第077回国会 予算委員会 第4号
昭和五十一年一月三十一日(土曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 荒舩清十郎君
   理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君
   理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君
   理事 山村新治郎君 理事 小林  進君
   理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君
   理事 山田 太郎君
      上村千一郎君    江崎 真澄君
      小澤 太郎君    大野 市郎君
      奥野 誠亮君    北澤 直吉君
      倉成  正君    黒金 泰美君
      櫻内 義雄君    笹山茂太郎君
      瀬戸山三男君    谷垣 專一君
      西村 直己君    野田 卯一君
      藤井 勝志君    保利  茂君
      細田 吉藏君    前田 正男君
      松浦周太郎君    安宅 常彦君
      阿部 昭吾君    阿部 助哉君
      石野 久男君    岡田 春夫君
      田中 武夫君    多賀谷真稔君
      堀  昌雄君    安井 吉典君
      湯山  勇君    荒木  宏君
      林  百郎君    増本 一彦君
      小濱 新次君    松本 忠助君
      河村  勝君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      福田 赳夫君
        法 務 大 臣 稻葉  修君
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        文 部 大 臣 永井 道雄君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        農 林 大 臣 安倍晋太郎君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
        郵 政 大 臣 村上  勇君
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
        建 設 大 臣 竹下  登君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長
        北海道開発庁長
        官       福田  一君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      井出一太郎君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)
        (沖繩開発庁長
        官)      植木 光教君
        国 務 大 臣
        (行政管理庁長
        官)      松澤 雄藏君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 坂田 道太君
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      佐々木義武君
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 小沢 辰男君
        国 務 大 臣
        (国土庁長官) 金丸  信君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        内閣法制局第一
        部長      角田礼次郎君
        公正取引委員会
        事務局長    熊田淳一郎君
        警察庁長官   浅沼清太郎君
        警察庁警備局長 三井  脩君
        防衛庁参事官  伊藤 圭一君
        防衛庁参事官  平井 啓一君
        防衛庁防衛局長 丸山  昂君
        経済企画庁調整
        局長      青木 慎三君
        経済企画庁物価
        局長      喜多村治雄君
        経済企画庁総合
        計画局長    宮崎  勇君
        法務省人権擁護
        局長      村岡 二郎君
        外務省アジア局
        長       中江 要介君
        外務省アメリカ
        局長      山崎 敏夫君
        外務省欧亜局長 橘  正忠君
        外務省条約局長 中島敏次郎君
        外務省国際連合
        局長      大川 美雄君
        大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君
        大蔵省主税局長 大倉 眞隆君
        大蔵省理財局長 松川 道哉君
        大蔵省銀行局長 田辺 博通君
        文部省管理局長 清水 成之君
        厚生省社会局長 翁 久次郎君
        通商産業審議官 天谷 直弘君
        通商産業省産業
        政策局長    和田 敏信君
        通商産業省基礎
        産業局長    矢野俊比古君
        中小企業庁長官 齋藤 太一君
        運輸省港湾局長 竹内 良夫君
        運輸省鉄道監督
        局長      住田 正二君
        運輸省航空局長 中村 大造君
        労働省職業安定
        局長      遠藤 政夫君
        建設大臣官房長 高橋 弘篤君
        建設省計画局長 大塩洋一郎君
 委員外の出席者
        日本国有鉄道総
        裁       藤井松太郎君
        日本電信電話公
        社総裁     米澤  滋君
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      森永貞一郎君
        参  考  人
        (税制調査会会
        長)      小倉 武一君
        予算委員会調査
        室長      三樹 秀夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月三十一日
 辞任         補欠選任
  伊東 正義君     染谷  誠君
  青柳 盛雄君     荒木  宏君
  中島 武敏君     増本 一彦君
  正木 良明君     小濱 新次君
  矢野 絢也君     松本 忠助君
同日
 辞任         補欠選任
  小濱 新次君     正木 良明君
  松本 忠助君     矢野 絢也君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和五十一年度一般会計予算
 昭和五十一年度特別会計予算
 昭和五十一年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
○荒舩委員長 これより会議を開きます。
 昭和五十一年度一般会計予算、昭和五十一年度特別会計予算及び昭和五十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。小林進君。
○小林(進)委員 私は事前に政府に質問の要旨を申し上げておきました。その予定の質問を申し上げる前に、重大な問題について、突如ではありますが、まず前もって御質問申し上げたいと思います。
 その第一は、けさの新聞の報道によりますというと、きょうの午前十時でありまするかを期して、国鉄当局は昨年十一月のスト権闘争に対して大幅の処分をおやりになるという、そういう記事が載っておりましたが、これが一体事実なのかどうか。これが報道されるとおり事実の問題であるとするならば、大変重大な問題であると私どもは考えざるを得ないのであります。責任ある政府当局の御答弁をまずお伺いをいたしたいと思うのであります。総理大臣からお聞きしたいのであります。
○三木内閣総理大臣 運輸大臣からお答えいたします。
○木村国務大臣 国鉄におきましては、昨年の十一月末から十二月にかけましたあの違法なスト行為につきまして、きょう十時に処分の発表をいたし、それぞれに通告をする、なお、あの間におきます国鉄のこうむった損害につきましての賠償の請求もあわせて行う、こういうことでございます。
○小林(進)委員 これはまことに大変な発言だと思うのでございまして、いま運輸大臣は、昨年の十一月から十二月までに行われた違法ストとおっしゃいましたが、一体何を根拠に違法ストとおっしゃるのか。憲法の第二十八条には、労働者の基本人権として、これは労働者であれば必然的に備わっている、まあ身についた権利として新憲法は認めているのであります。しかるがゆえに、新憲法の制定と同時に、この基本権は崇高なものとして認められた。しかし、たまたま当時占領下にありまして、ちょうど朝鮮戦争が勃発する前の時代でありまして、マッカーサー司令官が、日本の国内の体制を整える必要から、政略的に一たん与えたそのスト権を奪ったのであります。占領軍の政策で奪ったのであります。しかも、その奪った原因を、この前もわが党の赤松委員がここでも言われたように、これは当分の間なんだ、やがてそのうちには憲法のもとに復帰するんだという、こういう確約も行われたと聞いているのであります。それを、その憲法本然の権利をマッカーサーが奪ったままに今日まで来ておいて、それが違法行為だというような、いわゆる国民を単純な言葉でだますような、そういう卑劣な理由でここで処分を行うなどということは、まことに民主政治と憲法の精神を裏切る大変な間違いだと私は思うのであります。
 しかも、どうもきょうの報ずるところによりますと、その大量の処分に対して、政府側でありますか、あるいは自民党でありますか、政党側では、この処分の量において質においてまだ不満足は多いけれども、まあこの程度ではやむを得ないだろうということで、公然と政府がこの国鉄当事者の処分に介入をしていることを明らかにしているのであります。これなども実に、労使対等の原則であります労働者の交渉権、当局者の交渉権、それに対する重大な国家権力の干犯だと私は思うのであります。干犯であります。思うのではない。干犯だ。政党もまた実に不当な介入をしていると言わなければならぬのでありまするが、そこら辺の事情もどうなっているのか、いま一度お伺いしておきたいのであります。
○木村国務大臣 現行の法秩序のもとにおきましては、公労法によって国鉄はストを禁止されておるわけでございます。したがって、ストはやっていけないことになっておりますので、スト類似行為は結局違法であるということであるわけでございます。しかも八日間にわたりまして、従来にない、全国鉄の機能が麻痺するということでございまして、国民に対して与えた被害はかつてない大きなものだというふうにわれわれは見ておるわけでございます。したがいまして、これらの違法行為に対しまして国鉄が厳正な態度で処置すべきであるということは、国鉄を監督をいたします政府側の責任大臣としては、事前にその趣旨のことは、国鉄に運輸大臣としての考えは伝えております。
 ただ、処分そのものにつきましては、これは国有鉄道総裁の権限で総裁がやることでございますので、その処分は国鉄総裁が自己の責任と権限において行ったということでございます。
○小林(進)委員 大臣はあくまでも公労法に基づく違法行為であるということをおっしゃった。私は憲法を否定したマッカーサーの便宜的な法律であると言った。その発生の理由は別にいたしましても、もし違法行為という言葉ですべてが律せられるならば――――――――――――――――――――――そうしておいて……(発言する者あり)われわれから見れば悪い政党であります。われわれから見れば悪い政党でありまするが、多数決の名において独裁的な悪法をつくっておいて、それに逆らうものが全部違法だ、違法だと処分されたならば、人民の権利はないのでありまするよ。それあるがゆえに、いわゆる民主政治のもとには抵抗権というものは認められている。抵抗権というものがあり、人民の抵抗する自然の権利というものが、悪い世の中を直し、社会を進歩さしていく原動力になっていくのであります。これが、多数決の名において自分たちの都合のいいことをつくったら、それは独裁です。政党の名においての独裁なんです。それが全部違法という名のもとにおいてできないならば、いわゆる人民の基本的な権利である自由というものは、これで踏みにじられるのです。お隣の韓国を見なさいよ。議会はあるけれども、出てくる法律が全部、これは違法だ違法だでは独裁じゃないか。独裁の法律で韓国はあのとおり暗黒の政治をやっているじゃないか。あなた方が、違法行為だというような、そういう論拠でやってくるならば、わが日本も遠からずこれは韓国になりますよ。一方的な、単純なそういう議論で労働者の基本権を奪っておることを正当化するような、そういう子供じみた理屈にわれわれは納得できません。
 それから、いま一つこの問題について申し上げたいことは、違法行為と言うが、原因はないじゃない。二十八年間労働者が闘ってきた。何万、何十万の労働者が処分を受けた。その処分の中で、ようやく一昨年、田中内閣のときに、田中さんにこの問題を出してきて、そうして正当な理論を出して、それならばこの問題は一年間の期間においてスト権の問題について研究してみましょう。その田中前総理大臣の話は、一年間のこの研究の中で前向きに問題を処理しましょうという、かすかではあるが労働者に一つの光を与えたのであります。しかし労働者の階級は、一年間は長いからせめて三カ月で結論を出してくれないかという強い要望をした。しかし、前総理の田中さんは、それは三カ月じゃ短過ぎるから、せめて一年間の期間だけは私の言うことを聞いてくれということで、労働者の方が折れて納得をしたのであります。その一年間の期間の間にあなたは何をやった。三木さんは何をやった。何も研究もしないじゃないか。その一年間の期間がもう切れるというときに来て、時間がない、時間がないからまだ待て、その回答の出ないうちにストライキをやる労働者はけしからぬ、そういう言い方を政府は持ってきている。一年間の期間待ったんですよ、こちらは。あなたはなぜその一年間の間にその結論を出さない。だから国民は言っていますよ。ああ田中さんの時代はまだよかった、もし田中さんが総理大臣ならば、われわれはストライキをしないでもいま少し明るい結論をもらったろう。あのヤマブキのように何もやらない三木さんだから、われわれはついにこういう血の涙を流しながら八日間のストライキも打たなければならなかったのだ。ああ田中さんであるならば、われわれはこのストライキを打たなくてよかったのだという、これが労働者階級の声ですよ。しかし、田中が三木にかわろうとも、一年間で出すという政府の公約は消えているわけではないのです。なぜ一年間で出さない。その期限までになぜ出さない。出さない自分たちの責任を問わずして、待ち切れなくてついに最後の権利に訴えなければならなかった労働者を、ただ、スト権違法だ、スト権違法だということで処分するなどということは、それこそ政府側こそ、天を恐れず人を恐れざるファッショ的な傾向であると言わなくてはならぬ。ファッショ的やり方であると言わなければならぬのでありまして、この問題に対していま一度私は回答を得たいと思うのであります。
○木村国務大臣 現行法のもとで法秩序を守るということが民主国家の基本であると私は考えておるわけでございます。国鉄は現行法におきましてスト行為を禁じられておるわけでございますから、国民のためにもストをやってはならないわけでございます。それが法を犯してストをやったということでございますから、それに対する厳正な処置をするということは、やはり民主国家の法秩序を守る根幹であると思うわけでございます。その動機なり理由なりにはいろいろあろうかと思いますが、動機、理由のいかんにかかわらず、法を破って国民に迷惑をかけるということは、やはりこれは厳正な措置をとらなければ、日本の法秩序、また国鉄内における秩序も維持できない、こういう判断に立っておるわけでございます。
○小林(進)委員 私は、こういう小学校の三年生みたいな討論を聞くためにここへ出ているわけじゃないのでありますけれども、ただ、わが党の堀委員が次の質問に国鉄総裁を呼んでさらに詳しく質問することになっておりますので、堀委員の質問を奪っては悪いので、私はこの問題を留保いたしておきます。留保をいたしておきまして、次にいま一つ問題を提起いたします。
 それは松岡前政務次官の件であります。私が予定どおり質問をしようとするときに、社会党の方から指示が参りました。去る一月二十八日参議院本会議におけるわが党代表の質問に対する総理の御答弁が沖繩の県民に対し悪い印象を与えている、この点、真意をただせよという指令でありました。総理の御答弁の速記録を朗読いたします。
 「小野君の御質問の中に、松岡政務次官に、一言触れておられましたのでお答えをいたします。松岡君は、小野君の言われるように、沖繩県民を愚弄するというような考え方は絶対にありません。ありません。沖繩というものの置かれている立場に対して深い同情を持ちさえすれ、愚弄するという考え方は毛頭ないことを本人のために申し上げておきたいのでございます。しかし、松岡君はすでに辞表を出しておりますのでこれ以上のことは私は申し上げません。」これが第一点であります。この中で「深い同情を持ちさえすれ」という言葉がありまして、「同情」とは何だというのが一般の声であります。これは強者が弱者に用いる言葉である。支配者が被支配者に用いる言葉である。時にまれには被害者または不幸に遭遇した人に用いる場合もあるが、普通一般の用語としては差別を前提とした言葉である。沖繩県民九十万人は、政治、経済、文化の上に理解と公正と公平をこそ求めているが、差別に基づく同情は必要でないということであります。この言葉を撤回せよというのが第一点であります。
 第二点について、これも速記録を読み上げます。これは、「松岡政務次官の問題については、本人の一身上の問題で辞任をいたしたものであり、先ほど申し上げましたように、松岡次官は沖繩問題に真剣に取り組んでいこうとしていたものと信じます。しかしながら、この問題で種々の誤解を招いたことは、その任命権者である政府として遺憾であります。今後政府といたしましては、沖繩問題の重要性にかんがみ、沖繩県と沖繩県民のため、一層格別の努力をいたす所存でございます。」これに対しましては、沖繩県民並びに多くの大衆はこう言っております。問題点は、「本人の一身上の問題で辞任をいたしたものであり」ということであります。あれほど不始末をしでかし、あれほど世人の非難を受け、任命権者としての政府の責任はもとより、政治家としてのモラルとして与野党議員一同にも直接、間接の被害を及ぼしたこの唾棄すべき問題について、松岡前次官は沖繩問題に真剣に取り組んでいたなどと、むしろ彼の功績を称賛するような言辞をもって、遺憾であるというがごとき任命権者としての一言の言葉もないことは、国民感情、県民感情を逆なでした言葉であり、とうてい承服できぬのでありまして、任命権者として遺憾であったということを申し述べよというのが第二点であります。
 総理の簡潔な御答弁をお伺いいたしたいと思います。
○三木内閣総理大臣 小林君の御質問で、同情という言葉が何か支配者の言葉だと、私はそのように思わない。人間としての感情を持っておれば、沖繩が大東亜戦争における最後の決戦場となってたくさんな人命を失って、今日においても、親を失い、あるいはきょうだいを失った人、ほとんどそういうふうな不幸な目に遭っておる人たちばかりであって、そういう人たちに対して、人間として心から本当に気の毒なと思わない人があるでしょうか。同情というものを、そんなに何か権力者が被支配者に対してやる言葉というのは、余りにも小林君、非常にいろいろ人情の機微をよく知っていられる小林君の御質問としては、ちょっと受け取りかねるわけでございます。
 また松岡君は、私は松岡君の辞令を渡したときに、一生懸命に沖繩問題に取り組んでみますと彼も言っておったわけで、彼の善意は疑わないのですけれども、彼の行動の中に世間の誤解を招くような点があったことは、大変に私は遺憾だと――政務次官という立場でありますから、そういう立場として言動に対しては慎重でなければならぬことは、小林君の言われるとおりでございまして、そういうこともわれわれとしては、今後、政務次官を任命するときに、もう少しやはりよく注意をしなければならぬ点だという感じ、反省は持っております。しかし、松岡君は一生懸命やろうと取り組んだというその善意は、私は疑ってはいないわけでございますから、そのことを率直に述べたまででございまして、沖繩問題に対しては、海洋博の後においても、私は沖繩へ参って言ったことは、これが終わりではないんだ、これが沖繩のこれからの発展のスタートであるということを申したのであって、私は、いまもそのように考え、今年度の予算においても沖繩には特に意を用いたわけでございます。
○小林(進)委員 この問題はわが社会党の総意でございまして、いま総理のお言葉はそのまま参議院に返ってきます。ボールは参議院に投げ返しますから、どうぞそこでまたひとつ論議をしていただきたいと思いまして、私の質問はこれで留保をいたします。
 いよいよ私の質問の本論に入りますが、質問に際しまして、総理大臣、きのうも国会の当初で申し上げました。どうか御答弁は、私の問うことの真意だけをひとつつかんでいただいて、簡潔明瞭、要領よく御答弁いただきたいと思うのでございまして、これだけは重ね重ねひとつお願いします。私も、質問する方は時間に制限がありますので、総理大臣の答弁もみんなわれわれの時間を食っていくのでございますので、どうぞひとつその点は間違いないようにお願いします。
 私は、まず対ソ連の問題から質問をいたしていきたいと思うのでございますが、グロムイコ外務大臣が来日をされました。首相との会談の内容を承りたいと存じます。グロムイコ氏は日本と中国とのみつ月に水を差しに来た、あるいは覇権条項がソ連に矛先を向けている、これを牽制に来たのであるというような説もございますが、その真相を承りたいと思います。
○三木内閣総理大臣 グロムイコ外相の訪日は、日本の内政干渉をしようという意図で訪日したものではないと私は考えております。
○小林(進)委員 ソ連が日本の領土である千島列島を占領して三十年たちました。特に歯舞群島、色丹島、国後局、択捉島の四島は、第二次大戦後ソ連が占領するまで、日本以外の国が領有したことや、日本と外国の間で領有権が問題になったことはございません。したがって、国民は全千島の返還をソ連に要求する正当な権利があると考えているのでございまして、この交渉に政府がどれだけ前進せられるかということに非常に期待を持っていたのでございまするけれども、このたびの共同コミュニケで田中訪ソのときの共同声明を再確認されたに過ぎぬことについて、ソ連の壁の厚いことを知りながらも、非常に落胆をいたしているのであります。交渉に際して政府が弱腰であったのではないか、日本側の正当な主張を正しく伝えていなかったのではないかとの懸念も、いまなお喧伝されているのでございまして、これらの点を逐次質問をいたしてまいりたいと思います。
 まず第一は、この国会における決議であります。一九七三年九月であります。わが日本の国会においては北方領土の返還に対する決議がなされておるのでございまして、その内容は、
   北方領土の返還に関する件
  戦後四半世紀余にわたり、いまなおわが国固有の領土である歯舞、色丹及び国後、択捉等の北方領土が返還されていないことは、日本国民にとつてまことに遺憾なことである。
  よつて政府は、すみやかに北方領土問題の解決をはかり、日ソ間の永続的平和の基礎を確立するよう努力すべきである。
  右決議する。この決議に対して、政府は、いかなる努力と、いかなる責任ある行為をおとりになったのか、まずここから伺ってまいりたいと思うのであります。
○三木内閣総理大臣 国会の決議のみならず、これは国民の総意でもありますわけですから、これを体して、対ソ外交の中では、この四島の一括返還というものが一番の最大の懸案として、あらゆる機会に政府は努力をし、先般のグロムイコ外相と私の会談でも、相当予定の時間を延長してまでこの問題に対して解決をはかりたいと努力をしたわけでございましたが、小林君の最初に御指摘のように、なかなかソ連の態度はかたかった。この交渉というものが非常に困難な交渉であるということは、国民の御理解を得ておきたい。しかし、政府はこの方針を変える考えはございませんから、今後も忍耐強く問題の解決に向かって努力をいたす所存でございます。
○小林(進)委員 グロムイコ外相は領土問題に関し、昨年十月のソ連共産党機関誌「コムニスト」の中に論文を発表するとともに、北方領土は終戦処理で一切解決された問題で、日本の要求は根拠のない要求だときめつけておられる。どうもそこには、カイロ宣言、ヤルタ協定、ポツダム宣言等を根拠として言われているのではないかと思われる節もあるが、この点をひとつお伺いをいたしておきたいのでありまして、一体今回の交渉の中で、こういうもろもろの協定や宣言が出てきたかどうか、この点をまず総理大臣から、一言でよろしゅうございます。
○三木内閣総理大臣 この宣言を私の会談の中に特に取り出したということではなくして、もう日ソの領土問題のための交渉は、ポツダム宣言、カイロ宣言――ポツダム宣言は「「カイロ宣言」ノ条項ハ履行セラルベク」というのですから、カイロ宣言を受けて、そうしてサンフランシスコ平和条約、そういうものを踏まえての交渉でありますから、特にカイロ宣言で、あるいはまたポツダム宣言でというようなことを指摘して条約の論議をいたしたことではございません。もっと端的な交渉をしたということでございます。
○小林(進)委員 それでは、状況はわかりましたけれども、いままでは、ソ連はよく領土返還の要求が意味ないという理由の一つに、ヤルタ協定を引用する場合が多かったのであります。しかし、御承知のとおりヤルタ協定はわが日本を拘束する何らの法的権限もないのでありますから、それがなければ非常に結構でございます。
 そこで、次に私は、時間もありませんから急いでお伺いいたしますが、一体、対ソ連の交渉の中で、ソ連の対日参戦の問題が議題に供せられたことがあるかどうか。日ソの領土交渉、あるいは今後も続けられるであろう平和友好条約の交渉の中に、ソ連の対日参戦ということが私は当然問題にされなければならぬと思うが、政府は一体この問題をどう取り扱う気か。その決意を承っておきたい。外交官の中にもこれを説明して、ソ連は日ソ不可侵条約を侵犯して軍事的に占領をし、国際法に違反して自国の行政区画の中に北方の領土を編入しているわけで、これを言葉でごまかしたり、善隣友好、アジア集団安保などというきれいな言葉で言ってもそれを了承するわけにはいかぬ、こう言っている人もあるのでありますが、政府の所見は一体どうなのか。総理大臣からお伺いをいたしたいと思うのであります。
○三木内閣総理大臣 私とグロムイコ外相との会談の中に、この問題、先般の戦争に触れて私は引用して論議はいたしませんでした。
 外務大臣との場合にそういうことがあったかは、外務大臣から答えることにいたします。
○宮澤国務大臣 私との間では、それに関連した話を私としてはいたしておりまして、かなり露骨には申してはおりませんけれども、ソ連がわが国と戦争をした結果、その勝利としてこれらの領土を獲得し、領有権を主張するものであるかという闘いに対しましては、別にそのこととは関係がないという答えをいたした経緯がございます。
○小林(進)委員 外務大臣にしては、一応この問題の芽をお出しになっただけでも大変な前進だと私は思います。当然やるべきことでございますが、これはやはり国際法上の問題であり、国際信義の問題であります。勝てば官軍、負ければ賊軍、勝った者は手段を選ばず何でもやって、勝ったが勝ちだというようなことが国際場裏に通用することになりますると、これは世界はやみでございまするから、どうかこの問題はひとつ基本的に腹を構えて、今後もしっかり交渉を進めていただきたいと思います。
 次に進みますが、サンフランシスコの平和条約の中で、千島列島の放棄がうたわれておりまするが、ここで放棄をするという千島列島の範囲の中に、一体歯舞、色丹、国後、択捉の四島は入るのかどうか。これが今後の領土権の交渉の中の一番基本だと私は思うのであります。この点をひとつ明確に政府側の答弁を伺っておきたいのであります。
○宮澤国務大臣 小林委員がよく御承知のとおり、一八五五年の日魯通好条約におきまして、全く平穏裏に、当時の帝政ロシアと幕府時代のわが国との間で両国の境界線を引きました。その際、得撫以北はソ連領である、そして択捉からこちらはわが国であるというふうなことが平穏裏に定められまして、一八七五年になりまして、御承知のように樺太、千島の交換という問題が条約になりましたが、この際、初めて千島列島という定義が登場いたしまして、千島列島は得撫以北占守島に至る十八島となっておりますので、わが国としては千島列島は伝統的に得撫以北というふうに考えております。したがって、歯舞、色丹、国後、択捉は千島列島に入るとはわが国は考えておりません。
 次に、サンフランシスコ講和条約との関連でございますが、たまたま私、サンフランシスコの会議に出ておりまして、当時の記録を持っておりますが、それによりますと、アメリカのダレス国務長官は、九月五日の、条約の起草国としての説明に際しまして、条約第二条の(C)項に言う「千島列島」という地名上の名称の中に歯舞諸島――歯舞アイランズと複数で言っておりますけれども――が含まれるかどうかについて議論があるが、米国の見解はこれを含まないと解すると言っております。
 なお、吉田全権は演説をいたしまして、北海道の一部である歯舞、色丹すら云々ということを申しております。
 したがいまして、一八五五年の条約、一八七五年の条約、サンフランシスコ講和会議におけるわが国の主張、アメリカの提案者としての説明、いずれも、これらの島ばいわゆる千島列島に含まれない、北海道に属するものであるというふうに考えております。
○小林(進)委員 それは、大臣の御説明は、私、了承しております。なお加えて、一九五六年の九月七日には、米国政府はさらに重ねて公式の見解を発表いたしまして、択捉も国後もやはり常に日本領土の一部をなしており、正当に日本の主権のもとにあるものと認められるべきだ、こういう明確な見解も出しております。
 私が質問いたしますのは、その問題じゃないのでありまして、千島列島における四つの島は日本の固有の領土であるということに対して、政府はそれも加えて、もっと理論的な根拠と揺るぎなき証拠を、もっと深みのあるものをお持ちになっていたらどうですかということを私は申し上げている。これは、繰り返して申し上げまするけれども、日ソ交渉の基本的問題です。日本国民が全部この自信を持たなくてはならない。国民の中に揺るぎない自信を定着させるということからこの問題は発足しなくてはならぬと私は思うのです。総理大臣、しかるに、あなたの政治的顧問だなどと言われる平沢君が、歯舞、色丹のみを一応その返還を要求しておいて、二十一世紀か二十二世紀かになったら改めて国後、択捉の返還を求めたらどうだなどという発言をしてみたり――それだけじゃありません。また、わが日本の中には、学者と称し、専門家と称し、あるいは外交官と称する者の中で異論が幾つもあるのであります。それは、どうもサンフランシスコの条約は歯舞、色丹だけなんだ、国後、択捉は放棄したのだ、そういう意見があったり、その他高野雄一氏だ、あるいは田村幸策氏だ、あるいは前原光雄氏だ、あるいは古い条約局長の西村さんだ、こういう方々のいろいろな意見がある。こういう意見の中にわれわれは、どうも千島列島の返還を要求したところで力が入ろうわけがない。で、この点を、もっときちっと政府の側でこの国論を統一する、理論構成をきちっとやるというその努力をおやりになる必要があるのではないか、ということを私は総理大臣にお聞きしているのであります。一言でよろしゅうございます。決意のほどを承っておきたいのであります。
○三木内閣総理大臣 四島一括返還を要求するというのは、政府の変わらない基本方針であります。ポツダム宣言、またカイロ宣言からいたしましても、日本の固有の領土を返還を要求されるということはあり得ることではないと考えておりますから、こういう自由な日本でありますから、いろんな意見はあっても、国民の多数はそういう意見に同調するものではない、そういう考え方から、政府は変わらない方針でこの問題の処理に当たりたいと考えております。
○小林(進)委員 時間もありません。駆け足で申し上げますが、一つの私の提案です。まず、国民にひとつその確信を持たせよう。第二番目は、このサンフランシスコ講和条約に関係をせられた連合国、この連合国の中でもその主たる役割りを演じられたアメリカの発言ば先ほど外務大臣も言われた。私も言いました。なおそのほかインド政府なども、これは一九五一年の八月二十二日でありまするけれども、対米覚書の中で、日本の侵略によって他の国から獲得したものでない地域に対し、日本の主権が完全に回復さるべきであることを希望する、こういうふうにインドは正しく主張をいたしておる。こういう国々に千島の四つの島は日本のものだという確認を求めて、そういう国際的な同調者を集めることから私はこの問題を解決の方向へ努力されたらどうか、それが一つです。もし、それができなければ、サンフランシスコ平和条約の第二十二条に基づき国際司法裁判所に提訴をいたしまして、これは日本の固有の領土であってソ連のものではないということを国際の公の舞台でその判決を求めるという方法、こういう幾つかの具体的な方法を政府は努力されるべきだと私は思うが、私のこの提案はいかがでございますか。
○宮澤国務大臣 私からお答え申し上げます。
 関係各国に問題を訴えるということは、まさしくわれわれとしてもいたさなければならないし、いたしてまいってきておるつもりでございますが、先ほど小林委員が正しく御指摘になりました一九五六年の米国の覚書というものも、わが国のそのような動きに対しまして確認を得たものでございます。したがって、このような努力は今後とも続けてまいらなければならないと思いますが、他方で、いわゆる裁判所に対する提訴の問題でございますが、御承知のようにわが国は、国際司法裁判所規程第三十六条に基づく強制管轄権の受諾宣言をしておりますけれども、ソ連はそれをいたしておりません。したがいまして、一般的な規定による提訴ということについては、ソ連に応訴の義務がないということになります。といたしますと、同じく規程第四十条でございますか、特別の合意によっていたすということが考えられるわけでございますが、今日までソ連がこれに応じておりません。応ずる気配が実はございません。この問題は、過去の日ソ交渉において提起をされたことが実はございます。それに対しまして、ソ連は、ソ連の方針としては自国の領土の問題を他の機関に提訴をし、裁いてもらうような方針は持っておらないというような実は返事をいたしたことがございます。しかし、この方法などもやはり問題を国際世論に訴える一つの方法であるということは、確かに私はそのとおりであろうと存じます。
○小林(進)委員 私は、この問題についてはひとつなおかつ御努力を願うということで了承いたしまして、次に移りますが、日ソ共同宣言について、ソ連はサンフランシスコ会議にグロムイコ代表を送り、平和条約案に対し、長時間にわたり反対演説をいたしました。その上、同平和条約案は極東に新しく戦争を準備するものだ、こういう結論で調印を拒否したのであります。でありまするから、この調印拒否の理由を裏から見れば、日本政府は、サンフランシスコで平和条約の調印をすると同時に、同じ席で日米安保条約の締結をした。私は、ソ連はこれを指したものと了解するのであります。こういう軍事条約が平和条約の裏側にある限り、ソ連が調印を拒否するのも私は一理なきにあらず、こういうふうに考えるのでありまして、これらを勘案いたしますと、将来わが日本の固有の領土を返還願う大まかな道が幾つあるかと言えば、私は二つだと思う。
 その一つは、ソ連の世界戦略が変わることであります。ソ連の字引の中にはフェア、公正の字はないという人がある、力の外交だと。これはアメリカも力の外交でありまするが、両大国ともに力の外交を表面に出しているのであります。これが変わったとき。第二番目は、アジアの情勢に変化を来したときだ。このアジア情勢の変化の中心は、中国と日本であると私は思う。この日本が、いまソ連が非難をする日米安保条約を、この形を変えるときにある。ソ連をいわゆる仮想敵国と見てこれは軍事同盟が結ばれたことは、表面はどうであろうとも、これは大方の常識なんだ。この形を変えるときに、私は日本に四つの島が返ってくるという可能性が生まれてくるのではないか。
 もう一度申し上げますが、その意味において、この四つの領土を返還をする他の一つの方法として、日米安保条約についていま一度再考慮する必要はないかどうか、これも伺っておきたいのであります。総理大臣。
○三木内閣総理大臣 これはやはり別個の問題で、日本は、日本の安全を確保するために最善と思われる政策を選択する主権国家としての自由を持っておるわけです。北方領土の問題は、日本固有の領土であるから、カイロ宣言からしても、日本が暴力とかどん欲によって奪ったものではない領土は返すということは約束しておりますけれども、固有の領土まで返すということはカイロ宣言、ポツダム宣言においてもないわけでございまして、この返還を要求することと、日本の安全保障政策の上から選択する道とを、これを廃棄しなければ領土は返らぬという関連をつけて日本政府は考えてないわけでございます。
○小林(進)委員 私は、その点は総理大臣の御見解と全く見解を異にします。これはわが党と最も見解の離れたところでありますが、時間がありませんから、その追及は後日に譲ります。
 次いで、私は御質問いたしますが、グロムイコ外相が日本においでになったときに、三木総理大臣との会見の場で、日中条約ができれば日ソ関係を考え直すという御発言をされたということが一般の評判となっておるのであります。すなわち、これが問題の一句と言われておるところであります。これ以外にもグロムイコ外相は、日本の要求は根拠のない要求と誹謗し、この要求はしかるべき反撃を受けるだろうと公然と言われたとも言われておるのでございますが、この点は一体どうなっておるのか。
 客観的に見まして、わが日本社会党は積極中立、いずれの国とも仲よくし、いずれの国ともいわゆる敵対をしないという原則、この原則に立って私は質問するのでありますが、対ソ連交渉においては、どうも国交回復以来、領土問題に関しては終始圧力を受けっ放しのような感じなきにしもあらずであります。これ以上の圧力と言えば、私は軍事的圧力以外にはないのではないか、こういう意見も聞いておるのであります。
 ソ連にはブレジネフ・ドクトリンというものがあって、これに基づいて一九五六年にはハンガリーを攻撃した。一九六八年にはチェコを侵略した。その他東ベルリンで暴動が起き、ポーランドでも起きておる。いずれもソ連ドクトリンに従わぬものは戦車と大砲でじゅうりんをしておるという、こういう見解もあるのであります。日本も余り強い交渉をすると、こういう国々にならってあるいは軍事的に、軍事力による攻撃でも受けるのではなかろうかといってひそかに恐れている国民もあるのであります。
 そこで、グロムイコ氏の発言を一体どうとればよいのか、この点をひとつ総理大臣の御見解を承りたい。特にこれがおどかしであるとすれば、友好国の招待を受けて日本に来日されておる方が、その来日の場所においてこういうことを言われたとすれば、少し国際慣習から見ても異常なものではないかと思うのでございますが、簡単に御所見を承りたいと思うのであります。
○三木内閣総理大臣 懸案になっております日中平和友好条約は、日本と中国との間の平和友好条約であって、第三国に対するものではございませんから、ソ連とはこれは無関係の条約でございます。この点はグロムイコ外相にも明白に申しておいた次第でございます。
○小林(進)委員 総理大臣、御注意いただきたいと思います。こういう発言があったかどうかということを私はお伺いいたしておるのでございますから、その点だけにお答え願いたいのでございます。
○三木内閣総理大臣 日本の内政に干渉しようという発言はございませんでした。
○小林(進)委員 日中平和条約を結べば日ソ関係を考え直すという、そういうお言葉がありましたかどうか、お伺いをしておるのであります。
○三木内閣総理大臣 私が申しておるように、グロムイコ外相は日本の内政に干渉しょうという意図で訪日をしたわけでございませんから、内政干渉的な言辞は、私はそういうふうな発言はなかったと考えております。
○小林(進)委員 どうも総理大臣は大事なところになりますというと言葉を濁される。内政の干渉ではないが、しかし日ソ関係を考え直すというお言葉はあったものと、私は総理大臣のお話の中からそういうふうに理解をいたしまして、次に移りたいと思います。
 そこで、問題になるのは、もしそういうお言葉があったとすれば、私はその後ろにやはりソ連の軍事力というものが背景になっておるのではないかと、一応日本人としては考えざるを得ないのであります。そこで、私は次の質問に入りますが、ソ連は北方領土を占領しているだけではなく、そこには大規模な海軍、空軍の基地を置いて、アメリカに対抗してアジア・太平洋地域で勢力拡大を図るための重要な拠点にしている、こういうことが言われているのでございまして、伝えられるところによりますと、択捉島の天寧、国後島の東沸には核装備の空軍が、それから単冠港はソ連太平洋艦隊の重要な基地になっているというが、ソ連太平洋艦隊とは一体どんな装備とどんな力を持っておるのか、私はこれを承りたい。
 時間がありませんから、続けて言います。
 なお、ソ連の軍用機が頻繁に日本の領空に接近し、時には領空を侵して情報活動を行っているというが、その具体的事実があれば承っておきたい。
 なお、ソ連の太平洋艦隊は宗谷、津軽、対馬の三海峡をわがもの顔に航行するとともに、日本近海でしきりに軍事演習、海洋調査、情報収集を行っているというが、この具体的事実はどうなっておるのか。
 なお、マスロフ海軍大将を司令官とし、ウラジオストクに司令部を置いて、約七百五十五隻、百二十万トンの強力な艦隊を持ち、その中には原子力潜水艦四十隻、弾道ミサイル搭載の潜水艦も含まれており、その訓練海域は太平洋からインド洋に及んでおるということでございまして、なおきのう報道されました新聞によれば、西ドイツのシュピーゲル誌は、西ドイツの週刊誌ですね、最近のソ連の海軍の増強を非常に詳しく報道しておるのでありまするが、これによると、いま私が申し上げました数字よりもさらに強大なものがあって、現在のソ連の軍事力は、これは未曾有の大きなものだ、世界開聞以来ない強大なものであって、アメリカの軍事力や装備をはるかに凌駕しているというのでありますが、その強大な軍事力を四つに分けて、四分の一がいわゆる太平洋艦隊となり、司令部のあるウラジオストクを中心にしておる。わが日本の自衛隊の艦隊の力では約二十万トン。ソ連のウラジオストクにおける艦隊は百二十万トン。六倍であります。一体こういう大きな軍事力を何の目的でこの太平洋あるいは北千島に置かなければならぬのか、そういうこともあわせてひとつ政府の御見解を承っておきたいのです。できれば総理大臣にお伺いしたいのでございますが。
○三木内閣総理大臣 防衛庁長官の方が詳細にお答えできると思いますので、防衛庁長官からお答えいたします。
○坂田国務大臣 ソ連太平洋艦隊は、司令部をウラジオストクに置きまして、ウラジオストク、ペトロパウロフスク、ソビエツカヤ・ガワ二等の基地に、潜水艦、巡洋艦、駆逐艦等の艦艇約七百五十隻、約百二十万トンを保有しておるというふうに言われております。
 次に、ソ連艦隊は、相手艦隊の打破、海上交通路の破壊、地上目標の破壊、輸送の実施等を目的とすると言われております。一方、日本周辺におきます活動状況などから、太平洋艦隊は次のような役割りを持っておると思われます。すなわち、海上における戦略攻撃力の保持、相手海上兵力特に空母部隊、潜水艦の撃滅、相手海上交通路の破壊及び撹乱、水陸両用作戦を含む味方地上軍への協力、ソ連本土及び海上交通線の防衛、海上勢力の誇示でございます。
 北方領土及び千島にございますソ連の軍事基地の実情について申し上げますと、北方領土であります歯舞、色丹、国後、択捉の四島のうち、歯舞島を除く諸島に、ソ連の軍事基地として飛行場あるいは港湾が設置され、航空機、警備艇等が配備されておると承知をしておるわけでございます。
 国後島には東沸飛行場、それから古釜布飛行場、ここには輸送機・ヘリコプター数機、択捉島には天寧飛行場、戦闘機約二個飛行隊、色丹島には斜古丹港、色丹飛行場、警備艇十数隻ということでございます。
 それから、御承知のように一九七〇年にオケアン演習がございましたが、昨年一九七五年には、四月中旬から下旬にかけまして、衛星を使いまして、モスコーの統一指令に基づきましてバルト海、それからバレンツ海、インド洋、北海、大西洋、太平洋、地中海等で、参加艦艇実に二百二十隻という全世界的規模で演習を実施いたしております。これは一九七〇年四月に実施されましたオケアン演習以来のものでございまして、オケアン七五と呼ばれております。わが国周辺におきましても、カムチャッカ半島東南、本州東岸沖、対馬海峡、日本海、フィリピン海に太平洋艦隊が展開をし、駆逐艦、商船、海洋観測船、上陸用舟艇等の艦船及びTU95、TU16、IL38等の航空機が多数参加いたしましたが、対潜水艦戦、対空母攻撃、商船護衛、両用戦等多岐にわたる訓練やミサイル発射、射撃訓練、爆撃訓練等が行われたものと推定されております。
 また、太平洋艦隊では、オケアン七五に続きまして昨年六月下旬から七月上旬にかけまして、日本海、東シナ海、黄海等で演習を実施いたしております。
 このような状況でございます。
○小林(進)委員 大体、私が挙げた数字とあなたの数字は同じようでございますから、これは事実でございましょう。
 これに対して、新しくアメリカの国防長官になられたラムズフェルド氏は、ソ連軍拡の脅威を強調された。シュレジンジャー国防長官がやめて新しくかわったら両国のデタントがむしろ進むのではないかという世評に反対をいたしまして、さらにソ連に対するいわゆる恐慌あるいは脅威を強調せられておるのでありまして、これは言わずもがな、二つの超大国を中心にした世界的な緩和の情勢ではない、世界はまさに動乱と危険な方向に動いていると判断していいと私は思います。これは私は時間があれば、ラムズフェルド氏の意見もシュピーゲル誌の意見も、みんな述べて実証したいのでありますが、時間がないから、これはやめますが、このほかにソ連は、こうした軍事的圧力を背景にいたしまして、日本沿岸に大型漁船団を繰り出して、沿岸漁民の安全と利益を脅かしているのみならず、漁業資源をも略奪をしていることは、もはや、前の質問で明らかになったところであります。これに対しても何らの適当な処置が講ぜられていないのであります。
 それのみならず、私は特にここにお伺いいたしたいことは、千島における、いわゆる漁業、漁民の被害でございまして、歯舞、色丹、国後、択捉の四島がとられて以来、このわが日本の漁民が受けている被害が、一体どの程度になっていますか。これも時間があればお伺いしたいのでありますが、時間がないから、私は私の資料で申し上げます。
 戦後から今日、昭和五十年の十二月五日現在まで、いわゆる拿捕された船の数が一千四百九十八隻、拿捕せられた人間が一万二千五百四十人、その中で、今日まで釈放された船が九百十二隻であります。釈放された人間が一万二千四百四十二人でありますから、まだ船の数においては相当数のものがソ連に取り上げられたままであります。一千四百九十八隻から九百十二隻を引いてもらえばよろしい。その残は全部まだ帰ってこないのであります。一体その中で死んだ人間は幾らあるかと言えば、三十六名がすでに死亡をいたしております。沈没をされた船であります。警備艇に追撃をされて沈没された船が二十五隻であります。いまなお抑留せられて、異国のどこかで泣きぬれている人が六十二名であります。
 こういう現状に対して一体、政府はどういう手を打たれたのでありますか。北鮮の中で何か一つ漁業でやられた人の問題を、政府は、まるで国がひつくり返るような大騒ぎをして、事実も確かめないで北鮮の問題には狂気のようにわめいている政府が、このソ連の、こういう大きな被害者に対して、政府の側から一つも声が出てこないのが、私は不思議でたまらない。何をされているのですか。
 一つの例を申し上げますと、昭和四十四年、第十三福寿丸がソビエトの警備艇の激突を受けた。そして十二名が死亡いたしました。これに対して日本政府は何をしたか。表面上は損害賠償の請求をしたけれども、ソ連の方では福寿丸が悪いんだ、こっちの方はいいんだという返事を受けたら、そんなことはないでしょうと言ったきりで終わっているのです。そして国民の側に向いては、いや賠償の権利だけは留保している。何年留保するんです、百年も留保するのか二百年も留保するのか。留保、留保で国民をごまかして、そのままにしているなどという、こんなのは外交じゃない。こういう方々にとっては、政府はあってなきがごとしであります。こういう問題をどう処置をされているのか。私はひとつ政府に責任ある答弁を簡単にお伺いしておきたいと思うのであります。
○宮澤国務大臣 ただいまの福寿丸の件でございますが、昭和四十五年の四月に至りまして、船主、遺族からの損害賠償請求書が出てまいりまして、ソ連に伝達をいたしました。その前に政府として厳重抗議をしておりますようなことは御承知のとおりでございますが、それに対しましてソ連は、七月になりまして、本件は福寿丸の船長に責任があるということを申してまいりましたので、わが国から十一月に再反論をいたしまして、早期解決を要望したという経緯がございますが、概して申しますと、小林委員の言われますように、このあたりの処理は、きわめて、われわれとしては不満足な結果に終わることが多うございました。抑留者につきましては、その都度、私ども、この話をいたします。そうしますと、とにかく現在、抑留されている者を釈放するというようなことは最高会議の決定と称しまして、いたしますわけでございますが、やはりこの問題の、いわゆる安全操業問題と称せられるものの基本にございますのは、ソ連の四島、北方諸島に対する領土権の主張というものが、ソ連なりの主張に基づいて抑留をする、わが国は、それに対して基本的に見解を異にするというようなことから発生をいたしております。したがいまして、基本的にはやはりその問題を解決をしなければならない。しかし、その前にも、いわゆる監視につきまして、わが国の責任者が乗り組みまして監視をしてまいりますならば、違反事件が減るのではないかというふうに考えられますので、そのような方法について、ソ連と話し合いを続けていきたいと考えておるわけでございます。
○小林(進)委員 政治でありますから、政府の決意を私は聞きたい。どうも、そういう点において、言葉は多いが実績において見るべきものがないということ、まことに残念にたえません。
 時間がありませんから、次に、ソ連に対する覇権主義反対の交渉をしたらどうかということ、非武装地帯の設置をしたらどうかという問題について、質問を進めてまいります。
 政治の最大の目標は、平和を確立し、戦争の惨禍を防止することにあります。いま日本にとって平和と戦争の危険は、それは地域的関係で非常に高まっているのであります。すなわち日本は、いま世界を二つに分けて相争っているアメリカ、ソ連という二つの超大国と、それから新興の大国、中国という、この三つの谷間に置かれているということであります。二つの超大国、一つの大国の谷間にあって、しかも人類を滅亡する強力な核兵器の武装の中に投げ出されている。これが日本の悲しむべき運命であります。この危険をどう切り抜けるか。どうしてわれわれの安寧を保つか。この身に振りかかる危険をどう逃れるか。これは国民一人一人が真剣に考えなければならぬ問題であります。
 当面このために、この危険を解決するためにしなければならぬ問題が私は四つあると思います。これは私見であります。第一は朝鮮半島の問題であり、第二は日中平和条約の問題であり、第三は覇権条項をめぐる対ソ、対米、対中の問題であります。第四は未来の世界の平和のために大国主義を捨てて第三世界の国々とともに歩むということであります。私はこの三つを、危険防止のためにぜひとも解決しなければならぬと思うのでありますが、その中で、まず私は覇権問題から、ひとつお伺いをいたしていきたいと思います。
 一九七二年二月二十八日、アメリカの元大統領ニクソンと中国の故周恩来首相との間で、中国と米国の共同コミュニケが締結をされました。その中の本文に覇権条項が明記されております。参考までに読み上げますが、それによると、どちらの側も、アジア・太平洋地域で覇権を求めるべきではない、いずれの側も、その他のいかなる国あるいは国家集団がこうした覇権を打ち立てようとすることに反対をする、と声明をしているのであります。これに続いて昨年の十二月、フォード大統領は訪中をされたが、この覇権条項については、フォードさんは、これをそのまま踏襲をし、さらに、これを発展強化することを確約をして、米中の間に、いわゆるみつ月の間柄が定着をしているのであります。総理大臣は一体これをどういうふうに考えられるか。
 時間がないから続けていきますけれども、わが日本の前田中総理大臣は、ニクソンにおくるること七カ月であります、一九七二年九月二十九日には中国を訪問して、北京において日本国政府と中華人民共和国政府との共同声明を発表した。その本文は、第一に「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」という、実に歴史的な宣言から始まっているのでありまして、その第七項目に「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」、こう声明を発表いたしているのでありまして、この共同声明は米中のコミュニケとその内容を全く同じくしているのです。これはもう総理大臣がお認めになるとおりであります。
 この日本とアメリカと中国と三つの国の同じ覇権反対主義の共同声明に対して、フォードさんはこれを追認をした。なおかつ、これを発展することを約束したんだ。しかるに日本の総理大臣は、これを追認をし、条文化することに逡巡をしているのであります。しかも三木さんは、この田中総理の共同声明に対して、これをまとめたのは、おれがやらせたのだと広言していられる。宣伝をしていられる。宣伝だけ、自慢だけしておいて、その後始末は一つもしない。そういうことは、フォードさんに比較をしても、国際信義に背き、国民を裏切る重大な行為であると言わなければならぬと私は思う。一体この点をどうお考えになるか、簡単に決意のほどだけお聞かせ願いたいのであります。
○三木内閣総理大臣 ずいぶん小林君の独断的な御判断がありましたが、それは申しませんが、一九七二年の共同声明、これは追認も何もない。われわれは共同声明を基礎にして、今日の日中関係というものを発展させているわけですから、共同声明の中の条項を日本は厳格に守り、それを基礎として日中関係を発展させたいという決意にはいささかの変化もございません。フォード大統領に劣るものでは決してないということを明らかにしておきます。
○小林(進)委員 あなたは、いささかも変わらぬ、変わらぬとしゃべっていれば、みんな物はできたのと同じものだと思っている。錯覚を起こしちゃっている。しゃべっていることと、つくることは違うのでありますよ、あなた。ヤマブキの実の一つだになきぞ悲しきといって、あなたのは花だけ咲いている。中身なきをいかんせんやだ。われわれはそんな言葉を聞いているのじゃない。実行を聞いているのであります。おやりにならなければ、百万言費やしても、これはやらないと同じであります。
 そこで私は、あなたの言いわけはしばらく留保するといたしまして、この覇権反対が、日本を取り巻く三つの大国、いま申し上げますように米中日の間で取り決められたということは、日本にとって大変好ましいことである。これは米中日三国の間で、広い意味の安全保障協定ができたものと私は解釈してよろしいと思う。残るのはソ連だけです。そのソ連もまた覇権反対を認めて条文を取り交わしてくれるならば、日本は初めて日本の周囲における三つの国の谷間の中においておびえているという危険から逃れる曙光を見出すことができるのであります。
 グロムイコ外相が訪日をされたときなど、この覇権反対の日ソ共同コミュニケぐらいおつくりになる、そういう政治的アイデアというか、政治的発想が私はあってしかるべきだと、祈るような気持ちでいた。これがいわゆる外交哲学というものなんです。官僚じゃない、行政じゃない、政治の妙味というものはここにある。これはおやりになりますか。こういう発想をお持ちになりましたか。宮澤君、君はいい。
 私は総理大臣に聞いているのであります。これがもし、こういうようなソ連とも覇権反対の協定を結ぶなどということは理論的であって、そんなことば実践性がない、夢だというような者があれば、それこそ、いわゆる外交の哲学を知らざるオポチュニスト外交なんだ、テクニシャン外交だ。哲学も思想もない、低俗な外交と言わなければならぬのであります。私はこれを宮澤外交に見るのであります。
 それは別にいたしまして、それで結論を導くために、あえて言いますけれども、これは夢じゃないのだ。わが日本の外交官ですよ、ある外交官は、こういうことを言っておるのであります。覇権条項についてソ連が何か言うことがあれば、日ソ間で覇権主義反対の共同声明を出せばよいではないか。政府は、このために積極的に対ソ交渉を行うべきではないか。そうすれば、日中条約と日ソ間の共同声明と米中上海コミュニケによって、日米中ソの四大国が、いずれもアジア・太平洋地域において覇権を求めないという結果になり、ここに初めて、日本海も太平洋も波静かに、日本は裸で昼寝ができる、平和安全の国になる。その入り口に向かうではないか。これをソ連に対して言いわけ的な、へっぴり腰の態度だけをつけている三木外交にはかなわぬね、こういう主張をしている外交官もいるのでありますが、これに対して三木総理の決意はどうか。簡単にひとつ。
○三木内閣総理大臣 いろいろと、私には簡単に答えよと言うけれども、かなり独断の問題がありますので、私は、いろいろお答えしたいのですけれども、御趣旨に沿うてできるだけ簡単に述べますが、一九七二年という年は、覇権反対ということに、いろいろ重大な声明とか、発表のあった年ですね。二月には覇権反対の米中における上海声明、それから九月には日中の北京声明、これも覇権反対、もう一つ、やはり五月にアメリカとソ連との間に基本原則というものが発表されておるわけです。その中に、どういうことを書いてあるかというと、米ソは世界政治における特権、スペシャルライツ、それから優越、アドバンテージズ、これを求めず、ということを書いてあるわけですね。このことは、覇権反対とか言ってないけれども、意味はやはり覇権反対ということである。だから、日本も中国もアメリカもソ連も、原則としては覇権反対ということに一つの合意はあると私は解釈をしておるわけであります。
 これからは、これは一つの政治の問題である。原則としては、やはり、そういう基本的な原則の発表であるとか共同声明などを通じて、この点については原則的では一致しておるけれども、あとはやはり政治の問題。日本は、これを政治の問題として取り扱わないで、原則の問題として覇権反対を取り扱いたいというのが日本の考え方でございます。したがって、いまソ連との間に覇権反対の条約を結ぶという考えを持っておりませんが、基本的には、日本もアメリカも中国もソ連も原則としては大きな考え方の開きはない、こう解釈しておるわけでございます。
○小林(進)委員 総理大臣は何か一つお知りになっていると、それを一切しゃべらないと、どうも気が済まぬと見えて、質問しないことも盛んにおっしゃるので、時間を食って、やむを得ないのでありまするけれども、いまおっしゃったアメリカ国とソビエト社会主義共和国間の関係の基本原則というものは、私も承知しております。一九六七年に締結された。その中に、いま言われたように第十一条です。その合意書の第十一条に「米国およびソ連は世界の問題における如何なる特権または優越に対する要求もしないものとし、また他の何者のかかる要求も認めない。双方はすべての国家の主権の平等を認める。」と規定しているのであります。これはこれでいいじゃないか。この条項をできれば、一番谷間にいて困っている日本なんですから、それをひとつアメリカにも言って、米ソ両国がこの合意書の十一条をちょっと入れかえて、アジア・太平洋地域において双方は覇権を求めないという条項にちょっと直してもらえば、これで米ソの間に覇権主義反対の条項がちゃんとでき上がるのだから、それくらいのことを積極的に求めるという政治的行動があってもいいのじゃないか。なおかつ総理大臣は、これは原則だけの問題で政治問題じゃない、実にこれは奇怪千万な説明であります。
 私は学者でもなければ、哲学を聞いているのじゃない。政治の問題として、これを現実の舞台に、現実の場に出してもらいたいからこそ、私は、こうして汗を流し一生懸命に論じているのです。そんな不謹慎な話がございますか、あなた。私はここで申し上げまするけれども、ここに荒船委員長もいらっしゃいますが、われわれ予算の代表は、こういう覇権問題、覇権主義反対の問題あるいは核の問題について、十一月の一日から十日間、国会の代表としてアメリカへ行ってまいりました。そのときにわれわれは、核の日本に対する持ち込みの問題や保有の問題に対して、アメリカ両院の議員諸君といろいろの交渉を続けましたが、あわせて、この覇権問題についても大変重要なわれわれの話題の一つにして、外交的交渉を続けてきたのであります。これは一緒に行かれた団長もいらっしゃいまするし、同行者もいられるのでありまするから、私のこれから言うことがうそであったらうそと言っていただきたいのであります。
 私どもは、そのアメリカ、ワシントンにおける上院議員との話し合いの中で、この覇権主義に反対する、その約束の中にソ連も仲間に入ってもらうということで、全く意見の統一を見たのであります。もちろん共産党はいらっしゃいませんでした、これは別でありまするけれども。そういうことについて荒船団長は大変熱心でございました。交渉で熱心であられましたと言っても私は過言でないと思います。そして政府が、あなたが、まごまごしている間に、すでに日米両議員の間でこの問題が正式に議題になっている。原則論じゃないのです。議題になった。これだけはひとつ肝に銘じていただきたい。
 まず、これに関する交渉の要点だけを申し上げますと、覇権主義反対には、日米中の三大国の間にすでに申し合わせができている。これにソ連が加わって四大国のいわゆる態勢ができ上がれば、日本は初めて戦争の不安から解放されるという糸口を、かすかながらもつかむことができる。この緊張緩和と日本の平和の糸口のためにも、覇権主義反対の、この安全の話し合いにソ連が入ってくれることである。これをソ連に説得し得る者はアメリカをおいてほかにない。アメリカの議会はこれをどう考えるかというのが、荒舩団長の発言であったのであります。これに対してアメリカの議会を代表する二、三の議員の回答がありました。時間がありませんから、ほんの御紹介にとどめますが、マクギーという上院議員は、中ソの対立が激しいので、むずかしいと思うが、中国はNATOの同盟に代表を送り協力的なのに比べ、ソ連はアジアにおいて緩和政策をとろうとしないのは残念である。中ソの最近の話がどうなっているか知らぬが、ソ連を四大国の覇権主義反対の仲間入りをさせるのは全く賛成である。もしソ連がこれに協力しなければ、米日中の間の関係は、さらに緊密の方向に向かうことは間違いなく、ソ連は結局、孤立することになろう。こういう見解を表明したのであります。これに対してジャビッツという上院議員は、私も全く賛成であり、ソ連にはオファーを出してドアを開いておき、仲間に入りたいときは、いつでも来られるようにしておくことであるという発言をしておるのであります。なお、下院軍事委員会の軍事給与分科会の委員長ストラットン議員は、こう言っているのであります。主義反対は全く賛成であるが、しかし、このことに関し、アメリカにソ連を説得する力があるかと言えば、アメリカの力には限度がある。覇権主義に反対するアメリカの態度は、国家も議会も真剣に話し合いをし、賛成もしており、フォード大統領も北京においてこれを確認している。われわれはソ連がこれに賛成してくれることを心から願っているが、アメリカはソ連に対し、それほど大きな影響力を持っていない。現在、直面している問題すなわちSALTの交渉やユダヤ人帰国の問題、中近東の問題などで、アメリカが対ソ交渉でどんなに四苦八苦しているかおわかりになりましょうという、こういう発言があったのであります。
 以上でわかるように、アメリカはソ連交渉が困難であっても、この覇権条項にソ連を仲間入りさせるということに非常に熱意を示している。研究もしているということを明らかにしているのであります。どんなに困難であろうとも、それが人類の生存と安寧に関する正しい道であれば、人類の英知を信じて、その努力をするのが外交じゃありませんか。総理の所見と決意を、ここでひとつ伺っておきたいのであります。
○三木内閣総理大臣 ソ連ばかりでなしに、世界各国が覇権反対ということは、平和の原則にかなうことでございますから、こういうことが普遍的な平和原則として世界が承認をされることは、私の強く望むところでございます。
 小林君は再度にわたって訪米をされまして、従来、閉ざされておった社会党の方々の訪米の機会が少なかったわけですが、非常な御努力に対して、敬意を表しておる次第であることを付言をいたしておきます。
○小林(進)委員 私はともかく、いまも申し上げましたように、政府の外交に先んじて、われわれの国会外交がアメリカの議会を通じてそこまで進んでいたということを申し上げた。このわれわれの議会人としての努力を、それこそ政府にボールを投げるのだから、このボールを引き受けて、政治の日程の中にのせて、困難な道であろうとも、やってくださいというのがわれわれの希望なんです。われわれですよ。オンリー小林じゃないのです。委員長を代表して――委員長よろしゅうございますか。委員長を代表して私は申し上げておるのでありますから、委員長も了承されております。
○荒舩委員長 異議なし。
○小林(進)委員 異議なしと言っております。
 これは、こういうふうに議会を通じて民間外交、議会外交の窓口が開かれているのですから、政府がまだこれを傍観し、原則論なんか述べているときじゃない。外交の日程にのせてください。これを強く要望いたしておきます。
 時間がありませんから、次に、私は駆け足で申し上げますが、あなたの言われる日中平和条約の締結について私は申し上げたい。
 中国側は、早期にこの平和友好条約を締結したいと言っている。三木総理も、先ほどから繰り返して早期に締結したいと言っている。しかるに、これが前進しないのは一体何がゆえか。そこに障害をなしているものは何なのか。私は、これを伺いたいのでありまするが、伺っていると時間がなくなりますから、その先へ進みますが、私は、この早期解決の障害をなしているものは、いわゆる宮澤発言で言う四つの項目だと思うのであります。この四つの項目が私は障害をなしていると思っている。特定の第三国を指すものではないとか、日中が共同で行動を起こすことではないとか、世界のどこでも覇権を求めないとか、国連憲章に違反するものであってはならぬとか、こういうことが私は大きな障害をなしていると思うのであります。
 三木総理にまずお伺いするが、あなたは覇権を求めずとは普遍的な原則だ、原則だと言われている。そんな原則論を口を開けばお経を読むように言っておられるが、一体あなたはだれにそれを言っているのですか。普遍の原則だというのを私に言っているのですか、あるいは中国に向かって言っているのですか。まず、あなたの言っておるその目標はだれに言っておるのか、それをひとつお聞きしたい。
○三木内閣総理大臣 このような条約を結ぶについて、国民の理解と合意を得ることが外交政策として大事でありますから、政府の考えておる覇権反対ということは、政府はこういうふうに考えているということを国民の理解を求めたいということでございます。
○小林(進)委員 実に私はくだらぬと思っているのです。そんなもの、これが普遍的な原則でないなんと言う者は国民の中にだれもいません。私も言わぬし、中国も言わぬ。だれも言わないものを、それをあなたが一生懸命に――また言うとそこらで騒ぐから言いませんけれども、俗に言う何かばかの一つ覚えという、そういうような形で一生懸命さえずっていられる。反対する者があってこそそれを反論する言葉であって、だれもそんなことは反対する者はいません。
 それより、共同声明の第七項はどう書いてあります。先ほど読み上げましたが、いま一遍読み上げますよ。「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」、これがどこが悪いのです。どこに問題があるのです。総理がそれほど力を入れてくどくど言われなければならないような悪い言葉が一体どこにありますか。暴力を用い、他国を侵略するものに反対するなどということは国連憲章の中にもある。どこにもある言葉だ。それに具体的に行動を起こし、他国を権力で侵害するようなもの、それにも反対しないなんというような、そんなコミュニケなら私はない方がいい。それがあたりまえじゃないですか。暴力をもって他国を侵略するものに対してお互いに反対をする、一体何が悪いんです。
 その中でこういう四項目などを掲げているのだが、一体この四項目とは何だ。日本政府の立場を言ったのか、見解を表明したのか、覇権条項の中に条件として本文に入れなければならぬと言うのか、あるいはまた、こういう四つの条件などというものを正式に中国に通告したのかどうか、御答弁をひとつ簡単に願います。
○宮澤国務大臣 ただいま小林委員がお読みになりました日中共同声明の条項第七項、このとおり別に少しもこれで悪いことはないわけでございます。これに基づきまして条文をつくるということが平和友好条約の作業でございますから、条文をつくってまいりますと、先ほど御紹介になりました私の申しましたような四つの点が出てまいります。で、これは私が昨年の九月以来中国の喬冠華外務大臣に私の考えとしてお話を申し上げておるところでございます。
○小林(進)委員 そこに私は条約の進行を妨げている大きな障害があると言うのだ。この四項目を見ると、全然言わぬでも、ことさらに言わぬでもいいのは三項と四項だ。世界のどこでも覇権を求めず、あたりまえじゃありませんか。この田中コミュニケの第七項に、世界のどこにでも覇権を求めると書いてありますか。アジア・太平洋に覇権を求めずということは、ひいては世界のどこにも覇権を求めず。当然じゃないか。われわれはアジアの平和を求めると叫んでいる。日本社会党がアジアの平和をつくるというのは、はあ、日本社会党はアジアだけに平和をつくって、世界に対しては戦争をするのか、こういう解釈をするような者が一体あるか。アジア・太平洋地域においていわゆる平和を確立するということは、ひいては世界の平和のために覇権を求めずということが当然の結論じゃないか。それを、第三項にあえて世界にその覇権を求めずと言わなければ承知ができないなどと言う。子供だましもはなはだしい。
 なお、第四番目の、国連憲章に反せず。中国も国連に加入していますよ。有力なメンバーだ。憲章を尊重することなんかわかっているじゃないですか。どこかいずれかの国が国連にでも入っていなければ、国連憲章を尊重するぐらいなことは条件につけてもいいが、しゃべってもいいが、お互いに国連の重要なメンバーとして入っているものに、何でこの四項目まで出して、国連憲章を尊重せよなどとばかなことを言わなくちゃならないのか。私は、本当にテクニックもほどほどにしてもらいたい。あなたのその常識と称するものにはあきれざるを得ない。
 なおかつ中国は、その後にもフィリピン、タイ、マレー、ビルマ、それらの国々とひとしく共同声明で覇権主義反対を言っております。しかし、これらの国々の共同声明の中には、世界のどこでも覇権主義をとらないということが挿入をされております。まさかことさらに日本だけがこの覇権主義をこんな形で条件をつけてこようとは、ゆめゆめも私は相手は考えていなかったと思う。これがいわゆる自分の英知におぼれ過ぎている宮澤テクニシャン外交の恥ずべき一面なんですよ。
 なお言いますよ。第二項で言う、日中が共同行動をとるということを意味しないということ。だれか中国がこの共同声明によって日本と共同行動をとろうという申し出がありましたか。あったというのならば、それをチェックする意味において、いわゆる共同行動をとらないということを明らかにする必要があるかもしれないが、言ってきたかどうか。
 なお私は、時間がないからいま一つ言いますけれども、第一項の、この特定の国を指すものではない。あたりまえじゃないですか。特定の国を指すものではないことはあたりまえだ。第三国を指すものではなく、それは言っているんだ。言っているんだが、もししかし、第三国で覇権主義を確立する国が具体的にできてくれば、その時点で反対しなければいかぬだろう。その時点で反対するというこの条文が何でいけないのだ。何でいけないのです、それが。そういう覇権を具体的に行動に起こした国がアジア・太平洋地域に生まれたら、その時点で反対しようというのがすなおなこの第七項の解釈だ。そのときにも反対しないで黙って見ているのなら、こんな第七項や、こんな共同声明は要らない。しかし、そういう具体的な覇権行為を出す国があらわれない限り、いわゆる特定の第三国を指すものではない、こういうことを明確にすることは、これはあたりまえじゃないですか。ソ連を初めどこの国でも覇権国として敵視するものではないということは、この第七項の条文の中に明らかに出ているじゃありませんか。明示をせられている。それをことさらに特定の国をやるものではないなどという、ばかの一つ覚えもほどほどにしてもらいたいような、こういうことをつけて問題を混乱せしめているところに、むしろ宮澤外交のこの四項目には何かほかの意図がある、すなおに受け入れられない何か意図がある、私はこう解さざるを得ないのであります。
 本当の腹を教えてください。本当の腹がどこにあるのか。日本のここら辺にいるタカ派がおっかなくてあえてこういう四つの項目を出したのか。あるいはソ連の思惑を気にしてこういう程度のものを出したのか。真意のほどをひとつ教えてください。これは、あなたはだめです。総理大臣です。
○三木内閣総理大臣 宮澤大臣の考え方というものをお聞きになったわけですから、宮澤大臣が答えるのが適当だと思いますが、われわれは一つだけ言っておきたいことは、共同声明を後退さす考えは全然持っていないということです。日本の立場というものに対しては、これはやはり日本としての立場は当然あるわけですが、そのことが共同声明を後退さしたりしようという意図のもとに日本の立場を考えておるのではなくして、共同声明を基礎にして日中関係を発展さしたいというのが政府の真意であるということは、これは繰り返し申し上げておきたいと思います。
○小林(進)委員 総理は、あなたは抽象論だけに終始をしておられるが、私は、この第四項目が第七項目をむしろ阻害をしている原因だ、それも一項目、二項目、三項目、四項目、何にも根拠がないじゃないか、言わぬでもいいことを言っているじゃないか、必要のないことを言っているじゃないかと私は言っている。だから、こんなむだなものを言うのは、他に他意があってこれを言っているんだろうと私は聞いている。もしこの第七項、これはまあ大平さんもここにおられるが、田中さんというよりは田中・大平共同声明と言っていいかもしれない。大平さん御苦労さまでした。あなたも、しかし共同声明に一体こういう四項目を付記しなければならぬ理由があると考えられますか。あなたは調印者の一人として、こんな四項目が第七項目のどこへ一体入れなくちゃならぬと――あなたは最近の新聞には、三木さんにはしんぼうし切れぬから縁切りをやるということをおっしゃったそうだから、これは大平さんにしては珍しい勇気のある行為だと私はそう思ったが、次の日もちゃんとそばに座っておられるので、これはやっぱりだめだなと思ったのでありますが、せめていわゆる共同声明の四項目に対する、この四項は全くむだな、正しいものにけちをつけた愚論であるということだけでも、ひとつあなたの所見を私は聞きたいと思う。元外務大臣大平国務大臣にひとつお尋ねをしたいと思うのであります。
○大平国務大臣 大変恐れ入りますけれども、私は、いま外交に対して国会に対して責任を持つ立場におりませんので、外交について御答弁申し上げることは控えたいと思います。
○小林(進)委員 時間もありません。私はこの問題はもっと詰めていきたいのでありまするが、しょせん私はこの問題については、この宮澤・喬冠華会談の後も、しばしば中国へ行かれた人の情報も取っております。また、宮澤・喬冠華交渉は、私もニューヨークにおりました、その会談を終始私はアメリカ側から情報を取りておりました。宮澤さんの方は、何か喬冠華・宮澤会談が成果があったように一生懸命にPRしていた。成果があったごとくPRした。しかし、アメリカ側も中国側もあしらっているのであります。何にもニュースもなければ成果もない。もしニュースとすれば、長々と十時間も長談義をしたという、その時間の長いのがニュースになる程度の問題だ、こういうことを、私はアメリカ側から情報も取っている。その証拠に、その次の日の九月の二十五日にはどうですか、二十四日のニューヨークの国連における宮澤外務大臣の演説も、ニューヨーク・タイムズの新聞には一行も出ない。喬冠華・宮澤会談なんか一言も出ない。わが社会党の江田団のジャパン・ソサエティーにおける演説は、ニューヨーク・タイムズの四分の一を占めたのです。
 もはや事実が証明しているのでありますから、中国はもはや三木さんがいいとかだれがいいとかということではない。中国側は、投げるべきボールは何十回も日本側に投げました、もう投げるボールはございません、後は日本側から返ってくるストレートのボールを待つだけです、こう言っているのが実情でございまして、宮澤さんが中国の方からボールが来るのだ、これ待ちだなどと言うのは、愚にもつかない国民のごまかしであります。ごまかしと断ぜざるを得ない。もう私はこういう人と日中問題を論じてもむだだと思いますからやめますが、三木さん、あなたです。フォードさんもニクソンさんも田中さんも、これら一番の勝負をするときにはみんな現地へ飛んで行っているのです。大平さんだって連れていかれたのです。みずから先に行ったのじゃないのです。こういう重大問題は一国の総理が先頭に立たなくちゃだめなんです。あなたにはその決意がないのだ。ヤマブキの花なんですよ、あなたのは。花は咲けども実の一つだになきぞ悲しきというので、中身がない。
 それで、私は時間もありませんから最後に御質問いたしますが、韓国の問題、金大中氏の自由の問題につきまして、去る第七十六臨時国会において、韓国の金大中を拉致いたしました張本人、韓国大使館一等書記官を日本に出頭することを要請する件につきまして、外務大臣が食言と思われる発言をした。これが予算委員会の審議において相当の混乱を巻き起こした。その収拾のため、予算委員会を開いた結果、荒船委員長から外務大臣に対し次のような質問があった。「先ほど小林委員から、金東雲事件に関し、本人の出頭を要請するよう要望がありましたが、私もごもっともな御発言と思いますので、委員長として政府に対し善処方を要望しますが、外務大臣いかがでございますか。」これに対し外務大臣は、「政府は、国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」という答弁をした。この答弁によって混乱を収拾して五兆円の予算が通過した。
 ところが、予算が予算委員会を通っていよいよ本会議を開くというそのりかの間に外務大臣は記者会見をおやりになって、あくまでも立法府の意見を韓国に伝えることを約束したまでのことだという、こういう答弁をした。金東雲問題については、すでに七月の二十二日の口上書で外交的決着をつけている以上、外務省としてはいまさら外交ルートに乗せる意思はないのだ、単に日本国会と韓国政府との間のメッセンジャーボーイを務めるだけの話だ、こういうことを明らかにしたのであります。
 われわれ国会側は、宮澤君の答弁は、外相自身が金東雲出頭実現のための外交的努力を約束したものと受け取ったにもかかわらず、こういう発言は立法府を全くだましただまし討ちの行為であるから了承できないということで、国会は非常に憤慨をしたのでありますけれども、直ちに参議院に持ち込まれて、参議院では、三十日、三十一日、一日、六日というふうに数回にわたってこの問題を追及いたしましたが、残念ながら衆議院は、ついにこれを追及する場がなくして今日に至ったわけであります。もちろん予算委員会の理事懇談会で一応宮澤さんの釈明を聞きましたけれども、それはあくまで非公式なものでありまして、ここで改めて外相の見解を承っておきたいと思うのであります。
○宮澤国務大臣 参議院におきまして、私はこう申し上げております。衆議院予算委員会における審議の経過を詳細に韓国側に伝えるにとどまらず、この問題について韓国側と誠意をもって話をするということがお約束を忠実に履行するゆえんであると考えております。
 そこで、荒舩委員長から御発言がございました直後に、実は韓国側に問題を伝えまして、要請を韓国側に伝えたわけでございます。なお、これらの韓国側との接触につきましては、予算委員会理事会あるいは小委員会にまず御報告すべきものと今日まで考えておりましたので、コンフィデンシャルに交渉を行いましたことを御了承願いたいと思いますが、交渉は、事柄の性質上、重い形をとって行いました。
 こちら側の要請に対しまして、韓国側からは、非常にむずかしい問題で、どのようにこれを受け取るべきかすぐには決しかねるので、しばらくの猶予を欲しいということでございました。それからしばらくいたしまして、韓国側から改めて本件につきまして、いろいろ韓国側としても考えたが、韓国側としてお答えができる範囲でない、取り上げることがむずかしいということを申してまいりました。わが国側から、このような経緯であるのでもう一度韓国側に再考してもらいたいということを申しました。韓国側としては、なかなかその点はむずかしゅうございますというようなことを返答をいたしてまいったわけでございます。これは委員長の御発言がありましたのが十月二十九日であったと思いますが、その直後から十一月の中旬にかけましての経緯でございます。
 以上、御報告申し上げます。
○小林(進)委員 私は、いまの外務省のおやりになったことには、まだ満足を表するわけにはいきません。いやしくも委員長の発言は、一社会党の小林の発言ではないのでありまして、理事会全員の決意でございますので、国会全体の要望であると見なければならぬ。その国会の要望に対し、単に一回か二回簡単に交渉して能事終われりとするようなそういう外務省の行為は、私は国会軽視と断ぜざるを得ないのであります。国会の名誉にかけても、まだまだこの問題は徹底的に追及するということを申し述べておくのでございまして、時間もありませんから、次に金大中氏の自由に関する問題について申し上げます。
 三木総理は、金大中氏は日本国家の保護を受けて日本国に滞在していた、それが不当に拉致されたのだから、日本政府にも道義的な責任があると回答された。金大中氏の自由の回復についてはさらに格段の努力をし、その結果を国会に報告すると確約をされた。これまでは全くりっぱだが、その後は何にもされていない。格段の努力をされた形跡もなければ、国会に報告するという約束も実行されていないのであります。
 こうした発言にわれわれは満足することができないのでありまして、私はこの三木総理の無責任を責める意味もあって、臨時国会終了日の十二月二十四日に衆議院議長を通じ政府に質問主意書を提出いたしました。それば時間がありませんから省略いたしますが、簡略して言えば、自由を与えられないという韓国政府の理由である金大中氏の選挙違反事件は、一九六七年の八月と九月に起きた問題なんだ。それを三年後の一九七〇年に、金大中氏が大統領に立候補すると言ったら、その直前にその公判を開いた。それが済むと、またそのままこれをすっぽかしてしまった。そして、その間に四年も経過をして、今度は日本側が、金大中氏のいわゆる拉致事件が起きて、その自由の回復を要求すると、今度は四年後の一九七四年、田中・金両総理の会談が行われた七カ月後の一九七四年六月にまた思い出したように公判が韓国で行われた。これはどう見ても政治裁判であることは、ライシャワーさんも位置づけているのであります。すなわち、前の一九七〇年の公判は、金大中さんの大統領立候補を妨害するためにやった。後の公判は日本に出国するのを阻止するためにこの裁判が行われていると見なければならない。
 なお第二点は、一九七二年までは、裁判の係争中でも、一九七一年、七二年にも金大中さんは自由に日本に来ているのです。裁判係争中にずっと来ているのです。この中でも、裁判係争中、日本で金大中さんにお会いになった方は山ほどいるのです。その当時と今日の状況は条件は一つも変わっていないのです。裁判が係争中だということで、変わっていない。
 しかるに、日本での拉致事件が起きてから、いわゆる韓国は金大中氏の身柄を拘束してついに出国をさせない。自由を与えない。これは一体どういうことですか。これはすなわち日本政府に対する約束を韓国政府が破っているという何よりの証拠ではないですか。その韓国政府の高圧な態度に三木総理大臣が屈服をしているという姿じゃありませんか。あなたはこれを屈辱外交と思わないのですか。われわれはそう解釈するのです。あなたは屈服させられている。こういう屈辱を受けながら、三木内閣の国会に対する公約は一つも果たされていないということを一体どうあなたは考えるかというのが私の質問書の趣意なんです。
 これに対して政府の答弁はどうかと言えば、全然質問に答えていないのであります。これは国会に対する実に軽視、無視もはなはだしいと言わなければならぬのでありまして、私はこの問題については総理大臣の陳謝を求めますよ。あなたが陳謝されなければ私は了承できません。
○三木内閣総理大臣 金大中氏の事件に対しては、政府は重大な関心を持ち続けております。それはなぜかと言えば、日本に滞在を許されておったときに起こった事件であるからであります。だから、私も、佐藤さんの葬儀に金鍾泌総理が来られたときに、この問題を私自身から持ち出して話をいたしたのでございます。ただしかし、小林君いろいろお話しになりましたけれども、韓国は主権国家として、韓国の内政に干渉することは私はできません。選挙違反の事件としていま係争中でございますから、韓国政府の日本政府に対する約束は、この事件が片づいたならば、韓国人同様、国外に出ることも含めて自由な立場を回復するという約束でございます。したがって、われわれとしては一日も早くこういう選挙違反事件が片づいて、そういう韓国政府が約束しているような事態が実現をすることに対して大きく期待をいたしておるということでございます。金大中氏自身の身柄に対しては、われわれは重大な関心を持ち続けておる次第でございます。
○小林(進)委員 何でも総理大臣は持ち続けているんですね。返事さえしていればそれでもう物事ができたとあなたは思っている。しゃべることと行動とは違うのですということを私はさっきから言っているのです。政治はしゃべることじゃなくて行動することなんですよ。仕事をすることなんですね。あなたは何もしないじゃないですか。私はそれを言っているのです。
 時間がありませんから次に移りますが、なお私の質問の主意書の第二点では、金大中事件の発生によって、日本国民は、外国の公権力である韓国情報部が国内に暗躍していた恐るべき事実を知ることができた。こうした経験に基づき、政府は、外国公権力が国内において捜査、脅迫、逮捕などの行為を行うことによって再び日本の主権が侵害されたり、また日本に居住する日本人及び外国人の基本的人権が侵されることのないよう万全を期してきたものと確信をするが、外国公権力の日本国内における行為について次の点を明らかにされたい。
 金大中事件以後、外国公権力によって、日本に居住する国民及び外国人の基本的人権が侵された事例はないか。もしあったならば、政府はその事実にどう対応したか。韓国情報部のその後の国内の活動についてどのような調査を行い、どのような調査結果が出たか。その調査結果に基づいて、どのような外交処置をとられたか。この四点の質問に対しても、政府は衆議院議長を通じて何にも答えていないのであります。外国の公権力の行使により、日本に居住する日本国民及び外国人の基本的人権が侵害されたような事例は承知していないと言っている。政府としては、韓国中央情報部員が日本国内に滞在し、かつ活動を行っていることの事実はつかんでいない、こう言っている。いないというならば、私はもっと聞きたいのでありまするけれども、時間がないから私の方で二、三の例を質問をいたします。
 まず第一に、韓国中央情報部は公式に日本国内で活動している、と情報部みずから述べているのはいかがいたしますか。それにもかかわらず、承知していないなどと答える意図は一体何なのか。警察及び治安当局までが、われわれに言わせればどうも韓国と密着をしているのではないかという疑いを持たざるを得ないのであります。
 いいですか。日本の国会と日本国民を侮辱して、こういう厚かましい返事を出したものと疑わざるを得ないのでありまして、その一例を挙げますと、これは韓国の新聞にも日本の新聞にも同様に報道されたことであります。
 昨年十一月二十二日に行われた、いわゆる留学生スパイ事件に関する発表の中で、韓国中央情報部は次のように述べている。「当部は、いわゆる韓国中央情報部は、その間、日本大阪を中心とした関西地方一帯に北傀、北朝鮮の対南工作拠点が暗躍中という端緒を捕捉し、犯証、犯罪の証拠を継続収集しながら鋭意注視してきたが、一九七五年十月初旬、韓国青年同盟大阪生野支部国語教師として従事したことがあり、大阪韓国青年会議所広報委員職にある間諜白玉光が青年会議所会議参席名目で国内に潜入し暗躍中であることを確認、検挙することでこれら間諜団を一網打尽にするに至りました。」
 また、この発表の際の記者の質問に対し、次のように述べているのであります。
 「特に、日本大阪を中心とした関西地方には、在日同胞六十余万中約五〇%に該当する三十万七千名が居住しており、朝鮮総連組織活動が他の地方に比べ強勢である点等から見て、日本大阪を中心とした関西地方でも北傀の対南工作拠点が間違いなくあるものと判断し、鋭意注視観察してきた当部は、七五年二月中旬本事件に関する端緒を捕捉し、一年近い内査工作を通じ、この事件の嫌疑事実に対する確証を得ることができた。」。こういうのであります。
 これはすなわち、内査工作とは、日本語で言えば内密の捜査を続けていたということでありまして、これは明らかに韓国の中央情報部が、完全ないわゆる捜査活動、情報活動をわが日本においてやっていたことなんだ。これは明快じゃありませんか。彼らみずからやっていることを証明している。それを認知しないということは、どうなんですか、一体。日本の警察当局がそれほど間抜けなのか、あるいは同根で、いわゆる同じ仲間同士でこういう隠しごとをやっているのか。これはいずれかと言わなければならぬのでありまして、こういう韓国中央情報部、すなわち外国公権力が、ここに述べられているような捜査活動を行う行為は、日韓両国間のいかなる条約かあるいは協定に基づいて行われているのかどうか、これをひとつ明確に私は御回答をいただきたいと思うのであります。日本の主権が韓国政府によってかくも侵害されるという事実であります。これはまことに重大なる事実でありまして、まず簡単にひとつ御答弁をいただきたいと思うのであります。
○宮澤国務大臣 小林委員からそのような件につきましていろいろ御注意をちょうだいしておりましたので、その間の事情につきまして私どもも調査をいたしております。
 他方で、ウィーン条約によりますと、外交官、いわゆる使節団の任務は、接受国におけるもろもろの事情をすべての適法な手段によって確認し、これらについて派遣国の政府に報告をするということは認められておるわけでございますので、本来はそれが適法な手段によっておるということ、相手国の公権力にもちろん干渉はしないということ等は守られなければならない条件でございます。
 私どもの調査いたしました範囲では、このウィーン条約に定められた権限と義務とを逸脱したような行為ではなかったというふうに判定をいたしておりますけれども、しかし、そのような話がときどきやはり私どもの耳に入りますので、なおよく厳重に注意をいたしてまいらなければならないと存じております。
○小林(進)委員 私は、もう宮澤外相の答弁は聞かないうちにわかるのであります。わかるのでありまするけれども、まあ一つの形式ですから聞きますが、もちろんこの問題については私の同僚の安宅議員が専門でございまして、この前もやっております。これは徹底的にやりまするので、いまの宮澤さんの答弁で了承するわけにはいきませんし、あなたをどうも信認するわけにはまいりません。その点はひとつ御了承いただきたい。
 なお、時間がありませんから、この問題についていま一つ私は重大な質問をいたしますが、総理を初め日本の治安当局は、韓国情報部の日本国内におけるこの不法、不当なる活動に目をつぶろうとしている。あなたはそうでないとおっしゃるかもしれませんけれども、私は後で申しますが、これは断じて許されることではありません。そのまた活動をしている韓国中央情報部の捜査内容というものがいかにでたらめなものであるかも明らかにされているのであります。
 そのでたらめな捜査報告に基づいて、日本で合法的に平和な市民活動を営んでいる在日韓国人や帰化した日本人――帰化すれば日本人だが、そうした帰化した日本人が政治犯にでっち上げられ、死刑などの極刑に処せられ、本人はもとより家族までが恐怖と生活の危機に陥れられているということは、これは目を覆うて過ごされる問題ではありません。これは同僚安宅委員もしばしばこの委員会において質問し、警察に警告を発してきたのでありまするけれども、一つも改めていられない。それゆえに、特に総理にこの問題も陳情を繰り返しているのであります。このでっち上げ事件の被害者の家族の陳情に、あなたは何回も接しられているはずです。それらの事件がいかにでたらめ、かつ捏造された事件であるか、またそれら被害者たちがいかに苦しんでいるか、あなたはたびたびの陳情を受けて十分承知していられるはずなんです。
 そのあなたにも陳情した極端な例の一、二を私はここで申し上げますが、すでに死刑が確定した崔哲教氏の事件及び近くまた最終審で死刑が確定するという陳斗鉉氏の事件などがそれであります。韓国中央情報部の捜査と韓国の裁判がどんなにでたらめであるかということは、この二つの事件でも明らかであります。
 この二人が極刑に処せられる根拠となっている北朝鮮への渡航が事実無根であることは、わが国の東京弁護士会がこれほど分厚な――弁護士会はこれを生命を賭して調査をしています、人の命でございますから。この弁護士会の調査によってこれは証明されているのであります。
 崔哲教氏は韓国CICによれば一九七一年七月三日から七月三十日まで北朝鮮に滞在したことになっているが、東京弁護士会はこの中でアリバイを明らかに証明をしているのであります。すなわち、七月三日に崔哲教氏自身がサインをして振り出した小切手が千葉銀行に保管されている。七月二十八日に同氏がサインした伝票がガソリンスタンドに保管されている。七月十五日には同氏は家主に十万四千円の家賃を払ったことも明らかになっている。七月二日には次女が産まれているが、同氏がその次女の産まれた病院を訪れたこともまたちゃんと証明をされているし、証人もあります。同氏のおばの韓未禮氏とともに北朝鮮に行ったことになっておりますが、同女は当時いわゆる病気通院中であったこともちやんと明らかに証拠が示されておる。また陳斗鉉氏の場合は、中央情報部によって北朝鮮渡航を言われておる期間に、東京で開催された在日韓国居留民団中央委員会に出席して発言をした記録と、そのときの記念写真もちゃんと存在しているのであります。
 それでありますから、この証拠をもって、総理、あなたのところへこの二人の事件について、このようにアリバイが証明されておりますよということをもって、また、この両氏の家族は、韓国政府に対しひとつ何らかの連絡をしてわれわれを助けていただきたいという依頼を持っていっているのです。官房長官を通じて、あるいは官房副長官を通じていっているのでありますから、当然あなたは受けていられるはずだ。これらの被害者家族の切実な訴えを一体あなたはどう処置されたのでありますか。あなたが友邦と確信をして、日本国民の血税をもってあの援助をしていられる韓国政府にこれをどのように一体伝達をし、どのような回答を得てくださったのか。正義と平和を愛する日本国民の総意にふさわしい誠実な回答を私はあなたに求めたいのであります。
 総理、実は、この子供さん三人を加えて五人の家族、奥さんが二人であります。苦しみにあえいでいるいわゆる崔哲教氏の夫人と陳斗鉉氏の夫人がこの傍聴席にきょうはお見えになっているはずであります。この御夫人は――私は知人からこの問題を取り上げてくれるように切々と訴えられたのです。私は、質問の時間がありませんからと言って一応断った。でありますけれども、考え直して、いや、これは私は断るべきではないと考えた。法治国日本を信じ、日本政府の保護のもとに安穏に暮らしている平和な家庭が、突如捕えられて、何の罪もないじゃないですか、何の罪もない者がこうして死刑にせられているのであります。もう死刑の宣告を受けているのですよ。近くまた死刑の宣告を受けるのですよ。いいですか、執行の期日もいま切迫しているのですよ。いても立ってもいられないというのがこれは奥さんの気持ちでしょう。家族の気持ちでしょう。
 だれに一体これは救いを求めればいいのです。日本のわが国に、法治国のもとに安全に暮らしている、平和に暮らしている者が罪なき罪で突然死刑になっている。だれに救いを求めればいいのですか。だから東京弁護士会にも行った。あらゆる手づるを求めて行った。わが日本のしかし弁護士会、法曹界には良心があった。これは一生懸命に調査してくれて、この確かなる証拠をつくり上げて世論に訴えてくれたけれども、それ以上の力はないのであります。それ以上どこに持っていけばいいのです。ために人を介して、総理、あなたのところへ行けば助けてもらえると思ったから、数回こうやってあなたのところへ行っているのじゃありませんか。あなたにお願いしているのではありませんか。それが、いま返事がないから、せっぱ詰まって、この国会の中で予算委員会が開かれているという、そういうことで全く未知だ、縁もゆかりもない私を訪ね当てて、私のところへこの問題を持ってこられたのであります。
 私は、縁もゆかりもないのですから、一応は断ろうと思ったが、しかし、考えてみればこれは大変な問題であります。思い直して私は質問台に立ちました。総理、思い直して私は質問台に立ちました。いまもまたわが党専門家の安宅さんからも書類が回ってまいりまして、陳斗鉉氏のこの嘆願書には、総理、総理の夫人も助命嘆願に署名をされているといういま報告が参りました。なお、日韓議員連盟の会長の毛利松平さんもこの助命嘆願書に署名されているという――日韓議員連盟全員もこの助命嘆願雷に署名されているということであります。私は、この問題であります、この、夫を助けたい、父を助けたいという一念で飛び込んできた異国人を、私は見殺しにすることはできません。
 総理、一人を殺して百人を助けるのもこれは政治なんでありますよ。しかし、百人を犠牲にして一人を助けるのもこれは政治なんです。いま総理に必要なことは、この無実の罪に犯されている二人のこの人たちを救って五人の妻子にいわゆる安全な家庭を、平和な家庭を二人に戻してやるということなんでありますよ。総理、このことに全力を尽くされることによって、日本人と韓国人の魂と魂が触れ合って日韓両国の大きな親善、融和の礎になるのです。この効力は無限なんだ。私はこれをひとつよく考えて、総理の責任ある答弁をお伺いいたしたいと思うのであります。
○三木内閣総理大臣 私直接というよりかは、官房長官にいろいろ陳情されたようでございましたが、この事件、これは、韓国内の問題については、日本政府としていろいろと日本政府がこの問題に対して干渉するわけにはいきませんけれども、人権問題として問題があるならば、これは日本としても関心を持たざるを得ないので、この問題は政府の方としてもいろいろとこの事件の実態については調査もしておるようでございますから、これに対しての見解を述べる必要がございますならば申し述べることにいたします。
○小林(進)委員 これは時間が参りましたから、私は残念ながら明確な回答を得ないで終わりますけれども、こういう事例は外国にはまれにあるのです。あるときにこの主権を侵害され、独立を侵害され、人権を侵害された問題に対しては、西独を中心にして命がけでやっているのですよ。総理、あなたのような外国の問題だからなどというそういう緩慢な、そういう情けない答弁をする国はよそにない。残念ながら、あなたはまだ問題の本質を知らない。どうかひとつ勉強していただいて、あなたの奥さんも署名されておりまするから、どうかこの二人の救出のために、これは日韓両国のどんなに大きな融和の礎になるかわからぬのでありますから、御奮闘を切にお祈りいたしまして、期待をいたしまして、総理、総理がんばれ。これで私の質問を終わります。
○荒舩委員長 先ほど小林君の発言中、不穏当な言辞があったかのように思われますので、速記録を取り調べの上、善処いたします。
 これにて小林君の質疑ば終了いたしました。
 午後一時より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。
    午後零時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。荒木宏君。
○荒木委員 先ほど国鉄当局の労働者に対するストライキ処分が発表されました。一方で大佃値上げを進めながら、他方でストライキ禁止を維持しつつ過酷な処分をする、これは三木内閣の反動的な本質を示すものだと言わなければなりません。
 昨日の不破質問でも明らかになりましたように、あの戦前の治安維持法による暗黒裁判、そして、わが党と民主勢力、労働者に対する過酷な弾圧の中で、権利を剥奪し、侵略戦争が遂行された。今回の処分は、その反動的な体制の延長、再編をたくらむものであって、三木内閣の民主主義に対する挑戦であり、このことを強く抗議をいたします。
 私は、そのことを申し上げておいて質問に入りますが、まずただしたいのは、三木内閣の不況対策であります。
 昨日の不破質問で投資の流れを変えること、このことを要求いたしました。特に本四架橋を取り上げたのでありますが、昨日明らかになりましたような環境破壊、社会資本の立ちおくれの回復、こうしたこととあわせて、日本経済と国民生活にこの不況対策がどういう影響を与えるか、このことはまことに重大だと思うのであります。本四架橋と言えば、これはすぐに鉄鋼とセメント、これが関連をいたします。
 そこで、通産省に伺いますが、まず、現在鉄鋼企業の生産、それから生産者価格の動向はどうであるか。一方でこんなに大きな鉄を要する巨大プロジェクトが発表される。三木内閣がこれを公共事業の目玉の一つとして進めるというのでありますが、この鉄鋼企業の生産並びに価格動向、これをまず伺いたいと思います。
○河本国務大臣 鉄の生産は現在のところ大体七割強という操業率だと思います。したがいまして、昨年一年ではおよそ一億トンの生産でありますが、現時点の瞬間風速は一億トンを相当割り込んでおる、こういう感じでございます。設備能力がほぼ三割近く余っておるというのが現状だと思います。
    〔委員長退席、井原委員長代理着席〕
 価格の方は、昨年の年末にある程度の修正ができまして、それ以降ある程度持ち直しつつあるというのが現状でございます。
○荒木委員 ということは、鉄鋼の方は減産をしている、そして価格は持ち直しつつあるというのは、つまり減産をやって価格を上げている、こういうことですね。
○河本国務大臣 減産をしておることは事実であります。ただしかし、それはカルテルとか、そういうことではございませんで、海外におきましても景気が悪いために輸出が伸びない。輸出が四十九年に比べまして非常に大きく落ち込んでおりますし、国内におきましても不景気のために需要が伸びない。こういうことのために売れないので、減産せざるを得ない。減産しておっても値段はなかなか上がらなかった。そこで、鉄鋼各社の昨年九月の中間決算はいずれも、一社の例外だけを除きまして、非常に大幅な赤字になっておる、こういう状態でございます。
 しかし、先ほど申し上げましたように、秋から価格調整が若干できましたので、幾らか持ち面しておりますし、それから、そこへ公共事業等も若干ふえましたので、需要も幾らかふえてきた。それから同時に、海外におきましても輸出の引き合いがごく最近になりまして相当ふえかけております。だから、市況が若干変わりつつあるのは、ここわずか一、二ヵ月の間だと思います。
○荒木委員 お聞きをしておることにひとつお答えいただきたいのですがね。在庫の問題、出荷の問題、輸出もと、いろいろあるでしょう。私は生産がどうかと聞いたのです。生産は減産しておるでしょう。指数がはっきり出ている。生産の方は、五十年の初めに比べて暮れの方は、たとえば夏は八三・四、暮れは七一・九、減っているでしょう。減産している。それで、価格の方はどうか。持ち直している。いまあなたは在庫のこともおっしゃったけれども、在庫はうんとふえているでしょう。在庫がふえれば、これは値段は下がるというのが普通の常識です。だから、減産があって、そして値が上がりつつある。この事実はどうですか。私が聞いたことに答えてください。減産をして値を上げている。どうですか。
○河本国務大臣 減産をして値を上げておる、私はそういう断定はできないのではないかと思うのです。需要が減ったので減産をした、売れないので減産せざるを得なかった、しかし年末になってようやく海外からの引き合いもふえてきた、国内の需要もふえた、こういうことだと思います。
○荒木委員 理由はいろいろ言えますよ。しかし、経済企画庁の月例経済報告にこの鉄鋼の体制がどうであるか、生産体制がどうであるかということがありますが、これは減産体制を強化していると見ているんじゃないですか。企画庁は鉄鋼の生産体制について、減産体制を強化している、こうはっきり書いているじゃないですか。減産を体制として強化しているとはっきり書いているのです。副総理、これはどうですか。
○河本国務大臣 それは私の言っていることと同じことでございまして、売れないから減産しておった、こういうことです。ところが、たまたま年末になって海外からの引き合いもふえてきた、それから国内の需要も幾らかふえてきた、そこで値段がある程度調整できつつある、こういうことだと思います。
○荒木委員 鉄鋼は、たとえば新日鉄は室蘭製鉄所の高炉の火を落としたでしょう。これは、御承知のように、高炉の火を落とすということは、すぐにまたやるといったって大変なことですよ、中が冷えちゃうんだから。ですから、体制として減産に入る、そういう方針をとっていると見ざるを得ないのじゃないですか。そして、値が上がってきているということ、これは事実だといま通産大臣はおっしゃった。そうですね。減産の体制をとっている、そして値が上がってきている、その事実をお認めになったんだけれども、そこで、これが今度の不況対策で一体どういうふうな関係を持つのか。公共事業が目玉ですから、所管している建設大臣に伺いますが、たとえば本四架橋を発注するでしょう。一応予算が出ているんだから、単価の計上もしてある。夏ごろ概算作業をやられたんでしょうけれども、そのときの低い価格で契約できるのか。いま鉄鋼が上げてきているでしょう。上げていってずっと高い段階になって契約をするのか。建設大臣、これはどうですか。
○竹下国務大臣 お答えいたします。
 この契約は、資材単価は、公益法人建設物価調査会及び経済調査会の毎月初めに発行される建設物価と積算資料に基づいて、資材別、地域別、規格別に決めております。
 ついでに、労務単価につきましては、建設、農林、運輸の三省から受注した建設業者の賃金台帳に基づいて、職種別、地域別に調査して決める。言ってみれば、実勢単価を基礎にして決める、こういうことであります。
○荒木委員 そうしますと、いま減産体制をやってずっと値を上げていると大臣は認めた。ずっと値が上がっていけば、上がったところで契約する。これは実勢だからね。建設大臣、そう言われた。
 そうしますと、もしだれでも同じようにそういうことができるなら、この不況対策は国民全体のものと言えるかもしれませんね。だけれども、不況下にだれでも減産をやって値を上げられますか。この点、どうでしょうかね。不況で厳しい、こうおっしゃっている。その厳しいときに、鉄鋼大手のように火を落としてまで、体制強化をしてまで減産をうんと強めていく、そうして値を上げる。こういうことが、大企業だとか、あるいは中小企業だとか、あるいは独占性の強い業種だとか、あるいは独占がそんなに強くない業種、いろいろありますが、同じようにできるでしょうか。
 中小企業庁の長官、見えていると思いますが、この不況下での値上げというのが、大企業でも中小企業でも、減産をしながら同じようにできるかどうか、このことをひとつ長官から伺いたいと思います。
○齋藤(太)政府委員 日銀でつくっております工業製品の卸売物価指数によりますと、石油ショック後の一昨年二月をピークといたしまして、中小企業の製品は以後ずっと低下傾向をたどりまして、昨年の四月まで十四カ月低下を見せております。五月以後、その後上昇をいたしましたけれどもその上昇のテンポは非常に低うございまして、昨年の十二月の物価指数で一昨年の十二月の指数と同じような状況でございます。こういう状況でございまして、不況下におきまして特に競争の激しい中小企業製品におきましては、なかなか値上げは困難な状況にあるように存じます。(荒木委員「大企業はどうですか」と呼ぶ)
 同じ日銀の工業製品につきましての卸売物価指数で大企業製品について見ますと、石油ショック後ずっと一貫して上昇を見せておりまして、一昨年いっぱい上昇をいたしましたが、昨年の一月から若干低下傾向に転じましたけれども、さらに四月からはまた上昇に転ずる、こういうふうな動きを示しております。
 ただ、石油ショック前におきましては、中小企業製品が大企業製品よりも非常に高かった、そういう状況でございますので、動きとしては、石油ショック後の動きは大企業製品の方が上がっておりますが、昨年十二月の水準におきましてなお中小企業製品の指数が相当高い水準にございます。
○荒木委員 いま最大の問題は、不況という国民的な危機に対してどうするか。いま中小企業庁長官の説明によりますと、不況下で中小企業は値が上げられない、下げざるを得ない、大企業の方は不況下でも値を上げることができる、こういう説明であります。そうしますと、本四架橋のような、総額二兆円といいますが、これは大プロジェクトです、鉄鋼にしても二千万トンというのですから。そういう不況対策、その官公需がどこへ行くか。この減産をして値を上げているところへ行くか。それができないようなところへも行ける不況対策であるか。これは一つのかぎだと思います。
 そこで、今度の予算、三木さんが出されたこの予算で最高の伸び率を示しておる費目は何か。これは大蔵大臣に伺いますが、本四架橋の工事費の伸び率、これは補正後で幾らぐらいになっておりますか。
○大平国務大臣 本四架橋は補正をいたしておりませんので、当初予算に比べまして六割九分ぐらいの増額になっておると思います。
○荒木委員 いま六割九分とおっしゃいましたけれども、私の方で建設省の方の関係で聞いたのは八一%であります。まあ数字の若干の違いはありますけれども、七割、八割いっておる。金額は、これは一遍にやるものじゃないから、単年度としてはまたそう多くないという見方もできる。しかし、予算のどこに力を入れたか、これはもうこの国会でずいぶん論議がありました。あの福祉元年と言われたときに、福祉予算が三十何%であると、当時の自民党の政府の皆さんが大変自慢をなさった。構成比はまだまだうんと低い。振替所得比は西欧諸国に比べたって三分の一から四分の一だ。構成比は低いじゃないですか、もっと上げるべきだとわれわれはもう何遍言ったかしれない。しかし、返ってくる言葉は、伸び率が高いのであります、ここに力を入れておるのであります、だからこれが重点なんです、こういう返事なんであります。どうでしょうか。今度の予算で、それじゃ、伸び率で見まして、この七割、八割もの伸びを示しているものが公共投資の中で、社会資本、産業基盤、生活基盤、いろいろありますが、これ以上の伸びを示している費目はありますか。これは高い伸びじゃないでしょうか。予算の規模が一四・一%、公共投資の伸びが予備費を含めて二六%というのでしょう。予備費を除けば二一%。これは大蔵大臣、いかがですか。この七割、八割という伸び、これはやはり高い伸びじゃないですか。
○大平国務大臣 それは御指摘のとおりですけれども、費目によりまして、これは年次別の予算のつけ方の推移を見ていただかなければ公正な判断はできないと思いますが、本四架橋につきましては、ここずっと予算の増額を抑えておりました。したがって、工事を抑えておったわけでございますので、今度再開に当たりまして七割程度の増額を認めたわけでございまして、別に私は特に意図的にこの種のプロジェクトについて傾斜した資源の配分をやったというようには考えておりません。
○荒木委員 これはちょっと事があべこべですね。あの社会保障の問題を昨年、一昨年、一昨々年大いに論議をしましたよ。福祉元年だと言って胸を張られたときの言い分は、私どもは、ずっと全体として見てまだまだ低い、だからうんと上げろと言ったのだけれども、皆さんの答弁は単年度だけ見て、やれ、三十何%です、これは福田副総理も胸を張られた。だから、全体のことを見て――抑えただとか、いままでの過去のなにがどうであったか、これはまた聞きます、長期のものは。しかし、この新年度予算について伸び率がどうか、いまこれを聞いているのです。七割、八割を超えているのはありますか。大蔵大臣、あったら言ってください。――これは政府委員に実務的な答弁を求めているのじゃないのです。政治的に、財政当局の責任者として、これ以上のものはあるかと、こう聞いているのです。
○大平国務大臣 これは費目の分け方でございますが、一つのプロジェクトといたしましては相当ふえたものもあるでございましょうけれども、いまの公共事業の分け方といたしましてわれわれが採用しておりまするところによりまして、七割以上超えたというようなものはほかにはございません。
○荒木委員 そうしますと、分類はいろいろありましょう。しかし、常識的に考えて、このロットのプロジェクトは非常に大きいものですよ。それが最高の伸び率を示している。そしてそこで使う将来含めて二千万トンという、これは東京タワーで言えば五百五十基分とも言われておるのです。そんなにでかいのを大体一手に引き受けるであろうと思われるところが減産をやって、値を上げている。私はこれは言い方はいろいろあると思いますが、ネコにかつおぶしじゃないか、そういうふうにも言えると思うのですよ。
 いままでのこととあわせて他の費目などを見ますと、たとえば東北新軸線、これは国費で六六%です、事業量。だから、そういったところにうんと高い伸び率を決めている。この新幹線とか本四架橋と言えば、あの悪名高い列島改造型予算の目玉と言われたんじゃないでしょうか。だとしますと、今度の新年度予算は低成長、安定成長と言われる、その中で高度成長型の目玉が延長されている。全体のスケールとか味つけは違いますよ。しかし、その中にこれが目玉だといったところはそのまま低成長下で延長されている、こう言わざるを得ないと思うのです。
 そこで、総理に伺いますが、三木総理、こういった列島改造型の目玉とされたものが低成長下で最高の伸び率で引き継がれている。これは抑えるべきじゃないでしょうか。たとえば予算全体の伸び率がある、少なくともそれ以下に抑えるべきではないか。さらに環境上の問題もある。きのう不破質問で、核燃料の廃棄物の危険、瀬戸内海の環境汚染の問題、いろいろ総理の環境庁長官在任当時のことにまで及んで指摘があったことは御承知のとおりです。うんと高い伸びを示しているこれを、せめて全体の平均以下に抑える、これが転換というものじゃないでしょうか。総理の御答弁を求めます。
○大平国務大臣 ちょっと私から先に……。
 新幹線の場合は、あなたの御指摘のように、東北新幹線六割六分、上越新幹線四割一分の増加でございますけれども、これはあなたの言われる補正後に比較いたしますと、前者は一七%、後者は二二%の増加でございます。私ども本四架橋について百六十億を二百七十一億に、東北新幹線千六百五十億を二千億にというようにふやさしていただいておりますけれども、そして増率はいま御指摘のようなことになっておりますけれども、これは総需要抑制の見地から真っ先にこの工事の増額を抑えた費目でございまして、工事の再開に当たりまして、その事業の緊要度、その地域経済に及ぼす影響、雇用の状況等を判断いたしまして、この程度は認めなければならないのではないかということでございまして、特にわれわれが不況対策を考える場合に、大プロジェクト本位に、あるいは大企業本位にという意図的なねらいをもちましてそういった予算の増額査定をやった、そういうような性質のものでないことだけは御理解をいただいておきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 荒木君も御承知のように、本四連絡架橋は、計画をワンルートにする。以前の高度経済成長期の計画は三ルートともにやる。これをワンルートにして、そしてほかのルートは地域開発としてやるということで、安定成長期の時代におけるこういう大型開発計画に対しては相当検討を加えたわけでございます。初期でありますから、初めにおいては、予算の伸びが何%と言われていろいろ御指摘になっておるようですが、仕事の初期においてはある程度伸びるということはやむを得ないわけでございます。
○荒木委員 それは総理、だめですね。いままで皆さんの答弁は、何が重点かというのは、伸び率ばかりで答えてきたんですよ。この期に及んで、今度はそれじゃ、これでどうですかと言えば、今度別の答えが出てくる。これは首尾一貫しないでしょう。
 単年度の姿もそうなら、今度の中期計画、これもまた同じ姿がここに出ている。公共投資部門別、これを見ますと、公共賃貸住宅は、比率が、百兆円の中で前の基本計画よりも低下している。ところが、今度値上げしようという電気通信、この方は逆に構成比がふえている。こういった交通、通信関係に力を入れる。これが目玉だというのは、これも列島改造のあの姿じゃありませんか。経済社会基本計画の中で麗々しく打ち出された、それをさらに構成比をふやして、そして希望が一番強い公共賃貸住宅の構成比、比率を減らしている。これは不況の中で前の姿をそのまま延長する、こういうことになるのじゃないでしょうか。こうした中期計画についての国民の求めておる公共賃貸住宅の構成比を減らす、そして列島改造型の電気通信施設関係の構成比を逆にふやすというこの姿は、三木総理、これは前の延長じゃありませんか。これは逆にすべきじゃないですか。総理のこの中期計画についての考え、答弁もあわせて求めます。
○福田(赳)国務大臣 しばしば申し上げておりますとおり、これからの中、長期の国土づくりは、成長中心型から生活中心型へと、こういうふうに考えておるわけです。そこで、環境衛生、それから厚生福祉、学校、それから農林漁業、こういうものに相当重点を置いているのです。たとえば、環境衛生につきましては、前の基本計画では八・七%のシェアのものを二二・六%にこれをふやす。それからさらに厚生福祉につきましては、一・九%のものを二・二%にふやす。学校、教育につきましては、四・九%のものを六・六%にふやす。半面、道路費、これは二一・一%のものを一九・五%に落とす。それから鉄道、これは八・七%のものを八%に落とす。そういうような処置をとるわけでございまして、全体として生活中心型に移行させる、こういう考えでございます。
○荒木委員 副総理はいま私の指摘した点についてことさらに答弁を避けられたけれども、いま何を目玉にしているかという――全体の姿はこれは項目がいろいろあります。限られた時間の中で、本四架橋はどうか、そして今度値上げする電気通信施設関係はどうか、特徴的な点をとらえて聞いているのです。これを転換すべきじゃないかというのです。これは転換しないのですか。いま私の聞いた点は、転換をしないか、するか。これを言ってください。
○福田(赳)国務大臣 本四架橋や新幹線、これは列島改造とかなんとかというアイデアに即してやっておるわけじゃないのです。これは国土の総合開発だ。国土を総合的に観察する場合に、北は北海道、南は九州、これまでは新幹線をどうしたってつくりたい、これは私は国民の願いではないか、こういうふうに思う。それから、四国は陸の孤島というようなことになっておるわけです。それにとにかく一本にしぼって早急に橋をかけよう、これも私は国家的、国民的課題というふうに考えていいのじゃないか、そういうふうに思うのです。ですから、何も政策転換をするわけじゃないのです。そういう国土の総合開発は進めなければならぬ。同時に、生活関連の整備、これにはいままで以上に力を入れなければならぬ。これが政府の構えでございます。
○荒木委員 国土の総合開発と一口におっしゃいますが、問題は中身なんですよ。その中身として、経済社会基本計画でも強調され、また政府みずからも国会で答弁をし、また世間からも言われておるこの目玉について、いまそれを転換するかどうかということを聞いているのです。本四架橋は単年度で最高の伸び率、長期で見たって公共賃貸住宅は構成比を減らしている、この姿を変えるかどうか。副総理はそのことには直接触れないで、答弁がありません。ですから私は、この単年度予算も中期計画もそういう点からは転換になっていない、このことを指摘して、さらにその公共投資が中小企業にどういう影響を与えるかという点について質問をしますが、たとえば住宅、学校など、そうした点が中小企業に波及効果が大きいということは間々指摘をされております。中小企業にそうした官公需を多く発注するようにということは、もう前国会でもわが党議員がしばしば追及してきました。そして三木総理も五〇%以上にしたいという希望は表明されたけれども、なかなかそのとおりにはならない。ことしになりまして、わが党の前国会での追及などによって、建設省が一月九日にようやく次官通達を出しました。建設大臣からこの通達の特徴、なぜこの時期に出したか、このことを簡潔に答弁を求めたいと思います。
○竹下国務大臣 お答えいたします。
 一月九日付の官公需に関する通達の趣旨、その特徴は何か、こういうことであります。建設省といたしましても、実は過去におきまして、五十年の十一月三十一日、あるいは五十年の十一月十日、五十年の十二月十一日等々、その種のことについての指示なり通達をしてまいっておりますが、改めて一月九日付事務次官通達を特に出しましたものは、毎年度閣議決定される国等の契約方針等に基づき基本的には配慮しておるわけでありますけれども、本院で補正予算を審議していただき、それが成立して、そして年度内一〇〇%消化という一つの使命感の中に、あるいは便宜的なことがなされてはならぬ、そしてまた、なかんずく本委員会等についてもこの問題についてはたびたび発言なり要望なりがあっております。そういう背景を踏まえて、改めて事務次官通達を出した、このように御了解をいただきたいと思います。
○荒木委員 そこで三木総理にお尋ねしますが、わが党が再三要求したにかかわらず、いまようやく建設省のみいまの趣旨の次官通達をやっと出したわけですが、ほかの省庁にも同じ趣旨の通達、つまり中小企業に対する官公需をロットとしてとらえて、それを高めていく、こういう措置を早急にとらせるように総理としても処置をされるべきだと思いますが、いかがですか。
○三木内閣総理大臣 中小企業に仕事を与えなければならぬということは強く感じておりますから、私も、あの法律は私が通産大臣のときにみずからつくって、関心を持っておるわけです。官公需の需要喚起、これはできるだけ各省庁に対しでその趣旨を徹底させます。
○荒木委員 徹底の方法として、たとえば建設省のように通達を出させる、そのことをひとつ総理の口からはっきりさしてください。
○三木内閣総理大臣 適当な処置をとります。
○荒木委員 この官公需問題の最後に、先ほどこうした大企業に向けられる公共事業が、減灘体制のもとで値をつり上げて、ネコにかつおぶしのようなものだ、こう言いましたけれども、さらにそういうやり方に政府が関与している。このことをひとつ最後に聞いておきたいと思うのです。
 通産省は行政指導と称して、減産にいろいろな形で関与していると言われています。これは需給見通しを立てておるのだ、業界に対して面接のカルテルにつながるような行為はしていない、こういうふうに言っているのですが、しかし、実際にいまいろいろな減産体制をとって値を上げている企業の代表者から直接聞きますと、通産省が業界首脳と相談をして、そうして業界首脳もそれを歓迎をしてガイドラインが出されて、そしてそのラインに従って生産それから価格決定が行われておる。通産省に聞きましてもこのことは言いませんから、業界からいろいろ経済動向を調査しておる金融機関の日銀の総裁に伺いますが、昨年の九月、十月に日本銀行が主要業種の社長、副社長、専務クラスを呼んで面接調査をした。これは日銀の調査局がやりましたが、その中で、昨日、私が調査局の担当者に聞きますと、通産省とそれから業界、たとえばアルミ業界あるいは石油化学製品の業界、石油業界、通産省とそれら業界の幹部が相談をして、そうしてガイドラインを決めている、業界も歓迎している、その大枠に従ってやっておる、こういう報告をしておりましたが、昨年の九月、十月段階での面接調査の結果、いま言ったような事実があるのは間違いないかどうか、この点を御答弁願います。
○森永参考人 調査局では年何回か、いまお話がございましたような調査をいたしております。これはもとより部内限りの、私どもの施策運営上の参考資料として聴取しておるわけでございまして、その都度その調査を私、熟読いたしておるわけではございませんので、ただいまのような御質問に具体的にお答えすることが困難なのでございますが、業界によりましては、たとえば政府を頼みにしておるとかいうような話をされるような向きもあったかと思いますが、それは現実にどういうふうに動いておるのか、その辺のところは私どもわきまえておりませんので、答弁を御容赦いただきたいと思います。
○荒木委員 総裁、これはきのう直接調査局の人に聞いて、そうしてきょう質問をするから、その点の調査結果をここで答弁を願いたい、よろしゅうございます、こういうことになっているのです。その面接調査結果によりますと、これは個別企業の名前は差し控えますけれども、石油化学業界では、通産省の行政指導が開始されたこともあって、生産増加テンポは鈍っておりますと。それから石油製品業界では、通産省の行政指導による後押しを強く期待しておると。また、今回は通産省のガイドポストで生産の大枠が決められているため、前回のような乱売合戦は防止できる、あるいは業界挙げて安値販売を自粛することにより通産省認可価格に達したい、つまり、業界の方では通産省の行政指導を希望し、通産省と相談をしてそうして減産をやり、価格の値動きをしておる、全体としてそういう面接調査の結果であります、こう育ったわけです。
○森永参考人 そのときどきの景況感を探るために、各業種にわたりましていろいろな方々の率直な御意見を伺った結果がその資料ということになっておるのでございますが、これは答えていただいた方々のコンフィデンシャルな話でもございましたので、どの業界がどうであったというようなことは申し上げにくいのでございますが、業界によりましては、いまお話がございましたようなことを希望するというお話があった向きもあることは事実でございます。ただし、それが現実にどういう展開をその後見せたかということにつきましては、私どもフォローアップをいたしておるわけでもございませんので、現実にどういうことになったかという点につきましてはわかりません。
○荒木委員 公正取引委員会に伺いますが、不況下で減産を強化する、そして通産省の行政指導を希望し、そして通産省と相談をしてガイドラインが出される、こういったようなことがありとすれば、これは独禁法上問題があるのじゃないですか。
○熊田政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまのようなやり方で業界の減産指導をやるということにつきましては問題があると思います。これにつきましては、高橋公取委員長もすでに前国会におきましてその見解を明らかにしております。好ましくないということを申しておりますが、ただいまのお話のようなやり方がなされますと、どうしてもその間に業者間のカルテルというものが行われやすくなるというふうに考えられます。そういう点から私どもは好ましくないというふうに考えております。
○荒木委員 こうした大企業の不況下での対応があり、そこへ公共事業の発注があり、五十年下期の決算予想は好転する、こういうふうに言われておるのですが、そういう中で、公正取引委員会としてこの問題をさらに調査をし、実態を明らかにする必要があるのじゃありませんか。たとえば石油、先ほど言いました幾つかの業界の例が出ておりますけれども、この問題について公取としてさらに真相を明らかにするということが必要なんじゃないですか。
○熊田政府委員 そういうような、ただいまおっしゃられましたようないろいろな業界に関しまして減産指導が行われておるということにつきましては、新聞報道等もございました。できるだけ公正取引委員会といたしましても実態を把握したいというふうに考えております。
○荒木委員 この不況対策のもう一つの柱は公定歩合の引き下げであります。問題は、この公定歩合の引き下げによって民間の金融機関で一番大きな資金量を扱う都市銀行、この不況下でどういう対応をしておるか。公共事業の点で大企業の対応は伺いました。不況対策としての、金融面で都市銀行がこの不況下でどうであるか。貸出金利と預金金利の利ざやによって銀行は利益を確保しておるわけでありますが、この都市銀行と地方銀行の平均約定貸出金利が、あの狂乱物価と言われた四十八年秋から五十年の夏にかけてどのような動きを示しておるか。日銀の総裁からこの点を伺いたいと思います。
○森永参考人 この前の引き締め期間にとった方がはっきりするのではないかと思いまして、四十八年の三月を基準にして申し上げます。
 これは四月に公定歩合が引き上げられたわけでございますが、四十八年三月の全国銀行の平均約定金利は、六分七厘一毛二朱でございました。それが五十年三月――四月から公定歩合が引き下げられましたので三月をとりますが、三月には九・四〇二まで上がっております。その間、都銀と地銀に分けて申し上げますと、都銀では、四十八年三月が六・三三三%でございましたのが、五十年三月には九・五六二%まで上がりました。地方銀行では、四十八年三月が六・九五二%でございましたのが、五十年三月には九・三五三まで上がりました。この間の金利の上がり方を比較しますと、都銀では三・二二九%でございますが、地銀では二・四〇一と比較的上がり方が少なかったわけでございます。これは、融資の対象が都銀にはプライムレートの適用先が多いわけでございますので、公定歩合の引き上げに伴う追随率が高かった、もちろん相対的な問題でございますが、というようなことで、都市銀行の方が上がり方が高く、地銀の方が少し低かった、そういうような経過になっております。
○荒木委員 ここに日銀の方から出された「貸出約定平均金利の推移」という表がありますが、昭和三十五年から見て、都市銀行は地方銀行よりもずっと平均約定貸出金利が四十八年の夏まで低かった。これは資金コストが低いわけですからそうなるのでしょうが、公定歩合が上がったときも下がったときもそうです。ところが、狂乱物価のときから不況のときにかけて、この十五年来初めて都市銀行の方が地方銀行よりも金利が高くなった。いまの総裁の答弁では大体一%近いです。資金量を五十兆円としますと、地銀と比べて一%の利ざやをかせげばこれは五千億ですよ。公定歩合の上がり、下がりの都度に逆転現象を生じているなら別です。十五年間ずっと同じ姿で来た。公定歩合が上がろうが下がろうが同じ形です。ところが、あの狂乱物価のときに公定歩合を、うんと引き締めだということで上げた。そのときに都市銀行の方は、いままで地方銀行よりも低かったのを追い越して、約一%ほどぎゅうっと上げたがために、単純計算をすれば五千億ほどもうかった。今度の前九月期決算で、上位十社のうち八社が銀行だ、こういうふうになっています。こういう中で総裁、初めて今度逆転したというのは、これはそのとおりでしょう。この十五年来こういうのはありましたか。
○森永参考人 資金コストの関係から申しますと、たとえば地方銀行の方は定期預金の比率が多い、それに比べて都市銀行の方は流動性預金が多いというようなことから、資金コストが都銀の方が少し低いということは、理屈の上から出てくるわけでございまして、概して申しますと、都銀の方が貸出約定平均金利は安いということだろうと存じます。ただし、引き締め期間中におきましては、公定歩合を九%まで上げましたわけでございますが……
○荒木委員 逆転したことがあるかないかを聞いているのです、十五年間。
○森永参考人 十五年間の統計をちょっと持ち合わせておりませんが、今度この逆転いたしましたにつきましては、先ほど申し上げましたように
○荒木委員 逆転の理由じゃないのです。逆転したかどうか聞いているのです。ほかのことを答えないで質問に答えてください。
○森永参考人 いま資料を見てから申し上げます。
○荒木委員 これもきのうちゃんとお尋ねしてあるのです。あなたの方から出されたこの一覧表で、このとき、十五年来初めてだということがはっきり出ておるのですよ。調べて後で答弁してください。
 そうして問題は、しわ寄せがどこへ行っているか。これは預金金利を引き下げた。これは三木さん御承知ですね、三木内閣の手でやられたのだから。それじゃ一%預金金利が下がれば――これは都市銀行の場合で、もちろん預けているのもあれば借りているのもあるのですけれども、個人の場合は預けておる方が圧倒的に多い。預けておる方が大体九二%です。法人の場合は借りておる方がうんと多い。そうすると、これで一%下がれば個人が大変な被害を受ける。これは数字はいろんな試算の方法がありますから、あえて聞きませんけれども。一方、貸出金利低下によって、今度は法人の方が当然それだけ下がったものだけ利得を受ける。問題はこのうち法人の貸出金利で、大企業と中小企業、これがいま大企業の方が中小企業に対するよりも低くなってきている。この点、日銀の総裁から、先ほどの点とあわせて答弁してください。
○森永参考人 いま手元に三十五年以後の資料は持っておりませんが、四十八年の引き締めの過程において五十年三月の数字をとらえますと逆転しておりますが、これは恐らく初めての現象であったろうと思います。その理由につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
 その後少し下がってまいりましたので、今日では都市銀行は八・三七%、地方銀行は八・六二%というようなことになっております。これは全体の約定平均金利でございますので、特に中小企業向けがどうということはここからはなかなかわかりにくいのでございます。
○荒木委員 どうも総裁はっきり御答弁になりませんが、考査局の調査では、五十年の四月に大企業向けが中小企業を下回った。つまり不況のときには、金融対策の面でも大企業が有利になって中小企業が圧迫されておる。三木さんの不況対策の目玉として、公共事業と公定歩合の引き下げだ、こう言う。これは内閣全体の政策の問題ですから、この二つを柱だとあなたはおっしゃっておるのです。そうして公共事業の方では、先ほど言ったような問題がある。片や公定歩合の引き下げという金融の面でも私がいま指摘したようなことがある。そうすると、この点はまさに国民を犠牲にして、そうして大企業の方に利益を伴うような不況対策としての姿を持っておると言わざるを得ないと私は思うのです。
 もう一遍日銀の総裁に確認しておきますが、この五十年の春から大企業の方が中小企業よりも金利が下回ったと考査局の調査ではっきり出ておりますが、その点はどうですか。
 それから、さらに預金金利を、すでに私どもが明らかにしておりますように、引き上げるべきだ、特に郵便貯金について引き上げてこれを保護すべきだ、こう言っておるわけです。預金金利のこの上の引き下げということも言われておるが、それをやるつもりなのかどうか、この点もあわせて答弁してください。
○森永参考人 地方銀行の貸出利率の方が低下度合いが低いのでございますが、これは特に大企業が優遇されて、中小企業が虐待されているということではないと思います。この引き締め時における上がり方が地銀の方が少なかった、したがって、緩和期における下げ方も少しおくれておるということだと思うわけでございまして、地銀の中には大企業に対する貸し付けも相当含まれておるわけでございまして、その中の中小企業向けの金利がどうであるかということにつきましては、統計を持っておりませんのでお答えいたしかねるわけでございますが、都銀と地銀との比較だけでは、いまおっしゃられましたようなことを直ちに結論づけることは尚早ではないかと思います。
 なお、公定歩合の問題につきましては、昨日もお答えいたしましたが、ただいまのところ、いままで講じてまいりました金融施策の効果がひたすら上がるように努力しておる次第でございまして、質、量両面から景気の回復に必要なる資金の供給の円滑を期すると同時に、金利の低下を促進しつつある次第でございますので、この上さらに公定歩合を下げるということにつきましては考えておりません。したがいまして、預金金利をどうするかといったような問題につきましても、いまのところ何にも考えておりませんことを申し上げておきたいと存じます。
○荒木委員 いまいろいろ事実関係を挙げましたけれども、こうした金融政策の面、公定歩合操作の面、不況対策のもう一つの柱にしておる面でも、総裁は事実を明らかにしませんけれども、日銀から出した資料ですでに判明しておりますが、都銀がこうした不況下で利ざやを確保する、そして預金金利の引き下げで国民が犠牲を受ける、特に貸し出しの中で、大法人が貸し出しの率が低くなって利得を受ける、この姿は、高度成長のときに大企業が有利な金融を受けたのと、これまた不況下で同じ姿を維持するものではないでしょうか。
 内閣全体としての、政府全体としての金融政策、不況対策としてのいまの時点での金融政策のあり方、特に郵便貯金の利子を引き上げて、そしてその資金で生活基盤の方に金融の手当てをすべし、こうした大きな政治姿勢、政策の基本として、所管の専門的な担当の大臣の意見ではなくて、三木総理の御意見を不況対策の基本の姿勢として伺いたいと思うのです。
○三木内閣総理大臣 中小企業の金融には政府は特に意を用いておるわけで、全体の金融機関の中小企業向け融資は四七%くらい、私の記憶が確かならばそうだと思うのです。まあ半々と言っていいでしょう。しかし、それだけでは十分だとも思いませんので、政府系の三金融機関を持ち、その上に持ってきて無担保無保証などのような特別の制度を設けて、中小企業の金融には特に意を用いておるわけでございます。
 また、郵便貯金の金利の問題についていろいろ御指摘がございましたが、いま一般の庶民の貯金というのは必ずしも郵便貯金だけだと断定はできない。あるいは地方銀行もあるし、信用組合、農協などもありまして、郵便貯金の利子だけを据え置くことは金利体系を乱しますので、一律に定期預金の金利というものの引き下げを行ったわけでございます。特に、不況対策の中で中小企業の占める位置、あるいはまた中小企業の受ける困難、こういうものに対しては特別の意を加えておるわけでございます。
○荒木委員 私の質問の最後に、いまの時点で特に必要な問題は歩積み両建て問題、しばしば論じられましたけれども、これをお尋ねしたいのです。
 いま総理の答弁がありましたが、輸銀の延べ払い融資は今度財投を含めて資金量八一%の伸びでしょう。こういう面でも輸出の大企業寄与率がうんと高いということは明らかですけれども、この面でも、伸び率一つ見ても同じような姿がそのまま続いている。私はこのことを指摘せざるを得ないと思うのです。特にいま歩積み両建て問題を取り上げるのは、数字の上ではいろいろ改善の数字は出ております。しかし、実際に公正取引委員会の調査結果でも、すでにこの委員会でもしばしば論議されましたけれども、まだまだ高い数字になっておる。しかも実際に苦情の申し立てをする件数がふえてきておるわけです。歩積み両建て問題で全銀協がやっているよろず相談所の方に申請のあった件数が四十九年に比べて五十年がふえている。それから、大蔵省の方に直接申し出のあった件数も増加している。ですから、実際は歩積み両建て問題というのはちょとも解決されていない。また、いま担保の見直しが行われておって、増し担保が要求されるけれども、なかなかないから、預金拘束ということが勢い強まる実態にある。
 大蔵大臣に伺いますが、こうした民間金融機関がやっておる苦情申し立てとは別に、いま大蔵省としてのこの歩積み両建て問題の苦情を取り扱うような窓口はありますか。
○大平国務大臣 地方財務局にその道を開いてございまして、いま御指摘のように、若干年々ふえてまいっておりますことは大変残念だと思っております。
○荒木委員 私が銀行課に確かめたところによると、かつてはやっておったけれども、いま制度として窓口はない、こう言いました。窓口はない。ただ、たまりかねてそれを言っていった人が、総務課なり金融課なり、財務局や財務部で聞いてもらうというだけで、制度としてはない、こう言っているのです。
○田辺政府委員 制度としてございます。恐らく先生あるいは誤解があるかと思いますが、数年前までは商工会議所に地方の財務局の係員が毎週何曜日というような日を決めまして、そこに出張して、そこで窓口を開いて相談を受け付けておったのでございますが、大分やっておりましたけれども、なかなかお客さんが来ない。一日ぼんやりしているというのも、これは行政の効率からいって問題でございますので、その商工会議所への出張ということはやめましたのですけれども、各地方の財務局担当のところでは常に相談を受け付ける態勢をしておりますし、その旨の表示もやっておるはずでございます。
○荒木委員 実際に思い余って相談をしようという人の件数は、公正取引委員会の調査による歩積み両建ての拘束を受けておるという数に比べてうんと低い。いま看板を掲げて何とか言いましたけれども、実際にそういったことを知らないという人がおる。ですから、人員も確保し、それからそのことも十分徹底をし、そうして制度的にも、たとえば電力事業、ガス事業あるいは建設業や宅地建物取引業、いずれも法律で苦情の申し立て権というものを認めて、そして窓口を置いて調査結果をきっちり報告をして、そのために不利益扱いを受けないという制度を設けておる。ところが、この金融の分野については、いま不況対策ということで重視をしていると言いながら、実態が先ほど申したようなことであるにかかわらず、法律上の制度が全く整備されず、一般に宣伝もなされてない。
 大蔵省が昨年、新聞や雑誌にいろいろな広告をしましたけれども、国債の宣伝で、たとえば週刊誌を見ますと、「緑色にもいろいろあるんだなあ」こういつたような表題の宣伝を金をかけてやってますけれども、そんなことをするよりも、新聞や週刊誌、いろいろな広報機関に、この歩積み両建ての問題では苦情があればどんどん言ってください、そうして利用者の皆さんの苦情に答えます、こういう宣伝もやり、そして窓口も充実するということをやるべきだと思いますが、こうした金融Gメンのような制度をひとつやるかやらないか、大蔵大臣にひとつ伺いたいと思います。
○大平国務大臣 大蔵省並びに地方部局自体が本来そういう苦情を承って処理していく役割りを持っておるわけでございまして、ことさらこれを宣伝してまいる必要はむしろないほどだと思うのでございますけれども、この苦情処理につきましては、仰せのように大変件数はいままでのところ実績的に少ないのでございます。
 これはよく考えてみますと、役所に持ち出して果たしていいものかどうかという御判断に迷っておられるのじゃないかと思うのでございまして、問題は、金融機関の自粛が一番基本に確立しないといけない問題だと思うのでございます。したがって、苦情処理につきましても、積極的に伺って処理に努力いたしますけれども、あわせて金融機関の自粛を促すという意味におきまして、もっと精力的な行政を展開してまいらなければならぬわけでございますので、きのうここでもお話がありましたように、アンケート調査等を通じましてできるだけ詳細に――わかりにくいことでございますけれども、できるだけ詳細に実態を掌握の上、推進してまいりたいと思っています。
○荒木委員 一言総理に伺っておきます。
 総理、これは電力の場合、法律で苦情申し立てを決めているのです。ガスの場合だって主務大臣に申し立てができる。それから建設業だってできる。家内労働法でもできる。ほかの各省庁の所管のところでは、法律で大臣にということが決まっているのです。そうすると、内閣全体と見て一番要求の強いその面について法律的な制度もない。これは全体のバランスの上からも、必要性の上からも、これは総理としてひとつ施策として考えるべきじゃないですか。
○三木内閣総理大臣 これは信用の問題に関係するデリケートな問題でございますが、銀行法改正というものでいま検討を加えておりますので、そういう場合に検討いたす課題の一つといたします。
○荒木委員 銀行から百億円自民党が借りておって、そして財界にそれの肩がわりを要請しておるというふうな状態では、はっきりした回答が出ないのはそこに原因がある、私はそのことを指摘して、関連質問者にかわります。
○井原委員長代理 増本君から関連質疑の申し出があります。荒木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。増本君。
○増本委員 荒木委員に関連して、幾つかの問題についてお伺いしたいと思います。
 政府も、いまの財政危機の克服ということを言っています。今年度の当初予算を見ましても、赤字国債を含めて膨大な国債が抱き込まれている。何よりも中心の問題は、この赤字国債脱却のために、一体今後の税負担をどうするのか、こういう問題であろうと思います。政府がせんだって発表された五十年代前期経済計画概案では、租税負担等を、四十八年から五十年平均に対して三%程度引き上げる、こういうようになっていますね。
 そこで、まず最初にお伺いしたいのは、一体政府はどんな構想をお持ちなのか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
○福田(赳)国務大臣 これから先の財政を展望しますと、経済は一応不況、インフレを脱却いたしましても、財政面ではなかなか容易ならざる傷跡が残る、これを速やかに克服しなければならぬ、こういうことになるわけですが、この際、どういう見当かという際に、問題になりますのは例の特例公債、赤字公債と言われる特例公債をいかなる時点で打ち切ることができるか、こういう問題だろうと思うのです。大蔵大臣は、一、二年でそれを打ち切るというわけにはとてもいくまい、そういう見方をしておる。さればといって、五十年代後期までこれを持ち越すということは考えることはできない、こう言う。そうすると、どうしてもこの三、四年のうちにはこれを解消する、こういうこととなるわけです。
 そういう三、四年後に特例公債を解消するという前提を立てて今後の財政を考えまするときに、一応歳出はどうなるか。私ども経済企画庁では、成長率六%強という経済展望をしておるのですが、それに応じて財政の支出面は一体どうなる、それから収入面は一体どうなるということを考えますと、四十八年、四十九年、五十年、この三年度におきまして租税負担率が二二・七%になるのです。それを大体三%くらい積み増しをする状態にならぬと、この三、四年の間に特例公債を解消する事態にはならぬ、こういうふうに考えるのです。その考え方を前期展望の中に述べておるわけなんです。
 その三%の租税食掛率の積み上げをどういうふうに実現するか。恐らく、ある程度これは自然増収でカバーできる面もあると思うのです。しかし、それは自然増収だけでは恐らくカバーし切れない。そういう際には、既存の税の税率改正をするとかその他の手直しということも考えられる。あるいは新税の創設というような方法も考えられる。とにかく、国民負担三%ぐらいふやしませんと、三、四年の間に特例公債を解消するということは無理だ、そういう見解でございます。
○増本委員 いま副総理、景気が上向けば自然増収があるだろう。では、この中期計画で進んでいって、どのくらいの自然増収が現在の税制のもとで可能なんですか。その点についてどういう見通しをお持ちでしょうか。
○福田(赳)国務大臣 それはいま大蔵省の方で中期財政展望として検討中なんです。この予算御審議の間に、速やかにそれを提出したい、そういうふうに申し上げておるわけであります。
○増本委員 過去のインフレ、高度成長、いろいろ問題はありますが、あの時期ならともかく、しかし、これからの実質六%の経済成長、名目一三%という状況のもとで、自然増収というのはそんなに期待できないですね。大幅な期待はできないでしょう。結局これはいまお話しになったように、新たな税負担、しかもそれが三%ということですが、この概案のこれで計算をしてみますと、まあ三%一遍にある特定の年度に負担をさせるということになるのかどうかは別にしまして、漸次、最後の五十五年で三%というようなことで考えて、ちょっと試算してみますと、五十二年に一%上げるだけで一兆九千億の税負担、それから二%で三兆八千億、まあ三%だと五兆七千億ぐらいという勘定になりますね。それから、五十三年が国民総所得が二百十五兆ですから、一%で二兆一千五百億、二%だと四兆三千億、三%で六兆四千五百億。五十四年が、総所得二百四十三兆円ぐらいですから、一%で二兆四千三百億、二%で四兆八千六百億、三%になると七兆二千九百億。五十五年、終点で三%ということになると、二百八十兆ですから八兆四千億。まあ、こういう勘定になりますね。
 まず、この概案の土台なんですが、概案では名目一三%の成長、実質六%。そうするとまず第一には、これは国民には物すごい負担をかぶせることになる反面、この概案が掲げている実質六%の成長だなんというようなことが、特に国民消費支出で五%強の成長、これはもう実質的には望み得ないことになるということに計算上からいってなりませんか。だから結局、国民負担三%の増というのは、もし一般勤労者、国民にこの三%の税負担をさせていくということになったら、実はこの概案で言っている国民消費支出五%というような前提そのものが崩れて、結局国民の生活向上なんというのはほとんど考えられない。
 そういう点で、この概案で掲げている中身というのは、実際には、詰めていくと、国民消費支出そのものを一層冷え込ませ、低下させていくという、そういう関係になるのじゃないかというように思いますが、その点は副総理いかがです。
○福田(赳)国務大臣 これは私は、これからの社会というものは、もう社会化という傾向、これが相当進むと思うのです。つまり個人、個々の生活ですね、われわれはまあわれわれ自身で生活を営んでおりますけれども、その中の何がしかを割いて共同の生活をしておるわけですね。まあそれは社会生活ですよ、国家生活。この共同の生活の部面がふえていく傾向を持つ。私は、これからの社会というものは、そういう傾向をたどるだろうと思うのです。ですから、まあ六%強の成長、その中で国民消費は実質五%そこそこだ、こうしても、社会消費、これがふえるわけですから、そこで六%強という成長が実現できるので、少しも矛盾はないし、むしろそれが時代の要求であり傾向である、そういうふうに考えております。
○増本委員 社会消費がふえるというお話ですけれども、しかし、その国民総所得全体の中での振り分けで見ると、国民消費支出の方が構成比で大体五五%、そこまで引き上げる、そういう計画ですね。そのために、いま低下しているのをそこまで引き上げていくための消費支出の実質の伸びが、五%の毎年の伸びでいこう、こういう計画ですよね、概案は。
 しかし、税負担はこれは国民に求めるわけでしょう。国民に求めるそこのところでの税負担が三%になると、先ほどお話ししたような大変な数字になる。これは国民に税をどこにどういうぐあいに求めるかということに関係しますけれども、しかし、平たく国民一人当たりに直せば、五十五年には今日と比べてなお一人当たり八万四千円の税負担という、そういう計算ですね。だからそういうことになると、国民消費支出は昭和五十五年では、総所得が二百八十兆で、五五%の国民消費支出ということになると百五十四兆円という勘定ですから、それが税負担八兆四千億円ということになると、構成比で見ると五・四%ぐらい、その中から税として持っていかれるというような勘定になる。ここのところで、一つは、実質五%というあれが、多少経済が仮に順調に伸びていくとしても、この五%の伸びが実質的には三%ぐらいの伸びにとまってしまうということにならないか。ことしは政府の見通しでは実質成長率が二・六%ですね。ですから、いまの国民生活実感と余り変わらない。そういう状態が今後五年間続き、国民の方は、今度は逆に物価は毎年八%ぐらい上がる、そしてそのための名目所得はふえるとしても、生活実感としては、この三%税負担ということで、国民生活向上という面では非常に変化がないというような関係にならないかというように思うのですが、どうでしょう。
○福田(赳)国務大臣 その点はこう理解願えればいいのではないでしょうか。つまり、これからは共同の道路をつくるとか、あるいは共同の治山治水事業をやりますとか、学校をつくりますとか、そういうわれわれの生活に関連しますけれども、共同でする場面というものが広がっていく。個々の家庭のつくりというものは、それに反して、それだけの財力を共同の社会づくりのために提供するのですから、それだけ少なくなっていく。言葉をかえて言いますれば、税負担も若干はふえる傾向になるけれども、反面におきまして、国家的社会的事業というものは大いに振興し、われわれの生活は社会連帯という中で充実されていく、こういう考えであるというふうに御理解願えればいいのではないかと思います。
○増本委員 副総理のおっしゃることは、道路がふえるあるいはそのほかの社会関連施設がふえる、結局政府固定資本はふえるけれども、しかしそれは国民消費支出を削ってそっちの方に転化をされる。だから、国民の個々の生活そのものは、実態としては、生活実感は変わらないということは否めないと思うのですよ、いまの御答弁で見ても。
 そこで、それではきょうは税制調査会の会長さんにおいでいただいていますが、中期計画を会長さんもお読みになったと思います。いまお話ししたように、終点の昭和五十五年では八兆四千億というような税負担になる。一体これだけの税収を上げられるような税目というのはどんなものとして考えられるのか。
 それからもう一つは、税制調査会では今後この中期計画の概案を受けてどのようなことをやろうとお考えになっているのか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
○小倉参考人 ただいまお尋ねのことでございますが、税制調査会におきましては、昨年の暮れ中期経済計画を受けまして、約三%の税及び税外負担の増徴といいますか、負担増ということはやむを得ないのではないかということを受けまして、税制調査会に基礎問題小委員会というものを設けまして、もっぱらと言ってもよろしいのですが、主として大学の先生方に基本的に御研究願った結果は、それを受けまして、税制調査会の五十一年度の税制改正の前文におきまして、ある程度の税の負担増ということはやむを得ないだろう、ただし、その負担増を求めるにつきましては、税制全般に非常に関係のあることで、今後どういう税制にそういう負担増を求めるべきかということにつきましては慎重に検討をする必要がある。現在こういうことになっておる次第でございます。
○増本委員 会長さん、もう一つの質問なんですよ。終点の五十五年で三%増とすると、政府の見込みでは二百八十兆だから、結局八兆四千億ぐらいの税及び税外負担を国民に課する、こういうことになるわけですね。そのときに、これだけの税収を上げられるような税目にはどんなものが考えられるのか、その点のこれまでの検討ではどうなのか、この点お答えいただいていないので、お願いします。
○小倉参考人 その点は、ありようを申しまして、税制調査会としてはまだ検討いたしておりませんです。ただし、むろん所得についての税あるいは資産についての税あるいは消費についての税というようなことが基本的に考えられますので、それぞれにつきまして恐らく検討を要するということになるのであろう、こう存じております。
○増本委員 そこで、いま税調会長も言われたように、所得から求めるか、消費に課するか。総理は、この前の国会から、今度の国会も含めて、そういう点では付加価値税というのが一つの重要な検討課題だ、そういうようにおっしゃっていますね、どうするかは後税調の答申によるけれどもと。しかし、御自身としては、付加価値税というのは非常に魅力のある税制のような趣旨の答弁をされている。
 そこで、まず一つ前提として確認をしておきたいのですが、消費者物価の上昇率をこの中期計画では平均六%というようなぐあいにしているわけですけれども、こういう一般消費税とかあるいは付加価値税というものはこの消費者物価上昇率の中には一応織り込んではじかれているものなのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
○福田(赳)国務大臣 税がどういう形を今後とるかということは、これは具体的に考えておりません。ただ、この消費者物価は海外の要因、これがかなり変動する可能性を見ておかなければならぬだろう。それから、公共料金、これが一回りというか、石油価格が四倍にはね上がったその影響に対する調整、それを初期の間は考えておかなければならぬ。そういうような要素を考えますと、本当は六%というようなところへ持っていきたくないのです。もう少し低目にしたいのですが、まあゆとりを持った考え方をしておいた方がよかろう、こういうだけの話であります。
○増本委員 一つは、これは大蔵大臣、大臣もいま直接税と間接税の比率が非常にバランスを欠いている、だからこの直間比率を是正せにゃいかぬという立場に立っておられますね。大臣としては直間比率をどのぐらいにお考えになるのか、この点はどうでしょう。
○大平国務大臣 正確に申しますと、直間比率を是正しなければならないというようなことは、私、申し上げた覚えはないのです。わが国のいわゆる税制におきまして、直接税収入が六七、八%、残余が間接税収入になっておりますので、直接税に偏っておるという事実があるわけでございます。それが一点。これは私がどう言おうと、いま言ったそういう客観的事実があるわけなのでございます。
 それから第二は、今度、いまあなたが問題にされておる新たな税源をどこに求めるかという審議を、まあ税調を中心に御審議をいただくにいたしましても、いま会長が仰せになりましたように、直接税に求めるか、間接税に求めるか、所得に求めるか、消費に求めるか、資産に求めるか、いろいろそういう検討が行われるであろう。そういう検討が行われる場合におきまして、いまの状態というのは確かに検討の対象になるに違いあるまいということを申し上げたのでございまして、私はいま幾ら幾らが適当であるなどということは申し上げた覚えもありませんし、申し上げようとも思っておりません。
○増本委員 副総理、この消費者物価を算定する場合には、国民の税負担がどのぐらいかということは外せない一つのモメントだと思うのですよ。特にまた、この直接の押し上げ要因になるのは間接税ですね。中でも、消費税や何かがどうなるかということはもろに関係してくる。だから、この六%は海外その他の要因だけだというぐあいで、これで中期計画が構成されるというものではないと思うのですね。
 だから、もう一度重ねてお伺いするのですが、じゃ、三%の税負担との関係でこの消費者物価上昇率六%はそこはどういうように判断をされ、どういう構成でこの三%の税負担というものが、この六%の物価上昇率の押し上げ要因としてどのぐらいのモメントを持つものとして計算をされ、勘定をされたか、この点を明らかにしていただきたい。
○福田(赳)国務大臣 六%消費者物価上昇というのは、これはもう政治的目標といいますか、概案という中の一つの目標数字でありまして、これは積み上げ数字じゃないのです。先ほど申し上げましたように、公共料金の問題もあります。それからさらに、ずうっと長きにわたって考えておかなければならぬのは海外要因である。そういうものを勘案いたしまして、過去の長期計画においてはかなり低目の数値を目標として掲げておりまするけれども、六%、これはまあ、私どもとしてはちょっと高いと思うのですけれども、この辺のことを考えておかなければならぬだろうかなというふうに思いますので、これは、税の体系がどうなるであろうかというようなものとは関係して考えておらぬ、かように御了承を願います。
○増本委員 それでは、言われるような付加価値税とか一般消費税が、これが物価押し上げ要因になるということはお認めになるでしょう。
○福田(赳)国務大臣 それはそのとおりでございます。
○増本委員 そうだとしますと、この付加価値税とか一般消費税というものが将来導入をされるということになると、その結果、この中期目標の消費者物価上昇率六%というのは当然変更になりますね。で、また、消費者物価上昇率が上がれば、今度は経済運営そのものがやはり手法もそれから中身も変わってくる、こういう関係になるでしょう。
○福田(赳)国務大臣 まあ、個々の税制をどういうふうにするかまで、五年先、十年先をいま考えておる余裕ばないのです。ですから、そういうものはそれといたしまして、世界の動きあるいは目立った公共料金の動き、そういうものを勘案いたしまして、大体六%程度かな、そういうことでございまして、とにかく名前からも概案、こういうことになっておるんで、まだそう精細に積み上げての結果ではない、こういうふうに御了承を願います。
○増本委員 税制をどうするかというのは、五年先、十年先と言うけれども、いま赤字国債を抱えて、財政再建をどうするのかというのが焦眉の問題でしょう。そこで、いかに国民に税負担を求めたらいいのかということが政府みずから問題提起をされている点でしょう。だからこの中期計画は、これは五年先から、昭和五十五年から六十年のことの計画じゃないのですよ。五十一年、来年度が初年度で、それからの五年間の問題、この五年の間に国民に三%の税負担を求める、こういうことで出されている問題ですからね。だから来年度あるいは再来年度からの税制がどうなるのかという、一年、二年先の問題ですよ。だから、そのときにどういう税制がとられるか、それいかんでは、政治目標だと言われている消費者物価の上昇率六%だって変わってくる。副総理認められるように、付加価値税だとか一般消費税というような問題になれば、しかも、それは総理の口からも出ているという現状では、当然変わってくるということもあり得る。そういうことになるんじゃないでしょうか。
○福田(赳)国務大臣 これは税制が根本的に変わりまして、そうして付加価値税というものが非常な大幅に導入されたというようなことになると、これは消費者物価には非常な影響があります。そういう際には、それはもう改定を要するというようなことになりましょうが、いまそういう税制という個々の問題は考えておらぬ。まあ、大体六%以内ということを目標として諸政策を運用いたしましょう、こういうことなんです。
○増本委員 この中期計画が変更になって、それで消費者物価が上がるというようなことは、政府としても歓迎するところではないと思うのですね。だから、少なくとも最低限この消費者物価上昇率六%、これが動くような、そういうような税制は採用すべきでないという結論になるのが当然だと私は思うのですよ。その点はどうですか。そのことをお約束できますか。
○福田(赳)国務大臣 六%以内ということを目標として諸政策を進めていくのです。その中に税制の改正というものも入る、これはもちろんです。しかし、財政にはまた財政の事情がありますから、その財政の事情から――それは根本的な税制改正だということになれば、物価目標についても考え直さなきゃならぬというふうなことはあるかもしれませんけれども、なるべくそういうことのないようにしてまいりたいというのが私の考えでございます。
○増本委員 それではこの中期計画なんというのは、これはおつくりになったって税制一つ変わったら変わっちゃうとか、そういう性格のものなんですか。じゃ、政府の消費者物価上昇率六%という目標も、そのときどきによって変わって、もっと上がるというようなこともあり得るというような、そういう性質のものなんですか。私は、いまの副総理の御答弁では、そういうように判断せざるを得ないのです。
 総理がそこでほかの勉強をされていますけれども、じゃ、いまの議論、経過を聞いて、その上でどうなんですか。この中期計画の消費者物価上昇率六%、これが動くような、そういう税制は採用しないということは断言できるのですか。国民負担をこれ以上かける、私は三%というのも重いと思っているのですよ。いままでの御議論でいっても、国民消費支出の方は削って、社会資本充実とかといって、結局国民は冷え込んだ消費生活、経済生活のもとのままにこの中期計画は置かれるのじゃないか、こういう感じを持たざるを得ない。しかし、それでも政府が出しておられるこの目標が動く、物価がもっと上昇するということになるような、そういう重大な税制改正はしないということが断言できるか、このことをお尋ねしたいのです。
○大平国務大臣 税制のことですから、私からちょっと一言申し上げておきます。
 中期計画その他、政府がいま持っておりまする政策との整合性を考えながら、私ども、中期的な財政の展望というようなものの試算をいま試みておるわけでございます。その中には、いま増本さんおっしゃるように、三%以内においての税負担を求めるということも中期計画でありますので、それも一つの柱として、展望を試算するに当たりまして援用させていただいておるわけでございますが、あなたのいわゆる税制改正との関連において詰めて議論いたしますならば、この税負担の増高というものが将来あり得るといたしましても、まず第一に、どれだけ自然増収でカバーできるかという問題が前提にあるわけでございます。
 それで、経済の成長がそんなに高い成長でなくても、順調にまいりまして、新たな根本的な税制の改正を伴うことなくて、しかも所要の財源が得られるという場合もあり得ようかと思うのであります。しかし、それではまだ若干足らぬじゃないかということが収支のバランスから見まして考えられる場合に、次に既存の税制というものにどれだけ付加すべきかというふうな議論も出てくるかと思うのでございまして、直ちに新税というところにすぐ直結する問題ではないと思うのでありまして、したがって、いま税制を非常に具体的な問題としてとらえられて、それと、つまり消費者物価との関連について議論されるのはなお尚早な議論じゃないかとぼくは思います。
○三木内閣総理大臣 中期経済計画は成長率として完全雇用を確保するためには六%程度の成長が必要である。また国民生活の安定のためには消費者物価を六%ぐらいにしなければならぬ。そういういろいろな日本経済のあるべき姿というものを頭に描きながら中期経済計画というものはできておるので、税負担の三%増ということも、いま大蔵大臣の述べましたようにいろいろな条件があると思いますよ、自然増収の問題もございますし。だから増本君は、すぐにこれは何か付加価値税というようなものを頭に入れてそういうことを想定するというのは、やはりこの場合適当ではないということでございます。何も新税を頭に置いてこういうことを言っておるのではないということでございます。
○増本委員 総理、私が質問しましたのは、政府の方で検討されてきた中期計画、これに基づいて五十一年度から昭和五十年代前半期の政治のかじ取りをしていこう、こういうことになっているわけですね。だから、そこで出された目標が、成長率の問題があります。それとの絡みでこの消費者物価の上昇率六%ということも出てきた、これはまだ多目だということを副総理は言ったわけですね。だからもっと低くせにゃいかぬというのが政府の目標だ。それだとしたら、その物価押し上げ要因になるようなそういう税制をやったら、政府がおやりになろうとしている中期計画そのものが動いてくるじゃないか、そういうような税制は採用されないというのが、これはもうあたりまえな帰結じゃないか。一般論として政府が中期計画をおやりになるんだったら、そのぐらいの決意はお持ちになって出してこられるんだろうということで、総理の決意のほどをお伺いしているので、真っ正面からお答えください。
○三木内閣総理大臣 中期計画の重要な一つの指標があるわけですから、それを崩すような税制改革というものはむろん適当ではないわけで、そういう経済指標の大きな柱を実現可能なように税制の問題も考えなければならぬことはお説のとおりでございます。
○増本委員 それではもう一つ伺います。
 大蔵大臣も、副総理も、一つは何か自然増収にかなりの期待を寄せておられる。しかし、ここのところの見込み、見通しというものは立たぬわけですよ。ところが、一方で財政需要、これも見通しはこの中期計画の中での国民総生産、国民総所得、そういう目標から見て財政需要についてははじき出せば出てくるわけです。それを、この総括質問のさなかに、終わるまでに大蔵省の方では検討してお出しになる、そういうことになっているわけでしょう。だから見込みのない自然増収を期待しながら、それによって税負担が決まってくるなんということをおっしゃるけれども、結局、はっきり財政需要から出てくるのは、そして三%の国民の税負担という、こういう結論になって出てきているわけですから、しかももう一つは、総理自身も言っている付加価値税あるいは一般消費税の採用とか直間比率を考えなくちゃいけないというように、具体的な税制の問題としてもうすでに出てきている問題ですから、私たちは当然帰結として付加価値税ということにならざるを得ないわけです。だから付加価値税になったら物価が動くぞ、間接税というものは物価押し上げ要因になるということも認められておる。それだったらそういう目標、政府の消費者物価上昇率の目標が動くようなそういう税制というのは、いまこの際緊急の事態なんだ、やめろ、付加価値税なんというものもやめろということがはっきりしなければ、これは中期計画そのものを来年度から実行していく、ことしから実行していく計画がそんな無責任なものであってよいのか。だからそういう点で総理の答弁は私は納得できない。再考の余地があるのですか、ないのですか。
○大平国務大臣 どうも議論の末に付加された議論が一つついて付加価値税というのがついてくる。付加価値税をやるというようなことを政府は言った覚えはないわけなんでございますし、何か政治的な御意図があって、何か政府から言質を引き出したいとあなたは思っておるんじゃないですか。(笑声)いまの民主体制のもとにおきまして政府が事をなそうと思いますならば、いろいろ公明に準備いたしまして、いろいろ手順を踏んでやらなければならぬわけでございまして、抜き打ちにそういう大それたことができるはずはないわけなんでございまして、税制調査会に政府がお願いいたしておりますことは、基本問題として税負担がどうあるべきかという点を御検討いただきたいということと、租税特別措置の見直しをお願いしたというのがこれまでの経緯でございます。これからは、いまから御提案申し上げまする中期財政展望というようなものを手がかりといたしまして、今後の財政運営についていろいろ熱心な勉強をいたしてみようということを申し上げておるわけでございまして、付加価値税というような問題をいま取り上げて政府が調査会に御検討をお願いしたわけではないわけでございますので、それに余りこだわられると多少困りますので、どうぞひとつそれは御勘弁をいただきたいと思うのでございまして、私ども事は公明にやりますから、別に抜き打ち的にこういう大それたことはやろうと思いませんから、その点御安心をいただきたいと思います。
○増本委員 それならば大臣、公明におやりになるというのでしたら、それならばいつも税制調査会でどういう議論がなされているのかということが実は国会の中でも十分にわからない。再来年度税制の問題で税制調査会等にこれから諮問をされ、検討も進められるであろうと思います。あるいはこの中期計画に見合った税制がどうなるのかということが検討が進められると思います。国会でもその問題は、税制調査会に議論されている問題は、それからまた、税制調査会にお出しになる資料及び政府の説明等も国会にそれを等しくお出しになって、国会を中心にしてこれからのこの中期見通しでの税制のあり方の公明正大なひとつ大論議をするという方向に持っていかなければいかぬと思うのですよ。いままでの税制調査会の運営の仕方を見ていましても非常に秘密主義ですね。だからそういうところを改めて、同じ、等しくこの国会でこの問題が議論されるということになるべきだと思いますが、その点、そういう手だてをおとりになるように要求をしますが、いかがですか。
○大平国務大臣 税制調査会ばかりじゃございませんで、あらゆる審議会、調査会は民主的に運営されるわけでございまして、これはその審議会、調査会にお任せしなければならぬわけでございまして、政府がこれは公開にしろとか秘密会にしろとかいうようなことをすることは適切でないと思うのであります。しかしながら、税制の問題は重要な問題でございますので、また国会の審議は大変重大な問題でございますので、政府といたしましては、国会の御要求の資料につきましては可能な限り御提出申し上げて、国会の御審議に支障を来さないように最大限の努力を申し上げるのは当然の責任と考えております。
○増本委員 ほかの問題に移る時間がなくなりました。もう一度この資料の問題で確認をさせていただきますが、これは総理もひとつ聞いてください。
 従来は、税制改正なら税制改正の法案が出てきて初めてその中身がわかるとか、あるいは税制調査会の答申が出て初めてわかる。税制調査会でどんな審議が行われ、特別部会までつくっていろいろ審議をされていても、その中身がわからない。その中で税制調査会の事務局をやっている大蔵省がどういう資料を出し、何を説明し、どうしているのかということ、これすらわからない。結果が一応明らかになってきたぐらいの段階で、まとめて資料が届けられることがある。再三再四にわたって資料要求をやってようやく出てくるという関係です。これでは、これからの税制の動向を公明正大に大蔵大臣議論しようとおっしゃったって、そうならない。私の何か政治的な意図による発言じゃないかということをおっしゃったけれども、そうじゃなくて、むしろ税制調査会を大蔵省が何か隠してそうして秘密裏にやっている、政治的な意図をお持ちじゃないか。だからそういうことがないように、公明正大に議論するのだったらその前提は取り払って、税制調査会――大体総理の諮問機関と国会を等しく扱えなんというこんな質問を私がするなんて、いまの現状はそのくらい情けない状態ですよ。しかし、それは前提ですから、だからそういう前提を――これはともかく税調に出した資料は全部出す、それから税制調査会で説明した中身は全部国会にも明らかにして、その都度同じような議論があらゆる角度から行われるというようにすべきであるというように思いますが、その点いかがでしょう。
○大平国務大臣 税調に私どもの方から、政府から出しました資料は、これまでも御要求によりまして委員会に出しておりまするし、また、税制調査会の審議の結果につきましては、逐一御報告を申し上げているつもりでございます。しかし、審議は非公開になっておりますので、それを一々お出しするわけにはまいりませんが、今後とも国会の御審議に対しまして政府は最大限の御協力を申し上げることに変わりはございません。
○三木内閣総理大臣 できる限り大蔵大臣の申したような趣旨でいろいろ御検討願う便宜に供したいと思っております。
○井原委員長代理 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。
 次に堀昌雄君。
○堀委員 私は、ただいまから、五十一年度歳入歳出予算を基本としながら、すでにお手元に差し上げておりますように、経済見通しについて、不況と賃金について、国の歳入について、景気浮揚と一般会計予算について、公共料金特に国鉄問題についてお伺いをいたします。
 まず最初に三木総理にお伺いをいたしますけれども、私ども立法府が予算審議をいたしますためには、政府はこの予算審議に必要な政府みずからが作成をした資料をできるだけ提供して、予算審議が実のあるものになることを期待するのが行政府の責任である、こう私は考えておりますけれども、その点についての三木総理の御見解を承りたいと思います。
○三木内閣総理大臣 そのとおりだと思います。
○堀委員 引き続きお伺いをしておきたいのは、私どもの手元にちょうだいをしますところの資料の中には、閣議決定になる公式な政府の資料、さらに閣議了解といわれる資料等があります。これらはいずれも政府の公的な見解でありますから、この公的な見解については、それを担当する当該閣僚の責任は私はきわめて重大であると思いますけれども、当然、内閣は連帯をして責任を負うことでありましょうから、あわせて総理もこれらの閣議の決定になりますところの政府の決定事項あるいは了解によるところの決定事項については、責任を持って処理をされるということになってしかるべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○三木内閣総理大臣 そのとおりだと考えます。
○堀委員 そこでまず最初に、予算のいろいろな論議をいたします際には、まず歳入の問題がきわめて重要な課題になってまいります。歳入なくして歳出予算は成り立ちません。その歳入予算の基礎となるものは実は政府経済見通し、企画庁が所管して閣議決定になりますところの政府経済見通しというものが実は基本にならざるを得ないのであります。この政府経済見通しには、「経済見通しと経済運営の基本的態度」という文書をもって公表されておるわけでありますが、昨年まではその末尾に「参考資料」として、第一表「人口・労働・雇用等」、第二表「国民総生産と国民総支出」、第三表「国民所得」、第四表「鉱工業生産指数」、第五表「農林漁業生産指数」、これらのものがこれまでは長い間にわたって添付をされて、実は公表されておるのであります。ところが、今回に限ってこの参考資料を外した「経済見通しと経済運営の基本的態度」というものが私どもの手元に配られました。これは一体なぜでしょうか。ひとつ企画庁長官のお答えをいただきたいと思うのであります。
○福田(赳)国務大臣 確かに従来添付しておりました参考資料というのを今回は省略したのです。
 その理由は、その参考資料の中に雇用者所得というのがある。御承知のとおりであります。あったのです。この雇用者所得に実は問題があるわけなんでありまして、私は昨年のいまごろも皆さんに申し上げておったのですが、賃金問題には政府は介入いたしません。ことしもまた同様の考え方でいこうと思うのです。ところが、昨年、参考資料の中に雇用者所得というものが掲記してある、これをめぐりまして政府が賃金決定の水準を示唆するのではないかというような見方をなす人があったわけでありまして、私はそれは非常に残念に思ったのです。これは直接問題となる賃金交渉のベース賃金とかかわりのある問題じゃないのでございますけれども、どうもそういうふうに受け取られがちである、そういう論議が行われる。そこで、そういう誤解を招くような資料は公式資料として添付しておくことは妥当じゃないのじゃないか、そういうふうに考えまして、実は私の指揮でこれの添付をやめるということにいたしたわけなのです。
 ただ、すでにこの国会の論議でも事雇用者所得に及びまして、大蔵大臣からも租税算出の基礎としてこうだ、こういうようなことにもなり、それを私がこの席で確認するということにもなっておりますので、そうは考えたものの、もうやむを得ない、ことしもこれは提出した方がいいんじゃないか、堀さんからもそういう御示唆がありましたので、これを拠出することにいたしました。それから、ことし提出することにいたした以上、将来もまた提出するということにしたらいいじゃないか、かように考えます。
○堀委員 この問題は、初め福田副総理はそういうふうにお考えになったようでありますが、一月二十八日の日本経済新聞の朝刊にこんなに大きく出ているのです。結果として撤回されるのでありますから、これ以上追及しませんけれども、やはり政府が雇用者所得が外へ出たら困るなどというような確信のない経済見通しを出していただくということでは私は困ると思うのですね。これは試算の過程でして、雇用者所得というのは個人消費と密接な関係のあるものですよ。要するに、国民総生産を考え、分配、国民所得を考えるということなら、当然雇用者所得があり、雇用者所得につれて個人消費が出てくる、こういうのが物事の仕組みだし、大平大蔵大臣がこの間ちゃんとここでお答えになったので、私はあれで、公式に閣僚が答弁したものを出さぬわけにはいくまいな、こういうふうに思って、事務当局に用意をしなさいと言ってあります。
 委員長、皆さんに配付をひとつお願いいたします。私も一部ちょうだいをいたします。
○井原委員長代理 ただいま堀委員から資料要求がございました。ようございますか。
○堀委員 準備をお願いしておる資料もありますので、一緒にこれを配付していただいて論議をいたしたいと思いますので、お願いをいたします。
 次に、総理大臣、いまの経済見通しに関連をいたしまして、ちょっと資料が見当たりませんが、新聞にまことに納得しがたい問題が一つ出ておるわけであります。それは、一月二十三日の閣議決定のあった後で、河本通産大臣が日本記者クラブで講演をなさったことに関連をし、通産大臣がどこまでおっしゃったのか、通産事務当局がどこまで言っておるかはわからないのでありますけれども、ことしの経済見通しに入っていない新しい需要がある。それは、プラント輸出については、通帳省が予想しておるものが六十億ドルぐらいはこの中には入っていない。さらに、新たに電力関係の設備投資と鉄鋼関係の設備投資とを進めることによって、この見通しに入っていない新しい需要が二−三兆ある。だから、今度の経済見通しは達成できるという趣旨のことが実は報道されておるわけであります。
 そこで、私、これちょっと問題があると思いますのは、二十三日の閣議で決定をされた内容について、通産大臣か事務当局かのところは、私、伺ってからでないとわかりませんが、このようなことを三日後に外部で閣僚がおっしゃったり、あるいは新聞社の取材に事務当局が応じておるとすると、一月二十三日の閣議決定というものは大変安易なものではないかという感じがしてなりません。
 河本通産大臣、私も新聞で見ただけでございますから、その間の事情をちょっと御説明をいただきたいと思います。
○河本国務大臣 確かに、一月二十三日であったと思いますが、日本記者クラブで講演をいたしました。
 その趣旨は、景気回復がことしの最大の課題であるが、その一つの大きな柱として公共事業がある。しかし、公共事業だけでは不十分である。そこで、貿易をことしは大きく伸ばしたいと思っておるが、商品貿易を無理やりに伸ばすと各国でトラブルが発生をいたしますから、プラント輸出を中心といたしまして貿易を伸ばしていきたいと思っておる。昭和五十年度のプラント輸出の実績はほぼ六十億ドルであろうと思うが、五十一年度は少なくともその倍の百二十億ドル以上を達成するようにいま努力をしておるし、その実現は可能である。これが景気回復の大きな一つの柱になるであろう。
 さらにまた、民間の設備投資は全体として二十二兆二千億というものが想定されておるけれども、現在のような需給ギャップが相当ある段階においては、よほど努力しないとこの達成はむずかしい。そこで、何か牽引車の役割りを果たさせるものを探しておるが、電力を思い切ってやってみたいと思っている。電力の昭和五十一年度の設備投資の予定は二兆三千億である。しかし、五十二年度の事業計画をある程度繰り上げることによってほぼ三兆円ぐらいな設備投資または発注、そういうものを含めてその程度のものを達成したい。電力がその程度の仕事をいたしますと、昭和五十年度は一兆八千億でありますから、非常に大きく景気回復に役立つであろう。同時にまた、これが牽引車になって設備投資全体が動くことになるであろう、そういうことを景気対策の柱に考えておるということを言ったわけであります。
○堀委員 お話はわかります。そこで、ちょっと伺いたいのは、私はそのことを何もどうこう言うのではないのですが、要するに、一月二十三日に閣議決定された経済見通しについて――いま二十三日とおっしゃったが、二十六日ではないかと思うのです、私、新聞では二十六日と見たのですが。要するに、日本記者クラブでお話しになったときに、そのいまお話しのプラント輸出が、今度は輸銀にもずいぶん資金をつけてプラント輸出をドライブしようということになっているわけですね。その際に、要するに六十億ドルは経済見通しのベースに入れてあるけれども、あと六十億ドル入っていないんだという一つの問題でございますね。これらの経済見通しについて、産業設備については経済企画庁だけで作業できるわけではないので、通産省がいろいろと協力した結果出てくるのじゃないか。その原局に当たるところが、要するに、こういう時期にやればやれるという可能性のある、これは見通しですから、通産大臣がその三日後にそういう発言をなされるようなことが見通しの中に入っていないということになると、通産省のこの経済見通しに対する協力のあり方ということについては、私は納得できないわけです。新聞記事によりますと、要するに通産事務当局は、通産大臣も公共事業だけではやや不十分であるといまおっしゃいました、そういう感じです。私は、通産当局には、どうも今度の経済見通しをいまのままで実施をしていってもうまくいかないのじゃないかという前提があるような気がしてならない。
 そこで、これだけカバーをすれば――いまのお話、かなり大きいんですね。電力は、昨年が一兆八千億で、今度の見通しの中に二兆三千億は入っているけれども、これを三兆にしたいということは、この二兆三千億を三兆にするだけで七千億。昨年の一兆八千億を二兆三千億にするために五千億。一兆二千億設備投資が動くのですね。二十二兆三千億に対して一兆二千億動く可能性がある。おまけに、電力というのは公共事業でありますから、通産省が指導をして、やろうと思えばやれる。資金需要については、これは将来のボトルネックになる産業でもありますから、大蔵省が資金配慮をすれば、やろうと思えばできる。言うなれば、公社、公団に準ずる公共事業のファクターの部分について、政府の方針によって動かし得るものがこの中に入らないというようなことで経済見通しが立てられるということは重大な問題だと私は思うのですが、福田企画庁長官いかがですか。
○河本国務大臣 副総理が御答弁になる前にちょっと私から申し上げておきますが、プラント輸出の分は多分入っているのではないかと思います。と申しますのは、予算編成のときに輸銀の融資が非常に伸びまして、プラント輸出が相当伸びるということを想定してありますから、入っておると思います。それから電力の設備投資も、二兆三千億というのは前からの計画でございますから、これは入っておると思います。しかし五十二年度の繰り上げ分七千億、これはあるいは入っていないかとも思います。と申しますのは、一月の下旬くらいになりましてその見当のものはできるということがほぼ確定をいたしましたので、あるいはそれは入っていないかとも思います。
○福田(赳)国務大臣 経済見通しを決める場合にはいろいろの調査をするのです。いま通産大臣から話がありましたが、積み上げ的ないろいろの調査もする、しかしてマクロ的な動きの調査もする、そういうようなことで、必ずしも個々の計画をずっと当たって積み上げておるわけでもないのですが、電力のようないまのお話ですね、これは非常に大きなものですから、頭に置くべきものであった、こういうふうに思います。通産省の方でもある程度頭に置いて私どもに資料提供をしておる、こういうふうに考えております。
○堀委員 いま私も、これは中に入っているかどうかということはわからないので、これは事務当局で結構ですから、いま河本通産大臣は百二十億ドル入っているのだというお話だが、新聞が伝えておるところでは、六十億ドル入っていてあと六十億ドルは枠外に残っている、こういう言い方をしておりますから、ちょっと経済企画庁の事務当局、これは入っているのか入っていないのか、答弁してください。
○青木(慎)政府委員 お答えいたします。
 私どもが経済見通しをつくりますときには、大体マクロのモデルではじきまして、その数字を各省に提示しまして、各省の積み上げ数字と矛盾しないかどうかをチェックしていただくということになっておりますので、私どもの計算の段階では個別のことはわかりません。ただ、通産省の方でどういうチェックをされたか、こういう問題であると思います。
○堀委員 時間がかかりますからここまでにしますが、後でひとつ通産、経企の事務当局の方で、実際にどうなっておるのか、六十億ドルというのは非常に大きな額ですから、これは調査の上御報告をいただきたいと思いますが、企画庁長官、通産大臣よろしゅうございましょうか。――それでは次にまいります。
    〔井原委員長代理退席、正示委員長代理着席〕
 いま皆さんのお手元に資料をお配りをいたしました。雇用者所得でない方の表でございます。「主要経済指標」、これは計数でありますから、この「主要経済指標」という資料を見ていただいて論議をいたすわけでありますけれども、まず四十九年度のところを見ていただきますと、左の端に「当初見通し」というのがあります。これが実は予算作成の基礎になるものでございます。左の一番下に五十一年度の経済見通しが記載をされております。来年度の、五十一年度の名目の経済見通しが左側にございます。
 そこで私は、この論議をいたしますのは、経済見通しというものが大変狂うものだという問題を少しここで明らかにし、その狂いというものが日本経済に非常に大きな予測せざる事態を招いている。もちろん実体が動くわけでありますから、予測が狂ったということは判断の誤りということでありましょうけれども、その判断の誤りにも実はいろいろあると思うのであります。
 この当初見通しというのを作成されておるのは、まず原案は予算作成の前に実は作成をされて、政府の財貨サービスの関係を除いた部分が大体十二月に発表され、それに基づいて実は政府は予算案をつくると思います。ですから、要するに来年の当初見通しというのは、十二月に実は作業されておるということから見まして、これは十二月に来年一年間の、四月からその翌年の三月までを処理するということはなかなかむずかしいかと思いますから、私は、当初見通しが多少狂うのはこれはある程度いたし方ないという感じがするわけであります。ところが、その次に「実績見込」という欄がございます。この実績見込みというのは、当初見通しの伸び率をはじき出す実はベースになるものであります。現在は、今度の経済見通しの中には、四十九年の実績と五十年の実績見込みと五十一年の見通しという形で三つ並べて出されることになるわけであります。ところが、ではこの実績見込みというのはどうかというと、たとえばことしの場合でありますと、大体十二月に実績見込みの作業がされるのだろうと思いますが、すでに実体的には、四月から三・四半期経過したところで実は実績見込みが出るわけです。これは統計によれば、大体第一・四半期の確定、第二・四半期の速報ぐらいをもとにして出るのだと思いますけれども、しかし実体経済は十二月まで見ておるわけですから、三・四半期分は推計の基礎としてはかなり精度の高いものがあっていいはずだ、第四・四半期についてはこれは狂うのはある程度仕方ありませんが、その実績見込みが実はきわめて不確定な状態になっておるということを、一つまず引例したいのであります。
 そこで、四十九年度の個人消費支出、当初一七・〇と見たのが、実績見込みでは二三・〇、これが実績では二三・七であります。この一七・〇から二三・〇になったのは、この年の春闘が御承知のように三二・九%の大幅賃上げになった結果でありまして、これはその前の年の見通しで予測をすることは困難でありますから、この二三%に動いてきたのは問題ないし、実績見込みと実績の差はきわめて微々たるものであります。
 ところが、その次にまいりますと、民間住宅、当初一五・四%の伸びを見ておったのが実績見込みで三・七%に下がりました。これも三・七%に動くのは、見通しと実績見込みの差があってしかるべきでありますが、この十二月に見通した三・七という実績見込みは、実績ではマイナス二・一となりまして、五・八%も誤差が出てきておるわけであります。
 その次の民間企業設備でありますけれども、これも一〇・三が九・二になり、実績見込みでなお九・二を見ておきながら実績が丁九となって、マイナス七・三%実はここで誤差が出てきているわけであります。
 民間在庫品、これは非常にむずかしい問題でありますから、いま民間在庫を調査する仕組みが日本の場合には非常に不十分だと思いますので、まあここが多少動くのは、これは余り問題にしようと思いませんけれども、その次の政府支出が一四・九当初見通し、補正予算がありまして二六・一になった。これは政府が組む予算と地方財政でありますから、かなり確度の高いものでなければなりません。経済見通しの中で、一番確度が高くていい。あとは政府が直接手をつけるわけにいきませんけれども、国と地方財政というのは、自分たちが考え、自分たちが実行し、情報も取りやすいわけでありますから、実は比較的これは動かないのが当然でありますが、四十九年度ではプラス二・九ということで、二九%に実は伸び率が動いているのであります。
 こういうふうに実績見込みが動いてきますとどういう現象が起きるかといいますと、五十年のところの「政府支出」という項をごらんいただきたいのであります。当初見通しは、政府支出は一四・四であった。ところが、実績見込みは一四・一に減っている。これは補正予算で第四次不況対策をやって、政府は国、地方を通じて公共事業をやった。にもかかわらず、一四・四というのが一四・一に減ったというのは一体どこからくるかといいますと、実はこれは金額で申し上げるとよくわかるのです。四十九年当初の見通しというのは二十四兆七千億円、実績見込みで二十六兆四千億円ということで、ここで一兆七千億円実は増加をしたわけです。ところが、この実績見込みが、さらに実績で二十七兆九百十二億円というふうに実は動いてきた。この動いてきたもとは、地方財政の情報が正確に把握できないから、それだけの分の振れが起こってきたわけですね。そこで、一四・四というのは、その二十六兆四千億円に五十年度の見通しの三十兆二千億というのを対比をして、そうしてつくった数字で、これが一四・四になるのです。ところが、ベースになる方がさっき申しましたように動いて、実績が出たものだから、この実績との間で比較をすることになりますとこれは一四・一、二十七兆九百十二億円、ベースが上がってきて、そうしてことしの三十兆二千億円、同じですから、それだけ伸び率は小さくなる、一四・一になるということが起こるわけですね。
 私はいまなぜこのことに触れているかというと、実は政府の財貨サービス購入というものは、これは政府が決める部分だから比較的確実だと思われているけれども、地方財政の情勢いかんによっては、これすらもかなり動くということを実は頭に入れておかなければいかぬということを一つ申し上げておるわけです。特にいまのような場合における、政府が五十一年度見通しで出しておりますところの政府支出の一三・三%の伸びというものが、実績見込み、実績という過程をたどれば、私は必ずこれはさらにさらに低くなる。要するに、上がる方に伸びるのならまあいいのですけれども、現実には事業のおくれが、いまは、昨年からことしへかけてずっと出てきている。前年のおくれはことしへずれ込むのもあろうけれども、また、ことしの分が来年へずれ込むという問題も出てくるという点で、私は、政府支出というものでいまの景気の浮揚を考えようという考え方は一つの考え方でありますけれども、これには配慮をして問題の処理をしないと、実はこれへ寄りかかっているだけでは、構成比も余り大きくはありませんけれども、実は問題が起こるという点を指摘をし、この経済見通しというものがきわめて重要な日本経済の一つのガイドポストになっておるということについては、私は政府としてよりこれが正確にできるような調査機構、たとえば在庫に関してはどういう形であればより正確な在庫情報が手に入るのか。民間設備にしても、どういう形にすれば――このように実績見込みを考えた段階と実績が民間設備で九・二から一・九へマイナス七・三%も動くなどというようなことがないような実はやり方をしなければ、そのベースが狂うような、いいかげんなベースに実績見込みがなっておる限り、私は政府が出す経済見通しというものは余り信頼されないということになるのではないかということをまず指摘をしておきたいと思うのですが、経済企画庁長官、その点について。
 もう一つは、どうもこういう統計資料の出方が非常に遅い。アメリカは御承知のように非常に早いのですね。なぜアメリカはあのように早くできて、日本はこんなに遅いのか。日本もアメリカも同じにコンピューターも使い、いろいろなことをやっている中で、これはもう少しいまの国民所得統計その他のものが速やかに国民に提示をされることが、いろいろな投資態度なりいろいろな物の考え方の判断の基礎になると思うので、これらについては、私は、多少財政の費用がかかろうとも、そういう部分についての配慮を行って、より正確でより早い経済見通しを、経済計算というものを国民に提示することが、特にこれからの厳しい経済情勢に際して、すべてのものの判断の基礎になるわけでありますから、重要であると考えますけれども、経済企画庁長官の答弁を求めます。
○福田(赳)国務大臣 経済諸統計の確度を高めよ、これは全く同感でございます。特に政府支出の点ですね、これなんか見通しと実績が間違うというようなことは、なるべくこれはそうないように努めたいと思います。私も今度はよほど精細に、自身でも当たってみたわけでございますが、できる限りの努力をいたします。
 また、統計の迅速化という問題です。これはずいぶん努力はいたしておるんですが、コンピューター時代でありますので、まだこれが迅速化の成果を上げる余地もないわけじゃないと思いますが、まあひとつ一生懸命やってみたいと思います。
○堀委員 アメリカでできることが今日の段階で調査問題で日本でできないというのは、私、考えられないのですね。ですから、ひとつ経済企画庁長官、アメリカでできるのはなぜできているのか、それはベースになる情報の収集の仕組みや何かに関係があるのじゃないかと思いますけれども、私もよくわかりません。しかし、何らかどこかに違いがあるからアメリカと日本の違いが出るのでしょうから、どうかひとつアメリカのこういうものがなぜ早く出るのかを十分調査をしていただいて、日本における迅速性に生かしてもらいたいということを特に要望いたしておきたいと思います。
 そこで、この経済見通しの重要性に関連をいたしまして、実は一つの議論になりますのは不況と賃金の関係の問題であります。この経済見通しで私は昨年非公式に福田さんに三月ごろにお会いしたときに、いまの雇用者所得、個人消費の問題に触れて、実は日経連が一五%以内に抑え込むという話だけれども、もしそれが一五%以下になれば、結果的には経済見通しが狂って財政欠陥が出るおそれがありますというお話をしておきましたけれども、当時福田さんは、いや、私はもういま物価のことが頭にいっぱいでほかのことは余り考えないというお話で、結果的にはああいう結果が起きましたね。しかし、雇用者所得は、その結果、実は五十年の改定見通しではどうなったのか、ことしのいまの見通しではどうなっておるのか、ちょっと事務当局、答弁をしてください。
○青木(慎)政府委員 雇用者所得につきましては、五十年の当初の見通しでは、この表にございますように一八・四でございましたけれども、実績見込みでは一三%強という数字になっております。
○堀委員 改定のときがあるでしょう。
○青木(慎)政府委員 一二・七でございます。
○堀委員 いま調整局長が、これはすでに発表されておるにかかわらず、五十年、五十一年の雇用者所得の伸びを一三%強と、こう答弁しましたが、データでは一二・八%。これ、どうなんですかね、一二・八%というのは一三%強というふうに言うんでしょうか。事務当局の答弁としてはちょっと不正確じゃないですか。
○青木(慎)政府委員 ただいま一三%強と申しましたのは、五十年度の実績見込みの数字でございます。五十一年度は一二・八でございます。
○堀委員 はい、わかりました。五十年の実績見込み一三・四と出ているのですからね、強だとかなんとか言わないで、いまこれ配ったんだから、あなた言っていいんじゃないですか。どうもここが私は問題があると思うのですよ、企画庁長官。だからそんな、内緒にしておこうと思うから一三%強とかなんとか言って――しかし、一三%強というのも一三・四%というのも変わりがないと思うが、まあ済みましたからいいです。
 そこで問題は、実はこういうふうに一八・四であると思ったのが、一三・一という春闘の状態で、これが改定見通しでは一二・七ですか、そして実績見込みでは一三・四と、やや後半時間外給与その他が少し出てきたから、改定がそこで上へ上がってきた、一三・四と思います。これは実績になってみないとわかりませんので、まあ結構だと思うのでありますが、ところが、来年度の見通しは、実は一二・八ということで、これは雇用者の増加分が一%あるのでしょうから、中身は一一・八。まあ日経新聞の伝えておるところによりますとこういう記事が出ておるわけです。政府側は、雇用者所得から逆算して出した春闘賃上げ幅は九・五ないし九・九程度と述べ、政府が一〇%に近い賃上げ幅を見込んでいることを明らかにした。これはまあだれかが取材に応じたんでしょうね、政府側はと言って、中身の計数を含めて出ているのだから。ここまで書かれてまだ発表されていなかったというのは、私も全くおかしな話だと思うのですが、しかし、まあまあ大体ここでいま予想しておるものは、それこそ一〇%程度という感じで物を見ているのではないかという気がいたします。
 企画庁長官、そんなものでしょうか。これは、賃金を政府がこうしょうという話だとして私は言っていませんからね。よろしいですか。要するに、これは皆さんの計算上のデータだということで言っているわけですから、そのように答えてください。
○福田(赳)国務大臣 雇用者所得は一二・八%と申し上げたとおりです。
 この雇用者所得は、これはもう堀さんですから申し上げるまでもないのですけれども、賃金決定の対象となるベース賃金、これは所定内賃金というのです。そのほか、あるいは時間外手当でありますとか、ボーナスでありますとか、いろいろなものを含めての話で、それはちょうど金額にしますと、雇用者所得の方が所定内賃金、つまり賃金決定のベースになる賃金、それの倍になるんです。それで所定内と所定外などの総平均が大体一二・八になるのですが、考え方といたしましては、所定外などのベース賃金以外の分の上がり幅はかなり大きいというふうに見ておるのです。所定内、つまり賃金交渉の対象になる方はそれよりは低い。その低い、高いの総平均が一二・八だということなんで、ですから、まあ賃金問題として論ぜられる所定内賃金、これは一二・八よりはかなり低いところにいくのじゃないか、そういうふうに思うのですけれども、これを一〇程度である、九程度であると、それを言いますと、またこれが政府は春闘決定に介入したというふうに言われますので、その辺はひとつよしなに御推察のほどをお願いいたします。
○堀委員 これはまあいいですけれども、少なくとも七%や八%では、実はいまの一一・八という所得の伸びにはならないですよ、率直に言いましてね。問題はまあまあやはり九%から一〇%の近くにあるということだけは間違いないと思うのです。よろしいですね。
○福田(赳)国務大臣 あえて反駁いたしません。
○堀委員 そこで、実は民間の研究所のデータをちょっとこれに関連して申し上げますと、三菱総合研究所、これは日本ではまあ野村総研、日経センター、三菱総合研究所というのは、民間の研究所としては整備をされた研究所でありますが、そこが実は五十一年の経済見通しを発表しておるわけであります。その五十一年の経済見通しのべースになっておりますものが、これは十二月の初めに実は三菱総合研究所が発表しておるのですが、一般会計予算は五十年度当初予算比一四・一%増。これを十二月の初めにはじき出したというのは全く驚くのですが、来春闘の賃上げ率は九%台というベースで、実は三菱総研が試算をしておるわけです。それによりますと、個人消費支出は二・一%と出ておるのですね。九%台というので二・一%。これは二・一%というのは実質です。ですから、政府の消費者物価の五十一年度の上昇率が約八ないし八・八ぐらいですから、大体名目では一〇ちょっと超えるぐらいのところの個人消費。政府のことしの見通しは実は二二・七でありますから、これに比べると二、三%ぐらい低い数字が出されておるわけであります。その結果としてのGNPは三・九%、まあ政府の五・六に比べるとちょっと低いのですね。まあ低く出ておる。こういう数字が実はあるわけですね。それですらそうなっておる。さらに、ごく最近に三和銀行が試算を出しておりますね。それによると、ベアが七%の場合、政府見通しである一〇%に比べて、個人消費の落ち込みは名目で一兆九千億となり、そのときのGNPは実質三・二%にとどまるというふうに実は出しておるのですね。まあ下の方、五%とかありますが、そんなことは考えられないことですから。
 ですから、これは春闘の労働者の皆さんが闘う中で経営者との間に決定が起こることでありますから、われわれはどこにどうなるかという予測をする気持ちは毛頭ありませんけれども、結果として、もしいまのような、日経連が言っておられるようなゼロまたは一けた、それも低い方だなんという話になってきたら、これまたことしの経済見通しはがたがたになる、こういうことになると思いますね。
 私はなぜそういうことを言うかというと、いまお配りをした「主要経済指標」の中に、増加寄与度というのがその二枚目の方にあります。この増加寄与度というのをごらんになれば、要するに四十九年度当初見通し、実績見込み、実績と並んでいますけれども、六七・八、六三・三、六七・九、これが実はこの年のGNPの増加分の中に占める個人消費のウエートですから、非常に高いわけです。五十年の実績見込みで見れば、八九・五になっているんですよ。約九割。五十年度のGNPの伸びが、もし実質で、結果的にはまだ実績はわかりませんが、実績見込みのとおりならば、五十年度の経済を押し上げた力の主力はまさにこの九〇%の個人消費なんですね。だから、個人消費というものを何か私どもが刺激をする話をすると、福田さんは、いや個人消費を刺激してはいかぬのだ、こういう話ですが、個人消費が堅調にならずして日本経済が伸びていくなんということは考えられないんですよ。よろしゅうございますか。だから、私どもが個人消費に着目をするというものをデータでお示しをしておる。実質で見てごらんなさい。右側の五十年度の実質の実績見込み一〇二強ということですね。一〇〇%全部を実質で言えば個人消費によって押し上げた。結果が実質二・六になるのか二・二になるのかわかりませんけれども、福田さんはいま、日本は欧州の諸国に比べて、欧州諸国は五十年度は皆実質GNP赤字だ、日本は黒字だ、こう言われる。確かに日本は黒字でしょう。その黒字を支えておるのは、このデータから明らかなように個人消費で支えている。このことを私は、この予算委員会を通じて政府の皆さんにちょっと頭の切りかえをしてもらわなければ困る。公共事業だけで経済が浮揚できるというのは間違いだ。具体的な計数の中でそのことは立証されておるということを確認をしておきたいんです。企画庁長官の何らか御見解があれば承ります。
○福田(赳)国務大臣 堀さんのお話は、私が言っていることの半面を確認をされておるようなことなんです。つまり、五十年度はわが国の経済は不振である。二%強の実質成長だという中で、どうしてこの二%を上回る実質成長が実現できたのかと言えば、消費がこれを支えた、これは私はそのとおりだと思うんです。次いでこれと肩を並べてこのプラス成長を支えたのは、政府のいろんな施策、つまり政府の財政需要、これだ、こういうふうに考えておるわけですが、皆さんの中には消費がもう沈み切っちゃったんだ、それで経済が衰えているんだ、だからここで景気をつけるんだ、そのためには消費を刺激しなさいという議論があるから、いやそうじゃありませんよ。五十年度だってごらんなさい。プラス成長を支えているのは個人消費なんだ。個人消費はこれは頭打ちであって、けばけばしい伸びの状態とは言えませんけれども、なお堅実な勢いを続けておるんだ、こういうことを強調しておるんです。その堅実な勢いである個人消費をことさらに政策手段を用いて刺激するというのはどうだろう。そういうことは、私は、これはせっかくのお話でありまするけれども、ここで政策手段でまたひとつお使いください、これが景気浮揚のためですよというような政策姿勢はとれないじゃないか、こういうことを申し上げておるわけであります。
○堀委員 なかなか「三つ子の魂百まで」と言いますけれども、福田さんはもう何しろいまの考え方が変わらないようですから、そういう方と余り論争する気はありませんけれども、それでは私は、なぜことし個人消費について重要に考えなければならぬかというのを、ちょっと順序があれしますけれども、先にこっちの問題に入りましょう。
 大蔵大臣、ことしの所得減税をやりませんから、実際は調整減税をやったとすれば幾ら財源を必要としますか。ことしの物価上昇に伴う調整減税、ニュートラルですよ、所得に対して。物価が上がって、名目的な所得がふえた者に対して弾性値がかかってふえるという分、それを切ろうという場合の財源は幾らですか。
○大倉政府委員 お答えいたします。
 二つ考え方があろうかと思いますが、一つは、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これを年度内上昇率と予想されております八%方引き上げる、そういう計算をラフにいたしてみますと、所要財源が二千億円弱という計算が一つございます。それから各控除八%引き上げでございますと、技術的でございますから結論だけ申し上げますが、課税最低限は八%まで上がらない。したがって、課税最低限の方を八%上げるという計算をいたしてみますと、所要財源が二千二百億円強という計算がいま出ております。
○堀委員 その後に自動車税の増税初年度分がありますね。それを加えると、要するに総体的増税というのは幾らになりますか。
○大倉政府委員 自動車関係税だけでございますか。
○堀委員 要するに増税全体。
○大倉政府委員 特別措置の整理合理化を入れまして、特別会計分を入れまして、五十一年度分の国税の増収額は二千二百七十七億円でございます。それにいま申し上げた金額をお足し願うということになるかもしれません。
○堀委員 主計局の方で、公共料金あるいは社会保障の掛金の引き上げ、ここは時間がかかりますから要りませんが、トータルで言ってください。一体幾ら国民から吸い上げるのか。
○吉瀬政府委員 公共料金の引き上げで一兆八百六億円でございます。それからもう一つ、いわゆる社会保険料その他の引き上げが、これは計算がいろいろございますが、七千二百億円でございますが、しかし、この中に企業負担もございますので、本人負担からいきますと四千七十七億。ただ、この際、給付費の増が逆にございまして、給付費の増が一兆あるということを申し上げておきたいと思います。
○堀委員 これらを全部合わせますと、大体二兆円くらい国民の負担がふえるのですよ。よろしゅうございますか、企画庁長官。要するに、確かに社会保障は払う者もあるし、受け取る者もありますが、実はいまの形で言えば、払っている方がほとんどで受け取る人間はごく少数なんですよ。そうですね。年金にしたところで、厚生年金を掛けている者は一ぱいいるけれども、厚生年金の受け取り者というのはごくわずかだ。だから、財政バランス上からトータルで見れば同じだけれども、財政効果として見れば、国民から吸い上げるものはいっぱいあるでしょう、ことしは。合計すれば、いまの税金の関係を含めて約二兆円。ですから、福田さんはほっておいたって大丈夫だと言われますけれども、もしここで賃金が仮に政府がいま考えておるより下回るような事態が起きたとすれば、これはもうほっておいていい話にはなりませんよ。
 私は、もう時間がありませんからいま減税の話をしようと思いませんが、アメリカも西ドイツも減税をやって景気浮揚になってきたことは間違いがない。アメリカは、七七年度会計予算では、ともかく予算の伸び率を五・五%に圧縮をするということで緊縮予算にしている。そうして公債依存度も一〇%余りで、日本と比べたら非常に小さいですけれども、やはり予算教書の中で百億ドル程度の減税をさらに提案をする、こういうことになっていますね。西ドイツは減税をした結果、消費に回らないで貯蓄に回ったと言われていたけれども、今日、やはり減税の効果が確実に効いてきて、その上に輸出がいまオンしているから景気が回復しつつある。私は、もしことしこの経済見通しのような情勢が起きないとするならば、これは福田さんの責任きわめて重大だと思うのですよ。いまの個人消費というものはほっておいてもいいんだという発想は、いまのような財政上の引き上げをやりながら、トータルとしてマクロで見れば問題ないかもしれないけれども、具体的には違うのですよ。引き上げられる部分とそうして受け取る部分が違うのですから、この問題がいまのような形のままでいって、いま日経連の言うような賃金押え込みが、仮に彼らの言うような方向にいったとしたら、日本経済はことしじゅうに恐らくテークオフすることはできませんね。間違いなくできません。もし、ことしじゅうにテークオフできなかったら、離陸できなかったらどういうことが起こるのか、来年は世界的なインフレがまた来るわけですよ。景気が上昇しない過程で外国のインフレは必ず日本にも影響してくる。また押え込みをしなければならぬなどということになったら、いまあなた方が考えられておる五カ年の経済計画なんかとんでもない話ですよ。ことしの経済運営というものは、まさにこの五カ年の経済、あなた方が考えておるものがそのとおりいくかどうかは別として、ある程度の成長を維持しながら日本経済がやっていけるかどうかというきわめて重要なポイントにことしの経済はかかっていると私は思う。それに対して、いまの福田さんの考え方ではこれは大変だし、日経連の考え方ではこれは大変です。要するに、日経連は自分たちの企業のものを払うまい、生産性の内部で押えると、こう言っています。これは重要な問題なんです。
 三木総理、あなたはこの間、当委員会で、賃金の上昇は生産性に見合うべきだという発言をしておられますね。ちょっとこれについてもう一遍確認をしておきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 経済全体からすれば、賃金はやはり生産性の向上とバランスをとるということが好ましいことは、これはだれびとも異存はないと思うのですが、しかし、現実に賃金の決定は、あるいは労働の需給であるとか、あるいはまた企業収益であるとか、あるいはまた消費者物価、まあ生計費と言いますか、そういうものを労使間で、そういう要素も加えて現実に話し合われるというものでしょう。しかし、理論的にはそういうことが基本であることは好ましい。現実の賃金決定には、いまのような要素が加味されて、労使間で話し合いがされるというものだと私は思います。
○堀委員 まあいまの理論の話は別として、現実には物価上昇なり生計費なりを勘案して決まるのだというなら話はわかりますが、そこで、当委員会は日経連の桜田さんなり土光さんなりに来ていただいて論議がされるようでありますから、まあこの問題はここらにしますが、一つ申し上げておきたいことは、ともかくあなた方も財界とはしょっちゅう連絡があるのですから、財界に向かっては、ことしの経済見通しは最低実行できるようにはしてもらいたいということを、政府の責任で私は言うべきだと思うのですよ。政府がこうやって閣議で決めたものは、これは皆さんの責任ですよ。
 総理どうですか、経済企画庁長官どうですか。要するに財界に向かって、ことしの経済見通しが実行できるように財界も協力をしてくれ、当然ではないかと思うのですが、どうでしょうか。総理からお答えいただきたいと思うのです。
○三木内閣総理大臣 今年度の経済見通し、その上に立った予算は、国民生活の安定、景気の回復というものをねらった予算でありますから、この予算が実行されるように、財界ばかりでなしに一般に強く要請することは、当然のことだと思っています。
○福田(赳)国務大臣 総理がお答えしたとおりですが、ただ、堀さんのいまの御発言の御趣旨、胸のうちは、賃金は、雇用者所得の見通しがあると、政府はあれを言っておると、それに対応せいというような御趣旨だといたしますれば、賃金の決定には政府は介入しないと、こういうふうにお答えするほかございません。
○堀委員 そういうことはわかっている前提でお話をしているのですよ。ことしの経済見通しが実行できるようにするためには、やらなければならぬことをちゃんとこう言ってあるわけですから、よろしゅうございますか。そんなことを、政府が何も賃金だけについて物を言ってくれなんと言っていないのですよ。経済見通しが完全に行われるためには、要するに賃金も適正に上がらなければ行われないのですよ。どうですか、企画庁長官。それじゃ、ちょっとそこを伺っておきましょう。
○福田(赳)国務大臣 経済の見通しですね、これは全体といたしまして、政府が考えておるその見通しには協力してもらいたいのです。ただ、個々の問題ですね。特に賃金問題というのは、これは非常に労使間の重大問題で、これを政府の見通しと関連を持ちながら決めていただきたいんだというような要請はできない。これをすると、政府がまた賃金問題に介入したと、こういうことになりますから、それはいたしません。
○堀委員 もう言う元気もないですけれども、私は政治的な発言をしておるのであって、そういうトータルとしての問題で話をしてくれと言っておるのに、あなたが何も一つだけ、賃金だけ取り上げて、そこは言えませんなんということを言う必要もないし、賃金は、これはやはり全体にかかっているじゃないですか。そうでしょう。
 では経済企画庁事務当局答えてください。いまの雇用者所得は、いま政府は一一・八と見たけれども、一%ずつ下がってきたら、それはどういう影響があるのか、答弁してください。
○青木(慎)政府委員 お答え申し上げます。
 ただいまの雇用者所得が一%下がった場合にどうなるかという計算は非常にむずかしい計算でございまして、それが及ぼす影響は、物価にも響いてまいりますし、輸出にも響いてまいりますし、そのトータルの全部の波及効果をはじくというのは非常にむずかしいので、私どもの方としてはただいま数字は持っておりません。ただ、個人消費というものは、雇用者所得が減れば直接の影響はやや減ってくると思います。ただ、そのいろいろ波及効果を及ぼしますと、それがプラスになる要素もございますので、この計算はちょっと事務当局としてはまだいたしておりません。
○堀委員 委員長に要望いたします。
 いまのお話を聞いておられて、問題を政治的に解決しようと思ったけれども、どうも政治的な解決になりそうにないので、ひとつ理事会に諮って、これからひとつ、経済企画庁に対して、雇用者所得の伸びが一%、二%、三%というふうに下がってきた場合には、それは経済見通し全体についてはどういう形でこれが動いてくるのか。当然物価にも影響しましょうし、さらには民間設備にも、あるいは民間住宅にも在庫にも、全部影響します。これは個人消費がウエートが高いだけではなくて、これが最終需要だからであります。ですから、これはひとつ理事会にお諮りになって、立法府の見解として政府に資料要求をお願いいたします。資料要求の限度は、総括の質問が終わるまでにお願いをいたします。
○正示委員長代理 理事会で相談をいたしましょう。結論は出ませんが、相談をいたします。
○堀委員 それでは、時間が大分経過をしてきましたが、簡単に、いまの問題にあわせて、政府が今度の予算編成方針の中で、実は総合予算主義の方針で問題を処理するということを書いておられますね。「四 総合予算主義による予算の編成・執行 総合予算主義の考え方のもとに予算の編成及び執行に努める。」大蔵大臣、これはどういうことでしょうか。
○大平国務大臣 きわめて当然のことといえば当然のことでございまして、今度編成して御審議をいただいておる予算をもちまして、五十一年度全体の年度を通じまして切り盛りをいたしたい。言いかえれば、よほどのことがない限り補正を考えないということでまいりたいという考え方でございます。
○堀委員 できるだけ補正を考えないということは、これは財政欠陥が起きれば補正をしなければなりませんね。この財政欠陥がなぜ起こるかというのは、いま政府が出した経済見通しどおりに経済が動けば、あなたの方は財政欠陥が起きないと、こういうことだろうと思うのですが、これが動いてきたらまた財政欠陥が起きますね。どうですか。これまでの財政欠陥というのは、私は、大蔵省にももちろん責任があるけれども、経済企画庁の見通しの狂いに責任がある、こう思っているのです。だから当然、私がいまやかましいほど言っておるのは、要するに日本経済を少なくともことしの程度にやらなければ、あなた方が言うここでの総合予算主義なんというのは吹っ飛びますよということを言っておるのですが、それはどうでしょう。
○大平国務大臣 その規模それから経済の状況の変化の程度によりますけれども、一方財政収支の状況等にらみ合わせまして、補正を必要とするかどうかという判断をしなければなりませんから、経済の変動がございまするならば当然補正を組まなければならないということには、直ちにならぬと思います。
○堀委員 ちょっといまの大蔵大臣の御答弁は重要ですね。そうすると、財政欠陥がこの間三兆四千億出たのは大蔵省の責任ですね。経済の見通しの変動ではなくて、要するにあなたの方の誤りだという言い方になりますよ。あなた方が計算しておるベースが狂っておるにもかかわらず、それは関係ないといういまの答弁ではおかしいじゃないですか。補正予算の問題は、財政欠陥が出るから補正予算組まなければいかぬと言っておるのですよ。財政欠陥が出てあなたは補正予算組まないで行けるのですか。
○大平国務大臣 ちょっと私の言葉が足りないで恐縮ですが、私が申し上げたのは、経済の運営に大きな変化がございまして、財政の歳入に大きな欠陥が生ずるということになれば、当然その補正の問題が出てくるわけでございますけれども、それは程度の問題であって、規模、程度いかんによりましては補正を必要としないでしのげる場合がないとは言えないということを申し上げたわけでございます。
○堀委員 それはもう当然なことでありますが、ちょっと具体的に言いますと、ことしの五十一年の法人税は、生産が一〇八%、経済見通しの生産の伸びは一〇・四です。だから少し内輪に見積もってあります。この誤差だけは大丈夫でしょう。物価が五%、これは政府の見通しが年度中四・八、年度平均五・六ですから、物価は大体ぎりぎりでしょう。まあ相乗で一一三、所得に対する調整を一〇〇として申告納税額を四兆六千百二十億に計算した。予算の説明書きの中にあるわけですね。それがもし大きく狂う、それは一%ぐらいの狂いならどうということはないでしょうが、二、三%も狂えば当然財政欠陥生じますよ。だから私は、ことしの法人税のベースの見方はわりに正確に、昨年ああいう事態が起きたからずいぶんかた目に見たのではないかと思ったわりに、実は計算上は経済見通しにバランスをとって見通しがされておる、こう判断しておるわけです。だから、経済見通しに近いベースで判断されておればおるほど、経済見通しが狂えばもろに狂う、ここへある程度、経済見通しはこうだけれども、いまのような時期だからこのぐらいで見ておこうという計算になっていれば、ここまで落ちてくる間は何も問題は起きない。しかし、いまの私が申し上げたようなのでは余りこの間誤差がない。だから、ことしはかなり法人税の見込みをかたく見ておるという感じがするので、私はそのことを申し上げているわけです。特にいまの問題は、法人税と申告所得税とが大きく狂っているわけですよ、この過去の経過を調べてみると。一番大きく狂っているのは法人税と申告所得。率直に言って、税金を一番たくさん取られているのは勤労所得ですよ。月給、サラリーマンの源泉所得が実は一番動きが少ないわけです。落ち込むときも少ない。たくさん税金を取られている。こういう情勢なんですね。
 だから、その点についてあなたは、それじゃことしはもう財政欠陥が起こる心配はない、いまもう七兆二千七百五十億、大変な国債を出しておるわけですが、歳入がもうこれ以上は絶対落ち込まないという自信があるのならそうお答えください。
○大平国務大臣 五十一年度の問題ですか、五十年度……。(堀委員「五十一年度です」と呼ぶ)過去大きな歳入欠陥を招来いたしまして大型の補正をお願いしなければならぬという事態にかんがみまして、今年度におきましては私ども用心深く、できるだけ正確な歳入の見積もりということに努力をいたしたつもりでございます。したがいまして、いま堀さんが言われるように、政府の経済運営というものに大きな狂いのない限りにおきまして、私どもの財政運営にもいままで経験したような、お願いしたような大きな補正措置をお願いするというようなことは、まあ避け得られるのではないかと思っております。
○大倉政府委員 ただいま堀委員の御質疑の中で、私ども国会に提出いたしております租税印紙収入の見積もりの中の生産、物価を引用なさっていただきましたのですが、これと企画庁の経済見通しの生産、物価との間に差がございます点は、実は税収のベースになります時期と経済見通しの時期とのずれによるものでございますので、ちょっと補足させていただきます。
○堀委員 そこで、歳出を一緒に論議をしたかったのですが、大分時間が経過をいたしましたから、特に総理に申し上げておきたいことは、予算編成方針の中で、総合予算主義という考え方が出てきたものだから、そこで、実は公共事業予備費という問題は、そういう名前では出ておりませんけれども、予備費の弾力的な運用というようなかっこうで出ておるわけですね。だから私は、これは後でまた論議をされることでありましょうけれども、やはり立法府と行政府とのけじめをきちんとしておいてもらわなければ困ると思うのですね。
 ということは、公共事業予備費というものを政府が一つ項目を設ける。あなた方の方は、善意で設けているんだ、歯どめだと言いますけれども、これはわれわれ国民の側から見ると、きわめて危険な憲法、財政法に対する政府の介入だとわれわれは見ているわけですよ。要するに、政策的部分を全然除外をするのならそういうものは要らないわけです。要するに、本当に予見されざる支出に充てる、災害のために充てるというようなことなら、これはだれが見たって予見せられざるもので、いいですけれども、政策的配慮が入るようなことにいまのものが使われるということになれば、それは予見されぬものではないわけでして、政策的な問題はここで、今度の予算委員会の始まります前に、行政府は行政府の責任の範囲できちっとやってもらいたいということを言っておるのは、要するに官僚の諸君が適当に書いたプランで、行政だけでものが進むようなことでは困る。要するに、予算で出されたものは国会の承認があって初めて予算になるのであって、そことの関係で実はこの公共事業の予備費というのは問題があるわけですから、そのことにおいてはいまの補正予算の問題も非常に問題があるわけです。
 だから、大平さんも慎重に、本来総合予算主義であるべきであるという話をされましたが、村上孝太郎君が主計局長のときに大変やかましく総合予算主義という問題が出て当然の問題であったけれども、とかく忘れがちになって、補正で処理をするわけです。しかし、やはり予算というのは原則的には総合予算主義であるべきであるし、それを総合予算主義でいこうとするためには、いまの経済見通しその他の問題がやはり科学的に客観的に運営をされ、それによって全体の経済がある一つのコンセンサスの中で動くようにすることが重要なのでありますから、それがもとが狂うからこっちが狂って、そしてまた補正だというようなことが繰り返されないようにするためには、私は政府としてはこういう問題についてより真剣な姿勢が必要である。
 私、本当を言えば、福田さん、経済のことを私にお任せくださいと、こう言っておられるけれども、私は率直に言って余り任せられないのですよ、こうぶれが大きくては。そして、総理も施政方針の中で、物価対策は成功したと、こう施政方針でおっしゃったのですが、私は、物価対策というのは後の経済とは無関係にあるのではなくて、いま日本経済は物価だけが落ちついたらあとはどんなになってもいいという話ではないと思うのですよ。だから、物価対策は政府の見通しのとおり行きましたと言われるなら文句はありませんけれども、物価対策成功したなんというのはちょっと私は思い上がりだと思うのですよ。物価対策成功していないからみんないま困っているのですよ。なるほど、物価は予定より下がってきた、そのことに私は反対するわけではありません。いいことですよ。いいけれども、成功したと言う以上は、やはり雇用を含め、国民の生活全体を締めて、いまのような不安な状況にしておいて成功したというのは言い過ぎだと思うのですね。総理、どうでしょうか。
○三木内閣総理大臣 成功したというのは、もう少し言葉があったかと思いますが、そういうことを言った背景は堀君も御承知のように、政府がああいう一つの公約をしたときにはだれも信用しなかったのですから、そんなことはできないだろうと言ったのが予定どおりに物価が鎮静しておることで、政府としてはお約束を果たせたということでああいう言葉を使ったわけでございますが、しかし、スタグフレーションというのは物価、不況、この二つの両面作戦を必要とするわけで、物価だけが安定したということで、一方においてはいわゆる不況という問題、これを解決しなければなりませんが、両方中途半端なことはできないので、政策のアクセントは物価につけた。物価が鎮静の方向にあるので、今度は不況対策に本格的に乗り出したということでございまして、物価がいまのような八%というので成功だとは思っていない。物価はさらに中期計画でも六%と言っているのですが、六%ということでも満足すべきものではなく、もう少し、やはり三、四%に向かって努力をすべきものだと思います。
○堀委員 福田副総理、速報が出たのは一月ですね。一月の東京都の物価はまた二けたになりましたね。いま、御承知のように北の方には雪が降る、南の方はからからだという異常な天候が続いておりますね。いまあなたの成功問題に関連する五十一年三月、一けたというのは可能ですか、どうですか、ひとつここで答えておいていただきたいと思います。
○福田(赳)国務大臣 物価は、十二月には東京区部で言いますと八%までの上昇というところにとどまったわけですが、一月一〇%というところまではね上がったわけです。九・九という目標ですね、それに到達するには二月の上昇、三月の上昇、これがおのおの〇・九一の上昇という以内でとどまれば九・九以内、こういうことになるわけでありますが、そういう一月になって形勢悪化したその原因は、これは野菜それから魚、これの値段が上がったというところが最大の要因です。それに公共料金の改定が前の臨時国会で決められまして、それが実施過程に入ってきた。この二つです。
 そういうことでありますが、農林省にも野菜の冬場の対策、これを十分やってもらいまして、何とかひとつ一けた、この目標は目標以内でいきたい、こういうふうにいま考え、全力を尽くしてみたい、かように考えています。
○堀委員 福田さん、一けたにするために農林省があちこちから野菜を集めて東京に持ってくるなんて話は、私はおかしいと思うのですよ。要するに、値段が上がってきたら、そんな一けたになろうとなるまいと、常時そういう体制がとられてしかるべきであるのにかかわらず、このごろどうも政府のやっておることは、ともかく安売りデーをいまの物価調査のところに合わせてやってみたり、きわめて人為的に指数を中心にしてやる。これは私は政治ではないと思うのですよ。日常の生活に関連して常時それが行われなければいけないのであって、どうも見ておると、いやちょっと指数が上がった、これを抑えないと、いまの成功というのはどこかに吹っ飛んでしまう、これは大変だ、よし農林省、ともかくあっちからもこっちからもキャベツを集めろという、こういうばかな話はないようにぜひしていただきたい。常時ひとつそんな指数にこだわらないで――物価を安定させるというのは政府の責任なんですから、基本的には。ひとつやってもらいたいということを申し上げて、国鉄の問題に問題を展開をしたいと思います。
 本日、国鉄総裁は昨年行われたいわゆるスト権ストに対する処分を発表しました。国鉄再建問題がきわめて重要な政治、経済上の課題となっておる現在、このような処分を強行して労使間に新たな紛争を引き起こす原因をつくったことはきわめて遺憾なことであり、断じて許すことはできないと思うのであります。私は、その背後にあってみずから国鉄再建の政府内における責任者である木村運輸大臣の責任をひとつ厳しく追及をしたいと思うのであります。
 最初に私は、政治姿勢で、閣議了解の事項について、閣僚はもとより総理に最高の責任があるということを実は申し上げました。日本国有鉄道再建対策要綱というのが五十年十二月三十一日に実は決定をされているのでありますけれども、その中には労使の正常化を実は求めているわけであります。これはおそらく木村運輸大臣が提案をして閣議が了解をした事項だ、こう考えるのでありますけれども、そのような提案をし、労使の正常化なくして実は国鉄の再建は不可能だ、こう自分の方で考えておる当人が、労使の中に新たな紛争の起こるような処置を国鉄再建と引きかえに文書でとっておるという事実がある。(「どんな文書か取り寄せろ」と呼ぶ者あり)いやいや、私ちょっと読んで確認をしますから。
  姿勢を正すための緊急措置
 1、昭和五一年一月中にスト権ストの処分を厳正に行う。
 2、昭和五一年一月中にスト権ストに伴う損害の賠償を関係労働組合に請求する。
   これに応じないときは、すみやかに訴訟を提起する。
 3、役員は、給与の一部を辞退する。木村運輸大臣、この文書が国鉄総裁との間に取り交わされたやに聞いておるわけでありますけれども、御答弁をいただきたいと思います。
○木村国務大臣 国鉄の再建問題は、五十一年度の予算前におきまして、それまでの長い間の国鉄の破局的な財政状況、これを再建するためにいろいろと再建方策を考えたわけでございますが、その中で、やはりこの再建には、国鉄自体のことでございますから国鉄みずからその再建に四十三万の全職員が一体となって当たらなければいけない、それが大前提であるという考えに立っておるわけでございます。たまたまその以前におきまして、スト権スト問題で世間にあれだけの大きな騒ぎを起こしたわけでございまして、まずその辺から国鉄当局もきちんとした姿勢を国民に示し、そうして国民の理解と協力がなければ再建ができないわけでございますので、そういう意味で国鉄に対して厳しい姿勢を求めたわけでございます。それに対しての国鉄からの運輸省に対する文書が、いまお読みになったものでございます。
○堀委員 木村運輸大臣、あなたはいま、国民の理解と協力がなければできない、だから国鉄から文書をとった、こうお話しになったんですね。国民の理解と協力を得る前に、内部に働いておる者の協力がなくてできるのですか、国民の理解と協力さえあれば。どうですか。
 そうして同時に、これは国鉄から文書を差し出したという形式にはなっておるでしょう。実は、十二月三十一日に予算が決定すると同時に再建要綱が決まっておるわけですね。要するに、国鉄再建の要綱を決め予算を決めるためには、ともかくおまえのところはこうやって一札入れろという話ではないですか。スト権の処分なりというものは国鉄総裁が行うように法律上明らかになっておるものに対して、政府がそのような介入をするということは、私は最初に申し上げましたが、これは重要な問題がある。
 総理は、あなた自身にも問題があるけれども、まずいま運輸大臣が、本来国鉄総裁の持っておるそういう権限を、予算をてこにして一札とってそうしてやらせるなどという、拘束をした権限の行使ということは運輸大臣として全く適任性を欠くと私は思うのです。総理の見解をひとつ伺いたい。
○三木内閣総理大臣 国鉄の処分は、やはり処分権者は国鉄の総裁でありますが、しかし、運輸大臣は国鉄に対する監督権を持っておるわけですから、運輸大臣として国鉄に対して監督上のいろいろな助言をいたすことに対しては、運輸大臣の権限だと思います。
○堀委員 いまのは形式は確かにそうでしょう。形式はそうでしょうし、これは恐らく国鉄が自発的に書いて出したんだということでしょう。三木さん、いまの力関係、全体の状況の中で、だれもそんなこと信用しないですよね。だから、そういうきれいごとの話ではなくして、私はいまから触れますけれども、国鉄再建問題というのは並み大抵の問題ではないのですよ。皆さんが認識していられる以上に、これは困難な問題なんです。この困難な問題をやるときに、私はいまのような一片の形式的な答弁をなすっておって済むとは考えておらないのです。
 だから、もう一つ私は三木さんに伺いたいのは、ともかく総理は、昨年、成田委員長との党首会談の席で、これは私も同席させていただいておりましたが、総理みずから、スト−処分−ストの悪循環を断ち切りたいという御発言があったわけですね。私はきわめて適切な御発言だ、こう思って高く評価をいたしておったわけでありますけれども、総理は、施政方針演説の中でこういうことをおっしゃっているわけです。「国民の要望にこたえて政治の信用を回復するために、政府のなすべき仕事は、数多くありますが、中でも、現下の緊急課題として、先に述べた不況対策のほかに、私は次の四点を考えています。それは、一つ、ルールと約束事は守るという法治国の精神に基づいた社会秩序の確立。」この面で総理は、要するにスト権ストの問題に触れておられるのですが、私はこれはこう読むのじゃないかと思うのですね。
 約束事を守るというのは、この前田中内閣が御承知の労働組合との間にした、要するに五十年の秋に結論を出すという約束が守られないからストライキが起きたのであって、原因と結果を逆にしてもらっては困ると私は思っておるのです。だからあなたがおっしゃるように、あのときにもつと早く、秋に――結論が出たのは十二月ですからね、あれは秋じゃありませんよ、冬ですよ、われわれの常識では。秋というのは十一月の末までが秋で、十二月というのは日本では冬だと思っていますがね。要するに、秋と約束したのが冬になった、その結果起きたということについて、私は、あなたの言っておられることを守ろうとするならば、これは問題がある、こう思っているのです。私がさっき総理にも問題がありますよと言ったのは、御自身がそう言っておられることで、あの結論の出方が遅かったことに、私は、政府は政府なりの責任と反省を考えていただかなければ困る、この思うのですが、その点はいかがですか。
○三木内閣総理大臣 せっかく前の政府がそういうことを言いまして、専門委員の懇談会というのをつくったのですね。その人たちの、あれは相当精力的な会合をしたわけですね、その結論、意見書の提出を踏まえて、やはり政府というものは考えてみたいという配慮があったのですよ。私も十二月一日というのはちょっと秋としては遅過ぎる、何とかして十一月中に出したいというのが私の考えでしたよ。それで非常に督促をしておったわけですよ。せっかくつくっておって、その意見書も出ない前に政府がいろいろ見解を述べることは、そうなってきたらもう懇談会などつくっても政府に協力しませんからね。ほかの懇談会にも影響する。そういうことで、おくれたことはもう少し早く出すべきだったという反省はいたしております。
 しかし、ルールというのは、やはり法秩序ということもございますし、そういうことは守らないと、こういう複雑な社会の秩序を維持していくためのよりどころは、そういうルールといいますか法律というものがやはり大きな社会の秩序維持の基礎になるという考え方は、私が施政方針演説で述べたとおりに考えております。
○堀委員 そういう反省があるということで、この問題はまた後の同僚議員が深く触れられますから……。
 もう一点だけ。いまの念書というのか何かに、損害賠償の請求について触れているところがあるのですけれども、私は、これはもうとんでもないことだと思っているわけです。というのは、これらの事例は西欧諸国でも実は支払われた前例はないというふうに私は聞いておるわけでありますし、民主政治というのは私は常識の政治だと思うのですね。常識の政治というときに、いまあの問題について損害賠償請求を国鉄が出すなどということは、一体これから国鉄再建をやろうとする立場において適当かどうか。それを、損害賠償がうまくいかなかったら訴訟を提起しろなんということに文書でなっておる点は、私は重大な問題だと思うのです。これは国鉄総裁を含めて責任があると思うのです。こんなことにオーケーと言った以上は重大な責任がある。だから、もしこういう問題について本当に処分するというなら、国鉄再建問題を御破算にするであろうこの責任者である木村運輸大臣、国鉄総裁も、私は同罪だと思う。この点について、総理の見解をちょっと伺っておきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 私は、やはりこの処分の問題にしても公労法というものがあるわけですから、これは堀君いろいろ御意見がございましょうが、しかし、現存しておることは事実です。やはり公労法が、それが悪法であるというならば改正をされなければならぬ。現行法がある以上は、それを守るというところに法秩序は維持されていく、また、その違法ストによって国鉄が現実に損害を受けた場合には損害賠償の請求というものはあり得ることである、こういうふうに考えております。
    〔正示委員長代理退席、委員長着席〕
○堀委員 国鉄総裁にそれじゃちょっと一つ、このことだけについて伺っておきますが、要するに、総理はいま、国鉄が損害賠償を請求するのはあたりまえだというような言い方をされた。一体あなたは、損害賠償を請求するということを文書にして、「これに応じないときは、すみやかに訴訟を提起する。」などということになっているが、損害を一体どうやって計量するのですか。ちょっと一遍それだけひとつ答えていただきたい。
○藤井説明員 お答え申し上げます。
 この損害賠償に関しましてはいろいろな御議論のあることも知っておりますけれども、追ってこれは法的に裁くべき問題であって、しからば御質問の損害額はどうするかということも、これは理論上は非常にむずかしい問題になりますけれども、一応目安というかアウトラインを申しますと、八日間のストでもって、得べかりし、つまり普通の、ストがなかったらこれくらいの収入があっただろうという金がまずわかる。それから賃金カットなんかいたしておりますので、それも引っ張る。列車が動かなかったので動力だの何だの消費もなかったということでこれも引っ張るというようなことで、さらにその残ったものの立証とかなんとかいうことになればいろいろな御議論が生まれると思いますけれども、大体の粗筋としては、これは私は法律屋じゃないのできわめて乱暴な話なんでございますけれども、そういう骨組みから考えた次第でございます。
○堀委員 そこで、実はちょっと再建問題にひとつ入っておきたいと思います。
 このことは今後同僚議員がさらに引き続きやられることでありましょうし、私は国鉄の運賃値上げ、公共料金の関係の問題、これと国鉄再建を絡めて実は伺うつもりでありますが、最初に総理に伺っておきたいのは、いまどうも公社その他の企業が独立採算でやれということになっておりますね。だから、独立採算というものと、公的な企業であるという問題と二つあるわけですけれども、私は、公的な企業といえども、経理は独立採算であるというならば、独立採算が本来きちんとならなければならぬ、こう考えるのですけれども、総理はその点いかがですか。
○三木内閣総理大臣 経理は独立採算制であるべきだと思います。
○堀委員 ところが、この決められた再建要綱によりますと「再建の基本理念1国鉄の役割」というところで「独立採算性を指向した自立経営を行うものとする。」――「独立採算性を指向した自立経営」というのは、これは一体何でしょうね。木村運輸大臣が当事者でしょう、国鉄総裁かな一それでは運輸大臣。
○木村国務大臣 国鉄の経営の形態は、御承知のように公共企業体でございますので、もちろん企業体である限りにおきましては独立採算ということを一方の一つの原則にしておるわけでございますが、一方公共性という使命があるわけでございますので、公共性という使命を発揮するためには必ずしも独立採算の面と合わない点もあるわけでございます。そこはやはり政府なりあるいは地方公共団体なり、国鉄以外のところでいろいろと援助をしなければならないというものが公共企業体の性格であると私は考えておりますので、そういう意味におきまして、完全な独立採算でいけという言い切り方ができないのでございまして、あくまでも独立採算を指向してやるという表現にいたしたわけでございます。
○堀委員 総理がさっきおっしゃった、経理上独立採算は当然だ――私が言っておることは、要するに、いま運輸大臣答えられましたように、公共的なサービスが求められておる。公共的なサービスを本来は国鉄が負担すべきでないにもかかわらず、国鉄に負担させるとするならば、それは独立採算を侵害するわけですから、その分については、公共的サービスを提供するのは当然ですが、そのサービスの対価を国が当然公共サービスのかわりに払ってやるというのでなければ、私は独立採算などという制度は成り立たないのじゃないかと思うのです。実はNHKがことし予算上値上げを提起しておりますが、数年前から、NHKは大体このころには聴視料値上げをしなければならぬ客観情勢にあったことはわかるわけですから、そこでNHKが本来負担すべきでないものをNHKが負担しておるのは全部排除すべきだ、そうしてからでなければ、要するに国の払う分までを聴視料で取るなどということは納得できないと言って、NHKを督励しながら、大蔵省が本来負担するものは大蔵省に負担をさせるということで、完全にはなっていないにしても、ほぼ実はNHKはいま本来NHKが負担しないでも済むものは負担しないということになっているわけです。たとえば、基地周辺の聴視料の減免だとかあるいは国際放送についての費用だとかいろいろな問題があったのですが、そうしてきた。だから、私は四十二年にも実は大蔵委員会でこの問題に触れたわけでありますけれども、国鉄を再建するためにどうしても必要なのは、何としてもこの公共負担の部分を国が見るかどうかというところが決断がつかない限り、私は国鉄の再建は不可能だ、こう考えております。公共負担の中には地方線の赤字の問題もあります。さらには公共割引の問題もあります。よくジャーナリズムで取り上げられる私ども国会議員の無料の運賃の問題についても、それは国会の予算で払ってやればいいのじゃないか。要するに、政策目的に応じてその部分が負担をするということで処理がされるべきで、それを全部国鉄におっかぶせておること自身は、総理が最初におっしゃった経理の独立採算を乱すことになっておるわけですね。ことしの予算ではこの地方線に対する助成が百七十二億されておるようでありますが、しかし、国鉄側は九百九十三億実は要求しておる。それに百七十二億しか国はめんどうを見なかった、こうなっておるわけですね。いま公共割引の負担というのは大体約五百億ぐらいあると言われています。時間が十分ありませんから簡単に私の方で述べていきますけれども、そうして、現在は五百億でありますけれども、過去におけるこの公共割引のための負担は、二十四年度から四十九年度まで合わせると一兆二千八百二十三億円にもなる。これだけを、実は本来国鉄は負担しないでもいいものをずっと負担させられてきておるという問題があるわけですね。地方線の問題においてもしかりであります。
 だから、国鉄再建の一番のポイントは、一つは労使の正常化ですよ。これは最大の問題点。その次は、いまの公共的な部分における、本来国鉄が負担しないでいいもの、それを負担させられておる部分を政府がきちっと処理する、この二点が確立をしない限り、私は国鉄の再建は考えられない、こう考えておるわけです。一体百七十二億などというものをいろいろ理屈をつけて財政当局は考えたのでしょうけれども、問題は金額とかそういうものではなくて、真剣に国鉄再建をやろうというのなら、経常収支がバランスするようにすることが最重要なんでありますから、そのためには過去における債務をたな上げをして処理するということも確かに重要でありますけれども、それにも増して、実は経常収支を圧迫しておるのは五百億の公共負担の問題であり、あるいは地方線の負担が国鉄側のあれでは九百九十億円余りある、それの半分だけをひとつ予算としてちょうだいしたいと言ったら、半分どころか、百七十二億だけしかいただけなかった、こういうことになっておるわけですね。こういう条件で再建をやらそうなどということは無理がある、こう考えておるわけであります。
 さらに、時間がありませんから、その再建問題をやる場合に実は運賃の値上げというのは不可分ですね。この運賃の値上げの問題だけをちょっとここで触れておきますけれども、国鉄は現在、今度の予算で五〇%の運賃の値上げをすることになっていますね。しかし、国鉄の資料で見ると、五〇%を上げて三七%増収になればいいんだということですね。これは非常に重要な問題です。値上げをする結果利用減が起こる、利用減を当初から考えて値上げをする。公共サービスというのは、一体人間が乗るのを制限することによってもなおかつ収入を上げなければいけないのかどうか。これは私は重要な問題点だと思うのですね。公共サービスとしては、値上げはします、しかしその値上げが利用減にならないような値上げの方法を選択することが公共企業の重要な基本的な考え方ではないだろうか。ところが、国鉄は当初一遍に倍になれば一番いい、そうもいかないから五割、五割で二年続き。選挙を前に五割、五割の二年続きなんということは困るから一年だけ出そうということになったのだろうと思いますけれども、それにしても五割上がって三七%の歩どまりなんというのは、私は甘いと思っているのですよ。この不況の情勢の中で、高度成長のときのものと同じようなふうにはいかないと思うのですね。だから、こういう点については、いまの再建の考え方に非常に問題がある。
 ちょっとデータを申し上げておきますと、国鉄側が試算をしたものの中で非常に心配な点は、四十三年には、旅客運賃の値上げをしたけれども貨物は実は値上げをしていない。ところが国鉄の試算では、平年度で貨物収入が何もしなくて九五%になっている。値上げしなくて九五%。四十四年にも旅客だけ上げて貨物は上げなかった。しかし、このときも国鉄の計算では九一・六%と、料金を上げなくても、運賃を上げなくても減ってきた。それはそうでしょう。かつての貨物の収入から見れば、ずっと今日低下の一途をたどっているというのが国鉄の状態ですから。そういう下降線にある。競争上は、トラックその他内航海運との間で厳しい競争が強いられている中で、しかし国鉄側は貨物についても名目五三・九、純増収三七・二%。これはもうナンセンスですね。私は国会に出て約十八年、経済問題だけを取り扱って今日来ておりますが、こんな再建計画を出してくるという、これは経済の問題を考えておる者から見ればもうナンセンスですね。これは値上げ問題が、高い安いとか、その当否を論ずる前に、もう一遍再建計画を含めて出し直してもらいたい。それでなければ、こんな再建計画で国鉄再建は絶対できませんよ。
 だから、私は総理に、これは大変重要な問題で、私どもは運賃値上げ賛成、反対の問題の前に、ともかくさっき運輸大臣は国民の理解と協力を得なければ再建できないと言われた。こんなやり方をして国民の理解と協力を得られますか。私は得られないと思いますね。どうしても得られない。だから仮に値上げをするとしても、もっと小刻みな値上げを何回かするということで、その程度の値上げなら仕方がないということに国民が理解をするならば利用減は減るでしょう。利用減をともかく一三%もぼーんと出すような値上げ案。実際には、過去の状態で計算してみると六〇%ぐらいになっていますからね。三七%の純増収というのは見込みはないですよ。大体三〇%増収にしかなりませんね。そして貨物はゼロですね。マイナスが立ちますね。もしここで五〇%やったらマイナスがどーんと立ちますね。これは私は間違いないと思う。
 そういう非常識な、経済的に常識的に考えられないようなやり方をとることについては私は納得できないので、これはひとつ総理大臣、この再建要綱というのは閣議了解事項になっていますが、恐らく十二月三十一日の予算閣議の忙しいさなかでぱっと出されて、閣議の皆さん、十分御検討になる時間もなかったのじゃないかと思いますけれども、これはひとつ再検討をして、あわせて国鉄の運賃の値上げももう一遍、いまの情勢で本当に国鉄が再建できる再建要綱をつくった上で考えたらどうか、こういうふうに思うのですけれども、総理の御答弁をいただきたいと思います。
○三木内閣総理大臣 堀君も御承知のように、国鉄の累積赤字は三兆一千億円、五十一年度末の赤字が八千億円というのです。全く危機の状態にあるわけです。これをそのまま放置することはできません。それで、国鉄自身も徹底的に合理化をやる、そしてまた債務は、累積赤字はたな上げする、財政的な援助を加える、運賃の値上げも行うという三本の柱はこれは大きな誤りはない。そしてこの全く危機の状態である国鉄というものを、堀君はもっと練り直して、いろいろ小刻みにやれと言いますが、これはやはり公共料金、国鉄でも、公共料金の値上げというものは国会の御承認を得るわけですから相当時間もかかるわけで、必要なときに必ずしも値上げを小刻みにしてないですね。できるだけこれを抑制しようということで一遍にこういう危機が来るような状態でありますから、この問題はいまの再建計画で処理して、堀君の言われるようにこれは大変な大きな問題を含んでいる。それは、一つには国鉄自身の経営のあり方、あるいはまた国鉄の財政的面から見た国鉄財政のあり方、あるいはまた労使関係ということも堀君御指摘のように重要でありますから、いわゆる公労法などの改正の問題、こういうものを含んでおるわけでございますから、私は本当に、こういう問題に対して見識を持っておる人たち、この人たちの知恵をかりたい。今度は中途半端なことをしないで、国鉄というものにメスを入れて、こういうことを繰り返して――再建計画といっても、過去に何回か再建計画をやってみんな御破算になるのですから、今度はそういうことでない根本的な、国鉄というものに対する再建策はもう少し腹を据えて、腰を落ちつけてやりたいと思いますが、当面の国鉄に対処する方針は、閣議でも決定しました再建方針にのっとってこの処理はいたしたい。将来の恒久的課題としては国鉄問題に本当にメスを入れたいという考えでございます。
○堀委員 残された時間が十分ありませんから、あと二点だけひとつお伺いをしておきたいのでありますけれども、この再建要綱の中には実は重要な問題が記載されているわけであります。
 それは一つは、基本理念のところに、責任ある経営体制の確立ということで、「国鉄が再建を達成し、その役割を果していくための基本は、国鉄自身が、安易な経営に陥ることのないよう厳しい姿勢のもとに国民に対して責任ある経営体制を確立することである。このため、労使関係を速やかに正常化するとともに、次の点を中心として国鉄経営の刷新を図るものとする。」こうあるのですね。
 そこで、ちょっと藤井総裁に承りますけれども、国民に対して責任ある体制を確立するということ、それから労使関係を速やかに正常化するというためにも、十月の当予算委員会においてスト権の問題についてあなたがお述べになったことは、今日も同様であると理解をいたしますけれども、その点をちょっと御答弁をいただきたい。
○藤井説明員 お答えします。
 十月の予算委員会で、私ども、関係閣僚の協議会の終わりごろに当事者としての意見を求められましたので、意見を申し上げました。しかし、これは当事者はどう考えるかということで決まる問題じゃなくして、立法上の立法政策、非常に重要な政治問題でございますので、私どもとしましては、私どもの申し上げた意見をできるだけ参酌していただいてお決め願いたい、かように考えております。
○堀委員 いや、私が言ったのは、今日も意見は変わりませんねと当事者の意見を聞いておるのです。もう一遍確認をしておきたいと思います。
○藤井説明員 過日申し上げましたのは、行政上の処分とかなんとかでストを規制するというようなたてまえに立っておるけれども、現在は規制するとかなんとかという力が十分じゃないので、国民大衆にしばしば御迷惑をかける。したがいまして、これは要は、ストをやっていかぬとかいいとかいうことでなくして、起こったら国民が御迷惑をこうむるので、この御迷惑を少なくする方途として、私どもは長年の経験からあのように考えましたということを申し上げました。
○堀委員 そこで、これは木村運輸大臣にまず確認をいたしておきたいのですけれども、この再建計画というのは、現在の国鉄の経営状態をそのままにして再建計画を考えたんだと思うのですけれども、その点は違いがあるかどうか、ちょっとお答えをいただきたい。
○木村国務大臣 お尋ねの点は、恐らく民間に移すとかそういうことを含めてのお問いであろうと思いますが、現在の公共企業体としての国鉄の経営の状態で再建をしようということでございます。
○堀委員 実は総理がさっきお触れになりました専門委員懇談会、正確には公共企業体等関係閣僚協議会専門委員懇談会、その答申の中には、国鉄問題等に触れ「民営ないし民営に準じた経営形態にはしないこととする場合には、従来どおり、その職員には争議権が認められないであろう。」こうなっているわけですね。だからもう、いま政府は、再建は現在の公共企業体のままでありますということになるのですから、そうすると専門懇の意見書というものは、それではもうスト権はだめですという答申になっているわけですね。まさか総理が、専門懇の趣旨を尊重すると言っても、そんな趣旨を尊重することはないと思うので、その点だけを明らかにしていただいて、私の質問を終わりたいと思うのであります。
○三木内閣総理大臣 政府の基本方針に出しましたように、この問題は、いわゆる公労法の改正問題も含めて、政府が政府としての方針を決定をする場合には十分な検討を加えるということでございます。
○堀委員 残余のこれらの問題については同僚議員の質問にゆだねることにいたしますが、要するに私は、国鉄の再建問題といまの労使関係と、そうしていまの独立採算、公共負担の関係、これらの問題は一体不可分の問題であって、どれが崩れても国鉄再建はできないと私は思うのです。だから、そういう意味では、それはいろいろと与党内部にも御意見がありましょう。しかし、国鉄というのは国民にとっては貴重な資産であります。そして、この国鉄を生かすことによって、日本のいまのモータリゼーションによる公害のまき散らしも軽減されるであろうし、各種の点において合理的な輸送体系であることに間違いありません。しかし、そのためには総合交通体系というものが確立されて、自動車なら自動車が野放しで、幾らでも自動車輸送でいいんだということであってもならないし、やはりそこにはおのずから政府としての総合交通体系に対する考え方が実ば確立をされなければならないと思うのですね。私はそういう意味では、もう御答弁は要りませんが、ひとつ政府は真剣に交通総合対策を含め、この国鉄問題について検討されることを要望して、私の質問を終わります。(拍手)
○荒舩委員長 これにて堀昌雄君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○荒舩委員長 この際、本日午前中に小林進委員から御発言のありました、在日韓国人で韓国法廷において死刑の確定をした崔氏及び死刑求刑が予想される陳氏の件につきまして、先ほどの理事会において協議いたしました結果、人道上の重大な問題であり、事は急を要するものでありますので、予算委員会を代表して、委員長の私から、政府に緊急に最善の努力をすることを要請いたします。(拍手)
○井出国務大臣 ただいま委員長より御要請のありました件につきましては、できるだけ努力をいたします。
○荒舩委員長 次回は、来る二月二日午前十時より開会いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五分散会