第094回国会 本会議 第7号
昭和五十六年二月十九日(木曜日)
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  昭和五十六年二月十九日
    午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 北海道開発審議会委員の選挙
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)、法人税法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時七分開議
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
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 北海道開発審議会委員の選挙
○議長(福田一君) 北海道開発審議会委員の選挙を行います。
○鹿野道彦君 北海道開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
○議長(福田一君) 鹿野道彦君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、北海道開発審議会委員に
      箕輪  登君    川田 正則君
      高橋 辰夫君    池端 清一君
   及び 吉浦 忠治君を指名いたします。
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(福田一君) この際、内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣渡辺美智雄君。
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、所得税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 所得税につきましては、最近における社会情勢の変化等に対応して所得税制の整備合理化を行うことといたしております。
 まず、家計を助ける主婦などに対する配慮といたしまして、控除対象配偶者などの所得要件につきまして、給与所得等に係る所得限度額を現行の二十万円から二十九万円に引き上げるとともに、父子家庭のための措置として、妻と死別し、または離婚した者のうち一定の要件を満たす者につきまして、寡婦控除に準じた所得控除を認めることといたしております。
 また、豪雪等災害に直接関連して支出した金額が年間五万円を超える場合に、その超える部分の金額を雑損控除として所得控除できることとするほか、所要の改正を行うことといたしております。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 法人税につきましては、現下の厳しい財政事情及び最近における社会経済情勢に顧み、法人税の税率を引き上げるほか、制度の整備合理化を行うことといたしております。
 まず、財政体質の改善に資するため、相当規模の増収措置を講ずることとし、法人税の税率を一律二%引き上げることといたしております。
 また、中小企業に対する配慮として、中小法人に対する軽減税率の適用所得限度を年七百万円から年八百万円に引き上げることとするほか、所要の改正を行うことといたしております。
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 租税特別措置につきましては、現下の厳しい財政事情及び最近における社会経済情勢に顧み、法人税法における税率の引き上げに対応して配当軽課税率等の引き上げを行うとともに、租税特別措置の整理合理化等を推進するほか、エネルギー対策の促進に資するための措置を講ずる等、所要の改正を行うことといたしております。
 すなわち、第一に、法人税につきましては、ただいま申し上げました法人税法の一部を改正する法律案により、その税率を二%引き上げることとしておりますが、これに対応して配当軽課税率等を一律二%引き上げることといたしております。
 第二に、企業関係の租税特別措置につきましては、適用期限の到来するものを中心に見直しを行うこととし、産業転換設備等を取得した場合の特別税額控除制度を廃止するほか、特別償却制度及び準備金制度の整理合理化等を行うことといたしております。また、登録免許税の税率軽減措置等につきましても所要の整理合理化等を行うことといたしております。
 第三に、現下の緊急の課題とされるエネルギー対策の促進に資するため、省エネルギー設備、石油代替エネルギー関連設備及び中小企業者の取得する一定の機械等につきまして、三年間限りの措置として、取得価額の三〇%の特別償却と取得価額の七%の特別税額控除とのいずれかの選択を認める措置を講ずることといたしております。
 第四に、交際費課税制度につきましては、定額控除額を超える交際費支出額のうち、前年同期の交際費支出額を超える部分は全額損金不算入とし、課税の強化を図ることといたしております。
 第五に、普通乗用自動車等に対する物品税の軽減税率につきましては、課税物品相互間の負担のバランス等を考慮し、二・五%引き上げることといたしております。
 第六に、割引債の償還差益につきましては、利子課税とのバランス、割引債の流通性等に配慮しつつ、総合課税のための具体的方法を定めることといたしております。
 第七に、中小企業等海外市場開拓準備金制度等、適用期限の到来する特別措置について、実情に応じその適用期限を延長するほか、所要の改正を行うことといたしております。
 以上、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(福田一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。熊川次男君。
    〔熊川次男君登壇〕
○熊川次男君 私は、自由民主党を代表して、ただいま提案されました所得税法、法人税法、租税特別措置法の各一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。
 昭和五十六年度の税制改正において、公債の発行額を前年度より二兆円減額し、財政体質改善のために、現行の税制の基本的枠組の中において相当程度増収を図る施策を講じ、法人税の六千三百億円を初めとして、酒税、物品税、印紙税及び有価証券取引税など、総額一兆三千九百六十億円にも上る増税が提案されております。
 しかし、国民だれ一人として税負担の高いことを望む者はおりません。他面、政府に課せられた役割り、すなわち社会保障の充実、社会資本の整備、経済の着実な進展など、国民の生活の安定、向上のために欠くことのできない政策を要求するのも、これまた同じ国民であります。
 ここにおいて、五十六年度厳しい情勢の中に、国債二兆円を減額し、赤字財政脱却の第一歩を踏み出そうとする強い決意に心から敬意を表するものであります。しかしながら、今回の一兆四千億円の増収は、国民の汗と涙の結晶、いわば血税によって納められるものであります。
 そもそも税のあるべき姿を考えるときに最も肝要なことは、税負担の公平であります。すなわち、一方においては税制面で、他方においては税執行面で、善良な納税者が納得する公平の確保、これが図られなければなりません。為政者が最も心しなければならない命題だと存じます。
 そこで総理に、税制面及び税執行面において、公平の器に愛情を盛られた、国家に活力を与える、国民に希望の持てる、強い決意でもって税の公平確保を図る基本的なお考えを拝聴いたしたいと存じます。
 ところで、租税特別措置、すなわち特定の政策目的のために税制上の措置を講ずる、いわゆる政策税制については、私は、そのすべてが不公平であるとか、あるいはすべてを是正せよと言うものではありません。政策税制の中には、御案内のとおり個人の少額貯蓄への配慮あるいは中小企業対策、資源・エネルギー対策など、当面わが国が直面している重大な政策、その目的に合致するものがあるからであります。
 しかしながら、こうした政策税制であっても、社会経済の推移によって政策意義の薄れたもの、あるいは効果に疑問の介在するものについては、その見直しを行い、税負担の公平を確保するために努力を怠ってはならないと存じます。
 この意味において、政府が昭和五十一年以来、社会保険診療報酬課税の見直し、利子配当所得の総合課税を俎上に上せるなど、その主要項目について改善が加えられ、また、企業関係の租税特別措置については、全項目の約八五%についてその整理合理化が行われるなど、精力的に進めてきたところの租税特別措置の見直しは、これまた高く評価できるものと存じます。
 しかしながら、税の公平という重要な課題を全うするには、社会、経済の刻々の変動に対応、適合できるよう、常に検討を加え続けなければならないと存じます。
 国民の納税義務は、税に対する信頼の上に立って、初めて可能であると存じます。
 そこで、大蔵大臣に、昭和五十六年度税制改正に当たって、政策意義の薄れたもの、あるいは効果の疑問のある租税特別措置の整理合理化について、どのように取り組まれたか、お尋ねいたします。
 ところで、今回提案されております法人税及び租税特別措置法の改正法案によりますと、法人税率の一律二%引き上げが提案されております。
 御案内のとおり、わが国経済においては法人企業は大きな機能を果たし、企業活動を通じて経済の拡大、雇用の安定などに大きな役割りを果たしてまいりました。
 一部には、法人企業に対し、その税率を、累進税率制を導入して大幅に引き上げるべきだという意見もありますけれども、法人企業の今日まで果たしてきた役割り、諸外国とのバランスなどをあわせ考えるならば、にわかにとり得ない意見と言わざるを得ません。税収を上げるその根源を枯渇させるような政策は決してとるべきではありません。
 そこで、大蔵大臣に、今回の税率の二%引き上げの根拠並びに税率及び累進税率の導入などに対してどうお考えであるかをお伺いし、降壇いたします。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 熊川君にお答えいたします。
 制度面及び執行面の双方を通じまして、税の公平を確保するととに全力を尽くさなければならないことは、熊川議員御指摘のとおりであり、また、そのような努力に欠けるところがあっては、税に対する国民の信頼を得ることができません。
 政府は、熊川議員がお述べになられたとおり、昭和五十一年度以来、積極的に政策税制の整理合理化を進めてきており、また、執行面においても、税務調査の的確な実施に常日ごろ努力しておりますが、今後におきましても、絶えざる努力を続けてまいる所存でございます。
 なお、執行面の一層の適正化を図るため、近く、脱税があった場合にさかのぼって課税ができる期間を現行の五年から七年に延長するなど、一連の制度改正をお願いしたいと予定しております。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 税の公平に対する基本的な考え方、それに関連をいたしまして、租税特別措置の整理合理化の状況はどうだという御質問でございます。
 やはり、租税の公平ということが非常に大切なことであって、一つは制度面、一つは執行面と二つございます。
 主として制度面につきましては、特別措置法というのは、熊川議員の言うように、一概にこれは不公正だということを言うことはできません。一つの政策税制でございます。しかしながら、ややもすると、一遍政策的に優遇を受けますとそこに居座ってしまうという傾向がありがちでございますから、毎年厳しく見直していかなければならない。したがいまして、ことしは、特に増税もお願いしなければならないという年でございますので、企業関係の特別措置の一律の縮減の後を受けて、さらに社会経済の実態に即して洗い直しをやりました。期限の到来するものを中心といたしまして、七十三項目中、二十三項目について実は整理合理化を行ったわけであります。一々ここで読み上げませんが、公害防止の関係とか、廃棄物とかあるいは船舶とか、医療機械とか、いろいろ優遇措置があったのでありますが、それらに対する整理合理化、削減、そういうことを二十三項目やりました。その他の問題について、産業転換投資促進税制というのがあったのですが、これはやめ、そのかわりに、エネルギー問題は非常にいま重要でございますから、その財源をもって、このエネルギー対策のための税制というものは創設いたしました。こういうものは不公平税制でも何でもないのであって、そのときの国が非常に重要な施策として奨励すべきものに充てた。しかも、いままでのものを廃止してその財源の中でやったのでございます。
 さらに、五十五年度ベースで見ますると、特別措置関係の減税額が約九千八百億円ばかりございますが、この大部分、八千億円近いものは中小企業とか個人とか、そういうものばかりでございまして、マル優制度で少額貯蓄に課税しないとか、生命保険料の控除とか、住宅取得の措置とか、そういうふうなものであります。これも、一概に不公正となかなか言い切れないものであります。しかしながら、これらの問題につきましても、皆さんの合意が得られれば将来検討を深めていきたいと考えております。
 それから、法人税率を二%引き上げた根拠は何であるか。
 これは、今回は新しい税はつくらない、しかし経費が非常に膨張する、われわれは極力抑え込まなければならない。一方において二兆円の国債減額を行う。この国債減額は自然増収の中で吸収できましても、自然増収は、地方交付税と国債の利払いと減額の財源で大体なくなってしまうということになって、当然増のものをどうしても賄えない。これは制度的にどうしてもふえてくるわけですから、経費の節減合理化だけではできない。したがって、いろいろな税金に薄く広くお願いをするという考え方でやったわけであります。
 したがって、法人税については、大体諸外国の状況等を見ましても、実効税率というものを考えた場合において日本のものはもう少し上げてもいいんじゃないかという点から、現行の標準税率は四九・四七でありますが、改正案で五一・五五。アメリカの五一・一八、イギリスの五二・〇〇、西ドイツの五六・五二、フランスの五〇・〇〇というようなものと比べて、まあ、この程度のことは、景気対策の問題等もございますが、それほどの影響力はない。したがって、現在の健全な財政運営のために御協力をお願いしたいということで引き上げたわけでございます。
 なお、累進税率のお話がございました。
 これは一部の党からも言われておることでありますが、これはうんともうかっているところに累進的な高い税率をかけろというのですが、何を基準にしてもうかっているというのか。ただ額面が大きくても、資本金が大きければその一割でも、三千億の資本金なら二割もうけても六百億出てくるわけですから、資本金が大きいからというだけで高率の課税をするということは適当でない。資本金に比べて利益率が高い、そういうものを探して課税したらということになると、資本金の小さいところの方が資本金に対する利益率が大きいのです。中小企業がよけい超過累進というわけにはいかないというような点から考えまして、このことは法人税になじまない。
 どうしても大資本、多くの従業員を集めてやらなければできないような企業もあるわけです。石油プラントをつくるとか、鉄鋼、製鉄をやるとか、そういうものはやはり必要があるから大資本を集めてやっておるわけでございますから、そういうものも高率課税をするということになると、果たして国際競争力においてどうなるのか。会社をさらに分割するような問題が出てきてもこれもまずいというようなことで、どこの国でもこれはやっておらないわけです。したがって、先進国大部分はやっておらないということでもあるし、やはり理由があるからやらないわけでございますから、われわれもこれについてはできませんということを申し上げている次第でございます。
 以上であります。(拍手)
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○議長(福田一君) 大島弘君。
    〔大島弘君登壇〕
○大島弘君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法、法人税法、租税特別措置法の一部改正案につきまして、総理並びに関係大臣に質疑を行うものであります。
 まず最初に、わが日本社会党は、野党第一党としまして、かつまた責任野党の立場からも、何でも反対という姿勢ではなく、是は是とし、非は非とする是々非々主義を一貫してとってまいりました。(拍手)この意味におきまして、今回の改正案におきましても是とすべきものが一部ありますが、大部分は非とすべき改正案であると思うものであります。
 まず、所得税法につき、わずかながら是とすべき改正案としましては、寡婦の場合に準じ父と子のみの家庭のための二十三万円の所得控除、また、家計を助ける主婦のために夫が配偶者控除を受けられる妻の所得限度額を、パートタイマーなど給与収入七十九万円まで引き上げたこと、また、今回の豪雪災害に関し、雪おろし費用等について五万円を超える金額を雑損控除としたことなどでありますが、これとても、わが党が長年主張してきたことがようやく不十分ながら実を結んだわけでございます。(拍手)
 総理にお伺いいたします。
 昭和五十三年度の物価上昇率三・四%、五十四年度同四・八%、五十五年度同七ないし八%という物価上昇に対し、五十三年以来四年間所得減税措置が一切とられなかったということであります。特に五十五年度に至りましては、六・九%という春闘相場に対し八%の物価上昇ということは、明白に賃金の目減りが生じているわけであります。
 政府は、事あるごとに、諸外国に比べ日本の所得最低課税限度額は高いといつも弁明しておりますが、それはフローの問題であって、たとえば貧弱な家屋に住んでいるわが国労働者とデラックスなマンションに住んでいる欧米諸国の労働者、あるいは先祖の蓄積遺産を十分に持っている先進国労働者とわが国労働者を比較した、いわゆるストックの面を考慮すると、果たして国際比較のみで解決するものではないと信じます。
 このような点から、今月十日、総評、同盟、中立労連、新産別の労働四団体が、その最低要求として、夫婦子供二人の標準家庭の課税最低限度額を、現行二百一万五千円から二百十八万円へ引き上げることを決定しております。わが党も、従来、低所得者へは緩く高額所得者にはきつくという公平の意味からも、課税最低限度の引き上げを要求しているのですが、この労働四団体の最低の要求を実現すれば、約三千億の予算措置が必要であります。これにつき、物価対策費、予備費などによって予算修正をする考えがないかどうか、総理のお考えを日本の全労働者の前に明白にお示しいただきたいと思うのであります。(拍手)
 第二に、法人税及び租税特別措置法の改正案につきまして質疑を行います。
 法人税率を五十六年四月以降一律に二%引き上げるという今回の改正案は、全国から大きな非難の的となっております。全国で約百三十万という法人は一律二%の税率アップを受けるわけで、かくては中小法人の倒産、首切り、さらには景気沈滞へ進むことは必至と考えておりますが、この点に対する大蔵大臣のお考えをお示しいただきたい。
 さらに、協同組合等の税率まで二%引き上げておりますが、このような組合は、法人税の負担を回避するため、留保分の加入組合員に事業分量配当してしまって、結局法人税引き上げの目的が達せられないと思うのでございますが、この点につきましても大蔵大臣のお考えをお伺いいたしたいと思うのであります。
 さらに、大蔵省の調査によりましても、法人の実質負担率は、一億未満で三五・一%、百億以上で三四・五%と、大法人ほど実質負担率が軽くなっております。しかも、資本金十億以上の法人で法人税収入の約半額を占めている現状を見るとき、少なくとも資本金十億あるいは百億以上の大法人または一定額の利益を産出した大法人に対しましては、累進税率をとるのが応能分担の租税原則からもまさに正論であり、わが党の多年にわたる要求でもあります。ただいま大蔵大臣は、この累進税率は諸外国でもやってないと申しますが、現にアメリカでも三段階税率を適用しているのであります。
 私は、この累進税率をとる考えはあるかないか、ないとすれば何ゆえか、再び大蔵大臣のお考えを明白にお示しいただきたいと思います。(拍手)
 なお、一月二十八日の国務大臣の演説に対する質疑において、わが党の山田耻目議員のこの種の質問に対し、大蔵大臣は「資本金が大きいからよけい利益が出る、従業員も何万といるわけです。したがって、よけい出たから重税を課せるのだと言っても、資本金の大きいことを忘れてしまっても困る。」――「資本金の大きいことを忘れてしまっても困る。」と言っていますが、これはどういう意味でございましょうか。私は、資本金の大きいほど実質負担率が少ないのは応能分担の税法原則に反していないかと尋ねているのであります。さらに続いて大蔵大臣は、「それならば資本金に比例して課税したらどうかという意見もありますが、そうなればみんな会社は分割してしまい、生産性が上がらない」云々と答弁しておりますが、大法人に対し標準税率より何%とかの重課税率を適用することによって、直ちに会社分割を考えるようなことがあるでしょうか。私は、この答弁を聞いて大蔵大臣の常識を疑うものであります。(拍手)
 大蔵省の歳出百科を見ましても、また総理の所信表明を聞いても、どこにも昭和二十七年以来約五万人体制のまま三十年間据え置いておる税務署の職員について触れていない。私は、財政再建と税務執行の面について政府の所信を問うものでございます。
 国税庁の最近の発表によると、税務職員が実地調査に入ると、法人税においては約八〇%、所得税においては約九〇%と、いずれも十中八、九は税の申告漏れが発見されているのであります。
 ここで問題となるのは、こうした実地調査が、税務職員の人手不足のために十年に一度という比率になっていることであります。たとえば、昭和五十四年、法人税の実地調査率は約一〇%であり、それに従事する担当者はわずかに七千人弱であります。
 こうした条件のもとでは、ばれたら納めるといったような納税意識の低下を食いとめることは至難のわざであります。脱税が悪質、巧妙化し、かつ大型化している現在、人手をほとんどふやすことなく、公正な税務行政をやれと言うのでありましょうか。
 今後、法人数を初め納税者数の増加、脱税不正の増加を思うとき、現行の国税関係職員の定員を据え置くとすると、法人税の実施調査率は六%程度に急激に低下せざるを得ないと考えるのであります。
 加えて、グリーンカード制度の導入により、一億枚にも及ぶであろうグリーンカードの交付事務が五十八年一月から開始されることとなっておりますが、これを一体だれが行うのでありましょうか。単なるアルバイターやコンピューターの導入で済む問題でありましょうか。千葉県松戸税務署管内だけでも、この事務処理は約百万件に及ぶと聞いております。そうして、昭和五十九年以降のグリーンカードのメンテナンス、すなわち二重のチェック、人格なき社団、非居住者等のチェックを、限られた定員の中でこれを行えと言うのでありましょうか。
 総理は、予算委員会において、昭和五十七年度の所得税減税と引きかえに大型新税を考えていると示唆しておりますが、この処理人員について、どのような考えをお持ちなのでありましょうか。
 アメリカでも、一九六五年の国税職員が一九七九年には約四〇%の増員がなされているのであります。およそ国税職員の定員については、歳入官庁の特殊性から考えるべきであって、最近の国税庁発表のデータから推計試算したところでも、税務職員仮に一万人増員したとして、税の増収は、もろもろの波及効果を合わせると、国税だけで一兆二千二百億、地方税へのはね返りその他申告向上等の波及効果を合計すると、約二兆円の増収が見込め、赤字公債減額のための大衆増税の必要がないと思いますが、いかがでございましょうか。
 なお念のため、ここで私が仮に税務職員の増加と申し上げておりますのは、主として大法人や不正所得者に対する調査のための増員でありまして、決して徴税強化のことを申し上げていないことは、改めてお断り申し上げておきます。
 しかるに政府は、第五次定員削減計画で五年間に二千百九十九名の税務職員を削減しようとしております。人を減らすだけが行政整理の目的でしょうか。公平、公正な均衡なる所得の捕捉と適正な課税実現のために、歳入官庁である税務の定員管理につきましては定員削減計画の対象外にすべきだろうと考えますが、中曽根行政管理庁長官の所信をお伺いしたいのであります。
 最後に、不公平税制の代表的なものとして貸し倒れ引当金及び退職給与引当金について申し上げます。
 今回、貸し倒れ引当金につき、債権額の千分の五から千分の三の費用化に改めておりますが、実際はどうか。たとえば都銀等につきましては、その実際の貸し倒れ発生率は何と〇・〇〇九%、これは五十三年度下期でございますが、で、税法が費用化を認める率と著しい乖離が生じております。
 さらに退職給与引当金でありますが、全従業員が退職した場合に要する退職金額の五分の二の積み立てを現行税制で認めておりますが、実際はどのくらい乖離があるかと代表的企業について述べますと、東京電力の五十四年三月末残高約千三百億の積み立てに対し実際使用額は約百三十億、つまり一〇%、新日鉄では千二百億の積立残高に対し実際使用額は百二十億強で同じく一〇%、日立製作所に至っては、八百六十億の積み立てに対し実際使用額はわずか五十億で六%にすぎないのであります。
 このように、銀行や大企業を優遇する現行税制の不公正を解消し、かつ、先ほど述べましたような国税職員の適正な定員管理、つまり、税制及び税の執行面の改正によって、今回のごとき一般増税によらないで財政再建の方法があると思うのですが、総理並びに大蔵大臣のお考えを、その理由を明示して全国民の前に明らかにしていただくことをお願いし、私の質疑を終わる次第でございます。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 大島さんにお答えいたします。
 まず、所得税減税を行い、また、そのために予算を修正するつもりはあるのかとのお尋ねでございますが、すでに、いろいろの機会に申し上げましたように、わが国の財政の現状及びわが国の所得税の負担水準などから見て、所得税減税はしばらくお許しをいただきたいと存ずるのであります。したがって、五十六年度予算の修正は考えておりません。
 次に、政策税制の見直し、適正な税務執行の確保による増収で財政再建ができるのではないかとのお尋ねでございます。
 先ほど熊川議員にもお答えを申し上げたとおり、税の公平の問題はきわめて重要な問題でありますので、制度面、執行面の両面にわたりまして公平の確保に最大の努力を傾注してまいりたいと存じますが、それだけで財政再建を達成できるかと言えば、私はなかなかむずかしいのではないかと思っております。
 私は、財政再建の基本は、むしろ歳出面において、高度成長下で肥大化した歳出構造を徹底的に見直し、合理化するということにあると考えております。五十六年度予算でも、一般歳出の伸び率を四・三%という二十五年ぶりの低い率に抑制いたしましたが、今後も引き続き歳出の合理化に重点を置いて財政再建に当たりたいと考えております。
 税務職員の増員問題など残余の御質問につきましては、所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 中小法人まで一律に二%上げなくたっていいじゃないかというお話であります。
 中小法人と大法人とでは御承知のとおり基本税率で二八%と四〇%、こうなっておるわけです。その差は現在一二%ございます。これは昭和三十年ごろはもっと低い数字でございまして、大法人と中小法人は大体五%ぐらいの格差があったのです。仮にこれを引き上げないということになると、一二%が二%違って一四%差が開くということになってまいります。そのことは個人形態で営む中小法人との問題で非常に不公平が出てまいりまして、かなり大きな個人形態の事業もあるし、中小法人でもいろいろな個人形態と似たようなものもたくさんあるわけです。したがって、そことの不公平、格差というものの不公平が起きないように、やはり税制は公正にということが大事ですから、そういうことで今回は二%引き上げる。しかしながら、七百万円以下というものを八百万円まで、結局月給を取ったりなんかして残り、会社の利益ですから、それが八百万円までのものは軽減税率を適用するということにいたしました。したがいまして、八百万円以下の法人というのは大体百二十三万社で、中小法人数百三十九万社の約九〇%、中小法人の九割というのが恩恵を受ける税率の中にある、こういうこともお考えいただきたい、かように考える次第でございます。
 それから、協同組合の税金を上げたらば、これは事業分量配当で、税金を払いたくなければみんなに利用分量で歩戻ししちゃえばいい、そうなったらば思ったほど税金取れないのではないか。これは一つ考えられることなんでございますが、しかし、歩戻し制度はいまでもございまして、歩戻しは適当にいまでもやっておるのです、やっておるところは。しかし、それは今度はもらった方に課税になります。これは一種のリベートですから、したがって、それが事業所得になる場合もあるし、そのリベートが雑所得になる場合もあるし、何でもらったか、結局、日常生活品を買ったものでもらったのか、農機具とか肥料でもらったのか、あるいは何でもらったのかという利用分量、あるいは預金を積んだためにそれに比例してもらったのか、いろいろ形態によって違いますが、そこにはもらった方に課税の問題が起きてまいります。したがいまして、一〇%も上げるというなら話は別ですが、二%程度であっては、私は、そのために事業分量配当が非常にふえるというようにも考えておりません。
 それから、その次は、大法人に対する重課の問題について、これは先ほども私は熊川議員にお話をしたわけでございますから、くどいことは申しませんが、いずれにいたしましても企業規模というものが大きくなければやっていけない企業もございます。大きい企業は確かに資本金も非常に、何千億という企業がありますから、大きければやはり一割配当するにしても金額的には大きな数字を上げなければ一割配当できない、一千万で一割は百万だし三千億で一割は三百億ということになるわけですから。だから、大きいから重課をするということは現在の法人になじまない。
 アメリカなどで軽課措置があるじゃないか。確かにございます。日本でもございます。日本でも四二%あるいは三〇%という軽課措置が二段階であるわけでございます。したがって私は、その点は、中小企業の約九割、八百万以下の所得の法人をカバーする制度があるわけですから、現在はそれでよろしいのでなかろうか、さように考えております。
 それから、国税職員の増員を図るべきだ。私も極力ふやしていただきたいわけでございますが、ただ、脱漏の問題で、調査をしてみれば八割は脱漏がある。だからそれと同じようにあるかというと、そういうことはないわけでありまして、これはやはり税務署が調査に行くのには、優良で――大体リストがあるのですよ。それで、いつ調べてもいいというところは、やはり余り調査に行かない。それから毎年いろいろ問題を起こすような人のところはちょこちょこ行くということで、行けばぼろが出そうなところをやはりねらって行くわけですね。でございますから、その比率をもって一律に全部脱漏だというふうにはなかなか言えないと思いますが、しかしながら実調率をある程度高めることは非常に必要である、その点は私は賛成でございます。ましてグリーンカードを実行するということになると、これはどうしても人手が足らぬわけですから、これにつきましては御理解を得まして、今後とも定員の充実には努めてまいりたいと思いますので、何分の御支援方をお願い申し上げます。
 それから、金融機関の貸し倒れ引当金、退職給与引当金、こういうものは不公平じゃないかというお話であります。金融機関の貸し倒れにつきましては、実際と積立率との間で乖離があるという御指摘がございます。そういうような乖離のないようにするために税制はちょいちょい直しておるわけでございますが、金融保険業の貸し倒れ引当金につきましては、五十六年度の税制改正におきましても、その法定繰り入れ率を千分の五から千分の三に引き下げる予定でございます。退職給与引当金につきましては、五十五年度において、その累積限度額を期末退職給与の要支給額の百分の五十から百分の四十に下げたところでございますが、これはもっと下げたらいいじゃないかということについては、私も考えておるわけでございますが、これらにつきましては、将来の検討課題とさしていただきたいと存じます。
 それから引当金の見直し、不公正税制の是正、適正な徴税確保という問題については、さらに一層、負担の公平、それから執行面において、特にいまお話があったように脱税者に対して十分手が回るように、いろいろな人員の面、やり方の面で十分に配慮して、その点は、徴税の公平な確保をして信頼を得られるように努力してまいる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 税務職員の御苦労に対しましては、われわれもよく理解もし、配慮もしてあげなければならないと思っております。
 政府といたしましては、ただいま総定員法のもとに第五次定員削減計画を実施中でございまして、昨年から始めて、五年間に三万七千六百五人の定員を減らすということを、いま進行さしておる最中でございます。
 しかし、一方において、どうしても重大なところにつきましては補充を認めなければなりませんので、いろいろな学校関係、病院、国税、外交当局、司法関係の登記事務所あるいは海上保安官、そういう方面についてはできるだけ増員の配慮もしてきておるところでございます。
 本年度におきましては、学校や医科大学が大分できまして、そちらに非常に人員を要することになりました。そこで、一般行政職から約一千百人を減らしまして、それから現業官庁から約千百人ぐらいまた減らしまして、約二千二百人ぐらいを、新しくできる国立大学の学部や医科大学あるいは病院、そちらの方に大部分とられてしまったわけでございます。そこで、何とかしてプラスマイナスをゼロにし、できたら百人以上はネットで減らしていかなければいけない、そういう方針で査定をいたしまして、大蔵省におきましても実際は定員を百五十二人減員しておりますし、各省軒並みに減らしておりまして、それを大学や病院やあるいはそのほかのところへ持っていったわけでございます。
 国税につきましては、第一線は四百三十八人増員をいたしました。これは、大蔵省の内部で総務とか管理とか施設方面から人員を浮かしていただきまして、そして税務の第一線へそれを充当していただいたわけで、国税全体といたしましては、自然退職のプラスマイナスを含めましてゼロということにして、そして実際は四百三十八人が第一線で増員している、こういう形にして、何とか御苦労していただくことにしたわけでございます。
 しかし、国税の皆さんが非常に御苦労していることはわれわれもよく理解しておりますので、今後ともできるだけ配慮を加えて、でき得べくんば御労苦に報いるようにしてあげたいと思っております。ただ、総定員法の枠外にするということは、現在の状況では非常にむずかしいと思いますので、枠内におきまして最大限の努力をしてまいりたいと思う次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 鳥居一雄君。
    〔鳥居一雄君登壇〕
○鳥居一雄君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに大蔵大臣に対し質疑を行うものであります。
 政府は、昭和五十六年度を財政再建元年と名づけ、その成果は、国債発行額を前年に比べ二兆円減額したことにあるとしております。もとよりわれわれも国債の減額二兆円を否定するものではありません。しかし、国債減額二兆円が税制改正案に与えた影響を見ると、いわゆる肥大化した財政のむだ遣いの洗い直しに見るべき成果を上げないまま、大衆課税の強化を一層図っている点はまことに重大です。特に、所得税減税の見送りによる見えざる増税二兆七千六百九十億円はその最たるものであり、巷間、増税元年と言われるゆえんとなっております。
 一昨年閣議決定した行政改革は、特殊法人を五十五年度から七年間に十八法人削減し、行政のむだを省くことにありました。その初年度である今年度、特殊法人の数は、見かけでこそ減るものの、看板をかけかえただけの改組や移管、それに統廃合と引きかえた新設法人の誕生で、高級官僚の天下りポストがたった一つ減っただけであります。
 補助金など国の支出は、節減どころか逆に二百三十六億七千万円もふえ、人員も差し引き三百九十人ふえる結果となって、経費節減というのはどこ吹く風かといった実態になっております。一体行政改革はどこへ行ってしまったのでしょうか。
 また検査院の報告書によると、五十四年度不当事項が各省庁、公社、公団など合わせて百七十九件、金額にして五千七百二十五億六千六百万円のむだ遣いを指摘しております。件数では前年に比べやや減ったものの、金額では二十倍以上にふえ、これまでの最高になっております。特に予算上のむだ遣いは百七十六件、三百三十六億四千五百万円に上り、前年の二倍を超えております。政府の綱紀粛正に取り組む姿勢を示したものの、その効果はなく、その後、逆にエスカレートしてきたのであります。
 政府がやるべきことをやらないで増税路線を突っ走る、国民は大いなる不安と不平と不信の念を抱かざるを得ないのであります。これでは、既存の税制の枠内の増税だとか財政再建元年と言っても、国民のコンセンサスは全く得られるわけがありません。こうした立場から、私は総理に伺います。
 総理の諮問機関である政府税制調査会は、去る十一月、「財政体質を改善するために税制上とるべき方策についての答申」、この中で「歳出の増加率が国民総生産の伸びを上回らない」ことを「強く望む」、こう提言いたしております。
 しかるに、国会に提案されました今回の昭和五十六年度予算案を見ますと、一般会計の歳出の対前年度伸び率は九・九%であります。比べて政府の経済見通しによる名目国民総生産の伸び率は九・一%になっております。なお、仮に昭和五十六年度予算の一般会計の伸び率が九・一%に抑えられたとしたら、歳出額で三千二百三十七億円の節約ができたことになります。同時に、税制改正に対しても、所得税減税を可能にすることを初め、提案されている税制改革案とは別の選択の道をもたらしたことは容易に想像できるのであります。
 もちろんわれわれも、歳出の規模が、経済動向や国民生活の向上に与える影響から見て、単に小さければすべてよしとするものではありません。しかし総理、政府税調の中期答申は、増税が国民に与える影響を考慮して歳出面まで言及した異例の答申とも言われております。したがって、答申に盛られた提言が初年度から実現されなかったことについては、納得のいく説明が必要と考えますので、総理の答弁を願います。同時に、次年度以降はどう対処されるつもりか、あわせて伺いたいのであります。
 また、この中期答申は、「広く消費に着目する間接税」、いわゆる大型消費税の導入を必要といたしております。とうした大型消費税導入論の根拠は、この答申が、国税収入の伸びが平均して一二%程度としていることに見受けられます。しかし、近年の税収の伸び率は、五十四年度が決算額で二一・一%、五十五年度が補正予算額で一四・四%、五十六年度が当初予算額で一八・九%と、いずれも税調答申の一二%よりはるかに高いものであります。
 私は、こうした税収の伸び率動向から見ても、総理が好調な税収が得られるための経済財政運営に努められれば、伸び率一二%を根拠とする大型消費税の導入は、その必要がなくなるのであります。したがって、この際、総理に、政府税調が答申する「広く消費に着目する間接税」の導入は断念することを明言していただきたいのでありますが、総理の勇気ある答弁を求めます。
 なお、新聞報道によりますと、自民党の政策責任者が、グリーンカード制度の見直しもあり得ると述べたと報道されております。利子配当の総合課税は、税負担の公平化のため必要であり、しかも国会で十分審議の上、所得税法の改正が成立したものでもあります。しかるに、総合課税が実施される前から不公平税制の復活をほのめかすような発言は、いささか理解に苦しむところであります。利子配当の総合課税とグリーンカード制度の実施についての総理の見解と決意を伺いたいのであります。
 次に、所得税減税について伺います。
 政府の四年連続の所得税減税の見送りは、大衆課税の強化など、国民生活を圧迫することはもとより、不合理な増税であることから、財政再建についても国民の合意と協力が得られない、その原因になっております。
 われわれも、五十六年度予算編成の過程から今日に至るまで、申し入れ、本会議での代表質問、予算委員会での質疑など、再三にわたりまして所得税減税の実施を強く要求してきたのであります。われわれの要求に対する総理を初め政府の答弁は、要約しますと、「財源がない、わが国の所得税は国際比較すると軽い。」、こういうものです。私は、政府の答弁ではどうしても納得しがたいのであります。
 まず、財源でありますが、これまで多くの方から指摘がありましたように、政府の税収見積もりは低過ぎると言わざるを得ません。近年の税収を見ても、政府は、昭和五十三年度四千七百五億円、五十四年度二兆二千三百億円、五十五年度は補正予算額で七千三百四十億円と、毎年度過少見積もりをいたしております。とうした傾向や民間の経済研究機関の予測などから、五十六年度も少な目に見ても、政府の税収見通しより三千億円程度の増収があると考えるのがより妥当であります。
 また、われわれは、政府の税制改正による増収額一兆三千九百六十億円のすべてに反対しているわけではありません。たとえば法人税の引き上げについても、大法人分は諸般の状況からやむを得ないと考えております。さらに、政府の税制改正案に含まれている金融保険業の貸し倒れ引当金の繰り入れ率の引き下げや、有価証券取引税の税率の引き上げも理解するところであり、かつ、いわゆる不公平税制の是正の見地から、政府案をより強化してもよいものであると思うのであります。
 私は、政府がこうした税の自然増収の正確な見積もり及びいわゆる不公平税制の是正の見地から、政府税制改正案の見直しなどを実施したとすれば、財源難は解決できるものと申し上げたいのであります。したがって、大蔵大臣に対し、財源難を理由に所得税減税を拒む姿勢を撤回されること、われわれが要求する財源対策に取り組まれることを望みますが、誠意ある答弁を願います。
 同時に、租税負担率や課税最低限の国際比較のみで、所得税減税は無用と強調されることも考え直していただきたいのであります。この点について、予算委員会におけるわが党の正木委員の質問で明らかになったことでありますが、わが国の国民生活の水準は、先進国と比べて決して高いとは言えないのであります。
 たとえばエンゲル係数でありますが、日銀の国際比較統計によって昭和五十二年度で見た場合、わが国の三二・六%に対し、アメリカ二〇・一%、西独二六・五%、フランス二九・六%、イギリスが三〇・五%となっており、わが国が最も高いのであります。
 このほか、国民一人当たりの可処分所得、土地住宅価格などの国際比較によっても、所得税減税が無用などとは言えないはずであります。国民生活全体に配慮した立場から、所得税減税に対し、大蔵大臣の英断を求めるものでありますが、所信をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、法人税について伺います。
 法人税の引き上げに当たって、中小法人に対する軽減税率も一律二%で引き上げることは、中小法人重課税と言わざるを得ません。特に、五十五年は年間の倒産件数が史上第二位を記録し、なおその勢いは、一月の倒産件数が史上最高となるなど、中小企業にとってますます厳しい状況になっております。
 こうした中にあって、中小企業をますます窮地に陥れるような重課税を強いることは認めがたいのであります。したがって、少なくとも中小法人に対する軽減税率の据え置きと、その適用範囲を一千万円程度まで引き上げることを措置すべきであります。この点につきまして、大蔵大臣の見解を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 鳥居さんにお答えいたします。
 まず、来年度予算編成に当たり、税制調査会の中期答申が守られていなかったのではないかとのお尋ねでございます。
 五十六年度予算の編成におきましては、公債の二兆円発行減額を基本方針といたしまして、まず予想される自然増収を二兆円の公債減額に充て、しかる後、歳出面の節減合理化にできる限りの努力をいたしました。歳出規模の伸び率を九・九%と二十二年ぶりに一けたに抑制したのでありますが、御指摘のように来年度の成長率の見通しが九・一%でありますので、その範囲内に歳出規模の増はおさまらなかったという結果になっております。
 しかし、私は、国債費と地方交付税を除いたいわゆる一般歳出を四・三%という低い率にとどめ得たこともあって、中期答申において求められているように政府が最大限の努力を傾注したことは、お認め願えるものと存ずるのであります。
 財政再建の努力は、五十六年度一年で終わるものではございませんので、歳出の節減合理化には今後引き続き努力を重ねてまいる所存でございます。
 なお、歳出の抑制合理化とともに行政改革についても、第二次臨時行政調査会の御審議の結果などを積極的に生かして、真剣に取り組んでまいる決意であります。
 予算執行の適正化にも一層努力し、財政再建についてさらに広く国民の皆様のコンセンサスを得てまいりたいと存じます。
 次に、大型消費税の導入について御質問がございました。
 すでに、いろいろの機会に繰り返し申し上げておりますように、政府としては、今後の税制のあり方について、今国会における御審議、御論議の経過等も承知いたしておりますが、今後の財政経済動向等を踏まえて、今後幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
 グリーンカードの問題でありますが、御承知のとおり、すでに昭和五十五年度税制改正におきまして、利子配当課税につき、税の公平の推進という見地から、昭和五十九年以降総合課税へ移行すること及びグリーンカード制度を採用することを決定しておりますので、政府はこれを確実に実施してまいる所存でございます。
 残余の問題につきましては、所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 鳥居議員にお答えをいたします。
 政府の税収見積もりは過去のデータからして少し過小評価だ、そういうことでございますが、私どもといたしましても、増税をするということは、国民生活や国民経済にかなりの御負担をお願いすることでございますから、それは非常に厳しいものでございます。したがって、必要最小限度のものにしなければならない、そう思っておりまして、昭和五十六年度の税収の予算につきましては、政府の経済見通しによる経済指標を基礎にいたしまして、最近までの課税の実績、収支の状況等を適切に勘案をして見積もった次第でございます。
 昭和五十五年度税収については、補正予算での増収見込み額を含めて、その固有の増収分を金額で三兆一千億円、伸び率で一三%見込んでおります。しかし、これに対しまして、五十六年度の税収については、固有の増収分を金額で三兆八千億、伸び率で一三・八%を見込んでおりまして、私としては、過小でない、かなりぎりぎりの数字を見積もったつもりでございます。要するに、実績ベースで比較しまして、一三%のところを一三・八%見込んでおります。そういうことであります。
 それから、不公平税制をもっと直せということでございますが、御承知のとおり、現在の措置法というものは政策税制でございます。それ自体をもって不公平というようなことはなかなか言えないわけでございます。しかし、その中で金融機関等に対する貸し倒れ引当金の繰入率が実態よりも少し甘いじゃないかということの御指摘がございますから、これにつきましては、御指摘に従いまして本年度においても、それを引き下げることの措置をとろうというように法案を出しておる次第でございます。
 それからエンゲル係数のお話が出まして、エンゲル係数が日本は三二%というようなことだから、これは必ずしも暮らしは楽じゃないんじゃないのか、こういうお話であります。
 ところが、エンゲル係数というのは、御承知のとおり使った金ですから、使った金の中に占める食費とか、そういうものの生活費の割合、これは貯金は別なんですよ。日本人というのは貯金が好きでして、使わずに二〇%も貯金してしまう。したがって、貯蓄を含む家計可処分所得に占める飲食費の割合を見ますと、主要諸国のそれとさしたる差はありませんということも留意する必要があろうかと存じます。したがって、生活の仕方というものについては、それぞれその国において、いろいろな生活の仕方があるわけでございます。したがって、私は、エンゲル係数だけをもって生活の差であるということは一概に言えないのじゃないでしょうかなというふうに思っておるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 玉置一弥君。
    〔玉置一弥君登壇〕
○玉置一弥君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま提案されました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対して、総理並びに関係大臣に御質問いたします。
 わが党は、わが国経済の発展と国民生活の安定を図る立場から、来年度予算においては、行財政改革の断行と不公平税制の是正、大企業の法人税率の二%引き上げなどにより、大衆増税によらない財政再建予算を編成するよう強く主張してまいりました。
 しかるに、昭和五十六年度予算案は、行財政改革をないがしろにし、財政再建の名のもとに、国債の二兆円減額を、国民生活全般に多大な影響を及ぼす大幅増税で賄おうとする大衆増税予算と断ぜざるを得ないのであります。このような立場から、まず所得税についてお伺いいたします。
 第一次石油危機を契機として、わが国経済は激しいインフレに見舞われ、次いで、長い深刻な不況に陥ったのでありますが、その痛手から回復したのもつかの間で、一昨年来、再び第二次石油ショックの影響をもろに受けたのであります。わが国経済は、このショックを、実質賃金の低下に見られるような勤労者の犠牲のもとに辛うじて乗り切ってきたのであります。
 すなわち、昨年一年間の名目賃金は、前年に比べ七・〇%増加したのでありますが、消費者物価指数がこれを上回り、八・〇%上昇したため、昨年一年間の平均実質賃金は、対前年比〇・九%減となり、戦後統計史上初めての賃金目減りという異常な事態を招来したのであります。
 さらに、最近の物価情勢から見て、年度間平均の実質賃金もプラス維持は絶望と見られているわけでありますが、現在の景気のかげりは、まさにこの実質賃金の減少による個人消費の低迷がもたらしたものにほかなりません。
 このように、五十五年度の消費者物価上昇率六・四%という政府の公約をかたく信じて賃上げの自粛に努力した勤労者に対し、すでに政府は、その公約の達成を放棄し、かつまた、来年度予算において何らかの償いをしようとする姿勢が政府にいささかも見られないことは、きわめて遺憾であります。(拍手)
 このような重大な失政に対し、政府がその責任を痛感されるならば、そしてまた同時に、政府が、来年度において個人消費を中心とする民間の活力により、五・三%の実質経済成長の達成を期待されるのであるならば、この際、勤労者や中小企業者に対する各種の大幅増税を取りやめるとともに、五十三年度以来据え置かれたままになっている各人的控除の引き上げなどの所得税減税を行うべきだと考えますが、この点につきまして総理の御所見をお伺いいたします。
 また、このたびの所得税法改正案に、配偶者控除の対象となる配偶者の所得限度を現行の二十万円から二十九万円に引き上げることとされております。これは、現在の制度では、パートタイマーなどによる主婦の所得が七十万円を超えると夫の配偶者控除が打ち切られることとなっているものを、来年度からこの限度額を七十九万円に引き上げるものであり、一歩前進と認めるにやぶさかではありません。
 しかし、この限度額を超えてしまうと控除が受けられなくなり、税負担がふえるため、むしろ減収になるケースが多く、そして、このため主婦のパートの年収は、その限度額以下に抑えられがちで、諸物価高騰の中でパートの賃金が伸び悩んでいる元凶ともなっているのであります。
 今回の改正による限度額の七十九万円程度の引き上げでは、パートで働く主婦にとって厳しい状況を解消することはとうてい期待できるものではなく、配偶者控除が受けられる配偶者の収入限度額を少なくとも百万円程度に引き上げることが必要だと考えますが、これにつきまして、大蔵大臣並びに労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 わが党は、高齢者の創意と経験を社会に生かし、社会連帯と活力に満ちた高齢化社会づくりを目指しておりますが、そのためには、現在年収七十八万円以上について課税されている老齢年金を非課税とすべきだと考えますが、大蔵大臣はいかがお考えでありましょうか。
 次に、法人税についてお伺いいたします。
 わが党は、かねてより、法人税については、実効税率の低位、法人の担税力の余地の存在、企業収益の回復等にかんがみ、大企業の法人税率を二%引き上げるとともに、中小法人の軽減税率の適用所得限度現行七百万円を千二百万円に引き上げるべきだと強く主張してまいりました。
 これに対し今回の改正案は、税率の引き上げを、大企業に対してのみならず、中小法人、公益法人、協同組合等に対しても一律に行われようとされ、同時に、中小法人に対する軽減税率の適用所得限度を年八百万円に引き上げるにとどめておられることは、とうていわれわれの容認できるところではありません。
 申し上げるまでもなく、金融機関の取引先企業に対する厳しい選別融資、公共投資の抑制、個人消費の低迷、住宅建築の不振、素材部門を中心とした在庫調整の大幅なおくれなどにより、このところ中小企業の倒産が相次いでおり、昨年一年間の企業倒産は一万七千八百八十四件、負債総額二兆七千二百二十五億円となり、件数、負債総額とも五十二年に次いで史上二番目の高水準を記録したのであります。
 さらに、今後緩和の方向にある金融政策の効果が中小企業に浸透するには時間がかかること、また、円高や貿易摩擦により、これまで景気の牽引力であった輸出の伸びが余り期待できないことなどから、企業倒産は引き続き高水準で推移することが予測されるわけであります。
 このように中小企業を取り巻く環境は、きわめて厳しい状況にあるにもかかわりませず、財政再建の名のもとに、政府は、これに追い打ちをかけるかのように中小法人に対しても二%の税率引き上げを求め、かつ、中小法人に対する軽減税率の適用所得限度額を年八百万円に引き上げるだけにとどめられたことは、現下の中小企業経営の実態と、来年度におけるわが国経済の成長に果たすべき中小企業を初めとする民間企業の活力に及ぼす悪影響とを全く無視したものであり、はなはだ遺憾に思うわけでありますが、この点につきまして総理の御所見を承りたいと存じます。
 次に、租税特別措置法についてお伺いいたします。
 政府は、来年度の税制改正において、当初、交際費課税のかなりの強化を検討されてきたわけでありますが、最終的には、わずかばかりの課税強化にとどめられたのであります。わが党は、社用族天国との批判が多いことから、交際費は原則として益金扱いとするよう主張してまいったわけでありますが、これについて大蔵大臣はどのようにお考えでありましょうか。
 また、この交際費課税を初めとし、現行の租税特別措置法には、なお見直しを必要とするものがあるのではないかと考えますが、今後の租税特別措置の見直しに対する大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
 最後に、財政再建の基本方針についてでありますが、わが党は、行政機構の簡素化、むだな経費の徹底した節約、補助金の整理などの行政改革の断行と不公平税制の是正及びわが国経済の安定成長維持による税の自然増収の確保によって、大衆増税によらない、計画的な財政再建を達成すべきだと強く主張してまいったわけであります。ここで改めて、この点を総理に御要望申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 玉置さんにお答えいたします。
 まず、物価と実質賃金の問題についてでありますが、第二次石油危機後におけるわが国の経済運営が、先進諸外国に比べましてきわめて安定的に推移いたしてまいりましたことは御承知のとおりでありますが、その重要な要因の一つは、健全な労使関係の上に立って、労働組合、勤労者の方々の自制的な賃上げ要求がございました。私も常日ごろ評価いたしておるところでございます。昨年九月の経済対策閣僚会議におきまして私が特にこの点を指摘し、勤労者の実質賃金の目減りを防ぐため、物価対策に全力を挙げてほしいと関係閣僚にお願いいたしたのも、労使のこのよい慣行を守るためには、政府もベストを尽くしていかなければならないという強い認識に立ったものでございます。
 その後、政府は、物価対策に全力を挙げてきたのでありますが、原油価格の予想以上の大幅引き上げや、冷夏、豪雪など異常気象が相次ぎ、季節商品の価格が大きな影響を受けたことは御承知のとおりでありまして、まことに残念でございますけれども、政府見通しの範囲内におさめ得ない結果になっております。
 しかしながら、幸い基調としては物価は安定化の傾向にありますので、今後、この安定化傾向をより確実なものにするため、引き続き物価対策を強力かつ機動的に推進してまいりたいと存じております。
 なお、これに関連して所得税減税を行うべきではないかとの御意見でありましたが、すでに再三申し上げておりますように、わが国の財政の現状及びわが国の所得税の負担水準などから見まして、所得税減税はしばらくお許しいただきたいと存ずるものであります。
 次に、法人税率についてのお尋ねがありましたが、このたび中小企業の軽減税率を含め、一律二%の税率の引き上げをお願いいたしております。これは、中小法人についての軽減幅が相当大きくなっていること、所得税減税ができない状況の中にあって、個人形態で事業を営む方々とのバランスに配慮する必要があることなどを考慮いたしたものでありまして、何とぞ御理解を賜りたいと存じます。
 なお、このような負担の増加の中にありましても、中小法人の軽減税率の適用所得限度につきましては、現在の年七百万円から八百万円に引き上げることとしており、苦しい情勢の中でできる限りの配慮をいたしております。
 その他の問題につきましては、所管大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) お答えをいたします。
 パート収入のある配偶者控除の適用所得限度、現在七十万円でございますが、これを今回七十九万円まで上げることにいたしております。それをせめて百万円にしないかというお話であります。
 これはどういう考え方かというと、控除対象配偶者である場合、二十九万円の控除を受けるわけですね。基礎控除二十九万円、扶養控除二十九万円。この二十九万円と給与所得控除の五十万円とを合わせて七十九万円、これまでのパート収入ならば、配偶者としてだれかの配偶者の控除を受けてもいいじゃないかという考え方なんです。しかし、それをもっと百万とかに上げるといたしますと、税金を払うようになりますね。税金を払いながらだれかの配偶者控除を受けるということは、これは税法上どうも納得がいかない。こういうようなことから七十九万円が限界である。それから、そうでない配偶者、他のそういう収入のない配偶者とのつり合いというようなものも考えて、七十九万円までということにしたわけでございます。
 それから、老齢年金の話が出まして、年収七十八万円以上について課税されている、これを非課税にしてはどうかということでございます。
 これは、公的老齢年金の受給者につきましては、勤労に伴う経費の概算控除としての性格を持つ給与所得控除が適用されます。そのほか七十八万円の老年者年金特別控除、六十五歳以上で年所得が一千万未満である場合の適用がございます。これは、私は、公的年金受給者に課税上の優遇措置である、かように考えております。たとえば、公的年金だけしか所得のない老夫妻にとりましては、その収入金額が二百十九万円以下の場合は所得税は課税をされておりません。そういうことでございますから、それ以上のことは御勘弁を願いたいと考えております。
 交際費を全部益金扱いにしろということですが、損金、益金ということは、要するに何らかの原因によって資本の減少をすることが損金なんであって、それは結局交際費を支出するわけですから当然資本の減少につながる。しかしながら、そういうようなものであっても、政策的に特別措置で、交際費については損金に認めませんということを、ある程度の枠をつくってやっておるわけでございます。
 今回も、さらにその交際費課税を強化をするということにしたわけでありまして、五十六年度におい七も、課税の強化を図るという措置法案を提案中でございます。この案は、前年の同期の交際費支出額の一〇〇%を超えて支出した場合に、その全額を損金に入れないという案でありまして、大変厳しい案でございますから、これによって目的はかなり達成できるではないか。かなりきついという声がありますが、本当にきついわけです。が、これはこの際お認めをいただきたいということでございます。(拍手)
    〔国務大臣藤尾正行君登壇〕
○国務大臣(藤尾正行君) お答えをいたします。
 パートの方々の配偶者控除といいまするものを七十万円から七十九万円に引き上げていただいた、これは玉置さんにも一応の御評価をちょうだいをいたしたわけでございますが、私どもといたしましても、非常に弱い立場にあられると思われますパートの方々とか内職の方々とか、こういった方々に特段の御配慮を願ったということは、それなりに非常に意義のあることであるということで、この御決断をいただいた大蔵当局に対しましても、非常にありがたい、かように考えておるわけでございます。
    〔議長退席、副議長着席〕
 ただ、御案内のとおり、パートの方々と申されます方々は、御家庭とお仕事とのその両方を保っていきたいということでパートにつかれておられる方々が多いわけでございますし、これをできればパートでなくてフルタイムにしていただいたらどうだろうかということを、私どもお願いをいたしておりますけれども、そういった御家庭の事情でございますとか、あるいは御職業上の技能の問題でございますとかということがございまして、パートの方がいいという方々が八〇%を占めておるわけでございまして、私どもといたしましては、できる限り、税金もお払いをいただいて所得も上げていただくという意味のフルタイムの方にぜひとも御進級をいただきたい、かように思いましていろいろと考えておるわけでございます。
 この問題につきましては職業安定というような紹介業務あるいはそういった御要望のあられまする方々に対しまする技能訓練、こういった面につきまして一段と私どもも今後力を入れてまいらなければならぬ、かように考えておりますので、御指示を非常に拳々服膺いたしまして一生懸命に努力をさせていただきたい、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(岡田春夫君) 蓑輪幸代君。
    〔蓑輪幸代君登壇〕
○蓑輪幸代君 私は、日本共産党を代表して、所得税法、法人税法、租税特別措置法の改正案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 まず最初に、財政再建の基本的なあり方についてお尋ねいたします。
 財政再建をうたい文句に出された来年度予算案は、新聞が大見出しで「重税時代くっきり」、「“防衛上位”の増税予算」と指摘したように、際立った特徴があります。しかも、それは、単に来年度だけのことではなく、今後の財政のあり方を方向づけるものとなっています。
 すなわち、軍事費の長期的拡大を約束する大軍拡元年予算であり、一般消費税の導入をも想定した大増税元年予算であり、さらに、老人医療費有料化、児童手当廃止などを予定した福祉切り捨て元年予算でもあるのです。
 このように、財政再建を口実にして福祉や教育を抑え込み、国民に大増税を押しつけながら、実は軍備の大増強を図るという政府のやり方は、全く卑劣であると言わなければなりません。(拍手)
 平和で豊かな生活を願う国民は、いまこのような動きに大きな不安と憤りを感じています。八〇年代が平和で希望のある時代となってほしい、これは国民共通の願いではないでしょうか。国民が幸せで豊かな生活を送ることは、憲法に保障された当然の権利であり、この国民の権利を保障するために財政を活用することこそが、政治に第一義的に求められているはずです。
 総理は、財政再建を図るためには、国民生活を犠牲にしてもよいとお考えですか。そうでないとすれば、財政再建と国民生活の安定との両立についてどのような御見解をお持ちになっているか、お答えいただきたいと思います。
 次に、税制改正についてお尋ねします。
 今回の新たな増税は、過去の最高であった五十四年度の四千三百四十億円の三倍、一兆三千九百六十億円にも及んでいます。しかも、その中身は、中小企業や協同組合への増税に重点を置いた法人税の増税や、消費者への転嫁を基本とし、低所得者ほど重い税負担率となる物品税や酒税、印紙税などの増税となっています。
 その上に、所得税減税を見送ることによって、国民は今年度当初よりも二兆七千六百九十億円も多い税金を負担させられることを特別に重視する必要があります。この減税見送りという実質的な大増税によって、この四年間で約六百万人もの人が新たに納税者として取り込まれるばかりか、所得の低い人ほど高い増税率を押しつけられているのです。
 国民にとって、負担の増大が税金だけでないことは百も御承知のことと思います、あなた方が、消費者米価や国鉄、郵便、健康保険料等々の引き上げを次々と打ち出しておられるのですから。
 五十五年上期の家計調査では、実収入のうち税金として取られるのが七・一%、社会保険料や公共料金支出を加えれば、実に二六・五%が公的な支出として消えているのです。これは、四十九年に比べ八・一ポイントもふえており、政府が先頭になって家計を圧迫してきたことをはっきり示しています。
 私のところに手紙を寄せられたある主婦の方は、次のように訴えています。
  せっせと家計簿をつけていても特別お金がた
 まる訳もなく、お金が右から左へ移動するだけ
 で、つけるのがゆううつになる程です。一生け
 ん命節約を心がけても、赤字がどーんとふくら
 んでこれから先どうなるやら、おそろしいくら
 いです。働いても働いても、苦しいくらし、も
 し、お父さんが倒れたらどうしようと先のこと
 を考えるとまっくらです。このうえ、大増税で
 はとてもたまりません。これが国民の生活実感なのです。
 厚生省の五十五年国民生活実態調査によっても、生活が苦しいと答えた人が前年より一〇%もふえ、四九・二%に達しているのは、その事実の深刻さを物語っています。まさに、家計収入は有限であり、国民負担の増大は無限であるというのが、国民の、とりわけ家計を預かる主婦の、偽わらぬ実感となっています。
 このような大増税が進められたのでは、せっかくのパート減税や寡夫控除の新設なども、わずか過ぎて吹き飛んでしまいます。
 総理、少なくとも五十六年度で六千億円程度の所得税減税に踏み切るべきです。また、財政再建期間中は減税しないという政府の方針は御破算にし、むしろ、所得税の総合課税方式の強化や、人的控除などの税額控除方式への移行を進めるべきです。
 児童手当については、昨年九月の厚生省中央児童福祉審議会の意見書でも提起され、諸外国でも広がっているように、税の児童扶養控除をやめて、第一子から児童手当を支給する方向への切りかえを図るべきです。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 大企業の法人税率の引き上げは当然のことですが、世論を逆手にとって中小企業や公益法人、協同組合などの税率までも引き上げることはとうてい認められません。総理が自賛された「安定と繁栄」のもとで、史上空前の大もうけを上げている大企業と違って、中小企業の多くは、仕事がない、資金がない、売り上げが伸びないなど、ないない尽くしの苦境の中で、倒産と背中合わせの経営を強いられているのが現状なのです。ですから、今回の中小企業などへの税率引き上げは、ぜひ撤回すべきです。(拍手)
 さらに、資本金が一億円程度の中小企業と、新日鉄などのように資本金が三千億円を超え、売り上げが何兆円もある巨大企業とが同じ税率とは余りにも不合理ではありませんか。(拍手)税の公平の見地からすれば、利益の大きい担税力のある大企業には一般より高い率の税負担を課す、段階税率の採用こそ図るべきだと考えます。(拍手)総理の御所見をお伺いいたします。
 さく税制の改正に当たっては、まず不公平な税制を徹底的に正すことから始めるべきです。
 政府は、不公平税制の是正はおおむね一段落したと言っていますが、これは大変なごまかしと言わなければなりません。なぜなら、今日、租税特別措置はもちろんのこと、各種引当金、受取配当益金不算入など、法人税法本法にも不公平税制が温存されているのです。
 そして、今回の改正も従来と同様のきわめてお粗末なものと言わざるを得ません。企業課税では、金融保険業の貸し倒れ引当金の繰り入れ率のわずかな引き下げなど、ほんの申しわけ程度にとどめた上、逆に大企業の要望していたエネルギー対策投資減税の新設や、物品税新設の見返りとしての大手家電業界向けの製品保証引当金制度の拡大などを準備し、かえって新たな不公平を広げてさえいるのは、非常に重大な問題です。(拍手)
 そしてまた、所得課税についても配当控除制度や有価証券譲渡益非課税制度などに全く手をつけていないではありませんか。
 財界の調査機関である日本経済調査協議会でさえも「資本蓄積、内部留保といった政策目標のために税制を活用するのは、明らかに時代おくれ」と指摘しているほどです。各種の準備金や特別償却制度を初め、すべての優遇措置を根本から点検し、不公平税制を完全になくすようにすべきです。
 総理、あなたは、これらの不公平税制の是正を今後どのように進められるのか、明確な答弁をお願いいたします。
 次に、今後の税制のあり方について伺います。
 税負担がどうなるかは、国民の生活に直接かかわってくるきわめて重大な問題です。ところが、総理や大蔵大臣の態度は、意識的に見解の表明を避け、国民に知らせないで大増税計画を進めていると疑わざるを得ないものです。
 さきの中期税制答申は、国税でGNPの二%、地方税でも一%程度の増税が必要とし、「広く消費に着目する間接税」の導入を提起しています。GNPが約三百兆円と見込まれる五十七年度で計算してみると、増税額は国税で約六兆円、地方税で約三兆円、合わせて九兆円にも上り、四人家族では年間三十万円もの大増税となるのです。
 また、大蔵省が提示した財政の中期展望も、五十七年度からの三年間に新たに約十四兆五千億円もの財源措置が必要だとして、超大型増税を示唆しています。
 総理、あなたはこの大増税を一体だれに、どのような形で負担させようというのですか。国民の批判が強く、私どもも断固反対している新大型間接税については、どのような形にしろ、将来にわたって導入しないと、この際はっきりと言明すべきです。
 最後に強調したいのは、いま進められている空前の大増税と福祉の切り捨ては、軍拡財源確保のためであるということです。戦後初めて軍事費の伸びが福祉費の伸びを上回り、戦車やミサイルが福祉や教育を踏みつぶそうとしていると言われています。
 八〇年代を戦争の時代にしてはなりません。私はいま、有事立法問題が論議されたある日の新聞に載っていた七十五歳のおばあさんの歌を思い起こしています。
  徴兵は命かけても阻むべし母祖母おみな牢に満つるともこの叫びを真剣に受けとめた誠意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答え申し上げます。
 まず、財政再建と国民生活についてのお尋ねでありますが、大量の公債発行による財政の破綻は、インフレのおそれにつながるものでありますから、国民生活の安定を図る上で、財政再建はきわめて重要であると考えております。特に、将来の生活、私たちより後の世代の生活にまで思いをいたしました際に、いまここでどうしても財政再建を達成しておかなければならないのであります。
 財政再建の過程におきまして、歳出の節減合理化が基本となるものでありますが、その際、社会的に、また経済的に弱い立場にある方々には重点的に配慮してまいることが必要であると考えております。
 所得税減税についてのお尋ねでありますが、先ほど来申し上げておりますように、わが国の財政の現状及びわが国の所得税の負担水準から見てまいりまして、しばらく所得税減税はお許しを願いたいと思います。
 次に、不公平税制の是正についてのお尋ねでありますが、これも先ほど来御答弁申し上げておりますように、租税特別措置の整理には、特に昭和五十一年度以来積極的に努力してきており、残されているものは、個人向けマル優制度とか、中小企業、農林漁業対策、資源・エネルギー対策など、限られたものになってきております。しかし、なお今後におきましても、社会経済の実態に即して見直しは続けてまいりたいと存じます。
 今後の税制のあり方については、今国会における御論議、今後の財政経済動向などを踏まえて、幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。
 以上のほかの問題につきましては、所管大臣から答弁させます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 所得税減税を実施しないとの方針を撤回しないか。これはもう総理大臣から詳しい答弁がありましたから省略させていただきます。
 それから人的控除、これを所得控除方式から税額控除方式に移行させないかということでございます。
 現行の所得税制は、すべての納税者について、その所得から、基礎控除、配偶者控除、扶養控除より成る基礎的な非課税部分を控除するという仕組みになっております。その残額に課税する、しかもこれに累進税率を当てはめるということになっておるわけです。
 昨年十一月に出された税制調査会の中期答申に述べられているように、このような現行の人的控除の仕組みは、簡明かつ合理的なものである、今後とも維持してよいと考える、こう言っているわけですね。私もそう思います。
 なお、わが国の所得税は、諸外国の中で最も累進的な、税率がきゅっと高くなる累進的な構造を有していることによって、現在の所得税負担がきわめて累進的になっておる、これも事実でございます。私は、いまのでいいのじゃないか、そう思っております。
 それから児童扶養控除、これをやめて、第一子からの児童手当を支給することを考えたらどうだ。
 これは一部の人が言っておるのですが、(「両方やれ」と呼ぶ者あり)これは本当に両方やらなければならないようなことにもなりかねない。私の考えといたしましては、日本の給与体系とヨーロッパとでは非常に違いますね、したがって、そういう児童手当のやり方というものには、私は、いかがなものか、余り賛成できかねるわけでございます。
 それから、法人税率の引き上げについて段階税率を設けろ。
 これは、先ほどどなたかの御質問にありまして、これは大法人だからといったって、問題は、その資本金の割合で幾らもうかったかが問題なわけですから。しかし、その資本金の割合で利益率が強いというのは、むしろ大企業というよりも資本金の小さい方に多い。(発言する者あり)いや、実際そうですよ。ですから、なかなかそういう税率もできない。だからといって、ただ資本金が大きいから、もうけが少なくとも税率は高いんだ、これもいかがなものかということで、私はちょっとなじまないと考えております。
 それから、土地の分離課税初めいろいろな不公正税制はもっといっぱいあるじゃないかというお話でございます。短期譲渡所得とかですね。これなどはしかし、短期譲渡所得なんというものは所得税本則よりも重い負担に実はしてあるということでありまして、かなりきちっとしているわけです。
 有価証券譲渡益課税についても、五十四年度に課税の強化をしたばかりでございます。しかしながら、昨年十一月の税制調査会の中期答申の考え方もありますから、それに沿ってさらに検討を進めてまいりたい、そう思っております。
 利子配当の問題は、総合課税への移行というのを決定済みでございます。
 その他、特別措置の見直し等については、時折それは時代の変化によってやるわけですから、今後とも見直してまいりたい、そう考えておりますが、あと残っているのは、マル優とか個人向けのものなどが残っておって、これはどういうふうにするか、今後の検討課題でございます。
 それから、中期展望の中で、増税が要調整という形でいっぱい出てくる、それをだれから、どうして取るのだというようなお話ですが、あれは全部増税というわけではないのですよ。あれは要するに、現在のままの制度で、そのまま手を加えないでおけば大体これくらいのインフレ率、これくらいのGNPの伸び率という一定の条件があって、そのもとではこんなにふくらんでいきます、しかし、税収の方も伸びますが、その差額にギャップがありますよと。しかし、これは要するにどうして調整するか。制度に手を加えていく、あるいはもっと政策的に歳出カットをばっとやる、そういうふうなことで、いろいろなことに手を加えてへこます方法が一つございますと。そこでどうしても足りない部分ということになれば、あとはどういうふうな負担方法にするか、また別な話でございまして、もう足りればそれでオーケーというわけで、何も要らぬわけでありますから、別に増税のためにというのではない。
 われわれとしては、総理が言っているように、極力歳出の縮減合理化を図る、そういうようなことで、ことしは二十五年ぶり四・三%、二十五年間やったことはないわけですから、何のかの言われたって二十五年ぶりの話であることは間違いないわけであります。極力今後も進めてまいりたい、そう思っておる次第でございます。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣園田直君登壇〕
○国務大臣(園田直君) 児童手当の制度については、御発言のとおり、昨年九月、中央児童福祉審議会から、長期の観点に立って根本的な改革を行うべしとの提案がなされております。この提案の趣旨にのっとり、控除の問題、税の問題あるいは対象の問題等検討すべきことで、私は、これは強化充実すべきであると考えておりますが、大蔵大臣は、それは一部の意見である、こういうあれでありましたが、一部の意見ではなくて、所管大臣の厚生大臣の意見でございます。
 いずれにいたしましても、先般の予算折衝の最後に、この問題は十分検討しましょう、こういうことを言ってありますから、政府部内で検討いたし、趣旨に従い努力をする所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(岡田春夫君) 伊藤公介君。
    〔伊藤公介君登壇〕
○伊藤公介君 私は、新自由クラブを代表し、ただいま議題となっております所得税法、法人税法、租税特別措置法、以上三法の一部を改正する法律案の趣旨説明に対し、総理並びに大蔵大臣に質問をいたします。
 政府は、昭和五十六年度予算を財政再建元年の予算であるとし、この予算によって財政再建を本格的軌道に乗せることができるとしております。財政の再建を公債依存体質からの脱却に求め、公債発行額の二兆円減額の達成が財政再建のスタートとされているわけでありますが、政府の考えている財政再建の基本的な理念につき、本議題であります税制の改正に関連をして、まず総理にお伺いをいたします。
 歳入総額に占める公債金の割合が異常な高さにあることから見て、財政の再建が当面の急務であることは、われわれもひとしく認めるところであり、巨額の公債依存から脱却することが、現在の財政に課せられた課題であることは、論をまたないところであります。
 しかしながら、問題は、この財政危機から脱却する政策手法にあると私は考えているのであります。政府が国債二兆円減額のためにとった方法は、総額一兆三千八百三十億円にも上る税制改正による増税と、大蔵省が約四兆五千億円と見込んだ自然増収、すなわち実質増税によるものであります。この税制改正による増税と自然増収という名の実質増税を合わせたその増税額は、実に六兆円にならんとするものであります。
 われわれは、かねてより、財政危機の背景、その原因を究明する立場から、また活力ある自由主義社会を求める立場から、財政再建を歳出構造の改革によって達成することを主張してまいりました。つまり、財政の再建とは、単に公債発行額の減額を目的とするものではなく、特に増税による公債減額は、不健全財政のそのしりぬぐいを国民にのみ押しつける以外の何物でもないと言わなければなりません。すなわち、現在の歳出構造は、昭和四十年代後半の高度経済成長期の歳出構造そのままであり、それを増分主義という予算編成のメカニズムで歳出膨張をさせたものであります。したがって、予算編成のあり方を、増分主義からゼロベース方式へと改める必要があると考えますが、この点について、まず総理のお考えを承りたいと思います。
 財政の再建は、時代の要請に合致しなくなった制度、たとえばその代表的なものとして、いわゆる三Kの赤字構造を変革する中で求められると考えます。財政再建についての考え方をまずお伺いをしたいと思います。歳出構造の改革として、三Kを含めどのような制度の改革を計画されているのか、これもあわせて伺いたいと思います。
 現在の食糧管理制度のもとでの生産者米価の決定方式は、生産費補償方式がとられているわけでありますが、食管制度そのものの見直しが行われない以上、生産者米価の引き上げは当然のことになるわけであります。消費者米価は、米の需給動向から考えましても、引き上げはきわめて困難な状況であります。財政の赤字という現状もあり、来年度の米価についての方針を、財政再建の方針を伺う一つの具体的な例としてお答えを伺いたいと思います。
 昭和五十六年度予算は、一般歳出を四・三%の伸びにとどめ、歳出全体の規模を一けたの伸びに抑制するために、経費について根底から見直すなど、節減合理化に格段の努力を払った、こう財政演説の中で大蔵大臣は述べられておりますが、見るべき制度の改革は全く行われず、国家公務員の百一人の純減、公共投資の抑制、地方財政対策費の圧縮など、これが徹底をした歳出の合理化、格段の努力かと疑わざるを得ないのであります。
 大蔵省がさきに公表をされました財政の中期展望によりますと、歳出歳入のギャップ、要調整額は、五十七年度においては二兆七千七百億円、五十八年度においては四兆九千六百億円、五十九年度においては六兆八千億円にも上るとされ、年度平均二兆三千億円弱が、歳出の抑制または歳入の増加による調整が必要となっております。
 五十六年度予算の編成が、六兆円に近い増税と、わずか数千億円の歳出合理化で行われたことを見ましても、この中期財政展望に言われる要調整額は、再び安易な歳入増加によって賄われるのではないかという推測がされるのであります。さらに、五十六年度予算の増税が、現行税制の枠組みの中で最大限の増収措置を図ったとされている以上、五十七年度以降の増収策は、新税の導入が考えられるわけであります。
 われわれは、活力ある自由社会の限りない発展を希求する立場から、これ以上の政府の肥大化に歯どめをかけ、そして新税の導入はもちろん、増税策には原則として反対の立場をとるものであります。国民の立場から見ても、まさに申しわけ程度の歳出減らしと、大増税の後にまたもや大型の新税では、とうてい容認ができるものではありません。
 中期財政展望の要調整額をどのように調整されるおつもりか、また、歳出の見直しで行われるお考えであるとすれば、その内容をお示しをいただきたいと思います。
 本格的な制度改革を短時間で行うことがきわめて不可能である以上、要調整額を歳出構造の改革で行おうというなら、その具体的な内容を少なくともサマーレビューの中で明らかにすべきだと考えますが、その点についての総理並びに大蔵大臣の御決意を伺いたいと思います。
 その上、私ども新自由クラブがかねてから、立党以来主張し続けてきたように、夏の各省概算要求提出時期以前に、翌年度の予算の骨格、そのあるべき姿を議論する予算国会を開会をすべきだということを主張してまいりました。与党の総裁としての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 さて、所得税法の改正についてでありますが、この改正の内容であります控除対象配偶者の所得要件の緩和等によって初年度百六十億円、平年度百三十億円の減収が見込まれております。この一方、いわゆる自然増収という名の増収額は二兆七千六百九十億円が見込まれております。このように大きな額の増収は、課税最低限度が五十二年以降長期にわたって据え置かれてきたことに大きく依存をしているものであります。
 五十六年度経済見通しによれば、来年度の実質経済成長率を五・三%とし、この寄与度は、内需四%、このうち個人消費二・五%を見込んでいるわけであります。五十五年度の輸出依存型から、内需依存型の成長への移行を予測されているわけでありますが、課税最低限、現行税率の据え置きと給与所得者の可処分所得の減少の中で、個人消費支出のこのような伸びが、どのような理由で予測をされるのか、大変理解に苦しむところであります。
 今般の所得税法の改正の内容は、以上のような観点から、当然各種人的控除額あるいは給与所得控除額の引き上げによって、課税最低限の引き上げ、所得税減税を行うべきでありまして、控除対象配偶者の所得要件の緩和等の内容はきわめて不十分なものと言わなければなりません。総理の御所見を伺いたいと思います。
 大蔵省が予算資料として提出をされました「業種別所得者数と所得税納税人員」によりますと、給与所得者は八四%が所得税を納税するのに対して、自営業者では四二%、農業所得者では一五%となっております。もちろん、山間の貧しい農家や地方都市の零細商店も決して少なくなく、これらが課税最低限以下となることは予測をされるものの、源泉徴収による給与所得者の納税と申告による納税の捕捉率に差があるのではないかと考えるのでありますが、大蔵大臣に、この数字を見て、税の捕捉率という問題をどのように考えられているのか、また、税の捕捉率に問題があるとすれば、改善の方策をどのように図っていくおつもりか、お尋ねをしたいと思います。
 法人税法の一部改正についてでありますが、私どもは、五十六年度予算の編成段階で、法人税率の引き上げには十分慎重である必要があるということを申し上げたところでありますが、今回の二%の税率引き上げが、景気動向を十分に配慮された上で行われようとしているのか、大変疑問を抱かざるを得ません。企業の設備投資意欲は、ここ数年抑制ぎみに推移をしておりますが、その一方、機械設備の耐用年数の到来、あるいは省力化を指向した投資意欲が最近になってあらわれてきております。設備投資の増加が経済の活力を生む源泉であることは、いまさら申し上げるまでもないことでありますが、このような景気状況の中で、投資意欲に水を差す形での法人税率の引き上げ、あるいは増税が妥当性を持つものであるか否か、経済運営の観点を含めて、御所見を承りたいと思います。
 特に、中小企業の税負担については、税率の一律二%引き上げによって、ますます企業経営を圧迫することになるのではないでしょうか。中小法人の軽減税率の適用所得限度の引き上げを現行の七百万円から八百万円にするという小手先の改正ではなく、中小法人の経営実態を考え、この際、適用所得限度を少なくとも年一千万円程度に引き上げるべきだと考えますが、この点についても、大臣のお考えを伺いたいと思います。
 以上、総理、大蔵大臣の明快な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 財政再建下におきましての予算編成のあり方についてお尋ねがございました。
 高度経済成長のもとで肥大化しましたところの歳出構造をそのままにせずに、根底から歳出の内容を見直す必要があるのではないかという御意見でございますが、全く同感でございます。
 昭和五十六年度予算の編成に当たりましても、そのような方針で歳出の節減合理化に取り組んでまいったところでありますが、今後の予算編成に当たりましても、サマーレビュー等を通じ、歳出の内容の厳しい洗い直しを進めてまいりたいと存じます。
 所得税減税につきましては、すでに再三申し述べておりますとおり、わが国の財政の現状、所得税負担の水準などから考えまして、しばらくお許しをいただきたいと存じます。
 残余の件につきましては、所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 伊藤議員にお答えをいたします。
 財政再建のため、三Kを含めてどういう改革をやっていくかということでございますが、具体的な削減方策については、各方面の意見を十分聞いて私は検討したいと思います。
 これは制度上の問題でございますから、食管法に手をつけないで、あそこの構造改革をするということは、これは不可能であります。当然食管法を直さなければならない。存置するところはどこを存置し、直すところはどこをなにするか。食管法は全然改正するな、財政改革でうんと経費は出せと言われても、それは不可能に近いことでございます。したがって、今回の予算編成までには、いろんな法律の制度をどんどん直すという問題については間に合いませんでしたが、これは、私は、財政再建を考える上において避けて通れない問題である、そう思っておるわけでございます。
 生産者米価、消費者米価の問題については、これはもう所得補償と申しましても、そのときの財政事情、経済事情、需給事情を勘案をして決めるわけでございますから、必ずしも上がるということばかりではございません。そういうわけでもございません。
 それから、要調整額をどう調整するつもりかということでございますが、これも要するに、制度的なものでよけい経費がかさむものは、制度の見直しをしなければならぬし、それから、もういまになれば国民の生活水準から、そういう補助金はなくたっていいじゃないか、もっと一部負担があってもいいじゃないかというようなものについては、そういうような方策をとる必要があるし、かなり思い切ったことをいままでもやってきましたが、さらに一層、もう法律の絡んだ話もあるわけです、みんなそうですからね。そういう問題についても国会等で皆さん方の意見を十分拝聴し、また、いろいろな御批判を得ながら、財政再建は総理の言うように、一年で終わるわけではないので、これは元年でありますから、これから続けてやらなければならない。そういうことで、やはりどういうところで調整するか御相談をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 サマーレビューまでに明らかにしろ。もう極力われわれとしては、国会が終われば当然来年度の予算編成の話をしなきゃならぬ、八月には予算の概算要求というわけですから、まず党内においても、政府の内部においても、抜本的な、歳出を中心にした議論というものをやっていく必要がある、かなり急いでやっていく必要があると私は思っております。
 それから、業種別の納税人口の割合で、給与所得者が八四%、自営者四二%というのですが、給与所得者は別に一六%脱税しているというわけではなくて、給与所得者も税金を払わない人が一六%いるということだと私は思います。農業者の場合は一五%しか税金を払ってないじゃないか――これは統計は、どこの統計この統計、いろいろ統計のとり方がございますから、だから業種別所得者と納税人口の割合というのは、所得種別、分類の違いなどから、単純に比較することは私は適当でないと思います。思いますが、農業者の納税割合が少ないということは、所得が少ないから少ないんでして、しかしながら、農業者は、サラリーマンより農家一体としては上の所得があるじゃないかという議論もあります。それは要するに農外収入でありまして、主として出かせぎであります。または兼業です。したがって、これは統計上勤労者に入っちゃうわけですよ。五百万所得がある。農業所得が百万しかない、四百万のサラリーマンとしての所得がある。農業者の方と兼業のサラリーマンの方と両方に入ってしまう、したがって、農業者の方だけから見ると非常に少なくなるというのも事実だと思います。しかし、農家の方も兼業している人は、サラリーマンとしてちゃんとその税金はみんな取られて納めておるということも事実でございます。
 問題は、自営業者の問題かと存じますが、この税の捕捉という問題については、ただ権限を強化して、税務署員をふやして権力だけでということよりも、私は、いつも言っているように、何といったってこれは納税者の自覚、要するに納税の思想の高揚ということが一番であって、申告納税制度である以上は、申告者がみんなその気になってもらって正確に申告すれば、もう本当に何にも問題はない、コンピューターでばたばたばた全部できちゃう。だから、まず相応のことをやっていただくことが先決でございます。しかし、それだけでは訓話になっちゃいますから、やはりその捕捉率については、税務職員をふやすことも必要でしょうし、それから、何といっても記帳をきちんとさせるということも必要でございますし、コンピューター等によっていろいろな周辺の調査を資料を整備するということで、脱税者に対してはもう一罰百戒、ぴしゃっとこれはやることも必要であります。
 いずれにいたしましても、いろいろな方策を全部組み合わせて税の公平が確保されるように今後も努力をしてまいる所存でございます。(拍手)
○副議長(岡田春夫君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
○副議長(岡田春夫君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十分散会