第072回国会 本会議 第19号
昭和四十九年三月二十二日(金曜日)
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 議事日程 第十八号
  昭和四十九年三月二十二日
   午後二時開議
 第一 沖繩振興開発特別措置法の一部を改正す
    る法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員赤松勇君及び岡田春夫君に対し、
  院議をもつて功労を表彰することとし、表彰
  文は議長に一任するの件(議長発議)
 日程第一 沖繩振興開発特別措置法の一部を改
  正する法律案(内閣提出)
 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(
  内閣提出)
 雇用保険法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
   午後二時四分開議
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
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 永年在職議員の表彰の件
○議長(前尾繁三郎君) おはかりいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました赤松勇君及び岡田春夫君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員赤松勇君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
  〔拍手〕
    …………………………………
 議員岡田春夫君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
  〔拍手〕
 この贈呈方は、議長において取り計らいます。この際、赤松勇君及び及び岡田春夫君から発言を求められております。順次これを許します。赤松勇君。
  〔赤松勇君登壇〕
○赤松勇君 表彰されるにあたり一言あいさつを申し上げます。
 私は、昭和五年、労農党に入党し、社会主義運動の第一歩を踏み出しました。当時、農村では、貧農のほかに、中小地主階層が金融資本の制圧に対して極度に不満を持ち、ただならぬ政治状況にありました。これが社会ファシズムの基盤をなし、五・一五事件、二・二六事件の発生を見るに至ったのであります。
 金融資本は巧みにこれを利用し、これらの階層の不満のはけ口を帝国主義侵略戦争に向け、昭和六年満州侵略戦争が始まりました。
 私は、当時二度にわたって投獄され、昭和十二年、中国侵略戦争が始まるや、近衛内閣の手で三たび投獄されました。鈴木茂三郎、加藤勘十、大内兵衛、美濃部亮吉、これらの人たち、いわゆる人民戦線事件がそれであります。四年間の獄中生活が終わっても、終戦までは、思想犯保護観察法によって政治活動を禁止され、一切の自由を奪われてまいりました。
 終戦を迎え、昭和二十年、日本社会党の結党に参加、同二十一年、衆議院議員に当選いたしました。
 私の忘れることのできないのは、昭和二十六年、安保条約をめぐって党は分裂し、わが党所属の衆議院議員は十六名に減り、当時私は国会対策委員長として、少数党の悲哀を骨の髄まで味わいました。
 翌二十七年の総選挙では、わが党は五十六名にふえ、翌二十八年にはさらに七十二名に増加、二年後の昭和三十年の総選挙では八十九名となり、昭和三十三年の総選挙では百六十六名に躍進をするに至りました。
 十六名の少数党から出発し、風雪に耐え抜いた往年を顧みて、まことに感慨無量なるものがあります。(拍手)
 いまや、日本資本主義は生産力の発展が桎梏となって、トラスト、カルテルなどによってそれを切り抜けようとしています。上部構造の政治は腐敗し、歴史の転換の必然性が歯車のように刻一刻正確に展開しつつあります。もはや、歴史は、社会主義の建設以外にこの矛盾を解決できないことを示しています。(発言する者あり)
 私は、栄光ある日本社会主義実現のため生涯をささげる覚悟であります。
 決意を披瀝して、謝辞といたします。(拍手)
○議長(前尾繁三郎君) 岡田春夫君。
  〔岡田春夫君登壇〕
○岡田春夫君 このたび、院議をもって、永年勤続の表彰を賜わりましたことは、私としてまことに感激にたえません。(拍手)
 昭和二十一年春、敗戦直後の本院に初めて議席を得てから今日まで、内外の情勢は大きな変化を遂げてまいりました。その間、ベトナム賠償、六〇年安保、日韓、三矢作戦計画など、私なりに全力を尽くしてきたつもりでございますけれども、顧みてみずからの非力にむち打たれるの思い切なるものがあり、感慨無量であります。
 さて、第二次大戦後四半世紀を経たいま、あらためて将来の日本を考えるとき、再び軍国主義とファシズムの足音を感ずるのは、私一人の思い過ごしではありますまい。(拍手)
 今日、一九二九年以来最大の資本主義世界の危機、とりわけ、底の浅い日本資本主義の構造的危機の中で、急激な対外膨張と、つくられた石油危機による異常なインフレと激しい収奪、四次防の進行をはじめとして、天皇論の台頭、国旗、国歌の法制化や刑法改悪の動き、また、思想、教育面における国家統制、経済面における官僚統制にあらわれた権力の強化など、次第にその様相が明らかになりつつあります。それのみならず、政界の一部においても、いま妖怪がさまよっております。
 十数年前、ある著名な日本の文明評論家が次のように述べております。
 「戦争へ導いた日本の軍国主義体制、……ファシズムが、過去の問題ではないということを、考えなければならない。現在は一応なくなったが、将来には再び起り得る。」「思想的な闘いは、自由主義と社会主義との間にあるだけではない。ファシズムが自由主義の後から来たという歴史的事実を、たえず思い出す必要がある。」「日本には、まだファシズムの問題が残されている。」
 現在、私たちに与えられている至上課題は、体制ができ上がってからいかに戦うかの問題ではなく、体制をでき上がらせないためにいかに戦うかの問題であります。それは、かつての時代の痛恨に満ちたわれわれの経験であり、教訓であります。齋藤隆夫その他の諸先輩がこの同じ演壇において訴えた絶望的な弾劾を再びここで繰り返させてはなりません。(発言する者あり)
 しかし、世界とアジアの情勢は、第二次大戦前と根本的に異なっております。いまや、国家は独立を求め、民族は解放を求め、人民は革命を求める流れが、現在の世界の主流であります。
 天下大乱の今日、われわれが大衆とともに力を合わせて戦い抜くならば、必ずや軍国主義とファシズムを粉砕し、真の新しい時代を迎え得ることは間違いがございません。
 私は、そのためにこそ、今後においても微力ながら全力を傾ける決意であることを、主権者たる日本の人民と議員各位の前に誓うものであります。
 以上をもって謝辞といたします。(拍手)
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 日程第一 沖繩振興開発特別措置法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、沖繩振興開発特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。沖繩及び北方問題に関する特別委員長小濱新次君。
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  〔報告書は本号末尾に掲載〕
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  〔小濱新次君登壇〕
○小濱新次君 ただいま議題となりました沖繩振興開発特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、沖繩及び北方問題に関する特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案の内容は、昭和四十九年度から、流域下水道の設置または改築に要する費用に係る国の補助の割合の引き上げに伴い、沖繩振興開発計画に基づく流域下水道の設置及び改築に要する費用に係る国の補助の割合についても、その引き上げられた割合によることとするため、所要の規定の整備を行なうものであります。
 本案は、二月九日本委員会に付託され、同月十五日小坂沖繩開発庁長官より提案理由の説明を聴取し、以後、慎重に審査を進めてまいりましたが、詳細については会議録に譲ることといたします。
 かくて、三月十九日質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、いまなお数多く埋没されている不発弾は、県民に多大の不安を与え、かつ、公共事業の実施に障害を与えているので、すみやかに不発弾の埋没状況を把握し、その除去につとめるとともに、不発弾事故の被害者に対しては国家賠償法の適用を検討するなど、その救済に万全を期することなどを内容とする四項目の附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
○森喜朗君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(前尾繁三郎君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 中小企業信用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
○議長(前尾繁三郎君) 委員長の報告を求めます。商工委員長濱野清吾君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔濱野清吾君登壇〕
○濱野清吾君 ただいま議題となりました中小企業信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、中小企業を取り巻く最近の経済変動に対処し、信用力、担保力の乏しい中小企業者に対する事業資金の融通の円滑化をはかろうとするものでありまして、
 そのおもな内容の第一は、倒産関連中小企業者の範囲を拡大することであります。
 現行では、主として親事業者の倒産または操短といった場合に、倒産関連保証の特例が適用されておりますが、倒産関連中小企業者の範囲につきまして、このような取引先の事情とは別に、原材料等の供給の減少、製品の需要の減少等により、その業種に属する中小企業者の相当部分の経営が不安定となっていると認められる場合、通商産業大臣が業種を指定し、その業種に属する中小企業者で経営が不安定となっていると市町村長等によって認められるものを特例の対象に加えること。
 第二は、保険限度額の引き上げであります。中小企業者一人当たりの保険価額の限度額を、普通保険については現行の三千五百万円から五千万円、組合の場合七千万円から一億円に、無担保保険については三百万円から五百万円に、特別小口保険については百万円から百五十万円に、それぞれ引き上げること。
 なお、この引き上げは、昭和四十九年二月二十二日から遡及して適用することであります。
 本案は、去る二月二十二日当委員会に付託され、二月二十七日中曽根通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、以来、慎重に審査を重ね、本日質疑を終了、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第でございます。
 なお、本案に対し、附帯決議が付されておることを申し添えておきます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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 雇用保険法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、雇用保険法案について、趣旨の説明を求めます。労働大臣長谷川峻君。
  〔国務大臣長谷川峻君登壇〕
○国務大臣(長谷川峻君) 雇用保険法案について、その趣旨を御説明いたします。
 現行失業保険法は、第二次大戦直後の経済混乱を背景に深刻な失業問題に対処するため、昭和二十二年に公布、施行されて以来、わが国の雇用失業対策の柱として、重要な役割りを果たしてまいりました。しかしながら、この間に、わが国の雇用失業情勢は、若年層を中心に急速に労働力不足の傾向が進むなど、基本的変化を遂げるに至っております。今後におきましても、長期的に見て、若年労働力を中心に労働力の不足基調は続くものと予想され、このような状況を背景に、質的な意味での完全雇用の実現が課題となっております。
 他方、その中にあって、わが国の人口構造の高齢化が進み、いわゆる高齢者社会へと移行するものと考えられますが、高年齢者の再就職問題の改善は容易ではありません。その他の心身障害者等特別な配慮を必要とする人たちの就職難も依然として残されております。
 また、昨年秋にはアラブ諸国の石油供給削減の問題が突発いたしましたが、このようなエネルギー問題その他国際経済上の諸問題に起因して経済面の急激な悪化を見るようなことなどがあれば、雇用面においても深刻な事態を招く場合が生じます。
 また、このようなエネルギー問題を契機に、産業構造は一段と資源節約化、知識集約化の方向への転換が促進され、この面からも雇用に少なからぬ影響が生じるものと考えられます。
 また、昨今、現行失業保険制度をめぐって、とみに、各種の問題が顕在化し、国民各層から種々な批判と要望が寄せられるに至っております。
 このような経済社会の動向に適切に対処するため、現行失業保険制度のあり方について抜本的に見直すことが必要であると考えられましたので、昨年五月、学識経験者を失業保険制度研究委員に委嘱し、客観的、かつ、専門的な立場からの調査研究を依頼いたしました。同年十二月、その結果が報告されましたので、その趣旨を全面的に尊重して、雇用保険法案要綱をまとめ、中央職業安定審議会、中央職業訓練審議会及び社会保障制度審議会に、それぞれ諮問いたしました。
 この雇用保険法案要綱におきましては、前述のような今後の経済社会の動向を前提とし、社会的公平の見地に立脚し、真に対策を必要とする人たちに思い切って手厚い措置を講ずることが必要であるとの考えに立って、すべての雇用労働者を適用対象とし、高齢者等就職の困難な層や低所得者に対し、就職援護施策の充実、全国的不況時における失業保障機能の強化、給付面における不均衡の是正等、給付内容の改善、整備を行なうとともに、雇用の状態の改善、能力開発の推進などにより、質量両面にわたる完全雇用の実現への要請に積極的にこたえることができるよう、失業保険制度を改善発展させ、雇用に関する総合的機能を持った雇用保険制度を創設することといたしました。
 各審議会におきましては、この雇用保険法案要綱について慎重な審議が行なわれ、それぞれ答申をいただきましたので、政府といたしましては、その御意見を尊重しつつ成案を固め、ここに雇用保険法案を提案した次第であります。
 次に、雇用保険法案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律は、労働者が失業した場合に必要な給付を行なうことにより、労働者の生活の安定をはかるとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、雇用構造の改善、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進をはかることを目的とするものであります。
 第二に、雇用保険は、この目的を達成するため、失業給付を行なうほか、雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行なうことといたしております。
 第三に、との法律は、零細企業の労働者はもちろん、従来から課題とされていた農林水産業の労働者をも含めて、すべての労働者に適用することといたしております。
 第四に、これからの高齢者社会への移行等に即応して、中高年齢者や心身障害者等の就職困難な人たちに、より手厚く、きめこまかな対策をとることといたしております。このため、給付日数についても、従来、被保険者期間の長短によっていた点を改め、年齢等の事情による就職の難易度により定めることとしており、また、保険給付の額については、従来、一律に前職賃金の六割としていた点を改め、低所得者層に配慮して上薄下厚の給付率を採用することといたしております。さらに、女子受給者等が出産、育児その他のやむを得ない事情により求職活動ができない場合には、受給期間を延長することといたしております。
 第五に、全国的に失業情勢が悪化した場合には、一律に給付日数を延長する等、失業保障機能を強化することといたしております。
 第六に、農林水産業の適用に伴って、従来、問題とされてきた季節、短期雇用労働者については、給付と負担の過度の不均衡を是正し、これらの労働者の実態に即した制度とするため、失業保険金を三十日分の一時金にするとともに、これらの労働者を多数雇用する業種については、特別の保険料率を適用することといたしております。
 第七に、日雇い労働被保険者については、その賃金分布の実態を勘案して、その給付及び保険料について、現行の二段階制を改め、三段階制とすることといたしております。
 第八に、現行の就職支度金にかえて、一定の常用就職の困難な人の常用就職を促進するため、三十日分の常用就職支度金を支給する制度を設けることといたしております。
 第九に、以上のほか、高年齢者の雇用の促進や不況の際の一時休業に対する援助によって失業を防止するなど、積極的に雇用の改善をはかるための事業、生涯教育訓練の推進、有給教育訓練休暇制度の援助などによる労働者の能力開発の事業及び労働者の福祉のための事業を行なうことといたしております。
 第十に、保険料については、一般の保険料率は、現行の千分の十三の率を据え置きとしつつ、千分の十の部分は労使が折半して負担して失業給付に充てるものとし、千分の三の部分は使用者の負担として、雇用改善事業、能力開発事業、雇用福祉事業に充てることといたしております。また、高年齢者の就職の促進と福祉の増進のために、高年齢者に関し、労使の保険料負担を免除することといたしております。
 なお、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案もあわせて提案いたしておりますが、この法律案は、ただいま御説明申し上げました雇用保険法案の成立、施行に伴って必要とされる、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、労働保険特別会計法、職業訓練法、船員保険法、国家公務員等退職手当法その他の関係法律の規定の整備及び経過措置を定めるものであります。
 これらは、いずれも雇用保険法案の附則的事項でありますが、立法技術上一つの法律案として整理することといたした次第であります。
 以上が雇用保険法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 雇用保険法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。川俣健二郎君。
  〔議長退席、副議長着席〕
  〔川俣健二郎君登壇〕
○川俣健二郎君 私は、日本社会党を代表し、ただいま提案されました雇用保険法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 提案趣旨によりますと、昭和二十二年制定以来の失業保険法をここで破棄しまして新たな法案をつくろうとするのは、あたかも、労働者を失業の恐怖から守り、画期的な雇用安定対策を目的とするがごとく思われます。しかし、その内容を吟味いたしますと、まず、保険料を値上げして、失業者の既得権である保険金をもぎ取り、加えて諸手当などは廃止することによって、より多くたまる余剰金で、本来は国の予算で当然手だてをすべき労働政策を国民の負担で行なおうとするのであります。実に本末転倒の法案であると断定するものであります。(拍手)答申に当たった審議会ばかりでなく、また、いまだ国会に上程される前から、すでに青森県をはじめとして全国的に反対ののろしが上がるという悪名高き法案であることも、御一同の認めるところでございます。(拍手)
 そこで、まず総理大臣にお尋ねいたします。
 田中内閣の経済政策の失敗がもたらした悪性インフレと、石油に対する見通しの甘さからくる国民経済の破綻によって、いよいよわが国の失業状態は新たな局面を迎えておることは、だれしもいなめない事実であります。すなわち、エネルギー危機と総需要抑制政策のために、農林業、建設業をはじめとして、生産調整、特に中小零細下請企業の倒産が日に日に増大し、労働者の雇用安定どころか、ここに失業問題が大きく顕在化してきているのでありましょう。特に、最もしわ寄せの受けやすい弱い立場にある季節労働者や中高年齢者、臨時、日雇い労働者、それに婦人労働者は、すべて現に失業の危機にさらされているのであります。このような情勢の中で、あえて政府は世の反対を押し切って現行失業保険制度を廃止し、雇用保険法を強硬に提案しようとするのは、これまさしく国民に対する挑戦ときめつけざるを得ないのであります。(拍手)
 言うまでもなく、失業保険制度は失業保障の機能を持つべきであって、政府が真にこのような弱い立場の労働者を失業から守る労働政策を行なうというならば、国民から集めた失業保険料を使うのではなくて、むしろ政府が国の手で能力開発なり職業訓練、福祉事業等を強力に推し進めるべきではないかと考えるわけであります。これに対する総理大臣の基本的な姿勢をただすものであります。
 次に、この法案を見ますと、まず指摘されるのは、農林漁業の労働者を失業保険制度から追い出そうとするのが特徴の一つであります。
 それでは伺います。いま東京、大阪を中心に八十万人も数えられる出かせぎ農民が、半年間も遠く家族と離れて、きびしい労働条件と賃金不払い、労働災害におびえながら、寒々とした飯場小屋にふるえておる出かせぎ農民を、総理はどう見ているかということであります。私から遠慮なく言わしていただくならば、あれは自民党政府の場当たり農政の犠牲者以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)農業基本法の失敗、総合農政のつまずき、果ては日本列島改造計画、どう弁明されても、総理大臣、この責任は免れないと思います。真に労働者を失業から救うというならば、まず、農民が出かせぎしなくても食える農業、農業から失業しない農民にするために、一億の食糧供給をになう農民に対して、今度はどのような農業政策を考えるのか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、農林大臣、この出かせぎ農民は、もちろん、好きでやっているのではありません。農林省の統計部門の分析が何よりも示しておるように、農機具の購入による借金返しが第一にあげられておるではありませんか。催促なしのふれ込みで、担保は何より強い田畑を押えて、秋の米代金から容赦なく取り立てる販売方法、いわば大手メーカーと結託した一部農協幹部が、海外旅行のプレミアをもらうその売り込みによって、かくして生じた借金によるものだと私は思います。
 このような借金政策と、先ほどのさまよえる農政の失敗と相まって、いわば、農民が農業収入だけでは生活できず、農外所得に大きくたよらねばならなくなってまいりました。これは一体どなたの責任でありましょうか。
 さらに伺います。戦後の都市建設は、ビルにしろ道路にしろ、新幹線、そして地下鉄工事にしろ、すべてこれ出かせぎ労働者の手によるものであると思います。ある大臣は、この出かせぎ労働者を、たいへん重宝な労働者だと、正直におっしゃいました。そのとおりであります。ボーナスあるでなし、ベースアップもなし、有給休暇をはじめとして、労働基準法等何一つ守られていない、下請の下請の労務提供の形の中の労働者であります。使うほうから見ればまことに重宝な労働者でありましょうが、政府は、重宝な労働者だと、よそごとのように評価するのではなくて、これらの出かせぎ農民を劣悪な出かせぎ現場から守る、いわゆる出かせぎ立法、この法律を検討されてきたといわれておりますが、一体いつ国会に提出されるのか、お尋ねいたしたいと思います。特に、倉石農林大臣は労働大臣の御経歴の持ち主でもありますので、お答え願いたいと思うのでございます。
 次に、具体的に労働大臣にお尋ねいたします。
 第一は給付日数の問題であります。
 政府提案では、三十歳未満の若年層は、勤務年数にかかわりなく、一律六十日としようとしております。現行制度ではこれが二百七十日でありますが、それを六十日としようというのはどういうわけか。高齢者優遇のためとおっしゃるでしょうが、高齢者は勤務年数で救われる現行制度があるのに、あえて勤務年数を無視する制度に修正した理由をお聞かせ願いたいと思うのであります。
 第二は、給付率と扶養手当であります。
 先ほどの大臣の説明によれば、現行、賃金の六割の一律給付を、今度は七割ないし五割とする、いわば上に薄く下に厚く、中高年や低所得者を優遇するとおっしゃる。ところが、これら中高年や低所得者に現在大きく加算されておる妻並びに子供に対する扶養手当を全廃するというのですから、どういう理由であるかということでございます。失業者の生活を保障することをほんとうに考えるならば、むしろ、給付率は諸外国並みに八割とするという前向きの改正を考えるべきであって、ましてや、扶養手当などをもぎ取るような労働政策を打ち出しておきながら、一体どうして下に厚くなるかということでございます。
 第三は、先ほど総理大臣にもお尋ねしました季節労働者に対する特例の問題であります。
 改正案によれば、現行の九十日を三十日分に一時金として、しかもこの種の労働者の保険料だけ引き上げるという点について伺います。
 思うに、提案趣旨にもありましたように、給付と負担のバランスを考えるということでありましょう。しかし、給付と負担のバランスのみにとらわれる考え方では、相互扶助を趣旨とする社会保険を論ずることができないと思います。失業すれば当然賃金の何割減の生活になるわけですが、まさか政府は、失業保険をもらうために失業しているとでも思っているのではないでしょう。しかも一時金で支給するという考え方は、皆さん、おかしいと思います。すなわち、失業者に対し、窓口で吟味することもなく、一時金で支給して、そのあとすぐさま仕事についても黙認するという考え方は、職安の窓口規制による今日の騒動から解放されるように思えるが、むしろこれは制度としてたいへんな問題を含んでいると思います。失業しない者に失業保険を支給する。おやめなさい。このような考え方で労働政策をつかさどるようでは、特に失業した場合の相互扶助という国民的合意の上に立って戦後いち早くでき上がった失業保険勘定を所管することすら、もはや労働省はその能力を失ったものと断言しても過言ではないと思うのでございます。(拍手)
 第四の問題は、被保険者期間、すなわち、失業保険受給者になるための最低の労働期間であります。
 この制度に関連して、実は野党の抵抗により六年間凍結されているという悪法があることは、御一同、先刻御承知のとおりであります。それが、この法案が成立することによって早められて適用されることになるのか、確認したいと思います。もしそうだとすれば、これからは、たとえば、春、四月の種まきに始まって秋の収穫の十月まで、最小限度七カ月間は農作業に従事しなければならない農民など、いわゆる一年未満の短期雇用労働者は、今度、満六カ月まるまる働き続けなければ失業保険受給者になれないという法改正のために、この失業保険制度から全面的に除外される結果となり、一時金はおろか、何らの給付も永久になくなるわけであります。一方、保険料は、今度は当然、適用の法律によって、必ず納めなければならないと改正し、いわば掛け捨てを求める、まことに奇妙な制度となるわけであります。
 ここで農林大臣、政府を代表してお聞かせ願いたいことがあります。すなわち、比較的耕作面積の少ない農民である出かせぎ農民に対して、政府は、はたして今後たんぼに帰るのを期待しているのか、それとも、大規模農業を打ち出すために、小規模農業を営む出かせぎ農民などは、年じゅう日雇い労働者の形で都市建設に従事することを希望しているのか、知らしむべからず、よらしむべし、真意はどうなのか、この場で明確にできないかということでございます。
 また、こういう労働者もおります。保険料は労働省の失業保険勘定に納入し、給付、すなわち支出は、林野庁の特別会計で負担するという例であります。その数、実に一万七千人。九カ月働いて三カ月首。十年も二十年も。世にこれを反復雇用、反復首切りという。それが何と国家公務員であります。これは、政府みずからが堂々雇用の不安定をやってのけるわかりやすいモデルだと私はきめつけたいのであります。
 社会党は、今国会に国有林労働者雇用安定法を提案いたしますが、政府は、このような雇用保険法案などを考える前に、まず国家公務員の雇用の安定から手始めに見せていただけないかということであります。この点、労働大臣にも伺います。
 さらにお尋ねしたいことは、今度の法案によると、失業者の就職促進のために現在設けられている就職支度金制度を全廃するとあるが、その理由を御説明願います。
 次は、日雇い労働者を一般労働者と違って取り扱うという問題であります。その一つは給付の段階制、他の一つは給付率の点であります。端的に差別扱いの理由をお聞きかせ願います。
 最後に、保険財政について伺います。
 労働大臣、現在、失業保険勘定の剰余金は約四千五百億円となっているようでありますが、一体、この法案を無理に改正することによって、年々どのぐらいの剰余金をもくろんでおるのか、お聞かせ願いたいと思うのでございます。
 そこで、この関連で大蔵大臣に二点だけ伺って終わりといたします。
 一つは、労働省の予算の仕組みはどうなっているかということであります。
 昭和四十九年度の予算案によれば、労働省一兆四千億であるから、いかにも国の総予算案の一割近くに見えます。ところが、その一兆四千億のうち、大蔵大臣、あなたのほうから来る分はわずかに二千億であります。すなわち、一般会計による予算は一五%、残りの八五%は、国民から集める失業保険勘定と労災保険勘定であって、大半は国民から預かった金で労働省の仕事がまかなわれているというところに問題があるのだと思います。このことは、他と同様、政府がいかに特別会計制度にあぐらをかいて行政に当たっているかを端的に物語るものと思います。財政を担当する大蔵大臣、この点どのように考えられますか。
 二点目は、給付金に対する国庫負担の割合について伺います。
 いまや日本の経済はGNP第二位を誇るというが、諸外国並みに国庫負担四分の一をこの際訂正して、引き上げることを考えませんか。その意思がありやいなや、お伺いしたいと思います。
 以上のように、政府が当然みずからの手でなさなければならない労働政策を、今回の法改正により失業保険財政の上に立って実施しようとするものであって、当然本法案は直ちに撤回することを要求し、一方、失業保険制度については抜本的に再検討することを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 川俣健二郎君にお答えいたします。
 まず第一は、雇用保険法案は既得権の侵害にならないかという趣旨の発言でございますが、本法案は、失業保険制度を改善、発展させ、失業保険機能の強化をはかっておるわけでございます。また、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずることとしており、さらに、雇用機会の不足している地域は積極的に安定した雇用機会を創出し、不安定な雇用を解消する等、雇用構造の改善も積極的に推進する考えであります。
 次は、現在の情勢下でなぜ本法案を出すのかというお問いでございますが、雇用保険法案は、高齢化社会への移行やエネルギー問題に見られるような、内外要因による経済変動に伴う雇用問題にも的確に対処し得るよう、今後の経済、社会の動向に即して、失業保障機能について格段の強化をはかっておるわけであります。
 たとえば、給付日数を就職の難易度に応じて決定するとともに、全国の失業水準が悪化した場合においては給付日数を一律に延長することや、雇用改善事業として一時帰休に対する援助を行なうなどが措置されておるわけでございます。したがって、今後不測の事態が起こった場合にも十分対処し得るものと考えておるのであります。
 次は、雇用対策諸事業は、国の手、すなわち、一般会計で行なうべきであるとの趣旨の御発言でございますが、雇用構造の改善、労働者の能力の開発向上等の諸事業は、保険事故である失業の発生の防止とその早期解消に大きく資するものであり、これらに要する財源については、労働保険特別会計において支出することが適当であると考えておるのであります。他方、従来から一般会計の支出によって実施してきた雇用施策もあり、両者は、それぞれの役割りに応じて相互に補完しつつ雇用対策の円滑な実施に貢献しておるわけでございます。今後ともこの方針によって措置してまいりたいと考えるわけであります。
 最後は、農林漁業従事者と農政の問題について御発言がございましたが、雇用保険の被保険者となる農林漁業従事者の多くは、短期雇用特例被保険者として一時金の支給対象となると思われますが、一時金制度を採用することは、これらの労働者の生活実態から考えて、現段階では最も適当な措置であると考えておるのでございます。
 なお、農政の基本としては、出かせぎのない農業経営が望ましいことはもちろんでございまして、政府としても、この線に沿って、従来から農業経営の近代化、農地保有の合理化など構造政策には特に留意をしてきたところでございます。また、これとあわせて農村地域に工業導入を促進するなど、兼業農家の所得の確保をはかっていくつもりでございます。
 特に一言申し上げますが、出かせぎ農民をなくする道は、国土総合開発を促進し、農工商三位一体の調和ある政策の推進が絶対に必要でありますことを念のため申し添えておきます。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 出かせぎにつきましてお話がございました。私どもは、農政の基本といたしましては、もちろん、出かせぎのない農業経営が望ましいことは当然でございますが、たとえば水田の単作地帯、川俣さんよく御存じの地域、こういう地域の農業労働の季節的に大きい地域にありましては、地元の兼業機会もまた乏しいのでございまして、そういう地域におきましては、農家所得の確保のために出かせぎが行なわれておるというのが実情でございます。これに対しましては、農業生産基盤の整備をするとか、農業団地の育成、農地流動化等の対策を講じまして、農業によって他産業従事者と均衡のとれた生活を営むことができますような自立経営の育成をはかります一方、専業的農家を中核として、兼業農家をも含めた集団的生産組織の育成等をはかってまいりたいと思っております。
 また、これとあわせまして、農村地域へ工業導入をはかることによりまして、安定的な就業機会を増大させつつ、兼業農家の所得確保をはかってまいりたいと思っております。
 それから、出かせぎ者の取り扱い等についてのお話でございましたが、出かせぎ者の出かせぎ現場における対策といたしましては、出かせぎ先の事情によりましても対策は異なっておりますが、いずれにせよ、労働関係の事項を中心として、健康保険、年金、税制等多岐にわたりますので、これらの施策をそれぞれの所管省庁を通じまして一そう強化をいたし、問題の解決をはかってまいるつもりでございます。
 それから、小規模農業を営む出かせぎ農民に、たんぼに帰るのを希望するのかというお話でございました。私どもは当然そうでございまして、出かせぎせられております方々、この方々の様子を見ますと、どうしてもやはり経営規模を大きくしてまいるということが必要であります。これから御審議を願おうといたしております農業地域振興の法律等を改正したいと考えておりますのも、三反歩、五反歩というようなところで農業だけで自立していくということは、今日の情勢で無理がありますことは、川俣さんよく御存じのとおりでございます。そこで、やはりこれを規模を拡大して、他産業に劣らない所得を得られるような農業を育成していくということが大事なことでございますので、どうしてもこの経営規模を拡大し、経営の集約化等をはかりまして、自立経営ができさすような農家に対しましては、農地の流動化、資本装備の高度化等の対策を講じまして、農業によって他産業従事者と均衡のとれた生活を営むことができるようにはかってまいりたいと思いますし、また、その能力に応じまして、他産業に就業しようと思考いたします農家に対しましては農業就業近代化対策事業等、あるいは職業訓練等の施策を強化いたしまして、その希望に沿い得るようにいたしてまいりたいと思っております。今後も農業を続けますとともに兼業所得の増大をはかってまいりたいと考えられる農家につきましては、農村地域工業導入等の措置のほかに、このような農家を含めまして、専業的農家を中核といたしました集団的生産組織の育成をはかってまいりたいと思っております。今般御審議を願っております農用地開発公団等の構想につきましては、川俣さんよく御存じのとおりであります。
 もう一つ、国有林の定期作業員のお話がございました。これにつきましては、ただいま私どもは林政審議会の労働部会等にもおはかりをいたしまして、年々この処遇の改善に努力いたしておるわけでありますが、御存じのように、素材生産事業におきましても、また、豪雪地帯の冬季作業はきわめて困難でありまして、こういう地域では、林業生産の特質のもとにおきましては、国有林としてはどうしても冬山事業の実施、作業適期の拡大、各種事業の組み合わせ等によりまして、雇用の長期化、通年化につとめてまいったところでありますが、今後とも、国有林の持ちます公的機能と経済的機能の調和をはかりながら、長期的視点に立って、これらの従業者の処遇の改善につきましては、農林省においては、鋭意いままでもやってまいりましたことは御存じのとおりでありますが、これからもこの方針をもって貫いてまいるつもりでありますので、御了承願います。(拍手)
  〔国務大臣長谷川峻君登壇〕
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
 第一番は、給付日数、若年者の給付切り下げ等でございますが、私たちの雇用保険法案におきましては、若年者の再就職が容易であるのに対して、高年齢者の再就職はなかなか困難でございます。そういう労働事情にかんがみまして、今後における人口構成の高齢化を考慮して、原則として、年齢等の就職の難易度に応じて所定給付日数を決定するということでございます。若年者の場合でも、その受給実績や若年者の労働力需給の逼迫の状況から考えまして、私たちの案が妥当なものと考えているものですが、なお、この法案では、就職が困難な者につきましては給付延長や、全国的に失業状況が悪化した場合におきましては、給付延長の制度を新設し、就職が困難な事情にある者の援助には万全を期してまいりたいと思っております。
 次に、扶養手当を廃止するわけはどうか、こういうことでございますが、扶養手当の趣旨というものは、低所得者層の実質的な給付率の改善をはかることにありまして、わが国においては、扶養家族に対する諸手当を賃金の一部として支払っているのが通例でございます。これらの諸手当を含めた総賃金が、基本手当の日額を決定する場合の基礎とされているため、今回、扶養家族のない者を含め、広く低所得者層全体の給付率を高くしたことに伴いまして、扶養手当というものをこれに吸収しようとしていることでございます。
 また、給付率につきましては、他の社会保険と違いまして、算定の基礎となる賃金の中に、ボーナス、臨時賃金等も含めているので、定期給与に比較した実質的な給付率はかなり高率となるのにかんがみまして、この法案においては、給付改善が現段階において最善なものと考えていることでございます。
 季節労働者の特別給付について三十日分で打ち切った、こういう一時金を導入した根拠はどうかというお話でございますが、ここで御理解いただきたいことは、社会保険においては必ずしも厳密な個々人ごとの給付と負担の均衡をはかるものではありませんが、季節的受給者のように、毎年就業と不就業を繰り返し、他の被保険者の場合と事故の発生の態様が異なるものに特例を設けることは、ILO条約においても認めているところでございます。特に雇用保険法案では、従来から課題となっておる農林水産業に適用を拡大することにしておりますが、農林水産業は季節的労働者が多いために、適切な措置を講じなければ極端な不均衡を招くおそれがありますので、季節的受給者につきましては、その実態も配慮して特例を設けたのでございます。給付面において三十日分の一時金としておりますが、これは季節的受給者の平均受給実績や新しい制度による給付日額の大幅な引き上げ等を考慮して、急激な変化を避けるとともに、一時金制度をとることによって就労の機会の増大が期待されることなど、これらの労働者の生活の実態に一そう即応するものと配慮しているところでございます。
 被保険者の期間の計算方法等のお話がございましたが、保険法案におきましては、被保険者期間の計算方法は、昭和四十四年における失業保険法の一部改正によって、昭和五十一年二月から実施されることとなっており、被保険者期間の計算方法と同一でございます。昭和四十四年の法改正の際には、雇用期間の短い出かせぎ労働者が受給できなくなるという点が問題になりまして、その結果、地元において雇用された場合には、その被保険者期間を通算することによって受給資格を得ることは容易としまして、農林水産業への適用拡大を待って実施することとなっておった次第であります。雇用保険法案においては、昭和五十年四月一日から、農林水産業を含め全産業を適用対象とすることとしているのであります。これにあわせて被保険者期間の計算方法の改正を行ないますが、昭和四十四年の法改正の経緯に即したものと考えております。
 国有林労働者の雇用安定につきましては、先ほど農林大臣から御答弁がありましたが、まさに林政審議会の林業労働小委員会において検討されておりますその結果を待ちまして、農林省と提携をはかりながら、国有林労働者の雇用の改善に協力してまいりたいと思っているものであります。
 次は、就職支度金でございます。現行の就職支度金制度は、制度本来の趣旨と異なるようなものになってきていることは、御承知のとおりでございます。そこで、真にこれを実効のある制度にするためには、就職困難な者を支給対象者として、また、支給残日数の多少にかかわらず、必要な場合には受給できるようにするとともに、その受給によって基本手当の給付日数に影響が及ぶことのないようにすべきでありまして、このような考え方に立って、現行の就職支度金制度にかえまして、常用就職支度金制度を設けることとしたものでございます。
 さらに、雇用保険の収支の見込みについてお話がございましたが、雇用保険の収支規模は、昭和五十年のお話がありましたが、いまから予想するのもなかなかたいへんで――四十九年度の予算を御審議願っておるところでございますので、なかなかたいへんでございますが、大体六千六百七十億円程度と見込んでいるわけであります。歳入のうち、保険料収入は約五千七百五十億円程度と見込まれております。歳出面では、失業給付費は約四千六百五十億円で、制度改正しない場合に比べまして約七百五十億円の増加を見込んでおり、また、雇用改善事業等の三事業には約一千二百五十億円を見込んでいるものであります。
 剰余金は決算後でなければわかりませんけれども、健全な制度運営のために、少なくとも収支規模の一〇%から一五%は予備費として保有することが必要であろうと考えているものであります。
 最後に、川俣議員から、保険法案を直ちに撤回せよというお話がございましたが、先ほど申し上げました提案理由にありますとおり、いまから先は積極的な雇用政策こそ大事なことだろうと思いますので、何ぶんひとつよろしく御審議のほどをお願い申す次第であります。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 川俣さんにお答えをいたします。
 まず第一は、労働省関係の予算のうちで一般会計の占める比率が非常に少ないんじゃないか、そういうことについてのお尋ねでございますが、申すまでもございません、労働省関係の予算は、一般会計及び労働保険特別会計、この両者からくるわけであります。そのうち、一般会計予算は、失業対策費を除きますると、いわゆる行政事務費でありまして、人件費だ、事務費だ、あるいは調査費だというたぐいのものでありますので、これが大きくなる、こういう理由がないのであります。しかし、これでも労働行政の執行にはいささかの支障もありませんから、この点は御安心願いたいと思います。
 他方、労働保険特別会計におきましては、これは労働者災害補償保険法、失業保険法によりまするところの保険給付金の問題、それから雇用改善施設の問題、あるいは労働者の能力開発という仕事、あるいは福祉諸施設ということがありますので、こっちのほうはどんどんふえてまいります。四十九年度においても相当の大幅な増加であります。
 したがいまして、労働省関係予算の比率が、一般会計一五%、また特別会計が八五%ということに相なりまするが、これは二つの会計の性格の相違からくる問題でありまして、何ら支障もなく、また、この二つの会計が相寄り相助けまして労働行政の完ぺきを期しておる、こういうことで、御不安のないようにお願いをいたしたいと存じます。
 次に、失業保険に対する国庫負担、いま四分の一になっておりまするけれども、これが低過ぎるのではあるまいかというような御懸念でございますが、この四分の一という補助率は、これは昭和三十七年に社会保障制度審議会におきまして審議したその答申を受けましてきめられたものでありまして、一般失業保険につきましては原則が四分の一、また、日雇保険につきましては原則が三分の一、こういうことに相なっておるのは御承知のとおりであります。その後、この補助率を用いまして保険会計の推移を見ておったわけでございまするけれども、これはいささかの支障もない、きわめて順調に推移しておりますので、国庫負担率を引き上げる必要はないものと考えております。
 なお、諸外国では一体どうなっているんだというお話でございまするが、英国におきましては負担率が四分の一、それから西独、アメリカ、イタリアにおきましては国庫負担の制度はございませんです。わが国はこれらに比較いたしましてまあ堂々たる措置をとっておる、かように御承知をお願いします。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 中川利三郎君。
  〔中川利三郎君登壇〕
○中川利三郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま提案されました雇用保険法案について、総理並びに関係閣僚に質問するのであります。
 現在、わが国の社会経済情勢は、第二次大戦直後の混乱期、あるいは第一次大戦直後、米騒動が起きた時期に匹敵する緊急異常な事態といわれ、とりわけエネルギー危機を契機として新たな失業問題が深刻さを加えているこのとき、政府があえて本法案を提出したことはきわめて重大であります。そこで私は、まず、本法案の基本的性格についてお聞きするものであります。
 現行の失業保険法は、労働者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定をはかることを目的にしたものであります。これが、労働者の基本的権利にかかわるものであるからこそ、国にその保障を義務づけ、今日に至ったのであります。しかるに、政府は、今後の経済社会の動向に即して給付内容を改善するということを口実に、失業者が受ける失業保険給付は現行制度に比べ八百億円を削減し、一方、雇用構造の改善など、本来の失業保険とは異質の事業には逆に五百億円を増加させるのであります。このことは、社会保障制度審議会が指摘しているように、保険事故でないものを含めて、ことさら雇用保険と称して社会保険の概念を拡張し過ぎるものであります。このことは、労働者のための失業保険という本来的性格を、資本家のための雇用政策へと変質させ、勤労権、生存権等、憲法の基本的条項に対する重大な侵害をもたらすものであり、憲法擁護の義務を負う総理の責任ある回答を求めるものであります。
 質問の第二は、失業に対する政府の認識と姿勢についてであります。
 提案理由説明によれば、政府は、わが国の失業雇用情勢が量から質へと基本的変化を遂げたとしていますが、もともと失業の発生自体、資本主義制度そのものに根源的に由来することは、現行失業保険制度制定にあたっての提案説明でも明らかであります。現実に本年一月の新規求人の全国平均によっても、建設業で二九・八%、製造業で二四・一%と、それぞれ大幅な減少を見せているのであります。したがって、いまこそ、失業保険のより一そうの充実改善こそ当面の最大の課題であり、国民の要求でもあります。しかるに、本法案の趣旨に見られる質的な意味での完全雇用の実現は、今日の現実認識から全くかけ離れたものと思うのでありますが、総理及び関係閣僚の答弁を求めるものであります。
 さらに、政府は、これまでも失業保険法上違法、不当な疑いのあるとされていた雇用対策上の支出を制度化しようとしているのであります。
 もともと雇用構造改善等は資本家や国が行なうべきことであります。本法案によれば、雇用対策の三事業と失業給付の支出は、予算項目上に区分されるにすぎず、法制上は一つの保険であり、財政制度上は同一勘定にされているのであります。したがいまして、法的、制度的には失業給付の費用を三つの事業に振り向けることも可能であり、さらには、長年にわたって労働者の拠出で蓄積された積み立て金等の資産も、雇用対策上の必要として食いつぶされることになりかねないのであります。特権的減免税など不当利得をあげている大資本にかわり、労働者にとって何ら責任のない雇用対策費用をなぜ労働者が負担しなければならないのか。この際、総理及び関係閣僚から明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 質問の第三は、今回最も問題となっている季節受給者の扱いについてであります。
 そもそも社会保険は、その目的に応じて機能を発揮することは当然のことであります。失業保険において、不安定な就労状態にある労働者がより多く保険給付を受けたからといって、社会的公平に反する、給付と負担の不均衡であると断定することは不当であります。むしろ、政府が、真に対策を必要とする人たちに思い切って手厚い措置を講ずることが必要であるという提案趣旨を生かすならば、これらの季節労働者をこそ、手厚い措置の何よりも必要な対象としなければならないと考えるが、総理並びに関係大臣の答弁を求めるのであります。
 次に、本法案において、月間十四日以上の就労、通算六カ月制の実施による受給資格の制限を早めたことについてであります。
 このことは、昭和四十四年の法改正時に、わが党のみが反対してきたところであります。当時指摘したとおり、これは季節労働者の失業保険受給に重大な制限を加えるものであります。そうなれば、冬型出かせぎの場合、田植えに間に合うように帰郷しようとすれば、秋の農作業を一カ月早く十月十五日までに切り上げ、一方、秋の農作業を終わって出かせぎに出ようとすれば、田植えの支度に間に合わない五月中旬まで働かなければ、受給資格を受けることができなくなるのであります。さらに、九十日分給付を三十日分の一時金に切り縮めることにしておりますが、これこそは、出かせぎ農民に対し、農業を投げ出すか、安上がりで無権利の日雇い手間取りになるか、その二者択一を迫る典型以外の何ものでもありません。さらに、農民に対し、農業で自立し得ることを保障しようとする何らの具体的、抜本的措置もなく、給付は下げるが負担はふやす本法案の強行は、出かせぎ農民に死の宣告を与えるものであります。
 そこで、あえて総理並びに関係閣僚にお聞きしたい。一体なぜ老人までが故郷を捨てて出かせぎに行かなくてはならないのか、一体なぜまじめに命をすり減らして働いても暮らしていけないのか、一体なぜ人間の命がこのようなまで虫けらのように扱われるのか、こういう出かせぎ労働者の率直な声に何と答えるのか、お聞きするのであります。
 さらに、過疎、豪雪などの問題を伴う季節労働者の問題は、単にその家庭、家族内にとどまらず、その地域社会を包む全体にはかり知れない影響を持つのであります。これら地域のたばこ屋、酒屋、床屋などの商売ももろにそのしわ寄せを受け、公民館で青年が学習しようとしても、肝心の青年がいないのであります。農協が農業講座を行なおうとしても、主人たちの姿はもはやないのであります。一たん火災が起こっても、村や町の消防団はその人数にこと欠くのであります。本法案の強行は、こうした季節労働者の地域全体をさらに破滅的方向へ追いやることになり、市町村など地方自治体の存立自体をすら危うくするものであります。
 たとえば、青森県五所川原市におきましては、四十八年度の米作収入四十五億円、リンゴ収入十二億円に対し、出かせぎ収入は三十一億円、失業保険収入は五億円を占めているのであります。この深刻な事態をどう受けとめ、どう処置されるか、具体的な回答をお聞きするのであります。(拍手)
 総理並びに関係大臣、ここに一つの詩があります。秋田県の出かせぎ地帯の小学生の詩であります。
 とおさんも、かあさんもいない毎夜、
 とおさんと、かあさんのまくらのにおいをかいでいます。
 弟と二人でうばいあいしながらかいでいます。
 とおさんのまくらはいろんなにおいがします。
 かあさんのまくらはやさしいにおいがします。
 このいたいけなきょうだいを残して出かせぎに出なければならなかった両親、そして父と母を、まくらのにおいで奪い合いしながらかぎ合い、なつかしむ子供たちの心情。本法案の強行こそ、もっと多くのこうした子供たちをつくり、その幼い心と願いをさえむざんに傷つけるものであることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)総理並びに関係各大臣は、この子供の叫びをどう受けとめられ、どうこたえるのか、お伺いするのであります。
 第四に、若年労働者、とりわけ婦人に対する扱いについてお聞きするのであります。
 この法案は、失業保険日数を年齢によって区分し、若年労働者の給付を大幅に切り詰めようとしています。しかし、失業保険給付は、すべての失業した労働者が次の安定した就労を確保するまでの必要で十分な期間の生活を保障することが第一義的原則であり、年齢によって区分する何らのいわれがないのであります。とりわけ、若年労働力の逼迫を理由に一律に六十日給付に切りかえることは、次の職場へ、次の職場へとかり立て、より一そう劣悪な職場へ追いやることになるのであります。このことは、資本の要請としての、若くて安い労働力の供給をこれまで以上に推し進めることをねらいとしたものと思えるのでありますが、関係大臣の答弁を求めます。
 また、とりわけ婦人労働者の場合、妊娠、出産、育児などは、婦人の天性に与えられた崇高な権利であります。次代を生み育てる若い婦人労働者のため、政府はあらゆる手だてを尽くしてその職場環境や働く権利の保障に万全を期すべきであります。しかるに、婦人労働者の現状は、たとえば保育所の保母、電話交換、レジあるいはパンチャー、看護婦など、いろいろなものをとってみましても、腰痛、頸腕障害、過労などによる退職などを余儀なくされているのが現状であります。
 もともと、一国の文化と政治の水準は、婦人に対する取り扱いと配慮の深さによってはかられるといわれるのであります。本法案の強行は、まさに資本の要請のもとに若年婦人を単なる労働力の視点でとらえ、婦人の持つ天性や、その尊厳に対する重大な侮辱に属するものと考えるのでありますが、総理並びに関係大臣の御所見をお聞きするものであります。(拍手)
 最後に、日本共産党・革新共同は、本法案の国会提出を直ちに撤回し、現在の経済情勢と深刻な国民生活の危機の進行のもとで、いまこそ失業保険制度、失業対策、雇用保障制度の抜本的改善、充実を目ざすことを重ねて強く主張するものであります。
 当面、失業保険金額を前職賃金の八〇%にし、最低日額を二倍に引き上げ、給付日数と受給期間の大幅延長、すべての労働者に差別なく適用させ、費用は国と資本家の全額負担を目ざし、とりあえずは労使の負担割合を三対七にするとともに、保険財政の管理と運営に労働者の代表を加える措置をとるべきことを主張し、このことを要求するものであります。
 総理の責任ある答弁をお伺いいたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 中川利三郎君にお答えいたします。
 まず第一は、今回の法改正と憲法との関係等についての御発言でございますが、本法案は、全産業の雇用労働者を適用対象にしており、また、失業給付につきましては、最近の雇用失業情勢に即した改善を行なうほか、付帯的に労働者の雇用福祉のための諸事業を行なうこととなっておるわけでございます。その内容は、憲法に定める生存権、職業選択の自由及び勤労権の趣旨に即して、これをよりよく実現しようとするものであります。
 雇用保険法案では、現行失業保険制度を改善発展させ、雇用に関する総合的機能を持った雇用保険制度を創設することとしておるわけであります。その中において、失業保険機能は一そう充実強化することとしており、制度の基本的性格を変えるものでないことは明らかでございます。
 本法案では、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずるとともに、たとえば雇用機会の不足している地域に積極的に安定した雇用機会を創出し、これらの地域の季節労働者その他不安定な雇用を解消する等の雇用構造の改善も積極的に推進する考えでございます。
 次は、季節的受給者に対する扱いについてでございますが、本法案におきましては、季節的受給者の雇用の安定のための施策を拡充強化しております。また、農林水産業への適用拡大にあたり、従来から問題のあった季節的受給者について、その生活の実態を十分考慮しつつ、給付と負担の面で特例措置を講ずることといたしておるわけであります。
 出かせぎ労働者につきましては、基本的には、できるだけ地元で就労することができるようにすることが必要であり、農村地域における雇用機会の確保や通年雇用の促進をはかるとともに、安定就労の促進と福祉の増進につとめているところであります。
 要は、出かせぎがなくて済むように、国土の均衡ある発展をはかることが政治の目標でなければならぬことは、申すまでもありません。
 次は、働く婦人の扱いについての御発言に対して答えますが、若年の婦人につきましては、出産、育児等の理由により退職する者も多いが、政府としては、婦人がその希望に応じて就業し得る環境を確保するため、その職業能力の開発向上をはかりますとともに、保育施設の増設等につとめているところであり、今後ともこれらの施策の充実につとめてまいりたいと考えます。また、本法案におきましては、妊娠、出産、育児等の理由のため職業につけない場合には、本人の申し出により受給期間を延長し、その理由がやんだ後に受給できるように措置していることは、御承知のとおりでございます。
 第四点目、本法案を撤回する意思がないか、撤回せよとのことでございますが、先ほど労働大臣が申し上げたとおり、本法律案は必要があって御審議を願っておるのでございますから、撤回の意思はございません。早急に御審議、御可決のほどをお願いいたします。(拍手)
  〔国務大臣長谷川峻君登壇〕
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
 第一番は、失業雇用情勢が量から質へと基本的に変化を遂げたという認識はおかしいじゃないかということでございますが、まさに、昭和四十年までわが国の失業率というものは一・四、ほんとうに完全雇用でございます。そしてまた、こういう石油危機といわれながらも、一・七が求人率でございます。そういうふうにしておりながらも、こういう石油危機等々のこともございますので、量的にはこんな情勢でございますが、さらに、お互いが七十歳、七十五歳と長生きしている今日、高年齢者のそういう方々の就職、そしてまた、それにつとめるための訓練、こういうところにいまから先、私たちがやらなければならぬということでして、まさに量と質ともどもにやるという考えを持っているものであります。
 さらに、先ほどのお尋ねの中に、労働者にとって何ら責任のない雇用対策費用をなぜ労働者が負担しなければならないかという御趣旨がございましたけれども、雇用保険制度におきましては、特に御理解いただきたいのですが、失業給付を行なうとともに、雇用改善、能力開発及び雇用福祉の事業を行なうことにしております。これらの事業に要する費用は、労働者の負担としませんで、保険料のうち千分の三を事業主のみの負担としてまかなうことにしておりますことを御理解いただきたいと思います。
 社会保険の目的から、真に不安定就労の季節労働者の問題を考えるべきじゃないかというお話がございましたが、いわゆる季節労働者の問題につきましては、基本的には、できるだけ、先ほど総理からもお話がありましたように、地元で安定した就労をすることができるようにすることが必要であります。そして農業経営の近代化と相まちながら、雇用対策基本計画に基づき、農村地域における雇用機会の確保や通年雇用の促進につとめてまいるところでございますが、一方、このたびの雇用保険法案におきましても、このような観点から、これら季節労働者の雇用の安定のために、季節的労働者向けの常用就職支度金を創設するとともに、雇用改善事業として、通年雇用奨励制度の充実や、地域雇用対策の推進をはかることとしております。
 また、農業水産業への適用拡大に伴い、従来から給付と負担の不均衡が著しい季節的受給者につきましては、給付と負担の面で特例を設けることとしておりますが、その内容につきましては、これらの人たちの生活の実態を考慮してまいりたいと思っております。
 さらに、月間十四日以上の就労、通算六カ月制は、農業を破壊するのじゃなかろうかということでございますが、このたびの雇用保険法案におきましては、被保険者期間の計算方法は、通常の労働者に期待し得る満六カ月の雇用期間を受給資格要件としたものでありますけれども、一方、雇用期間の短い出かせぎ労働者につきましては、出かせぎ先で無理な就労をしなくとも、郷里にお帰りになったあとで地元において働いて得た被保険者期間を通算して受給資格を得やすいようにして配慮していることも御理解いただきます。
 また、本法案では、農林水産業や五人未満事業所もすべて適用対象とすることにしておりますので、これらの適用拡大と同時に実施することが、季節的受給者に対する影響から見て適当なものと考えているものでございます。
 さらに、雇用保険法案におきましては、農林水産業への適用拡大に伴って、給付と負担の著しい不均衡の見られた季節的受給者について特例措置を講ずることとしておりますが、その内容は、これらの人たちの生活の実態に即して一時金給付といたしまして、その給付額も過去の受給実績等を十分考慮したものであり、その生活に急激な変化を与えないものとしておるのであります。
 次に、出かせぎ季節労働者の問題は、地域全体の破壊につながるのじゃなかろうかということでございますが、まさに、季節出かせぎ労働者の問題につきましては、雇用対策基本計画に基づいて、農業経営の近代化の施策と相まちながら、農村地域における雇用機会の増大、通年雇用の促進をはかる必要があるという観点から対策を進めておりまして、このたびの法案でも、農林水産業も適用対象とし、あるいは雇用改善の事業の一環として、農村地域における安定した雇用機会の確保等、地域雇用対策の推進をはかるなどやっておる次第でありまして、一方、雇用保険法案において給付面での特例も、季節的受給者の生活の実態に即して一時金としたもの、その給付額も過去の受給実績を十分考慮したものだということを御理解いただきたいと思うのであります。
 最後に、若年労働者、とりわけ婦人労働者のお話がありましたが、現在の失業保険の受給者の半数は三十歳未満の若年者で占められております。そしてまた、受給者のうち任意退職者の過半数にのぼる現状でございます。まあその原因はいろいろあるだろうと思いますけれども、しかし、そういう若年者はまだ就職はどこからでもありますけれども、しかしながら、その難易におきまして、むずかしいかやさしいかによって給付日数を決定するというたてまえから、いろいろ一定の、必要な場合には給付延長の措置もあり、また、若年者が実際に受給している日数から見ても、本法案の内容は妥当なものと考えているものであります。
 若年の婦人につきましては、総理からもお話がありましたが、出産、育児等の理由によって退職する方も多いのですけれども、労働省といたしましては、特に婦人の問題は大切でございますので、婦人の職業能力の開発向上をはかるとともに、その福祉の増進をはかり、一方、子供の保育に関しては、関係省庁と連絡を密にしながら、託児所を有する働く婦人の家を設けるとか、あるいは企業内の保育施設の増設等、さらに融資制度の活用につとめておりますが、このたびの法案におきましても、出産、育児等の理由から職業につけない場合には、本人の申し出により受給期間を延長し、その理由がやんだあとにも受給できるように措置しているところでございます。
 最後に、この法案に対する撤回というお話がありましたが、まさに積極的な雇用対策こそは、いまから先大事なことだろうと思いますので、御審議のほどをよろしくお願いいたします。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 農民の受けます失業保険の受給資格につきましては、ただいまここで労働大臣が詳細に御報告いたしましたので、御了承願います。
 それから、出かせぎ者及びそれに対する対策につきましては、内閣総理大臣から詳細にお話がございましたとおりでございます。御了承願いたいと思います。
  〔国務大臣町村金五君登壇〕
○国務大臣(町村金五君) 出かせぎ季節労務者の多い地域の振興のためには、その地域における安定した職場をつくり出すことがきわめて必要だという見地から、過疎地域対策緊急措置法の運用によりまして、産業基盤の施設の整備をはかる、企業の導入をはかるということによりまして、通年労働の機会を拡大いたし、安定的な雇用を増大させるということを目標といたしまして、出かせぎ等の労働力の流出を防止するということに自治省としてもつとめておるところでございます。今後ともさらに積極的にこれらの施策を推進してまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(秋田大助君) 大橋敏雄君。
  〔大橋敏雄君登壇〕
○大橋敏雄君 私は、公明党を代表いたしまして、先ほど労働大臣から趣旨説明されました雇用保険法案につきまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 このたび提出されました本法案は、わが国の社会保障制度の一環として重要な役割りを果たしてきた失業保険制度を全面的に変質させることを内容とするものであります。
 その中におきまして、幾つかの新しい発想は見られるものの、労働者の雇用と失業を保障する制度のあり方として多くの問題を含んでおり、さらに、この法案提出の背景として自民党政府の根本的な失政の数々を指摘せざるを得ないのであります。
 そこで、まず総理にお伺いいたしますが、昨年十月の石油危機以来、ますます激化するインフレと、相次ぐ諸物価の狂騰などに見られる日本経済の混乱は、低劣な労働条件のもとで働いてまいりました勤労者の生活を根底から脅かしております。中でも、中小企業の倒産は激増し、出かせぎ労働者、日雇い労働者、下請労働者等の失業の危機と雇用の不安は、ますます深刻化しているのであります。
 このような状況のもとで、政府は、現行失業保険制度を改めるため、雇用保険法案を提出し、ただいま労働大臣から説明されたとおり、その趣旨は、雇用情勢の変遷に伴い、質量両面にわたる完全雇用の達成と、現行法の問題点を改正することにあるとされております。しかし、その内容をつぶさに検討すれば、その趣旨と中身は大きな開きがあるのであります。
 すなわち、同法案においては、三十歳未満の被保険者について、給付日数を一律に六十日に削減する、季節労働者の保険料を大幅に引き上げる上に、給付のほうは三十日分の一時金払いとする、あるいは就職支度金や扶養手当を廃止するなど、給付面において大幅な引き下げとなっている点が幾つか見られ、全国二千万人にも及ぶ被保険者の既得権の侵害であると思われるのであります。特に、この措置によって、出かせぎ労働者、臨時労働者、日雇い労働者等、現下の困難な状況下において失業の危機と雇用の不安にさらされている人たちに深刻な打撃を与えることが憂慮されるのであります。同時に、このような給付面での後退の影響を受ける人たちは、求職活動を従前よりも短期間になさなければならないため、結果といたしまして、その希望と能力に対応したものとは言いがたい悪条件のもとに就職を余儀なくされるのであります。これは、憲法が保障する職業選択の自由をも制約することとなるのではないかと憂うるものであります。
 要するに、本法案は、政府の低賃金による若年労働者の労働力流動化政策の促進策であり、田中内閣の列島改造計画の推進をはかり、ひいては所得政策の導入を意図したものではないかと予測されるのでありますが、総理の御見解を承りたい。
 さらに、私は、出かせぎ、日雇い、下請等の各労働者が現在こうむっている雇用の不安を取り除くことこそが最優先であると考えるのでありますが、なお、真の意味での完全雇用の達成、特に不安定な雇用状態の解消について、あわせて総理の基本的な考え方をお伺いしたいと存じます。
 次に、総理並びに農林大臣にお伺いいたします。
 わが国の農業は、政府による重化学工業優先の高度経済成長が、安易な国際分業論的発想に基づく農業切り捨て政策を強要してきたため、いまや全国の農村、農家は荒廃の一途をたどり、まさに危機的様相を呈しております。ちなみに、四十七年度における農家所得に占める農業所得の比率は二一%に急落し、兼業所得や出かせぎによる収入への依存化傾向を余儀なくされており、とりわけ、出かせぎ労働者数は、失業保険の受給者のみでも四十七年度で実に六十一万七千人にも達しているのであります。今後、都市勤労者の賃金水準が年々上昇し、一方では農業所得の伸び悩みが続くならば、この出かせぎ労働者はさらに一般化するものと考えられるのであります。
 本来、農業従事者が恒常的に季節労働者として出かせぎに行かざるを得ない状態がきわめて不自然なものであることは、言うまでもありません。しかしながら、農業のみでは生活が成り立たないため、やむなく長期にわたって家族と離れ、建設業等において、一般労働者とは比較にならない劣悪な労働条件で働かざるを得ないというのが現実の姿であります。これはまさに政府の農業切り捨て政策の結果であり、農政の貧困が招いた悲しむべき結末であります。
 このように気の毒な立場に置かれている出かせぎ労働者に対しまして、このたびの雇用保険法案は、この出かせぎ労働者の保険給付と負担の過度の不均衡を是正するという理由から、従来の最高給付日数である九十日分を一律三十日分の特例一時金に削減し、保険料の負担も、従来の千分の十三から千分の十八に引き上げようとしております。このことは、一般の被保険者に比べて実に五〇%も引き上げられているのであります。その反面では、事業主に対する特別保険料は廃止されるということでありますが、これでは使用者を優遇し、季節的労働者には高負担を課すことになります。失業保険金が出かせぎ労働者の生活基盤に深く組み込まれている今日、このような今回の措置は、出かせぎ労働者の家族生活に重大かつ深刻な影響を与えることは明らかであります。しかも、出かせぎ労働者は、農業によって生活の自立がはかれないため、やむなく出かせぎと失業保険給付によって生活をささえているのであります。したがって、失業保険は、いわば農政のしりぬぐいの役割りを持っているともいえるのであります。
 農業従事者がこのような姿でなければ十分な生活が営めないという従来の農政の欠陥については、どのように考えておられるのか、また、こうした異常事態を改善するために、今後どのような農業政策を展開しようとしておられるのか、所信を承りたいのであります。
 次に、労働大臣にお尋ねをいたします。
 まず第一に、失業保険給付の日額でございますが、現行法では賃金日額の六〇%が給付されており、今回の改正によりまして、賃金の高い被保険者には最低五〇%、賃金の低い被保険者には最高七〇%という、いわゆる上薄下厚の給付率にするということでありますが、しかしながら、わが国の賃金はいまだ低水準にあり、たとえ一律七〇%給付にしたといたしましても、生活保障には不十分なものであります。しかも、最近の物価の高騰はまさに世界一であり、賃金及び年金等の実質価値は低下する一方であります。したがって、給付の日額については、少なくとも賃金日額の八〇%以上に引き上げることが、法改正にあたっての前提条件であると私は思うのであります。そうなってはじめて社会保障としての所得保障額といえるのであります。すでに、わが国より賃金水準の高い諸外国の給付額は、イギリスが最高八五%、フランスは八〇%、西ドイツでは七八%を給付しております。わが国も直ちに八〇%給付を実現することこそ正論であることを深く理解すべきであります。
 また、四十四年に扶養加算制度として創設されました扶養手当が廃止されますけれども、いかなる理由によるものか、あわせてお伺いいたします。
 第二に、所定給付日数についてでありますが、現在の被保険者期間に応じて給付日数を定める方式を改めて、年齢等による再就職の難易度に応じて定めることとしておりますが、これも一つの考え方であろうかと思います。この場合、三十歳未満の被保険者に対する給付日数は一律に六十日分に削減されており、そのために失業者が短期間で再就職をしなければならない、そういう結果になります。ということは、職業選択の自由を奪われることにはならないかと、先に指摘をしたところであります。たとえ若年者であっても、六十日の給付日数にすることは、既得権を大幅に侵害することであり、極端過ぎる措置と思うのであります。いかなる考えによるものなのか、納得のいく答弁をお願いしたいところでございます。
 第三に、季節的労働者の問題でありますが、今日問題になっております出かせぎ労働者の家庭の崩壊を防止するためには、就労経路の正常化、賃金不払い対策、労働災害の防止、有給休暇の付与等の就労に対する抜本対策を確立することが、出かせぎ労働者対策の急務であり、それなくして、失業保険のワク内でただ給付と負担の合理化をはかることは、まさに片手落ちの批判を免れないものであります。
 私は、こうした出かせぎ労働者をはじめ、屋外で働く全国の労働者の劣悪、過酷な労働条件の改善をはかるために、総合的な屋外労働者の福祉対策が確立されることを強く要望いたします。そして、そのための、仮称、屋外労働者福祉法の立法措置の必要性を強く訴えるものでございます。この点について、労働大臣の所信を承りたいと存じます。
 また、先に述べました三十日分の特例一時金は、あまりにも出かせぎ労働者の生活を無視した考え方と思われますが、これについてもあわせて御所見をお伺いしたいと思います。
 第四は、保険料の掛け捨て問題であります。
 都市労働者の多くは、その長い職業生活を通じまして保険給付を受ける機会もなく、長年、保険料を納付しているにもかかわらず、現行保険制度では何のメリットもない制度となっております。私は、決して失業保険制度無用論にくみするものではありませんが、一方において、雇用改善事業等の名目のもとに、事業主には実質的に保険料の還元が行なわれるにもかかわらず、一般の労働者に対しては何らの措置がとられていないのは、大きな疑問であるとともに、不公平を感ずるのであります。したがって、本制度の抜本改正をはかる考えがあるのならば、この際、一般の労働者にも、たとえば労働市場を引退する人々に対しては、脱退一時金の支給制度を採用すべきではないかと考えるのでございますが、御見解を承りたいと思います。(拍手)
 第五に、従来の福祉施設の中で、失業者が就職時において唯一の就職準備資金としてまいりました就職支度金について、これを今回廃止し、常用就職支度金とすることは、あまりにも極端な措置と思われますが、御所見をお伺いいたします。
 第六に、中小企業に関してでございます。
 この雇用保険法案が、従来の失業保険において適用除外されていた商業、サービス業等の零細企業に対しましても全面的に強制適用することは、これらの企業に働く労働者の福祉の増進に資するものとして評価できるのではございますが、しかし、現在これら中小企業、零細企業に働くこの人々は、政府の経済政策の失敗のしわ寄せを受け、経営上の危機に直面しているのであります。全産業に強制適用することは当然といたしましても、中小企業に対する何らかの配慮が行なわれてしかるべきだと思うのであります。特に、雇用改善事業や能力開発事業等は、大企業本位の運営が行なわれる危険性が十分予測されるところでありますが、これらの諸事業が中小企業にとっても十分メリットある内容とすべきだと思うのでございます。
 次に、大蔵大臣にお伺いいたします。
 同法案の保険財政の運用の問題点といたしまして、失業の予防と就職促進の美名のもとに、労使の納入した保険料が雇用改善事業等の諸事業に大幅に運用されようとしておりますが、本来、これらの事業は一般会計の負担において行なわれることが適正であると考えるのであります。また、財政当局が依然として雇用対策の財源を安易に雇用保険の特別会計に求めることは、かえって雇用政策の発展を阻害する結果となることをおそれるものであります。
 以上の点につきまして、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
 最後に、雇用保険法案の諮問に対しまして、職業安定審議会の答申では、一時に急激な変化を生じないよう再考を要すると指摘し、また、社会保障制度審議会の答申は、現行制度の問題点を一挙に解決しようと急ぐあまり、それによって影響を受ける労働者の生活を十分に配慮したとは思われないと指摘がなされているところであります。
 政府は、審議会の答申を尊重し、真に労働者の雇用の改善と福祉をはかるという基本的な立場に立つならば、本法案に関しては、私が以上指摘してきたごとく、数多くの問題があり、これらの点について十分再考し、出直すべきであることを強く主張いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣田中角榮君登壇〕
○内閣総理大臣(田中角榮君) 大橋敏雄君にお答えいたします。
 まず第一は、雇用保険法は、失業保険法を変質させるものではないかという趣旨の発言でございますが、本法案は、高齢化社会への移行やエネルギー問題に見られるような、内外要因による経済変動に伴う雇用問題にも的確に対処し得るよう、今後の経済社会の動向に処して失業保険機能について格段の強化をはかったものでございます。したがって、今後不測の事態が起こった場合にも、十分対処し得るものと考えておるのでございます。
 なお、政府は、現段階において、所得政策の導入は考えておりません。
 次は、完全雇用の達成についてでございますが、雇用保険法案は、雇用構造の改善、労働者の能力開発の推進、労働者の福祉の増進などにより、質量両面にわたる完全雇用の実現をめざすものでございます。このような考え方に立って、真に対策を必要とする失業者に手厚い措置を講ずるとともに、たとえば雇用機会の不足している地域に積極的に安定した雇用機会を創出し、これらの地域の季節労働者その他不安定な雇用を解消する等の雇用構造の改善も、雇用保険における事業の一環として積極的に推進する考えであります。
 今後の農政についての御発言に対して答えますが、農政の基本としては、出かせぎのない農業経営が望ましいことであり、政府としても、この線に沿って、従来から農業経営の近代化、農地保有の合理化等、構造政策には特に留意してまいったところであります。また、これとあわせて、農村地域への工業導入を促進し、兼業農家の所得の確保をはかってまいりたいと考えます。要は、出かせぎをしなくて済むよう、工業の全国的再配置、中核都市の建設などにより、国土の均衡ある発展をはかることが必要だと考えておるのであります。
 残余の質疑に対しては、関係閣僚から答弁をいたします。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
○国務大臣(福田赳夫君) 雇用保険法に規定する各種事業の経費は、労働保険特別会計でなく、一般会計で支弁すべきではないか、こういう御所見でございますが、雇用保険法に規定する雇用の改善、労働者の能力の開発向上、その他労働者の福祉向上、これらのための諸事業は、失業という保険事故の発生を防止し、また、これを早期に解消する、さような効果があることは、これは議論の余地のないところである、かように考えます。したがいまして、その結果、これらの支出は、直接、被保険者の福祉の向上、及び保険給付の軽減、したがって保険経済上の利益につながるものである、よって、これらに要するところの財源を労働保険特別会計から支出することは、妥当な措置であると考えますので、これを変更する意図はございません。(拍手)
  〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 農政につきましてお話がございました。総理大臣からもお答えいたしましたけれども、もちろん、出かせぎのない農業経営が望ましいことは当然でございますが、たとえば、水田単作地帯のような、農業労働の季節性の大きい地域でございまして、地元に兼業機会の乏しい地方におきましては、農家の所得確保のためにやはり出かせぎが行なわれているのが今日の実情でございますので、われわれは、農業生産基盤の整備であるとか、あるいはまた農業団地の育成、農地流動化等、この農地流動化につきましては、今回農振法というものを御審議願うために提案いたしておりますが、従来は、農民みずからが耕す人でなければ農地を持てないということになっておりまして、やはりそういうようなことが規模拡大のある意味においての支障になっておりますので、やはり規模を拡大して生産コストを下げて、そして国際社会において農産物の価格がそれに競争のできるような地位に引き上げていくということが大切でありますので、この流動化等に十分の力を入れまして、農業によって他産業従事者と均衡のとれた生活を営めるようにという考え方のもとに農政をやってまいっておるわけであります。しかし、また一方において、専業の農家を中核といたしまして、それに配するに兼業農家を含めた集団的生産組織といたしまして、コストダウンをして競争力を維持させる。同時にまた、いま総理もお話のございましたように、そういうふうにいたしますと、やはり兼業機会が多く造成されますので、農村に工業を導入する法律をつくりまして、いまぼつぼつそういうことが行なわれておることは御承知のとおりでありますが、どこまでもやはり出かせぎというふうなものをなるべくなくするためには、地元において安定的な就業機会を増大いたして、そして兼業農家の所得の確保をはかってまいるということが大切なことであろうと思いますので、そういう方向にただいま農政を進めておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣長谷川峻君登壇〕
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
 まず第一番は、給付率を八〇%に引き上げるべきだというお話がございましたけれども、これは他の社会保険と違いまして、算定の基礎となる賃金の中にはボーナスやら臨時賃金なども入っておりますので、定期給与と比較した実質的な給付がもうすでにかなり高く入っております。したがって、高額所得者の給付率を引き上げるには限界がありますので、この法案に出ておりますように、上のほうに薄く、下のほうに厚いというこの給付率が適当なものであろうと考えているわけであります。
 扶養手当の問題につきましては、わが国におきまして、扶養家族に対する諸手当はすでに賃金の中に入っております。そういう織り込み済みのときでございますから、今回は、扶養家族のない者を含めて、広く低所得者層全体に給付率を高くしたことに伴いまして、扶養手当はその中に吸収されたということで御理解をいただきたいと思うのでございます。
 次に、三十歳未満の被保険者の給付日数を一律六十日分にしたのは、職業の選択の自由を制約するじゃないかというお話でございますけれども、現在若年者の再就職というものはほんとうに容易であるに対して、高年齢者の再就職は非常に困難でございます。ことに地域によってそれがまたあらわれておりますので、今後そういうばらつきというものを調整する、年齢等の就職の難易度に応じて所定給付日数を決定することとしております。これによりまして、被保険者であった期間の長短によって決定する現在の方式よりも、中高年齢者等就職困難な者に対して、より手厚い給付を与えることにしておりまして、若年者の場合でも、その受給実績や若年者の労働力需給の逼迫状況から見て、今日のもので妥当だと思っております。しかし、本法案でも、就職が困難な者につきましては、給付延長や、全面的に失業状況が悪化した場合におきましては給付延長の制度を新設し、就職が困難な事情にある者の援助には万全を期しているところでございます。
 さらに、労働省は出かせぎ労働者に対して将来ともにしっかり手当てすべきじゃないかというお話がございましたが、これは御案内のように、就労経路の正常化とか、あるいは雇用関係の明確化とか、通年雇用奨励制度等いろいろやっておりまして、しかも就労前の技能安全講習会や健康診断の実施、特に賃金支払い保障制度の普及等々やっておりますが、いまから先も、これをさらにさらに主要就労地における援護相談所や福祉センターの設置など、各種の福祉施策を総合的に推進してまいるつもりでございます。
 さらに、三十日分の特例一時金は、出かせぎ労働者の生活に非常な影響を与えるじゃないかという御質問でございます。
 このたびの法案では、これからいままで問題となっておりました農林水産業に適用拡大することが第一。その農林水産業は、季節的労働者が非常に多いために、適切な措置を講じなければ極端な不均衡を招くおそれがありますので、その受給者につきましては、その実態に即しながら特例を設けた次第であります。
 給付面は、三十日分の一時金としておりますが、これは季節的受給者の平均受給実績や、新制度による給付日数の大幅な引き上げ等を考慮しまして、急激な変化を避けるとともに、一時金制度をとることによって就労の機会の増大が期待される等、これらの労働者の生活の実態に一応即応しているものと御理解をいただきたいと思うのであります。
 次に、一般被保険者には脱退一時金というものを支給しないかというお話がございましたが、失業保険は、元来長期積み立て保険制度ではないのでありまして、脱退一時金制度は、制度の基本的性格にかかわるものと思いまして、ただいまのところ考えてはおりません。しかしながら、お話のありますように、高齢者には保険料を免除するなど、実質的に御指摘の趣旨に沿うようにだんだんと配慮するつもりでございます。
 さらに就職支度金、このお話がございましたが、今日の就職支度金はいろいろな面において問題のあることは、御案内のとおりでございます。そこにおいてか、このたび、常用就職の困難な方々に対しましては、現行の就職支度金制度にかえまして、常用就職支度金制度を設けることにしたことでございます。
 さらに、雇用改善事業が中小企業にメリットがないじゃないか、こういう御質問でございましたが、私は実はその逆のことを考えておりまして、雇用改善事業とか、能力開発事業あるいは優遇措置等は、大企業よりは、実を言いますと、こういう能力開発、福祉対策というものは資金的に困難な中小企業にとって大きなメリットが生じてくるもの、そういうところにねらいを定めまして、具体的に事業の細目を定めるにあたっては、十分に中小企業の方々に、より手厚くなるように特別に配慮してまいるつもりでございます。
 最後に、大橋先生から審議会の答申の内容等々もこれあり、この法案について慎重に考えるべきだというお話がありましたけれども、私たちは審議会の御議論等々をよくよく承知いたしまして、労働省の原案を、そういう意味で審議会の意見を尊重しながら見直して、正すべきは正して、このたび法案を提出しました次第でありまして、何とぞ、慎重御審議のほどをお願い申し上げるものであります。(拍手)
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時十四分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  田中 角榮君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  中曽根康弘君
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
        自 治 大 臣 町村 金五君
        国 務 大 臣 小坂徳三郎君
 出席政府委員
        内閣法制次長  真田 秀夫君
     ――――◇―――――