思っております。
○堀委員 総理、勘違いしていらっしゃると思いますので、ちょっと補足をしておきますが、私が金利の自由化ということを言っておりますのは、何も高利貸しに高く金を取れという話をしておるわけではありません。それはアメリカ並みに金利を自由化しなさいということであります。アメリカでも、御承知のように、レギュレーションQというようなルールがあって、ある一定の行き過ぎについては天井を押えておるわけですが、そこまではかなり幅の自由がある。大体アメリカでは市中レートが動いたあとで公定歩合が追従するというかっこうでしょう。日本は完全な管理金利ですから、公定歩合を動かさない限りはなかなか市中レートは動かない。貸し出しは自由化されているのですけれども、それすらもなかなか動かないということになっておりまして、現在コールも九%くらい来ていますけれども、これはもうちょっと本来なら高くなるべきものが高くならないで、これもやはりかなり管理されておる。ですから、いまフルに動いておるのは、グレーマーケットの債券市場だけが日本の金融の唯一の自由市場じゃないか、私はこういう感じがするくらいでありますから、ここらは徐々に――それは一ぺんにはいきません。だから今度の長期金利の自由化、弾力化――自由化というと語弊があるでしょうね、弾力化、これが預金金利まで及ぶと思うのですが、佐々木総裁、お帰りがもう近いと思いますので、長期金利のこのたびの改定は当然預金金利に波及すべきだ。私は昨年の十月でございましたか九月ですか、宇佐美日銀総裁にお越しいただきまして、公定歩合をこれだけ上げたのだから、少なくとも〇・二五%くらいはもう当然定期預金金利一年ものを上げてもいいんじゃないかという議論をいたしました。そのとき宇佐美さんは、金利を上げるよりは物価を押えるほうが先ですと、こうおっしゃいました。物価を押えられないことを御承知でそうおっしゃったのだと思いますけれども、今度は預金金利についてはどの程度の波及を頭に置いておられるか、これだけを伺って佐々木総裁にお帰りをいただくようにしたいと思います。
○佐々木参考人 預金金利につきましては、ただいまいろいろ関係者が相談をしておる段階でございまして、それがどういう落ちつき方をしますかにつきましては、まだちょっと見当がつきません。しかし、今度の金利改定が事業債から始まりました長期金利の改定でありますので、おそらく預金の金利につきましても、まず具体的に動きますのは定期預金ではないかと思います。その幅につきましては、まだ関係者が話をしておりますので、私もまだ見当がつかない状態でございます。
○堀委員 佐々木総裁、もう時間でございますから、どうぞ御退席いただいてけっこうでございます。
 総理、ちょっと私、いまの債務者利益の問題に関連して、日本の場合に個人と企業がどのぐらい差をつけられておるかということをここで少し申し上げておきたいのです。
 実は、昭和三十五年に私が銀行にかりに十万円預金をしたといたしましょう。毎年物価が上がりまして、昨年の九月ではこの十万円は五万八千百六十一円に貨幣価値としては下落をしておるわけです。逆に、物の面で考えてみますと、当時、昭和三十五年に十万円で買えた品物は昭和四十四年の九月には十六万六千百二十九円出さなければ買えない、こういうふうに貨幣価値は下落しておるわけです。ところが企業の側は、昭和三十五年に私が十万円預金したのを銀行から借りまして土地を買ったとしましょう。工場用の土地を買った。昭和三十五年から今日までの間に、工場用の土地は三・五八倍に実はふえているわけです。そうすると、会社のほうは十万円で買った土地が今日三十五万円になっているわけですね。そうして三十五万円になって、私から十万円借りたのですから、これを返すときは五万八千円の値打ちのものを私に返せばいいわけですね。だから、要するに三十五万円に土地がなって、二十五万円もうけて、貨幣価値が下落して借金が減ったのが四万二千円ほどありますから、合わせて三十万円ほど企業側はもうかったのです。ところが私は、十万円の値打ちのあるものを入れておいたのに五万八千円の貨幣価値しかない十万円を返してもらっている。四万二千円損した。これが企業と個人との間のこの物価上昇の間に起こってくる一つの損と得ですね。これが、いまの私が申し上げた債務者利益だけではなくて、物価上昇が二重にメカニズムとして働いているという問題が一つありますね。
 もう一つは、それでは今度は法人税の問題になるのですけれども、法人税は、御承知のように昭和二十七年には四二%でありました。それがずんずん減税をして、四十年、四十一年、不況対策だといって三%も下げて、今度ようやく一・七五%バックするわけですね。依然として不況対策の税制なんですよ。あと一・二五%積み増ししない限りは、財政も不況対策のときの財政ですよ、予算が。四十一年の予算と同じ。税制も企業側に対しては不況対策の税制をいま使っているわけですね。まあ一・七五%バックしたことは、私も評価しますよ。やらないよりは評価するけれども、もう一・二五%バックしたら、そこでニュートラルになるわけですね。決して警戒型にはならない。ここで中立になる。だから依然としてこれは景気上昇型税制が残っているということ。それから予算規模もそうだ。
 それからもう一つの問題がありますのは、よくクロヨンとかトーゴサンとかいわれております一つの問題の中に、実は交際費問題というのがあるわけです、これはもう御承知だと思いますけれども。交際費課税の問題ですが、昭和四十三年には交際費は七千七百億円使われておるわけです。この七千七百億円使われた交際費のうちで、課税されておるのはわずかに千六百四十億円で、二一%しか課税されていない。あとの八〇%は無税で使われているわけですね。
 内田厚生大臣にちょっとお伺いしますが、あなたは、銀座にバーやキャバレーが何軒あるか御存じでしょうか。あなたの所管です。
○内田国務大臣 確かに環境衛生関係営業でございますから私の省の傘下にあるわけでございますが、私はその方面には全く通じておりませんので、お答えをいたしかねます。
○堀委員 事務当局、答弁できますか、厚生省。――手があがりませんから私が申し上げましょう。中央保健所管内というのに銀座のバーは入っているのですが、この間調べてみたら、一千八百四十八軒あります。こんなにバーがあるところは――おそらくこれは諸外国の一国分が全部銀座だけにあるくらいあるわけですね。これが成り立つのは一体何か。いま私が申し上げました七千七百億円のこの交際費によって実はこれが維持できておる。そうして、これは中小法人であろうとも、四百万円と売り上げの千分の二・五ですからね、小さいところでも一年に四百万円は使いほうだいなんですね。よろしゅうございますか。個人だったら、そういうものは一切認めない。法人なら四百万円認める。これがいまの日本の個人と法人との間の、トーゴサンが起きてくる最大の原因になっているわけです。どれ一つとってみても――日本の経済が、企業が資本主義社会で二番目になった、国民生活二十一番目というのはよくいわれることですけれども、国民生活二十一番目というのは人口で割っただけのことだから、私は何もそのことはたいして言いませんが、いかに個人と企業の間に格差があるか。貯金をしても損をする。片一方は土地を買ってもうけるけれども、こっちは土地を買わずに、家に入ろうにも入れないものがたくさんいる。交際費も四百万円までは使いほうだいで使える。こんなべらぼうな国が、一体世界にあるでしょうか。私は総理大臣に、ちょっとここのところを最初に伺いたい。ほかに、このくらいいい国があるだろうか。企業天国。
○佐藤内閣総理大臣 いろいろございますからね、これはよくお話をしてみたい。
 堀君の直接関係されるお仕事、お医者さんの場合をひとつ考えてみても、個人経営の場合と会社でつとめておる、いわゆる法人でつとめておる病院のお医者さんとの間にも、ずいぶん差がございます。これは、いまおっしゃるのと逆なような方向でございます。いわゆる経費として七二%控除するのと、源泉課税でどんどん月給から差し引かれるのと。だから、いま税制そのものがずいぶん複雑なもので、わかりにくい。そういうところから、国民の間にもずいぶん批判が出ておる、かように思います。税制調査会が取り組んでおるのも、そういう点にやはり適正に、これを国民の信頼の置けるようなものにしたい、こういうことじゃないだろうかと思います。私はいま一つの例をとって、これは不適当ではないと思いますが、ただいまお話しになったと逆な例もとったわけでございます。
○堀委員 いまの医者の中の開業医とサラリーマンの医者の問題は、ちょっと私の問題提起しておることとは別の次元の話なんですね。私の言っているのは個人と法人という経済単位の上の話をしておるわけなんですよ。よろしゅうございますか。だからそこをそういうふうにそらしたおつもりでも、これは私は経済専門ですから、医者のほうも専門だから、それはちょっと無理なんですよ。
 そこで私は、ここから税の話に入りましたから少し税金のことを言いますが、総理にひとつぜひお考えいただきたいのは、アメリカはケネディ大統領が就任をいたしまして、一九六二年にやはりアメリカの交際費課税を調べておりまして、やはりアメリカの交際費課税は不当なものが多い。そこで予算教書、租税教書を議会に送って、これはやはり租税の公平の原則と国民の納税意欲を高めるためにもっときびしい規制をすべきだという提案をいたしまして、一九六五年に現在の交際費課税のようにきわめてきびしいものになっておるわけでございます。それから、イギリスも一九六五年の四月から、外国の商社代理店に対する交際費は無税にするけれども、国内のものは一切認めないという、たいへんきびしい交際費課税をとっております。主税局長、間違いありませんね。ちょっとあなた、これを確認してください。
○細見政府委員 外国の制度は、おっしゃるようにかなりきびしくなっておりますが、ただ、いまお話を聞いておりまして、一つだけこれはと思いましたことは、交際費を使いますのも実は個人でございまして、事業計算上の問題になりますと、個人経営と法人経営とも、やはり同じような交際費というものが経費になるという要素はあるわけでございます。そこはお間違いないとは思いますが……。
○堀委員 もちろんそうです。会社が使うといっても、会社というのは抽象的なもので会社が歩いていくわけにいかないですよ。会社というのは人間が代表しているのですからね。あなたがおっしゃるまでもなく、会社につとめておる人間が会社の名によって交際費をただで使っているということなんで、それはもう私税金も本職でございますから間違いございません。
 そこで総理にお願いをしたいのは、実はいまこのように税制をいろいろさわりまして、否認をするように努力をしておりますけれども、否認率は一八%、一九%、二一%と、遅々として実は否認できる額というのは伸びないわけです。片や交際費のほうは年間九百億円から一千億円の幅で伸びていきますから、私はおそらく四十五年度の交際費は一兆円に近くなるのじゃないかと思うのです。何とか交際費課税については、ケネディの故知にならってひとつ納税者意欲と、それから企業側としても合理的な支出をすべきなんですよ。ともかく銀座に一千八百四十八軒のバーを養うために企業が金を使うようになっていると私は思わないのです、やはり。国民のより福祉のために使われるべきものだと思いますから、交際費課税については一ぺんもとから洗い直して、ひとつアメリカやイギリスの例を参考にして検討を加えていただきたいと思うのです。これをひとつぜひお約束をいただきたいのですが、総理、どうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま検討しろとおっしゃること、これは私もいろいろ問題があると思いますので、税制調査会をして十分調査し、しかる上で答申を得たいと、かように思います。
○堀委員 私の考え方には御賛成でございますね。
○佐藤内閣総理大臣 私はあなたのお考えどおり考えております。
○堀委員 そこで、税に入りましたから、ちょっと昨年の懸案になっておる問題をここで一言触れておきたいと思うのですが、実は昨年の予算委員会で、私は妻の座を守る税の問題というのを取り上げました。総理も実は御賛成いただいたわけです。
    〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
その後私は官房長官と他の用件でお目にかかったときに、官房長官もあれはいいことだと言って、御賛成をいただいたと思っておるわけですね。ところが、実はことしの税制には全然これは何にも出てこなかったわけです。私非常に残念なんです。そこで重ねて総理に、あのときのお気持ちと今日変わりはないんだと思うのです。私はやはり妻が正当にそういう税制の上で評価をされて、ともかく位置を高められるということはきわめて重要だと思いますので、まず原則的にその部分をもう一回確認をしておきたいのです。
○佐藤内閣総理大臣 私、全然同感でございます。そうして、そればかりではない、そうまであのきつい顔をしている佐藤が理解しているかといって、ファンからもいろいろ激励をいただいたような次第でございます。
○堀委員 そこで、去年はちょっと話をやや抽象的にしておりましたので、今度は具体的な問題提起をしたいのです。実は昨年は相続税と贈与税に触れたわけですが、贈与税の中で、現在昭和四十二年の改正で、婚姻二十五年以上にわたる妻に対しては、要するに二百万円の居住用の資産を生前に贈与したときは、それは無税にしましょうという法律があるわけでございます。ところが、婚姻二十五年とは、これは私はちょっと長過ぎると思うのですよ。だからまず私は、少なくともこれは婚姻十五年ぐらいにすべきじゃないか。やはり妻の立場は銀婚式以外はだめだなんというのはいかにも冷たいので、ひとつその期間を十五年にしたいということ。
 それからもう一つは、いま二百万円では、実は家は建たないのです、御承知のように。退職金をもらって、やれやれこれから家を建てよう、しかし自分はだいぶ年をとっておって奥さんのほうが若いから、ひとつ奥さんの名義にしておけば、おれが死んだあとも女房は何とか食えるわい、下宿をやってでも食えるわいということで建てるなら、やはり私はどうしても五百万円はいま要ると思うのです、現実の問題として。そこで、まず一つの提案は、ただ普通にお金で贈与するほうはいまのままでとりあえず置くとしても、いまある法律の二十五年以上二百万円というのを、ひとつ十五年以上の婚姻の継続をした妻に対しては五百万円をひとつ無税で贈与することができる、こうしていただけば、私は全国の奥さん方は将来に対してたいへん明るい希望が持てると思うのですね。第一点。
 第二点は、なぜ私が五百万円無税かといいますと、いま三十五年在職をした方の退職金は、五百万円まで無税なんです。ですから、そこで五百万円税金を取られないできたものを、奥さんの家を建ててもここも税金を取られない、こういう親心があっていいじゃないか。そうなれば相続税のほうでも、妻の相続分の五百万円というのは現在の仕組みの中で別建てで控除をしてやる。五百万円までは妻の分は無税だ。あとは合算になっておりますからちょっと複雑になりますから、そういう処置をぜひひとつ今度はここで確約をしていただきたいのです。去年あれだけ確約していただいておって、それであなた、私も総理大臣が約束をしておられるから、ことしの税制に出てきただろうと思ったら、どこかへ行っちゃって影も形もない、こういうことですから、ことしは、ぜひひとつ、それについてお願いをしたいと思うのです。ちょっと、主税局長に先に事務的に答えさせてから、総理、お答えいただきましょう。
○細見政府委員 十五年という年数につきましては、確かにおっしゃるように二十五年というのもいささか長きに過ぎるという感じもいたしますので、短縮する方向でまいりたいと思います。
 ただ、おっしゃっておりますいま一つの五百万円のほうにつきましては、贈与と相続税との間に複雑なバランスの問題があることは御承知でございますので、相続税の課税をどの辺から求めるかということを含めまして、その金額については検討いたさなければならない。いずれにいたしましても、この問題、だんだん土地、建物等の価格も上がってきておるときでございますから、今後の検討問題であろう、かように考えております。
○堀委員 以上のように、実は贈与税で先に渡しますと、もらわなかった奥さんの税金と実はバランスがとれにくくなる問題が一つあるわけです。これはちょっと技術的ですからもう申し上げませんけれどもね。そこで、私は前段のほうへ比重をかけているわけですよ。婚姻十五年五百万円をひとつ無税にしましよう、それに権衡のとれるように、相続税も先にもらわなかったものが損するじゃいけませんからね。婚姻がまだ十年しかない人は家がもらえなかった、そのために相続税のほうは五百万円引けなかったではバランスがとれませんから、その辺は技術上の問題として考えていただくとしても、これは私は政治的な問題として総理からぜひここでひとつはっきりしたお答えがちょうだいしたいのです。よろしくお願いいたします。
○佐藤(一)国務大臣 いま主税局長から御説明がありましたように、相続税との関係はなかなか複雑な関係がございます。いずれにしましても、しかし、方向としてその御趣旨については十分われわれも了解いたしておるつもりです。ですから、税調にも十分はかりまして検討したい、こう思っております。
○堀委員 税調で議論されるのもけっこうですけれども、やはり予算委員会の中で私どもと総理の間にある程度意見が共通しておることが、そういうところで、もし遮断をされるのなら、国会というものは一体どうなるのでしょうかね。私は国民の前に立って国民を代表して言っておる。総理も政府を代表しておられるのなら、税調にはかるのもいいのですが、ここで私は総理に政治的な答弁をいただきたいのですよ。少なくともそれについては総理大臣としてひとつ責任を持って考える、来年についてはそれは五百万円が多少切れる場合もあるかもしれない、しかし私は必ずしも五百万円きっちりやれと言うのじゃないけれども、五百万円くらいはやりなさいと言っているのだから、それについては総理も異存はないと思うので、これはひとつここのところは税調問題なんて逃げないで、政治的にひとつはっきりしてもらいたい。これは奥さんのことを考えて答弁してください。
○佐藤内閣総理大臣 政治的に発言しろというお話ですが、政治的というよりも誠意を持ってお答えするのが筋だと思います。ただいま言われました企画庁長官、大蔵大臣臨時代理の話、これは手続を申しております。いずれこれはきめるにいたしましてもそれだけの手続を踏まなければなりません。しかしここで努力するということは、はっきりあなたと私だけの問題でなしに、国民の皆さまの前で私が申し上げますから、ただいまの問題は税調におきましてもこの私の発言をむげに退けるようなことはないだろうと思います。
○堀委員 どうもこれは二年もかからなければできないというのが、私はやはりちょっと問題があると思うのですよ。だれもがいいと言い、まあきょうはおいでにならぬけれども、婦人の代議士が前におられて、この方もどこかで一緒になったときに、先生、私はあんなにうれしいことはありませんでしたと言って、自民党の婦人代議士がおっしゃったことがあるのですから、どうぞよろしく。その点今度は間違いのないようにお願いいたします。
 税金問題の中でその次にちょっと触れておきたいのは、これはさっき私にちょっと医者の話を総理からなさいましたから、医者に関係のあることをついでにちょっとここで言っておきます。実はいま御承知のように看護婦が足りないというのが日本の医療問題の中のきわめて重要な問題になっておるわけであります。ところが、税制上非常にまずいことが一つありますのは、看護婦を養成しておりますのは公的な機関もございますけれども、これだけでは足りませんから、全国の医師会が県の認可を受けて成規の手続に基づいて准看護学院というものを設立をいたしまして、そうしてそこの診療所につとめている人たちを昼間その学校に通わせて、二年間教育をして、そうして准看護婦という資格を、免許を県から受けておる、こういう仕組みがあるのです。ところが残念ながら、これは厚生省所管であるために勤労学生控除が得られないという問題がいま起きておるわけです。洋裁学校ならこれはともかく諸学校ということで、文部大臣が証明を出せば洋裁学校の人は勤労学生控除がある。しかし、看護婦になろうとして一生懸命やっている者は勤労学生控除がない。こういうまことに矛盾したことがあるのです。総理大臣もちょっとそれはおかしいとお思いになるでしょう、事案そのものについては。そこのところの考え方としては――ちょっと佐藤さん、できるだけ前大蔵大臣である佐藤さんとやりたいので、無理なときはあなたがお立ちになっていいですが、いまのようなことは常識的判断だから、ちょっと控えていただいて……。
○佐藤内閣総理大臣 お説のとおり、ちょっと私もおかしいように思います。
○堀委員 そこでこの間、実はこれは大蔵委員会でやったんですけれども、よく調べてみると、文部省と厚生省との間の連絡がどうもよくついてないらしい。ですから、これはひとつ文部大臣と厚生大臣にお一人ずつちょっとお答えをいただきたいのですが、すみやかに文部省と厚生省で調整をしていただいて、少なくとも来年度からは勤労学生控除が行なえるように責任を持ってやっていただきたいと思うのです。ひとつ厚生大臣、文部大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○内田国務大臣 その件は堀さんが御指摘のとおりであり、また総理大臣がお答えになったとおりであると私も思います。
 ただやり方につきまして、文部省と厚生省だけの話し合いでできる場合もあるし、さらに堀さんのおっしゃることをもっと手ぎわよくやるために、大蔵省にも入ってもらって、それがたとえば学校法人とか学校法人が経営する准看護婦養成施設でなくても、新しく厚生大臣、文部大臣が告示をする准看護婦養成施設については、働きながらとにかく看護婦の勉強をするのであるから、働きながら花嫁学校に行っておるのと同じ扱いをするような道もあると思いますので、三省間事務当局、できなければ私どもも入りまして、手ぎわよい解決の方向にぜひ向かいたいと思います。
○坂田国務大臣 御承知のとおりだと思いますけれども、いま学校、それから学校法人、それから各種学校の中で、学校法人に準ずる各種学校、それに政令でしぼってございますけれども、その条件が満たされるならば、勤労控除はできるということになっております。したがいまして、お尋ねの准看護学院が都道府県に申請をされて、そうして各種学校の中で政令の条件を満たす等のことがございますならば、いま先生がおっしゃったことが実現する。そのことはいま一番大きい問題でございまする看護婦が非常に足りない、これを何とかふやさなければならぬという、この国家的要請を満たすだろうと私は確信いたしておりますし、ただいま厚生大臣からお述べになりましたように、文部省、厚生省、そして大蔵省の心ある御協力を賜わりまして、実現することを望んでおる次第でございます。
○堀委員 それじゃ佐藤大蔵大臣代理、大蔵省も一言言ってください。
○佐藤(一)国務大臣 いま各大臣のお話がありましたとおり、何とか解決をするようにしたいと思っております。
○堀委員 その次に、いまのも若い人に関係があるのですが、こういう問題が一つあるわけです。
 いま日本の法律では成年と未成年というふうに問題が分かれておりまして、成年者である者は選挙権もありますし、あらゆる意味で実は法的な権利が認められております。未成年者というのは法的にまだ一人前にされていない。ところが税金だけが実は未成年者もみな一人前に認めている。ところが、いま二十歳以上、成年になっていても、各大学に行っておる人たちは国が補助しているわけですよ。国立大学に行っておる者も、今度は民間の大学も、何らかのかっこうでこの人たちを国は補助をする。そうして税金は払わない。そうして税金を払わないだけではなくて、その世帯主の扶養家族になる。こういう実情が税制上ある。実は非常なメリットが片方に与えられておる。富める者、要するに裕福な者は大学に行けるということで、そのほうには非常にメリットがある。大学へ行きたくても行けないで中学校や高等学校から働きに出ておる人に対しては情け容赦もなく税金を課しておるというのが、いまの日本の税制なんです。住民税についてみますと、未成年者は実は免除されておるのです。成年者だけが住民税は払うということに地方税制ではなっておるわけです。これは私はやはり一つ若い人の立場を考え、特に勤労青少年のことを考えると、国として何らかの配慮があってしかるべきだと思うのです。やり方はきょう私は触れません。少なくとも未成年者と成年者を完全に同じに、そうしてその同じ若い人たちの中で大学へ行く者は国の補助を受け、働いておる者からは容赦なく税金を取るというこの姿は改められるべきではないかと、こう思うのですが、青少年対策が重要な段階であるおりから、総理大臣の御見解を承りたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私が不十分な答えだったら臨時代理から補足させますが、私、ただいま指摘された、取り上げられた例が、成年者と未成年者と区別するのがあまり簡単過ぎるのじゃないかと実は思っております。未成年者がいわゆる勤労少年ばかりでも実はございません。なかなか裕福な未成年者もあると思います。(堀委員「そんな者は入ってない。収入が入らないから税金は払わない」と呼ぶ)いや、だからそういうものは、その税金はやはり取る。そうしてまたそういうものは、いまのその勤労青年の場合に、いままで特例を設けていたことが、これが適当かどうか、これは一つの議論があるから、今回はその控除金額と申しますか、それもふやしたようでございますから、これはまあだんだんいま堀君の言われるような方向に整備されつつあると思います。また、成年者だが学生、これは特別な補助を受けているじゃないか、これとの間の均衡が非常にとれないと、こういうような言い方をされますが、私はやはり学生のうちでも所得のある者について、これが特別な金額は控除されるが、それより以上のものはやはり課税されてしかるべきだと、かように思います。私の理解はただいまのとおりでありますが、さらに佐藤君が補足するかと思いますので、お聞き取りいただきたい。
○佐藤(一)国務大臣 これはなるほど堀さんのおっしゃる点も一理あるような感じでありますが、所得があるところに課税ありというやはり原則はあると思うのです。そこで、未成年者といえどもある程度の所得がある、これを免除するというわけにはまいらないと思います。これは、御存じのように免税点を、政府も努力いたしましてだんだんに改善をはかっておるわけでございます。今後といえども基礎控除をはじめできるだけ免税点等を上げまして、おそらく相当部分のものはもう現在免税点にかかっておるわけでありますから、比較的少人数の者であろうと思いますが、そうした者についても今後そうした方向で解決をしていく、これがやはりオーソドックスじゃないかと、こう思うのであります。
○堀委員 総理、ちょっと御認識がはっきりしなかったようですけれども、私が言いましたのは、要するに未成年、成年の問題が一つありますけれども、その未成年、成年の中で、貧しい者が実は勤労青年になっているわけですね。裕福な者は学校に行っているわけですよ。裕福な者は学校に行って、それは親の課税を減らすことになるわけですね。国はそれだけ、だから減税しているわけなんですよ、実際は。成年者なら本来なら税金を取っていいんですよ。いいんだけれども、学校に行ってると、それは国から補助をもらいながら学校に行ってなおかつ扶養控除として親の収入からそれだけ引けてるんだ。そういうものがこっちのサイドにあるときに、家が貧しいから働きに出て、あなたの言うように、なるほど所得はある。この所得の質をあなたは考えなければいけないんじゃないですか、実際は。本来なら、裕福なら学校に行きたいのを、行かないで働いておる人間の所得と、われわれの所得は同じなんですか。あなた、どう思いますか、総理にちょっと伺いたいですね。その所得の質を考えて、これについて何らかの配慮をするというのは、これは私は政治家として当然の配慮じゃないかと思うのですよ。そんな形式的に、所得があったら税金を取るなんということは、それは国民の心に触れることじゃないと思うのですがね。総理、ひとつ国民の心に触れるような答弁をしてください。
○佐藤内閣総理大臣 勤労青年の課税の最低限、そういうものを引き上げた、いま言われておる問題まさしくその問題ではないかと思います。また、いわゆる富裕な子供、それは親がいるのだと、こういうように言われました。そこらに親の責任ですべてが処理されている――むしろ親のほうの課税を扶養家族とかいうことで減らしているのじゃないかと、こういうことですが、まあ親のいる子供ばかりでもない、そういう青年もあるわけですから、やはり単独の一つの課税対象になり得るような資格のある者、それはやはり個人として扱われるか、あるいは家族としての一員か、そういうところに問題があるだろうと思いますので、そこらは税務署あるいは主税局ではよく分けて、区分して取り扱っておると思います。ただいま言われるように、私は勤労青年の課税最低限が適当かどうかというそういう御議論については、さらにわれわれも考えていくべきものがあれば考えなければならぬ、かように思っております。
○堀委員 実は今度の税制改正で給与所得控除が改正をされました。しかし最低のところは据え置かれているわけですよ。要するに率の分だけが改善をされましたから、高額所得者にわたって給与所得控除はたいへん大きくなりました。しかし、いまの人たちは定額控除しかないんです。その定額控除は十万円にいま据え置かれているわけですね。そうすれば、やり方の一つとしては、それは定額控除をふやす、五万円なら五万円ふやすということも一つの方法でしょう。あるいは未成年者で現実に働いておる勤労青少年については何らかの特別控除を考えてやるということも、私はあっていいんじゃないかと思うんですね。方法、手段はいろいろあると思います。ただ、少なくともわれわれ政治家として、この今日の段階で、働いておる勤労青少年の課税問題について、所得があるから課税をしますなどというような冷たいことを言わないで、その質を考えて、課税について何らかの配慮をしてもらいたい、こういう問題提起をしているんですから、それにまともにひとつ総理大臣答えてください。
○佐藤(一)国務大臣 現在の給与控除、堀さんも御存じのように、定額と定率の関係で、最近ずいぶん大蔵省としては上げてきたつもりでございます、数次にわたりまして。(堀委員「定額は動いてない」と呼ぶ)しかし定率のほうでだいぶ引き上げてきておる。(堀委員「定率は作用しない、いまのところは」と呼ぶ)まあしかし、一応五十万円あるいは八十万円のところで三〇%、このくらいのところは軽減をするようになってきたわけでございますから、そこいらのところは事情をよく御了解願っていると思います。
○細見政府委員 若干補足させていただきたいと思います。
 課税最低限を考えます場合に、確かに独身者の課税最低限、それから扶養家族をかかえた人の課税最低限、いずれの生活が苦しいかということにつきましては、いろいろ議論もあるところでありまして、それらの点につきましては総合的に、やはり所得の小さい人には税がかかっていかないように、また、おっしゃいましたような勤労青少年で中学を出て働いた程度の方でありますと、現在は中学出でありますとまだかかりませんし、それから高等学校を出た程度の方でありますと一、二年たつと課税になるというのが実情だと思います。そこで免税点の問題にからみまして、給与所得控除の定額控除の分を引き上げたらどうかという御議論かと思いますが、現在でも収入五十万円の方でありますと大体三六%程度がいわば給与所得控除になるわけでありますし、それから給与所得者であれば三十数万円までは免税点として失格するというような状態で、非常に限られた人たちの問題に現在なっておりますが、これはやはり所得のあるところすべての所得を公平に課税するというたてまえとして、免税点を基礎控除あるいは給与所得控除全体の引き上げの関連で引き上げてまいって、総合的に救済するというのが税制としては本則じゃないか、かように考えております。
○堀委員 私は、事務当局の答弁なら大蔵委員会で求めればけっこうなんです、大蔵委員ですから。なぜ、予算委員会の総括で総理大臣に伺っておるかというところを、あなたも、もうちょっと理解をしていただかなければ困ると思うのです。私は、いまこういうことを聞いてくれたとしたら、全国の勤労青少年というのは、やはりいまの自民党政府というのは冷たいんだなと思うだろうと思うのですよ。だから、私はいま具体的にどうしろと言っているのじゃないんだから、未成年の勤労青少年に少なくとも何らかの配慮をしなさいということに対して、総理が考えてみるということ、一言くらい言えないんですか。事務当局の答弁なら、私は大蔵委員会でけっこうなんですから。
○佐藤内閣総理大臣 そこまで考えて、わが自民党にも発言の機会を与えていただいたことに対して敬意を表します。
 私は、いまの勤労未成年、ことに向学心に燃える諸君が定時制の学校に通学するとか、こういうような場合の労働条件等も十分考えなければならぬ。また、そういう意味からも特別な学費が要るでしょうから、そういうような点も考慮すべきだと実は考えておる一人でございます。私も、別に冷たい感じで申し上げておるわけじゃありません。しかし、当面するところの問題は、取り扱っている者の説明が一番つぼにはまった御返事ができるだろうと思って、実は主税局長に答弁させたのであります。しかし、私どもも未成年の勤労青少年、特にこれは注意して、それらがすくすくと成長するように、あらゆる点で考えていくべきだ、かように思います。その点は御指摘のとおりであります。
○堀委員 そこで、税問題のもう一つの重要な問題点を、ちょっときょうは、はっきりきちんとしておきたいと思う点が一つあります。実は、今度の税制改正で、夫婦子供三人の家庭では百三万円までが無税になる、こういう税制改正が行なわれたわけです。ところが、総理大臣、実は、日本の現状はそうなっていないんです。ちょっとこれを、私、いまの日本の統計で申し上げますと、総理府が出しております国勢調査報告によりますと、昭和三十年には世帯数が千五百五十一万八千世帯で、平均世帯員は五・一でありました。昭和三十五年は、世帯数が千七百六十九万三千になりまして、平均世帯員が四・六になりました。昭和四十年には、世帯数が二千三百八、万五千世帯、平均世帯員が四・〇になりました。そうして、最近の食糧庁の移動人口調査によりますと、昭和四十三年に平均世帯人員は三・八にすでになっているわけです。そうして今度は、厚生省の人口問題研究所が四十五年の推計をいたしておりますが、この推計によりますと、三・七八ないし三・七一、こうなっているわけです。現在の日本の家族世帯構成は、どこから見ても、すでに四以上になっていないんです。そのときに、実在しない五人世帯で課税最低限が動いていくというのは、これは私は、いますでに問題があると思うのです。当然、この際、四人家族で幾らだというのが課税の標準世帯にならなければ、国民の実態から乖離したものを出して、幾ら百三万円になりましたと言っても、該当する者がいなければ、これは政治的には何ら意味がありません。それは統計的にはあるいは意味があるかもしれないけれども、政治的には意味がない。どうかひとつこの際、来年度からは、この税制の標準世帯というのは――いま私は政府の統計を三つあげました。総理府、食糧庁、厚生省、いずれも三・七なり八なりにすでにきておる実情から考えて、夫婦子二人の四人を標準世帯として、その課税額をもって税制の問題は明らかにする、そういう方針をひとつ確立をしていただきたいと思うのですが、総理大臣のこれに対する御見解を承りたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 これは、いま読まれたように沿革的な問題でございます。私どもも、五人標準家庭というようなことばを使っておりません。したがって、五人が標準家庭であったときのものを基礎にいたしまして、それから税制がどういうように変化してきたか、ただ沿革的に見ればこうなっているということで、ただいまも五人家庭ではと、こういうことを言っておると思います。しかし、さような言い方でなしに、ただいま御指摘になりますように標準家庭、そういう方向にやはりやることが望ましいんじゃないだろうか、かように思います。
 ただいま税制調査会の長期税制改革、その案は、ただいま言うように夫婦子供三人、まあ標準家庭ではない、その五人のところでいろいろ計画をした、それが実現されたばかりでございます。そうして、今後これでもう終わりだというものでないことは、いままでの説明でもたびたび申したとおりでございますから、さらにこういう問題について、実情に合うような――現実に厚生省のほうでは四人家族でやっておる。それらのことも考えながら、新しく減税計画をする場合には、ただいま御指摘になったような方向ですべきだろうと思います。しかし、これは、私が申すよりも大蔵当局がどういうふうに扱いますか、これはもう沿革的なものであるということだけはっきり申し上げて、標準家庭と言っておらないことだけお許しを得て、とにかくそういう五人家族もあるんだ、しかしそれが平均ではないんだ。だから、それはあるだろうが、少ないだろう、こういう御指摘はまさしくそのとおりだと思います。しかし、そういう家族が全然ないわけじゃございませんから、その辺のことも御了承いただきまして、私どももこういうことはこれから考えていきたい、かように思います。
○堀委員 まあ四人世帯も出ておりますから、こだわるわけではありませんけれども、実際ないものを、うんと減税しているぞという誇大広告ですよ。上げ底の減税になっちゃいますからね。だから、この際、政府は上げ底や誇大広告はやめて、やはり適正な状態のものさしをつくるということをひとつお考えいただきたいと思います。
 そこで、今度は、補正予算のあれでありますから、補正予算の中身の問題に少し触れたいのですが、その前に、これは事務的なことですから、少し主計局長にお伺いしたいのですが、予備費で、稲作対策事業費といいましたかね、二百二十五億円実は取りくずしていますね。一体これはどういう性格の金で、どういうところへ国としては配賦をしたのか、ちょっとお答えをいただきたいのです。
○鳩山政府委員 ただいまお尋ねの稲作特別対策事業費の交付のしかたにつきまして御説明申し上げます。
 これは、交付の金額は、三年間の平均の供出数量につきまして、一キロ当たり二円四十銭という金額、これを市町村から県別に集計をいたしまして、それを掛けました金額を国は県を通じまして市町村に補助するということで、受け取っておる交付主体は市町村でございます。市町村はそれを特定の条件、たとえば肥料とか農薬、あるいは米の生産に使う資材等の購入に充てたものに対して、その金額の範囲内で個々の農業者に対して交付することもできるという形になっておるわけであります。
○堀委員 しかし、法律も何もないわけですから、市町村に交付したものが個人に行くというのはどういうことでしょうかね。何か法律に書いてあって、法律で、これは市町村に交付をするけれども、個人に対して肥料その他のあれで交付することができるというなら、私は話はわかりますよ。市町村に交付をしたものがいつの間にやら、調べてみたら全部個人にいっておったというのは、法律もないのにそれをやるというのは、これはちょっとおかしいのじゃないかと私は思うのですが、財政法上、どうですか、おかしくないですか。これは、会計検査院を呼んで一ぺんやらなければいかぬ問題だが、時間がないから、決算委員会でやりますけれども……。
○鳩山政府委員 御承知のように、この補助金は、非常に異例なものであることは確かだと思います。ただ、これが財政法上違法であるかと申しますと、何ら財政法に触れるところはないわけで、ただ、従来からの財政の運営のしかたとして非常に異例であるということは事実と思います。というのは、これは補助金といたしましてもきわめて零細である。従来こういった性格の補助金は、既存のものも極力整理をしてきたような状態でありますから、財政の処理の従来の慣例からすればきわめて異例であると存じます。しかし、財政法上不可能ということではない、こう考えておる次第でございます。
○堀委員 不可能であるとかないとかの前に、適当かどうかという問題があるでしょうね。当、不当の問題があると思うのですよ。佐藤大蔵大臣代理、いま主計局長が異例のことだと言うけれども、違法ではないかもしれないけれども、適当でないように思うのですよ。地方自治体に補助をした金が、地方自治体には一銭も残らないで、全部個人に行っちゃっているなんということは、ちょっとおかしい。おかしいのはそれだけではないのです。予備費というのは、本来予見せられざる目的に対する費用でありますけれども、政策的なものを予備費で出すのはおかしいのじゃないかと思うのですよ。政策的なこういう財源は、補正予算で出すのが当然じゃないでしょうかね。国会の審議を重んじるということなら、当然、いまのような異例なものを、財政上処理するときに、それを予備費で国会の承認もなくすぽっとやるなんというのは、私は、財政法のたてまえからいったら問題がある。
    〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
これは補正予算で出すべきで、問題の処置のしかたとして、私は、ちょっと財政法上適当でない、違法ではないかもしれませんけれども、適当でないと思うのですが、大蔵大臣代理、どうですか。
○佐藤(一)国務大臣 二つ問題がございますが、第一点の問題は、補助金の当初からの目的がどういうふうになっておったかということによって判断する以外にないと思います。実は私も、この補助金を詳しく調べておりませんから、いまはっきり申し上げかねますが、その交付のときの条件あるいは目的によって判断したい。
 それから、後段の、政策的な目的の経費は予備費から出せないのじゃないかというおことばでございましたが、実は、堀さんもたぶん御存じと思いますが、昔は、予備金が二つの種類に分かれておりまして、一つは、いわゆる義務的経費に対応するところの予備費、それからもう一つは、やはり緊急な事態の場合においては政策的な必要という立場においても出し得る予備金というのがございました。現在はそれを二つに分けておらないのでございますが、そういう意味において、私は、昔からの経過から申しますと、政府が緊急性を感じた場合においては政策的なものも出し得るのだ、こういうふうに解釈しております。
○堀委員 まあ出し得るけれども、本来あるべき姿はやはり補正予算じゃないですか。そのほうが筋でしょうね。あなたも、主計局長をやっておられたから、当然、一番専門家なんだけれども、常識的な筋としては、補正予算でやる、補正予算を組まないというのならしかたがないけれども、補正予算を組むという見通しもあるならば、当然そういうことであるほうが望ましい、こういうことじゃないですか。
○佐藤(一)国務大臣 いま御指摘になりましたように、そのときに補正をする便宜があるかどうかによって、その扱いがそのときによって違うと思います。
○堀委員 時間がありませんから、あと二点だけ問題を処理しておきたいと思います。
 実は、健保国会がありまして、健康保険法の抜本改正というのは、少なくとも来年の八月までに行なわなければならぬと思いますね。いま暫定法――ああ、そうか、あれは暫定でなくなっちゃったわけだ。
 この間、新聞を見ると、何か来年の八月までには抜本改正をやるというような発言がありましたね。これは厚生大臣がなすったのですか。
 そこで、きょうは、これはまだ党の皆さんと十分協議ができておりませんので、私の個人的な私案でありますけれども、これこそ私は診療報酬の抜本的改正だという診療報酬に対する新しい提案をしたいと思うのです。
 その新しい提案をするにあたって、ちょっと客観的な条件を少し申し上げておきたいのでありますけれども、いまの医療の問題の中にはたくさんの矛盾があります。特に健康保険に矛盾がありますのは、いまは出来高払いということになっておりますから、患者が長く来てくれますと医師のほうは収入がふえるわけです。患者が早くなおってしまうと医師のほうの収入はそれでおしまいになる、こういうことになっているわけですね。その限りでは、要するに、へたな――へたなと言うと悪いけれども、能力のない医師のほうが収入がふえて、能力のある医師は、早くなおしちゃうから、収入がどっちかというと少なくなるという、まことにこれはさか立ちしているのですね。同時に、患者と医師の側から見ましても、早くなおることは患者にとって非常にしあわせですけれども、医師は、あんまり早くなおっちゃうと、経済的にはマイナスになる、こういう問題がありますね。ここでも実は食い違っているわけです。
 もう一つは、技術料が確立をされておりませんから、そこで、注射だとかあるいは薬を使うことによって、その中に含まれておる技術料を得ていきたいという方向で、実は薬代、薬価が非常にふくらんできておる。これはそのままお医者さんのネットのインカムになればいいのですけれども、そうでなくて、実はいま、お医者さんたちは、製薬会社の第一線のセールスマンをやっていることになっておるという、非常に矛盾があるわけですね。これを解決しなければ、私は、日本の健康保険診療報酬の抜本改正にならない、こう思っておるのです。
 そこで、昭和二十七、八年ごろ、私は、医師会におりましたときから、いろいろと資料を集めて、私の持論なんでありますけれども、新しい問題をここで提起をしたいのですが、実はいま全国の患者が、内科の外来で――診療所、病院に通っていく人の場合です。入院は別建てです。外来についてだけでありますけれども、この外来について、内科の人が全国では、政府管掌健康保険の資料によりますと、昭和四十二年四月の調査では、健康保険の――これは内科ではありませんね、全体でありますが、一カ月に本人が二百五十五点、二千五百五十円実は平均して支払ったことになっているわけです。
 そこで、私は、患者が一人来たら――各科別にこれは点が違いますけれども、内科をかりに三百点とすれば、一人患者が来たら三百点分を全国平均でお払いをします、十人来たら三千点、百人来たら三万点お払いをしますということで、医師と健康保険の間に取りきめができれば、患者がその月の間に内科のほうで百人来れば三万点、三十万円はお金を受け取れるわけです。そうすると、その三十万円の中で最も適切な治療をすればいい。そうすると、最も能率よく患者を治療して、早くなおすと、経費が最小になるわけです。へたにやれば、経費はどんどんふえるわけですね。そこで医師のほうは、患者をいかにして早くなおして経費を最小にするか。そのことが自分の収入を最大にすることですから、できるだけ勉強をして、いろいろな診断方法を使って、早くなおすために努力する。むだな薬剤を使わないで、できるだけ合理的な薬剤を使って早くなおそうというほうにインセンティブが働くということになってくるわけですね。
 そこで、この問題の中で問題が解決をされるのは、いま私ども医師は、健康保険の請求書を書くことに全国の医師はたいへん悩んでおるわけです。これが請求書を書かなくて済むようになるわけです。患者が何人来たかということだけが証明できれば、それだけで自動的に支払いを受けられる。こうなりますから、概算払いなんですけれども、きわめてその点は問題が簡単になって、請求書を書かなくて済むということです。
 その次に、いま、請求書を書けば、減点をするとか、この治療にこの薬はおかしいとか、支払い基金というところでいろいろ文句を言いますが、これもなくなります。これはもう受け取っているわけですから、そのワクの内における医療行為については完全に医師に自主性がありますから、一番いい方法で判断してやればよろしい。
 いま、薬価基準が下がるというと、お医者さんは、その中に入っておる技術料が減るものだから、たいへん問題が起きます。今度は、薬が安くなることは、ワクの中で薬代が少なくなることですから、薬価基準の改定なんというのは必要なくなって、薬価が下がれば下がるほどお医者さんは歓迎をする。いま薬価が下がることはお医者さんにとってはマイナスですけれども、薬価が下がること、これは合理的なんです、生産性が上がるわけですから、それはよろしい、こういうことできわめて医療の自主性が確立をされ、請求の煩瑣な点がなくなり、そして実は経済的にも安定をする。ただそれだけではないわけです。御承知のように総理も、これから当分の間は相当の物価上昇はある程度やむを得ない、こういうような御答弁をなさったように聞いておるわけです。これはいま、二%にしろ三%にしろと言ってもなかなかならないでしょう。五%内外の物価上昇というのはかなり続く。そうなれば、お医者さんのほうにすれば、二年に一ぺんぐらい診療報酬の引き上げがあっても、なかなかこれは解決できない、人件費はどんどん上がりますから。
 そこでいまの私の提案は、その三百点の中の、物と人件費に分けて、人件費部分については公務員賃金に自動的に毎年スライドさせてあげましょう、物はほうっておくわけですけれども。
    〔委員長退席、藤枝委員長代理着席〕
こういう形になれば、お医者さんのほうはこれまでのような診療拒否だとかいろいろなことをしなくても、これは診療報酬が公務員ベースに自動的にリンクをしておれば、物価上昇に十分耐えられて診療行為が行なわれる。こういうことで、一つの点数定額払い方式というのを、私と岡山県の医師会長をしておられた加賀先生が昭和二十七、八年ごろに考えたのですが、なかなか実は具体的に実施の段階にきていないのです。しかしやはり医療というものが経済的な合理性の上に成り立っていないと、いまのような無理ないろいろな政策をしなければならぬ。そのことが厚生省とお医者さんたちの間にしばしば問題を起こすことになるので、やはりここは経済合理性が一本中に立って、医師の利益と患者の利益が同じ側でマッチをするような新しい制度というものを検討する、このことが抜本改正の重要な問題になるのではないか、私はこう考えておるわけです。ただし、いまの問題には例外がありまして、一件あたり非常に重い病人が来たときに、平均で扱うと治療上問題が起きるといけないので、たとえば平均点の二倍とか三倍とか以上のものはこれまでどおり出来高で出してよろしい。これは重症患者はしかたがありませんから。それ以外の一般的な患者は平均的処理をしようというのが実は私の提案なんです。
 きょうは、これは提案ですから、皆さんにここでよろしいとか、よろしくないとかいう答弁を受け取るつもりはありません。しかし、この問題についてはひとつ厚生省として真剣に取り組んでもらいたいと思う。私はこの問題を鳩山主計局長にこの前話をいたしました。彼の感触だけを――彼には事前に話をしてやり方を承知しておりますから、鳩山主計局長から私がこの前申し上げたことについての財政当局側としての感触だけをちょっとお答えをいただいて、あと厚生大臣のお答えをちょっといただくようにしたいと思います。
○鳩山政府委員 ただいまの堀先生の抜本的な改革案につきまして承ったのでございます。私どもはこの医療費につきまして、現在の医療費が非常に詳細かつきわめて複雑であって、これを非常に手数をかけてやった結果と、堀先生のおっしゃるようなやり方でやった場合と、結果において、あまり大差がないようなことになって、非常に簡素化されてわかりやすくなるというような点について、非常におもしろいといっては恐縮でございますが、非常に研究に値する考え方だと存じます。ただ、やはり一つの制度をやりますと、いろいろそれについての逆な意味の弊害というものも当然予想されるので、堀先生のいまおっしゃいましたような、きわめて重症な患者が来た場合は例外であるとかいうようなことにどうしてもせざるを得なくなるだろう、そうすると、それがまただんだん重症というのがどの程度かとかいうことになって、だんだんまたこまかくなっていくおそれもあるのではないか。
 それからもう一つは公務員ベースというお話でございますけれども、最近の医療費、患者の受診率というのが非常に上がってきておりますので、公務員ベースでどんどん上がる、そうすると診療件数の増加というものが、それ以上に所得増加の原因になるのではないかというようなこまかい点について、いろいろ問題があろうかと思いますが、検討に値する課題であると存じております。
○堀委員 しかし、これは相手のあることでありますから、医師会の方と十分御相談をいただいて、でき得れば、私はこれがすみやかに制度になることを望むわけです。
 私は、この前の選挙の前に、医師会の皆さんといろいろ各地で会ったわけですが、この問題を提起したら、医師会員の私の選挙区におられる方は、あげて、ぜひすみやかにそうしてもらいたい。そのことによって医療の自主性が回復をされ、いまの診療報酬請求の詰まらぬ手間が省けて、そうして物価にある程度スライドできるということになれば、きわめて適切なんだから、ぜひそれはひとつ君、推進をしてくれというふうに地元の医師会の皆さんは、たいへんこれを要望しておりますので、ひとつ厚生大臣はこれを慎重に検討していただいて、医師会とも折衝されて――私はこれが非常に大きな抜本改正の柱になる、こういう確信を持っておりますので、それについてのお答えをいただきたいと思います。
○内田国務大臣 堀先生の御示唆がありました社会保険診療報酬の新しい支払い方式は、これは支払い方式の根本にも触れる問題で、各方面にいろいろな点を含んでおります。しかし、これは私は今後医療保険制度の抜本改正をやります際には、当然社会保険診療報酬の支払い方式の抜本改正にもあわせて触れなければならない問題だと思いますので、先生の御示唆につきましては十分研究をさせていただきまして、慎重に取り計らってまいりたいと思います。
 なお最後に堀先生からもおことばがありましたように、社会保険診療報酬のきめ方につきましては、これは先ほどの税制に関する税制調査会のあり方とは違いまして、例の三者構成の中央医療協の問題でもございますので、先生の御関係ある方面にも十分ひとつ先生から認識を深めて、いただいて、中央医療協等の問題としても、これは円満に取り上げられ、研究せられるような、そういう環境をもつくっていただきたいと思う次第でございます。
○堀委員 時間も参りましたから、経済問題はこれで終わりますが、最後に総理大臣にこれは格別に伺いたい問題が一つあるわけです。
 それは先般――これは私、新聞で拝見をしたのですけれども、本会議でもおっしゃいましたかね、答弁の中で。政治資金規正法はこの国会には出さないと、こういうお答えがありました。しかし、実は私は四十二年選挙に当選以来、四十一年の暮れに総理大臣が第五次選挙制度審議会に緊急に審議をしてくれということで、政治資金問題を御提案になり、当選後私は赤澤さんとともにこの特別委員の中の小委員となりまして、政治資金規正に関する答申に参加をして、そうして国会にこれが提案をされる運びになったわけでありますが、残念ながら経過はあのとおりです。
    〔藤枝委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、総理大臣は四十二年、四十三年にわたって政治資金規正法は何とかひとつ成立をさせたいという強い熱意を持っておられたことは間違いがないと私は思うのです。
 まず第一点として、今日でも政治資金規正法を成立させたいという熱意がおありになるのかどうか、まあこの国会のことは別として、その熱意がおありになるかどうかを先にちょっとお答えいただきたのです。
○佐藤内閣総理大臣 政治資金といえども、これは無制限、無秩序、さようなことではいかぬ、おのずから限度があるといまだに考えております。
○堀委員 総理が御諮問になって答申が出ておるのですから、私は答申を全然無視するのでは――先ほどから税制調査会にはかってと、こうおっしゃっているわけですが、やはり内閣に置かれておる選挙制度審議会もあなたのワクの中で協力をしておるわけですから、まあ、あのままでということは私も申しません。われわれも少し弾力的に考えていいと思っていますが、考え方はあの方向で、今日もやはり政治資金規正法は成立をさせたい、こういうお気持ちがあるのでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 いろいろ選挙制度審議会の面々、個人の名前は特に申しませんが、それらの方と個人的にいろいろ懇談してみると、やはり資金だけを云々することは、やや現状に合わないのではないか、やはり選挙制度そのものとして、全体もやはり勘案しながら、その中の選挙資金、政治資金、そういう位置づけをしないと政党としてはお困りでしょう、こういう御意見がだんだん固まりつつあるように思います。私もそうじゃないだろうか、いままで失敗をし、いろいろ批判を受けたのは、政治資金規正法それだけを抽出してやったから、いろいろ問題があったのではないだろうか、かように思っております。ここらに問題があるのではないだろうか、あえて議論を呼ぶわけではございませんが、私はそういうことも考えております。
○堀委員 そうすると、政治資金規正に対する熱意はおありだということですね。ぜひやりたいという熱意、ちょっとそれをお答えいただきたい。
○佐藤内閣総理大臣 何とかしたい、かように考えております。
○堀委員 実はたいへん差し出がましいことを言うんですが、自民党は今年じゅうに総裁公選があって、場合によっては、どうなるかわかりませんよ、佐藤さんがおやりになるのか、かわるのか、わかりませんが、しかし、この国会はその意味ではある区切りの国会ですね。これにお出しにならないということになると、熱意は持っていても、あなたがあの国会であれだけ何回も通したい、通したいと壇上でおっしゃったことは、ついにほごになるわけですね。だから、これはあなたが引き続き総裁をなさるのなら問題ありませんけれども、そこらを含めて実はこれは重要な問題だと思っているのです。これはあなたがかわられたら一から始まるのでは、非常に問題がありますので、そこらを含めてこの問題についての今後の取り扱いについてお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま私が政治資金規正と取り組んでおる私の姿勢はおわかりがいただいたと思います。私が総裁であろうがなかろうが、政治家であろうがなかろうが、そういうことに変わりなしに、私はただいまの問題の実現に努力する決意でございます。
○堀委員 終わります。
○中野委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。
 次に、塚本三郎君。
○塚本委員 私はただいまから、総選挙以来問題になってまいりました言論出版の自由妨害の真相につきまして、第二には過ぐる総選挙をはじめ、最近行なわれております民主主義政治の根幹であります選挙運動にまつわりまして、通常の選挙違反とは違っております異常なる妨害、悪質なる妨害が累増いたしております。これを第二に御質問申し上げてみたいと思っております。そして最後には、憲法第二十条信教の自由と政教分離の問題につきまして、政府の見解をただしてみたいと存じております。
 いままで多く本委員会をはじめ本会議におきまして、この言論あるいは出版の自由妨害につきまして、議論が展開をされております。しかし、これらの多くの問題は、政党すなわち公明党という立場から議論が展開されておるようでございますが、しかし、深くこれを掘り下げてみますると、一連の宗教問題であると私は思っております。したがいまして、私は、今回の言論妨害は創価学会に関する宗教問題であると思っております。それを公明党を対象にして論ずるところに、若干の食い違いがあると思うのであります。私は、憲法第二十条信教の自由は、また一方において政教分離の原則をも打ち立てているものと思います。よって世人が迷惑を受けあるいは不信に思っております言論妨害をはじめ、一連の諸問題につきましては、宗教の面に力点を置いて国民の疑いを晴らさんとするものでございます。このような立場に立ちまして、最初、言論及び出版の自由妨害につきまして、政府の見解をただしてみたいと思っております。
 そもそも基本的人権とは何か。基本的人権は多年にわたる自由獲得の努力の成果であり、侵すことのできない永久の権利として不断の努力により保持すべきものであり、このことは日本国憲法に明記されているところであります。日本国憲法はこの基本的人権を法的に保障し、かつその実効性を担保するために裁判所に違憲立法審査権を認めております。基本的人権のうち、出版その他一切の表現の自由は、思想及び良心の自由を確実にするものであり、これら二つの自由は基本権中の基本権とされております。
 また私人による人権侵害も許されてはおりません。一般に基本的人権は国家権力による侵害、すなわち国家権力が私人を利用する場合及び私人が国家権力を利用する場合を含みまして主張される権利と解され、私人による侵害に対しても直接主張される権利かいなかについては従来から議論の存するところでありますが、私人であろうとなかろうと、万人に対して主張される権利として積極的に理解するのでなければ、これを実質的に保障することができないというべきでございましょう。
 法務省設置法により法務省内に人権擁護局を設け、その下部機構として全国八カ所の法務局に人権擁護部、四十一カ所の地方法務局に人権擁護課を設けて、人権侵犯事件の調査処理等人権擁護に関する事務を取り扱わしめ、また人権擁護委員法により約九千二百名の人権擁護委員を委嘱し、人権侵犯の監視、救済等に当たらしめていることは、人権が国家権力に対してだけでなく、万人に対して主張される権利として擁護さるべきことであることを裏書きするものであります。具体的には、人権侵犯事件処理に関しては国家行政組織法及び法務省設置法に基づき人権侵犯事件処理規程なる訓令が発せられ、法務省内における人権侵犯事件の取り扱い基準が定められて一おります。すなわち、人権侵犯「事件の調査は、書面若しくは口頭による申告、人権擁護委員若しくは関係官公署の通報又は新聞等の出版物の記事若しくは放送その他の情報によって開始するもの」とし、調査の結果により、人権侵犯の事実があると認められるときは、情状に応じ刑事訴訟法の規定による告発、侵犯者またはその者を指導しもしくは監督する者に対し文書をもってする必要な勧告、侵犯者またはその者を指導しもしくは監督する者に対しその反省を促し善処を求めるための口頭による事理の説示、関係者に対する勧奨、あっせんその他の適当なる排除諸措置を行なうことが第九条に定めております。この場合、組織または多衆の威力による侵犯、重大な差別待遇、特に公衆の耳目を引いた侵犯等については、これらを特別事件として下級機関がこれを受理したときは遅滞なく上級機関に報告する等、慎重に処理しなければならないことになっております。
 今回の藤原弘達氏著「創価学会を斬る」の出版に際し、著者及び出版社に対して、題名を変えろとか、出版時期が総選挙の前なのでまずいからこれをずらせとか、出版に要する経費は当方が全部買い取るから書店に並べないようにしてほしいとか、さまざまな勧誘や妨害や圧力により創価学会員、公明党議員等が出版を妨害したと新聞、雑誌等で騒がれておりますが、その後政府は、いま申し上げましたような諸規程に従ってどのような調査をなさったか、第一に御所見を伺いたいと存じます。総理に先に所見を伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 あとで手続上の答弁があろうかと思います。
 この問題はもう本会議でも衆参両院でお尋ねがあるし、また当委員会でも、昨日は不破君から長いことお尋ねがありまして、ただいまの問題とは観点は違いますけれども、問題自身、いわゆる言論の自由、これが保障されておるかどうか、こういう点を非常に強く追及されました。しかし、まあ、私がお答えしたように、私は言論の自由、これは尊重しなければならない。いわれておるような問題がいわゆる言論の圧迫、あるいは妨害、こういうことに該当するかどうか、そういうことには問題があるということを答えたのであります。
 私はいろいろいままで伺っておりますが、ただいまお述べになりましたような調査を必要とするような、それだけの資料は集まっておらない、かように私聞いておりますので、別にこれは捜査にまで発展するようなものではない、かように私はただいま考えております。ただいま申したように、言論の自由と同時に、われわれ結社の自由のあることもやはり尊重しなければならない。憲法の二十条、二十一条、これは二つともございますから、それらの点もよく考えて、そうしてこれらのものに対処するということが必要だろうと思います。
○塚本委員 精神は昨日も十分お述べいただきまして、お伺いいたしました。しかし、この問題は、精神だけではだめだということになっております。たとえば、「書面若しくは口頭による申告、人権擁護委員若しくは関係官公署の通報又は」、これからです。「新聞等の出版物の記事若しくは放送その他の情報によって開始するものとする。」ということに規定せられております。法務大臣、どうでしょうか。
○小林国務大臣 この問題につきましては、私ども特に法務当局から指示をしておる問題ではありませんし、一般の扱いとしては、出先機関がいまのお読みになった訓令によりまして発動する。出先当局におきましては、要するにこの問題を、調査を始めるに足るような端緒を得ておらぬ、こういうようなことを聞いております。したがって、いま私どもはこれの調査をしたというふうな報告を受けておりません。
○塚本委員 国民はこのことを知りたがっておるのです。総理御承知のとおりですね。もちろんいままでなさっておいでにならないといたしましても、すでに本委員会におきましては、麻生委員からも、あるいは不破委員からも、あるいは赤松委員からも提起されております。それからも旬日を経過いたしております。なのにかかわらず、すでにいま市中に出ております新聞やあるいは雑誌等においても、極端な表現を使いまするならば、このことに触れておらないいわゆる新聞、雑誌はないといっても過言でないほどに、いま言論機関は重大視しておることはおわかりいただいておると思います。にもかかわらず、それで資料がないとは、どういう職務怠慢でございましょうか。「新聞等の出版物の記事若しくは放送その他の情報によつて開始するものとする。」第二条でございますよ。あなたのほうから通達を出しながら、ここですでに旬日前からこのことが論ぜられておりながら、地方の問題でございます、そしてそれに対する資料はありません――それは、法務省や、あるいはまた地方の皆さま方は新聞や雑誌は読むだけの価値がないとでもお思いでございましょうか。大臣、どうでしょう。
○小林国務大臣 いまのことは、これは法務省の訓令でありまして、扱い者の心得をきめておるのでありまして、新聞、雑誌もむろん読んでおると思いますが、それを始めるだけの端緒を得ておらない、こういうことを関係者が判断をするということでありまして、これは要するに当務者の判断にまかされておるのでございます。いま申すように、当務者としては、たとえば大体人権侵害というふうな問題は、侵害を受けておる方からの申告あるいは要請、こういうものが大きくこれを調べる動機に相なっておりますが、いままでそういう事実がございません。したがって、新聞やあるいはその他の報道を見ても、当務者がこれを始めるだけの端緒と認めなければ、これはその者の判断にまかされておる、こういうことでございます。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま法務大臣からお答えしたので、そのことについてお話しするわけではございません。国民がたいへん知りたがっているこの事実、それを明らかにしろ、こういうお話でございます。その点こそ、私は本会議でも二回、また、いま言われるように、当委員会でも昨日の問題、それとは別にただいま名前をあげられた方々からたびたびお尋ねがあり、またたびたび同じようなことをお答えしております。したがって、この問題について塚本君からまた同じように、今澄君があれだけよく聞いたのに、その上さらに不足があるといってまたお尋ねになる。これはよく国民も御存知だろうと私は思いますので、その点をつけ加えておきます。
○塚本委員 御存知だということは私ももうすでにわかっておる。ところが法務大臣、あなたのほうからの訓令で、いわゆる開始をしなければならぬ、こういうふうに訓令を出されておいでになるのですよ。にもかかわらず、そのようなことについては情報が入っておりませんというようなことでは、総理の精神はごりっぱだと思います、しかし、総理のその精神を生かす法務大臣の立場であまりにも職務怠慢だといわざるを得ないと思いますが、総理、どうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 法務大臣の責任は、同時に総理大臣の責任でもあります。ただいま職務怠慢だとおしかりでございますが、私はさようには考えておりません。
○塚本委員 私は責任者をいまどうこうしようとか、そのことを論ずるのじゃございません。政府の基本的な――いわゆる総理が堂々とここでお述べになりました。ならば、それに従って皆さん方がおきめになり、お出しになった訓令に従って、そのような言動に対する裏づけをとっていただきたい。だから、いままでやってなかったからけしからぬと申し上げるわけじゃございません。しかし、提起せられてからすでに市中にはこのことがはんらんいたしております。にもかかわらず、政府が手をつけないということ、そのことに実は今日の言論の自由妨害の問題の問題たるゆえんがあることを知っていただきたいと思うわけでございます。
 総理、昨日の不破委員への御答弁の中でも、すでに国民は良識を持っております、そのことは賢明な判断がなされております。しかし、藤原弘達氏の問題はもう勝負ができておるし、判断はできたと思います、これだけ言論機関が報道してくれましたから。しかし、私どもがおそれるのは、いわゆるそういう判断の基準になる出版などが市中に出回らないということになれば、判断は実は加えられないわけでございます。しかもこのことは、ただ藤原弘達氏のこの問題だけではないから、私は十分に法律の擁護者として政府のいわゆる態度をお聞き申し上げたい、こういうことであります。
○佐藤内閣総理大臣 政府の態度、政府の態度と言われますが、政府は非常に慎しみ深く、慎重にやりましても、しばしばどうも国家権力を使ったといって非難を受ける。言論の自由とか出版の自由とか、こういうような問題はどこまでも厳正であるべきだ、かように思っております。したがいまして、政府は軽挙妄動はしないつもりでございます。そうでなくても私はしばしばそういうような批判を受ける、色めがねで見られる。これは率直に私の感じを申し上げておきます。そうして、これがただいまのような問題につながる。だから私、国家権力がこの問題に関与しておらないことはもう御理解がいただいておると思います。
 今度はさらにこの問題を国家権力をもって追及しろ、こういうお話でございますが、それこそどうも言論の分野に政府がかってに入るというような危険があるのではないか。これは危険でございます。危険があるのではないだろうかと思って、私は慎重に扱っていく、かように申し上げておる。先ほど法務大臣も、さような意味で今日まで積極的に、そういうような被害者から告訴、告発等が出ておればそれは別だ、実はこういうことを申しておるんだ、かように思っております。
○塚本委員 政府のお考えは十分わかりました。特に総理がこの問題に対しては慎重過ぎるほど慎重な御態度もわかりました。
 ならば、国家権力でこれをやることはあるいは権力として行き過ぎになる危険性があるから、国会に対して、調査委員会を設けよ、証人の喚問をせよという委員長に対する発言が再三これも出されております。この問題は、権力の立場でなすことに対しては、行き過ぎになる危険性がある。しかし、行き過ぎになることを避けるとするならば、国会でやっていただく以外にはない、そういう意味で、私たちもそのことは心得ております。だから、政府の所信は、この訓令なるものの忠実なる実行だけを私はこいねがったのでありますけれども、そのことさえも総理はなお御慎重のようでございます。ならば、ここで、自民党総裁として、われわれ野党が提案いたしておりまする調査委員会を設けて、実は政府では困るから調査委員会にお願いしますという態度を表明なさるべきだと思いますが、どうでしょう。
○佐藤内閣総理大臣 どうも、皆さんから政府はずるいと言われないように、私が政府の首班でもありますし、同時にまた、自民党の総裁でもある、二重人格だ、こういうことで逃げたんだと言われないようにしたいと思いますが、こういうただいまのような御提案、それこそ国会自身がおきめになることじゃないだろうか、かように思います。そうして、私どもの考え方は、それぞれの党員の皆さんがおきめになる、かように思っております。
○塚本委員 御答弁いただくのも御無理だろうと思いますが、自民党先輩の皆さま方、ぜひただいま総裁としての御発言を心得ていただきまして、委員長のほうで善処していただきたいことをこの際要望いたしておきます。
 といいますのは、この問題は、いわゆるこの問題だけにとどまっておらないということも、すでに多くの委員が言っておるところでございます。創価学会員、潮出版社、公明党議員等が出版を妨害したとする行為は、著者藤原弘達氏及び出版社日新報道の、誘惑にも負けない、圧力にも屈しない勇気によりついに目的を果たせなかったが、このような行為は、明らかに憲法で保障された表現の自由を奪おうとするものと見なければなりません。藤原弘達氏の「創価学会を斬る」の出版問題は、公明党及び創価学会批判に加えられた圧力としては、氷山の一角と見なければならないでございましょう。出版界におきましては、菊とツルのタブーということばが言い伝わっております。菊は皇室であり、ツルは創価学会をさしております。創価学会を批判してはならないという意味であります。内藤国夫著「公明党の素顔」、植村左内著「これが創価学会だ」、福島泰照著「創価学会・公明党の解明」、大戸惺著「宗教の本質」等の出版物に対する創価学会員、潮出版社員、公明党議員等の、社会の注目を引いている重大な出版妨害の事件について、人権侵犯事件処理規程に基づいて調査はいまだしておらないということは、きわめて遺憾なことでございまして、ひとり、いわゆる藤原弘達氏のごとき著名の人物だから問題になっただけで、いま申し上げた数々の、ここにありまするその著書等は、実はこの問題を契機にしてやっと日の目を見るようになったことが大部分ではございませんか。
 だからこのことは、実はいままでこのような事態が犯されておったということをはっきりと国民の前に明示していただきまして、これから、宗教団体である創価学会が国民の前におわびをしていただくのが本筋ではなかろうか。公明党という党の問題よりも、これはすべて創価学会という宗教に対する問題であります。かつて評論家丸山邦夫氏は、この問題を党の問題として扱うことは筋違いだということを言っております。もちろん、このことは一昨々日もお会いいたしました著者藤原弘達氏も言明いたしております。問題は宗教の問題で論じてきておるのにかかわらず、公明党の議員の皆さま方がとやかくなさること、そのこと自身が問題ではなかろうかといわれております。信教の自由に基づきまする国家的な多くの保護を受けておりまする宗教団体が、こんな巨大な力で出版界に対する圧力を加えておりながら、このことに対して、政党だけがぎゃあぎゃあ言っておるということ自身が、私は問題の問題たるゆえんではなかろうかと思っておりますが、いかがでしょう。
○佐藤内閣総理大臣 私は、別に創価学会員ではございません。また、公明党員でもございません。自民党の総裁でございますから、そこで……(発言する者あり)これは冗談でも何でもない。はっきり申し上げておく、誤解があるといかぬから。
 そこで、私は申し上げたいのですが、いま信教の自由、これは憲法で保障しておる。また同時に、結社の自由もあるはずですね。結社の自由、宗教法人だから結社は一切してはいかぬ、こういうものじゃないと思います。結社の自由もある。それからまた、その宗教法人が活動する範囲というものはおのずからきまっておるだろう、かように思いますから、主たるものがそれが宗教である、かように思います。私は、そういうような立場でものごとは進んでおるんだと思います。それらが何らかこう混淆されるとかいうような問題がどこかにあるのではないだろうか。
 ただいまも言われるように、創価学会、同時に公明党の諸君がと、こういうことを言われる、私はそこらは区別してしかるべきじゃないだろうか、かように思います。(発言する者あり)どうも、お説教をするわけではございません。不規則発言ですから、これは私があまり相手にするのが間違いで、むしろあなたとお話をし、この話を通じて国民に判断していただければそれでいいのだ、かように思いますが、私はただいまのように、信教の自由、これは憲法で保障されている。同時にまた、結社の自由もある。したがって、宗教法人というものもあるのだということをこの機会に申し上げただけでございます。
○塚本委員 そのことにつきましては、あとで触れてみたいと思っております。
 私は、事実について調査をまだしてないということでございますので、私自身の体験をひとつ聞いていただきましょう。これは御調査いただかなくてもすぐおわかりいただけることだと思います。
 お読みいただいた、あるいはごらんいただいたとは思いますが、「公明党を折伏しよう」この私が印刷をいたしました――あえて出版だとは言いません。印刷をいたしましたこの書物に対して――昭和四十四年八月「公明党を折伏しよう」なる著書を出版しようとして印刷に付しました。この原稿を名古屋市の某印刷会社に手渡しました。もちろんその場合、ツルのタブーなるものを私はある程度承知しておりましたので、印刷会社の責任者に、創価学会員が従業員におりはしないか、ごく少数の人に活字を組ませるように等々、でき得る限りわずらわしい事態になることを避ける心組みで注意しておきました。私はことさらに問題を起こそうとは実は思わなかったからであります。
 ところが、何と驚くべし。わずか数日後にはすでにその第一校正のゲラが公明党首脳の手に渡ったのか、その情報が通じて、わが党の責任者のもとに、塚本の準備している「創価学会に強くなろう」なる著書の出版を中止するようにとの要請がなされてまいりました。
 なお、私の驚いたことは、著書の題名等いまだ私がきめておらない段階に、すでに公明党の責任者より堂々とその題名がわが党の責任者にと伝えられたことであります。私は印刷所にこの由を問い合わせたところ――印刷所に聞きましたところ、その題名は印刷所に私がふと漏らした注文書に書き込まれたものであることがわかったわけです。まだきめてない段階において、私がふと漏らした「創価学会に強くなろう」ということを、かりに実は注文書に彼はつけたというわけでございます。そのことがすでに公明党の幹部のもとに数日後に手渡ってしまっておるではございませんか。
 なお、工場長に調査してもらったところ、創価学会員が三名ほどいたので、外に漏れて申しわけありませんでしたとの返事であります。
 およそかくのごとくで、出版の中止ができねば題名を変更してくれとの要請であります。創価学会という名前だけは変えてくれということに、実は要請が変わってまいりました。一体これは私一人の体験ではないことは、藤原氏の問題をごらんになってもわかるとおり、私自身が驚いたような事態ではございませんか。これらの著書の方々が一様にこのことは指摘しておるではございませんか。戦前の事前検閲と少しも違わない事態が、ツルのタブーとしてこの数年間創価学会の批判は許されないとしてきた事態を何と考えられておるのでございましょうか。(「ツルのタブーとは何だ」と呼ぶ者あり)教えてあげましょう。創価学会に対して批判をしたものは、ことごとくその大きな宗教団体の財力の裏づけをもって、公明党の幹部の諸君や創価学会の幹部の諸君が実は印刷所へ話し合いに行って発行させないようにするから、創価学会、公明党に対する批判は絶対言論界においてはできないという通用語でございます。おわかりになりますか。
 こういうことで、これだけの人たちが実はこういう被害にあっているのでありまするから、証拠を突きつけてもそのように反抗なさる態度は、往生ぎわが悪いと私は思います。よろしゅうございますか。戦前の事前検閲と少しも違わない事態が、ツルのタブーとして、この数年間創価学会の批判は許されないとしてきた事態を総理は何と――このような事態、私が体験しておりまするから、一体このことを何とお考えになるのでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 きのうも不破君、大体同様のお尋ねがあったと思います。それに答えたのでございますが、どうも事実が違うとか、あるいは自分たちに非常に不利益だ、かようなことが目につけば、そういう意味で、当然そこを直してくれとか、ただいまのような話をするのはあたりまえだろうと思います。これは、ただいま検閲制度があるというわけじゃありません。検閲制度はございません。これはもうはっきり申し上げておきます。これは別に声が大きいからないというわけじゃない。これはもうないんです。政府もあらゆるものを検閲するようなことはいたしません。また、先ほどいろいろお話がございましたが、菊という話が出ておりますけれども、皇室といえども、ただいま検閲の問題はございませんから、国民に誤解のないように申し上げておきます。私は、おそらく公明党あるいは創価学会も、検閲はしているわけではないだろう。いまのような、創価学会員がいる。そのときに、自分の目について、そしてこれが事実に反するとか、こういうようなことについて仲間で話し合うことは、これは私どもしかたがないことじゃないか、かように思います。
○塚本委員 時間が少ないから突っ込んでおりますと……。恐縮ですけれど、不破委員が昨日言われたような、実は出版で売ってもらうために持っていったんじゃないんですよ、私は。印刷所に印刷を頼んだのに、公明党に渡っておる。第一校正のゲラというのは、実は著作権の何に当たりましょうか。黙って人に読んでもらう前に、実は他人さまが読むことは窃盗に当たりませんか。法務大臣、どうでしょう。
○小林国務大臣 どういう経路で渡ったか私は存じませんが、お互いの話か、あるいはその連絡によってそういうことがされた。私どもそれが直ちに窃盗になるとは思いません。
○塚本委員 だから、はっきりしておりませんから、この問題はぜひ重ねて、いわゆるこの問題は、実は事態をもっと詳しく、実は多くの政党から提案されておりますように、委員会を設けていただきまして、そうして事態をはっきりさせなければならぬと思っておるわけでございます。だから、そのことを実は私が証人としてみずから発言しておるのにかかわらず否定しようとなさるから、いわゆる多くの人々に対して来ていただいて、そうして事態を究明していただくことが国会として国民の疑惑を解くゆえんではないかと考えるわけでございます。どうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 これはどうも私の問題じゃないようですが、いずれ委員長がお話は聞いておるだろうと思います。
○中野委員長 塚本君に申し上げますが、いま著作権の問題が出ましたが、文化庁の責任者に言わせましょうか。
○塚本委員 お願いします。
○安達政府委員 著作権の問題といたしましては、未公表の著作物を無断で公表する、そういう公表するかどうかという段階におきまして問題になるわけでございますけれども、それ以前の問題は著作権の問題ではございません。
○塚本委員 お聞きしておりますると時間がございませんから、実はまだ疑惑があるようでございまするから、もう少しはっきりと、いま申し上げましたように、印刷の段階から今度はでき上がりましたこの本を、山っ気を出して私はなおかつ売ろうと思いました。ある名古屋の小さな出版社を通じて東京の大取り次ぎ店である二社の名古屋支店にこの「公明党を折伏しよう」と題する本を取り扱っていただくべく見本をお届けいたしました。そういたしますと、名古屋の支店の責任者がこれを見ていただいて、とりあえず東京に三千部ずつ送ってくださいという連絡を名古屋の某出版社からいただきました。選挙の事前準備のときでありますから若干おくれましたけれども、それを荷づくりして東京に送ろうとして、その出版社は住所はどこでございましょうかと尋ねたところ、実は逆に向こうから連絡が参りました。あるA社は、私が出したこの本は正式な出版社でないから、こういうことが断わりの理由。次に、政治家の書物は売れないから――えらく見下げられておりますね。そういうような理由。その他二、三の理由をつけて、実はほかの理由でA社は断わってまいりました。それからもう一つ、B社ははっきりと、創価学会関係に批判を加えた書だから、これを扱えばいままで扱っていた相手方の書が扱えなくなる、この一冊によって年間数千万円の利益を得ている創価学会糸の書とすりかえにすることはできませんので、お許しをいただきたいとの返事をいただいたのでございます。よろしゅうございますか。おまけに、そのかわりに、塚本先生のことで出版について万一の不祥事があった場合には、全社はあげて御協力をさしていただきますのでよろしくと、こう言う。私は不祥事を起こすつもりはございませんけれども、お断わりの代償としてこのようなことをB出版社は私のところにそういう連絡をいただいたわけでございます。中身を全然知らないときならともかく、支店の責任者がごらんいただいて、そうしてともかく名古屋の責任者が見本として三千部ずつ送っていただきたいという一度はその注文を出しながら、東京の本社にこれを問い合わせたときに、このようないわゆるストップがかけられたではございませんか。
 こういうような状態で、実は次々にいわゆる批判の書がいままで葬られてきたという事実を、総理、深刻にお考えいただきたい。私は、この問題は多くのいわゆる情報機関の皆さま方の関心を深めておいでになりまするが、おそらくあの方々もいままで数年間最も大きな被害者の方々ではなかろうか。だからこそ、一昨日の朝日新聞社説におきましても、実はこのことは国会において事態を究明してほしいと、このことを訴えておられるではございませんか。にもかかわらず、もうわかったでしょうという態度、私は証人を呼べという要求もなかなかこれが時日的にひまがかかりまするけれども、不幸にも私はその当事者になりましたから、私から総理及び閣僚にこのことを実感を持って聞いていただきたい、こう思ってお訴え申し上げたわけです。所感をお伺いしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私は、塚本君からたしかその「公明党を折伏しよう」という本を贈られた一人でございます。いろいろ苦労しておられるということをただいま伺って、初めていろいろ苦労なすったんだな、しかし、その貴重な本が私の手元へ来ている、かように思いながらいまの話を聞いたような次第でございます。
○塚本委員 私はおかげで国会議員という立場でございますから、議員の先生方に親しい方にだけはお贈りをさしていただきました。しかし、店頭にはついにいわゆる並べることができなかった。こういうような事態をお考えいただきまするならば、いわゆるツルのタブーなるものがどんな力を今日まで果たしてきたのかということを国会議員の諸君もおわかりいただけるのではなかろうか。
 言論の問題におきましても、同じようなことが実は繰り返されておるわけでございます。昨日、不破委員から放送の問題が出ました。私の演説会に対する問題等も実は出ております。しかし、これら論じておりますると時間が少なくなってまいります。
 たとえば、きょうここに来ております民社党本部あてのいわゆるはがきにこういうのが参りました。「前略 日蓮正宗は正しい道である。たとえれば太陽であり慈雨のごときである。これを妨害する者はたつまきであり台風のごときである。たつまき、台風を予知しこれを排除して何が言論弾圧か。これを云々する者こそ雷か地震のごときもので、人類の敵である。われらは京都があるから黙っている。京都が終わったら生命的危険があることを思い知れ。」こういうふうに党本部にまで堂堂と宗教人日蓮正宗の名前で実は送り届けられてきている一通の文書がここにあります。
 藤原弘達氏との話の中でも同じようなことが出ております。田中幹事長と折衝している間は……(発言する者あり)見てください。あとから希望の方はお見せいたしますから。
    〔発言する者あり〕
○中野委員長 静粛に願います。
○塚本委員 藤原弘達氏が田中幹事長と折衝している間は、電話による脅迫はぴたりとやんだ。そして話が決裂するや、すぐ攻撃が始まった。そして攻撃のほこが国会に向けられるや、私への脅迫はまたもやぴたりとやんだ。その組織的なことはみごとであると藤原氏は言っておられる。そのかわり私どものところに連絡して脅迫がきておる形になっている。議論が国会に移りますると、藤原氏に対する脅迫ではなくして、私どものところに脅迫が変わってきておる。民主政治下において、しかも見えざる姿の電話による脅迫は最も卑劣であり恥ずべき行為である。しかも、これが組織的に行なわれているやに見受けられるところが許しがたいのでございます。
 私が本委員会で二十八日に発言することがきまりますると、二十二日に一週間以内に立ちのかないと火をつけるぞとの脅迫電話が二回かかってまいりました。みごとに、二十八日ときまったら、二十二日、一週間前に、一週間以内に立ちのかないという、いわゆる国会のスケジュールまで知っているではございませんか。その後、事務所、自宅にと、かかってくる。一度は張っていた捜査課長が受話器をとって脅迫の電話を聞いております。真夜中でございます。「ばかやろう、殺してやる」こういうふうな電話をかけてかちんと切っております。捜査課長はそれを直接に受けておられるはずでございます。このような事態、自宅が女ばかりだから、男が受話器をとったときには、捜査の課長さんを私だと間違えたのでございましょう。だからこういうようなことを行なっておる。もちろん総理も、しばしば先日来うちにも脅迫があるとおっしゃっておられた。しかし、総理のごとき身辺を護衛されている者はいいんでございます。しかし、私たちはどうでございましょうか。私の家族は、実はいま名古屋を引き揚げてしばらくは姿を隠せという皆さま方からの御忠告に従って、避難しなければならぬという状態でございます。もちろん事務所や自宅は県警本部の御当局のたいへんな御配慮をいただいております。このことは、御迷惑をかけていることは心からおわびいたしまするが、これが一体いわゆる言論の自由の姿でございましょうか。公安委員長、いかがでございましょうか。
○荒木国務大臣 お答え申し上げます。
 先日もここで同様の趣旨の御質問に対してお答え申し上げたのですが、ほかにも似たような、この間も申し上げましたように、低俗な不届きしごくな脅迫電話等が来ている情報はキャッチいたしております。同時に、身辺の警護及び犯罪の容疑もありますから、関心を持って捜査いたしております。
 言論の自由との関係におきましても、お説のような気持ちは個人としていたしますが、私の立場からは、言論の自由との関連においての発言は差し控えたいと思います。
○塚本委員 まぼろしの書「これが創価学会だ」この点についても多くが論ぜられたところです。実は私は、一つ一つ事実関係で申し上げてみたいと願っておったわけで、単なるうわさでありますと、すぐうそだ、うそだとおっしゃいますから、詳しくこの経過や――あるいは当事者も実は本傍聴席においでになっておられるはずでございます。一々その事実を皆さま方に聞いていただきまして、このようにして言論出版の自由が妨害されてきたのだということを深刻に受け取っていただきたい。
 時間がございませんから、詳しくこのことを申し上げることは実は避けて次に移りますが、ただ出版だけではないのです。原稿の問題、いわゆる取り次ぎの問題、さらに広告の問題、藤原氏の「創価学会を斬る」の広告について、有力紙は新聞社に入っていく前に広告会社の段階でだめにされてしまっておる。だから、新聞社に責任はないと言われればおそらくそうだろうと思うのでございます。これははっきりと申し上げておきます。ところが、ある経済紙のごときは、新聞社まで届いたのです、広告社じゃなくて。ところが、実はそれでもだめにされておるというような状態でございます。もちろん幾つかの理由がありますけれども、実はこんな形で大衆にいわゆるこういう出版社が実は出版したんだといってみても、取り次ぎがやってくれない。広告がこれをみんな拒否してしまうという態度にいままではなっておったという状態ですから、著者は言っておるではございませんか、街宣カーで選挙と同じようにこういうものを実は書きました、買ってください、こうするより手がなかったと彼は訴えておるではございませんか。こういうような事実というものを今日のいわゆる言論・出版の自由の立場からお考えいただきたい。
 さらに私は、広告を出しますると、こういうおもしろいものもあるのです。おもしろいという言い方は変でございますが、ある広告社に、こういう本を出しましたから広告を載せてくださいというふうに依頼をいたしますと、その中で公明党という部分だけが削られてしまっておるのです。こういうふうでようございますかといって、実はその新聞を広告社から持ってきた版にはちゃんと「公明党の言論・出版妨害の実態」というふうに、向こうからこれでようございますかといって持ってきたこれには出ておるのでございます。ところが、新聞ではこれがすばっと切られておるのでございますね。驚いた状態です。しかし総理、私がいまここで申し上げたいのは、このことだけじゃないのです。同じ状態の中に、社会党及び社共両党に対する批判と非難も一緒に載っておるのでございますよ、同じこの広告の欄に。ところが、社会党や共産党のことだけは少しも削られておらないのでございます。あまりにも軽く社共の皆さま方は見られておるとはお思いになりませんか。国会勢力からいいますならば、何と見ましても社会党のほうが勢力は偉大だというふうに思っております。にもかかわらず、社会党や共産党の項目ははっきりと出ておりますよ。「社会党の外交政策の悲喜劇」漆山成美さん、これは某新聞社の御承知のとおり、論説委員だと承っております。はっきりとこういうふうに「悲喜劇」といって非難されておっても、少しもカットがされておらぬではございませんか。共産党の問題だってそうです。「七〇年闘争と社・共の思惑」という題で広瀬さんが書いております。きちっと出ておるではございませんか。にもかかわらず、「公明党の」というところだけはなぜ切られておるのでございましょうか。このような状態を考えてみたときに、天下の自民党さんでさえもそういうことはなさらぬのにかかわらず、(「共産党は妨害しないから出るのだ」と呼ぶ者あり)共産党のことはいざ知らず、自民党や社会党の方々はそういうことをなさったことはない。だからこわくないのです。ととろが、公明党だけがなぜこんなことが――しかもこれは悪質だと思いませんか。それでいきますといって、こうしてきちっと版ができておる。このときにははっきりと「公明党」と載っておるのですよ。選挙中だといって、あとからおいでになったそうです。削るならば同じように社会党と共産党さんも一緒におやりになったらいいと私は思うのです。にもかかわらず、あまりにもこの両党が軽視されておるじゃありませんか。
 こういう実態というものをいかに深刻な状態に、いわゆる原稿の、いわゆる印刷の問題から、取り次ぎ、出版の問題から、さらにいわゆる広告の問題から、いかにこのことが重大に取り扱われてきたのか。私は、ここで自由にこのことが言えるだけでも日本の前途は喜ぶべきことだと思います。総理、どうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 総理どうでしょうか言われても、ちょっと困るのですね。あなたの所属しておられる民社党の扱い方がこうだ、こういうことなら、なるほどそうかということで、私の答えようもございます。社会党あるいは共産党あるいは公明党、こういうような他党の話で引き合いに出されて、私どもが口を差しはさむということ、これはどうもあとで非難を受ける問題になるのじゃないかと思います。私は、出版の自由は守られなければならない、こういう原則は何度も申し上げております。そういう意味で、私どもの力をお使いくださることについて、こういうことをやれというようなお話があるならば、それは私どもその辺について具体的に考えます。言論の自由は守られておる、守られなければならない、こういう大原則はもうはっきり私も承知しておるのでございますから、その点は誤解のないように願います。
○塚本委員 私は最後に、もう一冊、この書だけ申し上げまして、あと御要望申し上げたいと思うわけでございます。
 「狙われる日本人」という書物でございます。これは総理、あなたの足元の辺から出てきた問題でございますよ。四十三年五月、今度双葉社が出した「狙われる日本人」の中から創価学会批判記事が消されておる。著者古谷多津夫氏。これは著者にこのことを表明することを御理解いただいて、私はきょう言っておるわけでございます。この人は以前「産業スパイ白書」という本を出しております。三河島事件で、最後まで遺体引き取り人があらわれず、一遺体だけが取り残された。これが創価学会のツルのバッチをつけ、じゅずをポケットに入れていた。身元を調べてみたら、北鮮のスパイだったということが、話の書き出しになっております。このゲラ刷りを、あなたの身辺の方でございまするが、実は出版を手伝おうと思ってふろしきに入れて赤坂の料亭に持ち込みました。これは会合があったから、ついででございます。三時間ほどの会合をして出ようとすると、そのふろしき包みがありません。帰りにその包みが失われた。ほかの人に女中さんが渡してしまったようでございます。さっそく警察署に手配をしてもらって、赤坂警察署でも捜査に乗り出したところ、この原稿が世田谷の烏山に捨ててあったものが、世田谷署に届け出がありました。約半日後でございます。そしてこの書が出版されてみたら、創価学会批判の部分だけがすりかえられておるではございませんか。もちろんすりかえにつきましては、著者に創価学会から連絡があり、著者は承知して抜いたものであることを言明しておりまするから、実はそのことに関する限りは、私は不正であったとは思いません。しかし、なぜそれが、いわゆるすりかえるべく創価学会にそのことがわかったのでございましょうか。ゲラ刷りが、わずか三時間の料亭に置いておる間か、あるいは酔っぱらいが持っていったという話でございます。そうしてどこかに渡った。その捨てられる前に、学会の関係者の手に入ったと見なければなりません。一体こんなことがあっていいのでございましょうか。そうして抜かれた部分のゲラ刷りだけはここに複写でとってあります。そうおそれられるような内容のものじゃないのでございます。私どもが読んでみましても、そんなに創価学会を非難しておることじゃないのでございますね。にもかかわらず、こういうようなことが――実はその人が言うのです。料亭におる三時間の間に写真でとられたのではないでしょうか、わざわざ盗まれたとは思っておりません。しかもその料亭の大部分が創価学会員であるということも言明いたしております。場所だけは、もしお聞きになりたければ、この場で言明いたしてもよろしい。これは総理の足元から出た資料でございます。次々に、このように日本の出版が事前検閲のごとき状態によって出てきておるということ。私は総理に責任があるとは思いませんが、こういうような事態でございまするから、願わくは前委員等が提示をいたしておりまするような調査特別委員会をぜひ設けることに御賛同いただき、さらにまた、その方々に国会に証人として来ていただきたい、このことを御要望申し上げまして、時間が来ましたから、私はあとの時間に譲りたいと思います。ちょっと御所見だけ……。
○佐藤内閣総理大臣 いや、私の全然知らないことなんです。私の足元からその印刷物がなくなった、こういうことですが、私自身が関係があるのですか。そこらちょっとはっきりしない。
○塚本委員 たいへん恐縮です。自民党の本部関係者とだけ申し上げておきます。総理御自身じゃございません。御無礼いたしました。
○中野委員長 塚本君に申し上げますが、ただいま御提案の件は、御承知のとおり、理事会でただいま話を進めておりまするので、いずれ理事会で協議をしていたします。
 皇太子御夫妻御帰国の関係から、塚本君の質疑を一時中断しまして、午後六時より再開することといたします。
    ―――――――――――――
○中野委員長 この際、公述人追加選定に関し御報告を申し上げます。
 すなわち、昨日六名の方々を公述人に決定し、この旨御報告申し上げましたが、さらに委員長の手元で選考いたしておりました二名の方につきましては、理事会において協議の結果、次の方々を決定いたしました。
 すなわち、三月三日午後一時半出席の方は会社員金城幸俊君、三月四日午後一時半に御出席を求める方は洋服仕立て業犀川庄吉君であります。
 以上、御報告を申し上げます。
 午後六時まで、暫時休憩をいたします。
    午後四時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時八分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 塚本君の質疑を続行いたします。塚本三郎君。
○塚本委員 先ほどから言論・出版の自由の問題につきましてお尋ねをいたしましたが、総理も立場上はっきりとした言明はなさらないようでありまするけれど、もう十分だというふうな気持ちが表情にうかがえるようでありますので、この問題は、くどいと思いまするから、私はまたいずれの機会ということにさしていただきます。
 ただ、先ほど、最後で時間がなかったので、若干私の発言の中で誤解を招くおそれがあると心配をいたしましたから、多少つけ加えさしていただきます。
 総理の身辺と申し上げましたのは、たいへん恐縮な発言でございまして、自民党本部の人からということでございます。
 もう一つは、いわゆる出版妨害の教唆という意味にあるいは受け取られたかもしれませんので、この点ももう一度繰り返して申しますが、そうではございません。自民党の本部の一事務の方が、実はそのゲラを途中で盗まれたということで、被害者の一人だということでございます。これは先ほど、文では間違いなく読んだのでございまするが、時間がなかったので、その点が何かしら自民党の方がそのことに加担をしたように受け取られたら御迷惑だと思いますので、あらためて最初にこのことを訂正さしていただきます。
 私は、この際、第二の、宗教にまつわります問題といたしまして、最近の選挙におきまして、いわゆる悲しむべき妨害行為、犯罪がたくさん出てきております。選挙犯罪についてお尋ねをいたしたい。
 今日まで数多く繰り返されてきた選挙違反、すなわち買収、供応、戸別訪問、文書違反あるいは相手方の名誉を傷つけるデマ宣伝等をいま論じようとしておるのではありません。自分を優位に置くとか、相手方を不利におとしいれようという運動のルール違反をここに論じようとするのではありません。集会、結社及び言論、出版、その他一切の表現の自由を基盤とする議会政治のもとでは、選挙制度は国政の根幹をなすものだと思っております。選挙制度は、立憲国家においては選挙人が国民の代表を決定し、国民が現実の政治についてみずから決断を下すために定められたものと思います。したがって、選挙が選挙人の自由に表明する意思によって公正に行なわれなければならないことは言をまたないのでございます。ここに公職選挙法は、言うまでもなく、選挙の自由、公正を確保するために、制定されたことは当然でありましょう。ところが、私がここでいま論じようとしておりますことは、選挙そのものを否定する立場に行き着く行為をいうのでございます。有利不利のルール違反ではなく、刑事的犯罪を伴い、特定の候補者をして選挙そのものを不可能にせしめる行為を論じてみたいのでございます。
 たとえば私の場合は、今回の選挙でございまするが、十三回の立ち会い演説会中十回はいわゆる右のような、といいまするのは、聴衆がほとんど百名以上の集団によって妨害をされております。そして、なかなか立ち会い演説をすることができない。といいますることは、私が演説をしようとすると、聴衆の中からわあっと百人以上の人たちが喚声をあげ、やじが出てくる。単なるやじではなくして、組織的でございまするから、ともかくほかの方々が聞こえない。もちろん幾たびか選挙管理委員会に制止方を要請しても、二、三十名の警察官や選管の委員、事務員ではどうにもならない始末でありました。そして逮補されたのはわずか一回のみでありました。一体これが民主政治下における神聖なる立ち会い演説会場のうつつの姿でありましょうか。私は、実際そのとき壇上でそのような暴動を見ておりまして、悲しくなったことでございます。このような事態は、同僚であり、先輩であります赤松委員も同じ選挙に立ち会っておいでになりまするから御経験なさったことであります。しかも、このような騒ぎは、私が政治と宗教のあり方について政見を述べるとき、必ず引き起こされる現象でありました。ある会場のごときは、演説が終わっても、聴衆が全員会場から帰るまで身辺の安全を保障しかねるといって、応接室から外には選管委員が出してくれませんでした。法治国家において、役所の中で身辺の安全が心配だというような事態があるということ、あったのでございます。一体こんなことがこの文明の世の中に許されるでございましょうか。十三回中十回はこういうような騒ぎで、まともの演説を私はさしていただくことができませんでした。この点きわめて遺憾だと思いまするが、公安委員長、御所見を伺いたいと思います。
○荒木国務大臣 御指摘のような事件があったとすれば、そのことは御説のとおり、遺憾千万と存じます。
○塚本委員 もちろん、直接にそういう暴力を加えた人はその場で逮捕されました。しかし、二十人や三十人でなく、二百名、三百名の人が合唱するかのごとく妨害をされたときは、警察官も手がつかないということ、これが十三回中十回、これが民主政治下における立ち会い演説でございます。私はまことに困ったことだということで、実は壇上で立ち往生しながら悲しくなりました。総理、これはどう思いますか、悲しいと思いませんか。
○佐藤内閣総理大臣 たいへん悲しむべきことだと思います。私も選挙に出ました当初、特別な妨害をしばしば受けたことがございます。その際は、ただいまのようなことでなしに、目の前で居眠りをしてみせるとか、たいへん静かな妨害。その次はげらげら笑い出す、しかも一人ではなく、それが集団的な笑いになる、そういう妨害行為がある。その辺でもまだ終わらないと、その次には声を出して妨害される。まあ選挙の初期にはしばしばそういうことがあったように思います。私はいまの時代に、ただいま言われるようなことがいまなおあるということ、これはわが国の民主政治のためにたいへん憂慮にたえないと思う。このことをはっきり申し上げ、ただいま公安委員長が、たいへんそのことは遺憾だ、かように申しましたが、同様の感をするものであります。
○塚本委員 さらに、相手候補逮捕のデマという新聞記事がございます。事務所が手入れを受けて、一人残らず警察に引っぱられたとするデマであります。これは自民党の先生でございます。もう君は中島候補に投票しても当選は不可能であるということを、相手に知らしめる意味を持っておりますね。というのは、中島候補は先ほど全員逮捕されましたということで、ずっと組織的に歩いておられるということでございます。これは三人がそのことで逮捕されております。全員が創価学会員であり、一人の人はその地域における責任者であるということまで明記されております。私どもきちっとそのことは裏づけをとってみたら、間違いないというような事態でございます。今度は逮捕されたというだけではなくして、相手候補者がなくなってしまったんだ。これも自民党の先生でございますが、中川嘉美派、台東区浅草橋三−八−一、菓子商田家一枝を虚偽事項公表の疑いで逮捕、十二月二十七日十数戸戸別訪問、山田久就候補は脳溢血で昨晩死んだから投票してもむだだと、中川氏への投票を依頼した。新聞に全部出ておったことでございます。これらは相手を傷つけて――私どもよく言われるんですね、あれにはおめかけさんがあるだとか、汚職をやった疑いがあるとかいうような中傷をすることは、いわゆるルール違反のたぐいでございますけれども、逮捕されてしまったとか、脳溢血で死んでしまったというようなことを組織的に言って歩くということは、もはや投票を不可能におとしいれておることではございませんか。私はこんなことが平気で行なわれておるということ自身が――もちろんこのことは、警察は直ちに逮捕いたしまして、ただいま起訴になっておりまするから、警察庁長官をお責め申し上げるわけではございません。しかし、こういうことが宗教団体で組織的に行なわれたということが新聞にも載り、警察もこの裏づけをとられておる。さらに、逆に今度は投票の無理じい、病気がなおる、こういうことでございます。選挙運動は、立候補の届け出のあった日から選挙の期日の前日まででなければすることができないとされ、選挙当日は一切の選挙運動は禁止されている。したがって、各種団体、組合などの棄権防止運動も、その団体、組合などが特定候補者を支持推薦している限り違反となる。去る四十二年――これは四十二年のことです。四月の群馬県議選投票日に、創価学会幹部会員等五人が、心臓病で寝ている老女に、投票すれば病気がなおるからといって、応援県議への投票を依頼し、無理やりに押し込んで投票所まで運び投票させた行為は、明らかに選挙当日の運動の禁止違反というべきである。それだけではない。選挙人に対し暴行もしくは威力を加えまたはこれを拐引する罪、これに、威力とは、人の意思を制圧する暴行以外の勢力を指称し、それ以上に客観的不正動作の加わることを必要としないと、判例は判示している。また、拐引とは、だまして連れていくことを意味する。前記の寝ている老女を、ぐあいがよくないので行けないと断わるのを、投票すれば全快するが、行かなければなおらないと、いやがる老女を無理やり車に押し込んだ上、投票所まで運び投票させたことは、威力を加えこれを拐引したもので、投票する自由と棄権する自由を妨害し、選挙の自由妨害罪を構成するというべきである。もちろん、これも検挙されておりまして、新聞に報道されたところでございます。あるいはまた、去る四十四年十二月には、重症の病人を不在投票で運び込んでおります。名古屋市南区においての事例でございます。二十分かかって投票所から出てきました。しかし、出てきたときにいわゆる倒れたということでございます。あるいはまた、詐偽投票、神奈川県警本部からもこのことが発表されております。その中に、いわゆる特異な違反として創価学会員による詐偽投票が一件あり、逮捕された。そこで警察庁からその資料を取り寄せてみましたところ、今年は三十日間で二十八件、五十八名の詐偽投票が行なわれた。しかし、これはどなたがどれだということには触れておりません。私は、東京新聞横浜版の新聞でそのことを見て、どれぐらい行なわれたであろうということで、三十日以内における警察庁の調べを取り寄せたわけでございます。そのほか、深夜におけるところのしばしばの怪電話、これはおそらく先生方でも多く経験なさったところでありまするが、いままでのようないわばルール違反的な、いわゆる買収供応であるとか、あるいは戸別訪問とか文書違反とか、あるいは悪質なるデマということとは本質的に違っておりまして、投票行為そのものを否認するの態度が宗教団体として行なわれてきたというこの事実。こういうことはもちろん目につく限りは警察ははっきりと処断をなさっておいでになりまするから、そのことを追及申し上げるわけではございません。しかし、こんなことは先生方でも、いわゆる町の中でほとんど常套語としてささやかれておいでになるのでございます。にもかかわらず、なぜこのことが国民の前に明らかにされないのか、悲しむべきことではございませんか。私は、このことはやはり政府としてもお考えいただかなければならぬと思います。いかがでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 具体的な事例を幾つかお述べになりました。私は聞いておりまして、そのこと自身がいいと言うのじゃございません。明らかに違法な行為、これは選挙法で取り締まるべき事案とは思います。しかし、おっしゃったように、それが団体あるいは宗教団体の行為だと、かように言われるところに論理の飛躍はないだろうか。個人的な犯罪行為はもちろんございますが、これは宗教団体の犯罪行為だ、かように言われると、まだもっと明確にしないと、そこまでは言えないのではないだろうか、聞きながらそういう気がいたしました。そうして、創価学会員であった、こういうことだけで直ちに創価学会自身が責任者であるかのように批判される。私どもの場合もそういうことはあると思います。自民党員が選挙違反をした、自民党自身が選挙違反をしたと、こういうところへすぐつながるというわけにはいかないのじゃないか。そこらはやはり十分よく精査された材料を持たれた上の発言だろうとは思いますが、そういうような感じがいたしました。
○塚本委員 私がここで発表いたしまする限りは、私も一個の人格者として、しかも議員として、国民の代表として、責任を持って発言をいたしておるつもりでございます。全部新聞で創価学会と明記しておるだけを出したわけでございまするし、なおかつ地区の責任者である、あるいはまた一人じゃなくして、集団でこれが行なわれておるというような事例等もあるわけでございます。
 私がここで申し上げたかったことは、いままでのような個々のルール違反的な選挙違反ではないということです。根本的に民主主義制度の根幹であります選挙制度そのものを否認するところにつながることを、私は憂慮してこのことを申し上げておるわけでございます。しかも、一般の団体よりも、宗教団体というものは、世間から見ても、なおかつ純粋であるべきだと受け取られておるところに、宗教の持つ特異性があると思うわけでございます。それは団体から指示したとは私は申し上げておりませんし、総理のおっしゃるとおりだと私も信じております。しかしながら、にもかかわらずこれが新聞紙上に出、あるいは警察御当局のお調べ等の調書を見せていただきますると、明らかに学会員であるということからこういうことが起こっておるということに、私はきわめて悲しみを覚えるわけでございます。宗教団体に対する指導といいますか、管轄であります文部大臣の御所見を承りたいと思います。
○坂田国務大臣 宗教団体と政治というのは、なかなかこれはむずかしい関係にある。歴史的に見ましても、非常に闘争を繰り返された問題です。宗教の自由というものは、やはり人間個人の信仰の問題でございます。言うならば、絶対的なもの。政治の問題というのは、反対党の主張というものがあることを前提として、そしてものごとをきめていく、あるいは一致点を見出す、どうしても一致点が見出せない場合においては、自由な言論を通じ、討議を通じて、最後には多数決できめていくということかと思うのでございまして、そういう意味から、片方は絶対的なことを主張するし、また政治上の民主主義のルールというものは、言うならば、相対的な原理からものごとを決定していこうということで、やはりここにトラブルが起こることは予想されることだと思うわけでございます。そういう意味から考えました場合に、宗教団体に属されておる人々の行動というものが、いろいろな問題を惹起してきておるということは、ただいま御指摘になりましたことでございます。
 ただ、いま総理からお話しがありましたように、はたしてその団体が組織的にそういうことを意図してやっておるのかどうかという具体的な事例というものは、やはり警察庁その他において事実を分析されてからでないと、何とも言いようはないんじゃないか。しかし、一般的に申しますと、そういうようなことはあり得る。これは単に公明党とかなんとかということじゃなくて、いかなる宗教団体についてもそういうことがいわれるんじゃないか。過去の歴史から考えましても、そういうことは考えられるということは申しておきたいと思います。
○荒木国務大臣 御要求ございませんけれども、補足さしていただきます。
 あまり雄弁におっしゃるもんですから、つい御返事する機会を失しましたが、警察庁でお調べになったという資料、それは選挙の自由妨害で検挙をしました件数が四十九件、人数が六十二名ということを御承知いただいているかと思います。私が補足して申し上げねばならぬことをまず総理がおっしゃったし、いま文部大臣がおっしゃられまして、私の守備範囲からいって、何とか申し上げなければ相すまぬような気持ちがいたしまして、立たしていただきました。
 警察の調書をごらんになったという話でございますが、だとすれば、おっしゃるようなことがあったかもしれません。ですけれども、選挙の取り締まりはもちろんのこと、およそ犯罪捜査、検挙その他やるにいたしましても、警察官職務執行法が命じます不偏不党、あくまでも厳正中正な態度でもって捜査その他に当たるという線でやっておることでございまして、ことさらある宗教団体、ある政党をマークしながら捜査その他をやるということは絶対にございませんことを、申し添えさしていただきます。
 したがいまして、すでにいま文部大臣からも御答弁申し上げましたように、何かの団体に属する人がどうかしたと供述をしましても、そのことが最終的に断定されておるわけじゃないと存じます。いずれ、−検挙しまして、いま捜査中でもあり、ないしは公訴の案件として起訴されますれば、法廷でもってそのことが終始述べられ、確認されれば別ですけれども、調書に載りましても、これを否認するという場合もありましょうし、その真偽のほどは裁判で最終的に御判断をいただきたい、かように存じます。
○塚本委員 そうです。おっしゃるとおりでございます。ただ私どもは、一々警察のあとを調べて回るわけにまいりません。しかし、起訴になったということは御当局の確信のもとにおやりになった。しかしその裁判の結果については、それらのものはほとんど新聞に報道されませんので、私はここに取り上げるわけにはまいりません。しかし、私が申し上げたかったことは、いわゆる神聖と世間で見られております宗教団体、これが個人において行なう場合においては、これはいたしかたがないことも当然でございましょう。しかし団体として組織的な指令を出さないといたしましても、このように悲しむべき妨害行為が幾つか警察の調べによって明らかになったといっても、なおかつその団体は完全にいわゆる白だということで放置しておくべき問題でございましょうか。国民はそのことに対し、政府において何らかの処置をとっていただいてしかるべきではないか、このような感じを持っております。法的ではなくして、何らかしてもらわなきゃこれは困るというふうな意見が、ちまたにありまする。私はその声を代弁して申し上げるわけでございます。だから、団体としての指令でなくても、いわゆる個々の信者さんたちがみずからの信念に基づいておやりになったことでしょうけれども、実はそういう関係が多過ぎたということ、このことは何らかの形で注意をすべき段階ではなかろうか。法律的にどうしようという前に注意すべき事柄ではないかと思いますが、文部大臣もう一度お答えいただきたいと思います。
○坂田国務大臣 宗教団体並びに宗教人というものは、一般的に政治活動というものは許されておるわけでございます。しかしながら、私たちが宗教法人で考えます場合には、やはりその宗教法人の目的に照らしまして、それが法令に著しく違反をしておるとか、あるいはまた、それが非常に明らかになっておる、あるいは不正なことがあるとかいうようなことが、もう非常にはっきりしてきておるというときに、われわれとしては考えなければならない、かように考えておるわけでございます。
○塚本委員 私がいま述べてまいりました基本的人権の問題や、あるいは選挙における悲しむべき妨害の数々も、よって来たる特異の現象として最近世論をにぎわしている根本的な原因は、宗教と政治の関連について起こっておる事象だと私は判断するからでございます。憲法第二十条「信教の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗教團體も、國から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と明記されております。政治上の権力を行使してならないということは、具体的にはいかなることを意味すると解釈すべきかということでございます。私見を申し述べてみますると、宗教における布教は、人間を媒介として行なうべきであって、政治を媒介として行なうべきではない。威力集団は国家権力だけではない。政教分離の解釈は、権力による利用のみならず、威力利用もまた禁止しておると、ハロルド・ラスキの「多元的国家論」においてこれを論ぜられておることを私は調べました。憲法第二十条もまたこのことを禁止していると解すべきでございましょう。宗教団体においても、巨大な組織力、資金力を背景として行なわれようとする言論・出版妨害、及び悲しむべき選挙違反の数々が行なわれていることについて、これは法律的なことよりも、総理として個人的ないわゆる感じとして御見解を伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま文部大臣からもお答えしたように、片一方で信仰の自由、宗教の自由といいますか、そういうものがございますが、二十条。同時に二十一条では結社の自由がございます。したがって、その特殊な信仰団体が結社をしていかぬということはないはずですね。これは結社の自由がある。したがって、その二つが一体どういうように組み合わされて、どういうように現実に活動されるか、こういうことをわれわれ考えていかなければならぬと思います。いまの信仰の自由、そういう意味から結社の自由まで否定するということになると、これはたいへんだ。(発言する者あり)塚本君はそこまではおっしゃらないし、しかし政治上の活動そのものについては、よほどいま制限さるべき筋のもののように、御指摘のように思います。私はいわゆる公序良俗に反しない限り、政治的活動を特殊な団体がしたからといって、別に問題はないだろうと思います。ただいままでおあげになりましたような選挙妨害だとかあるいは選挙活動の公正が持せられないとか、こういうような批判、これは現にただいまこの委員会でも取り上げられ、もうここ数日来そういう問題がございますが、おそらくそういうことは国民全般もこのマイクを通じてよく聞き取っていると思いますし、またその特殊な宗教団体におきましてもみずから考えられるところもあるだろうと思います。私が申し上げたいのは、一々政府がそういう問題についてタッチすることがよろしいのかどうか、指揮することがよろしいのかどうか、かように実は思うのでありまして、特別ないわゆる検察行為あるいは司法権の発動、それらのものは、それぞれがりっぱな資料を持って捜査は続けておる、かように思います。しかしながら、いわゆる行政官庁があるいは総理自身が、この事柄について特別に取り締まる方に、こういうことが注意すべきだというようなことを申し上げるような筋ではないだろう、私はさように思うのです。このことはもうよくこの会議を通じて、またおそらく報道されるその機会に、それぞれの方が自分たちでみずから考えられる問題じゃないか、かように私は思っておる次第です。
○塚本委員 団体結社の自由のことを私は非難しておるのでないことは再三申し述べております。私は先ほどから、いわゆる言論・出版の自由妨害に対する行為もまた宗教団体という問題を中心にして行なわれてきておるということを繰り返して申し上げたはずでございます。そしてまた、悲しむべきいま申し上げました、いわゆる選挙の妨害に対する問題等も、いわゆる創価学会という宗教団体の会員さんたちが引き起こしておると、実は公平に警察庁でお取り上げになった中で出てきた問題として、多く浮かび上がっておる、こういう事例でございますね。宗教団体が宗教団体の道からは著しく逸脱した犯罪的行為だけを、私はいま取り上げておるわけでございます。にもかかわらず、一連のこのような宗教団体構成員の一人でありまして、団体とは直接に関係がないかもしれませんけれども、こういうものがたくさん出てきておる。そして先生方でも個人的にお話をしてみますると、実はこういう事例に対しては困ったもあだということは私的にささやかれておる問題でございます。だからこそ、私は法律的に照らしていかがあろうかということは、これは法のおさばきをいただくからけっこうでございます。しかし、宗教の問題は、法のさばきを受ける前に、宗教は宗教らしく、いわゆるその体質が正されなければなりませんし、もしそのことがこのように逸脱された事例が多いとするならば、これは何らかの御処置をおとりになるべきだと私は思ってお尋ねしたわけでございます。文部大臣、何かこれに対しまして御処置なさったことがあるでございましょうか。
○坂田国務大臣 今回はございません。
○塚本委員 それでは文部大臣ちょっと――それでは、いま申し上げましたような、私があげました事象で、判決によりまして有罪と確定いたしましたならば、実はお取り上げになって御注意なさるおつもりでございましょうか、文部大臣。――法務大臣じゃないです。文部大臣です。
○坂田国務大臣 その点につきましては、もう少し事実が明らかにならないと何とも言えないと私は思うんです。と申しますのは、先ほど冒頭に申し上げましたように、あるいは国からの権力によって云々ということが憲法でいかぬというふうにいわれておるわけなんで、たとえば昔裁判権を持ったり、あるいは立法権を持ったり、あるいは課税権を持ったりというようなことがいけないということを禁止しておると私は了解しておるものでございます。
○塚本委員 事実を明らかにしなければとおっしゃいましたから、私は言いたくなかったのでありまするが、このことは事実を国民の前に、そして文部大臣にはっきりと、これからすでに決着がつきました事実につきまして述べてみたいと思っております。
 その前にお聞きいただきたいと思います。昭和三十一年六月三日、不正なる宗教活動に対する決議が実は院においてなされております。このような歴史的な決議が本院においてなされております。この際、総理及び所管の各大臣に御答弁をいただくに際して、責任ある御答弁を求めるため、その全文を朗読いたします。なすことにつきましては多少のためらいがあるでございましょうが、しかしながら、すでに院におきましては決議がなされております。
   昭和三十一年六月三日
        衆議院法務委員長 高橋禎一
  文部大臣
   清瀬一郎殿
    本委員会において、不正なる宗教活動に対し、別紙の通り決議した。右参考送付する。
    不正なる宗教活動に対する決議
  戦後の混乱と人心不安の裡に族生したいわゆる新興宗教団体の中には、世道人心に極めて憂慮すべき影響を及ぼしているものがある。
  もとより信仰の自由は憲法の保障するところであるが、布教その他の方法において不当に人心を強制し、或は基本的人権を侵害するが如きことは許されない。
  本委員会が右の趣旨により立正佼成会に関する人権侵害問題を調査したところによっても種種の行過ぎがあり、加入、脱退、金品受授、治療等につき欺瞞、強制、圧迫、迷信等により、公共の福祉に反すると思われるものである。政府は、この際、立正佼成会は勿論いわゆる新興宗教その他宗教団体の不正不法な宗教活動の横行している現状に鑑み、人権擁護の立場から速かに、
項目が四つあります。
 (1) 布教活動にして、人権の侵害行為又は犯罪を構成するものについては、その摘発につとめるべきである。
 (2) 宗教法人法第八十一条の解散権を発動すべき事由ありや否やにつき、徹底的に調査すべきである。
 (3) 宗教法人法中「認証事項」「役員の欠格条項」「書類の閲覧権、提出権」第八十一条解散権発動の前提たる「調査権の整備」「罰則強化」等につき検討すべきである。
 (4) 公益代表者にして、宗教法人の解散請求権をもつ検察庁は、宗教法人調査につき適宜の措置を講ずべきである。右、決議する。
 続いて参議院の法務委員会からのものが同じように行なわれております。これは申し入れ書になっております。
  憲法の保障する信教の自由は、あくまで擁護されなければならないが、いわゆる新興宗教団体のなかには、大衆の無智、病気、貧困、精神的苦悩などに乗じ、あるいは暴行、脅迫によつて加入の強制、寄附の強要、脱退の阻止につとめ、あるいは非科学的な医療類似行為を行なつて病状を悪化せしめ、また窮迫のあまり自殺者、精神病者を生ぜしめる等、基本的人権を侵犯し、法令に違反し、著しく公共の福祉を害し、また宗教団体本来の目的を逸脱するものが、少なからず見受けられる。
  政府は、かかる人権侵犯又は違法行為を根絶せしめるとともに、関係法令を一そう適正に運用して、その不備を認める場合はその改正につとめるべきである。
  右、申入する。
   昭和三十一年五月三十一日
             参議院法務委員会
  文部大臣 清瀬一郎殿
 このような決議が両院において院議としてなされております。このことを総理は御存じでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 先ほどこの決議が私にも届けられましたので、ただいまお読みになったことを、一、二字句が違ったようには思いますが、その趣旨はよくわかります。
○塚本委員 それじゃいままで御存じなかったということでございますか。これを見るまでは気がつかなかったということでございますか。
○佐藤内閣総理大臣 そうです……
○塚本委員 所管の文部大臣、いかがでしょうか。
○坂田国務大臣 私は承知しておりました。
○塚本委員 承知しておりましたという話でございますが、どのような御処置をおとりになったでございましょうか。
○坂田国務大臣 今度はまだしておらないということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
○塚本委員 法務省。
○小林国務大臣 私は不勉強で承知をいたしておらなかったのでございます。
○塚本委員 「公益代表者にして、宗教法人の解散請求権をもつ検察庁は、宗教法人調査につき適宜の措置を講ずべきである。」まさか院の決議は御軽視になっておいでにはならぬと思いまするが、大臣は不勉強だという話でございますが、法務省の担当責任者の方……。
○辻政府委員 お答えいたします。
 検察庁におきましては、法令で検察官の職責として規定されております事項につきましては、十分熟知をいたしております。
○塚本委員 熟知しておって、なぜいま申し上げたような事象があるのにかかわらず、このことに対して御調査なさらなかったのでしょうか。
○辻政府委員 お答えいたします。
 今回の総選挙におきますいろいろな事犯につきましては、現在検察庁におきましては、本来の検察事務といたしまして、鋭意捜査をまだ続行しておる部分が相当多いわけでございます。
 先ほど来御答弁がございましたように、個々の事件につきましてただいま御指摘のような行為があったかどうかということは、最終的には確定していない段階でございます。現在、検察庁においては、犯罪の成否そのものにつきまして鋭意検討しておるのが大部分の実情でございます。
○塚本委員 私は三十一年六月の決議に基づいてその後どのような御処置をなさったかということを聞いておるので、実は私がいわゆる今回の選挙を中心にして強調いたしましたから、あるいは受け取りが誤解を招いたかと思います。この決議以降における御処理をお聞きしておるわけです。
○辻政府委員 この三十一年当時の御決議によりまして、検察庁がいかなる措置をとったかは、いましかとわかりませんが、おそらくしていないと思います。
○塚本委員 文部大臣、この問題は実は立正佼成会に端を発して、立正佼成会のみならず、新興宗教団体として厳に注意せよということの両院のいわゆる御決議でございます。その後において何ら手が打たれておらないということは、私は、職務怠慢の責めを免れないと思いますが、いかがでしょう。
○坂田国務大臣 先ほど申しましたように、今回はいたしておりませんと申し上げたのです。
 いままでのことにつきましては、いまお尋ねでございますから、昭和三十一年六月二十一日、当時の文部省調査局長福田繁君が、各都道府県知事あてに「不正な宗教活動について」という通知を出しております。
○塚本委員 その後、幾つかの問題が続発しておるんでございますね。にもかかわらず、一通の通達だけで、これでいいというものではないと思うんでございます。その後、宗教団体の、ここに決議なさっておりまするような「布教活動にして、人権の侵害行為又は犯罪を構成するものについては、その摘発につとめるべきである。」このような、いわゆる具体的な事例を四項目にわたってなされておりまするから、継続して今日までそのことを御調査願い、あるいは、そういうような情報があったならば、それは直ちに注意をなさるなり、何らかの御処置をおとりになるのが、認可を与えておいでになります文部大臣として、しかも文部大臣あての決議になっておるんでございまするから、おたくのほうの責任だと思いますが、どうでしょうか。
○坂田国務大臣 いままでの経過では、なかなかその辺のところがまだつかまえ得ないわけでございますので、やっておりません。
○塚本委員 私は、御調査をしてほしいということですが、先ほどから逃げてしまわれている。しかし私ども、ほんとうにいわゆる宗教が宗教の本来の姿としてあるべきである、にもかかわらず、宗教が犯罪につながることが累増しておると院で決議をされておるのにかかわらず――いわゆるこのときは、立正佼成会が中心でございました。その後、実は凶悪なる犯罪、幾多の犯罪が出てきております。文部大臣、よくお聞きいただきたいと思います。選挙に熱中、妻を刺す。これは、和歌山市元寺町、印刷業、土橋哲夫が一階の炊事場で妻静代さんの左胸を刃渡り七十六センチの日本刀で刺し、和歌山市西署に殺人未遂の疑いで逮捕された。静代さんは出血多量で重体。同署の調べに対し土橋は、家のことも考えずに選挙運動に走り回って、午前一時ごろ帰宅した。日ごろから信仰のことで意見が対立しており、かっとなって刺してしまったと自供しておる。信仰のことから家庭を顧みなかった妻を刺し殺した事件でございます。(「それはどこの宗教だ」と呼ぶ者あり)創価学会でございます。塩崎ろんさん、病気がなおると投票かり出し、容態悪化。創価学会員。これは先ほど申し上げた選挙運動のことにも関連しておるわけでございます。車に乗せて投票にかり出し、病気を重体にせしめた。いまは、もうなくなっております。あるいは、これは私のすぐそばで起こったことです。信仰をやめると言ったら、無理に押しかけてまいりました。そして、ついに精神錯乱の、いわゆる精神病者でありましたから、やらずにおいてくれということを頼んだ。しかし、創価学会はやめると言いましたら、大ぜいが押しかけてまいりまして、また錯乱をしてしまいました。あとの子供は、私が民生保護で始末をさしていただきました。現在は、東海市に移り住んでおります。「高校生が両親を刺す」「念仏をやめろといわれて」念仏ということですから、私はどの信仰かと思ってみたら、実はこれも創価学会員さんでございました。四十四年十一月八日午前一時五十五分ごろ、東京都大田区蒲田の機械販売業、Aさん(五二)方で、家族が就寝中、長男の少年十八歳、高校三年がただ一人起きて、四畳半の仏壇の前で念仏を唱えていたので、そばに寝ていたAさんが、うるさいな、早く寝たらどうだと言ったところ、おこった少年は、台所から肉切りぼうちょうを持ち出し、Aさんと母親B子さんの胸、腹などを刺した。Aさんらは、それぞれ十日間のけが。近所から一一〇番で蒲田署員が急行、少年を殺人未遂の現行犯で逮捕した。私どもが調べによると、これは念仏と書いてあるが、創価学会の実は間違いでございました。こういうふうに幾つか新聞で報道された最近における事象と凶悪なる信仰そのものでもって行なわれた犯罪が、これは新聞に報道されておるものでありまするけれども、たいへんこれは――創価学会さん、名前を出しましたから、万が一間違ったならば、これは私は申し訳ないことだと思って、実は調査して、確認をとっておいたわけでございます。このような数数、まだはっきりと確信をお持ちにならなければ、もう少し読んでみましょう。「入会を拒んだ義父を仏罰だと撲殺」昭和四十一年一月三十日午前十一時ごろ、三重県度会郡大宮町野添、農業中西金作さんが、自宅前の菜畑で、同居中の娘婿、創価学会員川合幸介に木づちでなぐり殺された。どうしても創価学会に入らない義父金作さんを日ごろから恨みに思っていた幸介が、仏罰を与えてやると計画的に殺害したもので、犯行後幸介は、現場検証をする捜査官をしり目に、しきりにお題目を唱えていたといわれる。全部ここに新聞各紙の報道が載っているではございませんか。「たまりかねた老父が狂信のむすこを殺す」幾つかこういう信仰が、入る、入らないという問題を中心にしていわゆる犯罪が行なわれております。これは捜査中のことですが、先日のあの斎藤氏のばらばら事件でも、いわゆる創価学会の仏壇を中心にして実は犯罪の動機になるとある新聞は報道しておるのでございます。このことは、まだこれからの問題でございますから、実は報道だけにとどめておきたいと思っております。こういうことを、幾つか私はあげてまいったので一まだたくさんございます。気の毒なのは、このことによって子供が、いわゆる創価学会の掛け軸を破って、海の中におかあさんやめてくれと言って入水している記事も、下関におきまして新聞報道されておる。ここに全部スクラップがございます。私は、こういういわゆる犯罪の中の代表的なものを、実は四、五取り上げてみたのでございまするけれども、重大なことだと思うわけでございます。一体こういう状態が続発しておりまする中におきまして、いわゆるまだ調査しておりません、考えておりません、一体どこまで行ったならばお取り上げになるのでございましょうか。私は、もはやこういう問題は、人間の良心の問題だと思うわけでございます。一社会人として、しかも国会におきまして、十四、五年前に両院の御決議までいただいております。にもかかわらず、こういうような態度にお出になるということは、いかがなことでございましょうか。総理、もしこういうことに――たくさんスクラップが、各紙が報道いたしております。一紙だけではございませんから、まずこの事象は間違いない。しかも、いま申し上げた数々は、有名な、大きな凶悪犯罪でございますから、まさかここにおいでになります各紙の大新聞が、あやまちをおかされるとは思っておりません。こういうようなことをお聞きになって、実は単なる世間の事件として過ごすことができるでございましょうか。どうお考えになるのでございましょうか。
○佐藤内閣総理大臣 たいへん痛ましい幾つかの事件を、そのまま発表されました。しかし、私は、さっき申しましたように、それが創価学会の会員であるということで、直ちに会そのものを非難されることはいかがかと思う。そこらに、いきなりの論理の飛躍がありはしないか、かように先ほど来申し上げた。ただいまおっしゃるように、先ほどの三十一年の両院の決議あるいは参議院の申し入れ、これはもうそのまま生きておりますから、そういうものについて、私どもが善処することは、これは当然でございますが、しかし塚本君にも先ほど来申し上げますように、その人が創価学会員であったということで、直ちに学会の責任だと、こうされるところには論理的な飛躍がありはしないか、かように私は思います。
○塚本委員 文部大臣にお尋ねします。
 私は、直ちに解散せよとかあるいは処分せよとか申し上げておるわけではありません。実はいかにもそういうことは通知をしたからもう静まったであろうというような軽い態度でおいでになるので――いま総理は善処するとお約束をいただきました。文部大臣も具体的に所管大臣として、この事犯につきまして、あるいはこれに類する行為が私どもの目にとまらないところで一あるいはもしなにでございましたら、ここにたくさんそういういわゆる報道された事象がございまするから、私どもも協力をさせていただくことにやぶさかではございません。具体的に、院の決議に基づきまして御調査いただくということが必要かと思いますが、いかがでしょうか。
○坂田国務大臣 まずもって、たとえば人権擁護委員会であるとかあるいは警察庁とか、もう少し具体的な事実が出てまいりました時点において考えたいと思います。
○塚本委員 調査したといって、これから御調査していくことですけれども、調査をしなければ具対的事実はあがらぬのでございますよ。わからなければ、もう少し読んでみましょうか、こういう事件の数々を。私もまだここに用意しております。しかし、あまり、いま総理も御心配なさっておりまするが、事が宗教団体のことでございますから、これ以上申し上げることは私はいかがかと思っております。だから、すみやかに大臣が、いわゆる勇断をもって、この院の決議に対処するとおっしゃっていただけば、私はこれ以上申し上げることは控えたほうが、やはり人心を不安におとしいれるだけだと思いますから、避けたいと思います。だから、具体的に調査をいたしますと、もしそのことが確約が得られなければ、私はこの場において調査していただかなくても、私どもの手元に入っておりまする事態だけでもまだ十幾つこれらと類似する問題を持っております。だから、総理がいまも手でもってやめたほうがいいようなお合い図でございます。私もそう思っております。どうでしょうか、文部大臣、総理が善処するとおっしゃっておいでになるのだから、大臣はそれに従って具体的に調査に踏み切られることを要望いたします。
○坂田国務大臣 やはり個人のやったことと宗教団体との関係というものが、ただ、いまお読み上げになったことだけでは立証ができないのじゃないかと私は思うわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、政府でやはり人権擁護委員会もございますし、警察庁もありますし、やはりそのデータに基づかないと、私としてはいまここで何とか言えとおっしゃいましても申し上げられない。しかし、その時点でいろいろなことが出てまいりました場合には考えたいと思います。
○塚本委員 私は、団体を調査せよとか解散せよとかいっておるのじゃないのですよ。これは、私が読み上げたのは、不幸にして創価学会員さんが並んでおったということで、しかし、はっきりと立正佼成会さんのことについてもなされておるのでございます。私は隠そうといたしておりません。だから、そういう宗教犯罪にまつわります、しかも凶悪なる犯罪ということの数々が出ておるのでございまするから、だから、調べてみなければとおっしゃったって、私が調べただけでも手元にたくさんあります。実はこんなものを私どもにここから、それではそれではと次から次へと私がここで開陳する必要はないんじゃございませんか。あなたが具体的にそういうことについていわゆる御調査なさればいいことであり、新聞のスクラップがありまするから、たくさん政府におありでございますから、少なくとも報道された部分だけでもいいから御調査なさって――特に宗教団体からこういう声も出ております。最近におきましてはこういう信仰にまつわります凶悪犯罪――新聞さんは団体と個人とは違うということを、いま総理の精神をよくおくみ取りいただいて、某宗教団体、某宗教団体と書いてあるから、いわゆる宗教団体のほうでは、うちの宗教団体は迷惑だから、だれだということを明示してもらいたいということまで宗教団体は言っておいでになるのです。だ・から、具体的にそういう事犯は、公平に犯罪だけでいいからお取り上げになって、そしてそういうことに関係する宗教団体に対しては御注意なり御指導なり、ときによっては解散権を発動せられるための準備もなさることが必要だと決議せられているこの院の議決を守っていただきたいというだけではございませんか。もう一度御答弁いただきたい。
○坂田国務大臣 したがいまして、その事実というものが政府関係の人権擁護委員会なり、あるいは警察庁のデータに基づかなければ、私としては申し上げられないということを申し上げておるのです。
○塚本委員 それでは独自のデータを取り寄せる作業はおやりになるということでございますね。
○坂田国務大臣 警察庁長官あるいは人権擁護委員会等から資料を取り寄せることは私もいたしたいと思っております。
○塚本委員 このことに対しては、公安委員長は先ほどからたいへん憂慮なさっておいでになるようでございますから、積極的に御協力いただけると思いますが、いかがでしょうか。
○荒木国務大臣 お答えいたします。
 警察は宗教法人をマークしながら調査はいたしません。刑事法規に係属する犯罪行為があれば、その宗派あるいは信条のいかんを問わず何人たりと捜査をいたしまするし、必要とあらば逮捕いたしまして、司法権にこれをゆだねるという職責を果たすだけであります。ある集団を目ざして調査はいたしませんことを申し上げます。
○塚本委員 公安委員長は、自分の所管だけのことしか言われないし、所管のことにつきましては求めなくても言われる、きわめて忠実な御答弁だと私は敬服いたしております。しかし、これはぜひ公安委員長に御要望申し上げておきますが、文部大臣からそのような要請がありましたときには御協力をいただきたいと御要請申し上げておきます。
 そこで、調査なさるというお話でございまするので、資料を取り寄せるという話でございますので、私は、その際、いまここにたくさんのいわゆる犯罪の数々というものが、不幸にして創価学会さんのものがあまりにも私は目につきました。そこで、この際、かつては立正佼成会庭野会長を呼んだ事例が国会においてはあります。よって、この際、われわれはいまこそ国政調査権を発動して、国民の前にこのような真相を明らかにする必要があると思います。したがって、これらのデータから見まするとき、この際創価学会池田大作会長を証人として喚問することを委員長に要求いたします。委員長においてそのような取り計らいをされたいことを私は要求いたします。
○中野委員長 塚本君の御提案でありまするが、証人喚問の件につきましては、すでに先ほどの御質問のときも申し上げたとおりでありまして、理事会において十分協議いたしましてしかるべく処置するつもりでおりますから、御了承願います。
○塚本委員 よろしくお願いいたします。
 たくさんの事象を私はここで出すよりも、しかし、いわゆるその問題でもって解明していただくほうが実は確かだろうと思っております。
 そこで、総理が常に言われております人間尊重、このことはきわめて大切なことでございます。にもかかわらず、政治権力とは違った意味におきまして、いま申し上げましたようにいわゆる特異な事件ではありましょうけれども、犯罪が構成されております。私はこのことを少し突っ込んで調べてみたのでございます。ここに異常心理学講座、宗教病理学というのが出ております。これは、東京医科歯科大学の犯罪心理司法精神医学研究室の小田晋先生でございます。この先生が、実はこの宗教と犯罪の問題について論述をしておられるのでございます。「われわれがここで宗教病理学というのは、宗教に関する病理学と考えていただいていい。宗教そのものの病理を扱うのではなく、異常精神現象としての信仰の病態を知ろうとするものである。心の病を持つ人の精神症状の中で信仰がどういう形をとってあらわれるかということを研究することから出発する」「宗教心理学と並び、またその中に含まれて、信仰をめぐる人間の営みのあり方をその異常な形において知ろうとするものである。」「信仰と狂気の主題は人間存在の根元にかかわる重要な問題になるわけであって、宗教における狂気、狂気における宗教性の問題に分け入っていくことの意義は非常に重いといえる。誤解をおそれずにいえば、この領域では本来の宗教体験と病的な異常体験は相交わり相接して起きてくる。もちろん、この両者の間の差は一歩が百里でもあるようなものでもあるが、どちらの場合にも日常的なあたりまえの体験の形とは違った、異常とはいわないまでも、非常な体験のあり方が見られるのである。だから人間存在をそのぎりぎりの状態において最高の高みから最低の深淵までを一つの断面として見ることのできる機会を宗教の病理学は、少なくともその可能性として提供してくれるのである。」こういうふうに私たちの宗教から犯罪へのいわゆる移行過程というものを専門家は分析いたしております。「宗教病理を分析、探求するため、その症例を当たってみるとき、驚いたことに十四例中十例までが創価学会に入会している患者であった」と著者は語っております。そしてこの中にも幾つか実はいわゆる宗教関係のそういう病理者を当たって、精神異常者を当たってみましたとき、ここにも出ておりますように、十六例中十例が実は日蓮宗系某新興宗教団体あるいは創価学会と明示しておりまするが、先生にこのことを聞いてみたら、全部創価学会さんと出て、回答をいただいたのでございます。こういうふうにいわゆる集団的な行動によりまして行なわれて、異常な問題が提起されてくるということでございます。ここに私が申し上げたいことも、いわゆる神聖であるものが実は神聖であり過ぎることによってそのような事態が起きてしまうということでございます。私はいまにしてこれらの問題に歯どめをかっておかなければ、宗教団体そのものが不幸な状態にもなってしまうのではなかろうか。そして総理が言われるいわゆる人間尊重という立場からも、多くの方々が言っておられます、入れ入れとうるさくてしかたがないというような声というものは、たいへん私たちは日常的に耳に聞こえてくるではございませんか。こういうことをはっきりとやはり人心の安定のためにもおとりになるべきだと私は思っております。ことさらに犯罪を教唆をなさることは断然ないと思います。だけれども、純粋であればあるほど、異常心理のほうに向いていってしまうと、この専門的な学者も明示いたしております。だから、このことについて、私はいわゆる人間尊重のたてまえから、厳たる御処置をとっていただきたい、こういうことを要望いたすわけでございます。いかがでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 簡単にただいま読み上げられたもの、もう信仰に入った者は全部異常精神状態だ、かように言うことはいかがかと私は思います。たまたま取り扱った例が創価学会員であったかもわかりませんが、しかしそういうように断定するわけにはいかないのじゃないかと思います。
 またもう少し説明をつけ加える要があるのじゃないかと思いますのは、外国あたりもいわゆるキリスト教何々というような政治団体がございます。このことを考えてみると、宗教そのものが政治活動をしていかぬというものじゃない、かように思いますし、私はおのずから信仰、政治、それが結びつく、そういうことはあり得るのだ、かように思います。したがって、ただいまのようにある学者の特殊な説明、これで全部を断ぜられることはいかがかと思う。私はこういうことはよほど慎重でなければならぬのじゃないか、かように思います。
○塚本委員 憲法第二十条の信教の自由がきわめてゆるやかに、そしてまたきわめて寛大に解釈をされております。したがって、いわゆる信仰の自由は、私はあくまでもこのことは確保していかなければならぬということは総理と同じ見解であります。しかし、にもかかわらず、かつて院で決議されましたように、私どもが耳にいたします風評におきまして、新聞等の犯罪事実を調べてみるとこういうような事象があります。そうして私が若干宗教病理の問題を調べてみるとこういう問題が出てまいりました。こういうことを踏んまえて考えていただきますると、この際やはり具体的に御調査いただくことが必要ではないか、かように思って、厳にこの問題に対して取り組んでいただきたい、このことを私は強く御要望申し上げるわけでございます。文部大臣どうでしょうか。
○坂田国務大臣 どういうことですか。
○塚本委員 実はこういうような事象がたくさんある。だから調べてみると、こういうようないわゆる宗教犯罪、そしてまた宗教病理というものがある。だから集団で行なわれる場合、意識的にそんな指導はしないけれども、しかし、純粋に強力にこのことを推し進められると犯罪につながっていく危険性があるということでございまするから、いまこそ、この際、実は文部大臣は十分このような犯罪にならないように、犯罪が起きた事象等を御調査いただいて、そしてその調査の結果に基づいて御判断いただきたいということでございます。
○坂田国務大臣 わかりました。先ほど申しますように、やはり政府機関よく連絡をいたしまして、いま先生が数々申し述べられました事柄について、その事実の有無をわれわれ自身として、やはり知らなければいかぬというふうに思うわけでございます。
 それからまたわれわれは、宗教団体の布教活動については、私が調査するその権限を実は持っておらないわけでございます、御承知のとおりだと思いますけれども、そういうこともあるわけでございますが、十分政府部内におきましては相談をいたしてみたいと思います。
○塚本委員 この問題はきわめて関係が深いようでございまするので、ぼつぼつ打ち切ってまいりたいと思います。総理も打ち切れというお合い図をなさっておるようであります。私は総理の勇断をほんとうに期待いたしております。実はこのことは町におきましてずいぶん言われておることではございませんか。おそらくこのことは政府各閣僚も、いわゆるうわさとしては必ず耳に入っていることが少なくないことも実は私どもは承知いたしております。だからこそ私は、慎重ではありまするけれども、厳とした態度で対処していかなかったならば、人間尊重のたてまえから、加害者に対する人間尊重が行なわれて、そして社会に対する人間尊重が行なわれないような事象ができたらたいへんだというふうに憂うるからこのことを申し上げるわけでございます。総理どうでしょうか。
○佐藤内閣総理大臣 塚本君の言われることもわからないではございません。私はもともと信仰の自由、これは尊重しなければならない。同時にまた、私どもが大事なのは、結社の自由、これは言論の自由同様に結社の自由も尊重しなければならない。また大事な政治活動、これがそもそも何やかやといって制限されること、これは困る。だからその根拠がなければならない、かように思います。先ほど来あげられた事例がそれを逸脱しているとかそれを無視しているとか、かように申すのではございません。そういう意味で、私は、塚本君の発言も正常化はなすべきだ、こういう立場からのお話だろう、かように理解しております。したがって、私自身善処すると、かように申しました。このことでおわかりがいただけるんじゃないだろうか。その中身は私申しませんけれども、すでに衆議院において決議が行なわれておりますから、またこれだけの長い時間を費やして意見が交換されております、このマイクを通じテレビを通じてみんな国民もそれを知っております。さような状態でございますだけに、それぞれの宗教団体の責任者の方々も、この成り行きについては非常な関心を持っておられることだと思います。したがって、いままでとはまた違うような状態になるのじゃないだろうか、またそういうことを期待しつつただいまのようなお話をしておるわけでございます。
○塚本委員 希望だけを申し上げて終わらさしていただきます。
 国民の権利は公共の福祉に反しない限り……。このことは憲法条項でありますることは御承知のとおりでございます。したがって、宗教団体を実は保護するために――保護という言い方は悪いかもしれませんけれど、干渉を避けるためにということでいわゆる公共が害せられることがあったならば、これはたいへんなことだといわざるを得ないわけでございます。そして宗教団体は、御承知のとおり、税の方面におきましてたいへんな実は保護を受けておると解されております。膨大な資金力を背景にして政治団体、結社をつくることも自由だからといって、いわゆる政治にこの力が介入をしてみたり、あるいはまた人身に対して、いわゆる個々の会員ではあっても圧力がましきことが行なわれるとするならば、きわめてたいへんだといわなければなりません。このことは宗教界全体の問題でございます。
 私は、憲法第二十条におきまする政教分離の問題についてもう少しお尋ねをしてみたいと思っておりましたけれど、時間が参ったようでございます。しかし総理は強い決意のほどを示していただきました。具体的に行動にあらわしていただきますることを強く強く要望申し上げまして、私の質問を終わらさしていただきます。
○中野委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。大野潔君。
○大野(潔)委員 ただいままでの塚本君の発言中には不穏当な点がございますので、速記録を調査の上、善処されんことを望みます。
○中野委員長 後刻速記録を調査いたしまして、実質上不穏当なところがあれば理事会において十分協議いたします。
○塚本委員 私は、個人の名前が出ましたので、もう一つ委員長にお願いしたいと思います。
 穏当か、不穏当かにつきまして、特別委員会を、そのことについてもつくっていただくことを要求いたしておきます。
○中野委員長 塚本君、ただいまの質疑は一応終了いたしましたが、あなたの御意見もありますが、先ほど申し上げたように、速記録を調査の上、理事会においてしかるべく措置をいたしますから……。
 明後三月二日は、午前十時より委員会を開会し、補正予算の審査を行ないます。本日は、これにて散会いたします。
    午後七時二十三分散会