第080回国会 社会労働委員会 第5号
昭和五十二年三月十六日(水曜日)
    午前十時四十分開議
 出席委員
   委員長 橋本龍太郎君
   理事 斉藤滋与史君 理事 住  栄作君
   理事 戸井田三郎君 理事 中山 正暉君
   理事 枝村 要作君 理事 村山 富市君
   理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君
      相沢 英之君    井上  裕君
      伊東 正義君    川田 正則君
      小坂徳三郎君    津島 雄二君
      戸沢 政方君    友納 武人君
      羽生田 進君    葉梨 信行君
      山口シヅエ君    湯川  宏君
      大原  亨君    金子 みつ君
      川本 敏美君    渋沢 利久君
      田口 一男君    森井 忠良君
      草川 昭三君    古寺  宏君
     平石磨作太郎君    西田 八郎君
      浦井  洋君    田中美智子君
      工藤  晃君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡辺美智雄君
 出席政府委員
        厚生大臣官房会
        計課長     持永 和見君
        厚生省公衆衛生
        局長      佐分利輝彦君
        厚生省環境衛生
        局長      松浦十四郎君
        厚生省医務局長 石丸 隆治君
        厚生省薬務局長 上村  一君
        厚生省社会局長 曽根田郁夫君
        厚生省児童家庭
        局長      石野 清治君
        厚生省保険局長 八木 哲夫君
        厚生省年金局長 木暮 保成君
        厚生省援護局長 出原 孝夫君
        労働大臣官房会
        計課長     寺園 成章君
 委員外の出席者
        農林大臣官房審
        議官      小島 和義君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
三月十五日
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第三八号)
は議院の承諾を得て修正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第三八号)
 厚生関係の基本施策に関する件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
○橋本委員長 これより会議を開きます。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案につきましては、去る十日、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますが、昨日、本院の承諾を得て、内閣において修正いたしましたので、この際、政府よりその修正の趣旨について説明を聴取することといたします。厚生大臣渡辺美智雄君。
    ―――――――――――――
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案中修正
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○渡辺国務大臣 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案中修正点の趣旨を御説明申し上げます。
 戦傷病者戦没者遺族等に対する援護措置の改善を図るため、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案をすでにこの国会に提出し、三月十日当委員会におきまして提案理由を御説明申し上げたところでありますが、今回援護措置の一層の充実を図るため、この法律案に所要の修正を加えることとし、昨日本会議の御承諾をいただきました。
 その修正点の内容は、障害年金、遺族年金等及び留守家族手当の額の引き上げの実施時期、平病死に係る遺族年金等の支給範囲を拡大する措置の実施時期並びに遺族一時金を廃止し、当該遺族一時金の支給要件に該当する遺族に対して遺族年金等を支給する措置の実施時期を、それぞれ二カ月繰り上げるものであります。
 以上が、今回の修正点の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださるようお願い申し上げます。
     ――――◇―――――
○橋本委員長 厚生関係の基本施策に関する件及び労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、厚生、労働両省の政府委員から発言を求められておりますので、順次これを許します。厚生省持永会計課長。
○持永政府委員 昨日の本会議で、院の承諾を得て、内閣において修正されました昭和五十二年度の予算に関連いたしまして、先般当委員会ですでに御説明申し上げました厚生省関係の予算概要の修正部分について御説明申し上げます。
 その第一は、厚生年金保険、船員保険、国民年金につきまして、九・四%の物価スライド改定の実施時期を、それぞれ二カ月繰り上げることでございます。
 第二は、福祉年金、児童扶養手当を初めとする各種手当など、戦没者の遺族等年金につきまして、年金額または手当額の改善等の実施時期を、それぞれ二カ月繰り上げることであります。
 第三は、これらの措置に準じまして、生活保護被保護者、各種社会福祉施設の収容者に対しましても、臨時の追加給付措置を行うことであります。
 以上の修正によりまして、厚生省関係予算の総額は、五兆六千二百五十七億五千八百万円と前回の要求額に対しまして三百五十三億百万円の増加、昭和五十一年度予算に対しまして一八・七%の伸びと相なっております。
 なお、二枚目の資料に、今回の修正予算に関連いたします厚生省所管の特別会計の歳入歳出を記してございますけれども、説明は省略させていただきます。
 以上でございます。
○橋本委員長 次に、労働省寺園会計課長。
○寺園政府委員 昨日の本会議で、院の御承諾を得て、内閣において修正されました昭和五十二年度予算に関連し、先般当委員会で御説明申し上げました労働省関係予算の概要の修正部分につきまして、お手元の昭和五十二年度予算修正概要に基づきまして御説明申し上げます。
 予算規模でございますが、修正額十一億一千四百万円でございます。当初要求額を加えまして三千七百五十八億一千二百万円、一〇%増ということでございます。なお、特別会計につきましては修正いたしておりません。
 修正内容につきましては、理由でございますが、失業対策事業就労者に対しまして特別措置を講ずるためでございますが、その内容は、各種年金等の実施時期の二カ月繰り上げに準じまして、失業対策事業につきましても、五十二年度の改善分の二カ月相当分、すなわち就労日数六日分を追加するものでございます。これによりまして、一人当たり平均一万五千九百十三円増ということに相なります。
 以上でございます。
     ――――◇―――――
○橋本委員長 厚生関係の基本施策に関する件について質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古寺宏君。
○古寺委員 きょうは、大臣にOPPの問題にしぼって質問申し上げたいと思います。
 まず第一点は、三月の十三日に厚生大臣が松山におきまして、OPPについては食品衛生調査会の結論がオーケーと出れば諮問するし、だめと言えば許可しない、こういうような意味の発言をなさったと報道されておりますが、これは事実ですか。
○渡辺国務大臣 私の記憶によりますと、そういう具体的な話でなくて、OPPの問題については、私は、政治家でございますから詳しいことはわかりません、したがいまして、政府の指定の機関がございますから、そういうところの学者の意見に従いたいと思いますと、そういうことを言ったと思っております。テープレコーダーもとってありますから、まず間違いないでしょう。
○古寺委員 そこで、十五日に正式に諮問したわけでございますが、このOPPを諮問するに当たって食品衛生調査会に提出をする資料があるわけですが、何々でございますか。
○松浦政府委員 食品衛生調査会では、まだ現在資料を提出しておりませんで、これから部会が開かれるわけでございますが、その部会におきましては、WHOがこのOPPにつきまして検討いたしましたときの資料と、それからわが国で最近提出されました遺伝毒性に関するデータを御議論していただくという予定をいたしております。
○古寺委員 今回の諮問に関して提出いたしますところのWHOの資料、あるいはもう一つは残留農薬研究所の資料、この資料を提出するということは、OPPの安全性というものが実証されているあるいは確認されている、そういう趣旨でこの調査会にデータをお出しになるおつもりでございますか。
○松浦政府委員 結論的に申しますれば、いろいろなデータを調査会で御検討いただきまして、その調査会で学問的に安全であるかどうかということを御判定いただくわけでございますが、いずれにいたしましても、WHOのデータにおきましては、いろいろないままでにおきます実験を踏まえまして、WHOの専門家会議におきまして、OPPは一日の人間の許容摂取量は体重一キログラム当たり一ミリグラムであるということが一応計算されまして、そしてそれが勧告となっておるわけでございますので、WHOの専門家会議がそのような判断をしておるということ、それから第二に、遺伝毒性の実験では、いろいろな実験を行った結果、特に遺伝毒性についてないという結論でございますので、私どもの段階では、一応そのような観点から、これで一応の安全性の試験は済んでおる、こういうことで最終的には調査会の御判断にお任せするというふうな考え方でございます。
○古寺委員 調査会はもちろん結論を出すと思いますが、大体この結論の出る見通しはいつごろであるとお考えですか。
○松浦政府委員 これは会議の今後の進展模様で、確実なことは何とも、調査会の方の自主的な運営でございますので申し上げられませんが、通常のぺ−スで進むとすれば一カ月あるいは一カ月半ぐらいというようなところではなかろうかと思います。
○古寺委員 いまのお話を承りますと、新聞等の報道もそうですが、厚生省としては、この諮問によりましてOPPは安全である、そういう結論を期待して諮問していると思うのですが、この点については大臣はどうですか。大臣にひとつ……。
○松浦政府委員 先ほど申し上げましたように、一応私どもの事務局の内部でこれを見た段階で、有毒でとても使えそうもないということであれば、そもそも諮問をいたせないわけでございますので、その段階におきましては、これならば安全であろうというふうに考えましたので、専門家の御審議に任せるということでお願いしたわけでございます。
○古寺委員 この諮問するまでの経過といたしまして、青果物の輸入団体ですとかあるいはアメリカの政府ですとか、そういうところから再三〇PPを使用することを日本の厚生省も許可をするように、こういう要望があったということを承っておりますが、それは事実でございますか。
○松浦政府委員 そのとおりでございます。
○古寺委員 そうしますと、今回の諮問は、国民からの要望ではなくして、むしろいわゆる輸入業者、利益団体、それからアメリカ政府、こういう国民の要請ではなくして、いわゆる外国の政府あるいは利益団体の要請によって今回の諮問がなされた、こういうふうに判断しても結構でございますか。
○松浦政府委員 通常、添加物につきましては、それが有用性があるから添加物として指定するわけでございますが、実際問題といたしましては、今度こういう添加物が開発されたけれども、これはこういうことで非常に役に立つからこれを指定してほしいというふうな形で指定が行われるわけでございまして、全く何にもないところから、こういうのをつくってどうこうというようなことには通常なっておりませんで、そういった新しいものを開発されたときに、これを使いたい、それが毒があるか有用性があるかということを検討いたしまして指定するという通常のやり方をやっておりますので、この場合でも同じくそのような形で行うわけでございます。
○古寺委員 このOPPを許可してもらいたいという要請、要望というものは、大体いつごろからあったのでしょうか。そして今回の諮問は、福田・カーター首脳会談の日程に非常に接近しているために、何かそういう政治的な含みがあるのではないかということをいろいろ新聞等でも論評されております。したがって、いままで厚生省は、このOPPについては慢性毒性その他において非常に疑念があるということで、今日までこれを禁止してきたわけですね、それが急に変わりましたが、大体いつごろからこれを諮問しようというふうにお考えになっておられたのか承りたいと思います。
○松浦政府委員 OPPにつきまして最初に私どもの方にこの許可をしてほしいという要請があったのは、昭和五十年の四月でございます。その時点にアメリカから話がございまして、日本ではこういうのを許可できないかというのがございました。
 それから、なお同じく五十年の六月に、日本青果物輸入運営協議会、これは青果物を輸入しております業界の連合会でございますが、そこの方から許可の要請が来たわけでございますので、大体昭和五十年の春ごろからこの要望があったわけでございます。
○古寺委員 いや、いま私がお尋ねしているのは、大体いつごろから厚生省は諮問しようというふうに腹を決められたかということをお尋ねしているのです。
○松浦政府委員 この時点におきまして、いままではジフェニルという薬剤のみが、この柑橘類の防カビ剤として使われておったわけでございますが、ジフェニルだけでは効かないカビがあるということで、非常に腐りが多いということでございましたので、そういうことでこのOPPというのが必要であるということであったわけでございます。
 そこで、この薬を許可してほしい、こういうことがございましたが、私ども、実は食品衛生調査会の中に内規がございまして、急性毒性、慢性毒性、発がん性というのが、通常世界どこでも行われているこういうものを許可する場合のデータとして使われておるわけでございますが、これはわが国が特別でございまして、内規として遺伝毒性というものを今後は調べて、それに基づきまして検討する、ですから、急性毒性、慢性毒性、発がん性の試験、それから遺伝毒性の試験、この四つをそろえないと日本の食品衛生調査会では検討ができない、こういうふうな内規を決めたわけでございますので、この時点におきましては、食品衛生調査会に諮る条件が整っておらない、ですから、そういったすべてのデータが整った暁においては食品衛生調査会に諮問できるのではないか、こういうふうに考えておったわけでございます。
○古寺委員 この残留農薬研究所の発表は昨年の十月になされております。これが唯一の、あなたがいまおっしゃった必要な資料だったと思うのですが、十月からというと、大分時間がたっていますね、いつごろから大体諮問をする作業を始めたのですか。
○松浦政府委員 十月に、先生おっしゃいますように学会で研究の発表がございました。その研究が実際に私どものところへ届けられたのが十二月の二十七日だったと思いますが、十二月の末でございましたので、そのころ、その内容をその後検討いたしまして、これなら食品衛生調査会へ配るに足る資料である、こういうふうにその中身を見て判断いたして、そしてちょうど今回この時期にそういうふうな決定になったわけでございます。
○古寺委員 どうも私のお尋ねしているところをきちっと答えてくれないと困るのです。
 大臣にお伺いします。大臣は閣僚会議等があっていろいろお話が出たと思うのですが、所管の大臣として大体いつごろから、昨年からかあるいは今年になってからか、いつごろから諮問をする考え方に立ち至ったのか、まずそれが一つと、それから当然、このOPPが許可になりますと、レモンとかグレープフルーツ、これが自由に入ってくるわけです。ところが局長の新聞の談話を見ますと、外国の安いオレンジ、レモンあるいはグレープフルーツがどんどん入ってきて、国民生活にもこれは非常に結構なことだ、こういうことをあなたはおっしゃっているわけです。ですから、いつからこの諮問をしようという考え方に立ち至ったのかというその時期を私はお尋ねしているのですが、局長さんの方ば説明が余り懇切で大事なところが聞けないですから、大臣からひとつ……。
○渡辺国務大臣 この問題は、長い歴史がありまして、私が一番よく知っているのです。これはともかく、そんないつまでけんかしていたってしょうがないから、弊害のないものなら、世界じゅうどこでも使っておるんだし、余り日米関係がたがたけんかさせても、またそうすると、今度は輸入の枠の拡大とか貿易自由化だとか戦争がふったかってきても困るし、私は、できるだけ早くこれは諮問をして、毒でないものなら決着をつけたらいい、こう思っておったわけです。しかし、実際問題とすると、十二月にデータが出た、ところが私が大臣になったのは十二月の二十四日か二十五日くらいですから、続いてすぐ予算、正月になりまして休みでも予算というようなことで、今度は委員会ということになって少しおくれたというのが事実なんです。まあできることだったら、ともかく予算の問題さえ片づいておったら、一月の半ばごろでもデータがそろっていたら諮問をして学者の意見を聞いたらいいではないか、私はこういう考えでありました。
○古寺委員 それは局長さんも知っておられますね。
○松浦政府委員 はい、知っております。
○古寺委員 ところが十一日の分科会で、わが党の長田議員があなたに質問したのですが、あなたは、私はわかりませんと、そういう答弁をしていらっしゃる。わかっているんですよ。そういう長い歴史もある、しかも厚生省としては、この諮問をして、そうしてグレープフルーツとかレモンが解禁になるということもわかっているわけです。それをあなたは、わかりませんというような答弁をしているのです。全くけしからぬ話だと私は思う。長田議員は、時間がないので詳しくあなたに御質問申し上げなかったかもわかりませんよ、だけれども、あなたの答弁は全く、十五日に諮問がなされるとか、あるいは一カ月ないし一カ月半でその諮問の結論が出るというような答弁は出ていないのです。人をばかにしているような答弁をあなたはしている。どうなんですか。
○松浦政府委員 実は、あの長田先生の御質問は新聞報道についてはどうかというので、新聞報道については私どもは関知いたしておりません、こういうふうにお答え申し上げたので、あるいはそういうニュアンスのお取り違いかとも思いますが、私は、新聞報道については関知しておりません、こういう意味合いで申し上げたわけでございます。
○古寺委員 長田議員は、新聞報道を聞いているのじゃないんですよ、いつ諮問するのか、いつ解禁になるのか、こういう質問をしているのです。それに対してあなたは、新聞報道の質問をしたから私は答えなかった、そういう人をばかにしたような答弁をしては困りますよ。時間がないから前へ進みますけれども……。
 そこで残留農薬研究所、ここのデータが出てきた、これは試験を依頼したのはどこですか。
○松浦政府委員 日本青果物輸入運営協議会でございます。
○古寺委員 日本青果物輸入運営協議会というのは、これは業者の集まりですね、どうですか。
○松浦政府委員 そのとおりでございます。
○古寺委員 この日本青果物輸入運営協議会から再三、厚生省に対してOPPの問題についての陳情があったことも事実でございますね。
○松浦政府委員 事実でございます。
○古寺委員 そこで、こういうようないわゆる利益団体、業者の団体、直接利益が絡んでいるそういう団体が、自分たちの目的を達するために依頼したデータ、そういうものによってこの食品衛生調査会の審議にゆだねるということは、これは偏っていませんか。科学的に公平ですか、公正ですか。どうお考えですか。あなたも科学者です。
○渡辺国務大臣 これは方法論の問題でございますが、実は、こういうようなものの申請というものは、その利用者が申請を出すのです、何でも。植物、たとえばオレンジでもあるいはポンカンでも何でも、いろいろなものを輸入する場合は、それは取扱業者が、たとえば植物の検疫の問題についても申請を出しますし、こういうようなものも、いろいろな発がんとか何かという場合は、申請は――特許でも何でも、それは一般の人が出すのではない、特許なら特許をもらいたい人が申請を出す。したがってこれの場合も、そのOPPを利用した品物を取り扱う人が申請を出すということで、これは第三者が出すのでなくて、それを利用する人が申請を出すということでございますから、ほとんどそういうふうな取り扱いは、みんなそれは公平な機関が出すのじゃないんです。利用する人が出すことになっておるわけです。
○古寺委員 いまこの食品添加物としての諮問は、これはいわゆる安全性を確かめるための諮問なんです。しかも、これは懸案の問題です。いままで日本が日本の立場で、日本の主張でこれを禁止してきたのです。そういういままでの日本の厚生行政が、あなたになってから急に方向が変わった。いままでの日本のいわゆる食品添加物に対する考え方というものは、あなたの前のいままでの厚生大臣は、どんなことがあっても人間の生命を守るために、安全性というものを確認しないうちはこれを許可しないという方針であった。そういういままでの伝統の上に立つならば、安全性を確認する必要があるならば、国立の試験機関もあるでしょう。大学もあるでしょう。予算も計上できるでしょう。なぜそういうふうに、日本の科学の水準をゆがめるような、いままでの日本の食品行政のあり方をゆがめるような行き方というものをあなたはとろうとしているか。
 しかも、この問題に関連して、ただ単にグレープフルーツやレモンの問題じゃない、サクランボもリンゴも、あらゆる青果物が連動して輸入されてくるということはもう目に見えている。あなたは農林次官にもなっているじゃないですか。そうでしょう。よく御存じのはずなんです。それがなぜこういうふうに突然――突然ですよ。しかも、こういういわゆる業者の委託によって出されたデータというものを基礎にして諮問したのか、その辺をもう一遍お尋ねします。
○渡辺国務大臣 私も、歴代大臣と同じように、安全性の問題については厳重に考えておりますから、当然それは正規の機関にかけて、その学者先生の意見を聞くという手続をとっておるにすぎないのであって……(「業者目的だ」と呼ぶ者あり)業者目的とおっしゃいますが、それは薬でも何でもみんな第三者が申請するのでなくして、それを利用する人が申請をしてきて、それを……(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)おかしいと言ったって、全部そうなっているのじゃないですか。それは、だれも頼みもしない人はやらぬですよ。それを利用する人が全部、これでいかがでしょうかと言ってその検査を求めてくるわけですよ。それをわれわれ政治家はわからぬから、それは厚生大臣の諮問機関である学者先生方の食品衛生調査会があるから、そこに出すわけですよ。出すについては、何でも構わないで出すというわけにいかないわけですから、少なくとも公の機関で認められておる権威のあるところの実験データを添えて持っていらっしゃい、そこで実験チータを見て――それは役所でもちゃんと見るわけですよ。その人から来たやつを、まる写しに出すわけじゃない。一遍見て、なるほどこれならばまずまず心配ないかな、しかし、これはやはり第三者の機関に諮ってみるということが必要だから、そこで日本から集めた一流の学者先生が集まっておる調査会に諮問する、それでその答申を受けてどうするかをこれから決めるということで、これは少しも変わっておりませんよ。
○古寺委員 そこで、あなたはそうおっしゃるけれども、局長さんにお伺いしますが、残留研究所でこのデータを出すために試験をした期間はいつからいつまででございますか。
○松浦政府委員 その点については、私どもが残留農薬研究所に委託し、その答えをもらったわけではございませんので、つまびらかにしないわけでございますが、少なくも半年以上はかかっているのではなかろうかと想像いたします。
○古寺委員 確かに半年に近いでしょう。大体四月ごろから九月ごろまでです。こういう短期間に何世代にもわたる慢性毒性の試験、発がん性の試験、催奇形性の試験ができるとあなたは思いますか。
 それから、もう一つお尋ねしますが、WHOが出してきた資料というのは、これはいつの資料ですか。あなた方がいま提出しようとしている資料は何年の資料ですか。
○松浦政府委員 まず、第一点の残留農薬研究所の研究でございますが、これは急性毒性、慢性毒性、発がん性というような実験ではございませんで、遺伝毒性に関する実験でございます。
 それから、WHOの資料でございますが、印刷物としては一九七〇年の出版でございまして、一九六九年の評価の資料を予定いたしております。
○古寺委員 これはいつ行われた試験に対する評価ですか。
○松浦政府委員 この評価に関します論文がたくさんあるわけでございますが、ちょっと突然でうまく答えられませんが、ざっと申しますと、六八年、五三年、六五年、六六年、四八年、六九年、六七年、六七年、六九年、こんなようなところがいっぱい実験の論文がございまして、こういう論文を参考に検討してこのWHOの評価ができている、こういうことでございます。
○古寺委員 このWHOの評価の基礎になっている試験というのは非常に古い試験なんです。そういうWHOというものが絶対だという観念がまずあるが、WHOというのは間違いが多いんですよ。そういうところのデータ、それから残留農薬研究所のわずか半年足らずの、しかも業者から委託されたデータ、そういうものに基づいて、しかもその内容をよく検討しないで、厚生省がチェックしないで調査会に諮問するというこの姿勢、これが大臣の姿勢だと私は思うのですが、どうですか、厚生大臣。
○松浦政府委員 一九六九年に評価がされまして、その後一九七四年に、この評価どおりでよろしいということで、これがさらに勧告になって、現在WHOから勧告という形で言われております。勧告というのは、WHOが最終的に最も安全という形で判断した場合に行われる措置であろうかと思います。
 それから、残留農薬研究所の研究でございますが、これも通常、いまの遺伝毒性の学者の間で一番定型的、モデル的に行われる実験がその形で行われておりますので、そういう面からこのデータで十分であろう、こう判断したわけでございます。
○古寺委員 それでは、この審査基準の中にいろいろな項目がありますけれども、「新しい食品添加物の指定に際しては、そのものが、すでに指定されている同目的の食品添加物に比較して、同等以上の効果があるか又は別の効果を併有するものであることが望ましい。」こういう規定がありますね。
 そこで、ジフェニルはある種のカビには効くけれども、OPPは白カビに効くのだ、こういう厚生省のお話になっているのですが、この根拠になるデータはございますか。
○松浦政府委員 いまここに持ち合わせておりませんが、あると思います。
○古寺委員 それがあったら、後で出してください。恐らくないでしょう。
 それから次に、食品添加物の生体内運命に関する試験、あなたはお医者さんですからおわかりでしょうけれども、どういうふうに体内に入って代謝されていくか、解毒されていくか、そういうものに関する試験のデータはございますか。
○松浦政府委員 いま先生がおっしゃいました代謝関係につきましても、このWHOの評価の中で論文を検討して評価を下した、こういうふうにこのWHOの文書にもございますので、こちらの中でもその論文につきまして評価されているものと思います。
○古寺委員 それでは、WHOがそういう評価をした基礎になっているデータ、それをお持ちですか。
○松浦政府委員 WHOが評価した、そのWHOの書かれた文書というのはございますが、そのオリジナルなデータは、現在のところ持ち合わせておりません。
○古寺委員 そういう非科学的なやり方ではいけないのです。大事な問題ですよ。一億国民の生命と健康に関する問題ですよ。あなた、そういう姿勢でいいと思っていますか。こんなことじゃ、国民は怒りますよ。何をやっているのですか。
 それから、もう一つお聞きします。
 名城大学の花田教授の論文がございますね、これは調査会に諮問しますか。
○松浦政府委員 まず第一点でございますが、WHOは世界じゅうの専門家が集まりまして、そこでこれに関するデータのすべてを検討した上で結論を書いているわけでございまして、そのWHOの報告の中には、その各論文から引用してそういうデータのサマリーのようなもので書かれておりまして、その上で結論を出されておるわけでございますので、この一つ一つのもとの文献は、世界じゅうの専門家がここでごらんになってまとめられておりますので、これで十分ではなかろうかと思うわけでございます。
 それから第二に、名城大学の論文でございますが、これも手に入る範囲はお諮りするつもりをいたしております。ただ、言葉のあれでございますが、諮問いたしますのはOPPについて御諮問するわけで、あくまでも資料として御検討いただくというわけでございます。
○古寺委員 あなたは、もっと日本の学者を大事にしなければいけない。WHOに集まっているのは有名な学者だ、あなたは、日本の学者は信用がないようなことを言っているんですよ、新聞で。とんでもない話です。あなたは、こういう言い方をしていますよ。これは朝日新聞の記事に載っています。「花田教授のデータも調査会には合わせて提出するが、実験方法などに専門家は疑問を持っている」あなたのお考えでもないような言い方ではありますが、そういうことを私は新聞の記事で読んだ。日本の学者だってりっぱですよ。一生懸命やっていらっしゃるのです。なぜそういう貴重な日本の学者の実験のデータをもっと尊重しないのか。なぜそんなWHOの古くさい、用いられないような資料と、業者が自分の利益のために委託した、しかも非常に期間の短い−これはまだまだ問題がある。少なくとも六世代にわたる研究は必要だと私は思う。半年足らずの研究で慢性の毒性なんかわかりませんよ。そういう資料によって今回調査会に諮問したという厚生大臣の姿勢、これは一億国民の生命や健康を本当に心配してやった厚生大臣の諮問ではないと私は思うのです。
 それからもう一つ大事なことは、これが許可になれば外国からどんどんサクランボやリンゴも入ってくる。しかも、このOPPが許可になれば、新鮮なものでなくても鮮度が落ちませんから長持ちしますから、そういう栄養価のなくなるようなものも入ってくる。そういう危険性がある。こういう諮問というものは私どうも納得できない。もう一遍考え直してみたらどうですか、大臣。
○松浦政府委員 先ほどWHOの評価だけでというお話でございましたが、これは当然食品衛生調査会にかかるわけでございまして、食品衛生調査会の専門家は、こういうことの専門家でございますので、私ども通常いままでの経験では、オリジナルなデータは大体どの先生も目を通しておられるということでございますので、それはあと先生方の御判断になろうかと思います。
 それから、名城大学でございますが、いま先生朝日新聞とおっしゃいましたけれども、私、朝日新聞にそのようなことを言ったことはございませんので、あるいはと思いますが……。
 それから第三に、これもOPPの必要性になるわけでございますが、私どもいろいろ植物関係の方に聞きますと、OPPがないと非常に腐るので青いうちにとってしまう、青いうちにとってあれするので、非常に内容がよく熟し切らないので味も悪いし水気も少ない、こんなようなことを聞いております。むしろOPPを使いますと、熟してからこれがとれるということで、かえって非常にいい柑橘類が手に入るというふうに聞いております。
○古寺委員 アメリカのFDAというのがありますね、そこからOPPに関して資料を求めたことがございますか。
○松浦政府委員 ございません。
○古寺委員 そういうアメリカの事情も十分に調査もしない、しかも、こういう簡単なデータだけで安全性を確認しようということば、許されるべきことじゃないですよ。あなたは局長さんという立場ですから、大臣がやれと言うと、はいとそのとおり従わざるを得ないでしょうが、あなたも科学者であるならば、大臣は科学者じゃないんだから、さっきから何にも知らないと言っているんだから、確かに経理とか農業は詳しいかもわからないけれども、こういう人命に関する一番大事なことを知らない、それをあなたが抑えなければいけない。それがいままでの厚生省の伝統ですよ。大臣は相当気が強いから、その威光に恐れをなしてこういうような諮問をなさったかもわかりませんが、これは断固撤回すべきだと私は思う。やり直しです。
 そこで、時間がございませんので、次は農林省にお尋ねしたいと思いますけれども、アメリカではOPPは食品添加物ではなくて農薬として許可されているんですね。今回農薬を乗り越えた食品添加物として厚生省が許可するということになれば、農林省としても今度は当然許可するのですか、どうですか。
○小島説明員 アメリカの場合は、この種の物質についての取り扱いが日本とは異なっておりまして、果実防腐剤もペスティサイドという範疇で扱われている、わが国の場合には、主として農作物に散布使用されるものを農薬として扱っておりますので、現在のところは、わが国の農業者が農薬として使うという要請に接したことはございません。もしそういうものが出てまいりましたならば、その時点で農薬取締法に基づいて検討するということになろうと思います。
○古寺委員 たとえばジフェニルは日本のミカンには許可されていないのです。ところが外国から輸入するものはどんどん使っているわけです。これはどういうわけですか。
○小島説明員 現在認められておりますジフェニルは、日本におきましてもオレンジに関する限りは使うことができる、温州ミカンなんかは対象とされていない、こういう扱いでございます。
○古寺委員 こういう果物までも差別する姿勢はいけないと思う。漁業の問題ではソ連にぺこぺこ頭を下げなければならない、果物の問題や食糧の問題は何でもアメリカの言いなりにならなければならない、こういう農林行政あるいは厚生行政では一体日本はどうなる。食糧の大部分を外国から輸入しなければならない、小麦にしましても大豆にしましてもいろいろな畜産飼料にしましても乳製品にしましてもどんどん輸入されて、日本の農業生産者はいま大変な危機に直面しているのです。いまOPPが農林大臣の候補と言われた渡辺厚生大臣の手によって許可になりますと、日本じゅうの農民が怒るのです。リンゴも入ってきますよ。
 アメリカのリンゴの生産とサクランボの生産は日本の何倍でございますか。
○小島説明員 サクランボに関して申しますと、大体六、七倍というところでございます。リンゴはただいま取り調べましてお答え申し上げます。
○古寺委員 リンゴなんかすごいんですから。後でお調べになればわかります。
 そこで、こういうOPPが解禁になって、リンゴがどんどん入ってくる、サクランボがどんどん入ってくる、オレンジも入る、レモンも入る、グレープフルーツも入る、そうなったら、日本のミカンをつくっている方々、リンゴやサクランボをつくっている方々、そういう生産者に対してどういう救済方法を現在農林省としてお考えになっているか、農林省とそれから農業に関して専門家であるといわれる渡辺厚生大臣からお伺いして、きょうの質問を終わります。
○小島説明員 OPPに関して申し上げますと、問題になりました五十年春から夏にかけましてアメリカからの柑橘類の輸入は停滞をいたしましたが、その後わが国でも使用が認められておりますジフェニルを使いまして、五十一年には大体従来ペースの輸入水準に戻ってきております。今回の厚生省の諮問によりまして結果が使用を認められるということになりました場合に、特にこのことによって輸入が激増する等何らかの国内的な影響をもたらすというふうな事態は私どもは想定しておりません。
 また、サクランボの問題についてもお話がございましたが、サクランボの問題は、これまた御承知のように、現在は植物防疫法上の問題で、アメリカからは輸入ができない仕組みでございます。これもアメリカ側の改善という問題の検討が進められておりますが、仮にそういう問題が他日解決するという事態になりました場合に、国内に対する輸入による影響をどうやって緩和するかという問題につきましては、あらゆる手段を講じて環境の激変を緩和していくというふうな努力をする所存でございます。
○渡辺国務大臣 OPPをどうするか、これからの話でございますが、これが添加物として防腐剤として利用されたからといって、そうたくさん入ってくるというようには思えないのです。それから、世界じゅうほとんど大部分の国でOPPは使っております。アメリカのグレープフルーツ等はヨーロッパにも出ておりますし、世界じゅう使っておるのです。世界じゅう使っておるものを、何で日本は認めないのだ、一種の貿易制限ではないのかというような問題等がかねてからございまして、それで、これはかねてから騒ぎになっておるわけなんですよ。むしろ日本の方が抑えておるのがおかしいじゃないかという議論。ここで理由も余りはっきりしないで抑えておくということになると、しかもオレンジなんというのは輸入枠をぎゅうっと抑えてあるわけですから、オレンジの輸入枠をもっと広げろとか、何で貿易自由化をやらないのだというようなことに議論がふっかかっていかないという保証はどこにもない。ですから、私は、大所高所から見ても、そうぎすぎすけんかをしたって仕方がないと思っておるのです。
 しかしながら、毒性の問題については、世界じゆうで認めておるからといっても、それは念には念を入れなければならぬ。名大の何という先生だったかな――ああ花田先生、この花田先生もりっぱな先生だと思います。思いますが、食品調査会に名を連ねておる先生方も決してりっぱでないとは言えない。りっぱな先生ですから、そういう先生の意見を聞いた上で最終的に決めたい、こういうように思っております。
○古寺委員 どうもあなたと私、話が食い違っているのです。あなたは農薬の話をしている。アメリカとかEC諸国では、さっきペスティサイドという話が出ましたけれども、外国では農薬として許可しているんですよ。あなたがいま調査会に諮問されるのは、食品添加物として諮問なさるのです。それは調査会のメンバーは確かに優秀な人だとお考えでしょう、あなたが任命なさるのだから。当然の話です。だから、あなたの答弁は農林大臣の答弁になったりして、厚生大臣の本当の答弁にはまだなっておらぬのですよ。たとえば名城大学の何先生だなんて言う、失礼な話です。自分が任命した人はみんなりっぱで、あとの先生は名前も知らない。そういう態度、姿勢を改めて、一億国民の生命、健康を守る、それからまた、そういう食糧外交においても、これは今度はあなたの専門でございますが、圧力に負けないように、日本の生産者も守る、消費者も守る、国民を守る、そういう日本の国益の立場に立って、食品行政においても今後そういう姿勢で進めていただきたいということを特にあなたにきょうはお願いをして、終わりたいと思います。答弁は結構です。
○橋本委員長 次に、平石磨作太郎君。
○平石委員 まず、厚生大臣にお聞きをいたしますが、昨日厚生省は、今度のスモン訴訟について和解の席にはべる、着くということの決定がなされたようですが、大臣は、和解の席に着くことにした、そして今後とも誠意を持って本件の解決に当たりたい、こう述べておられます。
    〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
やはり和解の席に着くということは、和解案を基礎として着くのだ、こう理解をするわけですが、この和解案の中にある国の責任というものを感じて和解の席に着くのか、そしてこの和解案に従うという前向きの姿勢でもって席に着くのか、お伺いをしたい。
○渡辺国務大臣 いまスモン問題は裁判になっておるわけです。裁判になっておりますから、国は訴えられておるわけです。しかし国としては、向こうの原告の言うことは当を得てないという主張をずっとやってきているわけですね。ですから、一つの方法としては、裁判でひとつ白黒つけてもらおう、それで国がどうしても不服なら控訴もする、上告もする、これは法治国家として当然の一つの行き方なんです。しかし現実の問題として、もう長年月になるし、これからまた、延々と五年裁判になるのか十年裁判になるのか、そういうようなことをやっていくということは、法律問題は別としても、政治の世界でただ裁判だけでやるということは、どうも私としては腑に落ちない。――私ですよ、厚生大臣の。腑に落ちないと考えておったところに、御承知のような和解の提案があったわけです。
 ですから、政府内部においても、それはいろいろな議論がございます。ございますが、せっかくの裁判所からの御提案でございますから、御提案のあったことをちゃんと胸の中に入れて、そうして和解のテーブルに着いて、自分たちの言うべきことも言い、向こうの言い分も聞いて、何とか――これは和解ですから、責任があるのか責任がないのか、これを言い出してくると、これはともかく民事上の責任はないと国ははっきり言っているわけですから、それなら裁判をやればいい話ですが、それでは身もふたもないではないかということなので、わかったようなわからないような話だけれども、和解とか示談とかいうことは、もともとわかったようなわからないようなことなんですよ。それをすっきりと、足して二で割ったように、法律で白と黒と割り切るのならば、はっきりしていいですよ。いいのだけれども、それではお互いにメンツにばかりこだわってがんばられたら、患者はかわいそうですからね、いつまでも時間がかかって。ですから、そこのところはこらえるべきはこらえて、しかし、ちゃんと譲らざるところは譲れないわけです。だから、そういうところで話がつかないか、まず話し合いに応じてみよう、こういうことになったのです。
○平石委員 いまのお話ではどうも十分にわからぬわけです。態度がわかりません。したがって、和解の席に着くという以上は、やはり国の責任というもの、これが自分の頭の中になければ、ただ、裁判所から着かぬかと言われたから、何の考えもなしに白紙でこれに臨む、これは厚生省としては余りにも無責任じゃないか、私はこういう気がしてならぬわけです。
 だから、裁判所の和解の提示についての所見という中にも「被告国は、「スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を起こしたものと判断される」というスモン調査研究協議会の見解に従うというのであり、」こういうことが裁判所側の和解案提示についての理由として挙がっておるわけです。
 だから国は、いままで重ねられてきた裁判の中で、そういったキノホルム剤の服用によって神経障害を起こしたと判断される研究協議会の見解に従うのだ、こういう話があったから、裁判所としてテーブルを構えたというのが、和解案を提示した裁判所の考え方じゃないかと思うのです。そうすると、やはり国としては、いま大臣がおっしゃったように、国の責任はないのだ、だが、長いことかかる、被害者の皆さんにも大変申しわけないからまあ話を聞いてみようじゃないか、こういうだけの、そういう姿勢だけでは私は和解は成立するとは思えない。やはり出ていく以上は、これはきょうの新聞報道ですけれども、「大臣は誠意を持って本件の解決に当たりたい」やはり誠意を持って和解成立ということを前提に置き、そしてその基礎となるものは、キノホルム剤が神経障害を起こした、そして国の薬務行政というものが野放しになっておったということの一つの基礎を持って臨むべきだと私は思うのです。もう一回ひとつお願いをいたしたいと思います。
○渡辺国務大臣 和解のテーブルに着くのに、裁判官の考えていることとあべこべのことを考えておって和解のテーブルに着くはずがないのです。裁判官が提案をしておるのですから、それと全然反対のことを考えておって和解のテーブルに着くはずは最初からないのです。しかし、裁判官の提案どおりということになるかどうか、これはわからないことなんです。こちらではみんな異論のある部分があるのですから、そういうことを細かく詰めておったのでは、裁判でやったらいいと、話はもとに戻ってしまうわけです。だから、そういうことは暗黙のうちに、ぎしぎしした形で着くのではなくて、お互いに話し合いで詰めよう、誠意を持ってやろう、まとまらないことを最初から考えてやるのではなくて、裁判所のごあっせんによってなるべくまとめる方向で努力していこうと思っておるわけです。
 ですから、これから先、具体的にこうだのああだのといろいろなことを質問されても、いまからテーブルに出て話をすることを、ここで全部先に私がしゃべっちゃっても……(「そんな答弁あるか」と呼ぶ者あり)いやいや、現実の問題としてそうでしょう。いろいろ細かい質問がこれから出ても、それに具体的に私がここで全部お答えをしてしまうというわけにはなかなかいかないのです。それは気持ちとしては、いろいろ私も仮定の問題についても考え方を申し上げてみたいけれども、いまからテーブルに着いて謙虚にお話をしようという段階で大臣がこうだああだと全部言っちゃったら、私が直接裁判所に行って話をするのじゃないんですからね、フリーハンドをその立場にある人に持たしておかなければ、和解なんというものは成立するはずがない、私はそう思っておるわけです。したがって、誠意を持ってそれはやります、こういうわけです。
○平石委員 私は、和解の内容についてここで論じてはおらぬのです。和解に臨むに当たっての基本的な姿勢というもの、どういう姿勢、態度で臨むかということを、ここで大臣にお聞きしておるわけですから、大臣が誠意を持って臨むのだ、こういう新聞発表にあるような態度で−また原告側もやはり問題はあると思うのです。法的責任についてもあくまでも判決を求めて、そして国の責任を明確にして、この問題について片をつけたい、こういう気持ちもありながら、やはりいままでの長い闘病の生活やらこれからの生活のことを考えたときに、涙をのんでこれに応ずるのだ、こう原告側も言うておるわけだ。
 だから私は、このことが成立をして、そして解決をするためには、その姿勢として誠意を持って――その誠意の根拠には、やはり国もこれだけ大きなことを起こしてしまった、因果関係があるかどうかの内容は私は言うてない、やはり医療行政として、そういったことができた国の責任というものを感じてこれに臨んでもらいたい、こういういわば要望になりますが、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。スモンについては、これで終わります。
 次に、災害援助資金についてひとつ大臣にお伺いをしたい。
 私は、高知県から来ておるわけですが、高知県は御案内のとおり、毎年台風被災に遭うわけです。五十年には五号台風でもって約六十五、六億の災害を受けました。そして五十一年は十七号台風という大きな台風で、やはりこれも三百億近い災害を受けている。全市がほとんど水浸しという状態を繰り返しておるわけです。そしてその個人災害に対して、国の方から援護資金、これの貸し付けをいただいた。これは大変ありがたいことですが、ちょうど昭和四十六年の高知市が台風十号の被災のときには、まだそういう制度が国になかった。そのために県と高知市で援護資金の貸し付けを行ったことがあるのです。
 そういう経験に基づいて国に取り上げてもらったということは大変ありがたいのですが、この事務の進捗において問題があるのです。というのは、高知市からこれだけ貸しました、それで、その負担区分としては、国が三分の二、県が三分の一、こういう負担区分で行われておりますが、これが余りにも国から来るお金が遅いがために、被災に遭った被災者はもうすぐ欲しい、家具什器一切が水浸しで全部捨てなければならぬ、こういう状態ですぐ貸してやらなければいかぬ、そのために市町村では銀行から借り込んで、いわば立てかえ払いという形で先に金を出す、そして国からのお金、県からのお金が大変遅くなる関係で金利がかかるということです。災害を受けて、個人災害はもちろんのことですが、公共被災についてももう物すごいものがある。そういう財政情勢のむずかしいさなかに、さらにこれに金利を打たなければならない。
 これは私、せっかくこれだけの制度ができておるのですから、国の方の仕事をもっと迅速にやってもらって、市町村にそういったむだ金、死に金の金利がかからないようにすべきだと思うのです。このことについて大臣に所見をお伺いしたい。
○曽根田政府委員 いまお尋ねの災害援護資金貸し付けの手続問題でございますが、これは実施主体が市町村になっておりますので、一応市町村としましては、個人の借り受け期間を、高知市の場合、災害のあった月の翌月から三カ月というふうに決めておりますので、都道府県が一応高知市負担、市町村負担の全額を貸し付ける、そして国がそれに対してさらに三分の二を貸し付けるということでございますから、都道府県を通じてそういう申請が参りませんと、国としては資金の交付ができないわけでございますが、高知市の場合、一応昨年までに三回にわたって貸し付けを終わっておりますし、四回目の貸し付けを近日中に交付決定する予定になっております。
 事務の迅速化については、できるだけ督励してまいっておるところでございますけれども、そのような手続面の制約もございますし、今回については、私どもとしては、これはやむを得ないのじゃないかと思います。
 なお金利の問題でございますけれども、何分この事業は、先ほど言いましたように、市町村の事業でございますから、借入金の利子負担を国が見るということは、この事業の性格からいって私はむずかしいのではないかというふうに考えております。
○平石委員 迅速にやっておる、また、これからもやりたい、こういうお話ですが、ちょっと参考までに申し上げますと、昨年の十七号台風のときに、十月から貸し始めて、そして十二月までに高知市が貸し付けたお金が十四億一千八百万です。そのお金が十二月に入り始めた。だから、三月おくれているわけです。それで、国から入ってきたお金というのが、十四億の中で五億六千二百万しか入ってきてない。残った八億五千六百万というのは、今年へ持ち越しておるわけです。そうすると、当初十月から貸し付けた貸付金に対する金利がかさんでくる、そういう状態になっておるわけです。それから、おととしの五号台風のときは、もっと遅く、明くる年の三月三十一日に入っております。こういう形でおととしはざっと一千二百万、それから十七号台風においては二千七百万の金利を負担しておるわけです。これは市町村の事務でございます、事業でございますと言うても、余りにも市町村に負担をかけ過ぎるのではないか。
 そういう立場で、地方財政法の十九条に「国の支出金は、その支出金を財源とする経費の支出時期に遅れないように、これを支出しなければならない。」とあるわけですが、これから考えても、金利は負担してもらわなければいかぬと私は思うのです、こういう結果になっておるんだから。その点をお伺いしたいのです。
○曽根田政府委員 再度のお尋ねでございますが、何分事業の実施主体が市町村で、市町村が条例に基づいて実施する事業でございますので、国が金利まで負担するということは、現行制度のたてまえからは困難であるというふうに私どもは考えております。
○平石委員 市町村が行う仕事だとおっしゃるけれども、災害救助法の適用は県知事が適用しているわけです。そうすると、国からやはりこれに対する助成その他がなされていくわけですが、十八条の「国の負担金」これは貸付金ですけれども、「負担金、補助金等の地方公共団体に対する支出金」この貸付金の場合も、この十八条の「補助金等」という中に入っておる。
    〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕
だから貸付金で、事業主体は市町村だから国には関係ないとおっしゃるけれども、この「補助金等」の中に貸付金が入っておる。そしてこれの根拠となっていくものは「国がその一部を負担する災害に係る事務に要する経費」これは地方財政法の十条ですけれども、「地方公共団体又は地方公共団体の機関が実施しなければならない法律又は政令で定める災害に係る事務で、地方税法又は地方交付税法によってはその財政需要に適合した財源を得ることが困難なものを行うために要する左の各号の一に掲げる経費については、国が、その経費の一部を負担する。」こうなっておる。そうすると、その各号に掲げる仕事の中に「災害救助事業に要する経費」こうなっている、だから国は全く関係ない、こういうことはないのです。そして「補助金等」の中に貸付金は入っておる。だから、貸付金を早く出してもらわないとこういう結果が出てくる。
 私は、これを根拠にもう一回、金利負担についてできるかできぬかお伺いしたい。
○曽根田政府委員 地方財政法の趣旨はよく承知しておりますが、この援護資金貸付事業は、直接的には災害救助の事業ではございませんで、先ほど申し上げましたように、市町村が条例に基づいて行う市町村の固有事務でございますから、これに対する国の貸付原資のおくれに伴う金利負担、これを当然に国が持つということは解釈上むずかしいのではないか。しかしながら、事柄はできるだけ迅速に国が原資の貸し付けを都道府県、市町村に対して行うということでございますから、この点につきましては、今後ともできるだけ早く貸し付けができるように努力してまいりたいというふうに考えております。
○平石委員 こういった根拠法例もあります。したがって、国の方もそういう責任を感じた一つの事務のとり方をしてほしい。そしてそういった中で、約四千万、五千万近い金利負担というのは市町村は本当に困るのです。だから今後、災害があってはなりませんけれども、災害が来てこういう事業が出てきた場合には、もっともっと迅速にや
 ってほしい。
 それから、市町村の状況を申しますと、貸し付けの件数、金額がおよそ推定できる。それはもう事前に報告してある。そして貸し付けが開始せられたら、きょう何件貸して何ぼ貸しましたということが毎日報告されているのです。その都度報告されている。そしてどれくらいのお金を準備願いたいということをもあらかじめ推定値でもって言うてあるのです。だから、それだけにしてやって三カ月おくれるというのですから、もっと考えてもらわなければいかぬ。最後の詰めまではいきませんが、時間の関係もございますので要望しておきます。
 それから、きょうは大臣の所信に対する質問だということで、私も、大臣の取り組む姿勢についてこれからお伺いをしてみたいと思うのです。
 私、大臣の所信を聞いてみて率直に感じたことを申し上げますと、失礼でございますけれども、失望を感じたということです。いま福祉が非常に困難な情勢の中で、大臣の所信はいわば全く事務的です。私は、初めて国政に参加をしたわけですが、もっと大臣の所信の表明というものは味があるものだ、こう思っておった。全く味がありません。そして所信の中で、大臣は国民に向かって「福祉の心」を訴えておられる。「福祉の心」もちろん大臣のお気持ちと一緒ですけれども、私は、大臣は一つのビジョンを示すべきでなかったか、こう考えるわけです。このビジョンがない。だから、味が一つも出てこぬのです。全く事務的に終わっておる。だから、苦しいなら苦しいなりに国民に向かって一つ訴えるものがあってほしかった。そしてこれから先の将来を展望したときに、このことを目指して国はいくのだということを、私は国民の心に訴えてほしかったと思うのです。
 そういう意味で、いまの置かれた現況というものは、まことに厳しいものがあるわけですが、これから日本の社会保障というもの、福祉というものをどう再構築していくか、どの方向に持っていくのか、私は、これがいま問われておる時期じゃないかと思うのです。そういうことで、今後どのように再構築をするのか。ただお金がありません、困ったというだけでは、私は、これからの展望は出てこぬと思うのです。
 そういう意味で、大臣がこれから将来の一つの方向を示し、ビジョンを示して、それに国民のコンセンサスを求めていく。いまのままではコンセンサスの求めもできません。大臣がこれから取り組まれる姿勢についてお伺いをしたい。
○渡辺国務大臣 いろいろ御批判があるところでございますが、私は、御承知のとおり、予算編成直前に大臣になったわけでございますが、福祉行政を初め社会保障の問題については、かねていろいろ考えておったこともございます。しかしながら、何といったって厚生省というのは大きな役所でありまして、五日、十日で方向が変わる筋合いのものでもない。ところが医療保険の問題にしても、皆さんからしょっちゅうおしかりを受ける。医療費がどんどんかさむではないか、薬剤費が多過ぎるではないか、いろいろなことを言われておる。しかし、負担がふえるのも困るということになってくると、皆さんの意見をみんな聞いて、これは一遍考え直していかなければいかぬ。どういう形が一番いいのか。「重点的、効率的、かつきめ細かい配慮」という言葉であらわしておりますが、どういうのがいいのか。老人医療の問題等についても、調査会とか審議会とか懇談会とか、いろいろございますが、そういうところでことしの秋ごろまでには何とか方向を出していきたい。
 それから、年金の問題についても同様でございます。時間がないようですから、ここで長々とは申し上げませんけれども、真に恵まれない人を、本当にみんなで連帯の精神で救っていこうということを基本にしていくことがいいのじゃないかという気がするわけです。
 それと同時に、物、金だけでなくて、やはり心の問題も大きなことでございますから、老人にしても、ただ年金をよけいくれたら老人は幸福だということにはならないので、本当の意味の福祉社会というものは、もっと隣人愛のある社会でなければいかぬのじゃないかというようなことを申し上げたわけであります。
 いずれまた、時間があるときにでも、ゆっくり御懇談をさしてもらいたい、さように思っています。
○平石委員 どうも十分にわかりませんが、もちろん厚生行政あるいは社会保障の中にいろいろな矛盾が出ておる、このことについて、大臣ちょっと触れられたのですけれども、いま福祉について、いわゆる福祉の見直し論あるいはばらつき論が言われる。このことを考えたときに、あの例の福祉元年、当時の佐藤首相が「福祉なくして成長なし」と言われた。これは名言です。そういう形で福祉元年が始まった。そしてそれから五年、いろいろとその間変遷があり、変動があったとしても、いま福祉というものを見直そうと、こう言う。その当時は、高度成長に支えられて、二〇%から三〇%台でいわゆる厚生費が伸びてきておった。ところが、いま見直しだとかばらつきだとか言われて、だんだんと狭められる状態になってきておるわけです。国のいまの経済情勢がこうだとおっしゃれば、それまででありますけれども、私がさっき申し上げた一つのビジョンを出しなさいというのは、そのことに対してもしていかなければいかぬのじゃないかということです。
 今年の予算を見ましても、二十八兆五千億、そして福田首相は、今年は経済の年だと言って福祉を忘れてしまい出した。景気の浮揚、また、これを賄うところの歳入においては、いわゆる三割の借金財政、このことはわかります。景気を浮揚するためには、公共事業を伸ばすべきだといって二一・四%伸ばしている。いわば社会保障の費用というものが、公共事業等三割の借金のはさみ打ちにあって、今年も一七・七%という伸びではありますけれども、だんだんと狭められてきた。もっと勇断を持って福祉というものを日本の社会、政治の中に位置づけていかなければいかぬのじゃないか。その期待が来ておる。佐藤総理が「福祉なくして成長なし」と言われたあの当時、どうにか社会の中に、政治の中に福祉というものが位置づけられようとしておったわけです。そういうことを考えたときに、このばらつき論、見直し論を大臣はどう考えておられるか、所見を伺いたい。
○渡辺国務大臣 佐藤総理が言った「福祉なくして成長なし」という意味は、物質的にただどんどん世の中が栄えればいいということじゃない。やはり経済的に豊かになったら福祉も充実をしていかなければ、それは本当の成長じゃないじゃないかという意味だと私は思うのです。
 しかしながら、現実の問題としては、成長がなければなかなか充実した福祉ができなかったことも、裏返しに言うと事実でございまして、昭和四十八年から五十二年までの五年間に厚生省の予算は二・七倍になったんですよ。昭和四十八年には二兆円であった。社会保障費と一口に言いますが、大部分が厚生省所管予算です。それがたった五年間に三倍近くなったということは、ほかの省と比べてみれば一番よいことで、どこの省で、五年間に予算が三倍近くなった省があるか。これはどこにもないですよ。いまや厚生省の予算は五兆五千九百数億円、社会保障費も五兆六千億円、それはかなりのところまで来た。この調子でこれからも予算をとりたいと私は思っておる。一生懸命とるつもりでおる。しかし、現実の問題としては、自然増収がなかったり税金がどんどん上がってこなかったりということになれば、それは本当にとれるのかねということになる。私はとる気でがんばりますよ。ことしだって、社労の委員長を初めみんな一生懸命寝ずにやってもらった。それでともかく厚生省の予算は一八%という伸び率になったわけですよ。ほかのところは十数%でしょう。国の予算の伸びも、公債の償還費や地方財政の臨時交付金を除けば一三・六%です、行政費の伸びは。厚生省は一八%伸びておるのです。ですから、そういう意味においては、景気の刺激という大きな柱のほかに、やはり社会保障を極力守っていくという最大限の努力はなされておる、こういうふうに思っていただきたいのです。
 ばらつき論、見直し論というのは、金がうんとあれば、それは幾らでもできますよ。現実の問題として高度経済成長から安定成長へということになると、税収の問題や何かも大体計算をされる。そういう中で、これから限りあるお金の中で本当に社会のためになる金をどういうふうに有効に使っていくかという問題になると、いままでの惰性でだけやるのがいいのか、もう少しお互いに研究をして、本当に恵まれない人に温かい手を差し伸べられるような方法をとるようにするのがいいか、病気の問題でも給付の問題でも、いままでどおりがいいのか、少し内容を変えたらいいのか、そういうことはひとつお互いに――これは自民党だけで考えてごり押しするといったって、数がなくてだめなんですからね。ですから、皆さんとよく対話をして、相談をしてやっていきたい。
 こういうことですから、ばらつき、見直しという問題は、別にばらつきだからどこを切っちゃうとかなんとかというのではなくて、やはりむだがあったらむだを省いていく、それでお金ももっと有効に使っていく、予算そのものもふやすように最大限の努力をする、そういうことを申し上げておるわけです。
○平石委員 いま大臣が、予算の中で厚生費が伸びてきた、いわゆる予算の中に占める厚生費というものがだんだんとここ四、五年のうち伸びてきたと言われたが、これは私もそうだと思う。
 それなら、いままでだれが福祉の牽引車、いわゆる機関車であったかということ、これも私は今後の展望を考える上においては一つの反省として考えていかなければいかぬじゃないか、こう思うのです。それはもちろん皆様の力もありました。だが、いままでの政治を考えてみますと、高度経済成長一本やりだった。世の中というものは、私は、やはり総合的なものが世の中だ。こう理解をしておるわけです。そうすると、いままで高度成長の一本やりで走ってきた、これを表の政治と言えば表の政治。そうしたらその裏で、人口が都市集中になってしまった、そして都市の中における生活環境が悪化してきた、田舎の方は過疎になって、ひとり暮らしの老人がどんどん取り残されてしまっている、そして公害が出てくるというように、いろんな形においていままでの高度成長一本やりの行き方というものが大きなひずみを出して、社会不安にまでなってきた。そして一方で、国民の生活を守るいわば福祉というものが余りにもおろそかになっておった。そのために住民は、もう国に頼んでもどうにもならぬ、みずからかち取っていかなければいかぬという住民パワーになったと思うのです。だから、あちこちに住民の闘争やらいろいろな福祉を求める闘いというものが出てきた。もうだれも頼れない、みずから守らなければいかぬ、こういう住民パワーがぐうっと出てきたということです。
 そうすると、市町村あるいは地方団体は、住民の福祉を守り生活を守るということが地方自治の一つの本旨だ、そうなってくると、国が高度工業国家を目指していくといういわゆる国家目的と、そして地方団体が住民の福祉を守っていくという一つの目的、ここに大きなギャップが出てきた。そして後ろからは、住民パワーでもってみずからかち取っていくという一つの風潮が起こって、このために地方団体においては、それぞれの地域に応じて先行的にあるいは先駆的に、住民の生活を守るためにいろいろな形において福祉の施策がなされてきた。私は、いままでの経過から言うてそうだと思う。それが児童福祉手当になりあるいは老人の医療の無料化になり、そしてその上に国の行政というものが、全国統一的な形において行おうと乗っかってきたわけです。
 だから、いままでの福祉の牽引車というのは、うしろ住民であり、地方団体であったと言っても差し支えないと私は思う。そういう形で進んできた日本の福祉というもの、これが国家予算の中にも大きく累増して上がってきたわけです。こういう反省がなされ、そしてこのことが、先行的にそれぞれの地域における特殊事情に応じてなされたことを、ばらつきと言うのです。それをばらまきだと言って、ただばらまき論で国民を説得することはできない。私は、むしろばらまきよりもばらつきだと思う。だから、日本の社会保障の制度が整合性、統一性がなく、社会保障が秩序ある政治、社会の中に体系として打ち立てられるというようなことがなく、国が高度成長のみを考えておったから、いわばばらまきでなしにばらつきになってしまった。私は、このばらつきを直していかなければいかぬときに来ているのではないかと思うのです。
 厚生行政を預かる大臣としては、こういったばらつきを、これから整合性のあるものに、そして景気の変動でいろいろ影響は出てまいりますけれども、やはり社会保障というのは、安定的に確定的に、将来を見通してある程度安心のできる、いわば不動のものにしていかなければなりません。景気が悪かったからがたんと落ちる、こういうことでは社会保障の秩序ある発展は望めない。このばらつきになったいまの日本のあり方というものは、そういった背景と経過を考えたときに、大変言葉は悪いのですけれども、厚生行政の責任だ、だから、ここを直していかなければいかぬ時期にいま来ておる、このことについて大臣の所見をお伺いしたい。
○渡辺国務大臣 高邁な御議論で、ばらつきとばらまき、このばらつきというのは偏っているという意味かどうかよくわかりませんが、いずれにしてもいろいろな矛盾点は出ていると思います。ですから、それは皆さん方の御意見も聞いて、それで見直すべきところは見直していきたい、さように思っております。
○平石委員 余りにもそっけないのですが、やはりいまそういう時期に来ておる。だから、健保の問題にしても老人医療の問題にしても、この所信の中では五十二年度も無料化を継続する予定だということを書いてあるが、こんなに老人医療というものが単年度限りで――来年も無料化をやります、総理大臣のツルの一声、こんな短期的な考え方でこの所信に出てくるというようなことでは私は困ると思うのです。いま申し上げた点はその点なんです。その都度その都度出てくるというようなことではどうにもなりません。だから、いまのばらまき論だとか見直し論だとかいったようなことは、前段申し上げたような経過から、厚生行政を預かる者としては反省をしていただきたい。
 こういう状態の中で、今度の予算編成では、健康保険の問題にしましても、ああいう形で財源対策のみを考えておるというようなことで、いま私が総括で申し上げたような矛盾が出てきているわけです。厚生行政の中に、いろいろな制度の中に矛盾が噴出してき出した、これを何とか手当を、何とか手当をということだけで将来展望もない、いわばその日暮らしの行政に終わっておる。健康保険の問題にしても、また次回に論じますけれども、いまの置かれた立場は、そういう政府内部におけるところの今度の厚生予算の編成過程においての財政審議会あたりの意見書、ああいったようなものが主導型になって、厚生行政が伸びようとするのに対する外圧というか、政府内部においてすらそういった外圧がかかってくる。私は、これにも対抗しなければならぬと思う。後ろからの住民パワーでもって福祉の要求がどんと出てくる、そういう中で厚生省はますます窒息状態あるいは失速の状態に入っておるのじゃないかということで私は心配なんです。
 その意味で、今後厚生省がいわゆる、ミニマム、これだけのものは最低限やってまいりますぞ、こういう一つのビジョンが、ぴしっとしたものがあれば別ですが、金がないからとかあるいは見直し論だとかいったようなことだけで国民の説得はできません。一つのビジョンを立て、ミニマムをつくって、これだけのことはやるのだという一つの姿勢がないから外圧に押されるのです。そういう意味から、一つのミニマムをつくって、最低保障はこれだけのことはします、だから皆さん、これは皆さんの負担ですよということでなくてはいけない。保険にしてもそうです。全部国に見ろと言っても、これはできることじゃない。だから、個人が負担すべきものは何なのか、保険が負担すべきものば何なのか、こういうものをぴしっと立てていく。いままでお金があるから個人が見るべきものも保険が見よりました、しかし金がのうなりましたから、これはもうやめます、ほうり出します、こんなような状態ではどうにもならぬ。
 だから、国はやはり一つのミニマムをつくって、これだけはもう動かぬ、不動のものです、これを目指して皆さん一緒に苦労しましょう、これを示さぬ限り説得はできませんよ、すべての問題について。だから、政府内部で予算を取る場合にも、私は、そのことを厚生大臣に望みたいのですが、どうですか。
○渡辺国務大臣 公明党の福祉関係の書物の中にも、同じようなことが書いてございまして、私も読ましてもらって大変参考になっておるわけです。最低基準の問題については、それぞれの部門でやってはおりますが、それをどういうふうに仕組んでいくかということも一つの考え方でございますから、医療や保険やその他の問題を一遍再検討するときには一つの御参考にさせてもらいたい、かように考えます。
○平石委員 それでは、もう最後の要望です。
 いま申し上げたように、厚生省自身の中に持つ制度に矛盾が噴出しているということ、もうそこへ来ておるということ、そして外圧、国民を説得さす、この中でひとつ将来の展望において福祉のミニマムというものをつくっていただいて、そこで皆さん苦労しましょうというものを示すようにお願いしたい。これで終わります。ありがとうございました。
○橋本委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。
    午後零時二十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
○橋本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 厚生関係の基本施策に関する件について質疑を続行いたします。西田八郎君。
○西田(八)委員 私は大臣の所信表明について質問をするわけでありますが、その前に、きのう政府が今度のスモン訴訟に参加するという態度を決められた。これに関連をして、私は、これからの訴訟あるいは和解がどう発展するか、これからの課題として政府の善処方を要望しておきたいと思います。
 それに関連をして、薬というのは次から次へと新しいものが発明、発見をされていくのであります。したがって、その薬を使って、結果どうなるかということについては、きわめて長い臨床実験を必要とするわけで、これは本当にむずかしい問題ではなかろうかと思うのです。当時、新薬が出ると、その新薬に対する期待度が非常に高い。また新薬を使うことによって一時的に症状がよくなるわけですね。後にそうしたものが出てくるとはだれしも予期しないだろう。ところがそうした副次作用が出てくる、二次的なものが出てくるというようなことになってくると、私はそれは非常にむずかしい問題ではなかろうかと思うのです。そういう意味で、今後こうしたスモン病のような問題が起こらないとはだれも保証できないわけでありますが、そうした薬事といいますか、医薬の使用その他のあり方について、一体基本的にどういうふうに考えておられるか。このスモンに対処されるのと同時に、今後の対策というのはきわめて重要だと思うのですが、そういう面についてどう考えておられるか、まずお伺いをいたしたいと思います。
○渡辺国務大臣 御承知のとおり、薬の行政は非常にむずかしいところがございます。しかし、安全を第一としなければなりませんから、厚生省としては、まず、新しい薬の認可に当たっては厳格な審査を行うということが一つです。それから、すでに許可されておるものでありましても、昭和四十二年以前に許可されておるものについてはもう一遍洗い直しといいますか、再審査というようなことで、その効能とかその他の見直しをやる、こういうふうなことを実はやっておるわけでございます。用法その他についてもなるべく詳しく記入をさせるというようなことをやっております。
 しかし、しょせん薬というものはある意味では毒でありまして、食品と違うわけですから、いろいろな検査はやっておりましても、副作用が皆無になるということは恐らく不可能に近いだろうと存じます。したがいまして、いろいろな検査でも、仮に千人なら千人の臨床実験をやっても、五千人に一人の異常体質者があるとかなんとかという場合には、ペニシリンショックで一万人に一・人、打っただけでばたっとひっくり返る人があるわけですが、現実には何万人も臨床実験をすることはできない。したがって、事前にそういうことを発見するように努めますが、薬についての被害が出たような場合には何らかの救済策というものを考えていかなければならぬ、こういうことで、いま厚生省においては、薬害、薬の副作用の救済対策という制度をこしらえるということにおいて鋭意勉強中でございます。
○西田(八)委員 大臣、鋭意勉強中だとおっしゃるけれども、これは非常に急を要する問題だと思うのですね。
 そこで、事務当局、薬務局長は来ておられますか。――どこまてどういうふうにして進んでおるのか、また実験段階等でのいわゆる安全性というのはどういうふうにして確認をしておられるか、ひとつ詳しくお伺いしたいと思います。
○上村政府委員 まず、救済制度でございますが、去年の六月まで二年間研究していただきました医薬品の副作用による被害者の救済制度研究会、こういうものがございます。これは法律家、医学者、薬学者、数人から成る研究会でございますが、その研究会から昨年の六月にリポートをまとめて出していただきまして、それをもとにいたしまして鋭意準備作業をしておるわけでございます。
 このリポートでは、医薬品の副作用で亡くなったりあるいは重い健康被害を受けた人の中で民事責任の追及できない、そういう人に対しまして救済に必要ないろいろな給付をするということでございます。そして、給付に必要な費用というものは医薬品の製造業者等に負担させる。そして被害の認定なり給付なり費用の徴収を行うために基金のようなものを設けてはどうかというふうに考えておるわけでございます。それで、五十二年度予算では、この関係の各種の調査費といたしまして約二千八百万円計上しております。
 それから、第二に御質問になりました承認前の問題でございますが、昭和四十二年十月に「医薬品の製造承認等に関する基本方針」というのを取りまとめまして、それに従いまして物理的あるいは化学的な各試験、それから前臨床試験と申します動物試験、それからその臨床試験につきましても第一相、第二相、第三相というふうに分けまして、それでデータをとり、その薬が有効であり、それから安全であるというふうなデータが出そろいましたところで薬事審議会にかけまして承認の手続をとるというふうに進めておるわけでございます。
○西田(八)委員 これは、これから科学の進歩の中で難病と言われる病気も治せるというような可能性も生まれてきたと言われておるときに、非常に大きな問題に発展していくような気がするわけです。何かに効けばそれにはまた別の面で害が出てくるというようなことは往々にして起こり得ることですから、ひとつ憤重に対処していただきたいと同時に、やはり早急にそうした被害者に対する救済措置を確立されるように要望をしておきたいと思います。ことに厚生省で認可された薬を使った医者あるいはつくっている会社、それからまたそれに従事している労働者、それらにまでこの問題の影響が及んでくるわけですから、そういうことになりますと、ちょっとの手落ちあるいは過ちが非常に大きな被害をもたらすということを考えなければなりません。最終的には非常にとうとい命を奪うことになるわけでありますから、そういう点についても十分慎重に対処していただきたいということを要望しておきたいと思います。
 次に、今度の所信の中で大臣が非常に大きく取り上げておられます救急医療の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 百億からの予算をもってことしはそれにひとつ真剣に取り組むのだということでありますが、実際にもう、最近一人病人が出ると大変困るという実情であります。また、消防署の救急車も、消防出動回数よりも救急出動回数の方がどこの自治体でもはるかに高いというのが実情ではなかろうかと思うわけですね。それほどに救急医療というのは今日的な課題であると同時に、社会的問題に発展しつつあるわけであります。こうした時期にこうした問題を取り上げられましたことは一応評価できるわけであります。しかし、果たしてこれでどこまでできるのか、非常に疑問が多いわけでありますが、これは大臣でなしに関係当局者から、いまお考えになっておる体系についてひとつお聞かせいただきたい。
○石丸政府委員 まず最初に、救急医療の現状について御説明申し上げたいと思います。
 いままで救急医療に対しまして国の方でとりました処置でございますが、まず第一次救急医療体制といたしまして、人口十万以上の都市に休日夜間急患センターの設置を進めてまいったところでございまして、昭和五十一年度末までに百七十三カ所の整備を終わる予定になっておるところでございます。さらに、これは地域医師会の協力を得てやっておる制度でございますが、いわゆる在宅当番医制度を実施いたしております。五十一年四月一日現在で五百五十五地区でこの在宅当番医制を実施いたしておるところでございますが、いずれにいたしましても、初期救急医療体制といたしまして休日夜間急患センターの設置並びにこの在宅当番医制を従来から実施してまいったところでございます。
 さらに、最近人口の老齢化現象が起きまして、国民の疾病構造がずいぶん変わってまいりました。やはり急病患者といたしまして脳卒中の患者さんあるいは心筋梗塞等の心臓病の患者さんが非常に多くなっておりまして、特にこういった患者さんに対しまして非常に高度の医療をもちまして応急処置をしなければならない、こういう実態になっておりますので、本年度より救命救急センターという新しい制度をつくりましてこの設置を図っておるところでございまして、本年の計画といたしまして、全国で四カ所の設置を計画いたしておるところでございます。
    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕
 それで今後の問題でございますが、昭和五十二年度に非常に大幅な予算増をお願いいたしておるところでございますが、その計画に基づきますと、第一次救急医療につきましては、先ほど御説明申し上げましたような休日夜間急患センター並びに在宅当番医制の拡充ということに努力いたすところでございまして、休日夜間急患センターにつきましては、従来人口十万以上の都市にこれを設置いたしておりましたのを五万以上の都市までに拡大をしていこう。それと同時に、在宅当番医制につきましては、従来医師会の協力でやっておったわけでございますが、もちろん今後も協力は必要でございますが、その拡充、定着化に努力いたす所存で、地区医師会等に対します助成を行ってまいりたいと考えております。
 さらに、こういった第一次救急を実施するためにも、一次救急医療機関で処置できないような重症患者をすぐ受け入れてくれる第二次救急医療機関が必要でございます。そういった第二次救急医療機関といたしまして、従来からございますいろんな病院を今後組織化してまいりたいと考えておるところでございまして、この組織化の方法といたしましては、地区の病院の、いわゆる輪番制とわれわれ言っておりますが、順番に当番を決めて担当していただく輪番制、それから開業医の諸先生方が共同で利用していただく共同利用型の病院の設置、あるいはA病院は内科、B病院は外科というふうに診療科を協定していただいて当番に当たっていただくという診療科協定、この三つの型で第二次救急医療機関の整備を図ってまいりたいと考えております。
 第三次救急医療といたしましては、先ほど申し上げました救命救急センターをさらに拡充強化してまいる所存でございます。それと、こういったそれぞれの医療機関とそれから患者を運びます消防との間の連絡が悪いとどうしても効率が落ちるものでございますので、そういった医療情報のシステムを完備していこう、こういった諸施策を五十二年度に新たに考えておるところでございます。
○西田(八)委員 在宅医制度あるいは病院の輪番制ですかを新しく設けられる。しかし、当直医の問題ですけれども、これは内科の人が外科にぶち当たってもしようがないし、小児科が脳神経の問題――これはお医者さんだから全然わからぬということはないだろうけれども、そのために初診時で誤るということもあるわけですね。ところが、これはお医者さんにしてみればその時間拘束されるわけですから非常に過重負担になってくるわけです。私の所在する市では早くからこの制度が定着してきているようですけれども、なおかつ不便が出ておる。それはいま言ったような科目別の当直医になっていないところに問題があるように思うのです。したがって、そうした問題まで突っ込んでいくべきではないかというのが私の質問の一つです。
 もう一つは、五万都市以上ということでありますが、これは予算委員会でも大臣にお伺いをし、突っ込んだ話にはなっていないわけですけれども、五万都市ということになればかなり医療設備もできておるわけですね。市民病院があったり、公立病院があったり、あるいは医者の数もかなり集中をして各科にわたって存在しておると思うのです。ところが困るのは、そうした五万都市から離れた一万、八千、五千といったようないわゆる人口の非常に少ない、しかも広範な地域にわたっておる郡、いわゆる行政区で言うならば郡ですね、郡なんかが一番困っておる問題ではなかろうか。しかも、隣の字まで行かなければお医者さんがおらぬというところもたくさんあるわけです。無医村はなくなってきたと思いますけれども、無医字というのはまだまだたくさんあるわけです。そういう点から考えますと、むしろこうしたところに重点を置いた体制というものをしくべきではなかろうかと思うのですが、そうしたいわゆる僻地といいますか――僻地には僻地医療というのがまた別にあるわけですが、僻地にもならないそういう郡部の部落での体制というものを将米どういうふうに考えていかれるのか。またそういう問題が起こったときどういう処理をされるつもりなのか、ひとつお聞かせを願いたい。
○石丸政府委員 まず第一の診療科の問題でございますが、これはまさに先生の御指摘のような事態をわれわれも心配いたしておるところでございます。医学というものがますます専門分化してまいりまして、そういった点では初期救急医療に対応するには非常に幅広い教育が今後必要になってまいろうかと思いますが、現時点におきましては、やはりその地区の医師会のいろんなお話し合いによりまして、いわゆる救急医療に対応できるように当番を決めていただいて、現在考えておりますのは、少なくとも内科系と外科系が組になってこれに対応していただくというようなことも考えておるわけでございます。そういった点、診療科の整備ということは今後の問題だと思いますが、現時点におきましては話し合いによる外科系、内科系の組み合わせによる対応ということを考えておるわけで、現実問題といたしまして急病患者というのは、腹が痛いとかあるいは熱が出たとか、そういった内科系の患者さんと、それから外傷等の外科系の患者さんが大部分でございまして、眼科とか耳鼻科の救急患者というのはわりに少ないのでございますので、そういった点、内科系、外科系を中心に現在整備を進めたいと考えております。それからもう一つは、そういった専門外の患者さんが来ました場合の対応の仕方でございますが、そういった当番に当たられた先生方に応急処置をお願いいたしまして、すぐ専門の医者のいる第二次病院にこれを収容できるようなシステムを今後整備してまいりたいと考えております。
 それから、こういった休日夜間急患センターを人口五万以上の都市に整備するということで、むしろもう少し人口希薄なところの方が必要ではないかということでございますが、それはもちろんそうでございまして、ただ現時点におきましてわれわれは当面の整備すべき目標として人口五万ということを考えておるわけでございまして、今後さらに拡大はしてまいりたいと思います。現時点におきまして五万以下の市町村におきましても、これが共同いたしまして一部事務組合をつくって五万以上の人口圏になれば、そこはわれわれといたしましては助成を行ってまいりたいと考えております。
○西田(八)委員 五万以上都市というのは、いわゆる一つの市なら市というものではなしに、人口を合計して五万になればということですか。
○石丸政府委員 そうでございます。
○西田(八)委員 それはぜひともひとつ早急に確立をしてもらいたい。そして当番医の問題についても、いま町村合わせて五万以上になればということですが、そういうところには本当にお医者さんが数が少ないと思う。そうすると当番医がしょっちゅう回ってくるということもあるわけですね。都会であれば一年に何回かというところもあるでしょう。ところがこういうところですと一カ月に二回ぐらい回ってくるということも考えられると思うわけです。そういうことになってくると非常に不公平が生じてまいりますし、またそれだけに当番に当たられるお医者さんも大変だと思うのですが、その辺のところはひとつ十分医師会と話し合いをして、対処をしてもらえるようにお願いをしておきたいと思います。
 次は二次救急ですけれども、これまた問題なんですね。せっかく運び込んでも当直の医者がおらなんだとか専門の医者がおらなんだということで、回り回ってということになります。したがって、先ほど説明のあった医療情報システム、これが非常に重要な問題であると私は思うのですが、一体どういう方法でどのようにされるのか。いわゆる各市町村別にそういうセンターを設けられて、それが県なら県に集約されるのか、あるいは都会で他の市と密接しているところは行政区域を離れて連絡ができるようにされるのか。非常にむずかしい問題ではあろうけれども、それを克服しないとこの救急医療体制というのは確立できないように私は思うのですが、その辺のところについてどうですか。
○石丸政府委員 搬送を担当している機関と医療を担当する機関との連絡の問題、特にこれは広域化が必要だと思います。ただいま先生御指摘のように、それぞれの市町村ではなかなか対応できないような状況になっておるわけでございまして、われわれといたしましてこの情報網は広域化を目途といたしておるところでございます。すなわち、従来の救急情報というものはそれぞれの市町村が単位となりました消防本部単位の情報でございまして、したがって、その消防本部の範囲内に適当な医療機関がない場合に、他の消防本部の区域内の医療機関の情報がわからない、こういう状況でいわゆるたらい回しということが従来間々起こっておったわけでございます。したがいまして、われわれといたしましてはこの情報の広域化を図りまして、県全体を一本にまとめるという方策で今後整備してまいる。すなわち、他の行政区域内の医療機関も利用できるような情報を集めて対応していきたいと考えておるところでございます。
○西田(八)委員 そうすると、その所管はどこになるのですか。いまは消防がやっていますね。そうすると県の保健課かどこかがそういう役割りを引き受ける。そうすると今度は他府県との関係がうまいこといくのかどうか。いままでの実績から言って非常にむずかしい問題がある。これは事例ですけれども、子供ががけから落ちた、そこで救急車が出てきて指定されたところへ運んだ。ところが、そこで手当てをしているけれども、どうも長引いて困るというので親がどこかほかの病院に移したいという希望が出てきた。ところがその患者を移そうとすれば、病院間の対立が出てきたということで不必要の間入院をしているということもあるし、応急手当てが早く済んでおればもっと早期に治癒もしただろうし、あるいは障害を残さずに済んだということも現実に起こっておるわけですね。ですから、この情報をうまく組み合わせるということが救急医療の中でも一番重要な問題のように私は思うのです。どこかで患者が発生した、さあどこの病院へほうり込むか、それまでにどこでどういう手当てをしておくかということが重要な問題のように思う。そうすると消防さんだけでは、そこまで消防さんにせいというのは無理なんで、元来火を消すことの訓練を受けておられる消防士に、人の命を救うことだからやって悪いことはないんだけれども、それだけの訓練までせいというのは、これまた消防署員にも非常な過重負担をかけることになる。せいぜい酸素吸入をしながら走っていくというのが関の山ではなかろうか。そうすると、どこまで運んだらいいという確たる情報があって初めて救われると思うのです。そうすると、それには別の意味での情報システム化ということが必要になってくるんじゃないかと思うわけですが、そういう面で、所轄と、だれが担当するのか、そしてそれはどの範囲までどういうふうに広げるのか、そしてまた運ぶ所要時間等も関係してくると思うのですが、そういう面について非常に細かいシステムというものを考えておられるのかどうか。
○石丸政府委員 救急医療システムは、それぞれの地域の実情に応じて今後相当細かく分類されるというふうにわれわれは考えておるところでございます。少なくとも医療情報に関する限り、現在のところ三つの方式を実は現実に動かしておるところでございまして、必ずしもどれが一番いいということは言えないので、それぞれの地域の実情に応じて考えていかざるを得ないと考えております。
 一つは、東京都が実施している方法でございますが、これは第一次的にはそれぞれの区の消防でございましょうか、消防署単位に集めまして、それを東京都消防庁の方でまた一括して集めて、東京都では消防がすべての情報を握っている、かような状況になっております。
 大阪府の事例で申し上げますと、第一次的にはそれぞれの消防本部単位ごとに消防署が情報を握っておりまして、それを県の衛生部がまた集めて一括して県全体の情報を握っている、このようなシステムになっております。
 それから、これは神奈川県のまだ実験中の事例でございますが、三浦半島の鎌倉、横須賀、三浦地区につきまして、それと横浜市の一部がこれに加盟しておりますが、これは県の衛生関係の部署が各病院と直接に情報をコンピューターで入れている、こういう方式をとっております。
 それぞれの地域でまたいろいろな方法があろうかと思いますが、そういった点、今後われわれはきめ細かな方法をとってまいりたい。輸送との関係等につきましてもやはり同じことが言えるというふうに考えておるところでございまして、五十二年度を初年度といたします三カ年計画で一応のシステムを整備しようということで、五十二年度から発足させるわけでございますが、いろいろ検討しております段階でまたいろいろ修正すべき点も出てこようかと思うわけでございまして、今後またそういった事例を踏まえながらさらに修正して、きめ細かい対策を講じてまいりたいと考えております。
○西田(八)委員 これは五十二年度からですか。
○石丸政府委員 五十二年度からでございます。
○西田(八)委員 本年からですね。――いま言われるような幾つかのふくそうしたシステムの中でも、ふくそうすればするほどよけいややこしくなって、連絡がとりにくいこともあろうと思うのです。しかし、これは非常に緊急を要する問題、人一人の命にかかわる問題でもありますので、せっかくこうして取り上げられた限り、早急に整備をされるように、特にいまの通信工学の発展してきた段階では、コンピューター等導入すれば、私はいともたやすいとは申しませんが、可及的速やかな時期にそういうものを完成できるのじゃなかろうか。
 ただ、そこに障害になるのは、消防署は消防庁の管轄、あるいは病院は厚生省の管轄、あるいは県の衛生部は県庁の管轄ということになって、いわゆるお役所のなわ張りの関係が出てきたりすると、そのことのために手間取ってしまうことが往々にしてあるわけです。したがって、これは人の命を救う、主として厚生関係の仕事でありますから、そこで厚生大臣、いろいろ仕事が多過ぎて大変でしょうけれども、いまどこの都市に行きましても、救急医療の問題はいま一番頭の痛い問題、特に二十万以下の都市におきましては市議会等で一番頭を痛めている−市長等もそうでありますが、一番頭を痛めている問題であろうと思うのです。それは一にかかって、どこにどういう病床があいておって、どこにどういう医者がおられるということが的確に把握できないことから来る問題だというふうに私は理解をしておるわけであります。この問題に対して、所信の中にもあるわけですから、大臣ひとつぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、改めて所信を聞いておきたいと思います。
○渡辺国務大臣 あなたと医務局長の間でいま応答がございましたが、私もそのとおりだと存じます。場所によっては、大阪とか桐生あたりは医師会が非常にうまくやっておるそうです。したがって、そういうものを参考にしながら、地域住民がうまく利用できなければだめですから、そういう点で地域住民の意見も聞いて、それでその地域地域に応じたものをつくっていくようにしたい、画一的なことを押しつけてみたってなかなかうまくいかぬですから。ですから、みんなが納得のいくような、地域に応じた形にしていきたい、かように思っております。
○西田(八)委員 その対応策は地域に応じた対応策でいいと思うんです。しかし、その対応策を立てる根幹になる情報はやはり一元化していかないと、幾つかの情報が入ってくるとかえってややこしくなってしまう。したがって、情報の一元化についてはぜひとも努力をしてもらいたいということを申し上げておるわけであります。ひとつ十分の処置を顧いたいと思います。
 次に、これは予算委員会で総務長官に聞いたことではありますが、総務長官も場違いでどうもはっきりした答弁をいただけなかったんですけれども、いまやはり婦人団体の間で問題になっているのが母性の保健の問題ですね。要するに世の中に男と女がいるわけですが、男性には父性というものがあって特権が長い間与えられてきて、家父長統治でやはり男性が中心になった社会がつくられてきた。しかし、戦後、それが間違いであるということから男女平等ということが言われ、一昨年の国際婦人年世界会議においては男女平等を目指してという決議も採択されておるわけですが、問題はやはり、婦人というのは、男、女という性を離れて、子供をはらみ、子供を産み、子供を育てるという母性としての特権を私は持っておると思うんです。ところがその母性がいま一番冷遇をされておるという問題でありますけれども、お産についても育児についても十分な保障が与えられていないのが現状ではなかろうか。そういうところから、母性に対する保障といいますか、国家的な保障が行われるようにしてほしいという要望が婦人団体の多くから出てきておるわけでありますが、これについて総務長官は、先日発表されました国際婦人年世界会議の諸決議に基づく国内行動計画の第一次五カ年計画の達成をする間にひとつ検討をしていきたいというような、非常に消極的な答弁しかなかったんです。そうした婦人問題を論議するところと言えば、これはもうやはり総理府がやっておられる婦人会議のところでやるのか、あるいは厚生省でやるのか、あるいは勤労婦人については労働省ということになるわけですが、一番幅広く扱っておられるのが厚生省のように思うわけで、ひとつ所管大臣としてこの問題について少しでもお考えになったことがあるかどうか、その辺のところを聞かしていただきたいと思うんですが。
○渡辺国務大臣 これは厚生省で全部やれと言われても、仕組みがそうなっておりませんから、やはりそれぞれの省で、雇用問題とか勤務条件とかそういうようなものは労働省で指導をしていく、われわれの方としては要するに母子の健康というような問題を中心にいろいろとやっておるわけでございます。委細についてはそれぞれ担当者から説明をさせます。
○石野政府委員 母子の保健の一番中心になりますのは、実は母子保健法という法律がございまして、これでかなりのものをやっているつもりでございます。ただやはり、妊産婦健診にいたしましても、それから乳幼児の健診にいたしましても、まだまだこれから十分手厚くしていかなければならないという面がございます。五十二年度でもかなりの予算を計上いたしましたけれども、私どもとしてはまだまだこれでは不十分だ、こういうふうに実は考えておりまして、せっかくのお話でございますので、さらに手厚い保護について検討さしていただきたいと思います。
○西田(八)委員 これも多分に労働省等との関係も出てくるわけですね。特に勤労婦人については婦人に関する、女子年少者に対する特別の規定が基準法上設けられております。それに基づいて、安全衛生法では有害事業であるとかあるいは安全衛生規則というものがきちっと規定が定められておるわけでありますが、そうしたものを総称してやはり全体的に、健康な体で健康な子供を産み、健康に育てるということが国の将米の宝を育てることにもなると思いますので、そういう意味では私は女性に対して特権を与えていいというふうに思うわけですが、同時に、それも母子福祉法とかあるいは母子保健法であるとか、あるいは労働基準法の中の一部であるとかいうような形で散乱をしておったのでは、私は一貫したそういう対策がとれないと思うのです。したがって、そうしたもろもろのところで決められておるもろもろの問題を一つにまとめて、やはり母子保障法というか、保健法というか、そういう形においてまとめる必要がもう生じてきておるのではないかというふうに思うわけでありますが、そういう点についてはどうですか。
○石野政府委員 確かに、民社党の方では母性保障基本法というものを御提案になっておられますし、それから国会の婦人議員の間でも母性の保障法的なものについていろいろ御議論になっておられます。その中身を見ますと、確かに理念的なものははっきり打ち出されておりますし、それから具体的な内容についても、確かにいままでやっていない面について補完的にいろいろな制度を組み入れた形で考えておられますけれども、現在私どもがやっております母子保健法の中身をほぼ中心にしてやっておられるのと、それから労働省関係のいろいろな婦人に関します保護の規定、そういうものを機能的に発揮させるという理念を明らかにしているのじゃないかなと、こういう気がいたします。そうなりますと、果たして法律そのものをつくる必要があるのかどうか。現在の制度の運営というものをもっと各省共同で、総理府が中心になりまして機能的にやれば効果が上がるのじゃないかというのが事務当局の意見でございますけれども、せっかくの御提案でございますので、いろいろ検討させていただきたいと思っております。
○西田(八)委員 わが党はそういう母性保障法というものを早くから提案もしておりますし、また提唱もしてきておりますが、ああいう形になるのは、やはり現行法にとらわれるということもありますし、問題はやはり国会の通過ということも考えなければならぬということであるから、かなり遠慮した案になっておるわけですよ。問題は、これを取り扱う場所がはっきりしないということなのです。いま局長も総理府と、こういうふうに言われた。そうするともうすでに厚生省から総理府にもまたがっていくわけです。先ほど大臣の話でも、労働省もと、こうなってくると、一体どこにこの問題を取り扱うところがあるのかということ
 になってくる。そこがもうあいまいになってくるわけですね。ですから、私の頼んでおるのは、質問の中心は、総理府も関係しておる、労働省も関係しておるであろうけれども、問題は厚生省が中心になってやれぬかということを聞いておるわけです。そうして、やはり厚生省がやるというふうに踏み切れば他の省庁もやはりそこに、それだったらおれのところにもこういう意見があるぞということになってくるのじゃないでしょうか。その点で、よそとの関係でと遠慮せずに、厚生省は厚生省でやるのだという決意ができないかどうか。これは局長に聞くのはちょっとむずかしいと思うから、かえって大臣に伺った方がいいかもしれない。
○石野政府委員 大変むずかしい御質問でございますのでお答えしにくいわけでございますが、厚生省の守備範囲のものについては全身全霊を捧げて私ども充実させておりますけれども、各省にわたる問題について、厚生省がリードをとってこうしろと、こういうわけには現在いかない制度になっておりますので、やはり全体的な取りまとめというものは総理府にお願いしなければならない。その中心になるものはやはり厚生省にいろいろ多いものでありますから、これにつきましては積極的な姿勢で臨みたい、こういうことでございます。
○西田(八)委員 それではひとつ大臣も、せっかくああいう機関ができまして、女性行動推進本部ができておるわけでありますから、そういう中でも取り上げられるように努力をしていただきたいと思いますが、ひとつ要望をいたしておきます。
 私の質問はこれで終わります。
○戸井田委員長代理 次に、和田耕作君。
○和田(耕)委員 厚生大臣、昨日、十五日に、厚生省もいよいよスモンの裁判について和解のテーブルに着くという趣旨の態度を明らかにしたわけですけれども、これはどういう意味なんでしょう。国の責任と言われておる問題を一応検討して、検討済みになって態度を決めたという意味があるかないか、この点からひとつお答えいただきたい。
○渡辺国務大臣 これは先ほども御質問にお答えしたのですが、このスモンの問題は十年からの騒ぎなのですよ。それで裁判になっておる。国の方はいままでの主張として、薬事法上の法律違反は何もありませんということを言ってきておるんだし、現在もそういうことを言っておるわけです。一方は国に責任があると言い、薬剤会社もあるだろう、こういうようなことでございますが、これは裁判で争うというのも一つの筋道だと思います、国民には裁判を受ける権利がみんなあるわけですから。しかし、裁判で黒白をつけると言っても、なかなかこれはそうきちっといくものではない。裁判官自身もそういうことを言っているわけですね。だから和解の提案というものを出してきたわけですから、白黒をつける問題よりも、特定な条件のもとに、せっかくの裁判官のご提案もあることですから、患者の救済というものを考えていくということの方が実際問題としていいのではないだろうか、こういうようなことでございまして、もともと示談――和解は言うならば示談みたいなものですから、おまえが悪い、こっちがいいということじゃ判決になっちゃうわけでありまして、そこはお互いに譲り合うところは譲り合って、言うべきことは大いに言って、それで裁判官の御指導によって話をまとめていきたい、こういうふうなことであります。
○和田(耕)委員 それでは、この和解の問題について国はあっせんをするという、自分は大してお金を出すとか負担をしないであっせんをするという、軽い気持ちの和解のテーブルに着くという意味と理解していいのですか。
○渡辺国務大臣 これは国があっせんをするということだけではないと思います。被告というような立場も離れてはどうかということの御勧告も一部はございますが、やはり国は国という立場もございますし、まず裁判官のごあっせんというのが中心になるだろう、こういうふうに思うわけです。
○和田(耕)委員 これは、患者の救済をするためには和解をするより方法はないという東京地裁の裁判官の判決の一つの条項ですね。これを恐らくのんで、国は、それはそうです、和解のテーブルに着いてそういう問題を決めましょうということだと思うのですけれども、つまり、患者の救済ということになると、これは裁判になっているような膨大なお金の補償という問題もあり、あるいは当面のいろんな診断、治療等の問題もあると思うのですけれども、そのどちらの問題を意味しておるのでしょう、このテーブルに着いて話し合いをするというのは。患者の救済についてテーブルに着いて話し合いをしようということを国は受けているわけだから、その救済の内容、たとえば治療とかあるいは何千万円という補償とか、いろいろな内容があるわけですけれども、とりあえず国が和解について何とかしょうという意味は、患者の治療とかあるいは当面の生活上の問題とかということについてはめんどうを見てもよろしゅうございますという意味なのか、どちらなんでしょう。
○渡辺国務大臣 それはテーブルに着いて裁判官のお話をいろいろ承る、そしてともかくまとめていくようにしたい。現在でも国はやっているのですよ。それは御承知のとおり、スモン病にかかった方等については難病に指定をして、それで公費負担分を国が持つとか、あるいは国民年金法に基づくあるいは被用者年金法に基づくところの障害年金を支給する。一級の場合だったらば最低月額四万一千円とか、二級だったら三万三千円とか、あの中をずっと調べてみると、すでに年金をもらっている人も現実にはおるわけです。ですから、そういうことはやっておりますが、さらに裁判所の方ではそれよりも上の話をしているわけですね。ですから、そういうような問題についてわれわれは話を聞いていきたい。しかし、厚生省は公平な取り扱いも必要なわけですね。スモン患者だけ最優先でほかの患者は関係ないという話にもなかなかいかない問題もあります。そういうような点については、やはり病気の階層とか分類とか額の問題とか、いろいろな問題についてこちらも意見を主張するところは主張して、それで裁判官のごあっせんによってともかく話をまとめたい、こういうことなんです。したがって、具体的に一つ一つの仮定の問題をここで出して、私がこの場合はこう、この場合はこうだとここで言ってしまったのでは、テーブルに着いた人が、もう大臣がしゃべっちゃっているのですからそれ以上何も交渉できなくなってしまっても困るわけでございまして、これはある程度のフリーハンドというものを持っていなければテーブルに着いてお話しできないわけですから、余り私はここで縛りをかけるというようなことはしたくないのです。
○和田(耕)委員 よくわかります。いまのお答えで、治療その他の問題についていままで難病指定等の形でかなり手厚くやっていることはよく存じております。おりますけれども、スモン病の特定の患者に対して国がいまの補償の問題を含めてどういうふうな気持ちを持っておられるかということをお聞きしたがったのですけれども、そういう問題を含めてテーブルに着いて話をするというのがいまの御決定の意味ですね。それを伺えば結構でございます。
 私は、この問題はかなりしつこく大臣にいままで何回も質問してきたのですけれども、質問しておりますのは、これは当面苦しんでおるスモン患者の救済ということは一番大事なことの一つですが、その反面に、薬は当然こういう副作用を持っていると見なければならない。したがって、いっこういう問題が他の薬にも起こるかもわからない。あるいは新しく開発される薬にも起こってくるかもわからない。そういうのが薬の特色ですから、ここでこの問題について、国が国民の保健のために相当の責任を持ってこういう問題について対処しておるということを明らかにしておかないと、いろいろな学者やメーカーが新しい薬の開発をするという意欲が非常に薄らいでくると思うのですよ。これは私、もう数年前ですけれども、ドイツのバイエルの副社長に会ったことがある。そのときにいろいろな薬害の問題が議論されたときに、余りこれだけをやかましく言われますと新薬の開発なんかできませんよということを言われたことがあるのです。それが私は頭に残っているのです。しかし、それかといってメーカーは大いなる責任があるわけですから、その都度応分の責任を持たなければならない。しかしこの問題はメーカーだけが背負い切れないのだ。国はやっぱり一つの薬として許可してこれを公示している責任は、薬事法上の責任云々というものを超えまして、やっぱり国が責任なしとしないのですよ、常識的に見ても。許可しているのですから。そういう立場の国としては、この前予算委員会でも大臣に御質問したのですけれども、仮に厚生省としては三割の責任しかないとしても五割ぐらいの責任があるものとして対処しないと、大きな国民の生活安定という問題についての責任は保たれないということを私自身は考えておるのです。
 したがって、厚生省としては大所高所からもっとこういう問題に対する態度をお決めいただきたい。きのう十五日の決定、私はよかったと思う。それにしても、東京地裁のああいう形の判決があって二カ月ぐらいになりますね。どうしてこうぐずぐずしているのだろうかなと私は思うのですけれども、そういうことを含めて、ひとつこういう問題についての大臣としての大きい立場からの御決意を承りたい。
○渡辺国務大臣 御指摘のような点は、薬の許可とか新薬の開発とかという点で重要な問題を含んでおると思います。それは、新薬というものは厳格にこれは規制をしなければならぬ。しかし、その規制のために五年も十年もかけるということになると、事実問題としてこれから新薬の許可はできないということにも実際なるかもわからない。実際問題として、薬というのは臨床実験等いろいろやりますよ。やるけれども、それは何万人という人にできるはずがないんですから、幾らやっても何百人とか何千人とか、それだって三年とか五年かかるわけですね。ところが、人間には残念ながら個人差というのがあるんですね。三千人は大丈夫だったけれども、三千一人目で特殊なアレルギーを持っている人がある。ペニシリンショックというのはその一つの例ですね。何万件、何千件のうちの一人がばたりとひっくり返るというんですから。ですから、そういうようなものまで発見しようと言われても、これは事実不可能。日本国民一億人全部検査して歩かなければ薬を売っちゃいかぬというようなことになったら、実際はできないと思うんです。そういうことは不可能ですね。一方においては新しい薬の要望というのは非常にあり、この薬はぴたっと効くということがわかっておるということになると、かなり検査をして、大体これならいいだろうと思ってやったものが実は薬害だというようなことになることもあるわけです。薬害を起こすなと言うなら薬を承認するなという話と大体同じようなことになる。したがって、薬害を最小限度に切り詰めていかなければならぬ。人間の体にそんな重大な影響を及ぼさないようにするにはどうしたらいいか。
    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕
 その研究と同時に、一方で、万々一その薬害が起きて、しかも薬をよけいに、能書き以上に倍もくれちゃったとかいうことの民事問題が別に起きるとかいう問題の責任は別の話ですから、そういうような特定な条件のものを除いて、あるいはまた逆に言うと特定な条件のものだけについて、不可抗力のようなものについてはやっぱり救済制度というものをやっていかなければならぬ。予防接種法の改正というのはそれだと思うんですね。強制的に国が予防接種をさして、その結果、いいと思って伝染病予防のためにやるんだが、だれかがそれで薬害が起きた。薬といいますか、接種の害が起きたときには補償をするという制度を去年つくったわけですから、そういうようなものなども参考にしながら、一方において、万一の場合、薬害が起きて、それがともかく他の責めに帰せられないという状態のときには、みんなでこれは救っていくということもあわせてやらないというと、私は、医学の進歩というものはとまってしまう、こう思います。
○和田(耕)委員 最後に、田辺製薬の方はまだいろいろの原理問題を取り上げておられるようですけれども、患者救済という面については、とりあえず責任とは一応離れたようなかっこうでテーブルに着かすというような御努力はなさるつもりですか。
○渡辺国務大臣 それは一応私どもは裁判所の御提案にともかく従って、話し合いのテーブルに着きましょうと言っているわけですから、われわれがそう言っている以上、裁判所の方で、やはり訴訟派もあることだし、それからそういう人たちにも裁判官が何らかの話しかけをされるものと期待をいたしております。
○和田(耕)委員 終わります。
○橋本委員長 浦井洋君。
○浦井委員 大臣にひとつお尋ねをしたいんですが、二月二十二日の所信表明の中で、午前中から言われておるわけですが、「国民すべてが「福祉の心」を社会連帯の基調とすることによって初めて名実ともに備わった福祉社会の建設が可能になると信ずるものであります。」だから、そう言われるからには、厚生省の長である大臣は非常に十分な福祉の心を持っておられるだろうと思うので、きょうはひとつ砒素ミルクやらスモンの問題を通じて大臣のテストをしてみたいと思うわけであります。
 まず、砒素ミルクの問題であります。厚生省の方はよく御承知のように、昭和四十八年の十二月の二十三日に、守る会と森永と厚生省の第五回の三者会談が行われた。ここでその第四項目にこういうことがある。「厚生省は被害者対策について
 「守る会」の提唱する「恒久対策案」の実現のために積極的に援助し、かつ、救済対策委員会が行政上の措置を依頼した時は、これに協力することを確約する。」これは生きておるだろうと思うんです。
 そこで、厚生省にも大臣にも会われたと思うのでありますが、守る会とひかり協会の方々がいろいろと事業を進めてみた上で、ぜひとも国の協力を得たいという要望なり陳情なりがあったと思うわけであります。これは私も拝見をいたしましたけれども、もっともだと思います。たとえば、砒素などの毒物が人体にどう影響し、それが被害者の社会生活にどう影響するのかという問題であるとか、あるいは人間の体が未成熟な段階で主食として砒素ミルクを飲用した。そうすると当然直接作用もあるし、栄養障害も起こる。人間の個体の成長発育に多大多種の影響を与えておる、これは私当然だと思うわけです。
 ところが、これが一体どういう現状にあるのか、どういうところからこういうふうになってきたのかというところがまだわかっておらないわけで、これを科学的に把握することが、いまひかり協会が一生懸命やっておられる救済事業をより充実させることになるし、あるいはまた人類的な立場から見ても、学問的な研究として非常に人類の知識と福祉の増大に貢献する。私はもっともだと思うわけで、やはりここで国の責任と力でもって、この確認書のとおりに厚生省としては具体的に乗り出さなければならぬのではないかと思うわけでありますが、ひとつ大臣の御決意を聞いておきたいと思います。
○松浦政府委員 森永砒素ミルク中毒事件の問題につきまして、すでに、先生がただいまおっしゃいましたように、これは財団法人ひかり協会におきまして、健康管理事業、それから治療養護事業、調査研究というようなことを推進するということになっておるわけでございまして、国もこれらに協力しておるというのが現状でございます。ただ、その研究等の問題につきまして、何がどのように研究するテーマとして必要であるのかということがいまのところまだはっきりいたしておりませんので、今後ひかり協会ともよく相談してみたい、こういうふうに考えております。
○浦井委員 大臣もよく御承知だと思うんですが、一例だけ私申し上げてみたいんです。神戸に住む二十一歳の娘さんでありますが、ことしの一月一日、元旦のある新聞に写真つきで出ております。
 歩くこともできない、寝返りも打てない。自分の力で動かせるのは目、口、手の指だけだ、それもほんのわずかだ。三十年に生まれたばかりのときに二カ月足らず砒素ミルクを飲用しただけだ。ところが、不自由さの始まったのはいつからとは正確に言えないけれども、三ないし四歳の遠い昔のころは一人で食事もしたし階段を上りおりしたときもあった。しかし砒素ミルクの後遺症が四肢の機能を徐々に、しかし確実に奪って娘さんは衰えた、こういういま状態であります。
 だからそういう点で、ひとつ大臣の方も、いま局長言われたわけでありますけれども、ひかり協会や守る会の意向を十分に尊重して、努力をしていただくということをこの場で言明をしていただきたいと思います。
○渡辺国務大臣 ただいま局長が答弁したとおりでございます。−もう少し言いますか。今後ともひかり協会その他の関係者と十分に協議をしてまいることといたします。
○浦井委員 次に、いま問題になっておりますスモンの問題であります。国、厚生省は和解のテーブルに着くということでありますが、一つ私聞いておきたいわけでありますが、一体厚生省はこのスモンの発生について、法的にも、もちろん行政的にも全く責任がないというふうに考えておられるのかどうかということをまず最初に聞いておきたい。私はそうは思わぬわけです。どうですか、大臣。
○上村政府委員 まず、スモンの発生につきまして裁判で主張いたしておりますことは、スモンの原因についてはスモン調査研究協議会の報告に従う、それから責任論につきましては、責任がないというふうな主張をしておるわけでございます。
○浦井委員 責任がない。法的にも行政的にも責任がない、こういうふうに局長はこの場で断言をされたわけでありますが、私は責任があると思うわけであります。
 ひとつ具体的な経過について大臣によく聞いていただきながら、大臣の認識を新たにしていただきたい、このように思う。
 まず、戦前の問題であります。つい先日、厚生省からいただいた「日本におけるキノホルム(スモン)の経過」という一覧表を見てみますと、昭和十三年から二十年にかけて「「キノホルム」が、国立衛生試験所で製造される。」こういうふうに書かれておるわけなんでありますが、これは事実なのか。事実であるとすれば、もう少し具体的に言えばどういう経過なのか。私はきわめて重大な記載だと思うので、お答えを願いたいと思う。
○上村政府委員 事実でございます。それで当時は、御案内のようにエンテロ・ビオホルムというものが昭和九年にスイスから輸入されました。それで外国製品しかなかったわけでございます。そこで、国立衛生試験所というのはそういった薬を製造する試験をするところでございますので、国産化の検討を兼ねてキノホルムの製造をしてまいったというふうに私は聞いております。
○浦井委員 聞いておりますと言われたけれども、事実だろうと思う。
 私ここに一つ資料を持ってきているわけなんですが、これは「国立衛生試験所百年史」という資料であります。これの百十一ページのところを見てみますと「キノホルムの国産化」という項があって、「キノホルムは当時ヨードホルムに代る優秀な外用剤として注目されていたが、腸内殺菌、異常発酵防止の内用薬としても推奨されていた。」国立衛生試験所の「製薬部では本品の国産化の研究を推進していたが、工業生産が可能となり製造特許を出願取得した。昭和十三年度には製造費か予算化され本格的に製造を開始し、翌十四年にはじめて製品として発売された。製品の大部分は軍に納入された。」こういうふうに書かれておるわけなんです。これはそのまま事実なんですね。
○上村政府委員 そういうふうに書かれておることは事実でございます。
○浦井委員 書かれておることは事実と言うて――これは厚生省の所管の国立衛生試験所の出した百年史に書かれておるわけなんです。これは「発行者 国立衛生試験所」ですから、やはり当然厚生省としては内容について責任を持たなければならぬと思う。これは局長の答弁の仕方はちょっとおかしいと思う。
○上村政府委員 いま衛生試験所百年史に書いてあるのは事実かというふうにお聞きになりましたので、書いてあるのは事実でございますというふうに申し上げたわけでございます。
○浦井委員 そういう詭弁を弄せずに、素直にやはり事実を確認していかなければならぬと私は思います。
 そこで、その書物の中に、さらにある人物が寄稿をされておるわけです。「私と製薬部」という題で、篠崎好三という方であります。
 ちょっと読んでみますと、「私は昭和十年半ば衣笠豊所長からビオホルム研究の命を受けた。この薬品は元来スイス、チバ製品会社の発売で、アジア南部、東南アジア方面に多いアメーバ赤痢に卓効があり、また下痢をともなう腸疾患に著効あることが認められていた。私は種々研究の結果、既知製法と全く異なるパラジクロルベンゾールを出発原料とする新合成法を考案し、製法特許を得た。」「元来、衛生試験所の研究は一般に公開し、民間企業等に任すべきが本来の使命である。発表当時数社の製薬会社から特許権払下げの希望があったが、衣笠所長の熟慮の結果、時局から、衛生試験所で製造を実施することになり、昭和十三年度予算に計上され、工業化の準備が開始された。」そして「昭和十四年六月キノホルムの名称で、製品第一号が発売された。製品の大部分は陸海軍の衛生部に納入され、一部は民間にも払下げられた。」「ちなみに、衛生試験所は昭和十三年一月厚生省の所管になった。」こういうことを書かれておる。
 この経過、これは事実なんですか。書かれておるのではなしに、この経過は事実なんですか。
○上村政府委員 私もその篠崎好三さんが寄せられました文章は承知しております。このことについてそれ以外の資料がございませんのでわかりませんけれども、東京衛生試験所、これは現在の国立衛生試験所の前身でございますが、そこでその製造業務に達している職員が、終戦になりましてからそこを退所いたしまして、製薬会社に入社したというふうな話は聞いております。そうして、その際厚生大臣から、特許の実施権と、それからその当時の中古の製造機械の払い下げを受けまして、新しく入りました会社でキノホルムの製造を行っていた、そういうふうに……
○浦井委員 それは後で言いますから。事実なんですね。
○上村政府委員 書かれたものによりまして判断をいたしますと、そういうことがあったというふうになるわけでございます。
○浦井委員 これは事実だろうと私は思いますよ、大臣。
 そこで、それともう一つ大臣に知識として持っておいていただきたいのは、そのキノホルムが昭和十一年に劇薬指定に一たんなっておるわけなんです。ところが、さっき読みました十四年六月に国の製品が発売された後に、詳しく言うならば昭和十四年の八月の二十三日に普通薬として日本薬局方に収載をされておるわけなんです。これは第五改正日本薬局方の一部改正。そしてさらに同年、昭和十四年の十一月の九日に劇薬指定から当然外されておる、こういう経緯がある。これについてはいろいろ裁判でも問題になっておるわけでありますけれども、こういう事実、私、戦前の話を申し上げておるのでありますけれども、大臣、そういうことになってまいりますと、戦後大量のスモン患者をキノホルムという薬が発生をさせた。このキノホルムという薬は単に国が製造の許可をしたとか輸入許可をしたとかいうだけでなしに、国みずからが製法を開発して、製造をして、陸海軍に納入をして、そういうようなことになってくるわけであります。そうすると、これは一番初め局長は責任はないというふうに言われたけれども、果たしてそれでよいのかどうか、ひとつ大臣の所信をお尋ねしておきたいと思う。
○渡辺国務大臣 法律的なことは私よくわかりません。わかりませんが、ともかくこの責任問題をどうこう言っておったって仕方がない話なので、せっかくの裁判長のごあっせんもありますから、ひとつ和解のテーブルに着きましょう、こういうことまではしたわけなんですよ、そこまで。
○浦井委員 それは大臣、するりと体をかわされたみたいなところなんですが、さらに話を進めます。
 キノホルムの国の製法特許というのは、確かに戦後、いま局長の言われたように、こういうことになっておるのですね。その篠崎好三氏がやはり同じところに書かれておるのですが、終戦後、国の衛生試験所の製薬部は廃止されることになったので、その方は辞任をした。「辞任後、厚生大臣からキノホルム製造に関する特許実施権と製造用機械(修理して使用可能)の払下げをうけ、製薬会社に入社し、引き続きキノホルムの製造を続けていた。」こういうふうに書かれておるわけなんです。この製薬会社というのは一体どこなんでしょうか。局長、御存じですか。
○上村政府委員 八洲化学であったと聞いております。
○浦井委員 八洲化学から、それがどうなりました。
○上村政府委員 その後、そこの会社は合併等で田辺製薬に引き継がれたというふうに聞いております。
○浦井委員 それは局長言われるとおりでありまして、八洲化学に入って、八洲化学が倒産をしたので、田辺製薬が八洲化学立石工場を買い取って、一〇〇%出資の立石製薬をつくってエマホルムをつくらして、それを田辺が販売をして、しかる後、今度は田辺が直接製造、販売をするに至った。篠崎好三という方の持っておられる特許権が媒体になってずうっとここへ米ておるわけですね。
 だから、言えることは、先ほど私が言いましたように、国が製法を開発して、しかも製造したキノホルムが、戦後、結局ば田辺に引き継がれた。そして田辺は、大臣御承知のようにスモン患者を大量に発生させた。その間、国は製造許可については唯々としてやっておるわけなんです。しかも、いま田辺は、患者や家族が裁判に訴えると、スモンというのはビールスから来るのだというようなことをいまだにふりまいて、裁判官忌避までやるというような不当な行動をとっておる、こういうことであります。だから、そういう点で企業はもちろんでありますけれども、戦前からの経過を見ていくならば国にも全然責任がないというようなことは言えないのではないかと私は思うのですが、ひとつ大臣の御決断と言いますか、ここで、いまの時点でどう言われるか。私は期待したいと思うのですが。
○渡辺国務大臣 大臣は決断をもって和解のテーブルに着くように命令をしたわけであります。
○浦井委員 それで、大臣のいまの立場というものも私はわからぬことはないわけでありますけれども、ひとつ大臣にこの話をよく聞いておっていただきたいということであえて申し上げておるわけなんです。
 その次の問題は、日本薬局方というのがある。この日本薬局方には必ず解説書がついておるわけでありますけれども、この解説書については厚生省は責任を私は持つべきだと思うのでありますけれども、どうでしょうか。
○上村政府委員 まず、日本薬局方の方でございますけれども、これは御案内のように、医薬品の性状なり品質の適正化を図るために、厚生大臣が定めました医薬品の規格書でございます。そして、この日本薬局方には製法と性状と試験方法と貯法等が定められております。
 一方、日本薬局方にはいま御指摘になりましたように解説書があるわけでございます。この解説書は、局方が制定されました当時のこの方面についての学識経験豊かな方々が、その方々が持っておられます知見に基づいて解説を加えられたもの、したがって、民間発行の書物でございまして、公的な見解を述べたものではないというふうに考えます。
○浦井委員 そうすると、その内容について厚生省は、法的にはともあれ、いろいろ道義的に、あるいは技術的な責任は一切ないと、こういうことですか。
○上村政府委員 いま問題になっておりますのは法律的な責任の問題でございまして、いま御指摘になった道義的というのは範囲が漠然とするわけでございますから、どうもお答えいたしかねるわけでございます。
○浦井委員 そういうふうに逃げられるなら、私、厚生省としてはこれに責任を持たなければならぬのだというゆえんをお話ししたいと思う。
 たとえば、昭和三十六年に第七改正薬局方が公布され、その解説書を見てみますと、大臣、ちゃんとここに、これは写しでありますけれども、「厚生省薬務局推薦」と、こうなっておるわけなんです。推薦となっておる。法的には責任を持たなくてもよいかもわからないけれども、これは責任を持たないといかぬ。
 それから、さらに内容を調べてみますと、この解説書の編集委員長をされておる刈米達夫という方は当時厚生官僚であります。国立衛生試験所の所長である。そして同時に中央薬事審議会日本薬局方部会の副部会長である。さらに、いま編集委員のことをいろいろ局長は言われたわけでありますけれども、日本薬局方調査会調査員が百十三名おられるわけでありますけれども、その中に、百十三名のうちこの解説書の編集委員になっておられる方が三十三名おられるわけです。それで具体的にそれぞれ分担執筆になっておりますが、執筆者が、百十三名のうち五十三名おられるわけなんです。しかも大臣、その編集委員の中には、固有名詞でなしに、わざわざ五十音順に書いてあるわけでありますけれども、厚生省薬事課長、厚生省製薬課長、こういう官職名がいわば固定的に編集委員に入っておる、こういう仕組みになっておるわけなんです。これを見ていただけたらようわかると思う。
 だから、私は大臣に申し上げたいのですけれども、それは法的に厳格に言えばどうかということは、これは局長があるいは逃げるかもわかりませんけれども、やはり実質責任があるんではないか、こうみなさざるを得ないわけでありますけれども、これはひとつ虚心坦懐に、大臣どうですか。
○渡辺国務大臣 ですから再々私が言っておるように、法律論争だけでやっているわけではございません、私は政治家ですから。そういうものは法律論争だけで決まりのつくものではございません。だから和解論のテーブルに着いてください、こういうことなんですよ。法律論だけでやれば、それは裁判ですから判決を待ってという話になっちゃうのですよ。それじゃ解決がつかない。
○浦井委員 で、その解説書を見ますと、それは第七改正薬局方であります。第六改正薬局方、昭和二十六年でありますが、この第六までのキノホルムの項を見ますと、キノホルムの使用量というのは大体一日量〇・三から〇・六グラムであった。ところが昭和三十六年の第七改正薬局方になりますと、適用症がぐっと広がってきておる。そして一日の使用量もぐっと増量しておる。ちょっと申し上げてみますと、細菌性下痢あるいは胃腸炎に対しては一日〇・六から一グラム、それから急性のアメーバ赤痢については一日二・〇から三・〇、これを十日間投与してもよろしい。だから最大量三十グラムであります。それから慢性のアメーバ赤痢でいきますと一日量〇・九から一・五グラム、これは一ないし二週間投与してもよろしい。だから最大量は二十一グラムであります。細菌性赤痢、一日一・五グラムから二・〇グラ人。だからこれで見ても、第六改正薬局方から第七改正薬局方、その解説によると一躍第七で適応症もふえて用量もふえておる、こういうことになるわけであります。局長、一体これの根拠はどこにあるのですか。
○上村政府委員 第七薬局方の解説に書かれております用法、用量、これはいま御指摘になったとおりだと思いますが、当時の局方の解説書の書き方としましては、その当時の外国の用法、用量というものを参考にしながら書かれたものであるというふうに理解しておるわけでございます。
○浦井委員 外国の用法、用量をというふうに局長は言われたわけでありますけれども、それなら私は申し上げたいのですが、そこに書いてあるのですけれども、第七改正薬局方の解説書には初めて文献を引用することになった。だから、それぞれの薬の終わりのところに、これを読んでよく参考にしなさいということで文献が引用されておる。ここにも書いてある。厚生省推薦で、しかもたくさんの薬局方の調査員が参加をされて書かれておる中で、キノホルムのところに、JAMA一九三三年のデビッドの論文、これの項目が出ておるわけなんです。JAMAというのは、まあ別にひけらかすわけではないのですが、ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーションと言って、世界じゅうの医者が一番広く読む週刊の医学雑誌なんです。そのJAMAの一九三三年の版のある週の、デビッドという人の書いた論文が出ておる。その論文を私は読んでみました。そうすると、キノホルムということについては確かにアメーバ赤痢に効くと書いてある。しかし、使用方法はいわばきちんとコントロールしなければならぬ。ここに引用されておる文献の論文を実際に見てみますと、キノホルムの使用方法というのは、一日〇・七五グラムで十日間投薬をして、それから一週間薬を休みなさい。それからまた〇・七五グラム十日間投薬をしなさい。それで前後四週間で一応やめなさい。総量十五グラムまでにしなさい、こういうふうに書かれておるわけです。そうすると、いま局長ば外国を参考にしたと言われたが、厚生省、ここでやはり責任を持たなければいかぬと思うのです。ここで論文の目録を引用した、その論文の中にさえこういうふうに書かれておるわけなんです。だから、みずからここに示した文献の内容と明らかに矛盾をした使用方法やらあるいは使用量が堂々とこの解説書に書かれておる、こういうずさんなやり方が果たして許されてよいのかどうか。私はやはり厚生省のずさんさというものが後々スモン患者大量発生という大きな災いを残した、こういうように言わざるを得ぬわけなんですが、同じお答えかもわかりませんが、大臣、御感想をひとつ。
○上村政府委員 その局方の解説に引用されました一九三三年のデビッドらによるアメーバ症に対する臨床効果が確認された最初の製品はチバのビオホルムである。つまり、最初の臨床効果が確認されたのはチバのビオホルムであるということの文献としてデビッドらの主張というものを引用された、そういうふうに私は解釈をするわけであります。
○浦井委員 それはおたくが勝手に解釈をされるだけで、論文の目録を引用されたらちゃんとその論文を全部読むのがあたりまえの話なんです。
 大臣、こういうおぜん立てと前後して、これが三十六年のことでありますが、昭和二十八年に武田薬品がチバのエンテロ・ビオホルムの製造許可申請をしてきたわけでしょう。これは厚生省にいただいたわけでありますけれども、そのときの製造許可申請書というのを見てみますと、審査用紙のところはこんなふうに何も書かれていない。欄外にちょっちょっと何やらわからぬようなことが書いてあるだけで、何も書かれておらぬ。こういうようなずさんさがあるわけです。これは厚生省からいただいた。こういうことをやりながら、ここですでに一日の使用量を〇・七五から一・五グラムにふやしておるわけです。場合によっては一日四・五グラムまで増量してもよろしい、こういう申請をそのまま認めておる。適応症も、アメーバ赤痢にしか効かぬはずであるのに、夏季下痢も、胃腸炎にまでも広がっている。これだったら、武田薬品が、常備薬ですよ、何ぼでも飲んでくださいというふうに宣伝をするかっこうの口実を与えておる。そして、これは昭和二十八年で、今度は三十六年にはさっき言った第七改正。第七改正の私がさっき読み上げた用法、用量というのはこれの後追いではないか。
 さらに言うならば、三十六年にそういう第七改正薬局方を出しておいて、その翌年の昭和三十七年には、その前の年にアメリカのFDAがチバに勧告をして店頭販売薬としては発売停止にしておるわけでしょう、ところがその逆に、日本に対してはチバ製品が輸入申請をして、ここに三十八年のチバ製品の輸入申請書がありますけれども、これに対しても厚生省は結局そのときもきわめてずさんな審査をして輸入許可をしておるわけです。これは新聞にも出ましたけれども、わざわざ適応症も細菌性赤痢から細菌性腸疾患と、ずっと範囲はそうなれば広がりますからね、そういうふうに広げておる。だからメーカーは待ってましたとばかりに整腸剤というようなイメージでお医者さんに売りまくる。お医者さんの方は、そんなに言うのだから、忙しいし一々勉強する暇もないし、相当使ってもよいのだなということで患者さんに投薬をする。そしてスモン患者が大量に発生をする。これは明らかに、メーカーはもとより、厚生省にも大きな責任があると私は言わざるを得ないわけです。この辺を大臣、和解のテーブルに着かれることについて私は言及をいたしませんけれども、十分に認識をして行動を起こしていただきたい。このことをあえて要望をしておきたいと思うわけであります。
 そういうことなんでありますけれども、私この間いろいろ探しておりますと、JAMAのデビッドの論文というのは一九三三年に書かれたわけでありますが、さらに一九四五年のJAMAにもデビッドは書いておるわけなんです。その一九四五年のデビッドの論文の載っておるJAMAの雑誌というのは、何と国立国会図書館に一九五四年に入荷されておるわけなんです。一九五四年ですよ。それは一九四五年ごろには手に入らなかったかもわからぬ。しかし、デビッドが、この人はもともとキノホルムをむしろ推奨しておる人なんです。しかしこういうような注意をしなければなりませんよという警告を発しておるわけなんです。その論文を厚生省が読もうと思えば、すぐ近所の――厚生省の図書館というのは国会図書館の分館でしょう、そういうっては何ぼでもあるわけなんです。ちゃんとJAMAのこういう論文を読もうと思えば、情報収集しようとすればできる近所にあるわけなんです。それをやらずにずるずるとスモン患者を発生させていっておる。ここのところを私は大臣に十分に御認識をしていただきたい、このことをお願いをしたいわけです。
 もう時間が、ちょうど三時までですからやめますけれども、まとめてみますと、国というのはキノホルムの製法開発をやっておる。それから製造しておる。特許の払い下げをやっておる。それから薬事行政に基づくところの許認可をやっておる。それでスモン患者が発生しておる。これはもう明らかに大きなかかわりがあり、スモン患者の発生について国の行政に責任があると私は思わざるを得ぬわけです。ほとんどは各地の地裁で行われておる裁判でこと細かくやられておりますけれども、きょうはそのごく一部分を取り上げたわけであります。政府は、憲法二十五条の立場あるいは厚生省設置法にもきちんと書いてあるわけですから、そういう立場を守って、やむなく訴訟を起こした患者や家族といたずらに争うというようなことはやめて、早く患者の恒久的な救済に乗り出すべきだ、このことを私は最後に大臣に要望し、大臣の決意を聞いて質問を終わりたいと思うのです。
○渡辺国務大臣 浦井さんから大変参考になる話を承りまして私も勉強になりました。私も政治家でございますから、それは法律論ばかり振りかざしておるわけではございません。したがって、これが円満に話し合いがつくことを希望いたしてこれからも努力をしていくつもりでございます。
○橋本委員長 次に、工藤晃君。
○工藤(晃)委員(新自) 私は、人の命を守ることは政治の原点だ、こういうふうに考えております。そういう立場からいまの健康保険法、これをながめてみますと、こういう健康保険法では人の命が守られていないのではないかという大きな疑問を持つわけでございます。健康保険法がつくられた趣旨は人命尊重であり、医学の進歩に伴って医療の近代化ができていくような、こういう対応をしていける制度、これが健康保険法の姿ではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、それがそのようになっていないということになるならば、そのビジョンづくりを急ぐことが大変必要な条件になってまいります。厚生行政の最重要政策になってまいるわけでございます。その意味で、私は常に健康保険法の矛盾点を指摘しながら、どうしてもこの健康保険法というものを正しい姿に直していただく、これに執拗に焦点を合わせながら今後も質疑を繰り返してまいりたい、こういうように考えるわけでございます。
 そういう立場から、きょうは、健康保険制度はいかに医療の内容に対して低下をもたらし、その荒廃を招いているかという幾つかの例を挙げながら説明をしてみたい、こういうふうに考えるわけでございます。
 まず、自由主義社会において、すべての企業は、拡大再生産できなければその企業は衰退する、こういうふうに言われております。現行健康保険制度のもとにおいては、医療の拡大再生産というのは不可能でございます。たとえば外科の有床診療所あるいは病院、主に中小でございますが、こういうところでは外科の専門医がメスを捨ててしまっている、そして入院する部屋を閉鎖してしまっている、こういう状態が非常に多く見られるようになりました。これは社会的にも大変大きな損失だと思うのです。なぜそういうことが起きてきたかということを真剣にやはり考えてみる必要があると思うのです。それは採算に合わないからでございます。やればやるほど赤字になってくる。そのために外科医が外科のメスを捨てて、かぜの診断をしたり、あるいはちょっとした外来でできる手術程度の範囲にとどめてしまっておる。こういう現状は大変憂うべき姿ではないかというふうに考えるわけでございます。
 それからまた二番目に例を挙げますと、病院が勤務医を雇う場合にも、いまの公営病院におきましてはほとんど独立採算制でございますので、採算に合うようなお医者さんを求める。それはなぜかと言いますと、外来で一日に五十人、百人、こういうふうな患者をこなし得る能力のある先生を求めているわけです。そういう先生方は全く三時間待って三分診療ということを余儀なくされなければいけない、そういう過酷な条件を逆に採用時に強いられていかなければいけない、こういうことが現状でございます。これは国民が求めている医師の姿ではない。しかし、お医者さんも採用されるときにそういう能力があるかどうかをテストされるわけですが、それは医療の内容を向上させるテストじゃない。医療の内容を低下させていく一つのテストでございます。患者が求めていくものは一体何かというと、やはり温かい対応をしていただいて、心のこもった診療をしてもらう、あるいは自分の訴えを真剣に聞いてもらえる時間をとっていただける、こういう医療を求め、そういう先生を求めているわけでございますが、そういう先生は残念ながら採算ベースに乗ってこない。ただただ数でこなしていくという医療診療体制を整えていかなければ採算ベースに乗せていけない。そうしてもなおかつ赤字になってしまうというような現状でございます。
 三番目にまた別の例を挙げますと、ある私立の有名な病院でございますが、これはもう古くなってしまった。だから病院を建てかえましょうというので、銀行から融資を受けて病院を建てかえた。ところが返済に困ってしまう、そういう状態になりまして、銀行管理になるかあるいはその建設を引き受けた建設会社が仕方がないから赤字の間は自分が肩がわりしていこうということで経営に参加した。そして、どうしてもこんな赤字じゃやっていけない、これをどういうふうにすればいいかということを進言した。
    〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
そうしたら、たった一錠の薬を出せばいいのに三錠出したらどうか、一枚のレントゲンを撮らないで三枚撮ったらどうか、そうしたら採算ベースに合ってくるのじゃないか。これは経営の立場から考えた場合にそういう進言をしたそうでございます。そうすれば採算に乗ってくるのじゃないか。これは大変大きな問題を含んだ言葉だと思うのです。これは医療の内容をよくしよう、あるいはまた人命を尊重しようというものではない。先ほどもいろいろ問題になっておりましたキノホルムの問題もそうでございます。与えればいいという問題ではない。大臣もおっしゃったように、できるだけ被害を少なくしながら、人命を尊重しながら目的を果たすような医療行為をなしていかなければならない、これが医療の目的だと思うのです。ところが、先ほど申しましたように、一錠の薬を三錠使えばいいじゃないか、一枚のレントゲンを三枚使えばいいじゃないか、そうしたらもうかってくるじゃないか、こういう発想がいまの健康保険法の中でだんだん拡大されたとしましたならば、この結果は大変恐ろしい結果になってくると思うのです。
 そういう意味から、いままでいろいろな構造上の矛盾点あるいは財源上の矛盾点、あるいはいまの健康保険制度を存続させるためにそういういろいろな矛盾点が起きてきている。そうして医師が医師の喜びを持てない。要するにただ単に金もうけの手段になってしまっているんじゃ、これは生きがいがございません。そういうふうな、医師というとうとい使命感がなくなってしまうような制度の中で医療行為を行わせているとすれば、これは健康保険制度公害と言う以外にほかに方法がないと思うんです。だから、こういう矛盾点を私はいろいろな面から今後も指摘しながら、どうしてもこれは抜本的に、合目的に、人命が尊重されますように、そしてまた近代医学が即応していけるような体制、国民の求めている医療、安かろう悪かろうじゃなくて、本当に人命が尊重されていくような制度に持ち込むことがいまの厚生行政の課せられた最大の使命だというふうに考えるわけでございますので、そういう点をきょうも指摘したわけでございます。
 ところで、いまから多少大臣に、この前の三月四日の予算委員会の一般質問、あるいは三月十一日の予算委員会第三分科会での私の質問、こういうものを通していろいろお答えをちょうだいしてまいりました中で、この間十分意見を交換し得なかった点についていま一度御意見をちょうだいしながら話を進めてまいりたい、こういうふうに考えるわけです。
 三月四日の予算委員会では、最終的にことしいっぱいをめどにこの抜本改正をやりますと、はっきりと明言いただいた。ところが、三月十一日の予算委員会第三分科会ではまたその発言がやや逆戻りして、与野党のコンセンサスが得られたらこれは抜本改正をやりたい、こういうふうな発言に逆戻りしたような感じがするわけでございます。そういうわけでございますので、きょうはまたそれをもう一遍前に出していただくというつもりでいまから質問をさしていただきます。そういう意味において、今度健康保険法の一部改正の政府原案が出てまいりますが、こういう問題を提起した大変大きな問題だというふうに考えておりますので、それに沿って具体的に質問をしてまいります。
 そういう改正案の中の一つに、政管健保の保険料を賞与から二%新たに制度を設けて徴収する、こういうふうな点がございます。もちろんこれは暫定措置ということでございますけれども、組合の方は任意とする、こういうことでございます。ところで、大臣にお聞きいたしますけれども、なぜ組合健保はボーナスから二%徴収しないのか、その点について大臣のお答えをちょうだいしたいと思います。
○八木政府委員 お答えを申し上げます。
 今回の健康保険法の改正の基本的なねらいにつきましては、四十八年に医療保険につきましてかなり大幅な前進が図られたわけでございます。給付の改善も行われましたし、あるいは過去の赤字もたな上げする、あるいは国庫負担の定率化、その後の保険料率の引き上げに伴います国庫補助の連動というようなことで、政府管掌健康保険につきましての大きな前進が図られたわけでございます。ただ、その後の経済情勢、社会情勢が大きく変化してまいりまして、従来と異なりまして所得は大きく伸びておらない。しかも、医療費というものにつきましては、先生十分御指摘のとおり、今後とも医学の進歩、人口の老齢化、疾病構造の変化等によりまして上昇していくわけでございまして、この辺に基本的に大きな問題があるわけでございます。
 そこで、社会情勢、経済情勢の変化に応じましての今後の医療保険制度のあり方という問題につきましては基本的な見直しが必要なわけでございますけれども、昭和五十二年度末におきます千六百億円の赤字、これを当面何とか解消しなければならないということで、当面の財政対策を主眼にした改正というものを政府としては行わなければならないわけでございます。その際に、御指摘がございましたようなボーナスの二%というものが非常に大きな一つの柱になっているわけでございますが、政府管掌健康保険につきましてただいま申し上げましたような考え方から、政府管掌健康保険のボーナス二%という考え方があるわけでございます。
 一方、健康保険組合におきましては、政府管掌健康保険と異なりまして、各組合の財政状況というものに非常に格差があるわけでございます。一ころは、健康保険組合の場合には政府管掌と比べて非常にいろいろな面で、財政力の面等から申しましてもかなり豊かではないか。したがって、健康保険組合の場合には政管とかなり違うんじゃないかというような考え方であったわけでございますけれども、基本的にはそういう御指摘のような問題もございますけれども、健康保険組合の中でもかなり赤字の組合というものも出てきているわけでございます。したがいまして、健康保険組合の中におきましても、当面の医療費、財政状況が苦しくなっているという意味から何らかの対策を講じなければいかぬ。そこで、今回お願いしておりますボーナスからの特別保険料という考え方は、あくまでも当面の緊急的な財政対策というのが主眼でございますので、基本的な問題は今後の問題にしたい。一方、組合の方も同じような事情があるというふうなことから、組合につきまして一律に強制するということになりますと、財政状況によっていろいろな組合間の格差があるというようなことから、その必要のない組合もございますので、健康保険組合の場合には、財政状況によりまして必要な場合にはボーナスから徴収できるというような考え方にいたしたわけでございます。
○工藤(晃)委員(新自) お聞きいたしましたところ、坊大蔵大臣も発言されたように、やはり日本の健康保険制度は保険なんだというたてまえの御発言だというふうに考えます。
 そうしますと、まずお聞きいたしますが、黒字のところもある、給付も違う。そうするとおのずから、人の命もそこに軽重があらわれてまいります。これはいいことではないと思うのです。そういう徴収の方法あるいは給付の仕方、そういう面においてできるだけ平均をとり、ならしていき、そして人の命というものは常に平等にとうといという立場に立つことが健康保険制度の精神だろうと私は考えますので、そういう保険料の値上げの仕方そのものにも私は大きな疑問を投げざるを得ない。
 それからまた、この前私がお聞きをいたしましたときにも、今度の保険料の値上げの中には医療費の値上げ分は含まれていないというお答えでございました。そうしますと当然、これは医療費も長い間据え置かれておりますので、御存じのように医療費を上げてもらいたいという要望は大変強うございます。それから地方自治体の公立病院においてもその問題で大変困って、運動されておる事実がございます。そうするといつまでもそういうものを放置できない。これはどうしても対応していくような姿勢がとられなければならないということになりますと、ほかの条件をすべて一定にいたしました場合には、五十三年度には千二百六十五億という、ボーナス二%の徴収によって起きてまいります財源は黒になってまいるはずでございます。そしてそこに医療費の値上げが出てまいりますと、当然その黒字になった財源は医療費の値上げに充当されていくはずでございます。
 そういうことになりますと、また一方において中小企業主あるいはその従業員、この不況の荒波にもまれながらどうやって生きていくかということを真剣に考えていらっしゃる方々の方には、累積赤字がまいりましたので仕方がございませんから保険料を上げさしていただきますと言って強制徴収する。一方においては、そういう保険料は財政が黒字でございますから徴収しなくともいいと言って徴収しない。しかし、そういう不公正が拡大をしながら生み出した財源は、医療費の値上げという形で保険組合の方の医療費まで賄われてしまう。そういう結果になろうと思うのです。
    〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
 これは大変大きな問題だと思うのです。逆に、そういう発想からいきますと、お互いに組合のいろんな保険料については各管掌別なんだというたてまえを通しますと、今度は医療費だけがなぜ政管健保に右へならえしなければならないか。財政の苦しいところは苦しいような医療費を、黒字のところは黒字の医療費を取ってもいいんじゃないかという意見がもし出た場合に、大臣、それに対してどういうふうにお答えになりますか。
○八木政府委員 御承知のように、わが国の場合には、国民の健康、医療をいかに確保するかというために医療保険制度というものがあるわけでございます。そういう意味で各制度を通じましての皆保険、したがいまして、給付につきまして、いろいろの御指摘等ございましょうけれども、現在の場合には診療報酬につきましても、皆保険下におきましては統一的な診療報酬という考え方で行くというのが皆保険のあるべき姿であろうということで、各保険の財政状況ということに関係なしに、やはり皆保険下におきましては、診療報酬につきましても各保険を通じまして同一に考えるべきであるというふうに思うわけでございます。
○渡辺国務大臣 まとめてお答えをいたしますが、前の答弁で私が抜本改正という問題について触れたのが、後の答弁でコンセンサスを得られるならばというふうにえらく後退したじゃないかというようなお話でございますけれども、それはあなたの質問の中で、健保組合を解消してしまえ、健保組合を一般のやっと一緒にするか、そういうふうな思い切ったことをやれというお話なので、それは事実問題として一それは理想論として私は否定するわけじゃありませんが、それぞれ歴史も違うし、非常にむずかしい問題をたくさん含んでおります。したがって、来年そういうことができるかどうか。非常に来年ということになるとむずかしいので、与野党の皆様のコンセンサスが一致をすればそれはやってできないことはないわけですから、そういうことを言ったわけであります。
 しかしながら、各保険によって格差があるということは、これは好ましいことじゃないのですよ。ですから、政府としては格差を解消するために、組合保険には八億円しか補助金をやることにしないが、国民健康保険には一兆四千億円も補助金を出しましょう。それから政府管掌には三千億円からの政府補助金を出しているわけです。出すことにしてあるわけです、予算が。そういうことでバランスをとらせるようにして、格差是正ということは、消極的かもしらぬが、政府の助成によって格差は縮めていくように努力していることは事実であります。もっと抜本的に格差を解消するということは結構なことでございますから、それは努力いたします。
 それからもう一つは、赤字解消の方法について、お医者さんである先生が開業医でおっしゃるのですから全くそのとおりだと思いますが、一錠の薬をやるよりも三錠くれた方が解消ができますよとだれかが言った。これは私は非常に大変な真理を含んでおると思うのです。確かに現在の保険の薬価基準というものは世間から高いと言われておりますが、しかしそれはそれなりの理屈があって、バルクライン九〇なんというのを取っておったら安くなるわけないのです。しかしそれを取るためには、やはり医療協議会でみんなが一致している、こういうのですよ。これは厚生大臣といえどもどうしようもないです、正直の話が。ですから、あなたのような御意見が医師会でも主張される。薬価基準は、そんなバルクラインの高い人ばかり探して歩いて、一番高い人が一〇〇だとすれば九〇ぐらいの層の、ともかく高い薬ばかり探して歩いて薬価基準にすれば、それは市価と合わないのはあたりまえですよ。しかし現実にそれが医者の収入になっていることも事実なんですね。だから、それをもっと下げるなら下げて、そのかわり技術料の方をもっとがばっと上げろという声が、それは医師会とかなんとかからそろって統一的に出てくれば私は真剣に取り組みます。お医者さんが薬でもうけるなんということは、それは私は正常な方法だと思いません。やはり技術料でそのかわりたくさん差し上げるという二とが私は筋論だと思います。ですから、そういう声を大いに、これは皆さんも医師会に入っておることと思いますが、そういう中でひとつそういう声が出るように、ぜひとも私の方からお願い申し上げます。
○工藤(晃)委員(新自) 大変いろいろとお聞きいたしましたが、一つ一つに対してお聞きいたします。
 まず、別々に診療報酬を取ってもいいのじゃないかということに対して、それは一定にすべきであるというような御発言。大変身勝手な御発言で筋が通らない、こういうふうに私は思います。時間がございませんので、それだけでその答えにしておきます。
 それから、大臣からいろいろお答えいただきました。私はなぜそういうふうな問題を提起したかといいますと、薬でもうけているとかもうけてないとかということを言うのじゃなくて、いまの医療費が大変むだに使われているのじゃないかという点を指摘したい。本米、人の命を助けるために使われている部分が薄い。そして、世の中にいろいろなたとえがございますが、お年寄りが慢性疾患でお薬をたくさんもらって帰られる、飲まないでごみ箱へ捨ててしまったという例も聞いております。これは全くむだなことでございます。そういういろいろな矛盾点を、私はあれが悪い、これが悪いというのじゃなくて、みんなで反省しなくちゃいかぬ問題だ、こういうふうに考えますので、あえてそういう問題を提起しておるわけなんです。
 それから同時に大臣のおっしゃった中で、赤字のところはたくさん補助をし、そうでないところは少ししか補助してない、こういう御発言でございました。しかし、私はその考え方が大変腑に落ちないのでございます。赤字のところに補助するということはよくわかるのですが、黒字のところへたとえびた一文たりとも補助するという意味が私には理解できない。国民の税金でございます。黒字のところへなぜ補助しなければいけないのか、そういう点が私には理解されません。きょうは時間がございませんので、またこの次にその問題について触れさせていただきます。
 要は、コンセンサスを得られればということでなくて、大臣は積極的にこういう問題についてコンセンサスを得る努力をまずしていただきたい。もし、具体的にそういう努力をしていただけるような、こういう方法がある、考えているのだということがございましたらひとつ大臣の方から、もう時間がございませんので簡単にお答えいただきたいと思います。
○渡辺国務大臣 それは私の方も考えています。いま発表の段階でございませんが、必ず御相談を申し上げますから、ひとつその前にもあなた方の方からも聞いて――私が提案してみんなに反対されてはどうしようもないから、あらかじめ御相談をいたしまして、専門家の意見も聞いて、それで御相談しますから、何分その節はよろしくお願いを申し上げます。
○工藤(晃)委員(新自) 時間が参りましたので、最後に、これは委員長にお願いがございます。
 いまも大臣、積極的にいろいろお考えいただけているそうでございます。それで私どもにもいろいろ御相談いただけるそうでございますので、また私といたしましては、国民の生命がどうすれば尊重されるかというたてまえに立ってこの制度の抜本改革というものをやりたいというふうに真剣に考えているわけでございますので、ひとつこの社会労働委員会の中に、大臣の要請を受けて、われわれ国会の中でそういう抜本改正をやっていこうという小委員会をおつくりいただいて、ある一定の期間の間にそういう問題を真剣に取り組んでいく姿勢をもし出していただけるならば大変幸いだ、こういうふうに考えますので、委員長にひとつその提案をしてみたいと思います。よろしくひとつ……。
○橋本委員長 これは私がお答えするのですか。
○工藤(晃)委員(新自) ひとつお答えいただきたいと思います。
○橋本委員長 工藤委員のせっかくの御提案でありますので、これは理事会に一度協議をいたしてみたいと思います。ただ、いま大臣の御要請もありましたのでというお話でありましたけれども、寡聞にして私は実は厚生大臣からそういう問題で小委員会をつくれというような御要請を受けておりません。それと同時に、私が社会労働委員会に所属をするようになりましてから今日までの間に、これは政府からの要望とかいうこととは一切かかわりなく、この委員会の中において心身障害児者に対する基本法をつくろうという話が期せずして盛り上がった時期に、その問題で小委員会をつくったことが一回だけございます。ただしこれは一切政府の申し入れとか要請とかいうこととはかかわりなく、当委員会の意思としてそういう仕事をやろうということで小委員会をつくったことはございました。それ以外に、たまたま政府から提案のなされているような案件についてとかその他の問題で小委員会をつくったことは、そういうお話が出たことはございましたけれども、つくったことばございません。ですから、御提案の御要望に沿えるかどうかは私としてもいま何とも申し上げかねることでありますけれども、せっかくの御提案でありますから、次回の理事会に御相談をさせていただきたい、そのようにお答えをしておきます。
○工藤(晃)委員(新自) 大臣は各党のコンセンサスを大変重要視されているようでございますので、そういうもちろん御意思があるという前提に立たなければ私はこういう発言をしなかったのですけれども、そういう場合にできるだけそのコンセンサスを得られやすい条件をやはり私どももつくっていく、そういう積極的姿勢が必要であろう、こういうふうに考えたもので改めて委員長にお願いしたわけでございますので、そういう点もお含みいただいて、今後ぜひそれが具体化されますように御尽力いただければありがたいというふうなことで私の結論を結びたいと思います。
○橋本委員長 次に、金子みつ君。
○金子(み)委員 私は前回、厚生大臣の所信表明に関する質問をやりかけておりまして途中で切れましたので、きょうはその後の引き続きということになるわけでございます。
 前回、大臣の所信表明の中に、大臣が厚生行政を進めていらっしゃる底に流れる思想として「福祉の心」ということを、大臣の哲学を聞かせていただいたわけでございました。ですから、この所信表明の中にも、あるいはこれからお進めになる厚生行政の中にも、当然のことながらそのことが底辺に流れているはずだというふうに理解をしながらこれからの行政を私たちも見守らせていただきたいというふうに考えるわけでございます。それで、前回途中まで質問させていただきましたから、それをさらに続けてさせていただきたいと思います。
 前回質問させていただいていましたのは年金の話だったわけです。それで、国民皆年金というふうに日本の制度が進歩してきたわけでございますが、その中にあってもいまなおかつ年金に該当しないと申しますか、大臣のせっかくの福祉の心が通じない人たちが存在するという問題について質問させていただいていたわけでございます。初めに申し上げていたのは、予算委員会のときに私どもの党の多賀谷議員から質問されていた問題で、これは国民年金に入り切れなかった人の問題でした。これはそのときの大臣の御答弁で、いままで二度、四十四年と四十八年に特別な措置として救済制度をなさったわけでしたけれども、そういうやり方ではなしに、別の方法で何か考えてみたいと思うという御答弁があったと記憶いたしております。前向きで考えていこう。どういう方法でということはお示しにならなかったわけですけれども、考えていくというふうに御答弁なさったのを私は記憶いたしておりますが、このことについては時間的にはまだ少し御答弁をいただくのは早いかと思いますので、そのことに関する御答弁をきょういただこうとは思っておりません。ただ、そのことはお忘れなく、必ず前向きで、該当されなかった気の毒な、年金から外れてしまう方たち、この方たちを何かの形で救済できるような方法を大臣のお考えでぜひ進めていただきたいというふうに思うわけでございます。これはそういうわけで重ねてのお願いになるわけです。
 いま一つの問題は、やはり同じく無年金になる、年金に関係しなくなってしまうというグループがいまの人たちのほかにもう一つあるわけなんですね。それは何かと申しますと、被用者保険に加入している人の妻の問題です。奥さんですね。これは御承知だと思いますが、被用者保険に加入している人の奥さん、妻は被用者の、被用者という言葉があるわけですから、扶養家族という取り扱いになっておりますね。ですから独立した年金を持っていないわけです。この人たちは、方法はなかったわけではないでしょうけれども、被用者保険の加入者の妻は、仮にこの人が離婚をすることになった場合には無年金になるのですね。この問題を何とか救っていただく方法はないか。
 それを考えますと、やはり結局は、日本の年金制度の中では妻の年金権というものは確立していないということのためにそういうことが起こると思います。国民年金に加入しておられる場合は、妻でもないし夫でもないし、個人加入として扱われていますから、ここには妻というものの存在はないわけです。ですから、妻の存在というのはやはり被用者保険の加入者の妻、配偶者、こういうことになると思うのですね。そうするとこの人たちは年金権がない。これを何とかしなければならないというふうに私どもは考えるわけでございますが、この場合、唯一の方法としては、国民年金に加入させるという方法がございますね、いまの制度でいけば。なぜこの被用者保険に加入している人の妻が国民年金に加入していなかったのだろうかということを、実はいま不思議に思うわけでございます。これはなぜ加入していなかったか。もし加入しておれば年金権はあったのだと思うのですが、この加入が非常におくれてしまっておると申しますか、していない人がたくさんあるという問題はなぜだったのだろう。それをなぜ厚生省は勧めてくださっていなかったんだろうかということをまず私は一つ疑問に思うので、これをひとつ御説明をいただきたいと思います。
○木暮政府委員 被用者保険に入っております場合の妻の年金権の問題でございますが、いまお話しのようなことがあるわけでございます。その点は国民年金をつくりますときにかなり先輩は意識をしておった問題でございまして、国民年金に任意加入の道を開くと同時に、国民年金に任意加入しない場合にもその被用者の妻である期間につきましては空期間ということにいたしまして、年金の資格期間の中には算入するということをいたしておったわけでございます。したがいまして、高齢で離婚をいたしますともう六十歳まで余りがございませんので、その場合でも若干の年金は出ると思いますけれども十分な年金額にはならないということになるわけでございますが、その二点で、国民年金をつくりましたときに妻の年金権の問題は十分配慮しておったということも申せるかと思うのでございます。
 それでいまのお話は、なぜ被用者の妻を国民年金に強制加入にしなかったかということでございますけれども、その点につきましては、被用者の妻でございますので、被用者保険の方で処遇をすべきではないかという意見もございますし、また、強制加入にいたしまして被用者の妻が全部国民年金から年金を得られるということになりますと、被用者保険の方の年金の水準との関連をどうするかという問題もございます。また、強制にいたしますと、現在の被用者保険の保険料が家族をカバーするということになっておるわけでございますので、その世帯にとってみれば被用者保険の保険料と国民年金の任意加入の保険料を二重に納めるというようなこともございまして、任意加入ということで制度をつくったということだと思っております。
○金子(み)委員 そういうふうな理屈は成り立つのだろうと思うのでございますけれども、被用者保険の保険料とかあるいは被用者保険の給付額、それから国民年金の方の保険料とその給付額というようなものは大変に幅がありますね。格差が大変ございます。ですから、強制加入とした場合に、離婚した妻が自分の年金とそれから夫が受けるはずであった年金の二分の一の遺族年金が給付されるということがあると思いますけれども、仮にそのことが行われたといたしましても、それほど不都合な高額の給付が行われるということは考えられませんし、それでそのことが被用者保険とのバランスを壊すようなものになるとは思われないわけです。ですから私は、そのことが実際に行われても矛盾はないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。そうでなかったら、たとえば外国がやっているように、妻の婚姻期間というものを割り出して、そしてそれと比例配分するというふうなやり方だって考えられるわけじゃないでしょうか。そういうことを考えてくださったことがあるんでしょうか。いま局長のお話では、そのことは頭に入れてあったんだ、考えていたんだということですけれども、姿となってあらわれたものにはそのことは表明されていないわけですね。ですから、心の中で考えていてくださっても制度としてそれが出されていないということは、やってなかったということと同じになる、第三者にはそのようにしか見られません。ですから、そういうふうなことでは納得できないと思うのですが、いまのような方法を考えられるということは、検討してごらんになってみませんか。
○渡辺国務大臣 非常にいい御提案だと私思いますよ。それは相続税のときも同じようなことがあって、実際は妻の座の問題は大きな問題になったのです。現実問題として三十年も連れ添っていて別れるという人は余りいないと思いますが、二十五年、三十年一緒にいて別れるということになって、それでしかも三十年務めた妻が裸、はだしというふうな話になっちゃって、後から若いのをもらったらすぐこっちは死んじゃった、若い人が三十年分の掛金のおやじさんからみんなもらってしまうということは、これはだれが考えても非常に不合理ですね。ですから、そうすると前の人に三十年分を認めたら後は五年分ということでするとか、何かしなければこれはやっぱり不公正になってしまうわけですよ。前の妻に三十年分の年金を半分くれて、後の妻は五年しかいないのにこれに三十五年分くれるわけにはいかないわけですから、だからそういうようなことを含めて、年金問題の基本構想懇談会でいろいろ結論を出すときに私はこれは一歩進めて検討する必要がある。相続税でも同じことをやったのですよ。ともかく妻のものは三分の一以内は無税にしようというときに、それじゃ無税にするということになったら、前の妻を追い出しておいて後から若いのをもらえば、それが何十年間も無税なのかどうかという議論がありまして、それでやはり婚姻期間の計算というものを中に一緒に取り込もうということをやっておりますから、似たような思想なので、これは十分に検討させてもらいたいと思います。
○金子(み)委員 来年、五十三年度は年金改正の年になりますね。そうじゃないでしたかしら。
○木暮政府委員 昭和五十一年度に厚生年金につきましては再計算をいたしまして大改正をいたしました。その次の再計算の時期でございますけれども、これにつきましてはその後の経済情勢等を見きわめまして決めさせていただきたい、こういうふうに思っております。
○金子(み)委員 経済情勢を見きわめて、調子が悪ければやめようということかもしれませんけれども、そうではなくて、やはり大体五十三年はたしか年金をもう一遍改正する年だというふうに理解していたんです。もしそうでないとすれば何もそれにこだわることはないと思います。私がそれを持ち出しましたのは、来年がそうだと私が理解していたものですから、いま大臣が言われたようなことは来年の改正に組み込んでいただきたいということを申し上げたかったわけなんですが、来年が必ずしもそうでないとするならば、そのことにかかわりなくいまのことはできるだけ早く改正をして組み込んでいただくようにぜひお願いしたいと思うわけです。風聞でございますからあるいはどうか知りませんが、この国民年金制度ができました当初、被用者保険に加入している人の妻に強制加入をしなかったという事実があるわけですが、そのときこのことをいち早くわかっていたのはもちろん厚生省の方たちです。厚生省を筆頭に公務員の妻は全部国民年金に加入させていたということを聞いて、ほかの人たちが大変に憤慨したというのも聞いております。こういうことは風聞ですから、一人一人、この人だ、あの人だとあげつらう必要はないと思いますけれども、あるいはそういうこともあったのかもしれないと思います。
    〔委員長退席、中山(正)委員長代理着席〕
そうであるとすれば、やはり先ほど局長が御説明くださったことは理屈であって、本当の妻に対する考え方、自分の家族に安心した生活をさせるための考えとはいささか遠いというふうに思うわけです。ですから、そういうことがございましたので、私はそれを言うわけじゃありませんけれども、せっかくの大臣の御答弁もございましたから、できるだけ早い機会にそれをやっていただきたいというふうに思うわけでございます。
 そういうこともございますので、考えていただく中でもう一つつけ加えて考えていただきたいと思いますことは、いまの場合は妻の場合でございましたけれども、そういうこともあり得ますので、だれの場合でもそうですが、国民が安心して最低生活ができるという憲法二十五条のあの規定、国民の生きる権利ですが、国はそれを実現するための責任を持っているわけですね。義務も持っているわけですから、それを実現させるための最低生活を保障するという意味合いの基本的なものをやはり考えておく必要があるんじゃないかと思うわけです。最低生活を保障する基礎年金と申しますか、そういうものをどこのレベルに合わせてつくったらいいかという問題だと思いますけれども、いろいろございましょうけれども、私はやはり老人福祉年金などが一番そのものになるんじゃないかというふうに考えます。老人福祉年金が今回一万五千円に引き上げられたわけでございますけれども、一万五千円ではいまとても生活できないのは御承知だと思います。生活保護世帯に給付されている金額からいいましても一人頭二万円を超えているわけでございますね。それから七十歳以上のお年寄りの御夫婦の場合の補助もやはり一人頭二万円を超えておりますね。そうしますと、老人福祉年金の受給者だけが二万円足らずだということはどうも納得できないのです。これはやはり最低二万円にするという問題について、いまの大臣はどう考えていらっしゃいましょうか。実はこれは田中前厚生大臣は、二万円というのは架空の金額じゃなくて、軽費老人ホームに入る必要の最低限度ですね。ですからそこまでは引き上げたいということを何度も答弁していらしたのですけれども、それは実現できなかったわけなんですけれども、それを引き継がれた渡辺厚生大臣はその点をどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
○渡辺国務大臣 この話も、もう予算委員会から何回も何回も実は出ておる話でございますが、お金がたくさん私の方にあればやってあげたいという気持ちはございますけれども、しかし実際問題として無拠出年金の場合は掛金がないわけですから、全額国民の税金で出す。それで、よく生活保護との比較をされるのですが、生活保護の方は非常に厳しい条件があって、それは財産を持っていたり所得があったりしたらみんな生活保護の対象にならないわけですよ。ところが福祉年金の方は、財産を幾ら持っておっても、もしだんなさんが八百七十六万円以下の所得ならば奥様には差し上げますということですから、そいつを一緒に比較して生活保護と同じだけくれというのなら、全然条件が違うのですよ。だからなかなかそれはそのまま、財政上の問題もあって、そうはできませんということを私申し上げてきておるわけでございます。
○金子(み)委員 それでは、老人の問題が出ましたので、その次に所信表明の中に載ってきます障害者とかあるいは母子とか老人とか、要するに社会的には弱い立場にあると通念上考えられている方々の問題について少しお尋ねしてみたいと思います。
 お年寄りの話が出ましたからお年寄りの話から先に進めさせていただいてもいいと思うのですが、お年寄りの問題としては、いま一番問題なのは医療問題と福祉問題と、この問題がうらはらにあるということです。私はいつも、持論ですが、医療と福祉とは一本のより合わさった綱のようなものだという考え方を持っておりまして、医療と福祉がばらばらになっていたのでは、お年寄りのためあるいはそのほかのためにも何の意味もなさない。両方が効果をあらわさないということをいつも考えているわけです。ことにお年寄りの場合にはそのことが強く言えるというふうに考えるわけです。ですから、そういうたてまえから考えてみまして、お年寄りのいまお話の出ておりました老齢福祉年金の問題、これは所得制限がございますね。ことし所得制限が引き上げられたと申しますか、引き下げられたと申しますか、どういう言葉を使っていいのかわかりませんが、内容としては……(渡辺国務大臣「据え置き」と呼ぶ)据え置きは、扶養義務者の場合に据え置きになったわけですね。本人の場合は引き上げですね。それから扶養義務者の場合も初め引き上げという原案を持っていらっしゃいましたね。そういう原案がございましたね。あの原案どおりにもしいくとすれば、約十八万人ぐらいのお年寄りが対象から外されるということが大変心配されていたのです。それが、御努力の結果だと思いますが、本人は引き上げられてしまったのですけれども、扶養義務者の方は据え置きになったということで、少し緩和されたというふうに理解できるのです。いまの緩和された状態というのは五十二年度の予算の実態ですが、そのままこの政策が実現されるとする場合に、以前と比べてどれぐらいお年寄りが締め出されますか。
○木暮政府委員 老齢福祉年金で七千人でございます。
○曽根田政府委員 老人医療無料化、いわゆる無料化制度の関係では約八千人でございます。
○金子(み)委員 そうすると両方で合わせて一万……。
○渡辺国務大臣 いえ、大分ダブっております。
○金子(み)委員 ダブっているといっても、全部ダブりませんでしょう。
○渡辺国務大臣 大部分。
○金子(み)委員 それはどれくらいダブるのかというのもわかっていらっしゃいますね、いまいただかなくても結構ですから。両方合わせて一万五千になりますでしょう、いまのお話ですと。七千人と八千人で一万五千、そうなりますね、一応この数字では。
○曽根田政府委員 延べ数で一万五千あって、実際には対象がほとんど同一対象ですから大部分はダブっているわけですけれども、厳密に外れる部分、これは後ほど……。
○金子(み)委員 大部分じゃ困りますから、おわかりになっていると思いますから教えていただきたいと思います。いまでなくて結構でございます。
 そこで問題は、何人になろうと数の問題ではないと思うのですね。これは何人ダブらない人が報告していただけるかわかりませんけれども、考え方は数の問題じゃない。福祉の心というのはそういうところにはないと思うのです。たとえ一人であろうと千人であろうと、一万人であろうと私は同じだと思う。統計局の人が物を言うのだったら、統計は数字が意味がありますなんておっしゃるかもしれませんけれども、政治はそうじゃないと思うのですね。ですから、仮にこれが一人だろうと五人だろうと私は同じ意味だと思いますので、数が少ないからいいんだというふうにお考えだったとすれば私は間違いだと思います。そういうふうにまさか大臣はお考えでないと思いますけれども、数が少なくても、少ない数のものをやはり救わなければならないという気持ちがおありになっていただきたいと思いますが、それはどうでしょう。
○渡辺国務大臣 これは新聞などでも先生おわかりだと思いますが、大蔵省は、家族で七百万円、それから三百二十八万に配偶者の場合は切り込んできたわけです。現在、配偶者、要するに具体的にだんなさんがどこかに勤めていて、八百七十六万円までもらっていても奥様には年金を差し上げるというやつを、八百万も所得があって、財産が幾らあってもほとんど関係なく年金を差し上げるということは、この財政難の折からどうもそれは不公正是正の一端として直してくれという要求が大蔵省からあったわけですよ。もっと気の毒な人がいるんだから、そういう方に回す金なんだ。それから片っ方の問題、家族のやつは、八百七十六万を七百万に切り下げてくれという要求があったことは、これはいまだから言うけれども事実なんです。しかし、予算のどさくさ紛れにそんなことは困るということで、最後までこれは大臣交渉がもつれまして、二回もやるような騒ぎをしたわけです。その結果、ともかく据え置きというふうな話になったのです。私としては、これは年金を上げろという話と一緒になってくるわけだけれども、現実の問題として財産を持っていることは余り関係ないのですよ、この福祉年金というのは、所得の問題だけなんですから。だから、五億円の山を持っていようが宅地を持っていようが関係ないのですよ。それからもう一つは、預貯金というのは所得としてつかまえるのがなかなかむずかしいのですよ。なぜかというと、仮に三千万、五千万持って銀行へ積んであっても、分離課税という制度がございますから、分離課税だと申告しなくたっていいわけですから、実際はわからないのですよ。しかし、そういう人にも全部一律にくれますよというお金が福祉年金なんです。だから、条件の非常にまずい、貧しい人にだけ差し上げるというのならばまた話は別なんだけれども、そういう問題もあるので、ともかく私の方としては八百七十六万、だんなさんが持ったら一千万円まではよくしろということを言えばそれでまた財源を食うわけですから、厚生省の中としてはそのほかにもそれはいろいろと医療の問題にしてもやらなければならない問題があるということのために、今回は八百七十六万に押し戻したというところで、私の方はそれはそれでいいということに実際のところしたのです。限りある財源の中での話ですから、あとは配分の話ですからね。そういうことで御了承を願います。
○金子(み)委員 貧しい人にだけ福祉をするというのは本当の社会保障ではない。それは救貧事業ですよ。だからいま大臣おっしゃるように、社会保障あるいは社会福祉ということになれば幅広くしなければならないということになるので、いろいろ問題があるということもいまの御説明で一応わかります。わかりますけれども、厚生行政は、基本的な考え方はそこへ持っていっていただかなければならないのじゃないか、そう思って申し上げたわけです。
 引き続いてお尋ねして確認させていただきたいのは、ことしは老人医療費の無料化というのは大変難航いたしましたね。それで、これも大臣一生懸命がんばってくだすったおかげだと感謝いたしますが、五十二年度はとにもかくにも無料化は実現した。しかし、大変にきわどい橋を渡ったような感じもいたします。五十三年度、来年度、もうそろそろ来年度の予算の時期にもう二、三カ月したら入るのじゃないかと思いますが、これは五十三年度についてはどういうふうに進めていこうと考えていらっしゃるか。来年になったらこれが落ちることのないように、大臣の御決意を伺わせていただきたい。
○渡辺国務大臣 老人医療問題懇談会あるいは年金構想の懇談会等でひとつ専門的な分野から、社会的な公正あるいはいろいろな問題の効率化、そういうものも考えて、ともかく公正妥当に決めていきたいと考えております。
○金子(み)委員 それに関連いたしますけれども、医療費を無料化にしたことがあたかも現在の医療機関を混乱させたかのような風潮があるのでございますが、私はそれは必ずしもそうだとは思っておりません。というのは、お年寄りが病院の外来をサロン化してしまうとか、病院のベッドを焦げつかせて困るとかというようないろいろ意見が出ているようですけれども、外来に通っておられるお年寄りの数なんというのは外来患者の全体の一七%ぐらいにしかならないので、そんなにサロン化して病院を困らせているという実態は余りあるとは思えないのですが、そういうような声が大変高いわけです。その高い声を正しく理解してもらうという必要もあると思いますし、また実際問題として、お年寄りは急性の疾患よりもむしろ慢性的な疾患――疾患と呼んでいいのかどうかわかりませんが、疾患もございましょうし、あるいは異常あるいは障害ということがあると思いますね。ですから、どうしても滞在期間が長くなるということもあると思います。
 そこで、いまの医療制度あるいは医療の行政のあり方の中で、お年寄りのために専門病院をつくるとか、あるいはお年寄りは病院でなくても、いまのいわゆる病院の概念で言うあの病院でなくても――お年寄りに必要なものは何だと言えば看護のケアなんです。診療に関する部門は毎日毎日なくてもいいわけですね。週に一回でもいいかもしれない、二週に一回でもいいかもしれない、そういう人たちがベッドをふさいでいるということも確かにございます。ですから、そういう方たちに入っていただく老人専門病院なり、あるいは病院でなくても、いわゆるそういう方たちを収容してお世話する、外国にたくさんございますね、ナーシングホームのようなもの、あるいは今度東京都が始めましたハーフウエーハウスのようなもの、ああいうようなものを国が率先してつくることを行政の指導としておやりになって、そしていわゆる急性疾患を対象とする病院は病院としての機能が十分発揮できるようにというふうなことを考えているのだろうと思うのですが、これはずいぶん昔から考えられていることですから。ただなかなか実現しないので、なぜ実現しないのだろうということが不思議であるのです。ですから、その辺はもうここら辺でやらなければ、後十年もしたら日本もお年寄りは総人口の一二・四%ぐらいになりますね。一〇%を超える。英米と変わらなくなるわけですね。ですから、そういうような時代が来るのですからそれまでに準備をしておく必要があるのじゃないかというふうに考えますが、そのことがなぜできないのでしょうか。私は、厚生省の担当官の方たちは十二分にそのことは知っていらっしゃると思うのですね、そういう取り扱いをすればいいということを。それが実現できない理由をひとつ聞かせていただきたいと思います。
○曽根田政府委員 いまお尋ねの老人専門病院あるいはいわゆる中間施設、いろいろなものがございますけれども、あるいはまた訪問看護の問題、老人医療を取り巻くいろいろな施設整備の問題がございますが、これにつきましてはいろいろ従来検討はいたしておりますけれども、結局医療と福祉の接点と申しますか、その辺の機能調整をどうするかというような問題がございましてなかなか結論が出なかったのでございますが、いずれにいたしましても、老人医療費現行制度の見直しの際に、そういった施設整備をどういうふうに考えていくかというのがむしろ中心的な議題の一つになろうかと思いまして、現在、先ほど大臣が申しました懇談会における審議が一つの重要な柱になっておりますので、見直しの最終結論が出る際にこの問題についてもある程度の決着はつけたいというふうに考えております。
○金子(み)委員 重ねてお尋ねいたしますが、その老人問題懇談会ですね、そこでいろいろと検討してその結果でというお話でございましたけれども、それは結論はいつお出しになる御予定ですか。
○曽根田政府委員 来年度の予算編成に間に合う時期に結論をいただきたいという考えでございます。
○金子(み)委員 それでは、来年度予算を編成される場合にはそのことが実現できる、あるいは盛り込んでいただいて実現できるというふうに期待を持っていいですか。
○渡辺国務大臣 五十二年度予算をいまやっているわけですから、五十三年度予算を編成ということになると、ことしの暮れですな、ことしの暮れまでに結論を出したい、まあ、請う御期待という方向でやらしてもらいます。
○金子(み)委員 大きく期待して待っております。大臣の御手腕を期待しています。
 続けてお尋ねしたいことがございます。それは母子問題でございますけれども、五十二年度の予算の中で、今度母子保健対策を強化するというたてまえから一歳半の子供の健診をするということが新しく追加されているわけでございまして、それはそれなりに大変結構だと私は思っております。三歳児だけでは十分でないから一歳半、こういうことになっているので、それも結構だと思います。ただ、やはりどこまでもこれは後追いじゃないかというふうに思うわけです。問題は、健康な子供を出生するためには健康な母体が必要だということはもう当然の話でございますが、子供のことは一生懸命やってくださるのですけれども、母親の方はどうも何となく置き去りというか、手薄だという感じがいたします。母親はやはり女性なんで、女性べつ視になるかなと思ったりもする。先ほどの妻の年金権じゃないけれども、ひがむわけではありませんが、どうも日本のあらゆる行政が女性に対して決して公平ではない、男性に比べて公平ではないということがあちこち出てまいりますが、その中の一つにもこれがなるんじゃないかなと実は思うわけです。
 そこで具体的にお尋ねをしたいと思いますのは、今度の予算の中で、子供だけでなくて母だってやっていますよとおっしゃるかと思うのですが、母のとらえ方の問題もありますが、この予算の中で見る限りにおいては、母は常に妊産婦になっているわけですね。それで、この妊産婦の健診の問題ですが、健診の費用は上がっておりますが、これは妊娠期間中に何回健診できるように今度はおふやしになったのでしょうか。
○石野政府委員 従来どおり二回でございます。
○金子(み)委員 そうすると母親の、妊産婦の保健問題を推進するために従来どおりと、一つも変わらなかった、何も発展していないというふうに理解してよろしいでしょうか。
○石野政府委員 回数の面から申し上げればそのとおりになります。
○金子(み)委員 私は、二回が少な過ぎる、三回にしなさい、五回にしなさいという言い方もあると思います。
    〔中山(正)委員長代理退席、委員長着席〕
諸外国では妊婦の健診というのは毎月行われているわけです。しかし日本の場合はわずかに二回。しかし、実際問題として二回で終わらないということは御存じだと思います。妊婦期間中の母体を守るためには、二回だけでは守り切れないから、それ以外の場合も妊産婦は健診を受けています。しかし経費の点では、これは全部自費負担になるわけで、大変に費用がかかるわけですから、受けられる人と受けられない人ができてくるわけで、大変に公平を欠くという問題が起こってくるわけです。ですから私は、希望としては、二回では回数が少ないから、これはふやしていただけたらよかったなと実は残念に思っているわけでございます。少なくとも妊娠の初期と後期においてはもう少しやらなければいけない。初めの四カ月までとおしまいの三カ月とは最低必要なんです。ですから十回、十カ月の期間中毎月毎月ということまでは要求いたしませんが、少なくとも初めの四カ月、後の三カ月、七回ですね、これは今後計画をお進めになるときに考えておいていただきたい問題です。初めの四カ月は一番危険な時期ですし、後の三カ月非常に危険な時期です。
 その証拠にはという言い方もおかしいのですが、厚生省が出していらっしゃるこの資料を見ましても、周産期死亡率の国際比較を見ますと、日本だけ二けたなんですよね。しかも、何が二けたかといったら、周産期死亡率は後期死産と早産新生児死亡との二つに分かれていますが、日本は後期死産のところで非常に高いのです。これは妊娠後期です。妊娠後期死産が非常に高いわけです。日本は一二・九あります。オランダが九・三、カナダが八・八、スウェーデンは六・八という数字です。ですから、これが高いという問題は、やはり妊娠後期に母体が保護されていないという証拠だろうというふうに私は考えます。もしこれが本当に保護されておれば一あの鹿児島の五つ子の場合、あれは周産期医学の成功だというふうに報告されておりましたが、周産期にちゃんとした指導、管理ができれば、このような数字は出なかったと思います。
 ですから、そういう意味でも、ぜひ妊娠期間中の健診の回数はふやさなければいけないし、後期に十分診なければいけないということを私は申し上げたいのですが、そのことは考えていただけますか。
○石野政府委員 妊娠中の健診の問題につきましては、これは先生御存じのとおり、四十一年にも通知を出しておりまして、妊娠前期、それから後期、それぞれ回数を非常に多くやるように指導いたしております。一番望ましい姿は十二回ぐらいがいいのじゃないかと思いますけれども、実際上はなかなかそうはいかないということでございますが、私ども、できれば公費によりましてそういう妊婦の健診の回数をふやしたいという気持ちは十分持っております。しかし、一つの問題といたしまして、母子保健法のたてまえがございまして、これは法律上、妊婦みずから積極的に受診することが基本である、こういうふうに書いてあるわけでございます。そういうこともございますし、それからまた、かたがた健診の受け入れ体制の問題もあるわけでございます。それから診療の単価の問題、いろいろな問題もございますし、そういうことから実際上公費でどこまで負担するかということになりますと、望ましい回数とは別個にいろいろな制約が出てまいります。
 そういう意味で、私の方は、特に妊娠の前期の問題と後期の問題、それぞれ必ず一回は受けなければならぬという形がいまの姿でございまして、気持ちといたしましては、できれば回数をふやしたいわけでございますが、いまのような問題がございまして、実際これを実現することはむずかしいというのが現状であろうかと思います。
○金子(み)委員 私は、いま御答弁を伺っていてよくなるかなと思ったら、一番おしまいのところでむずかしいというお返事をなさったので、大変がっかりしました。やる気がないという意味でしょうか。
○石野政府委員 局長といたしましては、ぜひやりたいのですが、いろいろ制約もございますので、ここで自信を持ってやります、こう答えるわけにはいかないということを申し上げておるわけでございます。
○金子(み)委員 それはぜひやっていただきたいことでございますから、来年度予算を編成なさるときには、局長、大いにがんばっていただきたいと思います。大臣が後押しをしてくださるに違いないと思いますから、ぜひそれをやっていただきたい。
 同じ関連する事項でもう一つ私はお尋ねをさせていただきたいのですが、これは政策となりますから大臣に御答弁をいただきたいのです。
 実はこれは私、何遍でも申し上げておりまして、またあれかとおっしゃるかもしれませんけれども、実は大臣、御存じだと思いますが、日本の妊産婦の死亡率は世界一です。これはいま始まったのじゃないのですね。この厚生省の資料に数字が載っているのです。戦争前の昭和十五年、出生十万に対して日本は二三九・六のときに、同じぐらいの数字を持っておりますスウェーデンが二一六・一なんです。ところが戦後、最近の数字は、これで見ますと、日本はまだ四〇・六もあるのにスウェーデンは七・一になってしまった。これはスウェーデンだけではないのです。そこに表をお持ちでしょうからごらんくださいませ。カナダの場合でもあるいはイギリスの場合でもアメリカの場合でも、諸外国は戦争を境にして妊産婦死亡率をがたっと引き下げているわけですね。ところが日本だけが、戦争前に一番低かったのに、戦後になったら、そのまま居残りになって取り残されて、いま最高になっているというわけです。日本も日本なりにだんだん下げてはいるのです、その努力はわかるのですが、外国に比較いたしますと、はるかにけたが違うという問題です。一けたと二けたの違い、そしてそれが全然下がっていかない。この問題です。
 なぜこういうことになったかということなんですが、これは日本の母性衛生行政、子供のことは別です、母のための厚生行政が大変に立ちおくれだったというふうにしか考えられない。もちろん戦後は、日本は戦争に負けた国ですから、その問題どころではない、ほかの問題がたくさんあったと思います。結核の問題もあれば、伝染病の問題も大変だったと思ます。それはそれでわかりますが、なぜ母性問題も重点を入れて政策としてお立てにならなかったのかということです。何十年もたっているんですよ。いまだにこんな数字を持っている。厚生行政としては恥ずかしいじゃないでしょうか。これはどういうふうにしたら直るとお考えでしょうか。
○渡辺国務大臣 私は、専門家でないのでよくわかりませんが、一番死亡の多いのは産後の出血多量というやつだそうでございますけれども、ひとつ専門家の方から答えさせますから……。
○石丸政府委員 妊婦死亡で一番多いのは、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、出産時における異常出血が非常に大きな原因になっていると思うわけでございます。この出産時における異常出血に対しまして、やはり救急医療の問題が必要だというふうに考えておるわけでございまして、今回救急医療対策としていろいろやっておるわけでございますが、特に妊婦に対します産科救急という問題、これがわが国では非常におくれておるところでございまして、今後われわれとして、そういった血液の供給問題を含めまして、いわゆるグループ診療というような形でこれに対応していくべく、この産科救急医療体制をつくりたいと考えております。
○金子(み)委員 出血も確かに多いですね。しかし、私の持っておりますこの表では、厚生省の統計ですけれども、妊娠中毒症の方が高いのです。ですから、どちらも高いということですね。この二つともが、世界に比べて飛び抜けて高いということです。
 ですから、この二つの問題を解決しなければならないというふうに考えるわけですが、その方法として私、前々から御提案申し上げているのは、この二つの病気とも、妊娠になってからじゃ間に合わないものなんですよ。妊娠する前から健康を保っておかなければならない。たとえば貧血のひどい人は弛緩出血で妊娠のときに大出血をするわけですね。ですから、ふだんの健康を管理するということが大切なんですが、厚生省の母性行政というのは、妊産婦だけしかやっていらっしゃらないんですね。妊娠する可能性のある家庭の人たち、妊娠の可能性のある家庭の主婦あるいは家庭にいて仕事をしていない女性、職業についていれば労働安全衛生法で健康管理していますけれども、仕事についていない、家庭にいる婦人あるいはパートなんかに出ているような人たち、こういう人たちを健康管理する制度は日本には何もないのです。主婦も何もありません。これは谷間なんです。赤ちゃんはあります。母子保健法で赤ちゃんもある、三歳児もある、今度は一歳児半でしょう。そして子供たちは学校保健法があります。それから大人になれば安全衛生法があります。お年寄りになれば老人福祉法がありますというふうに、皆どの段階でもあるのです。ないのが家庭の主婦なんです。
 ですから、手落ちじゃありませんかということを、前々から私、申し上げているわけですが、そうしましたら、齋藤元厚生大臣が確かにそのとおりだ、前向きに善処しますとおっしゃってくだすった。しかし、前向きに善処してくだすったのは何かと申しましたら、厚生保険と船員保険の被保険者の妻、四十歳以上の成人健診をやります、こういうことだったのです。しかし、成人健診は成人病のための健診ですから目的が違う。そうではなくて、一般健康診断制度がなぜできないのかということなんです。これはそんなに新しい法律をつくらなくても、母子保健法の中でできるはずでございますから、大臣、ぜひそのことを考えて、この不名誉な数字をなくすために、日ごろの家庭の主婦あるいは婦人の健康管理をする、健康診断をする制度をつくっていただきたいのです。それを制度化するということについて、これは政策になりますので、大臣の御意見を聞かせていただきたい。
○石野政府委員 その前に、ある程度研究いたしておりますものをお話ししたいと思いますが、四十八年に金子先生からお話ございまして、実は四十九年度から、非常にじみでございますけれども、家庭婦人のうちで妊娠前の若い婦人に対する健康診査の問題につきまして研究いたしておりまして、心身障害研究の中で若年女子の健康管理についての研究ということで実は始めたわけでございます。その中身は、実は東北大学の鈴木教授にお願いいたしまして、特に宮城県、福島県を対象にいたしまして、女子の生徒に対します血圧の測定、それから尿検査、血液検査、血液型の判定、心電図、心音図、こういう検査を行ないまして、異常の認められた者に対しましてさらに精密検査を続けて、その後の保健指導を追跡いたしております。これを四十九年から五十一年まで毎年二百五十万円の研究費をもちまして続けておるわけでございますが、その研究成果がまだ出てまいっておりません。その研究成果を踏まえた上で、行政ベースに乗るものがあり得るならば、具体的な施策として検討してまいりたい、こういうことでございます。
○金子(み)委員 いまのお話は四十九年ですね、そうすると五十年、五十一年、ことしあたりは研究成果が出るのでしょうか。
○石野政府委員 もう一年はかからないかと思いますけれども、非常に範囲が広うございますし、それから追跡調査でございますので、その人たちが結婚をして、実際上妊婦になるということまでつかまえませんと意味がございませんので、そういう意味ではまだ時間がかかるのではないかと思っております。
○金子(み)委員 待っていられませんね。また、ことしも死亡者出ますよ。来年も出ます。ですから、そんなに悠長にお考えにならなくても、この問題は大体どうすればいいかくらいは――健康診断制度を設けるために、一つ一つそんなにどの場合でもいままで調査をなさったのでしょうか。そうじゃなかったと思います。ですから私は、この問題に限ってそのように慎重に御調査をなさる理由がわかりません。健康診断をするのに、そんなにお金のかかる問題でもありませんから、そういうように慎重に調査なさるのも結構だとは思いますけれども、そのことのために片方でどんどんと相変わらず高死亡が続くということを見逃しておくわけにはいかないと思うのです。ですから、できるだけ早い機会に健康診断制度を設けるということをぜひ決めていただきたいと思いますが、大臣どうでしょう。
○渡辺国務大臣 私は、予防医学ということは、実際のところ重点で取り上げなければならぬ、こう思っておるのです。思っておるけれども、私は、具体的にどういうことをやっていいかわからない。それには専門家がおりますから、いまその研究をさせて、研究が出たらそういう方向で、橋本委員長も皆さんも全部一緒に予算をとることに御協力いただいて、そういうことに力を尽くしていきたい、こう思っています。
○金子(み)委員 私は、どうも不思議でしょうがない。この問題だけ一生懸命調査研究なさると言うのですが、調査研究が悪いとは言わないですけれども、余り悠長になさるから、戦後三十何年たってもこんな数字が相かわらず便々と残っているということで、私は、本当に恥ずかしいと思うのです。これは厚生大臣として恥ずかしいと感じていただかなければ、私は直していただけないと思うのですけれども、そうお思いにならないでしょうか。
○渡辺国務大臣 これは恥ずかしいことは恥ずかしいかもしれませんが、日本では、昭和二十五年が十万人で百七十六人の死亡率なんです。それがだんだん百三十になり、八十になり、五十になり、四十五になり、四十になって三十八までになった。これは四十八年ですから、最近はもう少し減っているかもしれません。だけれども、外国から見れば確かに御指摘のように、イタリアよりはまだいいが、フランスよりも劣っておる。それからアメリカよりも劣っているということは事実です。事実だけれども、スタートのときから見ると、ほかの国はもっと低かった。それを日本は、昭和二十五年の百七十六のときはアメリカは八十三、半分くらいだったわけです。ですから、この短い間に極力努めてきたことは事実なんです。しかし、これでは満足できませんから、そういうことがないように今後ともせいぜい努力をいたします。
○金子(み)委員 ぜひ努力していただきたいと思います。私は、初めに申し上げましたように、日本は日本なりに努力してきていることは認めているのですけれども、余りにも外国との差がありすぎて話にならないじゃないか。ですから、それを早くやってくださいと申し上げているのですから、ぜひいまの大臣の御在任中に制度改正ということを考えていただきたいと強く要望をさせていただきます。
 それから、もうあと時間もわずかでございますので、予定どおり進みませんけれども、一つお尋ねさせていただきますのは救急医療の問題です。
 救急医療の問題は、いろいろな方が質問を出していらっしゃいますから、ここでいろいろとまた重ねてダブったようなことを質問することは私は避けたいと思います。時間ももうありませんのでいろいろと申し上げませんけれども、救急医療に関して申し上げたいと思いますことは、今回は大変結構な計画をお立てになった、やっとの思いですけれども。ところが三年計画、これまた悠長なんですね。救急医療の被害は待ち切れないですよ。三年計画、これをせめて二年に、この問題は緊急性があるんです。だから、いままでしてなかったのだからいいじゃないかというのは大変におかしな考え方です。そうじゃなくて、いまから三年待って、そして救命救急センターもいま十五カ所しかできていない、この前の四カ所で十九ですが、これを四十七にふやそうとか、あるいは情報センターですか、これも十五カ所から始めて三年かけて全県に、こういうことなんだと思うのです。それは一つの行き方でしょうけれども、この際、この問題は大変に緊急課題で、厚生省も目玉商品として今度お取り上げになっていらっしゃるくらいですから、なぜせめて二年ぐらいにこの問題を解決するような予算措置、これはほかのものからこちらへ予算を回してもいいじゃないですか、厚生省全体の予算の中で、あるいは厚生省の予算だけでなく、国の予算の中で。この緊急性はだれだって考えるでしょう。人命を尊重するということは、私は「福祉の心」の第一番だと思いますよ。ですから、人命尊重ということを考えれば、ほかの予算を回してでも二年間にこれを仕上げるという熱意と努力とを私はぜひ見たいと思います。
 そのことと、続けて質問させていただきます。もう一つですけれども、これは医師を初めとして医療機関の協力がなければできない、これはよくわかりますが、医師、医療機関だけでなく、医療関係者全部に関係いたしてまいります、医師が一人で何もできるわけじゃないから。だから、皆の協力が必要なのでございますが、その協力を実現させるという意味におきまして、この仕事は義務化するというような考え方で制度化するということはできないでしょうか。その二つを質問させていただきます。
○渡辺国務大臣 それは三年が二年、二年が一年がいいのはわかっているのです、私も。実際問題としてこの予算を取るに当たりましても、それは去年の四倍つけたわけですよ。四倍つけて、事務当局としては、一体どこでやるのだ、金だけ取ったってやる場所がないじゃないか、そういう議論まであったのです、実際の話が。申請がなくてどこでやるのですか、だけれども、これはともかく目玉商品でやってくださいということで、それは事務当局から聞いてもらった方がよくわかりますが、大変な苦労をしてやっていることは事実なんです。だから、そういうことはそういうことで認めてもらわぬと、みんな悪いようなことを言われても困るのであって、われわれとしては最大限のことをやっております。
 もう一つの義務化の問題は、これは法律でもつくって義務づけるというのはどういうことか知りませんけれども、それは言うべくしてなかなかむずかしいのですよ、これは。お医者さんにともかく義務づけるということは、なかなかむずかしいのです。ですから、なるべく誘導政策で、それでやらせていただく、こういうことにしておるわけでございますので、御了承をお願いいたします。
○金子(み)委員 私は、決してこのことはやさしいなんて考えたことはありません。大変だったということもよくわかります。ですから、よくここまでおやりになったなと思うぐらい、今度の救急医療の問題は、いままでになく元気を出していらっしゃるということもわかるわけなんですけれども、ただ、さっきから申し上げているように、大変なことはわかりますけれども、事、人命にかかわる問題だということなんです・あのたらい回しの訴訟になっているような事件が、あそこの問題だけではなく幾つも幾つも起こってくるわけですね。
 ですから、そのことを考えれば、大臣は、大変だ大変だということを理由になさらないで、大変はよくわかりますけれども、それを押して努力をしていただきたいということを申し上げているわけです。だから、そのことを私は申し上げているのであって、それが「福祉の心」じゃないでしょうか。私はそのことを、大変いいことを大臣はこれにおっしゃっていると思うのです。厚生行政をなさる上の基盤ですから、それを考えていただいて、無理なんだ、だめなんだというふうにお考えにならないで、ぜひこれはやってみせるという意気込みを見せていただきたいのです。
○渡辺国務大臣 これはやってみせるということで、三年間というのはかなり無理しているんですよ。だけれども、それはさらに充実をするように一層努力はします。
○金子(み)委員 時間でございますから、これで質問を終わらせていただきます。予定したものもございましたが、次の機会に譲らせていただきまして、どうか大臣、私は、新しい渡辺大臣のその熱意、ファイト、それに大変期待するわけでございますから、どうか五十三年度の予算のときにはそのことをぜひ発揮していただきたい。考えているだけでなく、実現するように持っていっていただきたい。ぜひよろしくお願いいたします。
○橋本委員長 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。井上裕君。
○井上(裕)委員 自由民主党の井上裕でございます。
 私どもの祖先が経験したことのない、また私どもの子孫が今後味わうべきはずもない敗戦という現実に私どもは直面いたしました。それからまことに早いもので三十二年の歳月がたっております。私たちはこの間、連帯と協調のもとに平和な社会を存分に享受いたしておりますが、一たびこの問題を大戦にはせるときに、いまは亡き二百四十万人に及ぶ戦没者とその御遺族の方々、また戦病者の方々に思いをいたすときに、大変な気がかりでございます。
 この御遺族の方々や戦病者の方々に私自身お会いするたびに思うわけでございますが、いつも痛感いたしますことは、非常にその方々が老齢化しておる。これに伴いまして、今後一層の援護が、文字どおり戦争の痛ましい犠牲者であるこれらの方々に必要ではなかろうか、このように感ずるものでございます。
 私は、昨日偶然、三十二年ぶりに、私どもが通年動員と申しまして、これは国家総動員法に基づきます通年動員で、旧制成田中学時代に松戸の日本航空機工業株式会社松戸製作所、そこに勤めたことがありますが、そこで所長をしておった方にお会いしたのです。ちょうどその当時、私どもと一緒に働いていた友人が、パイプから漏れた油の火に包まれて痛ましい死になった、これは現在、準軍属の扱いで援護法の対象になっておりますが、いずれにいたしましても、戦争というものは数多くの深いつめ跡を私たちに残しました。
 戦没者の御遺族及び戦傷者の方々に対します援護、さらにルソン、ニューブリテン、サイパン、西カロリン諸島等にいまだに眠っていると言われる多くの英霊の遺骨の収集、また、これらの霊に対します供養塔と申しますか、その建立などをあわせますときに、援護行政はまだまだこれからとの念を深めるわけでございます。援護行政を今後どのように施していくか、まず渡辺厚生大臣にこの基本的姿勢をお伺いする次第でございます。
○渡辺国務大臣 戦傷病者戦没者の遺族に対する援護措置につきましては、もうすでに三十余年というような長い年月がたっておりまして、対象者も非常に老齢化をしております。したがいまして、私どもは、いままでも努力をしてまいりましたが、年金の給付の改善ということにはさらに努めている必要がある、こう考えております。
 また、遺骨の収集や慰霊事業の実施につきましては、相手国の事情等もあってむずかしいこともときどきあるわけでございますが、遺族の心情というものも考え、さらに一層の努力をしてまいりたい、かように考えております。
 また、未帰還者の調査、引揚者の受け入れ体制の整備につきましても、帰国を希望しておる者を温かく迎えるという立場に立って一層の推進を図っていきたいと考えておる次第でございます。
○井上(裕)委員 先般、幹事長あるいは書記長会談というもので与野党の歩み寄りによりまして三千億円の所得減税、それと福祉年金などの増額時期を二カ月早める、この合意に達しましたことは、援護年金受給者の方々に対しまして、私どもまことに同慶の至りでございます。これまで恩給法の陰にこの援護法というものは隠れておりまして、私どもは、二ケ月繰り上がるということに対しましては、強い要望があったわけでございますので、御遺族の方々には大変喜ばしいことと思います。
 そこで、この実施時期と範囲、また増額の幅というものを具体的に御答弁願いたい、このように思います。
○出原政府委員 先般の与野党のお話し合いによりまして決まりましたのは、内容的には恩給と平仄を合わせるものでございます。したがいまして、障害年金、遺族年金等につきまして、従来六月実施で予定いたしておりました例の七%アップに見合う部分を四月、それから十月に予定いたしておりましたものを八月に、これは遺族年金で申し上げますと、例の六万円年金でございますが、そのようにいたしたわけでございます。
○井上(裕)委員 この援護年金を受けられる方々は、最初の質問で申し上げましたように、非常に受ける方々が老齢化しておる、お年寄りの方々である。しかもその方々は、この年金を生活の糧としている方々も多いわけでございます。
 そこで、事務当局としては非常に御苦労はあろうと思いますが、この支給の時期がおくれるというようなことになりますと、非常にゆゆしい問題ではなかろうか、このように考えます。そこで、率直なところ、この問題に対しまして、皆さんの、大丈夫だというようなところがありましたら、そのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 さらにまた、この援護の趣旨を体しまして、今回の支給時期を二カ月早めるということは、私ども非常に望んだところでありますが、さらに五十三年度におきましては、ぜひともこれを四月からやっていただくようなことにできないものかどうか、その点もあわせてお伺いいたしたいと思います。
○出原政府委員 年金の支給の時期につきましては、当初予定いたしておりましたより二カ月早まってまいりますので、障害年金、遺族年金等の受給者は、私どもが扱っておりますのは総数で十五万人でございまして、これらの方々に年金額の改定事務を進めていく上におきまして、事務的には台帳の整備でございますとか、あるいは年金証書の書きかえでございますとか、通知書を差し上げる、これを都道府県を通じて行いますので、そういう意味で相当の手間を要することは事実でございます。しかし、せっかくのことでございますので、これがおくれるということでは私ども申しわけないと思っておりますので、受給者の御期待にこたえるよう、給付改善の事務を間違いなくできるように現在督励をいたしております。職員にとってはかなりきつい作業になるかと思いますけれども、これはぜひやらせまして、間違いのないようにいたすつもりでございます。
 なお、明年のことにつきましては、今後のことでございますので、私どもも、具体的な対策をまだ立てておりません。
○井上(裕)委員 いまお話を伺いまして非常に安心したわけですが、明年度のことにおきましても、ぜひひとつその問題をお願いいたしたい、このように考えます。
 次に、援護法は「この法律は、軍人軍属等の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家補償の精神に基き、軍人軍属等であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」このような法律だけに、従来の遺族一時金を年金化するということは、同法の趣旨からいいまして、私どもは、一歩前進したということで非常に喜んでおるわけでございます。しかし、この年金の額を九万円とする根拠、さらに軍務にいて非常に疲労していた、あるいはまた、マラリアにかかっていて、そして戦後帰ってきてからTB、結核で倒れた、こういう方々に対します遺族年金の支給対象、この範囲についてお答えを願いたいと思います。
○出原政府委員 いま具体的なことで御指摘のございました例で申し上げますと、たとえば戦地で公務の傷病として取り扱われるものでございますが、マラリアにかかった方が、戦後日本へ帰ってから結核で亡くなったといったような場合には、マラリアそのものは公務の傷病でございますが、お帰りになってからの結核は直接公務には関係ございません。ただ、こういう人たちにも、戦地で過酷な勤務の影響もあったであろうというようなことから、従来、遺族に対しまして遺族一時金を十万円、これは一回限りでございますが、差し上げるようにしておったわけでございます。
 今回の一時金の年金化と申しますのは、すでに差し上げた方々を含めまして、大部分その方々でございますが、一時金であったものを、今回年金として年額九万円、わずかではございますけれども、差し上げるようにいたしたいというのが、今回改正をお願いしておりますものでございます。
 そういたしました趣旨は、戦中戦後の状況を考慮いたしますと、その状況につきましては、恐らくあの戦争の状況を考えなければ、公務傷病と何らかの関係があるというようなことの明確な資料が得られたであろうと思われる方々でございますので、この方々は本来遺族が年金をもらわれる蓋然性もかなり多いというようなことを考慮いたしましたことと、先ほど御指摘がございましたように、遺族も老齢化しておられるようなことをあわせ考えまして、一時金をさらに年金化いたしまして年金として差し上げるというようにしたわけでございます。
 なお、この金額を決めましたのは、そのほかの援護の年金の体系がございまして、平病死に係る遺族の年金につきましては、従来年金額十万円でございましたのを、今回、今度の八月から十二万円にお願いするということになっておるわけでございますが、これらとの均衡を考慮いたしまして九万円という額を決めたわけでございます。
○井上(裕)委員 次に、戦没者等の遺族に対します特別弔慰金の問題ですが、この支給の範囲が、いままでの日華事変からの方々に支給されていたわけでございますが、これが満州事変までさかのぼるということが言われております。この援護法の趣旨からして、私ども非常に結構なことであろうと思います。
 そこで、例の、内原の訓練所の、ちょうど私どもと同じ年配の方々であろうと思いますが、満州開拓青年義勇隊ですか、昭和十四年ごろですか、こういう方々に対します施策はどうなっておりますか、この点もひとつお聞かせ願いたいと思います。
○出原政府委員 特別弔慰金を、従来は日華事変以降の方々にということで決めておったわけでございますが、それを満州事変によって亡くなりました軍人の遺族に対しましても特別弔慰金を支給するというように今回お願いをしておるわけでございます。これは境目を決めるということはなかなかむずかしいことでございますけれども、満州事変と日華事変はいずれも今次大戦の発端となっておるものでございまして、これらの事変でお亡くなりになった方々についても、太平洋戦争で亡くなった方々と同様に弔慰をあらわすべきであるということで広げることにしたわけでございます。
 なお、御参考に申し上げますと、戦没者の妻に対する特別給付金でございますとか父母に対する特別給付金につきましては、すでに満州事変以後の戦没者の遺族を処遇の対象にいたしておりますので、それとの均衡をもあわせて考えればそれが妥当であろうというように考えたわけでございます。
 なお、満州開拓青年義勇隊の件につきましては、先ほど申し上げた特別弔慰金を満州事変にまで繰り上げたことは直接の関係を持っていないものでございますが、閣議決定によりまして青年義勇隊ができまして、その義勇隊の方々が満州に送られて軍事に関連した業務上の傷病にかかられるというような場合に、障害年金でございますとかあるいは遺族に遺族の年金を差し上げるということで、これは準軍属として処遇ができるようにすでに現行の制度でなっておりますので、具体的な例が出てまいりましたら、この制度にのっとって御処遇申し上げることは可能であると思います。
○井上(裕)委員 いまの義勇軍の問題ですが、これはわれわれのところへ陳情書が出た時点と、いまのお話では、それからあれになったのですか、その点ちょっと……。
○出原政府委員 満州開拓青年義勇隊の皆様方につきましては、現在の法律ですでに御処遇を申し上げておるわけでございますが、なお範囲の拡大その他についての御要望があるということで、私どもも、その御要望の趣旨は承っておりますが、今後の問題になろうかと思います。
○井上(裕)委員 そこで、特別弔慰金に関連いたしましてお伺いたしたいと思います。
 新たに戦没者等と生計関係にあった三親等の親族などに特別弔慰金を支給することになるわけでございますが、四十年法及び一部改正の五十一年法という時代の流れを踏まえて、この際、その額及び支給対象範囲につきまして、私どもにちょっとわからない点がございますので、もう一度明確にしておきたいと思いますので、御説明願いたいと思います。
○出原政府委員 三親等の問題に関連をいたしまして申し上げますと、戦没者がお亡くなりになったときもしくは昭和二十七年に遺家族援護法ができました時点におきまして、亡くなった方のお父さんとかお母さんとかあるいは奥さんとかいったように年金を受領する立場にある方がおいでになった場合には、この特別弔慰金はおじさん、おばさんあるいはおい、めい等の三親等の方には差し上げないということになっておったわけでございます。ところが、それでずっとまいりますと、最近の状況では二親等以内の血族がすべて亡くなっておられるケースも出てまいります。それはたとえて申し上げますと、おじ、おばも一緒に住んでおった、そうして亡くなった方と非常に密接な関係がある方でございましても、お父さん、お母さんが年金をもらっておられた、そのお父さん、お母さんが亡くなったら、弔慰金はおじ、おばにはいかないということになっておったわけでございますが、そのおじさん、おばさんに差し上げようというのが、今回の特別弔慰金の支給対象の範囲でございます。
 実は、全体を御説明申し上げておりますと、非常に細かくなるのでございますから、恐らく御質問のポイントになるだろうと思うところを申し上げたのでございますが……。
○井上(裕)委員 それでは、またそれは後で資料でお願いしたいと思います。
 次に、遺骨の収集のことにつきましてお伺いいたしたいと思います。
 日本遺族会あるいはまた民間の諸団体の協力を得て、これまで大規模な遺骨の収集が行われてきたわけでございますが、まだまだ水漬くかばね、草むすかばねという言葉のとおり、いまだ幾多の英霊が各戦地で眠られておるわけでございます。
 そこで、四十八年から第三次計画以後の遺骨収集計画はどのようになっておりますか。特に中国東北部つまり昔の満州、こういうところの状態はどうなっておりますか。また、私ども遺族会の方々によく聞かれる、あるいはお聞きいたしますことは、一部の観光業者が、遺骨を収集する、あるいはまたそれを巡拝する、参拝するというようなことに名をかりて、相手国の迷惑をも省みず、いろいろな点で行き過ぎがあるように聞いておりますが、この点は厚生省としてどうお考えになっておるか。私ども、この遣霊巡拝とあわせて、別に観光旅行の足を引っぱるという意思は毛頭ありませんが、これらの観光業者に対します指導と、また遺霊巡拝の趣旨を脱却しないような措置を考えておかなければならない、このように考えますが、その点についてのお答えを願いたいと思います。
○渡辺国務大臣 遺骨の収集につきましては、御承知のとおり五十年度をもって計画的なも一のは一応終了したわけでございますが、五十一年度以降は計画期間中に諸般の事情から遺骨の収集の目的が十分果たせなかった地域とか、あるいは新たに持ってこられた確度の高い情報に報づいて補完的な遺骨の収集をやってきたわけであります。いろんな相手国の事情で中国の東北部の方はまだ行っておりません。これはかなり長時間を要するものと思いますが、お互いに国民感情を刺激しないような形で、将来とも長い時間をかけてこれらについては考えてまいりたいと思っております。
 なお、遺族の中から非常に要望の強い戦跡、遺霊の巡拝ということについては、これは本当に戦没者に対する追悼の誠をささげるという気持ちでやっていかなければならぬ。かりそめにもそれが観光に堕するようなことがあっては相ならないということで、持に厚生省としても注意をしておったところでございます。この間参拝等の第一団が帰ってまいりましたが、非常に規律を守って、本当に皆さんからりっぱな行為であるといってほめられるような戦跡の遺霊巡拝をやってこられたということを聞いておるわけです。観光業者がそれにつけ込むようなことについては、絶対にさせないように、それは厳重に監視をしてまいりたい、こう思っております。
○出原政府委員 大臣の御説明に補足して御説明を申し上げたいと思います。
 第三次の遺骨収集の計画は、昭和四十八、四十九、五十の三年度にわたって、可能な地域につきましては太平洋戦争の地域全域に及ぼすという方針で実施をいたしてまいりました。ただ、相手国の事情あるいはその国の治安その他によってできていないところもございます。そういったところにつきましては、今後、事情が可能になれば進めてまいりたいということでございまして、そういった総合的な全地域にわたる計画は五十年度をもって一応は終了いたしましたが、今後につきましても、私どもは可能な限り遺骨の収集は続けてまいりたいというように考えております。
 具体的に予算におきましても、四十八、四十九、五十ほどのあれではございませんが、最近の状況を見てまいりましても、遺骨収集に使っております予算は一億三千万前後でございまして、これは昭和四十七年までのものに比べますと、けたが一つ上がっておりまして、大体十倍近いものでございます。私ども今後とも努力はいたしたいというように考えております。
 それからなお、民間の方々につきましては、民間の戦友その他の皆さん方が、やはり自分たちの行ったところへ、政府のやった以上にさらにまた遺骨の収集をいたしたいということで御協力を願っているのがございますが、そういう遺骨は、私ども政府が収集してこられたものと一緒にいただきまして千鳥ケ淵におさめるというようなシステムをとっておりますので、私どもは、一概に御協力を拒むというわけにはまいらぬと思います。むしろその御協力に感謝しなければならないところも多いかと存じますが、なお行き過ぎが生じませんように、私どもも、その方々と十分御連絡を申し上げて、今後とも気をつけてまいりたいと思います。
○井上(裕)委員 遺霊巡拝に伴いまして、四十七年度におきましては、フィリピンのカリラヤに戦没者の碑、あるいはまた四十八年にはサイパン島に中部太平洋戦没者の碑、こういうものが建立されておりますが、パプア・ニューギニアの慰霊碑などを含めて今後海外に慰霊碑を建立するという計画はおありかどうか。
 さらにまた、私の地元の千葉県でもいろいろな案がありますが、各地に戦没者の慰霊塔の建立が計画されておると思います。これらに対します補助金の交付など、これはぜひ必要と思いますが、そういうものについてお聞かせ願いたいと思います。
○出原政府委員 海外におきます慰霊碑の建立につきましては、すでに昭和四十五年には硫黄島、これは日本に復帰いたしましたが、四十七年にはフィリピン、四十八年にはサイパン島にそれぞれ建立いたしました。五十二年度はパプア・ニューギニアのウェワクに予定をいたしておりまして、すでにパプアニューギニア政府とも合意を見て、設計も完了したのでございますが、その後、現地政府が建設予定地の隣接の部落民との間に土地のトラブルが起こっておりまして、私ども予定したものが、現在その土地のトラブルが裁判になっておりますので、これは不可能な状態になっております。相手国の事情が重なってくることでございますので、私どもも、非常に残念でございますけれども、これは後日に譲らざるを得ないということになっております。
 なお、今後につきましても、主要戦域ごとに慰霊碑を、これは海外巡拝をしていただくときの中核になるものでございますので、ぜひ計画的に進めてまいりたいというように考えております。
 なお、国内でいろいろお建てになるものにつきましての政府の助成は、現段階では考えておりません。
○井上(裕)委員 最後に、渡辺厚生大臣にお伺いしたいわけですが、先ほど遺骨の収集の件につきまして、大規模な計画は終わった、しかし、できるだけのものをいたしたい、このように仰せでございました。ぜひそうしていただきたいと思います。
 私はここで、実は私の地元の佐倉市というところで、毎年招魂祭というのをやっております。これはいま佐倉の市長と連絡をとりまして聞いたのですが、戦後二十年から五十一年まで三十回やっている。それで、英霊は西南の役から今次大戦まで実に一万余柱、毎年の十二月の第二土曜、日曜にかけて招魂祭をやるわけです。きょうは千葉県知事だった友納代議士もおりますが、毎年この大祭には千葉県知事初め多くの方々がおいでになる。これは三市九カ町村にまたがりまして二千四百五十五名、五十一年は出席している。これは千葉県としても大きい行事で、私どものところでは、一番大きい行事であります。
 そこで、どのくらい費用がかかっているのだと言いましたら、昨年は五百十五万円、これは補助金も助成金もいただいてない、すべて末端町村の乏しい財政でやっているわけです。そしてこれは現実に私どもも十数年来出ているわけですが、この招魂祭のときは非常に寒いとき、みぞれが降り、あるいは雪が降っても、遺族の二千数百という方々がむしろの上に座ってみたまをお祭りする。ひとつ大臣もことしはぜひここへおいでになっていただきまして、とくとこの遺族の姿を見ていただきたい。これは私ども、やはり二度と戦いをやらないというような気持ちで、神に、英霊に誓わなくてはならない、私どもが平和日本で今日いられるのは、やはりこういう方々のためである、こういうことを私ども考えるわけでございます。
 そういう意味におきましても、ひとつ今後の援護行政につきまして最後に大臣の御意見をお願いし、また私どもも御要望をする次第でございます。
○渡辺国務大臣 援護行政につきましては、私も誠心、誠意今後とも尽力をさせていただきたい、かように思っております。
 また、佐倉の招魂祭問題については、なかなか時間的に余裕がないかもしれませんが、電報は差し上げたいと思っております。
○橋本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五分散会
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