第071回国会 決算委員会 第21号
昭和四十八年七月五日(木曜日)
    午前十時十九分開議
 出席委員
   委員長 宇都宮徳馬君
   理事 木野 晴夫君 理事 松岡 松平君
   理事 森下 元晴君 理事 綿貫 民輔君
   理事 久保田鶴松君 理事 芳賀  貢君
   理事 庄司 幸助君
      荒舩清十郎君    中村 弘海君
      野中 英二君    吉永 治市君
      高田 富之君    原   茂君
      浅井 美幸君    坂井 弘一君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田中伊三次君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
 出席政府委員
        公正取引委員会
       事務局経済部長 三代川敏三郎君
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務大臣官房会
        計課長     住吉 君彦君
        法務省保護局長 高瀬 禮二君
        法務省人権擁護
        局長      萩原 直三君
        大蔵省理財局次
        長       小幡 琢也君
        農林省食品流通
        局長      池田 正範君
        通商産業大臣官
        房長      和田 敏信君
        通商産業大臣官
        房会計課長   岸田 文武君
        通商産業省通商
        局長      小松勇五郎君
        通商産業省貿易
        振興局長    増田  実君
        通商産業省企業
        局次長     橋本 利一君
        通商産業省重工
        業局長     山形 栄治君
        工業技術院長  太田 暢人君
 委員外の出席者
        経済企画庁長官
        官房参事官   斎藤 誠三君
        法務大臣官房営
        繕課長     水原 敏博君
        法務省刑事局刑
        事課長     根岸 重治君
        法務省矯正局総
        務課長     平井 清作君
        法務省矯正局作
        業課長     樋口 淳雄君
        会計検査院事務
        総局第二局参事
        官       立花 寛英君
        会計検査院事務
        総局第四局参事
        官       前田 泰男君
        決算委員会調査
        室長      東   哲君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月四日
 辞任         補欠選任
  中村 弘海君     原 健三郎君
  吉永 治市君     宮澤 喜一君
  稲葉 誠一君     馬場  昇君
同日
 辞任         補欠選任
  原 健三郎君     中村 弘海君
  宮澤 喜一君     吉永 治市君
  馬場  昇君     稲葉 誠一君
同月五日
 辞任         補欠選任
  石田 博英君     野中 英二君
同日
 辞任         補欠選任
  野中 英二君     石田 博英君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和四十五年度一般会計歳入歳出決算
 昭和四十五年度特別会計歳入歳出決算
 昭和四十五年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和四十五年度政府関係機関決算書
 昭和四十五年度国有財産増減及び現在額総計算
 書
 昭和四十五年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (法務省所管、通商産業省所管)
     ――――◇―――――
○宇都宮委員長 これより会議を開きます。
 昭和四十五年度決算外二件を一括して議題といたします。
 本日は、法務省所管及び通商産業省所管について審査を行ないます。
 これより質疑に入ります。質疑の申し出がございますので、順次これを許します。野中英二君。
○野中委員 きょうは常日ごろ尊敬いたしております田中法務大臣をお迎えいたしまして、しかも、高通な識見を持っておられる大臣であり、かつ法曹界におきまして、その該博な御高見は常日ごろわれわれの接するところでございますが、その大臣にきょう質問をする光栄を有し、かつまた人権擁護というものがいかに大切であり、しかもこれが下僚においてどの程度厳重に実施され、あるいは守られているかということをお聞き取り願いたい、そうあれば、私は非常に幸いだと思うわけでございます。
 そこで、あらためて再確認の意味において申し上げておきたいのでございますが、憲法十一条に規定されております国民の基本的人権、さらに憲法九十七条に規定されておりますところの基本的人権の本質、これについて大臣、どうお考えになっておりますか、お尋ね申し上げておきたいと思います。
○田中(伊)国務大臣 私に憲法に関する御質疑をいただきましてもいかがかと思うのでございますが、まあ法務大臣が憲法の解釈に関して御答弁を申し上げたから見当違いというわけでもなかろうと存じますから、お答えを申し上げます。
 わが国憲法の採用しております基本的人権というのは、非常に高度なものであり、これほど高い見地に立った全面的、絶対的の基本的人権というものを規定しておる憲法は世界の憲法にも類例がない、こういうものでございます。ところが反面、一つの制約がございまして、これは先生のお読みになりました十一条のすぐ隣に十二条という条文がございます。このお隣の十二条の条文によりますと、十一条によって認めておる基本的人権なるもの、それはそれとして、その十一条に認めた基本的人権を行使するにあたっては、世の中の利益のために遠慮せねばならぬ。「公共の福祉」という表現をしておりますが、公共の福祉のためには遠慮しろ、遠慮する義務を負うということを規定しておることが、もう全世界にある憲法の中の、数多くの人権擁護の規定を持っております全諸国の憲法の中で、特徴中の特徴と見るべきものでございます。そこで、為政者、政府、国会議員、行政当局、立法当局というものは、この十二条の世の中のために遠慮すべきものであるというこの制限の条項を乱用することのないように、これを乱用すれば十一条が消えてなくなるわけでございます。乱用することがないように心せねばならぬ。そういう内容の規定が基本的人権のわが国の世界に誇るべき規定である、こう判断をしております。
○野中委員 さすがに法務大臣、もうすでに予防線を張っておられるわけでございまして、この十二条の引用でもうすでに一つの煙幕を張られたわけでございますが、それはそれでけっこうでございます。
 さて、萩原人権擁護局長にお聞きをしておきたいのでございますが、いま私が申し上げました憲法十一条、九十七条、あなた方も十分御認識になっていると思いますが、お尋ねしておきます。
○萩原政府委員 お答え申し上げます。ただいま大臣の御答弁になられました御趣旨に従いまして、われわれ人権擁護局及びその下部組織であります地方法務局の人権擁護部門を担当しております職員並びに人権擁護委員全部が一丸となりまして、この法規の人権擁護につとめるように努力いたしておる所存でございます。
○野中委員 続いて根岸刑事課長に確認をしておきたい。
 いま大臣及び萩原人権擁護局長が御答弁になったとおりでけっこうでございますが、さらにつけ加えて申し上げておきたいことは、憲法九十九条をよく御存じだと思うのでございますが、それもあわせて答弁していただきたいと思います。
○根岸説明員 お答え申し上げます。大臣及び人権擁護局長からお答え申し上げましたように、検察庁におきましても、もとより人権の擁護ということには十二分の配慮を尽くすべきであるというふうに考えております。
○野中委員 これで人権を規定いたしました憲法の問題を一応確認しておきまして、質問に入りたいと思います。
 六月二日の朝日新聞の夕刊に「地検の調べを苦に自殺 埼玉交通事故の“被害者”」こういう見出しで出ておるわけでございます。このことにつきましては、すでに私が質問通告をいたしておきましたので、事件の詳細を刑事課長は御存じだと思います。そこで、これらの事実関係をしばらくやりとりいたしたい、かように考えております。時間がございませんので、ごく手短に御答弁願いたい。
 この事件は、川口警察署が第一当事者、浦和市辻二百二十八の六、プラモデル製造業有井利行君三十二歳、第二当事者、北葛飾郡杉戸町下高野千三百九番地、農協職員折原昭夫君二十七歳について、業務上過失致死傷及び道交法違反の容疑で昭和四十八年三月二日浦和地検に書類を送致した事件でございます。
 このことについて事実関係をこれから確認をしていきたいと思いますが、発生の日時は昭和四十七年十一月四日午後十時五分ごろ、発生場所は川口市仲町三の百五十番地先市道交差点内、こういうことになっておりますが、発生の日時、場所には相違ございませんか。
○根岸説明員 間違いございません。
○野中委員 次に事故の状況についてでありますが、第一当事者の有井利行君が一時停止標識のある一時停止するところへ時速五十キロで進入、第二当事者である折原昭夫君の車と出会いがしらに衝突し、さらに左前方の電柱に激突いたしました。死亡者二名、負傷者二名、こういうことになっておるわけでありますが、これには間違いがございませんか。
○根岸説明員 有井の車が時速五十キロとおっしゃいましたが、四十キロないし五十キロというふうに私は報告を受けております。それから電柱にぶつかったかどうかについては私はつまびらかにしておりませんが、その他のことにつきましては、いまお尋ねのとおり間違いないようでございます。
○野中委員 これは私が検察庁に行ってとった資料であります。それにはそう書いてある。けが人は二人、死亡者は二名、これに間違いないですか。
○根岸説明員 二名死亡したことは間違いございません。けが人は三名というふうに聞いてございます。
○野中委員 ここに大きな疑問があるのでございます。というとは、当時十一月六日でありましょうか、出された新聞には、二人死に五人けが、こういう報道がなされております。しかも朝日新聞の六月二日の夕刊にも七名ということになっている。しかも折原昭夫君が自殺をしたときの検視人であります杉戸署の刑事係長、警部補萩野好美君の検視したものの中に、六月一日昼ごろ同人が見えないため母親がさがしたところ、二階六畳の間で自殺していたもの。遺書はないが、ポケットに二人死亡五人大けがの交通事故の新聞の切り抜きを所持していた、こうあるのであります。これはどちらが正確ですか。
○根岸説明員 失礼いたしました。死亡は二名でございまして、けが人は三名のほかに運転者の有井もけがしておりますので、それを入れますと、けが人は四名になります。死亡二名、けが人四名でございます。なお折原は負傷しておりません。
○野中委員 そうしますと、これは六人ということ。この有井君のグロリアは定員六名じゃなくて、これは五名なんです。ノークラなんです。そして死傷者を合わして六人ということは、これは定員オーバーじゃないですか。
○根岸説明員 おっしゃるとおりだと思います。
○野中委員 そして警察の調べによりますと、私のところへ出されました資料によりますと、有井君は一時停止の義務を怠ったと書いてあります。これも間違いありませんね。
○根岸説明員 そういうことで警察から送致を受けていることは間違いございません。ただ、私がいま申し上げますことは、捜査中の事件でございまして、一時停止を行なったかどうかの最終判断はまだ出ておりませんので、その点お含み願いたいと思います。そういうことで送致を受けていることは間違いございません。
○野中委員 警察の送致の中に、有井君が飲酒運転をしていることについては触れてないと思います。しかしこれは飲酒運転をしている。それはどう思いますか。
○根岸説明員 ただいままでのところ飲酒運転をしておったような状況がうかがわれるようでございます。
○野中委員 うかがわれるのですか。どうなんです。
○根岸説明員 先ほど申し上げましたように捜査中の事件でございまして、最終的の検察庁の認定が出ておりませんので、私はそのような表現を使っておるわけでございます。御了察願います。
○野中委員 それではちょっと話にならないんだ。これは困ったものだ。では、これは私のほうからお話し申し上げます。
 この有井君は、十一月四日、知人であります川口市在住の同業者のところに建前に行った。そして全部が酒を飲んでいる。そして第二次会に川口の小料理屋へ行こうとした。その途中において事故をやった。こういうことなんです。そうすると一時停止の義務を怠ったのも有井君、しかも定員オーバーをしている有井君、そして飲酒運転をしている有井君ということになっておる。そこで、この有井利行君は折原君に対してその非を認めて、昭和四十七年の十一月二十五日に折原君所有の乗用車の損害賠償を三十七万五千円しているわけだ。示談書をつくっている。その示談書の一番最後に、甲は、甲というのは折原君です。甲は右交通事故に関して乙、有井利行に対し寛大なる処分がなされることを切望すると書いてある。これをもう少し読みかえると、刑事事件に対しても有利な発言をしてほしい、こういう願望を込めての示談書なんだ。そう解していいですか。
○根岸説明員 ちょっと前の答弁を補足いたしますと、警察からは飲酒運転ということで事件の送致を同時にしておりますので、つけ加えておきます。
 ただいまの示談云々のことについては私存じませんので、お答えをいたしかねるわけでございます。
○野中委員 これは刑事課長はそう言うだろうと思った。一応民事に関して不介入であるという不文律を堅持しなければならぬ。それを御存じの課長はそう答えるにきまっていると思った。それはそれでいいです。
 このような経過をたどってみますと、われわれしろうとが見ても、折原君はどうしても白といわざるを得ないです。しかもこの折原君は非常にまじめな青年でありまして、ここにもあるとおり表彰状をもらっている。当時の杉戸警察署長の中警視から優良運転手として表彰を受けている折原君なんだ。それを突如として昭和四十八年五月二十二日浦和地検に折原君を呼び出した。そして入ってくるやいなや小松原副検事は、きさま罰金では済まないぞ、三年間はブタ箱に入れてやる。こういう全く人権を無視した副検事が存在したのだ。これをどう思いますか。
○根岸説明員 先ほど先生のほうから御指摘がございましたように、折原自身も警察では過失があるという認定をいたしまして、事件を送致してきておるわけでございます。折原に過失があると申しますのは、交差点における徐行義務を怠ったということで送致されてきておるわけでございます。したがいまして、ただいまの御質問では、折原は全く容疑もないのに、白であるのにとおっしゃいましたけれども、その点につきましては、先ほど来申し上げますように、捜査中の事件でございますので、ここで私が容疑があるのだ、ないのだということを確定的に申し上げるのは差し控えたいと思います。とにかく新聞に出ておりますように、被害者という立場ではなくして、被疑者という立場で呼び出されて調べを受けたというふうに御了解いただきたいと思うわけでございます。
 それからいまの副検事の発言でございますが、私どもが地検を通じまして調べましたところ、そのような発言はしておらないという趣旨の報告を受けております。
○野中委員 いま刑事課長がお話しになりましたとおり、交通事故というものは民事がからみ、行政がからみ、刑事事件がからむ。これは常識であります。ですから私はそんなことは十分承知で聞いているわけだ。そこで、一応白に近いこの折原君、それを被疑者として呼んだ、けっこうでしょう。けっこうですが、私の言うことは、この小松原副検事――名前まで出して恐縮でありますが、小松原君が、ドアをあけて入っていったら、とにかく罰金では済まないぞ――もう一度繰り返しますが、罰金では済まないぞ、三年間はぶち込んでやるぞ、こう言っているのですよ。これは朝日新聞にも書いてある。まだ資料を出しましょうか。当人のテープレコーダーがある、死ぬ前の。まだ出しますよ。答弁願います。おたくのほうは言わないと言うだろうと思いますけれども、これは言っているんだ。
○根岸説明員 本件事故につきましては、たびたび繰り返すようでございますが、最終的な結論は出ておりません。ただ、先ほど来申しましたように、折原のほうは徐行義務がある交差点で徐行しないで、先に入っていた車のわき腹に自分をぶつけたということで警察は過失がありといって送致してきたわけでございますが、どちらかといいますと有井のほうに過失の大きさがあるという認定は現段階でも検察庁は持っておるようでございます。ただ、有井自身の事件もまだ最終的な結論を見ておりませんので、あまり詳細に立ち入ることは避けたいと思いますが、取り調べに当たりました小松原副検事も、どちら側に主としてその非があるのか、どちらの過失が大きいかということは十分認識しておったようでございまして、そのような認識を持っておりました副検事として、いまおっしゃるような言辞を吐いたということはちょっと考えられないことでございまして、私が浦和地検につきまして調べたところでは、いま先生のおっしゃったようなことはないというような報告を受けておるわけでございます。
○野中委員 あくまでそういうふうなことを言うでありましょう。しかし、この弁護人であります平井博也弁護士の経過書、これはちゃんと実印まで押してありますが、これにも書いてあます。読みましょう。「小松原副検事に被疑者として取調べを受けた。右取調につき右検事は、「お前は、三年間ぶち込むぞ」「罰金では済まされないぞ」とどなられ、」こういうことを、少なくとも弁護士さんが、社会的地位のある人がこれは証言しているのです。それでもまだおっしゃられますか。
○根岸説明員 おことばではございますが、私の聞いておる限りにおきましては、副検事が取り調べをして、その後しばらくの間は、いまおっしゃった弁護人ではなくて、紺藤という弁護人が当時は選任されておったと聞いておるのでございますが、それはそれといたしまして、私が浦和地検につきまして報告を受けました限りにおきましては、先生のおっしゃったようなことはないという報告を受けております。
○野中委員 紺藤弁護士については後ほど触れることにしましょう。それは関係がある。
 そこで、その前にもう一度、これは重要なところだからぼくはもう一度しつこく質問しておくのでありますが、自殺までの記録というものがあります。読みますよ。その二十八日、月曜日に、「午後二時頃迄妻の実家に思案しつつ居った。思案の餘り東京上野叔母のところに本人が一人で行った。叔母のところにて一晩中検事の馬鹿野郎が憎らしい、亦残念だと繰返し繰返しわめき居り、翌朝四時頃迄言ひ続けて居った。」というのですよ。どうです。これでもまだおっしゃられるか。
○根岸説明員 私が報告を受けました限りにおきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
○野中委員 一方的に小松原氏がそういうことを言いますけれども、このとおり証人がおる。そしてこのやり方はまことに検事としてあるまじき恐喝じゃないですか。この取り調べに対しては一片の人権尊重もないじゃありませんか。もしこれが事実であったとするならば、人権局長、どう思いますか。
○萩原政府委員 お答え申し上げます。私どもも、昨晩御質問の趣旨を承りまして、直ちに浦和地方法務局に照会いたしましたところ、非常に申しわけないことですが、情報収集をしている段階でまだはっきり事実をつかんでいない、こういう返事でございました。そこで、事実関係が明らかになっておりません現段階で、人権擁護局としてどう考えるかということについての見解をここで述べることは差し控えさしていただきたいと存じます。ただ、先ほど来先生御指摘のように、二十二歳といううら若い、しかも表彰まで受けられた優良な青年がなくなられたということは実に痛ましいことでございますし、御遺族の方々の御心情も察するに余りあるものがございます。もし先生御指摘のような事実がございますれば、これは人権上ゆゆしき問題でございますので、御遺族の御感情その他のことを考慮いたしまして、もし私どもに調査をお求めになる御意向が確かめられます場合には、われわれといたしましても独自の立場から調査を開始したいと存じております。
○野中委員 時間の関係で先に進みます。
 六月二日の朝日新聞の夕刊に、記者が秩父まで小松原さんを追っかけて、そしてインタビューしましたその記事が載っておるわけでありますが、そのことばを引用いたしますと、「先月下旬にも折原さんが事故の処理を頼んでいた弁護士らに会って事件を示談にしよう、と話し合いがまとまろうとしていた」と書いてある。ここまでを質問するわけでありますが、一体折原さんの弁護士でありますところの――この示談を依頼していたのは折原さんの弁護士ではなくて、有井さんの弁護士である平林さんから頼まれたのじゃないですか。こういう報告を聞いたのじゃないですか。刑事課長、どうです。
○根岸説明員 私が聞きましたところによりますと、先ほど来申し上げましたように、警察から両名の送致を受けまして事件を取り調べておったわけでございますが、担当の副検事としましては、先ほど来申し上げましたように、飲酒運転の上、一時停止を無視して交差点に突っ込んできた相手方のほうがさらに過失が大きい、折原のほうは徐行義務違反で相手方のわき腹へ自動車をぶつけたのだけれども、その限りにおいて過失はなかったとは言えないにしても軽いという観点から、示談でもできれば当然起訴すべき事犯には当たらないというふうに判断したようでございまして、その上で、できるならば示談をしてきなさいということを折原のほうに告げたようでございます。そのときに、その後私が聞きました限りにおきましては、折原の弁護人である紺藤という人から、五月の二十三日ごろでございますか、示談がまだできないのでもう少し待ってほしいという連絡を受けた、そこで小松原副検事のほうは、それではそれでけっこうですという返事をしたというところまでの報告を私は受けておるわけでございます。
○野中委員 いま刑事課長は、この二十三日ごろ小松原副検事が紺藤弁護士に示談の関係をお願いした、話し合った、こういうことを言っておるわけでありますが、二十三日の水曜日には紺藤弁護士は千葉に出張していて留守なんです。できるはずがないじゃないか。
○根岸説明員 私が申しましたのは、副検事が取り調べをしまして、そういう事情であるから示談ができればなるべく示談をしなさいということをすすめたということを申し上げたわけです。
 そして、二十三日ごろと私は申し上げたわけでございまして、その弁護士に直接会って話をしたのかどうかということはつまびらかにしませんが、弁護士を通じて、二十三日ごろ示談の件はもう少し待ってほしいという連絡を受けたというふうに私は申し上げたつもりでございます。
○野中委員 今度は二十三日が二十三日ごろとなった。実に不正確なんだ、法務省ともあろうものが。法というものはほんとうを言うとそんなぼけやしないんだ。もう少し明確に答えてもらわないと困るのです。
 さて、紺藤君と折原昭夫君が会ったのは二十四日の晩なんです。だからそういうことはあり得ない。もう一つの平井弁護士のほうが副検事に会っているのは五月三十一日なんです。これは全く副検事の言いわけにしか私は聞き取れないのです。ですからこれはむしろ有井君のほうの弁護士と詰めていたんじゃないか、こんな感じがしてならない。もう少し卑しいことばを使わしていただくならば、副検事も有井の弁護士とぐるになって示談を強要したというふうにとらざるを得ない。これはほんとうにいやらしいことばでございますけれども、これはどう思いますか。
○根岸説明員 私が聞いておりますには、本人に示談をしてくるように伝えたというふうに聞いておるわけでございまして、いまおっしゃいましたような、相手方の弁護士とぐるになって示談を強要したというようなことがあるとはとうてい思われません。
○野中委員 それでは、当人に示談をしてこいということを認めましょう。その場合に、二十五日までにやれということを二十二日に言っているのです。二十二日に、二十五日までにやってこい、こういうことを言った。これは一体できますか。これは示談の強要。どう考えますか。少なくとも、不文律ではありますけれども、これは民事に不介入の原則があるわけじゃないですか。なぜそれをやらせるのですか。
○宇都宮委員長 時間がないから簡潔に答えてください。
○根岸説明員 どういういきさつでそういう話になったか詳しくは存じませんが、取り調べをしましたときに、二十五日ごろまでに示談をできたらしてこいという話をしたことは事実のようでございます。
○野中委員 このときにこういうことを言っているのです。おまえは調べれば調べるほど不利な点が出てくる、だから早く示談にしろ、小松原君はこういうことを言っているのです。そこで、示談を強要したことが第一点。
 それからもう一つ、小松原君の行為は刑法百九十三条、公務員の職権乱用に該当するのじゃないか、こう思うのですが、この見解をお聞きしたい。
○根岸説明員 示談を強要した事実があるかどうかは存じません。ただ一般的に申しまして、できたら示談をしてこいと言ったことだけでおっしゃるような刑法上の罪になるというふうには、私は考えておりません。
○野中委員 これは巷間伝えられるところによれば、示談は五千万円だという。しかも有井君の弁護士が言ってきていることは、その二〇%、約一千万円に該当する。これは二十三日に言って二十五日まで、三日間で回答せよという。農協の職員が一千万円の金をわずか三日間で調弁できると思いますか。してみれば、そういうことを勘案すると、これは私は強要であり、職権を乱用して示談に持ち込もうとする、これは完全に百九十三条違反じゃありませんか。
○根岸説明員 当時示談につきまして、どのような金額のやりとりがどのようにあったか存じません。私も報告を受けておりませんので、いまおっしゃったことにはお答えいたしかねます。
○野中委員 ちょっと重要なポイントになると、すっと逃げられてしまいまして、まことに困るわけでございます。しかし刑事課長、この問題は十分慎重にお取り調べを願いたいと思うのです。どうでしょう、法務大臣、調べていただけますか。
○田中(伊)国務大臣 折原青年の行為でございまするが、横っ腹にぶち当たった原因が、徐行義務違反に幾らか原因がある、そういうことが幾らかあったのではなかろうか、本人が気に病むほどの強い理由はなくとも、幾らかそういうことがあったのではなかろうか、徐行義務に沿わなかったところが幾らかあったのではなかろうか、こういう点を見ておりますので、示談をしてこい――この示談というもの、なかなか時間がかかるもので、先生御承知のとおり、簡単にできるものじゃない。そこでやっぱり副検事の立場から申しますと、交通事犯、事件は山のごとくあとからあとへ重なっておることでございますから、何月何日までに示談にしてこいと言うことは、たいへんどうも、公務員の職権を乱用したというほどの強いおしかりをいただくことではないのではなかろうかというふうに思うのです。
 問題は、折原青年がドアをあけて入ってきた、顔を見るなり出会いがしらに、三年ぶち込む、罰金では済まぬというおどし文句を並べたという事実があって、それが原因で自殺をしたということが想定されるということになりますと、これは容易でない。私がこれを耳にした以上は容易でない。問題の急所はここにあろうと存じます。そこで法務省刑事局も調べておるのでありますが、もう一度私の手で部下に特命をいたしまして、入念に調べろ、はっきりしたことがあがれば処置は明白でございます。かりにあがらないとしても、調査をいたしまして第六感でものを判断することもできるのではなかろうか、こう考えますので、調べまして、いささかでもそれに近いようなことがあったといたしますならば、先生仰せのとおりでなくとも、幾らか似たようなことでもあったと想定できます場合においては、処置が要る、放任はしておけない、こういうことになりますので、あらためて調査をいたしまして、先生に部下を派遣いたしまして御報告を申し上げます。
○野中委員 いま大臣からありがたいおことばをちょうだいしたわけでございます。ぜひ調査の上、厳重御処断を願いたい、こう思うわけであります。
 いよいよ時間になりまして恐縮でございますが、最後に一言申し上げたいのでございます。この折原昭夫君、二十七歳は、昭和四十八年六月一日の一時二十分、自宅の二階六畳の間において典型的な首つり自殺をしたわけでございます。二十七歳でございます。地球よりも重いといわれる人命を一人失ったわけであります。これが実は小松原副検事の三年間ぶち込んでやるという一言から来たものであります。それは当時検視した萩野好美君の状況調書がここにありますが、五月下旬ごろからさらにノイローゼが高じて、寝言にも、おれはそんな悪いことはしていない、こういうことを口走っていたということを書いてあるわけです。これは検察庁が私のところに資料として出しているのです。こうして折原君は死んだ。残された者は、ことし十月に生まれるであろう、女か男かわかりませんが、この子、ただ一人遺児を残して彼は死んでいったわけです。
 そこで、小松原君が行なったこの行為を私は許せない。この罪を償うものは金だけではない。精神的なものもありましょう。しかし金でも、この生まれいずるであろうところの子供のためにも私は国家賠償を請求しなければならぬ、かように考えるのでありますが、大臣、どうお考えでございましょうか。国家補償をお支払いになるお気持ちがありましょうか。いま、これから部下を派遣して調査すると言われた。その調査の結果によっては国家賠償をやるかどうか、それをお尋ねしたい。私としては、どうしても小松原副検事に対して求償権が届く国家賠償でなければならぬと考えている。
○田中(伊)国務大臣 人権擁護の立場から先生のなさる熱心な御主張というもの、えりを正して承りたいのでございます。しかし、そう飛躍をするわけにもいかぬので、現実にそういう暴言が行なわれたかどうかということをまず調べてみよう。行なわれておったとするならば、憲法十七条に基づく国家賠償――憲法十七条に基づく国家賠償というものは、非常に条件のむずかしい十七条でございます。故意、過失、これを原因といたします不法行為が存在をする、その不法行為の結果損害賠償が算定できるという基礎が明白にならないとこの国家賠償というものは通らない、これは一般論でございます。そのむずかしい国家賠償の問題までここで論じますことはいかがかと存じます。まず事実を調べてみたい。
 私は、ここにおって、部下は事実はありませんとこう言うておるのに、私はもう一ぺん調べてみたいとこう言うのです。部下のごきげん悪いですよ。ごきげん悪いことを私があえて言うのは、折原青年が浮かばれないからですよ、これでは。先生が公の席に出てきて、幾多材料を片手に持ってこれはどうだと詰め寄っていらっしゃる。これを水かけ論で捨てておいては死者に申しわけがない、こういう気持ちでおりますので、まずそこに資料があれば資料を私にちょうだいをしたい。一時お預かりをして、あとで返しますが、得心のいくまで調べてみて、暴言があったかなかったか、それを調べた結果を見て、国家賠償はどうだ――賠償になれば私が相手になるわけです。法務大臣が国家を代表してお相手をするということになる。これはいやな立場ですね。いやないやな立場ですよ。だから、そんなことまで言わずに、私の気持ちをおくみ取りいただいて、まずその事実の有無を調べ上げてみる、こういうことでいかがでございましょう。
○野中委員 これで結びますけれども、大臣は私を説得調で、まあ親子ほど違うのでございますから、私が説得された形だ。しかし大臣、まだあるのですよ。現実にいま進行されているあの事件、上尾署で取り調べている問題があるのですよ。次々に私はやりたいと思う。刑事課長、もしあなた方が私の納得のいくような調査ができなかったら、何べんでも私はこの問題を繰り返す。私の生ある限りこれは質問し続ける。
 以上をもって、ぜひ大臣、その当を得た――部下、下僚を擁護するという大臣のお気持ちはわかるのですけれども、それを越えて人権はとうといものだ、この基本的な観念に立って、少なくとも国務大臣や国会議員は憲法を擁護しなければならぬ。九十九条に規定してあるとおりです。その憲法の擁護者である大臣は、憲法擁護のために部下、下僚を一人や二人切ってもいい。勇往邁進をしていただきたいことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
○宇都宮委員長 原茂君。
○原(茂)委員 きょうは、こまかい、しかし人権上やはり重要だと考えます受刑者の処遇問題を中心にお伺いをしてみたいと思います。
 御承知のように、世界的にもこの種の受刑者に対してはその処遇改善というのが急速度に進められつつあります。改善されつつあります。わが国の場合に、このテンポに比較して旧態依然としている問題が多々あるように思うのですが、そうでなくて相当改善されているというような点があるなら、それもお聞きをしたいということが中心で、四、五の問題に分けてお伺いをいたします。
 いろいろと前段的に申し上げることはもう避けまして、単刀直入にお伺いしてまいりたいと思うのですが、現在作業をさせられておる受刑者の種類、その内容ですが、これは刑の種類によって違うものかどうかが一つであります。まあ、そう言っても禁錮刑と懲役刑では分かれているのが常識だと思いますから、したがって現在懲役刑で作業をさせられいる者がその刑の種別による分類が何かされているかどうかというのが一つであります。
 もう一つは、作業時間でございますが、現在実働八時間というのが法務大臣の訓令によってずっと行なわれている。しかし実際には拘束九時間半になっているように思うのですが、一体実働八時間以外の一時間半、拘束九時間半というのは事実かどうか。
 それから運動時間でございますが、この運動時間をややもするとお昼の食事の休憩時間にやらしているというようなことを聞いているわけですが、そんなことがあるのでしょうか。
 それから週休一日をとっているようでありますが、この週休一日というのは、ほんとうに自由に本人がその時間を使っているかどうか。
 まずその五点を先にお答えをいただきたい。
○平井説明員 先生の最初の御質問は、刑の種類によってその受刑者に課する作業の態様、業種が異なるか、こういう御質問と認識いたしましたので、その立場からお答えいたします。
 御承知のように、刑務所に収容されておる受刑者は、先生御指摘のように、懲役受刑者、それから禁錮受刑者、それからさらにたいへん数は少ないのでございますが、罰金等を納められないということで収容される労役場留置者というような者がおります。それからさらに、もう少し数が少なくなりまして、刑としての拘留受刑者という者が大体入っております。最も数が多いのは懲役受刑者でございます。懲役受刑者につきましては、あとでこまかい数などは詳細申し上げますが、大体刑務所内におきまして木工とか印刷、洋裁、金属、農耕、牧畜、あるいは北海道などに参りますと造林とか木材の伐採、あるいは場所によっては紙細工などもやらしておるところなどもございます。それからさらに皮工、皮製品をつくらせるとか、あるいは紡績をやらせるとか、さらには構外作業と申しまして、刑務所のへいの外のかなり離れたところの耕うん地などで農耕をやらせるとか、あるいは事業所の職工さんにまじって働くというような形の構外作業などもございます。こういった作業を課されておるのが懲役受刑者の大体一般的な姿でございます。
 それから禁錮受刑者でございますが、禁錮受刑者は、御承知のように、刑法の条文をかりてまいりますと作業は課されておりません。請願と申しますか、本人が自主的に働きたいということを願い出た場合には、その者の能力であるとか体力であるとか資質というようなものを考えて、また刑務所の若干の都合も考えますが、そうしてその作業をやらせるということになります。しからばこの禁錮受刑者にはどういう作業をやらせるかということですが、できれば禁錮受刑者に適切なものがあればそれをやらせるということになりますが、大体の刑務所では、禁錮受刑者だけに適切なというものはなかなか見つかりませんので、懲役受刑者と大体似たような作業に従事させるという例が多いと思います。
 それから、数は少ないと申し上げましたが、労役場留置者、これは大体懲役受刑者に類似した作業をやらせる場合が多いのでございますが、何ぶん数少ないということと、一般の懲役受刑者とか禁錮受刑者と混禁といいますか、同じような場所で入りまじって作業をやらせるには法律上親しまない地位の者でございますので、どうしても数少ない者が独居房などで一人でやるというような形になりますので、手細工とか紙細工というようなものになる可能性が多いわけでございます。
 それから拘留受刑者、拘留受刑者は期間もたいへん短い。いまでございますと大体一月以内ということでございますので、やはり紙細工程度のものを独居房などでやって、間もなく出所してしまうというのが実情でございます。
 それから第二点、ちょっと聞き落としましたので、あとでもう一度先生から教えていただきたいと思います。
 第三点の受刑者に対する運動時間、これを問題にされましたが、休憩時間を使って運動をやらせておるのではないか、こういう御質問でございましたが、御承知のように監獄法、それからそれを受けました監獄法施行規則の条文に即してお答えいたしますと、刑務所等の収容には一日三十分あるいはそれ以内といいますか、三十分を最高限度として戸外運動をやらせるということになっております。その戸外運動をやらせる時間をどこに設定するかというのはたいへんむずかしい問題になっております。もちろん雨天の場合にはなかなかうまくまいりません。雨天体操場のようなところがあればそこでやらせますが、ないところは、廊下で事実上ちょっとからだを動かすというようなことしかさせられませんし、それから、ほんとうならば作業時間以外に運動時間を設定いたしまして、そこでちゃんとやらせればよろしいのでございますが、御承知のように、収容者を処遇する刑務官といいますか保安職員と申しますか、一応刑務官と言わしていただきますが、刑務官の勤務時間もそう無限定に長くするわけにはまいりません。あちこちで言われますように、勤務時間を短縮する、場合によっては週休二日というような声がかかる世の中でございますので、刑務官の勤務時間もあまり長くできないというようなことになりますので、作業時間の中のどこにはさみ込むか、つまり作業時間を使うということでなく、作業をやらせながら昼間の日の当たるときのどの時間帯に三十分なら三十分というものをはさみ込むかというのがたいへんむずかしい場合がございます。特に日照時間の短い冬など困りますので、事実上休憩時間とか休息時間を戸外運動に使うというところもあると思います。
 それから週休一日という御質問がございました。これは、受刑者には免業日と申しまして、普通の日曜日とかそれから祝祭日は作業を課しません。結局作業をやらない日は何をやっておるかと申しますと、集団的な教育行事、たとえば知名人の講演を聞かせるとか、あるいは希望者には宗教教戒的な話を聞かせるとか、場合によっては運動会的なものをやらせるとか、また、そういう全体が参加する行事が設けられない場合には、クラブ活動といいますか、詩吟だとか読書だとかやらせる、少さなグループでやらせる、その行事がありますが、そういったものに参加させる場合がございます。それからそういう大きなグループ、小さいグループ、いずれを問わずそういう行事が行なえない場合には、刑務所にも図書室の設けがございますので、図書室から本を借り出させる、そうしてそれを舎房の中で読むとかいうようなことをやらせております。
 それから、先ほど作業時間につきまして、実働八時間ということであるが、事実上は拘束九時間半ではないか、こういう御質問があったと思いますが、拘束九時間半というほど長くはない、実情はそれほど長くはないと思います。ただ、実働八時間やらせるためには、その前後に若干の幅を見ます。たとえばかりに七時半から作業をやらせるといたしますと、これは工場でやらせるという場合を仮定いたしますと、七時半に工場が始まるとすれば、舎房から工場まで収容者を連れてまいらねばなりません。ばらばら不規則に連れてまいりますと、中には不心得な収容者もおりますので、やはり一応並んで規律を保ちながら工場に連れていく、そういうことを刑務官がやるわけでございます。そういうようなことを考えますと、舎房から工場までの路離が若干ありますので、やはり十分とか十五分とか幅を見なければならぬというようなことも考えられます。現実にそうでございます。それから七時半に工場の始業といいますか、機械を運転するといたしますと、その前に安全操業といいますか、事故のないようにということを考えますと、やはり機械の始業点検というのも五分なりそこらやらなければいかぬということがあります。それから、御承知のように収容者の中には不心得者がおりまして、刃物で職員を傷つけるというような者もまれにでございますがおります。したがいまして、木工にしろ機械作業にしろ若干刃物などを渡しますので、その員数点検というようなこともやらせます。そういったことがありますので、七時半に始まるとしても、その前に大体二十分から三十分近くの準備の時間が要るわけでございます。同じように、作業が終わってから舎房に帰るまでのことを考えますと、たとえば四時半なら四時半、あるいは五時に作業が終わるといたしますと、そのあと使わせた刃物は、員数だけ返ってくるかどうかというようなことをやはり点検せざるを得ない。そして舎房に連れて帰るためには、受刑者の数を点検――点検というのはおかしいことばでございますが、数を点検します。場合によっては、看守さん、刑務官の目をのがれて、どこかにひそむとか逃げるとかいうものもおりますので、そういうことがあっては、地域社会の方にも迷惑を及ぼしますので、収容者の員数まで点検するというようなことがありますので、実働八時間が前後でかなりふくれます。そういうこともありますので、実働八時間が、実際の拘束は少し延びるというようなことはあろうかと思うわけでございます。
○原(茂)委員 大体いまお答えいただいたのですが、いまの御説明は、大事なところが抜けていると思うのですよ。約九時間半になるのじゃないかというのです。実働八時間は、これはきちっと守らなければいけない。午前と午後に十五分ずつの休憩がある、合計三十分、昼めしが四十分、計一時間十分、これは実働時間の中に入れてはいけない、こういうことが訓令で出ているのでしょう。それだけで合計九時間十分になるじゃないですか。そういう感じでいまお伺いしているのですが……。
○平井説明員 ポイントをぼかしたわけではございませんが、私の答弁の至らないところから誤解を招きまして申しわけございません。先生御指摘の訓令は、おそらく最近の改正前のものではなかったか――これはちょっと間違っておれば失礼でございますが、なかったかというふうに思います。現在、休息時間をどういうふうに訓令で扱っているかと申しますと、休憩は四十分でございます。これは大体昼の時間のときに集中してとります。それから、これは国家公務員と同じように、午前と午後に原則として十五分ずつの休息時間をとらせるということになっております。改正前の訓令では、午前中の十五分、午後の十五分、これを休憩というふうにしております。したがいまして、休憩というのは、四十分にしろ十五分ずつにしろ、自由使用の原則というのがございますので、これは完全に労働時間といいますか作業時間からはずれます。これが改正前のあり方でございました。ところか最近これは――最近といっても、あとでこまかく日時なんか申し上げますが、午前、午後の十五分ずつの休憩を休息時間というふうに扱うことにいたしました。国家公務員並みと申しますか、そういう扱いにいたしております。休息時間の法的性質は、先生御存じだと思いますが、これは自由使用の原則は確立しないわけでございます。作業の疲れを休めて、次の作業にかかる準備のために一息入れるとか、用便をするとかのための時間でございますので、この休息時間は作業時間に組み入れて通算することにしております。したがいまして、先生の御理解とちょっと違ってきておるのじゃないかというふうに思うわけです。こまかいことは作業課長から説明さしていただければありがたいと思います。したがいまして、昼めしの四十分のときは、これは完全な休憩時間でございますから、自由使用ということでございます。昼めしを食べたり、好きな者は碁、将棋を打ったり、あるいはちょっとソフトボールなんかやりたいという者は、短い時間でございますが、狭いところでソフトボールなどやったりするというのが実情でございます。したがって、この四十分は作業時間に組み入れてございません。
○原(茂)委員 私が聞き違ったり見間違ったので、あなたのおっしゃるとおり、十五分十五分は、確かに作業時間内にこれは入りました。これは訂正いたします。四十分のほうは入っていないですね。ですから、八時間四十分というのは、もう完全な拘束になるわけです。
 それで、いま三つ目にお伺いした問題ですが、四十分の昼めしの休憩時間に体操をさせる、運動をさせるというようなことをやっていませんか。
○樋口説明員 ただいま先生の御質問の昼食等の休憩時間、四十分の時間に運動をやっているかという御質問でございますけれども、これは四十分の休憩時間のうちに食事をとりまして、済みまして、なお時間があるわけでございます。受刑者につきましては、非常に、その時間に何か運動をしたいという強い希望がございますので、そういうふうなものに活用いたしております。
○原(茂)委員 受刑者で私の知人もいるのですけれども、いまあなたが言ったように、全部の受刑者がどうも四十分じゃ昼めしの時間が余り過ぎるから、一斉に体操あるいは運動をやらしてくれ、全部がそんな希望をしておるというのは、とんでもない考え方であります。これは間違いであります、そういう認識は。アンケートでも取ってみたのですか。
○樋口説明員 ちょっと御説明が足りませんで恐縮でございますけれども、そのほかに、先ほど総務課長から御説明いたしましたような、午前と午後に各十五分、三十分の休息時間がございます。休息時間は、その次の作業に入りますいわば待ち時間といいますか、その前の休息、疲労回復という要素が入っておりますけれども、この中で休息として考えられる要素があるわけでございます。この中で、たとえて申しますと、卓球とかあるいはバドミントンとか、そういうようなものをこの時間に与えております。
○原(茂)委員 私のお聞きしておることにぴいんとお答えになっていない。時間がもったいないのですが、大臣、いまお聞きのとおりなんです。どだいこの八時間実働というものも、昭和二十八年の大臣の訓令がもとになっておるのですね。この実働八時間を確保するために、たいへんこまかい規制があるんですね。現代の、先ほどちょっと課長さんもお話しになったように、週休二日制が論じられようとするときに、受刑者であろうと、作業に従事する以上は、その人権は当然尊重され、労働に関しては、やはり基準法的な考え方が十分に適用されるのが至当だと思いますし、世界の大勢になっているわけですね。アメリカのイリノイ、あるいはその他の中心的な刑務所の状況を調べましても、どんなところへ行っても、一時間たっぷり自由な休憩時間というのがあります。日本の場合には、この昼めしの四十分の中で、みんなが希望するからという名目で運動をさせるという考え方自体が改められなければいけないのだろうというふうに思うのですが、どうでしょうか。もう改めていいと思います。実働八時間、これはいま週休一日制をとっていますが、実働八時間そのものを相当これからまた考えなければいけない時代が来ている。これはあとの問題にするとしましても、四十分の中の昼めしの時間だけは、このような、全員が希望するからという前提、考え方に立って何かをやらせる、それが運動であろうと何であろうと、やらせるという思想は間違いではないか。大臣、いかがですか。
○田中(伊)国務大臣 施設に収容されておる受刑者といえども、作業労働に従事しております以上は、理想を申せば、労働基準法に準じて作業をやらしていくということが一つの考え方であろうと存じます。せっかくの先生のお話に対しましては、いま直ちにここでどうするということは申し上げかねるのでありますが、ひとつ検討してみます。よく考えてみることにいたします。
○原(茂)委員 ぜひひとつ検討していただいて、また次の機会にお伺いしたいと思いますが、この実働八時間に関してもう一つ問題があるのです。やはり作業の状況によっては時間の伸縮があるだろうと思うのです。民間でいうと、超過したときには超過勤務手当というのがあります。一体この受刑者はどうなるのでしょうか。
○平井説明員 受刑者につきましても作業時間を延ばす場合がございます。一応実働八時間ということになっておりますが、若干でございますが、作業を延ばす場合がございます。どういう場合かと申しますと、作業というのも結局外部の事業所から注文をとったりするような場合がかなりございますので、その注文主のほうから、納期が変更になって、いついつまでにどうしてもやってくれというようなことがあった場合、いや、受刑者の基本的人権はこうなんだからと言って、形式的にその納期の履行を拒否するわけにはまいりませんので、やむを得ない必要な範囲で作業時間を延ばすというふうな場合もございます。
 それから、これは外部から注文をとったような場合でございますが、そのほかに刑務所の建物などを受刑者の手で建てる、われわれ直営工事と申しておりますが、こういうようなものをやっておる場合がございます。これも大体いつまで完成というようなことで予定を立ててやるわけでございますが、ときには大雨が降ったり雪が続いたりして、なかなか思うようにまいりません。資材が整わない場合もあります。そうなりますと、工期が迫ってくるというようなことで、どうしてももう少し、突貫工事というほどではございませんが、延長作業をやらなければいかぬというようなことがあります。そういう場合には、あとでこまかい時間を申し上げますが、若干でございますが、八時間をオーバーするということがあります。もちろんその場合には、増加食と申しまして、食事のほうも増加して支給することにいたしますし、例の作業賞与金というのも、加給といいますか、ちょうど公務員が超勤をやった場合には率がよくなると同じようなことで加給というようなことをやるわけでございます。
 それから、延長する時間の限度でございますが、たしか二時間が限度だったと思います。
 以上でございます。
○原(茂)委員 私もできるだけ端的にお伺いしますから、お答えのほうも中間の説明はあまりお聞きしなくてもいいと思います。端的に答えていただかないと時間がなくなりますから。
 この問題はあと回しにいたしまして、現在全国で刑務所というのが六、七十カ所あるだろうと思うのですが、その数は問題じゃないのです。全体を含めて、一年間に金額でいってどのくらいの作業を何人でさせるか、去年なら去年の数字でいいのですが、それが一つ。
 それから、つくっているものの種類、先ほどちょっと言われましたが、そういう種類と、それから構外で作業をさせる人数、こういうものを二つ目にお伺いしたい。
 それから、いまおっしゃった自営工事、構内作業、こういうものがたぶんあると思うのですが、賞与金はもちろん一般作業と同じだろうと思うのですが、その点を三つ目に。
 それから、いろいろ注文を受けて作業をすると思うのですが、一体刑務所で注文を受ける受注先はどこなのか。アメリカなどは州法によるきびしい規制があって、どうも日本とはだいぶ違っていますから、したがってそういう点の違いは後に申し上げますが、一体どんな種類のものがどの程度、何人の手で、金額は一体どのくらいになるのかということをお聞きしたいのと、もう一つは、あした、あさってですか、科学技術館で、たしか全国の受刑者の作品展示即売会というのですか、何かあるようなのをちょっと広告で見ました。これの製品は、展示されるものは、展示即売するからという前提で受刑者につくらしたものなのか、日常つくっているものの中からだれかがピックアップして出すことにしたのか、そのことをお伺いをしたい。
 時間の関係で先にどんどんお伺いいたしますが、一体賞与金というものがどのくらいかというのを見てみますと、昭和四十五年に受刑者一人一日当たりが三十七円四十銭、四十六年が四十三円、四十七年が四十七円六十六銭、四十八年が五十二円九十四銭という単価で賞与金、賃金に相当するものが払われていて物ができるわけですから、コストは非常に安いんですね。現在の製品の人件費の占める割合というものは非常に急速度にふくらんできているわけですから、この受刑者に払われる賞与金、一日とにかく五十円以内というような賃金相当のもので物ができるので非常に安くできる。安くできたものが一体どういう経路でどこを通って市販されるのか、一般市場に売られるのか。あるいはパーツならパーツとして大企業の一つ二つに納入をされる。これが特別に安いパーツとして計算されるのではなくて、一般市場における下請へ出したと同じ単価の計算によるコストの構成になって、企業なら企業を通じて売られているのかということを、四つに分けて端的にお答えをいただきたい。
○平井説明員 最初に刑務作業の規模を作業収入の面から申し上げますと、いま手元に昭和四十六年度の作業収入しかございませんので、あとで四十七年度も追加して申し上げますが、四十六年度の作業の規模を収入で申し上げますと、七十七億一千六百万円でございます。
 それから、そういった作業の受注先というようなことが先生から御指摘がございましたので申し上げますと、受注先は一般の民間人、これは個人も事業所も含めて一般民間人がまずたいへん多いと思います。それから国がございます。それから地方公共団体でございます。国などはどんな形のものかと申しますと、たとえば端的に申しますと、法務省の民事局とかあるいは裁判所などで使う用紙などを刑務所でもって印刷してくれというような場合がございます。地方公共団体の場合もそれに準じたような場合でございます。それから刑務所の自給製品と申しまして、収容者がみずから着る作業衣とか、舎房衣というものがございます。これを織ったりする仕事、それから刑務所の中で収容者が使う石けんなども刑務所でつくるというようなことがあります。それから刑務所で収容者が食べるところのみそ、しょうゆなども大部分はある刑務所で全部生産しておるというようなことで、刑務所の自給のためのものがあるわけでございます。
 それから、私でお答えできる範囲のものを簡単に申し上げますと、展示会のお話が出ました。御指摘のようにあした、あさってと刑務所の作業製品の展示即売会というのがございます。そこの製品は、日常刑務作業の一環としてつくっているものと同じものが出されています。これが大部分でございます。しかし一部のものは、ごく一部のものでございますが、日ごろのそういった日常の作業でみがいた腕をこの際あるものに凝縮して表現しよう、おりもおり全国の収容者の腕を競うというようなこともございますので、そういった能力、技能を集中してつくられたもの、つまり平常はあまりつくってないという形のものが若干はございます。しかし、これは何もてらうとかいうような意味でなくて、日ごろ鍛えたといいますか、日ごろ技術を習得したものをある時点にあるものに集中して皆さんにお見せするということで、善意に解していただければいいと思います。
 あと、こまかい作業の就業人員であるとか、構外作業の態様であるとか、作業賞与金が安過ぎるではないかとか、あるいは外部からの注文でつくったものがどういう経路で流れるかというようなことは作業課長から説明させますので、よろしくお願いします。
○樋口説明員 まず業種別の金額でございます。四十七年度につきましては、現在こまかく集計中でございますので、四十六年度についてお答え申し上げたいと思います。四十六年度の作業収入は七十七億一千六百万円でございます。業種別で見ますと、木工が十八億七千七百万円、印刷が十一億八千四百万円、洋裁が七億八千四百万円、金属が二十億三千九百万円、紙細工が三億三千六百万円、それから皮工の関係が四億四百万円、構外作業が一億四千四百万円、その他こまかい業種がございますけれども、主たるものはこういうとこでございます。
 なお、それについております就業者の数でございますけれども、木工について見ますと、平均一日千名ついております。印刷も千名程度でございます。洋裁が三千四百名程度ついております。金属が七千七百名程度ついております。それから紙細工におきましては四千七百名程度ついております。皮工が千二百名。おもな就業人員は、これを合わせますと約三万七千名程度になります。
 それから次の御質問の構外作業についている人員でございますが、本年の三月末で見てまいりますと、約六百九十名ほどついておりまして、この主たるものは農耕作業でございます。北海道なんか広大な農耕地を持っておりますので、そういう農耕の経営についている者、それから木工、洋裁、金属、これらの業種につきましては、幸い民間企業の協力がございまして、民間の職場に通役の形で出ている、ここで民間との協業体制をとりながら職業訓練を受けているという人員でございます。
 以上でございます。
○原(茂)委員 まだ少し説明が多いようなんですが、端的にまたお願いをしておきます。
 この賞与金というものは老若の違いがありますか。たとえば年をとっている六十、七十の人もいます。二十、三十、四十代の人もいる。これによって賃金の差があるかどうか、それが一つ。
 それから個人差はありますか。同じ年代であっても、能率がいいとか悪いとか、技術かいいとか悪いとかいう勤務評定をして賃金差をつけているかどうかということが一つ。
 それから受刑者が自分の趣味として、与えられた実働作業時間中に物をつくるのではなくて、かってに余暇に物をつくるということがありますか。あったときに、でき上がったものを刑務所の訪問者なりあるいは刑務所の機関を通じて、大部分がその人の収入になる前提で販売させるようなことを許していますか。これは私は許すべきだという前提でお伺いする。もうそういうことをしてもいいのではないかという前提でお伺いする。いままでそういうことがやられていますかどうか。アメリカでは、訪問者に関しては自由に売らしていまして、その収入は本人の所得になっているということが現にある。世界の主潮からいっても、だんだん刑務所において本人の更生、立ち直り、精神的なものに寄与させる環境づくりというものに相当いま真剣になっているという一助としても、アメリカではやっている。すでにこの程度のことはやってもいいのではないかという前提で、この点はやってないならやらしていいのではないかと思いますが、大臣にお考えをお伺いしたい。
 それから次に、就業中の労働災害に対してはどうなっているか。何か特別な災害に対する補償法、補償の規定というものがあってしかるべきだと思います。たぶんあると思うのですが、簡潔にその内容をお伺いしたい。
 それから、何かの理由でただで作業をさせることがありますか。懲罰だとか、いろいろ問題を起こしたからというような何かの理由で無給でやらせることがありますか。
 この問題の締めくくり的に大臣に直接お答えをいただきたいのですが、いまお聞きのような賞与金、賃金の程度です。私は、一年なり二年の受刑をした囚人は更生を期して出ていくであろうし、そのことが教育、指導されていると思います。社会に出ていった瞬間に、少なくとも相当の期間自分のかせいだ金で生活ができるという程度のものを持たして出してやるということが、私はいま基本的に問われる問題だろうと思う。現在のような一日何十円という程度のもので、せっかく精神的にも立ち直りを期し、またわれわれもそれを期待して、出所したあとのわずかの期間の間に自分の力では食うことができないということが原因でまた転落をして、再犯を犯すという事例が直接間接の原因となっていることを多々知っているわけであります。私は刑務所外で働いたときと同じ賃金収入をとまでは言いませんが、少なくとも一年二年とにかく服役した、つとめてきた、作業もまじめにやったといったときには、相当金額がその人自身に持たれて出所できるようにするという配慮が国家的に必要な時期に来ていると思うが、それにしてはあまりにもこの賞与金の定額は問題にならないと思いますので、これは至急に何らかの配慮を加え改める必要があると思いますが、大臣いかがに思いますか。これは直接にお答えをいただきたい。
○田中(伊)国務大臣 ただいまお話の、自分で品物をつくることを許して、つくり上げたものを訪問者に販売ができるようにする、その収入は本人のものとして、これを出所の際の生活に生かす、いい考えですね、たいへんいい考えでございますが、現在、監獄法の施行令、私のほうの出しております訓令、通達というものでは、そこまで開けた方法でいけるようにはなっておりません。これをその方向に検討するということ、私は重要な課題だと思ってただいま拝聴をいたしました。それから、それ以外に賃金制度の問題これは賞与金という形でごくわずかな、ほんとうにスズメの涙ほどのものを渡しておるわけでございますが、これを給与の体系に改めて、低ければ低くていいけれども、いやしくも給与に相当するものにこれを改めて、本人の将来を確保したいというような考え方も非常に賛成のできる、積極的姿勢で検討してみたいと考えることでございます。
 その他、先生の諸般の仰せになりましたことは速記録に厳然として残るわけでございますから、これをひとつ生きた質問の資料としてとらえまして、いま幸か不幸かだいぶ時間がかかっておりますけれども、監獄法の根本的改正を行なっておる。いまだに監獄法という情けない名前でございまして、これを根本的な大改革をするのが少しおくれておりますのは、刑法全面改正が先にできませんと、それを受けて立つ法律でありますので、これが進みません。こういう事情がありましておくれておりますが、遠からず表面に出てまいります。この全面的改正の際に、先生仰せのごとき諸般の項目について、これを資料といたしまして検討してみたい、こう思います。
○原(茂)委員 済みません、課長さんの答弁要りません。時間の都合であとでまたお伺いします。
 アメリカあたりでは大体二・八倍くらい現に払っています。これも高くはありませんけれども、これはやはり相当参考になる数字だろうと思いますから、その点も考慮をいただきたいと思います。
 それから、次に、受刑者の教育教化の問題についてお伺いしたい。これもこまかいことを一々お伺いするのを省きます。私が言わなくてもたぶんおわかりだろうと思うのですけれども、たとえばアメリカなどは、あそこのバンダリアですか、あれを除く全部の刑務所におきまして、小中学校教育、高校教育、大学教育というものを受刑者にやらしております。そのやらしている大学教育の場合、これは刑務所から大学に通わしているのですね。日本だって、最近の若い人のあるいは学生といっていい人の犯罪が非常に拡大頻発をしておる。こういうときに、途中で本人がその気になっても、やはり刑務期間中であるから、服役中であるからということで通学が許されないというようなことは、せっかく更生をしても本人の一生にとっては重大問題だと私は思う。したがって、これも何でもアメリカのまねをしろとは言いませんが、やはりまだ十分でない。小中学校教育は当然やらなければなりません。やっていると思います。高等学校教育も当然やらなければいけない。やっていると思いますし、やはり地方自治体の長なら長が修了したら修了証書を出すというようなことをきめこまかくきめて――刑務所の所長が修了証書を出したのではどこへも出せませんから、そうでない、きめのこまかい配慮をすると同時に、大学教育に至っては、私は是が非でも刑務所から学校に通うという制度がいま検討されていいと思うのであります。そうでなければいけない。そうでなければ若い者の将来の更生には役立たないだろう、こういうふうに思いますが、これも大臣のお考えがあるなら、私のぜひやっていただきたいと念願することに対する決意もあわせてお聞かせいただきたい。
○田中(伊)国務大臣 簡単にお答えを申し上げますが、罪を犯した者の刑が確定をいたしまして、刑務所の施設がこれを預かる、預かりました以上は、預かった以後においてのやり方というものは教育なのだ、刑罪を科するのではない、教育をするのだ、改過遷善に導くのだという考え方に徹底していきたい、精神だけは現在でもそうでございます。しかし、名前が監獄法などという名前がついておるだけありまして、お話にならぬ内容のものでございます。これを教育をするのだという方針に基づいて監獄法の改正を行なうとするならば、監獄から――どの人でも全部というわけにはまいりますまいが、一定の条件に沿うものであるならば、刑務所の施設から大学に通学さす、すばらしい一つの構想であると存じます。いまどうするかを申し上げかねるのでありますが、検討します。
○原(茂)委員 これは言わずもがなですが、わが国の教育関係経費なんというものは、とてもじゃないが問題になりません。これも時間がありませんから省きますが、再検討をして、来年度の予算要求なんかにもこれだけは急速に大臣がお考えになる必要があるのではないかと思います。数字は申し上げません。
 次に、衣料ですが、受刑者一人当たり、四十五年は年に二千六百六十六円七十二銭、四十六年二千八百四十円幾ら、四十七年三千百八円幾ら、四十八年三千百八円九十七銭、こういう数字になっている。四十八年は推定かもしれませんが、いずれにしましても、一体、これで受刑者が家なり知人なりから何ら衣料を差し入れて供与してもらわないで生活ができるとお思いになりますか。年間、この物価がどんどん上がっているときに、衣料費が特に八割も上がっておるというときに、三千百八十円の衣料費で、いやしくも刑に服している者は国家が完全に生活をさせる義務があります。一体、これで義務が果たせますか。この点も大臣にお伺いしたほうがいいかもしれません。
○平井説明員 刑務所収容者の衣料関係の予算につきましては、先生御指摘のとおりでございますけれども、これで十分な収容者の生活ができるか、外部の面会人が来たときにどうだという御指摘でございますが、一応私どもといたしましては、それらの予算費をなるべく効果的に使うということで、先ほど申し上げましたように、刑務所の受給製品として衣料品を織るとかあるいは縫製ということまで考えて金を有効に使うというようなことで努力しております。したがいまして、そういったもので作業衣とか工場衣をつくったりあるいは寝具をつくったりいたします。したがいまして、市販の物を買うよりはかなり格安で手に入りますので、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。したがいまして、決してぜいたくなことは申し上げられませんけれども、最小限といいますか、必要な衛生を守り、かつ健康を保持する程度のことはやっておるというふうに御理解いただければ幸いだと思います。
○原(茂)委員 そうおっしゃらざるを得ないでしょうが、これは皆さんが一年間の生活を考えてみて、どんなに静かに生活したって、三千百円でやれるなんというのはばかげた話で、どんなに安く買うからといっても、これでいいと考えたらおかしい。したがって、衣料というものは、ある人によると、大部分を外部から持ってきている人がいます。これは大臣もお聞きになっているのですが、あらためてやはり監獄法中心の問題を検討するときには、何としてもこれは考えていかなければいけない問題だろう、こういうふうに思います。
 今度は医療費、病気になったときのことをちょっと申し上げたかったのですが、これは時間がないので割愛いたします。
 その次に、食費、食べるものについてですが、食費が、私が全部これは読まなくても、皆さんからいただいた資料が中心ですから、おわかりのとおり、成人者あるいは少年に分けてはありますけれども、副食とそれから主食をまぜまして、四十八年、一日百三十七円、少年は少し多くて百五十五円。現在、百三十七円で一体十分かというと、アメリカあたりは、御存じのように、量、質ともにそれこそ非常に充実されているのです。したがって、いまカロリー計算なんかしてないですよ、アメリカの刑務所は。日本の場合は三千カロリー、主食が二千五百、副食が五百というようなことを基準にしてやっています。アメリカではもうカロリー計算をする必要がない。腹一ぱい、質もいい。カロリーは十分だというので、いまやあまりカロリー計算なんということは話題にもならないほど量、質ともに充実しているのですよ。日本の場合、これはわれわれがめしを食っていてもわかるのですが、皆さんがどんなに安くどうやって自給をやったからといっても、百三十七円で成人が一日の食費を済ましているような状況、いまのこの物価の中で、これはどうしても考え直す必要があるだろうと思いますので、これは先ほどの衣料と同じように、ひとつ検討していただく。もし、私の言っていることに間違いがあるなら訂正をいただくが、そうでないなら、これも相当検討する材料だろうと思います。現在のように処遇を中心に急ピッチに人間性の回復を求めている時代に、こんなばかな食費が依然として来年度の予算で組まれるようだったら、私は大問題だと思うのです。これは大臣によく銘記していただきまして、部下の皆さんと協議をして、改めていただきたいというふうに思いますから、その点はあとの問題と一緒に大臣から決意をお伺いしたいのであります。
 最後に、大臣にあえて申し上げたいのは、いま何カ所かあります刑務所を見まして、刑務所の専門職員の数が十分ではないという面が多々あります。これも一つ一つ例をあげる時間がないのは残念ですが、十分ではないと思うのです。これはやはり相当数もふやしながら、しかも受刑者に対する教育、研修、指導というようなものを含めて、そのこと自体を職員が研修をしてくるというような、相当の時間をさかなければ、いわゆる受刑者に対する充実した教育教化というようなものはできないという点からいっても、専門職員と一般職員、特にその職員の中から研修をさせることを前提にした職員というものを考えると、現在では職員の数が足らなさ過ぎる。これはどうしても職員面における充実が急務ではないかということを前提として思いますが、いかがですか。
 それから二つ目には、先ほど構外で働く者を農耕中心に説明がございました。私は、大学へ通わせるのと同じように、受け入れるところがあるなら、もっと広範に、いまも木工だ何だというところは幸いに多少やっているようでありますが、もっと広範に受刑者を社会に出して、そうして仕事をさせる、要するに受刑者の処遇の中で刑務所内におけるという原則的な考え方をいまや改めるときが来ている、受刑中であろうともやはり社会に出して、社会に接触をさして、昼間の時間というものはいわゆる社会的な生活環境を与えてやるというようなことを基本的に考えていくことがこれからの主潮ではないか、これからの考え方の方向ではないかということを考えるのですが、いかがでしょうか。ぜひそのほうに広げていくべきだと思います。
 それからいわゆる重罪者――重罪者というのをどういうふうに区別するのか私は知りませんが、そういう刑務所であっても、外からだけ刑務所をいわゆる警備的に統制をしよう、外からとにかくがっちりと警備を固めていこうという考え方が現在の監獄法中心の考え方だと思うのですが、これはやはりもう一歩広げまして、受刑者自身の自律的な精神面の涵養をはかって、受刑者自身が、いま自分の服役している場所に、明るい、より社会的な空気を導入した生活環境をつくっていこうということの配慮、いろいろな例をあげるとこまかい配慮が必要なんですが、そういうようなことにだんだん改めていく、外からがんじがらめに固めて警備をしていくというような、外部からの統制という考え方ではなくて、確かに警備は必要ですが、その警備自体が、受刑者の自律的な、精神面の指導、教育によって自発的に所内から起きてくる、しかも受刑者自身から起きてくるというようなことをぜひ考えるべきときが来ているのではないか、それがいまの世界的なこの種の問題に対する主潮ではないか、カレントではないか、こういうふうに実は考えますが、いかがですか。
 最後に、これはきょうおいでになっているかどうか知りませんが、受刑者がやがて服役が終わって出てまいります。出ていったあとの定着する社会状況を簡単な数字のパーセントでけっこうですからお知らせいただきたい。万が一再犯をする、あるいは再び帰ってくるというような事態になる人々があるとするなら、その理由は一体なんだろう。出たあとの、保護観察かどうか知りませんが、保護司かあるいは観察――何々局か知りませんが、そういう人たちの仕事にしても、現在のような予算、現在のような人数で一体十分だと思いますか。これで完全に更生が長い間かかって仕上げられるような、刑務所を出た人の将来というものをほんとうにあたたかく指導できるような、そういう仕事がいまの人員、いまの予算、いまのスタッフでできると思うか。非常にむずかしいのじゃないか。私はこの点の配慮が必要だろうと思いますが、いかがですか。
 以上四点であります。
○田中(伊)国務大臣 仰せになりました諸般の事項、みな注目して検討を要することでございます。幸い、先ほど申し上げますように、監獄法の根本的な抜本的な大改正、これに手をつけておるときでございますので、先生の御発言の速記録をよく精査をいたしまして、生きた資料としてこれを活用して、改善すべきは大いに思い切って改善するという方向に持っていかなければならぬと思います。
○原(茂)委員 終わります。
○宇都宮委員長 庄司幸助君。
○庄司委員 最初、法務大臣にお伺いしたいのですが、私、幸か不幸かまだ刑務所に入ったことがございませんので、外からながめて、実際中からながめた刑務所というのはわかりませんが、しかし外から数字的にながめますと、やはりたいへん不合理な点があるようであります。
 その点で、まず第一に、受刑者と申しますか、そういう方々の基本的人権の問題でございますが、いわゆる受刑人の基本的な人権について、いわゆる憲法で保障された基本的人権のうち、受刑者たるがゆえにどの点とどの点が制限されるのか、その点をまずお伺いしたいと思うのです。
○田中(伊)国務大臣 日本国民である以上は、刑務所の中であろうと外であろうと、憲法に定めた基本的人権があることは明白でございます。これは先生のおことばのとおりでございます。ただ、罪を犯して、法律によって刑がきまりまして、これを施設に収容をいたしますと、原則は自由刑であります。禁錮でありましても懲役刑でありましても、自由刑であります。したがって、自由の拘束を受けるということはいたし方がない。自由の拘束を受けるということ以外の事柄は、監獄法並びにその施行令、訓令、通達によってどのようにも改善ができる。先ほどいろいろの御質問がありましたが、これらは注目すべき事項でございます。したがって、自由を拘束するということ以外の事柄は、教育主義によって、からだを引き取った以上は教育をするのである、再び罪を犯すおそれのないような人間に仕立て上げて、社会に復帰をせしめるのだ、国民の協力をいただいて復帰をさすことに最善を尽くすのだ、こういう考え方に立ってやっていきますと、相当程度刑務所の中の人権は外の人権に準じましてこれを行なうことができる、こういうふうに存じております。
○庄司委員 それでは具体の質問に入らせていただきますが、先ほど原委員から概括的に御質問がございましたので、若干の重複はあると思います。私は主として作業の問題と食費の問題にしぼって、もう少し具体的にお伺いしたいと思うのです。
 最初、作業の問題から入らしてもらいますが、これは事務官の方でもけっこうですが、おたくからちょうだいしました資料を見ますと、昭和四十五年度決算について見ますと、作業収入が七十三億七千九百万円余ありますね。これに対して刑務所の作業費、これがどれだけかかったかというと、二十四億九千八百万円余でございますね。そうしますと、この四十五年度の刑務所収容費が四十一億七千五百万円余、それからいまの作業費二十四億九千八百万円余を合わせますと、六十六億七千三百万円余とこうなりますね。ところが、これに対しまして作業収入は七十三億七千九百万円余で、このうちからたとえば、このうちからというのはおかしな表現ですが、世間並みの計算方法でまいりますと、賞与金が三億九千二百万円余払われております。そうしますと、この収入から賞与金、これを差し引きますと、六十九億八千七百万円余余る勘定になるのです。余るというと、これも表現上おかしいとは思いますが、差し引きそういう勘定になります。そうしますと、いわゆる作業収入によって得られたもの、先ほどの御説明にもありましたが、それによって得られた収入の中から、たとえば賞与金を約四億ほど払って、残が六十九億八千七百万ほどになるわけですが、これを先ほどの刑務所の収容費、これは生活部分にかかる経費だと仮定しますと、それと作業費、これは材料費やその他含まれておりますが、これが六十六億七千三百万円余でございますから、これだけでも三億円くらい世間並みの会計で言えば黒字になるような勘定になるわけですね。そういう実態がありながら、刑務所の作業費が、先ほど原委員からも御指摘がありましたとおり、作業賞与金が一人当たり四十五年当時で実働八時間で三十七円四十銭、これはあまりにも少ないと思うのです。これは刑務所全体について見ましても、四十五年度決算で二百三十七億円ですから、いわゆる受刑者の実働八時間の作業によってだいぶ刑務所費が浮いているというふうに見られてもやむを得ないんじゃないかと思うのです。その点で私も原委員と同様に、この作業費四十五年度決算で三十七円四十銭、年間二百日働いたとしても、これは一万円にも足らない金額ですね。受刑者はこの一万円にも足らない金額のお金のうちから、いろいろ自分の嗜好品を買ったり、あるいは書籍なんかを購入したりするわけでしょう。そうすると、いわゆる世間のことばで言うしゃばに出るとき、刑務所外に出るとき、一般世間に出るとき、持っていくお金はもうほとんどないといって過言じゃないと思うのです。その点で私は、いわゆる作業収入によって得たもの、作業収入の中からいろいろ材料費であるとかそういうものを差し引いて、いわゆる残ると考えられるもの、これはやはり作業賞与金の増額に回すなり、あるいは受刑者の福利厚生、これをもっと改善するのに回しても差しつかえないんじゃないか、こう思うのです。その点さっきの質問と重複するようですが、くどいようでありますが、ぜひこれは実現していただきたいな、こう思うのですが、その点まずお伺いします。
  〔委員長退席、森下委員長代理着席〕
○平井説明員 お答えいたします。先生の御質問の趣旨、私次のように理解いたしました。刑務所の作業収入のうち三億ほど余ったもの、つまり黒字になったものを収容者に還元しないか、こういう結論だろうと思います。その前提として、その収入をかせぎ出すに要した作業費、つまりこれは原材料費その他の作業費ということになりますが、作業費を引き、それから収容者の身の回り、たとえば食べること、着ることに使った収容費と申しますか、これを差し引くのはやむを得ない、しかし、収入額から作業費と収容費を引いたところが、かなり残った、その全部を収容者に賞与金という形でやればいいのに、その一部分しか渡さないから三億円ほど黒字ではないか、その黒字を国が吸い上げておるのではないか、こういう趣旨に伺ったわけですが、先生の、収容費と作業費を引いた残りは全部収容者に還元しろという御発想は確かにたいへん示唆に富んだ考え方かと思いますが、しかしこの考え方を徹底してまいりますと、その収入をあげるに要したすべての費用は収入から除かなければいかぬ、そして、残ったものだけ還元しろという考え方につながってまいります。たいへんみみっちい考え方でございますけれども、たとえば、その収入をあげるに要したものとしては、作業技官というような職員がおりますが、そういった者が懇切丁寧に指導し、計画して、それだけの収入をあげさしたわけでございますから、そういった作業関係職員の人件費は一体どうなるのかという疑問も浮いてくるわけでございます。何も保安職員の人件費まで払えとは申しませんが、直接収入をあげるに必要であった作業技官などの作業関係職員の人件費はどうなるのか、こういうプリンシプルが出てくるわけでございます。そういう考えを徹底しますと、作業賞与金をやるどころか、むしろ赤字ということにもなりかねないので、そういうプリンシプルは現在導入しておりません。ではどういうことかと申しますと、作業賞与金は、先生御指摘のように、決して多いとは申し上げませんが、やはり更生資金ということを主体にした、そういったものが本質であるというふうに、作業賞与金というものを把握しておるわけでございます。
○庄司委員 そういういわゆる会計制度の問題これはいわゆる刑務所外の一般社会の会社の会計制度とは違うわけですから、当然そういうお考えがあってしかるべきだと思いますけれども、いわゆる常識的に考えても、刑務所の収容費をこの作業収入によってまかなってなおおつりがくるという状況にあるわけですね。ですから、この作業賞与金などというものはもっと引き上げて、受刑者が社会に出られた場合、役に立つような賞与金に改めていくなり、あるいはまた刑務所内の福利厚生施設に回して、収容者に還元する、このたてまえにぜひ立っていただきたい、こういうふうに考えているわけなんです。その点で、大臣からさっきも御答弁ありまして、たいへんくどいようですが、もう一度大臣からこの点のお考え方を明らかにしていただきたいと思います。
○田中(伊)国務大臣 せっかくの熱心なおことばでございますので、この点はひとつ慎重に検討をしてみたいと存じます。
○庄司委員 次に伺いますが、これは刑務所の食費の問題です。これも原委員から概括的な御質問がありましたが、私、少しこまかい数字にわたって申し上げてみたいのです。
 囚人、受刑者は三千カロリーを下らないという基準があるようでありますが、それで主食一副食合わせて百三十七円六十六銭、こうなっております。これは三千カロリーを得るための食費である。そうしますと、一カロリー当たりに直しますと約四銭八厘なんですよ。ところがこれを他の施設に比べてみたわけです。そうしますと、特別養護老人ホーム、この場合は千四百五十カロリーが基準にされている、老人ですから。それで三百十円なんですね。一カロリー当たり約二十銭ぐらいになるのですよ。それから、養護老人ホームですと、千六百八十カロリーで二百八十円、一カロリー当たり十七銭で、相当高いんですね。これは老人ホームですから特殊な性格がある、老人はあまりものを大量には食べないという性格もあるだろうと思いますが、やはりカロリー当たりはこの受刑者と比べると約四倍近く違うんですね。それから自衛隊です。これは訓練や何か非常にからだを使う仕事の性格を持っておりますが、陸上勤務の場合は三千三百カロリー、これで三百五十七円です。これも一カロリー当たり十一銭ぐらいになる。それから艦船勤務の場合は十三銭ぐらいについております。それから、これは厚生省の基準ですが、病院の患者さんはどれくらいの基準かというと、二千四百カロリーで三百円、ですから一カロリー当たり十二銭五厘です。これも刑務所の場合の三倍弱になります。それから人事院が出された日本人の男子の主食と副食、この計算は一人一日四百七円九十四銭なんです。カロリーは明示してありません。ですからこれは三千カロリーとして、あるいはもっとカロリーは低いかもしれませんが、やはり十三銭六厘ぐらいになる。これも刑務所の場合の三倍弱です。そこで、私は刑務所の場合確かに自給品はあるだろうと思うのです。野菜をつくったり、先ほどのお話ではみそ、しょうゆ、これなんかはある。しかし自給品はあるにしても、これのいわゆる主食、副食に占める割合は非常に少ないだろうと思うのですよ。肉であるとか魚まで自給なさるかどうか私はわかりませんが、これは受刑者たるがゆえにこういう安い食費の計算になっているのか、それとも何か旧来の惰性のまま、若干ずつ物価高に応じて当然増の引き上げをやってきた結果、こういうお粗末なかっこうなのか、この辺ひとつお伺いしたいと思うのです。刑務所の場合非常に安い。これで三千カロリー取って、しかも栄養の面で、いわゆる動物性たん白、植物性たん白、あるいは鉄分であるとかカルシウムであるとか、あるいはビタミンのいろいろな配合、こういうものが完全にいくのかどうか、こういう疑問が相当あるのですよ。その点どうお考えになるのか伺いたいと思います。
○田中(伊)国務大臣 先般私は東京拘置所に参りまして食事をしてまいりました。こんなことでいけるのかどうかということで食事をしてまいりました。麦五割、米五割、米麦フィフティー・フィフィテーのめしでございます。そしてジャガイモのおいしく煮つけたのがございました。それにアジの天ぷら、ハルサメとキュウリの酢のもの、この三種類のものが出ておりました。これは私が行ったからこしらえたのではないのです。その日のお昼に食べさせたものを私がちょうだいをしてきたのでございます。なかなかいける、おいしいですね。私はふしぎに思ったので、百三十七円六十六銭で、おかずは半額ちょっとしか充当できぬのじゃないか、こんなに安くできるのか、三食やれるのかということを聞いてみますと、やれるという説明をしておりました。ここでくどい御説明を申し上げることは御迷惑ですから申し上げません。そこで私は、これはなかなか参考になる、一ぺん先生何かチャンスがございますときに、私が御案内をいたしますから、昼食なり夕食を食べていただきたい。意外に安くできる。数が多いということが第一の要因であろうと思いますが、何千何百というものが一種類限りで頭数多くの食物をつくるということが原因のようでございますが、意外に安くできる。食べものの内容がなかなかよい、これはいけるという感じで食事をしてまいりました。そういうことでございます。しかしながら、数の少ないところでは、いま私が申しましたように東京拘置所のごとくどこでもいけるというわけにはなかなかいかないのではないかと思います。数が多かろうが少なかろうが、頭数がどうであろうが、百三十七円六十六銭ということがきめられておるわけでございますから、こういう点については考えてみなければならぬであろう。しかし、なおかつ窮屈な点がございますれば、これに対しましては改善のために大いに努力をしてみなければいかぬ。年々歳々物価が上がることでございますから、努力しておるのでございますが、今後この点については先生仰せのことを念頭に置きまして、十分ひとつこの内容を改善することに努力を傾けてみたいと存じます。
○庄司委員 それは大臣おっしゃられるまでもなく、私も一ぺん行って、実際朝から晩まで食べてみたいとは思っております。ただ、数が多い点では自衛隊のほうがむしろ私は一単位あたりでつくる食糧は多いだろうと思うのですよ。しかし自衛隊の場合は、陸上勤務で三百五十七円でね。それから艦船勤務では四百二十三円。幾ら自給するからといって、こう聞きがあるというのは非常にふしぎなんです。もし大臣のおっしゃるとおりなら、自衛隊がよほどの美食をしているか、あるいはむだ使いしているのか、こういうふうになってくるわけです。その点で、これは事務系統の方にお伺いしますが、一体刑務所の食費、主食、副食の割合はわかりますから、これはいいですが、副食について自給品ですね、これは何%くらい占めているのか。何か六〇円くらいだ、こう言っていますから、六十円のほかに自給品が一体何円くらい加算されているのか、これをひとつお伺いしたいと思うのです。
○平井説明員 お答えいたします。先ほど自給品と申し上げましたけれども、自給といいましても、たとえば例をあげますと、刑務所の農場でジャガイモをつくる、キャベツをつくる、確かにつくっております。つくったものを、受刑者の手でなったものであるから、ただで受刑者の食ぜんに供する、調理の用に回してしまっていいか、こういうふうに考えると、これはまいりません。一応形式的でございますが、国庫に納入するといいますか、国が買い上げるという形でこれを買い取りまして、つまりこの点では市販のものを買うと同じことになります。したがいまして、自給された野菜等を買い入れたその買い入れ価格は、先ほど来申し上げております百三十七円何ぼのその中に入ってくるわけでございます。何か先生の御質問を聞いていますと、自給品、つくったものはただでその場で食べてしまっているように理解しておられるように聞きましたが、そういうものではございません。そういう前提で私のほうのことを申し上げますと、野菜は大体全購入量の二%、これは刑務所等でつくったものを使っております。もちろん使っておるというのは、国庫へ納入する、国が買い上げて収容者の用に供するということでございます。
 それから先ほど御指摘のありましたみそ、しょうゆ、これは全刑務所等の収容者の分をほとんどまかなっておりますので、全体の全額の何%になるか、ちょっと数字がはっきりしませんので、とりあえず全収容者のみそ、しょうゆの消費量の大部分はある刑務所、具体的には市原刑務所でつくっておる、もちろんこれも買い上げて使っておる、こういうふうに説明させていただきます。
○庄司委員 そうしますと、自衛隊との比較の問題ですが、なぜこういうふうに自衛隊は三千三百カロリー、確かに三百カロリーほど多いわけですが、陸上勤務で三百五十七円で、おたくのほうは百三十七円で済むのかという非常にふしぎな現象が出てくるわけです。どの辺が違うのですか。
○平井説明員 一口で申しますと、刑務所等におきましてはカロリーの大かたの部分を主食つまり米麦でとっておるというふうに言えると思います。米麦のほうが副食に比べて安上がりであるというふうに言えると思います。食糧の構成を見ますと、自衛隊などでは米麦などでカロリーをとるよりも副食でカロリーをとっておるという傾向が強いと思います。そんなところに差があるのじゃないか。
 それからちょっと申し上げますが、刑務所等でございますと、百三十七円余りの金をどういうふうに使っておるか、大臣から先ほど御指摘いただきましたが、それだけの金でも大量購入といいますか、一種のもの、限定された種類のものを一時に大量に購入するということで、かなり安上がりになるということが幸いしておると思います。それから栄養士等の適切な指導等で、けっこういけるという施設もあるわけでございますが、大臣御指摘のように、小さな規模のところでは若干無理がかかっておる、物価の値上がりによってかなり無理がかかっておるという面は出てきておるわけでございます。
○庄司委員 時間もなくなりましたが、いまあなたのおっしゃった米麦でカロリーの大部分をとっておる、自衛隊のほうは副食で大部分とる、この違い、これは非常に私は刑務所の食事の考え方は旧日本型だろうと思うのです。よく秋田あたり、これは名ざしで失礼になりますが、昔米をおもにしてカロリーをとる、あるいはお酒でカロリーをとる、いわゆる副食のバランスを失して、東北地方なんかよく高血圧の患者か頻発する、これは大体医学界の定説になったのですがこういう古いタイプの栄養観があるのじゃないかと思うのです。これはたまたま大臣がどこかの刑務所でおいしいものを食べてこられたとおっしゃっていますが、カロリーを炭水化物だけに依存するということでは、私は非常に古い栄養の考え方になると思うのです。日本が非常に貧乏な当時、農民が非常に貧乏な当時、こういうことで生活していた。この考え方がまだ刑務所に残っているような感じがするのですよ。だからこれは、その考え方も含めて、受刑者の食事の改善、これをぜひ検討して、前向きで改善していただきたい。この点、最後に大臣からお聞かせ願って終わりたいと思います。
○田中(伊)国務大臣 承知いたしました。ごもっともと存じますので、検討いたします。
○庄司委員 終わります。
○森下委員長代理 坂井弘一君。
○坂井委員 日本弁護士連合会に貸し付けいたしておりますところの国有地の問題について伺いたいのでありますけれども、この所在地が千代田区霞が関一の一の一、面積が千百三十六・三六平方メートル、つまり三百四十三坪七五であります。貸し付け期間が昭和三十一年十二月二十日から三十年間、六十一年十二月十九日までとなっております。
 ところで、昭和十三年五月二十一日にこれが行政財産より普通財産に組みかえられておりまして、普通財産ということになっておるわけでありますけれども、普通財産は、国有財産法第六条によりまして、大蔵大臣が当然管理するということになります。
  〔森下委員長代理退席、委員長着席〕
ところが、これを所管しているのは法務省、こうなっているようでございますけれども、この法的根拠はどこに求めていらっしゃるのでしょうか、まずお伺いいたしたいと思います。
○小幡政府委員 国有財産法第八条というのがございまして、普通財産は国有財産法第六条で大蔵大臣が管理し、処分することになっておりますが、八条によりまして、大蔵大臣に引き継ぐことを適当としないものとして、政令で定めるものについては引き継がないでよろしいという第八条のただし書きがあるわけでございます。それを受けまして国有財産法施行令の第五条というのがありまして、そこに引き継ぎ不適当財産が列挙されております。その第四号、「前各号の外当該財産の管理及び処分を大蔵大臣においてすることが技術その他の関係から著しく不適当と認められるもの」、本件の場合はこの場合に該当するということで、大蔵大臣が管理しないで法務大臣が管理しているわけでございます。
○坂井委員 国有財産法第八条第二項から今度は施行令第五条の第四号、ただいま言われました「管理及び処分を大蔵大臣においてすることが技術その他の関係から著しく不適当と認められるもの」、なぜこれが該当するのでしょうか。著しく不適当である、どういう判断でしょう。
○小幡政府委員 大蔵大臣が引き継ぎを著しく不適当とするといいますのは、やはりその具体的な事実に即しまして、大蔵大臣が引き継いで管理するというよりも各省各庁の長が直接に管理したほうが非常に適切であるというような場合でございます。たとえば本件の場合のように、法務省の敷地がございまして、その中に食い込んでいるような財産、まわりが法務省の行政財産でございますから、その中にある場合には、そこにおられます法務省のほうで管理されるのが著しく適当である、このように考えた次第でございます。
○坂井委員 非常に無理な適用だと思いますよ。
 それじゃ伺いますが、貸し付け料は幾らになっておりますか。
○水原説明員 四十七年度は年額九十五万円でございます。
○坂井委員 三十一年から貸し付けておりますので、三十一年以来の貸し付け料をおっしゃってください。
○水原説明員 昭和三十一年度から四十五年度までは月額九千九百六十九円、年額にいたしまして十一万九千六百二十八円でございました。四十六年度にそれを年額五十万円に値上げを認めていただきまして、続いて四十七年度に、先ほど御説明申し上げましたように九十五万円にしていただいたわけでございます。
○坂井委員 つまり、三十一年度から四十五年度まで十五年間は月額が九千九百六十九円、それで四十六年が年額五十万、月額にいたしますと約四万ですね。四十七年度は年額が九十五万、月額で概算八万円、こういうことですね。これは普通財産ですね。当然普通財産貸付料算定基準がございます。正確に計算いたしますと幾らになりますか。
○水原説明員 四十五年度につきましては、正式に計算いたしますと年額二百六十二万一千八百八円になります。四十七年度は三百四十万八千三百四十八円となるわけでございます。なお、四十四年度以前につきましては計算いたしておりません。
○坂井委員 いまの計算でありますと、四十五年度は月額が、三十一年度から四十五年度まで十五年間九千九百六十九円と言いましたね。四十五年度が普通財産貸し付けの正式な算定基準によりますと、年額が二百六十二万一千八百八円、これを月額に直しますと二十一万八千四百八十四円、こういう計算になると思います。二十一万八千四百八十四円を九千九百六十九円で貸し付けてある、こういうことですね。そうしますと、普通財産貸付料算定基準というものはいわゆる国有財産法に基づきますところの料金の算定基準でありますから、当然この料金の算定基準によって収納しなければならないはずです。ところが、いま説明のありましたように、四十六年度は年額五十万、四十七年度につきましては年額九十五万、さらに四十八年度は目下交渉中である、こういう経緯のようでございますけれども、このような、つまり法務省と日弁連との間において適当な料金をお互いの話し合いできめる、こういうやり方、あり方に法的な根拠はございますか。
○水原説明員 御指摘のとおりの賃料しか徴収いたしておりません。昭和三十一年にこの建物を日弁連が購入いたしまして、それ以来、一部分につきまして法務省が日弁連から、賃料を払いまして借用いたしておりました。その賃料が比較的安い賃料で使わせていただいておった、こういういきさつがございましたので、三十九年三月三十一日に、法務省が全面的にその使用いたしておりました建物をお返しいたしました時点で、これからは算定基準に基づいた正規の賃料を払っていただくべきだ、このように考えましたので、三十九年九月十六日以降数次にわたりまして文書で正式の賃料を払っていただきたいということを申し入れております。日にちを申しますと、三十九年九月十六日が最初でございます。二回目が四十一年五月二十三日でございます。三回目は四十三年の三月十六日でございまして、四回目が四十五年の四月十四日でございます。これはいずれも大蔵省理財局のお定めいただきました算定基準に基づく賃料の要求をいたしてきたわけでございますけれども、日弁連のほうでこれに応じていただけない、再三私どもそのように申し入れましたが、応じていただけず、従前の料金しか払っていただけなかった、こういういきさつでございます。
○坂井委員 ですから、私お伺いいたしておりますことは、そのような形で料金を適当にきめるというようなあり方、それは法律的にどこに根拠があるのですか、こうお伺いしておる。できるのかできないのか、法律の根拠があるのですか、こういう問いであります。
○水原説明員 これにつきましては、算定基準はあくまで行政指導的な意味合いを持つものでございます。あと土地の貸借につきましては、民法の規定に基づくものでございまして、当事者の話し合いが第一義的なものではなかろうかと考えます。そうかと申しましても、当事者の話し合いだけで国有財産の運用が許されるものではございませんので、大蔵省のお定めいただきました算定基準にのっとるように努力をしながら現在に至っておる、こういう状況でございます。
○坂井委員 大蔵省は普通財産貸付料算定基準について通達を出しておりますが、この通達には算定基準の料金がずっと明示されております。しかし、いまのような法務省の場合は当事者間において適当な料金を取りきめしたようですけれども、そういう形をとってもよろしいという判断をなさっていらっしゃるのですか。まだほかにこういう例がございますか。
○小幡政府委員 国の財産につきましては、財政法第九条第一項がございまして、適正な対価なくして貸し付けてはならないとございます。したがいまして、適正な貸し付け料を徴収してほしいということを法務省のほうにお願いし、法務省のほうで先ほど御答弁がありましたように、数回にわたりまして相手方と折衝しているところでございます。
 それで、普通財産貸付料算定基準の問題でございますが、大蔵省といたしましては、やはり全国的な事務の統一をはかる意味において、適正な貸し付け料というのはこういう基準でやるようにということを指導しているわけでございますが、あくまでも貸し付けというものは民法上の私法契約でございますので、その算定基準、これは画一的なものでございますから、その具体的な事案に応じまして、かりにその基準によることが著しく不相応である、不適当であるというものにつきましては、特例といたしまして、民間の賃貸実例というものを勘案いたしまして、増減をするということは当然できるわけでございます。それから著しく算定基準に比べまして低い、また民間の賃貸実例もかなり高いというものにつきましては、最後の措置としては増額請求という手段に訴えるということになろうかと思います。
○坂井委員 それから、これは国有財産でありますから、国有財産の所在地の市町村に対しましては、国有資産等所在市町村交付金が当然支給されなければならないわけでありますが、現在この交付金は幾ら交付されておりますか。
○水原説明員 交付金は納付しておりません。
○坂井委員 なぜ納付されていないのでしょうか。
○水原説明員 先生御承知のとおり、東京都の都税条例に基づきまして、このように公共性の強い団体の不動産につきましては免税措置がございます。したがって、この建物自体につきましては、固定資産税、それから都市計画税、これを免税のお許しをいただいておるようでございます。そのような施設が使っております土地につきまして、もちろん本来ならば当然交付金を納めるべき筋合いのものでございますけれども、先ほど来申し上げましたような賃料が思うように入ってまいらないというような事情もございまして、免税対象物件に準ずべきような土地として使用されておるという立場から、現在まで交付金は納めておらないのでございますけれども、この点、先ほどの先生からの御指摘がございましたような賃料につきましても、今後弁護士会とも従前以上に積極的に交渉を持ちまして適正な価格を策定いたしたい、それとあわせて交付金の問題も解決していきたい、このように考えております。
○坂井委員 国有資産等所在市町村交付金というものは法律にちゃんと根拠があるんです。したがって、いずれの場合におきましてもこの交付金はちゃんと交付されておる。この件に限っては交付されていない。なぜ交付されていないかということは、いまいささかの御説明はございましたが、つまり交付金を交付いたしますと、日弁連から入ってくる貸し付け料金よりも交付金のほうが高い。入ってくる料金が少ない。しかも東京都においては地方税法三百六十七条及び都税条例百三十四条の規定によりまして固定資産税が免除されておる。そういうような経緯もある、公益的な性格もある。したがってこの交付金は国としては交付しない。交付しなければならないにもかかわらず、入ってくる料金が少ない。したがって交付しない。これは全然法律にのっとっていないまことに便宜的なあり方ですね。こういうことはきわめて好ましからざることだといわなければならぬと思うのです。いまのような貸し付け料金等については日弁連側と交渉して、そういう中で適正な料金が得られれば交付金も交付しよう、こういうような考えのようでございますけれども、法務省という司法界におきまして、日弁連もそうだと思いますが、最も法律を順守しなければならない、法律の準拠に対しまして最も厳正であらねばならないはずの法務省において、定められた国有資産等所在市町村の交付金も交付していない、あるいは貸し付け料においても、大蔵省の基準によりますところの貸し付け料を徴収していない。そんな不明朗なといいますか、あいまいな形のものを三十一年以来今日までずっと取り続けてきたということですね。ここに、私は国民的に見ましても、非常に理解しがたい、どうも納得できがたいものがあると思うのです。したがって、そういう点については厳正な態度で臨んでもらわなければならぬと思うわけですけれども、そうなりますと、会計検査院に対して一言聞きたいわけです。この問題に対してどういう見解をお持ちでございますか。
○立花会計検査院説明員 本件につきましては、過去二回にわたりまして文書で法務省に質問を発しております。その趣旨は、財政法並びに国有財産法の趣旨に従って、貸し付けの際は適正な対価を取るよう努力していただきたいということでございます。その結果、ただいま説明がありましたように、二回にわたって使用料の改定をいたしております。なお今後努力されるように私どもとしては見守っていきたい、こういうことでございます。
○坂井委員 国有財産でこういうような形、経緯できているという事例はほかにないのじゃないでしょうか。そこで、日弁連の主張としましては、当然弁護士会、これは裁判所、検察庁と並ぶ公的な機関であるから、むしろただにすべきじゃないか、したがってそのための無償の立法というような要請があるようでございますけれども、この無償立法をするのか、それともいまのような形で料金を相手側と交渉する中で適当な値段で折り合って、そして年々きめていく、こういうあり方は、この法的根拠はどこにもない。いかに公的機関とはいえ、日弁連に限ってはそれが許されるということは私は断じて許されぬと思う。しかも先ほど指摘したように国有資産等所在市町村交付金、これをいままでは交付していない。これもおかしい話ですね。したがって、こういう問題等については、交付すべき交付金はちゃんと交付をする、そして徴収すべき貸し付け料については成規の料金をきちっと徴収する、こういう方法か、さなくんば無償の立法をして、これを無償で貸し付ける、いずれか法律的にきちっと根拠を置いて、だれの目から見てもこれは納得できる、明瞭である、こういう形にしなければならぬと思うのですね。そのいずれをとられますか、あるいはまたほかに方法をお考えなのでしょうか、お伺いしておきたいと思います。
○小幡政府委員 この問題につきましては、法務省、それから最高裁判所が行政財産を弁護士会に使用許可しているものもございまして、一連の問題といたしまして日弁連あるいは弁護士会のほうから、こういった弁護士会に使用させる場合には無償にしてほしい、そのための立法化の動きがあることは私どもも承知しております。ただ、これにつきましては、無償で貸し付けるという場合は、現在の国有財産制度の上におきましては、地方公共団体が緑地とか公園とか道路、水道施設、こういったきわめて公共性が強い場合に限って無償にしているわけでございまして、この弁護士会、確かに公共性がないとは申しませんが、これまでを無償の対象にすることは現在の体系からしても困難ではないかと考えるわけでございまして、やはり立法化ではなしに、むしろ従来の経緯をよく見まして、貸し付け料の算定というものを話し合って、もうちょっと合理的に見直したらどうか。といいますことは、弁護士会の中に実は本来国が裁判所内に設置すベき弁護士控室の部分、これを実は弁護士会か提供している、こういう主張がございますので、そういった弁護士会の中にありますその控室の部分等の特殊事情を考えまして、ある程度この算定につきまして配慮を払う、そういうことによりましてこの貸し付け料の問題を一挙に解決したいと考えているわけでございます。
○坂井委員 この日弁連の会館の隣に法曹会館がある。敷地の広さも同じくらいですね。これは年間六百何十万納めていますね。一方はこういう額なんですね。それで適当な料金をというようなことで対処していこうというお考えのようでございますけれども、いずれにしても四十五年度の月額九千九百六十九円、これを正当な貸し付けの基準料金によって算定いたしますと、二十一万八千四百八十四円、二十分の一ですね。四十六年度は一挙に月額四万円、四十七年度が倍額で八万円、こういうふうに料金は上がってきておる。しかし私が言いたいのは、これは国有財産、普通財産なんです。もちろん貸し付けている相手というものは確かに公的な性格を帯びる機関であるという点は十分配慮しなければならぬと思いますが、そういうような考え方がこの料金算定基準の中に織り込まれていきますと、すべて国有普通財産を貸し付けてあるその貸し付け料金の算定基準がみんなばらばらになっていく。そうじゃなくて、少なくとも大蔵省はこの算定基準に基づいて収納しておるはずですね。事この日弁連の用地に限ってはこういうような形をとるということは非常に好ましくないから法律的にきちんとしなさい、私はこういうことを申し上げているわけです。ただ、そのことについては立法はできない。確かにできないでしょう。これは国有財産法第二十二条によりましても、公的な性格を帯びるとはいえ、これを無償にすることはできない。したがって特別立法をするしか道はない。そうなりますと、他の機関なり関係者との間において、またはなはだおもしろくないような事態をそこに生ずるというようなこと等もありまして、これはなかなか容易ではないと思うのです。
 そこで、大蔵省はいまのような御見解だそうですけれども、法務省はこれを一体どうされますか。
○水原説明員 先ほど御説明申し上げましたように、再三にわたり、しかも強硬に賃料の改定方を申し入れております。ただ残念なことには、相手方、連合会の理事者というのは一年任期でございます。私、本年の三月末に賃金料改定を要求する際にそのそばにおりましたが、その実情を申しますと、前の理事者がこういうふうに言ったじゃないかとこちらのほうで申しましても、のらりくらりというような態度が見受けられるわけでございます。そこで、今後はそのようなことのないように、一つ一つ交渉の経過を記録にとり、大蔵省御指定の算定基準に達するような料金を徴収できるように一そうの努力と誠意を示して改定に努力いたしたい、このように考えております。
○坂井委員 念を押して聞いておきますけれども、交付金は交付されるのでしょうか。
○水原説明員 交付金につきましても交付いたすように検討いたしたいと思っております。
○坂井委員 なお念のために大蔵省に聞きますけれども、交付金を交付していないというような事例がほかにございますか。
○小幡政府委員 事例につきまして、これは実は自治省の所管でございますので、私ども承知しておりません。
○坂井委員 では会計検査院に伺いますが、そういう事例はございますか。
○立花会計検査院説明員 ただいま資料がございませんので、承知しておりません。
○坂井委員 これはよくお調べくださいよ。交付金は交付しなければならぬのですよ。国有財産の所在する市町村に対して交付金は交付するとなっている。その交付金を交付しないなんて、とんでもない話です。それが今日までずっと、三十一年以来放置されてきたなんということは、怠慢というよりもこれはもう大失態だといわなければならぬと思うのですね。なぜ交付金が交付されないのかというと、交付金を交付すると、そこから上がってくる貸し付け料金よりも交付金のほうが多い。したがって、国損を生ずる。したがって、交付金を交付しなければならない法律は守るわけにいかぬ。こんな形が三十一年以来今日までずっとそのまま見のがされてきた、放置されてきた、ほっかぶりしてきたのですかね。きわめて私は遺憾だといわざるを得ません。したがって、いずれにいたしましても法務省は、日弁連あるいは大蔵省あるいは会計検査院等々関係機関と早急にこの問題をどう解決するかということについて、慎重な中にも早い結論をひとつ出していただきたい。その際に、やはり日弁連たるものは、確かに裁判所あるいは検察庁とともに、これは司法界における公的な性格を帯びる機関でありますし、営利的な団体ではございません。また過去の経緯もあるでしょう。そうしたことも十分配慮して、そういう中でその見出した結論が、国民の側から見て、まことに納得ができる、こういう形で結論を出していただきたい。そうでなくして、このようにあいまいな形で、不明朗で、しかも目に見えないからといって、当時者間で単なるなれ合いみたいな、そんなような形をいつまでもいつまでも続けるということは、これは私は断じて許されぬと思う。少なくとも法務省は法の番人でありますし、最も法律に準拠し、厳正であらねばならぬと思うし、順守しなければならぬ、そういう立場にある法務省でありますがゆえに、なおさらいまのこの件については、いま申し上げましたような方向で結論を出していただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
○宇都宮委員長 松岡松平君。
○松岡委員 大臣もたいへん御多忙の際と思いますけれども、物価問題についての対策の一部についてお伺い申し上げたいと思っております。
 まず、少なくとも封建制時代から、物価と災害というのは、おそらく政治の焦点だったと思うのです。これは歴史上明らかだ。最近では災害が公害にかわって、依然として物価がやはり内政の根幹になると思うのであります。ところが、最近では物価が異常に上がり、ことしの春から問題になってきた木材にいたしましても、あるいは生糸にしても、綿糸にしても、大豆にしても、みな異常な高騰を来たしている。その後、木材にしても、土地にしても、大豆にしても、一応行政指導によって緩和されつつあるのですけれども、しかしいつまた起こってくるかわからない。このままではほっておけない。行政指導というのは非常に手数のかかることであり、また調査を完全にしなければならぬことだと思うのですが、これについての大臣の所見の一端をお伺いしたいと思うのです。
○中曽根国務大臣 物価がこのように上がっており、また上がりつつありますことはまことに遺憾なことでございますが、この原因を考えてみますと、一つには、ドルの蓄積に伴う過剰流動性が存在していた、それがかなり動き回っているところに、世界的な物資不足等からくる先進諸国の高物価時代にぶつかりまして、両方の相乗作用ということで物価問題が非常な重大な問題になってきつつあるものであると思います。
 それで根本的には、この過剰流動性を漸次減少させ、なくしていくということを一面においてやるとともに、また一面におきましては物資の流入をはかる、そういう政策をしなければなりませんし、また一面においては、予算的措置においても購買力を抑制するという措置が必要のように思います。政府は公定歩合を三回引き上げ、預金準備率も三回引き上げまして、過剰流動性をいま懸命に還流させておるところでございます。と同時に、物資の流入につきまして、関税率を引き下げたり、あるいは特恵制度のシーリングを変更さしたり、あるいは外国と交渉しまして特別に商品輸入をはかったり、いろいろ一面においてやっておりますとともに、予算につきましても、公共事業費等についてこの九月までに契約率を四九%に引き下げまして、景気が過熱することを財政的にも防ぐようにやっておりまして、あらゆる面からこれを押えるようにいま努力しておるところでございます。
 それで個別物資につきましては、まず土地について、税制その他国会でもお世話になりまして、かなりきびしい措置をやりましたので、土地の投機はもう終わったろうと私は思います。それから御提示なさいました木材あるいは綿糸、毛、セメント、鉄鋼、そういうような一つ一つの項目の物資につきましては、需給調整協議会をつくったり、物資のあっせん所をつくったり、そういうことで個別行政指導をもちまして物価の抑制、流通の活発化ということを促して、投機や買いだめを極力防いできたところでございます。
 セメントは大体ゆるくなってまいりました。木材も、一時上がった外材等は六割程度に下がって、いま低迷しているというところでございます。それから綿糸も毛糸も、一時は投機の材料になりましたが、これもやや鎮静に帰しましたが、しかし上がる気配で、いまそういう気配を含んできている、そういうことで非常に心配をしております。鉄についてもそういう危険性がございました。今度アメリカから鉄くずの輸入について制限をある程度受けますので、それによって平電炉メーカー筋の製品が上がりはしないかということで、通産省でもいまいろいろ政策を打って、上げないように努力しておるところでございます。繊維製品、毛等につきましては、だいぶ輸入をいたしましたので、投機もなくなり、これもある程度押えられるという気がして、大体この四月で卸売り物価の上昇のテンポは非常に少なくなってきまして、四月を越してからは上昇のテンポはいままでよりずっと下がりつつあります。この勢いで次第次第に上昇率を減殺しながら、公共料金その他もできるだけ抑制しつつ、国民生活に影響を与えないような物価政策をやっていきたい。
 幸いに国会で御審議願いました買いだめ売り惜しみ規制法案が通りましたものですから、そういうもし一部にあるとする投機的な売り惜しみ、買いだめについては、あの法律を発動いたしまして、実地調査その他も断行する考え方でおります。そして両々相まってわれわれは物価をぜひとも上げないように努力していきたいという考えでおります。
○松岡委員 大臣の所管の物資に対する行政指導面については私もよく承りまして、かつまたお説のとおり、木材もおさまってきたようだし、大豆もおさまった。もっともセメントは、現実にはあれは業者がやったというよりは、こまい土建屋どもが手持ちのセメントを売って、仕事をするよりはセメントを値上げで売ったほうがいいなんという一時的な考えで値を上げたという傾向も非常に多いと思うのです。
 そこで木材でも、大豆、羊毛、綿糸、生糸でも、今年異常な高騰を来たした原因は、すべてとは申しませんが、商社、問屋、これに準ずる取り扱い業者の利幅があり過ぎるのですね。利幅を制限する法は日本にはないのです。ないから幾らもうけてもいいという考えがある。だから時期を見ては突発的にこれをやる。一種の投機なんです。これを抑制しないと大衆が困る。で、流通を阻害する。それについてはどうしたらいいか。まあアメリカでもヨーロッパでも大体商慣習が非常に強いですし、商社とか――日本のような大きな商社はほかにはないようで、日本が一番大きいと思いますけれども、それにしても、商社、問屋、これに準ずる取り扱い業者というものは世界的にもおるのですが、日本の場合には幾ら利益を取っていいのか、利幅の制限というものは全然ないのです。そのために行政指導をなさる場合でも、おそらくその尺度、基準というものについてたいへんお困りになると思うのです。一部ではこういう声があるのです。この際日本でも付加価値を創造しない商社とか、あるいはいまの問屋とか取り扱い業者の利幅を制限する法律をつくったらどうか。そうしないと、結局税で何とか調整するといってみても、それはあとの祭りでございまして、この点は大臣はどういうふうにお考えになっているか。商慣習のあるところはいいのです。ところが日本には商慣習がないのです。ですから、商社がいまのように大きく膨張した原因もそこにあるのじゃないかと私は思います。
 こういうことに対して、それは資本主義経済の否定じゃないかという人がありますけれども、私は資本主義経済を維持するためにこそ正しい秩序をつくっていかなければならぬのじゃないかと思っております。社会主義経済は初めから計画でいきますから、この問題は起こらぬと思うのです。資本主義経済こそこういう制限を設けて、資本主義経済の健全なる維持、発達をはかるべきじゃないかと思うのですが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
○中曽根国務大臣 物資不足あるいは物価が強含みというときに、一部の商社や問屋筋がこれを売り惜しみしたり屯積したりするということは過去にありましたけれども、これはまことに遺憾なことでありまして、これは商業道徳あるいは国民経済におけるそういう商社の社会的責任をわきまえない行為であると思います。そういう点につきましては、お説のように、日本にはマージンに関する一定の商業道徳とか商慣習というものが非常に欠如しておりますから、もうけるときにぐっともうけろ、そういう好ましからざる心理もそういうときに業界間で動く気配もなきにしもあらずであります。先般来商社その他集めまして、社会的責任を特に強調して要請し、商社等も自粛して相互に自戒をいたしますという約束をいたしまして、自来われわれはこれを監視しておりますと同時に、各物資ごとに、通産省が中に入りまして、需要者と供給者の需給調整協議会を開きまして、そしてどのくらい手持ちがあるか、どのくらい需要があるか、どの方面に物が足りないかというようなことを、通産も入りまして、その調整をずっと続けてきております。これはある程度効果をあげてきていると思います。幸いに先般売り惜しみ買いだめ規制法案が通りましたから、いざというときにはこれを発動いたしまして、そういうおそれのあるところには実地調査をやって、そして帳簿その他も調査する、そしてもし不当な利益をむさぼっているというような場合には、売り渡し価格等についても、適当な値段を、こちらでも行政指導で、不当なマージンのないようなやり方で売り渡すことを勧告する、あるいはそれについて公表する、そういうような形で、この法律を最大限に生かして、いまの物価の不当な騰貴を抑制しよう、こう考えておるところでございます。
○松岡委員 大臣の御決意を承りましてよくわかりました。
 この上、ちょっとこまかい点について、企業局長でもいいですが、次長でけっこうです。次長にお伺いいたしますが、具体的に言うと、ソ連から入っている木材です。これの輸入価格というものは通産省でおわかりなんです。ところがこれは、彼らはなかなか組んでおりまして、売り渡し値段については相当いまでも幅を持っておるのです。彼らの意見を聞きますと、長いこと損しておった、こういう機会にこそ一もうけせぬことにはどうにもならぬというえてかってな理屈を持っておるのです。輸入価格ですから原価は明瞭で隠すことはできないのですが、そういう点についてどういうふうに指導しておられるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
○橋本政府委員 一般的に輸入物資あるいは輸入価格について申し上げますと、先般の円高相場に移りました際に、そういった効果を一般消費者にも還元いたしたいということで、十数品目につきましてその価格の追跡調査をやる、その結果を一般に公表いたしまして、割り高商品に手を出さないように指導いたしてきておるわけであります。また並行輸入制も認めることにいたしまして、ソールエージェントによるところの独占的な価格を排除いたしたいと考えて実施いたしておるところでございます。
 ただいま御指摘の木材価格につきましては、ただいま輸入価格の資料を手元に持ち合わせておりませんが、木材につきましては、一般の過当投機の問題のほかに、需要想定について過小に見積もったきらいがあったのではなかろうか。さようなことから、輸入量そのものは例年とさほど減っておりません。むしろ若干増加して入っておるわけでございますが、それに見合う需要が、当初想定されたよりも非常に高く出ておる。たとえば公共土木事業投資を見るにあたりましても、やはり今回の苦い経験からいたしまして、原材料の供給面からだいじょうぶであるかどうかというようなこともチェックして対処する必要があるかと思っておりますので、需給の想定を十全にやり、かつそれに対しては内外の商品を問わず供給を確保するという心がけも必要かと考えております。
○松岡委員 橋本企業局次長にもう一度お伺いしたいのですが、羊毛について、かなり商社は地元で強い力を持っておりまして、前もって買い付けの契約もする、そうして価格を操作してつり上げて内地に持ち込むという形跡があるのですが、その点どうお考えになっておりますか。
○橋本政府委員 羊毛価格が異常に高騰いたしましたことは事実でございますが、この原因としましては幾つか考えられると思いますが、一つは、オーストラリアにおきます羊の頭数が大幅に減った、伝えられるところによりますと、一昨年一億六千万頭おったのが、昨年には一億四千万頭と非常に頭数が減っておるといったところからの問題が一つございます。それからいま一つは、天然繊維に対するいわゆる見直し需要というものが非常に伸びてまいりました。それに加えまして東欧、ソ連等の買い出動があったといったようなところから、御指摘のわが国商社によるところの買い占め的動きがあったのじゃなかろうかといったような問題点が出てくるわけでございますが、買い占めという具体的な明確な判断はできないまでも、やはりただいま申し上げましたように、供給は減少見込みである、需要は天然繊維の見直しということで予想よりも上回ってきておるといったようなところから、やはり当初において買い急ぎをやったのではなかろうか、それが各商社に波及し、あるいはその他の国に波及したといったようなところから羊毛が異常に高騰したというふうに解釈いたしております。したがいまして、断定的に思惑買いがあったということは言い得なくても、少なくとも買い急ぎ的な傾向があったということは言い得るかと思います。
○松岡委員 大体その点はわかりました。この商慣習の徹底ですね、これはぜひ私は本省あたりで間断なくやっていただくことが必要である。と同時に、やはり生産者に対する原価計算、これはもう今日の段階においては、生産者は原価計算というものをみな持っておるのですから、賃金の値上げに対しても確固たる原価計算を持たなければ、これは折衝できないのです。ですから、この原価計算に対する各企業体からの資料をお取り寄せになっておりますか。これをひとつお伺いします。
○橋本政府委員 特に法律で規制対象にしておるもの以外は、原価計算をとっておりません。
○松岡委員 私はそういうことこそ行政指導の範囲でできるのではないかと思うのですが、法律がないからといって、今日、公共の福祉ということが一つの基本原理なのですから、これはやはり出してもらわなければならぬと思うのです。つまり、公取に言われれば出す、通産省から言うたら出さぬというような態度のところがあったら、これはもう遠慮なく公表されていいんじゃないかと思うのです。少し手かげんがなされ過ぎる。私は、物資に対する行政指導というものが非常に広範な活動を必要とするゆえんのものは、原因の追及ばかりではなく、やはり政府の意見というものを一般消費大衆に認識さしていただくことが非常に大事だと思うのです。結局、物の売り買いというものは、消費者が買い手なのですから、いよいよ理不尽だ、いよいよ不正だと思えば、消費者は買いだめどころかボイコットするかもしれません。これがやはり商社にしても生産者にしても脅威なんです。特に最近見ますと、化粧品なんかの会社ですね、これは販売価格を指定している。請求されれば公取には出す。こういう場合にも化粧品会社ではかなりぼろもうけをしているという徴候があらわれている。というのは、あるところでは百円の化粧品が出て、あるところでは数百円でなければ売らない。一体どうしてそういう現象が起こるのか。そういう点で結局、原価計算の追及以外に物価の行政指導というものは尺度のきめようがないんじゃないかと私は思うのですが、どうでしょう、橋本さん。
○橋本政府委員 御指摘の点重々ごもっともだと思うわけでございますが、原価計算と申しますのは、やはり企業活動のすべての面から集約されて出てくるところの、別のことばで言いますと、企業として最も機密度の高い部分であるかと思います。さようなところから、たとえば電力料金といったような公共料金等につきまして、その価格改定、料金改正の必要性がある場合、そういった場合に限って原価計算書等を取り寄せてこれを審査するといったことが特別法に基づいて許されておるわけでございますが、さような特別の規制立法のない商品につきましては、やはり当方としては、行政指導の範囲内で相手方が出す、協力をする場合にしか入手し得ないというのが現状でございますので、御了承いただきたいと思います。
○松岡委員 和田官房長にお答え願いたいと思うのですが、いま国民は物価に対してもうどちらかというと神経過敏になっている、いらいらしているというのが現状なんですが、そのいらいらさを解決するものは、何といっても政府の価格に対する行政指導の態度、方法、そういう問題について国民に理解を与えていただくことが非常に大事なことだと思うのです。それがどうも立ちおくれておるような感があると思うのですが、ひとつ通産省が先頭を切って、そういう面に対して、テレビやラジオがイニシアチブをとるようなことでは、これはもう私に言わせれば立ちおくれだと思うのです。もう少し政府自身が自信を持ってその局に当たっていただきたいと思いますが、官房長いかがですか。
○和田(敏)政府委員 一九六〇年代におきましては、通産省の行政の一つの姿勢といたしまして、やはり輸出の振興と申しますか、国際的に戦える企業、あるいは国際的に願っておる商品の供給ということを最大の眼目としてまいったわけでございますが、先生御承知のとおり、わが国の国民所得もほぼ西欧と比肩し得るところまでまいりまして、いま問題になっておりますことは、先生御指摘のとおり、産業活動と国民生活との接点の問題ではなかろうかと思います。接点の問題といたしましては、公害、過密などと相並びまして、物価問題がその一つの項目として考えられます。国民所得は総体としては上がりましたが、国民生活の間に過密、交通渋滞、物価というような観点で一般的にいらいらしたものがあることは御指摘のとおりでございまして、通産省におきましても、先般国会で御審議を賜わり、通産省設置法の改正を見たわけでございますが、これを契約といたしまして、今後ともこの国民のいらいらを解消するために、特に物価問題等に関しましてはZ旗を掲げまして、それの安定を期することを最大の眼目といたしまして、今後の行政を進めたいと考えておる次第でございます。
○松岡委員 官房長にもう一言お尋ね申し上げたいのは、いま日本の工業力というものは非常に高いです。これを維持していく上において最も大事な問題は資源の確保であります。日本自体における資源というものは大体が足りないにきまっておる。結局海外に求めるのですが、この資源調査について一体――私もこの間アフリカのギニアに参りました。ボーキサイト、鉄鉱、これから開発する段階になって各国がボーキサイトに目をつけておりますが、鉄鉱についてはこれからであります。かなり品位の高いものもあるのですね。平均六五%、埋蔵量約百億トンと称しております。こういう問題に対しても通産省が率先して御調査をしていただかなければならぬのではないか。業者にばかりまかしておける時代ではないと思うのですね。だから、たとえばギニアなんか行きますと、これはもう全土一種の牧場です。草原の牛はもうそのまま草原の草を食って生きているような状態で、日本は牛が足りなければ、牛の育成を両国の間で話を進めれば、食肉牛なんというものは相当生産される可能性がある。そんなわけで、農民は生活を高めるためにはあまり働かないで、現状維持でやっているんですね。だから、収入はある、そうすれば豊かな生活ができるということになれば、大豆なんというものは、百万トンはおろか、三百万トンでも五百万トンでもつくってくると私は思う。気候のいいところですから、一年に三回もできる。そういうことで、ひとりギニアばかりでなく、アフリカとかアジアの諸国にも調査官を派遣して、絶えず調査をせられる必要があるんじゃないかと私は思っております。
 ギニアの問題についていずれ大臣にもお願いをしなければならぬと思っておりますが、きょうは官房長に、そういう資源調査の人たちを、予算もお取りになって、出す。私は、未開発の資源がまだまだアフリカにも各国にあると思います。ことにアジアにもあると思います。この点はいかがで
○和田(敏)政府委員 わが国におきましては、ただいま御説明申し上げましたように、国内的なサイドにおきましては、国民所得の増大に伴いまして、国民生活面と産業サイドの接触面におきまして、国民生活の充実という観点から、申し上げましたような公害、物価、過密というような問題に今後十分対処をしてまいり、真に国民が充実した生活が行なえるよう通産省としても一そう心を引き締めてまいりたいと思います。
 他面、御承知のようにわが国経済は、海を越えての循環によりまして、その経済活動が一そう発展可能になるのではないかと考えておる次第でございますが、御承知のように、わが国におきましては見るべき資源がございません。そのような観点におきまして、今後は、従来の輸出振興という形をさらに竿頭一歩を進めまして、均衡のとれた貿易の拡大、つまり相手国市場と申しますか相手方地域に対しまして、わが国とつき合っていくことが当該国にとっても利益であるというふうな形での貿易、商品の流れ、あいは海外経済協力等を進めていきたいと考えておる次第でございます。特に資源関係に関しましては、今後エネルギー庁というものを今回の設置法で設置することになりまして、その庁におきまして、御指摘の海外資源あるいはエネルギーの安定的な供給の確保ということに関しまして十全の調査を行ない、かつ、調査に基づき行政を実施していきたいと考えておる次第でございます。
 先般、当方中曽根国務大臣の中近東往訪ということもございまして、わが国が今後安定的に、かつ、世界的にフリクションを起こすことなく、われわれの必要とする油を長期的に入手していくというための御旅行でございましたが、今後とも油に限らず、わが国経済の発展のために必要な資源関係に関しましては、引き続き相手国政府あるいは相手国企業と十分な話し合いの上に、これらの円滑な海外取引を行なえるようつとめてまいりたい所存でございます。
○松岡委員 最後に、通産大臣が先般油の関係で御出張になりました件は、アフリカあたりでも非常に好感を持っておりますし、どうか大臣にアフリカ全部にもひとつお越し願いたいというふうな声が満ちておるのです。私見ますと、最近日本に対する認識が非常に変わってきているのじゃないかと思うのです。やはり責任ある所管の大臣の皆さんがそれぞれの立場から海外へ出られることは、私はほんとうに大事なことだと思っております。どうかよろしく御採択願いたいと思います。
 どうもありがとうございました。
○中曽根国務大臣 資源問題は日本にとりましても非常に重大な問題になりつつあります。通産省としましては、この資源確保の重責をになっておりまして、この面につきましてわれわれもいろいろ改革を加えて、勇敢に前進していくようにしていきたいと思います。けさほどもマダガスカルの外務大臣が参りまして、いろいろ国情も伺い、経済協力についても話をしましたけれども、いま松岡先生お話しのように、アフリカ地帯というのは将来非常に有望であり、かつ、日本を期待している地域のように伺っておりますので、私もできるだけ機会をいただいて現地を視察することを心がけていきたいと思います。
○宇都宮委員長 原茂君。
○原(茂)委員 日本の歴史を見ても、異常な物価の高騰インフレ傾向の非常な進み方など、おそらく大臣も相当苦労されておろうと思うのですが、これはもう一政府の問題ではなくて、国民的に何とかしなければいけない重大な問題だろうと思うのであります。本来ですと、いま松岡先生のお話にありましたように、基本的に物価をどうするか、これを根本的な問題として取り上げてまいりたいわけでありますが、時間も実は非常に限られておりますので、端的にずばり質問のほうから入ってまいりますので、御答弁も、あまり説明等要しない簡単な御答弁をちょうだいいたしたい、かように思います。
 まず最初に、現在の状況から判断いたしますと、政府が当初予想いたしました五・五%というものがおそらく一〇%近くまではね上がる、そういう状況にまでいまはなってきたと思うのでありますが、この間消費者米価の据え置きその他三つの大きな項目にわたっての手当てをされました。現存のところで、わが国のいま値上がりしつつあります指数を、やはり一〇%くらいまでいきそうだ、大臣はこうお考えでしょうか。指数をひとつ……。
○中曽根国務大臣 現在の情勢を見ますと、昨年に比べてその程度までいくことをおそれておる、そういう状況であると思います。
○原(茂)委員 そこで、この間政府がおとりになりました緊急措置というのでしょうか、消費者米価の問題もあり、それから景気の過熱に水をかけるというのが目的で公定歩合の引き上げをやって六%になりました。あるいはまた公共事業費の支出の繰り延べというようなことをおやりになったのですが、これで現在のところ政府としてやるべき手当てはまあまあ終わった、基本的にはこの三つを中心にいま手当て、措置を行なったので、まずここで押えることができる、こうお考えになりますか。
○中曽根国務大臣 政府としましては、先ほど御答弁申し上げましたように、まず過剰流動性の日本銀行に対する還流、それから個別物資に対する抑制措置、それから総需要の抑制、そういうふうな段階にずっと進んできたわけでございます。まだはっきりした数字は出てきませんが、大体四月くらいまでがピークで騰勢はやんできております。もちろん、上がっていることは事実ですけれども、上がる率が四月がピークで、あとは少しずつ弱まってきている。そういう状態でありましたところに、今回、大豆問題が起き、くず鉄の問題等が外部から起きまして、それで非常にいま対策に狂奔しているという状態でございます。まだまだ私ども、この物価抑制策としてはやることはあると思っておりまして、これで満足しておりません。ただ大事なことは、バランスがとれてやらないというと、どこかにひずみが出てくる、そういうことでありまして、総合政策として網を全面的に張って一つ一つを固めていく、そういう形でいかないと間違うと思っております。
○原(茂)委員 確かに大臣おっしゃるように、日本の今日までの総需要政策、これが金融偏重という弊害をおかしてきたことを改めつつあるということは非常にいいと思いますが、私はもう一歩踏み込んで、現段階で政府が思い切ってやらなければいけないことが、御存じだがどうもできないというジレンマにおちいっているのじゃないかという感じがするわけです。尊敬する中曽根大臣が、あれもこれもやりたいと思うのだが、どうもできない。しいて私ども外野がずばり言わしてもらうなら、どうもいまの内閣ではいけない、中曽根首班でもできたらやるんじゃないかなと思うようなことが私どもが考えてもあるのですが、一つの例をもって言うなら、たとえば、いま国鉄運賃の参議院における審議が進んでいます。これがもし通ったといたしましても、あるいは健保もその意味では同じですが、ずばり政府が政治姿勢として国民にこの物価抑制に体当たりでやっているのだという姿勢を示す一例としてでも、私はいままで延びてきた国鉄運賃の改定、こういうものも思い切って一年凍結するというような強い姿勢が、それはいろいろな政治的なからみ合いがありますからむずかしいこととは思いますけれども、そのくらいな姿勢を示し、大胆にやるような配慮がないと、いまおっしゃったようにクリーピングに総体的にはまだ値上がりを続けていきます。率は確かに少し下向きにゆるくなってきたには違いないのですが、まだまだとても予断を許さない状況にある。こういうものをすぽっとある程度のストップをかけようとするなら、やはり政治的な強烈な手を打たなければいけないのではないかと思う。そういう面で、どうも、いま関西電力その他電気二社あるいはガス会社、こういうものの値上げに対して、通産省からいろいろと折衝をした結果どうなるか知れませんが、これも現在のように、経済企画庁のほうでは少なくとも年内ぐらいは値上げを延ばそう、通産省の立場は、新聞で見る限りでは、どうも会社そのものの事情からいって無理ではないかというようなことが、食い違っているといいますか、この重大な公共料金の非常に大きな作用を与える課題に関してまで政府部内の意見の統一が、こういうものを引き下げるという方向で一致していないというようにすらわれわれには受け取られるわけであります。やはり思い切って、国鉄運賃はもちろんですが、この際せめて経済企画庁の言うような、年内だけはガス、電気に関して値上げをさせないという強烈な行政指導というものが示されない限り、ムードとしてのいまの値上がりというものを、逆のムードとしてぴしっと押えていこうという、冷却する効果というものが出てこないのではないか。私は、これは大臣に申し上げて釈迦に説法ですが、政治の一番大事なことは、やはりそのときに応じて、あるときには、何でもかんでもデータをもとにして考えるというのではなくて、直観的な姿勢というものがあっていいのではないか。ここまで来た物価問題なりインフレ傾向のおそるべき勢いというものを考えたときに、もう長い経験ですから、理屈だとかあるいは実態を調査だとか、原価計算だとかいうようなことを手順として踏まなければいけない、配慮はわかるのですが、現在における物価、インフレヘの対策というものはやはり直観的な姿勢というのも非常に大事だと思う。私は大臣がそういう意味で思い切った強い姿勢を直観的におとりになることがこの際は必要ではないかというふうに考えますが、いまのもう一歩突っ込んだ何か強烈な行政指導、物価、インフレヘのストップを意識した手段をとにかくここでお講じになる気持ちがおありになるかどうか、直観的な指導というものがあってしかるべきだと思いますが、どうでしょうか。
○中曽根国務大臣 原先生御指摘のように、確かに直観的な政治的決断というものを、政治家の英知によって政治の段階では必要とする場合があると思います。しかし、この公共料金の問題に関しましては、いま政府の部内でいろいろ検討を加えている段階でありまして、計数的基礎をつかむということがやはり決断をやる基礎でもございます。企画庁と通産省の間に意見の相違があるということを私は承知しておりません。企画庁がどういう考えを持っているか、われわれのほうへまだ言ってきてもおりませんし、小坂長官からもそういう話は聞いておりません。われわれのほうも、この問題についてどうするかという考え方を企画庁のほうに申したこともないのです。それは所管省であります。通産省が、コンピューター等を使いまして、厳格にいま経費やあるいは会社の経理の内容を査察しておるところでございまして、これが終わらないうちは政治的決断というものも容易に出すべきでない、そういうように思っている段階でございます。いずれにせよ、政府としては統一した態度で、一体のもとに、もちろん政治的情勢も踏まえてものを考えて、決断するときにはしなければならぬと思います。
○原(茂)委員 いまお話しのコンピューターその他を使っての計数的な基礎、これは非常に大事だと思いますが、私の申し上げました英知による直観、直観による強力な指導というようなものが政治に必要だというその意味では、少なくとも今日まで論じられてきた電気料金、ガス料金というようなものに関して、現段階でやはりコンピューターによる計数的な基礎を求めているということではおそ過ぎるように思うのであります。そういうもので計算する前に、もう政治情勢の中でこれに対する一応も二応もストップをかけるなり延ばすなりという前提がそこにあって、そのための基礎的な数字を求めていくような態度でなければ、基礎的な数字、計数的な基礎を求めた結果によってはどちらかに考えるという現在の政治情勢ではない。現在における政治家として一番大事なことは、公共料金に関する限りは、まず前提としては上げさせない、上げるべきではない、この前提に立って必要な基礎を求める計数的な計算、コンピューターの使用というようなことのほうが思想として非常に大事なんじゃないか、こういう考え、その態度がないと、私はまだまだ今後に相当大きな問題を起こしてくるだろうと思うのです。突破口が電気、ガスで開かれますと、あと続いてずっと出てくる問題は目に見えているわけでありますから……。などを考えたときには、まさに政治的な直観的な配慮というものの裏づけには、やはり前提として、現情勢においてはあちゆるものをいかにして上げないか、いかにして繰り延べるか、いかにしてストップをかけるか、この政治的な姿勢がない限り、私はこの問題に対処する姿勢ではないというように考えているわけでありますが、これだけにあまり問題をしぼるわけにまいりません。
 しかし、いま私がもう一度くどく申し上げましたことに対して大臣からのお考えを伺いたいのと、続いて質問を先に申し上げたいのでありますが、たとえば、こまかい問題になりますが、もうすでに日銀などでは八月ごろになると第四次公定歩合の引き上げというようなものを考えているようにすら伝えられている。私は、現段階でもうそのことがやられていい段階だ、まさに過熱の状況というものはとても鎮静していない、現在のポイント五上げによる六%で鎮静に向かっているか、とてもじゃありませんが、もちろんこの金融政策だけで今日の状況を鎮静に向かわせることは不可能だと思います。しかし国務大臣としては、そのことは現段階においてやはり必要な措置の一つだということをまず第一にお考えになるべきだと思うが、どうでしょうか。
 その次に、銀行でいままでやってまいりました貸し付けの窓口規制の強化ですが、これをもっと思い切ってやるべきではないか、もっと思い切ってやる必要がある。金融政策というのは、先ほどほかのことでバランスということばが出ましたが、非常に大事なことはやはりバランスだろうと思うのでありまして、公定歩合の引き上げに見合って窓口規制を強化するときには、その強化の率のほうをぐっと引き上げることのほうが、ある意味でこういう事態におけるバランスということになるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。そうして強化をすべきだと思います。
 次に、いま公共事業その他の繰り延べという措置を講じられました。これは確かに必要だと思いますが、やはりこの際思い切って一般予算全体を見直しまして減額修正、これを臨時国会を開くなり何なりして減額補正を思い切ってやるというようなことが今日の対策の一つとして必要だと思いますが、いかがですか。単なる公共事業の繰り延べによる事業の抑制というようなことだけで、行政指導が中心で、あるいは予算支出の繰り延べが中心でというのをもう一歩進める必要がある、そう思いますが、この際それを必要だとお考えになるかどうか。
 それから、さきにも触れたわけでありますが、やはり公共料金だけは何が何でも一年間凍結、このことを思い切って踏み込んでやらないことには、どうしても実際上の政治の力による、物価高騰、インフレ、これに対する対策を講じましたということには現段階ではならない、こう思いますが、いかがですか。一緒にお答えいただきたい。
○中曽根国務大臣 まず公定歩合の問題でございますが、総需要を抑制する必要は確かにまだあると思います。そういう意味におきまして通産省としても、民間設備投資がかなり強く出てまいっておりますので、自動車はじめ関係業界に協力願って、この設備投資の削減を実はやっておるところであり、最近の経済を見てみますと、マネーフローばかりを実は考えたきらいがありまして、戦後の物動計画に見合ったマネーフローという思想が足りなかったというふうに反省いたします。そういう意味でマネーフローの背後には必ずそれに見合う物の調整がくっついていかなければならぬ、そういう発想をもとにして、通産省においてもそういう新しい考え方に立った通産行政というものを大蔵と一体になってやるように、もう数カ月前から指導し始めておるところでございます。そういうふうにして物の流れと金の流れというものはバランスをとる、そういうことをできるだけきつくやっていきたいと思っておりまして、公定歩合の問題につきましてはもう少し様子を見るべきではないかと思います。
 第二に、窓口規制につきましては、重点的に規制を強化するということは賛成であります。
 それから減額修正の問題は、これは公共事業その他の契約率を九月まで昨年七〇%程度であったものを四九%に削減した、こういう効果が次第にもう出始めておりまして、これらの情勢を見つついくべきであって、減額修正は目下のところ考えてはおりません。
 それから公共料金の凍結の問題でございますが、公共料金の物価における比重というものを考え、また公共料金はできるだけ抑制しなければならぬ、そういう基本方針に立って私たちはこの問題を処理していきたいと思いますが、凍結するということがまた逆の面において一部の産業あるいは流通部面においてひずみが出てくる、その結果、次の段階にかなり高い率の騰貴が行なわれる、そういう危険性もなきにしもあらずであります。ニクソン大統領が賃金の凍結をやりまして、三カ月か四カ月の暫定措置をとって、それを解除したら、そのひずみが爆発するということが次の段階に起きた。やはりそういう経済自体を考えると、ある程度の長丁場の安定、そのために次第に冷やしていって、あまり大きなショックを起こさせないでならしていく、そういうことが賢明であるように私は思いまして、公共料金の凍結ということは必ずしも適当ではないのではないかと思います。
○原(茂)委員 公共料金のせめて一年ストップということに関しては、投機的な爆発的なというような御心配もあります。私はそれに対する対策もやはり講じていくべきだと思っておりますし、この件に関しては、まだ申し上げなければいけないことがあるように思いますが、次の機会に譲ります。
 そこで、もう一つ、二つ追加してこういうことをやる必要があるのではないかと思うのです。
 まだまだ過剰流動性というものは非常に高いわけであります。これがなかなか吸収できない。こういうときに安定国債、こういうような考え方をずばり実施に移すべきではないか。この考え方は、同時に銀行における準備率の引き上げ、これも少し思い切ってやるということが必要ですが、そういう手だてをしたほうがいいのではないか、こういう考え方があります。
 もう一つは、現在需要シフトインフレ、こういう状況にありますが、こんなときの手当てとしては思い切って緊急輸入というのをもっと大胆にやるべきじゃないだろうか。セメントがいい例なんですが、どんどん部門を広げて思い切って緊急輸入を先どりでやっていく、ある程度の危険を感じ、ある程度の年間の予想ができたときには、いまのようにあとを追っかけてやるのじゃなくて、徐々に緊急輸入というものをばかばかっと思い切った手を打つというようなことも現段階ではやる必要があるのじゃないか、というよりはぜひやってもらいたいという感じがするわけであります。現在また輸入インフレという状況がだんだん濃厚になってまいりました。これは思い切ってわが国の外貨のたまったものをはき出して、逆に日本のほうから円高相場というのをぐっと誘導していく、あるいは大胆な言い方ですがそのくらいのことをしない限り、完全なわが国の総合的インフレ対策というものにはならないのじゃないかというように考えますが、まずこの三つについて意見を……。
○中曽根国務大臣 安定国債という発想については、私も賛成であります。これは過剰流動性を還流させる、あるいはまた消費需要を抑制するという考慮からいたしまして、われわれは検討してみたいと思います。
 それから緊急輸入についても、われわれは賛成であります。ただ、そういう手配をいろいろやりまして、たとえば牛肉のようなものは去年一年間で七万五千トン程度入れたのを、ことしは四月、五月は七万トンばかり入れておりますし、豚肉等についてもいろいろ手配をしておりますが、残念なことには、最近は緊急輸入しようとしても、そのもの自体が外国にないというような情勢が出てまいります。しかし、世界情勢を見ますと、結局現在の各国におけるインフレ高進というものは、私三つの原因があると思っております。一つは食糧不足、それから第二は石油燃料不足、第三はベースアップ、この三つがあるだろうと思うのです。そういう面からいたしまして、この高物価時代というものはしばらく続くという危険性があると思います。これが半年や一年ですぐぴっちりやまる、そういう世界情勢ではないように実は思うのでありまして、ちょうど昭和二年から昭和六年ごろの世界的デフレ、これは各国を襲ったデフレでありますが、その逆が今度はインフレとして世界的に来ている時代に入った、そういう気がいたします。あのデフレの時代は、浜口内閣の金解禁その他でやはり数年続きました。それを克服するために、アメリカにはニューディールが出たり、日本では満州事変が起きたり、ドイツではヒットラーが出てきて悲劇が起きたわけでありますが、今日は逆の形が出てきておりまして、これを円満におさめていくためには、よほど英知を尽くして、国際協力をもってやらないとできない段階になってきているんじゃないだろうかと私は思います。ですからGトエンティーとか大蔵大臣の会議をやっておりますけれども、むしろ物資を所管する大臣の会議が必要ではないかと思われるくらいの時代に入っているのではないかという認識を持っております。そういう意味において国際的協調裏にこういうものをいかに解決するかという考え方をもって私たちは言いたいと思っておるわけでございます。
 第三点は、これはいま御答弁申し上げましたように、国際的に資源関係の物資が騰貴してまいりまして、各国とも伝染病が流入しているという状態で、インフレという口蹄疫が入っているような情勢になってきております。これは長期的に見ますと、一国だけでなかなか克服し得ない。それで一国がこれをやるとすると、国際市場を撹乱するという問題がまた出てきて、この問題がまた国際的な非難を受けたりいたします。そういうような面から、やはり先ほど申し上げましたように、国際的なものの面の協調方策をどう考えていくかという大局的なことをやって、かつてデフレのときに各国がブロック化して、そしてついに大戦の悲劇に突入したようなことを今度は絶対避けなければならぬ、そう思っております。
○原(茂)委員 私も同感の部分もありますし、情勢の判断としては同じであります。ただ、確かにインフレ過程という世界的な状況にあることは間違いないのでありますが、であればであるほどに、わが国の国民生活を考えたときに、これによりベターな措置を講じていく、これが日本の政治ということになるわけですから、そこにいろいろな国際協調その他の問題もあるでしょうが、そこを苦しみ抜いて、日本国民の生活を守り、利益を守っていくという、インフレ下における日本の政治のあり方というものは考えられていいのじゃないか、こういうふうに思いますし、いまのお話のデフレ、インフレという問題で言うなら、現在もうすでにスタグフレーションというような状況が非常に強くなってきているというようなことも実は考えるわけでありますが、少しこまか過ぎるかもしれませんが、つい先ごろOPECなどの関係で、油の業者の組合連合といいますか、これが値上げをしたいというようなことを言ってきたときに、いろいろな過去の事例をあげて、計算をさせながら、通産省の指導で、一応その値上げはストップになった、こう新聞に報道をされていました。いいことをしたと思いますが、ただ石油業者の側から言いますと、大口需要家に対しては何が何でも値上げをしてもらうのだという強い姿勢を捨てていないようであります。先ほどの電気、ガスの料金のストップというようなことと関連して、今日まで国際的なああいう貨幣の変動のあったときに、どのくらいの利益があったか知りませんが、いずれにしても、いい段階もあったのですけれども、現在における油の値上げというものは、大口需要といえども許してはいけないと思うのですが、これは無理である。とにかく現に入ってくるものが値上がりしているのだし、一割以上も値上がりしているのだから、上げなければならないということになる。その上げ幅というものは、思い切って抑制する指導をすると同時に、一般の消費者に対してのガソリンその他の値上げというものは、これは常識としては、秋口になったら何とか上げてもらえるだろうということが業界の一つの期待であり、何かそれが当然のことのようにすでに考えられ始めているのですが、通産省としては、これに対しては、いつまで値上げをさせない、大口需要に対しても同じだとお考えか、秋口に至るまでに一般の油も値上げさせてもらえるだろうという業界の期待にこたえるのかどうか。これをついでにお聞きしておきたい。
○中曽根国務大臣 政府の方針は、電力にせよ、ガスにせよ、公共料金はできるだけ抑制する、そういう基本方針を持っておりまして、そのほかの主要物資につきましても、消費生活及び生産活動に影響するところは多大でありますから、同じような精神に基づいて、できるだけこれを抑制するということで、石油についても同じ態度で臨んでおるわけでございます。いろいろ業者のほうについては、また言い分があると思います。OPECの側におけるテヘラン協定あるいはリヤド協定、あるいはジュネーブ協定等によって価格が引き上げられた、そういう理由もあると思いますが、また一面におきましては、円の変動相場制によって円高になってきている逆の面もございまして、そういう面をよく計算をいたしまして、そしてできる限りがまんしてもらうように、このときに物価引き下げに協力してもらうように、各業界に対して私たちはやっておるのでございます。それと同じ精神で石油に対しても臨んで、できるだけ抑制するという方針で進みます。
○原(茂)委員 少なくとも秋口には一般の消費者に対しても値上げをしてもらえる、この期待を裏づけるようないまの答弁のような気がするのですが、私は、もっと大胆に、少なくとも年内はさせないとか、一年間は認めないといったような、ずばりという姿勢が示されないと、やはりこの思惑的な物価の高騰というものを引き起こす原因になるのじゃないかと思うのですが、先ほどからこれはこまかくといって前置きしてお伺いしているわけですが、秋口になると一般消費者にまで油の値上げをさせるようなことに結果的にはなるのですか、少なくとも年内はさせないというような決意なのかをもう一度お伺いしたい。
○中曽根国務大臣 できるだけさせない方向で進みたい、こういうことでありまして、現在通産省は、権限のことを申し上げますと、御存じのように、公益事業等一部を除いては、そういう抑制の権限がないわけでございます。したがいまして、行政指導でやっておるのでありまして、そういう意味におきまして、原価の内容及び現在の物価情勢等をよく考えてみて、行政指導をできるだけ強めてやっていきたい、こう思っておるわけで、では、いつまでそれができるかということは、われわれのほうに法律的権限もございませんし、いまのところいつというふうにお答えすることは非常にむずかしい状態であります。
○原(茂)委員 行政指導の範囲しかできないのですから、強い決意というものが述べられることが必要なんであります。少なくとも年内はそんなことをすべきではない、させない、行政指導をするんだというようなことが一言大臣から出れば、大きく、冬を控えて油の買いだめとか買い占めなんということができない、ある意味では抑制される、値上がりも防げるというようなことにもなっていくわけですが、そういうふうな姿勢、そういう決意が、行政指導を行なうしかできないのですから、なおさら必要だ、こういうふうに思うわけです。
 ここで、ついでにお伺いしたいのは、経済企画庁から物価局の参事官がどなたかおいでいただいているのですが、買い占め防止、売り惜しみ防止の法律ができて、一番中心になります特定物資の指定、これは大豆をもう指定したのですか。
○斎藤説明員 両三日中に法律が施行になりまして、それに基づいて、今週なり来週にそういった特定物資を指定する予定でございます。したがって、まだ大豆等は指定になっておりません。
○原(茂)委員 最初に大豆の指定なんかをぜひやらなければいけないと思いますが、いまお考えになっている、来週特定物資に指定をしようという緊急指定をする物資というのは、どういうものを考えていますか。
○斎藤説明員 現在、物資の所管官庁であります通産省、農林省と協議中でございまして、企画庁といたしましては、大豆等について指定すべきだと考えておりますが、現段階は、まだ最終的に煮詰まっておりませんので、御了承いただきたいと思います。
○原(茂)委員 特定物資の指定だけは大至急にやる必要があると思いますから、希望だけを申し上げておきます。
 そこで、特に、いまお伺いした油を中心のソ連との交渉を今日までおやりになってまいりました大臣の立場でお考えをお聞きしたいわけでありますが、つい先ごろヤクートの天然ガスあるいはチュメニの天然ガスに関してアメリカの三社がおのおのソビエトとの間に長期の契約調印をいたしました。天然ガスのことは、私があえて申し上げるまでもなく、現在のように公害が日本にとって重要な課提であるときには、天然ガスの果たすこれからの使命は非常に重要であります。石油も大事でございますが、それにも増して天然ガスというのは、日本にとってもアメリカにとっても大事なものであることは間違いありません。これらの資源に関する外交交渉というのは、特にソ連に関する限りは、アメリカより日本のほうがチュメニなどを中心に非常に歴史は古かったわけであります。それがつい先日、二回にわたるヤクート、チュメニの米ソの契約成立ということになったわけでありますが、私は、いろんなこまかい経過もお聞きをしたり調べてまいりました。多く申し上げなくても、大臣のほうが御存じですから言いませんが、ここで二、三、問題点に考えなければいけないと思いますのは、第一の問題点としては、やはりわが国の場合、ソ連との交渉を行なっていくのに民間主導型でやってきた、こういう点が非常な欠陥じゃないかという気がするわけであります。ソビエトの場合、アメリカと交渉をいたしますのに、チュメニの契約ができましたそのときは、ニクソンとブレジネフ書記長との会談のあと、それからヤクートの交渉も、ニクソンがソ連を訪問した首脳会談の引き続きの重要課題としての契約、日本の場合には、民間のミッションが行ったり来たりという状況でソ連との交渉をしておりますから、ついソビエトの側も、日本のこの問題に関する折衝の一番のチーフを外国貿易省の次官という程度と言っては恐縮ですが、その人を責任者としての交渉にしかすぎなかった。ために、大事なことになりますと、ソ連の側も政府にお伺いを立ててという。日本の側とくれば民間主体でございますから、政府のほうはあとに引っ込んでいて、そして一体延べ払いをどのくらいにするとか、何年にするとか、利息は幾らだというようなことを陰で答えているだけというような姿勢が、今日相対的に考えたときに、ソ連との重要な資源外交にアメリカにおくれをとったと言っていいかどうか知りませんが、そういう感じを受けざるを得ないのであります。この点は、たいへんな重要な問題でありながら、ヤクートのガス田に関しては、何かあとで日本も参加する余地が残されている、前から日本の参加というものをある程度スペースをあけて米ソの話はできている、安西ミッションがそのために幾日に行くのだ、いま行きつつある、また交渉をするのだということが陰にあるようでありますが、相対的に言うならば、私は、間違いなく日本のこの重要な課題に対する外交の姿勢、交渉のあり方、国として取り組んでいかない、政府責任で全面的な折衝をしないところに大きな問題があり、今後も日本にとっては非常にわれわれの期待に反する結果を招来するおそれがある、こう思いますが、いかがでしょう。これが一つであります。
 もう一つは、近く、これも民間の安西さんが主体だと思いましたが、日ソの経済合同委員会等を中心に、この問題の具体的な折衝に入り、おそらくもうミッションが出発しておる。あしたあたりからやるのかどうか知りませんが、政府の側からも混成旅団のように、一部皆さんの部下が入っているらしいというようなことで近く行なわれるようであります。
 私は、二つ目にお伺いしたいのは、前段に申し上げたような理由からいって、やはり思い切って、中曽根大臣がその前後、できるなら一緒の時期にやはり国を代表し、政府を代表して即決するという心がまえで、あらゆる問題に責任を負って別途においでになるべきではないか。この際、非常に重要な問題でございますから、思い切って出ていって、大臣自身が全政府の責任を負って即決の姿勢を示す、これを実施に移すということが私は必要ではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
 それから最後に、三つ目にお伺いしたいのは、結果的に見ると、ソ連という国、アメリカという国の二大国で世界をある程度動かし得るという前提で先に先に話が進められているように思う、いろいろな問題に関して。私は、単にアメリカやソビエトに日本が利用されることにはふんまんを持つわけであります。そうではないといういろいろな事例もあると思います。しかし私は、これも直観的ですが、そんな感じをぬぐうことができない。そういう意味では中曽根大臣あたりは思い切って先に先にわが国のあるべき方針をきめ、アメリカやソビエトに大胆にわが国の主張すべきものを先に明示して、振り回すといっては恐縮ですが、ついこの間ソ連のアジア安保が先議だというようなことが松前氏から伝えられたと聞いておりますけれども、私はやはりわが国のやるべきことはこれだというようなことで、彼らのいう米ソ両大国に対して大胆に日本の国益を中心にした考え方を先行的に打ち出していく、そういう外交の姿勢というものが、資源ばかりでなくて必要だと思いますが、いかがでしょうか。この三つお伺いして終わ
 りたいと思う。
  〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕
○中曽根国務大臣 シベリア開発に関しまして、日本はアメリカとそうおくれているとは思いません。むしろアメリカが日本の列にようやく進んできた、そのように解釈しております。チュメニの開発につきましては、今里ミッションが行き、去年春に通産省からも係官を同行させまして、いろいろ調査をしてまいりました。その後事務レベルのいろいろな交渉がございまして、この七月に今里さんがもう一回ソ連へ行って基本契約的なものをきめてきたい、そういう段階まで進んでおります。ヤクートにつきましても、安西さんがソ連へ回り、アメリカに回り、そしていろいろな中間的な合意をやってきておりますが、先般ブレジネフ書記長及びニクソン大統領との会談できめられたものは、やはり基本契約に関する中間的な報告でありまして、大体日本の線まで進んできたというふうに私は解釈しております。いよいよこれから詰めの段階に入りまして、日本政府としてもコマーシャルな条件が整うならば積極的にこれを支援する、そういう態度をとっておりまして、おそらく田中総理が訪ソせられるときには、これは大きな話のうちの一つになるのではないか、そういうように私も観測しておりますし、できるだけ条件を合致させて成功させたい、そういうように念願をして、政府としての援助を惜しむものではないという態度をとっておるわけであります。
 それから私が行くということでございますが、ソ連という国は国営主義の国でございますから一先方は役人あるいは公団の総裁とかあるいは次官とかいう人が来て折衝の衝に当たるわけですが、日本は自由経済の国ですから、それを企業がやりまして、企業と向こうとの間で妥結したものに政府が財政的あるいは資金的援助を行なう、そういうタイプでどの国ともやっておるところでございます。これはアメリカも同様でございます。したがいまして、引き取り交渉に対する保証であるとか、あるいは金利の問題であるとか、そういうような問題で一々話がつかないというと政府が乗り出すことは必ずしも適当でない。いまそういう詰めをやろうという段階になってまいりまして、私が行って役に立つならば、私も行くことについてはやぶさかではございませんけれども、要は、どういう程度の内容でそういう二ードがあるか、そういう問題であるだろうと思っております。政府としては前向きの積極的な姿勢にあるということだけはこの際はっきり申し上げておきます。
 それから米ソが先行するということでございますが、米ソが先行していい二ともあります。悪いこともあります。先般のような核戦争防止協定というようなものはいいことであって、われわれは、こういうことがもっと勇敢に行なわれるならば、拍手かっさいするにやぶさかでない、こう思いますし、また米ソ結託というような大国主義的傾向が行なわれるならば、われわれはこれに対して反対の意向を持つものでございまして、中身によるものであるだろうと思います。しかし御指摘のように、日本外交というものが自主性を持って、そして外国に引きずられるという形でなくして、自主的にある程度切り開いていく、そして世界に貢献していくということも非常に大事なファクターであると思います。私は先般中近東へ油の問題等で行きましたが、リアクションも必ずしもなくはなかったと思います。しかしこれは、日本の長期計画を考えて、アジアにおける日本の姿勢をこの辺で国民の皆さまにもあるいは当該諸国にも見せて、そしてみんなでそのかまえで進んでもらうという気持ちがありまして、長期的な外交的な姿勢の問題も考えて実はやったのであります。これはいろいろ毀誉褒貶がありまして、批判もきびしいということは知っておりますが、私は間違っていないと思うし、必ずこういうやり方でなければ日本の生きる道はないと確信しております。こういう考えに立ちましてケース・バイ・ケースの問題を適切に処理してまいりたいと思っております。
○原(茂)委員 これで終わります。
 いまの中近東問題に関しては、確かに自信をもっておやりになる必要があるだろうと思うのですが あの考え方も相当部分私は肯緊に値すると思います。消費国同盟に加入しないするという問題はやはりあとに残るような気がします。それからほかの問題に関しては、大臣に対して私はだいぶ申し上げなければいけない異論があるわけでありますが、時間がありませんので、それが申し上げられないのは残念ですが、全部そのとおりだというわけにいかないということだけ申し上げて、きょうは質問を終わります。
○綿貫委員長代理 芳賀貢君。
○芳賀委員 委員長、ちょっと速記をとめてください。
○綿貫委員長代理 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
○綿貫委員長代理 速記を始めて。
○芳賀委員 中曽根通産大臣にお尋ねいたします。
 まず第一は、通産省所管になっておるところの自転車振興会の業務運営の内容等についてお尋ねしたいと思います。
 自転車振興会は自転車競技法を基礎にして設立されておりますし、同じ通産省所管では小型自動車競走法という法律があって、これはオートレース競技をやっておるわけであります。その他法律を基礎に置いたいわゆる公営ギャンブルとしては、中央競馬あるいは地方競馬、モーターボート等があるわけでありますが、きょうはこの公営ギャンブルのうち、主として自転車競技法に基づく日本自転車振興会の問題等について尋ねたいと思います。
 その前に、政府として、いわゆる公営ギャンブルといわれるこれらの運営について、一体これを必要悪と認めて将来も制度のもとでこれを維持していくという考えであるか、その点はいかがですか。
○中曽根国務大臣 競輪につきましては、いろいろ弊害の面もあることを承知しておりますが、また一面においては一つの娯楽として大衆に提供しているものでもございます。また一面において、地方自治体そのほかの緊急な財源の要素にもなっておるところもございます。いろいろな弊害につきましては、これを最大限ためるようにしながら善導しつつ自治体その他に役立てていきたい、そのように思います。
○芳賀委員 きょうは公営ギャンブルについての可否の論議はさておくといたしまして、日本自転車振興会に対して、法律の規定に基づいて、競輪の車券の売り上げ金から一定額を第一交付金あるいは第二交付金という形で交付を行なっておるわけでありますが、この競輪の収益による使途については法律にも明定されておるわけでありまして、その運営がはたして目的に合致した方向で進められておるかどうかという点について、業務の内容あるいは毎年の実績等について、この際できるだけ詳細に説明をしてもらいたいと思います。質問の都合上、昭和四十五年、四十六年、四十七年の三年間にわたっての実績等を中心にして説明を願いたいと思います。――ちょっと待ちなさい。大臣が答弁できない場合は、大臣からかくかくの理由で担当の政府委員から説明させるということを……。
○中曽根国務大臣 山形重工業局長から御答弁申し上げます。
○山形(栄)政府委員 御説明申し上げます。日本自転車振興会の補助を行なうにあたりましては、その前提といたしまして、通産大臣の認可を受けております補助規定等の基準がございまして、この基準に基づきまして補助を行なっておるわけでございますが、若干具体的に申し上げますと、毎年八月ごろ補助の申請手続を公表いたしまして、全国の公益法人から要望の公募を行なうわけでございます。この要望が取りまとまりましたところで、自転車振興会におきまして、さきに申し上げました基準に従ってこれを審査いたしまして、かつ法律に基づきます車両競技審議会というのがございますが、その審議会の議を経まして補助先を決定するわけでございます。
 なお補足申し上げますと、体育関係につきましては文部省が所管省でございます。また社会福祉関係は厚生省が所管省でございますので、体育関係及び社会福祉関係につきましては、両省の意見も事前に十分に聴取いたしまして、審議会でこれを決定いたすわけでございます。
 四十五年、六年、七年の補助の実績について申し上げますと、これは公益事業の面について申し上げますと、四十五年度全体の補助金額が四百五十九件、約百億円でございます。それから四十六年度は四百三十六件、百十七億円でございます。四十七年度は四百五十八件、百三十六億円でございまして、それぞれ各年度とも体育の振興、社会福祉の増進、医療及び公衆衛生の向上、それから文教その他公益の増進という、大きく分けまして四つのグループごとに審査の結果補助金を交付しておる次第でございます。
○芳賀委員 その基礎になる、過去三年でいいのですが、毎年度の車券の売り上げ高、あるいはそれに基づいた収益金の配分、内容的には自転車振興会に交付される一号交付金あるいは二号交付金、三号交付金その他納付金等に分かれておるわけでありますが、まず売り上げ金と収益の配分等が毎年度を通じてどういうふうに行なわれておるか、その点が明らかにならぬと質問を進めるわけにはいかぬわけです。
○山形(栄)政府委員 競輪の売り上げにつきましては、昭和四十五年度が五千四百四十二億円でございます。四十六年度が六千三百二十七億円・四十七年度が七千百八十七億円、相当の伸び率で推移しておるわけでございます。
 これらの売り上げの配分の原則でございますが、これは法律で明記してございまして、約七五%が車券の払い戻しに相なるわけでございます。それから残りが一応施行者の報償金ということに相なるわけでございますが、それの内訳といたしまして、いま先生お話しのように一号交付金、二号及び三号交付金に、それぞれ施行者収益金のうちの六・六%、六・四%、一・一%が交付、納入されるわけでございまして、その他選手に対する報償等々を除きまして、純粋に施行者の収入になりますものは四八・八%に当たるわけでございます。これは全体の約二五%の四八・八%でございますので、全売り上げに占めます比率で言いますと一二%くらいに当たるわけでございます。
○芳賀委員 次に、この交付金の中の一号交付金、二号交付金というのが支出目的が明確になっているわけですが、これを一号、二号に区分してどのような交付実績になっておるか。またその交付金、補助金によって、対象になる目的の事業、あるいは体育関係、社会福祉の増進等がどの程度期待的な効果をあげておるか、その点はいかがですか。
○山形(栄)政府委員 一号、二号の区分でございますが、四十七年度を例にとりますと、一号でございます機械関係に百三十九億円、それから二号の公益が百二十億円の配分の資金に相なっております。機械関係と申しますのは、いろいろと機械振興関係で非常に数多くの項目に出ておるわけでございますが、この公益のほうが先ほどちょっと申し上げました体育、社会福祉等に出ておるわけでございます。これを四十七年度に即しまして公益のほうの補助金、交付金の実績につきまして若干あれいたしますと、体育関係は日本体育協会を中心といたしまして、その他日本ユースホステル協会等々二十三件が交付対象になっておりまして、補助金額が二十六億円でございます。それから社会福祉関係の増進でございますが、これは全国にございます保育所、養護施設、心身障害者等の施設に出るものでございまして、たとえば、四十七年度におきまして保育所に全国で九十六件の対象に補助がなされておるわけでございます。養護施設が二十四件、特別老人ホーム三十二件等々、相当全国にわたりまして補助の対象が広がっておるわけでございまして、この辺は厚生省とも毎年度の重点補助項目につきまして御相談をいたしてきめておる次第でございます。
 それから医療公衆衛生関係でございますが、これは日本肺ガン協会、ガンの予防のための協会、それから日本赤十字、それから食品医薬品安全センター、結核予防会等々がおもなる補助対象でございますけれども、これを目的的に言いますと、成人病の予防施設というのが非常に多くて、四十六件四十七年度では補助の対象に相なっております。
 それから文教、公益の増進でございますが、これは最近の交通安全等の関係もこの対象に相なっておりまして、全日本交通安全協会、全国防犯協会連合会、日本環境衛生センター、それから国民休暇村協会等がおもなる補助対象でございまして、ここでは公害関係とあわせまして、青少年の育成施設全国で三十一件が補助対象に相なっております。
○芳賀委員 詳しい内容については後刻資料を提出してもらうことにしまして、ここで二号交付金といわれる公益事業に対する交付の問題ですが、これは補助金を交付する対象の団体というのは必ず公益人でなければならぬということになっておるわけですが、はたして日本自転車振興会として全国的にかかる目的を持った補助金交付の制度があるということを周知しておるのかどうか、一部の者だけがこれを承知して、そうしてこれを有利として活用するということになっておるか、その点はいかがですか。こういう点は大臣において承知しておられれば直接答えてもらいたいと思います。
○中曽根国務大臣 公募しますときは官報とそれから主要新聞に公示いたしまして、それで募集しておるようでございますから、大体関係者は知っておるのではないかと思います。
○芳賀委員 そこで問題があるわけですが、この自転車振興会の補助金を受ける場合には、一般の申請ではなかなか実現ができかねる。この補助金をもらうためには、どうしても特定の政党、率直に言えば与党・自民党ということになるわけですが、特定政党の特定の議員等の紹介、あっせんがなければ、幾ら公募の発表があっても、書類を提出しても、なかなか補助金を受領することができない。だから、与党の特定の議員さんたちにお願いしなければこれはだめなんだという点か相当広く伝わっておるわけです。こういうことは万々ないと思うわけでありますが、地方においてはそういう説が相当流れておるわけですが、これはどういうわけでそういう説が流布されるか、その点についてこれは局長からでもいいですけれども。
○山形(栄)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、振興会の補助は、これは八月ごろ募集いたしましてから、非常に詳細な手続を経て補助がなされるわけでございますけれども、地方の社会福祉施設、青少年関係の施設等、地元にとりましては非常に大事な施設及び計画でございまして、先生のお話しのとおり、与野党を問わず、われわれのところにもその実態及び必要性につきましてお話があることは確かでございます。
  〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕
しかしながら、先ほど来申し上げましたように、文部省、厚生省等関係省庁も加えまして、最終的には審議会の議を経てきまるわけでございまして、一部の方々の御意向で補助のしかたが歪曲されるというようなことは、われわれ万々考えられないわけでございますけれども、もし誤解がありといたしますれば非常に遺憾なことでございますので、われわれ関係者といたしまして、そういう点は戒心いたしまして、今後そういう点のないように、誤解の生じないような努力もいたしたいと考えておるわけでございます。
○芳賀委員 五種類の公営ギャンブルのうち、たとえば中央競馬の場合には、これは中央競馬会法によって、益金の必要額については全部これは国庫に納付するわけですからして、そこには問題は起きないわけですね。中央競馬の納付金は、四十七年度は約七百億円に及んでおるわけです。毎年急速に伸びるわけですが、これはちょうど四十八年度の畜産局関係の予算の総額と大体同額の数字になっておるわけです。中央競馬会の国庫納付金は、あげて日本の畜産振興に資するということになっておるが、こういう点は、ほとんど日本の畜産行政というものは、中央競馬会の納付金によって政策を実行しているというようなことになるわけで、国民から見ればまことにこれは奇異な感を受けるわけです。その他の振興会の場合には、振興会において適宜審査をする。もちろん最終的には所管の省において、通産省においては重工業局車両課が中心になって補助金支出の適否を審査して、結局支出するということになると思いますが、とにかく世上、いま言ったような特定政党の、しかも特定の議員等の紹介、あっせんがなければ補助金の交付を受けることは至難であるというような、こういう印象を与えておる。結局これは疑惑をはらんでおるということになるわけでありますから、この点については所管の通産大臣におかれても、絶対国民からそういうような不信、疑惑を招くことのない、公明な運営を、自転車振興会その他の振興会も大体同様であると思いますけれども、監督の責任者としての大臣の所信を承っておきたいと思います。
○中曽根国務大臣 えこひいきやへんぱなことが行なわれないようによく注意して監督をいたします。
○芳賀委員 私の思うに、これは結局自転車振興会の役員等の人事問題が一番関連を持っておるのではないかと思うのです。役員のうちの理事長、副理事長あるいは監事については、通産大臣の任命、複数の理事については大臣の認可を得て振興会長が任命するということになっておるわけですので、この人事あるいは役員構成というものは、やはり特定政党と癒着関係を持っておると思います。あるいは特定政党の特定の議員と特別の関係があるというような因果関係というものはこの数年定着した形で維持されていくということになれば、なかなか抜本的な改善はできないと思うのですよ。
 そこで、この振興会の歴代の役員について、就任以前の前歴等も含めて、どういう顔ぶれの諸君がその振興会の役員に就任しておるか、この点について、あとでよろしいですから資料として提出を願いたいと思います。
 この役員の構成、あるいは役員が中心になった業務の執行面に対して、特に監督の通産省として痛感されておる点かあれば、この際述べてもらいたいと思うのです。
○山形(栄)政府委員 役員及びそれぞれの方の前歴等につきましては、後ほど詳細に御提出申し上げたいと思いますけれども、この自転車振興会は自転車競技法に基づく特別の法人でございます。したがいまして、いま先生のおっしゃいますように、任命にあたりましても原則として大臣の任命という形式をとっておるわけでございます。非常に公正に業務が行なわれることが第一の眼目でございまして、全部そういうわけでございませんけれども、一番適正に公正に業務が行なえるという観点から人事がなされておるわけでございまして、現在の会長はもちろん通産省の出身者でございますけれども、これはその方の識見、人格等も含めまして大臣の任命に相なっておるわけでございます。最も大事なことは公正なる業務の運営ということであろうかと思いますので、われわれ監督に当たる者といたしましても、今後ともその点を第一重点といたしまして監督の衝に当たりたい、こう考えておるわけでございます。
○芳賀委員 次に、日本貿易振興会に関係を持つ雑豆輸入基金協会の実態についていささかお尋ねしたいと思います。
 このジェトロの場台は、日本貿易振興会法という法律が基礎になって、政府が二十億円の全額出資をしておることは言うまでもありませんが、以前ジェトロが行なっておりました輸入雑豆等に対する調整金の徴収事務というものを、その後雑豆輸入基金協会というものが設立されまして、これが行なっておるわけでありますが、この際ジェトロと雑豆輸入基金協会との関係、それからこの協会が本来的に何を目的にして事業を行なっておるか、その点に不明な点があるので明確にしておいてもらいたいと思います。
○中曽根国務大臣 小豆、インゲン、ソラマメ等の雑豆の価格は国際市況と国内価格との間に相当の開きがあり、かつその輸入税率はガットの協定税率となっております。したがって、何らの措置もとらぬ場合には雑豆の輸入業者は過大な利益を取得し得る反面、国内生産業者はかなりな被害に直面することとなります。このため、輸入業者の自主的な寄付という形で輸入価格の二〇%相当分を雑豆輸入基金協会が納付を受けております。納付を受けた差益金は、協会が税を支払った後、雑豆の生産振興、貿易振興等に使用するため豆類基金協会及び日本貿易振興会に交付されております。この差益金の実績は、四十五年度で十六億二千万円、四十六年度で二十四億千九百万円、四十七年度で十五億七千七百万円でございます。
 以下は局長から御答弁申し上げます。
○増田(実)政府委員 ただいま大臣から御説明申し上げましたように、雑豆の輸入にあたりまして、大きく国産の雑豆類との価格の差がございますので、その差額を寄付という形で徴収しておるわけでございます。先ほど先生がおっしゃいました雑豆輸入基金協会がこの寄付金を受け取るということになっております。
 それからジェトロとの関係について申しますと、雑豆輸入基金協会が、ただいまの寄付金、差益金を、一定の税金を払いました残りを、ジェトロとそれから日本豆類基金協会に半額ずつ交付する、こういうことになっております。ですから、ジェトロとの関係について申しますと、雑豆輸入基金協会が徴収いたしました金額を交付する先になっておる、こういうことでございます。
○芳賀委員 その前があるのですよ。以前は雑豆輸入あるいは輸入自動車等について、ジェトロがこれらの対象輸入品目に対して一定の調整金を徴収して、それを蓄積して、数年間たつと大蔵省に納付した、そういう時代があるわけです。この点については、もう古い話になるが、さきの佐藤総理大臣が通産大臣をやっておった当時、予算委員会等において、ジェトロの調整金の徴収並びにそれを大蔵省に納付するというその内容についてただしたことがあるわけですが、それがどうしてジェトロが行なった一部の業務というものを、雑豆輸入基金協会を設立させて、そうしていま運営しておるのかというその因果関係ですね。
○増田(実)政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、従来はジェトロがこの差益金を徴収する形でやっておりました。昭和三十二年から三十九年の前半まではそういう形でやっておったわけでございまして、その徴収いたしました金額を後には全部国庫に納付するという形でやっておったわけでございます。それが三十九年から現行方式に変わったわけでございますが、ここで問題が起こりましたのは、雑豆の輸入の関税は、これはガットの関係で、先ほど大臣から御説明申し上げましたように譲許税率になっておりまして、一〇%徴収いたしておるわけでございますが、この一〇%ではなおも国産の雑豆類との価格の差が非常に大きい。いまの関税の一〇%に加えましてさらに二〇%の差額があるということでこれを徴収いたしておるわけでございますが、これを一々国庫に納付するということになりますと、ガット譲許税率との間で国際的ないろいろの関係がございますために、これを寄付金の形で扱う、これは関係各省その他と相談をいたしまして、昭和三十九年から現行方式によりまして、寄付金の形で雑豆の輸入基金協会がこれを徴収いたしまして、その分をジェトロ及び豆類基金協会に配付する、こういうことに変わったわけでございます。
○芳賀委員 それじゃこの基金協会は寄付金受領団体ということになるのですか、事業目的は。
○増田(実)政府委員 雑豆輸入基金協会は、ただいま先生御指摘のように寄付金を受領する団体でございますが、この受け取りました寄付金を雑豆の生産、流通、消費改善のために使う、それから貿易振興のために使うということで、この協会の事業目的を達成するためにジェトロ及び豆類基金協会に交付する、こういうことになっておるわけでございます。
○芳賀委員 この主要目的を非難するわけじゃないのですよ。ただ、一種のトンネル機関的な雑豆輸入基金協会の性格、たとえば形式的には、輸入された雑豆を輸入業者から基金協会が買い入れをする、瞬間的にこれを売り戻しをする、そういう形をとっておるわけですね。買い受け、売り戻しのその差額といいますか、一定率というものを差額に――名称はどう言っているかわからないが、寄付金になっているかもしれませんが。そうすると、ただ輸入された雑豆の一定金額だけをこの基金協会が徴収するというようなことになるわけですから、それでは、最近は輸入農産物にしても価格変動が非常に激しいわけです。やはり政策的な手段としては、雑豆というのは行政価格がないわけですから、国内においてもこれは自由価格が市場で形成されておるわけです。国内価格も生産者の立場から見ても非常に不安定である。それから輸入価格との格差というものも従来相当開きがあるわけですから、当然これは政策としては、輸入の豆類あるいは国産の豆類というものをまず需給調整、価格安定のためにこの輸入基金協会がコントロールの役割りを果たすということであれば、非常にこれは効果的な機関であるというふうにも考えられるが、そういうことは全然やってないでしょう。ただ、入った分について一定率を瞬間タッチで徴収するというだけにこれは終わっておるのですから、それは単にトンネル機関としての役割りを果たしているにすぎないのではないかという問題が生ずるわけです。その点を一体どう考えておるわけですか。もちろん、これは通産、農林両省において、こういう協会の育成をしておられるわけですから、もう少し高度な、国民経済的な目的にも合致するような問題あるいはまた毎年毎年自民党の農業政策のもとにおいて、食糧全体が自給度を低下しておるわけですから、政府が低下させておるわけですね。だから、ますます今後輸入農産物全体を通じて根本的な政策の転換をはかるときになっておるわけですから、現存する雑豆輸入基金協会というものの時代に対応したあるべき姿というものについて、通産、農林両省において、両局長来ておるわけですから、その見解を述べてもらいたいと思う。
○増田(実)政府委員 ただいまお話のありました雑豆の価格の問題でございますが、価格は需給によってきまる点と、それから生産費と両方ございますが、現在の輸入数量につきましては外割りの対象になっておりまして、国内におきます雑豆の生産額に合わせまして必要な数量を輸入するということになっております。このために国内で不作な場合は先ほどから御説明いたしました方式で相当な数量を入れる、それから国内が豊作である場合にはその数量を減らすということになっております。例で申しますと、たとえば昭和四十五年度におきます輸入量は一万八千トンでございますが、四十六年度は約三万九千トン入れておるわけでございまして、各年の国産に合わしまして、そこで価格が安定できるようにということで、輸入数量のほうで、これは農林省と十分打ち合わせをいたしまして、外割りをするということによって雑豆の価格安定を期しているということでやっております。
○池田政府委員 豆類基金協会の問題は流通局長の所管ではございませんが、御質問でございますので便宜お答え申し上げますと、豆類基金協会では、受け入れました金は、雑豆の生産奨励金として大体使ってきております。しかしながら、これは芳賀先生もよく御承知のように、昨今のアズキの増産と申しますか、生産増加が非常に大きく行き過ぎまして、価格にかなりかげりが出てまいりましたので、地元の農業協同組合等の要請もありまして、たしかあれは約二億七千万円程度だったと思いますが、アズキを一時在庫調整をする、そのための金利、倉敷を補助するということで、その豆類基金の事業費の一部を使うということで計画を立てたわけでございますが、その後アズキの値段が持ち直しをいたしまして、たまたま基金協会の金を金利、倉敷のほうに充当しなくても済むというような状態であったというふうに記憶いたしております。
○芳賀委員 私の聞いておるのは、雑豆輸入基金協会というのは現存しておるわけだから、これを単に輸入豆類の差益金徴収のトンネル機関的なもので運営することがはたしてどうかということを聞いておるのですよ。これでいいとか、これ以外の方法はないというのであれば、そのように答弁してもらいたいと思います。
○増田(実)政府委員 現在の方式につきましては、先ほど申し上げましたように三十九年度に改定いたしましてこういう機構にいたしたわけでございます。当時いろいろの議論がございましたわけですが、国際的な関係もいろいろありますために、やはりこの形をとらざるを得ないということで、関係各省と相談いたしまして、現在のような形で行なっておるわけでございます。
○池田政府委員 一本で入ってまいりますお金を二つに分けると申しますか、ジェトロと豆類基金協会の両方の事業に分けるという形を現在とっておりますので、実務的に考えまして、受け口、それから分割するという意味での窓口が要るのではないかというふうに考えております。
○芳賀委員 先ほど言いましたとおり、差益金徴収の手段として、それは輸入商社からこの基金協会が買い入れをするわけでしょう。そうして瞬間タッチで売り戻しをする、そういう形をとっているわけでしょう。だから、買い入れすることはいいですよ。しかし何のためにこの商社に売り戻しをしなければならぬかという問題が出ると思うのですね。買い取りすることは、これは買い取ったことによって国内の同種の豆類と需給調整あるいは価格安定をはかるための調整作用をこの協会かするということになれば、買い取ったものを輸入業者にもう一度売り戻しをするという必要はないじゃないですか。これは最もしかるべき対象者に対して、あるいは国内の穀類等については農協の、以前は全販連、現在は全農に統一されたわけですが、そういう団体に適正な価格で売り渡しを行なう、その場合に、いままで当然徴収しておる差益金程度のものを協会として徴収するということは、方法論として否定すべきものではないが、最近、ただでさえ大手商社の買い占め問題であるとか、食糧にしてもあるいは木材にしても、国民がごうごうたる非難を浴びせておるその商社に対して、一たん買い入れてまた売り戻しをして、そうして十分な利益をあげて売りなさいというようなやり方は問題があるんじゃないですか。その点を一体どう考えておるか。これは大臣もいまの質疑の中でいろいろの問題点は理解できたと思うのですよ。こういう点はやはり通産大臣、農林大臣においても、政策基調から一体どういう輸入農産物に対する取り扱いが妥当であるかということも、国会等を通じて明らかにする必要があると思うのですが、大臣の考えがあれば述べてもらいたいと思います。
○中曽根国務大臣 トンネル会社はよくありません。それで、そういうものがある場合は、そのお金が適正に所期の目的どおり使われるということが正しいことであると思います。
 雑豆につきましても、いろいろ問答を拝聴しておりましたが、それらの金がその所期の目的に適正に使われるように、監督をより厳重にしていきたいと思います。
○芳賀委員 差益金の使用方法については、税金を納めた残りを豆類基金協会とジェトロに折半で寄付として納付するということになっておるわけです。そこで、これについても、日本豆類基金協会に差益金を渡すということは、協会の目的から見ても妥当な方法だと思うが、何のためにジェトロに対して同額の寄付をしなければなりぬのか。これもまたジェトロが一段上におってテラ銭をかせいでおるようなことになる、場所代を取っておるような印象を受けるわけですね。いままではジェトロが扱った調整金の徴収事務というものを、今度は豆類基金協会に渡したわけでしょう。そうしてジェトロは何も動かないで二分の一の寄付金を受け取っておる。そうであれば、むしろ全額を日本豆類基金協会に交付してもいいじゃないですか。これがなければジェトロの運営ができないというものじゃないと思うのですよ。しかも二十億円全額政府出資で、世界的に相当大きな海外活動とか貿易の調査活動等をジェトロがやっておることは、われわれも認めておるわけだから、そういうジェトロにちゃちなテラ銭の一部を納付しなければならぬなんというのはばかばかしい話じゃないですか。これは一体どう考えておるのか。
○増田(実)政府委員 雑豆の輸入によります寄付金の金額は相当な金額にのぼっておるわけでありますが、この金額の半分、つまり税金を納めました残りの半分を輸出振興に使おうということで現在の制度ができておるわけでございます。先生御指摘のように、ジェトロは全額政府出資の政府機関でございますし、また多額な補助金を受けておるわけでございます。しかしこの輸出振興あるいは輸入振興その他の仕事が年々非常に大きくなっております一それに必要な金に雑豆の寄付金を一部充当するということで、この使用の内容につきましては全部通産大臣の認可、監督を受けて、厳正に使用目的を監督いたしまして使用させておる実情でございます。
○芳賀委員 貿易政策に関してあと二点ばかりお尋ねしたいと思っておりましたが、他日に譲ることにして、大臣に一点だけお尋ねします。
 それは、いま問題になっておるアメリカ大豆の輸入問題です。すでに契約済みの分に対して、その五〇%については輸出を削減する、こういう措置をアメリカが一方的に決定したことは御承知のとおりであります。国際貿易上、取引が成立した、そういう契約の実施段階において一方的にこの契約を大きく変更する、あるいは解約に近いような変更をするというようなことについては、日本の政府としても黙っているわけにはいかぬと思うのです。この背信行為、貿易上の信義の上に立った背反行為というものに対して、日本側の政府としてアメリカに対して、一体どのような抗議、あるいは契約全面実行を迫るというような外交上の措置に出たものか、その点が不明でありますので、
 この際通産大臣から明確にしてもらうと同時に、今後アメリカに対する貿易を進める場合の日本側の基本的な態度等についても明確にしてもらいた
 いと思います。
○中曽根国務大臣 大豆の輸出及びその成約を半分に切ったということは、非常に遺憾千万な事態でありまして、こういうことが突如として行なわれるということについて、われわれは非常に当惑を感じておるわけであります。アメリカとしては大豆の値が非常に上がってきて、大体飼料その他にも差しつかえるという情勢になって、三倍ぐらいまで上がったようでありますが、それで国民生活安定のためにやむを得ず緊急の事態としてとった処置のようですけれども、わが国にしてみれば寝耳に水の措置をやられて非常に迷惑を受けておるわけであります。
 そこで、おとといの晩、私のほうの塩川政務次官をアメリカへすぐ派遣いたしまして、アメリカに対してわがほうの意思を伝え、また公正な割り当てをやってもらうようにわれわれとしては強く要請をしたところで、今後こういうような突如として人の迷惑になるようなことが行なわれないようにしたいと思っております。アメリカは、先般来日本に対して、農業物資を買ってくれ、買い方が足りないとずいぶん強く言っておったのが、急にこういうふうに豹変するというようなことは、やはり長いつき合いをしていく上についても遺憾な事態であると私は思っております。
○芳賀委員 これで質問を終わりますが、先ほど私から要求しました資料については、委員長から特に提出方を指示してもらいたいと思います。
○宇都宮委員長 芳賀委員の要求資料を提出してください、通産省。
○山形(栄)政府委員 先ほどの御要望の資料につきましては、できる限り早く提出いたしたいと思います。
○宇都宮委員長 庄司幸助君。
○庄司委員 私は、通産省がやっております大型工業技術開発、この問題についてお伺いしたいと思います。
 これは総額八百億円、四十七年までの実績が三百億円、たいへん巨額なものであります。それで、その多くが民間企業に委託されておるわけでありますが、こういったばく大な国費が民間企業に投資されるものだけに、テーマであるとかあるいは委託先の選定ですね、あるいはこの結果の評価の問題それから成果の活用、こういった問題については十分慎重にやられなければならない、こう思うわけです。これはおそらく通産大臣も同感だろうと思います。いやしくもこういった問題が特定企業の利益に、利潤追求のために利用されるようなことがあってはならない。そういった疑いがないような慎重な配慮が必要だろうと思うのです。
 そこで、きょうは超高性能の電子計算機、この開発について私はお伺いするわけであります。これは通産省の説明ですと、一九七〇年代初頭において世界のトップレベルに位するような超高性能電子計算機の開発、こういう目的で、これまでの大型プロジェクトの予算三百億円の約三分の一に当たる百億円を投じて開発しているわけですが、どうも若干の点でその成果に疑問の声が投げかけられている。これは通産省もいろんな雑誌や学会誌その他を見て御存じだろうと思いますが、さらにはこの運営のあり方にも問題点が指摘されているわけであります。今後さらに大型プロジェクトが続くわけですから、そういう点でこの際私は疑問を晴らしておく、これが非常に大事だと思うのでお伺いするわけです。この超高性能の電子計算機の中身は、工業技術院発行の文書を見ますと、一つは高性能な汎用ハードウェアシステムの開発、二番目はそのための高性能の部品、サブシステムの開発、三番目はソフトウェアの共用化を目標として、高性能ハードウェアシステムに適合する汎用の操作システムの開発、こういわれております。
 そこでお伺いしたいのは、この百億円のうちたしか二十億くらいだったと思いますが投ぜられているこのハードウェアの本体、これは一体いまどうなっているのか、まずこの点からお伺いしたいと思います。
○太田(暢)政府委員 大型プロジェクトでつくられましたハードウェアは、現在日立の秦野の工場に置いてございまして、そうして工業技術院の傘下にございます電子技術総合研究所と日立製作所の共同研究に現在それは使っております。
○庄司委員 これは本体について疑問の声があると私は聞いているのですが、中には大型プロジェクトを開発するにしても独自の本体は存在しないんじゃないか、こう言う人もあるのです。それから、その性能についても疑問視する人がやはりある。こういった多額の金が、国費が投入されたものについて、こういう疑問の声があるのは放置できないわけですが、その成果、通産省として十分なものと考えているのか、それから、この成果についてどういうふうに十分生かされているのか、この点ひとつお答え願いたいと思います。
○太田(暢)政府委員 この大型プロジェクトの成果につきましては、工業技術協議会の中にございます大型技術開発部会の評価分科会、そこでいろいろ詳細に検討してもらったわけでございます。この評価分科会は、日本におきますこの分野の最高の専門家の方々からなっておりまして、私どもといたしましては、この評価分科会でなされました評価は適正であるというぐあいに受けとめておるわけでございます。
 それから現在のその成果でございますが、ハードウェアに関しましては、先ほど申しましたように、共同研究で使っておりますが、この研究でいろいろの成果が得られておりまして、部品関係におきまして幾つかの成果が出ておりますが、これらにつきましては国有の特許になっております。またソフトウエアその他のノーハウ関係に関しましても膨大な資料があるわけでございますが、これらはいずれも工業技術院の中に保管してございまして、そして民間の方々から御希望があれば、それは利用していただけるような体制になっております。
○庄司委員 何か聞くところによると、本体ですよ、私はソフトウェアのことはまだ聞いておりませんからね、この本体については見たくても見れないような状態にあるんじゃないかという声もあるのですよ。本体はだれが行っても公開して見せてもらえるものですか。
○太田(暢)政府委員 これは本体につきましては、昨年この研究が完成いたしましたときに一応公開をいたしまして、皆さんに御披露し、見ていただいたわけでございますが、現在は工場の中に置いてありまして、共同研究その他に使っておるわけでございます。したがいまして、御希望の向きがありましたら、一応工業技術院のほうに申し出ていただければ、そういった御希望の方に対して御便宜をはかれるかと存じます。
○庄司委員 それはだれが行っても見せてもらえますね。
○太田(暢)政府委員 この本体は、先ほど申し上げましたように、現在民間企業の工場の中に置いてございますので、もしそういう御希望の方が大ぜいおられるということになりましたら、一定の時期をきめまして、そしてその日に見ていただくというぐあいなふうにしたらよいかと存じます。
○庄司委員 そうすると、何か大ぜいの方が相当まとまったら、一括して日をきめて見せる。では、大ぜいまとまらないとこれは見せてもらえない。これはどういうわけですか。
○太田(暢)政府委員 ばらばらにおいでになっていただくということは事務的に非常にめんどうでございますので、ある時期の間で申し込まれました方に対しましては、特定の時期をきめて一緒に見ていただくというふうに取り計らいたいということでございます。
○庄司委員 人数ですが、たとえば三人であるとか五人であるとか、三人でも五人でもあるいは二人でも一応まとまればいいという意味ですか。
○太田(暢)政府委員 一応原則としましては、そういう方々をまとめまして見ていただくということでございまして、極端な場合にはいま先生のおっしゃいましたような少人数であっても差しつかえないかと思います。
○庄司委員 それから、もしこれを利用してみたいという方があれば、これは工業技術院に申し出れば利用させてもらえますか。
○太田(暢)政府委員 このハードの利用というのは、非常にむずかしくて、高度の技術を要するわけでございますので、ただ単に利用したいというぐあいに申し出られましても、すぐそれを受け入れて御利用いただけるかどうかは疑問に思います。
○庄司委員 確かに技術的にそういう側面はあるだろうと思うのですね。しかし、そういう利用にたえるような技術を持った方々が利用したい、あるいは活用したい、こういう場合はどうなのか、これが第一点。
 それからもう一つは、この試作機本体、部品は別ですよ、これはどうも解体してしまうというようなお話をちょっと聞いたのですが、そういうことはありませんか。
○太田(暢)政府委員 最初の御質問でございますが、専門家の方、それを使い得るような能力を持った方からそういう申し出があればどうかということでございますが、これは原則としては可能かと思いますが、一応ケース・バイ・ケースで工業技術院でいろいろ御相談に応じたいと思います。
 それから二番目の問題でございますが、この大型プロジェクトの成果につきましては、先ほど申し上げましたように、現在共同研究に使っておるわけでございますが、その共同研究が終わったあとのことをいま御質問になったかと思いますけれども、その場合には、原則としましては、国立の研究機関の中に持ち込んで、それをさらに使っていくか、あるいは場合によりましてはそれを廃棄処分にするか、いずれかの方法になると思いますが、まだ現在そういう段階に至っておりませんので、お答えいたしかねます。
○庄司委員 何か廃棄処分の方向もあり得るというような御答弁ですが、私、数字は正確にはわかりませんが、大体二十億近く、これくらい国費をかけてつくった機械を廃棄処分になんかするのではたいへんな問題じゃないかと思うのですよ。廃棄という方向もあり得るかのようないまの御答弁ですが、大臣、どうですか。こういった本体を廃棄するような考え方もあり得るような答弁なんですが、これはひとつ大臣に答えてもらいましょう。
○中曽根国務大臣 日本の科学技術者が英知を結集し、国費を相当傾けてやったものでありますから、活用できる範囲内においては全面的に活用して、廃棄というようなことはなるたけ考えないほうがいい、そういうように私は思います。
○庄司委員 それでは私はソフトウェアの問題について、この中の開発部門に入っておりますが、これについてまたお伺いします。
 この超高性能電子計算機の開発について百億円くらいの国費が投入され、そのうちソフトウエア関係が約四十七億円投入されておりますね。そのうちの三十億円が株式会社日本ソフトウエアですか、ここに委託されているわけです。この日本ソフトでもっていわゆる共通ソフトウエアの製作が行なわれたようでありますが、この成果についても、実際にこの製作に携わった技術者や、あるいはここに私は別なコンピュートピアという雑誌の写しを持っておりますが、この中でもやはり評価報告書について疑問が出されているわけです。その点での成果の問題、あるいはソフトウエアで開発した製品もあるだろうと思うのですが、そういったものが一体どう活用されているのか、この点ひとつお答え願いたいと思います。
○太田(暢)政府委員 最初にソフトウエアの成果の評価でございますが、これも先ほど申し上げました評価分科会で慎重に審議されまして評価をされておるわけでございますが、それによりますと、もともとこの大型プロジェクトにおきましては、ソフトウエアの開発も一つの非常に大きなねらいにしておりまして、そのためにハードウェアシステムに取り上げました新しい機能を効果的に発揮しますための大型のオペレーションシステムの開発と、それからソフトウエアの共通化のための各種言語体系の設定と、中間言語を介しましたソフトウェアの分割開発を行なったわけでございますが、先ほどの評価分科会の評価によりますと、一応所定の目的を達したというぐあいに評価されておるわけでございます。
 それからこのソフトの成果でございますが、このソフトの成果につきましては、たとえば電電公社のDIPSにこれが使われたりいたしております。
○庄司委員 この技術者の指摘の中でこういうことも言われているわけですよ。これはまああとから述べてもいいのですが、「我が国のソフトウェア産業振興の呼び水としての大プロのソフト開発の発注が、逆の効果を生んで失敗した日本ソフトの短い歴史のうちに、日本ソフト当事者の経営と政府の指導の杜撰さを指摘せずにはおれない。」これはコンピュートピアのことしの六月号に出ているのです。これは一つの論としても、ソフトウエアの当事者の技術者からも、やはりどうもこの成果については工業技術院さんが考えているような成果があがっていないのじゃないか、こういう疑問が提示されているわけですね。こういう疑問に対して一体通産省のほうで科学的なこの検証に耐えるような反論ができないでいるのが現状じゃないかと私は思うのですよ。いわゆる評価分科会の結論だけで、みずから分科会の結論がりっぱだからりっぱだ、こういうオウム返しになるわけですね。これでは科学的な論争に耐えられないだろうと思うのですよ。私はその専門家でも何でもありませんから、いまここで技術的にどうのこうの、こういう論争をするつもりもございませんけれども、こういった疑問がある限り、私はやはり科学的な検証に耐えるような根拠を示す必要があると思うのです。それからまた、疑問のある方に対しては、当然その疑問に対して公に検討する場をつくる必要があるのじゃないかと思うのですよ。その辺、どうでしょうか。
○太田(暢)政府委員 通産省といたしましては、この大型プロジェクトの成果の評価に関しましては、最も中立で公正な評価をいただきますために、各テーマごとに評価分科会というものをつくって、評価をしていただいておるわけでございまして、この高性能のコンピューターの開発につきましても、先ほど申し上げましたように、日本で最も権威のある方々にこの委員になっていただいて評価をお願いしておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、評価分科会の意見は十分公正で正しいものだというぐあいに考えておるわけでございます。
○庄司委員 それからこのコンピュートピアでは何か「政策上の都合で行なったプロジェクトであり、真の科学技術に裏打ちされたプロジェクトでなかったため」、こういう表現もあるのですね。私は、もう時間がありませんから、この場であなたと論争やったって水かけ論争にしかなりませんから、いずれこれは科学技術特別委員会ででも、しかるべき学者なりあるいはその他の方々を参考人として呼んで、じっくり時間をかけてひとつ討論をしてみたいと思うのです。ですからそれは保留しておきます。
 それから、もう一つ私はおかしな話を聞いているわけですが、その前に会計検査院、この百億円にのぼる超高性能の電子計算機について、会計検査はいつごろなさいましたか。
○前田会計検査院説明員 お答えいたします。ただいまお話がございました電子計算機だけに限ってお答えいたしますが、これにつきましては、工業技術院の本庁検査の際に必ず毎年いたしております。最近でございますと、四十七年の三月、九月、四十八年の三月実施いたしております。
○庄司委員 もう一ぺん会計検査院に質問しますが、工業技術院は検査の対象にした。しかし、そこから、いわゆる補助金といいますか、いわゆる開発費がいっている会社ですね、ここへは検査に行かれましたか。
○前田会計検査院説明員 ただいまお話に出ましたその巨額の交付金でございますけれども、これは一応委託費という形で工業技術院から会社へいっているわけでございます。委託費の中にもいろいろございまして、委託費の中で補助金等適正化法によりまして補助金等という認定を受けましたものにつきましては、当然会計検査院の検査の対象となります。ところが、本件の場合におきましては、いわば国が行なうべき事業を民間に委託したという形をとっておりまして、一応補助金的な要素はない、こういうことでございますので、法令の適用上は当然検査の対象であるというわけにはまいらないわけでございます。ただ、先生がおっしゃいますとおり、相当巨額な金でもございますので、検査権限はないわけでございますが、通商産業省のほうにおかれましては、この委託研究費を出します際の契約書におきまして、非常に広範な検査権限、それから報告を聴取する権限を留保しておられるわけでございます。そこで、一応われわれは通商産業省の方の御協力を得るという形で会社へ出かけることはございます。現に四十三年に、富士通でございますけれども、四人で二日間おじやまして、いろいろ見せていただいている、こういうケースはございます。
○庄司委員 そうすると、富士通には行かれた。しかし本体をやっている日立、これは約二十億ですよ。いわゆるハードウェアの部分では相当大きな比重を占めております。こういうところへは行かれておらない。それから、四十七億円のうち約三十億円をかけているこの日本ソフトウェア、こういうところへは行かれておりませんね。おらないでしょう。
○前田会計検査院説明員 先生御指摘のとおり、参っておりません。
○庄司委員 この日本ソフトについては、あとからも言いますけれども、まだまだいろいろおかしな問題があるんですよ。三十億円もとにかく委託費を出しているところへ、何のふしぎもない、そうやっていままで過ごしてこられたというのは、私はちょっとおかしいような感じがするんですよ。それから、その他のところについても同じであります。こういうところに、せめて電話ぐらいで何か照会でもしたことがありますか。
○前田会計検査院説明員 特にございません。
○庄司委員 これは私は前にも指摘しましたが、会計検査院は確かに非常に人数が少ない。予算が超大型になるわりに人数はほんとうに微々たるものだ。だから件数も相変わらずの状況がある。そういう中で、民間の会社に膨大な委託費研究費が流れているときに、やはりみっちり検査してもらわなければ困ると思うのですよ。
 そこで、私は通産省にお伺いしたいのですが、会計検査院の検査の問題ですね。工業技術院と日本ソフトウェアの間ですが、民間の会社に委託費を出している。その間で何か打ち合わせをした形跡があるのです。検査院のほうはもう行く気もないようだけれども、とにかくおたくのほうでは、行かれて何かぼろでも出されると困るとでも思ったのかどうかわかりませんが、打ち合せた形跡があるのです。これはあなた方おそらく当然否定なさるだろうと思いますが、これは会社のごみ箱から出てきた資料ですよ。四十六年九月五日、「開発官室」と書いてありますから、おそらくこれは開発官室でやったことという意味なんでしょうね。「会計検査の際の電話の応答について。」どうです会計検査院、こういうのですよ。おたくが行こうともしないのに、もうちゃんと早手回しにこうやっているんですよ。それで「出席者」、工技院側、宮沢開発官、それから大山、伊東、それから日本ソフト、久保田、玉木、瀬戸、こうなっております。二番目「概要」「来る九月八日、十一日に行なわれる会計検査は工技院内を中心に検査する予定であり、日本ソフトに検査官が来る事はまずないと考えられるが、」たいしたものですよ、これは。「電話による問合わせがあると思われるので、その応答について打合わせを行ない、次の結論を得た。」ということで、いろいろ問いと答えが書いてあります。まず「四十六年度予算に対する実績が約一億円オーバーした理由」その理由を聞かれるだろう、そのときはこう答えろということで、「過少見積」と答えなさいといっております。「経験がないため、結合時の手直し等に対する見積が甘く、予想外に手間がかかった。」こう答えろ。それから二番目には「労働争議の影響により、作業効率が低下し、」断わり書きを書いてあります。労働争議の問題は「これは日本ソフト社内の事情である。」だからこの分の赤字は会社が背負った。それから「COBOL外注について」外注なさっているでしょう。この外注についてもやはり、こう聞かれたらこう答えなさい、こういうこともいっております。それからもう一つは成果上の問題ですね。重要な点があるわけですよ。「各言語はフル・スペックを完成した事とする。PL1、COBOLはシミュレーターマシン上で十分テストされた事とする。」シミュレーターマシンというのは、言うならば模型みたいなものですよ。本体にかけないでPL1とかコボルはシミュレーターマシン上でテストをやった中で評価が十分出ておるのだ、こういうことまで知恵つけておるわけですね。だからおそらくあなた方はこんなことを言った覚えがない、それはおそらく会社のごみ箱から出てきたので、われわれは関知しないと、テレビの映画のスパイ大作戦のような調子で答えられるのじゃないかと思うのですよ。しかしこれは明らかに労働組合側の方々が会社のごみ箱から拾ってきた資料なんですよ。だからこれはもう当然にあり得たと思われてもしかたがないのですよ。その点ひとつお答え願いたいと思うのですが、これは大臣答えられないでしょうから、技術院の院長でいいですよ。
○太田(暢)政府委員 会計検査院の検査に先立ちましてそういう打ち合わせをしたということは聞いておりませんが、実際にいろいろ事実に反するようなことを打ち合わせて曲がった答えをしろというようなことを言うはずもありませんので、私どもはそういうことはなかったというぐあいに解釈しておるわけでございます。
 それから成果の点でちょっと御説明いたしたいと思いますが、このPL1その他は、おっしゃいますようにシミュレーターマシンにかけまして、それで十分に成果が出たので、本体にかければ十分それはうまくいくであろうというぐあいにしておるわけでございまして、これは評価報告書にも書いてあるとおりでございまして、それはほかのフォートランその他でシミュレーターマシンにかけまして、同時に本体にかけて、シミュレーターマシンにかけたところから予想されますことが十分実証されておりますので、ほかの一、二のものにつきましては本体にかけないで大体シミュレーターマシンで十分いい成果が出ておりますので、本体にかけても十分な成果が得られるものというぐあいに期待して、それをかけておらない次第でございます。
○庄司委員 シミュレーターと本体はやはり私は違うと思うのですよ。あの飛行機でもシミュレーターを使いますよ。しかし本体はまた別ですよ。やはり成果というのは本体にかけてみなければ、ほんとうにこのソフトウエアの成果があったかないか、しかもいろいろ誤差が出たりなんかするものでしょう、私はしろうとだからわかりませんが。それを本体にもかけないで、シミュレーターだけで十分その成果があり得ると推測されるというような非科学的なものでは困ると私は思うのですが、とにかくもう三十億円からの国費を投入しておるわけですから、その点でもやはり間違いないのだ、こう思っていらっしゃいますか。
○太田(暢)政府委員 シミュレーターマシンといいますのもやはりコンピューターでございまして、先ほど例にお出しいただきました飛行機の模型というようなのとはだいぶ違いまして、やはりこれはちゃんとした試験機でございますので、そういうシミュレーターマシンにかけまして、あるモデルにつきましてシミュレーターマシンにかけまして、それで予測したものを本体にかけてうまくいった場合に、他の類似のものについてシミュレーターマシンのテストだけで推測をするというやり方は、研究の進め方の上からのやり方の一つだろうというぐあいに考えます。
○庄司委員 しかし本体が完成した、こうおっしゃっているわけですから、本体でなぜやらないのかというきわめてしろうと的な常識的な、私なんか考えてもそういうふうに考えが出るのですよ。これはいずれ技術上の問題ですから、それ相応の参考人を私いまからお願いして、どこかしかるべき場所であなた方と論争をがっちりやろうと思います。その点では、まずこの場はこれだけにしておきます。
 それからもう一つ問題だと思われるのは、日本ソフトウェアが去年の十二月に解散しておりますね。これはコンピュートピアにこう書いてありますよ。「一方、日本ソフトウエア(株)の解散(七二年十二月)がこの大型プロジェクトにおける最大の汚点として記憶に新しい。」とこう書いてあるのですよ。だから、民間会社が解散しようとどうしようと通産省は知ったことじゃないといえばそれまでかもしれませんが、最大の汚点として記憶に新しいのだ、こういっておるのですよ。これは相当の専門家が入って書いておる論文ですよ。最大の汚点だ、こういっておるわけです。それでこの点でも私、通産省とのからみ合いがどうもあるような資料を入手しておるのですが、いずれこれは社労委員会か商工委員会の中で当然取り上げられる問題だろうとは思いますけれども、私はそのはしりだけちょっと申し上げておきます。
 これは、日本ソフトウェア株式会社の園部達郎さんですね、これは、たしか社長さんですか、この人が四十七年五月にどうも興銀に送ったような形跡があるのですね。「弊社再建についての意見」、この中にいろいろ書いてあります。「現在弊社の労働組合は共産党員が支配しており」何を言っておるのですか、これは。御丁寧に、執行部十二名中六名は共産党員だとかなんとかスパイみたいなことをいって、しかもその中で、沖電気から派遣された藤井さんという取締役についても、これは会社間の派閥争いかどうかわかりませんが、さんざん悪口を言って、あと通産関係ではこういうことを述べられております。「現在通産省は昭和四十九年度から民間に発注となるべき第二次大型プロジェクト(パターン認識関係)の受託について党員主導の組合がある故を以て難色を示し」――通産省が難色を示した。労働組合の中に共産党員がいるからけしからぬ。「これが排除を要請しております。」通産省が排除を要請しておる、民間の会社に。「この要請は尤ものことで、実行するにやぶさかではありませんし、また官庁としてはこの要請で十分なのかもしれませんが、この受託時期までの二年間の経営については、出た赤字は三社がめんどうを見ればよい」という考えだ。それから「現在組合対策は笠原取締役(通産省出身)が中心で進めてもらっておりますが、この点十分留意するよう社長に進言している状況であります。」これは園部さんという専務さんですね、通産省出身の天下りの方が、この三十億円の委託費を土台にして天下ったのだろうと思うのですが、この人が今度組合の首切りや解散をやる、こういう役割りを持っておるわけですね。どうもこの辺から見ても、通産省と日本ソフトウエアの関係というのは非常に密接で、通産省の労働組合に対する干渉までがやられておるような形跡があるわけです。当然通産省はこれを否定するでしょう。そんな文書見たことないとかいろいろ言うでしょう。しかし実際これが会社のくずかごから出てきておるという事情があるのですね。この会社は去年の十二月そそくさと解散したわけでしょう。労働組合の反対も押し切って解散した。あわてて解散したものだから、こういう彼らにとっては重要な極秘文書をあわててほうり出して解散するような状況になるのですよ。私は、通産省がこういう干渉をやったとすれば、これはもってのほかのことで、たいへんな事態だと思うのですが、この点どうですか。大臣もおそらくそんなことを言われるだろうと思いますけれども、念のために伺っておきます。
○太田(暢)政府委員 この大型プロジェクトによりますコンピューターの開発と日本ソフトウエアの関係は、大型プロジェクトの委託先をきめます場合に、私どもは、日本の中で技術開発能力及び経理能力の面から見まして最も適格なところを選定してお願いしておるわけでございまして、そういう線で日本ソフトウエアが選ばれたわけでございます。また、この大型プロジェクトが終わりました時期と、ソフトウエアが解散しました時期がかなり近いのでございますけれども、大型プロジェクト制度の上からは、この日本ソフトウエアの解散とは全く無関係でございまして、一応大型プロジェクトが終われば、その会社にもうそれ以上は委託が進まないというぐあいになるわけでございます。
○庄司委員 もう時間もないから、そろそろ最後にしますけれども、このコンピュートピアという雑誌ではこういうことを言っています。さっきの「最大の汚点」と言って、そのあと「この累積赤字三億四千二百万円を背負ったまま、四十七年十二月十五日付で解散に追込まれた経緯については、本誌一九七三年二月号の「先取り精神もまた虚偽なり」に詳報したので、あらためて述べない。しかし、政府の大型プロジェクト「高性能電子計算機」のソフトウエア開発という主目的に向って邁進していた日本ソフトウェアがこの六年間に蓄積した貴重な開発実績を反故にしてしまった事実は、何とも奇妙である。」私も奇妙だと思います。三十億円も国費をつぎ込んで、このソフトウェアの技術者から事務員なりが一心同体となって開発した技術の問題が蓄積されてほんとうなら残されなければならないのです。こういった技術者個々は他の会社に就職することもあり得るでしょう。しかし、こういった一つのチームが解体されるということは、やはり日本の知識産業の発展の上からいって非常にマイナスだと私は思うのですよ。ですから、この日本ソフトウエアの解散について、通産省がこれをこのまま黙って見過ごすのじゃなくて、またこのソフトウエアの解散を促進するような干渉、あり得べからざることですが、こんなことをやるのじゃなくて、この日本ソフトウエアの蓄積された技術者の集団、知識集団、チーム、こういったものはやはり保存して発展させることが私は非常に大事な観点だと思うのですが、その点最後に私は通産大臣から明確にひとつ御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思うのです。
○中曽根国務大臣 大型プロジェクトをやる趣旨は、日本の技術開発をやって日本の技術水準を上げ、また国民経済の調和ある発展、高度化に貢献するためにやっておりまして、せっかく開発したものが有用に使われないということは、趣旨に反することであります。これらのものは適切に使われるように、われわれは今後とも監督してまいります。
○庄司委員 簡単に……。技術は確かに有効に利用されると大臣の御答弁がありましたが、この技術者の集団が日本ソフトウエアとしてあるわけですね。だから私が言ったのは、この日本ソフトウエアの解散を指をくわえて見ているのじゃなくて、適切な指導なりあるいは援助を行ないながら、この日本ソフトウエアを保存し発展させていく。発展まではよけいなことばかもしれませんが、この会社が解散をした。これを黙って指をくわえて見ているのじゃなくて、この会社を残していくような援助があって当然だったろうと思うのです。その点をもう一ぺん大臣からひとつ御答弁をお願いしたいと思うのです。
○中曽根国務大臣 この会社を維持するということは、現在の時点においてまことに遺憾ながら無理のように思われます。それらの持っておる頭脳が散逸しないように、また国民経済に大いに役立つように、私たちも大いにその方途を考えてみたいと思います。
○庄司委員 終わります。
○宇都宮委員長 浅井美幸君。
○浅井委員 私は、本日は鉄鋼関係についてお尋ねをしたいと思います。
 通産大臣に伺いたいのですが、七月二日にわが国の鉄くず輸入に対して自主規制をいたそう、こういうことを通産省できめられました。七月三日にはアメリカの商務省におきまして、いま問題となっておりますところの大豆の輸出規制、契約を半分にするという問題とともに、くず鉄の大口輸出の禁止も含んだところのスクラップの輸出規制策を実施いたしました。この点について伺いたいのですけれども、日米経済協力ということがいままでしばしばいわれておりました。通産省で自主規制をしよう、こういう態度をアメリカに通知した、それと同時に向こうは輸出を規制する、こういうことで、日米間がよく。パートナーシップだということで、友好関係にあるとかいろいろな説明があった、政府が口を開けば経済協力関係を説いてきたのですけれども、この結果について、まず通産大臣の今回のこの問題に対しての考え方をお聞きしたいと思います。
○中曽根国務大臣 スクラップの輸入については、アメリカ側から前からいろいろ苦情めいた話がございまして、なるたけアメリカの国内需要も考えて多量の買い付けを一時にやることを制限してもらいたい、それから全体の数量にしても、日本の国民経済も考えて、あまり多量に買わないようにしておいてもらいたい、そういう話がありまして、当方は五百万トン程度であるならば、何とかきちきちいけるのじゃないかということで、その辺の数量はまあというようなことを向こうに話しておったわけです。ところが、先方が言うのは、いや、五百万トンどころじゃありません、六百万トンをこえてすでに契約ができておるということで、調べてみましたら、なるほど成約はわれわれが考えていた以上にすでにできておったわけです。そこで、大体需給を考えてみますと、五百万トン程度できちきちいけるという予想でおったものでございますから、もしそういう措置をしない場合に、アメリカ側に大豆のような措置をやられてはいかぬということで、われわれのほうでそれでは五百万トンということで何とか押えるようにいたしますから、あなた方が強行するような強権的な行為はできるだけ日米双方のために抑制してください、そういうことで五百万トンということにしたわけです。その上、先方は、できるだけ各月ごとに輸入数量を割って、一時になるたけ殺到しないように輸出――日本にすれば輸入か殺到しないように、各月で均等に割ったような輸入のやり方をやってもらいたい、そういう希望もございました。そこで、当方としては、われわれがこの程度ならばいいと思っていた以上すでに成約していたということは、向こうに対してもそれは遺憾な事態でありますから、五百万トンということでわれわれのほうは抑制いたします、そのかわりアメリカのほうも、大豆のようなやり方をできるだけ抑制してもらいたい、そういうことで話が進んでおったわけでございます。それで、今回五百万トンということにいたしまして、そしてそういう大きな変化もございましたから、平電炉メーカーを呼びまして、昨四日首脳部を招致しまして、本年のアメリカのくず鉄輸入量は五百万トンで十分と考えておる、各メーカーに必要量が行き渡るように十分配慮した措置を講ずるから、鋼材価格の値上がりを極力回避するように協力してもらいたい、またくず鉄の輸入が七、八月に集中しないように、繰り延べについてもあわせて協力してもらいたい、こういう要請をいたしました。それに対して、業界側からは、政府の意向は十分に理解できるので、業界内で直ちに協力体制に入るように努力するが、スクラップ価格が高騰しないように、政府においても特段の措置をお願いしたい、こういうことがあったのでございます。
○浅井委員 経過はわかりましたけれども、今回のアメリカの措置は私自身非常に遺憾に思っております。この鉄くずの不足によりまして、平電炉の業界というのは非常にショックを受けております。したがって、「鉄くず不足は、当然、価格も大幅に押し上げ、一昨年秋にトン当たり平均八千円程度だったのが、現在は、三倍前後の平均二万三千円――二万五千円という急騰ぶり。この結果ことし四月以降、たとえば丸棒や小型形鋼などはトン当たり平均六万円と製品によっては一年前の二倍近くにハネ上がり、同時に業界内の企業格差が広がり始めている。」、こういうふうにいわれております。当然このアメリカの輸出規制、いわゆる五百ショートトン以上の輸出に対しては規制をするということが商務省から発表になっておりますけれども、この一件当たり五百ショートトン以上の注文には、七月二日以降の受注には許可が与えられない。こうなってくると、今後のビルや道路、あるいはまたいろいろな公共事業等に使われるところの製品の値上がりが予想されます。いま、政府の特段の措置といいますけれども、どういう措置を具体的になさるのですか。このことによって、いままでも価格は上がってきておりますけれども、さらに暴騰することが予想されます。通産省としては、どういうふうにやりますか。
○山形(栄)政府委員 お答え申し上げます。まず、スクラップの所要量の問題でございますけれども、現在、日本の平電炉メーカー及び高炉メーカー、鉄鋼で使っておりますスクラップは、輸入にたよっております比率が約一割でございます。これは平電炉が使っておる率が非常に多いわけでございますけれども、九割が国内の発生くずでございます。今回非常に問題になりましたのは、これからの先高なり国内生産の増強等を見込みまして、先ほど大臣がお話ございましたように、当初の期待されておるものより手当てを商社筋等が急いだわけでございまして、それが現実の姿として、相当の量が発生しておったわけでございます。一番大事なことは、今後われわれといたしまして、輸入貿易管理令を活用して、輸入くずの割り当てを行なうわけでございますが、その場合、メーカーの実需に即応して、メーカーに輸入くずの割り当てを行なうということをぜひいたしたい。これは、昨日の業界に対する行政指導を通じましても、その旨を伝えたわけでございます。これは一見たいしたことないようにお考えかとも思いますけれども、現時点のスクラップの輸入が、相当商社活動に依存しておりますので、実需に合ったところに割り当てするということで、現にその方針決定だけで、われわれ、若干不正確でございますけれども、情報といたしましては、くずの投げ売りがむしろ出ておるということを聞いておるわけでございまして、先ほど大臣もちょっとお話ありましたように、五百万トンということは、これからの四十八年の生産の、われわれのほうではじきました所要量を十分に充足する量でございますので、中間的な思惑等がないわけでございますれば、当然に需給に合った十分な量であるわけでございます。それらの措置を講ずることによりまして、鋼材の異常なる上昇等は避けられるのではないかと考えておるわけでございます。
○浅井委員 そういう答弁をするから、私も強く言わなければならなくなるのですよ。一昨年のトン当たり平均八千円がいま三倍になっておるじゃないか。いまあなたはアメリカの輸入が一割で済むと言ったが、では、鉄くずの国内調達はどのくらいあるのですか。
○山形(栄)政府委員 ちょっと誤解を生じましたので恐縮でございましたけれども、一億二、三千万トンを鋼材生産ベースといたしますと、全体のスクラップの所要量が大体四千七百万トン程度でございます。その価格形成でございますけれども、スクラップ価格といいますのは、やはり非常に景況に敏感でございまして、いま先生の御指摘のとおり、八千円ぐらいであったものが現時点では二万一千円、地域によって違いますが、二万五百円ぐらいから二万三千円ぐらいになっておることも事実でございます。これは全体の物価の上昇の反映とともに、特にスクラップは、非常に景況のいかんによって上がることも確かでございます。私の申し上げましたのは、現状の価格の暴騰を避けるように努力いたしたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
○浅井委員 だから、具体的にどういう努力をするのだということを先ほどから聞いているのです。具体的に努力をしなかったと言っていない。努力をしているのだろうが、値上がりに対して、どのような具体的な努力を今後するのか。値上がりがしないのならば、平電炉産業は、こんなにショックを受けたり大騒ぎをするわけはないでしょう。鉄くずの国内調達の推定は、今年度で二千二百万トンでしょう。アメリカの六百ショートトンというのですが、五百ショートトンに押えようとした自主規制、それがもし入ってこなかったらたいへんだということで大騒ぎをしておるのでしょう。いわゆる供給と需要の関係で、需要が大きければ大きいほど鉄の値段は敏感に上がるのです。その具体的な、値上がりの場合の措置をどうするかということを聞いているのです。
○山形(栄)政府委員 国内の発生くずは大きく分けて二つございまして、これは鉄鋼業者が鋼材をつくりますときに、粗鋼から鋼材までの歩どまりがございまして、そこで自家発生のくずが発生するわけでございます。それからもう一つは、いわゆる世間にございますくず屋といいますか、鉄鋼のくずを回収する業者がこれを集める、市中くずというグループのものがあるわけでございまして、これは過去の趨勢から見ましても、大体ほぼ同数発生いたしておるわけでございます。ただいま先生のお話しのものは、自家発生だと思うわけでございますが、国内の供給くずはそれに市中くずを足しました量でございまして、四十七年度に即して申し上げますと、鉄鋼業者の自家発生くずが千七百七十四万トン、国内市中発生くずが千八百六十万トン、両方足しまして三千五百万トン以上の発生があったわけでございます。
○浅井委員 いま量があるから上がらないというお話をしようとなさっているのか知りませんけれども、私は具体的に値上がりがどうしたら防げるのかということを聞いているのです。もう少し話を進めますと、田中総理が去年の暮れあたりですか、鋼材市況の鎮静化ということで、通産省に市中放出指示をやりましたですね。その市中放出指示というのは、在庫はあって、市況価格が非常に上がるということで、それではいけないということで、店売りの品物をなるべく放出するということで指示をした。通産省は乗り出してあっせんをしたのですが、その効果はあがっていますか。
○山形(栄)政府委員 鉄鋼につきましては、昨年の暮れぐらいから値上がりの傾向が出てまいりまして、通産省としては緊急に約百万トンの増産命令を出したわけでございまして、その後二月ごろ若干これが落ちついたわけでございますが、春先からまた非常に実需の強調もございまして、値上がりの傾向が出てまいりましたので、四月十七日に三十万トン、それから五月半ばに二十万トン、六月の中旬に約二十万トンという緊急増産の指示をいたしたわけでございます。
 この場合、いま先生の御指摘のとおり、これらのものにつきましては、問題は市中の鋼材需要、いわゆるひもつきといわれている以外の市中のところが一番大事でございますので、これらの緊急増産分はあげてこれを市中に回しますように、商社、特約店との会合も緊密に数次にわたり行ないまして、直接または高炉メーカーを通じまして最終ユーザーにこれが渡るように、しかもその結果をフォローするようにということで、いま鋭意やっておるわけでございます。しかしながら残念なことに、四月、五月に緊急増産出荷を命令いたしましたものにつきましては、その後の交通関係のスト等の影響もございまして、現時点で約六割が出荷済みでございます。いま非常なる努力をして、これの市中向けの放出についてフォローしておりますので、六月の緊急増産も含めまして、七月にはこの全量の約七十万トンが市中に出るのではないか。確かにじりじりと鉄鋼価格は上がっておりますけれども、われわれとしては、これをてこにいたしまして市中物の異常なる高騰を押えたいと思っておるわけでございます。
 なお、四十八年度の第一・四半期の粗鋼生産見込み、いわゆるガイドラインといいますものは二千九百五十万トンでございます。第二・四半期につきましては三千八十万トンということで、史上最高のガイドラインを設定いたしまして、七月以降、生産数量も非常にふやすような体制に相なっておりまして、夏場の夏季休暇等に伴う自動車その他、生産の若干の減少等も見込まれますので、七月以降、よほどのことでない限り、異常なる高騰は避けられるのではないかと、われわれ考えておるわけでございます。
○浅井委員 たとえば市中価格の推移、これはおたくの通産省からもらった資料ですけれども、厚中板、これが四十六年の十二月にはトン当たり三万七千五百円が市中価格でした。それが四十七年一月に四万円、六月に四万四千五百円、十二月には四万九千円、四十八年の六月には五万七千円。あなたはいろいろなことをいまおっしゃっていますけれども、この一つの製品を見ただけでも、市中価格はどんどん上がっておる。これで、いま物価を抑制しておるという。いまや、物価の安定は国民的な至上命題なんです。田中内閣の命題でもあるはずなんです。それが、どれだけ安定しているのですか。これで緊急な措置をとっているとおっしゃるのですか。増産分はいわゆる店売りに回しておるといっても、これだけの値上がりに対して、どのようにお考えになっているのですか。少しも手を打っていないのと同じじゃないですか。どうなんですか。
○山形(栄)政府委員 いま先生の例にお出しになりました厚中板は、確かに六月末で五万七千円の市中物でございます。これは過去の最高の、四十二年一、二月ごろの水準であるわけでございます。鉄鋼の市中価格の最高は、大体四十五年一、二月というのが過去の最高でございまして、非常なるブームであったわけでございますけれども、現時点の価格水準は、総じてほぼその辺の水準に相なっておることは事実でございます。われわれは、これを異常なる高値にしないように、われわれなりに一生懸命やっておるわけでございます。
 一つのめどといいますか、この間に非常に物価が上がっておるわけでございまして、これは鉄鋼側だけの言い方になりますけれども、一般の卸売り物価といいますのは、四十五年の平均を一〇〇といたしますと、ことしの五月で一一・二%の上昇に相なっておるわけでございますが、この間鉄鋼は、四十五年の一〇〇に対しまして一〇三%という、一般の卸売り物価よりは非常な低位なる上昇率に相なっております。私はこれでいいということを意味しているわけでございませんで、鉄鋼は、実需が非常に強い状態でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、現在の鉄鋼の製造能力をフルに回転いたしまして、あわせて輸入くずを通ずるスクラップ価格の高騰等につきましても、これは迂遠のようでございますけれども、メーカー割り当てを行ない、関係の平電炉メーカーとも十分なるコンタクトをとりまして、異常なる上昇を避けるように努力をいたしたいと考えております。
○浅井委員 あなたいま異常な上昇じゃないと思っていらっしゃるからそういう答弁が出てくるのであって、では大手メーカーの大手ひもつきといわれるのはメーカーから厚中板トン当たり幾らでもらっているのですか、あるいはまた店売りはトン当たり幾らでもらっているのですか。厚中板だけでいきましょう。――答弁に時間がかかるから言いましょう。三万八千円じゃないですか。大手メーカーが八割まで持っていく厚中板は三万八千円で手に入っておるものが、市中の中小企業を対象とした人たちは、三万八千円のメーカー渡しが五万七千円になっているじゃないですか。こんな不合理なことがありますか。いわゆる大手産業といわれる自動車、電機、家電あるいは造船、これらのほうにはメーカー引き渡し価格がトン当たり三万八千円で、中小企業の体質の弱いところに回るのが五万七千円じゃないですか。いまスクラップで平炉産業でつくってくるところの、この人たちの危惧というものがこの秋から出てくるのは当然じゃないですか。通産省の局長がそういうような考え方を持っておるから鉄の値段が安定しないでだんだん上がるのです。異常な高騰と言わないでどうするのですか。一年間に一・五倍じゃないですか。
 時間がありませんから次に行きますけれども、公取委員会来ておりますね。――昨年の七月、不況カルテルを半年間延長いたしました。これは国会でも相当問題になって、鉄鋼のメーカーに対する不況カルテルを組むのはけしからぬという論議が盛んに繰り返された。あの昨年の七月から半年間の延長についていろいろ問題が出てきて、ことしになって、なぜあのときにあれを延長したのかということを強く言われております。なぜあのとき延長したか、もう一ぺんその判断の根拠を問いましょう。
○三代川政府委員 お答え申し上げます。昨年の六月で第一次の不況カルテルが終わりましたが、それを延長いたしました当時におきましては、まだ鉄鋼の需給ギャップもかなり大きゅうございましたし、それから採算状態もあまり良好ではございませんでした。そしてその後の見通しといたしましても、公共投資に基づきます需要はまだようやく出てきたという程度で、そして民間投資関係の需要のほうはまだ停滞しておりました。そして当時、六月の末でございましたか、公定歩合の引き下げも行なわれるという、そういう先行きの見通しが必ずしも、今から考えますとおかしゅうございますが、当時はそういったようなあまり明るくない見通しでございました。そういうようなわけで、当時といたしましては延長もやむを得ない、そう考えましたわけでございます。
 ただ、その後、十一月の末ごろから非常に価格が上がってまいりまして、私どもといたしましても、これは何とかしなくちゃいけないと考えましたが、もう不況カルテルの期間も一カ月余りでございますし、ここで打ち切って野放しにして、すぐに増産がされ値段が下がるか、そういうことよりも、むしろカルテル下において増産を指示し、価格は据え置かせる、そういうことのほうがよろしいのではないか、そのように考えまして、通産省とも十分連絡をとりまして、そのようにいたしたわけでございます。ただ確かに、十一月の末ごろから思いがけない需要の大きな伸びが出てまいりまして、価格も上がってきたという点につきましては、不況カルテルというものは認めるときよりも打ち切る時期というものがむずかしいなということは十分反省いたしております。その意味におきまして、エチレンの不況カルテルにつきましては十二月をもちまして、業界の期待からしますとかなりびっくりしたことと思いますが、打ち切りましたようなわけで、これからの不況カルテルの運営につきましては、その辺を十分に反省してやってまいりたい、そういうふうに考えております。
○浅井委員 不況要件がそろってなかった場合、すなわちカルテルを実施する場合に不況の要件が整わなければ、不況カルテルは認めないわけですね。その不況の要件がなくなった、好況になったと判断されたならば、打ち切ることはいつでもできるわけですね。どうですか。
○三代川政府委員 おっしゃいますとおりに、不況の要件が欠ければ打ち切るというのが法律上から申しますと筋だと思います。ただ、打ち切りますにつきましては、審判を開いてというような手続上の問題もございますので、あと一カ月余りということになりますと、そういう手続をとっておりますと、その間に期間も過ぎてしまうということでございますので、先ほど申し上げましたように、その期間の中でできるだけ手を打ったということでございます。御了解いただきたいと思います。
○浅井委員 この不況カルテルは、事実九月ごろから需要増の動きが示されてきておるわけですが、それにもかかわらず強行して十二月まで引き延ばしたという批判がある。事実通産省は十二月に増産命令を出しておりますね。どうですか。
○山形(栄)政府委員 十二月八日に、いま公取のほうからの御説明もありましたけれども、カルテル下において、ガイドラインの拡大ということで、二十九万トンの増産命令を出しておるわけでございます。
○浅井委員 通産大臣、不況カルテル下で緊急増産や緊急出荷をやること自体、政府の政策が非常に大きな見通しの誤り、あるいは不況カルテルを組んできたこと自身が大きな誤りだったということは大臣お考えになりませんか。
○中曽根国務大臣 今日から考えますと、もう少しよく考えてやるべきであったと反省いたしますが、あのときは十月ないし十一月ごろから急激に景気が回復してまいりまして、われわれからすると鉄砲水が来たような感じの景気の回復の態様おありました。そういうわけで、臨時会議を開いて六千億円の補正予算まで組んで景気を上げよう、ある程度まで回復しなければいかぬ、そういうことも考えておったことでございましたので、いまから考えるとそういう反省がありますが、当時としてはちょっと見当が狂っておったように思います。
○浅井委員 またカルテル批判についてはその当時から非常に問題になっております。十月ごろに、七月に期限が延長された粗鋼の不況カルテルはこの辺で打ち切るべきだという声が非常に強くなっておった。日銀総裁は、最近の卸売り物価の急上昇をとらえて、鉄鋼はその有力犯人だとして、鉄鋼価格の値上がりをささえているカルテルに疑問を差しはさんだ、これが昨年の十月ごろの論調であります。それをあえて十二月まで引っぱった。非常に大きな問題になってきて、禍根になっております。わが国の現在の自民党政府が大企業と癒着をして、そして価格のつり上げを行ない、大企業向けの措置をとったためにこういうふうな結果が出てきておる。いま大臣が、当時の判断、いまから考えればということでありますが、そういう答弁をする以外にはないでしょうけれども、経済企画庁の経済見通しにおいても明らかに六月が底であって、それからはだんだん好況に向かうということを指摘をしておる。それにもかかわらず再延長をして、そうして十二月まで引っぱった。十二月八日には増産の指示を出しておる。不況カルテルは十二月の三十一日まで延々と続いておる。こんなばかなことがありますか。不況カルテルというのは生産を押えることではないですか。生産を押えることを公取が認めておって、そうしてその指導のもとになければならないのが、いわゆる通産省の指示で十二月八日には緊急増産をやっておる。こんな矛盾した政治を行なっているということは、国民に対して非常に反省をしなければならぬし、また戒めなければならぬ問題だと私は思います。この不況カルテルということについては、先ほど公取の経済部長ですか、お話しになったように、重要な反省をしてもらわなければなりませんけれども、物価の上昇をもたらしたその弊害というものは大きな問題であったということはよく自覚していただきたいと思います。だからこそ高炉の大手四社、新日鉄、住金、日本鋼管、神戸鋼の三月期の決算を見ますと、四社ともそろって過去最高の売り上げとなっておる。経常利益は昨年の九月に比べて、新日鉄が四・四六倍、四社合計でも三・八一倍、こういう大幅なふえ方になっております。ここで新日鉄、住金の両社の経常利益は過去最高の新記録です。日本鋼管や神戸製鋼にしても四十五年の三月期に次ぐ史上第二番目の利益を計上しています。公取は、いわゆる消費者や国民に顔を向けているのではなくて、大企業だけに顔を向けている公取委員会か、こういう批判が強まってきておる。
 そこで、通産大臣にお伺いしたいのですけれども、朝日新聞で報道されましたけれども、あなたが、いわゆる新日鉄に対して、配当について八分くらいで押えるべきだという要請をしたということから、異例の緊急要請だということで見出しが出ております。この点についてはあなたは否定をされるでしょうけれども、そのいきさつをちょっと簡単にお伺いしたいと思います。
○中曽根国務大臣 通産省としては、企業の自由な想像力を最大限に発揚させることが基本的に望ましい、そういう考え方に立ちまして、配当問題に不当に介入するようなことは極力回避すべきであると考えておりまして、鉄鋼メーカーの首脳に対して配当を押えるように要請したというようなことはありません。しかし、当時の鉄鋼業について見ますと、四十七年度下期は、前半は不況カルテル期間中であります。四十七年度末から四十八年にかけての需要の急激な盛り上がりによって売り上げが増加し、結果的に利益を増大することとなりましたが、その半分は、後半はカルテルにかかっておったということもあります。それで、私としましては、インフレ克服が国民的課題である昨今、ここで生じた余裕を物価抑制に向けることが望ましい、第二に、鉄鋼業は今後公害防止を相当進める必要があり、そのため、内部留保をここで厚くすることがより適切ではないか、また、鉄鋼業というものは日本の代表的産業であって、このような産業は長期的に安定していって価格を保持することが非常に望ましい、そういう基幹産業でもあるし、また、社会的責任が叫ばれておる今日、社会的倫理性を持った節度ある行動をとることが企業に求められているという私見をもって、利益金の処分については慎重に配慮することを期待をしたのであります。鉄鋼業界においても、自主的にそういう見地から、おのおのの見地、おのおの各会社の自主性において配当を押えたと考えております。
○浅井委員 それでは、この四十八年四月十三日の記事に対して、あなた訂正を申し入れましたか。明らかに「「大幅増配はまずいよ」 通産相が鉄鋼大手に要請 世論恐れ、配当抑える」という五段抜きの見出しです。この記事はうそでしょうか。
○中曽根国務大臣 鉄鋼協会とか鉄鋼連盟とかいうものにそういう要請をしたことはありません。しかし利益金の処分については、社会的な考慮をもってやることが望ましい、そういうことを会社の社長に言ったことはあります。それがそういうふうに書かれたのではないかと思います。
○浅井委員 要するに、あなた自身が私企業に関与しないというような言い方をしながらも、いわゆる行政指導をやったということは、これは私は問題ではないかと思うのです。いわゆる自由な企業に対して、商法上の問題、株主の権利を侵害するとか、いろんな問題が出てくると私は思います。確かにこのカルテルを組みながら、四十七年の十二月、越えて間もなく四十八年の一月二十四日に、当時の新日鉄の会長であった永野さんが、一割配当に戻すつもりである、これをはっきり言っておる。あなたが四月にこういうことを言った。そして三月の配当の結果を見ておると、九分配当になった。だから政策配当だ、こういうふうな批判が出てきておる。そして今度は内部留保という形で、決算表を見ると「特別損失」ということで、「特別償却引当金繰入」「価格変動準備金繰入」「投資損失準備金繰入」「公害防止準備金繰入」として総合計三百二十七億が、いわゆる租税特別措置という税金のがれの法律でもって、この内部留保をはかっておる。これはいろんな意味からいって、この租税特別措置法の問題も大きな問題であるとともに、また通産省が大企業だけにこういう恩典を与えておるそのこと、あるいはまた大企業に大きく配慮をしておる、そして世論をおそれて国民の目をごまかして、もうかり過ぎたという印象を与えないために、こういうふうな操作あるいはまた合法的な粉飾決算ともいわれておりますけれども、こういう悪口がいわれておる、そういうことが出てくるわけです。もっといわゆる大手メーカーをはじめとして正々堂々と、メーカーは装置産業なんですから、量産体制に入れば入るほどコストは下がるはずであります。こんな史上空前の利益が上がるような、そういうメーカーのやり方ではなくて、もっと価格の安定のために、ユーザーだけではなくて、店売りの配分をふやすとか、いろんな措置を具体的にとらなければ、この鉄の市場の価格の安定というのはできないと私は思うのです。この点、大臣、どうでしょう。
○中曽根国務大臣 利益金の処分について慎重な配慮を望むと会社の社長に期待したことはございますけれども、配当問題について介入したということはないのであります。しかしあの当時、日本の経済界の皆さんも、商社問題等が騒がれて、非常に社会的責任を痛感しておったときでございますから、それだけの利益金が出たものを全部株主配当に回すということについては、いろいろ慎重な配慮をして、いまのような決算が出てきたのであろうと推察をしております。しかし、当時からわれわれは、鉄鋼の値をできたら引き下げたい、上げないようにしてほしい、それが一番われわれの要望するところであるということは会社に伝えまして、そして鉄鋼の需給協議会を設けまして、また鋼材のあっせん所を設けまして、それらのメーカーが問屋や特約店等に対しての影響力を行使して、現場における価格を上げないように、特に市中の中小土建に対する鋼材の丸鋼その他の値段を上げないように非常に協力して実はやってもらいました。それはかなりの成果があったように思います。それと同時に、増産分は全部市中へ放出する、そういうことで市中にもまた回してもらったわけであります。そういうような努力を相協力しながら物価引き下げ及び経済安定のためにやってきたのでございまして、その延長でいまも鋼材の値段を上げないように、そして一番問題点は、いま御指摘になりましたとおり、市中に放出されるたしか二〇%弱のものの値段が流通過程において上げられていくという問題なんです。これが一番頭の痛いところで、ここを押えようと思いましてもなかなかむずかしい問題がございました。また現にございます。しかし今後の情勢を見まして、不当な売り惜しみ、買いだめというようなものがあるようでしたら、この間通過させていただきました法律を発動しまして、現場の実態調査なり勧告なり、そのほかをびしびしとやっていくつもりでおります。
○浅井委員 現実にたとえば新日本製鉄のいわゆる店売りを引き受けておるところの卸問屋等について、新日本製鉄の会社におきましてはお金を受け取らない、利子だけを持っていく、お金はいまはけっこうですということで受け取ってくれなくて非常に困っている、そういう現実の事実もいま国内で出てきつつあります。確かにいろんな面で、いわゆる店売りを通じての、卸売り、仲買い、小売りというこの窓口を通して買うところの中小企業の資材の購入問題については本格的に取り組んでいただかなければ、先ほどのアメリカのスクラップの輸出規制とともに、今後、これから秋の重要な問題になると思います。鉄鋼はまた日本の大きな基幹産業、基礎産業というか、非常に重要な産業であります。したがってこれに対する通産省の今後の取り組みの重大な決意を促しておきたいと私は思います。
 以上で質問を終わります。
○宇都宮委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三分散会