第084回国会 法務委員会 第17号
昭和五十三年四月十八日(火曜日)
    午前十時四分開議
 出席委員
   委員長 鴨田 宗一君
   理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君
   理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 沖本 泰幸君 理事 高橋 高望君
      稻葉  修君    上村千一郎君
      北川 石松君    篠田 弘作君
      中島  衛君    二階堂 進君
      三池  信君    渡辺美智雄君
      西宮  弘君    飯田 忠雄君
      長谷雄幸久君    正森 成二君
      加地  和君    鳩山 邦夫君
      阿部 昭吾君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 瀬戸山三男君
 出席政府委員
        法務政務次官  青木 正久君
        法務大臣官房長 前田  宏君
        法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (東京慈恵会医
        科大学附属病院
        亀田内科医長) 穂苅 正臣君
        参  考  人
        (作家)    小林 久三君
        法務委員会調査
        室長      清水 達雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十八日
 辞任         補欠選任
  原 健三郎君     中島  衛君
  前尾繁三郎君     北川 石松君
同日
 辞任         補欠選任
  北川 石松君     前尾繁三郎君
  中島  衛君     原 健三郎君
    ―――――――――――――
四月十七日
 民法第七百五十条の改正に関する請願外四件(
 土井たか子君紹介)(第三二八二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 人質による強要行為等の処罰に関する法律案(
 内閣提出第五二号)
     ――――◇―――――
○鴨田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、人質による強要行為等の処罰に関する法律案を議題といたします。
 本案審査のため、本日は参考人として、昨年ダッカ空港日航機乗っ取り事件の際、乗客として貴重な体験をされた東京慈恵会医科大学附属病院亀田内科医長穂苅正臣君及び作家小林久三君の御両名に御出席をいただいております。
 この際、両参考人に対し、一言ごあいさつ申し上げます。
 両参考人には、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 本委員会におきましては、ただいま本案について熱心な審査を行っておりますが、本日先生方から御意見を賜りますことは、本案審査に多大な参考になることと存じております。参考人におかれましては、それぞれのお立場かな忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げますが、穂苅参考人、小林参考人の順序で御意見をお述べいただくこととし、なお、御意見の開陳はお一人五分ないし十分に取りまとめてお述べいただくようお願い申し上げます。
 次に、参考人に対し、委員から質疑がありますので、さよう御了承お願いいたします。
 それでは、まず穂苅参考人にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○穂苅参考人 初めに、ダッカ・ハイジャック事故で無事に帰国できましたことは、日本国政府の処置並びに諸先生方や国民の皆様のおかげと深く感謝いたしております。
 私は、現在日本航空勤労部の健康管理室に嘱託医師として勤務しております。日本航空と慈恵医大との契約により、出向の形をとっております。日本航空におきましては役職員の健康管理に携わっており、私の受け持ちは、整備職員並びに客室乗務員の健康管理全般を行っております。今回ダッカでハイジャックに遭遇しましたが、このときもカイロ駐在の日航職員の健康調査のために出かけたものであります。
 昨年九月二十三日、JAL四七三便にてカイロに向かいまして、九月二十七日、JAL四七二便にてカイロを出発、九月二十八日東京着の予定でございました。
 御存じのように、九月二十八日、ボンベイの離陸直後ハイジャックに遭いました。ボンベイの前の着陸地でございますカラチで、クアラルンプールの日航機墜落事故のニュースを機内で聞きまして、すぐ現場に駆けつけるつもりで睡眠薬を飲みましたので、ボンベイの離着陸は知りませんでした。ですから、突然周囲の騒がしい物音で目を覚まされたわけです。それ以後、最後にアルジェリアで解放されるまで、百三十四時間機内に閉じ込められたままで過ごしました。
 機内の様子については新聞、ラジオ、テレビなどですでにお聞き及びのことと思います。しかしながら、一言で暑いと申し上げましても、その暑さは実感として十分に皆様に御理解いただけないことと思います。ダッカ着陸直後よりエアコン車がないために、密閉した機内の温度はどんどん上昇いたしまして、最高四十八度になりました。機内の客席の灰ざらは熱くてさわれないほどでございました。
 機内は風もなくて、初めのころは一日にコップ半分ぐらいの水しか与えられませんで、のどが非常に渇き、ズボンまで汗びっしょりで、まるで生き地獄のありさまでした。生きているのがやっとというようなありさまです。あれほど汗をかいた経験はございませんし、乾いたパンの食事はのどに通りませんでした。
 帰国後わかったことでございますが、高橋キャプテンは体重がマイナス十一キロ、チーフパーサーの池末君は体重が五キロ、私も約三キロ近く体重がやせておりました。これは非常なる汗のため、あるいは食事が非常に不足したためと思います。
 お客様の緊張と興奮とがつのり、赤軍と乗客が殴り合いになるかと思われたことが三回ほどございました。要するに、パニックになると思われたことが三回ほどございました。
 今回のハイジャック事件は、一、時間が長かったこと、二、飛行機のエアコンディショニングが効かなくて、外部よりの動力車に頼らなければならなかったこと、三、飛行機の後部の給水装置が壊れていたこと、四、ほぼ満席であったこと、五、ダッカという暑い土地での事件であったこと、などから、機内の環境は想像を絶するものがございました。
 次に、乗客の心理について申し述べたいと思います。
 ダッカで解放された人の中で、赤軍が親切であったとかあるいは紳士的であったとか言う人もございましたが、これは日本人的な罪を憎んで人を憎まずという発想が根底にあったことと思います。さらに、マスコミになれた日本人でもありまして、そこには一種の演出があって、何時間もの拘禁状態から解放されたということを考えますと、その喜びでいろいろな発言がなされたことと思います。私自身、途中交代で機内に入ってきた日航機長に赤軍の一味と思われたほどでしたが、非常に自分では落ちついていたつもりでございましたが、ハイジャックされた当初は、長い沈黙の世界でかすかなふるえを覚えていましたし、非常に緊張していたと思います。
 ダッカ着陸後は、前に述べましたような暑さも加わりまして、心臓発作を初め種々の病人が続発しました。私自身医者と名のりを上げましてから、かえって精神的な解放感を味わうことができました。長時間の拘禁状態に暑さが加わり、緊張が続きますと、乗客が、殺せとかあるいはピストルの弾を心臓に撃ち込めとかいろいろなことを申します。パニック寸前まで行きましたが、動力車が来てエアコンディショナーが入りますとみんなは拍手をし、赤軍そのものに対する恐怖心より、暑さに対する恨みから来るものの方が非常に大きくなったように感じました。ハイジャック事件の乗客の心理については、拘禁時間とかあるいは場所、環境、たとえば温度を低くするとか、あるいは食事などいろいろな因子によって変化いたしますが、時間の経過とともに精神的緊張は、人によっては極度に興奮する人もいますが、一般的には徐々に興奮がおさまってくるものと思われます。機内で騒いだのは多くは外人でございました。日本人は非常におとなしかったと思われます。これは、何と申しますか、日本人の他律的な個人と申しますか、日本人の特徴である集団論理的な考えがそこにあったのかもしれません。
 次に、ハイジャックした赤軍についての感想を述べてみたいと思います。
 今回の機内でコレラ騒ぎがございましたが、皆様に怒られるかもしれませんが、患者が使った便所の前で、二晩ほど赤軍のある男が直立で番をしていたと申しますか、お客を入れないようにしていました。そこには非常に厳しい軍隊的な訓練をした跡がうかがわれますし、あるいはハイジャックそのものも非常に計画的な行動によって行われたと思われる節が多々ございました。あの暑い中でも、彼らは背広を着ていましたし、覆面をしておりました。私のお隣にいた老人は、オートバイで町を走る若者に見習わせたいとも申しておりました。しかし私は、だからといってその罪を許すものではございません。法治国家として毅然たる態度でハイジャックに立ち向かっていただきたいと思います。そして、ハイジャックのない世の中にしていただきたいと思います。以上です。(拍手)
○鴨田委員長 次に、小林久三君。
○小林参考人 小林でございます。一推理作家として、ハイジャック事件に関する考え方を述べてみたいと思います。
 まず、過激派に対する考え方でありますけれども、これは基本的に、武装した軍事的な強盗集団にすぎないというふうに私は考えております。世界的にいろいろハイジャック事件が起きておりますけれども、彼らの強盗的な目的を達したというのは日本だけだというふうに私は考えております。ことにこの前のダッカ空港事件というのは、彼らの目的が明らかに十六億円という身のしろ金、つまり活動資金の奪取にあったということはほぼ間違いないことだと思う。そういう意味で、彼らが要するに武装された軍隊的な規律を持った暴力集団であるとするならば、警察との知恵比べという面を必ず持ってくるわけですね。
 したがってこれからの見通しを考えますと、次第に金属探知器などによりましてどんどん武器の取り締まりが厳しくなりますと、彼らが考えてくる手段というのは、強盗の手段として考えられますのは、これはあくまで推理にすぎませんけれども、基本的にまずダイナマイトが必ず次に使われてくるだろうと私は思います。ダイナマイトは御承知のように恐らく五ミリグラムくらいで、航空専門家にお伺いすればわかると思いますが、とびらを吹っ飛ばせば恐らく飛行機は墜落状態になる。しかもそれは金属探知器にはかからない。したがってこのダイナマイトないしプラスチック爆弾が使われてくるだろう、第一に。
 それから第二に、全乗客に対する、つまり人質という形よりも、むしろぼくは操縦士など乗務員に対するさまざまな手段がこれから考えられてくるだろうと思います。端的に申しますと、操縦士ないしパイロットに対する個人的な手段と申しますか、それはたとえば簡単に申しまして、パイロットの家族を前もって誘拐するとか、それを極秘の中に展開していく。
 さらに、もっと手段として考えられますことは、ただ飛行機の中に入るのではなくて、もう一つの飛行機によるハイジャックという手段が考えられます。というのは、もっと具体的に申しますと、たとえば戦闘機によって飛行機を追尾した場合、これははっきりと形を変えたハイジャックになるわけです。じゃ、日本において戦闘機がないではないかという問題が出てきますけれども、この場合銘記しておかなければならないのは、日本国内において政治的目的を持ってハイジャック事件が起きたというのは「よど号」事件だけだろうと思います。常に海外において起こる。しかもその場合において、世界的な組織を持っているPFLPとか、それからツパロマスとか赤い旅団とか、そういう連中とのいわば連動作戦に出た場合に、もう一つの飛行機によるハイジャックという予想外な事件が起こる可能性が考えられる。
 それから、もう一つさらに突き詰めて、これはおどかすわけでも何でもなくてもっと考えられる手段としては、ただ飛行機、人質全体でなくて空港ジャックができるということは、これは世界の推理小説をお読みになるとすぐにわかることですけれども、乗客を全部おろして原爆、ウラニウム爆弾というのを一台積みまして、それを飛行場の中に置きますと、これは御承知のように、ウラニウム爆弾というのはウラニウムとウラニウムをぶっつけるわけですけれども、これによって放射能汚染が完全に空港半マイル以上に広がる、こういう手段がこれからは考えられてくるだろう。それは、現実にこれまでのハイジャック事件というのは警備陣の意表をつく形で常に行われてくるということをやはり一度頭に置いていただければ、これからウラニウム爆弾による、それを飛行機の中に搭載しておけば、これはつまり特殊部隊を潜入させても、爆発させれば飛行場、それから半マイル以上放射能に汚染されるわけですから、まるで手も足も出ない。しかもウラニウム爆弾の重さは約三十ポンドぐらいしかない。こういう状態においてハイジャックが行われた場合には、人質の対策問題よりもむしろもっと大きな対策が考えられなければならないのではないか、私はこういうふうに思います。そういう意味で、ハイジャック対策というのはやはり武装した暴力集団というものを徹底的にせん滅する中での一環にすぎないのではないかと私自身は考えております。
 私の意見はそれで終わります。
○鴨田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○鴨田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
○横山委員 両参考人、お忙しいところ、まことにありがとうございました。短い時間で大変有益なお話を伺いまして、私ども、質問も時間が大変ないのでございますが、簡潔に二、三点伺いたいと思うのであります。
 まず、一つはいわゆる西独方式と言われる強硬作戦、一つは日本方式とも言われる人命最優先主義、あの当時非常に対比的に世間で議論がされました。その後、瀬戸山法務大臣はどちらともとれないことを就任以来言われておるわけであります。本委員会におきましても、断固厳罰をもって処する、同時に一人一人の人命優先ということを両立して言われておるわけであります。私の質問は、一体日本として、われわれが考えるべきものはどちらに中心を置くべきであるかということなのであります。
    〔委員長退席、山崎(武)委員長代理着席〕
私の意見を申し上げて恐縮でございますが、もちろん国民性の違い、社会的な組織形態の違いもあるだろうと思うが、両先生はこの点についてどうお考えでございましょうか。簡潔にひとつお答えを願いたいと思います。
○穂苅参考人 お答えいたします。
 私の意見といたしましては、日本的なやり方がいいのじゃないかなと思います。と申しますのは、横山先生がおっしゃられたように、日本人とドイツ国民との国民性の違いということもございますし、それから日本赤軍とドイツ赤軍というものの違いがございます。実際はよく存じ上げてはおりませんが、ぼくの知っているのはこの間のダッカのハイジャック事件での日本赤軍でございますが、先ほど申し述べましたように、非常に軍隊的に訓練されているということでございます。いかなるときでも自分の部署を離れるようなことはございませんでした。あるいは女の人も乗せていませんでした。ですから、西ドイツ赤軍の特殊部隊がもしこの間の日本赤軍の日航機ハイジャックに向かったとしても、ぼくは成功しなかったんじゃないかなと思います。
 それから国民性の違いということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、外人はパニックになるような寸前まで非常に騒ぎました。いろいろな病気であるとか仮病であるとか、実際に病人になったのは外人が非常に多うございました。ところが日本人というのは、非常に病人になる人が少なかったわけです。ですから、日本人の国民性として、周囲を気にするとか、集団論理的な考え方というものが非常に強いので、もし今後そのようなハイジャックに断固として向かうというようなことがございましたならば、いままで日本人が乗っていて緩衝剤になっていたのが、逆に緩衝剤じゃなくなって、やはり日本人的な発想で、日本人というのは振幅が、意識的なあれが非常に強いものですから、今後どうなるかわからないわけです。たとえば飛行機にハイジャックされたところは敢然として集団で立ち向かうというような方式をとられますと、果たしてこの間の五人の中で四人まで殺したとしても一人残っていたならば、やはりハイジャックは負けだと思います。ですから、お客のことだけを考えるならばやはり日本的なやり方でやっていただきたい、お客の一人としてはそういう考えでございます。ただ、そのほかにもろもろの対策は断固としてやっていただきたいと思います。以上です。
○小林参考人 私自身の意見は二つありまして、これからハイジャック事件というのは少なくなるだろうと私は思います。現実に過激派によるハイジャック事件というのよりも、もっと要人誘拐というふうな形で移っていくだろうと思いますけれども、基本的に日本の赤軍と海外の赤軍派との違いは、ブラックセプテンバーにしても、赤い旅団にしても、西独赤軍にしても、常に秘密の組織であるわけです。ところが日本の場合には、明らかに東京の一角にはっきりした事務所を設け、それから成田空港の場合は三十六カ所、いま多少減ったようですけれども、明らかにそういう組織の存在がはっきりしている。にもかかわらず、何かそこに断固たる処置をとれない。そういうところに、彼らがハイジャック事件を警備人のすきをつくという形で起こしてくるという土壌があるような気が私はいたします。そういう意味で、根本的にハイジャック事件に厳罰で臨むということであるならば、その前に日本におけるそういう過激派が堂々と事務所を構えて、なおかつ不法な手段をとれるというその土壌をきちんと処理することがまず必要だろうというふうに私は考えます。
○横山委員 その件について小林さんにもう一つ伺いたいのですけれども、起こった事件についての対処のあり方と同時に、前もって何を考えるか、いま言及されたことも含んででございますが、確かに私も少なくなるだろうと思うが、しかしながらこれはなくならないものであろう、そしておっしゃったように形を変えて意表をついて出てくると思うのであります。私ども政治を担当していろいろと対応を考えている者にとりましてもう一つ考えなければならぬことがあるのではないか。といいますのは、この間もここで法務大臣と一問一答を交わしたのですが、私ども野党をもっていたしましても過激派については絶対相入れない立場ではあるが、しかしそういう過激派が日本に起こってくる土壌というものは何であろうか。そういうことについてはわれわれ政治の舞台としては考える余地は一体ないのであろうか。起こった事件、それから起こりそうな事件に対する対処以外に一体――なるほど西独でもイタリアでも過激派は起こっておるけれども、何か当初日本が赤軍派の輸出国のように言われ、どんどん海外へ行っていろいろなことをやる、そういう日本の社会的土壌というものは一体どういうものなのか、政治の世界でどうすればいいのか。それはペニシリンはないであろう。ないであろうけれども、われわれが考えるべき点が何かないのであろうか。けしからぬ、いかぬ、断固断固と言っておっても、それだけでは政治の世界は解決しないのではないか。それは警察とかあるいは役所がやり、役所がやれないことを法律的にやるということであろうけれども、政治という広範な舞台では何を考えればいいのであろうかについて一問一答をしたのでございますが、そういう点で小林さんの御意見があったら伺いたいと思います。
    〔山崎(武)委員長代理退席、委員長着席〕
○小林参考人 お答えいたします。
 私自身政治の専門家でもございませんけれども、ただ、一人の市民として考えてみたいことは、彼らは近代高度資本主義国家における鬼子だ、こう言われます。つまり、物質的な豊かさの中で育ってきた若い人たちにとって、いまの既成組織というものがつくり上げていく政治的雰囲気、社会的雰囲気に対して、どうにもならないある焦燥感といら立たしさの中から非常に直接的な手段をとってくるのが、過激派によるハイジャックを中心とするさまざまな攻撃だろうと私は思います。したがって、これはいま生きているぼくたちの社会の中から生まれてきたものですから、別なところから突如異常発生的に生まれたものでも何でもなくて、日本の政治的風土、社会的風土の中から生まれてきたものですから、これは私たち自身の責任でもあるだろうと思います。ただ私、一人の推理小説家として思うのですけれども、政治的犯罪、社会的犯罪に対する日本特有の――これは明治時代から、諸先生たち先刻御存じだと思いますけれども、明治以降日本の警察組織のある優秀さというものはあるわけですが、逆に言えば、それは密偵政治、密偵制度というものを非常に巧みに利用して近代国家をつくり上げたという面はかなりあるだろうと思います。ということを考えますと、いまのこの過激派がこれだけ跳梁しておることをなぜ許しておくのだろうか、こういう疑問が私は非常に強いわけです。言葉は悪いのですけれども、一種のスパイ、日本の警察のとっておるスパイというものは非常に優秀なものだろうと思いますが、それが、私たち推理犯罪を考える立場からいきますと甘いように思えてならない、こういうふうな印象を非常に強くするわけです。
 もう一度整理して申し上げますと、彼らは私たちの社会が生み出した一種の鬼子だと思いますけれども、その鬼子に対するわれわれの考え方が、できの悪い息子をかわいがるという考え方で本当にいいのだろうかというふうに私は思いますし、そういう鬼子を生んだわれわれの反省も当然あるわけですけれども、それに加えて、日本が持っている警備陣というものをきちんと整えて、彼らの存在する理由を根こそぎ覆していく方法が必要だろう、私はこういうふうに考えております。
○横山委員 最後に一つ穂苅さんに伺いたいのですが、穂苅さんが体験をなさった人質としての経験はハイジャックという特殊なものでございまして、人質法案を検討しております過程から、人質にもいろいろな形態があるわけです。私の名古屋で、二億八千万円を銀行で取られました。社会的にきちんとした人なのでありますが、それが犯人に銀行へ連れられていって、二億八千万円出してくれと言うて平静な顔をしておったらしいので、銀行もあたりまえのような顔をして二億八千万円を出した。あるいはバスジャック、最近は人質の形態がいろいろございます。いまお話の、ダッカにおける日本人の態度が外国人と比べて非常に平静であったというのでありますが、あなたの体験を含んで、人質はその段階においていかにあるべきか。大変むずかしい話ですが、たとえば、私がその二億八千万円のことで警察にも銀行にも言うたわけでありますが、その二人の社会的にもまあまあという人が銀行へ行って二億八千万円、ホテルに人質があるわけでありますから、自分も人質なんですけれども、ホテルの人質を心配してやっておった。もう少しいい知恵はなかったのであろうか。たとえば、もう緊張の余り銀行の支店で気絶してしまったらどうだ、二億八千万円を要求する前に。気絶してしまうことによって事態の変化が生まれるのではないかということを冗談のように言うたら、まじめに警察も銀行も、それはおもしろい案ですねと言うたことがございますが、この点について、人質になりました穂苅さんの体験上、今後人質に寄せる参考の御意見を承って、小林さんからもそれについて補足的な御意見を承りたいと思います。
○穂苅参考人 お答えいたします。
 非常に漫画的な発想としか言えないと思うのですが、余りこういうところでそういうことを申し上げても不謹慎だと思いますが、飛行機の場合は空の上だということがございまして、銀行の場合とは違うのじゃないかと思います。それから、先ほど申し上げましたように、地上にありましてもガソリンを非常に多く積んでおりますし、一人で行動できないという面で非常に違いがございます。一人が立ち向かったとしてもほかの人に迷惑をかける、これは日本人的な発想かもわかりませんけれども、そういうようなことがございまして、なかなか敢然と立ち向かうということができないと思います。ぼく自身帰ってきまして、ある人に、おまえは一人も殺さないで帰ってきたとは何事かというようなことを非常に責められまして愕然となったのですけれども、そういうような考えの人もおりまして、やはり一人で立ち向かうべきであったかなとも思いましたが、ぼくはそんな勇気はございませんし、人質となったならばやはり静かにしておるのが一番いいのじゃないか、日本国政府とかあるいは日本国民とかというものを信頼して静かにしておるのが一番いいのじゃないかなと思います。
○小林参考人 小説の手段としては幾らでも考えられるのですけれども、現実に百何十人の人質の方がどのような態度をとったらいいかというのは、私自身専門外なことなのでお答えのしようがないのですが、ただ一つ言えることは、つまり、過去のハイジャック事件を詳細に調べてみますと、犯人の数が一番多かったのがたしか「よど号」事件だろうと思うのです。そのときにたしか九人だった。それ以外は大体五人、武器が拳銃ないしプラスチック爆弾、こういう形をとっておりますので、これに対抗し得る手段としては、犯人の乗り込む数がマキシマム十人であるという想定から、人質の中にある手段をつくることは、これから警備当局の中で考えていけばいろいろな方法はあるのではないか、私はそう考えておりますが……。
○横山委員 ありがとうございました。
○鴨田委員長 次、正森成二君。
○正森委員 御苦労さまでございました。それでは、穂苅先生に具体的なことについて伺いたいと思います。
 最初、いまの御説明の中でエアコンディションがきかなかったので四十八度にもなったと言われましたが、それは大体どれくらいの時間続いたのでしょうか。それから、その後何か改善されたと言われましたね。改善されて大体何度くらいになったのでしょうか。私は汗かきなもので三十五度でも耐えがたいのに、四十八度というのは想像もできないようなことでございますので、念のために伺います。
○穂苅参考人 はっきりした記憶はいまのところないのです。と申しますのは、もう半年以上もたっておりますからはっきりお答えできませんけれども、四十八度になりましたのは、着きまして、DC8、あの機種は動力車、外部に頼らないとエアコンディショニングができないので、エンジンを回しているときはいいわけなんですけれども、ああいう長時間になりますと、それも回しているわけにいかないので、エンジンを切ることになります。ですから、ダッカに着くまではエアコンディショニングはもちろんあったわけですけれども、着きまして、何時ごろでしたか、夜ですから約十二時間ぐらいたったときが極限になったんじゃないかと思われます。動力車が着きましてからまた普通の温度でございますけれども、余りそこら辺の温度については詳しくございませんので、正確にはお答えできません。
○正森委員 赤軍が一つのトイレで、二晩ほど徹夜で直立で張り番をしておったと言われましたが、私たちはいろいろ経験するのですけれども、こういうぐあいに閉じ込められた状況では、トイレの状況が一番汚染されてくるんですね、コレラとかそんなことがなくても。その点はいかがでございましたか。
○穂苅参考人 トイレの状況は、もう何と申しますか、できるような状態じゃないぐらい汚染しておりました。
 トイレと、先ほど申し上げましたけれども、トイレとギャレの間に赤軍の男がいたわけで、その間に荷物でバリケードを築きまして、その外側に、トイレの近くの方に立ってお客を寄せないようにしていたということです。
○正森委員 結局、そうするとトイレの汚染状況というのは、水が出ないからそういうぐあいになっていくわけですか。
○穂苅参考人 先ほど申し上げましたように、一つのトイレ、後方のトイレはシャットアウトしております。満員のお客様でございますから、前方のトイレだけを使うわけです。それから水もやはり出なかったわけです。途中から、ダッカからの水であれをすることができましたけれども、人によっては、トイレに行って、トイレから出る水を飲んでいた人もおりました。
○正森委員 そういう厳しい状況の中で、外部との情報伝達はどういうようにされましたですか、あるいは全然なかったわけですか。
○穂苅参考人 外部との情報伝達というのは赤軍を通してなされるわけですけれども、いま日本国政府と連絡をしている、あるいは日航機がもうじき来る、あるいはパキスタン政府の間に小さなトラブルがあるというようなことがありましたけれども、ほとんど外部の状態はわかりません。と申しますのは、そのほかに、着きましてからは窓を閉められていましたし、夜と昼の区別もつかないような状態です。
○正森委員 その赤軍派が、自分たちの知った外部との情報を乗客に伝えるわけですが、それが意識的に操作されたうそのものもありましたか。それとも後で外に出てみたら、そのときそのときの正確な情報を伝えていたというように判断されましたか。
○穂苅参考人 余り外部との情報というのは知らされてないわけですけれども、一番驚きましたのは、ダッカの暴動と申しますか、あれをインターナル・リトル・プロブレムというような表現でしかやってなかったので、まさか内乱が起こっているというようなことは考えませんでした。ただお客さんが、ちょっと周りの状況がおかしいというような、ちょっと窓をあけて見ることがときどきございますから、そんなようなことがありましたけれども、あと特別いま思い出しません。
○正森委員 そうすると、赤軍派は乗客の心理的動揺をできるだけ防ぎたいということを考えていたと思われますけれども、ああいう状況に置かれますと、乗客の中には自分の生命――団結を重んじるよりも、そういう赤軍派に対して迎合的立場をとるという者も集団の中には出てくるものですけれども、あなたのハイジャックの場合にはいかがでしたか。
○穂苅参考人 赤軍に迎合的な人というのは、ぼくの知る限りいなかったと思います。すべて憎しみの念が強かったのじゃないかと思います。
○正森委員 では、最後に伺いますが、犯人の中に、幾ら軍隊的規律を持っておりましても、相当長い時間ですけれども、すきを見せたというように多くの乗客に見られるときはありましたですか。それとも、いや、これは立ち上がったら一人ぐらいはやっつけられても、直ちに報復があるから無理だというような状況でしたか。
○穂苅参考人 長時間、まあ百三十四時間になりますと、赤軍の中にもかなりすきが出てくると思います。たとえば手りゅう弾であるとかあるいはピストルであるとか、彼らのものを奪おうと思えばいつでもございました。それは初めの方ではなくて、特にダッカを飛び立ってからある程度、人間関係と言っては怒られると思いますけれども、長時間である程度人間関係ができてきますと、特にいつでも取れるという状態がございます。ただ、一人を殺したとしてもあとの四人が残っております。
○正森委員 スチュワーデスというのは乗客と同じように座らされたままだったのですか。それとも犯人たちの補助をしてやはりサービスをさせられたわけですか。
○穂苅参考人 初めはスチュワーデスが動くことも禁じておりましたけれども、スチュワーデスとかパーサーの方からの申し出によりまして、非常に勇敢にわれわれ乗客のために食事を運んだり水を運んだりしました。そういう意味で、非常にスチュワーデスというものを見直しました。
○正森委員 ありがとうございました。
 それでは小林先生に一つだけ伺いますが、先生は「空を飛ぶ柩」という推理小説を書いておりまして、菱星重工というのですか、そこの会長さんか何かが誘拐されまして、それに呼応してやはりハイジャックされるというような筋だったと思いますが、先生はまだお書きになっていないかもしれませんけれども、ハイジャック以外のその他ジャックですね、外国の在外公館を占拠するとかいろいろな方法と手段が考えられますが、こういうことを申し上げては失礼ですが、推理小説家の想像によってどういうような事例が考えられるか、いまお話しになった原爆以外にございましたら、お話しいただきたいと思います。話の種を先取りするようで申しわけございませんが……。
○小林参考人 これは職業上の秘密に入りますので、ここでなかなかしゃべるわけにはいかぬのですけれども、ただ推理小説家として、つまり可能性としてあらゆることが可能だという時代に入った、こういうことは言えるだろうと思います。いままでは、PBM作戦と言いまして要人誘拐それから資金調達作戦、爆弾。ところが、これから考えられるのはもっとスケールの大きい、つまり、私は小説以外に映画の仕事もしておりますけれども、アメリカ映画で、御存じのように「合衆国最後の日」というのが、大統領を人質にする、そしてそれは原爆というものを手段にする。そういう手段も考えられますし、それから、やはり一番こわいのは核ジャックだろうというふうに私は思います。御存じのように、アメリカの原子力委員会から出ておりますパンフレットは一九六四年から公開されておりますし、それからロスアラモス計画という、これは原爆の製造、つくり方という本ですけれども、アメリカの法務省とそれから原子力委員会は、この本によって起こった出来事には一切責任は持たない、こういうただし書きが裏表紙についておりますけれども、こういうのは世界的に非常に出回っておりますし、ウラニウムというものは自動車でいまアメリカとか海外では輸送されているそうですから、こういうものに過激派が目をつけないわけがない。したがって、そこから起きることは、やはり最高首脳に対する牽制である、こういうことは理屈の当然として推理されるわけです。その程度にしていただきたいというように思います。
○正森委員 ありがとうございました。
○鴨田委員長 加地和君。
○加地委員 私は、余り時間がございませんので、最初に質問だけ個条書き的にお尋ねしますので、一括してお答えいただきたいと思います。
 最初に穂苅先生にお尋ねすることをずっと挙げていきます。
 まず、百三十四時間の間の食事とか水とか、そういうものはどういうぐあいになっていたかということでございます。
 それから、二度か三度ほどパニック寸前の状態になったとおっしゃいましたけれども、そのパニック状態というのはどういう状況で起きてきて、それが結局は起きないでおさまったというのはどういう原因かということでございます。
 それからまた三番目には、私たちがよく聞いておりますのには、操縦席のとびらをしっかり閉めておけばハイジャック事件というのはかなり防ぎ得るのじゃなかろうかと言われております。それが、余りとびらをしっかり錠をかけて閉めていない、操縦席の中の方から閉めていないことが多いと言われておりますけれども、それを励行すれば果たしてハイジャック事件を防止し得るようにお考えになるでしょうかどうかということでございます。
 それから、その次の質問は穂苅先生、小林先生両方に共通でございますけれども、私はこの赤軍なども、悪いことをする人間というのは必ずどこかに精神的動揺があり、すきがあると思うのですね。そのために操縦者あるいはスチュワーデス等にも警察官の権限とか資格というものも一定の人数に与えて、ある程度訓練をしておく、そして、全部が全部そういうぐあいに警察官と同じような働きができなくても、あるいはピストルを持っていたり、あるいは何がしかの護身術に毛の生えた程度の身の備えというものをさせておけば、こうやすやすと五人かそこらぐらいの者にやられることばかりではないのではなかろうかというように思うのですけれども、その点についてのどようにお考えになるかということでございます。
 それから、先ほど穂苅先生がおっしゃいましたように、百三十四時間の間、ハイジャック犯人の間にもすきができてきて、手りゅう弾等を奪おうと思えば奪えたかもしれないとおっしゃいましたが、乗務員の間に組織的なそういうことについての訓練ができていて、組織的な反撃というものがもし可能であったとすれば、それでも犯人たちの方が勝って、いわゆる正しい者が負けてしまうという状況のままになったかどうか、そういうことをお尋ねいたします。
○穂苅参考人 大体五つのことをお聞きになったと思います。
 まず食事と水のことですけれども、ダッカに到着いたしまして食事が運ばれたのはその日の夕方でございます。食事はチキンハム二枚とパン一個、それからバナナが一本でございます。水は小さなコップに七分目あるいは人によっては半分ぐらいでございますが、全く同じ食事がダッカにいる間に運ばれたわけです。向こうの政府を何も恨むわけじゃございませんけれども、同じ内容の食事でございます。それも水も十分に運ばれたわけではございません。一日にコップ七分目ぐらいが、多くなりまして二杯であったりあるいは三杯であったわけでございますから、水分の減少のために非常に体重が減少したというのは先ほど申し述べたとおりでございます。
 それからパニックの原因ということでございますけれども、パニックの原因というのは三回ほどございました。一回はダッカに着きまして、エアコンディションが効かなくて四十八度になったときでございます。それからもう一回は、やはりエアコンディションの状態が、これはいまちょっと定かではないのですけれども、いつだったかわかりませんけれども、やはり雨が降った日でございますけれども、余り暑くなりまして、暑さのためにパニック寸前ということでございます。そのほかに食事とか精神的な緊張とか、たび重なる疲労ということがあったかもわかりませんけれども、直接的には暑さのためとお考えいただきたいと思います。それから三回目というのは、あそこに乗っておりましたガブリエルという銀行家を殺すといって飛行機がダッカの空港の中で動き出したときでございます。あのとき皆さん非常に不安に駆られて、飛行機が前に進むと前に消防車などが来てとめられまして、身動きとれなくなったような段階のときに、やはりお客が非常に荒れました。
 それから三番目の御質問の操縦席のとびら云々でございますけれども、操縦席のとびらは、幾らかたくしてもぼくはだめなんじゃないかなと思います。今回も操縦席のとびらは、かぎがかかっていなかったわけではございません。かっちりかぎがかかっておりました。やはりその人質となった――突然赤軍派が前方の操縦席の方に行ったわけですけれども、アシスタントパーサーをつかまえまして、それで殺されるというようなことで、キャプテンがやむにやまれず、すぐにあけたわけではございません、相当の期間たってあけたわけです。その前に飛行機は、高橋キャプテンから直接お聞きした話ですけれども、ダッカに戻ろうとしたわけですけれども、アシスタントパーサーの悲鳴で、殺されるということでもってついにとびらをあけたのが現状でございます。ですから、いかに厳重なとびらをしようともだめだと思います。ですから、外部から全く遮断されたようなとびらであったなら構わないと思いますけれども、それはまたいろいろな面で問題があるのじゃないかと思います。
 それから、スチュワーデスとかあるいはパイロットのポリス化ということですけれども、ちょっとぼくはお答えできないですけれども、フィーリングで申し上げますと、余りうまくいかないのじゃないか。日航のスチュワーデスの健康管理をぼくはやっていますけれども、フィーリングとしてうまくいかないと思います。
 それから組織的に反撃が可能かというような御質問ですけれども、やはり正しい者が負けるのじゃないかなと思います。悪者が勝つと思います。それは西ドイツ赤軍のようにある程度すきを見せて、四人が四人とも前の方にいるという状態であったならばできるかもしれません。先ほど申し上げましたように、ダッカにいる間コレラ事件がございましても、やはり自分の決められた場所をあくまで守るというような不死身の決死隊的な考えの日本赤軍には、正しい者は負けると思います。以上です。
○小林参考人 私に対する御質問は、要するに操縦士ないし乗務員の拳銃所持などによるハイジャック防止ということに対する御質問だと思いますけれども、私自身はそういうことではむずかしいだろうというふうに思います。これはよく映画等でおもしろおかしく描かれていることですけれども、突如ハイジャックが暴れまくって、火薬が破裂しまして窓が吹っ飛ぶ、そのためにきりもみ状態になる、これが映会画社のある飯の種になっております。そういう構造上の不備もありますし、パイロットが拳銃を所持するというのは、これは私の専門外ですけれども、日本的に非常にむずかしいことがあるのではないか。法律的にも、それから国民感情の上でもむずかしいだろう。したがって、総合的に言いまして、やはり過激派に対する全般的な施策の中の一環にすぎない、私はそういうふうにいつも考えております。
○加地委員 ありがとうございました。
○鴨田委員長 次は、鳩山邦夫君。
○鳩山委員 穂苅先生に伺いたいのですが、よく火事場のばか力とかいうように、異常な状態、しかも命の危険があるというようなときに、人間は持っている以上の能力を出すことがあると聞いております。
 ところで、このハイジャックという異常な状態の中で、四十八度というような温度あるいはコップに半分の水しか飲めないという状態、これは肉体的に言えばもうすぐまいってしまいそうな状態でございますが、そういう悲惨な状態にいわゆる異常な緊張、興奮という要素が加わった場合に、人間の体力というものはその相乗作用によってひどく衰えるものなのか、まいりやすくなるのか、それとも異常な状態が逆に精神力を高めて、気力、体力が長持ちするようになるのか、その辺を医学的あるいは精神医学的にどうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○穂苅参考人 どうも医者としてお答えしていいのか、乗客の一人としてお答えしていいのかわかりませんけれども、経験的に申し上げますと、火事場のばか力ということも、ある時間があるのじゃないかと思います。長時間に及んだ緊張状態で肉体的にもあるいは精神的にも非常に疲労が極致に達しているときは、火事場のばか力というのは出ないのじゃないか、ばか力を出しっ放しにはいかないと思います。やはり緊張にはあるタイミングとかということがございまして、物を持ち上げるにもそうだと思いますけれども、やはりタイミングがございますから、ある一瞬でございます。それが長時間に及んだ拘禁状態で、もう生きることがやっとというような非常に植物的な状態のもとにばか力を要求したとしても、できないと思います。医学的にもそう思います。
○鳩山委員 小林参考人にお尋ね申し上げますが、先ほど参考人がおっしゃったように、ハイジャックというのは常に警備陣の意表をついて行われるから成立をしてしまうわけでございます。そこで、政府にも対策本部その他いろいろなものが設置され議論を積み重ねられているとは思います。そしてまた、ダッカでのハイジャック事件が起きて対策本部ができたときに、これはこのダッカ事件だけのためにあるのではない、これから永続的に活動させてハイジャックの未然防止のために知恵をしぼるのだ、こういういわば趣旨の説明のようなものがあったと記憶しておりますが、いま政府がどのような対策をしているか、細かいことまで知っておるわけではありませんが、推理作家としてのお立場から考えて、大体役人だとか政治家というものが対策を練ってもだめじゃないか、われわれの力をもっとかりるようにしなくちゃいかぬぞという気持ちがあるかどうか、あるいは、もちろん先ほど正森委員に対するお答えのように、確かに皆さま方の持っておられる知恵というものは職業上の秘密であり飯の種であるかもしれませんけれども、秘密裏に、あらゆるケースを想定してそれを政府に提出するというようなことができないものか、お尋ねいたします。
○小林参考人 私自身の考え方を申し上げます。
 日本の過激派の中で、全く所在の不明なのは日本赤軍という組織だろうと私は思います。その組織はどこにあるのか、これを考える場合の方法として、私は日本の警備陣がいま一体どういうことをやっているかは具体的には知りませんけれども、「空を飛ぶ枢」という小説の中で、私自身は、その所在を確かめるために日本の警察庁の特殊チームが過激派という陥穽の組織をつくって、パリにアジトを置いて接近作戦をとる、一種のおとり作戦ですけれども、それがある一乗客によってわかってしまったために起こるある推理小説を書きました。そういう方法は当然いまとっているのでしょうけれども、もっとそれを組織的にやっていけば――これは諸先生方、御存じでしょうけれども、モサドというイスラエルの中央情報局というのがございますけれども、彼らの持っている組織力、情報収集能力、行動力というものは大変なものだというふうに聞いております。日本の警察庁はそこまであるのかどうかわかりませんけれども、そういうことに私たちは非常な興味を持っておることは事実です。
○鴨田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 両参考人には、貴重なる御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
    ―――――――――――――
○鴨田委員長 引き続き、政府に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
○西宮委員 この前私が保留をお願いした問題は、要するに政府の答弁では私は納得しませんでしたので、したがって政府でも考えていただく、私も考えていく、こういうことで保留をしたわけでありますが、その前に私は、例の「強取」という問題についてかなりくどいほどお尋ね申したわけであります。大臣あるいは局長、私は辞書にない言葉だということを申し上げたが、辞書をごらんになりましたか。イエスかノーだけで答えてください、時間がありませんから。
○瀬戸山国務大臣 忙しくて見ておりません。
○伊藤(榮)政府委員 見ております。
○西宮委員 私は、国会の図書館にある辞書でありますが、それを見ましたけれども、全くないというのが三つばかり。それから全編十三冊から成っている大冊の日本で最も権威ある辞書があるわけでございますが、その中にはありました。ありましたけれども、これは「キョーシュ」と読むことになっております。「ゴーシュ」ではない。あるいは岩波の「広辞苑」、これには「ゴーシュ」と発音をしておりました。これは「強盗罪を構成する行為」と説明がしてあります。それから滝川幸辰さんの「刑事法学辞典」の中には、「強取とは、暴行・脅迫により被害者の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移すことである。」こういう説明がしてありました。ですから、私がないと申し上げたのは、最初の図書館に備えてある大きな辞書になかったので、ないということを申し上げたのですが、あることはありました。あったけれども発音の仕方が違う、あるいはまたいわゆる強盗罪の構成要件であるとか、あるいは強取とは要するに財物を自己または第三者の占有に移す、こういうことだという説明でありまして、この法律に使っておりますような航空機を強取するというようなことは、仮にこの言葉を適用しても、実際問題としてあり得ないことであります。私は実は昨年の国会の審議の際もその点を強調したわけでありますけれども、お忙しいでしょうけれども、もう少し大臣なども法律をつくる前には、日本の国民が使っているかどうかというふうなことぐらいはぜひ見ていただきたいと思います。いまの法律の中にどういうふうに用語例としてあるかということをお尋ねした際に、刑事局長は、認識不足といいますか見当違いというか、そういう答弁をされまして、これは直ちに訂正、補完をされました。しかしその際、いやしくも刑事局長たる者がまことに申しわけない、こういうことを言って訂正されたわけですが、それほどまでこの言葉はわかりにくい言葉だと思います。したがって、これは今度の改正刑法の草案ではりっぱに訂正されているわけです。そのことを私が指摘をいたしましたけれども、これまた刑事局長は御承知なかった。私も大変がっかりしたわけであります。ですから、これからは、法律用語ですから非常に厳密に区別をする必要がある、そういうために特殊な用語を用いるという場合があってもやむを得ませんけれども、しかしこの改正刑法草案等では明らかにそういう言葉は使わないことになったわけですよ。それは六十八ページに、いままでの航空機の強取等の処罰に関する法律というのはその言葉は使わないで、今度は別な言葉を使うということになっている。それほど私は航空機の強取というような言葉は不適当な言葉だと思う。これは強盗罪にはいいのですよ。さっきの辞典が言っているように、二つともこの辞典は正しいと思う。強盗罪などにはいいと思うのですよ。これは全く適切だと思う。占有を移して所持する、あるいは強盗して盗んだものをポケットに入れて持っていくというような場合にはいいと思うのだけれども、しかし飛行機の強取、これは具体的にはどういう例を指すのだと言って去年の国会でお尋ねをしましたら、刑事局長の御答弁では、ただ一つの実例は、昭和四十八年にベンガジ空港で航空機を爆破したことである、こういう御説明であったのでありますが、航空機の爆破、炎上というようなことがいわゆる占有を移すあるいは所持する、そういう言葉で表現をされるというのは、私はまことにその実態に沿わないという気がいたしまして、これはぜひこれから大臣にもお願いしておきたいと思うのですが、本省の皆さんはいずれも専門家でございますから、そういうことに慣れてしまって、日本人が使うのだろうかどうだろうかというようなことさえも余り考えておられないというふうに思われる。そういうことのないようにお願いしたいと思う。世の中は専門家よりは素人の方がいつも多いわけです。だから素人にわかるような、あるいはこの程度の言葉ならば西宮の知能指数でも大体わかるのじゃないかというぐらいにレベルダウンをして考えていただくということを特にお願いしておきたいと思います。
 それから、今回の法律の、人質による強要行為等の処罰に関する法律というので、私はこの「等」の字を問題にしたわけであります。これは局長の説明によりますと、この「等」とは第三条を指すのだということを言われました。そしてその御説明は、要するに第二条等に言うところの要求行為、それだけでは殺人ということにはつながらない、したがって、当然にいわば第三条は結果的加重犯にはならない、つまり、要求行為だけでは殺人ということは当然には出てこないので、したがって第三条は、そのために特に第一条、第二条とは別にもう一つあるぞというので「等」という言葉を入れたのだ、こういう御説明でございました。ただ、私が指摘をいたしましたのは、それならば刑法の逮捕監禁罪、これはあの逮捕監禁の章でありますが、あれには全然「等」はない、こういうことを申し上げたわけです。そうしましたら、局長の御答弁は、要するにそれは法制局の方針である、あるいは法制局の慣例である、こういう答弁をされたわけであります。しかし、問答している中に局長はこういうふうに御答弁になっておられる。「仮にただいま御指摘の第三十一章「逮捕及ヒ監禁ノ罪」とありますのが二百二十条と二百二十一条のこの二カ条からなる法律をつくるといたしますと、やはり逮捕監禁等の処罰に関する法律ということになるのじゃないかと思います。」こういうことで、だから今度の航空機強取のこの法律とそれから逮捕監禁罪と、本質的には何も変わっていないので、だからそう直すのがむしろ当然ではないかという意味の答弁をされている。したがって、この点に関する限り私の述べてまいりました私の考え方、これを局長はいわば全部承認され、同意をされたというふうに私は考えるのですが、それでよろしいですね。
○伊藤(榮)政府委員 先般お尋ねでございましたので、私も一応のお答えをいたしましたが、その後よく御引用の条文等を丹念に検討いたしてみたわけでございます。そういたしますと、逮捕監禁致死傷と申しますのは、人を逮捕監禁し、「因テ人ヲ死傷ニ致シタル者」ということでありまして、明らかに結果的加重犯である。西宮委員のお言葉をかりますと、まさに延長線上の行為である。ところが、ただいま御提案しております法律の第三条は、第一条あるいは第二条の罪を犯し、よって人をどうこうしたというものではなくて、強要行為をした者が人を殺したとき、こういうことでございまして、たとえて言えば、一条あるいは二条の罪と三条の罪との関係は、強要行為を犯した者が、という点を除いて考えますと、併合罪の関係に立つような関係にある。そういう意味におきまして、逮捕監禁致死傷が結果的加重犯であるというのとはやはり趣を異にする。したがいまして、仮に将来、逮捕監禁及び逮捕監禁致死傷の罪の二つだけで一つの法律をつくるといたしました場合に「等」が要らないとしても、今回の法律には「等」が要る。結局、熟考の結果、やはりそういう結論に達したわけでございます。
○西宮委員 その議論を始めるとまた時間が足りなくなりますから省略をいたしますが、局長はいま私が朗読いたしましたように、むしろ刑法の規定に「等」を入れるのが――これは法律にした場合ですよ、入れるのがあたりまえだというふうに答弁をされた。しかし、その法律では、ただし法制局の慣例は法律の名称には「等」を使う、しかし――これは明らかに言っているわけですよ、「等」を入れる、しかし法律の中の章の場合には入れない、これが慣例だというお話でありましたので、単なる慣例なのか、そういう程度ならば当然細則とかあるいは通達とか何かそういう基礎になるものがあるはずだというので、私はそのことを御提示を願いたいということを政府委員室を通してお願いをしておったので、もしあったらお示しをいただきたいと思います。
○伊藤(榮)政府委員 内閣法制局の考え方といたしまして、法律の題名は中身を正確にあらわすものでなければならない、しかしながら章名、節名についてはある程度の許容度があるというような考え方で法案の審査に当たっておるということでございますが、特にこれを内部通達でございますとか、そういう書いたもので明らかにしているという事実はないようでございます。
○西宮委員 局長はいまの御答弁と全く同じことを前回にもおっしゃられたわけでありますけれども、さらに局長はそういうふうに、法律の場合には、対象にする事態が複数ある場合には「等」をつける、しかしそれが章の場合には「等」をつけない、これが内閣法制局の慣例だ、しかも「私はその慣例は一応合理性があると思っております。」こういう答えもされて、局長としてもこれが正当であるという御答弁をされたのであります。
 私はその後で、本当に手当たり次第に二、三の例を拾ったわけでありますが、それをちょっと申し上げますと、犯罪者予防更生法第三章第三節保護観察の終了等、仮釈放及び保護観察等に関する規則第二章仮釈放等と「等」がある。滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第二章滞納処分による差押がされている財産に対する強制執行等、消防法第四章消防の設備等、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第二章急傾斜地崩壊危険区域に関する管理等、交通安全対策基本法第二章交通安全対策会議等、高圧ガス取締法第四章容器等、石油コンビナート等災害防止法第二章新設等の届出、指示等、これは私の手元にあった六法全書をぱらぱら見ただけですが、こういう例は幾らでもあるわけですよ。これは決して統一的な方針にはなっていない。このことは明らかだと思うのですが、その点はどうなのですか。
○伊藤(榮)政府委員 私も章名、節名に「等」のついているものはないとお答えしたつもりはないのでございまして、法律の題名と章名、節名とにおいては、法制局においてその厳密さの許容度が章名、節名においてはある程度緩やかに扱うこととされておる、したがって「等」をどうしても入れなければならぬ場合かどうか厳密に考えて、なくても大体わかる場合には章名、節名には「等」はつけておらない、これが慣例であるというふうに申し上げておるわけでございます。
○西宮委員 ただいまの御答弁は、その許容度云々ということで、幅があるのだという答弁をしておられますけれども、この前の御答弁では、その点はきわめて明確に答えられたわけです。そして「私どもはこの「等」がある方が正確じゃないかというふうな気がしておるわけでございます。」という答弁をしておるわけです。こういうことでまことに自信のないお答えです。そういう気がいたしますというように気分で左右される。いやしくも法律ですからもう少ししっかりしてもらわないと困ると思うのです。
 しかし、それでは最終的に局長のおっしゃるようにそれを全部認めるといたしましょう。そうしますと、当然に提案理由は書きかえなければならぬと思うのですが、それは書きかえていつお出しになりますか、大臣。
○伊藤(榮)政府委員 提案理由はまさにこの法案の内容の必要性を簡明にあらわしておるわけでございまして、改める必要はないと思います。
○西宮委員 改める必要はないのですか。そんなばかなことはないのじゃないですか。それでは第三条はよろしいという提案なのですね。第三条は除外するという提案理由なのですね。四日前の委員会でも私は申し上げたでしょう。「この種の強要行為に対する処罰を強化する」というので、つまり「等」はないわけですよ。あなたは「等」は第三条を指すと言うのでしょう。それでは、提案理由の方は第三条は除外するということですね。
○伊藤(榮)政府委員 もう少し先をお読みいただきますと「この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」となっておるわけでございます。
○西宮委員 冗談じゃありませんよ。この前質問したでしょう。この最後の「等」は何を指すかと言ってお尋ねしたら、第四条を指すと言われたのじゃないですか。つまり、第四条はいわゆる処罰の範囲を拡張する、刑法の第二条を適用する、それはりっぱに答弁に載っておりますよ。これは第四条を指すのだ。ですから、第三条は提案理由からは除外されている。その点は明瞭じゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 私が申し上げておりますのは「この種の強要行為に対する処罰を強化する」ということでございまして、処罰を強化するためにそういう強要行為を犯した者が人質にされている者を殺した場合には特に重い刑を盛る、こういう措置をも含めて処罰を強化しておるわけでございます。
○西宮委員 それはもちろんわかっていますよ。わかっていますけれども、ここで言うのは「この種の強要行為に対する処罰を強化する」。だから「強要行為」と言って「等」を入れなければ第三条は除外されてしまうわけです。その次の「等」は、これはもう明瞭に速記録に残っていますよ。これは第四条を指す。したがって、第四条は処罰の強化ではなしに、処罰の対象を広げるので最後に「等」をつけたのだ、こういう御説明なのです。
○瀬戸山国務大臣 西宮委員が、この法律の文言を書くときの用語の問題、法律の題名あるいは章、節等の書き方、こういうことについて深い御研究をされて、いろいろ御示唆をいただきまして、私もありがたく拝聴いたしております。もちろん国民に対する法律でありますから、できるだけ国民が理解のしやすいような用語を使う、これは当然のことだと思います。今後ともそういう点は十分気をつけて立案をいたしたい、かように考えます。
 ただいま、どこかと思って見ましたら、この法案の提案理由「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ、この種の強要行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要がある。」これは私の見ましたところでも全然矛盾を感じないわけでございます。といいますのは、これはしばしば刑事局長等からも御説明をいたしておりますように、この法案は、第一条が、御承知のように各種のハイジャックの規定を設ける、強要行為でございます。第二条が飛行機の強取による強要行為。この二つが並んでおるわけでございます。こういうものに対する処罰を強化するということを
 一応書いて、そのほかに、そういう場合に人質を殺した場合は別に重く罰するという規定が第三条にあります。でありますから、強要行為に対する処罰を強化するのが一条、二条、それから三条は、これと類型を異にして、人質を殺したときは「死刑又は無期」という規定がありますから、それが「等」に当たる、こういうことでありまして、私の方としては矛盾を感じない、かように考えます。
○西宮委員 それは大臣の御答弁が間違っておるのじゃないですか。なぜならば、一条、二条の事案に対して、第三条は人を殺した場合だ、ところが、この法律の題名に「等」をつけたのは第三条があるから「等」をつけたのだ、一条と二条だけならば「等」は要らないのだ、こういうことを局長は答弁されているわけですよ。そのために「等」をつけたのでありますということをくどいほど答弁をしておられるわけです。それならば、第三条をいまおっしゃったような人を殺した場合云々と言うならば、当然に提案理由の中に「等」を入れなければ通用しないじゃないですか。
○瀬戸山国務大臣 題名の「人質による強要行為等の処罰に関する法律」これもしばしば申し上げておりますが、いまのことと同じだと思います。第一条、第二条、犯罪類型をつくっております。これが強要行為に関する処罰の規定でございます。そのほかに第三条がありますから、この法律の内容はどういうことなんだということは、あらまし題名を見てわかるように、それが立法のときの書き方でございますから、強要行為だけでは、ほかに人を殺した場合の罪があるのかどうか見当がつかない、そのほかにも何かあるのだ、こういう意味で「等」が入れてある、これもしばしば申し上げておるところでございます。この提案理由の末尾に書いてあるものも、そのことをこういう意味で提案をいたしました、こういうことでございますから、私の頭が非常に低級なのかもしれませんが、ちょっと理解に苦しむわけでございます。
○西宮委員 大臣が言われるとおり、第一条、第二条は要求行為、第三条は人を殺した場合。その第三条に人を殺したというのがあるから、題名には「等」を入れたのだ、こういう局長の説明なんですよ。だから、それならばここにも「強要行為等」と入れなければ、提案理由の方では第三条は提案しないということになってしまうじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 「理由」にございますように「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ、この種の強要行為に対する処罰を強化する」というのでございまして、最近における強要行為の実情はどうかと見ますと、第一条に書いてあるような強要行為、第二条に書いてあるような強要行為、あるいはその強要行為に関連して第三条のような殺害行為、こういうものの発生が危惧されるわけでございまして、これらのものに対する処罰を強化するということがこの法律のまず主なる理由であるわけでございまして、なおこれに伴って第四条のような国外犯の規定を設ける必要もあるわけでございまして、それらを簡潔に述べたのがこの「理由」でございます。非常に簡潔に述べておりますから、論理的にいろいろ申し上げてまいれば、最近における人質による強要行為の実情はかくかくであるというようなことを細かく申し述べまして、こういうふうにこの理由を長く書けばよろしいのでございますが、それらのことの詳細につきましては、御審議の冒頭に大臣から提案理由として説明申し上げたところでございます。
○西宮委員 長く書く必要はないのですよ。あなたは、第三条は「等」の中に入っているのだ、「等」というのは第三条を指すのだ。――だから、ここでも「等」を入れさえすれば長く説明する必要も何もないのです。いまおっしゃったように、第一条、第二条は要求行為だ、強要行為だ、第三条が殺害行為だと言っておられるのでしょう。だから、そのために表題に「等」をつけて出したのだということを言ったのに、それならばここに「等」がなければ第三条の殺害行為というものは提案理由からは抜けてしまうじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 題名の方で使っております「等」につきましては、それぞれの罰則そのものをあらわすために「等」を使っておるわけです。ところが理由の方は、最近の現象、それからそれに対する対応の必要性、こういうことを述べておるわけでございまして、おのずから観点が異なる。だから、強要行為の罰則の法定刑を強化する必要がある、あるいは強要行為に係る者が人を殺害した場合の法定刑の強化を図るというふうな厳密な構成要件に即して理由を書くといたしますと、ただいま申し上げましたように、もう少し長く書かないといけないのかもしれませんけれども、そういう提出の理由となりました提出の必要性というものを、具体的な実情に即して簡明に記載した、そういう意味で、そこにごらんのような表現になっておる次第でございます。
○西宮委員 長く書かなければならぬという必要は全くありませんよ。前の方が「等」で第三条を指すのだと言っておるのですから、ここにも「等」を入れさえすれば何も問題はないのだ。
○伊藤(榮)政府委員 「理由」において私どもがかんがみておりますのは「人質による強要行為の実情」にかんがみておるわけでございます。したがって、その種の強要行為に対する処罰を強化するわけでございまして、論理は一貫しておるのではないかと思っております。
○西宮委員 これはちっとも一貫していませんね。「最近における人質による強要行為の実情にかんがみ」かんがみているのはこれだ。しかし、それならば第三条はなくていいはずなんです。単に強要行為だけを処罰するというならば第三条は必要なかったし、したがってこの提案理由で十分だということになるわけです。第三条を入れたからには、それを対象にした提案理由の説明がなければおかしいのじゃないですか。
○伊藤(榮)政府委員 第三条の規定も、最近の実情にかんがみて強要行為の処罰を強化する一つの手段でございます。
○西宮委員 それなら上の方の「人質による強要行為の実情にかんがみ」ここにも「等」を入れたらよかったかもしれません、いまのような御説明なら。
○伊藤(榮)政府委員 私どもの理由を書きました趣旨は、先ほど来種々申し上げておるとおりでございますが、いろいろ御指摘を受けてみますと、もう少し今後は配慮すべきであろうと思いますので、十分承っておきます。
○西宮委員 それではこれで終わりにいたします。とにかく法律の言葉というのは、ずいぶん権利義務に関係する、ことに刑事法などは、そういう点では特に大事な問題なんです。ただ、非常に残念なのは、いま御答弁を伺っておりますと、その都度その都度、この前に御答弁になったこと、その他適当にその場だけで答弁されるというようなのが目立って、その点は非常に私は残念に思ったのですけれども、ぜひ今後そういうことのないように御注意を促したいと思います。
○鴨田委員長 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 この前の残りの中で確信犯というのは一体何かということをひとつお聞きをしていきます。
○伊藤(榮)政府委員 確信犯という言葉は、わが国の刑法その他の法律において用いられておるものではありませんから、学説によりまして必ずしもその意味内容が明確でないと思うのでございます。世界的に見ますと、確信犯という言葉が使われましたのは、この前稲葉委員からもちょっと御指摘があったような気がいたしますが、一九二二年のドイツのラートブルッフによる刑法改正草案においてでございまして、それによりますと、同草案の七十一条におきまして「行為者の決定的動機が、彼が自己の道徳的、宗教的又は政治的確信に基づいて行為に対して義務づけられていると信じたことにあったならば、懲役及び禁錮の代りに同一刑期の拘禁に処せられる」こういうのをラートブルッフが提案したことがありまして、これが一般的な確信犯というものの定義あるいはこれに近いものとして考えられておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 この前私はフェリーと申し上げましたので、訂正さしていただきます。ラートブルッフですね。
 そこで、一体日本で確信犯というものは認められるという考え方ですか。確信犯というものは認められないという考え方ですか。
○伊藤(榮)政府委員 学説上は確信犯というものの存在を前提とした理論の展開が一部見られるわけでございますが、わが国の刑法等の適用の関係では、確信犯という概念を利用して裁判所が裁判をしたという例は余りございませんで、むしろ政治的な色彩の犯罪であるかどうかということが問題になりまして、そういうものについてはいわゆる禁錮、懲役でなくて禁錮をもって臨むべきではないかというような議論で、大体それが中心となっておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 たとえばこういう議論があるんですね。慶応大学の宮沢浩一さんの議論だと思っていいでしょう。「今日のように、投票を通じて政治的決定に参加する民主主義のルールの下で、「確信犯人」を認めることは、矛盾です。」という、これは対話の中の一つのあれで、宮沢さんの意見かどうかはっきりしませんけれども、こういう考え方があるのです。いまの法務省としてはこういう考え方をとっているわけですか。
○伊藤(榮)政府委員 別に法務省としては確信犯の存在を否定するという態度をとっているわけでもございませんし、いろいろ学説上確信犯というものについての説がなされ、たとえば確信犯については違法性の認識があるのかないのか、そういうものが期待できるのかどうか、あるいはこういうものに対して刑罰の改善効果があるのかないのかとか、そういう具体的な刑事政策の運用面で議論になる問題でございまして、確信犯というものは存在しないとか、何かそういうふうに決めつけるにいたしましても、確信犯の定義そのものが確立されておらないということでございますので、法務省としてどういう態度をとっておるということはございません。
○稲葉(誠)委員 木村亀二さんのものを読むと、木村さんは牧野さんの弟子ですから、主観主義の刑法理論をとっている人ですけれども「確信犯に対して応報刑を科することは、刑事政策的には盲目的無策を意味すること以外ではない。」こう言うんですね。これは矯正局長に聞かなければならぬことだ、こう思うのですが、こういう考え方に対しては一体どういうふうに考えます。
○伊藤(榮)政府委員 牧野先生の流れをくまれる木村先生としては、結局刑罰の本質を、どちらかといいますと犯人の更生改善という主観的な側面からとらえられる方だと思うのでございます。そういたしますと、木村先生の御認識になっておる確信犯というものは違法性の認識を欠くものである、したがって、もともと違法なことをしたと思っていない、そういうものであるから、これに対して、君は違法な行為をしたのであって、したがって社会順応性を身につけるようにならなければならないというような教育を施す余地がない、こういうようなことをおっしゃっておるのではないかと思います。
○稲葉(誠)委員 この確信犯の問題は非常にむずかしい問題ですし、まだそのほかにもたくさん問題があるわけですけれども、時間の関係もありますから、これで質問を終わりにいたします。
○鴨田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○鴨田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○鴨田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○鴨田委員長 次に、ただいま可決いたしました本法律案に対し、山崎武三郎君外七名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同、新自由クラブ、無党派クラブ及び社会民主連合の共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 私は、提案者を代表して、附帯決議案の趣旨について御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    人質による強要行為等の処罰に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法が一部過激分子による航空機の乗取り、在外公館の占拠等の不法事犯に対処する目的で制定せられた経緯にかんがみ、本法の適用に当たつては、憲法で保障された正当な労働、農民、市民運動等に対し、その本来の目的を逸脱してこれを乱用することのないよう万全の配慮をすべきである。
 ただいま議決いたしました法律案は、近時一部過激分子によるハイジャック等の不法事犯が悪質、過激化し、その都度多数の関係者を人質にして不法な要求をするなどの実情にかんがみ、この種事犯の再発防止のため、罰則を強化する等の措置を講じたものであります。
 しかし、本法が施行されました後は、過激分子に適用されるだけでなく、その他の者に対する適用も考えられるのであります。したがって、政府は、本法の運用に当たっては、労働運動など正当な運動を阻害することのないよう万全の配慮をされたいというのが本附帯決議案の趣旨であります。
 何とぞこの附帯決議案に御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
○鴨田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 直ちに採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○鴨田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、瀬戸山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣。
○瀬戸山国務大臣 人質による強要行為等の処罰に関する法律案につきましては、各方面から慎重な御審議をいただきまして、御可決いただきましたこと、ありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。
 なお、ただいまの附帯決議につきましては、当然のことでございますから、その趣旨を十分尊重して今後の運営に当たることを申し上げておきます。
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○鴨田委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
○鴨田委員長 次回は、明十九日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時四十八分散会