第093回国会 本会議 第5号
昭和五十五年十月七日(火曜日)
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 議事日程 第四号
  昭和五十五年十月七日
   午後四時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
 議員請暇の件
    午後四時四分開議
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。浅井美幸君。
    〔浅井美幸君登壇〕
○浅井美幸君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の所信表明及び鈴木内閣の組閣以来の諸問題についてただすものであります。
 総理が初めて臨む国会であり、国民は大きな関心を持っています。鈴木内閣がどのような理念と政策で内外の多端な情勢に取り組もうとされるのか、この最も素朴な国民の疑問に総理が率直かつ明快に答えることにあったはずであります。
 しかし、総理の所信表明を聞く限り、鈴木内閣の性格と全体像は依然として霧の中にあり、目標と期待は述べられていても、そのための具体策は何一つ示されず、あらわにされている部分からは、遺憾ながら国民が求める方向との大きな隔たりを感ぜざるを得ません。
 そこで、多くの国民が鈴木内閣に対して抱く不安や疑念、批判されている諸問題を私は具体的かつ率直に質問をいたします。総理におかれては、明確なる御答弁をなされるよう望むものであります。
 そこで、初めに鈴木内閣の政治姿勢について幾つかお尋ねいたします。
 総理は、就任後、和の政治を信条とし、活力ある日本型福祉社会の建設を国民的政治目標とすると述べておられました。しかし、現在までの鈴木内閣の姿勢を見るとき、国民の合意を求めたり、また野党の声に耳を傾けるでもなく、和の政治はひたすら党内向けだけだと批判する者が多いのであります。また、活力ある福祉社会の建設については所信表明の中には一言も触れず、むしろ総理が強調された「徹底した歳入の見直し」という言葉は、増税と福祉後退の暗いイメージを国民に与えたと言えるのであります。
 総理は、これらの批判に対し、そうではないと断言できるのか、どのように答えられるのか、まず伺うものであります。
 基本的な政治姿勢の第二は、いわゆる憲法問題であります。
 世界に誇る平和、人権、民主の現憲法に対し、自民党はかねてから第九条を含む改定を掲げておりますが、その実現をこの際行おうというその意図がきわめて露骨となってきたことであります。
 自民党幹事長の改憲発言が相次ぎ、憲法遵守義務のある閣僚としてそのかかわりの最も深い法務大臣が憲法改定を意図する見解を再三にわたって発言し、また閣議では総理の所信表明における憲法遵守の表現にクレームがつき、閣僚が削除を迫るなど、内閣の最も土台とも言うべき部分における閣内不統一について総理はどのようにリーダーシップを発揮されるのか。
 総理が、もし憲法改正を考えない、また、それが内閣の方針であるとするならば、改憲意図を持ち、それを堂々と主張される閣僚はあなたの内閣にふさわしいのかどうか、鈴木総理の信条をあわせお答えいただきたいのであります。
 これら一連の発言は、戦争放棄をうたっている憲法第九条の改正を示唆していますが、第九条は、戦争を絶対に起こしてはならないという国民の願望を込めたわが国の崇高な指標であります。この精神を踏みにじることは絶対に許されるものではありません。こうした改憲論議は、軍事力増強、靖国神社の国家護持などとともに、伯仲時代では言えなかった自民党の本音の政治が多数議席の獲得を背景に次々にあらわになってきたものであります。
 先日の所信表明で、総理が国会の場で憲法遵守を言明できなかったことは、この基本姿勢の大幅な後退であり、きわめて遺憾であります。昨日来、総理は憲法遵守を叫んでおられるが、もし改憲しないと言われるならば、あなたが憲法を変えないとされる理由をお伺いしたいのであります。まず、現憲法が定着し、評価されているから変えないのか、それとも議席が足りないから改憲発議はしないとされるのか、この二つのうちいずれの理由であるのか、お答え願いたい。
 また、将来憲法を改正しようとする自民党の方針との絡みもあわせて明確にお答え願いたいのであります。
 政治姿勢にかかわる質問の第三は、政治浄化と政治倫理確立の問題であります。
 政府・自民党は、前特別国会において野党側の強い要求をけって衆議院の航空機輸入調査特別委員会の設置を見送ったが、アメリカのマクダネル・ダグラス社のDC10をめぐる新たな航空機疑惑の発覚に伴い、政治的道義的責任を明らかにするため、国会で十分な審議の機会と場所が必要であったのであります。今国会において同委員会の設置を、わが党を初めとする野党の強い要求にもかかわらず、金権、腐敗、汚職に対する国民の厳しい批判は選挙により免罪符を与えられたとして拒否しております。
 政治倫理の確立を表看板にしている総理が、航特委設置について自民党総裁としての立場で積極的に働きかける意思がおありかどうか、お答えいただきたいのであります。
 また、倫理委員会の設置をみずから提唱しながら、議院証言法改正とワンセット論を打ち出したことは、倫理委員会を航特委廃止の隠れみのとして持ち出したにすぎないのであって、本気で設けようという姿勢にはないと言われております。
 総理は、倫理委員会の内容、さらに設置の時期をいつと見ておられるのか、お答えいただきたいのであります。
 次に、政治姿勢の質問の第四は、政治資金規正法改正について伺います。
 政治家と金の問題については、従来から国民の強い批判を受け、不透明だ、抜け道だらけだと指摘されてきました。今回、自民党内における種々の経緯を経て、ようやくさきの通常国会に出された改正案を急遽今国会に提出しようとしているようであります。今日まで野放しであった政治家個人の政治資金を規制しようということであり、その改正案の中身は、収入は明らかになるが、反面、支出は依然として不明のままに終わろうとするものであります。
 政治不信を解消する意味においても、少なくとも政治家個人の政治資金が収支ともに明らかにされることがぜひとも必要であり、この趣旨にかなう改正案を今国会に提出すべきであります。総理の御所見を明確にお示し願いたいのであります。
 政治姿勢に関する第五の質問として、選挙制度の問題について伺うものであります。
 総理も所信表明で、「公正で金のかからない選挙制度」と称して、参議院全国区拘束名簿式比例代表制の実現を目指そうとしておられる。私は、主権者たる国民の権利を尊重する立場から、一票の格差と言われる参議院地方区の定数の不均衡を是正することこそ急務であり、改正を優先させなければならないと考えます。参議院の全国区の拘束名簿式比例代表制は、参議院の政党化を助長し、二院制における参議院の本質を形骸化するものであり、かつ党利党略による選挙制度の改正であるならば、私どもは反対であります。
 参議院全国区制について、この地方区の現状是正も必要、政治資金規正法の改正も必要との前提に立って、選挙区制の見直しには議論を尽くし、与野党の合意によって是正すべきと考える、この考え方に総理の所信はいかがなものであるか、お伺いしたいと思います。
 この際、わが党から提案するならば、地方区定員是正と全国区制の問題をあわせ解決する方策として、大胆に参議院をブロック制に一本化することも一つの方法であると存じますが、これに対する総理の見解をお聞かせいただきたい。
 なお、衆議院の小選挙区比例代表制の導入を画策しているとの声が聞かれるが、よもやそのようなことはないと存じますが、この点についてもあわせてお答え願いたいのであります。
 政治姿勢にかかわる質問の最後は、国会運営の問題であります。
 総理は、就任当初以来、和の政治を掲げておられますが、和の政治とは、少数意見の尊重であると存じます。しかるに総理は、去る三日の自民党の両院総会で「国会審議は十分に論議を尽くし、できるだけ法案への合意を求める」としながらも、「最後は筋を通して、党の主体性を持ってやっていかなければならない」このように明確に言い切り、野党が反対する法案は数による決着を図るとの決意を表明したと言われるが、その真意を伺いたいのであります。
 和の政治と懸念される強行採決との矛盾をどう説明されるのか、法案や予算の修正に対して、野党との話し合いの政治をどの程度約束されるのか、具体的に答弁を求めるものであります。
 以上、政治姿勢についての諸問題をただしたわけでありますが、鈴木内閣の今後の国会運営の根幹にもかかわる問題として、率直かつ明確に国民の皆様にお答えいただきたいと思います。
 次に、防衛問題に関してお聞きいたします。
 鈴木内閣誕生以来、保革伯仲時代の大平前内閣との違いは、一段と右傾化が強まったことであります。それは、一連の改憲論議や靖国神社の国家護持法案の提出発言や歴代内閣に例のない閣僚十九名を伴う靖国神社の参拝など、右傾化の路線に突進しているかの感を深めるのは私一人ではないと存じます。私は、これら鈴木内閣における一連の動きに対し、厳しく反省を求めるものであります。
 自衛隊は、迎撃戦闘機に空対空誘導ミサイルの実弾を常備することに続いて、中期業務見積もりの装備計画に見込まれたものであるとして、艦艇や対潜哨戒機に実弾魚雷を積み込むことを実施しましたが、従来からの国会論議のいきさつからも、もし臨戦体制を強化することを国会の承認ないしは論議もないままに実施されたことは、まさにシビリアンコントロールを形骸化するものと言わなければなりません。この問題に対する総理の御所見をまず明確に示されたいのであります。
 政府の防衛力強化については、さきの通常国会で日米首脳会談帰国報告がこの本会議場で大平前総理からなされました。私はそのときに防衛力増強について質問をいたしました。大平前総理はそのときの質問の答えに、米大統領には中期業務見積もりの繰り上げ実施というようなことについては私は公約していない、また、中期業務見積もりは、防衛庁が防衛計画の大綱に基づき、毎年度の予算要求案等を作成する参考とする内部資料で、それをそのまま政府の計画とする考えは持っていないと明確に答えておられます。
 しかし、現実に防衛予算は、そのときに言われた、米大統領から要請された中期業務見積もりの繰り上げ実施要求に基づいて行われており、その場しのぎの答弁であったと、いま私は言わざるを得ないのであります。
 現に、予算概算要求では、大蔵大臣と防衛庁長官が折衝し、他の予算が前年度当初予算比伸び率七・九%に抑えられる中で、防衛費だけが九・七%の特別扱いを受けることとなり、閣議もこれを了承しているのであります。まさに中期業務見積もりが、政府の計画でもないのに大手を振って一人歩きをしているではありませんか。
 防衛庁は、この概算要求が認められれば、中期業務見積もりの繰り上げ達成の足がかりがつかめるとしており、しかも、同時に要求した五十七年度以降に予算支出が必要となる後年度負担、これは約一兆五千五百億と大幅に増加し、これを支払うために五十七年度以降の防衛関係費を年に十数%ずつ増額する必要が出てくる、このように言っているのであります。つまり、この五十六年度予算の概算要求額は、長期的な防衛関係予算の膨張を先取りする性格をあわせ持っているわけであります。このような政府のやり方に、すべての国民は果たして合意するでしょうか。
 そこで、これらの問題について総理に伺うものであります。
 中期業務見積もりは、昭和五十九年度を最終年度としているが、いつまでに繰り上げられるのか、それまでの各年度の防衛関係費の伸びと対GNP比率はどうなるのか、この際、明確に示されたい。これはまだ答弁できる段階ではないといった無責任さが許される問題ではないことを特に申し上げ、答弁を求めるものであります。
 また、鈴木内閣は、かつての自民党政府が決めた防衛費GNP一%以内の決定をあくまでも守るのかどうかもお答え願いたい。もし、防衛費一%以内の枠をはずせば軍事大国へのめり込む危険があることを指摘しなければなりませんが、明確なる答弁を求めます。
 さらに、総理は所信表明の中で、「みずからも節度のある質の高い自衛力の整備」と言われるが、「節度のある質の高い自衛力」とは一体何なのか、この問題についても明らかにしていただきたいのであります。
 防衛問題と関連して伺うものでありますが、総理は、就任早々、総合安全保障会議構想を打ち上げられ、所信表明でも、この推進を検討してきたことを述べられておられますが、具体的な構想と設置の時期について明らかにしていただきたいと思います。
 次に、わが国財政経済の根幹にかかわる重要な課題である財政再建についてお伺いいたします。
 財政再建については、総理は断固として当たる決意を示され、来年度国債発行額二兆円程度の減額を前提に置き、思い切った歳出の削減と現行税制の基本的な枠内で歳入の見直しを徹底する旨を述べられました。
 しかし、これを裏返してみると、歳出面では防衛費を特別枠で増大し、反面、福祉関係費や教育費は長期的視野に立つ見直しという名によって抑制し、国債減額に不足する財源は増税に求めるという構図になります。端的に言えば、防衛費を聖域に置き、国民にサービス低下と増税の両方を迫っていることにほかなりません。このような財政再建のあり方で果たして国民の合意が得られるのかどうか、まず総理及び大蔵大臣の所信をお伺いしたい。
 また、歳入の見直しを徹底する前提は、国民の税負担に対する不公平感を取り除くことが重要であり、優先されるべき課題であります。かねてわが党が政府に要求してきた不公平税制の是正について、さらに踏み込んだ是正を徹底されるかどうか。
 一方、所得税については、三年間減税が見送られ、勤労者は累進課税という仕組みの中で実質増税を負担させられていることは、社会的公正の見地から見てきわめて不合理でありますが、あわせて総理の所見を承りたいのであります。
 総理の所信表明に見る財政再建の方針は、増税キャンペーンを展開する財政当局の動きと相まって、国民に対し、五十七年以降における一般消費税を含めた大型間接税の導入や所得税増税などの大衆増税とともに、公共料金値上げや福祉後退などに対する不安を与えております。わが党は、こうした政府の意図に強く反対するとともに、国民の抱く不安に対し、総理はいかように説明されるのか、明確にお答えいただきたいのであります。
 総理が五十六年度を財政再建元年とされるならば、私は行政改革元年と申し上げたいと思います。行政改革が財政再建の前提であることは、すでに国民的な合意であります。したがって、行政改革の断行は鈴木内閣の政治と総理のリーダーシップを占うものであり、財政再建に対する断固たる決意は、そのまま行政改革に対する決意であってしかるべきであります。
 大平前内閣の五十五年行政改革案は、当初の計画より後退をいたしました。鈴木内閣は、これと同じ轍を踏むことなく、何よりも歳出削減に直結する行政改革を断行すべきであります。政府は、ともすれば行政改革による歳出削減には大きな期待が得られないとしておりますが、国民に対する基本的な政治姿勢として、誠心誠意改革の実行をもってこれを示すべきであります。
 五十五年行政改革とあわせて、当面少なくとも実施すべき事項については、公明、民社、新自由クラブ、社会民主連合の四党が合意した十項目をもって、去る三日、自民党総裁である総理及び行政管理庁長官、そして大蔵大臣に、その実施を要求する申し入れをいたしました。この際、この申し入れに対する御所見と決意を、総理初め関係大臣から承りたいのであります。
 さて、財政再建では、思い切った歳出の抑制をという総理の枠組みの中で語られた社会保障制度の再点検、福祉の立て直しとは、まさしく立て直しの名による福祉の削減を画策するものとあえて言わねばなりません。わが国の社会保障の現状は、制度、基盤づくりからその内容の充実を図っていく段階にこそあれ、縮小すべきものではありません。
 今日、老齢化社会の到来を迎え、老人の社会的扶養、介護問題についての長期的かつきめ細かな対応が迫られており、この実施が求められているのであります。
 一方、将来の社会の担い手である児童の健全育成は、国の活力の維持、民族の興隆発展を左右する重大な施策であります。しかるに、政府は自民党との間で、財政危機を理由に児童手当制度の見直し等について覚書を交わし、児童手当を来年度予算から削除ないし大幅削減をしようとしております。
 現在、十五歳未満の全児童のうち、児童手当受給者は約十一人に一人という現状であり、児童福祉審議会の意見から見ても、制度廃止または大幅削減を意図することには全く納得できません。私は、児童手当制度の維持強化を強く要求いたします。この際、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 さらに、福祉制度の核心をなしている厚生年金法の改正、健康保険法の改正については、大平内閣から鈴木内閣へと移行した中で、状況が一変されようとしていることはまことに憂慮すべきことであります。両法案とも、さきの通常国会で自民党と合意した四党修正の内容をもって速やかな成立を図るべきであります。
 しかるに、自民党内に、四党合意案は保革伯仲の時代のことであり、現在の圧倒的多数を持つ自民党の状況下では、白紙撤回であるとの声が高まっています。これは公党間の信義にかかわる重大な問題であります。(拍手)鈴木総理、物価高騰のもとで、年金受給者は一日千秋の思いで法案成立を待っており、これ以上の遷延は許されません。
 また、健康保険法については、慢性的な半身不随の状態の健康保険制度をこのまま放置することのできないことは言うまでもありません。その意味で、抜本改正への経過的措置として四党が合意した修正案は、十分ではないにせよ、保険制度改革の第一歩であると信ずるものであります。(拍手)
 すなわち、軽症に厚く重症に軽い現在の逆立ち医療の是正、特に家族給付の引き上げなど、平均給付率の引き上げ、薬づけ医療の解消、さらには入院患者の重圧となっている保険外負担の軽減など、矛盾を解消し、真に国民のための医療保険への脱皮を目指していることは評価されるべき修正内容であります。
 このような二法案のせっかくの修正合意について、総理はどのように対応されるのか、また、法案成立についての所見を簡明に答弁願います。
 総理の所信表明の中で、恵まれない人々に重点的に温かい手を差し伸べる必要がある、このようにあなたは述べられました。この総理の発言に対して、期待し、実現を望んでいる多くの人々に対し、ぜひ裏切らないでいただきたい。総理の積極かつ前向きの決意をここで述べていただきたいと思います。
 最後に、外交問題への政府の対応について伺うものであります。
 イランとイラク間に起こった戦争は、不安定な中東情勢をより緊迫化し、米ソの動向も気になるところであり、国際緊張を一段と高めております。政府は、今回の戦争の推移をどのように見ておられるのか、また、戦争の早期停止のためにわが国は今後いかなる行動をとられるのか、あわせて見解を伺いたいのであります。
 さて、アフガニスタンへのソ連の軍事介入以来、日ソ関係は冷却化してまいりました。長期的な展望に立つならば、日ソ関係の修復は不可欠な課題であり、米ソ間のデタントの再構築も望まれるものであることは言うまでもありません。
 今後の対ソ外交について、まず、八月二十九日に、対日関係発展の用意があるとしたブレジネフ演説について総理はどう判断しておられるのか。さらに、今次国連総会での日ソ外相会談の結果から見て、政府は対ソ修復について今後どのような基本姿勢で臨まれるのか、明らかにしていただきたい。
 次に、金大中氏に対する韓国軍法会議による死刑判決は、国際的にも国内的にも大きな衝撃を巻き起こしたのでありますが、総理は、金大中氏の生命の確保のためにどこまで取り組むことを考えておられるのか。また、仮に金大中氏の死刑が確定されるようになるなら、経済援助にも制約を受け、日韓関係にも大きな影響を及ぼすことを明らかにしておられるが、今後具体的にこの問題にどう対処されるのか、明らかにされたいのであります。
 以上、私は、当面する重要課題への対応を中心に幾つかの提案をしつつ、きわめて重点的に質問をいたしました。総理並びに関係大臣の誠実なる御答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、和の政治につきまして、国会運営、特に少数意見の尊重との関連などの点に関し、お尋ねがありました。
 第一に、和の政治は、ひたすら党内向けのものではなく、国会運営に当たってもこれを実践していきたいというのが私の基本的な考えであります。私は、国会は対立抗争の場であってはいけない、少数意見にも謙虚に耳を傾け、あくまで論議を尽くし、とるべき意見はこれをとり、民意を吸収し、話し合いを通じて国民の納得する結論を引き出す場であると存じます。この国会の、国民の納得する結論を出すことが議会制民主主義の本旨に沿うものであり、国会における和の政治は、この議会制民主主義のルールに従い国会が運営され、国民の負託にこたえることであると考えるものでございます。
 次に、所信表明で、私が徹底した歳入の見直し等述べた点につき、これは国民に暗いイメージを与えたという御指摘がございましたが、徹底した歳入の見直しは、思い切った歳出の抑制と並んで、一般消費税のような新たな増税に安易に依存したりせずに財政再建を行うための努力の不可欠の道程であります。したがって、それは暗いイメージというよりは、わが国の将来の健全な基盤を構築するための措置でありますので、この点よく御理解を賜りたいと思うのであります。
 次に、憲法問題について申し上げます。
 鈴木内閣では憲法問題について閣内不統一であるとの御意見でありましたが、はっきりと申し上げておきますが、鈴木内閣においては、憲法は改正しないという方針は閣内の一致した方針であり、異論を持つ閣僚は一人もおりません。(拍手)
 また、現行憲法を厳に遵守していくことは当然であり、この問題について閣内不統一ということは全くないのでございます。
 もとより各閣僚は、政治家である以上、憲法について関心を持つことは当然であり、憲法について研究したり、その改正の要否について意見を持っていると思いますが、内閣として憲法改正を取り上げないという方針を現にとっている以上、国務大臣である者は、内閣の方針について誤解を生ずるおそれがないように慎重であるべきであると考えます。
 私が憲法改正を考えない理由として挙げていることは、一つは、現行憲法の基本理念は非常にすぐれたものであると評価しており、将来においても堅持すべきものであると考えております。二つには、憲法を改正するというようなことは慎重の上にも慎重な配慮を要するものであり、国民の中から憲法を改正すべしという世論が国民的コンセンサスにまで形成される必要があると思うのでありますが、いま、そのコンセンサスができているとは思えないからであります。
 自由民主党の政綱には、自主的改正を図るということが掲げられてありますが、鈴木内閣においては、憲法は改正しない方針であることを改めて明言いたしておきます。
 倫理委員会の問題については、政治の倫理を確立し、政界の浄化と刷新を図ることは、わが国の議会制民主主義を守っていくため不可欠のことであり、最も緊要なことであると考えます。私は、国民の信頼と期待にこたえるため、このような役割りを持つ委員会設置を検討する必要があると考えます。これは国会の問題でありますから、総理としてではなく、自由民主党総裁として党首脳にこの私の考えを伝え、議会制度協議会あるいは議院運営委員会において各党各会派と協議するよう指示したところであります。
 なお、今国会において航空機の輸入調査に関する特別委員会の設置問題につきましては、まさに国会の場で各党各会派が論議して決めるべき問題であると考えております。
 政治資金規正法の取り扱いにつきましては、所信表明で明らかにしたとおり、政治倫理の確立が政治に対する国民の信頼を得る原点であり、当面する緊急の課題であるとの考え方に立って、さきの国会で廃案となった政治家個人に係る政治資金の明朗化を図るための政治資金規正法の改正案を今国会に提案をし、御審議をお願いいたしたいと考えております。
 参議院全国区制のあり方の問題は、地方区制度との関連、政治資金制度との関連などいろいろな問題が密接に関連してくる問題でありますので、本来は総合的な見地から各党間の論議を尽くしていただき、国民の納得のいく改善案を得られるようにしていくことが望ましいと考えております。
 しかしながら、全国区については余りにも金がかかり過ぎること、選挙人にとって候補者の選択がきわめて困難であること、時間的、地域的に候補者にとって負担が大きいことなど、早急に解決を迫られている課題を数多く抱えているのが現状であり、このことは国民的な意見として定着しておると思います。このような意味から、当面全国区制のあり方の問題をまず取り上げ、各党各会派の間で十分御論議をいただくことが選挙制度の改善を一歩でも進める意味で必要ではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、選挙のルールに関する問題でありますので、御提案の改善案を含め、国会の場において各党各会派の間で十分論議を尽くしていただくよう、お願いいたしたいと考えております。
 小選挙区比例代表制を導入するのかどうかという問題についても、前に述べたと同様に各政党の間で話し合うべき問題でありますが、まだその話し合いが進んでおりませんし、その機運が熟しているとも思えませんので、私としては党総裁として小選挙区制の導入を取り上げる意思は、いまのところありません。
 ミサイルや実装魚雷を航空機、艦艇に搭載した件についてでありますが、外部からの侵略からわが国を防衛することを任務とする自衛隊が、平時から有事に即応できる防衛体制を整備しておくことは、必要かつ重要なことであると考えており、近年、防衛庁はこの観点から各種の施策を講じてきておるところであります。
 今回の要撃機へのミサイルの搭載も、艦艇への実装魚雷の装備も、この有事即応体制強化のために行うこととしたものであります。なお、このような措置は、国際的に見て一般的傾向であると考えています。
 そして、シビリアンコントロールの点につきましても、これらの搭載については一般的な行政事務として防衛庁長官の裁量に任されていることであって、防衛庁内で慎重に検討して長官が決定したものであり、シビリアンコントロール上問題があったとは考えておりません。
 中期業務見積もりを繰り上げるかどうかという質問でありますが、中期業務見積もりは防衛庁限りの内部資料であり、政府としては防衛計画の大綱に従い防衛力を整備することとしており、今日の厳しい国際情勢にかんがみまして、同大綱に定める水準をできるだけ速やかに達成するよう努めてまいりたいと考えております。
 なお、申し上げるまでもなく、各年度の予算額はそれぞれの年度の予算編成において決めらるべき問題であり、五十六年度予算編成においては、緊急度、必要度の高いものについて財政事情を勘案しつつ、また、国民のコンセンサスを得ながら整備を図っていく考えであります。
 なお、お尋ねのGNPの一%以内の閣議決定については、現在変更することは考えておりません。
 次に、所信表明で述べた「節度のある質の高い自衛力」の内容についてでありますが、御承知のように、わが国は平和憲法のもと、非核三原則を国是とし、専守防衛に徹し、シビリアンコントロールも厳正に行われているところであり、こうした基本的な考え方に立って、周辺諸国に脅威を与えるようなものではなく、侵略に対して有効に対処していくだけの、時代おくれにならない防衛力を整備することを述べたものであります。その具体的な内容については防衛計画の大綱に示されておるところであります。
 次に、いわゆる総合安全保障に関してでありますが、今日の複雑な国際情勢とわが国の置かれておる立場を考えれば、単に防衛的な側面のみならず、経済、外交を含めた広い立場からの努力が必要であります。
 外交、経済協力、エネルギー、食糧などの諸施策は、無論それぞれの所管官庁が推進してきているところでありますが、私は、これらの施策について総合的な安全保障の視点から、高いレベルでその整合性を確保することが必要と考え、現在、その具体策について検討さしているところであります。
 私の所信表明における財政再建の構図は、防衛費を聖域に置き、国民にサービス低下と増税の両方を迫っているものだとの御意見がございましたが、そのようなことはありません。
 私は、現状のような財政ではわが国の将来は危うくなるのではないか、わが国の経済と国民生活が根底から揺るがされることになるのではないかと憂慮しております。財政再建に取り組んでおりますが、国の将来を真剣に考える国民各位の合意を必ず得られるものと信じております。
 税負担についてお尋ねでありますが、まず租税特別措置については、昭和五十一年以来の整理合理化によってその主要な項目のほとんどについて改善措置を講じたところであります。しかも、今後も税負担の公平確保には努力してまいります。
 所得税負担がふえているとの御指摘がありましたが、御承知のとおり、わが国の所得税負担の水準は、国際的に見ても決して高いものではありません。一方、財政事情は非常に苦しく、まさに破綻に瀕しているわけでありますから、財政再建が達成されるまでの間、国民各位の御協力をお願いする次第であります。
 増税や福祉後退に国民が不安を覚えているとの御意見でありますが、施策の優先順位については十分吟味を重ね、国民に不安を与えることのないよう配慮してまいります。しかも、五十五年度末で七十一兆円に達する公債残高、利払いだけで四兆四千億という財政の現状にこそ、私は不安を覚えます。国の将来のため、私たちの子孫のため、財政再建を進めることにぜひ御理解をいただきたいと存ずる次第であります。
 行政改革によって非常に大きな財源を浮かせるということはなかなか困難なことであると考えますが、国民の期待にこたえる簡素で効率的な行政の実現を目指し、内閣を挙げて取り組んでまいりたいと存じます。
 公明党、民社党、新自由クラブ、社会民主連合の行政改革に関する四党合意につきましては、私も拝見しております。せっかくの御提案でありますので、今後行政改革を進めるに当たり、できる限り参考にさしていただきます。
 児童手当について御質問がありましたが、児童手当制度のあり方につきましては、政府部内において現在検討を進めているところでございます。
 また、健保、年金の両法案につきましては、この臨時国会に政府原案を再提出したところであり、その速やかな成立を図ってまいる所存でありますが、従来からの経緯もありますので、両法案の取り扱いについては、与野党間の話し合いの経過を見守りながら、適切に対処したいと思います。
 イラン・イラクの紛争についてお答えいたします。
 現段階では、今後のことについて正確な見通しを立てることは困難でありますが、イラン・イラク両国間の対立の根は深く、また戦線も膠着状態にあるので、状況はなかなか楽観を許さないと思われます。
 わが国としては、日々刻々の状況の把握に全力を尽くし、一日も早い平和的解決のために、わが国として果たすベき役割りがあれば、これを積極的に果たしてまいりたいと考えます。また、そのためには、わが国と同様の懸念を深めている諸国との協調を図り、同じような考えを持つ諸国と提携をして、積極的な活動を展開するつもりであります。
 浅井議員御指摘のブレジネフ演説は、私も注意深く読みました。この演説は、特に日ソ経済関係を肯定的に評価しているようにも見受けられます。しかしながら、日ソ関係は、政治、経済等の分野を含め、全体としてとらえるべきものであります。わが国としては、通すべき筋は通し、同国との間に、真の相互理解に基づいた安定的な関係を確立せんとする従来からの基本方針を、引き続き堅持していく考えでございます。
 今後の対ソ外交についてお尋ねがございました。これに関連いたしまして、過般の私の所信表明においても申し述べたとおり、わが国は、ソ連との間にあっても、真の相互理解に基づく安定的な関係を発展させることを望んでおります。
 しかしながら、最近の日ソ関係は、北方領土の軍備強化、アフガニスタンへの軍事介入等、ソ連側の行動に起因して厳しい局面にあることは、御承知のとおりであります。このような事態はきわめて遺憾なことでありますが、わが国は、言うべきは言い、通すべき筋は通すとの一貫した態度で、過般のニューヨークにおける日ソ外相会談においても、伊東外務大臣より、これらの問題に関し、日本側の基本的考え方を率直に表明した次第であります。
 いずれにいたしましても、このような状況にかんがみますれば、わが国の方からいわゆる対ソ修復論を唱えることは筋が通らず、国民の納得を得ることはとうてい困難と考えます。所信表明でも申し述べたところでありますが、わが国としては、日ソ関係発展への道を開く環境をつくるためにも、ソ連側において、その誠意を具体的行動をもって示すことを強く期待するものであります。
 次に、金大中氏の問題でありますが、金大中氏の身柄の問題については、政府としても重大な関心を有するものであり、このような関心については随時韓国側に表明してきておりますが、今後ともわが方の関心の次第は十分これを韓国側に伝えてまいる所存であります。
 また、金大中氏の裁判自体は韓国の国内問題であり、私は、わが国がこれに介入しているがごとき印象を与える態度をとるととは適当ではないと考えております。
 なお、先般のNHKの番組における私の発言は、わが国としては日韓関係を重視しており、経済協力についてもこれを行いたいと考えているが、事態の成り行きによっては政府としても制約を受けざるを得ないという事情を率直に述べたものでありますが、いずれにせよ、現段階において具体的措置を念頭に置いて発言したものではありません。
 以上、御答弁申し上げましたが、残余の問題につきましては、所管大臣から御答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 簡潔にお答えをいたします。
 ただいま浅井議員から、国民に、サービスを低下をさせるか、それがいやなら増税か、どっちかと迫っておる、そんなことでは国民の理解は得られないんじゃないかという御指摘でございます。
 私は、もともと政府というのは税金で、一部税外収入がございますが、経費を賄う、これは原則でございます。
 問題は、昭和四十九年に約十五兆あった税収が、昭和五十年に約二兆円減りました。世界的な不況ですからどんと減った。税収が減ったのですから、そのときまでに進めてきたいろいろな事業や、社会保障でも何でも、その分どんと落とせば赤字はできなかったわけでございます。
 したがって、現在その赤字公債という問題については、これはどうしても減らしていかなければならないということになりますと、問題は来年の税収が何ぼあるか、これはまだわかりません。わかりませんが、大体うまくいってことしぐらいじゃないか。ということになると、四兆円か四兆五千億円か、これは話は簡単明快なんです。四兆五千億円のところで借金を二兆円減らすのですから、二兆五千億しか残らぬわけですから。そこで要するに国債の利息が一兆五千億円ふえるのですから、これを削る。あと地方交付税は三分の一返すのですから、約一兆円近いのを返したらゼロということになるのであって、したがって、明日、明後日ですか――そういうことになった場合に、税収その他の負担がふえない場合は、来年の一般歳出の予算は五十五年度と全く同じくなります。全く同じくなった場合どうなるか。これはかなりの騒ぎといいますか御批判が出るのです。
 したがって、何らかの形でふやさなければそれはできないのです。ですから、それは、われわれは決してその増収を図らないとは言っておらないのです。増収を図りますよということは言っておるわけであります。しかしながら、その前に、現在の経費の中でも、これは徹底的に洗い直しをいたします、区別はいたしません、ということを申し上げておるわけでございます。どうぞそういう点において御協力を賜りたいと存じます。
 また、不公平税制の問題につきましては、これはかねて公明党御主張の、いろいろな税制是正をやれ、これはほとんどやっているのです 皆さんの御主張どおり、言うことを聞いてやっているのです。
 たとえば大企業の特別優遇措置も、五十一年から五十五年まで八五%整理しています。利子配当の所得の総合課税も、五十九年からやりますと言って、法律も直していますというように、給与所得控除の頭打ちの問題も、これはやはり御要求の中にあったわけです、そういうものもことしから実行しているとか、退職給与引当金も縮小しろ、これもやっています。ほとんどずっとこれはやっていて、時間が長くなりますから言いませんが、かなりのことは実はやっているのです。これは御了解いただきたい。
 しかしながら、さらに総合課税の問題等については、法案はできたがまだ実行されておらない。その前にいろいろなことをやらなければなりませんから、これについては今後とも御協力を願います、ということを申し上げておく次第であります。
 最後に、五十五年度の行政改革とあわして、少なくとも四党で十項目の申し入れ書、それを実行せよという御要求であります。大変ありがたいことでありまして、私は心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 問題は、なかなかこれまで、私も勇気が実はないわけでありまして、行政改革の点については私は所管が違いますから申し上げませんが、その中で補助金の大幅整理、これをやれということでございます。五十五年から五十九年にかけて四年間でわれわれとしては三千八百十七種類ある補助金を四分の一廃止する、その四年間に九百五十四ぐらいのものを廃止をするということをお約束をしておるわけであります。
 しかしながら、これによってどれぐらい減るか、まだ金目を詰めておるわけではございません。御承知のとおり、補助金と一口に申しますが、約十三兆八千億ございますけれども、そのうちの三分の二は社会福祉と文教なんです。したがって、それを一割切るという問題は、これは非常にわれわれも切りたくても、いまいろいろ研究しておるわけでありますが、なかなか大変なことであって、これは法律措置その他がすべて必要なわけであって、御趣旨に沿いまして極力カットするようにいたしますが、法律も出てまいるわけでありますから、何分の御賛成をお願い申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 行政改革は現在の政治の最重要課題の一つであると心得まして、鈴木総理大臣御指導のもとに、内閣一体になって大いに真剣に努力するつもりでおります。
 当面は、いわゆる昭和五十五年行革と言われるもののやり残しを完成することでございまして、八つの重大法案がまだ残っております。ブロック機関の整理とかあるいは公社、公団の整理とか、国鉄再建とか、それらの重大問題、これらをぜひ今度の臨時議会等を通じて成立さしたいと考えており、御協力をお願い申し上げる次第でございます。
 それから、これからやる仕事でございますが、三つの目標を立てました。
 第一は、いわゆる機構いじりというようなことは今回は避けて、むしろ行政の実態に切り込んで仕事を減らそう、そういうことでございます。その仕事のもとは法律や許認可でありますから、法律、許認可等思い切って整理したいと思っております。
 現在法律が千五百本ぐらいございます。そのほかに大体機能を失ってやめていいと思う法律が約三百ちょっとございます。この三百幾つかの法律をぜひともこれは思い切ってやめる。そのほかに、いま生きている法律でも重要でないものは届け出制に変えるとか、そういうことで、これも思い切って整理するつもりでございます。
 許認可が約一万件ございます。このうち、二年間で約千件を廃止、統合するようにいたしたいと思っております。
 それから、いわゆる特殊法人の出資金とかあるいは剰余金のあるものがございますが、こういう財政危機の折でございますから、剰余金や出資金もこれはできるだけ政府の方に引き揚げさしていただいて、そして、国債を減らすお金の方に回すように努力したい、このような減量経営をやるということが第一であります。
 第二番目は、行政の本質は何といっても奉仕ということでございます。公務員の仕事は全体の奉仕者であります。したがいまして、奉仕をもっと徹底的にやらせるようにいたしたいと思います。
 お金をかけなくても、心がけで国民に御満足を得るようなことがたくさんございます。たとえば、サラリーマンがお昼休みに出生届を届けに行ったが、窓が閉まっていた、これもお昼休みも窓をあけていただく、あるいは駅や市役所の便所をきれいにしておく、こういうようなことは、心がけで国民の皆さんに御満足をいただけることでございまして、これらを徹底的に推進するようにいたしたいと思います。
 そして、来年三月までにそのやり方を評価いたしまして、よくやったところはこれをほめていただく、やらぬところは大臣を通じまして注意をする、そういう信賞必罰をやるようにいたしまして、サービスの改革を徹底的にやりたいと思っております。
 第三番目は、八〇年代は政治、経済、社会、大きな変化がございます。それに合うような行政をいかにつくっていくか。たとえば、いまプライバシーの保護と片一方で言っておりますと、片一方では行政の情報公開という声がございます。あるいは中央と地方の間、官業と民業の間、そういうようないろいろな複雑した問題が出てまいりますので、この際、権威ある機関をつくりまして、八〇年代に政府というものはどういう姿でおさめたらいいか、行政の機能はどの程度の限界を保たせたらいいか、そういう体系的な権威のある判断をいただきまして、具体的な政策を策定していきたい、そう思っております。
 第二番目に、いわゆる四党合意の点でございます。これは検討さしていただきました。拝見いたしましたところ、非常な御苦心の作でありまして、高く評価する次第でございます。特に、行政改革を断行せよと強く指示なさいまして、その御鞭撻に対しては、深く感謝申し上げる次第でございます。
 内容を点検いたしましたが、大体原則的に同感であるという点は、次のとおりでございます。
 それは、人員につきまして、新規採用をできるだけ抑制して配置転換を行いなさい、それから定年制を導入せよ、あるいはさらに特殊法人の統廃合を促進せよ、それから補助金の整理を大幅に行え、あるいは審議会やあるいは許認可を思い切って整理合理化せよ、あるいは国と地方の事務の見直しを断行せよ、こういう点は全く同感でございまして、その線に沿って検討を進めてまいりたいと思っております。
 それから次に、中央省庁の統廃合、整理の御提言がございます。これらにつきましては、機構いじりをしないという一応の原則をつくりましたので、これは各省庁が自主的に編成がえをやってもらうようにしたいと思っております。大体現有勢力を基本にいたしまして、この時代に合うように、各省のことを知っているのは各省でございますから、その範囲内で改革案を持ってきていただく、で、数年以内に各省全部一巡する、そういう考えに立ちまして、特に、来年度は試験研究機関の統合という面からまず進めるようにいたしたいと思っております。
 それから、地方出先機関の廃止の問題でございますけれども、原則的にはその方向が正しいと思います。しかし、一律にすべてやるということはまだ問題がございまして、これは慎重に検討さしていただきまして、できるだけその方向で処理してみたいと思います。
 それから、国会に行政改革の特別委員会を設置するということと、いわゆるオンブズマン制度を置けという御提言がございますが、これは国会に置くという御趣旨でございまして、これは国会の御議論がどういうふうになりますか、慎重に見守ってまいりたいと思っておりますが、行政管理庁といたしましても、内閣のもとにこういう制度を置くべきかどうかという問題について、林修三監理委員を先般ヨーロッパに派遣いたしまして、非常に勉強してもらいました。いま研究会をつくっておりまして、その結論を見守っておる状況でございます。
 以上、御答弁申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
○国務大臣(園田直君) 総理からお答えがありましたが、特に重点を置いて質問をされた二点についてお答えをいたします。
 児童手当の制度は、ただいま検討中であり、厳しい意見が出ておることは御意見のとおりであります。しかしながら、高齢化社会への対応が第一でありまして、そのためには老人の社会的扶養のための制度を維持していくことが必要であり、そのためには世代間の信頼は不可欠であります。老人と次の世代の人とをどうやってつないでいくか、これは非常に大きな問題であります。
 第二番目には、近年御承知のごとくわが国の出生率は著しく低下をいたしております。政治は未来であります。未来を担うものは子供であります。公正なるべき社会において特典を与えるべきは児童であります。こういう意味で、中央児童福祉審議会の意見書にあるごとく、高齢化社会への対応の柱として、児童手当の現行制度はこれを維持、充足すべきものと考えております。
 次に、社会福祉保障制度に対する厚生大臣の決意であります。
 国家財政再建の折から、むだ金、あるいは本当に困った人が救われないで余り困らない人が手当があるかなどという見直しは、当然政府の方針に従ってやるべきであると考えますけれども、しかしながら、社会福祉保障制度は、恵まれない人々がそれぞれそのハンディキャップを克服して、ひとしく活力ある社会の一員として生きがいのある生活を送ることができる条件を整えることであります。その充実は、政府の第一の課題であり、政治の礎であると考えております。社会経済情勢の変化の際――社会情勢の変化が起こり、それによって落ちこぼれた落後した人々を救うのが社会福祉ではなくて、社会経済の変化ある際には、まず奥に寝ておる親の病気の手当て、けがをした子供の傷の手当て、これをやってから家の再建を図ることは人間社会の常識であり、これがあたりまえのことであります。こういう決意に基づいて厚生行政を担当し、社会福祉保障制度の充足に努力する決意であります。今後とも御協力をお願いをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 中村正雄君。
    〔中村正雄君登壇〕
○中村正雄君 私は、民社党・国民連合を代表して、先般の鈴木総理の所信表明演説に対し質問いたします。
 まず第一は、鈴木内閣の政治姿勢についてであります。
 鈴木内閣発足後すでに二カ月余り経過いたしましたが、国民の多くは、鈴木内閣が何を考え何をしようとしているのか、かいもく見当がつかないのがその実感でありましょう。目に映るものは、各閣僚が言いたいほうだい、やりたいほうだいで、閣内がばらばら、総理大臣のリーダーシップがどこにあるのかという印象だけであると申し上げても過言ではありません。
 郵政大臣が郵便貯金の限度額引き上げを発言すれば、大蔵省がすぐこれに反対する。関西新空港問題について、運輸大臣が五十七年度着工と発言すれば、大蔵大臣はそう急ぐなと発言する。その他、特殊法人の利益金をめぐる行政管理庁と大蔵との対立、ソ連原潜事故をめぐる閣内の対立、防衛計画大綱の見直しをめぐる防衛庁長官の右往左往ぶり等、列挙すれば枚挙にいとまないほどであります。
 そこにあるのは、保守絶対多数の上にあぐらをかいたおごりであり、総理大臣の指導性の欠如と言わざるを得ません。(拍手)まさに国民不在の政治であり、内外の厳しい情勢に対処する、身の引き締まった政治姿勢とはとうてい言えないのであります。
 とりわけ軽視できないのは、憲法をめぐる、政府並びに自民党のばらばらな発言であります。
 もとより、基本的には、憲法をめぐる論議は自由であるのが憲法の精神であり、一切改憲論議をするなということは、言論の自由と憲法の精神に反するものであることは自明であります。しかしながら、個人的見解とはいうものの、法務大臣が国会の法務委員会で改憲の発言をすることは、やはり軽率と言わざるを得ません。私は、大臣は、公的の事柄について、公的の場所においては個人的な言動は絶無に近いと考えることが妥当だと思います。
 鈴木総理、奥野法相の発言を軽率とお考えになるか、個人的見解であれば自由だとお考えになるのか、明確な答弁を求めたいと思います。(拍手)
 八〇年代は、調整の時代から選択の時代であると言われております。鈴木総理は調整の名人と言われておりますが、これからの政治に必要なことは、単に足して二で割るような政治ではなく、高いビジョンに立った強いリーダーシップでありましょう。それなくしては、内外の厳しい環境の中で、国益を守り、国民生活の安定を図ることは、とうてい無理と言わざるを得ません。
 総理は、就任以来、和の政治を強調されてまいられました。しかし、それがどのような理念とビジョンなのか、必ずしも明瞭ではありません。それが、さきに指摘した国民の戸惑いの根本でもありましまう。したがって、この際、総理の言われる和の政治とはどのような理念、ビジョンなのか、国民の前に明らかに示していただきたいと考えます。
 あわせて、鈴木総理の和の政治とは、与党自民党内に向けての姿勢なのか、政治全体に対しての姿勢なのか、もし政治全体に対しての姿勢であれば、与野党伯仲時代に培われた野党との予算や重要案件に対しまする対話、協調路線を今後とも継続していく方針かどうか、それいかんによって、われわれの鈴木内閣に対しまする姿勢も考え直さざるを得ないと考えます。明瞭な答弁を伺いたいと思います。(拍手)
 政治姿勢の問題でいま無視できないのが、政治倫理の荒廃であります。
 大平内閣時代の松野氏の問題、浜田氏の賭博事件などに引き続いて、政治倫理の確立を強調した鈴木内閣においても、総理の右腕とも言うべき齋藤厚生大臣ら党の幹部が、悪徳医療法人の理事長から多額の献金を受け取るという事件が発生したことは周知のとおりであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
特に、現職大臣が大臣室においてみずから受け取った事実でございます。自民党の金権腐敗体質は、骨の髄まで達していると断ぜざるを得ないわけであります。(拍手)
 そして、何よりも今回の事件で明るみに出つつある医療の荒廃ぶりは国民に大きなショックを与えております。
 総理、この事件は、厚生大臣が辞任したことによってその政治的責任が不問に付される性質のものでは決してありません。総理は、この国民に与えた衝撃についてどのような責任を感じられ、今後、医療の荒廃をも含めどう対処する方針なのか。また、政治献金のあり方について、個人献金は善であり法人献金は悪であるというこれまでの考え方が崩れたと考えますが、どう是正していく方針なのか、あわせて総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 また、総理は、政治倫理の確立のため、倫理委員会の設置を提唱されてまいりましたが、総理は、倫理とはどのように考えておられるのか。また、倫理委員会とはどのような内容を考えておられるのか。倫理委員会について自民党内には異論もあるようでありますが、これをあくまで設置する決意なのかどうか、あわせて承りたいと思います。
 また、アメリカでは倫理規定をまずつくり、倫理委員会がそれに基づいて活動いたしておりますが、総理は倫理委員会をつくるに当たって、倫理規定は不可欠なものと考えられるかどうか、この点も明確にしていただきたいと存じます。
 次に、私は、内政の問題について質問いたします。
 当面の国民の最大関心事は、消費者物価の動向であります。卸売物価は傾向としては明らかに鎮静化する方向に向かってはおりますが、消費者物価の方は、この九月を見ても対前年同月比で八・九%上昇し、一向に安定する傾向が見られません。
 一方、勤労者の実質賃金を見ますと、本年二月以降、七月を除いてすべてマイナスを記録いたしております。この八月は実に三・五%の大幅減少となっておるという事実であります。ちなみに、大企業の企業収益を見ますと、この九月期中間決算で前期に比べ二三・一%も大幅増となっておる事実であります。
 これらの事実から明らかなことは、第二次石油危機の悪影響がすべて勤労者の家計にしわ寄せされておるということであります。
 政府は、日本経済の対応力は非常に高いことを、わがことのように称賛しておりますが、その最大の要因は、勤労者の賃上げの自制と民間企業を中心とした労働者の生産性向上への努力にあることを深く認識すべきであります。(拍手)したがって、当然に政府は、勤労者の生活向上を図る諸対策を強力に講ずべきであります。週休二日制の完全実施、六十歳定年制の早期実現を図るとともに、当面は消費者物価を最低限政府の当初見込みである六・四%以下に抑制することであります。
 現在に至っては非常に困難ではありますが、政府はあらゆる対策を講じ、六・四%の公約を達成しなければならないと考えます。
 すでに、政府予算以外に、さきの予算修正において、わが党が強く要求し実現した物価対策費五百億が用意されております。特に、今後は野菜類等生鮮食料品対策にこれら予算を重点的に振り向け、その安定を図るべきでありますが、鈴木総理の六・四%を守る決意と、そのための対策について明確な御答弁を求めます。(拍手)
 あわせて、この夏の冷害が、物価への悪影響はもちろんのこと、農家、一部中小企業者に対し重大な打撃を与えている現状にかんがみ、政府は、これらの農家、中小企業者に超低利の救済融資並びに重点的な公共事業の配分など、万全を期すべきだと考えますが、政府の対応のほどを示していただきたいと考えます。
 次に、私は、財政再建問題について質問いたします。
 鈴木総理は、去る九月八日の政府・与党連絡会議において、来年度の予算編成に関して、一つ、増税に頼らない財政再建、二つ、二兆円の国債減額、三つ、年内編成の三原則を示したと報道されております。にもかかわらず、その後いつの間にか官僚主導型の増税による財政再建路線が既定事実化し、鈴木総理自身が、新税によらない増税肯定論に傾斜し、来年度一兆数千億円の大幅増税を行おうとしていることは、きわめて重大な問題だと言わざるを得ません。
 鈴木総理、来年度予算編成において、あなたが指示した三原則は必ず守る決意があるのかどうか、鈴木総理の指導性の問題とも関連し、明確な答弁をお願いいたします。(拍手)
 わが党は、現下の財政事情の中で、何が何でも増税には一切反対だというものではございません。しかし、増税は最後の、かつ限定的な手段であって、それ以前に政府がなすべきこと、尽くすべきことがあり、これに政府は徹底的に取り組むべきでございます。その努力を怠り、最も安易な増税という方法によって財政再建を進めようとする姿勢に対しては、わが党は断じて容認することはできません。(拍手)
 政府がなすべきこと、尽くすべきことの第一は、国民に対して、財政の現状について率直に真実を語り、正面から問題を提起するやり方をとるべきだと考えます。
 第二は、サービスの低下か増税かという政府のこれまでの二者択一の発想を根本から改め、不必要な部分、むだな部分を排除する行財政改革を徹底して行い、行政改革のぎりぎりの限界を国民の前に具体的に示すことであります。(拍手)
 ところが、政府の行財政改革は遅々として進まず、それどころか、大平内閣当時の公約である府県単位の出先機関の整理統合計画も、いまだ発表されておりません。また、本年度の予算修正の際合意を見た補助金の整理合理化についてのサマーレビューも、その後どのような見直しを行い、その結果がどのようになったのか、全く明らかにされておらないわけであります。
 この二点について、経過を示していただきたいと考えます。
 政府は、行政改革について第二臨時行政調査会を新たに設けようとしておりますが、現在、もはや議論の段階ではなく、すでに提案されている諸対策をいかに実行するかであります。
 すなわち、政府の五十五年度行革の実施はもちろんのこと、公務員の実質三万七千人の削減、補助金総額並びに件数の大幅削減、特殊法人の廃止、統合の拡大、国会の任命による行政監察員制度の新設、情報公開法の制定などを早急に実現すべきであります。
 第三に政府がなすべきことは、財政再建と行政改革について、それは今後より必要な政策遂行のためであるという目的の積極面を、国民に提示することであります。
 財政再建を乗り越えた先の社会改革のビジョンがなければなりません。財政再建とは、単に赤字国債をゼロにするだけではありません。より積極的に高度成長から安定成長へ、産業重視から福祉重視へ、中央集権から地方分権へと、時代に即応した政策の遂行を可能にするための財政の構造改革、ひいては経済社会の構造改革を図ることでなければなりません。
 わが国にとって今後確実に起こることは、急速な高齢化社会の到来であります。この高齢化社会において、生活不安を解消し、なおかつ活力に満ちた社会を維持することは、政治に課せられた最重要課題と言っても過言ではありません。鈴木総理も所信表明でこの点を指摘されておりますが、ではどのようなビジョンをお考えになっておるのか、その大要を示していただきたいと考えます。
 最後に、私は、平和と安全の問題について質問いたします。
 平和と安全の問題は、多言するまでもなく国家存立の根本問題であり、各国ともその確保のため心血を注いでいるところであります。この見地から、われわれ民社党は、平和の確保こそ福祉国家づくりの大前提であるとの立場に立って、これまでも幻想的な平和論を排し、国会における安全保障委員会の設置など、防衛問題に対する国民合意づくりに野党といえども積極的に努力をしてまいりました。(拍手)しかるに、歴代自民党内閣は、一部野党の反発を恐れるの余り防衛論議を避け、日米安保の陰に隠れて事なかれ主義の態度をとり続けてまいったと言って過言ではないと思います。(拍手)
 しかし、いまやこのようなことを許してきた条件は消滅しつつあります。米ソの軍事バランスが大きく変化し、日米安保に寄りかかってさえいれば平和が保てるという時代は去りつつあるわけでございます。しかし、自民党内閣は、このような変化を国民に知らせ、理解を求める努力を真剣にやってまいったでありましょうか。これまで、わが党議員が国会でソ連の脅威についてただせば、それは脅威ではないと言って逃げております。北方領土のソ連軍事基地化の実態をただせば、それは島嶼防衛のためであって、日本に向けられたものではないという木で鼻をくくったような答弁の繰り返しであります。
 ところが、いま突然に防衛問題について高姿勢に転じ、予算措置だけを先走りさせようといたしております。国民に対する理解を求める努力を放置したまま、しかも無原則にこれを進めることは、防衛問題に対する国民のコンセンサスを生まないだけでなく、むしろ国論の分極化を招くものと断ぜざるを得ません。(拍手)
 今日、自衛隊と日米安保の必要性について、各種世論調査でも明らかなとおり、ようやく国民的なコンセンサスが生まれつつあります。しかし、外国の軍隊が攻めてきたらどうするかという世論調査を見てまいりますと、戦うというのが三一%、逃げるというのが二一%、降参するというのが二三%、この結果が出ておるように、まだまだ国民的なコンセンサスの底は浅いのが実情であります。
 このような予算措置だけの先行は、国民をして、それがアメリカからの圧力だということはわかっても、日本の安全にとってなぜいま必要なのか納得することはできないわけであります。(拍手)
 総理は、この国民の防衛問題に対するコンセンサスについて一体どのように考えておられるか、率直な御答弁を承りたいと思います。
 われわれは、鈴木内閣がこの平和と安全の問題に場当たり的でなく堅実に取り組もうとするならば、防衛予算を云々する前に、まず次の三つの基本的方針を確立し、国民の前に明らかにするよう要求するものであります。
 その第一点は、積極的な平和戦略の確立とその展開であります。
 言うまでもなく、最大の安全保障は世界平和の確立であります。鈴木内閣は、最近の米ソのデタントの崩壊、世界的な軍備拡張競争という状況のもとで、この事態自身を打開し、積極的に世界平和に貢献するため、わが国のとるべき平和戦略の具体策を内外にまず示すべきであると確信いたします。総理にその用意があるのかどうか、また、総理の言う西側の協力と連帯とは、日本として何ができ、何をすることなのか、まず承りたいと思います。
 われわれは、日本のとるべき平和戦略の当面の課題は、第一は対ソ政策、第二は軍縮、特に米ソの核軍縮の促進、第三に南北問題、特に途上国への政府開発援助の拡充の三点であると確信いたします。
 対ソ関係については、国民の悲願である北方領土の返還、経済協力問題などであります。北方領土問題について、先般、国連において伊東外務大臣がこの問題を提起したことは評価するものではありますが、しかし、それを言い放しに終わらさないため、今後どう進めるのかを含め、政府の今後の対ソ外交について、具体的にその方針を承りたいと思います。(拍手)
 また、デタントは崩壊したと政府は見ているのかどうか、デタントの回復のため、日本として米ソや国連の場を通じ、今後何をやろうとしているのか、さらに、その中で、米ソの核軍縮をどう進めさせていく方針なのか、あわせて承りたいと思います。
 開発途上国に対する経済援助について、政府の政府開発援助三年倍増計画が本年で終わる予定であります。それでもわが国の水準は国民総生産の〇・二六%で、先進工業国の平均水準〇・三四%に比べ、大きく見劣りしているのが現状であります。わが国としては、来年度から新たなる中期計画をつくり、国民総生産に占める政府開発援助の比率を、まず先進工業国の水準に早急に引き上げるべきだと考えますが、総理の明確なる答弁を承りたいと思います。
 また、当面する危機でありまするイラン・イラク紛争は、わが国の石油需給に重大なかかわり合いを持つものであります。われわれは、この紛争に大国が軍事介入せず、当事国はもとより、周辺諸国の自主的な和平努力により、平和が速やかに回復されんことを希望するものでありますが、政府としてはどのような基本方針に立って対処されんとしているのか、また、国民の不安である石油確保についてどのような見通しを持っておられるのか、この際承りたいと思います。
 なお、石油確保に関連して、石油資源そのものの自力開発について質問いたしたいことがございます。
 当時、幾多困難な過程を経て、日韓大陸棚の油田開発事業は、五十三年十一月、ようやくにして着工されました。しかし、自来二十数カ月、現地の工程は遅々として、いまだ確たる成果を見るに至っておりません。
 もとより海底油田の開発は難事中の難事ではありますが、それだけにその工事は特段に強力かつ大規模なものでなければなりません。この地域に七億キロリットルの埋蔵ありと目される以上、英国の北海油田開発の例をまつまでもなく、この際政府は、韓国政府と相はかり、その工事の推進を図るため、必要にして十分な措置を講ずべきであると考えますが、この事業に対する政府の態度、方針を明確にお示し願いたいと存じます。(拍手)
 日本の安全保障の上でいま考えなければならない第二点は、外圧による場当たり的無原則な増強でなく、日本の必要性に立った着実な防衛努力であります。そのために必要なことは、まず、わが国が受けている、あるいは受けようとしている脅威の実体は何か、これを国民に端的に知らせることであります。
 総理は、日本が対応しなければならない脅威の実体についてどう考えているのか、まずそれを承りたいと思います。
 同時に必要なことは、その脅威の実体に対応すべきわが国の防衛体制のどこに欠陥、問題点があるかを国民に率直に知らせることであります。(拍手)どこがどう不足しているからどう改善するのだということでなく、政府のように全体として何が何でもこれだけの予算をくれというのでは、国民の理解を得た着実な防衛努力はとうていできません。わが国の防衛体制の欠陥について、日本政府が言う前に、米国側がすでに具体的に指摘していることは周知のとおりであります。陸、海、空三自衛隊間の指揮統制系統の統一性の欠如、レーダーサイト、航空基地、護衛艦の防空装備の不備等がそれであります。
 総花的な装備の増強でなく、わが党が指摘してまいりました奇襲対処の法的欠陥の是正をも含めて、こうした自衛隊の機能、運営の改善に政府は重点的に取り組むべきであると考えますが、総理の所見を承りたいと思います。(拍手)
 また、こうした点からも、米ソのデタントと没脅威論を前提としてつくられた防衛計画大綱は、根本的に見直すべき時期に来ていると考えますが、あわせて承りたいと思います。
 安全保障の課題の第三点は、シビリアンコントロールと総合的安全保障政策の確立のため、現在防衛庁の方針の追認機関と成り下がっている国防会議を改組、強化することであります。各省庁の上に立って安全保障政策を総合的に進めていくためには、防衛庁設置法の中で位置づけられておりまする国防会議では無理であります。これを国家安全保障会議とし、単独立法で位置づけ、その構成並びに事務局を強化充実することが当面の急務と考えますが、総理はどのようにお考えか。また、総理が就任早々に提唱されました総合安全保障会議の設置はなぜ後退したのか、あわせてお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 最初に、私のリーダーシップについてお尋ねがありましたが、私は、物事の判断や決定に当たって、閣僚はもとより、与野党の御意見や世論などの傾聴すべき御意見にはできるだけ耳を傾け、可能な限り議論を行い、最後に国民が納得する結論に到達すべく努力することが私の政治信条でございます。リーダーシップの名のもとに高圧的に言論を抑えるとか相手方の意見を無視するとかは、私のとるべきところではございません。私は、決断を求められる場合においては、国家国民のために毅然としてリーダーシップを示す決意でございます。(拍手)
 次に、憲法の問題につきましてお尋ねがありましたが、鈴木内閣においては憲法を改正するととは全く考えていないことを明言しております。憲法改正に関する論議はもともと自由に行われて差し支えないものでありますが、鈴木内閣としては憲法改正を取り上げないという方針を現にとっておるのでありますから、その基本方針に沿って閣僚は慎重に発言、行動をとられたいと考えておるのであります。
 次に、和の政治について御意見がございましたが、これは党内融和のみならず、国会運営に当たる際もこれを実践していきたいというのが私の基本的な考えであります。私は、国会は対立抗争の場であってはならない、あくまで話し合いの場であるべきである、そういう意味で、議論を尽くし、謙虚に野党の御意見にも耳を傾け、とるべきものはとり、民意を吸収して、話し合いを通じて国民の納得する結論を引き出す場であると考えるものでございます。この国民の納得する結論を出すことが議会制民主主義の本旨に沿うものであり、国会における和の政治は、この議会制民主主義のルールに従って国会が運営され、国民の負託にこたえることであると考えております。(拍手)
 国民の健康を守る重要な責務を持つ医療機関において、国民の信頼が著しく損なわれる行為が見られたことはまことに遺憾であります。不祥事を起こした医療機関に対しては厳正な態度で臨む所存でありますが、今後再び同様の事件が起こらないよう、すでに厚生省では委員会を設けて検討を進めているところであります。
 また、所信表明で明らかにしたとおり、政治倫理の確立は当面の緊急の課題であります。このため、政府としては、さきの国会で廃案となった政治家個人に係る政治資金の明朗化を図るための政治資金規正法の改正案を今国会に提案したいと考えております。
 なお、政党法につきましては、議会制民主主義の根幹に触れる重大な問題を含んでおりますし、また、政党本位の選挙を行うためには、選挙制度をどのように改めるかということにも深くかかわりを持つ問題でありますので、政党制度、選挙制度のあり方に関する論議の推移を見ながら、慎重に検討すべきものと考えております。
 政界の浄化を図り、政治に対する国民の信頼を回復することは、わが国の民主政治を擁護する道であります。私は、政治の倫理化を図るため、党総裁として、国会に倫理委員会を設けることについて党首脳にその努力を要請しているところであります。もとより、倫理委員会を設けるかどうかは国会でお決めになることでありますが、各党各会派において大局的立場に立って御協議の上に、適切なる結論を出すことを期待いたしております。
 勤労者の生活の改善、向上についての御質問でありますが、私は、雇用の安定と並んで物価の安定による実質賃金の確保が基本的に重要であると考えております。最近の実情を見ますと、雇用は改善の動きが続いておりますが、実質賃金は消費者物価の動きとの関連で昨年に比べ低下しております。政府としては、引き続き物価の安定に最善の努力を払い、勤労者の生活の安定を図ってまいりたいと存じます。
 週休二日制と六十歳定年制の早期実施について御意見がございました。
 現在、政府は、週休二日制については昭和六十年度までに欧米先進国並みの水準に近づけることを目標に、また、定年延長については昭和六十年度までに六十歳定年の一般化を図ることを目標に行政指導に努めているところであります。
 消費者物価につきましては、冷夏の影響や原油価格の上昇など厳しい情勢にありますが、五十五年度の消費者物価が政府見通し六・四%程度の上昇におさまるよう最大限の努力を傾注してまいる所存であります。
 そのための対策といたしましては、去る九月五日に決定した経済運営の基本方針に示した物価対策、野菜の供給確保策、減産の行き過ぎの防止等六項目を物価対策として掲げておりますが、これを引き続き強力に推進してまいります。
 冷害についての御質問についてでありますが、被災農家に対しましては、天災融資法及び激甚災害法の早期発動の準備を進めるほか、公共事業の活用につきましては、第三・四半期の執行に当たり、特別な事業費枠を設けるなどにより、被災地での重点的な事業の実施に努めることといたしております。このほか、農業共済金の早期支払いなどの対策を講じ、被災農家の救済に万全を期してまいる考えであります。
 次に、冷夏で影響を受けた中小企業への対策でありますが、まず、冷夏の影響で経営の安定に支障を生じておる中小企業に対しましては、金融面から中小企業体質強化資金助成制度を機動的に活用することといたしました。また、冷夏の影響を受けて売り上げの減少が著しい業種を中小企業信用保険法の不況業種として追加指定し、信用保証協会の保証を通常の債務保証限度額とは別枠で利用できるように措置いたしました。
 次に、財政再建についての御質問でありますが、現在編成中の五十六年度予算では、公債発行額を二兆円程度縮減することを目途に作業を進めており、本年度緒についた財政再建の道をさらに一歩進めるよう、最善の努力を尽くす所存であります。
 公債発行額の大幅縮減は決して容易なことではありませんが、思い切った歳出の抑制と徹底した歳入の見直しを進め、現在のような財政事情のもとにあってなお行わなければならない施策であるかどうかの吟味を重ねることにより、公債の縮減を図ってまいりたいと思います。
 歳出の抑制などの努力を尽くしてもなお歳入が不足し、さらに踏み込んで検討が必要となることが考えられますが、その場合においても、現行制度の基本的な枠組みの中で増収を図ってまいる所存であります。
 なお、年内編成につきましては、ぜひともその方針で対処したいと考えております。
 財政の現状について率直に真実を語り、正面から問題を提起すべきであるとの御意見は、まことにそのとおりであります。そして、財政の現状を率直に正面から見れば、財政の再建は一刻の猶予も許さない問題であることが御理解いただけるものと存じます。
 府県単位の出先機関の整理統合につきましては、ただいま行政監理委員会において検討中であり、今月中には委員会の御意見をいただける予定であると聞いております。
 行政改革の徹底について御提言がございました。基本的方向において、御提言は行政の簡素、効率化を目指す政府の方針と軌を一にするものではないかと考えられますので、今後の参考にさせていただきます。
 財政再建と高齢化社会に対するビジョンを示せとの御質問でありましたが、財政再建は、わが国の将来の基盤を確かなものとし、われわれの子孫に明るい未来を開くため必要なものであります。それは決して財政収支のつじつまを合わせるのではなく、構造的な財政赤字の解消のため、あらゆる施策について財政がどこまで関与すべきであるかについて見直しを行うという大きな作業でありますので、お説のように経済社会の構造にも触れてくる問題でございます。
 高齢化社会の到来に当たり、私のビジョンを示せとのお話でありました。
 八〇年代以降、わが国の高齢化が急速に進むことは御指摘のとおりであります。このところ、大きく言って二つの問題が生じると思います。一つは、高齢者が安心して生活できる社会をつくり上げなくてはならないということであります。もう一つは、将来における働き手の負担を過重にしてはならないということであります。
 この二つの問題を同時に解決するため、現行の社会保障制度を再点検し、長期的な視野に立って福祉の立て直しを図り、負担の公平を図りながら、恵まれない人々、ハンディキャップを背負っている人々には、重点的に温かい手を差し伸べるよう配慮してまいりたいと思います。
 社会が高齢化することによって活力を失うことのないよう、社会を衰退させないように努力しなければなりません。わが国は今後とも民間経済を中心とした活力ある福祉社会を建設していかなくてはなりませんが、その中にあって、社会の高齢化に備え、定年の延長、再就職機会の増大に努め、自助の精神を失わない活力ある高齢化社会の実現に努力してまいりたいと存じます。
 防衛力整備については国民の合意が必要でないかとの御意見でありましたが、御指摘のとおり、国の防衛は国民の支持と協力がなければ成り立たないものであり、今後とも防衛について国民の広範な支持が得られるよう一層努力し、国民のコンセンサスを得ながら、防衛計画の大綱に従い、防衛力整備を進めていきたいと考えております。
 防衛予算についても、無原則に先行させているということは全くなく、来年度予算編成においては、厳しい財政事情を勘案し、他の諸施策との調和を図りつつ、適正に措置してまいる考えであります。
 次に、外交問題についてお答えいたします。
 中村議員より、わが国の外交方針についてお尋ねがございましたが、今日の国際社会においては、各国間の相互依存関係の著しい深まりが見られ、いかなる国といえども、世界の平和と安定なくして自国の安全と繁栄を確保し得なくなってきております。他方、中村議員も述べられたように、戦後の国際関係の基本的枠組みとなっている米ソを中心とする東西関係は、不安定な様相を見せ、南北関係の深刻化など、国際関係の多元化が進展しております。
 このような状況のもとにおいて、わが国としては、今後とも平和に徹し、軍事大国にはならないという基本的な立場を堅持しつつ、経済協力など世界の平和と安定のため、積極的に貢献を行っていきたいと考えております。
 また、その際、政治、経済上の理念を共有する米国との友好協力関係を基軸として、西欧諸国を含むその他自由主義諸国との連帯を一層強化してまいりたいと考えております。
 日ソ関係につきましては、わが国はソ連との間において、真の相互理解に基づく安定した関係を構築したいと考えております。そのためにも、ソ連側において、その誠意を具体的行動をもって示すことを強く期待しております。
 また、核軍縮については、平和国家としての自負に基づき、また、唯一の被爆国としての体験を踏まえつつ、軍縮分野の最優先課題として、その推進に努力を払ってまいります。
 さらに、開発途上国に対する経済協力につきましては、わが国は自由世界第二の経済大国として、今後とも積極的にこれを進めていきたいと考えております。
 最近の国際軍事情勢から、防衛計画の大綱見直しの問題について御意見をいただきましたが、最近のわが国周辺の国際情勢は、わが国北方領土における地上軍配備を含め、極東ソ連軍の増強など厳しさを増しつつあることは事実であります。
 また、防衛体制の欠陥を示せとのことでありますが、本年度の防衛白書において国民に明らかにしたところでありますが、装備の老朽化、即応体制の不備、抗たん性の不足などに問題があるのが現状であります。
 政府としては、昭和五十一年に決定した防衛計画の大綱に従い、防衛力の整備を行っているところでありますが、いまだ同大綱が定める防衛力の水準に達していないのが現状であります。したがって、同水準の可及的速やかな達成を図ることが必要であると考えており、現在防衛計画の大綱を改正することは考えておりません。
 次に、いわゆる総合安全保障に関してでありますが、今日の複雑な国際情勢とわが国の置かれた立場を考えれば、単に防衛的な側面のみならず、経済、外交を含めた広い立場からの努力が必要であります。外交、経済協力、エネルギー、食糧などの諸施策は、無論それぞれの所管官庁が推進していっているところでありますが、私は、これらの施策について総合的な安全保障の視点から、高いレベルでの整合性を確保することが必要と考え、現在その対策について検討させているところであります。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の問題につきましては関係閣僚から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 総理から大体答弁をしていただいたものですから、漏れた部分だけお答えをいたします。
 一つは、ことしの予算の修正で合意を見た物価対策費五百億円、これを使ったらどうかという話でありますが、四党合意にかかわる物価関連施策の推進のための五百億円というのは、「今後の物価動向に細心の注意を払い事態の進展に即応して適切な対策を講ずる。」こういう四党合意の文章でも明らかなように、仮に物価が著しく高騰をするおそれが生じたような場合に、事態の進展に即応した効果的な使途が検討される性格のものだ、かように考えております。
 したがいまして、この性格から見まして、この物価対策費が、現在物価が総じて落ちついた傾向の方向にある現時点では、この枠から何らかの具体的な支出が検討されるような差し迫った状態ではないと考えております。しかしながら、今後の推移を見て、物価がぼっと上がるようなときには、また検討さしてもらいます。
 それから、補助金のサマーレビューの結果どうなったかということでございますが、これは、ことしの七月二十九日に各省庁の補助金等の整理目標を定めて、先ほどもお答えいたしましたが、抜本見直しをやる、五十五年度以降に四年間で三千八百十七のうち約四分の一を整理する、こういうようなことで、今回は九百五十四の補助金について検討をしておるわけです。これなどを初め、それらのものについて、いろいろといま各省庁から検討結果が出されておって、その内容を点検中でございます。したがって、現在のところ、これを切ってこれを生かすというところまでまだいっておりませんので、これは五十六年度の予算の具体的な成果によってお示しをしたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣伊東正義君登壇〕
○国務大臣(伊東正義君) 対ソ問題でございますが、中村議員から国連総会で領土問題を取り上げたという御指摘があったのでございますが、国連総会におきまして、北方領土の返還、北方領土における軍備の配備は日ソ善隣友好に反するじゃないかということは、国民の総意であるということを率直に世界の世論に訴え、翌日はグロムイコ外相にも同じ趣旨の意見を開陳をしたのでございます。
 先生がおっしゃるとおり、言いっ放しじゃだめじゃないかとおっしゃるのはそのとおりでございまして、政府としましては、ソ連側に対しまして、この北方領土の問題の解決が日ソ間の真の相互理解の、あるいは日ソの友好親善の促進に不可欠なものであるという認識をあらゆる機会に伝えまして、理解せしめる努力を引き続き行ってまいるつもりでございますし、北方領土返還に対するわが国民の総意を踏まえつつ、今後とも筋を通すべきことは筋を通して主張して、息の長い姿勢で粘り強く対ソ折衝を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
 それから、米ソ等の核保有国の核軍縮のお話がございました。
 この点につきましては、従来より国連その他の国際場裏におきまして、核軍縮を中心とする軍縮の促進を強く訴えてまいったのでございますし、現実の国際関係の中におきましても、実現可能な措置を一つ一つ積み重ねてまいるという積極的な努力をしておりますし、特に具体的には、地下核の実験禁止を含めました包括的な核実験の禁止条約の早期締結ということにつきまして、核兵器保有国に対して引き続きこの条約の早期実現につきまして強く訴えておるような次第でございます。
 それから、先生から政府開発援助についてお話がございました。
 三年倍増計画は、これは国際的な公約をしたわけでございますが、今年で間違いなく達成できる見通しでございますが、来年以降につきましては、かかる積極的な姿勢を維持しまして、先生のおっしゃいました対GNPの比率を改善していくということの一層の努力をしてまいりたいと思いますし、どういう中期目標をつくるかということにつきましては、来年度の予算の折衝の際に、折衝の過程におきまして、この次の三年倍増計画後の計画につきましては、検討してまいるつもりでございます。
 この点につきましては、先ほど総理からも御説明がありましたし、所信表明演説におきましても、開発援助の分野におきましては積極的に今後とも経済協力を進めるというのが総理の演説にもあったとおりでございまして、われわれとしてはそういう態度でこの問題に取り組んでまいるつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣田中六助君登壇〕
○国務大臣(田中六助君) 中村議員にお答え申し上げます。
 中村さんの私に対する質問は二点あったと思います。第一点は、イラク・イランの戦争がわが国の石油確保にどういう影響を与えておるか。第二点は、こういう問題に関連いたしまして、日韓大陸棚に伴う自力開発はどうかという二点だったと思います。
 第一点につきまして現状を申し上げますが、短期的には何も心配は要らない。中長期的に見ますと、やはり問題があるということでございます。なぜならば、いままでイランから石油が来ておったのが七月末でストップいたしました。イラクからは九月末にストップしておりますけれども、これは一日三十九万バレル来ておりまして、これはわが国の依存率の約八・五%くらいと見られると思います。
 しかし、短期的に心配は要らないということは、まず第一に、私どもの備蓄、これが民間が約百四日分、政府関係が七日分、合計百十一日分あるわけでございます。
 第二点は、心配の要らない第二点でございますが、五十五年の四月から八月までの期間でございますけれども、ちょうど燃料油の販売量が八千百六十万キロリットル、これは前年同期に比べまして九〇・四%で、節約が行われておる証拠でございます。
 私どもが最も心配しております灯油でございますけれども、これも九月末のストック、つまり、九月末の在庫目標を六百五十万キロリットルとしておりましたけれども、これが九月に来ずに、八月末ですでに六百五十万キロリットルを超す六百八十万キロリットルになっておりますので、そういう点で短期的には心配は要らない。たとえば一日に取り出す量――これを三十日分、百十一日分から取り崩しますと、ちょうど一年もてるわけでございます。したがって、倍の六十日分取り崩しますと二年間もてます。そういう意味で、短期的には心配要らないというふうに言ったわけでございます。
 さらに国際的に見ますと、IEAの二十一カ国参加国の平均の備蓄量が百四十日分ございます。それからOPEC諸国の十三カ国、これがいままで減産を決めておりましたけれども、つい最近の理事会で減産はやめた、世界の石油事情の逼迫にこたえようということでむしろ増産に向かっております。そういうことから心配は要らないというふうに思っております。
 しかし、この紛争、この戦争が長引きますと、やはりどうしても私どもは心配せざるを得ませんので、どういう対策をとっておるかといいますと、まず、いま申しました備蓄量の増加ということが当然考えられます。政府備蓄をまずふやすということから、七日分はちょうど五百万キロリットルでございますので、総理も指摘しておりましたように三千万キロリットルにふやそうという考えが一つでございます。
 それから、中近東に依存するホルムズ海峡を通ってくる量が七〇から七三%ございます。これでは大変だということで、私どもは、中近東に依存することを分散しようということから、これを東南アジアあるいは中南米諸国にシフトしようということを考えておると同時に、IEAの会議でもいろんな問題を討議しなければならないというふうに考えております。
 それから、やはり何と申しましても国民の冷静な態度と判断、これが最も大切でございます。第一次オイルショック、四十八年十月末のときは、私どもの備蓄は全部で六十日分でございました。いまは私が申しますように百十一日分でございますけれども、当時六十日分でございました。一部のトラブルがございましたけれども、第一次、第二次オイルショックとも、非常に国民が冷静な態度で対処いたしましたおかげで、大きな騒動もなく済んだわけでございますし、世界も日本のこの態度を非常に評価しております。したがって、私どもはこれから政府として責任ある態度をとってまいりますけれども、これ以上また国民にも冷静な態度、冷静な判断で対処してもらいたいというふうに思います。
 それから、第二点の日韓大陸棚に伴う石油開発、自力開発をしろということでございます。
 私も素人考えで、最初、日韓大陸棚が横にあるのにどういうことだろうという疑問を持ちまして、いろいろ事務当局に対してこれを調べてみましたところが、最初わが国の番でございまして、これは第一本目をわが国がやったわけでございます。現在は第二本目を韓国側がやっております。私どもは、日本の沿岸に石油が埋蔵されておるということは、石油安定供給、安全確保という意味で非常に重大でもあり、大きな関心を持っておるわけでございます。現在日韓大陸棚は、所要の手続を経まして昨年秋から物理探査を行い、試掘をやっておるということはいま申し上げましたけれども、その結果、第一回目の日本側の探査のときは油徴があらわれたというふうに言われております。現在第二本目は進行中でございまして、この点についての結論はそのうちによくわかると思いますけれども、いま申しますように、いま探査中でございます。
 私どもは、この問題につきましては十分な関心を持っておりまして、民間会社がやっておりますけれども、早期にこれが開発でき、そして油が発見できるということを期待しておりまして、したがって民間会社がやっておりますけれども、政府のやれるだけの十分な対処、支援、援助、そういうものについては十分考えていかなければならない、そういうふうに思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(岡田春夫君) 不破哲三君。
    〔副議長退席、議長着席〕
    〔不破哲三君登壇〕
○不破哲三君 私は、日本共産党を代表し、所信表明に関連して鈴木総理大臣に質問をいたします。
 最初の質問は、韓国の軍法会議における金大中氏の死刑判決についてであります。
 この問題は、事の経過から日本政府が重大な責任を負っている問題であり、国民も、世界の民主的な世論も、鈴木総理の所信表明に注目してまいりました。ところが、総理は沈黙をもってこの注目にこたえたのであります。これは不可解なことであります。
 韓国の裁判問題を日本で騒ぎ立てるのは内政干渉だなどというのは、国際的な批判の封殺を願う全斗煥政権の代弁者の議論にすぎません。金大中氏は、韓国の軍部独裁政権の政敵として民主政治の確立を主張したがゆえに、死刑という極刑を科せられようとしているのであります。今日の世界で、政敵のこうした抹殺を許すかどうか、これはその国の内政問題にとどまるものでは決してありません。
 すでに一九四八年、国連総会が採択公布した世界人権宣言は、人権と自由の完全に実現される社会秩序を目指す権利を厳粛に宣言し、このことは国際人権規約にも具体化されております。この点に照らしても、金大中氏の問題が重大な国際問題であることは明瞭であります。
 総理は、それでもなおこれを韓国の国内問題とする立場に固執されるのか、その点をまず伺いたいのであります。
 しかも、日本政府がこの問題の直接の当事者であることは否定しがたい事実であります。
 韓国の秘密警察KCIAがわが国の主権を侵してこの東京で金大中氏を拉致し、韓国に連行したとき、自民党政府は、KCIAの犯行を立証するあらゆる事実に目をつぶり、虚構に基づく政治決着でこれを追認しました。これは、金大中氏を日本政府自身が韓国軍事政権に引き渡したのと同じであります。
 政治決着の際に、その条件とされたのは、日本滞在中の言動の責任は問わない、こういう韓国政府の約束でありましたが、この約束も紙くずのように投げ捨てられたのであります。今回の起訴状を一読すれば明らかなように、死刑法である国家保安法違反を問われた最大の訴因は、金大中氏が民主政治回復の目的で日本滞在中に行った活動そのものであります。
 総理、日本政府が七年前、日本の主権を貫き、金大中氏の原状回復を実現していたら、今回の軍事裁判も死刑判決もあり得なかったことは明白であります。その日本政府が、みずからの行動の結果に何ら責任を負おうとせず、これを事実上容認する態度をとるとしたら、それは、この殺人劇の共犯者としてのそしりを国際的にも免れ得ないのであります。(拍手)
 私は、政府が今日の金大中氏の死刑判決という現実に照らして、あの政治決着が虚構に基づく不当不法な取り決めであったことをいまこそ率直に認めるべきこと、そして、韓国に厳重抗議の態度をとり、金大中氏の死刑を中止させるため、あらゆる手段を尽くすべきことを、人権と自由、民主主義の名において総理に強く求めるものであります。(拍手)
 政府のこうした態度には、ファッショ独裁政権への肩入れという点で他の資本主義国に例を見ない自民党外交の特別の反動性が色濃くあらわれています。大体ことしの五月、全斗煥氏が軍事クーデターで一挙に政権を握ったとき、政界、財界の代表団や使節を次々と送って、世界に先駆けてこの政権支持の態度を表明したのは日本でありました。
 チリの問題でも同じであります。チリでは一九七三年、軍部が、選挙で成立した革新連合政権をクーデターで打倒し、大統領を射殺してピノチェト軍事政権をつくり上げました。以来七年間、革新民主勢力に対する弾圧、拷問、テロの体制がしかれ、国連総会ではこれを非難する人権決議が繰り返し採択されています。
 昨年の十二月十八日の総会でも、チリでの人権回復を求める決議が賛成九十三、反対六、棄権二十八の多数で採択されました。日本は棄権グループに属しましたが、サミットに集まる資本主義の先進七カ国のうちでも、こうした形でピノチェト政権への連帯を表明したのは日本以外になかった、このことは注目すべきであります。(拍手)
 日本が肩入れしている反民主政権のリストにはカンボジアのポル・ポト前政権も含まれています。この政権が自国民の大量虐殺という反人道的統治を行ったことは紛れもないことであり、帰国した日本人の報告や最近現地を訪問した日本人記者の観察によっても証明されています。
 ところが、鈴木内閣は、この犯罪行為のために政権を追われたポル・ポト集団との国交に固執し、ヘン・サムリン現政権を承認しないばかりか、今回の国連総会に際しては、日本の外交陣を総動員してポル・ポト支持の多数派工作の先頭に立ち、人道を重んじる良識ある国際世論のひんしゅくさえ買ったのであります。
 総理、これが世界の舞台における自民党外交の行動であります。反共、反革新の立場に立つ政権なら、どんな反人道的ファッショ政権でもこれを支持し、連帯する、これが自民党外交の基本方針なのか。これは、あなた方の自由と民主が本物であるかどうかの試金石ともいうべき問題であり、しかとお答え願いたいのであります。(拍手)
 次に、国内政治の問題に移ります。
 総理は、「安定成長の成果をともに分かち合う時代」と述べながら、わが国経済の繁栄を高く評価されました。確かに日本の産業や経済の根幹を支配している財界、大企業の立場に立つならば、経済の繁栄は一つの実感でありましょう。
 過日発表された米フォーチュン誌の七九年度大企業番付では、アメリカを除く世界五百大企業のうちで日本は百三十社を占め、イギリスの八十七社、第二位をはるかに引き離しました。ことしの繁栄ぶりは、さらに著しいものがあります。
 これに引き比べて、国民の生活はどうでしょうか。物価高と増税、そして賃上げ抑制などによって勤労者の生活が昨年よりも悪化していることは、政府統計にもはっきりあらわれているところであります。
 総理府の調査では、勤労者世帯の消費支出は、連続五カ月間前年同月を下回りましたし、労働省は、八月の実質賃金が前年より三・五%ダウンしたと発表しました。これは、六年前の狂乱物価以来の記録であります。
 中小企業の状況も深刻で、不景気の物差しとされた倒産件数毎月千件以上というのはすでにまる五カ年間も続き、最近では千五百件の危機ラインを突破する事態が頻発しています。
 さらに、夏の冷害が被害見込み約五千七百億円という戦後最大の打撃を農家に与え、ただでさえ厳しい農業経営の前途に一層の困難を加えていることも重大であります。
 高齢化社会を目前にしながら、社会保障の国際的な立ちおくれも依然として大きいものがあります。国民生活の向上という政治の原点から見るならば、日本経済は繁栄どころか危機的な状況が続いているのは否定できない現実であります。
 私は、政府が大企業の繁栄と国民生活の困難というこの対照的な現実を踏まえ、高度成長時代以来の大企業本位の政治のゆがみの反省に立ち、あらゆる分野での経済政策の立案と実行において国民生活の防衛と向上を第一の優先課題とすべきことを強く主張するものであります。(拍手)まず、この基本姿勢について、総理の所見を伺いたいと思います。
 総理は、所信表明で、国民の努力が報われる「思いやりのある社会」と述べましたが、内閣成立以来の言動を見ると、政府の現実の方針が、この言葉とは逆に、増税、物価値上げ、福祉切り捨てという国民生活への圧迫を倍加する方向に向いているという深い危惧を抱かざるを得ないのであります。もしそうであるならば、抽象的な言葉でそれを飾るのでなく、この国会に率直に政策方向を明示して検討を求めるのが当然でありましょう。
 そういう意味で幾つかの具体問題についてただしたいと思います。
 第一に、税制の問題であります。
 この三年間物価減税を見送ってきたため、国民の税負担は、四人家族、年収三百万円の勤労者世帯で六割近くも増大し、家計を圧迫する大きな要因となっています。この実質増税路線を見直して物価減税の実施を検討する意思があるか。
 昨日、大蔵大臣は、減税を不可とする理由として、免税点の国際比較を挙げましたが、これはいわゆるレート換算であって、実際の生計費指数で換算するなら、日本の免税点は欧米諸国に比べ低水準にあるのが現実であります。
 また、一般消費税やこれと同型の大衆課税を、少なくとも鈴木内閣の任期中は実行しないことを確約できるかどうか。
 さらに、税制の最大の問題であり、自民党もさきの同時選挙で公約した不公平税制の是正について、どういう規模と方向でこれに取り組むつもりか。これが質問点であります。
 第二、総理が強調した物価安定のためにも、公共料金の抑制と凍結が急務であります。
 いま予定されている、七八年以来連続六回目の国鉄運賃値上げ計画、さらに、国鉄に続く郵便料金の値上げと法定制緩和の計画、これを撤回し、再検討するつもりはないか。
 また、電力会社の九月期中間決算が過去最高の利益と予想されていることは、今春の大幅値上げの不当性を証明しているが、その反省に立って、企業の一方的申請に引きずられてきた公共料金政策の再検討を行う意思はないか、伺いたいのであります。(拍手)
 第三、わが国の社会保障の立ちおくれは、実際の購買力で換算して、ヨーロッパでは月十万円台の年金があたりまえになっているのに、日本では二万円台の年金しか受けないお年寄りが八百万人もいるという事実に浮き彫りされています。高齢化社会に備えるということは、一日も早くこのおくれを克服して日本の経済力にふさわしい福祉水準に到達することでなければならないはずであります。
 ところが、政府が唱えてきた日本型福祉社会論とは、医療費の無料化の後退など福祉をさらに引き下げて、高齢化社会を安上がりで迎えようというところに特徴がありました。
 総理は、高齢化社会対策を力説されたが、一体どちらの立場でこれを進めようとするのか、その基本をお尋ねしたいのであります。
 第四、戦後最大の冷害は、従来の対策の延長線にとどまらない抜本的な救援策の確立とその早急な実施を求めています。
 これまでのところ、政府の考えている施策は、例年の冷害対策の小出しの実施という枠を出ていないように見えるが、この緊急事態に対して、それにふさわしい抜本的な救済対策をどのような規模で実行するつもりなのか、具体的に伺いたいのであります。
 以上、国民生活の若干の緊急問題について質問しましたが、こういう要求を出すと、政府当局者がいつも言いわけとするのは、財政危機の問題であります。
 確かに歴代自民党内閣の赤字公債増発政策が生み出した今日の財政危機は深刻であり、わが党はその重大性を認識する点において人後に落ちるものではありません。反対に、政府が見通しもなしに赤字公債増発に踏み出した最初のときから、それが国民経済に恐るべき結果をもたらすことを警告し、一貫して反対してきたのはわが党であります。(拍手)また、財政危機が破局化してきたときに、大企業奉仕、安保優先という従来型のやり方では、国民に犠牲を押しつけるだけで危機を解決し得ないことを数字を挙げて指摘し、国民生活防衛に基礎を置いた民主的な財政再建策を積極的に提案してきたのもわが党であります。
 財政再建の道をめぐる根本的な議論は、来年度予算を検討する次の機会に譲りたいと思いますが、ここでどうしても総理に聞いておきたい問題があります。
 総理自身、今日の財政危機について「わが国経済と国民生活を根底から揺るがすものになりかねない」と深い憂慮を表明されました。ところが、その打開策もできないでいるのに、国の財政に新たな重い負担を課する軍備拡張路線に踏み出したのはなぜか、この問題であります。
 実際、政府が予算編成の準備作業で見せた軍事費優先の態度は露骨きわまるものでした。各省の概算要求の伸びを七%台で抑えながら、軍事費だけは別枠で九・七%増を優先的に保障する。自衛官のベースアップ分を加えれば約一二%増に相当するとされています。しかも、新規装備の発注による後年度負担分、いわば将来の予算の先取り分が新たに一兆円近く加えられ、これを消化していくためには、五十七年度以降軍事費を毎年十数%ずつ伸ばしていかなければならなくなる、まさに膨張する軍事費の重圧を長期にわたって国の経済と財政に担わせる方針であります。
 故大平首相は、本年二月、米誌「タイム」に答えて、いまの日本で軍事費をふやそうとしたら、選択は三つしかない。赤字国債の増発か、国民向け支出の切り捨てか、増税かだと述べましたが、今日の財政危機のもとで鈴木内閣が採用しようとしている軍事費優先の政策が国民に何をもたらすかは余りにも明白であります。(拍手)それは、一層の増税と高負担、厳しい福祉切り捨ての押しつけとならざるを得ないのであります。
 私は、鈴木総理に対して、財政再建の具体的なプログラムを国民に示さないまま新たな軍拡路線に踏み出した真意をただすと同時に、軍事費別枠という方針を白紙撤回し、予算編成に国民生活優先の方針を貫くことを強く要求するものであります。(拍手)
 さらに奇怪なことは、この軍事費問題が国会よりも先に日米間で協議されていることであります。
 わが党は、戦力保持を禁止した現憲法下で事実上の軍隊である自衛隊をつくり、そのための費用を計上すること自体を憲法違反とする立場に立っており、この点で政府・与党とは根本的に見解を異にしていますが、しかし、いずれにしても、軍事費をふやすか減らすか、これはわが国の内政問題であって、他国の干渉を許すべき性質の問題ではないのであります。(拍手)
 実際、ことしの四月、中国の当局者が日本の軍備増強を勧告したとき、わが外務省は、内政干渉としてこれに反発する態度をとったと聞きましたが、これはまさに正論であります。
 ところが、自民党政府は、事対米関係になると、アメリカ政府がどんなにあからさまに軍拡要求を持ち出してきても、これを干渉としないばかりか、日本の軍事費問題を進んで外交交渉のテーマとする態度をとり、防衛庁が作成した中期業務見積もりの繰り上げ実施を約束したとさえ言われています。事はきわめて重大であります。
 私は、政府に、軍事費問題でのアメリカとの交渉経過とアメリカ側に与えた約束の内容を具体的に国会に報告することを要求するものであります。(拍手)
 さらに、アメリカが、このように予算問題に介入し、日本政府がこれを許している根拠はどこにあるのか、それを総理に伺いたいのであります。その根拠が、日米安保条約にあるというのなら、それはまさに安保条約の存在が、日本の主権と安全の重大問題であるばかりか、国民生活圧迫の根源ともなっていることを裏書きするものであります。(拍手)
 私は、自衛隊の軍備増強を求めるアメリカ側の異常なほど執拗な要求の背景に、日米軍事同盟のNATO並みの攻守同盟化という要求、すなわち、日本を米軍の作戦基地として利用するだけでは満足できないで、日本の自衛隊にアジア・太平洋地域での米軍の肩がわりをさせたいという戦略的要求があることを重視しないわけにはいきません。これは、日本自体が攻撃を受けないでも、アメリカが世界のどこかで戦争を始めたら、日本もアメリカの側に立って参戦し、アジア・太平洋地域での軍事作戦を分担するということであって、自民党政府のとれまでの解釈によっても、現憲法下では不可能とされている要求であります。
 ところが、アメリカ側は、最近では、そういう戦略計画に基づいた要求を平気で日本に持ち出すようになっています。いわゆる三海峡封鎖作戦、すなわち、ヨーロッパで対ソ戦が始まったら、ソ連の太平洋鑑隊を日本海に封じ込める作戦を日本で引き受けてくれと求めてきたのもその典型であります。
 この八月末、東京で開かれた日米安保セミナー、ここには、アメリカの前大統領や元統合参謀本部議長、日本の元首相と三人の元防衛庁長官を初め、日米両国の多数の関係者が出席しましたが、ここでも安保条約の攻守同盟化が中心問題になりました。特に、日本側を代表して発言した三原自民党安保調査会長が、日本は列島防衛という限定された枠組みを超えて、アジア・太平洋地域の防衛責任を分担すべきだと述べ、日米安保条約の再改定を公然と日程に上せたことは、きわめて重大であります。
 このように、いま推し進められている対米従属下の軍国主義化の道は、自衛隊の海外派兵も含めて、日本をアメリカの世界戦略に一層深く引き入れるきわめて危険な道にほかならないのであります。
 総理、あなた方は、このところ、西側陣営の一員としての自覚を大いに強調しているようですが、アメリカからも自民党の側からも提起されている日米軍事同盟の攻守同盟化というこの問題について、どういう見解をお持ちなのか。特に三原構想は、あなたが総裁として責任を負っている自民党の安保調査会長の国際的な舞台での公式発言であります。総理の明確な所見をお伺いしたいと思います。(拍手)
 鈴木内閣のもとで改憲論議がにわかに盛んになったのも、あれこれの閣僚の個人的な性格によるだけではなく、安保条約の攻守同盟化というこの底流が生み出した所産であります。さきの日米安保セミナーでは、日本側から、一九八〇年代半ばという時期まで示して、攻守同盟化に見合う憲法改定の問題が持ち出されました。改憲論議の本質はまさにここにあります。改憲論者は自主憲法を云々しますが、それは、日本国民の自主性のあらわれであるどころか、アメリカの軍事的要求にこたえて、安保条約の攻守同盟化や自衛隊の海外派兵が可能になるように、憲法の枠組みを変えようという新たな対米従属の構想にほかならないではありませんか。(拍手)
 注目する必要があるのは、改憲運動が議論や研究の段階を超えて、いままさに全国的な政治運動として展開されつつあることであります。総理も御存じの組織に自主憲法期成議員同盟という名の団体があります。この団体は、ことしの三月、全国三千三百の自治体議会に文書を送り、政府と国会に対して、新憲法の制定を要請する決議を可決するよう、決議のひな形まで添えて申し入れました。この運動の推進者の言葉によれば、さきの元号法制化成功の教訓に学び、地方議会の決議から積み上げて、国政を動かす改憲運動を全国的に展開しようというのであります。
 総理、あなたは昨日の本会議で、鈴木内閣は憲法を遵守するということを明言されました。しかし、そのあなたを総裁とする自民党議員の多数が自主憲法期成議員同盟に属し、政府と国会に対する改憲要請運動の先頭に立っている事実、さらに総理自身を初め、閣僚二十一名中十八名までがこの団体に属し、改憲運動の一翼を現に担っている事実をどう理解したらよいのでしょうか。あなたが総理・総裁として自分の言明に忠実であろうとするならば、自民党議員を主力としたとの改憲キャンペーンは当然中止されるべきであります。(拍手)また、憲法遵守を公約した内閣の総理及び閣僚の地位と改憲運動団体の一員としての立場は両立しがたいものと考えますが、いかがでしょうか。明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 小選挙区制の問題も憲法問題と不可分であります。二十五年前、鳩山内閣が小選挙区制を取り上げたのは、改憲の発議に必要な三分の二を確保しようという目的からでした。小選挙区制導入を唱えた石破自治相の発言に対し、あなたはこれを訂正しましたし、本日も、いまのところ考えていないと答弁されました。しかし、これは重大な問題だけに、この際、はっきりと確かめておきたいと思います。あなたが内閣と党に責任を負っている限り、小選挙区制の導入に手をつけることは絶対にしないと確約できるかどうか、責任ある答弁を求めるものであります。(拍手)
 最後に、政治腐敗の問題であります。
 わが党は、政治資金規制の問題では、企業、団体献金の禁止を引き続き要求するとともに、主権者である国民の個人献金の問題についても、今回の富士見病院事件の教訓と反省にかんがみ、政治道義の徹底と明朗化に一層の努力を尽くすつもりであります。同時に、重視しなければならないのは、ロッキード事件以来、数多くの疑惑が提起されながら、どの事件も政治的道義的責任が明確にされないまま、灰色の決着がつけられようとしていること、ここに国民の政治不信の最大の原因の一つがあるということであります。あのダグラス、グラマン事件にかかわる日商岩井公判に当たった裁判長が、判決後、裁判の限界を語りながら、事件の根源にある政治腐敗の実態を究明する必要を国民に痛切に呼びかけたのは記憶に新しいところであります。この言葉に政府も国会もいまこそ真剣に耳を傾けるべきではないでしょうか。あの裁判でも多くの事実が提起されたように、一連の航空機疑獄には、政治上、道義上の問題として解明すべき無数の疑惑が残されています。
 自民党は、今国会でも航空機輸入特別委員会の廃止に固執しましたが、一体どのようにして国民の前で疑惑解明の責任を果たそうとするのか、自民党総裁としての立場も含めて、総理の見解を問うものであります。(拍手)
 以上、国政上の一連の問題について総理に質問してきましたが、八〇年代の情勢は日本の国民にとってきわめて重大弧あります。私は、わが党があらゆる分野で国民の正当な要求の先頭に立ち、国民に背を向けた悪政とは果敢に戦い、国民本位の新しい政治、独立、平和、非同盟中立の日本の実現を目指してあらゆる努力を尽くすことを最後に表明して、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 まず、金大中氏の問題についてお尋ねがございました。
 金大中氏の身柄の問題につきましては、政府としても重大な関心を有しており、このことは随時韓国側に伝えてきた次第であります。政府といたしましては、今後ともわが方の関心の次第を随時韓国側に伝え、まいる考えでありますが、他方、金大中氏の裁判自体は、基本的には韓国の国内問題であり、司法問題でありますので、わが国としても本問題についてはそのような認識で対処する必要があると考えております。
 なお、金大中氏事件の政治決着につきましては、韓国側による公権力の行使があったと断定し得るに至っていない状況下で、その当時の日韓双方の最高首脳が日韓関係の大局を考えて高度の政治的判断を下したものであり、現内閣におきましても引き続きこれを尊重してまいる考えであります。
 次に、政府の外交姿勢についてお尋ねがございました。
 わが国は、政治、経済上の価値観をともにする米国を初めとする自由主義諸国との連帯を基盤とし、世界の国々との友好協力の輪を広げていくという積極的な平和外交を進めてきております。
 不破議員御指摘の国々との関係についても、このような基本的方針を踏まえ、それぞれの国の個別の事情をも勘案しながら、それらの国に対する具体的施策を進めてまいりたいと考えております。
 国民生活の安定向上は、これまでの経済政策における一貫した目標であり、今後とも物価の安定、雇用の確保などに積極的に努め、国民生活の安定向上を図ります。
 税制に関連した御質問にお答えいたします。
 まず、物価調整減税を検討する意思はないかとのお尋ねでありますが、国際的に見た負担水準の実情や、厳しい財政の現状から見て、財政再建期間中の所得税減税は御容赦をいただくほかはないと考えております。
 次に、一般消費税のたぐいの税を導入しないと確約せよとのことでありますが、昭和五十六年度予算においては、現行税制の枠組みの中で増収を図ってまいる考えでございます。五十七年度以降につきましては、税制調査会の検討結果やその他諸般の事情を総合的に勘案して、慎重に対処してまいります。
 不公平税制の是正には、これまで改善の努力を重ねてまいりました。今後とも実態に即して努力してまいります。
 国鉄運賃値上げ計画を撤回、再検討するようにとの御意見がございましたが、御承知のような国鉄の財政事情でございます。単に物価上の配慮のみにとどまらず、国鉄の合理化の状況、国民生活への影響などを十分検討しながら、五十六年度予算編成の中で結論を出してまいりたいと存じます。
 郵便料金につきましては、きわめて逼迫した郵便事業財政の立て直しのため、料金の引き上げのため法案を提出しております。何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
 電力会社の収益などに触れた御質問がありましたが、電力会社の収支につきましては、原油価格、円レートなど先行き不透明な面が少なくありません。したがいまして、政府としては、電力会社の収支状況について慎重に見守っていくとともに、今後とも電力会社に対し、一層の経営合理化を行い、現行料金をできる限り長く据え置くよう指導してまいりたいと考えております。
 わが国における人口の高齢化は、諸外国に例を見ないほど急速でありますが、このため、今後急速に増加する高齢者が安心して生活できるような諸施策と、他方、相対的に少なくなる将来の働き手の負担を過重にしないという配慮の双方が必要になります。つまり、給付と負担の双方について公正が保たれる必要がありますので、そのような見地から、現行の社会保障制度を再点検し、長期的な視野のもとに福祉を考えてまいらなくてはならないと存じます。
 老人医療費についても、同様、負担と給付の適正化などの見地から、現在厚生省において検討が行われております。
 本年の冷害等によって生じた深刻な事態に配慮し、被災農家に対して天災融資法及び激甚災害法の早期発動の準備を進めるほか、農業共済金の早期支払い、被災地での重点的な公共事業の実施等の対策を講じ、被災農家の救済に万全を期してまいります。
 防衛費の問題についてお尋ねがございました。防衛費の別枠ということも決められておりません。(発言する者あり)その他の経費と同様に厳しい合理化努力、節減努力を求め、真に必要な経費に限り予算に計上されるものであります。
 次に、わが国の防衛費の問題であります。
 日米両国は、日米安保条約に従い、わが国が有事の際に、わが国の防衛のため、共通の危険に対して共同して対処すべき立場にあります。このような共同対処をより効果的に行い得るような体制を整えるという見地から、わが国の防衛努力について米国が関心を有することはむしろ自然なことであります。
 米国は、このような観点に立って、最近の厳しい国際情勢にかんがみ、わが国の防衛努力を可能な限り強化してほしいという期待を表明してきている次第でありまして、これは内政干渉といった筋合いのものではありません。また、わが国の予算問題に介入した態度でもございません。
 なお、防衛予算を含め、防衛努力については、もとよりわが国が自主的に対処すべきものであります。米国との間で行っているのも、交渉などといったものではなく、意見交換であり、その内容は従来より、適宜しかるべき形で国会にも御報告申し上げてきているところであります。
 先般の外務大臣の訪米の際におきましては、米側より、日本の防衛努力に関する従来からの米国の考え方の説明があり、最近の国際情勢にかんがみ、日本も西欧とともに一層の防衛努力を図ることを期待している旨の表明がありました。これに対し外務大臣よりは、わが国としては国民のコンセンサスを得つつ今後とも自主的な努力を行っていく旨述べたとの報告を受けております。
 なお、御指摘の三原議員の発言につきましては、私としては、三原議員が安保条約を改定する提案を行ったとは聞いておりませんが、いずれにいたしましても、政府としては、安保条約をわが国の集団的自衛権行使を前提とするようなものに改定することはもとより、そもそもいかなる意味でも同条約を改定することは全く考えておりません。
 憲法の問題についてお答えをいたします。
 公務員が憲法を尊重し擁護する義務を負うことは、憲法第九十九条に明記されているところでありますが、同時に、憲法は第九十六条に改正手続を定めていることから明らかなように、憲法改正を論ずることと憲法を遵守することとは個別の問題であります。
 自民党の議員も各党の議員と同様に、政治家である以上、憲法について研究し、その改正の要否について意見を持っていることは当然であって、いわゆる護憲運動をする団体もあれば改憲運動をする団体もあって、自由な議論がされるということは一向差し支えないと考えております。(拍手)
 また、憲法改正を論ずることと憲法を尊重し擁護することとは別個の問題でありますから、閣僚が改憲団体に所属することは憲法の尊重擁護の義務に反しないことは明らかでありますが、鈴木内閣は改憲しない方針をとっている以上、各閣僚は内閣の方針に誤解を生ぜしめないよう、厳にその言動を慎むよう要請しております。
 小選挙区制についての御質問でありますが、選挙制度の改正ということは選挙の土俵づくりの問題であり、事柄の性質上、各政党間で十分論議を尽くしていただくことが必要であると考えております。小選挙区制については、各党問で話し合いが進んでおりませんし、その機運も熟しておりませんので、小選挙区制の導入を取り上げる意思はございません。
 最後に、今国会において航空機輸入に関する特別委員会を設けるかどうかという問題についてお話がありました。
 政界の浄化と刷新を図ることは、民主政治、議会制民主主義を擁護する上からきわめて重要なことでございます。私は、航空機特別委員会、これにこだわるようなことなしに、広く国会の倫理の確立のために各党において御協議の上、国会においてしかるべき対処をされることを期待をいたしております。自由民主党総裁としては、党首脳に対し、倫理委員会設置に対しまして党の検討と善処を要請しておるところでございます。
 不破さんに対する御答弁はそれで終わります。
 中村議員の先ほどの御質問に対し、答弁を追加させていただきます。
 いわゆる総合安全保障に関しては、現在その具体策について検討させているところでありますが、国防会議の改組は考えておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 河野洋平君。
    〔河野洋平君登壇〕
○河野洋平君 私は、新自由クラブを代表し、鈴木総理の所信表明演説及び当面の課題について若干の質問を行いたいと思います。
 いま、わが国は、激動の八〇年代という予測そのままに、きわめて解決のむずかしい課題に取り巻かれております。しかし、わが国の政治は、こうした状況に対し的確な対応をしていると一体だれが言えるでしょうか。それよりもむしろ、日本の政治をねじ曲げようとする警戒すべき徴候が最近になって政府・自民党及びその支持勢力の一部に見え隠れし始めた、そう言われておるわけであります。
 そこで、私は、まず鈴木内閣の基本姿勢について伺いたいと思います。
 私は、衆参両院が同時選挙で空白になったあの約一カ月間、特に故大平総理が急逝された後の期間に、国会の意思を聞かなければならないような、国の存立にもかかわる非常事態でも起きたら一体どうなったか、こう考えると、いまでも慄然とするものがございます。
 内閣は国会から不信任され、しかも首相急死に伴う事務処理内閣とはいえ、法制上は存在をしておりました。しかしながら、その種の内閣が、果たして国家の安危に関する重要な決断を一体できたでありましょうか。仮にできたとしても、その決断が何を根拠に真に国民の信頼にこたえるものと断言できたか、はなはだ疑わしいと思わざるを得ないのであります。
 国の安全保障の面から考えても、このような政治的空白を一政党の利害からつくり出すようなことは避けるのが当然のことではないでしょうか。健全な民主主義を育てる上でも、民意を問う機会は多ければ多いほど望ましいということは言うまでもないと思います。また、二院制のたてまえから言っても、衆参同時選挙は、それぞれの議院が持つ特性を失わせるものと考えますが、総理の同時選挙に対する御所見を伺うものであります。
 次に、私は、最近特に論議を呼んでいる憲法問題について、総理の考えをただしておきたいと思います。
 はっきりしていることは、自民党という政党は、党の政綱の中で「現行憲法の自主的改正を図る」、こうはっきり明記している改憲政党であるということであります。したがって、奥野法務大臣らの一連の発言は、忠実にこの自民党の本音を吐露したものと私どもは受けとめております。
 しかし、これに対して、総理は所信表明演説で「憲法の理念を堅持する」と述べられるとともに、鈴木内閣においては憲法改正は毛頭考えていない、改正についての国民的コンセンサスはできていないと、繰り返し、繰り返し述べておられます。
 また、鈴木内閣の閣僚の中でも、たとえば宮澤官房長官は昨年十一月、日本のような憲法を持っていて、それを実践してきたということは、何よりも雄弁に緊張緩和や軍縮へのイニシアチブをとってきたのだ、こう述べておられるなど、外部に向かって積極的にこの憲法を評価する発言をされている方もいらっしゃるわけであります。
 憲法をめぐる議論が混乱するのは、自民党がみずからの政綱に憲法改正を明記していながら、国政選挙の際には、ほとんどその憲法改正問題には触れもせず、内閣は内閣で、改正することはないと言うなど、絶えずたてまえと本音が交錯しているからではないでしょうか。(拍手)
 そこで、総理、私は率直に伺いたいと思います。総理は、まだ国民的コンセンサスはないと言われますが、自由民主党の方針を重視するあなたの政治姿勢から考えて、あなたとあなたの内閣の閣僚は、今後自民党の政綱に沿って憲法改正への合意づくりに積極的に努力していくおつもりなのかどうなのか、この点を明確にお答えをいただきたいと思うのであります。もしそうでないならば、あなたとあなたの閣僚が改憲勢力に利用されることをきっぱりと拒否すべきだと思いますが、いかがでしょうか、御所見を伺っておきたいと思います。
 私たち新自由クラブは、現行憲法の精神は世界の平和と繁栄のために役立たせるべき崇高な理念であると考えます。同時に、種々の世論調査が示すように、国民の半数以上が現行憲法の維持を望むという定着度を見せている以上、との世論に挑戦し、みずから国論の分裂を招くようなことは決して好ましいことではない、こう考えておることを申し上げたいと思います。
 今日、世界の情勢は、超大国による果てしなき軍拡競争、イラン・イラク戦争に見られるような局地紛争が相次ぎ、人類がひとしく抱いているはずの国際平和の理想はますます遠ざかる一方かのように見受けられます。
 こうした平和の危機の中で、私たちは二年前、当時の園田外務大臣が、参加国の数からも画期的と言われる国連軍縮特別総会で行った演説を思い起こすべきだと思います。園田外相は「わが国は人類の先覚者としての誇り高き憲法の精神に立脚して、軍事大国の道をとらず、核兵器の廃絶を初めとする世界の軍縮に先進的に取り組む」との決意を披瀝され、各国代表に大きな感銘を与えたと伝えられております。
 近年、軍事問題をめぐる論議の中で、力に対抗するには力以外に方法がないかのごとき論調が強まっております。しかし、私たちは、わが国こそが核兵器の廃絶を初めとする世界の軍縮のために最も説得力を持つ立場にあることを決して忘れてはならないと思います。(拍手)
 このような危険な軍拡競争に、貴重な地球資源とエネルギーが浪費され、それが人類の貧困からの解放を阻み、世界経済の発展にも大きな障害となっているという現実を考えれば、いまこそ日本は、平和を重んずる高い水準の経済力を持つ国として、世界の軍縮のために主導的かつ具体的な行動を起こすべきであると考えます。総理の御見解をお尋ねをいたします。
 次に私は、防衛力の整備とシビリアンコントロールの問題について、総理のお考えをただしておきたいと思います。
 もとより、私たち新自由クラブは、新しい自由主義政党として、日米安保体制はこれを維持し、防衛のための質の高い自衛力の保持は必要であると考えております。しかし同時に、私たちは、現行憲法の精神に基づき、節度ある自衛力の整備を図ってきたことが、今日の日本の国際的地位の向上に大きな力となっていると考えております。
 たとえばことしの夏、アメリカ上院外交委員会東アジア太平洋問題小委員会が公表したいわゆるグレン報告書は、こう述べております。「日本は攻撃的な軍事能力の開発を意識的に差し控える政策をとることによって、かつての敵対的な国々に対し、日本の経済・技術力は軍事的な野心につながるものでもなければ、その他の面でも他の国々の安全を脅かすものでもないことを立証した。こういった見通しが受け入れられたために、日本とその近隣諸国との間に相互の利益となる経済・政治関係が打ち立てられ、現状を安定させたいとする共通の利害関係が強まった。」こうグレン報告書は述べておるのであります。
 ところが総理、政府が来年度予算の編成に当たって、防衛費の取り扱いを別枠扱いにするなど、防衛力の強化策を打ち出しつつあるのに便乗して、この立法府の一部にも、ただ単に陸海空自衛隊の戦力を強化しさえすればよいとする意見が出始めておるのであります。
 重ねて申しますが、私たちは自衛力の整備は必要だと考えます。しかし、その一方で忘れてならないのは、文民による兵力の統制の確立ではないでしょうか。私たちには、政府が自衛力の強化にばかり熱心で、シビリアンコントロールの強化について何一つ具体策を示していないのがどうしても気になるのであります。戦闘力の強化に対応してどう具体的に文民統制を強化されようとするのか、お答えを示していただきたいと思います。
 さて、総理、わが国は、あなたが述べてこられたように、国際社会において友好と協調を旨とし、進んで国力にふさわしい貢献をしていくことが必要だと存じます。その場合、最も悪いことは、世界に向かって約束したことを実行しないことであります。
 たとえば、私がたびたびこの場所から指摘をしている問題の一つに国連大学があります。世界の飢餓の問題などに取り組むために五年前に日本が鳴り物入りで誘致した国連大学は、当初目標とした五億ドルの基金が、現在までのところ一億一千万ドルしか集まっておりません。一億ドルの拠出を約束したわが国は、一千万ドルがいまだに未拠出のままであり、それどころか、誘致の際に日本が世界に示した公約である国連大学本部への土地、建物の提供であるとか、研究研修センターの建築資金の提供などは全くほおかぶりのままであります。そのために、国連大学はいまだに貸しビルに仮住まいをしているのが実情ではありませんか。
 同じような問題に、難民条約への加入問題があります。一九五四年につくられたこの条約に加入していない国は、先進国の中ではもはやわが国だけというのが実情であり、それは政府部内の調整が進まないためではありませんか。しかし、総理、日本が国際社会に占める地位を考え、現に国連が強く加入を期待し続けているというこの事実を重視するならば、一刻も早く難民条約への加入に踏み切るよう、政府部内、特に外務省、厚生省両省間の調整を急がせるべきだと考えますが、政府の御方針を伺っておきます。
 次に、経済問題について、特に財政再建と所得税の関連について伺いたいと思います。
 今日、サラリーマンが感じている重税感は、渡辺大蔵大臣の説明にもかかわらず、相当なものであります。それは、財政再建を理由に所得税減税が五十二年以来全く行われず、所得税の税率が四十九年以来変わらないために、実収入の伸びをはるかに上回るペースで所得税がふえているためであります。
 たとえば、昨年の家計調査報告では、サラリーマンの税引き前の実収入の伸びは七%であるのに対して、所得税は一八・六%もふえ、ことし上半期も所得税が実収入の三倍近いスピードの負担増となる傾向を続けておるのであります。まさに増税なしという名の増税が実態としては進んでいるというわけであり、ことに源泉徴収されるサラリーマンにとっては、いよいよ深刻な、言ってみれば不公平感が感ぜられているようであります。
 所得税は国の税収の四割を占め、そのうちの八割はサラリーマンの源泉徴収分と言われているわけですから、政府の言う自然増収というのは、実は納税者の一部に対して不公平な負担増を強いることと似た意味だ、そう私には思えます。
 そこで、総理に伺っておきたいと思います。間接税の増税などを考える前に、サラリーマンに偏る過重な負担を軽減する、もしくは公平に扱う、そういうおつもりはございませんでしょうか。世のサラリーマンの不満に対し明確な御答弁をいただきたいと思います。
 財政再建に関連して、行政改革についても伺っておきたいと思います。
 財政再建は行財政改革を含む歳出削減からというのが圧倒的な国民世論であります。総理も演説で定員削減の意思を示唆しておられるようでありますが、担当大臣は就任以来、人減らしには触れずに、省庁いじりはやらないと繰り返し発言をしておられます。行政の仕事減らしだけで、有効な歳出削減につながる行政改革の実を上げることができるかどうか、お伺いしたいと思います。
 また、長期かつ総合的な視野を持った行政改革案策定のために、調査審議機関を設立する意向とのことでありますが、これに関連して、十六年前、昭和三十九年九月に行われた臨時行政調査会の答申についてお尋ねしたいと思います。
 故佐藤喜一郎氏を会長に、七人の有識者によって二年半も要したこの答申は、千ページ余に上る膨大なもので、いまなお傾聴すべきものが多いのであります。この大半を歴代自民党内閣が長年放置同然にしていたと考えれば、新設の調査会の答申の行方も推して知るべしであります。総理の御所見と、また調査会の答申をいつまでに求められるおつもりか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
 なお、公明党、民社党、新自由クラブ及び社会民主連合四党がさきに合意し、政府に申し入れた補助金総額の一割削減など十項目の行政改革に対する四党合意を、先ほど総理の御答弁では、参考にする、こう言っておられますけれども、もっと積極的にこの四党合意の行政改革を尊重して、政府が一日も早く実行されるよう重ねて要求すると同時に、御決意を伺いたいと思います。(拍手)
 私は、ここで最近の問題について、二点伺っておきたいと思います。
 ことしの夏、日本列島を覆った冷たい夏は、農業はもちろん、夏物を取り扱う中小企業などにまで深刻な影響を与えました。こうした人々に対し、政府が被害の実態を早急かつ正確に把握するとともに、緊急融資を初めきめ細かな対策を講じるべきは当然であります。ことに青森、福島など東北から北海道にかけての農家は、被害見込み額が六千億円に上るとも言われる大災害にあえいでおります。こうした農家の救済について、政府はどんな具体的施策を実行しようとしておられるのか、重ねてお伺いをいたします。
 と同時に、専門家の説によれば、日本は来年もまた恐らくことし以上の冷たい夏となる可能性が濃いという説があります。もしそうであるならば、政府は、冷夏に強い農作物への転換や品種の切りかえといった長期的視野に立った政策指導を進めておくべきではありませんか。
 地震をも含めた自然災害予知のための体制づくりを充実させるべきことも当然と考えます。来年度予算でこの面に重点的な配慮を加えるおつもりはないか、あわせてお伺いをいたしておきます。
 もう一点、教育立国を主張している立場から、特に伺いたいのは、もはや社会問題にまでなっている校内暴力、つまり学校内における暴力についてであります。
 あちこちの学校で次々と起きている先生への暴力事件、生徒の間のリンチ事件などは、単純に学校管理の問題とか子供への過保護に原因があるなどと片づけてしまってはいけないと思います。入試地獄の深刻さが子供たちに与えているストレスや学習塾の乱立、家庭における親子の対話不足など、思い当たる学校内暴力の原因を一つ一つじみちに解決していく努力が必要だと思います。落ちついた家庭教育をしっかりと定着させることのできる教育環境づくりを進めるなど、これらの問題解決に誠実に取り組むお気持ちがおありかどうか伺っておきます。
 最後に、私は、政治倫理の問題についてお尋ねをいたします。
 最近の政治献金にかかわる問題を見ると、私たちは政治倫理の確立がいよいよ緊要なものであることを痛感せざるを得ません。
 立党以来、政治腐敗の追放、金のかからない政治の実現を主張してきた私たちにも、国民の皆様から批判や誤解を受けざるを得ない部分があったことを、私はまず率直におわびを申し上げます。
 私たちは、どんな事情があろうとも、政治の浄化に対する私たちの理想を変えるものではありません。むしろ、今回の問題を契機に、政治資金のあり方などについてより厳しく対応していかなければならないと決意を新たにいたしております。
 私たち新自由クラブは、個人献金の点検など、辺大蔵大臣の説明にもかかわらず、相当なものであります。それは、財政再建を理由に所得税減税が五十二年以来全く行われず、所得税の税率が四十九年以来変わらないために、実収入の伸びをはるかに上回るペースで所得税がふえているためであります。
 たとえば、昨年の家計調査報告では、サラリーマンの税引き前の実収入の伸びは七%であるのに対して、所得税は一八・六%もふえ、ことし上半期も所得税が実収入の三倍近いスピードの負担増となる傾向を続けておるのであります。まさに増税なしという名の増税が実態としては進んでいるというわけであり、ことに源泉徴収されるサラリーマンにとっては、いよいよ深刻な、言ってみれば不公平感が感ぜられているようであります。
 所得税は国の税収の四割を占め、そのうちの八割はサラリーマンの源泉徴収分と言われているわけですから、政府の言う自然増収というのは、実は納税者の一部に対して不公平な負担増を強いることと似た意味だ、そう私には思えます。
 そこで、総理に伺っておきたいと思います。間接税の増税などを考える前に、サラリーマンに偏る過重な負担を軽減する、もしくは公平に扱う、そういうおつもりはございませんでしょうか。世のサラリーマンの不満に対し明確な御答弁をいただきたいと思います。
 財政再建に関連して、行政改革についても伺っておきたいと思います。
 財政再建は行財政改革を含む歳出削減からというのが圧倒的な国民世論であります。総理も演説で定員削減の意思を示唆しておられるようでありますが、担当大臣は就任以来、人減らしには触れずに、省庁いじりはやらないと繰り返し発言をしておられます。行政の仕事減らしだけで、有効な歳出削減につながる行政改革の実を上げることができるかどうか、お伺いしたいと思います。
 また、長期かつ総合的な視野を持った行政改革案策定のために、調査審議機関を設立する意向とのことでありますが、これに関連して、十六年前、昭和三十九年九月に行われた臨時行政調査会の答申についてお尋ねしたいと思います。
 故佐藤喜一郎氏を会長に、七人の有識者によって二年半も要したこの答申は、千ページ余に上る膨大なもので、いまなお傾聴すべきものが多いのであります。この大半を歴代自民党内閣が長年放置同然にしていたと考えれば、新設の調査会の答申の行方も推して知るべしであります。総理の御所見と、また調査会の答申をいつまでに求められるおつもりか、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
 なお、公明党、民社党、新自由クラブ及び社会民主連合四党がさきに合意し、政府に申し入れた補助金総額の一割削減など十項目の行政改革に対する四党合意を、先ほど総理の御答弁では、参考にする、こう言っておられますけれども、もっと積極的にこの四党合意の行政改革を尊重して、政府が一日も早く実行されるよう重ねて要求すると同時に、御決意を伺いたいと思います。(拍手)
 私は、ここで最近の問題について、二点伺っておきたいと思います。
 ことしの夏、日本列島を覆った冷たい夏は、農業はもちろん、夏物を取り扱う中小企業などにまで深刻な影響を与えました。こうした人々に対し、政府が被害の実態を早急かつ正確に把握するとともに、緊急融資を初めきめ細かな対策を講じるべきは当然であります。ことに青森、福島など東北から北海道にかけての農家は、被害見込み額が六千億円に上るとも言われる大災害にあえいでおります。こうした農家の救済について、政府はどんな具体的施策を実行しようとしておられるのか、重ねてお伺いをいたします。
 と同時に、専門家の説によれば、日本は来年もまた恐らくことし以上の冷たい夏となる可能性が濃いという説があります。もしそうであるならば、政府は、冷夏に強い農作物への転換や品種の切りかえといった長期的視野に立った政策指導を進めておくべきではありませんか。
 地震をも含めた自然災害予知のための体制づくりを充実させるべきことも当然と考えます。来年度予算でこの面に重点的な配慮を加えるおつもりはないか、あわせてお伺いをいたしておきます。
 もう一点、教育立国を主張している立場から、特に伺いたいのは、もはや社会問題にまでなっている校内暴力、つまり学校内における暴力についてであります。
 あちこちの学校で次々と起きている先生への暴力事件、生徒の間のリンチ事件などは、単純に学校管理の問題とか子供への過保護に原因があるなどと片づけてしまってはいけないと思います。入試地獄の深刻さが子供たちに与えているストレスや学習塾の乱立、家庭における親子の対話不足など、思い当たる学校内暴力の原因を一つ一つじみちに解決していく努力が必要だと思います。落ちついた家庭教育をしっかりと定着させることのできる教育環境づくりを進めるなど、これらの問題解決に誠実に取り組むお気持ちがおありかどうか伺っておきます。
 最後に、私は、政治倫理の問題についてお尋ねをいたします。
 最近の政治献金にかかわる問題を見ると、私たちは政治倫理の確立がいよいよ緊要なものであることを痛感せざるを得ません。
 立党以来、政治腐敗の追放、金のかからない政治の実現を主張してきた私たちにも、国民の皆様から批判や誤解を受けざるを得ない部分があったことを、私はまず率直におわびを申し上げます。
 私たちは、どんな事情があろうとも、政治の浄化に対する私たちの理想を変えるものではありません。むしろ、今回の問題を契機に、政治資金のあり方などについてより厳しく対応していかなければならないと決意を新たにいたしております。
 私たち新自由クラブは、個人献金の点検など、外国との比較で見て相当低く、また有業人口に占める納税人員の割合もかなり低いのが実情であります。このような負担水準の実情や厳しい財政の現状を考えますと、財政の再建が成るまでは、物価調整減税を含めまして、所得税減税は御容赦を願わなければならないと考えております。
 国家公務員の定員管理については、昭和四十三年度以来、累次にわたり定員削減計画を策定し、計画的な削減を行っておりますが、一方で国立学校や国立病院などの新たな増員需要に応じながらも、五十五年度までの十三年間に約九千人の定員減を行ったところであります。今後とも、五十五年度を初年度とする第五次定員削減計画を着実に実施し、厳正な定員管理を行うことによって公務員数の縮減に努めてまいりたいと思います。
 なお、今後は仕事減らしを中心に行政の減量化に取り組むこととし、これを通じて要員の縮減を図るよう努めてまいりたいと存じます。
 御指摘の第一次臨調の答申は、昭和三十九年に行われたものであり、その後の行政改革の基礎となってまいりました。しかし、その後、行政を取り巻く経済社会の情勢が変化してまいりましたので、新しい時代に即応した行政のあり方について改めて抜本的な検討を行う必要を生じていると判断いたしましたので、新たに臨時に総合的な調査審議機関を設置することを検討いたしております。審議の期間は一応二年程度を考えております。
 行政改革についての四党合意による御提言は、私も拝見いたしております。せっかくの御提言でありますので、十分参考にさせていただきたいと存じております。
 本年の冷害等による被害の実態把握については、農林水産省において調査を進めておりますが、被災農家に対しては天災融資法及び激甚災害法の早期発動の準備を始めており、また、農業共済金の早期支払い、被災地での重点的な公共事業の実施などの対策を講ずることといたしております。被災農家はまことにお気の毒でありますので、対策に万全を期してまいりたいと存じます。
 また、冷夏に強い農作物への転換指導を進めるよう配慮せよとの御意見でございました。今回の冷害の経験を生かし、そのような方向で試験研究や農業技術、経営指導を進めることを検討いたさせております。
 冷夏の中小企業への影響の実態把握につきましては、すでに本年八月、通産、農林水産両省が調査を行ったところであります。同調査結果に基づき、冷夏の影響で経営の安定に支障を生じている中小企業に対しましては、金融面から中小企業体質強化資金助成制度を機動的に活用することといたしました。また、冷夏の影響で売り上げの減少が著しい業種を中小企業信用保険法の不況業種として追加指定し、信用保証協会の保証を通常の債務保証限度額とは別枠で利用できるよう措置いたしました。
 地震予知につきましては、東海、南関東地域を中心に、関係省庁、大学の分担、協力のもと、予知データの収集、予知体制の強化充実を図ってまいりました。
 暴風雨、低温、干ばつ等の予測につきましても、予測精度向上のため、各種観測施設の整備、技術の開発、改善に努めているところであります。
 今後とも、地震を含めた自然災害予知の充実を期し、一層の努力を重ねる所存であります。
 最近学校内暴力の増加が見られることは、まことに遺憾でございます。学校内暴力の防止のためには、何といっても、教師が生徒一人一人の個性をつかみ、学校や社会において好ましい人間関係を保つことができる人格を育て上げていくことが肝要でないかと思います。また、生徒の家庭や地域社会とも密接な連携を図り、教育の場と生徒の心の荒廃を防がなくてはならないと思います。
 政治倫理の確立は、政治に対する国民の信頼を得る原点であり、所信表明でも明らかにしたとおり、当面する緊急の課題の一つであると考えております。
 このため、政府としては、さきの通常国会で廃案となった政治家個人に係る政治資金の明朗化を図るための政治資金規正法の改正案を今国会に提案し、御審議をお願いいたしたいと考えております。
 政党法の制定については、議会制民主主義の根幹に触れる重大問題でありますし、また、政党本位の選挙を行うためには選挙制度をどのように改めるかということにも深くかかわる問題でありますので、政党制度、選挙制度の基本的なあり方に関する論議の推移を見ながら慎重に検討すべきものと考えております。
 なお、政府の情報の公開につきましては、これまでも白書を初めとする各種政府刊行物の発行などを通じて努力をしてまいりましたが、さらに、本年五月政府は閣議了解を行い、情報公開を一層円滑に行うため所要の改善措置を講ずることとしたほか、今後の課題として、各省庁共通の統一的公開基準の策定、わが国の実情に合った情報公開に関する法制化の諸問題などについても、幅広く検討を進めることといたしております。(拍手)
○議長(福田一君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
○議長(福田一君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 楢崎弥之助君から、海外旅行のため、十月十七日から二十八日まで十二日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
○議長(福田一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三十九分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        法 務 大 臣 奥野 誠亮君
        外 務 大 臣 伊東 正義君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        文 部 大 臣 田中 龍夫君
        厚 生 大 臣 園田  直君
        農林水産大臣  亀岡 高夫君
        通商産業大臣  田中 六助君
        運 輸 大 臣 塩川正十郎君
        郵 政 大 臣 山内 一郎君
        労 働 大 臣 藤尾 正行君
        建 設 大 臣 斉藤滋与史君
        自 治 大 臣 石破 二朗君
        国 務 大 臣 大村 襄治君
        国 務 大 臣 鯨岡 兵輔君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 中川 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 中山 太郎君
        国 務 大 臣 原 健三郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 角田禮次郎君
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