第082回国会 本会議 第9号
昭和五十二年十一月一日(火曜日)
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 議事日程 第九号
  昭和五十二年十一月一日
    午後一時開議
 第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一
    部を改正する法律案(第八十回国会、内
    閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 日程第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法
  の一部を改正する法律案(第八十回国会、内
  閣提出)
    午後一時四分開議
○議長(保利茂君) これより会議を開きます。
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 日程第一 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道
  法の一部を改正する法律案(第八十回国会、
  内閣提出)
○議長(保利茂君) 日程第一、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長大野明君。
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 国有鉄道及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案男及同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔大野明君登壇〕
○大野明君 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、鉄道の普通旅客運賃の賃率、航路の普通旅客運賃及び車扱貨物運賃の賃率の決定について臨時の特例を定め、あわせて、日本国有鉄道の投資の対象となる事業の範囲を拡大する等の措置を講ずることにより、その経営の健全性の確立を図ろうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 国有鉄道運賃法の改正は、当分の間、右の賃率等について、運輸大臣の認可を受けて国鉄が定める賃率等によることとし、その改定率は、物価等変動率に、決算で損失が生じたときは一五%を、決算で利益が生じたときは五%をそれぞれ加えた率を限度とすることとしており、日本国有鉄道法の改正につきましては、国鉄の投資対象事業の範囲を拡大するとともに、国鉄の経営の健全性の確立のため必要があると認めるときは、政府は、国鉄に対し、無利子貸し付けを行うことができることといたしております。
 本案は、第八十回国会の本年二月八日に提出され、第八十二回国会に継続審査となったものでありますが、第八十回国会におきましては、四月十五日政府より提案理由の説明を聴取した後、審査に入り、熱心活発な質疑を行ったほか、公聴会、参考人からの意見聴取、委員派遣、連合審査会等慎重審査を行ったのであります。
 今国会におきましては、十月二十八日、自由民主党、民社党及び新自由クラブ三党共同提案に係る、一事業年度における運輸大臣が認可する運賃または料金の改定による平年度収入の増加見込み額の総額を物価等変動率による経費の増加見込み額の範囲内とするとともに、国有鉄道運賃法の改正規定の施行期日を昭和五十三年三月三十一日とする修正案が提出され、加藤六月君から趣旨の説明を聴取した後、質疑を行い、さらに福田内閣総理大臣に対し質疑を行ったのであります。
 次いで、原案及び修正案を一括して討論に付しましたところ、自由民主党を代表して宮崎茂一君、民社党を代表して米沢隆君、新自由クラブを代表して中馬弘毅君が修正案及び修正部分を除く原案に賛成、日本社会党を代表して兒玉末男君、公明党・国民会議を代表して宮井泰良君、日本共産党・革新共同を代表して小林政子君が反対の意見を述べられた後、採決の結果、本案は多数をもって修正議決すべきものと議決した次第であります。
 なお、修正案について内閣の意見を聴取いたしましたところ、田村運輸大臣から、政府としてはやむを得ないものと認める旨の意見が述べられました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(保利茂君) 討論の通告があります。順次これを許します。渡辺芳男君。
    〔渡辺芳男君登壇〕
○渡辺芳男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対する修正案について、反対の討論をいたします。(拍手)
 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案は、第八十国会に提出されて以来、継続審査となっておりました政府案に対して、去る二十八日、運輸委員会において修正可決されたものでありますが、いずれも国鉄の旅客、車扱貨物、航路運賃の法定制を緩和して運輸大臣の認可によって値上げしようとするもので、大同小異であります。
 この修正案は前年度の国鉄の経費増加分を運賃値上げで賄おうとするものでありますから、国鉄と政府が決意をすれば今後はどしどし値上げされることになります。しかし、経済社会の情勢は、国鉄運賃の大幅な値上げを今後毎年連続してやることが全く不可能な状況にあります。
 昨年十一月六日、国鉄旅客運賃は五〇%、車扱貨物運賃は五三%値上げされました。政府と国鉄は、このとき国鉄離れを考慮に入れて実質三七%の増収を期待いたしました。しかし、値上げ後の落ち込みは深刻で、ついに去る九月二十一日、グリーン料金とA寝台料金を値上げする前の料金に引き下げざるを得なかったのであります。しかも、その後も好転せず、今日でもなお貨物は二七%、旅客は三一%にとどまっています。
 今後、政府が国鉄財政の帳じり合わせのために大幅な運賃値上げを強行することは、国鉄離れを一層ひどくし、国民生活にも大きな影響をもたらすばかりでなく、国民の国鉄としての大量輸送機能を放棄することになりますので、反対であります。(拍手)
 私が申し上げるまでもなく、国鉄の財政は、昭和三十九年度に三百億円の赤字に転落して以来毎年赤字が累積されて、特に最近では急速に悪化しております。
 この累積する赤字の原因は一体どこにあるか。一言で言えば、支出が不当に多く、収入が少ないことにあります。
 この赤字を生む原因の主なるものは、まずローカル線の赤字があります。国鉄は今日までローカル線百六十六線区、約九千二百キロについて相当思い切った合理化を進めています。この線区には約二千四百の駅が存在していますが、その五〇%がすでに無人駅になっていることを見ても明らかであります。それにもかかわらず五十年度で二千二百五十五億円、五十一年度で二千三百六億円の赤字を出しています。
 次に問題なのは、赤字を承知で新線建設が行われています。現在、鉄道建設公団が運輸大臣から工事命令を受けているローカル線は四十線区に上っていますが、そのうち二十五線区が工事を行っています。これらのローカル線が全部完成するまでには今後さらに五千億円ほど必要と言われています。しかも開業の暁にはいずれも赤字路線であります。
 私が特に指摘したいのは、新幹線の建設についてであります。現在工事中の東北新幹線は、昭和四十六年十一月に着工いたしましたが、当初の工事費見込み額八千七百億円を大幅に上回り、完成までには実に二兆一千億円もかかると言われています。しかも工事は大変おくれています。これでは国鉄の借入金はますますふえるばかりであります。
 さて、国鉄の五十一年度の決算によりますと、太平洋ベルト地帯を走る東海道新幹線と東海道線を合算しての収支計算では、七百九十七億円の黒字となっていますが、山陽線と山陽新幹線とを合算すると、こちらの方の収支は逆に千五十億円の赤字であります。
 巨額の借入金を投じて新幹線を建設し、開業すればさらに赤字をふやすことは、かつて新幹線を建設すれば国鉄はもうかると言われていた漠然たる神話がもう通用しなくなってきました。また、年間四千億円にも上る貨物輸送の赤字や毎年五千億円前後の改良工事費がすべて借入金で賄われているほか、通勤、通学等の公共割引では年間約五百億円にもなっています。これらによって、国鉄の長期負債は累積し、五十年度では六兆七千七百九十三億円にもなっています。政府はこのうち二兆五千四百四億円を特別勘定としてたな上げしましたが、五十一年度決算ではまた一兆二千百九十三億円も増加し、長期負債は五兆四千五百八十二億円となっています。不満足だが政府の助成があるにしても、これでは元金と利子を返済するために借金をするという悪循環であります。国鉄財政をこういう状態に置くことはまさにナンセンスと言わなければなりません。
 われわれは、今日まで、国鉄の経営基盤を確立するために、政府と国鉄の責任分担が不明確のままであってはだめである、国鉄の責任分野は国鉄の経営努力でやるべきだ、政府の責任に帰すべきものは政府が一切費用を負担すべきであるという負担区分の明確化を要求してきました。そのために、政府は、国鉄の過去の長期債務はすべてたな上げすべきである、幾ら努力しても出るローカル線の赤字は国民経済的見地から補償すべきである、工事費については国が出資すべきである、法定の公共割引は国が補償すべきである、年度末における欠損に対する借入金については利子補給をすべきである、などと要求をしてまいりました。
 これらの構造的欠損に対する政府の助成が十分に行われない限り、現状では国鉄財政の健全化は全く望めないのであります。
 討論時間の関係で、最後に総合交通政策について申し上げます。
 一九六〇年代に入ってわが国経済の高度成長は、大規模な工業化、都市化の進む中で、運輸交通部門に大きな影響を与えてまいりました。政府は、道路、港湾、国鉄、私鉄、空港等の整備五カ年計画を個別に計画し推進してきましたが、これらの計画には総合性がなく、計画規模も中途でしばしば改定を余儀なくされてきました。そして、モータリゼーションの異常な進展と交通機関の発達で、運輸交通問題は重要な政治課題となってきました。
 わが党は、このために、従来の個別的な交通体系から総合交通体系の確立を痛感し、政府に要求してまいりましたが、総合交通体系は、交通機関を今日のように対立競争の関係に置くことを避け、それぞれの機能に応じて分担し、その特性を生かし、相互に補完することでなければならぬと考えています。
 そのために、まず、現在分散している運輸交通行政の一元化を図り、行政の一元化によって、従来の許認可行政中心の運輸行政を改め、都市間輸送、大都市圏交通、地方交通の輸送分野をそれぞれ確立することに積極的に取り組むことを要求しております。
 これらの政策を実行するには、当然に規制措置も行わなければ、現状の過当競争、交通混乱を収拾していくことができません。
 政府や当局者がしばしば言明しているように、総合交通体系はガイドラインとして取り組みたいというような消極的な対策では、全く問題解決への前進にはなりません。われわれは、今後も秩序ある交通体系の確立のために、新たな決意をもって取り組むことをここに申し上げて、私の反対討論といたします。(拍手)
○議長(保利茂君) 米沢隆君。
    〔米沢隆君登壇〕
○米沢隆君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されました国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、自民、民社、新自由クラブ三党共同修正案並びに修正部分を除く政府原案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
 御案内のとおり、国鉄は、過去百年間、国内輸送の大動脈として、国民生活の向上と国民経済の発展に寄与してまいりました。今日、全輸送機関の中で国鉄が占める輸送割合は低下しつつありますけれども、そしてかつての独占的地位は薄れてはきましたものの、今後におきまして、特に省資源を余儀なくされます将来におきまして、国鉄がわが国の交通体系の中で占める役割りは依然として重大であります。
 にもかかわりませず、その国鉄の財政は、昭和三十九年度に赤字に転じて以来、急速に悪化の傾向をたどって、もはや国鉄の存在そのものが問われる危機的な様相を呈しており、その再建対策は目下の急務になっておりますことは御承知のとおりであります。また、この問題を無責任に放置することは許されないのであります。
 わが党は、本法律案に関連いたしまして、今春以来、国鉄再建についての考え方を明らかにし、法律案の修正を要求いたしますとともに、国の行財政上の助成の強化等につきまして政府の対策を求めてまいりました。その骨子は次のとおりでありました。
 一、国鉄の収支が均衡するまでの当分の間、諸経費の増加分、すなわち物価等変動率を限度とする運賃値上げを法定の枠から外し、一部国鉄の当事者能力を付与して経営努力の責任体制を強化すること、ただし、五十二年度の値上げは行わない。二、国鉄の責任にのみ帰すことのできない公共性ゆえの構造的な赤字解消につきましては、政府はきわめて消極的でありました。よって、それに対応する意味で、昭和五十二年度以降の政府助成規模を八千五百億円とする。三、国鉄労使は右の条件のもとに責任を持って経営努力に当たり、国鉄財政の均衡を達成する。以上三点でありました。
 その趣旨は、すでに御案内のとおり、昭和五十一年度に実施されました五〇%値上げによりまして、他の交通輸送機関との競争関係から、国鉄運賃はすでに上限に達し、過去の累積赤字を解消するような実質値上げは、もはや不可能になったと判断いたします。したがって、今後の運賃値上げは物価等変動に伴うコスト増を賄う以上に出ることはできないのでありまして、物価等変動率プラス一五%までを法定枠から外そうという政府案は、その意味におきまして実態認識を欠く暴論でありました。したがって、この際、その点を修正し、当分の間、この物価等変動率を限度内とする法定主義の緩和を図ることによりまして、国鉄に当事者能力を付与することが、国鉄の今後の再建努力に関し、真の意味における経営責任を追及できることになると判断をいたしました。
 また、私たちは今後の国鉄再建の方策につきましては、次の二つの基本的な方針を堅持すべきものと主張してまいりました。
 第一に、国鉄のいかなる経営努力によりましても解消できない構造的な赤字は、国が責任を持つことであります。構造的かつ恒常的な赤字経営を余儀なくされながらも、公共機関という要請のために設備廃棄のできない国鉄の場合、構造的原因から生ずる欠損は国または地方公共団体で負担するほかないのであります。
 第二は、国鉄自身そのものの経営努力であります。現在の国鉄赤字のすべてが構造的原因に基づくものではありません。残念ながら、国鉄労使の努力不足によるものがかなり大きな部分を占めているのであります。(拍手)物価等変動率に対応する運賃値上げを法定の枠から外し、構造的欠損を公的助成によって補うという条件を整えた上で要請されるものは、国鉄労使の懸命な再建のための努力であります。このことなくしては、いかなる条件を整備いたしましても国鉄再建は不可能でありますし、国民もまた血税をもって国鉄を助成することを許しはしないでありましょう。
 右のような見地から、わが党はさきに述べました三つの条件を提示し、法案の修正と実効ある国鉄再建対策の策定に努力してまいりました。今回作成されました三党修正案並びに政府に要請するための「国鉄再建の基本方向」はこの趣旨に基づくものであり、必ずしも一〇〇%わが党の主張を充足するものではありませんが、これを基礎とし発展させていくことによりまして、国鉄再建の方途が開けていくことを信ずるものであります。
 この際、政府に対しましては、「国鉄再建の基本方向」に示された施策の完全実施を要請し、他方、国鉄の労使に対しては、国鉄の国民に対し背負っております重大な使命と国鉄の厳しい現状を肝に銘じ、国鉄再建のためにあらん限りの努力を尽くされんことを強く求めて、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○議長(保利茂君) 薮仲義彦君。
    〔薮仲義彦君登壇〕
○薮仲義彦君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました国鉄関係法案の修正案及び修正部分を除く政府原案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。(拍手)
 この法案に反対する第一の理由は、国鉄の再建は、いまや運賃の大幅値上げによって行うことには限界があり、不可能であると認識するからであります。
 事実、昨年度五〇・三%の大幅値上げを行ったにもかかわらず、国民の国鉄離れという拒否反応に遭い、かえって約四千八百億円の減収となり、結果的には九千百四十一億円の赤字を出すに至っているのであります。このことは、とりもなおさず、国鉄が過去に有していた独占的な交通手段でなくなったことを意味し、国民が他に交通手段を選べる今日では、一方的な運賃値上げを軸とした再建は、もはや不可能であることを如実に物語っているのであります。
 しからば、いま政府のなすべきことは何か。それは赤字の解消を一方的な値上げにより国民に押しつけるのではなく、国鉄の持つ構造的赤字要因の除去と、国鉄の能力を超える負担部分については、国の責任においてその財政支出の制度化及び強化を図るべきであります。
 反対する第二の理由は、この法案が成立すれば運賃値上げに対する歯どめがなくなり、大幅な運賃値上げを連続して行うことが可能になる点であります。
 今日まで国鉄運賃は、その国鉄の持つ大きな公共性の立場から、国民の声を反映し、国会における審議によって決められてきたのであります。しかし、それが今後、一部法定制が緩和され、運輸大臣の認可になるわけであります。表現の上では本案を修正し、前年度の経費の増加分に限る範囲となっておりますが、わが党の試算によれば、対前年度比の経費の増ということは、毎年二五%以上の値上げを連続して行えることになるのであります。
 このように大幅な値上げが長期にわたって可能なことは、国鉄運賃法の精神である、国鉄運賃は公正妥当なものであり、賃金、物価の安定に寄与し、産業の発達に役立つという立法の趣旨を大きく損なうものであり、国鉄運賃法そのものの存在意義を失わさせるものであります。
 また、現在の社会、経済情勢からかんがみて、今後ますます財政事情が逼迫し、政府助成にも限界があるとするならば、この法案をもとに大幅な運賃値上げを容易にする危険性をはらんでいるのであります。
 次に、法定制緩和をやめる時期については、国鉄財政の収支均衡が図れるまでとしておりますが、政府の国鉄再建要綱に基づいて作成された現行の国鉄予算によっては、政府が当初収支均衡の目途とした昭和五十四年度はおろか、半永久的に国鉄財政の収支均衡を図ることは絶望的であります。わが党が試算したところによれば、五十三年度以降二〇%以上の値上げを毎年実施したとしても、累積赤字は昭和五十八年度においても解消することなく、さらに、それ以降は、大量に出る退職者や共済制度の負担増、借入金の利子支払い等のため、ますます国鉄財政悪化の要因が見込まれるのであります。
 要するに、「当分の間、」というあいまいな表現によって行われる法定制緩和は、値上げの恒常化以外の何ものでもなく、さらに、国鉄財政の再建はもとより、収支均衡を図る目途もない本法案を成立させることは絶対にできないのであります。
 反対する第三の理由は、今日の深刻な不況下における国鉄運賃の大幅値上げが、いかに国民生活を圧迫し、苦しめるか、その影響がきわめて大きいことを憂慮するからであります。
 御承知のとおり、国鉄運賃は公共料金の柱であり、この大幅値上げが家計に与える影響はきわめて大きいのであります。
 昨年度の大幅運賃値上げの影響は、政府の公約を大きく上回る消費者物価の上昇となって、国民の生活を圧迫し、福田内閣の政治公約の眼目であった物価安定を破綻させる原因となったのは衆目の一致するところであります。
 もし、国鉄運賃値上げが毎年連続して行われるならば、国鉄運賃に諸物価高騰の先導役を果たさせることになり、本法案の成立を図ろうとする福田内閣には、物価安定を口にする資格はないと言わざるを得ません。国民経済の安定に政治の主眼を置くわが党としては、国民生活を圧迫することが明らかな本法案を成立させることは、絶対にできないのであります。
 反対する第四の理由は、本法案の提出の基礎となっている政府の国鉄再建要綱が、国鉄再建の名に値しないものであるからであります。
 すなわち、政府の国鉄再建要綱は、三木前内閣当時につくられた再建計画を部分修正したものであることは、政府自身が認めているとおりであります。しかも、さきに指摘したとおり、国鉄の五十一年度決算報告書が示すように、五〇・三%の大幅値上げにもかかわらず、結果的には九千百四十一億円の赤字を出すに至っております。これは政府の国鉄再建計画が、その初年度において破綻したことを示したものであり、破綻した再建計画を文言の上で修正したにすぎない現行再建要綱では、国鉄再建が不可能であり、それを基本とした本法案を成立させることは、全く無意味と言わざるを得ないのであります。
 要するに、現在、政府がなすべきことは、すでに限界がある運賃値上げ依存型の現行国鉄再建要綱を根本的に改め、真に国鉄再建につながる国鉄再建案をつくり直し、国民の前に明らかにすることこそ、国民的コンセンサスが得られるゆえんであり、この基盤なくして、法定制緩和による値上げの先行は認めがたいのであります。
 国鉄再建が叫ばれてからすでに十年にならんとしております。しかし、国鉄の現状はきわめて深刻であり、重大な危機に直面しております。国鉄をこのような状態に陥れた責任は、挙げて政府にあると申せましょう。
 このような国鉄財政を立て直すには、わが党の国鉄再建案が示すように、構造的赤字の原因となっている借金投資を改め、鉄道の工事費及び基盤整備費等への国の投資を大幅にふやすとともに、借入金のたな上げや、地方交通線建設の見直し、さらにその赤字に対する助成を実施するなど、国鉄に対する国の強力な財政援助を行う以外にないのであります。
 わが党は、国鉄再建に対し今日まで真剣に取り組んでまいりました。政府は率直にわが党の主張に耳を傾けるべきでありましょう。
 本法案を成立させ、国民生活と国鉄経営をさらに悪化させる政府の今回の措置に対し、厳重な反省を求め、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)
○議長(保利茂君) 小林政子君。
    〔小林政子君登壇〕
○小林政子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、内閣提出の国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案並びに自民党、民社党、新自由クラブによる共同修正案に反対する立場から、討論するものであります。(拍手)
 反対理由の第一は、物価高と長期の不況のもとで、国民生活と営業に大きな困難が続いているとき、いまこそ公共料金の値上げに歯どめをかけて、国民生活を守ることこそが切実に求められています。いま必要なことは、国鉄運賃の相次ぐ値上げを繰り返すこの大もとを取り除き、真に国民本位の公共交通機関としての国鉄の再建が求められているのであります。
 ところが、改正案では、連続運賃値上げのための法定制緩和などを内容とするものであって、全く国鉄再建に逆行する措置にほかなりません。
 第二に、政府は法定制の弾力化措置であるなどと言っておりますが、その内容は、事実上の法定制撤廃にほかならないということであります。
 値上げ率の上限や国会審議抜きで値上げができる期間について、厳重な歯どめがかけられていると称していますが、実態は、政府への白紙委任にほかなりません。値上げ率上限を引き下げたと言われている修正案にしても、政府試算によっても明らかなように、物価上昇率の二倍を超える二〇%程度もの値上げが可能になっております。さらに、来年度には、今年度値上げを見送ったことから、二年分の経費上昇分を合わせて、実収で二六%、値上げ率で三七%の大幅値上げができるというものであって、まさに政府原案と変わらないどころか、むしろ一層の改悪案であると言わなければなりません。(拍手)
 また、政府は、今後の収支見込みさえ明らかにできず、いつ収支均衡が回復され、いつまでに累積赤字が解消されるのか、全く見通しが立っておりません。したがって、法定制骨抜きは事実上永久に続くことになります。
 第三に、修正案の前提になっているところの自民党などの「国鉄再建の基本方向」は、政府の国鉄再建対策要綱にも増して一層採算本位の企業主義的方向を強め、国民の足を奪おうとしているものであります。地方交通線の切り捨て、自治体負担の強要などは、国鉄の公共性を無視したもので、まさに国の責任を放棄するものにほかなりません。また、国鉄の高い運賃水準に合わせて、私鉄、航空など他の交通機関の運賃を一斉に引き上げるという総合運賃政策なるものの導入まで打ち出しておりますが、これこそ政府主導の公共料金値上げ政策そのものと言うべきであります。
 第四に、国民生活に重大な影響を与える法定制骨抜き法案を、しかも、修正案が提出されたにもかかわらず、きわめて短時間の形だけの審議で押し通そうとすることは、断じて容認できないところであります。
 現に政府は、今年度の運賃値上げを中止すると言っておきながら、運賃値上げのための法定制の骨抜き法案だけは急いで今国会で成立をさせようとしていますが、これはだれが見ても納得できるものではありません。乗客減など新たな事態が生じているときであり、次の通常国会の中で、国鉄経営、財政の抜本的な見直しを行い、十分に時間をかけて、そして国民の納得の得られる再建論議を行うことこそが当面の重要課題であります。
 たとえば、国の助成問題一つをとってみても、諸外国との比較で営業収入に対する国の助成割合を見ると、昭和四十一年から五十年の十年間で、フランスは五一・四%、ドイツでは四七・五%、イギリスは二六・五%となっているのに対して、日本はわずか八・二%にしかすぎません。
 また、道路投資と国鉄投資の中の一般財源と借金の割合を昭和三十五年から五十年の数字で見ますと、道路は一般財源が八一%であるのに対して、国鉄はわずか六・六%にしかすぎません。
 わが党は、すでに昨年、国鉄を民主的に転換するための政策を提案いたしました。本日、改めて「五つの転換こそ急務 国鉄再建にかんする日本共産党の見解」を発表いたしました。
 五つの転換とは、第一に、運賃値上げと借金政策の行き詰まりを打開し、国鉄財政の民主的転換を行う、第二に、新幹線と大企業貨物中心の国鉄づくりをやめ、在来線の整備を強め、公共交通機関にふさわしい輸送網づくりに転換する、第三に、一方的な地方交通線の切り捨てをやめ、国鉄二分割方式を根本的に再検討する、第四に、モータリゼーション優先をやめて、公共交通機関整備優先の交通政策に転換をする、第五に、人減らし、合理化の押しつけではなく、浪費と官僚的体質を根絶する、というものであります。
 国鉄を国民生活と経済の再建に役立つ公共交通機関に変え、国鉄への国民の信頼を取り戻すためには、いまや、その破綻が明白になった運賃値上げを繰り返す路線を突っ走るやり方に終止符を打たなければなりません。
 私は、国鉄政策の全面的な見直しと抜本的な転換を提案し、この臨時国会で運賃法定制の骨抜き法案を急いで通過させることに断固反対をして、討論を終わります。(拍手)
○議長(保利茂君) これにて討論は終局いたしました。
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○議長(保利茂君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(保利茂君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
    ―――――――――――――
○議長(保利茂君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時四十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 田村  元君
     ――――◇―――――