第071回国会 本会議 第26号
昭和四十八年四月十三日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十二号
  昭和四十八年四月十三日
   午後一時開議
 第一 石炭鉱業合理化臨時措置法等の一部を改
    正する法律案(内閣提出)
 第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を
    改正する法律案(内閣提出)
    …………………………………
  一 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小
    企業に対する臨時措置に関する法律の一
    部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨
    説明
  二 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭
    和四十七年度年次報告及び昭和四十八年
    度農業施策について)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求め
  るの件
 日程第一 石炭鉱業合理化臨時措置法等の一部
  を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に
  対する臨時措置に関する法律の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
 櫻内農林大臣の農業基本法に基づく昭和四十七
  年度年次報告及び昭和四十八年度農業施策に
  ついての演説及び質疑
   午後一時五分開議
○議長(中村梅吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(中村梅吉君) おはかりいたします。
 内閣から、日本銀行政策委員会委員に武田満作君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(中村梅吉君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 石炭鉱業合理化臨時措置法等の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(中村梅吉君) 日程第一、石炭鉱業合理化臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員長田代文久君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔田代文久君登壇〕
○田代文久君 ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法等の一部を改正する法律案につきまして、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、石炭鉱業の現状にかんがみ、石炭鉱業審議会の第五次答申に沿い、石炭対策の一そうの推進をはかろうとするものでありまして、そのおもな内容は、
 第一に、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正して、石炭鉱業合理化基本計画の目標年度を、三年延長して昭和五十一年度にするとともに、石炭鉱業合理化事業団に管理委員会を設置して、その収支予算、事業計画等の決定に際しては、管理委員会の議決を要することとし、あわせて、従来、国が直接行なっていた助成業務を、事業団に一元的に行なわせるための措置を講ずることなどであります。
 第二は、石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正して、現に再建交付金の交付を受けておる会社が、本年五月一日現在の借り入れ残高について、その償還期間を五年六カ月に短縮することができる措置を講ずるとともに、新たに、四十七年六月三十日以前に金融機関から借り入れた長期借り入れ金の借り入れ残高につき、総額六百八十億円を限度とする第三次肩がわり措置を講ずること等であります。
 第三は、石炭及び石油対策特別会計法の一部を改正して、昭和四十八年度において、閉山交付金等に不足が生じた場合は、特別会計石炭勘定の負担において借り入れ金をすることができることとしていること等であります。
 本案は、去る二月二十日本委員会に付託され、三月七日中曽根通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、以来、参考人から意見を聴取する等、慎重に審議を重ねてまいりましたが、昨十二日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党から、石炭及び石油対策特別会計法の一部改正の規定の施行期日を「公布の日」に改める修正案が提出され、修正案並びに修正部分を除く原案について採決の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提出による、二千万トン以上の出炭規模の維持と需要の確保、経営改善資金の弾力的運用、安定補給金の単価引き上げ等を内容とする附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
○議長(中村梅吉君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の
  一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(中村梅吉君) 日程第二、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長田川誠一君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔田川誠一君登壇〕
○田川誠一君 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、戦傷病者、戦没者遺族等の処遇の改善をはかるため、障害年金、遺族年金等の額を引き上げるとともに、特別給付金の支給等を継続し、その範囲を拡大しようとするものであります。
 改正の第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正であります。
 そのおもな内容は、障害年金、遺族年金等の額を恩給法に準じて二三・四%増額するとともに、扶養親族加給等の額についても引き上げることとし、被徴用者等を除く準軍属に係る障害年金等の額を、軍人軍属の場合と同額に引き上げること、及び日華事変中の本邦等における勤務関連傷病により障害者となった軍属、準軍属等またはこれにより死亡した者の遺族に対して、障害年金、遺族年金等を支給することであります。
 第二は、未帰還者留守家族等援護法を改正して、留守家族手当の月額を、遺族年金の増額に準じて引き上げることであります。
 第三は、戦傷病者特別援護法を改正して、日華事変中の本邦等における勤務関連傷病により障害者となった軍属、準軍属等に対して、新たに療養の給付等を行なうとともに、長期入院患者に支給する療養手当の月額を増額することであります。
 第四は、各種特別給付金支給法による援護の拡充であります。
 第一点は、国債の最終償還を終えた戦没者の妻及び父母等に対し、特別給付金を増額、継続支給することとし、妻については六十万円、父母等については三十万円の特別給付金をあらためて支給すること。
 第二点は、昭和四十七年の遺族援護法等の改正により、遺族年金、障害年金等を受けることとなった戦没者の妻及び父母等並びに戦傷病者等の妻に対して、新たに特別給付金を支給する等支給範囲の拡大を行なうことであります。
 本案は、去る二月十三日本委員会に付託となり、昨十二日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、施行期日についての修正案が提出され、採決の結果、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(中村梅吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村梅吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(中村梅吉君) 内閣提出、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。通商産業大臣中曽根康弘君。
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 去る二月十四日に実施されました円の変動相場制への移行は、輸出関連の中小企業の事業活動に著しい影響を及ぼすことが憂慮されております。
 政府といたしましては、直ちに中小企業製品に係る輸出の円滑化をはかるために外貨預託を裏づけとする先物為替予約制度を実施しましたが、中小企業対策の重要性と緊急性にかんがみ、政府部内で所要の措置の検討を進めた結果、三月十四日、国際通貨情勢の変化に伴う緊急中小企業対策について、閣議決定を行ないました。閣議決定は、次の事項を骨子としております。
 すなわち第一は、政府関係中小企業金融三機関等による長期低利の緊急融資の実施であります。融資規模二千二百億円、金利六・二%の特別融資により、輸出関連の中小企業者の経営安定をはかるものであります。
 第二は、前回のドル・ショック時に実施した緊急融資の返済猶予を行なうほか、設備近代化資金、高度化資金等についても返済猶予措置を講じ、経営安定をはかるものであります。
 第三は、担保力の乏しい輸出関連の中小企業者に対し、中小企業信用保険の特例措置を講じ、その信用補完をはかるものであります。
 第四は、法人税及び所得税につき、今後二年間欠損金の繰り戻し制度による還付を既往三年間にさかのぼって行なうなどの税制上の特別措置であります。
 第五は、中小企業の事業の転換を円滑化する措置であります。
 政府といたしましては、これらの特別措置により、輸出関連の中小企業者が第二次ドル・ショックに耐え、事業活動に支障を生じないよう遺憾なきを期したいと考えております。
 本法律案は、この閣議決定の内容中、法律的な措置を要する事項につき、立案されたものでありますが、その要旨は、次のとおりであります。
 第一は、今般の円の変動相場制への移行を国際経済上の調整措置として規定し、これにより影響を受ける輸出関連の中小企業者を新たに認定することであります。この結果、前回のドル・ショック時に認定を受けた中小企業者も新たに認定を受けることにより、再び救済措置を受けることができます。
 第二は、新たに認定を受けた中小企業者について、中小企業信用保険上の特例措置を講ずることであります。具体的には、通常の保険限度額のほかに、特別小口保険については八十万円、普通保険については二千五百万円のそれぞれ通常分と同額の別ワクを設け、無担保保険については通常分の一・五倍の四百五十万円の別ワクを設けることであります。この信用補完の強化により、担保が不足している中小企業者に対して、金融の円滑化をはかることであります。
 なお、四十八年二月十四日以降、認定を受けるまでの間に、信用保証協会が輸出関連中小企業者にした保証についても、この特例措置を遡及して適用することといたしております。
 第三は、認定を受けた中小企業者に対し、設備近代化資金の支払い猶予の特例及び事業の転換の円滑化のための措置を講ずることであります。
 第四は、租税特別措置法の一部を改正し、新たに認定を受けた中小企業者等に対しては、今後二年間に生ずる欠損金につき繰り戻し制度による還付を、通常は一年となっておりますのを、特に既往三年間にさかのぼって認めることとしたことであります。
 第五は、新たに認定を受けた中小企業者に対し講ずる特別措置に遺憾なきを期するため、法律の有効期間三年を五年に延長することであります。
 以上が国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(中村梅吉君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。上坂昇君。
  〔上坂昇君登壇〕
○上坂昇君 上坂昇であります。
 日本社会党を代表して、ただいま提案されました国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案という、まことに長い見出しの法案について、短時間の質問を総理及び関係大臣に対し行なうものであります。(拍手)
 わが国は、一昨年十二月、一九四九年以来実に二十二年間にわたりまして持続してまいりました一ドル三百六十円のレートを変更し、多角的通貨調整による一六・八八%の円切り上げを行なったのであります。この円ドル・ショックの困難な状況に対し、大企業は、蓄積された国際競争力と政府の積極的な政策的バックアップをてこといたしまして、下請企業や商社への負担転嫁を通じてこのショックをはね返したのでありますが、輸出依存度の高い中小企業は、操短、合理化、労働強化あるいは内需への転換により、かろうじてこのショックから免れ得たのであります。
 本来、この時点で政府は、従来の高度経済成長政策に基づく重化学工業中心の輸出至上主義を改め、物価安定、国民生活向上、社会福祉充実を基本とする産業経済政策の転換をはかり、国際収支の均衡を通じて、再び通貨危機を招来しないことに全力をあげるべきであったのであります。
 しかしながら、大企業との癒着の中でその政権を維持する自民党政府は、依然として財政金融面での景気拡大、大資本優先の政策を続けた結果、国際収支の黒字縮小どころか、インフレ助長、輸出指向、高度成長追求の経済構造を温存し、第一次円切り上げ以来わずか一年二カ月にして今回の変動相場制移行となり、実質的な円の切り上げを招来したのであります。その結果は、前回のドル・ショックの比ではなく、中小輸出産業に実に大きな被害をもたらしております。特に輸出比率が高く、発展途上国の追い上げを受けておる業種にありましては、産地ぐるみ倒産の不安に脅かされております。すでに今回の円変動制のもとで商談の見込みの立たないものが続出するとともに、契約済みのものにつきましても、契約時と決済時の期間的ズレから生ずる為替差損によって、輸出中小企業産地や中小商社は甚大な損害をこうむり、近い将来倒産を免れない企業、産地が相当の数にのぼるという状態に立ち至っているのであります。
 私は、ここで、政府の円対策について、基本的に二つの欠陥のあったことを指摘せざるを得ない。と同時に、政府の責任の所在を明らかにしなければならぬと思うのであります。
 本年一月二十七日の本会議における所信表明の中で、総理は、円切り上げを回避するためあらゆる努力を傾注する旨の言明をしたのでありますが、この言明にもかかわらず、政府の円対策はまさに後手後手に回り、何ら適切な措置をとらなかったばかりか、二月十二日の予算委員会では、今回のフロートは外国からの圧力によるものと、外圧に籍口してみずからの責任を回避している態度は、これは許すことのできない問題であります。(拍手)
 このような態度こそが今回の実質的な円の再切り上げを招き、中小企業に大きな変動と不安をもたらした第一の原因であるといわねばなりません。
 いま、国民は、変動相場制がいつまで続くのか、いつ固定相場制に復帰するのか、その固定制復帰の際の円の切り上げ幅はどうなるのかについて、政府が明らかにすることを要求をいたしておるのであります。この要求に対し、総理は、明確に答えなければならない時期にきていると私は考えるのでありますが、いかがでしょうか。(拍手)
 去る三月三十一日の参院予算委員会におきまして、わが党の羽生議員の質問に答え、総理は、いみじくも日本列島改造論の欠陥を認め、第二列島改造論で福祉優先を取り上げたいとの発言をなされたようであります。しかし、その政策は、依然として、全国総合開発計画など、一連の大企業、大資本優先に重点が置かれており、さらに、財政主導型のインフレ予算がこれに輪をかけておりますから、根本的な円対策ができるはずはないのでありまして、この点を第二の問題として指摘をしなければなりません。私は、いまこそ政策の大転換をはかるべきであると思うのであります。
 すなわち、内政においては、日本列島改造論に基づく全国総合開発計画を撤回し、それらに充てられる予算及び財投資金によって、物価安定、住宅、土地問題の解決、社会保障の充実等、真に国民経済、福祉中心の政策を推し進めるとともに、日米間貿易の不均衡是正による国際収支均衡の政策を打ち出すべきであると考えるのでありますが、総理の決意のほどを承りたいのであります。(拍手)
 大蔵大臣は、去る三月二十六日から、ワシントンで開かれましたIMF二十カ国委員会蔵相会議に出席をされたのでありますが、現在の国際通貨問題はどのような方向に進みつつあるのか、蔵相が感じ取られた点をお聞かせいただきたいのであります。
 御承知のとおり、ドルの交換性はすでに停止されており、一昨年末の通貨調整に引き続く今回の一〇%切り下げにより、ドルに対する信認は著しく低下しておりますが、日本としては、依然として基軸通貨の中心にドルを置き、ドルの交換性、威信の回復のため、協力を惜しまないという態度で蔵相会議に臨まれたのか、それとも、ドルにかわる何らか別の国際通貨体制を考えての立場をとられてきたのか、お伺いをいたしたいところであります。
 今回の円のフロートは外圧によると総理は言われているのでありますが、強くなった円に対する国際的な評価はどのようなものになっているかということ、このこととあわせまして、円切り上げによる中小企業の為替差損をなくしていくために、今後の決済方法を円建てで行なうようにすることが大切ではないかと考えるのでありますが、この方向に対する大蔵大臣のお考えと、これに対する各国の思惑は一体どういうふうになっているか、お尋ねしたいところであります。
 次に、一昨日の報道で、ニクソン大統領は、いよいよ米国議会に対し、新通商法案を提出し、黒字国に対する心外ガード、輸入課徴金など、国際収支改善についての大統領権限を大幅に強める政策を打ち出したのでありますが、これは、今年九月のナイロビ蔵相会議のあとに開催を予定されている新国際ラウンドの時期を目安として、通商面だけではなく、ドルの安定をはかる意図を持つものと推測されるのでありますけれども、このことに対し、政府はどのような見通しを持っておられるか、お伺いしたいのであります。
 このことは、変動性の継続の期間と、景気過熱抑制の最近の金融引き締めが効果をあらわすであろう時期との関連において、わが国貿易業界に及ぼす影響がきわめて大きいと考えられますので、この点については、大蔵大臣及び通産大臣から御答弁をいただきたいというふうに思います。
 通産大臣に質問をいたしますが、わが国の輸出政策の目標は、昭和三十年以来、重化学工業を中核とする輸出構造の急速な確立に置かれてまいりました。そして、そのための輸出関連下請企業の育成と、アメリカ中心の輸出産業育成としての中小企業対策がとられてきたといえると私は思うのであります。
 したがって、わが国の輸出中小企業は、金融、税制、労働条件等の各般にわたり、いわゆる二重構造下に置かれてまいりましたから、インフレ助長政策下における原料、資材、労働賃金、その他経費の高騰の中で、製品の販売価格を引き下げることによって輸出市場における競争にうちかつことはまことに至難でありまして、変動相場制や円の切り上げのあらしの前には、その存在が根本からくつがえされる危険性を中小企業は持っていると思うのであります。
 こうした点から、一昨年暮れの円切り上げに際して、輸出中小企業産地の深刻な混乱が心配され、わが党は、産地の実態調査を行ない、その対策樹立の緊急性を強く政府に要求してきたところでありますが、このドル対策法の実施により急場をしのぎ得た効果は、それなりにあったと思うのであります。しかし、この施策の実効はあったにしても、企業それ自身が操短、合理化、人員整理、経営の多角化あるいは設備転換など、大きな犠牲のもとに急場を克服してきたその努力を見のがしてはならないのであります。そして客観的には、景気の上向期と金融緩和期にあい、ようやく谷底からはい上がってきたのが輸出中小企業の実態であります。
 そのやさき、変動相場制に移行し、一年そこそこで対ドル百円の切り上げとなった今日、その深刻さは、まさにはなはだしいものがあるといえるのであります。これらに対する緊急適切な措置が要請されているという認識の上に立って、具体的な質問をいたしたいと思うのであります。
 このドル対策法による措置は、つまるところ緊急対策でありまして、中小輸出産業の問題を根本的に解決するものでないことを指摘せざるを得ないのであります。
 これが根本的な解決は、先ほど総理にただしました内政転換にあることはもちろんでありますが、現実に、中小企業がその経営を成り立たせるために必要なことは、環境整備と、変化する輸出市場への新しい対応であると私は思うのであります。
 具体的に、中小企業が公正に競争する環境にあるかといえば、実情は必ずしもそうではありません。独禁法、下請代金支払遅延防止法などがあるにいたしましても、大企業が中小企業分野へ不当に進出し、あるいは巨大企業の独占、寡占価格によるところの価格支配、下請単価の切り下げ、手形の長期払いなどが幅をきかしている実情に、根本的なメスを入れる必要があると私は思いますし、市場や消費者嗜好にマッチした、新しい製品の開拓などに対する適切な指導が要請されると思うのでありますが、これらについての通産大臣の見解を明らかにされたいのであります。
 さらに、今日一般に中小企業経営にとってネックとされているところは、一つは労働力確保の視点であり、もう一つは長期経営安定資金供給の問題であるというふうに思います。労働者確保にとりましては、その生活を保障する最低賃金制の確立と社会保障の完全実施であります。そして、これに見合う職場環境の改善と施設設備の近代化に要する金融措置として、少なくとも五年以上の長期低利貸し付け制度の実施と金融の潤沢化が必要なのであります。これらは、もちろん中小企業存立の環境整備拡充の一環であることは申すまでもございません。特に金融面では、信用保証協会などを通ずる際の手続の簡素化、選別融資、歩積み・両建ての排除など、金融引き締めの段階では十分に考慮されなければならない問題でございます。
 なお、この際、今回の対策として、輸出中小企業の内需向け指導に当たられる場合、既存の同種企業との過当競争や過剰生産問題も考えられますので、これらについての通産大臣の指導方針を承りたいと存ずるのであります。
 この法律では、第一に、生産高の大半を中小企業が生産する輸出割合の大きい業種、二番目には、地域経済に大きく貢献をしている輸出比率の高い産地を特に対象としているのでありますが、このワクをもっと広げ、輸出割合が小さくとも、大きな影響を受ける単独の中小、零細企業にも道を開くことが必要であります。その際、手続上の簡素化が特に考慮されなければならないということを申し添えたいのであります。
 この法案の裏づけの融資として、二千二百億円を措置をいたしたのでありますが、昨年度の第一次措置につきましては一千八百億円でありまして、特に繊維関係でこれに一千三百億円を加えまして、合わせますと三千百億円になっているのであります。前回よりなお大きな影響と被害が予想される今回の措置が、実質的に前回の措置より少ないというのはうなずけないところでありまして、この点についてもお伺いをいたしたいところであります。(拍手)
 最後に、第一次ショック対策のうち、中小企業振興事業団による転換融資事業について、四十七年度中、一件しか申し込みがなかった問題がございます。あまりに手続が煩瑣なためか、指導が悪いのか、それだけのまた被害がなかったというのか、その点のところをお聞きいたしたいのであります。
 私は、転業というのは経営が悪化してからでは手おくれなのであって、経営がある程度順調である段階において、的確な見通しのもとに断行するとき成功すると思うのであります。そしてまた、このことは、統計上にも出ているということを申し上げたいのであります。
 共同転換という一定のワクにこだわり過ぎて、機械的な判断、指導におちいるとするならば、この効果はあがらないこともあわせて指摘しておきたいというふうに考えるのであります。
 以上の諸点につきまして、通産大臣の見解及び通産省としての基本的方針を明らかにされたいというふうに思います。
 以上で、本法案に関連する私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 上坂昇君にお答えをいたします。
 まず第一間日は、実質的な円切り上げに追い込まれた原因は、政府の内政面における福祉重点への施策転換が進まなかったことにあるのではないかという趣旨でございますが、さきに閣議決定された経済社会基本計画でも明らかにされておりますように、最近の内外情勢の変化に対応して、従来の成長優先の経済構造から、国民福祉と国際協調を志向した経済構造へ転換をはかることが、基本的に重要であると考えておるのであります。
 政府としては、今後とも、社会資本の整備、社会保障の充実等の福祉政策を積極的に展開するとともに、公害対策の強化、週休二日制の普及等につとめてまいる考えであります。
 第二点は、固定相場制復帰への時期いかんという趣旨の御発言でございますが、政府としては、今後の通貨情勢の推移と、為替市場の動向を見守り、円の相場の適正な水準を見出した上で、適当な時期に固定相場制へ復帰することが望ましいと考えておるのであります。
 第三点は、この際、列島改造論による国土総合開発は取りやめてはいかんという趣旨の御発言でございますが、先ほども述べましたように、輸出優先、生産第一から、社会資本の拡充、生活環境の整備、福祉社会の建設、国民福祉の増進へと前進をはかってまいりたいと考えております。
 自然と人間社会との調和した豊かな環境を、国土全域にわたりつくり上げていくための必須の政策として、列島改造による国土の総合開発は急を要するのでございますから、何とぞ御理解いただきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
○国務大臣(愛知揆一君) 御質問の第一は、去る三月二十六、七両日、二十カ国蔵相会議が開催されましたが、そこにおける状況の概要を報告を求められたわけでございますが、わがほうといたしましては、安定的な為替秩序に基礎を置いた一つの世界経済秩序の確立が必要である、こういう理念の上に立ちまして、安定した、しかし調整可能な平価制度、調整過程における国内政策の重要性、準備資産の中でのSDRの役割りの拡大、そして、最も重要なドルの交換性の回復、資本移動規制の重要性、インフレ抑制を含めた、各国の国際収支の節度の重要性を主張いたした次第でございます。
 これらの主張は、おおむね、今回の会議の主要な論点をカバーしておりますし、しかも、多くの国の代表から共感をもって迎えられたと信じます。コミュニケにも、これらの考え方が盛り込まれておりますし、会議の方向づけに相当寄与することができたものと思っております。
 御質問の第二点は、将来もドルを基軸通貨として維持する考えかという点でございますが、将来の通貨制度においては、長期的には米ドルの役割りを漸次縮小していく必要があると考えるのでありますが、当面の問題としては、米ドルの信認が回復される必要があることは申すまでもないところであると存じます。米国としても、ドルの信認回復は、米国のみならず、世界の通貨貿易体制全体の発展のために、欠くべからざる要素であることを認識をいたし、そのための努力を行なっているものと理解をいたします。
 また、今回の会議におきましては、蓄積ドルの固定化、いわゆるコンソリデーション問題等を含め、一般的な交換性回復のための諸条件について、蔵相代理会議にさらに積極的に検討することを指示しておりまして、わが国としても、今後かかる検討が推進される必要があると考えております。
 第三は、円の立場あるいは円建て決済等の問題でございますが、今回の二十カ国会議あるいはさきの拡大十カ国会議等を通じまして、戦後目ざましい発展を遂げた日本経済は、今日では、国際通貨制度上欠くことのできない一大支柱となりつつあることを私は強く感じた次第でございます。従来のドル中心の通貨体制が変わりつつあることは、一つの歴史の流れであると存じます。
 そこで、現在のような変動相場制のもとではもとよりでありますが、新しい通貨制度ができましても、為替レートは、従来に比べてより弾力的になるものと思われます。
 このような状況のもとで、わが国の業界の立場に立ってみれば、貿易その他の対外取引を安定的に保ちますためには、御指摘のように円建て取引の促進をはかることがきわめて望ましいことと存じます。したがって、こうした基本的な考え方を促進する方向で、漸次できるものからこれを進めていくことに努力を傾けたいと考えておる次第でございます。
 一般的に今後の経済運営にあたりましては、円の変動相場制移行、一連の金融引き締め政策等の効果の浸透を慎重に見守りながら、また国際通貨情勢の推移を踏まえまして、財政金融政策の適切かつ機動的な運用を通じて経済の安定成長を確保し、特に当面の急務でありまする物価の安定をはかるために最善の努力を払ってまいりたいと思いますが、わけても輸出関連中小企業対策につきましては、本法案を中心といたしまして、一そう強力な援助措置を展開してまいりたいと思います。
 なお、米国の新通商法案は、議会に提案されたばかりでございます。また、その基本的性格は、大統領に対する授権法であるという性格を持っておるように見受けられますので、わが国の経済に及ぼす影響については、今後の事態の推移を見きわめる必要がありますが、わが国といたしましては、その運用によって、自由無差別という貿易原則が米国によって阻害されることのないよう期待をするところでありますし、わが国の対外経済関係の調整を今後とも強力に推進しながら、米国に対して主張すべきことは強力に主張するという態度で、両国の経済関係の調和的な発展につとめてまいりたいと考えております。(拍手)
  〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業に関しまして御懇篤な御質問をいただきまして、感謝をいたします。
 まず、金融の問題でございますが、今回の為替調整に関しましては、二回目でございますので、特に大蔵省とも相談をして、金融については力を入れているところでございます。
 総額を申し上げますと、国民金融公庫貸し付けでは、四十八年度で総額八千四百七十七億円、中小企業振興事業団の共同工場融資等につきましては、これは無利子、期間十六年でございますが、八十四億円のうちから出します。設備近代化資金につきましては、無利子、期間五年、四十八年度は二百七十五億円など、長期の貸し付けを用意しております。
 なお、四十八年度におきましては、小企業経営改善資金といたしまして、無担保、無保証の融資を一件について百万円まで、これは期間二年以内、金利は年七%といたして実施しようと思っております。
 なお、信用保証協会について御質問がございましたが、輸出関係の中小企業については、特別の弾力的措置を行なうように指示してあります。大体、前回は申し込みの九五%程度が達成されておりまして、時間的には早いものは二日か三日、おそくとも一、二週間で融資が実現されております。今回もこれを促進いたしたいと思います。
 それから、中小企業関係の事業転換の件でございますが、この点については、さらに高度化されたものや高級品の方向に中小企業の製品を向けていくということ、それから、どうしてもやむを得ないというものについては、事業転換を思い切ってこの際やるつもりでございまして、それらに必要な資金については用意をしております。通産省といたしましては、特にそういう重要なポイントについては緊急診断を目下実施しております。
 前回の例で見ますと、転換の中には、韓国や台湾に進出したものもございますし、また、たとえば燕の食器のようなものは、道路の曲がりかどにある鏡に転換して成功したという例もございます。
 なお、これらの問題のために、今度、法案でも御審議願いますが、無担保保険を実施しておるところでございます。
 それから、中小企業の大企業との調整、環境整備の問題でございますが、この点につきましては、中小企業団体法を活用いたしまして、事業調整を行なうつもりでございます。この法律によりまして、特殊契約条項がございまして、進出する大企業と中小企業組合との間に調整を行なうことができ、まとまらない場合には通産大臣が調停することになっております。そして、それらの情勢によっては、一部の進出計画を変更させるとか、停止させるということも考えております。
 もう一つの問題点は、百貨店や大型スーパーが進出するという問題でございます。
 この点については、今回、大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律、いわゆる新百貨店法を提案いたしまして、これらの調整を行なう考え方でおります、今回は、スーパーを中に入れてきたという点に大きな特色がございます。
 それから、下請の関係でございますが、三月初旬の調査によりますと、四千社を調べましたが、三月の調査では、まだ相当受注残が輸出について残っております。これはレートがまだ決定してないために、いまのところはまだそれほど大きな圧力がきているように見受けられません。しかし、値引き交渉をやらされているものが大体二・七%、下げさせられたものが二%、受注量の減少したものが六・五%、これに対して単価を逆に上げたものが五%、それがふえたものは一一・二%となりまして、まだ輸出のほてりが残っているように思います。しかし、これからさらにきびしくなってくると思いますので、この点については特に注意いたしたいと思います。
 それから、ドル対法の認定の問題がございますが、前回は、千二百二十社を特別に認定いたしまして、支援対象といたしております。今回も、事態は深刻であると思いますので、地域並びに業種別にさらに思いやりのある措置を講じたいと思います。(拍手)
○議長(中村梅吉君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度農業施策について)
○議長(中村梅吉君) 農林大臣から、農業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度農業施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣櫻内義雄君。
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十八年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告のうち、第一部農業の動向について申し上げます。
 わが国の農業及び農村は、国内的には他産業との生産性及び所得格差の拡大、農業就業者の構成の老齢化に加え、最近においては土地、水等の国土資源の利用をめぐる農業と他産業との競合の激化や、都市化の進展等に伴う農村社会の著しい変貌など、各分野にわたってきわめて困難な問題に直面しているばかりでなく、対外的には、わが国経済の国際化に伴う農産物輸入の拡大の要請の高まりや、昨年来の世界的な穀物需給の逼迫に見られる世界市場の不安定性に対処して、国民食料の安定的供給の確保をはかっていかなければならないという重大な課題に当面いたしております。
 まず、農業及び農村と国土資源利用との関係について見ますと、土地の投機的取引の増大、地価の高騰等は、農業経営の円滑な遂行と高能率農業の展開をはかる上で大きな障害となっております。農業及び農村の健全な発展をはかるためには、土地、水等の有限な国土資源について農業と他産業との間における計画的な利用調整をはかりつつ、その利用秩序の確立につとめることが今日の政策的課題となっております。
 また、農業の他産業に対する比較生産性の格差は、前年度に引き続き拡大しておりますが、農家の生活水準は、農外所得の増大により勤労者世帯とほぼ均衡しております。
 さらに、農業の構造について見ますと、最近における農業就業人口の加速的減少にもかかわらず、農家戸数の減少は緩慢でありまして、農業を従とする第二種兼業農家の割合は一そう増大しており、耕地規模の拡大による農業経営の規模拡大は、一般的にはほとんど進んでいないのであります。
 このような中で、いわゆる自立経営農家の割合は、近年低下傾向にありますので、その今後における存立、発展のための条件整備をはかることが重要でありますが、他方、専業的農家を中核とする集団的生産組織による作業規模の拡大と高能率生産単位の形成の動きに注目する必要があります。
 次に、農産物需給の動向を見ますと、食生活の高度化と多様化を反映して需要は引き続き拡大を続けているのに対して、農業生産は停滞的に推移しており、農産物の輸入は増加傾向にあります。また、世界の農産物貿易をめぐる環境は、拡大ECの成立や日中国交回復等を背景として、今後著しい変化を来たすことが予想され、さらに、最近における世界の農産物需給事情の不安定性に対処しつつ、国民食料の安定的、効率的な供給を確保していくためには、国内生産が可能なものは、生産性を高めながら極力国内でまかなうことが一そう重要となっております。
 最後に、今日の農村社会は、都市化の進展等に伴い複雑な変貌の過程にありますが、全国的に見てなお大部分の農村は、依然として農家を中核とし、農村的風土を備えた地域社会でありまして、食料供給の役割りはもちろん、国土や自然環境の保全、培養の役割りなど、多面にわたる社会的役割りを果たしております。
 以上のような農業及び農村の動向を踏まえつつ、その国民経済社会における役割りを今後十分に果たしていくためには、土地、水等の国土資源について、農業と他産業との計画的な利用調整をはかりつつ、農業生産に必要な優良農用地の確保並びに地力維持を基本としたその合理的な利用をはかるとともに、自立経営の育成と並んで、専業的農家を中核とする集団的生産組織の育成等による高能率生産単位の形成を積極的に推進することが必要であります。
 また、需要の動向に対応した国民食料の安定的、効率的な供給体制を確立するため、農業生産の再編成を推進することが必要でありますが、特に最近における世界の農産物市場の不安定性に対処して、国内農業の生産、供給力を維持、強化することが重要であります。
 わが国の農業及び農村がこのような役割りを十分発揮しつつ、今後とも農村的風土を維持した活力ある地域社会として存続、発展していくことは、わが国経済社会の健全な発展にとって不可欠であります。このような観点に立って農村環境の総合的な整備を推進し、緑と豊かさに満ちた高福祉農村社会を建設することこそ、今日の最も重要な課題であります。
 以上が第一部の概要であります。
 次に、第二部におきましては、四十七年度を中心として講じた施策を記述しております。
 次に、昭和四十八年度において講じようとする農業施策について申し上げます。
 ただいま御説明申し上げました農業及び農村の動向に対処し、かつ、その役割りにかんがみ、農業基本法の定めるところに従い、また諸情勢の推移を織り込みまして、農政の総合的展開をはかることといたしております。
 このため、昭和四十八年度におきましては、高能率農業の育成、農業生産の再編成、高福祉農村の建設、農産物価格の安定、農産物の流通加工の合理化及び消費者対策等の充実、農業金融の整備拡充など各般の施策を推進することといたしております。
 以上をもちまして、概要の説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭和四十七年度年次報告及び昭和四十八年度農業施策について)に対する質疑
○議長(中村梅吉君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山崎平八郎君。
  〔山崎平八郎君登壇〕
○山崎平八郎君 私は、ただいま御説明のありました昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十八年度において講じようとする農業施策につきまして、自由民主党を代表して、内閣総理大臣並びに農林大臣に対して質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、農林大臣の御説明のとおり、四十七年度の農業白書においては、農業を取り巻く諸情勢はますますきびしく、わが国経済の持続的な高度成長の過程で生じた過密過疎、公害の深刻化、土地、水など有限な国土資源の利用をめぐる競合の激化、あるいは地価高騰など、さまざまのひずみが、農業及び農村の発展にとって大きな障害となっているという、重大な問題提起をいたしております。
 次いで、農業の内蔵する苦悩は依然として激しく、すなわち、わが国農業は、非農業部門の急速な成長に対して著しい立ちおくれを示し、農業と他産業との生産性の格差が拡大していくばかりでなくて、若年層を中心とした農業就業者の減少による老齢化、あるいは農業を従とする第二種兼業農家の著しい増加を見るに至っており、農業経営の安定的発展がきわめて困難になっておりますことと、かてて加えて、昨今、国際通貨体制の動揺や農産物の国際需給の逼迫、農産物を含めて自由化の要請など、わが国農業をめぐる国際的環境も一段ときびしさを加えるに至っていることも、白書が指摘しているとおりであります。
 このように農業にとってきわめて困難な、しかも激動する社会経済環境の中で、多くの農民は、将来に対する方向を見定めることができず、不安と動揺を示しておると申しても決して過言ではないと存じます。
 そこで、農林大臣に第一の質問をいたします。
 私は、農業、農村の現代社会において果たすべき役割りの重要性にかんがみ、農業と他産業との均衡のとれた調和のある発展をはかるには、わが国経済社会の安定的発展こそ最も重要であると考えるものでありますが、今後の国際経済の動向及びわが国経済のあり方について、政府はどのように認識し、その中でわが国農業をどのように位置づけて、今後の農政を展開されようとしているのか。願えるならば、総理の御所信も承りたいと存じます。
 次に、私は、これまで農業及び農村が、国民食糧の供給や自然環境の保全、培養など、多面にわたる社会経済的役割りを果たしてきたことを高く評価するものであります。そして、今日わが国経済は、国民福祉の充実を目ざした産業構造への転換をはからなければならないという重大な局面を迎えておりますが、農業、農村にとりましても、国民社会のいしずえとしての役割りをあらためて見直す必要があると考えるものであります。
 しかるに、最近、無秩序な開発や企業の投機的土地取引は、枚挙にいとまのない状況でありまして、このまま放置するならば、美しい緑の農村は、たちまちにして壊滅を余儀なくされることは必定であります。(拍手)
 そこで、総理大臣並びに農林大臣に第二の質問をいたしますが、これら乱開発や土地の投機的取引の抑制など、土地対策について抜本的な施策を講ずることが必要と考えるものでありますが、それぞれ見解を承りたいと存じます。
 また、農業白書は、最近の農業不振については、農業生産の減退や農産物価格の停滞、農業就業人口の減少など、具体的な数字をあげて分析いたしておりまして、私はあえてこれらを軽視するものではありませんが、農業不振の根本問題は、高度成長が持続する限りにおいては農業が著しい立ちおくれを示し、かつては、国家社会を自分たちの手でささえてきたと自負していた農民が、今日では、もはや自信と誇りを失い、不安と動揺の渦中に巻き込まれ、営農意欲を喪失しているところにあると考えるものであります。
 今後わが国経済社会の健全な発展をはかる上からも、また、将来長きにわたって健全な農村的風土を維持するためにも、営農意欲の高揚こそが農政の最も重要な課題であると考えるものでありますが、ここで第三の質問をいたしますが、農林大臣はどのようにお考えでしょうか。(拍手)
 さらに、農業就業者の構成の老齢化、農家の兼業化が一そう進む中で、わが国農業のにない手の問題は、今後の農政を推進していく上で最も重要な課題となっております。しかも、農業基本法は、農業構造政策の目標として、家族農業経営をできるだけ多く自立経営として育成することを規定いたしておりますが、白書は、四十六年度にはわずか四%に減少した事実を示し、将来の存立発展の諸条件について、あらためて確たる見通しを持つ必要があると指摘しております。
 ここで、農林大臣に第四の質問をいたしますが、自立経営の育成の見通し及び育成のための条件整備の具体的な方策についてどのように考えておられますか、見解を伺いたいと存じます。
 さらにまた、わが国経済の近年の動きを見ますと、四十五年秋以来の景気停滞の過程を経て、昨年、景気は全面的な回復上昇の過程を示したわけでありますが、特に本年に入って、国際通貨体制の動揺もあって、円は目下フロート中でありますし、この間、消費者物価ばかりでなく、卸売り物価の上昇という事態を招いています。
 このような特殊な事情の中で、政府においては、最近、預金準備率の引き上げや公定歩合の引き上げ等の措置を相次いでとられたわけであり、これらは適切な措置と考えるものでありますが、大商社の保有する過剰流動性を背景にして、土地や株式、さらには木材、大豆、生糸、モチ米、羊毛等の投機的取得が行なわれ、これが卸売り物価や消費者物価の上昇に拍車をかけているのが現状でもあります。
 特に農産物は、元来、わずかな豊凶の差が大きな価格の変動をもたらすという特質を有しているのでありますが、大豆、生糸、モチ米等、農産物の買い占めや売り惜しみが行なわれるのであれば、これら品目の急激な価格上昇を招くことは避けがたく、したがって、まじめに働く一般国民は、なかんずく、土にまみれ、手塩にかけてこれらの生産に従事した農民にとっては、真にふんまんやる方のない心理状態に追い込まれ、(拍手)先行き不安に明け暮れていることも無理からぬことと思われますが、ここに、時をかさずに、峻厳な政府の基本的対処方針が期待されますが、第五の質問として総理大臣にお伺いいたします。
 なお次に、世界における農産物の需給は、四十七年上半期までは比較的安定的に推移してまいりましたが、同じく秋以降、穀物をはじめとする需給の逼迫により、国際市況は全面的な高騰に転じています。すなわち、国際価格の上昇の著しいものは、主穀、飼料穀物、豆類、畜産物及び繊維にまたがり、これらの品目のほとんどが、史上の最高値または十ないし二十年ぶりの高値を記録している実情にあります。しかも、農産物国際価格の高騰ということは、直接的にも間接的にも大きな影響を及ぼしているのでありまして、たとえば大豆の高騰は直ちにとうふ価格の急騰を招き、飼料穀物価格の上昇は配合飼料の大幅な値上げに結びつくのであります。
 伝わるところによりますと、四十八年の世界農産物需給は、アメリカにおける休耕の解除による作付の増加や、アルゼンチン等における生産回復が見込まれているとはいえ、なお楽観を許さないものがあります。また、長期的に見た場合、世界農産物需給は、人口の増加、所得水準の向上に伴う飼料穀物需要の増大等に対応して、十分な供給が可能であるかどうか問題であります。
 このように不安定な世界の農産物需給事情のもとで、国民が必要とする食糧を、将来にわたり安定的かつ効率的に供給していくためには、国内の生産体制を整備し、農産物の自給率の向上をはかる必要があると存ずる次第であります。
 農業白書によりますと、四十六年の総合自給率は七四%とされていますが、小麦八%、大豆四%という自給率はあまりにも低過ぎますし、鶏卵九八%、肉類八三%、牛乳、乳製品八八%という自給率の裏には、それを生産するに要した膨大な輸入飼料穀物の存在を見のがすわけにはいかないのであります。
 ここで、自給率の向上について、緊急飼料対策を含めて、第六問として農林大臣の所見を求めるものであります。
 さらに、これと関連し、従来進められてきた米の生産調整をどのように進められるか、お伺いしたいわけでございます。
 さらにまた、農産物の国際需給の逼迫等とも関連して、食糧や飼料の相当量の備蓄がぜひ必要であると断定するものでありますが、これらについてもあわせて所見を伺いたいと思います。
 一方、世界情勢を見ますと、拡大ECの成立や日中国交回復に伴う日中貿易の新たな展開が予想されるなど、わが国は、世界農業との関連を急速に深めつつありますが、わが国の主要な輸入農産物の世界貿易に占める割合は、輸入農産物全体ではおおよそ世界貿易額の一割を占めていることは、農業白書でも指摘しているところであります。
 このように、海外依存度のきわめて高い農産物供給構造を持つわが国においては、すでに述べましたように、農産物国際市況の高騰の影響を大きく受けることになるのでありまして、したがって、世界各国の需給実態を的確かつ敏速に把握することがまず必要であり、しかる後、長期的輸入契約の締結や輸入先の多元化等適切な措置をとることが、国民生活の安定をはかる上できわめて重要であると存じますが、第七問として農林大臣、海外からの安定した供給の確保をはかる具体的方策はいかがでありましょうか、お尋ねいたします。(拍手)
 最後に、農産物の自由化問題について総理大臣にお尋ねいたします。
 わが国においては、国内農業との調整をはかりつつ、逐年輸入自由化が進められてきたところであり、昨年四月末には、農林水産物の残存輸入制限品目は二十四品目に減少し、このうち農産物は二十品目となっております。これらの農産物は、牛肉、乳製品、果実等の基幹的な品目であるか、または特定地域の農業と地域住民の生活をささえている畑作物であります。
 世界各国の農林水産物の残存輸入制限品目は、御案内のとおりわが国と大同小異であります。しかしながら、アメリカにおいてさえも、実質的には十数品目に及んでいるのであります。このように、世界の主要国が農産物の自由化をしないのは、農業生産は自然条件に左右され、工業とは大きく異なる面があること、国内の農業生産が一たん縮小した場合には、その回復に多大のコストと長い期間を要すること、さらにまた、外国からの輸入にあまりに依存し過ぎると、世界的な需給逼迫時には国際貿易に投機的性格が加わるおそれも出てきて、国民食糧の安定的供給が困難になることなどの背景があるためであります。(拍手)
 いやしくも、一億をこえる国民が、狭い国土の中で、末長い将来の生存の基盤について真剣に洞察しなければならないとき、もしも日本の成長農産物を安易に外交の具に供するならば、悔いを千載に残すことになるものと存ずるのでありますが、農産物の自由化について総理大臣の所見を求める次第であります。(拍手)
 さらに、これは希望でありますが、昨日のエカフェ総会において、発展途上国に対する農業開発援助について外相が強調されたことと、本日、田中内閣が発足以来初めて開かれた物価対策閣僚協議会の模様、とりわけて、オレンジの自由化がささやかれている際、輸入自由化品目及び輸入割り当てワクの拡大についてお示しいただければ幸いであります。
 以上の希望を添えまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 山崎平八郎君にお答えをいたします。
 今後の経済成長のテンポ、産業構造の方向及び農業の位置づけ等についてまず申し上げますが、政府は、従来の生産、輸出優先の経済運営を改め、国民福祉の充実を今後の基本的目標とし、産業構造も、重化学工業に傾斜したものから、知識集約化を中心とするものに転換をさせてまいります。また、この過程で、農業と他産業との生産性上昇の格差も次第に縮小し、農業の健全な発展が確保されるものと考えておるのであります。
 なお、今後五年間の実質経済成長率は、経済社会基本計画において述べておりますとおり、九%を想定しておるわけでございます。
 第二は、土地の乱開発に対する対策についてでございますが、乱開発による土地の無秩序な利用は、国民の限られた資源である国土の適正かつ合理的な保全に著しい支障をもたらし、農業、農村の破壊を招くことにもなります。早急に国土全体にわたって土地利用の秩序を確立し、その一環として農林地の適正な保全をはかる必要があるわけであります。
 新国土総合開発法案におきましては、全国土にわたり土地利用基本計画を作成し、土地売買等の届け出制度及び特別規制地域における土地売買の許可制度を設けることとしておるのであります。また、特定総合開発地域の制度を設け、計画的な開発を推進するための措置を講ずることといたしておるのであります。
 このような新国土総合開発法の運用とあわせて、農業、農村については、農業振興地域制度の推進、農地制度の適正な運用、農村地域の総合整備等を推進してまいりたいと考えておるのであります。
 第三は、いわゆる商品投機に対する政府の基本的対処方針等について言及されましたので、お答えをいたしたいと存じます。
 一部農産品価格の高騰に対処して、政府としては、輸入の増大、国内生産物の出荷促進、商品取引所における規制措置の強化、商社等に対する要請、警告等、各般の対策を講じてまいったことは御承知のとおりでございます。一部商品においては、すでに値下がりの傾向を見せておるものもあるわけでございます。
 なお、今後におきましても、投機的な動きに対しましては、必要に応じ、あらゆる手法を活用して、商社等に対する指導等を強化するとともに、今国会に提出をされておる生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案の成立を待ちまして、その活用により、買い占め等の弊害の除去をはかってまいりたいと考えます。
 最後に、農産物の自由化に対する基本方針について申し上げます。
 貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、一般的にはこれを推進しなければならないと考えておるのであります。
 農産物の自由化につきましては、種々困難な面があることは十分承知をしております。生産者の理解を得ながら万全の体制を講じつつ、できるものから自由化を進めてまいりたい、こう考えます。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 国民経済における農業の位置づけ、また土地の乱開発につきましては、ただいま総理のお答えがございました。
 農村的風土の維持についての御質問でございました。
 農業と農村の健全な発展をはかりつつ、営農意欲の向上のためには、生産性の高い農業を確立し、農業従事者の所得と生活水準の向上をはかるとともに、農村地域の環境整備を進める必要があると思います。そのために、新土地改良計画に基づく基盤整備、農業団地の育成などの構造改善事業及び農産物価格安定対策を講ずるとともに、農村総合整備モデル事業や農業者年金制度を拡充して、農村的風土の維持につとめてまいりたいと思います。
 自立経営農家の育成についてお尋ねがございました。
 養豚、養鶏、施設園芸等は、自立経営農家が増大しつつあります。稲作畑作物等、耕地面積を必要とする部門は、自立経営のシェアが低下しておりますが、新土地改良計画により労働生産性の向上、農地保有合理化法人により自立経営農家の育成をはかるとともに、専業農家を中核として兼業農家を含んだ集団的生産組織の育成をはかっていきたいと思います。
 自給率を高める点につきましては、食料の安定的な供給を確保するためには安易に外国に依存すべきでないことは言うまでもございません。昨年十月、五十七年を目標とする試案を作成いたしまして、それに基づいて主要農産物の完全自給ないし八割以上の自給率を確保することといたしておりまするが、最近の国際情勢等を考慮いたしまして、去る二日に農政審議会に、新たなる情勢に基づく検討をお願いしておるようなわけでございます。
 生産調整につきましてお尋ねがございましたが、四十八年度の生産調整については、画一的なものとならぬよう配慮し、適地適作の考え方に立って行なうよう指導しておりますが、四十九年度以降は、以上の考えのもとに、転作の促進と定着化を進めてまいりたいと思います。
 備蓄政策についてのお尋ねでございますが、小麦、飼料穀物、大豆等の農産物については、その大部分を輸入に依存している実態にございますので、開発輸入、輸入先の多角化を進めるとともに、備蓄問題について、国際的食糧需給の動向を見守って検討してまいりたいと思います。
 なお、国際的な食糧需給事情について、情報をしっかりとれというお話でございました。在外公館よりの情報あるいは係官の海外派遣を行ない、輸入先の多元化と、安定した供給源を確保してまいるようつとめてまいりたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 野坂浩賢君。
  〔野坂浩賢君登壇〕
○野坂浩賢君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま農林大臣から報告のありました四十七年度の農業白書に関連をして、農政の基本問題について、田中総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 今日、世界的な食糧需給の逼迫により、わが国におきましても大豆、アズキ、飼料等相次いでの大幅な値上がり、独占大企業による米、大豆、木材、生糸等農林産物の商品投機、価格の操作、また土地の買い占めなどにより、国民生活への打撃ははかり知れないものがございます。(拍手)豊かさの中の貧しさ、政治の矛盾を露呈しておるのが今日の農業の実態であります。(拍手)
 政府・自民党の農基法農政は、現実に農民から土地を取り上げ、農畜産物の生産基盤を失わせ、さらに農民を農業から切り離し、農業人口を減少させ、日本農業を縮小し、農民に営農の希望を失わせてきたのであります。(拍手)独占資本の利潤を拡大するために、政府・自民党は口先では農業を守ると言いながら、実際には農業を破壊してきたのであります。(拍手)
 かかる農業政策は、単に農業者のみではなく、全国民の重大な関心事となり、政府が日本農業の現状をどのように分析をし、局面の打開をはかるか、いかなる具体的な施策を示すか、全国民が注目をしていたのであります。
 今回公表されました白書は、日本農業の荒廃と衰退を認めたのであります。第一に、農村と農業をあらためて見直すことを強調し、第二に、化学肥料、農業機械あるいは農薬使用による高能率一辺倒を反省をし、第三に、世界の食糧事情の逼迫から従来とってきた国際分業論を否定し、国内自給力を強めるとしておるのでありますが、日本農業再建のために、新しい基本農政への転換を指向したものと受け取ってよいか、総理に見解を聞きたいのであります。(拍手)
 さらに、今日、全国の農民は一体何と言っておるか。農業を一体どうするんだ、どうなるんだ、何をすればいいんだ、これが農民の土日土の叫びであります。(拍手)農業基本法成立以来、ここ十数年政府がとってきました大企業本位の高度経済成長政策によって、農民が、農業がいかに犠牲になったことかを、怒りと悲しみをもって表現をしておるのであります。(拍手)総理は、これに対していかに反省をし、いかに対処しようとするのか、所信のほどを承りたいのであります。
 特に、白書も触れておりますが、かねて国際分業論の第一人者であったといわれております総理は、このような事態にかんがみて、従来の主張を取りやめ、本気で国内自給力を高め、需給の安定をはかるための農業政策を進める決意があるかどうか、伺っておきたいのであります。
 以下、各論についてお尋ねをいたします。
 第一に、農畜産物の貿易自由化問題についてであります。
 農畜産物の輸入量は年々増大をして、これに伴って国内自給率は近年減少の一途をたどり、四十六年度は七四%にまで低下したことを白書は述べております。カロリー計算からすれば四〇%台に低下をしておることを、この際明らかにしておく次第であります。この結果、わが国の農畜産物の輸入額は世界の農畜産物の貿易額の一割を占めるに至り、輸入の伸び率もまた西欧各国に比べてきわめて高い水準にあります。特に、輸入飼料の原料価格の高騰は、わが国畜産業を壊滅的状態にまで追い込み、大豆等の価格暴騰は、消費者の家計にも重大な影響を及ぼしておるのであります。世界の農産物需給は楽観を許さず、安易な国際分業論によるわが国の重化学工業中心の経済体制は、国民への食糧安定供給に重大なる支障を来たすことが十分に予測されるのであります。
 農産物の輸入自由化について、わが国の農林水産物にかかる残存品目は、お話がありましたとおり二十四品目にまでなっておる今日、フランス三十九品目、西ドイツ十九品目等に比較して、国際的に何ら非難されるものではなく、一時的な外貨調整のため自由化を促進することは、大企業の輸出促進を利するだけで、基盤の弱いわが国農業を崩壊に導くものにほかなりません。(拍手)
 すでに参議院農林水産委員会におきましては、自由化阻止が決議をされ、衆議院農林水産委員会におきましても、その胎動があることは皆さん御存じのとおりであります。この現状に立って、新通商法によるアメリカ大統領の権限拡大に伴う外圧等を排除して、自由化阻止の方針を堅持することがいま最も重要であります。ただいまの答弁で、総理大臣は、一般的に推し進めるというようなお話がありましたが、農林大臣の、農民の立場に立って、確固たる所信のほどをこの際承っておきたいのであります。(拍手)
 第二に、農畜産物の自給体制についてであります。
 政府は、農産物の需給の展望と生産目標について、昨年十月われわれに示したのであります。予算説明の中でも自画自賛したのでありますが、すでに五カ月たった今日、その甘さと誤りを余すところなく指摘されて、御答弁がありましたように、農政審議会に再検討を持ち込まざるを得なくなったというのが今日の現状であります。まさにお粗末そのものであります。(拍手)ここで心機一転し、政府が本格的に農畜産物自給度の向上と取り組むならば、世界の食糧、飼料の需給見通しも分析、検討し、確固たる自給率を設定して、これを達成するための誘導政策としての財政措置及び価格政策を明示するための抜本的対策樹立が必要と思うのでありますが、その再検討の用意ありやなしや、大蔵、農林両大臣にお尋ねをしたいと思うのであります。(拍手)
 第三に、所得の格差と価格補償についてであります。
 近年、農業と他産業との所得及び生産性の格差は、いま話がありましたとおりに拡大の一途をたどり、農業基本法の指向した命題は、まさにくずれ去らんとしております。すなわち、政府・自民党が農基法農政で期待した自立経営農家の育成は、逐年増大をするどころか、逆に四十六年度の専業農家率は一四・四%にまで減少し、農家所得に占める農業所得の割合は、わずかに二六・四%となったのであります。注目すべき点は、農家所得の伸びは専業農家ほど低く、この結果、基本法農政のにしきの御旗である自立経営農家率は、昭和四十二年一二・九%をピークとして、四十六年度はわずか四・四%になったのであります。政府・自民党が呼号した百万自立経営農家は、先日、本会議場でありましたまぼろしの年金どころではなくして、雲散霧消したと言えるのであります。(拍手)
 農林大臣、あなたはこれを見て、この原因は一体何だ、どのようにお考えになっておるのか、私は聞きたい。私は、原因の一つとして、米価の三年連続据え置き、さらに農産物価格が抑制をされ、かつ不安定によるものと思うのでありますが、四十六年度農産物上昇率は前年比一・七%にとどまり、労賃、生産資材の上昇率はもちろん、諸物価に比べはるかに下回っておるのであります。特に、米価、または、先日決定をされました豚肉価、加工原料乳保証価格等は全く農民の期待を裏切ったものであり、農政不信を助長し、農業破壊の道を強めたものであるという以外にないのであります。(拍手)
 私は、この際、主要な農畜産物価格の決定は、すべて生産費所得補償方式に切りかえて、農民の生産意欲をかき立てなければ、所期の目的達成は困難と思うのでありますが、農林大臣はいかにお考えか伺いたい。
 第四に、生産性向上のための条件整備についてであります。
 農業の生産基盤である耕地の整備状況は、農業構造改善事業、土地改良事業等を行なった集落は、四十五年度四五%と述べておりますが、区画整理事業の完了集落の割合は、水田二一%、畑地七%にすぎないのであります。この整備の現状では、今後の農業の生産性の向上、高能率農業の展開の場としてはきわめて不十分であります。したがって、従来の、受益者の負担、借金の強制、このようなことをやめ、基盤整備事業は、山間地も中間地も平たん地も同一補助、同一単価の画一主義を排し、全額国庫負担等、思い切った国庫助成の引き上げ、さらに予算のワクの拡大をはかることが刻下の急務と考えるのでありますが、農政進展のために、本事業をいかに進めるか、財政当局である大蔵大臣及び農林大臣に聞きたいのであります。(拍手)
 第五に、農業労働力の質と出かせぎ、後継者問題についてであります。
 近年、農業労働力は減少の速度を速め、四十六年度は前年対比九・六%減となり、農業労働力の質も低下をし、老齢化、帰女子化が進行し、男子農業専従者がいない農家が全体の六二%を占めるに至っておるのであります。
 したがって、これと並行して出かせぎ者も増加をし、白書は、その数三十四万人と述べておりますが、私の把握するところでは、百二十万人にも及んでいるのが現状と実態であります。出かせぎをしない農村を希求しながら、食うために、生きるために出かせぎをしなければならぬのが今日の農村、農民の実態なのであります。
 農林大臣は、いかにして農業を振興させ、出かせぎ者を減少させるのか。また、労働大臣は、出かせぎ者が労基法、労災法、失業保険法等を無視されながら低賃金労働にあえいでいる実情をどのように把握し、労働条件の改善につとめているのか。今後の方向についても、それぞれ見解を承りたいのであります。
 ここで最も注目をしなければならないのは、後継者の問題であります。
 先ほども話がありましたが、後継者の基幹となる新規学校卒業者の農業就業は、四十七年三月末わずか二万二千人であり、十年ないし二十年後の世代交代期におきましては、農業生産を維持するに足る労働力がはたして確保し得るやいなや、はなはだ寒心にたえない状況にあります。
 したがって、魅力ある農業、引き合う農業、生産意欲向上の情熱をかき立てる農業への転化がいま必要なのであります。後継者なき農業は抹殺されるのであります。
 そのために、田中内閣のスローガン、単なるスローガンではなしに、真に決断と実行をもって、農村の環境の整備、基盤の整備、価格の補償等を実施し、後継者の確保に力を集中すべきと思うのでありますが、その具体策と確固たる見通しを農林大臣から聞きたいのであります。(拍手)
 第六に、当面する問題である米の生産調整と食管制度についてお尋ねをしたい。
 本年度においても政府は米の生産調整を実施することとしているのでありますが、飼料対策としての古々米等の放出により、過剰在庫は本年度中に解消されるのであります。最近の穀物生産事情が不安定なことを考慮いたしますと、二百五万トンの調整は再検討の要ありと思うのであります。農林大臣は、過般の衆議院農林水産委員会、参議院予算委員会において弾力的な発言を行ない、調整考慮の答弁を行なっておるのでありますが、この際、調整再検討を行なう、このような考え方に立つかどうか、農林大臣の所信を承りたいのであります。(拍手)
 さらに、食糧事情不安定の状況から、いま答弁がありましたが、再度、安定供給のため六カ月程度の備蓄制度の実施をする意思ありやなしや、承っておきたい。
 次に、食管制度についてでありますが、本件につきましては、自主流通米の発足、物価統制令の適用除外等、食管制度の根幹がなしくずし的に取り払われており、米の横流し、商社等による買い占め、売り惜しみ、逆ざやかせぎの悪徳商人等が横行し、国民の生活を脅かしておるのであります。生産者、消費者の不安、商品としての投機、不当利得防止のためにも、食管制度を堅持し、全量買い入れ、自主流通米の再検討、物統令の復活等、国民生活を守るためにもあらためて検討し直すべきと思うのでありますが、いかようにお考えか、承りたいのであります。(拍手)
 また、四十八年産米に対して……
○議長(中村梅吉君) 野坂君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく結論を急いでください。
○野坂浩賢君(続) いつごろ生産者価格の決定を行なうのか。その際、今日の諸物価の実情、農業所得の実態、農民生活の現状を見て、農林大臣自身生産者米価引き上げをする用意ありやなしや、その意思を承りたいのであります。
 以上申し上げましたように、独占資本本位の農基法農政、この農政のために農村は破壊され、農民は混迷をし、前途に希望を失わんとしておるのであります。この際、農基法を再検討し、真に農民のための農政を、国民のための食糧需給安定のために、生産、構造、流通に対して抜本的な対策を樹立することを強く訴え、田中総理はじめ関係大臣の真摯な答弁を要求をして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 野坂浩賢君にお答えをいたします。
 第一は、農業と農村の新たな展開のための施策いかんという御発言に対してお答えをいたしますが、農業及び農村は、国民に食料を安定的に供給するだけではなく、国土と自然環境を保全し、健全な地域社会を維持する上で重要な役割りを果たしており、農業と農村の健全な発展なくしては、わが国経済の調和ある発展はないものと考えておるのであります。このため、農産物需要の動向に即した農業生産基盤の計画的な整備や農業団地の形成等を通ずる生産性の高い農業の育成をはかるとともに、農村の生産と生活を一体として、農村環境の総合的な整備を進めてまいりたいと考えております。
 第二は、農産物は極力国内で自給するという決意と、自給のための具体策についての御発言でござますが、国際分業論は、工業製品については妥当する面もあります。しかし、食料は国民生活の基盤をなすものでありますから、国内生産が可能なものは、生産性を高めながら、極力国内でまかなうべきであります。安易に外国に依存することは、国の政策としてはとるべきでないと考えておるのであります。
 このような観点に立って、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等については、完全自給ないし八割以上の自給率を確保する等、農産物需給の動向に即して農業生産の確保をはかってまいりたいと考えます。このため、新たに土地改良長期計画を策定し、農業生産基盤の計画的な整備を進めるなど、生産、構造、価格、流通の各般の施策を進めてまいりたいと考えます。(拍手)
  〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
○国務大臣(愛知揆一君) 食料は国民生活の基礎をなすものでありますから、効率的に国内生産が可能なものは、生産性の向上と需要に即応した生産の選択的拡大をはかりながら、安定的に国内でまかなっていくことが望ましいことであると考えております。財政当局といたしましても、その基本方針にのっとりまして、予算の編成等に当たっておる次第でございます。
 昭和四十八年度予算におきましては、まず、今後十カ年間にわたる新土地改良長期計画を策定し、農業生産基盤の強化を進めるとともに、農業団地の育成などによりまして、生産性の高い農業を確立することといたしております。
 また、特に、野菜、果実一畜産物等需要の増大する農産物を中心に、価格安定対策、流通対策等を強化することといたしまして、適正な自給率の確保をはかることといたしております。
 また、乳価等農産物の政府の支持価格につきましても、それぞれの生産、需給の動向を勘案いたしまして、農林省と十分協力いたし、適正にその価格を決定しておる次第でございます。
 これを四十八年度農林関係予算の一般会計予算総額に占める割合について見ていただきますならば、基調として一〇〇%をこえる自給率となっております米を中心にする食糧管理費の増加率が鈍化しておる、このことを除きますならば、農林関係予算は、前年度に対しまして二七・六%の増加と相なっております。また、一般会計予算総額に占める割合も、前年度の六・八%から七%に増大いたしておることにも御理解を深くしていただきたいと存ずる次第でございます。
 かくのごとく、国民生活の基礎をなす食料の自給その他につきましては、財政当局としても十分の配慮をいたしておりますことを御了承いただきたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) まず、貿易の自由化についてのお尋ねにお答えをいたします。
 現在残っている残存輸入制限品目は、いずれもわが国農業の重要な産品であって、かつ対外競争力をつけるべく各般の施策を推進しているところでありますので、農林省としては自由化ができないことをしばしば表明しているとおりであります。
 昨年公表した試案は、各方面の権威者の意見を徴して発表したものでありますが、今般農政審議会において、お話しの新しい情勢に対応して検討をお願いしたところであります。結論が出るのにある程度の期間が必要でありますから、その間は試案を中心に各般の施策を講じてまいりたいと思います。
 農業所得の確保をはかるためには、価格政策が重要なことは言うまでもありませんが、同時に、生産基盤の整備、構造対策や流通機構の整備等、各般の施策を総合的に推進する必要があります。
 生産費所得補償方式をすべての農産物に適用をすれば、需要を上回る供給や物価上昇を引き起こすおそれがありますから、現行価格制度の適正な運用をはかってまいりたいと思います。
 農業基盤の整備を充実することについては、十分御意見を承りました。今回、新土地改良長期計画をお願いしておる次第でございまするが、事業の規模や性格や、離島とか山村といった地域区分等に応じて所要の助成をはかってまいりたいと思う次第でございます。
 出かせぎの問題につきましては、基本的には生産性の向上や経営規模の拡大等により、農業所得の増大をはかるとともに、地元での就業機会をふやして兼業所得の確保をはかることが肝要であります。このため、自立経営の育成をはかる一方、専業的農家を中核として、兼業農家をも含めた集団的生産組織の育成をはかり、また、農村地域への工業の導入を推進し、安定的な就業機会及び所得の確保をはかってまいりたいと思います。
 次に、後継者の育成についてでございまするが、近代的農業を担当し得る高度な専門的知識と企業的経営管理能力を備えた農業後継者の育成に努力することが必要でございます。そのために農業者大学校や各県の各種研修施設の整備充実、農村青少年の活動の推進、後継者育成資金の貸し付けワクのワクの拡充を講じてまいりたいと思います。
 生産調整についてのお尋ねがございました。二百五万トンの目標数量を変更することは考えておりません。しかし、画一的なものにならざるよう、適地適作の考え方に立って行なうべきもので、国と都道府県が十分連絡をとって、きめのこまかい指導を行ないたいと思います。
 米の在庫につきましては、百万トンの古米を持ち越すことを基本的な考えとしておりますが、この問題については十分配慮してまいりたいと思います。
 食管制度の問題でいろいろお尋ねがございましたが、全量買い上げについては、予約限度数量制でまいりたいと思いまするし、自主流通米については、生産者側から見て、また消費者側から見てメリットがありまするので、廃止する考えはございません。標準米制度により中心的な価格が一応立っているので、物統令の適用は考えません。
 生産者米価につきましては、従来生産費及び所得補償方式をとってまいりましたが、今回はいまだ全くの白紙でございまして、いまこの段階でお答えするものを持っておりません。
 わが国農業をめぐる内外の諸情勢はますますきびしいものとなっておりますが、農業基本法に定められた農政の基本的目標及びそれを達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢におきましても同じねらいであって、再検討する考えはございません。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
○国務大臣(加藤常太郎君) お答えいたします。
 出かせぎ労働者の多くは建設業を中心に就労いたしております。建設業は、その業態からいたしまして労働災害、賃金の不払い、寄宿舎の問題、留守家族の問題等に関して大いに改善を要する問題が少なくありません。このため、労働省としては、職業安定所の利用促進によりまして、この種の問題を極力防止、改善するとともに、特に建設業に対しましては、最重点業種として監督指導につとめておるところであります。今後も災害の防止、その他の労働条件の確保について、一そうの努力をしてまいる所存であります。
 なお、御指摘のような労災保険や失業保険についても、これらの労働者の保護に欠けることのないように、十分の配慮をいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(中村梅吉君) 津川武一君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔津川武一君登壇〕
○津川武一君 日本共産党・革新共同を代表して、田中総理と関係大臣に、昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告、いわゆる農業白書に対して質問いたします。
 第一は、わが国農業の危機的現状と、それに対する政府の責任についてであります。
 農業生産は三年間も連続して減退し、物価上昇にもかかわらず、農業総生産額も前年度を五・二%も下回りました。農業所得も減り、出かせぎ者はふえ、農業だけで生活できている自立経営農家はたったの四・四%になってしまいました。政府自身も白書の中で、「わが国農業と農政はいまだかつて経験したことのない困難な局面に立たされている。」と告白せざるを得なかったのであります。
 農業白書に示された日本農業のこの深刻な現状は、大資本本位の高度経済成長と対米従属のもとで、自由化と農産物輸入の拡大、米の大幅減反、開発の名による土地の買い占めと農地汚染などで、農民を犠牲にし続けた自民党農政がもたらしたものであります。(拍手)
 しかるに、田中内閣は、同じ白書の中で、適切な土地利用をやるとか、大企業による農地の買い占めと荒廃を一そう強め、すでに誤りが明らかになっている農業構造改善や農業生産の選択的拡大などの政策を、これからもまだ続けるというのであります。この壇上でも、失敗し続けたものを、田中総理や大蔵大臣や農林大臣はやると答弁しているのであります。
 田中総理、日本農業のこの深刻な危機は自民党農政によるものですが、そのことを認めますかどうか。誤りが明らかになったにもかかわらず、なぜ従来の農業政策を引き続き強行しようとしているのですか。あなたは米作減反に苦しむ農民、夫を出かせぎで奪われている妻や子の悲しみに何にも責任を感じないのですか、はっきり答えてください。(拍手)
 第二は、主要食料農産物の自給率を高めて、国民に主食を安定的に供給するという課題です。
 わが国の食料農産物の総合自給率は急速に低下し、特に小麦は八%、大豆は四%となっています。その反面、外国農産物の輸入は大幅に増加し、世界の農産物貿易の実に一割をわが国は輸入しております。このように、おもな農産物食料品を外国に依存することはきわめて危険であり、誤った経済政策といわなければなりません。
 農産物の自給は、国の真の独立の上からもきわめて重要であります。(拍手)国民の命のかてである食料の大きな部分を外国、特にアメリカに依存していて、どうして真に自主独立の外交経済政策をとることができるでございましょうか。(拍手)このような状態のもとでは、外国の農業生産に少しでも異変があれば、いま大問題になっているように、国内外の大商社が投機に乗り出し、国民が物価高、物資不足の苦しみにおちいることは、すでに木材、大豆、飼料などの例で明らかでございます。主要食料農産物の自給率向上は、物価と経済の安定にもどうしても必要なのであります。
 このような立場に立って、わが党は、早くから食料の備蓄と自給率の向上とを要求してきたのですが、自民党政府は、アメリカと日本の大資本のために農業を犠牲にし、自給率を低下させる政策をとり続けてきました。それは、新安保条約が締結され、大資本本位の高度経済成長が始まった六〇年代を通じ、一貫して自給率が急速に低下したことでも明らかでございます。(拍手)
 わが党は、日本農業の自主的発展のために安保条約を廃棄すべきだと要求してきましたが、自民党政府は、安保で日本が繁栄したと言い張り、安保はあくまで堅持すると繰り返しました。しかし、安保条約と日本農業の発展、自給率向上とが両立しないことは、過去十数年間の歴史が何よりも雄弁に物語っております。(拍手)
 グレープフルーツの自由化は、安保条約の第二条、日米経済協力をたてにとったアメリカの圧力のもとに強行されたではありませんか。農産物の残存輸入制限品目も、アメリカの要求で減少させられたではありませんか。
 総理、これでもあなたは、一方では安保条約を堅持しながら、他方では、日本農業の発展と自給率の向上が可能だと強弁するのでございますか。
 しかも、ニクソンは先日、輸入課徴金など強力な輸入制限措置を含む権限を大統領に与える新通商法案を国会に上程し、これを武器に、日本に対する自由化要求をますます強めようとしています。
 総理、あなたは、ニクソン大統領の新通商法案をてことする、オレンジなどの自由化要求に対して、日本農業を守る立場から、断固として反対できますか、はっきり答えていただきます。(拍手)
 第三には、国土、わけても農耕地を大資本本位の開発による破壊や土地投機から守り、環境を保全する課題です。
 白書によれば、農耕地は毎年減り続け、残っている耕地も耕作を放棄したり、裏作をしなくなったりしています。田中総理の日本列島改造論は、農地法を改廃してまでも、土地と水と農村の労働力を大企業に投入しようとしています。この改造論にあおられてあおられて、青森県むつ小川原巨大開発地域では、三井不動産などによって、農地法に違反してまで農地が買い占められ、九州の阿蘇、北海道の釧路などでは、せっかく開発した酪農用草地がレジャー基地としてつぶされるなど、全国至るところで土地の大規模な投機が横行しています。白書は、現行農地制度がこうした農地の投機的取引を抑制し、農業的土地利用を確保することに貢献していると述べております。総理、あなたの内閣が閣議決定した白書は、農耕地を守るのが農地法に基づく現行農地制度だと指摘しているのに、あなたは日本列島改造論で、この農地法を廃止するとまで言い切っているのです。この矛盾をどう説明しますか。
 土地投機を押えるためには、日本列島改造論を撤回し、農地法を守ることが何よりも強く要求されております。この点について、あなたの明確な見解を明らかにしてください。(拍手)
 第四には、国民に食料を安定的に供給するために、農民に生産と生活のできる価格を保障することです。
 歴代自民党内閣は、大企業の生産物は価格をつり上げ、農産物の価格は不当に押えてきました。その結果、製造業の一日当たり労働賃金に対する農業所得の一日当たりの割合は、五四%にまで落ちてしまいました。これでは日本農業が発展するはずはありません。
 そこで、まず大企業の独占価格、わけても農機具機械、肥料、農薬などの価格を引き下げること、農民には生産費を償う価格を保障すること、そして、消費者には生活を圧迫しない価格で供給することが必要です。この点についても総理の所見を求めます。
 われわれは、日本農業に対する保護政策を繰り返し主張してきましたが、政府と財界は、日本の農業の過保護になるといって反対してきました。しかし事実は全く逆です。日本の農業が過保護どころか、冷遇されていることは、だれよりも農民自身が一番よく知っているだけでなく、白書の数字から明々白々であります。(拍手)
 日本農業を守るためには、まず農産物の価格を保障しなければなりません。こうしてこそ、食料の供給を安定させ、国土の緑を保全し、過疎を解消することができるのです。総理の見解を聞かせてください。
 農林大臣にもお尋ねします。
 自民党政府の低米価政策により、北海道では四割もの水田に稲が植えつけられなかったし、農民は稲作を粗放にして出かせぎに出ています。最近では米不足さえ伝えられております。四十八年度生産者米価は、この意味でも、生産費を償うに十分な分だけの値上げが、同時に消費者米価については、食管法どおりの価格で売り渡すのはもちろんでございますが、物統令を再適用して価格の安定をはかることも要求されております。この点に答えてください。
 また、食管制度については、農林省や財界筋から改悪や廃止が喧伝されておりますが、とんでもないことです。今日、米があのようにむちゃくちゃな投機の対象になっているのは、政府がなしくずしに食管を改悪したからであり、食管堅持こそ、米の生産と円滑な消費を守る道なのです。農林大臣は、食管堅持の先頭に立つべきだと思いますが、あなたの決意はいかがです、お答えください。
 最後に、農業の後継者を確保育成することについてです。
 総理、私のところに、青森県黒石市派立農業青年同志の会、浅利善蔵さんという青年から、こんなに長い手紙が届いています。この青年は、小農から身を起こし、定時制高校を出、懸命に農業に励んでいます。手紙には、農業青年としての抱負と苦悩を書きつづり、その終わりに「農家の花嫁のことですが、日本じゅうの人から敬遠されている農家の後継者に花嫁を迎えるには、政治の力でなければ絶対に解決されません。どうか若い農村の青年に希望を与えてください。そして、きらわれている農村の花嫁に、毎月奨励金をくださることをお願いしてやまないのです。」これが手紙の結びです。
 総理は、このような農村の実情を何と考えますか。そして、この青年に何と答えますか。まず、聞かしてください。
 農業に後継者を確保し、農村のお年寄りに老後を保障するとすれば、あなたの大企業本位の、アメリカ従属の経済政策を根本的に転換しなければならないのです。
 わが党は、かねてから、自民党政府の農政転換を要求しつつ、
 一つ、アメリカをはじめとする外国農産物の輸入を押え、保護政策をとり、農業を自主的、全面的に発展させる。
 二つ、米麦をはじめ、おもな農産物に価格保障制度を確立し、農業を多面的に発展させる。農用資材などの独占価格の引き下げ、減税、機械の共同利用などで生産費を切り下げ、安い農産物を生産する。
 三つ、勤労農民に必要な土地を保障するため、米軍と自衛隊の基地などの返還、国有、公有、大山林所有者の農用適地の開墾などを行なう。最新の機械、技術の成果の利用で中小農民の経営を改善する。
 四つ、日本に適し、栽培技術の進んでいる農産物の輸出を助成する。
 五つ、民主的な総合開発で生活条件、文化、教育水準の向上をはかり、都市と農村の差を縮める。という民主的総合農政の実現を要求して戦ってきましたのですが、田中総理、このように政策を転換しますか。それを尋ねて私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 津川武一君にお答えをいたします。
 農村は、申すまでもなく国民に食料を提供するというだけではなく、民族のふるさとであり、心のふるさとであり、魂の安息所であります。この農村が荒廃に帰するような状態で日本のあしたがあるわけはありません。その意味において、農業基本法を中心にしながら、長い展望に立ちながら、よりよい農村づくりを進めておることは御理解をいただきたいと思うのであります。
 第二は、オレンジなどの輸入自由化の要請にどう対処するかということでございますが、先ほども申し上げましたように、貿易の自由化につきましては、最近の内外の情勢にかんがみ、これを推進しなければならないと考えております。農産物の自由化は種々困難な問題がありますが、生産者の理解も得ながら、万全の対策を講じつつ自由化を進めてまいりたい、こう考えておるのであります。
 列島改造と農村との問題に対して言及がございましたから、この際、簡単に申し上げておきますが、日本は、明治、ちょうど百年前には一次産業比率は九〇%でございました。それが、先ほどから御指摘がございますように一七%を割ったのであります。しかし、アメリカの一次産業比率は四%であります。拡大EC十カ国の平均数字は六%であります。明治から大正、昭和へと百年の歴史を経ながら今日の国民総生産を拡大し、国民所得を拡大してきたことは、歴史が示すとおりであります。その中で、専業農家がアメリカ並みの四%になりつつあるということを考えるときに、農村に対して何をしなければならないかということをまじめに考えなければならないのであります。演説だけで農民はよくならぬのであります。(拍手)
 それは米にとってみても、国際価格の倍であります。三倍でも四倍でもいいということにはなりません。そのためには、国際競争力にたえ得るようなものとか、主食としてどうしても国内で確保しなければならないものであったならば、国際価格の倍であろうが二倍半であろうが、ある程度の確保をしなければならないのが政策の限界と考えなければならぬのであります。(拍手)ですから、社会主義体制の国の中で主食にも不足をしておる国の多いことは、如実にこれを物語っておるじゃありませんか。(拍手)でありますので、ただ現在のままに推移を許せば、一次産業比率の減少の部分は大都会に集中をし、さなきだに混乱の都会の環境はなお混乱するのであります。公害も、土地も、物価問題もどんどんと大きくなるのであります。農民であるというかもしれませんが、私も百姓の子であります。(拍手)やがては百姓に返る身であります。皆さん、そういう意味で、列島改造を進めることによって国土の水や、しかも一次、二次、三次産業の労働調整を行なう、そういう状態をはからずして、どうして一体日本の一次産業が、生活向上があるのでありますか。(拍手)
 いま兼業農家が多くなり、農業収入と兼業収入との比率が逆転しつつあるのは、これは事実じゃありませんか。それを否定して、いまの津川君のような発言だけでどうして一体農村がよくなるとお思いになりますか。だから私は……(「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)簡単じゃありません。こういうことは、もっとちゃんと申し上げなければなりません。ですから、列島改造を行なうことによって農工商三位一体の、全国均衡ある発展をはかる以外に、一次産業や二次産業の均衡をはかることはできないわけであります。
 そういう意味で、列島改造を非難し、批判をしておって、ただ農村だけをよくしようといっても、それはできない相談であることを御理解いただきたい。(拍手)
 それから、農産物の価格保障対策に対して申し上げますと、現在米麦をはじめ畜産物、青果物、畑作物等、大部分の農産物を対象に価格政策を実施しております。今後は、野菜、果実、畜産物等の需要の拡大する部門を中心に価格政策をさらに拡充強化して、価格の安定につとめてまいりたい。
 以上。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) 総理のお答えで尽きておりますが、二、三補足をいたします。
 自立経営のシェアは、四十二年をピークとして下がっておることは事実でありまするが、自立経営農家による生産は、わが国農産物の五分の一を占めており、養豚、養鶏、酪農、園芸等施設型農業において相当の規模拡大は進んでおるのであります。したがって、農業基本法に定められている農政の基本的目標及びその目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においても同じねらいであると思います。
 次に、米価でございます。三十五年産米価以降、生産費及び所得補償方式により米価を決定しておりますが、その間、米を取り巻く経済事情や需給事情等の変化を考慮に入れて、算定要素のとり方等について所要の修正を行なってきておるのでございまするが、従来どおり、食糧管理法の規定に基づき、米価審議会の議を経て決定することに変わりはございませんが、先ほど申し上げたとおりに、具体的な方針はいまだきめておりません。
 食管制度の根幹についての御質問でございましたが、米穀管理研究会で制度運営の改善につき検討を行なってもらっているところであり、その結論を待つ必要はありますが、米穀の管理制度は、農家経済、国民消費生活等、国民経済の各分野に大きな関係を持っておるのでございますから、慎重に対処してまいりたいと思います。(拍手)
○副議長(秋田大助君) 内閣総理大臣から答弁の追加があります。内閣総理大臣田中角榮君。
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) たいへん重要なところが落ちましたので、追加して申し上げます。
 それは、農業後継者の配偶者、俗にいう農村の花嫁不足に対しての面でございます。
 私も豪雪単作地帯の出身でございまして、これらの問題は深刻に承知をいたしておるわけでございます。この農村の花嫁に対して、別な給付金か何かを給付してはどうかというような御提言もございましたが、それよりも、やはり農村というものを魅力あるものに育てなければならぬわけであります。(拍手)魅力のないところに人が定着するわけはありません。その意味で、私の列島改造論もこの点に論及し、これを重要施策と掲げておるわけでございます。そういうことでございまして、まず、農業というものがほんとうに魅力あるものになり、しかも、二次産業や三次産業との調和もとれて、そこで落ちついて家族の収入があげられるようになり、東京や大阪や大都会に出た人たちと均衡する収入が得られるような状態が確保されなければならないわけでございまして、その意味で、長期計画を策定し、推進を続けようとしておるわけでございます。そして、その実があがれば花嫁は確保されるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 瀬野栄次郎君。
  〔瀬野栄次郎君登壇〕
○瀬野栄次郎君 私は、公明党を代表して、ただいま報告のありました昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告並びに昭和四十八年度において講じようとする農業施策、いわゆる農業白書について、田中総理並びに関係各大臣に対し質問を行なうものであります。(拍手)
 このたび提出されました第十二回目の農業白書は、政府みずからが農基法農政の失敗をほぼ全面的に認めざるを得ないことを如実に物語っております。さらに、今回の白書は、全体的に農業の現状と問題点を提起したにすぎず、その問題解決への具体的な方途は何ら述べられていないという、まさに反省白書そのものから一歩も出ないものであるといわざるを得ません。
 よって、私は、わが国農業が当面している幾つかの基本的問題を明らかにしつつ、政府の見解をただすものであります。
 第一に指摘したい問題は、農業基本法の目的と、これに対する政府の農業政策の行き詰まりについてであります。
 昭和三十六年に制定を見た農基法は、言うまでもなく農業と他産業との生産性の格差を是正し、生活水準の均衡をはかり、そして、自立経営農家の育成をはかることを目標として、農民に未来の明るい夢を持たせるのがその目的であったわけであります。
 しかしながら、白書が如実に物語っているとおり、目的とした自立経営農家戸数のシェアも、昭和四十二年度の一二・九%をピークに、その後は年々減少し、四・四%にまで低下しております。さらにこれと並行して、農業粗生産額も三五%から二一%へと落ち込むとともに、兼業農家の進展が依然として著しく、ことに農業を従とする二種兼業農家は、総農家戸数の五八%を占めるに至り、稲作生産額並びに耕地面積のそれぞれ約四割のシェアになっております。
 このような現状を見るとき、農基法の示した方向がまさに空文化に終わっているといわざるを得ないのであります。また、高度成長政策の道を歩み始めて以来、日本の政府には完全に農業政策がなかったことを実証しておるのであります。いな、あるとするならば、それは高度成長政策への奉仕であったのであり、そのための農業政策であったと断ぜざるを得ないのであります。ここに農基法農政の挫折がまことに浮き彫りにされていることを、指摘せざるを得ないのであります。
 また、これらの現実をさらにこのまま看過していくならば、日本の農業者にはヘビのなま殺し同様の仕打ちとなるでありましょう。
 このような現状に対し、総理はいかに反省されているのか。また、この際、真にわが国農業を確立し、農村の福祉向上を盛り込んだ方向で農基法自体を再検討すべきであると考えるが、総理並びに農林大臣の所信を承りたいのであります。
 第二に、国際的な食糧危機の到来に対応し得る日本の総合的な食糧供給政策の方向についてお伺いします。
 今年の白書はこうした農産物需給事情の不安定性を強調するとともに、国内農業による安定的供給の維持を主張し、安易な国際分業論を批判しております。
 このたびの世界的な農産物価格の高騰は、異常気象による一時的現象によるものか、構造的要因によるものかという議論がかわされておりますが、いまだに世界の食糧供給体制が、このような異常気象によってもたらされる凶作を克服でき得なかったことは事実であり、今後の見通しにしても、FAOやローマクラブ等も指摘しておりますように、人口急増、地球自体の寒冷化、環境汚染、破壊等の要因によって、はなはだ暗いことを無視することはできません。
 おそまきながらも、いまこそ政府は、こうした最悪の事態を想定し、いついかなる事態が発生しても、国民の生存にとって最も基本的かつ不可欠な食糧供給が安定的に確保できる方策を講ずべきであると主張するものであります。(拍手)
 昨年秋農林省が発表した昭和五十七年度を目標にした「農産物需給の展望と生産目標の試案」は、単なる理想論であり、国会答弁用の安易なものにすぎないといわざるを得ません。
 そこで、政府は、単にFAOやローマクラブ等の予測にたよるのみでなく、政府自身による独自の国際的な農産物の長期、短期にわたる需給の予測を各品目ごとに作成すべきではないか、また、それに沿って国内需給見通しを立てるべきではないかと考えるが、これについて総理並びに農林大臣の答弁を求めるものであります。
 次に、農畜産物の自由化についてでありますが、この問題が、国際通貨不安とうらはらの日米通商調整とからんで再び表面化しつつあります。
 これは、一九七二年のアメリカの貿易収支の赤字六十四億ドルのうち、日本との貿易による赤字が四十一億ドルにのぼっている事実から、わが国を第一に意識しての通商攻勢といえる国際経済に関する大統領報告を、先ほどニクソン大統領が議会に送っておりますが、これに対し、政府は、通商面でも応分の負担を約束することで輸入制限措置の緩和をはかろうと考えており、農産物の自由化促進を、そのための肩がわりとしてやむを得ないとの考えがあるようであります。現在の二十四残存品目の輸入自由化は、日本農業を壊滅に追い込むものであり、今後、安易な農畜産物輸入自由化と輸入ワクの拡大は断じて行なうべきでなく、特にオレンジ、果汁の輸入自由化並びにワク拡大については、果樹農家を根底から崩壊させるもので、このことについては私も委員会において再三にわたり農林大臣に答弁を求めましたが、農林大臣はそのつど、農相としては自由化はしないと言明しておられますが、農家の不安を取り除くために、田中総理自身の見解を承りたいのであります。(拍手)
 次に、米の備蓄制度並びに生産調整、買い入れ制限等の問題でありますが、昨年来の世界的な穀物不足は、アメリカの過剰農産物で何とか救われましたが、穀物、大豆などの大幅な値上がりという後遺症を残したのであります。
 いま、各国とも食糧増産に力を入れておりますが、地球的規模の異常気象が取りざたされているだけに、まだ安心はできないのであります。
 加えるに、このたびの食糧不足の背景には、人口増とともに、食糧消費の高度化という構造的要素が加わっている様相を強くしており、今後も天候次第では、いつ世界的食糧不足に見舞われるかもしれないのであります。
 こうしたときに、二百五万トンの生産調整を行なわんとする政府のとる態度は、まさに見通しのないものといわざるを得ないものであります。
 先日来日した、FAO事務局長バーマ博士からも、日本政府に対し生産調整の中止の要請があったと報じられ、さらに国内においても、各県で生産調整が形骸化されていることが見のがせない事実となっております。このような現状に対し、農林大臣は、先ほど、画一的なものにならぬよう、きめのこまかい指導をすると言われましたが、いかなる指導をされるのか、また、今後とも生産調整を続行される考えであるのか、見解を承りたいのであります。
 さらに、先ほども述べました、今後起こり得るであろう世界的穀物不足に対し、自給率一〇〇%を保っている唯一の農産物である米に対しては、買い入れ制限制度を撤廃し、備蓄制度をより一そう充実してまいるべきだと主張するものでありますが、これについて、農林大臣の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 次に、今年二月、大豆に端を発した価格暴騰の背後に、大手商社等の大量買い占め等、投機が大きく左右したことは、今回強制捜査を受けた丸紅等の例を見ても明らかであります。その後、生糸、モチ米、アズキ、さらに米にまで波及し、実にゆゆしき社会問題、政治問題となり、国民のひとしく批判するところとなっています。
 このことは、農産物の国内自給を放棄し、もっぱら外国農産物に依存する政府の農政そのものが、このような農産物の投機現象をもたらしたと言っても過言ではありません。
 国内農業の自給度を安定させ、農業生産性を高め、外国農業に太刀打ちできるような農業の発展をはかることが、農産物の投機を防止するために急務であると考えますが、この点、総理はどのように考えておられるのか、所信を承りたいのであります。
 さらに、今国会に大手商社の買占め及び売惜しみを規制する法案が提出されておりますが、農業者、消費者を守る立場から、食管法を再評価し、米に対する物統令の適用の復活をはかるべきであり、さらに、自給率の向上が要請される飼料、小麦、大豆などに対する価格補償制度を拡充し、生産条件の改善をはかるべきだと考えますが、総理並びに農林大臣の見解を伺いたいのであります。
 次に、農業白書は、今後のわが国の食糧供給体制に大きな支配権が確立されると懸念されるインテグレーションについて、ごく簡潔にしか触れていないが、これに対しては、専門家の中でも論議がかわされているところであり、近い将来には、こうした大商社を中心にしたインテグレーションで生産された商品が市場の大半を占めるようになるであろうともいわれています。利潤追求を優先する生産、流通、販売の系列化が、すでに今日までも大きな問題を提起しつつありますが、何よりも懸念されることは、今日の商社の買い占め等のごとく、市場での占有率を高めた段階における価格操作であります。
 政府は、このインテグレーションをどのように評価し、以後いかなる方向に誘導していかれるのか。将来誤りを起こさないためにも、農林大臣に明確なる答弁を求めるものであります。
 第三に、農業生産基盤整備の観点からの農地、農業用水の優先的確保と地力の維持保全についてお尋ねしたい。
 政府は、日本列島改造計画に基づき、工業の地方分散を促進していますが、その結果、農地、農業用水という制限された資源の利用をめぐり、農業と工業が競合関係を深めることは言うまでもありません。加えて、最近の大企業による仮登記制度などを悪用した優良農地や山林原野の投機的な買い占めはすさまじく、農地の分断と減少、農地価格の高騰をもたらし、農業経営規模拡大のブレーキともなっています。
 さらに、このたび、列島改造関係法案の主柱と目される国土総合開発法案が、国会に提案されておりますが、これによると、土地利用計画の権限についても、総理に大きな権限が与えられるようもくろまれております。改造論に見られるように、都市、大企業優先の思想を持つ田中総理が、こうした強権を手中におさめられることを憂慮しているのは、国民の中に数多くあることを知るべきであります。
 さらに、将来の食糧危機を想定するとき、日本の人口の過密性にもかかわらず、農地がきわめて狭小であることを考慮し、農地周辺の山林原野を含めて農用地域の設定をはかるなど、現在の乱開発からの転用規制をよりきびしくし、農業用水も含めて、農地の優先的な確保にもつとめるべきだと思うのでありますが、総理並びに農林大臣の答弁を求めるものであります。
 また、地力の維持保全についてでありますが、戦後の農業は、化学肥料と農薬の過度の投入をはかる一方、機械収穫の普及や、出かせぎ等に見られるような近年の労働力の流出が、堆厩肥料の投入量を急激に減少せしめたこと等によって、日本では過去千年にわたって、ほぼ変わりなく維持し続けられてきた土地本来の有機的生命力を少なからず低下せしめ、フェーン現象、低温、病虫害に対する抵抗力も著しく弱める結果となっているほか、無機質化したところの土壌は、一部に食品公害の問題すら惹起させつつあることは、ゆゆしき問題であります。農業白書によれば、この重大なる問題に対する解決策については、ごく簡潔で抽象的にしか述べられていないが、はたして、この深刻な問題をいかにして解決されるのか、農林大臣の具体的かつ根本的な対策をお伺いしたいのであります。
 最後に、出かせぎ農業者に対する救済策についてお伺いしたい。
 これまでもるる述べてきたとおり、永年にわたる自民党政府による高度経済成長政策が農業にもたらした矛盾には、さまざまなものが列挙できますが、中でも典型的なものは、出かせぎ農業者問題であります。すなわち、農畜産物への十分なる価格保障も確立されず、米の減反政策や買い入れ制限が強行され、安易な農畜産物の貿易自由化が実施される中で、政府の打ち出す構造改善政策に未来を託し、忠実に実行したにもかかわらず、経営規模拡大、機械化、土地改良、基盤整備等によって多額の負債を背負い、やむなく妻子と別れて出かせぎにまで出なければならなくなったたくさんの労働者がいるのであります。
 現在、出かせぎ農業者は全国で百二十万人いるとさえいわれていますが、出かせぎ自体、本来あるべき姿ではありません。ましてや、非人間的な悲惨な就労体制は、断じて早急に解消さるべきでありましょう。
 政府は、みずからの責任において、現在やむなく就労している出かせぎ農業者に対する労働賃金の遅払いまたは不払い、有給休暇並びに労働災害補償等について、緊急特別措置の制度化をはかり、あたたかい救済の手を差し伸べるために、抜本的な救済措置を講ずべきであるが、農林、労働大臣の心ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 以上、当面の重要かつ緊急な農政問題についてお尋ねいたしましたが、日本の基幹産業である農業の実態が、一日も早く明るい白書となって報告されるよう、田中総理並びに関係各大臣に、農業政策の一大転換に対する所信の表明を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 瀬野栄次郎君にお答えいたします。
 第一は、農業政策のもととされておる農業基本法を再検討せよということでございますが、基本法施行以来、わが国農業は、農業生産の選択的拡大と生産性の向上を実現しつつ、農業従事者の所得と生活水準の向上を果たしてまいりました。他面、農業と他産業との生産性の格差の拡大、兼業化の進展、自立経営農家のシェアの低下等の現象が見られることも事実であります。
 しかし、農業基本法に定められている農政の基本的目標、及びその目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においても同じねらいであると考えられるのであります。したがって、農業基本法を再検討する考えはございません。
 政府独自の世界の農産物の長期需給見通しを立てよということでございますが、これは必要でございます。
 今世紀末になれば、地球上でもって不足のものは何か、水と主食であろうと、いまから予言せられておるのでありますが、それだけではなく、この一、二年間に非常に食糧の不足が告げられておるわけでございます。しかも、食糧の非常に大きな消費国であるソ連においても、アメリカから、両年度において千八百万トンから二千万トンの小麦を買い付けておるというような事情、それが日本やその他の国にまで大きな影響をもたらしておることは事実でございます。それだけではなく、もっと大きな消費国が非常に食糧に困っておるという事実は指摘するまでもないのでございまして、国際的に見た食糧の長期需給見通しを立てなければならないということは、御指摘のとおりでございまして、検討を進めてまいりたいと思います。
 第三点は、輸入の自由化問題でございますが、自由化がアメリカとの関係だけで行なわれるというようなことをお考えになっておるわけではないこともよく承知しておりますが、この際、一言いたしておきたいことは、南北問題いわゆる北側の持てる国と南の開発途上国との間を調整しなければならない人類の悲願、言うなれば世界の人類の平和を守るためにどうしても行なわなければならない南北問題の解決には、一次産品の無税化ということが大前提になっておることを、ひとつ知っていただきたいと思うのでございます。ケネディラウンドの推進、今年度から新国際ラウンドの推進が行なわれるわけでございますが、主要工業国といわれるような日本は、食糧の自給度を上げなければならないという要請と、同時に南北問題に大きく貢献をしなければならないのだという事実の調整が必要であることを、十分御理解賜わりたいのでございます。
 しかし、自由化に対しては、国内にも困難な問題がありますので、生産者の理解を得ながら万全の体制を講じた上で自由化を逐次進めてまいりたい、こう述べておるのであります。
 それから、農産物の投機的買い占め等に対しての御発言がございましたが、御承知のとおり、出荷の促進、商品取引市場における規制措置の強化、商社に対する要請や警告等々の措置を行ない、値下がりも行なわれておるのでございますが、今国会に提出をしております生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これはもうぜひ、いっときも早く通していただきたいのです。私がこういうところで、こうして国会で御審議をいただいておる過程におきましても、この法律は、ほんとうに一日もいっときも早く必要である。(拍手)そうすれば、それだけ物価が下げられるのです。国民大衆の要請に応じられるのです。私は、そういう意味で、心からお願いをいたします。(拍手)
 それから、あとは農林大臣からお答えをいたしますが、最後に、出かせぎの問題を申し上げますと、これはお互いが、政党政派を越えて解決をしなければならぬ問題であります。この出かせぎの現状は、政党政派は別にしても、この事実に目をおおうことはできないのでございます。
 それは営農規模を拡大するといっても、日本の地形、地勢上の制限から考えると、おのずから限界が存在するのであります。しかも、日本の半分は、特に米の主産地は、豪雪単作地帯であります。そうすれば、一年間にほんとうに純農業に従事できる月というものは、二カ月間しかないのであります。昔のように、炭を焼くこともできません、俵をつくることもできません、むしろを織ることもできないんです。そうすればどこに行くかというと、結局冬季は、農繁期以外のときは、公共事業に従事するか、公共事業のできない降雪期には大都会に出かせぎを余儀なくせられるのであります。
 だから、列島改造論においては、一次、二次産業の調整を行なおうとしておるじゃありませんか。(拍手)農村地帯において列島改造論が高く評価されておるのは、そのゆえんであります。(拍手)事実に目をおおってはいけません。皆さんも、事実を十分御検討いただきまして、列島改造論を推進していただければ、このような悲惨な出かせぎはなくなるのであります。(拍手)どうぞ御理解をいただきたい。(拍手)
  〔国務大臣櫻内義雄君登壇〕
○国務大臣(櫻内義雄君) お答え申し上げます。
 農業基本法につきまして種々御批判でございまするが、しかし、成果のあがっておる面もよくごらんをいただきたいと思うのであります。
 農業の労働生産性は年率六・三%の伸びで、約二倍に向上しております。農家所得は年率一二・九%の伸びで、約三・八倍に増加しております。農家の生活水準は、勤労者世帯とほぼ匹敵する水準まで向上し、一人当たり家計費は、勤労者世帯の九七・九%であります。農業生産の選択的拡大については、野菜は一・五倍、果実は一・七倍、畜産は二・八倍に生産が増加をしておるわけでございまして、したがって、基本法に定められている農政の基本的目標及びその目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢において変える必要はないと思います。
 それから、飼料についての価格補償について触れられましたが、飼料穀物の国内生産については、現状では、内外の生産性格差がきわめて大きいこと、及び生産費と流通価格との差が著しいので、きわめて困難な事情にあると思います。
 小麦についての価格補償制度は、国内産麦は、食管法の規定に基づき、政府買い入れ価格を通じてその価格支持をはかることとしており、本年産の麦価についても、同法の規定に基づき米価審議会の意見を聞いて、適正に決定してまいりたいと考えております。
 また、米の問題についていろいろ御質問がございました。先ほどからのお答えに重複いたしますが、二百五万トンの生産調整は、これを変える考えはございません。
 きめのこまかい指導とは何かということでございまするが、この生産調整が画一的に当初行なわれてまいりましたので、でき得る限り適地適作の考えを入れまして、その面での指導をいたしてまいりたいと思います。
 また、米の備蓄制度について御質問でございましたが、先ほどもお答え申しましたように、百万トンの古米の持ち越しを基本的に考えております。これは、十一、十二と新米穀年度になりまして古米を長く消費者に提供していくわけにはいかない。したがって、百万トン程度でありますれば、正月からは新米を配給できるということで、基本的にはその程度を考えておりまするが、しかし、現下の食糧情勢からいたしまして、備蓄制度についてなお検討をさせていただきたいと思います。
 食管法につきましては、先ほど来お答えを申し上げましたとおりに、米穀管理研究会でいま検討してもらっておるのでございまするが、しかしながら、諸情勢を考えまするときに、この際は慎重に対処してまいりたいと思います。
 インテグレーションに対する問題をお取り上げになりました。
 最近、飼料会社等の畜産部門への進出が顕著でありまして、飼養農家にとりましては、インテグレーションは、生産物の販路や販売価格が比較的安定していること、資金援助、技術指導等が受けられることなどの利点がございますが、農業と企業との間には、経済的な力関係に差があることから、両者の契約取引の公正が確保される必要があると考えており、今後の動きを十分見守ってまいりたいと思います。
 それから、土地、水、地力の確保についてのお尋ねでございました。
 農業振興地域制度、農地制度の運用等を通じまして、地域の実情に応じて、農業において利用すべき土地、水等の資源確保につとめるとともに、地力の維持保全をはかるため、各地域ごとの土壌条件に適応した施肥改善、土壌改良、有機物の施用等の地力維持保全の諸対策を講じてまいりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣加藤常太郎君登壇〕
○国務大臣(加藤常太郎君) 出かせぎ労働者の保護については、労働省といたしましては、先ほどからいろいろ申し上げましたとおり、監督指導の強化、各種の援護措置等必要な行政措置をなお一そう強化いたしまして、これが措置を講じたいと思います。
 出かせぎ労働者に対するただいまの特別立法については、同一の職場でありながら他の労働者と区別する、こういうようなことはなかなか問題がありますので、法的保護措置を講ずるということは、なお慎重に今後検討していきたいと存じております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 稲富稜人君。
  〔稲富稜人君登壇〕
○稲富稜人君 私は、民社党を代表いたしまして、この際、昭和四十七年度農業の動向に関する年次報告並びに昭和四十八年度において講じようとする農業施策、いわゆる農業白書に対し、総理に若干の質問を行ないたいと思います。(拍手)
 私は、ここで、その白書の枝葉末節の内容について議論するつもりはありませんが、ただ、この機会に、わが国農業の基本的姿勢に対し、総理の率直なる御答弁を求めたいと存ずる次第でございます。
 私は、昭和四十三年、その年のいわゆる農業白書に対して質問したおり、農業基本法制定以来毎年提出されておる白書は、単に官僚的作文にすぎないものであって、これによって、少なくとも農業にその運命をかけて農業経営に従事している農民を感奮興起せしめる何らの気魄もないと批判いたしたのでありますが、本年度提出された白書を通読いたしましてもまた、それと同じく、何らの魅力も持ち得ないものであるということをまたここで繰り返さなければならないことを、実に遺憾に存ずる次第でございます。(拍手)
 さらに、私があらためてここで指摘いたしたいことは、この農業白書は、農業基本法第六条並びに第七条の規定により毎年国会に提出することを義務づけられておるものであり、また、かく義務づけられたゆえんのものは、この白書によりわが国農業の実態を国民の前に明らかにし、今後講じようとする施策について国会の論議を通じて国民的合意を得ることにより、農業を国民経済全体の中でいかに位置づけるかということであると思うのであります。しからば、この農業白書作成の心がまえといたしましては、現在のわが国農業の現状とその問題点を忠実に反映させるとともに、国民の理解が得られるような、具体的かつ積極性に富んだ施策を提示するというものであらねばならないのであります。
 特に、今日のように、高度経済成長の伴う産業構造の急速なる変化や、農産物の輸入自由化の圧力などにより、農業存立の基本的意義づけが問われ、農業の将来が全く不明確で、農業従事者が不安動揺している現在、また一方には、モチ米、大豆等々、農産物が投機の対象となり、農民のみならず国民全体が、農産物の需給見通しについて大いに注視している状況の中で発表される今回の農業白書は、特にきわめて重大な意義を有するものであったのであります。
 しかるに、今回発表されました農業白書は、この激動する経済全体の中で農業がいかに取り扱われ、また将来に向かっていかに位置づけられるかという根本的な問いには、何ら答えていないのでありまして、これでは、農民に日本農業の将来の指針を与えるのではなく、かえって農民をして混迷におとしいれるのみであると言っても、決して過言ではないのであります。(拍手)
 さらに、これと関連して、予算案と農業白書の関係について申し上げたいことは、そもそも、その年の農業関係予算案は、農業の現状と調査と分析に基づいてその年政府が講じようとする政策を、財政的に具体化したものであらねばならないのであります。すなわち、予算案は、農業白書に基づいて作成されるということであらなければならないのであります。
 しからば、この白書を国会に提出すべき時期は、少なくとも予算案が決定前にこれを提出すべきものであるにもかかわらず、毎年この白書を国会に提出された時期を見ますると、さすがに、農業基本法が制定されました年の三十六年はその年、すなわち三十六年の十二月二十七日に提出されておりますが、その後は毎年おくれて、この数年間のごときは、本年を含めまして、国会に提出された日は年度末ぎりぎりの三月三十一日でありまして、このときは、すでに予算案は衆議院を通過いたしたあとであります。かくのごときは、まさに農業基本法の精神を軽視するもはなはだしく、全く政府の怠慢であるといわざるを得ないのであります。(拍手)何ゆえに予算案決定以前にこれを国会に提出しなかったのか。また、本来は当然予算案提出と同時に提出すべきものであるにもかかわらず、なぜおくれるのか。これに対して十分なる総理の御所見を承りたいと思うのであります。
 ここで総理に強く申し上げたいことは、このような歴代自民党政府の農業基本法の軽視と農政に対する怠慢の結果は、いまや日本農業をして重大なる危機に直面させているのでありまして、農民は日本農業の将来に対する多くの不安を感じておるのであって、農業経営に対する希望も意欲さえも喪失しようとしておるのであります。かくのごとき実情になった第一の理由は、従来政府がとってきた農政の誤りから生じたものでありまして、歴代政府の責任は実に大なるものがあるといわなければならないのであります。
 すなわち、その理由の具体的な問題は、自民党池田内閣は、去る昭和三十六年、農業従事者が他の国民各層と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにすることが、農業及び農業従事者の使命にこたえるゆえんのものであり、そのために農業の向かうべき新たな道を明らかにし、農業に関する政策の目標を示すためと称して、農業基本法を制定して、農民に大きな期待を与えたのであります。
 しかるに、それ以来すでに十二年、その農業基本法はいまや全く空文化してしまい、農民をして失望に追い込んでいる現状であるのであります。しかるに、先刻総理は、農業基本法は非常に効果的であった、今後もこの農業基本法の趣旨を尊重して農政をやっていくのだ、かように言われております。よって、私は、ここにさらに具体的に農業基本法が空文化している事実を総理に申し上げたいと思います。
 農業基本法は、その第一条において「農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、農業の発展と農業従事者の地位の向上を図る」と明記しながら、逆に、農業は発展するどころか、年々衰退の一途をたどり、農業従事者は、他産業従事者と所得の均衡はさておき、農業のみでは生活が不可能になり、やむなく妻子と別れて出かせぎに行かなければならないような実態となっておるのであります。いまや日本の農家経済は、農外所得が七〇%以上であるという全く悲惨な家計で、その農家の経済を維持しなければならないという窮状に追い込まれているのであります。
 さらに、第二条には「需要が増加する農産物の生産の増進、需要が減少する農産物の生産の転換、外国産農産物と競争関係にある農産物の生産の合理化等農業生産の選択的拡大を図る」と主張しながら、政府が今日まで推し進めてこられた無計画な場当たり農政のために、たとえば昨年においては、ミカンの生産過剰による価格の暴落等、また一方には外国農産物の輸入により常にわが国農業を脅かし、これまた農民をして不安とあせりの中に追い込んでいるのであります。(拍手)
 第三には、農民の希望を持てる農業経営をなさしめるため、自立経営農家を育成するため必要な施策を講ずると称しておりながら、逆に自立経営農家は、これまた減少の一途をたどっております。いまやその自立経営農家の率は、先刻もここで申されましたように、四十二年度の一二・九%をピークといたしまして、四十六年度にはわずかに四・四%にまで減少しているのであります。かくのごとく、農業基本法が目標といたしましたその三つの大きな柱はことごとくほごとなってしまいまして、期待された農業と現在の農業の実態とのこの大きなギャップをもたらしたのでありまして、その責任は、これまで政府が推し進めてきました政治姿勢の誤りにあるといっても決して過言ではないと思うのであります。(拍手)
 すなわち、その原因は何であるか。これは、政府が、あまりにも工業優先の高度経済成長政策の過程の中で、国民経済における農業の位置づけをあいまいなものとし、あまりにも財界の主張を尊重して農業の世界分業論に偏向し過ぎた、そして農産物の輸入にのみ依存した結果であるといわざるを得ないのであります。その証拠には、農業基本法第十四条に「農産物の輸出を振興する」と明記しておるにもかかわらず、政府は、農産物の輸出振興はこれを全く放棄しまして、逆に農産物の輸入に狂奔して、日本農業の存在すら忘れたごとく、安易な農産物の海外依存に終始しておるのであります。しかも、海外にこれを求めんとするならば、政府みずからが海外の農産物の生産状況等を調査する機関ぐらいは設置すべきにもかかわらず、安易な輸入にうつつを抜かしながらこれを怠っている間に、海外各地に調査機関を有する商魂たくましき商社に先んじられ、農産物が投機の対象となり、今回のような木材、生糸、大豆、飼料等々、商社に買い占め、価格操作をされるがごときは、全く政府の怠慢、ふしだらさ、実に言語に絶するものがあるといわざるを得ないのであります。
 よって、ここに、総理に強く要望いたします。
 いまや世界の食糧事情は、すでにいわゆるローマクラブ報告等で警告されておりますように、開発途上国の爆発的人口増によって、世界の食糧は不足するという食糧危機の時代を迎えようとしております。これに対して各国とも食糧の自給対策をとりつつあるとき、わが国のみが前に申し述べましたように食糧の海外依存政策をとることは、これこそ百年の大計を誤る結果になると思うのであります。
 よって、この際、すでに申し述べましたような空文化した農業基本法を抜本的に改正する必要があるのではないか。私たちは、この際、かくすることによって日本農業の位置づけを確立すべきものであると、かように考えます。これに対する総理の決意のほどを承りたいと思います。
 最後に、田中総理に特に申し上げます。
 先刻からもお話がありましたごとく、総理、あなたも農家に生をうけた方だと聞いております。あなたも農家の生活が楽でないことは十分御承知でございましょう。
 あなたはかつて、その農家の苦しい生活から抜け出さんとして、青雲の志を立てて上京されたと聞いております。幸いにあなたは今日の大成をなされました。しかしながら、今日の農村の状況というものは、かつてあなたがおられたときの農村の状態と一つも変わっておりません。やはり今日の苦しい不安な中に、黙々としながら望みのない農業に取り組んで何とかやっていこうと努力をしている農村青年が多数おるということをひとつ十分承知していただきたい。そうしてこの農村青年に一日も早く希望の持てるような日本農業を確立していただきたいということを特に私は希望いたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 稲富さんにお答えいたします。
 白書の提出が非常におそくなった、はなはだ遺憾であるという御指摘でございまして、これは、これからできるだけ早く提出をいたしますように努力をいたしますから、ひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。それは、漫然としておってきょうになったわけでないのでございます。社会経済環境の変動に対応しまして、農業及び農村も、きわめて激しい動きを示しております。このような動きを的確に把握して、将来の農政の指針として役立たしめるためには、可能な限り最近時点までの諸統計や情報を収集し、動向分析に万全を期する必要があったためでございますので、これは、両々相まつように努力をいたしますので、御理解をいただきたい、こう思います。
 農業基本法を抜本的に改正せよということでございますが、これは、先ほども申し上げたとおり、確かに経済成長が著しかったために、農業と他産業との間の生産性の格差の拡大や、兼業化の問題等が起こっております。しかも、自立経営農家のシェアが低下をしておる現象もあらわれておるのでございますが、しかし、それかといって、いまの農業基本法が必要でないということではないのでございます。農業基本法は、農政の基本的目標、その目標を達成するための根幹的施策の方向は、現在の情勢においてもまだ同じだと考えておりますので、農業基本法をいま改正することは考えておらないということを述べておるわけでございますが、農村の実態、将来的な問題、国際的な情勢からどうしなければならないという具体的な問題については、十分検討を進めてまいりたい、こう考えるわけでございます。
 それから、稲富さんは農業基本法がつくられるころからずっと御主張になられておる農業の専門家でもございますから、よくおわかりであろうと思うわけでございますが、農村というのは、ただ農村を保護するという状態だけでは、農村の生活はよくならないわけであります。それは、世界の国々の状態移り変わる歴史をひもとくまでもなく、一次産業を主体としておった人類が、二次産業へ、三次産業へとどんどんと移ってきておるのでございます。それは、先進工業国のみならず、後進国、開発途上国も、先進工業国が歩いたと同じ道をいま歩み続けておるのであります。それは、年に一回とか二回しか生産ができない一次産業というものと、空気からものを取って生産をしようというような二次産業と、それを取り扱おうというような三次産業を比べてみて、その生産性に差のあることはやむを得ないのであります。しかし、二次産業や三次産業の収益の中から一次産業を保護しなければならないというのは、生命を維持するために、一次産業は欠くことのできないものであるからであります。しかし、それにはおのずから限界がございます。
 先ほども申し上げましたように、地球上の平和を維持するためには、現に九〇%も一〇〇%も一次産業で生きておる国もあるのでありますから、その一次産業と、われわれ主要工業国の間でお互いに協力をすることによって、それは自然の協力でなければなりません。自然の国際分業でなければなりません。そういう状態においてのみ平和が維持できるのでございますから、新ラウンドの推進が必要であることもまた事実でございます。その中において、日本の農業、日本の一次産業をどう位置づけ、日本全体の産業の中でどうしなければならぬかというのが理想でなければならぬわけであります。ですから、ただに農業だけをどこまでも、一〇〇%自給をするのだということで、国際価格の三倍になっても五倍になっても、そうしなければならないのだという農政は存在しないのでございますから、おのずから限界の中における農政であることを、農民も、またわれわれも十分理解をし合わなければならぬわけであります。それは、農村に生まれ育って、こうして出てこなければならない私が、真に叫んでおるのでありますから、これはひとつ理解をしていただきたい。(拍手)
 しかも、農村の青年に希望を持たせなければならない、それはそのとおりであります。魅力のない農村に青年が居つくわけはありませんし、青年の居つかないところに嫁が来るわけはありません。これはまじめなことなんです。そういう意味で、農政というものを二次産業や三次産業と同じ収益にあげるには、いまの二町歩や三町歩や五町歩や十町歩でやれるわけはありません。そうすれば、ほんとうに国際競争力に耐え得るような農村を考えれば、いまの二八%程度の一次産業比率は、十分の一近くなるでありましょう。専業農家はわずか四%なのであります。ですから、そういうことになれば、どうしても二次産業や三次産業へ、さなきだに混乱をしておる大都会に過度に集中をせざるを得ないのです。だから、いま公害や交通や住宅で困っておる大都会から、働く場所を提供し、一次産業と二次産業が労働調整が可能なときに住宅も解決できるし、社会環境も整備されるし、人間生活も確保され、一次、二次、三次産業の調整ができるのだということを申し上げておきます。それが、農村青年に対して夢と希望を与えることであるということをすなおに申し上げておきます。(拍手)
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君
        農 林 大 臣 櫻内 義雄君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        労 働 大 臣 加藤常太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        中小企業庁長官 莊   清君
     ――――◇―――――