第087回国会 外務委員会 第6号
昭和五十四年四月二十五日(水曜日)
    午前十時二十分開議
 出席委員
   委員長 塩谷 一夫君
   理事 愛野興一郎君 理事 大坪健一郎君
   理事 奥田 敬和君 理事 毛利 松平君
   理事 井上 一成君 理事 土井たか子君
   理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君
      鹿野 道彦君    川田 正則君
      鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君
      佐野 嘉吉君    中山 正暉君
      福田 篤泰君    小林  進君
      島田 琢郎君    高沢 寅男君
      松本 七郎君    浅井 美幸君
      野村 光雄君    寺前  巖君
      依田  実君    楢崎弥之助君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 園田  直君
        農林水産大臣  渡辺美智雄君
        労 働 大 臣 栗原 祐幸君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)      三原 朝雄君
 出席政府委員
        内閣総理大臣官
        房同和対策室長 黒川  弘君
        総理府人事局長 菅野 弘夫君
        青少年対策本部
        次長      松浦泰次郎君
        防衛庁参事官  岡崎 久彦君
        防衛庁長官官房
        防衛審議官   上野 隆史君
        防衛庁装備局長 倉部 行雄君
        法務省人権擁護
        局長      鬼塚賢太郎君
        外務政務次官  志賀  節君
        外務省アジア局
        長       柳谷 謙介君
        外務省アメリカ
        局長      中島敏次郎君
        外務省欧亜局長 宮澤  泰君
        外務省経済局長 手島れい志君
        外務省経済局次
        長       羽澄 光彦君
        外務省条約局長 伊達 宗起君
        外務省条約局外
        務参事官    山田 中正君
        外務省国際連合
        局長      賀陽 治憲君
        文部省学術国際
        局長      篠澤 公平君
        厚生大臣官房長 大和田 潔君
        水産庁長官   森  整治君
        水産庁次長   恩田 幸雄君
        労働大臣官房長 関  英夫君
        労働省職業安定
        局長      細野  正君
        自治省行政局公
        務員部長    砂子田 隆君
 委員外の出席者
        防衛施設庁施設
        部長      多田 欣二君
        法務大臣官房審
        議官      水原 敏博君
        法務大臣官房参
        事官      藤岡  晋君
        外務大臣官房外
        務参事官    井口 武夫君
        文部省大学局高
        等教育計画課長 遠藤  丞君
        水産庁海洋漁業
        部長      佐野 宏哉君
        運輸省船員局労
        政課長     松木 洋三君
        労働省職業安定
        局雇用政策課長 白井晋太郎君
        労働省職業訓練
        局訓練政策課長 守屋 孝一君
        外務委員会調査
        室長      高杉 幹二君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十一日
 辞任         補欠選任
  川田 正則君     倉石 忠雄君
  佐野 嘉吉君     前田治一郎君
  中山 正暉君     始関 伊平君
  依田  実君     永原  稔君
同日
 辞任         補欠選任
  倉石 忠雄君     川田 正則君
  始関 伊平君     中山 正暉君
  前田治一郎君     佐野 嘉吉君
  永原  稔君     依田  実君
同月二十五日
 辞任         補欠選任
  木村 俊夫君     鹿野 道彦君
  河上 民雄君     島田 琢郎君
  中川 嘉美君     野村 光雄君
同日
 辞任         補欠選任
  鹿野 道彦君     木村 俊夫君
  島田 琢郎君     河上 民雄君
  野村 光雄君     中川 嘉美君
    ―――――――――――――
四月十三日
 千九百七十四年の海上における人命の安全のた
 めの国際条約の締結について承認を求めるの件
 (条約第一二号)(予)
 千九百七十四年の海上における人命の安全のた
 めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書
 の締結について承認を求めるの件(条約第一三
 号)(予)
同月二十四日
 北西太平洋における千九百七十九年の日本国の
 さけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定
 書の締結について承認を求めるの件(条約第一
 四号)
同月十一日
 日本国平和宣言決議に関する請願(森喜朗君紹
 介)(第三〇二〇号)
 同(武藤嘉文君紹介)(第三〇三六号)
同月二十日
 日本国平和宣言決議に関する請願(村山達雄君
 紹介)(第三一〇七号)
 同(渡部恒三君紹介)(第三一〇八号)
 同(古屋亨君紹介)(第三一三二号)
 同(伊東正義君紹介)(第三一四五号)
 同(藤波孝生君紹介)(第三一七三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
三月二十七日
 国際人権規約批准促進に関する陳情書(大阪府
 南河内郡太子町議会議長建石吉夫)(第一〇七
 号)
 朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書外十
 四件(山口県玖珂郡美川町議会議長藤井肇外十
 四名)(第一〇八号)
 旅券事務の財源措置改善に関する陳情書(東京
 都千代田区丸の内三の五の一全国都道府県旅券
 事務主管課長会議代表澤田正)(第一〇九号)
 竹島の領土権確立等に関する陳情書外一件(中
 国四国九県議会正副議長会議代表鳥取県議会議
 長浜崎芳宏外十名)(第一一〇号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――本日の会議に付した案件
 北西太平洋における千九百七十九年の日本国の
 さけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定
 書の締結について承認を求めるの件(条約第一
 四号)
 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規
 約の締結について承認を求めるの件(第八十四
 回国会条約第一六号)
 市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結
 について承認を求めるの件(第八十四回国会条
 約第一七号)
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
○塩谷委員長 これより会議を開きます。
 北西太平洋における千九百七十九年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣園田直君。
○園田国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋における千九百七十九年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 政府は、昨年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づき、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における本年の日本国のサケ・マスの漁獲の手続及び条件を定める議定書を締結するため、本年四月三日以来、モスクワにおいて、ソ連邦政府と交渉を行ってまいりました。その結果、今般妥結を見るに至り、四月二十一日にモスクワで、わが方魚本駐ソ大使と先方カメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。
 この議定書は、北西太平洋の距岸二百海里水域の外側の水域における本年の日本国のサケ・マスの漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まりの手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋のソ連邦の距岸二百海里水域の外側の水域における年間総漁獲量は、昨年と同じく四万二千五百トンとなっております。
 この議定書の締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケ・マス漁業の操業を本年においても継続し得ることとなりました。
 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
○塩谷委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
○塩谷委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
○大坪委員 ことしは、昨年に比しまして大変短い期間で、関係当局の御努力によって交渉がまとまったようで、大変結構だと思います。漁獲量も総量においては昨年とほぼ同じ、中身において若干問題があるようですけれども、同じようになったようです。
 まず、今回のこの漁獲量策定に関して、実は毎年毎年こういう漁獲量の策定について議定書をつくって国会にお出しになっておるようですけれども、基本的にこれは農林大臣とソ連の漁業大臣との間の話で決まることであって、国会に一々お出しになる必要があるのかないのか、ちょっと私は疑問に思っておるところがあるのですが、議定書の中で両国の船を相互監視するというような規定があって、これが両国民の権利義務に関係するからお出しになっているようだとすれば、その部分は協定か何かに盛り込み直して、交渉をもっと効率化するようなことはできないのかどうか、その点第一にお伺いしたい。
○宮澤政府委員 昨年ソ連との間に日ソ漁業協力協定を結びましたときに、この協定は五カ年間の期間を一応定めたわけでございまして、私どもといたしましては、一応長期の協定にいたしたわけでございます。
 実は、その中にこの取り締まりのごときわが国民の権利義務に関するもの、すなわち法律事項を盛り込むことによって、ただいま御質問のように、漁獲量その他は行政府限りの折衝事項にして、一々国会の御審議を経ずに操業ができるということを考えたわけでございますが、ソ連側は、そのような五カ年という期間を限った一応長期の協定の中に取り締まりというような法律事項を盛り込むことによって、日本の沖取りを今後その期間認めるというようなことになることをいといまして、その結果、協定そのものにはそういうことを盛り込むことはできなかったわけでございます。
 その結果、毎年このような議定書を策定して国会の御審議を経るということになったわけでございます。
○大坪委員 そうすると、ちょっと心配な点がありますのは、海洋法会議でいま議論されておりますように、遡河性の魚については母川国の権利であるというような主張が一般化した場合には、将来サケ・マスについで沖取りが非常にむずかしくなるという見通しがあるわけですか。それに対してどういう対応策を考えておられますか。
○宮澤政府委員 ただいま御指摘のように、国際的な趨勢及び海洋法の非公式統合草案におきましても、遡河性の魚種は一義的に母川国の権利、利益及び責任であるということがうたわれておりまして、これは世界の大勢であろうかと思われます。
 ただ、その海洋法の統合草案の中に、母川国の第一義的な利益及び権利、義務、責任であっても、伝統的な漁業を行っていた母川国以外の国の経済的な混乱を避けるため、ないしは、その母川国と協力して遡河性魚種の維持、育成に努める国に対しては、それに対して応分の寄与をする者に対しては特別な考慮を払うというような規定もございます。そのようなことがございますので、日本側が、この場合で言えばソ連と協力することによってサケ・マスの増殖に寄与するということでございますので、そういう意味ではお先真っ暗というようなことではなくて、協力の次第及びサケ・マスの増殖のぐあいによっては、今後ともそのような操業は維持できるものと考えております。
○大坪委員 その辺の問題については後で農林水産大臣にも御質問したいと思います。余り時間がないようですから先を急ぎます。
 そうすると、一応ソ連との間で協議が調って、総漁獲量は四万二千五百トン、昨年と同じに決まったわけですが、これによって、ことしは昨年のように漁船の出漁を見合わせる、それに対して相当大幅な補償をするというようなことはなくて済むのかどうか。それから、昨年の補償額は一体幾らだったのか、ちょっと私記憶にありませんけれども、相当高額の補償をしたと思いますが、その補償額がことしは出ないとすると、どこの面でどれだけ節約になるのか、それをちょっと御説明願います。
○森政府委員 ことしはいわゆる減船は避け得るというふうに考えております。
 それから昨年は、サケ・マスの関係で申しますと、百六十二隻の減船を行ったわけでございまして、そのほかにサケ・マスの母船二隻を減船をいたしておるわけでございます。
 そこで、昨年要しました経費は、いわゆる見舞金を交付金として政府が交付しておりますが、昨年は四百五十四億の支出を行っておるわけでございます。そのほかに共補償として百八十三億、補償分の融資措置を講じておるわけでございます。
○大坪委員 そうすると、結局国庫支出で約四百五十億の節約ができたということは言えるわけでございますね。それが第一点。
 それから、今回はそういうこともあってでしょうけれども、漁業協力費というのがどうもふえておるようでございます。漁業協力費というのは政府が補償するということではなくて、大日本水産会がソ連側と話をつけられたようですけれども、水産庁で御承知おきならば、その漁業協力費の中身、それから漁業協力費というのはどういう原則でソ連側と話がついたのか、それから昨年に比べてどうなのか、その辺をちょっと御説明いただきたい。
○森政府委員 漁業協力費というのは、先ほども母川国のお話がございましたが、サケ・マスのほとんどがソ連を母川国とするサケ・マスでございまして、それに対しましてサケ・マスの資源の保護、再生産のためにソ連側が多額の経費を支出をしておる。それに対する一種の、コンペンセーションという言葉を向こうは使いますけれども、そういう応分の協力を行うという趣旨のものでございまして、これにつきましては昨年全体で十七億六千万円を大日本水産会がソ連側に支払う。これは現物でございまして、機材なり設備なりを現物で向こうと相談をして供与するということになっておりまして、今年もその考え方で、あくまでも向こうのサケ・マスの再生産に役立つものという限定で、向こうとの話し合いで資材なり設備を供与するということになろうかというふうに思っております。
○大坪委員 三十二億五千万円ということですが、そのうち国庫負担はどのくらいでしょうか。どういう原則で国庫負担をするんでしょうか。
○森政府委員 国庫負担につきましては、今後実際に支出を必要とする額、すなわち三十二億五千万円というのは四万二千五百トンとれた場合のことでございますから、そこまでいかない場合にはその分だけ減額をするということになっております。そこで、ことしの漁期が終わってどのくらいとれたかということによって額が決まると思います。その額につきまして政府がどのくらい持つかどうかということになるわけでございますが、ことしは結果的には約四五%持ったわけでございますが、その考え方といたしましては、政府が持つにふさわしいもの、たとえば小さな器具みたいなものはもう民間で持ってもらいたい、大きなそういう設備的なものにつきましては国が見るにふさわしいだろうというような振り分け方をいたして、ことしは四五%国が持ったという経過がございます。今回の分につきましても同様な考え方でその額が決まった段階でよく関係者と相談をして決めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○大坪委員 実は、これ補助金に類するものになると思うのですけれども、負担率の原則がどうもはっきりしない。つかみ金的な要素が非常に多いんですけれども、これはほかの産業の場合と関連してやや私は疑問だと思うのですね。その辺はもう少し明確な原則を立ててもらいたい。
 それから、何か聞くところによると母川主義で、カムチャッカ半島の関連の河川から出た魚がぐるっと回遊して公海のオホーツク海からアリューシャン列島を通って千島列島の横を回遊してくる、だからその付近を通る日本の船を対象にして規制をする、こういうことのようでございます。そしてとった魚が四分の一だから四分の一程度日本が持てというようなことになっているようでございますけれども、どうも私はこの妥協の仕方が、何かカムチャッカ半島からぐるっと回遊してカムチャッカ半島に戻っていく魚は全部ソ連の持ち分の魚であるから、日本はその資源保護のための寄与として幾らかを、そのとった分だけを負担しろ、こういう原則になっているようですけれども、これは実際科学的に、日本が公海の上でとっている魚が必ず全部ソ連の扶育した魚であるという保証があるのかどうか、その辺がどうも私ははっきりいたしません。もう少し納得のいく科学的な説明をそこでいただきたいと思うのです。
 時間がないと言ってきておりますので、最後に一つお聞きしたいことがございます。実はこの魚の交渉についてソ連政府と日本政府が交渉しております長い交渉の過程で、野党の党首の方がソ連政府と話をされまして、一部の漁業問題の決着の関連で、ソ連側が野党の党首の方と関係のある、あるいはそこの御指定になるような漁業団体あるいはまた関連業界のところと特別の取引をするような話が新聞に報ぜられておりました。事実かどうかよくわかりませんし、このサケ・マス漁業に関連してのことかどうか私もよくわかりませんけれども、その辺の経緯がおわかりでしたらちょっと御説明いただきたい。もしそれが事実ならばこれは非常にすっきりしない話だと思います。一国の正式の漁業交渉というものが行われているときに、それと並行して同時的に野党側がそういう話をされるということになると、外交権というのはどういうことになるのかはっきりしなくなると思うのですけれども、その辺のことをちょっとはっきりさせていただきたいと思います。
○森政府委員 前段の、サケ・マスがソ連系のものかどうか。九十数%ソ連系のものであるということは、過去の科学者の共同の調査ではっきりしております。
 それから後段の御質問でございますが、この問題は日ソ間で共同事業、要するに両方で船を出し合って魚をとる、カ二とエビが中心でございますけれども、そういう漁業の提案が去年ソ連側から提示されました。それに対しましてわが方でそれを受けるかどうかにつきましていろいろ協議した結果、漁業者を対象として契約を結ぶべきであるということで、商社は貿易面において、もちろん向こうがとった魚を輸入しなければいけませんから、それは商社の働きは認めるけれども、契約の当事者は漁業者またはその団体であるということで政府の基本的な考え方をまとめた結果がございます。ところが昨年、共同事業でいろいろいいところまではいったのですが、なかなか成功しなかった。そこで十二月に、これは社会党と申し上げていいと思いますが、社会党の訪ソ代表団がソ連との間で零細漁民、中小漁業者の救済、保護をベースにしてこの共同事業、それからコンブも入っておりますが、これを積極的に打開したいというお話があったようでございまして、その場合に社会党が推薦する団体と契約を結ぶようにしてほしいという申し入れをしたようでございます。これに対しまして、イシコフ漁業相に会われて社会党が窓口となることで合意したという経過があるようでございます。
 その後、私どもは大日本水産会を窓口として、従来からこの共同事業なりコンブの事業を進めるということで話し合いをしておりまして、最近になりまして、この問題は私どもが進めておりました従来の考え方どおりに一応進んでいるということでございます。その過程で、私が申し上げましたような社会党の後押しがあって進んだという見方もありましょうし、そうでない、従来の考え方で進んだという見方もありましょうし、それはいろいろ解釈がありましょうが、いずれにせよ、事業としては今回の私どもの訪ソを契機に解決が図られつつあるというふうに考えております。
 したがいまして、関係の商社がどうかということにつきましては、あくまでも関係の漁業者またはその団体が契約の当事者になるということで、貿易業務それから契約を結ぶ場合の言葉の問題とか、そういう実際の契約業務の問題につきましては、商社が漁業者を代行して契約を締結しておるということが真相でございます。
○大坪委員 これで終わりますけれども、いまの問題については若干疑問が残るところがある。外務大臣、外交交渉としての基本問題との関連で、そこをどうお考えになっているか一言お聞かせいただきたいと思います。
○園田国務大臣 ただいまの問題は内々実情を承っておりますが、このコンブのことは、御承知のとおり民間との話し合いでございまして、政府が直接やっておることではございません。いろいろありますが、今後とも民間がおやりになる場合でも、なるべく政府もそれを承知をして、うまく筋立てて、日本の言い分が多岐にわたらぬようにうまくやっていきたいと思っております。
○大坪委員 終わります。
○塩谷委員長 島田琢郎君。
○島田委員 懸案の日ソサケ・マスの問題が決着を見るに至りましたが、その間の関係者の御努力に対してまず敬意を表しておきたいと思います。
 そこで、今回の交渉の経過を私どもずっと見ておりまして、あるいはまた決まりました議定書の中身などを見てまいりますと、ずっと私どもが指摘をしてまいりましたように、日ソ間におきます漁業の問題というのは連年非常に厳しさを加えている、こういうことがさらに本年の場合も顕著になったというふうに思うわけです。
 そこで、規制の強化という問題でひとつお尋ねをしておきます。いま申し上げましたように、公海におけるサケの採捕がかなり厳しく規制をされたり、それがさらに一層強化されるということになったわけであります。一つはシロザケ、ベニザケの尾数の制限というものがさらに厳しい、加えてギンザケが新たに尾数制限の対象になったということでありますが、これらの交渉時におきますやりとりというのは長い時間をかけておりますから幾つか問題点があると思うのでありますが、この点について、交渉に当たられた政府当局としての考え方をひとつ聞かしてほしいと思うわけであります。
 さらにもう一つ、禁漁区におきます漁期の短縮というのが漁業者にとっては非常に重大な問題でございます。一カ月半も短縮される、こういうことになりますれば、与えられた四万二千五百トンの漁獲の完全消化という点にも非常に問題が出るのではないか、このようにも思われますが、なぜこのように規制が強化されたのかという点をお聞かせいただきたい。
 それから、ことしは常識では豊漁年でありますが、豊凶に関係なく厳しさだけが表に出てきておる、こういう感じがするわけでありますが、この点についてもひとつ感想をお聞かせ願いたいと思います。
 さらに、いま触れましたけれども、決まりました総漁獲量というのが果たしてこの期間内でとり切れるのかという問題が一つ出てまいります。これは採算上の問題にも影響をもたらしてくるわけでありますから、この点について見通しをどのように持っていらっしゃるのか。
 以上の点をまずお聞かせ願いたいと思います。
○森政府委員 今回の交渉では、まず日ソの漁業委員会で資源検討が行われまして、北太平洋におきますサケ・マス資源の相互の見解が述べられておるわけでございます。
 それではソ連側は、ベニザケ、シロザケにつきましては、現在の資源確保のための親魚の数が五分の一しか確保されていないということを主張いたしました。それから系統群全体が非常に若齢化しておるという影響が大きく、資源状態が合理的でないという主張をいたしました。それからギンザケにつきましては、一九七七年から再生産のサイクルが乱れてきておって親魚の回帰量が減少をしておる、そこで本年の操業規制を強化する必要があるということを表明いたしたわけでございます。
 今回の交渉におきましてソ連側は、終始、ベニザケ、シロザケ、ギンザケの資源状態が悪いということを根拠にいたしまして、三角水域の禁漁区を拡大して下を全部閉めてしまうということ、それからベーリング公海の大幅な漁期制限を当初提案してきたわけでございます。
 これに対しまして日本側は、本年のサケ・マスの資源状態は全体として一九七七年の水準よりも高いということ、それからベニザケ、シロザケにつきましても資源の再生産にとって必要な水準に近いという反論をいたしまして、できるだけ日本の漁業に重大な影響を与えないように、ソ側の規制案は受け入れられないということで反論をしたわけでございます。
 しかし、ソ連の立場、資源保護に対します主張は非常に強うございまして、結局、三角水域の禁漁区を昨年と同様の操業区域にする、それからベーリング公海の操業制限を昨年どおりにさせるということには成功いたしましたけれども、魚種別の尾数制限を強化する、すなわちギンザケの尾数制限を追加するということと、三角水域と言いまして四十四度以北、東経百七十度から百七十五度のアメリカの二百海里の下のところでございますが、そこの操業期間の短縮に応ずることにいたしたわけでございます。
 そこで、あとクォータが全量消化できるのかどうかという御質問がございました。これにつきましてはいろいろな規制条件がございますけれども、日本の漁民というのは多年にわたって漁獲をしておるわけでございまして、過去の知見等から相当な漁獲能力を持っておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。そこでこの漁獲量を達成できるかどうかということは、ことしの海況が非常に悪いという問題もいろいろございます。海況が悪いといいますのは、やや暖くなっているのじゃないかという問題がございます。そういう心配はありますけれども、ともかく操業に全力を尽くして努力をしてみるということが先決であろうと思っておりまして、決して不可能な数字ではないだろうというふうに思っておるわけでございます。
○島田委員 資源の問題についてはいろいろ見方があるのでありましょうけれども、最近の沿岸等におきますサケの回遊の状態や捕獲の状況を見てまいりますと、例年に比べてことしがそんなに資源不足になっているといったような、そういう様相があらわれているとは私も思われません。したがって、資源不足を理由にするというのはいかがなものか、私もそう思うわけであります。しかし、決まったことでありますから、このやりとりの期間におきましていろいろ出てまいりました問題点を整理しながら今後に対処されるということがより賢明だろう、こう思いますから、この点については深く論議をすることはやめておきますが、クォータの全量消化という問題の中で、特に、現状の船団でこれだけのものをとる、こういうお感じをされているようでありますから、そうしますと、減船なんということが起こったら全量消化できない、こういうことになりますね。したがって、ことしの場合の減船というのはどういうふうにお考えになっているのですか。
○森政府委員 ことしの特徴は、先ほど申しましたように、向こうがベニ、シロ、ギン、この三魚種につきまして尾数制限あるいは操業期間の短縮を非常に迫ってきたわけでございまして、マスは豊漁年でございます。したがいまして、マスを中心に四万二千五百万トンの漁獲をしてほしいというのが向こうの主張でございます。そういう意味から申しますと、その漁獲の達成は一応可能なのではないかというふうに思っておるわけでございます。
 結論から申しますと、減船は一応回避できるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
○島田委員 次に、協力費の問題でありますが、一般的に常識的な判断をすれば、昨年の十七億六千万円がいきなり三十二億五千万円になった、これはもう大変なことでありまして、協力費がいきなり倍増するような条件というのはどこにあるのだろうかというふうに疑問を持たざるを得ないわけでありますが、この積算の基礎になっているのは何なのか。そうでありませんと、何かどんぶり勘定みたいに三十五億と出してきた、四十二億と出した、真ん中とったみたいな話をして、最後はつかみの計算で妥結をするといったような印象になると、外交上も非常に問題があるし、積算が非常にあいまいだということになれば、今後もこの問題は尾を引いて、来年はまたこの倍増なんということになりかねない。そういう点は単年度の交渉にとどまるものでありませんから、長期的に見ていかなくてはいけない場合に問題を残すのではないかというふうに思います。
 その点では、積算の根拠は一体何なのかということと、もう一つは、漁業協力費というのは性格的にはどういうものなのか、こういうふうにはっきりさせておかないと、いま申し上げましたような将来の問題としてもこれが残っていくというふうに思いますが、この点はいかがですか。
○森政府委員 今回の漁業協力費の性格の方から申し上げますと、ソ連側が母川国として極東サケ・マスの資源の保護、再生産等のために、多額の経費を支出しておるということ、それからわが国がとっておりますサケ・マスのほとんどがソ連系のサケ・マスであるということで、わが国といたしましても、ソ連の経費の投入に対しまして応分の協力を行う必要があろうという判断をいたしたものでございます。このことにつきましては、海洋法の草案におきましてもそういう趣旨の規定がございます。まだそれが成立しているわけではございませんけれども、そういう趣旨もございまして、私どもとしてはこれに協力をする必要があろうと判断したわけでございます。
 そこで、去年の倍になっているのはどうかということでございますが、ソ連の主張を聞きましたら、去年は非常におかしいということを当然言っておるわけでございますが、一応十七億六千万円ということでございまして、今回、ソ連は去年とことしと全然性格が違うと言って主張しました中身を申し上げますと、極東のサケ・マスの保護と再生産に関してソ連邦が支払っている金額が一億四千万ルーブルということを申しました。これは漁業省だけでなしに、いろいろ向こうの林野庁なりそういう河川の担当が払っている分も入っているということでございます。
 直接の根拠にしておりました向こうの主張は、四千七百万ルーブルの金を支出している。これは会計ではっきり明記されておる金である。それは漁業省が支出している分である。中身としましては、サケ・マスの増殖に関しますふ化場の維持費一千万ルーブル、それからサケが回遊してまいりますその回遊路と産卵場におきますサケ・マスの保護を含む漁業保護事業費に六百万ルーブル支出している。それから産卵河川の土地改良費に百万ルーブル払っておる。それから産卵河川の汚染及び破壊防止に関する事業費として漁業諸機関だけで三千万ルーブル払っている。締めて四千七百万ルーブルである。それはやはりソ連の沿岸に回遊してくるソ連がとっているサケも、当然そのために支出しているわけでございまして、向こうの計算では大体日本が四万、向こうが十二万。そういたしますと約四分の一、二十五%、だから四千七百万の約二五%、一千百万ちょっとでございますが、そのルーブルの金は日本で負担すべきものである。それを円に直しますと、最近のレートを使いますと約三十九億になると言っていましたけれども、ともかくいろいろなレートの使い方がございまして、三十五億と当初向こうは申したわけでございます。その三十五億を払ってもらいたいという主張であったわけでございます。
 しかしわが方は、そう言ってもその趣旨なり考え方は認めるにしても、それだけ負担できないものは負担できない。ことに、数量を削減するからにはそんなものはとても負担できない、またそういう気にもなれないということで種々折衝をしました結果、三十二億五千万円の漁業協力には応じましょうということの結論になったわけでございます。
○島田委員 私の言うのは、いま性格とか積算の根拠というようなもののお話がありましたけれども、それは昨年と変わる状況になったのかという点です。昨年とそんなに大きく変わる状況が生まれているのかどうか、昨年も同じような話が出てきていたのかどうかということをもう一回聞きたいのです。昨年も同じような話が出てきていたとすれば、十七億六千万円というのはどこに根拠があったかということになるし、ことしになって資源の保護だとか、あるいはかかっている経費がこれだけだから、こういうお話が出てきて、そこで三十二億円という妥結になったのだ、こういう経過はわかるにしても、去年とことしと一年でそんなに状況が大きく変わるというのはおかしな話で、去年も同じような話が出てきていてことしの半分で済んだとしたら、この辺の取引というのはおかしいのじゃないですかと素朴な疑問を持つわけでございます。
 それともう一つ、これはあくまで協力費であって入漁料ではないというふうに規定づけられているようであります。そうすると、日本は政府間交渉でアメリカとかニュージーランドとか、あるいはカナダとかソロモンとか、こういったところと入漁料を払って協定を結んでおりますね。他の国とは入漁料という形で協定をやるわけなんですが、ソビエトに対しても入漁料という性格はあったのかどうか。そういうものは全くなくて協力費一本にしぼられたというその経過は一体どうなんですか。
○伊達政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま先生が例に挙げられましたニュージーランドでございますとかアメリカ、カナダ等におきましては、先方の二百海里の漁業水域内に入って操業をする、漁獲をするということでございますので、その場合に入漁料という名目のお金を払うことは法律的に説明がつき得るわけでございますけれども、この議定書におきますサケ・マスの漁業といいますのは、二百海里の外側におきまして、つまり、何と申しますか、二百海里もある意味においては公海ではございますが、沿岸国の漁業管轄権がかぶっているという意味で、二百海里内では漁業の面に関しては公海とは言えないところでございますけれども、純粋の公海、つまり二百海里の外側における漁業につきまして、漁獲につきまして入漁料を払うというのはいかにも筋の通らない話であるわけで、法律的にはどうも説明のつかないことになりますので、入漁料というのは、日本政府としてはソ連に払う筋合いのものではない、そういうふうに考えている次第でございます。
○島田委員 それは公海と非公海、つまり二百海里内という区分けの中で、法律用語としてというか、法律上の取り扱いとして入漁料という形をとった、その説明はわかるわけです。そうすると、公海でとるのは自由だという意見がありますが、・そこで何でこんな高い金を払わなければならぬのだという疑問になってしまうから、私の素朴な感想から言えば、この辺のところはまことに疑問の残る決定の仕方ではなかったのか。こういう点は、外交上の問題がいろいろあるのでしょうから、一ヵ月や二ヵ月の交渉で私の言うようにぱっぱっといかないであろうということはよくわかるのですけれども、しかし、この辺は時間をかけて詰めていかなければ将来に非常に多くの問題を残して、これから一層困難さを増していく結果になりはしないかということを今度の結果を見て非常に心配している、こういうことであります。
 そこで、これは性格的には、公海あるいは二百海里内における入漁料あるいは協力費という性格の違いであるという説明を日本としてはしておっても、世界の大勢としては入漁料の押し上げといったようなことにつながるおそれも十分ありますから、日ソ間における取り決めというのは単に二国間の問題にとどまらず、世界各国にも大きな影響を与えていく。先ほど申し上げました入漁料を払っている国々に対しても、日本の交渉は非常にむずかしくなるという点もありますから、そういう点はしっかり腹に据えておいてほしかった、こういう希望をいま申し上げておくわけであります。
 そこで、漁業協力費ですが、先ほどの質問でもちょっとお答えがあったようでありますけれども、これはあくまでも現物支払いである、こういうことが説明されておりました。現金支払いの方法をとらないで現物支払いになっているというのはどういう理由に基づくものなのか。それから、これらの現物の引き渡しは一体いつまでに終わるのか、そういう協定事項があるのかどうか。もう一つは、仮にこの四万二千五百トンのクォータを消化し切れなかった場合に協力費はどうなっていくのか、この辺のところも明らかにしておいてほしいと思います。
○森政府委員 協力費の支出の方法でございますが、去年のお話を申し上げますと、これは向こうとの話し合いで、十七億六千万円相当の機械と設備を提供するという約束になっておるわけでございます。
 その中身につきましては、先ほど申しました設備なり機材ということになるわけでございますが、多少詳しく申し上げますと、サケ・マス用のペレット、えさの生産工場用の設備でございますとか、サケ・マスの稚魚のふ化あるいは養魚場用の設備、それから、多少大きくいたしまして放流することを日本でやっておりますが、そういう生けすとかあるいは自動給餌機みたいなものだとか、そういうものが主な品目でございます。
 それから、協力費でクォータを達成できないということもございます。去年は達成できなくとも十七億六千万円払うということになっておったわけでございますが、今回は、先ほど申しましたように、向こうの積算基礎から申しましても、とれたものしか払う必要はないというふうに判断をいたすわけでございまして、要するに、四万二千五百トンとれない場合にはとれない分だけ減額するということでやりたいと考えておるわけでございます。
 それからこのことは、五月から一応七月末まで漁期がございますので、その漁期の期間にどれだけとれるかということが実際に成果として出てくるわけでございますから、それによって払うべきもとの金額が決まるというふうに思っておるわけでございます。そしてそれが決まったところで、中身につきまして大日本水産会がソ連側と話し合いをしまして、設備なり機材についての明細をつくって、それを向こうに供与するということになろうかと考えております。
○島田委員 なぜ現物支払いになったのか、そのもともとのところの説明はありませんでしたけれども、しかし、いま幾つか説明されました機材類とか施設のようなものについては、当然ソ連側としては、ソ連国内における漁業の振興といったものに振り向けられていくことになるわけですね。そうすると、どうも変な話で、さっきの話に戻るのですけれども、公海でとった魚に対して協力費を払って、その協力費はソビエトの国内の生産振興に使われていくということになると、その使い方を見れば、これはやはり一種の入漁料みたいになってしまうのではないかと思うのです。法律的には問題ないとしても、その使われ方を見ていきますと、これは端的に入漁料という性格づけになっていってしまうのではないかというふうに私どもは思うのです。
 そういう点を考えますと、現物支払いの方法というのは将来に問題を残すようなことがないのかどうかですね。まあ、向こうの希望だと言えばそれで仕方がないということになるのかもしれないけれども、この点について、もともとのところでどういう話し合いがなされてこうなったのかというところを経過的に知りませんと即断はしかねますが、いまお聞きする限りにおいてはいささか疑念の残る取り決めではないか、こう思うわけであります。もちろん、現金で払うよりは現物で払った方が、日本側の単価の設定の仕方と向こうの理解の仕方とでいろいろ違うから、あるいはそこでメリットがあるのかもしれない。現実には三十二億に値しないようなかっこうになるのかもしれぬから、そこのところは私は余り細かく言うつもりはありません。外交上の問題として、それはそれで私は納得しておきますけれども、しかし大臣、外務大臣でも農林大臣でも結構ですけれども、こういう外交上非常に多くの問題を含んでいるというこの協力費の取り扱いについて、一体、将来ともこれでいくつもりなのかどうか、これでいいんだ、やむを得ないんだ、こんなふうに外務大臣も農林大臣もお考えになっているのかどうか、この辺のところは大臣からお聞きをしておきたい、こう思います。
○渡辺国務大臣 私も一番心配をしておるのは、これは入漁料ではありませんよということをはっきりさしてもらわなければ困るということが一つなんです。御承知のとおり、二百海里外の公海上の話でありますから、その点で入漁料ではありませんということをひとつはっきりさしておきたい。
 それからもう一つ、これはソ連もアメリカもカナダも同じですけれども、日本もそうなんです、サケとかマスというものは母川主義をとっておるわけです。要するに、自分のところで生まれたサケ・マスは回ってきても自分のものなんだよ、それを途中でとってしまうんだから、その分だけソビエトの方のとり分が足りなくなる。どこのサケだかわからないんじゃないか、海の中のサケなんかは、実際は私もそう思ったのです。ところが、科学者が調べてみると、やはり日本のサケは日本のサケの通るルートがあるし、アメリカのサケはアメリカのサケの通るルートがあるんだそうです。学者がそう言うんだから、それに従うほか私などの素人はわからないわけです、学者がそう言うんだから。(発言する者あり)いやいや、それは学者がみんな、世界じゅうの学者がそう言っているんだから。その結果は、大体九割ぐらいはソ連の規制したところを通るのはソ連のサケだろうということは認めているわけですから、私もそれを信用しておるわけですよ。
 そこで、向こうは結局途中でとられるから自分のところへ来る魚が少なくなる、両方で十六万トンとっているならば、その四分の一を日本がとっているじゃありませんか。これをソ連は、日本がとらないとすればみんなソ連に来るんだ、しかし、最近サケ・マスがふえたのは、ソ連でもいろいろなことをやっておる、川をきれいにしたり、木を残したり、川ざらいをしたり、いろいろなことを言っておるわけだ。そういうことのために、毎年かなり金がかかっておる。それでその四分の一、三十五億は日本が負担したっていいじゃないか、われわれがこれだけ努力して金をかけているからサケがふえてきたのであって、それを日本は途中でとっているのだから四分の一は金を払ってくれということなんですが、こっちは入漁料ではありませんよと言っている手前、それに見合った現金を払うというのでなくて、要するに、向こうはそれだけの資材を投じて、金を投じてやっているのならば、それの補償的な、向こうではコンペンセーションとか言っているようですが、その補償的なものとして、その一部について日本も応分の負担をいたしましょう、それは現金ではなくて、そういうような施設でお好みのものを差し上げましょうということで去年もやってきたし、ことしもやってきた。年々これが大きくなってしまったら、一体どうするんだ、これは採算が合わなければ、原則的には魚をとる人が払うわけですから、そんなによけいな負担をさせられたんでは、とてもじゃないけれどももうからないということになれば、やめたということになるわけですよ。赤字を出しながらやる必要はないんだから。
 だけれども、それを払うかやめるか、期限はもうぎりぎりのところまで来ているし、二十日までに調印しなければ魚がみんな北上してしまって、いなくなってしまうわけだから、そういうタイムリミットもあった総合判断の結果、この程度ならば、まず第一に減船をしなくて済む。減船をすると、補償金だって何百億とかかる、あなたも御承知のとおりだ。失業問題も起きてくる、景気も完全回復していないということになると、ともかく高いような気もするし、当然のような気もする。正直な話が、そこらのところはわからないわけですよ。だけれども、減船しないで済む、数量が確保される、面積も、とる場所も大体決まった。しかし、万一予定量がとれないときは、約束したけれども、三十二億全部はだめだぜ、あなた十二万トンと言っているんだから。十二万トンとれなかったときはそんなに負担し切れませんよという留保条件つきでこれは決めたのでございますから、総合的に御判断いただけば、減船はしなかったし、まあ優の方の部類に入るんじゃないかというように私は思っています。
○島田委員 例によって渡辺大臣の自画自賛というやつがあって、優だなんというような話が出てきましたけれども、交渉ですから、私はそれ以上追及するようなお話をしているのではない。ただ、素朴な疑問として、それじゃ去年と同じトン数なら、四分の一ということになれば三十二億という。あるいは三十二億が正しかったら去年も払わなければならなかったかもしれないんですね。ところが、去年は十七億で済んでおって、ことしいきなり三十二億になるから、これはまたえらい違いじゃないか、どこに根拠があったんだとこう聞かざるを得ないわけです。まあお考えはわかりました。
 そこで、いまおっしゃった中の協力費の中の政府の負担という問題があるんですが、先ほどもこの点は質問がなされていたようですけれども、余りはっきりした根拠がないみたいに聞きました。そのうち政府が当然持つものは持ってやる、そうでないものは受益者負担だ、こういうお話でありました。また、いま減船補償費を払わなくて済むというお話がありましたね。確かに、昨年は六百三十七億六千八百万円減船補償をやっておるわけであります。これは払わないで済むんなら、全額国で持ってやっていいという理屈になりませんか、どうですか。大臣、そのお考えはありますか。
○渡辺国務大臣 これは減船補償の場合と違うんですよ。これはやはり一つの補償金、コンペンセーションは魚をとる原価の中に入る金ですからね。当然、それでも採算が合ってとれるかとれないかという民間同士の話なんだから、本来から言えば。採算が合わなければ、全然だめならやめという話なんだ。しかし、それは何とかいける。もうけは、それはある程度薄くなりますよ。だけれども、何とかいける。しかも、減船もしないで済む。そうすれば労使双方ともいい、実際。政府としてもいいわけですよ。
 ですから、去年よりもふえた、何でふえたんだと言われても、それはいろいろなそういうような問題があって、向こうは向こうでいろいろなことを言っているわけですから、相手のあることなんです。私は、年々これがふえていくということは、それはもちろん困ることと思います。思いますが、ともかくソ連はソ連の考えを持っているんですよ。私の方から言えば、向こうの言わんとする意図は大体私は見えているんですよ。ですから、これはきちっと説明がつかぬと言われればつかないし、説明がつくと言われればつくし、交渉のことですから、そういう点で全体的にひとつ御評価をいただきたい、こう思っております。
○島田委員 ただ私は、減船補償費は出さなくても済むしという話が出てきたから、そんならお金がそれだけもうかったんだから、全部政府で見てあげてもいいのじゃないか、こう言ったのでありまして、これは民間のことなんだから、わしは知らぬよ、一方ではこういうお話も出ると、それはちょっといただけない話になるから、ことしも六百億くらい去年の例から言えば出さなければならぬと思っていたものが、まあ渡辺大臣方式で言えば、これはもうかっちゃった。そんなら少し多くめんどう見てやってもいいじゃないですか、私はそう言っているんです。
○渡辺国務大臣 それは入漁料の話も同じでして、当然コストに入るべきものを日本政府が見るなんということを表に出すことは、それでなくてさえも、日本は銭を持っているんだから、うんとドルがたまってしょうがないんだから出せ出せと言われているわけですからね。そういうふうな当然民間の漁業コストに入るべきものまで政府が持つということを表に出すことは、来年またうんとふやせという話になってくることにもなるわけですよ。だから、われわれとしては、原則的にコストに入るものは、民間が持つものは持つもの、しかし急激にふえたりなんかしていろいろな事情で政府が持つことが相当な理由があると思われるものについては、政府がいまでも一部助成をしてきておりますし、今回もある程度の助成ということは当然避けられない、こういうふうに思っておるわけです。
○島田委員 そうすると、去年の例で言えば四五・二%政府が持っていますから、これは最低と考えていいわけですね、端的にお聞きしますが。いろいろないまの御意見については、私は押し返す話はいたしません。ただ、性格が違うと言えばそのとおりでありますから、それは高度の政治判断というものが一つ加わってこなければいけない問題でありますから、それ以上のことは申し上げませんが、昨年当然政府が持たなくてはいけないと思って持ったものが四五・二%ありました。それならことしは最低で考えていいな、これはどうですか。
○渡辺国務大臣 こういうものは前例のあることですから、中身を見なければ何とも言えませんが、中身を見て、ある意味で補償的に具体的な施設を供与するわけです。そうかといってどの程度の中身であるか。しかし、全体的に中身の積み上げた結果が四五・何ぼになったというならば、そういうものは一応の前例でもありますから、当たらずといえども遠からずの参考になるのではないか、そう思っております。
○島田委員 そこで、森長官は交渉の終わった後の談話で、資源保護という要求は反論し切れない問題がある、したがって、今後のサケ・マスについては日ソの共同努力で再生産を確保する時代に入った、こういうふうに述懐をされておられるわけでありますが、これは私は非常に貴重な意見だと思うのですよ。
 そこで、沖取りの将来というものを考えてまいりますと、交渉の話題の中にも出ていたようでありますが、業界の再編成という問題は、これは向こうも言い、こっちも言っている、こういうことでありますので、この問題には手をつけざるを得ないだろう。このままでいけば、いまのようなどうもわかったようなわからぬような、大臣の表現をかりれば当たっているような当たっていないような、こういったような実にあいまいな形で今後もこの交渉が進められていかなくてはならないということになりますと、沖取りの将来というのは非常に問題を残していくというふうに私は思うわけです。そこで、いま母船式漁法をとっているわけでありますが、これは一体将来どうするのか。基地独航型漁法というようなものも検討されているやに聞いていますが、こういう点についてひとつ見解を承っておきたいのと、それから四八などを含めて裏作を持っているわけでありますが、この裏作転換という問題の将来の見通しはどうなっていくのかという点も一つあると思うのです。それが転換をしていく場合に、沖取りの将来を考えても非常にこれは大事な点であろう、こう思うのです。この点はいかがですか。
○森政府委員 現在やっておりますのは、母船式の漁業と基地式独航船でやっているわけでございます。そういう沖取りの問題の将来はどうするのかということでございますが、先ほど先生も御指摘があり、私もそういう主張をしたいわけでございますが、ともかく規制措置は守っていく。そういう中でソ連を母川とするサケ・マスの再生産、そういうものに協力をしていけば、要するに生産量はふえていくわけですから、その中でやはり沖取りというものをあくまでも私どもとしては主張をしたいというふうに思っておるわけでございます。そこで、基地式の場合もありましょうし、母船式の場合もございますけれども、それはそれなりにやはり遠くに出かけていく母船式のよさと、それからまた近くはできるだけ基地式の独航船を使う、この考え方、それぞれいい面を両方持っているわけでございますから、その調整を図りながら、ソ連にはなお沖取りを続ける主張をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。今回ともかく総漁獲量を維持できたということ、いままでは八万トン、六万トン、四万トンというふうに非常に急激な減船を迫られてきたわけでございますけれども、今回何かともかく去年と同量の漁獲を認めてもらったということとあわせまして、やはり沖取りを主張してまいるということにも、協力費とあわせながらやっていくことにも意義があるというふうに判断をしておるわけでございます。
 それから裏作の問題につきましては、当然私どももその裏作でペイをしていく、そういうことをあわせて考えてまいりたいと思いますけれども、裏は裏の事情がございまして、それをまたこういうサケ・マスのためにだけ、漁船の裏にだけふやしていくという事情も非常に窮屈になっておるわけでございまして、ともかく裏も表も両方あわせながら今後のサケ・マス漁業の経営の安定を図っていくというはかなかろうというふうに思っておるわけでございます。
○島田委員 そうすると、業界の再編成というのは、いまのお話で言えばなかなかむずかしくて手がつけられぬ、こういうふうな印象に聞こえるわけでありますが、しかし、ことしのあるいは昨年のこういう結果を見ても、割り当て水域の魚群の問題には非常に不安もありますし、また効率面でも非常に心配が残っている。こういう現行方式に頼っていくよりは、むしろ二百海里内での操業もできる共同漁業を望む声も業界にはあると聞いています。この際将来の方向をしっかり検討する必要があると思っているのですが、この点はいかがですか。
○森政府委員 先ほど私申し上げましたように、公海での漁獲をやっておるわけでございまして、そのためのいろいろな折衝をしているわけでございます。したがいまして、ソ連の二百海里の中でサケ・マスを行うという考え方につきましては、ある意味では、たとえばソ連がいま四万トンとっているのは沿岸に行くまでに六万トンになる、要するに太って帰るわけですから、そういう方が合理的だという主張ともリンクされた主張かもしれません。ただそういうことを直接ソ連側が、そうしたらどうだということは言っておりません。ただそういう場合には、もちろん今度は、そういう二百海里の中でもし操業が行われるとすれば、それはまさに入漁料と、もう一つは旗国主義といいますか、まさにソ連の監督のもとで漁業を行うという形になるのが普通でしょうし、あるいはその中で共同事業ということもあるかもしれませんけれども、共同事業というのは、現在お互いに試験的に双方で話し合いをしながら、双方でいいというものについて試験的にやってみようという段階でございまして、むしろお互いに、お互いにというよりも、ソ連側で技術的に余り持ってないそういう漁法を日本とやりながら学びたいという気持ちが一つあるわけでございます。そういう実験事業を今回共同事業としてやりたいということでございますので、直ちにいまのサケ・マスについて、そういう共同事業がなじむのかどうかということについても問題はあろうと思います。いずれにいたしましても、そういうことについて直接ソ連側から主張があったわけでもございませんし、申し出があったわけでもない。また申し出があるということは、逆に言えば沖取りはやめろということにつながる話でございまして、私どもといたしましては現在やっております沖取りをあくまでも認めさせるという立場で折衝を続けたい、またそういたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○島田委員 たまたま母川国主義という問題が出ましたが、母川国主義論に対して日本はかなり長い間抵抗してまいりました。しかし、もうアメリカにしてもカナダにしてもソビエトにしても、海洋法会議等の議論を聞いても、母川主義という考え方というのはかなり世界の大勢になりつつある。日本が依然反母川主義を唱えていくことが果たして適当かどうかというのは非常に問題のあるところであります。国内においても母川主義という問題に対してはおおよそ合意ができつつあるような機運でありますけれども、政府みずからはいまだに母川主義は正しいと言い切ってはいないわけであります。この点についてはどういうふうに対処するつもりなのか、それが一つと、ついでに、昨年九月にサハリンでサケ・マス増殖四カ国会議というのが開かれました。日本の政府としてはこれに参加しませんでした。主義は一つあるとしても、積極的にこういう会議に参加をして、日本の主張は主張として堂々と述べながら、世界の大勢をしっかりはだで受けとめる、こういう積極的な姿勢がなければいかぬと私は思うのですよ。なぜこういう会議に政府みずから出ようとなさらなかったのか、これは外交上の問題としても非常に問題が残ると思うのですよ。ですから、こういう積極的な姿勢というのは持つべきである。そして、世界の動きの中で日本の主張する点は堂々と主張をしていく、こういう姿勢というものは今日非常に大事だ、こう思うのですが、これはいかがですか。
○渡辺国務大臣 昨年のサハリンのサケ・マス増殖会議になぜ出ないか、これは実は一長一短なんですよ。アメリカとカナダとソ連とはある程度共通しているわけですが、日本は幾らか違ったニュアンスを持っているわけですからね。そこへ日本代表が飛び込んで、多勢に無勢みたいな話がいいのか、いろいろ外交上の配慮もしなければならぬということで、これは慎重な態度をとったということです。それ以上詳しいことをここで申し上げることはいかがかと思いますから、差し控えます。
 それから、母川主義の問題でございますが、これはもう好むと好まざるとにかかわらず、サケ・マスについては世界じゅう大体そういうふうになってきておる。日本もいまなりつつあるわけですよ。ある程度はなっているのですよ。サケ・マスにしたって、ふ化放流をやってきたときとやらなかったときではまるっきり違うでしょう。一時は日本の領海内といいますか、沿岸で二万トンぐらいしかとれなかった。ところが、政府は、そういうような世界の大勢にあるから、公海ばかりでなかなかとれないということを見越してふ化放流事業、養殖事業、栽培事業というものをどんどんやってきた。その結果は、いまや北西太平洋のいわゆる日ソ交渉でとる魚よりも日本の沿海のサケ・マスの方が多くなってしまったわけですから、五万トンを超すような状態になってきておる。これはひとつどんどん多くしていこうじゃないかということでありますから、そうなれば当然日本だって母川主義というものをもっと強く打ち出すような時代はもう先に見えてきていると言って差し支えないのじゃないか。ですから、われわれとしてはやはりそういうような国内の体制というものを強化して、そしてやはり世界じゅう母川主義という立場をとるならば、自分たちもどんどんサケ・マスをふ化放流して、日本の川や海でとれるようにしてきたし、今後ももっとそれをふやすことができる。あと五、六年もすれば倍ぐらいまでいくのじゃないかという見方をする有力な人もおります。したがって、私はそういうことにもっと力を入れてやっていきたい。国際トラブルを少なくして、自分のところでとれたら一番いいわけですからね。ですから、そういうようにしてまいりたいと考えております。
○島田委員 結構なお考えです。そこで、もっとふ化放流事業というのを強化するという大臣のお考えが示されたわけでありますが、北海道は水産庁直接でやっていますね、民間ももちろんありますけれども、主体になっているのは国営であります。内地府県は民間の方が多い、こういうかっこうになっていますが、これはもうこの際、全国的に国が積極的にいま大臣のおっしゃっているような姿勢に立つべきだ、こう考えますので、内地府県のサケ・マス放流事業というのも積極的に水産庁が乗り出してやる、こういう姿勢に立つべきだ。つまり、母川国帰属主義というのが国際的な潮流であるとすれば、回帰量の増加を図るという意味でも、全国にわたって自前のふ化放流をやる、こういう点でもっと国が積極的な姿勢を持っていくべきだというのが私の主張でありますけれども、この点はいまの大臣のお考えになった点で私は大まかには理解しますが、いま内地と北海道の差ということを申し上げましたが、早急にそういう方向でこの事業を強化するという点についてはいかがですか。
○渡辺国務大臣 結論的に言えば、早急に強化したい。いま内地では民間の増殖施設を整備したり、稚魚の買い上げをして放流するために助成をしたり、北海道のふ化場の種を本州に持ってきて移殖をしたり、ふ化技術の指導を行っておるわけです。ただ、国営のなにがないじゃないかということを言いたいところだと思いますがね、先回りして言っては申しわけないけれども。しかし、国営が必ずいいかどうか、これはまた問題がありまして、全部国営にしなければうまくいかぬという話でもないし、北海道で危険を冒して国の費用でやってきたその成果というものを民間にどんどん入れられて、それが成功するならば何も国営の必要はないわけですから。いずれにしても、結果的には一番効果のある方法で、これは内地におけるところのふ化放流事業とか、川をきれいにする事業とか、こういうものはどんどんとひとつ進めていかなければならぬ、かように考えております。
○島田委員 間違ってもらっては困るのですが、私は民間が悪いと言っているのではありません。その積極的な姿勢を国みずから持て、そういう点で叱吃激励をいたしているのでありますから、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたい。
 そこで、離職者対策の問題でありますが、運輸省と労働省から見えておられると思いますので、五十二、五十三年の減船に伴う離職者の実態というのを、時間がなくなりましたので、簡単にひとつ説明をいただいておきたい。
 それから、今後の残された問題についてはどのように対処するのか。この二点、まず運輸省から伺いましょうか。
○松木説明員 お答え申し上げます。
 日ソ漁業交渉関係の離職者については、先生御存じのとおり、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法によりまして、離職者の生活の安定と再就職の促進を図ってまいっておるところでございます。
 お尋ねの一昨年、昨年の減船関係で、私どもの船員職業安定所関係で手帳の発給をいたしました数は、本年二月末現在で五千六百七名と相なっております。この離職者の方たちのうち再就職をされた人は、期間の短い漁業に就職した人を含めまして延べ三千六百六十名と現在相なっておるわけでございます。
 私どもといたしましては、この漁業離職者の人たちに対しまして、今後とも職業相談なり求人開拓につきましては、水産庁の協力も得まして、さらに広域の就職開拓をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○白井説明員 お答えいたします。
 いま運輸省から答弁がありましたとおりでございまして、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法で離職者の方々の救済をいたしているわけでございます。
 それで、元来海におられた方で陸の部門での就職を希望される方は労働省所管の公共職業安定所へ求職申し込みをされているわけでございますが、この法律に基づきまして手帳の発給をいたしております者が、五十四年二月末現在で六百六十名、そのうち再就職した者が百五十九名、それから職業訓練受講指示をいたした者が百三十六名というような経緯になっております。
 なお、今後の問題点としましては、これらの法律を適正に適用いたしますとともに、なおこの法律がことしいっぱいで期限切れになることになっておりますので、現在、今国会に五十八年六月三十日までの延長をお願いいたしている次第でございます。
○島田委員 ところで、農林大臣がいなくなりましたが、外務大臣、今度の日ソの交渉に当たって、日本側代表団の中に大水の会長が加わっているわけでありますが、昨年も農水では大分これを問題にしたのでありますが、大水会長は知ってのとおり亀長氏でありますが、亀長氏はいま参議院議員ですね。こういう政治家がこの大水の会長の位置にとどまっているということ自体も私としては理解ができないところでありますが、こういう職責を持っているということについて、政府側としてのこれに対する見解というものを、どう思っているのかを私は聞いておきたいと思うのですよ。市井人じゃありませんで、政界に身を置いているわけでありますから、その及ぼす影響というのは非常に大きいわけです。それは相手側にとってみれば国会議員の大水会長と言えば少しはおもしになるかもしれませんけれども、国内的には非常にすっきりしない。こういう点については毅然として問題の整理を行うということが必要だと思うのですよ。昨年は渡辺大臣でございませんでしたが、前大臣にもこの問題について農水で大分問題にしたのでありますが、その後の取り扱いについては何らわれわれが要求したようなかっこうになっていない。これはおかしいと思うのですよ。いかがですか。
○渡辺国務大臣 亀長参議院議員の大水会長の話でございますが、これは農林大臣の許可でもございませんし、純然たる民間団体の中で選任をされたものでありますから、そのこと自体を悪いということは私は言えないと思います。しかも、いままでやってきた行為も別に弊害は何もなくて、非常によく亀長氏は大水会長として激務の中努められたということも事実でございます。ただ、非常に忙しいからどうするかという問題は別な問題だと思います。
○島田委員 それは大水の会長は大臣指名でないということはわかっているのですよ。しかし、行政の問題として、やはり大水だって農林水産大臣の行政の範囲に入ると思うのですよ。ですから、いまあなたが、これはもう何も悪いことないと言い切るのには幾つかの問題があると私は思うのですよ。それをいまここで時間がなくなったところでやることはできませんけれども、昨年これは相当の時間をかけて農水でも議論がなされたところでありますから、それはそういう中で前大臣も相当その点については深く考え込んでいたようでありますから、私どもは善処されるものと思っておりました。そういう点は国民の側から見ておかしいという感じが持たれるということであるならば、やはり毅然として善処さるべきである。大臣の側から見れば何もおかしくないと言ったって、国民の中には疑惑の目を持って見る者だってあるわけでありますから、そういうことがないようにすべきだ。それがこれからの水産行政のあり方として、やはり農林大臣の姿勢というものに疑念を持つようなことがあってはいけないと思うから、私は親切で、そういう問題は早く整理されて、何も亀長さんでなくたって大水の会長になり得る人材はたくさんいると思うのですよ。もう国会議員になったのであれば、そういう点についてはやはりすっきり善処されるべきだ、私はそう思います。いかがですか。
○渡辺国務大臣 一部にそういう御批判のあることはお伝えをいたします。これは御本人が善処されるものと存じます。
○島田委員 納得できませんけれども、時間が参りましたから私の質問はこれで終わります。
○塩谷委員長 野村光雄君。
○野村委員 いよいよ五月一日の出漁期を目前に控えまして、ただいま今回の日ソ漁業交渉に対する議定書の提案が外務大臣からなされたわけでありますが、最初に基本的なことを外務大臣にこの際ちょっとお尋ねしたいと思っております。
 今回の日ソ漁業交渉というものは、御存じのとおり、長年にわたりましたイシコフ漁業相から新カメンツェフ漁業相にかわった、こういう中で、関係漁民、また全国民が今回の交渉の成り行きを非常に注目をして見守ってきた。しかもことしは御存じのとおり豊漁の年を迎えて、関係漁民としては昨年以上の漁獲量というものを一応期待していた、しかし結果的に上積みはできなかった、こういう現況でございますけれども、特に前イシコフ漁業相は、御存じのとおり、政治的色彩といいますか、そういう濃い交渉、しかし今後の日ソ漁業交渉というものは、新漁業相というのは特に学術的しかも実利的、しかも今回の内容からいきますと経済的交渉という様相を呈してきた。すでに出漁期を迎えて、今回の内容云々という問題でなくて、特にそういう経済交渉の様相を呈してきたという中で、今後の対応に対してますます厳しくなるのじゃないか。こういう将来展望について、新漁業相に入れかわった今回の日ソ漁業交渉を経験した中からどのように考えていらっしゃるのか、その点をまず最初にお聞きをしたいと思うのであります。
○園田国務大臣 漁業の問題は日ソ間という特別のことではなくて、新しい二百海里時代を迎え、それぞれの国が漁業の問題については厳しくなってきておりますので、これは全体の流れとしても、日ソ間の問題も、漁業に対する交渉というのはだんだん厳しくなってくるという趨勢にある。しかしまた、いまおっしゃいますとおりに、単年度ごとに漁期が迫ってから二国間の経済問題の様相を呈してやることはわが方としてはきわめて遺憾でありまして、やはり長期の協定を取り結ぶべくわが方は主張しておったわけでありますけれども、先ほどから農林大臣からも言われますとおり、ソ連の方はサケ・マスの沖合い漁業禁止というのが大体の原則でありまして、それを長期にわたって取り決めをすることはこれを肯定するかのごときことになるのでということで、なかなかわが方の主張を聞きませず、残念ながら単年度ごとに漁期が迫ってから、しかも二国間の利害問題の様相を呈しながらやっているわけでございます。
○野村委員 次に、渡辺農相にも基本的なことを最初にお尋ねをしたいのですが、いずれにいたしましても交渉に対しまして今回努力なさった労苦に対しまして、私、率直に敬意を表するわけでございます。しかし、いま外務大臣からも御答弁ございました将来展望、さらに一段と厳しい時代を迎えてくるのじゃないかというのが関係漁民の不安でございます。そういう中で、巷間うわさされておりますが、渡辺農相は何か近く訪ソなさる、こんなこともお聞きをいたしておりますけれども、訪ソなさるとするなら、その目的なり、ただいま申しましたような将来展望、また新漁業相との今後の日ソ間における基本的な構想、考え方、こういうものを担当大臣としてひとつこの際漁民の前に明らかにしていただきたい、こう思うのです。
○園田国務大臣 いまの御発言の中の農林大臣の訪ソでありますが、これは外務大臣の方からも実はお願いをしているところであります。
 と申しますのは、農林大臣の訪ソがいつも、漁期の中で利害が対立した場合に出かけておられますが、そうではなくて、問題がないときに、広い視野で親交を深め、広い視野に立って長期にわたって相互理解を深めることがきわめて大事だ、こういうわけで農林大臣に、ぜひ御苦労ではあるが訪ソしていただきたいと私の方から要請している経緯を御報告申し上げておきます。
○渡辺国務大臣 このサケ・マスの問題につきましては、私どもは今回の交渉も決して安易に考えておったわけではありません。イシコフさんが更迭されて、知日家として知られておった方でありますから、われわれも非常に心配をしておったわけであります。
 ソ連は当初から、いままでと違って、科学的な根拠によって掛け値のないぎりぎりの提案をいたしますというようなことで、いままでだったら最初からゼロ回答みたいなことですけれども、最初から三万八千トンという数字をぽかんと出してきたわけです。そのかわりこれは非常にいろいろ理屈がついておりまして、なかなかその線を譲らないというような状態になったわけで、当初われわれが考えておったと同じような経過を実は経てきたわけでございます。
 向こうでも実務者あるいは科学者等の意見を最大限に尊重するというような姿勢でございますから、私は今後とも、従来のようにゼロになったり一〇〇になったりというふうな大きな振れというようなものは予想できないのじゃないか、そう思っております。
 そして、いま外務大臣がおっしゃいましたように、いつもサケ・マス交渉でお互いの利害の対立した中でだけ農林大臣が訪ソをするということよりも、日ソ間にはもっと友好を促進しなければならない問題も漁業の面においてたくさんあるわけなんです。共通の利害もございます。世界に対して深い共通の関心のある事項もあります。たとえばオキアミの問題をどうするかとか鯨の問題をどうするかとかいうような問題は、日ソ間における非常に関心の深い利益の共通した問題でございますし、あるいは、ソ連から学ぶべきところのいろいろな漁業に関する技術もありますし、また、日本がソ連に提供できるようなたくさんの技術も持っています。ともかく、沿海州でとった魚をモスクワまで運ぶというようなことはいままで余りやっておらぬわけですから、これから夏において魚を運ぶということになれば、その長距離輸送あるいは貯蔵、冷凍というような問題は日本の方が進んでおるのではないだろうかというような気もするわけであります。したがって、そういうような共通のお互いの利益になるような問題もありますから、期限が迫ってお互いに利害が対立した中で、三日とか五日とかというようなところでそういう話はなじまない。したがって、外務大臣にも御相談をいたしましたところ、やはり折を見てそういうようなお互いの友好増進という点からも、お互いに都合のいいときに、共通の利益について、それを深めるような方法がいいのじゃないかというような御助言もございますので、私といたしましては、向こうでも来ソを歓迎するというようなことでありますから、適当な時期にそういうような機会をつくりたいということを申し上げたような次第でございます。
○野村委員 わかりました。
 私どもといたしましても、先ほど外務大臣がおっしゃった単年度交渉というものが非常に関係漁民にとっては、毎年毎年その出漁期を秒刻みで、時計を見ながら、どうなるのかという不安、こういうことはやはり可能な限り長期的な交渉に、ひとつぜひ訪ソなさいました折には、担当大臣として強力な話し合いを効果的にお願いしたいと思っているわけであります。
 次に、議定書の内容につきましても、先ほどすでに関係各委員から触れられておりましたので、私はちょっと観点を変えて質問しますけれども、特に今回の、操業期間が大幅に短縮された、そういうことで目的の漁獲量というものが果たしてとれるのかとれないのか、そのことにつきまして先ほど来いろんな論議がされておりましたけれども、心配ないだろう、とれるだろうと、若干確信のないような御答弁でございます。確かにそうだろうと思うのですが、現場の、操業いたしております漁民の立場から言いますと、いままで三往復をやっておりましたところ、期日が短縮されたために一ないし二往復しかできない。これはもうどうすることもできない。期日を短縮されたための現実の問題なんでございますから、そういう中で果たしてとれるのかということをもう一回確認したいということ。確保できるのか、万一これが確保できないとするならば、採算上非常に高価な魚になってしまう。当然これが消費者にもはね返りが来る。そういう最悪の場合の救済対策、こういうものに対しては考えていないのかどうなのか、この点をひとつお尋ねしたいと思います。
○森政府委員 漁獲量の割り当てが達成される見込みがあるかということにつきましては、一つは、先生いま、三往復から一回か二回の往復しかできないというお話でございましたが、恐らくこの問題は、北緯四十四度以北、東経百七十度から百七十五度の間の水域について六月十五日までの期限がつけられた。それは恐らく基地式独航船のお話をされておるというふうに思います。この問題につきましては、いま六月十五日まで制限されたあの水域について、一往復ないし二往復しかできないということの御指摘だと思います。それは、その限りにおいては私はそのとおりだと思いますが、問題は、四十四度以南でどれだけ操業が可能であるか、逆に申しますと、という話になろうかというふうに思います。
 その場合に、何が違ってくるのかということでございますが、まさに向こうが問題にいたしましたベニ、シロ、もう一つギンザケ、これがあの水域で非常に多いわけでございまして、それが操業期日の規制というところにはね返ってきたわけでございます。したがって、端的に申しますと、マスはとれるけれども、そういう、ことにギンでございますが、ギンザケについて非常に操業がむずかしくなっているということに相なろうかと思います。したがって、魚種別にいろんな変化が出てくるということでございまして、それがどういう魚種別の価格構成、価格がどういうふうに変化していくかということに絡んでいろいろ経営的にはどういう問題が出てくるだろうかということではないだろうかというふうに思います。
 したがって、私も、一つとしましては漁獲量全体が達成可能かどうかという問題と、魚種別構成がどういうふうになろうかという問題と二つあろうかと思いますが、前者の問題につきましては、まあ五二年から二十六年間も操業しているわけでございまして、そういうみんな経験者ばかりでございまして、いろんな漁場の形成というのはよく承知しておる。ただ、ことし、先ほど申しましたように若干水温の上昇が早いのじゃないかという、いろいろ推測が、いままでの経験からと申しますか、三月、四月の水温からその辺の心配が一つあるわけでございます。それもまたどういうふうに影響をしてくるかということはあるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう知見を持っている漁業者が計画的にこの地域で操業をしていくということで、ある意味では相当自信を持っておる方もおられるはずでございます。だから、総量については何とも言えませんけれども、いまここで完全に達成するというふうに申し上げるわけにはいかないけれども、これは見込みでございますから、やってみなければわからないという結論になろうかと思います。
 しかし、いずれにせよ、これが達成されないということ、あるいはまた魚種別構成が変わってまいりますことに伴って経営的に何らかの影響が出てくるということでございますれば、その段階で私どもはそれに対してどういう対応策を講ずるか、いろいろ融資措置なり何なりが必要かどうかということを判断した上で決定をいたしたいというふうに思います。したがいまして、私どもは今後の実際の漁獲の推移を十分見守ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○野村委員 そうすると、さらに確認いたしますけれども、やはり私どもがいま心配しておりますことは、御存じのとおり非常に期日が短縮された、しかも農作物と違いまして、短期間の中で、決められた魚種を決められた場所でとってくるということは、当然気象条件というのが、いかんともしがたい問題が、私が申し上げるまでもなく海には横たわっております。そういう点から、先ほど長官がおっしゃったとおり、最悪の場合というものはある程度ないとはいえない、こういう条件なわけでございます。
 そういうところでぜひ担当大臣に念を押しておきたいわけですが、ただいま申しましたような最悪条件が起きたときにはこれらに対する救済対策も改めて検討したい、こういう前向きな御答弁をいただいたわけですけれども、大臣もこの点は、最悪の場合は当然その事態に対して関係漁民に対する救済対策は前向きに検討する、こういうことで確認いただいてよろしゅうございますか。
○渡辺国務大臣 森水産庁長官が答弁したとおりでございます。
○野村委員 一応最悪の場合の救済対策も確約されましたので、私も万一にもそういうことがないように望んでおりますけれども、その場合の善処策を改めて関係漁民にかわってお願いを申し上げておきます。
 次に、漁業協力費の問題、これも先ほどから論議を呼んでおりまして、一面では金で決着した漁業交渉、関係者にとっては余りありがたくない言葉かもしれませんけれども、そんな言葉さえ出ている状態であります。
 そこで私が一番心配いたしますのは、この三十二億五千万円は政府が大幅な助成をする必要がある、こう考えますけれども、この点に対する助成の基本的な考え、これをまずお尋ねをしたい。
 それから、特に今回大きな課題になっておりますのは、ベニザケが昨年百六十万匹からことし百十万匹、シロザケが四百三十万匹から三百八十万匹、さらにギンザケが昨年まで無制限であったのが百二十万匹ということに制限された。こういうことになってまいりますと、最も高価なサケが非常に厳しく規制をされたわけであります。
 サケ・マス、サケ・マスと言いますけれども、私が説明するまでもなくサケとマスとでは価格の面からいっても味の面からいってもお話にならないくらい違うわけでございますが、その点を何か一部の政府担当者はサケ・マスと言えば何でも同じだというふうに勘違いしていらっしゃる向きがあるようでございまして、私もきのう、ある担当者から聞きますと、並べて食べさせられたってどっちがどれだかわれわれではわからないというくらい無認識な状態というものを非常に心配しているわけであります。
 結局、高価なベニザケなりギンザケなりシロザケが昨年よりか規制をされ、厳しくなった、そういう中で、さらに漁業協力費というものが二倍にふえた。そのしわ寄せが消費者にくるのじゃないか、私はこういうところに非常に大きな危惧をしている一人でありますけれども、これに対する具体的な考え、どのように認識していらっしゃるのか、これが第二点です。
 もう一つは、昨年の協力費というのは入漁料的性格を持っているとわれわれ国民は認識をしていた。ところがことしは漁獲量の見返りとなる補償金的性格、こういうふうに関係漁民なり国民は受けとめておりますけれども、今回の結果に対してどのように認識なさっていらっしゃるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
○渡辺国務大臣 まず第一に協力費の政府助成の問題につきましては、これは先ほどもお話があったように、要するにソ連政府の向こうでやった投資に対する補償として品物で提供する、しかしながら結局はお金のかかる話ですから、その内容を見て審査をいたしますが、まあ前例もあることですから、そういうものは一応の目安になるでありましょう、こう考えております。
 第二番目は、金目のものが少なくなって高くなるのではないか。これは品物のことでございますから、物が少なくなればある程度高くなることはなかなか抑えられないし、それが量が少なくて値段が同じだということなら、漁業者の方が収入が少ないわけですからもっと困るという話になるわけです。ですから、これは全然高くならないという保証は、私はいま断言できません。しかしながら、日本の川ないし沿海でサケ・マスが今度はよけいとれるということになれば、全体の問題もありますから、どの程度になるかは漁獲の結果を見なければ何とも申し上げられないわけであります。
 それから、協力費については補償金的な性格が非常に強くなった、こういうことでございますが、向こう側はコンペンセーションというようなことを言っておるわけでありまして、われわれも入漁料ということでは、これはほかの国にも響く問題でありますから、それはだめでございますよ、しかしサケ・マスのように自分のものだというふうに世界じゅうが認めるものの公海でとったものの一部の補償ということについては、まあどれくらいがいいかということについて、決まった原理原則というものはきちっとあるものじゃないが、向こうがかかった費用の四分の一を出してくれということなんで、ネゴシエーションの結果、最終的に四分の一程度という向こうの要求よりも多少下回った額で決まったものである、こう考えております。
 なお、先ほども言ったように、予定のものがとれないということになれば、それだけのものを出したくともなかなか出し切れない、これはコストの問題ですから。それは、とれない場合には三十二億五千万円が少なくなることもございますよということは念を押してあるわけでございます。
○野村委員 それでは最後に一問だけ。
 先ほど島田委員からもちょっと触れられておりましたが、いずれにしましても高価な協力費を年年出していかなければならない。しかし幸い、年年やっておりますところのふ化によりまして、このふ化事業の成果が、特に北海道あたりは五十二年が約三万五千トン、五十二年が四万四千トン、日ソ間で契約しました量よりか沿岸でとれる、こういう時代が幸いやってまいりました。これは非常に喜ばしいことでもあるし、これに対しては、私はこの際思い切ってふ化事業の振興策をもっと図っていくということについて、改めてひとつ大臣の御見解をいただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。
○渡辺国務大臣 全くそのとおりでございまして、私としてはいままでの計画を見直して、もっと北海道だけでなくて内地にもおろしてきまして、それでそういうような事業を一層大幅に増加をしていきたい、かように思っております。
○野村委員 終わります。
○塩谷委員長 渡部一郎君。
○渡部(一)委員 私は簡単なことを二、三お伺いしたい。
 いま野村委員からも質問がございましたが、この漁業協力費でございます。漁業協力費の問題について先ほど水産庁長官は、先方はコンペンセーションという言葉を使って要求が行われた旨おっしゃっておられます。ところが、農林水産大臣の御説明によると、夏におけるとった魚の長距離輸送とか、あるいは冷蔵とか、その他漁業に関するさまざまな技術というものは、わが日本の方がたくさんある。そういうものを先方にも出してあげるようにしたい旨のお話がございました。もし、漁業協力費であるならば、わが方の先方に対する漁業協力費の請求も同時に行われ、相殺されなければならない。ところが、これは何事かと言いたいのです。漁業協力費なんてでかでかと書いてあって、毎年毎年ふえてくる。サケ・マスのふ化の代金の四分の一というものの請求が行われており、それをまるまるのみ込んで帰ってきておる。こんなものは交渉ではない。こちらの言い分を先方に言うことなくして、先方の言うことだけを聞いて帰ってくるんだったら、これは交渉にならぬのではないか。私は先ほどのような御説明では納得いきがたい。そして、この文書を見ると、「ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。」となっていますから、恐らくこちらは漁業協力費と言い、先方はコンペンセーションと言い、そんな言葉を突き合わせることは平気な顔をしてぱっぱっとサインして帰ってこられたのだろうと私は邪推しておるわけであります。ところが、そういう用語をほっておけばどういうことになるかと言えば、次から次へこういう金額が高くなるだけの話なんですよ。水産庁長官、下向いておらぬで私の話を聞いてください。そういういいかげんな交渉じゃ困るのです。何でわが方だけが漁業協力費を払わなければならぬのか、明快にしてください。
○渡辺国務大臣 私が訪ソをしたときに、日本とロシアには共通の利益があるということで、漁業の協力の話は将来の問題として話をしたのであって、いま考えておる補償的なものということは、これはソ連が放流をしたり、ふ化場をこしらえたり、川をきれいにしたり、木を残したり、いろいろなことで費用がかかっておる、そのためにサケがふえてきた、そのソ連糸のサケを日本が四分の一とっているんだから、ソ連がとっているものの三対一の割りでとっているんだから、その分について投下した資本の補償三十五億円をよこせというのが、向こうの見解であったわけです。それで、その前には、要するに、サケが一番帰っていくところの通称いわゆる三角水域と言われますが、そこは全面禁漁ですよ、ここではもう魚を一匹たりといえども入ってとっては困ります、いけませんということも言っておったわけですよ。そういうようなものを解消させて復活させるというようなことや、交渉でございますから、こっちがただ金だけ出しますというだけでなくて、いろいろな交渉の経過で向こうが譲るべきものはうんと譲ってもらって、それで決着をしたということであって、補償金だけ出してきちゃったというわけじゃないのでございます。その点は御了解をいただきたいと存じます。
○渡部(一)委員 そういう論理でおっしゃるのだったら、日本の二百海里距岸のエリアの中でいまソ連船がイワシやサバをとっておりますね。そのイワシやサバをとっておる者に対して、これは多年にわたり日本がイワシやサバの魚種を保存するために、あるいは魚礁をつくり、あるいはさまざまな施策をとり、あるいは適度におわいを投棄し、営々辛苦して育てたという論理だって成り立つじゃないですか。それなら、イワシやサバの代金の中に漁業協力費としてソ連からとるのは当然じゃないですか。なぜこっちだけ譲るのですか。漁業協力費なんという名称を使うから問題なんです。
○渡辺国務大臣 サケ・マスにつきましては、もう世界の大勢としてそれは母川国のものだ、要するに、公海で泳いでおっても自分が生まれた国のものだ、海洋法の精神からしてそういう思想が残念ながら定着してきたわけですよ。イワシについてはそういうふうなことを世界的に認めておるわけじゃなくて、サケ・マスについては二年後とか長いものは七年後に生まれた国にまた戻って帰るのだ、そういう一般的な定説になってしまった。そういうようなところから、カナダでもアメリカでも、サケ・マスについては同じ姿勢で、それはもう公海や何かでとっちゃいかぬということを言っているわけですよ。ですから、それは一緒にはできないのじゃないだろうか、こう思っています。
○渡部(一)委員 そうすると、日本は今後サケ・マスを世界のどこかでとった場合、最近では南米の方でも多少はとれるという話も伺っておるわけですが、漁業協力費と称して日本政府はその都度お金をキャッシュで払うという意味ですか。それはソ連にだけ払っているのですか。それともほかの国にも今後全部払うのですか。
○森政府委員 公海上で沖取りをしておりますのは日本だけでございまして、ここのいま議定書で決められたところだけでとっておるわけでございます。それから、先ほどイワシ等のお話がございましたけれども、ソ連と日本との間では日ソ、ソ日でそれぞれ、日本は主にスケトウ、カレイその他メヌケ等の種類をソ連の二百海里内でとっておる。それから、ソ連は日本の二百海里内でイワシ、サバを主とする魚種をとっておる。それぞれ入漁料を取ることができるようになっておりますけれども、入漁料は取らない。いわゆる等量主義とかいう話まで出てくるのもその辺に起因をしていると思いますけれども、それはそれで一応相互にとり合いをしておって相互の漁業秩序が成り立っておるというふうに理解をしておるわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいましたサケ・マスについてほかに何かそういうことが行われるかということになりますと、ほかの場所では恐らくそういうことは今後もなかろうというふうに思いますし、今後ソ連との間でこの沖取りをどういうふうに維持していくかということにつきまして、いまの協力費というのが相当重要な役目をなしていくでありましょうということを申し上げているわけでございます。
○渡部(一)委員 だから私は、終始一貫しないと言っているのですよ。アメリカに対して、カナダに対して漁業協力費を払っており、そしてソ連に対しても払うというんだったら、同じバランスで物を考えるべきですね。ところが、ソ連に対してだけ漁業協力費を払う。向こうがごちゃごちゃ言うから払っているんだ。それならまさにコンペンセーションじゃないじゃないですか。無理難題、言いがかり費とでも言うべきものですよ、これは。そうでしょう。そうでしょう、あなたのおっしゃることは。そして、先ほど私がイワシやサバの例を挙げたら、スケトウとバランスがとれておるから、入漁料については両方で取らぬことにしておりますという。バランスがとれているというんだったら、その分については漁業協力費をこっちもいただいている勘定になるんだ。そういう考えでいくからだんだん魚の量は均等の量になってくるし、既存の漁業エリアとしてこちらが開発した、いままで苦労してきたそうした分というのは、既存の権利というものは全部放棄されて、交渉するたびにただ後へ下がることになるじゃないですか。漁業協力費とは何事ですか。この中に漁業協力費なんて織り込むから、交渉の都度後へ下がる一つの原因になると私は言っているのですよ。協力費などと称してなぜこんなものを入れるんだ。それならほかの国と交渉するたびに協力費を全部払わなければなりませんよ。ニュージーランドにだって払わなければいけないよ。インドネシアにだって払わなければいけませんよ。向こうの漁船がこっちへ来て魚をとっているわけじゃないじゃないですか、そうでしょう。これは何事ですか、すっきり説明してくださいよ。
○森政府委員 サケ・マスのいま日本が沖取りしております部分につきましてはソ連系のサケ・マスが大半であるということは先ほども御説明したとおりでございまして、アメリカのサケ・マスについては東経百七十五度のライン、それから東の方はアメリカから禁止をされて、そこへ入れない、禁止区域になっております。アメリカが考えておりますのは、アメリカ産のサケは大体回遊しない範囲までで押さえている、逆に言うと、アメリカ産のサケがとれる区域につきましては日米加の漁業条約で禁止区域が設けられておりまして、それから東の水域には入れないというのが現状でございます。したがいまして、残された、いま日本がサケ・マスの漁業としてやっております区域におきますサケ・マスは九十数%までソ連系のサケであるという前提でいろいろ話し合いが行われておる。それも、先ほど申し上げましたようにソ連の母川に基づきますサケの再生産と保護のために日本も協力をしていくべきであろう、そのための経費は支出すべきであろうという考え方に基づきますものでございます。
○渡部(一)委員 そうじゃないんだよ。大臣だって言われておるじゃないですか。あなた大臣の言うことももっと聞くべきですよ。そうじゃないんだよ。日本は残念ながらサケ・マスについては母川国主義だという世界じゅうの言い方に押し切られそうなんだと大臣はさっきから言っておられるんだ。だからそういう考え方にならざるを得ないと大臣は説明されたんだ。ぼくの言っているのはその話とは違うんだよ。その話を前提にするんだったら、九割ソ連糸のサケ・マスなら、九割払うのが当然じゃないですか。三分の一なんて少な過ぎるんだよ。四分の一なんていうのはもっと少ないじゃないですか。そういうことを言っているんじゃないですよ。漁業協力費なんという形でキャッシュを払って、それを容認するやり方をすれば、今後金額は無制限に上がるだけだと言っているのです。ほかの国とはそういうルールではやってないのに、何で漁業協力費なんという項目を起こすのかと私は聞いているのじゃないですか。交渉の仕方がでたらめですよ。交渉に一貫性がないということは外交で一番まずいことなんだ。だから、向こうが無理難題をいろいろ言いましたから、ルールに合いませんけれどもこういうようになったんです、済みませんと言うなら私は理解します。それをもっともらしくここで説明して、このうるさい外務委員会の中で、さもさもりっぱな交渉をしたようなことを言うから私は言っているのじゃないですか。協力費とは何事ですか。もう一回言ってくださいよ、短く。
○渡辺国務大臣 これは政府が直接ソ連に払うのではなくて大日本水産会が、要するにソ連の河川で産卵する遡河性の魚類の保護や再生産及び維持のためにソ連の方が支出する経費の一部を日本側が負担をしますということをソ連に申し入れをして、受諾してくるわけです。ただ政府としては、大日本水産会がそういうことを言っていったことについては同意をいたしますと言うだけであって、大日本水産会が、要するに自分がとってくるものですから、それでその魚はソ連が十二万トンとり、日本が四万トンとり、両方で十六万トンだ。結局十六万トンの二五%を日本はとっておるのですから、ソ連が再生産や資源の保護のために投下している費用の四分の一、向こうの言うのは三十五億なんですが、三十五億出せと言ったわけですよ。こっちは三十億しか出せないということで三十二億五千万というふうに決まって、それは政府が直接出すのではないのです。要するに漁獲をさせてもらう漁業団体、会社とか何かが出すわけですよ。ただ、それを全部会社に出させて政府は少しも助成しないでは気の毒じゃないかという声があるわけです。それに対しては、政府は去年も助成はいたしました。四五・何%か助成はしました。けれども、原則的には全額を要するに漁民が出す。そのために漁民の代表が一緒についていってるわけですから。一緒についていって、そこで政府の方と相談をしながら、これをけっ飛ばしてしまうか、それとも受諾するかを決めるわけですから、政府が一方的にやってしまうのではないのであって、それは、全然採算が合わないでこんなふうな無理難題を言われるのだったら、われわれはここで魚をとったって赤字になって、とてもじゃないが借金だけ残っていやだ、だから魚とりをやめたと言うならまたそういう話もあるわけです。しかし、漁業者としてはこの程度ならば魚をとった方がいい、もう時期が迫っておる、余り交渉が長引いて一週間も十日も長引くと、結局五月一日に出漁ができなくなってしまう、魚は動いてだんだん北に行ってしまう、ソ連の二百海里にみんな入ってしまうとまるっきりとれないじゃないかということもあって、それは喜んで出しておるわけじゃないが、相談の結果、この程度で妥結というならそのかわり禁漁区のところは開きなさいよ。それは開かしたわけです。そこで妥結をしたのでありますから、全体のことを見て御了解をいただきたいということを申し上げておる次第でございます。
○渡部(一)委員 大臣の最後の一セリフで私は了解したいと思います。事のいきさつというものはいろいろ入り組んだのがあってこうでございますと言うなら、それで私は理解しましょう。けれども、論理としてはめちゃくちゃですよね。漁業協力費という名前をつけたのがまずいかぬ。これは私は最後まで言いますよ。今度は問題にしますよ。というのは、名分のないテーマをつけて国内用に押し込んでくるということは、それを逆手にとられて次の交渉をまた悪化させるもとになる、それが一つです。
 それから、政府は大日本水産会に対して昨年度四五%の援助を与えたということは、すなわち漁業者が出しておるというのではなくてこういう形で日本政府がその大半を出していると見るのが当然です。したがって大日本水産会が出したという論理では必ずしも一貫して説明ができるとは思われない。
 第三番目には、こうした論理一貫しないやり方で漁業交渉を進めるなら他国との漁業交渉をますます難化させることになる。
 しかしながら、漁業交渉というのが一筋なわでいかない難交渉であることは十分理解の上、私はこれ以上追及するのはやめたいと存じます。ただ今後そのルールをもう少しきちんとしておいていただきたい。質問をする気になれないぐらい穴だらけな協定書をつくってきて、そうして一々言われるのではたまらなさ過ぎる。しかももっともらしく説明されるのではたまらない。今後の御配慮を求めて、私の質問を終わるといたします。
○塩谷委員長 渡辺朗君。
○渡辺(朗)委員 このたびの交渉は大変厳しいものだったようでございますが、その中で交渉に当たられました関係各位の御努力にまず敬意を表したいと思います。ただ、これからのことを考えますと、何か心配がいろいろ出てまいります。
 第一番目に、今回の漁獲枠の決定の根拠になる資源状態、これなんかはソ連が一方的に判断するだけで、何か日本側の方に何にも決定権がないのではあるまいかと思って、今後の交渉というものは、来年度になるとますます大変だろうという心配を私は持ちます。その点はいかがでございましょうか。
○森政府委員 今回の交渉で、操業水域は昨年と同様ということになったわけでございますが、違った点は、北緯四十四度以北、東経百七十度から百七十五度におきます操業日数の制限ができたということでございます。問題はそこに尽きる――尽きるというとちょっと語弊があるかもしれませんが、そこでのベニザケなりシロザケなりギンザケの漁獲を、ソ連側としては再生産保護のためにできる限り抑えたいという主張があったわけでございます。そこで、そこの分につきまして、昨年の実績からいたしますと約半分程度のものに向こうは抑えたいという考え方であったようでございまして、その残り半分はとることはいいのですけれども、その半分を抑えられた。その半分のものをほかの地域でとってほしいというのが向こうの要望でございます。逆に申しますと、とっては困るという地域を非常にきつくしてきたわけでございます。それは尾数制限なり何なりもすべてその考え方に基づくものでございまして、別にその他につきまして一々ソ連側に、どこでどのくらいということを押しつけられてきたわけではございません。逆に申しますと、その地域を制限することによって、ベニ、シロ、ギンの再生産の資源確保を図りたいという主張を認めざるを得なかったということでございます。
○渡辺(朗)委員 それからさらに、私も心配なことばかり言って申しわけありませんが、漁業協定、これを読んでみますと、資源の確保ということと、それから合理的利用ということは言ってありますが、実際にこれから魚を双方でとっていくのだというところが出てこない。しかも、はっきりと今回の交渉に先立って向こうの次官の方からは、原則は沖取りの禁止である、こういうふうなことを言っている。そうすると、ことしも恩恵的に許されたけれども、来年は原則が適用されるのではないか、あるいはいろいろな規制が、ことしは豊漁年であったけれども、来年が不漁ということになりますと、その原則はますます強化されてくるという懸念を持ちますけれども、この沖取りというものが許されている根拠というのは一体どこにございますか。今後とも許されるという見通しはどこから立てられますでしょうか。その点が大変不安でございますが、大臣、もしできましたら……。
○渡辺国務大臣 経過を見ますると、日本は、かつて戦前は、カムチャッカの付近のソ連の領海で、またはその近くでソ連の海域を借りて、それこそ借地料か入漁料か知りませんが、そういうものを払ってとっていたようであります。それが戦争になってしまって、その後になってから今度は追い出されてしまった。それで公海でとっておった。ところが、海洋法会議のような思想が世界じゅうに広まって、アメリカでも、カナダでも、自分のところで生まれたサケもマスも自分のものだ、こう言い出したわけです。ソ連も言い出したわけです。アメリカもカナダも、要するに公海ではとるべきでない、自分の川なり、川の近くに来た魚をとったらいいじゃないかというのが大勢になってしまったわけですね。
 ところが、日本としては、しかし、昔ながらそこでもう終戦以来二十二、三年ごろからずっととっているのだから、現実にそこには一万六千人もの従業員がおり、加工業者等も入れると、家族も含めれば六万人の人が生活しているじゃないか、だから急にそんなことを言われたって、それは母川国主義的な考えは日本は持っておるわけですよ、日本だってもうすでに五万トンもとっているのですから、日本の川や日本の近くの海で年々これをふやして十万トンくらいにしようと思っているのですから。そうなってくると、かつては二万トンくらいしかとらなかった日本近海のサケ・マスというものは、いまは五万トンもとるようになったし、あと五年もしたら七万トン、八万トン、十万トンにしようというのですから、母川国主義だめよということも日本はなかなか言い切れないわけですね、現実にそういう明るい見通しを持っておるわけですから。しかしながら、それがまだ定着していない、していない一方で、現実には公海で何十年間もとっていた従業員や加工メーカーもあるのだ、この人々を一遍に失業させるなんて、そんなめちゃくちゃなことを言ってもそれはだめですよ、海洋法の中にだって書いてあるじゃありませんか、そういう既得権益があるのだから一遍になくすようなことはできませんよ、それは困りますということで交渉しているというのが現実の姿であります。したがって、この交渉は少なくとも続けていかなければならない、こう思っております。
○渡辺(朗)委員 いま大臣はこれは既得権だというお言葉を使われました。これは大変大事なところだろうと思うのです。二百海里時代になった、あるいはまた海洋法会議の中で母川国主義というものが定着しつつある。にもかかわらず、われわれの方は既得権という観点からこの沖取りというものを要求していく。ところが、それに対してソ連側の方は、ことしのサケ・マス沖取りを認めた理由として、日本業界の再編成が進んでいないからだ、こういう言い方をしていますね。そうすると、これはわれわれの既得権というのを、向こう側は何かとても恩恵的な態度で臨んできている。ここら辺の問題は、大臣はどのように今後の見通しを持っておられますか。
○渡辺国務大臣 それはソ連側はそういう態度なんですよ。アメリカもカナダも、要するに沖取りといいますか、そういうところはとっていないんだ、公海ではましてとっていないんだ、ソ連もとっていないんだ、日本だけじゃないか、世界じゅうみんなとらないのに日本だけがとっているんだから、世界の大勢に従うべきである、日本だって沖でとらなければ日本の魚もふえるのだから、長い目で見たら日本もよくなるのだから、それはだんだんに体制を変えていくべきだという主張を向こうは持っておることは事実だと私は思いますよ。しかし、現実にはことしは日本の方は不景気だし、失業者がこれ以上出ては困る、みんながそう思っているわけですから、だから、既得権益ということは主張してもいいことになっているわけですから、われわれとしては既得権益は主張してきておる。しかしながら、大きな流れとしては、世界じゅうでそういう権益を日本だけが永久に維持し切れるかどうかということは問題があろうかと私は存じますが、当面われわれはそれを主張する権利は持っておる、こういうふうに考えております。
○渡辺(朗)委員 このところは今後大変大事な問題になってくるのではあるまいかと私は思うのですね。つまり日本側は既得権だと言い、それからソ連側の方は、業界の再編成が進んでいないから気の毒に、だから当面沖取りを許しましょう、その中で結局妥協の方式がいわゆるコンペンセーション、日本向けには協力費、そういうような処理方法が生まれてくる根拠になってくるのではあるまいか。そうしますと、大臣、大臣がお出しになった漁業白書の中には構造転換が急務であるということをおっしゃっておられます。そうですね。そうするならば、将来のサケ・マス沖取りの問題は構造転換の中でとらえていかないといけないし、来年度は相当抜本的な見直しの姿勢でもって臨まなければならないのではないかと私は思いますが、その点いかがでございます。
○渡辺国務大臣 これは、私はいますぐ既得権を放棄する考えは毛頭ありません。ありませんが、日本の国内で放流すればサケ・マスがふえるということも事実なんですから、少ないときには日本の周辺で二万トンぐらいしかとれなかったものを、放流したりなんかして、いまや五万トンになった。あと五、六年すればうまくいけば八万トンか十万トンぐらいにあるいはなるのではないだろうかという見通しがあって、ふえることは間違いない。ということになれば、これは和戦両様の構えですな。やはり国益優先でやらなければ。だから私は最悪の事態も考えて――最悪の事態もいつも考えなければなりませんよ。ですから、そういう場合にも日本ではちゃんといままでの両方合わせて十万トンぐらいのものは日本でとれるだけの体制というものは、これはしていかなければならぬ。しかしながら、そうかといって既存の権益でとっておった現実もあるのだから、これもそう簡単には放棄はできません、これは主張していきますという考えであります。
○渡辺(朗)委員 私は、いま大臣がおっしゃったように、確かにサケ・マスのわが国沿岸での漁獲量は昨年で五万トンにもなりましたし、もうはっきりと北洋の方を上回っているわけですね。それからまた魚価の値上がり、高騰が予想されるということになると、米国、カナダ、そういうところからのサケ・マスの輸入というものもふえてくるでしょう。たしか昨年の場合は、四万九千トンぐらい入っているようでございます。そういうようなことになっていくと、これは業界の方々大変苦労しておられるのはよくわかるのですけれども、膨大な協力費なるものまで払いながら、そしてこういう厳しい交渉の中でぎりぎりまで、出航直前まで心臓を痛めるような状態に置いておくというような交渉の仕方は、これはちょっと考え直さなければならぬのではあるまいかというようなことを素人ながら感じるわけでございます。
 ただ、私はいま既得権という言葉にこだわるようでありますけれども、ここら辺のところは本当に既得権が主張できていくのかどうか、もしそれをするならば、むしろ今後日ソ漁業協定の中に盛られている平等互恵という物の考え方、これを具体化するところに活路があるのじゃなかろうかと思うのです。日ソ漁業交渉の中でいままでの協定ができておりますね、日ソ漁業協定が。その中にうたわれている日ソ間の平等互恵の協力関係、これをどのように進めるか、それを具体化する中で活路が出てくるのじゃないかと思うのです。特に大臣は言っておられましたね。日ソの漁業問題は日ソ友好のシンボルである、だから私は行くんだ、ソ連に行って新大臣にも会って話し合いもしたい、こういうことを言っておられる。私はその具体化を図るということが急務だと本当に思うのですが、いかがでございましょう。(「そんなものはシンボルと思わない、領土だよ」と呼ぶ者あり)
○渡辺国務大臣 まあ領土もそれはシンボルですが、日ソの関係で私がソ連側に言っていることは、私もそれは直接行ったわけではないが、いろんな人と話をしているわけですよ。それやこれややはり日本とソ連の友好関係の一つのシンボルになっておるのだ。それを全部つぶすようなことは決して友好にはなりませんよということも言っているのです。
 それから、協定の中にきちんと織り込んでこんな交渉をしなくてもいいようにしたらいいじゃないかという議論、私らも実はそうしたいと思っているのです。そうしたいと思っていますが、そうなってくると母川主義というものをはっきりと認めてしまえば、じゃ何年間で完全に実施するのだという話も、これはなかなか逃げられなくなってきますね。そこで、公海でとらない、何年間でそれじゃそうするのだという問題もありますから、それだけ踏み切れるかどうか、ここらのところ、国内体制の問題もあるし、利害の問題もあるし、業界の問題もありますから、そこまでは踏み切れない。そのために毎年毎年やっておる。しかしこれは余りいい姿じゃないのであって、やはり私としては、第一には国内の沿岸でサケ・マスがとれるような工夫をもっと大きくしていくということが一つ。それから、もう間際になって、いつも心臓が悪くなるように本当にぎりぎりまでどうなるかわからぬというようなこともいかがなものだと思いますから、こういうものもなるべく事前の話し合いによって合理的に、しかも日本の権利も認めてもらうような形で実務的に決まるようにした方がいいのじゃないかなという気がしております。
○渡辺(朗)委員 私はやっぱり日ソ間の漁業の分野において漁業の協力関係をどうつくっていくのか、たとえばその関連で、昨年の日ソ漁業共同事業のプロジェクトというものが五件たしか調印直前までいって、たしか煮詰まっていたはずでございますが、それが全然その後進展をしていない。何か延期になったりたなざらしになっている。そういうところから取り組んでいくことが必要じゃないだろうか。この問題についての現状はいかがでございますか。御存じでしたら……。
○森政府委員 日ソの共同事業についてでございますが、昨年あるところまでいきまして、結局時期がもう間に合わないからという話でことしに持ち越されたということでございますが、今回の訪ソに当たりましても、農林水産大臣からカメンツェフ大臣あての書簡を出しまして、五件を早く片づけるようにということで書簡に対する返事も参っておりまして、現に逐次調印が進みつつあるのが現状でございまして、すでに二件処理をされて、次の案件の相談に入っておるというのが現状でございます。
○渡辺(朗)委員 時間が余りありませんので多くを質問できませんが、私は渡辺大臣にひとつお聞きしたいのです。
 今度の交渉を見ておりまして、素朴な国民感情として、日本側の交渉力まことに弱いのだなと、新聞にそういう言葉も出ておりましたし、国民の素朴な感情としてそういうものを感じました。交渉力を強めるということが必要であろう。私はそれの前提には平等互恵の日ソ友好関係を大いに進めるべきだし、そのために大臣先頭に立って活動していただかないといかぬと思っておりますが、そういうことを前提にして交渉力強化ということのために何をしたらよろしいか、決意のほどなり抱負のほどなりを最後に大臣からお聞きしたいと思うのです。
○渡辺国務大臣 交渉力を強めるためにはいろいろな手があると思いますが……(「けんかしてこい」と呼ぶ者あり)まあけんかをすることもそうかもしれませんが、そのためには、それは公海でサケをとらなくてもいいのですということで国が合意してくれれば一番話は簡単明快なんですよ。問題は、そのためにはやっぱり日本の国内のサケ・マスの量をもっとふやすことが一番ですよ、何といったって。それはサケ・マスの量が足りなくて、欲しい欲しいが優先すれば、私はともかく行って交渉決裂するのは造作ない話だけれども、それじゃ困るというのですから。ということになれば、それはもう補償の一部を負担してでも、いまはそんな体制じゃないから、交渉決裂じゃなくて、とらしてほしいというような漁民の方が圧倒的に多い。ということになれば、政府としてもできるだけその意を体して交渉に当たらなければならぬということなんです。ですから、ソ連側の言うことも、私はみんな間違いだと思っておりませんよ。理屈は理屈として、アメリカもとってない、カナダもとってないじゃないか、ソ連もとってないじゃないか、日本だけとっているのだ、いつまでとっているのだ、世界じゅうとってないのだから、自分の国へ帰ってくるのだから、小さいうちにとらずに大きくなってからとったらいいだろう。これは一つの理屈ですからね、まるっきりだめだとなかなか言えない点がある。世界じゅうの大勢がそう言っているのに日本だけがそんなでたらめないと言ったって通用しない。
 しかし、それはそれだが、現実の姿は先ほど言ったように、家族も含めれば六万四千人の人がそれで飯を食っているのだ、だからこれを一遍に壊すことはできませんよということを言っているわけですから、これからいろいろソ連の利益になるようなことも考え、サケを大きくしてとるようなことも考え、いろいろ総合的な手だてをしなければそうパンチの効いた交渉というわけにはなかなかいかないのでございまして、その点は御了承を賜りたいと存じます。
○渡辺(朗)委員 交渉力を強化するために平等互恵を前提にしてということでいま農林水産大臣の御見解、抱負をいただいたのですが、外務大臣からも最後に一言いただきたいと思います。
 日ソ間において、これからどのようにして日本側の交渉力を強めるか。
○園田国務大臣 漁業問題が厳しくなってきておることは御承知のとおりでございます。その厳しい中で行われるわけでありますが、一番大きな問題は、漁期に入ってしまってから単年度ごとにやることが交渉を非常にやりにくくしておると考えます。そういうことでいま農林大臣からも御発言がありましたが、農林大臣の御計画に基づき、私は、農林大臣が直接の日ソ相互間の漁業問題の利害が目の前にない時期にソ連を訪問されて、大所高所から長期的にこういう問題の相互理解を深めつつ、この問題をなるべく有利な方に持っていかれるように期待し、考え、外務省も努力したいと考えております。
○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
○塩谷委員長 寺前巖君。
○寺前委員 きょうじゅうに採決をして参議院に御審議をいただこうということで皆さん御協力になっているようですから、私も確認をしておきたい点を三、四点質問をさせていただいて終わりたいと思います。御明確に答弁をいただきたいと思います。
 まず第一点は、先ほどから論議になっていますが、サケ・マスについては母川国主義がすでに定着してきている、それをもとへ戻すのはむずかしいのだという態度で折衝をされているようにお見受けしました。本当に将来の国際的な海洋のあり方全体から考えた場合に、果たしてこういう考え方はいいのかどうか。確かに国連海洋法会議の統合草案には母川国主義の原則がうたわれておりますが、遡河性魚種サケ・マスの漁獲を行ってきた国の権利も考慮はされています。
 そこで、このサケ・マスについて、先ほどの農林大臣のお話を聞いていますと、ふ化し育てていって、そして沖へ出てまた戻ってくるのだ、ですからそれは確かに母川国のところにもともとの権利があるのだという態度で、世界の趨勢がそういうふうになっているからそういう態度で臨むのだとおっしゃっていたわけですが、しかし同時に、生まれて育つためにはまた大きな海が要るのだ、ですから決して母川を持っている国だけが絶対的な権利を持つというのはちょっと行き過ぎの考えになるのではないだろうか。将来を考えてみたら、世界の海というのはその沿岸に川があって、そこで遡河性の魚を育てるだけで、そこだけが権利を持っていくということでは将来の世界の諸関係から言うならば、関係諸国だけが大海の魚を権利としてとるあれが出てくるのだということになってくると、これは私はちょっとおかしいのではないだろうかと思います。
 だから、基本的な考え方として、母川国の権利というのは重要な発言権を持つか知らないけれども、もっと大きな将来を考えてみたら、共同して資源を大切にし育てながらも、同時に世界の人がその魚についてとる権利というのはやはりそれなりにあるんだという立場をとるべきではないだろうか。原則的な話として御見解を承りたい。
 それから、先ほどからのお話を聞いておって、ソビエト側は母川国主義一本のように提起をしてきているようにお見受けするわけですけれども、これに対して日本側としての見解はどういうふうに向こう側にこの会談の中で明らかにされたのか、この二点についてお聞きをしたいと思います。
○渡辺国務大臣 母川国の問題については、言葉は違うとしても、海洋法会議の中でも遡河性魚種については、それを第一次的な権利者だということを言っているわけですね。それから日本でも、二百海里法という法律の十二条で「湖河性魚種の保存及び管理」というところで、要するに遡河性魚類の二百海里水域外についても同じようなことを言っているわけですよ。ですから、定着してきつつあるということを私が言ったのはそういうことなんです。
 ですから、日本で放流をどんどんやって、仮にいままで二万トンしかないのを五万トンになったわけですから、あと五年たってそれが八万トン、十万トンになったということになると、日本の周りだって、ソ連ばかりじゃなくてほかの国が来てとるということになれば、母川国主義で日本で育ったサケを何でおまえたちとるんだということを、実際は言わないわけにはいかなくなるわけです。したがって、それを全部放棄をするといっても、日本の現実にも合わないし、世界の大勢にも合わないということなので、それは一切認めないということをわれわれは言えないんですよ。
 しかし、長い歴史を持っておって公海で魚をとっておったという日本漁民の現実があるわけですから、この現実の権利というものは、はっきりしたことは海洋法でも書いてありません、既得権とは書いてないが、既得権に類似のものですね、こういうものは主張できることになっているわけです。だからわれわれとしては、いままでとっておるんだし、何万人もの人がそれで生活しているんだからとらせろという主張はしておるわけであります。
 その折衷的なものは、ここは禁止でとらせないというのが原則なんだが、それじゃそういう現実もあるからとってもいいよ、そのかわり、この魚はソ連の魚だ、ソ連がいろいろ金をかけて卵をふ化したりなんかしたものが大きくなってきたんだから、それを日本が途中でとるわけだから、ソ連のかかった費用の一部を持てというのがコンペンセーションの話になってきたわけであります。
○寺前委員 ぼくがきちんと確認しておきたいなと思ったのは、将来の海洋法の海洋秩序のあり方の問題として提起をしているわけなんです。だから第一義的発言権者というか、権利としては母川国の諸君にあるだろう。それはわかる。だけれども、それじゃそれ以外の国は発言権はないのかということについて、発言権がないという立場をとるべきではないのじゃないか。やはりあるという、度合いは別だ。したがって、将来の図で言うならば、大海における資源の保護とか、どういうふうにして育成していくとか、共同的にみんなが積極的に検討をしていくのだ、そういう関係を確立していくというのが将来の海洋のあり方の絵じゃないか。そういう立場を日本政府として持っているのかどうか。これが一つと、もう一つは、そういう立場を日本政府が持っているとするならば、ソビエトに対してこういう態度の問題について、原則問題に対する日本側の見解というのは相手側に、目先の交渉だけじゃなくして、明らかにしてやるのかどうか。私はそこの二点を原則問題としてちょっと聞かしてほしいと思います。
○渡辺国務大臣 これはむしろ法律問題ですから外務省に答弁をしていただきますが、あなたのおっしゃっているような考えに立っているからこそ、日本は強く交渉をしているわけなんです。それはそのとおりなんです。
 法律問題は外務省から答弁をしてもらいます。
○宮澤政府委員 ただいま御指摘のような、まさにそのような見地から昨年の四月に漁業の分野における協力に関しまして日ソ両国の間の協定を結んだわけでございまして、この協定の三条に「協力の具体的な措置は、この協定に基づいて毎年作成されかつ署名される」云々と、この今回できました議定書がその協力の一つのあらわれでございますが、その協力の内容は、やはり海洋資源の保存及び合理的利用、こういうことでございます。したがいまして、保存及び合理的利用の具体的内容を盛り込んだものがこの議定書でございます。
 そこでただいま寺前委員御指摘の、第一義的に母川国のものではあろうけれども、広い海洋に出て大きくなっているのだから、母川国だけの権利ではないではないか、こういう御指摘でございますが、このような考慮が実は海洋法の、まだ正式に採択されておりませんが、非公式統合草案の中に、母川国と合意の上で特に財政面で遡河性魚種の再生産のための措置に参加する国には、これら魚種の漁獲について母川国は特別の考慮を払う、すなわち、母川国のみに再生産の努力をさせるのでなくて、一緒に努力をする国にはやはり母川国も考慮を払う、こういうことでございまして、今回協力という形でソ連側の再生産努力に寄与するという意味で日本側が沖取りを認められる、こういうことでございますが、これがやはり両国の再生産及び合理的利用の端的な一つのあらわれであろうと考えております。
○寺前委員 とするならば、資源確保のあり方とか、開発のあり方とか、両国間で全体としてのそういう研究をし、そういう検討に具体的に入らなければいかぬのじゃないか。お魚をとる話だけではあかんのではないか。もう少し大局的にやる必要があるのじゃないか。いまの話だけだと、向こうが育てているのだから、おまえの方から金を払え、おれのところはこれだけ要っているのだぞ、どうや。ああ、ちょっと高過ぎるぜ。それではちょっと筋の通らぬ話になるのじゃないか。そこはどういうふうに進めているのですか。
○渡辺国務大臣 それは、あなたの言うようなことは専門家同士でやっているのです。専門家から答弁させます。
○佐野説明員 お答えいたします。
 ただいま寺前先生御指摘のような仕事は、日ソ漁業協力協定によって設けられております日ソ漁業委員会の仕事として定められておりまして、ちょうど今年のサケ・マスの政府間交渉に先立ちまして、日ソ漁業委員会の第一回の会議を開きまして、資源の状況及びその合理的利用について日ソ双方の科学者の意見の交換を行うというふうな格調の高い仕事をやっておるわけでございまして、いまの先生のようなお話は、政府間交渉に先立ってそういう場で行われることになっておるわけでございます。
○寺前委員 私が聞いておるのは、高いとか安いとかいう話が出るから、それだったら、ちゃんと予算を組んで、資源はこういうふうにして確保し、こういうふうに育てていくのだという図面をお互いの間で別個にちゃんと組んでやっていけば、高いとか安いとかいう話は関係ないじゃないか、別の次元の話じゃないか、そこはどうなっておるのやと聞いておるのです。
○佐野説明員 日ソ両国で極東のサケ・マスの資源保護及び再生産のためにソ連側の使った金の穴埋めをするという話じゃなくて、日ソ双方が協力をして資源の保護と再生産に当たるべきであるという考え方は、日本側としては昨年来持っておりまして、ことしもこういう日ソのサケ・マスの共同増殖事業についての考え方というのを日本側から提起してございます。それで、ことしの場合は不幸にして、ソ連側は現在の段階では極東の水域におけるサケ・マスの資源の保護及び再生産についての事業は、日ソ両国がそれぞれ独自のプロジェクトとして実施するのが適当であると考えており、日ソ両国が協力し合ってそういう仕事をやることの当否については、次の日ソ漁業委員会の席上もう一度よく議論をしてみたいというような話がございまして、今度の交渉の際に結実することは不幸にしてできませんでしたが、日本側としては本筋はそういう考え方でアプローチしていくべきものであると考えて対処をしておるところでありまして、今度の日ソ漁業委員会では必ず実りある討議をしたいというふうに考えております。
○寺前委員 時間の関係がありますので次にいきます。
 次に、こういうふうにいまソビエト側は明らかに母川国主義第一で、先ほどからの話を聞いているとそうなっていますね。それから資源保護というのは非常に強調しておりますね。こういうことになっていきますと、これから今後のサケ・マス漁業について日本側にとっては厳しい制限をいろいろつけてくるだろう。これは一般的に想像のつく話であります。そういう状況の中で、いまとっているとり方、要するに母船を持っていって集めてくるやり方、それから乱獲云々ということまで言われたり、新聞に載せられたりしていますが、それはさておいても、こういう母船式漁業というもののあり方について検討すべきではないのだろうか。要するにもう少し中小の漁民を中心にして独航船方式で漁獲をやっていくというやり方をしないと、大型の母船が行ってそれを中心にしてぐわっと合理的に、とにかく巻き上げてくるというやり方というのは検討する必要があるのではないか。これはどういうふうにお考えですか。
○森政府委員 母船式漁業の特色は、やはり遠洋的な遠くまで出かけてそこで漁獲をするというところに特徴があると思います。たとえばべーリング海に基地独航式母船が行くということは不可能に近いというふうに思います。非常に海の荒れる日も多いわけでございまして、そういうところに現在の小さい七十何トンの船が参るということは問題であろう。したがいまして、いまの漁業の水域がどういうふうになってまいりますか、私どもはいまの水域をさらに操業可能な状態で交渉を続けたい、またいろいろ問題がありましょうけれども、ともかくそういうことで臨みたいと思っておるわけでございますから、そういう意味では現在の操業水域に母船式漁業が入っておりますことは、それなりの意味があるものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
○寺前委員 それでは私はもう時間がないので次にいかないとあれなんですけれども、それは将来の経過から考えていくならばぼくはもう少し検討すべき課題だと思いますね。それは遠洋へ行って大型でぐわっと集めてそれでほうり込んでくるという時代認識では、改善をしなかったならば、これは日本の漁業のあり方としての問題を残してくると私は思いますね。これは意見を申し上げておきます。
 次に、こういう毎年交渉をやっていくと、ともかく直面する問題を解決していかなければならぬのだということで話が進んでいくと思う。そうすると、一番最初に日ソの漁業問題が問題になったときに、千島列島、歯舞、色丹などのところの二百海里問題というのはここでずいぶん論議になったけれども、実際交渉の部門になってくると、一年契約の話になっていくとこういう話は横っちょへいってしまうだろう。この問題を毎年毎年そんなことをやっておったら、現実が解決しないということでずっといってしまうと、これまた定着していくのじゃないだろうか。それなりにこの千島問題について、たとえばの話、入り会いして共同して、ここで操業を、お互いが異論を持っているのだから、認め合うやり方をやるとか、具体的な提案をそこへやっていくというやり方をしなかったならば、これは定着してしまうのではないか。そこの問題についてどういうふうに考え、今日まで進めてきているのか、これからどうしようとしているのか、それを聞かせていただきたい。
○園田国務大臣 ただいまの御発言はきわめて貴重で大事な御意見であると拝聴いたしておりました。確かにそういう点がいままで粗漏であったことは否み得ません。今後十分注意をしていきたいと考えております。
○寺前委員 時間もありますので、私は、これは積極的に、共同管理をこういう地帯ではやるという提案をソビエト側にすべきではないか、意見を申し上げておきます。
 それからもう一問だけ、時間が来たようですのでお伺いしておきますが、先ほど問題になっておったところの日ソ漁業共同事業の五案件というのがありました。もう細部の話は別にして、ともかく日ソ漁業協力協定の第五条の(d)項に「漁業の分野における共同事業の実施の妥当性を検討する。」という項がありました。私は、あの漁業の問題について、何で民間関係だけでそれを進めさせていくのだろうか、日ソの漁業協定を結んで仕事をやってきている以上は積極的に政府がちゃんと正面に出て、そうして協定をやっていくというやり方をなぜやらないのだろうかということについて質問をしたいと思います。
○森政府委員 御指摘の問題につきましては当初からソ連側と日本側の政府間、大臣同士の間で基本的な話が進められました。それに基づきまして具体的な話が進められたというふうに理解をしておりますし、最近におきましても大臣から向こうの大臣へ基本的な考え方を伝え、向こうの大臣からも書簡で基本的な考え方が返ってきておりまして、基本的な枠組みにつきましては政府間での話し合いのもとに行われておるというふうに理解をいたしております。
○寺前委員 政府間でやっておって、それでなぜごたごたするのですか。きちんと政府間協定で話をまとめてしまえば何も問題は起こらないのじゃないか。私は素人だからよくわからぬ。ちゃんと政府間で漁業協定に基づいてやってしまえば、あとは問題ないのじゃないだろうかと思うのですが、そこはどうなんですか。わかりやすくしておいてくださいよ。私は素人でよくわからぬ。
○森政府委員 具体的な個別のケースにつきましては、先ほど申しましたように漁業団体なり漁業者が協定を結ぶわけでございます。その中には金銭にわたる問題もございます。そういう問題で実はいろいろ折り合いがつかなかった。またそういうことで非常に時間がかかっておるというのが現状でございます。
○寺前委員 現状でございますではなくして、政府間できちんとやってしまえぬのかと言っているだけの話です。民間協定にせずに政府間協定でやってしまえぬかということです。
○森政府委員 この共同事業につきましては基本的には政府間の漁業協定に乗らないもの、また乗りがたいものについて行うという基本的な了解がございます。したがいまして、スケトウダラは日ソの漁業協定で漁獲の対象にしている漁業でございまして、そういうものについてはいろいろ資源問題もあり、日ソの漁業協定でむしろ入漁料等も払わないで漁獲を行うということで基本的に話がついている。一例を申しますとそういうことでございまして、逆に申しますと、そういう協定外で行われる基本的な話し合いにつきましては政府間でやる、その具体的な契約の当事者につきましては、日本側としましては民間の漁業者または漁業団体といたしておるわけでございます。
○寺前委員 この問題は直接あれでもないですからやめます。
○塩谷委員長 依田実君。
○依田委員 渡辺農林大臣がお忙しいということですから一つだけ先に農林大臣に伺わせていただきまして、あとは順次質問させていただきたい、こう思っております。
 こういうふうに協力費というのが毎年毎年上がっていく、そういう傾向だろうと思います。その算出根拠について森長官などのお話によると、ソ連側の算出根拠に従っていた方が安定的な漁業ができる、こういうことでございます。そうしますと、また来年もソ連側の言い分、これに左右されるわけでありますけれども、この歯どめというのはどういうふうになるのか、この辺、農林水産大臣、一言だけ。
○渡辺国務大臣 これは先ほどから言っているように、漁業をするのは政府がやるわけじゃありません、これは漁家がやるわけですから、漁業団体がやるわけですから、採算が合わないほど要求されたのではそれはそんな魚は要りませんということになるのです。歯どめはおのずから出ているわけですね、赤字をぶちながらやりませんから。ですから私は、歯どめはどこだと言われたら、採算が合わないほど要求されてもそれはできませんよというのが一番端的な歯どめじゃないか、そう思っております。
○依田委員 その前提になります採算が合わなければと、こういうことでありますけれども、今回、それからまた昨年もそうでありましたけれども、要するに政府がある程度負担をする、こういうことになってくると単純な企業ベースだけじゃない、こういうことでありますから、そうするとやっぱり歯どめがないのではないか。企業ベースはここまで、それ以上は政府が持とうじゃないか、こういうことになると、日本はいまお金持ちですから、そういう意味では歯どめがない、こういうことになるじゃありませんか。
○渡辺国務大臣 だから私としては、政府は無制限に持つようなことはいたしません。ソ連に対して、投下した資本に対してその四分の一なら四分の一について要するに漁業団体が持ちます、その中でさらに政府として適当と認めるものについては助成をいたしますということを言っているわけであって、際限なく政府が持つなんと言ったらそれは歯どめのない話になりますから、それは厳に慎まなければならない、かように考えております。
 それと同時に、国内で魚がたくさんとれるようになれば、何もそんなに金を出し出しとらなくたって、国内の沿岸だけで十分だということになれば必要ないわけですから、そういうようなことで国内のサケ・マスの放流やその他のものを強化をして国内の沿岸でとれるように一方努めておるところであります。
○依田委員 そのあとのことは専門家の方にまた伺いますから、どうぞお出かけください。
 外務大臣にちょっと感触を伺わせていただきます。
 いままでは漁業交渉というのは日ソ交渉のいわゆる柱になっておりまして、しばしば政治的問題と絡んでおったわけでありますけれども、今度の交渉を拝見さしていただきますと、大臣がかわった、こういうことも非常に大きいのじゃないかと思いますけれども、非常に実務的、経済的ベースで進められておる、こういうふうに私感ずるわけであります。今度の交渉、日ソのいままでのいろいろの関係の中でどういうふうに位置づけられるか、大まかな感触をひとつ伺わせていただきたい。
○園田国務大臣 今度の漁業交渉、短期間の中で折衝が行われたわけでありますけれども、水産庁としては非常に努力をされて、減船しないということを重点にやられたわけであります。日ソの漁業交渉というものはとかく政治的な判断をされて、ソ連の日本に対する締めつけであるとか、あるいは日ソ関係が悪いからだんだん厳しくなるとかという話がありますが、これは全く違った批判でありまして、漁業問題そのものが世界各所で厳しくなってきておる。そこで、この厳しくなってきた漁業問題というのをめぐって、何としても年に一回やる交渉でありますから、いまおっしゃいましたとおり日ソ間の一つの柱であります。これが円満にいくように、平素から資源の問題とかその他の問題等で協力をしながら、共同で資源を開発し保護をやっていく、こういうことで、農林大臣ぜひ今度は、この問題が片づいたらなるべく早い時期にソ連においでになって、日ソ関係の一つの柱であるこの漁業問題を中心にして相互理解を深めていただきたい、こう願っておるところでございます。
○依田委員 この漁業交渉、外務省と農林水産省両方で、持ち場持ち場それぞれ分担してやられておるわけでありますけれども、こういうぎりぎりの交渉をされる、そしてまた農林水産省のバックには業界がある、こういうことで、どうしても最終打ち上げ、これが、もう少し交渉したら、こういう感覚もあるのじゃないかと思うのです。この交渉全般の中で、外務省として、本当ならもう少し粘って交渉したらというような感覚があるのかどうか。要するに、農林水産省の方は業界のバックがあるものですから、そちらの圧力がきっとあるのであろう、こう思うのであります。そういう交渉に臨まれておって、外務省として何か農水の方へ言い分があるかどうか、その辺をちょっと伺わせていただきたい。
○園田国務大臣 率直に言って、今度の交渉の最終段階では、われわれが予期をして、国内では一切閣議その他の準備を、態勢を整えておりましたが、予期どおりにいかなかった。最終段階まで水産当局はよく粘って交渉したものであると私は考えております。
○依田委員 それじゃ少し具体的な問題に入りますけれども、議員からいろいろお問い合わせがある例の漁業協力費、これの性格について、入漁料なのかいわゆる補償費なのかどうか、この問題について確認をさせていただきたい、こう思うのであります。と申しますのは、昨年の議事録を見ておりますと、当時の中川大臣は、性格の発想は入漁料だ、こういうことをおっしゃっておるわけでございます。そして、昨年の算出根拠というのは、当時のいわゆる世界的な入漁料三・五%、それにアルファさせて四・五%、こういう数字が載っておるわけであります。ことしはもちろん入漁料というものは世界的に高くなっておるわけでありますから、その三・五とかそういう数字は別といたしまして、入漁料としてじゃなくて、先ほどからのお話を聞いていると補償費だと、こういうお話でありますけれども、その辺の性格についてもう少しきちっとしたお答えをいただきたい。
○森政府委員 二百海里水域の問題でございません。したがいまして、私どもも入漁料とは考えておりません。昨年も確かに漁獲高の何%ということで、一応計算の基礎としてはそういう計算を行ったことはございます。しかし、それはあくまでも便宜的な方法として考えておったものでございまして、その計算も入漁料というつもりでやったわけではございません。今回の算出に当たりましては、むしろ向こう側が、パーセンテージを使うのが非常に不安定で、かつ変則的な計算方法であるという主張をいたしておりました。私どもも、若干便宜としてそういう方法はあり得るんだということは主張いたしましたけれども、基本的には向こうの考えは、漁業の再生産確保に事実使った金の日本の相当分を払ってもらいたいという主張をしたわけでございまして、私どももその方が合理的ではなかろうかというふうに考えましたけれども、直ちに三十五億をいただきかねる、それは支払えないということで反対をいたしたわけでございます。
○依田委員 先ほどもちょっと申しましたけれども、森長官の帰ってこられた談話の中に、算出根拠はソ連側の算出根拠に従っておった方がいいだろう、つまり、安定的な漁業をするためにはそれがいいだろう、こういうことでありますけれども、そのソ連側の算出根拠について日本側が納得してやっておるのですか、それとも、さきに森さんがおっしゃったように、つまり向こうに従っておればいいんだと、こういう考え方でしょうか。
○森政府委員 ソ連のサケ・マスの保護、再生産のために投下されている金を、そのうち日本がとっているソ連系のサケの応分の負担をするという考え方は、私どもは、いいのではないだろうかというふうに思います。ただ、その額そのものは、向こうがつけ出してきたそのものを私ども認めるつもりはございません。
○依田委員 問題は、やはりその前提になる向こうが出してきた算出根拠、つまり数字、これを、いま森さんの発言だと、納得できない、こういうことでありますね。そうすると、今度の三十二億五千万というのは、話し合い、一種の談合みたいなもので、まあまあと、こういうことで納得したわけですか、最初の前提の数字が納得できないというのですから。
○森政府委員 向こうの最終要求は三十五億ということでございました。私どもは、それは払えないということでがんばったわけでございまして、そういう意味では、向こうの算出根拠を一々こことここがおかしくてこうであるというところまでは言っておりませんけれども、ともかくわが日本の業界で払えないものは払えないんだということで、結局最終的には三十二億五千万円ということに相なったわけでございます。
○依田委員 どうも、ちょっと交渉のやり方がつかみ金的な感覚じゃないかと、こういうふうに思っておるのです。私は、今度の交渉全体を見まして、いまの数字もそうでありますけれども、何か去年の中川さんの発言なども見ておりますと、金を払ってやれるものならそれでいいじゃないか、こういう考え方がどうも日本の交渉団の中にあるのじゃないかと見ておるのです。その辺についてもう少しシビアに考えていただかなければならぬと思うのですけれども、そうなると、それじゃそれを政府と民間でどういうふうに負担していくか、この辺について、交渉の途中で要するに日本側のお考えというものはあってやっておったのでしょうか。つまり、政府と民間との持ち分、これについてはお決まりになっているのでしょうか。
○森政府委員 昨年四五%を負担いたしたわけでございますが、これは、設備なり機材を見まして、政府が負担するのにふさわしいものの項目を選びましたところ四五%になった。結果論でございます。しかし、ことしはどういうふうな負担率になるかということは決まっておりませんけれども、先ほど大臣が御答弁いたしましたように、そういうものを勘案しながら決めるということに相なろうかというふうに思います。したがいまして、そういうことは今度の交渉の過程で業界も恐らくそういうつもりで判断をいたしておると思いますけれども、私どもが半分持ちますとか四五%持ちますということを確約したことはございません。
○依田委員 そうしますと、この三十二億五千万円というのが出てきた場合に、要するに、いま大臣いませんけれども、先ほど大臣のあれじゃ、採算に合う範囲で受けているのだ、こういうことであります。そうしますと、業界としては、そのうちどの程度なら採算が合うというのか、つまり業界負担分が幾らなら採算が合うのだということが出ないと、採算に合うかどうかということは出てこないと思うのですね。その辺の細かいところは業界と打ち合わせながら、この三十二億五千万というのは決まっているのでしょうか。
○森政府委員 三十二億五千万というものは、全体の漁獲量がどうなるかということ、それからどういう魚種別の構成になるかということ、その魚種別の構成というのはマスなりベニなり何なりということでございますが、そういうことと、それの値段がどういうことになるか、全体の中で漁獲高がどのくらいになるか、これはそれぞれ腹づもりというのはあろうかと思いますが、確たることは言えないわけでございます。したがいまして、そういうことを総合勘案いたしまして業界としては判断し、われわれも業界の意見を参考にして決めたということでございます。
 それから、業界が全部それについて満足をしておるということは、もちろん金目のものでございますから、そろばん勘定というものはなるたけ立った方がいいわけでございますから、必ずしもそれで十分満足しておるというわけではないというふうに思います。したがいまして、全体を見ながらやむを得ないという判断のもとに決められたというのが実態であります。
○依田委員 大体腹づもりをされているというお話でございましたけれども、大体腹づもりというのは、業界でどのくらい持てると腹づもりされているのでしょうか。
○森政府委員 先ほど申しましたように、実際の計算をどういうふうにしていくか、実際の具体的な数字はこれだからこれで結構でございますというふうに言うたわけではございません。しかし、全体として私ども、業界の趨勢としてはこれで決断をした方がいいだろうというふうに判断いたしまして、最終の請訓を東京に仰いだ額が三十二億五千万円でございました。
○依田委員 ちょっと話を変えさせていただきまして、この沖取りの問題についてソ連側は、もちろん協定議定書の表題にありますように、「日本国の」と特に入れておるわけであります。向こうでは、とりあえず臨時的に日本に沖取りを認めている、こういうことだろうと思うのであります。向こうと交渉なさっておって、これはある時期に沖取り自体を向こう側が禁止してくるかどうか、こういう感触を持たれておるのかどうか、あるいはまた日本のサケ・マスの操業の再編成が終わるまで、こういうふうに向こう側は言っておりますけれども、その再編成が終わる時期、これについてソ連がどういうふうに考えておるのか、日本側で感触があるのでしょうか。
○森政府委員 ソ連側がどういうふうに考えておるかという中身につきましては、私どもただしたわけではございませんけれども、恐らく考えるとすれば、要するに漸次それを漸減をして、ある時期にやめてしまうということはある、ことしではございませんけれども、かつての交渉ではそういう意見も述べられたことがございます。したがいまして、あるいはそういうことを考えているかもしれませんけれども、ここでそのことは、むしろ先ほどから問題になっているような、向こうも漁業協力費を執拗に要求をしてくるという考え方と全体とあわせて、どういうふうに考えるかにつきましてはいろいろ意見があろうと思いますし、最近のソ連側の出方というものはさらに今後も検討を要する問題だろうというふうに思っております。
○依田委員 その協力費は、要するに機材提供の形で行われておるわけでありますけれども、その機材がどういうふうに使われておるのか、その辺のトレース、アフターケアは日本としては全然できないわけですか。
○森政府委員 機材を提供するということで、大体日本側の会社の製品でございます。したがいまして、それは全部サケ・マス用にいろいろ使われるという判断をいたし、またその現物をこちらで届けるということになっておりますから、使い方など、それをどこに据えつけてどうするかということまではタッチしておりませんけれども、そういうサケ・マスの再生産に必ず使えるし、また使うということを言明いたしております。
○依田委員 時間がありませんから、最後に、昨年あたりは外国からの輸入、そういう量も四万九千トンですか、それ以上になっている。あるいはまた、日本側のいろいろのふ化放流の技術改良によって沿岸物が五万七千トンですか、そういうふうになってまいりました。いわゆる沖取りの比重というものがだんだん下がってきたわけでありまして、そういう意味で、日本側としてこの沖取りというものを将来どういう位置づけをするのか、この辺の長期的展望を伺わせていただいて終わります。
○森政府委員 先ほど大臣も申されましたように、相当な従事者が従事しておる漁業でございます。したがいまして、できるだけ沖取りの漁業は維持していきたい、と同時に、沿岸を回遊するサケ・マスのため積極的にふ化放流事業を拡大していきたい、こういうことでございます。
○依田委員 終わります。
○塩谷委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
○塩谷委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、採決いたします。
 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○塩谷委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
○塩谷委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後一時三十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時八分開議
○塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
○小林(進)委員 私は、本日は総理大臣の出席を求めていたのでございますけれども、総理はまだお見えになりませんか。委員長、これはどうなっているんでしょうな。
 実は、後でも質問しますけれども、五月の二日には総理はカーター会談においでになる。これは重要会談です。ですから、そういう大きな任務を持って行くときには、やはり国民に向かって所信を表明していくというのが一国の総理大臣の基本的姿勢でなければならぬ。総理が国民に向かって、私は来月の二日にはアメリカに行きます、カーター大統領とこういう重大問題を話します、その場所をあえて提供するために私は総理大臣の招請を促した。私の親切なんですよ。そういう親切を受けるような気持ちがないのは一体だれが悪いんだ。やはり外務官僚か、そばにいてこういうことをやらせないのは。それはいかぬ。外務大臣、まだいいですから、私がやっている間にちょっと呼んでいらっしゃい。重大なこういうときにこそ常に民間外交、国民とともに話をするという姿勢がなければ、新しい、近代的な外交になりません。それが一つ。普通の場合と違うのですから。アメリカへ行くのでしょう。その次には首脳会議もあるだろうし、いまは重大な時期ですよ。進んで、お願いしても出てきて国民に訴えるという姿勢がなくちゃいけません。
 それから、私も外務委員会に何年かぶりで来てしばらくここへ座ってみたのだが、どうも空気が濁ったようだな。なぜかと私も自分で調べてみた。私は第七回国会、昭和二十四年の十二月に外務委員をやっている。それから第八回の国会でも外務委員をやり、なお第三十三回の国会にもやって、私は外務委員を三回やっているが、当時はここにおられる岡田さん等もおられて国政、特にわが日本の外交方針に対して、それは頻繁な論議を繰り返した、国の基本問題でありまするから。ところが、どうも最近、昔に比較して様子が変わってきた。その点が少し気に入らない。一体、外務委員会を今次国会で何回開いたのか、いま調べてみた。六回開いたという。第一回が十二月二十二日から始まって四月二十五日、今日に至るまで六回だけれども、予算の説明だとか人権規約はやっているが、国の基本に関する外交方針、特に政府の外交方針をじっくり説明する、聞く、質問するということがこの中にはない。
 私どもは何も官僚の後を追って事務的に問題を処理するために外務委員会を開くのではないと思う。国政の中での重要な外交の一端、これは国会議員としては最も崇高な重要な仕事です。これをわれわれは追及していかなければならぬと思うけれども、残念ながら今次国会ではまだそれは聞かない。これは委員長にお願いしますが、ともかく大平内閣、新総理大臣、かわったばかりだから、外務大臣はかわりませんけれども、総理大臣を通じて、一体日本の外交方針をどこへ持っていくのか。予算はまたおのずから別ですから、質問する姿勢が違う。外交の基本に対する問題はここでやる以外にないのですよ。遅まきながらこの外務委員会で政府の外交方針を腰を落ちつけて与野党ともにじっくり聞くというチャンスを委員長みずから考えていただきたいと思います。外務大臣、いかがですか。もしそういうお考えを持ちましたら、総理大臣、外務大臣がわれわれの要望に従って、この委員会を通じてじっくり国民に政府の外交方針をつまびらかにする。そして国民の共感を得ながら国民とともに国の外交方針を動かしていく。そういう基本的な姿勢を持っていただくように私は強く要望いたしておきます。
 そこで、私はたくさん質問を持っておりますけれども、わずかの時間でありまするから、国の基本方針について聞きたいのです。聞きたいが、さしあたってきているのは、この五月二日に総理がアメリカへ行く、あるいは六月二十八日にはサミットの東京会議が行われる。これは国民の側からは知らなくてはいけません。
 それでまず、東京サミットの問題に対してどこまで一体話が進んでいるのか、第一予備会談が三月二十二日に東京で行われたはずだ。第二の会談が五月、ワシントンで行われる。第三回の会談がパリで行われるが、その予備会談はどこまで話が煮詰まっているのか、外務大臣、お聞かせを願いたいと思います。
○園田国務大臣 サミットの準備会議は第一回が終わったところでありますが、第一回の会議は順調にいっております。その時日の経過については、事務当局からお答えをいたします。
○羽澄政府委員 お答えいたします。
 この前の準備委員会で決まりました第一の点は、先ほど先生がおっしゃいました期日の点でございまして、六月二十八日と二十九日ということに決まり、また準備委員会を、第一回は済みましたので第二回はワシントンにおいて、その後ちょっと変更がございまして十八日、十九日となっておりますけれども、第二回をやる。第三回はワシントンで決めるということになっておりますが、大体パリが予定されております。
 それから議題の点でございますけれども、議題の点につきましては種々検討が行われましたけれども、これとこれに限るという点での確定はございませんでした。ただ、ボンのときに取り上げられました五つの議題につきまして、大体これでよかろう、しかしこれにあと足すものが出てくる可能性があるので、それらについては第二回、第三回の準備会議を重ねるに従って確定していこう、そういうことが決まった次第でございます。
○小林(進)委員 君のしゃべるのは早口でさっぱりわからない。いま少し落ちついてしゃべれ。わからないよ、君のしゃべっているのは。
 それで、今度のサミットではボン会議の宣言に盛り込まれた五つの分野についてその後の進展ぶりを点検する。この作業が一体どうなっているのか。これに対して日本の態度はどうなっているのか。
 それから直ちに注意を払う問題として経済問題。この経済問題に対してどういう態度で日本が臨むのか。
 三番目は、エネルギーの問題。特にイランの石油事情だとかあるいはエネルギー供給確保のための新エネルギーの共同開発等の政策はどう持っていくのか。
 通商貿易では東京ラウンドでまとまった関税率引き下げと非関税障壁を大幅に緩和するための国際的規約の早期実現の問題がある。これがどうなっているのか。
 それから八〇年代の世界貿易が保護貿易的になる懸念がある。そういう問題に対して、いわゆる東京ラウンド妥結実施以後の世界貿易の仕組みについてサミットでは一体どういう扱いをするのか。こういう問題についていま少し落ちついてわかりやすく話をしてくれ。
○羽澄政府委員 どうも失礼いたしました。
 第一のボンのサミットで取り上げられました五つの点でございますけれども、これについてはきわめて予備的な意見の交換は行われましたけれども、第二回、第三回にむしろこれからの討議を譲るということでございました。
 第二のエネルギーの点につきましては、各国からいろいろな議論が出まして、特にわが国の場合非常な関心を持っている点もございまして、いわゆる天谷グループというものがこの際つくられたわけでございます。エネルギー庁の天谷長官が中心になりまして、これからのエネルギー問題に関してペーパーを書く、そのために会議を開くというような段取りになっております。なお、このエネルギーにつきましては天谷ペーパーのほかにも各国から必要に応じペーパーを出すことは妨げないということになっておりますが、天谷ペーパーが中心になってこれからいろいろペーパー化されて議論されるであろう、こういうふうに考えております。
 それから、MTN、東京ラウンドの点でございますが、これは四月十二日に実質的に妥結を見まして、ジュネーブにおきまして、それまでに合意されました文書の上にカバーリングノートをつけて、各国の代表がカバーリングノートに署名したわけでございます。それで、まだMTNの問題が残っておる点もございますし、それから条文などについて詰める点もございますけれども、このMTNができた後、どうやっていくか、たとえばOECDなんかで行われております今後の世界貿易をどうやって運営するか、そういった議論にこのMTNの成果をどうやって織り込んでいくかということに話が向けられたわけでございますけれども、その点に関しても結論めいたものはまだ出ませんで、第二回、第三回に実質的な討議は譲るということでございます。
 八〇年の経済的な運営をどうするか、いわゆる中長期の見通しという問題でございますが、この問題に関しましてもきわめて予備的な議論がなされましたけれども、今後の検討にまつ。しかし、この中長期の問題といいますのは、ボンで取り上げられました五つの問題にそれぞれ絡んでまいりますので、この五つの問題と絡み合わせながら中長期の問題を検討していったらよいのではないか。これは結論ではございませんけれども、そのときの大勢はそういうことで、今後議論を続けるということになった次第でございます。
○小林(進)委員 そうすると、第一回の会議では、ボン会議の後を受けて問題の所在を摘出して話し合ったということだけであって、決定も結論もまだ出ていないということだ。第二回、第三回にだんだん仕上げをしていくということになるのだろうけれども、将来の見通し、一体それは結論に達するのかね。東京でもやって大平総理が議長になるのだろう、議長席に着いてアーウー、アーウーと言っているうちに、どうも宣言もできない、まとまりもつかないで終わったといっては、これはやはり国辱的な問題になる、国際問題だから。親分がアーウー、アーウーなら諸君らの方はなおさらその点をきちっと事前に整理していかなければならない。第二回、第三回に仕上げの見込みはありますか、どうですか。
○羽澄政府委員 お答えいたします。
 現在の見通しでございますけれども、第三回までにはペーパーを完成して、もちろんこれは事務レベルのペーパーでございますので、サミットに集まった首脳に一度見せて、サミットの段階で最終的な修正や加筆等が加えられまして、完成されるわけでございますけれども、その前の準備段階といいますか、事務レベルのペーパーは第三回の準備会議において完成したい、また完成できるであろうということで、いま進められております。
○小林(進)委員 これは議論の余地もないから、君たちの努力に期待する以外にはないけれども、外務大臣、どうも戦後三十年、外務省の官僚もだんだん血が濃くなってしまって、同族だとか系統だとか、親子とかおじ、おいとか、そういうのばかりが外務省に集まってくるものだから、だんだん新鮮な血がなくなってしまった。だから、このままではわが日本の外交を任せる外務官僚としては将来互いに心配がある。余り同根、同血の者が家族的に集まらないように、あなた、人事の問題も少し刷新をしてきっぱりやるようにしてください。外交というのは百年の大計だから、何も一家族で独占するものじゃないから。最近の動きを見るとどうも迫力がないし、外へ回ってみても、在外公館などというのは往年の昔に比較すると実に貧弱過ぎていかぬ。これはおいおい一般質問でやります。
 そこで、これは園田外務大臣でなければできぬから私はあなたに、あなたを信頼するがゆえにこういう注文をつけるのですから、拳々服膺してきちっとやってください。
 そこで、次にあなたにお伺いしますけれども、サミットの前に内閣でやっておかなければならぬことがあるわけです。その一つが私は日米の首脳会談だと思っている。またその準備行動も含めて、四月の五日から四月の十二日まであなたはアメリカへおいでになった、こう国民は理解しているわけですが、そのあなたの訪米をされた目的、並びに交渉の内容、その成果についてちょっと御報告をいただきたいと思います。
○園田国務大臣 小林さんからの数々の御注意は拳々服膺いたします。外務官僚、なかなか上品なようでありますが、だんだん元気を出してきてやっているところであります。いま答弁しました羽澄君も、なかなか優秀な外交官であります。私は小林さんと長い交際ですから、心やさしきことを十分知っておりますが、きょうはどうも威勢が強過ぎて、羽澄君あわててああいうことになったわけでありますから、この点は御了承いただいて、私には強く言われても結構ですから、若い人に質問するときにはにこっと笑ってやさしく質問していただければありがたい。まず基本を申し述べておきます。
 先般の私の訪米は御指摘のとおりでありまして、日米首脳者会談の下準備が第一の目的、第二の目的は、現在日米間の懸案になっておりまする経済摩擦の諸問題、これの解決の糸口ができないものか、アメリカの真意はどういうものなのか、こういうことがわかれば結構だ、この二つの目的が私の訪米の目的でございました。
○小林(進)委員 どうですか、その成果はおありになりましたか。
○園田国務大臣 総理訪米の下準備の方は、微力ではありますが、大体できたと自分で考えております。
 現在問題になっております諸問題は、私がこれを解決したり、あるいは日本側の考え方を示したり、案を言うことは私の職務ではなくて、向こうの本当の言い分がわからぬものでありますから、向こうの真意は何なのか、そしてこれに対して解決の糸口は何か、こういうことを探るために行ったわけでありますが、なかなか困難ではありましたが、大体向こうの真意、実情等は理解をして帰ってきたつもりでございます。
○小林(進)委員 外務大臣は本当の政党人として、そういう敵方に探りを入れるとか情報をとることにおいては人一倍手腕力量をお持ちになっておりまするから、その点は確かにお言葉のとおり御成功なされたものと信頼をいたしますが、それでいよいよ五月の二日、ワシントンに行かれることになった。これは、実は新聞紙上で知ったことでありますから間違っているかもしれませんが、カーター大統領と大平総理との会談をされるテーマは、八〇年代に世界的視野のもとで実り豊かな日米関係をどう築き上げるかというのが議題の中心であると承っております。その具体的な議題は、一つにはエネルギー対策、第二番目は中長期の経済展望、第三番目はアジア、中近東の情勢について、大まかに見てこういう三つの問題を議題にしてお互いに話し合われる、こういうことだそうでございますが、この点、間違いございませんか。
○園田国務大臣 大体そのとおりだと思いますが、まず第一は、世界経済の現状打開のために日米両国が何をなすべきか、おのおの日米両国のなすべき責任、そしてまた日米の責任を果たすことによって、日米協力して世界経済のために何を貢献するか、一口にして言えば、いまおっしゃいました中期長期の展望というのが一番の議題になると存じます。
 それから二番目は、やはり首脳者会談でありますから、両国間で関心のある国際情勢、特にわが方から言えばアジアを中心にした問題、米国から言えば中東地域等の問題が出ると存じます。中東その他については、具体的には日本と米国がやることは当然相違があるはずだと考えております。
 続いてエネルギーの問題は、御承知のとおりに中東地域の状態、それからアメリカのスリーマイル島における原発の事故、こういうもので全世界的に核エネルギー開発の停滞を来しておりまして、一九八五年ごろにはエネルギーの一つの危機の徴候が出てくるのじゃないかと言われておりますが、現状からすればテンポが早まるのではないか、こういうことが考えられまするので、エネルギーの問題、それからまた日本は私の就任以来やっておりますことは、いろいろな会談に先だってASEANの国々の要望を聞いて、これを主張することにいたしておりますので、ASEANの国国にはそれぞれ意向を承りまして、そのASEANの主張というものもやらなければならぬ、こういうことだと考えております。
○小林(進)委員 だから私は、外務大臣の言われたその問題についてさらに具体的にお聞きしたいのでございますが、第一のアジア、中近東情勢の問題でありまするけれども、この中には日米等の会談の議題としては、対ソ、国防問題、対ベトナム問題、対中国関係、対朝鮮半島の問題等について私は当然話を出さなければならぬと思うし、特にこの際、北方領土の問題等も、それはアメリカ側の見解はしばしば私どもは聞いておりますし、知っておりますが、特にこういう点もこの際やはりきちっと首脳会談の中で念を押してきてもらわなければならぬと考えておるのでありまするが、以上の諸問題について大平総理大臣はどういう意見を持っておいでになるのか、アウトラインをお聞かせを願いたいと思います。
○園田国務大臣 私が総理の心中を御報告することはニュアンス等において相違があるかもわかりませんけれども、いまおっしゃいましたような問題で、短時間ではありますけれども意見の交換をすることは当然だと考えております。
 ただ、北方四島の問題では、先般私がバンス長官と会いましたときにも話題になりましたけれども、米国に介入してもらう必要はない、こう言っておきましたが、これはあくまで日ソ間の問題でありまして、これに米国が介入することはかえって事を複雑にし、困難にするおそれがあると考えておりますので、いまのところ北方四島問題が首脳者会談で出ることはないのではなかろうかと推察をいたしております。
○小林(進)委員 これも内閣の問題ですから見解の相違ですけれども、武力もなければ威力、圧力を加えることのできない日本はこの北方問題をどう解決するか、いかにあなたの個人的な外交手腕だって、あの頑迷なソ連の壁を破るわけにいかぬ。ならば、やはり終戦のときに連合国側としてサンフランシスコの平和条約にも参加した世界の各国にわれわれは呼びかけて、世界的な世論の中で、あるいは国内的な国民の総意の中で闘うといいますか、交渉を組む以外にはない。この際私は世界にもっと堂々と呼びかけるべきであって、アメリカに話せばうまくなる、インドに話せばまずくなる、英国に話せばまずくなる、そんなちびちびした根性では北方問題の解決にならないと思います。その意味においては私は外務大臣と全く考えは別だ。あらゆる手を用いて世界の世論に訴える、世界百五十有余の国々の一つ一つに承認を得るくらいの努力をしなければいかぬと私は思っています。この点は反対ですけれども、話をするしないは別といたしまして、総理大臣はひとつ勇気を持って臨んでもらいたいと思います。
 朝鮮問題についても、カーター大統領は近く朝鮮を訪問される。首脳会議の一体前なのか後なのか私はわかりませんけれども、こういう問題についても、本当にいま日本が、私は後でも言いましょう、朝鮮には南の朝鮮、大韓民国には人権問題が依然として繰り返されている。そしてわが日本の最大の屈辱である金大中氏の事件もいまだ未解決のままであります。こういう問題につきましてもカーター大統領は、あなたも御存知でしょう。私はこれは後で言うつもりでしたけれども、事のついでですから申し上げますが、オルランド・レテリエ事件というのがございました。外務省の官僚よく聞いてくれよ。これは一九七六年にアメリカに起こった事件です。元駐米チリ大使、これはアジェンデ政府の閣僚だ。この閣僚であったオルランド・レテリエ氏が、ワシントンでチリの秘密警察、韓国で言えばKCIAだ、その秘密警察の手で暗殺された事件、これに対してカーター大統領はどういう姿勢をとったか。彼はあらゆる困難を克服してこの問題の犯人を探索し、アメリカの名誉を回復しなくてはいかぬということで、決断と勇気と粘りを持って問題の処理に当たり、ついにレテリエ氏を暗殺した犯人、チリの秘密警察を捕らえて厳重なる処分をされている。カーターさんは人権と国の名誉、独立の問題に対してはこれくらいの態度を続けている。これがたまたま韓国へ行かれるのです。朴大統領のいわゆる基本人権侵害のために、韓国国民のみならず、わが日本も泣かされているんだから、こういう問題も友邦日本のためにきちっと処置をするように、大平総理大臣から直接カーター大統領に協力を願うというくらいの話をしてもらいたいと思いますが、外務大臣いかがですか。あなたはどうも金大中ということになると元気がなくなってくるけれども、これは日本の独立と名誉に関する重大問題ですから、一番勇気を持ってやっていただかなければならぬと思いますから、明確な回答をひとつお願いしたいと思います。
○園田国務大臣 金大中問題が大事なことであることは私も同意見であります。ただ、日本と韓国のこの問題に関する態度は御承知のとおりでありまして、今度の首脳者会談でこの問題が出るかどうかはちょっと疑問だと考えております。
○小林(進)委員 この問題は長く尾を引く問題であります。私は外務委員会の委員をやっている限り延々として何回でもやりますから、きょうのところはこの程度にしておきます。
 次に、エネルギー問題に関係いたしまして、この前元アメリカエネルギー省長官のジョン・C・ソーヒル氏が日米欧の会議に出席されたのでありますが、そのときに相当貴重な意見を日本に残していかれましたが、このエネルギー対策について外務大臣は、これはお話し合いになりましたか。
○園田国務大臣 お会いできませんでした。
○小林(進)委員 彼は、カーター氏に対しても将来のアメリカのエネルギー対策、日米のエネルギー関係の問題等に彼自身がみずから助言をした、こういうことを言われておるのでありますが、その助言の内容について外務省、これは局長でいいが、だれか知っている方があったらひとつ答弁をいただきたいと思います。
○園田国務大臣 いまわかってないそうでございます。
○小林(進)委員 どうも外務官僚はふまじめでいかぬ、それでは質問にもならぬじゃないか。
 それからいまの問題でございますが、チリのオルランド・レテリエ事件、これは私は初めて言うんじゃないのです。実はこの前、五十三年の十月六日の予算委員会で、この問題の質問をした。そしてこの事件の真相とその後の経過を詳しく調べて資料として提出するように外務省に要求した。ところが、六カ月たっても今日まだその回答は出ていないのであります。これが真相です。外務省の官僚ほど悪い者はいないのです。
 改めてこれは外務大臣にお願いいたしますが、この資料は外務省調査の上に早急に今度はこの委員会に提出するようにひとつ御指示を願いたいと思います。
○園田国務大臣 調査をしてお指図どおりいたします。
○小林(進)委員 それでは、次に話を進めます。
 エネルギー機関の問題も質問がございますが、これは国際エネルギー機関、三月の一日、二日にパリで行われた。石油の消費の五%を節約する、あるいは石炭の利用の拡大を図る、こういうことが決められて、今度は閣僚の理事会が五月二十一日、二十二日カナダのトロントで行われることになっておりますが、このカナダの閣僚理事会には日本側は一体どなたが出席をされるのか、そのときに日本側の話の提案はどういうことになるのか、お聞かせを願いたいと思います。
○園田国務大臣 燃料については、ただいまから箱根でまず会議があり、続いて、いまおっしゃった会議が、カナダであるべきはずのものがパリに変更になったわけでございます。これにはわが方からも私や通産大臣が出席をして会議に参加したいとただいま検討しておるところでございます。
○小林(進)委員 これは外務大臣、通産大臣お二人がおいでになるわけですね。私はそれは結構だと思います。あるいは二人より三人の方がいい。こういうときには、国際問題でもありまするし、やはりきちっとした政策を持って出席をしていただきたいと私は思うのでございます。先ほどのソーヒル氏なども核に対する代替を大いに考えるべきである、石油、石炭、これを大いにひとつ力を入れるべきだということが一つ。それから、八〇年前半に必ず石油の危機があると、これはいまの外務大臣がおっしゃったと同じ。八五年を待たずして危機がある、また、その危機の一つには、イランのような政治動揺を来すことによって、いわゆる生産が減ったとか、あるいは価格が引き上げられるとかというような問題も出てくるだろうし、平穏な場合に、このまま進んでいっても、大体石油の価格は一年間に平均して五%ずつ毎年上がっていくだろう、こういう見通しを持っておられるのでございまして、このことに関して彼は、日米の間で新しい石油開発について協力できる方法を探求したらどうか、何か共同の機関をつくって、そこでひとつ新エネルギーを開発する、そういう共同動作、共同行為に入ったらどうかということをカーターさんに自分は助言をした、こういうことを言われておるのでありますが、大平さんが行かれた場合、このエネルギー問題に対して、こういうことも含めてひとつ具体的な話し合いをしてもらいたいと私は思う。実はそれをここで聞きたかった。
 なお、あわせて、先ほども外務大臣言われましたけれども、何ですか、スリーマイルのあの恐ろしい原発の被害、この安全の問題も、これはよほど真剣に考えてやっていただかなければいかぬ。どうもこの安全の問題にまだ日本政府は、大いに注意する、注意するなどと言いながら、片方では、通産大臣等を中心にして核燃料、いわゆる原発が何としてもやはりエネルギーの主力にならんければならぬなどという恐ろしい発言をしていられる。国民はどっちを信用していいかわからぬ。安全に力を置くのか、やはり安全を度外視しても核燃料の生産に力を入れようとするのか。ここら辺も私どもはアメリカ大統領との会談の中で日本国民が安心するようなきちっとした安全装置の会談をしてきてもらいたいと思うのでありますが、いかがでございましょう。
○園田国務大臣 いま御発言の数々はきわめて大事なことであって、今度の首脳者会議の中の話題になることは当然だと考えております。
 おっしゃるとおり、まず日米が核エネルギーに対しても新しい核融合のエネルギーを何とか考え出す、これを技術的に研究するということや、あるいは石炭の液化であるとか、いろいろ問題があると思いますが、そういう問題、それからいまの現在行われておる核エネルギーの安全性、こういう問題は当然議論になるべきものであって、いまやエネルギーの問題が技術から政治の問題へと移りつつあるということを考えておりますので、これは御発言の趣旨も踏まえて首脳者会議では必ず話し合いができるように考えております。
○小林(進)委員 先ほどから外務大臣は、首脳会談の予備交渉に行かれて、世界経済の中で日米の責任をどう分担すべきか等の話をされたと言うが、それはそれで結構だが、むしろ首脳会議の中で身近に迫った最も重大問題は、いま日米両国の間に経済、貿易、通商、軍事、国防、それらを含めてみんな気持ちの若干の違和感が出ていると思う。若干と言ってはむしろ悪いかもしれません。相当大きく開きまして、時には、経済問題なんというようなものは日米経済戦争などという表現をしている問題もある。大平さんが行かれたら、この日米の経済摩擦の問題が私は大きな議題の中心になるのじゃないかと思う。よっぽど腹を決めて行っていただかなければならないが、この問題についてはまだ日本側にいささか楽観的な甘い考えがあるのではないか、話せばわかるなどというそういう考え方があるのではないかと私は思いますが、いかがですか。
○園田国務大臣 日米関係は政治的には非常に緊密にいっていると思いますが、いまおっしゃいました両国間に横たわる経済問題の対立というのは日本で見ているより以上に深刻でありまして、議会、国民等の間の感情的な問題にまで発展をいたしております。これは御指摘のとおりであります。そこで今度の日米首脳者会議では、この日米両国間の対立しておる経済摩擦の問題は別個の問題として他の問題を取り上げる、できれば総理訪米前あるいは会談前にこの問題は解決したいという方向で検討しているところでございます。
○小林(進)委員 これは非常に根が深い。根が深いが、私が見ておりますと両国にも無理があるけれども、いわゆる日本の側にも大変間違いがあると私は思う。これはやはり官僚政治だ。だから日米関係は数年の動向を見ていると、アメリカからそのときそのときの問題に押されてずるずると後退している。まず古きをたずねて、古きといったってこれは十年以内ですけれども、あの繊維問題で、佐藤内閣のときだ、がたがたとやられてだんだん後退してきた。今度は、それが過ぎたらどこヘアメリカが火をつけてきたかというと農産物の問題。やれ小麦を買え、大麦を買え、ミカンを買え、肉を買え。今度は農産物の交渉でがたがたとしりぬぐいしている。最近は何だかというと、今度は電電公社の調達問題。電電公社の何とかという総裁もその責任をとってやめるとかやめないとか言っているけれども、こういうふうに押され押されてがたついている。一体アメリカの真意がどこにあるかということを見きわめる力がない。特にアメリカの議会筋の動向に対する見通しがさっぱりない。みずからこれに対処していこうという信念がない。これが日本のアメリカとの経済外交です。だれが悪いのか、外務官僚が悪いのか、通産官僚が悪いのかわからぬけれども、内閣自体が悪いのか知らぬが、はたから見ている国民は歯がゆくてしょうがない。こういうことを日本が繰り返して、相手から火をつけられてはがたがたと毎日後退しているから、またアメリカはだんだん増長と言っては何でありますけれども、力を加えてきている。日本というのは頭をはたけばネコの袋のように頭を下げるのだからこれではたけ、あれではたけ。このままじゃこの先は次から次へとはたかれていかなければならない。こういう問題に対してきちっとした長期展望ということもありますけれども、立って行って交渉される腹構えがあるのか、具体策があるのかどうか、いかがでございますか。
○園田国務大臣 日米の経済問題はその背景に日本の抱える黒字とアメリカの抱える赤字があるわけでありますが、アメリカの国民の間には貿易経済の勝負において日本は汚ない、フェアプレイじゃないという感情を与えているのが一つ。それから、おっしゃるとおり交渉中に、いままで向こうと折衝してずるずる後へ押されていく。したがって、何か日本は強く出れば譲るかのごとき感じを与えてずるい国民だというような感じを与えたおそれがあるということは残念ながら御指摘のとおりであります。
 そこで、いまの経済問題の主体は貿易障害でありますが、関税あるいはその他政府調達の開放という問題があるわけでありますが、西ドイツのシュミット総理は私に次のように言いました。日本とドイツは資源がなくてよそから資源を買ってきて、これを加工して貿易で立っている国だ、貿易に依存して立っている国のことは貿易に依存しない国にはなかなか理解がしにくい、しかしそれにしても自由貿易ということがわれわれのためには得であって、目の前の利害だけにとらわれずに長期の立場から貿易障害は、日本の伝統、習慣その他つらいところがあろうが、思い切って取り払った方がよかろう、こういう御意見でありますが、私はやはり思い切ってやるものはやり、譲るべからざるものは譲るべからず、こういうことで今後はやるべきである、そういうことでやっておる所存でございます。
○小林(進)委員 西独のシュミットさんの考え方は私もほのかに聞きまして、信念や主張に基づいて動くところは日本よりはどうも兄貴分だという感じを強めたのでありますが、いま大臣の言われたように、哲学的思想的なきちっとしたものを持って、堂々と、いまおっしゃるように闘うところは闘い、譲るところは譲る、こういうはたから見ても理解のつくような経済外交をやっていただきたいと思います。
 それに関連いたしまして貿易の黒字問題でありますが、これについても、いわゆる経常収支ではなくて基礎収支に重点を置く、こういう腹構えで交渉をすると言っておられますが、この問題についても一体アメリカの理解を得ることができるか。いま一回申し上げますよ。貿易の黒字問題について、今後経常収支ではなく基礎収支に重点を置きバランスを図ることでアメリカ並びに各国の理解を得たい、こういうことを政府が言っているんだが、一体これは相手国の理解を得ることができるかどうか。経済を知っている外務官僚はいないのですけれども、これはいかがでございましょう。私はこういうところに甘さがあると思うのでございますが、いかがですか。
○園田国務大臣 この問題も、正直に言いますと、日本は都合のいいときには貿易収支を善い、都合の悪いときには基礎収支に変わっていく、そういうところが汚いということを言われているわけでありますが、しかしいずれにいたしましても黒字の問題はただいま米国と日本の間では逐次縮小されていく傾向にありますけれども、これが定着していくかどうかということは今後の問題であります。残念ながらECの方は逆に少し日本の黒字がふえておるので、これまたなかなかむずかしい問題でありますが、しかしこの赤字、黒字は経常収支で言うか基礎収支で言うかあるいは貿易収支で言うか別にして、やはり日本ひとりでできることではない、これは赤字国と黒字国がともに責任を果たしてやるということだけは強く主張しなければならぬと私は考えております。黒字縮小のために日本が改善すべきことは改善しなければならぬが、また米国も、赤字をなくするためには米国の体質改善が必要であるということを私は言うべきであると考えております。
○小林(進)委員 大体この問題は抽象論に終始しましていささか隔靴掻痒の感があるのでありますけれども、これはやむを得ないと思います。
 いま一つはサミット会議を目前にして日本は公定歩合を〇・七五引き上げましたが、この問題は一体赤字国に対してどういう影響があるか、イエスと言うかノーと言うか、これの見通しが一つ。
 それからいま一つは、昨年のボン会議で福田前総理が成長七%ということを対外に宣伝これ努めておいでになった。これは何も法律問題でもなければ、公約問題でもない。これに拘束されることはないとは言うが、一体このたびの東京会談でこれがどのように受け取られるか。先般参議院で行われた予算委員会の質問では、五十三年度の経済成長の見通しは、七%なんてものでない、六%もいかない、五・七かないし五・八そこそこです、こういう政府側の答弁があるわけです。くどいようでありますけれども、これは一体東京会談の中でどういう形になってあらわれてくるか、ひとつ見通しをお伺いしたいと思います。
○園田国務大臣 経済成長については、今後も西独あるいは日本の経済成長を各国は希望するでありましょう。しかし、七%成長が達成できなかったことについて、今度のサミットでこれが非難されるとか問題になることはないと存じます。と申しますことは、ボンでああいう会議をやってそれぞれ責任を分担したわけでありますが、その後世界経済というものは、ボンで論議されたように必ずしも拡大していってない、むしろインフレあるいは雇用問題という新たな問題が出てきたわけでありますから、その中にあって六%の経済成長、日本はよくやったということで、これは米国では当初いろいろ言っておりましたが、ヨーロッパの方では当初からよくやったという意見でありまして、この問題については理解ができたと考えております。
○小林(進)委員 これは見通しの問題ですから、外務大臣の御答弁をひとつ素直にちょうだいすることにいたしまして、だんだん時間も迫ってまいりましたので先を急ぎます。
 総理は、今度五月十日には、マニラで行われる国連貿易開発会議に御出席になるという予定だそうでございまして、私はこれはアメリカへ行かれた帰りに寄られるのかと思ったら、一たん日本へ帰ってきて、一日ばかり東京に滞在して奥さんの顔をながめて、次の日またマニラへ飛んでいかれる、こういうようなコースだそうでございます。それはどちらでも結構でございますが、そこで総理は南北問題について演説をされるというのであります。どういう演説をされるのか、国民にとっては非常に興味がある、関心を寄せる問題です。外務大臣、草案をあなたがお書きになったのでしょうから、内容をちょっとここで御披露いただきたいと思います。
○園田国務大臣 UNCTADの総会はこれはきわめて大事でありまして、特にアジアでこの総会が開かれるということに非常に意味があるわけであります。開発途上国というものが、単に援助を受けるという立場から、世界経済の一つの歯車として役目を果たすというふうに変わってきております。かつまた、開発途上国はタンザニアで行われたアルーシャ宣言によって新しい国際経済の秩序を考えておるわけで、方向は具体的に決まってきております。また、具体的な問題としては、日本とASEANと協力をして原則的にはまとまりました共同基金の問題あるいはその他の問題等がありますので、今度のUNCTAD総会では、特に日本の総理はこれに関心を持って出席した、これが大政治的な目的を達する、次には開発途上国の人々の立場に立って先進国との間の調整を図る、こういうことが日本の責任だと考えております。私もお供をいたしてまいりますが、演説の内容はまだ存じておりません。
○小林(進)委員 外務大臣も総理と一緒にマニラにおいでになる、それは結構です。それならば、そのときにフィリピンのマルコス大統領あるいはオーストラリアのフレーザー首相ともお会いになるということでございますが、その会談の内容は一体どういうことを予定されているのか。
 これから先は私の注文です。
 何と言っても日本とアメリカと中国の間には、お互いの国はアジア太平洋地域において覇権国家にならないという、これは実に神聖、厳粛なる申し合わせがあるわけです。この問題の具体化、これが武装しない日本の生きる道だというのが私の生涯の政治的信念です。この問題についてはわが党の飛鳥田君も、カナダへ行ったときに、あそこでオーストラリアとか太平洋地域の国々の方と会われて、彼は彼なりにひとつ非武装地帯をこのアジア地域につくろうじゃないか、太平洋地域につくろうじゃないかという申し出をしてきた、ソ連へ行ったときにも同一の問題を提唱いたしまして、それぞれの共感を得てきているのであります。共感を得ているが、しかし、権力を持っているわけじゃない、執行権を持っておるわけじゃありません、野党外交でありますから。それは単なる宣言にすぎません。今度はひとつ総理が、マニラまで行かれたら、オーストラリアやフィリピンの大統領も含めて、この日、米、中の間にできたアジア太平洋地域でお互いに覇権国家にならないという旗印のもとに、アジア太平洋の地域を平和にする、非武装地域にする、戦争のない地域にする等の具体的な提案をしてきてもらいたいと私は思うのでございますが、外務大臣、いかがでしょう。あなたは去年の六月あたりにも国連へ行かれて非核武装の大演説をやられた。私はあれが一番胸に響いているのであります。本当に平和を愛するならば、そういう平和の話し合いがいつでもトップ会談の中について回らなくちゃならないと思うのです。どうでございましょう、オーストラリアやフィリピンの大統領を通じてアジア太平洋地域の非核武装地帯のお話をされてくるかどうか、私はひとつお尋ねをしておきたいと思う。
○園田国務大臣 ただいまの御意見は非常にりっぱな意見で、私も同感するものであります。今度行かれてフィリピン大統領あるいは豪州の総理とお会いになった場合に、アジア太平洋地域の平和、安全ということで話が出ると存じます。ただ、非武装地帯まで具体的にいくかどうか、現状が熟しておるかどうか、まだその付近はここでお約束するわけにはまいりません。
○小林(進)委員 園田外務大臣、これはもうあらゆる機会を通じて、安全保障でもよろしゅうございます、非武装中立でもよろしゅうございます、この点、ぜひひとつ情熱、熱意を傾けてやっていただきたいということを私はお願いをいたします。
 このマニラ会談についていま一つお尋ねしますけれども、ここに集まる発展途上国七十七カ国のグループは、東京ラウンドの合意内容について非常に不満を持っておるということを私は聞いているわけであります。この国連貿易開発会議で発展途上国を中心にした多角的貿易交渉を開始する、そういう提案をやってくる、東京ラウンドとは全く反対の提案をやってくる、私はこういう一つの見通しを持っておるわけでございます。たとえば繊維などの関税は大幅に引き上げろとか、特恵関税制度の利益については配慮せよとかあるいは選択的セーフガードの創設などというものはやめろとか、こういう問題が私は出てくると思います。それに対しては、いまのところ日米あるいはECなどが、この発展途上国ラウンドには難色を示しているというのが現状ではないかと私は思うのでありますけれども、これはやはり日本は調整役を務めなければならぬと思いますが、こういう東京ラウンドと発展途上国ラウンドの問題の調整についてどうお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思うのであります。
○園田国務大臣 東京ラウンド、MTN等について開発途上国にそれぞれ意見があることはよく承知しておりますが、これはなかなかむずかしい問題であって、いまどのようにやるか考慮中でございます。
○小林(進)委員 外務大臣、いまちょっとお話を聞かなかったのであります。年をとりますと耳が遠くなるものですから、ちょっと答弁を。
○園田国務大臣 ただいま、そういうことについてどうやればいいか検討をしているところでございます。
○小林(進)委員 それが心配なんでございます。五月の十日でございますので、まだ時間がありますけれども、これはやはりきちっと、さっきもおっしゃるようにアジアのこういう国連の発展途上国会議に一国の総理大臣が出席されるのは今度が初めてだそうですから、私は相手国も非常に期待していると思いますし、日本に対して、総理が出席をするだけでも相当好意的な態度で迎えてくれると思う。そこへ行ってみそをつけたのじゃ何にもなりませんから、効果を上げるために十分なる準備をしていっていただきたいと思います。
 もう時間も来ましたから、質問は山ほどあるのでありますが、あと二問で終わります。私は、これは質問しながら、私は私で時間を見ながら頭の中で整理をしておるのでありますが、その中の第一問は、防衛に関する日米の動きです。これも私はやはり首脳会談の中で当然出るし、出すべきだと思うのでありますが、これについて日経ですが、三月二十一日付で中期業務見積もり作成の作業が政府の中に行われており、その内容の一部として五十九年度を目途として五十九年度防衛費のGNPに占める比率を一七%、これは今年度は〇・九%ですけれども、これを一七%に引き上げることを基本目標として装備等の計画の作成をしている。この点について三月二十三日、参議院の予算委員会でわが党の和田静夫君が質問した。それでその質問に対して、それはおっしゃるとおり作業中でございますという答弁をしておる。続いて四月二十三日、おととい、自衛隊の幹部会同で、大平総理はこの作業を認めていらっしゃる。これは私は、五月二日にアメリカへ行かれる前にこういう作業を認めたりしていられるということは、やはり総理のアメリカに対するおみやげじゃないかと思っている。日米関係のいわゆる国防調整の意味を含めて、私はこういう構想を打ち出されたのだと思っている。
 そこで、どうも最近の日米貿易摩擦が激化をしてきておりまする中で、アメリカの政府はあるいはアメリカの議会は、ともに従来の軍備強化を要請をしたりただ乗りを非難するというようなそういう声は若干影をひそめたようでありますし、あなたが訪米されたときには、バンス国務長官はむしろ日本の防衛努力を何か評価されたようなお話があったように聞いているのでありますが、これは結構だなと私は思っているのでありますけれども、ところがやはり四月二十三日外国人特派員協会でチャーチ米上院――チャーチ委員会、私ども熟知の間柄でありますが、このチャーチ上院外交委員長が日本の軍事費の増加を求めて大演説をやっておられる。また、キッシンジャー元国務長官が、これも四月十九日の米大使館の内外記者団の会見席上でソ連の最近の軍事力の増強を警戒しなくちゃいかぬ、そのためには日本の防衛力に大いに期待し、日米ともにその均衡ある防衛体制をつくらなければならない、そして情勢の変化に応じた新しい軍備の増強を図らなければならぬというようなことを述べていられるのでありますが、これを受けて、こういう一七%国防力の増強を総理大臣はおみやげに持っていかれるのじゃないかと思いますが、この点いかがでございましょう。
○園田国務大臣 防衛庁の一・七%の防衛増強及び総理がこれを認めたという事実は私は存じません。知っておりません。しかし、いずれにいたしましても、今度首脳者会談に際してそのようなことを総理が日本側から提案することは絶対にございません。日米の関係では、いまおっしゃったとおりに安保ただ乗り論というのは影をひそめて、日米安保条約に基づく日本の自衛力はほぼ満足すべきものであるという意見でありまして、ただ、チャーチ委員長であるとか、それからキッシンジャー元国務長官は、御承知のとおりあの人は力と力の均衡という力関係を非常に強く見る方でありますから、もともとのあの人の持論でございます。こういう発言等々を新聞はあたかも何か一連のものがあるように書いておりますが、それは絶対にございません。もちろん、日米首脳者会談でありますから、日米安保を基軸にした一般的な安全その他についての抽象的な話し合いはあると思いますが、そういうことは絶対にないことをこの際明言しておきます。
○小林(進)委員 もう私は、それではサミットを中心にしまするもろもろのことに関する質問は、まだ不満足でありますけれども、時間が参っておりますので、そばの土井先生にやめろやめろという御催促も受けておりますので、やめまして、続きは次の機会に譲りたいと思いますが、ともかくひとつ成功を祈ります。どうかひとつきちっとした日米交渉を明らかにして、是は是、非は非、国民が後ろにいて心から拍手を送り得るようなそういう交渉事、その中にはいま私が羅列いたしましたもろもろの問題が入るわけでありますから、こういうことも含めて、ひとつりっぱに成果を上げてきていただきたいと思います。外務大臣も一緒においでになるのでございますか。――おいでになるならばなおさら結構でございますので、どうかひとつ総理を助けて、まああなたの方が親分かもしれませんけれども、総理は総理でございますから、大いにひとつきちっとした成功、これは本当に超党派的に私は申し上げたい。私は親中国論者であり、親米論者でもございまして、アメリカと日本との成功を心から祈るものでございますから、お願いいたします。
 時間が参りましたから、私は実は次に対北方領土の問題、対対ソ関係の問題、対金大中の問題、朝鮮半島の問題もお聞きしたいのでありますが、まだ質問要旨が全部ありますから、これは次の機会に譲ることにいたしまして、外務委員長にひとつ要望をしておきたいと思います。
 それは、私が五十三年の十月六日予算委員会で、これは園田外務大臣に質問をいたしますとともに、その席上で予算委員長の中野四郎君に金大中拉致事件に関係いたしまして、元外務事務次官の後宮虎郎、法眼晋作、それから金山政英、それと岸信介元総理大臣、それから国策何とかの会長で日韓会議の常任理事をおやりになっている矢次一夫氏を参考人として国会にお呼びすることをひとつ採用していただきたいという提案をしている。ところが、予算委員長は理事会に諮りまして処置しますということで、今日このままになっております。その内容については、また私は次のこの委員会で繰り返し質問いたしますが、それを委員会に参考人として招致をすることに対して、ひとつ手続をお願いをいたしたい、それが一つであります。
 それから次には、アメリカ国務省の極東部長をしておりましたレイナードさん、できればこの方も当外務委員会の参考人として日本においでいただくことを御考慮いただきたい。その問題については、外務委員長、ちょっと奇異にお感じになるかもしれませんが、その必要性を委員長並びに委員各位から了承を得なくちゃなりませんので、私は、レイナードさんの発言をここで読み上げます。
 韓国政府が日本の与党政治家に献金をするとい
 う習慣は李承晩政権時代にまでその起源をさか
 のぼり、政権末期の一九五九、六〇年ごろにそ
 うした献金のパターンが確立されたといえる。
 私は五九年から六〇年代初めまでソウルの米国
 大使館に勤め、そうした献金の実態を米大使館
 の機密報告、そのほかで克明に掌握する立場に
 あった。五九年ごろそうしたインテリジェンス
 ・レポートで毎日のように韓国政府から日本の
 個々の与党政治家にどれだけの額の金が寄付さ
 れたかが報告されていた。やり方としては、李
 承晩大統領の腹心だった当時の駐日韓国代表が
 自ら直接、日本の政治家に会って現金を手渡し
 ていた。その献金についてはしばしば同代表か
 ら韓国の外務省を飛び越して直接李大統領へと
 事後報告されていた。私は当時極東勤務が新し
 く、韓国政府のそういうやり方も知らず、対日
 献金の実態には大変驚かされた。韓国政府の金
 が日本の政治家のだれとだれにいくらという事
 例の報告を連日驚きながら読んだ。なお、いま
 でもまざまざと覚えている。当時、日韓の国交
 正常化はまだだったが、李承晩大統領は日本の
 与党への献金により在日朝鮮人の本国帰還、韓
 国美術品の本国送還、日本から韓国への賠償援
 助供与などについて日本の国会や政府が有利な
 決定をするようになることを狙いとしていた。
 こういう目的と手段に基づく韓国から日本への
 政治献金はその後も絶えることなく続き、金額
 もどんどん増えた。米国政府はそういう金の流
 れを一貫して確実につかんでいた。最近の献金
 では駐日韓国大使館が直接動くことはなく、韓
 国から時折訪日する政府要人が直接日本の政治
 家に金を渡す役目を果たすことが多くなってい
 た。日本の政治家も選挙が多く金が必要だから
 どうしても受け取ることがほとんどで、その献
 金によって日本の国会議員が韓国に有利になる
 ように動くというパターンは李承晩政権崩壊後
 もずっと続いていた。こういうことを彼は発言をしているのでありまして、われわれはこの発言を拳々服膺して、やはり、委員会はえりを正して聞く必要があるのであります。この召喚を委員長においてすべからく実現するようにお諮りをいただきたいと思います。
 いま一人、お願いをいたしたいと思う人がございます。その方は、最も親日的であり、長く大使として駐日をされておりましたライシャワー氏で、ぜひひとつ日本の国会においでいただくように手続を願いたいと思います。
 ライシャワー氏は、金大中事件についてこういう発言をしておられたのであります。
 東京のホテルから一人の政治家が拉致されて五
 年たった。犯人はだれ一人つかまらない。拉致
 された被害者は帰ってこない。だが、政府はす
 べてが決着がついたと言っている。これでよい
 のか。金大中氏が韓国に帰国すれば当然危険は
 あると思ったが、まさか日本でこのようなこと
 が起ころうとは思っていなかった。私はKCI
 Aがやったことだと一貫して思っている。数々
 の証拠と状況から見てもKCIAの犯行だと
 いうのが合理的に納得できる唯一の結論だ。ま
 さかマフィアの犯行だというわけではなかろ
 う。この犯行はある意味で国際秩序に対する挑
 戦だ。米国は韓国に対していろいろのてこを持
 っているから、もっと強い態度に出てもよかっ
 た。だが、日本は自国の主権が侵されたのだか
 ら、何といっても強硬な態度に出るのが当然
 だ。日本と米国は連名で金大中氏の国外出国を
 韓国に要求すべきだった。こういうりっぱな発言をされているのであります。願わくは日本のこの委員会の中で、いかに外国の外交官、大使というものはその姿勢がりっぱであるかということを私は学びたいと思います。ひとつ、国会に招請するようにお取り計らいをお願いします。
  これで私の質問を終わります。
○塩谷委員長 ただいまの小林委員の要望に対しては、理事会に諮りまして善処いたします。
 土井たか子君。
○土井委員 私は、ガット東京ラウンドについて、特に政府調達統一コードの適用範囲等に関係のございます、ただいまもっぱら問題になっております通信機器本体の開放問題などに触れて、きょうは少し御質問をさせていただきたいと思っておりましたが、その部分はまた、外務大臣がアメリカからお帰りになって、そして東京での会議に向けて、少しまた外務委員会を開くという機会も当然設けるべきだと思っておりますので、その節、少し詳しくお伺いすることにしたいと思います。
 それできょう、ほかに二点私はお伺いしたいことがあるわけですが、一つは中ソ条約の廃棄通告に関する問題です。
 四月の三日のこと、中国はソビエトに対しまして、ソビエト社会主義共和国連邦と中華人民共和国との友好同盟及び相互援助条約、これが正式な条約の名称でございますが、これの廃棄通告を行ったわけであります。このことは、考えてまいりますと、第二次大戦後の東西冷戦体制の一つの柱であった中ソ条約というのが、延長されることなく、来年の四月の十日をもって廃棄され、そうして三十年間続いたその歴史が終わるということを意味していることにほかなりません。中国側は以前から、中ソ条約は死文化しているとの立場をとってきたわけでございますけれども、その意味からいたしますと、今回の通告というのは、条約を廃棄するための手続だということになって、現状の追認にすぎないという理解も成り立つわけであります。しかし、戦後三十年間、曲がりなりにも中ソ両国を律してきました基本条約の正式消滅というかっこうでございますから、そういう点からいたしますと、中ソ両国にとって重要な歴史的な出来事だということはまがいのない事実であります。日本を初めとする周辺諸国が今後の国際政治や国際情勢を考える上でのこれは大きな意味を持つものになると思いますが、外務大臣のこれに対する御所見を伺いたいのがまず第一問なんです。
 特にその節、中ソ条約というのがいままで両国の全面衝突を防止する上での安全弁だったというふうな認識を持っている方々もあるわけですね。この条約が失効いたしますと、中ソ対立を阻止する歯どめがそういう意味ではなくなる。だからむしろアジアの安定より不安定ということをもたらすおそれもあるのじゃないか、こういう意見も当然そういう立場に立てば出てくるわけでありますが、こういうことに対しても、含めてひとつ外務大臣の御所見をまず承りたいと思います。
○園田国務大臣 中ソ同盟条約の破棄通告というのは、中国が以前から言っておった流れに従ってやられたものであります。わが国としては、同条約の中にわが国を敵視する条項がありますから、ソビエト、中国両方に、これは困るということを言っておったわけでありまして、そういう意味においては、わが国は中国の破棄通告を歓迎をし、評価をいたします。ただ、この破棄通告に対しては、中国もソ連も、これが刺激的にならないようにいろいろ配慮しておった形跡等もございまするが、これによってソ連と中国が特別関係が激化するとは私は考えておりません。むしろ希望としては、この破棄通告にもかかわらず、両国が逐次友好関係の方向へいくように期待するものでございます。
○土井委員 それは大変外務大臣とされましては儀礼的な御答弁であるわけですが、いまおっしゃいましたとおりに、この問題は日本敵視条項があるというところに、大変日本としてはいままで考えなければならない条約であったわけであります。しかし、戦後の少なくとも日本は、恒久の平和を念願しておりますし、それを保持するための努力をしていくということが日本の国家的義務でございますから、そういう点からすると、はなはだ目ざわりなと申し上げることができると思うのですが、そういう条約でもあったわけなんですね、内容からいたしますと。昨年八月の、外務大臣の政治生命をかけて大変御努力をされました日中友好平和条約、この締結に至る過程の中で、日本を敵視する条約を持つ国とどうして平和条約が締結できるのかというふうな、自民党の中で、特にこれは名指しで言うことは差し控えなければならないのかもしれませんけれども、そういう一部の人たちも含めてそういう議論が国内的にあったことも事実でございます。結局中ソ条約を廃棄するということからいたしますと、日中平和友好条約の前提条件がこれでかなったことになるという意味を持つわけでありますが、今回の通告は、そういうことからすると、日本が本来持ってきた要望が通ったということにもなると思うのです。
 これはそう理解してまいりますと、国連憲章の百七条との関係というのも実は出てまいります。御承知のとおりに、この百七条という条文は、「この憲章のいかなる規定も、第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。」こうなるわけなんです。ですから、百七条のこの条文には今回中ソの廃棄される条約というものがもはや縛られない。したがってそういう意味では、国連憲章の内容が、これによって中ソ関係に対する日本の立場というのが変わってくる、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、いかがでございますか。
○園田国務大臣 お説のとおりだと考えます。
○土井委員 そういたしますと、それをもう少し広げてまいりまして、国連憲章の百七条の条文というのは、本来は、あるべき姿としたら、だんだんこの百七条という条文の意味がなくなっていく方向に世界の趨勢は動きつつある、またそういう方向に動かしていくべく努力するのが平和国家としての義務でもある。そのために日本としては再び戦争を起こさないというあかしを外交の中で国際社会において明らかにしながら、百七条に対してはこの条文の意味がだんだんなくなっていくという方向で国連の中でも努力しなければならない、こういうことが問われているように思われてならないのですが、外務大臣いかがですか。
○賀陽政府委員 ただいまの条項でございますが、これはお説のとおりでございまして、わが国として着実な努力によってこれを修正するという方向であることは言うまでもないところでございますが、この条項は同時に旧ドイツに対する占領状態、ベルリンその他の状態を憲章上若干担保しておるという要素もございまして、この点は日本だけの問題ではないということに一つの特殊性があるわけでございますが、この点も踏まえまして修正の努力を行うべきことは、まさに御指摘のとおりだと存じます。
○土井委員 これは非常に大事なことですから、外務大臣の御所見をひとつ重ねてお聞かせいただきたいと思います。
○園田国務大臣 お説のとおりであると考えます。
○土井委員 中国の廃棄通告について今回一連の通告に対してとられてまいりました行動を見ておりますと、刺激を避けて至って慎重な態度だということが言えるかと私は存じます。その中で特に両国の関係を改善することについて話し合いを持ちたいという建設的な提案をソビエトに対して持っていかれて、そしてこれに対して四月十七日にソビエト側も会談の議題や目的についての中国側の見解を期待する、これについての中国側の合意が得られれば会談の場所やどのレベルで会談を開くかということの協議ができるという覚書を手渡しておられるという経過が現にございます。そういうことからいたしますと、両国の間における外交問題が今後どういう方向で進展するかが非常に注目される問題になってくるわけですが、外務省としては、特に外務大臣はこれに対してどのような見通しをいま現にお持ちになっていらっしゃるわけですか。
○園田国務大臣 中ソ条約破棄通告に対してお互いに話し合いをしたいという提案があり、外相会談まで出てきたことは歓迎すべきことだと思います。日本としてはこの会談が実りあるものになることを期待いたしますが、現実としてはいましばらく見守らなければ、なかなか判明はいたしません。
○土井委員 いわく、これは現実廃棄通告というものがございました案件でございますから、今後それが具体的にどのように外交交渉の中で推移していくかというのは予断を許さない、そして非常に微妙な段階ですから、外務大臣にこのことを具体的にお尋ねしても、恐らくいまと同じような儀礼的な御答弁しかいただけないのではないかと思いますが、これは時を追って、また推移に従っての質問を私は展開したいと思います。
 最後に一つだけ、私は外務大臣に特に御見解をただしたいことがございます。それは、三月二十三日当外務委員会におきまして、委員長の方から法務省に対して去る一月二十三日の外務委員会の理事懇談会の協議に基づいて法務省の出入国記録を要求いたしました。内容はトーマス・チータム、ハリー・カーン両氏の昭和四十三年から四十四年にかけての出入国記録でございます。ところがこれに対しては法務省は資料提出をなさらなかったわけでありますし、今日に至るまで私たちは資料要求にこたえて法務省がお出しになった資料を手にいたしておりません。しかしそれにもかかわらず委員長からの御質問に対しては答弁をされて、議事録としてこの内容が現に四十三年から四十四年にかけてチータム氏、カーン氏の出入国事実がここに記載をされておるわけであります。もちろん委員長は最後の御発言の中で、外務委員会としては国政調査権の問題、法務省見解のこれに対応する態度は、まだ最終決定を見ておりませんから、これについては課題として残しておきたいと思います、こうお断りになっているわけでありますけれども、しかし今日に至るまで外務省とされてなぜわれわれが要求をしているにもかかわらず要求に基づいて資料提出をされないかという理由は、関係する方々のプライバシーの問題がある、したがって国政調査権というのが大切であることは重々承知をいたしておるけれども、プライバシーとの関係があるので慎重に検討を続けているということを言われ続けてきたわけであります。そこで外務大臣にお尋ねをしたいのは、プライバシーの問題と国政調査権というのをはかりにかげながら、法務省としてはいずれが重いかということでずいぶん検討に検討を重ねていらっしゃるようであります。今日もいまだに検討を重ねていらっしゃるに違いありません。なぜかと言えば、資料要求に基づく資料を私たちは手にいたしておりませんから。しかしプライバシーの問題ならば、議事録で具体的に何のだれがしが何月何日に入国して何月何日に出たということが明記されるということになると、これはすでにプライバシーということに対して法務省のおっしゃっている域を外されているのではないですか。したがって、法務省がおっしゃっている理由というのは、すでに議事録になったその瞬間に理由としては意味をなさなくなった理由になっている、こう考えなければならないと思いますが、外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○園田国務大臣 入国管理局は御承知のとおり法務省の所管でありますけれども、その意見があったときに私は同じこの壇上から、委員会で正式に決まったものであれば出すのが当然であろうと発言をいたしておるはずであります。
○土井委員 いま外務大臣が御答弁になりました節の質問は、きょう私がここで質問した中身と結論的には同じことでありますけれども、しかし過程の上で言うと少しニュアンスが違っております。あの時点とこの三月の二十三日の外務委員会で委員長から御質問された段階とでは少し段階が推移しておりまして違っているわけであります。したがいまして、改めて私はこの問題についてお伺いをしているわけでありますから、プライバシーということを理由にそれを侵害するおそれがある場合は、国政調査権と一体いずれが重いかということを考えて、慎重に検討した結果資料要求に対してこたえるべきかこたえるべきでないかということをひとつはかりたいというのが法務省の公式見解だといままで私は理解をしておりますから、その公式見解をそのまま受けて立てばこの外務委員会における議事録に明確に記載をされるような答弁という形式で言うことも、実はプライバシーの侵害という点から言えば許されないのです。この点を外務大臣に御所見はどのようにお考えになりますかということを私は聞いているわけでありますから、それは法務省の問題であるとおっしゃればそれまでかもしれませんけれども、しかしあの入管局長が当委員会に出席をされて、その席で私がお尋ねしたときにも、これは本来は法務省の問題であると振り切られるべき問題であったにもかかわらず、局長自身が外務省から出向されているという立場もありますから、したがって外務大臣はあのように御答弁されたものだとわれわれは認識をいたしております。事はやはり政府と国会との間での問題でございますので、当外務委員会は、法務省だけを問題にして資料要求に対して具体的事情というものをいろいろやりとりしているだけにすぎないことではありません。もっと大きな視野で考えれば対政府の問題であります。したがって、そういうふうな意味も含めてひとつ外務大臣から御見解を承って私は終わりにしたいと思います。
○園田国務大臣 ただいまの段階においても私の解釈並びに心境は変わりございません。
○土井委員 それはどういうことですか。もう一度はっきり、その点はどういうふうなことが変わっていらっしゃらないかということを私は確認さしていただきます。
○園田国務大臣 この前答弁しましたように、委員会で決まり、委員長から命ぜられたら出すべきことは当然である、こういうことでありまして、その答弁からすれば、いまのプライバシーと国政調査権どちらが優先するかということは土井先生なら当然おわかりになるはずだと思います。
○土井委員 わかりました。
 それでは、追い打ちをかけたような物の言い方になりますけれども、閣議の席で外務大臣から、所管は全く別であるかもしれませんけれども、こういう旨のことを提案され、またいろいろ御見解を述べられたということがございますか。
○園田国務大臣 ございません。閣議で言うべきことではなくて、私があのとき約束したのは、私、法務省にはそういうお話をいたします、こういう約束をしたのであります。
○土井委員 そうすると、法務省に対しては外務大臣の方からそういうことに対するお話をなさったということでありますか。
○園田国務大臣 当委員会の模様並びに私の考え方は申し伝えてございます。
○土井委員 終わります。
○塩谷委員長 渡辺朗君。
○渡辺(朗)委員 しばらくの間外務委員会が開かれておりませんでしたので、その間に起こった国際的な出来事、そういう問題についてお聞きしたいと思っております。ただし時間の関係もありますから、今回は外務大臣が訪米されますし、また引き続いてUNCTADの総会にもお出になる、そこら辺を中心に幾つかお尋ねをさしていただきたいと思っております。
 まず、それに入る前に、実は海洋法会議でありますが、第八会期の最終の週を迎えております。最終の段階になりまして、見通しの方はいかがでしょう。この会期でまとまりますでしょうか。そこら辺、外務大臣いかがでございましょう。
○園田国務大臣 いろいろ努力をしておりまするし、いま問題点になっている点等、日本の政府としてはこれを率先をして問題点に対する答えを出し、これがまとまるように極力激励をしておりますが、見通しとしてはなかなか困難ではなかろうかと存じます。
○渡辺(朗)委員 海洋法会議の第八会期最後の週を迎えておりますけれども、おっしゃるように大変むずかしいというようなことを外の方からの情報で聞いております。たとえばアメリカのリチャードソン代表は、今会期中には無理だろう、今年中にも無理だろう、こういうふうなことすら言っている。そういういろいろな困難がある中で恐らく日本代表は努力していらっしゃると思いますけれども、私はやはり日本の国会でございますので、何か中間報告でもあった方がよかったのではあるまいかな、こういうようなことも考えております。ただし、いよいよ困難なところをまとめようとしておられるわけでありますから、どういうふうにいままとめようとしておられるか、あるいはもうどうしても解決できないような問題がそこに横たわっているのか、だから困難なのか、そこら辺の結論的なところだけで結構ですからひとつ教えていただけませんでしょうか。
○井口説明員 お答え申し上げます。
 一番まとめるのが困難な問題が深海海底の開発でございまして、深海海底を開発する場合に、わが国は私企業をベースにして開発したいという考えでございますけれども、国際機関に対する収益の分与が非常に重いという点が現在大きな問題になっております。それから、国際機関に直接開発をさせるためには借り入れをベースにして資金や技術援助をするということでございますけれども、その場合に、債務保証のほかに財政負担という問題が起こっておりまして、この点についても鋭意検討しているわけでございます。この問題が「解決すれば、あと大陸棚あるいは漁業等の問題は大体片づきかけておりまして、必ずしも悲観的な見通しというわけではございませんで、リチャードソン代表がそういう演説をしたという新聞報道もございますけれども、米国は実は今会期実質交渉を今週で終えたいという立場でやりまして、それが思うとおりにいってないという点に関する不満があるわけでございますけれども、なお今週、最後の週でございますし、今後の見通しについては必ずしも悲観的というふうには考えておらない次第でございます。
○渡辺(朗)委員 私、これを聞きました一つの理由は、深海海底資源の開発問題というのは、ほっておくと途上国と先進国の間の対立問題、これをはらんだ形でそのままいってしまうのではあるまいかということが一つあります。これが同時にまたUNCTADにも当然陰に陽に持ち込まれる問題点にもなってきやしないだろうか。そういう点で、日本の政府の立場として、この問題を途上国と先進国の間にあってどのような方式で、この妥協策ないしは納得のいく方向でまとめようとしておられるのか、この態度が聞きたいから実は質問をさせていただいたような次第です。これについてはいかがでございましょうか。
○井口説明員 わが国といたしましては、海洋法を早期に妥結させるという立場から、またまさに南北問題の解決の一環という立場からこの問題に対処いたす立場でございますが、他方において先進国としての立場というものがあるわけでございまして、これを開発途上国の利益というものとどういう形で調和させるかということでございますが、あくまでも開発途上国の利益というものを十分にアコモデートする前向きの姿勢を打ち出したい、こういうことで内部で鋭意折衝しておるわけでございます。
○渡辺(朗)委員 これはそれ以上に触れませんが、外務大臣、UNCTADを前にされまして、いまの海洋法問題を二つをとりましてもなかなか途上国と先進国のそういった対立問題は根が深いようでもありますし、そういうものを日本として相当勇断をふるってのイニシアチブでまとめていくような方向、調和させていく方向というものを打ち出していただかなければならないと思います。
 さて、その問題に入る前にもう一つ、今度は訪米されるわけでございますが、当面の日米経済摩擦、これは国民として非常にいまのままの推移というものを心配しております。どのように打開しようとしておられるのか、この打開が恐らくは今回のわが国首脳の訪米というものの大きな目的であろうと思いますけれども、いかがでございましょうか。私は細目について聞こうとは思いませんが、こういう経済摩擦、ほっておくと相互のナショナリズムみたいなものがぶつかり合うような危険性、こういったものを含んでいる状況の中で、解決策、これのいわば方向づけといいますか戦略といいますか、そういうものはどこに置いて今回外相は訪米される所存でいらっしゃいますでしょうか。
○園田国務大臣 御発言のとおりに、これは時間の経過とともに感情的な問題にまで発展をし、激化してくる可能性がありまして、日本で見ている以上の深刻な問題でございます。そこで、ただいまワシントンの東郷大使とストラウス通商代表との間に最後の詰めをやっているところでございますが、日本政府としては総理訪米、日米首脳者会談前にこれは何とかめどをつけたい、こういう方向でやっております。
○渡辺(朗)委員 これは日米の経済摩擦という問題が取り上げられましてから久しくなります。そしてこれには相互にいろいろな問題点がございまして、それがふくそうしている、こう言わざるを得ないと思うのです。その理由の一つに、アメリカ側から見るならば、日本の国際的な責任遂行、国際的な責任の度合い、そしてまた期待感、それがどの程度実行されているか、こういうものに対する不満、こういったものもあるやに聞いております。そういう観点からは、日本が国際的な諸問題なりあるいは特にアジアのいろいろな問題、こういったところに対してかなりの責任を負い、実行していかなければならぬのではあるまいか。たとえば、最近のインドシナ半島における中越の紛争、その後の経緯、そういったものを見ておりまして、日本というものがまだ何にもできないという状態でいるといういら立ちのようなものを感じるのは私ひとりではないと思うのですが、外務大臣、インドシナの中越の現在の交渉の状況、そして見通し、ここら辺をどのように見ておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
○園田国務大臣 中越紛争はいろいろありましたけれども、結局両方が会談に臨むというところまで来たわけであります。会談に臨みはしたものの、中越紛争の根は非常に深いわけでありまして、これがなかなか早急に会談が解決の糸口を見出すということは困難であろうと考えております。わが国は中国、ベトナム両方に、日本が中越和平のためになすべき役割りがあればいつでも果たす用意があるという申し入れだけはしておるところでありますが、見通しとしてはこれはなかなか簡単に話はつかぬ、こういうことで見守っておるところでございます。
○渡辺(朗)委員 関連して外務大臣、現在ベトナムに対する日本の援助の問題は、その後いかがでございましょう。
○園田国務大臣 五十三年度の援助は、ちょっと違うかもわかりませんが、九〇%ぐらいはすでに援助は終了しておりまして、あとの問題もそれぞれ進んでおるわけであります。今後の問題については予算の審議を願うわけでありますけれども、応分の援助を進めることになろうかと存じております。
○渡辺(朗)委員 いまの中越の紛争、前後いたしまして、その当時から難民の問題が非常に論議をされております。先般参議院でたしか外務大臣は、難民条約についても大変前向きの御発言をされました。それからまた四月の上旬でございましたか、閣議においては、わが国においても難民を、五百人を当面のめどといたしまして受け入れる、定住をさせる準備あり、こういうような御決定があったやに聞いておりますが、その点はいかがでありますか。
○園田国務大臣 そのとおりでございます。
○渡辺(朗)委員 ただ、いまの当面五百人というのも何か大変場当たりのような感じがいたしまして、もうちょっと何か根拠のある数字、どういうふうな方針なのかというようなことが出てくることが大切ではなかろうかと思うのですが、五百人というのは難民の定住の量の問題でございますけれども、これはどのような根拠に基づいての決定でございましょう。
○園田国務大臣 これは数字だけではなくて、八項目にわたってそれぞれ就職あるいは職業のあっせん、職業の訓練、その他一切を含めた具体的な計画でございます。
○渡辺(朗)委員 これは発表されているわけでございますね。ぜひいただきたいと思います。いまの八項目の細目につきましては、後ほどで結構でございますからぜひお願いいたします。
 さらに私は、これは想像でございますけれども、恐らく外務大臣行かれれば、アメリカの方の首脳とはグローバルな諸問題を当然御検討されるし協議されると思います。先般のエジプト、イスラエル両国間の平和条約、これについてのわが国の態度といいますか、評価の仕方というのはどのようになされておりますでしょうか。まずその点、お知らせをいただきたいと思います。
○園田国務大臣 エジプト、イスラエルの調印までこぎつけたアメリカの努力と勇気は評価をいたしております。
 しかし問題は、この調印は両国の調印でありまして、中東地域の包括的和平というものはこれからいろいろ問題が出てくるわけであります。日本の立場からいっても、中東地域というのはきわめて重要でありまして、また、エネルギーの面からいっても一番大きく依存をしているわけであります。日本は、しばしば言っておりますとおり、国連決議二百四十二、これに基づく包括的な和平を希望しているわけでございます。したがいまして、中東については日本独自の立場から、これに対する包括的和平に向かうよう、日本の持っている政治的、経済的役割りを果たしたい考えております。
○渡辺(朗)委員 いま大臣のおっしゃった政治的、経済的役割りを果たすということでございますが、伝えられるところによりますと、アメリカもエジプト、イスラエル、これを援助する、経済援助をするということを打ち出されているようでありますし、わが国もまたその要請を受けたやに報道されておることがございました。わが国として、この平和条約締結の当事国、その双方に対して、これからどのような態度でもって臨んでいかれるのか、ここら辺を御説明いただきたいと思います。
○園田国務大臣 エジプトその他に対する協力について要請を受けてはおりません。日本は日本の立場から応分の援助をしたい。なお、反エジプト・アラブ連合諸国に対しても、日本は応分の援助をすべきであると考えております。
○渡辺(朗)委員 さて、幾つかUNCTADの問題に入らせていただきたいと思います。
 今度のUNCTAD、これに対する態度といたしまして、恐らく政府の方はいろいろな案を持って臨まれるに違いないと思います。ですが、途上国がまず先進国に対して、特に日本に対して希望しているのは、援助の質というものの向上であろうと私は思います。量的なものもさることながら、質的な問題であろう。たとえばグラントエレメントの問題であるとか、あるいはまた借款その他の条件の問題であるとか、そういうことに途上国の方では非常に強い要求が出てくるのではなかろうかと私は思います。援助の質と量、特に質を高めるということに対して、わが国として、従来に比し新しい方式、新しい方策というものは打ち出されますでしょうか。そのような準備は行われているのでございましょうか。
○園田国務大臣 UNCTADの総会でそういう二国間の問題が出されるとは思いませんが、そういう期待があるということは事実でございます。したがいまして、開発途上国、それから開発援助に対する世界的な方向の転換、こういうことから、質、量ともさらに改善をしていきたいと検討しておるところでございます。
○渡辺(朗)委員 コモンファンドについての出資金の問題、こういった点については、もはやわが国としては決着がついていると思いますけれども、STABEXの問題なんかについてはいかがでございましょうか。
○賀陽政府委員 STABEXの問題につきましては、今次UNCTADでやはり出てまいると思います。現状は、御承知のとおりIMFにSTABEXの改善した姿が存在しておりまして、これがグローバルなSTABEX、全世界的なSTABEXになっておるわけでございます。これをさらに改善するという考え方であろうと思います。
 これに加えまして、日本はASEANとの間で地域的なSTABEXの検討を行っていることも事実でございますが、今次のUNCTAD総会において、STABEXについて共通基金と同じような具体的な成果が上がるかどうか、これについては、むしろそうではない方向で今後UNCTAD事務局等が継続を検討する、次期総会等におきまして、さらにこの問題の具体化を図るという方向ではないかというふうに推察をしておるわけでございます。
○渡辺(朗)委員 私は外務大臣にぜひお尋ねをしたいのですけれども、いままでそういう国際会議に出て、あるいはUNCTADのような日本に対しての期待感、これはアジアで持たれるわけですから、特にいままでのUNCTADと違って、日本に対する期待感あるいは衆目がそこに集中する、そういうタイミングであろうと思います。そういう意味で、余りはったりとかほらとかということではなくて、やはりそういうタイミングをとらえて、日本としての対外政策を大きく前進させるようなチャンスにもされる必要があるし、それからまた、それを機会に国内に対して問題提起をする意味もあろうと思います。
 そういう観点から、今度は総理大臣も外務大臣もいらっしゃるわけです。何かそういう構想をお持ちでございましょうか。たとえば前には、心と心の触れ合い、こういうようなキャッチフレーズみたいなものを打ち出されたことがあります。あれもあれなりに非常に意味があったと思いますけれども、今回のUNCTAD、これに臨むに当たって、そのようなグランドデザインと言いますか、一つの構想はお持ちでございましょうか。
○園田国務大臣 UNCTADの総会がきわめて大事な会議であって、しかもアジア地域内でこれが開催されるという点、さらにこれが終わってから引き続いてサミット、そのサミットで南北問題が大きく取り扱われなければならぬ、こういう考え方から、サミットとUNCTADの総会をわれわれはつないで、開発途上国の要望というものをどうやってサミットで出すかということを考えていることは御発言のとおりでございます。
 したがいまして、今度のUNCTADの総会では、いろいろ考えて、総理の演説なりあるいは考え方、こういうものを考えておるわけでありますけれども、共通基金を初めとする諸問題は当然のことでありまして、共通基金は昨年ASEANの外相会議で相談をして、そうしてサミットで日本が発言をして、これが宣言の中に入り、いま原則的にはまとまってきたわけでありまして、この基金等の問題についても、日本は腹構えは十分できて準備をしておるところでございます。
 そういうことを基盤にしながら、一方には、先ほど言われましたが、米国との関係で、当面する経済問題よりも、黒字、赤字という大きな問題について、経済援助、それから難民対策、それから国際協力の諸問題に対する日本の拠出金、協力、こういうものはもっともっと積極的にふやしていくことが、黒字に対する非難をやわらげる非常に大きな要素だ、黒字の問題も今度問題になりますけれども、考えてみまするとなかなかむずかしい問題で、黒字と赤字の両方がすぐ均衡になるということは困難である。しかも、日米双方が努力をしながらも、石油であるとか、ドル、円の価値の変換あるいは世界経済の微妙な変動があれば、直ちにこれはまたわれわれの計画をつぶすわけであります。したがいまして、むしろ黒字減らしも大事かもわからぬが、それよりもっと大事なことは、いま言ったようなことに日本が進んで貢献するということだと思いますので、そういう点を中心にただいま政府部内で検討しているところでございます。
○渡辺(朗)委員 私は前に外務大臣にも御提言を申し上げ、お訴えをしたことがありました、予算委員会の席上でございましたけれども。いま大臣がおっしゃったように、国際協力を進める、ここら辺で何か方針の大きな転換を図ってもいいのではあるまいか。その際に、余りバイで、二国間協定というような形を通じて二国間の援助、こういうものを進めるよりも、マルチの形で、その方が消化率も高いし、それから、やはり国際的に評価もされるし、受け入れ国の方も、余りひもつきでないというようなこと、相手国に遠慮が要らぬというような点でも大変喜ぶことであろうし、そういった方向への転換みたいなものを、今回いいタイミングですから図っていかれる、こういうことが必要であろうと常々思っております。
 ただ、今回のUNCTAD総会に当たりどのような構想を持っておられるか。これからおつくりになるのであろうと思いますけれども、総理はかつて環太平洋構想というようなものを言っておられました。事実そういうような考え方も非常に意味のあることであろうと思います。そしていいタイミングだろうと思いますので、できれば私は、環太平洋というようなものよりも、OECDのような地域内の政策の相談の組織ではなくて、またECのような地域的な特恵あるいは差別といったような問題を目的とするものでもない、ちょうど中間的な相互の地域内の政策調整機関のようなもの、こういったものぐらいは提案されるチャンスではあるまいかと思っておりますけれども、何かそのようなアイデアなり方針なりというようなものは構想の中に入っておりませんのでしょうか。
○園田国務大臣 構想を申し上げる段階ではないと存じますけれども、御意見は十分拝承して理解するところであります。しかし、UNCTADの総会は地域的な問題はなかなか提案できませずに、世界各国から集まるわけでありまして、地域的な問題を提案すると反発を招くおそれ等もありますので、十分考えてやりたいと考えております。
○渡辺(朗)委員 事実私もその点は重々存じております。ですがこれは、南北の問題などを本当に論議する、国内でもそういう意味での論議を深める一つの好機であろうという意味であえて申し上げております。
 私は特に、これは要望でございますけれども、これは人から聞いた話ですから真偽のほどはわかりませんが、たとえば西ドイツとアメリカの関係でも、相互に摩擦の問題があり対立の関係があったにしても、それが日米関係のようにこじれていかない。これはどこに違いがあるのか。
 たとえば、マーシャル・プランの二十五周年記念か何かの席上、あれはアメリカのハーバード大学かどこかの特定の教室の中で発表されたプランだったわけでありますけれども、二十五年後に同じ場所で、西ドイツの人がやってきて、そして、アメリカ国民に今度は私どもがお返しする番でございますと、そういうふうな発表の仕方をする。まことにその中身たるや、そんなでっかい援助をするわけでも何でもないけれども、アメリカの国民世論に対しては非常にアピールする何物かがあった。
 たとえば、対外援助に対する姿勢を一歩前進、二歩前進させる、対米摩擦をこういうふうに好転させよう、御努力しておられるけれども、何かそこら辺に対しての配慮といいますか、やはり、アメリカの国民なり世界の諸国民なり、特に途上国の人たちなり、そういったところに日本というものはこういうふうな方向をやっていくぞと、もっと、まあショーにしてはなりませんけれども、しかし、そのようなさまざまな政治的配慮があってしかるべきであろうし、そういう中での一つの構想みたいなものを打ち出していただきたい、これは要望でございます。外務大臣、いかがお考えでございましょう。
○園田国務大臣 確かに日本はアピールの仕方がへたでありまして、かつまたその話しかけの仕方が、相手の国民がそうだと、こう納得するような話の仕方がいままで非常にへたでございました。これはきわめて大事であると考えますので、いまの御意見は十分承って、今後努力をしたいと考えます。
○渡辺(朗)委員 これは蛇足でございますけれども、いまあの難民に対する態度にいたしましても、ジュネーブで問題が協議されている前ぐらいにでも、ぽんと、援助金額も一千万ドルでございましたか、何か責められてから出していく。同じ出すのだったら、もっと効果があってしかるべきだろうと思いますし、いまのように、五百名は定住させるし、八項目にわたる対策も出しているということであるならば、そういうものを外圧によって、外から責められて渋々出すのではなくて、むしろ先取りをしていくような態度があってしかるべきだし、これからの外務大臣の御活躍に期待しております。大変厳しい中ですけれども、どうぞ成功を祈ります。
○塩谷委員長 寺前巖君。
○寺前委員 日米首脳会談が近く行われるわけですが、日本の防衛分担の問題が議題になりますか。それとも日本側から積極的に出す用意があるのですか。
○園田国務大臣 日本側から出す考えもありませんし、アメリカから議題になることもないと存じます。
○寺前委員 キッシンジャー前米国の国務長官が四月十九日の読売国際経済懇話会での講演あるいは同日行われた内外記者団との記者会見で、こういう問題を提起していますね。
 地域防衛の重要性を強調して、「地域の防衛の性格は変わっていかねばならない。そして地域の軍隊との協力が必要である。」そしてそれは、NATOや日本との関係でも当てはまると指摘しています。さらに記者会見では、ソ連の日本周辺での軍備増強に触れて、「はるか遠くにある戦略兵器だけに依存することは不可能なので、西太平洋地域で日米両国は、共同して軍事体制を強化する必要がある」ということを言っています。
 極東地域防衛の性格は、地域の軍隊との協力を軸としていくことで、これまでのアメリカ中心が変わって、とりわけ日本の軍事力と役割りに期待するというこのキッシンジャーの考え方、外務大臣はどういうようにお考えになりますか。
○園田国務大臣 前国務長官キッシンジャー氏の考え方は、力と力の関係で物を判断される方でありまして、これは以前から一貫した考え方であります。それが近ごろソ連の極東軍備が強化された、大西洋から太平洋に重点が移ったというような考え方から言っておられる、キッシンジャー氏個人の意見であります。
 私は今度訪米いたしましてたくさんの人々に会ったわけでありますが、米国国内の責任者、指導者からはそういう意見は全然聞かれませんでした。キッシンジャー氏の発言、チャーチ外務委員長の記者クラブにおける講演等、そういう趣旨のものがありますけれども、これは一つの意見であると私は考えております。
○寺前委員 すると、キッシンジャー氏の、日米が共同して軍事体制を強化する必要があるという見解については支持しないという見解ですか。
○園田国務大臣 私、平素からいろいろ答弁している中で御理解いただけると思いますけれども、ソビエトが極東の軍備を強化したということだけをとらえて、過度にこれへの対応の策として日本が防衛力を強化するなどということは、私は適切なことではないと考えております。
○寺前委員 四月十九日に大平総理が、アメリカのロサンゼルス・タイムズ紙二十日付に載っておるやつですが、「アジアにおけるソ連の「エネルギッシュな」軍事力増強に対応するため、日本は軍事的偵察能力および抑止力を強化しなくてはならない」「防衛予算も「増加せざるを得ない」」、この記事によりますとこういう発言を総理がしているのですが、これはいまの外務大臣の見解とはかなり隔たりがあるのですが、どうなのでしょう。
○園田国務大臣 講演の趣旨、私承っておりませんけれども、私が総理と折々話すことからすれば、私の意見は総理も同じように考えているものであると私は自信を持っております。そのインタビューの発言の趣旨がどういう趣旨かわかりませんが、ただ日本の国土防衛という観点から、専守防御という立場から、日本が海空に重点を置かなければならぬ、これはいままでの一つの主張でございまして、後の強化しなければならぬということがどういう意味かわかりませんけれども、私はことさらにこれをキッシンジャー博士などの発言と結びつけては考えておりません。
○寺前委員 山下防衛庁長官も、ソ連の軍事的動向はわが国の安全保障に深くかかわるものだという発言を二十三日の陸海空自衛隊の高級幹部の会同でおやりになっているようだし、大平総理もいまの話は「ソ連の「エネルギッシュな」軍事力増強に対応するため」、全部「ソ連の軍事的動向」とか「エネルギッシュな」云々ということを言って、防衛力強化――そうすると対ソ外交をやっておられる外務大臣としては、こういう発言というのは対ソ外交を進めていく上においては不謹慎な発言だというふうに言えるわけですか、どういうことですか。
○園田国務大臣 日本の基盤は日米安保というのが基盤であることは、これはもう厳たる事実であります。日本の国土防衛を考えるならば、ソ連邦の軍事強化というものは非常な大きな関心と懸念を持つことは私も当然であります。ただ、これに対して日本の軍事力を増強して対応しようという考え方は間違いであると私は考えております。
○寺前委員 そうすると、かなり総理や防衛庁長官との見解が違うことになって、閣内不統一ということになりますね、これは。対ソ外交をやる上において、外務大臣はあんなことを言っておるけれども、実態は違うのだということになったら、日本の政府のあり方としては信用を落としてしまうことになる。私は外務大臣がとられているのが従来からとってきた日本政府の態度だったと思うのだけれども、最近の大平総理なりあるいは防衛庁長官の発言の方が従来の態度とは明らかに違う態度になったというふうに見ることができると思うのです。しかも最近の一連の宣伝が、ソ連は日本にいまにも攻撃をしかねないような話があの千島問題でも出されたと思うのです。だからそういうふうにソ連の脅威を大宣伝することによって、国民にそちらに向かっての戦力増強を組織していくというような行動というものは、対ソビエト外交を進めていく見地から見るならば、そういうようなあたかもそちらの方に構えなければならないという宣伝をすること自身、政府としてこれは注意を要する見解ではないかと思うのですが、そこはどうなんですか。
○園田国務大臣 ソ連邦と友好関係を進めていきたいという考え方、これはあくまで平和の追求、戦争の回避ということであります。したがいまして、ソ連が極東における軍備を強化することについては非常な懸念と関心を持って警戒をしていることは私も全く一致をしております。ただ、そのためにどうやるべきかということは私は違うのであって、日本の軍事力、防衛力を強化してソ連に対抗しようという考え方はこれは誤りである。山下長官がどのような講演をしたか、総理の講演も承っておりませんが、私のこの考え方には間違いはないと存じます。
○寺前委員 いよいよこの首脳会談に行ってアメリカとの間に話が出るわけだけれども、アジアと西太平洋がソ連の進出で影響を受けているからといって、自衛隊がそれを敵視して、そしてアメリカの対ソ戦略と同一のレベルで協力関係、行動を組織していくということは、自衛権の概念から見ても逸脱ということになると思うのですが、そういうふうに理解して外務大臣は臨まれますか。
○園田国務大臣 私はモスクワでも申し上げましたけれども、日米安保は日本外交の基軸であるということをはっきり申し上げてあります。したがいまして、今日の平和というものは米ソの力の均衡によって維持されている、こういう点は私もはっきりそう考えているところであります。したがって、米と日本と協力をして、この抑止力というか均衡力を維持することは当然であると考えております。考えておるが、ソ連のたとえば国後、択捉の基地の問題であるとかあるいはベトナムにおけるソ連の艦艇の動きとか極東における軍備の強化、こういうものを過度に宣伝をして、これに力をもって対応しようということは間違いである、こういうことであります。
○寺前委員 外務大臣は三月上旬の米韓合同軍事演習、チームスピリット79について、予算委員会の席上で、米韓両国に自重を促すような発言をしておられました。その真意はどういうところにあったのでしょうか。
○園田国務大臣 それは少し間違いがありまして、私は韓国には何ら発言はしておりませんし、要望もいたしておりません。米国に対して、南北対話、統一が始まった時期に余り適切じゃないということで、どうしても変更できないということでありましたから、それならばこの統一、対話のムードを壊さないように十分注意してやってもらいたいということは米側に言いましたが、韓国側には私は何らの話もしておりません。
○寺前委員 その後、三月十日付の韓国日報紙で外務大臣の発言に対して、「韓日安保同質論や韓米日三国防衛提携関係をぶち壊そうとする底意がないとは言えない」というふうに書かれているわけですね。外務大臣はこの「韓米日三国防衛提携関係をぶち壊そう」という意図でもって、こういうことを念頭に置いてやられておるのか、あるいはいまもおっしゃったように、朝鮮民主主義人民共和国へのもっと接近という問題を考えていることから、軍事的行動なんかの自重をアメリカ側に促したんだという立場なのか、再度お聞きしたいと思います。
○園田国務大臣 私は米韓の関係をぶち壊そうとか韓国に内政干渉した覚えもないし、する所存も全然ございません。ただ、南北の対話が形だけでも始まったところであり、この対話も南と北の考え方は相当食い違いがありますから、なかなかうまい方向には行かないと思いますけれども、それにしても、細々でもいいから私はこの対話は続けるべきだ、そういう環境づくりをやるべきだと考えておるからでございます。
○寺前委員 防衛庁お見えになっておりますか。――四月四日に韓国の参謀本部の議長が高品統幕議長と会って、そして日韓の軍事部門の指導者のいろいろな交流をおやりになったようです。一方でこういうチームスピリット79という動きがある、一方で日本と韓国との間の高級の幹部の交流が進んでいるという問題について、いろいろ先ほどお話があったような対話ムードを進めていくという上においてやはりいろいろ懸念が生まれてくると思うのです。実際問題としては、金大中の事件後、こういう交流については自重ぎみであったというふうに私は理解をしているのですが、そうじゃなかったのでしょうか。
    〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
金大中事件以来の日韓軍事部門の幹部の交流状況はどうだったのか、これからどういうことがいま計画の上にあるのかということを御説明いただきたい。
○岡崎政府委員 お答え申し上げます。
 金大中事件がございましたのが昭和四十八年でございます。それでまずわが方の自衛官の韓国への出張状況を申し上げますと、四十九年は一件もございません。五十年が四件十三名、五十一年が五件十一名、五十二年が六件十五名、五十三年が八件十七名でございます。
 今後の計画という御質問につきましては、陸幕長が本年四月三十日より五月四日まで韓国を訪問する予定でございます。
 それから、先方の韓国の軍人の防衛庁訪問は、四十九年は一件一名でございますが、五十年に十一件三十七名、五十一年に十一件三十八名、五十二年に十一件三十九名、五十三年が十九件七十六名でございます。
○寺前委員 それで、陸幕長はわかりましたが、今後の計画はどういう計画になっておりますか。
○岡崎政府委員 現在のところ、確定した計画はございません。
○寺前委員 いずれにしても、韓国の参謀本部の議長の訪日が、新聞報道によると、十年ぶりになされたということが出ている。日本の側からも陸幕長が四月三十日に行く。最高のクラスの幹部の交流がここに始まってくる。しかもさらに、新聞報道によると、防衛庁長官が訪韓するということを今夏にやると報道されている。これは事実なのかどうか、そこだけ先に聞きましょうか。それは事実ですか、いつどういう議題で行くのか。
○岡崎政府委員 去る四月四日、韓国の合同参謀会議議長金鐘煥大将が防衛庁を表敬訪問をいたしました際に、先方から非公式な訪韓要請の打診がございました。これに対しまして、防衛庁長官より、国会会期中でもあり大変忙しいが、機会があれば一度訪韓してみたいと述べたことがございます。現在のところ具体的計画はございませんが、先方から正式に招待の申し入れがあれば検討してみたいと考えております。
 防衛庁といたしましては、朝鮮半島における平和と安定の維持はわが国の安全にとっても重要なことでございまして、韓国を訪問して国防関係者にお目にかかるとともに、韓国の軍事事情を視察することは有意義なことと考えております。
○寺前委員 ですから、そういうふうに防衛庁長官が韓国へ行くということは初めてなんでしょう。違ったら違うと言ってください。先ほどおっしゃったいろいろな資料を後から提出してほしいと思います。
 それで、そういうようなかつてないことが行われ始めてくる。一方では対話という話がさっき外務大臣からあった。朝鮮の自主的、平和的統一を求める声というのが国際的にも非常に高いようになってきておる。こういうときに、一方で地域防衛がどうのこうのと国際的にも言われている中で、こういう日本の行動がとられるということは、果たして朝鮮の自主的、平和的統一にとって有効なあり方なんだろうか、かえって有害になっているのじゃないだろうか。私はそこを懸念するのですが、外務大臣の見解をお聞きしたいと思う。防衛庁の方も後で……。
○園田国務大臣 南北の対話は期待しているところでありますけれども、あくまで自主的に南北の対話をされて、そしてまたわれわれから言えば、南北の均衡が壊されないようにしながら話が進むことを期待しております。
 防衛庁長官の訪韓問題は、まだ具体的な計画ではなくて、私は聞いておりません。軍の幹部の交流というのはどこの国でもやっておりまするし、中国からもそうでありますし、ソ連の方からも、自分の方も来たい、日本の方からも来いという話もあるわけでありますから、ソ連の軍備の強化に余り神経質になることもいけませんが、そういうことに余り神経質にならぬ方がいいのじゃないかと思います。
○岡崎政府委員 安全保障の問題に限ってお答え申し上げますが、先ほど申し上げましたとおりに、朝鮮半島における平和と安定の維持は、わが国の安全にとって重要な問題でございまして、防衛庁長官が韓国を訪問いたしまして、韓国の軍事事情を視察し、国防関係者から韓国の事情を聴取するということは重要なことと考えます。
○寺前委員 資料提出はいいですか。
○岡崎政府委員 先ほど申し上げました両国の軍事関係者の年次の訪問の数でございますか。後ほど提出いたします。
○寺前委員 私が懸念する問題が、「日本の防衛」という昭和五十二年七月防衛庁が出しているものの百六十七ページのところにこう書いてあるのです。「わが国が憲法上許される範囲内で防衛力を保有することは、一つには国民の平和と独立を守る気概の具体的な表明であるとともに、直接的には、日米安全保障体制と相まって、わが国に対する侵略を未然に防止し、万一、侵略が行われた場合にはこれを排除することを目的とするものであるが、」自衛権のことですね、「一方、わが国がそのような態勢を堅持していることが、わが国周辺の国際政治の安定の維持に貢献することともなっているものである。」これにはそう書いてある。ところが、山下防衛庁長官の三月十八日の防衛大学校の卒業式における発言というのは、どうもそういうことにはならないようなんですね。新聞を読むと、周辺地域の軍事バランスの保持に貢献する防衛力の機能を強調しているということで出ているのです。日本の自衛隊の任務というのが、周辺地域の軍事バランスを保持していくのだ、そういうようなものに貢献する防衛力の機能の強化ということをうたい出したら、これはちょっと性格が変わってきているじゃないか。防衛白書と言われるこのものともちょっと違うじゃないか。私は、そういう意味では外務大臣はどういうふうにお考えになるのか、閣議でも一度きちんと検討してもらうべき性格ではないだろうか、いかがでしょうか。
○園田国務大臣 防衛庁長官の発言の真意がどういうところにあるか、私が答えるべきところでありません。しかし防衛庁長官にはどういうことなのか聞いてみたいと存じます。
○寺前委員 お約束の時間が来たのでこれで終わりますが、交流問題は、実態は、防衛は防衛でやっている、外交交渉は外交交渉では違うのでありますので、閣議としてきちんとした態度をおとりになるように願います。
 終わります。
○大坪委員長代理 依田君。
○依田委員 寺前委員に続きまして、最近の防衛問題についてのいろいろな発言、一連の動きというものについて、ほかの委員会などでいろいろ議論がされたようでありますけれども、当委員会ではなかなか国際情勢一般についての時間がなかったという関係で、取り上げられませんでした。少しおさらい、総括の意味もあってお尋ねをさせていただきたい、こう思うのであります。
 最近、防衛庁長官から一連の対ソ発言がありました。早いところでは、二月二十一日衆議院の予算委員会で、例の北方領土の軍事基地化、建設について、極東のソ連軍はわが国の防衛にとって潜在的脅威であるという発言をされて以来、いろいろな発言があるわけであります。近くは、先ほど秀出ましたけれども、四月十二日に若手の財界人を前に、ミンスク、バックファイアの極東配備についていろいろまた心配をされているという発言があったわけであります。
 そこで、こういう一連の発言をなぞってみまして、防衛庁として、対ソ軍事関係について最近重大なる変化があるというふうに見ておられるのかどうか、その辺をお聞きしたい。
○上野政府委員 お答え申し上げます。
 もともと脅威と申しますものは、意図と能力が結びついて、それにそのときの国際環境等ございますけれども、顕在化すると言われております。そういう意味におきまして、現在のわが国に対しまして差し迫った、きょうあすにも脅威があるというふうには考えておりませんが、こういう意図というものは変化しやすい、国際環境もまた流動的であるということは言えるわけでございますので、周辺諸国におきます軍事能力につきましては配慮する必要があると考えておりまして、そういう考え方を従来からとっておるわけでございます。また、国会等におきましても御説明したことがございます。
 現在の極東のソ連軍の能力を純軍事的に見ますれば、その意図は別といたしまして、相当巨大なる軍事能力があるということ、それから、極東におきますその能力が最近増加の傾向にあるということは、客観的な事実でございます。そういう意味におきまして、防衛庁長官がその事実を称して潜在的脅威と表現したものでございます。先ほども申し上げましたように、こういう考え方、そういう表現は従来とも防衛庁がとっておりますし、発表してきておりますものでございますので、最近になりまして、対ソの認識について変化があったというものではございません。
○依田委員 ちょっとよくわからなかったのでありますけれども、前に、たしか五十一年だったかと思いますけれども、当時の防衛庁長官の坂田さんがややニュアンスの似た発言をされました。そのとき、直ちに当時の宮澤外務大臣がこれを否定されるような発言をされたわけでございます。今回は、私の聞いております範囲、外務大臣の先ほどのお話にもありましたように、防衛庁と少し見解の違うお話をされておりますけれども、公の場所で宮澤大臣が否定されたような、そういう反応の仕方がなかったのじゃないか、こう思うのであります。外務大臣として、いまの防衛庁の認識について、それとどこか違うニュアンスがあるか、あるいは同じなのか、その辺をひとつお話をいただきたい。
○園田国務大臣 防衛庁長官の発言その他の御質問がありましたけれども、防衛、安全保障については、外務省は防衛庁と緊密に連絡をいたしておりますので、具体的な問題については相違はないと考えております。
○依田委員 われわれ外から見ておりますと、防衛庁の方が少し対ソ関係についてシビアといいますか、神経質な考え方を持っておる。外務大臣のお考え方はそうあっても、しかしそうだからといって、すぐそれを日本の防衛力の云々ということに持ち込むのは外交政策上よくないだろうという御意見だろう、こう思うのであります。しかし、本当のところどうなんでしょう。外務省は最近安全保障委員会というものを設置されたわけでありまして、この設置については巷間聞くところ、いまの防衛庁の考え方についてある程度批判的な考え方を外務省がお持ちだというふうに聞いておるわけですが、いかがでしょう。
○園田国務大臣 国の安全保障は外交と防衛と相まってできるものでありまして、したがいまして、一方は外交交渉によって安全を守ろうとするし、一方は許された自衛力をもって守ろうとするわけでありますから、そこに当然少しぐらいのニュアンスの相違があるとは存じますけれども、しかし、大なる本質的な相違があってはならぬ。その両方の持ち場からくる意見の相違というのは逐次調整していかなければならぬと考えております。
 ただいま外務省に一つの研究グループをつくりました委員会は、事実かどうか知りませんが、いまの防衛庁の防衛力強化、一・七%増強などということに対する反対でもなければ、これの支持でもなくて、別個に、日米安保体制というのは逐次変化してまいります。新しい世代一九八〇年に向かって安全保障はどうあるべきか、基本は、米国の国防長官とも話しましたが、軍事力によってのみ国を守り安全を維持するということは、もうすでにその時代ではなくて、政治、経済、防衛と、三者が一体になって安全を守るべきだ、こういう意味から私は新しい時代における安全保障という課題で研究を命じているものでございまして、具体的ないまいろいろ言われている問題に対する研究の委員会ではございません。
○依田委員 この安全保障委員会の設置された目的、まことに大臣のおっしゃるとおりでございまして、軍事力だけによって一国は守れない、これが世界の定説であります。そういう意味で、外務大臣は防衛庁をチェックする意図はないというお考えだそうでございますけれども、ひとつこの委員会が健全に機能を発揮してくださって、私の思っているような危惧の起こらないようにぜひしていただきたい、こう思うわけであります。
 ところで、防衛庁に伺いますけれども、最近の長官のいろいろな一連の発言の中の、ソ連のミンスクあるいはバックファイアというものの極東配備の、日本の防衛に与えるあるいはまた日米の軍事バランスに与える具体的な脅威、そしてまたもう一つは、これまた最近よく言われておりますベトナムの基地使用が極東の軍事バランスに与える影響、こういうものについて少し具体的に詳しくお話をしていただきたいと思うのです。
○岡崎政府委員 お答え申し上げます。
 まず、ミンスクの極東配備でございますが、これは恐らく極東に配備されるだろうと国際的に推定されました。実際に配備されるかどうかは、まだ配備されてみないとわからないことでございます。ミンスクという航空母艦は、主として潜水艦に対する航空母艦でございまして、アメリカのいわゆる攻撃型空母と比べますと戦力にはかなりの差がございます。その意味で、アメリカの航空母艦とミンスクとだけ比較した場合におきましては、米ソの軍事バランスに大きな影響を与えるというほどのものではございません。しかし、これはアメリカの潜水艦の活動に対しましてはかなりの制約要因となりますし、またミンスクに対してアメリカの海軍力をある程度対抗配備しなければならないという意味で、制約要因になっております。それからまた東南アジア及びインド洋地域、その広い地域におきます局地介入能力及びその政治的なプレゼンス、政治的影響力行使の手段としては有用な航空母艦と考えます。
 それからバックファイアにつきましては、これはいまだ極東に配備されたということは確認されておりません。しかし、米国の議会証言その他種種の情報から総合いたしますと、いつ極東に配備されても不思議でないという状況になっております。バックファイアは最新の中距離爆撃機でございまして、中距離と申しましても非常に足の長い爆撃機でございます。それでまた超低空進入能力を持っておりますし、速度も最大速度がマッハ二・二五ないしマッハ二・五ぐらいである。それから海軍用のバックファイアというものは対艦攻撃能力が非常にすぐれております。
    〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
これが極東の海軍航空隊に配備されます場合は西太平洋地域あるいは日本の海上交通路に対するソ連の非常に高い攻撃能力を意味するものとなります。それから、これは中距離爆撃機でございますが、非常に足の長い爆撃機でございまして、戦略核を装備する場合はアメリカ本土に対する脅威ともなるという性質の飛行機でございます。
 それからベトナムの基地につきましては、従来ソ連は東南アジア地域におきまして艦艇、航空機の行動基地として使用が可能な港湾、空港等を確保しておりませんでしたので、ソ連本土から遠く離れたインド洋あるいは南シナ海等へのプレゼンス、哨戒、偵察などの実施に大きな制約があったと考えられます。したがって、ソ連がベトナム領内の港湾、空港等を基地として使用することは、ソ連が抱えておりましたこのような制約要因を大きく緩和することになりまして、ソ連の軍事行動能力の拡大をもたらすことになると考えられます。特に恒久的基地としてソ連がこれを使用する場合は、平時においてはインド洋、南シナ海等を含む地域などへのソ連の哨戒、偵察能力、局地紛争介入能力、政治的プレゼンスの能力、極東とこれらの地域間の中継補給能力等が増大するものと見られ、米ソの軍事バランスに影響を与え、その地域の安全及びわが国の海上交通路の安全にとって潜在的脅威になると考えられます。また有事におきましては、わが国及び米国の海上交通路に対する脅威となることは言うまでもなく、これら地域周辺における西側諸国の行動に大きな制約を与えることになると考えております。
○依田委員 後の方のソ連のベトナムの基地使用、この問題について、話はそれますけれども、ベトナム援助の問題について最近総理大臣と外務大臣の考え方がちょっと違うような新聞報道が出ておりました。総理大臣は四月十九日に外人記者クラブで、ベトナム援助の増額拒否などについて少し考えるところがある、こういう発言をされておるわけであります。一方外務大臣の方は、要するにソ連が恒久基地化するようなことはないだろう、こういうことで、この援助問題についてはこれまでどおり考え方は変化はない、こういうお考えだそうでございますけれども、これはどちらが正しいのでしょうか。
○園田国務大臣 ベトナムの基地の問題でありますが、先生御承知のとおりに、従来ベトナムはソ連邦から武器その他の供給、援助を受けておったことは事実でありますが、中越紛争発生以来、艦艇、航空機等がこれに立ち寄る機会がふえてきたわけであります。平和会談になった今日もぬお、カムラン湾その他には若干の艦艇が寄港したり出入りしたり、航空機が出入りしている模様であります。
 そこで私は、ベトナムの外務大臣に対しては、直接または文書によって、ベトナムの動向、特にベトナムに対するソ連の動向についてはASEANは非常な懸念を有しておる、かつまたアジアの平和というものの阻害要因になる、したがって基地提供等のことはあったら大変であるという要請をしておりますが、外務大臣はこれに対して、基地は絶対提供しない、自主独立の国家である、ただし中国の脅威が自分の方にはあるのであるから、この脅威がある間はソ連の艦艇等が出入りすることは当然である、こういうような趣旨のことを言っておるようでありまして、ただいまのところ総合判断は、私はカムラン湾その他にソ連の基地ができるとは考えておりませんけれども、しかし大変重大な問題でありますから、非常な懸念と注意力を払って見ているところでございます。
○依田委員 話はまたもとへ戻りますけれども、先ほどからいろいろソ連の極東配備の問題について日本として注意しなければならぬ点がある、こういうお話でございます。
 そこで、こういう一連の動きに対して、いま防衛庁として装備あるいは配備の点などについて何か変化させなければならぬのか、対応を迫られておるのかどうか、この辺を伺いたいと思うのであります。たとえば監視態勢の強化、こういうものは当然お考えになっておると思いますけれども、そのほかに何か具体的に対応の変化というものを防衛庁として考えなければならぬのかどうか、その辺をお伺いします。
○上野政府委員 最近のわが国周辺におきます先生御指摘のようなそういう国際情勢の推移につきましては、重大な関心を持って注目する必要があるということで、御指摘のような監視態勢等々の強化は行っているところでございます。特に国後、択捉の問題等ございましたことを一つの契機といたしまして行っております。これは国後、択捉のみに限りませんで、対馬海峡その他ございます。ただ、しからば、現在防衛力整備は御承知のごとく「防衛計画の大綱」というものに基づいて行っているわけでございますけれども、その大綱が定めました基本的な国際情勢の枠組み、それに基づきますところの計画の具体的な内容につきまして、いま直ちにこれを変更する必要があるというふうには考えておりません。
○依田委員 防衛大綱の話が出ましたけれども、三月二十八日に永野陸幕長は、防衛大綱の見直し、こういう発言をされました、翌日田中官房長官はこれを否定されましたけれども。また四月に入りまして、つい最近、山下長官が今度は、防衛大綱の水準まで引き上げよう。また大平総理大臣は、自衛隊の幹部会で、節度のある質の高いもの。いろいろ防衛大綱をめぐりまして発言が多少混乱しているのじゃないか、こういうふうに思うのですが、もう一度現在の日本周辺の国際情勢との関係で、現在のこの防衛大綱でいいのかどうか、それをちょっと伺いたい。
○上野政府委員 「防衛計画の大綱」のいわゆる別表でございますが、そこには具体的な整備目標が書いてございます。現在の水準といたしましては、たとえばいま問題になっております早期警戒機E2Cの飛行部隊のごとくまだできておらないもの、あの大綱の別表に書いてありながらまだその水準に至っていないものがございます。そういうようなものをまず早急に完成するといいますか、その目標を達成するということがまず当面の急務でございます。
 それから、永野陸幕長の発言の御指摘がございましたが、これはその後国会等でも防衛庁長官から明らかにしておりますごとく、永野陸幕長が現在のわが国周辺におきます軍事情勢の変化をもって直ちに防衛計画大綱の見直しの必要性を述べたというものではございませんで、そういうわが国周辺の軍事情勢の変化というものは重大な関心を持って注意する必要があるということを主に発言をし、またそういう変化があることは事実でございますから、その変化を踏まえてぽつぽつ「防衛計画の大綱」の見直しと申しましょうか、その発言の詳細は記憶しておりませんけれども、「防衛計画の大綱」について十分に情勢の変化を踏まえながら検討していくということは大事ではないかという趣旨の発言をしたと承知しております。
○依田委員 発言の内容についてはこれ以上申し上げませんけれども、しかし、有事立法以来制服の方々がいろいろな提案をなさるのでありますけれども、少し内局との相談なしにおやりになっているという点があるのじゃないか、こういうふうに思いまして、その点は今後ひとつくれぐれも御注意をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 最近のニュースの中に、防衛庁長官がアメリカの国防長官に、空母二隻を常駐させてくれ、こういうことを要請するのだ、こういうお話があるわけであります。これはきっとアメリカがインド洋、この艦隊の創設があるのかどうかわかりませんけれども、そういう意味でインド洋へ空母を派遣する、そういう間隙を埋めてもらいたい、こういうことだろうと思うのであります。しかし、こちらから常駐要請、こういうことになりますと、それを機会にまたアメリカの方からいろいろ要望も出されるのじゃないか、こう思うのであります。前から、聞くところによりますと、現在の横須賀入港の際、厚木へ艦載機を入れるわけでありますけれども、それが厚木だけじゃ足りない、木更津を貸してくれぬか、こういう要望が来ているというふうに聞いておりますけれども、この点はいかがでしょう。
○上野政府委員 現在、西太平洋及びインド洋を担当区域といたします第七艦隊には航空母艦が二隻配備されております。この第七艦隊と、それから東太平洋の第三艦隊を隷下に置きます太平洋艦隊は現在六隻の空母を有しておりまして、これを修理、訓練、配備というローテーションで第七艦隊に二隻の空母を配備しているというものでございます。このような空母の配備につきましては、私どもといたしましては当分その現状が維持されるものというふうに承知をいたしておりまして、そういう現状の継続ということにつきましては、私どもそれを希望しているところでございます。
 なお、現在、防衛庁といたしまして、さらに一隻の航空母艦を極東に配備してもらいたい、そういう具体的要求というようなものがあるわけではございません。
 厚木その他の件につきましては、別の政府委員が御回答申し上げます。
○多田政府委員 訓練の関係についてお答えを申し上げます。
 いま先生のおっしゃいましたように、現在ミッドウェーが入港いたしますと厚木に駐機をさせておるという実態でございます。ある期間空母が港に入るというような場合に、パイロットの練度維持あるいは安全性の確保というような面で着艦訓練等を陸上において行わなければならないという必要性があるわけでございます。
 いま申し上げましたように、厚木に飛行機を置きまして、着艦訓練等の一部を厚木で、大部分を三沢基地で行っておるというのが実態でございますけれども、必ずしも十分な訓練ができないということもございまして、かつて米側から日本国内の他のしかるべき基地を利用できないだろうかという打診をされた事実はございます。しかし、着艦訓練等につきましては、騒音問題その他いろいろ問題がございまして、その後具体的な検討が進んでいないというのが実態でございます。
○依田委員 もう一つ、最近一部にうわさが出ておるのでありますけれども、この第七艦隊の空母の入港港として佐世保はどうだろう、こういう意見が出ておるやにも聞いておるわけであります。内々外務省あたりで、それは非公式でしょうけれども、佐世保の意向など聞かれておるようでございまして、佐世保の意向としては一時的では困る、つまりそのためにいろいろ民間の業者が転換したりあるいは施設をつくったりしたところがすぐにまたいなくなってしまう、こういうことでは困る、かえって恒常的ならいいんだ、こういうような答えが出ている、そんな話もあるわけでありますが、この佐世保入港問題というのはどの程度具体化しているのでしょうか。
○中島(敏)政府委員 ただいま先生御提起のような問題がアメリカから提起されているというような事態は全くございません。
○依田委員 外務省で佐世保の意向調査とか、そういうことをなさったあれもございませんか。
○中島(敏)政府委員 特にそのようなことをやったことはございません。
○依田委員 時間がありません。もう超過させていただきましたので、一つだけ。
 昨年の十一月二十七日に「日米防衛協力のための指針」、こういうようなものができているわけであります。これにのっとって、この中には共同作戦研究あるいは共同演習、こういうものを適時行う、こういうふうに書いてあります。最近までの実施状況、これについてちょっと伺わせていただきたいと思います。
○上野政府委員 「日米防衛協力のための指針」というものに基づきまして、自衛隊と米軍との間で実施することが予定されております共同作戦計画の研究その他の作業につきましては、昨年十二月以来、長官指示に基づきましてその研究作業に着手をしております。現在は米側との間で研究の作業手順を初め今後の仕事の進め方について協議をしているという段階でございます。何分にも初めての仕事でございますので、慎重を期して仕事を進めたいということでございます。
○依田委員 大平総理訪米されまして、いろいろこういう問題なども出て、安保の運用、この問題について情勢変化に応じた運用の仕方というものを日米間でこれからいろいろお話しになると思うのでありますけれども、国内法との関連や指揮権等の問題いろいろあると思いますので、ひとつ慎重にいろいろ御相談をしていただきたい、こういうふうに思っております。
 以上、終わります。
○塩谷委員長 楢崎弥之助君。
○楢崎委員 総理大臣のサミット以降の今年度の外遊の、外国訪問の計画について、ありましたら御報告をいただきたい。
○園田国務大臣 サミット以降の外遊計画はまだ決まっておりません。
○楢崎委員 中国側から総理の訪中の招請があっておると思うのですが、どういう形であってますか。
○園田国務大臣 先般、ケ小平副首相がおいでになったときに、ぜひ両方の首脳が訪日、訪中をして親善関係を深めたい、こういう意味で総理がおいで願いたいという話がありまして、大平総理にかわりましてからもこれは引き続いてだという話が正式にございます。先般、周恩来未亡人がおいでになりましたときにもさらにこれは続けてありまして、総理もぜひ訪中したい、こういうことを言っております。これは御承知のとおりに、日中両国の関係からぜひ早くやりたいと思っておりますが、まだ時期等については未定でございます。
○楢崎委員 そうすると、総理もぜひ訪中したいという意向を持っておられる。外相は個人としてはどう思われていますか、時期あるいはその他について。
○園田国務大臣 私としても、先ほども申し上げましたような関係から、なるべく早く総理の訪中を実現していただきたいという考え方で進めております。
○楢崎委員 そうすると、サミット以降は外交的なスケジュールはない、空白である、あるとしたら、言われている解散、総選挙しかない。もしそれがないとすればこれは十分半年間はあいているわけですね。それとは関係なく、つまり解散、総選挙等々の問題とは関係なく、なるたけ早く今年じゅうにでもというような意欲はあるのでしょうか。
○園田国務大臣 できるだけそういうつもりで実現を図りたいと考えております。
○楢崎委員 次に、航空機購入疑惑についてお伺いしますが、いわゆる海部メモについて私は数々の疑問があるし、解明をしてもらいたい問題がある。きょう午前中、航特の方を傍聴さしていただきました。あの中で伊藤刑事局長が、あのいわゆる海部メモ、シアトルの分とドレスナー銀行の分とユニオン銀行の分と一応三つに分けて考えた場合に、一部について真実と違う、あるいは客観的な事実と違うという心証を持っておるという答弁がありました。その心証というのは、心証を得るに足る何かがあるはずであります。したがって本人の心証ですからぜひ刑事局長をお願いしたい。そしたら刑事局長は重要な会議があるからだめだとおっしゃる。で、もしかわりの方が答弁できない場合は、明日でもその点だけについて質問さしていただきたいと思うのです。これは後で理事会でぜひ御検討いただきたいと思います。
 それで、かわりの審議官が参られておりますから、審議官の心証としては――今度はあなたの心証を。心証というのは本人しかありませんから、あなたの心証としては、その三つのメモのうち、全部にわたってそういう刑事局長が持っておるような心証をあなたはお持ちかどうか。あるいはあのうちのどれかについてという特定ができるのかどうか、お伺いします。
○水原説明員 まずもって出席要求のありました伊藤刑事局長が、先ほど委員のお言葉のとおり、重要会議にちょうど入ったばかりでございまして、出席できないことをおわび申し上げたいと思います。
 お尋ねの件につきましては、どの部分に真実があり、どの部分が真実と違うか、その点につきましては現在、昨日再逮捕したばかりでございまして、これから捜査を行うところでございますので、その点についてのどの部分について違った心証をとっているかについてはお答えを御容赦願いたいと思います。
○楢崎委員 御本人じゃないからわからぬわけですね。これは御本人に聞かないと心証というのは……。あなた自身の心証をいま聞いたわけですけれども、あなた自身は捜査中ということでわからない、こういうことですから、これは御本人にぜひ聞きたいところです。
 それからもう一つ、ドレスナー銀行とユニオン銀行のあのメモの部分ですが、これは日商岩井本社のメモの分、あの冒頭のあて名書きがついておるドレスナー銀行の分とユニオン銀行のメモの分はすぐ続いておるのですか。巷間出回っておるものは並べてゼロックスでとられていますが、どうなんですか。つまりユニオン銀行の部分にもあのあて名が当てはまるのですか。そういうことです。
○水原説明員 これはあくまでコピーでございまして写しでございます。もとの形状がどういう形になっておったか。これにつきまして現在東京地検で捜査中でございますので、あて名が一つにかかるのかどうか、現在のところ捜査中だということで御了解いただきたいと思います。
○楢崎委員 実は、十年前、ちょうど昭和四十四年二月四日の予算委員会でこのドレスナー銀行のメモの存在を私ははっきり指摘しておるわけです。十年前です。そのときのものは福田氏というものはなかった。松野氏というふうになっておった。だからその辺はどうなっておるのか。これは私の疑問です。だから先ほど聞いたとおり、日商岩井の本社のメモの部分が続いておるかどうかについて私はまだ疑問があるのです。何か心証がありますか。
○水原説明員 御指摘のとおり、このメモにつきましては数種類のものが巷間出回っております。大もとのものが、オリジナルなものがどういう形であったのか。これにつきましても当然捜査の対象でございまして、現在捜査中でございますので御容赦願いたいと思います。
○楢崎委員 それもぜひ解明していただきたい。
 それから午前中も航特で問題になっておりましたが、あの経理部長あて、これは井上潔氏ですね。このメモ二つ、経理部長あての支払い依頼書ということにおたくのあれはなっていますが、これは二つとも渡っておるのですか。二つとも渡っていないのですか。それとも一つだけ渡っておる可能性があるのか。
○水原説明員 この問題につきましては楢崎先生が非常に前から御関心をお持ちになっていろいろ御調査なさっておられるわけでございまして、私ども従前の国会御論議の経過も十分勉強させていただいて、それが捜査におきましても相当高度の関心を持って追及しておるところだと思うわけでございますが、この問題につきましても、一つだけが行っておるのか、あるいは全く行ってないのか、それとも二つは行っておるのか。このあたりにつきましてこれまた現在捜査の対象でございまして、捜査中でございますので、わかり次第いずれ明らかにする時期があろうかと思いますので、それまでの間御容赦願いたいと思います。
○楢崎委員 それもいずれ明らかになるでしょう。仮定でございますけれども、参議院の証人喚問で、井上潔氏はそのメモは関知しない、自分は全然受け取っていないという証人としての答弁があった。もし受け取っておるとすれば、これは仮定ですよ、一つの仮定だが、井上潔氏の偽証ということになりますね。
○水原説明員 もし受け取っておりながら、しかも受け取っておる当時の記憶が現在残っておりながらあえて受け取っていないと虚偽の証言をしたとするならば、これはあくまでも一般論でございますが、議院証言法違反、偽証は成立すると思います。
○楢崎委員 それで海部メモの点につきましては伊藤刑事局長の心証の根拠をぜひ聞きたいわけです。それでこれは明日でも明後日でもその部分だけ質問の機会を与えていただきたい。これは理事会でひとつ御相談をいただきたい。
 それで、実際には昭和四十三年のたしか十一月にF4Eファントムを採用することが決定をした、それは間違いないですね、防衛庁。
○倉部政府委員 四十四年一月十日に国防会議でF4E百四機の国産を決定いたしまして、それがさらに閣議におきましても了承されております。
○楢崎委員 そうすると、いずれにしてもこのF4ファントムに関するメモは決定の三、四年前に出されておるわけですね。
 この種の信憑性と関連をして、こういうことをもう一つやられておる節がある、そう申し上げましょう。それは海原氏の本の中にも一部指摘をされている。ホークの問題です。それで、ホークの国産化の決定の時期は四十二年三月の国防会議及び閣議、それから、メーカーの決定時期は四十二年十一月。これは間違いないですね。
○倉部政府委員 国産化開始の時期は三次防期間中でございまして、四十二年度末であると思います。
○楢崎委員 おたくからいただいた資料によれば、国産化の決定時期は四十二年三月の国防会議及び閣議、それから、メーカーの決定時期は同年十一月ですから暮れと、こうなっているのですが、間違いないですか。それを聞いているのです。
○倉部政府委員 国産化の決定時期は四十二年三月の国防会議及び閣議でございまして、メーカーの決定時期はいまお話しの四十二年十一月です。
○楢崎委員 間違いないですね。
 ここに英文の、レイセオンの会長あて岸信介ということで紹介状が行っておる。いまここにある英文は、本当に行っているものの下書きの下書きの下書きくらいです。だからこれは一部違っておる。たとえばこれは一九六六年の八月五日になっているけれども、これはたしか六日のはずです。そういう点の違いはある。それから、英語の冠詞等に若干間違いがありますが、大体中身は一致している。
 どういう中身になっているかというと、
  一九六六年八月五日
 チャールズ・F・アダムス会長殿
  レイセオン・カンパニー
  レキシントン・七三・マサチュセッツ
  USA
 ミスターアダムス殿
  貴社によって開発されたホーク・ミサイル・システムの国内生産は、防衛庁の第三次防衛力整備計画に含まれた最も重要な防備プロジェクトの一つであります。わが国政府は現在この計画を注意深く推進しております。このプロジェクトについて、防衛庁長官は、防衛生産に従事する三井グループの指導的会社である東芝電気に対して国内生産計画を提出するよう要請しました。東芝電気及び三井グループの関連諸会社は、防衛庁に対し、これまでの研究と能力に基づく計画を提出しました。
  私は日本の今後の防衛についていろいろな観点を考慮しつつ、個人的に日本の防衛産業の成果について強い関心を持っております。
  このプロジェクトの準備の進展についてレイセオン社と東芝の間で技術的援助事項に関して商業ベースで協議することが必要となってきております。この協議の準備のために三井の代表が貴殿を訪問することになりました。それゆえ、貴殿がぜひ彼らにお会いくださるようお願いいたします。
               岸信介
こうなっている。つまり紹介状。現実に三井の代表が会いに行かれてますね。
 そこで、私が申し上げたいのは、つまりこれは四十一年の八月です。さっき答弁になったとおり、その国産化の決定時期とかあるいはメーカーの決定時期はずっと先です。だからこの内容は、こういうことは決まってない。私はそれだけ確認したいのです。
○倉部政府委員 ただいまの書面、私承知しておらないわけでございますが、四十一年の八月とおっしゃったかと思いますが、その時期は、いまお話しのとおり、まだホークを国産するに当たっての調査研究段階でございまして、国産の決定をしてないわけでございますので、いま先生おっしゃられたとおりではないかと思います。
○楢崎委員 そこで、つまり品物は違うけれども、やり方が似ているのですね、この海部メモと。実際に決定する前にこういう虚偽の内容を書いて、そして紹介状を持たして、いかにも――もしこれが事実であるとすればですよ。しかし実際には三井物産の代表がこれを持って行かれてますね。私はこういう点はぜひ明確にしてもらいたいと思うのですよ。
 そこで、私、これでやめますけれども、防衛庁装備局長が防衛庁を代表するかどうかわからぬけれども、きょうは装備局長だけお呼びしていますので、この英文メモをやりますから、これについて真偽のほどを明確にしてもらいたい。
 なお、その後で同じように金が動いておる。つまり東芝が割り込んだわけですね。実はおたくの資料にもありますとおり――もうこれでやめますから、指摘だけしておきます。レイセオン社と技術提携のあった会社、これは防衛庁の資料です。「日本無線が三十年代の初めから電子管等の部品について技術提携関係にあったと聞いておる」というおたくのあれです。これは三菱電機に吸収されましたね、日本電気は。だから、当然レイセオン社と技術提携をしているのは、この時点では三菱電機なんです。だから三菱電機に大体決まりかけていて、それに東芝が後で割り込んだ。そして大体三対七、三菱電機が七で東芝が三、そういうシェアになっている。実際に政治献金があっている。だからこれは私、ぜひ明確にしてもらいたい。同じようなことなんですよ。だからこれは防衛庁の責任でひとつ明確にしてもらいたい。よろしゅうございますか。
○倉部政府委員 私ども強制的な調査権限を持っておりませんので、ただいまの点につきまして十分な調査はむずかしいと思いますので、私どものできる範囲でいろいろ調べてみたいとは思っておりますが、先ほど申しましたような立場にありますことを御了解いただきたいと思います。
○楢崎委員 初めからそんなに悲観的なあれを出す必要はないじゃないですか。一生懸命やりました、しかしこういう壁がありました。具体的にそれは後でおっしゃることであって、ぜひひとつ全力を挙げて解明してもらいたい。よろしゅうございますね。もう一遍。
○倉部政府委員 私どものできる範囲で努力したいと思います。
○楢崎委員 終わります。
     ――――◇―――――
○塩谷委員長 次に、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。
 井上一成君。
○井上(一)委員 私は、機会あるごとに、世界のすべての国からなくすべきは核と差別であり、守るべきは平和と人権であるということを強調してまいりました。そして、そのこと自体を私の政治理念として今日まで進んできたわけであります。そういう私の強い信念の中から、いま審議をなされております国際人権規約の批准、承認を促進していきたいという一員として、昨年の五月三十日、国連の総会において園田外務大臣がみずから署名をなさってこられた、そのことについて、評価をいたすわけであります。同時に、部分的に、残念なことではありますけれども、三つの留保がなされておるということについても、可及的速やかな留保解除に努力をすべきであるということも政府当局に強く要望をする次第であります。もちろん、この条約の中身についてはこれから逐一逐条審議を私なりにもいたしますけれども、ともあれ、条約の精神、そして人間の権利保障ということについては、どんなに難儀な、むずかしい問題があろうともぜひ保障していくべきであり、そのこと自体が一つの政治理念であってほしい、私はこういうふうに考えるわけです。まさにもう字句の定義の時代は終えたと思います。むしろそれを実践の時代に移してもらいたい。そして、実践の時代に移すことが今回の批准を求めることに踏み切られたことだと私は理解をいたします。なかんずく平和と人権という問題については、私もこれまた園田外務大臣には機会あるごとに質問を通して申し上げております。世界の平和を維持するためにも、わが国は平和憲法を持つ唯一の国家として、永世中立、平和宣言をいち早く態度表明をすべきであるということを私は申し上げてきました。あるいは人権にかかわる基本的な法律、もちろん憲法の中において明確にされておるわけでありますけれども、人権基本法というものも、この機会に改めてその取り組みを進めるべきである、私はこういうふうに考えるわけであります。外務大臣にはしばしば私なりの見解を申し上げておるので、ここであえて深くお尋ねをすることは、何というのでしょうか、もうわかり切った、あるいは外務大臣のお考えは十分理解をしているつもりではありますけれども、あえてこの国際人権規約の精神を、いつ、どんなときにでも、いつまでも尊重し遵守していくんだという御決意、御意思の確認、そして、先ほど申し上げました部分的な留保を含めた足らざる点を一日も早く補っていく、あるいは至らない部分については、それを至らしめるべき努力をするという御決意のほどをここでお示しをいただきたい、確認をし合っておきたい、このように思います。
○園田国務大臣 人権というものが大事なものであり、国の政治の基本であるという考え方、これに基づいて人権規約というものを一日も早くやれという井上委員の熱心な御議論と御意見は終始承ってきたところでありまして、人権規約が国会提出の運びになりましたのも、これまた井上委員の非常な御努力があったと感謝をいたしております。人権規約というものと、それから世界の平和と安定の基礎はこの人権保障であるということは、全く御意見のとおりであります。ただし、複雑な国際情勢、激化する今日の段階では、永世中立ということについては、社会党のあなたと私は若干見解を異にするものでございます。
 人権基本法というお話がございました。卓抜した憲法とそれに基づくそれぞれの国内法の状況から、別個の立法を要しないとは考えますものの、社会情勢の推移等からは、将来の問題として、その御提案を意識しながらこの御提案は検討してみたいと考えております。
 なおまた、人権規約提案についていろいろ留保事項があるわけでありまして、これは短期間にまず国の政治の柱として人権規約を打ち立てることを早くやらなければならぬ責任であると感じて、関係各省と調整に努めたわけでありますが、この調整に時間をとりまして留保事項がいろいろあるわけであります。しかしながら、この留保事項というものは、個人の持っている基本的な問題、こういうことから考えたら、やはり社会の必然性としては一歩一歩これを外していって完全な人権の基本を打ち立てることが大事であることはお説のとおりでありまして、そういう方向に一歩一歩努力をしたいと考えております。
○井上(一)委員 外務大臣がいま、一歩一歩という御発言があって、充足をしていきたいという決意については十分わかりました。
 前後するわけでありますけれども、わが国の憲法がその前文で諸国民との友好と連帯を高らかにうたっている、あるいは平和を国是としていくのだ、そういう観点からしても、B規約の四十一条及び選択議定書のいずれも宣言なり批准をすべきであった、これがなされていないということは、わが国において他国にいわゆる知られたくない人権侵害が存在していると思われることになるのではないか。また、国際連帯の精神を踏みにじる懸念もあるのではないか。そういうことを考えれば、先ほど指摘をした留保の問題と、そしていま私が指摘をいたしましたB規約四十一条及び選択議定書も、一日も早い、率先をした宣言なり批准をわが国がとることを私は強く要望しておきたいと思うのであります。できれば、このことについても、留保部分と同じように一つずつ問題の解決に努力をしていただける御意思をここで確認しておきたいと思います。
○園田国務大臣 ただいまの御発言は必然性であって一つの方向でありますので、運用の例を見ながら逐次検討していきたいと考えます。
○井上(一)委員 さて、労働大臣なり総理府長官に御出席いただいたわけでありますので、いま外務大臣からは、改めて外務大臣の意思を確認させていただきました。国際人権規約を批准するべき政府当局がとられた手続、何ら変わることはないと思うのでありますけれども、ここで両大臣に、この条約を尊重、遵守していくという御意思を念のために御質問申し上げて、お答えの中で確認をしてみたいと思います。
○三原国務大臣 お答えをいたします。
 外務大臣の御意見と全く同じ考え方なり姿勢でおるわけでございます。御了承願いたいと思います。
○栗原国務大臣 私ただいま参りまして、ちょっと井上委員のお話を聞いたわけでございます。私も同感でございまして、日本の憲法というのは平和憲法でございますし、人権も尊重するということは政治の基本的な姿勢でなければならぬと思っております。したがいまして、いわゆる国際人権規約につきましては、私もその重要性を十分認識しておりますので、御提案の趣旨に沿うようにいろいろと積極的に施策をしてまいりたい、こう考えるわけでございます。
○井上(一)委員 わかりました。いまの御答弁を私は信頼申し上げて、人権が保障され、平和が守られるようにお互いに協力をし合っていきたい、こういうふうに思います。
 さて、総理府長官、まとめてお答えをいただくのはどうかと思うのでございますけれども、今日のわが国の社会における人権侵害の事実を、総理府長官として掌握されておるというか、承知していらっしゃる具体的な事例を挙げて、その原因がどこにあり、そしてその事例を解決すべきどのような対策、努力をなさっていらっしゃるか、少しお聞かせいただきたいと思います。
○三原国務大臣 私が所管する事項について申し上げたがよかろうと思いますので申し上げたいと思うのですが、第一には同和問題でございます。
 わが国における基本的な人権問題として同和対策の問題があるわけでございます。私の郷土福岡県におきましても問題がございまして、私の政治生活の中におきましても幾多の事例を持っておるわけでございます。したがって、この問題につきましては、積極的に対処してまいりたいと思っておるところでございます。
 次に私の関係する児童の問題、これも具体的な例は幾つもあるわけでございましょうが、今日におきまする青少年の自殺あるいは非行等の問題も、深く掘り下げてまいりますればそうした問題に関連をすると思う点もあるわけでございます。あるいは母子家庭の問題でございまするとか、貧困家庭の問題でございまするとか、そういう家庭における児童のことを考えてまいりますれば、国の子供として貧富の差なく対処してまいらねばならないというような事象を幾多見るわけでございまして、こういう問題がやはり問題だと思うのでございます。
 その他、老人、婦人、身障者の問題等、私の関係する担当事項におきましても、日常の生活の間において幾多の問題を見聞するわけでございまして、こういうような問題等考えてまいりますれば、先ほど委員御指摘のように、差別的な事態があってはならぬ。それは基本的に人権に関係をし、平和に関係する問題だと思いまするし、基本的な施策の問題であると思うのでございまして、そういう点で将来、誠意を持って積極的に対処してまいるべき問題であると受けとめておるところでございます。
○井上(一)委員 具体的な事例という中で、同和問題なり児童の問題について大枠のお答えがいろいろあったわけですが、そういうことを含めて、やはり完全批准へ努力することがそういう対策にも通ずると思うのですよ。そういう意味では、留保をつけたということには、まあ一定の時期はやむを得ないということも言われておりますけれども、留保をつけるということはそれだけ対策がおくれる、解決がおくれる、対策が行き届かないということになるわけです。もう一度総理府長官に伺いますけれども、完全実施へ努力することが本来の本意であるというふうに私は思うのですが、これについては御異議ございませんね。
○三原国務大臣 本日の御提案になっておりまする条約との関連におきましてどういう点が特に関連をするかということでは、主としてA規約の事項等で留保になっておりまする公の休日の問題、同盟罷業権に関する規定の問題、消防職員の問題等があるわけでございます。こういう点につきましては、先ほども申し上げましたように、私は、できるだけ早期に留保事項が解決できることに誠意を持って努力すべきである、そう考えておるところでございます。
○井上(一)委員 全くそのとおりでございますので、政府当局においては、長官のおっしゃるように、速やかな留保解除に向けての努力を私は強く要望しておきたいと思います。
 それでは、条約それ自体について、条文を追って逐一質問をしていきます。
 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約を略させていただいて、A規約に関してという表現で質問をいたします。市民的及び政治的権利に関する国際規約についてはB規約という形で質問をいたします。
 まずA規約に関して、第二条の一で定められた漸進的に達成すべき立法措置に該当するものを具体的に列挙していただきたいと思うのであります。なお「漸進的」とはどの程度の期間を想定していらっしゃるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
○賀陽政府委員 お答え申し上げます。
 まず第一に「漸進的」の意味でございますが、これは英訳でも「プログレッシブリー」という言葉を使っておりますように、絶えずたゆまなき前進をするということでございます。期間につきましては、特定のことはございませんけれども、かなり加速した熱意を持って措置を進めていくということがこの言葉の中にはあらわれておるように存じておるわけでございます。
 それから、漸進的なプログラムと申しますか、そういう点でございますが、これにつきましては今後ともさらに検討を進めるべき問題であると存じますけれども、井上先生がおっしゃいましたA規約についてはその九条の社会保障の外国人への適用の問題、それからやや細かくなりますけれども、A規約十一条の公営住宅の外国人への適用、A規約六条の弁理士資格の外国人への開放、さらにB規約に移らしていただきますと国家賠償法の相互主義の問題、そういったものに取り組んでまいる必要があるかと思います。また、A規約七条の賃金以外の男女平等の問題も一つの問題点であろうかと存じておりますし、さらには同和差別の地名総鑑の問題、そういった点についても真剣に取り組まなければならない、かように考えております。
 以上、申し上げました点は、やや短期、中期的な問題点でございますが、さらに中長期的に目を向けますと、後ほどまた問題点の御提起があるかと存じますけれども、B規約二十条の戦争宣伝の禁止あるいは憎悪等の唱道の禁止については、やや長期的な視野になると思いますけれども、事態の推移を踏まえてこれまた積極的に検討してまいる必要があるかと存ずる次第でございます。
○井上(一)委員 第二条の2で「いかなる差別もなしに」権利が「行使されることを保障することを約束する。」こういうことが明確にうたわれているわけです。これは同条の、第二条の1における漸進的に達成されるといういまのお答えの中で継続的に充足していくのだ、もちろん不断の努力の中から継続的に、さみだれ的ではないのだというお答えがあったわけですけれども、むしろもう一歩前進した形で自動的に実施されるべきではなかろうか、私自身はそのように理解をするわけなんです。そして、自動的に実施されるべき対応策として、それぞれにかかわる国内法が充足されていく、こういうふうに考えるわけです。この点についても、私はそういう理解をしております、そういうことで取り組んでほしい、こういうことを申し上げておきます。
 それから、同じくA規約の六条の2で「完全かつ生産的な雇用を達成するための技術及び職業の指導及び訓練に関する計画、政策及び方法を含む。」措置を行わなければならないとうたわれておるわけであります。そういう意味でこの条約批准に際して労働省はこの六条の2にかかわる対策を十分手だてをしていらっしゃると思いますけれども、念のためにこのことも聞いておきたいと思います。
○関(英)政府委員 職業訓練に関しましては、雇用問題として最も重要な手段でございますので、職業訓練法に基づきまして職業訓練の基本計画というものを策定いたしまして、その整備充実を図ってまいっておるところでございますが、先ほどの国会においてもさらに職業訓練法の改正に努めまして、より一層時代に沿った訓練を進めてまいる、こういうことに努めているところでございます。
○井上(一)委員 できればできるだけ一つの例を挙げて、具体的な事実で答弁をしていただきたい。
 では私の方から申し上げましょう。いま全国で大工さんの平均年齢は何歳か御承知ですか。
○関(英)政府委員 ちょっといますぐにはわかりかねます。
○井上(一)委員 それじゃそのような技術を修得する技能訓練校、職業訓練校は全国にどれくらいの施設があって、そこでどれくらいの人が技術を修得しているのですか。
○守屋説明員 公立の職業訓練施設といたしましては約四百の訓練校がございます。そのほかにも、御承知かと思いますが、事業内職業訓練という形で、これは大体大工の職種が非常に多うございますが、こういう形で訓練をやっております。
 その中で、養成訓練につきましては、ラウンドナンバーで約五万、そのほかにも離転職訓練、いわゆる中高年齢離転職者を中心にいたしました能力再開発訓練と言われる訓練の種類で、約七万数千の訓練をやっております。このほかにも在職労働者を対象にいたしまして向上訓練という形で約十万、以上のような形で公共職業訓練施設においては訓練をやっておりますが、そのほかに事業内につきましては補助等の形をもちまして約七万の訓練をやっております。事業内につきましては大体その大半は建設関係というように御承知いただければいいかと思います。
○井上(一)委員 その事業内における七万という数字ですけれども、私の承知しているのでは、三千万労働者の中で建設産業に従事する人たちは約四百八十万人くらいいらっしゃるというふうに把握しているんですよ。そして、大工さんの平均年齢は四十三歳見当なんですね。いわば高齢者、中高齢者に類する人たちが多い。それから、若者がみずから技術職を身につけるための機会は非常に狭いわけなんです。
 雇用の創出だとかあるいは公共事業の拡大投資だとかいろいろいいことを言われたって、実際問題としてやっていることはどういう実情であるかということをぼくは聞きたかったわけです。こんな実情では、人権規約を批准したときに、さらに新しい職業の機会均等を保障していくんだという取り組みにならぬのではないだろうか。私は一定の危惧を持つから、これをあえて条約審議の中でお尋ねをしたわけです。
 どうなんですか。もっともっと実情というものを、ただ単に公的機関で四百あるいは離転職の形で七万だとかいう数字を挙げていらっしゃいましたけれども、そういう人々に対しての具体的な政府自身の取り組みの一つとして助成措置はどうしているのですか。あるいは訓練校に対する育成にどれだけの予算を割いていらっしゃるのですか。これで十分だとお考えになられるのでしょうか。
○守屋説明員 予算につきましては、私どもも現在の状態で十分というようには決して考えておりません。年々その増額に努めております。今後ともに実際の訓練ニーズに即応するような形で、また職種につきましても、先生御指摘のような建設関係職種につきましては必ずしも訓練施設の中でやるというだけではなくて、民間の各種教育訓練機関に委託するという形等をとりまして、今後ともに必要なニーズに合うように、より一層訓練内容の充実強化に努めてまいりたい、かように考えております。
○井上(一)委員 さらに、やはりそういう中から身につけた技術が職業に結びつくように十分な場をつくっていかなければいけない。私は、これはここで初めて申し上げるわけじゃないのですけれども、失業者が百数十万おるんだという今日、完全雇用対策、いわゆる完全雇用を達成するためにはどうしていったらいいのかという一定の具体策を持つべきだと思うのです。あるいはそういうことに対する検討を加えるべきだと思うのです。とりわけこういう国際人権規約という内外人に対する労働の権利を保障していくという機会をとらえて、やはり私は前々から申し上げているように、完全雇用を達成するという一つの施策を実らさなければ、この条約が批准され、承認されたって、中身というものについての触れ合いがなくなっていくと思うのです。そういう意味で付加価値に応じた義務づけも一定の割合で企業にすべきではないだろうか、あるいは週休二日制の問題だとか時短の問題だとかいろいろなことがありますけれども、労働省がやはり、そういうことで働く権利というものを十分保障していくその受けざらをつくるべきである。それがいま具体的な一例として建設産業労働者に対する私の一つの提言なのです。たとえば、建設産業の大手企業に対してみずからの抱える社員として、いわゆる建設産業労務者、技術者は、必要とする人員のどれぐらいの割合で持っているかということは、労働省、承知していますか。
○守屋説明員 先生御指摘のように、建設業では重層下請という形をとっておりまして、確かに元請で持つ労働者の数というのは非常に少なくて、下請さらには再下請という形で、おっしゃるような、ある意味では非常に不明確な、といいますとちょっと言葉に語弊があるかもしれませんが、直用という形じゃない形で多くの者が雇用されておるという現状は私ども十分認識しておりまして、これにつきましては、職業訓練の面のみならず、あるいは労働基準その他の面でもそれぞれの施策は講じてきておるわけでございます。
○井上(一)委員 このことについて余り時間が割けませんけれども、いま申し上げたようにやはり元請から下請と、そしてさらに孫請という形の中で下へおりればおりるほど、そこに働く人たちの職業に対する安定度が薄まっていくということも事実なんです。だから、十分そういう点を配慮しながら労働の権利保障について格段の努力を願いたい、こういうふうに思います。
 なおさらに、私は六条の一、職業選択の自由について、これはもう指摘すればきりがありません。いろいろな意味で職業選択の自由がいま十分保障されておりません。このことについては、当然職業選択の自由について十分な保障をする取り組みをなさっていらっしゃいますね。
○細野政府委員 お答え申し上げます。
 労働省としましては、就職の機会の均等を確保するということが労働省の職業紹介その他の雇用関係を通じましての中心的な課題であるというふうに考えておりまして、その実現のためにいろいろな施策をきめ細かく実施をしておる状況でございます。
○井上(一)委員 いわゆる労働によって不利益をこうむら、ないような手だてを十分されておりますね。
○細野政府委員 政府のやっております政策手段自体としましては、御指摘のように就職上の差別のないような手段を講じておりますが、しかしこれが完全に徹底しているかどうかという点になりますと、いろいろと遺徳な問題が現に生じているという毒のも事実でございまして、その政府の方針自体を今後とも一層徹底をさせなければいかぬ、こういうふうに考えているわけでございます。
○井上(一)委員 私は、これは労働省だけの問題ではなかろうとも思うのですけれども、政府の方針というのはすでにこういうことを絶対的保障をしようということで条約審議に入っているのですね。三大臣の確認をする意味でのお答えも、いまあなたはそこで聞いていらっしゃるわけなんです。だから私からすれば、むしろ職業選択の自由が十分でなかった分野、いろいろあります。国家公務員、地方公務員、いろいろな意味から、分野を通して今後はそのような自由を十分に保障していきます、そういう取り組みをしますということのお答えが欲しいわけで、当然そうあるべきだと私は理解しているのです。そういうことで、私の理解をしている、そのことでよろしゅうございますか。
○菅野政府委員 国家公務員という話が出ましたので、私からお答えをしたいと思います。
 国家公務員については、もちろん公務員法におきましてそういうことがうたわれておりますし、先生の御指摘のことはまさに金科玉条でございますので、そういうふうに取り組んでおりますし、今後とも努力をしてまいりたいというふうに思います。
○井上(一)委員 さらに私は第七条の(c)項、これは少し――文部省はお見えですか。それでは、この(c)項に「すべての者がその雇用関係においてより高い適当な地位に昇進する均等な機会」を保障すべきとされているとうたわれております。このことについては、もちろん遵守されるわけですけれども、文部省はこのことについては十分な配慮がなされていると私はうかがえない部分があるので、あえて文部省の見解をここで尋ねたいと思います。いかがでございますか。
○篠澤政府委員 具体的な事例を御指摘いただきたいと思います。
○井上(一)委員 いやあ、これは恐れ入ったね。私はあえて私の方から具体的事例を申し上げたくなかったわけです。そしてむしろ文部省がそういうことに早く気づいてほしかったということなんです。今回文部省がまとめられた外国人の教員任用特別措置法案、これはまだ案でございますから正式に審議の対象になっておりませんけれども、その中で、正式に採用された外国人教員に対して、管理職である学長、部局長や評議会、人事委員会の構成メンバーにはなれない、教授会メンバーにはなれるが、教育公務員特例法で定められた人事をめぐる議決には加われない、という制限を設けたのが特徴だと実は報じられておるわけです。それが事実であれば、これは全くもって第七条の(c)項を無視した無法な法案だ。いまこちらでこういう、審議をしているさなかこういうことが出た、こういうことなんです。このことについて、どうなんですか。
○遠藤説明員 お答えいたします。
 ただいま先生御指摘のございました新聞報道に書かれておりましたのは、私どもが内々で中間的に検討いたしておりましたもので、中間のときにはそのような議論がなされたことはございますけれども、いろいろ問題も多いということで、そのような案を公式に決めたことはございません。
○井上(一)委員 私は、中間的にせよこういう発想が文部省の中にあったという事実について、国際人権規約の条約の趣旨というものを十分文部省では理解をされてなかったのではないだろうかと思うのです。
 ここで改めてお尋ねをいたします。決してこの(c)項に反するような措置はとらないということをお約束いただけますね。
○遠藤説明員 明文の規定はないけれども、公務員に外国人を採用する際に当たりましては、公権力の行使または公の意思形成に参画するような職につくことはできないという公務員関係の法理があるというふうに解されておりまして、それとの調和と申しますか、これら人権規約等々との関係につきましてなお検討をいたしておるところでございます。
○井上(一)委員 おかしいじゃないの。いま国際人権規約を審議し、そしてこの七条の(c)項も明確に別に留保してないのですよ。これは政府当局がちゃんと保障しますということで、さっき外務大臣も明確に言われたじゃないですか。文部省はこれはどういうふうにお考えなんですか。文部省はこの、項については堪忍してほしい、こういうことですか。
○遠藤説明員 現在、政府部内において統一して考えております公務員に関する法理というものと外国人の雇用の問題というものの限界と申しますか、その調和という問題についてなお検討いたしておるところでございます。
○井上(一)委員 この国際人権規約というものは、すでにそういうものが全部なされた段階で国会に上程されたわけなんですよ。いまのあなたのお答えでは、今後検討していくんだとか、いましているんだとか、そういうことは本来おかしいわけです。行政府が議会に議案を提案するときに、まだこの部分については調整がついておりませんという形で出すのは全くもってナンセンスで、おかしいのですよ。私はそういうことがあってはいけないので強く指摘をしたわけですけれども。あなたはこういうことは公務員法に云々だとか言って、今後調整するのですというようなことでは、これは審議できないじゃないですか。この点については、私は文部省のちゃんとした見解を改めていただくということにしたいと思います。
 さらに、労働省にもう一つ。皆さん遅くまでそこにお座りをいただくわけですけれども、私もこの問題、国際人権規約のそれぞれの条項一つ一つが大変大切であるという中で真剣に取り組んで質問をさせていただくので、そういう意味でひとつ皆さんの方も私の質問を十分理解してほしいと思います。
 男女差別という問題がありますけれども、女性のお答えになる方がここに一人もいらっしゃらないわけです。私は女性問題についてもやはり女性自身の受けとめるそのお考えを聞きたかったわけですが、きょうはどなたもいらっしゃらないので、これを見てもやはり役所の中における目に見えない男女差別があるのではないかというふうに思うのです。これは後でまた触れたいと思います。
 さて、次に第七条の(d)項「公の休日についての報酬」を保障すべしとの条項を留保されたわけです。この「公の休日」という意味、「公の休日」とは一体何を指すのか、こういうことを聞いてみたいと思うのです。
 国民の祝日に関する法律というのがわが国にあるわけですね。その第一条において「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、」そして第三条で休日と定めたわけであります。そういう法の趣旨を十分に生かすという意味から、私はこの留保されたものはできるだけ早い時期に、これは国民こぞって記念するのだ、祝うのだ、感謝するのだ、それはみずからの意思によって休むのではなく、休ませている側が報酬の保障をしても当然ではないだろうか、こういうふうに思うのです。留保している国が何カ国くらいあるのか存じませんけれども、わが国はそういう点ではこの留保もできるだけ速やかに解除すべきだと思うわけです。少しこの点に触れたお答えをいただきたいのですが。
○賀陽政府委員 お答えを申し上げます。
 「公の休日」の定義は、国民の祝日ということでございまして、この点について留保をしている国について御質問がございましたが、デンマークとスウェーデンが留保をしておるわけでございます。
 留保の理由といたしましては、先生御了知をいただいておるところと存じますけれども、国民の祝日に対しまして賃金が払われるという全体的合意というものは現在の情勢からは成立していないのではないかというふうに、現在の情勢に着目いたしまして、今回この条項を留保したわけでございますが、もちろん、日曜日とかその他の週休日はパブリックホリデーでございまして、この(d)項の「休息」に含まれるものでございます。
○井上(一)委員 この点も、できるだけ早く留保を解除すべきである、こういうふうに思うのです。
 次に、第八条の1の(d)「同盟罷業をする権利」、ストライキ権についても留保をされているわけですが、国際的な趨勢から見ても、この取り扱いはきわめて後進的だ、そして留保それ自体は非常に遺憾である、私はこういうふうに思います。これまた労働基本権の保障、あるいはそういう観点から一日も早い留保解除に踏み切るべきである、私はこういうふうにも考え、強くその点も要望しておきたいと思います。
 なお、2で警察の構成員に消防職員を含むという解釈をわが国はしているわけであります。このことは、ILO条約勧告適用委員会の報告なり確認などの過去の歴史的な経過の流れから見ても非常に不当であるということです。一九四八年に消防組織法によって警察機構と分離をしたわけであります。それから七二年の六月、第五十七回総会でILO条約の勧告適用専門委員会から報告がされて、消防職員は警察の範疇に含まれずと明言をされている。あるいはさらに七三年の六月日本政府に消防職員の団結権保障の処置を希望するという要望がなされ、七七年の六月には消防と警察を同一視することはできないと確認がされているわけです。
 そういうことから考え、国際的な世論、国際的な合意というものからも十分理解ができるように、政府当局の、「「警察の構成員」には日本国の消防職員が含まれると解釈するものであることを宣言する。」そういうような留保及び解釈に関する宣言については非常に誤った考え方であります。これは当然改めるべきであります。もちろん当初に申し上げたように、この留保については速やかな解除をすべき努力をするという三大臣の意識が確認されましたから、あえて私は、一日も早くこの留保を解除すべきことを特に強く要望をいたしておきます。
 さて、続いて第九条、もちろんこれは「社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」ということが明確にされているわけです。それで、社会保障の水準を高めることは漸進的であってもよいが、その適用範囲については、二条の2の定めからいっても、漸進的に拡大するものであってはいけない。いわゆる内外人平等の原則、この際日本国民が適用されている水準にまでは批准とともにすべての在日外国人、特に在日朝鮮人、在日韓国人に対して適用される必要があるのではないか、当然適用されるべきだということであります。具体的にすぐにその適用に踏み切る、あるいは適用に処するその具体的な社会保障の事例を私は厚生省から承っておきたいと思います。
○大和田政府委員 お答え申し上げます。
 社会保障の中では健康保険であるとか厚生年金保険、こういったいわゆる事業所を対象といたしますところの社会保険、社会保障制度があるわけでございますが、これにつきましては外国人といいましても日本人と同様の適用をしておる、いまお尋ねの外国人を適用除外しておるという制度は、国民年金それから児童扶養手当、特別児童扶養手当あるいは児童手当、こういったものが対象になるというふうに考えられるわけでございます。
○井上(一)委員 政府の取り組みの遅さ、あるいは至らなさを充足するためにそれぞれの出先というのでしょうか、地方というのでしょうか、地方自治体では手だてをしているわけなんです。いま児童手当だとかそれらに対する社会保障は十分でない、国民年金等については十分でない、こういうことなんです。いま実際地方自治体でどれぐらいの社会保障にかかわる制度、条例がなされているか、厚生省は御存じでしょうか。
○大和田政府委員 ただいま把握しておりません。
○井上(一)委員 「社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める」のだと、この第九条が明確にされておるわけなんです。この条約を批准するに当たっては外務省は当然厚生省とも話し合いは持たれたと思うのです。その折に、いま指摘をしたように、対象の範囲を拡大する、あるいは当然その中に入っていくそういう人たちに与えられるべき制度というものは、これは把握しておかなければおかしいと思うのです。それは存じませんということでは、私は答えにならないと思うのですが、いかがなものでございましょうか。
○賀陽政府委員 これは御協議申し上げている段階におきまして先生の御質問にお答えすることになると存じますが、厚生年金保険法、健康保険法、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、老人福祉法、伝染病予防法、結核予防法といったような諸般の法律について現在状況として担保されておるということでございまして、ただ繰り返しになりますけれども、合理的理由に基づきまして漸進的に今後充足してまいる問題が先ほど厚生省の方から御指摘があったものと考えております。
○井上(一)委員 私はここに九十七項目――その他は別にいたしまして、九十七項目の各種制度の実例を持っているわけなんです。国民健康保険、国民年金、福祉年金、公営住宅入居承認だとか児童手当、身体障害、児童福祉金、遺児福祉金、養老年金、これは数えれば九十七あるわけです。そういうことについて、これはB規約の二十六条にも、法のもとの平等を保障する具体的措置を考えていかなければいけない一つの問題もあるわけなのです。
 私の申し上げたいのは、そのように地方自治体が、この批准を待たずに先進国の経済大国を自負するわが国に居住する外国人に対して、それに見合った条例制定をしてきた、こういうことで努力している。にもかかわらず、政府自身がそのことに十分な実情把握がなされていないというところに少し不満を持つわけであります。
 その一つの具体的事例として、十一条の一に「食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準」を確保するために適当な措置をとらなければならないと明記されているわけです。特に、住居について、公営住宅に入居のいわゆる基準の中に含まれていなかった、入居についての内外人平等の原則というものが十分保障されていなかった、こういうことなんです。そういう意味では、今後やはりそういうことに十分な取り組みをしていかなければいけない、こういうふうに思うのです。
 さらに、これは十二条の2になるわけですけれども、「死産率及び幼児の死亡率を低下させるための並びに児童の健全な発育のための対策」というものを措置しなければならない。当然このことについてはもうすでに一定の措置を講ずるべき対策は持っていらっしゃるんでしょうね。
○賀陽政府委員 十一条、十二条についての御質問でございまして、十一条につきましては、私から申し上げるまでもないことでございますが、「相当な生活水準」と申しますか、定義は基本的には各国の判断にゆだねられると存じますけれども、やはり憲法二十五条の「健康で文化的な最低限度の生活」をかち取る権利ということを客観的な基準にしながら努力をすることが条約の締約国に求められていると存じます。
 十二条につきましては、憲法二十五条の先ほど申し上げました基本的な立場というものからのプログラム的な規定であると存じますけれども、十二条につきましても、これはこの(a)、(b)、(c)、(d)その他の措置について完全を期するということで今後とも努力をするように、また外務省といたしましても各省とも御連絡をしてまいりたい、かように考えております。
○井上(一)委員 私は厚生省にお尋ねをしたいと思うのです。
 こういうことに対する施策、手だてが講じられているでしょうねということですので、具体的に講じられているあるいは講じようとお考えになっていらっしゃるそのことについてお答えをいただきたい、こういうふうに思うのです。
○大和田政府委員 お答え申し上げます。
 母子保健、いわゆる幼児の死亡率の低下、児童の健全な発育のための対策というならば母子福祉対策であり、母子保健対策であろうと思いますが、これにつきましては私ども特に国籍を問わず同様の対策を講じておるというふうに考えておるわけでございます。
○井上(一)委員 それじゃお尋ねをいたしますけれども、乳幼児に対する六ヵ月健診というのは御存じですね。私はこのことは死産率だとか幼児の死亡率を低下させるための一つの非常に大きな取り組みだと思うのですよ。そういうところにこの六ヵ月健診の意義を私は持っているのですけれども、そういうことを義務づけたりあるいはそれに準ずる取り扱いをされるとかあるいは公費負担ということに踏み切られるわけですね、そういうことですね。
○大和田政府委員 お答え申し上げます。
 一歳六カ月児健康診査、これを実施をしておるわけでございます。
○井上(一)委員 一歳六カ月あるいは三歳児健康診査、これもあるのですよ。そういうことも当然あるのです。六ヵ月というすでに先行している自治体が随所にあるわけなんです。そういうことに対しては、あなた方はいままで何ら制度に対する助成対策を講じようとしなかったわけなんです。それで私はあえて、もちろん日本国民あるいは日本に住む外国人あわせて幼児の死亡率を低下させるのだ、健全な児童の発育に寄与するのだという一つの制度、政策、そういうものの中で、六カ月健診、そういうものの費用を当然公費で見ていくのでしょうね、またさらに、いままでそういうことについて先取りというのでしょうか、先行した地方自治体に対してはさかのぼって応分の助成措置を講じても私は決してし過ぎたとは思わないのですけれども、単年度会計の中で仕組まれていく予算執行に対して前年度分ということは申し上げませんけれども、この条約が批准をされたらやはりそういう政策についても速やかな手だてをするのでしょうねということを聞いているのです。どうなんですか。
○大和田政府委員 お答えいたします。
 特に公費負担云々と申しますよりも、むしろ先ほど申しましたような母子保健対策の推進強化、これはすでにかなり推進強化をしておりまして、その結果、たとえば乳児死亡率につきましても、昭和四十年一八・五%、これが五十一年では九・三%というような効果を見ておるわけでございまして、そういったようないわゆる母子保健対策につきましては今後とも推進をしていくということはお答えできるわけでございます。
○井上(一)委員 このことについてもまだ不十分だと思うのです。決して母子保健対策だけですべてが満たされるのだということではありません。やっぱり医療の水準が向上していったとかあるいはいま言う保健衛生の面での啓蒙が寄与したのだとかいろいろなことはあるでしょう。そういうことはありますけれども、私の指摘している六カ月健診なりあるいは三歳児健診、そういうことについての取り組みをやっぱりしなければいけない、こういうことなんです。さらに、病気になってもすべての者に医療あるいは看護を十分確保するような条件をつくらなければいけないということも続いてうたわれているわけなんです。だから、すべてをすぐに五十四年度にするのですとかあるいは五十五年度に完備するのですということを私は申し上げているのじゃなくて、当然そういうものをこの条約批准と並行して政策の中に入れるのでしょうねということを言っているのです。そんなことは考えやせぬのだというならそれはおかしいと思うので、あえてぼくは申し上げているわけなんです。どうなんですか、もう一度。不備である社会保障、そういうことについて十分充足すべき努力をなさるお考えを持っているのか、いや、現時点でいいのだというお考えなのか、どちらなんですか。
○大和田政府委員 この点につきましては、先生おっしゃいましたように、母子保健だけでなく、ほかの制度などにつきましても、乳幼児死亡その他いわゆる国民の健康という観点からの対策、これは当然進めていくということを申し上げられるわけでございます。
○井上(一)委員 そういうことをちゃんとやっぱり順を追って話さなければだめですよ。一つこのことをやったからすべてが完全に解決するというような社会の問題解決はあり得ない。いわゆる制度それ自身は社会に起こる問題を解決するためにその必要性に応じて生まれてくるのでしょう。制度をつくったから問題が起こるのじゃないのですよ。そういうことでしょう。社会の制度それ自身、全部いままでから、これからもそうなんです。これから起こるということは、国際人権規約を批准すれば、内外人平等の原則に立ち、そして児童に対する十分な保護をしていかなければいけない、そういうような観点から諸制度をつくり出していかなければいけない。大変失敬な質問になりますけれども、国際人権規約、このことのいわゆる原点とも言うべき、発祥とも言うべき一番最初の時点は何だとお考えになられますか。
○大和田政府委員 私どもの行政のサイドから申しますと、福祉であるというふうに考えていいと思いますが……。
○井上(一)委員 それじゃ、福祉とは何なんですか。
○大和田政府委員 やはり国民の幸福というものに対する施策であると思います。
○井上(一)委員 私は、大変失礼だとは思うのですが、もう少し今回の人権規約、これは第二次大戦であれだけの、世界のすべての中で大きな犠牲を払ったんですよ。その中から大人の反省が次代の子供たちに対して、いわゆる生きることの権利さえ保障できぬような状態をつくったらいかぬということから、世界人権宣言というものが始まっているんですよ。そしてそれはただ単なる願望、願いだけであってはいけない、一つの約束事、一つの法律、拘束力を持たそうというところから国際人権規約というものが生まれてきたんですよ。そういう意味から、こんなことを尋ねるということは私は大変失礼だと思ったんですけれども、やはりそこを考えたら、時あたかも国際児童年なんです。一番弱い立場というのは子供なんですよ。児童なんですよ。弱い立場の人と言えば、すべて子供だと思うのです。そういう子供の、幼児に対するあるいは児童に対する十分な手だてというものは何ぼしたってし過ぎるということはないんですよ。金があるからやるというのは福祉じゃないんですよ。慈善なんですよ。哀れみ、そういうことの発想は金があるから。金がないからしないというのだったら福祉じゃないですよ。福祉というのはいま言われるように幸せだ、皆がそれぞれ幸せだというのは、生きていることの確認でしょう。こんなことをいまここで質問の中で申し上げたくなかったんだけれども。
 今回のこの厚生省の取り組みというものに私は大きく期待をしておったわけなんです。私はこの批准をだれよりも促進する一員として今日までやってきたわけなんですね。恐らく私自身も厚生省の取り組みに十分な期待をし、そして本当によくやっていただいたとお礼も申し上げたいくらいのことを思っておったんですがね。九十七も九十八もあるその一つ一つをここで申し上げる時間がないから、児童の問題に触れて申し上げたわけです。頭の中で理解をしても、あるいは知識を幾ら認識をされたって、吸収をされたって、生かせるようにしてくださいよ。それが本当に社会の中で生きているという事実を私は示してほしい。それがまさに国際児童年であり、そして今回の国際人権規約を批准するということの意義だと思うのですよ。そんなことがわからぬようで、この人権規約を批准するに際しての政府の取り組みを十分だとは言えませんよ。どうなんですか。
○大和田政府委員 先生の御趣旨を体しまして、私どもも社会福祉行政を進めてまいりたい、かように思っております。
○井上(一)委員 私はそういう意味でひとつ今後に期待をします。とりわけ児童の保護は、ただ単なる言葉のやりとりだけで終えてほしくない、こういうふうに思うのです。すでに保育所の問題についても私は指摘をした事例があるわけなんです。これは何も行政的な、財政的な面だけで指摘をしたわけじゃありません。保育に欠ける児童に対して十分な措置を講ずるのはだれの責任なんですか。十分な児童の発育を、発展を願うのはだれの責任なんですか。
○大和田政府委員 具体的には、第一次的にはやはり親でございますけれども、私どもといたしましては、総体の児童の福祉ということにつきましては国、これがやはり私どもの行政の一環として強く望んでおるところでございます。
○井上(一)委員 児童福祉法というものが制定されて明確にその一条と二条に記されているのですよ。そのことにいままでの国の政策が十分であったと言い切れるでしょうか。私はいまこそ、この国際人権規約を批准することを契機に大いなる反省を求めたいわけであります。十分でなかったという大いなる反省があってこそ、次への取り組みができます。そういう意味で、端的に保育行政一つをとらえていま指摘をしましたけれども、保育行政についても十分でなかったという反省が私は必要であると思うのです。どうなんですか、十分だったと言い切れましょうか。
○大和田政府委員 逐年鋭意努力をしてきた、こういうふうに申し上げるのが一番正しいのではないかと思います。
○井上(一)委員 努力はしてこられた、それは一定の努力はなさってこられたでしょう。しかしいま私の聞いているのは、十分であった、パーフェクトであったと言い切れないということでしょう。だからこそ今回のこの条約批准を契機に、より真剣に努力を傾注するのだという意欲とその意思を私は確認したいわけです。
○大和田政府委員 今後とも努力をいたしたいと思っております。
○井上(一)委員 さらに私は、第十三条の2の(b)、中等教育への無償教育の漸進的導入等により、すべての者に対する機会の付与をうたっている条項がここにあるわけですけれども、これは若干留保されたということで非常に残念に思うわけです。この中等教育は、私の見解では当然わが国における高等学校、高等教育を意味すると解釈をするのですが、それでよろしいでしょうか。
○篠澤政府委員 お答え申し上げます。
 十三条の2の(b)におきます種々の形態の中等教育と申しますのは、次の(c)との関連で読みますならば、わが国におきます高等学校、後期中等教育というふうに理解いたしております。
○井上(一)委員 私もそのように理解をするわけです。
 それで、公立高校に入ることができずにみずからの命を断っていく若者、青年がおる今日であります。非常に残念なことなんです。そういうことを考え合わせたときに、そういう不幸な事態の再発を防ぐためにもこの留保の一日も早い撤回を強く要望しておきたいと思います。
 さて、時間の関係で一応B規約の要点についても質疑をしておきます。
 B規約の二条の2で立法措置を求めている。そしてA規約についてはそのような条項がないわけでありまして、当然のこととしていわゆるB規約全文にわたって国内法の整備が必要になるというふうに私は理解をするわけです。とりわけB規約というものはA規約と異なって、漸進的に取り組んでいくのだということが明確にされておらないわけでありますから、逆に考えれば、B規約については当然自動的に必要措置がとられるのだというふうに私自身は解釈をするわけであります。もちろん、そのように憲法にも明確にされているというふうに思います。九十八条の二項等から考えても当然だ、こういうふうに思うわけであります。
 そこで、法務省に出入国管理令第三十九条の強制退去にかかわる質問をしたいと思うのです。
 このB規約の九条の3に「逮捕され又は抑留された者は、」「妥当な期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利」を持ち、「裁判に付される者を抑留することが原則であっては」ならない、こういうふうに明記されておるのですけれども、いま申し上げたように、出入国管理令においては強制送還を前提とした収容措置が講じられるように感ずるわけであります。これはあくまでも私の受けとめでございますけれども、本来はそうあってはいけない。当然釈放される権利あるいは裁判を受ける権利ということを前提にした取り組みでないといけないと思うのですけれども、この点についてはどういうかかわり合いがあるでしょうか。
○藤岡説明員 お尋ねの出入国管理令に基づきます外国人の身柄の拘束、いわゆる収容でございますが、申すまでもなく二通りございまして、そのうちの一つは、ある外国人が出入国管理令に定めてあるいわゆる退去強制事由に該当するか否かを審査してまいる上で、必要上本人の身柄を拘束する、収容する。私どもはこれをいわゆる収令収容、収容令書による収容と呼んでおるわけでございます。そして、その収令収容につきましては出入国管理令の明文上原則として三十日間、やむを得ない必要のある事由がある場合にさらに延長して三十日間、合計六十日間、こういう期限の定めがあるわけでございます。もう一つの方の収容は、恐らくこれが井上委員の御質問の点であろうかと推察するわけでありますが、先ほど申しました出入国管理令に定める退去強制手続を進めまして、ある外国人について退去強制事由に該当するということが確定、確認されました上で本人を強制送還する。強制送還をするまでの間、いわゆる退去強制令書の執行の一環として本人の身柄を拘束する、これを私どもは退令収容、つまり退去強制令書の執行としての収容、かように呼んでおるわけでございます。したがいまして、いまお尋ねの、いわゆるB規約の九条の三項との関連において申し上げますならば、第一の大前提といたしまして、申すまでもなくB規約の第九条の第三項は文言上明らかなように「刑事上の罪に問われて」云々ということでスタートいたしております。
 問題は趣旨であろうと存じます。この第九条の三項それ自体がいわゆる未決拘禁、つまり有罪であるか否かが確定するまでの間の未決の拘禁に関して、いわゆる妥当な期間内に釈放される権利、こういうことを言っておるのだと思います。仮に、趣旨のレベルにおきまして、先ほどの出入国管理令上の収容の問題を考えます場合に、いわゆる収令収容、つまり延長いたしましても、最大限六十日という方の収容は、これはこの趣旨のレベルにおきましても、B規約の九条三項に何ら抵触するものではない。しからば、もう一つの方の退令収容、いわゆる確定した人の強制送還までの収容でございますが、確かに退令収容に関しましては出入国管理令上、いわゆる国内法上期限の定めがございません。その意味において、お尋ねのB規約の九条三項によるところの原則、釈放される権利を定めた原則に抵触するのではないか、こういうことになろうかと存ずるわけでございます。
 問題は、退去強制令書の執行としての収容、退令収容の性質でございます。これは少し平たい言い方をしますと、ある国へ、原則としてその外国人の本国でございますが、本国へ送還するまでの収容でございますので、送還そのものがスムーズにてきぱきとはかどりますならば、場合によっては一週間ぐらいで収容が終わってしまうという場合もございます。ないしは強制送還などという日本の政府当局の手を煩わさないで、御本人が、私はそれでは自費でもって出ていきますということで、いわゆる自費出国をなさる場合であれば、確定した翌日にでも出ていくわけでございまして、さような意味合いで、本来刑事手続上の未決拘禁と性質は違いますし、いま申しましたような点から、何ら九条三項に抵触する問題はないはずである、かように理解をいたしております。
○井上(一)委員 そこで、次に第十七条の一項及び二項、「何人も、その私生活、」云々と、プライバシーの法的保護を十分に保障すべきである、保護を受ける権利があるんだとここでは定められているわけです。
 ここで、わが国における部落地名総鑑等による人権侵害は、現在事実として野放しの状態であるわけです。これは当然、この条約批准と同時に法的な措置が講じられるものと私は思っております。今日人権侵害の大きな事実の一つとして部落地名総鑑があるわけですけれども、これに対する取り組みについてここで聞いておきたいと思います。
○鬼塚政府委員 部落地名総鑑あるいはこの類似図書、同和地区の地名を具体的に記載しておりますいわゆる差別図書につきましては、従来法務省といたしましては、心理的差別の解消という啓発を中心にして当たっておったのでございますけれども、その過程におきまして、どうもやはり啓発だけでは十分ではないのではないか、こういうことを痛感いたしまして、すでに一昨年から、鋭意この問題について取り組みまして、何らかの法的規制が必要ではないかという観点で努力しているわけでございます。その過程におきまして、法的規制と言っても非常に広いものでございますので、とりあえずはこの部落地名総鑑のような差別図書を発行販売してこれでもうける、つまり差別を金もうけの種にする、こういう特に悪質なものについて何らかの規制ができないだろうかという観点で資料を集め、また問題点を検討して、鋭意詰めているわけでございます。ただ、詰めている過程におきましてまたさまざまの問題がございまして、それを一つ一ついま具体的に検討している段階でございます。
○井上(一)委員 法的規制を加えるという立場は変わりませんね。
○鬼塚政府委員 先ほど申し上げましたように、啓発だけでは十分ではないということでございますので、何らかの法的規制が必要だという考えは全く変わっておりません。
○井上(一)委員 当然そうあるべきだ、人権侵害の最たる部落地名総鑑を野放しにしておくということはわが国の憲法の意にも反しますし、国際人権規約を批准するに当たっても十分な対応とは言い切れませんので、いまのお答えのとおりにぜひ一日も早い法的規制を強く私からも要望しておきたいと思います。
 時間がありませんので、続いて二十条の問題に触れておきたいと思います。
 ここでは「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」具体的にどのような法律をお考えになっていらっしゃるのか、あるいは現在の法の中でその二十条の一項に当たる法律が十分備わっておるのかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。なお、戦争のための宣伝ということについてはどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、どういうものを指すのか、このことについても触れてお答えをいただきたいと思います。
○賀陽政府委員 お答えいたします。
 二十条につきましては、第一項の「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」これについての国内法がいかに担保されておるかという御質問でございますが、これは端的に申し上げまして国内法はございません。われわれといたしましての考え方でございますが、憲法九条の戦争放棄の精神がわが国としては広く受け入れられておるという状況がございますので、考え方といたしましてはいわゆる法律による禁止に事実関係は合致しておりませんけれども、憲法の基本的な立場が浸透いたしまして戦争宣伝行為というようなことが実際に行われることはほとんど考えられない。仮にかかる宣伝行為が行われたといたしましても、現状におきましては具体的な法益を害するということには至らないというように考えておるわけでございます。したがいまして、二十条につきましてはかかる状態において当面は十分であるということでございますが、同時に御批准をいただきました場合には、わが国としても新たに条約上の義務を負うわけでございますから、将来戦争宣伝行為による具体的な法益侵害の危険性が出てまいりました場合には、先ほど漸進的プログラムの中で御説明申し上げましたように、やや中長期的な問題とは存じますが、立法が検討されるべきではないかというのが私どもの考えでございます。
○井上(一)委員 さらに二項に差別、敵意または暴力の扇動の禁止について定められているわけです。ここでの国内法もまた現時点で整備されているのかどうか。整備がされていないとするならば整備をする用意をお持ちであるのかどうか、このことについてもお尋ねをします。それからさらに「憎悪の唱道」という表現がありますが、「憎悪の唱道」とは具体的にどういう形を指すのか。さらに先ほどの一項の中で、戦争のための宣伝ということについてはむしろ現時点では憲法九条だけで十分であるというような認識を持っていらっしゃるし、そのことについての対応については法律はないということです。戦争を賛美していくあるいはそういう一つの傾向、流れ、表現の自由だという枠の中でその道に流れていく潮流をつくろうとする、そういうことも広義の意味では「戦争のためのいかなる宣伝も、」という中に入るのじゃないだろうか、こういうふうに思うのです。戦争それ自体を美化していこうという風潮、そういうことについてここで明確に政府当局の考えというものも明らかにしてもらうべきではないだろうか、こういうふうに思うのです。いま申し上げた点について、もう少し詳しく二項の分ともあわせてお答えをいただきたいと思います。
○賀陽政府委員 二十条の第二項の国内法的担保の状況でございますが、これを読みますと大変長くなるのでございますが、その一部分だけを読ましていただきまして、あとはお手元に差し上げますので、ひとつごらんいただきたいと思います。
 行為の主体が個人であって、行為の相手方が不特定または多数である、被害者が個人または団体である、構成要件の該当行為として差別の扇動となる国民的、人種的、宗教的憎悪の唱道ということに関しまする現行法は一応これを整理してみますると、憲法十一条の基本的人権の享有、十二条の自由、権利の乱用の禁止、十三条の個人の尊重、幸福追求の権利、第十四条の法のもとの平等、第十九条の思想、良心の自由、同二十条信教の自由、同二十二条職業選択の自由、同二十四条両性の本質的平等等々でございます。さらに刑法では、脅迫二百二十二条、強要二百二十三条、名誉毀損二百三十条、侮辱(法人を含む判例)二百三十一条、信用毀損、暴力行為等処罰ニ関スル法律でございます。また、行為の主体が集団である場合も上記と同じようになると思いますが、その他につきましてはお手元にリストを差し上げまして、ひとつ御参照いただきたいと思うわけでございます。
 それから第二の御質問でございますが、二十条についての「憎悪の唱道」とは何であるかということでございますが、われわれといたしましては、この二十条の表現にございまするところの「国民的、人種的又は宗教的憎悪」ということがございます。これは内容がこの二十条に示されておるものというふうに考えておるわけでございますが、われわれの今後の立場といたしましては、上記の諸般の国内法を踏まえまして表現の自由という基本的な立場、これは御承知のように本規約の十九条にございますけれども、これとのバランスにおきまして考えてまいるというのが私どもの基本的立場であろうかと考えます。
○井上(一)委員 憲法十一条が一つの枠ということに言われましたけれども、それは今日でもちゃんと明確にされているのですよ。その中でなおこのような事例が社会問題として起こっているわけなんです。それを食いとめるためには、やはりきちっとしたものが必要である。ただ単に、法律をさらに強化せよとか、そういうことだけにとらわれたくないと私は思うのです。法律を強化したからすべて解決するということでもなかろうかと思います。やはり政府自体の取り組む姿勢が大事だと思うのです。
 それで、さっきの啓蒙啓発、人権規約のあるいは人権にかかわるそういう認識を深めていくということも大事だろうし、学校教育が人権教育を基本に置いて取り組んでいかれるということも一つの具体的な事例であろうし、いろいろなことをあらゆる分野で、平和と人権というものを根底に置いて取り組んでいく。政策それ自身、もちろん必要なものも充足をさせていかなければいけないわけですけれども。そういう意味で、まだまだ質問をしたいわけでありますけれども、きょうはもう予定の時間も参っておりますので、私自身の一つの考えを提起しておきたいと思うのです。
 私は、人権を守る立場あるいは人権にかかわるたくさんの人々の代表的な機関、日本弁護士連盟だとか人権擁護委員だとか、その他調停委員さんだとか人権擁護に関する諸団体があるわけです。あるいは個人の資格の方もたくさんいらっしゃるわけなんです。そういう方々を網羅した第三者機関、人権啓発センターあるいは人権啓発協議会、名称はどんな名称であろうとも、人権というものを中心に置いた取り組みをする第三者的な機関をこの機会にぜひ設けるべきだ、そしてその機関を通して人権規約の普及なり、あるいはその人権規約が十分役割りを果たしているかどうかということも点検をしていく、あるいはまた何らかの形で問題が起こった場合に、当事者双方から事情を聴取した中でその問題を解決するための裁判を下していく。労働争議における労働委員会のようなものだと言い切ってしまうと何か少したとえが狭くなってしまいますけれども、ともあれ人権を守るという立場に立って、すべての層からすべての力をそこに集めて、基本的人権が十分擁護される社会をつくるために一つの機関を政府当局がつくるべきである、こういうことを私は提起したいわけなんです。これは何も外務省だけの問題じゃなく、総理府だけの問題じゃなく、労働省、厚生省、文部省だけの問題ではない、政府自身の問題としてこういうことを取り組むべきである。いままでにいろいろな組織があります、協議会がありますと言ったって、それが十二分な機能を果たしていなかったからこそ、今日の社会の中における人権侵害のいろいろな事例があるわけなんですから、その事例を解決していく、そしてこの国際人権規約を批准をする。そういうこととあわせて、やはりこれを契機にそのような第三者機関をつくることを強く私から提起しておきます。
 これはきょうは事務レベルでの答弁では、私としては満足でありません。当然このことについての政府としての統一的な見解というものを私はちょうだいしたい。本来なら総理大臣にここに出席をしてもらって、今回の国際人権規約批准に際しての政府の取り組む姿勢を明確にしてもらうべきだと思うのです。そういう意味では、私はきょうはこれで質問を終えますけれども、次の機会に、このことも含めて、残された部分的な質問もあわせてもう一度お尋ねをしてみたい。さらに、日本における外国人の人権侵害の問題、金大中氏の問題、そういうことも含めて、この人権という問題について私は次回にまた質問をさせていただきます。
 きょうは、これで一応、最後に私の問題提起を質問の形で申し上げて質問を終えたいと思います。
○塩谷委員長 次回は、明二十六日木曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時十六分散会
     ――――◇―――――