第084回国会 商工委員会 第11号
昭和五十三年三月二十八日(火曜日)
    午前十時四十三分開議
 出席委員
   委員長 野呂 恭一君
   理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君
   理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君
   理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君
   理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君
      鹿野 道彦君    粕谷  茂君
      藏内 修治君    島村 宜伸君
      田中 正巳君    辻  英雄君
      中西 啓介君    楢橋  進君
      西銘 順治君    橋口  隆君
      松永  光君    渡部 恒三君
      渡辺 秀央君    板川 正吾君
      加藤 清二君    後藤  茂君
      上坂  昇君    渋沢 利久君
      清水  勇君    中村 重光君
      長田 武士君    玉城 栄一君
      安田 純治君    大成 正雄君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  河本 敏夫君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     橋口  收君
        公正取引委員会
        事務局経済部長 妹尾  明君
        通商産業政務次
        官       野中 英二君
        通商産業大臣官
        房審議官    島田 春樹君
        通商産業省貿易
        局長      西山敬次郎君
        通商産業省産業
        政策局長    濃野  滋君
        通商産業省基礎
        産業局長    天谷 直弘君
        通商産業省生活
        産業局長    藤原 一郎君
        中小企業庁長官 岸田 文武君
        中小企業庁計画
        部長      小松 国男君
 委員外の出席者
        労働省労政局労
        働法規課長   岡部 晃三君
        労働省職業安定
        局雇用政策課長 白井晋太郎君
        商工委員会調査
        室長      藤沼 六郎君
    ―――――――――――――
三月二十四日
 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に
 関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出
 第六九号)
同月二十七日
 下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
 律案(市川正一君外一名提出、参法第四号)(
 予)
 伝統的工芸品産業その他の中小企業性産業を保
 護するための輸入制限等に関する特別措置法案
 (渡辺武君外一名提出、参法第五号)(予)
 官公需についての中小企業者の受注の確保に関
 する法律の一部を改正する法律案(安武洋子君
 外一名提出、参法第六号)(予)
同日
 栃木県小山地区に大型店進出延期に関する請願
 (和田一郎君紹介)(第二五一一号)
 同(森山欽司君紹介)(第二五二六号)
 同(稲葉誠一君紹介)(第二六三一号)
 同(広瀬秀吉君紹介)(第二六三二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 特定不況産業安定臨時措置法案(内閣提出第三
 八号)
     ――――◇―――――
○野呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
○後藤委員 この前一時間余り質問をさせていただきましたが、どうも私の質問と答弁がかみ合わない部分が幾つかございました。
    〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
大変重要な法案でございますので、そのかみ合わなかった部分をさらに幾つか掘り下げてみたいと思うわけでございます。
 私がまず申し上げてお聞きいたしたいのは、本法律案は産業政策と独禁政策との分岐点に立っている法律ではないだろうか、私はこういうように考えるわけです。今度の法律でも、第五条で主務大臣がカルテルの指示をいたします。その場合に、十二条で公正取引委員会の同意が条件になっているわけです。そして第七条で、独禁法から同意と同時に離れていくわけですね。もっとも十二条の三項を見ますと、公正取引委員会は主務大臣に対して変更、取り消しを求めることができる、こうなっております。しかし、私が申し上げたいのは、第五条の指示で産業政策に乗っていくのではないだろうか。第二項では共同行為の期間が一応定められております。しかし、前回も申し上げましたが、これは独禁法の弾力的運用、つまり不況カルテルで対応していくというものではないわけですから、期間が相当長くかかるのではないだろうか。つまり、この指示カルテルというのは、その対象になった業種は再び独禁政策のレールに返ってこないのではないだろうか。不況カルテルの場合には期間が決められておりまして、条件が変わってまいりますと自動的に返ってくるわけですけれども、指示カルテルの場合には返ってこないのではないだろうか、こう思うわけですが、産業政策局長と公正取引委員長から、いま私が指摘をした点、誤りかどうか、お伺いしたいと思います。
○濃野政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、御指摘のように、この法律の第五条のいわゆる指示カルテルで、第二項で共同行為をすべき期間、共同行為の内容を定めて告示により行うとなっておりますが、確かに、期間の長短につきまして、不況カルテル、特に当面の需給調整を中心とする不況カルテルの場合とこの指示カルテルによる共同行為の場合と、期間の長短の違いはあると思いますが、独禁政策と産業政策の調整という観点から考えてみますと、御指摘のように、指示カルテル発動に際しての公正取引委員会の同意ないしは必要な場合の措置請求権等、法律上にもまた実際上にも、公正取引委員会が独禁法の立場から現実に実施をされている共同行為の内容をトレースされていくことは、これは事実上の問題としてもあることだと思いますし、私は、第五条の指示カルテルなるがゆえに、独禁政策の実施という観点から公正取引委員会がその職務を行われるその点には、不況カルテルの場合と違いはないのではないか、こういう感じがいたしております。
○橋口政府委員 不況カルテルの場合は、いま産業政策局長からお答えがございましたように、原則として短期の当面の需給調整ということが中心になるという性格のものでございますけれども、しかしながら、構造的不況業種のような実態がございます場合には、いままでの手法によりますと、生産数量カルテルを長期間継続する、こういう形で事実上設備の廃棄が行われるいわば猶予期間と申しますか、そういう期間を認めた例もございます。たとえば麻糸について申しますと、約五年間出産数量カルテルが継続いたしました。そのほか一年数カ月も生産数量カルテルの継続した例があるのでございまして、行政上の扱いとしましては、現在は、当面三カ月ということで、三カ月ごとに見直すということでそういう政策態度をとっております。
 しかしながら、麻糸で申し上げましたように、化学繊維によって駆逐されるというような構造的変化に直面するような業種につきましては、生産数量カルテルで更新に更新を重ねて数年にもわたるという例がございますので、今回の法律によって新しく設備の共同廃棄についての指示カルテルという制度が設けられますと、その点はいまの独占禁止法による不況カルテルよりはむしろ政策的態度が明確になるということでございまして、そういう点から申しますと、先生のおっしゃいますように、まさに産業政策の立場が優位をなすという点もあろうかと思います。しかし、同時に、産業政策の立場だけで直進いたしますとときには問題がございますから、したがいまして、公正取引委員会の同意ということで、産業政策のみの立場ではなくて、一般ユーザーとか消費者の立場も勘案してこれに対して審査を加える、こういう法制の仕組みになっておりますので、先生が御心配のような、産業政策の枠に一たん取り込まれたら再び独禁政策の領域に戻ることはない、そういう事態は起こり得ないのではないかというふうに私は考えております。
○後藤委員 私は、産業政策優位のもとに取り込まれるとかという立場から申し上げているのではないのです。そうではなしに、独禁法というのは、第一条の目的にも書いてありますように、公正にして自由な競争秩序を守ることが基本だと思うのですね。それで、別の産業政策的判断で政府がてこ入れをしなければならないという、つまり現状認識がここにあるわけです。そのことは、本来の独禁法の想定できない土俵がここでつくられていかざるを得ない条件が生まれてきたのではないか、こういうふうに私は考えるわけですね。そういたしますと、十二条で同意を与えるということは、公正取引委員会が産業政策的判断に立つということにならないだろうか、産業政策的な判断に立っていかなければ同意というものが行えないのではないかということを私は申し上げているわけですが、その点いかがでしょうか。
○橋口政府委員 公正にして自由な競争条件を確保し、また促進するというのが独禁政策の本来の使命でございますけれども、しかし、競争制限的な行為を一切不可とする考え方をとるべきか、あるいはとっておるかと申しますと、これは独占禁止法自体にも不況カルテルという制度がございますし、それから、先ほど来申し上げておりますように、大変長い期間実際問題として不況カルテルを認めなければいけない、つまり競争制限的な行為を許容しなければならない経済の実態があったということも事実でございますし、そのほか、産業政策の立場から幾つかの適用除外法令というのがございまして、これが多過ぎるではないかという議論はございますけれども、やはり日本の経済の実態の要求するものは、単に独占禁止政策のみでは対処できないということもこれまた事実でございます。
 したがいまして、そういう点から申しますと、今回の法律も五年間という一定の期間ではございますけれども、競争制限的な行為というものが大幅に取り入れられた。そういう意味では、独占禁止政策に対する一つの例外措置がふえたという点は事実でございますけれども、しかし、それでは独占禁止政策の基本である公正にして自由な競争の原則が失われるほど深刻な問題であるかと申しますと、それはそうではない。この間もたしか先生にお答えをしたと思いますが、この程度のと申し上げてはちょっと表現として適当でないのでございますけれども、かつての自由化、工業化の過程において起きました構造変革の方がむしろ深刻であったというふうな認識を私は持っておるわけでございまして、そういう経過を経て日本経済は今日ここまで大きくなってまいりましたが、いまの時点での構造不況業種に対する対策のために独禁政策の基本が失われるということはないというふうに私は考えております。
○後藤委員 そこにやはり私との認識の違いがあると思うのですね。橋口委員長は、この前の私の質問に対しまして、実体的な判断の基準というものは、独禁法上の不況カルテルと今度の法律案の指示カルテルと基本的に違いはない、このようにお考えになっておられるという答弁をされておられます。この認識は、先ほど言われたこの程度のという、つまり構造不況といいますか、この程度の不況という認識、いわゆる強弱の差はありますけれども、やはり公正取引委員長は循環不況という認識を超えておられないのではないかと私は思うのです。いかがでしょうか。
○橋口政府委員 循環不況であるか構造不況であるか、それから構造不況業種の原因とか内容もいろいろございますので、これは一括してこうだというふうになかなか申し上げにくいと思います。つまり、構造的な要因と循環的要因と重なったものもあると思いますし、あるいは過去における投資の行き過ぎとか見通しの間違いとか、そういうものもあろうと思いますので、私がたしか前回の委員会でも申し上げましたのは、たとえば合繊繊維に駆逐された天然繊維、あるいは石油に取ってかわられた石炭の衰退と申しますか、あるいは海運の集約化とか、いろいろな経験を経て日本経済は今日まで来たのでございまして、その場合にも、独占禁止法の領域の中で対処が可能であった部分が相当ございます。それから独禁政策の運用によって対処したものもございますし、あるいは今回の構造不況法案のように独禁法の適用除外ということで対応した例もございますので、そういう点から申しまして、まあ繰り返しになりますが、限時法である、五年間の臨時立法であるということを考えますと、過去において、戦後において生じた経済上の諸問題とそれに対する対処の仕方と今度の問題と基本的、本質的に違いはない。そういう意味で、それが循環的発想だという御指摘であればあるいはそういうことであろうかと思いますが、しかし、いろいろな構造変革を経てきた日本経済の過去の経緯から申しますと、今度がいままでとは全く違った特別のものであるというふうには私は考えていないのでございます。
○後藤委員 全く違いがないとは考えていないということになってまいりますと、私は、この前も御質問申し上げましたように、それは現行独禁法の弾力的な運用でよろしいではないか、私の認識はそういう認識なんです。しかし、ここで大変時間をかけて、しかも世上、構造不況ということで大変深刻に受けとめている、何らかの法律的な支えというものが必要である、その議論をいたしておりますのは、これは構造問題だからだと思うのですね。単に、石油ショック以後の世界的な不況の中で、需給に照らして設備が過剰である、したがって、設備を廃棄をすれば、格納をすれば、休止をすれば切り抜けられるというような性格のものではないと私は思うのです。
 確かに過剰の問題がシビアにあらわれておりますから、この過剰設備に対する何らかの措置をとっていかなければならないということがあると思いますけれども、私は、いま公取委員長が御答弁になりましたような認識ではない。たとえば造船にいたしましても、アルミにいたしましても、合繊等にいたしましても、設備格納なり休止なり廃棄をしていけば、これからの日本のアルミ産業、合繊産業、造船業というものは、長い将来はともかくとして、中長期にわたって安定できると私には考えられない、この法律によっては。局長、いかがでございましょうか。
○濃野政府委員 御指摘のように、いわゆる構造不況問題が、過剰設備の処理のみによって、将来の日本の経済のあり方の中で現在構造不況業種と言われているものかすべて問題が片づくとは私も考えておりません。
 たびたび答弁申し上げていますように、私どもがこの法律案をつくりまして御審議をお願いいたしましたのは、構造不況問題の抱えておる原因も違いますし、将来の日本の経済の中でそれぞれの業種がどういう地位にあるべきかという経済において占める地位も違うと思いますし、したがって、解決の手段方法というものも違うと思いますが、共通した一つの問題は、設備が過剰であって、この設備が過剰のままの状態があっては、もちろんほかのいろいろな政策手段が必要であるといたしましても、これが本当に効果を出して、新しい経済の運営の中で構造不況業種に該当する業種が新しい道を選ぶことの解決のためにはどうしてもこの設備処理に手をつけなければいかぬ、こういう認識でございまして、私は、そういう意味で日本の経済、従来の非常な高い成長率から新しい減速経済を迎えた中で抱えた設備の過剰問題というのは、何と申しましても一つの新しい問題ではないか、こういうふうに認識をいたしております。
○後藤委員 解決の手段の当面緊急最大の課題が過剰設備の問題である。しかし、いま局長も触れられておりますように、他の方法、手段というものも考えていかなければならぬ。私は、むしろその他の方法、手段というものを、あわせてセットでそれぞれの個別業種に対する対策というものを講じていかなければならない段階に来ていると思うのです。
 その場合に、最初公取委員長が、産業政策の優位のもとにひざを屈するのではないかというような受けとめ方をされておりますけれども、私はそういうことを申し上げているのではなくて、こういった構造不況というのは独禁法になじまない段階に来ているのではないか、しかもセキュリティーの立場から考えてみましても、アルミ産業を国際市場にゆだねるというわけには私はまいらないだろうと思うのですね、その自給率をどの程度に置くかということはもちろん慎重に検討していかなければならないと思いますけれども。あるいはまた、電力料金等にいたしましても、あるいは関税等にいたしましても、いろんな方法を考えていかなければならないということになりますと、こういう大変不十分な包括的なこの安定臨時措置法という名前をつけておりますけれども、これでは対策は講じられていかないのではないだろうか。つまり、自由競争なり市場原理の枠を超えないで構造不況対策が講じられるとは私は思えないのです。
 ですから、冒頭に公取委員長にも申し上げましたが、これは公正取引委員会が産業政策的立場に立った認識において同意を与えていく、その後は独禁法から離れていかざるを得ない構造的内容を持っているわけですから、その独禁法から離れていくものに対しては、それなりのやはり対策を講じていくべきであろう、常に公正取引委員会のいろんな意向を考えていきながらやるべき性格から離れていっているのではないだろうか、こういうように私は考えるわけです。
 つまり、別の保護政策というのですか、別の対策というものが講じられてこなければならないから構造不況ということを言っているのではないか。もしそうでなければ、私が繰り返し申し上げておりますように、これは循環不況の非常にひどいのだ、だれが責任ということは別にいたしましても、大変な過剰設備を抱えている、何はともあれ、この過剰設備を解消していけばみんな立ち直るんだ、そうしてもう一度自由競争、市場原理にゆだねることによって公正な価格が成立していくんだ、余り心配することは要らない。これなら今日の独禁法制の上に立って対策を講じていけばいいじゃないか、また、いままでの通産省が進められておりました行政指導といいますか産業政策を一生懸命強化していかれればいいではないか、かように考えるわけです。この点、重ねてもう一度お伺いをしますけれども、局長、いかがでございましょうか。
○濃野政府委員 いわゆる構造不況問題、さらに広くはこの減速経済下の経済運営にどう取り組むかという問題にただいまの御質問は絡んでくると思いますが、私は、あらゆる問題、これは構造不況問題の取り組みのみならず、私ども重ねてただいままで基本的な立場を御説明申し上げておるように、日本の経済の現況ないしは運営の基本は、マーケットメカニズムと申しますか、やはり市場機能を十分に活用して、行政の介入はできるだけ最小限度にとどめていく方法をとるべきではないだろうか、こういう基本的な考えでございまして、ただ、経済の変化、内外事情の変化の中で、そういう市場メカニズムの有効性を最も最大に活用するために必要な範囲でそういう環境を醸成していくのが行政の仕事の最大の問題ではないかと考えております。
 そういう意味で、過剰設備の処理の今回の問題につきましても、私どもは、やはり当該業界の自主的な解決への努力ということを前提にすべきだと繰り返し申し上げているわけでございまして、今度の法律も、そういう意味で、あくまでも業界の自主性を尊重し、その中で問題を片づけていくということを考えておるわけでございます。
 その中でのただいま先生御指摘の行政指導でございますが、私は、この法律ができましても、通産省が、産業行政の観点から、個々の業種の抱えている問題につきまして一緒に当該業種をどうすべきかということを考え、あるいはいろいろ説得に努めるという、いわゆる行政指導の範囲というのはますます広がってくると思いますが、しかし、その中でも、一方、御指摘のございますように、やはり独禁政策との調整と申しますか、どこで調整、調和を保つかというような問題もございまして、今回の法律案の内容は、そういういろんな観点、現在置かれておる行政のあり方のいろんな観点を考えまして関係方面との調整の上にでき上がった一つの仕組みではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
○後藤委員 ちょっと角度を変えてお聞きをしてみたいのですけれども、安定基本計画に定める事項、特に設備の処理は、局長、業種全体を包括をして定めるわけでしょうか。
○濃野政府委員 そのとおりでございます。たとえばアルミ産業というものを例にとれば、アルミ産業としての設備が将来一定の年次を前提といたしまして幾らの生産能力が必要であるか、したがって、どれだけの過剰設備があるかということは、アルミの製錬産業なら製錬産業として考える、こういうことでございます。
○後藤委員 そういたしますと、現実にはアウトサイダーというものが存在をしている、あるいは現在想定をされなくても、アウトサイダーが出てくるということは想定をしておかなければならないわけです。その場合のアウトサイダー分の廃棄、この部分というものは一体どういうようになるのでしょうか。
○濃野政府委員 御指摘のように、法律論または現実論といたしまして、当該業種すべてが、この基本計画が定まりました場合に、それに基づいて設備の処理を進めるかどうか、これは法律的にも事実的にも、別の意味で申しますればアウトサイダーが存在する可能性は十分にございます。
 ただ、私どもは、この法律自身が、立て方といたしまして、やはり特定不況産業になって安定基本計画が定められる業種というのは、いわゆる当該業種に属する事業者の大部分の人がこの法律に従って設備処理の手続を進めていこうという申し出を前提にやろうということになっておりますから、この安定基本計画が全く定められたとおり実施をされない、こういう事態はむしろ現実問題としては想定をしないで問題の処理、取り進めを進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○後藤委員 現実問題としてというのが、この前の私の質問でも、この特記されました四業種と政令で定める業種とが扱いが法律上違っている、これも現実的にはそういうことがあり得ないと思ってというように言われる。ここでいま論議をいたしておりますのは、法律の解釈の問題でございまして、現実的にはいま局長が言われたような事態というものはたくさんあるだろうと思うのです。
 問題は、そのインサイダーがアウトサイダーに割り当てていきたいと考えておった設備廃棄の量につきまして廃棄処分をしていく、これをインサイダーが引き受けていくことになるのか、いや、もうそれはアウトサイダー部分は目をつぶる、これについては除外だということになっていくのか、さらに、アウトサイダーの新増設というものに対してはどうなっていくのか、局長、いかがでしょうか。
○濃野政府委員 まず、法律的に申し上げますと、第一の御質問の、アウトサイダー分を、安定基本計画ができました後、設備処理に当たってアウトサイダーがこれに協力をされないということがはっきりした場合に、その分をインサイダーに振り向けてやるかどうか。これが事業者の努力で行われる、つまり自主的な努力で行われる以上、その裏にいろいろ行政指導等がございましても、法律的にはアウトサイダーの分がインサイダーに振り向けられるということはあり得ないことだと私は思います。
 それからさらに進みまして、共同行為の指示の場合にも、これは全事業者に対して共同をしてこれこれの設備の処理を進めろ、こういう指示でございますので、個々の事業者が幾らやるかということは、その段階では決まっておるわけではございません。したがって、その共同行為がアウトサイダーになる可能性のある人のかぶるべきものを割り振ってやるということも、これは法律的には考えられない点ではないかと思います。
 第二に、アウトサイダーの新増設、これも法律的にはアウトサイダーの設備の新増設を抑える規定はございませんから、法律的にはそういうことはできない、こういうことでございます。
○後藤委員 私もそのとおりになるのではないかと思います。
 そういたしますと、安定基本計画というものがその実施の過程で、一体どこがどう担保していくのか、実効が上がらなくなるのではないか。しかも、先ほどは過剰設備というものを廃棄することが当面緊急、大切だと言いながらも、いま大臣がお見えになりましたが、国家財政の立場からも、あるいは金融措置といたしましても、税制からも、あるいは保護貿易というものはとれないにいたしましても貿易管理の立場からも対策を講じていくわけでしょう。いまほかのものはすべて手をこまねいて、ただ過剰設備を廃棄さえすれば当面よくなるんだということではないと思う。いろいろな方法が講じられてくるわけですから、しかも相手は私企業でございますから、そういたしますと、安定基本計画という大上段に振りかぶった計画の実行というものが私は大変にむずかしいと思う。むしろ実効が上がらないのではないか。
 ですから、後でまた大臣にお伺いを最後にしたいと思いますけれども、つまり独禁法ではなじまない部分がいまできてきている、しかもそれは循環不況ではなくて構造的内容を持っている、そして国民経済的観点に立って大変大切な産業である、こうなりますと、それについては別の産業政策的な認識なり手段というものがとられていかなければならないだろうと思う。それを自由競争というもの、市場原理というものの枠を外さないで、しかも公正取引委員会を取り込んで何とかしていこうとしていけばいくほど大変むずかしい問題があります。しかも国民的な合意がなかなか得られないのではないか、こう考えるわけです。したがって、この構造不況というものの認識が強くなればなるほど、私は個別産業対策を講じていかなければならないだろうと思う。つまり、公正取引委員会、独禁法の法制の枠を離れた観点からこの問題をとっていかなければならない段階に今日の産業構造の転換期には差しかかってきているのではないか、こういうふうに考えるわけですが、局長、いかがですか。
○濃野政府委員 ただいまの御質問、いわゆる構造不況問題に対する取り組みの姿勢の問題と絡む問題ではないかと思います。
 私は、先ほどから申し上げておりますように、現段階、この法案のよって立っております考え方は、やはり設備処理が構造不況業種共通の問題であるという認識、しかもこの処理に当たっては当該業界の自主的な解決への努力、まとまりというものを前提とするということ、この二つに立脚しているわけでございまして、ただいま御指摘のような、たとえばアウトサイダーが非常にたくさんいて、あるいは非常に強いアウトサイダーがいてその業界としてまとまりがつかないという場合には、法律論は別といたしまして、現実には過剰設備の処理が業界ぐるみでは進まないと思います。そういう場合にどうするかというのは、これは別の問題でございましょう。
 それから第二に、これは私から申し上げることかどうかわかりませんが、先生のただいま御指摘の点は、私もある意味では同感でございまして、この法律はそういうことで一般的な過剰設備の処理に関する仕組みと申しますか、これをつくっておるわけでございますが、仮にある業界が別の観点から見まして、国民経済的な判断あるいは国際経済を含めました大きな立場から見まして、過剰設備の処理を国の立場から見てこれはほっておけない問題である、しかもただいま御指摘のようなアウトサイダーの存在その他から業界の自主的な判断では進まないというような事態が仮にあった場合には、それはその業界を、その業種をどうするかという別の問題として取り上げなければならない問題だろうと思います。その際に、あるいは独占禁止法、独禁政策との間で別の新しい調整問題が出てくるかもしれない。しかし、それは別の問題でございまして、この法律は、繰り返し申し上げますように、やはり業界の自主的な判断、自主的な解決の努力を前提としながら、いわば設備処理に関する一般的な仕組みをつくるということがこの法案のねらいではないかというふうに考えております。
○後藤委員 時間が参りましたので、まだたくさん質問をしたい点は保留をしておきたいと思うのですが、大臣がせっかくお見えでございますので、一言お伺いをしておきたいと思います。
 大臣は、私の前回の質問に対しまして、当面の課題はこの法律によって大部分一応解決できる、このように答弁をされました。私は、どうも大部分一応解決できないのではないか、先ほども産業政策局長にその点を御指摘いたしました。つまり、今日の構造不況産業というのは循環不況ではない。どんなに見ても、設備を廃棄したから問題が解決するというようなそういう性格のものではない。当然国内産業の保護なりあるいは国際分業との関連に立って構造対策を講じていかなければならない。そういたしますと、少なくともこの構造不況産業の対象になっております業種につきましては、期間は別といたしまして、自由競争の枠を超えた政策判断というものがどうしても働いていかなければならないのではないだろうか。現に円レートが二百二十五円とか、二百二十円を切るのではないかというようなことも言っております。六十億ドルの国際収支の黒字見通しというものもむずかしいのではないかというようなことも言っております。そういたしますと、このドルを使っていくということもこれからも考えていかなければならない。そういう相乗効果の上に立って構造不況対策というものはとられていくべきだろうと思う。
 この法律によってはたくさんの実効が上がらない課題を抱えておりますだけに、大臣、大部分一応は解決できるということにならないのではないか。個別対策というものを先ほど局長が言われましたが、別の法律、別の対策を講ずることになるかもしれないということが、これから検討するのではなくて、現実の課題ではないかと思うのですが、大臣、簡単で結構でございますので、お答えをいただきたいと思います。
○河本国務大臣 私は、構造不況業種対策の最大のものは、やはり景気の回復、内需の拡大、ここにあると思います。景気が回復して産業全体の糧業率が上がる、不況業種の操業率も上がるということであれば、自然に問題は解決するわけでございます。だから、ある意味では大半の問題は景気回復によって解決するのではないかと考えております。
 それから、いわゆる構造不況業種と称せられる業種の現在の最大の課題は、設備の過剰でございます。過剰設備を相当大量に抱え込んでおるということでございまして、もしこの過剰設備の問題を解決することができれば、私は、その業界の抱えておる大部分の問題は解決できる、過剰設備の解消だけですべての問題が解決できるということではございません、しかしながら、大部分の問題は解決することが可能である、このように考えております。
○後藤委員 終わります。
○山下(徳)委員長代理 清水勇君。
○清水委員 この法案がかなりの曲折を経て提案をされてからこの方、当初期待を寄せていた産業界の中にも、うっかりこれには乗れないぞ、こういうしり込みの傾向が出ていたり、マスコミや学界等の中にも、実効が望めないという見方がかなり強まってきているのではないか、私はこう思います。
 そこで、それはそれとして、私は、さまざまな内容あるいは問題を内包しているこの法案について、最初に法案の持っている基本的な問題点あるいは矛盾点、次いで法案の個々の条項の持っている欠陥等について質問をしあるいはただしてまいりたい、こういうふうに思います。
 まず最初に、いまも論議がありましたけれども、今日のいわゆる構造不況というものはそもそも何によって起こっているのか、このことはやはり明らかにしなければならないのじゃないか。よく石油ショックが直接的なきっかけであるというふうな言われ方もされております。そこで、たとえばよく例に出される平電炉、つまり小棒の業界について見る場合、五十五年度を展望してもなお三百三十万トンの設備過剰だ、こういうわけでありますが、そこでひとつこの点に触れてただしてみたいことがございます。
 私が問題にしたいのは、この平電炉における過剰設備だと言われるものは、現実に石油ショックの後に設備をされている、こういうことなんです。私は、この点で企業なりあるいは業界が安易に設備投資に走った結果であるというような一面を決して否定はしません。しかし、同時に、事実上通産当局が当時設備投資を促していたということ、これらが総合して今日のような需給ギャップを生んでいるのじゃないのか。そこで、私は、これは構造不況というよりも、経済全般の見通しを誤った政策不況と言うべきものではないのか、こういうふうに思えて仕方がないのです。この点、通産大臣はどういう所見を持っておられるか、まずお聞きしたいと思います。
○河本国務大臣 石油ショックが起こりまして、世界全体が非常に大きな影響を受けまして、物の需給関係も大きく流れが変わってきたわけでございます。急激に需要の高まったものもありますし、中には急激に需要の減少したものもありまして、一大変革が産業界全体に起こったわけでございます。
 そこで、政府といたしましては、四十八年の秋にオイルショックが起こりましてから、何とか三年以内に、四十九、五十、五十一年くらいの間に産業全体をもとの姿に立て直したい、景気を回復したいということで、歴代内閣が懸命に取り組んできたわけでございますが、残念ながら、オイルショックによる影響は非常に深刻でございまして、もうすでに五年たっておるけれども、いまなお現在のような深刻な不況が続いておる。つまりオイルショックの影響が非常に大きくて不況がなかなか思うように克服できない、ここに私は最大の原因があったと考えます。
○清水委員 そこで、さらに重ねて申し上げると、たとえば繊維、合板、いま申し上げた小棒、みんなそうなんですけれども、過去においてこれらの産業では設備投資がたとえば共同行為で行われる、政府が介入して設備投資の調整をする、あるいは廃棄をする、そういう一連の経過を持ってきていると思います。あるときは過剰設備の調整のために生産調整カルテルが実施される、こういう経過もあったわけであります。つまり言いたいことは、通産当局の産業政策というものが、事あるごとに共同行為やあるいは合併といったような行為を促進してきたということは紛れもない事実でありますし、また、そうした介入がいずれも失敗に終わっている、こういうふうに見ているわけであります。
 そこで、重ねて聞きたいことは、私は、これまでのいま申し上げたような政策とそれから今度の新しい法律による政策との間に一体どういう相違があるのか、どうもよくのみ込めないものですから、簡潔で結構でありますが、お教えをいただきたいと思います。
○濃野政府委員 いままでの通産省の産業政策の一つの大きな手段といたしまして、ただいま御指摘のようにいわゆる共同行為を通じて生産調整をするとか、あるいは共同行為のみならず、いわゆる業界ベース、いわば業界の自主的な行為を前提にいろいろな面での産業政策を推進してきたということは、ある意味で大きな一つの手段であったことは事実だろうと思います。
 それで、今回の法律と従来やってきたいわば行政指導と、そういう行政指導がありながらなぜ今度こういう法律をつくるか、こういう御趣旨ではないかと思いますが、私どもただいままでの間に御答弁申し上げておりますように、過剰設備の処理問題も、昨年以来主要な業種ごとに、問題を抱えておる業種ごとに、あるいは行政指導のベースでいろいろ業界と一緒に、問題のあり方、今後の解決の方向等考えてまいりました。その間で幾つかの過剰設備の処理に関する基本的な問題が出てまいりました。
 一つは、過剰設備の処理を進めるに当たって、やはり金融的なバックアップをする必要があるのではないか、それはすでに昨年、平電炉の過剰設備の処理あるいは繊維産業の一部の処理につきまして保証基金の設立をいたしました。こういうものを広く過剰設備処理の一つの柱にしなければならぬのではないか。
 それから第二は、私どもただいままでいろいろ御答弁申し上げておるように、過剰設備の処理に当たりましては、広い意味での私どもの行政指導と申しますか、一緒に考えるという態度がますます必要であろうと思いますが、長期に過剰設備を処理するということを行うに当たっては、どうしても独禁政策との調整、独禁法との調整の問題等が出てまいりまして、これをいわゆる指示カルテルというかっこうで片づけなければならない、こういう問題が出てまいりました。
 いわばこの二つを中心に今度の法律案をつくった、こういう経緯でございます。
○清水委員 いま局長がそういう言われ方をされたので、重ねて大臣に問いたいと思うのでありますが、たとえばわが党の加藤議員は繊維問題の権威でございますが、繊維産業の問題についてちょっと私からも触れたいと思いますが、過去二十年ぐらいの間に過剰設備に対して、たとえば特別融資等で多分六千億以上になると思いますが、国家資金をつぎ込んだり、あるいは廃棄をした設備を政府が買い上げる、こういうことを重ねながら一向に事態が改善をされていない。また、現にそうした過去の実績から言えばカルテル行為等がむだだったんじゃないかという見方もあるし、ある有力企業の社長などの言葉によれば、この二十年間に二十万台の綿スフ織機を廃棄をしてきているけれども、実はその裏で十六万八千台からのやみ織機をつくっている、ちょっとでも景気がよくなるとすぐ設備投資に走って、常に供給過剰というような体制が続いている、こういうような見方をしているわけであります。
 結局のところ、どうも繊維産業等について言えば、設備廃棄につぎ込んだ税金というふうなものはむだ金に終わったような感じがするし、政策的な効果は少しも出なかったんじゃないか。ところが、今度も新しい法律を通じて事実上同じようなパターンで、いま局長が説明をされたようなことをやろうというんでありましょうから、まあ私は従来の政策との間にそう著しい相違があるようには思えない。この辺、大臣から改めてお聞かせをいただきたいと思います。
○河本国務大臣 繊維産業は、いまお話がございましたように、確かに過去長きにわたりまして幾つかの政策を実行してまいりました。しかしながら、これが思うように成果を上げ得なかったという理由はいろいろあると思いますが、一つは、やはり年を追うて近隣諸国からの激しい追い上げがあるということ、それからまた、そういう激しい追い上げがあるわけでありますから、日本の業界としては、速やかにそれに対応いたしまして、近隣諸国と競合しない高度な分野へ進出していく、あるいはまた複雑な分野へ進出をしていくという、そういう対応がややおくれたのではないか、こういうこともいまになって見ますと反省をされるわけでございます。しかしながら、もし過去の幾つかの対策をやらなかったとするならば、それはもう大ごとになったと私どもは考えております。
 そこで、今回は、繊維産業全体にわたって、この法律だけではございませんで、中小企業団体法等も活用いたしまして、総合的な構造改善事業を業界が希望するならば進めていきたい、このように考えておるわけでございますが、きょうは政府委員、局長も来ておりますから、繊維産業における問題点をごく簡単に説明をさせることにいたします。
○藤原政府委員 繊維産業の構造改善問題につきまして、大臣が御説明になりましたとおりでございますが、若干補足して御説明申し上げたいと思います。
 いまお示しになりました従来の設備の処理に要しました費用等につきまして申し上げますと、大体いままでに紡機、織機等の買い上げに約六百億円ぐらいの補助金を支出しております。それから、融資ベースで三千四百億円程度の金を支出しております。そういうことで、従来数回にわたりまして過剰設備の処理問題についてお金を使っていることはお示しのとおりでございます。
 それぞれその段階におきまして、迫られました過剰設備問題というものを処理してまいったわけでございますが、今回改めて大幅な過剰設備の処理を、いわゆる繊維産業の川上から川下まで一貫いたしまして二割ないし三割の過剰設備を処理せざるを得なくなっておりますのは、やはり単に景気だけでは解決できないような基本的な問題点が存在するわけでございまして、その一つの大きな原因は、本来輸出産業として非常にある意味ではシンプルなものを大量に輸出しておりました日本の繊維産業が、輸出産業という意味で、輸出につきましては従来のようなパターンは非常にとりにくくなりました。特に円高の現況におきましては非常に困難な状態に陥っておりまして、内需の拡大ということに大きなウエートを置かざるを得ない状態になったというのが一つの大きな問題点でございます。
 それから、やはり先ほど大臣からもお話しございましたように、近隣諸国の追い上げといいますか、そういうものもございまして、輸出市場における競争力の問題、それから輸入の国際競争力の問題等もございまして、品種転換といいますか、高付加価値の品種へ転換せざるを得ないというふうなことで、従来やってまいりました景気変動に伴いますような過剰設備というものとやや質的に異なりますところの構造的な要因に基づきます設備処理がどうしても必要であろう、こういうことでございますので、川上部分におきましては今回の法案によりまして、それから川下の分野におきましては中小企業振興事業団の共同設備廃棄というものによりまして実行してまいりたい、そういうことで繊維産業全体の構造改革というものが必要になってきた、こういう状態でございます。
○清水委員 ちょっと話がそれるような感じがいたしますが、この際にちょっと申し上げておきたいことは、率直に言って、私は、これまでの福田総理の発言というものに非常な不信感を持っている。たとえばあの石油ショック後の日本経済について、これは全治三カ年だといったようなことを手始めにして、去年は去年で、本会議を含めてさまざまな機会に、八月になれば景気回復の兆しをつかむことができる、こういうことを言い続けておられたし、ことしは予算委員会等の場を通して、この春以来といいましょうか二月以来、五十三年度では七%の成長なり経常収支の六十億ドル、これを達成することによって長い不況のトンネルから抜け出ていく、こういうことを重ねて言われているわけでありますが、実際にはその見通しのすべてが狂っているように思えて仕方がないわけなんであります。
 言ってみれば、どうも場当たり的な思いつき発言といった、こういう感じが強い。今回の構造不況対策の場面を見ても、どうもその範疇を出ないんじゃないか、こういう疑念を抱かざるを得ない率直な気持ちでございます。まあ、福田総理はここにいないわけですから、云々しても始まる話ではありませんが、この点について通産大臣はどう思っておられるか。
 さらに言えば、この法案の成立というもので一体不況産業の安定を期することができる、こういうふうな自信を持っておられるのかどうか。これまでの一連の福田発言等を通じて大変な政府に対する不信感があるものですから、そうした疑念が国民の間に深い。この機会に所見を承りたいと思います。
○河本国務大臣 オイルショックを全治三年の期間をかけて治すという福田総理の公約は、私は、ある意味では実現できているのではないかと思うのです。なぜかといいますと、オイルショックが起こりました直後に日本の経済は大幅な赤字に苦しんだわけであります。世界の人たちも、これだけの大ショックを受けて、資源エネルギーをほとんど全部外国から買っておる日本としては、その直後に出した大赤字はとても解消できるものではない、日本経済もいよいよ行き詰まるのではないか、こういう見通しが大部分であったわけであります。それから、かつまたその影響を受けまして、いわゆる狂乱物価という時代が相当続きました。しかしながら、国際収支の大赤字と狂乱物価、この二つの重い症状はおさまったと私は思います。ただ、病気が余りにも重く、かつまた相当期間続きましたために、体力が大変衰弱をいたしまして、病気そのものは治ったにいたしましても、消耗した体力を回復するのに相当な時間がかかっておるというのがいまの時点ではないかと考えております。
 そこで、こういう背景の中にいわゆる構造不況業種問題という大問題が起こっておるわけでございますが、いまのお尋ねは、今度の法律で構造不況業種はもう完全に立ち直ることができるかというお話でございますが、私は、構造不況業種の抱えております一番大きな問題は解決できると思います。つまり、過剰設備に悩んでおるわけでございますから、その業界が自主的にまとまれば過剰設備は廃棄するだけの対応ができることにこの法律でなるわけでございますので、一番大きな問題は解決できると思います。
 しかし、先ほども申し上げましたように、構造不況業種に対する一番の大きな対策というのは景気全体の回復である、内需の拡大である、このように考えておりますので、この法律とあわせて一般的な景気対策、この二つによって対応策を進めることが必要であると考えております。
○清水委員 それでは、重ねてお尋ねしたいわけでありますが、これは安定基本計画の策定にかかわり合いを持つ話でありますけれども、たとえば去年でしたか、産構審が報告書の中でこういうことを言っている。「多くの分野で、事態がどのように展開していくか予断を許さない、いわば、不確実性に満ちた状況に」ある、こういう指摘があるわけであります。現に、いま展開をされている内外の情勢というものは、内には、高度成長時代のひずみがさまざまな矛盾となって深刻な影響を示しておりますし、外には、円高問題一つをとってみても、国際的にきわめて厳しい環境に遭遇をしている。また、一口に構造不況と言ってみても、先ほど局長がちょっと言われているように、その状況なり内容なりというものは一律に論ずることはできないのではないか。それぞれの産業、業種によって複雑で個別な事情と条件を内在している。
 こういうさまざまな情勢というものを踏まえて見るとき、果たしてこの法案の第三条が規定をする安定基本計画なるものを、しっかりした間違いのない見通しを持って策定をすることが実際に可能なんだろうか。私は、どうも不可能に近いことなんじゃないか、あるいは不可能なんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけですが、この辺はどういう認識をお持ちでしょうか。
○濃野政府委員 現在の情勢のうち、特にただいま先生御指摘のように、五十二年度の「産業構造ビジョン」で、産構審から、御指摘のような、現在の一つの特徴は不確実性ということだという指摘もございました。事実でございます。私どもも、この法律の安定基本計画の作成に当たりまして、特に設備の処理に関する事項を定めますバックグラウンドになります長期の需給見通し、これからの経済の方向というような基本的な考え方、方向というようなものをどうしても前提に考えなければいけませんから、そういう意味で、現在でも作業上いろいろなむずかしい問題があることは十分承知いたしております。
 ただ、私ども昨年、同様に大変むずかしい事態の中でいわゆる構造不況業種と言われておる業種の幾つかにつきまして、関係業界、学識経験者の方、あるいはその他の関係者を集めましていろいろと議論いたしました。御案内のように、平電炉、アルミ産業等々において、長期の需給見通しを踏まえましたこれからの方向、あるいは設備がどこまで過剰かという議論もやった経験も持っておりますし、そういう不確実性の中ではありますけれども、次第に将来の方向というものを一つの見通しをつけなければいけない、また、一つの見通しの目安をつかみ得るような事態がだんだんやってきているのではないかと思います。
 そこで、私どもこの安定基本計画の作成に当たりましては、関係審議会、当然でございますが、審議会の中にそれぞれの場をつくりまして、ただいま申し上げましたような学識経験者、関係業界、その他多くの方が取り組みまして、現段階で可能な限りでの衆知を結集いたしましてこういう安定基本計画のバックグラウンドを固める、これはむずかしいことではございますが、十分可能なことだと思っておりますし、また、こういう過剰設備の処理ということを進めることが非常に必要なときだけに、それもぜひやらなければいかぬことだ、こういうふうに考えておるわけでございます。
○清水委員 ところで、私は、構造不況対策の基本というものを見る場合、今日陥っている、さっきの大臣の話じゃありませんが、病気の原因、つまり病根というものを取り除こうとする、そういうものでなければならないと思うのです。そのためにはやはり既存の構造を変える、つまり転換をするということがどうしても必要になってくるんじゃないか。
 そこで、通産大臣に聞きたいのでありますが、構造不況業種と呼ぶからには、そうした産業は、たとえば先ほど大臣が言われるような、景気が回復をし、需要が拡大をしても不況の状況を修復できない、こういう性格を持っているというふうに思うのです。そうだとすれば、従来の構造に根差した個々の企業の既得権益をどうして守ってやろうかとか、あるいは支えてやろうかという政策では、結局のところ繊維産業の二の舞のような結果になってしまうのではないか。ですから、いずれにしても構造の転換ということについてもっと手をつけていかざるを得ないのではないかというふうに思うわけでありまして、単に過剰な設備を処理すれば事が済む、こういうふうにはどうも理解できないわけでありますが、その点はどうでしょうか。
○河本国務大臣 私は、先ほども、景気が回復し、内需が拡大をすれば、構造不況業種の大半の問題点は解消するということを申し上げましたが、その一例を挙げますと、たとえばセメント業界などでありますが、つい先般までは大変な不況で気息えんえんたる状態であったわけでありますけれども、公共事業の拡大によりましていまでは生産も上がり、採算もよくなり、十分やっていける、こういう体制にいまなっておるわけであります。
 そこで、今度の法律の中心は、余った設備、過剰設備を廃棄するということでございまして、過剰設備が廃棄されて需給のバランスがある程度とれるということになりますと、その業界の抱え込んでおります大部分の問題が解決されると私は考えておるんです。大部分の問題が解決されれば、あとはその業界が工夫し、努力し、そして残された問題点を解決しながら発展を図っていく、こういうことが必要でございまして、何から何まですべて政府が手とり足とり世話をしていく、これは自由主義経済でありますから、そこまではまいらぬと思うのです。不況の最大の原因であるこの設備問題さえ手をかして解決することができれば、あとは業界は自力で立ち直ることが可能である、このように考えております。
○清水委員 そういうお答えでありますが、いずれにしても、構造不況と言われるものは、先ほども議論がありましたが、いわゆる循環不況とは異質なものなんですから、広い意味の環境の変化によってもたらされる、そういうものであると私は思います。そうだとすると、したがってその基本的対策というものは、環境の変化というものをどういうふうに的確にとらえるか、また、将来の展望を見出していくかということが非常に重要な課題になるのじゃないかと思うのですけれども、しかし、通産当局の対応を見ていると、従来の業界とか産業とかという観念にとらわれてというか、そういうとらわれ方で事態を打開をしようとされている。私は、これでは本当の意味での安定的展望を見出すというようなことができるのかどうか、こういう点でいささか疑問を持つわけでありますので、この点は別にお答えは要りませんけれども、申し上げて、以下、本法案の持っている具体的な中身に触れてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 いままでの答弁で、正直なところ、時間の関係もあって余り突っ込めませんから、釈然とできない部分が相変わらず残っているわけでありますが、そこで、少し理解を深める意味で、法案の内容に触れてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 まず最初に、第一条の「目的」で、「計画的な設備の処理の促進等のための措置を講ずることにより、」云々と、こういうことが規定をされておりまして、ずっと第二章の設備の処理にまつわる安定基本計画等々につながっていっているわけでありますが、しかし、これらのどの条項を見ても、設備の処理という共同行為によって重大な影響を受けるであろうと見られる関連中小企業者の代表なり労働組合の代表なりの発言権というようなことについて規定がない。これは一体どうしたのか。政府は一体関連中小企業者や労働者の意見なんか問題にしないんだ、こういうつもりであるのかどうなのか、私の意見を申し上げる前に、まず承っておきたいと思います。
○濃野政府委員 この法律は、ただいま先生のお触れになりました第一条の「目的」にも書いておりますように、いわゆる構造不況問題の取り組み、いろいろな観点があると思いますが、この取り組みの姿勢といたしましては、その手段として計画的な設備の処理について安定基本計画を作成する、そして最終的な担保として指示カルテル制を設け、かつ債務の保証を行う基金を創設する、そういう一連の措置を講ずることによりまして、特定不況産業の不況克服と経営の安定を図る、これが第一の目的でございますが、結局、最終的な目的は、雇用の安定を含む国民経済の健全な発達、こういうことになっております。
 手段といたしましては、その設備処理にまつわる一連の手続を定める、内容を定めるのが法律でございまして、そういう意味で、先生御指摘のような関連中小企業との関係とかあるいは労働組合に対する配慮の問題等が、法案の規定の前面に出てはいないということは事実でございます。ただ、私ども、基本的な「国民経済の健全な発展」という中身の中にただいまのような問題が当然のことながら最終目的としてある、それを目的として踏まえて運用を図ることが必要であると考えておりまして、その意味で、たびたびただいままでも大臣から御答弁ございましたように、この法律の運用、たとえば安定基本計画の策定等に当たりましては、関連の中小企業の代表の意見あるいは労働代表の御意見等を、委員というようなメンバーの資格において審議会に参加をしていただく等によりまして十分反映をしていくかっこうで運用をしてみたいと思っております。
 なお、特に雇用問題につきましては、ただいま申し上げましたように、この法律の主たる手段は過剰設備の処理に関する一連の措置について規定することではございますけれども、第十条に、「雇用の安定等」ということで、事業者の配慮事項あるいは国または都道府県知事のいわば努力規定というものを定めまして、雇用の安定がこの法律のバックといたしまして非常に重要であるということを、ここに強調したつもりでございます。
○清水委員 いま局長から述べられている中で雇用の問題がありましたが、これはまた後ほど触れます。触れますからその際に譲るといたしまして、いまのお答えを聞いていると、関連中小企業者なり労働組合なりの意見を尊重するんだ、したがって、審議会等にも委員として加わってもらうんだ、こういうふうな御趣旨の答弁でありますが、しかし、現実にこの法案を見る限りにおいては、関連中小企業者の代表なり労働組合代表なりの意見を聴取するとか尊重するとかもしくはどうこうするというような、こういうことがどうも読み取れない。もし本当にそういう意味で尊重をするという態度であるならば、この際、法案を修正してでも、いま申し上げた代表の発言権の確保ということを改めて規定すべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、その点、どうでしょう、一言で。
○濃野政府委員 ただいま申し上げました答弁の繰り返しになりますが、この法律が直接ねらっておりますことは、特定不況産業の不況克服と経営の安定を図るための設備処理に関連をする措置につきまして定めるということでございまして、究極の目的に雇用の安定あるいは関連事業者、中小企業者の安定ということがございますけれども、ただいま申し上げたような直接的な目的がそういうところにございますから、実際の運用上、ただいまも申し上げましたような配慮は十分にやってまいりますが、この法律の規定の上に明文を設けるというのは、過去のいろいろな先例等に徴しましても、私どもとらなかったところでございます。
○清水委員 じゃ、いまの点はまた後で触れましょう。
 次に、第二条の五号に設備の処理についての規定がございます。そこで、尋ねておきたいのでありますが、これによると、三ページから四ページにかけて、設備の処理の順序というのでしょうか、順序として、「廃棄若しくは長期の格納若しくは休止」、そういう順序で規定をされているわけでありますが、この点について、「休止若しくは格納若しくは廃棄」というような順序に改める方がより現実的であるし、また、ベターではないか、廃棄ということについてはこれを最小限にとどめる、こういうような立場をとるべきではないか。理由は後でいろいろ申し上げますが、まず最初に、その点を承りたいと思います。
○濃野政府委員 この第二条第五号の設備の処理の中身、この順番はどうしてこうなっているかということでございますが、これは恐らく設備処理という観点から見たときに、物理的に見てはっきりしたものから並んでいるのではないか、設備処理のあり方として重要なもの、あるべき好ましいものからというよりは、物理的に見て非常にはっきりしたものから並んでいるのではないか、こう考えております。つまり、廃棄という一番物理的にはっきり処理という体制がわかるもの、それから格納、これは物理的に外してどこかに収納するわけでございます。それから休止、それは設備をそのままの状態において凍結するといいますか、とめることでございますので、そういう順番に並んでいるわけでございまして、設備処理のあり方として好ましいものからということではないと私考えております。
○清水委員 そこで、重ねて尋ねてみたいわけですが、私がなぜいまのようなことを申し上げるかというと、いみじくも先ほど大臣が言われたように、去年、これこそ典型的な構造不況業種であると言われたたとえばセメントあるいは小棒といったような業界が、現在は需給状況がかなり好転を示すというようなことを反映してフル操業に入っていたり、通産当局自身が増産要請をするというようなこういう変化を示しております。つまり、私が言いたいことは、安定基本計画策定の任に当たる通産省自体が、わずか一年先の見通しすら的確に予測できないというようなときに、好ましい姿だとして廃棄を最優先するというやり方は、状況によっては将来に禍根を残すことになりはしないか、こういうことが一つの理由なんです。また、実際的にいま説明のあった休止や格納という措置でほぼ十分に緊急避難ができる、そういう想定のできる業界もあるわけであります。にもかかわらず、まず廃棄を優先させるということはどうも私としては理解に苦しむ。先ほど来申し上げているような繊維産業における歴史的な教訓とでも言うのでしょうか、そういう経過を無視しないためにも、私は、いま申し上げたような廃棄を最優先的に位置づけるというようなことは避けてしかるべきじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、いかがでしょう。
○濃野政府委員 過剰設備の処理というのは、結局は生産能力を長期にわたって削減する、そして長期的な需給状況の観点から見まして改善を行うということが目的でございますから、結局、長期に生産能力削減の効果を持つことが必要でございまして、そういう観点から見まして、廃棄、長期の格納、休止ということを法律の処理の内容として挙げたわけでございます。
 さて、この中で何を最も重視すべきかというのは、これは業種あるいは企業の実態に応じてそれぞれの業種ごとに決めるべき問題であろうと思います。ただ、一般的に申し上げれば、廃棄というのが一番はっきりした設備処理の方向でございますから、それが一番はっきりした効果を出すことはもう間違いございませんが、あるいはただいま御指摘のような将来の長期需給見通しの関係等から見まして、そこまでやるべきではないというような問題もございましょう。これはあくまでも個々具体的な業種が、この安定基本計画を定めるに当たりましてどういう設備処理の態様をとるかというところで決めるべき問題ではないか、こういうように考えております。
○清水委員 それでは、重ねていまの問題に触れて聞きたいのですが、この法案が例示をしている不況産業は、大体において装置産業というべきものだと思います。こうした装置産業においては、設備廃棄をする場合、結局は一つのプラントを単位にやるしかないと私は思います。そうした場合に、どこの会社のどの工場をつぶすかなんということが、業界内の話し合いで円滑に行われるということはどうも考えられない。さりとて、主務大臣が指示をして決めるというようなこともできないのじゃないか。そうなってくると、一体廃棄をどうやって行うのか。いま局長、繰り返し、好ましいものは設備の廃棄、こういうふうに言われているわけですから、そういう意味で設備の廃棄の仕方について何か予定をされている考え方というものがあるならば、お聞かせを願いたいと思います。
○濃野政府委員 私、ただいま廃棄が最も好ましい方法ということで申し上げたわけではございませんで、設備の処理という観点から見れば、廃車というのが一番はっきりしたかっこうだというふうに申し上げたわけでございます。
 御指摘のように、装置産業等におきましては、その業界として全体的な過剰設備の処理量というものが定められた場合に、これを一律にいわゆるプロラタ方式で処理ができないというケースが間々あり得ることだと思いますし、その場合に、御指摘のように、あるいは工場単位で整理をするとか、さらに進みましては、ある業界におきましては、企業として企業の合併とかあるいは非常に幅広い意味での提携とか、こういうものが必要だという業界も出てくる可能性というものは十分にあり得ると思います。
 ただ、これまた御指摘のように、それではどこの工場をとめるべきであるとか、あるいはどの会社とどの会社が一緒になるべきであるというようなことを、たとえばこの法律で申し上げますといわゆる五条の指示カルテルの内容にできるかと言えば、そういうことはこれはできないことでございまして、あくまでも業界全体としての処理量とか処理の方式を定めるということでございます。そこになりますと、これは法律論を離れまして、確かに個々の業界でそういうプロラタ方式を離れて処理の方式を定めるのはむずかしい問題たくさんございますけれども、私ども、それこそこの基本計画を定めるに当たりまして、その業界が最もいい方法はどうか、どういう方向をとるべきかということと絡みまして、いわば考え方の基本的な方針なり何なりは、この基本計画策定に当たりまして十分議論をして、そこで基本的な方向を出すべきものではないか、こういうふうに考えております。
○清水委員 同時に、設備の処理に関連してただしておきたいことがございます。これは一つは輸入規制という考え方を一体持っているのかどうか。たとえば、いま言われるように、通産当局が希望するような形で設備の処理が行われた、そして需給のバランスが回復された、事態は改善を見たとしましょう。しかし、そうしたところへ輸入が野放しになっている場合、やがて輸入の増大という問題が起こり、そのために再び設備が過剰に陥るというようなことが十分想定できるのじゃないか。そうなると、設備の処理による事態の改善というものはきわめて一時的なものに終わってしまう。再び過剰設備をどうするかというような事態を迎えなければならない。そこで、私は、輸入制限ということが相伴って考えられなければ、こうした悪循環を繰り返す結果になってしまうのではないかという疑問を持つわけでありますが、この点、政府はどういうふうな所見をお持ちでしょうか。
○濃野政府委員 御指摘のような輸入にどういうふうに取り組むかという問題は、私は大変大きな問題であろうと思います。私ども、安定基本計画の策定に当たりまして、まず設備の処理量を含む設備の処理に関する基本的な事項を定めるに当たりましては、長期的な需給をどう把握するか、その中で、国際的な開放体制にあるわが国といたしましては、輸入をどう見ていくかという点がそこで十分議論さるべきことだと思います。
 ただ、輸入にどういうふうに取り組むかということにつきましては、国際的な経済社会環境の中でいまの日本の置かれておる立場から見ますと、軽々しく輸入制限をどうすべきかということを取り上げるべきではございませんし、したがって、ここに輸入制限に関する特別な規定を設けるということはとるべきではないと私ども考えております。
 なお、業種によりましては輸入問題というのはとりわけ大きな問題になる場合もございますから、いかにして秩序ある輸入体制というものをとっていくか、あるいはさらに進みましていわゆる緊急避難のような場合にどういう体制をとるかということは、安定基本計画策定のいわばバックグラウンドでございます長期の需給見通しの策定、この場合に十分業種別に議論さるべきではないだろうか、こういうふうに考えております。
○清水委員 私も、現在の国際経済関係からいって、輸入規制なんというようなことは容易に行いがたい側面を持っておる、こういうふうな見方をしております。しかし、同時に、先ほど大臣が言われるように、繊維産業なら繊維産業という特定の業種を見る場合に、発展途上国等からの追い上げ、こういうものの影響がきわめて深刻である、だから何とかせざるを得ないというような顧慮せざるを得ない場面に立たされている、この点は私も認識を同じにするわけなんです。ただしかし、そういうことを無視して、単に今日想定される過剰設備の部分の処理が行われれば何とか当該業種あるいは産業を安定化し得るのではないか、私はそういうふうには必ずしも受けとめておりませんから、この点はいま局長が言われる点、十分に留意がされなければならないことじゃないか、こう思うのです。
 同時に、先ほども後藤委員が聞いておりましたが、アウトサイダーの取り扱い問題、これだって、インサイダーを中心に話し合って過剰設備の処理をする、しかし、他方アウトサイダーは設備の新増設に出るなんというようなことがないという保証はどこにもない。そうなりますと、この法律によって行われるであろう設備の処理というものがそれほど実効が上がるのか、どうもそういう気がしてならない、こういうふうに私は思うわけなんです。ですから、たとえば安定基本計画の策定一つをとってみても、長期の展望に立った需給の見通しをどう判断するか、また、いま申し上げたような状況をどのように勘案するか、これはなかなか問題をはらんでいると私は思うのです。
 さて、そういう事情があるにしても、仮に百歩譲って設備の処理という立場に立って考えた場合、政府は、先ほども大臣が言われているのですけれども、手とり足とりそれほどめんどうを見るべきものではないのじゃないか、つまり業界の自助努力というか自主性にまつということをたてまえとしたい、私はこれには大賛成なんです。少なくとも業界の自主性によるということを大原則にすべきだと思うのです。どちらかというと、政府の施策に依存するというような傾向がなしともしないわけですから、業界自身の責任と自覚において設備問題についても対応させる、こういうことが非常に重要だと思うのです。
 その場合でも、たとえば法案によると、どうしても業界でまとまらない場合にはカルテルを指示する、こういうことがあるわけでありますが、この場合に、先ほど来申し上げているような業界の自主性をたてまえにしていくとすれば、カルテルを指示するという形で設備の廃棄等を強制するというのではなしに、現行独禁法二十四条の三に基づいていわゆるカルテルを勧告する、こういう立場をとることが至当なのではないか、こういうふうに思えて仕方がないわけなんですけれども、そういうふうに考え方を変える、方針を改めるというお気持ちはありませんか。
○濃野政府委員 この法律が設備処理を進めていきますに当たりまして業界の自主努力を前提とするというのは、御指摘のとおり私どももそういう立場で考えておるわけでございまして、第四条に、この安定基本計画の実施につきましても、まず事業者の自主的な努力によって行うべきであるという訓示規定を設けたのもその意味でございます。
 この四条の自主的努力、これはこの安定基本計画を前提として個々の当該業種に属する事業者が自主的に単独で行う場合、あるいは先生ただいま御指摘のような現行のいろいろな仕組みを使ってやっていく場合、いろいろあると思いますが、私ども指示カルテルという制度を設けましたのは、ただいま御指摘のございましたたとえば不況カルテルの運用ということを考えますと、この不況カルテルの運用の幅をどうするかということは、これは公正取引委員会の御判断の問題ではございますが、私ども考えましても幾つかの問題がございます。
 一つは、短期の需給調整の場合にも、緊急やむを得ざる場合としてたとえば合繊の生産調整等につきましても、なかなか業界自身いろいろな関係で不況カルテルの結成に至らないというような、業界の抱えておる実態から来る問題の場合がございましょう。それから第二は、過剰設備の処理というものを不況カルテルで行う場合にも、これは公正取引委員会委員長が、現在の二十四条の三の条件に合致をすることを前提としてと御答弁になっておられますが、つまり不況カルテルの発動要件がございます。長期の設備処理に当たりましてなかなか要件に該当しないというケースもまた出てまいりますし、それから、不況カルテルの運用ということになりますと、安定基本計画で特定の設備処理の必要量を定めた場合に、それ以下のカルテルでございますれば、独禁法のたてまえから申しましてこれはすべて認可に値するものであると考えます。そうすると、不況カルテルの運用だけではなかなかこの基本計画の最後の実施の担保ができない場合等が考えられるわけでございまして、そういうことから、従来の法制にもございます基本計画という国が定めた計画の最終的な実行を担保する方法として指示カルテルという仕組みを考えたわけでございます。したがって、私ども、この法案でできております一つの仕組みは最終的な担保としてぜひ必要ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
○清水委員 この点についていろいろ意見を持っているのですけれども、時間の関係がありますから、先へ進まざるを得ません。
 ところで、大臣にお尋ねをいたしますが、第二条による特定不況産業の政令指定について発議を大臣がなさる、こういうわけでありますが、私は、その際に十分慎重を期すべきであるというふうに考えるのであります。現在の経済情勢というのは、とりようによれば全産業平均で操業率、つまり稼働率が七〇%台、こういうような状況なんでありますから、一部を除けば大部分が不況産業ではないかと言われる状況でもありますから、やたらに業種指定を拡大するなんというようなことは慎まなければならないと私は思うのです。ことに関連中小企業者の安定やあるいは雇用の安定ということに留意をするならば、どこかに政令指定についての歯どめがなければならない。そこで、業種の指定に当たっては、たとえば雇用問題とのかかわり合いも含めて少なくとも労働大臣の合意を要するといったような、そういう措置があってしかるべきなんじゃないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、この点、いかがでしょうか。
○濃野政府委員 法文の解釈問題でございますので、私からお答え申し上げますが、第二条の五号のいわば対象業種、候補業種の指定、これはそこに定められておりますように政令で行うわけでございまして、内閣が決めるわけでございます。したがって、発議権は私どもにございますが、内閣の意思として政令で決めるわけでございまして、そういうことから申しますと、これは当然のことながら労働大臣の御賛同を得るというかっこうになると思います。事実問題といたしましても、私どもこの政令案の立案に当たりまして十分そういう御意見が伺える、これは後へずっと続いていく問題でございますから、そういうふうに処理をしていきたい、かように考えております。
○清水委員 労働省からどなたか見えておりますか。――いまの点について局長のそういう答弁がありましたが、いずれにしても、閣議で決めるといっても発議をされるのは通産大臣で、ともすると労働大臣は聞きおくみたいな形になりかねないという心配もあるわけですが、事前の段階でいま私が申し上げているような点について労働省としてはどういう対応をいま予定をされておりますか。
○白井説明員 お答え申し上げます。
 いま、通産省の方から御説明ございましたように、この法律の字句からいいまして、事業所管大臣の権限と責任において行うべきものだと思いますが、業種指定その他につきましては政令で指定されることになっておりまして、事前に労働大臣と通産大臣と十分協議していただくという確認もいただいておりますので、それで十分やっていけるというふうに思います。
○清水委員 同時に、今度は第三条の安定基本計画の関連でお尋ねをしたいわけでありますが、この安定基本計画に定める事項の中に、当然のこととして雇用の安定、関連中小企業者の安定に関する事項というものを織り込んでしかるべきなんじゃないか、こういうふうに私は考えます。現在、政府自身もしばしば言われるように、雇用の安定は今日の最優先政策の一つである、こういうふうになっているわけでありますが、また同時に、中小企業等を取り巻く環境がますます悪化をしている、こういうことなどに思いをすれば、どうもここに雇用の安定、関連中小企業者の安定を図るという事項が加わらないということは納得がいかない。私は、この点を責務としてはっきりさせるべきではないかと思うのでありますが、本法案にはこれが欠落をしている。法案に属することだから局長からというふうなお話ではなしに、この点は重要な問題でありますから、提案をされた大臣の立場で、第三条の二項の中にいまも私が申し上げたような事項を入れるべきじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、どうでしょう。
○濃野政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、この法律の最終的なねらい、それは特定不況産業、いわゆる構造不況産業の不況克服、経営の安定を通じまして国民経済の健全な発展を図ることにあるということでございまして、この国民経済の健全な発展という基本的な目標の中に、当面の問題として一番大きな問題の一つに雇用の安定があることは、これは私どもそのとおりであると思っておりますし、したがって、安定基本計画の作成あるいは過剰設備の処理に当たりまして、雇用の安定ということが非常に重要なポイントであると私ども考えております。
 ただ、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、この法律は、直接のいわば規定の対象といたしますのは、設備の処理の仕方なりあるいはどれだけするかという量なりそれを定める、そしてそれにつながる一連の措置を規定するというのがこの法律の内容でございますために、私ども、雇用の安定とかあるいは関連中小企業者の経営の安定ということは、この法律の運用に当たって最も大きな一つの配慮すべき事項として考えることは当然でございますが、雇用の安定の内容をこの法律の基本計画の内容にするということは、この法律の目的からして、規定をしようとしている内容からしていかがか、こういうことで雇用の安定ということを基本計画の内容にしていない、こういう次第でございます。
○清水委員 なぜ私が雇用という問題についてこだわっているかというと、当初の通産の原案には、実は雇用のコの字も触れられていなかったんですね。その後いろいろ議論がございまして挿入をされているわけでありますが、私は、そういう当初の考え方から判断をして、どうも本法というものは企業救済法的なにおいを感じるわけでありまして、繰り返し雇用のことについて触れているわけなんです。
 確かに直接的な目的は局長が言われるとおりかもしれませんが、しかし、その目的を遂行するあるいは遂行しようとする場合に、当然のこととして、同時的に関連中小企業者の問題あるいは雇用の問題が出てくるわけなんですから、まさに同一的な取り扱いがされてしかるべきなんじゃないか、こういうことから、私は、安定基本計画の中にいま申し上げるような事項というものをやはりはっきりさせておくことがよりベターなんじゃないか、こういうことを言っているわけであります。
 もともとの目的はそこにないのだから雇用の点には触れていないのだと言われるけれども、しかし、現実に政治的判断を通して現在提案をされている法案によれば第十条に雇用条項が出てきているわけですね。しかし、これはひどい内容でして、まことに申しわけ的で実効性が期待できない、いわば単なる訓示規定の域を出ない、こういうふうに私は受けとめております。
 先ほども触れましたが、今日不況対策の最重要な柱の一つに当然雇用の安定を図るということがなければなりませんし、この点は企業に対する政策と同等に扱われてしかるべきである。どうも雇用問題が付随的にしか扱われないということは非常な問題だというふうに私は感ずるわけであります。本来的に言えば、第一条の目的中に雇用の安定等の措置をうたい込むくらいな態度が示されてしかるべきだ、こういうふうに私は考えているわけでありますが、現実には、第十条に消極的な表現をするにとどまっている。もう繰り返し御説明を聞かなくてもわかりますけれども、この点はどうしても納得がいかないので、やはり雇用の安定といったようなことについては法案を改めて補強をしてもらわなければならない、こういうふうに思うわけでありますが、一口でいいです。どうでしょう。
○河本国務大臣 実は、私どもは、この法律案をつくりますときに、昨年の年末に各党で共同でつくっていただきました離職者緊急対策法、これと表裏一体の関係にある法律であるという考え方のもとに、雇用問題についてはその法律で処理すればよろしい、このように考えておったのでありますが、しかしながら、この法律そのものは、国民経済全体の健全な発展を図るという目的から考えますと、やはりこれでは片手落ちであるということで、第十条に三項目を起こしまして、そして一連の雇用に対する考え方を列記をじたわけであります。そして、安定計画をつくる過程等におきまして労働側の代表に審議会に入っていただきまして、その審議会において十分に意見を言っていただく。そのようにいたしまして、労働側の御意見をその場を通じて今後の計画に反映をさせていきたい、このように考えておるところでございます。
○清水委員 いま大臣がそういうふうに言われましたから、重ねてお尋ねをするわけでありますが、実は、私がこの問題でしばしば触れているという意味はどういうことかといいますと、仮にこの法案が原案のまま成立をしたらどうなるか、一口に言って、雇用労働者というものが、過剰設備の処理即過剰労働者の整理という形で合法的に解雇をされかねない、こういう心配があるからなんです。現に、ことし一月ごろから、一つの例を申し上げると、紙パルプ産業等では、通産省の指導のもとに、この法律案の成立ということを前提にした形で、すでに労働組合に人員整理などの提案が出されているのです。労使関係には非常に問題が起こってきているわけです。ですから、この法案が成立をするということになれば、一面ではあたかも解雇促進法といったような、そういう危険な面を持つことになるのではないか、こういう心配が当該労働者等から非常にあるわけなんですね。
 だから、この安定基本計画の策定の場面も無論だけれども、特にこれを受けて、個別企業では当然のこととして設備の処理等をめぐっては労働組合の合意ないし少なくとも事前協議という趣旨をどこかに規定をしておかなければ非常に危険なのではないか、いま大臣が言われるように、国民経済的な立場に立って見ていくというその視点が失われてしまうのではないか、私はそういうふうに感ずるがゆえにこの点を申し上げているのですが、この点については労働省からも一定の見解を聞きたいと私は思うのです。
 それから、ついでですから申し上げると、いま大臣は離職者対策臨時措置法にも触れられた。政府なりの説明を聞くと、仮に人員整理、職を失うという場面が出ても、離職者対策臨時措置法という受けざらがあるから心配は要らない、こういうことをよく言われるわけなんですけれども、しかし、今日の雇用情勢というものを見る場合に、一たん職を失う、つまり失業をすると容易に再就職をするという機会に恵まれない、これがその現実の姿だと思うのですね。それとも、たとえば通産なり労働省なりが、いや、そんな心配は要らない、国の責任で再就職を保証をする、こういうふうにでも言われれば話は別でありますが、しかし、なかなかそういうわけのものでもない。したがって、大臣が述べられるように、第十条で三項にわたって規定をされている、それはそのとおりですけれども、やはりこの内容を修正、強化をして、申し上げたような不安のないような対応を国なり事業者なりの責務として行わせるというようなことがあってしかるべきなんじゃないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、通産並びに労働双方から承りたいと思います。
○岡部説明員 この法案が実施に相なりました場合に、労働組合の関与と申しますか、労使関係の面で幾つかの段階があろうかと思います。それで、私どもも通産省といろいろと協議を申し上げまして、まず、この法案の第二条第二項の規定に基づきまして特定不況産業に指定すべき旨の申し出をするというふうな段階におきましては、関係労働組合の意向も十分考慮した上で申し出るように指導をするように通産省にお願いいたしまして、その確認をいただいているところでございます。
 さらにまた、この法案の第五条の共同行為の実施に関する指示をするという段階もあるわけでございますが、この段階におきましても、関係労働組合の意見を聞きまして、その意向も十分考慮した上で実施するように、関係業界及び関係事業者に対して指導するようにお願いをいたしまして、これまた通産省の確認を得ているわけでございます。
 最後に、いよいよこの法案に基づきまして企業が過剰設備の廃棄等を行う場合、これは雇用その他の労働条件に重大な影響が及ぶという場合もあるわけでございますが、この設備の廃棄等自体は企業の経営上の問題であるとは考えますが、しかし、そのような場合には、あらかじめ関係労働組合と十分話し合いを行いまして、その理解と協力のもとに進めることが望ましいというふうに考えているわけでございます。
 なお、言うまでもないことながら、この過剰設備の廃棄等に伴う労働条件の問題につきましては、当然団体交渉の対象になるというふうに考えています。
○濃野政府委員 過剰設備の処理問題に絡みまして、雇用の安定に関する問題が非常に大きな問題であることは、先ほどから何回も御答弁申し上げておりますように、私どももそういうふうに認識をいたしておりまして、ただいま労働省側から御説明ございましたように、私どもこの対象業種の指定、これは政令でございますが、それから安定基本計画、さらにはいわゆる共同行為の指示等に当たりまして、労働問題の担当である労働省当局との間で十分な協議、連絡を重ねるということで、すでに両省間で、事務的にどういうことについて事前の相談をするか、十分な話し合いをいたしておりますのが第一。
 第二に、先ほど申し上げましたように、この法案では、安定基本計画の策定に当たりまして関係審議会の意見を聞くようになっております。また、共同行為の指示の場合も意見を聞くことになっておりまして、この審議会の場におきまして労働組合の意見も十分反映されるように審議会の構成等も考えていきたいと思いますし、個々の業種におきまして特に大きな経営者側と労働側との問題がある場合は、当然のことながら、この審議会の場におきまして大きな議論になると思いますが、そこで意見の交換を十分行う、そういうことにしたいと思います。
 なお、御指摘のような、個々の事業者が過剰設備の処理をするに当たりまして労働組合側との同意あるいは協議を法定したらどうかということでございますが、この過剰設備の処理は非常に大きな問題でございまして、関係労働組合の理解と協力がなければ個々の事業者で進められないと考えております。したがって、当然のことでございますが、個々の事業者も、設備処理という非常に重大な問題については、それぞれの組合と十分相談の上処理をしていくものと考えております。
 ただ、これを法律に書くかどうかということになりますと、設備の処理問題自体は経営の分野に属する問題でございますので、先ほど御指摘のような点を前提とすることを法定するのはいかがかと私どもは考えております。
○清水委員 時間が参りましたから、最後に一つだけお尋ねして、質問を終わることにいたします。
 第三章の基金について、基本的な問題について尋ねるわけでありますが、確かに設備の処理のために信用保証によって必要な資金の融資が受けられる、その結果、需給のバランスの改善とか償却費や維持費の負担の減少、あるいは収支状況の改善に役立つと仮にいたしましょう。しかし、この資金は返さなくていいただの銭ではむろんないわけでありますから、一面では新しい負債をしょうことになるわけですね。したがって、先に申し上げたメリット、それから新しい負債をしょうデメリットとがその後の企業の財務状況に一体どういう影響をもたらすのか。これは仮定の論でありますし、ケースごとに異なる問題でありますから、なかなか一口に言えないむずかしい問題だと思います。しかし、少なくとも私がいま申し上げるような見方は成り立つ。
 そこで、基金によって企業が債務保証を受けるといった場合、後々のことも配慮をして、当然のこととして労働組合の合意といったものを条件あるいは前提にしながら資金を借りる、そしてその後の影響が重ねて労働者の上に及ばないような何らかの歯どめをしておくことが必要なんじゃないか、こういうふうに一つは思います。
 それから、いま一つお聞きをしたいことは、話は少し飛ぶわけですけれども、三十六条の「評議員会」というのがありますね。二十人の評議員を理事長が任命するわけなんですが、その中に労働者の立場を代表する評議員を学識経験評議員として任命することによって基金運営の公正を期する、こういう配慮も当然あってしかるべきだと私は思いますが、そういうおつもりがあるかどうか、二点をお尋ねいたします。
○濃野政府委員 債務保証のためのこの信用基金のいわば運用問題について、二点御質問でございました。
 第一点の債務保証に当たって労働組合との関係をはっきりさせるべきではないかということでございますが、基金は、御指摘のように、設備処理を行う企業は担保力が不足いたしておりまして、こういう企業に対して、再建の見込み等の金融的な判断から債務保証という補完的機能を営ませることがねらいでございまして、個々の企業によりまして、この債務保証を受けるに当たっていろいろな判断が企業のサイドから当然加えられると思うわけでございます。
 そこで、個々の事業者が過剰設備の処理を安定基本計画によって進めていく場合に、当然のことながら、その事業者と関係労働組合を初め関連の事業者、たとえば商社との関係が非常に緊密であれば商社、あるいは関係の金融機関等の十分な理解と協力を得た上で設備処理を具体的に決め、そしてこれこれの金の担保として債務保証基金を受けるという決定をするわけでございますから、個々の事業者は、ただいま申し上げましたように、広く関係者の意見を入れていくことは当然だと思います。基金の側からいたしますと、そういう事業者の判断が加えられた上で出てくる債務保証を求める計画に対し、債務保証の適否を判断をしていくということになるのだろうと思います。
 第二に、評議員会、法律の三十六条で規定がございますが、この運営に関しましては、そもそものねらいが、基金の運営が公正かつ中立的であることを確保する目的で設置されるわけでございまして、私ども現在、この三十六条の評議員会のメンバーがどういう方であったら一番適当かということにつきましては、今後基金の設立に当たりましていろいろ議論をする観点ではないかと思いますが、この法律に書いてございますように、「評議員は、産業又は金融に関し学識経験を有する者のうちから、」云々とありまして、理事長の任命事項になっております。どういう方を評議員にお願いをするかは、現実事実上の問題として、これからの基金の運用についてのいろいろな問題を整理するときに議論をしてみたい、その一つの対象項目である、こういうふうに私ども考えております。
○清水委員 終わります。
○山下(徳)委員長代理 午後二時二十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時四十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十三分開議
○野呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。渋沢利久君。
○渋沢委員 どうしても重なる部分が出てくることは御了承いただいておきますが、最初にお尋ねしたいと思いますことは、信用基金の出資百億、そして一千億以上の債務保証を行うという、この法案の目玉みたいな部分だと思うのですけれども、この百億、一千億というものの計算の根拠になるものを、最初にできるだけ具体的に御説明をお願いしたいと思います。
○濃野政府委員 今回、この法案におきまして設立を予定をしております信用基金につきましては、十六条で、この基金の資本金につきまして、日本開発銀行と開発銀行以外の者が出資をいたしまして、それの合計額が資本金になる、こういう規定を設けております。
    〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
 五十三年度の予算編成に当たりまして、この信用基金に日本開発銀行からの出資の額、これはいろいろ議論の結果決めたわけでございますが、その経緯につきまして御説明申し上げます。
 開発銀行が五十三年度の財投計画の中で出資し得る最高限度は、ただいまの百億ということになっておりますが、当面、この法案が御審議の結果成立をいたしまして、この基金が設立をされるという場合の当初発足の資本金につきましては、二十億の民間の出資または出捐が出るという見通しのもとで、八十億開発銀行から出資をして、合計額百億でスタートをする。なお、民間からの出資または出捐の額が二十億を超えるめどがはっきりいたしましたときに、残りの二十億を開発銀行からさらに出資をいたします。そういたしますと、開発銀行から百億、民間から二十億プラスアルファで、保証限度が十倍という運用でやっていきたいと考えておりますので、その場合の保証限度は千二百数十億、つまり千二百億プラスアルファということになるのではないかと思います。
 ただいまの御質問は、その百億というものをどうやってはじき出したかということではないかと思いますが、私ども、この信用基金の創設を企画いたしました際に、いわゆる構造不況業種としてこの信用基金の保証の対象になり得る業種をどれだけ考えるか、その場合のこの信用基金の保証を申し込む対象となるいわば担保抜きの設備はどのくらいあるかという一応の試算はいたしましたが、今回の五十三年度の最後のこの出資の百億の限度というものを決めますときには、いわばまとめた金で百億、当面、出だし百億と決めたわけでございまして、その裏打ちをなす細かい積算根拠はつくっておりません。
○渋沢委員 そのあなた方の内部でやった一応の試算というのはどういうものですか、聞かせてください。
○濃野政府委員 財政当局と財投計画の調整と申しますか話し合いをいたしましたときには、通産省所管の構造不況業種と数えられるもの数業種につきまして、ただいま私が申し上げました大体対象となる設備の額から算定をいたしまして数字をつくりました。しかし、いま申し上げましたように、最終的には当面発足百億ということで決まりましたので、その百億の中身についてのブレークダウン等はやっておりません。
○渋沢委員 すでに行われた質疑を通して、大臣も、所管関係大臣と協議の上当然必要に応じて枠はふやしていく、もっとも、指定業種がふえていくということがあり得るわけですから、当然のことだと思いますけれども、そういうふうにおっしゃっておるわけだと思うのです。それはまさにそのとおりであるというふうに理解をしていいわけですか。
○濃野政府委員 発足時の問題につきましてはただいま申し上げましたが、今後この法律が動き出しまして、具体的にこの法律の対象となる特定不況産業というものが関係業界の申し出によりまして正式に指定がされる、そしてこの法律に定める手続で設備処理が始まったときに、一体その設備処理の対象となる設備の額がどれだけあって、その中からこの基金に幾ら保証の申し込みがあるかということはおいおい具体的になると思います。その場合、当初発足の基金の額で足りなくなった場合には、かねて大臣から御答弁のように、その際新しい出資または出捐をどのぐらいにするかということは、具体的にその段階で検討し、決めていきたい、こういうふうに考えております。
○渋沢委員 大臣も言われているわけですけれども、過剰設備を廃棄しようとするときに、この設備がみんな金融機関の担保になっておる、これは担保抜きである、その担保抜きが言ってみれば設備廃棄を進める起動力、この法律の目的でもあるという趣旨を強調されておるわけでありますが、まさに債務保証の目的はこの担保抜きにあるという説明ですが、それがそのすべてであるということであるか、債務保証の目的を改めて具体的に伺っておきたいと思います。
○濃野政府委員 御指摘のとおり、この基金の債務保証の対象となる資金は、ただいま御指摘のような設備処理の対象となる主要設備の担保解除資金、それから、主要設備を処理いたします場合に、それに伴って使用不能となる付属設備等があると思いますが、これの担保解除資金、これが中心になるものと私ども考えております。
○渋沢委員 たとえば一定の時期いろいろな企業が土地買いをやりまして、いまたくさんの土地を抱えて、もちろんこれも担保に入ってはおるのでしょうが、その処理に困っておるというような部分がかなりあると思うのですね。当然そういうことへも手助けをするということになろうと思うのですけれども、そういうことでしょうか。
○濃野政府委員 企業というベースで考えますと、過剰設備の処理ということに関連いたしまして、いろいろな将来の再建の方向とかいうことで、企業全体の運営の問題が当然議論になると思いますが、ただ、この基金で保証いたします対象は、ただいま御指摘のございましたようなところまで広げるわけにはまいりませんで――もちろんそういうものを含めた全体の、将来への、どうやってこれを金融でめんどうを見ていくかという問題は当然出てくるかもしれませんけれども、この基金プロパーといたしましては、いま申し上げた主要設備ないしはそれに付帯をした付属設備の担保解除資金ということが対象になる、こういうように私ども考えております。
○渋沢委員 この法律の目的は、過剰設備処理に悩んでいる企業に対してこれを円滑に廃棄等の処分をさせる、そのために必要なあらゆる手だてをしていこうということだと思いますが、お話のとおりに、これはみんな担保に入っておる、その担保抜きというところにこの基金の目標、うまみ、この法律の重みがある、こういうことでありまして、同時に、ということは、金融機関にとってもこれは大変なありがたい法律になってくるわけでありまして、そういう意味では、特定不況業種の企業家を援助するという性質と同時に、金融機関の焦げつき対策にも大変大きな寄与をする法律になっている、こういう性質を持っているなという感じがするわけですが、これは大臣、そういう特徴のものだということについての大臣の所感を伺いたい。
○濃野政府委員 御指摘のとおり、過剰設備の処理ということをある業界が進めていきます場合には、現在の段階で見ますと、いわゆる金融機関ないしは業種によりましては商社を中心とする関連事業者が、いろいろな関係で金融的な関係、支援の関係等を持っておりまして、過剰設備の処理を進めるに当たりまして、その担保抜きのための資金の保証というものをこの基金で行いますことは、それだけの反射利益が金融機関等にもあると私考えております。
 したがって、そういう面から、私は、過剰設備の処理は当該業界自身の自主的努力ということは重ね重ね申し上げておりますが、そのほかに、やはり金融機関ないしは関連の事業者等の協力を得られる一つの目安というのもそういうところにある、したがって、みんなの協力のもとで片づけていく問題ではないか、かように考えております。
○渋沢委員 おっしゃるとおり、金融機関のみならず関連の大商社、この特定不況業種に対して設備投資をあおり立ててまいりましたこれらの大商社や金融機関にとって、その焦げつき対策の対応策として、単に過剰設備の処理援助というだけでなしに、そういう二重三重の効果を持った、特徴を持った法律であるという趣旨の説明を、私のお尋ねに対して解明していただいたわけでありますから、その点はもうそれで結構だと思います。
 そこで、一つ利口になりましたので先に進みたいと思うのですが、先ほど清水委員からもいろいろお尋ねがありました。しかし、やはり私どもこの法律で一番心配するのは、業種によって三割あるいは五割、やあ六割だというようなこの廃棄が迫られるということが言われるこのいわゆる不況業種の中での設備処理ということがこの法律の施行とともに実施される中で、そのことが与える関連の下請中小企業、そこで働く労働者がどういうことになるのだろうかということでございます。
 それで、各委員の質疑にもかかわらず、一向にその点が解明されておらない。しかし、先般のこの法律が提案されましたときのたとえば本会議での労働大臣の答弁などは大変歯切れがいいのでありまして、後藤委員の質問に対して、労働省も見えていると思いますが、労働大臣が答えた言葉は、そのままで言いますとこうなっておりまして、「特にまた、ただいま法案に出ております第十条において、雇用の安定のためには国並びに都道府県が責任を持つということを明記しておるわけでございますから、先ほどからのいろんな御心配に対しては十二分にわれわれは構えをいたしておる、このように御理解いただきたいと思うのでございます。」という答弁をされている。この言葉だけ国民が聞きましょうものなら、これは何と手厚い責任のある姿勢を政府は持ってこの法律を出しておるかというふうに、だれが見ても読み取れるわけなので、政治家の言葉に責任があるとするならば、この法案の態度としての政府の説明の言葉としては、大変重要な言葉だと私は受け取っておるわけなんです。これはもちろん労働大臣の言うたことということじゃありませんで、政府のこの法律の精神、政府の考えというものが表明されたものだと思いますし、委員会でも、すでに河本通産大臣は、しばしば同様趣旨の説明をされておるわけなんであります。
 改めて、これは通産大臣の言葉から、いまの指摘いたしました労働大臣の言葉が、この法律におけるわれわれが心配をいたします労働者の問題雇用安定の問題に対する政府の明確な姿勢だ、法律にどう書いてありましょうとも、法律ですべてを明らかにするわけにはいかぬのでありまして、いずれにしてもこれが政府の基本姿勢だということは素直に受け取っておきたいと思うのですが、改めてこれは大臣から一言言っていただきたいと思う。
○河本国務大臣 第十条には三項目の規定がございますが、その精神は、労働大臣が本会議で答弁をした内容に尽きるわけでございます。
○渋沢委員 そこで、その精神にのっとりまして、具体的にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。この十条の中で幾つか触れておるわけでありますけれども、特にいま指摘をいたしました国、地方自治体が「労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる」、これは訓話規定だとか精神規定だとかいうことで批判をしてもしようがないのでありまして、しかし、法律の文言にここまで明確にともかく言葉にしておるのでありますから、具体的にはどういう法律と手当てをもろて失業の予防と雇用の安定を配慮するのか。言葉は配慮でも何でも構いませんが、具体的には、これだけの過剰設備の処理をすれば雇用の問題が出てくる。これはもう明らかなんです。政府もしばしば明らかに認めておるところなんでして、しかし、失業の予防、雇用の安定、これは国と都道府県が責任を持ってやると、労働大臣が本会議場で胸を張って説明したとおりなんです。しかし、具体的に予想される過剰人員の処理ということに対してどういう具体的な対応で、受けざらで失業を予防するのか、雇用を安定させるのか、これはひとつ具体的に聞かせていただきたい。
○白井説明員 お答え申し上げます。
 特定不況業種からの離職者等の問題につきましては、雇用保険法、それから先般臨時国会で成立しました特定不況業種離職者臨時措置法等を活用いたしまして、具体的に対策を講じていくということになるわけでございますが、具体的には、失業の予防その他につきましては、昨年の十月から施行されました雇用安定資金制度、これを活用いたしまして、雇用調整に対する助成、または事業転換等の場合の従業員が転換していく場合、または出向していく場合の助成等を行って失業の予防に努めますとともに、特定不況業種、やむを得ずそういうところからできた離職者につきましては、離職者臨時措置法を、こちらの法律も業種指定をすることになっておりますので、そのところを弾力的に指定いたしますとともに、この法律に基づきまして、具体的には四十歳以上の者に対する雇用保険の延長給付とか、職業訓練手当や時期手当の支給とか、その他雇用促進助成金の支給等を行うことによって離職者の再就職に努めてまいりたいというふうに思っております。
○渋沢委員 離職者法は、これは離職してからの対応でしょう。そうでしょう。離職した者に対して雇用保険給付の期間延長と、それから就職促進手当ですか、これをつけるということでしょう。しかも二年の時限立法ですね。つまり、首を切られて失業者になったけれども、手当は少し余分に見てやろう、それでもだめな場合には就職促進の手当を少し見てやろうということでしょう。五年も十年も見るわけではないでしょう。給与の何割補償するのですか。賃金の六割でしょう。上限があるでしょう。日額三千円かそこらじゃないですか。日額三千円か三千百円かというのは、三十日働いて、月にならして幾らですか。
 それはなかなかりっぱな法律をつくられたと言われたのですけれども、あなたがいま言った離職者法で失業の予防、雇用の安定――これは私の自分の演説じゃないんですよ、法律の文言を言っている。労働大臣と政府が、この法律の提案に当たって政府の態度として明確に示した法律の説明の言葉で言っているわけです。失業の予防と雇用の安定を図るということ。
 離職者法では、六割の賃金を一定の期限に限って、しかも頭打ち幾らで、十万かそこらでは暮らしの安定もできぬじゃないですか。これは何もないよりはいいというお手当ではないでしょうか。これをちょっと説明してください。
○白井説明員 お答えいたします。
 私の御説明が足らなかったかと思いますが、先生のおっしゃいますとおり、離職者法は、確かに失業を余儀なくされた人を対象とするわけでございまして、失業の予防につきましては、先ほどからお話が出ておりますように、業種指定や安定基本計画をつくる場合に、なるべく離職者を出さないようにということを労働省としては希望しているわけでございまして、その辺で事前にいろいろと協議をいただくということを踏まえますとともに、先ほど御説明申し上げましたのは、雇用保険法の安定資金制度を活用して、これは大企業の場合は賃金の二分の一、中小企業の場合は賃金の三分の二を助成していくわけでございますが、そういうことによって、離職者として労働市場へ出ないで、転換を図っていくということについて努力してまいりたいということでございます。
○渋沢委員 これは通産の御意見も聞かなければなりませんが、この法律は、五年の間に安定基本計画にのっとって特定した不況業種の全体の安定を図ろう、できるかできないか大変疑わしいのだけれども、ともかくやろうということで、当面こういう援助をしようということですね。その二年の時限立法である離職者法、これは話はいま引っ込めましたけれども、そうじゃなしに、安定資金制度で失業の予防、失業者を出さぬように見ていくんだ、こういうふうに労働省は言っておるのですが、一体、今度の法律で、本当に失業者を出さない、この資金制度と離職者法があるから雇用の安定が図れる、つまり雇用不安などはいささかも拡大しない、失業者も出ないというようなことが言えるのですか。そういう前提でこの法律を提案し、そしてこういう文章で法律に明文化されていらっしゃるのですか。
○濃野政府委員 今回のこの法律が内容としております設備の処理、これが安定基本計画、そしてそれに基づいて事業者の努力ということを中心に進められてまいります場合に、ただいま御指摘のような雇用の面で全く失業者が出ないかと言われれば、そういうことは期待できないと申しますか、やはり若干の雇用調整ということが行われることは、現実としてそういう姿が出てくると私どもも考えております。
 ただ、私どもは、そうは申しましても、設備調整を進めながら、雇用調整と申しますか、雇用の安定を害しないように、スムーズに設備処理が行われるということがねらいでございまして、そういう意味で、第十条は、事業者も国もあるいは地方公共団体も、雇用の安定を目的としてそれぞれ配慮ないしは努力をしなければならない、こういういわば基本的な考え方を十条に規定しておる、こういうことではないかと思います。
○渋沢委員 これは大臣にどうしても伺いたいのですが、きょうは大臣は余り物をおっしゃらないようですけれども、大臣にぜひ伺っておきたいのです。
 大臣は、二法一体論というものをしばしばおっしゃっているわけです。この法律と離職者法は本来一緒に出すべきものだということを何回もおっしゃっておるわけです。しかし、いろいろな都合であれが先に通ったけれども、とにかく、確かにこれでは雇用の問題は出る。今度の過剰設備の廃棄をやれば当然出る。ここでは、言ってみれば首切り法案とかいろいろ言われようとも、ここで吐き出した者はちゃんと受けざらがある、あの法律で守るのだ、こうおっしゃっておる。いま労働省の方で言ったこの二つの、安定資金制度それから離職者法でやる、これは大臣もしばしば言って、二法一体論というものをおっしゃっておる。こっちで切って吐き出して、こっちで受けて立つ、これで御心配の点はないようにするということで、本会議での労働大臣の、一切心配を残すようなことにはなりません、そういう政府の構えはここにありますということの裏づけをされておるわけですね。しかし、いまの話でも明らかのように、吐き出した者の受けざらになるべき二つの制度をもってしても、雇用不安をなくすとか、失業者を出さないとかいうようなことは考えられないことは明らかなんです。
 大臣、大変話がつじつまの合わない話になっておる。これはもっと正確に、最初に私がお尋ねしたように、一千億を超える債務保証によって過剰設備に苦しむ企業家を助けるのだ、この企業家をほっておいては大変だ、助けるのだ、同時に、担保にしている金融機関にとっても焦げつきが大変心配なわけで、ここもめんどうを見てやるのだ、こういう法律だ、それはそれでいいじゃないか、そうしてこれが不況克服のてこになるんだ。自信を持っておっしゃるならそれもいいじゃないか。しかし、そこでは当然、一業種が何割もぶった切られれば、関連下請はばたばた倒れるものも出てくると想定しなければなりませんし、労働者の問題も出てくる。これはやむを得ない、できるだけのことを、落ちこぼれがあってもこの法律とこの制度でやる。これもちゃんと見ていきますと、二法一体論などということを言うことは、ちょっときれいごとに過ぎるのではないかというのが私の感じなんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○河本国務大臣 構造不況業種でどの程度の設備の共同廃棄をするかということでありますが、私どもの観測では、少ないものでも一、二割はしなければいかぬと思っております。多いものは五、六割の設備の廃棄をしなければならぬのではないかと思っております。そういう業種は、長きにわたりまして不況に苦しんでおりますから、もうすでにある程度の合理化をやっております。ある程度の雇用問題の調整をしておるわけでございますが、しかしながら、金融機関の了解あるいは関係取引先の了解等を得てそれだけの設備の廃棄をする以上は、やはりそこで雇用問題が表面化せざるを得ない、それは当然のことだと私は思います。ただしかし、その場合でもできるだけ失業の予防をしなければいかぬ、そしてまた雇用の安定を図っていかなければならぬ、そういうことで、先ほど来労働省からもお答えのように、雇用安定資金制度を活用するとか、あるいはまた、離職者対策法に決められました職業訓練を実施いたしまして再雇用を促進するとか、いろいろな制度を活用いたしまして、失業の予防あるいはまた雇用の安定というものを図っていこう、こういう考え方でございます。
○渋沢委員 やや正確に、十分ではないけれども、おっしゃったと思うのです。この法律は、過剰設備に苦しむ企業家と関連の商社や金融機関を助ける、そこではずみをつける。好ましいと思わぬけれども、関連下請や労働者に被害は出るだろう。出るのはあたりまえ、できるだけのことはする、できるだけのことはいますでにつくられた制度を生かしてやりたい、こういうこと、つまり言葉をかえて言うと、ある程度の犠牲はやむを得ない、こういうことなんです。しかも二法一体論というのは、大臣、これはわれわれの側から言うと聞こえませんのですよ。
 離職者対策法なんというのは、政府の出した法律じゃないじゃないですか。あれは、もともと労働団体の国会請願や何かを受けて野党が案をつくって、自民党さんと御相談をして議員立法でやっている。何も政府が進んで特定不況業種対策として、経営者はこれで見る、労働者の方はこれで見るというかっこうで、まさにそういう立場でお出しになったものじゃないじゃないですか。たまたまここでは切るけれども、切られた労働者の扱いは去年できたその法律があるということで二法一体論をお述べになっておる。しかし、一皮向いたお尋ねをすると、結局いろいろ犠牲者が出るのは、これはやむを得ない、できるだけめんどうを見ましょう、こういう姿勢であり、同時に、それがこの法律の中身である。
 これはしかし、大臣、大変問題だというふうに思うわけで、高度成長の時代で、失業者をどんどん吸収していくような力が日本の産業にあるときならいいけれども、改めて言うまでもない、本当に冷え切って悪い状態で、失業者がもう大変な増大傾向にある中で失業者をつくるという政策は、しかもこれを国の力をかりてやる、国が安定基本計画までつくって、その網の中で指示カルテルまで発動してやろうという仕事の中で、労働者の切り捨てはやむを得ない、できるだけ見たいというようなことでは、これは通らない話じゃないかと思うのであります。私は、やはりその部分での考え方を少し改めていただくという姿勢がないと、これは理解をされない法律になるのじゃないかと思うのですが、重ねて大臣のお考えを伺っておきたい。
○河本国務大臣 政府といたしましては、このような法律を御審議をお願いしておるわけでございますが、実際は、不況業種と言われる業界の中にも、一、二の業界は、こういう法律のお世話にならないで、自力で何とか目鼻をつけたいと思っております。こういう業種もあるわけでございます。すでにそういう意見を言っておられる業界もございます。私どもは、それが本筋ではないかと思うのです。やはり自力でこの難局を切り抜けていこうという考え方が、私は一番尊重、評価さるべきだと思っております。
 しかしながら、業界の大部分の意見が合致をいたしまして、合意を得まして、そうしてやはり自力でやるのが無理だ、この法律の制度に乗っかって過剰設備を廃棄をしていこう、こういう業界に対しては、この法律に決めてありますところの制度に従ってできるだけの援助をしていこう、こういう考え方でございまして、この法律を活用されるかどうかということは、業界の意思にかかっておるわけでございまして、決して政府は強制するものではないわけでございます。
 しかも、こういう深刻な不況の状態でございますから、やはりいろんな角度から何とか切り抜けていかなければならぬという工夫を労使双方がすべきでございまして、もし自力でもやれない、こういう業界が、合意を得られないまま何もやらないということになりますと、これはもう全体がつぶれてしまう、こういうことになりますから、そこはやはり深刻な事態になっておるということを労使双方が理解をいたしまして、そうして何とかこの難局を突破していこう、こういう考え方でございますから、双方が理解をし合うということが大事だと思います。
○渋沢委員 双方が理解し合うという、その構造にこの法律がなってないところを私は問題にしているわけなんです。大臣の言った最後の指摘は、それはそういうことならば結構なんです。
 これはもともと産業の安定的な発展のために過剰設備を処理しようという、直接にその雇用労働条件にかかわる事業内容です。それだけに、私は何も一般論で議論を楽しんでいるわけではございません。この仕事は直接に雇用と労働条件にかかわる問題である、それだけに、おっしゃるとおりに、労働者側の理解と協力なしにこれをやろうということがどだい間違いだ、できるものでもないと思うのです。そういう形でやるべきではないと考えるわけです。そうお考えになるならば、やはりこの法律を通してそういう立場というものをもっと明確に打ち出さなければならぬのじゃないかということで、きょうも清水委員からの指摘があったと思いますし、同様の指摘はしばしば展開をされていることだと思うのです。
 具体的にはいろいろなことが提案されていると思いますけれども、残念ながら、労使双方の一体的な理解と協力の中でというようなものにならないのです。切り捨て御免的な傾向になるのじゃないかという心配が残っているわけなんです。そういういわば歯どめをかけるためにも、この法律の中に、雇用の安定ということ、それから労働者側の立場を尊重するという立場、考え方というものをもっと明確に、たとえば安定基本計画の策定に当たっても、業種指定に当たっても、あるいは共同行為にかかわる部分についても、一貫して労働者と関連下請中小企業の立場を尊重するということが、もっと明確に打ち出されなければならないというふうに思うのです。
 個々の具体的なことで審議会がどうというような議論がたくさん展開されておりますが、そういうことに細かくいま重ねて触れようと思いませんけれども、個々の部分はどうしても精神規定、精神答弁、そういう配慮はいたしますという範囲を一歩も出ておらない、これではわれわれも納得するものにならないと思うのです。もし了とされるならば、その趣旨をいま一度具体的にお答えを願いたいと思います。
○濃野政府委員 雇用安定、または中小企業、下請企業等の経営の安定の問題は、この法律の最終的な目的といたしまして、当面の経済情勢、不況の中で最も重点を置いて考えなければならぬということは、私どもも全くそのとおりに考えております。ただ、繰り返し御答弁申し上げておりますように、ただいま御指摘のこの法律の業種指定に始まり、安定基本計画を定め、最終的には指示カルテルという仕組みを含めた設備処理、このための必要な措置を定めるというのがこの法律の第一のねらいでございますので、雇用の安定あるいは中小企業の経営の安定という問題は、私ども当然あらゆる面で配慮していきたい、具体的には、何遍も御答弁申し上げておりますように、審議会の運用等を通じましてやります。
 それから、たとえば先ほど特定不況産業の指定の政令のことについても、ぜひそういう趣旨を入れるべきだという話がございましたが、私ども、雇用問題を担当しておる労働省当局とも、ただいま御指摘のような場合にはそれぞれ事前に前広に協議いたしまして、そういう意味での内閣の中での意思統一を図るというようなことを通じましてやっていくつもりでございます。
 ただ、法文の上にそれを明記するかどうかという問題になりますと、繰り返しになりますが、この法律がねらっておる本来の目的からいたしまして、私どもとしては、その運用面で十分配慮すれば十分ではないか、重ねてそういうふうに考えておるわけでございます。
○渋沢委員 そういう立場を尊重するとおっしゃるならば、たとえば信用基金の運営の中で、金融機関などの担保抜きということだけでなしに、雇用の安定あるいは下請関連の対策のための必要な資金繰りに充てるということも明らかにすべきだし、また、当然のことながら、その運営についても、その目的に合うように、生かされるように、関係者の参加を求めて、そうしてその基金が目的に沿って有効に使われるような体制を明らかにすべきじゃありませんか。そういうことについては、一言も明確に触れておらないでしょう。言葉の上だけで、この法律の最終目標は雇用の安定だ、下請中小や労働者のことを考えておるなどとおっしゃいましても、具体的には何も生かされておらないということなんです。どうでしょう。
○濃野政府委員 ただいま御指摘の第三章信用基金の運用に関する問題でございますが、信用基金の運用に当たりまして、その対象とする資金は、先ほど申し上げたように、主として設備処理に伴う担保抜き資金というようなものを対象にしたいと考えておるわけでございます。
 ただ、ただいま御指摘の中の広い意味の雇用の安定と申しますか、設備の処理を円滑に進めていくためには、各事業者、経営者と労働側との話し合いというのは、当然のことながら緊密な協力、話し合いが進められると思います。先ほど私が申しました雇用調整が必要だというときに、たとえばどうしても退職金が借り入れられないという場合に、これをこの保証の対象にするかどうか、これなどは、私対象になし得るものではないかとも考えておりますし、それから、この基金の運用自身について労働者側の意見の代表あるいは中小企業の意見を代表する立場の人が運営の面で参加ができないか、こういうことが具体的な問題だと思いますが、先ほど御質問もございましたように、私どもは、今後この基金の運用の面で主務大臣として大蔵大臣ともいろいろ相談をし、あるいはこの基金発足後、基金の理事側とも必要な指導、話し合い等を通じまして、ただいま御指摘のありましたようなこの法律の目的が一番うまく遂行されるようなかっこうで、この運用の円滑化を図っていく方向でいろいろ具体的な議論を詰めていきたい、こう考えておるわけでございます。
○渋沢委員 さっきの答弁よりは少し前向きな答弁の片鱗が出ましたけれども、しかし、まだまだ納得のできるような答弁とは言えません。
 時間がありませんから、最後に、公取委員長にカルテルに関係したことでぜひお考えを伺っておきたいと思うのです。
 こういう特定業種の設備処理にかかわる共同行為を国の指示によってできるというような種類の法律というのは、まず世界的にあるものでしょうか。
○橋口政府委員 カルテルに関する世界の法制でございますけれども、原則禁止と弊害規制主義と、大きく分けますとこういう二つの流れがあると思います。原則禁止の考え方をとっております最右翼と申しますか、典型的な国がアメリカでございまして、それから弊害規制主義という考え方をとっておりますのがイギリス、フランスでございます。その中間にありますのが西独、日本でございまして、日本は不況カルテルという制度を持っておりますが、西独はもっと限定いたしまして、構造的な需給の変化に対応する場合に限ってカルテルを認める、こういう制度でございます。
 それから先の問題として、国が指示をしてカルテルを結成させるという法制があるかということでございますが、これは、私の承知しておりますところでは、世界には恐らく類例がないだろうと思います。
    〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
 ただ、これから先はよけいなことでございますが、日本の法制では、いわゆる独占禁止法適用除外例として、こういう性質のカルテルはたくさん例がございます。
○渋沢委員 時間がありませんので、細かく伺えないのは残念なんですけれども、一つどうしてもただしておきたいという点は、後藤委員もしばしば尋ねておったわけですが、なぜこの法律が必要なんだろうか、現行の独禁法の不況カルテルでいいじゃないか、やれるじゃないかという議論があって、公取委員長も、いや、これは公取の同意という条件の中で全く同じだという趣旨の説明をされているわけです。どうもこれはすかっとこない答弁なんですね。全く同じだというふうにはどうも思えないわけです。
 私ども、いまの独禁法については、この内容をさらに強化していく、公取の機能、権限を含めてさらに一層これを強めていくということを期待しているし、去年の法改正の中ではそれが全党の意思で実現をしている。一歩、半歩前進があるというふうに評価をしているわけですけれども、また逆に、これを強めるということを必ずしも好まないといいましょうか、望まないという考えや立場のあることも承知しております。そういう流れの中で、今度は同意権があるからということだけでは、同じだという理解には立てないわけです。これは公取委員長、もう一度簡潔にその要点を伺いたいが、全く変わりがない、何の障害もない、こうお考えでありましょうか。
○橋口政府委員 これは実体認識の問題と法制のたてまえの問題と二つあると思います。
 実体の認識につきまして、構造不況業種について民間の発意に任せておけば国民経済的な要請である設備の処理ができるかどうか、仮にそれができるという認識であれば、御指摘のように、こういう新しい法制は必要ない、こういうことになるだろうと思います。
 しかしながら、その点の認識につきましては、私どもは主務省当局と同じ考え方を持っておるのでございまして、民間の自発性に基づいて個々の業者なりあるいは業界が共同して行為を行うということに期待をいたしておりますけれども、どうしても共同行為ができない、あるいは個々の事業者の廃棄では十分国民経済的な目的を達することができないといった場合のいわば最終的な保障手段としての指示行為、指示カルテルでございますから、したがいまして、午前中の委員会でもお答え申し上げましたが、産業政策と独禁政策の調和という点から申しますと、これは産業政策に重点を傾斜した考え方でございます。
 しかしながら、その産業政策に対する歯どめとして同意権を確保したということでございますから、そういう点におきまして、産業政策と独占禁止政策とは全く同等の立場に立つ、対等の関係に立つという意味におきまして、民間の自発性に基づいて結成されますカルテルに対して公正取引委員会は認可権を持ちますのと本質において異ならないということを申し上げたのでございまして、もちろん、民間の方が自発的に申請するものと政府の方が指示をするものと、これは法制上のたてまえで全く同じだ、そういうことを申し上げた趣旨ではございませんで、つまり歯どめという立場において独占禁止法の守るべき法益を守るという立場から申しますと、同じ程度の重さを持っておる、こういうことを申し上げたのでございます。
○渋沢委員 公取委員長のおっしゃること、私も全く否定はいたしません。しかし、にもかかわらず、全体の流れの中で見ますと、これはやはり変わった、半歩、一歩後退だという印象はぬぐえないわけです。国の指示カルテルといいましても、通産の方もかなり後退をして、そしてあくまで強制力を持たないという形で、業界の自発性というものを尊重する立場におりておるわけですから、内容からいいますと、むしろ独禁の現行法でやれるものを、ただ名をとったといいますか、名をとったという意味で言えば、産業政策との触れ合いの中で半歩、一歩後退したということはやはり否めない。委員長としてはいまのような御説明をせざるを得ないと思いますけれども、この事実はどうも否定すべくもないと私は思うのであります。
 現実に、独禁でやる場合には業者の側が公取に申請を出して認可をいただく、こういう関係ですね。今度は、通産大臣が公取に対して同意を求める、こういうかかわりですね。しかし、同意であろうが何であろうが、こっちの持っておる物差しは同じだ、だから実体は同じだとおっしゃるわけだけれども、これが全く同じだ、同じ姿だというふうにはだれの目にも映らないわけであります。
 歴史の流れがあります。こういう流れの中でこれは明らかに一本とられた、一歩後退した姿が私どもの目には映し出されておるわけであります。そういう意味で、公取委員会の譲歩に対しては私は非常に不満の意を表明せざるを得ないわけですが、これは議論がすれ違ってなかなかかみ合わないような気がいたします。
 最後に、もう時間がございませんので、一つだけ通産大臣にお尋ねいたします。
 安定基本計画の一と二は、読めばわかるわけですが、三がようわからぬように書いてありまして、これは要するに、単に設備の処理というだけでは相ならぬのでして、業界全体、業種全体の再編成、合併、営業権譲渡というようなものを含めて再編成を考えていく、安定基本計画の中でそういう絵を鮮やかに描こう、こういう発想だろうと思うのですが、その点はいかがでしょう。
○濃野政府委員 三条二項三号は、「第一号の設備の処理と併せて行うべき事業の転換その他の措置に関する事項」と書いてございまして、私ども、設備処理に当たりまして、それを契機として、ただいま御指摘のような業界ぐるみ将来のあり方等をいろいろ議論しなければならぬ問題が出る業種、業界があるのではないかと考えております。
 まず、事業の転換のほかに、その他の措置に関する事項として予想されますのは、いま御指摘ございましたが、たとえば生産の委託をしておる、あるいはそれを引き受けるというような関係、あるいは品種の専門化を進めていこうじゃないか、あるいは事業の共同化を進めようとか、さらに進んでは合併の問題等がございますが、そういう業種の抱えておる将来の基本的な方向、問題点についてのいろいろな議論が行われる、そういう場合にそれを必要な事項としてこの基本計画の内容にしたらどうかというのが三号の趣旨でございます。もっとも、そうは申しましても、これは個々の事業者、どことどこがどうなるべきだというようなことではなしに、その業界の将来の方向としての基本的な考え方あるいは基本的な方向というものを示すことになるのではないか、私どもそういうふうにこの規定を考えております。
○渋沢委員 その中で、関連のたとえば下請中小企業を再編淘汰するということではなしに、これをどう近代化し、生かしていくかという政府の持っている中小企業政策、少なくとも表で言ってきたそういう政策との重ね合わせの中でこれをどう再生させていくか、こういうことでの位置づけ、あるいは雇用の安定、つまり労働者の安定というものの位置づけ、そういうものの中でこの安定計画の絵が描かれるということではなしに、そこの部分は全く欠落して触れませんで、そして販売、要するに営業譲渡や合併などを通して再編成をしていくということは、つまり別な言葉で言うと、これはどうしても力の弱いものが淘汰される、歴史的にそういうものなんでして、そういう方向づけに読めるわけですね。
 そうでないというならば、これは雇用の問題、雇用の安定、関連中小企業の位置づけというものを総合的に第三の項で絵にかくというならわかるのですけれども、一と二の設備の処理の部分についてはよくわかるのだが、三の部分に来たら全くよくわからぬで、よく考えてみたら、言ってみれば再編成だ、弱いものは淘汰していく、こういう描きが出てくるんじゃないかと想定されるわけです。いまの御答弁を聞けばなおさらのこと、雇用と下請関連の位置づけというものを明確にすべきじゃないでしょうか。それを伺っておきます。
○濃野政府委員 この三号のただいま私御答弁申し上げましたような問題になる業種、それがどういう業種か、これは今後対象業種が特定化しまして、個々の業種別に安定基本計画が審議会の場で審議をされるときの問題になると思います。
 それで、業種によりましては、一般的な中小企業の経営の安定とかあるいは雇用の安定という一般問題を除きまして、特にその業種の抱えておる下請関係あるいはその業界の仕組みからいいまして、そういう問題が浮き彫りにされる業種もございましょう。それから、そういう問題をどう議論するか、これはその業種業種の審議会の議論の対象の問題として非常に大きな問題になるのだろうと思います。その場合には、一般論として申し上げておりますように、個々の業種ごとの審議会に、特にそういう下請関係、中小企業関係、業種構成の観点からしてそういうことが非常に大きな問題であれば、特にそういう方々の御意見を審議会の議論の場で十分くみ上げるというようなことによって、ただいまの御心配の点のないように、それからまた、この「その他の措置に関する事項」等も、先ほど申し上げましたように、個々具体的な問題というよりは、私は、その業界のこれからの進むべき基本的な考え方なり方向の議論がこの内容をなすものと考えております。この二つから、ただいま御指摘のような問題は、個々の業種の審議の場で十分円満に片づけ得る問題ではないか、こういうふうに考えております。
○渋沢委員 心配も不満もいっぱい残したままですけれども、時間が参りましたので、終わります。
○野呂委員長 午後四時二十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後三時三十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後四時四十二分開議
○山崎(拓)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本忠助君。
○松本(忠)委員 ただいま審議をいたしておりますところの特定不況産業安定臨時措置法案、これが近々成立をするだろうと思っております。一応山が見えてきたようでございます。しかし、この法案が成立したといたしましても、景気の回復が実現しなければその有効性が発揮できない、このように私は思うわけでございます。
 そこで、法案の審議に入る前に、二、三お伺いしたい点がございます。去る二十五日に政府が決定をいたしました当面の経済政策に関連いたしまして、二、三お伺いをいたしたいと思うわけでございます。
 三月二十四日の質問の際も、私、円高問題に触れたわけでございますけれども、そのときも、二百二十円台で来週は定着するのではなかろうかというようなことを申し上げたわけでございます。ずばりそうなってしまいまして、きのうは円レートが実に二百二十五円台まで上昇しましたことは御承知のとおりでございますが、きょうも朝から二百二十五円、これで前場も引けたようでございますが、午後は幾らぐらいになっておりますか、御存じでございますか。
○河本国務大臣 二百二十五円二銭で終わったようであります。
○松本(忠)委員 いずれにしましても、二百二十円台に定着ということは大変なことだと思うわけでございますが、先般決定をいたしました当面の経済政策、これで円レートが安定できると政府は見ていらっしゃるのかどうか、この点について、まず通産大臣にお尋ねを申し上げるわけでございます。
○河本国務大臣 いま政府のとろうとしております政策を大きく分けますと、一つは内需の拡大策でございます。予算が来月早々には成立をいたしますので、それと並行いたしまして幾つかの内需拡大策を促進していこうということを去る二十五日に決定をいたしました。それから、第二の対策は、五十三年度は輸出につきましては数量は横並び、こういうことで行政指導をしたい、このようにいま考えております。それから、輸入の緊急拡大につきましては、去る三月十一日に四項目の対策を決定いたしましたけれども、その後の貿易の動向等いろいろ配慮をいたしまして、さらにこれを大きく拡大する必要があるのではないかということで、近くそのための関係者の会議を開くことにいたしております。
○松本(忠)委員 公共事業の予備費の弾力というような問題については御討議はなかったわけでございますか、新聞には出ておりますけれども……。
○河本国務大臣 公共事業予備費が五十二年度予算で計上されておりますが、二十五日の七項目の中には、公共事業予備費を使うということは正式には決定しておりませんけれども、多分、官房長官が七項目の説明をいたします際に、政府は弾力的、機動的に景気対策に対応していくつもりであるので、財政投融資の弾力条項であるとか、あるいは予算に計上してある公共事業の予備費であるとか、そういうものは臨機応変に活用していくということを説明したと私ども理解しております。
○松本(忠)委員 いろいろいま大臣がお述べいただきました内需の拡大の問題であるとか、五十三年度の輸出ベース、これも横ばい、あるいは緊急輸入の問題等々、どれをとりましても大事な問題でございます。しかし、特に目新しいという問題ではございません。こうした対策だけでは、私は円レートの上昇は避けられないというふうに思うわけでございますけれども、私個人といたしましては、輸出の直接的な規制は回避した方がいい、こういうふうに思っております。内需の喚起にはかなりの時間がかかるのではなかろうかと思いますし、輸入の拡大についても限界があると思います。そうなりますと、残された手段というのは輸出の規制しかないわけでございますが、もしやろうとするなら、早く決断を下すべきである、私はこのように思うわけでございます。大臣はこの点に対してどのようにお考えでございましょうか。
○河本国務大臣 法律を発動して輸出規制をすべし、また輸出の数量を減らすように指導せよ、こういう意見等も一部にあったようでありますけれども、しかしながら、いま諸外国から日本に対して具体的な輸出規制要求は全然出ておりません。しかもまた、大部分の主要商品につきましては、それぞれの国との話し合いによりまして、大体軌道に乗っております。こういう矢先に、数量を減らすような法的規制を加えるということは、もう非常に大きな影響を内外に起こすことになりますので、こういうことは絶対避けなければならぬということで、とりあえず数量横並びということで行政指導を徹底させることにしたわけでございます。
○松本(忠)委員 聞くところによりますと、政府の部内にも、輸出を規制するかあるいはまた円高を放置するか、二者択一どちらかだ、こういうふうな御意見もあるようでございますけれども、通産大臣として、二百二十円が台割れになったというような事態が起きましても、このままの状態で、先般の二十五日の御決定の線でいくというお考えでございましょうか、重ねてこの点をお伺いいたします。
○河本国務大臣 円の今後の動きにつきましては、にわかに予断を許しませんけれども、その背景には、一つはわが国の大幅な黒字ということがありますし、もう一つはアメリカの経済の動向、アメリカの大幅な赤字、この二つが一番大きな背景になっておるわけでございます。そこで、先ほども申し上げましたように、わが国としては、貿易のある程度のバランスを回復するために、三項目を中心とするいろいろな工夫を続けておるわけでございまして、その中でも最大の対策である輸入の緊急拡大ということは大きな柱でございまして、これを近く決定をすれば、相当な効果があるのではないかと私どもは考えます。
 ただしかし、やはり何と申しましてもアメリカとの話し合いは必要でございまして、その点につきましては、来月の十日、牛場経済担当大臣がジュネーブでストラウス・アメリカ通商特別代表と会談をすることになっておりますので、その際、日本側としての考え方を伝え、アメリカに対してもドル防衛についてもう少し積極的に行動するように要請をする手はずになっております。また、来月の十二日にはシュルツ大統領経済諮問委員長が参りますので、宮沢企画庁長官がやはり同じような要請をすることになっておりまして、順を追うてアメリカ側とも十分意見交換をする手はずになっております。だから、いろいろな工夫をし、いろいろな努力を続けておるわけでございまして、その経過をもう少し見守りたいと考えておるところでございます。
○松本(忠)委員 二十五日に御決定になりましたいわゆる七項目というもので、すぐ円高は鎮静できるというふうにも考えられないわけでございまして、やはりある程度の時間も見なければならないと思うわけでございますが、私ども、基本的には内需の拡大ということが一番必要ではないか、こういうふうに考えておりましたし、五十三年度の予算の審議の中におきましてもこのことは言い続けてまいったわけでございますが、二十五日の当面の対策の中で、財政上の追加措置、これが含まれておらぬようでございます。
 通産大臣は、かねてから、必要な場合には補正予算によるところの財政の追加をとるべきであるというような御主張があったように承っております。また、昨日、総理と民社党の佐々木委員長との間の会見でも、臨時国会の召集あるいは補正予算の再編成、こういったことが話題になったようでございますが、いずれにしましてもまだ本予算が成立をいたしておりません。しかし、もうこれは旬日のうちに成立することも間違いございませんし、なかなか景気の浮揚ということができない場合、そしてまた円高という問題に対応するために補正予算の編成、これをすべきであるというふうにも思っておるわけでございますが、財政の追加について大臣の御見解を承っておきたいわけでございます。
○河本国務大臣 今回、五十三年度の予算の審議を通じまして、総理大臣は、しばしば、内外の情勢変化に即応して機敏かつ大胆に対応する、そして七%成長と経常収支六十億ドルという目標は必ず万難を排して達成する、こういうことを約束をしておられるわけでございまして、その意味するところは、必要とあらば補正予算も組みましょう、あるいはまた金融政策もさらに強力に進めましょう、あるいは産業政策、貿易政策もいろいろ考えましょう、すべての政策を臨機応変に集中して経済目標を達成していこうということをお述べになっておるわけでありますから、当然補正予算を組むということは決して否定するものではありませんけれども、ただ、現時点はまだ予算は成立直前でございますし、しかも財政投融資につきましては弾力条項という政府の権限もございますし、公共事業予備費等もございますから、いまの段階では、直ちに補正予算を組まなければならぬ、こういうことではないと思います。ただしかし、臨機応変、大胆に対応する、こういうことが内閣の基本方針でございますから、必要とあらばいかなる手段もとっていく、こういう意味でございます。
○松本(忠)委員 いま大臣からもお話がございましたように、牛場経済担当大臣もヨーロッパへ出かけられるようでございますし、また、経済企画庁長官も来訪するシュルツ委員長と会われて日本の国の状態というものをいろいろと説明になり、そしてまた政府の所信を述べられることと思うわけでございますが、私は、政府がアメリカに対して、基軸通貨国としての責任にふさわしい対策をとる、この一点をぜひとも要望していただきたいし、これは強くやっていただきたいと思うわけでございます。
 この点について総理を含めていろいろの閣僚の方々が努力されることはわかるわけでございますが、通産大臣としては、国会が忙しい中でございますから席をあけることは不可能かとは思いますけれども、相当の熱意を持ってこの問題に取り組むべきであると私は思いますが、大臣の御見解はいかがでございますか。
○河本国務大臣 相手国といろいろ意見を交換し、話し合いをする場合にも、やはり日本としてなすべきことも幾つかございますし、それから、先ほど申し上げましたストラウス、シュルツ両氏に宮澤大臣、牛場大臣がそれぞれ面談して、日本としての考え方を伝え、アメリカにいろいろ要請をする、そういうスケジュールも決まっておりますので、私どもはそれに期待をしておるところでございます。
○松本(忠)委員 わかりました。せっかくの御努力をひとつお願いいたしたいと思います。
 それでは、もう一点だけで一般的な問題を終わりますが、当面の経済政策の中で中小企業対策の推進という問題があるわけでございます。これももう従来からも言われ続けておることでございます。しかし、二百二十円台ということになり、あるいはまたそういうことを予測することはいかがかと思いますけれども、あるいは二百十円台、こういうことになると、中小企業の中でも特に輸出関連の業者というものは全く壊滅的な打撃を受けるということはもうはっきりしていると思うわけでございます。その救済策というものについてはどのようにお考えでございましょうか。この点について何か目新しい対策を打ち出すことの考えはございませんでしょうか。この点、二百十円台になったときに大臣はどのようにお考えになるか。
○河本国務大臣 この一月に法律をつくっていただきましたが、そのときの背景は円レートが二百四十円ということでございました。その後二百三十円になりまして、やはり相当な影響が出てまいりましたので、いま貿易を中心とする産地産業約七十九地区の緊急調査を進めておるところでございます。それからさらにまた円高という事態が起こっておりますので、十地区を選定いたしまして、これまた緊急調査をいたしております。いずれ近く、ここ数日の間に結果がわかりますので、それを見た上で何らかの対応策が必要ではないかと思っております。
 去る二十五日にも、七項目の内需拡大策の中で中小企業政策を一つの柱として取り上げております。数項目にわたる対策を決定したわけでございますが、その中でも、特に最近の円高に対応して中小企業をどう救済していくかということについて一番考えなければならぬ点だと心得ております。
○松本(忠)委員 一般的な問題は以上で終わりまして、法案の方に入りますが、中小企業の方々、いま特に輸出関連の中小企業の方々は、もう本当に毎日毎日円の相場を見てはため息をついているような状態でございますので、これに対しては大臣としても何らかの策を立てていただくことを特にお願い申し上げるわけでございます。
 それでは、特定不況産業安定臨時措置法案の方に入ってまいります。
 御承知のように、いわゆる構造不況業種と言われております業種につきましては、こう言われるのにはいろいろ原因があったと思うわけでございますが、その原因の中でも、大まかに言って、第一番目に過剰設備によってこういう事態が起きた、あるいはまた石油ショック以後の原燃料のコストの上昇によるところの国際競争力の弱体化、三番目には発展途上国の追い上げ、さらにはまた四番目に円高、こういったものが原因として挙げられているわけでございますが、特に本法案によりまして解決を図ろうとしているのは、過剰設備によってもたらされたところの構造不況業種であると考えられるわけでございます。
 構造不況業種となった原因はさまざまありますけれども、そうしたものから見た場合に、この構造不況業種対策というものは個別対策が必要ではなかろうかと私は思うわけでございます。したがいまして、この法案だけでは構造不況業種対策は不十分ではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点の見解はいかがでございましょうか。
○濃野政府委員 構造不況業種対策の中で、ただいま御指摘のございました構造不況業種はたくさんございまして、よって来る原因等もいろいろございますが、共通して考えられる問題として過剰設備の問題というのがございまして、この法案は、御指摘のように、過剰設備を処理する仕組みと申しますか、措置を規定するということがこの法案の主たる内容をなしております。私、ただいま申し上げましたように、この法案の御審議を得まして成立をいたしまして、この法案に従って過剰設備の処理が促進をされれば、いわゆる構造不況業種が抱えておる現在の主要な問題解決の道が得られる、かように考えております。
 ただ、御指摘のように、抱えておる問題あるいは解決の方向というものはいろいろございますから、さらに景気の浮揚を図ることによってその環境をよくするという一般的な問題のほかに、業種の実態に即応した問題、これを長期的なこれからの方向を踏まえていろいろ考えていくということは当然のことながら必要な事態があり得る、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 それで、濃野産業政策局長に伺いますけれども、いままでにも幾つかのいわゆる構造不況業種対策というものがあったと思うのです。しかし、それがいずれも所期の効果を上げることができなかった、こういう点が考えられて、また今日のこの特定不況産業安定臨時措置法というものの提案になっているように思いますが、いままでやってきたそうした対策の中でも効果が本当にあったのかなかったのかという点について、私は余りなかったのではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
○濃野政府委員 いわゆる構造不況業種と言われる業種、当省の所管だけでもかなりの数がございますが、設備処理というような長期的な問題のほかに、当面の景気対策の一環といたしましても、金融対策あるいは生産調整対策、雇用対策等いろいろな面で当面手を打たなければならぬ問題がたくさんございまして、業種別に、昨年以来、私どもそれぞれの業種についていろいろな手を打ってきたところでございます。そのほかに、今度御審議をお願いしておるいわば長期的な構造不況問題というものへの取り組みにつきましても、業種別に私どもこの一年間にいろいろな展開があったと考えております。
 若干業種別に申しますと、一つは平電炉業界でございますが、平電炉業界につきましては、御案内のように、昨年初め以来、一番先にこの問題に手をつけまして、ただいま申し上げた当面の対策としては、中小企業団体法による生産調整あるいはアウトサイダー規制等の不況対策を行いますし、金融面の支援におきましても、昨年の補正予算で、今度の法案の中にございますようないわゆる保証基金を創設する等々の措置を打ちながら、将来の長期的な過剰設備の処理の目安等もつくりまして、現在それに手をつけておるという状況でございます。
 それから、アルミ製錬業等につきましては、これまた長期的に見ますと、現有能力に対しましてかなりの過剰設備を抱えておるというところから、これも昨年以来、私どもの担当原局において問題の処理に取り組みまして、たとえばアルミ地金の輸入につきまして、五十三年度、来年度から関税割り当て制度を導入をいたしまして、これをアルミ製錬業の将来の立ち直りの一つの手段にする、あるいはことしの三月、今月でございますが、アルミニウム産業構造改善促進協会というものをつくりまして、これを通じて凍結設備に対する資金援助をする仕組みをつくるとか、それから、これは若干一般的でございますが、政府系の金融機関の既応金利の軽減措置を講ずるとか、あるいは金属鉱業事業団を通じまして輸入安定化備蓄について、五十三年度にさらにまた積み増しをやろう等々いろいろな手を打ってきておるわけでございます。
 さらに、繊維、特に合繊等につきましては、業界がなかなかまとまらないというところから、昨年十月以来、異例ではございますが、減産指導に取り組んで、ことしの四月からはこれを不況カルテルに移行しようと考えておりますが、そういうことで合繊業界への取り組みをする。また、合繊業界につきましては、現在、この法律の成立等を控えながら、設備処理問題に非常に真剣に取り組んで、業界の中でのいろいろな意味での提携問題等が具体化の道を開くということで、大変むずかしい問題ではございますが、徐々ながらそれぞれの業種ごとの問題点にいろいろ取り組んできた、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 局長が、平電炉であるとかアルミであるとか繊維、合繊であるとか、いろいろの例を引かれましておっしゃいましたけれども、率直な話、これは点数つけてどうですか。どれぐらい自信があってつけられますか。この対策が効果を発揮したか発揮しなかったかという点に御自分で御点数をつけてみて、たとえばどうでしょうか、平電炉の場合何点ぐらいつけられますか。あるいはまた、アルミ製錬の場合には何点ぐらい、繊維の場合はどれぐらい、こういうふうになりますと、私は、及第点は一つもつけられないのではないかと思うわけですけれども、この点、御自身でひとつ採点をしてみてください。
    〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
○濃野政府委員 自分で点をつけるのもいかがかと思いますが、いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたように、構造不況問題は、短期的な当面の問題として緊急に処理をしなければならないいわば生産調整等を中心とする対策、それと長期の対策と二つに分けまして、昨年いろいろ実施してきましたのは、その中の当面の対策でございます。
 基本的に構造不況、過剰設備という問題を抱えておりますから、当面直ちに立ち直りを期待するということはなかなかむずかしいかもしれませんが、この一年の経緯の中で、先の長いこれからの立ち直りの中での一つの契機は、それぞれの業界がつかみ得る道を開いたのではないかと思っておりますし、長期の計画につきましても、ただいま申し上げました業界等につきましては、それぞれの審議会の場等で非常に真剣な討議が行われまして、それによってこれからその業界のいわば協力によって自主的な解決への方向が出だしたということは、やはり過剰設備の処理というような問題は大変むずかしい問題だけに、そういう空気が各業界に出てきたということは、私どもとしてこれからの行政を進めていく上で一つの足場ができた、そういうふうには評価ができるのではないか、かように考えております。
○松本(忠)委員 余り横道ばかりそれていてもいかぬのでありますけれども、平電炉の問題なんか、通商産業省の指導に逆にいった方はうまくいっていて、言われたとおりにやったのが全くどうにもならなくなってしまったというような話も聞くわけでございますし、どうもこの問題については御自分で採点なさることはなかなかむずかしいとおっしゃって逃げたわけでございますけれども、本当にいろいろの問題を含んでおるわけでございますし、長期的展望に立ってこの問題を解決するために今回の提案になったというふうに思われるわけでございますが、しかし、この法案の中にも非常に懸念すべき点が幾つも幾つもあるように思います。
 特に私は、この法案の中で、労働者の雇用の問題、またそうした構造不況産業に関連しているところの下請の中小企業の経営の安定の問題、こういう点について非常に心配があるわけでございます。この点についてこの法案の中に配慮が欠けているのではなかろうか、こういう点が考えられるわけでございます。やはり何点かの修正をして実りのあるものにして送り出すべきではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけでございます。
 政府として、この法案を自分たちは最善のものと思って出したわけでございますから、修正をしなさいと言っても、おいそれと修正に応じるとは思いませんけれども、何点かの修正をしなければこの法案はまずいのではなかろうかというような率直な気分がしています。特に第一条の目的でございます。この中におきましても、特定不況産業の不況の克服、それから経営の安定、そうしたことを図って国民経済の健全な発展を目指そうとしていることに私は異論があるわけではございません。しかしながら、特定不況産業が設備の処理の措置を講ずるならば、当然そこには関係している労働者、下請の中小企業者、こういったものにも影響が生じないわけはないと私は思うわけでございます。
 したがいまして、この本案の目的を規定する場合にも、もう一つ欠けているもの、これは何かと言えば、雇用と関連中小企業の経営の安定ということでございますが、これを目的に加えるべきではなかろうか、こういうふうに私は思うわけでございます。もちろんこの問題に対して、政府としては、先ほども申し上げましたように、責任を持って絶対なりと信じて提案したわけでございますから、おいそれとは応じないと私は思いますけれども、やはりこの問題は重大な問題でございますし、雇用と関連中小企業の経営の安定という問題を入れるべきではなかろうか、こう思います。この点については大臣の率直なお考えをお伺いいたしたいと思います。
○河本国務大臣 雇用問題と関連の下請中小企業に対しては、もちろん十分な配慮を払わなければなりません。また、配慮を払うことになっております。ただしかし、これは政府委員からも繰り返し答弁をいたしておりますように、過剰設備を廃棄するための法律でございますので、過剰設備の廃棄ということを中心にいろいろの規定をつくっておるわけでございます。もちろん、いま御指摘の二つの点につきましては、並行いたしまして十分配慮をいたしますけれども、法律に書くのはいかがかということで書かないことにいたしております。
○松本(忠)委員 大臣のお答えを一応私も胸にとどめておきます。
 濃野局長にお伺いいたしますが、第二条の特定不況産業の政令指定に関して伺いたいと思うわけでございますが、第一項の中でも第一号から第五号まで掲げてありますところの業種に属する製造業、これが政令のいわゆる指定候補、こういうふうになっているわけでございます。しかしながら、これらの業種の中にも、個々の企業を見ました場合には、相当規模的に大きなものもあるし、また、中小零細の企業もあるのではなかろうかと思うわけでございます。格差があることは事実だろうと思うわけでございます。そうした場合に、この政令指定を行う場合の業種内の規模の大小、これを問わずに同一次元で考えるのかどうか、この点を伺いたいわけでございます。
 もう一つは、同一業種で仮に規模の大小は問わずに同一次元で政令指定をした場合、そして安定基本計画を作成するとした場合には、設備処理の実施が中小企業の方へしわ寄せになってきはしないか、この可能性があるのではなかろうか、こういう心配があるわけでございます。中小企業である場合には、どうしても設備の処理が直ちに廃棄につながるケースが多いのではなかろうか、その場合にはどういうふうな対処をされるのか、この点を心配でございますので、伺っておきたいのでございます。
○濃野政府委員 まず、この法律の第二条の特定不況産業の指定、これは二段階に分かれておりますが、いま先生は候補業種とおっしゃいました。特に五号で政令で具体的に定めることになると思いますが、その場合、企業の規模の大小は、法律的には私ども問うつもりはございませんで、それが一つ問題になりますのは、この五号の中で、特にこの第一項の五号自身では直接の問題はございませんが、第三項でいわば第二段目の指定のときに申し出を前提といたしておりますが、申し出のときには数と事業活動、これの二つの要件で、いずれも「大部分」という表現と申しますか、条件を決めておりまして、ここに規模の問題等が絡んでまいりますが、結論といたしまして、私どもは企業の規模の大小で区別はしない、こういうたてまえにいたしております。
 第二に、そうすると、具体的にこの法律の対象になって安定基本計画をつくり、過剰設備の処理をするときに中小にしわ寄せがあるのではないか、こういうことでございますが、安定基本計画の作成に当たりましては、やはり業界全体として見てバランスのとれた構造改善が図られるように配慮をしていくというのがそもそもの基本でございまして、やはりその業種業種の構成がそういう企業規模でどうなっているかというような点、これが安定基本計画を定めます場合にも大きな配慮事項となるべきでございまして、御懸念のような点は、具体的な安定基本計画作成のときには生じないように努力をしていかなければならないと考えております。
 なお、法律を離れまして、御案内のように、いわゆる中小企業が大部分を占める業界、中小企業性の非常に高い業界、たとえば機屋さんの業界でございますとか、その他一部の繊維の二次製品業界等は、むしろ現在中小企業独自の分野で、過剰設備の処理につきましてもすでに幾つかのスキームと申しますか、仕組みができ上がっておりまして、したがって、この法律は、どちらかと申しますと、大企業かあるいは中堅企業のウエートの高い業種、これが実際にこの法律を使って設備の処理を進める主要な業種になるのではないか、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 ひとつ伺っておきますけれども、要するに既存の法律、たとえば中小企業事業転換法、これと連動するというような場合も考えられると思うわけでございますが、その際には特別の配慮を払うのかどうか、この点はどうなんでしょうか。
○濃野政府委員 ただいま申し上げましたように、いわゆる構造不況業種と申しますか、過剰設備の処理を必要とする業種、業態はたくさんございますが、中小企業の比率の高い業界につきましては、すでに中小企業プロパーの領域におきまして幾つかの過剰設備処理に関する、あるいはその他の施策が用意されておりまして、むしろそちらの仕組みを使って過剰設備の処理が行われることが多いと思います。しかし、この法律も、先ほど申し上げましたように、規模の大小とか、中小企業であるがゆえにこの法律の対象にならぬということではございませんで、法律的にはすべてが対象になるわけでございます。したがって、業種によりましては、同じ業種で既存の中小企業行政に絡んだいろいろな仕組みを使い、かつこの法律による過剰設備処理の仕組みも使うという、複合的に両方の仕組みを使う場合もあり得るのではないか、かように考えております。
○松本(忠)委員 わかりました。
 そこで、先ほど局長からもいろいろと平電炉あるいは合繊、アルミ、そういったものについてお話がありました。それぞれの業界でいろいろ独自にやっていたわけでございますけれども、たとえば平電炉の場合、三百三十万トンという数字をよく聞くわけでございますが、この過剰設備の処理、これをやることになっているわけでございますが、それがそのまま安定基本計画となるわけでございましょうか、それとも再度検討するわけでございましょうか。
 言うならば、二条の三項で、いわゆる製造業を営む者の数の大部分を占め、その申し出をした者の事業活動が当該製造業を営む者の事業活動の大部分、要するにシェアの大部分を占める場合、両方ともそろって初めてなるわけですが、平電炉の中にはアウトサイダー的な動きをしているものがありますが、あの三百三十万トンといういわゆる過剰設備の処理の問題については、安定基本計画というものは新規に立てるのか、あるいはそのまま活用されるのか、この点はいかがなんでしょうか。
○濃野政府委員 いわゆる構造不況業種の過剰設備の処理の問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、すでに昨年以来、私どもの産業構造審議会のそれぞれの部会、小委員会の場、あるいは関係局長の私的な諮問委員会としての研究会の場、あるいは業界の中での研究の場等で過剰設備の処理量等々についての検討が進められてきたのは、御案内のとおりでございまして、平電炉等は最も早くこの議論に手がつけられまして、三百三十万トンという一つの目標の数字について、個々の会社あるいはグループごとに設備処理の詰めが行われた業界でございます。ただ、この法律ができますと、現在までやっておったものが法律的にそのまま直ちにこの法律に言う安定基本計画になるかと言えば、それはならない。やはりこの法律による手続が要ると思います。
 第一は、御指摘のとおり、現在までは通産省の付属機関でございます審議会の場等で議論がされまして、それによりまして、行政指導を通じて通産省と業界との間でいろいろ話が進んでまいりましたが、この法律に乗るということになりますと、御指摘のように、対象候補業種になりましても、まずその業界として申し出がなければなりません。この申し出の要件に合うかどうかという問題はございましょう。この申し出の要件に従って出てきて、初めてこの法律に乗るというかっこうになると思います。その後は、この法律第三条に言う安定基本計画が定められなければならないと思います。
 ただ、現実問題といたしまして、業界としての申し出ができた以上、従来のいろいろ議論したことは非常に大きな参考になると思いますので、安定基本計画の作成までの日時なり議論の内容なりがそれだけ煮詰まっている問題ではないか、こういうふうに私は考えております。
○松本(忠)委員 そうしますと、いろいろの業態でいままでやってまいりましたことは、いずれにしても御破算にして、新しく申請をし直して、申し出て、そしてこの条件に合って初めて認められて安定基本計画を練る、その基本計画ができた段階からこれが適用になる、こういうふうに理解するわけですね。
 それでは、次に移りまして、公取委員長に伺いたいと思います。
 三条の「安定基本計画」とそれから四条の「事業者の努力」、この問題に関連いたしまして若干伺いたいと思うわけでございます。
 四条の事業者の努力規定につきましては、個々の事業者が、安定基本計画に従って、自己の判断によって自主的に設備処理を行うのが基本であるという認識に基づいて設けられたものと伺っているわけでございますが、この点、重ねて公取委員長の御見解を伺いたいと思います。
○橋口政府委員 物の考え方のたてまえといたしまして、おっしゃるような考え方に基づいて設けられた規定でございます。
○松本(忠)委員 通産大臣、いまの考えについては同意でございましょうか。同じ認識でございますか。
○濃野政府委員 私どもも、四条の趣旨は、業界の自主的な解決への努力を前提とするのだというのがたてまえでございますし、安定基本計画が定まれば、それに従って業界の自主的な判断によって設備処理に当たる、こういうことでございまして、公取委員長の御発言と全く同様でございます。
○松本(忠)委員 それでは、安定基本計画の方に移りますが、この安定基本計画の定め方、これは内容じゃございません、内容はここに書いてございますが、定め方について具体的に説明をしていただきたいと思うわけでございます。
○濃野政府委員 安定基本計画は、まず、この三条二項で内容が何かということが挙がっておりますし、手続としては、第三条の一項で関係審議会の意見を聞いて定める、この二つが柱になると思います。
 まず、安定基本計画の内容は、そこに挙がっておりますように、一号、二号、三号で、一つは設備処理の内容、どういう種類の設備を対象として、どういう設備を幾ら、どういう処理の方法をとるかという設備の処理に関する事項でございます。なお、これを決めますためには、その業種の長期的な需給見通しの作成がその背景にある一番重要なことではないか、これが第一号の設備処理の量なりその方法等を定めるに関連いたしまして、一番大きな問題ではないかと思っております。
 第二番目は、設備の処理をいたします以上、設備の増設、新設等は制限をしなければしり抜けになるわけでございまして、そういう意味で、設備の処理とあわせまして、新増設の制限に関する事項を定めるというのが二号でございます。
 三号は、単純に設備処理がプロラタで一律にできるような業界もございましょうが、業種、業態によりましては、単純なる設備の処理、プロラタな処理では問題が片づかない、あるいは事業の転換の方向、考え方でございますとか、生産の委託、受託の関係、販売に関する提携、さらに進んでは合併問題というようなものに対する基本的な方向、それに対する考え方等を十分議論して、その方向を出すことが必要な業種もございましょう。
 そういう意味で、安定基本計画は、ただいま申し上げましたような内容につきまして審議会の意見を聞いて決める。したがって、この審議会も、業種別の部会なり小委員会を設けまして、関連の業界、学識経験者、労働関係者あるいは中小企業の関係者、地域の代表の御意見等を十分にくみ取りながら十分な御審議を願う、こういうことで決まるのではないかと思います。
○松本(忠)委員 要するに、三条二項で、安定基本計画に定める事項というのは一、二、三、こう書いてありまして、それでわかるわけですが、その前段の第三条の中で、「特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図るための基本となるべき計画を定める」、その定め方は、具体的には審議会の意見を聞いてやるというわけですね。
 そこで、その審議会の中に、関連する企業あるいは関係の労働者、こういうものが十分入ると思いますけれども、この点は、いま言う業態別につくるということになると、直接的に関連しているものがそこへ入ってこなければ、この安定基本計画はつくれないと思います。その点、入ることは間違いございませんね。
○濃野政府委員 審議会、ただいま申し上げましたように、業種別に部会なり小委員会という場で検討するというのは、まさにその業種についての直接の当該業界の人のみならず、関連いたします業界の方たちの御意見、それからただいま御指摘のような労働団体、労働組合の御意見、あるいは非常に地域的な産業もございますから、そういう場合にはその地域としての御意見等も参酌する場を設けるということがこの審議会を使う意味でございますので、私どもそういう方向で運用をしていきたい、かように考えております。
○松本(忠)委員 それで、三条二項三号の「第一号の設備の処理と併せて行うべき事業の転換その他の措置」という「その他」というのは、何を意味しているわけでしょうか。
○濃野政府委員 この点は、先ほどちょっと触れましたように、業種によりましては、単なる設備の処理量を一定の率で処理ができないという業界、業種等もございますので、その場合には、その業種としての、たとえば生産を委託するあるいはそれを受けるというような生産面での提携関係でございますとか、販売面での提携関係、たとえば共販会社の設立というようなことが考え方の一つの中心になる場合もございましょう。それから、あるいは品種についての専門化を図っていくということが、その業種としてむしろ設備処理を進めるのとあわせまして、実質的に非常に重要な問題になる業種がある。あるいはさらに進んでは、合併問題というようなことにつきましての基本的な考え方とか方向というものが「その他の措置に関する事項」に該当するのではないか、かように考えております。
○松本(忠)委員 「事業の転換その他の措置」ということが御説明でわかるわけですけれども、もう少し何とか具体的に、そこのところは、雇用の安定とか関連中小企業の要するに経営の安定というふうな表現はできないものですか。その点はいかがでしょう。
○濃野政府委員 この安定基本計画自身は、たびたび御答弁申し上げておりますように、一号の設備の処理をどのくらい、どういう設備についてどういうテンポでやっていくかということが、この法律に定められております安定基本計画のねらいでございまして、御指摘の雇用の安定あるいは関連中小企業者の経営の安定問題というのは、当然のことながら、この法律の一番基本的な第一条のいわば「国民経済の健全な発展に資する」というところで最終目的で入っているわけでございますが、この基本計画の内容の一つとして、具体的にそれでは雇用の安定を図るためにどういう措置をするんだというようなことは、設備処理を目的とするこの法律の安定基本計画の内容にするにはいささか筋違いではないかと、私どもそう考えておるわけでございます。
 もっとも、先ほど御答弁申し上げましたように、たとえばある業界におきまして、その業種の構成から見まして、関連事業者と非常に特殊な関係がある、あるいは下請関係等で特別の問題がある、したがって、設備処理を進める上につきましてはその業種としての非常に特別な問題として、それがこの三号に当たるようなことが、非常に抽象的に申し上げておりますが、そういう場合があり得るならば、あるいはそういうものがこの三号の内容になるかもしれませんが、一般的な問題としては、私先ほど申し上げましたような、むしろ事業転換とかその他の提携関係、そういうものがこの三号の中身になるのではないか、こういうふうに考えましたのが立法の趣旨でございます。
○松本(忠)委員 大分わかってきました。
 そこで、要するにこの安定基本計画なるものを見たときに、個々の事業者がどの程度の設備の処理をすればいいか、これはわかるわけですか。
○濃野政府委員 設備の処理について考えますと、この安定基本計画の一号で、設備の種類、それからその生産能力の合計、つまり必要な設備の量になると思いますが、それから先ほど申し上げたように、そのバックとして、長期的ないわば需給の見通しから幾らぐらいの過剰設備があるかというようなことが、当然この一号絡みで出てまいります。したがって、非常にプロラタで一律に設備の処理を行うことがその業種のいわば実態からして適当と申しますか、可能な業種につきましては、全体の姿が描ければ、個々の事業者は、自分のその業種における一つのシェアとか地位とかいうものから、自分はこの程度のものを進めればこの過剰設備の全体の処理の中で十分自分としての職務と申しますか、自分のシェアが果たせるということはわかり得ると思います。
 ただ、先ほどの三号絡みでございますが、単なるプロラタの一律の一定の比率では設備の処理がなかなか進められないという業種等につきましては、直ちに全体の姿が描けただけでそういう問題がわからぬという場合もございましょう。しかし、その場合に、まさに三号に言いますように、これからの業種としてのあり方の方向というものが定められれば、その後の「事業者の努力」のところの、単独であるいはそこで共同していままでの仕組みを使ってやっていくというようなことで、業界の中でのいろいろな意見の調整等も可能だと思いますし、そういうことで、個々の業種によりまして、全体の数量がわかったから直ちに自分の処理量がわかる業種と、それから、それだけでは自分の処理量が計算で算術的には出てこない、しかし、その後業種としてのあり方の方向等が示されれば、その業界の中でのお互いの意見調整というようなことから将来のあり方を出していくという二つのタイプの業種、そういうものがあり得るんではないか、そういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 わかります。それは業界全体としてのいわゆるどれぐらいやるのか、また、その中に自分のところが占めているシェア、そういうものによってある程度はわかるわけだと思うわけでございますが、そうした場合に、個々の事業者が安定基本計画に従って設備の処理を行う場合に、これは債務保証の対象にはなるわけですね。
○濃野政府委員 結論的に申して、債務保証の対象になると考えております。結局、この信用基金によります債務保証は、計画的な設備の処理、つまり安定基本計画のラインに沿って設備の処理が行われるという見通しの得られるものについては債務保証するわけでございますから、自主的な努力による設備処理も、そういう観点からの判断が可能であれば債務保証の当然対象になる、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 もう一点伺いますが、独禁法に基づいて不況カルテルによって設備の処理をした場合に、この計画に従っていれば、債務保証の対象になりますか。
○濃野政府委員 そのとおりでございます。
○松本(忠)委員 それでは、もう一点伺います。
 この安定基本計画というものがガイドライン的な性格のもので、内容も非常に厳密なものにはなり得ないと私は思います。そうなりますと、この安定基本計画というものは、相当幅を持たした内容になるのではないかと思いますけれども、この点はどうでしょうか。
○濃野政府委員 御指摘のように、安定基本計画は、特に長期の需給の見通しを立てまして、過剰設備の処理量、別の言葉で言えば、ある将来の一定の時期における必要設備量というようなものをはじき出すわけでございますから、流動性のないものでは、現実の問題としては、それを前提として設備処理を進めるということにはいろいろな問題がございましょう。そういう点では、流動的と申しますか、幅のあり得るものではないかと思います。
 ただ、現に、先ほども申し上げましたように、昨年、平電炉でございますとかアルミでございますとか、その他幾つかの業種におきまして検討の場はいろいろございますが、相当いろいろな議論が進んできております。しかし、流動的、幅のあるものとは申しましても、やはり設備処理の目標になる数字でございますから、十分議論の上、かなり具体性のあるものでなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 それでは、ちょっと飛びますけれども、三十九条の二項ですが、「前項第一号の債務の保証は、特定不況産業に属する事業者が安定基本計画に従つて行う設備の処理」、この「従つて」という意味でございますが、「従つて」ということは、要するに、この設備の処理のために必要な資金を借り入れする場合など、一〇〇%この計画に従っていなければ対象にならないのかどうか。この「従つて」という意味、これは全くすべてがその基本計画に準拠していなければいけないのかどうか、これらの点はどうなんでしょうか。
○濃野政府委員 三十九条の二項に「安定基本計画に従つて」と書いてございますが、これは先ほどいろいろ御質問ございましてお答えいたしましたように、安定基本計画の内容が、設備の処理に関する事項、それから新増設、それからその他の三号の事項とございますが、安定基本計画自身は、業種、業態によりまして、先ほど御説明しましたようにいろいろな内容があり得ると思います。したがって、それを受けまして、ここの三十九条の二項の「安定基本計画に従つて」というのは、安定基本計画に定めがあればそれには従ってという意味の「従つて」だ、こういう解釈でいるわけでございます。
○松本(忠)委員 そうすると、要するにいまの質問は、その安定基本計画に一〇〇%合致しなくてはならないのかどうなのか、一〇〇%なくてもいいのではなかろうかと私は思うわけです。安定基本計画というものが非常に流動的であるとするならば、それを一〇〇%まるまる満たさなくても債務保証の対象とすべきではなかろうか、こう思うわけです。そうしないと、この四条の規定というものは絵にかいたもちになっちゃうのではなかろうかという気がしますので、いま重ねて伺うわけです。
○濃野政府委員 この信用基金による債務保証は、先ほども申し上げましたように、当該業種の過剰設備の処理が円滑に行われまして、その業界としての本来の目的が達成されることが最終のねらいでございます。したがって、先生のただいまの御指摘のように、安定基本計画でたとえば百万トンというのが設備処理の全体の量として決められて、その百万トンがびた一文欠けても、あるいは欠ける見通しの場合には保証しないかというとそうではございません。その場合に、九〇でいいのか、あるいは九五なければいかぬのか、あるいは九〇を若干切ってもいいのかというのは、その業種の設備処理の全体の量がどうであるかとか、具体的ないろいろな業種によって違うとは思いますが、特に一〇〇%を期待いたしますと、これは本来カルテルによって自主的な努力を前提にしておるわけでございますから、一〇〇%完全に達成されるということはむしろ非常にまれな例であるということが言えるのではないかと思います。したがって、結論といたしましては、必ずしも一〇〇%まるまる達成されなければ保証をしないということではない、また、そういうふうに運用をしていかなければならないと考えております。
○松本(忠)委員 確かに一〇〇%達成するなんということは、とてもじゃないけれども、無理な問題だと私も思いますので、いまのお話のように、要するにある程度従っていれば対象になる。そのある程度が九〇であるか、八五であるか、七〇であるか、その辺のところは具体的にはなかなか明示しがたいと思いますし、いろいろの業態がありますからむずかしい問題だと思いますが、この問題については、これからこの法が施行になりまして、そしてある業種については安定基本計画が定められた、こういった場合にやはりこの辺のところが今後具体的な問題になってくるのではなかろうかと思いますので、伺ったわけでございます。
 それから、安定基本計画の作成に当たりまして考慮しなければならないもう一つの点がございますが、要するに設備の処理というものが即労働者の雇用に関係いたしますし、また、ひいてはそれがその地域の経済に著しい悪影響を与え、壊滅的な打撃を与えてしまうおそれすらあると私は思うわけでございます。こうした場合に、主務大臣に対して都道府県あるいは関係市町村、こういうところが意見を申し出ることができるようにしておく必要があるのではないかと思いますが、この点はどうでしょうか。
○濃野政府委員 構造不況業種の中には、非常に地域的な特性を持った業種がございまして、構造不況業種の設備の処理等を中心とした今後のあり方いかんでは、地域経済に大変な影響を与えるという業種があることは御指摘のとおりでございます。したがって、そういう業種についての将来の方向を出すこの安定基本計画の策定あるいは設備処理の内容の検討に当たりまして、必要でございますればその地域の声を反映させる。これは前に大臣の御答弁にもございましたが、もし必要であれば、そういう業種については、特にその地域の声が反映されるような審議会の構成等も十分考えていかなければならない、かように考えております。
○松本(忠)委員 その意見が反映されるような場所というのは、どういうところを指すわけですか。
○濃野政府委員 具体的に申し上げられますのは、一つは、先ほど申し上げた審議会の審議の場等において特に地域代表の御意見を聴取をするとか、さらに進んでは、審議会の委員としてその地域の代表の方の参加を願うかということではないか、かように考えております。
○松本(忠)委員 ですから、そういう特殊な事情を持っている関係市町村長が意見を申し出ることができるようにしておく、その場所は審議会だ。しかし、審議会にそういう方々を委員として迎えられるようにしてもらいたいという要望を出さなければ、やはりだめでしょう。その要望を出さなければ、そちらで一々この場所で、この安定基本計画を立てるについてはこの関係市町村長はどうしても出て意見を言ってもらわなければならぬということが全部わかりますか。わからないとすれば、やはり関係市町村長の方から申し出をしなければならないのではなかろうかと思います。これは地域によりますと、本当に地域の経済というものが壊滅的な打撃を受けると私は思います。そういうことを避けるためにも、やはり出る場所へ出て意見が言えるようにしておいてやらなければいけない。ですから、これはむしろこの法律の上で明文化しておくべきではなかろうか、こういうふうにすら私は思うわけでございます。その点、どうですか。
○濃野政府委員 どの業種が特に地域的に非常に大きな問題を持っているかということにつきましては、私どももあるいは手落ちはあるかもしれませんが、どの地域についてはどういう地域の問題があるというのは、大体わかっているつもりでございますが、御指摘のように、その地域から、ぜひ自分のところの意見を聞いてもらいたいというお申し出等があれば、その審議会の審議の場、あるいは役所自身でもそういう御意見、お申し出を十分受けまして、審議会の運営等についてそういう手配、配慮をしていきたい、かように考えております。
○松本(忠)委員 このことは、明文化することができなければ、配慮するということをぜひ十分認識をしておいていただかなければならぬと思うわけでございます。
 それから、ちょっと先へ飛びますけれども、第三章の特定不況産業信用基金、この性格についてお尋ねをいたしたいわけでございますが、これはどのように位置づけをなさいますか。
○濃野政府委員 構造不況業種対策といたしましてはいろいろな取り組み方があると思いますが、私どもといたしましては、大臣からもたびたび御答弁がございましたが、構造不況対策の設備処理の基本的な考え方は、やはり当該業界の自主的な解決への努力というものを前提に考えるべきであって、すべてまる抱えとい灯方法はとるべきではない、こういうことで昨年以来やってまいりました。
 そういたしますと、いままでいろいろ議論をいたしましたところでは、過剰設備の処理を計画的に進めていく上で一番大きな問題というのは、やはり金融的な面のバックアップということでございまして、大体構造不況業種は、長期にわたる不況のもとで企業体力も大変弱まっておる、特に担保余力がないということから、設備の処理に手をつけようと思いましても、その担保を解除するための資金等を新たに調達することが非常にむずかしいということでございまして、そのためには保証機能を持つ基金をつくりまして、そしてこれを補完してやるということが、先ほど申し上げた、つまり業界の自主性を尊重しながら、それを前に立てながらやっていく第一に取り組むべき問題ではないか、こう考えたわけでございまして、昨年補正予算で平電炉業界あるいは繊維業界の一部に国が出資をして保証基金をつくったのも、まさにそういう考え方からでございまして、今度の法案の御指摘のこの基金のいわば性格もそういうことで、そういう経緯と私どものそういう考え方からこの基金をつくった。
 したがって、基金の性格は、まさに過剰設備の処理が独立でできない構造不況業種に対して、そういう保証ということを通じてバックアップをする、こういうものだと理解をいたしております。
○松本(忠)委員 そこで、第十三条の目的ですね。「特定不況産業信用基金は、特定不況産業における計画的な設備の処理を促進するため、これに必要な資金等の借入れに係る債務を保証して」云々と書いてあるわけですが、計画的な設備の処理をすれば、当然そこで従業員の首切りということも行われるのではなかろうかというようなおそれがございます。そうしたことを考えますと、やはり雇用の安定ということを考えておかないと、これはもう計画的な設備の処理をするためだけにしか金は使えないのかということになるのじゃなかろうか。雇用の安定のための資金は一体どうなんだと私は思いますけれども、これはどうでしょう。
○濃野政府委員 雇用の安定問題は、当面の経済のいろいろな目的の中で一番重要な問題でございまして、過剰設備の処理をうまく進めていく上でも、雇用の安定という観点からの配慮が非常に大きく必要である。したがって、計画的な設備の処理を安定基本計画で定めてやっていく上でも、たとえば設備処理のテンポ等も、雇用の安定をいかにうまく達成をしながらやっていくかという観点から考えらるべき問題だと私どもは思っております。
 そこで、第十三条の特定不況産業信用基金の「目的」にも、「計画的な設備の処理を促進するため、これに必要な資金等の借入れに係る債務を保証して、」と書いてございます。
 それは何が対象になるかと申しますと、一つは、先ほど申し上げた設備処理のための担保抜きの資金が中心になると思いますが、雇用の安定と言えるかどうかわかりませんけれども、設備の処理を雇用の問題を十分配慮しながら計画的に進めていくためには、できるだけ新しい失業者を外に出さないで、内部の配置転換とか、抱えたまま職業訓練等をしながら新しい職場へうまく雇用の再配置を図るというようなことをスムーズに進めていかなければならぬと思います。
 しかし、そうは申しましても、どうしてもいわゆる雇用調整もやむを得ない事態が生じてまいりましょう。そういう場合には、労使間の円満な話し合いで、一つの計画のもとに設備調整と有機的に調整をとりながら進めていく問題ではございますが、そういうことで円満に話し合いがついた場合に、退職金がないために設備の処理が進まないケースもあり得ると思います。そういう場合の退職金の借り入れについての債務保証等も、この十三条の目的の範囲内でその資金の融通の円滑化を図るための債務保証も可能である。私どもはこういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 そうすると、十三条の中で計画的な設備の処理をするためには、職業訓練の実施であるとか就職のあっせんであるとか、職業及び生活の安定のためにいろいろな措置を講じようとするけれども、そればかりではなかなかうまくいかないだろうと私は思います。ですから、ここで雇用の安定のためにもこの資金は使えないのか。これは使うことができないのですか。要するに設備の処理をするための資金であって、雇用の安定のためにはこの資金は使えないのか。この点はどうでしょう。
○濃野政府委員 私がただいま申し上げましたように、計画的な設備の処理を進める範囲でそれに必要な資金をこの基金で保証するということでございますから、一般的に雇用の安定のために必要な金融をこの基金で保証するということでこの基金の運用ができるかと申し上げれば、私どもはそういうことは考えていないと申し上げます。
○松本(忠)委員 わかりました。要するに計画的な設備の処理をするときに当然起きてくる雇用の問題についての資金の活用はできる、こう伺っていいわけですね。それをはっきりしておいてもらいたい。
○濃野政府委員 雇用問題の絡みで申し上げますと、ただいま御説明いたしましたように、計画的な設備の処理を行うために労使間で円満に話がついて、雇用調整の一つの計画ができたが、退職金がない、これは借りてこなければいかぬという場合は、この基金の保証の対象として考えらるべきものだと私どもは考えておりますが、私が先ほど申し上げましたのは、一般的に雇用の安定のための資金の金融をこの基金で全面的な保証をすることは不可能ではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。
○松本(忠)委員 その点は理解しました。
 それから、三十九条で業務内容を定めています。この業務内容の具体的な中身、特に第一項二号の「附帯する業務」とは一体どういうものを指すわけでしょうか。
○濃野政府委員 この信用基金は、十三条の目的を達成するために、三十九条の第一項一号にございます「計画的な設備の処理のため必要な資金及び当該設備の処理に伴って必要となる資金」、これは主要設備の廃棄に伴って付帯設備を処理しなければいかぬ、あるいはいま私が申し上げたたとえば退職金の問題等についての債務保証を行うことが主たる目的でございまして、私どもは、この保証行為だけに限ってこの基金を運用すべきではないかと考えてこういう規定にいたしました。
 ただ、基金でございますので、そういう保証業務をやっていく上で付帯業務が出てまいります。たとえばこの基金が債務を保証した結果、債務保証を実行しなければならない、そういたしますと、基金が取得した求償権を行使するという業務がございます。それから、これは基金の運用上当然でございますが、基金は資本金でお金ができますが、この基金を構成する資金の運用の問題等が出てまいります。そういうものがここに書いてある「附帯する業務」の内容でございまして、あくまでもこの基金は債務の保証を中心に運用していく、その他の業務はやらないたてまえでございます。
○松本(忠)委員 たびたび平電炉ばかり引き合いに出して恐縮でございますけれども、平電炉業界などで現在債務保証基金が設けられているわけでございますが、本法案によりまして平電炉業界が申し出をし、安定基本計画ができて滑り出した場合に、現在ある債務保証基金とこちらの基金との関係はどういうふうになるのでしょうか。
○濃野政府委員 平電炉業界は、御指摘のように、昨年の補正予算で国から三億五千万円、業界三億五千万円の出資がございまして、七億円の基金で七十億の保証を行っておりまして、現にそれが動き出しておると私了解しております。
 この基金が将来できましたときにその関係でございますが、まだその点について関係業界等と通産省との間で話は進めておりません。
 ただ、一般的に申し上げまして、平電炉が、先ほどの御質問にございましたように、業界の総意といいますか、大部分の意思がまとまってこの法律による対象業種としての申し出があって、この法律による手続に従って設備の処理をやろうということになった場合を前提として考えますと、いつの日か現在の保証限度額七十億を使い切ると思います。その場合にはこの基金の保証をさらに新しく使っていく、こういうことで運用していったらいかがかと私どもは考えております。その場合に、現在の基金との関係を組織的にどういうふうにするかという問題は、また別の問題として今後詰めてみたいと考えておるわけでございます。
○松本(忠)委員 わかりました。
 それでは、この基金の規模はどの程度を限度と考えていらっしゃるのか。この点については一応一千億になるわけでしょうけれども、各業種から安定基本計画が出て、一年以内にこれが全部出ていくまでは、この基金なるものは、分配というか割り当てといったことはしないのですか。一年後に全部出たところでこの問題は始まるわけですか。それとも、出てきた順序に従って、安定基本計画ができて、これが実施に移された場合にやるようになるわけでしょうか。そんな場合を考えますと、造船業のような大きなものでこの枠の方が極端に取られてしまうのではないか、全部出そろったところでやるならいざ知らず、それが出てきた順序でやるというようなことになると、これはちょっと問題ではないかというふうに思うわけです。各業種間におけるところの差別が出てくるのではなかろうかと思いますが、この点はどうでしょうか。
○濃野政府委員 ただいま御指摘、御懸念の点は、私どもも同じ問題として意識を持っております。
 そもそもこの基金の設立を計画いたしました昨年末の段階におきましては、私ども通産省所管の幾つかの構造不況業種と言われるもの、これの今後の設備処理計画、いろいろ議論されております処理計画を前提に、こういう基金をつくった場合に一体どのくらいの保証の対象が出てくるかという一応の試算で、財政当局と基金の設立についての話し合いを進めたわけでございますが、何分とも当初発足のときでございますので、御案内のように、日本開発銀行から百億を限度として出資をする、なお民間の出資または出損を一応二十億をめどに発足をするということで、この基金のいわば構成を考えたわけでございます。当時まだ造船業等は、そういう意味でこの保証の対象として私ども計算の中に入れておりませんでした。
 そこで、御質問の第一の点でございますが、私ども、この法律御審議の過程で、それぞれ関係省庁との間で、一体この法律にどのくらいの業種が対象として将来上がってくるかということについてのいろんな意見調整を進めたいと思っております。その中で、それを踏まえまして、将来一体この保証基金の規模というのはどのくらいになり得るかという見通し等もつけまして、大まかな見通しはぜひ早急につくってみたいと考えておりますが、しかし、現実の基金の運用に当たりましては、その全部が出そろうまで待つということでは、設備の処理を進めていく上ではいろんな問題が出てまいりまして、早く話し合いが固まって体制ができたところには早くこの保証機能を使っていくということが、むしろ法律の趣旨からいっても必要だと思います。そういう意味から申しますと、現実の保証は、できたものから進めていく、そして必要になれば財政当局とも十分話し合いの上、むしろこの保証基金のいわば規模の拡充という方向で問題を処理していくのが本当ではないか、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 要するに、早く申し出をし、そして早く対象になるようないわゆる安定基本計画というものが出たところから逐次出していくとおっしゃるわけですね。そうすると、しまいの方になって、要するにこの二条の六項のところの「一の業種を第一項第五号の業種として定めるための同号の政令の制定又は改正は、この法律の施行の日から起算して一年を経過する日後は、行わない」、日後は行わないということですから、一年間にはその申請ができるわけですね。一年を過ぎたらもう対象にならないわけだから、その一年間の最後の方で出たときに、すでにその資金がもう使い終わっていた、なかったというようなことが起こるおそれはありませんか。
○濃野政府委員 ただいま申し上げましたように、私ども、どういう業種がこの第二条の一項の一号から四号まで以外のいわば五号の対象として候補業種として出てくるか、一応の目安は持っておりますが、なおもう少し詰まった目安は早急につくらなければならない。それを前提にこの保証ということを考えたときに、大体どのくらいの大きさのものになるのかということは、農林省、運輸省等関係の官庁とも十分意見をすり合わせまして、一つの目安は早急につくりたいと考えております。そして、ただいま申し上げましたように、早く体制の固まったところからこの運用を図っていく、そうしてその目安ができた段階で、やはり私ども、ただいま御指摘のようなことがないように、財政的な裏打ちについても早い段階から必要な準備は進めていく、こういうことで、ただいま御指摘のような問題、懸念がないように取り計らっていきたい、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 それだけの用意があれば結構ですけれども、果たしてどれぐらいの申し込みがあるかもわからぬわけですし、また、この法律ができて、そして私は適用してくださいと言って特定不況産業の業種が、この製造業の方々が申し出をしてくると、早くできた順番にやってしまう。その必要とする資金というものを全くそのとおり認めて、フルに渡してしまう。私は、最後の方になったら、必ずこれは足らなくなってくるのじゃなかろうかというような気がするものですから、その点を心配の余りこう言うわけです。
 特に業種間の差別というもの、そういうことがないか、この点は心配なんです。要するに、大企業的ないわゆる造船業というものが大きな枠を占めてしまった、これはまとまりが早いですから。そしてそれが早くやってしまった。そしてそっちの方が資金をうんと持っていってしまったときには、あとのもろもろのものが出てきたときにはなかったということになるおそれがあるのじゃなかろうか、そういう心配を思いますので、この点をきちっとしておかないと、早くやった者が得だった、そこに差別が起きてくると思いますが、この点、大臣どうでしなうか、心配ございませんか。
○濃野政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、経緯論といたしましては先ほど御説明したとおりでございまして、特に造船業という非常に大きな業種は、この保証基金を設立する際に、私どもの一つの目安と申しますか、積算の一つの基礎として考えていなかったということは、非常に率直に申し上げました。
 ただ、私ども、今後の運用に当たりまして、造船業の直接の主管官庁である運輸省等も、この基金の設立の経緯等につきましても十分その点は御了承になっておられますし、造船業が将来いわゆる業界の申し出によりましてこの法律の対象になり、そしてこの信用基金を利用いたしまして債務保証を行うという場合には、所管官庁である運輸省自身も、この法律の経緯等を踏まえまして十分の努力をされると私ども期待をいたしておりますし、この法案の成立の過程で、事務的ではございますけれども、運輸省当局との間にもそういう将来の運用についての話し合い等もいろいろ進めております。したがって、御懸念のような問題のないように私ども十分連絡をとりながらやっていきたい、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 造船の問題なんかは、いずれ連合審査もあるわけでございますし、その時点でまた運輸省にも私たち問いたださなければならないと思っておるわけでございますが、特にまたベニヤのような問題もありまして、これはいろいろいわゆる基金の分配といいますか、そういったものについて不公平が起きてはならない、こういう点を危倶するわけでございます。
 それでは、もう一点お伺いしたいことは、基金によりまして債務保証を行う場合に、主たる債務者である事業者とその親会社、親事業者及び金融機関に対して、基金の保証債務について一定割合の保証を求めるといういわゆる裏保証、これが考えられていると言われておりますけれども、具体的にはどのようにこれをやっていくわけでございましょうか、この点をお尋ねいたします。
○濃野政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、実は、この基金の保証という問題、これはある意味で非常に技術的な問題等も踏まえておりまして、この保証行為の実行に当たる、そういう問題をいろいろ検討いたしますために、私ども、それからこの基金は大蔵大臣が主務大臣でいらっしゃいますので、大蔵当局並びに銀行界、それぞれ専門家の方を集めまして、現在事務的にいろいろな問題の整理をやっております。その問題の一環といたしまして、ただいま御指摘のいわゆる裏保証問題等につきましても、どういうかっこうが一番いいか、いろんな議論をいたしておるわけでございまして、現在のところ、こういうかっこうでいくということはまだ決まっておりません。
 ただ、私どもの基本的な感じといたしましては、たびたび申し上げますように、この過剰設備の処理というのは、当該業界のみならず、ただいま御指摘のような、いろいろな金融機関あるいは業種によっては商社その他の関連事業者と金融的ないろんな関係がございまして、設備の処理を進めるのはこれら関係業界あるいは金融界等の全面的な協力、支援のもとに、一緒になって考えていかなければならぬ問題だと思いますし、また、別の観点からいきますと、この基金で保証を行うということが、そういう従来の金融関係にある方には、ある意味での反射的な利益をも与えるわけでございまして、したがって、ただいま御指摘の裏保証、つまり保証を行った、その保証を実行した結果保証金額の一定割合について代位弁済を行った、この場合の求償問題というのはある程度ルールを決めておくことがむしろ適当ではないか、こういうふうに私ども考えておるわけでございまして、ただいま法案の御審議を受けておりますけれども、ただいま申し上げたようないろいろな技術的な問題等を含めまして、金融界等の意見も十分入れながらこの問題の詰めを早くやりたい、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 なかなかこれは大変な問題でございますし、せっかく研究中でございますから、どうかひとつ完全なものをつくり上げていただきたいと思います。
 そこで、もう余すところ時間が三十分ほどになってしまいましたが、大分残っておりますので、かいつまんで伺うことにいたします。
 第三条の二項で、安定基本計画に定める事項が明記されておりますが、業務提携あるいは合併、こういったことはその内容になりますか、定めることになりましょうか。
○濃野政府委員 先ほども若干ただいまの御質問に関連した御答弁を申し上げましたが、この二項の第三号の「事業の転換その他の措置に関する事項」、この事項は、必ずしもすべての業種、業態で問題になるとは私考えておりませんが、業種、業態によりましては、ただいま御指摘の広い意味での提携、たとえば先ほど申し上げました、今後設備処理を行う、それによって、その業界のあり方としてやはり生産上の委託関係を結ぶとか、あるいは販売の提携、たとえば共販会社の設立をするとか、あるいはさらに進んで企業の合併の問題というようなことが問題として必要となってくる、議論されるべき業界というものが私はあるのではないかと思います。
 ただ、その場合に、具体的にどことどこがこう合併すべきであるとか、どことどこがこういう販売提携をすべきであるとかいうのがこの安定基本計画の内容になる、そういうものではないと私申し上げていいと思います。ここで決められますのは、あくまでもその業界としてやるべき今後の基本的な方向なり考え方、必要な業界についてはそういうものが議論をされ、この三号の内容になるのではないか、こういうふうに私ども考えております。
○松本(忠)委員 それじゃ、ちょっと伺いますが、仮に計画が業務提携等を含めた場合、この安定基本計画の内容というものと指示の内容というものは同じになるのでしょうか。
○濃野政府委員 第五条の「共同行為の実施に関する指示」は、自主的な努力だけではできないという場合に、その五条に書いてございますように、「当該設備の処理と併せて行うべき当該設備の新設、増設及び改造の制限又は禁止」、つまり設備処理とそれから設備処理に伴って行う設備の新増設の禁止、これをもって「以下「設備の処理等」」と書いてございます。そして共同行為の実施の対象は、まさにこの「設備の処理等」でございますから、ただいま私の御説明しました合併とか、提携とか、これの基本方針が仮に決まりましても、それはいわゆる共同行為の指示の内容にはならない、こういうことでございます。
○松本(忠)委員 公取委員長にちょっと伺いますが、業務提携等を含めるとしたところの指示カルテルに、公取の場合ば同意をなさるわけでございましょうか。そのカルテルは、独禁法の適用除外となるのでしょうか。その二点を……。
○橋口政府委員 いま通産省からお答えがございましたように、指示カルテルの対象になりますもの、内容になりますものは、第五条に書いてございますような設備の新増設または改造の制限または禁止でございまして、したがいまして、どことどこと合併しろとか、どことどこと業務提携しろというような、そういう内容の指示は出ないわけでございますから、したがいまして、公正取引委員会がそういう問題に対してどういうふうに対応するかという問題それ自体がないというふうに法律の規定から読めるわけでございます。
○松本(忠)委員 それでは、次に進めまして、五条で言うところの「共同行為の実施に関する指示」、いわゆる指示カルテルの持つ拘束力というものは、どの程度のものを言うわけでございましようか。
○濃野政府委員 いわゆる指示カルテルでございますが、これは、それに従わない、したがって、共同行為をしないという場合でも、何ら法律的な罰則はございませんで、つまり法的拘束力は持っておりません。そういうふうに理解をいたしております。
○松本(忠)委員 それでは、この指示カルテルを勧告程度に改めた場合に、その拘束力はどういうふうに違ってきますか。
○濃野政府委員 勧告と指示がどこが違うかということでございますが、確かにその言葉から受けますニュアンス等は非常な違いがあるようでございますが、私、法律の専門家ではございませんが、法的な意味あるいは法的な効果としては、勧告ということと指示ということは同様ではないか。つまり法的な拘束力がないという点では、同様のものではないかと考えられております。
 なお、この法律でいわゆる指示カルテルという制度をとりましたのは、従来から、こういう設備の処理と申しますか、構造改善というものに絡んだ前例としては、繊維の立法がございますし、そのほか、こういう設備処理には関連いたしませんが、その他の法令にもいわゆる指示カルテルという制度がございますので、その前例をとって指示カルテルととったわけでございまして、法律的には勧告と指示というものは効果においては同じではないか、こういうふうに私は考えております。
○松本(忠)委員 確かにおっしゃるように、その指示と勧告というものは、字面も違うし、読み方も違うししますが、中身については余り大きな変化がないというふうに言われるわけでございますけれども、この安定基本計画自体がかなり不確実性を含んでいると私は考えておりますが、こうした不確実性を含んだままでの指示カルテルというものが発動されることについては、問題があるんじゃなかろうかと思います。あくまでもガイドライン的なものとして、勧告程度にとどめておいた方がよいのじゃないかというふうな気がしますけれども、あくまでこれは指示の方がよろしいとおっしゃるわけでございますか。
○濃野政府委員 私どもがこの指示カルテルという制度を、政府部内、特に公正取引委員会との関係でいろいろ調整をいたしまして、本制度の設立についての合意に達しました。
 これをぜひ法案に盛りたいということの理由でございますが、この過剰設備の処理は、基本的には、繰り返し申し上げておりますように、やはり当該業界の自主的な努力で、自主的に解決すべきであるというたてまえではございますけれども国が一つの計画を定めまして、最後に法的に、法的といいますか、一つの仕組みとしてその実効を担保する、特に独禁法との間の調整を法的に図る、そういう意味では、過去の前例等にも、計画というものを前提とした最後の結びとして指示カルテル制度というのがございまして、最後の手段としてこの指示カルテルをぜひお認めを願いたいということで入れたわけでございます。単なる勧告ではそういう意味での法的な独禁法との調整という問題の解決にはなりませんので、私ども、ぜひともこの指示カルテルの制度をお認め願いたい、かように考えておるわけでございます。
○松本(忠)委員 御趣旨の点はわかりましたが、この問題は、われわれもちょっといろいろ意見がございますので、この問題については、また後刻よくお伺いをいたしたいと思います。
 それから、あと二十分ほどになってしまいましたが、六条の「共同行為の内容」でございます。
 第六条に「共同行為の内容」というものが示されておりまして、ここにいわゆる内容の適合条件というものが規定されているわけでございますけれども、これを具体的に言うと一体どういうふうになるのでございましょうか、ごく簡単で結構でございますが、説明をしていただきたいと思います。
○濃野政府委員 第六条に「共同行為の内容」が、次の各号に掲げる条件に適合しなければならぬということで、四つの項目が挙がっております。これは、こういう指示カルテル制度というものを法定をいたしました過去の例等におきましても、大体同じような条件といいますか、適合要件というものが定められております。
 一つ一つ簡単に御説明いたしますと――その前に、全体といたしまして、この第六条は、主務大臣が行う指示にかかわる共同行為の内容につきましてこの要件を定めておるわけでございまして、やはり第一義的には、一体この要件に適合しているかどうかの判断は、主務大臣が行うことになるのではないかと思います。
 一号につきましては、たとえば指示をして処理を進める設備の処理量というものが、安定基本計画に定めてあります設備処理量を超えないようにすべきである、こういうことがこの内容、「必要な程度を超えないこと。」と書いてございますが、そういうことを定めたものではないかと思います。
 それから二号につきましては、指示カルテルが行われた、それによって、その指示カルテルで処理の対象になります設備、それでつくる製品の価格が著しく上昇するというようなことによって、一般消費者や関連事業者の利益を不当に害することのないようする、こういう趣旨のもので、どの程度に価格が上がれば不当に害するかというようなことは、一概にはなかなか言えませんが、個別ケースごとにそういう不当性を判断することになるのではないかと考えております。
 三号の「不当に差別的でない」というのは、指示を受けて共同行為を行う事業者相互の間で、設備の処理量等につきまして、一部の事業者だけに特定の負担がかかるというようなそういう処理方式、不公平が生ずることのないようにすべきである、こういうことではないかと私ども考えております。
 四号の「指示を受けた事業者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。」この規定は、共同行為が実施された場合に、従業員の地位に影響を与える可能性があることが考えられます。たとえば事業者が自分のところの従業員の配置転換とか、あるいは出向するとか、あるいは教育訓練、あるいは出向先との話し合いをしなければいかぬということが現実だと思いますが、そういうことをスムーズに進めるための時間的な余裕も全然考えないで、設備の処理期間を非常に短く決めるというようなことは、この要件から見て問題であるというようなことでございまして、そういうことのないように、たとえば設備の処理量あるいは処理期間を定めるというようなことがこの四号の意図している内容ではないか、こういうように考えております。
○松本(忠)委員 公取委員長に一つ伺っておきたい点がございます。
 この共同行為の内容について、公取としては、この内容がまずいような場合、取り消しを求められるというふうに考えられるわけでございますが、それを判断する根拠はどこになるわけでございましようか、公取委員長にお答えをいただきたい。
○橋口政府委員 御質問の趣旨は、第十二条の「公正取引委員会との関係」の第三項でございますが、この第六条の一号から三号までの要件に適合しなくなったと認められるときは、主務大臣に対して変更または取り消しを請求する、こういうふうになっております。これは、いま御説明もございましたように、指示カルテルを行います場合の例文的な規定でございまして、もともとの淵源は、独占禁止法の不況カルテルの認可要件の場合のいわば消極要件に相当するものでございます。
 したがいまして、ここの一から三に、当初指示のときにこの消極要件を阻害しない内容であったものが、たとえば何らかの事情によりまして、それは国内的あるいは国際的な対外的な要因もあろうかと思いますが、何らかの事情によりまして対象になっております設備で生産される物資が不足する、それによって急激な価格の上昇がある、その結果として一般消費者やあるいはユーザーの利益が不当に害されるおそれがある、あるいは指示カルテル実施後生じた事情の変化によりまして業者間に不当に差別的な結果があらわれる、あるいは全体の展望につきまして、指示の際には、あるいは安定計画作成のときには、当時得られる最善の資料で展望いたしましても、その後基本的な情勢の変化によって、一号にございますような設備の処理を必要とする限度を超えるような内容に結果的になってしまったというようなことが指示カルテル施行中に生じたというような場合に、主務大臣に対して取り消しの請求をするのでございまして、これは先ほど申しましたように、こういう規定は、そもそも独占禁止法に規定がございますから、それに基づいて不況カルテル認可の際に判断をいたしておるのでございますので、やはりその後の情勢の変化に応じて判断をして、主務大臣に対して変更または取り消しを請求する、こういうことになろうかと思います。
○松本(忠)委員 公取委員長、御用があるようでございますので、もうあとは質問がございませんから、これで御退席いただいて結構です。
 局長にもう一つ、いまの問題に関連しまして伺っておきますが、この共同行為の内容の適合条件として、第二号に、いわゆる「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがない」ということ、また、第四号の方は、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」こういうふうなことが書かれておりますが、この消費者及び関連事業者、あるいはまた従業員というものが、この指示カルテルに対して何らかの異議を唱えることができるのかどうなのか、その場所があるのかどうなのか、これはどうでしょう。
○濃野政府委員 まず最初に、直接のお答えになりませんが、先ほどから先生の御質問等にお答えいたしております中にも触れておりますが、この共同行為の内容の要件、これは先ほど申し上げましたように、第一義的には主務大臣、通産省所管の業種でございますれば通産大臣が、この要件に該当するかどうかということの第一義的な判断をいたしまして、それに適合するように配慮をして指示をするわけでございますし、また、関係審議会の場で各方面の意見、一般消費者の代表の方もおられますし、関連事業者の代表の方もおられますし、また、労働者の代表の方も入れて審議をして、意見を十分聞いた上で指示をするわけでございますから、
    〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
万々そういうことは事実問題としてはないと私どもは確信いたしておりますし、また、万一、六条に定める要件に適合しなくなった場合には、主務大臣は、この指示の変更または取り消しをする必要が生じてくる。第七条で「指示の変更等」というのがございます。したがって、そういうことがないようにまず行政的に配慮をすることで、御質問のような御懸念はないと思います。
 なお、それじゃ、法律問題として御指摘の点が一体道があるかどうかという点でございますが、先生のおっしゃる何か解決の道というのが、たとえば行政不服審査法という法律がございますが、これの対象に一体なるかどうかということは、そもそもここに言う指示カルテルのいわゆる指示というのがそういう行政訴訟の対象になるかどうか、検討を要しなければいかぬと思いますし、従来のいろいろな前例等を見ますと、この指示の対象は業者でございまして、一般消費者あるいはここに言う関連事業者、さらには従業員というものでは直接ございませんので、いろいろな問題があるのじゃないかと思いますが、もし必要でございますれば、これは所管はむしろ行政管理庁でございますので、私ども事務的にも行管の意見等も聞いてみなければならない、かように考えております。
○松本(忠)委員 第十条のところに雇用の安定の問題があるわけでございますが、この法案を俗に首切り法案などという失礼な言い方をする方もあるわけでございますけれども、とにかく事業者というものは、これによって一応設備の処理ができるということになるわけですが、問題は労働者の方、こういう設備の廃棄が即首切りにつながる、こういうおそれもなきにしもあらずでございます。
 そこで、第十条に雇用の安定ということが書いてありますが、二項で、「国は、特定不況産業に属する事業者であつて当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従つて設備の処理その他の措置を行うものの雇用する労働者について、失業の予防」――「失業の予防」ということは、要するに首切りをしないというふうに率直に受けとめていいわけでしょうか。
 それからまた、三項にございますところのいわゆるさまざまな職業訓練であるとか、就職のあっせんであるとか、その他の「職業及び生活の安定に資するため」云々というふうにございますこと、こういうものは一切これは努力すればいいのか、やらなければならないのか。義務規定なのか努力規定なのか、いずれに属するわけでございましょうか。
○濃野政府委員 この第十条の二項、三項、これは法律的に申しますと、「努めるものとする。」と書いてございまして、いわゆる訓示規定と申しますか、宣言規定でございますが、ただ、この主体は国であり、公共団体でございまして、当然のことながら、雇用の安定という当面の最大の問題を中心に、国としての責務を果たす必要があると考えております。
 そしてこの二項は、簡単に一言で申し上げまして、むしろ「失業の予防その他雇用の安定を図るため」、つまり何とか失業者を出さないように努力をするということでございまして、具体的には雇用保険法の改正により創設されました雇用安定資金制度、内容は細かく触れませんけれども、いわゆる景気変動等雇用調整事業あるいは事業転換等雇用調整事業、これをフルに活用いたしまして雇用安定に努めるということでございます。
 三項の方は、この間成立をいたしました特定不況業種離職者臨時措置法等によりまして、職業訓練の実施、就職のあっせんその他同法が定めておるようないろいろな方法を使いまして、むしろ離職者を中心として職業及び生活の安定に資するため必要な措置を講ずるように努めていく、こういう点を訓示規定として表現をしてあるわけでございます。
○松本(忠)委員 時間もなくなりましたので、あと二、三問で終わりたいと思います。
 五十五条でございます。報告の義務というのが五十五条にございますが、ここで私どもの玉城委員からの質問に対しまして、五十五条の「報告の徴収」というのは、「特定不況産業に属する事業者に対し、」となっておりますので、一応その産業に属するものであるならばすべての事業者というふうな解釈で御答弁があったように思っておりますが、いわゆるアウトサイダーに対しても報告の徴収を行う、このように解してよろしいわけでございますか。この点は念のために伺っておきます。
○濃野政府委員 五十五条は、御指摘のとおり、「特定不況産業に属する事業者」と書いてございますので、いわゆるアウトサイダーといま御指摘がございましたが、そういうものを含めて、広くすべての事業者に適用になる規定でございます。
○松本(忠)委員 そうなりますと、五十五条には、「第一章又は第二章の規定の施行に必要な限度において、」報告の徴収をする、具体的には政令で定めるということでございますが、「必要な限度」というのは一体どのようにお考えでございましょうか。
○濃野政府委員 この「必要な限度」という言葉は、報告徴収という法律の規定に大体入っておる規定でございまして、その例文を引いてございますけれども、具体的には、私ども次のように考えております。
 第一には、たとえば安定基本計画をつくるという場合に、生産設備の状況がどうなっておるか、あるいは現在生産数量がどうか、あるいは設備の新設等の意向を持っておるかどうかという、そういう事実関係について、これは当該業種に属する事業から広く徴収をする必要があると思います。
 それから、共同行為の指示が、仮に指示カルテルを発動するというような場合、その前提としまして、いままでに一体どれだけ設備の処理をしたか、あるいは設備の新設等をどのくらいやったかというようなことも、指示をいたします前のこれも事実の把握として必要だろうと思いますし、また、特定不況産業がその後の経済情勢の変動で指定の取り消しを行わなければならないという事態が出てくるというようなことを予想しますと、設備の稼働状況は一体いまどうなっておるのか、あるいは経営状況がどういうふうな状況にあるかということも、ぜひその事業、その業種全体の問題としてつかまえなければならない問題ではないか。したがって、政令では恐らくただいま申し上げたようなことを規定をいたしまして、安定基本計画の策定であるとか、あるいは共同行為の指示とか、あるいは特定不況産業のいま申し上げた指定の取り消しとか、こういうことを行うに当たって、その必要な事実関係を把握する、そのための報告徴収の規定として運用することになるのではないか、こういうふうに考えております。
○松本(忠)委員 それではさらに、五十五条と五十八条の関係でございますが、五十八条には、要するに罰則の規定というのがあるわけでございます。このことは、アウトサイダーに対してかなりの強制力を持つものではなかろうかと思うわけでございます。ということは、結局アウトサイダーを規制しようというふうなお考えと受け取ってよろしいわけでしょうか。
○濃野政府委員 私ども、この報告徴収の規定は、ただいま申し上げたようないろいろな行政上の一つの行政処分と申しますか、これを行うに当たつてのいわば事実関係をはっきりつかむ必要のために行うわけでございまして、アウトサイダーをこれによって規制するための手段としては考えておりません。法律的には何らこれを出すことがアウトサイダーの規制につながるとは私ども考えてないわけでございます。
○松本(忠)委員 しかし、やはり報告をとられるということになりますと、要するに役所に報告をとられたということで、かなりこれは受ける業者の方は役所の考え方というものに反してやることができなくなる、もう報告を出すということだけでもかなり重荷に感じる、こういうふうに思いますので、やはりこういうことを考えますと、五十五条の要するに報告というもの、これは必ず出させなければならないわけですし、出さなかった場合にやはり五十八条の罰則の規定というものがあるわけだと思います。そうなりますと、いやでもおうでも出さなければならない、こうなりますと、かなり役所の規制というものを受けるようなことになりはしないか、こういう危険が考えられますが、この点はどうでしょうか。
○濃野政府委員 現実の問題を申し上げますと、私いま幾つかの例を挙げまして、そういう事実関係を見るために、行政の必要上この報告徴収の規定を使うことがあり得るということで申し上げましたが、現実には、こういう法律による報告徴収の命令の規定ではなしに、現実の実際の話し合いとしていろいろ実態の把握に努めるのが役所のやり方ではないかと思います。しかし、この法律で、いろいろの段階で国が先ほど申し上げたような行動を起こすときに、やはり最終的に法律によって担保された報告徴収の規定を設けておるのがこの趣旨でございまして、これを行うことは、命令が出た以上確かに五十八条の罰則がございますので、報告をしないあるいは虚偽の報告をしたときにはこの罰則の対象になり得るわけでございますが、これ自身がアウトサイダーの行動を規制する、たとえばこの命令を受けて、報告徴収の命令を受けたがゆえにカルテルに参加をしなければならないとか、そういう間接な規制が働くとは私は思いませんので、繰り返して申し上げますが、この規定自身がアウトサイダーを規制することに間接的にも影響を与えるものではない、こういうふうに私は了解をいたしております。
○松本(忠)委員 なかなか役所でお考えのようなわけには一般の中小企業の業者などというものは考えません。やはり役所というものは煙たいものだ、大変にむずかしいことを考えておるわけでございますので、その点は、罰則があるということ、五十八条があるということは、非常に中小企業の者にとっては負担になる、重荷になるというふうに考えるわけでございます。
 さて、もう時間も参りましたので、これで終わりにいたしますが、最後に、大臣にお伺いいたしたいわけでございます。
 このいわゆる安定基本計画というものが策定され、それに基づいて設備の処理が行われた場合に、その関連の下請中小企業というものの影響はかなり大きいものが出る、そういうことについて大臣も、いままでに、設備廃棄に伴って相当大きな影響が出てくるというような答弁をなさったのを私聞いております。この影響というものは大臣はどの程度のものであるとお考えでございましょうか、これが一点。
 それから、設備廃棄に伴って相当大きな影響が出るとするならば、その関連の下請中小企業者に対する救済策としてはどのような手を今後打たれようとするのか、この二点についてお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
○河本国務大臣 この設備の廃棄の量でありますが、業種ごとに担当異なると思います。これは後々よく相談しなければならぬことでございますが、少ない業種で一、二割、あるいは多い業種になりますと、五、六割も廃棄する必要があろうかと思います。したがいまして、中小企業に対する影響も、設備の廃棄の度合によって異なってくると思います。しかし、いずれにいたしましても、相当な影響が出ることは事実であります。下請中小企業は相当な被害、影響をこうむりますので、その場合には、現行の中小企業対策、幾つかの制度がございますが、その制度をフルに活用いたしまして救済をしていきたいと考えております。
○松本(忠)委員 大臣のいまのお答えを私も了とするわけでありますが、とにかく下請、それと関連中小企業というものが、こういう一つの法案ができて、設備の廃棄ができて、一つの業態、業界としては大変いい方向に向かえると思いますが、そういう場合にいつもいつも影響を受けるのが関連の下請中小企業でございますので、この点については、いまの大臣のお答えのように十分の御配慮をいただきたいということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
○中島(源)委員長代理 次回は、明二十九日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後六時四十二分散会