第085回国会 外務委員会 第3号
昭和五十三年十月十六日(月曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 永田 亮一君
   理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君
   理事 毛利 松平君 理事 井上 一成君
   理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君
   理事 渡辺  朗君
      加藤 紘一君    鹿野 道彦君
      木村 俊夫君    鯨岡 兵輔君
      小坂善太郎君    竹内 黎一君
      谷川 寛三君    中村  直君
      中山 正暉君    羽田  孜君
      原田昇左右君    福田 篤泰君
      福永 一臣君    森田 欽二君
      岡田 春夫君    河上 民雄君
      高沢 寅男君    安井 吉典君
      中川 嘉美君    正木 良明君
      曽祢  益君    寺前  巖君
      正森 成二君    伊藤 公介君
      楢崎弥之助君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  福田 赳夫君
        外 務 大 臣 園田  直君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 金丸  信君
 出席政府委員
        防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君
        外務政務次官  愛野興一郎君
        外務省アジア局
        長       中江 要介君
        外務省アメリカ
        局長      中島敏次郎君
        外務省欧亜局長 宮澤  泰君
        外務省中近東ア
        フリカ局長   千葉 一夫君
        外務省経済協力
        局長      武藤 利昭君
        外務省条約局長 大森 誠一君
 委員外の出席者
        外務委員会調査
        室長      高杉 幹二君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十六日
 辞任         補欠選任
  石原慎太郎君     谷川 寛三君
  稲垣 実男君     鹿野 道彦君
  川田 正則君     中村  直君
  木村 俊夫君     加藤 紘一君
  佐野 嘉吉君     森田 欽二君
  塩崎  潤君     羽田  孜君
  福田 篤泰君     原田昇左右君
  岡田 春夫君     美濃 政市君
  安井 吉典君     久保  等君
  曽祢  益君     佐々木良作君
  寺前  巖君     正森 成二君
同日
 辞任         補欠選任
  加藤 紘一君     木村 俊夫君
  鹿野 道彦君     稲垣 実男君
  谷川 寛三君     石原慎太郎君
  中村  直君     川田 正則君
  羽田  孜君     塩崎  潤君
  原田昇左右君     福田 篤泰君
  森田 欽二君     佐野 嘉吉君
  正森 成二君     寺前  巖君
    ―――――――――――――
十月十四日
 世界連邦の調査研究に関する請願(中川嘉美君
 紹介)(第一五三一号)
 北朝鮮在住日本人妻の安否調査等に関する請願
 (倉成正君紹介)(第一五九九号)
 同(武藤嘉文君紹介)(第一六〇〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
     ――――◇―――――
○永田委員長 これより会議を開きます。
 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 ただいまより内閣総理大臣に対する質疑を行いますが、質疑者各位は、理事会で申し合わせいたしました持ち時間を厳守されますよう、あらかじめお願いを申し上げます。なお、政府においても、簡明な答弁をお願いいたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
○大坪委員 日中平和友好条約の論議が大分詰まってまいりました。本日は総理にお出ましをいただいていろいろお尋ね申し上げるということになったわけでございます。
 日中間の二千年の歴史を踏まえまして、この間百年近く若干不幸な時代がございましたけれども、アジアの二つの大きな国が真に正常な平和友好関係を築く基盤をつくったということは、まことに喜ばしいことでございます。この日中条約をここまでもたらすについてずいぶん御努力をいただきました、俗に申します井戸を掘った先人の御苦労も大いにしのばなければならぬと存じておりますし、また、特に福田総理大臣の時宜を得た御決断と園田外務大臣及び外交当局の粘り強い御努力に、深い感謝と敬意を表したいと存じます。
 さまざまな議論がございまして大分問題点が明らかになってまいりましたので、きょうは時間の制約もございますから、特に、日中平和友好条約後の将来の日本外交の基本問題について、そのあり方についてお尋ねをいたしたいと存じます。
 第四条の第三国条項というようなものがございましたために日本の自主外交の自由というものが確保できたということは、大変喜ばしいことでございます。これと関連して、総理は全方位外交というお言葉を盛んにお使いになられますが、すべての国との平等なつき合い、あるいはこれが、単に、すべての国との八方美人的な外交というふうに国民の皆さんから受け取られておるとすれば、事は重大ではないかと私は存じます。と申しますのは、日中平和友好条約の締結がありまして、全世界のこれに対する反応を見てまいりますと、必ずしも日本が全方位外交という言葉で表現したいような情勢が世界にあるとは思えないわけでございます。
 きょうの新聞にも出ておりましたけれども、ソ連は、日本が中国と手を結んで反ソ包囲網を狭めてくるのではないか、あるいは日中米の結束が新たな一つの反ソ戦線を結成するのではないかというような見解と危惧を非常に持っておるようでございますし、それから、アジアのいろいろな国々の反応をうかがってみましても、たとえばフィリピンのマルコス大統領でございますとか、シンガポールのリー首相でございますとか、あるいは韓国の朴大統領でございますとか、こういう方々は、日本が中国と条約を結んだということは、東アジアの安定勢力の一種の結束ではあると見ております。これは、この間おいでになった西ドイツのシュミット首相もそうでございますが、しかし、日中の結束というものがソ連の反発を生むのじゃないか、アジアにかえって不安定要素を拡大するのではないかという心配を表明しておるようでございます。
 ヨーロッパに参りまして友人と会って話をいたしますと、日本はよく踏み切った、よく踏み切ったけれども、ソ連の圧力をはね返すのはなかなか容易ではないぞ、こういうような意見も聞かれるわけでございます。
 こういう状態を見ますると、日本はいままで、俗に申しますアメリカの核のかさのもとで、日米安保条約という体制を基軸といたしましてある意味では政治、外交の世界に安住しておったと思うのでございますが、今度の日中平和友好条約を結んだために、世界のパワーポリティックスの中に日本が、好むと好まざるとにかかわらず引き出されてくるのではないかという考え方なり予測が大方であるように思われます。だから、日本の場合は恐らくこの日中平和友好条約が、今後日本の外交進路を決めていく場合に、日本の防衛力の強化でありますとか、そういったものに対する戦略的なあるいは国際的な要請というのが必ず強くなってくるのではないかという意見もまた出ておるわけでございます。
 こういう状態のもとで全方位外交というのはどういうことになるのか、総理の御決意なり御判断をお聞かせいただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 わが国は、戦後一貫いたしまして、いずれの国も敵視せず、いずれの国とも平和友好の関係を結ぶというたてまえをとってきたのです。長たらしい言葉で言いますと、わが国の世界に臨む立場というものは説明するのはやっかいだ、それで私は、それを一口で言えばどういうことだろうということを考えまして、全方位平和外交という言葉を発明したというか、使っておるわけなんです。
 わが国は、戦後、経済力は蓄えてきた、しかし、それにもかかわらず軍事大国への道を放棄した、こういうことでありまして、これはもう一貫した国是である、こう申し上げても差し支えはないし、また、それは日本国憲法の示すところでもある。
 そこで、とにかく全方位平和外交、いずれの国とも敵対関係は持たない、いずれの国とも仲よくする、これは当然のことだろう、こういうふうに思うのです。しかし、全方位平和外交と申しましても、これは等距離外交というわけにはいかないのです。相手国とわが国との立場、これはそれぞれ違いますから、そこでいろいろの態様は違います。しかし、私どもの善意、これはどこの国にも通ずる、こういうふうにしたい、こう思っておるわけでございます。
 そこで、今度日中条約ができた。できたからといって、これは日中間の問題であります。これが日米間に影響するとか、あるいは日ソ間に影響するとか、アジアの諸国に影響するとか、そういうことは全然ないように苦心をした。それがもう六年もその苦心に費やした、こういうことでありまして、全方位外交というものは、一貫したわが国の政治姿勢であり、またこれからも取り続けていかなければならぬ方向である、このような認識でございます。
○大坪委員 いま総理のお言葉でございますけれども、たとえば米中が接近をいたしまして共同声明が出ましたのが一九七二年の二月二十八日でございます。その後アメリカは、三カ月を出ずしてソビエトとの間にも米ソ関係の基本原則をつくった、これが一九七二年の五月二十九日でございます。アメリカですら、こういった一つの外交的なインパクトをもたらすような事態をつくれば、たとえば対ソ修復に相当の熱意と覚悟で当たっておる。わが国についても当然、やはりそういう努力というものが要請されるのではないかと思われます。
 時間がありませんから続いて申し上げてしまいますと、たとえば、ほかのアジアの諸国との関係でもそうでございまして、当該アジア諸国の方で、日中平和友好条約ができたためにわれわれがある意味で不利な立場になるのではないか、あるいは東アジアの非常に強力な二国の同盟のために自分たちが犠牲になるのではないかというような疑義をもし持っておるとすれば、これは何としてもそういう疑義は解消しなければならぬ。そのための相当具体的な手だてが日本の外交には必要でないのか、こういう感じがいたします。
 それから、日米安保体制を基軸とする、そういう基軸のもとの日中平和友好条約だということになりますが、この間も御議論が予算委員会でありましたように、それでは一体、台湾との関係をどういうふうに考えたらいいのか。わが国は、ポツダム宣言を受諾いたしまして台湾を中国に返還をいたしたわけでございます。したがって、台湾問題は当然中国の内政問題でございましょう。しかし、アメリカと台湾との関係あるいは日本とアメリカとの日米安保条約ということを考えますと、この台湾条項をどう考えたらいいのかということは非常に重要な問題でなかろうかと存ずるわけです。一九六九年の佐藤・ニクソン会談によります日米共同声明、これが俗に申します台湾条項というものをつくったと言われておりますけれども、台湾条項が変化したのかどうか、台湾条項をどう考えるのか、こういったことも、日中平和友好条約が生まれました後の国際情勢にわが国として本格的に取り組むべき重要な問題点であろう。
 対ソ関係、対アジア関係、対アジア関係の中の台湾条項、こういった点で首相のお考えをお伺いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 ただいまも申し上げましたように、日中平和友好条約、これは日中間の問題である。これはいささかもわが国と他の国との、つまり第三国ですね、関係に影響があるわけではございません。日米安全保障条約、これは厳然として存在をいたしておるわけであります。
 日ソの関係、これも善隣といたしましてのつき合い、これはますます推し進めていきたいと考えております。
 また、アジア諸国との関係、これも、私が昨年マニラにおいて声明いたしたとおり、本当に善隣友好のきずなをさらに固めていこう、しかもそれを心と心との触れ合いの関係まで進めていこう、こういうようなことであります。
 台湾の問題、これはすでに日中共同声明において決定をいたしておるというような状態であります。これは、大坪さんもその内容につきましては篤と御承知と思いますので、これには触れませんけれども、今回の日中平和友好条約によって、この共同声明において決められた立場、これはいささかの変更もない、このように御承知願います。
○大坪委員 御質疑を通じての総理のお話でございますけれども、しかし、やはり一番重要なことは具体的な手だてを重ねるということだと思います。どうぞひとつ、単にお言葉だけでなくて、積極的な日本の外交というものを御発揮いただけるようにお願いをいたしたいと思います。
 これで終わります。
○永田委員長 土井たか子君。
○土井委員 いよいよ日中平和友好条約の審議も大詰めでございます。国交回復へ向けて、さらに国交回復の共同声明後この調印へ向けて、調印からこちらに、この国会の審議を通じていよいよ承認をする前夜だということを考えてまいりますと、いままで幾多の苦難を乗り越えてこの日のために、中国との間に平和友好のきずなを強く結ぶために苦労されてこられた方々に対して、非常に感謝の気持ちを強く持つわけでございます。わけても、このために文字どおり政治生命をかけられた故浅沼稲次郎元委員長を持ちます私たちの日本社会党といたしましては、この外務委員会の席でいよいよ承認寸前の日中平和友好条約の審議に当たりまして、感無量でございます。
 本日は、この日中平和友好条約の中身に盛られております。アジアは言うまでもなく、全世界においての平和、さらに平和の安定へ向けて日本が果たす役割りの責任の重大さというものを心に銘じながら質問をさせていただきたいと思います。
 いままでに、質問の中で大体の重要問題は論議がされてまいっているわけでございますけれども、この節、特にこの調印へ向けての日中交渉再開のあたりから、総理大臣が全方位外交という言葉をお使いになり始めたわけであります。先ほどもこれについての御質問があったようでございますけれども、どうも歴代総理の外交方針というものを見てまいりますと、いわゆる外交三原則、これは国連中心主義、アメリカとの協調、アジアの一員としての立場という外交三原則でございました。福田総理になって、特に最近になってこの全方位外交という表現が出てきたわけでございますが、従来の歴代総理が言われ続けてきた、そして外務大臣が外交方針として培われてまいりましたこの外交三原則と、全方位外交というのはどう違うのでございますか。これはよくわからないのですね。全方位外交という内容は、幾ら説明を受けてもぴんとこないわけであります。ひとつ総理から、この全方位外交というのはどういうことなのかという御説明をまずお聞かせいただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私の言う全方位外交というのは、歴代内閣で使いました外交方針、特に外交三原則ということに触れられましたが、それらと少しも違うところはないのです。ただ、外交三原則といいますと、わが国はいずれの国も敵視しない、いずれの国とも友好関係を結ぶんだとか、国連中心でいくんだとか、いろいろ言いますが、何か一言でわが国の基本的な立場を明らかにしておくという言葉はないかどうかといって私は考えておったのですが、全方位平和外交というと、それらのわが国の戦後一貫してとってきた外交方針が一言でわかるような気がする、こういうことでそういう言葉を使うに至ったわけであります。決して、いままでわが国政府が一貫してとってきた外交方針のどの点を修正するという、そういう意味は全然ございません。
 御承知のように、わが国は一貫いたしまして平和政策をとっておる。わが国は今日、世界の経済大国になった。世界の歴史を顧みてみますれば、経済大国というものは必ず軍事大国になったものです。しかし、わが国はこの世界の歴史を覆しまして、経済大国にはなりましたけれども、その経済大国すなわち軍事大国というそういう道は選ばない、もう平和経済大国に徹する、こういう選択をいたしたわけであります。
 そういう軍事大国的立場をとりませんということになりますと、何をもってわが国の安全を保障するかということになると、世界じゅうにどういう敵国もつくっちゃいかぬということだろうと思うのです。世界じゅうのどの国とも平和友好の関係を持たなきゃならぬということだろうと思うのです。これは憲法の前文にもそう書いてあるのです。そういうことを考えまするときに、わが国のそういう立場を全方位平和外交という一言で言うと、これはぴんと国民にくるんじゃないか、みんなにわかっていただけるんじゃないか、私はそのように考えまして、そういう短い言葉で私が申し述べたような意味合いを表明する、こういうことにいたしておるわけであります。
○土井委員 外交三原則と従来から言われてきたことと何らの違いはないとおっしゃるわけでありまして、短い言葉で言いあらわしたいとおっしゃるのですが、全方位外交と言うよりも外交三原則の方がはるかに言葉としては短いわけでありますから、したがいまして、短い言葉で言いあらわしたいためにこれをおっしゃっているのではなかろうという憶測がわれわれの間にはすぐに出てくるわけでございます。特に、全方位外交というので敵をつくらないというところがその特徴だとおっしゃいますけれども、ただいま、何と申しましてもアメリカとの協調ということで、日米安保条約を基軸にした外交という点においては従来の外交三原則と違っておりません。したがいまして、そういう点からいうと、日本とアメリカとの間に結ばれております日米安保条約そのものが軍事同盟条約である限りは、敵をつくらないと言ったって、現にそれに対処するための条約を基軸として外交をやるわけでありますので、そういう点からすると、幾ら口先で、全方位外交によって敵をつくらないということを百万遍言われても、どうも人をごまかすような言い方にしかわれわれには響いてこないわけでございます。いわば自分を売り込まんがためのテレビのコマーシャルのような感じがいたしまして、迫っております総裁選挙目当ての用語を、総理大臣とされては何とか苦心をしていま使っていらっしゃるんじゃなかろうかという憶測すら動くようであります。
 そこで、ちょっとお尋ねをしますが、これは園田外務大臣にお尋ねしたいのですが、先日この外務委員会の席におきまして、全方位外交についての御質問に対する御答弁で、園田外務大臣は、これは総理のおっしゃる御発言であって、私は従来からこの表現は使っておりませんということを、きっぱりと御答弁されたわけであります。そこで、外務大臣はことさらこの表現をお使いにならないというのはなぜでございますか。
○園田国務大臣 総理のおっしゃる言葉は全方位平和外交という言葉でありますけれども、これは私が発明した言葉ではない、こういう意味でありまして、その後の私の答弁を聞いていただくと、総理のおっしゃる全方位平和外交というものは私が具体的にやっていることをまとめておっしゃったことで、私はこれには異存はございませんという答弁をしております。
○土井委員 総理大臣に大変気をお使いになっていらっしゃるように思われてならないわけでありますが、私は、外務省が従来から出しておられるいろいろな文書をひっくり返して、いろいろ点検してみました。どこをどう見ましても、この全方位外交という表現はないわけでございます。そうして、ことさら外務大臣は、先日の当委員会において、私は従来からこの表現は使っておりませんときっぱり言われる。こうきっぱり言われるところには何らかの意味があるに違いない、このように考えているわけでございますから、重ねて、特に積極的にお用いにならないという意味のところをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
○園田国務大臣 総理と私と一緒にやりました国会冒頭の外交方針演説には、私は、総理のおっしゃった全方位外交を具体的に申し上げているはずでありまして、逆に言うと、私の言ったことを総理大臣が一段上から一言にまとめられた言葉が全方位平和外交だ、こう思っております。
○土井委員 しかし、どうも釈然といたしませんですね。外務大臣の御様子が、きょうは、先日の外務委員会と大分違うようでございます。外務大臣のここでのいろいろな御発言のニュアンスがそうくるくる違ってくるようでは、日本の平和外交もおぼつかない、こういうかっこうになってまいりますので、ひとつおっしゃることは一貫して、きっぱりとおっしゃったことはきっぱりとおっしゃったこととしてお変えにならないように、再度、そういうことに対して御注意を申し上げたいと思うわけであります。
 いずれにいたしましても、外務大臣は、いずれの国に対しても平和関係を樹立するための外交政策を実施させたい、このような御趣旨で、先日来、日中平和友好条約の審議に当たって、この委員会における答弁を繰り返し繰り返し述べてこられたわけであります。要は、この線を貫いてまいりますと、日中平和友好条約を具体的に実施してまいりますわが日本のアジアにおける立場、さらには、もう一つ大きく全世界における平和に貢献する立場から申しまして、憲法の趣旨から申しましても、また、今回の条約の中身を実現する努力が問われているという立場から申しましても、日本においては中立政策というのが今後非常に大切になってくるかと存じます。私どもは、中立政策というものを日本において実施することが大切だと考えて、そのための努力を払うことが肝要である、このように考えておりますが、外務大臣は、このことに対してどのような御所見をお持ちでいらっしゃいますか。
○園田国務大臣 他国に対する外交を公平にやるということは当然のことでありますけれども、中立ということはやや違うわけでありまして、われわれはやはり均衡による平和、現在では抑止力の平和、社会党の方々はそれを中立による平和を願っている、その点がわれわれと社会党の方との意見の相違でありますけれども、願うところは同じでありまして、われわれやはり現段階においては、本当の平和が来るまでの過程段階として、均衡による平和、抑止力の平和を考えているわけであります。
○土井委員 実は、均衡による平和、抑止力による平和というものを具体的に追求する政策として、中立政策というのが問われているわけであります。そういう意味で私は外務大臣に御質問を申し上げ、また、それが大切だということをひとつ御留意願いたいという意味で喚起をしているわけでありますが、外務大臣、再度その点についての御意見を承りたいと思います。
○園田国務大臣 基本的に中立ということに反対するわけではありませんけれども、対立があった場合に、その場その場によって中立でおる場合もありましょうし、あるいはまた、国連憲章に従って一方につくこともあるでありましょうが、しかし、外交が基本的に平和を願い、そしてまた、各国に平等に交際できることが理想であることは当然であります。
○土井委員 問題はそういう言葉のやりとりのきれいごとじゃないんで、具体的に何を努力して実現さすための政策を実行していくかというところにあるわけでございますから、そういう意味も含めて、ただいまから、この日中平和友好条約の中身に関連をする基本的なことについて少しお尋ねを進めたいと思うわけでございます。
 日中平和友好条約の第四条という条文でございますね、この第四条という条文が誕生するに至るまでの過程が実は大変大きな問題であったということは、これはだれしもがただいま認識しているところでありますが、条文で申しますとこれは実に簡単な条文でございまして、第四条「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。」こう簡単に書いてあるわけなんですね。ところで、この第四条に言うところの「第三国との関係に関する各締約国の立場」というのは、申し上げるまでもなく、第二条に言うところの覇権に対して反対をする。「アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」とあります。第二条でございますね。これは簡単に言って反覇権というふうに私たちは表現をしているわけでございますが、この反覇権の問題に対して、日中間で解釈に若干の隔たりがあった。そうして、わが国の立場からすると、ソビエトは恐らく、この反覇権条項を入れることによって態度を硬化させるかもしれない、そういう危惧に対して配慮をして、その危惧を薄めるために努力をした結果が第四条の条項となっているというふうに一般的には解釈をされているようであります。
 私は、きょうはここに、その間のいろいろな努力の足跡について中江要介アジア局長が書かれている一文を持ってまいりましたが、この文章を読んでみますと、いろいろな点で少し問題点はあるようでありますが、事いまここで私が申し上げている点について書かれている点を、少し読んでみたいと思うのです。
 「経済と外交」という、外務省が出していらっしゃる、ことしの九月号の内容に「「日中条約」締約交渉から学んだもの」という表題、これは中江さんがお考えになったのかどうか、こういう表題が掲げられていて、その文章の中に、交渉が非常に長引いたのは何がその理由であったか、こういうことが書いてあるのです。
 理由の二つ目はソ連側にある。「右の新聞報道を見て、」というのは、日本において書かれた「中国側が「反覇権条項」を条約に入れて反ソ姿勢を打ち出そうとしているからだ、と報じた。」日本の新聞の報道を見て、「当時のトロヤノフスキー駐日ソ連大使は、公然と「日中条約」阻止のキャンペーンを始めた。泥棒は、まず、自分ではない、と言い張る。何故、ソ連は、「反覇権条項」にムキになって反対せねばならぬのだろう。」
 さて、長引いた三つ目は中国側にある。「ソ連がそういう態度に出たからには黙っておれない。是が非でも「反覇権条項」は条約本文に、“そっくりそのまま”入れるべし、と言い出した。日本の方で一寸でもこれに手を加えたり、解釈を口にしたりすると“「共同声明」から後退してはなりません、前進すべきです”の一点張りである。」こういうふうに書かれていて、そうしてさらにこの文章の終わりの方で、「とにかく交渉は妥結した。中国は前半戦で「反覇権条項」を条約本文に入れることに成功して」というのは、私が先ほど申し上げた第二条の部分に入れることに成功して、「大量得点をあげていた。日本は後半戦で、対第三国外交のフリーハンドを確保して」というのは、ただいま私が問題にしている第四条でございますが、「一挙に追い上げた。見応えのある一戦であった。いい勝負であった。つまり「双方が満足できる形で」まとまった。」こう書いてあるのです。
 こういうことから考えてまいりますと、日本にとっては、ソビエトの危惧を薄めるために努力した結果、この第四条の条項というものができて、これは日本の努力が実ってこういう条文になって、双方満足するというこの条文の体裁になった。これはいわばそういう政治的配慮のための条文というふうに解してよろしゅうございますか。いかがでございますか。
○園田国務大臣 第四条には、まず基本的な精神は、この条約締結によって日本国の自由な、しかも日本国の考えておる外交方針がいささかも拘束されるものではない、こういう表現のもとに、いま土井委員がおっしゃいましたようなことも考慮しつつやったことは事実でございます。
○土井委員 そうすると、端的に言うと、これは政治的配慮のための条文というふうに解しても間違っていない、こういうことになるわけでございますね。
○園田国務大臣 わが国の基本的な外交の自由を守ったわけでありますから、そういう意味と、それから他の政治的な配慮も入っていることも事実でございます。
○土井委員 それまで政治的配慮をされてこの第四条という条文を入れられた、そういうことになってまいりますと、親ソ外交というものをこれから実際上日本としてはとっていかなければならない宿命がここにございます。したがいまして、親ソ外交に対して、この第四条からすれば、積極的に日本としては努力を払うということが必要になってくる、そういうことに相なりますが、これでよろしゅうございますか。
○園田国務大臣 全くそのとおりでありまして、ソ連に対して友好関係を緊密にしていきたい、こう考えております。
○土井委員 そこで、いろいろ、日中平和友好条約に従いまして日中間でこれからとられてまいります協力関係の中に、中国が今世紀中に先進工業国の経済水準に達することを目標に進めてまいります四つの現代化という問題に対しての日本からする協力という問題がございます。この四つの現代化というのは、申し上げるまでもなく、農、工、軍、科学技術、この四つの現代化でございますけれども、この四つの中国の現代化についての日本側の協力の仕方が、場合によっては、ソビエト側から見れば反ソになるような仕方も出てこないとは限りません。端的に申し上げますと、軍事についての現代化に日本が協力をしていくというふうなことをいたしますと、どう見ても、これはソビエト側からすれば反ソ的な状況をここで醸し出してくるわけであります。したがいまして、そうは絶対させないというふうな御努力というのが日本側においては必要になってくるわけなんでございますね。そういう御努力というのは、具体的にはどのようにして日本としては払われる御用意がおありになるわけでありますか。
○園田国務大臣 中国に対しても、現代化のうち軍の現代化には協力することはできません、その他のことはできるだけ協力いたすようにいたします。こういう抽象的な言葉で答えておるだけでありますが、今後は、やはり軍の近代化というものには、社会が非常に交差してまいりまして、単なる経済問題でも、直接ではないが軍の現代化等に影響すること等もありますから、十分この点は検討しながら関係各省とも相談をして、この協力については慎重に注意をしながら、かつ積極的に協力したいと考えております。
○土井委員 さらに具体的にこれをお尋ねをするということについてのお答えはなかなかしにくかろうと思います。ただいまの御答弁も、したがってまことに抽象的な御答弁にとどまっているわけでございますけれども、もう一つこれは申し上げれば、最終的には、いかなる方法においても中国側の軍の現代化、さらには軍備の増強、そういうものに対して日本は協力しないということが、はっきりここで確約できるわけでありますね。総理大臣、いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 中国側はいまお話しの四つの近代化、これに非常に重点を置いた施策を進めておることはお話しのとおりでございます。わが国といたしましては、中国の努力には求められれば協力をする、こういう考えでございまするけれども、お話しの軍事協力、中国の軍事力を強化するための協力、これは絶対にいたさないというかたい方針でございます。
○土井委員 そうなってまいりますと、もうすでに武器輸出に対して、昭和四十二年四月段階での武器輸出三原則というのがございますし、さらに新しくは、昭和五十一年二月に衆議院の予算委員会で政府が統一見解をお出しになりました新武器輸出三原則というのもございます。この武器輸出三原則から考えても、当然武器の輸出は中国に対して日本側からはできないということがまず言えると同時に、もう一つ、園田外務大臣は先日、五月三十日にニューヨークにおいて開かれております国連軍縮特別総会において演説をされているわけでございますけれども、その演説の中には、一般的に武器の輸出を慎むということに対して非常に強い内容を表明された演説を展開されているわけでございます。そういう点から申し上げますと、中国に対して、日本は断じて武器の輸出もあり得ないということがここで確認されてよろしゅうございますね。
○福田内閣総理大臣 そのとおり御確認願います。
○土井委員 先日わが党が入手いたしました外務省調査部分析課の資料がございます。これはもうすでに当委員会で井上一成委員の方から質問の中で取り上げられた資料でございますけれども、この資料によりますと、中国の軍の現代化を進めようとしている中で、中国は西側諸国からの武器導入を図らざるを得ないということが明記をされているわけでございます。このバランスを軍事力に求める、中ソの軍事力にバランスをつくるための中国の武器の増強、さらに軍の増強という問題が、日本は言うまでもなく、アジアに対してどういうふうな意味合いを持つかということは、私は、今後大変大きな課題であろうと思われます。
 そこでお尋ねをしたいわけでありますが、この中国の、中ソの軍事力のバランスを持つための軍備の増強というものは、一体好ましいというふうに考えてよいのかどうか、わが国にとって、さらにアジアの平和にとって。どのようにお考えになりますか、外務大臣。
○園田国務大臣 ただいま発言されました、わが外務省の調査部から出しましたものは、これは外務省の分析ではなくて、どこかに書いてあると思いますが、これに関する各種の新聞あるいは研究の資料、これをそのまま集めまして発表したものでございますから、その中に書かれていることが外務省の意見だというわけではないということをまずお断りをいたしておきます。
 中国の軍備についてわが方はどう見ておるか。これは先般も申し上げましたとおり、中国が自分の国を守るために、独立国家として防衛をどうされようとこうされようと、こちらが干渉すべきことではない、こういうふうに思っております。
○土井委員 それは干渉すべきでないということは大原則でございます。内政干渉は一切慎むべきであります。したがいまして、干渉することは許されない、これはもう明々白々でございますけれども、しかし、今後中国が中ソの軍事力のバランスということを中心に考えながら軍備の増強をやるという状況に対して、これを、アジアの平和を確立していく、アジアの平和というものを維持していくという点から、さらにわが国が平和に対して貢献をする、平和を安定さすために努力をする、そういう立場から考えて、その状況はどのように受けとめてよいかということは、これはお答えの対象になるであろうと思うわけであります。いかがでございますか。
○園田国務大臣 先般ソ連のグロムイコ外務大臣とお会いしたときに、この条約に対することは、不愉快ではあるという発言はありましたが、条約そのものに難点は言われませんでした。ただ、対立しておる中国と友好関係を結び、これに力をかすことが、ソ連にとっては不愉快である、こういう意思の表明もございましたので、均衡による平和を願っておるわれわれとしては、いろいろ判断はございますけれども、いま日本外交として一番大事なことは、先ほど申し上げましたとおり、ソ連と日本の関係をうまく進めていって、そして、私が中国でも言いソ連でも言ったように、中ソの対立が緩和する方向をわれわれは願っておるので、微力であるがそういう努力を続ける、したがって、一方に加担することは断じていたしません、こういうことを言った手前、この軍事情勢の判断を外務大臣としてここで申し上げることは、とかくの誤解を招くので、お許しを願いたいと思います。
○土井委員 それは外交的な配慮というのも外務大臣の御発言の中には一つ一つございますから、重ねて強くこの点を追及することは、私自身差し控えたいと思います。
 さて、今後、日中間における経済協力のパイプが大いに太くなっていくということは、実際問題として事実でございますけれども、中国を日本の広大な市場とする見方をとるのではなくて、平等互恵の原則というものをお互いの間でかたく守りながら協力をし合っていくということが大切だと考えられるわけでありますが、この点に対しての心づもりはいかがでございますか。
○園田国務大臣 ただいまの御発言、全くそのとおりだと考えまして、中国にもそういう話し合いはしてまいりました。日本としてもこれを市場として見ては相ならぬ、こう思っております。
○土井委員 先ほどの条約第四条という問題とも少し関連が出てくるわけでございますけれども、最近特に米中の国交正常化が進みつつあるというニュースが聞こえてまいります。したがって、ここで米中の国交正常化というものが具体的になってまいりますと、日米中の軍事的な同盟というものが事実上でき上がっていくのではないか、こういうふうな懸念を持たれる方もないわけではないようであります。こういうことを心配されているこの心配は当たらないということを、ひとつわれわれとしては具体的に実証しなければなりません。それは努力の中で実証しなければならないと思うわけでありますけれども、このことに対してどのように外務大臣はお考えになっていらっしゃいますか。
○園田国務大臣 まず、私が就任しましてから二回の日米首脳者会談があったわけでありますが、その際、総理と大統領の二人きりの会談、それから私の入った会談、私と外務大臣等の会談においても、日中友好条約についてアメリカに相談したことはございません。ただ、私が、日中友好条約は進めていきたい、近い将来締結します。こう言ったことに対して、成功を祈るという外交的な辞令があっただけであります。私が、日中友好条約は締結いたしますと一番先に言ったのは、言いにくいことでありますが、ソ連のグロムイコ外務大臣に言ったことであります。
 なお、いまの御質問の点に対しては、しばしばの各種の会談等による私の確信は、米国自身が日本、中国、米国と三国が結んで軍事的な協力なり協議なり、あるいは力の脅威をやろうという意思は全くないことは、私は各種の話し合いで確信を持っておるばかりでなく、米国自体も中ソの間の紛争が火を噴かないことを願っておるということは、間違いはございません。したがいまして、米中関係は、上海の共同声明以来両国から話し合いは進んでおるようでありますけれども、どの程度進んでおるのか、どういうことになるのか、こういうことも、私としては詳細に知るところではございません。
○土井委員 先日、日中条約というのは、この条約の一条、二条から見ても明らかなとおりで、内容としてはお互いが不戦の約束をした不可侵条約的なものだというふうな御説明がなされているわけでございますが、これは、外務大臣の御認識はそのような御認識であるという御答弁もいただきましたが、総理大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
○福田内閣総理大臣 これは平和五原則を軸としてこれから日中間をやっていこうということでありまして、相互に武力で事を解決しようというようなことは絶対になくするようにしなければならぬ、こういうことを条約で厳粛に誓い合ったということでございます。
 なお、日中間で非常に大事なことは相互に内政に干渉しない、こういうことだろうと私は思うのです。この点も園田外務大臣が十分話をしてきておるところでありまして、この点は特に心していかなければならぬ点である、このように考えております。
○土井委員 そうすると、再度私は御質問をいたしますけれども、端的に申しまして、内閣総理大臣は、この日中条約は不戦の約束をした不可侵条約と考えてよいということをお認めになっていらっしゃるわけでございますね。
○福田内閣総理大臣 そのとおりに理解をいたしております。
○土井委員 そういたしますと、もはや、日米安保条約は中国を対象としている条約とは考えられない、安保条約はもはや中国を対象としていないというふうにも見られるわけでありますが、この点はいかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 日米安保条約は、特定のどこの国を対象とするというような性格のものではないのです。わが国としては全方位平和外交、どこの国とも友好にしていこう、こういう考えでございますけれども、どこでどう間違って、間違った考え方を持つ国があるかもしれない、そういう際には断固としてこれをはねのけなければならぬ、こういう性格のものでありまして、まあ、日中間で相互不可侵という約束をした、それが守られる、こういうことにおきまして、日米安保条約は中国に関する限りにおきましては、これはもう何の適用というようなケースは考えられないということと思いますけれども、とにかく日米安保条約というものは、それ自体どこの国を対象にしてやっているという性格のものではないということを御了知願いたいのであります。
○土井委員 ただいま総理大臣は、どこの国を対象として考えられた条約というわけではないというふうな御答弁を、安保条約に対して御説明されたわけでございますけれども、総理大臣、御承知のとおりに、この安保条約についての佐藤総理大臣とニクソン大統領との間の、昭和四十四年十一月二十一日の共同声明なるものがございます。御承知のとおりであります。この共同声明の中で、第四の個所に「韓国の安全は日本自身の安全にとつて緊要である」ということを述べたということと同時に、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとつてきわめて重要な要素である」ということを述べた、こうございます。いわゆるこれが後に台湾条項と言われている内容でございます。したがいまして、そういう点からいいますと、これもまた総理大臣が御承知のとおりに、今回の日中平和友好条約の土台になりました国交回復の折の日中共同声明の第三項で、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こう述べてまいったわけであります。そういう関係からいたしますと、先日、参議院の予算委員会の席で総理大臣の御答弁の中に、日米安全保障条約の形式上は台湾条項は残っているけれども、日中条約を締結するということを頭に置いて安保条約というものは運用していきたい、こういうふうな御発言があったわけでございます。さらにまた園田外務大臣は、先日調印をされて、そして政治生命をかけて懸命にがんばってこられて北京からお帰りになった八月十八日の外務委員会の席で、台湾地域に「武力紛争が起こるおそれはないと申し上げます。」と、これまた、きっぱり御答弁をされているわけであります。こういうことからいたしますと、安保のたてまえはたてまえといたしまして、事実上台湾条項というのは消滅したというふうに見てよろしゅうございますかどうですか。この点はいかがです。
○福田内閣総理大臣 土井さんのおっしゃる台湾条項というのは、佐藤・ニクソン会談で台湾地域はわが国の安全に非常に重要な関係を持つというそのことを指しておられると思いますが、あの当時の両国の認識、特にわが国の認識を佐藤総理は申し述べたという性格のものなんです。
 それはそれといたしまして、日米安全保障条約というものがある。その適用範囲は一体どこだというとフィリピン以北、台湾地域、こういうようなことになっておる。その条約上のたてまえ、これは日中共同声明によって変化が来たものとは考えない、こういうことを申し上げておるわけであります。
 さてしからば、台湾周辺において何か一朝事が起こった、そういう際に米軍がわが国の基地から発進をする、そういうときには日米安全保障条約に従いましてわが国の事前承認を求めなければならぬ、これは米軍の義務であります。米国政府の義務であります。その際に日本政府はイエスと言うのかノーと言うのか。もう状況が全く変わってきた、佐藤総理当時の認識とは大分変わってきておるじゃないか、そういう認識の上に立てば、これはもうイエスというケースはないのではないか、こういうようなお尋ねでありました。それに対しまして私は、日米安全保障条約上のたてまえは、日中共同声明によって、いわんや今回の日中平和友好条約によって何らの変更を来すものではない。しかしながら、お尋ねの、わが国の基地から米軍が発進をするという際の事前協議に対する答弁、答えはどうなるかというと、それは理論的にはイエスもありノーもある、こういうことでありますけれども、いまや共同声明も発出した、また日中平和友好条約もできた、また台湾周辺の客観情勢というものはきわめて平穏である、そういうことを考えますときに、それらの状況を踏まえてお答えをするということになるであろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
○土井委員 そうすると、いまの総理大臣の御答弁を総合して、これまた結論の部分だけを申し上げますと、安保条約の形式上は台湾条項はあるけれども、しかし現状のこういう日中平和友好条約、さらにその土台になっている日中共同声明、さらには台湾周辺にいろいろな緊迫した状況はない、そういうことを総合して考えて、事実上台湾条項は消滅したに等しい、こう見てよいということになりはしませんか。
○福田内閣総理大臣 非常に細かくなって恐縮なんですが、台湾条項、条項といわゆる土井さんのそのお言葉は、佐藤総理のその認識を指しておられるのであるとすれば、その佐藤総理の認識はもう非常に変わってきているのです。私が申し上げているのは、佐藤総理のいわゆる台湾条項、これの認識は変わっている。変わっていることは変わっております。しかし、御質問を受けますのは、安保条約との関係は一体どうなんだ、こういうことを聞かれますものですから、安保条約との関係におきましては、もう日中共同声明、あのときも台湾の問題は、いまお読み上げになられたとおり相当はっきりしておるのですよ。そういう変化も出てきておる。そういう状態であり、また佐藤総理の認識の時代とは大変変わって、いま静かな状態でもある。そういう状態でありますので、仮に万一、そういう今日の静かな状態にもかかわらずあの周辺で問題が起こった、その際に日本の基地から米軍が進発する、そういう際に日本が何か事前協議を求められる、そういう際にイエスと言うかノーと言うか、こういうと、わが国といたしましては理論的にはイエスもありノーもある。つまり安保条約の対象範囲、これには共同声明にもかかわらず変化はないのですから、そう言わざるを得ないわけです。しかし、佐藤総理の当時と事態の認識はもうまるきり変わってきておるのだ、それから日中平和友好条約というような、これから日中間は平和友好で行きましょうというような条約もできたのだ、そういうことを彼此総合いたしますと、イエス・オア・ノーを決めるその際には特別の配慮をしなければならぬ、このことを申し上げておるわけであります。
○土井委員 それでは、少し表現を変えて申し上げたいと思います。
 なかなか総理は渋いことをおっしゃるわけで、余りその点についてかたくなな御説明ばかりを御答弁でなさいますと、やはりそれならば、心配しているとおりに、日中米軍事同盟というふうなものが刻々と形成されていっているというかっこうになるのではないかという危惧を抱く人たちも出てくるに違いないと思います。したがいまして、この点は回りくどい表現でなしに、端的な御説明で御答弁をぜひお願いしたいと思うのですが、そういたしますと、事実上台湾条項といままで言われ続けてまいりました佐藤・ニクソン会談のあの共同声明の内容というものは消滅したということは、これは大臣はなかなかおっしゃらないわけであります。状況が変わったというふうなことで先ほど来御説明を賜るわけでありますけれども、この台湾条項という問題を安保条約を適用する場合に、運用する場合に当てはめて考えていきますと、実際問題は名存実亡という状況になっているのではないか。実際問題この台湾条項という問題は、安保条約上はもはや、名前はあるけれども実はないという意味の名存実亡という状況になっているのではないか。このことに対して御確認は賜れませんか。
○福田内閣総理大臣 名存実亡というのは私が発明した言葉ではないので、中国側で言っている言葉なので、それがどういう意味を持つかということを正確に理解した上でないと申し上げられませんけれども、とにかく理論的には安保条約の適用範囲といたしまして台湾周辺が含まれる、こういうことでございます。これが現実にどういうふうに適用されるのか、これはつまり事前協議の場合を私は申し上げているわけでありますが、その際におきましては、もう共同声明もできました、あるいは日中平和友好条約もできました、また最近における、佐藤総理が認識した当時の状況とはあの周辺の平和状態というものは大変変わってきたということを踏まえまして、それらを配慮いたしまして判断します。こういうことを言っておるわけであります。
○土井委員 そういたしますと、佐藤総理がニクソン会談のときに確かめられましたいわゆる台湾条項というのは、もういまでは意味がない、実質上の意味はない、こういうことがいまの福田総理の御発言の中からうかがえるわけであります。
 それならば、先日、これは実は外務委員会、八月十八日の日に、条約局長である大森さんに質問をして御答弁をいただいているわけでありますが、間違いのないように、会議録によりましてその部分を読んでみたいと思います。
  今次交渉の過程におきまして、日本側は、わが国の外交政策において日本と米国の特別な協力関係は今後ともわが国の対外関係の基軸であり、日米安保条約体制はわが国の安全保障を支える一つの大きな柱であり、これを堅持する旨を述べましたところ、中国側は、日米関係が特別な地位にあること、日本が日米安保条約を必要としていることにつき明快な理解を表明いたしました。したがいまして、日米安保条約及び同条約に係るわが国政府の立場は、日中平和友好条約の締結によって何らの影響を受けるものではございません。極東の範囲に台湾地域が含まれることについても、何らの変わりもございません。
こうなっているのですが、ここにある日中平和友好条約は日米安保条約にかかわりないと言われている、このかかわりないという内容をまず大森局長、ここでちょっと説明を賜れませんか。
○大森政府委員 あの際私が発言いたしました冒頭におきまして申し上げたことは、日中共同声明というものが日米安保条約にかかわりなく発出されましたと同様に、日中平和友好条約の調印は日米安保条約にかかわりなく達成された、調印されたということを冒頭に申し上げてあるわけでございます。その「かかわりなく」という意味は、特にこの問題が日中の、この問題と申しますのは、日米安保条約が、日中共同声明を発出するにつきましても、あるいは日中平和友好条約を調印するに際しましても何ら問題とならなかった、かかわりがなかった、議論されなかった、こういうことでございます。
○土井委員 日中間においては議論されなかった。ただしかし、今回ただいまの総理の御発言からいたしまして、この台湾条項というものが佐藤・ニクソン会談で確かめられたときとはまるで状況が違ってきたわけでありますから、そういうことからいたしますと、安保条約の第六条に申しております極東の範囲についても、やはりそれなりの認識に対しての相違が出てきてしかるべきだというかっこうになってまいります。六条の極東条項は従来どおり、たてまえとしては極東の範囲というのは変わりはないけれども、しかし、それを適用する場合において、この台湾という問題に対する取り扱いは台湾条項の当時に比べて変わってきている。したがって台湾というものを、台湾の安全は日本の安全という認識で見るという事実上の問題は、ここに消滅している、そういう認識は消滅している、この日米安保条約の第六条の極東の範囲の中で認識する場合にそういうふうになっている、このように理解してよろしゅうございますか。
○福田内閣総理大臣 事実関係はもう非常に変わってきたのです。先ほどからるる申し上げておるとおりでございますが、これは安保条約の問題となりますと、台湾の地位というような問題と絡んでいろいろ理屈をこねますと、いろいろの議論があるわけです。そういうことで、安保条約、これはただいま大森局長から御説明申し上げましたように、日中平和友好条約とは何のかかわりもなく存在しておるわけであります。また、中国側もこれを認めておるし、条約上も、条約第四条においてそのことをはっきりさしておるわけですから、そういう意味合いにおきまして、安保条約のたてまえは、この条約またはその以前の共同声明、これによって違うところはない。しかし、実際は、先ほどるる申し上げたとおりずいぶん変わってきておるので、その辺は十分心得ておる、こういうことでございます。
○土井委員 総理大臣は、力んで十分心得ておるとおっしゃいましても、どういう心得を具体的になすっておるかというのは、もう一つ判然としないわけであります。これは端的にお答えいただけませんか。安保条約第六条にいうところの極東ということに対する認識が変わってきておる。極東に対しての運用という問題が、解釈は従来から変わらなくとも、日中平和友好条約の締結後は、事実上の運用において異なってくる。いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 法理的には、日米安保条約と日中平和条約とは何ら関係なくできておるわけであります。法理的には相互に影響するところはないのでございますけれども、実態といたしましては非常に変わってきておる。その辺を心得ながら、日米安保条約の運用には配慮する、こういうことを申し上げておるわけです。
○土井委員 そういたしますと、日中平和友好条約が締結された後、この安保条約について、大分、運用面での極東の範囲に対する取り扱いの違いが具体的には出てくるということにならざるを得ないだろうと思うわけであります。
 こういうことを考えてまいりまして、これは時間のかげんもありますから、一つここではっきり確かめておかなければならないのは、いまの日米中の軍事的な同盟というものが事実上でき上がるのではないというあかしを、具体的にこの日中平和友好条約締結に向けて私たちは明白にしておかなければなりません。そういう点から考えますと、総理大臣は最近しきりに有事立法の問題をほのめかしておっしゃるようであります。これが必要だということをおっしゃるようであります。有事というのは、奇襲を前提として考えられるのが有事でありますから、一体どこの国からの奇襲があるのか。これは先日、万々一という、またこれは総理大臣の言葉でありますから、まさか、人の言ったことだからその意味はわからないとはおっしゃらないだろうと私は思いますけれども、万々一ということで、この奇襲というのはどこからあるとお考えなんですか。韓国からあるわけでありますか。アメリカからあるわけでありますか。中国からでありますか。朝鮮民主主義人民共和国からでありますか。ソビエトからでありますか。いずれからその奇襲というものを認識して有事というものをお考えになっていらっしゃるのか。いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 先ほどから、日中米軍事同盟というような説があるというようなことでございますが、これは大変な誤解というか曲解といいますか、そういう議論だろうと思いますので申し上げますが、私は、米中間に国交正常化の時期が来るということ、お互いに努力しているということはよく承知しています。しかし、その正常化が米中軍事同盟だというような性格である、こういうふうには断じて思いません。それから、先ほどからも申し上げているとおり、日中関係だってそうですよ。日中関係、これも平和的諸関係のことでありまして、軍事同盟的なことは考えておらぬ。これもよく御理解されておるということだろうと思いますが、したがって、そういう間に日米中の間で軍事同盟ができるなんというようなおそれは万々、これも万一もありませんから、そのとおり率直に御理解を願いたいのであります。
 わが国の世界に臨む立場は、これは日中間については日中です。日米間については日米です。日ソ間については日ソであります。そういう間において、これは置かれておる立場でいろいろな違いがあるのです。日米間においては日米安全保障条約というような、軍事面を含めての強いきずなで結ばれておる、そういうことでございますが、日中間は、これは平和友好関係だ。日ソ間も、条約だけはできておらぬということでありますけれども、平和的関係は推進しよう、こういうことでございます。
 私が言う全方位平和外交というのは、決して等距離ということを言っておるわけじゃないのです。私どもの立場として平和ということで呼びかけよう、こういうことなんです。しかし、わが国がいかに平和、平和、平和といって、どこの国に対しましても平和友好関係を呼びかけると言いましても、さあ、どこかの国で、よこしまな心を持った国が出てこないとは限らぬじゃありませんか。そういう際に備えて、わが国はわが国を守る態勢を進めておるというようなことであって、いま私の全方位外交の立場からいって、どこの国を仮想の敵国であるなんというようなそんな考え方は一切いたしておらないのです。まあしかし、あらゆる可能性を考えまして、――わが国はとにかくわが国の安全は守り抜かなければならぬ、他の国を侵すというようなそういう考え方は持ちません。しかし、どこかの国でそういうよからぬ考え方を持ってきたとする、その際にはこれをはねのける、こういうことを申し上げておるわけであります。はねのける、そのために、これは国全体であらゆる面で備えをしなければなりませんけれども、特に軍事的、武力的な面におきましては自衛隊というものを存置しておるわけであります。存置しておる以上、あらゆる可能性に対しまして準備をすることは当然である、そういうふうに考えまして、有事体制をどうするかというような論議がありますから、その有事体制に対しましては、これはちゃんと抜かりない準備をしておくことが妥当であるということを申し上げておるわけであります。
○土井委員 ただいま総理大臣はるる御説明をされましたけれども、よからぬ考えを持つ外国がないとは限らない、その国をはねのけるために日本としては有事体制を考える必要がある、こういう御発言でございますが、よからぬ考えを持つ国をはねのけるのには、これはいろいろなやり方がございます。総理大臣がおっしゃるような有事立法並びに有事体制というものを考えてそれをはねのけるということが、果たして、日中平和友好条約後の日本は平和国家として、アジアは言うに及ばず、全世界に貢献するという態度を表明することになるのかどうか。アジアの諸国からすれば、また再び日本は軍事大国になるという方向に進んでいっているんじゃないか、こういう危惧を総理大臣のただいまの御発言からしても受けとめられるという向きが十分にあるやに私は思います。ソビエトからいたしましても、そのことは大変問題だと私は思うわけでありますが、外務大臣はこのことに対してどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
○園田国務大臣 有事立法、有事体制の研究は、これは国の独立を守るために結構でありますけれども、外務大臣としては有事をつくらないのが外務大臣の責任でありますから、外務大臣は、憲法の枠内で、しかも他国に不安を与えないようにこういう研究その他のことをやっていただきたい、こう思うわけであります。
○土井委員 外務大臣の職務からされればそれは当然だと思いますけれども、総理大臣と、有事ということに対しての考え方に大分相違があるようであります。その辺は、総理大臣が独自の感想としておっしゃっているという分については御自由でありましょうけれども、やはり一国の総理として、政治の最高責任者として、このことに対していろいろと問題を展開されていっているわけでありますから、事は国内問題にとどまらず、国外において外国から日本を見る目というものが、このことによって非常に左右されてくるということも現実ただいまの重大な問題になってきているのじゃないか、私はこのように考えます。
 したがいまして、いま奇襲というものを前提にして考えていく有事というものは、日中条約後の、日中平和友好条約を締結する日本の中国に対する責任、さらにはアジアに対する責任、全世界の平和というものに対しての責任、そういう点から考えても好ましくないと私自身はきっぱり言わなければならないと思いますけれども、外務大臣、いかがでございますか。
○園田国務大臣 私は先ほども申し上げましたとおり、憲法ということと、他国に不安を与えないように、その枠内でそういう研究をしていただきたい、こう言っておりますとおりであります。
○土井委員 さてそこで、昨日のNHKテレビの国会討論会の場で、ただいま御出席の金丸防衛庁長官は、例の機密保護法の制定について、将来はこれを考えなければならないという先日の参議院の予算委員会での総理発言について、総理からの命令は受けていない、これは将来の、総理の個人的見解の願望だろうと思うというふうな趣旨のことをおっしゃっておられます。これはそうでございますか。
○金丸国務大臣 私がNHKのテレビの座談会におきましてそのように申したことは、間違いありません。
○土井委員 そういたしますと、総理大臣と金丸防衛庁長官との間では、大分にこの問題に対しても認識の相違がございます。
 総理大臣は、先日、問題の参議院の予算委員会で、この機密保護法が必要であるという理由について、日本はスパイ天国だと言われているから、したがってこれが必要だというような趣旨の御答弁をされておりますが、日本がスパイ天国だと言われる御発言の裏づけになるような事実がございますか。私は、これはただならぬ御発言だと思って聞いているわけであります。そのことに対しての立証をなさらない限りは、スパイ天国だなどということは安易に口にすべき問題でないと思うわけでありますが、このことに対しては定かな根拠があるわけでございますか、いかがでございますか。
○福田内閣総理大臣 わが国といたしましては、今日この段階におきましてはいろいろ国家の機密というものがあります。ありますが、自衛隊の中の機密ということ、これは非常に重要なものでありますが、これの保障といたしましては、自衛隊員がその職務で知り得た機密を漏らすという際には、三万円以下の罰金また一年以下の懲役という制裁があるわけなんです。そういうことで、いまは防衛庁は、それを厳格に実行します。それで軍事上の機密は守られます。また守ります。こうおっしゃいますが、さて、有事という際になった場合に、その程度の機密保護の体制でいいのだろうか。これは三万円の罰金で済むのですよ、一年以下の懲役で済むのですよというくらいなことでありますれば、あるいはそれを犯して国を売る、機密を売るような者が出てこないとも限らぬ。ですから、その一事を考えてみましても、有事においての機密保持をどうするか、これはひとり防衛庁だけの問題ではありません、各省にもそういう問題があると思いますけれども、検討に値する問題ではあるまいか、私はそのように申し上げておるわけなんです。
 まあとにかく、国家機密をどういうふうに保持するか。これを拡大しまして、やれ言論統制だ何だと言うような人がありますけれども、そんなことは全然考えておりません。そうじゃないのです。本当に日本の国が死ぬか生きるかという際に、いかにして日本の国の機密を守るかという最小限の備えというものは検討しておかなければならぬだろう、こういうふうに思うわけでありまして、他意はありませんから。有事の際に国をどうして守り抜くかという最小限の備えはしなければならぬだろうなということを考えているので、これは防衛庁長官との間に何らの相違はございません。
○土井委員 幾ら総理大臣がそういう抗弁をなさろうとも、防衛庁長官との間で、昨日のテレビの国会討論会を通じ、また今日のこの席を通じての御答弁の上で開きがあるということも、具体的にここで確かめられているわけであります。しかもこの辺は、福田さんは、大平さんとちょっと物の考え方が違っているようでございますね。大平さんの場合は、現行法で十分だという考えであります。新たに、総理がただいまおっしゃったようなことは一切必要ない、このような立場で臨んでおられるようでありますから、大分に考え方の上で開きがあるようであります。
 要するに、私たちは外国に対して、一切軍事大国にならないというあかしを具体的にしなければならぬ、このことが今回の反覇権という条項に対して、それを中心に盛った、そして子々孫々に至るまでの平和友好のきずなをこの条約によってしっかり結ぼうとしているわが国の基本的姿勢でなければならないと思います。平和憲法を持つわが国としては、軍備に頼る国ではない、軍事力を増強してそれによってこれからの国を考える国ではない、一にも二にも平和に対してのあかしというものを具体的に明らかにしていかなければならない、このことが私は、今日ただいま問われている一番大きな大切な問題だと思っております。
 したがいまして、最近の福田総理のこの有事立法に対するいろいろな御発言なり、またそれに対するいろいろな御意見なりは、いまの日中平和友好条約の中身に対して、これからの平和というものを確保すべく締結をされる条約であるにもかかわらず、このことがむしろ、日本と中国との間でせっかく考えていることが、いまの福田政権によって逆の方向に、つまり軍事大国の方向に持っていかれてしまう、そういう危険性というものを感じている人たちに対して、しっかりと平和の国家であるというあかしを立てなければならないときだと思います。したがいまして、福田総理の最近の一連の御発言に対しまして、私たちはこれは基本的に認めるわけにはいかないという意見をはっきり申し上げさせていただいて、質問を終えたいと思います。
○永田委員長 渡部一郎君。
○渡部(一)委員 日中平和友好条約が本委員会にかかりますことは、戦後の大きな処理の問題の中で最大の懸案の問題でありましたし、ここ十数年にわたる日本国民のコンセンサスの上に立つ国民の願望でありました。長い間の自由民主党の中におけるさまざまな意見の葛藤を乗り越えて、総理はいよいよ決断をされ、本条約を当委員会へ提出されたてとに対し、深く敬意を表したいと存じます。
 私はこの条約を見ておりますと、まさに、日中問題はこれで一つの軌道には乗りました、日中条約はできましたし完成はしましたが、日中関係はこれからスタートするのだという感じを強く持つものであります。問題はこれからにありますし、どんな理想的な文章をつくったとしても、その文章を土台として両国間の紛争が生じたり戦争が起こったりする場合もあるのでありますし、この条約を背景にした政策の運用、外交方針の展開は、わが国にとってまさに大きな課題を与えるものだと思うわけであります。
 そういう意味で、私はこの条約に対して、内容については当委員会ですでに相当の審議が行われましたけれども、その内容と、これからどういうテーマ、どういう問題があるかというような点につきまして、率直に議論を進めたいと存じます。
 まず最初に、当条約の第二条には覇権反対の条項が高らかにうたい上げられております。日本政府のいままでの説明では、反覇権ということは新しい国際的なルールを示すものであり、あるいは日本政府としてもこれまでの日本国憲法並びに国連外交で表示されたさまざまな外交の基本的条項に合致するものであるというようなニュアンスの答弁が何回かございました。反覇権の条項を含む条約が成立したのはこれが世界で初めてと承っておりますが、これを運用するに当たって、なかなか問題は大きいことだと存じます。この反覇権条項は、当条約の中に日中関係としてとらえられているだけではなく、「いずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」となっております。この反覇権条項をどう評価されておるか、それを総理に改めてお伺いしたいと思います。
○福田内閣総理大臣 反覇権という文字ですね、この覇権というそもそも文字は昔からある言葉なんですが、私どもの学生時代の寮歌にも、覇権を譲ることなかれなんていうような文字があるくらいでございまして、これは古い言葉なんです。ただ、これが政治上、外交上の言葉として出てきたのは、私の理解するところでは中国じゃないか、こういうふうに思うわけであります。ただ、その覇権の意味するところは一体何だというと、力をもって相手国に相手国の欲せざるところを押しつける、こういうようなことではなかろうか、こういうふうに思いますが、そういう意味だとすると、言葉は違いまするけれども、方々で使われておる。たとえば、私ははっきりした言葉は忘れましたけれども、ソビエトがアメリカ初めいろんな、カナダですか、ああいう国々と基本関係宣言というようなものを結んでおる、そういう中にもあれと同じような言葉が書いてあるわけなんです。それを中国流に中国で覇権という言葉で使うわけですが、覇権というその言葉は中国が初めてと思いますが、私は、その言葉の意味するところはただいま申し上げたような内容のものとすれば、これは国際社会の規律として当然のことである。ただ、中国が初めてそれを使い出したというようなことで、特殊な意味があるんじゃないかというような見方をする国もあるようでございまするけれども、しかし、それはそれといたしまして、私は、国際社会、これはもう非常に貴重な通則である、こういうふうに考えるわけでございまして、それを条約の中に取り入れるということにつきましては、私は何らの抵抗は感じなかったわけです。ただ、国際社会の中で、この覇権というものは特殊な意味合いを持っておるんじゃないかというような受け取り方をする向きもあるやに聞いておりますので、そういう誤解があってはいかぬ、こういうふうに考えまして、特に条約第四条というものを設けまして、この条約、つまり覇権条項もこの条約の中に含まれておるわけですから、この条約は第三国との関係において両国の立場に何らの影響を及ぼすものではないのだということをはっきりさしたわけです。
○渡部(一)委員 そこまでは結構だと思いますが、一昨日当外務委員会における質疑の際、具体的にこの問題を伺いました。御答弁が少し揺れたように思いますから、きょうはまとめて決定版を御返事をいただきたい。
 わが国は、言うなれば三つの領土紛争を抱えております。一つは言うまでもなく北方領土であり、対象国はソビエト連邦であります。そして、一つは竹島であり、もう一つは尖閣でございましょう。これらの国々の紛争を起こしている様相というものは、不法な状況であるとか、特にソビエトの北方四島に対する占拠は不法な状況であるというふうに説明がすでに行われました。そして、それは、最初の御答弁では、これは覇権以前の問題である、あるいは覇権を上回る行為であるというような御説明があり、後に、そういうことは抜きにして、覇権云々とは関係なく不法な行為であり、両国間の懸案問題であるというように御説明が直されました。また、当初はソビエトを指して覇権国家のようなニュアンスが出ておりましたが、後の答弁ではそれは清算されました。
 したがって、わが国として、これら三つの紛争対象国を覇権国家と認めるか認めないか、これは覇権行為であるかどうか、これは大きな政治判断でありますし、条約を結んだ以上日本国の判断が問われるわけであります。そこで、これに対して明快かつ正確な御答弁を今後のためにいただいておきたい。
○福田内閣総理大臣 まず、北方四島について、これが覇権問題とかかわりがあるか、こういうお話でございますが、この北方四島問題と今回日中間に締結されました反覇権の問題とは別個の問題である、私はこのように理解をいたしております。すなわち、日中平和友好条約、これに反覇権とうたわれておる、これは国際的通常の原理である、こういうふうに先ほど申し上げましたが、それをいかなる場合にいかに適用するかということは、そのケースケースに従って判断してまいります。
 ところで、いま御指摘の北方四島の問題は、わが国の固有の領土である、よってわが国に返還せしむべきものであるというわが国の確固不動の島々でございまするけれども、残念ながらソビエト連邦がこれを不法に占拠しておる、こういう状態であります。しかし、この問題は、いま日中平和友好条約にいう覇権問題とはいきさつが別個にそういう状態になって今日に至っておる問題である。つまり戦後処理、そのごたごたに乗じましてソビエトがいまわが国の北方領土四島を不法占拠しておるという状態であって、これが日中平和友好条約にいう反覇権行為に当たるかどうかということになりますと、これは区別して観念すべき問題である、このようなぐあいでございます。
 それから竹島の問題。竹島の問題も、これもちょっと北方四島に似ておるのです。つまり、あれはわが国の固有の領土である、これもわが国の不動の姿勢であり立場であります。しかるところ、終戦直後のわが国の置かれた立場は非常に弱い立場であった。そういうような中で、あの島々、竹島は不法に占拠されまして、そして今日に至っておる、こういう状態でありまして、さて、これが日中平和友好条約に言う覇権行為に当たるかというと、私どもはそれとこれとは別の問題である、そのような認識でございます。
○渡部(一)委員 そうすると、この条約二条で指定されている「いずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、」「他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」というこの条項は、わが国の周辺においては覇権国家がない、覇権行為がない、現在のところそういうふうに決められるのですか、それともいまのところでは覇権行為というものは、あるかどうかについてまだ決めていないという立場をとられるのですか、どっちですか。
○福田内閣総理大臣 北方四島の問題、また竹島の問題は、終戦直後の非常に不規則な、しかもわが国が敗戦国である、そういうようなわが国の置かれた弱い立場の中から出てきた異常な事態である。あの一つ一つの案件をとりまして、それが覇権行為であると断ずるということは、私は適当ではない。しかし、だからといってわが国は北方四島の主張をいささかも曲げるわけじゃありません。竹島に対するわが国の主張、これが変わってくるというわけじゃありません。それはそれとしてどこまでも粘り強くやる。しかし、これが日中平和友好条約における反覇権の行動としてやるというような性格のものではなくて、戦後処理というような問題、その問題として片づけるべき問題である、このように考えておるわけです。
○渡部(一)委員 私たちのこの審議は、東南アジアの国も、あるいは中国やソ連やアメリカも全部見ておるわけでありますが、わが国の覇権反対に対する姿勢というものは、ある意味で日本外交が本当に平和外交であるかどうか、十分に諸国が見詰めているところだと存じます。いまの御説明によると、最初は力をもって他の国を動かそうとするのが覇権行為というふうに総理は言われましたが、その説明ならば、これらの国々は全部覇権国家に入るわけであります。まさに覇権的行為でありましょう。竹島に軍事力を乗せ、不法占拠することによってわが国にその状況を押しつけようなどと試みている韓国のやり方は、覇権国家と言うしかないのであります。先ほどの福田総理の定義によれば。ところが福田総理は、ソ連邦並びに韓国に関しては、戦後異常の状態の中に発生したことだから、覇権行為と言うのは適当でない、戦後処理の課題であると、まとめて言うとそういうふうに言われました。しかしそれは覇権の解釈から推してくるとどうもおかしな言い方になろうかと私は思いますし、日本の姿勢を疑わせるものになろうかと思います。現に外務大臣は土曜日の討議の中で、日中両国は、覇権行為が発生した場合には一緒に反対を表明する、そういうことがあり得る、こういうふうに言われました。したがって、私はこうした積極的な姿勢といまの総理の姿勢を見ると、何か言いしれぬギャップを感ずるわけであります。ですから改めて伺うわけでありますが、ソ連邦あるいは韓国の行為は、わが国から見れば、覇権行為かどうかは別にして覇権的行為だ、覇権行為に準ずるものだ、こう見ておられるという意味でございますか。
○福田内閣総理大臣 北方四島並びに竹島の事態、これは相手国による不法なる占拠状態である、こういうことを申し上げます。ただ、これが、先ほども申し上げましたが、日中平和友好条約にいう覇権状態、覇権行為であるかどうかということになると、もう少し幅広い立場で検討し、幅広い立場で結論すべき問題じゃないか、こういうふうに思うのです。あの一つ一つの案件だけをとらえて、これが日中平和友好条約にいうところの覇権行為であるということを断ずることはそう簡単な問題じゃないんじゃないか、これは御理解が願えるんじゃないかというふうに思いますが、とにかく不法なる占拠に対しましては断固としてわれわれは戦う、これだけははっきり申し上げます。
○渡部(一)委員 この問題は今後に大きな課題となるべき問題でございましょうし、日本の平和外交の姿勢から見ても、これは慎重に判断をし、考えなければならぬ問題でありましょう。外交当局としても苦心されるところだろう、それは私はわかります。しかし、反覇権の命題についてわが国が毅然たる立場をとることが何らかの形で表示されるのでなければ、この条項は、そうすると他の国から見ると、日中条約と言って大騒ぎしてできたけれども、日本は反覇権とは言うたけれども、具体的には何も反覇権と言わないのだ、反覇権国家ではないのだ、反覇権行為もないのだ、これは要するに言葉の抽象的表現では同意したけれども、一般論としては同意したけれども、この条項を動かさないことを日本は決めたのであるという不信を諸外国から招く可能性があるのではないか、今度は逆にそれを私は心配する。したがって、私がこの条約はこれで終わったのではないと申し上げたのはそれです。日中関係はこれでできたのではない。この適用を世界が大きな目をして見ている。それも余り好意的ではない目でみんなが一生懸命見ておる。その中でこの条約の解釈は何だと言わなければならない。だから、ソ連の行為や何かについて覇権行為でないと言い切ってしまえば、それはもう一つの重要な、ちょっと行き過ぎた表現になるだろうと私は思うのです。総理、ですから覇権行為かどうかについては今後慎重に検討して表明されるというぐらいに御答弁を直されたらいかがですか。そうでないと、総理が、ソ連は覇権国家でない、覇権行為を犯していないとここで大声で表現したということは、日中関係が出だした瞬間に日中関係を破壊することになりかねないと私は思いますし、恐らくそれでは東南アジア外交もごたごたすることでございましょう。その御表現はちょっと正確を期しがたいと私は思いますが、どうでしょうか。
○福田内閣総理大臣 私が申し上げておりますのは、これは竹島にせよ、あるいは北方四島にせよ、戦後処理というか、そういう案件として非常に重大な問題であり、わが国は相手両国がわが国の固有の領土を不法に占拠しているのだ、こういう理解なんです。しかしこれが日中平和友好条約による覇権行為と断ずべきかどうかということになりますと、これは四島の問題あるいは竹島の問題、こういうだけの問題としてとらえるという性格のものでなくて、もっと広い、高い立場で判断し、その一角として論議すべき問題である、このように考えておるのです。それでありますから、この北方四島の問題、竹島の問題は、未来永劫覇権問題とかかわりない問題であるとは申し上げませんけれども、一応これはそういうふうないきさつの違うところから出てきた問題でありますので、別個の問題として考えるべきだ、こういうことを申し上げておるわけであります。しかし、北方四島にいたしましても竹島にいたしましても、とにかく不法に占拠されておるのですから、この不法の状態に対しましては断固として戦う、この決意につきましては微動だもいたしません。
○渡部(一)委員 くどいようですが、もう一つ。
 覇権行為でないと言い切られるのは問題だろうと思いますが、いまの御答弁は、私は、きちっと言われているのですからそれなりの筋は通ると思いますが、覇権行為でないと最初に言い切られちゃったから、その部分はそういう意味じゃなくて、覇権行為かどうかというのは今後十分検討するという意味だと理解していいのですね。
○福田内閣総理大臣 先ほどのあれをずっとレビューいたしまして、そして要約してみますると、あの北方四島あるいは竹島が不法に占拠されておる、この状態が覇権行為であるかどうかという問題は、広範な、また高いいろいろな見地をとらえて判断すべき問題である、こういうことでございます。
○渡部(一)委員 やっと正解が出たようでありまして、私胸をなでおろしているわけであります。というのは、これほどの、わが国がいまこの条約を解釈するに当たっても重大かつ微妙な問題をいま抱えておりまして、その問題はいまの応答を聞いていただければおわかりのとおりだと思うのです。今後の日中関係の運行こそは、わが国の外交の一つの大きな基軸である。この軸をしくじると、日米関係をしくじったと同じように、またある意味ではそれ以上に大きなマイナスというものをわが国政にもたらすことがあり得ると私は思います。したがって、慎重かつ的確なお取り組みが必要だと思いまして、わざわざ何回かにわたって申し上げたわけです。
 第二のポイントを申し上げます。それは、私たち当委員会のメンバーが、言わず語らず、またある委員は積極的に述べられて一番心配したことは、対ソ関係、対東南アジア関係であります。それはなぜかと言えば、日中条約に一番不快の念を示しているソビエト、ある意味で警戒の言葉を述べた韓国、そしてある意味でこの条約の前途というものに対して一部の警戒を述べた東南アジアの国々、こうした国々に対して私たちは説明をしなければならぬ場所に置かれております。対ソ関係に当たっては、わが国の立場からいって日中友好というものは歴史的関係であり、わが国は最も近隣の国として交渉するのが当然であり、反ソ同盟の一環になるつもりはなく、米中軍事同盟に加わるつもりはない、政府から何回も説明が行われており、私たちもそれに共感するものであります。しかしながら、ソビエト側が何回かの説明に対して、日本側は行動で日ソ友好を示すべきであるとか、善隣協力条約を検討すべきであるとか、あるいは本条約はソビエトに対する脅威であるとか、さまざまな表明が行われているわけであります。
 こうしたソビエト側のこの条約及び条約というよりも、むしろ日本の行動に対する深い関心と警戒に対して今後どう取り組むか、これは重大な課題だろうと思います。解答の出にくい問題でもあると思いますが、少なくとも今後の方向性だけは明示した上で取り組んでいかなければならない。本会議における総理の施政方針演説も、その点に関しては外務委員会討議に譲られた面と申しますか、大綱に過ぎて御答弁が詳しからぬきらいがあります。したがって、対ソ外交についてどうされるのか。この場で総理の御見識を承りたいと思うわけです。
○福田内閣総理大臣 日ソ両国はお互いに隣国であります。この隣国であるという関係のほかに、あるいは貿易の面におきまして、あるいは資源開発というような経済協力上の問題につきまして、あるいはお互いにお互いの文化を持っておるその文化の交流という面におきまして、いろいろ両国といたしましては彼此相補う、そういうことのできる関係にある、こういうふうに見ておるわけであります。これから日ソ関係が円滑に伸びていくということになれば、かなりりっぱな二国間関係ができるであろう、私はこういうふうに考えておるわけであります。その認識の上に立ちましてこの両国の関係を進めていきたいというのが私の基本的な考え方です。
 ただ、ソビエト連邦が今回の日中平和友好条約につきまして非常に不快感を示しておる、これは事実でございますが、私どもとしてはそういうことがあってはならぬというので、日中平和友好条約につきましてもずいぶん苦心をし、渡部さんなんかにもずいぶんお世話になった。にもかかわらず六年も時間がかかったというゆえんのものはその辺にあるのです。ですから、この日中平和友好条約ができたからソビエトの立場を害したとか、ソビエトに対する考え方が薄くなったとか、そんな考え方は私は全然いたしておりません。日中は日中のことで、これも善隣の関係でございますから進めていかなければなりませんけれども、日ソにつきましてもそのような考え方で、これから善隣の関係をさらに努力していきたい、これが基本的な考え方でございます。
○渡部(一)委員 時間もありませんから……。私はソビエトに対して、日本の平和的姿勢は変えず、がんこに表明することが大事だろうと思います。これはがんこでなければいけない。ソビエト側が日本外交に対してしばしば不快の念を示した最大のものは、日本側の説明がその都度変わることであります。変わってはならない。平和外交に対する姿勢は特に変わってはならない。
 それから第二には、私は猜疑心を巻き起こすようなことをやるべきではないと思う。向こうはナーバスなんです。それは、わが国の大きさと先方の大きさとを比較すればナーバスだなどと想像もできないのにもかかわらず、日中条約の後、日本側から元自衛隊の幹部が訪中したということを取り上げて強い不快の念が表明されておる。一国の代表が、退役軍人の二、三人が中国へ行ったことを取り上げて、わざわざ日本側に対して意思表示をするということ自体が異常状態であります。よほどの不快感があるに決まっている。これはソビエト外交の伝統的な強い警戒心、そしてそれを巻き起こさないように、こうしたことについてはもっと慎重な配慮があってしかるべきではないか、私はそう思うのです。あのくだらない訪問のおかげでわれわれはどれぐらい損したかわからない。たかが自衛隊の幹部なんというのは後から行けばいいのであって、外交的配慮もなく、ぽかぽか招待に応じて行くばかはない。それぐらいのコントロールのできない政府ではないはずだ。私は、その意味では強い不快の念をソビエト政府と一緒になって表明しておきたいと思うのです。こんなばかな話はない。何にも意味がない。
 だから、いまや日中関係を安定的に発展させるためには、私たち公明党も七一年の六月に中日共同声明をつくり、そして竹入、矢野両氏を中心とする数々の訪中のもとに積み上げて今日までがんばってはまいりましたけれども、今度は日本国民全部がそういった点を深く注意すると同時に、日中関係については政府は特段の配慮を持っていただきたいと思うのです。そうでないと日中関係の接触というのは、私は当委員会でも指摘しましたけれども、教育問題なんかでは、先方から万という留学生が来る。それに対する受け入れの施設がない。そのまま受け入れれば反日主義者を山ほど抱えることになる。当委員会で文部大臣に私は何回も言いましたけれども、設備が全然整っていないままいま迎えようとしつつある。文部省の予算なんというのを文部省に任せておいたら、この問題はどんなに日本の安全保障にマイナスを招くかわからない、そういう状況にある。だから、日中関係でもこういう問題がたくさんある。
 それと同時に日ソ関係にも強い配慮が要る。いま日中条約を結んだのは、日本の国際化時代へのスタートの条約であると私は認識しておるわけであります。どうかその点、十分の御配慮をいただいて、総理におかれても、政府を監督する立場から――いろいろなことで最近はお忙しいようではありますけれども、それはそれ、これはこれでありますから、寸分の余地もなく、寸分のすきもなく、日本の進路を過たぬよう指揮をとっていただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 大変貴重な御助言をいただきましてありがとうございました。そのように心得ていたします。
○渡部(一)委員 終わります。
○永田委員長 曽祢益君。
○曽祢委員 私は、総理に対しまして、条約の問題についてはもう大体内容的にも満足しておりますので、これは討論の際に意見を申し上げますが、三つの点について同僚委員とダブるところがあるかもしれませんが、一つは尖閣諸島の問題、第二は中ソ友好同盟条約の問題、第三がいわゆる全方位外交、その中にソ連を含めて、その三点について簡単に御所見を伺いたいと思います。
 まず尖閣諸島の問題ですが、これは園田外務大臣がある週刊誌の中でしゃべっておられることにも関連するのですが、どうも外相の方は尖閣諸島の領有権の問題に触れることを非常に心配をされたようであります。尖閣諸島の問題を日中のトップ会談の俎上にのせることすらかなりためらっておられたやに伝えられておるのですが、その点については私はそうは考えない。領有権が重なり合っている例は、先ほど来不幸にしていろいろあるのですね、比方四島もそうだし、竹島もそうです。実際問題としては、領有権の主張まで中国側にはっきり放棄させるというのは、日中平和友好条約に関連してそれを遂げようというのは無理だ。しかし領有権問題が重なり合うこと自体には、直接これを否定してかかるのでは交渉もぶちこわしになりますから、そうでなくて、外相が結果的にはやられたように、中国側とも話し合いによって、中国側が、実際上領有権の問題は別にしておいて、そして日本の領有権を侵害したような、この前そういう不幸な事件がありましたが、ああいうことはもう起こらぬぞ、こういう言質を与え、私はそれで手を打って差し支えない、かように考えるのですが、この領有権の問題と中国側の少なくとも日本の領有の事態に対して妨害行為を繰り返さないという言質、これで満足するという、この方向でいいとお考えかどうか、総理の御所信を伺いたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私は、日中平和友好条約締結の過程におきまして、園田外務大臣とケ小平副主席との間の会談をつぶさに伺ったわけであります。私の判断はこれでよろしい、こういう考えであります。つまりこの問題はもう歴史的に見ても、国際的に見ましても、わが国の固有の領土であるということは一点の疑いもないのです。そういうところでありまするから、どうかそれを確認してくれなんというようなことを中国側に申し出ること、これは全く要らざることである、こういうことです。
 しかしそれにもかかわらず、去る四月でございましたか、不幸な事件が起きた。ああいう事件が起こっては困るというだめ押しだけをしておけばそれでいいんだ、こういうふうに考えておりましたところ、園田外務大臣はそのとおりの発言をされまして、そしてケ小平副主席におかれては、もうそのとおりに心得ます。何十年もああいうようなことは絶対に起こさせません、こういうことを明言いたしましたので、この問題はこれで決着になった、このように考えております。
○曽祢委員 竹島の問題はいろいろの経緯があってむずかしいとは思いますけれども、中国側の態度から考えましても、韓国側が少し甘え過ぎているという感じがしてなりません。やはりこれは速やかに、竹島を不法占処しておる事態を改めるべく措置をとっていただきたいと思いますが、総理のお考えを伺います。
○福田内閣総理大臣 竹島も北方四島と同様にわが国の固有の領土であるというのがわが国の不動の見解でございます。ところが曽祢さん、これは一番よく御存じのとおり、あの終戦直後のわが国の置かれた状態、そういうようなことから、不幸にして韓国側があの地域を実力的に支配するというようなことになって今日に至っておるわけですが、私は曽祢さんのおっしゃるとおり、これはわが国の固有の領土でありますから、どうしても決着をその方向でつけなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。ところが一方はああいう状態がかなり長い間続いてしまったのです。そういう状態の中で、韓国の国内政治上の扱い、これも非常にまたむずかしいということ、これも私どもも理解ができるわけでありますが、そういう中において、日中双方がこの問題、先般の日韓閣僚会議のみぎり両外務大臣が話をしたのです。安全操業の問題、これはある程度の進展を見た、こういうことでございますけれども、領有権の問題は依然平行線である、こういうのが現状でございます。しかし私どもは、とにかくこの問題はわが方の主張を押し通さなければならぬという不動の立場を堅持してまいります。同時に取り急ぎますのは漁業の安全操業の問題です。これは一刻も早く軌道に乗せなければならぬ、こういうふうに考えまして、順を追うてということにはなりまするけれども、最終的にはわが国の主張は貫き通すという方針のもとに、差し迫った漁業安全保障問題を片づける。これはとりあえず工夫をいたしておる最中である、こういうふうに御理解願います。
○曽祢委員 これは領有権の問題が重なり合っておってもやはり事態はほうっておけませんので、速やかなる措置をお願いいたしたいと思います。
 次に、中ソ友好同盟条約についてでありますが、これは私がいまさら申し上げるまでもなく、この条約は、冷戦からむしろ熱戦と言われる朝鮮戦争にまで発展するきっかけとなった条約であって、ある意味ではあの時分の産物ですけれども、非常に国際的な相互援助条約等から見て特異な条約ですね。つまり相手をメンションします。名指しで非難し、要するに日本の報復主義と軍国主義の復活と、これと結託する政府、要するに対日米軍事同盟、日米を反対にしたところの軍事同盟、これはその他の相互援助とか何とかということはつけ足しで、完全な名指しの軍事同盟、これは例が非常に少ない。西ドイツの場合ですら、西ドイツとポーランド、西ドイツとフィンランドと結んだような古い条約が若干残っておるようですけれども、非常に特異な条約。したがって、日本とその後の中国もそうですし、ソ連との関係も一応平常な国交を持っておるのですから、もうその事態からいってこういうものは廃棄すべきだ。しかもこの条約は、御承知のごとく、来年の四月九日までに廃棄の手続をとらないと五年間の自然延長に入るわけです。いまちょうどタイミングもよく、奇しくもここに中ソ友好同盟条約を廃棄すべき絶好のチャンスである日中平和友好条約が結ばれた。ですからこれは、中国側の名存実亡という態度もわからぬではないけれども、これははっきりした廃棄の手続をとってもらうことがわが国の立場からいって当然に、中国ばかりでなく、後で述べるように、ソ連に対しても本来そのぐらいの主張をやるべきだ。そういう意味で、中ソ友好同盟条約をそういうふうに重要視してこれに対処すべき外交姿勢を整えて交渉団が臨んだかというと、残念ながら必ずしもそうではない。これは十三日の私の外相に対する質問のときにも明らかにしたんですけれども、実は政府の戦略というものはそう整ってなかった。のみならず、われわれ国会議員がいただいていた、国連に登録された条約の翻訳によれば、はっきり、効力を発生するのは廃棄の通告になっているのです。両国が通告するわけです。中国が破棄しようとすれば、中国が廃棄の意思をソ連に通報する、こういうふうに書いてあるのですね。ところが、条約の交渉における結果は、これは結果的に見ると外相がとられた措置でいいと思うのですが、これは中ソそれぞれの立場からいって通告の必要はないというのですね。廃棄の意思を表明すればいい。したがって新華社通信等を通じて中国政府の意思をはっきり表明すればそれで十分である、廃棄の手続が完了するんだ、こういう見解なんです。それならそれで、そういうことを十分認識の上で臨まれたかどうか。臨まれたとすれば、われわれはそういう点については何ら知らされていない、こういったような食い違いがあるのです。その点に対して総理の御見解と御所信を伺いたい。
○福田内閣総理大臣 わが国が、今回、日中間に日中平和友好条約を結ぶという基本方針をずっと進めてきて、それに署名調印をしたんです。
    〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
ところが、いま御指摘のように、他方中ソ間にはいわゆる中ソ同盟条約があって、それは明らかに明文をもってわが日本を敵国視しておる、こういうことで、その条約というのは相矛盾するんです。そこで私は、園田外相が訪中するに際しまして幾つかの訓令を出しておるわけであります。その一つといたしまして、中ソ同盟条約は日中平和友好条約の締結と相矛盾する、この矛盾を解消するということでなければならぬ、こういうことを申し上げたわけでありますが、この問題につきましてはかねて中国の要人から、わが国の民間人、国会議員を含めまして政府以外の人に対しまして、あれは名存実亡である、こういうふうに言ってきたのでありまするが、今回の園田外務大臣と中国側との会談におきまして、中国側がかねがね覇以外の日本側に対しまして言ってきたその言葉を引用いたしまして、これは名実存亡であるということを政府の立場として申し出たわけであります。また、その他いろいろこれに関連して外務大臣と中国側との間にやりとりがあるのです。これは両国間のやりとりでありまするからここで公にすることはできませんけれども、総合いたしまして、中国側が、日中平和友好条約と中ソ同盟条約とが相矛盾せずということにつきましてある行動をとるということにつきましては間違いはない、こういう感触を外務大臣は得て帰ったわけでありまして、私はそれでよろしい、こういう考えでございます。
○曽祢委員 どうも歯切れが悪いので余りぱっとしないのですけれども、そういう感触とかなんとかという問題は外交辞令であって、実態は、平和友好条約に全くそぐわない、また、絶好の機会であるから廃棄の意思表明をしてもらうことになった。それはそれで結構だと思うのですけれども、政府側がいろいろな、特に条約の正文等について、正しい翻訳等について怠っておった、そういうことは今後ともあってはならないと思うのです。ですから、翻訳が間違っているなら国連の事務局にはっきりその点を指摘するとか、やはりそういう措置をとるべきだ。外務省内部のそういう翻訳についていままではわからなかった。正文でない翻訳を翻訳と思っていたことなんですから、そういうことが再びないようなはっきりした態度をとっていただきたい。
 第三に、これはもう一遍御答弁願います。第三に、私は、ソ連側に対しても、これは中国側がやってくれたからいいという問題じゃないと思うのです。これは後で対ソ外交について時間があれば伺いたいのですけれども、少なくとも善隣友好条約を、平和条約のつなぎでありますからごまかすつもりでは必ずしもないと思うのですけれども、つなぎとしてでも善隣友好条約を結ぼうというソ連としては、中国側が通告したからあるいは意思表明したからいいという問題じゃない。
    〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
善隣友好の精神に反するようなこのような条約、これははっきりソ連としても日本との友好を求める立場から言えば廃棄すべきである。ほうっておけばこれは自然延長という形になるわけです。そういうきちんとしたけじめをとってほしい、こういうことを申し上げている。お答え願います。
○園田国務大臣 総理の前で私からも改めて申し上げておきますが、この前発言しましたとおり、正直に言って、交渉の途中は通告か表明かということは、大臣の意思は存じませんでした。そこで会談が終わってから、新華社で声明するという話がありましたから、法的効果の出る手続をされるかということは念を押して帰ってまいりました。
 なお、後の御注意は十分他の条約についても検討し、それから国連にも通告し、ソ連に対してもそういう態度でやりたいと考えております。
○曽祢委員 わかりました。それ以上追及いたしません。
 そこで、第三の問題が全方位外交であります。当面、日中平和友好条約を結んで、全方位外交の一番厄介でもあるのが日ソ関係であります。これについては、言うまでもなく今度の条約がりっぱにできておるので、彼らが心配しているような、中国側の反覇権運動に日本が参加して反ソ包囲陣へ行く、そんなものじゃ全然ないわけです。条約の内容からいってもりっぱに答弁ができる、物おじせずに堂々とソ連に、しかし説得すべく努力をしていかなければならぬと思うのです。と同時に、先ほど申し上げましたが、そのシンボルとしても、中ソ友好同盟条約みたいなものをそのままにしているような無神経で、しかも場合によったら、外務省の見方によれば、善隣友好条約というのは平和条約で四島を解決するということをひっくり返してしまおう、これにかわるものという意図だというふうに断定しているようですが、私は、それは見てみなければわからない。そういう意図があるかもしれないし、表面から言えば、ある意味で言えば中間的ということを言っているのです。善隣友好条約、あのままで交渉に入っていいという意味じゃありません、私は。むしろやはり基本的態度は四島問題を含めた平和条約による領土問題の最終的解決、これが基本であるということ。そこでもし中間的なものが何かあるとするならば、向こうがそういうものをプロポーズする、提案する前に、それと全く反する、日中平和友好条約のできるような時代に中ソ友好同盟条約に対する態度をそのままにしておくという手はないじゃないか。いま外相からも、そういう観点ではないかもしれないけれども、ソ連に対しても中ソ友好同盟条約の終了を求めるように話されるという。それで結構ですから、そういう基本的態度でソ連に臨んでもらいたい。この点をひとつ総理から御答弁を願いたい。
○福田内閣総理大臣 これからの対ソ外交は結局四島返還を実現して平和条約を結ぶ、こういう一事に尽きるのです。しかし、簡単にそういうふうになるとは思っておりませんが、そこに行くにはどういうふうにしたらいいだろうかということにつきましてはいろいろ苦心をしています。いますが、ただいまの御提言等につきましては篤と私どもも貴重な意見として覚えておきたい、このように存じます。
○曽祢委員 最後に全方位外交を一わたり御質問しようと思いましたけれども、時間がない。
 ソ連問題は別とすれば、やはり日本の安全に非常に関係の深い重要な問題として三つの視点ですね。
 一つは、朝鮮半島の平和と安定を強化する。この点については今度の日中平和友好条約の成立は非常にいい状態。南北両鮮の融合等に非常にいい一つの条件。これに勇気を得て一層日本の外交努力を、南北の融和といいますか安定といいますか、それに努めてほしいということが第一点。
 第二点は、やはり台湾海峡に波が荒くなるのは日本の平和から見て断じて看過できない。今度の条約は、第四条においてその点がどうなるかは、第四条は国を相手にしているのですから、台湾地域あるいは国民政府というか台湾住民というか、こういう問題には関係ないと思いますけれども、日本の態度としては、台湾海峡で一戦交えるような状態は、日本にとって安全上最もゆるがせにできない。ですから、今度の条約をつくったことが、台湾海峡の静ひつといいますか、波立たざることに対してプラスであってもマイナスでない、こういうものであるかどうか。この第二点の台湾海峡の静ひつに対するあれはどうなのか。
 それから第三が、各委員からもお話がありました、世界の各国が注意しておりますし、何といっても日本という世界の自由陣営第二の経済大国、一万においては中国という政治、軍事大国、これが一緒になってやろうというのですから――一緒になってやるというのはあれですが、仲よくなるのは結構だけれども、やはり恐ろしいなという感じを持つ国もかなりある。一方においては、逆にそういうことによってまた中ソの紛争が、これは台湾海峡を含めてそうかもしれない、中ソの紛争が激化しやせぬかという心配を抱いている国は多いわけですね。日本が特に重視すべきASEAN諸国においてそういう傾向が強い。もう皆さん、総理も御承知のように、フィリピンあるいはインドネシアあたりにおいても非常にそういう声が出ている。一例を挙げれば、ソ連はフィリュービン外務次官をASEAN諸国に派遣する。そういうことであるので、ASEAN諸国に対する適当な措置を適時やってもらいたい。場合によっては特使の派遣もあるいは必要であろう。この三点についての御答弁をいただいて質問を終わります。
○福田内閣総理大臣 朝鮮半島の問題につきましては御所見のとおり心得ております。
 それから台湾の問題は、今回の日中平和友好条約の締結交渉の中でも全然話をしておりません。これは共同声明で原則は決まっております。
 それからASEANにつきましては、特に配慮いたしまして、もう外務当局を通じましてるるその立場を説明いたしております。私は、よく理解をされておる、このように考えております。
○曽祢委員 終わります。
○永田委員長 正森成二君。
○正森委員 日本共産党は、戦前、中国に対する侵略戦争に断固として反対し、日本の植民地とされていた台湾や満州の解放を主張し、どんな迫害にも屈せず、日中両国国民の真の友好と連帯の立場を貫き通した日本で唯一の政党であります。また戦後は、一九四九年の中華人民共和国成立以来、その承認と国交回復、平和五原則に基づく友好関係の確立のために先駆的な努力を続けてまいりました。そして一九六六年以来の日本国民の運動に対する中国側からの大国主義的干渉と覇権行為に対しては、わが党はその誤りを道理をもって指摘し、国際関係の共通の基準である平和五原則を擁護する立場から、外国からのいかなる不当な干渉も許さない自主独立の立場を確固として堅持してまいりました。現在必要なことは、過去の中国に対する侵略戦争から教訓を引き出し、二度と政府の行為によってこのような戦争が起こらないようにするとともに、他方、わが国が中国に対しいたずらに卑屈になることなく、言うべきことを言い、中国の大国主義的干渉を断じて許さないという立場を堅持し、平和五原則を堅持することであると思います。
 以下、この立場から質問さしていただきます。
 まず第一に、今回の日中平和友好条約は、一九七二年九月二十九日に発表された共同声明第八項の発展として行われたものでございます。共同声明には「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と明記されております。
 そこで総理に伺いたいと思いますが、昭和六年以来十五年間にわたる戦争が、中国の民族主権、領土主権を侵害した戦争行為であり、いわゆる平和五原則に全く反する行為であったということを現在御認識になっておりますか。
○福田内閣総理大臣 昭和六年以降日中間に起きた事態ははなはだ遺憾なことである、このように考えておりまして、その考え方は共同声明に明記されておる、こういうことであります。日中の不幸な事態に対する認識は、私はあの共同声明で尽きておる、このように考えております。
○正森委員 私は、共同声明の表現にもかかわらず伺いましたのは、今回の条約第一条には平和五原則が明記されております。その中には、主権の尊重、領土の保全ということが書いてあります。そこで、過去十五年間のあの日本の中国に対する戦争に対して、それがこの条項に違反するものであるという認識がなくして結んでおるようなことでは、この日中平和友好条約は事実上意味がないことになります。そこで聞いておるわけであります。重ねて御回答をお願いします。
○福田内閣総理大臣 今回の条約は、過去のようなことを一切清算いたしまして、両国ともどもにもうこういうようなことはないように、平和五原則を遵守いたしましてそれでやっていこう、こういうことであります。私は、日本政府の立場とすると、過去の事態については深くこれを反省している、こういう立場でございます。
○正森委員 それでは次に移りますが、政府は従来、両国政府が覇権反対の共同行動をとることはないというようにしてこられました。ところが十四日、外務大臣は同僚委員の質問に対して、両国が共同で第三国の具体的な覇権主義的行動に対し反対する旨の意思表示をすることはあり得る旨答弁されました。
 そこで、総理に伺いたいと思いますが、総理もそう考えておられるのでしょうか。考えておられるとすれば、どのような場合を想定しておられるのでしょうか。両国が共同で意思表明するということは、それ自体政治的には一つの共同行動であり、より具体的な共同対処に進む第一歩になるおそれがあると思いますが、総理の明快な答弁を望みます。
○園田国務大臣 総理の言われる前にお許しを得て一言。
 私が言いましたのは、共同して反対するということは言っておりません。覇権行為であるかどうかということを相談することはあるか、こういう質問に対して、そういう場合もあり得るかもわからぬ、こういう答弁をしております。
○福田内閣総理大臣 あくまでもこの条約は、個々に判断をしていく、こういうことでございまして、この個々に判断する結果、たまたま同じ判断があるというような趣旨を外務大臣は申し上げた、このように理解いたします。
○正森委員 それでは確認いたしますが、相談した結果、共同コミュニケをある具体的な第三国の覇権主義行動に対して行うというようなことは考えておらない、こう聞いてよろしゅうございますか。
○園田国務大臣 私が答弁しましたのは、覇権行為の判断について相談することがあるかもわからぬ、こう言ったので、共同は全然別個の立場だ、こういうことを言っております。
○正森委員 総理は予算委員会における答弁で、この条約で言う覇権とは、一国が他国に、武力による押しつけだけではなく、大国主義、自己の運動のパターンを押しつけるなどの政治的強制を含めて言う、こういうことについて確認をされました。現在もそういうぐあいに伺ってよろしゅうございますか。
○福田内閣総理大臣 覇権行為の内容については、累次私は国会に申し上げておるとおりでございます。
○正森委員 私がいま述べました内容は、十月三日にわが党の東中議員の指摘に対して、貴見のとおりというようにお答えになったことでございます。したがって、それを確認されたというように解釈して、次に移らしていただきたいと思います。
 一九七〇年の四月十五日に、周恩来首相は、日中友好貿易業界の団体に対して、「よど号」のハイジャック事件について、すばらしいことです。日本の修正主義者は、彼らをトロツキストだと悪口を言っていますが、彼らは行きすぎた出来事にすべてトロツキストだとか、アナーキストだとか言っています。こう述べております。すなわち、中国の首相は、あの狂暴なハイジャック犯をすばらしいと称賛してそそのかし、逆に彼らの暴挙を糾弾するわが党を修正主義とののしって干渉を加えているわけであります。
 さらに、一九七一年、三里塚訪中団の戸村一作らに対し、周恩来総理は、左派は、初めあなた方の三里塚闘争に接近することを恐れていました。左派の人たちに恐れないで接近し援助してはどうかと話し合ったことがあります。皆さん、それからは左派は三里塚でやるようになったでしょう。と、みずから暴力集団を激励し、指図して、内政に干渉したことを事実上認めているのであります。この点は外務大臣が今回の日中交渉の中で指摘し、抗議したと答弁されておりますが、重大なことでありますから、総理に対してお伺いしたいと思いますが、総理自身も、このような内政干渉に対しては毅然とした態度をおとりになるかどうか、伺いたいと思います。
○福田内閣総理大臣 日中間で過去においていろいろのことがあったようです。私も精細に覚えてはおりませんけれども、これから一番大事なことは、日中双方内政不干渉、これが一番大事だと思います。これが守られなければ、私は、せっかくできたこの平和友好条約も本当に名存実亡、こういうことになってしまうのだろうと思います。今後はお互いに内政に干渉しないということに特に配意をしていくべきであり、私どもといたしましては、中国側に対しましてもこのことを強く要請してあります。わが国といたしましても、中国に対して、内政干渉的なことは一切いたしません。
○正森委員 中国側は、それだけではありません、日本国民全体に呼びかける日本語の北京放送で、いわゆる新宿事件について、進歩的な青年学生は、日本全国で……数万の警察、機動隊の警戒を破ってデモを行い、石や火炎びんを武器とし、角材、ヘルメットで武装して肉迫戦を繰り広げた、意気盛んなデモは、怒濤のような勢いで勝利のうちに発展している、と、暴力集団を支持、激励し、また、日中共同声明発表後の昨年にも、参議院選挙の直後に、日本向け北京放送で、どうしても暴力革命の用意を整えなければならない、すべての革命的人民は武力で国家権力を奪取することを立脚点に置くべきであると放送し、日本政府を事実上転覆することを主張しております。このような干渉行為にどう対処されてこられましたか。あるいは今後どう対処なさるおつもりか、重ねて伺いたいと思います。これは日本国民全体に呼びかけられているのです。
○福田内閣総理大臣 過去におきましてはいろいろのことがあったことは御指摘のとおりでございますが、今後が大事だと思うのです。今後におきましては相互内政不干渉、これは非常に大事なことだ。これはもう中国側にも厳に慎んでもらいたいと同時に、わが国におきましても断じてそのようなことがないように篤と配慮してまいります。
○正森委員 それではもう一点伺いますが、日中共同声明ができて中国と国交を回復しましてから、中国からの政府関係者等、国と国との間の公的関係者について、わが国が入国を拒否したことがございましょうか。あるいはまた、中国人民政治協商会議を構成している政党は、中国共産党だけでなく中国民主同盟その他たくさんありますが、中国からの公的な関係者の入国に際し、わが国がこれらの団体に加盟していることをもって入国を拒否した事例がありますか。
○中江政府委員 ただいま正森先生の御指摘になりましたような具体的な例が日中平和友好条約署名調印後にあったかという点につきましては、私の記憶に関する限りがございません。
○正森委員 ところが皆さん、総理、わが国が先方に対してそういう態度をとっているのに、中国側は、すでに予算委員会その他で申しましたように、四年前の日中航空協定締結に際して、国会の代表団を構成したわが党の議員の入国を認めておりません。最近は大阪府議会の代表に対しても、わが党が構成員になっていることについて、入国を認めない態度をとっております。これについてわが党の上田議員が指摘しましたところ、外務大臣は、「日本の外務大臣としては不愉快でございますから、日本共産党の方は正しい方であるから、今後拒否しないようにと努力はするつもりでございます。」と答弁しました。この答弁は、個人として不愉快であるというのではなく、日本の外務大臣として不愉快であると述べたところに重大な意味があると私は思います。日本の外務大臣として何が不愉快なのか。また、この問題について拒否しないように今後どういう態度をとられるのか、伺いたいと思います。
○園田国務大臣 外交を担当する外務大臣が、日本国が他国から入国を拒否されることは不愉快には間違いございません。特に、憲法で規定されておる、それによって成立している共産党の拒否というものは決して愉快ではございません。
 そこで私は、この問題については、友好条約も締結されたことでございます。今後各界各層広く意見の交流をしてもらうことは、日中両国の大事なことでございます。したがいまして、私は発言したとおり、きのう寺前議員、それからきょうあなたから冒頭に言われた、日中関係に努力された面等のこと等も伝えて、今後このようなことがないようによく向こうに伝達をして努力をする所存でございます。
○正森委員 終わります。
○永田委員長 伊藤公介君。
○伊藤(公)委員 私は、過去六年越しの懸案でありました日中平和友好条約が締結をされたということに率直に賛意を表したいと思います。
 しかし、私は、本委員会の中で終始一貫審議に参加をしながら、当初福田総理は、この条約に関してかなり消極的であったと思います。そして、総理がアメリカ訪問を終えて帰ってこられて、かなり日中条約締結に向けて積極的になられたという感触を受けているわけでございます。このことは、日米間で大事な外交問題を話されるということは、私は、あって当然だと思うし、そのことを批判しようとは思わないわけでございます。しかし、わが国の自主外交ということがいま国民の願望になりつつあり、しかも総理が御発言になられているように、いずれの国とも全方位外交を展開をするというお立場からすれば、今度の日中条約に当たって、総理が、日中の関係をどうするかということに対する当初の意気込みはそれほどなかった、こう受けとめざるを得なかったと思います。率直に申し上げて、不退転の決意で臨まれた、この日中平和友好条約の締結に執念まで燃やされた、野人とも言われる園田外務大臣の功績はきわめて大きかった。私は一人の政治家として評価をさせていただきたいと思うのであります。
 しかも、今度の日中平和友好条約を結ぶべきだという国民の世論のあったことももちろんであります。私は実は昭和十六年生まれでありますから、ちょうど戦争が始まった年に生まれたわけでございます。私の村からも次々と満州国に家族が行ったということを私も幼心に聞いていた、そういう世代でございます。しかし、やがて悲しい戦争が終わって引き揚げてきた日本人の、今日では全国に広がっている、町や村に住んでいる、かつて中国で戦ったあるいは中国に生活をしたこうした人々の心の中に、中国人から現地で受けた友情あるいは善意ということどもが、非常な激しいあるいは厳しい戦火のもとでも、いまなお戦後一貫して日本人のこうした善意ある人々の心の中にともっていた。こうした背景の中で日中平和友好条約が結ばれたという意義はきわめて大きいと私は思うのであります。
 しかし、問題は、現実の厳しい国際状況の中で、中ソ対立というこうした中で結ばれたこの条約、わが国の外交の中で今後どのような外交を日中以後進めるかということがきわめて大きな問題であり、私はまず総理に、国民にわかりやすく、日本のこれからの進むべき、外交のあるべき姿を明快に御答弁をいただきたいと思います。
○福田内閣総理大臣 私がこれからの日本外交について申し上げる前に、一つ伊藤さんが大変重大な誤解をされておる。何か私が五月にワシントンに参りまして、カーター大統領と会談した、その後で日中条約の締結を決意したんだというようなお話でございますが、これはとんでもない間違い。私は七年前に外務大臣をしておった。あのときから水かき外交だというようなことを言っておるじゃありませんか。それから、わが国の内閣の立場といたしましても、歴代の内閣が日中平和友好条約の早期締結、こういうことを考えておったのですよ。しかし、これが味の悪い形でできたんじゃいかぬです。やはり全国民全部というわけにいきませんけれども、まずまず全国民と言えるような程度でいいのでしょうが、皆さんから祝福されるというような形でこれが締結されるということ、それからもう一つは全世界に悪い影響を与えない、こういう立場で締結されること、これを旨としてやったのですから、これはなかなかそう簡単にはいかない、時間もかかったわけでありますが、いずれにいたしましてもアメリカと相提携し、アメリカと相談してこれを進めたんだ、こういうようなことは一切ありませんから、その点は、まあ日米中というようなことを言う人もありまするから、念のため誤解のないようにしかと申し上げさせていただきたいと思います。
 それから、これからの外交をどうするんだという問題になりますと、これはやはり全方位平和外交、この道を行くほかないと私は思う。わが国はいまや経済大国になったけれども、軍事大国になろうなんというような考え方は持っておりません。そうなれば、どうしたって世界が平和でなければわが国の平和はないのです。また、同時に世界のどの一つの国とも敵対関係を持つというような関係でありましたら、わが国にはわが国の平和というものはありません。もうこれは憲法でもそう言っているとおりでございます。そういうことで、全方位平和外交というものをますます強く推し進めてまいりたい、このように御理解願いたいのであります。
○伊藤(公)委員 私に与えられた時間はきわめて限られておりますから、最近の政府・与党内における有事立法をめぐる問題にも触れたいと思ったわけでありますけれども、私は次の一点についてお尋ねを申し上げたいと思います。
 サンフランシスコ平和条約で世界の国々と平和条約を結んだときに、わが国と平和条約を結べなかったのが今回のこの中国とソビエトであります。しかし、中国との平和条約を締結することになったわけでありますから、今後ソ連との平和条約をどうするかということがわが国外交のきわめて大きな課題だと私は思うわけであります。しかし、この日ソ関係を一歩でも前進をさせるためには、北方四島の返還という、終始一貫して貫いてきた四島の問題、北方領土の問題を解決せずして日ソ関係は一歩も進まない、こう思うわけでございます。
 しかし、ことしの九月、私どもが現地にも参りました。少数意見といいながら、北海道の根室地方の方々は、戦後次々と政府の視察団が北方問題でやってくる、その接待費で地方自治体の負担は大きくなっている、一方では、二百海里で漁業もだめだ、領土もだめだ、そうした状況の中で、現地では――決して大多数の意見だとは私は思いません。しかし二島返還でもという、生活苦の中から生まれてきているこの声は、今後の日ソ交渉を進める上で決してプラスにならない。こうした状況を生まないために、総理はどのような決意で今後こうした問題に取り組むか。
 また、かつて日ソの国交回復に当たっては、時の総理の鳩山一郎総理大臣が、いろいろな下積みの準備をしながらもみずからソ連に赴いて、わが国とソ連との国交回復に乗り出した。総理は、今後、対ソ外交に関してみずからこれに対して当たるという決意でわが国の外交を考えていただきたい、私はこう思うわけでありますが、総理の御所見と御決意を伺って、時間が参りましたようですから、質問を終わります。
○福田内閣総理大臣 私は、日中平和友好条約ができたからソビエトに対して悪いことをした、こういう認識は持っておりません。しかし、それはそれといたしましてソビエト連邦はわが国の隣組である、そういう立場で、日ソ関係、これは残された最大の外交案件でございますが、これを推進してまいりたい、このように考えまして、その推進の手順、段取りをどうするかということにつきましては鋭意精細にこれを検討いたしまして推し進めてまいりたい、このように考えております。
○伊藤(公)委員 質問を終わります。
○永田委員長 楢崎弥之助君。
○楢崎委員 私は、冒頭に、個人的なことですけれども、昭和三十一年に松本治一郎先生のお供をして初めて訪中して以来、小さな力ではありましたが、正常化なりあるいは平和友好条約の締結に努力をしてきた一人であります。きょう、この平和友好条約の賛否採決に賛成の立場で参加し得ることを大変光栄に思い、また感無量であります。
 それで、ケ小平副首相も二十二日来られますが、もし招待があれば福田首相は訪中をされますか。あるいは華国鋒主席を招聘するお考えがございますか。
○福田内閣総理大臣 日中間は共同声明によって正常化された。そして、なお今後のこの日中間につきましては、今回平和友好条約ができた、こういう今日でございますので、経済関係、これは相当進んでくるだろう、こういうふうに思います。また技術協力関係、それから人の往来、これも頻繁になってくるだろうと思いますが、その中におきまして中国の首脳が気軽に往来をするということは非常に大事なことであろう。御招待がありますれば私も中国を訪問するということ、これは日時につきましてはいろいろ外交日程、内政日程がありますから、すぐ決まるというわけじゃありませんけれども、そういう心がけで臨みたい、このように考えます。
○楢崎委員 私はこの際総理の注意を喚起したい問題があるのですけれども、あなたは、副総理、つまり内閣法第九条による総理大臣の職務を臨時に行う大臣をあらかじめ指定されておりませんが、その理由は何ですか。通常副総理と言うのですけれども、正確に言えば、内閣法第九条によって総理大臣の職務を行う国務大臣をあらかじめ指定されていないが、どうですか。あなた自身は、三木内閣誕生のときに、その年の十二月九日ですが、副総理に指定されましたね。今度はなぜですか。
○福田内閣総理大臣 副総理を置くということ、これはそのときの内閣運営の都合で決めたらいい問題だろうと思います。三木さんが私を副総理にした、あれは私を副総理にして経済関係のことを統括するような立場にということでされたのだと思いますが、私はいまそういう立場の人が必要であるとは考えませんものですから副総理を置かないというだけでありまして、他意はございません。
○楢崎委員 私が注意を喚起したいというのは以下のことであります。
 総理は万々万一ということが大変好きであります。もし総理が突発的な事故で万々万一総理大臣の職務を執行されないときに、いわゆる防衛出動を下命しなければならない事態が起こったら、一体だれが下命するのですか。万々万一そういうことはあり得る、この防衛出動の下命、下令は総理大臣の専権事項、余人をもってはかえがたいのであります。有事有事と言ってあなたは用意をせいということを言うけれども、あなた自身がやるべきことをやっていないじゃありませんか。それを私は言いたいのです。どうです。
○福田内閣総理大臣 私に事故ができたという際には、私の職務を代行する大臣を指名します。それで大体片づくのじゃないか、こういうふうに思いますが、そういう時間もないというようなことがあるかどうか、そういうようなことにつきましては、まあ貴重な御注意だということで承っておきます。
○楢崎委員 そういう指名をするような余地もないときのことを私は言っているのですよ。よもやないと思うが、あなたが万々万一をいつも言われるから、総理、言っているのです。アメリカでは副大統領を必ず指名する。核のボタンを押すのは大統領専権事項、もしそれができないときは副大統領ですから。これは大事な問題なんです。まじめに考えてくださいよ。自分でやるべきことをやらないで自衛隊に有事の何とかと言うのは私は本当におかしいと思うのですよ。こういう国の一大事の問題でしょうからもう少しまじめに考えるべき必要がある。そのときの政権の都合でないがしろにするというような種類の問題ではない。これを厳重に私はここで注意を喚起しておきたいと思います。
 そこで、これから日中間はより発展しなければいけません。それで先ほども確認がありましたけれども、私もやはりもう一遍確認しておきますが、この日中平和友好条約は、過去四十年にわたって中国人民に迷惑をかけた、それのいわゆる総決算だ、償いの意味も含めて、これは講和条約の意味を持った条約の締結である、このように認識をいたしますが、どうでしょうか。
○福田内閣総理大臣 この条約は、名称は日中平和友好条約でありまして、平和という言葉は入っておりまするけれども、平和条約的な性格というものではございません、これは条約論といたしまして。条約論といたしますると、平和友好条約は日中共同声明のあのときで万事決着がついておるわけであります。しかし政治的には、今後の平和友好関係を決める、こういうことでありますから非常に重要な意味を持つ、このように考えております。
○楢崎委員 私はその御答弁は外務大臣の御答弁と違うように思うのですけれども、この点はこの条約の性格上非常に重要ですから、もう一遍確認をしておきたい。外務大臣、どうですか。
○園田国務大臣 私が答えました意味は、戦後の処理は共同声明で全部終わっておりますが、この共同声明が国会の批准を受けてなかったわけでありますからまあそういう意味もあるかもわからぬ、こういう趣旨の答弁をいたしました。
○楢崎委員 総理、この点はもう一遍確認をしておきたい。
 先ほど正森議員も指摘をしましたが、前文にその種のことを意味する内容が盛られておると私は思うのですね。非常に重大ですから、条約論というよりもその性格について、意味について、意義について私は問うておるわけです。御答弁をお願いします。
○福田内閣総理大臣 平和条約と言えばまず戦争の終結である、また賠償問題その他債権債務の問題である、それからもう一つは、領土の画定の問題である、この三つが平和条約という中に入るわけなんですが、この三つの平和条約の構成要素、これは全部日中共同声明の時点で解決済みなんです。今度の条約は、前に向かって、先々に向かって日中の関係をどうしよう、こういう条約でありまして、いわゆる平和条約的性格のものではない、このように御理解願います。
○楢崎委員 この七二年の日中共同声明に基づいて今度の条約ができたわけでしょう。だから、その前文をきちんとお読みになれば、いまのような総理のお答えは出てこないはずですがね。私は、くどいようですけれども、その点はもう一遍確認をいただきたい。
○園田国務大臣 条約論としては総理のおっしゃるとおりでありますが、あの共同声明が国会にかかっておりませんので、これで改めて国会の承認を受けるわけでありますから、性格から言えば平和という意味もある、このように私はお答えをしたわけであります。
○楢崎委員 これで終わります。
 いまの御答弁は、平和条約の意味を持った、いわゆる講和の意味も含めた政治的な意味を持った条約である、このように確認をして終わりたいと思います。
○園田国務大臣 この際、一言補足説明をさせていただきたいと思います。
 覇権行為であるかどうかを判断する場合に、中国と話し合うか、こういう質問に対して二回ほど、話すことはあり得ると存じます。こういうことを答えておりますが、これは、今日いろいろな観点から協議して共同戦線を張るというふうに誤解を受けてはなりませんので、私がそういうふうにあり得ると話したのは、両方で具体的に協議をして、会談を開いて統一を図る、こういう意味ではなくて、国際情勢その他の一般の会談の中で話し合うことがあり得る、こういう補足説明をさせていただきたいと思います。
○永田委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○永田委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。奥田敬和君。
○奥田委員 私は、自由民主党を代表して、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件について賛成の討論を行います。
 一九七二年、日中共同声明により日中正常化が実現して以来およそ六年、政府が懸案の日中条約交渉促進に決断を示し、日中双方が満足し得る形での条約締結にこぎつけたことを心から喜びたいと思います。
 この条約は、まず、今世紀において幾つかの不幸な経験を経た日中両国の間に、対等で正常な隣国関係を設定するものであり、対等なパートナーとしての日中両国の再出発をしるすものとして多大の歴史的意義を持つものであります。
 本条約のいま一つの大きな意義は、それが、社会体制の異なる国の間の平和共存をうたうものであることであります。自由主義国と社会主義国、しかも、戦火を交えた経験を持つ国と国とが平和友好関係の強化をうたうとともに、いずれの地域においても覇権は求めるべきでないことを条約で誓い合うのは歴史的にも画期的なことであり、国際的にも重要な意味を持つものであります。
 他方、本条約第四条には「この条約は、第三国との関係に関する各締約国の立場に影響を及ぼすものではない。」と規定されております。乙の条項によって、この条約の本来の目的と性格とを明らかにし、平和に徹し、いかなる国とも善隣友好関係を増進するという、わが国外交の基本方針を明白にすることができたものと評価いたします。
 日中平和友好条約は、このように日中両国関係のみならず、世界の平和と安定のためにも重要な意義を持つものであり、その締結は広く世界の諸国民によって歓迎されております。
 しかしながら、なお一部には、この条約を現在の厳しい国際社会におけるパワーポリティックスの観点から解釈し、その締結の効果について危惧の念を表明するものがあることも事実であります。わが国としては、今後ますますアジアを初めとする諸国との間の友好親善関係を促進し、覇権を求めないという姿勢を、事実をもって実証していくことが必要であります。
 私は、日中平和友好条約締結を機に、政府がこの条約の持つ積極的な意義をわが国外交の一層強力な推進のために十二分に生かし、かつ役立てていくことを要望し、それによってわが国が真にアジア及び世界の平和と繁栄に役立つ国であることの評価を国際的にも定着させ、確立させることを強く希望して、私の賛成討論といたします。(拍手)
○永田委員長 河上民雄君。
○河上委員 私は、日本社会党を代表して、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約に対し、賛成する討論を行います。
 本条約は、日中両国が名実ともに過去の不幸な歴史を清算して、不戦と恒久平和、子々孫々にわたる友好条約を樹立するとともに、アジアにおける平和と安定の基礎を打ち立てたものとして、わが党は心からこれを歓迎するものであります。
 この歴史的な日中平和友好条約の調印に至るまでの道のりは、日中両国民にとって決して平たんなものではありませんでした。それは単に、国交回復後六年の政府間交渉によって調印に至ったものではなく、日中両国民の多大な努力と犠牲によって切り開かれたものと言って過言ではありません。まず何よりもわれわれ日本国民は、そして特に日本政府は、わが国が十五年間にわたる戦争によって中国本土への直接侵略を行い、さらに中華人民共和国成立後二十年余にわたって中国を否認してきたという、この二つの歴史的事実の清算の上にこの条約が締結されたことの意味を深く受けとめるべきだと考えます。
 また、中国のことわざに「水を飲む者は井戸を掘った者を忘れるべきではない」という有名な言葉があります。ここに数多くの日中友好の先覚者の血のにじむ、当時は報いられること少なかった努力のあったことを忘れてはなりません。
 わが党につきましても、結党以来、日中国交回復と日中友好を外交の基本政策とし、日中友好への国民世論の形成に一貫して奮闘し、その間、浅沼稲次郎委員長の遭難の歴史を持っておりますだけに、本条約が国会で承認される今日、ひとしお感慨なきを得ないのでございます。
 このように、明治初年、一八七一年の日清修好条規に始まる近代百年の歴史の背景の中で調印された日中平和友好条約は、今後の日中関係の基準、原則となるだけでなく、アジアの平和と民族自決に大きく貢献するものでなければなりません。そのために、次の諸点に留意すべきだと考えます。
 第一に、わが国は中国と今後、経済、文化、科学技術など、社会生活の全分野にわたる交流を促進するに当たって、中国を日本の広大な市場とする見方をとるのではなく、平等互恵の原則を堅持しつつ、二千年の歴史で初めて、対等、相互尊敬、相互信頼の関係を確立する日中新時代にわれわれが立っていることを常に銘記すべきであります。
 第二に、本条約は日中両国が反覇権を誓約しておりますが、日本はアジア諸国に対し武力介入や内政干渉を行ってはならないし、すべての紛争を平和的に解決する外交的努力を強化しなければなりません。特に朝鮮問題については、アジアの民衆を再び敵としないという原則から、朝鮮民主主義人民共和国への敵視政策を根本的に転換すべきときが来たと考えます。
 第三に、本条約はいかなる第三国に向けられたものでもないと明言する第四条の重みを考えた場合、この条約の調印によって懸案のアジアの諸問題の解決、アジアの平和共存に貢献をするものとする努力をしなければなりません。したがって、日中条約を日米安保条約の強化と結合させるような考え方はきわめて危険であり、アジアにおけるパワーポリティックスの一環を担うことは厳に慎まなければなりません。
 以上、わが党の立場を述べて、日中平和友好条約への賛成討論といたすものでございます。(拍手)
○永田委員長 正木良明君。
○正木委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件について、賛成の討論を行います。
 日中平和友好条約の締結は、日中国交正常化実現以来六年越しの懸案であり、その早期締結はかねてより強く期待されてきたものであります。
 ようやく、去る八月十二日に本条約が北京において調印され、ここに国会の承認を得、さらにケ小平副主席並びに黄華外交部長の訪日によって批准書交換の運びとなりましたことは、まことに喜ばしい限りであります。
 本条約は申し上げるまでもなく、一九七二年の日中共同声明の原則と精神を条約とし、日中両国の恒久的平和友好関係を維持し、発展させるものであるとともに、アジアと世界の平和に寄与するものであって、日中関係とアジアの歴史に新しいページを画するものであります。特に、日中両国がともに覇権を求めず、いかなる地域においても、覇権を求めようとする国または国の集団にも反対するという、いわゆる反覇権条項が条約として明文化されたものは、本条約が初めてのものであって、その意義はきわめて大きいものがあると思うのであります。この原則は、わが国憲法の恒久平和主義に合致するものであるとともに、わが国の今後の平和外交の重要な原則となるべきものであります。同時に、世界の普遍的な平和原則として確立されるべきものと確信いたします。
 本条約の締結によって、長年の懸案に一応の決着がつけられたことになりますが、むしろ真の日中平和友好関係は、本条約締結を出発点として今後の課題であるとの認識に立って、新たな決意のもとに日中平和友好関係の発展のために一層の努力を傾注するとともに、アジアの平和と繁栄のために全力を尽くすべきことを、この際、政府に強く求めるものであります。
 わが党は、本条約の早期締結を一貫して主張し、これまで六次にわたる党訪中代表団を中国に派遣し、中国首脳との会談を通じて、党派を超えた立場でその実現のために努力いたしてまいりましたが、今後とも日中平和友好関係並びにアジアと世界の平和のため全力を尽くす決心でありますことを表明し、賛成の討論といたします。(拍手)
○永田委員長 曽祢益君。
○曽祢委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本と中国との間の平和友好条約に対し、賛成の討論を行わんとするものであります。
 本条約が七二年の日中国交回復以来六年の日子を経てようやく円満に妥結することになったことは、両国のために大変に喜ばしいことだと存ずるのであります。
 内容を検討いたしまするに、第二条、第四条の、いろいろ努力の結果できた両条項は、わが国の立場と中国の立場の双方を尊重しながら、反覇権問題を含めた円満な解決ができていることを確認いたします。したがいまして、われわれとしてはこの条約に賛成するものであります。
 第二に、この条約に関連いたしました三つばかりの問題がございます。
 まず第一に、尖閣諸島の問題については、当局の努力と中国側の態度によりまして、尖閣諸島の領有権の問題は別といたしまして、領有に対する妨害をなさないという確約を得たことを多といたしまして、この問題は解決したと認めるのが妥当だと思うのであります。
 第二は、中ソ友好同盟条約の問題でございます。この点につきましても、中国側がはっきりと五カ年間のいわゆる自然延長に入る前の来年四月九日までに政府の廃棄の意思を表明することによってこの条約の廃棄ができることが明らかになりましたので、これで一つの障害が除かれた、この努力を多といたしまして賛成するものであります。
 同時に、第三の問題であるいわゆる全方位外交といいますか、日中平和友好条約の成立を機会に、日本の各国との外交関係に累を及ぼさないように、この配慮が必要であります。
 特にソ連に関しましては、われわれは堂々とした態度でその誤解を解くことには真剣に努力すべきでありますけれども、特にソ連に対しまして覇権問題等について心配要らないこと、さらにまた日本といたしましては中ソ友好同盟条約の廃棄の手続をソ連側もとることを進めるように当局の努力を希望する次第であります。
 第三国等に対しましては、特に私が質問等を通じて申し上げましたように、朝鮮半島における平和の確立への積み上げの努力並びに台湾海峡の静ひつを保持する、第三に特にASEAN諸国に対する外交を強化するように、そして、この二つの強国が結合したことに対する不安を除くような適切な外交措置をとられんことを付言いたしまして、私の民社党を代表する賛成討論を終わりたいと存じます。(拍手)
○永田委員長 寺前巖君。
○寺前委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、日中平和友好条約批准案件について、賛成の討論を行うものであります。(拍手)
 日中両国間に平和五原則に基づく真の友好関係を確立することは、両国関係の歴史の経過から見て、また、アジアの将来にとってきわめて重要な意義を持っています。
 両国の不幸な関係は、十五年に及ぶ日本軍国主義の中国侵略戦争、その後の中華人民共和国樹立以来二十数年にわたる不承認にありました。また、中国側の日本国民の自主的運動に武装闘争路線などを押しつける大国主義的干渉にありました。
 この間、日本共産党は、戦前は中国侵略戦争に反対し、戦後は中華人民共和国の承認と国交回復、平和五原則に基づく友好関係の発展を願って闘ってきました。同時に、中国側のわが党と民主運動への干渉に毅然とした態度を貫き、自主独立の立場を守ってきました。
 わが党は、日中両国民の真の友好関係の確立を重視すればこそ、この立場に立って国交回復以来六年、反覇権を焦点として難航してきた問題点を、国会での徹底した審議を通じて究明し、最終態度を決めることとしてきたのであります。
 審議を通じて次の諸点が政府の公的解釈として明確にされました。
 その第一は、第二条に書かれている反覇権条項は特定第三国を指すものでないこと、覇権行為の認定はそれぞれの立場とやり方で自主的に行うこと、この条約によって共同行動を義務づけることはできないこと、そしてこれらが両国の合意となっていることであります。また、中国の三つの世界論、反覇権国際統一戦線論を基礎とする特定の外交路線に拘束されないことはもちろん、日中、米日中の同盟につながるものでは絶対にないことも明らかにされました。
 第二に、日本への内政干渉に関連して、政府は、一国が他国にその意に反して自分の意見を押しつける政治的強制や干渉は、力によるものに限らず、覇権としてこの条約が反対していることを再三にわたり明らかにされたことであります。特に中国の特定路線の押しつけや、中国への入国差別扱いは不正常であることを認め、その改善に努力することも約束されました。
 第三は、尖閣列島について、日本の歴史的領土として正当な立場を貫くこと、今後中国側から紛争問題として持ち出されることはないであろうという見通しが出されたことであります。
 日本共産党・革新共同は、政府が答弁として明確にされたこれら日中両国政府の合意や日本政府の公的解釈を確認し、そのことを条件としてこの条約批准案件に賛成するものであります。
 しかし、この条約の成立によって日中両国間の平和五原則に背く不正常な関係が全面的に解決されたと見ることはできません。日米軍事同盟の強化、日本軍国主義の復活の策動が日米両政府で、有事立法という軍事ファシズムの攻撃を含めて強力に推進されていること、中国政府が、対ソ戦略の思惑から日米軍事同盟賛成に方向を転換し、この条約成立を機に軍事交流を強め、日本をその外交、軍事路線に引きずり込もうとしていること、この条約下では、もし政府の言明が厳格に実行されないようなことがある場合、この条約が、力の立場に基づく大国間の抗争に日本を引き込む新たな契機となる危険を依然として持っていることであります。また、日本政府は毅然とした対処を約束したとはいえ、中国側の政治的干渉、覇権主義的行為が決して清算されていないということであります。
 台湾問題についても、日本政府は、中華人民共和国の不可分の一領土として承認してこなかった過去からの誤りを依然として訂正せず、日米安保条約の極東条項、一九六九年の日米共同声明の台湾条項に対する態度を変えていないことであります。
 わが国の将来と日中の真の友好、アジアの平和に重大なかかわりあるこれらの問題について、わが党は真の独立と平和、中立・非同盟、平和共存を目指す自主的立場から、今後とも事態の展開と政府の態度を注視しつつ、問題解決のために国民とともに積極的に努力することを表明して、討論を終わります。(拍手)
○永田委員長 伊藤公介君。
○伊藤(公)委員 私は、日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件に対し、新自由クラブを代表して賛成の討論を行います。
 わが新自由クラブは立党以来、日中平和友好条約の早期締結を、機会あるごとに強く政府に要求するとともに、河野代表訪中等によって側面から政府の締結交渉への努力を支援してまいりました。条約の交渉開始以来、紆余曲折を経て、やや遅きに失した感はありますが、これまで多くの先輩たちが、その道を力強く切り開かれ、広範な国民各層の方々のじみちな運動があったからこそ今日締結の運びを見るに至ったわけであります。これがわが国の国益に合致するばかりでなく、世界の平和に大きな役割りを果たすものととして心から賛意を表します。
 さて、本条約をめぐって国民の間にはさまざまな論議が行われてまいりました。その最も大きな論点は、第二条に言ういわゆる反覇権条項についてであり、条約のおくれの原因の一つになったのもこの反覇権条項でありました。すでに、交渉や国会審議の過程で、この条約が反ソ政策とかあるいは共同軍事行動などというものではないことは明らかになりましたが、この反覇権条項は、日中平和友好条約のシンボルともいうべきものでもあり、二国間の基本条約としては、世界に類例を見ない画期的な条文であると私は思います。
 覇権行為の禁止はわが国だけに課せられたものではなく、中国をも拘束するものであって、日中両国の友好発展が東南アジア諸国にとって警戒の目で見られましたし、この覇権条項があってすら一部の国は不安な眼をもって見ていることを見ても、この覇権条項が歴史的な意義を持っていることがわかります。
 日中平和友好条約の締結によって、これから日中両国の交流は、ますます盛んになっていくことでありましょう。また日中友好のムードもまた一段と強まっていくことと思います。
 しかしながら、こうした条約が結ばれただけで二国間の平和と友好がいつまでも維持できるとは限りません。このことは過去の事実が明らかに示しています。
 日本と中国の間は、近代の歴史の中で百年近く不幸な状態が続きました。両国の二千年にわたる長い交流の歴史から見れば、わが国と日中両国の不幸な関係は短い期間であったかもしれませんが、この間にわが国が中国でどんなことをしてきたかを知ってはいても、一体どうして中国との戦争が行われたのかということを知らないでは、再び不幸な状態を招かない保障とはならないと思います。われわれはもう一度日中間の不幸な過去を振り返って総点検をしながら、相互理解と友好を推進していく必要があることを強く指摘をして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○永田委員長 楢崎弥之助君。
○楢崎委員 私は社会民主連合を代表し、この日中平和友好条約の締結を支持し、賛成の討論を行いたいと存じます。
 ここに、福田首相、園田外相初め日本側関係者並びに華国鋒主席、ケ副主席等中国側関係者、両国政府の御努力に心から敬意を表したいと存じます。
 また、故浅沼社会党委員長の犠牲を初めとして、多くの政治家の皆さん、民間の方々のそれぞれの立場からの長い御努力に厚く感謝の意を表明するものであります。
 この条約の意義は、何としてもまず、過去半世紀にわたる日中間の不幸な関係に終止符が打たれ、今後アジア及び世界の平和と安定の維持発展に大きく寄与し、特にアジアにおける平和の偉大なとりでとしての意義は実に重大だと思います。
 わけても反覇権を双方が確認し合った意義は、ひとり日中だけではなく国際的にも重大な影響を持ち、今後これが国際的な外交の画期的な基本原則になると確信いたします。
 今日、この種覇権行為は日本周辺の超大国にも確実に見受けられるし、また小さな国にもその傾向が見受けられることは、この際特に留意しておく必要があると思います。たとえこの条約が第三国との関係に関する双方の立場に影響を及ぼすものではないとしましても、その第四条の条項と第二条の覇権条項とが矛盾してはならないのであります。
 すなわち、覇権を確立しようと試みる国または集団があれば、第二条の覇権条項がその覇権国との関係に影響を及ぼすことは当然であろうと思います。そうでなければ第二条の覇権条項は名存実亡になるからであります。
 最後に、わが国はかつて償い切れないほどの被害と損害を中国人民に与えたのであります。たとえ相手が賠償の請求はしなくても、その好意を日本国民は決して忘れてはならないと思います。その国家的罪の償いは今後積極的自発的に産業、経済、農水産業、文化、学術、科学技術など各般にわたる交流、協力について中国の今後の発展に寄与するよう最大限の努力をすべきであると思います。
 過去を忘却した者は再び過去の過ちを繰り返すという言葉をいま一度かみしめ、本条約が日中子々孫々にわたる永遠の友好親善、連帯の偉大なきずなになることを確信し、賛成討論を終わります。(拍手)
○永田委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○永田委員長 日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○永田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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    〔報告書は附録に掲載〕
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○永田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十七分散会