第087回国会 本会議 第30号
昭和五十四年五月三十一日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十八号
  昭和五十四年五月三十一日
    午後一時開議
 第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提
    出)
 第二 産地中小企業対策臨時措置法案(内閣提
    出)
 第三 教育交流計画に関する日本国政府とアメ
    リカ合衆国政府との間の協定の締結につ
    いて承認を求めるの件
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第二 産地中小企業対策臨時措置法案(内
  閣提出)
 日程第三 教育交流計画に関する日本国政府と
  アメリカ合衆国政府との間の協定の締結につ
  いて承認を求めるの件
 渡辺農林水産大臣の農業基本法に基づく昭和五
  十三年度年次報告及び昭和五十四年度農業施
  策、林業基本法に基づく昭和五十三年度年次
  報告及び昭和五十四年度林業施策並びに沿岸
  漁業等振興法に基づく昭和五十三年度年次報
  告及び昭和五十四年度沿岸漁業等の施策につ
  いての発言及び質疑
    午後一時四分開議
○議長(灘尾弘吉君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(灘尾弘吉君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 渡部行雄君から、六月四日より十三日まで十日間、中村靖君から、六月四日より十四日まで十一日間、右いずれも海外旅行のため、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 電波法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
○議長(灘尾弘吉君) 日程第一、電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長石野久男君。
    ―――――――――――――
    〔石野久男君登壇〕
○石野久男君 ただいま議題となりました電波法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約の発効に備え、船舶局の無線電話の聴守義務等について所要の措置を定めるとともに、宇宙における無線通信の実用化に対処するため、人工衛星局の技術的条件等を整備するため所要の規定を設けるほか、規定の整備を行おうとするものであります。
 本案は、五月八日本委員会に付託され、五月二十三日白濃郵政大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人の意見を聴取する等、慎重に審査を行いましたが、昨三十日質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 産地中小企業対策臨時措置法案
  (内閣提出)
○議長(灘尾弘吉君) 日程第二、産地中小企業対策臨時措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長橋口隆君。
    ―――――――――――――
    〔橋口隆君登壇〕
○橋口隆君 ただいま議題となりました産地中小企業対策臨時措置法案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 これまで、円相場高騰の影響を強く受けている輸出関連中小企業に対しましては、いわゆる円高、対策法を初めとする緊急対策が講じられてまいりましたが、とのような中小企業が特定の地域に集中している産地につきましては、最近、中長期的な展望を踏まえて事業の合理化を計画的に進めようとする意欲が盛り上がりつつあります。
 政府は、このような産地中小企業の自助努力を助長し、新たな経済的環境への適応を促進するため本案が提案されたものであります。
 法案の主な内容は、
 第一に、国は、円高その他の経済的事情の著しい変化によって大きな影響を受けている中小企業業種で産地を形成しているものを特定業種として地域を限って指定すること、
 第二に、指定された産地における産地組合は、新商品、新技術の開発、需要の開拓等について振興計画を作成し、また、産地中小企業者は、同様の事項について事業合理化計画を作成し、それぞれ都道府県知事の承認を受けるととができること、
 第三に、承認を受けた計画に従って実施する事業については、金融、税制上の特別措置を講ずるとともに、国及び都道府県は中小企業に対し、雇用の安定を図るための措置及び振興事業等について必要な指導助言を行うことなどであります。
 本案は、去る三月十四日当委員会に付託され、五月二十九日江崎通商産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、審査を行い、昨三十日質疑を終了いたしましたととろ、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの六派共同提案による修正案が提出されました。
 その内容は、産地組合が作成する振興計画の内容として人材の養成を明示すること、雇用の安定措置等の対象として関連中小企業者を加えること、技術の研究開発の推進等について、国及び都道府県の責務規定を設けることなどであります。
 採決の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、産地の実情に即し本法の弾力的運用に努めることなどを内容とする附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第三 教育交流計画に関する日本国政府
  とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結
  について承認を求めるの件
○議長(灘尾弘吉君) 日程第三、教育交流計画に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。外務委員長塩谷一夫君。
    〔塩谷一夫君登壇〕
○塩谷一夫君 ただいま議題となりました教育交流計画に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 日米間の教育交流計画は、従来、米国政府の経費負担によって実施されてまいりましたが、昭和五十二年九月に米国政府から、今後は両国政府の経費分担方式によって本計画を実施したい旨提案があり、両国政府間で協定締結交渉が行われました結果、合意に達し、本年二月十五日東京において本協定の署名が行われました。
 本協定は、日米両国間の教育交流計画を実施するため日米教育委員会を設置すること、両国政府は、委員会の年次予算を共同して承認し、各自の予算の範囲内で、五〇対五〇の割合による分担原則に基づき委員会に対する資金の拠出義務を負うこと、委員会は法人格を認められ、また、直接税を免除されること等について定めております。
 本件は、二月二十七日外務委員会に付託され、五月二十五日政府から提案理由の説明を聴取し、質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御承知を願います。
 かくて、昨三十日質疑を終了し、採決を行いました結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(灘尾弘吉君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(灘尾弘吉君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(農業基本法に基づく昭和五
  十三年度年次報告及び昭和五十四年度農業
  施策、林業基本法に基づく昭和五十三年度
  年次報告及び昭和五十四年度林業施策並び
  に沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十三年
  度年次報告及び昭和五十四年度沿岸漁業等
  の施策について)
○議長(灘尾弘吉君) 農林水産大臣から、農業基本法に基づく昭和五十三年度年次報告及び昭和五十四年度農業施策、林業基本法に基づく昭和五十三年度年次報告及び昭和五十四年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十三年度年次報告及び昭和五十四年度沿岸漁業等の施策について発言を求められております。これを許します。農林水産大臣渡辺美智雄君。
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 農業、林業及び漁業の各昭和五十三年度年次報告並びに昭和五十四年度において講じようとするそれぞれの施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、農業について申し上げます。
 最近、農業をめぐる諸条件が大きく変化する中で、農業就業人口の減少率は著しく鈍化し、若い農業就業者が増加する傾向が見られます。
 農業生産は、畜産等を中心に増大しておりますが、米、ミカンは過剰基調にあり、その他多くの農産物の需給が緩和しております。他方、麦、大豆、飼料作物等は需要に対して生産が不足する状況にあります。
 昭和五十三年度には、水田利用再編対策が行われ、麦、大豆、飼料作物等を中心に転作は目標を上回って実施されました。しかし、米の過剰傾向は一層強まっており、米の消費拡大対策と転作の一層の定着、推進を図っていくことが必要となっております。
 一方、国民の支出する食料費に占める流通、加工サービス費の割合が年々増大しており、食料品価格の安定を図る上で流通、加工サービス部門の合理化が一層重要となっております。
 農業構造の面では、借地による農地流動化の動きが見られ、また、基幹男子農業専従者のいる農家において、農業労働時間を増加させ、規模拡大や経営の複合化などにより、農業経営の発展を図る動きが進んでおります。
 また、民族の苗代ともいうべき農村は、五千万人近い国民が居住する生活空間となっており、生活環境の整備や就業機会の確保を図るなど、農村における定住条件の整備を進めていくことが必要になっております。
 わが国農業は、一億を超える人口を持つ世界有数の市場を背景に、農業者の努力と適切な施策によってその発展が期待されております。
 こうした中で、農政の当面する重要な課題としては、
 第一に、需要の動向に適切に対応し得る農業生産構造を確立し、総合的食糧自給力の向上を図ること、
 第二に、農産物価格の安定と流通、加工の合理化を図ること、
 第三に、意欲的な農家への土地利用の集積など農業構造の改善を推進すること、
 第四に、農村の定住条件の整備を進めることなどであります。
 以上のような最近の農業の動向を踏まえ、昭和五十四年度の施策としては、需要の動向に即応して農業の生産体制を整備し、総合的な食糧自給力の向上を図ることを基本として、地域農業生産体制の総合整備、需要の動向に即応した農業生産の振興、農業生産基盤の整備、住みよい農村の建設、農産物価格の安定、流通、加工の合理化と消費者対策の充実、風土、資源に適合した食生活の普及、各種農業技術の開発、普及等を進めることといたしております。
 第二に、林業について申し上げます。
 最近におけるわが国林業をめぐる諸情勢は、木材需要の伸び悩み、外材の進出、経営コストの増大等きわめて厳しいものがあり、このため、伐採、造林等の林業生産活動は停滞の度を深めております。しかしながら、より長期的に見ますと、世界の木材需給は、今後、かなり不安定に推移するものと見込まれており、他方、国内の森林資源は、戦後植栽された人工林が本格的に生産力化していくものと見込まれております。
 このような森林資源をめぐる長期展望から、現下の厳しい情勢のもとで、適切な森林の施業、管理を維持し、生産の担い手と技術の散逸を防ぎつつ、やがて訪れる戦後植栽林の本格的な伐期到来の時期へとつなぐとともに、将来にわたって森林資源を切れ目なく整序していくことが必要であり、この際、幅広い国民的視野に立って適切な対処の方向を見出していく必要があります。
 こうした動向の中で、林政の当面する重要な課題としては、
 第一に、木材の需給及び価格の安定を図ること、
 第二に、林業生産から国産材の加工、流通に至る各部門の一貫した体質改善を推進すること、
 第三に、国有林野事業の経営の改善合理化を推進すること、
 第四に、特に緊急の課題として、マツクイムシの防除を徹底することなどであります。
 以上のような最近の林業の動向を踏まえ、昭和五十四年度の施策としては、国内林業生産の振興と森林の公益的機能の発揮を調和させつつ、林道及び造林事業の計画的推進、林業構造の改善、林産物需給の安定及び流通、加工の合理化、林業従事者の福祉の向上、国有林野事業の経営改善等の各般の施策を強力に進めることにいたしております。
 第三に、漁業について申し上げます。
 昭和五十二年から昭和五十三年にかけてのわが国漁業生産について見ますると、遠洋漁業の生産は、海洋新秩序の形成が進む中で、外交努力を重ねてまいりましたものの、減少いたしました。一方、わが国周辺水域におけるイワシ、サバ、サンマ等が好漁であったため、総生産量は一千万トン台の水準を維持しているものと見られます。
 水産物の需要は、高度化、多様化しつつ増加を続けてまいりましたが、昭和五十二年前半には、北洋漁業関連魚種を中心に魚価が高騰したため、最終消費量は減退を示しました。
 しかし、昭和五十二年九月以降は、生産の増加と消費の減退から、水産物の生産地価格は前年を下回る水準となっており、消費者価格も落ちついた動きに転じており、昭和五十三年には需要も回復に向かっております。
 漁業経営の収益性は、昭和五十二年には魚価の上昇もあり、かなり改善され、ほぼ石油危機以前の水準へと回復しました。しかし、昭和五十二年後半からは、二百海里時代における国際規制の影響と魚価の低迷から厳しい環境に立たされているものと見られます。
 さらに、わが国周辺水域の一層の活用が重要となっている中で、水産物の生産、流通活動の場であるとともに漁業者の生活の場として重要性の増してきた漁村の最近の状況について、特に章を起こして触れておりますが、漁村は、その立地条件の制約や社会資本の投資の立ちおくれなどから、生活環境の整備の面でおくれている面が多く見られます。
 こうした動向の中で、漁政の当面する重要な課題としては、
 第一に、周辺水域の見直しと活用を図ること、
 第二に、豊かな漁村の建設と担い手の育成を図ること、
 第三に、遠洋漁業の新たな展開を図ること、
 第四に、水産物価格の安定と有効利用を推進することであります。
 以上のような最近の動向を踏まえ、昭和五十四年度の施策としては、沿岸漁場の整備、開発など、わが国周辺水域内の水産資源の維持培養、漁村における生活環境の整備、遠洋海域における新資源、新漁場の開発、水産物の高度利用の促進と流通の合理化等の各般の施策を強力に進めることといたしております。
 以上をもちまして、農業、林業及び漁業の各年次報告並びに講じようとする施策の概要の説明を終わります。(拍手)
 国務大臣の発言(農業基本法に基づく昭和五
  十三年度年次報告及び昭和五十四年度農業
  施策、林業基本法に基づく昭和五十三年度
  年次報告及び昭和五十四年度林業施策並び
  に沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十三年
  度年次報告及び昭和五十四年度沿岸漁業等
  の施策について)に対する質疑
○議長(灘尾弘吉君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。日野市朗君。
    〔日野市朗君登壇〕
○日野市朗君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府の農業、林業、漁業の三白書について質問をいたします。
 まず最初に、私はこれらの白書を一読しての感想を申し上げたいと思います。
 果たして、政府には、日本の第一次産業を守り育てていくという決意があるのだろうか。政府の真意は、もう第一次産業には金も手間暇も余りかけたくない、第一次産業は自分で何とかやっていってもらいたい、日本の社会は自由経済、自由競争の社会なんだから、一こう言っているように思われてならないのであります。しかし、私は思います。第一次産業などというものはそんなものではない、第一次産業がきちんとしていてこそ、その上に精神的、物質的に豊かな社会、豊かな国、これが成り立ち得るのだと思います。私は、このような見解に立ちながら、これから幾つかの質問をいたします。(拍手)
 どうか、私の感想が、おまえの思い過ごしだよと言われるような御答弁を期待したい、こう思うのであります。
 まず、農業白書について伺います。
 第一次産業である農業が重要であること、これについてはもう多言を要しません。しかし、私はあえてこの問題について総理の考えをお聞きしたいと思うのであります。
 農業は、食糧を生産します。食糧が人間の生活に最も必要な物資であることは言うまでもありません。その供給を確保することが政治に課せられた第一の義務であること、これはもう当然過ぎるほど当然であります。この点、総理においても御異存はないでありましょう。いかがでありましょうか。
 食糧は、外国から輸入をすることもできます。しかし、国内での天災等による生産力の低下や、国際紛争などによる輸入不能などの事態は十分に考えられる。そのために、国内における生産力をできるだけ高め、食糧供給に憂いなきょう、食糧自給に万全を期する必要がある。この点はいかがでありましょう。
 わが国の農産物は、国際競争力は弱いのであります。しかし、自給を高めるためには農民の生産にまたなければならない。この点はいかがでありましょうか。
 生産力を維持するためには農民の生存が必要である。そのためには、農民が生存できるような農産物価格を保障すること、これが必須の条件であると思いますが、この点はいかがでありましょう。
 いささか当然の事柄とも思われるような繁雑な質問になりましたけれども、これらの諸点は食糧問題の根幹をなす事柄でありますから、総理からぜひとも、この最も基本的な点をどういうふうに踏まえているか、御決意のほどを伺いたいのであります。
 総理や農林水産大臣は、常に食糧の自給力の向上を口にされ、食糧問題は安全保障の問題であるとも言われるのであります。白書も同一の基調に立っているようであります。しかし、私には、それらの言葉がいかにも空疎なものに思われてならない。本当に政府が食糧の自給力を向上させようと思い、食糧問題が安全保障の問題であるとの認識を持つのならば、農民が希望を持って農業にいそしめるような状況がつくられているかどうか、これを検討しなければなりません。そのような状況は現在あるとお考えでありましょうか。
 現在、農民は生産意欲を持って農業に従事しているのでありましょうか。農業を進めるに当たって、最も大切なものは生産意欲であります。意欲のないところに自給度の向上もありませんし、生産性の向上もありません。昨年から唐突に強行された水田利用再編の施策は、多くの農民から生産意欲を奪ったと私は思います。白書は、この施策には農民が自発的に協力した、こう述べています。これは誤りであります。いまやペナルティーという言葉を知らない農民はおりません。なぜですか。このことは、農民がペナルティーの威嚇のもとにやむを得ず転作に応じたこと、これを雄弁に語っているのであります。この施策が農民の農業にいそしむ意欲を大きく損じた、このようにはお考えにはなりませんか。
 農民が意欲を持って農業に取り組むためには、所得の確保が必須の条件であります。白書は、転作の一層の定着、推進を図る、こう言います。なら、伺いましょう。農家の所得を引き下げることなしにそれは可能でありましょうか。現在は転作をすれば転作奨励金が出ます。しかし、転作奨励金がなくなったらどうなりますか。わが国の農産物は、国際的に見れば競争力は弱いのであります。これはわが国農業の宿命であります。わが国には狭い農地しかありません。農民は、その農地をいとおしみながら、土くれの一つ一つを愛撫するかのようにして食糧を生産し、みずからも生き、国民をも生かしてきたのであります。一望千里の広大な農地を抱えて、農産物を国際商品としてきた国と同日の談ではない。外国からの安い農産物と似たような価格で日本の農産物を競争させることは、とうてい不可能事であります。そのような転作をやって、どうしたら農家の所得が維持できるのでありましょうか、教えていただきたいものです。
 この点の解決策として、白書は、農業の規模拡大をうたいます。しかし、私には、全くこの考えは不合理なものとしか思われません。
 外国の農家とわが国の農家の一戸当たりの農地面積を対比してみましょう。アメリカは百五十七・六ヘクタール、フランスは二十四・五ヘクタール、ECの中で最も経営規模が小さくて問題視されている西ドイツが十三・三ヘクタールであります。日本は何と一・二ヘクタールであります。わが国が少なくとも西独並みに農家の規模を拡大するためには、現在の農地を十倍にしなければならない。しかも、土地価格は他国に比すれば天文学的とも言える高値であります。こんな状態で、国際的な競争に勝てるほどの規模拡大などとうてい無理と思うが、いかがでありましょうか。
 白書は、規模拡大のために、いわゆる第二種兼業農家の農地を専業農家や第一種兼業農家に使用させることを指向しているようであります。政府は、これら施策が農家所得の低下なしに不可能なことをよく御存じであります。でありますから、その引き下げをやろうとしているのではないのでしょうか。そして、白書は、農家世帯員一人当たりの家計費が勤労者世帯を上回ったとして、農家の所得の高さを印象づけて、これを根拠として農家所得の低下を是認させようとしているのではなかろうかと思うのであります。
 だが、この根本になる認識には大きな誤りがあります。全国農家戸数四百七十八万五千戸でありますが、そのうち、年齢五十四歳以下の男子が農業に専従する農家の所得は年間二百九十三万円であります。これは、国家公務員の給与と対比すれば、高校卒で年齢三十三歳ぐらいの者一人に相当するのであります。決して高い額とは言えません。しかも、農家の場合は、就労者は一人ではありません。数名にわたるのであります。これは第二種兼業農家でも同じことが言えます。第二種兼業農家はいわば共かせぎなのであります。決して、農家の生活水準が平均的な日本社会において高いなどということは言えないのであります。農家の所得をこれ以上下げていいなどという理屈はどこからも出てまいりません。白書の言う一部の規模拡大は、他方に圧倒的な多数の農家の規模縮小、それから許すべからざる所得の低減を伴うというべきではありませんでしょうか。
 さらに、この政策には重大な問題点が内蔵されております。この政策が進んでいけば、当然大多数の農家の所得は激減をする。多くの者は農業をやめなければならないでありましょう。そうして、他に所得を求めるために、どこかに働き口を求めなければなりません。この人たちに就労の機会を与えるために、政府はどのような対策を用意しておられるのでしょうか。そのような問題が起こらないなどということを私は言わせないつもりであります。あのECにおいても、同じく規模拡大の政策をとり、その結果として雇用問題に重大な問題が起こり、ECの拡大政策は挫折をいたしております。そのことをわれわれは知っている。政府でも十分にこのことは御了解でありましょう。この雇用問題にどのように取り組むおつもりであるか。
 この問題は重大問題でありますから、政策の整合性の問題といたしまして、労働大臣にもすでに御相談があったろうかと思います。労働大臣、この雇用問題をいかがなさるおつもりか、お答えをいただきたい。
 そして、この規模拡大政策の結果出てくる雇用問題をどうするのか、どのような展望を持っているのか、この点については農林水産大臣にも伺っておきたいと思います。
 農業問題は、国民生存の問題であります。この問題については、経済上の自由競争の原理は大幅に修正されなければなりません。一たん破壊された農業は容易には回復しないのであります。農業を破壊しないために、農民の所得を維持し、農民に希望を持たせ、農民の生産意欲を高めなければなりません。それゆえにこそ農業保護政策、なかんずく支持価格制度は、各国が取り入れ、力を入れている政策であります。わが国においても、現行の食管制度を初めとする支持価格制度を、農民の生産費や所得を補償する方向でより改善強化し、さらに拡大することが急務と考えるが、いかがでございましょうか。
 次に、林業白書について問題を指摘いたします。
 木々の緑、それはまさに人類生存の基礎であります。緑は、われわれに酸素を供給してくれるのみならず、生活に必須の水資源を涵養し、環境を浄化し、国土を保全し、われわれに安らぎの場を与えてくれます。だが、しかし、いま山は荒れています。その結果として、ダムは土砂に埋もれ、山崩れが続発し、鉄砲水が人々に被害を与えます。山の荒廃はもはや放置できないところまで来ているのであります。白書の認識も同じであり、白書は次のように言います。「わが国森林・林業をめぐる現下の情勢は、極めて厳しい。このため、国内林業生産が著しく停滞の度を深めている。森林資源の荒廃が表面化したときは、もはや手遅れの事態にもなりかねない。」まさに正しい指摘である。
 問題は、しからばいま何をなすべきかであります。白書の提言する、供給面での需給及び価格に関する情報の的確な把握と伝達システム、外材輸入の監視指導、こういったことについて私は異議をはさもうとは思いません。しかし、それでは足りないのではないでしょうか。いまや、小手先の対策で事態が改善できる状況ではない。零細なわが国の森林、林業業者の企業努力ではとうてい賄えない外材や代替資材の圧力がわが国の業者を圧迫し、その生産意欲を失わせ、山は荒れているのであります。
 第一になすべきこと、それは大規模な資金の投下であります。これは直ちになされなければならない。いかがでございましょう。
 その観点から、わが党が提案している、国の行う分収造林法の速やかな成立が必要であろうと思います。いかがでございましょうか。
 次いで、思い切った外材の輸入制限を行い、内材の供給と価格を安定せしめることは、これまた焦眉の急であると思います。
 いかがでございましょうか。
 次に、私は、国有林野事業の重要性を指摘したいと思います。
 国有林野、それはわが国の林業の中心的位置を占めております。国有林野の荒廃は、すなわちわが国森林の荒廃であります。国有林野は守り抜かなければならない。ところが、林野庁は、北海道の五営林局の再編を行い、他地域での九営林署の統廃合を行った。真に国有林野を育成する熱意があるかどうか、私はきわめて疑問視せざるを得ないのであります。いま林野庁は、この国有林野の中から手を抜いていこうという方向にあるのではないでしょうか。確かに、国有林野特別会計は赤字でありましょう。だが、そのゆえに国有林から手を抜いていいことにはならないのであります。問題は山のことであります。森林のことであります。いまの投資が実を結ぶのは数十年の将来であります。数十年後の豊かな森林のために現在資本を投下するのは、林野事業としては当然のことではありませんか。どのようにお考えになるでありましようか。
 次に、漁業白書について伺います。
 二百海里時代の到来は、もはや完全に本格化しました。かつての沖合いから遠洋へといったような発想はすでに過去のものであります。私たちは、勇気を持ってこの現実を直視し、発想の転換を遂げなければなりません。そのため、国際的に海洋生物資源は全人類の生存に必要な人類の共有資源との観点から、その有効利用と公正な配分を行い得る国際的な生産協力と国際的調査研究機構を確立することなどの努力が必要と思われますが、このような、発想を変えた長期的展望に立った努力について、どのようにお考えになるでありましょうか。
 わが国漁業の根底には、われとらずんば人にとられるという無主物先占的な思想があり、それが乱獲と漁場の破壊となり、世界各国から、日本の漁船は世界の海を荒らすとの非難を受けてきました。今後、海洋生物資源を全人類的共有の財産と見て、有効利用を目的に国際漁場、公海漁場で生産活動をする以上、従来の利潤追求型の私企業による経営は、もはや遠洋漁業にはなじまないものになっているのではないかと思います。(拍手)これを公社化することが必要と思います。これを公の手で規制し、これを公社化する方向での経営が必要になってくると思うのでありますが、いかがお考えでありましょう。
 このような時代にあって必要なのは、沿岸漁場の開発であります。しかし、巨大工業開発、タンカー、原子力発電所などが漁場を荒らしているこの現実は、まことに遺憾であります。白書も指摘しているように、多くの赤潮による被害を初め、海洋汚染による被害が数多く見られているところであります。この点をどうするかについて、抜本的な施策がなければなりません。白書には、私は、これに取り組む迫力ある姿勢が見られなかったのが残念であります。この点をいかがなさるおつもりであるか、農林水産大臣に伺いたいと思います。
 以上で私の質問を終わりますが、第一次産業に対する温かい思いやりと、第一次産業が国の産業の中でどのような位置を占めるか、この点についての明確な政府の姿勢をぜひともお示しをいただきたい、このことをお願いいたしまして、私の質問といたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
○内閣総理大臣(大平正芳君) 最初の御質問は、食糧の確保、自給力向上を図る必要を認めるかという御質問でございました。
 国民に食糧を安定的に供給いたしますことは、国政の基本的課題であると考えております。したがいまして、食糧の生産に当たられる方々の生産意欲とその生活を守ってまいりますことも、政治的に見て基本的な課題であると政府は心得ております。そのため、政府としては、国内で生産可能なものは極力国内生産で賄うということを基本といたしまして、総合的な食糧自給力の向上に努めてまいりたいと考えております。
 第二の御質問は、農産物の価格保障についてでございました。農民が生産できる農産物価格を保障してまいることが必要でないかという御趣旨と承りました。
 われわれは、この問題に対しましては、ひとり価格政策だけでなくて、品種改良などの生産対策、農業経営の規模の拡大などを図る構造政策、それとあなたの言われる価格政策を総合的に組み合わせまして、農業所得の維持向上を図ってまいらなければならないと考えております。
 自余の問題につきましては、関係大臣からお答えいたすことにいたします。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 十四、五問ばかりございますから、簡潔に答弁をさせていただきます。
 まず第一問、農民が生産意欲を持って農業に従事できる状態にあるかというのでありますが、これは、物は考え方であります。どんな産業でも、景気のいいときもあれば悪いときもある。農業の場合に、現在米生産過剰というような点があって、そこらの点を指して言っておるのだろうと思いますが、世界じゅうの人が、日本は世界で最大の市場だと、こう言っておるわけですから、日本で生産者がそれを知らないわけがない。これは一億一千万の消費人口があって、しかも、開発途上国とは違って購買力が旺盛である。したがって、一個二百円のミカンも売れる、一粒五十円のイチゴも売れるという市場ですから、この市場、一億一千万の人に物を供給する市場を至近距離に持っておる日本の生産者が、希望が持てないというはずがないのであります。問題は、やり方なのであります。したがって、われわれは、農業に夢と希望を持たせるような仕組みをだんだんやってきておるし、今後もやっていく必要がある、こう思っておるわけでございます。
 第二番目は、水田利用再編対策が農民の生産意欲を失わしているが、ということでございますが、これは、過剰生産のときにはどんな産業だって生産調整をやるのであって、鉄だって何だってそうです。したがって、この一時的な過剰生産をなくす、このことは、やはり農協等も自主的に、政府のやっているところに上乗せしてやろうという気持ちになったのは、価格を維持するためには過剰生産しておっては維持できない、こういうような考え方に、まじめな考え方に立ってやっておるのでございますから、これは私は、現在の米価を維持するためにはやむを得ざる措置である、かように考えております。
 第三番目は、農家所得の低下なしに転作を進めることができるかということでございます。
 これもやり方でございまして、全体から申しますと、大体百九十万トンに相当する生産調整の米の金額というのは五千四百億なんです。したがって、それらの所得は、一応の推計、六割の所得率と見て約三千三百億。したがって、これに対する政府の奨励金が二千六百億円出ておって、あと七百億円が結局所得不足になるのではないかというお考えでございますが、これは平均した転作作物というもので考えましても、十アール当たり、低い大豆や麦でも二、三万円にはなるわけでありますから、したがって、四十四万ヘクタールというもので七百億円というところを割ると十アール一万六千円。したがって、一番安い大豆やなんかをつくっても二万か三万になるんですから、農業所得を全体として少なくしておることにならないということであります。
 それから第四番目でございますが、転作奨励金がなくなったらば、麦とか大豆のようなものはつくらなくなっちゃうんじゃないか。
 これはその危険性は非常に強い。これは率直に私は認めます。したがって、不足しておる麦や大豆については、ともかく別にいい転作物がきちっとできるまで奨励金を続けていく必要がある、そういうふうに考えております。これはあなたの所説と同じ。
 それから、その次の五番目は、農業は、西欧の諸国に比べて非常に面積が小さい、規模拡大ができないじゃないか。
 これは本当にむずかしい問題でございます。もともと国土面積がないんですから、規模拡大するといっても、新しく開墾するといっても、たんぼや畑の二階建て、三階建てというわけにはなかなかいかない。ということになりますと、これは要するに利用権の集積、同じたとえば一反歩で、二万円しか所得が取れない人がある、七万円所得を上げる人もある。実際あるわけですから。兼業農家の場合に、全部ではもちろんございませんが、第二種兼業というような場合には、精魂込めて農業をやれる人ばかりおるわけではない。しかし、土地を人に貸すということは、これは大変な問題なんです。土地は財産的価値が非常にありますから、貸したが最後返ってこないとか、小作料払ってもらえないとか、返してもらうときに離作料を取られるというようなことではなかなか貸さないから、専業農家がつくるような高い生産性はできないんだけれども、結局、税金対策もあるし、相続税の問題もあるし、固定資産税の問題もあるから、自分がつくってどうしても守っているという人もあるのも事実でございますので、これは両方に利益になることを何か考えていかなければならぬというようなことで、土地の流動化促進のための諸制度の見直しということを目下鋭意勉強中でございます。
 また、日本の場合は面積が少ないと申しますが、たとえばドイツの十三分の一ぐらいの面積だけれども、ドイツでは小麦をつくっているのは一ヘクタールで十六万円、日本は米をつくって平均の所得で百四十万円ですから、日本の一ヘクタールはドイツの九ヘクタールに、水田の場合は該当するのです。二ヘクタール持っていれば十八ヘクタール、ドイツで持っていることになる。ということで、オーストラリアで二千五百町歩の土地を持っている農家に私は行ってきました。二千五百ヘクタール持っておって三千万円の収入がともかくない、こういうような点も考えますと、日本の場合は一概に土地が狭いから何十分の一なんだというばかりにはいかない。そのかわり農産物は高いというような宿命を持っておるのであります。
 その次は、農業就労者一人当たりの所得が少ないではないか。
 確かに農家とすれば、勤労者が三百四十万で農家が四百六十七万ですから、二戸当たり農家の所得の方がいまや勤労者世帯を上回っていることは確かであります。三割ぐらい上になっちゃっている。しかしながら一人一人にすると、農業就労者としては少ないじゃないかと言われれば、それは少し少ないのであります。農家の就労者一人当たりのということになりますと、大体三十人未満の中小企業の勤労者の規模ということで、少し足らない。このことは、裏返しに言えば、もっと生産性を上げられないかということであります。就労人口の問題で日本は零細だと言われながら、就労人口はいま一〇・六ぐらいですね。ドイツあたりが約四・九ぐらいです。アメリカが二・五、イギリスが二%ということですから、生産性をもっと上げて就労人口が少なくなるようにすれば、農業者一人あたりの所得は必然的に上がる。そういうふうな政策を土地流動化とともにもっと進めてまいりたい、かように考えております。
 第七番目は、雇用問題でございます。そんなに生産性を高めちゃったら失業しちゃって、農家の人が行くところがなくなっちゃうんじゃないかという御質問、御心配であります。
 しかし、私は、強制的に失業者をつくるようなことは毛頭考えておらないのでありまして、要するに、土地は持っているのだけれども財産の保持として持っているんだ、貸したら返ってこないから持っているんだという人には、貸してもちゃんと返ってきますよ、小作料もちゃんと約束どおりもらえるように保証しますよという制度にすれば、働いても働かなくても、同じまたはそれ以上の所得を上げることができる。(発言する者あり)ですから、そこなんですよ、ここは勉強を少ししてもらわなければ困るところは。ここのところをわれわれはやって、資産として一〇〇%に使うことの創意工夫をこらしていくということによってこれは失業者はつくらない。しかしながら、農村に就労機会をたくさんつくる。結局労働力が浮いた、三人でいままでやっていたのが二人で済むということになれば余剰労働力ができますから、その余剰労働力は、別の園芸をやるとかハウスをやるとかすることもあるし、別な他産業へ在村、在宅で勤められるというようにすれば農家所得の増大につながるので、景気の状況等と相まって、農村工業導入というようなものはもう一遍よくやっていかなければならぬ、こう思っておるのであります。
 第九番目でございますが、社会党の提案の国営分収造林、これを行えということでございます。
 これもいろいろ研究さしてもらったんです。ともかく、要するに造林というものは重要だから、林野庁に民間の林も造林させろというのが骨子であります。ところがこれは問題でありまして、なかなか、現在の林野庁のやり方についても、(「まじめにやれ」と呼ぶ者あり)まじめに言っている。林野庁のやり方につきましても、これはいろいろ問題があるわけであります。したがって、こういう事業はなかなか公務員には向かないと私は実際は思っているのです。したがってこ、のような事業は、公共的にやるよりも民間がやることの方が能率が上がるというのが、大体これは世間の常識でございます。したがって、私は、国営分収造林に関する特別措置法について賛成するという立場にございません。
 それから第十番目ですが、外材の輸入の制限ということにつきましても、ストレートにものの制限をするということは、これはいろいろな国際問題を起こす。ガットの関係もございますし、また、そうでなくてさえも、現在輸出国が、丸太でばかり輸出することは不利である、加工して日本に売ろうという動きが出てきておるわけですから、じゃ丸太の輸入を制限するということになったら得たり賢しということになって、日本に対しては丸太輸入でなくて加工品ならいいよ、こう急激なことになってきても困る。したがって、それらの問題については、直接的な規制というものは反動もあり問題もあるので、これについては、私としては、四半期ごとに短期の需給の見通しというものをつくって、それを公表して、そしてその計画外の余分なものまで輸入してしまったために値段が下がってしまう、こういうことを未然に防止していくというような行政指導をやっていく必要がある、そういうことでございます。
 それからその次は、営林局とか営林署の統廃合というものは、国有林野の管理から政府は手抜きをしているのではないか、こういうような御心配でございますが、そういうことはございません。ただ、町村合併等も行われた中で、二つの村に一つ営林署があるとか、前には一つの村に二つ営林署があるというような事態もあったわけでございますから、町村が三つも四つも一緒になっているのに、その中で営林署が、これだけの機動力が持たれ、また道路もよくなるという段階では、やはりむだを省けるところは省かなければ国民に対して申しわけがないのであって、そういうような管理者等については省けるようにいたしました。そのかわり、第一線の組織である担当区の事務というようなものは、それは現状のまま置いてあるわけでありて、少しも手を抜いておらないのであります。署長さんが少なくなったとか局長が少なくなったとかいうのは、それはありますよ。ありますけれども、末端の実際の仕事の面については手抜きはいたしておりません。
 それから、国有林野特別会計の赤字は、将来のための投下資本なんだから赤字は認めたっていいんじゃないかという御感想でございますが、これはやはり、赤字の原因はいろいろございますけれども、組織の簡素化とか要員の規模の縮小、生産性の向上、こういうものは民間でもみんなやっているわけですから、それは国有林野はやらぬでいいというわけにはいかないのであって、したがって、そういうものは、やるものはやった上においてなおかつ赤字が出れば、それは一般会計で見るより仕方がない、私はそう思っておるのであります。
 それから、漁業問題でございますが、漁業問題につきまして、漁業資源は人類の共有物である、公正な分配をするために国際的な生産、研究の協力が必要ではないか。全くそのとおりだと思います。したがいまして、これは科学的な管理と合理的な利用を図っていくことが必要でございますから、そういう意味で国際協調、国際協力、国際研究を極力やらしていただきたい、かように考えております。
 それから、遠洋漁業は利潤追求型の民間はだめだ、公社化をしたらどうだというのでありますが、これも問題は、遠洋漁業に対しては、今後とも資源の保護とか有効利用というようなものについては適正に操業するということが必要であります。しかし、経営形態を公社化にする必要があるかどうかについては、私は賛成いたしかねるところであります。
 それからその次は、沿岸漁業振興のために、公害による漁場の荒廃がある、これにどう対処していくかということでございますが、赤潮の発生等、公害による漁場の荒廃を防止することは非常に重要なことでありますから、基本的には水質、それから底質等の悪化を防ぐためのいろいろな措置が必要であります。農林水産省といたしましては、今回も、広島の西南海区水産研究所に赤潮部というものもわざわざ設置をいたしまして、赤潮に対する基礎的な調査研究、各種技術の開発研究等をやらしておるわけで、(発言する者あり)御無礼いたしました。南西海区であります。そういうようなことなど、一層今後とも努力をしてまいる所存でございます。
 以上、簡単でございますが、答弁にさせていただきます。(拍手)
    〔国務大臣栗原祐幸君登壇〕
○国務大臣(栗原祐幸君) 私に対する御質問は、農業経営規模の拡大によって離農者が出てくるじゃないか、その離農者の雇用対策はできておるのか、こういう御質問でございます。
 いま農林大臣からもお話がございましたが、経営規模の拡大の態様によっていろいろ違うと思いますけれども、しかし、経営規模が拡大いたしますれば離農者が出てくるということは考えられることでございます。したがいまして、これらの点につきましては、農林水産省とよく連絡をとって対処してまいりたいと思います。
 なお、末端におきましては、こういう離農者が一番関係の深い団体は農業協同組合でございます。したがいまして、そういうことが予想される場合には、農業協同組合と地域の安定所とよく連絡をとりまして、職業訓練、職業指導、職業紹介等について万全を期したい、こう考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(灘尾弘吉君) 神田厚君。
    〔神田厚君登壇〕
○神田厚君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題に供されましたいわゆる農業白書ほか林業、漁業の白書につきまして、大平総理並びに関係大臣に御質問を申し上げます。
 近時、わが国農業を取り巻く環境は、未曽有の米の生産調整、農畜産物の輸入圧力などに加え、景気停滞などによる農畜産物価格の低迷など、まことに厳しい状況にあります。
 こうした中で、私どもが特に憂慮をいたしますのは、最近各界から出されている農業、農政に対する厳しい批判ないしは提言であります。かかる提言ないし批判の背景は、一言で言えば、財界にあっては、最近の貿易摩擦を農畜産物の市場開放に血路を求めようとするものであり、また、一部労働界にあっては、最近の賃金抑制策に対応して安い農畜産物価格の実現を要求したものでありますが、政府は、かかる提言等をどのように受けとめておられるのでありますか。
 私は、農業は激変する経済動向等に対し安易に左右されるべきものではなく、長期の見通しのもとに、人類の生存にかかわる基礎産業として位置づけられるべきものと思いますが、総理の農業に対する基本理念をまずお伺いいたしたいのであります。
 また、今後の農政の推進に当たり、農業のあり方に対する国民的コンセンサスがいまだ確立されていないことはまことに不幸なことであります。このため、早急に各界の代表者を集めた国民食糧農業会議等を開催し、国民に広く農業を理解させる機会を持ち、食糧農業に対する国民的な合意づくりを行うべきであると考えますが、いかがでありましょうか。
 また、以上の点に関連し、渡辺農林水産大臣は、事あるごと、農業の見直しに触れ、この中で農業基本法の改正にも言及されておりますが、大臣の基本的考え方と改正の作業状況をお伺いしたいのであります。
 次に、白書に沿って御質問を申し上げます。
 第一点は、農業の体質強化のための経営規模の拡大方策であります。
 白書は、第二種兼業農家等の農業生産力の低下とともに、後継者のいない農家が近年ますます増大していることに着目し、これら農家の所有農地の中核的農家への集積を指摘しておりますが、その具体的な方法について有効な手段を明示していないのは片手落ちであると考えます。
 渡辺農林水産大臣は、さきの予算委員会における私の質問に対し、農地の流動化を図るため、農地法及び農振法等の改正を含め、各種制度の洗い直しをしたい旨の答弁を行っておりますが、この際、その具体的方策等についての考えを明らかにしていただきたいのであります。
 また、こうした構造政策の推進に当たり、重要なことは、離農者等に対する安定した就業の場の確保でありますが、その具体的方法はどのように考えているのでありますか。
 第二点は、農畜産物の輸入に対する問題であります。
 白書は、昨年そして本年と、引き続き、農畜産物の輸入制限に対する諸外国の事例を紹介するとともに、わが国農業の置かれた立場を分析し、わが国はこれ以上の輸入余力がないことを強調しております。にもかかわらず、一昨年来の日米通商交渉に引き続き、東京ラウンド交渉においてもわが国が大幅な農畜産物の輸入開放を行ったことは、政府として言行不一致の責任を免れることはできません。米の生産調整と相まって、農業者の農政不信を一層つのらせております。
 さらに、六月末に開催される東京サミットにおいて、わが国は開催国として各種の要望を受けることが想定されますが、総理は、農畜産物についてはこれ以上の市場開放は無理であるとの判断のもと、これ以上の市場開放の約束をしないことを期待したいと思うのでありますが、いかがでございますか。また、過日、報道によりますと、米国からの穀物輸入について長期協定の締結問題が言われておりますが、真意のほどをお聞かせいただきたいのであります。
 第三点は、総合的食糧自給率の向上を図るための農畜産物相互間の相対価格差の是正問題であります。
 今日の農業生産は、米、ミカン、牛乳、乳製品、鶏卵等に過剰が見られる反面、麦類、大豆及び飼料作物等は依然として自給力を高めることができないといった版行的状態にあります。こうしたことは、わが国食糧の安全保障の面からも、また限られた農地の有効利用といった面からもまことに憂慮すべき事態と思いますが、総理はいかなる認識をお持ちでありますか。私は、かかる状況の是正のためには、一時的な奨励金等による誘導措置では事足りず、従来から指摘している農産物間における相対価格差の是正こそが緊要と思いますが、この点、どのように考えておられるのか。また、これとあわせ、本年秋に改定予定の農産物の長期需給見通しはいかなる構想を基準に改正作業を進めているのか、明示されたいのであります。
 さて、ことしも米価の季節がやってまいりました。昨年七月、日本武道館の米価全国大会におきまして、時の自民党幹事長であった現大平総理は、そのとき全国から集まった三万名の農業代表者を前に、あしたの希望につながる米価を約束したにもかかわらず、生産農民の期待の米価は前年度に引き続き据え置きという結果に終わり、全国四百八十万農家の失望を買ったのは記憶に新しいところであります。ことしもすでに農材水産大臣は早々と米価据え置きの方向を明言しておりますが、総理は、ことしこそあしたの希望につながる米価を実現して、全国の生産農民の期待にこたえていただきたいと思いますが、いかがでありますか。あわせて、米価問題について農林水産大臣の御意見をお聞かせいただきたいのであります。
 また、現在の農政は、米の生産調整、牛乳の生産調整、そして鶏卵の生産調整、ミカンの生産調整など、生産者の自主的な生産調整に任せており、その責任を果たしていないのはまことに農政不在のそしりを免れません。これらの自主生産調整に今後どのような展望を持って行政指導を行っていくつもりなのか。特に養鶏問題では、企業養鶏に対して、委員会決議を踏まえた、違反者に対し飼料安定基金からの除外も含め、きちんとした指導が果たされなければならないと考えますが、いかがでありますか。
 次に、林業問題であります。特に外材問題について一点お尋ねいたします。
 外材輸入の増大は、短期的に見れば、わが国の木材需給を緩和基調とし、木材価格の低迷を招き、林業及びその関連産業の生産活動の停滞の最大の要因となっておりますが、長期的に見れば、外材の輸入は逼迫する見通しという状況に対応して長期的にわが国の木材需給の安定を図るために、政府はどのような基本的な理念を持って対処していく考えであるのか、お伺いしたいのであります。
 最後に、漁業問題について御質問をいたします。
 海洋新秩序の形成はなお進展しつつあります。遠洋漁業に対する沿岸国の締めつけは一層強まり、入漁料、漁業協力費の引き上げ要請は今後強くなる一方であり、漁業経営に及ぼす影響も憂慮されるところであります。各国からの入漁料、漁業協力費の引き上げの要求については、どのように対処をしていくつもりなのか。入漁料、漁業協力費での折り合いがつかないで交渉がまとまっていないオーストラリア、アメリカなどについての今後の交渉はどう対処するのか、お聞かせいただきたいのであります。
 また、一昨日、中国政府は、わが国の尖閣諸島に対する調査について、中日両国間の了解に違反していることは明白であるとの抗議をしてまいりましたが、この調査は沖繩開発庁による漁業における安全操業の問題も含まれており、われわれとしても看過すべきでないのでありますが、この点については、日中条約締結時に日中両国において異なった見解が残ったのではないかという疑念を改めて持たざるを得ません。昨日の衆議院外務委員会の質疑等を通してうかがえることは、この点についての外務大臣と沖繩開発庁並びに運輸省との間に意思の疎通を欠き、この重要な問題について閣内不一致が見られたことはまことに遺憾であります。その責任は厳しく問われなければなりません。
 外務大臣は当時の責任大臣として、この一連の動きについて明確な答弁を求めたいと思います。また、閣内不統一の責任は総理にありますが、この際、中国の抗議について、日本としてはどう対応なさるおつもりなのか、総理並びに外務大臣にお聞かせいただきたいのであります。
 今回の調査の目的と今後の方針について、特に今後も調査を続行するのかどうか、これらの問題に関しましてわが国の基本的態度を、総理並びに外務大臣に重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
 続いて、北洋漁業の問題に関連しまして御質問を申し上げます。
 北洋のサケ・マスについては、三十二億円という、昨年の約倍額の入漁料を支払うなど厳しい状況であります。しかしながら、日本の漁船にとって必ずしも安全操業が確保されているとは思えません。
 一つは、再三にわたって行われている択捉島周辺のソ連軍の射撃訓練計画についてであり、駐ソ日本大使館は五月十八日、ソ連軍の択捉島周辺及び沿海州沖合いでの射撃訓練計画に抗議し、その中止を求める申し入れを行いました。その内容として、択捉島周辺は日本領海の一部を含む、訓練水域で操業中と推定される日本漁船が損害をこうむるおそれがある、そういう事実を指摘し、損害賠償請求の権利を留保したと伝えられております。この区域の射撃訓練は、昨年は六月と九月、ことしは二月と三月と四月と五月と、さらに五月二十八日から三十一日、いま現在行われているように、とかく頻繁に行われ、そのたびに日本漁船は多大の被害を受けております。これらの問題につきまして厳然たる態度をとるべきであると考えますが、いかがでございますか。
 さらに、七七年から中断されている貝殻島のコンブ漁について、ソ連側が、日本漁船の操業に漁業省の発行する操業許可証の携帯を条件とすることを通告してきました。この件についての交渉の経緯と今後の見通し、また、その対応策について外務大臣にお伺いしたいのであります。
 最後に、懸案となっております韓国漁船の操業トラブルの問題につきましてお尋ねを申し上げます。
 過日、トップ交渉が行われたと聞いておりますけれども、どのような結論が出たのでありますか、今後どのように対処をなさるおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 以上、各点につきまして政府の責任ある御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣大平正芳君登壇〕
○内閣総理大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、各界から農政に対する批判があるが、これをどう受けとめておるか、また、食糧農業に対する国民的合意をつくり出すため、何か諮問機関のようなものをつくる考えはないかというお尋ねでございました。
 農政批判でございますけれども、農業は、天候、害虫等と闘いながら、土壌の生産力を維持しながら経営いたすものでございまして、他の産業に比べまして特別に困難なむずかしい産業であると心得ておりまして、それだけに特別の配慮がなければならぬと考えております。また、わが国の農業は、国土が狭い関係で経営が零細になっておりまする関係もございまして、これまた特別な配慮が必要であると考えております。
 しかしながら、だと言って、農業の生産性の向上がゆるがせにされていいはずはないのでございまして、生産、流通両面にわたりましての合理化は一層進めていかなければならぬと考えておりまして、私ども、そういう観点に立ちまして農業政策には特に意を用いていくつもりでございますけれども、これに対する国民的合意の形成につきましては、すでに農政審議会等いろいろ機会がございますので、そういう機会を通じまして国民の理解と合意を得るように努めてまいりたいと考えております。
 第二の御質問は、東京サミットにおきまして農産物の輸入拡大要求があった場合にどう対処するかということでございます。
 わが国は、ガットの精神にのっとりまして、他の先進国並みの市場の開放を遂げておるつもりでございまして、個々に問題は若干ございまするけれども、いまこの態勢を変更しょうとは考えておりません。いまのわれわれのとっておる立場に立ちまして東京サミットに対処する所存でございまして、新たな譲歩を私どもは考えておりません。
 それから、食糧の自給力の向上についてのお尋ねでございましたが、これは先ほど日野先生にお答えいたしたところでお聞き取りをいただきたいと思います。
 それから、本年度の米価シーズンもだんだん近づいてきたが、あすへの希望につながる米価を約束すべきだと思うが所信はどうかということでございました。
 本年の生産者米価の取り扱いにつきましては、まだ何も決めておりません。例年のとおり、米価審議会の意見を聞きまして、適正な水準に決定いたしたいと思いますが、米が大幅な供給過剰となっておりますること、あるいは米から米以外の農産物への転作と米の消費拡大にいま最大の努力を傾けておること、そういう現状につきましては、十分配慮する必要があるのではないかと考えております。
 尖閣諸島における調査についての問題とこれに対処する外交の方針につきましては、外務大臣からお答えをお願いすることにいたします。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
○国務大臣(園田直君) お答えをいたします。
 東京サミットで農産物貿易が討議された場合は、対外経済の調整に留意しつつ、総合農政の推進、農家経済の安定に支障のないよう対処する所存でございます。
 尖閣列島の問題は、御承知のごとく、日中友好条約の条件でもなければ議題でもございません。領土問題は論議されておりません。しかし、国民大多数の関心のあるところでありますから、その際、私とケ小平副主席との会談の間で取り上げられた問題であります。
 基本的な立場を申し上げますと、尖閣列島は、歴史的、伝統的に見てわが国固有の領土であり、しかも有効支配をしていることは明々白々たる事実であります。(拍手)最近に至って中国がわが国の領土であると主張しているものであります。そこで、わが国は尖閣列島については係争中のものではないという立場であり、中国はわが方の領土であると日本に主張しているという、基本的な立場の相違があります。
 そこで、これについて、私の方からケ小平副主席に発言をいたしました。その発言は、そのまま申し上げますると、尖閣列島に対するわが国の従来の立場を主張し、その上、先般行われたような漁船団のような事件があっては困る、こう主張したのに対し、ケ小平副主席から、このような事件は今後やらない、このままでよろしい、こういう話でありました。それ以上は一言半句も両方から発言をいたしておりません。これで私は十分であると考えておるわけであります。
 なお、択捉周辺におけるソ連の射撃演習その他でございまするが、わが方は、御承知のごとく、しばしば厳重に抗議をいたしております。これに対するソ連側の返答は、択捉の島を日本の領土として、前提としてする日本の申し入れば受け入れるわけにはいかない、公海で射撃をやり演習をやるのは、これは国際法上に規定されたる権利であるというのが向こうの言い分であります。
 しかし、わが国としては、わが国固有の領土である択捉の島に接続する領海の一部を含む危険水域の設定は不法である、また、ソ連は、危険水域の設定に当たっては、漁業操業等に関するわが国の利益に影響がある場合にはこれに合理的な考慮を払うべきであるとの立場であって、これを含め、過去数回厳重に申し入れをしているところであります。
 貝殻島のコンブ操業については、ただいまモスクワで交渉中でございまするが、これは政府が窓口ではなくて、民間団体すなわち北海道水産会が窓口になって交渉しているところであります。ただいま交渉中でありまするから、これに見通しを申し述べることはこの交渉に影響いたしますので、この見通しについて申し述べることはお許しを願いたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 日本農業に対する基本的な考え方はどうであるか、こういうことでございますが、簡潔に申し上げますと、私は、農業というのは国民の食糧を安定的に確保しなければならない使命を持った産業である、こう考えております。また、農山漁村は民族の苗代である、こういうような基本認識に立っております。もう一つは、先ほど言ったように、日本は、一億一千万人という消費人口、しかも購買力の旺盛な消費人口を持つ優秀な市場であるから、農業者の創意と工夫によって、日本農業には夢が持たれるということを申し上げた次第でございます。
 したがって、今後の農政の基本方向は、農業が産業である以上、消費者を本位に考えなければならないのであって、消費者が好まないものをつくっても喜ばれないわけですから、消費者の需要に対応して適切な農業生産を進めていくということが大切だと存じます。それからもう一つは、いろいろな創意工夫をして、土地の流動化もその一つですよ、そういうふうなことをやって生産性の高い農業をつくり、その担い手を育てていくようにしなければならない、こういうのが私の基本的な考え方でございます。
 次に、農業基本法の見直し等の問題について、どれぐらい作業がはかどったかということでございますが、これは、農業基本法については、その目的に掲げたように、生産性の向上、農家所得の向上などは相当程度私はあの目的を達成したものと考えております。
 しかしながら、規模の拡大ということが、いろんな農地制度上の制約もあって思ったように進まない。就労人口は、ここ二十年間ぐらいのうちに二〇%から一〇%に、半分に減った。農業に働く人の数は半分に減った、生産高は減らない、しかし農家戸数は二割しかまだ減らないというような問題があるのは、やはり土地をみんな持っておるというところですから、そこらのところの創意工夫をして、農業地域の再編成と規模の拡大ができやすいような仕組みを考えるために目下作業中でございまして、結論が出ておりませんが、近い時期に農地法あるいは農業基本法等、農政審議会の意見を伺うようにしたいと考えております。
 それから、経営耕地の規模拡大のための施策については、先ほどお話しいたしましたように、借り手と貸し手が円満に話し合いがつくような保証というものを考えてやる必要があると思っております。
 それから、兼業農家の規模拡大について、兼業農家に余剰労働力ができた場合にどうするんだというような場合でありますが、それは施設その他の同じ農業の中で働く場合もございますし、それがやりたくないという場合には、景気の回復と相まって、計画的な農村への工業導入や公共事業の推進、観光、農産物加工等の地場産業の振興ということも今後あわせて考えていく必要がある、こう思っております。
 米国との穀物の輸入長期協定の問題については、これは総理からもお話しがあったと思いますが、私は、長期協定は必要ないと思います。要するに、日本はアメリカにとっての安定的顧客であると同時に、日本にとってアメリカは、特にえさ、飼料作物等の安定した輸入先でありますから、ここに極端な変化が起きたのではどっちも困ることでございますので、これにつきましては、定期的にそれぞれの事務当局レベルでその年の情報交換等を行って、支障を来さないようにやっていくことが実務的である、こう考えておるわけでございます。主としてこれはえさ、小麦の問題でございます。これは買わざるを得ない状況にあるわけですからね。輸出規制なんて言われたらまた困るわけですから。
 それから第四番目は、総合的な自給力強化のための農産物の相対的価格関係の是正をしたらどうだ。全くそのとおりでございます。これは神田先生の質問どおりでありますから、結論だけを申し上げます。
 それから第五番目につきましては、農産物の需要と生産の長期見通しの問題で、この改定作業のことでございますが、これは、いま新しい経済計画を経済企画庁で策定作業中だと聞いておりますが、この問題と農政全体の問題日本の今後の産業のあり方、これは関係があるわけでありますので、これらのものを見ながら、国内で生産可能なものは極力国内で賄うということを基本としながら、農業政策及び農産物等の需給の長期見通しを立ててまいりたい、こう考えております。
 それから、生産調整のことでございますが、特に鶏卵の生産調整の話にちょっとお触れになったわけでございますけれども、この鶏卵の生産調整を守らない生産者に対しましては、従来からも、制度的な融資、補助事業、卵価安定基金制度の利用等の対象から除外するというような措置をとって、ともかくかなり厳しく、みんなのために生産調整をやってくれよということで呼びかけておるわけであります。無断増羽者に対する是正指導は一層強化してまいりたい、かように考えております。
 木材の問題につきましては、これは長期的に見れば、外国からの木材が安易に入るとは思いません。どんどんどんどん伐採していますから、向こうでもこれは資源枯渇になってますし、山の中の奥地に入らなければとれないという状態になってきておる。それから一方、需要は増大しておるということで、私はそういう点では、将来的な見通しとして、外材に頼っておるということはむしろ危ないというぐらいの考えさえ持っておるのです。したがって、私はこの間に、いま外材がだぶついて木材の値段が低いからといって造林をしたくないという人がありますが、そういうことのないように、いろいろな国産材の振興のための諸政策というものをやっておるわけでございます。(「どうするかということだけ言いなさいよ」と呼ぶ者あり)長くなりますよ。ですから、そういうことになりますと、要するに山の総合整備とか公庫資金を長期低利で貸し出すとか、融資や助成の面で手厚い助成制度をやっておりますということを申し上げておるのであります。
 それから、入漁料によって圧迫されておるんじゃないかということでございますが、入漁料は、本来漁業者自身が操業経費として負担すべきものでございます。それが原則であります。しかしながら、南太平洋諸国の場合は、非常に高額であったこと、それから数年分一括払いであること、こういうようなこと等もありまして、遠洋漁業者の負担を軽減するため、南太平洋漁業振興基金というものを設けて利子負担の軽減を図ることとしたわけであります。
 オーストラリアとの間の入漁料の交渉、まだ決まっておりません。おりませんが、極力話し合いをして、負担の軽減を図るようにやってまいりたいと考えております。
 韓国の問題等につきましては、話し合いをいま進めておって、きょうも国会が終わったらば、非公式でございますが、私も話をするつもりでございます。
 以上であります。(拍手)
○議長(灘尾弘吉君) 外務大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。外務大臣園田直君。
    〔国務大臣園田直君登壇〕
○国務大臣(園田直君) 私の答弁に足りないところがありましたので、お許しをいただいて、追加をいたします。
 尖閣列島でただいま政府がやっておりまする調査、これは、微妙な立場のもとにわざわざ有効支配を誇示するためのものであるならば不必要であるけれども、地域の漁民、住民の方々の避難、生命の安全等のために行う調査団ならば当然のことであるということで、閣内不統一はございません。
 なお、これに対する中国の申し入れに対しては、原理、原則と、感情、面目との別あることは、個人の交際、国の交際、当然であります。したがいまして、慎重に検討し、対処したいと考えております。(拍手)
○議長(灘尾弘吉君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○議長(灘尾弘吉君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時三十八分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  大平 正芳君
        外 務 大 臣 園田  直君
        農林水産大臣  渡辺美智雄君
        通商産業大臣  江崎 真澄君
        郵 政 大 臣 白浜 仁吉君
        労 働 大 臣 栗原 祐幸君