第071回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会 第28号
昭和四十八年六月二十日(水曜日)
    午前十時十三分開議
 出席委員
   委員長 佐野 憲治君
   理事 菅波  茂君 理事 登坂重次郎君
   理事 林  義郎君 理事 渡部 恒三君
   理事 小林 信一君 理事 島本 虎三君
   理事 中島 武敏君
      小澤 太郎君    大石 千八君
      田中  覚君    戸井田三郎君
      徳安 實藏君    阿部未喜男君
      土井たか子君    木下 元二君
      岡本 富夫君    坂口  力君
      小宮 武喜君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 三木 武夫君
 出席政府委員
        環境政務次官  坂本三十次君
        環境庁企画調整
        局長      船後 正道君
        環境庁自然保護
        局長      首尾木 一君
        環境庁水質保全
        局長      岡安  誠君
        厚生政務次官  山口 敏夫君
        厚生省環境衛生
        局長      浦田 純一君
        水産庁長官   荒勝  巖君
        通商産業政務次
        官       塩川正十郎君
        通商産業省公害
        保安局参事官  田中 芳秋君
        通商産業省化学
        工業局長    齋藤 太一君
        建設省河川局長 松村 賢吉君
 委員外の出席者
        環境庁企画調整
        局公害保健課長 山本 宜正君
        参  考  人
        (日本自然保護
        協会常務理事) 石神甲子郎君
        参  考  人
        (横浜国立大学
        教授)     宮脇  昭君
        参  考  人
        (鳥取県知事) 石破 二朗君
        特別委員会調査
        室長      綿貫 敏行君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十日
 辞任         補欠選任
  大石 千八君     徳安 實藏君
同日
 辞任         補欠選任
  徳安 實藏君     大石 千八君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第一二一号)
 公害対策並びに環境保全に関する件(水俣病問
 題)
     ――――◇―――――
○佐野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 本日は、参考人として日本自然保護協会常務理事石神甲子郎君 横浜国立大学教授宮脇昭君及び鳥取県知事石破二朗君、以上の方々が御出席になっております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、また遠路にかかわらず、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
 本委員会といたしましては、現在自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案について慎重な審議を続行いたしておりますが、本日は参考人の皆さんから貴重な御意見を承り、もって本法案審査の万全を期したいと存ずる次第でございます。つきましては、どうか忌憚のない御意見を述べていただきたくお願いいたします。
 なお、議事の整理上、御意見の開陳はおのおの十五分程度といたしまして、あとは委員の質疑にお答えいただきたくお願い申し上げます。
 それでは石神参考人からお願いします。
○石神参考人 私、日本自然保護協会の石神でございます。ただいまから意見を申させていただきます。
 わが国は古来世界的の風景国でございます。この風景国であるということは、わが国土の自然のあらゆる条件が世界的にすぐれているということでございます。すなわち、日本列島は、太平洋の西側の造山帯で火山帯に位置しておりまして、狭い島国にかかわらず、三千メートル級の山が二十数山ございます。すなわち地勢は急峻でございます。さらに、日本列島は温帯のモンスーン地帯でございます。そして南北に三千キロほども延々と連なっておりまして、南からは暖流である黒潮が北上し、北からは寒流である親潮が南下して、日本列島の東西で相かわしております。したがいまして、気候はすこぶる変化に富み、雨量は多く、四季の区別はかつ然としております。これによりまして日本の動物や植類の多いこと、世界的に誇るに足るものがございます。これらによりまして、うららかな日本の緑林に囲まれましたる国土は世界的にも風景国になっておるのでございます。
 ところが、この美しい風景国、この豊かな自然が私ども日本民族をはぐくんだ母体として、すなわち、比較的頭脳明晰で一億の同一国語を話しておる国民をはぐくんだ母体として、すぐれたる国土と民族が不可分の関係にあるという問題を認識することがはなはだ乏しいのでございます。そして現在のように自然を破壊してはばからないというような問題が多々出ております。私どもは、子孫の繁栄をこいねがうならば、この祖先伝来のわが国のすぐれたる自然景観、自然環境を大切にいたしまして、子々孫々に伝えていかなければいけないと存ずる次第でございます。
 国の施策といたしまして、この美しい環境を守るという法律が自然公園法でございます。すなわち、わが国のすぐれたる風景地を保護し、自然資源を保護するということが大前提でございまして、これを国民の利用に供し、保健、休養、教化に資すると書いてございます。まことに国土の保全のための法律としてふさわしいものと考えられます。
 自然公園法によりますと、国を代表した、そして最もすぐれたる景観地及び世界に誇るに足るものが国立公園でございます。これが現在、二十六、百九十九万ヘクタール、国土の面積の五・三%余を占めております。国立公園に準ずる風景地は、国定公園でございます。これが四十八カ所、その面積は約百万ヘクタール、国土の二・六八%を占めております。なお、都道府県におきまして代表する風景地は都道府県立自然公園に指定されております。これが二百八十六カ所、その面積はやはり二百万ヘクタールほどございます。国土面積に比して五・三%ぐらいでございます。自然公園全部で約五百万ヘクタールの地域を占めておりまして、国土面積の一三・四%に当たります。
 このすぐれたる景観地、五百万ヘクタールほどの地域が、狭い国土におきまして国民の福祉と身心の健全なる育成のために、これを自然公園として確保し、これを維持管理することは、国の最低の責務と考える次第でございます。ただし、わが国の自然公園制度は、土地の所有権のいかんにかかわらず、地域を画して公園に指定しております。これは、アメリカの国立公園のごとく地域全体が国立公園局の所有地である制度と性質を異にして地域制の国立公園といわれております。これは自然公園法の前身でありまする国立公園法が昭和六年の制定でございます。明治末年に富士山を国の公園にしてほしい、あるいは日光を国の公園にしてほしいというような陳情、請願がたまりまして、昭和五年ごろは百件をこしました。当時の安達謙藏内務大臣が民意をいれるという意味におきまして国立公園法を制定してもらいました。当時の文化法としてめずらしい誕生でございます。このときに国内はやはり豊かでございません。したがいまして、国立公園の制度は国立公園区域全部を国有地にするということは困難でございます。また狭い国土におきまして公園専用地域をとるということもぜいたくでございます。したがいまして、少ない土地をいろいろな意味に使用することのできるように地域制の国立公園制度を考案したものでございまして、日本の国情にまことにふさわしい公園制度と考えられる次第でございます。
 しかし、国立公園の中におきまして公園に指定いたしましても、すぐれたる景観を守ることは必要でございます。このために法律によりまして利用の制限を付しておりますいすなわち自然公園におきまして最もすぐれたる中核的地点は特別保護地区に指定し、原則として現状維持の管理の方針をとっております。これに次ぐものは特別地域でございまして、特別地域は管理の部合上一種、二種、三種に分けてございます。
 第一種特別地域は国立公園特別保護地区に次ぐすぐれた景観地でございまして、これは景観の保護を主とし、国立公園の利用等は最低限にとどめ、森林の代採のごときは一〇%の択伐を許すという程度でございます。第二種特別地域は国立公園の景観と国民の公園の利用を調和せしめて整備する区域でありまして、場合によりましては国立公園目的以外の産業開発も許されております。第三種特別地域は自然公園の景観に著しく支障を及ぼさない限りにおきまして、国立公園の利用施設はもちろん他の産業も計画的に利用をいたしております。これらの特別保護地区、特別地域は地域内におきまして景観に影響を及ぼす工作物等を行なう場合には、これは国立公園におきましては環境庁長官、国定公園及び都道府県におきましては都道府県知事の許可が要ります。したがいまして、これらの許可の際に正しい利用方法、自然景観とよくマッチするように指導できるわけでございます。
 ところが国立公園の中にはいわゆる今度の問題になっておりまする普通地域が相当含まれております。これは景観のまとまりとか国立公園の利用の必要上等より数地域があり、公園の中に含まれております。普通地域の中には集落を含む場合もございます。また農耕地や林業経営地等も相当含まれております。したがいまして、住民の不便を及ぼさないように、ある一定度の限界より大規模の施設を行なうとき、これは届け出を要するという制度でございます。いままでは、届け出すれば直ちに工事をやってよろしいという制度になっております。ところが、御承知のように近年の土木工事の機械の進歩は著しゅうございまして、普通地域におきましても住宅分譲、別荘地分譲あるいはゴルフ場の経営あるいは河川におきまして砂利採取が制限されましたものですから、山の土石の採取等を盛んに行なわれております。瀬戸内海のごときは島が、山がすっかりなくなったというようなところさえございます。すなわち自然公園の中におきまする普通地域の自然環境の保全はいままでのような法律では全うすることができないのが現状でございます。普通地域は最近の自然公園の指定には公園の指定の際に保護計画を立てますものですから、比較的普通地域の含まれる部分は少のうございます。しかし、古い国立公園国定公園におきましては、当時の事情から公園の指定を急いだ問題とか、あるいは学術的調査を行なわずに応分に指定したとか、あるいは指定した後に保護計画を立てたというような事情から普通地域が七〇%以上もあるところがございます。やはりこれらを自然景観を守らない限りは、自然公園の景観を維持することはできないわけでございます。したがいまして、今回のようないままで掲上してありませんでした土地の形状と変更する行為とか、海面以外の水面を埋め立てする行為とか、陸において鉱物を採取し、土石を採取する行為というようなものをやはり届け出事項に追加するということ、さらにいままで届け出と同時に着工できたものを、三十日たってから着工してよろしいというような、監督官庁におきまして自然保護と開発との調整を指導できる機関を置いたということは適切なことと存じます。もちろん自然保護の立場から申しますれば、もっともっと強い規制をやることが望ましいのでございまするが、自然公園行政の各般の情勢を考えまして、今回の改正案が実現性の最もある、しかも効果的の法律改正と考えられます。
 ことに都道府県立自然公園におきましては八割近くがまず普通地域といってよろしいのでございます。したがいまして、都道府県立公園の景観指導はほとんど行なわれておりません。今回この法律改正によりまして、おそらく都道府県立自然公園条例も改正にだんだんなると思います。そして都道府県立自然公園の景観も維持が一そう適確になるのではなかろうかと存じまして、今回の改正について賛成を表するものであります。自然環境保全法の普通地域におきましても同様な条件と考えます。
 以上、私の意見を終わります。(拍手)
○佐野委員長 どうもありがとうございました。
 引き続き、宮脇昭君にお願いいたします。
○宮脇参考人 横浜国立大学の宮脇でございます。
 御承知のように、わが国でいままで厚生省の国立公園局あるいは国立公園部に所属していた自然公園行政が、厚生省から環境庁の自然保護局に移ったわけでございます。
 そうしていままでの単なるたとえば自然公園法の第一章の第一条にありますような、すぐれた自然の風景地を、景色を保護する、あるいはそして保護しながら利用増進をはかるということだけでございませんで、これは議員の皆さん御承知のように、たとえば今度の新しい自然環境保全法の第一条には、「この法律は、自然環境の保全の基本理念その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定めるとともに、自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まつて、自然環境の適正な保全を総合的に推進し、」云々とあるわけでございます。いわばいままでは景色を、日本の比較的すぐれたあるいは変わった景色を守るのが自然公園法でございましたが、それが新しい人間の持続的な生存環境、さらに彼らがいわば心を持ち文化を創造する能力を持っているならば、日本人の、あるいは人間の心とからだの持続的な保障、あるいは失なわれているところでは、積極的な創造の基盤としての自然環境保全法のその基礎は、自然公園法その他の自然保護、自然環境の保全を目的とする法律と相まってといわれている以上は、現在あるいはこれから持続的な日本の最後の自然の聖域から、都市や産業立地の公害で悩んでいる人たちの緑の保養所としてのいわば自然公園というものは、単なる景色のよいところを残すだけでは不十分でございまして、いままで、たとえばクヌギ、コナラの雑木林のような半自然生のものでありましても、それが、そこに住んでいる人たちの持続的な心とからだの保障であり、あるいは科学の目的に、さらに将来の間違いのない国土の開発や利用に対しての鏡の役目をするようなものは、何を犠牲にしても残さなければいけないし、あるいは失われているところでは、積極的に奪い返す必要があるわけでございます。
 そのように見ていったときに、いわば自然環境保全法の一番中心といいますか基礎になっている自然公園法が、第一条の目的において現段階では不十分ではないかというふうに私は考えさしていただくわけでございます。したがって、自然の単なる風景地を保護するだけではなしに、その自然の景色を、風景をささえているあらゆる生物的な、あるいは非生物的な材料をインテグレートし、総合した、いわば人間も含めた自然の多様性、エコシステムのバランスをいかに残し、あるいはさらに、それを将来にわたって保全していくかということが、これから問われるところの自然公園法及び自然環境保全法の基盤でなければならないというふうに考えています。
 そういう点で見てみますと、いままでの日本の自然公園法がいかに形骸的であったかという一例を申し上げますと、たとえば日本の自然公園は国立、国定あるいは都市公園がどれだけあるかということを外国の学者が調べますと、国土の一三・六%は日本の自然公園でございます。これはたとえばドイツの九・数%よりはるかに面積が広い。日本は国立公園の行政が非常によくいっているといわれますが、いま石神参考人からも言いましたように、たとえばスイスの国立公園に相当するような、ドイツの自然保護地域に相当するような特別保護地区以上の厳密な意味での規制が行なわれているのは、わずかに国立公園において一一%、国定公園において三%、都市あるいは都道府県立公園ではほとんど皆無の状態でございます。このように見てくると、形ばかりの国立公園行政なり自然公園行政がいままで十数年間行なわれてきたけれども、実質におきましては、国立公園の中におきましても普通地域がほとんどであるし、あるいは特別地域におきましても二種、三種というのは伐採も自由であるし、あるいはほんのわずかな届け出なり規制があれば道路もできるというようなことによりまして、残念ながら、自然公園法の不備によっていままでさまざまな、一般の自然保護の運動家やあるいはその担当者の御努力にもかかわらず、形骸的な自然あるいは国立公園がわが国各地に現存し、あるいはさらに破壊が進んでいる状態でございます。したがいまして、一体すぐれた風景地をどのように定義していらっしゃるか。いわばすぐれた風景をささえているあらゆる状態、あらゆるその基盤を総合したものを、たとえばドイツ語のディ・ランドシャフト、景観ということばでいわれる、景観とは単なる景色ではなしに、景色をささえているあらゆるものをその周辺とともに保護しなければならない。そのようなものがいわば自然公園の本質でなければならないというふうに考えています。
 さらに大事なことは、そのような自然公園の利用ということは間違いのない保全、持続的な保障のワクの中できわめて遠慮しながら慎重に行なわなければならないということ。そして、自然環境保全法ができましたが、国会で自然環境とは一体何であるか、どのような議論がなされたか、むしろ私は参考人の一人として、差し出がましいことではございますが、お尋ねしたいわけでございまして、一体何が自然環境か、皆さまはどのようにお考えになっていらっしゃるか。私たちが、たとえば生態学の立場から申し上げます自然環境とは、実は自然の一員としての人間も含めた、そして彼らのポテンシャルな人間固有の文化を創造する能力をも含めた、いわばすべての生物集団と彼らの生存環境の持続的な保障あるいはバランスの確保が自然環境である。そして公害対策委員会そのほかでもよくいわれますように、たまたま現在新聞で問題になっているPCBとかカドミウムとか有機水銀とか鉛を告発されたのは、あと追いで押えることだけがあたかも環境庁の問題のように、あるいは自然環境を守るようにいわれることはきわめて間違いであって、もちろん毒殺行為に相当するような、単独の重金属で人が死ぬような問題は何を犠牲にしても発生源に行って押えなければいけませんが、少なくとも自然保護局でいわれるところの、あるいは自然環境といわれるものは、そのような未知の要因も含めた人間の持続的な生存環境の要因を総合して、それを命と関係させた場合に、初めてわれわれはそれを環境という。したがって、現在いわれている環境とは人間の持続的な生存環境であり、そして個々の非生物的な要因ではなくして、それを総合して命と関係した場合に、人間及び彼らの共存者との多様な持続的な生存環境をわれわれは自然環境というのではないか。したがって自然環境保全法は、単に国立公園に指定されているところだけでなしに、日本の国土のすべてにおいて、特に最近のいわゆる公害やあるいは産業や都市化によって人間の環境が汚染され破壊されているところでは、新しい自然公園の創造こそ、あるいは自然環境の創造こそ自然公園法として必要ではないかというふうにすら考えるわけでございます。
 そのように見ていきますと、いままでの自然公園というのは、形の上では面積が非常に多うございましたが、そのほとんどはいわば普通地域なり一種、二種の地域で、そこは極端にいえば何をやってもよかったわけでありまして、それが自然公園なり自然保護地域、日本では国立公園とか国定公園という名前で呼ばれていますが、そういう名前だけに片寄って、それが地方公共団体ではたまたま遊び客の誘致にいままで役立っていたために、国立公園、国定公園の運動を一生懸命やりますけれども、やられたあとは指定のされっぱなしで、むしろ開発に拍車をかけ、開発という名前の、かけがえのない国土の破壊をすらもたらしたわけでございます。したがって、もしできることならば、むしろ国立公園のすべての地域を特別保護地区と同じような規制が必要ではないかとすら思われるわけでございます。
 したがいまして、今度の提案まで出されるような問題はむしろおそ過ぎたのではないか。そしてもう一つ大事なことは、そのような普通地域も含めたところの自然公園、日本の国立、国定及び都道府県公園におきましては、まず自然の多様性を残すことがすべての行政の第一目的であって、その保障のワクの中で遠慮しながらの利用を考えるべきではないかと思います。
 もう一つここで大事なことは、いままで一度国立公園あるいは国定公園に指定されますと、現状変更の場合には、昔の自然公園審議会、現在の自然環境審議会ですか、それを通りますが、そこで議論されるのは、許可するかしないか、あるいはどのような規制をつけるか。現在では大部分の場合あらゆる規制がついて、その上でやむを得ずとか、あるいはよほど慎重に許可されるわけでありますが、いわばアフタケアが全くなされないために、開発サイドでは、許可だけとればあとは何をやってもよいというふうな、しばしば間違った破壊をもたらしている。したがいまして、お願いしたことは、単に条件をつけて許可するだけではなしに、そのあとが具体的にどのようになされているか。二年目、三年目、五年目、十年目ぐらいに、積極的ないわば追跡調査が法律によって条件づけられ、もし基準どおりになされていないときには、むしろ復元命令を出すなりいままでの開発行為の取り消し命令を出すぐらいの法律的な基盤がない限り、単なるいままでの自然の風景地を守るんだ。そして自然環境保全法はその風景地を守る自然公園法が中心になっている程度ではいつまでたっても、ほんとうの人間の持続的な生存環境も、そして日本人の豊かな文化あるいはポテンシャルなわれわれの情緒を今後も保持することは、あるいは創造し維持することはできないのではないかというふうに考えます。
 もう一つ最後に申し上げたいことは、日本の国土でいま自然が残されているのは、かつて宮内庁に所属していた、あるいはかつて国に所属していた現在の国有林地域の大部分でございます。そして自然公園の多くのところも国立公園の大部分も、実はこの国有林と重複しているわけでございますが、一たび自然公園法あるいは自然環境保全法によって指定された国立公園は、ぜひ林野庁サイドの方も協力して、まず日本人すべての人たちの最後の自然の遺産をいかにみんなで協力して守るかということを前提にして、そのワクの中で、いわば単なる木材生産工場でなしに、国民の多様な持続的な生存環境の保障と国土の最後のいわば自然を保護し、災害を防止するという多様な目的のためにできるだけ全域を保護するようにしていただきたい。
 いままでの法律なりあるいは国立公園の具体的な例を見ますと、一番大事な自然の最後の日本の森林が残されているようなところはたいてい特別地区あるいは特別保護地域から全部はずされてしまっているわけです。だからせっかく国立公園あるいは国定公園に指定されても、あっという間にスーパー林道がつき、林道がつき破壊されてしまっている。名前だけの国立公園あるいは国定公園になっています。そうしてわれわれがそれを、たとえば自然環境審議会そのほかで言いましても、それはいわば国立公園になっていない、大部分いいところはなっていない、その次は、なっているけれども普通地域でございますから、どうにもなりませんというふうな答えが返ってくる。これは一体日本の行政はどうなっているのかということを疑わせられるわけでございまして、私たちは、国有林とかあるいは日本の国立公園というのは、日本人すべての者の共有財産であって、それをたまたま林野庁なりあるいは環境庁の自然保護局が管理を、国民一億の委託を受けてやっているのであって、国民の財産である以上は、国民の側に立っての保護なり保全を基盤にし、そうしてそのワクの中で、国民の合意の中で最小限の自然の許容範囲のワクの中での伐採なりあるいは林道をつけるなりあるいは開発を考えていただくべきであって、かりにも独立採算制であるとか云々の次元の低い、いわばたまたまの法律的な規制といいますか、行政の措置によっていままで残された、そして一度破壊されたら、日本の高山帯や亜高山帯あるいは最後に平地に残されている自然の多様な森のように、五十年、百年たっても、世界じゅうの金と技術を集中投資しても復元できないような国民の最後の遺産は、これはセクショナリズムあるいは縦割り行政のワクを越えて、すべての人の合意によって守るべきであるし、守ることこそ、たぶんどろくさくても間違いのない日本人の心とからだを守る自然環境保全法のあるいは自然公園法の基盤でなければならないと思います。そういう点におきまして、いままでの許可制行為にして、あれをしてはいけない、これをしてはいけない、木を切ってはいけないというふうなことだけでなしに、いかに国民の最後の自然の聖域を、心とからだの保障の場を守るかということの先取り行政、先取りの法案を積極的につくっていただきたいということを国会の皆さまにお願いするわけでございます。
 最後に、もう一つ最後で申しわけございませんですが、いまの日本の自然が破壊されることは、もちろん国や地方公共団体に対していつも行政があと追いになるきらいがあるということ。
 その次に二番目に、いわば企業サイドの人がせつな的な利潤によって、一度破壊したら、企業自体も、国民も、国も、地方公共団体も損をするという、少し長い目での経済的な利潤を見る能力がないということ、したがって、きょうもうかればあすはどうなってもよいというふうな方式で自然の聖域――自然には強い自然と弱い自然とある。いわば人間の目に相当するような弱い自然は残すのが新しい開発の手法であるにもかかわらず、山のてっぺんから穴の中まで全部道路をつけ、施設をつけてつくってみんなに見せるために、目に相当する弱い自然は指一本でだめになる。あっという間に日本の最後の自然の聖域が破壊された、あるいはされている。と同時に観光客の深層心理からいいましても、全部見せられてしまうと、もうそこは魅力がないので、よその山に行き、よその地方に行くので、これは地方公共団体、地元民に対しても、実は少し長い目で見れば経済的に損であるということも十分わきまえて、あすもあさっても間違いのない、自然の利子、資本を残して、その利子で堅実に生きていく方法を考えるべきではないかと思います。
 三番目に、利用者のモラルの問題がございますが、これは何としても家庭教育、学校教育におきまして、自然には触れてはいけないところがあるという教育をすべきではないか、私たちは自然の一員としての自分のからだであってもあるいは相手のからだであっても、ほっぺたは突っついてもよいけれども、どんなに相手を愛しようと思っても、指一本入れれば目はつぶれてしまう、いわば弱い自然は残すのが新しい開発の手法であるということを、すべての国民が共通の見解として、党派やあるいは考え方を超越して理解し、そのワクの中でのどろくさくても間違いのない、時間がたてばますますよくなるような多様な自然環境の保全と、そのワクの中での利用を、国民の合意として進めていっていただきたいというふうに考える次第でございます。(拍手)
○佐野委員長 どうもありがとうございました。
 次に、石破参考人にお願いいたします。
○石破参考人 石破でございます。
 衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会におかれましては、委員長はじめ委員各位、公害対策なり、さらに環境保全のために格別御尽力賜わっておりまして、まことに感謝にたえません。
 さらにまた、きょうは自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案につきまして、私どものごとき者まで参考人としてお呼び出しをいただき、意見をお聞き取りいただきますこと、まことに感謝にたえません。厚くお礼申し上げます。
 今回御提案になっております両法の一部改正につきましては、自然公園法なり自然環境保全法の趣旨を全うするために一歩前進したものである、こういうふうに考えまして、地方行政を担当する者といたしまして賛成でございますけれども、正直申し上げまして、この程度のことでいわゆる必要な自然が守れるものかどうかはなはだ疑問とするものであります。
 はなはだ恐縮でありまして、委員長の御命令がありますれば取り消さしていただきますけれども、実は私は鳥取県の知事をしております。たいへん失礼な言い方でありますけれども、非常に忙しいからだであります。お呼び出しをいただきましたのが、おとといの午後五時ごろでございました。実はきのう、六月県会に提案します予算の査定で、どうしても出られぬということでお断わりしたのですけれども、どうも知事の意見をお聞きになりたい、それでほかの県の近まの県知事を集めたらどうだ、いや、それぞれ県会を招集しておったりしてどうにもならぬということでございまして、無理やり出てきたわけなんであります。
 きょうこの委員会場にあがりまして拝見しますところ、御出席の委員の皆さんきわめて少数であります。国会目下重要法案御審議中でありまして、お忙しいこと百も承知いたしております。しかしながら、まさかこれだけの数の委員の人がお集まりになって、私どもまでお呼び出しになってお聞き取りになるのに、これだけしかいらっしゃらぬというようなことで、ほんとうに大多数の国民が期待しております自然の保護がはたして可能なものかどうか非常に疑問とするところであります。政府をはじめ、たいへん失礼な申し分でありまして、御命令がありますれば取り消します。このようなことで、かりにこの模様を県に帰りまして県庁の記者クラブで発表しまして、県民はそれを読んでどう感じますか、私ははなはだ寒心にたえないことでありまして、それだけを申し上げます。御命令がありますれば取り消します。
○佐野委員長 けっこうです。遠慮なく所見を述べていただきたいと思います。
○石破参考人 そこで、申し上げましたとおり、今回の改正は一歩前進でありまして、たいへん歓迎するところでありますけれども、この程度のことでどうかと思います。
 時間十五分でございますから、なるべくその範囲で申し上げますけれども、鳥取県には国立公園が二つと国定公園が二つあります。
 大山隠岐国立公園でございますけれども、総面積は一万三千五百三十一ヘクタールあります。そのうち国有林以外の面積が七千三百十三ヘクタールございます。そのうち普通地域、特別地域にわたりまして、正確にはわかりませんけれども、いわゆる大企業が買占めておるような面積を合計してみると、普通地域において二百七十六ヘクタール、それから特別地域につきまして百五十ヘクタールぐらいありますか、合わせますと四百二十五ヘクタールぐらいはどうも企業が買占めておるような事実があります。山陰海岸国立公園のほうは千五百二十四ヘクタールございますが、そのうち公有地以外が九百二十ヘクタールございます。これにつきましては、いわゆる企業が買占めておるというような形跡を県はまだつかんでおりません。
 国定公園が二つございまして、その一つの比婆道後帝釈国定公園、これは県の西のほうにありまして、広島県あたりと一緒になっておりますけれども、県内の面積が千四百三十七ヘクタールございます。そのうち五百二十二ヘクタールはどうも買占めが行なわれておるという形跡があります。それからもう一つの国定公園の氷ノ山後山那岐山国定公園、これは兵庫、岡山、鳥取県とまたがっておりますが、県内の総面積が七千二百十ヘクタールございます。そのうち特別地域を約百六十ヘクタールばかりどうも買占められておる形跡がございます。
 そこで、非常にむずかしい点でありますけれども、こういう事実困っておりますから、法律、制度を強化していただいて何とかして保護をしていかなければならぬと思いますが、お考えいただきたいと思いますのは、土地所有者の利益をどうして保護してやるかという問題であります。いわゆる不動産屋とか土地ブローカーの行為は、いわば悪と申し上げてよかろうと思います。どうしてもこれは阻止しなければならぬことだと思います。
 しかしながら土地所有者はどんな保護を受けておるかという点でございます。現在自然保護が世間に非常にやかましくいわれておりますが、自然保護の必要性をだれが叫んでおるかという点であります。国立公園、国定公園地内の土地を所有しておるものは全然その要求を持っておりません。自然保護をしてくれなんということは言っておりません。何とかして自分の土地をいい値段で売りたいという要求を持っております。自然保護を唱えておりますものは国民の大多数でありまして、そうしなければ人類の生存のためにもこれは必要欠くべからざることでありますけれども、具体的にだれが要求しておるかと申しますれば、大体都会地に住んでおる人であろうと言って差しつかえなかろう。観念的に、理論的に自然保護の必要を説かれる方はこれは別でございますけれども、現実に自然を残してもらわなければ自分の生存は危いと考えておりますのは都市に居住しておる者に大体限られるのじゃなかろうか。ところがこれらの大都会に住んでおる方々は経済の高度成長によりまして相当の所得をあげ、相当の生活を営んでいらっしゃいます。けっこうなことであります。また都会地周辺の農地をお持ちの方々はそうたいして自分の所有地に自分で金を投資することなくして、ことばは悪うございますけれども、ほとんど現在にしてみますれば、ただ同然で政府から払い下げを受けた土地を何ら自分で努力することなくして、坪何十万円という値段で売って大きな所得をあげていらっしゃいます。国立公園国定公園だけではありませんけれども、山間地の農家の方々は、これまでは鉄道もつかず道路もつきませんし、全然金にもならないというところであったのでありますが、いいか悪いかは別といたしまして、いなかの土地でもいい値段で売れる時世が来ました。やっとこれで世間並みの生活ができるかな、土地でも売って、いい生活ができるかなという大きな期待を持っておるわけであります。ところがそれをどっこいそれは待て。だれのためだ。土地所有者のためではないわけです。そこでほんとうに自然を守る必要があるというならば、国民全体で自然を守るための負担をする。そして山間地の土地所有者が、やっと日の目を見るようになったから土地を売ってでももうけるか。昔は娘を売ることができましたけれども、きょうびは娘も売れません。先祖伝来の土地でも売っていい生活をし、子供を学校にでもやるか、自動車でも買うか。どっこいそれはいかぬ。どうもその辺が不公平ではなかろうかというふうに考えます。
 そういう考えもございまして、県としましては、政府の御援助をいただきまして大山の国立公園につきましては四十五年度、四十六年度、両年度にわたりまして約百三町歩県で買い上げております。山陰海岸国立公園についても買いたいと思っておりますし、四十七年度におきまして起債を御承認いただいて相当面積を県で買い上げてやり、自然も保護し、土地所有者にも御迷惑をかけないという方法を考えたのでありますけれども、遺憾ながら政府の財政援助は、特別保護地域と第一種保護地域ならば、これは起債を認めてやろう。第二種あるいは普通地域等についてはその承認まかりならぬ、こういう事態になりまして行き悩んでおります。ことしは大山につきましては特別保護地域、第一種、第二種、第三種、普通地域、この区分でも再検討していただきまして、できるだけ国の援助を受けて県が買い上げられるように区分を変えていただきたいということを政府にお願いしておりますが、そうでもして土地所有者の人にも不当な迷惑をかけないように、しかも自然保護をはかるように、貧弱な県でございまして、県限りではこれはどうにもなりません。やはり国の御援助をいただきたい。そして自然保護を全うしたい。繰り返して申し上げますけれども、ほんとうに自然の保護が国民の保健上必要だというならばただではできないということを御認識いただきたいと思います。財政御多端でございますから、国庫におきましてもそう無制限に金が出ないことも承知いたしております。しかしながら、かりに国立公園を全国民が年間何人使っておるか、かりに三億人使っておるといたします。一人について百円徴収するといえば三百億円の金はできるわけであります。その金をもって道路とかその他の施設をするのでなしに、国立公園、国定公園地内に土地を持っておって、売るにも売れないという者に何らかの反対給付をしていただくというような道でも講じていただきますれば、財源は必ずしも獲得不可能ではない。もっとも、技術的に申しまして、国立公園の出入りにゲートをつくるといっても、これはできるものではありません。そうしますれば、たとえば国立公園、国定公園を利用する者は大部分は勤労者だと思います。給与所得者、まあそれだけに限りませんけれども、かりにその方々から百円ずつ税金をよけい取っていただく。決してこれは、私は拒まないと思うのです。それを拒むような方には国立公園に入っていただかない、まあ極端なことを申し上げて恐縮でございますけれども。
 それで、実はこの大山国立公園を御指定を願いましたのは、戦前もずいぶん前でございまして、地元がどの程度のお願いをしたのか承知いたしておりませんけれども、戦後国立公園に御指定願いました山陰海岸国立公園でございますけれども、実は、恥を申し上げますけれども、正直申し上げまして、地元の者が、これはぜひとも自然を、景観を保持しなければならぬという理想でお願いしたものでありません。国立公園に指定を受けると何らかの国庫の援助を受けて施設の整備ができるだろう、旅館営業、見せもの屋、輸送業者等も何らかの恩典に浴することができるだろう、地方の住民も幾らか働き場ができるだろう、そういういわば欲でやったものだというのが実態でございます。そういうことからいたしまして、そういう欲望もあながち拒否もできませんし、それらの方々の欲望もかなえ、しかも土地所有者の保護もしていただく。そのために特別の財源の御考慮をお願い申し上げたい、ぜひともひとつ御考慮を願いたいと思います。
 今回の御改正に関しまして、直接の関係はありませんけれども、金をもう少し出していただきたいという点でありますけれども、おかげさまで、大山につきましてはことしから管理事務所を設置していただくことになりました。しかしながら、その陣容を拝見しましても、三人とか五人とかいうことでございます。鳥取県内の大山国立公園の面積、先ほど申し上げました一万三千五百三十一ヘクタールあります。そのほかにも岡山県、島根県にまたがっている。それを三人、五人で管理して自然の保護ができるということは、まあ、これは環境庁長官みずから現地にいらっしゃっても、これはとても不可能だと私は思います。本気で自然保護が必要だとの御認識がありますならば、たとえばそういうほんとうならば言うだけでまあいいかげんでいいわというなら、これはまあそれで何をかいわんやでありますが、もう少し本気で考えていただきたい。
 さらに、こまかいことでございますけれども、一定の条件をつけまして、国立公園地内、国定公園地内でもある種の開発行為を許可する場合の道が開かれておりますが、どうもそこがあいまいな点がある。あいまいな点があると申しますると、結局買占めをしようとされる方は、何とかすればこれは許可の道が開かれるかもしれぬという期待を持つでありましょうし、さらにこれを許可、不許可を実際に行ないます担当者、それぞれ人間であります。どのような誘惑、どのような圧力で、どのような間違ったことをせぬとも限らない。許可しないなら許可しないで、びしっとやっていただく。一定の基準をおつくりになるなら、明確な、もうだれにでもわかるようなはっきりとした基準をおつくり願いたい、そういうふうにお願いを申し上げまして、たいへんどうも失礼なことを申し上げましたけれども、重ねて申し上げますけれども、自然の保護はきわめて必要である、いわゆる土地の買占め、開発は一応私は悪であると申し上げてよかろうと思います。そういう観念に立ちながらも、土地所有者の権利を保護して――金持ちの権利じゃありません。ほんとうのいわゆる過疎地域で困って困って、それを売る以外には食う道がない、たとえば一部農林省の御援助を受けまして土地改良事業、開墾事業等をやっております。低利資金でありますけれども、元利を償還しなければなりません。それを償還するためには、国立公園であろうと、部落有の一部の土地でも売らざるを得ない。それ以外にはどうにもやりようがない。娘も売れぬ時節でございますから、そういう事情をよく御賢察いただきまして、御高配をお願い申し上げたいと思います。(拍手)
○佐野委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の御意見聴取は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○佐野委員長 引き続き、参考人に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅波茂君。
○菅波委員 私は最初に、ただいま参考意見を申し述べました石破参考人にお伺いしたい。
 石破さんは鳥取の県知事という立場で、地方長官という形で、たとえば鳥取にある大山とかあるいは山陰海岸とか、国立公園のすばらしいものを持っておる。そのほか、氷ノ山後山那岐山国定公園と、それから比婆道後帝釈国定公園、たくさん広大な面積の国立なり国定をお持ちであるわけなんです。そういう意味で、いまの状況の中で、いまのお話の中でも非常に、何といいましょうか、苦労が多いという、それを保護していくのには非常に苦労なすっておるというふうに考えているんです。いまのお話にありましたように、国に対する要望がいろいろ、区分を変えていくとかあるいは土地公債のようなものを多分に発行してもらうとか、いろいろの要望があると思うのですが、いまの無秩序な開発、こういうことによって自然環境が非常に破壊されておるわけであります。人間の住む環境、これもまた破壊されておる。これを保護していくのに、現場といってはなんですが、地方長官として具体的に一体どのような対策を緊急に講じていかなければならぬか、これが一点であります。
 それから第二点は、国立公園と国定公園は国と並んで都道府県が管理をおやりになっておるわけで、管理上のいろんな要望、たとえばいまも大山あたりは膨大な面積を持ちながらも管理人が非常に少ない。そういう増員というお話ですが、増員もありましょうが、何かもっとそういう管理者としての国に対する要望というものをまずお聞かせ願いたいと思うのです。
 ついでに全部皆さんに言ってしまいますので、あとで一括して順次御答弁をいただければと思います。
 次に、これは石神参考人にですが、石神先生はもう全くのベテランで、われわれ聞いておっても、言うならば環境庁のOBというぐらいで、しかもいま自然保護協会の常務理事をやり、長い間環境問題に取り組んでおられるわけでございます。自然保護という問題ではもう全くのベテランでございますが、これからの自然保護を進める上においてどういうような考え方あるいはどういうような方針といいましょうか、そういうものが一番重要であると先生はお考えになっておるか。これを一点まずお聞かせいただきたい。
 それからもう一つは、先ほど先生のお話にもありましたように、国立公園のうち古く指定されたものには普通地域の割合が非常に多い。公園によってはその割合が八割にも達するということを聞いておるわけであります。自然公園の保護の見地から今後どのような対策を講ずるべきであると先生はお考えになっておるのか、これをお聞かせ願いたい。
 それから宮脇先生にもちょっとお伺いしたいんですけれども、石神参考人にもお願いしたいのですが、こういういまの自然保護の状況の中で、心とからだのバランスとかいろいろすばらしいお話を聞かしていただいたわけでありますが、もう一度簡単にといってはちょっと失礼なんですけれども、基本的にどのような考え方を持って、あるいはその方針というのはどう持っていくのが自然保護という場合に一番適切な処置になるか。簡単でけっこうでございますからお聞かせ願えればけっこうと思います。
 以上でございます。
○石破参考人 実は、ただいま御質問いただきました件につきまして私自身が名案を持ってないから困っておるのでございます。それで困っておるのでございまして、とてもお答えはできませんけれども、自然保護のためにさしあたりどういうことが必要と思うかというお尋ねでございましたが、結局今回御提案いただいておりますような届け出を、範囲を広げますとか、それから一定期間の開発行為を停止して、その間に必要な指示を与えて必要な手直し等をさせることを文字どおり厳正にやっていただく。開発業者の手に渡ったものはそうしてやっていただく。あれをほんとうに励行していただくということ以外には、緊急にとおっしゃいましても私もちょっときめ手はないと思います。
 今後の、この法律が成立、施行されますまでの間の土地所有者の指導でございますけれども、これは従来からも私は口をすっぱくして申しております。あんた方もせっかくの土地が値段に売れる。売る以外には食う道がないというんならそれはやむを得ぬけれども、実は鳥取県の土地といえどもだんだん便利になってきて、ブローカーさんが手を出そうというときには将来値上がりがあるにきまっておる、だから何とかして持ちこたえてくれといってお願いしておりますから、今後の新しい売却ということは、県も努力いたしますし、市町村長も一生懸命でございますが、土地所有者の方に何とか持ちこたえていただくように、行政指導を強化して新しい売買が行なわれぬように、これは何としても、とりあえずは県が責任を持たなきゃならぬと思います。そうしてやっていきますが、とりあえずは開発業者の手に渡ったものの開発行為の制限を、法律の定めるところに従って厳正にやっていただくという以外にはなかろうと思います。
 管理体制の強化でございますけれども、自分が管理しております国定公園につきましても十分の手が行き届いておらぬ今日、政府にそう多くを期待するわけにはいきませんけれども、国の予算もすでに成立しておることでございますので、ことしどうこうということにはまいるまいと思います。そこで、政府からことしならことし一年でよろしい、何人か県の職員を派遣して協力してくれという正式の御要請がありますれば、一年間ぐらいのことならば県費で必要な職員を提供する、そして厚生省、環境庁の指揮下に入れて管理の強化に当たらせるつもりであります。
○石神参考人 自然保護の運動につきましてお答えいたします。
 私どもが自然保護の運動を始めましたのは、昭和二十四年、尾瀬ヶ原が水力電気の貯水池になるということから、日本に残されましたる高層湿原を保護したいという運動でございます。次には昭和二十六年に、阿寒国立公園の雌阿寒岳の噴火口の硫黄採掘問題が起こりました。だんだんこれらの問題が起こりましたが、私どもの自然保護運動の当初の目標は、国立公園の中のすぐれたる景観を保護するということでございました。これは世界の自然保護運動の趨勢でもありまして、すぐれた景観を保護するとかあるいは美術的に美しいところを保護する。その次におそらく学術的にとうといところを保護する。尾瀬ヶ原の場合も同様の意味であります。
 そういう保護運動がだんだん拡充いたしておりまして、それから産業によりまする自然破壊が大きくなりまして、私どもの生活環境の自然ファクターが乏しくなる。結局命を漸次むしばまれる強迫感によりまする自然保護運動ということに進展してきておるわけでございます。
 で、最初に申し上げましたように日本の国土はバラエティーに富み、非常に質のよい自然に囲まれておりました。したがいましてその自然に甘えまして、自然の価値をほとんど見失っております。そしてどのように公害を出しても、自然の自浄作用によってきれいにしてもらえるというような甘えた感情で今日まできております。ところが今日の近代産業の規模というものは、自然の復元作用や自然の自浄作用をはるかに越したきわめて悪質なものでございます。たとえば東京湾にいたしましても、私どもは隅田川で船をこぎ、水を飲み、東京湾で泳いだわけでございますが、いまの若い人は、隅田川でも東京湾でも泳ぐことはできません。すなわち、心身の錬成というものは東京湾からほうり出されたわけでございます。東京湾だけではございません。伊勢湾でも大阪湾でも瀬戸内海でも、日本の国民をはぐくんだ海岸風景というものは、もうことごとくつぶされております。これらの風景が私どもの民族性をはぐくんできたということは、まぎれもない事実でございます。
 ところが今日では、たとえば瀬戸内海におきましては、千数百万匹のハマチが死んでおります。骨の曲った魚、頭のでっかい魚、しっぽの欠けた魚というような憂うべき現象が魚にあらわれております。
 私どもおとなは、すでに細胞分裂を終わっておりまして、あとは新陳代謝だけでございますから、公害の影響はそれほど急にはまいりません。しかし、私どもの次の人あるいはネクスト・ネクスト・ゼネレーションの細胞分裂にどのような悪い影響があるかということを考えましたときに、水俣病の例、イタイイタイ病の例、あるいはそのほかのいろいろな子供の成育に及ぼす悪い影響を考えましたときに、現在のような日本のすぐれた大事な自然を惜しみもなく失ってしまって、はたして私どもの二世、三世が現代の私どもと同じような体力と知力と能力と心がまえを持ち得るかどうかということが、非常に心配なのでございます。
 私どもは明治維新以来富国強兵とか、あるいは終戦後は経済重点主義で、金もうけ、出世主義の教育を受けております。そして、私どもの命をはぐくんでくれた自然が大切であるというような教育は全然受けておりません。現在の憲法を見ましても、人権は守られなければいけないという規定はございます。文化的な生活をしなければいけないという規定もございます。しかし、命を大事に守る、最も大事な日本のすぐれた自然を守らなければいけないという根本的な問題には全然触れておりません。ドイツのワイマール憲法には、すぐれた自然の景観を守るのは国の責任であるという文章がございます。すなわち、私どものあらゆる生存と生活と文化の母体である自然というものをもう少し考え直さなければいけないということが、自然保護運動の思想普及の一番大事な点でございます。
 私どもは、自然保護の思想普及運動をやっております。これはいままでの文部省が教えてくださらなかった心がまえの問題でございます。自然保護とは思想であり、哲学であり、宗教に通ずるといわれております。すなわち、心がまえが一番大事なのであります。
 ところが、二十年ほど運動をやっておりますと、一応マスコミはじめ経済界もそのほかも、自然保護ということは皆さん旗じるしに使っていただいておりまして、昔に比べて実に感憾無量なものがございますが、ほんとうに自然保護を了解していただいておるか。
 光化学スモッグは依然としてたくましゅうしております。工場からは排水。法律に規定してある規定以下のものを出せばよろしいという、法律にはかかりませんが――たとえば先般も、鹿島灘には公害がないと偉い方がおっしゃいましたが、現在の法律にはかからないということでございます。公害はあります。魚はたくさん死んでおります。この魚を食べた漁民はひっくり返っております。はっきりと公害があるわけでございます。
 公害というものは、法律で規制しただけではいけないのでございます。やはり私どもの命を守るというライフサイエンスはもっともっと勉強しなければいけないと思います。
 したがいまして、環境庁ができまして、公害対策研究所はことしからおできのようでございます。しかし、公害対策ということは対症療法でございます。うみをふくということでございます。そうでなくて、ほんとうの、自然環境を守らなければいけないという学術的の論拠をつくり、これを国民の納得するようなシステムをつくるための自然保護研究所のようなものをどうしてもほしいのでございます。私どもは昨年、日本にあります九百もの大学に自然環境保全とか自然保護とかいう学科は一つもなかったわけでございます。それで、どうぞつくってくださいという意見書をつくって出しました。そうしますと、そればかりではございませんが、農工大学に環境保全科ができました。ここにおられます宮脇さんのところにも環境研究室ができました。長らく不運でおられました助教授が、日本の自然環境のトップレベルの方が、ようやく教授になられたというような現実でございます。これではいけません。やはり自然の問題とほんとうに取り組む――これはすぐそろばんに出てまいりませんから。
 そこで、私どもは――日本人の昔の心がまえというものは豊かでございました。たとえば明治維新前は、日本は小鳥の天国でございました。ペルリが日本に参りまして上陸いたしましたとき、たいへん鳥が多くおりました。連中は鉄砲を撃って喜んで船へ持ち帰りました。おこったのは農民でございまして、農民はあんなばち当たりのことをすると言って、幕府に異議を申し立てた。それが翌年の神奈川条約の付録に、日本人は鉄砲を撃つなんというような残酷なことはしないから、アメリカ人もそういうことはやめてくれということがはっきりと出ております。国際条約におきまして、自然保護の条約のおそらく最も古い問題だと思います。日本人はそれほど優秀な民族であったのでございます。
 ところが、百年間そういう教育は受けておりません。したがいまして、エコノミックアニマルといたしまして、文明国において心がまえの最も悪らつな国民は日本人であると指摘されております。
 私は、日本人の心を昔のようなゆかしい心に取り戻したいということが一つの念願でございます。そのためには、自然保護憲章という国民の心がまえをつくりたいということで、いま努力しております。三木長官にもお願いして、私ども自然保護団体だけがきめた自然保護憲章ではナンセンスだ、国民全部が、敗戦後の混乱いたしましためいめいの心がまえを一つにして、ほんとうに私どもの民族を守るための自然に対する感謝の念、自然の恩恵を大切にする心がまえというようなものを自然保護憲章に盛り上げたいということを一つ念願しております。
 いま一つは、私どもの国土は世界にすぐれた景観でございます。すなわち自然ファクターがよかったのでございます。これを少なくとも昔の姿のような自然条件に、豊かな国に戻したいのでございます。これはいまだ日本の自然の復元力というものが豊かでございまして、たとえば明治以後を見ましても、私、学校を出て植えたこのくらいのクスノキは、実に一かかえも二かかえも大きくなっておりまして、自然の復元力は豊かでございますから、いまにして国民がほんとうに日本民族を守るための自然を大切にするという心がまえを持つならば、日本の国土は昔のようなりっぱな景観になる、自然環境になると思います。
 その二つ、環境を昔に戻したいという問題と、心がまえもやはり日本人らしい心がまえに戻したいということが、自然保護運動の大きな目標でございます。
 次に、自然公園の中の普通地域の問題でございます。
 これは、終戦後に国破れてなお山河あり。山河しか残ってなかったわけでございます。国民は、残されたこのすぐれたる山河を経済再建に利用したいといいまして、当時私国立公園部の計画課長をしておりましたものですから、国立公園に指定してくれという地域は四十幾つに達しました。したがいまして、占領下でございますからGHQのオーケーを得て、なるべく国民がすぐれたる自然に接して日本人の心がまえをもう一度取り戻して、日本の再建に資したいというのが私の国立公園行政の方針でございました。したがって、少し乱発した傾向がございます。
 また、国定公園の制度をつくったのも私でございますが、これなども少しあせりましたので、当時は学校でもそういう問題を研究してもらえませんでしたから、学術的研究の結果を得ずして、目見当で特別保護地区とか普通地域とかきめましたので、現在の環境庁自然保護局に今日たいへん御迷惑をかけておりますが、当然現況に即しましてもう一度再検討をすべきものと考えます。
 しかし、再検討いたしますにも、何ぶんにも国立公園行政というものは新参者でございます。わずか三十億ぐらいの予算しかございません。先ほど石破参考人も言われましたように、今日、国立公園と国定公園の利用者は実に五億をこしております。先ほどのように百円ずつ負担をしてもらえば五百億以上の収入がございます。国立公園にお行きになる方はレクリエーションとして楽しんでおられます。ただで楽しむレクリエーションというものはそうたくさんございません。マージャンをやろうとテニスをやろうと経費は要ります。したがいまして、レクリエーションに対する反対給付というものを当然負担してよろしかろうと思います。
 もう一つは、多くの人がオーバーユースで、国立公園へ行きますと必ずくず物を一ぱい散らしてまいります。富士山の頂上であろうと剣の頂上であろうと、石の川原でなくてかん詰めの川原になっております。これを片づけて運ぶということは、剣の頂上なんかヘリコプターでなければ運べません。たいへん金が要ります。こういうような負担。すなわち行く人めいめいが公害の原因者でございます。すなわち原因者負担は当然考えていいわけでございます。受益者負担と原因者負担を利用する人が考えてよろしい。また、国立公園の中におりまして営業している人、あるいは交通機関を動かしている人がそれぞれの受益者負担をしてよろしかろうと思います。これはレクリエーションの問題でございますから、この人たちに負担をかけてもすぐ生活に関係する問題ではございません。
 したがって、こういう問題は大蔵省と環境庁とよく御検討くださいまして、受益者負担あるいは原因者負担のような特別の税金の形で取ることをぜひお考え願いたいのでございます。そうしない限りにおきましては、国立公園の中の施設整備というものはなかなか整いません。また、管理機構というものはわずか八十人ぐらいしかおりませんが、アメリカのイエローストーン国立公園なんかは、イエローストーン国立公園の管理者だけでも百数十人おります。自然公園というものは最もすぐれた教科書でございます。また、最もすぐれた学校でもございます。私どもは、自然公園をレクリエーションばかりでなくして、私どもの英知をはぐくむ大事な勉強の場所として、自然からあらゆるものを学び取らなければいけないと考えます。その意味におきまして、いま少し自然保護局の自然公園行政あるいは自然保護行政に対しまして、われわれ国民がこぞってそれぞれ負担してよろしかろうと思います。先ほど申しましたように、利用する方には特別の受益者負担、原因者負担をかけるような制度をぜひお考え願いたいと考える次第でございます。
○菅波委員 私の時間が来たようですから、これで失礼します。
○佐野委員長 島本虎三君。
○島本委員 この自然公園法や自然環境保全法の一部改正法案につきましていろいろ貴重な御意見を賜わりまして、私どもほんとうに感謝にたえません。それで、なお今後の法案の改正並びにわれわれのこれに取り組む姿勢として、私は二、三お伺いしておきたいという点があります。
 まず鳥取県知事の石破参考人からお伺いしたいのでありますけれども、なるほど公園の特別地域が相当の面積にわたって買い上げられているというような点、これは私どもまことに重大な問題だと思います。それは法そのものの中にも、特別保護地区と第一種の特別地域というように指定されている。この点は、おっしゃるような今後国が買い上げるという対象の地域になっているようでありますが、しかし特別地域のうちの第二種と普通地域は買い上げの対象にならない、こういうようなことでございます。いまそれを私ども聞きまして、石破参考人、実は私も実際びっくりしたのであります。この伊勢志摩や吉野熊野国立公園この中の八〇%ほどは普通地域に算入されている場所があるのであります。これではやはり維持管理は相当困難だ、こういうように思います。それで第二種や普通地域では買い上げはまかりならぬ、こういうようなことに厳重になっておりましょうか。ものによってはこれはやはり許可されているようにわれわれは思っておりまして、その点は今後の知事の一つの権限に属しておって、それによってどんどん拡大していってもらいたいという願望もあったわけであります。
 いま具体的な問題として石破さんのほうから、第二種と普通地域はまかりならぬということになると、これは法の手続としてもわれわれとしてはほんとうに不勉強であった、こう思わざるを得ませんので、これは重大なことであります。この特別地域につきましての買い上げ、国立公園内の買い上げは四十七年度予算におきましても相当準備されておるのでありますが、さっぱりそれが進んでおらないのであります。そういうような点等からして、ただいまの御発言は相当今後の参考になりますので、今後国のほうで自然公園の土地を買い上げてもらいたい、こういうような点についてもう少しざっくばらんに、行政の立場からひとつ参考意見として出してもらいたい、こういうように思うわけであります。まだありますけれども、順次一つずつお伺いしていきたいと思います。
○石破参考人 お話しになりましたとおり、政府が財政援助をしてくれますのは、現在のところ特別地域に限られておりまして、第二種保護地域以下の国立公園の買い上げにつきましては、政府の財政援助がないわけでございます。ところが特別保護地域、大山について申し上げますと、ほとんど大部分が国有林でございます。でございますから、これは実は買い上げの対象にしていただかなくても自然が破壊されることは、企業もまんざらあほうじゃありませんから買いません。第二種も相当制限がきびしゅうございます。これもなかなか手を出しませんが、やはりこいつは出す危険性があります。これは現在の制度によりましても買い上げを進めさせていただきたいと考えておりますし、問題は第二種保護地域以下の地域で、しかも乱開発を防止したいという地域でございます。成立しました予算によりますると、依然として第二種保護地域以下の買い上げにつきましては政府の財政援助はいただけないようであります。やむを得ませんから、これは本末転倒でほんとうはいいことじゃないと思いますけれども、第二種保護地域以下の規制のゆるい地域をせめて第一種保護地域程度に指定がえを政府にしていただいて買い上げの対象にしていただく、そしてできますならば大山地域におきまして、県は、四十八年度において七百町歩ぐらいのところを県で買い上げさせていただきたい、こういうように考えております。
 そこで、先ほど申し上げましたけれども、そう政府が買い上げぬでも第二種に格上げしてしまったらどうだという御意見があるいはあるかもしれませんけれども、これは先ほど申し上げましたとおり土地所有者の権利というむの――大金持ちの権利はどうこう批判の余地はあろうと思いますけれども、過疎地域の山しかないという連中でございます。政府が買い上げの準備をせずに一方的に規制を強化する、それは御遠慮願いたい、こういうように考えております。
○島本委員 それと同時に、国立公園が二つございますようでありますが、このうちの大山国立公園の一万三千五百三十二ヘクタール、このうちで特別地域に属する百五十ヘクタールですか、それから普通地域に属する二百七十六ヘクタールですか、こういうようなものはすでに土地が買収されている、こういうようなことのようでございまして、その他にも、山陰国立公園のほうにもこういうような点が見られるようでありますが、これは特別地域等においても国のほうからは都道府県知事を通じまして買占めというか、いわば所有権の転換がございましても、そういうようなものは一切まだ都道府県ではわからないような状態になっているのでございますか、この国立公園内の特別地域でも。この辺は、われわれはなかなかそこつでございましたが、県段階では完全につかめるものだと思っておりましたし、その段階では規制もいわば重要な問題に対しては可能である、こういうふうにさえ思っておったのでありましたが、この点知らないうちにこういうふうに所有権の転換が行なわれているとするならば、今後のことを考えましてもやはり私は重大な点があろうかと思いますので、これに対しまして参考人の意見を縦横無尽にひとつ聞かしてもらいたいと思います。
○石破参考人 私も実はちょっと制度上おかしいと思っておったのでございますけれども、所有権の移転そのものは全然規制の対象になっていないと私は承知いたしております。県としましても、これに法制上は関与する権限はないということになっております。そのほか、これは農地につきましてはあるいは農地保有合理化法人でないと買えないとかなんとかあるように思いますけれども、えて一般的に土地の利用規制につきまして、所有権の移動そのものを取り締まるという制度は現在少ないんじゃないか、国立公園にはないと思います。
○島本委員 そういうことでございました。
 そうすると、これは普通地域がすでに七九・七%もあるのに、これは伊勢志摩国立公園があるわけですね。それから七九・二%、ほとんどこれも八〇%に近いのでありますけれども、吉野熊野国立公園があるわけでございますね。こういうようなところは特定の企業またはそういうふうな個人によっても、あるいは方法によっては全部買占められて、それが今後においては自然の保護が全うされないようなおそれがこの場合にはある、こういうようなことになるのですが、もしそうだとすると、われわれとしてはまことに重大だと思って、いまの報告を聞きましてこの資料とあわせて見まして、意外に普通地域が多い国立公園があるのでございます。こういうような点ではびっくりしておるわけです。したがいまして、もう一回知事のこういうようなものに対する今後の――八〇%くらい普通地域になっておりますからね。こういうようなことに対しては、今後どうしたらいいとお思いでございますか。
○石破参考人 自然公園地域におきましては、普通地域のみならず特別地域につきましても、所有権の移動そのものは私は法律上規制されていないというふうに思います。したがいまして、これは私有権の制限の問題とも関連しますし、非常にむずかしい問題でございます。私見でございますけれども、本気でトラブルなしに自然の保護を円滑に進めますためには、土地を売ってはいけないという制度を開きますことはなかなか困難だろうと思います。ただし土地の買収を禁止もしくは制限するということは憲法上どういうことになりますか、あるいはそれは可能ではないかという気がいたします。ただ残されます問題は、かりに土地の買収を禁止するというような地域をつくるとしまするならば、これは憲法上可能だとした場合におきましても、土地の所有者の権利をどうして保全してやるか。大企業が持っておりはしません。みんな零細の農家が持っておるものでございます。それらの権利をどうして保護してやるか。結局、政府なり地方自治体において無制限の買い取りに応じてやるという準備をしてかかる必要かあろうと思います。
○島本委員 次に宮脇参考人にひとつお伺いをいたしたいと思いますが、われわれがいつでも頭を痛めておるのは、世界の公園だといわれる瀬戸内海でありますが、すでに死の海になっております。それからだんだん、乱開発というこの表現にぴったりするような開発がいままで行なわれてまいりました。もう最近では、国立公園や国定公園は数多くございますけれども、残る自然というのは日本の中に、世界に冠たりとはいいながらも残り少なくなっておるわけであります。大雪山などはまさにそのうちの一つだ、こう思っておるわけでありますが、依然としてその中にもいま言ったような特別地域――普通地域さえもあるのでありまして、今後この管理の上から見ますと相当行政的にも、私どもももちろんですが、気をつけなければならない点が多いのであります。官庁そのものの中にもやはり環境庁がありまして、またその中にも林野行政があるわけでございまして、その林野行政の中には経営部門が当然ございますから、そういうようになりますと、官庁が二つあるということで自然を守っていく、それで調和しながら、調整しながらやるといってもやはり独立採算があります以上それによってまかなわれることになりますから、制度そのものも今後やはり十分考えておかないと、自然の環境の保全にはならないのじゃなかろうか、こう私いま先生の意見を聞きながら考えたわけであります。それで林野庁、環境庁、同じ自然を保護する立場から二つがあるわけでありますが、先生はそうするからそうなるということに責任はこの場所で負わなくともいいのですが、この両官庁があるということに対して、自然保護関係とあわせて先生どういうようにお考えですか、ずばっとひとつ言ってもらいたい、こう思うわけであります。
○宮脇参考人 ただいまの島本先生の御質問でございますが、これは残念ながら日本のように縦割り行政機能があまりにも発展あるいは発達し過ぎた行政機構におきましては、どうしてもこれを一つの基本的な目的にしぼって総合行政が行なわれなければなりません。もちろんさまざまなそういう施策はあるはずでございますが、何としても環境庁あるいは農林省の両方におきまして、それぞれの部局が、たとえば環境庁の場合でございますと、現場では国立公園の管理事務所、一方におきましては、林野庁におきましては、営林署担当区というふうに分かれていまして、それぞれの人たちがあまりにも狭い自分の専門分野に、あるいは技術的な分野に固執するあまり、あるいは環境庁なり林野庁の基本的なところでは、新しい時代に対応した林野行政はかくあるべきであるということ、あるいは環境行政という問題についてお考えになっていらっしゃるかもしれませんが、それがわれわれが現地に行って実際に末端に行って調べてまいりますと、たとえば国立公園の自然公園の中でございましても、富士山の静岡県側の山麓付近あるいは長野県、そのほかいわばマスコミの人たちによってたまたま出てくるのは、町のまわりやきわめてわずかであって、ほんとうの日本の国土の自然の聖域に行けば行くほどきわめて大規模な林道あるいはスーパー林道が、南アルプスの場合もそうでございますが、できて、そういう林道は一般市民は入れないわけでございます。すなわち関所がしてございまして、われわれある場合、許可を得たらある場合には日曜日に行くわけでございますが、ただ林道につき危険であるから入れない、あるいは金を払わなければ入れないというふうになっているわけです。それをわれわれが歩いて入ってみますと、その林道の末端といいますか、一番行きつくところはきわめて大規模な、画一的な、しかも多くの場合今日なお自然林が伐採、皆伐されているわけでございます。そういう問題が一方は林野行政に行なわれているし、一方においてはささやかなとあえて申し上げさしていただきますが、自然保護行政、環境保全行政が行なわれているわけですが、それが日本の最も自然な聖域に行けば行くほど大きく交錯するというか、かみ合っていないわけです。したがって、たとえばこれはあくまで私見でございますし、あるいは当然日本もそうなると思いますが、林野行政の基本がいままでの木材生産工場から多様な国土の自然環境を保全し、そしていわば災害を防止し、さらにそのワクの中での間違いのない一部の自然の許容範囲のワクの中での生産行政に従事するということになれば、自然保護局が農林省につくのかあるいは林野庁が環境庁につくのかは別にして、当然これはもう統一されなければいけないぎりぎりのところに来ている。それが今日なぜ日本の国政におきまして、一方においてはいわば環境行政、自然公園行政が言われながら、他方においては今日なお独立採算制、それが政府でなぜ変えられないのかふしぎでしかたがないわけでございますが、独立採算制がはたして、率直に言わしていただきまして、林野行政にプラスになっているのかマイナスになっているのか、おそらく両方あるのだと思いますが、したがってなかなか変えられない。いま、日本で残されているたとえば原生林的なものはきわめてわずかでございます。ところが日本の山野、山林は、国土の六八%は山林であるとそれぞれの省の広報のパンフレットには載っているわけでございます。しかし六八%の大部分は原野でありあるいはすでに破壊し尽くされていて、たまたま地目が山林なり原野であれば、それがそのまま国土の山林であるというふうにいわれている。あるいは自然林の規定にいたしましてもきわめて大まかであって、どうかこういう問題を、ほんとうに国土の保全を基盤にしての間違いのない開発なり、あるいは自然の許容範囲のワクの中での林業もやっていこうとするならば、当然一元行政がとられるべきであって、そのために財政的なあるいは行政機構的なもの、あるいは人為的なものが多少ブレーキになるのならば、それを変えるのが行政であり、それを審議されるのが国会の場ではないかと思うわけでございます。きょうのこの委員会も各政党合わせて二十五人の委員がいらっしゃるそうでありますが、その二十五人の中のわずか四人や五人が――参考人としましては、トップの石神参考人もおっしゃいましたけれども、われわれ非常に忙しいのに電報で呼びつけられてきましく、そして実際に来てみれば四人や五人の人が、出たり入ったり一人、二人しておりますけれども、いずれにしても五、六人の人の、しかもたまたま質問される方だけ、あるいは質問したらたぶん、島本先生は別といたしまして帰るんじゃないか。そういうところで、何の国会の行政が行なわれているのか、それが国民一億の選良のやられることかとさえ、非常に失礼であることはあえてわれわれ存じているわけでございますが、そういうところで審議されてやられる、あるいはその程度のことでやられる限りどんなに形式的にそろっていても、日本の国土はどんどん、日に日に破壊されている。しかも皆さんが最も自然の聖域が残されていると思うところほど破壊されているわけであって、これを御存じなのは、おそらく環境庁あるいは林野庁の末端の人たちだけでございまして、実際にそれを言いますと、長官もあるいはそのほかもそうかと驚かれるような状態でございまして、どうか一番大事なことは、一度破壊したら復原が困難な自然の聖域、そして日本一億の国民の心とからだの保障の場となる多様な自然環境をいかに残すかということが国立公園行政の基盤ではないか、自然環境保全法の一番の目的ではないかと思うときに、いまの日本の行政あるいは政治の問題に対して、どうかあすのための行政を国会議員の先生方はもちろんのこと、各省の方たちも本気でやっていただきたいということをあえて申し上げさせていただきたいと思います。
○島本委員 参考人の御意見、肝に銘じております。それにいたしましても、なおこのように熱心な人もおり、それが改革の一つの発火点にもなりますから、皆さんも御憤慨でしょうけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。委員長にかわってお願いいたします。
 それにいたしましても、いま参考人の御意見の中で一つ私の心に残っている点は、この開発という名の破壊を阻止するためにも、国立公園のすべての地域を特別保護区域に指定しなければならないのではないか、そして新しい自然公園環境の創造が必要だ、こういうことばがありました。なかなかこれはぴったりしたことばだと思います。新しい自然公園環境の創造ということば、これもまたいろいろ大きい問題を含んでいると思いますが、この点についていろいろと行政的にも、それからこれまたわれわれに対しましての一つの示唆もあろうかと思います。この機会でありますから、私も新しい自然公園環境の創造の必要性、このことを歯に衣を着せないでもう一回お話願いたいと思うのであります。
○宮脇参考人 いままでの日本の自然環境あるいは自然公園というのは、あるものを残せばよかったわけでございます。そのあるものも十分残せないのが現状でございます。ところがすでに御承知のように、日本の国民の大部分、いわば八〇%近くは都市砂漠化したあるいは産業砂漠化した自然の多様性の画一化、貧化した植物砂漠地域に住まされているわけでございます。そういうところのいわば半病人になった日本の国民の大部分が、失われたふるさとの代償として残されている離れ島やあるいは高山の最後の自然の聖域に殺到しつつあるために、残された自然度の高いいわば処女地、処女林的な最後の国立公園の重要なところまで破壊されているわけでございます。したがっていまあるところを、あるいはスイスに四万ヘクタールの唯一の国立公園がありますが、そのスイスの国立公園では、たとえば避難道路と既設の道以外には車道一つつくられていないわけでございますし、ドイツのたとえば一九〇九年に指定をされましてリューネブルグハイデという二万五千ヘクタールの自然保護地域、ドイツには国立公園はございません、自然保護地域がございますが、ここでもいわば排気ガスを出すような車は全部ストップされている。そしてたまたまそこの住民たちの足の悪い人が馬車を使って中を通る、あるいは自然にじかに接することが行なわれているわけでございます。したがってどうしても日本の最後に残された国立公園、あるいは自然公園の聖域は十分規制されなければいけないけれども、幾ら規制しても、ほとんど七、八〇%の人たちがたとえば首都圏近畿圏、中部圏、あるいは北九州圏に集中されている以上は、むしろ積極的ないままでの意味での自然公園を、いわば人間と自然が自由に共存できる場を、日帰り地域あるいは週末地域、そして一年に一週間ないし二週間の休みのあるときはいままでの自然の国立公園に行きましても、それ以外はできるだけ都市や産業立地の近くに、たとえ田園景観でございましても、半自然性の景観であっても、いかにそれを残しあるいはポテンシャルな能力に応じまして植生図そのほかによって自然の診断図をつくり、その処方せんのワクの中で、多少時間がかかっても、二年たち、三年、五年、十年たてば、明治神宮の森が五十年であれだけのものがジャガイモ畑からできているわけでございますから、われわれの子供の時代には自然の多様な環境がわれわれの大都市やあるいは新産業立地の周辺にもできるように、そのための創造をいまから始めていただければ、というふうにお願いしたいと思います。
○島本委員 ありがとうございました。
 今度は宮脇参考人と石神参考人に、たった一つのことなんです。具体的なんです。
 いま瀬戸内海の開発、これが日本では一つの大きい問題であります。と申しますのは、あの周辺は国立公園地帯であり、また特定の国立公園さえも岡山県の水島臨海工業地帯のそばにあるのでありますが、だんだんそれがだめになっていく。管理だけの問題じゃない。まして世界の公園ともいわれたようなこれがいまのような状態であるということは、これはまさに政治や行政の怠慢である、これは私ども自身肝に銘じております。これを今後どのようにしたらいい、こういうようにお考えでしょう。お二人から具体的にお伺いしておきたいのであります。
○石神参考人 瀬戸内海の自然破壊状態は、今後も日本の産業開発重点主義を進めますると、日本じゅうがあのようになるということを心配いたします。すなわち瀬戸内海のまわりは新全国総合開発計画とか新産業都市とかあるいは新工業都市でございますとかでもって埋められております。国立公園に指定いたしましたころは、水は清く、島には松の木が青々と茂り、すばらしい国立公園として世界に称賛を受けたわけでございます。ただいま行ってみますると、海岸はもう白砂青松の海岸なんというものは一つもございません。ほとんどが埋め立てられまして、工業地域に化しております。そして海の水は赤潮に害され、先ほど申しましたように、そこに住む魚は人間が食うにたえないほど被害を受けております。すなわち、せっかくの瀬戸内海国立公園もいまは保護すべきものがほとんどなくなってしまっておるというのが実情でございます。私は先ほど、自然保護は昔の姿に戻したいということを目標にいたします。したがって、瀬戸内海の水を昔のようなきれいな海に戻すことが一つ。それから、ただいま宮島のほうにいたしましても、対岸の工業地域からの公害によりまして、宮島の松の木は衰弱し、これにマツクイムシがつきまして、松の木はほとんどもうだめでございます。やはり植物の生育し得るような自然公園にいたしません限りは、人間に悪い影響を及ぼします。岩のたたずまいにしろ、島のたたずまいにせよ、やはり私どもの心身を育成しました環境という問題を大切にすることが必要でございます。しかし終戦後のあの貧しいときに、生きるための産業開発というものは必要であったということは認めざるを得ません。しかし今日のようにGNPが自由世界第二位になって、なおかつ欲ばって金もうけのみをはかるということはますます自然破壊を増加するばかりでございます。われわれは、私どもの命を大切に考える場合は、私どもの生存していくために消費いたしまする自然の恩恵というものをほどほどに消費していかなければいけないと考えます。これをむさぼって消費したところが公害が発生いたしました。その辺きわめてむずかしい問題でございまするが、自然保護運動をいたしまする者といたしましては、多くの国民がどうぞ公害をやめる努力を国をあげて努力していただきたい。これが一番大事な問題ではなかろうかと思います。日本人は勤勉な国民でございますから、先般のあの不景気、不景気といわれたときでさえGNPは五%もしくは六%進んでおります。外国では五%もしくは六%GNPの進んだ国は正常な経済活動の国でございます。日本人は五%や六%では不景気、不景気といって、かこっております。これは欲ばり過ぎておるわけであります。やはり私どもがほどほどに身のほどを考え、集団生活をいたしまする私どもが、皆、めいめいがそのところを得て、健全なる心身に発揚しまするようにするためにも、瀬戸内海をはじめ、スポイルされました国土の環境を昔の姿に戻していただきたい。公害さえなくなれば、自然の自浄作用は日本の自然環境の自浄につながるのでありますから、わりあいに早く昔の姿に取り戻せる、まだ間に合うと思います。そういう意味におきまして、やはりそろばんに出ませんけれども私どもはこの自然の問題を大事にしまして、瀬戸内海をぜひとも昔の姿のような白砂青松で美しい――あのまわりには二千万人の住民が住んでおります。いまのままでいきましたら、あの二千万人の住民の次のゼネレーションの方々が必ず悪い影響を受けます。ということは、まず確実と考えてよろしかろうと思います。自然を取り戻しますれば、やはり私どもの日本民族をはぐくんだ自然が、ネクストゼネレーションのネクストゼネレーションでも、すぐれた日本民族を育成してくれると思います。そういう意味におきまして、瀬戸内海を昔の姿に戻すということは、きわめて簡単な目標ではありますが、努力はたいへんなものでございます。そのようなふうに国民全部が自然のとうとさというものを考えまして、私どもが生存しております自然の消費をほどほどにするという問題が切に願わしいことでございます。これは教育の基本問題から国民の価値観の革命を行なわなければいけないような大きな問題でございます。どうぞ私どもの将来のためにも、この辺の考え方を変えて、大事にしていきたいと考える次第であります。
○宮脇参考人 時間もないようですから、まとめて一口で言わしていただきます。
 瀬戸内海を生き返らす、たぶん唯一の、そして最後の手段は、いままでどおりの投資をしていただきたい、しかしその投資のすべてを自然の復元、環境創造の方向の科学的な研究及びそれの具体的な実施に投入していただきたい。それがたぶん瀬戸内海をよみがえらす唯一の方法ではないかというふうに考えています。
○島本委員 もっともっと聞きたいのでありますが、時間になりました。どうもありがとうございました。
○佐野委員長 岡本富夫君。
○岡本委員 参考人の先生方には、きょうはたいへんにお忙しいところをおいでをいただきまして、ありがとうございました。何ぶん当委員会が特別委員会になっておりまして、あるいは常任委員会がありまして、そこでついついなかなか出席がされないわけでございますが、どうしても大事な公害対策並びに環境委員会でありますから、私ども、常任委員会にしなければならぬというような提案もいたしておるわけでありますが、いずれにしましても、先生方の貴重な御意見は議事録でしっかり読んで、そして今後の審議に資していきたいと思っております。
 そこで、あまり時間がないものでありますから、まず宮脇先生にお伺いいたしますけれども、先生からいつか、開発あるいは道路をつけたりするためには、一つの木あるいは一つの草木にしましてもこれは非常に潜在植物と連携をしておる、したがって植生図というものを確立をして、これによっていろいろな開発をしていかなければならない、私も、先生のお話を聞きましてから、諸外国、特にドイツあるいはアメリカの例を見ましたが、相当植生図の研究あるいは植生図については完備しておると思うのです。そこで、わが国もやはりそうしないと、これは架空の空論になってしまうし、まして、今度は日本列島改造なんていいましても、この法律を見ましても、どういった基準で許可をするか、こういった基準が決してないというように思いますので、まず一つは、先生から、日本全国の中で植生図がつくられているのはどのくらいつくられておるのか、あるいはまた、今後日本列島の植生図をつくるには、現在の日本の、先生のような専門の先生は非常に少ないと思うのですが、どのくらいかかるだろうか、こういうことをひとつお聞きしたいと思います。
○宮脇参考人 われわれがいまさら穴蔵生活にも返れない以上、そしてさらに、持続的な生存環境のワクの中でのよりよい生活環境の改善をはかろうとするならば、今後もある程度の自然の利用も、あるいは産業の開発も考えざるを得ないと思います。
 いままでなぜ環境破壊、自然破壊が行なわれたかといいますと、それは、いわば自然の許容範囲のワクを越えた産業廃棄物が投棄されたり、あるいは自然の許容範囲のワクを越えた過利用が、人間の持続的な生存環境の破綻、へたをすれば命にまで影響を及ぼすさまざまな公害問題あるいは国土の破壊をもたらしているわけでございます。
 したがいまして、いま岡本先生が御質問いただきましたように、われわれが今後も間違いのない、そして時間がたてばますますよくなるような、国土の多様な自然環境を保全し、あるいは積極的に失われているところで創造し、そのワクの中である程度の利用を考えるならば、どうしても自然の許容範囲というふうな問題を、単にフィジカルな、物理的な、あるいは化学的な手法、死んだ材料がらの手法でなくして、命の側から、しかも、人間も含めた多様な生物社会の基本的な構成者であり、数千年この方日本人がそれぞれの土地の多様な、鎮守の森やふるさとの森と共存してきたような多様な自然環境、生きた構築材料、私たちのことばで言わしていただきますと植生の側から、生命の側から総合的に診断し、そして失われているところでは奪い返し、どの程度ここは開発ができるかということを、まだ不十分ではございますが、生態学や植物社会学的な立場から、総合的な日本国土の、いわゆる日本列島改造論に先行した日本列島環境創造、保全のための基礎図をつくらなければいけない。
 その一つの基本的な手法として、いま御質問がございました植生図、ベジテーション・マップ、ドイツ語のベゲタチオンスカルテといいますが、これが現在、一九三九年にドイツのヒトラーが、世界で最初に帝国中央植生図研究所をつくりまして、その結果は不幸にも戦争にも使われたわけでございますが、いわばポテンシャルな、それぞれの土地の、人間も含めた生物社会の保障の基盤を潜在自然植生図で診断し、その許容範囲のワクの中で、どこは残し、どこはこの程度の利用が考えられる――あるいは最近のムード的な緑化のように、自然の許容範囲のワクを越えて、画一的に北から南まで同じような外国のポプラやニセアカシアを植えても、長もちしないですぐ枯れてしまうといういろいろな問題がございます。したがって、どうしてもわれわれは、単なる部分合理的な手法から、どろくさくても間違いのない人間の共存者、いわば日本列島をかつて囲んでいたふるさとの木によるふるさとの多様な緑の森が命をかけて示しているところの環境汚染や自然の保全の実態を、現存植生図で現状診断し、さらに潜在自然植生図によって、復原の場合の処方せんをつくる、そのようなワクの中での間違いのない国土の保全を前提にしたところの、環境保護を前提にしたところの、たとえせつな的でも、よりよい生活環境の改善に努力しなければならない。
 では一体、日本の国土をどれぐらいの研究費によって、どれだけの人間がどれだけの時間をかけて、そのような命の側からの、単なる一年、半年でなしに、十年、二十年、三十年、将来を見通した自然環境の保全の基礎図ができるかということを、たまたまドイツのゲッチンゲン大学のエーレンベルク教授が先年日本に参りまして、やはり各省の皆さまにお話ししたときに、文部省の手塚研究助成課長が尋ねましたところ、ドイツでは一九六〇年に百人のスタッフによりまして国立の植生学研究所ができ、そこで二十カ年計画で全国土の潜在自然植生図をつくっている。その結果が、これは私、ことしの四月の国際シンポジウムの場合にも、実際に植生図研究所で見せていただきましたが、ほとんど、開発が問題になっている、ルール地方であるとか、フランクフルト地域であるとか、ハンブルク地域は完成しているわけでございます。
 わが国でも、ようやくそのような方法が、まあ文化庁の天然記念物をどこにするかというふうな、かなり荒目の、相観的な現存植生図と、そして私たちが二十年この方、どろくさくやってこさしていただきました部分的なもの、六、七十カ所ございます。それを、日本列島の全国土からいうときわめてわずかでございますが、幸いにもことし環境庁で、きわめてわずかな予算と、期間が短過ぎますが、二億五千万の予算を国会の先生方の御了承を得て、三木長官のほうでお取りいただきまして、それを基礎にして、単なる、目で見て見かけ上の緑から、質を押えた植物社会学的な基礎によった現存植生図と、それを基盤にした自然図の構想、あるいはそれがいま具体化していますが、これが唯一の方法であって、残念ながら、結果から申しますと、半年や一年で――たとえば日本の国土の半分しかない西ドイツで二十カ年の、百人の教授級のスタッフがやっているのに、まだ、日本でいわば研究者もふぞろいの中で、半年や一年ではできませんが、それでも第一回の試みとしてそれが行なわれている。
 願わくば、このような手法が単なる一時的な政策あるいは一時的な、強い大臣が出たからたまたまできるのではなしに、どのような時代であっても、少なくとも二十カ年計画ぐらいで、全国土の間違いのない、できれば法律にのっとった自然環境の診断図をつくり、そのワクの中で、まず人間の持続的な生存環境と心の保障のための環境保全を基盤にして初めて、開発行為、開発計画がなされるべきであって、いままでのように開発計画が先行し、問題ができ、人が死ぬようになって大騒ぎして、新聞で告発されてやっと部分的な、鼻ふき運動的な対症療法をやる限り、いつまでやっても十四本のいわゆる公害関係の法律が何千本できょうとも、あと追い行政にしかならないと私は思います。
 われわれ研究者も含めまして、先生方は、いわば税金によって、あすのために、あすの行政の責任者としてやってくださっているわけでございますから、どうか間違いのない、時間がたてばますますよくなるような自然環境を守るための、具体的なそして先取り的な積極的な法案を積極的におつくりになっていただき、さらに間違いのない環境創造のために、国民の先頭に立って進んでいただきたいというふうにお願いしたいと思います。
○岡本委員 貴重な御意見をいただきました。
 そこで次に、石神先生ですか、今度、改正案でも届け出制になっておるわけでありますが、わずか三十日ぐらいの届け出で、それの検査といいますか、この届け出られたものが確かに、それを許可しても自然公園あるいはまた自然環境が破壊されないかということを検討ができる人員が環境庁にあるのかどうか。実は、私、一つの例を申し上げますと、十和田八幡平ですか、あっちのほうに調査に参りましたが、ずいぶん広いところでわずか環境庁からは二人、県からは一人出向してお手伝いしております。これぐらいの人数で、この届けられたものを全部いいのか悪いのか点検が私はできないのではないかと思う。しかし、この三十日の期間、これが来たらもうあとは許可せざるを得ないわけですね。したがって、私はこれは届け出でなくして許可制にまで持っていくようにならなければいかぬ、こういうふうに考えておるわけですが、先生のお考えをひとつ伺いたい。
○石神参考人 日本の自然公園は生みっぱなしである、極端に言えばそのように批判できると思います。生むだけは熱心な国民のサポートがございます。指定しますと、それに対する管理に関する予算、管理に関する人員、管理に関する管理機構というようなものはきわめて貧弱でございます。
 いま十和田の例を御指摘になりましたが、実際あれだけの、おそらく百万以上利用者がいると思いますが、一人や二人の管理人で正しい利用をすることはほとんど不可能でございます。また、先ほど申しましたように、個人有地が相当ございますが、その各所有者がいろいろな国立公園の中の利用計画を立てまして、書類を出してまいります。それをその管理人が調査して、意見を付して本省へ回してくるわけでございまして、管理人は非常に多忙でございます。したがいまして、十分なる維持管理はやれていないのが事実でございます。
 そこで、本来ならば各国立公園ごとに少なくともしっかりした管理所を必要といたします。私が終戦直後に、一松大臣の御尽力によりまして国立公園部をつくりました。そのときには各国立公園ごとに技師、技手、事務官と雇等を入れる、百二十何人かの定員をいただいたことがございます。ところが、急な政変でございまして、それを実行しないうちに実行しない予算は行政管理のほうに移されまして、実に残念遺憾なことでございました。
 その後二十年たちました今日も、いまだ国立公園の中に管理所のありますのはごくわずかでございます。しかも、その管理所に、先ほど石破参考人の言われましたようにわずかな人数しか行けません。十分な管理ができません。しかし、現在の行政におきまして、人員の定員をふやすということは非常に困難なのでございます。これは国立公園の価値観に対する既往の考え方がやはりレクリエーション的な、ぜいたく的なというような考えを持っている惰性が多分にあると思います。自然を大事にしなければいけないという問題が、ほんとうに民族の一番大事なグルンドであるというような問題をはっきりと把握いたしますれば、わずかに三十億ぐらいの予算で今日の五百万ヘクタールの国立公園、国定公園を管理せいなどというのは神わざでございます。
 したがいまして、先ほど申しましたような受益者負担あるいは原因者負担によりまして、これは賦課税として取ることが可能だと思います。これを申しますと、多くの場合、そういう人の土地を利用している者から税金は取れないというようなことをよくいわれますが、昭和六年に国立公園法をつくりましたときに、人さまの土地を法律をもって国立公園にすると言った、あの元気、あの信念さえ持っておりますれば、今日におきましてもたとえ国立公園におきましても受益者負担、原因者負担がとれないことはないと思います。そういうような問題で、やはり財源がほしいのでございます。
 針ノ木峠に行きまして、あの雪渓の水を飲みますと、あれには大腸菌が入っております。危険でございます。それほど利用者が多いのでございます。しかしその簡易水道をつくるということには大蔵省は予算をくれません。それよりはもっと集落の簡易水道をつくるほうが優先的でございます。当然のことでございます。そうしたならば、針ノ木峠の簡易水道の整備には針ノ木峠を利用する人たちが負担をすべきだと思います。そういうような考え方から、やはり私どもは、少なくとも私は、国立公園の経験者といたしまして、この問題はいままでのような予算のとり方ではほんとうの整備はできないと思います。いまのような整備をいたしておる状態で、普通地域を国立公園に格上げするということは、たとえば先ほどの伊勢志摩国立公園のごとく、七〇何%が普通地域でございます。これはあのときに指定した考え方といたしましては、日本の国立公園は地域性の公園でございます。住民の環境を美しくする、美しい環境に集落があるという考え方が一つの国立公園の前進ではなかろうかというような意味において、一つの試みとして指定したものでございます。それは今日におきましてはやや了解される部分はあると思いますが、あのころはあんな三流以下のところを国立公園に指定したと非難されたものでございます。したがいまして、わずかの国立公園の届け出制度にとどめておりますが、ほんとうの風致維持はできません。またある程度の所有権の制限をしておりますから、これに対するやはりある程度の補助等のことをやってやらなければいかぬとも思いますが、何ぶんにも予算がわずかなものでございますから、国立公園行政そのものが新参者でございますから、予算がとれておりません。その意味で非常に問題がございます。
 私はもちろん、少なくとも第三種特別地域に指定して許可制にすることが理想的だとは思います。しかし国立公園に指定した普通地域を第三種特別地域に指定しようといたしますと、これは国立公園法も自然公園法も新しいものでございますから、各省協議をいたしましたときに、審議会にかけるに先立ちまして、必ず各省協議がととのわなければできないのでございます。この各省協議というものは非常にむずかしいのでございます。たとえば役所の国立公園の指定のときには候補地を決定いたしまして、ABCの特別保護地区を指定したいといって審議会で意見書を出しましたところが、Aはよろしい、BとCはいけないということで、なかなか指定ができません。十一年たって、Bもよろしいということになって指定をいたしました。十一年たっております。そうして最近になり、Cのところの乱伐がひどいという国民の世論から、林野庁はようやくCのところも保護することになったようなわけでございまして、それぞれの官庁の行政がございまして、新参者の国立公園行政というのは実に惨たんたる苦心が要るわけでございます。そこで、全部第三種地域にするということになりますれば、これははたして何年たって指定ができるかという問題になるかと思います。それよりも実現性のある、前進でございますから、一歩前進のまあこの程度でも現在は満足しなければいけないのではなかろうかという次第でございます。
○岡本委員 私どもやはり、この国立公園の中をどうなっておるか調査しましたところが、場所はあれですが、七カ所ぐらい警察の摘発を受けて初めてわかっているようなところもあるわけですね。それをよく見ますと民有林なんです。民有林だから、自分のところの土地をこのようにしたのだから、何だ何だというようなこともあるわけです。したがって、国立公園あるいは国定公園の中の民有林はすべて買い上げてしまう。そうすればこういう問題が起こらないんではないか。指定されたほうもいろいろな法の無知もありましょう。そういうことで簡単に造成をして人に売っちゃった、こういうこともあります。したがって、国立公園あるいは国定公園内の民有林というものはすべて買い上げてしまう、こういう方式がよいのではないか、こういうようにも考えておるのですが、その点について……。
○石神参考人 アメリカの国立公園はほとんどが国立公園局の所有地でございます。こういう形をとるのが理想的ではございます。しかし日本では先ほどの普通地域の多い伊勢志摩国立公園とかあるいは吉野熊野国立公園などは民有地が非常に多いのでございます。これを買い上げるための予算というものはばく大な金額に達します。それでよくやく一昨年から特別保護地区、第一種特別地域の民有地を買い上げるための起債六十億が認められた。先ほどの石破参考人のように、これも前進でございます。特別保護地区ではなくてほかのところも買えるような制度、やはりこれを拡充することが望ましいと思います。
 それともう一つは、実は国立公園の中の自然環境を守ってもらうということは、その民有地の犠牲において守ってもらうわけでございます。利用する者は先ほど申しましたような都会の者でございます。そこらにやはりその受益者の問題、受損者の問題のバランスの問題がございます。この問題は過疎地帯の問題と都市の問題との関係に似ておりまして、やはりこの問題を部分的に解決しようとしてもできません。
 たとえば利根川の水は東京都民の水道として大事でございます。利益を受けているのは下流の人たちでございます。その水源地の水源林は大事に守ってくださいということを私たちは主張したいのでございます。ところが上流の方々はやはりその林業経営によって経営をしておられますから、切らなかったらば経済活動が困難でございます。そうしますれば、水源涵養林として切らないところに対しては、その水の恩恵を受けている人々が受益を向こうへ戻さなければいけない。そういうような大きなバランスを、これは国家の経済としてお考え願いませんことには自然保護はできません。鳥取県等は自然のすぐれたところでございます。おそらくこれは都市の人が利用に参ります。残してくるのはごみでございます。これを県自身の立場で整備することはきわめてむずかしい。これはやはり大阪なり近畿から行く人たちの負担において整備してあげなければいけないというふうに考えます。この点のプラスマイナスのバランスというものは国家的見地においてお考え願いたいというふうに考えるわけでございます。
○岡本委員 石破先生にお聞きいたしますが、もしもおわかりにならなければけっこうですが、十和田湖は、山は富士、湖水は十和田、広い世界にただ一つといわれたのですが、この十和田湖の湖水が最近非常によごれました。ということは、一つは水力発電がありますのですが、逆送水をしているのです。逆流をさしている。逆流をさせて、発電所がまた十和田に水を入れているわけです。いままでは付近の各支流の川の水を集めて逆流していたのですが、雪どけ水あるいはまた乱伐によって最近非常によごれた水が逆流するわけでございまして、大体五メートルから六メートルくらいどろがたまってしまっている。こういうようになっているのですが、こういった問題について、十和田湖を保全するについての先生のお考え方、もしもございましたらひとつ……。
○石破参考人 十和田湖の実情を全然承知いたしておりませんので、お答えする資格もありませんし、お答えになるかどうかわかりませんけれども、ただいまの先生のお話を承っておりますと、発電のために水位が数メートル上がり下がりするという事実がまずあるようでございますが、自然の景観保持の上から申しますると、一般的に申しまして、ダムにつきましては水位が下がったときにはきわめて見苦しいものになるように考えております。十和田湖もおそらくその例に漏れないだろうと思います。さらに水質汚濁の問題でございますけれども、十和田湖の実例は存じませんが、鳥取県内におきましても湖水等が汚濁して困っております。国立公園自然公園地内に限りません。一般的にそういう現象が起こっておりまするが、県内におきましては水質汚濁の防止のためには下水道の整備、これをどうしてもやりませんことには解決できないと思います。いろいろの近代産業を阻止することができるならばけっこうでありますけれども、今日それはできないと思います。鳥取県の例で申しますれば、県内の需要電力を県内で発電しますものはわずか三分の一でございます。大部分は瀬戸内海沿岸で発電していただいております。先ほど瀬戸内海の問題が出ましたけれども、鳥取県内で発電せずに瀬戸内海で発電してくださいといえばそれで済みますけれども、それでは瀬戸内海沿岸に申しわけないわけで、ある程度の発電を県内で認めざるを得ない、近代生活をする以上。そうしますると、どうしても下水道その他の公害対策を完備して近代産業も鳥取県でなるべくしなければならぬ、こういうふうに考えて――それは余談でございますけれども、水質保全のためには下水道整備、これをやるのが最善だと思います。
○岡本委員 お約束の時間がもうあと二分ほどになってしまいましたのですが、宮脇先生は十和田湖のほうには調査においてになりましたか。――おいでになったら、ちょっと御意見をいただけましたら……。
○宮脇参考人 御承知のように十和田湖は貧栄養湖といいまして、本来生物社会では太り過ぎよりも、栄養過多よりもやや栄養不足、やや飢餓状態が一番間違いのない、いつまでも健全に生きていける方法でございます。ところが、御承知のように揚水発電によって水が絶えず動くという問題、さらに周辺のさまざまな施設からの下水が出てくるというふうなことによって急速に貧栄養湖が過栄養、中栄養湖を越しまして過富栄養湖あるいは過栄養湖といいますが、これは社会的な影響ではございますが、特に冷温帯におきます、いわばブナ帯におきますところの十和田湖では、なかなか微生物の分解還元があたたかい地方ほどうまくいきませんので、急速にその汚染物質といいますか有機物が残されて、それが湖の汚染をもたらし、そして生物社会の貧化、環境汚染の元凶になっているのではないかと思います。したがいまして、揚水発電所ができている場合やむを得ませんですが、水位の急速な上下をさすということは、生物社会にとって非常にアンバランスでございますし、さらに周辺からの下水の問題、そういうものが相乗、そして残留したものがお互いに影響し合いまして、急速な過栄養、さらに破壊といいますか、環境汚染をもたらしておるのではないかと思います。
○岡本委員 お約束の時間ですから終わります。
○佐野委員長 小宮武喜君。
○小宮委員 いま三人の先生方の意見をいろいろ聞いておりましても、今回出されております自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案について、非常に不十分であるというような三人の先生方の御意見のように理解いたしました。これは全く私も同感でありまして、そのためにはどうすればいいのかというような問題について私なりにいろいろ意見を持っておりますので、それについて先生方の御意見を伺いたいと思います。
 まず自然保護に関する行政そのものにも問題がありはしないか。といいますのは、国立公園とか国定公園とかあるいは都道府県立の自然公園のほうは厚生省が所管をしておる。それに文化財保護に基づく史跡、名勝、天然記念物に関するものは文部省が所管しておる。または森林法に基づく保安林は農林省、あるいは都市公園法に基づく都市公園は建設省。環境庁が所管するものといえば、この自然公園法だとか温泉法あるいは鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律ぐらいのものですが、こういうように自然保護に関する行政がばらばらでいいのかどうかということについて、私率直な疑問を持っておるわけであります。したがいまして、このように自然保護という問題が大きな問題となってきた今日、この自然保護について統一的にひとつ推進していく、またはその調整に当たる行政官が必要ではないのか、それを私は環境庁がやっていただきたい、こういうふうに考えているわけですが、いまの自然保護に関する行政が非常にばらばらであるということについて、三人の先生方の御意見を一言ずつひとつお伺いしたいと思います。
○石神参考人 私どもは造園というものを専攻しております。造園は自然と人間のコミュニケーションする場所を生活環境につくるものでございます。したがって、木を植えまするにも木を切るために植えるのではないのでございます。木を育てるために植えるのでございます。たとえば明治神宮の外苑のようなものでございます。明治神宮の森のようなものでございます。ところが林野庁のおもなお仕事は、林木生産という問題は非常に大きな部分を占めておられます。森林法の古い歴史を見ますと、明治三十何年かのものは森林の育成を主としております。したがいまして戦争前は、私どもは若いころ山へ行きますると、すばらしい国有林がございました。これはどこのものかといったらば帝室林野局とか山林局の林でございました。ところが今日は、私いま山へ登ります。去年も槍へ行っております。秩父にも行っております。ひどいな、皆伐してこんなところまで切ってというと、これはたいがい林野庁の国有林でございます。すなわち林野行政というものが森林伐採のみを、独立採算制の観点もあると思いまするが、そういう問題を強くやっております。私どもは木は切るものではない、人間を育成するための自然の大きなファクターであるから大事に守っていきたい、そこらに考えの差がございます。ですから私どもの立場からいえば、たとえば少なくても森林、木材生産を目的としない、国土の保全、国民の福祉になるようなものは、やはり自然環境保護の一環としてまとめていただきたいのでございます。あるいは文部省にしても、文化財のものなどはやはり一つにしてもよろしかろうと思います。しかし先ほどの林野庁の行政でも、どこで線を引くかということになりますと、片一方はやはり木材生産という産業でございまするから、その辺なかなかむずかしい問題があると思います。自然保護の立場からいえば、あれもこれも一つにしたいとは思いまするが、なかなか現実はむずかしいという問題と、やはりこのライフサイエンスに対しまする研究が未熟でございますので、各省の説得し得るだけの資料がなかなかございません。その点われわれももっと勉強していかなければいけないと考えております。
○宮脇参考人 各省それぞれの歴史的な発達の過程もございますので、なかなかむずかしいこととは思いますが、現代のようにいわば自然環境の保全の問題が国民の総意であり、そしてわれわれが生き延びるための基本的な基盤である以上は、行政は人間によって、あるいは行政組織は人間によってつくられたものであるし、人間によって変えることができる。しかし一度殺した命は、雑草一本、虫一匹、再びつくることはできない。ましていわんや多様な自然環境の命の側からの総合的な具体化されたものとしてのふるさとの緑の森や自然は、一度破壊しますと復元するのに世界じゅうの金や技術を集めても、何十年あるいは百何十年かかり、不可能なことさえあるわけでございます。したがって真の環境保全を政府やあるいは国会の皆さんがお考えになるならば、この辺で思い切って少なくても農林省あるいは林野庁の木材生産の分野は、これは民間でもできるわけですから、木材生産公団でもおつくりになりまして、そちらへ全部渡す。しかし里の保全、日本の森林の――植林じゃございません、あるいは一部植林も含めて多様な自然環境を守る分野は、これは環境庁に当然、鳥獣保護課だけじゃなしに持ってくるほうが妥当ではないか。同様にいたしまして、文部省の文化庁の少なくても天然記念物という分野も、いままでの点の保護からいまや面の保護、自然の保護に移っていますから、その分野も持ってきて、それを総合的に一元行政をやられない限り、各省調整とかいろいろと形の上ではいままでもやられていますが、結果はいままで石神参考人もおっしゃったように、一番守るほうが弱くて、切るほう、すぐ金になるほうが強いというのがいままでの日本の行政形態でございました。したがって、自然環境の保全を、この衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会の二十五人の委員の皆さまが、本気にまじめに考えてくださるならば――最初に私四人と申し上げましたが、十一名出てくださっていましたので、たいへん失言を訂正しなければいけないわけでありますが、これだけお忙しいのに皆さん出てきて審議してくださっている以上は、どうか思い切った行政改革をやって、間違いのない自然環境の保全、そして国民の命と心の保障のための、あすのための行政の施策をいまおつくりいただければというふうに考えています。
○石破参考人 原則的に申しまして、御質問の御意見に全く同感であります。ぜひともそうあってほしいと思います。ただこの問題は、ちょっとそれるかもしれませんけれども、単に自然保護とか環境保全の問題だけでございませんで、国政全般についてそうあっていただきたいものと思います。
 これもまた余談でありますけれども、さきに設置されておりました日本列島改造問題懇談会の意見を求められた際にも申し上げたのでございますけれども、地方行政を担当しておる者として痛感しましたことを書きました。その中におきまして、国の行政の縦割りの弊、もう地方住民としてその弊にたえられません。ぜひともこれを打ち破っていただきたい。そのために内閣の本来果たすべき調整機能を強化していただきたい。自然保護、環境保全もその重要な施策の一つだと思います。
 余談でありますけれども、私は十五年前にある省の事務次官をつとめておりました。今日ではそういう事実は毛頭ないと思いますけれども、十五年前の私のつとめておりました役所の事務次官の最大の仕事と申しますれば、何とかして自分の省の仕事をふやしたい、ほかの省に侵されないようにしよう、これが最大の実は責務であって、ほかの省に事務を取られたなんていうと事務次官はつとまらぬというのが十五年前のある省の実態でございます。今日はそういうことはないと思いますけれども、ぜひともそういう見地から国政全部、自然保護、これが一番問題だと思いますけれども、きわめて困難なことだと思いますけれども、先生の御意見に全く賛成でございますので、ぜひともそういう方向で御尽力願いたいと思います。
○小宮委員 それでは、いまのように法律が非常に不十分であるし不備であるのでどうしたらいいのかということについてはいろいろ意見が分かれるところなんです。
 そこで、これは石神先生が常務理事をしておられる日本自然保護協会では昭和四十一年十月の第八回の国立公園大会で、これは自然保護憲章のごときものをつくったらどうかということが決定されておりますね。それからまた四十三年の四月には厚生大臣の諮問機関であります自然公園審議会でも「自然公園制度の基本的方策に関する答申」がなされておりまして、その中でやはり自然保護憲章というものを制定すべきだという答申もなされているわけです。それで最近、さきの環境庁長官の大石長官は盛んに自然保護法あるいは自然保護基本法というものを次の国会ぐらいには出したいということをもうしきりに言っておったわけですが、まあやめられたものですからとうとうお流れになっておりますが、この自然保護憲章を、自然保護法、自然保護基本法、いろんなことばの使い分けはありますけれども、こういったものをつくることについて先生方は――石神先生はこれは自然保護憲章の制定を望んでおられると考えられますが、他の宮脇先生また石破先生は、この自然保護憲章なのか自然保護法なのか自然保護基本法なのか、そういったいずれかのものをつくったほうがいいのか、その御意見を、これは石神先生はわかっていますからけっこうですから、お二人の先生にひとつお伺いしたいと思います。
○宮脇参考人 いまお尋ねございました自然保護法あるいは自然保護基本法というものは基本的には必要でございますが、日本では自然環境保全法というものができていますので、もしこれが正しいといいますか、非常に完備した法律であるならば、単なる自然保護でなしに、いわば人間の持続的な生存環境全体を、自然保護地域、国立公園自然公園だけでなしに日本の国土全域を間違いなく守り、そのワクの中での慎重な利用ということが含まれているならば、これが私はむしろ理想的ではないかと思います。残念ながらその第一章あるいは第一条を見さしていただきますと、自然環境保全法、これほどりっぱな名目の法律でありながら、この第一章総則、第一条には「この法律は、自然環境の保全の基本理念その他自然環境」云々、これは最初に申し上げましたので省略いたしますが、その「基本となる事項を定めるとともに、自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まつて」やれ。したがって、ここの自然環境保全法では何をいっているのかというと、自然公園法そのものが非常に中心になっているわけです。その自然公園法には何が書いてあるかといいますと、第一章総則、目的、第一条には「この法律は、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、」利用しろ。風景をいっているわけです。景色をいっているわけです。それはもちろんいままでのように人間の多様な自然環境が守られているときには景色を守ることが自然公園の目的であってよかったと思いますが、いまや人間の持続的な生存環境が破綻しつつある、都市あるいは産業立地のようないわば公害のるつぼに日本人の大部分が住まわされているときに、単なる景色を守るだけがいわば自然公園法の、そしてせっかく新しいアイデアでつくられたはずの自然環境保全法の中心になっているということは、いかにもこれは形だけが新しくて、形だけが総合的で内容が不十分ではないか。自然環境保全法と銘打つ限りは第一条におきましては自然環境とは何であるかということの正しい理解、定義がなされまして、そして自然環境というのはどれほど時代が変わろうとも人間が命を持っている限り人間の生存権、生存環境というものは変わらないはずでございますから、生存権の保障を第一条に当然うたうべきであって、人間の持続的な生存権、文化の創造能力を保持し、あるいはさらに時代とともにあるいは時間とともに積極的につくり上げる、あるいは創造する、ふやすためにはどのような自然環境が守られなければならないかということが当然入れられるならば、私は自然保護法あるいは自然保護基本法の精神――先生のおっしゃった精神もこの中に入るのではないかと思いますが、名前だけが現在のような自然環境保全法で、しかもその大部分が自然公園法にのっとり、自然公園法は景色、景観地を守れというのでは、これはあまりにも羊頭狗肉ではないか。もう少し心を入れ、実質を入れ、そしてあすもあさっても間違いのない基盤を高らかにうたい上げ、それを具体的に実施していただきたいというふうにお願いしたいと思います。
○石破参考人 先生のおあげになりました法律の構想につきまして全然承知いたしておりませんので、直接の答えにならぬと思いますけれども、実は私は法律というものの限界につきまして、法律の能力と申しますか効力の限界につきまして、大きな疑問を持っておる一人でありまして、大体の国民が理解し実行可能な法律でない限りは幾らつくっても意味をなさぬと思っておる。私事を申し上げて恐縮でありますけれども、何十年前になりましたけれども私も大学で法律を専攻した一人でありますけれども、最近たくさんできます法律、なかなかわかりません。これでも、土地小なりといえども鳥取県知事をつとめております法学士であります。それがわからぬというような法律を幾らつくっても、これはそれを守れといって国民にしいるほうが無理ではなかろうか、混乱のもとではなかろうかと私は思います。そこで法律もさることながら、先ほどの御質問に対してもお答え申し上げましたけれども、守りやすい法律をつくっていただかなければならぬと思う。と申しますのは、自然保護に限って申しますれば、今日自然保護が要求されております地域はおおむね山間地のいわゆる過疎地であります。土地所有者は、大企業が買占めたものは別といたしまして、零細農民であります。その土地を何とかして金にでもかえて自分の生活を豊かにするという以外にはもう道が残されておらぬところであります。自然保護を強く叫んでおりますものは都会でいい収入をあげていらっしゃる方々であります。あるいは自分の土地はずいぶん高い値段で売って高い所得をあげていらっしゃる方々です。それらの方々のためにきょうの暮らしに困っております農民、その土地を規制するという以上は、それじゃ守りましょうと言わせるためにはそれ相応の補償をしてやらなければならぬ。国立公園にしましても、国定公園にしましても、まさに国民のものであります。
 少なくとも国立公園地内の土地所有者は、自然を保護してくれなんて頼んでおりはしません。何とかして自分の土地も世の中にいい値段で売っていい暮らしをしたいと思っております。それらの対策を十分講じていただけますならば、そうむずかしい法律をあれこれおつくり願わぬでも、土地所有者は十分協力する。
 国立公園の年間利用者は、三億といい五億といっております。かりにこれらの方々が百円払っているとすれば――徴収方法は技術的にむずかしい問題があります。私は鳥取でございますけれども、大阪から鳥取へ自分の自動車を運転していらっしゃる方はたくさんいらっしゃいます。大山の国立公園に入るために、取り方はむずかしゅうございますけれども、百円ぐらいお払いになる、これは決して無理じゃない。それを払わぬ者は入ってもらわぬ、そういう者には自然を見せぬといっても、私は公平の原則に反しないと思います。したがいまして、御指摘になりました法案の内容等は知りませんけれども、そうむずかしい法律をごちゃごちゃおつくり願わぬで、国民が喜んで協力できるような、簡単明瞭な、実効のあがる措置を講じて、必要な規制をしていただきたい、そういうふうにお願いします。
○小宮委員 いま石破参考人から話がありましたように、特に自然保護、自然環境を守るという意味からすれば、国民の各層、国民の一人一人が守るという立場でなければむずかしいと思うのです。
 そこで、そういうような立場からかもしれませんが、日本自然保護協会のほうでは、自然保護法だとか自然保護基本法というような法律をつくるよりは自然保護憲章というものを先行させるべきではないのか、そのあとで法律はつくるべきではないのかというようなお考えのようです。それももっともな御意見だと思いますが、いまのような状態では、ただ国民に協力を求めるといってみても、なかなかむずかしい。その意味で、やはり法律をつくったほうが手っとり早いんじゃないかというような気さえするのです。やはり自然保護協会では、従来どおりの方針で、自然保護憲章を制定しようというお考えを現在でもお持ちでしょうか。これは石神先生にだけ質問します。
○石神参考人 憲章と法律の違いがございます。法律では、覊絆できる区域が条文にはっきりと示してなければいけません。ところが、自然に対する思想、心がまえというものは法律で規制できない部分がたくさんございます。たとえば、自然は偉大であるというようなことを認識して、自然をたっとびましょうというような心がまえは法律条項にはなりません。私どもは、人々の心がまえとして、日ごろの平生の指針となるような問題を取り上げたいと実は考えております。自然とは何か、自然保護とは何かというような問題を私どもはいろいろと議論しておりまするが、これはきわめてむずかしい問題でございまして、先般も学術会議で動物の生態学者と植物の生態学者が自然保護のシンポジウムをなさっていろいろ議論をされ、結局自然とは何かというところに戻って、もう一度自然とは何かというシンポジウムをやろうじゃないかということになったそうでございます。それほどむずかしい問題でございます。
 そこで、私どもの命を守り、生存を保障し、また私どもの精神文化を守ってくれますところの自然、こういう自然を私どもはどういうように考えたらよろしいか。自然に対する心がまえをもう一度反省して、いままでのように、自然は人間のためにあるものだ、所有物である、かってに使っていいんだというような人間の思い上がりの考え方を改めていただいて、自然の恩恵によって私どもは生きているんだという心がまえを持つようにしたいというのが自然保護憲章でございます。したがって、この問題は法律条項になりません、ということでございます。
 結局、日本の国土を大事に守るための基礎は、日本人の心がまえだと思います。この問題についての教育というものはほとんどやられておりません。そこに非常にむずかしい問題があります。私ども二十何年間自然保護の思想普及に努力しておりますが、これがきわめて遅々でございます。ほんとうにおそいのでございます。今日、自然保護団体が六百ほど日本にはございます。それぞれの地域の自然保護運動をやっております。これを守ろう、これは目的がはっきりしておりますからやりやすいのでございますが、私どもといたしましては、その一番大事な考え方というものをしっかりして、その考え方を国民に普及していきたいということでございます。そのやり方が自然保護憲章という形で出てきておりますので、私どもだけの団体できまった案というものは国民の案になりません。財界あるいは学界、いろいろな方々があれをたたき台にして、ほんとうの、日本人の自然に対する心がまえというものをつくっていただきたいというのが私の念願でございます。
○小宮委員 最後に、皆さん方がそういうふうに期待しておっても、また欲求があっても、いまの政治の中ではそれがなかなか実現しにくいという問題があります。したがって、自然を守りあるいは環境を保全していくというためには、大きく運動にまで発展させなければ、目的を達成するということは非常にむずかしいと思います。したがいまして、自然保護協会のほかに、山岳協会もありましょうし、鳥獣保護協会もありましょうから、そういった関連する団体等とも十分連携をとりながら、いま石神先生の言われた自然保護憲章でもけっこうでしょうし、また自然保護基本法でもけっこうでしょう、そういったものを盛り上げていくために大きく国民運動にまで発展させなければ非常にむずかしいと思うのです。その意味で、自然保護協会等では今後こういった運動をどういうふうに発展させていくか、それで国民をどう盛り上がらせるか、今後の運動について何かお考えがあれば御参考までに一言お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○石神参考人 自然保護運動をやっております多くのものは、利益を追求して運動しているものはまずございません。みな自分の利益を別にいたしまして、やはり郷土の自然を守る、私どもの部落の人々の命を守るというようなことが多うございます。自然保護協会でも、昭和二十六年以来多くの先生方の奉仕によって活動してまいりました。そして今日、財団法人になりまして十数年たっておりまするが、仕事はますますふえております。人手も足りません。そこで、財団法人といいましても、基本金わずか二百万円しかございません。財団法人の実はございません。会員が約四千五百人ほどございます。この会員の善意のサポートによりましていま活動しております。本来は、こういうような国民のほんとうの命を守る運動でございまして、これは国がやっていただいていいような性質のものでございます。当然国から補助していただいてもいいと思います。私どもは利益追求しておらないのでございます。利益追求運動をしておりまする自然保護団体はこれは邪道でございます。これははっきり申し上げられます。したがいまして、私どもは活動すれば活動するほど、これは経済活動に直接いたしますので、経費を必要といたします。「自然保護」という機関誌を出しております。これが一年に十二回出しておりまするが、これに対して会員の会費はわずか千円でございます。千円で十二回出しますると、このごろは郵税が非常に高くなっている、赤字でございます。同志をふやせばわれわれのほうの活動は活発になると考えましたが、千円で同志をふやせば協会の会計はますます赤字になってまいります。会費を上げなきゃいけないというようなことになってまいります。
 そこで、最近は賛助会員という制度をつくりまして、それぞれの心ある方々から、賛助会員一口九万円でございます。これをふやすように実はいま努力しております。しかし、自然保護という問題に対する理解というものは、財界は、口では了解しておりましてもなかなか困難でございまして、賛助会員に加えていただけるかというような問題についても答えは非常に困難でございます。しかし、これでくじけてはいけません。私どもは熱心にやっていきたいと思います。しかし、イバラの道であることは依然として変わりません。自然保護運動などをやっておりますると、これはにくまれ者でございます。勇気と決断を要します。したがいまして、これをいかに大きくするかという問題につきましては非常にむずかしく、私ども役員等もいろいろ考えておりまするが、現実は基金がないということに尽きます。本来は国の補助を希望いたしまするが、いろいろなルートを、ひもつきの基金では困るのでございます。その辺にもむずかしい問題がございます。
 というふうなことで、やりたい仕事は一ぱいあり、基金を集めたいわけでございまするが、なかなか矛盾が多うございまして、いま非常に悩んでおるというのが現実でございます。どうぞ、この運動につきまして、ぜひとも皆さま方の有形、無形の御支援を願いたいと思います。
○石破参考人 御質問はなかったと思いますけれども、お願いを申し上げたいと思います。
 今日、私個人、土地所有権というもののあり方について再検討の時期にきておるのではないかとも考えておりますし、自然保護運動の意義をあえて否定するものではありませんけれども、ぜひともお願いしたいと思いますことは、きょうも何回か申し上げましたけれども、今日だれが自然保護を求めておるかということであります。先ほど申し上げましたけれども、大体都市生活者であります。相当の給料をお取りになって相当の暮らしをなさっていらっしゃる方、あるいは都会地周辺で所有地を相当高額にお売りになっていい所得をあげていらっしゃる方々であります。それらの方々が、自然を守れといって御要求になっておりまする土地についていいますと、先ほども申し上げましたけれども、土地を売る以外には今日生き方がないという非常に気の毒な地位に置かれた方々ばかりであります。
 具体例をあげます。山間に飛び離れた部落があります。きょう薪炭製造が成り立ちません。どうしても部落をあげて里に出たい。それには部落の山を売る以外にはない。それがたまたま保安林ということであります。国立公園地内にもそれに類するところがたくさんあります。土地改良事業をやって、低利資金というものも何ぼかの元利を負担しなければならぬ。低利資金でも返さなければいかぬ。それをどうして出すか。きょうの営農ではそれは払えません。そうしますと、共有で持っておる幾らかの土地をできるだけいい値段で売って、それで土地改良の負担金を払う以外にはない。それに類するのがたくさんあります。大企業の土地の買占めを悪と規定するならば、あえてそれは否定しませんけれども、土地所有者にしてみますれば一文でも高い金で確実な場所に売りたいという要望が強うございます。
 したがいまして、お願いしたいことは、自然保護、たいへんけっこうであります。保護しなければならぬ零細土地所有者の生活をどうして守ってやるか。その裏づけを十分にしていただいた上で自然保護の方策を講じていただきたい。お願いであります。
○佐野委員長 宮脇先生、何か一言。
○宮脇参考人 いまの石破参考人の御意見でございますが、これは、私はいまはある意味では国の行政の姿勢次第ではチャンスではないかと思います。すなわち、いま石破参考人がおっしゃったような過疎化しているところでどうしても土地を売りたいというところでは、むしろ国が積極的にあるいは国と地方公共団体が積極的にその地域を適正な価格で買い取って、そこをこれからの新しい自然環境保全地域なりあるいは自然公園地域としてむしろ過密地域の人間の心とからだの緑の保養地として使うという、そういうダイナミックといいますか、総合的な、長期的な視野に立った国政の基盤になるような法律なりあるいは具体的な施策をやっていただければというふうに考えさせていただきます。
○小宮委員 これで質問を終わります。
○佐野委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見を述べていただき、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。
 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。
   午後一時十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時七分開議
○佐野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 公害対策並びに環境保全に関する件、特に水俣病問題について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小澤太郎君。
○小澤(太)委員 私、まず環境庁長官に決意のほどを伺いたいと思います。
 長官御就任以来きわめて熱心に環境問題と取っ組んでおられること、私どもそばから拝見をしておりまして敬意を表する次第でございます。私も初代の政務次官として非常に苦労いたしました。またいろいろ感想を持っております。さぞかし御苦労があろうかと思いますが、その当時に比べまして、環境あるいは公害の問題が現実には一向によくならないという現状でございます。乱開発あるいは投資の対象などになりまして、環境は破壊されつつある。それから公害は、御承知のように次から次に新しい公害問題が出てまいります。さらにまた資源の問題にいたしましても、資源消費型の生産業というものが依然として活発である。したがいまして、こういう事態に処して、副総理たる長官が、この際政府の姿勢をはっきり確立していただきたいと思うのです。公害の防止、排除、環境の保全、資源の節約、有効利用、こういう問題につきまして端的に長官の御決意をまず伺いたいと思います。
○三木国務大臣 小澤さんも政務次官をされて、環境庁の行政経験がおありになるわけでございますから、いろいろ御理解の深いことだと思いますが、端的に言って、こういうことをやらなければ、これは日本の環境汚染というものがなかなか防ぎ切れるものではない。一つには、とにかく公害問題というものを企業も行政も政府も、これが非常に今日のような深刻な問題だと意識をして経済政策を進めてきたわけではないわけであります。ごく最近数年の間に、公害問題というのはこれほどの国民的関心を呼び、現実にいろいろな問題を起こしてきたわけですから、過去の蓄積された汚染というものを徹底的に除去しなければならぬ。そのためにヘドロなんかの処理も、水俣なんかも、禍根を断つために水俣湾にたまっているヘドロを処理しなければならぬ、そういうことでこれは埋め立て方式によって処理をしようという計画を進めているわけです。
 そのほかの海域にしましても、建設省も来年度から本腰を入れて、海域あるいは河川あるいは潮沼のいわゆる清掃事業に本格的に取り組みたい、こういっているわけです。これはどうしても蓄積されたわけですから取り除かなければならぬし、取り除かなければいろいろ問題が、いつまでたってもあと片づけという問題に追われるわけになりますからそれが一つ。
 もう一つは、既設の工場に対してやはり規制を強化していかなければならぬ。そして強化された規制の中で、公害を企業側としても防止するような投資を行なっていかなければならぬ。やはり化学工業、ソーダ工業なんかでも、水銀なんかでも来年の九月までにクローズドシステムにするというのですからね。やはり政治が相当の目標を設定して、それまでにみなが総がかりで努力するということで、いまの既設の工場でも公害を外に出さないような努力をする。一方においては下水の問題。公共下水というのは、来年度から政府は思い切ってこの問題を一番大きな公共事業として取り上げたらいいと思うのです。いままでは道路とかその他いろいろな公共事業というものの急がれるものがありましたから、下水というものがあと回しになっておるけれども、考えてみれば、割合はともかく、やはり公共下水を整備しなければ瀬戸内海はきれいにならぬですからね。そういう点で工場の公害というものを防除するためのいろいろな技術開発をこれからやっていく。一方において公共事業として下水道というものを大きく取り上げたい。
 もう一つは、これからの新しい企業というものは公害を出さない企業ということにしないと、新しい工場を設置する場合には無公害を目ざして企業がそれに思い切って金をかける。経済はある程度成長すべきだと思いますよ。これだけの大きな人口をかかえて、経済はそんなに高い成長率は要らないけれども、ある程度の成長がなければ、いろいろな社会的な問題が起こってくることは明らかであります。それにつけても、やはり公害というものを除去しながら成長をはかるということでなければ、国民的理解と支持は得られない。
 そういう点で企業の側としても、従来の生産設備に傾けた努力というものを公害を防止するという投資に力を入れて、これからは公害防止の努力というものが成功した企業が発展していくんだということで、公害防止の努力というものが自由競争の大きな目標になるように持っていかなければ国内的にも反発が起こりますし、あるいは国際的にも公害のダンピングをやっておる国だということを言われるようなことになれば、これはいろいろな面において日本の経済発展というものがチェックされることは明らかでありますから、そういうことでこれはひとつ性根を入れかえて、これからはみなが日本のよごれている環境をきれいにして、この環境をこれ以上よごすことをやめて、さらに経済成長期のまあ昭和三十五年ころまでの日本にもう一ぺん返そうではないかということで、総がかりで取り組んでいく必要がある。量的な拡大ということは国民も望んでいませんし、生活の面における質的な充実ということが国民の期待するところでありますから、そういう点で、もう一ぺん公害対策というものを根本的に見直してみる時期だというふうな感じがいたしておるわけでございます。
○小澤(太)委員 一応のお考えはわかりますが、私が伺いたい姿勢というのは、一体これをだれがやるか、だれが責任を持って、だれが当事者であるかという問題なんです。政府としていろいろ施策を考えておられること、これはよくわかります。そこで、いわゆる原因者負担の原則をどの程度まで進めていくかという問題です。それから公共負担、一般国民の税金なり地方自治体の住民の税金なりで負担するものはどうするかという問題とか、あるいは国と地方自治体は責任をどのように分け合っていくか。現在いろいろ言われておりますけれども、現実に現場に行ってみますと責任の所在がはっきりしないことが多い。結局どう言っていいのか、悪いことばでいえば、責任のなすり合いになるし、負担者は自分が原因者であるから、一切がっさい負担するという気魄もない。こういうことでございますから、この点についてはっきりした、少なくとも原因者負担の原則というものをあくまで堅持していただくということ。それから、基本法に調和条項を削りましたからあの精神を生かしまして、しかし調和が全然ないわけではございませんが、環境に企業が調和できるなら調和させる。環境に調和させるのであって、主体は環境である、こういうような態度を堅持していただきたいということでございます。御答弁大体わかりますが、一言そういう点に触れていただきたいと思います。
○三木国務大臣 やはり原因者負担の原則というものは、これをくずしますと収拾がつかなくなります。だから原因者負担の原則というものはくずすべきではないので、そういう点で原因者がいろいろなダメージに対して補償をする、責任は原因者に戻さなければなりませんが、先ほど申したような下水道の整備であるとか、あるいは公害防止の技術開発であるとか国としてやらなければならぬ問題は非常にある。こういう点では国がこういう問題に対しては思い切って力を入れていくべきである。国がやらんならぬ分野というものは非常に多い。だから、いろいろな生命とか健康とかその他財産上の被害を与えたことに対しては、これは補償責任は加害者が持つ。しかし、それ以外に国としてやらんならぬものが私はたくさんにあると思う。ただ、いま御指摘のような自治体と国との関係ですが、公害対策というものを進めていく上については、国と自治体と地域住民、三者の気心の合った協力関係というものが要ると私は思います。そこで、その中でもやはり地方自治体の持っておる役割りというのは非常に大きいと思う。なぜかといったら、地方の実態というものを一番知っておるのは自治体ですから。国の持っておる全国的な計画、基準あるいは財政力、こういうものは、地方自治体などに比べて国として持っておる大きな力でありますから、そういう点では国としての役割りを果たさなければならぬし、地方の実情に沿うた対策については、地方の自治体がやはり相当イニシアチブをとるべきである。それに対して、国が自治体に対して、こういうふうな自治体の貧弱な財政力でやれということはできませんが、それには国が持っておる財政援助というもので、その地方の自治体に対するそういう面からの国の助成は要る。また、自治体が地域住民に対しての協力も求めなければならぬ。それが何か、地域住民との協力を得ることがいかにも問題を複雑にするという考え方は私は誤っていると思う。どうしてもやはり地域の実態をあからさまに地域住民に述べて、地域住民の協力を得るという態度を持たなければ、公害対策というものはなかなか推進されていかぬのではないか。おのずから分野があると思うのです。この分野をはっきりして、地方自治体には実態に即して、いろいろな施策をやってもらわなければならぬのですが、その場合に、いわゆる地方自治体の持っておる財政力の面などは国があまりめんどうをかけないで、このめんどうを見るというだけの態度というものが国に要る。そうなってくれば、いま言った三つが、国と地方自治体と地域住民が、具体的には私の言うことにもいろいろ問題があると思うけれども、大きな役割りの区分はできるのじゃないか。そういうことで、協力し合うような体制といいますかルール、これを確立することが急務だと思うのでございます。
○小澤(太)委員 この問題については私また時間をかけまして、具体的にいろいろ意見を述べたいし、また御意見も伺いたいと思います。きょうはこういうことをやっておる時間がありませんから、本論の水銀、PCB汚染問題に限って御質問をいたしたいと思います。
 さきに、当特別委員会の委員長をはじめ諸先生方、水俣病関係で現地を御視察になったのでありますが、御承知のように、第三の水俣病として有明海地区、今回は第四の水俣病といっていいか悪いか、これはまだ不確定でございますけれども、少なくとも、そのようにいわれておるような危険のある状態が徳山湾に起こっております。またPCBにつきましては、岩国の海域において起こっております。
 私ちょっと地元へ行ってまいりまして、実情を聞いてまいったのでございますから、やや私が疑問とするところを伺いまして、この解決に政府としての力を特に入れていただきたいと思います。
 まず私が伺いたいのは、徳山曹達なり東洋曹達、これが水銀を海に放出しておって、この数量が両方合わせて六・三トンとかなんとかいっておられます。これにしても非常に大きな数量でありますけれども、このようなことが事実間違いない数字なのかどうか、その点を政府はどの程度確認できておるのかどうか、この点通産省の関係と思いますが、政務次官からでもあるいはどなたからでもよろしゅうございますが、伺いたいと思います。
 と思しますのは、一応の発表を見ておりましたけれども、現地に行ってみますと、地方の新聞などにはたとえば徳山曹達はあのような報告をしているけれども、水銀の入っているマッドを埋め立てに使っているが、そこに海との障壁も十分にせずに使っているために、あるときにはこれが流れて出たという事実があるのだ、そしてそこ付近の海域には非常に高い水銀のPPMが出ているのだ、こういうことを現実に地元の人は知っているのだ。ところが、こういうことが政府の調査の中には出ていない。蒸発してしまったとか、どこかへ埋めて完全にクローズドしてしまったという話だけでございます。そういうような点について十分な調査が確信あるものができておるかどうか、これを伺いたいのです。
○齋藤(太)政府委員 徳山曹達と東洋曹達の水銀の排出状況につきましては、先般当省の通産局の係官を工場に派遣をいたしまして、現地調査をいたしたところでございますが、まだ詳しい報告が本省のほうに参っておりませんけれども、電話で聞きましたところでは、徳山曹達につきましては、これまでの水銀の消費量、昭和二十七年から昭和四十八年、ことしの三月末までの消費量が三百七トンという報告を受けております。ただ、この三百七トンと申しますのは、投入されました水銀とその後回収いたしましたり、現在工程の中に残っております水銀の差でございまして、この三百七トンが即工場外に流出したというものではございません。この三百七トンにつきましては、いろいろ排水処理をいたして回収をいたしておりますので、あるいは廃棄物として工場の中に埋めたりいたしておりまして、現実に工場の外に出ましたのは、最後に処理されたあとの排水の水質の中の水銀濃度を調べまして、それと排水量をかけませんと、現実には外へ出た量が正確にわからないわけでございます。これらの点につきまして、現在まだいろいろ通産局で調査中でございますが、一応会社の報告では、この消費量の中で排水中に出ました量は、徳山曹達については三・七トンという報告でございます。
 それから東洋曹達につきましては、昭和三十一年から……
○小澤(太)委員 大体のことは私知っているのです。つまり排水量から逆算したという。ところが排水でなしに、敷地の中に埋めたというマッドが、水銀を多分に含んだものが、処置が不十分なために流れておるという事実があるというのですが、そういうことを計算しないと、ただ排水量から逆算してこれだけしか出ていない、――これだけといってもそんなにたくさん出たらたいへんなことなんですけれども、それにしても、そういうものを基礎にして判断してやられることが適当であるかどうかということですから、もっとそういうような数字じゃなしに、現地で、たとえば市の職員なりあるいは地元の人なり工場の中の人なり、いろいろな点からそういう点をよく調べてみてでないといけないのじゃないかということを痛感したから申し上げるわけですから、私が申し上げたような事実があったかどうか、その点を確認しておられるかどうかの問題なんです。
○齋藤(太)政府委員 水銀電解法で苛性ソーダを生産いたしますときには塩を原料にいたしますけれども、塩の中の数%の不純物がたまってまいります。この中に水銀がまじってまいりますので、これは廃泥と申しますか、マッドという形で抽出をいたしまして、廃棄物法の施行前は大体工場内に埋め立てをいたしておりましたが、廃棄物法施行後は、コンクリートで固定化いたしまして工場内に埋め立てる、こういうふうな処理をいたしております。
 従来の埋め立て分につきましては、地下に浸透する等の危険がないかどうか等につきましても現地調査をいたしておりまして、もしそういった危険が予想されるようであれば、また適切な対策をとりたい、かように考えております。
○小澤(太)委員 時間がありませんからもうはしょっていきますが、水産庁おいでになっておられますか。――実は、岩国の海域のPCBの数値の問題ですが、これは、実は水産庁の発表に誤りがあるということでございます。具体的に申しますと、五キロの線、七・五キロの線それから十キロの線と、こう三つやりまして、そしてA区域が五キロの線、七・五キロがB、十キロがCと、御承知のとおりでありますが、その中で実にふしぎな数値が出ているのです。アナゴです。アナゴは、B地域では、水産庁の発表では最低〇・六、平均〇・八、最高一ですね。ところが十キロのいわゆるC地域ではアナゴが最低が五PPM、平均が七PPM、そして最高が一〇PPMと、遠いところが非常に数値が高い。三PPMをはるかにこしている、こういう発表であります。
 したがいまして、あの地域では十キロ以内の、つまりA、B、C三つの地域が危険地域とされておるのです。ところが、実際に調査に当たりました漁協の人、組合員でございますが、それがアナゴをとったのはA地域だ、C地域ではアナゴはとれなかった、こういうことなんですね。このA地域にはアナゴについては何も書いてないわけです。遠いところに非常に高いのがある。これは明らかに誤りであるというので、岩国市の市報ではこれを訂正しているのです。そして、いま申し上げましたC地域のアナゴは、これをそのままそっくりA区域に入れておりまして、こういうふうになっているわけであります。これは一体どっちがほんとうなのか。十キロまでになりますと非常に広域になります。漁業者がそこでなかなかとれない、こういうようなことになっておるわけですが、こういう点はどちらが正しいのか、十分にお調べ願いたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
○荒勝政府委員 ただいまお指摘の点でございますが、私のほうの山口県のPCBによります汚染魚の発表は、御存じのように、アナゴが一つ入っておりまして、これは河口から、いわゆる門前川河口から七・五キロから十キロメートル以内の藤生沖というのですか、ここでとれたアナゴが五ないし一〇PPMあったということで七検体調べております。平均七のPPMが出ておりまして、五検体調べて五匹とも出ておるということで、汚染されたるものということで先般公表した次第でございます。
 これにつきまして、この調査方法につきましては、山口県庁に魚の採取をお願いいたしまして、委託して調査したわけでございまして、しかも、最終的に整理の段階におきまして、多少長い時間かけまして、各県と十分に打ち合わせをいたしまして、こういう調査結果を発表いたしまして、私のほう一存だけで一方的な発表をしたわけでございませんで、県と打ち合わせの上で、むしろ県からいただいた数字でいたしたわけでございますが、ただいま御指摘のように、かりにもし万が一そういうミスということがありますれば、私のほうとしても再調査するとともに、県に照会いたしたい、こういうふうに考えております。
○小澤(太)委員 これは十分に調査していただきたいと思います。
 長官、お聞きのとおり、私も環境庁におりましたときは、一緒に調査したり何かしまして、各省でやってきたのが正しいという考えでありましたけれども、これは明らかなミスだと私は思います。水銀の排出量の問題にしましても、あるいはいまのPCBの数値の問題にしましても、もっと責任をもって的確な調査をしていただかないと、これから及ぼす影響というのは重大な問題です。これはひとつ水産庁長官、よく調べて、間違っておれば直ちに訂正していただきたい。もし間違っていなければ、岩国市に言って市報を変えてもらいたい。市報にはA地域と明らかに――これは漁民から聞いて、漁協から聞いて間違いないというので、市民に対して安心感を与えるためにこういうふうにしておりますから、市報に掲載しておりますから、こういう点をひとつお願いいたしたいと思うのです。
 そこで、また時間の関係もございますので次に進みたいと思いますが、健康調査の問題でございます。私は早く健康調査を広範な地域にわたってしてもらいたいということがお願いの要旨でございますが、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、徳山湾の場合におきましては、まだ国、県の健康調査が行なわれておりません。行なうという予定でございます。ところが、すでに熊本大学の原田助教授が現地に来られまして、どうもあやしいと疑いのある三人について問診をしておられます。ところが、これはハンター・ラッセル症候群は一応認められないがということでしたが、もう一人あやしい患者があらわれまして、これはどうもそうらしいという判断、したがって精密検査をすべきだといわれております。
 そこで、あとでまた触れますけれども、もう一つ熊本の保養院という病院がございます。そこにやはり疑いのある患者を地元の人が連れてまいりまして、そこの藤野先生、お医者さんに見てもらいました。ところが、その診断では、どうもハンター・ラッセル症候群の一部があらわれておる、水俣病に近いのじゃないか、こういう診断をされております。もちろん疫学的調査もこれからしなければならないというようないろいろな条件は言っておられますけれども、そういうのを先にやりまして、さらにまた、あの地方には民主的な公害対策協議会というのがございまして、これは県の医師会長さんが会長になっております。これも自主的にやろうと言っておるのです。ですから、早くそういうこと――いまやられているのは権威がないとは申しません。みなそれぞれ専門家がやっておられるのですから、相当の理由があると思うのです。ところが、国や県や市の健康調査というのがまだこれからというところでございまして、もう非常に心配を先に与えておる。心配を先にすることはいいことでございますよ。ですけれども、何か国のほうが手おくれじゃないかという気がいたします。その点について、どうぞひとつ、これはどこでおやりになりますか、環境庁長官、一日も早くやっていただきたい、これはお願いでございます。
 そこで次に私、伺いたいことがございますが、原田助教授の話では、水銀によるところの水俣病とはいいがたいかもしれないけれども、いわゆる重金属の複合汚染、複合公害ということが考えられる。いろいろな重金属が一緒にたくさん流れ出ておる、それに水銀が入っておるものもあろう、こういうものの複合的な病気であるから、いわゆる徳山病といわれていいものかもしれません、こういう御発言があるわけでございます。ですから、そういうようなものが実際あるものかどうか。これはどこですか、厚生省ですか。そういう研究ができておるかどうか。もし事実そういうことがあるとするならば、一徳山湾に限りません。おそらく全国の各工業地帯はほとんどそういう状態にあると思います。これは広範な調査をして、あらかじめやはり健康調査もやらなければならぬと思いますが、その点はどういうふうなお考えでしょうか、伺いたいと思います。どこでしょうか。
○三木国務大臣 徳山湾については環境庁も、いま言った単に水銀に限らず、有害物質を含めまして、あそこの環境調査をやりたい、いま段取りをいたしておる次第でございます。そういうことで、いろいろ重金属の複合といいますか、そういうふうなことだって考えてみる必要もございますので、まずやはり精密な環境調査を行なう、健康調査も私はやるべきだと思います。こういう環境調査とにらみ合わせて、県とも連絡をとりまして、国としても医師団などについて、水俣病というのはだれでも医者が診断ができるわけでもありませんから、相当やはり医師団においても協力する必要がありますから、厚生省のほうとしても、国立病院の医師団、その他水俣病に対して経験のある医師団を精密検査の場合には派遣をして、協力をするということになっておりますから、環境調査、健康調査というものは、徳山湾あるいは徳山湾の沿岸の漁民の方々にも行ないたいという方針で計画を進めておる次第でございます。
○小澤(太)委員 重金属複合公害といいますか健康公害、こういうものはどういうふうになっていますか。何かそういう定説でもありますか。いま研究しつつあるのか。いま長官は何か研究するようなことを言っておられましたが、どういうことでしょうか。
○船後政府委員 各種の重金属が複合いたしまして、人体にどのような害を及ぼすかということは、可能性としては考えられるわけでございますが、現在のところ定説はないと聞いております。しかし、そのような危険性がある、かつまた、そのような提言をしておられる方もあるわけでございますから、今回水銀等の汚染の人体影響につきまして、専門的な学者に検討をお願いいたす予定でございますが、その作業の一環といたしまして、ただいま御指摘のような複合汚染の問題も専門学者に至急詰めていただく、検討していただく予定でございます。
○小澤(太)委員 研究するということでございますが、船後局長、どうかこれは真剣にやっていただきたいと思うのです。これはこういうことを書いてあるのです。
 原田助教授は、水銀のほかにも同湾内には高い濃度のクロム、亜鉛などの重金属類が蓄積していることが確認されており、水銀プラス重金属の複合汚染による中毒症が発生している、これは新しい水俣病というよりも徳山病というべきものだろう、こういっておるのですから、どうぞひとつ十分な研究を至急にやっていただきたい。及ぼすところは大きいと思います。
 それからもう一つ伺いたいのですが、無機水銀が出ておって、それがたびたびいろいろ議論されたのを私も聞いておりますが、有機水銀に変化する、こういうことでございます。ただいままでのチッソとか昭和電工の分は、アセトアルデヒドを電解法によってつくる際にメチル水銀が出ておるといわれておる。ところが、徳山湾の場合は苛性ソーダを電解法によってつくっている。その際に出るのは無機の水銀であって、メチル水銀は出ないということをいわれている。ところがこれは別の方ですけれども、三井東圧化学の大牟田工業所の所長さんのお話では、メチル水銀は微量だ、微量だけれども出るかもしれない、出ておっても微量です。こう言っている。そこで徳山湾の汚染の問題は、微量のメチル水銀が食物連鎖によって堆積されて何万倍になる、こういうことになっておるのか、あるいは無機水銀が何らかの作用によってメチル化するということになっておるのか、この点がどうもはっきりしないと思うのですが、いままでもいろいろ好気性菌とかなんとかいろいろなものがあって、そういうバクテリアによって有機水銀になるという説もあるようですが、徳山湾の場合は、一体どういうことであのように魚に多量なメチル水銀が検出されるか知りたいということでございますが、これは厚生省でしょうか、どこでしょうか。
○山本説明員 お尋ねの前段のほうでございますクロムや亜鉛などでの複合汚染ではないか、これは当然考えられることでございますが、現在までのところ、複合汚染による症状の形態がどんなものであるかということにつきまして、まだ研究が開発されておりません。これは新しい問題として今後の研究にまたなければならないと思います。
 第二番目の問題でございます、無機水銀の有機化の問題でございます。これは今日かなりの学者が実験的にも証明されております。しかし量的に、地域ごとに無機がどの程度有機化するかということにつきましての調査方法、あるいは研究方法につきまして、まだ確立したものがございません。したがいまして、質的に無機水銀が有機化するということまでは考えられますが、それがどのような条件の場合に量的にどのくらい変化していくものであるかということにつきましては、いまの段階でははっきり言えないと思います。ただ、日本の国内の学者におきましても、無機水銀があるいは紫外線の影響であるとか、あるいはバクテリアの影響であるとか、そういったような条件を整えると有機化するということがあるけれども、すべてがそういうものではないであろうというところが現在までの定説でございます。これもまた今後強力な研究を必要とする分野ではなかろうか、かように考えるのであります。
○小澤(太)委員 ソーダの電解法によってメチル水銀が出るということはあり得ることでしょうか、どうですか。
○齋藤(太)政府委員 ただいままでの調査のところでは、電極として使われております水銀が、かりに排水中にまぎれまして出るといたしましても、これは金属水銀でございまして、無機水銀であるというふうに私どもは聞いております。
○小澤(太)委員 そうしますと、徳山湾の場合は、これは無機水銀が原因だと、こう判断してよろしゅうございますか。
○齋藤(太)政府委員 無機水銀が海中に入りまして堆積をいたしました場合に、それがメチル水銀等の有機水銀に変化するかどうかにつきましては、まだ確認がされておりません。通産省の工業技術院の微生物研究所におきまして、昭和四十五年度に実験室でやりましたときには、特定条件のもとでは、微生物の作用によりまして無機水銀が有機水銀になることが認められております。それから逆に、有機水銀が無機水銀になるケースも微生物の作用によりまして認められておりますが、これはあくまで実験室の問題でございまして、微生物の繁殖を阻害するような塩分を多量に含んでおります海水中で、水銀がそういったような挙動をするかどうかにつきましては、まだ確認されていない現状のように私、伺っております。
○小澤(太)委員 そうなりますと、徳山曹達、東洋曹達が多量の水銀を、これは無機ですが、流しておる。その海域にメチル水銀をたくさん持っておる魚が出てきた。こういう因果関係はどうなるのでしょうか。われわれとしては、やはり原因者は両ソーダ会社だと、こう断定せざるを得ないと思っているのですが、いまのようなお話だと、どういうことなんでしょうか。その点はひとつはっきりさしていただきたいと思うのです。
○山本説明員 動物の体内におきまして無機水銀が有機化するという報告が一例ございます。しかし、それも確認されているものでございませんし、いまの先生のお尋ねに対して、はっきりとしたお答えができないわけでございます。
○小澤(太)委員 私は、いわゆる原因者負担ということを考えまして、こういう漁民に非常な生活の不安と申しますか、生業ができない。またかりに、いまあやしいという者がはたして患者であったりするような場合、こういう場合に原因者がこれを負担して引き受けてやらなければならぬというときに、それがはっきりしないようなことで一体どうするかということは非常に不安に思います。われわれ常識として、また県民としても市民としても原因はそこにあるんだ――現実にその企業に行っていろいろ補償を求め、徳山曹達、東洋曹達のごときは毎日漁民一人に一万円ずつ支払っております。十五日間支払うといいますが、これがいつまで続きますか。こういうような状態にあるときに、もう少し政府のほうでそういう点をはっきりさせていただかないと、これは行政の責任だと思うのです、はっきりさせることが。こういうようなことをどう考えているのか。これはひとつ、もっとはっきりしたことは言えませんでしょうか。あなた方は科学者だからそういうことを言われますけれども、これは坂本政務次官、考えを言ってください。
○坂本政府委員 そこに魚がいて、そして非常に危険な程度のメチル水銀を含んでおるという事実、そこに工場があって、そうして相当の、現在ではなくても過去において流出があったというこの事実があれば、これは国としても早急に科学的な究明はもちろんいたさなければなりません。学問的に原因探究ということは相当むずかしいことであろうとは思いますけれども、しかし、これは科学的に究明を早急に国のレベルでもって詰めていきますると同時に、やはり社会的にはこれは会社の水銀によるものであるという、これはまあ社会的通念だろうと私は思うております。
 その間に立って、ただいま行政が何をしておるかという追及でございまするけれども、おっしゃるとおりだと私は思うて、早急にこの原因究明につきまして、これはやはり政治、行政の責任において早急に詰めていきたい、こう思うております。
○小澤(太)委員 念を押すようでありますが、事、徳山湾に限っての話としまして、やはり原因者は両企業だということをわれわれ断定しております。住民も断定しておるのですが、その考えで進んで国としては差しつかえない、また国もそういう考えで進んでおる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
○坂本政府委員 現実の政治、行政という面からいたしますれば、ただいまおっしゃるような覚悟を持って私どもは対処していかなければならぬ、こう思うております。
○小澤(太)委員 どうも歯切れがよくない。現実の問題なんですよ、毎日、毎日。これはひとつ早くやっていただきたい。もうこれ以上言いません。言いませんから、どうぞ学問的に究明できるなら早くやっていただきたい。そしてよく疫学的調査、いろんなことを言われますが、そういうふうなことも、こういうことがはっきりしなければ、たとえば健康診断にしてもできないことになりはしないかと思う。こういう懸念があります。どうぞひとつ、これは関係当局が至急に調査をしていただき、少なくとも現実の問題としてどう扱うかという態度ははっきりしていただかないと困ります。
 時間もございませんから次に移りたいと思いますが、先ほど申しましたように、重金属の複合汚染という問題、それからいまの無機水銀の有機化の問題、こういう問題が肯定されますと、単にその工場があるところだけでなしに、たとえば農薬の問題もありましょうし、それから、いま問題になっていない海域でも同様な状態が起こる可能性が十分にあります。
 そこで健康調査の問題も、問題が起こってから、いま環境調査に行きまして、環境調査の結果必要あれば健康調査をやりましょうということになっているようですね。この間環境庁で主催された各省の協議会の対策にもそうなっておるようです。そういう考えじゃいけないのじゃないだろうか。むしろ先取りして、あやしいところは何らかの方法でまず健康調査をやるんだ、むしろあやしいところは全国にわたって健康調査をやるんだというぐらいの勢いでいかなければ、みな後手に回るのじゃないか。重金属の問題、いわゆる徳山病なんというものがかりに出たとすればたいへんなことだと思うのですよ。あるいは出るかもしれませんよ。そういう意味で、ひとつ健康調査を至急に広範囲にやっていただきたい。これは、私はお願いです。やっていただけますか。
○坂本政府委員 環境調査をやると同時に、くさいと思うところは並行して健康調査も実施いたします。(島本委員「みんなくさい」と呼ぶ)
○小澤(太)委員 いまみんなくさいと言われたですが、さっき言ったような問題がイエスかノーかになると――かりにイエスになるとみんなくさくなるんですよね。私はそういう点が心配ですから、どうぞひとつ広範囲に積極的にやっていただきたい、これをお願いします。
 それから次に、安全基準を、これは二十三日ごろまでに専門家会議で出していただくという話を聞いておりますが、どういうふうになっておりますか。水銀の場合です。
○山口(敏)政府委員 魚介類の水銀の許容基準等につきまして、四十六年から水銀の慢性毒性試験を実施しておりまして、基準の設定作業を進めておったわけでありますけれども、このたびのこうした有明湾等の事例にかんがみまして、水銀汚染、特に魚介類の摂取等の暫定基準を早急に設定をしたい。特にいま先生御指摘のように、二十三日をめどにいたしまして専門家会議で検討しておる。特にこれは国民の皆さんの食生活にもきわめて重要な関連があるわけでございますので、十分科学的に検討してまいって、PPMというような形での許容基準と同時に、主婦の方々や国民の方々にもわかりやすく食生活の指導指針等の形も含めまして、両面から暫定基準を早急に結論を出したい、かように思っておるわけでございます。
○小澤(太)委員 早急にやっていただきたいというのは、実は私ども瀬戸内海におりますが、瀬戸内海の魚はうまいということだったのです。われわれも瀬戸内海の魚を食べに郷里に帰ったものです。このごろは瀬戸内海の魚は全然売れません。危険水域でないところも、全然関係のないところも売れないのです。瀬戸内海ばかりでなしに、このごろは日本海も少し怪しくなってきた。売れない。これは厚生省で、魚はなるたけ食べないようにして肉を食べなさい、野菜を食べなさいといわれたのです。それを受けてある県の衛生部長が魚もあまり食べないほうがよかろうと一言漏らした。しかも基準がはっきりしません。いままでの暫定基準がきわめてはっきりしない。こういう状態から、みんな心配しているやさきに、政府並びに県の関係者からのそのようなニュアンスのある発言があった。あわてて今度は、県はだいじょうぶです、安全ですということをまたやったのです。前に徳山のことは御存じだと思いますが、シャコが水銀に汚染されている。そこで売れなくなったものですから、漁民が、県庁に押しかけてきた。しかたがないから衛生部長が紙に書きました立て札をたくさんつくって、そこで魚屋さんのところにみな立てさせた、これはみんな安全ですから。ところがそんなものは信用しませんよ。だから売れなかった。そういう経験が三、四年前にあります。
 今回は各県でやられて、山口県もたまりかねて安全宣言というか今度は安心宣言というか、安心してください、食べても安心ですよ、しかもいま政務次官おっしゃったように、一日マグロならどれだけ、アジならどれだけ、こうわかりやすいように。ところが一向に効果がありません。瀬戸内海の魚は、沖のほうの関係のないところのものも売れません。このごろは日本海まで売れなくなってきている。これをどうしてくれるのかというのです。もちろんいま危険な水域だとしていわれているところは、先ほど言いましたように、漁師に対しては一日一万円ずつやっています。PCBの場合は、岩国の東洋紡は危険区域からとってきた魚を毎日買い上げておるのです。漁師が行ってせっせととってくる、しかもそれを時価で買い上げてコンクリートに詰めておるわけです。こういうことをしておる。しかし危険なところでないところまでそういうふうになっていますから、漁民は全部お手上げなんです。
 お願いしたいことは、早くはっきりした基準をきめていただきたいということです。そうしないと政府によってオーソライズされないものは、県の知事さんがいかにがんばっても、安心宣言やったって安心しませんよ。これを早くやっていただきたい。これが第一。二十三日ごろまでにできるかどうか、はっきりお願いしたいと思います。
○山口(敏)政府委員 先生御指摘のとおり、基準の設定は一日も早いほうがいいわけでありますから、二十三日をめどとして早急にいま結論を出したい。国民の皆さんの食生活の健全な運用の面からも、ひとつ作業を一そう進めたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。
○小澤(太)委員 この基準を早くきめていただかないと漁民は困りますし、それから消費者も魚が食べられぬ。それから、これは漁民と消費者だけでなしに魚屋さんが困っているのです。町を歩いてみましても、徳山あたりは魚屋さんが全部店を締めておる。これをどうして、だれが補償してやるか。政府でおつくりになったあの要綱を見ますと、融資のことばかり考えておるのです。漁民に対しても融資をしてあげよう、関連の商業者に対しても融資をしてあげよう。原因をつくって商売ができない。魚がとれない。とれるけれども売ってはいけない。何もできないのに金を貸してやる。金を貸してやるのではいけませんよ。金を貸すのではなしに、金をそれだけ補償してもらわなければいかぬ。その補償をどうされるかということを政府はどう考えていらっしゃるか。これはどこからでもよろしいから話していただきたい。たいてい政府のやつは――私も政府の側に立ったこともありますけれども、すぐ緊急金融措置、それをやるのです。商売ができなくてその日に困るのに、金を貸してやるというのではだめだと思うのです。そういう点はどこまで考えていらっしゃるか聞きたい。
○塩川政府委員 お尋ねの件でございますが、とりあえず緊急融資でということで、これは御不満でございましょうが、総合調査を現在環境庁を中心にしてやっておりまして、やはり原因者というものをはっきりと、先ほどのああいうお話がございましたけれども、そういうものが確定いたしました場合に、それの趣旨に沿って救済措置を早急に講じなければならぬ。したがって、とりあえずは生活費のこともございましょうしいたしますので、緊急融資という手続によってやっておるようなことであります。
○小澤(太)委員 よくわかりました。いまの政府の融資、それから県もそれぞれ応急の融資をやっております。それは原因者がはっきりした場合に原因者負担に切りかえるという前提のもとにおやりになる。しかもその範囲はいわゆる生業補償というところまで延ばす。漁業者のみならず魚を売っておるところの魚屋さんまでということでございましょうね。その点……。
○塩川政府委員 営業によって受けた被害の救済という面になってくると、若干まだ検討の面があろうと思います。生業補償、医療補償、こういうものはもちろんでございますが、その品物を対象にして営業行為をやっておった者、こういう人たちに対する補償の程度というものについては全面的にいくのか、どの程度のことをするのかという内容等につきましても検討はいたしてみたいと思います。それ以外の補償については、従来の水俣病のございました、ああいうことがやはり一つの前例として適用されていくべきだと思っております。
○小澤(太)委員 基準を早くきめていただきまして、それから最初に言いましたように原因者がだれであるかということをはっきりさせていただいて、そしてその基準に合致するところは、今度は厳重に漁獲の禁止をやらなければいかぬと思うのです。これは現在の法制のもとでは漁獲の禁止はできない。ですから、はっきりさせて危険な地域を基準をきめなければ禁止もできませんから、禁止した場合に、今度はそこでほんとうに漁業ができませんから――いままではとって持っていったら会社が買ってくれるのです、禁止されておりませんから。漁民としても、それは買ってくれるから金は入りますよ。しかし生きたぴちぴちした魚を自分がとって、そして消費者に供給するという漁民としての一つの生きがいというか、精神的にそういうものがあるのです。とっても毒になる魚をしかたがないからとって、それで会社に持っていって買ってもらって、それでかつかつ生きていくという漁民のその気持ちになってみますと、それじゃいけないのです。だから、禁止なら禁止してくれ、そのかわりそれに対する補償を十分してもらいたい。と同時に、これは水産庁にお願いですが、それにかわる漁民として、どういうふうにして生きていけるのか。沖に出なければならぬが漁船をつくらなければならぬ、それをどうしてくれるかとか、漁場の転換をどうしてくれるとか、漁業権の関係で非常にむずかしい問題がたくさんあると思いますが、そういう積極的なことをやっていただきたい。そのためには、やはり基準を早くきめるということ、そしてこれは法律の改正が必要だと思いますが、禁止区域を設けて、そしてそこにおる漁民に対しては十分な補償をし、また、これに対する将来の生業についての育成を助成する。それからもう一つは、その禁止区域以外でとれた魚は安全です、これは安心でない、安全だという国家がオーソライズした保証をする、こういうことになって初めて漁民も助かる、消費者も助かる、みんな助かるのです。こういうことをおやりになる考えがあるかどうか。水産庁長官に聞きたいと思うのです。
○荒勝政府委員 ただいまお尋ねの点で、第一点の漁場の禁止制度を設けるかどうかの点でございますが、現在の漁業法は、魚族資源の保護と、それからいわゆる漁獲に伴う紛争の調整ということを目的としておりまして、現在の漁業法の体系の中では、汚染魚についての禁止処分ということはできないことになっております。
 今回の第三水俣病を契機といたしまして、私のほうといたしましても、実際上の行政指導という形で指導いたしておりますが、濃密に汚染されている海区についての漁獲を、自主的にとらないという措置を講ずるよう、都道府県知事を通じまして指導申し上げまして、各漁業協同組合単位でそういう形の自主規制が行なわれているわけでございますが、これを直ちに禁止するかどうかということになりますと、私のほうといたしましても、民法上の一つの物権の対象に漁業権というものがなっておりまして、これをどう取り扱うかということにつきまして、これは内部でいまたいへんな論議を生みながら議論いたしておりまして、きょうここで、こんな形でどうのこうのというふうな明確な答弁をできないことにつきましてはまことに残念でございますが、研究させていただいておるというふうに御理解願いたいと思います。
○小澤(太)委員 漁業権の問題、これは問題があるということはわかりますよ。しかし、事こういう状態になっておるときに、いままでの考え方、法律の観念を変えていかなければいかぬのじゃないだろうか、こう思います。そして、私漁業をやっておる方々によく会って、一体どうしたらいいか、こういう考えがあるんだが、かりにできれば禁止区域を設ける、こういうことはどうだと言ったら、賛成ですね、いやだと言わないですよ。ヘビのなま殺しのように、ただ自主的にやれとか、自分たちだけで規制をやれ、とった魚は、これは食品衛生法で売ってはいけないのでしょう。食べたら病気になりましょう。そういうような矛盾したことを――いまは権利の問題かなんかがあってできないというんじゃおかしいと思うのですよ。私はやはり国民の健康と生命と、そしてそれを維持する生業をみんな助けてやるという立場に立たなければ何もできないと思うのですよ。私も法律のことは多少勉強しておりますからわかりますけれども、長官、ひとつ勇気を出してやっていただきたいと思うのです。私は環境庁長官に最初に聞いたのは、そういう具体的な問題について、環境庁がリーダーシップをとって、もろもろの旧来の観念を変えて新しい――もう世の中がグローバルに全部変わっていくときですから、これは変えていかなければならぬ。これがやはり日本の国民を守り、広くいえば世界の人類を守ることなんですが、そういう使命感を政府が持って、勇気をもってやってくださいよ。法律によって人が生きておるのじゃありませんよ。人が生きるために法律があるのですから、そういう問題はどうぞひとつしっかりやっていただきたい、これをお願いします。
 いろいろ申し上げたいことがたくさんありますが、時間が参りましたから、きょうはこれで私はとどめておきます。この次また機会かあれば――私はかつて坂本さんと同じように環境庁の初代の政務次官で、非常に苦しみました。苦しんだ中に、私は非常な憤激を心の中に持っています。どうしても変えなければならぬ問題があるということを私はかたく心に思っておるのです。これをこれからも私も勉強させていただきまして、皆さんにお願いしますから、政府もいままでの考え方を一てきしてひとつやっていただきたい。これを最後にお願いしまして質問を終わります。
○佐野委員長 林義郎君。
○林(義)委員 ただいま小澤委員の御質問を聞いておりまして、私も非常に同感であります点がたくさんあります。小澤先生と同じ山口県でありますし、瀬戸内海は非常にきれいな海であります。この海の中で、こうした水俣病の類似症状が出たということは非常に遺憾なことでありますし、そこで私は、単に水俣病だけの問題ではない、やはり瀬戸内海全体をきれいにしていかなければならないという考え方で、議員立法を進めなければならない、こう思っておりますが、この話は別にいたします。きょうは水俣病に集中してお話を申し上げますから、そのことはまた別の機会に政府当局にお尋ねして、お話を聞きたいと思います。
 まず第一点は、先ほどの話の中で重合汚染、複合汚染であるというお話がありました。この前、水俣周辺の視察に参りましたときに、熊本県庁で武内教授その他の方々にお話を聞いたのであります。水俣病というのはそういう重合汚染とは関係ないのだという御説明がありました。私が聞きましたのは、ハンター・ラッセル症候群とはどういうものであるか、一体水俣病というのはどういう手続でもって診査されるのであるかと聞きましたところが、武内教授からの御返事では複合汚染ではない、複合汚染ということも考えられるけれども、それではない。明らかに水銀によるところの患者を水俣病患者というのである、こういうふうなお話でありました。先ほどの答弁とちょっとニュアンスが違うのでありますけれども、この辺は、一体水俣病というものは重合汚染、それを含むのか含まないのか、まずその辺を明らかにしてもらいたい。水俣病というものは水銀中毒症である、言うならば水銀の慢性中毒である。それによって起こるところの視野狭窄、難視聴、その他のものをいうのでありまして、水銀が原因だと私は思う。そういった点でありまして、その点を私まずお答えいただきたい。それが第一点です。
 それから第二番目の問題は、それに関連してですが「“新南陽市にもいた”水俣病の類似症状」ということであります。新聞でありますからはっきりいたしませんが、一人は「水俣病とは断定はしないがこれまで自分たちがみてきた水俣病患者と比較すれば、かなり疑いが濃い」といっておられます。それからもう一人の方は「水俣病ではないが、水銀など重金属複合汚染が考えられる」こういうふうなことをいっておられるのです。
 それから医者の話ということで出ておりますけれども、「水俣地区の住民であれば間違いなく水俣病と診断されるが、徳山湾周辺についてはまだ詳しい疫学調査がなされていないので、水俣病と断定することはできないが、疑いはきわめて強い。」こういう発表をしておられるのです。ここから読みますと、水俣病というのはやはり水俣湾周辺であるところの病気であるということが反対解釈として出てくるのですね。徳山であるからできない、「水俣地区の住民であれば間違いなく水俣病と診断される」、こういうことであります。徳山であるからそう診断されない。そうしますと、水俣病というのは、水俣の地域に発生するところの病気は水俣病である、こういうふうな解釈も私は当然出てくるだろうと思うのですね、どうしてもこの文章読んだら。それからもう一つは、先ほど申しました武内教授の重金属複合汚染とは全然違うのが水俣病であるというけれども、一方では重金属複合汚染も考えられる、こういうふうに言っているわけです。水俣病ではない、重金属複合汚染で、いま先ほど話がありました徳山病である。一体その辺は医学的にはどういうふうになっているのか、この点につきまして御説明をできる方があれば直ちに御説明していただきたい。当委員会におきましては、しかし集中的に少し議論をしなければならないというお話でありますから、御答弁ができなければこの次の機会でもけっこうでございますから、その旨を御答弁いただきたい。
○船後政府委員 私も医学の問題につきましてはしろうとでございますが、水俣病というのは、これはメチル水銀の摂取によりまして起こるところの神経系統の病気である、かように承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、武内先生が水俣病はメチル水銀が原因によって起こるとおっしゃったのはそういう趣旨であろうと存じております。なお重金属の複合汚染によってどのような病気が起こるのか、この点につきましては、先ほど私も答弁いたしましたし、また公害保健課長も申し上げましたように、現在定説はございません。そこで、そういう可能性は絶無かということになりますと、これは否定できないわけでございますから、したがいまして、重金属が複合いたしまして、人体にどういう影響を及ぼすかという点につきましては、専門の先生方に御検討いただくということを申し上げたわけでございます。なお、詳しくは公害保健課長から、これは専門家でございますからお答えいたします。
○山本説明員 ただいま局長から趣旨の要点につきましてお答え申し上げたわけでございますけれども、中毒症の中で、特に人為的な環境汚染による中毒症というものを公害病というぐあいに従来から考えておるのが基本的な線だと思いますけれども、したがいまして、水俣病につきましては、水俣湾の魚介が工場の廃液によって汚染をされまして、その汚染をされた魚を多食することによって起こった有機水銀中毒症状ということで、それの症状の特徴というのは、後天的な水俣病についてはかくかくしかじか、先天的なものは胎児性水俣病ということで、こういうような脳性小児麻痺に症状は似ておるということであります。要するに、環境汚染の影響を受けているということと、それによって中毒症独特の症状を持っているということが条件になっております。複合汚染の場合につきましては、単一の物質による中毒症に加えまして、もう一つのBという汚染物質による症状というものが重なるわけでありまして、場合によりましてはその症状がマスキングといいますか、隠蔽されることもあり得るのかもしれませんが、一応常識的には、二つの汚染物質によって起こる典型的な症状の重なり合いという形で起こってくると考えていいんじゃないか、かように思います。
○林(義)委員 何かわかったようなわからないような答弁と言っては語弊がありますけれども、私は、水俣病というものは、まず第一に申し上げたいのは、水俣地区にあるところの病気であるということは正しいのかどうか、これはどうですか。
○山本説明員 水俣病というのは、水俣地域におきましていま申し上げましたような条件があり、環境汚染があるので、そこで起こっている一定の条件をそろえた、症状をそろえた疾病を水俣病、こういうぐあいに思うわけであります。阿賀野川の水俣病につきましても、これは現在行政的には水俣病という名称で扱っております。それは、水俣湾の水俣病と同じ症状であるということでございます。したがいまして、水俣病ということばには医学的なことばとしての一定の疾病、一定の症状をそろえた疾病という概念があるわけでございます。したがいまして、分けていうならば、水俣湾で起こっている水俣病、阿賀野川で起こっている水俣病、こういうぐあいになろうかと思います。症状としてはほぼ一定したものであるというぐあいに思っております。
○林(義)委員 環境によって影響されるところの病気であるということがはっきりしておる。阿賀野川の流域におきましても同じような症状がある。そうですから、やはり環境調査をしなければ、私は水俣病という断定はできないと思うのですね。環境調査なしで疑いがあるとかいうわけには、判断するときにはいかない問題じゃないか。したがって、症状としては似ておるということはいえても――ことばの問題ですよ。ことばの問題として、症状としては水俣病と同じような症状が出ておる、外見症状はそうである。しかしながら、毛髪中の水銀を調べるとか、あるいはそのほかにいろいろな体内に水銀が入っておるということを調べなければ、また同時に、その家族において同じような状況があるということを立証しなければ、いわゆる水俣病というものにならないのか、単にからだを調べただけでなるのか、それはどちらですか。
○船後政府委員 先生のお説のとおりだと思います。この点は、今回の問題の発端になりました武内報告でございますが、この報告におきましてもこのように述べております。「有明地区で、定型的水俣病と全く区別できない患者が五名あり、一応水俣病と同様とみられるものが三名」と述べて、さらに「現在の魚類メチル水銀含有量からの発症は考えにくいが、疫学的調査から有明地区の患者を有機水銀中毒症とみうるとすれば、過去の発症と見るとしても、これは第二の新潟水俣病に次いで、第三の水俣病ということになり、」というふうに述べているわけでございまして、疫学的調査によりまして判断し、その上で断定するというふうに考えております。
○林(義)委員 そういたしますと、いま読まれた中で「みうるとすれば、」という一つの前提がついている、この前提をやらなければ、水俣地区においては確かに環境調査もされておりますから私はできると思いますが、なかなかほかのところはできないと思うのです。そこで私はそういった断定をされるようなものにつきましては、類似症状であるから、これは健康被害救済の適用も受けられない云々ということであります。それは、そういったことが認定できないからほうっておいていいということには一つもならないと私は思うのです。現実に病気でありますから、病気の人はなおしていかなければならない、治療もいろいろ考えていかなければならない、費用も考えていかなければならないだろうと思います。そういった点につきまして、私は環境庁政務次官にひとつお尋ねしたい。この辺は一体どういうふうにしてやられるつもりでありますか。
○船後政府委員 熊本大学の武内報告を受けまして、直ちに疫学調査の必要がありということでございますので、環境調査及び沿岸住民の健康調査を実施する、この調査の結果を見まして医学的に判断をしたい、かように考えております。
○林(義)委員 私は水俣病というものは、医学的にもまだまだ究明しなければならない点がたくさんあると思う。この前もお医者が六人ほど熊本県庁に来ておられました。私が質問いたしましても、この先生はAといい、この先生はノンAと言う。それからこの先生は、私がBという質問をしたのに対してBでないというふうな話です。学者のあの六人の一緒になって研究された方でも、なおかつそれだけの意見の分かれるようなものでありますから、やはり医学的な定説を立てていかなければならない、これだけたいへんな問題になっている病気でありますから、できるだけ医学的な究明を急ぐということが私は何よりも必要なことだろうと思うのであります。この辺につきまして、政務次官三人おられますが、どなたからでもけっこうでございます。御答弁いただきたい。
○山口(敏)政府委員 あくまで純粋な医学的な問題追跡というものは、これはもう当然でございますし、そうしたあくまで医学的な立場からの一つの結論というものを私どもは十分尊重しなければならないというふうに思います。しかし同時に、いま林先生の御指摘のように、専門家の方々でもその判断や見解が分かれるという場面におきましては、私は少なくともこうした時代的必然性あるいは国民的要求というものから考えたときには、前向きな公害という問題に対する行政自身の認識を、やはり国民サイドの立場から、その専門家の意見をどう行政が選択をするか、施策するかということがより大事なことなんではないかというふうに思いますし、そうした意味におきましても、環境庁等とも十分連絡をとりながら、そうした住民の検診の中に、厚生省といたしましても積極的にこれらの住民の方々の検診、さらにまた医学的要請にこたえるというふうな姿勢が大事ではないかというふうに感じておるわけであります。
○林(義)委員 一方の極に患者があります。水俣病患者というか、水銀慢性中毒症患者がある。一方の極に、私は工場を中心とする汚染源があると思うのです。汚染源のほうからいえば、どこかの工場から水銀が出ていることは間違いない。工場からのみではありません。かつて水銀農薬として流したところの水銀の影響もなしとしないというのも私は考えるべきであると思います。その流れ出たところが田畑に入る。田畑から川を伝わって海に入る、あるいは工場の排出口から川を伝わって海に入る。海の中に入ってヘドロになるペドロの中を食べるプランクトンがある。そのプランクトンを食べる小さな魚がある。小さな魚を食べる大きな魚がある。その魚を人間が食べて、からだの中に入って、排出されるものもあるでしょうし、からだの中に残留するものもある。その残留したものが脳神経に対して障害を起こしている、私はこの一連の問題だろうと思うのです。この一連の問題がどういうふうな面におきましてどういうふうな形でやっているかというものを解明していくことが、やはりこの問題の解明の一番大きな問題である。したがって健康診断だけでもいけないし、いろいろなことをやっていかなければならない問題だろうと思うのであります。ところが、そうはいってもなかなかすぐできませんから、現実に起こっているところの事象に対して、私はやらなければならない問題があると思います。
 そこで、先般、先週の金曜日ですか、木曜日ですか、政府が発表されました「水銀等汚染対策推進会議の設置について」というのがありますが、その中に議事要旨という形で「漁民対策」「関連企業対策等」というものが掲げてあります。現地に行きますと、とにかく漁民のたいへんな声だ。これは行かれた方は全部御承知であります。委員長以下全部知っている。たいへんな声です。一日も早く対策を出すことが一番です。私は対策の内容は要りません。対策の内容について聞くわけではない。一日も早く金を出すことが私は必要だと思うのです。一体いつ出せるのか、今週に出せるのか、来週になるのか、この辺ずばりひとつお答えいただきたいと思うのです。
○荒勝政府委員 先般の環境庁主催の会議の結果に基づきまして、この漁民に対する必要のつなぎ資金という対策、緊急に対策資金を設けるということが大体きまりまして、これにつきまして、まず第一番に現在あります農林漁業金融公庫の、五分でございますが、一人五十万円まで融資の道があるというのが一つ。それから第二点といたしまして、天災融資法に準じた方法により融資を行なうという方法が検討されまして、これは三分資金でございます。これは大体事務的にいま固めつつありまして、近日中に閣議といいますか、何らかの形で政府で御意思を決定していただくように取り扱えると思っております。ただ問題なのは、まだ、いろいろと資料を集めておりますが、具体的に県と折衝しておりますが、最終的な意味での資金需要量が十分固まっておりませんので、その辺につきましてなお鋭意、今週中には資金需要量が十分固まるように検討いたしたい、こういうように思います。
○林(義)委員 関連企業対策はどうですか。いまのは漁民対策でしょう。「漁民対策との関連に配慮しつつ、鮮魚商等の経営安定対策として、国民金融公庫資金等の活用を図る。」「低所得の世帯に対しては、生業資金の貸付等、世帯更生資金の活用を図る。」こうなっているわけであります。いつやられるのですか。
○田中(芳)政府委員 鮮魚商あるいは観光業者、こういった方が非常に困っておられることは私ども承知をいたしておるわけであります。ただいまの中小企業庁として、これら業種を所管いたしております関係省庁と話を詰めておりますが、何ぶんにも規模がかなり零細な層にわたりますために実態把握が困難でございます。そこで、かたがた県あるいは国民公庫、中小公庫の支店、支所等を通じまして情勢の把握につとめております。中小企業庁といたしましては、月末をめどに何とか話をまとめたいということで努力をいたしておりますが、なかなか作業は困難をきわめておる現状でございます。
○林(義)委員 「会議は、環境庁長官、政務次官及び事務次官のほか、各省庁の別表に掲げる職にある者をもつて構成するものとする。」という表現になっておる。坂本政務次官お見えでございますが、私は、事態は緊急を要すると思うのです。当面のつなぎ資金であります。やはり政府が勇断をもって取り上げるべきではないかと思います。いまお話がありました、月末である、できれば近々中に君を詰めるという話でありますけれども、やはりタイムリミットをきめてこういった問題は取り組むべきではないかと思います。たとえば、二十三日までには必ずきめるとか――あの二十三日の日に先ほどの暫定基準は出されるわけでしょう。それと並行して出すとか、あるいは二十三日でなくて、そのときまでには必ず現地に渡ると、私は、こういうふうな対策をとることが必要だろうと思うのです。やはりこれは副総理の環境庁長官が主催される会議ですから、政府としても私は強力にひとつ進められたらいいと思う。環境庁の御決意を承りたい。
○坂本政府委員 過ぐる十四日でありましたか、連絡省庁の会議を開きまして、三木長官が議長になりまして、そして、この問題は緊急を要する、まことに重大な影響を及ぼす問題でありますので、もう、いままでの各省庁の権限の争いなどというようなことはとんでもないことであって、かきねを払って、そしてひとつみんなで協力をしてやってもらいたい、しかし、もちはもち屋だから、君のところはこの問題を、君のところはこの問題をと、一々厳重に問題をしぼりまして、そして各省を督励をし、応援を求めたわけでございます。その問題の一端としまして、漁民に対する緊急融資なども天災融資法に準じてやろうということで、いま水産庁と大蔵省が詰めておる段階でありますが、しかし、いまの水産庁長官の話を聞きまして、方針はきまったけれどもまだ事務的に、たとえば資金需要などの点で詰まらないというような話でありますが、資金需要もさることながら、緊急に対処するということが一番やはり漁民に対する奉仕なのでありますから、その点は早急に詰めてもらうように私どもからも要請を強めたいと思っております。
 また、通産省の管轄の鮮魚商などの問題につきましても、大蔵折衝その他で、いままでのペースでやっておればこれはひまはかかると思いまするが、そんなことを言ってはおれない段階でありますので、これも両省にぜひ一日も早く詰めて、漁民の不安解消に役立つように、私どものほうからも強く要請をいたしたいと思っております。
○林(義)委員 次官に申し上げますが、いま需要予測云々という話がありました。私は考え方が逆だと思うのですね。需要がどのくらいあるかということは別にして、限度額二百億円の範囲内においてこれこれの融資をいたしますということを閣議ででもきめればよろしい。それで一人十万円出す、漁業組合には漁業組合長が責任をもって当たる、市や県がその間に入って責任をもって融資をするというような私の考え方であります。二百億にならないかもしれない、実際にやってみたら百五十億で済むかもしれない、また五十億で済むかもしれません。二百億で出しますというところのその対策こそが、いまこそ望まれているのではないか、こう思うのであります。大政務次官でありますから、三人もりっぱな政務次官がそろっておられるのでありますから、ひとつ政務次官から大蔵省のほうにも十分……。その辺の発想の転換こそ私は必要じゃないか、こう思うのです。ひとつぜひこういった点を考慮していただきまして、話をできるだけ早く解決をしたい。いまのところそれしか言いようがない。いついつまでとおっしゃらないのですからしようがありませんが、その点をぜひお願いをしたいと思います。
 それから汚染源の問題であります徳山につきましては、先ほどありましたように徳山曹達である。有明海それから不知火海につきましては、大牟田の三井東圧、日本合成及びチッソ、これしかないのです。ほかに水銀を出しておるところはないわけでありますから、これははっきりしている。
 そこで、私は先ほどこういうふうに申しました。汚染源からずっとこうやって、いまいろいろと融資をされる金につきまして、これは生活困窮であるけれども、やはりいまの関連以外のところの人はかんでないのですね。水俣におきましても、ほかのマグネシアクリンカーをつくっている会社は全然この問題については関係ない。関係あるとすれば三社だ。考え方として、汚染源の究明をいまからいろいろやっていかなければなりません。汚染源の究明をやる、同時に環境調査をやる、先ほど申しました、ずっと一連のシステムがある、そのシステムの中においていまから詰めていかなければなりませんけれども、今回出す金はやはりだれかが負担をしなければならぬ。決して国民の税金で国民全部に負担をさしていいという金ではないと思う。将来はだれかに帰属しなければならない問題です。本来ならば、汚染源がわかっているならば、汚染源者が全部払うべきものである、私はこう考えます。この辺は公害問題の基本問題だ。基本問題ですから、今回の金を出されるにあたりましても、私はその基本原則を絶対にくずしてはならないと思うのです。これについてはどうお考えになりますか。
○坂本政府委員 公害に対してはPPPの原則というものは貫かなければならぬということは申すまでもないことであります。ただ、いまの緊急融資の問題等につきましては、いま環境調査をやって、そして厳重に原因者を追及しよう、かかろうとしておるところでありまして、その間におきましては、この緊急融資も、つなぎ融資でありますが、やむを得ない。しかし普通の不況の融資とは違いまして、これは人道上から見ても血の通うた、漁民との間にやはり何らかの政治行政というものは奉仕すべきものであるということは間違いないのでありまするから、早急にやりたいということを先ほども申し上げたわけでありまして、これはすみやかに原因者を究明をして、PPP原則というものは貫くべきものだと私は思っております。
○林(義)委員 そのときに問題がありますのは、現地で調べますと、日本合成にしても大牟田の三井東圧にいたしましても、戦争中からもいろいろと水銀の排出をしているわけであります。戦後のあの混乱の時代におきましてもいろいろと水銀の排出をしておるわけであります。その当時におきましては、病気は具体的にあったかもしれませんけれども、少なくともいまのような医学的な体系はできておらない、また医学的な究明もされない。おそらく何人かの方々は、水俣の風土病であるという名のもとになくなられた方もたくさんおられるだろうと私は思うのであります。その辺をどう追及していくかというのは、これはやはりお互い政治家が考えなければならない大問題であります。BHCの問題にいたしましてもしかりであります。DDTの問題にしてもしかりであります。これらは私も記憶がありますけれども、戦後に東京を歩いておりましたら、DDTの白い粉を進駐軍に吹っかけられたことがある。非常にきたないかっこうをして歩いていたから、何だということで、シラミがわいているんじゃないかということで吹っかけられたことがある。かつては非常に有用な薬であった。サリドマイドにしてもかつては非常に有用な薬だということで厚生省当局はお認めになったのだろうと思うのであります。学問が進歩することによってその考え方が変わってきたということであります。私は、その責任をだれがとるかという問題は、これは考えなければいけない問題だと思うのであります。これは新しい問題、ほんとうにお互いが、政治家が与野党を越えて考えていかなければならない問題だと私は思うのであります。
 と申しますのは、昨年の六月に当委員会におきまして、水質汚濁防止法及び大気汚染防止法の改正をいたしました。そのときにどこまで原因をさかのぼるかという議論をしたことがございます。そのときの附則の中に規定がございまして、この法律は公布の日から施行する、施行の日以前に排出されたものについては、それによって、(島本委員「そうじゃないよ、表現違うよ」と呼ぶ)表現は、施行の日以前に排出されたものによって、それが現在以後において発生した病気であるということを事業者のほうで証明した場合にはこの企業の責任とする、こういうふうな、私いま条文持っていませんからちょっとはっきりしませんけれども、そういった形で、きわめて古い時代のものにつきましては適用されないような形になっている。
 そのときに私は議論いたしましたのを覚えておりますけれども、カドミウムのような問題である、あるいは銅のような問題である、銅というのは日本も天照大神の時代からあったのでありますけれども、一体その辺の公害をどうするのだというような議論も法律論としてはあった。そこをやはり科学の発展、医学の発展とバランスをして考えていかなければならない問題でありますけれども、その科学が発達する前の問題というものをどうつかまえていくかということ、これはやはり考えていかなければならない問題だろうと思うのであります。その当時その当時におきましてはきわめて有用なものである、また、その当時においてはきわめて問題がないとされた物質であったというにもかかわらず変わったというもの、相当に危ういというようなものと、私は物質によってもいろいろあるだろうと思うのであります。そういったものについて基本的にどういった形で分担をしていくか、これまで私はPPP原則といわれておりますけれども、なかなか及んでいないのだろうと思うのであります。それをやはりどうしてやっていくか。現在いろいろ使われています薬がたくさんあります。この薬におきましても、これから医学が進歩していけば、あるいは場合によってきわめて人体に対して有害であったということが証明されないとも限らないのであります。こういったような問題についてやっていかなければならない。いままでは宇宙は無限である、お互いの生活のものは有限であるという一つの前提のもとにおいて進められた。いまや地球は宇宙船である、一つの中の集まりであるから、これをどう使っていくかということがお互いの問題、まさしく発想の転換をしていかなければならない。基本的な問題として、政府の有能な三政務次官がおられますから、この辺につきましての御見解をひとつ承りたいと思います。
○塩川政府委員 おっしゃるように、過去のものについての追及ということにつきましては明確なものが出ておりません。しかし、こういうようなものが社会問題として起こってまいりましょうから、社会問題に対する政治の姿勢として、やはり解決をさぐっていかなければならぬと思います。したがって、新しいものにつきましては、純然たる公害問題として解決していかなければならぬ、こう思うのであります。
 そこで、先ほど林さんからの御質問の中にございましたように、これからの科学の発展ということもございまして、まさにそのように科学が新しい公害をつくっていくということも考えられる。と同時に、ここで考えなければならぬのは、やはり人間の欲望というものをどの程度満足させるかということの問題もあると思うのです。したがって、科学技術の発達ということと、われわれの特に消費生活におきますところの欲望の充足というものをどの程度に押えるべきかということも、やはり公害問題の大きい問題だろうと思います。そういう点を見ます場合に、人間というものはどの程度の生活ということを考えていくべきかということ、これがやはり大前提になって、公害問題というものも考えられるのではないかと思ったりいたします。
○山口(敏)政府委員 ただいまの林先生の各面にわたる御意見、また政治的な理念は、私もすべて同感でございます。特に変革期にあるわが日本の国民的政治に対する要求、要望というものを、政府も国会も地方議会も含めまして、どう受けとめ、これに対決をしていくかというところに尽きると私は思うのです。その中に、行政の立場におけるそれぞれの発想の転換というものを強力にしていかなければならない、これは私は、やはり時代の発展の中で、人口問題あるいは食糧問題の議論の中におきましても、人類はネズミ算的にふえる、しかし食糧は算術級数的にしかふえない、やがて将来にわたって非常に食糧難に見舞われるであろうというような議論も、百年も百五十年も前から行なわれておるわけでありますけれども、その中にも、人類の進歩とくふうによって、そうした危機を乗り越えてきたわけでございます。しかし、今日私どもが問われておる公害の問題につきましては、もう歴然とそうした科学、文明の発展の中で、環境破壊あるいは公害、汚水、汚染というような中で、海のさち山のさちを含めて、私どもが住む地球がたいへん侵食されておるという実感は、これは人口問題と食糧問題以上にたいへん深刻、切実な問題として、われわれ立ち向かっていかなければならない。こういう意味から、この仕事は環境庁である、この仕事は厚生省、この仕事は通産省だというようななわ張り的な感覚ではなくて、むしろお互いの領分を乗り越えてでも、でき得る問題に対して積極的に取り組んでいかなければならない、こうした決意とお願いをいたしておるわけでございます。
○坂本政府委員 過去の公害問題、これと将来の公害問題その間にPPPの原則がいかに適用さるべきであるかというお尋ねでございました。しかしそれは、過去の段階でDDTのようにいい面もあれば、いまから考えればこわい点もあったのだ、そのときはわからなかったでしょう。しかし、いまはわかってきたら直ちにやめたわけでありましょうが、水銀を一つ例にとれば、水銀は、これは工場で使う分には非常にいいでしょうけれども、それを流したら、これはあぶないにきまっているわけでありまして、そういうような水銀の問題とはちょっと私はニュアンスが違う、こういうふうに思っておるわけなんです。しかし、いまも山口次官の言いましたように、日本の成長というものはやはりこれからも続いていくだろうと思う。いままでのような高度成長は続かぬにしても、安定的な成長は続いていくべきであろうし、また、この成長を通じて、いままで力の及ばなかったような生活水準の向上、福祉の充実、生活環境の整備あるいは公害の防除、こういうような点で、これからやはり相当な経済力を持つようになってもらわなければならぬわけであります。また、政治の方向もその方向だろうと私どもは思っております。これからますます経済力は充実していくわけでありますが、そのときに、やはりPPPというものの原則をしっかり踏まえて、過去には気のつかなかったこともありましょう。しかし、成長の陰には必ず生産性の向上がある、生産性の裏には必ず技術の革新が伴っていくわけでありますから、この技術革新の限りを尽くしながら、その中でやはりPPPの原則を貫くという姿勢というものがないとやはりあやまちを繰り返しかねないという意味から、PPPの原則というものは非常に尊重されるべきものである、こう私は感じておるわけであります。
○佐野委員長 島本虎三君。
○島本委員 今回、われわれも福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、それに一部は鹿児島県にわたってまで調査に入ったわけであります。私どもとしては、党のほうからも、この第三水俣が発生した翌日、五月二十三日と二十四日に調査に入っているのであります。そして今回、六月十六日から十七、十八日と三日間、衆議院としてこの調査を行なったわけであります。私は、この二回の調査を通じて、いままでと同じような考えや、同じようなやり方ではとうていこの問題の解決にはならない。三木環境庁長官も副総理という資格でこの衝にあたることになったのは、いわば今回を機会にして、これを全部解決させなければならないという点の配慮であるかもしれない、こうさえ思ったわけであります。そういうような見地からして、最後の日には、四千人もの漁民の、それも主婦をまじえた陳情さえ授けました。こういうような実態の中で、事態は容易ではございませんし、並みたいていのものではないということをわれわれもよく肝に銘じて帰ってまいりました。
 いまいろいろ質問もございましたが、私もこの中で長官に基本的な問題として一、二確かめておきたい、こういうふうに思います。と申しますのは、今回この対策を実施するのに、もうすでに長官は私どもの前で説明をしてくださいましたから、これは十分わかっております。この緊急措置を行なうことになったわけでありまして、十五日でしたか、われわれ委員会でも説明を受けたのであります。きょう資料も受けました。はたしてこれをやるのに、いままでと違った体制でないと、長官、これはやっていけません。このきめられた緊急対策はほんとうにやるのですね。また、この中に少しもお互いの企業セクトが入っておらない、このことだけははっきり確認しておきたい、こういうように思うわけでありますが、これも長官、私がいま言ったような点で理解しておいてよろしゅうございますか。
○三木国務大臣 やるという決意のもとにきめたものでございます。
○島本委員 やるという決意のもとにきめたというこの対策です。そうならば、通産省もこれに対して、各企業のほうへはっきりこれを申し入れて、少なくともこれに対して協力しないような、こういうような態度はあり得ない、こういうように思うのですが、この点は長官が言ったとおりですね。
○塩川政府委員 同様でございます。
○島本委員 私どもは、ここにほんとうに残念な例を長官に申し上げなければならないのです。私どもが調査に入ったのは、昭和四十八年六月十六日、十七日、十八日の三日間なんです。そうしてその以前に当委員会で、七名にもわたるところの学者を招致して、そして水銀に対していろいろな意見を聴取したわけであります。その聴取した一人、東京工大助手でありますところの加藤邦興さん、日本科学者会議全国常任幹事会の公害研究委員会の担当をしておられる人であります。当委員会にも来て、われわれの聴聞に応じてくれた人です。この方が、六月十五日に、これまた三井東圧に正式に許可を得て、中へ調査に入らしてもらっているのです。そしてほんとうに調べたい、こういうようなところまで十分本人は調べてきたかったのです。ところが、工場内に入るのに、事務系の人を説明につけて、そして工学部卒業生または技術者、こういうような者に対しては説明しない個所がある。そしてせっかく中へ入っても、これ以上調査はしないでくれと拒否する。こういう態度をいま三井東圧自体がとっているんです。どうしてこんな態度をとるんですか。現に私どもはその次の日に調査に入っているんです。これはうそではありません。本人と私は帰りの飛行機が一緒だったのです。涙を流さんばかりに悲憤慷慨しているのです。こういうな態度でほんとうに第三水俣の撲滅ができますかと悲憤慷慨しているのです。長官、こういうような企業の態度ですよ。それがいまなおかつ、漁民にいろいろ要求をされたり、いろいろ科学的な対策にもこれをもって当たる、こういうように言っている会社が、もう科学者の調査を拒否しているじゃありませんか。こういうことが許されていいんですか。各省間においてこれは全部セクトを払ってやると言いながらも、依然として通産行政の中にこういうようなことがあるということは、私は日本の恥だと思うのです。こんな状態で――委員長も涙ながらに皆さんにもういろいろあいさつしたこともございました。私、見ていました。企業の態度はこれでいいんですか。こんな態度でほんとうに解決になりますか、長官。
○三木国務大臣 島本委員の御指摘になる事実は、私はよく存じませんが、かりにもそういうことがあってはならぬ。それはなぜかといえば、企業、ことに化学工業のような場合は、安全性の確認ということについては、もう注意し過ぎるぐらい注意してもなお足りないぐらいだと思いますから、そういう技術者あるいは専門家が調べたいというような場合には、できるだけ便宜をはかるべきであって、そういうことには営業の秘密というようなものもないですからね。そういうことで、営業の秘密があっても、安全の確認というものはもっと優先する問題だと私は思いますね。
○島本委員 同感なんです。安全の確認なしに今後こういうような問題の解決、こういうようなものにならないことははっきりしています。この場に来てわれわれの聴聞に応じて、そしてその実体を明らかにし、本人も進んでまたその中に調査に行ったら、そのようにして拒否されたのです。通産省、いかに言っても、十五日の段階でまだあるという東洋高圧です。これで具体的な指導が、いま出された緊急十一項目にわたってのこの中ではっきりやれるのですか。
○塩川政府委員 私は、その調査に行かれた事実等につきましては、詳細存じておりませんが、しかし、そこで協力を拒否したということは、私はどうもふに落ちないのであります。そこで、協力を拒否したのか、あるいはまた、調査に行かれた方と会社との間で十分な話し合いがついておらなかったのかどうかというような点につきましては、私ども会社のほうに、どういう事実であったかということを問い合わせてみます。ついては、やはりそこに会社とその調査された方との間の手続の問題等もあったんではなかろうかといま思います。と申しますのは、公正な第三者調査機関として、公的な機関として調査されたのであるかどうかということにつきましても、私は存じておりません。そこで、第三者機関として調査されるような場合に、いやしくもそれを拒否するというようなことがあったということになりましたら、これはもう私たちとしても十分に今後そういうようなことのないようにさせなければならぬ、このように思っております。
○島本委員 これは正規の手続です。そして正規の案内人がつきました。それに答えてもらえなかったのは、技術にたんのうな人を案内人としてつけてもらいたかったし、本人はそれを希望したそうですが、事務系の人が案内についたそうです。したがって、いろいろ質問いたしましても、私は存じません、存じませんばかりだそうです。そうしていよいよこの企業内部へ入って、もう少しその中を見せていただきたいと言ったら、これより先は技術屋さんはお断りしております、大学の工科にいらっしゃる方にはここからは遠慮してもらっております、私はわかりません、遠慮をお願いします、私は事務系です、こういうふうにして理不尽にも調査を拒否しているのです。本人からの言です。こういうようなばかなことがあって、これで緊急対策なんか言っても、これはまだまだ姿勢がしっかりしておりません。したがって、この事実を至急調査されて、そうして曲がりなりにもこういうようなことがあったとするならば、まさに企業は全然まだまだ公害に対する態度、考え方は徹底しておりませんから、この点、厳重に注意してやるべきだと思います。とりあえず私は、それを調査して至急報告してもらいたい、これを要請しておきたいと思います。よろしゅうございますか。
○塩川政府委員 会社側に至急連絡して、私の手で一回調査してみます。
○島本委員 少なくともこの国会の議事録はまあ公開ということになっておりますが、行政の資料は非公開、これがまだ原則になっておるようであります。おそらくはもう、すでにこういうような段階ではなしに、行政の資料もいまでは全部公開してもいいのじゃなかろうか。ましてこの点では、公害企業でも、こういうようなものはどんどんと発表してもいい段階ではなかろうかと思います。いまこそこの情報の公開、これをすべき段階だ、こう思うのです。こうするのでなければ、すべて企業の秘密ということで、これを拒否したり、また内緒で排出したりする、こういうようなことは、もうすでにいまの企業の中では許されない、そんなことがあってはならないのです。この情報公開、こういうようなことに対して、やはりこれから一つのきめ手になるんじゃないかと思いますが、長官、このお考えはいかがですか。
○三木国務大臣 これからの企業というものは、やはり安定性の確認といいますか、自分の生産工程を通じてそれが人間の生命や健康に害を与えないということは、すべてに優先をすることでもしそういうことになれば、いま全国の実例から見ても企業の存立の基盤というものがゆるがされるわけですからね。だから、企業自身としてもそういう点では従来とは考え方というものを、私は、まだ中には例外もあるかもしらぬけれども、少なくとも近代の企業の経営者というものは、いままでと態度を改めなければこれからやっていけぬ時代だと思いますね。これからのやはり投資をするにしても必ず公害の防止ということを生産の設備と同じくらいの、金額はむろん違いますけれども、ウエートを持ってやらなければ、これをやがて企業に対しての国民の理解、支持というものは得られなくなってくる。反企業のような風潮が国の中に浸透していくことは日本のためにもよくない。だからそれにこたえるためにも企業は生産をして社会的役割りを果たすと同時に、一方において公害を防除して、そのことが国民の生活に害を与えないということに対してきびしく責任を持つような体制を確立することがこれからの企業経営者の私は大きな責任だと思います。そういうことで、これからはよほど従来と考え方を改めなければもうこれからはやっていけないんだ、そういうことだと思います。
○島本委員 さらに長官、この十一項目だけは緊急にこれを実施すべきである。このことだけは私もそのとおりと思います。
 そこで第三の条項の中にある水銀排出の規制です。これは四十九年九月までにクローズドシステムを完了させる。これは最もけっこうです。ソーダ工場など、こういうようなところに対しては五十年九月を目途にこれは隔膜法に切りかえさせたい、切りかえさせる、こういうようなことだと思うのです。そうですね。
○三木国務大臣 できればクローズドシステムで水銀を外へ出さない、ここで歯どめをしたわけです。それでももっと水銀のこれだけの汚染というものが起こっておるわけですから、水銀を使わないようなシステムにかえるためには、いま開発されておる隔膜法によって、そうして水銀を使わないというようなことのほうが一番完全ですからね。できれば一年後には水銀を外へ出さない、また二年後にはもう水銀を使わない生産工程というものは、私の会議をしたときには何とかそこへ持っていけぬかということで会議の運営に当たったのでありますが、なかなかやはり隔膜法に二年後に全部切りかえるということはどうしてもできない、五割くらいのものしかできない。しかし、五割とこう言わないでやはりできるだけこれを切りかえる、もっと五割以上切りかえるような、でき得べくんば完全に切りかえることが理想でありますが、そこまでできないにしても、できるだけ努力をしてもらいたいということで極力という、その中には、ほかの項目には極力ということばは使ってないのですよ。それだけに使ったわけです。私ども極力などというのはいつもおざなりの文句ですから、これだけの事態を前にしてこれだけはやるという約束のような決定にしたがったのですが、それはできるだけ努力をするということで、極力という文字を入れてもらいたいという強い要請がありまして入れたのでありますが、これは入っておっても、できるだけやはり切りかえることになれば、切りかえができれば、それが一番好ましいことですから。ことに隔膜法に対しても日本の技術開発も相当やはり進んでいるんですね。技術開発をやっておりますから、いま通産省が考えるような速度よりもこの問題はやはり早い技術開発の結果も出てくる場合も私はあると思いますので、いまは極力と入っておりまするが、でき得べくんば、できるだけほとんど大部分の生産工程がそういうふうな水銀を使わないような、こういう生産工程にすることを強く期待をいたしておる次第でございます。
○島本委員 私はそれで長官が進んでつけたということは初めてわかりましたが、私はもういまこういうような事態でありますから、水銀関係についてはクローズドシステムを採用するのですから、一切今後は流してはならないのだ。したがって、五十年の九月を目途にして隔膜法へ全部切りかえさせる。これでいいのじゃないか、極力というから、努力目標になってしまう。努力目標になるから、できないから、やむを得ないのだということになって、また逃げられちまう。おそらくこれは長官の善意であるのか、またはそのほかのこれはもう責任回避のための字句なのか、ここだけに極力というようなことばが使ってあるわけです。これはむしろ義務規定にして義務的に切りかえなければならないのだ、当然技術的な進歩もあるでしょうから、それくらい、長官、やってもよかったのじゃなかろうか、こう思うのであります。しかしこの点は「五十年九月を目途に極力、隔膜法への転換を図る。」のだ、この極力ということはこれは私の考えた意味ではないようでありますが、しかし極力やったけれども、だめだった、こういうようなことがないように、これは指導すべきであります。これは両刃のやいばになる極力ですから、もうこれは極力気をつけたほうがよろしい、こういうように思います。長官、これはつけたつけないでちょっと違うニュアンスが感じられますので、この点つけたことの意味がむしろ絶対それをやらせるのだに近いのだ、こういうような意味に私は解釈しなければならないと思いますが、極力やったが、できなかったからやむを得ないのだ、こういうような逃避的な意味に使われないように指導すべきだと思います。それでなければむしろ抜いちまったほうがいいではないかと思うのです。この際ですから、これをはっきりしておきましょう。
○三木国務大臣 極力島本委員の御趣旨に沿うように今後指導いたします。
○島本委員 それから先ほどもいろいろ質問に出たのでありまするけれども、これはどういうことですか、原因者の追求でありますが、いままでのいろいろな調査は継続されて行なわれていました。もうすでにわかっている点もあろうかと思います。環境調査にあわして原因者追及をこれから行なうのですか。もう海底なんか全部調べてみたら、わかっているはずじゃありませんか。これからまた行なうという、これはまさに時期を延ばすための文句にこれは逆用されるおそれがないかどうか。もうすでに疫学的にはかればわかる。まして海底を調べてみたならば、そこでもはっきりわかる。もうわかっているのに、これからまた環境調査をして、あわせて原因者の追及を行なう。これでいいのでしょうか。これでは行政の怠慢ということにまた言われるおそれがないか。もうわかっているのでしょう。これから別なところをやるならいい、九州の有明湾でも、それから八代湾でももうすでにわかっているでしょう。しかるにかかわらず、これから環境調査をやる、それにあわせて原因者の追及も行なう。もうすでに二けたの年数を経ているのですから、こういう段階じゃないと思うのです。技術者に聞き、科学者に聞いたら、もうはっきりそれはわかっているはずです。日本全国にこれを実施するからという新しいケースならいざ知ざず、瀬戸内海沿岸、それからコンビナート地帯、それとあわせていまの有明、八代、この各湾、こういうようなところではもうすでにわかっているのです。これについてもこれから調査して、これから原因の追及を行なう、こういうような意図でございますか。
○三木国務大臣 これは原因者は、政府が公に態度を明らかにする必要があるわけでございます。この原因者はこういう企業である。その限りにおいては補償の問題も伴いますので、そういうことで、たとえば水俣病の患者に起こるような症状が起こっておるということですが、これはやはり患者に対しても精密検査をする必要があります。それからまた底質の調査もして、政府が、企業の責任、原因者はだれであるということを政府の見解を明らかにするということは、今後起こるべき一切の責任を負わすわけでありますから、したがって、いつまでも原因者の究明をおくらすという考えはないのです。できるだけ早くすることが必要でありますけれども、そのことは単に常識というわけにはいかない。その原因というものを科学的に究明をして、できるだけ早く原因者を明らかにすることが問題を解決するために好ましいとは思いますけれども、大体いま考えてみればわかっておるじゃないかということで、原因者を政府の公式な見解として述べるためには、もう少しいろいろやる問題がある。それは患者とおぼしき人のやはり健康の調査あるいはまた環境といいますか、底質などの調査、これをやる必要があるというので――島本委員、これは逃げるために言っているのじゃないのですよ。われわれも早くやりたいのです。漁業者なんかでも原因者が早くわかれば非常に問題の解決には資するわけでありますが、そういうことがありますので、この問題はそういう手続を経て政府の見解を明らかにしたい。これはたいへんな補償問題が伴うわけですからね。そういうことでございます。
○島本委員 これは事務的な問題になりますが、新たにこれから第四次、第五次、第六次とこういうのが発生してくる可能性は当然われわれも考えておりますが、新しい個所に対して新たに環境の調査を行ない。それとあわせて原因者の追及を行なう、こういうのならば話がすっきりしておる。いままでもうすでに裁判で判決が出た。そして行政的にも公害等調整委員会、この結論が出ている。それと同じような傾向でその辺にもう出ている。おそらく学者が底質を調査すればすぐわかる、こういうふうに言われておる。あの日本合成なり三井東圧なり、こういうようなものがはっきり原因者であるというような調査がまだ事務的にできておらないのですか。
○岡安政府委員 その原因者の追及の問題は、形式的な問題から申し上げますと、この会議は水銀汚染のみならず、PCBその他の有害物質につきまして、原因者の追及を環境調査とあわせまして行なうということを書いてございます。したがいまして、原因者の確定する段階におきましては、すでに相当程度資料があるものと、これから資料を収集しなければならないものといろいろ順序はあろうと思います。しかしながら、政府といたしましてはっきりと確定するというためには、現在までにございます資料のみでは十分ではないというふうに考えております。そこで、早急に環境調査並びに健康調査を行ないまして捕捉をいたしまして、できるだけ早く確定をいたしたい、かような趣旨でございます。
○島本委員 もうすでにわかっているのもあわしてそういう態度だとすると、私は納得できません。環境調査にあわして原因者の追及をできるだけ早く行なう。これには年限がありません。あしたでもそうなるのです。大体何年をめどにしてこれを終わらせるつもりでありますか。これは補償の問題も関係するから重要なんです。このめどは何年に置いていますか。
○岡安政府委員 少なくとも、私どもは年をもって数えるようなそういう長年月を意図しておりません。ただ病気の関係におきましては、健康調査のいかんによりましては多少月日はかかると思いますけれども、それ以外の原因追及につきましては、環境調査、これも今月中には着手いたしたいと思っております。それを早急に完予いたしまして、いたしますれば相当早いときに結論は出る、出さなければならない、かように考えております。
○島本委員 これはもうすでに本年度じゃなくて本年中に完成する、こういうふうに理解しておきたいと思いますが、これでよろしゅうございますか。
○岡安政府委員 環境調査はそこにもございますとおり、今月中に着手をいたしたいと思いますし、その完了は今年中にこれは完了いたしたいと思っております。それから健康調査のほうは来月からということになりますが、これにつきましては、今年じゅうに完了というわけにはまいらないというように考えておりまして、これは今年度中に、あるいは来年度早々までかかるかと思います。したがいまして、環境調査でわかる部分につきましては、きわめて近い将来原因者の確定が行なわれるというふうに私どもは考えております。
○島本委員 ですから、もうすでにそういうようなもののでき上がっている個所もあるし、もうわかり切っている個所もあるのです。ところが、いまのようにしてずっとやっていったら――年と数えない、月だ、こう言うから、それならばあわせてやる原因者の追及、これもことしじゅうかと言ったら、ことしまた越える、こういうふうに理解されては困るのです。月で数え、年として数えないなら、ことしじゅうに全部原因者の追及も終わる、これでないと何のための緊急対策になりますかね。
○岡安政府委員 ちょっと私のことばが足りなかったかと思いますけれども、健康調査によりまして病気その他の原因を確定するものにつきましては、これは多少月日がかかるということを申し上げましたけれども、それ以外のものにつきましては、私どもは今年じゅうに原因者を確定いたすという目標で作業をしております。
○島本委員 今年中でも十二月までありますが、十二月までゆっくりなんてそんなことは許されませんから、まさに限度はそこにあっても、もっと早く一、二カ月の間にこれはやるようにすべきであります。この点は長官、私はくどいけれども、いままで私も公害と取っ組んで十年間です。やはりいつでもこういうような態度、マンマンデーの態度によってこういう公害が発生しているのです。したがって、答弁の一つ一つで質問もこういうようにくどくなるのです。いまも月によって、年ではないと言った。十二月までにできると言った。十二月までにできるから十二月まででいいんだじゃないんです。もうすでに一カ月でも二カ月でも、この辺でもうやってしまわないといけないと思うのです、七月でも八月でも。これはあと一、二カ月後までにやるべきだ、こういうように思います。長官のなみなみならない決意を伺っておきます。
○三木国務大臣 私の決意からいえば早いほどいいと思うのです。これは漁業者でもやはりいろいろな問題が起こりますからね。そういう場合に、患者、漁業者の補償問題というものは、原因者が負担の原則というものをわれわれはまげないと言っているのですから、原因者が早く究明されないとこの問題は片づきませんから。しかし環境調査のほうは、これは初めてやるというわけでもないわけで、いろいろな下地がありますから、相当スピードアップできるのですが、健康調査の面を何かもう少し速度を速めるようなくふうをいたしまして、そうしてなるべく原因者の究明というものを、島本委員の言われるように一、二カ月ということにはまいらぬとは思いますが、しかし、少なくとも今年年度内には、暦年における今年度内においてやるくらいのスピードでなければ……(島本委員「年度じゃなく年だ」と呼ぶ)年というのは、暦年ですからね、年度内じゃありませんよ、暦年として今年度中にはそこまで原因者の究明ができるくらいの速度でやらなければならぬと考えております。
○島本委員 長官、きのう私もちょっと北海道の関係新聞を見て驚いたことがひとつあるのです。私どもの調査は、佐賀県それから長崎県、それにも及びました。一部は鹿児島まで行ってまいりました。この佐賀、長崎の県民の皆さんは、自分の県ではそういうような原因物質を排出するような企業はまだないし、将来もないはずである、しかしながら、やはり隣の県の排出物によって、魚価は下がるどころじゃない、もうすでに生業が成り立たなくなってしまっているのだ、これは佐賀や長崎県の人たちの叫びです。そうかと思っておりましたら、きのう札幌で中央市場ではPCB三PPM以上出した水域、いま言われた調査した八水域、ここから来た漁は一切これはもうせりにのせない、こういうような決定をしたそうです。片や近県はそういうように困っている、これかと思っていたら、もうすでに北海道までこれがいって、札幌の中央市場、あれは北海道の中央市場みたいなものですが、そこでさえもこれらの点は扱わない、こういうような点ははっきりしているのであります。そうすると、この水域のものは一応は要注意ということになって、われわれも熟知しておりますが、関係のない長崎や佐賀やこういうようなところの漁民、これまた一そう困ることになるわけでございます。私は、水産庁としても、通産省としても、こういうような対策はもうすでにはっきり立っているものだと思っておりますが、この点についてはどのような対策をお持ちでしょうか。前の人とダブるかもしれませんが、この点を私はあえて大事だと思いますから聞くのです。
○荒勝政府委員 先般私のほうでPCBに関しまして水域を発表したのでございますが、少し長くなるかもわかりませんが、その発表するに際しまして、その件につきましては非常に気を使いまして、単に従来のように何県の魚というふうな表現をいたしませんで、場所によりましては具体的な地先を限定し、たとえば何々川の沖合い五百メートルとか、あるいは何々川の天然ウナギというふうに、地区と魚種を限定いたしまして、三PPMをこえておりますものにつきましてのみ発表いたしたのでありますが、やはり多少いろいろな報道の間に、その全水域とかあるいは全魚種が汚染されているというふうに消費者の方が判断されたのではなかろうかと思いますが、非常に不安感を呼びまして、当該県の全水域にわたるような汚染があるような形になりまして、非常に漁民の方々に不当に御迷惑をかけたのではなかろうか、こういうふうに見ておる次第であります。
 したがいまして、まず近く厚生省のほうで、水銀と並びましてあるいはPCBにつきましても、安全基準といいますか、一つの新しい基準を再整理されるやに聞いておりますので、それとともに、私どもといたしましては、もう一度その辺につきましては再確認の上、ほかの魚はいいんだという表現をとって、もう一度よく各県に連絡いたしまして、消費者の不安とそれから漁民の方の実質的な被害等を一日も早く安全になるように努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○島本委員 一日も早くというのは、具体的な方法がないと、これはもう単なるから念仏に終わるわけです。したがって私どもはこの点は、もうすでに具体的な陳情を受けてきております。この有明海産の魚介類の市場取引価格が暴落している、一部の貝類については取引が停止されている、これは事実です。それと同時に、一部に地元仲買いの買いたたき、こういうような傾向も見られている、これも事実であります。それと同時に、魚介類の汚染に不安を持って出漁を控えている漁師の方がいまおることは、皆さんも御存じのとおりなんです。したがって、魚海草類の食品としての安全基準の早期設定を頼む、これも具体的な要請、どこからでもこれは出ているのです。したがって、これを早くやるというような点、それはわかります。長官のおっしゃるのはよくわかります。
 それと同時に、水俣病発生によって魚介類の値下がり、またはこれをとらないために起こるところの不安や、どうしても生活苦でありますから、その救済措置、こういうようなものも具体的につくってくれ、こういうような要請もあるわけです。
 それと同時に、水銀等による汚染水域における漁獲禁止、これに対する正当な補償をするような立法化をしてもらいたい、この要請もあるのであります。きわめて具体的なんです。ですから、こういうような問題に対して、どういう手を打つんだということが、もうすでに困っている漁民に対するこれは答えになるわけです。ですけれども、これから早く安全基準を設定するんだ、それに対する若干の融資はするんだ、これは対策にならないんです。これに対して水産庁、通産省、やはり早く対策をもってこたえてやらぬとだめなんです。いま言ったような三、四点にわたる漁民の切々たる要請でありますが、これに対してどういうようにお考えですか。
○荒勝政府委員 この水俣地区に関しましては、水銀の汚染が非常にひどいように、私たちのほうもデータを寄せてもらっておりますし、厚生省のほうで新基準をつくられるまで、あそこの水俣のみならず、有明海も含む一連の地区についての安全なことについての断定は、いまの段階において私からはまだ差し控えさせていただきたい、こう思っております。そしてその結果、漁民の方が非常に御迷惑になるというようなこともありまして、これにつきましては、この間の環境庁長官のところの会議の席で、早急につなぎ制度を検討するという方針が決定されておりまして、それに基づきまして、私のほうと財務当局も含めまして検討いたしている最中でございますが、一応さしあたりの問題としまして、天災融資法という法律があるわけでございますが、直ちにこの公害にこれをつけるわけにいかないこともありまして、天災融資法に準じた措置によりましても低利資金を貸し出すという方向で、一様に作業を急いでおりまして、いまの段階におきましては、たぶんでございますが、三分資金ということで早急につなぎ資金が融資できるように努力させていただきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
○島本委員 この中には鮮魚商も入っているのですが、こういうような方面では通産省も十分考えてやらないといけないんじゃないかと思うんです。通産省のほうもこの対策は立っておりますか。
○塩川政府委員 通産省のほうでも中小企業庁を窓口にいたしまして、緊急融資の対策を早急に講ずるように目下準備をいたしております。
 先ほど来お話しございましたように、できるだけ早くというその時期を示せということでございますが、先ほど林委員からの御質問がございましたように、とりあえず貸し出しを急ぐということが大事な問題だと思います。そこで一刻も早くそういう体制をとるように指令はいたしておるのでございますが、実情把握し次第、積極的に貸し出しの手続をとらしていきたい、このように思っております。
○島本委員 つなぎ融資であるとか、それからいろいろ漁民に対しては漁業振興策を至急に検討するといわれている。また天災融資並みにこれは措置してやるのだ、つなぎ融資を。それと同時に、農林漁業金融公庫の漁業経営資金でこれを措置するのであるとか、また、県の緊急措置については援助方法を講ずるとか、こういうようなのもすでに緊急対策に出ているのです。これでは漁民に対する救済にならないということなんです。これは先ほど小澤委員ですかも、はっきりここで質問し、皆さんから答弁あったとおりなんです。借りたものは返済しなければならないし、返済できるようなこういうような状態ではないということなんです。したがって、これは先ほどの答弁にあったように、つなぎ融資として出しておいても、今後やはり原因企業がはっきりしたならば、企業にこれを支払わせるようにするのだ、このことですね。このことだとすると、当然生業補償も今後は考えるのだ、こういうような答弁があったから、これがまさに生きてこなければならないということなんです。つなぎ融資であるとか、そこでばったりただ貸してやればいいんだというような考えでは、これはいまの場合には、この困窮している漁民に対する対策にはならないわけです。したがってここで生業補償も十分考えるのだ、こういうようなことでなければならないはずなんです。先ほどそういうような答弁があった。こうなんですが、この点は私もはっきり確認しておきたいのですが、政務次官どうですか。
○塩川政府委員 その件につきましては、先ほど小澤先生なりあるいは林先生から御質問がございまして、島本先生重ねての御質問でございますが、お答えいたしましたように医療補償あるいは生業補償、そういう面についての補償を実施せしめるということでございまして、つなぎ融資といっておりますのは、目下検討されております被害者救済制度というものが確立いたしましたならば、それが代替すべきものでございますが、その制度がまだ十分に発足いたしておりませんので、とりあえずはつなぎ融資ということが必要になってくるのでございまして、ついては、そのつなぎ融資が将来において補償に代替し得べきものであるということでございますので、御了承願いたいと思います。
○島本委員 通産省としては全く私は感心した答弁です。いままでそういうようなのが出なかったのでありますが、私はきょうはあなたに心から敬意を表します。今後どしどしやってもらいたい。このことを心から要請しておきます。りっぱです。
 それと同時に、きょう私は新聞を見て、兵庫県に一つの例があるのです。その例はあとにしてもいいわけでありますけれども、これは長官、いまもいろいろありましたけれども、この損害賠償保障法案は十五日の閣議でもう出してありますね。いまのようにしてつなぎ融資そのものをしたり、そのほかにいろいろ漁業振興対策、至急にこれを確立させてやったり、農林中金の融資や信金等の資金をもって低利、長期の融資をしてやるなり、県の応急措置についての援助方法を十分講ずるというこの緊急措置、これに合わせて、通産省のほうではつなぎ融資そのものも原因企業がはっきりしたならば、企業にこれを支払わせるようにして、その生業補償も十分考えてこの中に取り入れているんだ、こういうような考えなんです。いま出しているこの環境庁の損害賠償保障法案、そうならば、なぜこれは健康被害保障法だけにしてあるのですか。健康被害保障法、これならば、これによって生業補償なんかやるのはなかなかむずかしいじゃありませんか。そこまでいくのに、これが問題になっているのに、これから出す法律案がまさに健康被害保障法、これではどうしてこの生業被害を入れられますか、どうして財産被害を入れられますか。初めからクローズドショップですか、クローズドシステムを逆にこの被害保障法の中でとっている。これは逆ですよ。ここはオープンにしておけばいいんです。クローズドシステムのほうは工場のほうですよ。被害救済のほうはこれをオープンにしないとだめなんじゃありませんか。なぜ健康被害保障法なんて小さい名前で出すのですか。通産省のほうではもうすでに、いま言ったように生業補償も考えている、ちゃんとこれすべきであり、こうするんだと言っている。最も進歩的なはずの環境庁のほうでこれじゃ、最も退歩的じゃありませんか。これじゃ現実とマッチしませんね。これじゃ少し私は通産省の考え方より環境庁長官のほうがおそいような気がいたしますが、そうじゃございませんか。
○三木国務大臣 島本委員も御承知のように、損害保障という制度は初めてこういうふうに取り入れる制度でありますから、一ぺんに間口を生業補償まで広げますと、この損害保障の制度というものば軌道に乗らない。それは生業補償ということになれば、健康とは違って非常に経済的ないろいろな問題を含むわけでありますから、やはり健康に対しての損害保障というものを軌道に乗せて、次に生業補償の問題に取り組むことが、こういう制度を軌道に乗せていくためにそのほうがやはり現実的であろう、こういうことで健康に限ったわけでありますが、しかし、次には生業補償の問題というものはやはりどうしても取り入れざるを得ないでありましょう。瀬戸内海の赤潮の問題一つとらえても、なかなかやはり現実に問題が起こっておるわけです。今度の問題を考えてみてもそうでありますから、先日も閣議で、この問題については農林省の関係が非常に多いわけですね、被害が農作物等であり、漁業の問題でありますから。だから農林省としても真剣にこの制度というものと取り組んで検討してもらいたい。経済的な問題になるのですからね。そういう点で、農林大臣もこれは取り上げて検討いたしますということでありました。だから、あるいはこの制度ど別のこういう制度をつくるほうが問題の処理としては適当なのか、あるいはいまの健康の損害保障の制度の中にこれを拡大して、生業も取り入れていくのかは今後やはり研究をいたしてみたいと思います。しかし、現実に生業補償の問題というものが、政治の大きな課題としてわれわれがどうしても取り組まなければならぬ問題であることは明らかでございます。
○島本委員 むしろ、いまこういうような時代でありますから、昭和四十五年十二月のあの公害国会、あのとき以上に緊迫した情勢で、あらゆる必要な法律は改正しなければならないし、あらゆる状態を、今回これをもって一つの歯どめにするくらいのきちっとした対策をいまにして講じなければならないのであります。長官のいまの考え方はわからないでもありません。しかしながらこれじゃ、逆に行政のほうが先にいってしまいますよ。あなたがそうしている間に、きょうの新聞によると、兵庫県では十八日午後、関係九市町の漁業協同組合とPCB等を使用している五十一工場の代表者、これを合わせて百有余の人を集めて兵庫県水産公害救済対策協議会、こういうようなものを発足さして、そして県が一千万円、市が一千万円、関係工場から合計一億、そのほか町村もありますから、総計一億数千万円でこの周辺だけでもこれをやろうというわけで、漁業の損失補償と生活のつなぎ資金と融資に対する利息の補給、こういうようなことをやって漁民の救済制度をつくった、こうなっている。もうすでにこういうようなものを追い詰められた県ではやっているでしょう。もうすでにこういうふうにして生業補償まで出しているでしょう。その県一県だから約二億足らずで間に合うかもしれません。日本全国でやるのに、まだ県がやっているこれまでに追いつかないようなこういうような法律をいまのこのこと出されておる。これが公害対策だとするならば、まことにいかにもまじめに取っ組んでいるといえども、これはやはり都道府県のほうが先行してしまいます。あるいはもう老人に対する施策であるとか、こういうような社会保障の関係はあとから追っかけて歩いていますが、公害行政もこれまた追っかけて歩く、こういうようなことになりかねないではありませんか。もうすでにこういうようなことをやっているのですから、こういうようなことを十分考えて――漁獲規制等による漁業者の損失救済、これまで入れているのです。漁獲の規制によって生ずる漁業者の損失救済、これまで中に対象として入れなければならなくなって入れているのです。PCB公害で魚価の低落を招いた、この損失補償までこの中に入れるというのです。そして漁業転換資金だとか、生活のつなぎ資金なりの利息の補給まで入れるというのです。りっぱじゃありませんか、これは。いま国は、四十五年のあの公害国会、それ以上のものの法制をもってやろうというのに、この一地方のこういうような対策におくれるような対策状態では私は心細い。これをもって今回はすべての官庁を網羅してこれに当たるんだといっても、これじゃ一兵庫県に及ばないじゃありませんか。私はまことにこの点ではまだまだまどろっこしいような感じがいたします。
 それで、水産庁のほうでは水銀等による汚染水域における漁獲禁止、これとその補償に対する立法措置、こういうようなものを当然考えるべきじゃなかろうかと思います。先ほどからの答弁は聞いて知っております。しかし、あえて私の口からもう一回質問するんです。水銀等による汚染水域における漁獲禁止と補償等に関する立法措置は、当然いまもう検討すべき段階じゃないか、やるべき段階じゃないかと思いますが、水産庁、どのようにお考えです。
○荒勝政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、さしあたりのつなぎ資金としては、融資によって低利資金でこの問題を解決していきたい、こういうように思っております。ただ問題は、それだけではたして十分なんだろうかということが一つの問題でありまして、先ほど三木環境庁長官からもお話がありましたように、生業的な補償について、何らかの検討を閣議の席で農林大臣にお話がありましたが、これについて農林大臣からも私のほうに指示がありまして、内部で非常に前向きにといっては失礼ですけれども、検討をさせていただいております。
 この漁業法は、御存じのようにこういった事態に備えてない。約十年ほど前に漁業法を改正しておりますが、こういったことを想定してない法体系になっておりますので、現在の漁業法を直ちに適用いたしまして、漁業権の禁止あるいは漁獲の制限というふうなところまで行政的に直ちに実行することは非常にむずかしゅうございまして、ただいまのところ、非常に間接的な表現でございますが、食品衛生法をたてにとりまして、売ってはならない、したがって漁獲物を陸揚げしてはならないというふうなことから、反射的に漁獲の自主的な制限、自主的禁止というふうな形で、漁業協同組合の了解を得て、都道府県知事がそういう形で話をつけられておるわけでございます。これにつきまして、当然に漁業法を改正するなり、あるいは別の法体系をもってこれに対処すべきであるという御意見も各方面から聞かされておりまして、これについては、先ほども申し上げましたように、漁業権が一つの物権の対象となりまして、民法上の所有権の根本に触れる問題でございますので、いま直ちにここでこの問題について何とかいたしますというにはなかなかむずかしい問題がありまして、われわれといたしましては、内部で関係者が集まりまして論議をしている最中でございます。この問題については今後さらに十分に検討さしていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○島本委員 その検討は大いにされ、早く結論を出してもらいたいのです。漁業権というようなものは物権と同じであるから、これは憲法によってでも禁止はむずかしいのである、先ほどのいろいろな答弁もわかっているのです。しかしそのままにしておいて、自主規制をしておいて自主的にやるから、これはもう損害が起きても何やっても、おまえらの責任だということになってしまう。食えないから自分でまたとってこなければならないということになる。とってきたその魚を売ると国民の生命にかかわることになる。生命にかかわることになるから、それを禁止すると憲法上からも疑義がある、こういうようなことになるわけです。この悪循環はそのとおりです。しかし何よりも重いのは生命です。何より大事なのは生命ですよ。生命を損ずることがないように措置するのでなければならないのです。そういうように、もう禁止すべき魚はとってはならない、こういうようにして、それに対する補償をきちっとしてやって、体制をきちっとするならば、あえてこれでできないことはないと思うのです。これはやる方面に向いて検討しておるのでなければ、自主規制が行なわれているからいいんだ、これじゃ全部漁民のほうにしわ寄せされるのです、自主規制ですから。したがって、これをはっきりと皆さんのほうで指導していかなければならないのだ、ここにいきつくじゃありませんか。このままにしておいたら、漁民はいよいよ食えなくなった場合にどうするのか。この対策は憲法違反だからできないのだ、こんなことを言っていられないのであります。四千人も水俣の雨の降る中を、漁民が主婦をまじえてあの埠頭でもうすでに暴動一歩手前でしょう。こういうようなところまできているのです。そういうようなことを考えたならば、命にはかえられないのだ、命が一番とうといのだ、この見地からもう一回考えるべきではなかろうか、こういうように思うわけであります。
 この点等についても、これは環境庁長官と水産庁長官、両長官同士で十分検討しておいてもらいたいし、そうでなければこれはとんでもないことになるんじゃないか、こう思いますから、あえて私は、前に言った答弁は知っているのです、知っていながらもこれを出さなければならないのであります。なぜならば、漁民のほうからそれを切実なる要求として、行く先々から全部出ているのです。漁民が要求して、漁民のためにある水産庁がこれはできないのだ、こういうことでは、ほんとうの生きた行政にならないということです。十分この点を考えておいて指導してもらいたい、このことだけは心から要望しておきたいと思います。今度は環境庁長官に……。
○三木国務大臣 漁業問題というものはいろいろな問題を含んでおりますから、十分今後水産庁長官ともいろいろと協議をいたすことにいたします。
○荒勝政府委員 ただいま御指摘のとおりでございまして、われわれのほうでもつなぎ資金程度でこの問題が片づくとは思っておりませんし、また環境がそう簡単に一年や二年できれいになるとも思っておりませんで、今後のこの問題につきましては、閣議の席で、環境庁長官から農林にも御指示もありましたことで、われわれといたしましても、この問題については本気で取り組んでおりますので、そういうふうに御了承願いたいと思います。
○島本委員 ことに生活の保障というような点は、いまや重大な問題でありますから、それを今後考えておいてほしいことです。それと同時に、もう時間ですからこれで私はやめますが、こういうような重大な問題を審議しているこの最中にも、水銀使用工場たる住友化学の菊本製造所、そこでまたして騒動が起こっておるのです。土のうを排水口に置いて、もうすでに漁民が実力行使を行なっておる、こういう実態さえあるわけです。瀬戸内海のPCB汚染魚検出のあおりを受けて、伊予灘の海域でとれた魚が売れなくなった。したがって、愛媛県の新居浜市内の漁協では、ついに十四日から一斉休業に入った。一斉休業に入ったあとで、これではどうにもできなくなって、ついにいまのような挙に出た、十八日、こういうようなことです。まだこういうようなことが行なわれ、まだ企業としていまのような状態があるということは遺憾じゃありませんか。一体これはどういうことなんですか。いまこれを解決するために、企業がもう平身低頭してこの問題に対して対策に当たっているときでしょう。それだのに、漁民との間にこういうトラブルがまたして起きている。十八日じゃございませんか。私は、まだまださっき言ったような状態の中でも、こういうようなことが次から次へと起こっているようなこういう状態は遺憾です。通産省、これはどういうことなんですか。最後にこれを聞いて私は終わりたいんです。
○塩川政府委員 連続的にこういう事態が起こっているということは私たちもほんとうに残念なことでございますが、菊本の製造所のものも、やはり過去からいきさつがあると思います。ついては、根本的には水銀を使わない方法、隔膜法、これに一刻も早く切りかえていくべきだと思いますし、先ほど三木長官からおっしゃいましたように、できるだけというよりも至上命令をもって作業法の転換をはかっていきたい、それによって一刻も早く海の水をきれいにすべきだ、このように思っております。
○島本委員 これで終わりますが、初めに言ったように、もうすでに企業の姿勢が改まったといいながらも、ここに参考人として貴重な意見を吐いた、そういうような人の立ち入り検査において、見る場所を制限して拒否したり、いまこの問題に対する解決をしている最中にさえもこういうような事件が起きている。これは下部、末端にはまだ通産省の指導が十分行なわれていない、こういうことになるんじゃないかと思います。私はきわめて残念です。そして、いかに三木長官が声高らかに言ってもまだそういうような状態だということは、私は遺憾千万なんです。それと同時に、あなたがはっきりと北海道電力という一企業に対してさえも、あまり流血の惨を生むようなことはするな、話し合いを継続しなさいというあなたのことばの次の日に、一企業から無惨にももう踏みにじられているのです。あの結果は御存じでしょう。無力なんですか、これは。そうあってはならないです。また、これは内閣の命にかかわる問題だと思っております。したがって、いまのような状態に対して、もう一回調査した上で報告してもらいたい、このことを要請して私の質問は終わります。
○佐野委員長 中島武敏君。
○中島委員 水銀、PCBなどによる汚染というものは、現在非常にすさまじいものがあります。これは非常に重大な問題で、今日もう社会問題政治問題になっておるといっても私はいいと思うのです。
 去る十六日、十七日、十八日と三日間、私も第三水俣の問題に関して現地調査を行ないましたが、一そうその感を深くいたしております。しかし、この水銀やPCBなどによって汚染が行なわれる、患者が発生する、この問題を考えてみるのに、今日のような重大な事態を引き起こした上で企業が水銀をたれ流す、あるいはPCBをたれ流すということを放置してきた政府の責任というのはきわめて重大だと考えます。なぜなら、第一水俣病がチッソのメチル水銀を含む排水によって起きたものであるというこの問題について、はっきりした熊大の見解が発表されたのは昭和三十四年であります。このときに、政府が水銀使用工場に対して徹底的な点検を行ない、そして対策を講じておったならば、今日の事態は回避されたであろうと考えられるわけであります。また、その後四大公害訴訟が行なわれましたけれども、この訴訟の判決が出るたびに政府はどう言ってきたか、今後とも一そう関係省庁と密接な連絡をとって、強力な公害防止行政を行ないたい、判で押したようにこういうふうに政府は言ってきたわけであります。一体どんな規制の強化が行なわれていたでしょうか。私は、この点でも政府の責任というものは非常に重大だと思います。
 最近の問題についても、徳山湾の水銀汚染の問題を見ましても、全国の水銀工場を総点検せよという世論が非常に大きく盛り上がってきた。そしてその世論に押されて調査に実際に入った。調査に入ってみて、はじめて徳山湾の水銀汚染が水俣湾よりももっとひどいということがはっきりしてきたわけであります。世論に押されて実際に行って見た。行って見るまでわからなかった。行って見てはじめてわかった、これが実態なんです。昨年の熊大報告についても同様であります。中間報告が昨年やられた。すでにこの中間報告の中で、水俣病と疑わしい者が有明海に二十九名いるということが報告されておったわけであります。しかし、これでも政府は動かなかった。ことしの五月二十二日に第三水俣病の発見が報告されて、それに引き続いて沿岸各地で患者が発生する、患者と疑わしい者が続出をする、こういう事態になって、はじめて環境庁長官を議長とするところの水銀汚染対策推進会議が設けられたわけであります。
 私は、全体を通じていえることは、ほんとうに政府が企業の公害のたれ流しに対して、これを黙って放置してきたということだと思うのです。この点ではきわめて重大な責任を政府は持っていると思います。おくればせながら、今度推進会議が設けられて対策が発表された、私は、これを機会にもう公害は日本からは完全に追放する、まさにそういう転機にしなければならないと思うのです。いままでの政府の責任ということを十分に考えて、そしてそういう転換を根本的にはからなければならないと思います。
 私は、そういう点で、最初に副総理でもあられる環境庁長官にこの問題についての所信を伺いたいと思うのです。
○三木国務大臣 過去のいろいろないきさつを述べられての責任という問題でありますが、しばしば申しておるように、水俣湾にしても企業にしても、また行政の面からも、事態の深刻さに、このことで将来どういう深刻な事態が起こるかということに対しての見通しというものが非常に甘かったことは事実であります。しかしこのように各地に、水銀の汚染等もそうでありますが、この問題を引き起こして、そのことが少なからず国民生活に不安を与えておるという現状からして、これは過去の反省の上に立って、こういうことに対して、政府のほうにおいても公害防止対策推進に対しては、よほど強い態度をもって臨んでいく一つの大きな転機に来ておるということを感ずる次第でございます。
○中島委員 私は、今日のような深刻な事態を招いた根本的な原因というのは、やはり何といっても生産第一主義といいますか、あるいはまた成長第一主義というか、こういう政策を政府がとってきた、まさにここに根本的な原因があると思うのです。いま長官は、いまこそ転機にしなければならないというふうに言われましたけれども、まず転機にしなければならないのは、何よりも従来の政治、行政のあり方、このことを転換しなければならないのだと思います。それは一言で言って、やはり人間の命や健康を第一に考えるという、この方向に根本的に転換しなければならないんじゃないかと思います。そういう点では、いま政府がとっておられる工業開発をてことする高度成長政策をとる限り、私は公害はなくならないのではないかというように思うのです。したがって、私はあとで具体的な問題についての質問をいたしたいと思っておりますが、まず根本的なその姿勢について、再度長官にお伺いしたいと思います。
○三木国務大臣 大きな転機に来ておるということは、量的拡大ということでいままで経済成長というものは行なわれてきたわけでありますが、またそのことが日本に対して国民の所得、国民の雇用の機会、いろいろな点で日本の経済成長のもたらした利点というものをわれわれは抹殺することはできない。しかし今日の段階になってくると、量的拡大というよりかは、日本が経済的にも力を持ってきておるわけですから、その力を量的でなくして、日本の質的な面、それには環境の保全もあるし、公害の防止もあるし、とにかく根本は生命と健康を大事にするということから出発するわけでありますが、そういう考え方に大きに転換をしなければならぬ時期に来ておるということでございます。
 そういう点で、われわれとしても政府としても、あらゆる機会に経済政策の方向を成長から福祉重視へと言っておることは、結局において、そういう私のいま申したようなことに方向を転換しなければならぬということをしばしば申して、今後における政治の方向というものは、だれの目から見てもそういう方向に進まなければならぬ時期に来ておるということでございます。
○中島委員 公害をほんとうに出さない、これをほんとうに防止していく、環境を保全していく、人間の命や健康を大事にしていくという上において、政府のとらなければならない姿勢とあわせて、企業の責任を明確にしていくということが非常に大事な問題だと私は思っております。
 富山県の魚津市にある日本カーバイド、ここでは六十トンの水銀が行くえ不明だということが、県などの調べでわかったそうであります。これに対して県がどういうふうに言っているか。これは新聞報道でありますけれども、「いまになっていきなり六十トンの水銀が行くえ不明だったと公表されても、どんな対策をとればよいかわからない。工場側は無責任きわまる。」、こう言っておるのですね。そしてまた、この同じ日本カーバイドのことですけれども、六年前に企業がみずから調査をした。ところが、ごく最近これも報道されておるところによりますと、この会社の元研究員が、会社が発表しているのはずいぶんおかしいといって問題を明らかにしております。それによりますと、魚の中に、そのときの調べによりますと、最高八十PPMという汚染が発見された。しかし極秘資料として会社はしまい込んでしまった。今日までそれを隠していた。それでもう良心に苦しめられて、元研究員がそのことを明らかにするということがやられているわけであります。
 私どもはまた、過日の調査において日本合成にも参りました。この日本合成は水銀の消費量があまりにも少ないという指摘を県から受けて、もっと再検討して資料の出し直しをせよというふうに要求されているわけであります。これはチッソと同じ生産工程でありますから、メチル水銀を排出したということはもう疑いのない事実なんです。しかし自分では、自分が犯人だと名のり出るということはやらぬわけであります。私どもの質問に対しても、幾らでも自白はするけれども、犯人だとはみずからは名のって出ない、自首はしない、こうあそこの責任者は答えているわけであります。私は、こういう企業の姿勢ではほんとうに公害を防いでいくということはできないと思うのです。
 そういう点では、私が最近手にしました「商事法務」という雑誌があります。この雑誌の中に、経団連の常務理事産業部長菅元彦さんという方が執筆をしていらっしゃる。これを読みますと、実におそるべきことが書いてある。それは例のイタイイタイ病の判決のあとの問題に関してでありますけれども、汚染土壌の復元を企業負担でやるということを誓約したわけであります。これは御存じのとおりだと思うのです。しかしこの問題に触れて、これはずいぶん何かつるし上げのような状態のもとでやられたんだ、こんなのは正常じゃないんだというようなことをいっているのですね。この企業の姿勢でほんとうに公害をなくしていくということができるでしょうか。あるいはまた、同じこの方がいっておられるのには、あの例の損害賠償保障法案の問題に関しても、賠償保障制度、これは設けなければならない、その設けることを要求する理由は何か、そこにはまず第一に、「ある程度十分な救済をやれば紛争が抑止されるだろうということで、紛争抑止効果をねらった」のであるというふうにはっきりいっているのです。こういう企業の姿勢、これをこのままにしておいて問題が解決するかどうかということであります。私はそういう点について、まず通産政務次官のほうからお伺いしたいと思います。
○塩川政府委員 企業の姿勢がいままで生産第一主義であったということは、これは私もやはり肯定するものであります。しかしながら、最近におきます行政面におきましての転換と相呼応いたしまして、企業者の中でも、自分の工場が公害企業であるということが世間で糾弾されるようになってきた場合には、企業の存立そのものもあぶなくなってくるという意識が非常に強くなりつつあるということもまた事実だと思います。したがいまして、何といいましても、いま転換期の最中でありますので、いろいろな意見も出てこようと思うのでありますけれども、だんだんと企業者自身が自分の手で公害を解決し、そして一般大衆といいますか、消費者といいますか、実需者といいますか、そういう筋から安心して取引のできる会社であるというそういう信頼をやはりつけなければ、これから企業家としてはなっていかない、そういう時代に入ってきたのでありますから、現在転換期で、まあ通産省といたしましても、非常にきびしくこういう面において指導はいたしておりますが、できるだけ早く、そういうすっきりとした転換が実際に現実のものとなってあらわれてくるように期待しておるものであります。
 ついては、いま論文がそのように発表になりましたが、その論文を私は見ておりませんし、その方にもまだお会いしたこともございませんが、その意図されたところが那辺にあるかはわかりません。わかりませんが、少なくとも損害賠償制度が紛争をやわらげるためにあるのだという考え方、これはやはり間違っておる、そういうものではないと私は思います。ですから、その論文にこだわることなく、私たちは企業サイドから公害を自主的に解決する方向に強力に指導していくつもりであります。
○中島委員 政務次官にぜひひとつこれは読んでいただきたいと思うのです。はっきり書いてあります。しかも責任ある人ですね。経団連の常務理事です。経団連の常務理事がこういう姿勢なんです。ましてそれぞれの企業はどういう姿勢でいるのかということを、これは端的にあらわしているんじゃないでしょうか。先ほど私は、日本カーバイドのことであるとか、あるいはまた宇土合成の問題ということについても申し上げました。私は、この辺でほんとうに政府が企業を指導するという場合に、どうなければならないかということをこの問題は明らかにしているように思うのです。
 ところで委員長、環境庁長官が所用で出かけられる。これは実は私が質問に立つ直前に聞いた話であります。私は長官にもこの問題について答弁をいただこうと思ったのですが、長官はすでにどうしてもよんどころのない事情でお出になるということでありますので、私はきょうの質問はここで保留させていただいて、明日また続行させていただきたいと思いますので、ひとつよろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
○佐野委員長 ただいまの中島委員の申し出の件、私も先ほど環境庁長官からその旨をお聞きいたしまして、中島委員に対して非常に御迷惑をおかけいたしておりますけれども、御了承を得て、明日質疑を続行していただきたいと思います。
 次回は、明二十一日木曜日午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後六時二十四分散会