第063回国会 科学技術振興対策特別委員会 第11号
昭和四十五年五月六日(水曜日)委員会において、
次の通り小委員及び小委員長を選任した。
 海洋開発に関する小委員
      海部 俊樹君    木野 晴夫君
      佐々木義武君    菅波  茂君
      鈴木 善幸君    田川 誠一君
      前田 正男君    井上 普方君
      石川 次夫君    山中 吾郎君
      近江巳記夫君    北側 義一君
      吉田 之久君
 海洋開発に関する小委員長   田川 誠一君
―――――――――――――――――――――
昭和四十五年五月六日(水曜日)
   午後一時二十五分開議
 出席委員
   委員長 北側 義一君
   理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君
   理事 菅波  茂君 理事 田川 誠一君
   理事 前田 正男君 理事 井上 普方君
   理事 近江巳記夫君
      加藤 陽三君    梶山 静六君
      森  喜朗君    石川 次夫君
      三木 喜夫君    吉田 之久君
      寺前  巖君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      西田 信一君
 出席政府委員
        科学技術庁長官
        官房長     矢島 嗣郎君
        科学技術庁計画
        局長      鈴木 春夫君
        科学技術庁研究
        調整局長    石川 晃夫君
 委員外の出席者
        公正取引委員会
        事務局取引部長 坂本 史郎君
        厚生省環境衛生
        局食品化学課長 小島 康平君
        参  考  人
        (東京医科歯科
        大学教授)   外村  晶君
        参  考  人
        (医事評論家) 水野  肇君
        参  考  人
        (財団法人癌研
        究会癌研究所主
        任研究員)   蕨岡小太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十七日
 辞任         補欠選任
  谷垣 專一君     鈴木 善幸君
    ―――――――――――――
五月四日
 海洋資源開発振興法案(矢追秀彦君外一名提出、
 参法第一一号)(予)
 海洋資源開発公団法案(矢追秀彦君外一名提出、
 参法第一二号)(予)
 海洋資源開発技術総合研究所法案(矢追秀彦君
 外一名提出、参法第一三号)(予)
同月六日
 海洋資源開発委員会設置法案(矢追秀彦君外一
 名提出、参法第一四号)(予)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会設置並びに小委員及び小委員長選任の
 件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興対策に関する件(食品加工技術に
 関する問題)
     ――――◇―――――
○北側委員長 これより会議を開きます。
 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。
 海洋開発に関する問題について調査を行なうため、小委員十三名よりなる海洋開発に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
○北側委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、海洋開発に関する小委員に
      海部 俊樹君    木野 晴夫君
      佐々木義武君    菅波  茂君
      鈴木 善幸君    田川 誠一君
      前田 正男君    井上 普方君
      石川 次夫君    山中 吾郎君
      近江巳記夫君    北側 義一君
      吉田 之久君以上十三名を指名し、小委員長に田川誠一君を指名いたします。
 なお、小委員、小委員長の辞任及びその補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
○北側委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 まず、参考人出頭要求に関する件について、おはかりいたします。
 食品加工技術に関する問題調査のため、本日、東京医科歯科大学教授外村晶君、医事評論家水野肇君及び財団法人癌研究会癌研究所主任研究員蕨岡小太郎君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
○北側委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
○北側委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうか本問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。
 それでは、外村参考人からお願いいたします。
○外村参考人 私は、いま御紹介いただきました東京医科歯科大学の外村でございます。
 私は、昭和四十三年の厚生省科学研究班で、甘味剤の一つでございますサイクラミン酸塩の毒性に関する研究の一員といたしまして、サイクラミン酸塩の代謝産物でございますシクロヘキシルアミンの染色体に及ぼす影響について検討を行ないましたので、本日この問題の参考人といたしまして、私どもの研究課題を中心として、細胞遺伝学的な立場から二、三の私見を申し述べさしていただきたいと思います。
 サイクラミン酸塩を含む幾つかの人工甘味料のハツカネズミに対する致死量あるいは許容量の測定というふうなものは、すでに岩手医大の田中助教授によって発表されたのでありますが、今回この問題提起の直接的な動機となりましたのは、一昨年の秋、アメリカのFDAのグループがサイクラミン酸ナトリウムあるいはカルシウムの代謝産物であるシクロヘキシルアミンが、ネズミの一種でありますカンガルー・ラットのじん臓の培養をした細胞とか、あるいは骨髄の細胞あるいは睾丸の染色細胞などの染色体に異常を起こしたという報告に、みながびっくりしたわけでございます。高等動物の組織の細胞を培養して、その培養細胞に対する薬物の作用を調べる、こういうことは一般に広く行なわれている研究方法の一つでございますが、実際には生体から取り出した細胞を人工的にガラスのびんの中で飼うという特殊な条件下に起こったのでございますから、そこに起こった変化をそのまま直ちに生体に結びつけて考えられるかどうかというと、そこには幾つかの問題がございます。このことは、染色体そのものに対しても言えることでありまして、たとえば、DNAのベースアナログの一つであります五−ブロモデオキシウリジンというのは、塩基の一つのチミンと置きかわって、DNA合成の阻害を起こします。このようなことは、実際に化学実験でも証明されますし、それからまたバクテリアとか、いろいろなそういうものでもそういう現象が起こって、突然変異を誘発するというようなことがわかっております。こういうものを実際に生きた人間の細胞に作用させますと、染色体に異常が起こってまいります。このことから、人の染色体の場合でも、バクテリアなどと同じようにそういうような化学変化が起こっているのじゃないかと判断することができるわけです。
 しかし、このような理論的な裏づけがない場合、あるいは実際にその化学的反応において明確でないような場合には、培養細胞を使って実際に染色体に異常が起こったといたしましても、それがはたして直接的なその薬物の影響によるものなのか、あるいはそれが二次的なものかということはむずかしいわけであります。また、実際には濃度という問題もございまして、実際に生体に取り込まれた場合には、これは物質によって違いますが、非常に短期間に排せつされてしまうものも多いのであります。これに比べまして、培養細胞の場合は、その培養びんの中に入れっ放しになりますと、その入れている時間だけ全部その細胞に薬が渡ってくる。こういうことから、実際の生体の場合とはかなり条件が異なっております。
 こういう問題もございますが、それから、最近いわれておりますLSD、これは青少年が使うあれなんですが、LSDのようなものでも、染色体に異常を起こすという報告があります。それから、いや、そういう報告は、変化はあまりないのだ、そういうようなことを言う学者もおりまして、これは、実際の観察のむずかしさと、それから、使ったいろいろな条件というものによって違いが出てくるのじゃないか、こういうようなこともございまして、シクロヘキシルアミンがネズミの培養細胞の染色体に影響を与える、こういうことについても、いままで述べたような観点から、再検討してみる必要があると思いまして、私この実験に参画いたしたわけでありますが、その結果は、すでに厚生省に報告してございます。
 簡単に要約しますと、シクロヘキシルアミンを人のリンパ球あるいは人工流産胎児の組織の細胞に与えますと、その染色体に染色体の切断が起こります。しかし、私どもは、ハツカネズミの生殖細胞に対しては、実際のそういう生殖細胞の染色体に影響が出たという結果は得られませんでした。これは、動物によってあれが違うのか、あるいは濃度の問題とか、いろいろな問題がございましたが、私たちの実験結果では出ませんでした。
 それから、実際にいろいろな外国に行っていて、そういう習慣上何年かずっと人工甘味料を使っている人、それから美容のためにそういうサイクラミン酸塩を実際に何年か使った人、そういう人について、末梢血液中のリンパ球の染色体の変化を調べましたが、これも、一般の人と差異があるような、特別な、異常の増加ということは観察されませんでした。
 これがわれわれの結果なんでありますが、実際に、人の培養細胞の染色体に異常を起こすということはまず確実でございます。これは、ことしになりまして、カナダのストルツという博士が、サイクラミン酸塩類、それからその関連物資について幾つか調べましたが、いずれも人のリンパ球の染色体に異常を起こすということを報告しております。
 それで、そのこと自身はまず間違いのないことだろうと思いますが、ではその培養細胞の染色体に異常を起こした物質が、直ちに生体におけるいわゆる遺伝的な影響とか、あるいは発ガン、あるいは催奇形作用、そういう物質として断定していいのかどうかということが問題の焦点となります。
 まず、遺伝的障害ということに関しましては、こういう染色体異常が生殖細胞で起こった場合、その大部分の細胞というのは、受精する前に死んでしまったり、あるいは受精したとしても発生できなかったり、あるいは発生の途中で流産となってなくなってしまう場合が多いのであります。
 このような染色体の異常というのは、優性の有害効果をあらわします。ですから、実際問題として、ある薬物がその遺伝的障害を持った子供を実際に生産するかどうかということになりますと、先ほど述べましたような培養細胞での実験ではいけないのであって、実際にはやはりいろいろな実験動物を使って、実際に生まれてきた子供に奇形が出るかどうかという、そういう実験をやらなければ、ほんとうの遺伝的障害の有無を論じることができないわけであります。これは非常に時間がかかることでありまして、現在大規模なそういう調査というのはまだなされていないようです。ただ、こまかいデータは知りませんが、遺伝的あるいは催奇形作用はあまりなかったという、これはシクロヘキシルアミンについてですが、そういう報告がアメリカのほうでなされているそうですが、やはり実際にこれがほんとうに遺伝的に障害があるかどうかということをきめるためには、相当大規模な実験を行なわなければいけないのじゃないかと思います。
 それから、発ガンという問題、これはあとから蕨岡参考人からお話があると思いますが、私たちの分野から見ました観点から言いますと、最近、劣性遺伝病の一つに、色素性の乾皮症という病気がございます。これは、日光に当たりますと、皮膚が、赤く斑点ができて、それがだんだんかいようになって、しまいにはガン化して死んでしまう、そういう劣性遺伝病なんですが、これが、人のリンパ球を培養しまして、それに紫外線を当てますと、染色体の切断がたくさん出てまいります。ところが、これが、普通の人の場合ですと、そういうような切断が起こっても、直ちにそれが回復、切れたところがまたもとに修復されるのですが、この患者では、そういうのが修復されません。結局切れたまま残る。そういうようなことがもしもガン化という問題につながるとすれば、こういういろいろな薬物で染色体切断を起こすような物質というのは、やはりある程度発ガンということと関連してくるのではないかというふうに考えるわけであります。
 私個人の意見といたしましては、このような結果から生殖細胞の染色体に障害を直接与えるかどうかということはまだ確認されておりませんが、これまでに述べましたいろいろな事実に基づいて、サイクラミン酸塩を疑わしい物質として、使用を少なくとも中止することが望ましいのではないかと思います。たとえば放射線のようなものは、これは実際にもう遺伝的障害を起こすことは明確でございますが、やはり治療とかあるいは診断のために、われわれはどうしても使わなければならない、それに取ってかわるものがないわけですから、ある許容線量というような考え方をもってある程度使っていかなければならないわけですが、こういう甘味剤のような場合には、絶対的なものではないわけで、それにもしかわるものがあれば、それにかえるということのほうが望ましいわけで、初めに申しましたように、そういうやはりしっかりした遺伝的な研究がなされて、そういう障害がないということが確かめられるまで、やはり中止しているほうがよろしいのではないかというのが私の意見でございます。
○北側委員長 次に、蕨岡参考人にお願いいたします。
○蕨岡参考人 癌研究所の蕨岡でございます。私が専攻といたしますところは、ガンの実験発生の研究でございます。そのような関係もございまして、厚生省の食品衛生調査会の委員といたしまして、毒性部会、農薬の残留部会、石油たん白部会等におきまして、発ガンの立場から食品の問題について意見を述べさせていただく立場にございます。そういうような関係で、この前問題になりましたチクロの場合も、私はガンの立場から一応私自身の意見を述べて、食品衛生調査会のほうは、もちろんその意見を述べましたものを委員長の考えによりまして厚生省の方と御相談になりまして、御存じのような措置がとられたものと思います。
 そのような関係がございまして、私がガンと食品というものをどういうふうに考えているか、また考えたらいいか、さらに現在世界的に、またわが国の厚生当局がどのように考えているかということをまず最初にごく簡単に申し上げて、それからあとでまたごく簡単にチクロの具体的な資料について御説明を申し上げます。
 まずガンの問題でございますが、ガンが発生するほんとうの原因は現在のところまだわかっておりません。しかし、細胞の中でどういう変化が起きたらガンになるかということは非常にむずかしい問題でございますけれども、実際問題といたしまして、いろいろな外因によりましてガンが発生することは疫学的にもまた実験的にもいろいろと証明されておりまして、環境の因子が発ガンに及ぼす影響というものはかなり具体的にいろいろわかっております。しかし、ガンと申しますのは、一般的に非常に発生するまでの期間が長うございまして、一般的には大体寿命の半分以上、ごく短いときでも五分の一とか三分の一くらいかかりませんと出ないものでございます。まずそういうことをよくお考えに入れておいていただいて、ちょっと話を聞いていただきたいと思います。
 食品の場合の問題点は――食品が加工されてわれわれの口に入るということがだんだん多くなるのは文明のしからしむるところでありまして、利点でございます。しかし、文明は両刃のやいばでございまして、利点がある反面必ず欠点がございます。食品の加工の場合にも、そういう利点を伸ばしながら、欠点はなるべく少しでも被害を少ないようにカバーしていくというのがもちろん当然だと思います。
 では、ガンでは一体どういうふうに考えたらいいかという問題になるのでございます。こういう食品に対する発ガン性とか慢性毒性とか催奇性とか、いろいろ欠点がございますが、そういうものに対する考え方がだんだんに固まってまいりましたのは一九五四年、戦後からでございまして、WHOあたりからそういう考えがだんだんと広まりました。わが国ももちろんその線に沿いましていろいろと行政当局が努力なさいまして、私たちもそのお手伝いをいたしました。そして、わが国におきましても、昭和四十年にWHOの考え方を取り入れまして、「食品添加物の指定および使用基準の設定、改正について食品衛生調査会において調査審議を行なう際の基準」というものを作成いたしました。この内容は皆さんもおそらく御存じだと思いますが、大体大綱はWHOの考え方にのっとっておるものでございます。その中で慢性毒性、発ガン性の問題をちょっと申し上げます。ここに書いてあるのをちょっと読ましていただきます。
 「慢性毒性試験」という項目では、「慢性毒性試験の実験期間は、原則として短い寿命の実験動物の全生涯にわたる期間とし、かつ次世代に及ぼす影響の試験を行なうこととする。しかし食品衛生調査会が特に承認した場合は、慢性毒性試験の期間等を適宜変更することができる。
 また、食品添加物として毒性がないと一般に認められるもの、最終食品に残存しないことが証明されるもの、その他慢性毒性試験を必要としないことが確認されるものについては、試験を簡略にすることができる。」
 それから具体的にどういうふうに行なうかという項目で、「慢性毒性試験」といたしまして、ア項といたしまして「原則として、ラットおよびマウスを用いて、平均寿命に近い期間の経口投与毒性試験および次世代に及ぼす影響の試験を行なう。この際場合によつては、その十二カ月以上の中間成績を毒性の判断を行なう資料とすることもある。また必要ある場合は、非ケツ歯類たとえばイヌ又はサルを用いた亜急性毒性試験(実験動物の寿命の十分の一程度)を行なう。」
 イ項といたしまして、「動物は慢性毒性を判定するために十分な数の雌雄両性を用いる。」
 ウ項といたしまして、「必要がある場合は、動物の離乳直後から投与を開始する。」
 エ項といたしまして、「投与量としては、最大安全量、最小中毒量および確実中毒量の三種類が判断できるような量を段階的に設定する。そのためには、あらかじめ亜急性毒性試験を行ない、その結果から慢性毒性試験の投与量を決定することが望ましい。」
 オ項といたしまして、「病理学的検査はできるだけ多くの臓器について行なう。」
 このように慢性毒性試験のことが書いてございます。もちろんガンの発生を検査いたしますのは、この慢性毒性試験の範疇に入るものでございまして、「短い寿命の実験動物の全生涯にわたる期間」この中に含まれるわけでございます。
 ところで、ラット、マウスにおきまして満二カ年、これは大体寿命の三分の二ないしはそれ以上に当たりますが、そういう試験を行なって確実に安全であるという安全量を出しまして、そのほかに動物種類の間の感受性の差を一〇とし、また人におけるいろいろ感受性の違いを一〇としまして、両方かけ合わせた一〇〇という安全率をかけまして、その範囲内で添加物の一日の摂取許容量というふうに定めておりますので、実際に厚生省で定めました量を少しくらい超過いたしましても、もちろん百倍以内でございますから、そういう意味では毒性を発揮するという心配はまずないというふうに考えていいと思います。もちろんこれの前提といたしましては、動物実験における成績が人間に該当することができるということを仮定した話でございます。それは非常にむずかしい問題でありまして、必ずしもできるとも限りませんが、人間を実験に使うことはできませんので、そういう方法で行なわれております。これは医学の社会では一般に常識として通用している概念であるといっていいと思います。でございますから、たとえ少しくらい超過しても毒であるというふうに短兵急に考えないで、安全性の規定の範囲をただオーバーしただけである、ほんとうに毒というのは百倍とか三百倍というような安全係数をこえて確実に毒性が出た場合に初めて毒だというふうに解釈していただけるといいのじゃないか。と申しますのは、添加物にもいろいろ急性毒性の問題があるものもございますし、慢性毒性のあるものもございますけれども、これはやはりあくまでも定量的な問題でございます。と申しますのは、生理的な物質にいたしましても同じようなものでございまして、あとからも申し上げますけれども、シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウムなどは甘味料といたしましては砂糖よりもむしろ急性毒性は低いのでございます。そういうこともございますので、すべてただ規定を超過したから毒であるというのじゃなくて、安全性がどこに置かれているかということをよく認識していつも考えていただきたい、そういうことをまず最初に申し上げます。
 それから次に、具体的に昨年問題になりましたチクロの問題でございますが、それがいままでどのようなデータがあるかということにつきまして、私が厚生省その他から入手いたしました資料につきましてごく簡単に申し上げます。
 チクロヘキシルアミンの問題でございますが、このチクロのソーダ塩は、まず急性毒性から申し上げますと、もちろん食品は経口で口から食べるものでございますから、注射したとかそれから塗布したとか吸入したという場合は、発ガン性の立場からはこの場合にはある程度は参考になりますけれども、最終的には経口で二年以上生涯に及ぶ試験をやったものがきめ手というふうに考えていいんじゃないかと思いますので、もちろんその経口の極性についてまず申し上げます。
 サイクラミン酸ソーダの場合は、マウスにおきましては経口でやりますと、半数の致死量は十ないし十二グラム、十一グラム、十七グラム、十五・三グラム、こういうような成績が出ております。またラットにおきましては十二グラム、十七・五グラム、十五・三グラム、もちろんこれは体重キログラムに換算いたしたものでございます。
 また、たとえばこれに対するものといたしまして、砂糖の場合はどうなっているかと申しますと、砂糖は八ないし十二グラムというふうに普通いわれているわけでございます。これからもわかりますように、急性毒性はむしろ砂糖より低いというふうに考えられます。
 それからサッカリンの問題でございますが、サッカリンのソーダ塩も、マウスにおきましては十七・五、十四・二グラムパーキログラムというような値でございます。それからラットにおきましては十七、十四・二グラムパーキログラム、もちろんこれもなお砂糖よりはそういう意味では急性毒性は低いものでございます。
 それから昨年問題になりましたサイクラメートのソーダ塩とサッカリンのソーダ塩との混剤の毒性でございますが、これもマウスにおきましては十二・八グラム、二十一・五グラム、ラットにおきましては十六・五グラム、二十一・五グラム、こういうふうに非常に低い値になっております。
 次に、その発ガン性の実験の問題を申し上げます。いままでどのような検査がなされていたかということから申し上げますが、サイクラミン酸塩はかつては非常に安全なものであるというふうに考えられていたのが、昨年突然問題になったのでございますけれども、すでに一九五一年にFDAにおきまして、この甘味料の毒性試験、発ガン性試験が行なわれておりまして、〇・〇五ないし〇・一〇、一・〇%でラットを飼いまして、期間は〇・〇五の場合は三カ月、〇・一〇の場合は二十四カ月、一%の場合は十八カ月という期間飼っております。これは三十カ月と申しますと、二年半でございますから、大体人間でいいますと七十五歳前後まで飼ったということになります。それから十八カ月は一年半でございますから、大体四十五歳前後という計算になります。これでいずれも特別な発ガン性は証明されておりません。
 それからさらに〇・〇一%、〇・一〇%、〇・五%、一%、五%、こういう高濃度において二十四カ月、人間でいいますと六十年に相当するわけでございますが、その間やりまして特別なガンの発生を認めておりません。そのほかに短い実験といたしましては十一カ月、十二カ月、六カ月などの試験もございますけれども、これは省略させていただきます。
 それから合剤の試験といたしましては、サイクラミン酸のソーダ塩とか、サッカリンのソーダ塩をまぜましたものを六カ月やっていますが、〇・五%、二%、これがいずれも期間は六カ月でございます。短うございますが、別に発ガンは証明されておりません。
 それから同じく合剤の実験でございますが、これは昨年のでございまして、それはあとから申し上げます。
 それからサッカリン自身の問題でございますが、サッカリンも〇・〇一%、〇・一%、〇・五%、一%、五%、こういう高濃度におきまして二十四カ月試験をいたしまして、やはり特別なものがございませんが、五%の分で二年を過ぎたものに一部腹腔内にリンパ肉腫があった、しかしこれは特別に実験に原因を求めるべきものかどうか疑問であるという程度の問題でございまして、特別な問題はございません。もちろん膀胱ガンの問題、肝臓ガンの問題、そういうものは出ておりません。
 それからチクロがからだの中に入りましたときに代謝産物としてできますシクロヘキシルアミン自体の毒性がどうなのか、発ガン性がどうなっているかという試験といたしましては、油に五%溶かしたもの〇・五ミリリッターを毎日与えまして十二カ月やっておりますが、これでも特別な発ガン性は認められておりません。
 それから同じくシクロヘキシルアミンの五%の油の溶液を〇・五%えさにまぜまして十二カ月やっておりますが、特別なものは認められておりません。ただ二十一カ月に肝臓の腫瘍が一つと、二十三カ月に腹の中の大網という組織がございますが、大網に一つ肉腫があるということは出ております。しかしこれは特別に実験によるものと考える必要はまずないのじゃないかと思います。と申しますのは、自然発生にもこの程度のものはよくあるのでございます。そのように大体なっております。
 ところで昨年の問題でございますが、いままで申し上げましたように、単品としてのチクロ及びその代謝産物のシクロヘキシルアミンの発ガン性最高五%の二十四カ月までのも、いままで一九五一年のFDAの試験でもネガティブでございましたが、昨年に出ましたものはどういう成績かと申し上げますと、サイクラミン酸ナトリウムとサッカリンのソーダ塩と十対一の割合で混剤にいたしたものをラットに投与いたしております。その投与量はWHOで人体の許容量として考えております量の十倍と二十倍と五十倍量に相当するものを二年間やっております。これは体重に換算いたしますと五百ミリグラムパーキログラム、千ミリグラムパーキログラム、二千五百ミリグラムパーキログラム、こういう状態でございます。えさに換算いたしますと〇・五%、一%、二・五%、こういうことになります。これをラットにやりまして一年六カ月たったところで、各実験群を二つに分けまして、片方にシクロヘキシルアミンを投与し、片方はいままでどおりサイクラミン酸塩とサッカリンソーダの混剤をそのまま食わせるというかっこうでやっております。そうしてこのデータは科学的な報告でございませんので、このデータだけからは具体的なことがかなりわからない点が多いのでございますが、その文章から推測いたしましたところでは、発ガン性はどうなっているかと申しますと、大体一年半と二年の生存率をあげておりますが、問題は要するに二年たったところで全部殺して組織を見て、膀胱に腫瘍ができていたということを認めたというふうに解釈していいと思うのでございますが、そういたしますと、一年半で二つに分けて、片方にサイクラメート、シクロヘキシルアミンをやり、片方にはやらないというのもやりまして、それからその動物の中では、チクロはからだの中に入りましたときに、それが代謝されてシクロヘキシルアミンになるものと、それからそうしないようなものという個体差があるのでございまして、〇・一%以下のもの、それから〇・七%までのもの、〇・七%以上の高度に転換するものというふうに分けて成績を出しておりますが、それによりますと、高度に転換するもののほうが成績としては多いようでございまして、大体二年のところで高度に転換するものは、雄は十一例中三例に膀胱のガン、それもシクロヘキシルアミンを投与しないほうの本来の群、それからシクロヘキシルアミンを投与している群でしかも高度に転換する群が良性腫瘍が雄に十例中二例、それから膀胱のガンが雄に十例中一例、雌に十四例中一例というかっこうになっておりまして、それからシクロヘキシルアミンに転換しない群は雄に一例中一例膀胱のガンがあるというかっこうになっております。
 ところが対照群で普通の飼料で全然そういうものを加えないで飼っておる群も二年で十三匹生きておったのでございますが、そのうち一例乳嘴腫ができております。乳嘴腫は十三例中一例という率は決してそう高くもないのでございますけれども、普通にはそうある例ではございませんので、おそらくこれは何か本来弱いながらもそういうものをつくる能力を持った可能性のある系統であった、それに対してそういうものがいったために誘発されてよけいに出たというふうに解釈したらいいのではないかというふうに考えられるのでございまして、それ自体の絶対的な発ガン性と考えるよりは、誘発性というふうにこのデータからは解釈すれば大きな間違いはないというふうに考えられるわけです。しかしこれは初めて出た成績でありまして、はたしてどうなりますか、これは確実に学問的にはもう少し追試をいたしませんと同じに成績が出るかどうか、いままでの単品の成績及び合剤の成績と矛盾いたしておりますので、学問的にはもう少しやってみなければはっきりしたことはわからない。しかしこの量はあくまでも大量でありまして、実際問題といたしましては、WH
○の許容量の二十倍量を人間に換算いたしますと、六十年食っても腫瘍はできない、五十倍量六十年食ったときにこういう成績になるということでありますので、発ガンを誘発するおそれは、疑いは残っているかもしれないけれども、実際に人間においてもしエクストラポレーションができるとすれば、二十倍を六十年間食べ続けるということは、おそらくむずかしいことでありましょうし、実際問題としては確率は非常に少なく、おそらくそういうことはないのではないかというふうに考えられますし、アメリカの当局の考え方としても、もちろん人間においてそのためにガンができたという証拠はないということはちゃんと書いてあります。
 そのようなわけでございまして、ガンと申しますのは発生が非常に長い時間がかかるのでありまして、それを確実に証明するためには、一カ所たとえ出ても条件が違うともう変わったりすることもありますので、確実にそれが発ガン性があるということを証明するためには、二カ所以上の、方法が違うと違いますので、同じ方法で実験して同じ成績が出たときに初めて学問的には確実に発ガン性があるというふうに考えますので、この問題は発ガン性に関しましては疑いは残りますが、まだ解決されていない問題であるというふうに考えてもいいのではないか。それを実際に行政に移す場合には、いかに被害を少なくするようにすればいいかということは、行政当局の方がこういうデータを参考にいたしまして考えていただければ大きな間違いはないのではないかというふうに考えます。
 サイクラミン酸のことはそれくらいにいたしまして、あと発ガンの問題はいろいろございますけれども、短時間にこまかいことまで申し上げることは、時間もございませんからこの辺でやめさしていただきまして、もし何か発ガンに対してどう考えるかというような疑問の点がございましたらまた質問でもいただければお答えさしていただきたいと思います。
○北側委員長 最後に水野参考人にお願いいたします。
○水野参考人 水野肇です。
 私は、昨年からことしにかけてチクロをめぐっていろいろの問題が起きたわけでありますけれども、それを社会的に見てどういうふうに考えておるかというようなものの見方のようなことを申し述べさしていただきまして、その中から行政なりそういうふうなものの問題点というふうなものをできれば浮き彫りにしたい、そう考えておるわけであります。
 私は、このチクロだけに限りませんけれども、一般に広い意味の公害というものについては、いつでも安全性と科学性というものとが非常に微妙な関係にあるということが非常に多いんじゃないかと思うのであります。
 まずその科学性の問題でありますけれども、私はやはり科学性というものについては科学的なデータというものをはっきりさせるということが、あたりまえのことではありますけれどもたいへん重要なんではないかと思うのであります。多少失礼な言い方にわたるかもわかりませんけれども、先般来のチクロを見てみました場合に、しょせんは外国のデータにいささか振り回されている感というものがあったようであります。それは外国のはっきりとしたデータというものでいろいろと論議があったわけではなくて、いわゆるマスコミの外電によって一喜一憂したような傾向がないではない。しかも、その情報をとるために、たとえば厚生省について申しますと、アタッシェはいないというふうな行政上の大きな欠陥を持っておったんではないかと思うのであります。もちろん世界じゅうに厚生省関係のアタッシェを置けなどというようなことは申しませんけれども、少なくともワシントンには一人要るのではないか。これは何か行政措置でことしから置くようになったそうでありますので、まあ過去の話ではございますが、かなり情報不足というものがあったということが一つであります。
 それから第二番目には、これは私はおそらく国民の多くの方々が疑問を持たれたのだと思うのでありますけれども、外国のデータが出ればそれをまるのみに信用して、それだけで日本の行政というものはいいのだろうかという点であります。多少、小理屈を言えば、日本人とアメリカ人とではすでにいろいろな点において、少なくとも民族的な差はあるわけです。皮膚ガンになる率などというのはアメリカは圧倒的に多いわけでありまして、子宮ガンとか胃ガンは日本のほうが多いとか、ガン一つをとりましてもそういうことがあるわけでございます。そういう点で私は、私個人の意見でありますけれども、やはり日本独自のものを持つ必要がこの際ありはせぬかということを非常に痛感したわけであります。もちろんそのつくり方としてはいろいろあると思いますけれども、今日ございます国立衛生試験所、たいへん御努力をなさっておられるわけでありますけれども、少なくともアメリカのたとえばNIH、国立衛生研究所でありますが、そういうようなものだとかいうふうなものと比べますと全然話にならぬわけであります。そういう点で、私は、日本もここまで経済成長しておるのでありますから、やはり国立衛生試験所については非常に大きなものに拡充する、そうしてそこに毒性センターのようなものをはっきりした形で設けて、日本は日本独自でやる、それがやはり私は日本の政治ではないだろうかというふうに非常に痛感したわけであります。
 これは仄聞するところによるとという話でございますけれども、先般閣議のあとで総理と大蔵大臣と厚生大臣と三人がお話をなさっておられるところでやはりこの問題が出たそうでありまして、国家研究機関というふうなものをつくらなければならないのならひとつ考えなければならないなという総理の発言もあったそうでありますけれども、私はやはりそこまで前向きのほうがこういう問題については非常にいいのではないかと思うのであります。それはなぜかと申しますと、もう一つの問題として私はやはり医学というものはどうしたって不確かな要素というものが入らざるを得ないと思うのです。人工衛星が空を飛んでおるのと人間が生きておるのとは一見どちらも科学のように見えますけれども、人間のメカニズムというものはほとんどわかっていないわけでありますから、そこではからざりきというふうな、たとえばサリドマイドのような事件はいろいろ起きてくるわけであります。そういう点から見まして、私はやはり重要なことは、いつの場合でもサイエンスでぎりぎりまで追っかけてなおかつ何がしかのプラスアルファというものが残る、それをどういうふうにやっていくかということが、一つの政治なのではないかと思うのであります。つまり別の言い方をいたしましたならば、安全性というものは科学にプラスアルファがやはりついて回ると思うのであります。たとえば、今般のチクロの場合、科学的データについてはさきに両先生からおっしゃいましたとおりである、私もそう信じておりますけれども、それをどういうふうにやっていくかという場合に、たとえば厚生省はチクロを禁止した、そうしますとやはりチクロそのものがほんとうに科学的にいえば幾らか疑問は残るわけであります。何もチクロを食べたからといって必ずしもガンになるというものでは決してないわけであります。チクロよりもっとはっきりしているものをいえば、それはたばこなんかのほうがはるかに有害であるわけであります。そういうようなことから見て、ほんとうにサイエンスだけから追っかけていった場合には、結論がなかなか出にくいと思うのです。しかしそこで、安全性と申しますか、要するに疑わしきは使用せずという行政をそこに反映させたとします。そうしますと、やはりそこで何よりも重要なことは、国民が厚生省並びに国に対して信頼を持つということなのではないかと思うのであります。そこの点が実は、厚生省はそうはやったけれども、あとから何かいろいろあって、結局は禁止することを少し先のほうに延ばしたとか、厚生省と農林省とがだいぶ意見が違うとか、あるいは今般の牛乳の中のBHCの問題でも、いち早く農林大臣がさっと、もうだいじょうぶですと言ってしまえば今日これまでだというふうなそういうことではなくて、私はやはりそこはほんとうの意味で閣議了解事項の要るようなものではないか、そう思うのであります。それは何よりも、国民が自分の健康について国を信頼するかしないかというせとぎわにくるわけでありますから、そこのところが私はたいへん重要な点の一つではなかろうか、それを痛感した次第であります。
 それからもう一つは、これはたびたび、科学技術庁の本委員会の速記録を見ますとあちこちに出ておるのでありますけれども、やはり行政の一本化というものについては何らかの形で考えなければならないのではないか、そういう時代が来ていると思うのであります。たとえば、あとでもちょっと触れたいと思いますが、例の問題になっておりますアメリカのFDA、これも最初は農林省に付属しておったのでありますが、やがて、日本で申しますと文部省と厚生省とを足したような省に移管されておるわけであります。私は何も、何でも厚生省がいいとか何でも文部省がいいとか農林省がいいとかそういう意味ではなくて、やはり行政の――もちろん各課長クラスあたりでいろいろ行政の連絡会議というのはあるようでございますけれども、そこのところは、もう少し制度の上でも何かこういうふうな問題についての一本化というものは、皆さま方も速記録で、本委員会で御主張になっておられますように、私もまたやはり必要なのではないかということを思っておるわけであります。
 それからもう一つの問題としましては、こういう問題というのはやはり法律として一本何か要るのではないかという気がするわけであります。今日、日本だけではございませんが、西ドイツなどでもそうですけれども、やはり役所というのがいろいろと分かれておりまして、こういう問題というのはどこの所管事項かというのはわりあいにわかりにくいことが多いわけであります。せめて、たとえば国民健康法というふうな、保健ではないので、つまり一億総健康というふうなそういうニュアンスのことでありますが、そういうような法律というものが一つありまして、そこにかんがみて、あるいは照らし合わせて、そういうふうな方向の行政というのはそこへ持っていく、それの主管をどこにするかは別としまして、やはり私はそういうものがここでは要るのではないかと思うのであります。あるいはそれと似たような考え方としましては、たとえば国家安全委員会というふうなものも要りはせぬかと思うのであります。これは何も食品だけが問題なのではなくて、いろいろなこと、すべて国民の生活を圧迫しているもの、そこには安全性というものが出てこない限り結局はどうにもならないという時代にアメリカでさえなっておるわけであります。そういうことから見まして、私は何もやたらにたくさん行政機構をつくれという意味で申しておるのではありませんけれども、今日、経済企画庁が元締めをしておるようなものをさらに発展させて、国家安全委員会というようなものあるいは科学技術庁もそういうことをおやりになっておられますが、そういうことで何か一つ――これはきょうのテーマではございませんが、事後の問題等も含めましてやはりそういうところで扱う必要がありはせぬかと思います。
 それから最後に、私はぜひこれは行政当局にお願いしたいのでありますが、やはり今回のチクロを見て私が一番痛感しましたのは、日本の厚生省をはじめ農林省もあるいは科学技術庁もその中に入ると思うのでありますけれども、アメリカのFDAの行政というものの研究不足ということがいえるのではないかと思うのであります。FDAの資料をかりに衆議院の先生方が持ってこいとおっしゃいましてもおそらくペラにして数ページのものしか出てこないと思うのであります。しかし、今日FDAの行政というものは、それがいい悪いは別としまして、世界を非常にそういう渦に巻いておるわけであります。ヨーロッパではかなり反対の意見がございます。しかし、アメリカの中でももちろんあるのでありますけれども、これがそっくりそのまま私は右へならえで日本に来たらいいのかもしれませんし、あるいはそうでないのかもしれないと思うのですけれども、そのあたりはやはり大いに調査研究する必要があるのではないかということが一つであります。
 それからもう一つは、私はやはりこういう問題については国民へのPR不足というものもかなり痛感した一人であります。なるほどマスコミはたくさんお書きになったし、そういう角度での問題は出ておるわけでありますけれども、つまりPRというものが単にマスコミだけに依存するものではなくて、やはり国なりそういうふうなところで一つの保健所なら保健所を単位にした、こういうたとえば添加物なら添加物につきましての一つのPRというものが私は要ると思うのであります。それがつまり情報化時代といわれておりながら肝心の情報は実は流れておらないというのが日本の各階層でいろいろございますけれども、私はやはりこれにもそういうことが出てきたのではないか、そう思っております。
 それから一番最後に、ではチクロについてどうか、おまえ個人の意見はということになったといたしましたならば、私はやはり政府並びに厚生省あるいはそういう各官庁というものが国民の信頼を得るということ、そういうことにおいてまずやはり即時中止すべきではないかと思うのであります。しかし中止してどうするか、中止してその次は私はやはり日本でこれを追試するあるいは研究するということが行なわれなければ、次にまたアメリカのデータが来るのをお待ちしましょうということではほとんど意見がないと思うのであります。もちろんそれは永久に中止する、アメリカのとおりにやるんだということなら別ですけれども、私はやはり個人としましてはまず中止してそうして日本にもずいぶんたくさんそういう道の権威の学者の方々はいらっしゃるわけです。予算を出しさえすればある程度のことはできる。アメリカ並みと言いませんけれども、ヨーロッパ並みには今日できる実力をお持ちになっておられるわけですから、やはり私は中止して日本で研究する。もちろんそのためには先ほど触れましたように非常に優秀な研究機関が必要であって、しかもそれは私は国立でないといけないと思うのでありますけれども、そういうようなことがやはり私はチクロについていえるのではないか、そんなふうに思っております。
○北側委員長 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
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○北側委員長 質疑の申し出があります。順次これを許します。井上普方君。
○井上委員 私、お伺いしたいのですが、例の昨年の末チクロ禍というのでマスコミをはじめ国民全体が非常な恐怖におちいったのは御承知のとおりだと思います。しかし、いま蕨岡先生並びに外村先生のお話を承りますと、そう、何と申しますか、蕨岡先生のごときはFDAで出された資料も科学的なものとも思えないというようなちょっと御発言もあったくらい不確かなものであった、こう承ったのであります。しかし、日本の政府がなぜあのように反応したのか、しかも直ちにチクロを禁止したのか、そこら水野先生のおっしゃるのには、日本の技術者がワシントンに少なかった、情報の不足であったというようなお話もございますが、ここいらのあたりをまず厚生省はどういうような考え方で進んだのかお伺いいたしたい。
○小島説明員 資料につきましては、いま先生方から御説明があったのですが、昨年の末に私どものほうではアメリカの資料を取り寄せまして、そして食品衛生調査会で御検討いただきました結果、発ガンについての疑いがある、正確に申しますといま蕨岡先生のおっしゃいましたようにガンを誘発するおそれがある、そういうことについて疑いが持たれたということで、われわれとしては多少でも疑いのあるものについては食品添加物としての指定を行なうべきではないという方針をとっております。それで指定を取り消したわけでございます。
○井上委員 しかし、いままでのお話を承りますと、濃度においてすでに違ってきているんですね。蕨岡先生のお話によりますと、パーキログラムの許容量の六十倍あるいはまた五十倍というのが与えられて初めて腫瘍が生まれてきた。しかも、その腫瘍も対比物としてはあるのだということになりますと、去年の終わりにFDAから出された資料そのものにも、しかもサンプルというものが非常に少ない、そのサンプルの少ない中で、なぜこうあれだけ大問題になったのか、私どもにもがてんがまいらないのです。食品衛生調査会のほうで疑わしいということで出されたとおっしゃいますけれども、疑わしい、誘発するおそれがあると言われるけれども、いまのお話を承っておると誘発されるおそれすら私どもには考えられないのですが、これは蕨岡先生どうでございますか。
○蕨岡参考人 いやおそれがないのじゃなくて、あれだけのデータから見ますと少なくとも五十倍の量、WHOの人体許容量の五十倍以上の量を二年――ラットですが、人間にしますと大体六十年に相当するのでありますが、それくらい食べますと、あのデータからは膀胱腫瘍の誘発のおそれがあるということは言えると思います。
○井上委員 そこで課長さん、いまのお話で、私どもからしますと、濃度におきまして六十倍ですか……(蕨岡参考人「五十倍でございます」と呼ぶ)五十倍の許容量をしかも二年間、人体にいたしますと六十年という長い間与えて初めて出てくる、誘発するおそれがある――発ガンじゃないですよ誘発するおそれがある、こういうものをなぜあなた方はあれだけ大々的にやられたのか、ここらがどうも私にはがてんがいきかねるのです。それで、それが一貫していままでとられてきているのならまだ話はわかります。しかし、二月にこれまたおたくのほうでは基準をゆるめられて、国民に現在使わしておるのでしょう。ここらあたりの経緯をひとつお話し願いたいのですが。
○小島説明員 アメリカのデータによりまして、こういうものはガンを誘発するおそれが非常に大量であるということでございまして、私どもとしては食品添加物については非常にきびしい態度をとっております。そういう疑いがちょっとでもあれば使用はやめさせるということで直ちにその製造及び使用というものはやめさせたわけでございます。現在でも使用というものはさせてはおりません。ただ、製造及び使用を直ちに中止いたしましたが、その際に残っております食品につきましては、やはりある程度の期間を置いて回収ということになりませんと、実際に市販されているというものでそういうものを知らないで売っている方もあるということもありますので、通常猶予期間というものを置いているわけであります。その猶予期間を御存じのように清涼飲料水については一月末、その他の食品については二月末ということにしたわけでございます。実は当初そういう措置をとったのでございますが、その後になりまして一部の食品については延期の措置をとったわけでございます。その延期いたしましたものにつきましては、御存じのようにかん詰め、びん詰め等でございまして、これらについては含有量も少なく、また摂取する機会も全体の量から考えましてもそれほど多くない、また従来、製造年月日あるいは人工甘味料の含有等の標示もきちんとされているようでありまして、それらについて国民の選択ができるように標示をするという理由で延ばしたわけであります。これにつきましては、私どもはそういうものは延ばしても健康上の観点から問題にならないというような考え方で延ばしたわけでございます。
○井上委員 この問題につきましては、昨年の十一月ですかチクロの問題が出てきたときに、すでにそのようなあやふやなデータでやられておった。疑わしきものは使用しない、これはまことにけっこうだと思うのです。しかしそれじゃ、すでにグルタミン酸ソーダそれ自体についてもアメリカのFDAですか、発ガン物質とかなんとかというクレームがついておるようですが、これに対してあなた方はどうなのです。
○小島説明員 アメリカにおきましてグルタミン酸ナトリウムの問題については、FDAは安全であるという見解を付しております。アメリカにおきましてグルタミン酸ナトリウムの件が問題になっておりますのは、オルニーといわれる方がこれをネズミの新生児に注射をいたしまして、そして脳の一部に障害が起きるということを報告しているわけでございまして、実は私どももその資料を取り寄せまして、そして専門家の御意見等も伺ったわけでございます。これは大量を新生児に注射するという非常に特殊な状況でございまして、グルタミン酸ナトリウムというのは、普通私どもの食事の中のたん白質の成分として含まれているグルタミン酸がただナトリウムになっただけのものでございまして、通常の私どもの摂取で問題が起きるということは考えられないということで、私どもとしては現在アメリカで行なわれた特殊な実験については、その実験そのものとしての評価はするけれども、しかし添加物としての規制についてどうこうするというほどの問題ではないという解釈をしたわけでございます。
○井上委員 私どもはその後いろいろ雑誌なんかを見まして、このチクロの有害性あるいはまた発ガン性につきましては、私自身は非常な大きい疑問を持っておるのであります。なぜあわててこれほどまでにやかましくいって禁止したか、その後また許可したか、あまりにも政府の方針に一貫性がない。これは明らかに先ほど水野さんが言われましたように、日本自体においてこれを研究しておる自主的な研究体制が整っておらないゆえんでないか、このように考えまして、先般もこの点については質問いたしたのでありますが、ただいま蕨岡先生あるいは外村先生のお話を承りまして、ますますその感を深くするのであります。このチクロなんかは、どうですか、はっきり申して藤岡先生、ここらでいままでの日本人が使っておる使用量、特にチクロは糖尿病患者に使われているものが多いようでございますが、これで発ガン性あるいはまた誘発性があるとお考えになりますかどうでございますか、日本人の摂取量からしまして。
○蕨岡参考人 いまそういう問題につきましてちょっと考えるのでございますけれども、日本で使われるようになりましてからたしか十三年だと思います。十三年になりますが、その量は人体許容量以内で使われておりますので、それに十三年としますとネズミに換算しますと、どれくらいになりますか、大体半年足らず、半年にもなりません。ですから二十倍量を六十年食べてもだいじょうぶですし、ネズミですと二十倍量を二年だいじょうぶですから、その程度を六カ月食べたのではおそらく――そうかどうかはやってみなければわかりませんけれども、六カ月食べさしてあともし一年間、人間で一年といいますと、ネズミですと大体十二日くらいになります。大体ネズミと人間は、寿命その他から換算しますと三十対一になりますので、もし人間で十三年にあと一年いまの量を食べさしたといたしましても、そういう意味では危険性はほとんどないのじゃないか、エクストラポレーションができるとすればですが、そういうふうに考えても大きな間違いはないと思います。しかし、これだけのデータからもまずおそれはあるということは言えると思いますから、おそれがあるものは添加物としては原則として使わない、そのおそれがなくならない限り使わないというのは当然だと思いますから、一応禁止していく。しかし、社会的な不安を引き起こさないという点から、もし何か処置をするとすれば、十三年に一年足しても、動物の実験はエクストラポレーションしてもいいのだと仮定すれば、大きな間違いはないのじゃないかというふうにも考える。それから実際にそうであるかどうかということは同じ条件で追試してみなければはっきりしたことはわからないというのがいまの状態じゃないかというふうに思うわけです。
 それからサイクラミン酸自体、単品の場合とサッカリン単品の場合、それはいずれもそれだけでそういう発ガンのおそれのあるというデータはいまのところはまだないわけであります。これは両方十対一にまぜたもので初めてこういうデータが出たということでございます。
 それから日本で全然やってないかという問題でございますけれども、私は実は少しやっておる。と申しますのは、シクロヘキシルアミンの関連した化合物でジシクロヘキシルアミンというのがございます。それはソ連の仕事といたしまして、ジシクロヘキシルアミンを投与したネズミに肝臓ガンができるというような成績があるのでございます。もしそういうことになりますと、チクロを食べたときにヘキシルアミンができて、もちろんジシクロヘキシルアミンでやっておりませんが、ジシクロヘキシルアミンの片方をとりますと、ヘキシルアミンになるわけでありますから、そうなるかどうか、生体で化学反応を起こすかどうかは、私存じませんが、もしそういうことがあるといけないと思いまして、私はチクロのこういう問題が起きる前に、私の仕事の関係上から、一昨年から少し考えましてチクロを五%、今度の量の二倍量であります、単品といたしまして。それからシクロヘキシルアミンをやはり一%という大量になりますが、これをマウス十匹に水に溶かして経口投与いたしまして、大体現在でシクロヘキシルアミンのほうが一年九カ月、それからチクロ自体のほうは一年十カ月半となっておりますが、そういう状態で問題がある前から始めておりましたので、詳しいことはちょうど見ておりませんでしたが、それから以後死んだやつをよく注意して見ておりますが、現在までのところ――いま一匹ずつしか残っておりません。毒性が五%、一%というのは耐えられる最大でございますから、一匹ずつしか生きておりませんが、いままで死んだものにはそういう意味では発ガン性は全然認められておりません。それから、いま一匹残っているのはどうなるかわかりません。それは出てからの問題ですが、いままでの成績から見て、組織学的にそういうふうにつながるかどうかということはちょっと疑問じゃないかというような点がございます。それはただ、私がそういう立場から少し手がけておりましたので、全然やっていないというわけではなくて、やはり問題があるものは考えてやっているのだということは念のために申し上げておきます。
○井上委員 そこで私は大臣に申し上げたいのです。いままでいずれの方々も、日本自体において国が金を出して研究体制ができていない、実質的にチクロ自体につきましても、蕨岡先生は財団法人の方ですし、水野さんは、国立衛生研究所をもう少し拡大しろ、こういうお話でもありますけれども、実際問題として、仕事をしておる有能な人々が民間なりあるいはまた大学等々にかなりおられるのですね。怪しいときには、これらを使うという体制をやらなければならないと思います。佐藤さんは衛生研究所の拡大強化というようなお話をしたそうですけれども、これとても、現在の役所の機構からすれば、いまの役所というものは非能率的なものでありまして、できない。しかしながら、予算をとって委託研究するという分にはこれはかなり業績が上がってくると思います。したがって、そういう総合的な調整機能というのは科学技術庁にあるのでありますから、特に農林省と厚生省との間において意見の対立があるような問題、先日もベータBHCの問題につきましても農林省の考え方と厚生省の考え方の間に大きな差があったが、こういうときには調整機能を持つ科学技術庁としては対処しなければならぬと思う。そういう場合にあなた方は科学研究費をお持ちになっておる。しかも緊急なる場合には出すことができる予算もお持ちになっているのですから、そういうところにどんどんお出しになってこういう問題に対処して、国民の疑惑を解いていただきたいと思いますが、どうでございますか。
○西田国務大臣 昨年の五月に資源調査会が、食品添加物に関する報告をかなり分厚いものでありますが出しまして、そして関係各省にその趣旨を御説明いたしまして善処をしていただくように措置をしたわけでございますが、この研究調査結果をまとめるにあたりましても、ここにメンバーが出ておりますけれども、先生御指摘のように、かなり各界の方々あるいは直接食品添加物の関係の方々等にも御参加を願ってこんなものをまとめております。
 そこで、厚生省では国立衛生研究所が中心になりましてこれの具体的な調査研究を行なっておられるわけでございますが、その研究に対してもう少し民間なりあるいは有識者の動員を考えたらどうか、こういう御指摘だと思います。これは確かに考えてしかるべきことだと思います。ただ私のほうは科学技術庁の立場から全体の見積もり調整という立場でタッチをしておるわけでございますけれども、私どもも食品公害だけではなくてあらゆる公害、いろいろな問題がたくさんございますもので、これをいまのわれわれの陣容で全部その結果を追跡し、そして全部完全に掌握するというところまではいまの陣容において……。また各省と科学技術庁との責任分野といいますか、そこら辺がたいへんむずかしい問題でございます。そこでやはりそれぞれの省が責任を持っていただいて、それで科学技術庁の立場でタッチするというのが現状でございます。したがいまして厚生省がそれぞれの与えられた予算でこれに当たっているわけでございますが、さらにそういう必要があるというような御判断で御相談をいただきますれば、私のほうもそれぞれの事態に対処いたしまして、ただいま緊急にそういう必要があるというようなことでございますれば、またそういうことも考えられると思います。何ぶんにもいまは具体的なこの問題についてのお尋ねと思いますから、その必要があればそういうふうにはからうことは、その必要ありという結論が出ますれば、それは考えてしかるべきだと考えております。ただ、私が申しましたことは非常な各般にわたるもろもろの問題につきまして、やはり問題が重要であるという場合には科学技術庁の資源調査会等が中心になりましてみずから検討し、そして各省の御注意を促しあるいはまた善処を求めるというようなやり方をやっておりますが、そこら辺にも、その結果をどう使うかというような問題等につきましてももう少し掘り下げていく必要があるということも私実は考えておるわけでございます。
 当面のこの問題につきましては、ひとつことしからまた新たな予算も計上されているわけでございますし、それでなお不足であるか、不十分であるかということにつきましてはやはり主務省のお考えを中心として私どもこれに対処していきたい、こう考えております。
○井上委員 それじゃちょっとお伺いしましょう。
 厚生省、チクロの追試に幾ら金を出しているのです。
○蕨岡参考人 私答えてよろしゅうございますか。私少しやっているものですから、厚生省の食品調査会の委員として。――私、先ほど申しました食品調査会の委員で、発ガンの立場からそういう問題にタッチしておりますもので、先ほど申しましたように、私は、この問題が起きる前に、問題があるといけないと思いまして始めましたのですが、厚生省のほうではガン研究助成金によりまして食品添加物、医薬それからカビ毒の発ガン性に関する研究班というのがございます。それに入っておりまして、その中から金をいただいております。それの金を使わせていただいております。
○井上委員 幾らです。
○蕨岡参考人 それは四十四年度は七十七万七百五十円でした。その中に入っております。それからずっと前にも毎年大体七十万円とか八十万円とかずっと引き続きでございますが、いただいております。
○井上委員 先生、七十七万で一体何ができるんです。
○蕨岡参考人 ですから、それは先ほど申しましたように、問題が起きてからプランを立ててやるのじゃありませんで、あらかじめ問題が起きるといけないというのでブローベとして、そういう予備的な実験にそういうものを使わせていただいております。
○井上委員 だから、ことし、四十五年度の予算に幾ら組んでいるのですということをお伺いしているのです。どうなんです。
○小島説明員 本年度は実は新しく食品関係の調査研究費といたしまして委託費が三千五百万円計上されまして、これを用いましていろいろな食品添加物の慢性毒性とかあるいは催奇形性とかそういったものについてやるということになったわけでございまして、この金は委託費でございますので、国立の研究機関のみならず大学その他にも委託できるような金でございます。突発的な事態あるいは特別な問題についてはこの金が使えるということで考えております。
○井上委員 いや、私が聞いているのは、チクロの問題について幾ら金を使うのだということを聞いているのです。
○小島説明員 チクロの問題については、私どもとしては今後新しく金を支出するということは特に計画しておりません。
○井上委員 そうすると、予算配分については三千五百万のうちで全然ないということですね、チクロについては。
○小島説明員 御存じのように、実は添加物総点検というような問題がございますので、私どもといたしましてはいろいろな添加物につきましてあるいはまた新しい食品等につきましての研究を行なうことになります。チクロは一応指定を取り消してしまったわけでございまして、私どもとしては今後は使用されないというたてまえから研究調査費等を配分する予定は組んでおりません。
○井上委員 そうすると、あなた方は先ほどのアメリカの不確かなる実験データそれ自体をまるきり頭から御信用になっておられるわけですな。そうしますと、日本で自主的に研究するという体制が全然ないということですよ。蕨岡先生がおそらく発ガンの問題でやられたのでしょうけれども、これは先生のお話を承っておりましてサンプルが非常に少ないですね。
○蕨岡参考人 もちろん前々から予備的なものとして始めたものですから……。
○井上委員 そうしますと、サンプルも予備的な問題としてやられたとしましても、これはサンプルとしては非常に少なくて、あまり学問的にこれだというきめ手になるような御研究でもないように私は思うのです、サンプルがあまりに少ないので。
○蕨岡参考人 確かにそれはプローベですから確実なことはわかりません。
○井上委員 そうしますと、これだけ大問題になって国民に不安を与え、かつまたその後のジャーナリズムによると、あのチクロによってアメリカがくしゃみをすると日本は肺炎を起こしてしまったというくらいのことが言われておるのですね。厚生省はなぜこれの研究をなさらないのです。私は、チクロはさらに糖尿病患者についても今後まだまだ使われる要素がある薬だと思うのです。チクロと言うただけで国民は拒絶反応を起こしますよ。これらの問題について蕨岡先生にも七十七万円くらいしか委託研究費をお渡ししておらないという実態を聞いて私もあ然としておるのです。おそらく発ガン物質の研究で七十七万なんといったら、先生が実験動物を何十匹かお飼いになってそして次はこれのレポートをつくって、今度はこれを印刷するだけで大体七十七万消えてしまうでしょう。
○蕨岡参考人 まあやり方にもよりますけれども、プローベですとその程度でまず一応できます。ちゃんとしたものをやりますとなかなか……。
○井上委員 大臣、それほどまでに政府というのは日本の科学に対して金を出すのは少ないのです。おそらく蕨岡先生この場でおっしゃられておるから七十七万全部それに使ったわけじゃないのです。七十七万のうちでそれに使った金というのは、おそらく十万円もお使いになったら上等のほうだったろうと思います。そしてそれを印刷してお配りになる、本に掲載する、学術雑誌に出すということになれば、先生はおそらく赤字になっておるはずです。これが現在の日本の研究体制の実態なんだと思うのです。したがって、私が申したいのは、こういうような大きい問題になってくれば、国はどんどんお金を出しなさい。厚生省は、もうチクロは使わないんだから、ことしの予算に全然金は出しません、こうおっしゃるのです。それでは日本では、チクロの有害性あるいはチクロの無害性の問題について、おそらく今後全然研究されないおそれすらある。こういうようなことを考えると、国はもう少し金を出すべきだ。水野さんは、国立衛生研究所を拡充しろとおっしゃいますけれども、何も国立衛生研究所を拡充するまでもなく、それより先に委託研究費でどんどんと研究さしていただけばいいのです。それには、いまチクロの問題一つとりましても、国は全然金を出さないのでしょう。そういうことについて、大臣、あなたは佐藤内閣の一員として、しかも科学技術の機能を調整する官庁の責任者として、どうお考えになりますか。そしてまたどう対処されようとしますか。お考え方を承りたいのです。
○西田国務大臣 やはり第一義的には、担当省がこれに対処してもらわなければならぬと思うのです。そして必要な要求を要求として出していただいて、私のほうは各省全体にわたって予算をということはどうも実際にはなかなかむずかしい。ですから、こういう問題が起きて、どうしてもこれは早急に必要であるという結論が出ますれば、またそういう御要請があれば、私のほうはそれに対処する用意は持っておるわけであります。そこでそれが直接試験所で使う金でも、あるいはまたそれよりもっと有効な方法で、いま先生がおっしゃるように、各省を動員してやるということが最も有効であるということならば、その方法でも私はかまわないと思います。ですから、ほんとうは私のほうにも責任はございましょうけれども、やはり第一義的には所管省がひとつしっかりやっていただくということをわれわれは期待したいわけです。また御要請に対してはおこたえするつもりでおります。
○井上委員 そこで大臣、第一義的にやらなければいかぬ厚生省もサボっているのです。全然やらないですよ。これだけ大きな問題が出ているにもかかわらず、これに対する研究予算というものは全然組んでないというのです。これに対してあなたはどうお考えになりますか。そしてあなたがそれに対して厚生省こうしなさいということを言いますか。どうです。
○小島説明員 厚生省はこれについて何も組んでないということでございますが、実は国際的にこういう情勢があるわけでございます。
 と申しますのは、チクロにつきましては、昭和三十九年のFAOとWHOの専門家委員会で評価をいたしました。一応安全であるということで、それまでの毒性試験のデータを全部検討して報告書を出しております。それで現在、アメリカの資料によりまして、世界各国とも禁止に踏み切り、国際的な問題になっておるわけであります。もちろん一部の国では禁止に踏み切ってない国もございます。世界的な問題になっておりますために、本年の六月二十四日からWHOとFAOが世界じゅうの専門家を集めまして、添加物についての専門家委員会を行ないますが、その際に、チクロの問題について再評価をするということで、現在までに各国で行なわれた研究資料を集めております。私どもは、現在までに日本で得られました資料をWHOのほうに送付いたしております。そしてその会議におきまして、毒性の評価についてある程度の意見が出ると思います。各国に対する勧告も行なわれるのじゃないかと思います。そして今後の研究についてこういうものが必要だということもたいていの場合にそういう報告に書いてあるものでございまして、たとえばその研究をどこの国がやるか、そういったようなことがその会議以後にきまってくるだろうと思います。そういった勧告なり意見なりを今後参考にして私どものほうにおいても検討したい、そういうふうに考えている次第であります。
○井上委員 しかし、日本でチクロの毒性試験あるいはそういうような研究をされているのはあまりないのじゃございませんか。蕨岡先生たちのデータくらいじゃないのですか。まだほかにたくさんあるのですか、どうなんです。
○小島説明員 実は先ほど蕨岡先生、それから外村先生から御説明がありましたように、遺伝に関する研究、染色体に関する研究、それからいわゆる次世代に及ぼす影響等につきましては国立衛生試験所等でやった試験もございまして、私どもとしては相当参考になる資料だというふうに考えております。
○井上委員 昨年の十一月は、その日本独自の資料から、そしてアメリカの昨年出されました資料と対比して決定されたのですか、どうなんです。
○小島説明員 昨年の十一月の際には、それまでに日本で得られました資料というものも参考にいたしまして、それからアメリカのデータだけでなしにほかの各国におきますいろいろなデータ、それから厚生省は金を出しませんでしたが慶応大学の医学部におきまして、皮膚科の関係で日光皮膚炎を生ずる、そういったような資料も未発表のものでございましたが私どもは集めまして、そういう資料を全部先生方のお手元にお出しして、御検討をいただいております。
○井上委員 私は承っておりまして、どうも先ほど水野さんが言われましたように、日本でともかく研究されることが非常に少ない。しかもアメリカでやられたらとたんに日本で大きくジャーナリズムに乗って、そして一般の風潮としましては、チクロを少しでも食えばガンになるんだというような考え方で進まれたと思うのです。しかし、その後のデータなんかを見てみましても、あまりそう神経質になる問題でもない。そこらあたりの政府の態度と申しますか、非常にあやふやなものを感ずるのです。厚生省が一度そういうふうに決定したならば、それを突き進んでおるのならいいですよ。途中でかん詰めならあるいはこれは一年間使ってもいいとかいうような態度に出てくることが国民に大きな不安を与えるのです。そこで私どもが何を言っても日本に――政府といっても過言ではございませんが、あまりにもそういうような科学的なデータに対する知識が少な過ぎるのじゃないか、このような感がしてならないのです。これは単にチクロの問題だけじゃないと私は思います。またベータBHCの問題もあると思います。さらにはまた、日本の残留農薬としてたくさん残っております燐の問題、フォスファが非常に大きい問題として、今後国民の食品の中にはこれは知らず知らずのうちにあるのじゃないかと私は思う。これは、この間も大臣もお見えになっておりましたけれども、農林省の考え方と厚生省の考え方に大きな食い違いがある。これはあなたも御存じでしょう。しかも日本の現在の病気を見てみましても、この間も申しましたが例の戸田病とかいわれるああいうような病気が出てくるのも、一つには食品公害から及んできておるのではないかという説すらあるのです。したがいまして、こういうような問題については十分な研究体制を科学技術庁として――第一義的にはそれは厚生省にありましょう。しかし、厚生省にはありましょうけれども、農林省との間における摩擦、相克というのがあるのも御存じのとおりです。したがいましてそこにあなた方の科学技術庁としての調整機能というものを発揮する時期ではないか、このように私は考えるのです。そこで大臣が今後どういうような対処をもって食品公害に臨まれるのか、厚生省と農林省との意見の衝突の場合にどういうような方法をもって臨まれ、これに対する調整機能をどのように発揮せられるか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
○西田国務大臣 この残留農薬の問題も先般御論議がございまして、私もここで聞いておりましたが、確かに完全に意見が統一されていない面もあるということは御指摘のとおりでございます。そこで、農薬残留の緊急対策に関する調査、これもかなりの予算が組まれておりまして、六千万円ぐらいことし組まれておりますが、これらの調査、研究費が活用されて、ひとつ早急に結論を出してもらうことを期待しておるわけでございますが、何と申しましても社会が発展し、複雑化してまいりまして、こういう問題がますます深刻化するということが考えられますので、科学技術庁をあずかるものといたしまして、また国務大臣の一人としての立場からも国民の健康を守り、明るく豊かな社会を築くためにも私はできるだけの努力をしたいと思っておりますが、いまの御指摘のような問題につきましては、早急にひとつ政府部内の考え方を統一して、そして一つの目標に向かって全力をあげてその結論を出すという方向に、私どもの立場からもひとつ積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○石川政府委員 この種の最近出てまいりましたいろいろな問題があるわけでございますが、これとの取り組み方につきましては、ただいま大臣からお話がありましたように、前向きの姿勢で進んでいるわけでございますが、何しろ最近いろいろなこの種のものが非常に次々出てまいりまして、私たちがこれを十分に調整を行なうというのはまだ不十分な状態でございます。しかしながら、大臣からも再三われわれ事務局に対しましても、この問題について積極的に取り組むように御指示をいただいておりますので、われわれもわれわれの仕事といたしまして、この調整機能というものを十分活用いたしまして、しかもわれわれのほうにございますたとえば特調費のようなものも効率的に十分これを活用いたしまして、そして御期待に沿うよう努力したいと思っております。
○井上委員 終わります。
○北側委員長 次に石川次夫君。
○石川委員 去年の六月でしたか、食品添加物についていろいろな質問をしたことがございますけれども、それからずいぶん関心を持ちながら非常にほかの用件が忙しいために、きわめて国民生活にとって重要だと思われるこの案件がいままで放置をされたということは非常に残念だと思っております。きょうは幸い機会を得たものですから、科学技術庁長官にまずお話をしたいと思うのでございますけれども、いままで厚生省あるいは農林省で農薬の問題あるいは食品添加物の問題をいろいろやっておりますけれども、どう考えてもこれはほんとうに国民の立場に立って国民の生活、健康というものを考えておるかどうかということについては非常な疑問がある。たとえば、水銀農薬を何とかしてやめろということで、私も何回もこの委員会で追及をしたことがありますけれども、この農薬の取り締まりの法令を見ますと、有害な農薬だと思われるものについては正常な防衛道具をつけて正常な行為を行なって、なおかつ著しい被害があるときにはこれを許可しない。こういうばかげた法律がいまでも残っているわけです。これはどう考えても業者本位の考え方であるとしか考えられない。厚生省のほうにもそういうものが間々見られるわけなので、科学技術庁としてはそういうことに直接関与はしないかもしれませんけれども、実は各省にまたがるそういう問題について先ほど井上委員からお話がありましたように、調整しなければならぬ立場にあると同時に勧告権があるわけですね。これは食品添加物に対してはチクロ問題なんかだけじゃなくて、チクロなんかよりはるかに劇毒のものがたくさんあるのですよ。チクロだけがアメリカが騒いだから日本が取り上げるというふうな、非常に私たちからしてみればこっけいな態度じゃないかと思うのであります。そういうきわめて深刻な問題については、佐藤さんも幸い味の素なんかは全然使っておらぬそうです。自然食主義だそうです。そういうふうなことで、幸い非常にこのことに関心を持っておられるということもあるようですから、この勧告権というものを十分使っていただいて、先ほど申し上げたように予算が非常に少ない。七十万円でチクロその他を含めての試験をやっているなんといったって、これはとても権威のある研究――これは蕨岡さんにたいへん失礼な言い方になるようにおとりになられても困るのでございますけれども、こんな貧弱な研究体制でチクロの問題について解答を出すということは不可能です。したがって、アメリカ人と日本人とは体質が違うというふうなお話も先ほど参考人から伺いましたけれども、そういうことを言えば、日本は一番胃ガンが多いわけですね。食品添加物の影響が一番多いと思わなければならぬ。それから、そんなことを言えば動物実験だってあてにならぬということにもなりかねない。そういうことも含めて食品衛生の問題についてはよほど積極的に取り組んでいかなければならぬ重大な問題だと思うのです。そういう点で、いま調整局長はいろいろ前向きに検討するとおっしゃいましたけれども、調整局がやっておりますのは宇宙開発もあり、海洋開発もあり、とても食品衛生までやれないと思うのです。資源調査会でいろいろな資料が出ております。なかなか資源調査会の仕事は科学技術庁の中における仕事としては私は高く評価をしております。将来こういう方面にどんどん発展をしていってもらいたいと思いますけれども、しかし資源調査会で出しております食品添加物の問題も、結局暗いサイドは全然出ていないのですね。これがいかに人生の食品生活を豊かにするかという、バラ色の面だけ出ているわけです。これはほんとうの調査にはなっていないのです。これは資源調査会自体の人が認めています。そういう点でこれはあと一度考え直さなければならぬところに来ているのではないか。こういうことですから、科学技術庁長官には、その点における調整機能を発揮するということだけではなくて、きわめて重要な問題だとお考えになれば、これは勧告権を発動してもらう、こういう必要があると思うのですが、その点いかがですか。
○西田国務大臣 私も実は役所に入ってみまして、いま先生の御指摘になりましたように、勧告権を持っておるということを承知しております。しかしながら従来勧告権というのはあまり発動しておらない。あまりじゃない、ほとんど勧告権を使っておらない。これは何もしておらないということではございませんが、勧告という形をとっておらないことは御指摘のとおりでございます。しかしながらそれじゃ何もしておらぬのかというわけではございませんで、それぞれの連絡あるいは協議、注意いろいろな手段をとっておりますけれども、御指摘のように、問題によりましては勧告をするということも私は必要だと思う。実は私自身もそう考えておったわけでございます。これから重要な問題につきましてはそのことを十分活用してまいりたい、かように考えます。
○石川委員 非常に前向きの御答弁をいただいたのですが、勧告で私が記憶をしておるのは、大学において学生が文科系が多過ぎて、理科系が、これだけ科学技術が発展をしていくのに伴って人材が少ないということで、強引な勧告権が出されたことがございます。非常に効果がありました。そういう機能を持つだけの力は実は科学技術庁は持たなければならないし、また持っておるわけですから。それとこの食品添加物の問題を国民が非常に関心を持っておる。また非常に重要な問題である。もう二世、三世にわたる遺伝の問題にかかわる問題であるということでございますので、私は勧告に値する問題を含んでいる、こう思いますので、その点ひとつ十分に御配慮を願いたいと思うのです。
 それで私はきょう申し上げたいと思うことは、食品添加物は、これはもう言い出したら切りがないのです。あまりにも多方面で多種類で、これを一ぺんに委員会あたりで二時間や三時間で話をするといっても、とても解明できる問題ではございません。したがって、ほんとうに目ぼしい三つ四つのことだけ申し上げたいのです。
 結論的にいって、行政でこれをどうするかという問題なんです。
 その前にちょっと蕨岡先生がいらっしゃっておりますので、一応伺いたいと思うのですけれども、戦後いろいろな病気が出てまいりました。フィラリア病とかベーチェット氏病、カンジダ病、メニエール氏病、パーキンソン氏病というような病気がいろいろ出てまいっております。これは医学が発達したので、戦前は解明をされなかったものが解明されているという面も多分にあるでしょうけれども、原因不明という病気がこの中で大半です。この原因不明というのは一体何に基因するかというと、これは私は専門家でも何でもありませんけれども、どうも食品添加物というものが染色体その他を破壊をしているという面が多分にあるのではなかろうか。これは遺伝にも相当影響が出てくるのじゃなかろうかという気がしてならないのですが、その一般的な点について先生はどうお考えになっておりますか。
○蕨岡参考人 いまの御質問でございますけれども、私はそれには直接関係がございません。ガンしか知りませんので、ちょっとお答えするわけにもいかないのですが、ガンに関しましては環境因子の問題というのはかなり問題がございまして、幾つかのものは具体的にわかってきております。それ以外の病気に関しまして、はたしてそういうものがどれだけ影響があるのかということは私の専門外で、ちょっとお答えはできません。具体的に環境因子のどういうものがどういうガンということなら、また特にあれでしたら、幾つかの例くらいは申し上げることはできます。
○石川委員 きょうそういうことをいろいろ話をしているひまはございません。たとえば痛風なんというのは昔からあった病気ですけれども、最近は非常に若い人に痛風が出てきているという面があります。それからガンなんか、小児ガンというのも、昔もあったのかもしれませんが、最近特に多い。私の友人の子供もこの間死んだばかりですが、おそらく昔はほとんどなかった病気じゃなかろうか。それから四十歳以上の妊婦で一三%は大体奇形児が生まれるという統計が最近出ておる。こういう問題もどう考えても、戦後新たに加わってきた要素としては、公害の部類である。一般的な公害という問題はございますけれども、直接的にはやはり食品添加物というものが影響なしとはしないのではないか。これはしろうと考えかもしれませんけれども、どうも考え方がそこに行かざるを得ない。たとえば、石油のタールの発ガン性の問題とか、あるいは染色体に対する影響とか、いろいろな問題で本を読んでみますと、たとえば味の素のそのほうの関係の部長が、とにかくタールの影響なんというものは二代、三代にまたがらなければ大体わからぬ、こう言っておるわけですね。一ぺんにはわからぬ、しかし発ガンのおそれがあると同じような意味で、おそれはあるというようなことが多分に含まれているわけです。そういうようなことで、乏しい研究で、短い期間ではとうていわからないけれども、考え方の基本としては、疑わしきは罰せずではなくて、疑わしきは用いない、疑わしきは罰する、こういう態度でいかなければいかぬ性質のものではなかろうか。そうでなければこれは将来とんでもないことになるんじゃなかろうかという恐怖に似た予感が私はしてならないわけです。
 そこで厚生省に伺いたいのでありますけれども、こういう問題については、先ほども申し上げましたように、いろいろな要素が重なり合って相乗性を発揮する問題があるわけです。その研究などはいまのところはほとんど皆無だと思うのです。たとえば、いま言ったチクロの問題とサッカリンとを実態的に合わせたという程度のことはやっているかもしれませんが、一日に何十種類、百種類に近いようなものをわれわれは知らず知らず食わされているわけです。食わされておるものは、およそ米にも、パンにも、みそにも、しょうゆにも、ソース、ノリ、酢、かまぼこ、ハム、ソーセージ、牛乳、お茶、サイダー、コーヒー、お菓子全部入っています。したがって、一つ一つは取るに足らぬ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、食べる物で食品添加物の入ってないものは一つもないという現状ですね。この相乗性が一体どういうふうに出てくるのだというふうなことは、いまの乏しい研究機関、研究費用ではとうてい解明できないものがたくさんあるわけなんです。
 そこで、厚生省にはこの前この点について相当きびしく追及をした結果、食品添加物については抜本的にひとつ考えよう、きょう環境衛生局長が来てないので、非常に残念なんですけれども、これは非常に重要な問題なので、課長さんだけなのでありますけれども、局長にも十分ひとつこれは伝えてもらいたいと思うのです。いずれまた局長にも出てもらってこの問題について解明したいと思うのですが、この前やった後どういう方法が――チクロの問題はまたあとでちょっと伺いたいと思うのですが、井上さんから大体の質問が終わっておりますから、あまりくどくは申し上げませんが、どういう手を法制的には立てられたか、その点を伺いたいと思います。
○小島説明員 私どもは添加物につきましては、従来から非常に慎重な態度をとっております。私どもとしては、現在添加物の問題は世界的な問題でございまして、国際的にも国連のFAO、WH
○が委員会をこしらえまして、そして毒性面の評価、それから添加物の試験のやり方等の原則をきめておりますので、私どもの食品化学課ができましたのは六年前でございますが、当時からそういう原則にのっとりまして新しい添加物の許可をした、同時に古い添加物の洗い直しということをやりまして、色素なども現在までに十くらいの色素を削除いたしまして、現在では世界でも色素の数などは少ないほうの国に入っておるわけであります。そういうふうにして私どもとしては現在許可されている添加物の数も、アメリカ等に比較して非常に少なく、むしろ現在では加工食品の輸入には非常に不便を来たしているくらいのところまで持ってきているわけです。私どもとしては、今後は安全である添加物であっても、不必要なもの、あるいは必要性の少ないものの使用はさらに締めてまいるということで、たとえば色素の野菜等に対する使用を禁止したい、あるいは漂白剤を野菜等に使うことを禁止したいということを昨年やりまして、今年度におきましてはさらに広範な調査を行ないまして、食品添加物の使用をさらにきびしくしてまいりたいと考えております。ただ現在の日本の状況は、世界の他の文明諸国に比べまして、相当きついところまでいっております。私どもは今後さらにこれをきびしくしていくということは、国際的に見ても非常にきびしいレベルまでいくということで、これは中小企業等にとっては非常に大きな影響がある問題だと思います。したがって、私どもとしては、他の関係各省とも連絡をとった上で、あくまでも厚生省といたしましては国民の健康第一という立場からわれわれの考えを貫いていきたいというふうに考えております。
○石川委員 アメリカよりもこちらのほうが許可品目が少ないという点について異論があるのですが、その点はきょうは触れません、時間がございませんから。しかしアメリカではとうてい許可しそうもないものが日本で許可されているというものも多々あるのです。色素の問題とかあるいはニトロフランの関係とかいうのがあるわけですね。そのことについては、きょうは時間がございませんから……。
 そこで一つ例として申し上げたいのですが、いろいろ手を加えておられると思うのでありますけれども、昭和四十四年八月六日の官報に「着色料や漂白料の使用禁止」というのが出ております。これは食品衛生法に対する一つの前進かと思って内容を見たのでありますけれども、これはその第一番目に、「食品添加物の指定に関する考え方」として「食品添加物は、安全性が実証されるかまたは確認されるものでなければならない。」これはこのとおりですね。確認されていないものはたくさんあるわけなんですよ、そこに問題がある。その中で、「指定し得る添加物としては、次の各項のいずれかに該当することが実証または確認されることを必要とする。」ということの中に、「食品の製造加工に必要不可欠なもの」というのが出ておる、これは一体どういう意味かわからないのですよ。必要不可欠といったって、砂糖とそれからチクロという場合に、チクロのほうが必要不可欠というふうに考えるのか、砂糖だって代行できるので、必要不可欠という場合にはどういうことをさすのかということが一つ疑問が出てくる。それから「食品の栄養価を維持させるもの」、その他に「食品の損耗を少くするために腐敗変質、その他の化学変化などを防ぐもの」というのがあるのです。これはこれでわかります。栄養価を維持させるというのは一体どういうものなんだろうか。腐らせるのではなくて、栄養価を維持させるということは、一体具体的にはどういうことなのか、これはわからない。それから「食品を美化し魅力を増すもの」というものがある。こんなものは必要ないのじゃないですか。着色剤あたりでもって何かみめうるわしくして飛びつきやすくする、売るほうとしては「食品を美化し魅力を増す」という必要があるかもしれませんけれども、食べるほうとしてはこんなの必要ないのですよ。食べるほうの側に立ってこの基準ができているかというと、そうはなっておらないというのが、こういうふうな通達からも出ておると思うのですけれども、この点について御意見ありますか。
○小島説明員 現在、お話しになられましたのは、食品添加物を厚生省が指定する際の基準でございますが、その中には、食品添加物というものは、たとえば以下のような効用がなければならぬということになっておりまして、その例といたしまして、たとえば食品の製造、加工上必要不可欠の場合、あるいは先ほどおっしゃられましたそれを美化し魅力を増すというような場合、いろいろあるわけであります。それらのどれかに該当しなければならぬということになっておるわけであります。製造上必要不可欠というのは、たとえばとうふをつくる際にどうしてもにがりというものが要るわけでございます。そういった場合に必要不可欠ということになるわけであります。あるいはまた栄養価を維持すると申しますのは、これは日本語としてはあまりいい日本語でないために誤解があったのかもしれません。
    〔委員長退席、井上委員長代理着席〕
たとえば、アミノ酸等を食品に添加をいたしまして、そしてそういうものの栄養価というものを高め、かついい栄養のものであるといったようにするというようなことを考えております。あるいはまた「美化し魅力を増す」というものは要らないのじゃないかというお話でございますが、食いものは、ただ栄養がありさえすればよろしいというものではございませんで、やはり食欲というものは、人間の一つの楽しみでございまして、嗜好性というものがあるわけでございまして、たとえば、菓子等は子供にとっては一つの楽しみでありますが、これに色をつけずに全部の菓子が自然の色のままで、ドロップもまっ白のままということでは、やはりぐあいが悪いということは、これは世界的に一つの考え方になっておるわけでございまして、実はこの基準は日本だけの基準ではございませんで、国連のWHO加盟諸国が、WHO、FAOの勧告に従って同じようにやっている基準でございます。
○石川委員 まあそういう世界の基準にのっとったものかもしれませんけれども、いまの国民の感情からしますと、ことさらに「食品を美化し魅力を増す」ということを書けば、何かこれは業者が売らんがために都合のいいような基準ではないかという考え方は、成り立たないことはないのですよ。そしてほんとうに有害か無害かということに限定をして、きびしくやってもらおうということからいえば、これは言わずもがなではないか。これは常識的なものですね。何かそういうことをつけ加えたということについて誤解を招く余地が非常に多い。誤解というのか正解というのか、それはよくわかりませんけれども、栄養価を維持させるというんではなくて、栄養価を高めるための添加物ということなんで、これと意味が、若干いまの説明とは食い違ってくると思うのです。維持するというのでしたら、これは腐敗をしない、変質をしないということで十分なわけですね。ところが、いまの説明とはだいぶ違う。
 それからこういうこまかいことを一々言っていますと時間がなくなってしまうのですけれども、最後に、「食品添加物は、原則として添加した食品の化学分析等により、その添加を確認し得るものでなければならない。」、確認できなければやむを得ない、確認できるものでなければしようがないということだと思うのですが、確認できるものばかりではないと思うのですね、添加物は。確認できないものはどうなるのでしょうか。
○小島説明員 原則として確認できるということは必要であると私ども考えております。確認できませんと、取り締まり等が非常にむずかしくなるわけでございます。しかし添加物の中には天然物を化学的に合成するようになったものも非常に多いわけでございます。ビタミン類あるいはアミノ酸類等はその代表的なものでございます。そういうものは、たとえばビタミンがすでに存在いたします食品に、さらにそれを添加して強化するというような場合には、それではたして人工的に添加したものであるか、あるいは天然にあったものであるかというような判定が非常にむずかしいわけであります。
    〔井上委員長代理退席、委員長着席〕
そういったものにつきましては、分析して確認することはできないというのは、技術的な限界でございます。
○石川委員 これはほんとうに基準どおりやりますと、確認し得るものでなければならぬということになれば、確認し得ないからやむを得ないのだという抜け道が出てくる危険性が非常にあるわけなんです。たとえば合成香料なんか、これはちょっと分析ができないですね。なかなか実際問題として分析できない。それからCMC――のり料に使っているCMC、こういうものはアイスクリームとかつくだ煮とかマヨネーズ、ジュースなんかに入っておりますけれども、これを分析しようと思っても分析できないし、確認はできないということなんです。現状はそうなんです。確認できないからこれはしかたがないのだと放任される余地が多分に出てくる、こういう危険性がある。したがって、確認できないということで逃げる余地のあるような、こういう指示のしかたというものは、非常に私は、不親切ではないか、こう考えるのだが、その点はどう思いますか。
○小島説明員 確かに先生の御指摘のとおり、分析法には限界がございまして、天然物に非常によく似ているもの、たとえばCMC等でも、これは天然のセルローズの誘導体でございまして、非常に分析がむずかしいわけでございます。しかしこういったものは、大体が天然物とほぼ同一のものでございまして、そういった技術的な限界があるのはやむを得ないという考え方に立っております。これは日本だけでなしに、世界的にやはりそういう立場をとっておるわけでございます。私どもは、取り締まりは製造のほうの工場のサイドからそういうことをやる。それからまたそういったものを入れ過ぎますと、たとえばCMCのようなものの場合には、非常に粘度が増しまして、そういったものの性質から、相当加えたのじゃないかということが確認できますので、私どもとしては、そういう際には、製造所等の監視からそういう点を取り締まる、そういう立場をとっております。
○石川委員 いまのような御説明は一応了解できる面もありますけれども、確認できないからやむを得ないのだという逃げ口上ができるような余地を残す指示というものは、私はまずいと思うのですよ。確認できなくても、実際これはCMCが入っておるとか、合成香料が入っておるという場合があるわけですね。確認できませんからというので放置をされる余地を残しておるのがこの通達なんです。これはひとつ考え直してもらいたい。
 それからこれは最近来たので私驚いたのですが、食品化学新聞――ごく最近です。これに、パンなどの食品加工に広く使用されておる流動パラフィン――これはコールドクリームの原料です。このパラフィンを食品添加物に指定すべく現在厚生省で規格、使用基準等について検討中であるという、はたしてそうなのかということと、もうすでに食品加工として指定されていない流動パラフィンがパンなどの食品加工に広く使用されておるということ、これは大々的にこの新聞に出ておるわけです。こういう点については、一体どういうふうに対処するのですか。
○小島説明員 先生は御存じと思いますが、食品添加物につきましては、天然のものを食品添加物として使う場合、それから化学的に合成したものを使う場合とあるわけでございます。天然のものにつきましては、たとえば香辛料その他につきましては、特に法律上の縛りがございません。法律上は食品添加物として指定をいたしておりますのは、化学的合成品に限られておるわけでございます。ところが流動パラフィンは、御存じのように天然物でございまして、天然物を蒸留分離するものでございまして、これについては、法律上指定の手続の必要はないわけでございますので、私どもは指定ということは考えておりません。ただ、天然物でありましても、こういったものをむやみやたらに食品に使うのは非常に困ることでございますので、私どもとしては、ほんとうに流動パラフィンが必要なものだけに使用を限るように従来指導をしてまいっておるわけでございますが、しかし流動パラフィンにつきましては、天然物であっても、やはり相当きびしい規制をかけていくというふうな考え方を私どもとるようにしておるわけでございまして、そのために流動パラフィンの品質を規制する特別な厳重な規格をこしらえまして、そういう規格に合ったもの以外は使わないという形にしたいというのが現在の私どものやっておる作業でございます。
○石川委員 まあこういうふうに、どうも非常にずさんになっておるのですね、民間では。流動パラフィンというのは、鉱物油系でございますね。これは実際に有害か無害か、これはまだ海のものとも山のものともわからぬわけですけれども、とにかく食用には使えそうもないような、こういうものが添加物として堂々とまかり通っておる。通っておるという現実の中から今度は食品添加物として認めるかどうかということをこれから検討するというようなことで、どうも行政が逆になっておる。これは厚生省が手抜かりだとかなんとかいうことじゃなくて、こういう実態が現実だということを踏まえて何とかまた対策を考えてもらわなければならぬ、こういう意味で一つ例として申し上げたいと思うのです。
 それで厚生省のほうでは、いろいろ食品衛生協会、食品衛生調査会、こういったものがあるのですが、食品衛生協会というのは業者の集まりで、ほとんど業者の利益を守るということで、食品衛生調査会のほうは、俵萠子さんのような方が入って、いろいろ検討をされておるようでありますけれども、これもいろんな委員会で指摘をされておるように、業者の代表というものが入り、あるいは学者というものも入ってはおりますけれども、消費者の代表というのがほとんどいない。こういうふうな片手落ちの面を指摘されておったのです。ところがかてて加えて、きょうは厚生大臣は見えておらぬのですけれども、何ですか、今度厚生大臣の私的諮問機関として懇談会というものをつくるということになっております。これはどういう名前になるかわかりませんが、有害食品追放への食品問題懇談会というようなかっこうであるようであります。このメンバーを見ますと、これまた主婦連の関係の高田ユリさんが一人入っているだけで、まじめな人も中に入っていると思うのでありますけれども、どうも財界代表のにおいがきわめて濃い。これでは私は公正な結論は出てこないと思うんです。ほんとうはいま一番心配しているのは消費者なんですよ。消費者がもっと積極的に入って、こういうメンバーを構成するというのならいいのでありますけれども、非常に良心的な方も入っておるようでありますけれども、全然門外漢みたいな人も入っているということで、屋上屋を架すというか、こういう諮問機関をつくってみたところで、われわれはとうてい期待できない。たとえば中性洗剤の問題について、園田さんが厚生大臣であったときですが、ある委員会で質問が出たときに、突如として園田さんが爆弾的な意見を出したわけであります。中性洗剤は有害である、ABSは有害であると思うので徹底的に調べるということを言ったあとでの園田さんの話が何かに出ておりましたけれども、そういっても厚生省に関係するところの学者というのは、ほとんどが製薬会社と洗剤会社に関係のない人はいませんから、結局大臣の負けです、こう言われて、おれは参ったよ、こういう話が何かの新聞に出ておりました。これは事実そうなのかどうか、私は確認はできませんけれども、そういうふうな実態であるかのごとき疑念を国民は多く持っているわけなんです。したがって、これはよほど消費者の代表を積極的に参加をさせて、公正な形でということでないと、今度諮問機関をつくって、いかにも有害食品を追放するんだというふうなことを言ったって、ゼスチュアとしてはたいへん政治的な効果はあるかもしれませんけれども、実際の効果があるかどうか疑わしいという目で国民としては見ざるを得ない。この点を一応申し上げておきたいと思うのです。
 それでチクロの問題、これは井上さんから質問をされました。私はチクロ有害説のほうなんですよ。井上さんは医者の専門的な立場で、チクロは有害ではない、こう言っているのですけれども、いまおっしゃったように蕨岡先生は一生懸命良心的に研究をされて、誘発する危険性がなきにしもあらずという結果を出された。その御努力に対しては敬意を表するわけですけれども、何といってもこの研究は日本としては日が浅いし、また予算も少ないし、やはりアメリカの研究のほうを信頼する以外にないというのが現実だろうと思うのです。したがって、アメリカでチクロというものを禁止するということになると、あわてふためいて日本の厚生省でも禁止をするという、これは私は醜態だと思うのです。チクロの害というのは何も最近始まったことじゃない。前からわれわれは言っていたんです。ところがアメリカがやめたら、チクロだけはやめるというようなことになったのですけれども、このチクロの問題で申し上げたいのでありますが、だんだん態度が軟化をしまして、業者のほうの立場というものをお考えになったのだろうと思うんですけれども、ラベルで表示をするということになっておりますね。ラベルで表示をするというたけれども、あれは印刷はできないんですよ。やっぱり張っつけなければならぬですね。これは一億五千万もあると言われているのですが、実際は仲買いのほうの関係や何かあって、一億五千万なんてつけられるものじゃないと思うのです。こういう膨大な数に対してラベルを張るということが一体可能なのかどうかというようなことまで考えておやりになったのかどうか非常に疑わしい。というようなことは、地方に行ってラベルを張っていない、印刷を添付していないじゃないか、こう言うと、そんなことばからしくてできるもんですか、買ってくれるなと言わんばかりじゃないか、そんなこと私のほうではやれませんよということで、実はほとんど実際に行なわれていないというのが実態だと思うんです。それで厚生省のほうでは最近通達を出して、これに対する取り締まりをきびしくするということが出ておりますね。サイクラミン酸塩なんて書いたって、これは実際はチクロなんてわかる人はないんですからね。チクロとはっきり書けば買う人にもわかるんですが、サイクラミン酸塩なんて書いたって、ぼくらだってわかりやしませんよ。しかしそれにしてもそれを張ることに関してだいぶきびしい通達が四月二十日に出たばかりのようです。
 ところで公正取引委員会の方がいらっしゃるようでありますけれども、こういうふうな通知を厚生省で出しても、これは本来は公正取引委員会の仕事じゃないのですか、こういうものが出た場合には。これを監視するための人手といいますか、公正取引委員会は実に人手が少ないので私はお気の毒だと思っている。もっと強化をしてもらわなければならぬとふだんから考えているのですが、その点については公正取引委員会はどういうふうに対処をされるのか。自分たちの範囲でないとおっしゃれば、けっこうなんでございますけれども。
○坂本説明員 チクロの問題につきましては、そもそも問題の提起が、国民の公衆衛生に危害があるということから発したものというふうに存じておりますが、そういう角度から厚生省が取り締まりをやっておられるわけでありまして、第一次的には厚生省が取り締まられるべき問題ではないかというふうに考えております。
 ただ内容と表示が不一致の場合に、そういった表示が事業者によって用いられまして、それが不当に顧客を誘引するものとして公正な競争を阻害するような場合には、不当景品表示法の第四条の規定によりまして、これに違反する場合があるわけでございます。景表法に違反する場合には、もちろん公正取引委員会としても取り締まりを当然行なわなければならないわけでございます。考え方としては大体そういうことでございます。
○蕨岡参考人 先ほど委員に対する考え方でちょっと誤解があるんじゃないかと思われる点がございますので、一言申し添えさせていただきます。
 私は財団法人癌研究会の癌研究所でガンの発生を研究いたしております。食品衛生調査会はもう十年間やっておりますけれども、私たちは立場といたしましては、国民の一人として、自分もそういうものを食べるのである、そういうものを食べるときに、ガンの立場から自分が食べるとしたらこれを許可してもいいだろうか悪いだろうかということを考えて、大体ガンの立場から意見を述べるような立場をとっておりますので、決して業者とか役所とかどうとか、そういうことは毛頭ございませんから、その点誤解がないようにひとつお願いいたしたいと思います。
○石川委員 蕨岡さんにだいぶ反論をされましたけれども、それはよくわかります。よくわかりますけれども、全体としてはそういうかっこうにはなっていないというのは定評なんですよ。良心的な方がいないとは私は申しませんよ。しかし今度の諮問機関を見ても、味の素の副社長さんを入れているのですね。そういう人をなぜ入れる必要があるのだろうかという疑問をひとしく国民は持っているわけなんです。消費者の代表がたった一人というのも、これはどう考えても合点がいかないという疑問があります。これはやはり消費者の代表を積極的に参加をさせて、消費者の意見を大いにくんでもらう。国民の意見を吸い上げる。そこに出ておられる方は、もちろんこれは国民の一人であることには間違いないでしょうし、食品添加物もいやおうなしに食べさせられておる一人であるでしょうけれども、しかし国民はそういうふうには見ておらないというのが実際なんですね。これは非常に良心的にやっておられる方にはまことに申しわけない話なんですけれども、そういう実態だということで申し上げたわけです。
 それで蕨岡さんについでにお伺いしたいと思いますが、非常に微量だから差しつかえないんだ、こうおっしゃるのですが、私は微量ということばが、どうも微量だからいいということばかりは言えないんじゃないか。ということは、先ほど申し上げたように、幾つもの種類、一日じゅうに何十種類も食べなければならぬというようなことになっておるのが重なり合ったらどうなっているんだということになると、これは相乗的な化学変化を起こす可能性もあるでしょうし、そういう点で微量とばかりは片づけられないんじゃないか。たとえば、四日市のぜんそくにしてもそうですね。一つ一つの煙突だったらこれは全部規制してあるんですよ。ところが全部重なり合ったら、これは環境が異常な変化を起こしているということと同じで、一つ一つはなるほど微量で押えてあるかもしれませんけれども、それを一日に何十種類も食べなければならぬということになれば、微量とだけでは済まされない問題が一つあるのではないかという面と、それからあと一つはメチル水銀化合物の問題で、昭和電工で、阿賀野川の問題が起こりましたね。これは犯人は昭和電工だということが確認をされたかっこうになっているのです。私は前にこの委員会で取り上げて、犯人ははっきりしているのじゃないかというのに対して、そうじゃないのだという反論もございました。しかし結論的にはそうだ。そのときのメチル水銀化合物は、昭和電工は阿賀野川に対して一日に五百グラムしか出ておりません。一日の流量で考えてみたら、これは一体どのくらいかというと、これは何億分の一なんですよ。大体三千万トンといわれておりますから、六百億分の一だという説もあるし、とにかく何億分の一、何百億分の一くらいの微量であることは間違いない。その微量なメチル水銀化合物があれだけの阿賀野川病というものを出しているわけなんです。そうすると微量だからいいというのは理由にならないのじゃないか。こんな微量、ほんとうに人体の中に入った微量というのは、何億分の一じゃないはずですよ。少なくとも何百万分の一か、せいぜい何万分の一くらい。水の中のやつとはちょっと次元が違うかもしれませんが、何百億分の一という微量なものが積み重なってどうなったかわかりませんけれども、とにかくそれで人体に対してあれだけの障害を与えているということを考えると、有害添加物というのは、微量だから、許可された範囲内だからそれでいいのだということだけでは解決のつかない問題だということをひとつ御理解を願いたいと思うのです。
 非常に時間がたちそうなので、私たくさん申し上げたいのですが、具体的な問題として三点伺いたいと思うのです。
 まずコカ・コーラですが、コカ・コーラの広告を見ますと、コカ・コーラの原料はすべて天然で、人工と名のつくものは一切使っていませんと書いてありますが、人工のものを使っておりませんか。小島さんにちょっと伺いたいのです。
○小島説明員 コカ・コーラには、人工的なものとして、たとえば燐酸等の添加物が使用されております。
○石川委員 燐酸も使われているし、カフェインだって、ちょっと問題がありますね。カフェインは日本では全然できないものなんですよ。物価対策特別委員会の中で解明されたことは、これは繰り返しません。というのは、私の同僚の武部委員のほうから何回もしつこく追及されておりますから繰り返しませんけれども、アメリカから送ってきているのは香料だけだというのですね。あとは日本で全部つくり出す。香料にはカフェインは入ってないのです。そうすると、カフェインは日本でつくっている。カフェインができるものは日本ではお茶しかないのですよ。日本のお茶だけではとても十分ではないので、どうもインドから入ってきているくず茶が原料になって、そこでカフェインがつくられて、カフェインそれ自体として添加をされているという危険性がきわめて濃い。カフェインそれ自体も添加物として認められておらないけれども、カフェインが入ることによってコカ・コーラに対して習慣性を持たせるような結果が出てきていると思うし、コカ・コーラについてはほかにも言うことがたくさんありますが、なるほどチクロは使ってないかもしれません。チクロは使っておりませんと書いてある。そうすると、これはおそらくクエン酸も使っておりますね。それから燐酸も使っております。そうすると、天然でもって人工と名のつくものは一切使っていませんというこの看板には大きな偽りがある。これは一流新聞を一面使っておるのですよ。これはたいへんな表示のインチキですね。こういう問題は、これは公正取引委員会に聞きたいのですが、公正取引委員会もだいぶ人手が足りなくて、なかなか手が回らないだろうと思って同情しておるわけなんですけれども、これは不当表示の問題にひっかかってきませんか。
○坂本説明員 ただいまの問題でございますが、ただ、いまこの段階で断定的なことは申し上げられませんので、私のほうで十分検討さしていただきたいと思います。
○蕨岡参考人 先ほど量の問題でお話がございましたけれども、農薬などのように生物環を通って濃縮される場合と直接食品添加物のようにそのものずばりが入っているものとはちょっと話が違うと思います。添加物の場合はそのものでございますから、それは先ほどからも申し上げておりますように、最大安全量を出して、それにセーフティファクターの一〇〇ないし三〇〇という一〇〇以上のものをかけてやっておりますからその間違いは添加物に関しては量的な問題は問題ないと思います。
 それからいろいろなものがまじるじゃないか。現在三百六十五ですか、何ぼかございますから、もちろん全部入るかどうか知りませんけれども、大体安全係数が一〇〇とか三〇〇とかなっておりますから、その許可された範囲内で全部まじってもその限度、しかもそのいろいろなものがまじったときすべてがすべて相乗作用になるかというと必ずしもそうではありませんで、ものによりましては相殺作用もございます。たとえばガンのほうで申しますと、二十メチルコラントレンというのは非常に強い発ガン物質でございます。ところがこれと非常によくかっこうが似たもので炭化水素のクリセンというのがございますが、これは発ガン性はございません。こういうものはタールその他大気の中の汚染物質の中にも全部いろいろな芳香族の炭化水素がまじっております。もちろんクリセンもございます。こういうものを一緒にやりますと、かえって発ガン性が阻害されてしまう。一般に炭化水素のような場合は強いものと強いものとやれば、ある程度相乗じゃなくて相加作用的な作用はございますけれども、強いものと弱いものとやりますとむしろ弱くなってしまう。弱いもの同士はもちろんございませんし、それからバターイエローはネズミの肝臓に対して発ガン性が強いのでございます。それからメチルコラントレンは、皮膚なんかに塗りますと、一般的に非常に強い発ガン性を発揮するわけでございますけれども、これは経口的に両方ともやりますとメチルコラントレンはかえってバターイエローの肝臓の発ガン性を押えてしまうというような作用を逆に持っております。そういうわけで具体的にどういうものとどういうものがまじった場合にどうなるかということは、学問的には実験をしない限り何とも言えないというような現状だと思います。
○石川委員 蕨岡先生は何かかえって相乗性がなくなってしまって消してしまうんだというようなお話でしたが、そうばかりは言えないでしょう。それは重なり合うことだってあり得るはずですね。
○蕨岡参考人 重なる場合もございますし、相殺する場合もございます。それから添加物の場合ですとデヒドロ酢酸はやはりバターイエローの発ガン性に対しましてはむしろ相殺的に作用するというようなデータもございます。ですから、実際はどういうものが入ってどうなっておるかということは、定量的に、しかもガンの場合は寿命一ぱい、ネズミを使った場合には二年ないし三年やって成績を出さない限りその点は何とも言えないと思います。
○石川委員 いまのところはガンの研究もまだ研究途上ですが、いま先生はガンのことだけでおっしゃっているが、私はガンのことだけ言っているわけじゃないのですよ。ということは、四十歳以上の妊婦が一三%も奇形児を生むということは、食品添加物が大きく用いられるようになってから二十年もたっていないと思うのです。十三年くらいだと思うのです。ですから年とった人がわりあいそういうものに多く接していて、これから若い連中が年とった場合にはもっと多くの弊害が出てくるんじゃないか。その弊害といいますか、そういう現象がただ単なる公害一般として片づけられるものかどうかということについては、非常にわれわれとしてはしろうとなりに心配なんです。おそらく食品添加物の影響が皆無ではないであろう、こういうことを考えざるを得ない。いま研究の内容から見ても非常に予算も少ないし、また国立衛生研究所の実態というものは諸外国に比べたら非常に貧弱であるというようなことからいったら、相乗性の研究なんかまだまだこれからの問題ですよ。したがってそういうことから言えば、疑わしきは絶対使わないというき然たる方針でいかなければ、とんでもない結果が出て、一億総慢性中毒みたいな結果になってからではどうにもならぬのじゃないか。ただいまの水銀の農薬問題にしてもそうなんです。あれがこのままあと二十年も三十年も続いたら水銀の障害にもうほとんど一億人がかかってしまうんじゃないかと思うくらいのデータが出たわけなんですね。水銀だけはとにかくとめることになりましたけれども、それ以外の食品添加物はまだまだ野放しになっている、まだまだ解明されていない面がたくさんあるという点で私はガンの問題についてだけ申し上げているわけじゃないのです。その点は誤解のないようにしてもらいたいと思う。
 たとえばコカ・コーラの場合は香料が入っておりますが、香料には――これはちゃんと厚生省の国立衛生研究所の副所長さんと前の所長さん、この食品添加物という本、これは権威のあるものだと思うのです。これにはちゃんとボルネオールというのがわずかばかり使われているし、桂皮アルデヒドも〇・一五%でしたか何%でしたか忘れましたけれども、使われているわけですね。このどちらも毒性があるわけです。ネコは一キロ当たり一グラム、口から与えれば不安状態、三から四になると全部麻痺、死亡するというのがこのボルネオールの毒性です。桂皮アルデヒドのほうはウサギに注射をすれば〇・七五ミリグラム、これは十グラムに対してですけれども、二十四時間以内に全部死んでしまうという猛毒があるのです。これはまあきわめて微量であるから心配はないんだということなんですけれども、これがとにかく香料としてコーラの中に入っていることはこの本でもはっきりと証明されている。こういう性質のものなんです。
 それから、これはまあ公開していいかどうかわかりませんけれども、最近LSDの中毒が相当蔓延しているというので国家的なたいへんな関心事でありますけれども、最近コーラが使われている現象があるのですね。それはしかしコーラ自体がそういうものじゃない。コーラにほかのものをつけ加えるとそういうことになるということなんで、コーラ自体がそれほど毒性があるということを私は申し上げるつもりはありませんけれども、若い連中の中に非常に広く使われているコーラがまたそういうものに使われ始めておるということを御存じですか。おそらく御存じないでしょう。そういうふうなこともありまして、スカッとさわやかとばかりはちょっと言っておれないんじゃないか。値段の点もこれはべらぼうな値段で、原価は大体三円だといわれておりますが、これはよくわかりません。しかし少なくともほかの国では十八円ですよ。日本では三十五円です。これは十八円で売ったのでは日本の清涼飲料水がみんなぶっ倒れるということになりまして、ほかの国の倍の三十五円で売っているというような事実もあるわけです。こういうふうなコカ・コーラに燐酸が入っているということはこれも先ほどお認めになったとおり。燐酸はカルシウムを破壊するし、燐酸の比率がコカ・コーラは非常に多い。こういうことで、これを経常的に飲むと、カフェインというようなものの影響もあって軽い中毒症状を起こすというようなこともあるし、したがって、コカ・コーラがこのまま野放しにしていいのかどうか。これは日本とアメリカくらいです、先進国で飲んでいるのは。ヨーロッパでは全部ボイコットされていますね。どこへ行ってもコカ・コーラはこんなに売っていませんよ。こういうことで、コカ・コーラをこのまま野放しにしていいのかどうかという問題があると思うのです。しかしこのことはきょうは質問いたしません。これ以上申し上げません。というのは先ほど申し上げたように武部委員が相当熱心にこのことについてやっておられるようでありますから、私があまり多くを申し上げる必要はないと思います。しかしこの問題についていずれかは結論を出すべき必要があるのではないかと考えておるということだけは申し上げておきます。
 それから味の素なんですけれども、これは世界的に蔓延をしているのですが、発酵法のときでもすでにアメリカあたりではこれについては問題になっておりまして、発酵法から最近は――海外へいきますと発酵法で現在でもやっておりますが、日本の場合には四日市なんかを中心にして石油エチレンから出たところのアルデヒドを原料とする酢酸、それからノルマルパラフィンという石油中にある物質がグルタミン酸ソーダの原料になるというようなことでこれは使われておるわけです。これは相当いろいろ問題があるのであまりあからさまにはしたくないのでありますけれども、発酵法でやったものとそれからこういうふうに石油から加工してやったものと化学方程式は同じなんです。同じだからといって、人体に対する影響が同じだということは言えない。不純物といいますか、副成物というかそういうものは必ずあるはずなんです。こういうものの中にタールが入っているのではないかという説も行なわれているし、また事実入っているのではないかと私は思うのです、ごく微量ではありますけれども。これが発ガンのもとになるのではないかというようなこともいわれておるわけでありますが、何か味の素について国立衛生試験所でお調べになったことがございますか。
○小島説明員 国立衛生試験所で特にそういう微量なものについての試験をしたということはございません。
 また、私どもその製造法を見ましてもタールが入ってくるというふうには考えられません。
 それから先生がいまアルデヒドを原料にした酢酸を使っているということを言われましたけれども、酢酸を合成法で使うということはございません。
○蕨岡参考人 先ほど次世代に及ぼす影響のことをお尋ねになりましたが、私はもちろんガンしかやっておりませんので専門でございませんけれども、委員の中にはそういう方がございますし、先ほど申し上げました「食品添加物の指定および使用基準の設定、改正について食品衛生調査会において調査審議を行なう際の基準」、これにのっとってやっているわけでございますが、その中にもイの「慢性毒性試験」の項の中に「かつ次世代に及ぼす影響の試験を行なうこととする。」というふうにございますし、それからWHOのものにもございまして、それは一応ちゃんと考慮してやっておりますので、現在の学問的な水準でできる範囲内のことは考えてやっておるということだけは申し上げておきます。
○石川委員 先ほど厚生省の方がいらっしゃいまして、石油からじかにつくっているわけじゃなくて、ガスでもって何か分解をしてやっておるから心配はないんだというふうな御説明を受けましたけれども、しろうとでよくわかりません。よくわかりませんけれども、しかしこれはある学者によりますと、味の素にはタール分はごく微量ではあるけれども、確かに含まれておるという説もあるのです。ですから、必ずしも厚生省のほうで自分で国立衛生試験所で調べた結果ではないのですから、これは確信を持って厚生省も言うわけにいかないだろうと思うのですけれども、石油食品については三代までの慢性毒性試験をしないで食用に供することは危険であるということを相当権威のある人が言っております。しかもこれは味の素の関係者ですよ。そういうことを言っているのです。したがって、やはりこれは疑わしいという面は多分に残るのです。われわれは非常に神経質で、あまり神経質であり過ぎるのではないかという御批判もあるかもしれませんけれども、どうも次の代をになう国会に携わる人間としてはわずかなことでもそういう禍根を残さないようにしなければならぬという責任があると思うのです。石油食品というものについては、これはどう考えても常識的に考えて非常なタール分が副成物として残るということを通じて、次代、三代にまた慢性的な影響が出ないという保証がない。しかも、これは味の素の相当権威のある人がそれを言っているくらいなんですから、この点についてはいまのところは国立衛生試験所は何にもお調べになっておらないようでありますけれども、これはひとつ関心を持ってもらう必要があるのじゃなかろうか。いま直ちにこれはだめだと私断定するつもりは毛頭ありませんけれども、これは野放しにしていい性質のものではないのではないかという感じがしてならないのです。これは一般的に言いますと、味の素のグルタミン酸ソーダが精神分裂症にきぐというので、これを一日に薬のかわりにがぶがぶ飲んでいてガンになったという人も多分にあるのです。笑い話かもしれませんが、しかしこれは決して根拠のない話ではなさそうです。そういうふうなことがあるものですから、この点についてはやはり検討に値することではなかろうか、こう私は思うのです。
 その二つの代表的な例に申し上げましたけれども、最後に一つ、日本だけに認められておるものでニトロフラン誘導体、これは御承知のように日本ではトフロンという名前で出ておりますが、アメリカでは許可されておりません。日本で独特に開発されたものでありますから、アメリカでは不許可にするもしないも食品添加物として認められておらぬわけです。日本だけに認められておるというものです。これは上野製薬さんがつくっておられるので、そこの会社の盛衰とも非常に関係があるので、私は非常に言いにくい、情としては忍びがたいものがございます。しかしながらこれは明らかに劇物ですね。たとえば、劇物というのは体重一キログラム当たり〇・五グラム以上でございます。毒物ということになれば〇・三グラム、それ以上ならば致死量になるというのが毒物、こういうことになるわけですね。ところが、ニトロフラン誘導体は〇・四二グラムですよ、毒物と劇物の間です。これが体重一キログラム当たり〇・四二グラムでもって致死量になるという非常な猛毒を持つものであります。このことについて、実は「危険な食品」あるいは「うそつき食品」ということで郡司さんという方がお書きになりましたところが、相当の激高した手紙が上野製薬から、新聞にわび状の広告を出せ、それでなければ告発をするといってきたんですが、そのままです。告発できないのですよ。できないだろうと思う。逆に検察庁のほうが、これはおかしいと踏んでいるんじゃないですか、私はあまり詳しくは知りませんけれども。ニトロフラン誘導体にしてもそうですが、硫酸銅とか亜硝酸カリとか、こういうものは劇物、毒物ではあるけれども、食品添加物としては幾らでも買えるのですね。硫酸銅なんか、これで人殺しをしたというのはこの間出た例があるわけですが、硫酸銅も食品添加物、発色剤です。野菜とか果実とかコンブには硫酸銅を使っております。それから、亜硝酸カリなんかもハム、ソーセージに使っております。これは劇物です。劇物ではあるけれども、食品添加物としては買える、こういうかっこうになっておりまして、これは制約がないのです。
 いろいろ申し上げたいのは、そのうちの一つニトロフラン誘導体のことだけについて申し上げますと、これは明らかに劇物でありますが、そのニトロフラン誘導体の上野製薬のほうで出している「トフロンの御理解を得るために」というのがここにあります。この中で驚くべきことが書いてある。「『トフロン』は腐敗菌はもちろん、赤痢菌、チフス菌、食中毒を引起すブドウ状球菌、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、大腸菌等の恐ろしい菌に対して広範囲に強い殺菌力を持っている」こう書いてあるのですよ。たいへんこのトフロンというものは有効なんだと言おうと思ったんでしょうけれども、こういう菌を全部殺しちゃうんですね、これは。だから、非常にこれは有益なんだと言いたいのでしょうけれども、読むほうは、こんなおそろしいものが食品添加物として使われておるのかという疑問を持たざるを得ないのです。それから、トフロンというのは、これは名前のとおりとうふにかけるのですよ。民間のとうふの作業場に行ってごらんになるとわかると思うのですけれども、これは微量だからといって量を制限して、それでやっていませんよ。目分量ですよ。目分量でこういう劇物が使われておる。これはどういう障害が出てくるか、まだこれは実験されておりませんからわかりませんけれども、これをこのまま無制限に添加物として認めていいかどうかということについては非常に疑問がある。そういうものを認めるという厚生省の態度に対して私は非常に疑問を持たざるを得ないのです。トフロンについてはどういうお考えを持っておりますか。
○小島説明員 トフロンという名前で言われておりますので、そういう名前を使わしていただきますが、トフロンにつきましては、厚生省におきましては十分な慢性毒性試験、これは二カ所以上の公立研究機関で行ないました試験というもの、それから次世代に及ぼす影響等につきまして検討した上で許可をしております。安全率も百倍ではなくて二百倍をとっております。したがって、現在とうふに対して非常に微量を使用許可いたしております。その量では全く問題ないということでやっております。
 なお、先生は赤痢菌だとかいろいろな菌が死ぬというから重大だとおっしゃいますが、これは食塩でも五%一〇%加えれば、たいていの菌は死んでしまいます。砂糖のようなものでも、濃厚なシロップの中では菌は生きておるということはできないわけでございます。菌を殺すということと毒性とは必ずしも関係ないわけであります。
○石川委員 薬も飲み過ぎればみんな毒になるのですから、そういう意味ではわかりますが、事あらためてこういうことを強調するということで、かえって誤解を招いておる面があるし、またそういう強力な殺菌力があるということになれば、これは人間も殺されるんじゃないかという印象を受けることは当然ですよ。これは変な弁解文みたいなものを書いたなと思って、実は私もおかしくてしかたがないのですが、とにかく、晩に帰って一ぱいひっかけて冷やっこを食うというのは日本人の味だと思うのだけれども、九二%大豆は輸入です。これはよけいなことですけれども。日本の大豆というものはほとんどないのですよ。それでトフロンをかけたものを食って毎日毎日これを食っておるということになるとどういうことになるのだろうか、非常に心配です。ある程度そういう研究はされたと思うのですが、慢性といったって食品添加物に認められたのは、これはごく最近ですから、慢性の研究なんかそう行き届いておるとはぼくは思わないのです。こういう疑わしいものを認めるということは、厚生省の態度に非常に問題があると私は思わざるを得ないのです。これは水かけ論になるかもしれませんけれども、このニトロフラン誘導体は私は一つの例として申し上げただけです。あとは着色剤やその他についていろいろ問題点がたくさんございますが、いま申し上げたように、先ほどのパンや何かに使っておるから食品添加物としていまから認めようかというような態度ではなくて、積極的にそれを監視できるような体制というものをまず厚生省がつくらなければならぬ。後世に対する遺伝その他のいろいろな影響はどういうものかということについては、まだまだ研究というものは不十分だということを前提に置いて、それを強化するなりあるいは慢性毒性の実験をするなりという体制をつくらなければならぬ。これをこのまま放置すれば一体どういうことになるかということについては国民は非常な関心を持っておるということなんです。
 そこで、最初に戻しまして、科学技術庁長官はこういうものについて十分関心を持っていただいて、これについての研究をよほどやらないと、たとえば農薬の水銀だけ一つをとってみても、これがあのまま使われたら一体どういうことになるか。たいへんなことになると私は思うのです。直接影響を受けておるのは農民のうちの四〇%です。しかしながらあれは米の中に全部入っておるのですね。日本人の髪の毛の中にはアメリカ人やヨーロッパ人に比べると数倍も多い水銀が累積されておるということが実証されておるわけです。その水銀の人体に与える影響というのはこれはまた言うまでもないことで、たいへんな猛毒を持っておるというようなことで、水銀は使わないということに一応はなったわけなんですけれども、実はいまでも地方では使われております。そういう点でまだまだ疑問があるのですけれども、きょうは農薬の問題の場ではございませんから申し上げません。確かに食品添加物はわれわれの生活を豊かにしているという面がございます。そういう面を否定するつもりはございませんけれども、マイナス面に対する研究というものはまだまだ不十分だということで、これに対してはほんとうに日本民族の将来にかかわる問題でもあるということをお考えいただいて、これは時と場合によっては勧告権を発動してでも徹底的な調査をするという決意が必要ではないかと思っておる。この点科学技術庁長官に伺いたいと思います。
○西田国務大臣 先ほど来石川先生非常に該博な研究なり調査なりに基づいた御質問を伺っておりまして、厚生省はそれぞれ責任ある官庁として国民の保健衛生につきましては十分な対策のもとに行政を執行しておると思いますが、しかしながらいまお述べになりましたいろいろな問題、これは一例であると思いますが、われわれといたしましても十分な関心を持ってひとつ検討を加えまして、先ほどの勧告権につきましては単に食品添加物だけでなくて、科学技術全般についての御意見と拝聴いたしたわけでありますけれども、十分に心得てまいりたいと思います。
○石川委員 それでは私は終わります。
○蕨岡参考人 先ほどお話しありました発ガン性の炭化水素の汚染の問題でございますけれども、これは、炭素は非常にやっかいな問題でございまして、公害で空気がよごれたことともずいぶん関係もございますけれども、実際問題といたしましてはやはり量的な問題を実験的にきめていくということしかないと思うのでございます。いろいろ食品の中ではかったものがございます。たとえば自然に、普通家庭で料理、焼いたような場合にどれくらい残るか、添加したのではなくて、そういうようなのもございます。たとえば薫製にしたチーズとかはフロラントレンは〇・八PPB、それからピレンが〇・七PPB――PPBというのはパーツ・パー・ビリオンでございますから十億分の一でございますかね。それから魚では一・六とか〇・八、それから〇・八、一・〇、それからサケなども一・八から一・四と、こういうPPB程度のはございます。それから植物油なんかにいたしましてもいろいろなものが入っておりまして、たとえば日光で乾燥いたしましたコプラでも3・4−ベンツピレンは〇・四から四・三PPB。それから1・2・5・6−ヂベンツアントラセン、これも発ガン性のものでございますが、これは〇ないし〇・一PPB。そのほかに発ガン性じゃないものがたくさん入っておりまして、たとえばフエナンスレンは一二・六から二一、アントラセンが二・二から四・三、ピレンが二・四から四・三、フルオランセンが三・二から五・四、クリセンが〇・八から一・三、3・4−ベンツアントラセンが〇・四から〇・六、1・2−ベンツピレンが〇・五から四・二、ペリレンが〇から〇・七、アンサンスレンが〇ないし〇・一、ベンツペリレンが〇・二ないし一・〇、コロネンが〇ないし〇・二と、こういうふうに発ガン性、発ガン性じゃないものがPPB程度ではもう自然界に入っておるのでございます。
 それからこういうものを、発ガン性についてはまだ十分な期間と量で確実な発ガン性を調べたものというのは比較的少ないのでございますが、調べられた範囲内におきましては、〇・四%でマウスで一年とか、それから十五ミリぐらいで十八カ月とかいう程度で調べられておりますけれども、この程度の量でございますと、いまのところはまだ確実に発ガン性であるというような証明がございませんので、そういうものは今後将来もう少し定量的な問題をきちんときめていかなければいけない問題ではあると思いますけれども、その程度の現状になっているということを、簡単にお話し申し上げます。
○石川委員 どうもきょうの参考人の方はほんとうにお忙しいところ、ありがとうございました。
 ただガンの問題はまだまだこれからの問題でもあるしするから、いままでの結果だけでもってこれで事足れりという問題ではないと思う。しかしそれと同時に、私が先ほどから申し上げておるように、ガンの問題だけではなくて全般の問題としてお伺いしているのです。種類が非常に多いし、また相乗性というものについても解明されておらない。したがってどこまでどういうふうに重なり合って相乗性を発揮しているか、これもまだこれから検討の対象になるだろうと思うのですね。そういうことがありますので、厚生省としてもほんとうに国民が心配している問題であるということで真剣に取り組んでいただき、予算の問題にしてもこれは科学技術庁長官あたりも仲介の労をとっていただいて、もっと真剣にこの問題に取り組むこともできるように、解明できるような体制をつくってもらうということと、いまの勧告権の問題も十分ひとつ考慮をしてもらいたい。
 こういうことで、私の質問をきょうは終わりたいと思います。
○北側委員長 この際参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 次回は、明七日木曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十三分散会