第063回国会 予算委員会第一分科会 第5号
昭和四十五年三月十七日(火曜日)
   午前十一時四分開議
 出席分科員
   主査 笹山茂太郎君
      足立 篤郎君    坪川 信三君
      登坂重次郎君    藤尾 正行君
      川崎 寛治君    中谷 鉄也君
      山中 吾郎君    伊藤惣助丸君
      大野  潔君    林  孝矩君
   兼務 大原  亨君 兼務 島本 虎三君
   兼務 沖本 泰幸君 兼務 二見 伸明君
   兼務 山田 太郎君 兼務 松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 小林 武治君
        国 務 大 臣
        (国家公安委員
        会委員長)   荒木萬壽夫君
 出席政府委員
        警察庁刑事局長 高松 敬治君
        法務政務次官  大竹 太郎君
        法務大臣官房長 安原 美穂君
        法務大臣官房会
        計課長     伊藤 榮樹君
        法務省民事局長 新谷 正夫君
        法務省刑事局長 辻 辰三郎君
        法務省矯正局長 勝尾 鐐三君
        法務省保護局長 鹽野 宜慶君
        法務省人権擁護
        局長      川島 一郎君
        法務省入国管理
        局長      吉田 健三君
        労働大臣官房会
        計課長     増田 一郎君
 分科員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      金光 邦夫君
        大蔵省理財局国
        有財産第一課長 市川廣太郎君
        大蔵省理財局鑑
        定参事官    三島 和夫君
        厚生省環境衛生
        局公害部庶務課
        長       藤森 昭一君
        労働省労働基準
        局監督課長   大坪健一郎君
        労働省職業安定
        局業務指導課長 保科 真一君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月十七日
 辞任         補欠選任
  野田 卯一君     藤尾 正行君
  川崎 寛治君     山中 吾郎吾
  大野  潔君     林  孝矩君
同日
 辞任         補欠選任
  山中 吾郎君     中谷 鉄也君
  林  孝矩君     伊藤惣助丸君
同日
 辞任         補欠選任
  藤尾 正行君     野田 卯一君
  中谷 鉄也君     川崎 寛治君
  伊藤惣助丸君     大野  潔君
同日
 第二分科員松本善明君、第三分科員大原亨君、
 山田太郎君、第四分科員沖本泰幸君、第五分科
 員島本虎三君及び二見伸明君が本分科兼務と
 なった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十五年度一般会計予算中法務省所管
     ――――◇―――――
○笹山主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。
 昭和四十五年度一般会計予算中、法務省所管予算を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤尾正行君。
○藤尾分科員 たいへんに時間がおくれまして、しかも私に与えられた時間は、たった三十分でございますので、私は、主として選挙違反問題の取り扱いについて、警察並びに検察の仕事、これと人権との問題、こういった問題を取り上げまして御質問をいたしたいと思うのでございますけれども、ごく簡単でけっこうでございますから、ぜひ明確なお答えをちょうだいいたしたいと思います。
 まず、何といいましても警察あるいは検察というようなお仕事は、これは人身の自由、その他基本的人権に直接密接な関係があるだけに、人権侵害という問題との関連が非常に私は多いような気がするのでございます。警察法の第二条第二項、あるいは刑法の第百九十三条、百九十六条、あるいは刑事訴訟規則六十八条、九十三条、そのいずれを見ましても、応接に対しては親切丁寧に、迅速を旨とし、常に温容と理解をもってこれに当たらなければならぬとか、あるいはいやしくも法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等の権限を乱用することがあってはならないということが厳格に規定をされておるわけであります。あらゆる事件は、全部同じでございますけれども、すべて裁判の結果、裁判の審判をまって、その結果がわかるわけでございますけれども、この選挙違反につきましても、事件は同様でございまして、その事件の最終的な判決、これに対する論評というようなものは、当然その事件が終了をした段階において取り上げられなければならないはずであります。
 ところが一月二十八日の各新聞を拝見いたしておりますと、閣僚を含む三百三十五の代議士、下部の党員を検挙した、悪質な買収、供応が行なわれておるというようなことを、警察庁がおそらくこれは発表をせられたのではないかと思うのであります。同じことが全部の新聞に出ておりますから、おそらくそうだと思うのでありますけれども、こういった、まだその罪が一切確定をしていないという段階において、しかも閣僚の名前をあげて、これこれの閣僚をはじめとして、こういうことが行なわれているというようなことを天下に公表するということが、はたして許さるべきものであるかどうか。この点は、まず警察の最高責任者とされましての公安委員長にお伺いをいたしたいと思います。
○荒木国務大臣 お答え申し上げます。
 いまの御指摘の点は、まことに遺憾であると思います。それぞれの地域の新聞を洗ってみればわかることではありますけれども、御指摘のとおり、まだ確定をしていない選挙違反につきまして発表しましたことは、心なきわざであって、まことに恐縮いたしております。
○藤尾分科員 大臣は、非常にお忙しいようでありますから、ここで法務大臣も含めまして、まず大臣に関連のある重要な問題について先にお伺いをいたしまして、即刻大臣に御退席をいただいてけっこうでありますから、もう一問だけお伺いをいたします。
 これは岡山県において起こった事件でございますけれども、岡山県の第二区におきまして、ある選挙違反がございました。たばこ耕作組合事務局長の五十二歳になる方が、選挙違反の容疑といたしまして留置をせられたわけであります。これが大体一週間くらい経過をいたしまして、取り調べが行なわれたあと、夜のできごとでございますけれども、気分が悪いということになりまして、さっそく医者に見せてもらいたい、こういうことで、一説には外科医に見せたということであります。ところが外科医に見せたあとも気分が悪いので、何回も医者を呼んでくれと訴えたけれども、夜がおそいということで、それを理由にして医者を呼ばなかった。そして一夜明けて結局その方は、その晩のうちになくなったという事件がございます。
 いやしくもこの問題につきまして、遺族の方々も、もうなくなられてからどんなことをしてみても、なくなられた方が生き返るわけではないし、これ以上恥をさらしたくないということで、非常に口をつぐんでおられるように聞いております。しかしながら、こういった問題について、あるいは警察でも、あるいはこれは検察が――これは検事の調べがあったようでございますから、検察が主たる責任をお負いになるのか、私は知りませんけれども、こういった死亡者が出たというようなこと、そうしてその医者にもろくに、十二分に見せなかったというようなこと、そうしてこの事件があってから、急に選挙違反でその区で入っておられた容疑者の方々の一斉の健康診断が行なわれておるというようなこと、こういったことをずっと拝見をいたしておりますと、非常にそこに大きな手抜かりがあって、いやしくも人命がそこでそこなわれておるというような事件が起こっておるときに、これに対する責任を一体だれがお負いになるのか、私は、こういった問題は、人権の中でも最も大きな問題だ、かように考えまするし、もしかりに、そこに警察なり、あるいは検察なりの手落ちがあったということになりますと、これは私どもがここで看過することのできない非常に重大な事件だと思うのであります。
 この問題について、この問題を一体御承知かどうかということも含めて、ひとつ公安の責任者としての荒木大臣、あるいは法務大臣の御見解を、短くてけっこうでございます。一言ずつ、ひとつお答えをいただきたい。
○荒木国務大臣 お示しの事件は存じません。したがって、いかなる筋でそういうふうになったかということについても存じませんので、わがほうの責任であるのかどうか、その点もさだかでございません。ですけれども、結果的に見まして、選挙違反に関連してなくなったということは、これは遺憾しごくでありまして、その間どういう理由があったかは別といたしまして、残念に存ずるところであります。詳しくは政府委員から……。
○小林国務大臣 ただいまの事件につきましては、実はこれは警察から検察庁が受理をして、そうして検事勾留をしたあとのできごと、こういうことになっておりますので、中にはあるいは検事の取り調べが過酷であったとか、あるいは何かそういう話もないではありませんが、実は、ただ勾留のための尋問をした、わずかに二十分程度であって、検事のほうの取り調べが影響を与えた、こういうふうなことには、私どもは見ておりません。ただ御本人が、やはりその間に二度健康診断を受けております。その際も、異常がなかった。それからまた、家族その他からも、従前から健康上のそういうふうな異常があった、こういう申し出も全然なかった、こういうことに相なっておりますが、いずれにいたしましても、勾留中警察でなぐられたということは、非常に私どもお気の毒であった、こういうふうに思いますが、検察庁の関係においては、その取り調べがそれに影響した、こういうふうなことには見ておりません。さようにひとつお答え申し上げておきます。
○藤尾分科員 時間がありませんから、実はこの問題について、もっともっとお伺いをいたしたいのでありますけれども、こんな問題にかかわっておりますとなかなか進みませんから、いまお伺いをいたしますと、公安委員会委員長は事件をあまり御存じない。また法務大臣は、これは検察の取り調べ中に起こった問題でなくて、留置場でそういった健康であった方が突然なくなられた問題である、だから、この問題については非常に遺憾であるけれども、その責任についてどうこうというわけにはなかなかいかぬというようなお答えのように受け取りました。これ以上追及してもしかたがございませんから、これはあとでまたゆっくりやるといたしまして、大臣、お引き取りになっていただいてけっこうでございますから、どうぞ両大臣ともお引き取りになっていただきます。
 そこで、こういった人権の問題というのが選挙違反の取り調べに関していろいろ各地で起こっております。私は、ここにもし、これを国会じゅうの、三百三十五人も代議士の関係者が選挙違反にかかったというのでありますから、この三百三十五の代議士の一人一人について、おたくのほうはどうでしたかというものをもしいただいて、これを検討いたしましたならば、私は相当な量に達するいろいろな問題が出てくるであろう、かように考えております。しかしながら、時間がございませんから、これはこれで他に機会を求めまして、十二分にひとつ追及をさしていただきたい。
 また、岡山県のこの問題につきましては、この関連の一切の資料をひとつ御提出を願いたいということを御要求をさしていただきたいと思います。
 そこで、さらに問題を進めるわけでございますけれども、これは私の関係をいたしておる、私のところで起こった問題でございますから、きわめてよくわかるのでございますけれども、一つには、まずこういう問題がございます。
 選挙最中でございましたが、一月二十四日のことでございますけれども、私の後援団体であります婦人会の方の、あるいなかの方々のところへ、警察当局者が一日に三回にわたって、同じうちに訪れられて、そうしておまえの属しておる婦人会は一体どういう性格のものか、会費は幾らで、会長はだれだ、その幹部は一体だれだ、何回会合したか、あるいはそれについてどうこうというようなことで、一日三回というのですから、これは相当な数です。いなかのおばさんですから、ふるえ上がっちまった。そこでその当日、立ち会い演説会に、私がやっておったわけでありますけれども、その立ち合い演説会も聞きに行きたいと思ったけれども、行けなかったという事件がございます。一体、警察がこういう私どもの後援会に類する婦人会というようなものについて、一体どこまで情報の入手が必要なのか私は知りませんけれども、こういった問題の限界というものは、一体、あるのですか。どこまで調べていいか、どんなところまで警察というものは調べにゃならぬのだと……。そうしてそのためにいなかのおばさんが非常にふるえ上がってしまって、国民の権利である立ち会い演説会にも行けなかったというような事件がある。こういったことをする権限が、一体警察にあるのかないのか、これはひとつ警察庁の刑事局長にお伺いいたしたい。
○高松政府委員 いまの御指摘の、一日三回行った事実があるかどうかという点につきましては、私もよく存じません。一般に選挙犯罪の捜査の場合に、情報の入手がまず先決であることは申し上げるまでもないと思いますけれども、ただその情報を、どのようにして、どういうふうにして得るかということが、非常に捜査としては大切な点だろうと思います。限界という問題も、これも非常にむずかしい問題だと思いますけれども、現実にそういう情報のとれそうなところ、あるいはそういう可能性のあるところ、あるいは何といいますか、何かの手づるのあるところ、そういうところからごく内々で情報をとってくるというのが選挙取り締まりの一般の形であろうかと思います。
○藤尾分科員 そういう一般的なことで、あなたが情報を収集する必要があるから便利なところで何でもやってもいいんだ、こういうようなお考えのようでございますけれども、いなかの婦人というようなものは、あなたも御案内のとおり、警察に一日に三回も自分のうちに来られると、どういう感じを持つに至るであろうかというようなことは、あなたは十二分に御承知のはずであります。したがって、ふるえ上がって、国民の権利の行使である立ち会い演説会にもそれで来られなかったというようなことになると、一体それは選挙妨害になりはしませんか、あるいは国民の人権の侵犯になりはしませんか。この点はどうなんですか。あと一ぱいあるのですから簡単に答えてください。
○高松政府委員 無差別に、全然手当たり次第にどこでも行くというふうなことではおそらく実際にはなかったろうと思います。何らかの形の何らかのもの、それから何らかの関係ということで参ったのであろう、かように考えます。
○藤尾分科員 それが何でもなかったのです。もし何でもなかったとすれば、一体どういうことになりますか。何の根拠もなくて行ったということになると、どういうことになりますか。それで、その地区全体の婦人たちが、権利の行使をそのために非常に妨げられた、こういうことになりますと、これはどういうことになりますか。
○高松政府委員 全然無差別に、そんじょそこら手当たり次第そういうことをやるというふうなことは、やはり問題であろうと思います。
○藤尾分科員 問題であるということをいま言われましたけれども、問題になるのは、そういうことはいま手始めでございますけれども、実はこれは私の選挙区で、同じく小山というところでも起こっておる。これは選挙後でございますけれども、ある地区の婦人が七十名、全部警察に参考人として引っぱられておる。そうしてその参考人に対しまして、非常に失礼なことばを乱用いたしておりまするし、またある時間を指定して――七十人ですから、午前と午後に分けて呼んだのでしょう。午後の連中がやってきたときに、二階から、こう見まして、来た、来た、来た、来たというようなことを言って、同じく取り調べを受けておられる参考人の御婦人たちに対して嘲笑したというような事件があります。非常におこっておられる。そうして私のところへこういう手紙をよこしておられる。この手紙の内容につきましては警察の本部長に渡してあります。そうして本部長は、取り調べに非常に粗漏がございましたということを私に言っておるのでありますけれども、一体粗漏のある取り調べというのはあるのですか。
○高松政府委員 本部長がどういう意味でそういうことを申しましたのか、私にはちょっとその前後の関係がつかめませんので、よくわかりません。
○藤尾分科員 あなたは、前後の関係がわからなくてそれはよくわからぬと言われるけれども、実はこれはあなたのほうの次長さんにもよくお話しを申し上げて、前後の事情は十二分にわかっておられるはずです。
○高松政府委員 私にはよくわからないと申し上げたのは、本部長がもしそういうことを申し上げたとすれば、その間の彼の判断の前後の状況がよくわからないということであります。事件自身の問題は、私もいささか承知しております。
○藤尾分科員 大体いなかのことでございますから、警察に呼ばれるというようなことになりますと、これは何かしたのではないかということで、非常に肩身も狭くなる、こういうことはあなたもおわかりのことだと思う。一つの地区の御婦人だけを選んで七十名全部とにかく参考人だといって呼んでくる。参考人をお呼びになるのはあなた方の権限かもしらぬけれども、本来ならば参考人というものは、あなた方のほうでお調べがつかないから、あなた方のほうでお願いをして、あなた方のほうで出向いていって、私のほうではこういうものを調べておりますけれども、どうも私どものほうの力が足りませんからわかりません。どうかそういう意味合いで、ひとつこれを補充するお役に立っていただきたいという意味で、あなたのほうでそこへ行ってそして頭を下げて事情を聞く、これが参考人としての当然の態度でないでしょうか。
○高松政府委員 問題の参考人は、まさしく御指摘のとおりのものだと思います。ただこの場合の六十名余ですが、その参考人は実は入場券をもらった、形からいえば被買収の容疑者、こういう形になる人たちでございました。
○藤尾分科員 それでは、そういうときに調べるにあたって、その参考人に対して、容疑者であるからということを告げないで、参考人として呼び出しながら、それじゃなぜ逮捕状を出さないのですか。参考人として呼びながら、それに対する――これは一人一人の訴えです、一枚一枚が。それじゃこの訴えを一枚一枚読みましょうか。皆さん非常におこっておられる。警察なんというものはなんてひどいところだ、大きな声を出して人をおどかしてみたり、何だということで非常におこっています。警察なんというものは二度と協力せぬ。私は元来が、あなたは御承知かもしらぬけれども、警察というものを非常に大事に思っておる。警察というようなものは、国民の協力がなければこれは成立せぬものです。国民の協力なくて、そしてあなた方だけで警察の仕事が完全に、できると思ったら――できるかどうか、それは私はあなたに一回伺ってみるが、あなたはできるとお思いですか。
○高松政府委員 私どもの特に刑事警察というような仕事は、国民の協力がなければできないということは、私どもかねがね強く申しておるところでございます。国民の協力をいかにして確保していくかということが、私どもとしては非常に大きな問題である。むしろそれが警察のよって立つ基盤である、かように考えております。
○藤尾分科員 あなたが言っておられるとおりだとすれば――どなたに会って話してみても、あなた方最高首脳部はみなそのように考えておられる。ところが末端に行きましてこういう事件が起こってくる、あるいは事件が起こらない先においても、やっておられることは国民をおどかし上げるとか、非常に不快な念を与えるとか、そういうことばかりであって、国民とあなた方警察との間を非常に疎隔するばかりのものである。こういうことになったら、一体あなた方のそういう御方針というものが末端との間に非常に疎隔を来たしておる。その責任はだれがお負いになるのですか、お答え願いたい。
○高松政府委員 いま御指摘の小山の問題にいたしましても、おそらく現地の責任者としては年末でもあり、相手方が御婦人でもあり、それから趣旨の点についても若干問題がある。そういう意味で、被疑者ということではなしに、参考人ということでなるべく簡単に済ませる、こういうことが私はそういう形になったものだと思います。
 それから、そういうことについての国民の協力を得るか得ないかについての………
○藤尾分科員 めんどうくさいからこれをお読みなさい、あなたの場所で。
 時間がありませんから直ちに次の問題に入りますけれども、一番初めのが栃木の問題、それからいまのが小山の問題今度は佐野の問題です。
 佐野の問題というのは、秋山川という川がございまして、その川が長年改修ができなかった、それを沿岸の方々が私のところにおいでになって、何とかこの川を直してもらいたいと言われるから、私も直してあげなければいけないと思って一生懸命になって、そうしてどうにかこうにか予算をかき集めてその改修をはかっていったわけです。非常に私はいいことをしたと思っておる。そうしてその方々は期成同盟をおつくりになってやっておられたら、それが選挙運動と結びつけられて、そうしてある人の投書があって、ここにあるようにいろいろな人が、取り調べのばかばかしさ、取り調べの間違いというものをおこって、これはみんなおこって書いておられるわけです。これはほんとういうと、時間があったら一々読みたい。
 ところがその投書した人が――現実にここにございますけれども、これは公文書です。その投書した人が、ある候補者の手ぬぐいと半えりを持って回っておる。そうして、ここにございますようにその取り調べを受けた、一番初め二十日間入れられた方の夫人が非常におおこりになって、自分の亭主は何も悪いことをしていないのに二十日間もとめられておる、そうしてそれを言いつけたやつのほうがこういう選挙違反をやっているじゃないかということを言って、現物をほんとうに差し出して警察へ持っていっておられる。ところが警察はそれに対して、それはお持ち帰り――これは捜査課長ですよ、ここをちょっと読みますから聞いておいてください。「半襟、タオル箱入りを佐野警察捜査課に持参して、これはどうしてくれるのかと植竹捜査課長に提出したところ、選挙違反になるかどうかわからないから、自分のほうで使用していろと言って取り合ってくれません。こんなことが一体あっていいのですか。物証を持っていって、そうしてこれをどうしてくれるのだといって行ったときに、一体警察というものはどうしなければならぬかということがきめられておるはずです。直ちにそれを検察に持っていかなければならない、それを検事のところに持っていかなければいかぬ、そういうようにこれは法規上きめられておる。それを、あなた、これは選挙違反になるかどうかわからぬから持って帰ってどうのこうの、使っていてくれとは一体何ごとですか。そういうことは警察の行為として非常に大きな弛緩である、ゆるみがある。あなたが考えられておることと全く違った方向にこれがいっておるというようなことに、あなたは気がおつきになりませんか。そういうことが行なわれておるのが実態だとすれば、あなた方がいま志しておられる民主警察というようなものとおよそ違ったところにそういったものが行きつつあるということだと私は思う。この点は、あなたは責任者としてどういうふうにお考えになりますか。
○高松政府委員 いまの問題につきましては、これは私全然聞いておりませんで、何らかの事情があるのかもしれませんが、よく調べてみたいと思います。
○藤尾分科員 そんなものは事情なんかあるわけがないじゃないか。そこでその方は非常におこって弁護士と相談をせられて、これを足利の検察庁に持って行った。検察庁でそれを取り上げた。ところが検察庁におかれましても、もうこれは二月七日のことでございますから、一月二十八日で一応選挙違反事件は終わっており、大体一応解散だということで、検察庁においても、これは取り調べるにはお取り調べになったんだと思いますけれども、たった一日間この被疑者をお呼びになっただけで問題はそれっきり。本人に対しましてはそれから約一週間後に、あなたが出された違反被疑事件は左記のとおり処分いたしました、不起訴でございます、こういう通知がきておる。そうして入れられたほうの人たちは、それはいろいろ容疑があったのかもしれませんけれども、少なくとも選挙とは何も関係なく秋山川の改修ということを一生懸命にやっておって、しかも自分たちの金を出して、そして上京してきて陳情をした結果を皆さま方に報告するために報告会を開こうということでやったという事件です。これもあなたのところに差し上げてもいい、全部ありますから、これを見てごらんなさい。そしてその間の取り調べにおいて、佐野の警察あるいは県警というものの代表者がどのようなひどいことをやっているか。これは私あてに来た手紙ですけれども、これを見て黙っているわけにいかない。だから、あなたのそういう高度の民生警察としてのあり方というものに対して、現実は非常に背反した方向に行っておるということをあなたはお認めになるかならぬか、その点をひとつお伺いしたい。
○高松政府委員 取り調べに当たった者の言動なり何なりについて、私どものほうでも県本部に命じて調査をいたさせました。県本部のほうの報告では、特に言動が非常にひどかったというような事実はないということを申しておりますが、いままた御指摘がございましたし、私どものほうといたしましてもよく調べてみたいと思います。その結果、警察のほうの、あるいは署のほうの取り調べその他に非常に欠陥があるならば、これは早急に是正をしていきたいと考えます。
○笹山主査 藤尾分科員に申し上げます。時間が来ておりますから結論に入ってください。
○藤尾分科員 どのように是正されましたか。
○高松政府委員 取り調べのやり方というふうなものを十分に反省させ、あるいはそういう欠陥について指摘をして、そういうことの起こらないようにさせる、こういうことでございます。
○藤尾分科員 最後に、あなたのほうは、あるいは欠陥があったらそれを反省するでそれで済むかもしれない。しかしながら、その取り調べを受けて非常にからだを悪くして、そのために、ここに診断書もございますけれども、約一カ月の安静休養をしなければいかぬとか、あるいはひどきに至っては、先ほども申し上げましたように命をなくされた方がおられる。こういう方々に対する責任は、一体それじゃどうするのですか。
○高松政府委員 先ほど岡山の件について御指摘がございましたが、私どもも中国管区警察局長をして監察をいたさせました。それから県本部長の報告と両方を詳細に見てまいりましたが、先ほど御指摘のことと岡山のほうは事情がだいぶ違っておるように思われます。それで発病は一月二十日の朝でございます。朝の五時十二分に看守が、せきを四、五回したということで気づきまして、それから呼び起こしたけれども起きない、おかしいなということで見たら、非常に、まさに容体が変だということで、それからすぐに医者を呼びまして、五時二十五分に医者が参っております。六時に死亡された。死因は急性心臓死、こういうことでございました。それで警察の調べなり留置なりに起因してこういうふうなことになったものかどうかという点を調べましたが、先ほど法務大臣からちょっとお触れになりましたけれども、こういう突然の病気でたいへんお気の毒でございますけれども、その点については、警察として留置なりあるいは取り調べについて、それが原因で死亡されるということではなかったように思われます。なお、留置後二度医者の検診をいたしてございます。
○藤尾分科員 あなたは、こう言えばああ言う、ああ言えばこう言うと、いろいろそれははあなた方にも都合があるから、いろいろな書き方もありましょうし、言い方もあるでしょう。しかしながら、ともかく留置をされて、からだを悪くしたとか、あるいはこの場合には死んでおられる、とにかく。その死因についてどうだこうだという、それは考え方はいろいろ違うかもしらぬけれども、そういうものは、あるいは世間に対して、留置を受けた、不起訴になりました、何でもございませんでしたということで、一体その受けた不名誉というものはだれがこれは回復するのですか。それをどのようにして回復する手段があるのか。私はそれを伺いたい。そういう道が開かれていないと、あなた方のやっていることは全部正で、全部是で、そうしてその疑われた者は、そうして取り調べを受けた者は全部非で、全部これは不正であるということになっちゃうんです。そういったことがいまこの世の中で、新憲法下のこの世の中で通っていいものかどうか。あなた方はみずからの責任であるとか、あるいはみずからの警察なりあるいは検察なりの権威であるとかいうことにとらわれておられるかもしらぬけれども、国民は、国民の権利、義務というものを持っておる。もっと大きなものを持っておる。それが傷つけられる。その傷つけられることは、不起訴になろうと何しようと、不起訴でございますという一片の通知でそれで終わりというのじゃ、これはあまりひどいじゃないですか。これは法体系の上で一体どうなのか。これはひとつ法務省でもお答えを願いたい。
 で、いずれにいたしましても三十分の、もう私の時間は過ぎておりますから私はこれ以上やろうにもやりようがない。でございますから、これは日をあらためて法務委員会なり、あるいは地方行政委員会なり何なりで、とっくりとやらしていただきますけれども、とりあえずこの場で結論といたしまして、そういう責任を一体どうするのか、だれがとるのか、その点をお答え願いたい。
○辻政府委員 お答えいたします。
 ただいまの御質問、一般的に申し上げまして、犯罪の嫌疑を受けて捜査され起訴されて、その結果無罪になったという場合でございますと………(藤尾分科員「無罪じゃないですよ、あなた。無罪というのはですな……」と呼ぶ)それではそこまでいかない、調べを受けまして不起訴になりましたという場合でございますか、その場合だけについて申し上げますが、その場合は身柄を拘束されておりましてしかも不起訴になった、その不起訴のまた理由が、全く白であったというような場合におきましては、被疑者補償という制度を設けておりまして、その身柄の拘束に伴う損害というものを補償するようにいたしております。
 それから身柄を全然拘束されずに被疑者として取り調べを受けまして、その結果不起訴になったという場合には、身柄の拘束に伴う損失というものはございませんので、これは一般的にはその刑事訴訟のルートにおける損害賠償というものは講じておりませんけれども、一般の民事上の損害賠償の請求をしていただくという形になろうかと思います。
○笹山主査 時間が参っておりますから簡単にお願いします。
○藤尾分科員 いまのは一般論でけっこうでございますけれども、それは要するに法体系におけるあなた方の知識であって、一般の国民はそういうことは知悉してない。そういう制度がございますということを一々公告してありますか。不起訴にしたときに、そういう説明書をつけて、みんな、これこういうふうになっておりますから、この損害については、このようにして御請求になったらいかがですかというようなものを、その人たち一人一人にこれをつけて差し上げるほどの親切さが、いまのあなた方の法務行政、検察行政というものについているかどうか、私はその点を言っているのです。その点いかがです。
○辻政府委員 いまの被疑者補償の点につきましては、適時検察庁のほうにおいて御連絡をしておるかとも思います。
 それから一般的な民事上の損害賠償につきましては、これは一つの国民の常識としてそれぞれの方々が当然おとりになる法的措置であろうと考えております。
○笹山主査 じゃ時間が参りましたから。
○藤尾分科員 これが最後ですから、もう質問はいたしませんけれども、そういう考え方を官僚主義というんです。あなた方だけがわかっておる。あなた方だけが独善して考えておる。そうして、そういうものがございます、そういうものは知っているのは国民の常識だ。――一億の国民はそんなこと知りゃしません。そういうことを懇切丁寧につけて差し上げるのが行政というものの責任であり、行政というもののあたたかさです。そういうところにあなた方の独善があり、官僚というものは、官僚だといって世間から一つの目でもって見られる一つの要素がある。その点を私は最後に御忠告申し上げておきます。
 私の質問はそれで終わります。
○笹山主査 ちょっと申し上げますが、次の順は山中吾郎君でございましたが、まだお見えになりませんので、そこで、その次の番の沖本泰幸君を繰り上げて順にお願い申し上げたいと思います。沖本泰幸君。
○沖本分科員 私は、主として同和対策特別措置法に関連して、法務行政に関係のある問題について御質問したいと思います。
 まず、昨年の暮れにこの同和対策特別措置法が施行されました。しかし、これはまだ施行されたということになっただけで具体的な同和対策に対する行政というものが重点的に行なわれていない、こういううらみが多分にあるわけでございます。
 そこで、法務大臣にお伺いしたいわけでございますが、この同和対策の基本的な精神になるわけでございますが、差別問題についてはどうしても人権ということがからんでくるわけでございます。ところが、この同和対策特別措置法に関連して長期計画というものを各省がお立てになったわけでございますが、法務省のほうではこれに関する具体的な内容というものは伴っていないと思うわけでございますが、その具体例について御説明いただきたいと思います。
○小林国務大臣 この問題の一般的の所管は総理府であることは御承知のとおりでありまして、私ども人権問題といたしましては、同和問題のいま言うように一般的な問題については、調査あるいはそういうことはしておりません。個々の具体的問題が間々起きるのでありますから、これらの問題については調査をして、これの救済等の配慮をいたしております。したがって、すべて人権というものは個々の問題でございますから、個々の問題についてケース・バイ・ケースでもって取り扱って善処しておる、こういうことでございます。
○沖本分科員 ここで述べたいことは、まず、部落差別というものに対する歴史的社会的な問題、こういうふうな関係によってこの差別問題が発生し、助長されて、ずっと残ってきている、こういうふうな経過があるわけです。それに、わが国の社会構造やわが国社会体制が、この差別を温存していくような基礎になっている、こういうふうなことが言えるわけですけれども、しかし、間々これとスラム問題とがすりかえられて考えられているということが非常に多いわけです。そしてまたよく指摘されることは、こういう問題をお取り扱いになる、人権を守っていただく関係の方々自体も、まだまだ差別に対する観念をお残しになっていらっしゃる。それが、取り調べ、あるいは調査の最中に、その調査していらっしゃる人自体が差別的な言動をおやりになる。こういうことが非常な問題になってきておる、こういうことでございます。
 たとえていいますと、差別的な戸籍が昨年は残っておってたいへんな問題になってきた。あるいはこういう差別問題の地名が載っておる地図があったり、あるいは興信所によって身分を内々に調べる。その目的は何かというと、あらかじめ初めから、そういう部落の人たちではないか、それがどうであるかこうであるかということによって調べに入っていっている。こういうことの内容が、もうすでにそこから差別が出てきている。最近は、二、三、男の人が結婚問題で自殺する、こういうふうな事件もたくさん出ておるわけでございます。こういう関係について、昨年問題になりましたこの戸籍問題はどういうふうにいまなっておるのでしょうか。
○小林国務大臣 いま、戸籍法あるいは戸籍面において、何らの差別がないことはもう御承知のとおりでありまして、いわゆる明治の初めに出た壬申戸籍、こういうものはもう廃棄をする、そしてその処分をしたものは一切もう公開はしてならぬ、照会にも応じてはならぬ、またそのものは法務局において主として厳重に封印をして保管するということで、一般の人にそのものが見られる、こういう機会はもう絶無になっております。
 なお、いまのように、興信所の問題が最近も起こりまして、こういうことに対しましては、最近われわれの人権擁護局のほうから、こういうものはもう調査の対象にすべきでない、こういうことを強く勧告をいたして、全国の法務局にもその向きを知らしておるのでございます。それで、むろん私どもの関係者がそういうふうな観念を持つべきでないし、また、そういう気持ちで調査などは絶対すべきでないということで十分注意をいたしておるというのが現状でございます。
 要するに、これらの問題については、そういうことを調べること自体が差別的な考えに基づくものだということでございまして、先般この予算委員会におきましても、一体興信所をどこで取り締まるか、こういうふうな問題まで出てきておるのでありますが、これは、取り締まるということよりか、そういうことはもう調べてはいけないということを人権擁護の立場から強く法務省から注意を喚起し、勧告をいたしておる、こういうことでございまして、こういうことが私は相当な効果を結果において示すというふうに考えております。
○沖本分科員 さらに、こまかい点になりますが、差別的な地名が記載されている登記簿等があるわけなんですが、そういうものからは、この差別的な名称をはずしていただくような方法はとれないものでしょうか。
○新谷政府委員 お答えいたします。
 登記簿等にも不動産の所在を記載してございますので、あるいはそれから仰せのような地域の関係が出てくるということも確かに考えられるわけでございます。しかし、これは、あくまでもその土地とか建物の不動産の所在を示しているだけでございまして、その所有者とは必ずしも関係はございません。そういうことで、いまの不動産登記法上の物件の表示そのものを改めるということに
 つきましては、なお研究を要する問題があろうかと考えております。
○沖本分科員 さらに、この問題で一番関係が深いのが人権擁護機関ということになるわけですけれども、先ほど大臣もお触れになりましたけれども、ただ問題が起きたり事件が起きたことに対して問題を処置していく、こういうふうなお考えが主体になっておる。また、そういかざるを得ないというふうな点もあることはうなづけるわけですけれども、さらに機能を発揮し、十年間の時限立法でもあるわけですから、この十年の間に差別問題をなくしていくという一つの働き、動きというものが、やはり法務省自体、あるいはその具体的な計画の中にも出していただかなくてはならない。こういうことになってくるわけでございますから、こういう点に関する人員の配置であるとか、あるいはこの問題に対するいろいろな検討、こういうものが十分加えられてしかるべきである。また、こういうことを調査したり、あるいはいろいろな点について研究をしていただくような費用も十分見ていただいて、そしてその十年の中ではっきりした成果を見出していって、この十年の時限の間にこういう差別問題はこの世からなくしていく、こういうふうに向いたものが出てこなければならないと考えるわけでございますが、そういう点について今後大臣はどういうふうなお考えでこの問題をつかんでお越しになるか、その点についてお答え願いたいと思います。
○小林国務大臣 これは、要するに人権擁護思想の普及と申しまするか、こういうことのために、あるいは講演会をやるとか、あるいはパンフレットをつくるとか、こういう啓発的な、啓蒙的な運動は、法務省の責任においてこれから展開してまいるつもりでおります。
○沖本分科員 それに加えまして十分お願いしたいことは、特に人権擁護に携われる方々に、差別というものの歴史であるとか、たとえていいますと、部落の方々は昔秀吉が朝鮮征伐をやったときの捕虜であるとか、あるいはいろいろな風説が流れておるわけです。それがまことしやかに考えられておる。こういうところに、もうすでに間違ったものがあるわけですから、血のつながりあるいは人種的なもの、あるいは皮膚、日本の国民として何ら変わったところがないわけです。ただ、そうと思われるような地域に生まれて育ったというところから、生まれ落ちてかららく印を押されて、ああ、あそこの出であるとかと、こういうことで、その人自体が人生に暗い影をもって暮らしていかなければならない。全くその人にとってみればたいへんな問題になるわけです。就職するにも差別がついてきている、結婚するにも差別がついてくる。何らわれわれと変わりはない、同じ日本の国民同士であるのに、そこに何らかの形で、黒い、重たい荷物を背負い込む、こういうことがあってはならないわけですから、こういう、いわゆる差別に関する十分な問題を、こういうことに携わる方々が十分握っていただいて仕事に当たっていただくということでなければならないと思うわけです。そういうことのために、たとえば一つのパンフレットをつくるについても、ことばの扱いとか、それから文献をあさっていろいろ検討するとか、そういうことでなければならないと思うわけでございます。そういう点に十分費用を見ていただいて、十年の問に結果がはっきり出てくる、法務行政に関しては差別問題は一切解消した、こういうところまでお力を入れていただきたい、こういうふうにお願いしたいわけでございます。
 つきましては、そういう点について人員をふやしていただく、またはそういう特別な機関をつくっていただく、あるいはそういう問題に対して全国的な一つの調査をおやりになる、こういうお考えはありませんでしょうか。
○小林国務大臣 これは非常にごもっともな御意見だと思いますし、私どもも、この問題を主として扱うのは地方法務局の人権擁護課、こういうところでございますから、これを扱う者が、私はさような心配はないと思いますが、この上とも念を入れて、そういう気持ちを持たないで事に当たるように、またあらためてそういう部内教育と申しますか、そういうことをいたしたいと思いまするし、お話しのようなことも、今後十年間に実績を十分あげなければならぬ、こういうたてまえからして、これからもあるいは人の問題とか、あるいは部内教育の問題とか、そういうことについても十分にひとつ念を入れたい、かように考えております。
○沖本分科員 前向きにお答えをいただいたので、ぜひとも次の年度には十分な計画をお立ていただきたいことをお願いしたいわけです。
 さらに、国家公安委員長がいらっしゃれば一緒にお願いしたいと思ったのですが、人権擁護の立場という面でいまお話を承ったわけでございますが、さらに何らかのことで事件を担当し取り締まりに当たられる検察、警察の方々も、やはり取り調べの内容、そういうものの中に、そういう点、十分配慮していただいたものがなければならない。狭山事件と、こういいまして、非常に問題をかもし出している、まあ係争中のものでありますから、内容について触れるということは避けたいとは思いますけれども、無実の罪で調べを受けておる、こういう内容について部落の皆さん方は、完全に無実であり、差別問題にからんでここまでやられているんだ、石川青年を取り戻そう、こういうふうな運動も起こしていらっしゃる。こういう観点に立って、検察行政のほう、あるいは警察行政のほうにも、十分成果を得ていただくような方法をおとりいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
 私、持ち時間がまだ十分あるわけでございますが、次の質問者が時間の都合がありますので、時間をさいて、そちらのほうへお譲りしたい、こう考えますので、短い時間ではございましたが、大臣に十分その点お含みいただいてこれから当たっていただくことを心からお願いいたしまして、質問を終わらしていただきます。
○小林国務大臣 いまのお話しのことは、もう検察方面においても十分留意をいたしておりますが、この上とも念には念を入れる、こういうことで、またあらためてひとつそういう要請もいたしたい、かように考えています。
○笹山主査 それでは、次は二見伸明君。
○二見分科員 私は、保護司の問題について法務大臣の御見解を伺いたいと思うわけであります。
 最近、年々犯罪は増加の一途をたどっており止すし、まことに不幸なことではございますが、書少年犯罪もそれに比例して、あるいはそれに比例する以上に青少年犯罪の増加というものは著しいものがあるわけであります。このために保護司の社会的な任務といいますか、立場というものも年々増大してくるんではないか、こう考えるわけでありますが、現在、保護司の対象となるような非行青少年と申しますか、犯罪少年と申しますか、それは常時大体何人ぐらいというふうに法務省のほうではおつかみになっているんでしょうか。
○小林国務大臣 六万人ぐらいといっております。
○二見分科員 六万人ぐらい……。私、数のことでがたがた言うわけではありませんけれども、法務省からいただいた資料によりますと、大体常時十万人ぐらいを保護司の対象にしているようです。
 その数字の違いはともかくといたしまして、現在保護司の数というのは保護司法できめられて、定数、定員が五万二千五百人、こうなっているようでありますけれども、実際の保護司の数というのは四万九千人ぐらいである、こういわれております。これはこのとおりでよろしいでしょうか。
○鹽野政府委員 お答えいたします。
 御指摘のとおり、保護司の定数は五万二千五百人というふうに保護司法で規定されております。現在員はただいま御指摘のとおり四万九千、ときによって若干違いがございますが、四万七千ないし九千ぐらいというのが実情でございます。
 それから、ついでに一言御説明させていただきますが、保護司の処遇の対象者になる少年でございますが、保護司の処遇の対象になる者の総数は、御指摘のとおり約十万でございます。そのうち少年が約六万でございます。その趣旨で先ほど大臣が御答弁になったわけでございます。
○二見分科員 実際の運営上の問題になりますけれども、十万、あるいは少年を対象にすると六万、この数に対して四万七千ないし九千という保護司の数でもってこれで十分なのかどうか、この点はいかがでしょうか。
○鹽野政府委員 少年を含めまして保護司の保護観察の対象者は、先ほど申しますとおり十万でございます。それに対して四万八、九千人の保護司さんが活動していらっしゃるわけでございまして、平均いたしますと一人の保護司さんが二名ないし多い方で三名ということになりますので、全国平均から申しますと決して足りない数ではないと存じます。しかしながら、御承知のとおり対象者の数は、地域によっても若干アンバランスがございますし、それからときによっても若干推移がございますので、地域によりましては一時若干忙しいというところもございましょうし、また地域によっては若干ひまで、対象者を一人、場合によっては対象者をお持ちにならない保護司さんもあるというような状況でございまして、現在のところ四万八、九千名の保護司さんで十分に事は足りているというふうに私どもは見ております。
○二見分科員 地域によって保護司の数にアンバランスといいますか、あるいは犯罪少年の、地域によって均衡がとれてないわけですね。そのために保護司によっては三人も見るところもあるし、あるいは保護司によってはゼロというところもある、ということは五万二千五百人、それに対して実際が四万九千人ということになりますと、三千人ほどの定員に対する不足があるわけですね。そういうところでもってカバーしていこうということは検討されているわけでしょうか。
○鹽野政府委員 御指摘のとおりまだ定数から見ますと余裕があるわけでございまして、新しい候補者を発見することによりまして逐次充員いたしたいというふうには考えておりますが、これもすでに御承知のことと存じますが、なかなか新しい候補者を発見するということにもいろいろ問題がございますので、現在のところ平均数が、一人で対象者二名を担当するということでまずまずまかなわれておりますので、現在のところはそれで運用しているというような実情でございます。
○二見分科員 保護司法の第三条によりますと、保護司というのは「職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。」それから健康で活動ができる、これが保護司の条件になっているようであります。保護司の年齢といいますと、大体五十歳以下が二割くらいで、五十一歳以上が八割くらいだ、平均年齢とすると五十八歳ないし六十歳くらいだというふうに聞いておりますけれども、これはこのとおりでよろしいですか。
○鹽野政府委員 おおむね御指摘のとおりでございます。
○二見分科員 私は、保護司についての一つの問題はこの年齢の問題だろうと思います。たとえば、現在の少年というのはゴーゴーは踊る、ボーリングはあたりまえ。ところが、こんなことを申し上げては失礼になりますけれども、五十八歳、六十歳といういわばお年寄りの方は、ゴーゴーやボーリングを見ると、あれはよくない、こういう感覚があるわけです。価値判断の基準が違うわけですね。ミニスカートを見れば、若い者はかっこいいと思うけれども、お年寄りのほうは何となく少しおかしいのじゃないか、こういう感覚の相違がある。保護司の年齢が高いということは、保護司が対象とする少年のほんとうの姿がわからないのじゃないだろうか。自分のいままで受けてきた教育だとか道徳だとかというものを基準にして見てしまう。ボーリングへ行くのはよくない、ゴーゴーを踊るのはよくない、喫茶店へ行くのはよくない、こういう感覚が、全部が全部とは申し上げませんけれども、出てくるのじゃないだろうか。私は、そのために保護司には、一つは年齢上の問題があると思います。当然これの若返りは、法務省としても考えていかなければならないと思いますけれども、今後、この保護司の若返りということについてどういうような立場で臨んでいかれるか、あるいは選考基準を改めるとか、そういう点の御検討はどうなっておるのでしょうか。
○鹽野政府委員 保護司の年齢の問題は御指摘のような状況でございます。ただ、保護司の仕事の中心は保護観察の実施でございまして、この中には必ずしも少年ばかりではないわけでございまして、相当な年齢に達した対象者というものもあるわけでございます。保護司の仕事を見てまいりますと、やはり相当な年配者が豊富な生活経験あるいは知識を持ちまして、若い対象者をきわめて巧みに善導していくという例は少なくないのでございます。それからまた、保護司の仕事はただ精神面だけではないのでございまして、犯罪者を更生させるためには、そのほかに就職のあっせんとかあるいは住居のあっせんというような、いわば経済的と申しますか、物質的な援助というようなものもかなり大きな比重を占めるわけでございまして、そういう面をとらえてみますと、若い方よりも場合によっては年配の保護司さんのほうが、十分に効果的に仕事をしていくという例もまた少なくないのでございます。それから少年の対象者を見ますと、同年配の者に対してはかえって反発を感じるというような対象者もあるわけでございまして、さような例をずっといろいろ見てまいりますと、ただ年齢の点だけで非常にぐあいが悪いというふうな結論は、必ずしも出てまいらないように存ずるわけでございます。
 しかしながら、御指摘のように少年の対象者の中には、やはり年配の人には話しにくいというような対象者ももちろんあるわけでございまして、そういうような対象者につきましては、すでに御承知のとおりBBSという若いボランティア組織がございますので、そういう若い方の協力を得まして、保護観察を巧みに実施していくというような努力が払われているわけでございます。
 そこで、若返りの問題でございますが、法務少といたしましても、できるならばもう少し若い保護司さんをふやしていきたいということは、当然考えているわけでございます。ところが、これも先ほど御指摘のとおり、保護司には保護司法に定められた条件がございますので、この条件に合致するような若い方々を新たに発見していくということにはかなり困難な問題があるわけでございまして、その問題につきましては、数年来、各観察所長ともいろいろ努力をしてまいっているところでございますが、現在のところ、まだそれが十令な効果を発揮し得ないでいるというような状況にあるわけでございます。
○二見分科員 いまBBSの話が出ましたので、法務大臣にお尋ねしますけれども、これは新聞の記事ですが、「現在青少年の善導活動として成果をあげているBBS運動を新年度からさらに育成、強化することになった。BBS運動の予算はこれまでゼロだったが、ことしはじめて指導者研修費として二十万円計上されたのを機に、総理府青少年対策本部の青少年育成費からも支出を求め、強力にテコ入れしていくことにしたもの。こういう記事が出ております。確かにいま御答弁がありましたように、保護司ではカバーし切れない利点がかなりBBS運動にあるわけでありますけれども、法務大臣としては、このBBS運動を育成、強化していくという方針、新聞の記事はそうなっておりますが、これはどういう方向でやっていくのか。また、BBS運動の会員の方たちと法務大臣も、場合によったらば定期的でもかまわないし、不定期でもかまわないけれども――もしいままで話し合いが持たれていたのなら、それはかまいません。もし持たれていなかったならば、今後お持ちになって、いろいろな意見の交換をするようなお考えがあるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
○小林国務大臣 私は非常に有益な運動と思っております。政府におきましても、ボーイスカウトなどについてある程度の助成措置を講じておる、こういうこともありますが、この運動は、あくまでも民間の自発的な善意による運動ということになりますので、政府が関与することもあまり好ましくない。したがって、その辺のかね合いが非常にむずかしいと思います。私どもとしてはこの運動をひとつぜひ推進してもらいたい。したがって、われわれがこの方々とお話し合いをする、あるいはこれを進めるお願いをする、こういうふうな機会は持ちたいと思っております。
○二見分科員 それから法務大臣、もう一点お尋ねしますけれども、現在の保護司法によりますと、保護司の報酬というのは無報酬なわけですね。実費弁償が月六百七十円ないし千円くらい支給されているだけである、こう聞いております。法務大臣もこれについては、報酬を支給したほうがいいのじゃないかというかなり強い御意見をお持ちになっておるということを聞いておりますけれども、この点いかがでございましょうか。
○小林国務大臣 あれだけの大事業を単に民間の善意だけにたよるのはどうか、私はこういうように思っておるのでありまして、しかも、いまのいわゆる実費というのは、実費でないほどきわめて僅少なものである。これはもう活躍を願う上においても一つの欠点だと私は思うのでありまして、いま申すように、五万人近い人に報酬主義を導入するなどということは、むろんすぐには困難な事柄でありますが、そういうことを考えに置いて、実費を相当程度増額をしてあげなければ活動にも支障が生ずる、私もぜひ将来はそういう方向へ持っていきたい、こういうふうに言っておりますが、保護司会のほうでは、実費を上げてもらうことは非常に望ましいが、報酬主義をいまどうこうということは必ずしも賛成でない、こういうようなお話でございますが、私ども、いわゆる報酬主義というようなことを考えに置けば、ある程度実費の引き上げが可能であろう、こういうような考え方でおります。
○二見分科員 保護司会のほうでは実費の引き上げが望ましくて、報酬という形はあまり好ましくないという御意見でございました。それはどちらにいたしましても、実際に保護司のふところに入るお金がふえることは、私は大賛成であります。ぜひともこれは法務大臣に、乾坤一てき、がんばっていただきたいと思います。
 新聞の記事によれば、四十五年度はだめだけれども、四十六年度には大蔵省と折衝して何とか報酬制度を実現したい、こう法務大臣は非常な熱意を示しているというようなニュースも見たことがございます。これは大蔵省との折衝の問題になりますので、どの程度の目安かということはあるいは言えないかもしれませんけれども、どうですかね、法務大臣としては、月々たとえば一万円とか二万円とか、このくらいを目安にしているのだという腹案ございますか。
○小林国務大臣 報酬主義といえば、おのずから程度あるいは金額が出てくるのでありますが、いま申すように、私どもはそのくらいの気持ちで待遇をすべきである、こういうことでありますが、たまたま保護司会のほうでも、いわゆる報酬主義に徹することは困る。これは現に当たっている人たちの意見も尊重しなければなりませんから、そういうふうな気持ちでやれば、ある程度の実費の引き上げも可能であろう。ことに毎年少しずつ、とにかく上げてきております。これはよくスズメの涙などとひやかされますが、あの程度の引き上げ方では非常に不満足だ、こういうふうに考えております。
○二見分科員 保護観察の問題と関連して、少年法との関連でお尋ねしたいのですけれども、私は保護司の制度というのは、あくまでも保護主義といいますか、教育主義が基本となっているのじゃないかと思います。ところで、現在法務省がお考えになっている少年法の改正あるいは青少年法といいますか、この問題でありますけれども、法務省の考えは、少年法の精神は、いまの教育主義あるいは保護主義からむしろ刑罰主義に理念を置きかえようとしているのじゃないか。それは適用年齢を二十歳未満を十八歳未満に引き下げるということからも、あるいは検事に先議権を認めるということからも、私は刑罰主義に移そうというのが法務省の少年法改正の基本的な考え方じゃないかと思いますけれども、そういたしますと、保護観察という、どちらかといえば教育主義的な考え方、保護主義的な考え方と、これは対比する考え方になるのではないか。そういう点の調整、そういう点はどういうふうに認識されているのか、まずその一点をお尋ねしたいと思います。
○小林国務大臣 これはいま、刑罰主義どうこうなんという考えはありません。したがいまして、これを改正しても、保護処分についていろいろの段階を設けて、いま申すように青年というふうな取り扱いをしていきたい。要するに成人と少年との間のものを設けて、適切な保護なり、あるいは適切な刑事責任なりと、こういうふうに分けてまいろう、こういうことでありまして、いまこの年齢の引き下げとかということにつきましては、大体ある程度世論もその方向に動いておるように思いますが、私どもは刑罰を科することが目的ではなくて、なお具体的事例に適応するようなきめのこまかい処置をいたしたい、こういうことから出ておるのであります。
○二見分科員 少年法改正につきましては、裁判所側の意見と法務省側の意見とは、これはまっこうから対立するわけであります。ここでは、これを黒白をつけようという気持ちは毛頭ありませんけれども、ただ一点お互いに歩み寄れる点は何かというと、私は保護処分の多様化という面ではないかと思います。
    〔主査退席、登坂主査代理着席〕
この点は、私は裁判所のほうにも異存はないのじゃないか。もちろん法務省のほうとしては、少年法改正の一つの柱にしておりますので、この面についてだけは、法務省側と裁判所側との険悪な対立がなしに、あるいはできる問題じゃないかと思いますけれども、この点は早急に、保護処分の多様化ということは実施されていくのかどうか、考えられていくのかどうか。もちろん、年齢制限と年齢の引き下げや検事の先議権となると、これはいろいろ論議を呼ぶと思いますけれども、保護処分の多様化のほうだったら、それほどの論議でもないような気もいたしますので、そういうふうに全部を一ぺんにやろうというのじゃなくて、まずあまり抵抗の少ないところからむしろ改正に着手したほうがいいのではないか、こう私は思うのですが、この点いかがでしょうか。
○小林国務大臣 処分の多様化という問題は、これはぜひやらなければならない、かように考えております。
 それから、何も刑罰化を進める、こういう問題でなくて、いま申すように、事態に適応するような処分というものを多様化していこう、こういう考え方でありますが、年齢そのものにつきましては、われわれこれをすぐ成人としよう、こういうことではありませんで、いま申すように、多様化するためにはそういうふうにしたらよかろう、こういうことであります。
 いずれにしましても、この問題は長い間の問題でありまして、思案をしておっても、議論をしておっても、これは始まらない。これは何とかしてある程度の結論を出せということが、やはり世論であろうと私は思う。これらの問題は、二つの関係の議論ということでなくて、ある程度は世論がだんだんきめていくであろう。したがって私どもは、これをある程度前進させたい。そしていわば世間の批判あるいは世間の意見をこれにぜひ出してもらいたい、かような考え方を持っております。
○二見分科員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
○登坂主査代理 林君。
○林(孝)分科員 私は最近国民の間に次第に経験がふえてまいりました登記の問題、特にその手続上の問題について質問をしたいと思います。
 最初に、登記所は、個人が代書を通さずに登記申請をした場合、非常にぶっきらぼうである、不親切であるという声が私どものところにも来ておりますし、また、ここに一枚の投書を持ってまいりましたけれども、その投書の中、あるいは新聞の投書等にもあらわれてきておりますが、そういう個人申請ということに対して、登記所はどういう姿勢で臨まれておるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
○新谷政府委員 登記所の個人申請に対する姿勢でございますが、これは申し上げるまでもなく、登記所というものの非常に重要な機能にかんがみまして、私どもといたしましては、それが司法書士を通じていましょうとも、あるいは司法書士を通じないで個人で申請されましょうとも、同じように親切に窓口の応接をするべきである、こういうことで登記所の指導はいたしております。
○林(孝)分科員 民事局では、過去に登記申請用紙のひな形というものを各登記所に送ったはずですけれども、現在実際問題として、そういう登記所における申請用紙が窓口において利用の便に供されていない。これはことしの東京中野区の登記所であったことですけれども、登記申請用紙のひな形を見せてほしいと言ったら、倉庫から出してきた。そういうことでもって、その書き方等も教えてくれない、そういう不親切なことがあったわけであります。個人申請ができるといっても、そういうふうな窓口でのトラブルというものが次第にふえてきているということから考えると、それは非常に問題ではないかと思うわけであります。
 特に最近、マイホームを建てるという人たちもふえてきております。この登記は保存登記、権利登記または組合登記だとか商号登記、一切含めての登記でありますけれども、そういう登記をする機会というものは確かにふえてきた。こういう国民の日常の権利義務に密接な関係を持つ登記が、現実には手続の不案内から、代書を通さなければならない。その代書の件についても、非常に金額がかかる、そういうのが実情なんです。
 一面、ある点から考えますと、やはり同じ国民の日常の権利義務に関する戸籍あるいは居宅、こういう申請に関しては、申請用紙が窓口で無料で配付されておるわけです。そういう内容を見ますと、非常にわかりやすい内容で、窓口にあります。そこで登記所においても、こういう窓口で登記申請用紙というものを無料で交付するようにしてはどうか、私はそのように思うわけですけれども、この点いかがでしょうか。
○新谷政府委員 中野の登記所の不親切な取り扱い、御指摘いただきましてまことに遺憾に存じておりますが、御承知のように登記所は非常に現在多忙をきわめておりまして、私どもとしましてはそのようなことのないように、十分ひな形も一般の方に利用していただくように、親切に取り扱うようにということを指導いたしておるわけでございますが、たまたまどういう事情でございますか、御指摘のような事実がありといたしますれば、まことに申しわけないと考えております。しかし、他面におきまして、最近いろいろ団地の造成等がございますが、こういったところの登記所におきましては、むしろ団地の人たちがみずから進んで登記簿の閲覧をしたり、いろいろな手続をとりに来るそうでございます。したがいまして、登記所すべてがいま御指摘のような状況にあるとは、私は考えていないのでございます。
 なお、申請書等の用紙につきましても、これはできますならば、私どもといたしましては、仰せのような方向で窓口に備えて、十分国民に利用できるような体制をとりたいというふうな考えを持っております。しかし、現在登記所の問題といたしましては、それも非常に重要な問題でございますけれども、そのほかにさらに内部の体制を確立する施策をいろいろと講じております。予算の面でも、そういった面を考えましていろいろと計画したこともございますけれども、いかんせん問題が非常に多過ぎますために、その申請書の用紙までなかなか手が及ばなかったというのが実情でございます。
 今後の問題といたしましては、確かにその点も、私どもも非常に強い関心を持っております事柄でございますので、十分研究さしていただきたいと考えております。
○林(孝)分科員 十分研究されるということでありますが、いまの、非常に多忙をきわめておる――多忙をきわめておるということは、非常に仕事が多いということにも通ずると思うわけです。その反面、そうした窓口のトラブルが起こっておるんじゃないかとも考えるわけです。
 ここに一つの投書があるのですけれども、この人の場合も個人で申請されたわけであります。ところが、三日、四日と登記所に通う。その必要記載事項の内容を聞いて持っていったところが、こうしたものじゃだめだとまた突っ返されえる。そうして結局何度も足を運んで、金額は個人申請で、代書を通さずにやったから安くついたけれども、非常に時間の浪費というか手続の複雑さを感じた。ですから、登記所がそのように書類を重要視するならばそこまで、それじゃだめだ、こっちにしてくれというような、そういう――わかりやすい、画一的なそういう用紙を窓口あるいはその辺の売店等で売っておって、簡単に書き込めば登記ができる、そういうふうな便宜をはかっていただきたいというのが一般の声であります。
 そこで、もう一つは代書の問題でありますけれども、代書料というのは、これはばかにならないのです。代書料は、印紙代のほかにプラスした事実上の登録税化しておる、そのようにも考えるわけですけれども、この考え方自体は妥当なものと考えていいでしょうか。
○新谷政府委員 司法書士の手数料が非常に高いという御非難でございますが、私どもも間々そういうことを耳にいたすわけでございます。これにつきましては、現在御承知と思いますけれども、日本司法書士会連合会が司法書士の指導をいたしておりまして、法務省といたしましては一般的な指導監督権を持っておりません。しかし、そうは申しましても、これは国民の利害に非常に影響する問題でございますので、法務省といたしましては連合会に向いまして、この辺の司法書士の指導を十分していただくようにということをお願いしておるのでございます。
 なお、法律に違反するような措置を司法書士がとりました場合には、これは法務大臣の懲戒権一発動も可能でございます。こういった面につきましても、事あるたびに、連合会を通じまして司法書士の皆さん方の自覚を求めておる、促しておるというのが実情でございます。
 なお、その手数料が高いという問題でございますが、これもちょいちょい私どもの耳にも入ってまいりますので、そのつどいろいろ調べて、連合会とその対策を講じておりますけれども、これが全部が全部そうであるとも必ずしも言い切れないと思います。と申しますのは、四十四年の一月でございますが、連合会におきまして、約六千人の司法書士についての実態調査をやられまして、その結果によりますと、年間の総収入、名目的な所得総額が、大体百五十万円以下の人が六六%ちょっとこえるぐらいでございまして、平均いたしますと約百二十万円ぐらいということでございました。これはサンプル調査でございますので、必ずしも正確にあらわしていないかとも思いますけれども、連合会でお調べになったところではそういう状況でございます。私どもとしては、やはり規定に定められた手数料で正確にやっていただくということを連合会を通じてこの上ともお願いし、なおそういう努力を続けていきたいと考えております。
○林(孝)分科員 それでは、国税庁にも関係することでありますけれども、戸籍あるいは供託の申請用紙の年間所要予算額はどれぐらいになっておりますでしょうか、わかりましたら……。
○新谷政府委員 戸籍の関係は大体二百六十万ぐらいだと思います。供託が百五、六十万だったと記憶しております。
○林(孝)分科員 税務署でも青色申告、白色申告等の申告用紙は無料で交付しているわけです。その内容もわかりやすいものとなっております。そこで、登記用紙を無料で渡すとして、その年間の必要予算、先ほど、いままでも試みたことがあるようなことをお伺いしましたけれども、そういう予算の見込みはどれほどになるでしょうか。
○新谷政府委員 大体のことを申し上げますと、登記の事件の甲号事件というのと乙号事件というのとございます。この両者合わせまして推算いたしますと、約一億四千万円ぐらい要るのじゃないかと思っております。
○林(孝)分科員 ひとつ確認しておきたいのですけれども、過去に、登記申請用紙の無料支給について予算要求をしたことがありますでしょうか。
○新谷政府委員 乙号事件について請求をいたしたことはございます。
○林(孝)分科員 それはいつごろからでしょう。また毎年しているのか。本年度はどうなのか、その点……。
○新谷政府委員 ただいま申し上げました乙号の申請書の無料配付をしようと思いまして予算要求いたしましたのは、二、三年前でございます。それまでもときどき、そういう要求をいたした記憶がございます。本年度につきましては、その要求はいたしませんでした。
○林(孝)分科員 全国で登記の際に張る印紙代、登録免許税ですけれども、その国庫収入総額は幾らになっておりますか。
○新谷政府委員 現在、登録免許税でございますが、四十四年度の推定でございますが、九百九十億円ぐらいになろうかと思います。
○林(孝)分科員 九百九十億という巨額の登録免許税を取っているわけであります。その代償としても、また国民に対する親切、またサービス、そういう面からも、戸籍のようにわかりやすいそういう登記申請用紙を無料で交付してはどうか。いまその総収入を聞きまして、ますますその気持ちを強めた次第であります。またそのときに、必要な添付書類がそれに添付できるようにしたらどうか、私はそのように思うわけですけれども、税務署等の申告においてはすでにそのようにやって、現に国民にサービスをしているわけです。登記のほうもそのようにできないものか、今後のそういう実現に対する見通しというか、また今後予算を取ってそれを実現していくという考え方が具体的にあるのかないのか、その点をお伺いしたいと思います。
○新谷政府委員 先ほども申し上げましたように、過去において何回かそういう要求をいたしたことがございます。しかし、先ほども申し上げましたように、登記所として対処しなければならない問題が山積いたしております関係で、予算の折衝におきましても、むしろそちらのほうの解決にどうしても重点が向いていくわけでございます。最後までこの申請書の問題について取り組むことが、残念ながらできませんでした。どちらかと申しますと、時間が足りなかったというふうなのが実情でございます。しかし、われわれの希望といたしましては、仰せように国民にできるだけサービスしたいという気持ちを持っておりますので、今後の問題としてはなお研究さしていただきたいと考えております。
○林(孝)分科員 具体的に、いつごろの時点においてそういう予算措置を講じていくかという点、いかがでしょう。
○新谷政府委員 まだ来年度の――来年度と申しますか四十六年度になりますが、四十六年度の予算要求の策定というものはいたしておりません。四十五年度の予算が成立いたしまして、それから次年度の計画に入るわけでございますので、その段階で検討することになろうと思います。
○林(孝)分科員 登記の件についてはこれで終わらせておきます。
 それからもう一つ、これは少年院の中の問題でありますけれども、ここに「格子なきろう獄」大成果」というある新聞の記事を読みますと、非常に少年院の内容が明るくなって健康的であるという記事であるわけです。ところが、私のところにいま来ております手紙を見ますと、これは奈良の少年刑務所の中の問題でありますけれども、一人だけではなしに、ほかにもあるとはっきり言っておりますけれども、非常に暴行を加えられたり、リンチのようなそういう暴力が少年に加えられておる。このことについて法務大臣にお伺いしたいのですけれども、少年刑務所のそういう指導担当官の指導に対して、今後大臣としてどういう姿勢で臨まれるか、最初にお伺いしたいと思います。
○小林国務大臣 これはもうお話のような事態があってはならない。いわゆる明るい少年院であり少年刑務所でなければならぬ。したがって、さような趣旨で、収容者の処遇についても、係の者が十分注意してさような非難のないようにすべきである、さように考え、その指導をいたしたいと思っております。
○林(孝)分科員 大臣の姿勢を伺いまして安心したわけでありますけれども、この件については、私自身も、実際この奈良少年刑務所の担当者に会ったわけではございませんし、今後調査しなければならないと思うわけでありますけれども、こういう事実があったかどうか、また、その奈良少年刑務所の内容がどのようになっておるのか、これはこの機会を通して、政府の関係の方に調査をしていただきたい、そのようにお願いしたいと思います。
○勝尾政府委員 お尋ねがございました奈良少年刑務所あるいは奈良少年院につきまして、お尋ねの件の報告は、本日までのところ参ってはおりません。しかしながら、少年関係の施設のみならず、この種の拘禁施設で収容者が暴行を受けるというようなことは、矯企業務の自殺的な行為というべき重大な事柄でございますので、直ちに奈良少年院あるいは奈良少年刑務所について調査をいたします。
○林(孝)分科員 では、私これをお見せしますから、よろしくお願いいたします。いまはっきり、これから調査をしていただくようでありますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○登坂主査代理 この際、暫時休憩いたします。
   午後零時四十七分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時二十九分開議
○笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます、
 質疑を続行いたします。山田太郎君。
○山田(太)分科員 きょうは出かせぎ労務者にいて、また時間があれば、集団就職の問題から人権の問題、あるいは人権の保護の点についてお伺いしていきたいと思います。
 そこで、最近の一般紙等で非常に大きな見出しで、「人狩り暴力飯場を手入れ」とか、あるいは「短刀ちらつかせ乱暴」、あるいは 「出かせぎ青年逃げ出す」というふうな記事を非常に目にいたします。これが、聞くところによりますと、暴力団の資金源になっておる。人不足につけ込んで、職業安定所等の成規の手続を経ないで人集めをして、労務者を食いものにしているという状況がひんぴんとして起こってきております。この状況は、法務大臣もすでに新聞あるいは担当の官庁から報告は聞いていらっしゃることと思いますが、いわゆる基本的の人権、就職の自由あるいは転職の自由等々のそういう人権の問題からも、非常に大きな問題だと思います。その点について、まず法務大臣の、ありきたりの御見解でなく、国務大臣の一人としてそれにどう対処していったらいいかというふうな問題も含めてお答えを願いたいとともに、人権擁護局長からも、自分の掌握している範囲において、現状をお聞きしたいと思います。
○小林国務大臣 世間に伝えられているような暴力飯場とかあるいは人狩りとか、こういう現象はまことに遺憾な状態でありまするが、私ども法務省としては、これに関して、暴力とかあるいは脅迫とかこういうふうな問題は、端緒を得れば検察の問題にもなってくるということでございますが、これは第一次的にはやはり職業安定の問題、あるいは警察の取り締まりの問題、こういうことを期待をいたしておるのであります。また人権問題にしても、こういう事態は非常な――これをぜひとめなければならぬ事態であると思いますが、人権の調査というものは、大体当事者の申告とか要請とか、こういうものがあって発動するのが通常の形であります。私どものほうとしましても、これらの情報というものは、新聞その他によってこれを集めておりまするが、要は、その具体的の発動をするような、いま私が申したような要請等はなかなか出てこない、こういうことでありまして、さような情報を収集しておりまするからして、もし必要があれば調べるということになるが、とにかく第一次としては、通常の行政当局による取り締まり等を私どもは期待し、また、そこからの要請によって動きたい、かように考えておるのであります。いままでのところは、具体的に救済を求める、こういうような事例がどうもあまりない、こういうことでございます。
○川島(一)政府委員 お答えいたします。
 御指摘の暴力飯場の問題につきましては、これは人権にかかわる問題であるといたしまして、私ども、新聞の記事などは注目しておるところでございます。しかしながら、ただいま大臣もお話しになりましたように、具体的な事件としては、現在までにまだ一件も取り扱っておりません。したがいまして、地方から上京してきた者がどういう手段で暴力飯場に連れていかれるのか、あるいはまた暴力飯場における待遇というものがどういう状態であるのかというような点につきましては、新聞の報道以上には何も承知しておらないわけでございます。したがいまして、現在の段階では格別な対策を立てるというわけにもまいらない次第でございますが、今後の成り行きによりまして、人権として対処をすべき問題が出てまいりました場合には十分考慮していきたい、かように考えております。
○山田(太)分科員 人権擁護局長にもう一度お伺いしておきたいのですが、私が法務委員であった当時ですが、当時あなたが局長ではいらっしゃらなかったわけですが、どうも消極的な面が擁護局として当然なような口ぶりをなさっておりました。しかし、それでは基本的人権を含めて、人権を守っていく上において非常にあきたらないものがある。そこで、集団就職の面についても、あるいはそのほかの面についても、もっと積極的にこの点を、意欲的に人権を守る立場から動いていきたい、そういう前局長の御答弁もあります。その面から、この出かせぎ問題はまだまだ大きくなると思います。当然またそれが予想されておりますので、人権擁護局としてもっと積極的な体制をつくっていくことを考えてもらいたい、その点を要望しておきたいと思います。これは答弁は要りません。
 そこで、次は警察庁のほうの方にお伺いしたいのですが、新聞の報道は東京近辺の問題が非常に大きく取り上げられておりますが、先日、テレビでございましたか、名古屋の暴力飯場の問題が隠しカメラで写されております。いま現在、警察庁において、このような暴力飯場が幾つあるのか、その点を把握されておるかどうかという点が一つ。もう一つ、先日あった暴力飯場の実情ですね、これを簡単でけっこうですからお話し願いたいと思います。
○高松政府委員 全国でどれくらいあるかという数字は、ちょっといま把握しかねております。東京で大体飯場がいま六千カ所ぐらいといわれておりますけれども、そのうち数十カ所、詳細は非常に不明でございますけれども、いわゆる暴力組織を持つものがやっているのではないかと思われる飯場が、東京で大体数十カ所あるように思います。私、前任、大阪でございますが、大阪付近にもかなりあるようでございます。
 それから、先般御質問になりました事件は、一月の二十二日に青森から上京してきた出かせぎの人が、職安で紹介された飯場に行きましたところが、労働条件も明確でないし空気もおかしいというので、自分はやめたいということを申し出たところが、一カ月くらい働かなければだめじゃないかとか、逃げたらただおかぬというようなことで脅迫されまして、それで警察へ飛び込んでまいりました。それで、それを逮捕したというものがございます。
 そのほかに、ことしの三月の初めから警視庁では、本部と上野警察署と両方が一緒になりまして、二十四名ばかりの専従員を設けて取り締まりをやっております。この中で暴力団から派遣された者というものは実はつかみがたいのでございますけれども、道路交通法違反なりあるいは軽犯罪法で現在まで逮捕あるいは検挙して処理した者は、十三日現在で二十四名という報告を受けております。
 私どもも、この実態が非常につかみにくいのでございますけれども、今後ともひとつできるだけ実態をつかんで、適切な取り締まりを加えるようにしてまいりたい、かように存じております。
○山田(太)分科員 十分な捜査並びに適切な数の掌握もまだ不十分なようでございます。問題は、先ほどの御答弁にもありましたが、職業安定所を通した就職者が暴力飯場に働かされた、その問題の事実をいまおあげになりましたけれども、そういう問題ももちろん含めてでございますが、一例をあげますと、上野あるいは名古屋あるいは大阪、そのようなところへ地方から出かぎに出てきた人が、正式の職業安定所を通してさえもいまのような暴力飯場に就職される、この点についてはまた後ほど聞きますが、いわゆる世間でいわれる手配師、その手配師についての警察の取り締まりですね。ただ取り締まりさえすればこれを防げるという問題ではありませんけれども、しかし、それを取り締まるというそのチェックのしかた、ただ上野駅周辺でうろうろしているのをつかまえるというだけでは、このチェックはできないと思います。いわゆるそのような暴力飯場というものを正確に把握し、チェックしなければ、それを防ぐこともできないと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
○高松政府委員 いわゆる手配師が出てまいりましたのは、大体昭和三十五年くらいから出てまいりました。三十八年くらいから、次第に暴力組織の手先が非常に多くなってきたというようなことをいわれておったわけでございます。これは東京でも、あいるは大阪の西成でも非常によく似た形が出ておりました。こういうものに対する取り締まりを、たとえば職業安定法違反という形で相当取り締まってまいりましたけれども、最近はいさ太か形が変わりまして、飯場から直に募集するというような形で、ちょっと職業安定法違反という形のとりにくいものがわりあいに出てきているというのが実情のようでございます。いずれにいたしましても、そういうふうな形で、手配師の取り締まりを軽犯罪法なり道交法違反でやるというのはかったるいのでございますけれども、私どもとしてはあらゆる法令をフルに使って、職業安定法違反なり労働基準法違反なり、そういうものを含めまして、これから単に駅付近でなしに、簡易旅館その他についても実態を調べ、いろいろと施策の手を伸ばしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
○山田(太)分科員 警察の段階では、人員をふやすとかあるいは方法をもっと緻密にしていくとか、チェックの方法を考えるとか、そういう点について、現状のところは要望を申し上げるほかないかとも思いますが、そこで、次は労働省のほうにお伺いしたいと思います。
 労働省としては、先ほども一言申し上げましたが、減反あるいは休耕、あるいは米の値段の据え置き等々から、より一そう出かせぎの人数がふえてくることは当然予想されております。その予想されておる問題はともかくとして、現在の出かせぎ労務者、これの状況把握はどのようにしてつかまえておりますか、その点についてまずお伺いしておきたいと思います。
○保科説明員 出かせぎ労働者の実態でございますが、諸種の統計から推計しております。現在のところ、出かせぎに出られる方は年間約六十万人ぐらいではないかというような推計をいたしております。そのうち農林省の農家就業動向調査によります農閑期出かせぎという方が、毎年約二十二、三万というような統計になっております。
 それから、最近の出かせぎに出られる方の傾向でございますが、従来建設業に出られる方が多かったのでございますが、大体就労先の産業は、現在でも建設業が半数以上でございますが、最近の傾向といたしまして、製造業に出かせぎに出られる方がふえてまいりました。
 以上のような概況でございます。
○山田(太)分科員 そこで、出かせぎ労務者が賃金の不払いによって帰れなくなったり、あるいは仕事中にけがをしてもその補償を見てもらえなかったり、問題が随所に起きておるわけです。これはあなたのほうでも、出かせぎ労務者に対しての追跡調査ということをなさったことがあるかどうか、一言聞いておきたいと思います。
○保科説明員 基準局の監督課長が来ておりますので、監督課長から……。
○大坪説明員 ただいま御質問のございました追跡調査につきましては、実は私どものほうでできる限りの努力をいたしておりますが、十分実績をつかめておらない現状でございます。ただ、出かせぎ労働者に対しまして賃金不払いがどういう状態になっておるかというような点につきましては、賃金不払いは、労働者及びその家族に非常に影響が強うございますので、行政の最重点といたしまして、そういうことのないように指導強化をいたしてまいっております。
 出かせぎ労働者は建設業に非常にたくさん就労されておりますが、建設業は下請でございますとか孫請でございますとか、非常に重層的な関係が多うございまして、建設業にお入りになる出かせぎ労働者の方々が郷里を出られますときに、まず、どういう労働関係にお入りになるか、あるいはどういう労働条件で自分が就職されるのかという点に十分な知識をお持ちにならないままで東京にお見えになるというような点もございまして、場合によりますと、賃金の不払いがありましても、その賃金不払いがその御本人に一体幾らあったのかという点すらもはっきりいたさないという点もございます。したがいまして、まず郷里をお出になりますときに、私どもの出先でございます労働基準監督機関におきまして、雇い入れ通知書というようなものを必ず本人に渡すようにする。それから賃金支払い明細書をちゃんと渡すようにする。あるいは就業規則をどこでもつくっておりますけれども、これをよく労働者に知らせて、労働条件をはっきりさせるようにするというような指導をずっと続けてまいっておりまして、実績は相当あがってきておると存じております。
 また昭和四十年十月からは、賃金の不払い状況をこちらで十分調査をいたしました上で、公共工事の発注の場合の入札参加資格審査の要素に加えることにいたしております。つまり、私ども労働省または都道府県の労働基準局長から、建設省または都道府県の建設主管部局を通じまして、各種公共工事発注機関に対して通報制度というものをつくりまして、賃金不払いが発生いたしましたような事業場はもちろん、賃金不払いについて実質的に責任のある元請事業所、そういったものにつきましても通報いたしまして、工事発注の場合に悪質なものは指名から除くというような措置をしていただくようになっております。
 それから一部の府県におきましては、県等が中に立たれて御努力を重ねられまして、建設業関係者が集まりまして、賃金不払いを業界の力でお互いになくすような努力をする、あるいは不払いが発生したときにこれを補償するような制度をつくるという動きがございますので、そういうのを極力援助をいたして、賃金不払いを実質的にもないようにいたすように努力いたしたいと考えております。
○山田(太)分科員 その答弁のようにできておれば問題はないわけです。
 時間があと十分足らずしかありませんので、これは朝日新聞の報道でございますが、東京医科歯科大学の農村厚生医学研究施設、その長である柳沢教授が、五百人の出かせぎ労務者を追跡調査した結果を発表されております。その五百人の追跡調査を発表なさっているその数字を見てみますと、時間がないので数字を簡単に申し上げますが、いまおっしゃったような結果になってないということです。これは最近の報道です。それはまず労災、労働上においての事故で死亡した人が七名、それから負傷者が九名、病気で帰ってきたのが八名、蒸発が一名。
 そうしてもう一つ、私が調査した地元のある部落、四十四世帯の部落でございます。その四十四世帯の部落の中で死亡者――やはりこれは下請の下請の下請のようなところへ行っている人です。補償をもらっていません。死亡一名、それから負傷事故で帰ってきている人が五名、このうち三名が何ら金をもらってないそうです。それから病気になって帰ってきた人が三名、それから蒸発して家庭破壊した家が三世帯であります。四十四世帯の部落です。このようなのは多いほうではあります。しかし、このような四十四世帯の部落でさえも、十二名にわたる事故が出かせぎの結果起きているところもあります。
 またもう一つは、東京出かせぎ援護相談所、これは上野です。そこの調査は、これはもう聞いていらっしゃると思うのですが、六千人の相談があったうち三割の千八百人、三割もの多くの方が、労働条件や賃金をだまされたということによって、転職さがしに再び舞い戻っている。あるいはそのうち賃金をだまされた人を含めて、賃金の不払い等、二〇%の人がその被害を受けている。また、その六千人の相談のうちの三割の千八百人の中にあるものでさえも、やはり蒸発で家庭破壊が百四十人もあります。
 これはまた見方は違うといたしましても、問題点は別の問題点といたしましても、出かせぎ労務者の結果がこのような状況になりつつあるというところです。この問題は、いまおっしゃったような方法では、またいままでやってこられたことでは防ぐことができないという証拠じゃないかということを感じるわけです。この点についてはどうでしょう。
 またこれからより一そう離農なりあるいは出かせぎなりふえていく現状にある方々を、どのようにして保護していくかという点について、もう少し真剣に考えていただかなければならないと思います。
 そこであともう四分しかありませんから私のほうから申し上げます。これに対して、まず出かせぎ労務者の手帳、これは出してはいらっしゃいます。しかし、この中の三割、すなわち六千人のうちの千八百人のうち、この手帳を持ってない人が六割おる。それから、職安からの紹介でない人が六四%おります。いまの御答弁のようなことでは、現状がこうなっているのだということを考えたときに、その答弁はただの答弁にしかすぎないとしかいえないわけです。これをどう防いでいくか。その点についてはこれからの問題でございますが、いまの答弁だけでは満足できない現実の証拠が出てきています。もちろん、あなたをいじめようなんと思って言うのではありませんけれども、こういう現実があるのをどのように対処していこうとする計画があるか、その点を一言聞かしてもらいたいと思います。
○保科説明員 先生御指摘のような問題があること、私もわかっております。したがいまして、出かせぎ労働者対策の基本といたしましては、まず事業主に対しましては、出かせぎ労働者を多く雇う事業主の事業所台帳をつくりまして、安定所のほうでいかなる事業所であるかよく把握するようにいたしまして、安心のできる事業所へ紹介するということを一つの対策にしております。
 それから、出かせぎ労働者に対しましては、できるだけ安定所なり市町村を通して就労するように呼びかけをいたしております。(山田(太)分科員「できるだけでなしに、どうやっていくか」と呼ぶ)それから、出かせぎされる方の出かせぎ労働者台帳というのをつくりまして、就労するときには安定所を通って就労するようにというような呼びかけあるいはパンフレット、それから農村における放送等を通じまして呼びかけを行なっておるところでございます。
 それから、出かせぎ援護相談所の状況も、先生のおっしゃいましたような状況でございますので、そういう問題がございますので、東京、大阪、札幌、名古屋とつくったわけでございますが、新年度は横浜にもつくる計画にしております。安定所でできない、きめのこまかい周辺の相談をやってまいろうというのが相談所の趣旨でございますので、そういうような対策をもっともっと努力して、きめこまかくやって、出かせぎ労働者の保護に対しまして万全を期したいというふうに考えております。
○山田(太)分科員 その点の具体的な措置については、後ほど書類でいただきたいと思います。
 そこで、もう時間が迫ってきましたが、もう二点だけ聞きたいことがあります。先ほどから申し上げておりました、これから農村からの出かせぎが非常にふえてきはしないかという問題です。
 労働省からお見えになっている方は、局長を言うてあったはずですが、一緒にかち合ったかもしれません。そこで、課長さんでは御返事できないかもしれませんが、炭鉱離職者については特別措置法があります。離農者にも特別措置法を考えるべきではないか、その点について一点と、もう一つは、時期は忘れましたが、労働大臣の御答弁の中に、出かせぎ者に対する特別立法をするという答弁をなさっていたことを私、聞いております。それについてのその後の状況はどうなっておるかという点、それからもう一つ――これはよく覚えておいてくださいよ、時間がないから質問だけ先にします。それからもう一つ、これは要望と質問と一緒でございますが、大阪には労働福祉センターが愛隣地区にできております。
    〔登坂主査代理退席、主査着席〕
東京においても、この大阪府における労働福祉センターに類するものをつくる要望があれば、労働省としても十分援助するつもりがあるかどうか、その三点についてお伺いしておきたいと思います。
○大坪説明員 ただいま先生からお尋ねのございました、出かせぎ労働者についての何らかの法律的な規制が必要ではないかというお話でございます。これは昨年の当国会におきまして、前労働大臣であられました原労働大臣が、検討に値するというお答えを申し上げておると記憶いたしております。私どもの大臣も先日、本国会におきまして、検討いたそうというふうなお答えはされておると存じますが、問題が非常に複雑でむずかしゅうございますので、私どもからは直接お答え申し上げるのは非常にむずかしい問題だと思うので、御了承いただきたいと思います。
○山田(太)分科員 きょう、局長をお願いしておいたのですが、また時をあらためて労働大臣あるいは厚生大臣にもお伺いしたいと思いますから、きょうはこれで質問を終わります。
○笹山主査 次は、伊藤惣助丸君。
○伊藤(惣)分科員 法務大臣及び関係省庁の方に伺いたいのですが、東京豊島区にある東京拘置所、通称巣鴨刑務所といわれておりますが、この移転問題について質問いたします。
 御存じのように、あの東京拘置所は――現在新宿副都心とともに豊島副都心といわれておりまして、都市計画においては第二の都心になる。その中心にはこの巣鴨の刑務所のあと地に建つ超高層のビル、これを中心として発展する、このようにいわれております。ところが、この刑務所の移転をめぐりまして、現在いろいろなうわさがあるわけであります。私は、この機会に公式に大臣及び関係各省庁から、今回のこの移転に関する問題について明確に、正確に答弁を承りたい、このように思います。
 まず第一に、東京拘置所の移転計画の概況について簡単に伺いたいと思います。
○伊藤政府委員 御承知のように、現在の東京拘置所は池袋の辺にございますが、戦後巣鴨プリズンというような名前でも呼ばれた時代があるわけでございます。ところで、かねてからこの東京拘置所につきましては、首都圏整備計画の遂行上障害になるということで、移転の要請があったわけでございますが、昭和三十三年に、この拘置所を移転すべきであるという旨の閣議了解がございましたので、当省といたしまして鋭意努力を傾けておったわけでございますが、その間、他にも移転を相当とする施設が出てまいりました。結局巣鴨にございます東京拘置所のほかに、小菅の刑務所、川越少年刑務所、浦和刑務所、旭川刑務所などもあわせて移転を実施しようということになりまして、昭和四十一年度の国庫債務負担行為におきまして、川越市、岡山市、旭川市及び株式会社新都市開発センター、これだけを相手方といたしまして建築交換契約を締結して、実施に移ったわけでございます。
 要するに東京拘置所あと地のうちから、国が東京都に対して公園用地として渡しますものを除きました部分を国が売り払いまして、これを財源としまして新たに小菅に東京拘置所、それから栃木県に下野刑務所、現在黒羽刑務所と読むことになっておりますが、それと旭川刑務所、岡山刑務所、川越少年刑務所、浦和拘置支所、これだけを取得する契約を締結したわけでございます。
 その結果、川越少年刑務所、岡山刑務所、旭川刑務所につきましては、すでに工事が完了して収容が開始されております。それから小菅に新たにできます東京拘置所、それから浦和拘置支所につきましても、現在工事が順調に進んでおります。その間、小菅刑務所の移転先として、一時青梅市所在の地区に移転候補地が選ばれたのでございますが、地元の反対等がございまして、その後移転先の場所が変更になりまして、先ほど申し上げました栃木県黒羽町、ここに適地が発見されまして、そこへ移転することとなりまして、現在計画が進行しておるのがあらましでございます。
○伊藤(惣)分科員 この計画にあたりまして収支予算といいますか、資金計画について簡単に伺いたいわけです。それで、いまも説明にありましたが、最初の契約と、また変更分の契約とあるわけでありますが、そういった点について簡単に説明願いたいと思います。
○伊藤政府委員 この計画の内容を計数的に申し上げますと、国のほうから売り渡します財産が、要するに東京拘置所のあと地の相当部分ということになるわけでございますが、五十三億六千百万円余りということに相なっております。これに対しまして交換で受け取ります財産、先ほど御説明申し上げました財産の評価額を合計いたしましたものが四十七億四百万円余りとなっておりまして、その間の差金が六億五千七百万円余り生じておるわけで、この分につきましては、国が現金で受け取る計算になるわけでございます。
 なお、先ほどお尋ねの中に、当初計画との差についての御指摘がございましたが、当初の計画は、国が渡します財産と受け取ります財産との差額が約一億四千四百万円でございましたが、先ほど申しますように、小菅刑務所の移転先が、東京都青梅地区から栃木県黒羽町に変わりましたことの結果、交換差金が増額した、こういう状況になっておるわけでございます。
○伊藤(惣)分科員 この扱いについては建築交換方式というふうに聞いておりますが、このような扱いをする法的根拠はどこにあるのでしょう。
○伊藤政府委員 本来国が財産を取得いたします場合には、一般予算をもちまして購入するのが一般の姿でございましょうけれども、御承知のように矯正関係の収容施設というようなものを取得いたしますには、巨額の金額を要するわけでございます。そういたしますと、国のいわゆる予算規模、あるいは小さく申しますと法務省の予算規模というようなものから考えまして、非常な困難を生ずるわけでございます。そういう観点から建築交換方式によりまして、こちらが現に保有しております財産を、公共団体その他公共的な事業をいたしますものに売り払いまして、これの見返りとして同種の施設を取得するということをいたしておるわけでございまして、現在では、御承知と思いますが、特定国有財産特別会計において売り払い及び取得をいたしておるわけでございます。
○伊藤(惣)分科員 建築交換方式、こういったことはあまりないんじゃないかと思うわけです。そこでこれが可能であるというならば、今後もこういう方式による払い下げ、あるいはまたそういう方式による扱いがふえるのではないか、こう思います。
 そこで、時間がありませんから、きょうはお聞きするだけにとどめておきたいと思いますので、どんどんお聞きしますから簡潔に答弁願いたいと思うのです。
 この拘置所を六カ所の刑務所に分けて、それぞれそちらを整備しながら移転する、中でも中心となる黒羽刑務所ですか、初めて名前を聞きましたが、そこには大半の拘置所の方々が移転されるよう聞いております。年内完成で、来年から移転の予定だということも伺っております。
 そこで、そのような工事をしたわけでありますが、その随意契約内容、その点について伺いたいと思います。
 さらに、建築交換方式についての法的なものは何もないと考えてよろしいのですか。
○伊藤政府委員 基本的には、建築交換は国有財産法で認められておるわけでございますが、現実には、さらにその具体的な建築交換を対象として規定されております法律として、国の庁舎等の使用調整等に関する特別措置法あるいは特定国有財産整備特別会計法というようなものがございまして、それに基づいていたしておるわけでございます。
 契約をいたします際には、根拠といたしまして御承知の予算決算会計令、予決令というのに従わなければならぬわけでございますが、その予決令九十九条二十一号を見ますと、公共用、公用または公益事業の用に供するために、直接公共団体あるいは事業主体に売り払う場合には随意契約ができるというふうに定められておるわけでございます。これによって本件の場合は随意契約をいたしておるわけであります。
 なお、つけ加えて申しますと、相手方となりましたのは、先ほど申し上げました幾つかの市がございますほかに、株式会社新都市開発センターというのがございますが、これが建設大臣の特許を得た都市計画事業の主体でございますので、これに対して予決令の九十九条二十一号を適用して随意契約をいたした、こういうことになっておるわけでございます。
○伊藤(惣)分科員 簡単でけっこうですから、たとえば下野の刑務所はどこの会社が幾らで随意契約というように、六カ所の契約会社と金額と、担当した刑務所をお願いいたします。
○伊藤政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、国といたしましては、契約の内容が、でき上がった建物を取得する、こちらから出します財産と交換にでき上がった建物を取得するという契約でございますから、国と建設工事業者との間には、契約はございません。先ほど申し上げました株式会社新都市開発センターが、それぞれの会社と契約しておるわけでございます。
 一例を申し上げますと、小菅に現在つくっております東京拘置所につきましては鹿島建設、浦和拘置所につきましては大林組といったところが、株式会社新都市開発センターと契約を結んで施工しておるようでございます。
○伊藤(惣)分科員 その随意契約の内容について国が直接関係はありませんけれども、株式会社新都市開発センターの資料をいただきたいと思いますが、その点についてどうでしょうか。
○伊藤政府委員 新都市開発センターと私ども法務省との間には、監督関係その他がございませんので、権限に基づいて資料を出してもらいたいということはできないと思いますが、いわば密接な関係にある関係先でございますから、御要望の趣旨に沿って努力してみたいと思います。
○伊藤(惣)分科員 だんだんと伺っていきますが、要するに、金額にしますと数百億円というお金が動いているわけであります。また最終的に動くわけであります。そのようなものがすべて随意契約という形において、さらにはまた、株式会社新都市開発センターという一つの営利団体の会社において行なわれるということは、一般から見ますと、どうしても何かある、こう見る人が多いわけであります。現に、このことは地元の区議会、特に革新系の方々から盛んに事務当局、あるいは副都心委員会においても話題になっているわけであります。したがって私は、この際、そういったことの疑義を晴らすためにも積極的にそういったことについて資料を要求し、また明確な答弁、そして前向きな姿勢で対処していただきたい、こう御希望申し上げます。
 次に申し上げたいことは、あの約二万坪にわたる土地の評価でございますが、非常に安かったという話もございます。この土地評価の基準は、どのようにして割り出したのか、その点について伺いたいと思います。
○伊藤政府委員 まずもって、ただいま御指摘いただきましたように、こういった建築交換は随意契約でいたしますだけに、きわめて慎重に、国に対し、住民に対し、国民に対し損害をかけないようにやらなければならぬということは、私ども重重承知をいたしておりまして、常々自重自戒して事務を進めておるわけでございますが、なおそういうようなうわさの立ちますようなことがあれば、きわめて残念でございまして、今後とも十分慎重にいたしていきたいと思っておるわけでございます。
 さて、ただいまお尋ねの評価でございますが、これはいわゆるわが国で有名な、かつきわめて信頼度が高いとされております、たとえば日本不動産研究所というようなものを含めました数個の信頼の置ける鑑定業者に依頼をいたしまして価額の鑑定をいたさせまして、それを大蔵省の財務局のほうへお出しをいたしまして、財務局のほうにおきましてそれらをごらんいただいて、あるいは足らざるところは向こうでももちろん調査になったと思うのでございますが、最終的に評価額が決定されております。
○伊藤(惣)分科員 この土地評価の基準の資料ですね、これも提出していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
○伊藤政府委員 この評価関係の資料は、大蔵省の御所管になっておりますので、私どもで連絡をいたしてみることといたします。
○伊藤(惣)分科員 基本的なことを伺いたいのですが、国有財産の性格とその取り扱いについて、すなわち管理、処分の基本方針について伺いたいと思います。大蔵省の方。ますが、御質問が処分に関する御質問ではなかろうかと思います。で、処分についてお答えいたしますと、私どもが持っております普通財産の処分の基本的な考え方は、物納その他によりまして、その他財産につきましてすでに占有している方たちがいるというようなものにつきましてはそういう人たちに処分いたす。それからそのような状態にない完全なるさら地、未利用の物件につきまして、できるだけ公共性の強い用途、それから国が直接使います公用途、そのような用途に充てていきますことを基本的な方針といたしております。
○伊藤(惣)分科員 まあ国有財産というものは本来、かつて昨日の分科会においても福田大蔵大臣が答弁しておりますように、原則としては払い下げしない。しかしながら、占有する者があった場合には公共性ということをよく考えた上で、また公共性を前提にそのあと地利用をさせる、こういう答弁を私は聞いております。
 そこで伺いたいわけでありますが、このあと地利用に、また移転計画の中で民間資本を導入した理由、国有財産のただいま申し上げました本来の性格からいっても、当然公共企業体、あるいはまたそれに準ずる公益法人というところで扱わせるということが、本来の精神ではないかと思うわけであります。その点について伺いたいわけです。
○小林国務大臣 御指摘のとおり国有財産は法務省関係におきましても原則として公共団体にこれを譲り渡す、こういう方針をとっておりますが、たまたま東京拘置所の問題につきましては、東京都と十分折衝をいたしたのでありますが、東京都が、かえ地が発見することができない、こういうことで、やむを得ずこういう措置をとった。しかして、いまお話しの新都市開発センターというのから、東京都を通じてそういうことをいたしたいということで、東京都からのお話でこれを進めたということでありますし、なお、この事業のあと地は、公共的用途に使用すべしという強い条件を付しておるのでありまして、また、この団体の構成者は、日本でいえばきわめて信用の高い人たちだけでこれを運営、構成しておるということでありまするし、またこの会社自身が、建設大臣から都市計画事業の事業者としての認定を受けておる。また運輸大臣からは、バスターミナル等の免許を受けておる。しかして、そのあと地は、一部はもうこれは公園用地にいたしたのでありまするが、その他の土地も、いまの公共的なものにほとんど使われることに相なっておりまして、御承知のようにあるいは児童会館だとか各種のこういう文化施設もつくらなければならぬ、こういうことでございます。
 それで、これはもう法務当局としては当然、とにかく形は株式会社であるということでありますから、評価あるいはその間の交渉等につきましても、いささかも疑惑を招くことのないように十分な配意をいたしたつもりでございます。原則論としては、お話のとおり相手は公共団体でなければやらぬということにつとめておりまするが、たまたま東京都にはそういうふうな運びにいま私が申したようなことでいかなかったと、こういう例外的措置であったというふうに御了承願います。
○伊藤(惣)分科員 大臣から丁寧な答弁承ったわけでありますが、そこで私が質問したい点は、東京都にやったのだけれども、東京都ではとうてい応じられない、したがって新都市開発センターに依頼した。しかし、その前に一般的に考えられることは、それではそれだけのものを、公共性の強いものをつくるにしても、幾らでも政府の関係する団体があるわけであります。たとえば住宅公団とか、公共性の強い団体があるわけであります。だから、そういった点について、たとえば照会したのかどうか。
 だんだんと聞いてまいりますけれども、この新都市開発センターのメンバーは、財界でも非常に有力な方々が参加しております。また、元大蔵省の方も、あるいはまた元衆議院事務総長の方も関係しておるというような面から、またいろんな疑義がわくわけであります。そういう点いろいろございますけれども、時間がありませんから、まずその新都市開発センターのことについて質問したいと思います。
 この新都市開発センターの役員と実態。役員の書類はいただきました。実態も資料として私持っております。しかし、これを設立してから何年かの間に社長がかわり、あるいはまた役員が交代されているようであります。
 そこで、伺いたいわけですが、まず発起人の名前、それからこの契約書についても最初の当分の契約には、まず法務大臣官房経理部営繕課長田村秀策、この方が甲となり、また契約担当官関東財務局長山本靖、この方が乙になり、そして株式会社新都市開発センターの社長として中村建城さんですか、この方がなっているわけであります。
 ところが、変更分を見ますと、この開発センターの社長がかわっているわけですね。そういった点について、まず発起人の全員の名前、それから前歴、そして当初から交代した役員の方々の名前、前歴、その点について簡単に伺います。
○伊藤政府委員 発起人の名前を申し上げます。
 お名前の読み方は必ずしも正確ではないかもしれませんが、お許しをいただきます。
 発起人の代表者が井深大、職業がソニー株式会社の社長、以下発起人とされまして安西正夫、昭和電工株式会社社長。石川六郎、鹿島建設株式会社副社長。今里広記、日本精工株式会社社長。大池真、池袋駐車場。小林中、アラビア石油株式会社社長。今日出海、現在文化庁長官をしておられます。清水雅、株式会社東宝社長。堤清二、株式会社西武百貨店社長。永野重雄、富士製鉄株式会社社長。中村梅吉、衆議院議員。水野成夫、株式会社産経新聞社相談役。以上十二名が発起人でございます。
 現在の役員は、代表取締役社長が大池真、先ほど出てまいりました。常務取締役桑原大行、常務取締役望月鷹雄、取締役安部寛助、以下取締役でございますが、安西正夫、井深大、今里広記、鹿喰清一、田中甲二郎、堤清二、徳永久次、馬渕威雄、丸地安次、水野成夫、渡辺武次郎、以下監査役副島勝、林、整相談役小林中となっております。
 発起人から設立当時の取締役、それから現在のただいまご説明申し上げましたメンバーに移ります過程は、先ほど申し上げました中村建城氏が社長を退いておられるほかに若干あると思いますが、ただいま直ちに申し上げますことも、資料が不完全なまま申し上げてもあれでございますので、必要があれば後に資料としてお出ししたいと思います。
○伊藤(惣)分科員 資料を要求いたします。
 それで、もう持ち時間が来てしまいましたのでまとめて申し上げますので、この点もご答弁、また資料の提出をお願いしたいと思います。
 新都市開発センターの設立の趣旨及びその事業内容について、これも資料としてお願いしたいと思います。この中にずいぶんと聞きたいことがございます。
 それから公共性が強い、また公共的なものをつくるということを大臣からもいま答弁がございましたが、バスターミナルあるいはまたその大ざっぱな計画については私も持っているわけでありますけれども、今回の特別国会においても、佐藤総理がその施政方針演説の中で、七〇年代は内政の年だ、特に社会開発がおくれている、社会開発、社会福祉の充実をはかる、こういう面から、社会福祉ということが具体的にその施政方針演説の中にも含まれております。そういう点からいっても、私はこの公共性の建物の中に当然そのような公共的な施設があってしかるべきだ。ところが新都市センターの中には、趣意書にはそういうことがあったとしても、事業内容には全くない。
 さらにまた地域住民の立場から考えますならば、あの辺一体は戦前戦後を通じて、私もあの近くに住んでおりますので、いつもあの刑務所からだれかが逃げてサイレンが鳴るたびに、戦争が終わってまでも私ども地域住民はいやな思いもし、また暑いときでもかぎをかけて恐怖におびえたことを私も体験しております。そういう観点からいってもあの土地が開放され、またあの土地を中心として副都心ができるということについては都民そして地域民がきわめて喜んでいるわけでありますが、こういうものができても現在のままできるならば、全然住民には何の還元もない。社会福祉施設という一つのことを考えてみましても何もない。
 たとえば公園ができるということでありますが、地元住民はかつては五千坪の公園を要望したことがあります。それもやっと、二千坪になった。しかもそれは超高層の、三十六階になるか、あるいは六十階になるかわかりませんが、そのビルが建つためにはそのくらいな空地を確保しなければならないことは当然のことであって、その超高層の広場ともいうような、そんなための公園というような形ではどうにもならないと思います。ましてまた、超高層ビルができることによって、最近いろいろ話題になっております突風の被害だとか、あるいはまた電波の陰になってテレビの難視聴という問題や、いろいろな問題が起きてくるわけであります。このままいくならば、必ずや地元の人たち、また地元の当局、さらにまた副都心委員会においてはたいへんな問題に発展するのではないか、そういう点を私は危惧しております。
 そういう意味において、時間が参りましたので、最後に資料の要求を要望いたしましたけれども、大臣からこの問題に対してどのような態度で臨まれるのか。まだまだ建設までにはだいぶ期間がかかるわけでございますけれども、この問題についての大臣の所信を伺い、さらに会計課長の資料要求に対する明確な態度と、その資料要求に対して出せるのか出せないのか、そのことを明確に伺って、終りたいと思います。
○小林国務大臣 お話の向きはきわめてごもっともでございます。いまいろいろな体育館とか、修学旅行会館とか、あるいは各種展示場とか、集会所とか、かような地元住民に恩恵のわたるような施設をすることについても、私どもはこれからも十分契約の内容に従って監督と申すか、そういうことを実現できるようにひとつ配意をいたしたい、かように考えます。
○伊藤政府委員 御要求のございました資料のうち、私ども限りで決定できるものにつきましてはお出しするようにいたします。それ以外のものについては、それぞれの責任あるところと話し合いをしてみたいと思います。
○伊藤(惣)分科員 終わります。
○笹山主査 この際暫時休憩いたします。
   午後四時三十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後五時四十九分開議
○笹山主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山中吾郎君。
○山中(吾)分科員 まず第一に、BBSのことでお聞きいたしたいと思いますが、BBS、復帰運動は、その話をしますと、それはどういう運動かと聞く人があって、たいていの者はまだBBS運動というのは御存じない人が多いのであります。国会議員の中にもあまり知っている人がないようなんでありますが、私は、しかし、このBBS運動は、少年の社会復帰のために非常に重要な問題であると考えておるので、特にそれを中心にしてお聞きいたしたいと思うのであります。
 まず、現在の全国のBBSの状況といいますか、ごく簡明でありますから局長からお聞きしたいと思うのです。
○鹽野政府委員 BBSについてのお尋ねでございますが、BBSはただいま仰せのとおり、非行少年に対する友だち活動を通じて本人の社会復帰をはかるという趣旨の運動でございます。
 御承知のとおり、この運動は、今世紀の初めにアメリカで始まった運動でございまして、日本におきましては、戦後、昭和二十二年ごろに京都の学生の中から運動が起こりまして、漸次全国的な運動になってまいったということでございます。だんだん会員が増加いたしまして、現在全国の会員は約一万名でございます。もう少し正確に申しますと、九千七百名ぐらいだと思います。
 組織といたしまして、全国が五百二十五の地区に分かれておりまして、地区のBBS会というものを組織しております。それが県単位に集まりまして県の連盟が組織され、さらに全国を八ブロックに分けまして地方連盟が組織され、さらにそれが集まりまして日本BBS連盟という組織ができているような状況でございます。
○山中(吾)分科員 四十五年度の予算にBBSに関連する予算が若干計上されておると聞いておるのですが、その計上されたごくわずかな予算の内容を御説明していただきたい。
○鹽野政府委員 御指摘のとおり、四十五年度の予算にBBS関係の予算が若干計上されているわけでございます。この予算は、BBS会員の研修の際に、従来から保護観察所におきましてこれに協力いたしているわけでございますが、その研修の際に保護観察官が研修会に出席する旅費というものが若干入ったということでございます。
○山中(吾)分科員 私の手元にある資料には、BBS百十一団体に対し保護観察所職員が指導するため出張する旅費として十八万六千円、現在の国の予算からいったら、スズメの涙の何分の一ぐらいなわけですが、これは一番最初に法務省で大蔵省に要求された最初の要求額とどういう違いがあるのです。
○鹽野政府委員 ただいま申し上げましたとおり、BBS会員の研修に際しまして、保護観察所の職員が講師なりあるいはリーダーというようなことで講習に参加するということを従来からやってきたわけでございますが、これは従来は観察所の手持ちの予算でその方面に努力をしていたわけでございます。しかしながら、BBS活動は、御指摘のとおり、きわめて重要な活発な運動になってまいっておりますので、法務省といたしましても、漸次予算的な措置を講じてまいりたいということで、今回初めて予算に計上されたものでございまして、当初法務省といたしましては、この保護観察官がBBS会員の研修に参加するために実は二百万円程度の旅費を用意いたしたいというふうに考えていたわけでございますが、何ぶんにも初めての予算でございますので、いま御指摘のような金額が四十五年度の予算としてまず頭を出したというような状況にあるわけでございます。
○山中(吾)分科員 当初予算の要求が二百四十八万八千円と私の資料にあるのですが、そうでしょう、二百万程度というのはその意味ですね。――これは全部旅費のようでありますけれども、私は岩手県のBBSの会長を創設当時から十数年やって、若い人のうしろだてになってきたのですが、そういう体験からいいまして、このBBS運動というのは、保護司の指導のもとに少年院その他から出てきた少年を社会復帰させる友だち運動なのでありまして、私は非常に有効な、純粋な運動であると思うので、世間は知らないけれども、このBBS運動をずいぶんうしろだてになって応援してきたわけなんです。そういう体験からいって、あまりにも国のほうでは認識が不足であるということを痛切に実は感じておるわけなんです。
 このBBSの諸君が年二回、三回、県単位で一定の場所、あるいは学校の教室を借りるとかあるいはお寺の一室を借りるかして、県下のBBS会員を集めて、友だち活動についての学習会を、みな旅費を分担していつもやっている。その場合に、それについて必要な資金カンパなどは絶えず私たちがしてあげておるわけですが、そういうことを考えてみたときに、確かにここには保護観察所の観察官ですか、あるいは所長が一名あるいは二名来て、最初に訓示的な一つの話は一時間ほどされる習慣があるようであります。したがって、そういう意味の旅費だと思うのでありますが、このBBS諸君が一堂に会して、そして一晩泊まりあるいは二晩泊まりで研修会をするについての、その研修費というものは少しもここに要求もされていない、載ってもいない。これはどうも私は法務省の認識不足だと思うのですが、それはどうでしょう。
○鹽野政府委員 ただいま御指摘のとおりの予算の組み方になっているわけでございますが、BBSの会員の研修は、ただいま仰せように非常に活発に行なわれております。私ども全国の状況を統計的に見ましても、全国にBBSの単位が五百二十五地区あるわけでございますが、全国平均で見ますと、各地区で一年間に二、三回の研修会が行なわれているような状況でございます。さらに県単位でも毎年三回ぐらい行なわれている。それから、私どもがよく承知しているところでは、中央研修と申しますか、全国の各県のBBS会員が一名ずつ中央に集まりまして、一堂に会して研修を受けるというような事業も年に二回ほど行なわれているわけでございます。ただ、私ども考えておりますのは、BBS運動は御承知のとおりいわゆるボランティア運動でございまして、非行少年の更生のために非常に役立っておりますけれども、その運動自体はあくまでボランティアとして成長していくということが望ましいのではなかろうかというふうに考えておりますので、研修自体につきましては、やはりそのボランティア活動の一環として行なっていただく、国の側、つまり観察所側といたしましては、これに講師なり何なりとして出席いたしまして、その研修に協力するというような形が望ましいのではないかということで、ただいまのような考え方で予算編成がなされている次第でございます。
○山中(吾)分科員 ボランティア運動であることはよくわかるのですが、それは全国のいろいろの種類の少年団体、青年運動、少年運動はみなそうなんです。それはしかし、文部省関係を見ましても、いわゆる共催の形とかいろいろの形において助成をしておるということは、これは常識だと思うのですよ。しかし、ボランティアということが理由で、法務省がその研修事業費として――実際に出すときには共催でやればいいのですから、そういうことがボランティアの制度がなくなるのではなくて、この青年諸君が集まって学習をするときに、それについて、事業の補助というのですか、あるいは保護観察所とBBS共催というかっこうとかというぐらいにおいて出されることが常識じゃないのですか。局長は、ボランティアだからということで、ちょっと金を出したから干渉するとか支配するとかいう問題じゃなくて、BBS諸君が自腹を切って――みな職業を持っておる、あるいは大学の学生諸君であり、あるいはクリスチャンの純真な青年もあり少年もあるわけですが、そういうのもについて、ボランティアだから研修、学習の予算は出さぬほうがいいという思想はちょっとおかしい、大体常識に反すると思うのです。各省の、たとえば総理府の青少年対策本部ですか、あるいは文部省、全部お調べになったらわかる。最初にお出しになるのに、観察所の職員の旅費だけを要求されるというのは、ちょっとあまりにも役人本位的ではないかと私は思うのですが、その意味において局長の思想はちょっと変えてもらわなければ困る。これは永久にこのままになるのでしょう。結局BBSの研修のための旅費という項目で保護観察所の職員の旅費を多くとるだけの思想しかない。私は、法務省の事業のうちで、上から下に向かって保護司か何かのように最も権力的なイメージを与える法務省でありますから、そういう法務省のイメージの中で、いわゆるBBS、ビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズ・ムーブメントという、上下の関係なしで、友愛に基づいてその少年を社会復帰せしめるという運動は、たった一つ人間的な運動であり、法務省としては最も大事に育てるべき問題じゃないか。そういう意味において、いま局長の御答弁にはそういう思想が一つもないように思うのですが、いかがでしょう。
○鹽野政府委員 今回の予算に観察官の旅費だけが計上されているということでいろいろ御指摘をいただきましたが、BBS活動の研修に協力するという理由で観察官の旅費だけを増加しようとしたということではないのでございまして、やはりBBS活動の重要性、それに伴う会員の研修の重要性ということを認識いたしまして、役所の側からもこれに協力していきたいということで、いろいろ検討を進めまして、まずことし初めての関係でございますので、かような形で予算の上に芽を出したということでございまして、先生御指摘のとおり、BBS活動というものは、私どもの役所から見ましても、きわめて重要な活動でございますので、この育成ないし研修につきましては、私どもといたしましてもさらに努力をしてまいりたいというふうに考えてはおります。
○山中(吾)分科員 考えておられるということは、これはもう本年度の予算はこれで追加要求されることはできないと思いますから、運営については、やはりBBSの研修会には何らかの研修に必要な事業費を捻出してやる運営上の考慮が局長としては考えられるという意味なのか、来年においてはこの研修費についてそういう思想のもとに予算要求されるという意味か、二つお持ちになっておるのか、いま一つ確認しておきたいと思うのです。
○鹽野政府委員 まず予算の実行の面でございますが、従来もこの名目で予算は入っていないのでございますけれども、観察所としては、職員を派遣するなりなんなり、自分の手の届く限りの努力はしてきたと思うのでございますが、そういう意味で本年につきましても、さらに実行の面において努力を重ねてまいりたいと思います。
 それから、将来の予算の問題は、御趣旨はよく私も理解することができておりますので、さらに検討させていただきたいと思います。
○山中(吾)分科員 私の手元に、これは現在岩手県BBSの会長ですが、県立図書館長を兼ねて、これは私のあとを引き受けてBBS諸君の指導をしておる村松史郎君から手紙が来ておるのですが、「BBS運動で必要な経費は会員の研修のための経費をほしいものです。これにはBBS直接はだめだと思いますので、観察所が県B連と共催の形でBBS運動を盛んにするための研修なり、講習会なりを開く形でその諸経費を観察所がもつようにするなどが考えられると思います。」いわゆる講習会、研修会を共催の形という姿で、これはボランティアの性格をなくさないで、そして観察所の専門家が行って講習の講師になるわけですから、そういう形が望ましいし、「年に二回か三回開くように」してほしい、「資料作制費補助、できれば保護少年一人に対して月いくらという」算出の基礎で活動費などが出れば非常に有効に活動ができるということを書いておる。これは実態に合っていると思うのです。
 私は、県の教育長をしておるときから、このBBSを実はずっと見てきておるので、これくらい純粋な運動はないようですね。そこで、保護観察所がこの辺にもう少し力を入れる必要があるのだ。全国的にだんだんと何か地についてきたように思うのですけれども、予算面において法務省が少しも手当てをされていない。その理由はあなたの思想だということがわかった。ボランティアの問題だからしないほうがいいのだ。しかし、この諸君は少しも金のない青年諸君であって、県下から集まるときに、もうこれはたいへんなんです、金を集めるのには。そういう意味において、私は、次の来年の要求にはぜひ、局長と、これは大臣が来たら念を押したいと思うのですが、もう少し努力をしてもらいたいと思うので提案をしておきたいと思いますけれども、四十四年一月一日現在のBBS会員は全国で九千七百十九人、協力件数が千八百二件、地区回数が五百二十五カ所というふうになっておりますけれども、かりに会員数を九千七百十九人、まず一万人としますと、一人百円の研修費を計上してみても九十七万円なんです。ごく、スズメの涙ほど出しても、九千七百十九人という全国のBBS会員に、少年院から出てきた子供たちを友だち活動で純粋な運動をするこの諸君に対して、一人当たりの計算で年百円とう予算を計上しても九十七万円、ことしのあなた方の予算は十八万六千円なんです。これは観察所の職員の旅費で、何に使うか、ほとんどどうにもならないものだと思いますが、こういう学習のための一人わずかに百円、あなた方のたばこ代、年に一箱、それで九十七万の予算要求というものはここに出てくるのだ。あるいは不良少年を友だち活動として担当する、一件千円と見ても、私はこれを見ますと、千八百件の件数からいったら百八十万という一つの予算の算出の基礎が出てくる。これくらいのことは何兆円という国の予算の中で一体計上できないはずないじゃないですか。これさえも何とかというお考えが少しも法務省にないとすれば、まことに遺憾である。現実のBBSの純粋な青年諸君の活動というものを御存じないからだ。そして全国のBBS大会のときは法務大臣が式辞を述べる。全国の組織ばかり考える。いまごろ組織を固めちゃいけませんよ。各県ごとにもっと自主活動をして、下からそういう純粋な青年運動を盛ってくる、そういうことをされるということがいま何よりも大事なときなんです。いま利が顕微鏡で見てでなければわからぬような算出の基礎をちょっと出してみても、私は百万や二百万という――六兆円という膨大な予算の中で、こういう自腹を切らしてまでやらすということをなくする一つの算出の基礎が出るはずなんです。法務省はこういうことをどうして考えられないのですか。要求されて削られておるなら、大蔵省の主計官に私は話しするが、最初から出していない。言いようがない。これを、こういう一つの提案も含んで、もう一度来年度の予算のことも考えなければならぬと思うので、局長に御意見を聞いておきたい。
○鹽野政府委員 御趣旨はたいへんよく理解いたしました。よくわかりました。十分に検討させていただきたいと思います。
○山中(吾)分科員 大蔵省の主計官おられますね。ちょっとあなたの御意見を聞いておきたい。
○金光説明員 法務省の具体的な御要求に基づいて検討させていただきたいと思います。
○山中(吾)分科員 主計官も御要望に応じてと言っておりますから、今度わかられたと思う。こんな百万や二百万、そういうことを来年度の予算に期待いたしたいと思うのです。
 なお、この機会に認識を深めるために申し上げておきますが、このBBSに参加する諸君というのは非常に明朗濶達でして、そして不良化した少年諸君を導くというための会合だから、与えるという姿勢があるものですから、この青年諸君は、自分自身の人間形成に非常に明るいグループという雰囲気をつくっておるので、ここに入る青年諸君は、現在一番退廃的な空気の中の青年諸君の世相といいますか、あるいはいろいろの形骸化された青年グループの中で、みずから人間をつくる団体として非常に大きい意味がある。不良化した子供復帰をさせるという機能でなくて、そういう子供を復帰せしめるという、与える姿勢を持っておる中のグループ自身が人間的に非常に育つ。そういう意味において重要な青年運動であるから、これがずっと全国的に大きい運動になるならば、日本の国における一番いい青年運動になる。暗い少年を対象にするからそのグループが暗いかというと、そうじゃない。最も明るい。暗い少年を導くためのグループであるから、その研修会などは非常に明るいグループ、青年団になっておるということをつけ加えて、私は来年度の予算期までに大きい期待をしながら見ていきたいと思います。忘れないようにしてください。大体局長も主計官も認識されたので、くどく申し上げません。大臣が来ないので、来たときに最後に大臣に意見を聞いて終わりたいと思います。
 次に、時間がありますからお聞きしたいのですが、刑事局長ですか、少年法の改正で十八歳に年齢を下げる下げないという論議がいま一つの政治課題になっておるようであります。裁判所のほうにおいては現状維持の説であり、法務省のほうでは十八歳にすべきだ、こういうふうに私は聞いておるのですが、間違いありませんか。
○辻政府委員 お答えいたします。
 ただいま法務省におきまして少年法の改正の作業をいたしておりますが、法務省の考え方は、少年の年齢を十八歳に下げるというのではございませんで、いろいろ考え方がございますけれども、一つの考え方は、現在二十歳以下が少年ということになっておりますが、このうちで十八歳から上を、二十三歳未満というところの年齢層をとらえまして、これを一つの青年層としてとらえるという考え方と、それから依然として上限は二十歳でございますが、そのうちで十八歳、十九歳を青年としてとらえる、この二つの考え方を中心に検討をいたしておるわけでございまして、単純に少年の年齢を現行の二十歳から十八歳に下げるという考え方はとっておりません。
○山中(吾)分科員 私は、戦後の豊かな生活の中で、生物的成熟という点からいくと、もう十八歳前後が成人ボーダーラインであって、これを中心に検討することはそう間違いないとは思っているわけです。ただ、生物的成熟と、人間形成、人格形成の問題は教育の問題であろう。また英国あたりが十八歳で選挙権を与えるという一つの動きもあり、さらにまた大学の学生諸君の地位の問題も、大体十八歳から二十五、六歳の学生諸君が対象で市民権その他の論議が出ておる時代に、やはり十八歳というものについて大いに論議すべきであるということは私は適当な問題であろうと思うのです。ただ、そういうときに、一方に国が国民に対する教育的責任を十五歳で打ち切って、義務教育は十五歳まで、そうして民法上あるいは刑法上の一人前は二十歳。十五歳から二十歳の間は国の教育責任を放棄して無能力にしておいて、そして二十歳以上は成人だ。そういうふうなところに現在の年齢制度が非常にアンバランスである。また労働基準法で十六歳は就職適齢として雇用契約を結べば一人前にされる。給与が高ければ課税対象になるというふうなことも含んで、社会制度としてあるいは国家制度としての年齢制度に非常に不合理を感ずる。したがって、義務教育の終了年齢あるいは教育年齢、あるいは就労年齢あるいは民法上の成人年齢、あるいは刑法上の、皆さんの問題のいわゆる完全刑事責任年齢といいますか、そういうものをやはり総合的に検討すべき段階に来ているのではないか。もしそれを具体的に爼上にのせられるならば、裁判所と法務省だけがかれこれ論議をするのでなくて、文部大臣も入り、あるいは労働大臣も入り、労働省、文部省、法務省、裁判所等を含んで、この問題を総合的に皆さんが検討されて、そしてもし国会に審議を求められる場合には出してもらいたい。ただ裁判所と法務省の問題ではないと私は確信をするわけなんです。現在、文部省関係でいえば八〇%、東京都においては九〇%も高等学校卒業、その高等学校のもっと充実した教育のあり方まで検討してい付けば、十八歳で十分に成人として責任と自由を与える人間形成ができるのであるということも含んで、皆さんがこういう問題を論議するときに着眼してもらう必要があるということを要望しておきたいと思います。
 法務大臣がおいでになりましたから、最後に、あなたの御意見を聞いて終わりにいたします。
 BBS運動について、いま局長と大蔵省の主計官にお聞きしておった。BBS、御存じでしょうね。たいていはお知りにならない場合があると思うので申し上げたのですが、本年度の予算に、保護観察所の職員のBBSの指導旅費として十八万計上されておるだけなんです。現実にこのBBS運動というのは、少年院その他から社会復帰する少年に対する非常に有効な運動であるので、年二回、三回、各県ごとに県下の会員を集めて研修会をしておりますから、少なくともその研修事業について、BBSと保護観察所の共催その他の姿で、自腹を切って集まる必要のないように、学習会ができるような予算の計上をぜひしてもらいたい。これはもう来年度予算の問題でありますが、そういう意味において局長も努力し、主計官も私とのやりとりを聞いて大体理解をされたと私は見たのであります。法務大臣にもその点について、来年また在職されるかどうかは別にして、そういう思想が次の大臣にも流れるように、大臣の御意見を聞いて私の質問は終わりたいと思うのです。おわかりにならなければ補足説明いたします。
○小林国務大臣 ただいまのお話は、私は非常にごもっともと存じます。保護司の職務、職責を補完する意味におきましても、BBSの機能というものは非常に大事なものだと私は思います。お話しのように、一部の旅費だけ計上いたしましたが、これはボーイスカウト等にも国からある程度助成をしておる、こういうあれもありますし、保護司のいまの補完作用として私は非常に大事なことだと思うから、お話しのような予算については、ひとつ十分配慮をいたしたい、かように考えております。ただ、これはやはり民間の善意の組織でありますから、役所がこれに介入するとかいうようなことは厳に慎まなければならぬと思いますが、そういうことも考慮いたしまして、ある程度いまの研修費の助成をするということは、私も必要だと考えております。
○山中(吾)分科員 いま法務大臣がボーイスカウトやガールスカウトの例を出されたのですが、ボーイスカウト、ガールスカウトというものについてはいろいろの援助をする口がありまして、一番何もないのはBBSなんですよ。だから、助成されることがボランティア運動の本質をそぐのでなくて、学習会、研修会というものに対する助成ですから、その点は御心配なく、ボランティア運動であるから遠慮したほうがいいという思想は、御心配にならなくてもいいと思うので、私は申し上げたのです。御理解をいただいてひとつ努力賄いたいと思います。
 なお、保護司のことでありますが、保護司の活動についても私は承知はいたしておるのですが、たいてい六十歳、七十歳の老人の方々が非常に多いと思うのです。現在の少年諸君にはどうも断絶があり過ぎて、なかなか機能を果たすことができない状況になっておると思うのですが、保護司の選考はどういう基準になっておりますか。これは局長にお聞きします。
○鹽野政府委員 保護司の選考でありますが、保護司の選考は、手続を簡単に申し上げますと、まず保護観察所長が候補者を推薦いたしまして、各観察所ごとに保護司選考会という会がございますので、そこで選考を行ないまして、選考を通過した者について大臣が保護司を委嘱する、こういう手続になっております。
 保護司たる条件といたしましては、保護司法に規定されてございますが、簡単に申し上げますと、社会的信望を有することということが一つ。これは非行少年あるいは犯罪者を更生させようというわけでございますから、当然必要な条件であろうかと存じます。それからもう一つは、職務を行なうに必要な熱意と時間的な余裕があることということが一つの条件になっております。それから生活が安定していることということが条件になっているわけでございます。
 以上のような条件を具備した人の中から大臣が保護司を委嘱していくという手続になっているわけでございます。
○山中(吾)分科員 そういう結果から年配の、大体還暦を経たような人が多くなっておると思うのですが、もう少し若い人をお選びになる必要があるのではないか。四十代以下の人は非常に少ない。その点、私は、実際の機能を果たしていないのじゃないかという感じがしておるわけです。
 それと同時に、保護司を多く選考されておれば金が要らないので、そういう方向に行かれるのかもしれませんけれども、むしろ専門家の保護観察所の観察官を多くされたらどうか。わりあいに若い感覚と科学的な指導知識も持ち、そしてその観察官とむしろBBSの友だち運動というもの、監督指導が強化されては困るのですが、そういう関係で新しい観点でBBS運動を育成するというふうなことが非常に大事ではないかというように私の体験で感ずるのです。それはいかがでしょう。
○小林国務大臣 いまの保護司の老齢化ということも、もう長くいわれて、批判されておりますので、私どもも、できるだけこれを若返らせたいという考えをもちまして、さような指導をいたしておるのでございます。
 なお、保護観察官が非常に少ない、こういうのもお説のとおりでありまして、これももう少しふやしていまのようなことをさせたらよかろうというふうにいわれております。私どもも同感でございまして、できるだけいまおっしゃるような考え方でこれから対処したい、かように考えております。
○山中(吾)分科員 岩手の場合をちょっと見てみますと、私BBS運動を応援しているものですから、保護観察所にもときどき行ったりして、若い観察官ともよく話をするのですが、非常に感覚がいいと思うのですね。今度は何か予算で一名また減らされるようなことであり、観察官が課長を兼ねているから、四名のうち課長二人はほとんど事務ばかりをして、せっかくの技能というものを働かすようなことができない状況にある。そういうことを考えたときに、何か保護司と観察官の関係を両方見なければならぬと思うのですが、もっと有効に活動できる、こういう若い青年団、BBS運動が活発に動けるような予算の計上のしかたを私は検討すべきである。そのときに、むしろあと二、三名観察官を多くして、そうすると若い者が出てくることにもなるし、先ほどの局長のような選考基準でいきますと、たいてい六十を越えた、まあ地域の名望家かもしれませんが、あるいはお寺の住職になりますけれども、これはもう実際はほとんどそういう機能を果たす積極性というものは出ない時代になっているのではないかと思うので、検討を願いたいと思うのであります。
 そこで、まだ次の質疑者がおいでになっていないので、その時間大臣に、いま刑事局長とお話をしたのですが、少年法の問題について、私の一つの見解を示して希望を申し上げておいたのでありますけれども、少年法の改正ですね。これは数年前から論議をされてきたことも私も承知し、大臣も知っておられると思うのです、十八歳にするかしないかで。その十八歳から二十二、三歳までの、何というのか成人ボーダーラインを特殊な取り扱いするという考慮も含んで改正法の論議は出ておるようでありますけれども、十八歳ということを中心として刑事政策その他の点からお考えになる場合には、私は裁判所と法務省だけの問題ではなくて、文部省の問題、労働省の問題も含んで、少なくとも四省の関係者の中でこういう問題を論議をして結論を出してもらいたい、こういう意見を先ほど申し上げておったわけなのです。それは私は、十八歳というのは、現代の身体的発達、生物的発達という意味においては、やはりもう成人として見ていい発達段階である。しかし一方、人間形成、人格形成という点についてアンバランスがあるところに問題が出ておるように思いますが、そういうことを考えて、現在文部省関係は、中教審を中心として、大学から幼稚園に至る全体の教育制度の抜本的改革をはかると佐藤総理大臣も施政演説に言っておる時代でありますから、それの一つとして、こういう問題を論議をされる必要があると思うのです。たとえば現在の義務教育制度は十五歳で打ち切っておる。しかし現代のように科学技術が発達をして、一方に人間性とそれから生活技術がアンバランスになり、単なる教育は知能犯的人間をつくるだけである、あるいはいろいろの人間形成のひずみが生まれてきておるので、六三制全体の抜本的検討の中に十八歳までは少なくとも義務教育にすべきであるとか、あるいは現在の高等学校教育は後期中等教育という、そういう教育水準を考えるのではなくて、むしろ前期高等教育という水準で高等学校というものの教育目標をやはり再検討すべきだという論もある、十八歳を考えて。私は一つの考え方だと思うのです。そういうときであるから、刑事制度としての少年法の検討をする場合も、一方に日本の教育制度全体を再検討する段階であることも含んで、十八歳まで国が教育の責任を持つということを前提とすれば、十八歳というものは、少年法の基準にすることは決して反対すべきものではなくて、むしろそこに肯定する立場が出るのではないか、教育制度と一緒に考えれば。また一方に労働基準法で、新制中学を卒業すればいわゆる就職年齢といいますか、そういう年齢を前提とした法律体系になっておる。雇用契約を結べば一人前、そして給与が高ければ課税対象にもなるというこの体系にも矛盾があって、税の公平、不公平の問題にもなっておるわけでありますから、そういう労働基準法の改正の問題、日本の教育制度全体の再検討の段階にきておる現在、そうして刑事政策のほうで少年法の改正が爼上に乗っておるとき、あるいは教育刑の思想から裁判所においては反対だという伝統的な一つの考え方もあるのでありますから、法務大臣は少年法の施行の責任者でありますから、法務大臣がむしろ積極的に文部大臣、労働大臣、裁判所を含んで、その四者の中でこういう問題を総合的に検討する姿勢が必要ではないか、そういうふうに私は考えるのです、裁判所と法務省だけの問題でなくて。そういうことを私は思うので、この機会に法務大臣のこういう少年法改正に関連をして、お考えを聞いておきたいと思います。
○小林国務大臣 いまの義務教育を十八歳までにする、それでいまの少年法改正にも関連させろ、こういう御意見は、私は傾聴すべきものと、かように考えております。ただ、実はいまのこの年齢の引き下げというようなことは、お話のとおりもう数年前から問題になっておりまして、そして大体世間もその線にある程度同調されているのではないかと思うのでありまして、私はもうこの際、ある程度この問題を前進させ結論を得なければならぬ、かように考えておりますが、お話しのように文部省、労働省と、こういうものも加えましてわれわれは相談をいたしたい、かように考えております。いずれにいたしましても、少年法改正というものは、法制審議会にも出さなければならぬ問題でありますから、これらのところへ出して、そして今度は表立ってひとつ世間の批判なり御意見を承ってそしてこれはもうあまり延ばすべき問題ではないというふうに私は考えておりますので、できるだけ結論を出したい。しかして教育の問題が伴えば非常にけっこうでありますが、一体それが片づくかある程度結論が得られるまで待てるか、こういう問題もあります。しかしその案を出すためには、お話しのように四者の会談あるいは協議、こういうものを私も持ちたい、かように考えております。
○山中(吾)分科員 けっこうです。
○笹山主査 次は、中谷鉄也君。
○中谷分科員 きょうは、前回大臣に時間切れでお尋ねすることができなかったいわゆる世の中にあってはならない、あり得べからざる差別、そういうものが、しかもなお社会的事実として存在をする。そういうふうないわゆる同対審の精神に反するような、そのような人権侵害問題について最初お尋ねをいたしたいと思います。
 内容は、すでに通告を申し上げましたけれども、興信所がその調査の対象、調査の方法その他において無差別な調査が行なわれる。そうして古い戸籍、旧戸籍をあばいて調査をする。壬申戸籍の問題については、すでに一昨年来われわれはこの問題を法務省に対していろんな角度から問題を提起し、法務省もこの問題については努力をせられたわけでありまするけれども、いまなお旧戸籍をあばいて興信所が調査をする。そういうことで結婚話が破談になった、そういうふうな事実が新聞等に報道をされているわけであります。しかも興信所は、それらの問題について、これは商売なんだから、自分のほうについてはそういうことは別に責任はないんだ、というふうにとれるところの発言をしている。こういうことは許されないことだと思います。
 そこで、これらの興信所が旧戸籍をあばいて調査をして、結婚話が破談になるというようなこと、そういう旧戸籍をあばくというふうなことが許されることなのかどうか、そういうことが許されないことであるとするならば、それに対する対策いかん、これが私の第一点の質問でございます。大臣の御答弁をいただきたいと思います。
○小林国務大臣 これは、事例もあったことでありまして私どもは許さるべきことではないというふうに思うのでありまして、その向きのことはこの調査の対象にすべきでない、こういうことにつきまして興信所にも強く勧告をいたしておるのでありまして、このことは全国の法務局にも通知を出しまして、それぞれの向きに注意をしてもらいたい、こういうことにいたしております。したがって、これらの問題の被害者からのお話もあったのでありますが、これらについてはいろいろのお話を申し上げておりますが、私どもは一般論としていま申し上げたようなわけでありまして、人権問題としては、われわれももしそういうことがあれば、扱って、それぞれの救済手段をとらねばならぬと思いまするが、また一般的には、これは刑事問題でいまどうこうというわけにはまいりませんが、民事の損害賠償の問題等にも当然相なるべき問題である。しかし、そういうことのないようにすることがまず第一の要件でありますから、いま申し上げたような措置をとっておりまするし、今後も十分ひとつこれらのことについては注意をしてまいりたい、こういうふうに思っております。それで、それなら、前にもお話がありましたが、かようなことを法律的な問題として扱えるかというと、いまの状態において、興信所を法的に規制する、こういうふうなことには相なっておりませんし、われわれとしては、強く、そういうことを営業上いたすべきでないということをいま申し渡したと申すか、勧告をしておる、それで今後の出方をひとつ見たい、こういうところでございます。
○中谷分科員 人権擁護局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。そういうことはいけないことだ、人権侵犯に当たることなんだ、だから法務省は通達を出した、強い勧告を興信所に対してしたということであります。ところが、興信所がそれらの勧告をきかないという状態のもとにおいては、戸籍法そのもので、何条というようなことを引用して申し上げませんが、旧戸籍をあばく、そういうことはとめることができるのですか、できないんでしょうか。
○小林国務大臣 いまの戸籍法には、もう御承知のように何らの差別的な記載はない、こういうことでありまして、もとの、いわゆる壬申戸籍と称するものにおいてはさような事実であったが、これらは大かたもう廃棄処分にしておる、そうして、廃棄したもの等の閲覧等は一切許さない、その戸籍自体も市町村に保管させるということよりか、原則として法務局がこれを預かって厳重に保管する、こういうことで、閲覧をするとかこういうことは一切させないということにいたしております。
○中谷分科員 問題の事案は人権擁護局長すでに御存じでございまするけれども、Aさんという人の身元を調べて、そうして同興信所の徳島支社が出身地の町役場の戸籍簿を見てまとめた内容が調査書の内容になっておるということなんですね、新聞の報道によると。壬申戸籍の問題とはこれは違う問題でございましょう。そういたしますと、こういうふうなことは営業としては許すべからざることだ、これはもう法務省の御見解を承りました。許すべからざることだということを法務省、大臣がそういうふうに強くおっしゃる。しかし、だからといって、そういうことを勧告した、されることについてはやむを得ないのでは、これは率直に申しまして同対審の精神に反することはなはだしい。こういうようなことを商売だからといってやる興信所が、これはあとを断たないということも想像ができる。これではむしろ法務省自身の威信にも私はかかわると思う。こういうような問題について人権擁護局長どういうようにお考えになりますか。
○川島(一)政府委員 お答えをいたします。
 今回の問題につきましては、われわれといたしましても、非常にいろいろな角度から慎重に考慮いたしまして、これを人権上許されないというだけではなく、やはり現在の法律のもとにおいてそれがむしろ違法というべき行為に当るであろうというような角度から、先ほど大臣が言われたような結論に達したわけでございます。したがいまして、今度その見解を法務局を通じて各興信所にも周知させまして、そしてそれにのっとってやることがすなわち法律に忠実なゆえんである、そういう趣旨を十分徹底させて、そして今後再びそういう不祥事が起きないようにしたい、こういう趣旨でございます。したがいまして、今後の問題でございますから、これに対しておそらく興信所がこちらの見解を無視するというようなことはあり得ないであろうというふうに考えております。
○中谷分科員 全国で興信所は幾つあるか、御確認いただいておりますか。
○川島(一)政府委員 興信所の数は確認しておりません。
○中谷分科員 一体、そうすると、どこのだれぶどうして、その興信所へそういう通達がいったのですか。
○川島(一)政府委員 これは具体的な事件でございますから、問題となりました関係の興信所には、直接この事件に対する処置としてこちらの見解を示したわけでございます。それ以外の興信所に対しましては、地方法務局を通じまして行政的な指導を行なう、こういう趣旨でございます。
○中谷分科員 そうすると、各地方法務局を通じて地方法務局管内にある興信所に対しては間違いなしにそういう通達がいっておる、興信所にですよ。それは探偵社という名前であるか、人事興信社という名前であるか、いろいろな名前がございますね。そういうところへは通達がいっておるわけなんですか。
○川島(一)政府委員 そういうことではございません。法務局において今後そういう興信所に対してできる限り自粛するような措置をとるようにということをこちらから指示いたしたわけでございます。
○中谷分科員 これは大事な問題で、大臣がおっしゃるように、民事訴訟の対象になるとか損害賠償の対象になるとかいったって、結婚話が破談になれば、その人の一生は棒に振られるわけでしょう。そういう問題じゃございませんよ。お金の問題じゃございません。そうすると、その問題を起こした興信所に対しては厳重に勧告をした。しかし、町役場へ旧戸籍をあばきに来る人は、興信所だといって、旧戸籍を見なきゃならないという、そういうことはないわけでございますね。その点は一体どうなんですか。結局、地方法務局へ通達を出したとおっしゃる。そうすると、地方法務局は興信所に対してどういう具体的な行政指導をしておるのでしょうか。
○川島(一)政府委員 私のほうといたしましては、別に方法は指示しておりません。しかしながら、御承知のように、同和対策の問題につきましては、いろいろな方法でもっていわゆる差別問題を解消するための努力をすべきであるという趣旨から申しまして、あらゆる可能な方法を通じてやれ、こういう趣旨でございます。
○中谷分科員 これは、とにかく興信所というものがあって、その興信所の実態も把握していない、そうして地方法務局へそういう通達を出した、地方法務局が興信所をどのように規制するかということについて規制の法律は現在ない、しかし、興信所について行政指導をする、そうですね。ではあなた自身が人権擁護局長としてお考えになられる、予想される行政指導の方法は、地方法務局長が興信所に対して行政指導される行政指導の方法は、一体どんな方法があるのですか。
○小林国務大臣 ただいまは、いま局長が申されたようなことをしたのでありますが、あらためて私は地方法務局長に対して、具体的な、興信所にこういう強い勧告をしておる、こういうことをひとつ管内の知れておる興信所には通牒を出せ、こういうことをいたしましょう。
○中谷分科員 これは局長に御答弁いただきたいと思います。
 民事局長も御出席いただいているのですけれども、要するに、こんな興信所が、本来結婚話が破談になることがわかりきったような、そういう可能性を十分に持った旧戸籍をあばく調査というふうなことは業としてできないのだというかっこうで戸籍法その他を改正をするところまでいかなければ、まさに同和問題の中における差別を受けておる人たちは、とにかく非常な不安の中に生活をし、結婚問題を迎えると思うのです。そういうような点については、勇断を持って、行政指導以上の法律的な規制というものもひとつお考えになっていただけませんか。戸籍法上の問題。
 それからいま一つ、興信所に対する法的規制について、調査の方法、調査の内容あるいは調査の対象等に対しての規制というものもあまりにも野放しになっておると思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
○小林国務大臣 いまの戸籍法そのものは、戸籍法として改正の必要はこの際あるまいというふうに思っております。いまのように、そういう調査はしてはならぬということは、興信所の取り締まりなんということではできません。だからこそ今度そういう強い勧告を出したり、また、全国の興信所にも知り得る限りは各法務局からこういうものを出したから注意をしてもらいたい。少し様子を見まして、この問題自体は戸籍法でなくて、あるいは場合によったら、同和対策なる特別な法律があります、ああいうふうなところで、もし必要なら考えなければなるまいが、われわれが強い勧告をしましたから、しばらくひとつ時間をかして様子見たらどうか。そういうふうなものが相変わらず出るとするならば、やはり私がいま言うたようなところで、そんなようなことをひとつ考えなければなるまいかというふうに思っております。
○中谷分科員 だから大臣に一つお願いしておきたいと思いますが、様子を見ていただく、法のいろいろな規制の問題ですから、そういうことでやむを得ないのかもしれませんけれども、私は一日も早くこういう問題については措置をしていただきたい。興信所といってもピンからキリまでございまして、聞くところによると、東京都の電話帳には四百幾つの興信所が出ているらしいけれども、実際に業を行なっておるというのは、継続してまじめにといいますか、盛大に業を行なっておるのはごくわずか、あとは非常にその内容はよくない。よくないということは、逆に言うと、金もうけのためには何でもするというようなものもその中には若干あるということだと私は思うのです。だから、様子を見ていただくのはけっこうだけれども、結婚話がまた破談になるような旧戸籍があばかれるようなことが御検討になっておられる間に出てくるというようなことでは、その人の一生は浮かばれないと私は思うのです。ですから、強い御勧告ということですけれども、具体的にはもうちょっと――私、しつこいようですけれども、その強い御勧告の内容はひとつお教えをいただきたい。同時に、地方法務局を通じて、地方法務局に対してそういう御勧告をされるということでございますけれども、法務大臣としては、直接各市町村にはそういう勧告というのはできないのでございますか。
○小林国務大臣 いまはその地方の戸籍関係のほうにはそういうものを見せてはならぬ、こういうことは強く言うてあるわけです。要するに閲覧等を許してはいけないということは、その向きの調査に応じてはならぬ、こういうことでありまして、これはいままでは通達でありますから、将来どうしてもこれを強く法的規制をするというならば、やはり同和対策の法律等において、そういうことを、法律的にも古い戸籍などはもう調査の対象にしてはならぬ、こういうことも言うくらいのことを考えなければなるまいというふうに思っております。いまはとにかく戸籍当局に対しては、一切そういうものは閲覧も、調査に応じてもならぬというふうなことには、もう法務省からきつく指示しているわけでございます。
○中谷分科員 次に、別の問題に移ります。
 非行少年の増大とその対策ということが非常に大きな課題であります。問題は少年と交通事件との関係が一体どうなるのかとか、あるいは少年の最近の凶悪犯罪についてどういうふうに対処をするのかというふうな問題がいろんな角度から論難をされました。そうしてもうこの論議というのは、大体その論議が白熱化いたしましてからでも足かけ五年になるのではないでしょうか。そういうふうな中で少年法の改正について、法務大臣としてはどのようにお考えになっておられるか。改正すべきとするならば、その改正点というのは一体どういう点をお考えになっておられるか。
 なお、何と申しましても、この改正の問題については最高裁判所との話し合いと合意というものがどうしても必要だと思いますが、そういうよらな点についての根回しは一体どういうことに相なっているのでしょうか。これらの問題についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○小林国務大臣 これは、一番の問題は年齢を引き下げる、そうして少年と成人の問のものをつくって、そうしてこれに応じた刑事なりあるいは保護処分なりの多様化と、こういうようなことが一つの目的、したがって、一番大きな点は年齢十八、十九の問題でございまして、この点が相当な議論になっているというわけでございますが、私の希望としては、ぜひこの少年法の改正はやりたい、こういうことを強く思っております。先ほどからこれについては十八歳までの義務教育の問題もあろうし、労働省あるいは文部省、裁判所、この四者で十分協議をしろ、こういう指示をここの委員からお話がありまして、それも私はごもっともだと思うのであります。
 それで、いろいろ根回しはしておりますが、いまの年齢問題については、なかなか合意を取りつけることは困難であります。しかしこれはやはりある程度世論が決定すべき問題であり、私どもも、このまま議論を繰り返しておってもものは前進しない、したがってある程度の話し合いをしたあとで、なるべく早い機会に法制審議会においてひとつ全体の論議をしてもらいたい、こういうふうな考え方を持っております。
○中谷分科員 御担当の局長にお尋ねいたしたいと思いますが、そういたしますと、少年法改正を希望される法務省の問題点というのをもう一度ひとつ整理をして言っていただきたい、これが一つ。
 いま一つは、何と申しましても、四、五年前から論議されている裁判所とのいわゆる少年法改正についての意見の食い違い、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるか、問題点がどこにあったということを簡単に御説明いただいて、この点については現在どういうふうになっているかということ。
 それから大臣の御答弁によりますと、法制審議会の答申を待ってということでありますけれども、法務省としてはこの少年法改正を、いつごろをめどにして改正を国会のほうに出してくるということになるのだろうかという問題それらの問題についてひとつ御答弁いただけませんか。
○小林国務大臣 私おもなことはお答え申し上げますが、法制審議会に付議をしたい、そこでもってひとつ十分な論議を尽くしたい、これをしなければものは前進しない。したがって、私はいま、いつそれなら国会へ出るかということになると、私どもの希望としては来年はひとつ願えないか、来年の通常国会にはそういう用意はできないか、いまの年齢問題は合意に達することはなかなか困難である、しかし、御承知のように今度は道路交通法の改正におきまして十八、十九の者にも反則金を課する、こういうことで最高裁も譲ったということばはどうかと存じますが、そういうことで話し合いができておりますから、この点でもだいぶ前進した、かように考えております。
○中谷分科員 局長、ひとつ……。
○辻政府委員 少年法改正の法務省として考えております最もおもな骨子と申しますか、これを申し上げますと、三点になろうかと思うわけでございます。
 第一点は、先ほど来大臣の御答弁がございますように、青年法を規定いたしまして、年齢層に応じた処遇の個別化をはかっていくという点が第一点でございます。それから第二点は関係機関の責任と権限の明確化をはかるという点でございます。これは具体的に申しますと、青年法を設けました場合に青年の処分につきまして、刑事処分にするか保護処分にするかという選別を検察官がいたしたいという、大まかにいいましてそういう一つの点でございます。第三点は、この少年保護の執行面の整備充実をはかる、こういう点が第三の骨子でございます。
 このうち第一、第二の骨子につきましては裁判所との間に現在なお意見の対立があることは御案内のとおりでございます。第三点につきましては、そんなに意見の対立はないという状況でございます。
○中谷分科員 ではこれで質問を終わりますが、局長さんにもう一点。
 裁判所との対立といいますか、裁判所との見解の相違というのは、これはかなり息の長い議論と申しますか、考え方の違いで、少年法関係の資料というものを集めてみましたら、私のからだの高さぐらいまで行くのじゃないかと思うぐらいたくさんございますけれども、裁判所との話し合いというのはどういうようなかっこうで具体的に現在進行しているのでしょうか、その点をひとつ御答弁をいただきたいと思います。実は私の手違いできょうは最高裁の家庭局長さんに御出席をお願いしておりませんので、あまり法務省の御意見ばかり承っておってもおかしいのですが、最高裁との話し合いはどういうかっこうでおやりになるのか、この点だけをひとつ御答弁くだい。
○辻政府委員 裁判所との間におきましては、従来私のほうの刑事局長、担当の青少年課長その他の者と最高裁の家庭局長、担当の課長、このレベルで種々意見の交換をいたしてまいっております。
○中谷分科員 あと一点だけの質問なんですけれども、これは非常にむずかしい問題であるし、従来から何べんも何べんも繰り返された問題でありますが、一点だけ簡単にお尋ねをいたしておきます。
 再審の道をもう少し門を開くべきではないか、再審の道というのは、とにかくラクダが針の穴を通るよりもむずかしいではないかということがかねてから言われておりますけれども、そういうような問題について、ひとつ何らかの形で御検討をいただく、御検討されるお気持ちはないかどうか。質問者が特に御検討いただけるというふうに、そういうかっこうの申し方を半ばいたしましたのは、やはりずいぶん再審を求めている、そうして再審に関する規定の針の穴が大きくなれば、晴れて無罪になる人だってかなり出てくるだろう、こういうふうな気持ちが私はあるから、そういうことを申し上げたわけです。これらの問題について簡単に御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
○辻政府委員 現在の刑事訴訟法に定めております再審の事由でございますが、この再審事由につきましては、現在のところ私どもは改正を検討する必要はないものと考えております。
○中谷分科員 終わります。
○登坂主査代理 次は島本虎三君。
○島本分科員 法務大臣になりましてから、小林法務大臣にはこの席初めてでございます。御健在で何よりであります。
 大臣も御承知と思いますが、世界でも初めての、社会科学者たちによる公害問題国際シンポジウムが十二日に、公害なき環境の享受は基本的人権である、こういうような東京宣言を採択して終わったようでございました。しかし、私この記事を読んで、ちょっと心に触れたものがあるわけです。このシンポジウムの討議を通じて、日本側と外国側の参加者、この間に大きなみぞが見られて、最後まで埋め切れずについに終わった。それは公害反対闘争への関心と評価についてであって、孤立したまま加害企業と苦しい戦いを続けなければならない、またみずからの生命や生活を守り切れない、こういうような日本の住民たち、これに対して外国人学者たちは、それは犯罪ではなのか、こういうような指摘をして、公害については企業はいまもって責任を負おうとしない、外人の参加者は最後まで日本のこの特殊性を理解できなかったのだ、こういうような記事があるわけです。いろいろ学者、公害関係ではその道のエキスパートであります。こういうような人たちがせっかく来ておって、世界の自由主義の国で第二位の生産力を誇っておるというこの日本、この公害の状態の中でどうしても理解できなかったし、このみぞを埋めることができなかった。その指摘される問題は、それは犯罪ではないのか、こういうようなことに対しての解明が十分理解させることができなかったんだ、こういうようなことであったようです。そして私の手元へつい最近経済企画庁のほうから送ってもらいました一九七〇年二月十日のアメリカのニクソン大統領の教書、すわちわち「環境汚染防止に関する教書」、これが届いて、その中で、「裁判所の措置を求める連邦権限を拡大して、地元の不履行のため大気の質が全国的基準を下回っているか、または排気ガス基準または実施時間表の違反による州際または州内大気汚染事態をも含めることを提案する。」そして「私は、既定の大気保全水準または実施時間表に従わない者に対して、裁判所が最高一日一万ドルの罰金を課することを提案する。」こういうようにして七つの項目をあげて、具体的な、これからアメリカが大気汚染をはじめ公害に取り組もうとする姿勢をはっきりニクソン大統領が白書として示しておるわけです。わりあいにわかりやすく書いておるわけです。そして国際シンポジウムのこのみぞを埋めることができなかったという決定とあわして大臣にお伺いしたいのは、大臣のほうから諮問しておりました法制審議会の方面の公害罪に対する結論がいつ出されるようになるのでしょうか。私はこれはぜひ聞いておきたい、こう思いまして、おそくなりましたけれども、はせ参じた次第なのであります。これについてひとつ大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
○小林国務大臣 日本がこれだけ公害問題が非常な緊急の問題になってきたのは、経済成長が非常に急激であった、こういうことの結果でありまして、実は私が厚生大臣の際に厚生省に公害課をつくって、この問題に取り組み始めたのがわずか五年前、こういうことでありますが、当時におきましてはやはり企業の採算と生命身体とのバランスというようなことを言うておりましたが、いまではもうバランスなどということを言っておる時代じゃない。とにかく健康と生命を守らなければならぬ、こういう時代になってきておりまして、前のような考え方はこの際改めて、やはり人権と申すか、人間の健康というものを第一義的に考えなければならぬときがいまきておるというふうに私は考えております。行政上いろいろ指導とか規制とかやっておるのでございますが、これらの一般的な問題よりか、特に直接的に害を加える、健康に害のあるこういう問題につきましては、実はいまでも刑事問題になっておる。ただこれは因果関係の証明というのが非常にむずかしいからなかなからちがあかない。しかし最近は裁判におきましても、裁判所方面においても、――公害の刑罰というものはいまの刑法によって扱う以外にいまありませんが、一体これはどうなるか、こういうことでありまして、非常にめんどうな問題でありますから、私はお話しのようにどうしても公害罪というようなことは非常にめんどうな問題であるが、このままじんぜんとして日を過ごすべきではないというふうに考えております。それで、この問題は、現在法制審議会で毒物その他の有害物を放出して大気や公共の水域を汚染して公衆の生命身体に危険を生じさせる罪というものをつくるという積極論、またこれの過失犯を新設する、こういう方針が一応決定されております、何ぶんにも刑法全体の改正というのは容易なことではなく、また非常に手間のかかる問題であるから、私は刑法全体にまかせてこのまま置くことは必ずしも適当ではない。これだけ一つ抜き出してさらに検討を推進してもらう必要があるのじゃないか、かように考えております。したがって、全体問題としてでなくて、この問題をなるべく早急にこの審議会の刑事特別部会においてひとつ検討してもらわねばなるまい、かように考えております。したがってまだいつこれが出るかということはわかりませんが、私は刑法全体の問題としてよりか、この問題を抜き出して検討してもらわなければなるまい、かように考えております。
○島本分科員 大臣のその決意はわかりました。実は私も大臣が二月四日に、これは津の地方検察庁で記者会見をして、その際に、刑法に公害罪を新設するのはむずかしい、こういうような見出しで次にいろいろ言われていたことがあるわけです。それを見て私はぜひきょうその内容を聞いてみたい、こう思ってはせ参じたわけなのでありますけれども、それによりますと、これはたぶんこのとおりではないんだと思うのですけれども、法制審議会のほうでは刑法に公害罪を新設する方向で検討を進めているようだが、刑法で公害を取り締まるのは無理である、公害の概念自体がまだはっきりしない。産業の採算と人間の健康の調和点をどこに置くかでその基準が変わってくる、刑法で取り締まるためには一定の基準に従って刑罰をきめなければならないがそれはむずかしい。また発生源のはっきりしている問題については、現在の刑法でも十分取り締まれる、こういうような新聞記事があったわけなんです。これによりますと、どうもいま大臣がおっしゃったことと、この内容との間にちょっとズレがあるような気がしてならないわけです。私はどうも、大臣がせっかくいま言ってくれたのが、これで帳消しにされるような気がして心配だったのですが、これはどういうようなことなのでございましょうか。
○小林国務大臣 いまの内容について、私はこれをいま関知しておりませんが、しかしむずかしい問題であることはもうわかり切っています。私もむずかしいと思うが、むずかしいからといってほおっておくわけにはいかない。できるだけ、とにかく何かの基準を設けて結論を出さなければならぬ。それから、極端なものはいまの刑法でもやれるので、民事訴訟等も、いま損害賠償ではだいぶ出ておりますが、直接的な因果関係の証明できるようなものは過失その他によって、いまの刑法でもとにかくこれを取り締まることができるというふうに思っておりますが、しかしそういう一般問題ではなくて、やはり公害そのものについて何らかの結論を出すような時期が来ておる、こういうふうに私はいま思っております。
○島本分科員 そういうようにいま思っておる。それで私も安心しました。これはやはりその見地から考えなければならない時期でありまして、現在のような自由主義の国で世界第二位の生産力を誇る、しかしながら、この生産力を誇ると同時に、公害で国民の健康と生命をむしばんでおる、こういうようなことが正比例して起こっているというこの事態に対しては、やはり為政者としては十分考えなければなりませんし、それぞれの立場で国民の健康と生命を守るのでなければならないはずなんです。そういうような意味で私は公害罪は設定しなければならない。したがってこの際大臣を大いに激励して、早くこれを出させるようにしたい、こういうように思うわけなんです。国が公害と認定して、因果関係が認められても、現在の裁判では解決がなかなか困難であって、長くかかっているというのが実態であります。国が、まさにそれによって起こったんだということをはっきり認定しても、裁判に持ち出されますと長くかかっております。黙っておいたら現在の機構では弱い者がしいたげられる、こういうような結果さえ招来しているわけであります。認定と事実確認の上に立って公害罪がやはり必要だという段階でないか、これも関係の裁判官会議でもすでにそういうようなところまでいっている人もあるそうであります。私もそういうような点からしてぜひこれは設定すべきではないか、こう思います。
 この際法務省の皆さんに、ひとつ衆知を結集して私のために開陳願いたいのですが、外国の立法の例、こういうような刑法典の中に公害罪の規定、こういうようなものはどうなっているか、ひとつお知らせ願えませんでしょうか。
○辻政府委員 突然の御質問でやや不正確かも右じませんが、外国のほうで私どもが承知いたしておりますのは、たとえばアメリカのニューヨーク州刑法であるとかロシア共和国刑法等に若干の規定がございます。
○島本分科員 それくらいでございましょうかね。ニューヨーク州刑法、ロシア共和国刑法、スウェーデン刑法、それからドイツ一九六二年刑法草案、オーストリア一九六八年刑法草案、まだまだたくさんあるようでありますから、これは他の外国のほうではもうすでにこういうようなものを考えてそれぞれ公害罪またはそれに近いような規制を強めてこれを実施している、こういうようなところまでいっているようであります。私のほうでは「警察研究」というこの本によって見ましたからこれはあとでよく見ておいてください。
 そしてどうですか、次に私はこの刑法犯としての公害罪の必要性、これについてはいま大臣からも伺いました。違法性は大きくて道義的にも非難に値する公害が生じていることはこれは否定できない、こういうような現状認識を基礎にして、単に行政取り締まり法違反、法規違反としてとらえるだけではなく、刑事犯としても規制して、その反道徳性を宣言することが必要である、こういうようなことも往々にしていわれ、われわれもそのとおりだと考えているわけなんでありますけれども、こういうような点からしても、刑法犯としての公害罪の必要性はやはり大臣認められておるというような現状にあるということで私どもが考えることは、これは早計でしょうか。そして現在のイタイイタイ病またはあの水俣病、四日市ぜんそく、その他各方面に出されております、政府が公害病として認定したようなこういうような病気、こういうようなものでさえもいまや裁判にかけられたら百年裁判、いつ結論が出るかわからないような状態のもとに推移されておるわけです。これをやはり三条機関的に強力に行政権をもってでも、準司法権をもってでもこれを強力に始末をつける必要があるわけであります。私はそういうような一つの紛争処理機関が必要である、これと同時にひとつ刑法犯としての公害罪の必要性、こういうようなことも十分認められるのじゃないか、こういうように思うわけなんでありますけれども、これはやはり早急に急いでやるべきじゃないかと思います。私の考えは間違いでしょうか、大臣。
○小林国務大臣 これはもう御主張は間違いでない、こういうふうに考えます。実はもう法制審議会においても一般論としては先ほど申したようなことはやはり新設するほうがよかろう、新設すべきである、こういうふうな方針が一般論としては一応合意ができておるのでございますから、これの具体化をこれからひとつできるだけ早く考えたい、こういうことです。
○島本分科員 大臣、それと同時に、ここにやはり現法律体制のもとでは因果関係がはっきりする、また原因者、こういうようなものが罰せられる。こういうようなことからして、工場長や直接その場にある人が罰されるような傾向は、これはどうしても払拭することはできない、こういうようなことに相なろうかと思うわけです。それで、処罰対象を直接行為者のみでこれを行なうということは、これはやはり弱い者いじめになり、本体を見失うようなおそれがあるのではないか。したがって法人処罰、こういうようなものに対しても十分今後は考えた上でこれを取り入れるべきじゃないのか、こういうふうに思っているのでありますけれども、これは現在起きましたところのいろいろな事犯、また工場等に対しましても、工場長またその責任者ということになると、もうその上に社長なり会長なりまたはそれをはっきりつかさどっている人はいつでものがれるということになりますから、これはやはり法人処罰、こういうふうなものを入れるのでなければ画竜点睛を欠くことになりはせぬか、こういうこともおそれるわけです。この点も十分考えておかなければならないんじゃないかと思います。大臣、いかがでございますか。
○辻政府委員 ただいまのお説のとおり、いわゆる公害罪がどういう形で規定されるか、将来の問題ではございますが、規定されました場合に必要に応じていわゆる企業の責任者と申しますか、そういう方にまで罰則が及んでいくといういわゆる両罰規定でございますが、両罰規定を設けるかどうかという問題は、十分検討すべき問題であると考えております。
○島本分科員 そうすると、厚生省も来ておるようでありますけれども、厚生省も、現在大臣も御存じのように、具体的な患者の救済、この法律の主管官庁として、また現在起きておりますいろいろな事象に対しましての指導や救済する直接の官庁として、いまいろいろ苦労されているようであります。それで今回公害罪の立法化を厚生省はどのように考えているのか、この際厚生省のほうの考え方に対しても、はっきりここで伺っておいてみたいと思うのですが、来ておりますか。
○藤森説明員 お答え申し上げます。
 先生御承知のように、公害問題の解決ということのためには、その公害の態様であるとかあるいは被害の実態、こういうものに対応いたしまして、いろいろの面から多角的な措置や対策を講ずる、こういうことがどうしても一必要でございます。したがいまして、多数人の健康や生命に危険を生ぜしめるような著しい公害というものにつきましては、その発生の責任者を一定の要件のもとに刑事法上処罰対象とするということは、健康やあるいは生命を尊重するという立場から見まして適切な措置ではないか、こういうふうに考えているわけでございます。もちろん刑法犯として取り扱うということになりますと、法律上おのずから構成要件その他いろいろの限定があろうかと思いますけれども、公害罪を新設することによりまして、公害がいわば産業活動に伴う許された危険ではないということが明らかにされるということになりまして、私どもが過去に経験してまいりましたような悲惨な公害事件の再発を防止する、こういう上でもたいへんその意義は大きいものがある、かようにいま考えているわけでございます。もちろん厚生省といたしましては、このような刑事法上の動きをも注視しながら、同時に他面で各種の防止対策を強力に推し進めまして、公害の発生そのものを防止する、こういうことにこれからも努力をいたしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
○島本分科員 それと同時に、今度刑事局長にちょっとお伺いしてみたいと思うわけであります。それは訴訟費用の援助と公害裁判の促進についての考え方であります。これは裁判でありますから、なんでございますけれども、考え方を伺っておきたい、こう思うのですけれども、いろいろ費用の点とあわせて、弱い立場にある住民が泣き寝入りするような可能性の高いような現在の裁判、こういうようなものに対しまして、やはりもう公害裁判は促進されなければならないものでありまするけれども、現在、紛争の解決のために、なかなか手間どっておるわけであります。イタイイタイ病、水俣病、国が公害である、その原因である、こう認定したものであっても、それが裁判にかかると、いまだに、カドミウム中毒の問題であろうと有機水銀の問題であろうと、これはもう裁判になったまま、救済されないままに放置されておるわけであります。そうなってみますと、紛争の解決については、やはり何らか策を用いなければならないんではないか、こう思いまするけれども、これは刑事局長に聞くのはちょっと変かもしれませんが、ひとつこの際、あなたの決断を聞かせてもらいたいと思うのです。これはひとつあなたに、大臣の前に聞いてみたいのですけれども、紛争の解決についてどのようにお考えでございましょうか。
○辻政府委員 ただいま御質問の問題は、当省の民事局の所管でございますが、民事局長見えておりますので、私からは答弁を差し控えたいと存じます。
○新谷政府委員 民事局長の所管ということでございますけれども、実は、これは裁判上の問題でございまして、現在の民事訴訟法の中に訴訟上の救助という制度がございます。この運用は裁判所でやっておりまして、最高裁判所のほうでも、費用に困っている人につきましてはできるだけ救済する方向でやっていこう、こういう方針のようでございます。私のほうは直接裁判に関係ございませんけれども、民事局長という御指名でございましたので、一応お答えいたします。
○島本分科員 せっかくそこまで丁寧に答えてもらいましたので、この際またちょっと、これは大臣でしょうか、お伺いしておきますけれども、せっかくいまのように裁判救済のような手続があっても、一たん裁判になると、これは長引く。金のない弱い人の立場でこれを申請すると、加害者である企業のほうからそれに対してまた抗告が出る、こういうような状態だということも承るわけであります。それじゃ、せっかくこういうような制度があっても何にもならぬじゃないか。やはり公害罪を早く設定するのでなければ、こういう弱い人の救済にならないじゃないか、こういうように思うわけです。大臣、この点はいかがでございましょう。
○小林国務大臣 いま起きておるいわゆる公害裁判というのは、全部民事上の賠償責任の問題で争われておる、こういうことでありまして、これらにつきましても、中には、いわゆる訴訟救助、これの適用もやっておるものがあるようでございます。お話しのようなことは、これは、裁判所の一つの手段としていま行なわれておるから、こういうこともひとつお伝えをいたしておきます。
○島本分科員 私がいま長たらしく刑事局長に聞いたりいろいろやったのは、あえて少し――この裁判が長引いているという現状、そうして、せっかくこういうようなことに対して救済の手を差し伸べて、それを国のほうで負担してやろうとしても、逆に加害者である企業のほうから抗告が出てしまうというようなのが裁判になっているその実態である。そういうふうになってしまうと、やはり弱い者はますますしいたげられてしまうんだ、こういうようなことで、公正な裁判をやろうたって、その前に弱い被害者のほうが伸びてしまうわけです。したがって、ここに、もうすでに御存じのように、公害罪というものを設定するのでなければ、いま苦しんでおる被害者を救済することはできない。それと同時に、いま世界でも第三位、自由主義の国では二番目の生産力をあげている、こう誇っている日本ですから、当然、それと正比例して起こっている公害、こういうようなものに対しても、企業の自分の認識としても、これははっきり責任を負うべきなんです。それがたてまえなんです。まして、それをあえて犯して、責任を負わないで、そして国民の生命も健康も犠牲にして、企業だけもうければいいんだ、こういうような考え方こそ、まさにこれは犯罪にも通ずるような行為にこれからはなりかねないのです。したがって、いまの状態の中では、この救済のめんどうな裁判、そしてこれに対してはっきり活を入れるためにも、ひとつこの際、大臣、公害罪の設定、こういうようなものは急いで――個々の問題でもよろしゅうございますから、こういうような態度をとってもらいたい、決意してもらいたい、このことなんです。
 私は心からこれを要請して、時間にもなりましたし、最後に大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。
○小林国務大臣 お話の趣旨は、まことに私はごもっともと存じますので、さような趣旨に沿うようにひとつ努力をいたしたいと思います。
○島本分科員 では、これで終わります。
○笹山主査 次は大原亨君。
○大原分科員 きょうは、分科会の質問は最後になりましたが、帰国問題の一点にしぼって、いままでいろいろな質疑応答がありましたが、実質的には非常に大きな権限を持っておられる法務省の管轄の問題を中心にいたしまして、これから質問をいたします。
 第一番目は、国連で採択されました世界人権宣言がありますね、法務大臣。この世界人権宣言、人権に関する世界宣言はどのような法的な効力を持っておるか、あるいはこの問題に対して日本の政府はどのように理解をし、考えておるか、こういう点について最初にお答えいただきたいと思います。
○吉田(健)政府委員 人権宣言の詳細に関しましては、私よりも、人権局長がここにおりまして、そのほうがより詳細に存じておりますので、法的問題に関しましては人権局長より最初お答えしていただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 国際人権規約でございますが、これは国際連合憲章の趣旨をふえんいたしまして、世界人権宣言に掲げられている人権と基本的自由の具体的な保障条項に法的な拘束力を与える多数国条約として、一九六六年に第二十一回国連総会で採択されたものでございます。
○大原分科員 いまの御答弁のように、大臣、これは多数国間の条約として、まあ条約と同じような効力を持っている。国連がいまお話しのような時点において採択いたしましたのはそういう効果を持っている。その条約と同じような効力を持っている人権に関する世界宣言の第十三条の第二項には、人はすべて自国を含むいずれの国をも立ち去る権利及び自国に帰る権利を有する、こういうのがあるわけであります。日本国憲法の二十二条の二項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」憲法と条約の関係について議論しようとは私は思わない。ただしこの人権宣言は多数国間の条約として国内の法律よりも優位にある人権宣言の効力を持っておる。したがってこの人権宣言に違反をする日本の国内法やあるいは国内の行政上の措置は無効である、私はこういう見解を持っているのですが、いかがですか。
○川島(一)政府委員 御承知のとおり、この条約をまだわが国は批准いたしておりませんので、その拘束は受けていないというふうに考えております。
○大原分科員 国連憲章の精神に従ってできた条約については、日本の国連に加入する時点は違っておりますが、いままで採択された憲章とか条約を忠実に履行いたします、こういうことを誓約をして日本は国連に、時間的におくれておりますが加入したわけですよ。ですから批准していないから尊重する義務はありませんというふうなことはどこから言うんですか。
○川島(一)政府委員 この条約は非常に広範な各種の権利、自由について規定しておりますが、現在の世界各国の法制に比べますとまだ合わない点が非常にたくさんございます。そのために世界の主要な国はほとんどまだ批准していないという現状にございまして、わが国におきましても同様でございます。この条約の精神を尊重して徐々に国内法を改めて、そして批准できる体制につくっていくというのが現在の世界の各国の現状であろうと思います。
○大原分科員 私は時間の浪費を避けたいと思うんですが、いままで総理大臣も前園田厚生大臣も、前の法務大臣も帰国問題に関連をいたしまして、人道の立場に立って人権宣言は尊重すべきである、こういうことを原則的に了承しておるのですよ。あなたの答弁はそれと違うんですか。それと違うんだったら話をもとへ返すよ。
○川島(一)政府委員 私は国際人権規約とそれから人権宣言といささか混同しておったかと存じますが、人権宣言はこれは条約ではございませんので、ただその精神はもちろん各国ともに尊重すべきものであるというふうに考えております。
○大原分科員 それはあなた不勉強じゃないですか。そんなことは時間の浪費じゃないか。あなたは多数国間の条約だと言った、私がそのとおり言ったら。また違うの。もとへ返ったの。大臣いかがですか。総理大臣はそう答弁をしているんですよ。
○小林国務大臣 私はこの問題を十分検討しておりませんので、的確なお答えはできないことを残念に思います。
○大原分科員 これは主管大臣の小林さん、あなたは厚生大臣をやったりいろいろな大臣をたくさん何回も何回もやって、日の当たるところにおられて、それは自民党の中でもうらやましいという人があるのに、この基本的な問題について議論した問題を私は蒸し返したくないのだけれども、私どもが議論を進める上において一応私はこれを取り上げたんですよ。総理大臣は、原則的にこれは当然のことであって尊重しなければならぬ、こういうことを言っているんですよ。そういう点については法務省の中じゃ意思統一してないのですか。主管局長いかがですか。
○吉田(健)政府委員 人権宣言につきましては、私たちは当然その精神を十分守っていく姿勢でおります。
○大原分科員 長い間時間がかかるですね。
 そういうことでございますが、私は集約的に質問するわけですが、私の手元に東京都の板橋区の馬玉金という人に対しまして朝鮮民主主義人民共和国から来た手紙があるわけです。これは朝鮮語で書いてあるわけですが、八十歳になる母親からの手紙であります。十四歳のときにやむを得ぬ事情から日本に渡った娘さんと三十六年間会えていない、父親が最近死んだ、六年前でありますが……。ひたすら娘との再会を待ちわびている母親の手紙があるわけです。これは法務大臣、私はいままでいろいろ議論してきましたが、これはひとつ頭へ入れてもらいたいと思うわけですが、議論する前に私読んでみます。「会いたくてたまらないいとしい娘に数百里も離れた異国の土地で元気でいることでしょうか。」これは少し翻訳が……。「孫や孫娘もみな大きくなりましたか。いまペンをとったものの、何から書いたらよいのか、思いをまとめることもできずに、ただ熱い目がしらをぬぐってばかりいます。あなたと生き別れてからもう三十六年もの長い長い年月が流れてしまったのですね。私が生きているうちにあなたたちと会うこともできない気がしてなりません。年端もいかないあなたを海を越えて数百里も離れた日本に送ったのにはやむにやまれぬ事情があったのですよ。親子兄弟互いに会うこともできず、このように別れていると、母親の私も娘のあなたも同じように胸がつまるやるせない思いです。この気持ちをどうして言尽くせるでしょうか。あなたのおとうさんは、生きているうちにあなたたちに会いたいと指折り数えるように待ちながら、いとしい娘を見ることもできずに六年前七十五歳でなくなってしまいました。痛わしくふびんでなりません。数多くの同胞が祖国に帰国してなつかしい故郷や親戚とまみえ、先祖のお墓にお参りし、なつかしい再会を喜ぶ姿を見るたびに、私はあなたたちのことがひとしお思われてなりません。生きているうちに一度でもよいからあなたたちに会いたいこの思いをどうやって訴えたらよいのでしょうか。」こういってずっと書いてあります。
 そこで私はたくさんの議論はしませんけれども、この帰国の問題というのは人権の問題であり、人道の問題なんですね。人道の問題に対して結果としてはそういう非人道的な立場になるような政治的な介入をする、あるいは事実上妨害するということは、これは佐藤総理がいつも言っておられますが、平和に徹するとか自由を尊重するとか、そういう精神とは全くうらはらのことじゃないかと思うわけですよ。ですからこういう問題は人道の問題として徹底してやるべきである、韓国の妨害があるからということでこれが曲げられると、私はそういう具体的な人間の立場に立って考えてみると、これは非常に大きな禍根を残すものではないか、したがってこの懸案の問題の中には、一万七千名の帰国の問題がありますね。それから新たに帰国をしたいという希望が条件の変化の中で出てくる問題がありますね。もう一つは、三番目には、里帰りの問題がありますね。中国との関係を認めておりますが、そういう問題を、私は人道の立場に徹して自主的に日本が解決をする、そういうことが長い目で見て、これは国にとっては何ら被害のないことであり、国益に合致する方針である。政府が口先で言っている、佐藤総理が言っている御方針である、こういうふうに私は思うわけです。そういう問題に対して、基本的にいままでいろいろ議論してまいりましたが、法務大臣はどのような理解を持っておられるか、私はこの際お聞きをしておきたい。
○小林国務大臣 いまのお話のように、純粋な人道上の問題としてこの問題に対処すべきである、こういうふうに思いますが、人権と申しましても、国全体の関係で、これは国益上の問題、あるいは外交上の問題、いろんな面において多少の制約はやむを得ない、こういうふうに思います。また私どもも希望することは、かようなことが政治的に利用されないように、こういうことを心から希望しておりまして、ほんとうに私人が人道的な立場で、個人として、私人としていて、また戻りたい、こういうようなことは私はほんとうに純粋な問題、それだけの問題として扱ったらどうか。どうもとかくやはり政治的に、あるいは国益に反するようなことに利用される心配がある、こういうことでございまして、お話しのように、私は人道上の問題として、純粋にさような問題として扱えれば非常にありがたいことだ、かように思っております。
○大原分科員 私はたくさんの議論をしたくないのですが、たとえば日本から北朝鮮人民共和国に帰る、こういうことがどんなに日本の国に被害があるのですか。それならそういう希望者があった場合に、それをいままでの経過を尊重しながら、日本の国において――戦争中のことについては私は言いません、もう時間がないから、そういう経過を踏まえながら人道の立場で、日本から帰っていくという場合に、いままでたくさんの人が帰って行ったけれども、日本にどういう政治的な影響とかあるいは被害があったのですか。被害はないでしょうが、全然ないでしょうが。
○小林国務大臣 これはもう大原委員はよく御存じのように、もともと数万の人が帰っておりますし、今回においても、御承知のように一万数千の方が帰りたい、私も帰ることは御希望があればそうすべきだ、こういうことで日本と朝鮮の赤十字の間で交渉しておる。それでコロンボでどういうことでもってあの問題が決裂しているかということもよく御承知のとおりでありまして、あのときの話し合い、すなわち事後入国の方々が、要するに国際赤十字の仲介によることを希望しておる。その話し合いがつけば、私はこの問題が進捗する。われわれとして、政府としても、この問題が解決されることを期待しておる、こういうことでございます。
○大原分科員 私はこれも議論を省きますが、これは赤十字というのがあるわけですよ、日赤が。それが日赤に対して――国際赤十字もあるわけですが、日赤に対してすべてをまかすということでいいんじゃないですか。帰国の問題については日赤にまかす。一々政府がそういうあなたのような基本方針をきめたのだったら日赤にまかすという方針をとれば、この問題は解決できるんじゃないですか、人道の立場から。そうすれば、たとえばいわゆる韓国のほうから抗議がくる、そういうことがあっても、これは赤十字がやっているんだ、赤十字精神で赤十字の方針ですべて人道の立場で日赤が扱っているんだ、そういうことを政府が割り切れば、そういうことについてぐらぐらするということはないわけです。ぐらぐらするならば、これは結果としていろんな問題に波及するわけですね。
 もう一つの点は、たとえば中国との関係においてはいろいろな積み上げがあって、里帰りの問題を含めて人道上の問題として、ある程度往来については一つのめどがついているわけです。ルールができつつあるわけであります。それと朝鮮民主主義人民共和国と差別をしているというようなことはおかしいわけです。ですから、この問題は人道の立場と、日赤にまかす、そういう方針で仕事を進めていくならば、この帰国問題については何ら障害はないのじゃないかと私は思うわけです。ですから、いろいろ議論いたしてまいりましたが、最近もいろいろ政府の発表があるわけですが、そういう問題について新しい観点に立ったそういう方針というものはございませんか。その点についてお答えいただきたい。
○小林国務大臣 北朝鮮帰還の問題も、大原委員も問題が一点に煮詰まっている、国際赤十字の問題に詰まっている、こういうことはよく御存じのとおりで、これはまかした日赤がそういう主張をされておる、こういうことになっておりますから、これに朝鮮の赤十字と話し合がつけば前進するだろう、そういうふうに思います。また里帰りの問題等につきましても、これは御承知のような事情でございますので、これらも前から申し上げているように、少しでも前進した姿でひとつ考えたい、かように思っております。
○大原分科員 具体的にどういうことですか。具体的にどういうことをやるのですか。
○小林国務大臣 具体的に若干のことを考えておる、こういうことを申し上げておきます。
○大原分科員 その内容を言ってください。
○小林国務大臣 内容はいまちょっと申し上げられません。
○吉田(健)政府委員 ただいまの大臣の御答弁に対してさらに具体的に補足さしていただます。
 先ほど先生のおっしゃいました帰還問題に政治的に何かこれを押えているのじゃないかとか、そういうような御疑念があったようでございますが、この点に関しましてはあくまで人道的なケースとしてこれをはかっておるわけでございまして、現在お触れになりました一万七千名あるいは一万五千名といいますか、いわゆる帰還未了者、配船その他の都合で、申請は出ているがまだ帰っておられないこれらの方々に関しましては、従来八年間にわたって遂行してきました集団帰還の方針に準じまして、暫定措置としてこの一万五千名の方をお帰しするということに実質的にはコロンボ会談で話が進んでおるわけでございます。
 ただいま先生の御指摘になりました帰国の自由云々の点は、むしろその一万五千人もしくは一万七千人の方が集団帰還された後に、もしさらに今後帰りたいという希望者が出てくるならば、これをどうするかといういわゆる事後処置の問題でありまして、その点に関しましてはすでに政府といたしましては官報その他でも公示しました。また事実十四名の方が帰っておられますが、個別的に出国証明書を出し、自由にお帰りいただくことを認めておるわけでありまして、何ら人権上の出国の自由を阻止しているという事実はございません。ただ集団的にこれを帰すかどうかということになりますと、とりあえず現在たまっております一万五千人の方を従来のカルカッタ協定による帰還方式に準じまして、早く六カ月の間に帰すことになっておりますが、六カ月の間に帰っていただこう、その間にもし将来何か問題が起こるという見通しがつくならば、さらに話し合っていこうではないか、この二つの点に分けまして、従来日本赤十字の代表と朝鮮赤十字の代表と話し合ってこられて、一応実質的には合意に達しております。
 代表者の事後の問題でございますが、その一万五千人が帰った後の問題に、まだ帰る人がおるからこれを集団的に帰す、集団的に帰してくれなければ困る。そのときの代表者が日本に入ってくるのに対して入国を簡単に認めてくれ、こういう手続の問題で実は一応意見の相違が出たわけでございます。しかし、これはいわゆる一万五千人の人が帰られたあとの仮定の問題に基づいて、しかもその段階では、お帰りになる方は自由に帰っていただくということは双方認めながら、集団的に帰られる場合に限って代表者が入ってこられるのは、われわれとしては、従来の方針よりも――個々に帰られるということでありますから、国際赤十字を通じて手続していただくならば、本人が直接出頭されたりいろいろなめんどうな手続をとられなくても簡単に日本の出国を認めましょうという方針で先方に伝えてあるわけでございます。ボールは先方へ投げたのですが、先方からこれに対する応答が現在までのところない。そのために現在、日本赤十字と朝鮮赤十字との間の話し合いが途絶しておるというのが現状でございまして、この投げたボールが一応返ってきますと、それに基づいてできるだけ早く円満にこの問題が妥結されることを関係者一同こいねがっておるわけでございます。
○大原分科員 つまり一万七千名以後のことが密接に関係しておるわけですが、ただその場合でも、一人一人自由に帰りなない、それは自由ですよ、こういうのは、どこをどう通って帰るかという問題を含めて非常に不親切ですね。結局向こう側が船を持ってきて、向こう側の費用でもって帰るのですから。集団帰国についてはいままでの他の外国人とは違った立場にあるわけですから、そのことを考えて、人道の立場から十分実情に即したようにすべきである。そのほうが費用は安く済むし、便利なんですから。それから日本の国益にも何も関係ないわけですから。
 それからもう一つは、手続上の問題についても赤十字があるわけです。だから、向こうにボールを投げましたよということではなしに、双方が合意できるような提案を、いままでのことにこだわらないで虚心たんかいにすべきである。そういう点については積極性を示してもらいたいわけですよ、日本において特殊な事情があるわけですから。ですから、私はその点について向こうの返答待ちというふうなことではなしに、そういう実情に即して方針をきめて実行に移す、その際には政府はとやかく言わないということでルールができれば、これは韓国であろうがどこであろうが文句を言う筋合いではないわけです、内政干渉ですから。そういう点については思い切った措置をすべきではないかということでありますね。いかがですか。
○吉田(健)政府委員 ただいま御指摘の事後措置の点に関しまして、個々に帰国するのは自由だから、それで問題は解決しておる、そうじゃなくて、やはり集団的に帰すということを親切に考えるべきじゃないかとおっしゃられる点につきましては、私も御趣旨をよく理解できますし、まさに私たちは個々に帰られる方は個々に帰っていただくが、いま御指摘のように配船の都合、経路の不便さとか、いろいろな問題がありますので、集団的に帰られる場合のことをも予想して、その配船で来られたときの代表者の日本に入る手続をどうするかということに問題がいましぼられまして、これでどうだ、これでどうだということで話し合っておるわけでありまして、一応わがほうの提案が出ておりますので、それに対して先方の確答が参りました上でさらに次の段階に進んでいく、こういうことになろうかと思うわけでございます。
○大原分科員 時間もありませんが、里帰りの問題がこの前一般質問のときに議論になりましたね。里帰りの問題につきましては、前の法務大臣との間において若干経過があったわけですね。これなども当事者にとってみれば人権上非常に重要な問題ですが、この問題についてはどのような考え方で処理されますか。
○小林国務大臣 前回この席でたいへん大原委員におしかりを受けた問題でありますが、この前の二名の問題があったわけでございます。これについて非常なおしかりを受けたわけでありますが、今回においてこれを再考しようというふうなことには相なっておりません。
○大原分科員 その問題を含めて里帰りの問題について、前向きな処理をする意思はありませんか。
○小林国務大臣 これは先ほど申し上げましたが、若干前進する形において考慮をしておる、その内容あるいは時期等はいまは申し上げられない、こういうことでございます。
○大原分科員 里帰りの問題については具体的に前向きに処理をするような用意はある、こういうことですが、具体的な問題について言いますとまた前のようなことになってくるということを御心配だと思うわけです。
 時間も参りましたが、この問題はやはり人道的な立場で処理することが、短期的にも長期的にも国の利益に合致する。そして国と国との間に国交関係がないというふうな場合は、赤十字があるわけですから、赤十字が赤十字の精神、人道上の精神でこの問題を処理する。こういうことでは、政治の不当な介入、干渉というふうなことを許したがごとき印象というものは、いままでの精神からいいましても、あるいは世界人権宣言からいいましても憲法からいいましても、そういう点はあってはならぬことであります。このようなことに対して政治が介入し、不当に混乱をすることはいけないことであります。不当に問題を混乱させる、それこそ政治的であるという理由になるわけであります。したがって、この問題については熱意をもって前向きに処理するように私は強く法務大臣に期待をしておるわけでありますが、法務大臣から最後のお答えをいただきまして、私の質問を終わります。
○小林国務大臣 お話の向きは十分承っておきます。
○笹山主査 次は松本善明君。
○松本(善)分科員 法務大臣に出版妨害問題について伺いたいというふうに思います。
 公明党、創価学会の出版妨害事件は、今国会冒頭から重要問題として論議をされておりますので、法務大臣も重大な関心を払っておられるとは思いますが、総理大臣も答弁で、言論、出版の自由は民主主義の基本をなすものであり、政府としても言論、出版が不当に抑圧されることがないように十分配慮をしなければならないというふうに答えておられるわけであります。この民主主義の根本にかかわる重大な問題でありますが、憲法二十一条でもこれを保障しているだけではなくて、特に法務大臣に注意を喚起しておきたいと思いますのは、憲法八十二条で出版に関する裁判が政治的事件とともに公開で行なうことを特にきめておる点であります。これは出版の権利というものが、単に著者や出版社の権利にとどまらないで、国民すべての知る権利に関することだから、こういうふうに明記をされておるのだと思うわけであります。こういう重大な問題でありますので、出版妨害について、そこに犯罪あるいは人権侵犯がある場合には、きびしい態度で対処しなければならないというふうに考えておりますが、法務大臣のこの点についての御所見をまず伺っておきたいというふうに思います。
○小林国務大臣 私ども事実関係は十分承知しておりませんので、軽々に申し上げることはできませんが、出版過程において暴行、脅迫等の事態があれば、これは刑法上の問題として刑事責任を負わなければならぬということになります。人権の問題は別途の問題でありますが、いわゆる刑事責任の問題は、さような趣旨においてわれわれがそういうことがあったかどうかを知る端緒がなければむろん捜査もできないということで、現段階におきましては、私どもは暴行、脅迫等の問題についてはこれを知るような事態になっておらぬ、こういうことでございます。
○松本(善)分科員 私の法務大臣にお聞きいたしましたのは、一般論といたしまして、この言論妨害問題について、犯罪や人権侵犯事件があれば――これはあればですよ、事実はもちろん調べてからでなければわかりませんけれども、これはあればきびしい態度で処理しなければならないのは当然ではないかということを伺っておるわけです。
○小林国務大臣 それはもう当然でございます。
○松本(善)分科員 それからまた犯罪があるというふうに思量するならば、捜査当局はすぐ捜査を開始をすべきであり、これは告訴や告発のいかんにかかわりません。また、人権侵犯事件処理規程第二条によりますと、「事件の調査は、書面若しくは口頭による申告、人権擁護委員若しくは関係官公署の通報又は新聞等の出版物の記事若しくは放送その他の情報によって開始するものとする。」というふうに書いてあります。したがって捜査当局や人権擁護局は、出版妨害事件についても、犯罪もしくは人権侵犯事件があると考えられる場合は、告訴、告発のいかんにかかわらず、また国会で論議をされているといなとにかかわらず、国民の知る権利を擁護するという立場から、捜査もしくは調査をすべきであるというふうに考えますけれども、法務大臣の所見を伺いたいと思います。
○小林国務大臣 これは御承知のように、犯罪は予断や見込みをもって捜査をするというようなことは非常な問題でありますから、検察当局としましては、これは犯罪があるということについての十分の認識を持つだけの端緒がなければやるべきでない、こういうふうに考えておるのでありまして、本件につきましてもさような趣旨からいまのような処置に出ておらぬ。しかし、人権の問題はこれまた多少違うのでありますが、従来人権問題というものは、大体被害者の救済、あるいは被害者、侵犯された者からの申告あるいは要請、こういうことに基づいて発動しておる。こういうことでございますが、今回の事件におきましては、新聞その他においてはわれわれも資料を持っておりますが、関係者からは何らの要請もまだない。こういうことからして格別の調査はしておらないようでございます。
○松本(善)分科員 私が法務大臣にお聞きいたしますのは、現在どうかということではなくて、犯罪あるいは人権侵犯事件があると考えられる場合には、告訴や告発のいかんあるいは申告のいかん、国会で論議をしているといなとのいかんにかかわらず、もし犯罪や人権侵犯事件があると考えるならば、捜査当局や人権擁護局は動くべき性質の筋合いではないかという一般論をお聞きしておるわけであります。
○小林国務大臣 いま申し上げるように、捜査当局としてはそれについての端緒がなければやれない。端緒とは何かといういろいろな問題がありますが、告発、告訴もあればあるいは密告、いろいろな問題がありますが、そういう端緒を得ておらない、こういうことであるからしてそういう処置に出ていないと……。
○松本(善)分科員 私は、現在端緒を得ていないという趣旨の答弁についてはもうわかったわけですが、一般論といたしまして、これは告訴や告発がないからやらないとかあるいは国会で論議をしておるからやらないとか、そういう性質のものではなくて、独自に捜査当局が端緒を得るならば当然やらなければならない筋合いのものではないか、こういうことを伺っておるわけであります。
○小林国務大臣 これはお話のとおりでありまして、端緒があれば当然やるべき問題だ、こういうふうに思います。
○松本(善)分科員 それでは、具体的なことをお聞きしたいのでありますが、この出版妨害事件につきましては、全国の書籍小売り店の大部分を占める八千百二十五の業者を組織しております日本出版物小売業組合全国連合会も、業界人として黙視することができないということを決議をしております。講談社、平凡社、小学館、岩波書店、中央公論社など大手出版社のほとんどを組織しております日本書籍出版協会もこの問題について声明を発表をして、この核心をなす事実はもはやおおいがたいまでになっているという声明を発表をしております。また出版労協とか新聞労連とかマスコミ共闘とか出版報道関係に働いておる労働者を組織する団体も、それぞれこの出版妨害事件について声明を発表をしております。
 こういうふうに出版、小売り、そういう言論界に働く非常に多くの人たちがこの問題について声明を発表をしておるわけでありますが、法務大臣はこの問題についてのいろいろな新聞報道や雑誌の報道、そういうものを通じてごらんになって、公明党、創価学会に対する批判の書物の出版が妨害というふうに言っていいかどうか、それまで法務大臣にいま聞こうとは思いませんけれども、この出版が困難であった、そういう少なくも時期があった、そういうことがあったといまお考えでありますかどうか、その点について法務大臣の所見を伺いたいと思います。
○小林国務大臣 いろいろの新聞、雑誌あるいはその他においてあったように言われておる、そういうことを承知しております。
○松本(善)分科員 それでは法務大臣に事実を少しお聞きをしたいというふうに思います。
 本日第一議員会館で有志議員集会が開かれました。そこでいろいろな事実が被害者から訴えられたわけであります。その中に、西日本新聞の東京支社の論説委員の隈部大蔵という人がおられます。この人は福島泰照あるいは隅田洋、こういう名前で出版をしておられる方であります。この名前を、ペンネームを使わなければ出版をすることができなかった。いまやっと本名をあかすことができるということはたいへんうれしいことだというふうにこの集会で訴えられたのでありますが、この人の最初の出版はこの本でありまして、「日蓮正宗・創価学会・公明党の破滅」という本であります。これは写真植字で、普通の印刷をすればわかってしまうということで写真植字で非常に秘密裏にやられておるわけです。これは一冊も出ませんでした。一冊も出ません本でありましたけれども、この本の出版契約書におきまして、先ほど資料をお渡しいたしましたが、市販できない場合のことをわざわざ書いてあるわけなんです。備考というところに、市販できない場合はどうするということを書いている。これは出版契約は当然に本が出るということを予想をしてそうして契約をするものであります。ところが契約のときに、本が出ないかもしれない、市販できないかもしれないということを予想して出版契約をしておるわけであります。これはこういう本の出版が非常に困難であったということを何よりも明白に証明をしておると思いますけれども、いまこの事実を私が申し上げて、法務大臣はこういう種類の書物の出版が困難であったというふうにはお考えにならないかどうか、御所見を伺いたいというふうに思うわけであります。
○小林国務大臣 こういうことにつきまして困難であったかどうかというようなことが私からお答えすべき筋のことではないんじゃないか、こういうふうに思います。これはお互いに自由な個人間の契約であったというふうに思うのでありますが、私からこの内容についていま批判すべき段階ではない、かように考えております。
○松本(善)分科員 ここで私どもが事実を示して法務大臣に所見を聞きますのは、まだ端緒を得ていないとか、あるいは捜査は開始をしていないとかということを言われるものですから、法務大臣の所見を、事実を示して、どう考えられるかということを聞いておるわけです。
 ここで犯罪が成立するかどうかということを法務大臣に詰めようというふうには思っておりません。しかし、この出版契約書そのものに市販できないことを予想して書いてある。このことは常識的に見て、なるほどそれは出版というのは非常にむずかしかったというふうに思うのが常識のある人間の考えであります。その常識が法務大臣には通用しないのかどうか、すなおにそれが犯罪になるかどうかということをお聞きしておるのではありません。この契約書を示されて、このとおりであるならば、なるほど出版というのはむずかしかったのかもしれない。その感想を聞いておるわけであります。もう一度お答えいただきたいと思います。
○小林国務大臣 これはどうも私の職責上お答えをしなければならぬ問題かどうかということについて、私は疑念を持っておるのであります。
○松本(善)分科員 そうすると、それについてはお答えにならぬというわけでございますか。――それではさらに、この件に関して事実をお聞きしたいというふうに思います。
 福島氏はこの第一作、この本が出版ができないようになりましてから――これは出版社も印刷所もつぶされてしまいました。そしてやみに葬られたわけでありますが、その次に「現代のさまよえる魂」という主題のもとに、今度は原稿を書き上げるまでは出版社をきめないで二百字詰め原稿用紙九百枚のものを書き上げました。それがこれであります。そうしてこの原稿のままで出版できなかったのです。これはだてに法務大臣にお示ししているのではありません。これだけ原稿にしても、出版できないという事実があったということの証拠としてお見せしているわけです。これは何よりも物語っています。出版できないのです。そうしてやみに葬られてしまったわけです。ところが、これも創価学会、公明党の知るところとなって、その最高幹部の某が介入をいたしまして、これも断念せざるを得なくなった、これが第二の事件です。
 それからさらに、この二冊の弔いの書を出版をするということで、第三の書の「創価学会・公明党の解明」という本が出されたわけであります。これも極秘のうちに印刷して、やっと四十四年の、昨年の十一月にでき上がったわけであります。これもいまでこそ取り次ぎ店が新刊扱いをしておりますけれども、出版したときは、三月上旬までは新刊委託扱いはされないという事態であったわけであります。
 ところで、きょう私が法務大臣にお聞きしたいのは、この中での第二の事件、隈部氏の受けた圧迫の内容のことであります。この「現代のさまよえる魂」の原稿を書いておるときに、原稿を書き上げないうちに、創価学会、公明党の知るところとなって、隈部氏の地位に重大な影響を与えることのできる有力者から――これはいまでもその氏名を明らかにしたくないということを言われておる状況であります。公明党についての出版を計画しているのは事実か、もしそうであれば、出版の動機、経緯、内容等について至急手紙で詳細に説明されたい、という内容の親書も来ている。それから自分の親友から原稿の題名、副題、どういう原稿用紙を使っているかということまで情報がキャッチされているということは聞かされている。それで隈部さんは、自分のまわりに創価学会、公明党の情報網が張りめぐらされているという不安とおそれを抱いたという状況でありました。
 そのうちに、隈部さんは創価学会の最高幹部であり、公明党の当時副委員長でありました参議院議員の北條浩氏と面会をせざるを得ないということになってきたわけであります。私どもたいへん不本意でありますが、同僚議員の名前を上げなければならない。これは議員としても、やはり出版妨害をするということはできない。この点については、何ら普通の人と同じように、特権はないのだというふうに確信をしております。それで事実を明らかにするために言うわけであります。北條氏とは一面識もないので、面会を隈部さんは断わり続けてきたけれども、連日のように面会を求められる。とうとう四十三年九月十一日に、東京赤坂のプリンスホテルの一室で面会するということになったわけであります。そこで一時間半話し合いました。そのときの事情をお話しいたします。これは法務大臣よく聞いていただきたいのです。これが一体捜査や、あるいは人権侵犯事件として、法務省としても考えなくていいかどうかということをあとでお聞きしますから、よく聞いていただきたいと思うわけであります。
 そのときの隈部氏が北条氏からもらった、これは名刺であります。そして会って、そのときの様子については隈部さんがその当時メモにして書いてある。この手帳がメモであります。このメモはどういうふうに書いてあるかと申しますと、北条氏の発言として、「@『破滅』以来の情報収集により西日本の隈部の名前が浮かぶA情報の根拠を示さず(示そうとする気配も見られず)B経済研究者であるから、ふしぎに思っているC民社党は自民党から生まれたもの、自民党は金権政治D人間革命、闘争、青年部の情熱、確信と情熱を繰り返すE参議院選当選については結果論的には追加当選もあり得たが、実際問題としては苦闘であったF別かれぎわに、社と新聞の関係もできたことだから、今後ともお会いしたいGアリでも象は全力をもってつぶす」また、このメモのあとには「備考」として、隈部氏の印象に強く残ったものとして、「A『破滅』については裏付け資料もかなり持っているらしい。また『破滅』に続く計画も最近の情報を得たという。Bそのせいか、執拗に裏側を探るような気配は見えなかった。」としるされておるわけです。
 また、この当時の内容を、このメモをもとにして言われたことを隈部氏が手記にしたものをお読みいたします。こういうことが言われたということです。「@初版即絶版となった隅田洋著『目蒲正宗・創価学会・公明党の破滅』以降、この著者が一体だれであるかということについて情報収集してきたが、その結果、西日本新聞東京論説委員の隈部という名が浮かんできた。Aもっとも、あなたは経済担当の論説委員であり、エコノミストとして幾つかの経済の専門書も出していることだし、そういうあなたが宗教を論ずることに対し、私は不思議に思っているのだが……。しかし、『日蓮正宗・創価学会・公明党の破滅』の著者、隅田洋というのが、実はあなたのペンネームであるということが調査の結果ほぼ明らかになったわけだ。Bさらに、あなたが前著の『破滅』に引き続いて、何か公明党、創価学会についての第二の批判書を執筆し、その出版計画を立てているという確実な情報を最近得た。C創価学会は、言うまでもなく伝統ある日蓮正宗を信奉し、日蓮大聖人様を本尊としている世界最高の宗教である。そういうわけだから、創価学会に対する批判は絶対に許されるものではない。また一方、創価学会は、そこらのおかしな新興宗教とは全く内容が違う。Dさらに、創価学会の中でも、特に青年部は、人間革命、闘争心、情熱、確信に非常に燃えていることを強調しておきたい。Eだから、創価学会、公明党を批判するものに対しては、創価学会という象は、アリの一匹といえども、全力をもって踏みつぶすということを十分承知をされたい。」こういうような趣旨のことを言われたということであります。
 隈部氏は、まだ出版社もきめていない原稿について、創価学会、公明党に情報がつかまれ、しかも自分の運命に重大な影響を及ぼすことのできる有力者を通じて、北条氏と面会をせざるを得ないという立場に置かれ、さらにいま読み上げましたメモのように、創価学会青年部の情熱を繰り返し強調される。アリでも象は全力をもってつぶすというふうに言われたわけです。したがって隈部氏は、この出版を続けていくならば、身辺や家族への危害、会社での地位の変化が起こるのではないかと心配をしたというふうに訴えております。そして、この出版をしていくためには、家族の疎開も考えなければならないと思い、また当時学生の火焔びん事件もあったので、家の周辺に金網でもしなければならないということを真剣に考えたということであります。しかし、これらの対策もできないし、出版社との最終的な契約もできなかったので、この「現代のさまよえる魂」の出版を断念せざるを得ないということになって、このように原稿のまま残っておるというわけであります。
 そして第三回目の著書の「創価学会・公明党の解明」の前書きで隈部氏が述べているように、まさにここには弔いの書として出すということを述べております。出されたわけであります。この「解明」のときには、隈部氏は「現代のさまよえる魂」の原稿のとき以来、考え続けてきた身辺整理に決心がついた。会社での地位の変化も覚悟する。退職ということも覚悟する。家族を熊本に疎開させ、自分の家は、いとこの家族に住んでもらって、自分は身を隠して出版をするという決意で出版を始めたということであります。ところが幸いにも、藤原氏の「創価学会を斬る」に対する公明党、創価学会の出版妨害問題が大きな問題になって、隈部氏の言によれば、奇跡的に助かったということであります。隈部氏はまた、「現代のさまよえる魂」の原稿についての情報が、創価学会、公明党に知られているということが知らされたころから、腰が悪かったというせいもあるけれども、ステッキを常に携帯し、医療用のコルセットをつけて――かたいコルセットです。万一のときに備えたということであります。そして、これは藤原氏の「創価学会を斬る」の問題が大きくなったので、もうだいじょうぶだというふうに思うようになって、初めてやめたということです。コルセットもやめる、それからステッキの携帯もやめるということになったということであります。
 出版妨害行為は、こういう深刻な事態を引き起こしております。これは私直接隈部氏からお聞きしたことであります。このような深刻な事態が起こっておる。まず、このいまの事実を私が法務大臣に御報告をした。この事実について法務大臣、一体どのような御感想をお持ちになりますか、お聞きしたいと思います。
○小林国務大臣 これはいま私も初めてお聞きするのです。そして、このような問題についてどういう趣旨でもって法務大臣がお答えしたらいいかどうか、私もわかりませんが、個人としてはいろいろの判断もあります。しかし、大臣としていまここにあなたから初めて報告を聞いて、そしてここに軽々しくこうだというふうな断定は私は適当でない、かように考えております。
○松本(善)分科員 もちろんこれについてはいろいろの人権侵犯事件であるとかあるいは犯罪事件としてもし取り上げるならば、それはあらゆる観点からの検討が必要でありましょう。場合によっては北条氏からもいろいろ聞くということも必要でありましょう。あるいはその他の事情も調べる必要もありましょう。ありましょうけれども、少なくもいまの私がお話をいたしまして、法務省としては黙っていていいというふうにお考えになりますか。ほっておいていい問題であるというふうにお考えになるかどうか。
○小林国務大臣 これは、いまのようなお話をずっと黙っておられたわけですね。われわれは少しも関知をしなかった。知らなかった。これも私もどうかと思いますし、さような重大なあれがあればしかるべき措置をとられるべきではなかったかと思いまするが、いままで、あなたから聞くまで私どもも何も知らない、こういうことでございまして、いまのお話は、私ども法務省の資料としてひとつ承っておきます。
○松本(善)分科員 法務大臣「それで私は一番最初に、告訴や告発、それから申告のいかんにかかわらず、国会での論議のいかんにかかわらず、法務省は人権侵犯事件や犯罪ありと思量するならば動き出すべき筋のものではないかということをお聞きしたのであります。その点について、法務大臣はそうだということを言われました。いま初めてここで国会議員から聞かされた、それまで知らなかったのはあたりまえだと言わんばかりのお話です。それで一体法務省や検察庁や人権擁護局のつとめは済むのか。国会で問題になるまでは一切何もしないでいいのか。これだけ国民が大きく問題にしておる中で、一体問題のある点はどこにあるかということを法務省の中では、検察庁やあるいは人権擁護局は考えなくていいのかどうか。そこのところをお聞きしたいと思います。黙って知らぬ顔をして、国会で問題になってから初めて考えていいのかどうか、そこです。
○小林国務大臣 これは事実いまあなたのおっしゃったこと、報告も初めて私どもは聞いておるのです。しかし、われわれにはこれを知るべき手だてはありません。そんなことをまたそこらへ行って見込みでもってお聞きして回るわけにはまいりません。したがって、私はいま申すように、あなたの話は私どもの今後の考える資料として承っておく、こういうことでございます。
○松本(善)分科員 法務大臣、先ほど人権侵犯事件処理規程の二条を読み上げました。それは、新聞の報道によってもそれを端緒としてやらなければならないということを書いてあるのですよ。それについてどうお考えになりますか。
○小林国務大臣 これは松本先生よく御存じのように、法務省の訓令――新聞等によって知っても調べろというのは訓令でございまして、これは要するに従業員の心得を示した、こういうことでありまして、いわば一般社会に対する責任と申すか、義務をいうたものではない、そういうこともしなさい、こういうことをいったのであります。しかし、いままで大体長い間の人権問題でありますから、これらは大体において私どもが調べろとかあるいは調べるなとかいうことを上から指示したことはありません。それぞれ出先当局の所管になっておりまして、その判断においてやる、こういうことになっております。したがって、これはどういうことをやるかはそれぞれの法務局の担当官の判断においてやっておる。しかもやることは、御承知のように人権問題は単に調査をするだけでありまして、強制権も何もない。お断わりを食えばそのままだ、こういうふうな事柄でありますから、事柄によって調査が非常に困難だということでございます。今日かような大きな問題を国会で論議されておる、こういうことでありまして、もしわれわれの発動、こういうことについて何らかの――いまみなそれぞれそんなことはよく御存じの方々であります。人権問題の要請とかあるいは申告とか、これらの方々がわれわれにそれを知らせるとか、こういうようなことをされておらないということは一つの事実でございますので、その点も申し上げておきます。
○松本(善)分科員 法務大臣、だから私は、告訴や告発のいかんにかかわらず、申告のいかんにかかわらずということを先ほどから言っておるわけです。先ほどの人権侵犯事件処理規程、これは内部の訓令だというふうに言われましたけれども、そのとおりに行なわれてなければ法務大臣が監督すべき責任があるのじゃないですか。
○小林国務大臣 そのとおりに行なわれるのが通常の場合でありますが、いままでの長い間の慣例上そういう、ただ新聞とか雑誌とかいうようなことで発動を大体しない、こういうふうな慣例になっておるのでありまして、これをこの際あえてとがめることもどうかというふうに思います。しかし、これはいろいろ資料によってこれからまたそういうふうな判断をされるかもしれません。しかし、かような問題は、実はいま申すように、慣例としてわれわれのほうから、上からあまり指示しないのが普通でございまして、また必要があればそういうこともあり得ると思いますが、いままではそういうことはしておらない、こういうことでございます。
○笹山主査 時間がまいっておりますので結論を急いでください。
○松本(善)分科員 その点についての人権擁護局長の意見を聞きたいと思います。
○川島(一)政府委員 人権侵犯事件処理規程はただいま大臣が仰せになりましたような訓令でございます。これは私ども事務を取り扱う者といたしましては、事件を調査する、その調査を開始する場合にはどういう場合にするかということを一応定められたものというふうに考えております。したがって、当事者の申告あるいは関係行政庁その他からの通報、それから新聞、ラジオの情報、そういうものによりまして人権侵犯事件として調査する必要があると認めた場合にはそれに基づいて調査をせよ、こういう趣旨の規定だというふうに考えておるわけでございます。御承知のように、人権侵犯事件というのは、人権侵犯によって被害を受けた者を救済するということに主たる目的があるわけでございます。したがいまして、被害者からこういう被害を受けたからぜひ救済してほしいという申告がございました場合には、これは原則として取り上げるということにいたしております。しかしながら、人権侵犯事件のすべてが人権擁護機関によって救済されるのではなくして、あるいは刑事事件あるいは民事上の訴訟などによって救済される場合もございますし、また本人が被害を受けたけれども人権擁護機関のお世話になりたくないという場合もございます。そういうわけで、新聞、ラジオなどの情報だけによって直ちに事件を取り上げるということは、よほどの事情がない限りこれを避けるというのがいままでの慣例でございます。
○松本(善)分科員 最後に、刑事局長に伺いたいのでございますが、この出版妨害事件については、場合によっては威力業務妨害あるいは場合によっては強要、強制あるいは独禁法違反というようなことも言われております。もちろんどのことがどれに当たるということをいま言うわけではありませんけれども、そういう刑事事件になる場合もあり得ると思いますけれども、これについての一般的な見解を刑事局長にお聞きしたいというふうに思います。
○辻政府委員 具体的な事実関係を前提にせずに、どういう場合にどういう犯罪になるかということはちょっとお答えいたしかねるわけでございます。ただ先ほど来お話がございますように、検察官は犯罪の嫌疑があり、それを裏づける十分な証拠があり、かつみずから捜査をする必要があるというふうに認定いたしましたならば、当然犯罪の捜査をすることは申すまでもございません。
○松本(善)分科員 時間が参りましたので、十分にこれらの点について、いまこの場で法務大臣や法務省の当局の諸君に問題を詰めて議論をすることができないのはたいへん残念でありますが、これからの法務委員会その他におきまして具体的な事実をあげながらさらに論議を詰めたいというふうに思います。法務省当局といたしましても、きょう私が申しましたことを資料にするということを法務大臣言われましたけれども、さらにこの全般にわたって、国民の出版をする権利あるいは知る権利というものが妨害をされないように、そのために法務省としても努力をするという方向でやってもらいたい。その点についての決意を法務大臣一言お聞きいたしまして私の質問を終わりたいというふうに思います。
○小林国務大臣 お話しのようなことはその決意でこれからもやる、当然であります。
○笹山主査 これにて昭和四十五年度一般会計予算中、法務省所管に関する質疑は終了いたしました。
 明十八日は午前十時より開会し、裁判所所管の予算を議題とし、質疑を行ないます。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後八時四十二分散会