第087回国会 社会労働委員会 第14号
昭和五十四年四月二十七日(金曜日)
    午前十時五分開議
 出席委員
   委員長 森下 元晴君
   理事 越智 伊平君 理事 竹内 黎一君
   理事 戸井田三郎君 理事 向山 一人君
   理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君
   理事 古寺  宏君 理事 米沢  隆君
      相沢 英之君    石橋 一弥君
      大野  明君    川田 正則君
      木野 晴夫君    斉藤滋与史君
      戸沢 政方君    友納 武人君
      水平 豊彦君    村上 茂利君
      湯川  宏君    安島 友義君
      枝村 要作君    大原  亨君
      金子 みつ君    川本 敏美君
      島本 虎三君    水田  稔君
      矢山 有作君    草川 昭三君
      谷口 是巨君   平石磨作太郎君
      和田 耕作君    浦井  洋君
      田中美智子君    工藤  晃君
 出席政府委員
        厚生大臣官房長 大和田 潔君
        厚生省薬務局長 中野 徹雄君
        厚生省薬務局審
        議官      本橋 信夫君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (スモン患者) 金田  洸君
        参  考  人
        (スモン患者) 坂本 久直君
        参  考  人
        (日本薬剤師会
        会長)     石館 守三君
        参  考  人
        (日本製薬団体
        連合会会長)  石黒 武雄君
        参  考  人
        (東京慈恵会医
        科大学名誉教授
        (内科学))  上田  泰君
        参  考  人
        (東京大学医学
        部名誉教授(薬
        理学))    熊谷  洋君
        参  考  人
        (日本弁護士会
        連合会公害対策
        委員会副委員
        長)      萬羽  了君
        社会労働委員会
        調査室長    河村 次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十六日
 辞任         補欠選任
  相沢 英之君     松野 頼三君
  石橋 一弥君     宮澤 喜一君
  草川 昭三君     中川 嘉美君
同日
 辞任         補欠選任
  松野 頼三君     相沢 英之君
  宮澤 喜一君     石橋 一弥君
  中川 嘉美君     草川 昭三君
四月二十七日
 辞任         補欠選任
  安島 友義君     千葉千代世君
  草川 昭三君     浅井 美幸君
同日
 辞任         補欠選任
  千葉千代世君     安島 友義君
  浅井 美幸君     草川 昭三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 医薬品副作用被害救済基金法案(内閣提出第四
 六号)
 薬事法の一部を改正する法律案(内閣提出第六
 一号)
     ――――◇―――――
○森下委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として七名の方々に御出席を願い、意見を聴取することになっておりますが、ただいま、スモン患者金田洸君及び坂本久直君並びに日本薬剤師会会長石館守三君、以上の三名が出席されております。
 一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。両案について、それぞれのお立場から、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
 なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、その後各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。
 また、念のため申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承を願います。
 それでは、まず金田参考人にお願いいたします。
○金田参考人 金田でございます。きょうは、ちょっと座らせていただいて……。
 最初に、お手元に差し上げました資料について説明いたします。
 資料のうち「いわゆる恒久対策の十七項目について」というのは、私どもスモンの原告が、スモン患者の恒久対策の要求案として作成したもので、議題の医薬品副作用被害救済基金法案の参考資料として提出したものであり、もう一つの資料、「資料1」と書いてありますのは、各国薬事法を、臨床試験、新薬承認制度そのほかの重要な項目について比較対照した資料でありまして、薬事法改正案の参考として提出したものであります。また、この二つの資料は、今月十四日から十八日にかけて京都で開催されました薬害防止のための京都国際会議において、私どもの原告団、弁護団により発表されたものであります。また、第三番目の一枚の資料は、同じ国際会議の最終日、総括の席上で、原告を代表して私が提案し、会議で採択されたもので、改正薬事法に盛り込まれるべき要件を記したものであります。
 以下に述べる私の意見を裏づけるものとして、この三つの資料を参照くださるようお願いいたします。
 まず、医薬品副作用被害救済基金法案について意見を申し述べます。
 第一に、この法案の被害対象ですが、法案に従えば、スモンなどの既存の薬害は全く含まれないことになります。御存じのとおり、被害の規模の大きさと深刻さが史上空前のものとされ、全国の裁判所が専心努力を払っても、なおその解決は期しがたいとされる、スモンの問題を放置してよいものでありましょうか。スモンの問題を契機として企画された、この法案であります。スモンの未提訴のもの、投薬があっても証明されない人々を、ぜひこの法案の中に含めて、裁判もしくは和解で得られたと同額で救済していただきたい。目前の大きな問題の解決を図らずに、将来の小規模な薬害の収拾を図るだけの法案であるなら、成立の必要はないとすら考えるものであります。
 第二に、副作用の範囲として、既知とか未知の副作用を問わず含め、また治験薬についても含むべきであると考えます。
 第三に、給付の内容については金額などを明らかにされておりませんが、一たん薬害が発生すれば、スモンと同程度の深刻さを生ずることを考えて、参考資料のスモン恒久対策の内容に準じた給付が行われることを切望いたします。
 四番目に、評議員会の構成についてですが、企業の加入団体の役員が加わるのなら、当然消費者団体の推薦者が加わって、消費者の立場から審議すべきことを要請いたします。
 五番目、認定の方針についてですが、当然のことながら、この法案の当初の目的に記されてあるとおり、被害の迅速な救済を図らねばなりません。水俣では、認定についての裁判が起こるなどして、その認定の遅延が問われております。東京地裁におけるスモンの鑑定は、関係者の熱意によって迅速に進んだことは御承知のとおりであります。必ずできるとの信念のもとに、関係者の努力を要請いたします。
 以上が、薬害救済基金に対する意見でございます。
 次に、第二番目の薬事法改正法案について意見を申し述べます。
 スモンの裁判を通して痛感したことですが、国が薬事法の改正を行わずに、政令により行政指導を行った結果が、この深刻な薬害の発生であり、また裁判上は、薬事法の不備をよいことにして国に責任なしと論争したのは、被害者にとってまさに悲憤の至りとしか申しようがありません。遅きに過ぎたとの感が大であります。
 しかしながら、今回改正するについては、被害者の気持ちに沿って、以下の点を法案に加えていただくことを強く要望いたします。
 一、これだけの大きな薬害の発生を経験したにもかかわらず、改正案においても、医薬品の安全性確保を法の目的とするとの規定を欠いております。これでは、法に基づいて定められる安全性の確保のための政令の指導理念が失われるおそれが生じます。ぜひ、この規定を明確にしていただきたいと思います。
 第二番目としまして、新薬の承認基準は次の三つの要件を満たすことを求めます。
 (a)有効性は、厳格にコントロールされた前臨床試験並びに臨床試験により実証されなければならない。
 (b)安全性について十分に立証されない場合、承認は拒否されなくてはならない。
 (c)承認申請の際、企業は、有利、不利を問わず、可能な限り収集したすべての資料を提出しなければならない。
 三、承認の際に、表示の文書自体も審査の対象とされ、添付資料として表示文書の見本を提出すべきこと、また適応症、効果、投与方法、投与期間、禁忌・副作用、使用上の注意など、表示文書の基本的内容も法律で定めることを求めます。
 四番目、承認の際提出された資料は、承認後直ちに公開することを求めます。
 五番目、承認後、国はみずから医薬品の有効性、安全性に関する情報を医師、企業の協力のもとに収集し、記録し、分析し、適切な措置を講ずることを求めます。
 以上、改正案につきまして述べました要件は、すべて法律に明記すべきものと考えております。
 最後に、二つの法案を通じて、被害者として強く要請しますことは、国が法に基づいて行う施策は厳正なものであると同時に、施政者本人が、法の真意に基づいて、薬害被害者を迅速にまた十分な内容をもって救済し、さらに、今後の薬害の発生を未然に防止するに足る十分な措置を講ずることであります。
 新薬の承認や、以後の監視にしましても、厚生省の態勢の不備や当事者の意識の不足から、スモンやそれ以後の薬害が続発しましたことを真摯に反省していただき、文字どおり法に血を通わせて、今後に対処されんことを切望いたします。
 これで、私の意見を終わります。
○森下委員長 次に、坂本参考人にお願いいたします。
○坂本参考人 私、スモンの被害者の一人の坂本久直でございます。
 きょうから薬事法の一部改正、救済基金法案を御審議なさるというのですが、その前に、被害の実態を御理解願わないと、御審議が不十分になろうかと私は思っております。ただし、議会運営の都合上十五分間程度という制約を受けました。私は原稿もございませんです。文字も書けませんです。読むこともできませんです。しかし、被害者として言えることがございます。このことを、少し意見として述べたいと思っております。
 私たちは、スモンの会全国連絡協議会という組織を持ってございます。ただ、ここで御理解願いたいのは、スモンの裁判が進行しているがゆえに裁判を主にとっておられますが、原告だけが救済されてはならないということを申し上げたいのです。厚生省調べでも一万一千人という被害者がおります。潜在患者を含めれば二万人は超えているはずでございます。これらすべてのスモン被害者が救済されるべき法案がつくられて当然と思っております。遅きに失した審議であることを、諸先生方に対してもまことに失礼かもわかりませんが、立法府である議院の皆さんに、そして行政府である国家に、いかに長年放置されておったかということを御反省願いたいと思っております。このことなくして、この二法案の成立は大変無理であろうと考えております。私たちの意見につきましてはすでに各先生方にお配りしておりますが、いずれにいたしましても、救済法案なるものが、既往のサリドマイドやスモンに適用されていないということが非常に遺憾にたえないわけでございます。しかも、原因の明らかなものについてはまたこれが除外されているということが、これまた私自身不可解に思っております。
 本来資料をもって論ずるべきですが、一方でまた、一時金と健康管理手当のことも言っております。この健康管理手当すら、私たちは、わずかながらの低いものを要求しております。今日までに恒久対策の要求をいたしております。これは国にも製薬企業にも出してございます。また世間一般にも発表いたしております。スモン特別法の要綱案も私たちはつくり上げて、また皆さん方にも御提示してございます。これと今回の救済法案の兼ね合いを十分御理解願って、全体が完全に救済されねばならぬということを特に強調したいと思うのです。
 次に薬事法でございますが、私は、薬事法の改正を非常に期待しておりました。ところが一部改正でございます。戦時薬局方の改正から、戦後の改正の歴史をずっとたどってまいりました。いまから四十年くらい前に、この問題が明らかにされているはずなんです。それが今日ようやく論議されようとしております。これをもっと早くしておれば、私自身、昭和四十二年の発病ですが、そのときにすでに、キノホルムによる変化を自分の体で認めております、もし国なりそれぞれの機関が十分な研究を持っておれば、これは昭和三十年以前に、このような薬害を起こさずに済んだと思っております。サリドマイドのときの御反省も願いたいということです。
 時間も余りないようですが、諸先生方が、時間に追われて不十分な法案をおつくりになるということは、将来国民にとって大きな禍根を残すでありましょう。国民が将来安心して生活できるためにも、また、医薬品の安全性を十分担保した薬事法の改正をされてこそ、今日課題とされている二法案の審議だと思います。
 時間も迫ったという御指示をいただきましたので、私、十分申し上げられませんでしたけれども……
○森下委員長 まだありますから、どうぞ。
○坂本参考人 それでは、わずかの時間ではありますが、ぜひ被害の実態を見ていただきたいと思っております。
 このめがねを見ていただきたいのです。このようなめがねで、手近に持っていっても小さな文字は読めません。新聞の字も読めないのです。車いすも行政から支給されました。しかしこの車いすですら、これはある意味では国から給付されたものですが、完全ではない。私、幸いにここに、後ろにつえを持っていますが、これだって、きょうは参考人だから許されると思うので、やらせていただきますが、ちょっとごめんくださいね。感情的になるかもわかりませんですが、こちらが福祉で支給されたものなんです。このつえは私たちは福祉で支給されませんです。なぜか。車いすを持っているからです。でも、私はこの二本の足があるのです。先生方にぜひこれだけは見ていただきたいのです。ごめんなさいね。ちょっとお許しを願います。――この二本の足があるのです。こうして足を運びたいのですよ。このつえをとってごらんなさい。どうなるとお思いですか。――こういうことになってしまうんですよ。このようにしたのはだれかと言ったら、行政府であり、あるいは国民皆かもわかりませんです。このことを御審議願わないと、薬事法の改正も救済法の意味もないということを、私は体をもって言いたかったのです。皆さん方が、どれだけの方がおいでになるのかわかりませんです。どなたがどなたかわかりませんです。家内ですら、私のためにこの何日間、息子や娘を置いたまま、東京へ出てきております。先ほど参考人でおっしゃった金田さんも、家族ぐるみの苦しみをしておられるわけです。全国には多くのこのような被害実態があることを御理解願いたいのです。一たん薬害が起きれば、患者のみならず、家族までが悲惨な目に遭うのだということを御理解願わないと、救済の意味がないということなんです。たしかこの傍聴席にも、そういう患者の仲間がおいででございます。このことを御理解願わないと、あれこれ言ってもだめで、私はこれは基本的な問題だと思っています。
 非常に抽象的な話になりましたけれども、きょうのような天候の日には、スモン患者の皆さんは体が痛んでおります。したがって、私自身非常に体も不安定、神経的にも不安定なのです。本当に、私も五十五歳を迎えながら、このような席にこんな状態で参考人として出てくるのは、本当なら健康な体で動いておった人間です、これだけでも男として情けないのです。
 もう一つ言わせてください。きょうは朝から行動のためにここへ出てまいりましたので、時間が迫ってまいったのです。もうすでに下ばきはぬれているのです。おわかりでしょうか。五十五を迎える男が、自分の小便することすら十分にならないのです。漏らしてしまうのです。それはぬれてみて初めてわかるのです。これは何がしたのかと言ったら、薬害、キノホルムだったのですよ。それは国の制度がしたわけなんですよ。裁判になれば、法的責任はないとうそぶいているのです。それは立法府に責任があったかもわからないのです。この点をぜひ御理解願って、十分なる御審議をお願いしたいと思います。(「まだ時間はあるよ。あと五分ぐらいある」と呼ぶ者あり)まだ、いいですか。
○森下委員長 どうぞ。
○坂本参考人 はい、ありがとうございます。時計もだてにはめているだけなんです。ごめんなさいね。
 もう一つだけお願いいたします。すでに一千人余りの被害者が命を絶っているわけです。絶っているというより、絶たされたと言いたいのです。言うなればつくられた死なんです。このことも御理解願いたいと思います。ちまたに救済法案が出ていく、それにスモンが乗る。国庫を使うのだからという意見も出るかもわかりませんですが、もし今日まで多額の国庫、いわゆる国の金を使うということになったとしたら、そして三十年、四十年前に研究をし尽くしていたら、今日こんな二万人余りの被害者を出さずに済んだはずです。また、国庫補助をする必要はなかったはずなんです。ある方はおっしゃいます、そういうことをすれば企業は倒れるじゃないかと。企業は、戦後の中で十分利潤を上げたことは間違いございません。それを容認したのはだれかということもございます。私も一市民ですから、企業で働く市民労働者の生活権まで奪いたくはありません。しかし、失われた肉体や失われた青春を取り戻すにはどうしたらいいのですか。私、ここに謝罪をしていってくださいということを言いたいのですが、わびてもらっても皆さんの顔が見える目にもなりませんです。皆さんと御一緒に走る足にもなりませんです。
 されば、生涯の補償をお願いしたいということです。それが私たちが申し上げているスモン特別法であり、恒久対策法であり、今回審議されておる救済法にぜひ既応の疾病まですべて含めてほしい、原因が明らかなものであればあるほど、これを補償対象にすべきであると申し上げたいということです。
 ありがとうございました。まだほかの時間もあるそうですので、よろしくお願いいたします。(拍手)
○森下委員長 次に、石館参考人にお願いいたします。
○石館参考人 それでは、日本薬剤師会長としまして、最初に、医薬品副作用被害救済基金法案について所見を述べさせていただきます。
 本法案の趣旨でございますが、従来民事訴訟法よりほかにすべがなかった手段を、民事責任と切り離して、そうして、とりあえず被害者を緊急に救済する制度の設定を目的としておりますことは、その限りにおきましては、諸外国にも例がないことでありまして、その点は、遅きに失したうらみはありますけれども、評価してよろしいかと存ずるのであります。
 この被害の原因、因果関係の判定はきわめて科学的な手段を講じなければなりませんので、医薬品に対しては特に困難を感ずるのでありますが、今回それらに対して、とりあえず救済を目的としてそれを優先しているということに対しては、われわれも評価していいと思っているわけであります。
 次に第二に、基金は企業の拠出金を主体として成り立っておる、いわゆる特別認可法人としてこれを提出されております。その基本的な考え方は、察するに、製薬企業は一体となって社会的な、道義的な責任を遂行するものと理解し得るとすれば、またこれを換言するならば、国民医療の進展に伴い、副作用による被害というものはこれは医薬品につきまとうやむを得ざるものである、これをいかにして救済するかという問題でありまして、そういう意味において、このことは、いわゆる賠償責任ではなくして、社会的な、福祉的な、道義的な責任である、こう理解してよかろうかと思うわけであります。そうするならば、社会的、道義的責任として企業が自発的にこれを拠金するという考えであるならば、これは国家の福祉の政策に相なるわけで、もっと国が積極的にこの政策に参与するようわれわれは希望せざるを得ないのであります。
 第三は認定の問題であります。
 この法案におきましては、この認定は中央薬事審議会の中に置くということであります。これもそれ以外にいい方法がないならばいたし方ないとしましても、認定の委員会の機能というものに対して私たちは非常に疑いを持つものであります。それが完全に機能するかどうか、単なる司法権がない一委員会が、徹底的にこの原因を調査できるかできないかという問題に、非常に疑問を持つものであります。これはもちろん厳正に、中正に学識経験者によって判定されると思いますけれども、これは十分、その機能が目的に沿うようわれわれは強く希望したいのであります。
 第四はこの基金の業務でありますが、業務は単に被害補償の救済給付をするというだけで、第二十七条にありますが、それによってこの目的が達せられるかどうか。どうしてもこの業務の中に、こういう被害が起こらないような措置をやはり付加すべきじゃなかろうか。すなわち、被害ができてから救済するのではもう遅いのでありまして、そういう意味において、これを未然に防ぐ仕事も、同時にこの基金が考慮する必要があるのじゃないか。それには情報というようなものを完備し、そのシステムを通して防止を考える業務も付加して妥当ではなかろうかと、われわれ薬剤師会としては考えておる次第であります。
 以上の四つの点につきましてが、この救済基金法案に対する所見の概要であります。
 次に、薬事法の一部改正に対する法律案に対しての所見を述べさせていただきます。
 改正の要旨を拝見しますと、今回のこのことは、薬事法全面改正をやる前に、また全面改正はやることが必要とは思うが、その前に、緊急に医薬品の安全性、有効性についての確保を図るのが目下の急務であるからして、この薬事法改正は、そういう安全性及び有効性の緊急を要する措置をここに講ずることを目的としておるというわけであります。
 御承知のとおり、薬事法は、昭和三十五年から二十年近く経過しておりまして、その間に医薬、医療の進歩は著しいものがありまして、二十年をたった今日、薬事法は全面的に改正しなければならぬ時期にあるということは申すまでもありません。われわれ薬剤師会としても、それに関心を持ち行政にそれを希望してまいったわけでありますが、しかし、緊急を要する問題でありますならば、これも時期的に時間的に制約されておりますので、今回の一部改正が出たわけであります。
 そういう意味で、以下、この薬事法の改正において第十項目の改正要点が述べられております。
 そのうちで、第一の医薬品等の製造又は輸入の承認の問題、これについては特に申し上げることはありません。
 また、第二の新医薬品等の再審査の問題、あるいは第三項の医薬品の再評価の問題等は、これは行政措置を今度は法律の条文に明らかにしたという点において、また新しい時代に沿うように改正したという点においては、別にわれわれは異存はないと存じております。
 第四の問題が少しくわれわれに関係している問題で、薬局開設者、医薬品の製造業者及び一般販売業者等の遵守事項が決められております。従来この問題がきわめてあいまいになっておりました。というのは、旧法におきましてはこれはいわゆる訓示規定程度のものでありまして、開設者と医薬品を管理する者との義務規定がはっきりしなかったのですが、今回、この資料の2ページの新旧対照の法律条項によりますと、九条の二にそのことが挿入されておる。それは開設者の義務として「薬局における医薬品の試験検査の実施方法、薬局の管理者の義務の遂行のための配慮事項」として、開設者がそれを遂行するための遵守すべき事項を決めておるということは、一つの進歩だと思っております。また同じ条項が、製薬業者あるいは一般販売業者におきましても、薬剤師の医薬品に関する管理権というものを前進させたということに対しては、われわれは評価している次第であります。なお、これが十分実が上がるようさらにその点を御指導願いたいと思う次第であります。
 そのほか、第六項に監督という項があります。(一)の緊急命令はいいとしまして、(二)の回収等という問題があります。これは不良医薬品のほか、事件が起きた場合には、製造業者あるいは輸入業者がこれを速やかに回収しなければいかぬし、それを命ずることができるという条項であります。ただ、ここで私たちが疑問に思いますのは、そういう不良医薬品の回収に際して、それらが果たして完全にいまの現状でできるかどうか。つまり医薬品のいわゆる記録がなしに、この効果が発揮できるかどうかに私たちは疑問を持つのであります。これは省令で定められておるように思いますが、その点、実行可能な方法、回収が完全に堅実に行われる保証があるような方法を勘案していただきたい。
 その次の第七項でありますが、情報の提供等という項目があります。ここにおきましては必要な情報を提供するよう努めなければならない、すなわち製造業者等は必要な情報を提供するよう努めなければならない。また、これを受ける方の薬局開設者等は情報の収集に協力しなければならぬという、いかにもやんわりした訓示規定になっております。これがわれわれとしてははなはだ不安に思うのでありまして、予防のためには情報システムができるだけ完備していなければならぬが、現在それがいずれにしてもあいまいになっておる。これはいろいろな方面から上がってくるところの疑義に対して、これを慎重に審議し、またそれを収集して、公正な科学的判断をするまでには二段階、三段階の手段が必要でありましょうが、最終的には、これだけは医薬品に対しては遵守しなければ危険であるというような広報を、各使用者、販売者等に有効に徹底させる方法を考えてしかるべきであろう。そうでなかったら実効が上がらない。つまり訓示規定では、いろいろな問題が起きた場合、行政の問題が起きた場合、あるいは判定会議における場合も、果たして情報を受け取った方に責任があるのか、出さぬ方に責任があるのかということがはっきりしない、われわれはこう憂えるのであります。私はこの点十分注意を喚起したいと思う次第であります。
 最後に、この法案に挙がっていない問題でありましてわれわれが重要と考えることは、現在、皆さんも批判されているように、日本における医薬品の取り扱いの実情がきわめて不健全であるということであります。薬が、一般商品のように安ければよろしい、品質なんかは第二として流通されておるという問題、これが健全化されませんと、医薬品の安全性は確保できないという憂いであります。したがって、流通の健全化のために不可分であるところの、たとえば取引に際してその利益がはっきりしているものというような方法によって、これを取り扱うようしていただきたいという考えをわれわれは持っております。これらは抜本改正において論ずべきであるが、安全性の立場からも、なるたけ早い機会に流通機構の健全化をぜひ図ってもらいたい、これが今回の薬事法の一部改正にないということをわれわれははなはださびしく思う次第であります。
 以上で、私の陳述を終わります。
○森下委員長 以上で、各参考人の御意見の陳述は終わりました。
○森下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
○水田委員 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。時間が限られておりますので、二、三点お伺いしたいと思うのです。
 一つは、金田さんにお伺いしたいのですが、いま御要望がありました項目の中に、この法案によりますと適用は法律が施行されて六カ月以後からのもの、ですから、これにスモンをそのまま適用し、内容を改善する、こういう御意見と理解してよろしいでしょうか。この法案によりますと適用は全く今後の問題だけになっていますね。だから、御意見は、スモンをこの法律の適用に乗せて、そして要望のありましたような項目の改善をする、こういうぐあいに理解してよろしいですか。
○金田参考人 私は法律家ではありませんから、細かい方法論についてはわかりません。ただ、問題としますことは、現在四千名足らずの人間が裁判で争っておる、裁判で何とか救済を受けようとしております。しかし、それ以外に、すでに七千人に及ぶ未定数の患者があるわけであります。この方々は、今後救済を受けるについても、裁判でとにかく争っても、それだと今後十数年はかかるだろう、また裁判所の状態がパンク状態であるということをお考えいただいて、それ以外の、法案経過措置として何らかの方法をとっていただきたいということが私の考え方です。
○水田委員 わかりました。
 それからもう一つ、私どもいろいろ検討してみましても、スモンの発生の状況を見たときに、日本で言えば、たとえば大学の医学部から派遣されたお医者さんなどのいる公立病院等で相当発生しておる。私の地元ではそういうことなんですが、その場合、下痢症状がある、キノホルムを投与する、さらに下痢症状が激しくなる、さらに大量投与するというような形のものが多いわけです。ですから、いまの大量投与の問題というのは、もちろん製薬会社の説明の仕方の不親切といいますか、ごまかしといいますか、そういうものもあったと思うのですが、医療に携わる医師の責任も全く無視できないと思うのです。そういう点についての御意見が余りないわけですが、今度の薬事法そしていわゆる医薬品副作用被害救済基金法案でそういう点が全くないわけなんですが、そういう点について、金田さんと坂本さんのお二方から御見解があれば聞かしていただきたいと思うのです。
○金田参考人 医師の責任ということにつきまして、私どもは裁判では医師の責任を問いませんでした。しかし、私どもが考えますお医者様の実際の責任上の問題は、臨床経験にまって、患者が病床にあるときに、その状況を正確に把握して、投薬の効果の有無あるいは投薬の経過といったことを十分に判断すべき責任があったろう、そう考えるわけです。したがいまして、その点で、一般の医師は臨床上の観察を怠ったという責任があろうかと思っております。
 もう一つ、たとえば私どもは、キノホルム剤が連続的に、しかもスモンの特効薬であるかのごとく喧伝されて投薬されたという事情を考えますと、一つ二つの論文がありまして、キノホルム剤がスモンに非常によく効くとか、そういう発表をなさった先生方あるいは神経内科医の専門家の先生方にしますと、これは知識上の誤りがあったのではないか、研究的な誤りがあったのではないかと私どもは考えます。したがって、その点の責任は問われるのではないかと思っております。
○坂本参考人 まず、先ほど医師の責任について何にもおっしゃらないと言われたのですが、私は、若干の自己紹介をしなければいけませんので申し上げます。
 私も戦時下、満州で、このキノホルム剤を使用した側におった者です。アミーバ赤痢に投与する側におったということを申し上げます。陸軍病院におりまして、医官候補生でしたから、このことを存じております。
 では、戦後の医師と薬事の問題ですが、たしか医薬分業があったと思うのです。悲しいかな、医薬品の施用、量のかげんについては、医師にゆだねておったわけです。で、医師に果たして薬理学の知識があったかということが一つ問題になると思うのです。それ以前に、プロパーが持ってくる情報をほとんど基礎にして医師が投薬しておったことになると思います。
 いま一つ、そのような販売法あるいは分量の許可をしたのはだれなのかということが根本にあると思うのです。私は、自分の臨床例を申し上げますが、スモン症状の初期といいますか、これは後でわかったのですが、田辺のエマホルムを服用しだして二週間日にある症状が出てまいりました。これは緑舌と言いまして緑の舌なんです。キレート化合と言います。このことは自分自身が体験して覚えていたわけです、アミーバ患者を診たわけですから。その意味では、いま金田さんがおっしゃったように臨床医が十分なる臨床処置をし所見をしておれば、あるいは多くの患者を救えたかもわかりませんが、それ以前に問題があるのは、私はやはり劇薬であったということ、これは戦時中劇薬だったのですよ。それを戦後一般薬にして大量販売しておったのです。それを許可しておったという点は見逃せないと思うのです。医師についてはそういう診療時間が十分なかったということで、今後の中で、薬理関係の方はやはり臨床学を学んでほしいし、医療関係の方は病理学とともに薬理基礎を学んでほしい。そういう知識が相まって健康が保てると思っております。
 以上でございます。
○水田委員 ありがとうございました。
 それでは、石館参考人にちょっとお伺いしたいのですが、医療関係には医師もおれば薬剤師さんもおられるわけですが、スモンのようないわゆる大規模な薬害が起きた中で、医療関係の一方の役割りを担う薬剤師さんとして、こういうのを防ぐ手だてといいますか、制度としてなかったのかどうか。あるいは今後薬事法なりこの医薬品被害救済基金法案というものでやっても、なおかつそういうものが出てくる、いまのスモンの場合も大量に薬剤を投与されたというようなことから起こっておるわけですが、そういう点を防ぐ手だてというのは、薬剤師さんの持っておられる薬に対する知識なり薬理の知識なり、そういうものが有効に生かせられる手だてというのは、一体どういうぐあいにしたらいいものか。御意見があればぜひ聞かしていただきたいと思うのです。
○石館参考人 ただいまの御質問ですが、これは学問的水準という問題はさておいて、具体的に現在においてそういうものを予防するにもっといい手段はないかという御質問と解釈いたしますが、一つは、一つの薬が薬害ができたということは、一例、二例ではこれは薬が悪いという科学的な根拠が非常に薄弱だと言われるわけであります。多くのデータがそろって、確かにこれはこの薬の薬害だという認定には相当の臨床的なデータがそろわなければ科学的に断言できないわけで、その点が非常にむずかしい点の一つでありますが、現在日本におきましては、投薬は医者がほとんど絶対の権限を持っております。量が多くても、これが治療に必要であると言われれば、これを薬剤師が拒否することはできません。ただしそれを救うため、人間ですから間違いがあり得るのですから、それらを二重にチェックすることが必要であるということはこれは世界の通例で、すなわち医薬分業というものは処方せんを薬剤師がやはりチェックする、疑問があった場合はそれに対して注意を喚起するという役目をするのが薬剤師の務めであるわけでありまして、この点がまだ日本においては十分実行されていないというのが一つの、これは一つでありまして全部ではありませんが、それが強制法の一つの論拠にはなり得ると思うわけであります。
○水田委員 終わります。
○森下委員長 次に、矢山有作君。
○矢山委員 まず最初に金田さんにお伺いしたいのですが、いま石館先生のお話を聞いておりましたら、この基金法というのは、その責任がないとき、あるいは被害を起こした責任がだれにあるかそれがわからないとき、あるいは第三者に責任がないとき、そのときを救済の目的にしておるのだ、したがってその責任は社会的、道義的責任というふうに解釈しておるようなお話だったわけです。そういう見解に立って基金法による被害者の救済を考えるということになると、自然に救済対象が狭められてくる、あるいは給付水準が非常に引き下げられてくる、こういう危険性が出てくる。そしてむしろ逆に、その被害を起こした製薬企業なりの責任を軽減化し分散化するというような弊害が非常に起こってくるのじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、いかがですか。
○金田参考人 私も、いま矢山先生がおっしゃいました内容と全く同じような危険性を感じております。この問題の最初の研究会の報告を私ども最初から拝見しておりますけれども、その研究会の当時には、もっと広範囲に、たとえば一つの薬害が起こったときには、基金は必ずそれをまず救済すべきであるという考えに立っておったと思います。そして、その後にもし民事責任がはっきりわかったときには、その被告というか、責任のある対象者に対して基金が求償すべきだという意見が書いてあったと思います。私はとにかくまず救済を先に考えていただいて、そしてその中でできる範囲でその被害者の生活が成り立つように、あるいはその被害に対しての十分な償いが行われるように、まずそれを最初に考えるべきである、そう考えております。
○矢山委員 それからもう一点お伺いしたいのは、この救済対象にしておるのに、適正な使用であるとか、適正な目的に使用された場合が対象になる、こうなっておるわけですね。ところが、その適正な使用か、適正な目的による使用かということは、現在のような薬事行政の機構のもとで、被害者の方にこの責任を持たせることができるのかという問題があると思うのです。したがって私は、適正な使用であろうが不適正な使用であろうが、そんなことに関係なしに、これはやはり救済対象として考えるべきではないか、こういうふうに思っておるのですが、これは被害者の方の体験なりからひとつ御意見を承りたい。
 それからもう一つは石館先生に、そういう点で、一体適正な使用だとか適正な目的による使用だとかいうようなことを、いまの機構の中で担保するような仕掛けになっておるのかどうか、その点が十分担保できないままで置いておいて、適正な目的による使用の場合あるいは適正な使用の場合にだけ救済対象を限るというのは不当だと思うのですが、どうですか。
○金田参考人 私も、先ほどの要望の中で申し上げましたように、適正とか不適正とかあるいはそれが治験薬であるとかそういったことは問わずに、まずその基金の適用を考えてほしい、そう申し上げたはずです。その点で、矢山先生の意見に全く同感でございます。
 それで、本来私どもの体験からしますと、たとえばキノホルム剤をスモン患者に対して投与された実例を見ますと、私どもに対しては、やはり当初の臨床医は状況が全くわからずに、かっけであるとかあるいはほかの昔からわかっていた病気の対象と考えて、それには胃腸薬として何の変哲もないこのキノホルム剤が効くのだといって、適正に使用したはずであったのです。しかし、結果は不適正であったというしかございません。その辺で考えまして、適正とか不適正とか、それは後になって判断できるものであろう、そう考えております。
○石館参考人 ただいまの疑問は私も持っておるわけでありますが、やはり過誤であるか、不適正であるかないかの判断は、もうそういう場合はどうしても一これは、いまのところは、適正に使用されたにかかわらず被害を受けたという者が救済の対象になっておるわけでありますが、そうでない場合は過誤になりまして、これはやはり行政訴訟で争わなければならぬ問題じゃないか、その点を明らかにしなければならぬ問題になってくるのじゃなかろうか、こう考えておるわけであります。しかしとりあえず救済する。しかし、それがはっきり行政的に移さなければならぬ問題になったならば、それは後でそれを処理するということになろうかと存じておるわけであります。
 それだけでよろしゅうございますか。
○矢山委員 だから、要するに適正な目的による使用であろうと不適正な使用であろうとそれを問わず、とりあえずやはり救済対象に含めるべきであるという御意見ですね。
○石館参考人 明らかにそれは過誤であるという、一応のクリーニングはしなければならぬのじゃないでしょうか。明らかに過誤の場合は賠償になりますからね。明らかに賠償になりますから。それを一応やって、しかし疑問な場合は、徹底的に解明してからやるということは現実的じゃないから、怪しいものも灰色のものも救済はまずやるという趣旨ではなかろうかと存じております。そうすべきだと思っております。
○矢山委員 それから、いろいろと飛び飛びの質問になって恐縮なのですが、お話を聞きながら質疑を申し上げます。
 もう一つは、この救済をやる場合に、基金で認定及び救済給付等もやる、それからまた費用の徴収、求償もやる、こういう仕掛けになっているわけですね、この法案は。そうすると、やはりその収支のバランスを優先的に考えながら給付を考えていく、あるいは認定を考えていく、こういう形になってしまって、かえって認定の場合に認定から外すという傾向ができたり、あるいは給付を抑制するという傾向が非常に出てくるのじゃないか。したがって、こういう点についてはやはり、基金の運営の制度というものは根本的に変えていかなければならぬ。たとえば認定とか救済給付等をやる機関は別につくる。むしろこれは国の行政事務としてやる。そして、費用の徴収だとかあるいは求償権の行使だとかいったものは基金でやる。こういうふうに明確に区別せぬとやはり問題が起きてくると思いますが、この点は金田さん、どうですか。
○金田参考人 私も専門的なことはわかりません。これが実際の運営に関して、たとえば十人以下の評議員会で、認定とか基金の求償とか、それらをすべて兼ねるということになりますと、大変煩わしい範囲になるだろうと思います。ですから、いまの先生のように、現実にそれを分離してうまくいくのでしたら、それも私はよいと思って、同感いたします。
○矢山委員 それから、救済対象にする場合に、最初から医薬品の中で除外をされているものがあるわけですね。「がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であって、厚生大臣の指定するもの」どういうものを指定するつもりかわかりませんが、こういうことでこれによる被害を除外するということになると、これまた私は問題だと思う。やはりこういった特殊医薬品についても、除外規定を設けないで、一応救済対象にすべきだと思いますが、この点は石館先生、どうでしょう。
○石館参考人 私の承知している限りでは、中央薬事審議会において安全性を審議する基準がありまして、がんその他特殊な病気に対しては、副作用が相当強いものでも許すというような条項があるように承知しておるわけです。がんとかそれに類する重要な重症の病気、これは副作用と有効性というもののバランスが非常に近いものですから、これは特別に扱わなければどうも公正な扱いはできないだろう、こういう考えからこれができておると私は承知しておりますが、いわゆる安全性の評価のときは特別扱いにしておるわけです。少しぐらい毒性があっても、がんに有効な場合は特別に配慮するということになっておるものですから、そのことからこれは連関していると存じております。
○矢山委員 それから、これで最後にしますが、これは坂本さんが非常な被害を受けられて、いま私どもも驚いたような状態におるわけですが、そういう被害の激しさから考えた場合に、いまの民法上の過失責任主義の立場に立ってこの救済を考えるということには問題があるのではないか。というのは、過失責任主義の立場に立って問題を考えるとするなら、最初申し上げましたように、この法案というのはその責任の所在がわからぬ状態において救済をするわけですから、したがって、それは先ほど石館先生がおっしゃった社会的、道義的責任、こういうことになってくるから、したがって、どうしても、救済の対象を締めたりあるいは救済の内容がお粗末になってくる。そうすると、現在の大量生産、大量販売の状態の中、そしてまた乱診乱療がとかく言われておる中においては、これはやはり過失責任主義の立場に立つのでなしに、無過失責任主義の立場に立って物を考えるべきだ、こういうふうに私どもは考えるわけです。特に無過失責任の立場に立った立法例というものも現実に出ておりますし、それからまた裁判所の判例なんかを見ておりましても、実際の解釈、運用の問題として無過失責任を追及するというような傾向もできておるわけですから、したがってそういうふうな点で、この法案の全体を通しての基本的な物の考え方として、その点に問題があるのではないか。だから、私の主張から言うなら、現在の医薬行政の実態を踏まえて考えたときに、あるいは医薬業界の実態を踏まえて考えたときには、当然被害者の救済というのは無過失責任の立場に立ってやるべきだ、こういうふうに私どもは考えておる。そこで、これは法律家でないからそこまでは言えないという問題もあるかもしれませんが、やはり被害者の立場として、この点ははっきり主張すべきことは主張しておいていただいていいのではないかと思うので、その点で坂本さんのお話、それからまた金田さんからも御意見を承ってもいいと思うのです。
○坂本参考人 まず、皆さんのお手元に届いていると思いますが、この救済基金制度に対する私どもの意見がつけてございます。当然でございます。無過失責任を取り上げてこそ全面的な救済になると思うのです。これを一つ申し上げたいと思うのです。
 これを起こした背景につきまして先ほど若干言い漏らしましたが、健康保険制度にも問題があるとぼくは思っています。薬価基準、点数制度とかというところにも問題があると思っています。最近は非常に企業は利口になりまして、この医薬品は効能書きを正しく読んでからお飲みくださいということをあけすけと言っています。これは完全に責任の回避であり、消費者に対する責任の回避です。私たちはこういうことを見逃してはいかぬと思うのです。その意味でも、いかなるものであっても、医薬品から事故が起きれば当然それは含むべきであって、無過失責任を問うべきであるというように考えております。
○金田参考人 この問題も数年前でしたか、同じ研究会の報告を拝見しましたときに、本来なら無過失責任に立つべきであるという御意見があって、しかも後段に、この無過失責任についていまは十分な論議が尽くされてないから、将来ともこれを続いて取り上げるべきであろうという御意見があったと思います。
 私どもがスモンの訴訟で訴状の中で言っておりますものは、製造物責任というやはり無過失責任の立場からこの問題を追及しておりました。そして東京地裁なりのその判例は、同じように製造物責任というものを肯定された判決が出ております。その例からしましても、私どもは、この無過失責任というものを当然十分に考えて、考慮の中に置いて、この基金を運営すべきであろう、そう考えております。
○矢山委員 終わります。
○森下委員長 次に、大原亨君。
○大原(亨)委員 スモン患者の両参考人にお尋ねいたします。
 最初に坂本参考人に伺いますが、問題は、いま両参考人からお話があったように、これから基金法とそれから薬事法の改正を扱う際には、世界で全く類例のないほどの大規模なスモンの問題の完全解決をしなければいけない、それがその法律の中に含まれているかあるいはそれが前提でなければいけない、こういう力説をされました。
 そこで、それに関係をして、恒久対策の問題にしぼってお話をお聞きするのですが、金田参考人もそうですが、坂本参考人も、いま実際にスモンの患者の皆さんの実態が非常に深刻で、厳しいということがわかります。いままで長い間苦しまれた上に、これからも精神的にも社会的にも非常に苦しんでいかれるわけです。したがって、それに対する法律上の賠償、一時金という問題があるのですが、しかし、和解案の中にも介護手当までは出ているわけですね。介護手当では、いまの患者の方々が非常に苦しい中で治療を続けていく、あるいは生活を続けていくという際に、いわゆる介護手当以外の、たくさんの雑費を含めましての経費がかかると思うのですね。栄養の補給もあれば抵抗力をつけることもあるだろうし、それから神経的な障害に対する治療法というのはないわけでしょうから、実際上、はり、きゅう、マッサージ程度しかできないだろうと思うのですね。だから、治療の上からも社会的にも療養生活と一緒に、これからの将来の上において非常に大きな負担がかかると思うのですね。その恒久対策について、坂本さんの方は健康管理手当という案を提案しておられますね。それで金田さんの方は出ていないのはどうなのかということ。これは具体的な内容で出ていると思うのですけれども、つまり坂本さんの方は五万円、十万円、十五万円というきのうも提案があったようです。そういう報道がされておりました。それで坂本さんの方には、健康管理手当の必要性、その点についてもう一回この機会にお話しをいただきたいと思う。それから金田さんの方は、名前はともかくといたしまして、これからそういう問題に対する患者側の要求としまして、この点についてはどうお考えか。名前はどうでもいいですから、この問題については介護手当だけでいいのか。判決ということになれば一時金ということが中心ですからあれですが、恒久対策の問題について率直な御見解をお伺いしたい。これが第一であります。
○坂本参考人 まず、一時金との兼ね合いもございますので、一時金のことを少し御理解願わないといけないと思うのです。
 私は四十二歳で発病し、十三年たっております。もしも発病しなかったら、一般的なある社会での社会人だったはずなんです。で、失われてしまったものは一時金で獲得されるべきであろうと思っています。これで御理解願えると思うのです。いわゆる慰謝料と御理解願ってもいいと思うのです。
 さて、私たちは健康管理手当と介護手当を申し上げております。健康管理手当、むろん障害を持ってしまったわけです。現にこり時期でもまだこのようなひざかけ毛布が要ります。これは、中は毛の生えたブーツです。下履きはくつ下も長いソックスです。メリヤスのパッチ、なおその下にストッキングといいますかタイツをはいています。それでもまだ冷え冷えいたします。これを放置したら体は完全に硬直いたします。死を早めます。だから、こういうものは日常的に要ります。先ほども補装具をお見せいたしましたが、この補装具はいまようやく便宜を図って給付されるようになりましたが、これは実費で購入しなければならないのです。これが一つあると思うのです。本当に私たちはもっと多く要求したいのですが、当面はこれだけをということを申し上げているわけです。
 それから、現に私には家内がおりますが、家内がこうして介護してくれるわけです。きょう私は一人では来れません。三人来てもらっているのです。三人は要るわけなんです。もしこの方々にお手当をお支払いしたといたします。最近の平均は五千円、六千円のお手当をいたします。一日一万八千円です。幾らあっても足りないわけです。こういうように御理解願いたいと思います。それから食費にしてもしかりです。食事に非常に気を使わなければなりません。日常生活の暖房費、これも非常に気を使います。逆に冷房が使えないのです。こういう日常生活上多くのものが出てまいります。こういうものを含めて介護手当、健康手当を申し上げております。この面につきましては、私たちの恒久補償要求案と、それからスモン特別法の中に書かれております。
 以上でよろしいですか。
○金田参考人 すでにお手元に差し上げました資料の恒久対策の五ページ目をごらんいただけばわかると思うのですが、私どもの方ではそこに項目を挙げてありますように、第一として、治療方法の開発と最新の医療サービスといった問題を取り上げまして、第二に、スモンなどの神経疾患に向ける病床の付設費といって、こういった金額を取り上げております。それから今後の治療費として、健康保険の自己負担分に対する国庫補助金とか、ベッド差額の負担分に対する補助金、あるいは介護料の負担分に対する補助金、こういった形で治療費の請求をしております。それから、治療にはもちろんそれに対する交通費が要ります。それは入院や通院に要する交通費の一例として、タクシー券といったものを補助するようにということを申し上げております。
○大原(亨)委員 それから石館参考人、長い間中央薬事審議会の会長をしておられたわけですね。それで、中央薬事審議会をきちっと強化しまして、専門的な調査あるいは研究機関というものを付属機関に置くとか、あるいはそこへ情報等を集約して処理する専門の職員を置くとか、薬事審議会の自立的な機能というものを強化して、それは少々金がかかってもいいわけですから、大切なことですから、現在せっかく累積があるわけですから、いろいろな専門機関があるわけですから、実際上のそういう専従的な専門家の集団を最小必要限度置くと一緒に、付属的な研究調査の機関を置いて、そしてそこで的確な政府の判断の資料を出す、単なる文書審理ということだけではいけない、こういうことで中央薬事審議会をきちっと強化をして、人的にも物的にも、この問題に対処する中心的な機能が果たせるようにするという点についてのお考えはどうか。
 それから、これはあなたの御専門の薬剤師ですが、日本では、薬剤師が調剤しなくても、たとえば医師だけが調剤しまして、あるいは家族等が調剤するようなかっこうでの開業医等もたくさんあるわけです。それから、御承知のようにいままで議論があったのですが、薬剤師のそういう独立した分業の機能がないものですから、その点をきちっとすればこれはかなりの薬害が防げると思うのですが、それが現在はそうなっていないので、医療事故という関係になるかもしれないが、出てくるわけですね。ですから、医薬分業の問題については、生産段階と流通段階と使用の段階で、薬剤師には薬剤を管理する社会的な法律的な機能、責任があるわけですから、一番専門家ですから一番責任があるのですね、国家試験までやっているのですから。ですからその点薬剤師会が、職能の自覚の上に立った点をもう少しはっきりこの際内外に宣明されることが必要じゃないか、分業の問題を含めましてですね。マン・ツー・マンで医薬分業の話し合いを進めるとかいうことでなしに、強制分業を計画的にやるというふうな前提でやって、量とか相乗作用とかを薬剤師が責任を持ってチェックする、そういう機能、責任があるんだということなれば、そうすればこれをやらなかったら犯罪になるわけですから、処罰されるわけですから、だからそういうような、産業が発達して科学が発達したら、それに対応してきちっと分化してチェックする機能がなかったら、こういう問題はいつまでたっても起きるのじゃないか。
 こういう二つの点ですが、簡単にひとつ。
○石館参考人 ただいまの大原議員の御趣旨、前半の中央薬事審議会を強化し、また必要な研究機関は自分で持ち、また常時従事できるような専門家の制度をつくるのがいいんじゃないかというお話、私もそれは全く同感でありまして、私も審議会に、どうかそういうぐあいにありたいものだという、口頭での進言はし続けてまいったわけであります。いま十年余りたちまして、さらに国際的にこの問題が大きくなっておりますし、それに対応するためには、いま言った御趣旨を実行に移すことがきわめて必要であるという実感、主張を私は持っておるわけであります。また、現在日本における研究体制は国際的水準にやっと追いつきつつ努力しておるという程度でありますが、やはりこれらを整備するということは、私は国家としても十分考えてもらわなければいかぬと思う。
 私は、中央薬剤審議会の責任者であった時代にもそれは言っておったのですが、日本は予算に関係したものはなかなかむずかしいという実情があります。余分でありますが、そういう意味で、私は、厚生省を去ってから、食品薬品安全センターという財団法人のものを、これは自転車振興会から出していただいてつくっておりますが、これも、こういう安全性の確保について中立的な立場で、国際的な水準の研究所をつくりたい、そうして安全性を宣言していこうという考えから、いま私もその責任者をやっておるわけですが、従来はなかなか国家がその理想に対して十分に理解しない――今日援助はしてもらっておりますが、おっしゃるように、そういう時代になっておるということは確かであると私は思うのです。
 第二の点でございますが、医薬品のいわゆる安全性の確保は薬剤師が責任があるのじゃないかということですけれども、医薬分業はそのために国際的には当然やらなければならぬことになっておりますが、日本は特別な事情と申しますか歴史的な事情がありまして、これを強制的にやるということは患者に非常に迷惑をかけるという意味から、やはり医療は患者を中心に考えていかなければならぬから、トラブルが起きると患者に迷惑をかけますから、われわれは協調の精神で順々にやっていこうという方針をとっておる次第であります。
○森下委員長 次に、川本敏美君。
○川本委員 先ほど来たくさんのいろいろな質問がありましたので、私は、まず金田さんと坂本さんにお聞きしたいのですが、いわゆるサリドマイド事件が起こってから、アメリカでも西ドイツでも薬事法等の改正が早急に行われて、薬害が発生しない措置が行われておる。ところが、それが今日まで、わが国においては、行政通達等ではいろいろ出ておるけれども、あるいは薬害救済法あるいは薬事法の改正というような形には出てこなかった。なぜ政府が積極的に出てこなかったのか。そういうことについて、スモンの患者となられたお二方の、なぜ今日まで放置されたのだろう、こういうことについて、感じておられることがありましたら一言ずつお聞きしたいと思います。
○金田参考人 とにかく、今日まで放置されたことに対しては、私どもは大変な不満を抱いております。やはり国が裁判に問われて、訴訟を遅延させるための時間かせぎとしか考えておりません。その結果から見まして、いまではとにかく遅きに失したと私、先ほど申し上げたとおりでございます。
○坂本参考人 おっしゃるとおり、私自身もサリドマイド禍の友達を持っています。先ほども私の発言の中で申し上げましたが、もしサリドマイド事件のときに国が確約したとおりあるいは企業が確約したとおりにしておれば、第二のスモンは出なかったと思っています。むろん、このキノホルム剤に対しても、一九六〇年にはすでにアメリカでは完全なる使用制限があったわけです。その翌年に日本に大量輸入があったという事実があるわけです。こういう点を見合わせてみれば、もっと早くにこういう制度が確立されておれば、多くの国民が被害に遭わずに済んだと思います。いま出されている二法案ですら問題です。この二法案がなおざりにされれば、次の被害者が出るでありましょう。このように思います。
○川本委員 重ねて金田さんにお聞きしたいのですが、認定の問題について先ほど来いろいろ質問が出ておって、薬害救済の患者の認定について、先ほどちょっと御意見が金田さんからおっしゃっておられたのですけれども、基金が認定とか徴収とか給付というものを全部やっていくということになると、認定というのが大変迅速に行われない危険性があるということをおっしゃったと思うのです。その点についてはやはり切り離して、国が直接認定業務をやるべきだと言われたと思うのですが、国が認定をしても、判定の仕事は中央薬事審議会の判定部会に任されるということになれば、これはなかなかむずかしいのじゃないかと私は思うのですが、その点について患者としてどう思われますか。
○金田参考人 私どものスモンの鑑定の状況を私どもつぶさに見ておりまして、やはり鑑定というのは、認定もそうでしょうが、もともと専門家によって判定するしかないと思います。しかし、その専門家の熱意というものがもちろん大事でありまして、その熱意によってとにかく、現在スモンの鑑定がかなり迅速に進んだということは先ほど申し上げたとおりです。しかし、今回の基金によるその認定制度というものがどういうものができ上がるのか、私にはわかりませんが、その時点ではもちろん同じような関係者の熱意が必要であろうと思いますし、そして切り離してやる方が運営の点でやりやすいということであれば、それは御専門の方々の判断に任せるというしかございません。
○川本委員 石館参考人にお聞きしたいのですが、中央薬事審議会の会長をしておられたそうですけれども、患者の認定の業務について、大臣から中央薬事審議会に諮問されたときに、これは判定能力はあると思いますか。先ほど石館さんは、過誤の問題もあるから非常にむずかしいような言い方をされたと思うのですが、それは十分いまの薬事審議会でできますか。
○石館参考人 私が答える内容であるかどうかちょっと疑問ですが、御質問ですから、私の考えだけを申し上げておきます。
 中央薬事審議会の常任部会というものでやっておるのですが、これは、そういう問題が起きた場合は、そこを最後の機能として、全体的な立場からオーソライズするという機能はありましょうが、専門的な立場からこれを認定するということは別な委員会、しっかりした権威あるものがつくられなければ、私は不可能だと思っております。
○森下委員長 次に、島本虎三君。
○島本委員 まず石館参考人に、先ほどの意見の開陳の中で、この救済基金法は賠償責任でなく社会的、道義的な責任、こういうふうなことを言っておりますが、これでいいと思うかどうか。それと同時に、製薬企業の責任についてはどう考えるのか。それと、医師、薬剤師はこの医療と製薬の責任を持つべきじゃないと考えているのかどうなのか。この点、きちっと意見を賜りたいと思うわけです。
 次に金田、坂本両参考人に伺いますが、皆さんの文書によるいろいろな意見の中に、今度の救済基金法の中の基金の評議員会には製薬メーカー、こういうようなものを入れないようにしてくれという意見書があるわけでありますが、これはいかなる見解に基づいて、いかなる意味によってこういうようなことをきちっと出したのか、この点の意見を両参考人から同時にもらいたいと思います。私の持ち時間は五分間でありまして、申しわけございませんが、その点を御了解の上でお願いいたします。
○石館参考人 この法案は、やむを得ざる、つまり「適正に使われたにかかわらず」という条件がついておるものですから、これは賠償責任というような問題とは切り離した法案じゃなかろうか、こういう観点から私は申し上げたわけであります。過誤のあった場合あるいはその責任の問題は、これは別な行政裁判になるのじゃなかろうかと私は解釈しております。この法案の趣旨はそういう趣旨だろうと私は理解しておるわけであります。
○島本委員 これでいいと思うのか、悪いと思うのかという意見を求めているのですが、あなたは意見がない。そうすると、これはもう患者の責任だということになってしまうわけですから、これは病気になったのが悪いのだというような切り捨て法案になるのじゃないか。こういうようなことであなたが考えていていいのか、この法案をどう考えるのか、あなたの意思を聞きたい。
○石館参考人 どうも非常にむずかしいのですが、全然ないよりは、これは非常に緊急に救助、救済するということを私は高く評価しておるわけであります。それを評価しておるのであって、私ども薬剤師会としては、実は、これは結局は行政裁判でなければできないのじゃなかろうかということを考え方の基本に持っております。
○坂本参考人 確かにおっしゃるとおりで、これは自動車事故とお考えください、ひいた人間がその賠償を審査できるのかということです。全くぶっちゃけた話ですわ。私は関西ですので、何言うとるかということです。加害者が自分でその請求を何で審査したりするのかということです。もう基本的な話なので、これはやはり企業が、自分たちの擁護のために審査基準を非常に厳しくしていって、そのために真の救済にならない場合が生ずるから、企業は当然評議員会に入るべきじゃないということです。簡単明瞭なことです。
○金田参考人 いま坂本さんが言われたとおりでございます。やはり自動車事故と同じと考えていただきたい、そう思います。
○島本委員 なるほど、そのとおりなのであります。したがって、私の考えでは、薬剤師会の会長であります石館参考人なんでありますから、この法案を見て、この中にはやはり国の方についてもっと責任を重んじたっていい、いわゆるpppの原則というか、加害者責任というものの責任がぼけていては困るではないか、その点をもっと明確にするよう何か考えるべきだ、こういう意見があってもいいはずであります。それが薬剤師の地位を高める一つの基本にもなるわけでありますが、ここをぼかしてまた逃げようとしても、これは根本的な救済法にもならないし、あなたがおっしゃったような、これでは薬剤師会の社会的権威を高めることにもならない、こう考えるのであります。まだ時間が三十秒あるようでありますから、この点に対してもう一回石館参考人に伺っておきたい。
○石館参考人 一口で言いますと、この法案がうまく運営できるかできないかは、私も実は自信がないわけでございます。特に判定の問題に関しては……
○島本委員 不満ですが、終わります。
○森下委員長 次に、谷口是巨君。
○谷口委員 本日は、三人の参考人の方には大変御苦労さまでございます。まして、スモンの二人の方の切実なお気持ちを聞きまして、非常に感銘を深くしておるわけであります。非常に質問がたくさん出ておりましたから、私の時間も二十五分でございますので、ひとつ簡単に一お聞きしますし、また答弁もひとつ簡潔にお願いを申し上げたいと思います。
 最初に金田さんに伺いたいのですが、この救済法案につきましては、既発のものについては基金が救済金支払いの代行業務を引き受けてもよい、また既発のものについては裁判中のものは介入しにくい、また既発のものについては和解をしたものについては必要ない、こういうふうなことをうたっているわけでありますけれども、このままの状態でいわゆる賛成できるお気持ちなのか。それとも、私の考えとしては、いわゆる代表質問のときも、既発のものも当然対象とすべきであると主張しておるわけでありますが、その辺のところを明確にお答え願いたい。
○金田参考人 私が主張しました内容は、すでに先ほど申し上げましたとおりでございまして、この状態でそのまま私は見過ごすつもりではございません。とにかく私ども既発生のものを含めるということが第一の条件、必須条件とお考えいただきたいと思います。
○谷口委員 明確に伺いました。
 坂本参考人にお伺いいたしますが、既発の判決派と称せられる方々、この方々は、既発のものをもし救済の対象とした場合、そういうふうにもしなった場合、いわゆる基金法の枠の中で問題を処理し、裁判を終了させるお気持ちがあるのかどうか、ひとつ明瞭にお答え願いたいと思います。
    〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕
○坂本参考人 立法府の中でこんな質問を受けようとは思いませんでした。裁判権というのは別個のものだと思っています。
 ただ、私たちは、先ほども申し上げましたように、被害者は二万人−三万人おるわけです。訴訟に立っておるのは四千五百人余りなんです。ここを御理解願いたいのです。私が申し上げておるのは原告で申し上げているのではないので、そういう意味では被害者の一人として、私たち被害者が十分に補償され救済される制度は、国があるいは企業が責任を持ってやれば、全部の被害者は解決するのだという言い方をしております。このようにお答えいたします。
○谷口委員 よくわかりました。
 次は、石館参考人にお伺いをしたいと思います。
 薬事法に関しましては、いわゆる七十七条の二に情報の提供ということが言われておるわけでございますけれども、非常に混乱をさせないように整理されて、そして的確にこれは連絡通報されなければなりませんし、また集約されなければならないと思いますが、それに対する参考人の御意見を伺いたいと思います。
○石館参考人 情報については被害を未然に防ぐという立場から、もう一つの問題は、これが判定あるいは訴訟になった場合でも、それがどこに欠陥があったかというようなことがいつも論議の的になるわけでありますが、それらのためにも、情報というものを、ある程度システムをはっきりさせておかなければ、その争いが水かけ論になると私は考えております。したがって情報というものは、これが非常にむずかしいのですが、それを選定し、それをまとめて、そしてこれだけはぜひ副作用としてこう処理しろ、こういうような国に対する情報の決定は、やはり学識ある経験者によって常時これが審査されていかなければならない。したがって、いま言ったように、その情報が訓示規定なんというのでは、果たして情報が徹底したのか、効いたのか効かないのか、出したのか出さないのか、出してもそれは不徹底であったのかという問題が起こると思いますので、これは、この法案の一つの大きな効果を上げるためにもぜひ情報システムをつくってもらいたい。ドイツあたりでもそれを慎重にやっております。二段、三段に委員会で決めて、最後に公報に準ずるような、これさえ見ればよろしいというようなものを一つ設定してほしいというのが私の希望でございます。
○谷口委員 情報システムというのは非常に大事なことでございますから、いまの精神は確かに尊重しなければならないと、私も同感であります。
 次に、薬の流通について伺いますけれども、薬の安全性、品質管理、こういう面から見ますと、各段階での管理問題が非常に重要心なってくるわけであります。したがいまして、たとえば何か副作用が見られた、あるいは危険性が予知された、こういう場合に、これは速やかに販売停止あるいは回収等の措置を講じなければならぬことになるわけであります。その問題につきまして、今度、流通段階においてのいわゆる記帳の義務が、公取なんかの意見の影響を受けまして、非常に後退をしているように私は見るわけであります。したがいまして、こういう急に回収しなければならないような場合、流通経路の明記がなくて、果たしてこれが十分な事後の処置、いわゆる販売停止もしくは回収ができるとお考えになるのか、私はできないと判断をするけれども、どのようにお考えになりますか。
○石館参考人 先ほどもその点について、回収の問題もあり、また救済法の問題にも関連し触れましたが、安全性を確保するためには医薬品が完全に管理されている、普通の商品と違うのだという観念がどうしても織り込まれなければならぬ、それが現実においては薄利多売というようなことが横行されていて、そして、医薬品が普通の商品と同じように取り扱われておるという弊害が非常に露骨にあらわれてきておるということは、議員も御心配のことだと思うのですが、われわれもそれを非常に心配をしておる。何とかしてこれに歯どめといいますか、公正な取引をするような規制方法はないものかということであります。
 これに対しては公取の意見もいろいろあるようでございますが、公正な取引をするということは道義的な問題になりますが、これがやみ行為をしないように、またそれには、その取引場においてそういう医薬品の記帳を義務づけるというような問題も考えられるだろうとは思うのですが、それが法的になかなかむずかしい問題もあるらしく思います。この法案において、これは避けているわけでは全然なさそうなんですが、これは後回しにしているらしいのです。これらの医薬品の健全な流通というものに、安全の立場の上からもできるだけ早く規制が欲しい、そのためには、取り扱いの場合は、政令でもいいからある程度の規制を考えてもらいたいというのが私の考え方であります。
 しかし、もう一つは、これは抜本改正にも関係するかもしれませんが、急にはできないかもしれませんが、医薬品というものはやはり、衛生法規だけではなくて、福祉法規の精神も入れて、そうしてまた経済的な法規も中に含むような方法でなければなりませんので、簡単にはできないかもしれませんが、その点はぜひ皆さんでお考えを願いたいと思っておる次第であります。
○谷口委員 いまの御意見を聞いておりますと、いわゆる流通経路の明記については望ましいけれども、そんなにいま直ちに義務化しなくてもよろしいというふうにもとれる感じが一面いたしますが、私としてはそうはおっしゃってないと思うので、その点、流通経路の明記は必要であるのかないのか、もう一回、明確に、その御見解を伺っておきたいと思う。
○石館参考人 いや、少なくとも最小限度のことはぜひこの際実行してほしいというのが私の考えであります。すなわち流通機構において、一般販売業、卸業等においてその医薬品の利益がわかるような制度がぜひとも必要じゃなかろうかと考えております。
○谷口委員 次は、副作用被害救済法の方に関連が出てまいりますけれども、この法律によりますと「この法律で、医薬品の副作用とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においても」云々とあるわけですね。この「適正な使用目的に従い適正に使用された」ということについて、私は石館参考人の意見を徴したいのです。こういう表現がなされておりますけれども、実際にいまの、たとえば薬局方その他におきまして極量が示されておりますし、また一日の通常量が大体示されておりますけれども、これを基準としていわゆる適正な使用量と考えるのか、あるいは医師が判断すればいろいろな使い方ができるわけでありますけれども、いわゆる薬局方そり他によらなくてもできると私は思いますが、こういう表現で明確に一つの基準が出るとお考えになりますか。
○石館参考人 先ほどのお話にもありましたが、判定が非常にむずかしいかろうという私の心配はそれであります。果たして適正に使用されたかどうかということは、これは非常にむずかしいと思いますし、この問題は日本だけじゃありません。米国なんかでもこれを非常に問題にしておるわけですが、すなわち過誤を犯した、あるいは知識が低くて医者が誤りを犯したという場合もあるでしょう。そういうことは非常にむずかしい問題です。したがって医師は高度の知識を修得しなければならぬ、こう言っていますが、最善を尽くしても誤りが起こり得るということがそこにあるわけで、その判定を被害者が承認するかしないかということにかかっているのじゃないかと思うのであります。不服ならばこれは他の方法をもって訴える方法もあるでしょうから、道は閉ざされているわけじゃありませんが、その判定が、果たして被害者がそれを承服するような判定になるかならぬかということは、これはどうもあらかじめ予断ができないわけで、和解のかわりにやるというような程度ならばできるかもしれませんが、これは余りに私個人の考え方になりますので、その程度にしておきます。
○谷口委員 いま私が申し上げていることは、まだ委員会で十分詰めなければならないことについていま触れているわけでございますが、たとえば判定部会というものがつくられるそうであります。判定部会に持ち込む前にも、たとえば患者自体あるいは被害者自体がいわゆる必要な資料を集めなければなりません。また判定部会においても、判定の資料を求めるためには、これは一つは診療側のいろいろなカルテその他の資料を求めなければならないわけですね。現実にはそれは非常にむずかしいと私は判断をしているので、いわゆるそういう調査権というものを判定部会に持たせなければいけないのじゃないかということを私は本会議で強調したわけであります。それについては、大臣の答弁は非常に抽象的であります。こういうように答えているのです。「被害者の申請に必要な資料等が医療機関等の拒否によって入手できないような場合どうすべきか、そうした場合に対しての対応を考えるべきであるという御指摘は、そのとおり私どもも率直に受けとめて、本制度が円滑に運用されるため、施行に当たって周到な準備をしてまいりたいと存じます。」というだけでありまして、現実にこういう資料の提出を命ずる権利、そういうものがない限り、十分な判定結果は出ないと私は思います。これは被害者に対しても非常に重要な関心事だと思いますが、それに対してあなたはどのようにお考えですか。
○石館参考人 私どもの危惧もその点にあるわけでございます。たとえば調査権あるいは医師のプロトコールの調査権というものがなくして、果たして正しい判定が可能であろうかどうか、これは良心的な医師の協力が私は前提条件になると思う。司法権というものがないものがそういう判断を正しくできるかということに私は疑問を持つというのは、その点であります。ごもっともでございます。
○谷口委員 私の非常に懸念するところと全く同じように感じますけれども、もう一歩進めまして、いわゆる判定部会の内容についてでありますけれども、委員会のメンバーにかかわりますけれども、考え方によりますと、どういう人たちを中心に持っていくかの問題がありますが、現在医業関係と薬業関係、法律家ということに聞いております。何か問題が起きますと、いわゆる医師の数をぐっとふやしてくるそうでございますが、もしそういう場合、適正なる使用という問題に触れてくるわけでありますけれども、同じ関係の方々が、そういう問題について、これは実際必要であったのだというふうに口をそろえて言ってまいりますと、常識的に考えてこれは適正でないと考えられた場合でも、適正になる可能性が、十分そのおそれがあると私は考えるわけであります。したがって、そのメンバーについては、全く中立的な法律家みたいな人をたくさん入れるべきだと私は主張しているわけでありますけれども、そういう問題についてどうお考えでございますか。
○石館参考人 その点は同感でありますが、それには中立な公正な学識経験者が、中立な立場で厳正に判断するということがたてまえであります。できるだけそうありたいと私は願うわけであります。この判断は非常にむずかしい。医療の正しいか正しくなかったかということは、医師の技能の評価にもつながる問題ですから、非常にむずかしいというのは、その点であります。だから、その意味で、厳正な判断ができるような仕組みにしてほしいというのは、最小限度の望みであります。
○谷口委員 私は、いままで医師の責任というものが余り追及されておりませんので、したがって、いろいろな資料もある程度出されたと思うけれども、今後もし医師の責任の追及ということになってくると、相当これは資料の提出に困難性を覚えるのではないか。非常にその危惧を私は持っているわけでありますが、時間の都合で先に進めます。
 もう一つ、医薬品の安全性とか有効性とか品質の管理等は非常に厳しく考えられておりますが、私はこれは一つの片手落ちだと思う。要するに医薬品の使用面での管理、これも強化しなければならないと思う。それがないから今日のような医薬品の被害が相当出てきていることは否めない。したがって私は、使用管理の面でもっと国は強く意を用いなければならぬという考え方を持っているわけでありますけれども、参考人の御意見はいかがですか。
○石館参考人 質問の趣旨がちょっとはっきりしませんが、使用面の管理というのはどういうことを意味するか、いま一度……。
○谷口委員 要するに医師がいろいろな医薬品を使った場合、その使ったものの量とかその他については、責任の追及がほとんどなされません。こういう問題については、何らかの形で法的な規制をやらなければならないという考え方を私は持っているわけでありますけれども、そういう面でどのようにお考えですか。
○石館参考人 大変むずかしい質問でございますが、それを少しでも未然に防ぐ方法としましては、やはり医師会と薬剤師会が協力し、また分業というものを確立して、チェックを十分にするということが具体的な一つの方法だと私はそう信じております。これはわれわれ薬剤師会も、医薬品の使い方に対する教養を十分積まなければならぬというので、卒後教育を十分やっている次第であります。
○谷口委員 十分な答弁を得られないようですが、もう一つ最後にお伺いしておきます。
 現在の医薬品の販売ルートについて、要するにプロパーという問題があるわけですね。プロパーの教育問題については業界においてそれぞれ自主的になされておるようでございますが、これは国がもっと一つの基準のもとに十分な教育を施して、人間の生命の安全、健康の保持に役立たせるべきだと私は考えますが、参考人の御意見はいかがですか。
○石館参考人 御趣旨は私も賛成でありますし、また薬務当局もその方向に検討しているはずであります。すでに諸外国ではそういうことが確立しているところもありますし、まだというところもありますけれども、プロパーの教育の資格ということを規定しよう、そしてそういうことを訓練していこうということは、日本でも私は実現をぜひしてもらいたい、こう考えております。
○谷口委員 時間がちょっとありますから、医薬分業について意見を徴したいと思いますが、従来医薬分業に任意医薬分業とか強制医薬分業という言葉が使われておりますが、私はそういう差はあるべきはずはないと思う。法律で決めた以上、これは強制も任意もないはずであります。したがいまして私は、医薬分業というものは国がきちっと日にちを決めて、いついつまでにこれをやる、そのためには準備体制はこのようにしろと、基準を国がみずから定めるべきであると考えます。それでなおかつできない過疎地域その他は、特別の法令をもってこれを除外するとか、将来に見送るとかすべきであると私は考えますが、日薬会長の医薬分業に対する御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
○石館参考人 大変大事な問題でございます。法律では医薬分業が原則になっておることは承知しております。ただし、その後三十五年になりまして、これが、医師が必要と認めた場合という条件が七カ条ありまして、それに該当する場合は医師みずから調剤してもよろしいという条項が、いまそれを何といいますか、口実に使っておるわけであります。われわれも、国民のために分業がよろしいのだということは主張し、これを実行に移さなければならぬ。しかし、そういう意味で、分業しろといってもこれを発行する医師がなければ非常に困るので、また医師と患者というものは人間関係も大事にしなければなりませんので、これを無理にやるということは、われわれはやらなければならぬとは思っているけれども、国民がそれを十分承知した上でないと、国民が非常なトラブルを受けるであろうという配慮から、われわれは医師の良識にまって、これを医師が指導してやるという方向でいかなければ国民が困るというわれわれの良識から、やむを得ずそういう手段をとっているわけであります。それは大きな政治問題になりますし、法律にも逃げ道があるわけであります。ぜひ私は、医薬分業は医師の良識にまってやらなければいかぬという信念で進んでいる次第であります。
○谷口委員 終わります。
○越智(伊)委員長代理 次に、米沢隆君。
○米沢委員 きょうは、参考人の皆さんには大変御苦労さんです。時間もありませんので、早速御質問いたします。
 まず、金田参考人にお尋ねをしたいと思うのであります。
 今回の基金法は、既存の薬害を放置しておるという意味で問題がある、そういうお話がありました。私もそれは同感であります。しかし、新しく発生するであろうというものに対処するというこの基金法は、既存のものが解決しない限り余り意味がないという御趣旨でありましたけれども、ないよりましだという評価はわれわれはしておるのであります。参考人の言われるゆえんは、本来すぐにでも解決しなければならない問題が放置されるのはけしからぬ、同時に医薬品には副作用というものがつきものである、そういうことを前提にして新しい立法ができるのは、結局は副作用をなくすという努力を怠っておるのではないか、そういう主張につながって、新しい立法みたいなものはナンセンスだという議論になっておるのじゃないかと思うのでありますが、将来の副作用被害に備えてこういう法律ができることは本当にナンセンスなのか、それともある程度は評価されておりながらもいろいろな条件があるのか、そのあたりをひとつ聞かしてほしいと思うのであります。
○金田参考人 将来の副作用被害に対してこの法案ができるということに対しては、それはある必要性はあろうかと思っております。
 ただ、現実の問題といたしまして、先ほど申し上げましたとおり、いま大きな被害を、それからその被害の解決の問題を放置したままで、国がこの問題にまず最初に手をつけようという態度に、私は憤慨しているわけであります。
○米沢委員 それから、坂本参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど来認定の問題がいろいろと論議をされましたけれども、確かに認定というのは本当にむずかしいと思うのですね。皆さんが被害者の立場でいろいろ経験なさっておられると思うのでありますが、たとえばそういう疾患、いわゆるスモンではないかということになって医者を訪ねられる、あるいは病院を訪ねられる、そのときスムーズに、ああこれはスモンですねという認定が下されたのか。今日に至っては、かなりの例がありますから簡単に認定はしてくれると思いますけれども、最初のスモンが世の中に余り知られていなかった時点においては、確かにそれがスモンであるという認定は非常にむずかしかったのではないかと思うのですね。その点、経験則上どういうことであったのか。
 もう一つは、最終的に審査部会、判定部会等で認定することになるわけでありますが、しかし、その判定部会で認定するということになりますと、因果関係を抜きにしては考えられないと私は思うのです。したがって、その因果関係がその前にあって、それから、それはこういう薬を飲んだからこういう副作用で、結局これは薬害でありますという判定をしなければならないわけでありますから、私はそこで、逆にまたおかしいではないかという、なぜおれを認定しないのだという裁判にまで、また逆に持っていかれる可能性があるという感じがするのですね。そういうことを危惧いたしますので、皆さんがスモンであると認定されるに至ったときに、医者に対してまたは病院に対してどういう御感想をお持ちになったのか、その点をお聞かせいただきたいと思うのです。
○坂本参考人 まず、言葉では診断か認定ということになると思うのです。病名は診断がつきます。私は四十二年発病ですが、スモンは医学用語であったのですから、日本語で幾つもの病名がついております。症状から来たものをスモンと言っておるわけですから、症状の判断は三十年ごろでもすでにされておった。これは医師が診断しておりますから非常に容易であったことは間違いありません。ただ、診断書や証明書を書くかということについては問題があったわけです。この点は御理解願いたいと思うのです。医師としては、患者の症状を十分診断し得るものであったということです。容易に診断できたということです。これをひとつ御理解願いたいのです。
 証明書が手に入るか否かは別問題です。これはここであえて申し上げます。これは製薬企業と医者との関係もあろうと思います。そういうことから医師が非常に拒んでおる、あるいは民事事件も起きかけている中で拒んでおる、こういう事実があったことも御認識願いたいと思うのです。そういう拘束がなければ、容易に診断書も提出したであろうということも言えます。現に二万人からいる被害者の中で、四千人余りしか証明らしきものをとれていないということを御理解願いたいのです。厚生省ですら一万一千人つかんでいながら、その二〇%余りはまだ個人個人が証明書を手に入れていないということです。医師が内々に報告しますけれども、患者には証明を出さないという事実があるわけです。これも御理解願いたいということです。
 次に判定の問題です。
 私は、あえて申し上げますが、日は忘れましたが、たしかこの社労委員会で、鑑定問題は被害者から申し出云々と言った大臣がおりましたが、その国側がですよ、全然そうじゃございません、現在でもずっとまだ、国が鑑定鑑定ということで裁判で争っているわけです。人間が鑑定されてたまるかということです。これをまず申し上げます。
 ですから、判定という方法であればまだ理解できるはずです。サリドマイドのときには鑑定問題がございませんでした。ほとんど認定で終わっております。しかし、判定の必要があることは社会的に理解いたしますが、その判定をわずかの人間でやった場合にはどうなるかということです。三年で千三百人余りしかできていないのです。二万人おるのです。十数年の判定期間がかかるということです。これで果たして、この救済法の意味があるかどうかを御理解願いたいということです。早期には被害者が救えないことになるので、その意味で、判定機関はもっと大きく行政措置で、都道府県に移管していいのじゃないかという意見を持っております。
 以上です。
○米沢委員 ありがとうございました。
 それから、薬には副作用がある、これはどうしても認めねばならぬ事実ではないかと思います。そこで皆さんはキノホルムを投与されて、飲まれて、いろいろそういうスモンの症状を呈するに至ったわけでありますが、議論の仕方どいたしまして、副作用があり、そしてそのような薬害と言われるような、大きな被害にまで至ると言われる薬が、実際の原疾患には大変効く薬である、そのかわり副作用も大変きつい、こうなったときに、原疾患の治療をするためにはその薬は使用してもいいとされるのか。それとも、副作用があるならばそういうのは完全に製造中止にまで至らねばならぬというふうにお考えになるのか。その副作用があるという薬も、患者さん本人に対して、これはこういう副作用がありますが飲まれますか、注射をされますかという条件つきであったならば、その薬は使用してもいいというふうに皆さんの立場から考えられるのか。そのあたり、ちょっと教えてほしいと思います。
○金田参考人 私が答えます。
 まず、これは被害者によってそれぞれ意見が違うだろうと思うのです。副作用があるとわかったときに、その副作用の大きさとそれから有効性の大きさとのバランスがもちろん問題になるでしょうけれども、有効性が十分あるからといっても副作用がかなり強いものであるならば、それはかなり注意して使っていただかなければなりません。もちろん患者の方がそれを認諾しまして、この使用を許可するというのでしょうか、医師に対して使ってもよいということを言うのは間違いであろうと思います。患者にはそれを判断する能力がないわけですから、それはもちろん間違いであります。ですから、私どもが申し上げますことは、その有効性が十分あるならば、とにかく副作用のより小さいものを十分に注意して使っていただくということしか申し上げようがございません。
○米沢委員 坂本さんはいかがですか。
○坂本参考人 まず、副作用があるのに使うということについて、基本的にぼくは理解できないのです。安全性が十分確保された医薬品を使うべきであるという基本に立っていただきたいと思います。副作用はあるがあなたこれを使ってもいいですかということを、医師と患者にゆだねているというところに問題があると思うのです。そういう制度はあってはなりませんと思っています。むろん患者は答える知識を持っていません。したがって、それ以前の段階で使用制限を明確にすべきだと思っています。
 以上です。
○米沢委員 それから、これは金田参考人にお伺いしたいのでありますが、いままで薬害の裁判等を通じて、国の方は、国の法的責任について、製造承認に当たっての審査基準など具体的な規定はなく、国が特定個人の被害まで賠償する法的根拠はない、こういう主張がなされてきたわけです。しかし、今後薬事法の改正によりまして、確かになまぬるいものはありますけれども、いままでの行政指導でなされたようなものが一応法的に整備されて、そういう審査基準あたりがある程度うたわれてくるということになりますと、今後の裁判においては、法的責任は皆無であるという議論は私は非常にむずかしくなってくるんではないかと思うのです。その意味で今度の薬事法は一面評価できるのではないかと私は思うのでありますが、いかがですか。
○金田参考人 もちろん、私ども考えまして、いま先生がおっしゃいましたとおり同じように評価をいたします。ただ、今度の薬事法の内容で、最初に私が申し上げましたように、薬事法の目的そのものが、安全性を確保するという目的が十分に記載されていないという面から、これを運用する場合、実際に薬事法に基づいて法を執行される方々の心がけ次第では、かなりなまぬるいものになるだろうということを懸念して、申し上げております。
○米沢委員 ありがとうございました。
 それから石館参考人にお尋ねをいたします。
 先ほどの御意見の中で、この基金法について、企業の拠出金を中心にしてこの基金が構成をされる。そこで、民事訴訟的な賠償責任を云々せずに、少なくとも社会的、道義的な観点から、いわゆる社会保障的な観点からこういう制度ができることは是であるというようなお話があったと思います。しかしながら、患者の皆さんの話を聞かしていただきますと、確かに過誤の責任、たとえば薬事法が不徹底であったとか、行政措置がおかしかったとか、企業と国の責任が明確でないとかいう議論はいろいろありますけれども、いま求められておるのは生涯補償あるいは恒久対策なんですね。生涯補償、恒久対策をやろうとすれば金が要る。では一体金はだれが出すかとなりますと、やはりそこでまた責任論がぶり返してくるわけでありまして、基金制度というのは、もしこれが有用であるならば、社会保障的な形でなされるということに是とするよりも、やはり国なり企業というそういうものの責任、結局無過失責任的なものでない限り、おっしゃるような恒久対策なり生涯補償なんというのは非常にむずかしいなという感じが私はするのでありますけれども、石館参考人の御意見はいかがですか。
○石館参考人 無過失責任とか、そういう製造物責任というものが法的にもまだ非常に未熟である、これは非常に問題があるということで、それをそういう観念でなく、いま言ったように、医薬品が適正に、現在の普通の学問的水準に基づいて適正に使われたにかかわらず起きた被害は、時間を置かずになるたけ早くこれの救済に取りかかるという意味の、いわゆる社会福祉的な政策の一環として、企業家は進んでその社会福祉的な救済に協力するという立場の法案だと私は解釈し、その意味において私は評価したいと思うのです。将来はわかりませんが、いまの民事の問題から離れて、ひとまずこれをやるということは進歩、前進だと考えているわけであります。
○米沢委員 それから、この基金法の業務の中で、石館参考人は、給付だけではなくて、今後被害が起こらないように未然に防ぐという発想も取り入れてほしかったという御意見でありました。私は大変傾聴に値する御意見だと思います。
 そこで、薬剤師会という立場で物を申しますならば、その薬害が云々され始めますと、それが医者の要指示薬になったり、いろいろと注意をしなければなりませんが、しかしそういうものが出てくるまでには、やはり売るという立場で、無過失的に言うならば一応加害者としての責任を問われるという、そういうこともあったのではないか、私はそう思います。
    〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕
 そういう意味で、今後医薬品について、特に売薬でこういう被害を起こされた方もたくさんおるわけでありますから、そういう意味で、きれいにそれが薬イコール薬害だというふうになりますと、いろいろと注文をつけられますから皆さんの売薬という意味では責任を免れることになるかもしれませんけれども、その以前においては、やはり薬剤師会としてあるいは薬店を経営される方として、医薬品、特に新しく出てくる医薬品についてはかなりの知識を吸収される訓練なり教育なり、そういうものが必要欠くべからざるものになる、私はそう思うのですね。患者さん個人がやってきて、これをください、はい、そうですかじゃなくて、やはりその医薬品についてはかなりの知識を持つ、それをかねての教育、そういうものをどういうような形で薬剤師会の会長としてなされていこうとするのか、その点を聞かしていただいて、時間が経過しましたので質問を終わりたいと思います。
○石館参考人 簡単に申し上げます。
 われわれ薬剤師、薬を扱う者の教養、知識、技能の向上は、実務教育研修、薬剤師会としての研修があり、また政府も、厚生省当局もそれに対して協力をしていただいております。
 いまの医薬品のいろいろな管理の責任というものが薬剤師会に課せられているわけであります。これは非常にむずかしい問題があるので、われわれは抜本改正において医薬品の種類、扱う者の責任というようなものをはっきりさせてもらいたいということを期待して、ぜひこの一部改正だけで終わるのでなくして、時代とともに要求され展開しておる医療、医薬品の問題を安全に供給するような、また強力な医薬品もたくさん出ているものですから、そういう医薬品の分類、取り扱いの責任をはっきりさせて、そうして、いままで多少混乱をしておる医薬品の分類をはっきりさせてもらいたいというのが、われわれが熱望しているところであります。今回はそれは省いておるわけであります。
○米沢委員 ありがとうございました。
○森下委員長 次に、浦井洋君。
○浦井委員 坂本さんにお尋ねをしたいわけでありますが、私どもは、長年被害者として非常に苦しんでこられて、しかし皆さん方が被害者として結集をされて、裁判を起こされて、四つの地裁で判決もあり、またきのうは三企業と国との間で直接交渉をされるというようなことで、皆さん方の運動も、まだジグザグではあるけれども、だんだん成果が出てきておるというふうに思うわけであります。また、国会に対しても、集中審議をやってほしいというような御要望もあったことを私も十分承知いたしております。きょうは非常に貴重な機会でありますから、先ほどもお聞きしますと、体調も余りよくないということだそうでありますけれども、ひとつ思い切り被害者としての声を上げていただきたいということを前置きいたしまして、ちょっと重複をいたしますけれども、もう一度基本的な問題について坂本さんにお尋ねをしたいと思うわけです。
 今回政府によって出されてきております基金法案、これでは既発生の者が適用対象外になっておるわけなんですが、このことについて被害者のお一人としてどう思われるか、これに対してどうしてほしいか、どうすべきかということについて坂本さんにお尋ねしたいと思います。
○坂本参考人 各議員さんにたしかお渡ししてあると思いますが、まず既発生が含まれていないということについては不満の意を持っております。当然入れていただきたい。本則に入れるなりあるいは附則の中で入れていただきたいということです。簡単ですが。
○浦井委員 最後のところ、もう一度ちょっと。
○坂本参考人 本則に入れるなり附則に入れるなりして、しんしゃく願いたいということです。
○浦井委員 それから、いまもお話が出ておりましたけれども、過去の鑑定問題では非常に苦労をされてきたと思うわけです。しかしそういう中でも、たとえば福岡の地裁では投薬証明のない患者さんも、あるいは広島地裁では同一の鑑定人でもよいというような成果も上げてきておられるわけなんですけれども、現在出されております基金法案の認定の制度についてどう思われるか、そしてどうしてほしいと考えておられるか、この点はどうですか。
○坂本参考人 まず基本的に、いま出されておる法案では十分なる認定はできないということを申し上げます。それからスモンの場合を申し上げますと、非常に容易に診断し得るものであったということです。そういう意味で先ほども申し上げておりますが、それぞれ診療機関がありますし、それから投薬経過もわかっておりますので、そういう意味では行政を通じて、都道府県における判定機関をつくっても十分であろう、それが早期救済に値するであろうと思っております。
○浦井委員 そういうことを含めまして、スモンの被害者の恒久救済対策というのは本来どうあるべきだというふうに考えておられますか。
○坂本参考人 本来どうあるべきかと言ったら、根本的にはぼくの体をもとに戻してくれということですが、そんなむちゃなことは申しません。要するに、家族を含めて悩める者すべてが一生涯安心して生活できるすべのものをつくり上げるべきだということです。具体的には申し上げられませんけれども、そのように御理解ください。
○浦井委員 具体的に言っていただいて結構です。そういうことの中に、当初皆さん方が原状回復事業ということで要求をされておったわけでありますが、政府原案でも保健福祉事業という項目が当初ありました。それが現在はなくなっておるわけなんですが、こういう点については一体どう思われますか。
○坂本参考人 当初、私も大綱を読んでもらいました。今回のも読んでもらいました。保健福祉が抜けております。当然今回は入れるべきだという意見を持っております。
○浦井委員 それから、各論的になりますけれども、この基金法案では、医療費というのは健保の自己負担分について医療費と言う、いわゆる保険相乗りの制度になって、それで基金から給付されるということになっておるわけなんですが、たとえばそういうことになったとしますと、いま皆さん方が恒久対策の一環として要求されておるはり、きゅう、マッサージを初めとして、いろいろな点でかなりの制約が起こってくるのではないか、このように私どもは危惧をするわけであります。だから、そういうことも含めまして、私どもはやはり被害者手帳といいますか、そういう手帳の発行を制度化させることが必要だというふうに考えるわけなんですが、その辺の実情について坂本さんから少しお教えを願いたいと思います。
○坂本参考人 まず、私は、医療費の定義の問題だと思うのです。医療というのは医術をもって療養するということですから、患者の健康に値するもの、生活に値するものすべてが含まれていいはずなんです。ところが現在では健康保険制度があって、それのみの自己負担分の補助ということです。であれば差額ベッド料はどうなるのだ、付添婦はどうなるのだ、療養費はどうなるのだ、特別食はどうなるのだということが出てまいります。これが完全に満たされなかったら完全な医療と言えないわけですから、この点では非常に不満足なものであるということを申し上げたいと思うのです。
 ちょっと自分のことになりますが、私自身も入院しておりました。完全に体が動かない間、家内は約一年余り私と一緒に病院で生活していたわけです。当時子供は六年生と四年生です。この子たちはほったらかしなんです。子供たちはほっとけば非行に走りかけているわけです。家庭も破壊されていくのです。こういうものを保障しないで、患者は果たして精神的に安定して治療を受けられるかというと、受けられないわけです。非常に精神的に不安な状態では、いかに医薬品をもらってもこれは戻ってきませんですから、こういう点も含めたものが必要であるということから、恒久補償と申し上げているわけです。
 恐れ入りますが、もう一点は何だったでしょうか。もう一点、何か御質問があったと思ったのですが。
○浦井委員 手帳の発給ですね。
○坂本参考人 手帳の件は、私、ちょうどここに持ち合わせております。身体障害者手帳というのをもらっております。この身体障害者手帳にスモンによる視神経萎縮、両下肢機能障害と書いてくれています。これは地方行政が理解がいいからですよ。ただし、これは持っているだけで何にもならないのです。車いすを買う場合とかあるいは税金の免除になるとか、そういう程度にしかならないわけです。これで治療を受けようと思っても受けられませんです。そういう意味で、スモン患者にはいわゆる合併症あるいは随伴症が多く出てまいります。先ほども言ったようにむろん神経障害がございます。その原因だとか症状経過を知らずに、簡単に医薬品を与える医療を行った場合には、逆な効果が出る場合もございます。そういう危険性もございます。そういう意味で、原爆手帳と同じようなスモン手帳が必要であろうということは、意見を申し上げておきます。
○浦井委員 その次に、この基金法案では、予防接種救済法並みの給付水準が予定をされているわけなんです。たとえば障害年金一級で月十七万円足らずということになるわけですね。そういう点で、この辺の問題について一体どう思われるか、どうしてほしいと考えておられるか。どうですか。
○坂本参考人 まず、私は、細かい数字はよくわかりませんですが、何をもって等級をつけるのかということなんです。正直言いまして、重度、軽度という言葉がございますが、何を基準にして重度、軽度にするのかということが明確にされていないわけです。それから、判定に対する問題も明確にされていないのです。これで金額を決められていくことが、まず私には理解ができないことです。軽度、重度に関係なく薬品によって事故が起きれば必要なものはすべて補償すべきです。それから、症度についても十分なる審査が必要である、またある程度の認容が必要であるという考えなんですね。それで、いま出されたものでは非常に不満足なものだと思っております。
○浦井委員 次に、薬事法の一部改正について坂本さんの御意見を少しお聞きをしておきたいと思うのです。
 皆さん方は薬害根絶ということを一つの大きな目標に掲げておられるわけです。そういう観点から、いま政府が出してきておる薬事法の一部改正というのは一体どうなのか。特に目的の項で、安全性、有効性というようなはっきりとした表示が抜けておるわけなんです。それから巷間伝えられるところによりますと、当初は企業の責務というような項目が入るはずであったのが、メーカー側との折衝の中で消えたというようなことも言われておるわけなんですが、これは私は当然入れるべきだと思うのです。そういう点について一体どう思われますか。
○坂本参考人 まず、非常に期待を裏切られたというのが私の感想なんです。薬害根絶を申し上げてきました私たちとしては、無論、戦時薬局方なりあるいは戦後の薬事改正で変わっていった中でこういう薬害を起こしてきたわけですから、それを十分反省された上で薬事法の改正が出されるかと思ったら一部改正、しかもこれまでの行政通達をだらっと並べたにすぎないじゃないか、しかも責務が外れていったじゃないかということは、ただこの時期に、こういう制度をつくりますよという見せかけではないかという怒りを持って見ております。医薬品の安全性も、国民の命も、根本的に担保される薬事制度の改正になっていないということを強く申し上げたいです。
○浦井委員 最後に石館先生にお聞きをしたいのですが、日本薬剤師会でいろいろ論議をされて、いままでも御意見をお伺いしたわけでありますけれども、薬剤師のこれからのあり方といいますか、職能も含めたあり方というのが非常に大きな問題になるだろうと思うわけです。医薬品の安全性、有効性を確保していくために、薬剤師という職能から見まして、今回の薬事法の改正を含めて一体どうすればよいのかという点をお伺いしたいと思う。
 それから、その中の各論的な問題で、モニター制度であるとかあるいは情報伝達制度という中で、薬剤師というのは一体どういう役割りを果たすべきだと考えておられるか。総論と各論、二点についてお伺いしたいと思います。
○石館参考人 政府が情報を責任を持ってやるようなシステムを何かの形でつくることが第一の条件であるということで、われわれ薬剤師会といたしましては、情報をいかに伝達するかということにつきましては、ファクシミリというような費用も用意しまして、情報の伝達を各県に速やかにやる、またそういう情報伝達の主任を設定して、地方で疑問があった場合はすぐ答えるようなシステムをいませっかく準備中であります。もうすでに実行はしておりますけれども。そういうことで、われわれは、医薬品についての国民に対する直接の相談相手としての薬剤師の役割りを大いに強調し、またそのための訓練をしておるわけであります。
 それからもう一つは、医薬品の分類がいまのところ非常に混乱をしているように思います。先ほど言ったように今回はそれには触れておりませんが、配置売薬あるいは大衆薬、要指示薬とかあるいは医療用とか、こういうような混乱をしている向きがありますので、ぜひこれの分類と取り扱いの責任というものをはっきりさせて、国民に安心を与えるということを期待しておるわけでございます。
 モニター制度については、われわれはそういう意味で、各薬局において常に患者のアフターケアを十分やれ、ただ与えるだけではなくして、それのアフターケアをして常に情報をつかむように、そういうことも訓練をし、奨励をしておる次第であります。
○浦井委員 終わります。
○森下委員長 次に、工藤晃君。
○工藤(晃)委員(新自) 本日は金田、坂本両参考人、大変体のぐあいの悪いところをお出ましいただきまして、心から感謝を申し上げます。また、石館参考人もお忙しいところをお出ましいただき、熱心に御討議をいただいて、感謝いたします。
 私に与えられた時間は十五分でございます。その中でこのような重要な問題についてお聞きをするということでございますので、十分なことは当初から望めないと思いますが、ただ皆さん方のお立場からの御意見というものが今後どのように反映していくかということについての私なりの質問をさせていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
 第一番に、医薬品副作用被害救済基金法の問題に関連して質問いたします。
 薬というのはそもそも異物であるというふうに私は考えているわけで、効果とかあるいは副作用とかというものは、人間がそれによっていい結果が出た場合には効果と考え、被害があるいは害が及ぼされた場合には副作用というふうに、一応便宜的にとらえているのではないかというふうに考えているわけです。薬の側から見れば、すべてそれは薬の持っている特性である、こういうふうに考えた方が至当ではないか。しかしそれを使用した結果、こういう副作用による被害が生まれたという場合に、それをどのように社会が救済をしていくか、この問題の方便をできるだけ有効に、また被害者に対する手厚い手段をどのようにとられていくかということが問題点であろうというふうに考えるわけです。
 あと一点は、そういう被害が出てしまった後の救済もさることでございますけれども、問題は、きょうもるるおっしゃっておるように、そういう発生を未然に防ぐためにどうするかという問題の二点が、きょうの質問をしたい点でございます。
 そういう薬物の特性というものから考えて、この法案の当初に書かれております「医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする。」という目的、それは確かに結構でございます。しかしながら後の方で、医薬品の副作用に対する定義の中には「適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応をいう。」というふうに定義されているわけですね。そうすると、副作用被害救済というのはこういう定義にのっとった救済であるというふうに考えられるわけであります。ところが、前提とする私の考え方からいたしますと、薬そのものは、適正な使用とかあるいは適正な目的のために使うとかというふうなことを断定することは不可能だ、そういう考えがあるわけでございまして、そうなってくると、ここに救済法案そのものが非常に矛盾に満ちたものになろうかという考えを持つわけでございます。結局は、要するにこういう定義をつくる以上は、それが適法であるかどうかということを判定しなければならないし、だれにその責任があるかということもまた追及されなければならない。しかしそういうことになってまいりますと、これは救済という問題、この医薬品というもろ刃の剣と申しますか、あるいは天災に準ずるというふうな考え方から救済していこうという場合には、こういう定義そのものが非常に大きな障害になると思うのです。
 そういう意味で私は、被害者のお二方にまず一番に、皆さんが救済をしろという場合の御要求というか、どういうふうに救済をされるべきであるというふうにお考えになっていらっしゃるか、その点について、先ほどからもおっしゃっておりましたけれども、改めてお聞きをしたいと思います。
 石館参考人については、私が前提といたしました薬物の特性というものについて、私の考え方がどうであるかということについての御意見を承りたい、こういうふうに思うわけでございます。
○金田参考人 医薬品の被害というのは、私どもは、先ほどから申し上げましたように、被害者が自動車に乗りまして一つの交通事故に遭ったようなものであると思います。したがって、私どもが求めますことは、この被害者の遭った被害について十分な、しかも適切な補償といったものをまず最初に与えることである、そのために救済が必要であるということだと思います。しかる後に責任があったというようなことがわかれば、その意味でその求償あるいは別な手段があろうかと思います。そういう手だてを講じてほしいということでございます。
○坂本参考人 何かそちらの方でごちゃごちゃと言われると、ぼくも目が不自由になってから、発言にないことを言いましてごめんなさいね。目が不自由になると非常に私語が耳に入り過ぎるのです。申しわけないですね。自分が言おうとするときに、何かちかちかと言葉が入ってくると、目が見えないために、自分に言われたのかと思ってしまうのです。
 まず、被害を救済するということは、被害がある限り加害があるということです。加害が明らかなものから早く救済すべきであるということなんですよ。これが基本だと思うのです。今回出されているのは、加害のあるものは別個にされています。これはおかしいと思うのですね。全く、医薬品と言う限りどこかが売った薬品のはずなんですよ。どこが売ったかわからぬ、どうなったかわからぬものだけは救済しようという法だとぼくは簡単に理解しているわけです、今回の法案については。これで果たして救済されるのかなと思います。金を出す側も、だれが加害を与えたかわからぬものに、どうして金を出すんだと言いたくなるのですよ。そういう意味でも、この制度は問題があります。やはり加害責任と、それから判定にしてもしかりで、結果は、制度はできても、本当に狭義の救済にしかならない制度になっているということで、非常に不満を持っています。
○石館参考人 医薬品は総じて異物であるという考え方には、私も同感であります。ただ、その異物を使用するに支障があるかないかの判断は、医師にあると私は思うのであります。そういう意味で、それが商業の具に供されては大変なことでありますが、異物ということは基本的にあるわけです。それをあえて使うということにはそれだけの理由がなければいかぬということじゃなかろうか。その点のいわゆる社会的良識というものが前提になると私は思っております。
○工藤(晃)委員(新自) そういうことになりますと、どうも、この副作用救済基金法の定義そのものから議論をしていかなければならないというふうな感じを現在持っております。
 それから次に、やはり問題は、こういう救済措置というのは後追いでございますから、副作用をどのように未然に防止していくかということがもっと大事なことだ、こういうふうに考えるわけでございます。そういうことについてやはり幾つかの問題点がそこにあろうと思いますけれども、私が簡単に考えましても、情報収集をできるだけ早くやるとか、あるいは製造責任をもっと厳重にしていくとか、あるいは早期発見をどのようにとらえるとか、あるいはまたチェックをできるだけいろいろな形で厳重にしていくとか、こういういろいろな方法等々がありましょうけれども、あともう一つ質問をしたいことがございますので、一言ずつで結構ですから、そういうことについて患者さんの側から、こういうところがやはり一番大事なんじゃないかという点をお答えをいただきたい、こういうふうに考えます。
○金田参考人 薬事法が改正されますことは、とにかく急を要することだと私は考えております。しかし、薬事法そのものの本質が、やはり安全性の確保ということを念頭に置いて改正されなければいけないということをどうしても強調したいと思います。
 それから、この薬事法を使って為政者が一体どういう施策をしていくのか、今後行政指導としてそれをどうやって補っていけるのかという覚悟のほどを、私どもは十分確かめたいという気持ちがあります。
○坂本参考人 まず、今回の薬事法改正というのは安全性が完全に保証されていないことを問題にしたいと思うのです。これだけはやっていただきたい。
 それから、いまも先生がおっしゃったように、では安全性を保証するために、また医薬品事故を起こさないためにどうするのだという点が非常に抜けているということです。これは言うなれば情報収集もしかりです。それから、医者は、この薬はこういう薬品ですよというところまでは、行くところまで行かないと言わぬと思うのですよ。これはこういう副作用がありますよ、これは何々というお薬ですよ、こう言えるまでに医者にも知識を持たせたいし、情報を与えなければいけないと思います。
 それから、現在持たれているプロパーの問題、これははっきりぼくは申し上げておきます。医師とプロパーの関係、製薬会社との関係も、明快に行政が指導していかないと、次が起きるであろうという意見をつけ加えておきます。
○石館参考人 一言にして言えというわけですが、今回の薬事法改正はきわめて厳格にされた改正であるということであります。その意味では、いままで行政指導でやったものをなお前進してできるだけ補てんしたということにおいては評価というか、そうわれわれは考えております。しかしながら、まだ個々に抜けている点がたくさんある、安全性だけに関してでもまだこれを補てんする必要がある個所、情報の問題等でも未然に防ぐ方法が何か欠けているような気がする、こういうところが私の所感であります。
○工藤(晃)委員(新自) 残された数分の時間を、石館参考人にお聞きをいたします。
 先ほどの御発言の中に、薬事法の一部を改正するということだけじゃなくて、全面的に、基本的に見直していくべきではないか、こういうことをおっしゃっておられたと思います。そういうことの具体的な意見を、簡単で結構でございますから、時間の許す限りお述べいただきたいと思うのです。
 それからあと一点は、今後のこういう医薬品の副作用その他非常に社会的な問題を背景といたします中で、薬剤師会の皆さん方が社会にどのような対応を公的にしていけばいいのかということについて、積極的な御意見がございましたらあわせてお聞きをしたい、こう思います。
○石館参考人 工藤先生にこういう機会を与えられたことを私は感謝をいたしますが、薬剤師会、薬剤師としては、医薬品の管理と供給が主なる薬剤師の法的責務でありますが、さらに薬剤師は製薬企業の中にも責任があり、また卸とか一般販売業の中にも責任がある、そういう意味において、いままでの薬剤師の管理権といいますか管理義務といいますか、この両方が常につきまとうわけであります。現在、当局もそういう意味で、いわゆる製薬過程における薬剤師の責務というものを前よりも前進いたしました。また、化学的製造面だけじゃなくGLPという生物試験の方においても、いませっかくそれの法制化に取りかかっておるようであります。そういう意味で、医薬品の管理という問題がはっきりしませんと、安全性の確保もできないわけであります。したがって、今回いままでの行政を強化したという前進は大いに認められるが、もっと基本的に、先ほど工藤議員が言われたような供給の厳正な管理というものをもしなければならぬ。先ほどから諸先生にお答えいたしましたように、情報のはっきりした責任あるシステムというものの設定、それから医薬品の分類というものもはっきり近代化しなければいかぬ、それに対し管理の責任を明らかにしていかなければならぬという、今後重大な問題が控えておるわけであります。これらについては、一部改正に続いてぜひ当局が取りかかっていただきたい、それでなければ時代におくれるということを心配しているわけであります。
 以上です。
○森下委員長 以上で、各参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時四十七分開議
○竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 委員長所用のため、その指名により、私が委員長の職務を代行いたします。
 医薬品副作用被害救済基金法案及び薬事法の一部を改正する法律案、両案の審査を続行いたします。
 ただいま参考人として日本製薬団体連合会会長石黒武雄君、東京慈恵会医科大学名誉教授上田泰君、東京大学医学部名誉教授熊谷洋君及び日本弁護士会連合会公害対策委員会副委員長萬羽了君、以上の方々が出席されておりますので、一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 両案について、それぞれのお立場から、何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
 なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、その後、各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。
 また、念のために申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず石黒参考人にお願いいたします。
○石黒参考人 日本製薬団体連合会会長の石黒武雄でございます。
 先生方には、いつも国民の健康福祉の向上のために御尽力を賜り、また、私ども製薬業界に対しましても、日ごろ御懇篤な御指導をいただいておりますことをありがたく存じております。
 本日は、私どもが重大な関心を持っております薬事法の一部を改正する法律案と医薬品副作用被害救済基金法案につきまして、業界の意見を申し述べる機会を与えられましたことを感謝申し上げます。
 このたび、国会に薬事二法案が提出され、御審議を仰ぐことになりましたが、これらの社会的背景につきましては、私ども深く認識しているところでございます。
 日本製薬団体連合会といたしましては、国民医療の向上と健康の増進を願い、よりすぐれた医薬品の供給のために、及ばずながら努力しているところではございますが、なお、業界に対する批判につきましては、これを真摯に受けとめて、改善すべきところは改善を進め、社会の信頼を高めるよう努力してまいる所存でございます。
 さて、法案につきまして私どもの所信と要望を申し上げたいと存じます。
 まず薬事法の一部改正についてでございますが、このたびの薬事法の改正の目的は、医薬品の有効性と安全性の確保を図るところにあり、その大筋について、業界として十分理解するところでございます。
 私どもは、すぐれた治療効果を持ち、より安全性の高い新薬の創製開発を行うことと、医薬品の品質の確保に努め、適正な情報の提供を行い、安定供給を図ることが製薬企業に課せられた社会的使命と心得まして、種々努力を重ねてまいりました。特に、昭和四十二年の製造承認等に関する基本方針の通達以来、行政指導によりまして、開発、製造、流通、情報の各過程にわたって、品質確保と安全性確保のための対策が強化されましたが、業界もまたこれに積極的に協力し、さらに自主的に対応を図ってまいりました。この十年余りにわたる各企業の研究開発面、製造設備面の投資の大部分が、品質の確保と安全性の確保に向けられたと申しましても過言ではございません。
 なお、私どもは今後とも、薬事法改正の趣旨に従い、一層の努力を重ねてまいる所存でございますので、新薬の研究開発の促進を初め、生産、流通の各段階における諸活動が円滑に推進されますよう、法の適正な運用についてお願い申し上げます。
 引き続きまして、医薬品副作用被害救済基金法案について申し述べます。
 先ほど申し上げましたとおり、薬事法の改正によりまして、特に安全性確保のために国の監督、規制が強化され、法的にも万全の安全対策が講じられることとなり、私ども業界もまた、これに対応して真剣に取り組んでまいる所存でございますが、それでもなお、医薬品の特性から、予期せざる副作用被害が生ずる可能性が絶対にないとは申せません。医薬品が医療の場におきまして適正に使用されたにもかかわらず、予見し得なかった副作用により被害が発現するとか、ある程度予知されておりましても、治療上の必要性から使用された結果、被害が生じるなどの事態が起こり得るわけでございます。これら、何人にも法的責任が及ばず、かつ、受忍の範囲を超えた被害につきまして、民事責任を離れて、これらの不幸な被害を早期、円滑に救済するための基金制度が創設されますことは、わが国の実情に照らして妥当なものと存ずる次第でございます。
 それゆえに、日本製薬団体連合会といたしましては、社会的救済を目的とした本制度の創設に積極的に協力し、直接的に関与すると否とにかかわらず、全企業が共同して拠出することを決意しているところでございます。
 これまで、私ども業界として合意に達するまでの基本的要件といたしまして、制度の創設、運営に当たられる主体者としての国の拠出を要望してまいりました。その点から申しまして、本法案につきまして、第四十三条 国の補助金の条文に不明確な点があり、業界として将来に不安を残しているところでございます。その点に関し、ぜひとも先生方の御理解を賜り、国の定率補助を明確化していただきたいと存じております。
 つきましては、本法案に関しまして、医薬品には無過失責任を導入し得ないとする私どもの見解と、基金に対する国の負担についての要望と、この二点について申し述べたいと存じます。
 まず、医薬品が本来的に危険を内在しており、しかもそれによって企業利益を得ているという観点から、医薬品に無過失責任を導入すべしとする論がございます。確かに、文明の発達と社会生活の複雑化から、消費者保護のために、ある種の商品の分野に製造物責任を適用して、さらに無過失責任の原則を明確化しようとする考え方が現在世界的潮流となっていますことは、否定し得ないところでございます。しかしながら、私どもは、医薬品に無過失責任を課すことが果たして妥当かどうか、慎重な検討を要するところであろうかと存じております。
 医薬品は、有効性と安全性のバランスを本質としておりまして、副作用は常に、治療目的に適合した主たる作用である効能、効果と併存するものでございます。また、副作用被害につきましても、治療効果による受益と危険の引き受けないしは受忍の度合いとの比較考量に基づいて、判断されなければならない性格のものと存じております。また、その上にいかに高度の科学レベルをもって安全性を追求いたしましても、副作用の完全な予見は困難である面もございます。したがいまして、治療目的のためにプロフェッショナルな判断が介在して使用され不可避的に生ずる副作用の被害とか、あるいは効能、効果を期待して容認された範囲内の被害についてまで、製薬企業に全面的に損害賠償の責任を課すことは妥当でないと考える次第でございます。
 またさらに、医薬品は医療と不即不離の関係にございます。そして現在、医療自体につきまして、その有効な治療を期待するために、治療を受ける側にある程度の危険の引き受けが行われている事情からしまして、治療行為に無過失責任を課すべきでないとする考え方が社会通念であろうかと存じます。医療の場で用いられる医薬品につきましても、同様の考え方がとられるべきだと存じます。現に、製造物責任法理が発達し、保険制度の裏づけのあるアメリカにおきましても、医薬品の特性に着目して、無過失責任の導入は適切でないとされております。
 次に、国の負担を妥当とする考え方について申し述べます。
 この法案によるところの救済制度は、本来的には、国にも業界にも民事責任の存在しない被害について、法理論を離れて早期救済を図るという社会的な措置でございますから、国はまず、本制度の主体者として、その費用負担の方式と割合とを明確化すべきであると存じます。
 その理由として、第一に、国は医薬品の製造承認を行い、かつ、その製造、販売、使用にわたって監督、指導する責任を持ちます。第二に、何人にも法的責任の及ばない被害者の救済に当たるべき社会福祉責任、第三に、わが国独自の性格をもって創設された救済制度を円滑に運営するための国の責任、第四に、国民の健康福祉増進、保健衛生上の消費者保護に関する国の責任などでございます。
 業界の立場で申し上げますならば、基金に対する拠出はすべて製薬企業に対し強制されております。したがいまして、直接的に当該被害に関与していると否とを問わず、共同して所定の費用負担に応ずるわけでございますから、被害に関与する企業を除いては、その間に何らの因果関係も連帯性も存在していないわけでございます。この点が、いわゆる汚染者負担の原則による公害健康被害の補償問題と本質的に異なることを、十分御理解賜りたいと存じます。
 そのような関係にありながら、なおかつ、業界が共同拠出に応ずることを合意した根拠は、社会福祉の理念に立つものでございますが、また同時に、生命関連商品である医薬品を製造販売するという社会的立場に基づくものでございます。
 このように、本制度は、国の施策に業界が協力して、両者の負担により運営されるところに意義があり、その点から申しましても一国の定率負担なくしては、本制度の円滑な運営を期しがたいと存ずる次第であります。
 以上、申し述べました理由によりまして、日本製薬団体連合会といたしましては、本法案の第四十三条補助金について、次のように御要望申し上げる次第でございます。
 すなわち、国は救済給付費用に関しまして給付費の二分一の補助、さらに、一定限度を超える大事故に際しては別途に考慮をお願いいたしたいこと、また、基金の事務費に関しましては二分の一の予算補助をお願いいたしたいと存じます。
 以上、諸先生方の貴重な時間をちょうだいいたしまして、日本製薬団体連合会としましての所信と要望を申し上げましたが、どうか業界の立場を御理解いただき、また個々の企業の経営上の事情等御賢察賜りまして、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○竹内(黎)委員長代理 次に、上田参考人にお願いいたします。
○上田参考人 私、慈恵大学の上田でございます。私は、臨床医学の立場から意見を申し述べてみたいと考えております。
 最初に、薬事法の一部改正法律案について意見を述べます。
 医薬品は、医療の場を通じて国民の健康、ひいては国民の福祉に寄与、貢献するものと考えております。したがって、国民の福祉の向上のために医薬品がいかにあるべきかは、ユーザーである医師、医薬品メーカー並びにその関係者が、常に本姿を考慮して検討していかなければならないと考えます。また同時に、行政もその中にあって、果たすべき役割りを明確にして、医薬品を認識していかなければならないと考えております。
 したがって、薬事法の改正に当たりましては、広い視点から、二十一世紀に至る将来を見通しての改正でなければ意味がないと考えます。
 われわれが医薬品に関して一貫して主張を堅持してまいりました、医薬品をめぐる諸問題を考察いたします基盤は、医師による医薬品のポジティブチョイスという概念であります。このポジティブチョイスという概念の実施を可能にさせるためには、ユーザーである医師、製造者、さらには流通関係、行政など、医薬品に関連のあるものが別個にばらばらに対応するのではなく、すべてが緊密な連携をもって対応していく必要があると考えます。
 皆様のお手元にお配りしてあります表がそれでございますので、ごらんをいただきたいと思います。
 今回の薬事法の改正案を見てみますと、その主たる対象領域はその図の点線で囲んだ範囲のものでありまして、文字どおり、われわれが見ますと一部の改正になるわけであります。
 このような一部の改正では、本法案が、医薬品の有効性、安全性の確保が中心課題ということでありますので、医薬品全般から見ますと、この有効性、安全性の確保にはなお不十分なものがあると言わざるを得ないのであります。
 特に、われわれ臨床領域で関係が深く重要でありますところの研究開発、流通などにつきましては、全く言及していないということが言えるわけであります。
 この事実は、わが国の円滑な前向きの薬務行政を行う上で、また将来に向かっての今回の改正がより意義あるものとする上では、不十分ではないかと考えるものであります。
 以上を総論といたしまして、次に各論的なことを申し上げます。
 特に私は内科学の専攻者でありますので、この法案の中でよろしいという点につきましては時間の関係で省略をいたしまして、特に臨床として指摘申し上げたいことだけについて、以下時間の許す限り述べてみたいと思います。
 まず第一に、医薬品の製造に関連した問題であります。
 国民の健康を保持、向上させるためには、次々に発生しております新疾患あるいは難治疾患に対応する強力な新薬剤の開発がぜひ必要であります。すでに述べましたように、今回の薬事法の改正法案中には、新薬開発に関しましてはほとんど触れていないというように考えます。薬剤の開発の問題につきましては、これはぜひ、臨床の面から見ましても、積極的に取り組んで欲しいということを考えるものであります。このままでは、新薬剤の開発は、他の国に比べて一段とおくれをとる可能性があるわけであります。
 次は、新薬開発の再審査の問題について述べます。
 この再審査の内容を見ますと、いわゆる先発メーカーの開発利益を保護するということ、したがってこの新しい薬剤の開発意欲を増進させるというところに一つのねらいがあることは、われわれは理解ができます。ただ、薬剤というものはきわめて広い範囲にわたりますために、これが一つの六年という期間でもってすべてを区切ってしまうことにつきましては、われわれは必ずしも同意できないものがあるわけであります。薬剤によってはもっと短い期間の方がより適切であると思われるものもありますし、また薬剤によってはより長期の期間でよいものも十分あると思われるものもございますので、これを一律に六年間とすることにつきましては、将来幾つかの問題を残す可能性があると考えるものであります。
 次に、医薬品の再評価について述べます。
 医薬品の再評価につきましては、すでに実施をされ、成果を上げていると考えております。今回の改正は再評価の明文化であると思います。しかし、現在の速やかな疾病の変貌の現実を知るところのわれわれ臨床医にとりまして、この再評価という制度は必ずしも万全なものではなく、さらにより一層の慎重さをもって扱う必要があるということを強調したいのであります。
 臨床医として一、二の実例を申し述べてみたいと思います。
 御承知のようにクロラムフェニコールという薬剤がございます。これはかつては広く使われていた腸チフス抗生剤でございますが、今日では再生不良性貧血等の発生が原因になって、ほとんど使用が禁止されております。ところが、その後いろいろの研究の進歩に伴って、今日では、糖非醗酵性グラム陰性桿菌感染症というものがわが国でも次第に増加しつつある現状でございます。このような感染症には、いまの時点ではクロラムフェニコール以外に効果を示す薬剤が全くないわけでございます。一体こういうような事態に対して、この再評価というものを行う上でどのように解釈していくかということは、今後の国民の健康保持の上でも重要な問題であろうと考えます。
 次に、クロロキンという薬剤があります。この薬剤は御承知のように腎炎の治療薬として使われまして、そのために非常に好ましくない視力障害などの副作用が発生して、再評価に上ったものだと思います。本来この薬剤は腎炎の治療などに使う薬剤では全くなかったのでありますが、どういうわけかこの薬剤が使われ、しかも長期間に使われるということによって、この視力障害があらわれてきたわけでございます。ところがこの薬剤は、御承知のようにマラリアの治療薬としては世界的に最もすぐれた薬剤であるということが承認されております。わが国の世界との交通の現況からして、最も抗マラリア剤としてすぐれている薬剤がほとんど使えないということが、果たしてよろしいかどうかということにわれわれは臨床医として大きな疑問を持つものであります。したがって私たちは、この再評価という問題につきましても、簡単な文面だけではなくて、さらに内容を十分考慮した上の再評価でなければ、問題が起こり得ると考えるものであります。
 次は、情報の提供等の問題であります。
 医薬品などの適正な使用のために必要な情報の提供、情報の収集の協力ということがこの中に述べてありますが、一体情報とは何を指すのか。私は、たとえば薬効、副作用もその一つと考えておりますが、もし誤った情報、そしてその誤った収集解析が行われたならば、これはまことに危険であると言わざるを得ないのであります。この方面の専門医師の間においても、判定の困難な副作用情報あるいは薬効情報というものがあることを御承知だと思います。したがって薬剤を直接使用しない、また患者も全く診ていないような人たちから得るような情報が果たして本当の情報かどうか、われわれはこの点に大きな危惧を持つものであります。したがって、この情報の内容のいかんによっては、情報を求める手段はあり得ても、その結果はきわめて危険になるということをここで特に指摘をしておきたいと考えております。
 次に、治験の取り扱いについて一言述べます。
 臨床試験の問題は、わが国の現況ではきわめてデリケートでございます。被験者の人権の問題、あるいは第一相試験、第二相試験から始まって第三相試験に至る臨床試験計画の組み立て等の問題、さらには前臨床試験、すなわち動物実験から臨床試験への移行、その時期の決定等の問題、もう一つはいわゆるダブルブラインドテスト、二重盲検法でありますが、このようなものが今日わが国では余りにも重視され過ぎておると考えます。そして、このような盲検法は一体効果の判定のためなのか、副作用の判定のためなのか、まことにあいまいなものが多々あるように考えております。したがって、このような問題につきましても十分な解析を行わなければ、いわゆる臨床試験と簡単に言いましても、まことにいろいろ複雑なものを包含していると考えるものであります。
 われわれの臨床経験からしても、自然治癒というものがございます。また、同一成分の薬剤によっても副作用の違いというものもあります。また人種による違いというものもありますし、年齢による薬剤の反応の違いというようなものもあります。さらには、薬剤の併用による副作用とその判定等の問題があるわけでありまして、この治験の取り扱いにつきましては、本法案はいわゆる人体実験に対して規制するものであり、その責任を製造業者あるいは臨床試験の実施者に負わせている可能性がありますので、われわれ臨床試験を行う臨床研究者の立場からいたしますと、当然この点は国もその責任を負うべきものであり、このことは明文化する必要があると考えております。
 以上、薬事法の改正について二、三の点を指摘したわけでございますけれども、この法案の前向きの姿勢につきましてはわれわれは評価をいたしますけれども、いまわれわれが指摘いたしました幾つかの問題につきましては、ぜひ十分な御配慮の上、御検討をいただきたい、こういうふうに考えるものであります。
 次は、副作用被害救済基金法案について臨床の立場から一言だけ申し上げます。
 医薬品の製造業者らが「各年度、基金に対し、拠出金を納付しなければならない。」ということが中にございますが、医薬品が公共経済の中に包含するものである以上、拠出金の主体はわれわれは国が負うべきものであると考えております。
 さらに、国民の健康保持に最も重要な医薬品を製造する業者に拠出金の納付を義務づけることは、医薬品すなわち副作用発生物質という誤った観念を国民に与える結果になりはしないかということをわれわれはおそれるものであります。したがって、拠出金そのものについてはわれわれは意見は持ちませんけれども、その拠出金の出る場所については当然国家としてもこれについて十分な配慮を必要とし、医薬品製造業者だけがこの拠出金を出すという考え方についてはわれわれは賛成をしかねるものでございます。
 以上、簡単ではございますが、われわれの意見の要点を申し上げました。
○竹内(黎)委員長代理 次に、熊谷参考人にお願いいたします。
○熊谷参考人 熊谷でございます。
 昭和五十一年六月二十五日付で厚生省「医薬品の副作用による被害者救済制度研究会報告」というものが発表されました。これに対して「国民にとって大きな喜びであり、福祉の充実として受け取りたい。この問題は新しい大きな社会問題であり、これが過去の法律概念ですべて処理され得るかどうかについては問題がある。」というふうに日本医師会では指摘しております。「しかし、このような研究報告が出たことは、将来さらに研究を進める上の出発点として歓迎したい。」というのが、私もまじえた日本医師会の意見でございます。そして、早くその評価を発表したのであります。ここで問題として指摘されたところは、法と科学の接点をどこに求めるかということでございます。
 次に、時間の節約上項目だけについて申し上げます。
 効果と副作用、因果関係、これには動物の場合と人体の場合とを分けて考える必要があります。細かいことは申し上げませんが、動物の場合にはコントロールがきくのであります。均一性、純系とか、あるいは人工的に同質の動物を実験のために飼育して使う。したがって動物実験においては、数学的に取り扱うことは非常に容易であります。ところが人間の場合には、集団として取り扱うことはできません。一人一人がみんな別の体質であり、反応を持っております。この点が人間における副作用の判定の最も困難なところなのであります。ことに、先ほど上田教授から申し上げましたように、薬効副作用の判定の第一、第二、第三、第四相、第四相というのは不特定多数の人間に対する検索でございます。このようなものに対しては相当長い期間を与えて観察しなくてはならない。それでもなお、これを予測するということになるとはなはだ困難なのであります。先ほど申し上げました作用に対する予見の限界、これは先ほどの報告の二十三ページに出ておりますが、医薬品の人体に対する作用を完全に知るための、実際上可能な基準を設けることは不可能であるということが述べてあります。副作用の存在については最高の科学水準によってでき得る限り予見しなければならないが、実際には、臨床上広く使用されるようになった場合に初めて発見されるか、あるいは科学の進歩によって発見される副作用もある。科学の進歩ということは、それを裏返せば、科学はまだ常に不完全だということでございます。この基本的な原則は決して忘れてはならないところであります。
 それから、救済の制度の報告におきましては、二十五ページにございますが、医薬品の副作用被害を救済する一方法としては、現行法の過失責任主義を改めて、無過失責任主義を導入するという方法が考えられるというふうにうたっております。しかし、その波及効果を考えると、いますぐには導入できないとしております。しかし、科学的にはまさにこれに対応する部分が厳然として存在するのでございます。ここに、法と科学との歩み寄りが考えられないであろうかというのが私の考え方であります。
 次は、国の責任でございます。国は医薬品の製造の承認、指導監督という点から医薬品産業にかかわっているゆえ、この救済制度に対しても「何らかの責任」を負うべきである、「何らかの」という非常にあいまいな言葉が使ってあります。国は医薬品の製造、販売許可の活殺与奪の最高の権限を持っておるわけでありますから、この権限の裏側がすなわち責任でありますと私は考えております。被害者に対する賠償並びに救済は、以上の理由から、国の責任が先行すべきであると私は考えます。これは恐らく国民の常識でもありましょう。また医学の立場から考えても、福祉国家の原則から言っても、当然国の責任が先行すべきであると私は考えております。企業との協同も一つの方法として評価され得るでありましょう。
 次に救済でありますが、以上述べたことから、いま一つの問題は、法ができれば医薬品の問題が具体的に解決されるというものではないのであります。さらに、福祉は専門別に細分されるべきではありません。専門の総合であり、全体であります。私は、福祉というのは生存のためによりよい条件を備えるというふうに解しております。現に大量の被害者がいることを考えるならば、その苦痛を除き、社会復帰を考えることが医学の立場であります。責任をとるということは、問題の解決をも考慮するものでなければなりません。
 それならば、具体的にどのようなことが考えられるか。これは一口に申し上げるならば、難病対策的な発想がその根底にあるべきだろうというのが私の考えであります。被害者は、国立専門病院で専門スタッフによって臨床治療の研究をしてほしいというのが私の希望でございます。皆さんは法律によって、臨床試験をし、その成績それからその副作用を調べるというふうなことが簡単にできるようにお考えですが、いまの大学の医学教育ではなかなかそのような成果を上げることはできません。したがって、成文をつくる前に、あるいは成文とあわせて、そのように実際に患者に起こる副作用を早く発見し、しかも早く治療するということのできる医者を養成する必要があるのであります。現在の大学の医学教育では必ずしもそのような指導はしておりません。私ははっきりと申し上げます。
 それで、その一つの例を申し上げます。
 現在、難病対策の厚生省の仕事のほかに、民間の団体がありまして、そこと厚生省それから大学の連中が一緒になりまして、大学の行き方と第一線の開業医との間のギャップを埋めるということを目的にしまして、浜松大学の吉利君と武見太郎と相談いたしまして、開業しておるお医者さんの手引きとして「症例による難病へのアプローチ」、これは第一集から第六集まで出ております。これでは、実際の症例について詳しく記載し、それを実際の臨床をやる第一線のお医者さんに配って、そして、大学のお医者さんと臨床の第一線のお医者さんとができるだけ接近して、この難病の問題に対処しようということでございます。このようにすることによって、患者の救済にもなるし、また実際にそれに携わることのできる医者を養成することができるわけであります。こういうことはすでに始まっておるものですから、これを一つのモデルとして国は責任を持って被害者を救済せよ、これが私の願望であります。
 以上をもって、私の陳述を終わります。
○竹内(黎)委員長代理 次に、萬羽参考人にお願いいたします。
○萬羽参考人 弁護士の萬羽でございます。
 日本弁護士連合会は、昭和四十九年開催の人権擁護大会において、医薬品副作用被害に対する救済制度の迅速な確立と薬事法の抜本的な改正の必要性を決議して以来、数多くの意見書を発表して、これの早期実現を訴え続けてまいりました。それは、わが国には世界に例を見ない多数のしかも深刻なる薬害被害が発生し、これら被害者は、救済されることなく長期間放置され、人権上無視し得ない重大な社会問題となっておったことであります。そして、薬害の発生は、その根本原因を考えてみますと、安全性を無視した製薬企業の営利主義と、これを許してきた国の行政上の欠陥にあるからであります。
 国はこのたび、ようやくこの二法案を提案いたしましたが、その内容を検討してみますとまことに不十分であって、このままでは真の被害者救済にはほど遠く、また、将来の薬害の発生を防止する効力を有するものとは言いがたいものであります。かえってこのままでは薬害隠しという非難を受けることになるのではないかと考える次第であります。
 以下、この二法案の不十分であり、ぜひとも改善を要する事項について御説明申し上げます。
 まず救済基金法案につきましては、われわれは、第一に、この法案は完全で迅速なる賠償を原則とすべきであり、第二には、原因者の責任を明確化するものでなければならない、このように考えております。
 したがいまして、救済法案において改善を要する第一の点は、この法律の基本的性格を、現在提案されておりますような恩恵的な補償的制度とすることではなく、損害賠償としての性格を与えるべきであるというふうに考えます。国はこの制度を恩恵的な制度というふうにとらえております関係から、この法案を見てみますと、救済の内容はきわめて不十分であり、また加害者の責任を不明確とし、その責任を分散化、軽減化する機能を持つものとしております。
 改善を要する第二の点は、無過失責任規定の制定であります。
 この規定の必要な理由は、まず第一に、医薬品は人間の生命、健康に重要なかかわり合いを持っておるということでございます。このような強度の危険性を持ったものについては、無過失責任の規定が各方面からその立法が進展しているところでありまして、本法案におきましてもこれの導入がぜひとも必要と考えております。また訴訟等を通じまして、当初は責任がとても考えられないような事案と見えた事柄につきましても、審理を進めていき、企業に最高度の注意義務を課すということによって、究明いたしますと、いずれも企業の責任が認められる結果となっておりますことは明らかなところであります。したがいまして、実質的にも、現在すでに、裁判では無過失責任主義が採用されているというふうなことも、この制度を必要とするゆえんであります。
 またもう一つは、製薬企業は医薬品を販売することによって利益を得ているわけでありまして、かように利益を得ているところが責任を負うのは当然だという考え方からも、無過失責任規定の制定が必要とされる理由と考えられます。
 第三点として改善を要求される点は、国庫負担の問題であります。
 法案は、その第四十三条におきまして「特定の医薬品の副作用により著しい健康被害が多発した場合」に、費用の一部を国が補助するというふうに規定しております。薬害被害につきましては、国も製造承認等で深いかかわり合いを持っている関係上、われわれも、企業と同様興国もその責任者であるというふうに考えます。したがいまして、被害者に対しては、国も、当該医薬品を製作した企業と同時に、共同して損害賠償の責めに当たるのは当然でございますけれども、その原因者の間におきまして最終的な負担をいずれにするかという点は、またおのずから別個の観点から考えてみる必要がございます。この観点から考えますと、最終的な費用の負担者は国とすることは納得できないところでありまして、企業が最終的な責任者とならなくてはならないと考えます。国がその費用で損害賠償に当たるということでは、企業の責任を国の費用で保険してやるということになる結果となりまして、企業が医薬品の開発に対して安全性を重視するということにはならなくなる結果となるおそれがあります。
 次に改善を要する第四の点は、救済機構の是正の点であります。
 現在の法案におきましては、基金が拠出金の徴収、被害の認定及び給付まですべてを行うことになっておりますけれども、財源調達機関が同時に給付の認定まで行うということでは、公正らしさを担保する制度とは言えないと考えます。したがいまして、基金は拠出金の徴収と後に述べます求償を行うということにして、被害者の認定、それから原状回復事業、医療給付等は、これを国の行政で行うとすることが必要ではなかろうかと考えます。
 次に改善を要する第五の点は、救済の対象が狭過ぎる、したがいましてもっと広範囲に対象を広げるべきである、このように考えます。
 その第一点は、この法案の第二条二項によりますと、との制度の給付の対象となるものは、医薬品が適正な使用目的に従って使用したにもかかわらず発生した被害ということになっておりますが、これでは医療過誤及び過剰投与等の場合が給付の対象から除かれることになって、きわめて問題であります。
 第二の点は「がんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品」が除かれておりますけれども、これら医薬品によって発生するきわめて重篤な被害が本制度の対象外に置かれることは、これもきわめて問題であると考えます。
 第三点は、第三者に賠償責任があることが明らかな場合、これも除かれることになっておりますけれども、この制度の根本的な性格を損害賠償責任とする見地に立てば、このようなことが除外されるべきでないということは当然であります。
 第四点として、医療費、医療手当等は「政令で定める程度の医療を受ける者」に給付されるとありますけれども、このようなことでは、政令の定め方によっては軽微な副作用が除外されるということになって、この点も問題でございます。
 第五番目に、障害年金、障害児童養育年金等は「政令で定める程度の廃疾の状態にある」者について給付されるということになっておりますけれども、これも廃疾の状態とはいかなるものかということが問題となりますけれども、重篤な被害でなければこれには当たらないということになっては、そのような認定を受けれない被害者はいままでと同様放置される結果となることになるわけでありまして、これもきわめて不当だというふうに考えます。
 そして最後に、この問題で最も重要なる事項は、既発生の被害については附則の第一条二項でこれを除いているという点でございます。
 そもそも、この制度が世論に押されてこういう形で法案とまで提案されるに至ったのは、現在すでに多発している深刻な薬害被害、これがこの運動の根本となっておったわけでありますから、これが救済されることなく放置されるということであっては、全く何のための制度かと言わざるを得ないわけでございまして、ぜひともこれは、過去に発生した被害もこの制度の対象となるように、本法においてこれを明示することが必要であるというふうに考えます。
 次に改善すべき第六の点は、真に救済に役立つ給付内容に改善していただきたいということであります。
 この法案による給付の内容はきわめて不十分であります。そして、その中で最も重要なるものは、この法案では原状回復事業が欠落している、こういうことであります。被害者に金さえ払ってやればそれで事足りるということではないのでありまして、被害者が被害を受ける前の状態に少しでも近づけるためには、原状回復事業が最も大切なことでございまして、これが落ちていたのでは非常に大きな欠陥であると言わざるを得ません。
 最後に、第七点として改善を要する点は、求償規定の整備を図っていただきたい、こういうことでございます。
 この法案の三十条二項を見ますと、基金は、第三者が責任を有することが明らかになった場合は、損害賠償の請求権を給付をした限度で取得するという規定がございますけれども、基金に対して求償を義務づける規定がござかません。これでは、基金は求償をなおざりにする結果となって、企業の責任が覆い隠される結果になるわけでございまして、原因者負担の原則が貫けなくなる結果となります。したがいまして、基金は、被害者に給付をした場合に、必ずその責任において原因者を究明する義務を負うようにすべきであり、原因者が明らかになった場合には、その原因者に対して求償をすべきである、そのことがまたとりもなおさず基金の充実ということになって、被害者に対する給付がより可能になるという結果になろうかと思います。
 次に、薬事法の改正について申し上げます。
 薬事法の改正法案で欠落している重要な事項として、まず第一点は、目的規定を含む総則の規定の改正がなされていない、こういうことであります。現在の薬事法は、これが単なる取り締まり的な法規なのであるか、あるいは国民の健康を増進すべき積極的な行政を義務づけているものであるかということにつきまして、現在いろいろ見解が分かれているところでございます。したがいまして、この改正におきましては、薬事法の根本性格を明定する意味において目的規定を明らかにし、薬事法は、国民の生命、健康の維持増進を図る積極行政を目的とするものであるということを明らかにする必要があります。
 欠落している第二点は、中央薬事審議会の組織運営の改善が図られていないという点であります。
 医薬品の承認等は高度の専門知識を有する必要から、その安全性、有効性の確保は、専門家である薬事審議会を中心に図られなければならないところでありますけれども、現在の中央薬事審議会は単なる諮問機関であって受動的なものであり、きわめて不十分であります。したがいまして、これを改善し、権限を大幅に強化するとともに、薬事に関する重要事項については必ず中央薬事審議会の議を経なくてはならないものとすると同時に、中央薬事審議会が安全性、有効性を否定する意見を出した場合には、国もこれに従わなければいかぬという拘束力を持たせることが必要となります。
 欠落している第三点は、規制措置請求権を定めておらないという点であります。
 薬事行政につきましては国民の絶えざる監視が必要とされるところでありますが、国民の薬事行政への参加の道として、医薬品等によってみずから危険を受けるおそれがある場合、あるいは一般消費者の生命、身体に危害の発生するおそれのある場合、国民は厚生大臣にこれを是正するための適切なる措置を求める、そういう権利をぜひとも制定する必要があると考えます。そうして、これに対応する国の応答義務を認め、国がこれに従わなかった場合には義務づけ訴訟を開く道までを講ずべき必要があると考えます。
 次に改正案の内容にわたりますが、
 この内容で改善すべき点の第一は、製造承認の拒否事由において、その定め方がきわめて不十分であるということであります。たとえば有効性に関しては、著しく有害な副作用が発生して使用価値がないということを拒否事由にしておりますが、このようなことでは有効性に偏重しておって、バランス論を取り入れて、安全性を無視しているというふうに言い得るのではなかろうかと考えます。したがいまして、有害作用のあるおそれのある場合も含めて拒否事由とするということがぜひとも重要であると考えます。
 そして、これはまた、承認の取り消し、変更等の規定が設けられておりましても、拒否事由が不十分に定められている関係上、これが改善されなくては、承認の取り消し、変更等の規定が有効に働くことができないという結果になります。
 改善すべき第三の点は、新医薬品について六年目に一回だけの再審査をするということになっておりますけれども、これでは不十分であって、承認には、そもそも当初から五年間の期限をつけて、五年目には再審査、再申請をさせて、新たに製造承認をする場合と同様の審査をすべきであろうと考えております。
 改善すべき点のもう一つは、表示につきましては使用期限の記載の義務づけだけが提案されておりますけれども、これも不十分であって、効能書きをも製造の承認の対象とした上で、これを患者に交付をするということまでも義務づけるべきだと考えます。
 それから治験、すなわち臨床試験につきましては、法案では届け出制となっておりますけれども、これでは不十分であって、認可制とすべきであると考えます。そうして、さらには、治験依頼者の無過失責任規定と被害者の救済制度も確立することが、この法案でぜひとも必要ではなかろうかと考えます。
 以上、時間の関係上非常にかけ足で申しわけございませんが、これをもって説明にかえさせていただきます。
○竹内(黎)委員長代理 以上で、各参考人の御意見の陳述は終わりました。
○竹内(黎)委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、向山委員長代理着席〕
○金子(み)委員 まず初めに、上田先生にお尋ねさせていただきます。
 医薬品というのは、その効用と毒性をあわせ持っているということで、もろ刃の剣というふうに言われているわけでございますね。そして、日本には薬害患者が非常に多発しているということも事実でございます。それで、特にキノホルムが原因になっていると言われておりますスモン患者が、欧米では数名ないし数十名というような発生状況でありますのに、日本では、最近の数字を厚生省に伺いましたところ、一万七、八千人ぐらいというふうに聞いております。なぜこんなに日本に多いのかということについて明らかにされていないような感じがいたしますので、先生の御見解を伺わせていただきたいのですが、それは日本人の体質みたいなものがあるのか、あるいはそれとも、こういった効果の非常によくあらわれると申しますか、要するに一口に言えば効き目のいい薬ですね、この薬の使い方の問題があるのじゃないかという疑念もあるわけでございます。たとえばそれは、一定の適量の基準というものがあるのだろうと思うのですけれども、その適量を超えて、そして過剰投与をしたというようなことがあるのではないか、こういうふうな疑いが大分持たれているわけなんですけれども、その辺がつまびらかにならないと、という心配があります。
 そこで、いま私がお尋ねしたいと思いますのは二つの点です。日本人にそういう性格が、体質的なものがあるのかどうか、個人差があるとかいろいろ言われますので、その点。あるいは、その薬の使い方が正しくなかったのではないかというふうにも思うのですけれども、その辺の御意見をお聞かせいただきたい。
○上田参考人 お答えします。
 私はキノホルム関係の研究のことをやっておりませんので、私は臨床医という立場で、いまの質問についてお答えしたいと思います。
 第一点は、いまのような薬剤を使うことによってスモン病という神経疾患が起こるのは、人種的な違いがあるかどうかという御質問だと思うのですけれども、この点は、私ははっきりしたデータはいま日本でもないと思いますので、明確には答えられませんけれども、現実として日本人にあのように多いということは事実でございますので、一つはやはり、御指摘のように人種的な問題も関与しているのではないか、こういう印象を持ちます。というのは、私が先ほど臨床試験のときに意見を述べましたように、薬剤の種類によっては、人種によって薬剤の副作用の発生率に差があるということを私は申し上げたのですが、このキノホルムについてのことについては、私は知識がございませんのではっきり申し上げられませんが、こういう現実を見ますと、やはり何らかのそういう人種的な違いがある可能性がある、こういうことを言わざるを得ないと思います。
 それから第二点は、使う薬の量あるいは使い方に遺憾な点がなかったかということでございますが、これも私の知っている範囲では明確なお答えはできませんけれども、たとえば量を多く使った人が必ずしもスモン病になっているとは限らないということ、それから使っている期間が長い人が必ずしも全部スモン病になっているということが言えないわけでございますね。そういうことを考えますと、使っている量あるいは使っている期間というものが直接的に、スモン病の発生にダイレクトにつながっているかどうかということについては、私はいまお答えできないわけです。ただし、私たち臨床医として長年患者の治療に当たってきている者から見ますと、たとえば、私はさっきクロロキンの例で申し上げたのですけれども、あれは短期間使ったのでは視力障害は出ないわけです。やはりきわめて長期間に使った患者においてクロロキンによる視力障害というものが出ておりますので、日本における医薬品の使い方という問題につきましては、やはり慎重にしなければいけないということは事実でございますので、いまの御指摘の点が違っているという御返事ができなくて、ある意味では肯定せざるを得ない、こういうふうに考えます。よろしゅうございますか。
○金子(み)委員 いまの先生のお答えに関連してでございますけれども、キノホルムのことは別といたしまして、そのほかにもいろいろございますですね。たとえば結核のストマイの問題とか、そういったものが幾つか出ておりますね。ああいった問題は、やはり分量の問題と、それから使い方の問題ということにならないのでございましょうか。同じようなことだとは思いますけれども、いかがでございますか。
○上田参考人 これも大変むずかしい問題でございまして、そのストマイあるいはカナマイ等によるアミノ配糖体剤の聴力障害の問題は、私の先ほど申し上げたことにきわめて似ておりまして、量が多いから――これは逆に申した方がいいと思いますね。量が少ないからストマイ聴力障害は起きないかというと、そうでもないわけです。しかし、一般論としてはやはり量の多い方が起こる可能性は強いということは事実でございます。ただ、そういうストマイあるいはカナマイによる聴力障害の問題についても、やはり人によってかなり敏感度が違うわけでございますので、一概に、こういう量を使えばなる、このぐらいの量ならならぬというようなことは言えないわけで、この辺が非常にデリケートで、臨床医としてはいろいろの角度から検討しなければいけない問題だと思います。
○金子(み)委員 それでは、次に熊谷先生にお願いいたします。
 今度の新しい法律の案では、新薬の承認に関して、改正案で申しますと、著しく有害な作用がない限り承認するという考え方でつくられておるわけなんですけれども、私がお尋ねしたいと思っておりますのは、新薬の承認に当たっては、安全性や、それから被害を未然に防ぐという目的によって、こういうような場合は承認することはできないというような、いわゆる不承認の基準のようなものですね、こういうようなものがある方が安全ではないかというふうに、そうすると非常にはっきりいたしますから、そういうものがある方が安全性は確保できるのじゃないかというふうに思いますが、それはいかがでございましょうか。不可能なことに近いのでございましょうか。先生のお考えをどうぞ。
○熊谷参考人 お答え申し上げます。
 文章ではっきりと、これは許可しないという文章はつくれると思いますけれども、先生も御存じのように、動物実験の段階では、いまの行き方でも、副作用がほとんどないような厳格な規定のもとに実験を進めております。そうしてそれを、コントローラーと名づけられる人が、この動物実験のデータをもとにしてならば、人体に臨床実験してもよろしいという考察を加えた上で、第一相、第二相の実験を始めるわけでございます。第一相の実験というのは動物実験、それから第二相は健康な人に使ってみるわけです。それの代謝、排せつその他をですね。それで異常がないとすれば今度は第三相に移って、その薬がねらっておる症状を持っておる患者さんについて調べるわけでございます。それで、効能、効果があってしかも副作用があらわれないということを確認した上で、多数の患者について観察するわけでございます。さらに第四相になりますと、不特定多数の患者について検討するわけでございます。この点は、先ほど私が申し上げたように、厚生省で規定しておる期間ではあらわれない、あるいは予見できないというふうなものも含まれている可能性があります。ですから、その時点で、これは承認できないというふうな規定は設けるべきではないというのが私の考えであります。したがって、いまの新薬の承認の手順から見て、これは科学的に認めるべきではないというデータは、厚生省に提出する前に、自主的に脱落してしまうというふうに私は考えております。おわかりいただけましたでしょうか。
○金子(み)委員 一番おしまいのところ、自主的に脱落するという点がちょっとよくわかりません。
○熊谷参考人 厚生省に承認の申請を出さないということでございます。
 そういうふうに、企画されて実験をやっても、毒性のために申請しないという薬はかなりございます。そういう意味で、現在の効能、効果及び安全性についての実験の過程は正しいものと私は考えております。
 以上で説明を終わります。
○金子(み)委員 わかりました。出すべきではない、出さないということになるわけですね。ありがとうございました。
 それじゃ、その次の質問は、日弁連の萬羽先生にお願いします。
 これはこういうことなんですが、患者さんが受けた被害が薬害であるか、医療被害であるかということを判定する必要があると思うのですけれども、なかなかむずかしいことなんだろうと思いますが、これを判定するのに非常に厳格な識別が必要だと思います。けれども、薬事審議会がこれを判定するのはおかしいのじゃないかと考えるわけです。というのは、薬事審議会は薬を認定している審議会ですね。ですから、そこでその薬の被害があったことを認定することは、できないことはないでしょうけれども、何か正しい判断がしにくいのではないだろうかというふうな気がいたしますので、これを判定するためには、何か別のもっと権威のある組織を準備して、そこですることが考えられてもいいのじゃないかと思いますが、先生のお考えはいかがでございますか。
○萬羽参考人 判定の問題は、一般的な因果関係の判定と個別的な判定と、二通り考えられると思います。
 当該医薬品から当該副作用が生じたのではないかという点についての一般的な因果関係の判定は、われわれは、国に判定委員会のようなしかるべき機関を設けて、そこで判定すべきであろうと考えております。現在の制度は、判定及び給付もすべて基金一本に考えておるようですけれども、それでは公正に欠けるのではないかと考えます。
 それから個別的な認定は、すべて中央の判定委員会に任せたのでは、認定に長期間を要するという結果になろうかと思いますので、これは各都道府県レベルに委任をして、そこで判定すべきであると思います。そして、その判定に当たっては主治医の見解を最も尊重すべきであろうかと考えます。
○金子(み)委員 この二つの法律に直接関係ないのですけれども、先ほど先生方のお話を承っておりまして、ひとついい機会だから教えていただきたいと思いますことがあります。
 熊谷先生にお尋ねしたいのですが、先ほど御説明くださいました中で、法律の成文をする前に早期発見や早期治療の可能な医師を教育すべきである、そして、現在の大学ではそれが行われていないとおっしゃったのです。時間も余りございませんので一言で結構でございますが、現在の大学で行われていないということについてその実態を、一口に言って、いまの大学の教育の欠点とでも申しますか、行われていないというわけですから、それを一言教えていただければと思います。お願いいたします。
○熊谷参考人 仰せのとおりでございます。
○金子(み)委員 それで、一口におっしゃっていただいて、内容としてどこがいかぬとお考えになっていらっしゃるかというのを承りたかったのですが。
○熊谷参考人 そのような能力のある医者を現在は実習させておりません。
○金子(み)委員 わかりました。ありがとうございました。
○向山委員長代理 次に、水田稔君。
○水田委員 上田先生にお伺いします。
 上田先生は、スモンなりキノホルムは専門でないと言われましたので、一般論としてお伺いするのですが、臨床医は、薬の有効性あるいは副作用についてどの程度の情報を製薬会社から提供を受け、そしてその場合、あれだけの被害が出るまで、臨床医というのは、いまの熊谷先生のお話ではそういう能力のある医者を養成してないということですが、現在の開業医なり病院で臨床に当たられておる臨床医では、ああいうことはやむを得ないことだろうかという疑問があるのですが、そういう点、実際臨床御専門でやっておられる立場から、あれだけの被害が出たことについてどのようにお考えか、まずお伺いさせていただきたいと思います。
○上田参考人 いまの御質問、一般論としてお答えしたいと思います。
 われわれ臨床の立場で申しますと、決して、製薬企業から副作用その他の情報を得て、医療行為をしているわけじゃございません。当然臨床医という者は、疾病に対して適正な薬剤を使用するという場合には、まず正確な診断を下すことが第一であって、でたらめにただ薬剤を使うということは全くないわけでございます。したがって、ある疾病についてこの薬剤を使うことが適正であると考えた場合に、薬剤を使うわけでございます。しかもその使う薬剤は、年齢その他のことも配慮いたしまして、その状況に応じて一定の量を決めて使う。これはわれわれは医学で十分、私も教えた一人でございますし、習ってきたことであって、その点については全く疑問の余地はないわけでございます。しかし、予見のできない副作用というものは当然あり得るわけでございます。
 先ほども私は申しましたけれども、今回、新しく薬剤をつくって国が承認したものでも、六年たったらそこで一つのチェックをしなければならぬという規定ができるようでございますけれども、六年ということについては薬剤の種類によって違いがあるということを申したわけでございますけれども、こういう一つの制度をつくることは私も賛成ではございますが、しかし、薬剤によってはきわめて短期間に副作用の明確になるものもありますし、非常に長期間の結果でないと副作用かどうかわからないものもたくさんございますので、そこらのかげんが大変むずかしいわけでございます。
 したがって、いま先生の御質問でございますけれども、臨床医の立場からすれば、これは当然この薬剤を使えば副作用がある、こういうものはわかっておるわけでございます。しかし、中にはどうしても副作用の見当のつかない、副作用の発生がわからないというものもあるわけでございまして、この辺はいわゆる昔から言うさじかげんという言葉がございますけれども、臨床医といえども、大変いろいろ複雑なむずかしい問題を常にはらんで、それを承知の上で使っているのが現状でございます。
 ただ、ここで一言だけぜひ申し上げたいことは、疾病の中には、薬剤の種類がきわめて少なくて、これはきわめて毒性が強いけれども、これを使わなければ患者の命が絶たれるという疾病があるわけでございます。
 例を申し上げますと、真菌症、カビの一種でございますが、こういう疾病にわれわれが使うアンホテリシンBという薬があるのですけれども、これは最初から血液毒であり腎臓毒であり神経毒である薬剤でございますけれども、これを使わなければ患者が死んでしまうという場合がございまして、こういう場合には、もちろん患者の家族等には十分話はしますけれども、意識して副作用を承知の上で使う薬剤もある、こういうことをこの際申し上げておきたいと思います。
○水田委員 石黒参考人にお伺いしたいのですが、いまお伺いしますと、実際の臨床医のところには、副作用等の詳しい情報というのはこれまでは十分伝えられてないというような御意見がいまあったわけですが、今度の改正案でも、そういう点では、午前中の薬剤師会の会長さんの御意見にも、単なる訓示規定だという御意見がありました。スモンの問題を振り返ってみて、製薬業界として、そういう点についての十分な情報提供ができていなかったということについての何らかのお考えがあれば、まず聞かしていただきたい。
 私どもは、この法案についても、そういう点では、その規定というのは不備という感じがいたしておりますが、製薬業界として、今後こういう薬害を起こさないために、そういう点の情報についてはもう少し、業界自体として、こういう事故を起こさないための詳しい情報提供というのをむしろ積極的にするというお考えはないのでしょうか。その点、二点お伺いしたいと思う。
○石黒参考人 お答え申し上げます。
 製薬業界といたしましては、プロパーが主として、医薬品の情報の伝達あるいはフィードバックに当たっております。この資質の向上は常に私ども注意して改善を考えておりますが、特に最近はこの点を重要視いたしまして、プロパーの資質の向上には企業として十分努力いたしております。
 なお申し上げますというと、このプロパーの資質の向上につきましては諸外国においてもやっておりまして、たとえば西ドイツあたりではプロパーの資格制度を持っておりますが、そのほかでは自主的にこの資質の向上に努めております。アメリカにしても、イギリスあるいはスウェーデンにいたしましても、そういうようにやっておりますので、私どもわが国におきましても、業界では、このプロパーの資質向上に関して十分意を用いておる次第でございます。
 なお、諸外国のプロパー教育に関する諸制度の調査も、近々調査団を派遣するつもりでおります。
○水田委員 論議をする会議でないものですから大分遠慮しながら申し上げたのですが、私が申し上げたように、少なくともスモンの判決を見ると、昭和三十一年以降については、これは十分な情報提供の義務が製薬会社にあったと私は思う、明らかに薬害ということが出ておるわけですから。その点について、二十数年間、そういう点の御反省が今日業界に一体ないのかどうか、私はきょうの会議でそのことをお伺いしたくて、物の言い方としては大変やわらかく申し上げたので、その点のお答えがありませんので、ひとつお聞きしたいと思います。
○石黒参考人 十分反省をいたしております。
○水田委員 それから、その後の、これからの問題についての御答弁もきわめて抽象的な、プロパーの教育ということなんですが、私は少なくとも、私どもは法案論議の中で論議をしたいと思いますが、情報提供については、薬剤師会の会長さんからもこれは訓示規定ではだめだ、しかも、これはどうも内容を論議してみなければわかりませんけれども、この薬害が生じた、いわゆる被害が生じたようなことであって、もっと以前の薬効なりあるいは薬害の起こる可能性の問題とか、いろいろなそういう事前の情報等については欠けておるんではないかという気がしておるわけです。むしろ積極的に製薬業界がそういう点については十分な情報を全部出していくということを、私は、お考えとしてはこの委員会あたりできちっと言ってもらうことが、一つはスモンに対する反省の姿勢としては一番きちっとしたものを出していただける、こういうぐあいに思うのですが、その点いかがでしょう。
○石黒参考人 情報の収集、伝達あるいは整理は、メーカーだけでは足りませんので、医療関係並びにこれの整理収集等につきましては、メーカーと国と医療関係と協同して進むべきだと思っております。
○水田委員 時間の関係で、最後に萬羽参考人にお伺いしたいと思うのです。
 先ほど石黒参考人は、無過失賠償をとるということは適当でないということで、たとえば危険が常に内在している、あるいはいわゆる患者に受忍の度合い、限界というものがある、完全な予見は困難等の理由を挙げて言われたわけです。これは法案論議の中で、無過失賠償でいくかどうかということが救済の内容にも大変深いかかわり合いがあるわけです。恐らく、さっき参考人は時間の関係できわめて簡単に、患者に選択の方法がないというようなことで、医薬品は生命、健康に重要なかかわり合いがある、こういういわゆる抽象的な一言で済まされたわけですが、私ども論議する上できわめて重要な要点でありますので、その点を、たとえば他の法案における救済の制度が今日どうとか、あるいは、そういうことで御研究なさっておられればまず基本的な考え方、その点だけを聞かしていただきたいと思うのです。
○萬羽参考人 われわれの考え方といたしましては、この法案でぜひとも無過失損害賠償の規定を設けていただきたい、こう要望するわけであります。
 その根拠は、まず第一点としては、医薬品が人間の生命、健康にきわめて深いかかわり合いを持つ、まかり間違えば人体の生命をも奪いかねない。また重篤な被害を生じさせる危険物質である。したがって、かような危険物質を製造し販売する者は、それなりの最高度の注意義務を当然課すべきであるし、そういうふうな最高度の注意義務を課した上で判定するならば、これは現在の訴訟でも、実質的に無過失賠償と言えるところまで進んでいるのが実情じゃなかろうかと思います。そうであるならば、長い審理を重ねてようやくそこにたどりつくという患者を放置するむだを省いて、その点を明文化することによって、被害を一日でも早く救済するということが根本の考えであります。これにつきましてはいろいろ理由があるんですけれども、突き詰めて言えば、そこの点でございます。
○向山委員長代理 次に、島本虎三君。
○島本委員 ただいま質問ございました水田委員に引き続いて、いまの薬害の被害救済の無過失責任の考え方を伺いたいのであります。
 いまの萬羽参考人の意見は大体わかりましたが、なお念のため伺いますが、これは、同じような問題で石黒参考人の方にも伺います。
 石黒参考人の御発言としては、いま薬害についてはサリドマイド、スモン、こういうようなものからして重大な反省をしているという前置きがございました。それは受けとめます。その中で、被害者に対して無過失賠償責任は導入できないということをはっきりおっしゃっておるわけです。その中には、それが妥当かどうか、こういうようなのはいろいろ問題があること、また副作用の予見が困難であること、また受忍の問題も言いました。それから、治療を受ける側が危険を引き受けるのも社会通念だ、こういうような話もあったわけであります。したがって、国の負担が妥当で民事責任は存在しない、こういうような陳述がございましたが、これに対して萬羽参考人はどういうふうにお考えでございますか。
 同時に、石黒参考人に対しては、萬羽参考人は最終的な負担は製造企業側が負うべきである、薬剤被害についての企業と国は共同の責任であるけれども、最終的な費用は企業が負うべきであるというように言っておるわけですが、これに対してあなたは、無過失責任の導入はすべきでない、この両方の意見が根本的に違っていますので、いまの石黒参考人の陳述に対する萬羽参考人の御意見を承りたいし、それから萬羽参考人がおっしゃったそれに対して石黒参考人はいかに考えますか。この点を伺います。
○萬羽参考人 まず無過失責任の問題に関してお答えします。
 これに関しては先ほども若干説明申し上げましたが、それにつけ加えまして、まず医薬品につきましては、先ほども申し上げましたように一つは危険を内包しておるということ。そして、この危険性にかんがみて、いろいろな法律で無過失規定がすでに導入されているという事実でございます。たとえば鉱業法であるとか自動車事故についての自動車損害賠償保障法、原子力事故についての原子力損害の賠償に関する法律、それから公害についての大気汚染防止法、水質汚濁防止法等について、すでに無過失責任規定が導入をされているという事実であります。
 それからもう一つは、副作用について患者が承認しておったじゃないかというふうな議論につきましては、必ずしもそのようなことは過去になかった。医者の段階において副作用が仮に情報として伝達されておっても、そのことを患者にきちんとして理解せしめて使用しているという事実は、これまでのところきわめてまれではなかったかと思うのであります。そしてまた、仮に、医者が薬を投与する場合に、当該副作用について患者に納得のいくような説明をし、しかる後投与したという場合に限って考えれば、この場合はある程度患者においても危険を引き受けたと言える点はあろうかと思います。したがってこのような、患者が本当に理解して、しかもその医薬品以外に代替医薬品がないというような場合に限ってだけ考えれば、その場合は損害賠償ということで請求をすることは困難になろうかと思います。しかしそのような場合でも、この制度に救済的な意味を持たせまして給付の内容は準ずるというところになってもいたし方ないかと考えますが、やはり本制度の対象にすべきかというふうに考えます。
 それからもう一つ質問があったと思うのですが、それは何でございましたでしょうか。
○島本委員 それは、石黒参考人の方で、国の負担が妥当で民事責任は存在しない、こういうふうに言っていたが、それに対してどう考えていますか。
○萬羽参考人 その点につきましては、医薬品の被害につきましては、製薬企業はその薬の開発者として、そして国はこれを製造承認して販売を許可したという点において、医療被害に対しては両方とも責任を負うべきは当然だと思います。したがって、この救済基金に対して、国も一定割合に応じて、基金が負担し切れない場合に限って国も貢献的というか第二次的に費用を負担して、まず被害者の救済を図るべきである、こういうふうに考えます。しかしながら、国の費用において被害者を救済した場合に、その国の費用を出しっ放しにするということであってはならないと思います。国民の税金によって企業の責任を担保してやるようなことがあっては、企業の開発の姿勢がより安全性を強める方向に働かなくなるのじゃないかというふうに考えられるからであります。
○石黒参考人 冒頭に私が陳述いたしましたように、医薬品というものの副作用は、現在の進歩した科学でも予見し得ない場合がございます。しかし副作用が生じた場合でも、メーカーにもまた国にも何ら民事責任を問う理由がないような場合に、この救済法で早期に迅速に被害を救済していこうという趣旨かと思っております。そういう意味におきまして、現在医薬品に無過失責任を導入した国は西ドイツに一つ例がございますが、これとても、西ドイツは保険制度を採用しておりますけれども、受忍の限度がありますし、補償の総額と一人当たりの限度もございます。しかし慰謝料はありませんです。そういったようなことで、私は決して完全な法律とも思っておりません。米国でも現在慎重に考えております。したがいまして私は、医薬品に無過失責任を導入するということは、現時点におきましては慎重に検討し考慮しなければならないものだ、そう思っております。
○島本委員 慎重にというのでわかりました。先ほどの陳述では、導入はできないと断定してございましたが、これは慎重にというようになりましたので、わかりました。
 次に、石黒参考人に伺いますが、今回の被害救済基金法、これに対しては、賠償責任というよりも社会的、道義的あるいは恩恵的なものであるということであります。しかし、これに対してはまだまだ不十分だろうと思います。ことに重大な反省を込めてと言うなら、もう少しその意味では突っ込んでもいいんじゃないか、こういうように思うわけであります。ことに製薬メーカー、この企業の責任に対してはどういうようにお考えでしょうか。
 たとえば、きょうの本会議でもこれは問題になったのでありますが、診療報酬請求が二百九十四円の薬が原価は三十円にすぎない、こういうようなことさえ言われているんです。恐らく二百六十円もの利ざやがあるような商行為と申しますか、こういうようなことが行われているのが現行であります。そうすると、こういうようなことをやられたために病気になった人たちは、今度は基金の評議員会に製薬業者を入れないでほしい、なぜならば、これはスモンの患者の意見でありますけれども、自動車でひいた人を判定する中に入れるようなもので、こんなことは許されないと言うのであります。そうすると、医薬企業の責任というものをもっと考えたらいいんじゃないか、こういうように思うわけであります。
 同時に、この点においては医師もはっきり責任がありというように今後は考えられないかどうか。この点、やはり重大だと思いますので、救済基金法はただ単に社会的、道義的責任であって、これは恩恵的なものであればいいんだという考え方から一歩出て、これは萬羽参考人の方は無過失賠償責任をやってもよろしい、また石黒参考人の方からもこれは慎重にという意見が出たわけでありますが、もう一歩進めて、今度は企業責任というところまではっきり医師の側と製薬業者が考えられないかどうか。これについて意見を伺います。医師の方は簡単にイエスかノーかでいいのでありますが、上田先生と熊谷先生に伺います。石黒参考人の方が先に、それから医師の責任についてのものはイエスかノーかをお二人に、それで結構でございます。
○石黒参考人 お答えいたします。
 私は、最初に申し上げますように、民事責任のない気の毒な被害者を救済するのでありますから、社会的救済と考えております。法律的責任に基づいて救済するものではないと思っております。
○島本委員 スモン、サリドマイドでもそうですか。
○石黒参考人 いや、それは別でございます。今度の基金法案の趣旨と理解して……
○上田参考人 もし間違ったことをお返事すると申しわけありませんので、もう一回私に対する質問を、要点だけお願いできませんでしょうか。
○島本委員 これは救済基金法、この救済についてはもう賠償責任ということではなく、社会的、道義的な責任、こういうようなことで、この救済については恩恵的なものであるということになっていますが、いま言ったようにスモンや何かの患者、こういうような人から見れば、基金の評議員会に製薬業者を入れるということに対しては、自動車で自分がひいておいて、ひいたかどうかの判定にそのひいた人を入れるようなものだから、これは入れない方が正しい、午前中こういうような陳述があったわけです。それで、製薬業者の方では、それに対しては、社会的責任であってまだ直接責任ではないという陳述があったわけですが、やはり医師のいろいろな責任ということに対しても、これは医者の立場で言うことなので無理かもしれませんが、どうお考えですか、こういうようなことであります。
○上田参考人 私は、法律のことはわかりませんので、医師の常識として申し上げますが、それでよろしゅうございますか。
 それはケース・バイ・ケースだと思います。すべてがいま先生の御指摘のようになるとは限りませんけれども、状況によっては、先生が御指摘のように、医師の中にも責任を負わざるを得ない場合がある、私はこういうふうに考えております。
○島本委員 では、これで終わります。
○向山委員長代理 次に、大原亨君。
○大原(亨)委員 もう時間がありませんから一問だけ。
 いろいろいままで午前中からも質問してきたのですが、いまサリドマイドとかあるいはスモンとかいう、世界に類例のない薬害問題が発生しておる。薬害か医療事故かという議論がありますが、薬害問題が発生しております。たとえばアメリカでは、アメーバ赤痢に限定いたしまして量なんかもきちっと厳しくやる、それで十名以下のスモンの患者が出ているということで、社会問題になっている。ヨーロッパでも三名とか五名とかあるいは十数名である。せいぜい初めの方で二けたである。日本では、厚生省の統計でも一万一千名出ておるし、実際上は潜在を入れたら二方名と言われているのですね。
 ですから、きょう全部の参考人に御所見を結論的に私はお伺いしたいのですが、日本医師会員の熊谷先生、それから内科の上田先生でも、これは非常に条件の整備されたところで、臨床やそういう研究や治療をやっていらっしゃる方です。ですから、一般的な日本の医療行為の中で起きておるこの問題について、十分集中的な研究をされていないんじゃないかというふうに私は感じました。しかし、それでは済まないわけです。ですから、私どもは、サリドマイドとかスモンのような原因を具体的に分析をして、そしてこの費用負担等の全体の問題を、救済措置も考えて、完全に解決をして、この二法案の出発が初めて可能である、こういう考え方でこの審議を進めていきたいというふうに思っておるわけです。ですから、日本のような、たとえばこういう表を見てみましたら、徳島県が人口に比例いたしましたらスモンの患者が一番多いわけです。これは絶対数は大阪とかあるいは東京もある程度多いのですが、徳島県は四百三十九名で、人口比例にいたしましたら一番多いのです。また、ここはたまたま一人当たりの医者の数も多いわけです。ですから、たとえば三時間待って三分とか、痛いと言えば鎮痛剤、眠れないと言えば睡眠薬、こういうふうな対症療法の実態をずっと追跡しているんだという、私が知っているお医者さんがおるが、大量療法というのはたいていキノホルムを使っているんだという、こういう傾向があったということを言っている人もあるわけです。ですから、いろいろな人種とかそういうことだけでなしに、日本の医療制度が本当に患者を一人一人見つめて臨床や治療が行われているかという問題、医薬分業の問題等を含めて、国と企業と、生産、製造承認の段階、それから流通の段階、それから使用の段階、これは医療機関ですね。こういうところの問題は、法廷とはまた日本弁護士会とは別の観点で、私どもは事実を究明しなければならぬ、総合的に考えていかなければならぬ、その原因を究明しながらこの根絶を図っていくということが必要だ、そう思っておるわけですが、そういう点の一点だけにしぼって、日本弁護士会の方から順次、どういう点について一番大切であるかという点を、簡潔に結論的にお答えをいただきたい。
○向山委員長代理 それでは、それぞれの参考人から簡単にお答えを願いたいと思います。
○萬羽参考人 大変申しわけないんですが、問題の要点がどこにあるのかがちょっと……。
○大原(亨)委員 わかりました。よろしいです。萬羽参考人の御意見はいままで聞きましたから、法廷でやっておられますし、そのことの御意見は私も理解しておりますから、私どもは十分に審議することができます。よろしゅうございます。
○熊谷参考人 簡潔に御答弁申し上げます。
 スモンについては、完全に科学的に研究してから措置をとってよろしいというお考えには、賛成できません。
 私の考えを申し上げますと、スモンの原因は、キノホルムのほかにプラスアルファがあるんではないかと考えております。そういう観点で、厚生省も十分この原因の究明に取り組んでほしいと思います。いまの原因の究明のやり方では手ぬるいと思います。
 それからもう一つ、スモンの患者の救済は、学問的に解決しなくても、まず救済を始めろというのが私の意見でございます。
○上田参考人 大変申しわけないのですが、御質問の要旨が私にはまだ十分理解できないんでございますが、先ほど金子先生の御質問とかなり関連したものがあったように伺っておりますが、臨床の立場で申しますと、一つはやはり、日本人がきわめて多いということには人種的な何らかのものがありはしないかということが第一点。その次には、いま先生が御指摘になったことでございますけれども、徳島県には非常に医者が多いと言っておられましたけれども、キノホルムという薬剤は下痢の患者に使うわけです。日本人というのは消化器系の疾病が非常に多いこともございまして、臨床の医師は、かつてはキノホルムを下痢があると、われわれは第一選択と申しますけれども、第一選択薬剤としてかなり使ったわけでございます。しかし、先ほども私申し上げましたように、下痢の患者に使えば必ずスモンになるかというと、決してそうではなくて、たくさん長く使ってもならない人と、期間的に短くても現実にスモンになる人とあるわけでございます。これはもう明らかな事実でございまして、私たちもかつてキノホルムを使ったことがございますけれども、私たちの使った範囲の中ではそのような患者は出ていないわけです。ですから、そういうことを考えますと、薬剤と人間との関係というものはきわめてデリケートであってむずかしい、こういうことを率直に申し上げなければいけないと思います。
○石黒参考人 どういう御質問でしたかな。
○大原(亨)委員 いいです。
○向山委員長代理 それでは結構です。
○大原(亨)委員 私が申し上げたのは、趣旨だけは言っておきますが、つまりこんな大きな薬害事件が発生しておる、それで、メーカーのサイドでどこを直さなければいかぬというふうに考えておるのか、どういう点を修正、改善しなければいかぬか、その点をどう考えておられるのかということを聞きたかったわけです。これは、裁判等でたくさん双方の材料が出ておるわけですから。しかし、私は時間もまいりましたから協力いたしまして、これでやめます。
 以上です。
○向山委員長代理 次に、古寺宏君。
○古寺委員 参考人の先生方におかれましては、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。
 サリドマイドあるいはスモン等の問題が発生いたしまして、こういうような薬害を再び繰り返してはならないということで、今回の薬事法の一部改正、また基金法案が提案をされているわけでございますが、いろいろ御意見を拝聴いたしましても、非常にいろんな御意見がございまして、私どもも、この御意見を十分に検討しながら、今後審議を進めなければならないと考えているわけでございます。
 まず最初にお伺いしたいのは、石黒参考人にお伺いしたいわけでございますが、現在スモンの問題が係争中でございます。このスモンの問題につきましては、チバ、武田製薬等は一応国と歩調を合わせて和解等にも臨んでおったわけでございますが、田辺製薬はまだ歩調が合っていないようでございますが、こういう点につきまして製薬団体連合会としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、御意見を承りたいと思います。
○石黒参考人 スモン患者の現状、まことにお気の毒に思っております。できるだけ早くこれを救済し、紛争を解決していかなければならないと私は存じております。この業界といたしましては、製薬メーカーの関与者と国と患者さん七、いま話し合いが進んでおるように聞いております。それに対して私どもは、現在は早く解決することを望んでおります。
○古寺委員 今回のこの救済基金法案は、業界の拠出金によって基金が運用されるわけでございますが、業界の歩調が合いませんというと、せっかくこの法律ができ上がっても運用ができないわけでございます。そういう面から考えまして、今後この法案が通っても、業界として全面的に御協力ができるのかどうかというのがまず第一点でございます。
 それから、非常に国の責任論を業界側は主張しておられまして、少なくとも二分の一は国が責任を持って拠出をしてくれ、こういうことを先ほどお話しになっているわけでございますが、そういうような本法案に対してのいろいろな御意見もある、また業界の足並みもそろわない、こういう中で、こういうような法案について業界としては賛成なんでございますか、反対なんでございますか、お伺いします。
○石黒参考人 お答えいたします。
 今回の救済法案は、私どもは全業界を挙げて賛成いたしております。業界の一致した意見はありますが、ただ、業界だけがこの基金を負担しなければならないということについてはまだ意見がございまして、先ほども申しますように、国にも責任があるから、国が主体となってこの法案、基金の運営をしていき、また被害者の判定もしていくということでありますから、国の主体性に対しまして業界も協力していくということでございます。
○古寺委員 スモンの場合は、現在係争中の方もございますが、そうでない方もございます。潜在の方も入れると相当の数に上るというふうに言われているわけでございますが、こういうスモンのみならず、既発のいわゆる薬害を受けられた方々に対しても対象にしてくださいという声が非常に強いわけでございます。特に患者さんの立場から言いますというと、今回のこの薬事法の一部改正あるいは救済基金法というものがこういうふうに爼上に上がってきたのは、われわれがいるからこういう問題が出てきたのだ、それを、われわれを犠牲にしておいて、置き去りにするということは納得ができない、こういう御意見が非常に強いわけでございます。
 先ほどは、業界としてもこのスモンの問題については非常にお気の毒に思っている、申しわけない、こういうお話があったわけでございますが、そういうお気持ち、姿勢からするならば、当然業界からも、既発の患者さんについても、特にいま問題になっておりますところのスモンのような患者さんについては、これはぜひその対象に入れてもらいたいというような御要望があってもいいのではないかというふうに、私は常識的に考えるのでございます。そういうことを全く御主張なさらないというのは、どういうような原因によるのでしょうか。
○石黒参考人 まだ業界としての意思決定をしておるわけではございませんが、私個人といたしましては、この既発の不幸な被害者の救済につきましては、別途考慮されまして、この救済基金が何らかのお役に立つというようなことがある場合には、これを別途考えていく必要があろうかと思っております。
○古寺委員 別途考えるということは、何かまた別な救済法をおつくりになるというお考えでございますか。
○石黒参考人 そうではございません。何か救済方法に関して基金がどういうふうにお役に立つことができるかということは、業界としてもまだ申し上げる場合でもございませんし、基金ができた後の問題かと思っております。
○古寺委員 それから判定の問題でございますが、この判定の問題につきましては、業界側としては国がやるべきである、こういうふうにおっしゃっておりますが、それは業務の面でございますか、それとも経費の面でございますか。
○石黒参考人 この判定は公平七正確なものでなければならないと思っておりますので、経費とか業務だけではございません。判定技術というものに信頼の置ける判定委員会と申しますか、そういうものを必要とするのじゃないかと私は思っております。これは基金から厚生大臣に申し出まして、厚生大臣は、薬事審議会の機構の中で認定または判定をするように、私は承知しております。
○古寺委員 いや、今後の運営に対する考え方につきましては厚生省からいろいろお聞きしておりますので、ただいまのようなお話も私は存じ上げているわけでございますが、業界は、国が全部責任を持ってそういうような判定についてはやるべきであるというお考えなのか、そういういろいろな十分な判定を進める上において必要な経費については、これは業界が負担をなさるというお考えなのか、その点を承っているわけでございます。
    〔向山委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
○石黒参考人 業界は基金に対して拠出するという責任を持っております。その基金をどのように使用するかということは、基金の問題かと思っております。
○古寺委員 次に、萬羽先生にお尋ねしたいのですが、わが国の薬事法は非常に古い時代の法律で、非常に欠陥があります。これは全面改正をしなければならないということが前々から言われておったわけでございますが、今回はその一部改正の案が出ているわけでございます。
 そこで、そういうような欠陥のある薬事法によっていろいろな薬害がわが国においては発生した、こういうふうに考えられる部面が非常に多いわけでございますが、先生が無過失責任の導入ということを先ほど非常に強くお話しをしておられたようでございます。この点につきましては反対もあるようでございますが、西ドイツにはそういう例があるそうでございますが、わが国においては、そういう面からも無過失責任の導入というものが必要ではないかというふうに私は考えるのですが、いかがでございますか。
○萬羽参考人 まことにおっしゃられる御趣旨、そのとおりであります。医療事故につきましては、過失を訴訟上立証するというのは、非常に専門的な知識と長期間を要するわけでありまして、これを訴訟で長くやっておったのでは長期間被害者が放置されるという、被害者救済の観点からまず要望されるというのが一点と、もう一つは、このような危険性を内包している物質を開発する者は最高度の注意義務を負わなくてはいかぬ、かかる注意義務に立って審理をすれば、裁判上、当初は責任がないのではないかというふうに予想されておった医療事故であっても、医薬品事故であっても、結果的にはやはり企業側の過失が認められておるという実際的な見解からいっても、それからまた、先ほど申し上げました各種の法案におきまして、すでにわが国においても無過失責任が導入されておるという観点からも、特に医薬品事故におきましては無過失責任の導入が必要かというふうに考えております。
○古寺委員 そこで、もう一点お伺いしたいのですが、現在、国の責任論と製造物責任論、この二つの議論があるわけでございますが、その場合にどちらをおとりになりますか。
 それから、もう一点は給付の内容でございますが、現在厚生省がお考えになっている給付の内容というのは、予防接種による事故に対する給付の内容と同じようなことを考えているようでございますが、これを少なくとも、公害によって健康被害を受けた方に対する補償法と同じような給付の内容にすべきである、こういう考えもあるわけでございますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○萬羽参考人 国の責任につきましては、国も、医薬品につきましては製造承認等につきまして深いかかわり合いを持っておって、安全確保の義務がある、従来の薬事法でもわれわれはそう考えております。したがいまして、国が十分な実質審議をしないで製造承認を許したという点で、いままでの医薬品事故が起こっておったわけですから、したがいまして国にも責任が及ぶことは当然と考えます。
 しかし、国の責任と製薬企業の責任を見た場合に、開発をして、販売をして、利益を受けるのは製造企業の方でございますから、したがって、いずれが責任を負担すべきかという点から見れば、これは利益のあるところが責任を負担するのが、これは公平の原則上当然でありまして、企業が最終的な責任を負うべきである。そこで、おっしゃられるように製造物責任の理論、いろいろございますでしょうけれども、先ほど言いましたような無過失責任の規定をそこに働かせて、被害者の救済を早く図るべきであるというふうに考えるわけです。
○古寺委員 どうもありがとうございました。
 熊谷先生にお尋ねをしたいのでございます。
 熊谷先生は、先ほど、無過失責任を導入するということはいろいろ問題がある、この報告書にも書いてございます。時間の関係で読み上げませんが、こういう点については無過失責任を導入した方がいいというふうに、いま日弁連の萬羽先生がおっしゃっているわけでございますが、熊谷先生はどうでございますか。
○熊谷参考人 薬物による副作用の問題の原因究明の問題から見たら、非常に困難があるということを申し上げました。したがって、これを法律で取り扱うように、有罪か無罪かと、はっきり割り切るわけにはいきません。したがって、その間にもう一つの領域を設けろと、それは無過失責任であると私は考えております。私の考えております無過失責任というのは、無過失であっても、その原因がはっきりしてくれば有罪であるということになると思います。というのは、医学的あるいは生物学的な立場から考えれば、そんなに時間が早く原因・結果論が、原因・結果あるいは責任論が解決できるものではないというのが私の考えでございます。その実例はスモンの場合でございます。
○古寺委員 既発の患者さんを救済の対象とすべきかどうかという点については、どのような御見解をお持ちですか。既発の、たとえばスモンのような患者さんを今度の法案の対象にすべきかどうかという点については、どのようにお考えですか。
○熊谷参考人 申し上げます。
 救済という立場に立ったならば、いますぐでも始めるべきだというふうに私は考えております。
○古寺委員 次に、上田先生にお尋ねしたいのです。
 先生は、先ほどわれわれに資料をお見せくださいまして、開発あるいは流通、情報、そういう問題で非常に不備である、こういうお話が今度の改正案についてあったわけでございます。そうしますと、今回の薬事法の一部改正については、これは反対をすべきであるというふうにお考えでしょうか。それからもう一点は、国も少なくとも二分の一は負担すべきである、こういうお話がございましたが、この国の責任論の二分の一という根拠はどういうような根拠によるものか、教えていただきたいと思います。
○上田参考人 最初の質問についてお答えをいたします。
 私はこういう図をお示し申し上げたのですが、これは、厚生省が今回改正案として出されたところを点線でお示しをしたわけでございますが、薬剤、医薬品というものはもっと幅の広いものでありますから、こういうようないろいろな関連したものを当然考慮に入れなければいけないという意味で、この表を出したわけでございます。したがって、いまの御質問で、今回の改正案には反対かというと、決してそうではなくて、私は最初に反対という言葉を使った覚えはございませんけれども、不十分であるという言葉で御説明申し上げました。したがって、今回この改正案が審議をされて、もし通過された場合には、さらになるべく速やかな時期に、より幅の広い薬事法の改正がなされ、前進をすることを私は希望するという意味で申し上げたわけでございます。これが第一点。
 それから第二点の方は、もう一遍ちょっと御質問をいただけますか。
○古寺委員 第二点の方は、先生は、国が二分の一の拠出を負うべきであるということを……。
○上田参考人 私、二分の一という表現は申し上げなかったと思うのですが、国が主たる責任を負うべきである。しかし、製薬企業、要するに製造業者も当然何らかの負担を負うべきである、私はそういうふうに申し上げたつもりで、数字的に二分の一とは申し上げなかったつもりでございますが、よろしゅうございますか。
○古寺委員 わかりました。訂正いたします。国が主たる責任を負うべきであるという、その根拠ですね。
○上田参考人 医薬品というものは、わが国民の健康の増進という基本的な問題がございます。われわれ臨床医が使う薬剤というものは、当然国の許可を得た上で使うものであると私は思います。したがって、当然国というものが十分な責任を持った上で薬剤が発売されております以上は、当然国がその責任を主たるものとして負うべきであろう、こういうふうに考えております。
○古寺委員 いま上田先生からは、国が主たる責任を負うべきであるというお話しがあったわけでございますが、この点について萬羽先生はどのようにお考えでしょうか。
○萬羽参考人 これは、被害者に対しては、先ほども申し述べましたように、製造業者も国もともに共同して責任を負担すべきだと考えます。したがって、基金に資金が不足しておれば、国は二分の一に限らず、十分な給付を行える資金を供給すべきだと考えます。しかし、一たん給付した後に、だれが最終的にその負担をすべきかという点を考えますと、これは製造会社が、企業が責任を負うべきだ。その根拠は、利益を得るものが負担をすべきだ、これが公平の原則だというのが一つ。
 それから、開発に当たって、まず第一に注意義務を尽くして、試験を重ねて、安全性を確認すべき第一の責任者は、やはり製造企業であって、国はそれを事後的に審査し、安全性を確認して担保してやるということでありますから、おのずからそこで相違があろうかと考えます。したがいまして最終的な負担は企業にすべきである、そしてそのことによって、医薬品の開発についてより安全性を重視する機運が出てくるのではないかと考えます。
○古寺委員 時間ですから終わります。どうもありがとうございました。
○竹内(黎)委員長代理 次に、米沢隆君。
○米沢委員 参考人の皆さんには、大変御苦労さまです。時間がありませんので、早速御質問いたしたいと思いますが、まず最初に石黒参考人にお尋ねをいたします。
 御案内のとおり日本は有名な薬害国だと言われ、薬づけ医療が非難をされ、また保険等では四〇%前後が薬価で占められる。そして、国民も何か薬が好きなんじゃないかということまで言われる。そしてまた薬害が多発するものですから、果たして企業は、副作用の研究等に本当に力を入れておるのだろうかという不信感が持たれる。いろいろといま、医薬品業界に対する批判なりあるいは不信というものが広がって、大変だろうと思うのでありますが、石黒さん個人は、現在のように薬害が多発する社会的要因についてどういうふうなお考えを持っておられるのか。同時に、医薬品業界として責任みたいなものはどういうふうに感じていらっしゃるのか。この点をお尋ねしたいと思います。
○石黒参考人 お答えいたします。
 薬害について世間の批判は、私どもは十分心得ております。ただ、過去の大きな薬害は、昭和四十二年以前に発売された薬でございます。昭和四十二年以後は厚生省の規制が厳しくなりまして、業界といたしましてもこれに対応すべく、研究開発それから副作用の動物実験その他を非常に厳しく進めておりますので、四十二年以後の医薬品には大きな薬害はなかったろうと私は思います。ただし薬のことでございますから、幾らかの副作用が全然ないとは申しませんけれども、現在では、業界といたしましては新薬の開発には十分安全性と有効性を厳しく追求いたしておりますから、過去の反省も含めまして、今後は十分安全性の高い、そして有効性も認められるものが開発されていくと思っております。
○米沢委員 重ねてお尋ねをしますが、お医者さんが薬をたくさん使ったらもうかるという批判に対して、どういう御感想をお持ちですか。
○石黒参考人 これは私は、一つは日本の医薬の制度の問題もあろうかとは思うのでありますけれども、決して私は、お医者さんが薬を使い過ぎるとは思っておりません。十分良心的な治療をなさっておるかと思いますが、数字的に保険料の三八%ですかというような、欧米に比べて比率は高いのでありますけれども、この比率も、よく分析したならば、それほどの差はないかと思っております。医療費と薬剤費の比率でございますね。
○米沢委員 まだいろいろ意見はありますが、時間がございません。
 次は、上田参考人にお尋ねをしたいと思います。
 先生には臨床医学的な立場で大変貴重な御意見を聞かせていただいたわけでありますが、先生の問題点の指摘に関しまして、たとえば再審査というものは六年一律で決めるのは非常に問題がある、あるいは再評価にもいろいろと問題がある、それから情報提供にもいろいろ問題がある、それから臨床試験の現況はかなりデリケートであるというような、いろいろな話を伺っておりますと、果たして、薬事法の実効が上がるようにしていくためには、かなりの配慮が必要だとわかりました。同時に、かなりな配慮ということは、権威のある臨床医学的な専門家が個々に、みんな一つ一つチェックしていかないと薬事法の実効は上がらないのではないか、そんな感じさえしたわけでございます。そういう意味で、薬効はどういうものがあるか、あるいは臨床医学的にどういう効果があるか、あるいは副作用はどういう効果があるか等々、特に副作用が起こらないような薬事法の法制化というものは果たして法律になじむものかどうか、そういう疑問さえ私はちょっと持ったのでありますけれども、たとえば再審査される場合六年一律はおかしい、だから短期間でやれるものの医薬品の分類とか、あるいは長期を要するという医薬品の分類とか、現在の医学の常識においてそういう分類ができるものかどうか。そしてまた、おっしゃったような再評価はむずかしいけれども、再評価の仕方もいろいろな分類をすることによって、いろいろ法的な規制を設けられるような対象になり得るかどうなのか。そのあたり、ちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
○上田参考人 いま御指摘のありましたように、実は、医薬品というものがいかにむずかしいものであるかということを、私はいろいろの例を挙げて申し上げたわけでございます。したがって、医薬品のこういうような法律的な問題は、日本だけではなくて、欧米でもみんな困っていることは現実でございます。しかし、今回の法律の改正というのが有効性と安全性の確認という前向きの姿勢でございますから、今回こういうような一つの案が出されたものと考えているわけで、したがって、パーフェクトを期待するということはどだい私は無理だと考えます。
 いま先生の御指摘のたとえば再審査の六年ということでも、これも法律的には一律にしなければむずかしいのかもしれませんけれども、いまお話しがございましたように、私は幾つかの段階に分けることだって決して不可能ではないと思います。短くするということはそれだけ危険が多いという意味でございますし、長くていいということは、それだけむしろ副作用の少ない薬剤というふうに私は理解するものでございます。
 それから再評価の問題は、これは一般にはきわめていい方法だと気楽に取り上げられておりますけれども、私のような臨床医家の立場で見ますと、しかも私たち研究者でございますので、現実には先ほど御指摘申し上げたような幾つかの問題が含まれておりますので、再審査をするに当たっては、薬剤の種類にもよりますけれども、できるだけ慎重でなければいけない、こういうことを指摘して申し上げたわけでございます。
○米沢委員 もう一度お尋ねをしますけれども、クロロキン製剤は、視力障害が起こるということで、いま製造中止ですね。そういうことで、たとえばマラリアあたりが発生したときに一体どういう処理をなされるのですか。
○上田参考人 大変困ります。現実に、たとえば海外のマラリア流行地に行く場合に、日本でほとんどこの薬剤は手に入りません。したがって、私の知っている範囲で例を申し上げますと、まずイギリスに渡って、イギリスで手に入れてそれからアフリカに行ったという例を私は聞いております。したがって、クロロキン以外でも抗マラリア的な作用を持った薬剤はございますけれども、いまの時点ではクロロキンが最もすぐれているというのが世界の定評でございますから、これから、一たん再評価したらそれっきりというのじゃなくて、またその状況によっては改めて直していく必要があるのではないかというのが私の見解でございます。
○米沢委員 次は、熊谷参考人にお願いいたします。
 先ほどの御意見の中で、医薬品の効果とかあるいは副作用等を研究するのは、特に人間に当てはめる場合には大変むずかしい、そういう意味で予測できない部分があることは当然である、それが一つの限界であるというようなお話でありました。その限界がイコール受忍の範囲みたいなものではないかと私は思うのでありますが、それを今度は、法律でいろいろ整理しながら、審査をどうしようとか、評価をどうしようとか、あるいは薬の効き方についてどう考えようとかいうことを考えていくわけでありますが、薬害を発生させないための理想的な薬事行政、行政の介入のあり方はどういうものが一番いいとお思いですか。
○熊谷参考人 「薬害」という言葉はまずいのですが、「薬の副作用」を一〇〇%発生させないような法律は、不可能だと私は考えております。
○米沢委員 萬羽参考人にお尋ねします。
 日弁連の御意見では、企業と国が高度の注意義務を尽くせば副作用は予見できる、したがって、薬害の大部分は民事上の責任を追及できるという御意見のようです。しかし、上田先生やら熊谷先生の話を聞きますと、結局私は、医薬品の特殊性を認めるかどうかというそこにかかっておるような気がしてなりません。そういう意味で、萬羽参考人自身、医薬品の特殊性を全然認めないのか、それとも何かの条件を付して認めるのか、これが第一点。
 それから、先ほどの御意見の中で、救済基金法に関して完全で迅速なものにしなければならぬ、そして原因者の責任を明確化しなければならぬ、そうおっしゃいました。そして、結局、補償的な恩恵的なものでは給付が不完全であるから、賠償責任論に立却して完全に給付内容をよくしていくべきだ、そういう御意見のように私は拝聴したわけでありますけれども、この医薬品の特殊性みたいなものは、私は、幾ら頭をひねっても、ある程度あるのではないかという感じがしてならぬわけです。
 そこで、皆さんが考えておられます理想的な法律ではなくて、いま提案されているこの基金法の新法によりますと、対象にするのは少なくとも適正使用というのが条件であり、あるいはまた、予見できても治療上やむを得ざるもので使う、そういうものに限って対象にするという現在の法律の内容だけからしましたら、賠償責任論というのは問えないのではないか、問えないというよりも立証がむずかしいという感じが私はしてならないのでありますけれども、その点に関してどういうふうな御意見を持っておられるのか。
 それから、補償的な恩恵的な給付では不完全だと私も思います。そういう意味で、完全なものにしていくためには、特に患者の皆さんがおっしゃっております生涯補償とか恒久対策等を考えますと、相当な金が要る。そういうことを考えましたときに、賠償責任論で議論を繰り返すよりも、国家の責任を追及して、国庫負担をかなり否定的にとらえておられますけれども、逆に肯定的にとらえられて、その残りの部分を賠償責任論で補完していくことの方が、より完全な迅速な給付内容をつくっていくというのに近道じゃないかと思うのでありますけれども、この三点をお伺いしたいと思うのです。
○萬羽参考人 まず第一点は、医薬品の安全性と有効性のバランスの問題だと思いますけれども、この点につきましては、この有効性と安全性のどっちに重点を置くかという、基本的な問題であろうと思います。
 従来の製薬企業の考え方は、有効性があれば多少安全性は犠牲にしてもやむを得ないというふうな、考え方としてそういう基本に立っておるのではないかと考えますが、われわれはそうではなくて、安全性をより重視すべきであるという見解であります。したがって、安全性をより重視して最高度の注意義務を企業に負荷させれば、予見不可能であったかに見える事柄でも、審理の結果予見が可能であったという結論が出ているわけでして、そういう意味において、予見不可能であるということは、そもそも開発段階において安全性を無視しておったからだということが言えるのではないかと思うのです。したがって、無過失責任の考え方もここを根拠にしているわけであります。
 それから、現在の法案では給付が不完全だということは、おっしゃるとおりであります。われわれはこの制度を損害賠償責任に基づくものだというふうに考えておりますが、このことは国の責任を問えなくなるということではございません。国も開発の関与者として、製造承認等の責任から、当然に損害賠償義務を負うべきだというふうに考えております。したがって、国の損害賠償責任を追及するからといって、この制度が矛盾するということにはならないと思います。したがって、給付の程度を厚くして、基金が不足した場合には、国は二分の一等に限らず十分な資金援助をすべきである。ただし、先ほど述べましたように、国が出した分は最終的には基金を通じて製薬企業の方から回収すべきである。これが原因者負担の原則を貫くゆえんだろうというふうに考えるわけです。
○米沢委員 終わります。
○竹内(黎)委員長代理 次に、浦井洋君。
○浦井委員 萬羽参考人にお伺いをしたいのですけれども、まず基金法についてであります。
 まず総論的に、現在四地裁で判決がおりておるということで、この裁判の到達点から見て、救済制度の範囲と給付水準はいかにあるべきかということについて、ちょっとお教え願いたいと思います。
○萬羽参考人 繰り返して言うようですが、われわれは、本制度の性格は損害賠償に基づくものにすべきだということですから、給付の水準は、裁判例の示すところに従って、十分に民事の損害賠償が認められる範囲内は給付すべきであると考えます。
○浦井委員 救済対象はどうですか。
○萬羽参考人 救済対象の問題につきましては、意見発表のときに申し上げましたように、現在の法案ではこれが非常に狭められておる、これは非常に不当であって、改善しなければいけないと考えておりますが、それをもう一回繰り返してもよろしゅうございますか。
 まず第一点は、既発生の被害を除いておる、これは不当である。その理由は省きます。
 それからもう一つは、第三者に損害賠償責任あることが明らかな場合、これは除いております。これも民事損害賠償に基づくものであれば、入れて当然だと思います。
 それから「その他厚生省令で定める場合」は除くとありますけれども、このような重要事項を厚生省令で定めるべきでなくて、除くのならば、国会で審議を尽くした上で、除外理由を設けるべきである。したがって、厚生省令に委任する規定は削除すべきである等々であります。
○浦井委員 基金法について後でまた触れたいと思うのですけれども、次に薬事法の改正案で、いただいた日弁連の意見書によりますと、目的の項がきわめて不十分だというふうに述べられて、「医薬品等の安全性・有効性を確保し、もって国民の生命・健康の維持・増進を図る積極的給付行政を目的とするものであることを明記すべきである。」こういうふうに書かれておるわけであります。私も同感でありますが、当然これに付随をいたしまして、国と企業の責務もこの改正案の中に明記されなければならぬというふうに私は考えるのですが、萬羽さんの御意見はどうですか。
○萬羽参考人 それはおっしゃられるとおりまことにごもっともでありまして、われわれの意見書を読んでいただけば、その点も総則規定で述べるべきであるというふうに記載しておりますので、御検討いただきたいと思います。
○浦井委員 石黒さんにお尋ねしたいのですが、いま日弁連の萬羽さんからは、企業の責務は当然これを法文化すべきだ、こういう御意見なんですが、皆さん方に内示をされた厚生省の案では、企業の責務の項が入っておったというふうに聞いておるわけであります。業界からの要請によってこれが抜けたというふうに私は伝え聞いておるわけでありますが、そういう事実があるのですか。
○石黒参考人 企業といたしましては、もし原因者である場合にはもちろん責任を負うつもりでおります。
○浦井委員 いや、私が聞いているのは、厚生省から内示された案では企業の責務の条項が入っておったのに、それが抜けておるわけです。いまはないわけですね。それはやはりいろいろ業界の方から要請をされたわけですか、というふうに聞いておる。
○石黒参考人 いや、そういうことはございません。
○浦井委員 企業の責務の条項が入っておれば、日薬連としては都合が悪いわけですか。
○石黒参考人 企業の責任ということがある場合には、企業は責任を負います。
○浦井委員 企業の責務という条項が入っておったら、業界としては都合が悪いのですか、と私は聞いておるわけです。
○石黒参考人 どうもそこのところ、私はちょっとわかりませんですが、そういうものが入っておって抜けたのか、入ってなかったのか、どうも存じておりません。
○浦井委員 萬羽参考人にもう一度お尋ねしたいのですが、薬事法の改正にもう一度返るのですが、薬事審議会のあり方について少し詳しく、意見書に書いてあるわけなんですが、どうあるべきかということについてお聞きしたいと思うのです。
○萬羽参考人 医薬行政につきましては、薬そのものが高度の化学的な知識を要求するものですから、医薬行政を十分に尽くすためには、やはりそういう高度の知識を持った委員会なりが責任を持って薬事行政を監視する必要がある。したがって、そこにはいままでの中央薬事審議会と違って強力な権限を持たせるべきである。したがって、当初われわれは公正取引委員会のような独立の機関を設けて、ここに医薬品の安全等をすべて監督させるべきであるというふうに考えてもおったのですが、意見書ではそこまでは主張しておりませんが、中央薬事審議会の権限を大幅に強化して、そして重要なる点は、そこで医薬品の安全性、有効性に疑問があるという否定的な見解が出た場合には、厚生大臣もこれに従わなければいかぬというふうな権限を認めるべきである。そしてさらには、このようなチェックを十分なさせるためには、企業に対する資料の提出権であるとか、立入権であるとか、そういう広範な権限をここに認めるべきである。そしてさらには、その構成委員である人たちについては身分を保障をするということが大切であろうというふうに考えております。
○浦井委員 ありがとうございました。
 熊谷先生にお尋ねしたいのですが、先生は日本薬理学会のかつての会頭であられた、それから現在は日本医学会総会の会長であられる。当然中央薬事審議会にも強い御関心がおありだろうと思うのですが、いま萬羽さんからお話がありましたけれども、現在の中央薬事審議会についてどう思われるか、変えなければならぬとしたらどういう点か、この点についてお伺いしたい。
○熊谷参考人 一言で申し上げます。いまの審議会を変える必要は認めません。
○浦井委員 そうですか。――もう一度萬羽さんにお尋ねしたいのですが、これも陳述のときに簡単に触れられたと思うのですが、臨床試験のあり方について、人権問題という観点からどう考えておられるか、これは簡単にひとつお答え願いたいと思うのです。
○萬羽参考人 これは現在、大学病院等で患者の了解も得ないで臨床試験に使っておる。したがって、患者はモルモットがわりに使われて、その点でも大きな人権無視がある。したがって、これについては十分な規制が必要であろうというふうに考えております。
○浦井委員 上田先生にお尋ねをしたいのですが、私も医者なんですが、医師は医薬品に関する情報というのは大体何から得ておるのか。東大の教授であられたし、現在は慈恵のプロフェッサーをやっておられるし、医師の世界について非常にお詳しいと思います。たとえばいわゆるプロパーと言われる人たちからか、それから添付文書なのか、それからいろいろなパンフレット類、学会誌、学術誌、それから医師の間の情報、いろいろな手段があるだろうと思うのですが、先生から見られてどういう順番なんでしょうか。どういう実態なんでしょう。
○上田参考人 お答えします。
 これは、その臨床医の勤務する状況によってずいぶん違うと思います。たとえば開業医の場合、あるいは大学病院で勤務する医師、あるいは大病院で勤務する医師等によって、大きな差があると私は考えます。
 たとえば大学病院を例にとって申し上げますと、これは先ほども申したのですけれども、製薬企業のプロパー等からの情報ではないと私は考えております。これはどこまでも学問としてでございますので、学会であり、医学情報としてはいろいろの医学雑誌等で、私はそれが主たるものであると考えております。
 ところが、開業の医師たちにとりましては必ずしもそうではなくて、一つは、いわゆる製薬企業のプロパーからの情報もたくさん入ってくるだろうと思います。また、勉強しない医者は別でございますけれども、まともな医者であるならば、当然医学系統の多くの雑誌もございますし、現在はテレビあるいはラジオ等からのいろいろの情報もございます。さらには、もう少し勉強する医師では、当然学会等に参加して学会からもいろいろの情報を得る、こういうことになっておりますので、一律にどうだということは、情報の入手は同じだとは言いかねるわけでございますが、いろいろの手段によって、今日情報過多の時代でございますので、少なくとも情報の入ってくることは間違いない、こういうふうに考えております。
○浦井委員 時間がなくなってきておるわけですが、特に開業医の場合には、医薬品に関する情報あるいはもう一つ新しい製品の使用に踏み切る動機、こういうようなものについてはかなりプロパーと言われる人たちのそういう手段を利用する場合が多いということは言えますか。
○上田参考人 それは御指摘のとおり、そのとおりだと私は思います。いま先生の御指摘の開業医というものを主体とするならば、これはプロパー活動というところから入る情報というものは、量的にはきわめて私は多いと思います。ただし、内容については私は違った意見を持っております。
○浦井委員 石黒さんに最後にお尋ねしたいのですが、いま上田先生が言われたように、プロパーの、特に開業医の中に占める情報伝達手段としてのウエートは、非常に高いだろうと思うのです。私もそう思います。だから当然、プロパーの資格化ということが問題になってくるだろうと思うのですが、今回も、あなたは御否定になるでしょうが、プロパーの資格化というのも当初の厚生省案には入っておったのが抜けておる。あなたはそういう事実は御存じでしょうか。やはりプロパーの資格化ということは必要だと思うのですが、その点について。
○石黒参考人 お答えいたします。
 プロパーの資格化は必要だと思います。そうして、特に資質の向上に努むべきだと、私どもは現在その方面で意を用いております。
○浦井委員 終わりますが、最後に上田先生に、苦言といったらえらい僣越でありますが、やはり、先ほどからお聞きいたしておりますと、スモンが日本で多発をして外国に少ないということについて、私は少々意見を異にするわけです。やはり適応症の拡大であるとか用量の拡大というようなことが、国と企業の無責任さでずっと行われていった、そして不必要に多用されたということが、日本でスモン被害者の多発を生んでおる原因だというふうに私は思いますし、ついこの間京都で行われました国際シンポジウムでも、それに近い結論が出ておるように私は新聞記事で見たわけでありますが、その点だけを上田先生に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
○竹内(黎)委員長代理 次に、工藤晃君。
○工藤(晃)委員(新自) 参考人の方々には、大変長時間に及んで御審議をいただき、御意見をちょうだいし、まことにありがとうございます。私が最後でございます。与えられた時間は十五分でございますので、その中で多くのものを実はお聞きしたいと思っております。ただ、時間の都合でどこまでそれが許されるかわかりませんが、そういう意味において、最初に、私の質問事項を簡単に、御指名をさせていただきながら、言わしていただきますので、その範囲の中でお答えをいただければありがたい、こう思います。
 まず第一番目に、熊谷参考人にお聞きいたします。
 このたびの薬事法の改正に当たりまして、最も留意していかなければならない、こういうところが一番留意しておかなければならぬというようなところがございましたら、簡単にお答えをいただきたい。
 それから二番目に、今後薬の有効性とか安全性については非常に厳しい、またより強いチェックをしていかなければならない、こういうことでございますので、それに伴いまして薬事審議会の現在の制度がそういうことに対して対応し得るのかどうか、あるいはもし対応しきれないということであればどういうところを改善していけばそういう要望にこたえていけるのか、こういう点についてお聞きをしたいと思います。
 それから三番目には、スモンについてでございますけれども、キノホルムを服用しても小児では発病しないと言われている、それはどういう理由によるのか。あるいはまた、年長者においては比較的多いのじゃないかという説もあるようでございますので、そういう点についての御知見をちょうだいしたいと思います。
 それから、もし時間がございましたら、ダブルブラインドの点について、こういうやり方で果たして副作用の判定を今後ともしていくのに適当かどうか、こういうことについての御意見がございましたらちょうだいしたい。
 最後に、副作用被害を余り重視し過ぎまして、逆に新薬の開発という問題についてどのような影響がもたらされるかということについての御所見がございましたら承りたい。この最後の副作用被害と新薬の開発の問題については、石黒参考人からも御意見をちょうだいしたいと思っております。
 それから上田参考人にお聞きをしたい点は、薬事審議会で薬を認可する場合に、薬の範囲が非常に広うございます。そのために、臨床医としての意見が薄められてしまって、認可する場合の意見の中に余り入っていきにくいのじゃないかというふうな心配があるわけでございますけれども、こういう点についての御意見はいかがでございましょうか。それから、副作用の予測とか発見は具体的にできるのかどうか。
 それからもう一点、この場合についでにお聞きしておきたいのですが、薬が発売許可される場合に、許可された効果以外の効果に対しては現在の健康保険制度では認められていないんですが、しかし医学的見地からして、一体そういう問題についてはどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃいますか。
 十五分の中でこういう質問をするのは非常に恐縮だと思いますが、そういうことについて、その範囲の中でできるだけ御回答いただければありがたい、こう思います。
○熊谷参考人 お答え申し上げます。
 もう年のせいで、おっしゃったことが全部頭の中に入っておりませんけれども、最初の薬事法改正について最も大切な点は、あの中には法律として国の責任を論じられないのかもしれませんけれども、それはすべて救済法の中に逃げておって、しかも、そこに国の責任が非常に薄められておるという点が注意しなくてはならぬ点であろうと思います。私の考えは、国の責任が先行すべきだというのが私の主張でございます。
 それから薬事審議会の構成その他でございますが、いまおっしゃった、認められた効果以外に新しい効能が出てきたという場合には、それなりのデータを添えてもう一遍申請して、それを薬事審議会にかけて認めさせる、そういう方法があると思います。それは必ずしも法律に規定しなくとも、アンダースタンディングであるいは行政指導でやれると思います。
 それから、小児にキノホルムをやっておるお医者さんがたくさんおるそうでございます。私は開業しているわけじゃございませんのでわかりませんが、しかしそれにも出ない、しかも十何%しかキノホルムを飲まない人にもあの症状が出ておるということのために、その本当の原因と結果を、いまの状態で最終結論を出すべきではないというのが私の見解であって、これは時間をかけて、裁判とは別個にとことんまで追求しろというのが私の考えで、それに対応して、同じ症状を持っておる患者は即座に救済を始めろという立場でございます。
 きょうの議論は、聞いておりますと副作用一点張りでございまして、医薬品のソシアルエフェクト、社会効果というものには全然触れておりません。これは、こういう一方的な議論ではいかぬというのが私の考えでございます。
 以上でございます。
○石黒参考人 お答えいたします。
 医薬品の開発は、わが国の産業の上からも重要なことでありますが、なお保健医療について有効な新医薬品の開発については、私どもは重い責任を感じております。
 この開発に関しましては、現在の日本の薬事法、この新しい薬事法も含めまし、すでに私は国際的に第一級のランクに上がっておると思っております。しかしながら、私どもメーカーといたしましては、有効性、安全性の追求を一層厳しくやりまして、医療に貢献していきたいと思っておりますが、この科学の進歩は非常に日進月歩であります。したがいまして、安全性あるいは有効性の追求も、これは永遠の課題だと思っております。
○上田参考人 先生の幾つか御指摘になられた中で、私の答えられるものだけ答えさせていただきたいと思います。お許しください。
 まず第一に、私は臨床でございますので、小児にスモン患者が出にくいという御指摘でございますが、私はこの方面は研究しておりませんので詳しいことは存じませんけれども、われわれが仄聞するところでは、そういう事実があるそうでございます。これを裏返しにして述べますと、薬剤と薬害との関係のむずかしさというものがこういうことでも明らかでございまして、先ほど私は臨床研究のところでも述べましたように、年齢差というものはいかに薬剤に反応の仕方が違うかという、これは一つの例になるんではないか、こう私は考えるものでございます。なぜなるかということについては、私は全くわかりません。
 次に二重盲検法についての御指摘でございますが、これは私、もうここ何年間か指摘していることでございますが、現在、厚生省ではこの新薬の開発の場合に二重盲検法をやれという制度は、どこにも書いてないようでございます。ところが現実には、二重盲検法をやらなければ薬剤の許可ができないというのが現実でございます。ところが、多くの場合に、この二重盲検法というのを薬効の有効性の判定と副作用の判定と、この両方あるように錯覚をしておる場合が多うございまして、特にこの副作用を判定するのにはこの二重盲検法はずいぶん不足の問題があると思います。
 次に、この二重盲検法にはいろいろの欠点がございまして、現在私たちも新薬開発の研究をずいぶんやっておりますけれども、この二重盲検法が決して適正なチェックシステムではない、もちろんいいものもございますけれども、これでは全く正確なジャッジのできないという幾つかのものがございまして、現在、この二重盲検法そのものを一〇〇%信用している学会は私はないと思います。したがって、これは一つの手段として使い得る場合もありますけれども、全部これだけによるということについては、大きな疑問を私は持っております。
 それから、副作用被害と新薬の開発についてどうかという御質問があったと思いますが、私は、現在のようないろいろの疾病、たとえば難病あるいは疾病の変貌がきわめて急速な今日においては、どうしてもその征服の手段の一つとして新薬の開発というものがぜひ必要であろう、こういうふうに考えます。そのときに一番困ります問題は、いま先生の御指摘のように副作用被害の問題だと思います。したがって、これはわれわれ日本人の知恵において、何とかこの副作用被害というものをなくする努力をしながら、この新薬の開発というものは強力に続けていくことが、日本人の今日の長寿の一つの大きな理由であり、こういうことをおろそかにすれば、必ず日本人の長寿はどこかの時点でとまってしまうだろうと私は考えますので、この辺につきましてはお互いに英知を出し合って、この問題を何としても解決していかなければいけない問題だ、私はこういうふうに考えております。
 それから薬事審議会のことにつきましては、熊谷先生がおいでになりますし、私は余りよく内容を存じませんので、この点は答えを許していただきたいと思います。
 最後に、副作用の予測ができるかどうかという御質問が先ほどあったと思いますが、副作用の予測のできるものとできない薬剤が私はあると思います。たとえば副作用の予測のできる薬剤というのは、先ほど来御指摘のあった、今日ではストマイ難聴というようなものは十分予測ができます。したがって、こういう点に十分な注意を払えば、今日ではストマイ難聴なんというものを起こす可能性というものはきわめてわずかであって、むしろ、そういうものを起こすというようなことは医者のエラーにつながるようだと私は考えております。それから一方には、全く予測のできない副作用というものの発現があるわけでございます。したがって、薬剤はすべて副作用が起こるとか副作用が起こらないとかというように、白黒で決めることはきわめて危険でございますし、私は臨床医の立場から言えば、先ほど弁護士会の先生からの御発言で、安全性が先で有効性が後だというような議論をされますと、われわれ臨床医は患者を治すということはとうてい困難になる。安全性は当然重要でございますけれども、有効性を見ないような薬剤はまるで何にもならない。砂を飲ましているようなものでございますから、この点はぜひ先生方も御記憶願いたいと思います。
 終わります。
○工藤(晃)委員(新自) もう質問する時間がございません。
 それでは、私の考え方を多少述べさせていただきまして、また別の機会に御意見などちょうだいしたいと思います。
 薬害救済の問題と、それから薬の有効性というものを一緒の土俵の上で物を考えるべきではないのじゃないかというふうに私は考えているわけなんで、薬物そのものは、きょうの午前中の参考人の方にも申し上げたのですけれども、これはもともと人体に異物なものを有効な部分だけを何とか人間の知恵で取り出そう、こういう考え方ではなかろうかと思うのです。副作用の点は、当然薬の方から見れば、それは人体に対しては有効でありあるいは人体に対して副作用であるというふうな被害の部分も合わせて、その薬の特性だろう、こういうふうに考えますので、それを安全性だけを主張するということは、逆に言って、私が心配するのは、先ほど上田先生がおっしゃったような点でございました。
 それからもう一つは、どうしても健康を保持するためにもあるいはまた健康社会をつくるためにも、やはり薬の今後の占める地位というのはもっともっと強化されるだろう。そのときに、新薬の開発について余りにも消極的な態度をとられては困るのじゃないか。そういうことについては、逆に言えば、もっと政府が積極的にそういう部分のフォローをしていくべきではないか。これが私の考え方でございます。
 これで、やめます。どうもありがとうございました。
○竹内(黎)委員長代理 以上で、参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時一分散会