第071回国会 本会議 第18号
昭和四十八年三月二十七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十四号
  昭和四十八年三月二十七日
   午後二時開議
 第一 関税定率法等の一部を改正する法律案(
    内閣提出)
 第二 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、
    承認を求めるの件
    …………………………………
  一 健康保険法等の一部を改正する法律案(
    内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 関税定率法等の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 日程第二 放送法第三十七条第二項の規定に基
  づき、承認を求めるの件
 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律
  案(内閣委員長提出)
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整
  備計画の変更について承認を求めるの件
 住宅金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
   午後二時六分開議
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(中村梅吉君) 日程第一、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 関税定率法等の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長鴨田宗一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔鴨田宗一君登壇〕
○鴨田宗一君 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、最近における内外の経済情勢の推移に対応し、対外経済関係の調整、国民生活の安定、充実に資するため、関税率について所要の調整を行なうほか、各種の関税制度の整備を行なおうとするものでありまして、その大要を申し上げますと、次のとおりであります。
 第一は、特恵関税制度の改正であります。開発途上国との経済取引を拡大し、これら諸国の経済発展に寄与するため、まず、農水産物の特恵関税については、その適用品目を拡充するため、新たに十一品目を追加するとともに、現行特恵関税適用品目のうち十四品目について税率の引き下げを行ない、次に鉱工業産品であって、特恵税率を一般税率の二分の一にとどめている品目のうち、六品目についてその税率を無税に引き下げることといたしております。また、現在、鉱工業産品の特恵関税適用輸入額が一定の限度額に達した場合には、特恵税率の適用を停止することとしておりますが、この制度につきまして、特恵適用輸入額が限度額に達しても特恵税率の適用を継続することができることとし、輸入拡大をはかることといたしております。
 第二は、関税率の改正であります。国民生活の安定、充実をはかるため、まず、国民生活に関連の深い物資を中心に三十二品目の関税率を引き下げることといたしております。
 次に、関税割り当て制度の改善をはかるため、硫化鉄鉱及び天然黒鉛についてこの制度の適用を廃止し、その関税率を無税とするとともに、魚粉、木炭の二次税率を引き下げることといたしております。
 また、通関実務を簡素化し、輸入者の便宜をはかる見地から、識別困難な類似品目間の税率を低いものに統一することとし、三十五品目について関税引き下げを行なうことといたしております。
 このほか、本年三月三十一日に期限の到来する百八十七品目の暫定税率につきましては、その適用期限を一年間延長することといたしております。
 第三は、各種の関税制度の改正であります。
 まず、わが国の居住者に対する贈与品について、政令で関税を免除し得る限度額を五千円から一万円に引き上げるほか、輸入後一定期間使用されて再び輸出される物品に対する減税制度の対象の拡大、保税展示場に関する制度の要件の緩和等を行なうことといたしております。
 また、わが国の宇宙開発の推進に資するため、人工衛星等宇宙開発の用に供する物品等について、関税を免除する制度を創設することといたしております。
 本案につきましては、審査の結果、去る三月二十三日質疑を終了し、ただちに討論に入りましたところ、日本共産党・革新共同を代表して増本一彦君より、本案は大企業の利益優先の構造を促進するもので、反対である旨の意見が述べられました。
 次いで採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しましては、附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(中村梅吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件
○議長(中村梅吉君) 日程第二、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。
    ―――――――――――――
 放送法第三十七条第二項の規定に基づきを求めるの件
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長久保田円次君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔久保田円次君登壇〕
○久保田円次君 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に関し、逓信委員会における審査の経過と結果とを御報告申し上げます。
 本件は、日本放送協会の昭和四十八年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めようとするものでありまして、
 まず、その収支予算は、事業収支におきましては、事業収入一千五百四億二千万円、事業支出一千三百二十五億八千万円、事業収支差金百七十八億四千万円、資本収支におきましては、資本収入、資本支出とも三百六十八億六千万円の規模となっておりますが、特別収入及び特別支出を除く、経常事業収支においては、九億九千万円の支出超過となっております。また、事業収支差金のうち、百四十三億五千万円を資本収支に繰り入れ、三十四億九千万円を翌年度に繰り延べることとしております。
 次に、事業計画は、難視聴の早期解消をはかるためのテレビ・ラジオ両放送網の建設、放送番組の充実刷新及び社会情勢の変化に即応した営業活動の推進等の諸施策を実施することとしております。
 また、放送センター建設の完了に伴い、不用となる東京放送会館の土地、建物を売却することとしておりますが、その収入は、最も有効に国民に還元する趣旨のもとに、放送センターの建設及び沖繩の復帰にかかる債務の返還、放送界全般の向上に寄与する放送文化基金の設立並びに事業安定化資金の確保を行なうことといたしております。
 逓信委員会におきましては、二月二十七日本件の付託を受け、数回の会議の後、三月二十六日、討論なく、採決を行なった結果、全会一致をもって本件はこれを承認すべきものと議決した次第であります。
 なお、採決の後、委員会は、本件に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案にかかる附帯決議を付することを全会一致をもって決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案(内閣委員長提出)
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、内閣委員長提出、国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(中村梅吉君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の趣旨弁明を許します。内閣委員長三原朝雄君。
  〔三原朝雄君登壇〕
○三原朝雄君 ただいま議題となりました国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 御承知のとおり、現行の国民の祝日といたしましては、国民の祝日に関する法律によりまして、元日、成人の日、建国記念の日、春分の日、天皇誕生日、憲法記念日、こどもの日、敬老の日、秋分の日、体育の日、文化の日、勤労感謝の日の十二の祝日が設けられており、これらの日は、国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日として定められ、また、同時に休日とすることと定められております。したがいまして、祝日を休日としているのは、それぞれの祝日の意義を考え、平常の勤務を離れて、それにふさわしい一日を過ごし得るようにという趣旨と考えられるのであります。
 本法律案は、これらの国民の祝日が日曜に当たるときは、その翌日を休日としようとするものでありまして、祝日、日曜ともに、それぞれ平常の勤務を離れた日として確保し得るようにいたそうとするものであります。
 今日、わが国の政治における第一の政策課題は、国民の福祉増進であるといわれており、その実現は、各般にわたる行政施策を通じて遂行されるべきでありましょうが、現在、すでに国民各層の間から、生活の中にゆとりある余暇を求める声が高まっていることはいなめません。
 また、諸外国におきましても、祝日と日曜日が重なったときは、翌日を休日としている例もあり、この際、本改正を行なうことは、時宜を得た措置であると考えた次第であります。
 何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(中村梅吉君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
    ―――――――――――――
  〔本号(二)に掲載〕
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。法務委員長中垣國男君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔中垣國男君登壇〕
○中垣國男君 ただいま議題となりました法律案について法務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方裁判所における交通関係の業務上過失致死傷事件及び簡易裁判所における民事事件などの適正迅速な処理をはかるため、判事補三人、簡易裁判所判事四人、裁判官以外の裁判所職員二十八人計三十五人を増員しようとするものでます。
 当委員会におきましては、去る二月二十日提案理由の説明を聴取し、自乗長時間真摯な質疑応答を重ねてまいりました。
 かくて、本日質疑を終了し、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同提案による附帯決議が付されましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(中村梅吉君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件を議題といたします。
    ―――――――――――――
 漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長佐々木義武君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔佐々木義武君登壇〕
○佐々木義武君 ただいま議題となりました漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、最近における漁業情勢その他経済事情の著しい変化に伴い、昭和四十四年第六十一回国会で承認された漁港整備計画を全面的に変更しようとするもので、昭和四十八年度以降五年間に四百二十港の漁港を全国にわたり計画的に整備拡充し、その機能の増進と安全性の確保をはかり、もって漁業生産の増大、流通の円滑化及び漁業経営の安定に資するためのものであります。
 本件は、去る二月二十一日農林水産委員会に付託され、三月二十三日政府から提案理由の説明を聴取するとともに、同日及び三月二十七日の両日にわたって慎重審議を行ない、三月二十七日質疑を終局し、採決の結果、これを適切な措置であると認め、全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。
 なお、本件に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 住宅金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○中山正暉君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、住宅金融公庫法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(中村梅吉君) 中山正暉君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 住宅金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
 住宅金融公庫法の一部を改正する法律案
  〔本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。建設委員長服部安司君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号(二)に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔服部安司君登壇〕
○服部安司君 ただいま議題となりました住宅金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、居住環境の良好な住宅の建設及び個人住宅の取得の負担軽減をはかるため、住宅金融公庫の業務範囲を拡大するとともに、貸し付け条件の改善を行なうことを目的とするもので、おもな内容は次のとおりであります。
 第一に、賃貸住宅建設事業者または分譲住宅建設事業者で、公庫の貸し付けを受けて、政令で定める規模以上の一団地の住宅建設を行なうものが、住宅の建設とあわせて関連利便、公共施設の建設、整備を必要とするときは、それらの建設または整備に必要な資金を貸し付けることができることとしております。
 第二に、個人住宅建設資金、賃貸または分譲住宅建設資金、関連利便、公共施設の建設、整備資金等にかかる貸し付け金の利率については、法律で定める限度の範囲内で、政令で定めることとするほか、関連利便、公共施設にかかる貸し付け金の償還期間等を十年以内とし、政令で定める大規模な事業による学校等の施設にかかる貸し付け金にあっては、二十年以内に延長することとしております。第三に、宅地造成資金、特定中高層耐火建築物建設資金及び店舗等建設資金等にかかる貸し付け金の限度、利率及び償還期間等は、政令で定めることができることとしております。
 なお、政令で利率を定める場合は、事業が促進されるように配慮するほか、銀行その他一般の金融事情を勘案しなければならないこととしております。
 第四に、以上の改正に伴い、産業労働者住宅資金融通法、北海道防寒住宅建設等促進法について、公庫の貸し付け金にかかる金額の限度、利率及び償還期間等に所要の改正を行なうこととしております。
 本案は、去る二月二十日本委員会に付託され、三月七日建設大臣より提案理由の説明を聴取し、慎重審議いたしましたが、その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。
 かくて、本二十七日、本案に対する質疑を終了し、討論を省略し、直ちに採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、民間デベロッパーに対する指導監督、個人住宅に対する貸し付け条件の抜本的改善など六項目の附帯決議が付されました。
 右、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(中村梅吉君) 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣齋藤邦吉君。
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 医療保険制度の問題につきましては、財政の健全化をも含めた抜本的な改善がかねてから重要な課題となっているところでありますが、制度の中核的存在である政府管掌健康保険が現在まで十年間深刻な財政難を続けてまいりましたこともありまして、昭和三十六年の皆保険達成以来、健康保険においては見るべき改善が行なわれないまま今日に至っております。医療保険の分野では関係者の間で利害がいろいろと錯綜し、問題の根本的な解決をはかることが困難なものが多々あることも事実でありますが、これを何とか解決の方向へ導く努力の積み重ねが必要と考えるものであります。
 今回は、これまでの経緯にかんがみ、また、関係審議会の意向等を尊重いたしまして、国民の福祉水準の向上を求める要請にこたえるべく、福祉重点施策の一環として、実現可能なものから段階的に制度の改善に着手するとの見地に立ち、改正を行なうこととしたものであります。
 すなわち、今回の改正は、制度創設以来三十年間改善されないままになっている家族療養費の給付率の引き上げ、高額療養費の支給等家族医療給付の改善を中心に、国民医療の確保に関する医療保険の側での対策を充実強化するため給付改善を行なうとともに、保険の運営上重要な問題である保険財政の恒常的な安定を確保するための諸施策を講じようとするものであります。この改正によって懸案の抜本改正の第一歩が踏み出せるものと確信いたしておる次第でございます。
 まず、健康保険法の改正について申し上げます。
 第一は、医療給付の改善でありまして、家族療養費の給付率を五割から六割に引き上げますとともに、高額な医療につきましては、家族療養費にあわせて高額療養費を支給し、自己負担とされているもののうち一定限度額をこえるものを保険から全額給付することといたしております。第二は、現金給付の改善でありまして、本人分娩費の最低保障額を現行二万円から四万円に引き上げ、さらに配偶者分娩費について現行一万円から本人分娩費の最低保障額と同額の四万円に引き上げるとともに、家族埋葬料につきましても改善をはかることといたしております。
 第三は、標準報酬の改定でありまして、その等級区分が最近における給与の実態と著しくかけ離れるに至っておる結果生じておる負担の不公平を是正するため、現行三千円から十万四千円までの三十六等級でありますのを、二万円から二十万円までの三十五等級に改めるものであります。
 第四は、保険料の改定でありまして、政府管掌健康保険の保険料率を七%から七・三%に改定するとともに、当分の間の措置として、現在保険料の算定の基礎とされていない賞与等について、支給のつど、その一%を労使折半により特別保険料として徴収するものであります。なお、この特別保険料は、報酬月額五万円未満の者からは徴収せず、賞与等が五十万円をこえるときは、五十万円として計算することとしております。
 第五は、国庫補助の拡充でありまして、財政基盤の脆弱な政府管掌健康保険に対して、これまでの定額国庫補助を改め、定率制の国庫補助を導入することとして主要な保険給付に要する費用の一〇%を国庫補助するものであります。
 第六は、保険料率の調整とこれに連動した国庫補助率の引き上げの問題でありまして、政府管掌健康保険の保険料率について、厚生大臣は必要あるときは社会保険審議会の意見を聞いて、法定料率の上下〇・七%の範囲内でこれを調整できる規定を設け、同時に、この規定により法定料率をこえて保険料率を引き上げた場合は、さきに述べました定率国庫補助の割合を料率〇・一%につき〇・四%ずつ増加することとしております。
 第七は、健康保険組合関係でありまして、それぞれの組合の規約で定めるところにより、特別保険料を徴収できることとするとともに、保険料率の調整幅が現行三%から八%までであるのを三%から九%までに、被保険者の負担料率の限度が現行三・五%であるのを四%にそれぞれ改めることとしております。
 次に、船員保険法の改正について申し上げます。
 船員保険の疾病部門につきましても、さきに述べました健康保険の改正に準じ、家族療養費の給付率の引き上げ等保険給付の改善を行なうとともに、標準報酬の改定等所要の改正を行なうものであります。
 また、国民健康保険法の改正につきましては、健康保険法の改正に準じて高額療養費を支給することとしております。
 次に、厚生保険特別会計法の改正について申し上げます。
 この改正は、昭和四十八年度末における政府管掌健康保険の借り入れ金に係る債務をたな上げするとともに、新規の借り入れを限定し、また、昭和四十八年度以前に健康勘定において生じた損失を一般会計からの繰り入れによって補てんする方途を講ずるものであります。
 なお、この法律の実施時期につきましては、本年四月一日からとしておりますが、高額療養費の支給に関する部分につきましては、諸般の準備手続等を考慮いたしまして本年十月一日から実施することとし、また、国民健康保険法の改正は昭和五十年十月一日からとしております。
 以上が健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(中村梅吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山下徳夫君。
  〔山下徳夫君登壇〕
○山下徳夫君 私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑を行ないたいと存ずるものであります。(拍手)
 思いまするに、国民の健康と福祉を守り、これを向上していくためには、まず医療保険制度を整備し、よりよく、より高い医療を国民全体に均てんし、普及していくことが近代国家としての当然の方向であります。このため、わが自民党内閣は、先進諸国に類例を見ない国民皆保険制度をすでに昭和三十六年に達成し、国民医療の負担軽減と健康の増進に貢献してまいったのであります。
 すなわち、保険制度の普及は、医学、薬学の進歩と相まって、乳児や結核の死亡率を驚異的に激減させ、平均寿命も著しい伸長を見せ、もはや世界の長寿国グループに入るまでになりました。しかし、わが国の人口の老齢化と高度経済成長に伴う社会構造の変化は、成人病や各種公害病等を惹起し、医療を一そう複雑化してまいりました。
 これらに対応する国民医療は、機敏かつ積極的に展開されなければならず、今回の法律案もその一翼をになうものであります。しかしながら、医療制度全般に対する国民の不満は、むしろ漸次高まりつつあり、三時間待って三分診療とか、保険あって医療なしといわれるのも、その不満感のあらわれであります。この際、政府は、医療制度改革に対する基本方針を国民の前に明らかにすべきであると思いますが、総理よりお聞かせ願いたいと存ずるのであります。
 医療制度の中で最も重要な問題は、医療供給体制の確立であり、その中で最も重要なのは、質、量ともにすぐれた人的、物的医療施設整備の問題であります。皆保険の目的が、いつでも、どこでも医療が受けられることにありとするならば、今日なお無医地区が三千カ所もあるのは、皆保険の基礎的条件が整備されていないことであり、大きな問題であります。同時にまた、基幹病院の整備と救急医療対策も急を要する問題と思いますが、厚生大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 また、差額ベッドの問題がしばしば論議されておりますが、これも根本は、施設整備の問題と密接につながっていると考えます。今日の医療施設は、高度の機器の整備を必要とし、その経費は、一ベッド当たり一千万円ともいわれ、個人資本のとうてい及ぶところではありません。ここに国公立病院に対する思い切った公的資金の投入が必要とされるわけで、英国、イタリアが医療施設を国営とし、米国においても、病院整備法に基づいて病院の施設整備には国家が一定の割合を負担しているのも、このような事情を背景とするものと考えられるのであります。
 しかるに、公的病院の代表たる日赤、済生会等が、それぞれの病院で独立採算制をしいられて、経営管理の面でかなり無理がいっているのではないかと心配されるのであります。火事を出さなきゃ消防署が成り立たぬというような制度は、すみやかに改むべきだと思いますが、厚生大臣はいかにお考えか、承りたいのであります。
 次に、公費負担医療についてお尋ねいたします。
 現行では、戦傷病者、予防接種事故等、国家補償的性格のものと、結核、精神病、法定伝染病のごとき、地域社会に不安を与えるものとに限定されておるのでありますが、今日の社会構造の変化に対応して、今後は、公害病やスモン、べーチェットのごとく、社会的にその対策を必要とするものにも及ぼしてはいかがでございましょうか。さらにはまた、疾病予防診査等で、社会が必要と認める妊産婦、乳幼児や成人病予防等の健康診査、あるいは疾病予防措置としての予防接種等、一連の疾病予防対策にまで適用範囲を拡大されてはどうでございましょうか。消火より火災予防に力を注ぐことが、さらに国民の健康管理上重要と考えますが、この点につきまして厚生大臣にお伺いをいたします。
 次に、お尋ねしたいことは、医療従事者の確保の問題であります。
 医療施設の整備につきましては、GNP第二位を誇るわが国の財力からすれば、早期解決の可能性は十分にあると思われますが、人の問題はしかく簡単ではございません。
 まず、その第一は、医療の最高責任者たる医師の確保であります。特に、量だけでは無視できない問題だけに、巷間伝えられる一部の私立医大の入学負担金数千万円等を耳にするとき、りつ然たるものを禁じ得ないのであります。(拍手)政府は、国立の医学部、医大をさらに整備促進することによって、質のよい医師を必要なだけ確保できるように要望いたすものであります。
 また、医療従事者の問題で最も深刻なのは、看護婦確保の問題であります。このことについて、当局が年々努力されていることは認めるものでありますが、看護婦という職業が魅力ある職業として評価されるような仕組みをつくらない限り、根本的な解決は困難であります。(拍手)そのためには、看護婦の業務を分析して、真に看護婦の資格にふさわしい業務内容に整備するとともに、思い切った処遇の改善や年金制度を設けるなど、有効な対策を早急に講ずる必要があると考えるのであります。
 また、医師と同様に、看護婦の質の向上も期さなければなりませんが、四年制の看護学部の設置等について、今後どのように進めていかれるおつもりであるか。
 さらに、必要人口を確保するための緊急対策として、従来医師会等で行なってきた中学卒三年課程の看護学院制度のほかに、高校卒隔日制四年課程の制度を実施してみられるおつもりはないか、厚生大臣にお尋ねをいたします。
 次に、医薬分業についてお尋ねします。
 この問題については、欧州諸国では、すでに十三世紀から実施されておるのであります。わが国でも一応法律の制定を見たとはいうものの、まさに空文にひとしく、それぞれの立場から主張のみ多く、全く軌道に乗っておりません。日本の医療の大きなガンの一つは、諸外国と比べて薬の使い過ぎであります。試みに、外国の総医療費に占める薬剤費の割合は、英国で一〇%、アメリカ、スウェーデンで一二%。これに対して、日本は実に四三%にのぼっております。現に総理府広報室の「医療保険に関する調査」昭和四十二年度版によりますと、傷病等がなおって、なお薬が残った者は二七%に達しておると指摘をしておるのであります。しかも薬の乱用は、かえって薬害をもたらし、現にスモン病については、キノホルムを禁止してからむしろよくなったといわれておるのであります。「医者は薬売り」という汚名を返上するためにも、医薬分業を推進すべきだと思いますが、厚生大臣はいかにお考えでございますか。
 さて、今回の改正案の中身についてでありますが、全体的に福祉の充実を期待する国民の声にこたえるものとして、政府の決意に敬意を表するものであります。しかるに、一部に今回の改正案を値上げ法案ときめつけ、給付の改善を黙殺し、累積赤字のたな上げや、定率一〇%の国庫補助という画期的な国のてこ入れにも目をおおい、いたずらに保険料の増収部分についてのみ誇大な宣伝に狂奔し、国民を欺瞞し、ひいては、健保改悪であるとする動きのあることはまことに遺憾であります。(拍手)
 それは、政府が改正案の実体を国民の前に克明に明らかにし、また国民の理解を求める努力がなされなかったためと考えるのであります。昭和四十一年、四十二年、四十七年の改正案のごとく、給付改善を行なわずに、ただ単に財政措置のみを講じた案ならいざ知らず、今回の改正案は、十分に給付改善を行ない、つまり、中身をよくすることにその主眼が置かれておるのであります。(拍手)値上げ法案のそしりは全く当たらない。この改正案は必ずや国民の福祉の前進につながるものと考えますが、総理大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手)
 次に、改正案の中身について、具体的に承りたいと存じます。
 第一に家族給付率の引き上げであります。このことは大正十五年、健康保険法制定以来初めての改正で、大きく評価されるべきであります。しかし、国保では、すでに昭和三十九年から七割給付を実施しているのにかんがみ、健保でもぜひ七割にすべきだと思いますが、このことについて、総理及び厚生大臣の御意見を承りたいと存じます。
 次に、家族高額療養費の支給についてでありますが、これは、給付率の引き上げと相まって、国民の医療費負担を軽減するための画期的な措置であり、大きな福音であります。
 近年は、心臓病、ガン、腎不全あるいは原因不明で治療不確定な難病など、一カ月に五十万、百万と多額の医療費を必要とする疾病がふえております。しかも、いかに費用がかかろうと、最大限の手を尽くしてやりたいのが近親者の心情であり、そのために、すべての財産を手放して、塗炭の苦しみを受ける例は少なくないのでありまして、このような家庭経済の破綻から救わんとする今回の措置は、まさにクリーンヒットといわなければなりません。(拍手)
 この際、特に、国保の全保険者が実施に踏み切るよう切望したいのでありますが、この点について、厚生、大蔵両大臣の御所見を承りたいと存じます。
 次に、保険財政の健全化対策についてお尋ねをいたします。
 御承知のとおり、政管健保は過去十年間赤字を続けてまいりました。これは構造的に常時逆ざやという性格を持っている証拠でありまして、このような体質的な弱さを補強するため、定率一〇%補助を導入したことは、まさに画期的であり、高く評価されるべきであります。
 また、過去の三千億円の累積赤字をたな上げして、一般会計で穴埋めすることは、実に英断であり、これで政管健保も身軽になって再出発できるのであります。
 しかし、一部に定率国庫補助をもっとふやせという意見もありますが、経済社会基本計画でも、保険料にたよるべき分野と、租税等の一般財源にたよるべき分野を明確にせよといっておるのであります。受益者負担を一切否定して、すべて租税負担でまかなえという主張が世論に逆行することは、これまた当然であります。
 次に、標準報酬の改定でありますが、このことは、昭和四十一年以来、全然手を加えられておりません。今日の賃金の実態等からすれば当然の改定で、審議会もおおむね了承しておるところであります。また、料率の改定及び特別保険料についても、これによる増収は、被保険者一人当たり月百八十円で、給付改善よりはるかに下回っており、社会保険の趣旨からすれば、これまた当然といわなければなりません。
 次に、弾力条項の問題でありますが、累積赤字を保険の負担外にたな上げする以上、今後、政府が責任を持って保険財政を安定させる仕組みとして当然必要であり、組合健保、共済組合、労災保険、失業保険等の短期保険ではすでに行なわれているころであり、ただ、巷間流布されているやに聞かれているところでは、政府がこの弾力条項を用い、保険料率を一挙に最高限度の八%まで引き上げるのではないかという疑惑と懸念でありますが、この際、厚生大臣は、この問題について、国民にはっきりと所信を述べられるべきだと存じますが、厚生大臣の所見を承ります。
 さて、今回の改正案は、収入にのみ力を入れて、支出には何らの措置も講じていないという意見があります。
 そこで、お尋ねいたしますが、政府は、診療報酬体系の合理化、出来高払い制度の欠陥の是正、乱診乱療に対する監査の強化、医薬分業の計画的推進、一部負担の適正化など、支出適正化の諸制度をすみやかに改善実施するとともに、五人未満の事業所への適用拡大についても、今後どのような方針で対処されるおつもりであるか、勇断をもって実行される決意のほどを厚生大臣から伺いたいのであります。
 最後にお尋ねいたしたいことは、御承知のとおり、政管健保は零細中小企業の従業員を対象としており、これらの方々の家族に対する給付改善は、もはや一日たりとも放置できない問題となっておるのであります。長年政権を担当しているわが党としても、この十年来、赤字、空白、不毛の健保の分野に、大きな光を投げかける今回の改正案は、待望久しい国民の期待にこたえるものとして、ぜひ早期実現をはかるべきものと信ずるのであります。(拍手)
 また、本法案は、給付の改善と財政の健全化という二本の柱により、懸案の医療保険抜本改正の第一歩ともなるのであります。
 総理は、この健康保険法改正を、不退転の決意をもって、今国会においてぜひ成立させるお気持ちがあられるかどうか、重ねて御決意を承って、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 私から四点にわたってお答えをいたします。
 第一点は、医療制度改革に対する基本方針を明らかにせよということでございます。
 医療制度につきましては、医学、医術の研究開発、医療施設の体系的整備、医療従事者の養成及び資質の向上など、広範にわたり課題が山積をしておるのであります。これらの課題を計画的に解決していくため、目下、社会保障長期計画の策定を急いでおりますので、医療供給体制の整備を最も重要な柱と考えて策定を急ぐつもりでございます。
 第二問は、今回の改正案が、十分な給付改善を行なう点に主眼を置いたので、値上げ法案のそしりは当たらないと思うがいかん、こういう御質問でございますが、今回の改正案は、御指摘のとおり、福祉政策の一環として、実現可能なものから段階的に制度の改善に着手するという立場で、家族医療給付率の引き上げなど、給付改善をはかりますとともに、財政の健全化に必要な諸施策を講じて制度の充実強化をはかり、国民の福祉水準の向上に資することを目的といたしたものであることは、御指摘のとおりでございます。
 第三点は、家族給付率については、国保ではすでに七割給付を実施しておるので、健保でも、ぜひ七割以上に引き上げるべきではないかという御意見を交えての御発言に対してでございます。
 家族給付率の引き上げは、医療保険の内容の充実のため、最も重要な課題でありますが、三千億円にものぼる累積赤字をたな上げしながら、あえて制度創設以来初めての改善を行なおうとするものでありますので、今回は、とりあえず六割まで引き上げることといたしたわけであります。
 最後の問題は、政府は、この健康保険法案を不退転の決意で、今国会において成立させる決意があるのか、こういう御激励を含んだ御発言に対してでございますが、国民医療の充実を期するために、その中核をなす医療保険を国民の要望にこたえ得るよう改善することが目下の急務であることは、お説のとおりでございますので、その意味におきまして、今回の改正は、今国会においてぜひとも成立させたいと考えておるのでございまして、各位の御理解を特に求めたいのであります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 愛知大蔵大臣不在中代理をつとめておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 私に対する御質問は、家族の高額療養費の支給を、国保加入者全部に対して実施すべきであると思うがどうかということでありますが、結論から申し上げますと、ぜひそうしたい、ただし、全面実施については、三年程度の準備期間を置いて、着実にその実現をはかりたいということでございます。
 御承知のように、国民健康保険は、被保険者の構成、また、市町村は、それぞれの財政基礎が異なっておりまして、非常に多様な基盤をなしておるわけであります。家族の高額療養費支給の実施に伴いまして、新しく国庫補助給付を導入することにいたしておりますが、保険料の負担増を伴うものであり、すべての保険者について、実施態様を同時に整備することは困難であるといわざるを得ないのでありまして、世帯員の療養給付率を、たとえば四年計画で五割から七割に、また、助産費を三年計画で三千円から一万円に、それぞれ過去において引き上げた例がございますので、こうした例にならいまして、三年程度の準備期間をおいて実施するようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 国民医療供給体制というものは、非常に範囲が広範にわたっておりまして、僻地医療の問題、救急医療の問題あるいは医療施設の体系的整備、あるいは看護婦、助産婦等の養成、こういう各般にわたる問題でございますが、厚生省におきましては、今日までそうした面に努力はいたしてまいりましたが、まだ十分でない点もございますので、先般、閣議決定をいたしました経済社会基本計画に基づきまして、年次別な社会保障長期計画を策定することといたし、医療供給体制の確立をはかってまいりたいと考えております。すべての国民が充実した医療を受けられるように、私としても真剣に取り組む決意でございます。
 国公立病院に対する問題でございますが、国公立の医療機関は、原則として独立採算制をたてまえといたしておるわけでございますが、本来、公的病院に期待されておりますのは、ガンとか救急医療とか僻地医療、こういったふうな高度、不採算の医療を行なっておる、こういうことが非常に地域医療において期待されておるわけでございまして、今日まで補助をいたしております国立病院におきましても、施設整備のためには、一般会計財源の繰り入れを行なうことによりまして、国公立病院の整備につとめておるわけでございますけれども、まだまだ、私は、こうした国公立病院の整備のためには思い切った財政投資をするということが必要だと考えておりますので、私としても、今後とも、一そうこうした実現のために努力をいたしたいと考えております。
 次に、公費負担医療の問題でございますが、スモン、べーチェット病等の特定疾患につきましては、昭和四十七年度において、四疾患の入院患者に対してだけ、その医療費の一部について補助を行なってまいりました。四十八年度におきましては、この範囲を拡大いたしまして、対象疾病を六疾患に拡大する、さらにまた、入院だけじゃありませんで、今度は入院、通院両患者を通じて、医療費の自己負担を全額公費とする、こういうことにいたしておるような次第でございます。
 さらにまた、妊婦、乳幼児につきましては、従来所得の制限がございましたが、四十八年度におきましては、この妊婦、乳幼児につきましては、全額公費によって、全階層に拡大して、公費による健康診査を行なおう、こういうことにいたしておるわけでございます。
 なお、将来は、予防検診につきまして保険で何とか考えてもらえぬか、こういうお話もございましたが、そういう問題につきましても、将来、保険財政が許すようになりましたら、ひとつ前向きに検討いたしたいと考えておる次第でございます。
 次に、看護婦の問題でございますが、最近の医療の高度化に伴い、医療需要はますます増大をいたしておりまして、看護婦の確保は非常にむずかしい問題でございます。
 先般、私どもは、来年度から、看護婦さんの夜間手当を三百円程度から、三百五十円から千円と飛躍的に上げることにいたしましたが、今後とも、私どもは、処遇の改善あるいは夜間保育所の設置、こういうふうな点にできるだけの努力をいたし、そして看護婦の確保に全力を尽くしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 さらにまた、四年制の看護学部の設置、その他緊急対策としてのいろいろな御提案がございましたが、前向きに慎重に検討さしていただきたいと考えております。
 次に、医薬分業でございますが、医薬分業については、すべての関係者がこれについて正しい認識と理解を持つ、これが一番大事なことでありまして、それぞれの分野で協力する、これが基本であるわけでございますが、なかなかまだそこまではいっていないことは遺憾でございます。そこで、政府といたしましても、今後とも、国民的合意のもとに、その推進をはかり、国民全体の医療の向上を期するようにいたしてまいりたいと考えておる次第でございまして、医薬分業の推進には全力を尽くす考えでございます。
 次に、家族給付率の引き上げ等の問題に関連してお話がございましたが、今回の改正案は、すでに御承知のように、家族給付率の引き上げとか、あるいは家族高額療養費の新設、すなわち、一応私どもはその限度を三万円と予定しておりますが、たとえば成人病、心臓病等において自己負担がたくさんかかる場合においても、一月三万円さえあればどこの病院に行っても安心してかかれる、こういう制度でございまして、思い切った給付改善の措置であります、それに対して、保険料率の引き上げはわずかでございます。七%に、わずかに〇・三でございまして、十万円の標準報酬の方は、労使折半でございますから、月百五十円という料率の負担になるわけでございます。そういうわけでございますので、私どもは、この法律は、まさしく福祉政策の一環としての福祉改善の法律であると考えておる次第でございます。(拍手)
 なお、政管健保につきましては、現在の財政が非常に苦しいために、一応、私どもは、六割給付といたしました。しかし、私どもは六割で満足するものでありません。したがって、この法律が通りました暁、直ちにそのあと、七割給付にするように、私としては積極的に努力することを申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
 それから、家族の高額療養費につきまして、国民健康保険にどういうふうに及ぼすのか。一応、これは三年計画ということで、慎重なかまえを見せておりますが、できるだけ早く全国民に及ぶようにいたしたいというのが私の念願でございます。
 次は、弾力条項の規定でございますが、これはもう、私が申し述べるまでもなく、こういうふうな短期保険については、よその社会保険全部に備わっておる制度であります。御承知のように、失業保険、さらにまだ共済組合、こういうふうな短期保険については、弾力条項、これは当然のことであります。単年度の収支のバランスをとる、これが短期保険の原則であります。こういうふうなことで、今回この規定を設け、しかも上限、下限の制限を設けて、社会保険審議会の議を経て慎重にやろうというわけでございます。
 しかも、この弾力条項の発動はどういう場合に発動するのか。それは、中医協等によっていろいろお考えいただく、診療報酬の改定等において発動されるものでありまして、ただいたずらに、みだりに、最高限まで引き上げようなどということは夢にも考えていないことを、この機会に明らかにいたしておきたいと思います。(拍手)
 それから最後には、診療報酬体系の合理化、出来高払い制度の欠陥、乱診乱療等のいろいろな御意見を交えての御質問でございます。まさしくそのとおりでございます。中医協等の意見も十分に承りまして、今後、そういう方面に改善の努力をいたしますと同時に、五人未満の事業所に対する適用拡大の問題、まさしくごもっともでございます。今後、そうした方向に努力をいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 金子みつ君。
  〔金子みつ君登壇〕
○金子みつ君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に対し、質問を行なうものであります。(拍手)
 近代医療は、健康増進から始まり、予防、治療、リハビリテーション、そして社会復帰に連なる一貫した機能であり、健康の保持と健康破壊からの回復とを中心とする、包括的、総合的体系であります。
 一方、国民の生活は、GNPに比例しない低所得、低賃金、加えて物価の高騰に苦しみ、国民が今日ほど国の福祉政策の充実を強く求めているときはないのであります。(拍手)
 国民のための医療を完全に行なうためには、福祉の充実が同時になされなくてはなりません。すなわち、医療と福祉は縦糸と横糸の関係にあります。ところが、わが国の現状は、医療と福祉がすれ違っていてかみ合わず、その接点が存在しない結果、医療は国民の福祉として実現されていないのであります。
 わが国の医学は世界的水準に達しているといわれておりますが、医療はまさに立ちおくれの状態にあり、医学を応用して国民の医療を行なう手段、方式、すなわち医療政策もまた未熟であり、適正を欠いております。それは医療保障の中心をなしている医療保険制度が不完全、不合理で、矛盾に満ちているからにほかなりません。(拍手)このことは、わが国政府が政治の反動化、経済の軍事化の政策をとる限り、労働者や農民、市民の命と暮らしに脅威を与え、一段と収奪と搾取を強めていくでありましょう。
 政府は政管健保の財政の硬直化を理由に、今日まで、高福祉ならぬ低福祉、高負担、また、受益者負担の政策を堅持し、国民の反対にもかかわらず推し進めてまいりました。政府がこのような政策をとり続けていく限り、医療制度の抜本的改革は決して前進いたしません。
 今回政府は、再び公約に違反し、たな上げされてきた抜本的改正については何一つ手をつけず、健康保険法等の一部改正を提案してまいりましたが、まず第一にお尋ねしたいことは、一体なぜ抜本的改正について手をつけようとしないのか。国民の命を守る責任ある立場としてのお考えを、総理、明確にお聞かせいただきたいのであります。(拍手)
 次にお伺いしたい点は、今回の改正案は、前回までの改正案のような、政府管掌健康保険の財政対策ではなく、給付の改善と単年度収支バランスを貫いたものであると厚生大臣は述べておられますが、政管健保はその性格上、赤字になるのは当然なのであります。その対象である中小零細企業に働く労働者は、職場の労働条件がきわめて劣悪で、昭和四十六年度現在では、一人当たり国保の約二倍の平均七・八日病気にかかり、受診件数は、一人当たり国保の約二倍半の十・七六回であります。また、ぎりぎりまでがまんしてから受診するということもあって、医療費の支出が国保の約二倍、組合健保の約一倍半の四千二百四十八円とかさむのは当然のことといえるのであります。
 現在、十分とはいえませんが、農民や自営業者を対象とする国民健康保険には四五%、日雇い労働者の健康保険には三五%の国庫補助があることを考えますれば、政管健保に二〇%の国庫補助は当然過ぎるほど当然のことでありますのに、今回やっとその半分の一〇%を定率化したにすぎないことは、もはやおそきに過ぎた措置といわなくてはならず、はなはだ遺憾とするところであります。(拍手)政府は即刻二〇%に改められることを強く要求し、大蔵大臣並びに厚生大臣の所信を述べていただきたいと思います。
 第三には、いま国民が強く要望しておりますことは、重い病気になったときや、療養が長期にわたる場合に必要な高額医療費の完全給付であります。このように国民が苦しんでいる高額医療費について、政府として責任を持つことは当然のことであります。したがって、今回の三万円までを自己負担としたことについても問題は残りますが、それよりもこの高額医療費の支払い方式がいわゆる療養費払いであるために、事後に支給されるのであっては、やはり見せかけの仕組みにすぎず、実際問題として国民が苦しむのに変わりはないのであります。したがって、真に国民のためを考えるなら、これを現物給付にすべきではないでしょうか。お考えをお聞かせ願いたいのであります。
 ところで、もし、健康保険の給付が家族の医療費を重点的にカバーすることに意味を持つものであるとするならば、その医療給付は、本人も家族も他の医療保険も含めて、すべて同一化することが論理的ではないでしょうか。その意味におきましては、社会党は、本人、家族とも給付を十割と主張し続けてきたところでありまして、さしあたっては家族を八割にと提唱しているのであります。
 このたびの改正案では、健保の家族給付を五割から六割に改善したと、鬼の首でも取ったように言われますが、これとても、言うならば昭和十八年以来実に三十年ぶりのことであり、しかも今回、社会保障制度審議会も社会保険審議会もともに七割を答申しているにもかかわらず、六割に値切ってしまっていることは、審議会無視もはなはだしいといわなくてはなりません。(拍手)この点についても、政府は、直ちに七割給付に改善する意思がおありになるかどうか、あわせて、この際はっきりと御回答を願います。
 第四に、今回の改正案につきまして、さらに厚生大臣にお尋ねしたいと思いますことは、一つには、今後保険料の引き上げについて、前回改正案では、社会保険庁長官の手でなされるようになっておりました弾力条項でありますが、このたびは厚生大臣に変えたことと、審議会の意見を聞くことに変更したわけでありますが、前回も今回も常に審議会無視をあえて実施してきておられる厚生大臣にこのような権限を与えることは、形式を整えるだけにすぎないと思われますし、(拍手)国会無視、また、国民無視の姿勢は前回と少しも変わってはいないのであります。
 議事録によりますと、去る昭和四十四年八月、医療保険制度改革要綱試案を両審議会に諮問された際、当時の斎藤厚生大臣は、「保険料の増減は、被保険者、事業主ともに大きな影響を与えるものであり、その方式については国会において決定していただきたい」と説明しておられるのでありまして、今回、一度ならず二度までも同じ趣旨の提案をされるということは、国会を侮辱するものだといわなくてはなりません。(拍手)そればかりでなく、国会の議決なしに官僚の独断で国民生活に影響を与える重大な事項が左右されますことは、断じて容認されるものではありません。(拍手)
 その第二は、保険料率の引き上げとともに実現される、ボーナスの導入による総報酬制恒常化の意図についての問題であります。
 このことは、ひとり政管健保のみにとどまらず、今後、他の健康保険制度や年金制度に及ぼす影響を見のがすことのできないきわめて重大な問題でありまして、国民生活の圧迫をもたらす保険料引き上げとともに、強く反対せざるを得ないのであります。
 今日、わが国の医療制度はまさに混迷をきわめているといえましょう。分立する各種医療保険制度、僻地医療対策の貧困、救急医療体制の不徹底、また、医師や看護婦をはじめとする医療従事者の不足からくるサービスの悪化、特に看護婦の不足は慢性的で社会問題化し、次々にベッドを閉鎖して、さなきだに少ないベッドを一そう狭め、医療内容を低下せしめている現状は、放置しておけない重大問題であります。
 また、入院すれば、医療費のほかに差額ベッド代、付き添い看護料、冷暖房料などの差額徴収の公認は、医療制度の不完全さが生んだまさに論外の搾取だといわなければなりません。(拍手)
 そのほか、国民の健康管理の不徹底、また、国民を食いものにしようとする製薬資本の跳梁、不正入学の矛盾に満ちた医学教育など、国民の命と健康を守るための医療には、解決を目前に迫られている重要事項が山積しております。
 日本社会党は、すべての国民は、「だれでも、いつでも、どこでも、よい医療を無料で」というのが基本的方針でありまして、「保険から保障へ」を提唱しているのであります。その具体的内容は、さきに発表いたしました医療保障基本要綱に明らかにいたしております。「保険から保障へ」の考え方は、すでにILO、国際労働機関、また、WHO、世界保健機関などにおける基本的見解でもあるのでありまして、国民に対する医療の包括的、総合的公共サービスを行なうことを終局の目的としているのであります。国民が最高の健康を享有する権利を行使するために、予防と治療、公衆衛生と臨床のリンクされた運営による完全な保健医療サービスが、一日も早く実施されなくてはならないのであります。
 政府は、いまこそ医療問題の抜本的改革に乗り出さなくてはならない最大の政治課題を負わされていると思うのでありますが、総理は、今回の、依然として変わらない財政対策を目的としたこそくな改正案を撤回し、医療制度全般に対する真の抜本的改革への決意と構想とをお持ちになっておられるかどうか、明確にしていただくことを強く要求いたしまして、日本社会党を代表しての質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 今回の、医療制度の抜本改正に手をつけなかった理由は何か、抜本改正に対する決意と構想はどうかという問題に対してお答えをいたします。
 医療需要の増大、高度化に対応し、政府としては、医師等の確保、医療施設の整備など、医療供給体制については、総合的かつ計画的整備を早急にはかる必要があると考えておるのであります。
 第六十八回国会に提案をしました医療基本法案につきましては、各方面からいろいろ意見もありましたので、時間をかけて練り直すことにいたしたわけでございます。
 また、同法案が目的としておりました医療供給体制の整備につきましては、先般閣議決定をいたしました経済社会基本計画を受けまして、現在厚生省において長期計画の策定を急いでおるわけでございます。この長期計画の策定に基づきまして、今後総合的な施策を講じてまいる所存でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 政管健保に対する国庫補助率を二〇%に引き上げるべきではないかということでございます。
 今回の健康保険は、家族療養費の給付割合を、五割から六割に引き上げるほかに、家族の高額な医療についての自己負担を軽減するため、家族高額医療費の支給制度を設ける等、医療給付の画期的な改善をはかるとともに、その実施の前提となる政管健保の財政の健全化をはかろうとするものであります。
 このために、被保険者に相応の保険料負担をお願いする等、保険制度のたてまえに基づく健保会計の自主的努力を前提とし、国としても、政府管掌健康保険の収支均衡に積極的に努力をするために、まず、御承知のごとく定額補助であったもの、これは二百二十五億円給付でございましたが、これを一〇%の定率に切りかえました。これによりまして、四十八年度の予算額は八百十一億円になるわけでございます。二百二十五億円から八百十一億円に引き上げますとともに、保険料率の調整規定に基づく引き上げに連動して国庫補助率を引き上げる。すなわち料率が〇・一%ふえますと、国庫補助率は〇・四%連動してふえるわけでございます。そういうことをいたしまするほかに、約三千億円にのぼりまする過去の累積の収支不足額をたな上げいたしまして、さらにその累積の損失約二千五百億円を、一般会計から繰り入れて補てんする道を開くなど、思い切った財政援助を行なうことにしておりまして、国の前向きなこの姿勢については、十分御理解を願いたいと思うのであります。(拍手)
 なお、この機会に申し上げておきますが、列国の先進工業国の中におきまして、イギリスはナショナル・ヘルス・サービスという制度をとっておりまして、アメリカには医療保険制度はございませんが、ドイツ、フランスはやっております。ドイツにおいてもフランスにおいても国庫補助の制度というのはないのでございまして、日本は特に国庫補助の制度をやっておる、こういうことでございます。
 第二点は、家族給付率の七割引き上げについてでございますが、今回の健康保険の給付改善については、関係審議会の御意見をしんしゃくしながら、実現可能な面から段階的に実施するということによりまして、この充実をはかっていこうということでありまして、家族療養費の給付率についても、保険財政の状況等諸般の事情を勘案の上、今回の改正では、まず、この保険制度始まって以来の改正でございまして、従来の五割から六割に引き上げることにしたわけでございます。
 その他、家族の高額療養費の支給制度を設ける等、保険給付の画期的な改善をはかることにしているわけでございます。
 なお、七割給付を実施しまする場合には、さらに三百七十三億円の財源を必要といたしまして、この額を保険料率に換算しますと、約〇・三四%に相当することになるのであります。われわれは漸を追うて確実にこの健康保険を改善していこう、こういう考えでおるわけでございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 医療供給体制につきましては、先ほど総理からも御答弁がございましたが、医師あるいはまた看護婦、助産婦、こういう方々の養成計画を立てる、そのほか僻地医療の問題、救急医療の問題、各般にわたる問題でございますが、医療供給体制の確立は、医療問題のうちの最重点でございまして、先ほども総理からお話のありましたように、経済社会基本計画に基づく長期社会保障計画の中核として、真剣にこの問題を立案し、実行に移すように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
 次に、政管健保の体質からいって赤字は当然であるのではないか、もっと国庫補助をふやしたらどうだろうか、こういう御質問でございました。
 医療保険制度は、被保険者相互の連帯意識を基調として、各自の負担能力に応じた保険料を負担する、それによって給付費をまかなう、これが本質であることは間違いございませんが、政管健保は、御質問にございましたように、中小企業の方々が対象でございます。であればこそ、普通のよその組合ならば国の補助は出さぬでいいわけでございますが、こういうふうな中小企業であるからこそ、今日まで私どもは定額の金を補助をいたしておったわけでございますが、たった二百二十五億という定額では、これだけの給付改善をやるには不十分であろうというので、この際、思い切って給付費の定率一〇%、すなわち約八百億という国の負担をしようという、この私どもの気持ちをどうか御理解をいただきたいと思う次第でございます。(拍手)国庫の負担が多いことは、これにこしたことはないでしょうが、現在の段階では、まず二百二十五億から八百億になる、ここでひとつごしんぼうをいただきたいものと考えておる次第でございます。
 高額療養費の給付につきましては非常に評価していただいておりまして、まことに感謝にたえないところでございますが、療養費払いにしたのはどういうわけだ、現物給付にしたらどうだ、こういう御意見でございますが、これはほんとうに事務的な考え方でございまして、関係方面の事務量の軽減をはかり、わかりやすい制度とする必要がありますので、従来とも、健康保険組合の付加給付におきましてはこういう償還制をやっておりますために、これを採用することにいたしたことを御理解いただきたいのであります。
 家族療養費の給付の割合を六割にしないで八割ぐらいに上げたらどうか、こういうお尋ねでございました。
 私どもは、今回の給付改善にあたりましては、趣旨説明でも申し上げましたように、実現可能な面から早期に着手し、段階的に実施する、こういうことを基本といたすわけでございまして、政管健保においては、今日までの財政が非常に脆弱でございます。三千億の赤字をかかえ、一年間にまた一千億もの赤字も出なければならぬという状態でございますので、この財政再建のために、私どもは、まず三千億の赤字はたな上げにいたしましょう、しかも中小企業であるからこそ定率の一〇%、八百億の国の負担を出しましょう、こういう状況でございますので、やはり、ものというものは順序がございまして、一足飛びに七割というわけにはまいらぬと考えておるものでございます。(拍手)
 次に、弾力条項の規定でございますが、これは先ほども申し上げましたように、単年度の短期保険というものは、医療保険ばかりじゃございません、組合健保、各種共済組合、労災保険、失業保険、みんな弾力条項を備えて単年度収支のバランスをとる、これが基本になっておるわけでございます。しかもまた、私どもの今回提案いたしておりまする弾力条項には上と下に幅を持たしてありまして、無限に広げようなどということは一つも考えていないのであります。上限下限のワクをはめ、しかも、これを発動するときには診療報酬改定のような場合でございまして、社会保険審議会の十分なる御検討をいただいて厚生大臣がきめるという、慎重な取り扱いにいたすわけでございます。
 さらにまた、賞与に対する特別保険料の徴収については総報酬制につながるのではないか。私ども、さようなことは夢にも考えていないのでございます。現在の給与の実態が非常に不公平に、――最近の給与の実態がだいぶ変わってまいりましたので、こうすることが、低所得者に対してむしろ厚い措置であると考えておるわけでございます。御承知のように、標準報酬五万円未満の方々には、賞与については一つも特別保険料はちょうだいいたしません、こういうことになっておるわけでございます。
 なお、最後でございますが、先ほど申し上げました医療供給体制、それを中心とする医療制度の改革、これは何としてでも私ども真剣に取り組まなければならぬと考えております。御指摘のありましたような差額ベッドの問題、あるいは付き添いさんの問題、こういう問題については、今後私どもは、前向きにこの問題の解決に努力いたしたいということを申し上げて、答弁にかえる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 田中美智子君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔田中美智子君登壇〕
○田中美智子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、健康保険法等の一部改正案について、総理大臣と関係閣僚に質問いたします。(拍手)
 第一の問題は、田中内閣が、よくいわれるように、保険あって医療なしという医療の荒廃の現状を根本的に改善する何らの方策も明らかにしないままに、健康保険改正案を提出していることです。
 いま、国民の間には、医療に対する不満が急速に高まっています。国民は、大資本本位の高度成長政策のもとで、大気汚染、公害、物価高、低賃金、労働強化などによって、人間の生存に必要な、豊かな暮らしときれいな環境が破壊され、病人やけが人はついに九人に一人という状態にまでなっています。一たび病気になれば、自民党質問者まで先ほど認めざるを得なかったように、三時間待って診療三分という状態で、十分な医療が受けられないありさまです。過疎地帯だけでなく、大都市でも、夜間や休日は無医地区と同様のところが急速に広がっています。もともと病気をなおすはずの薬が、逆に病気の原因となるような不合理も横行しています。入院するにしても、保険だけによる入院は困難で、付き添い料も自己負担せねばなりません。その上、医師、看護婦不足から、あきベッドはあれど入院できずといった矛盾も広がっています。予防とリハビリテーションの立ちおくれは、障害者と慢性疾患を一そうふやすという悪循環を生み出しています。
 このような現状は、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障している憲法第二十五条の精神から見て、とうてい許すことのできないものです。(拍手)
 健康保険のあり方について、国民はもちろん、早くから各種の審議会も、保険の前提条件として医療の現状を早急に改善すべきであると、たびたび答申してきたことは周知の事実です。それにもかかわらず、政府は、この答申に対して何ら責任ある対策を講じてこなかったのです。
 私は、こんなにまで医療の荒廃をもたらした政府の責任について、総理はどのようにお考えになっているのか、はっきりとお答え願いたいと思います。(拍手)
 また、日本共産党が、民主的な医療運動とともにかねてから主張してきたように、いつでも、どこでも、だれでも安心して十分の医療が受けられることを目ざして、医療機関の整備や、医師、看護婦などの養成をはかるために、国の責任で年次計画を早急につくり、根本的な対策を立てるべきだと思いますが、この点について総理の見解を要求いたします。(拍手)
 質問の第二は、政府が今回提出している健康保険一部改正法案の問題です。
 この法案は、家族給付の五割から六割への引き上げ、高額医療費の支給などわずかな改善と引きかえに、保険料を千分の七十から千分の七十三に引き上げるだけでなく、ボーナスからも保険料を新しく取り立てるなど、労働者の負担を大幅に引き上げるものです。政府は、しきりに福祉中心型への転換を宣伝していますが、健保一部改正法案の内容は、全く福祉の名に値しないものです。(拍手)
 家族給付が引き上げられたといっても、それは国民健康保険の七割給付にも及ばず、社会保険、社会保障制度両審議会の、家族給付は七割に引き上げるべきであるという答申にもそむくものです。また、政府が目玉商品としている高額医療費の支給にしても、多くの患者が差額徴収されている部屋代や付き添い料金は自己負担となり、支給の対象からはずされています。しかも療養費払い制ですから、まとまった現金がなければ医者にかかることもできません。全面的に現物給付にすべきだと思います。
 私は、さしあたり、少なくとも家族給付を八割に引き上げ、さらに、療養中の生活に直接響く傷病手当の給付率も引き上げ、給付期間も延長する必要があると思います。この点について政府の責任ある答弁を求めます。(拍手)
 また、政府案によれば、給付改善による支出増は五百九十三億円にすぎないのに、保険料値上げによる増収は九百七十一億円となり、差し引き約四百億円も給付改善分を上回っています。政府が何と弁解しようとも、今回の健保改正案が当面の赤字を国民の負担で穴埋めしようとするものであることは、この数字を見れば明らかです。(拍手)政府は、保険財政の赤字は国民が負担するのは当然であるという態度をとっていますが、国の無責任さをさらけ出しているといわねばなりません。(拍手)
 保険財政の赤字の第一の原因は、すでに見たように、自民党の大資本本位の高度成長政策のもとで、国民の健康破壊が激増していることです。
 第二に、政府管掌健保では、中小企業の労働者の賃金は、大企業の労働者と比べて月平均一万二千円も安く、したがって、高率の保険料でありながら保険料収入が少ないわけです。
 さらに重要な原因は、薬代の問題です。昭和三十年に総医療費の二〇%であった薬代は、現在四〇%をこえ、保険財政を圧迫する大きな原因となっています。このように薬代が大きな比重を占めるようになったのは、日本の製薬大企業が医療保険に寄生して独占価格を押しつけ、ぼろもうけをしているからです。(拍手)昭和四十六年度下期の総利潤率は、製造業は一八・八%なのに、医薬十二社は四九・三%と、実に二・七倍ももうけています。
 政府が、このような製薬大企業のぼろもうけを規制する手段を何一つとろうとせず、保険財政の赤字の負担を国民に押しつけようとしていることは、全く許せません。(拍手)私は、保険料の値上げをやめ、まず第一に、製薬大企業の利益を規制することこそ必要だと思います。総理大臣や厚生大臣はどのような考えであるのか、まじめな答弁を要求いたします。(拍手)
 今日、労働者の負担する社会保険の保険料は、年間ほぼ一カ月の賃金に相当するもので、保険料の大幅な値上げは、物価高、重税とともに庶民の生活を脅かすものとなっています。健康保険の料率の引き上げに、私は断固として反対いたします。
 特に許せないのは、政府が弾力条項と称して、国会の審議を経ずに、厚生大臣の権限で保険料率を千分の八十まで値上げできるようにしようとしていることです。国民の生活に重大な影響のある公共料金の決定権を国会からはずして、政府の手に移そうとすることは、国会軽視もはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 弾力条項の問題は、前国会でも、議会制民主主義に反するものとして、国民と野党の大きな反対を呼んだものです。総理がほんとうに物価の安定、国民生活の向上と議会制民主主義を尊重しようとするならば、直ちに弾力条項をやめるべきです。総理のきっぱりとした答弁を要求いたします。(拍手)
 第三に、私は、国民の健康を守り、医療を改善するために、国民が求めている二、三の問題について政府の見解をお聞きしたいと思います。
 まず、健康保険の民主的な改善の問題です。
 現在の日本の医療保険制度は、職業やつとめ先によって違っており、さまざまな不公平があります。たとえば中小企業に働く政府管掌健保の労働者は、大企業で働く労働者よりも高い保険料を払っています。ごく平均的な企業をとってみても、八万円の賃金の中小企業労働者は、同じ賃金の大企業の労働者よりも年に五、六千円も保険料が高く、家族給付は五割ぽっきりで、家族に対する付加給付のある大企業よりも、はるかに悪い条件です。同じような不公平は、国民健康保険にも、日雇健康保険にもあります。比較的よいといわれている組合健康保険も、決して十分ではありません。
 このような日本の劣悪な保険制度を改善するためには、現在のばらばらな医療保険制度を大幅に改善する方向で改め、労働者健康保険と国民健康保険の二本立てに再編成することが必要です。(拍手)
 また、保険財政の赤字負担を国民に押しつけることをやめ、国と資本家の負担で本人、家族とも十割給付の実現を目ざすべきです。さしあたり本人十割、家族八割を主張いたします。
 保険料については、労資折半主義を改め、当面労資の負担比率を三対七にし、労働者の負担を減らさなければなりません。政府管掌健保でさえ、労働協約によって労働者三、企業主七を認めさせている職場がすでに幾つか生まれています。国際的にも、フランスやイタリアでは、労働者よりも資本家側がはるかに多く保険料を負担するのが常識になっています。
 政府は、労働者と資本家との保険料の負担割合を、さしあたり三対七に改める気があるかどうか、中小企業主については、負担がいま以上に増加しないように国が補助するつもりがあるかどうか、これに対してお答えいただきたいと思います。(拍手)
 また、六十歳以上の老人、乳幼児の医療、各種の難病などに対して公費負担医療を広げ改善すること、全国の医師や看護婦が、医療従事者として誇りの持てるまともな医療が行なえるように、診療報酬を適正に引き上げ、物価、人件費に見合ったスライド制を運用することも重要です。政府にその意思があるかどうか、明確に答弁を求めます。
 以上の私の要求は、低福祉低賃金といわれる日本経済の体質を改めるために医療の面で行なわなければならない最小限の要求です。円・ドル問題の論議を通じて明らかになったことは、いまこそ日本経済を福祉中心型に転換させることが国民的な願いであり、それこそが、日本経済の安定とつり合いのとれた発展のために欠かせないものです。政府が、大資本優先の低福祉政策を真の福祉優先へと転換を目ざす勇気があるならば、以上の要求を誠意をもって実行するのが当然です。政府にその勇気があるかどうか、総理大臣の責任あるお答えを要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) まず第一番目は、医療供給体制について年次計画を立てて抜本的な対策を立てよという御議論でございますが、医療に関しては、休日夜間の急患の診療の確保、無医地区における医療の確保など、問題は山積をいたしており、医療供給体制の整備は、目下策定を急いでおる社会保障長期計画の重要な柱と考えておるのでございます。国民医療の確保のため今後最大限の努力を払い、計画的にこれらの問題の解決に当たってまいりたいと考えます。
 第二は、赤字を理由に掛け金を上げるのはなぜかという意味の御質問でございますが、今回の改正では、政管健保の三千億円にのぼる過去の累積赤字をたな上げするほか、新たに給付費の一〇%の定率国庫補助を設けるなど、政管健保の被保険者の負担軽減に着目して、国としても相当思い切った援助を行なうことといたしたわけでございます。
 なお、被保険者につきましても若干の負担増を求めておりますが、これは、給付の大幅な改善との見合いで相応の負担を求めたいという趣旨によるものでありまして、理解がいただけるものと考えておるのでございます。
 第三点は、弾力条項は国会軽視ではないかという問題でございますが、保険料率の調整については、その上下限が法律で定められておること、その保険料率の決定に際して、法律上社会保険審議会の意見を聞くこととされておりますので、国会軽視ということにはならないと考えておるのでございます。
 残余の問題については関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) 医療供給体制につきましては、総理からすでにお答えのありましたように、長期計画を中心として策定をし、これが実現をはかってまいるようにいたしたいと考えております。
 政管健保につきましては、中小企業を対象とする関係もありますので、私どもは、労働者の負担軽減ということで、従来とも定額の補助をいたしてまいりましたが、今回は思い切って一〇%という定率補助を設けることといたしておるような次第でございます。
 家族給付率の引き上げにつきましては、私ども実現可能な面から早期に着手し、段階的に実施する、こういう考え方でさしあたり六割ということにいたしたのでございまして、八割などをいたす考えは全然ございません。
 傷病手当金の改正につきましては、将来の問題として私は十分検討に値する問題であると考えておる次第でございます。
 高額療養費の療養費払いの問題につきましては、できるだけ事務量の軽減をはかり、わかりやすい制度とする必要がありましたので、すでに事務的に定着いたしておりまする健保組合の付加給付の例を参考といたしまして採用することにいたしたわけでございます。
 製薬大企業についてのお尋ねがございましたが、医薬品産業は、他産業と比べて集中度が低く、新規参入も多いなど、最も自由競争が行なわれておる産業でございまして、医薬品の価格につきましては、独占価格や寡占価格が形成されておるとは考えていないのでありまして、薬価基準につきましては、かかる自由競争によって形成される市場価格を基礎として定めておるものでございまして、毎年薬価調査によって実勢価格を把握し、その結果に基づいて薬価基準の引き下げを行なっておるような次第でございます。
 弾力条項につきましては、国会無視、軽視ではないかというお尋ねでございますが、これは、先ほど来お答え申し上げてありまするように、よその短期保険はみんなこういう制度を持っておるのであります。組合健保、各種共済組合、失業保険、労災、こういうふうな短期保険は、こういう弾力条項の規定を設けておるのでございまして、絶対にこれは私どもは必要なことだと考えております。
 しかもまた、この保険料率の調整につきましては、無制限に上げようなどというものではなく、上下、幅を持たせており、しかも法律でその幅を書いていただいて、そしてこれを実際に行なうときには、社会保険審議会の意見を聞いて行なう、こういう制度でございますので、国会を無視しようなどという考えは毛頭ございませんし、国会無視の法律ではないと確信をいたしております。
 医療保険の保険料の労使負担の割合を三対七に改めたらどうだというお話でございますが、わが国の社会保険制度は、今日までそれぞれの長い沿革を経ておりまして、成熟をいたしております。労使折半ということが定着をいたしておる考えでございますので、いまこれを改める考えはございません。いな、むしろそれよりも、労使全部をひっくるめて、中小企業を対象とする政管健保について国の補助を多くするということのほうが適切でありますので、定額よりも定率一〇%ということにいたしたわけでございます。
 社会保険制度の整理統合につきまして、地域保険、職域保険、二つに統合したらどうかというお尋ねでございますが、御承知のように、社会保険制度はそれぞれの沿革を経た長い歴史的なものが多いのでございまして、いま直ちにこれを整理統合するということは困難であろうかと考えております。
 次に、公費負担制度の問題でございますが、医療費の負担区分につきましては、従来より保険医療というものを原則といたしておりまして、ただ戦傷病者に対する医療といったふうな国家補償的なもの、あるいは精神病といったふうな地域社会に不安を与えるようなもの、こういうものは公費負担をたてまえとすることといたしておりまして、そのほか老人問題等につきましては、それぞれの社会的配慮を要するものについて自己負担分について公費負担、こういうことにいたしておるわけでございまして、今後とも私どもは、医療保険の充実と相まって、それぞれの疾病の性格に応じ、公費負担医療の範囲をいかに定めるかということを検討いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 御質問は大部分厚生大臣からお答えになりましたので、一点だけ私のほうに関するものを申し上げます。
 原爆病とか乳幼児、老人医療の全額公費負担分にお答えを申し上げるのでありますが、私どもは、社会保障給付としての医療給付は、基本的には医療保険制度を中心に行なわるべきものであると考えておる次第でございます。
 現行の医療公費負担制度も医療保険制度を前提としておりまして、まず全額公費負担の前提をとっておりますものは、社会防衛的な見地からする法定伝染病、結核、精神病者、こういう社会にほっておけば害をもたらすようなものを第一に考えております。それから第二の点は、生活保護世帯に対するものでございまして、最低生活水準を維持することが困難な方々に対する負担、これは全額を考えておるわけです。第三点は、特殊な援護措置としての戦傷病者、原爆病の患者に対する負担、これらに限定されておりまして、その他の公費負担制度は、身障者、結核、児童、老人等の特殊な社会的な弱者について、医療保険の補完的措置として、残された自己負担を公費で肩がわりしようというものでございます。
 さようなことでございまして、御趣旨は承りましたが、われわれは、すべて公費負担ということになりますと、医療保険制度というものの意味がなくなる、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 坂口力君。
  〔坂口力君登壇〕
○坂口力君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、幾つかの問題点を取り上げ、総理大臣及び関係大臣の明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 この改正案は、過去二回にわたって国会に提出され、いずれも廃案となったものであります。この健保改正案に対し、反対運動がなぜこれほども強く繰り返されているかについて、数々の理由をあげることができますが、その最大のものは、国民が保険料等の財政負担に見合ったと信じることのできるよい医療が平等に保障されていないことであり、それを耐えがたい不満としているからでございます。
 四大公害病に対する判決からも明らかなように、七〇年代の政治課題の重要な一つは、生命の危機にいかに対処し、その脅威を取り除くかにあると思うのであります。さらに、病気に対しては、個人よりも社会的見地から対処すべきであるという方向性の中で、医療問題に国民的合意を求めねばならないときであります。
 まず第一に重要なことは、わが国の医療のあるべき姿について、政府が基本的な態度を明らかにし、その中でこの健保改正案がいかに位置づけられているかを明確に示される必要があるということであります。
 政府の主張が、一挙に抜本改正を行なうことは困難だから、改められるところから徐々に変えていくのだということであるならば、この改正案が全体のどのような医療制度の中に位置づけられ、いかなる理念のもとに改革されようとしているのか、総理はいまここでそのオリエンテーションを明らかにされる責任があると考えるものであります。それなくして、健保問題は幾万言の議論を繰り返しても無意味といわなければなりません。(拍手)この点について、総理の十分にして納得のいく御答弁を要求するものであります。
 御承知のごとく、戦後の日本は、農林漁業という一次産業から、二次、三次産業への比重の増大という変化を遂げ、これが都市への人口集中を引き起こし、昭和四十五年における市部人口は、実に七二・二%に上昇する結果になったのであります。この人口移動の中で、日本の職場のパターンは、大企業と中小零細企業にはっきり二分され、大企業のほうは相対的に高い賃金、雇用の安定、昇給の保証、職場の安全性、退職金、いずれをとっても、中小零細企業のそれと比べて、大きな格差を生じているのであります。
 労働者は、この二重構造になった職場のいずれかに属し、中小零細企業にあっては、その体質から、まず経営的躍進のみに全エネルギーが集中され、その当然の帰着として、職場の労働環境や福利厚生は最小限に押えられ、時間外労働を余儀なくされ、その上、低賃金をしいられている結果になっているわけであります。そのため、職業病や労働災害の発生は非常に多く、たとえば労働災害の死傷者数は、従業員五十人未満の小企業において六割強を占め、死亡者のみでは約七割を占めていることが統計上明らかであります。また、健康診断の結果は、十人に一人がどうしても治療を要することを示し、その多くの人は、症状がありながらがまんをして働き続けているのであります。この二重構造の底辺に属する人々の多くが、いま議題となっている政管健保の加入者であるということはまことに重大でございます。
 政管健保におきましては、月額十万四千円以上の人は二二・七六%であるのに対して、組合健保の加入者は二八・八九%と二倍以上になっているのを見ましても、政管健保に属する被保険者がいかに低賃金層であるかがわかると思うのであります。
 しかるに、今回の健保改正案は、この底辺で生きる人たちに相互扶助と受益者負担の原則を強制し、古典的な保険主義を貫こうとしているのであります。そして、国庫補助率を一〇%にとどめ、低所得者の保険料率の引き上げをはじめ、特別保険料を新設して、一方的に被保険者の負担増を強化して、財政の立て直しをはかろうとしています。
 もし相互扶助と受益者負担を主張されるならば、政管健保内での操作よりも、八種類に分立している各種保険の格差是正こそ先決であります。政治のひずみとして、断層の生じた二重構造の各階層間でこそ、まず第一に相互扶助の原理を導入されてしかるべきであります。それなのに、低所得層の間でのみ相互扶助の精神を振りかざし、格差是正に手を触れないことの理論的矛盾に対して、総理はどのようにお考えになっているのか、納得のいく御答弁をお願いする次第であります。(拍手)
 この改正案におきましては、政管健保においてのみ大幅な保険料率の引き上げを決定づけ、特別保険料を新設し、弾力調整を計画しているのであります。これらの処置は、各保険間の格差を増大し、それを固定化するものと断定せざるを得ません。少なくとも、政管健保は、組合健保と比較し、政管健保本人の年齢別平均給与が組合健保の本人と同じレベルと仮定して計算をした場合、保険料拠出金はかなり増加するはずであります。この増加分に匹敵する額を国庫補助として出すことを提案するものであります。おそらく国庫補助二〇%前後になると推定されますが、それでもなお、政管健保に属する人々には、職場環境、労働条件の悪さがあり、その健康破壊による医療費の増額が、組合健保より不利な条件として残るのであります。
 日本における健康保険法案の歴史をひもといてみますと、大正十一年に、時の貴族院で健保法案は成立しているのであります。そのときの希望決議の第三として、「本案に定むる国庫の負担は、十分と認め難きをもって、政府は、漸次、その率および、その額を増加し、制度の本旨を全うせられんこと」と書かれています。この点こそいまもなお健保の中心課題であり、「制度の本旨を全うせられんこと」、このことばをそのまま田中総理に申し上げ、この初心に返って英断を下されよと声を大にして叫ぶものであります。(拍手)
 日本国民の健康水準をながめてみますと、平均寿命は、昭和二十二廣に男女とも「人生五十年」を突破しましたが、四十六廣には、ついに男七十歳、女七十五歳の大台をこえることになりました。したがって、当然のことながら、年齢構成は変化し、四十五年には六十五歳以上が七%強でありますが、二十ないし三十年先には、五人に一人が老人となる日がおとずれようとしています。この年齢構成の変化は、また疾病構造の変化と関連し、結核をはじめ、肺炎、胃腸炎など炎症性の疾患が著しく減少し、脳卒中、ガン、心臓病など、生ある者が避けることのできない老化現象と関係深い、いわゆる成人病が上位を占めるようになってきたのであります。
 これらの文明病の特徴は、何ら症状がなく、知らない間に病状が進み、気づいたときには取り返しのつかなくなるものであり、長期療養を要し、最も医療費の多くかかるものであります。たとえばガンは、医療点数平均八千点をこえ、一件当たり最も点数の高いものであります。この成人病は、早期発見、早期治療こそが最も重要なことを医学は教えています。
 しかるに、今回提出されました健保改正案には、この予防に対する配慮が全く認められていず、財政悪化の原因をみずからつくっているといわざるを得ません。予防こそが医学の真髄であり、健康管理による早期発見は、一時的な保険財政の負担になることがありますが、長期的な展望に立つならば、保険財政正常化の基本であることは、市町村における国保保健婦の活躍ですでに実証されているところであります。この疾病構造の変化に対処する政策のないところに、この改正案の国民の側に立った将来への展望と現状分析の欠陥があると断ぜざるを得ません。厚生大臣の御見解を賜わりたいと思います。
 最後に、医療の内容でございます。
 政管健保の被保険者が病院にかかるとき、昭和四十年に一人当たり外来点数は四十二点でありましたが、四十五廣には七十八点と二倍近くになっております。また、一人当たりの受診件数を比較いたしますと、政管健保の本人が年平均六回で最も多く、また、一人が一回の病気で何日間病院にかかるかを見ますと、政管健保の本人が四・一日、家族三・二日、組合健保では、本人三・六日、家族三・二日であり、政管健保の本人が、最も多く医療機関を利用していることがわかるのであります。それでもなお、健康診断の結果、治療を必要としながら、治療を受けてない人が一〇%も存在するわけであります。
 また、一回の病気についての医療費は、政管健保の本人が五千四百九十八円で最も多く、組合健保の本人よりも千円を上回っております。
 これらの数字は一体何を物語っているのでしょうか。中小零細企業に働く人々の労働環境、生活環境がいかに健康を害する条件に満ちたものであるかを示していると思うのであります。
 また、各種保険の中で、自己負担分の多いグループほど、一件当たり、すなわち一回病気にかかったときの医療費が少なくなっていることに着目しなければなりません。政管健保の家族は、五割給付のため、最も一件当たりの医療費が少なく、おそらくぎりぎりまで診察を受けないか、十分なおり切らないうちにやめてしまうか、その両方が重なっているものと理解するのであります。国民健康保険が昭和四十三年から七割給付になりましたが、それを境に、急速に一件当たりの医療費の上がったことを思い起こせば、保険の給付率が、人々の受診という行動を決定する重要なファクターとなっていることを認識することができるのであります。
 今回の改正案では、保険審議会の答申が七割であったにもかかわらず、これが無視され、六割に据え置かれましたことは、国民の怒りと不信を買うものであり、それによって起こる受診抑制への影響は、単に個人の問題でなく、一国の将来に大きな損失を招くといわざるを得ません。
 日本の中で最も医療を必要とする人々の多い保険の家族に対して、給付率六割に押えられたのは、いかなる基礎資料によるものか。さらに、保険審議会の答申をなぜ無視されたのか。厚生大臣の御所見を賜わりたいと思うのであります。
 弾力調整にいたしましても、保険審議会の意見を聞くことになっていますが、軽々しく答申無視が行なわれては、国民の声として歯どめにはならないと考えるのであります。
 われわれの試算によりますと、国庫補助を一五%に引き上げれば、家族給付を七割にし、保険料率は現行のまま、特別保険料は徴収せず、弾力条項をはずし、労使保険料率を七対三にしても、六百十二億の黒字になるのであります。
 以上、幾つかの理由を申し述べましたが、いずれの点を取り上げましても、健保に対する議論は、人権問題として論じられるものであり、断じて経済問題として論じてはならないものであります。(拍手)
 政府・与党が健康の保障をにしきの御旗とし、人権問題としての論議の場に立たれるならば、われわれは、新たな角度から論議を尽くし、国民への責任を果たすものであります。しかしながら、経済問題に終始した論議であるならば、国民とともに、断固阻止する決意であります。(拍手)
 最後に、総理大臣及び各関係大臣の御答弁は、健保そのものに対する御意見もさることながら、どのような医療全体の流れの中でこの健保を把握されているかについて、明確なる態度を示されることを重ねて申し述べ、私の代表質問を終わらせていただきます。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第一は、今回の改正案は、全体の医療保障体制の中でどのような位置づけをし、改革をするのかという問題でございますが、わが国は昭和三十六年に国民皆保険体制を確立し、これを中心に医療保障を推進してきたのでございますが、今後とも、この基本方針のもとに国民医療の確保につとめてまいりたいと考えます。
 今回の健康保険の改正も、この方針に沿って、家族医療給付の改善を中心として、あわせて、保険の運営上重要な問題である保険財政の恒常的な安定を確保するための諸施策を講じようとするものであります。
 医療問題は、関係者の利害が複雑に錯綜し、その解決に時日を要するものが少なくないのでありますが、今回の改正はこのような点も考慮し、当面急を要し、かつ実現可能と考えられるものから着手したものでございます。この改正によりまして、懸案の抜本改正への第一歩が踏み出せるものと確信をいたしておるのでございます。
 第二は、政管健保と他の保険との間に格差が生じているが、政管健保加入者のみの間での相互扶助の原則を貫こうとするのは問題があるのではないかという御指摘でございますが、医療保険制度は、被保険者相互間の連帯意識を基調として、各自の負担能力に応じた保険料を負担することによってその給付費をまかなうのがたてまえであることは申すまでもありません。しかしながら、それぞれの制度を構成する被保険者の階層によっては、保険料の負担能力が低く、このたてまえを貫くことが困難な場合もありますので、その財政体質の状況等を総合的に勘案し、必要なものについては、応分の国庫補助の措置を講ずべきものと考えておるのであります。
 この意味で、政管健保について三千億円に及ぶ累積収入不足をたな上げするほか、給付費の一〇%に及ぶ定率国庫補助を新設し、財政体質の強化をはかることにしたものでございます。
 最後に一点申し上げますが、抜本的な改正案を出すのが先だと言われておるのでございますが、この問題に対して、政府も、抜本的な改正案を出したいという熱意に対しては同じ考えを持っておるのでございますが、過去の例に徴してもおわかりになるとおり、非常に錯綜しておる問題がありますので、当面改正を必要とするものに対しては、これを改善をはかろうとしておるのでございますから、その間の事情を御理解の上、御理解賜わりたいと思うのでございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 政管健保に対する一〇%の定率国庫補助の根拠、及び組合健保との権衡上これを二〇%に引き上げるべきではないかという御所論に対して申し上げますが、組合健保に対しましては、一部の石炭などの非常に財政基盤の脆弱な組合に対する定額補助、これは四十八年度で三億円出す予定でございますが、こういうものを除きましては、原則として国庫補助を行なっておりませんが、政管健保については、被保険者が中小企業の被用者であり、その所得水準が、大企業の被用者を主体とする組合健保の被保険者より低いという点を考慮して、従来からも二百二十五億円の定額補助を行なってきたわけでございます。
 今回の健康保険改正にあたりましては、被保険者に相応の保険料を負担していただくことのほか、また、保険制度のたてまえに基づく保険会計の自主的努力を前提とし、国としても、政府管掌健康保険の収支均衡に積極的に寄与するために、先ほども申し上げましたが、定額補助を定率補助に切りかえまして、一〇%に切りかえたわけでございます。
 これによりまして、従来の定額補助では二百二十五億円であったものが、八百十一億円とすることになりましたが、そのほかに、保険料の調整規定に基づく引き上げに連動して国庫補助率を引き上げる、すなわち、料率〇・一%について国庫補助〇・四%上がるわけでございますが、そういうような措置を講じたり、従来の不足額のたな上げや、あるいは損失の一般会計からの繰り入れというようなことをやっておるわけでございまして、まさにこれは、私どもは、保険財政の赤字の解消策ばかりでなくて、給付内容を改善するということを強く指向しておるのでございまして、前向きの姿勢については、どうぞ十分御理解を賜わりたくお願いをする次第でございます。
 以上をもって答弁といたします。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答えを申し上げます。
 医療問題に対する基本的な態度から申し上げますと、あまねく国民が充実した医療を受けられるということを基本といたすわけでございまして、医療供給体制の確立こそが最も大事なものでございまして、この問題につきましては、今度の新しい経済社会基本計画に基づく社会保障の長期計画の中で、十分案を練って、どれが実現をはかってまいるようにいたしたいと思いますが、それと相まって、特に政管健保においては、組合健保あるいは国民健康保険等に比較いたしまして劣っておる給付を改善し、何とか少しでも保険制度も一緒に改正していく、こういう考え方で立案されたことをまず御了承を願いたいと思うのでございます。
 それと同時に、今回の改正案は、昨年出しました法律とは全然違うのでありまして、昨年出しましたのは赤字対策法でございまして、給付については何ら触れていなかったのでございますが、今回は、給付改善を主とし、それに見合って応分の保険料負担をお願いしたい、こういうわけでございますので、昨年提案いたしました法律とは、その構想を異にしておることをまず御理解いただきたいと思うのでございます。
 なお、政管健保につきましては、その体質が劣悪でございまして、中小企業の被用者であり、その賃金水準も大企業の被用者に対して低い。こういうことでございまして、この政管健保にできるだけ国の補助をふやす。従来は二百二十五億という定額でございましたが、今回は、医療費総額の一〇%を国が負担しよう、こういうことでございまして、私どもは、大体一〇%程度が現在の段階においては適当ではないかと考えておりまして、二〇%まで国庫補助をふやすということは、いまのところ困難であると申し上げることができると思います。
 なお、そのほかの保険制度の統合については、それぞれの沿革もございますので、いまにわかにそれを行なうということは、きわめて困難であると考えております。
 なお、家族給付の六割につきましても、七割給付というお尋ねがございましたが、脆弱な政管健保でございますので、まず、さしあたり六割にする、これがいまの時点で適当と考えておるものでございます。
 それからさらに、最近の成人病の増加等による疾病構造の変化等に伴いまして、予防給付というものを今後は考えたらいいではないか、非常にごもっともな御意見でございまして、政管健保の今回の改正法律案が成立いたしました暁には、この予防給付についても、福利施設として十分考究する必要があるのではないか、前向きに私は検討いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
○副議長(秋田大助君) 和田耕作君。
    ―――――――――――――
  〔和田耕作君登壇〕
○和田耕作君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま問題になっております健康保険法の問題あるいはそれに関連した問題について、総理あるいは関係大臣の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 わが国の医療は、ほんとうに国民の医療のために役立っておるのか、この問題を真剣に考えてみる時期にきておると思います。
 いままで十数年にわたりまして、この健康保険法の問題をめぐって、政府あるいは医療関係者で熱心な討議を重ねておりますけれども、しかし、やればやるほどおかしくなってしまう。一歩前進するように見えて、実際は二歩後退をしておるという繰り返しではないかと思います。
 総理、このような問題をどのようにお考えになるのか。つまり、このような問題についての切っ先の入れ方が間違っておるのじゃないのか。一番大事なことは、いろんな制度をこまかくすることではないのでございまして、りっぱなお医者から、りっぱな医療機関から、りっぱな医療サービスを受けられるようにすることです。議論があんまり保険制度のこまかな点にばかり入って、支払う側はできるだけ少なく払う、お医者さんのほうはできるだけもうけるように、このような観点からこの問題を議論するから、いつまでたってもよくならない、ますます悪くなる、このようなことじゃないかと思います。
 総理、ひとつこのあたりでこのような悪循環を断って、国はもっと真剣になってお金を出して、そして正しいお医者さん、正しい医療機関ができるにはどうしたらいいかという問題を突っ込んでいただきたいと思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。(拍手)
 現在、いままでいろいろの質問者が述べましたように、日本はたいへん危険に満ちた状態だと思います。産業公害あるいは都市公害、交通事故の激増、それに加えて成人病の増加、難病の続発など、各種の傷病の危険に対して、国民はたいへん生命、健康を脅かされておるのでございます。これに対して、医療機関の整備は全く立ちおくれの状態である。過疎地帯の医療の確保はますます困難になっておる。大都市においても医療機関は混雑をきわめておる。一日がかりの診断を受けなきゃならぬのが通常である。入院するにもかなりの期間が必要であり、そしてまた、入院となれば、高額な差額医療やあるいは高額な付き添い料を出さなければ入院できない。
 特に、私がここでお訴えしたいことは、救急病院の状態の乱脈でございます。また、夜間あるいは休日の診療ができなくて困っておる問題でございます。そしてまた、一方では、病院などはたいへん深刻な赤字に悩んでおる、人手不足に悩んでおる、看護婦等の確保ができない、せっかくの病床を利用するにも事欠くというような、不合理千万な問題が山積いたしております。
 このような状態にもかかわらず、医療を担当する労働者は、驚くほどの低賃金にあえいでおる。患者も、病院も、労働者も、関係者すべてが苦しんでいる状態があるわけでありまして、これがはたして福祉国家の医療といえるかどうか。私はまず総理に、このような問題について、総理は深い反省を持っておられるのか、申しわけないことだったということが言い切れるのか、その点からお伺いを申し上げてみたいと思います。
 そうしてまた、先ほど抜本策の要求に対して、総理は、何とかしようと思っていま検討しておるのだというようなお答えでございますけれども、抜本策の検討も必要ですけれども、いま申し上げたような問題が山積しているわけでございまして、このような問題についての効果的な具体策を精力的に準備しなければならないと考えております。このような問題について総理の御所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 また、厚生大臣に対しては、過疎地帯の医療はますます困難になっておる。昭和三十一年から対策をしておると言っておりますけれども、ますます困難になっておる。これで一体国民の皆保険なんということが言えるかどうか。
 第二に、また、高額な差額ベッドや付き添い看護人の負担の問題がある。このような問題を解決しないで、給付の改善や、また先ほどから、この法案にあります高額医療の問題等のことをいばっておりますけれども、はたして、こういう問題に対して手をつけないで、政府は給付の改善をしたということができるかどうか。また、その次には、病院等の赤字、看護婦の確保についてお伺いをしたいと思います。
 病院の占める役割りというのは、ますます重要になっております。一般の開業医に比べて、病院の赤字の状態がひどいということは常識となっております。また、看護婦の不足も、病院においてはなはだしいといわれている。この際、病院の基本施設その他について、国はもっと配慮が必要である。この病院の状態を、中医協で代表する代表がいないなんということはおかしなことです。厚生大臣は、この問題について即刻対策を講じて、病院の状態について中医協が十分理解するような処置を講ずべきだと思います。
 また、その次には、救急病院の拡充の問題でございます。
 いま、交通事故にかかった。救急病院に行く。あの病院がいい、この病院が悪いなんという判断はできない。しかし、救急病院では、このような患者に対して、はたして親切な、良心的な治療をする体制にあるのかどうか。また、夜やあるいは休日の患者の問題がさまざまな社会問題になっております。このような問題を処理するために、どうしても救急病院というものの中に、休日や夜間の診療を義務づける要員の配置が必要だと思いますけれども、この問題について厚生大臣はどのようにお考えになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
 その次に私は、現在一番大事な問題、医療担当者側の中核となっているお医者さんの問題についてお訴えをしてみたいと思います。
 保険制度やいろいろな機関の拡充も必要ですけれども、それにも増して重要なことは、信頼のできるりっぱな医者をどうして確保するかということだと思います。かりに、量的に医療機関が拡充した、形だけりっぱな保険制度ができた、安い保険料で十割の給付が得られたとしても、肝心の医者の質が悪ければ何にもならないのでございます。医療は他のサービスと違って、国民の健康と生命を守るというかけがえのない仕事をしており、また、病人は医者を選ぶ権利があるとはいっても、事実上は、医者の無条件な管理下に置かれておるというのが実態でございます。
 このようなお医者さんが、薬を売らなければ収入が得られないというような保険制度は、早急に改めなければなりません。薬は薬剤師の職分であることは、昭和三十一年の法律ではっきりしておる。最初に自民党の代表の方が言われた医薬分業の問題、これはただ一つ正しいことを言われたと思って感心をいたしておりますけれども、この問題については、法律の趣旨を忠実に実施するという点において、自民党政府はさぼっておった。昭和三十一年にはそういう法律ができておるんだから、それをやらないというのはさぼっておったことになる。ぜひともこの問題に着手しなければならない。具体的にどうしたらこの問題が推進していくのか、この問題について厚生大臣のお答えをいただきたい。
 また、これに見合う問題は、お医者さんの待遇改善の問題でございます。生命を守る高貴な職分にあるお医者さんにふさわしい収入が得られるように、十分な診療報酬の制度をつくるべきであります。そのために一時的に医療費がかさむとしても、よい医療が受けられれば国民は納得すると思います。
 この二点について、総理と厚生大臣の責任のある御答弁をいただきたいと思います。
 最近、私は日本医師会会長の武見さんとお会いいたしました。武見さんは非常にりっぱな本を出されております。「将来における医療水準確保のために」という本でございますけれども、この本で強調されていることは、日本の社会保険のこの体制のもとで、日本の医師の技能がいかに低下しておるかという問題を書いておるのでございます。また、これについて、国家試験を含めて、そしてお医者さんの再訓練の問題を含めて、かなり的確な、そしてきびしい提案をしておるのでございます。医師会の責任者である武見さんがこのような勇気ある提案をしていることに対して、私は敬意を表したいと思います。
 総理、このような問題について、日本のお医者さんの技術水準が低下しておる、どうしたら上げられるかという問題について、ぜひとも考慮していただきたいと思います。
 これと関連して、私は、ぜひともここで申し上げたい問題がございます。
 現在、特に私立大学で裏口入学といわれておる問題でございます。文部省の調査によりますと、昭和四十六年、いまから二年前の調査によれば、私立大学の医学部の入学生は二千百三十七人、そのうち六五%に当たる千三百九十三人は、多額の寄付金を納めて入学しております。その総額は八十三億五千二百万円にのぼっております。一人平均六百万円、最高は二千百万円出しておるというのが文部省の調査でございます。昭和四十八年の三月現在、医科大学に入学する総数は、国立は三千四十人、公立は五百八十人、私立は二千五百八十人、合計六千二百人の人たちが入学するのでございますけれども、この私立の二千五百八十人のうちの六五%といえば、千六百人以上が裏口入学であることは確実でありましょう。しかも現在では、その寄付金は平均一千万円ともいわれておる。最高は三千万円ともいわれておる。
 総理、このような状態を放置して、いい医者ができると思いますか。
 事実、現在お医者さんになるには、大学を卒業する、大学を卒業して国家試験を受ける。卒業するときに落第するものは一人もいない。国家試験の合格率は九八%だといわれておる。このような国家試験は無意味じゃありませんか。つまり、このようにしてできたお医者さん、毎年つくるお医者さんの三割近いものが、このようにしてつくられておる。国民は、このような方から医療サービスを受けておる。
 総理大臣、文部大臣、厚生大臣、この事実を放任する政府の責任は重大だといわなければなりません。この点だけについて、私は武見さんの意見に賛成です。国家試験のやり方を含めて、政府は早急に対策を講ずべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
 第三は、健康保険法の改正の問題についてであります。
 政府は、今回の改正案を、給付の改善と財政の健全化を目的としたものだと述べておりますけれども、六割給付にせよ、高額医療費にしても、すべて、昨年国会に提案した、そして廃案になった、そのままのものを提出されております。ほとんど目新しいものはありません。
 しかも、家族の六割給付に至っては、社会保険審議会でも社会保障制度審議会でも、七割給付にすべきだと強く答申をいたしております。なぜ七割にできなかったのか。かりに本年できなくても、来年できる。法律では、今年から実施するとして、来年からやりますということがどうして言えないか。この点についての厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
 次に、高額医療費の制度についてであります。
 そのねらいとするところは、一応評価することができると思いますけれども、月に自己負担が三万円ということになれば、勤労者の平均の所得の四割近いものになります。このようなものを毎月毎月納める。大部分の国民にできると思いますか。できやしませんよ。三万円にしたその根拠をひとつ教えていただきたい。
 そしてまた、三万円を二万円あるいは一万円と少なくしていく予想をしておられるのか。現在、少なくとも三月ぐらいあとには全額を国が補償するようなことを考えていないのか。このような問題について厚生大臣にお伺いをしたいと思います。
 次に、弾力条項について。昨年、本院において修正、削除された保険料率の弾力条項とほとんど類似の形で再提出をしていることは、これは何と言っても議会の軽視だといわざるを得ないのです。少なくともこのような問題を出す場合には、去年の本院で議論になった諸点を参考にして、どのような場合にこの弾力条項を発動するのかという、具体的な内容を明らかにするぐらいのことはしなければなりません。そうしなければ審議のしょうがないじゃありませんか。このような意味において、私どもは政府のこの問題についての真剣さを疑わざるを得ないのでありまして、反対せざるを得ないのでございます。
 また、ボーナスの問題に対する特別保険料の徴収が今回も提案されておりますけれども、これは、一般の保険料では見合うものがあります。たとえば出産費あるいは傷病手当を増加するとかいうような見合いがありますけれども、このボーナスの問題についてはそのような見合いが一つもない。収入一方のものだ。こういう点はぜひともお考えを願わなければなりません。やめていただかなければなりません。
 保険料率の引き上げについても、内容は昨年の案と全く同じものであります。政府の説明では、給付の改善を行なう、それだから保険料率の負担は当然じゃないか、こう言っておりますけれども、審議会の七割はやらないで、六割程度でお茶を濁しておって、負担増を言うということは、国民を愚弄するものになりはしませんか。
○副議長(秋田大助君) 和田君、申し合わせの時間が過ぎましたから、ごく簡単に願います。
○和田耕作君(続) これらの点について何とか勇断をお願いしたいと思います。
 さらにまた、国庫補助の問題について申し上げたいと思います。
 定率一〇%、これも昨年と同じだ。政府は、今年は福祉国家、福祉予算をつくろうとしておるのに、去年と同じものを出して、福祉予算中心の予算を組むなんと言うことはおかしなことなんです。
 また、先ほどから厚生大臣の御所見を承っておりますと、保険は大体国が金を出すべきものではないというような趣旨のことを言っておりますけれども、冗談じゃありませんよ。大体社会保険制度というのは、社会保障制度を実現するための手段としての保険制度です。国庫補助をして何らおかしいことはない。特に政管健保のようなものは二〇%、少なくとも一五%の国庫負担をやるべきです。
 このようないろんな問題がございまして、私どもは何でも反対と言うのじゃありません。できるだけこのような問題について政府が、ひとつ良心的な答弁をいただき、そしてできるだけの改善をしてもらいたいと思うのでございます。何としても先ほど申し上げたとおり……
○副議長(秋田大助君) 和田君、なるべく簡単に願います。
○和田耕作君(続) 政府が十分な医療サービスを、よい医療サービスを提供してないところに、さまつな問題まで問題になるわけでございますから、政府はひとつこのあたりで勇断をもって、政府の負担で思い切って日本の医療をよくするためにがんばってほしいと思います。
 これでもって質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 第一点は、医療制度の抜本改正についての基本姿勢についてでございますが、先ほども申し述べましたように、医療制度につきましては、医学、医術の研究開発、医療施設の体系的整備、医療従事者の養成及び資質の向上など広範にわたり課題が山積をしております。医療供給体制の計画的整備は、現在作業を進めている社会保障長期計画の最も重要な柱として考えておるのでございます。
 国民医療の確立のため、今後最大の努力を払い、計画的にこれらの問題の解決に当たってまいりたいと考えます。
 次は、大学医学部への入学者をどう認識し、いかに対処するつもりかという問題でございますが、人命を預かる医師には、他の職業に比べて高い資質と専門職業人としてのモラルが要求されることは言うまでもないことでございます。
 国としては、資質の高い医師の養成、確保と教育の機会均等をはかるために、私立医科大学の入学時寄付金につきましては、それが入学の条件とされたり、あるいは高額にわたることのないよう、十分指導し、また、その助成について、今後とも一そう配慮してまいりたいと考えておるのでございます。
 次に、国家試験の問題でございますが、医師の国家試験は、国民医療にかかわる重要な試験であるので、その実施にあたっては、厳正を期していることは言うまでもないのであります。
 また、医師の資質の向上は、単に国家試験のみならず、卒業前の教育、資格取得後の研修を含めた医学教育全体の向上が必要でありますので、医科大学の充実とともに、臨床研修についてもその充実をはかってまいりたいと考えます。
 残余の問題に対しては、担当大臣から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
○国務大臣(小坂善太郎君) 四十八年から五十二年までの五カ年間にわたりまして、経済社会基本計画というものをつくりまして、皆さまのほうにも差し上げておるわけでございますが、その中で、振替所得は、五十二年には十二兆三千億円になる。国民所得との対比が八・八%になるということにいたしておりますが、この五年間の伸び率は二二%でございまして、昭和三十五年から四十五年までの五カ年の伸びに比べまして、非常に大きく伸びております。この期間は一八%でございますから、四%よけいになっているわけでございます。
 そこで、この計画に基づきまして、この健保の改正案ができておるわけでございますが、この計画と斉合する形においてできておるわけでございますが、今日の政管健保の状況を見て、だれもこれでいいと思っている人はないと思うのであります。三千億円にのぼる累積の収支不足がある。また、累積した損失が二千五百億円あるという状況を見て、これでいいと思っている人はないと思うのでありますから、私どもも、この機会に三千億円の収支不足はたな上げにする、二千五百億円の赤字を一般会計から埋めるということによって財政を立て直して、また、このたびの改正案においては、給付内容を画期的によくしよう、こう言っているわけでございます。
 なお、たいして変わりばえがないじゃないかという御意見もございましたが、御承知のように、三年計画で家族高額負担の療養費を新設いたしましたり、また分べん費等をとってみましても、本人の最低保障は二万円から四万円でございますが、家族は一万円から四万円に上げるということにしておりますし、また、埋葬料の改善等を見ましても、今日二千円であるものが二万円になるということで、著しく内容を改善しているわけでございますので、どうぞいろいろ御意見もございましょうけれども、このよい点について特に御賛同を賜わりたく、お願いする次第であります。(拍手)
  〔国務大臣齋藤邦吉君登壇〕
○国務大臣(齋藤邦吉君) お答え申し上げます。
 医療保険制度の改正とともに、最も重要な問題は、医療供給体制の確立であることは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。そこで、医療供給体制の整備の問題につきまして、具体的ないろいろな問題を御質疑いただいたわけでございますが、なるべく簡単にお答え申し上げます。
 まず第一に、過疎地帯に対する医療確保対策について御質疑がございましたが、今日まで私どもは僻地診療所の問題、あるいは診療車の整備の問題、医師の派遣等々の措置を講じてまいりましたが、まだまだ十分ではございませんので、今後は、こうした町村ごとに具体的に、医師との連携政策、措置というものを樹立させて、僻地医療の医療確保に万全を期してまいるようにいたしたいと思います。
 次に、具体的には高額差額ベッドの問題付き添い看護婦の問題等も御意見がございましたが、こういう問題につきましても、今後、十分保険医療機関を指導して、誤りなきようにいたしたいと努力いたしますが、同時に、患者さんの負担の軽減につとめるようにいたしたいと考えております。
 病院の赤字対策の問題もございましたが、赤字を解消するためには診療報酬が適正でなければならぬ、これは当然のことでございますが、同時に、国といたしましても、ガンとか救急医療とか、そういう面においていろいろ援助をいたしておりますので、そういう施策の一そうの拡充をはかってまいりたいと考えております。
 看護婦の問題は、当面最も大事な問題でございまして、養成の施設を整備するということと相まって、処遇の改善、これが一番大事なことでございまして、来年度におきましては、国公立の病院、診療所におきまして夜間勤務手当の増額等をいたしましたが、今後とも処遇の改善をはかってまいるようにいたしたいと考えております。
 救急病院、救急医療センター等に関連いたしまして、お医者さんに休日、夜間診療を義務づけたらどうかというお尋ねでございますが、義務づけるということは困難かと思いますが、現在、御承知のように、休日、夜間におきましては、国公立病院を中心として、私的医療機関の御協力もいただいて、それぞれの地域で協議会をつくって、必要なときにはお医者さんは必ず配置されるという仕組みができておるわけでございまして、今後、そういう仕組みの強化に努力をいたしたいと考えております。
 さらに、中医協に病院代表を別ワクで入れたらというお尋ねでございましたが、現在は、御承知のように、医師会の推薦で委員が出ておるわけでございますが、日本医師会などには、すでに病院の医師もたくさん入っておるわけでございまして、医師会は当然病院の代表をすべきものであり、また現実、代表いたしておると考えておる次第でございます。
 医薬分業の問題につきましては、今日まで十分定着いたしておりませんことは遺憾とするところでございまして、今後、私どもは、薬局の受け入れ体制を整備するなど分業の基礎的条件をもっともっと整え、国民に対しても医薬分業の趣旨を十分に徹底させまして、これが実施を推進していく考えでございます。
 もとより、医薬分業の推進に伴い、お医者さんめ診療報酬制度の確立ということが問題になるわけでございまして、当然、医薬分業の推進に伴い、中医協において適正な措置をとっていただけることを期待いたしておる次第でございます。
 次に、最近における医師の水準が低下しているではないかというお尋ね、まことにごもっともでございます。私どもは国家試験を厳格にいたしておりますが、最も大事なことは、国家試験が済んだあとの卒後の研修ということが一番大事なことでございますので、今後、私どもは、国立病院に臨床教育センターを併設いたしまして、医師の水準、医療の水準向上のために努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
 家族療養費の給付の割合を六割にしたことは審議会の無視ではないかというお尋ねがございました。七割にすることも私は望ましいと思いますが、何と申しましても今日の政管健保の基礎が脆弱でございますので、まず六割にして、それが実現した暁に、私は、今後七割にするということに真剣に取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
 高額療養費の給付三万円という問題、これについては評価していただいておりますが、将来軽減する考てはないか、こういうお尋ねでございます。これも私、ごもっともな御意見だと思いますが、これはわが国の医療保険においての新しい制度でございますから、まずこの制度を発足させていただいて、そして、その実績を見た上でそうした問題を考えてみたいと考えておる次第でございます。
 なお、弾力条項についてはいろいろ御批判がございましたが、弾力条項についてはたびたび申し上げておりますように、診療報酬の改定あるいは給付改善その他緊急な場合にのみ限るようにして運営をすることが当然であると考えておる次第でございまして、社会労働委員会において法案審議の際に、そういうことを申し上げたいと考えておった次第でございます。
 賞与に関する特別保険料の徴収についてのお尋ねでございますが、この特別保険料の徴収をやめますと、保険料率を〇・五%程度上げなければならない。そういうことになりますと、低収入の、報酬の安い方々にはお気の毒でございますので、むしろ五万円以下の標準報酬の方には賞与からの特別保険料は取らないで、それ以上の方からいただこうというわけでありまして、所得の高い者からこういうものをいただこう。負担の公平をはかった趣旨でございますので、御理解をいただきたいと思うのでございます。
 最後に、国庫補助をもっと増額したらどうかという御意見を交えてのお尋ねでございますが、私どもは今日、まあ昨年まで二百二十五億の定額でございました、それを今度は思い切って定率、八百億ということにいたしたわけでございますので、将来はいざ知らず、現在の段階においては定率一〇%が適当であると考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣奥野誠亮君登壇〕
○国務大臣(奥野誠亮君) 私立医大の入学にからみます寄付金の話の絶えませんことは、私も、現状をこのままにしておいてはいけないのではなかろうかと考えている一人でございます。医学教育に多額の経費のかかることでもございますので、総理からもお話がございましたように、国からの助成策の充実についてくふうを払っていきたいと考えるものでございます。同時にまた、設立の認可の申請にあたりましては、自己資金を経費の三分の二以上準備する、昨年からは四分の三以上準備するということになっておりますので、そのとおりの運営が行なわれているものかどうか、調査に取りかかったところでございます。
 より根本的には、私立の医科大学の設置認可、これについては慎重を期していきたい。反面、国公立の医科大学を計画的に増設していきたいと考えているわけでございまして、四十八年度には医学部も含めまして三つの国立医大、四十九年度には四つの国立医大を設置するということで、関係の経費を予算に計上させていただいているところでございます。(拍手)
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        法 務 大 臣 田中伊三次君
        文 部 大 臣 奥野 誠亮君
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        農 林 大 臣 櫻内 義雄君
        郵 政 大 臣 久野 忠治君
        建 設 大 臣 金丸  信君
        大蔵大臣臨時代
        理
        国 務 大 臣 小坂善太郎君
        国 務 大 臣 坪川 信三君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
     ――――◇―――――