第063回国会 予算委員会 第17号
昭和四十五年三月二十日(金曜日)
    午前十時十分開議
 出席委員
   委員長 中野 四郎君
   理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君
   理事 坪川 信三君 理事 藤枝 泉介君
   理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君
   理事 田中 武夫君 理事 大野  潔君
   理事 今澄  勇君
      足立 篤郎君    相川 勝六君
      赤澤 正道君    植木庚子郎君
      江崎 真澄君    小沢 一郎君
      大坪 保雄君    大野 市郎君
      大村 襄治君    奥野 誠亮君
      賀屋 興宣君    上林山榮吉君
      小坂善太郎君    笹山茂太郎君
      塩谷 一夫君    田中 龍夫君
      登坂重次郎君    灘尾 弘吉君
      西村 直己君    野田 卯一君
      羽田  孜君    浜田 幸一君
      福田  一君    藤田 義光君
      古内 広雄君    松浦周太郎君
      松野 頼三君    森田重次郎君
      赤松  勇君    川崎 寛治君
      北山 愛郎君    久保 三郎君
      楢崎弥之助君    西宮  弘君
      細谷 治嘉君    相沢 武彦君
      坂井 弘一君    古川 雅司君
      松尾 正吉君    麻生 良方君
      河村  勝君    竹本 孫一君
      東中 光雄君    不破 哲三君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 小林 武治君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 内田 常雄君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  宮澤 喜一君
       運 輸 大 臣 橋本登美三郎君
        郵 政 大 臣 井出一太郎君
        労 働 大 臣 野原 正勝君
        建 設 大 臣 根本龍太郎君
        自 治 大 臣 秋田 大助君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      保利  茂君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      山中 貞則君
        国 務 大 臣
        (国家公安委員
        会委員長)
        (行政管理庁長
        官)      荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣
        (北海道開発庁
        長官)
        (科学技術庁長
        官)      西田 信一君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 中曽根康弘君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      佐藤 一郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制局第一
        部長      真田 秀夫君
        防衛庁経理局長 田代 一正君
        経済企画庁調整
        局長      新田 庚一君
        経済企画庁国民
        生活局長    矢野 智雄君
        経済企画庁総合
        計画局長    八塚 陽介君
        経済企画庁調査
        局長      宍戸 寿雄君
        外務省アジア局
        長       須之部量三君
        外務省アメリカ
        局長      東郷 文彦君
        外務省経済局長 鶴見 清彦君
        大蔵省主計局長 鳩山威一郎君
        大蔵省主税局長 細見  卓君
        大蔵省関税局長 上林 英男君
        大蔵省銀行局長 近藤 道生君
        厚生省児童家庭
        局長      坂元貞一郎君
        農林大臣官房長 亀長 友義君
        農林省蚕糸園芸
        局長      荒勝  巖君
        通商産業省通商
        局長      原田  明君
        通商産業省繊維
        雑貨局長    三宅 幸夫君
        中小企業庁長官 吉光  久君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      佐々木 直君
        予算委員会調査
        室長      大沢  実君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十日
 辞任         補欠選任
  川崎 秀二君     塩谷 一夫君
  上林山榮吉君     小川 半次君
  小坂善太郎君     羽田  孜君
  西村 直己君     浜田 幸一君
  福田  一君     小沢 一郎君
  沖本 泰幸君     古川 雅司君
  竹本 孫一君     麻生 良方君
  谷口善太郎君     東中 光雄君
同日
 辞任         補欠選任
  小沢 一郎君     福田  一君
  塩谷 一夫君     川崎 秀二君
  羽田  孜君     小坂善太郎君
  浜田 幸一君     西村 直己君
  古川 雅司君     矢野 絢也君
  東中 光雄君     谷口善太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十五年度一般会計予算
 昭和四十五年度特別会計予算
 昭和四十五年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○中野委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算、昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、昨日に引き続き、締めくくりの総括質疑を行ないます。竹本孫一君。
○竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、予算の一番重大な問題である二、三の問題を重点的に質問いたしたいと思います。
 まず、佐藤総理は、総理大臣として長い間おつとめになり、大臣もレコードとしては百三十四名おつくりになったというお話でございますが、その間数々の業績をあげられたと思います。野党でありましても、その点われわれは率直に評価をいたすものであります。ことに外交問題につきましては、沖繩の問題をはじめ、数々の困難な問題に取り組んでいかれた御努力に対しては、敬意を払いたいと思うのであります。しかしながら、まだ残された問題が幾つかあります。特に総理も内政

の年とことしは規定をされておりますように、内政上にも幾つか重大な問題がほとんど未解決に、もしくは矛盾を拡大して残されておると思いますが、そうした問題を中心にきょうはお伺いをいたすのでございます。
 まず最初に、社会開発を言われる佐藤総理で、私どもが強く期待をいたしておりました児童手当の問題でございます。
 これは、御承知のように、家庭生活の安定、児童の健全なる育成のために必要だということで、総理も四十年一月二十五日の衆議院における施政方針演説においてその旨を申され、さらにその後引き続きましてたびたび国会においても言明をいただいておるわけであります。もちろん、その間厚生省においても、四十二年十一月でございますか、児童手当懇談会ができて準備を進めておられましたけれども、総理としても四十三年度にはこれを実現したい。四十四年度にはこれを実現したい、四十五年度には実現したいとたびたび言明をいただいているわけでございますけれども、実は今年度の予算にもそれが実現を見ていない。こういうことでございまして、まことにこれは社会開発を言われる総理としては、内政上の大きな残された問題の一つであろうと思うのであります。
 そこで、私は、これは結論だけお伺いをするわけでございますけれども、一体児童手当の問題については、もう世界の六十数カ国が実現をいたしておりますし、総理もたびたび言明をいただいている問題でございますので、この辺で、予算委員会の最後の総括でございますので、何年度にはほんとうにこれを実現される御決意であるか、その御決意のところをお伺いいたしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 もう多くを言う必要はないようで、ただいまも事情を御存じのとおりでございます。政府としてこれが早く、その時期を明確にすることができないこと、私は何とも申しわけなく思っております。ことに積極的に児童手当を創設しようと、かく申したのが私自身でもありますし、そういう意味からこれをただいまもなおその時期が明確に申し上げられないことはいかにも残念であり、遺憾しごくでございます。しかし近く審議会から答申も出ることだ、かように期待しておりまするので、答申を得た上で私どもがさらにこれを具体化する、その努力を続けたい、かように思いますので、御了承をいただきたいと思います。
○竹本委員 審議会の答申は相当早く出てくる予定のようでございますが、私がお伺いいたしたいのは、なるべく近い機会にということでなくて、最も早い機会に実現をしていただきたい。四十六年度においてもなお実現するということがここで御言明がいただけないような状態でございますか。
○佐藤内閣総理大臣 この答申の内容というものはまだ窺知できません。いろいろ私どもが伺っておるところだと、基本的なものの考え方にも相違があるようでございます。したがって私は、どんな、われわれが取り組み得るような答申が得られるかどうか。もっと明確にいえば、第一子から、あるいは第三子から、こういう問題がありますし、あるいは企業の負担の問題がございますし、また総額の問題、もちろんあります。それらの点をも勘案して、この際に明確にしなければならない。私は、その答申自身が非常に固まっておるものだ、かように思っておりましたら、意外にそこまで進んでおらない、かような実情でございますので、ただいま明確に申し上げかねておる、こういうことでございます。
○竹本委員 民社党といたしましては、この問題については特に熱意を持って取り組んでおる問題でございますし、また、いまお話しのように、第一子からか、第二子からか、第三子からか、また金額は幾らにするかということについて議論をすれば、これは限りのない問題だと思いますので、トライアル・アンド・エラーでまずスタートをさせるということが根本の問題だろうと思います。どうか総理において、この問題についてはぜひとも四十六年度には必ず実現するという決意を持って取り組んでもらいたいことを要望いたしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまの民社党の強い御要望、これも承知いたしております。民社党だけでなく、与党内でも非常に強い要望を持っておりますし、また公明党等からもしばしばこの問題が、また各党からこの問題が出ております。そういうことを考えると、これは国会のいま世論になりつつあるのじゃないか、かようにも思っております。ただその金額がなかなか一致はしない。またその負担個所もなかなか一致しない。そこらにも具体化するのに困難な問題がございますから、これをできるだけ早目に答申を得て、そうしてコンセンサスをつくりたい、かように考えております。
○竹本委員 第二の大きな残された問題としましては、私は物価の問題があると思います。きょうはこの問題に少し本格的に論議を深めてみたいと思うのであります。
 きのうも夕刊で読みますと、マイホームの夢が破れて、深川の製本屋の奥さんが子供二人道連れにして、非常に気の毒な無理心中をされたという記事を読みましたけれども、原因はやはり家が持てない。値が高くて物価が上がってどうにもならぬということにありまして、最近におけるいろいろな問題の中で、私は、物価問題が百悪の根源だというぐらい非常に大きくこの問題を真剣に考えておるわけでありまして、きょうは、本格的にこの問題に少し取り組んでみたいと思うのであります。
 御承知のように、私どもが、物価の問題で、たいへんこの値上がりが最近激しくなったということを感じておるわけでございますが、一月には卸売り物価も上がり過ぎるほど上がって、あるいは四・五%ぐらい上がっておるではないかといわれておる。消費者物価の問題になりますと、七・八%上がったということをいわれておる。そこで私は、二月、三月、最近一番近いところで消費者物価並びに卸売り物価は、対前年比で幾ら上がっておりますか、伺いたいと思います。
○佐藤(一)国務大臣 お答え申し上げます。
 卸売り物価につきましては、一月が四・五でございます。それから、消費者物価につきましては、一月が七・八でございます。
○竹本委員 まだ二月、三月はそれからますます上がっておるということも頭に入れてこれから議論をしていきたいと思うのでありますが、最初にインフレの問題をお聞きしたい。特にインフレの定義について承りたい。
 私がかつてこの委員会において、宮澤さんが当時経済企画庁長官であるときに伺ったと思うのでありますが、記憶に間違いがあるかもしれませんが、そのときに政府は、いまの経済はインフレではないのだというお話がありました。私はもうインフレになりつつあるのだということを申しましたが、問題は、インフレというものさしによってきまりますので、一体、政府の考えられておるところでは、インフレとは何であるか、何ぞやということを伺いましたときに、宮澤さんがお答えになりましたのは、定期預金の利子を上回るほど消費者物価が上がってきたならば、その場合にはインフレといわれてもいたしかたないだろう、こういう御答弁があったと思うのであります。宮澤さんはいま所管が変わりましたけれども、そういうお考えに変わりはありませんか、伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 そういう御議論があったことは記憶いたしておりますが、私の記憶によりますと、私がインフレと考える一つの条件は、やはり換物運動が起こるということが一つの要件ではないかと私は思いますと申し上げました。しかし、他方で消費者物価が定期預金の利子を上回るようであっては、これは経済政策としてはやはり問題があるのではないかということは、確かに申し上げました。
○竹本委員 現在の企画庁長官の佐藤さんのインフレに関する定義を承ります。
○佐藤(一)国務大臣 いろいろと御議論もあるようでありますが、私どもは、消費者物価の高騰が非常に長期にわたる場合、そしてかつ卸売り物価もともに相当に高くなり、これが継続的に続く場合でありまして、同時にいまお話がありました換物傾向が一般化してくる、貯蓄率の低下が相当起こる、こういうような状態を言うものと思っております。
○竹本委員 西ドイツの連銀副総裁のエミンガー氏が、一月でございますがパリへ行きまして、新聞記者招待の昼食会で円の切り上げの問題について質問を受けて、そのときにこういうことを言っております。日本はインフレによる調整を受けておる、物価上昇率は年間六%をこえており、このようなインフレは西ドイツでは考えられない。したがって、日本は物価、賃金の上昇、需要の拡大によって円の切り上げを回避していることが十分考えられる、しかし、そのような政策には限界があるのではないだろうかということを言っておるのであります。これはいろいろな内容を含んでおります。まず基本としては、円の切り上げは望ましいがまだいま切迫したとはいえないというのが、別のところでも言っておるわけで、いまの日本は、海外物価の値上がり等が国内に響いてくる。それを受けとめるのにいろいろ方法はありますけれども、円の切り上げをやって、そこで値段を引き下げて国内物価政策に使う――まあマルクの切り上げはそういう形でございますが、そういう態度をひとつとるか。そうではなくて、海外物価のはね返りをそのまま受けとめて、少しぐらい物価が上がってもがまんするということで、経済をインフレにすることによってその影響をそのまま吸収していこうという考え方と、御承知のように二つあります。この副総裁が言うのは、日本はインフレによる調整を考えておる、年間六%以上上がるというようなことはわれわれドイツ人には考えられないことである、しかもこれはそう長くは続かないだろう、いろいろなことを言っておるわけであります。まあ円の切り上げの問題はあとで論ずるといたしまして、私は外国がもうすでに日本はインフレをやっておるというふうに見ておるということと、のみならず、インフレを計画的にやっておるのだ、政策としてやっておるのだというところに大きな問題があると思うのです。
 そういう意味で、私はこのインフレの問題を、きょうは、定義なんというのはごまかしができますからあまり追及いたしませんけれども、いかに物価が上がっておるかということを、これから具体的な数字について議論をしてまいりたいと思います。日銀総裁があとで見えるそうでありまして、物価の値上がりにつきましてはもう手をあげたような発言がこの間ありましたので、この問題も関連をいたしますが、特に私がこれからお伺いするのは、来年度の経済見通しによれば、消費者物価四・八、卸売り物価一・九の値上がりになるだろうというふうに出ておるようでございますけれども、そうであるかということが一つ。
 それから次には、経済企画庁長官がよく御存じだと思いますがげたの問題です。物価が一年間ずっとこういうふうに上がってきます。それを平均して、ここと、この間の年度末の値上がりがげたといわれるのでありますが、要するにそこから新しい年度が始まるわけです。これは総理にも聞いていただきたいのですが、物価が上がると非常に困る問題であり、インフレを計画的にやっておるとさえ外国では言っておる。その物価の値上がりの問題について、経済企画庁をはじめ政経の決定した経済の見通しによれば、これから一年間のわれわれの消費者物価は四・八、卸売り物価は一・九、こういうのです。これが科学的根拠があるかどうか。努力目標といえば、どんなところだって何でも言えますから、そういうばかげたことではなくて、やはり現実性を持った政治の課題として四・八%におさめ得るのかどうかということがこれからの問題であります。また、どうしておさめるかということが、われわれの大きな課題であります。
 そこで、私は真剣に伺うのですけれども、四・八%の中にはげたが一体幾ら入っておるかということをまず伺いたい。ついでに、去年のげたもわかれば一緒に伺いたい。
○佐藤(一)国務大臣 いま御質問の消費者物価についてお答え申し上げますと、大体二・五くらいのげたが見込まれると思います。昨年の分がたしか三%近いものであります。ちょっと正確な数字はありませんが、約三%とお考え願います。
○竹本委員 いまちょっと聞き漏らしましたけれども、昨年の分が私の調べておるところによりますとげたは二・二%であります。ことしのやつはあとでもう一度よく承わることにいたしたいと思いますが、それで四・八ということにしますとその間、余裕ですね。ことし上がる余裕、もうことしというか、来年度ですが、年度の始めにこれだけ上がってきておるわけですから、年度間に上がる余裕というものは、そのげたの分だけ差し引かなければいけない。その余裕の分が幾らありますか。ことしの分と、はっきりしてください。
○佐藤(一)国務大臣 お答え申し上げます。四・八と二・五ですから、二・三の倍ですから四・六であります。
○竹本委員 いまの二・六、四・八と二・二五とすれば二・六五の間違いだろうと思います。
 そこで私は伺いたい。総理、ちょっとこまかくなりますけれども、これは重大な問題ですから、ひとつ真剣に聞いていただきたいと思うのですが、去年はげたが二・二%あって――去年というのはいまの年度ですけれども、消費者物価が大体六%上がります。そうすると大体四%くらいぐっと上がっていったわけですね。ことしはスタートが、いま二・二五というお話でございますけれども、これはあとで伺いますけれども、実はとり方が間違っておると思うのですよ。あるいは不十分だと思うのです。私は大体三・〇くらいに見なければだめだと思うのです。かりに二・二五としても余裕は二・六五しかないのです。去年は二・二が四近く上がって六・〇になっておるとすれば、あと二・六五でどうしてそれをおさめることができますか。
○佐藤(一)国務大臣 先ほど申し上げましたのはげたが二・五と申し上げたのです。そこでわれわれが目標といたしておりますのは四・八でございます。二・五と四・八の差でございますから二・三なのですが、ただしこれは年を通じてのものでございまして、ずっと上がってきますから、ちょうどそれを倍の余裕があるわけです。ですから、この差の二・三の倍の四・六のいま余裕はございます。
 それから、先ほど昨年のげたを申し上げましたが、これはちょっと私が間違えまして、御指摘のように二・二でございました。
○竹本委員 まあこまかい数字で、これだけでやめますけれども、私が申し上げたいことは、去年は、大体政府の予定からいいましても、あるいは事実から申しましても、三・五からあるいはもっと余裕があった。ことしはもう余裕が二・三しかないんですね。そうすると、去年以上の勢いでいま物価が上がっているときに、去年以下の値上がりの前提、計算で四・八という数字を出すということは、全く私はこれは根拠がないと思うんですね。去年二・二のげたがあって三・五の余裕があったとしても、ことしはかりに四・八とすれば、二・五ならば二・三しか余裕がない。こういうことになりますと、物価の値上がりの情勢から見て、このげたから見ても、この四・八という数字がほとんど根拠に乏しい。これはとても実現は不可能である。したがいまして、物価はいよいよ上がっていくという、インフレマインドがいよいよできると思いますけれども、経済企画庁におきましては、ことしは余裕は少なくても四・八におさめてみせるんだという特に自信のある根拠があるのならば、それも伺っておきたいと思います。
○佐藤(一)国務大臣 私たちが四・八という目標を立てましたにつきましては、御存じのように四十四年すなわち本年度は、消費者物価が総合でもってたいへん上がります。政府の見通しの五・七をこえて六になろうと思います。そういう情勢になってきておりますが、これは御存じのようにほとんど季節商品によるものでございます。この季節商品の昭和三十六年以来の異常高、こういうことが大きな原因になっております。でありますから、この季節商品を除きましたその他のもので考えますと、大体五%ぐらいのところになっております。そういうことで、われわれとしては、従来の政策であるところの基本的な構造政策その他を進めるばかりでなく、公共料金その他の抑制の大きな方針を立てましてやってまいる。そして、この季節的な商品につきましては、これも野菜等については、従来の例から申しましても、いわゆるサイクルの関係もございます。ことしの異常高ということを、これは捨象して考えていいのじゃないか。しかし、ある程度の値上がりはもちろん予定しなければなりませんが、それらを計算いたしましても大体四・八ぐらいのところにおさまるであろう、こういうふうに思っております。
○竹本委員 値上がりというとすぐ季節商品をはずすということでございますけれども、これは単なる政府のごまかしといいますか、あるいは数字のとり方の技術にすぎない、テクニックにすぎないと思うのですね。というのは、はずされたものがわれわれの生活に関係ないものならいいんだけれども、実ははずしたものが一番大事なわれわれの野菜の問題だ。そういう場合に、野菜は別です、それははずしてみればこんなことになりますと言ってみて、議論のための議論にはなるけれども、一体国民の生活を守るという立場から考えた場合に、こういうことはナンセンスだと思いますが、総理、いかがでございましょう。
○佐藤(一)国務大臣 別に物価指数からはずすという意味ではございません。もちろん生鮮食料品、国民の生活でたいへん重要なものでございます。ただ、季節商品を除いた分が大体五%ぐらいで安定をしておりますからして、あと問題は季節商品がどうなるかということでございますけれども、これも大体こうした十何年ぶりの異常高というのがことしの例でございますから、これを平年よりやや少しぐらい来年も高くなると見込んでみましても、大体四・八ぐらいのところには落ちつきそうである、こういう説明を申し上げたわけです。
○竹本委員 総理、いかがですか。
○佐藤内閣総理大臣 いま企画庁長官が詳細にお答えをいたしました。しかし、私は、いま御議論になっておるように特殊なもの、ことに季節商品、そういうものを除外するという、そういうことでは困る。消費者物価が一番問題になっておるのは、われわれの台所に直結するものがいまの議論の対象になっておる、かように考えますので、そういう点をさらに掘り下げていかなければならぬだろうと思います。私は、この一般物価の動向、景気動向等から批判されるものもございますが、特殊な事情によるものもありますから、その特殊事情というものを掘り下げていって、一つ一つこまかな対策を立てることが望ましいんではないだろうか、かように思っております。
○竹本委員 特殊事情ということで、いまの季節商品の問題でございますが、野菜が上がったからということでよく説明をされるんです。ところが、野菜はなぜ上がったかというと、お天気の関係だと言われる。そうしますと、佐藤内閣の経済政策はもうおてんとうさま次第だということになりまして、これは全くナンセンスだと思うのです。一体野菜も、野菜は下げなければならぬと言われて、毎国会われわれも話は聞いている、御説明は聞いているんだけれども、ひとつ主管大臣から伺いたいが、野菜は下がることはあるのか、いつ下げるのか、どういう見通しを持っておるのか、そのことについてひとつ主管大臣から伺います。
○倉石国務大臣 異常乾燥のために出荷がだいぶおくれましたことは、御承知のとおりであります。いまはそういうことについて事情は解消いたしておりますので、御承知のように野菜価格はだんだん安定してきておりますが、万博のような一時的なものがございまして一部に偏在する傾向がございますので、そういうことに対する手当てをいま私どもは一生懸命でやっている最中であります。
○竹本委員 だんだん承っておりますと、物価の値上がりはお天気さまと万博の関係みたいなようなことになっちまいますが、季節商品の問題はこのぐらいにして、ついでに、いま万博の問題が出まして、まあ世の中には万博が終われば物価が下がるだろうと言う人もおる、また万博が終われば日本の経済が不景気になるのではないかと言う人もおります。そこでちょっと一つだけ関連して伺っておきたいが、万博特需というものは、一体政府はどのぐらいに計算しておられるか、伺っておきたい。
○宮澤国務大臣 大体百万人程度の外国からの来訪者を見ておるわけでございますが、それがどのぐらいの特需になりますか、計算をいたしたこともございませんのではっきりいたしません。たいして実は考えていないということでございます。
○竹本委員 次へまいりまして、この大事な物価の問題について総理にお伺いしたいのですが、一体政府の取り組む政治姿勢、これもこれからもまだ論議をしていきますが、まず行政の面で一体物価の主務官庁というのはどこであるか、またどういう法的な権限を持っておるか、まずこれをひとつ経済企画庁に伺いたい。
○佐藤(一)国務大臣 この経済企画庁の設置法にも規定してございますけれども、これは基本的な政策の企画立案と、それから各省間にわたるところの調整でございます。この調整は二つございまして、基本的な政策というものと各省の政策とが一致するようにという問題と各省相互間の調整、こういうようなものを持っております。
○竹本委員 総理、いまお聞きになりましたように、経済企画庁というのは、普通常識では物価の主務官庁というようなことになっておるけれども、実は各政策の企画立案と官庁間の連絡調整だけなんですね。でありますから、ほんとうに物価問題に責任を持って取り組んでいくという体制にこれは弱いとぼくは思うのですね。でありますから、その弱い例を申し上げますと、宮澤さんのときのことだけれども、宮澤さんが経済企画庁長官のときに、総理も御存じだと思いますが、ビールの値上げの問題がありました。百二十七円を百三十円にするという、三円値上げをすれば、ビールの生産が四十億本ありますので百二十億円会社はもうかる。つり銭に困るだろうとかなんとかうまいことを言いまして、実際は百二十七円を百三十円に上げました。しかし、ビールの値を上げるということはたいへんな問題だということで、政府も、総理も御苦労いただいて、何とかこれを押えろということを言われたことも私覚えております。ところが、その旨を受けて、経済企画庁長官であった当時の宮澤さんが、ビールの会社四社に申し入れをされたということも聞いております。しかし、聞いただけで、政府は政府、会社は会社ということで、ビール会社は政府をほとんど問題にしないで、翌日でしたか、翌々日でしたか、ぽんと三円上げてしまいました。それに対して経済企画庁は何にも言えない、何にもできない。宮澤さんのせっかくの努力はビールのあわぐらいのものだ。全然政策効果は持たなかった。こういうことに対して、総理何かお考えがありませんか。
○佐藤内閣総理大臣 いままでのこの物価問題が、しばしば縦割り行政の弊害だ、こういうことが指摘されております。政府としては、そういうことがあってはならない。やはり、政府の責任で各官庁の意向を統一するという、そういう場合の中心になるものが、ただいま経済企画庁でございます。そのために、しばしば連絡閣僚会議を開いておる。そうして、各省でまちまちな行政にならないように、また、その下の担当官会議もございます。そういうものが実際には動いておる。こういうことで、政策にそご、不統一を来たさないようには努力はしております。ただ、ただいま言われたような問題が結果において出ておる、こういうことでおしかりを受けておるような次第でございます。
 もう一つ、ただいまの政府行政機関間の問題だけでなしに、もっと大きな会議もございまして、これはもう各界、各層の方々で、物価問題の懇談会、審議会を設けている、こういうようになっているわけでございます。
 仕組みとしては、一応形は整っておるし、私自身がそういうものを指導しておるということでございますから、私自身、いまのところで不十分だとは思わない。しかし、もっと実効があがってしかるべきだが、どこに実効があがらないのか。これはもう、もう少し私が責任を負うべき筋のもので、おしかりを受ける、これは当然だろうと思います。
○竹本委員 総理は、機構の面ではあまり不十分な点はないということをおっしゃったようですけれども、私は、いまの経済企画庁の権限で物価の問題に本格的に取り組んでいくということは、ほとんど不可能なぐらいにむずかしい問題だ、決して十分でない、これは見解の相違になりますが、そう思います。
 のみならず、物価というものは、経済政策全体の矛盾がうみとして物価に出てくるわけですから、全体の施策の総合計画化といいますか、調整と申しますか、これが必要だ。それも、総理もその必要を認めて、かつて内閣補佐官ということを言われたとぼくは思うんですね。これも、何か新しい行政上の一つのエポックメーキングな努力だというような宣伝をされて、当時真剣に取り上げておられるような気がしておったけれども、そのうちどっか流れて、「風と共に去りぬ」というようなことになってしまった。あの問題は一体どうなっておりますか。
○佐藤内閣総理大臣 これもいろいろ行政管理庁で研究はしておると思いますが、いまの行政機構そのものの基本に触れる問題でございますから、必ずしも簡単に結論は出てこないようであります。
○竹本委員 しかし、簡単に結論が出ないとおっしゃるけれども、結論を出して案をつくって、もう通そうというところまでいったんでしょう。それを、忘れたように消えてしまったことが、私第一無責任だというわけですね。そういう点はどうですか。
○佐藤内閣総理大臣 これはやはり、いままでの行政機構そのものの基本に触れる問題ですから、それぞれの一応の担当という部署がございますので、担当の部署をきめないような補佐官制度というものについては、まだなかなかなじみが薄い、そういうことで、これが実現しなかった、かように御了承いただきたいと思います。
○竹本委員 総理の御答弁によりますと、結局、内閣補佐官は十分検討はできていなかったということになりますが、そういうことでよろしゅうございますか。――私は、いずれにいたしましても、内閣の総合機能というものはやはりこれから強めていかなければいかぬと思うのですよ。そうしなければ、ことに、各省それぞれの分裂行進をやっておるというような今日のセクショナリズムと行政のあり方からいえば、内閣において集約をしていく機能がなければ、たいへん行政の面ではロスが多くなり過ぎる。ぜひひとつ真剣に考えて、今度は、あとで忘れないような責任のある案を出してもらいたい。要望いたしておきます。
 そこで今度は、具体論で卸売り物価の問題に入ってまいりたいと思いますが、日銀が四十四年十一月に出しました「最近の卸売物価の上昇をめぐる問題点」、このものを読んでみますと、結論はいろいろありますけれども、物価を上げるのはやはり内需であるという結論になっておるようであります。さらにまた、経済企画庁が本年初めに「四十四年の経済の回顧」というものを出しましたけれども、それは非常に重大な内容を持っておる。その内容を詳しく申し上げる時間もありませんけれども、物価が値上がりする場合には三つの原因が指摘してある。第一、五割までが内需であります。需給の関係から出てくる。需給といいましても、輸出よりも内需関係が中心です。それから、三割ぐらいが海外の影響だ。あと残った二割が賃金である。こういうふうに、賃金の値上げ、ベースアップの関係だということになっておる。いろいろの資料をずっと見てまいりますと、大体において、物価の値上がりというのは、需要が一ぺんに殺到するということが一番大きな原因である、こういうふうに私は考えるけれども、経済企画庁長官の御意見をあらためて伺ってみたい。
○佐藤(一)国務大臣 ただいまの御指摘の点は、四十四年度の上半期の情勢というものを企画庁で分析した結果でございますが、総観いたしまして、やはり私も、需要の強さというものが今日最も物価上昇において大きな役割りを果たしておる、特に卸売り物価においてはその感が強い、こういうふうに感じております。
○竹本委員 ここでひとつ経済企画庁の責任ある御発言として、需要の強さというものが物価値上がりの大きな原因であるということを第一にひとつ確認しておいてもらいたいんです。これからの議論はそれから出発をいたします。
 もう一つ、これに関連いたしまして、マネーサプライの問題をひとつ伺っておきたい。もちろん、これも需要の強さというものがあって、需要があるから金が出ていくんですから、他の反面でありますが、後の問題と関連をいたしますので、私が調べたところによれば、大体こういうことになっています。総理、これは大きな流れの特色を私はつかまえてみると、こういうことだと思うのですね。大体日銀券が二〇%増発されると、四半期のうちの一つ、一四半期おくれて大体GNPがふえていく。生産が上がっていくわけですね。日銀が貸し出しをやって、それから生産が上がっていく。さらに、もう一四半期おくれて、今度は卸売り物価が上がっておるというふうに私は理解するんです。
 そこで、需要が強いということが物価を上げるんだ。物価を押えるということが佐藤内閣の大きな経済政策の根本課題だということになりますと、どうして物価を押えるかということについて、科学的な取り組み方をしなければいかぬと思うのですね。その一つとして、いまのマネーサプライというものを考えてみた場合に、日銀券を放出して、一四半期おくれてGNPがふえて、もう一四半期おくれて卸売り物価が上がる、こういうことになれば、通貨の増発というようなこと、これは経済学でもいろいろ異論のあるところで、通貨数量説を私はここで言おうとは言いませんが、しかし現実に日本においてそういう勉強、調査をした人もおります。日本の動きも大体一四半期ごとおくれて、ときによって違いますけれども、そういうふうに上がっていくのだということがありますので、私は、マネーサプライが急増するということはやはり押えなければならぬだろうと思うのです。このことは、あとで物価安定政策会議でも指摘をいたしておりましたので、私はあわせて申し上げておるわけでございますが、いずれにしましても、卸売り物価というものも需要の強さが原因だということだけを確認をしていただきたい。
 第二に、消費者物価について申し述べてみたいと思いますが、時間がありませんので私のほうから申し上げますが、消費者物価の値上がりというのにも、あるいは低生産部門の関係で上がってくるのだという説明もあります。あるいは消費需要が多過ぎるからだという考え方もある。あるいはカルテルとか再販価格維持制度といったようなもののために不当に価格がつり上げられているのだという意見もある。また、いま申し上げました、卸売り物価が上がれば当然に消費者物価が上がります。
 なお、この点について経済企画庁に聞きたいが、最近においては卸売り物価の値上がりが、先ほど来言うように決定的になっております。その卸売り物価の値上がりが消費者物価にどのくらいはね返ってくるかということについて、消費者物価上昇の寄与率として卸売り物価はどのくらいになっておるかということについての経済企画庁の御意見を伺いたい。
○佐藤(一)国務大臣 卸売り物価と消費者物価との物価指数上における共通品目といいますか、大体三割ちょっとぐらいだと思います。でありますからして、大体影響をはかります際にこれをどの程度に見るか、この正確な寄与率は、卸売り物価としての寄与率はございませんけれども、大かたの見当がここいらにつくと思います。
○竹本委員 私は、寄与率も大体三割ぐらいに見ているのです。これは議論をする時間もありませんが、いずれにいたしましても、卸売り物価が上がる。低生産部門の問題は、総理、これから力を入れるというのだけれども――私は、物価を下げるという問題で言います。物価を下げなければいかぬ。消費者物価を下げなければならぬ。その消費者物価を上げている原因はいま並べました。その中で役に立ちそうなものを、これからいまどれを押えていけば消費者物価を下げられるかということをひとつ考えてみたいのです。
 その第一に、上がる原因の一つの、低生産部門のいまの農業とか中小企業のものは人手も足りないし、合理化も徹底しないのでなかなか下がらないのだ、そこは上がっていくのだ、こういうことでまた消費者物価が上がる。けれども、これは政府も努力をされておりますけれども、そのためにあした物価が下がるというところまで効果を期待することは、ほとんど不可能であります。これはだめ。消費需要の問題で、ベースアップあるいは労働階級の所得の問題があります。百貨店の売れ行きもいま大体二〇%ずつふえている。賃金収入も大体一七、八%ぐらいふえている。これを押えることができるかというと、とっぴな所得政策でもやれば別ですけれども、いまの段階でこれを押えることも実際問題としてなかなか不可能であります。そうすると、あと卸売り物価はどんどん上がっておるんだから、そのまたはね返り、これを避けることもいまのままじゃできない。一体どこを押えて消費者物価を押えていこうとされるのか、その点を私は聞きたい。上がる原因のどこをふさげば物価を押えていくことができるのか。この点について消費者物価を四・八に押えるんだとおっしゃるが、しかも先ほど申しましたように、げたがあって余裕が幾らもない。しかも上げておる原因のどこを押えればうまく押えることができるのか、ひとつはっきりした御答弁を願いたいと思います。その前に一体再販価格維持制度というものについては、これも物価の値下がりといいますか、そういうものをじゃましておるのでありますから、その点についてどういうお考えであるか、あわせて伺いたい。
○佐藤(一)国務大臣 消費者物価の抑制の対策はいろいろございます。何といいましても、基本的にはいわゆる構造対策、いま竹本さんから、これはだいぶ時間がかかるというお話がございましたけれども、これも、たとえば昭和三十年代の後半の六%台が昭和四十年に大体五%台になったというような点を見ましても、構造対策というものはうまずたゆまずやはり続けていく。これはやはりじりじりと効果をあげていくものである、私はこういうふうに感じております。そういう意味でこれが第一の基本であろうと思います。
 それから、しかしながら、いずれにしても競争条件をできるだけ十分にしなければいけませんが、これらについては、一つはやはり需要をある程度押えませんと、十分な自由競争というものが実現いたしません。そういう意味におきまして、需要というものをやはりあまり行き過ぎないように抑制をはかる。現在金融の引き締めをやっておりますが、これは卸売り物価対策であるばかりでなく、同時に消費者物価に対しても大きな効果を持つ、こういうふうに考えております。なお、そのほか同じくやはり競争条件をできるだけ実現するという意味においては、輸入の観点からこれをできるだけ自由化を行ない、かつまた輸入政策を弾力的に運営してまいる、こういうこともわれわれが考えておるところであります。それらの前提として、公共料金をできるだけ抑制してまいる、これもわれわれの対策になっております。
○竹本委員 再販価格の問題でどなたか御答弁されますか。
○佐藤(一)国務大臣 再販価格の問題につきましては、公取委員会の考え方というものも十分参照いたしまして、そうしてこの物価対策上は、これについても今後十分に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
○竹本委員 いろいろ長官から御答弁がありましたけれども、やはり項目をたくさん並べられるだけで、私が聞く、どこを押えて消費者物価を押えようとしておられるのであるかということについては、どうも明確な御答弁に受け取れません。なるほど構造対策は必要――私が言うのは必要だけれども、ことしの間に合うのはどのぐらいかということを言っておるわけです。これはたいして間に合わぬ。需要を押える、金融引き締めの問題が出ました。これも一つの方法でありまして、あとで日銀総裁が見えたときに十分論議をさせていただきたいと思いますが、問題は、財政が、需要を多くするか少なくするか、景気をよくするか悪くするかという問題について、今日の新しい段階では一番大きな役割りを持っておると思うのです。現に福田さんが大蔵大臣になられたときは、不景気だったときにはポリシーミックスという新しいスローガンのもとに公債発行にも踏み切られて、そして需要をかき立てて、これで景気を出された、うまく成功されたというか、やっておられた。そういうわけで、これから先は、景気を動かすにも、あるいは物価を動かすのも、財政の役割りというものがものすごく大きいと思うのです。
 そこで私が言いたいのは、消費者物価を押えるについては、経済企画庁長官も言われるように、需要を押えなければならぬ。その需要を形づくっておる一方の面の一般庶民の賃金収入その他を押えるわけにいかない。これは世界的なものだ、大きな流れだ。そうすると、残ったものは、財政面から来る財政需要と一口に簡単に申しますが、そういう面を押えていく以外にないと私思うのです。そういう意味で財政をただ数量的に少なくさえすればよろしいというチープガバメントを言おうとは思いません。内容がむしろ問題でございますから、内容の問題のほうがより大事でございますが、同時に量的にも大事な問題なんですね、財政というものの影響が大きいから。これは大蔵大臣はよくお考えいただいておると思いますけれども、特に質的経済の成長ということを今度の財政演説でも言われたわけでございますから、その大蔵大臣が編成される予算をずっと見ておりますと、質的成長にプラスの方向に動いておるかマイナスの方向に動いておるかということについては、遺憾ながら私は意見を異にする。
 私は、いま昭和三十五年以来の日本の一般会計歳出予算というものの伸びをずっと見てみます。三十五年が一六・七、次は一九・四、三十七年は二一・六、次は一九・三、次は三十九年と四十年は少し少なくて九・三と一二・一、四十一年は一九・六、四十二年度一六・二、四十三年度一三・七、四十四年度一三・九、今度は大体一八%、こういうことになっておるのです。日本の財政は、総理、伸びる一本やりです。途中でスローダウンしたことは一ぺんもありません。四十年の不景気のときに一ぺん下がったくらいのものだ。毎年、毎年一〇%、一五%、昭和二十四、五年には二四%くらい伸びたこともある。そういうふうにのぼり一本やりの財政、どんどんふくれあがるばかりであって、どこにも引き締めがないという財政のあり方、そういうものは、私は、ちょうど政治において政権交代のない民主主義はないといわれておると同じように、財政政策においてもどこかでのぼるときもあれば次には下るときもなければ、経済全体が引き締まる、緊張というものがないのです。のぼり一本である。こういうあり方には私は非常に危険を感ずるし、心配をするのでございますが、総理、ひとつお考えはどうでございますか。
○福田国務大臣 お話はまことにごもっともでありまして、昭和四十五年度を展望しますと、やはり産業体制、これは強気でございます。そういう際でありますので、財政、経済両面におきまして少し抑制の考え方を出さなければならぬ、こういう考えに基づいて、一方においては金融調整政策を始めておりまするし、同時に予算の編成も、あるいは道路を、下水道を、住宅をと、非常に社会資本充実の要請も高いです。高いですが、全体としてはこれをなるべく低位に押えたい、こういうふうに考えまして、政府所要の財貨サービス、これにおきましては、前年度に対しまして一四・八にこれをとどめる、こういうくふうをこらす。また財源面におきましては、公債の発行額を減らす、政府保証債の発行額も減らす、さらに法人税の増徴もいたす、お話しのような考え方でこまかい配慮をいたしておるのであります。
○竹本委員 時間の倹約のために……。政府が格段の配慮を行なったということで、物価をあまり上げないようにということで配慮されたことが、大体私の見るところ九項目あります。いまお話しの財政規模について押えるように努力をした、法人税、公債発行額の減少、それから両米価を押えたということ、極力公共料金を抑制するということ、流通機構の近代化、農林、漁業、中小企業の近代化、労働力移動の近代化、経済企画庁の物価安定費三千五百万円、九つほど項目があります。しかし私は、これはやはり夜店のステッキを並べたように並んでおるだけで、ほんとうの政策のシステム化という点についてはアクセントが足りないと思うのですね。そこで、私はその点を問題にしますから、個々の問題を一々議論をいたしませんが、特に財政はいま大蔵大臣の御説明にも言われました、また大蔵大臣が御努力しておられることもわかりますが、しかし、一木のささうるところでないもっと大きないろいろの矛盾があるじゃないか。私がここで一番不愉快に思いますのは、予算編成のときに、圧力団体がプリンスホテルですか、何とかホテルですかに集まって、とにかくものすごい勢いでやる。そしてまた自民党さんがいろいろ注文をつける。そこで、私は法制局長官に伺いたいのだけれども、一体予算編成権というのはどこにあるのだ、予算編成とは何ぞや、この点について伺っておきたい。大体いま見ておりますと、圧力団体が予算編成をしたり、予算編成の場がプリンスホテルか何かに移ってみたりしておったのでは問題にならぬと思うのですね。まず法的な意味での予算編成権とは何ぞやと伺いたい。
○高辻政府委員 あらためて申すまでもございませんが、御承知のように、予算の作成は憲法上内閣の権能であり、その専権に属することとされております。御指摘の予算編成権というのは、このように予算の作成が内閣の権能であり、その専権に属するものであるということを申しておることであると思います。
○竹本委員 総理にお伺いいたしたいけれども、一体いまほんとうの意味で予算編成権、いま御説明のあったような編成権がきちんと――それは政党内閣制だからというようなことの説明があるかもしらぬけれども、内閣は予算編成については厳格に――党の希望は申し述べるあるいは聞くことはあってもいいかもしれないけれども、一々この項目についてこれをふやせ、これは困る、何ですか、あれは。ああいうふざけた予算編成は一体どこにそういう例があるか。私はもう新聞を見ながらいつも憤慨しておる。たとえば今度の問題の米の生産調整一つとってみてもわかりますよ。これなんかも圧力団体によって筋がどういうふうに曲がっておるか、まことにでたらめきわまっておる。最初に私どもが新聞で読んだ範囲でございますけれども、大蔵省原案では、米の生産調整というものは、百五十万トン、約三十五万ヘクタールについて二万一千円、七百五十億円だと聞いておった。それがいつの間にか八百十四億円に金額がふえた。金額はふえたけれども、生産調整は三十五万が二十四万ヘクタールになった。十一万八千ヘクタールについては別なほうで何かしっかりやってくれということになっておる。これなんかは、農林大臣、きのうも御答弁があったようだけれども、実際ははたしてどうなるものか。おそらく総理といえども確信は持てないだろうと思うのです。工場の敷地に二万ヘクタール売りたいといっても、金融引き締めで工場の買い手がないといったら、それで終わりなんだ。市町村についても、時間がありませんから言いませんけれども、そういうことによって五十万トンの調整がはたしてできるかどうかということは、農林大臣自身、自信を持ってない、政府も自信を持っておられない。しかも金額は、七百五十億円が八百十四億円になったのがいいとか悪いとか私はここで言いません。それよりも私が問題にするのは、七百五十億が八百十四億にふえて、しかも三十五万ヘクタールが二十四万ヘクタールに減って、わけがわからないようになった。こういう予算の編成のしかたを、内閣には責任のある編成権があるのだという立場から、一体どう受けとめておられるか、総理の心境を伺いたいと思うのです。
○佐藤内閣総理大臣 これはもういまさら申し上げるまでもなく、内閣に編成権がある、これははっきりしております。幾ら政党内閣と申しましても、内閣自身に全責任のあること、これはもう当然でございます。しかし、いま私は圧力団体だとは申しませんが、ただいまは民主主義の時代でございますから、各方面の意見を徴するということは望ましいことではないかと思います。私は、福田君が大蔵大臣になりまして、今回初めてのことだと思いますが、各党の御要望事項も伺ったと思います。これは必ずしも全部入ってはいないだろう。しかし、この伺うという態度自身が望ましい、これはほんとうに好ましい事態ではなかったかと私は思うのであります。問題は、いろいろな事態が起こりましても、圧力団体に政府が屈したとか、圧力団体で予算の編成が曲げられたとかいう事実があれば、これはとんでもないことですから、私が責任を負わなければならない、かように思います。しかし、曲げられたことはございませんし、また圧力団体に屈した、さような問題もございません。ただいまの民主主義の時代において、各方面の意見を聞くこと、これはむしろ好ましいことであって、そういうことは適正にやるべきことだ、かように私は思っております。
○竹本委員 総理としては簡単に曲げられたとは言えないと思いますけれども、しかし、それにしても、この米の生産調整一つとってみても、筋が通っておると最後まで言えますか。これは米の生産調整だけの問題じゃありません。すべての問題を見て、恩給にしても、その他の公共事業にしても、もちろんこの中に必要なものもあります。私はここで人の要望、特に党の要望を聞いてもらっては困るということを言っておるのではありませんが、要望を聞き過ぎてはいないか、聞かされ過ぎてはいないか、程度の問題ですよ。しかも方法の問題ですよ。個別に一々の項目について、昔は行政大権というものがありましたけれども、その行政大権を侵犯して、そうして個々の問題まで一々入っていくということが一体許されていいかどうかということです。どうですか、その点は。
○佐藤内閣総理大臣 個々の問題について積極的に入られる、そういう事態はそれはいかぬ、これはもうお説のとおりであります。私はしかしただいまあげられた米の問題一つを取り上げましても、これは実はたいへんな問題だ、画期的な問題でございます。政府が政治的なあるいは法律的な拘束を加えるとか、こういうことをしないで、各自治体、各団体また同時に生産者の協力を積極的に得る、こういう意味において団体や生産者団体あるいは自治体等と十分の連絡をとったこと、これは私はそれでよろしかったのではないかと思っております。いわゆる百五十万トンの減産、百五十万トン以上の減産をしよう、こういう画期的な事態に当面して、それを政府だけの考え方できめたとしたら、これはとんでもないことだ。ここで私はそれぞれ自治体やまた農協や生産者団体と相談するのはあたりまえじゃないかと思うのです。このことをやることが私は曲げたとは思っておりません。私はそれよりも、言われようとするものが、特別な団体が特にその団体だけのためにどうこうしたというようなものがあれば、これは一つの問題だろうと思います。しかし、さようなものが私どもの目にはあまりついておりません。
 私はこの前もこの委員会で申したのですが、総理自身としては、いわゆる予算のぶんどりについての話は直接には陳情は受けない、こういうことを実は申して、私自身はその陳情団体に会っておりません。しかし、それにいたしましても、きわめて特殊なもの、一度ふるいにがかったもので、総理に会う、総理が会ってくれるほうがよろしいというものがあれば、それは私も説得に回る意味において会ったものもございます。しかし、それより以上に、いわゆる私自身が圧力を感じてその陳情を受け入れた、こういうことはございませんので、そういう点では、私はこれは堂々と国民の皆さんに、この責任のある場所をかりて、マイクを通じて申し上げ得る、かように思っております。また大蔵大臣も、そういう意味ではなかなか、やせてはいますけれども屈するというような弱い大蔵大臣ではございませんので、その辺は御心配のないように願っておきます。
○竹本委員 私が言うのは、案をつくる際に、民間であろうが党であろうが、各方面の御意見を聞かれるということは当然なことでございますし、またそれぞれの団体が大いに意見を述べるということもけっこうなことだと思います。民主主義はそうあるべきだと思いますが、案がきまってから、大体案がきめられてからねじ曲げられたり変な方向に走ったり脱線したりするようなことが、少しいまのところ多過ぎるではないかと思うのです。その点をこれは総理、まじめに日本の予算編成の問題として筋を通すということで、やはり総理は総理らしいリーダーシップを発揮するということをここでぼくは言明されるぐらいのことがなければ、あのぶんどり合戦を、だれだってあれを苦々しく思っていますよ。総理、真剣なところでどうでしょう、そこは。
○佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来の答弁で十分だと思っております。また責任のある答弁をしたと思っております。
 もう一つ、つけ加えて申し上げておきましょう。概算として予算閣議で大蔵大臣が提案したその金額が、最終的に総額が変わったことはございません。この一事をもってしても、大蔵大臣が予算を原案を出して、そしてその中におさめている、きちんとしております。これがただいまのように陳情その他によって動かされて、そして総額が変わる、こういうことがあれば、これこそ非難に当たるだろう、またそれこそ御指摘のとおりのような御批判が当たるだろうと思います。しかし、さようなことはございませんから、御安心を願います。
○竹本委員 私は総理の御答弁にあまり誠意が感じられないのは非常に遺憾であります。総額が変わらないから、われわれはあまり圧力によってどうにもなっていないといったって、内容がずいぶん変わっている。いま言ったように三十五万ヘクタールのものがいつの間にか二十四万ヘクタールになっておってみたり、あるいは中央でやるべきものが地方団体へいってみたり、財政投融資に逃げてみたりしておるでしょう。もう一つ重大なことは、六百五十億か七百億か知らぬけれども、初めから切られ用というか、ぶんどり合戦用としてちゃんと大蔵省は予算の中に含ませておるじゃないですか。そうじゃないですか。そうしてみると、初めからそういうことに六百億か七百億の金をあてがっておかなければならぬほど、日本の政治は腐っておるというか、日本の政治は間違っておるというか知らぬけれども、私は遺憾な点が多いと思うのですよ。そういうものを、額が同じだから――それはいなかの、予算も経済も知らない人ならそれで一応納得するかも知れぬけれども、われわれに向かってそういうことを言われても、それは総理、だめですよ。額が同じでも内容が変わっておる、方法が変わっておる。おまけに初めから六百億、七百億も予算編成のぶんどり合戦用に用意しておるというようなことは、ふざけた行き方でしょう。私はこれはまじめな予算編成とは思いませんが、いかがですか。
○佐藤内閣総理大臣 ただいまの調整費として、あるいは予算のいわゆる分配をする場合に、ある程度のものを余裕を持つということ、これは私は当然のことじゃないかと思います。大蔵大臣が各省の要求を同列に聞いて案分したというなら、これは不都合だ、こういうことでの御批判は当たるだろうと思います。しかし、ものの軽重によりまして、そうしてそれに重点を置かれる、こういうことで配分する、これは私はあたりまえのことだと思います。それまでを大蔵大臣が各省大臣の意見を無視するというなら、これは内閣制度はうまく運用はされません。これは十分それぞれの大臣の話も聞いて、そしてものに軽重をつけてその金額を分配する、これが当然のことなんです。私はそのことをけしからぬと言われても、それはどうだろうかと思います。私は、大蔵大臣といえども、話を聞かないうちから各省の問題は全部わかっておるわけじゃありません。だから、その各省の話をにらみ合わせて、そしてそのうちから重点的に支出していく、これはあたりまえのことだ、かように思っております。
○竹本委員 当然のことだ、当然のことだと総理はおっしゃるけれども、それでは当然のことばかりやっておきながら、当然なことを積み重ねていった結果、物価はどんどん上がるということですか。私は逆だと思いますよ。当然なことがときどきねじ曲げられたり、当然でなくなったりしておるから物価が上がっておるのですよ。当然なことだけやっておって物価が上がるとは、それではどういうわけですか。
○佐藤内閣総理大臣 いま予算の話をしていたら、突然変異で物価に回ってきましたが、この予算編成の際にも、総需要を押えるという、物価についての考慮を払うという、そういう話を十分されたはずであります。その点は一応了承されて、そしてただいまのような話が出てきた。私は元ほど九つの対策をとったと言われるが、もう一つ落としていたものもある。それは何か、特殊なものについての輸入対策もあります。そういうものもやはりつけ加えていただきたい、かように思いますが、きめこまかな物価対策はやらなければならない。しかも私はしばしば申し上げますように、この編成は編成、同時に実行にあたっては経済の動向を見きわめて、そしてそれに対応する財政の支出、それを考えるということも同時に申し上げております。したがって、この点では竹本君と考えは同じではないかと思っております。
 ただいまの予算編成の基本、先ほど大蔵大臣が説明した、これで十分総需要を押えるという観点に立って、そしてまた負担の点でも考慮が払われておる、それは納得され、しかもただいま申し上げるように重点的な支出をした、そして実行にあたっては、さらにこれについて対策を立てるということをつけ加えさせていただきます。したがって、物価の問題、これは私どもが真剣に取り組まなければならない問題だ。先ほどもちょっと一言触れましたが、物価の問題こそは具体的にそれぞれの問題についてぶつかってやらないと、総体的に総ワクがどうこうというだけではなかなか解決はできるものではない、かように私は思っております。
○竹本委員 物価の問題は総理必ずしも専門家ではありませんから、私は詳しく申しませんが、しかし物価は、全体の総需要が一番根本の問題だということが、いまは経済界であろうが財界であろうが、常識になっているんですよ。その常識が守られるか、守るに非常に困難だというところに、予算編成過程における政府のリーダーシップというか、総理のリーダーシップがもう少し強く発揮されなければいかぬじゃないかということを私は言っているんですよ。この問題はこのぐらいでやめますが、総需要を押えるという面でも、ことにその総需要の内容の問題も十分ありますよ、その質の問題も、それから全体の量の問題も、総需要の問題についてリーダーシップがなければ、いまのような形ではどうにもならない、物価は上がる一方だということを私は指摘しておるわけです。また収入の面につきましても、圧力団体は何もなかったということで非常にけっこうですけれども、しかし、われわれは雑誌を見ても、新聞を見ても、そうじゃないという記事をたくさん読む。たとえば法人税の問題でも、大蔵省が事務的良心において二%を考えた。私は三%論者ですけれども、とにかく二%に踏み切ったということは、ほかに財源がなかったとかいろいろ理由はあるにしろ、大蔵省としては一歩前進だというので敬意を表しておった。それが財界の圧力で一・七五%に下がったじゃないか。利子や配当の特別措置についても財界が非常に動いたということが経済雑誌にはいろいろ書かれておる。そういうことが政治に対する不信感をいよいよ強めておるということでありますので、私はこれ以上議論しませんけれども、収入の面についても支出の面についても、総理のリーダーシップというものは、まじめな意味で民主的な方向で強く発揮されなければ、いまのようにだれが編成したのかわからない、と言っては極端な言い方になりますけれども、そういうふうに国民が受け取っておるというところに私は問題があるということを、特に強調いたしまして、この問題は終わりたいと思います。
 次に、対米外交の基本姿勢の問題として、繊維やピアノの問題について少し伺ってみたいと思います。
 まず繊維のほうからまいりますが、もうすでに同僚議員からたびたび論ぜられておりますので、私はポイントだけを聞きたいと思います。
 通産大臣に伺いたいが、綿製品協定というのがありました。この綿製品協定については、われわれ日本としては非常に苦い経験を持ったと思うのであります。その苦い経験というのは、これは例外の例外だぞといっておったのが、いつの間にか原則になった。他には及ぼしませんといっておったのにもかかわらず、他に及ぼすようになった。ネクスト・フュー・イヤーズ、たったわずかの間、数年間やりましょうといったのが半永久的になった。順次規制ははずしてまいりますといったのに、それがはずされないで、逆にだんだんふやされようというような方向に行っている。この四つの点は、私は綿製品協定の非常にきびしい経験であったということで、われわれとしては一つの教訓だと思いますが、通産大臣、いかがでございますか。
○宮澤国務大臣 私もさように考えております。
○竹本委員 今後貿易の自由化が叫ばれ、ケンドールさんもやってきていろいろ議論が行なわれているし、また化合繊の問題もむずかしい段階に入っておりますが、綿製品協定にも七〇年九月に期限が来る。この九月に期限が来るときには、政府はアメリカからあれだけ強くいわれている貿易自由化の原則に協力する意味においても、これはやめるべきだと思いますが、政府の考えはいまどういうところでありますか。
○宮澤国務大臣 これは多国間の協議になるわけでございます。わが国としては単純に延長するということについては、従来反対の態度を表明しておるわけでございますけれども、多国間の協議にどう対処するかということについては、いろいろ外交上の問題もあり、またわが国の国内の業界の問題もあるようでございますので、外交当局において、もう少しいろいろ検討をされるはずだというふうに聞いております。
○竹本委員 外務大臣はいかがお考えでございますか。
○愛知国務大臣 ただいま通産大臣から御説明がありましたとおり、これは多国間の話し合いの問題でもありますが、従来のわれわれの考え方としては、これをやめて新しい環境にしたいということをかねがね考えておるわけでございますが、いろいろこれからの折衝、関係国の態度もございましょうから、いまはっきりした見通しは、まだ申し上げるまで行っておりません。
○竹本委員 次にガットのルールということがよくいわれますが、ガットのルールということはどういうことであるか、並びにアメリカのスタンズ長官がこの間八十五人ばかりの議員に会ったときに、繊維の問題でございますが、選択的規制の方針はとらない、被害の有無なんかを証明しろというのはなまいきな、まあ内政干渉みたいなやり方だというようなことを言ったようであります、新聞でありますが。そういう意味で、ガットのルールとは何ぞや、スタンズさんをはじめ、アメリカの一部にそういう意見を述べる人がいるが、これはガットの精神に反するか反しないか、また包括規制ということがいままでに各国の例においてあるかどうか、この三つを伺いたい。
○愛知国務大臣 ガット精神について、詳しく申し上げるまでもなく、よく御承知のことと思いますから、御必要があれば補足することにいたしまして、繊維の問題についてのお話と思いますから申しますが、ガットの精神からいえば、たとえばある国からある国に対する特定の輸出につきまして、いろいろの面から見て被害を与える、その立証がついたというような場合以外には、包括的な規制というものを一般的にやるべきでないというのが、一口に言ってのガットの精神だと思いますし、またそういう角度から、政府としても現在のこの繊維問題に当面する基本的の姿勢といたしておりますことは、しばしばこの席からも御説明しているとおりでございます。
○竹本委員 スタンズ長官が言っているようなことはガットの精神に反すると思うがどうか、世界にこういう規制をやった例があるのかどうか、その二つはどうですか。
○愛知国務大臣 いま間接にお答えしたつもりですけれども、世界にはそういう例はございませんし、また少なくともわが日本政府の態度としては、いま申し述べましたような態度でこれまでも来ておりますし、この精神を貫きたいと考えておるわけであって、この考え方に対しては、いまおあげになりましたような説というものは、これに反する立場である、かように理解せざるを得ないと思います。
○竹本委員 いままでも来たし、ガットの精神を尊重しながら今後も行くだろうということを言われておりました。私はそれをはっきり聞こうと思ったけれども、答弁の中にありましたからやめますが、そうすると、これからガットのルールでいこう、ガットの精神は尊重していくんだ、これは今後も変わりはないのですか。
○愛知国務大臣 要するに、繊維の問題についてはいま非常にむずかしい段階に来ておりますことは、御承知のとおりでございますが、やはり総理もしばしば言われておりますように、日米双方の理解を進めて、いかなるむずかしい問題でも片づけ得るような環境にあるわけでございますから、現在いろいろの立場から日米双方にいろいろの見解はございますけれども、何とかしてこれを歩み寄って、かつ、私どもとしては筋を立てたワク内で解決に進みたい、かように念願いたしておるわけでございます。
 同時に、これは私から申すべきことではないかと思いますが、日本の業界におかれても、こういう低迷した状態がいつまでも続くということは、かえっていかがであろうかということも、十分考えなければならないのではなかろうかというふうに考えております。
○竹本委員 ただいまの外務大臣の御答弁を聞いておると、原則は原則だけれども、日米友好という大きな問題の前には、もうこの辺で業界も考え直さなきゃならぬではないかというような意味にとれますが、そうでございますか。
○愛知国務大臣 私は、日米友好のこの環境の中で、必ず日本側としては筋の通った考え方のもとに話し合いが妥結できる、またそうせねばならないと、こういうことで、時間的に非常に焦慮を覚えながら、ここが大事なところであるということで、あらゆる知恵、才覚を尽くしてまいるべきである、かように考えております。
○中野委員長 竹本君に申し上げますが、ただいま日銀総裁が出席いたしましたので、この点お含みの上、御質疑を願います。
○竹本委員 通産大臣にお伺いしたいが、先般、財界の巨頭を集められていろいろ御懇談があったようであります。ちょっとそこで私ども奇異な感じを持つんですけれども、原則を守る――私が理解するところによれば、繊維業界の連中も、マテリアル・インジュリーが証明されれば、もちろん謙虚な立場で相談に乗って協議もしましょう、規制も考えましょうということになっておると思うのですが、そうではないかということが一つ。もし業界も、そういうはっきりした筋を通し、原則を守っての立場を貫いておるならば、いまさら通産大臣がお会いになって、そういう人たちに説得をするというのですか、何というのか知りませんが、いまのはやりで言えば接触かしれぬが、接触をするという必要が一体どこにあるか。財界の、あるいは繊維産業の連中が、被害があっても規制はしませんと、こう言っているなら、これは説得もしなければいかぬ。原則を破っている。しかし被害があって、それが証明されれば、ガットのルールに従ってわれわれも規制いたしましょうという用意があることを言っておる。それに向かって、ケンドールさんがやって来たなんとかいう情勢の中で、ことあらためて面会、接触をやるということは、別の政治的な圧力をかけるというか、あるいは政治工作をやるというか知りませんけれども、少なくとも先ほど来お話がありましたように、日本の政府もガットのルールは守るべきであるし、守らせるべきであり、守っていきたいと言っておられる基本的な態度とは、若干の矛盾を感じますが、いかがでございますか。
○宮澤国務大臣 これは昨日も申し上げましたとおり、仲介、あっせんを依頼したわけではなかったのでございまして、その後の日米間の交渉のありさまについて、私からお話しをし、また先方の御意見も承ったということであったわけでございます。
○竹本委員 政府の訓令というのがどんなものであるか、詳しくは新聞でなければわかりませんが、通産省の態度にも、ガットの原則を守るとおっしゃっていながら、私は、最終的には日米の協力のためにいろいろと総理も心配しておられるし、やらなければならぬ努力、必要な問題があると思います。しかし、この間、通産省のほうから言われたのか、外務省を通して言われたのか知らぬが、被害論議対象品目として十品目をあげた。向こうでは、これは被害規制品目と受け取っておる。それからさらに、そのときに新聞の伝うるところでは、米国の関税委員会にこれがかかるが、その関税委員会の御意見は、これを十分というか十二分というか尊重してまいりたいということもつけ加えてあるように承っている。関係輸出入国会議も、ジュネーブにおいてさっそくやりましょうということも言っているように承っている。そうしなければアメリカにこの際つなぎができないのだ、つなぎの手が打てないのだということもわかりますが、それにしても、根本の原則をくずしてはならぬと思うから私は聞くわけですけれども、そういう被害論議の対象品目というものを十品目あげてみたり、米国の関税委員会の調査資料は、まあ一〇〇%とは書いてないけれども、尊重しますと言ってみたり、あるいは関係輸出入国会議は、さっそくジュネーブで開きましょうと言ったりするということは、何だかアメリカの圧力にそれこそ屈して、あるいはアメリカの言うことをほとんど全部のんでしまったのと同じような感じを受けますけれども、これはテーブルにつくか、つかないかということも、あとで下田発言に関連して議論をいたしますけれども、少し通産省の御努力というものは、行き過ぎたといいますか、具体的になり過ぎておると思いますが、どうですか。
○宮澤国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、こういう問題は、誠意をもってできるだけすみやかに解決することが、両国の国交のために大切だと私は考えております。したがって、昨日も申し上げましたが、われわれが、いま業界と一緒に、一定の条件と前提のもとに、場合によっては自主規制を考えるということは、アメリカに対する好意であるというふうに考えているわけでございますが、私どもとしては、できるだけの好意は、ひとつアメリカに対して尽くしていこう、しかし他方で守らなければならない原則がある。
 なお先ほど言われました規制対象品目は、昨日も詳しく申し上げましたが、これは先方の提示しました二十八品目のデータの中で、特にわれわれとして、さらに詳しい説明を求めたいと思いまして説明を要求したところの品目でございます。
○竹本委員 繊維産業のほうでは、論議をやらぬと言っているのではない。アメリカに対して、全然誠意がないから受け付けないと言っているのでもない。被害が証明されれば謙虚に、すなおに誠意をもって御相談をしましょうと言っている。私は、これ以上にいま何を言えるか、あるいはやれるかということを考えてみても、ちょっと私には方法がわからないが、通産大臣の御認識では、いまの繊維産業のアメリカに対してとっている態度というもの、被害があれば規制もいたしましょうというその態度は、誠意が足らないと、こういう御判断でございますか。
○宮澤国務大臣 私ども国全体の国益というものを考える立場と、繊維産業の方が自分たちの業界を考えられる立場とは、それはおのずから幾らかの違いがあることは事実だと思います。しかしながら、いま繊維産業の方々のとっておられる基本的な考え方について、私は何も批判がましいことを申すつもりはございません。
○竹本委員 全体を考える立場と、それぞれの業界の立場とは、確かに違うところがありましょう。しかし、それぞれの業界のない全体もありません。沖繩と繊維が取り引きされたのだというようなことがよく言われます。私は、総理はそういうばかなことをやられるとは思いません。沖繩に百万の人もおる。これも日本国民で、お気の毒で、われわれは誠意をもって問題を考えたい。しかし、繊維にも百九十万の従業員、関係者がいるでしょう。この二百万に近い人たちも、やはり日本の大事な産業分野でもあるし、また日本の国民でもあるわけでございますから、これも大事にしなければならぬ。そういうことについては、もう議論をするのはばかばかしいですから、私はやめますが、いずれにしましても、繊維産業の立場というものが、誠意が足りないというのではなくて、繊維産業の全体も、これから動こうたって動けないと思うんですね。動く方法がない。もし通産大臣が財界の連中にお会いになって、いまの基本線でこう行けという、プラスの手があるならば、それは大いに話されたらいいと思うのだけれども、われわれは、それこそ先ほどではないが、基本線を曲げるという軌道修正以外には話し合われる材料はなかろうと思うんですね。その辺が、われわれどうも納得できないと思いますが、次に進んでまいりましょう。
 アメリカの日本に対する政治姿勢というものは、行き過ぎといいますか、傲慢といいますか、あるいは穏当を欠いているというふうに私は思うのでありますから、お伺いをいたしたいのです。私は、これから具体的な例をあげますが、たとえばケンドールさん、これは総理がお会いになったから、よく御存じのようだけれども、われわれが新聞で見ると、なかなかわかった話をされる、包括規制はやめましょう、損害のはっきりしたものに限りましょう、国際的取りきめの性格も強めましょうというようなことを、ニクソンと会ったという後に新聞で語っておられます。これは、われわれは新聞で知った話でございますけれども……。そうすると、このケントールさんのような――もちろん、あの人は自由貿易論者であるから、そういうことを言うのが、むしろ当然だと思いますが、そういう声がある。
 そこで、ここでひとつ下田発言について伺っておきたいと思うが、そういう声があるときに、日本の下田大使が、アメリカにおいていつか発言をしたときに、沖繩では成功したけれども、繊維で失敗しては困る……。まあ、それは下田君の憂国の至情で言っているのだと私は理解しますけれども、しかし、その言い方そのものには非常に行き過ぎたところがある。たとえば日米首脳の会談の意見は一致しているのだ、それだのに、なぜ対案が出ないのか、米国側は理解に苦しんでおると言って、アメリカにいる大使だからアメリカのことを紹介するのはけっこうでございますが、まるで日本の態度が全部誤っておるかのごとき語調で、下田大使が二月二十六日には語ったように新聞で見ると出ておる。
  〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
こういう点は、日本の大使であるから、アメリカに向かって日本の立場をアメリカに主張するのが日本の大使のやることで、まるでアメリカの主張を日本に向けてやっておるということだけに重点が移り過ぎておるということは、もう論議があったから私詳しく申しませんけれども、非常におかしい。しかし何よりも、アメリカにもそれだけの、ケンドールさんみたような意見もあるのに、それをなぜ日本に紹介しないで、日本のほうが早くテーブルにつかぬのはけしからぬとアメリカが思っておるんだということだけに力点を置かれるのか、私はこの辺がわからない。外務大臣、いかがですか。
○愛知国務大臣 下田君の問題については多くを申しませんけれども、すでにしばしば御説明いたしましたように、いまケンドール氏の説をお取り上げになっておりますが、いろいろのアメリカにおいての情報あるいは意見というようなものは、非常に詳細にかつ的確にわれわれのところに駐米大使として送ってきております。ただいまもおあげになりましたのは、日本の在米の記者諸君に対しまして、何といいますか、アメリカ側の一つの考え方というものを話したことが非常に問題になったわけでございますけれども、アメリカに対してこちらの状況を伝えること、またアメリカの諸般の状況を詳細に伝えることにつきましてはずいぶんと努力をしている、これはひとつ買ってやっていただきたいと思います。
○竹本委員 私は、下田君はクラスメートでもありますし、大いに誠意を買いたいと思うのです。ただ、熱意があり誠意があるということと、国策的な方向を、あるいは措置を誤るか誤らないかという問題は、一応別にして考えなければならぬと思うのです。総理、日本が沖繩の問題のときに、核抜き本土並みということを御承知のように民社党が言っておる、そのときに下田君が、そんなとぼけた考えではだめだ――民社党に言ったわけじゃありませんよ。一般論として、核抜きなんというようなことを考えるようなことは全然問題にならぬというような発言をして、三木さんが何かそれに似たような発言を総裁選挙のときにしたときにも、総理が、あんなとぼけたことを言う人を外務大臣にしておったのはおれの失敗であったとかなんとかおっしゃったのを新聞で見たのだけれども、おっしゃったかどうか知らないが、総理がそういうことを言われたについては、少なくともアメリカ大使なりあるいは外務大臣なりが、アメリカの情報のキャッチのしかたがまずかったと思うのですね。その当時に、われわれはむしろ理論的に、実際的に考えて、沖繩は完全本土並みということを言ったわけです。われわれは、ある意味においては誇っていいと思うのでございますけれども、アメリカは、国際政治の今日の段階においておそらくこの線に来るだろう――来てもらいたい、また来るだろうということを考えて、われわれはその政策の基本的な方向をきめたわけであります。
 それはまあ別といたしまして、下田さんがもし、アメリカにもそういう正論があるのだ、あるいはこの問題についてはそういう方向に行くかもしれぬという情報をキャッチして、それを正しく外務省に移し、外務大臣が正しく総理のところへ、耳に入れておれば、私は総理がああいう、あとから見ればおかしな発言はされなかっただろうと思うのです。総理を補佐する意味においても、正しい情報というものはつかまなければならぬ責任がありますよ。総理はそういう正しい情報をつかんでおって間違ったことを言われたのか。そうじゃないと思うのですよ。やはり現地から送った情報が間違っておったから、その上に立って総理がああいう発言をされただろうと思うのです。しかし、私はここで三木さんを弁護する意思も何もありませんから。問題は、下田さんはアメリカ大使、そして有能な大使、これは私も認めるけれども、ときどき情勢判断が誤る。アメリカは核抜き本土並みではできないとはっきり言ったじゃないか、そんなことではどうにもならぬと言ったと私は思うのですよ、私の印象が間違いでなければ。そうすればこれは前科一犯だ。この前も情勢判断を誤っておった。今度もまた繊維の問題については日本が案を出すべきだ、日本がテーブルにつくべきだと言って、若干いたけだかなような非常に強い発言をされるが、だんだん聞いてみると、ケンドールさんみたような意見もある。こういうことを考えてみると、一体情報のつかみ方そのものに下田大使において的確であるかどうかということを私は心配をするのです。いかがでございますか。
○愛知国務大臣 先ほども申し上げましたように、今回の繊維についての何は、いままだその話し合いが非常に深刻に行なわれておるわけですからなんでございますが、私はこれについての情報というのは、やはりいわば硬軟両様あるわけですね。ですから、その幅の広いまたそれぞれの立場によっていろいろの意見があることは、私が先ほど申しましたように、十分情報としても掌握しているつもりです。同様に沖繩の場合におきましても、これも多くを申しませんけれども、沖繩の返還問題について、アメリカ自身の立場においてもいろいろの硬軟両様と申しますか、幅の広い意見がある。そうしてさらにその上に時の要素というものもあわせて考えなければならない。広い幅でまたタイミングの関係もあって、そのとき、そのとぎの情勢、あるいはそれに基づく情勢の判断というものも違うことであるということは、これはよく御理解いただけるところではないかと思います。
○竹本委員 硬軟両様ある、あたりまえであります。情報というものは必ず右と左と正反対の情報が入ってくるのです。動きというものには必ず右と左、硬軟両方あるにきまっておる。それを全体としてどうつかむかということが、これが大使なら大使の大きな仕事であり、大臣なら大臣の大きな責任じゃないかとぼくは思うのです。もちろん人間でありますから、誤ることはときにはあるでしょうけれども、誤まったときには、硬軟両方あるからしかたがないんだというようなことでは、ぼくは責任をとった態度とはいえない、誤ったら誤ったとはっきり言うべきだ。硬軟両方ありますから、そちらのほうの半分、じゃ、なぜあとの半分を言わなかったかということが問題なんです。これは時間がないから申しませんけれども、日本の国際情報の把握のしかた、収集のしかたに非常な疑問を持っておる。それはあらためてまた論ずることにいたします。
 繊維の問題あるいはピアノの問題に返りますが、総理、私はこういう点を心配しておる。アメリカの産業は、いま、ハーマン・カーン――総理よく言われるけれども日本の産業から非常に追い上げられておる、危機感があるのです。ある意味において地盤沈下と自信喪失というものがある。現実に数字を見ますと、重化学工業でOECDへの輸出のシニアを見ると、一九六二年から六七年の間に日本の重化学工業は五%から九%に伸びておる。その間にアメリカは二四%が二二%に落ちておる。重化学工業においてさえもアメリカは追いまくられておるのですよ。また輸出の伸びを見ると、一九六三年から六八年までに日本は年々一八・一%伸びた。世界の平均は輸出は八・九%しか伸びていないのに日本はそれの倍、一八・一%伸びた。そのときにアメリカは七・七しか伸びてない。日本が一八伸びているときに、アメリカは七しか伸びないのです。でありますから、アメリカとしては、繊維にしてもピアノにしても、あらゆる産業について自信を失っておるか、地盤沈下にうろたえておるというか、あわてておるというか、大きな問題があるのです。そこで、私が問題にしたいのは、このアメリカの基本的な悩みというものを考える場合に、これからかってにガットのルールがあろうが、何があろうがしかたがない、輸入はストップだ、自主規制だなんていうことで、次々に日本の輸出を押えてくるというようなことになってくると、これはたいへんな問題だ。繊維やピアノの問題だけじゃないということを私は心配している。しかもそれはなぜかといえば、いま言ったように、日本が一八%伸びておるときにアメリカは七%しか伸びないんだ、こういう大きな基本的な悩みの中での問題でございますから、今後に波及する可能性が非常に多い、そこを私はいま心配をしておるわけであります。そういう意味で繊維の問題は単に繊維の問題ではありません。したがって、どうしてもこの辺でこれは本格的に問題を議論しておかなければいけないと思うので、最後に繊維の問題として総理にお伺いいたしたいのでありますけれども、総理がニクソンさんとお会いになる、国会の決議もあったことでございますから、当然に繊維の問題は出たと私は思うのです。出なければおかしいと思うのです。そのときにまた総理が、この問題は何とか片づけよう、あるいは両国の親善の立場で、総理が言われるように領土の問題さえ話し合いでできたのだから、話し合いで片づけましょうというように言われることも当然だと私は想像する。
 そこで私が一つ伺いたいことは、そのときに総理は、この問題について年内にも片づけようということを言われたか、あるいはそういうふうに受け取れるような発言をニクソンさんになさったのであるかどうかということを、まずひとつ伺いたい。
○佐藤内閣総理大臣 いまの問いに簡単に答えればいいと思いますが、やはり前提になる問題で私は少し竹本君と意見を交換してみたいし、国民にも十分理解してもらいたいと思う。
 ただいま日本の経済は成長しておる、ハーマン・カーンを持ってくるまでもなく、そのうちにアメリカを追い越すだろう、そういうような状態になっている、そこへもってきて、もう一つは、アメリカ自身がただいまが不景気だ、そうして非常に困っておる、しかもまた中間選挙の年でもある、そういうものも重なっておるわけです。
  〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
したがって、アメリカ自身に非常に複雑な政治情勢のあること、これもやはり一応念頭に置いて理解してやらないと問題を間違えることになるのじゃないか、かように思います。したがって、追い詰められたとかあるいは追い越されるとか、こういうあがきというよりも、いわれておるように日本の商品としても最大の輸出国であるアメリカ、それ自身が不景気で相当悩んでいる、総体の輸出品目にも影響のあること、これはもうわかるわけです。これは不景気でなくて、非常に好景気で消費がどんどん進んでいるときなら別に問題はございません。しかし、それが不景気だ、そういうところに問題がある、かように私は思っております。
 そこでただいまのように、ニクソン大統領と沖繩問題で交渉した際にこの話が出たか出ないか、これはもうこの前も申し上げたとおり、そういう話にも触れております。そうしてそういう問題をできるだけ早くやろう、早く片づけなければならない、これはおそらく相手方の聞き方によっては、それはどのようにとったかわかりません。私は、また最近も、さらにその点で、少なくとも万博の開催前には話は片づけたい、外国からお客さんが来て、そうしてにぎやかにお祭りをする、その場合にまでそういう問題が残っておってはまことに残念じゃないか、こういうことも申しました。したがって、これらの点については私はあまり詳しく申し上げる必要はない。政府の態度、また日本国民から見ましても、実情を十分考えるならば、互譲の精神でものごとを片づけるという、そのことがおわかりだろうと思います。
 したがって、ただいまのお尋ねのように、そういうような印象を与えることがあったか、こう言われれば、おそらく早い機会に、かように申しただけにそういうことを考えておっただろう、かように私は思います。しかして、私は、このことはただ繊維業界だけでなくて、先ほど百九十万の関係者があると言われるけれども、これは見方によればもっと多いかもわからない、九百万人ぐらい関係しているかもわからない。いまたいへん問題になっているのは、受注が非常におくれている、こういうことで、石川や福井の業界あたりもずいぶん混乱を来たしておるやに、またそこらにもすでに労賃が非常に下がっておるというような話も聞きます。私はそういうことを考えれば考えるだけ、何としても早くこの問題を片づけなければならないと思います。そうして業者自身のことばが、片言隻句が、それぞれの機関を通じて、今回は非常に詳細にお互いにキャッチされている。ただいま下田大使の発言を云々された、またケンドール氏の発言を云々された、しかし同時に、やはり相手方も、アメリカ自身も、日本国内における各業界の姿そのものを、鏡に映したようにそれぞれキャッチしている。どこそこでは、もしも輸出がおくれればそれは業界で引き取って、そういうものを全部かかえるとかいうような話までしているというようなことまで伝わる、これでは話をぶちこわすことになる、そういう事柄はしないほうがいいのじゃないかと私は思っております。お互いに誠意を尽くして話をしようというのはそこにある、かように私考えておりますので、これは議論していいこともございますが、あまり役立つ問題でもない。ことに私先ほどの、下田大使はもうすでに初犯があるのだ、こういう話をされました。私は外交の機微に触れるような問題を大使自身が云々することは、これは不穏当だと思いますが、私は国内におきましても、そういう問題が、これから交渉しようというその段階で、何々はむずかしいのだとか、何々はできるのだとか、こういう話はいかがかと実は思っておるのです。(竹本委員「情報が誤っているのです」と呼ぶ)だから、そこらに問題があるのじゃないだろうか、かように思いますから、ここらはわれわれの態度がなまぬるいとか、あるいは慎重だとか、かように言われるかわかりませんが、私はそういうものを、全体をつかんで、やはり正鵠を得た方向で国益を進めていく、こういうことでありたい、かように思っております。
○竹本委員 私は繊維の問題としてだけ問題を論じているのではないのです。一番心配なのは、アメリカの地盤がいま言ったように沈下しておりますよ。アメリカはあわてておりますよ。これからはケネディラウンドでもなんでも、かってなことをやりますよといま言っておるのですね。
 たとえば、私はついでにピアノの問題を一口だけ申し上げますが、ピアノが御承知のように関税引き上げをされました。一三・五に一一・五を上げたのです。関税委員会の論議をほんとうは本格的にここで論議したかったのでございますけれども、三対二で決が出たのですね。しかも反対が二人、賛成が三人だけれども、賛成の三人のうちのまた二人は――三人といっても、被害があったと言って上げたのじゃないのです。これもまた大事な点なんです。スレット・オブ・インジュリーと書いてある、被害を与えるおそれがあるということだけでやったのです。そのおそれがあるから、二人の人は一三・五%、一人の人は二〇%に関税を上げなければだめだ、あとの二人は反対なんですよ。そういうきわどいところで三対二になって、ピアノの関税は、一一・五が、ケネディラウンドを御破算にして一三・五にして、そうしてそれだけならまだいいが、七三年まではもう当分やめだと言ってストップをかけてしまった、そんなばかげた話がありますか。もしこれが適用されるということになれば、繊維も大体そうかもしれぬが、被害があったのではない、被害のおそれがあるということだけなんだ。そのおそれがあるかないかはだれが判断するか、向こうさんがかってに判断する。しかも、そのおそれというだけで三対二で結論が出て、一一・五は一三・五になっておる。しかもこれを機会にいまから二、三年間はストップして、ケネディラウンドはもうやめだと、こう言う。やめだというか、ストップするのだ、そういうことをピアノの場合にとっておるが、私が調べてみると、価格なんかも、一つも日本のピアノは向うより安く売っているわけではなくて、同等もしくはそれ以上なんです。インジュリーは、いま言ったようにほとんど問題にならない、ない。しかもアメリカがピアノ産業においてまいっておるのは、音楽人口がさっぱり伸びない、アメリカのディーラー網がさっぱりできない。要するに自分のほうの構造改善の努力が足りないで、日本が七倍伸びておるときにアメリカは横ばいとかなんとかいって、日本の伸びる率は非常に激しいけれども、全部まとめてもまだ一〇%なんです。今度の問題も政府がまた一〇%なんて言っておりますが、大体私が見るところ、アメリカの考え方は、どんどん日本から入ってくる品物はみな伸び率を一〇%に押えよう、そういう考え方がある。ピアノについても一〇%しかないのだけれども、伸び率はなかなか激しかった。そうすると今度は三年間ケネディラウンドはだめだ、税率は二%上に上げてしまうのだ、こういうやり方でやってきておる。
 こういうことが次々に行なわれていったならばどうなるか、第一、自由貿易とか言っておるけれども、アメリカのような国はどんどん先に進んで、より高級なところへ発展していけばいいのに、次元の低いところで日本と競争して、自分が追いまくられたら、今度は日本の輸入を制限する、ケネディラウンドはストップする、こういう行き方がピアノには非常に露骨に出ておる。このピアノの実情を調べてみると、繊維の場合と全く同じなんです。結局は、アメリカ産業の地盤沈下で、そのしりぬぐいのためには恥も外聞もなく日本の伸びていく産業を片っ端から押えていこうというのがアメリカのやり方だということを私はおそれるわけです。そこで、自主規制というけれども、全然自主規制にならぬじゃないか、アメリカはこれとこれの品目をやってくれ、このくらいの程度やってくれ、まるでアメリカの命令を受けているようなものだ。これでは米主規制であって自主規制じゃない。自主規制である以上は、絶対に日本は自主規制の線を貫いていかなければならぬし、またガットのルールは当然守りながら日米の協力と親善のために大きな政治的配慮を考えなければならぬと思うのです。でありまするから、互譲の精神ということはもちろん必要でありますけれども、互譲ということは日本の筋を曲げるということではない。アメリカのわがままに無条件降伏するということでもない。どうか、その筋を通してもらいたいと思いますが、総理の決意を伺って、次にまいりたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 先ほど来申したように、これはなかなかむずかしい段階に来ております。やはりいつまでもこの問題をそのままにしておくわけにいかない。できるだけ早く片づけなければならない。そういう意味でさらに話を続けて、そうして結論を見出したい、かように私は決意しております。
○竹本委員 ぜひこれは最後まで筋を通しながら、政治的配慮をやっていただきたいと思います。
 日銀総裁にお忙しいところお出かけいただきましたので、時間がございませんけれども最後に……。
 実はこの間、新聞で見ますと、十一日の日に、帝国ホテルにおける内外の金融情勢についてのあなたの講演は、いろいろ驚く記事が出ておるわけです。これの真意を伺いたいと思っておいでをいただいたわけでございますが、時間がありませんのでまとめて伺いますから、まとめて御返事をいただきたいと思います。
 その第一は、通貨価値の最後の番人だといわれる日銀総裁が、もう物価の安定は困難だと言って、さじを投げたようなことを言われた。物価が上がるということは通貨の価値が下がるということです、言うまでもない。その通貨価値の維持の御本尊がそんなとぼけた発言をされるということは全く考え得ないことであるが、ほんとうにそういうことを言われたのであるかということが一つ。
 次に、このまま悪循環を繰り返していけば、悪性インフレの可能性さえあるということを言われておるが、それは私も同感である。私も先ほどから指摘しておる。そこで第二番目は今度の金融引き締めの問題についてでありますけれども、卸売り物価を押えていこう、金融を引き締めて、国内需要をおさめれば物価の安定が期待できるということでこの引き締めは始まったと思うのです。そう書いてある。ところがあなたの御意見によると、もう卸売り物価の横ばいは当面期待できないということを言っておられるようであるが、そうすると、一体金融引き締めはなぜやっておるかということなんですね。押えて物価を安定さしたいということで引き締めを始めたのだけれども、それはもうできないということになれば、その意味においてもう金融の引き締めというものははずされるべきではないかと思うが、ゆるめられるべきではないかと思うが、その点はどうか。また第一に、初めから見当違いに、できもしないことを期待して、金融引き締めをやれば何とか物価を押えられるという期待のもとに、しかしそれは不可能なことがあとでわかったのだけれども、そういう間違った、錯覚の期待のもとに金融引き締めを始められたのであるかどうかということが問題であります。これが第二点。
 それから第三点は、あなたのお話だといって伝えておるのは、いままでの経済理論では物価安定はもうだめだ、ケインズ理論にかわる新しい経済の経験にふさわしい理論が登場しなければならぬという学説の判決までやっておられるが、そういうこともやられたのであるか。まずこの三つについて御意見を伺いたい。
○佐々木参考人 いま三つの点についてお尋ねがございましたが、最初の第一の点、物価の安定は困難だということを私が申したようなお話でございますが、あのときの話の真意は、いまわれわれの当面しておりますむずかしい問題点をあげまして、その中の一つとして物価問題のむずかしさに言及したことは事実でございます。しかしながら、そういう問題の解決にあらゆる努力をしなければならない、もし必要であれば、新しい理論の開発または新しい対策の検討ということもやって、全力をあげてその問題の解決に当たらなければならない、そういう趣旨でお話をしたのでございます。あのときの速記の最後のところでは、私、最後の締めくくりといたしまして、ドイツの中央銀行総裁の就任のあいさつのことばを引きまして、通貨価値の安定のもとでどうしたらできるだけ経済を着実に伸ばし得るかということへの研究、努力というものがわれわれの最大の責務である。この責務の重大さを私は痛感しておる次第でございますということを申して、その話を終わったのでございます。この速記もやがてできてまいりますから、もしお読みいただければしあわせでございますが、私の真意はそういうところにございました。
 それから第二の点でございますが、いまの金融引き締め政策というものが物価の安定を一つの目標としておりましたことは事実でございます。ただその物価が、私がもう横ばいはだめだというようなことを申した覚えは全然ございません。したがいまして、そのだめな目標のために金融の引き締めを続けているという感覚は私としても持っておりませんし、いまの総需要を調整するという政策が物価の上昇に対する金融面からの対策として第一であるということは、いまの世界の各国が努力しておりますインフレ対策、そういうもののやはり中心になっておる次第でございます。
 それから第三番目のお話でございますけれども、これもずっといままで関連しておりますので、重複いたすかと思いますけれども、やはり全体としての総需要の抑制がいまの物価対策としては一番中心になるということは、いまも続いて考えております。そういう意味で、いまの金融政策がやがて効果を発揮することを、私どもとしては見守っておる次第でございます。
○竹本委員 重ねて二つだけ質問をして終わりにいたしたいと思います。
 一つは、これは総裁がお見えにならないときに特に言ったのでありますけれども、いまお話しの総需要の抑制ということから言えば、そしてまた日本の設備投資あるいは社会資本の問題についてもいろいろやらなければならぬものがたくさんある。内閣のほうにおいても行政機構の改革なんと言われたけれども、これはさっぱり行くえ不明になっておりますが、そういう意味で、行政費等についてもむだを大いに省いて、行政機構の改革はこの際徹底的にやってもらいたいと思うし、また圧力団体の話もしたのでありますけれども、それらも含めて、財政をてことしたそういう意味の需要の抑制をやるということが一番効果的な方法なんだ。極端に言えば、いまの段階――いままでは別ですよ――いまの段階に来れば財政を思い切って引き締める。逆に金融のほうはもはやゆるめていくというふうな段階である。あるいはもう一つ言うならば、違った言い方になりますが、財政を中心にして景気対策、物価対策というものはやるべきであって、いままでのように財政が放慢のままにいきながら金融で締めろ、金融で押えろといって金融にしわ寄せすることは、日銀総裁、人がよいものだから少し過当な負担をかぶっておるのじゃないか。私は、やはり日銀総裁ともあるものは、通貨価値の維持ということについてもう少し厳粛な使命感を持ってもらいたい。そして、国の、あるいは政治家の圧力が何であろうとも、この財政面でもう少し締めてもらわなければ、福田大蔵大臣のことばではないが、質的成長ということから言うならば、もう少し気のきいたやり方をしてもらわなければ、日銀だけでは背負いきれないのだ、金融でやれるものには限界があるということだけはもう少しはっきり打ち出してもらいたい。むしろ財政が中心になって金融がそれを補完するくらいの役割りにならなければ、いままでのように金融引き締めが独走するというようなやり方は、世界の経済政策を見ても行き方が逆になっておるのじゃないかと思うが、その点についての総裁の意見を伺いたい。
 もう一つは、設備投資の動きを見ましても、あるいは鉱工業生産の動きを見ましても、去年の九月から始められた金融の引き締めというものは、完全ではありませんけれども、一応の成果をおさめた。いま申しました財政その他の面をそのままにしておいて、金融引き締めだけでこれ以上の効果をあげようということは、それ自体が無理である。したがって、金融引き締めをこのままやれば、弊害のマイナスの面だけが多くなる、倒産が多くなる。大企業も設備投資の金がなくて困ってしまう。中小企業はなおさら困ってまいりますが、そういった意味の金融引き締めのマイナスだけがこれからは出てきて、物価引き下げという大きなねらいのための役割りは、むしろこれからは多くを期待できないと思います。そういう意味での金融引き締めは再検討の時期に来ておるではないかと思いますが、この点について御意見を伺って終わりにいたしたいと思います。
○佐々木参考人 第一のお尋ねの財政と金融両政策の役割り、その両方がともに進まなければならないというお話、この点は私も同感でございます。したがいまして、この四十五年度の予算の実際の運営にあたりましては、経済情勢の実態によくマッチした運営をしていただくということを大蔵大臣にもお願いしておりまして、大蔵大臣もその趣旨には賛成で、そのお約束をいただいております。
 それから、第二番目の金融政策の効果がいまどの段階まで来ておるかという点につきましては、いまのお話のように、設備投資がすでにある沈静の方向に向かっているというような具体的な徴候はまだ実はつかまえられないのでございます。最近いろいろ各方面で調べました四十五年度の設備計画も、大体昨年の同期につくられました計画の前年同期への伸びとほとんど変わっておりません。したがいまして、いましばらく模様を見る必要がある、こういうふうに存じておる次第でございます。
○竹本委員 これで終わります。
○中野委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。
 次に、不破哲三君。
○不破委員 日本共産党を代表しまして、私は、出版妨害問題について、それからまた時間が許すならば、これから始まる沖繩返還交渉に臨む政府の基本態度について、総理並びに関係閣僚に質問いたしたいと思います。
 まず第一に出版妨害の問題でありますけれども、私は総括質問の際に、ちょうどきょうから三週間前でありますけれども、この問題について事実をあげて総理の所信を伺いました。その際総理は、二度まで繰り返して当事者自身の発言ならともかく、第三者がこの問題について取り上げて云云するのは筋違いではないかということを発言されました。私は総理のこの要望にこたえる意味も含めて、当事者である証人をこの予算委員会に喚問されることを要望いたしましたけれども、三週間たった今日、いまだにこの証人の喚問の問題については明確な結論が出されておりません。これは、私は非常に残念なことだと思います。そういう状況の中で、私ども予算委員会の会議でこの問題を取り上げました六人の議員が、国会でこの問題を審議する一助にもと、真相を明らかにする一助にもと考えまして、先日十七日に、喚問を求めました十二人の証人の方にいわば参考人として議員の集会に出て意見を述べてもらいたいという集会を開きました。残念ながら竹入公明党委員長、田中自民党幹事長、池田創価学会会長は出席をいただけませんでしたけれども、被害を受けたという当事者の方はテープで参加をされた内藤国夫氏をはじめ、藤原弘達氏、それから福島泰照氏、植村左内氏その他出版社関係の方々に来ていただきまして、この事態の当事者としての発言を詳しく伺うことができました。その証言を伺いますと、今度の出版妨害の問題がどんなに重大なものであるかということを、問題提起をし、質問をした私たち自身があらためてひしひしと感じるほど、今度の事件の重大さ、系統性というものが明らかになりました。私たちはこの集会の内容は、議事録全体を近く公表する予定でありますけれども、この点については、総理もぜひ今度は、前書きとあと書きだけではなしに、全体を読んでいただきたいと要望するものでありますけれども、きょうはその明らかにされた事実の上に立って、総理の基本的な姿勢について若干の質問をいたしたいと思います。
 第一は、このいま取り上げられております問題が出版妨害であるかどうかという基本的な認識の問題であります。先日総理は、田中幹事長の介入問題について私が質問をいたしましたときに、まあ自分のことが書かれるときに、そういうことはぐあいが悪いからやめてくれという程度のことであって、これはあまりたいしたことじゃないのだという趣旨のことを答弁されました。しかし、私は今度の議員集会で当の被害者である藤原弘達氏それからまた関係の出版社の方々の証言を伺いまして、これは決してそのような性質のものではない。特に私がここで強調したいのは、問題が非常に系統的、組織的な行為だという問題であります。単に一つの孤立した行為として田中幹事長と藤原弘達氏の話し合いが行なわれたわけではない。非常に系統的な、この出版物をとめようという一つの意思に貫かれた一連の行動がある。それ全体がはたして出版妨害の行為であるかどうか、これが一番の問題だと思います。まず昨年の場合でいえば、八月から九月にかけて、公明党と創価学会の正式な代表と名乗る人々が、著者と出版者に出版を中止してもらいたいという勧告に繰り返し来る。それがだめになると、今度は田中幹事長が動員されたのか、頼まれたのか、おせっかいやいたのか、いろいろありますけれども、ともかく出された出版物を買い取りたいという申し入れに来る。それがだめになると、いよいよ本が出ると、今度は取り次ぎ店から断わられる。広告店から断わられる。さらに最後に取り次ぎ店、広告店を当てにしないで著者と出版社自身がこの本を自分の力で全国に配布するという活動をやったところが、小売り店の妨害を受ける、こういう一連の行為であります。しかも私そのとき直接出版社の代表に伺いまして非常にびっくりしたのでありますけれども、小売り店で妨害されたという事実を具体的にあなたはつかんでいるかと質問しましたところが、多数つかんでいる。どの程度の事実をつかんでいるかと聞きましたところが、自分たちが全国で回った書店の数は千五百軒をこえる。その八割が創価学会、公明党、聖教新聞社、潮出版社、こういう人々からこの本を扱うなという妨害を受けているということが明らかになった。まさかこの出版社の人たちが小売り店の中からわざわざ妨害を受けている書店だけを集めて、抜き出して回ったわけでありません。全国八千五百ある小売り店の中からいわば任意に千五百軒以上の小売り店を回った。そうしたら八割までそういう手が回っていた。これはだれが考えても非常に組織的な、系統的な行為であります。初めから終わりまで、この本を世に出さないために一貫してこういう手段がとられ、妨害が加えられてきた。そしてまた、先日佐藤総理は、しかし妨害が加えられたと言っても、本が出て、実際に私のところへ回ってきている、こういうものであるならば妨害ではないではないかということも言われましたけれども、私がじかに出版社の代表に確かめましたところ、本を出してまだ世間で大きな問題にならない、この出版妨害問題が非難の対象にならない、そういう段階には、十一月から十二月にかけてほんとうにごくわずか手渡しをしたり、ごくわずか好意のある本屋で少数売る以外は、出した本のすべてが販売不能におちいって、まさに出版社として窮地におちいるような状態に立たされたということも明確に証言をされました。
 そこであらためて伺いたいのですけれども、先日私は田中幹事長の介入という問題について伺ったところが、総理は、これは出版妨害ということで取り上げるほどの筋のものではないだろうという答弁をいただきました。あらためてきょう伺いたいのは、この初めから終わりまで実際に本を世に出させないために系統的に加えられてきている、これが一つの意思のもとに動かされていることは客観的に非常に明瞭なのでありますけれども、こういう行為も出版妨害の行為とは考えられないのかどうか。そういうものとして取り上げ、論じる性質のものと考えられないのかどうか、その点の基本認識の問題をまず第一点として伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私の基本認識の問題だと言われるが、実はただいま述べられたその大事な会合に私は出ておらない。したがって、その話はいま不破君から、おそらくそのままの状態だろうと思いますが、そうお聞かせをいただいただけです。したがって、こういう問題は、やはり直接聞いたその点で私がどう感ずるかを申し上げるのが本来の筋じゃないかと思います。不破君は正確にお伝えになったことだとは思いますけれども、ただそのときの雰囲気等もございますので、そこらはちょっといまここでとやかく申し上げることは差し控えさしていただきます。
○不破委員 そういうことも考えまして、総理の属されている自民党にもぜひ議員の方、閣僚の方含めて御出席をいただくように御案内申し上げたのですけれども、出席いただかなかったのは非常に残念だと思います。その点はあらためてあとでまたお伺いしたいと思うのですが、その問題の出版妨害の系統性、組織性という点では、藤原さんの場合以外にも非常に多くの事実が明らかにされました。
 昨日も西宮委員から幾つかの点が指摘されましたけれども、私が証人として喚問を求めました福島泰照氏の場合などは、さらにひどい妨害を受けております。そのときに証言された内容を簡単に御紹介しますと、この福島さんという人は、実は三べんも被害を受けているわけです。西日本新聞社の論説委員で、本名は隈部大蔵さんという方でありますけれども、ペンネームでいろいろ宗教批判をやられていた。一番最初に書いた本は、もう本が刷り上がって、一万部実際に刷り上がったけれども、印刷の過程から、出版の段階から、最後に本が出た段階まであらゆる圧力が加えられている。そして著者自身が検印までしたにもかかわらず、ついに一冊も売られなかった。出版社の社長自身がまわりからの圧力で非常なノイローゼ状態におちいって、完全にまぼろしの本としてつぶされてしまった、こういう経験の持ち主であります。
 それで、そういう経験の上に立って、福島さんが次に同じような第二の批判の書を書かれた。私はここにその原稿を持ってきておりますけれども、こういう膨大な原稿を福島さんが執筆されました。ところが、この原稿を執筆している段階で、まだ出版社もきまらない段階に、創価学会が、公明党が、福島さんがこの本を執筆しているということを調査網によってですか調べ上げられて、そして福島さんに対してこの出版の中止を要求する、こういう事態が起きました。
 それで、その事態がどういう形で行なわれたかといいますと、福島さん自身の関係者を通じていろいろな圧力が加えられる。最後には、公明党の当時の副委員長であります北條浩氏から直接会いたいという何べんもの申し入れが来る。そしてあまりひんぱんな申し入れを断わり切れないで、赤坂のプリンスホテルで会ってみると、私はそのときに北條氏のほうから福島さんに手渡された名刺とか、当時福島氏が記録した手帳とか一切のものをここに持ってきておりますけれども、ここで非常に重大な、いわば脅迫的な話をされている。
 第一に、私たちはあなたがペンネームで前に出した本についていろいろ調査をした結果、あなたが著者であるということを突きとめた。それから第二に、そのあなたがいま第二の出版を用意されていることも種々調査をして突きとめた。明らかにそういう広範な調査をやっているわけであります。そして第三に、創価学会は世界最高の宗教であるから、この創価学会に対する批判は絶対に許されないということが言われ、さらに創価学会の中でも特に青年部は闘争心に非常に燃えているということを繰り返し強調され、最後に創価学会、公明党を批判するものに対しては、創価学会という象はアリの一匹といえども全力をもって踏みつぶすということを十分承知されたい、こういう話が北條氏自身から著者の福島氏に直接伝えられる。
 私はこれは単なる会話として見過ごすことができない問題だと考えます。なぜなら、福島氏自身が前の著書を出版しようとしたときに、一万部も本を出しながら、それが創価学会の圧力でまさに雲散霧消されてしまった。著者が全然知らない間にこの本が消えて葬られてしまったということをすでに経験した当事者であり、その当事者に対して、そうやって前の本をつぶした団体の代表者が、今度もまた、われわれは象のようにアリをつぶすのだということを申し渡すわけですから、これは単なる会話として見過ごすわけにいかない。実際福島氏は、まだ出版社もきまっていない段階からそういう圧力や脅迫を受けて、市井の一介の人間として、ほかに身を守る手段のない人間として、自分の家族の生命のことまで考えざるを得なくなった。そういう点で、これだけの本を書きながら、ついに出版を断念せざるを得なかったということをそこで証言をしておるのでございます。
 それから次に、福島氏は、しかし真実を訴えなければいけないということから、第三の批判の書を用意をされた。これについては、一回、二回の経過から、どんなにみつからないように出版をしようとしても、必ず原稿の執筆の段階、出版の段階から情報が漏れて、情報が漏れれば妨害活動が始まるということから、東京都内で、公明党の党員や創価学会の会員が絶対にいないと思われる印刷関係の業者あるいは製本関係の業者、これを自分の足で歩いて、まさに分業で、手分けをしてほんとうの家内工業のような、二、三人でやっている店をさがしてはそこで個々に頼んで本をつくり上げる、こういうたいへんな、いわば戦前言論が自由でなかった時代に、まともな本を出版しようとするとえらい苦労をしたような、いわばそのような苦労をさんざんされて、第三の書物を昨年の秋に出版された。しかしこの本も、取り次ぎ店では扱いを拒否された。このような繰り返しの受難の持ち主であります。こういう事態は、佐藤首相は先ほど私が正確に事態を伝えているとしても、当事者から聞かなければわからないと言われましたけれども、こういう事態が、一回は出した本が一冊も世にあらわれないでつぶされてしまう。二回目は書いた本が、原稿を書いた段階で、これだけの本を完成していながら出版を断念せざるを得ないところまで追い込まれる。こういう被害者の訴えがもし事実であるとするならば、これを出版妨害の行為と見るのは正当ではないのか。総理自身が、これが事実であるとするならば、これを出版妨害の行為と見なさないのか、その点について重ねて伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いま何度も繰り返して、もし事実であればといわれる、もしというのはこれは仮定だ、こういうことに厳密にいえばなりますが、仮定の問題で私が議論するのもどうか、かように思います。したがって、これもただいま御遠慮を申し上げておきます。
○不破委員 さらに別の角度から伺いたいと思います。
 先日総理は、この問題は私人間の問題である。もし国家が介入している問題ならこれは重大な問題であろう。しかし、私人間の問題であるから、これはどこまでが妨害行為となるのかということについては慎重に考えなければいかぬという趣旨のことを言われました。しかし、私はここでその点に関して重ねて伺いたいのは、国家権力だけが公であるという立場に立てば、つまり政府と国家以外のことはすべて私事であるという立場に立つならば、これは私人間というワクに入るかもしれません。しかし、関係しているのは単なる個人ではなしに政党であります。この国会を構成し、そしてみずからそれぞれの政党が政権につくことを展望しているそういう政党の行為であります。そして国民の間に支持を争っている政党がそういう妨害行為をする、あるいはその政党を生み育てて、特定な政治目的を実現しようという宗教団体がその妨害行為の主体であるという場合に、私はこれは単なる私事である、政治に関係のない問題だというわけにはまいらないであろう、こういうように考えます。そしてこの問題については、どのケースをとってみても単なる個人ではなしに、公党の代表者、政党の代表者が関係しているというのがきわめて重要な問題であります。たとえば藤原弘達氏の著書の受難の場合には、最初に登場したのは公明党の中央幹部会員である藤原行正氏でありましたし、さらに田中幹事長に依頼するという形で公明党の竹入委員長が登場をしている。それから、ただいまの福島泰照氏の本の場合には、北條浩公明党の当時の副委員長が主要な役割りを演じておられる。そしてまた内藤国夫氏の著書の場合にも、内藤国夫氏の著書のゲラを手に入れて、その書きかえを求められたのが竹入委員長であり、北條浩副委員長であったことは、これまたすでに紹介をされているところであります。さらに先日の集会で明らかにされたものでありますけれども、内藤国夫氏の著書についてある新聞社、毎日新聞に小さい広告が載ったら、その新聞の編集の首脳部に北條副委員長から抗議の電話が来たということも当日の集会で証言をされました。編集幹部のところに北條さんが直接電話をしてきて、こういう広告を載せるのはわが党に敵対する気があるのか。あれだけお願いしたにもかかわらず、内藤の出版を押え切れなかったばかりか、こうやって広告を載せるとはわが党に敵対するつもりなのかという抗議の電話が直接北條副委員長から寄せられている。このように、事は決して私事、個人の問題ではなしに、まさに国民の間で公然と活動をし、政権の問題もそれぞれの党の責任において展望している、そういう政党の行動であり、その政党の代表者の行動である。こういう場合に、この問題をも私人間の問題と考えて、国の政治の舞台で討議すべき問題とは考えられないのかどうか、その点について伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 私は別に討議して悪いと言っているわけじゃない。けれども、大体政府について、政府の責任のある問題、これを論議される、討議される、審議される、そういうのが大体のあり方のように私は思っております。この場合には、これは私人だから討議してはならないというわけではない。私人の場合の救済方法はおのずからちゃんと道があるわけですね。だからそういう方法を使われたらどうなのか。私がこれをどう考えるかといって私の判断を求められるが、私の判断は、やはり最高裁の判断のほうが本来の筋ではないかということを実は私は申し上げたいのです。したがって、この場所でいろいろおやりになること、それは言論の自由ですからおとめするというわけじゃないですよ。何をおっしゃってもそれはけっこうですが、私ども政府自身に責任のある問題、その問題ならこれは責任を持ってお答えできる。私人間の場合なら政府自身がそれまで引き取って申し上げるわけにいかない、それこそ裁判の問題ではないか、かように私は思うのです。
○不破委員 私は、この問題は佐藤総理はそう言われますけれども、政府に二重の責任がある、これは明白だと思います。
 第一は、佐藤総理は所信表明の施政方針の演説の中でも、出版・言論の自由を守る点は政府としても十分配慮をしたいというふうに言われました。それはただ政府が出版・言論の自由に干渉をしないというだけではなしに、政府が責任を持たれているこの日本において出版・言論の自由が侵されないように配慮をする、こういう責任をみずからになわれたものだと思います。そういうことがあったら、これは全部裁判所のことである、政府は全く関係がないというのは、日本の政治の責任を負われている総理のとるべき態度ではないのではないかというふうに考えるものであります。
 第二には、総理は自民党の総裁であります。その自民党の中から、先日から繰り返し問題になっておりますように、直接の関係者があらわれてきている。この点では政府の一般的な責任という以上に二重の責任があるというふうに私ども考えるものでありますけれども、時間もありませんので、次に進めさしていただきます。
 それからもう一つ言っておきたいことは、総理は先ほど、そういう問題があるならば裁判所にかければいいではないか――しかし私は、事が個人が個人に被害を与えた、総理の言う私人間の問題であるならば、これは裁判所で白黒をつけるのが一番適切な方法であろうかと思います。しかし問題は、政党が自分に対する批判の自由を奪っているという問題、自分に対する批判が行なわれようとするときに、これを事前に封殺をするという問題、これは単にその関係者である著者個人の権利が奪われるだけではありません。その政党が自分に対する批判を封殺する目的は、その著者に被害を与える目的ではなしに、広範な国民の目の前で、自分に対する批判が展開されるのを阻止しようという目的であり、いわば関係者は国民の全体であります。しかもその主体が政党である。こういう場合には、これは政治の問題として、たとえ刑法の何条に触れる、触れないという裁判上の問題とは別個の問題として、政治の問題として徹底的に究明すべき問題であるというように私は考えるものであります。しかし、総理への質問は次に進めさせていただきます。
○佐藤内閣総理大臣 いま申し上げるように、政府の責任だという問題が先ほど申すように主体だ、こういうことを申しました。しかし、ここで審議されることは、必ずこれはテレビを通じて国民全体がちゃんと聞いておる、いまの国民は政治意識はなかなか高いですから。そういう意味では、こういう問題についての適正なる判断を必ず下すものだ、かように考えます。しかし、私が特に裁判ということを申したのは、これは特に救済を要する問題があるならばそこに持っていくよりほかに方法がないじゃないか。しかし、不破君が先ほど来言われるような意味で政府の意見を聞くのは、これは政治的な問題だと言われる。それならばこの場が必ず国民に達しておる、国民の意識は高いですから、国民自身から批判を下される、かように私は考えております。
○不破委員 先ほど総理は、私がもしこれが事実であるならばと言ったことをとらえられて、仮定の問題には答えられないという自民党の総裁の伝統的な答弁をされました。しかし私は、私自身が発言している問題について、これは事実であることを十分調査した上で申し上げております。しかし私が、これがもしということを言ったのは、自民党や公明党の方々を含めて、全体が承認するという意味でまだ公認された事実になっていない、そういう意味で私は事実をあげても、総理は私はまだ聞いておりませんと言われるから、もしという仮定法を使ったわけであります。このもしという仮定法をこの場で直接の既定の事実にかえる道は、総理もおられ、公明党の方もおられる場所でその参考人の直接の発言を求め、そこで反論すべきことがあれば、別の事実をあげて反論し、事実を確定する、これが政治の場においてお互いが承認し合う形で事実を確定する正しい道であると私は考えるものであります。そういう意味で私は先日も証人の喚問を要請をいたしました。その他の委員の方々も多くの証人について喚問を要請されました。ところが、これは言うまでもないことでありますけれども、この証人喚問が実現をされなかった。今日までされていない根源には、直接の当時者である公明党のとっている態度とともに、自民党が証人喚問に賛成をしないという態度をとっていることが非常に大きな原因になっていることは隠れもない事実であります。そうして佐藤総理は自民党の総裁であります。総理が自分の見ている前で当時者の発言を求めたい、それによって事実を確定したいという考え方を持っておられるならば、なぜ自民党が国会の舞台で証人を喚問することにあれだけ反対をされるのか、賛成されないのか、そのことについて伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 ちょっと話が違っているようですね。私は、私の判断を求められたが、その場所にいなかったから私が判断を下すわけにいきませんということを申したのです。私は判断を下したいのだがその場所にいなかった、たいへん残念だ、かように申しておるわけじゃないのです。だから、いまこういう者を呼ぶか呼ばないか、これはどこまでも私は自民党の総裁ではありますけれども、当委員会の問題だ、かように考えておりますので、その点は皆さん方で御相談の上、決定されたことだと思います。
○不破委員 この問題は予算委員会の理事会で討論された過程で、国対委員長の間の会談ということで預けられたということは、私が申し上げるまでもないと思うのです。その際には、そこでとられる自民党の態度というものは、単なる予算委員会の範囲を越えた党の態度であると思います。
 それで私は重ねて伺いたいのですけれども、なぜ反対するかということを聞きましたら、事情が違うと言われましたから、その自民党の総裁である佐藤総理として、この問題を証人を喚問をして国会で事実の真相を究明する、そういうことには当たらない性質の問題であると考えられておられるのかどうか、あらためて証人の喚問の問題について、総裁である佐藤総理がどういうふうに考えておられるか、このことを伺いたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 それこそ皆さん方が自主的におきめになることなんです。やはり満場一致であることが望ましいですね。やはり、数で無理をしてそういう問題を決定する、かようなことではなかなか運営はうまくいかないんじゃないか、かように思います。したがって、私はやはり全部が賛成されたときに初めてこういう事態は行なわれるんだ、かように思っております。
○不破委員 自民党としてはどういう態度をとられるのですか。
○佐藤内閣総理大臣 それはもう先ほど来申したように、自民党としては全体が賛成されることが何よりも大事なことだ、かように考えております。数は一番多いのですから、私どもは数でものを決定するというだけに徹するなら、こういう問題は非常に簡単でしょう。しかし、そうではないのです。事柄の性格上、全部が相談をして納得がいくというそういうもとで、初めてこの問題が解決されるものだ、かように私は考えます。
○不破委員 そうしますと、五党のうちで三党は喚問に賛成をしている。しかし、公明党が反対をしているという場合には、自民党は賛成の態度はとらないということですね。
○佐藤内閣総理大臣 いま申し上げたとおりです。
○不破委員 時間が参りましたので、これで質問を終わりたいと思いますけれども、私はこの問題については、国会の外では問題の重大性が非常に明らかになっていると思います。そして、この問題について公明党とともに自民党及びその総裁であり総理である佐藤首相が、この問題を国会の場で究明することについて、それからまた具体的な事実があげられて問題の重大性が明らかにされていることについて、きわめて弁護的といいますか、問題の重大性を軽くする、あるいは弁護的な態度をとられていることも、これもまた、先ほど総理はテレビ、テレビと言われましたけれども、テレビや新聞を通じて明らかになっていると思います。しかし、この問題は、私は、単に国会の中の力関係で数が多いからということであいまいにされていいものではない、それをあいまいにすることがいま国会の中で多数を占めている方々に対する国民の批判を招くもとになるということを最後に付言をいたしまして、時間が参りましたので、きょうの質問を終わらせていただきます。
○中野委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。
 締めくくり総括質疑はこれにて終了いたしました。
 以上をもちまして昭和四十五年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。
    ―――――――――――――
○中野委員長 この際、委員長より御報告申し上げます。
 すなわち、言論・出版妨害問題につきましては、赤松勇君、麻生良方君、不破哲三君、塚本三郎君より、その真相を究明するため、証人の喚問要求、あるいは参考人の出頭要求、またこれらに関する調査特別委員会の設置要求等が委員会においてなされ、理事会においてその取り扱いを協議いたしましたので、この際、その結果について御報告いたします。
 理事会におきましては、これらの事項につき、社会、民社、共産の各党よりきわめて強い要求があり、その真相を究明するため、本日までその適当なる論議の場及び方法等につき種々論議を重ねてまいりましたが、遺憾ながら合意に達せず、その具体的結論を見ることができなかった次第であります。
 また、昨日の田中武夫君より御要望がありました国会内における請願審査のあり方、行政の監督機関としての、かつての行政監察特別委員会のような特別委員会の設置、委任立法の基準の作成等の問題につきましては、議院運営委員長に十分その趣旨を伝え、今後検討を求めることといたします。
 また財政法第二十八条七号の主要な法人の範囲等、財政法に関する問題につきましては、当委員会としましても、予算委員会の運営改善に関する問題とも関連し、今後検討することといたしたいと思います。
 また、中谷鉄也君より要求のありました興信所に対する政府の所管の明確化につきましては、すみやかに政府において善処されるよう決定し、委員長よりこの旨政府に申し入れた次第であります。
 以上、理事会の経過並びに結果について、御報告申し上げます。
 午後の会議は一時三十分より再開することとし、討論、採決を行ないます。
 この際、暫時休憩をいたします。
   午後零時四十六分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時四十分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算、昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 この際、日本社会党の細谷治嘉君外八名、公明党の坂井弘一君外四名、また民社党の今澄勇君外二名より、それぞれ昭和四十五年度予算三案につき、撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
○中野委員長 これより、各動議について、順次その趣旨弁明を求めます。細谷治嘉君。
○細谷委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算及び昭和四十五年度政府関係機関予算の三案につき、これらを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、その概要を御説明し、委員各位の御理解と御賛同を得たいと存ずる次第であります。
 わが国経済の高度成長は、政府自民党の大企業本位、生産優先の財政金融政策に強くささえられて、民間設備投資の急速な拡大と産業の重化学工業化をもたらし、ばく大な資本蓄積を達成いたしたのであります。しかしながら、その陰では資金と資源のアンバランス、富の偏在を招き、さまざまな形の格差と不公平を拡大させるとともに、過疎、過密、公害、交通事故、有害食品のはんらん等を引き起こし、国民生活や福祉などを、耐えがたいほどに犠牲に供してまいったのであります。
 特に、佐藤内閣以後の昭和四十年から、四十四年末までの消費者物価三二・六%の上昇に加え、最近の卸売り物価の連騰が示すように、高度成長の中に計画的インフレが組み込まれております。このため実質賃金の上昇が抑制され、通貨価値の減少により、勤労者の生活はその基礎を奪われ、大衆貯蓄者もまたばく大な損失を負わされているのであります。その反面、巨額の借り入れをして、土地や実物資産を手に入れた投資者には巨大な利得がころがり込み、富の不均衡を一段と激化させているのであります。
 かてて加えて、政府の不公平な税制は、たび重なる大法人の税率軽減や悪名高い租税特別措置を中心とする大企業、金持ち優遇、勤労者に対する酷税によって、格差と不公平がいよいよ助長されておるのであります。
 労働生産性の著しい上昇にもかかわらず、賃金は生産性を下回り、労働者は、生活様式や消費構造の変化によって、支出の増大を余儀なくされ、ますます生活が圧迫されるに至っております。その結果、昭和四十年から四十三年にかけて、国民所得に占める雇用者所得は、五六・六%から五四・二%と低下し、国見総支出に占める個人消費支出もまた五六・六%から四・五ポイントも下落し、さらに製造業における労働者の分配率も、三八・三%から三三・八%へと、大きく下落しておるのであります。
 こうして、大企業は、記録的な八期連続増益、増収を続け、繁栄を謳歌する一方で、中小企業は、大企業の踏み台とされ、好不況にかかわらず、常に倒産は増大を続け、石炭産業などはいわばやっかい扱いを受け、急速に整理が進んでおるのであります。
 また、政府の農業破壊政策によって、米価は据え置かれ、食管制度のなしくずしが始まり、農産物の輸入自由化と相まって、四十五年度は水田の休耕、転作による米の減産が、場当たり的に打ち出されてまいりました。かくして生産者米価と兼業収入で、かろうじてささえられていた農家経済は、まさに破綻に瀕し、農村は、過去の新規労働力給源として、大企業のための農業として再編成されようとしておるのであります。
 そればかりでなく、成長政策の矛盾は、資本主義の物質中心、金権万能、弱肉強食の生存競争を激化させ、人間精神の荒廃を招き、汚職、犯罪をはびこらせ、暴力、売春、ギャンブル等の横行を許しておるのであります。
 このような、人間疎外と人間性破壊による社会の腐敗が、国民に抜きがたい政治不信を植え付けており、青少年を衝撃的な直接行動へとかり立てているのであります。
 政府は、七〇年代は内政の年と称し、昭和四十五年度の予算編成にあたり、物価の根強い上昇基調を抑制しつつ、経済の効率化と国民生活の充実向上をはかっていくとうたつております。だとするならば、以上に述べたような成長政策の矛盾を解消するため、経済財政の運営を根本的に改め、平和経済の実現をはかり、もって、経済成長の成果を民生の安定と福祉の向上に振り向けて、真の繁栄時代を切り開くべきでありましょう。にもかかわらず、政府提出の予算案は、相も変わらず、大企業、資産所得者を優遇し、勤労者の生活を圧迫し続けるものであり、日米安保体制の持続、いなその拡大強化のもと、自主防衛の美名で、防衛力の増強を推し進めようとする、インフレ予算、軍事優先の予算となっておるのであります。
 政府は、この予算を警戒中立型と呼んでいますが、その規模が経済成長率を大きく上回るばかりか、内容においても、公共投資や防衛関係の器材費など、民間設備投資を刺激するものとなっております。国債発行も四千三百億円と巨額が予想され、その残高は三兆円にものぼり、一年おくれで日銀引き受けとなるため、通貨信用の膨張を引き起こしているのであります。また、卸売物価対策も、金融を引き締めながら財政で刺激するという、しり抜けであり、インフレと高度成長とが同居しています。したがって、経済運営の基本的態度の中心に物価安定を据えながら、実際には、何ら有効な対策を取ろうとせず、四十四年度同様、消費者物価の大幅上昇は、もはや避け得ないものとなっております。
 政府の税制改正案は、重税と不公平是正を要望する国民大衆の期待を裏切るものであります。
 法人税率引き上げを当初の二%、財界や金融界の圧力で留保所得に対してのみ一・七五%と値切り、他方で引き当て金制度の拡充をはかるなど、優遇を続けております。さらに、悪名高い利子・配当優遇の撤廃を渋り、その温存をはかり、不公平を一そう拡大しております。税の自然増収が一兆三千七百七十億円にものぼるのに、所得減税は、わずか二千四百六十一億にすぎず、課税最低限は数年前の目標百二万円にとどめ、他方、税率緩和の恩典を属領所得層にまで広げています。しかも、財源計画のないまま十兆三千五百億の新道路計画、全国九千キロに及ぶ新幹線網を決定するなど、自動車新税構想をはじめ、間接税増徴の土台づくりを行っていることは、全く言語道断と申さねばなりません。
 わが国の社会保障水準は、依然、西欧の三分の一程度にとどまっており、社会保障関係費の増額分は大半が医療費で占められています。特に、老人、母子、障害者に対する福祉年金の増額は、わずか二百円にすぎず、生活保護基準は一四%アップにとどまり、一般勤労者世帯との格差は、一向縮まっていません。また、政府の三年越しの公約であった児童手当の創設は、今度もまた見送りになっております。
 都市化が急速に進展する中で、公害や交通事故が記録的な発生を見ているにもかかわらず、国民の生命と健康を守るために必要な予算措置がとられておりません。政府の住宅建設五カ年計画は四十五年度で満了するのでありますが、住宅難は解消するどころか、逆に、政府公約の一世帯一住宅の実現はかえって遠のいています。上下水道、公園清掃施設など生活環境施設の整備は、いよいよおくれるばかりであります。
 大学紛争の原因の一つである教育研究機能の貧弱さは放置されたまま、学生の七五%を占める私学の援助はわずか認られはしたものの、現実には焼け石に水でしかありません。加えて、義務教育の父兄負担や地方自治体の超過負担は一向に解消されず、幼児教育の振興も放置されています。予算編成に際し、最大の焦点であった農政に目を転じてみましょう。
 歴代自民党政府の小農切り捨て農政は、米の百五十万トン減産によって一そう強められ、両米価据え置き方針のもとで、食管制度の空洞化が進められています。かくして、稲作の土台は崩壊し、農産物輸入政策によって食糧自給率も低下し、畜産、果樹など国内農業全体が追い詰められて、農業の将来に対する希望はいよいよ完全にうせつつあります。なかんずく何らの見通し計画を持たず、五十万トン分、十一万八千ヘクタールの土地買い上げの責任を、何らの予算措置も行なわず、地方団体や農協に押しつけ、地方交付税の配分によって糊塗せんとするがごときは、国会軽視、地方自治の侵害であって絶対許されないことであります。
 中小企業予算は、相変わらず予算総額の〇・六%にすぎず、特に恵まれない中小企業労働者に対する施策は、皆無といっても差しつかえないのであります。
 労働省予算は、佐藤内閣以来伸び悩み、三千万人をこえる労働者対策が予算総額のわずか一・二%にすぎないことも、政府の労働者軽視を証明するものであります。しかも、インフレ抑制に名をかりて、賃金引き上げ抑制をねらいとした実質的な所得政策すら導入されようとしています。労働力不足がいよいよ深刻化しつつある今日、失対事業は一万人のワクを削減し、転職困難な中高年齢労働者に一方的な犠牲を強要しています。
 政府、特に大蔵省は、地方財政富裕論を宣伝し、地方住民の要望と行政水準の低さに目をつむり、地方交付税からの三年連続の借り上げ、一部補助金への肩がわりなど、覚え書きと法律無視の態度であり、住民福祉と地方自治を抑圧し、新中央集権化をねらうものと断じて差しつかえありません。
 沖繩関係予算は、米軍の施政権下、過去二十五年にわたる投資不足分をまかなうには、あまりにも不十分であります。現在沖繩では、基地労働者の大量解雇など、深刻な問題が山積していますが、これらの解決に最善を尽くすとともに、沖繩県民の意志に基づいて、早急に平和経済開発に着手し、基地依存経済から脱却するために十分な財政措置がぜひとも必要だと思うのであります。
 以上、申し述べましたように、国民大衆の要求を無視した予算案にもかかわらず、防衛予算のみは聖域として最優先扱いをされ、七〇年安保対策としてその伸び率も一七・七%とこれまでの最高となっています。いまや日本はアメリカのアジアにおける防衛責任の肩がわりに協力し、七二年から始まる第四次防にかけて、自主防衛、軍事化路線を強力に進みつつあるといえます。准尉制度の新設、海空自衛隊の強化に力が注がれているのが大きな特徴点であります。
 また、海外経済協力は、東南アジアの反共諸国に片寄って行なわれ、アメリカの援助の肩がわりとドル防衛協力を進めております。特に来年度予算では、わが国の資本市場と資源確保に重点が置かれており、エコノミツクアニマルへの道を依然歩み続けようとしているのであります。
 以上のような観点と分析から、社会党は、次のような基本方針に基づいて予算を編成すべきであると強く主張するものであります。
 その詳細は、組みかえ要求動議に示してありますが、これを要約いたしますと、まず物価安定対策を強力に推進するとともに、勤労者の税の軽減と公平化をはかり、あわせて社会保障の大幅な拡充、住宅、生活環境の整備と、すべての公害一掃のための施策を重点的に実行に移し、人間回復のための措置を講ずべきであります。
 次に、農漁民、中小企業者に目標と希望を与える施策を確立することであります。特に危機に直面している農業については、関係予算を大胆に編成がえを行ない、米、畜産、果樹を柱とする農民の農政を推進するとともに、全額国庫による土地改良、基盤整備事業を進め、共同化の推進、農業機械ステーションの設置、指導機関の充実等をはかることであります。
 また食管制度を守り抜き、生産者米価は生産費及び所得補償方式で決定し、消費者米価を据え置き、並行して備蓄米制度の創設、貯蔵施設の拡充、消費増大のための研究、宣伝などに努力すべきであります。
 同時に、畜産振興のため、田畑転換を可能とする土地改良事業の通年施行、草地造成による飼料増産等をはかり、牛乳、豚肉などの価格支持制度の確立が必要であります。
 これらと関連して、急速に進みつつある農山漁村の過疎化現象を食いとめるため、集落の再編成、産業の再配置等、抜本的な改造計画を強力に推し進めねばなりません。
 長い間米国の支配下で苦悩した沖繩に報いるため、平和経済開発のため、すみやかに沖繩開発基本法を制定し、本土類似県以上の財政支出を行ない、九十八万県民が喜んで祖国に復帰し、将来に希望の持てる格段の措置を講ずる必要があります。
 防衛費については、平和憲法の精神を貫き、自衛隊の増員をやめ、装備費を中心に防衛予算の削減を断行すべきであります。また反共諸国に偏した海外経済協力を改め、いずれの国とも平等互恵の精神に基づいて対処すべきであります。
 以上、私は予算編成に関する基本方針を申し述べたのでありますが、当面とりあえず緊急に確保すべき最低限のものとして、かつ、各党の御賛同をいただけるものとして、次の諸項目につき、政府は直ちに組みかえを行ない、国会に再提出するよう要求するものであります。
 その第一は、給与所得者のうち、特に低所得層及び独身者の所得税負担の軽減をはかるとともに、四人世帯年収百万円まで無税とするため給与所得控除の定額部分を十万円引き上げ、政府案による八百万円以上の金額の税率軽減措置を一時停止すること、普通法人の所得のうち留保部分についての法人税を現行の一〇%増、利子・配当所得の税率是正、租税特別措置の合理化、交際費課税の強化などであり、これによる増減収は相殺する見込みであります。
 第二は、物価安定対策の推進、社会保障給付の改善、児童手当制度の創設、住宅対策の充実、交通安全緊急対策の推進と一元化、公害対策の強化、義務教育関係費の増額、労働災害対策の拡充などであり、大よそ千七百三十五億円の増が見込まれるのであります。
 第三は、農漁業政策の確立と中小企業対策の強化であります。国、地方を通ずる農業関係予算は巨額に達するのでありますが、これを根本的に編成がえすることを前提に、経営高度化のための共同化を促進し、これを柱として農業機械ステーションの設置、指導機関の充実をはかり、さらに、畜産の振興と経営の安定をはかるため、牛乳、豚肉等の価格支持と、あわせて飼料自給度の向上のため土地改良事業の通年施行、草地造成などを推進することであります。
 第四は、沖繩関係援助費を大幅に増額し、特に立ちおくれの著しい社会福祉及び医療に重点を置き、さらに産業振興、国土開発をも推進すべきであります。
 以上による増加経費は、合計で大よそ二千八十億円と見込まれるのでありますが、すでに申し述べましたような基本方針に基づいて、防衛関係費から大よそ千四百二十億円を削減し、一般物件費の節減、経費の効率化等によって、約六百六十億円を捻出することによって、収支をバランスさせるべきであります。
 最後に、予算編成の進め方について一言いたします。
 予算復活折衝中、ある与党議員が朝早く起き、朝食会をかけめぐる、会館に入れば地元の陳情団、まさしくかき入れどきだと語っていました。また、ある議員は、物価が上がり、名目所得が増加しているので予算が組めるのですと、インフレをたたえ、物価上昇を賛美しておりました。ここに予算案の本質が見出されるのであります。弱肉強食のぶんどり合戦、非民主的な予算編成と申さなければなりません。私は予算編成の抜本的改革を要求する次第であります。
 以上、政府の予算三案に対する日本社会党の基本態度、予算編成の基本方針及び当面緊急に組みかえすべき諸点を具体的に述べたのでありますが、政府はすみやかにわが党の組み替え動議に基づいて編成がえを行ない、国会に再提出されるよう要求するとともに、委員各位の御賛同をお願い申し上げまして、趣旨説明を終わります。(拍手)
○中野委員長 次に、坂井弘一君。
○坂井委員 私は、公明党を代表して、政府提案の昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算及び昭和四十五年度政府関係機関予算については、政府は、これを撤回し、わが党が提出する要綱により、すみやかに予算を組みかえ、再提出することを要求する動議について、その趣旨を説明いたします。
 政府から提案されました予算案は、国民の期待を裏切るものとなり、およそ内政の年とするに裏づけのない予算となっているのであります。すなわち、出委員会における今日までの長期にわたる審議の結果、われわれが究明し得た政府提出予算案の実体は、依然として産業優先の軌道を一歩も踏みはずすことなく著しい変化を求めるならば、わが国民の勤勉と優秀性による経済の活力を自主防衛路線に誘導し、軍事偏重に傾斜する方向を明らかにしたにすぎないと言わざるを得ないのであります。
 かくして、物価安定をはじめ国民生活の質的向上を期待する国民の切実な要求から大きく距離を置いたままの政府予算案をわが党は承認するわけにはいかないのであります。
 動議の内容につきましては、文書によって各位のお手元に配付されておりますので、要綱の細部については説明を省略し、要点をあげて御説明いたします。
 第一に、政府予算案の規模とそれが示す施政方針の大綱でありますが、政府予算案の規模は、前年度比一七・九%増となり、これは政府見通しの名目成長率を大幅に上回るものであります。
 さらに、財政投融資計画の大幅増とあわせ、しかも内容的には、政府の標榜する内政の充実に何ら積極的な意欲が認められないきわめて景気刺激型予算となっております。
 経済の高度成長の継続と、これに対応する施策の不備によって、物価上昇が根がはえた状況にある現在におきましては、ポリシーミックスの運用による経済の安定成長をはかることが最も重要なことであります。
 この基調に立って、経済成長の急速な前進によって置き去りにされてきた社会資本の充実と国民生活の質的充実のため、社会保障の整足をはかり、人間性豊かな政策を盛り上げていくことが四十五年度予算の課題であります。したがって、組み替え動議では、国民福祉の充実向上を最重点とした質的転換を強く要求したわけであります。
 第二に、国債発行でありますが、景気過熱を懸念しながら、引き続き四千三百億もの国債を発行することは、適正な財政運営とはいえません。ましてこれが市中消化をたてまえとするというものの、日銀よりの信用供与に依存する市中銀行引き受けという形式をとる以上、インフレ要因となることは明らかであります。
 したがって、政府の支出内容と、国民経済の動向から勘案し、自然増収が大幅に見込まれる昭和四十五年度においては、政府予算案より二千億円の減額を要求するものであります。
 第三に、減税と税の不公平及び物価安定についてであります。
 政府は、史上最大の減税とうたっておりますが、所得減税は、税調答申より二年間の実施のズレがあることから見ても、その間の物価上界を考慮すると、実質的には重税感の不満を解消するに値しないものであり、特に四十五年度においては、約一兆四千億の自然増収が見込まれながら、減税に回される額はわずかに二千四百億円にすぎません。
 税の不公平の典型である利子・配当所得に対する優遇措置をはじめとして、租税特別措置は、ほとんど改廃が進められず、国民の期待を裏切ったものとなっております。
 したがって、重税と不公平の解消のため、歳入の中で所得税減税による減額を四千八百億円とし、租税特別措置法の整理合理化、交際費課税、高額所得者課税、自然増等よりの増収をはかり、歳入において六千八百億円の増額を要求しております。
 物価安定については、政府予算に見る限り、安定策の推進に十分な財政的裏づけがなく、過度に需要を刺激し、物価高騰を招くことは必至であります。
 第四に、地方財政の圧迫について。政府は地方財政規模の増大をもって余裕の理由とし、三百億円を国へ借り受けすることにしていますが、かような措置を講ずることは、地方交付税の実質的減額であり、地方財政に対する不当な圧迫であると言わざるを得ません。
 したがって、政府の地方財政からの借り受け措置の撤回を求めるものであります。
 第五に、農業並びに中小企業対策であります。
 過剰米問題の解決策として、政府は、水田の転換、休耕や農地転用など、米の生産調整政策を進めておりますが、農家は、長期的農業ビジョンを持たない糊塗的な政策に対し大きい不安を抱いております。
 したがって、政府は、すみやかに確固たるビジョンを立て、抜本的かつ具体的な農業近代化政策を推進すべきであります。かかる意味から、当面する米作転換の推進については、基盤整備事業資金、農業者離農給付金等の増額をはかり、さらに農産物の安定供給と価格安定対策を強力に推進すること、などから対策費の大幅増額を要求するものであります。
 中小企業の構造改善と技術の開発は、経済の持続的成長と物価安定の上から重要であります。ことに、アメリカの対日輸入制限問題、発展途上国からの追い上げ等の挾撃の中にある中小企業の進路の打開は、中小企業がわが国経済と労働人口に占める位置から見てもきわめて重要であり、中小企業対策費の大幅増額を要求するものであります。
 第六に、社会保障の充実、住宅、公害等の関係施策についてであります。
 政府案による社会保障関係費の伸び率は、前年度に比較して、実質的にきわめて低く押えられ、特に、四十五年度実施を公約した児童手当を見送っていることは、国民に対する不信行為であり、許しがたいことであります。
 生活保護基準の引き上げ、児童手当の実施、出産費用の公費負担、老齢福祉年金の大幅増額、母子、老人、盲人対策費の増額、保母給与の改善、保育所の大量建設、看護婦養成等、政府は、国民生活優先の施策の公約をすみやかに実現すべきであり、社会保障関係費の増額のために、根本的な予算の組みかえを求めるものであります。
 住宅難にあえぐ低所得勤労大衆の現状はますます深刻化しております。このような現況から、特に公営住宅の建設については、政府施策住宅調整分戸数のうち、四万戸を確保し、十三万七千戸の建設を強く要求し、あわせて、住宅地区改良工事について、二万戸の改良住宅の建設を要求するものであります。
 さらに、公害問題は、いまや大きな社会問題になっているにもかかわらず、政府は依然として公害対策の基準を、産業の利害と、国民生活との妥協点に置いております。公害から、国民の生命、財産と健康を守るための積極的な予算の増額を要求するもので、これはまた政府の公約実現を求めることでもあります。
 最後に、防衛予算及び沖繩援助費についてであります。
 政府は、防衛費予算を、前年度比、一七・七%に増額し、年々増加率を急膨張させたのであります。言うまでもなく、これは日米共同声明を大きく反映させ、自主防衛の名のもとに、軍事力強化を具体的にあらわしたもので、アジアの緊張緩和に逆向する危険な方向を示すとともに、日本の国力を軍事偏重の軌道に乗せようとする危惧を大きくするものであります。
 わが党は、このような予算案と、その方向に強く反対するものであり、従来より、三次防予算を認めない主張を貫き、人件費、施設費、庁費、被服費、食糧費等を除く予算は、すべて四十一年度同等額で押え、政府案より、二千二百八十九億円の削減を要求するものであります。
 沖繩授助費の五四%増は、政府として、本土復帰の体制づくりに一応、前向きで臨んでいるものとして認められますが、七二年本土復帰を円滑に実現するためには、基地依存経済からの脱皮のための、長期開発計画が不可決であり、県民生活の本土との格差是正のためには、援助費の大幅増額を必要とし、特に、基地労働者の解雇が切迫した問題となっているが、これに対する政府の強力な対策を求めるものであります。
 以上が、組みかえ要求の動議の概要でありますが、これによる歳入の減額は六千八百億円で、これに対する歳入増額は同額であります。歳出の増額は、六千二百六十二億円、これに対する、歳出減額は同額であります。
 これを要約しますと、歳入予算においては国債発行を半減し、減税と税の公平に重点を置き、歳出予算においては、立ちおくれた社会資本の充実、社会保障の質量両面の水準向上に重点を置き、防衛関係予算の伸びをおおむね四十一年度に戻す減額をし、公共事業予算の効率的使用をきびしく求めるもので、予算規模においては政府案と同額とするも、根本的に大きく質的転換を要求したものであります。
 予算委員各位におかれましては、この動議に賛成され、政府案が国民生活優先を基調とした予算に是正されることを強く要望いたしまして、動議の提案説明を終わります。
○中野委員長 次に、河村勝君。
○河村委員 私は民社党を代表して、昭和四十五年度予算三案について、政府に対し、政府案の撤回を求め、わが党の組みかえ案に基づき、予算案を組みかえの上、再提出することを要求する動議を提出するものであります。
 わが党が、政府予算案に対し組みかえを要求する理由は、大別して次の三点であります。
 第一は、いわゆる七〇年代のビジョンに欠ける点にあります。
 わが国経済は、いまや国民総生産において世界第三位に位し、国際収支の黒字もまた定着しつつあります。この時期においてこそ、経済成長の成果を住宅、社会保障、生活環境整備等の拡充、物価安定、大幅減税の推進に振り向け、真の高度福祉国家建設への第一歩を踏み出すビジョンを持たなければならない。にもかかわらず、政府の四十五年度予算案は、これら長期的視野とその実現へのビジョンを全く欠き、従来の総花的予算編成の悪弊を踏襲しているにすぎず、国民の期待を裏切るものであります。
 第二は、減税と税制改革の不徹底であります。
 政府は、四十五年度税制改正案で、所得税の課税最低限度の十万円引き上げ、税率の緩和、法人税の引き上げ、利子・配当課税の手直しなど広範な改正を行なっているが、いずれも不徹底なものであり、大幅減税の推進と税負担の公平、平等を求める国民の期待からは、遠く離れたものになっております。
 政府は、いわゆる百万円減税の実現によって、課税最低限度額は欧米水準並みになったと称し、今後とも大幅減税の必要なしといっておりますが、物価の急速なる上昇による実質所得の低下を考慮するならば、いまなおきわめて不十分なものであります。
 利子・配当課税の是正に手をつけたことの意欲は多としますが、内容においてはほとんど改善が見られない。法人税率の引き上げもまた、民間設備投資の行き過ぎを抑制するためには、なおかつきわめて不十分であります。いずれもこの際、抜本的改革を必要といたします。
 第三は、物価対策の欠如と、国民生活環境整備の立ちおくれであります。
 昭和四十四年度の消費者物価上昇率は六%をこえようとしております。昭和四十五年度においても、依然としてインフレ化の傾向がさらに強まりつつあるにもかかわらず、政府には物価抑制について何らの具体的政策がありません。
 加うるに、土地制度の矛盾から生ずる地価の高騰に対する無策のために、社会資本の立ちおくれがますます激化しております。
 本予算案においては、国民生活環境の整備について若干の配慮が見られるが、住宅政策において明らかなように、社会開発の中心課題とするという政府の公約を裏切って、既定の五カ年計画すらついに完成せず、一世帯一住宅の庶民の夢をむなしくするがごときは、国民生活安定に対する佐藤内閣の熱意の不足を如実に示すものだといわざる得ないのであります。
 私は、政府案に対して、以上基本的な三点の批判の上に立って、次のようなわが党の組みかえ案の骨子を説明させていただきます。
 わが党の組みかえ案の基本方針は、七〇年代のわが国の経済力を基礎にして、その力を国民生活の安定向上に重点を指向し、高度福祉国家建設のレールを敷かんとするものであります。
 以下、歳入予算からその特徴を申し上げます。
 第一は、歳入予算規模を政府案より六百五億増の八兆百二億円としたことであります。
 第二に、その中で歳入減の主たる要素となるものは、国債発行額を政府案より三百億減の四千億円としたことと、所得税の減税幅の拡大並びに専売納付金のうち千三百五億円を地方に委譲し、住民税の減税と住民福祉対策の拡充に充当したことであります。
 所得税については標準世帯の免税点を百三十万円に引き上げることとし、これによる減税額は、初年度三千五百億円であります。このほかに、未成年勤労者の所得控除を設けることとした等であります。
 第三に、歳入増の要素となるものは、租税及び印紙収入について、経済成長の予測から推算して、政府案より二千百十億円増の七兆千四百九十四億円と見込んだほか、法人税の引き上げ並びに利子・配当課税、交際費課税の是正によるものであります。法人税については、大企業法人税率を三%引き上げて三八%とする。これによる増収額は千二百億円であります。利子・配当の優遇措置は全廃することとして、これによる増収額は千億円、交際費課税については損金不算入率を八〇%に引き上げることによって、増収額三百億を見込んでおります。
 次に、歳出予算については、歳入予算規模と同額の八兆百二億円、政府案より六百五億円の増といたします。
 政府案と比較して、一般行政費の節約二千五百五十億円、防衛関係費削減八百五十七億円、産投出資の削減四百六十八億、計三千八百七十五億円を減額し、歳出組みかえの増額四千四百八十億円に充当することといたしました。
 組みかえの重点を、社会保障、住宅、物価並びに文教対策に置きます。
 そのおもな内容は、社会保障については明年度から児童手当制度を新設し、第二子より月三千円を支給すること、老人対策として、六十歳以上の老人医療費の国庫負担並びに老齢年金をそれぞれ二万円に引き上げることとします。これによる支出増は二千八十億円であります。
 住宅等生活環境整備については、政府案に対して二千八十億円の増として、政府施策住宅の増設と上下水道等生活環境施設の整備に充当いたします。
 このほか、公私学の格差是正のため、文教対策費の増五百億円、物価対策費三百億、中小企業、農業対策に三百億円等の増額をいたしております。
 以上、わが党の予算組みかえ要求動議の理由と組みかえ案の骨子を説明いたしました。
 各位の御賛同をお願いいたしまして、私の提案理由の説明を終わります。
○中野委員長 以上をもちまして、各動議の趣旨弁明は終わりました。
    ―――――――――――――
○中野委員長 これより討論に入ります。
 昭和四十五年度予算三案及びこれに対する撤回の上編成がえを求めるの動議三件を一括して討論に付します。
 討論の通告がありますので、順次これを許します。細田吉藏君。
○細田委員 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十五年度予算三案の政府原案に賛成し、社会、公明、民社各党のそれぞれの予算組みかえ動議に反対の討論を行ないます。
 御承知のとおり、この十年間のわが国の経済発展は目ざましく、四十四年度の国民総生産は六十兆円をこえて、自由諸国家中の第二位となり、国民は未曽有の繁栄を謳歌している状況であります。
 敗戦による壊滅状態からここに至るまでの日本経済の復興、発展、高度成長はまことに奇跡的ともいうべきものでありまして、諸外国のひとしく驚異の的になっているところであります。
 このような繁栄をもたらした原動力は、何といっても日本国民の英知と勤勉であることは言うまでもありません。それと同時に、わが自由民主党並びに歴代わが党内閣の財政金融及び経済諸施策が妥当適切であったことも、広く国民の認めるところと思います。
 さて、四十五年度予算に関しまして、国民が最も強く望んでいる点は、第一に、この景気を長期的に持続していくということであります。第二には、経済発展に付随して生じているいろいろなひずみの是正という問題であります。その内容としては、物価の安定、公害対策、あるいは交通難の問題、過密・過疎に対する対策など、いろいろございます。
 そこで、私はこの予算が国民の願望に対してどうこたえているかということを、以下数点にわたって検討したいと思います。
 まず第一は、経済の持続的成長の確保の問題でありますが、このためにはやはり景気の過熱化を防ぐことが必要であります。この見地から、昨年九月以降、金融引き締めの措置がとられているのでありますが、こういう時期に編成される予算は、景気に対して刺激的でない、いわゆる警戒中立型の予算でなければなりません。
 私は、今回の予算は、ほぼそういう性格の予算であると思いますが、特に今回の予算の歳入面の大きな特徴である公債の削減と法人税の増徴という二つの政策の持つ景気調整的役割りを高く評価すべきであると思います。すなわち、公債と政保債の発行をそれぞれ六百億円ずつ削減し、一般会計の公債依存度は前年度の七・二%から五・四%に低下しているのであります。さらに法人税の増徴は、長期金利の引き上げとともに、企業の投資活動の活発化を抑制する役割りを果たすものと期待されるのであります。
 以上のような理由により、今回の予算案は決して景気刺激的なものではなく、警戒型のものであると思うのでありますが、私は、この際特に四十五年度の財政金融政策の運営は、内外の経済情勢をにらみ合わせながら、弾力的に行なうべきであるということを政府に強く要望しておきます。
 第二の問題は、物価の安定であります。
 昨今の物価騰貴の原因は、財政よりもむしろ輸出や設備投資の増大、個人消費支出の増大など、需要の伸びが非常に大きいこと、賃金上昇による生産コストの増大を生産性の向上によってカバーできない部門の商品の値上がりが大きいことなどであると思われます。
 四十五年度予算は警戒中立型であることは、ただいま申し上げたとおりでありますが、さらに消費者米価の水準を据え置くなど、極力公共料金の抑制をはかっていること、また流通部面の合理化、農林漁業、中小企業の近代化、労働力流動の円滑化等の諸施策をはかっていることなどからいって、少なくとも財政の面からする物価騰貴の誘発はないと言うことができると思います。政府の経済見通しによっても、四十五年度の消費者物価の上昇率は四・八%となっているのでありますが、これはぜひともこの程度でとどめなければならないと思います。このためには、各界各層のそれぞれの立場における協力ももとより必要でありますが、特に政府としては特段の覚悟を持って当たっていただかなければならないと思います。
 第三に、減税の問題についてであります。
 今回の所得税減税は平年度約三千五十億円にのぼる、かつてない規模の減税であります。なお^これに、地方税についても、住民税を中心に負担の軽減が行なわれることになっておりまして、中央地方を通ずる減税の規模は平年度約三千八百億円にのぼるものであります。今回の所得税の減税により、夫婦子三人の給与所得者の課税最低限は年収百三万円に引き上げられ、年来の公約百万円免税が達成せられることになります。なお、中堅所得階層の負担を緩和するために、給与所得控除の拡大、税率の引き下げ等がはかられ、税制調査会の長期答申の内容は完全に実施されることになりました。
 第四点は、社会保障の充実であります。
 四十五年度の社会保障関係費は一兆一千三百七十億円余となり、初めて一兆円の大台に乗せております。また前年度に比べて二〇・一%の大きな伸びであります。
 内容に入りますると、生活扶助基準の一四%引き上げをはじめとして、老人白内障の手術の国庫負担あるいは老人の健康の精密検査の拡大等を実施し、さらに母子保健対策として低所得層妊婦の健康診断の対象人員を五万九千人から一挙に八十九万一千人へと大幅にふやす等の措置を講じております。これらの政策は、ともすると社会の繁栄から取り残される階層の人たちにあたたかい手を差し伸べて、経済成長の成果を全国民の生活の中に吸収させようという政策のあらわれでありまして、私の強く賛意を表するところであります。
 第五は、文教及び科学技術の振興であります。
 このうち科学技術振興費は二四・四%と大幅の伸びを示し、動力炉の開発を中心とする原子力の平和利用、宇宙開発、海洋開発、大型工業技術の開発等を大きく取り上げています。
 文教関係の予算で最も目立つのは、私学振興助成の新しい施策でありまして、経常費の補助、私学振興財団の新設などを内容としております。また公立文教施設の整備費、特殊教育の振興費、僻地教育の振興費等が増額されておりますが、予算的には小さな金額でありましても、教職員の海外研修を前年度の三十五人から五百人に拡大している点は注目すべきであります。
 第六は、社会資本の整備であります。
 経済成長のテンポの拡大に伴い、社会資本の立ちおくれが問題とされますが、これを是正するために、公共事業関係費を対前年度一七・三%増加いたしております。この数字は前年度では一二・八%でありまして、大きな伸び率になっております。
 内容的にこれを見ますと、まず国民の最も要望する住宅、生活環境施設の整備に重点を置いております。次には、新しく道路整備五カ年計画、海岸事業五カ年計画等をつくり、さらに本州四国連絡橋公団の新設など、社会資本の充実に一そうの力を入れる気がまえを示していること等が特色と思われます。
 第七は、農業問題であります。
 私は、農業問題に関しましては現在三つの点が必要であると思うのであります。
 まず第一は、当面する米の生産過剰に対処するために、米の増産を本位とする従来の農政は、何らかの形で転換をはからなければならないということ。第二は、農政の転換は農民の犠牲において行なわれてはならない。したがって、食管制度の根幹は維持しながら、総合的な農政を展開していくということであります。しかしながら第三に、農民の立場を守る施策といいましても、それはあくまでも消費者の利益を無視するものでなく、一般納税者の十分な理解と納得を待って行なっていく必要があるということ、この三つでございます。四十五年度予算に見られる米の生産調整対策その他の新しい措置は、こういう考え方の上に立ったものとして私は賛成いたします。なおまた、年来の公約であった農業者年金の制度が新しく発足することになったことも、まことにけっこうなことでございます。
 四十五年度予算のその他のおもな内容として、沖繩に対する援助、防衛力の充実、中小企業の近代化、貿易の振興、経済協力の推進、交通安全、公害対策の強化、地方財政の充実等があげられますが、これらの経費の内容については時間の関係上省略いたしまするが、いずれも適切妥当なるものであります。
 以上が政府原案に対する賛成の理由であります。
 次に、社会、公明、民社の各党からそれぞれの立場において予算組みかえ要求の動議が提出されていますが、私は以上述べたような理由により、政府原案が最善のものと認めますので、これらの動議には反対いたします。
 以上で討論を終わります。(拍手)
○中野委員長 次に、川崎寛治君。
○川崎(寛)委員 私は日本社会党を代表して、今回提案されました昭和四十五年度予算案三案に反対し、細谷治嘉君外提出の日本社会党の予算組みかえ動議に対して賛成の討論を行なうものであります。
 公明党及び民社党より提出されております組みかえ動議につきましては、遺憾ながら賛成しがたい点がありますので、やむを得ず反対の態度を表明するものであります。
 佐藤総理の施政方針演説を、アメリカの各有力紙は経済成長と防衛費増大を結びつけた政策発表と大きく報道し、昨秋の佐藤・ニクソン会談での約束が具体化されたものと受け取っているのであります。一方、アジアの各国は、再びアジアの支配者として乗り出してくる日本への警戒の態度が表明されているのであります。
 佐藤総理は、昨年末の総選挙中には、日中国交正常化への積極的態度を打ち出しながらも、選挙が終わるや著しく後退いたしました。それは、佐藤・ニクソン会談後のナショナル・プレス・クラブ演説においても、総理は米ソ、米中、中ソの共存を要望しながら、日中平和共存については一言も触れていないのであります。日米共同声明が緊張の三十八度線、十八度線、台湾海峡の対立をさらに深めるものであり、日米安保体制の冷戦構造をいよいよ強めるものであることは言うまでもありません。七〇年代の日本外交の基本は、アジア、太平洋にある緊張を緩和させ、平和共存の体制をいかにつくり上げるかに向けられなければなりません。しかるに、それに全く逆行するものが佐藤内閣の姿勢であります。そのことは、自主防衛の名のもとに防衛力の限界をとめどもなく広げ、防衛費の大幅引き上げ、海外経済援助、武器輸出緩和への姿勢等に明らかであります。
 民主主義政治の基本である言論・出版の自由の問題についても、参考人を喚問する社会、民社、共産三党の要求を、自民党、公明党の諸君はついに反対し通したのであります。くさいものにふたは、まさに反民主主義的態度と断ぜざるを得ません。
 次に、四十五年度予算案について、具体的に触れてまいりたいと思います。
 佐藤内閣は、今回で六度目の予算編成を迎えたわけであります。佐藤内閣のもとで推し進められてきました産業優先、大資本奉仕の成長政策の矛盾と経済社会のゆがみはかつてなく増大し、いまや日本経済は重大な危機をはらんでいるといわざるを得ません。なるほど、国民総生産は自由世界第二位に達し、鉄鋼、造船、自動車をはじめ、重化学工業は急速に発展し、世界に冠たる地位を築いたのでありますが、その陰では物価が異常な上昇を示し、インフレ経済の定着化が進み、所得と資産の格差、富の著しい不均衡をむき出しにしたのであります。また都市の過密化、農山村の過疎化とともに、公害のおそるべき蔓延、交通事故の記録的発生など、新たな社会的諸矛盾が山積し、国民の生活福祉は犠牲にされています。そればかりでなく、資本主義の物質中心、金権万能、弱肉強食の生存競争の論理がますます貫徹し、その結果、人間の精神の荒廃を招き、汚職や犯罪をはびこらせ、暴力、売春、ギャンブルは横行しています。いまや、社会全体が腐敗し、狂わされつつあると言っても過言ではありません。昭和四十五年度予算において、佐藤内閣の以上のような基本的方向が貫かれ、ますます鮮明にあらわれんとしてきていることを具体的に指摘して、反対の理由を明らかにしたいと思います。
 第一に、佐藤内閣成立後の昭和四十年から四十四年末までに、消費者物価は三二・六%上昇し、通貨価値はわずか四年の間に三分の一近く減少しております。さらに最近卸売り物価が十二カ月連続して上昇していることは、インフレが新たな段階に入ったことを示しています。政府は四十五年度予算を景気警戒中立型と称していますが、予算の伸びが不況対策の年の四十一年と同じことや、支出内容が四千三百億円の国債を発行し、公共投資や防衛費支出の増大など、インフレ要因、景気刺激要因が強まっていることは、だれしも認めるところであります。卸売り物価対策としても、昨年九月から金融を引き締めながら、今度は財政をゆるめることによって完全にしり抜けとなってしまうのであります。すなわち、意識的に成長持続政策をとり続け、計画的インフレを織り込んだ物価値上げ予算となっております。このことが労働者の実質賃金の上昇を押え、家計を圧迫するとともに、勤労者の貯蓄の価値を奪い去って、老後の生活設計を破壊しています。他方、巨額の借り入れによって土地や実物資産に投資する大企業や投資家にばく大な利潤と借金の切り下げをもたらし、所得と資産の格差、富の不均衡を一そう激しくするのであります。政府は地価や独占価格に対しては何らの抑制措置をとろうとしていません。総選挙後の医療費やタクシーなど公共料金値上げに見られるごとく、物価対策を放棄し、逆に値上げを助長しているものと断ぜざるを得ません。
 第二に、税制においても、税の自然増収一兆三千七百七十億円にのぼるのに、所得税減税はわずかに二千四百六十一億円に過ぎず、物価上昇に苦しむ低所得層、独身者層には減税の恩典は薄く、逆に実質増税とすらなっております。これに反して、法人税は四十年の不況以来三%引き下げられたのを、好況になった今日もとに戻して当然であるのに、財界、金融界の意に従って、わずかに法人の留保所得分のみ一・七五%引き上げにとどめました。そればかりか、この三月末で期限の来る利子・配当優遇措置に対しては、金融、証券資本のかねてからの強い働きかけで、現状維持的内容のものとして温存されたことは、まさに大資本奉仕の佐藤内閣の姿そのものといわざるを得ないのであります。かくして配当だけの所得者の課税最低限は二百八十二万円から四十五年度三石四十七万円、平年度三百四万円へはね上がり、給与所得者の百二万円の三倍にのぼり、税の不公平、不均衡を拡大させたのが、今年の税制改正の実態であります。
 第三に、国民生活福祉を拡充することこそ現代政治の最大目標となっていますが、わが国の社会保障水準は、生産力の高さに反比例して相変わらず低く、社会保障費は国民所得に対しても、予算総額に対しても、西欧水準の三分の一程度にしかすぎません。社会保障がその名に値しない貧弱なものであることは、国民生活白書も指摘するように、国民が貯金や保険などの私的保障にたよらざるを得ない実態から明らかであります。老人、母子、障害者の福祉年金はわずかに二百円しか引き上げられず、生活保護基準も一四%ばかりの引き上げにとどめられ、相変わらず一般勤労世帯よりはるかに低い水準にとどめられております。
 人間不在の経済成長の生み出した公害は、亜硫酸ガスなど大気や水の汚染、地盤沈下、騒音、有害食品のはんらんとなって、命と健康をむしばんでおります。その原因である企業の責任は放置され、国の公害対策も著しく立ちおくれているのが現状であります。おびただしい死傷者を生み出している交通事故に対して、行政責任はばらばら行政の中に埋没し、交通安全対策は車の増大のはるかあとをあえぎながら追っかけているありさまであります。
 また、住宅建設五カ年計画は、本年で終わるわけでありますが、政府施策住宅の建設は、一部民間建設に肩がわりされ、計画すら達成されておらず、政府の公約の一世帯一住宅は、庶民のはかない夢と消え去っておるのであります。
 大学紛争の一つの大きな原因は、財政問題であります。大学生の七五%が依存しておる私学に対する援助がわずか認められただけで、相変わらず教育が権力に従順な安上がり労働力養成の場としかみなされておりません。義務教育無償の原則や幼児教育の振興は、とっくに忘れ去られた感があります。まさに国民生活犠牲、人間疎外の予算といわざるを得ないのであります。
 第四に、農業破壊、中小企業切り捨て、労働者軽視の予算となっていることであります。
 自民党の切り捨て農政は、生産者米価据え置き、食管制度の骨抜きから、四十五年度にはいよいよ米の生産制限に進み、農産物自由化政策と相まって、食糧の自給率を低下させ、輸入依存政策を強めています。これは労働力不足対策として、農業人口を二〇%前後から米英並み五%程度に落とし、農業を新規労働力源として分解しようとしているもので、西欧ですら農業に手厚い保護を加えているのに対し、きわめて農村に冷酷な仕打ちといわざるを得ません。同様に、中小零細企業は、好、不況を通じて倒産が増大し、一万件をこえる倒産件数を記録しているにもかかわらず、中小企業予算は〇・六%とコンマ以下の微々たるものであります。さらに、労働者対策は、佐藤内閣になってから、予算の伸びが著しく鈍化し、ことしはわずか三・三%の伸びにすぎず、日本経済をささえている三千万労働者に対する労働者対策予算は、わずかに一・二%にすぎません。このように、すべての分野で、働く勤労者に対して過酷な予算となっているのであります。
 第五に、沖繩対策と地方財政についてであります。
 佐藤内閣は、七二年の沖繩返還を前にして、大幅増額をはかったかのポーズをとっていますが、沖繩県民の四分の一世紀にわたる苦難の歴史を振り返るとき、本土政府の果たすべき責務のあまりにも大きく、過去の埋め合わせだけでも、多少の増額程度では問題になりません。米国援助と軍事基地依存経済を脱却し、沖繩県民の権利を回復するとともに、生活と福祉の向上のため、平和経済の開発を早急に進めることはもちろん、当面する基地労働者の大量解雇に対しても万全の措置を講ずるため、さらに予算を倍増させなければなりません。
 地方財政を見るとき、三年間連続して国が地方から財源を借り上げる措置をとったことは、地方住民の生活を圧迫するものであり、住民に超過負担をしいておきながら、行政水準の引き上げは妨げられています。さいふのひもを締めることによって、中央直結の官僚政治がますます強められ、地方自治に圧迫を加えたことは不当であります。
 最後に、七〇年安保対策として、防衛費の増額は何よりも優遇され、世界最高の伸び率を示したことであります。
 日米共同声明によって、日本の自主防衛、軍事大国への路線はいよいよ強化され、七二年から始まる第四次防にかけて、アジアに向かって歩み始めようとしております。ニューヨーク・タイムズ紙にも指摘されたように、佐藤内閣の閣僚の言う、一九七五年までに日本の防衛支出は、GNPの二%まで増加すると、防衛予算の総額は現在の十六億ドルから六十億ドル以上になり、西ドイツ、フランス及びイギリスの現在の軍事予算より大きくなり、経済大国から軍事大国に肥大化する危険性がいよいよ現実化しようとしております。海外経済協力も、エコノミックアニマルの悪評をよそに、今年度は日本の資本進出のために、市場開拓、資源開発のための予算が重点的に組まれたのであります。このことは、経済協力が、反共諸国に片寄って行なわれ、アメリカの援助肩がわり、ドル防衛協力となっていることとともに、まさに経済的にも、軍事的にもアジアの盟主たらんとするねらいを秘めた安保対策予算であります。
 このように、七〇年代を迎えて、日本の進むべき方向が左右される四十五年度の政府予算は、国民生活を犠牲にし、インフレ、物価高を進める軍事予算といわざるを得ません。政府は社会党提案の組みかえ方針に沿って、国民の要望する平和と繁栄の時代を切り開くため、すみやかに予算案を撤回し、組みかえの上、再提出することを求めて、私の討論を終わります。(拍手)
○中野委員長 次に、大野潔君。
○大野(潔)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提出の昭和四十五年度予算三案に対し反対し、公明党坂井弘一君外四名提出による昭和四十五年度政府予算案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に対し、賛成の討論を行ないます。
 また、社会党、民社党提案の、政府予算に対する編成がえ要求動議につきましては、いささか意見を異にする点がございますので、遺憾ながら反対の意を表明するものであります。
 昭和四十五年度一般会計予算総額は、七兆九千四百九十七億円で、前年度比一七・九%の伸び率を示し、財政投融資計画は、三兆五千七百九十九億円で、伸び率は一六・三%となっているのであります。いずれも政府経済見通しの名目成長率一五・八%を大幅に上回った規模で、この予算案を見る限りでは、物価の安定、経済の持続的安定成長という政府公約は、国民に与えたバラ色の夢にすぎなかったといわざるを得ないのであります。
 以下、政府原案反対の主要な理由を申し上げます。
 第一に、財政硬直化打開と新規政策についてであります。
 四十五年度一般会計予算においては、税の自然増収の大部分を歳出増に振り向けざるを得なかったのであります。これは当然増経費が九千百億円という巨額にのぼったためで、新規政策費は三千億円程度にとどまってしまったのであります。こうした傾向は、年々顕著であり、三十九年度における当然増経費の前年度予算総額に対する増加率が六・三%で、新規政策が七・九%となっていたのが、四十五年度では全く逆転し、当然増経費が一三・六%へ、新規政策費が四・四%と、その差も拡大しているのであります。これは政府の無責任な放漫財政によって起こったものであり、すみやかに現在の行政機構と予算配分ルールを再検討して、抜本的な是正策を講ずるべきであります。
 第二に、好況下における国債発行についてであります。
 四十五年度国債発行額は、六樹億円減額して、四千三百億円となっておりますが、四十五年度一般会計予算における国債依存率を四十四年度に比較すると、七・二%から五・四%に低下しているのでありますが、これは国債発行額を減額したからだけではなく、予算規模が大きくなっているためであります。国債依存による財政規模の拡大は、当然各種の当然増経費を大きくし、財政の硬直化の原因となり、現在のような好況段階では、国債依存率を少なくしておくべきであります。特に、四十八年度以降にあっては、七年満期の一般会計国債の償還期となることを考慮するならば、政府が本年度予定している国債発行額は、大幅に縮小をはかるべきであります。
 第三に、税制改正についてであります。
 まず、所得税について言いますと、一応二千四百六十一億円の減税となっております。政府は、これに対して税調答申の完全実施であると言っておりますが、答申とは二年間のずれがあり、平均世帯人員が四人を割った現在、五人家族を基準にして百三万円まで非課税にしたことと、消費者物価の六%の上昇を考慮すると、実質所得は据え置きで、依然、税負担は高いのであります。
 また、税負担の公平を著しく欠いている利子・配当課税のような税の優遇措置については、今回の税改正で若干整理されたとはいうものの、依然として大企業、資産所得者優遇となっているのであります。
 いずれにしても、今回の減税案は、国民の年来の要望である重税、不公平という税制の矛盾を解決したものとは言えないのであります。
 第四に、物価についてであります。
 最近の消費者物価の上昇は、もはや楽観を許さない段階に来ております。昨年一年間の上昇率は五・八%という高騰で、卸売り物価も四・一%の上昇という十年ぶりの記録を示しているのであります。政府は、ことしすでに政府主導の物価上昇ともいうべきタクシー運賃の値上げを許し、口先だけの物価対策であることが明らかになったのであります。
 また、政府経済見通しや、四十五年度予算案の規模を見ましても、物価安定に対する政府の情熱は全く見られないものといわざるを得ないのであります。予算における物価対策費にしても、わずか流通機構費等の財源を配分しているにすぎないのであります。物価抑制にならない額のものであります。政府は、真に国民生活優先、福祉の向上を叫ぶのであるならば、積極的に物価対策費の確保につとめるべきであります。
 第五に、社会保障費について見ると、二〇・一%の成長は、規模を一兆円の大台にまで拡大したが、社会保障給付費の国民所得に対する比率は六%にすぎず、昭和三十八年当時、西ドイツではすでに一九%をこしていることからしても、はるかに低いことが明らかであります。
 七〇年代の大きな政治課題といわれている人口の老齢化問題、出生率の低下に伴う若年労働者の枯渇を思い合わせると、国民生活の安定のためにも、老齢年金、児童手当などの所得保障施策の確立と充実をはかるべきであります。
 特に、児童手当については、最近の物価、住宅費の高騰は、次代をになうべき児童の健全育成の大きな障害となっております。これら社会的、国家的要因に基づく児童福祉の侵害は明らかであり、もはや一保護者の努力のみでは、児童福祉の万全ははかり得ない状況であります。かかる観点から、児童手当制度の実現は重要な政治課題であり、緊急に行なわなければなりません。しかるに、再三の公約にもかかわらず、再びこれを見送らんとする政府の姿勢に対しては、きわめて遺憾であります。政府として本年度において、児童手当制度発足のための財源措置を講ずることは、国民への公約を果たすことであり、社会保障推進のかなめであると考えるものであります。必要な措置をとることを強く切望するものであります。
 第六に、防衛関係費についてであります。
 昭和四十五年度政府原案におきましては、前年度からの伸び率一七・七%という、自衛隊発足以来の大幅な増加となっておりますが、いままでの質疑を通して、政府は国民に、平和憲法下における自衛力の限界、防衛費を大幅に増額しなければならない具体的な根拠などは、何ら明らかにしていないのであります。しかも政府は、こうした根拠を示さず、このような大幅増額をしているのであります。これはまことに遺憾といわねばなりません。軍事力偏重の安全保障政策、自主防衛に名をかりた軍事力増強政策は、国民の意に反するものであります。また、軍事費については、世界的にも削減傾向にあり、日本のみが増額することは、この世界の趨勢に全く逆行するものであります。このような国民生活を圧迫し、社会資本の充実をおくらせている防衛関係費の大幅増額には、強く反対するものであります。
 最後に、五十万トンの米の減反計画が、まことに不明確な点を指摘し、本予算案の反対討論を終わります。
○中野委員長 次に、麻生良方君。
○麻生委員 私は、民社党を代表いたしまして、政府提案の昭和四十五年度予算関係三案に対し、反対の討論を行なわんとするものであります。
 わが党は、すでに、昭和四十五年度の予算組みかえ案において明らかにしたとおり、七〇年代のわが国が進むべき方向は、いわずもがな、アジアの民生安定と積極的な平和創造に貢献する平和国家の道であり、内にあっては、世界に誇り得る高度福祉社会の建設にあることは明らかであります。
 このような立場から、七〇年代の当初に当たる来年度予算の重点は、一、大幅な大衆減税の推進、二、勤労国民のための住宅、社会保障、生活環境の整備などの飛躍的な向上、三、科学技術や情報化社会の進展に対応した教育の画期的な振興、四、物価安定の四点に置き、国民生活の充実、向上をはかるよう強く主張いたしておるのであります。
 この観点から、以下、政府提出の予算関係三案に対する反対の理由を明らかにいたしたいと思います。
 その第一は、税制改革に対する政府案の不徹底ぶりであります。
 政府の言によりますと、今回の税制改革は大幅なものであり、国民の期待にこたえたのみならず、税負担においてはすでに先進国水準を越えたと自賛しておりますけれども、御承知のとおり、六〇年代における消費者物価の年平均上昇率は五・三%という大幅なものであるため、勤労国民の実質所得をはなはだしく引き下げ、生活の内容充実という点では全く期待できないのが現状であります。しかも、税負担の不均衡が著しいものでありますから、その重税感はおおうべくもないものとなっており、十万円程度の免税点引き上げでは決して勤労国民を納得させるものではありません。
 この一つをとらえてみましても、政府の税制改革が国民の実態といかにかけ離れているかがはっきりするのでありますが、これに引きかえ、大企業に対する法人税の引き上げは、景気後退期であった昭和四十一年に三五%まで引き下げる優遇策を講じたものを、わずかに一・七五%引き上げる程度にとどめ、予算編成前に政府が主張していた三七%にすら引き上げられなかったということは、税制に対する国民の不信を買うのみならず、それが同時に、政治不信に直結する大きな要素となっているのであります。
 このほか、利子・配当を筆頭とする租税特別措置の不均衡、不合理の改革に対する国民の期待がいかに大きかったかを考えますと、政府のとった予算編成は明らかにこれらを裏切ったものといわざるを得ません。
 政府予算案に反対する第二の理由は、防衛関係予算の急激な増大であります。
 このことは、昨年十一月の日米首脳会談以来、政府の防衛に対する方針が一段と積極的となり、共同声明によって台湾海峡、朝鮮半島等に対する政府の危険な考え方が明らかにされたのと軌を一にすると考えざるを得ないのでありますが、国民もまた政府の歩まんとする道に非常な危険を感じているのであります。もとより自国の安全保障について国民として無責任な態度で過ごせるものではありません。わが党は、この責任感から、国民の合意に基づく自主防衛体制の確立、すなわち、敵をつくらないための平和外交の強力な展開を主体とし、万が一の場合に備えて、専守防御に徹する防備を国民合意のもとに装備することを主張いたしておりますが、政府のいう自主防衛とは、日米安全保障条約の堅持によって、米国を主体にし、わが国はそのもとでもっぱら武装を強化するというものであって、自主防衛とはおよそ縁の遠いものであります。それにもかかわらず、過去五年間の防衛関係費の伸び率が平均一二・六%であったのでありますが、今回、一躍一七・七%と大幅な伸びをはかったのは、さきに申しましたごとく、日米共同声明に負うところがきわめて大きく、かつは、四十七年度より発足させようとする国民の合意なき四次防計画の布石としか言いようがないのであります。わが党は、国民合意を得る努力もせずに、政府ペースで防衛措置を積極的に進めようとする方針には、あくまで反対することをここに明言しておくのであります。
 反対理由の第三は、国民生活の充実、向上に積極的な配慮がされていないということであります。
 この意味からすれば、政府は、むしろ、社会保障関係費の伸び率は二〇%をこえる一兆一千億円の大台に乗せたと自負されるであろうが、この中身は、大半が医療費の引き上げであって、現在、最も強く要請されている老人、心身障害者等、生活能力を欠いた弱者に対する所得保障や、あるいは不幸な条件にさらされている母子家庭、生活保護世帯等に対する手厚い保障対策費はきわめてわずかな増にとどまっているのであります。しかも、過ぐる総選挙での与党の公約でさえあった児童手当制度の端緒さえ、この予算案に盛り込まれていないのはきわめて遺憾であります。
 また、政府は、高度成長による繁栄を力説し、これを一そう促進せんとつとめておりますが、この陰には四畳半一間の民間木造アパートで、家族が折り重なるようにして生活する勤労国民が、全国に数百万世帯も存在するのであります。したがって、これら勤労国民に対する公的住宅の供給は、きわめて重要かつ緊急を要する政府の事業でなければならないのであります。しかるに、政府は、住宅建設緊急五カ年計画における政府の責任分については積極的に推進しようとはせず、むしろ民間の自力による建設に多くを依存して、これが予想より伸びたから五カ年計画は完遂したという態度をとり、まことに消極的な施策のうちに終始しようとしていることは、国民の基本的な生活権確保の立場からして許されるべきものではありません。
 しかも、いたずらな量的拡大に狂奔する高度成長経済がもたらす各種の公害については、この絶滅目標こそ政府の掲げる緊要な対策でなければならないのであります。過日の各国科学者による公害に関する東京宣言においても、公害排除について今後政府の負うべき責任量はいよいよ増大するといわれておるにもかかわらず、政府はわずか六百二十八億円程度の生活環境整備しか用意せず、しかも直接公害対策と見られるものがなきにひとしい状態であるというのは、一体いかなる責任を感じているのであろうか、政府の猛省を促してやまないところであります。
 私は、反対理由の第四として、物価安定に対する政府の政治姿勢を数えざるを得ないのであります。政府には、総理大臣の諮問機関として物価安定政策会議が、名称こそ変わりましたが、数年にわたり設置され、この間数々の政策提案がなされたことは、国民のひとしく承知するところであり、国民もまた政府の手によって施策化することを期待し続けているのでありますが、政府はこのうち何を具体化したといわれるのでありましょうか。公共料金値上げストップ、その間、事業の徹底的な合理化をはかれという提案に対しても、物価安定のための最大のガンといわれた流通機構の刷新合理化にしても、また生産性の向上した大企業製品の価格引き下げ、あるいは低生産性部門の近代化推進等、重要な提案は全く手をつけていないのが政府の実態ではないでしょうか。このように、物価対策を放置していると言っても言い過ぎではない政府の姿勢こそ、まさに重大視しなければならない。
 しかも政府は、四十五年度予算案の編成にあたり、その重点の一つとして物価対策をあげておられるのでありますが、政府がいうところの財政金融の全般を通じ物価の安定をはかろうという手法は、もはや国民には通じないのであります。というのは、政府は例年この手法をとってこられたのですけれども、先ほど申し上げましたとおり、毎年五・三%も消費者物価が上昇してきた事実が明確にそれを物語っておるのであります。物価安定のためには設備投資の無秩序な拡大が信用膨張を大きくするこのインフレ・メカニズムを根本的に改めると同時に、公共料金、流通機構、大企業製品の引き下げと農業、中小企業等の近代化など、物価形成の実態面を改革しなければ、その実はあがらないのでありまして、これらの諸点について何らの具体策も織り込まれていない政府予算案に反対するのはけだし当然であります。
 以上述べたように、国民の期待を裏切り、しかも一片の夢さえ国民に与えず、大企業本位に経済、社会を秩序づけようとする政治のもとでは、人心の不安を一そう助長するのみならず、人間疎外の管理社会をますます強化し、人間の精神的荒廃と社会的混乱を高める以外の何ものでもありません。
 よって、私は政府に対し、この点について猛省を促すと同時に、この際社会党並びに公明党からそれぞれ提出されております予算組みかえ案にも賛成できないことを表明して、反対討論を終わります。(拍手)
○中野委員長 次に、東中光雄君。
○東中委員 私は、日本共産党を代表して、本予算三案に反対します。
 本予算の特徴は、第一に、さきの日米共同声明に基づき、日米共同軍事体制の強化をさらに押し進めようとすることにあります。五千七百億円に達する軍事費は、前年度に比べて一七・七%の伸び率であります。これが総額六兆円といわれる第四次防衛力整備計画において、さらに高まることは明らかであります。それによって、わが国は七〇年代後半において世界有数の軍事大国になろうとするのであります。しかもその前提となっている日米共同声明が、朝鮮、ベトナム、台湾地域などでのアメリカの侵略戦争に、日本を本格的に組み込むおそれのある危険な内容を持っていることは、この委員会の審議を通じても明らかになったものであります。このようなアメリカの核のかさのもとで、アジアにおける軍事的役割りの多くを肩がわりしようとする自衛隊の増強は、わが党は断じて容認することはできません。
 第二は、国民生活が本予算の実施によってますます圧迫ざれるということであります。
 本予算案は、赤字公債発行を伴う、実質的には一九%をこえる膨張率を持つインフレ予算であり、これはますます激しくなる物価上昇と、自然増収と称する税の増徴、生活費に食い込む重税によって、国民生活をいよいよ圧迫するものであります。すでにこの二月の東京の消費者物価指数は、政府の見込みをはるかにこえて、前年比八・二%の高騰となっており、このインフレ予算の実施は、政府の公共料金引き上げ、独占価格擁護の政策と相まって、一そう激しい物価上昇を必至としているのであります。
 所得減税も、低、中所得者は物価値上がりに伴い、実質的増税となることは明らかであります。住宅関係予算も、公営住宅の補助率が低いために、住宅建設を中止する地方公共団体があらわれ始めているくらいであります。社会保障関係費も、生活保護対象人員の削減、特別失対事業の廃止、就労人員の削減などによって改悪されつつあります。
 特に重大なのは、米作削減を突破口として総合農政を強行し、米の買い入れ制限、農地法改悪などによって、中小農民の土地と水を取り上げ、農村から追い出そうとしていることであります。これは、近代化の名による中小企業、流通部門の整理淘汰、独占企業の系列支配の強化とともに、全く国民生活を破壊するものであります。
 第三は、いわゆる海外援助、公共事業費の大幅増額によって、大企業、独占資本への奉仕が強化されていることであります。
 佐藤総理は、アジア開発を七〇年代の重要な国家目標として位置づけましたが、これらは開発途上国の人民の生活安定に役立てられる援助などというものでは断じてありません。反対に、アメリカのアジアにおける新植民地主義の政策に協力しながら、独占企業が七〇年代の高度成長を遂げるために、海外の市場、資源などを確保するためのものであります。
 また、いわゆる社会開発も、主として独占企業のための産業基盤の強化と、その需要の拡大をはかるためのものであります。
 佐藤総理は、七〇年代を平和と繁栄の輝かしい勝利とうたい上げましたが、この予算案の実施によって、一部の独占企業の繁栄は保障されても、大多数の国民にとって一そうの生活難を招来することは明らかであり、わが党はこの予算案に強く反対するものであります。
 なお、社会党組みかえ案は、防衛費の取り扱いなど、わが党の政策と合致しない部分や、不徹底なものも含まれておりますが、全体としては国民生活を擁護する方向での改善案でありますので、条件つきで賛成いたします。
 公明党、民社党の組みかえ案には反対であります。
 以上で私の討論を終わります。
○中野委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 細谷治嘉君外八名提出の、昭和四十五年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○中野委員長 起立少数。よって、細谷治嘉君外八名提出の動議は否決されました。
 次に、坂井弘一君外四名提出の昭和四十五年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○中野委員長 起立少数。よって、坂井弘一君外四名提出の動議は否決されました。
 次に、今澄勇君外二名提出の昭和四十五年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
 木動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○中野委員長 起立少数。よって、今澄勇君外二名提出の動議は否決されました。
 これより昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算、昭和四十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○中野委員長 起立多数。よって、昭和四十五年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
 なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
○中野委員長 これにて昭和四十五年度総予算に対する議事は全部終了いたしました。
     ――――◇―――――
○中野委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 去る二月の二十日、総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真剣なる論議を重ね、慎重な審議を尽くし、本日ここに円満に審査を終了するに至りました。このことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力のたまものでありまして、ここに連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し、深く敬意と謝意を表しまして、ごあいさつといたします。(拍手)
 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十二分散会