第095回国会 本会議 第3号
昭和五十六年九月二十八日(月曜日)
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 議事日程 第二号
  昭和五十六年九月二十八日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
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○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員古井喜實君に対し、院議をもつ
  て功労を表彰することとし、表彰文は議長に
  一任するの件(議長発議)
 鈴木内閣総理大臣の所信についての演説
    午後一時四分開議
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
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 永年在職議員の表彰の件
○議長(福田一君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました古井喜實君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員古井喜實君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
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○議長(福田一君) この際、古井喜實君から発言を求められております。これを許します。古井喜實君。
    〔古井喜實君登壇〕
○古井喜實君 このたび、永年勤続のゆえをもって、不肖私に対し、表彰の御決議を賜りました。身に余る光栄であり、感激の至りであります。
 不敏な私が、大過なく今日を迎えましたのは、諸先輩を初め、同僚友人の各位、並びに郷党の皆様方の御懇情、それと、天は見捨て賜ず、すなわち天帝の御加護のたまものであります。ここに謹んで御礼を申し上げます。(拍手)
 本日は、私にとって二度とない機会でありますので、一言申し添えさせていただきます。
 今日まで二十数年の政治生活の間、私は一つのモットーを唱え続けました。それは「政治家は貧しく、国民は豊かに」というものであります。しかるところ、政治の現実においては、いうところの貧しい政治家は衰退するのみであり、私の信奉した政治哲学は幻想にすぎないことを知りました。
 申すまでもなく、かくなる原因は金の選挙であります。いまや、民主政治のよって立つ選挙は、体力にあらずんば金力の戦いとなり、政治は、富の神の支配する領域と化したかの感があります。(拍手)
 今日、政治倫理の荒廃を嘆く者は多いが、それよりもさかのぼって、その根源である金の選挙を放置する怠慢と無気力を嘆くべきではないでしょうか。(拍手)
 現下、一国の財政を救うことは急務であります。他方、病める民主政治を救うことは、日本の将来にとって何物にもかえがたい緊要事であり、困難ゆえに避けて通るべき筋合いでないと信ずるものであります。(拍手)切に、各位の御賢慮を懇請いたします。
 最後に、世界はいま、各地において、平和と人間愛の精神が失われ、相互不信と緊張がつのり、戦争の脅威が漂うております。かかるときこそ、わが国の平和主義は光を放たなければなりません。(拍手)
 日本の誇りであった湯川博士は、いまや世にありません。しかし、人類の敵であるがんと核に対し最後まで闘った湯川精神は、永久に国内と世界に受け継がれなければならぬと信ずるものでございます。(拍手)
 以上をもって、私の感謝の言葉にかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
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 国務大臣の演説
○議長(福田一君) 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣鈴木善幸君。
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 第九十五回国会の開会に臨み、所信の一端を申し述べるに当たり、まずもって、先般の梅雨前線の活動と台風十五号などにより被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。政府は、復旧対策に全力を傾注するとともに、今後とも、災害対策に万全を期してまいります。(拍手)
 さて私は、組閣以来今日まで一年余りの間、すべての国政の中でも特に緊要な課題として、行財政の改革に取り組んでまいりました。
 わが国は、戦後の復興期、高度成長期、さらには二度にわたる石油危機による経済的混乱の時期を経て、今日の繁栄と国民生活の安定を確保し、国際的にも高い評価を受けております。
 しかし、資源・エネルギー及び環境の制約、人口構成の高齢化、国際社会での役割りの増大など、根本的な対応を必要とする課題はなお多く残されています。このような課題に適切にこたえ、国内にあっては活力ある福祉社会を実現し、対外的には国際社会に一層貢献するため、国、地方を通じて行財政の基盤を確かなものとしなければなりません。
 わが国の行財政は、高度成長のもとにその役割りを拡大してきました。それは、国民の求めにこたえるためのものでありましたが、他方、高度成長による豊かな自然増収のもとに肥大化してきたことも否めません。特に、石油危機以降は、国民生活の安定と不況克服のため多額の借入金が必要となり、その結果、財政収支の不均衡が恒常化し、わが国財政は健全性を失うに至りました。
 私は、行政の改革と財政の再建は表裏一体であり、それだけに相互の関連をしっかりと見きわめながら着実に推進しなければならないと思います。すなわち、民間と行政の役割り分担、国と地方の仕事の配分及び各種の制度や施策について、不断の合理化、適正化が必要であり、そのためには、既成の観念にとらわれない新しい発想が求められております。
 私は、このたびの行財政改革に当たって、さしあたり緊急に実施すべきものから着手し、時代の要請に応じた簡素で効率的な行政の確立と財政の健全性回復に向かって確実に一歩一歩進む決意であります。
 昨年十月、私はこの壇上で、国民の求めるところに的確にこたえる行政実現のため、長期かつ総合的な視野を持った行政改革案策定を目的とする調査審議機関の設置が必要であることを申し上げましたが、幸い、国会の御同意のもとに、去る三月、臨時行政調査会が発足しました。
 私は、臨時行政調査会に、二年間の期限で、八〇年代のわが国にふさわしい適正で合理的な行政のあり方を御審議の上、国、地方を通じた行政制度と行政運営の基本的改革案を示していただくようお願いしております。同時に、私は、財政の現状を考え、特に昭和五十七年度の予算編成に向けて、実行できる具体的改革案の提示を要請しましたが、同調査会の格段の御努力によって、去る七月十日、行政改革に関する第一次答申をいただくことができました。
 政府は、この答申を最大限に尊重し、その内容を速やかに実施に移すこととし、八月二十五日、「行財政改革に関する当面の基本方針」を決定しました。私は、昭和五十七年度予算編成等を通じ、この方針の実現を図る決意でありますが、そのため、五十七年度から五十九年度までの臨時特例の措置として、関連の施策を一括した法律案を今国会に提出し、必要な関係法律案とともに御審議をお願いすることといたしました。いずれも当面の行財政改革を進める上で欠くことのできない施策でありますので、できるだけ早く成立することを念願しております。(拍手)政府は、また、新たな定員削減計画についても、この基本方針のもとに、着実に実施してまいります。
 行財政の抜本的改革を進めるためには、今後もなお各種制度の見直しを行う必要があり、引き続き検討を加えていきたいと思います。さらに、今後臨時行政調査会から提出される答申についても、政府は、その趣旨を尊重し、順次実行する決意であります。
 私は、本年一月の施政方針演説で、財政の再建について特に国民各位の御理解と御協力をお願いしました。
 昭和五十六年度予算では、歳出の抑制に努め、国債費と地方交付税を除いた一般歳出の増加率を四・三%と、昭和三十一年度以来の低い率にとどめ、特例公債を二兆円減額しましたが、このため、他方で、現行税制の枠内ではありますが、一兆四千億円の増税をお願いいたしました。
 このような国債減額の努力にもかかわらず、なお五十六年度には十二兆円余の国債発行が見込まれ、その消化が困難となっている現状であります。今年度末には国債残高が約八十二兆円となり、国民一人当たり七十万円を超えるものと見込まれ、その利払いは、年額約五兆六千億円、一日当たり百五十億円以上の巨額に上ります。
 国債の減額、とりわけ特例公債からの脱却は、財政再建の中核であります。政府は、昭和五十九年度にこれを実現することを目標としており、五十七年度予算の編成に当たっても、行財政改革による歳出の抑制を通じて着実にこの目標に向かって前進する決意であります。
 このため、政府は、さきに国債費と地方交付税を除く一般歳出について、五十七年度予算の要求額を原則として五十六年度予算額の範囲内にとどめるいわゆるゼロシーリングを定め、この方針のもとに概算要求が提出され、現在、調整作業を行っております。
 行財政改革は、わが国の未来を確かなものとする上で欠くことのできないものでありますが、既存の制度が改変されるという意味で国民各層にとって種々の苦痛を伴うことは避けられません。しかし、一刻のおくれは、問題の解決をさらに困難にします。来年度予算が増税に頼ることなく財政再建に向かって着実に前進するため、国民の皆様のいままでにも増した深い御理解と力強い御支援をお願い申し上げます。(拍手)
 また、歳入の面でも等しく痛みを分かち合うという観点から、税負担の公平の確保は重要な課題であります。このため、政府は、従来から積極的に努力してまいりましたが、今後とも税について、制度面だけでなくその執行面でも、改善に一層の努力を傾けてまいります。
 次に、対外関係について、若干申し上げます。
 私は、先般カナダのオタワで開催された主要国首脳会議に出席し、各国首脳と、現在世界が直面している諸問題について、率直で建設的な意見の交換を行い、大きな成果を上げることができました。オタワ・サミット宣言に明らかなとおり、各国首脳は、世界の平和と繁栄を脅かしている政治的、経済的困難に、連帯と協調の精神をもって対処し、自由貿易体制の維持強化と先進民主主義諸国の経済の再活性化に向かって最大限の努力を払うとの決意を改めて確認しました。私は、先進民主主義諸国が西側全体の平和と安定を確保するためには、それぞれの国情に応じた防衛努力とあわせて、政治、経済など、広範囲にわたる対応を図らなければならないとの総合安全保障の考え方を述べるとともに、南北問題等への対応について、アジア諸国の期待と関心にも十分配慮が払われるべき旨を強調し、各国首脳の理解を得ました。
 わが国は、今後とも日米友好協力関係を外交の基軸としつつ、このたびのサミットの成果を踏まえ、国際的責任を積極的に果たさなければならないと思います。
 私はまた、オタワ・サミットで、建設的な南北対話の重要性を強調しました。南北間の相互依存関係はますます深まり、また、世界の平和と安定のため、先進諸国が、開発途上諸国の経済発展あるいは福祉の向上に貢献していくことによって、それら諸国の民生を安定し、政治状況の不安を解消していくことが必要であります。
 この意味で、近くメキシコで開催予定のいわゆる南北サミットは重要であります。南北の主要国の首脳が一堂に会し、開発と協力の問題について忌憚のない意見を交換することは、世界の相互依存と連帯の精神のもとに建設的な南北関係をつくり上げていく上できわめて有意義な機会となります。
 私は、国会の御了承を得て、この会議に出席し、経済協力に取り組むわが国の積極的な姿勢を明らかにするとともに、特に、食糧増産、農業開発などの施策が開発途上国の国づくりの基本として重要であることを訴えるつもりであります。(拍手)
 このたびの国会は、新たに提出される法律案及び前国会から継続審査となっている法律案など、行財政改革に関連した案件が御審議の大宗を占めるものと存じます。まさに今後の行財政改革の成否を左右する国会であると申しても過言ではありません。
 国家百年の計という言葉があります。行財政改革は、二十一世紀を展望する国家の大計であり、避けて通れない国民的課題であります。われわれは、国民の期待と関心にこたえ、全力を挙げて行財政改革達成の推進力とならなければならないと思います。(拍手)
 国民の皆様の一層の御理解と御協力をお願いしてやみません。(拍手)
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○鹿野道彦君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る三十日午後一時より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
○議長(福田一君) 鹿野道彦君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福田一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時二十八分散会
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        法 務 大 臣 奥野 誠亮君
        外 務 大 臣 園田  直君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        文 部 大 臣 田中 龍夫君
        厚 生 大 臣 村山 達雄君
        農林水産大臣  亀岡 高夫君
        通商産業大臣  田中 六助君
        運 輸 大 臣 塩川正十郎君
        郵 政 大 臣 山内 一郎君
        労 働 大 臣 藤尾 正行君
        建 設 大 臣 斉藤滋与史君
        自 治 大 臣 安孫子藤吉君
        国 務 大 臣 大村 襄治君
        国 務 大 臣 鯨岡 兵輔君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 中川 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 中山 太郎君
        国 務 大 臣 原 健三郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君