第095回国会 本会議 第4号
昭和五十六年九月三十日(水曜日)
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 議事日程第三号
  昭和五十六年九月三十日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三分開議
○議長(福田一君) これより会議を開きます。
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 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(福田一君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。飛鳥田一雄君。
    〔飛鳥田一雄君登壇〕
○飛鳥田一雄君 私は、日本社会党を代表して、本国会で行われました鈴木総理の所信表明に関して質問をいたします。
 この際、私は、お言葉だけではなく、具体的に進めておられる施策の実際に即して伺いたいと思います。(拍手)
 総理、あなたの内閣が発足してからわずか十四カ月、この間、二つの重大な政治の方向転換が進められようといたしております。
 一つは、総理がレーガン大統領との会談で同盟を約束し、ソ連と対抗して軍備を増強し、西側自由陣営の一員としての責任を負担するという、まことに危険な方向であります。
 もう一つは、政府が行財政改革の美名のもとに、一方では防衛費を増大しながら、他方では年金、福祉や教育費を切り下げ、財政赤字のツケを国民生活や地方自治体に押しつけようとしておられることであります。
 以下、私は、わが国の政治がいま直面するこの二つの問題を中心にして、順次、鈴木総理の御見解を承りたいと存じます。
 まず、平和の問題でありますが、いま、わが国民、否、世界じゅうの人々が最も憂慮しているのは、米ソ両大国のデタントが後退し、新冷戦時代と呼ばれる危険な、きな臭い気配が国際環境に漂っていることであります。
 特に、アメリカのレーガン政権は、発足以来「力による平和」というスローガンを前面に立て、対ソ強硬路線を打ち出し、全地球規模の同時多発戦略を宣言し、軍事的緊張は一段と高まりました。ソ連側の対抗措置も、この緊張を構造的に持続させる結果にしか現在なっておりません。
 総理、いま中東において、アフリカにおいて、東南アジア、中南米において、局地戦争や紛争が続き、さらに、米ソ両国の本土のみならず、アジア、ヨーロッパも恐るべき核戦略体制の網の目に包まれております。私たちは、核戦争がいつ起きても不思議ではないという人類共滅の危機を、深刻に認識しなければなりません。(拍手)
 この危機をいかに打開するかは、わが国民と人類にとっての根本命題であります。すべての政治家は、ここに心を砕き、着実に平和をつくり、前進させる理念と方途を探求しなければならないのであります。
 私は、その意味において、まず初めに、鈴木総理のグローバルな平和への理念、平和への基本的構想を伺いたいと存じます。(拍手)
 先月発表せられました防衛白書には、初めて、守るべきものは国民や国土だけではなく、国家体制であるとの考え方が打ち出されております。私は、これをきわめて危険なものだと考えます。今日の平和が危機に瀕しているのは、異なる価値観に立つ異なる国家体制間の不信と対立が極度に増幅され、武力によって体制を守り、国際社会で覇権を握ろうとする力の論理が大国の行動を規定してきたところに、その根源があります。
 現代世界の平和は、異なる体制間の共存を認め合い、保障し合う以外にはあり得ません。したがって、私は、それぞれの政府と政府、国民と国民との間の対話とコミュニケーションを積み重ねて、平和共存の原則を確立することこそ、最も重要なものだと考えるものであります。(拍手)
 鈴木総理は、お口だけではしばしば、武力に頼らない、軍事大国にはならないと言われておりますが、肝心なのは事実であります。あなたは日米首脳会談で、レーガン大統領の主張するソ連脅威論に歩調を合わせ、それに対抗する日米の同盟と、わが国防衛力の増強になお一層の努力を約束されたのであります。
 その直後に、現にあなたは、一千海里のシーレーン防衛を日本が行うと言明されましたが、最近の南西諸島を中心とした海上自衛隊の演習は、アメリカ第七艦隊が参加して従来にない広域にわたって展開せられたのであります。これは明らかに日米安保条約の「極東の範囲」を押し広げ、共同作戦体制を整える動きであります。
 また、政府は、次年度予算のゼロシーリングの過程で、防衛予算七・五%の増額要求を聖域として扱われました。中でも、F15戦闘機、P3C対潜哨戒機など、新規契約の航空機の購入費は前年度の七・六倍に急膨張を遂げ、そのうち、たとえばF15四十三機の価格は四千五百億円であるにもかかわらず、次年度予算にはわずか四十四億円、すなわち一%しか計上されていません。このようにして、後年度支払いの契約高は二兆二千六百億円に激増すると見込まれております。一体これは、国民生活の立場から、どういう意味を持っているのでありましょう。これは事実として、わが国が米ソ軍拡競争の一方に加担し、戦争への危険を増大させる軍事大国への道でなくて何でありましょう。(拍手)
 今月初めにありました日米下田会談で、総理は、「アジアに米国の軍事力が存在すること自体、平和を担保する最も重要な要素」と述べておられます。こうした発想こそ、まさに力の論理を賛美するものではありませんか。そうでない、こうおっしゃるのならば、どうかはっきりと国民にわかるようにお答えをいただきたい、このように考えます。(拍手)
 総理、レーガン政権の誇張されたソ連脅威論については、すでにアメリカ国内ですらも、その危険性を指摘し、批判する声が高まっております。たとえばカーター前大統領でさえ、ソ連悪者論は余りにも単純過ぎると述べておられます。そして、レーガン政権の対ソ強硬路線と小さな政府・大きな軍備政策は、いまや現実の中で破綻しつつあるのであります。
 大声でソ連の脅威を叫び、わが国や西欧諸国に対して、対ソ輸出を慎重にせよと一方において求めながら、その実、アメリカ自身は対ソ食糧禁輸を解除いたしました。キャタピラー社の対ソ・パイプライン敷設機械の輸出申請を認可しました。大きな矛盾ではありませんか。さらに、レーガン政権は、軍備の大幅増強計画に基づく国防予算から、百三十億ドルの削減に踏み切らざるを得なくなったのであります。国内外の通貨・経済体制を混乱させ、各国の指弾を浴びている高金利政策にしても、結局は過大な軍備に原因があり、早晩行き詰まらざるを得ないことは、もはや目に見えているのであります。
 総理、軍備増強の路線が、国際緊張を激化させるだけではなく、経済を破綻させ、国民生活に非常な犠牲を強いるということは、すでに明白であります。単純なソ連悪者論に乗って軍備増強に走る愚かな政策を取りやめ、米ソ両国に対して、軍拡競争の中止、軍縮交渉の本格的推進を強力に要求すべきであります。(拍手)
 わが国民の願いは、政府が、国際緊張の緩和と軍縮を目指して積極的な役割りを果たし、世界平和をリードする政策と行動を示してくださることであります。戦後三十六年、平和憲法のもとで目覚ましい経済成長を遂げてきたわが日本こそ、国際社会の中で、力の論理を否定する平和への強い発言力を持ち得るはずではありませんか。(拍手)
 特に、来年の国連軍縮総会に向けて、日本の果たすべき役割りは重大であります。いまこそ勇気を持って、レーガン政権の圧力をはねのけ、自主と平和の外交に転換すべきときと思いますが、総理の御所見はいかがなものでしょう、この際、ぜひお伺いをしておきたいと思います。(拍手)
 また、最近、きわめて憂慮すべきことは、米ソの核戦略体制のもとに戦域核が登場したことであります。ソ連の戦域核配備に対抗して、アメリカも中性子爆弾の製造を決定し、いまや核兵器が現実に使用される危険がますます強まってきております。これに対して、ヨーロッパ諸国民の間で広範な反対運動が盛り上がり、北欧の非核武装地帯設定構想もいまや現実化しようといたしつつあります。この事実をいかにお考えでしょうか。
 世界で唯一の原爆被爆国であるわが国こそ、中性子爆弾、戦域核の生産、配備に強く抗議し、撤去を要求すべきではありませんか。特に、政府は、中性子爆弾の製造中止を直ちにアメリカ政府に申し入れるべきではないか、ぜひお伺いをいたしたいと思います。(拍手)
 最近逝去された湯川博士らの第四回科学者京都会議は、ことし六月、非核三原則が堅持されるためには、まず日本政府が従来の核抑止論から脱却することが必要であり、その上で、世界に向けて核軍縮のための具体的提案を行うべきであるとの声明を明らかにせられまして、核のかさから抜け出ることを求めておられます。総理は、このような日本の知性と人類愛の声をいかがお聞きでいらっしゃいますか、お伺いいたします。
 したがって、一切の核兵器については、政府がすでに明らかにされたように、わが国への配備や寄港、通過に反対というだけではなく、少なくともアジア・太平洋地域からの撤去を求めて努力していただきたいのであります。
 わが党は、かねてからアジア・太平洋地域の非核武装地帯設定を主張し、国際的活動を続けてまいりました。このわが党の構想こそは、一九七六年四月、衆議院外務委員会で行われた核拡散防止条約批准に伴う決議の中に、「世界の平和維持に非核化地帯構想が重要な意義を有していることにかんがみ、我が国はこの為に国際的な努力をすること。」と盛り込まれているのであります。
 先日の国連総会において、園田外相は、「軍拡競争を停止し、核兵器の廃絶を初めとする軍縮を実現することは、世界の安定と発展のための最大の課題」とお述べになり、「非核三原則を堅持し、核軍縮を中心とする軍縮促進を念願するわが国は、そのため積極的に寄与する決意である」と、世界に向かって表明せられました。その責任は重いのであります。これが真実、鈴木内閣の真意であるとするならば、総理、あなたも国会の決議に基づき、アジア・太平洋地域の非核武装地帯構想の具体化のために、直ちに国際的な努力を尽くす決意がおありかどうか、お答えをいただきたいと存じます。(拍手)
 また総理は、所信表明演説において、メキシコで開かれる南北サミットに出席の意思を表明され、第三世界諸国への経済、技術協力を推進していきたいとの考え方をお述べになりました。それが真に平和友好、互恵平等の一貫した立場で実現せられるのならば、私たちも大賛成であります。
 しかし、鈴木総理が責任を現に負担していらっしゃる日米共同声明は、「平和と安定の維持のために重要な地域への援助を強化していく」として、レーガン流の選別援助に同調を示しているのであります。アメリカは、レーガン政権になってから、国際機関を通じたグローバルな差別なき援助を縮小し、自国にのみくみする国だけへ選別援助を行うことに転じました。また、わが国外務省発行の「経済協力の理念」という小冊子にも、政府の行う開発援助は「日本の総合的な安全保障を確保するためのコスト」であると述べ、アメリカを初めとする同盟諸国の防衛努力を補完し、紛争周辺国への援助を重点にすると主張しております。このようなやり方は、紛争の相手国を刺激し、敵対関係をつくり出すだけのものと言わざるを得ません。こうした選別援助は、軍拡競争の一方に加担する外交姿勢の延長であり、南北問題の真の解決に役立つものでしょうか。妨げるものとならざるを得ないのでありますが、総理の見解はいかがですか。選別援助は断じてやらない、こういうことを明言していただきたいと思います。(拍手)
 さきに開かれた日韓定期閣僚会議で、韓国側が北の脅威と日本の安全保障のとりで論を主張し、五カ年で六十億ドル、すなわち日本円で一兆四千億円に及ぶ巨額な援助を要請いたしました。これは、鈴木総理が「韓国の防衛努力と在韓米軍の駐留が朝鮮半島の勢力均衡に寄与している」と高く評価したことを韓国側がとらえ、防衛負担を分かつことを主張してきたものと思われるのであります。すなわち、実質的には軍事援助であり、結果として朝鮮半島の緊張を激化させ、朝鮮の自主的平和統一を阻害するものであります。
 総理、私は、開発途上国に対する援助基準外の、いわゆる中進国たる韓国に向けて、結局は軍事援助となる援助は行うべきではないと考えますが、方針をお伺いしたいと考えます。(拍手)
 次に、私は、第二の問題点である行財政改革についてお尋ねいたします。
 元来、今日の行財政の肥大化、税金の使い道のむだや不公正は、もともと高度経済成長期における自民党政府の放漫で無責任な政治がつくり出したものであります。これにメスを入れ、民主的で公正かつ効率的な行財政に改革せよということは、国民多数の望むところでありましょう。(拍手)
 この国民の要求にこたえて、これまでわが党は、行財政を大資本奉仕から国民生活優先に大きく切りかえ、不公正税制を是正し、国の権限と財源を地方自治体に大幅に移譲し、軍事予算を削減し、情報公開制度と国民の代表が参加する行政監察委員会制度を確立して、国民のための平和と福祉と分権、自治を目指す行財政改革を進めることを再三提唱してまいりました。
 ところがどうでしょう。今回、鈴木総理が行おうとしている行政改革は、国民の求める行革とは全く逆で、単なる財政のつじつま合わせのための理念なき行革と言わざるを得ないのであります。(拍手)
 しかも、その中身を拝見いたしますと、もっぱら福祉や教育を切り下げ、地方自治体に負担を押しつける一方、反面では、財界の収益は温存し、大企業優遇の不公正税制の是正にも全く消極的で、物価調整減税にさえ一言も触れようとせず、もともと国が負うべき責任を国民に転嫁するだけのものであります。これでは財界主導、福祉切り下げ、軍備増強のための行革であり、自治と分権と国民生活を破壊する行革ではありませんか。(拍手)
 こうした行革の基本的性格と総理の姿勢について、ここに改めて私は御所見を伺っておきたいと思います。
 私は、国民が求める行財政改革の最大の項目は、不公正税制の是正だと考えております。鈴木総理も、一昨日の所信表明演説では、特に税負担の公平を図ることを強調しておられました。
 この点、わが党は、すでに利子配当総合課税の強化、課税所得の公正な捕捉、大企業の所得ランクに応じた段階別法人税率の導入、大法人の各種引当金、準備金に対する無税扱いの圧縮などを政府に具体的に提案しております。もしこれを断行なされば、社会保障費や教育費を削って弱い者いじめをしなくとも、昭和五十九年度の赤字公債発行ゼロを達成することが可能であります。(拍手)なぜ政府は、国民の立場に立った具体的な方策を示されないのか。所信表明で不公正税制是正の決意を述べられた鈴木総理は、一体いつまでにその具体案を提案なさるのか、責任を持った御答弁をいただきたい、このように考えるのであります。(拍手)
 さらに、補助金の削減について見ますと、政府の補助金カットで一番大きいのは福祉関係、次が教育、三番目が農業となっております。ここにあなたのいわゆる行革の性格が端的に示されていますし、また、たとえば環境庁の公害対策の補助金などは、水俣を初めとする住民運動が血みどろになって実現させたものであります。これをすら一律カットの対象にするというのは、血も涙もないことではありませんか。(拍手)
 こうした反面、自民党の党略、票集めの効果をねらったと思われるものや、財界に援助していると言われる約三千億円の補助金、さらに特殊法人、許認可法人に与えている出資金、補助金、委託費などについて全く手をつけておられていないのは一体どういうことですか、お伺いしたいと思います。
 わが党は、行財政改革の基本は何よりも公平公正であり、民主的でなければならないと主張するものであります。総理のお考えはいかがでしょうか。
 総理は、以上のことについては、まず公正公平な改革案をつくり、国民各層の痛みを公平に分かち合うようにすべきであります。私は、この際、その案ができるまで、今回の行革法案のうち、福祉や教育費などの切り下げになる弱い者いじめなどの予算関連法案は撤回して、根本的に見直すことを提案いたしたいと思います。総理のお答えを願います。(拍手)
 私は、総理の行革が福祉、教育、国民生活に及ぼす具体的な影響については、同僚議員の質問にお譲りいたしたいと思いますが、特に、公務員定数の一律削減と称して、看護婦さんや保母さんに至るまで人減らしの対象にしようということは何でありますか。また、教育の分野では、昨年の与野党合意に反して四十人学級の実施を抑制しようとしたりすることに対して、むしろ憤りを感じざるを得ないのであります。成長する子供は待っていられないのであります。(拍手)
 今日、国民が行財政改革で強く求めているものは、清潔、明朗な政治、国民に奉仕する行政であることは言うまでもありません。そのため、まず第一に必要なことは、ロッキード汚職事件を初めとする政治腐敗の根源を断ち切り、国民から信頼される行政を確立することであります。一般公務員が熱意を持って行政サービスに取り組める政治環境の浄化、民主化を進めることであります。
 ところが、鈴木内閣の姿勢は、政治腐敗の一掃にはきわめて消極的でありました。たとえば、衆参両院の航空機特別委員会を廃止したのは、鈴木自民党総裁になってからではありませんか。また、教科書無償制度廃止の動きで出版社その他に圧力をかけ、教科書内容を右傾化させ、教科書をめぐる政治献金など、腐敗が教育の分野にまで及んでいることは許しがたいことであります。(拍手)
 わが党は、政治腐敗の一掃を期して、政治家や高級公務員の資産を公開する情報公開制度を設けることを主張いたしておりますが、これらの点、総理は一体どうお考えなのでありますか。いまや、断固として政治姿勢を正し、行政機構の民主的改革に踏み切るべき時期ではありませんか、強くお答えを求めておきます。(拍手)
 以上のほか、私は、本国会が緊急に解決すべき若干の重要な問題について御質問を申し上げます。
 まず、北海道の豪雨、台風十二号、十五号による災害は、農作物だけで三千億に上っているのであります。政府の対策は不十分です。総理は、心からお見舞いすると言われましたが、被災者が欲しいのは言葉だけではありません。直ちに災害救済特別措置法を制定し、交付金の支給等の具体的方法を講ずべきであります。
 また、国際障害者年に当たり、政府は、さきの国会決議に基づき、障害者の社会への完全参加と平等を実現するため、明確かつ具体的な年次計画を策定して実施すべきであります。特に障害者雇用率の達成、精神障害者に対する雇用対策、重度障害者の生活保障と介護、共同作業所への助成拡大を急ぐべきであります。
 次に、同和対策事業特別措置法強化改正の件については、総理は、さきの通常国会で、今後の施策の実施に支障を来さないよう、概算要求までに結論を出していきたいとお約束になられたのであります。全国知事会を初め、三十五都府県議会、千二百二十七市町村議会が、特別措置法の強化改正や附帯決議の早期完全実施を求める決議を採択し、各界、各層の運動も史上かつてない盛り上がり方をいたしております。
 同和問題の解決こそ、人間の自由と平等に関する基本問題であり、時の財政や政治事情に左右されてはならないものであります。さきに国際人権規約を批准し、世界に人権を守ることを明らかにした立場をしっかりとお踏まえになり、本国会で特別措置法の強化改正をせらるべきであります。
 さらに、今月初め、婦人に対する差別撤廃条約が二十二カ国に及ぶ批准を得て発効いたしました。政府は、この条約を速やかに批准するとともに、わが党が提案している男女雇用平等法に同意され、育児休業制度をすべての婦人労働者に適用すべきであります。
 最後に、前国会からの継続案件である三公社五現業の給与引き上げに関する仲裁裁定は、ILO等に対する国際的誓約によっても完全実施するのが当然であります。
 同様に、公務員給与についても、人事院の給与勧告制度は、最高裁判決によって公務員の労働基本権の代償措置であると再確認されたものでもあり、固有の権利であって、財政のつじつま合わせと引きかえにさるべきものではありません。法治国家として法律を守るかどうかの問題であります。政府は、行革法案とは関連なく、即時完全実施に踏み切るべきであります。(拍手)
 これらの各問題について、総理の明確なる御答弁を期待いたします。
 以上、私は、平和の危機への対処と行財政改革という、わが国の政治がいま直面している二つの重要課題を中心にして、さらに、緊急、切実な国民の要求をめぐって質問をいたしました。
 総理、最近、自民党内に憲法改正の声が高まり、八三年政治決戦を憲法、防衛問題の選挙と断ずる動きさえありますが、総理は、この際、憲法はあくまでも守り抜く決意をお持ちであるかどうか、私はここにお伺いを申し上げ、国民の願う民主的改革になり得ることを私たちはお願いいたします。これこそが国家百年の大計であり、二十一世紀への足固めではありませんか。
 重ねて総理の所信のほどを伺って、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 飛鳥田社会党委員長にお答えをいたします。
 まず、国際社会において最も重要な平和の問題についてであります。
 今日、世界の平和と安定を維持していく上で最も重要な要素となっているのは、依然として米ソを中心とする東西間の力の関係であり、したがって、いかにして安定的な東西関係を構築していくかが大きな課題であると申さねばなりません。
 米ソの関係は、近年、ソ連の一貫した軍備増強や第三世界への進出により不安定な面が出てきておりますが、他方、両国とも、核戦争に至るような全面的対決は避けるとの考え方であると思われます。また、最近では、米ソ間の戦域核制限交渉開始の合意に見られるように、対話を通じての関係安定化への努力も開始されております。
 わが国といたしましても、このような現実を踏まえ、東西間において、より低レベルの戦略的安定が図られるよう、米ソを中心とする関係国の軍備管理、軍縮への努力を強く働きかけるとともに、特に、明年の国連軍縮特別総会を念頭に置きつつ、核軍縮を中心とする全面完全軍縮に向けて前進が図られるよう、平和国家として最大の努力を傾注していく所存でございます。(拍手)
 次に、わが国の防衛力の整備に関連して、これは軍事大国への道を歩むものではないかとの御懸念が表明されました。
 しかしながら、わが国は、あくまでも平和憲法のもとで専守防衛に徹し、現下の厳しい国際情勢を踏まえつつ、日米安保体制を基軸として必要最小限度の防衛力の整備に努めているところであり、このことは、国会においてもこれまでたびたび御説明申し上げてきているところであります。したがって、軍事大国云々の御批判は全く当を得たものではありません。(拍手)
 私は、飛鳥田議員御指摘のとおり、さきの下田会議において、米国の東アジアにおける役割りに触れ、米軍のこの地域におけるプレゼンスが平和を担保する最も重要な要素であると述べました。これは、東アジアにおける米軍の存在が、抑止力として、この地域における平和と安定の維持に貢献しているという疑いのない事実を事実として述べたものであります。
 なお、米国は、軍事的側面のみならず、東アジアにおける緊張緩和のための政治的役割りや各国の国づくりに対する経済的協力を通じて、この地域の安定と繁栄にとって重要な貢献を行っていることも御承知のとおりであります。
 なお、わが国の外交に関して、一部の国からの圧力云々のお話がございましたが、わが国は、あくまでも自主的な判断に基づいて外交を進めてきているところで、改めて申し上げておきたいと存じます。
 次に、中性子爆弾の問題についてでありますが、わが国は、唯一の被爆国として、あらゆる核兵器の究極的廃絶を目指し、軍縮の分野で核軍縮を最優先の課題として、国際場裏において強く訴えてきております。
 ただし、現実の国際関係におきましては、軍事的均衡があらゆるタイプの核兵器を含む各種の兵器体系により維持されているということも事実であります。したがって、私は、核兵器の中から特定の兵器のみを取り出し、それだけについて御指摘のごとき意思表示を行うことは必ずしも適当でないと考えます。
 いずれにせよ、わが国といたしましては、中性子爆弾、戦域核を含め、あらゆるタイプの核兵器の究極的廃絶を目指し、現実の国際関係において実現可能な具体的措置を一歩一歩進めていくことが肝要であると考え、その考えに基づき今後とも軍縮委、国連等の場において、核軍縮を強く訴えていく所存でございます。(拍手)
 飛鳥田議員御指摘の核の問題につきましては、今日の国際社会において、力のバランス及びそれに基づく抑止が安定維持のための重要な要素となっていることは否定できない事実であります。わが国としては、核の脅威に対しては引き続き米国の核抑止力に依存していく必要があると考えます。
 なお、非核三原則につきましては、わが国として今後ともこれを堅持してまいる方針であることは、改めて申し上げるまでもございません。また、この方針と米国の核抑止力に依存することが矛盾するものではないということにつきましても、これまでも国会等において、たびたび申し上げているとおりであります。
 また、ある地域を非核地帯とすることにつきましては、適切な条件がそろっている地域であれば、その地域の国々の提唱により非核地帯が設置されることは、核拡散防止の目的に資するものと言えましょう。しかしながら、御指摘のアジア・太平洋地域につきましては、非核地帯を設置するための現実的な条件は、遺憾ながら、いまだ整っていないと考えます。ただし、政府といたしましては、一般的な構想としては、そのような考え方を十分理解するものでありまして、今後とも適切な条件が一歩ずつでも醸成されるよう、外交努力を行ってまいる所存であります。
 次に、わが国の経済協力のあり方についてお尋ねがございました。
 開発途上国の経済的混乱は、政治的、社会的不安定を惹起し、国際的な紛争の引き金ないし国際的緊張の原因ともなりかねません。したがって、世界の平和と安定の維持のためには、開発途上国の政治的、経済的及び社会的安定が不可欠であると考えます。経済協力を通じ、開発途上国の経済社会開発を支援をし、民生の安定、福祉の向上に貢献することは、これら諸国の政治的、社会的安定をもたらすとともに、広く国際間の緊張を緩和することに貢献することになります。
 私は、以上の認識を踏まえ、去る五月の日米共同声明でも、「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対してわが国が援助を強化していく」旨述べたものでありまして、これはわが国が開発途上国を敵と味方に分け、そのような立場から選別的援助を実施するといったことを意味するものではございません。
 相互依存と人道的考慮とに基づき、相手国の経済社会の開発を支援し、もって民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を行うという考え方は、韓国に対しても同様に当てはまるところであります。
 なお、わが国のこうした形の経済協力が、過去において南北対話の実現の阻害要因となったり、朝鮮半島の緊張を助長したりしたことはありません。わが国としては、こうした考え方に基づき、今後とも南北間の緊張緩和が望ましいとの基本的立場を維持するとともに、韓国の経済社会開発と民生安定にできる限り寄与していく方針であります。(拍手)
 次に、行財政改革に関連して一連の御質問がございましたが、それにお答えする前に、若干の事実に触れておきたいと思います。
 高度成長路線を歩んでいたわが国経済が、第一次石油危機に見舞われたのは昭和四十八年でございました。この影響で、わが国の経済は一転して景気の停滞、インフレ、失業、国際収支の赤字に悩まされたことは、これは事実でございます。このとき前面に出て、公共事業を中心に積極的役割りを果たし、民間経済を下支えし、失業を初めとする種々の問題の解決に当たったのが財政であります。景気の停滞に伴う税収の伸び悩みにかかわらず積極的な財政運営をいたしましたので、支出の拡大は、勢い国債の増発を招く結果となったのであります。さらに、第一次石油危機の生じた昭和四十八年度は、また福祉元年と言われたように、社会保障等の施策水準の引き上げが重要な課題とされた年であり、この年以降の福祉関連施策の充実が、歳出を押し上げる要因として働いたのであります。
 試みに、最近十年間の国の予算の伸びを見ますと、国債費と地方交付税を除いたいわゆる一般歳出の伸びは、十年間で約四・五倍となっておりますが、この中にあって、社会保障関係費は六・六倍、文教及び科学振興費は四・五倍となっており、他方、防衛費は三・六倍、公共事業関係費は前年度と横ばいとされた年度もありまして、十年間で約四倍となっております。決して福祉の切り捨てとか、軍備増強予算とかいうことにはなっていないことはこのとおりでございます。(拍手)
 このような経済運営の結果、今日のわが国の経済情勢は、成長率で見ても、物価で見ても、失業率で見ても、国際収支の状況で見ても、世界の諸国と比べて最も恵まれた状況にあります。
 西欧先進諸国との対比で見ても、マイナス成長に悩む国もある中で、わが国は五%近い安定成長を続けております。多くの国が二けたインフレに苦しむ中で、わが国の消費者物価の上昇率は四%台にとどまっております。失業率をとりましても、七%から一〇%程度の失業者を出している国がある中で、わが国の失業率は二・二%程度で推移しております。国際収支の回復の状況につきましても、皆様御承知のとおりであります。
 わが国は、今日、一次、二次の石油危機の影響を脱し、世界が注目する安定と繁栄を享受しておりますが、これは、わが国民の英知と努力、それにわが自由民主党政権の経済政策の成果であると信ずるものであります。(拍手)
 しかし、今日のわが国の繁栄と安定の中にあって一つ問題を抱えておりますのは、行財政、中でも財政の不均衡であります。
 今年度末における国債残高は約八十二兆円となります。これは国民一人当たり七十万円を超える額であります。今年度予算の国債の利払い額は約五兆六千億、これは一世帯当たり約二十万円の利払いを負担していることになります。先ほど、この十年間で社会保障費は約六・六倍、防衛費は三・六倍になったと申しましたが、国債費は実に約二十倍になっているのであります。
 このような状況を放置しておいては、わが国の財政は新しい政策課題、国民の新しいニーズに対する対応力を失います。私が、わが国の将来のため、行財政の改革、財政の再建が必要であると考えておりますのは、以上の事実に基づくものであることを、まずもって申し上げておきます。(拍手)
 次に、逐次御質問にお答えを申し上げます。
 まず、鈴木内閣の行財政改革の基本的性格についてお尋ねがございました。
 私は、わが国が内外の課題に適切にこたえ、国内にあっては活力ある福祉社会を実現し、対外的には国際社会に一層貢献するため、国、地方を通じて行財政の基盤を確かなものとしなければならないと考えております。
 わが国の行財政は、高度成長のもとに、その役割りを拡大してきましたが、特に石油危機以降は、国民生活の安定と不況克服のため、多額の借入金が必要となり、財政の健全性が失われております。
 このような状況を打開して、新しい時代の要請にこたえることができる対応力を回復するためには、行財政の全般にわたる見直しが不可欠であります。この見直しは、行財政のあらゆる分野について厳正に行われる必要があり、長期かつ総合的な視野に立つものでなくてはなりません。
 このため、臨時行政調査会におきまして二年間の予定で検討が行われておりますが、同時に、なし得ることは時を置かず着手するとの方針のもとに、臨時行政調査会にもお願いし、当面、昭和五十七年度予算の編成に係る第一次の答申をちょうだいいたしました。目下、その実行に取り組んでいるところであります。
 行財政改革は、国家百年の大計とも言うべき大事業でありますが、このため、必要な措置の中には、産業や国民生活の各分野において痛みを伴う事柄も出てまいります。しかし、この痛みは、よりよい明日を築くための産みの悩みであり、耐える価値のある悩みであると思います。痛みを公平に分かち合い、簡素にして効率的な行政を実現し、新しい時代の要請に対応し得る健全な財政を実現して、わが国の未来を確かにすることが行財政改革の目指すところと考えます。私は、全力を挙げてこの行財政改革に当たる決意であります。
 次に、税負担の公平についての御質問でありますが、税負担の公平確保はきわめて重要な課題でありますので、制度面、執行面で改善に一層の努力を傾注してまいる所存であります。
 中でも、租税特別措置につきましては、五十七年度においても引き続き厳しい見直しを行ってまいる方針であり、また、所得税の税負担の公平確保を図るためには、申告水準の向上という観点から、制度面においてどのような方策をとり得るかということを中心として、申告納税の基本を踏まえ、引き続き検討する所存であります。また、執行面におきましては、今後とも誠実な青色申告者の普及、育成等により、さらに納税環境を整備するとともに、可能な限りの調査事務量を確保し、税務調査の充実に一層努めてまいりたいと考えております。
 次に、補助金の削減に関連いたしまして、福祉や教育費の切り下げになる予算関連法案は撤回するよう御提案がありました。
 政府は、行財政改革推進の当面の施策として、臨調第一次答申を最大限に尊重して、行革関連特例法案の国会提出を初め、目下所要の措置を実施に移しております。
 その際、行財政のあらゆる分野について厳しい見直しが必要であり、簡素かつ効率的な行財政の実現のためには、等しく痛みを分かち合う気持ちが必要であります。その意味では、文教、福祉といった部門についても例外なく見直しが必要であると考えますが、社会的、経済的に見て弱い立場にある方々に対する真に必要な施策は確保してまいる所存でありますので、この点を御理解の上、当面の法律改正を要する事項について提案している行革関連法案の御検討をお願いいたします。
 次に、政治倫理について御意見がありましたが、私は、清潔かつ公正な政治と行政は国民の信頼を得る原点であり、政治、行政に携わる者が常に自戒の念を持って事に当たらなければならないと考えております。
 なお、御提案の政治家等の資産公開の問題については、事柄の性質上、国会における審議検討にまちたいと思います。
 情報公開制度の問題につきましては、臨時行政調査会において検討テーマとされているところでありますので、その結果を参考にして、慎重に対処してまいる所存であります。
 次に、先般の北海道の長雨、台風による災害についてお尋ねがありました。
 政府といたしましては、このたびの災害に対し、被災後直ちに復旧工事を進めるとともに、天災融資法の発動、激甚災害の指定など、各般の措置を講じているところであります。
 なお、御提案の災害救済特別措置法の制定につきましては、政府としては、災害弔慰金の支給、災害援護資金の貸し付け、農林漁業者、中小企業者への特別融資などの既存の制度を機動的に運用して、被災者の救済に万全を期しておりますので、御意見として承っておきたいと存じます。
 次に、国際障害者年との関連でお尋ねがありました。
 国際障害者年を契機とする障害者対策の国内長期行動計画のあり方につきましては、現在、国際障害者年特別委員会において審議が進められているところであり、政府といたしましては、その審議結果を踏まえ、総合的な施策の推進について検討してまいりたいと考えます。
 なお、御指摘の障害者雇用率の達成は、身体障害者雇用促進対策の柱であって、未達成企業に対しては引き続き強力な指導を行ってまいりますし、その他、精神障害者対策、重度障害者の生活保障、介護などにつきましても、今後とも適切な対策を講じてまいる所存であります。
 次に、同和対策についてでありますが、政府といたしましては、同和対策事業特別措置法が期限切れとなる昭和五十七年度以降においても、関係施策を再検討し、その適正化と効率化を図りつつ、なお一定期間所要の施策を講ずることといたしております。
 その場合の財政措置の内容及び法律問題につきましては、同和対策協議会の最終意見を見きわめつつ、関係各方面との意見の調整を図りながら検討してまいる所存であります。
 婦人に対する差別撤廃条約についてお答えいたします。
 この条約の批准のため、国内法制等諸条件の整備に努めるととは、国際的にも重点課題とされているところであります。また、政府といたしましても、本条約が本年九月に発効したことにもかんがみ、関係各省庁間の連絡調整を密にし、批准のための諸条件整備を促進してまいりたいと考えております。
 なお、具体的な批准時期につきましては、関係各省庁による批准のための諸条件の整備をできるだけ早急に進め、その状況を勘案の上、決定したいと考えます。
 なお、男女雇用平等法の制定、育児休業制度の全婦人労働者への適用の問題につきましては、婦人少年問題審議会などの審議を経た上で検討してまいりたいと考えます。
 次に、仲裁裁定の完全実施を求めるとの御意見がございましたが、現在までのところ、国会に付議した当時の状況に格別の変化が認められませんので、引き続き国会の御判断にゆだねることといたしております。
 また、人事院勧告の取り扱いにつきましては、これまで維持されてきた良好な労使関係、現下の厳しい財政事情など、諸般の事情を総合的に勘案して慎重に判断する必要がありますので、引き続き給与関係閣僚会議において検討を行うことといたしております。(拍手)
 私は、防衛力の着実な整備を図ることと軍縮への努力は、いわば車の両輪のごときものであり、いずれもおろそかにすべきものではないと考えます。この点、重ねてお尋ねがありましたので、明確に申し上げておきたいと思います。
 最後に、防衛費についてでありますが、政府としては、行財政改革の推進に当たっては、聖域なき見直しを基本として対処してまいる考えでありますので、防衛費につきましても、予算編成過程において一般の経費と区別することなく十分検討を行っていくつもりであります。
 飛鳥田議員から、自衛隊予算の縮小を行政改革の中軸とせよとの御提言をいただきましたが、わが国の防衛につきましては、一貫して、憲法及び基本的防衛政策のもと、自衛のため必要最小限度の防衛力を着実に整備していくとの方針をとっているところでありまして、せっかくの御提言ではありますが、御趣旨に沿うわけにはまいりません。(拍手)
 以上、お答えを申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 加藤六月君。
    〔加藤六月君登壇〕
○加藤六月君 私は、自由民主党を代表して、鈴木総理の所信表明に対して質問を行います。
 冒頭に当たり、まず、昨年の冷害に引き続き、本年も台風の影響等により、北海道を初め各地で大きな被害を生じ、多くのとうとい生命が失われたことは、まことに遺憾であります。党を代表して心からお見舞い申し上げます。(拍手)
 わが党は、政府と一体となって、災害復旧に万全を期しますとともに、今後の災害対策に全力を傾注してまいります。
 さて、質問の第一は、今日最大の政治課題となっております行財政改革についてであります。
 総理は、所信表明において、行財政改革は二十一世紀を展望する国家の大計であると述べられました。私も同感であり、行財政改革は、わが国が今日当面する最大、最重要の政治課題であると存じます。
 わが国、民族が、将来の繁栄と豊かな福祉社会を建設し、平和な国際社会の一員として、二十一世紀に向けて明るい未来を築き上げていくためには、行財政の改革こそ、乗り越えなければならない大きな試練なのであります。そしてまた、われわれがいま取り組もうとしている行財政改革ほどむずかしい課題もありません。
 昭和の初め、濱口雄幸総理、井上準之助蔵相のコンビで第一次大戦後の不況下、強い反対を押し切って財政の緊縮と行財政の抜本的な改革を断行されようとしましたが、御存じのように、志半ばにして暴徒の凶弾に倒られました。これほど行財政改革はむずかしいということであります。
 鈴木総理は、常々、行革は断行あるのみと申され、今回の臨時国会も行革推進国会として開かれたのであります。
 本国会は、わが国が当面する財政危機を行革によって克服し、激動する内外情勢に対する政治の対応力を回復するため、突破口を開くことができるか否かを決するまことに重大な国会であります。改めて、行財政改革と今国会に臨む鈴木総理の御決意のほどを伺いたいと存じます。
 さて、わが国経済は、第一次石油ショック後、国民生活安定と経済立て直しのため公債政策を積極的に取り入れました。その結果、日本経済は順調に回復し、今日、世界の優等生としての地位を確立しました。
 しかし、発行された公債の累積残高は、現在八十二兆円にもなっており、この大量の公債発行を継続したならば、わが国財政の機能を阻害するばかりでなく、今後の国の基本的な課題である活力ある福祉社会の建設、教育、科学技術の振興、社会資本の整備、総合的な安全保障、エネルギーの確保等々の基本的な政策を達成し得ないことになります。
 こうしたことを考えますと、現在の赤字財政を早急に立て直すことは、今後のわが国社会経済の発展と、輝かしく確かな未来を築くための最重要かつ喫緊の課題であります。(拍手)
 現行の行財政の徹底した見直しを行うという要請にこたえて、政府の臨時行政調査会は、去る七月十日、行財政改革に関する第一次答申を提出されました。
 私は、まず、同調査会の委員及び関係者各位の御熱意と御労苦に対し、深く敬意を表するものであります。
 財政再建に取り組むわが党及び政府は、この答申に先立つ六月五日、来年度予算の概算要求を原則として前年度の枠内にとどめるという前例のないゼロシーリングの方針を決定し、次いで七月十七日、臨調第一次答申については大筋を了承し、これを尊重しつつ増税なき来年度予算編成を推進する旨を党議として決定し、次いで八月二十五日、「行財政改革に関する当面の基本方針」を党及び政府において決定し、これをもって昭和五十七年度予算編成への根幹を決めたのであります。
 最近、一部の人々から、行革の推進が、やれ財界主導型であるとか、臨調追従主義で国会は不要であるとか、教育、福祉切り捨てであるとか、あるいは行革反対のストライキを打つとか、いわゆる反対のための反対論が出されましたが、私は、こうした議論は、今日の財政が、大型増税か、はたまた行財政改革による前進か、二者択一の岐路に立っているという厳しい情勢への理解が欠如しているものとして、きわめて遺憾に思うのであります。(拍手)総理におかれましては、こうした反対論にどのように対処される御決意なのか、お伺いいたします。
 また、行財政の改革に当たっては、必ず種々の苦痛を伴うものでありますから、まず指導者から始め、そして、すべてが等しく痛みを分かち合わなければならないと思うのでありますが、総理は、このことを国民にどう理解していただこうとしておられるのか、お伺いしたいと存じます。
 さて、臨調第一次答申に伴う当面緊急を要する臨時特例措置については、これを一括して行革関連特例法案として今国会に提出され、さきの通常国会から継続審査となっている他の行政改革関連の法律案ともども、ぜひともこの国会で成立させなければなりません。(拍手)
 今国会は、さきに述べましたとおり、行革という大きな試練の海原を乗り越え、将来の活力あふれる日本型福祉社会の建設という彼岸に向かって船出し得るかどうか、重大な意義を持っているのであります。鈴木内閣は一体となって御努力されるよう強く望むものであります。
 さらに、行財政改革の推進は、今回の臨調第一次答申に基づく措置が出発点であります。簡素にして効率的で、新しい時代に対応力のある政治行政体制を築き上げることが基本的課題であり、追求すべき目標であります。
 今後は、国家公務員及び地方公務員が、憲法で言う全体の奉仕者であるという立場を踏まえ、その定員、給与の合理化を図るとともに、国、地方、特殊法人等を通ずる行政の合理化、効率化を抜本的に進めなければなりません。
 また、租税政策の見直しに当たっても、単に歳入を図るというだけでなく、国民の税負担の公平と適切な税務執行を図ってまいらねばなりません。
 以上、るる申し上げてまいりましたが、政府臨調の今後の御審議と第二次答申を通じ、根本的な行財政制度の見直しが行われ、これが確実に実行されることを望むものであります。
 再度申し上げますが、行財政改革の断行こそ、わが国が、激動する国際社会の中にあって、平和で活力ある明日の日本型福祉社会をつくり上げていく道なのであります。
 行財政改革の断行に対する総理の不退転の御決意と、今後の御方針についてお伺いしたいと存ずる次第であります。
 当面、最優先の緊急課題である行政改革と財政再建については、以上に申し述べたとおりでありますが、さらに私は、八〇年代から来るべき二十一世紀への国政発展の方途に思いをいたすとき、他に幾つかの重要な政策課題の達成が絶対に必要かつ不可欠であると考えます。
 私は、このうち、わが党及び政府が最重点の政策課題として取り組むべきものは、まず第一に、自由市場経済のメカニズムと民間の潜在活力を最大限に生かした安定経済成長の維持発展であり、第二は、科学技術の振興と総合エネルギー政策の強力な推進、第三は、高齢化社会に対応した新しい福祉政策の展開、第四は、激動する国際情勢に対処して、世界の平和維持と発展に貢献する主体的かつ能動的な総合安全保障政策の推進の四つであると思います。そして、これらの最重点政策課題だけは、いかに財政再建期間中といえども、その解決、達成に全力を傾注しなければなりません。
 そこで、以下、これらの諸問題について、総理の忌憚のない御所見を伺いたいと存じます。
 まず、安定経済成長の維持発展についてであります。
 国民生活の安定確保こそは政治本来の使命であり、安定経済成長の持続と物価の安定は、そのための不可欠の前提条件であることは言うまでもありません。
 幸いにして、いまわが国経済は、主要先進諸国の中でずば抜けた安定ぶりを示しつつあります。しかも、今日なお、わが国経済は、依然好調な輸出と、民間設備投資と個人消費の着実な伸びを背景に、順調に上昇軌道を歩みつつあるのであります。しかしながら、その一方で、輸出の伸びに比して、内需拡大のテンポになお力強さが欠けること、業種間、地域間格差が顕在化しつつあることも否めません。私は、政府が、内需中心の景気の着実な拡大が実現されるよう、適時適切な政策運営を図られんことを強く要望するものであります。
 また、わが国経済の持続的発展を支えるものとして、科学技術の振興と総合エネルギー政策の推進はきわめて重要であります。国内に石油資源が皆無に等しいわが国にとっては、まさに国民経済と国民生活の死活にかかわる重大問題であると言っても決して過言ではありません。
 このため、わが党及び政府は、すでにエネルギーの長期的かつ安定的な供給確保を八〇年代の最重点課題の一つとして位置づけ、目下、画期的な総合エネルギー政策を実施中であります。昭和五十七年度予算概算要求に当たっても、他の予算は原則伸び率ゼロの厳しい査定方針を貫く中で、エネルギー関係予算は二四・二%増と、特に別枠扱いの重点的配分をしたのも、その熱意のあらわれであります。
 この際、私は、石油代替エネルギーの開発利用の促進から未来エネルギーの研究開発まで、短期、中期、長期にわたる総合エネルギー政策と、科学技術振興の展望と具体策を総理にお伺いしたいと存じます。
 次は、高齢化社会に対応した新しい福祉政策の展開についてであります。
 福祉政策の充実は、経済の発展とともに、国民生活の安定を支える車の両輪であります。
 現在、わが国の社会保障制度の水準は、すでに先進国中でも最高のレベルに達しました。しかしながら、安定成長時代への移行と、今後急増を予想される高齢者人口の増大を考えるならば、わが国の社会保障も、ようやく大きな転換期に直面しつつあると考えざるを得ません。
 私は、この際、現在の福祉水準の維持充実と、その長期的安定を図るため、弱者の重点救済を基本に、年金、医療等を含む社会保障制度全体の再構築を進めるべきであると考えます。とりわけ、かねて提案中の老人保健法案は、ぜひとも今国会で成立させ、新制度の発足を急がねばなりません。
 私は、今後目指すべき新しい福祉政策とは、重点的かつ効率的な公的扶助と日本人固有の自立自助の精神、細やかな人間関係、相互扶助の仕組み等を組み合わせることにより、公正で活力あふれる日本型福祉社会の建設にあると考えるものであります。総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)
 次いで、国際情勢に関する基本認識と、これに対処すべきわが国外交のあり方、総合安全保障政策に取り組む基本的態度等について、総理の御所信を伺いたいと存じます。
 七〇年代以降、次第に激動の兆しを見せていた国際情勢は、八〇年代の到来とともに、にわかに多様化と不安定化の度を強め、混迷の様相は時とともに深まる一方であります。私は、国際情勢がこのような状態に陥った最大の原因は、およそ次の三点であると考えるものであります。
 すなわち、そのまず第一は、ソ連の軍事力を背景とする露骨な勢力拡張政策であります。(拍手)これが東西関係を中心とする国際関係の緊張を増加し、世界の平和と安全を脅かし始めているのであります。
 第二は、第三世界の動向であります。第三世界諸国は、次第に世界政治に対する発言力を増大させておりますが、その政治的、経済的基盤は依然として脆弱であり、国際関係全体の不安定化の大きな要因になっているのであります。
 そして、その第三は、資源・エネルギーの制約の顕在化を契機とする西側諸国の経済的停滞であります。
 私は、このような国際環境の急激な変化によって世界の平和が危機にさらされるに至った現在、西側自由主義陣営の主導的国家たるわが国の果たすべき国際的役割りと責任は、きわめて重大と考えるものであります。
 これまでわが国は、国際政治の分野では、とかく受け身の消極的な姿勢に終始してまいりました。しかしながら、いまやわれわれは、本来、資源小国、加工貿易国家のわが国ほど、国際の平和維持を必要とする国はなく、また平和の最大の受益者でもあるという事実に真剣に思いをいたさねばなりません。
 私は、世界の平和を必要とする国は、みずから平和維持のため可能な限りの力を尽くすべきであり、平和によって利益を得る者は、当然、その利益の一部を平和の代償として支払うべきであると信じます。(拍手)
 総理、こうした諸般の情勢を考えれば、私は、いまこそわが国が、かつてのような平和の受け身の受益者たる立場から脱皮し、平和の積極的な創造者としての立場へ、大きく外交姿勢を転換すべきときが来ていると確信するものであります。また、これによって積極的に国際政治に参画し、発言し、行動することを通じて、新しい国際平和秩序づくりに貢献し、世界平和維持のために国力にふさわしい役割り分担を進んで担うことこそが、平和国家としてのわが国の果たすべき責任でもあります。
 国際情勢に関する基本的な認識とあわせて、この点についての総理の率直な御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 続いて、オタワ・サミットについてお尋ねいたします。
 総理は、自由と民主主義の価値観を共有する西側先進諸国が、国際情勢に関する基本認識と、これに対する基本戦略の一致を図りつつ、ソ連の継続的な軍備増強等に対する有効な対処、西側経済の再活性化、第三世界の政治的安定化等の総合安全保障戦略を実施することこそが、西側全体の平和と安定を確保するゆえんである旨を強く訴え、各国首脳に多大の感銘を与えられたのであります。
 私は、以上のような総理の御見解には基本的に同感であります。この際、改めて、オタワ・サミットの意義と成果についての御報告とあわせて、今後わが国に課せられた国際的責任の履行に対する総理の御決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
 次いで、世界平和維持のための国際的役割り分担の問題と関連して、わが国の防衛努力についてお尋ねいたします。
 わが国には憲法上の制約もあり、分を越えた軍事力の強化や軍事面での国際的役割り分担ができないことは申すまでもありません。しかしながら、少なくとも、自分の国はみずからの力で守るだけの自衛力は整備すべきであると考えます。(拍手)
 最近における急激な東西緊張の高まりや中近東情勢の変化等により、わが国周辺における日米安保体制による米軍事力の補完能力に一時的な空白もあり得る現在、われわれは、自衛力の整備について、さらにさらに考え直さなければならないときであります。
 私は、以上のような判断に立って、専守防衛、文民統制、非核三原則の基本原則を堅持しつつ、新しい国際情勢の変化に対応し、より一層の防衛努力を続けるべきだと信じます。
 しかしながら、一方われわれは、米ソ両国を中心とする果てしない核軍拡競争が、人類全体を破滅に陥れるものであるということに思いをいたし、国際的な軍縮問題の推進に全力を傾注しなければなりません。この点に関する総理の忌憚のない御所信を伺いたいと存じます。
 さらに、国際平和の維持と世界経済全体の発展のために対外経済協力推進の重要性は言うまでもありません。また、軍事的な面での国際的貢献に制約のあるわが国にとって、経済協力こそ西側の一員として寄与し得る最大の分野であると私は信ずるものであります。
 このため、わが党及び政府は、昭和五十七年度予算概算要求でも、政府開発援助費を一一・四%増と最重点の増額を予定しておりますが、私は、もしこれが実現されるならば、平和国家としてのわが国の国際的役割り分担の最大のあかしとなるものと確信するものであります。(拍手)
 なお、これと関連して総理は、所信表明演説の中で、近くメキシコで開催予定の南北サミットに参加したいとの強い御希望を表明されました。私もまた、総理の南北サミット出席に強く賛成し、野党各党の国際的、国家的見地に立つ御理解のもとに、その実現を心から要望するものであります。
 開発途上諸国の社会的、経済的強靱性の強化と安定を図るための経済協力と、貿易投資の拡大等の経済面での協力について、わが国の果たすべき役割りはきわめて大きいと考えます。
 以上、対外経済協力の重要性及び南北サミット出席の意義と御抱負について、総理の御意見を承りたいと存じます。
 このほか、やや各論にわたりますが、先般、わが党の二階堂総務会長の訪中によって日中間で原則的合意が成立した経済協力の内容と、難航を続ける日韓経済協力問題についてお尋ねいたします。
 両案件とも、なお両国事務レベル間で折衝を続けているところであり、詳細にわたる御答弁は時期尚早かとは存じますが、両国とも、わが国とはきわめて密接不可分の関係にあるだけに、事は重大であります。
 とりわけ韓国に対する経済援助問題は、同国の政治的、経済的安定が、朝鮮半島における平和と安定の維持、ひいては、わが国を含む東アジアの平和と安全にとって重要であるという特殊性にかんがみ、韓国の経済社会開発と民生安定に資するだめ、一刻も早く解決されるよう強く要望するものであります。(拍手)
 最後に、日ソ関係の改善についてお尋ねいたします。
 戦後わが国は、サンフランシスコ平和条約調印から満三十年、日ソ国交回復に関する共同宣言調印から二十五年を数え、その間、着実に世界の各国との友好親善関係を深めてまいりました。しかるに、ソ連との関係においては、先方がわが国の平和的外交方針を理解せず、かたくなに話し合いの門を閉ざしているため、いまだに平和条約の締結を見るに至っていないのはきわめて遺憾であります。
 その最大の原因は、わが国の正当な北方領土返還要求に対するソ連の理不尽な態度であります。(拍手)このまま事態を放置するならば、日本国民の返還要求は燎原の火のごとく燃え上がり、ソ連に対する国民感情は悪化の一途をたどるおそれさえあります。これは、日ソ両国の友好親善関係維持のためにも決して得策とは言えません。
 総理は、先般、みずから北方領土を視察され、この問題に対する並み並みならぬ関心を示されましたが、北方領土返還と真の日ソ友好関係樹立のため、いかなる御所見をお持ちなのか、お聞かせ願いたいと存じます。
 終わりに、この臨時国会に臨むに当たり、わが自由民主党及び政府は、輝かしく確かな未来を築くため、国民から負託された重責を胸に刻みつつ、不屈の勇気と決意を持って前進することを申し述べ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 加藤議員にお答えをいたします。
 御質問の第一は、行財政改革と今国会に臨む私の決意についてのお尋ねがございました。
 私は、先般の所信表明で申し述べましたとおり、行財政改革は、二十一世紀を展望する国家の大計であり、避けて通れない国民的課題であると考えております。このため、組閣以来今日までの間、すべての国政の中で特に緊要な課題として行財政の改革に取り組んでまいりました。
 今国会では、行革関連特例法案等を提出し、わが国の将来のかかった行財政改革について御審議をお願いいたしたいと存じております。
 今回取りまとめました法案による改革措置は、申すまでもなく行財政改革に関する第一次の着手とも言うべきものであります。今後における二次、三次の取り組みにつきましては、引き続き臨時行政調査会からの答申等を待ちまして、さらに検討し、具体化を進めてまいりたいと存じます。
 すべてのことは最初が肝心であります。私は、加藤議員同様、今国会は今後の行財政改革の成否を左右する重要な国会であると存じます。今国会における御審議によって、国民の行財政改革に対する理解が一層深められることを願い、また、私自身、今後さらに行財政改革の達成に邁進する決意であります。(拍手)
 次に、一部の人々から、行財政改革につきまして、財界主導であるとか、臨調追随主義であるとか、教育、福祉切り捨てであるとかの声があるとして、これに対する私の考えをお尋ねがございました。
 私は、行財政改革のような国家百年の大計とも言うべき国民的課題を達成するためには、広く国民各層の御理解のもとに、政府と国民が一体となって当たらなければならないと存じます。事が行財政の改革でありますから、その達成に当たって、産業なり国民生活の各分野なりでいろいろ痛みを伴う事柄のあることも承知いたしております。しかし、私たちはいま、最近における内外の厳しい環境を踏まえながら、新しい時代の要請に対応できる簡素で効率的な行政の確立と、財政の健全性と対応力の回復とを目指して行財政改革を推進しているのでありますから、その過程における痛みは、よりよい明日を築くための産みの痛みとして耐えていかなければならないと思います。
 私は、現在、政治には未来を的確に展望した対応が、公務員諸君には全体の奉仕者としての厳しい自覚と行政の合理化、効率化への徹底した努力が、そして国民の皆様には活力にあふれた自立自助の精神が求められていると思います。このような意識が今国会における論議を通じてはぐくまれ、国民が行財政改革に対しひとしく参加の意識を持ち、将来の基盤固めのための建設的な痛みは等しく分かち合うという機運が生ずれば、行財政改革は必ず成功するものと信じます。(拍手)
 行財政改革は国民全体の問題であります。財界主導とか、福祉切り捨てとか、ただ、きめつけてかかるのではなく、国家、民族の未来のため、広い視野に立った建設的な議論を深めることを、国民各位が望んでいることを忘れてはならないと思います。(拍手)
 次に、行財政改革に対する私の不退転の決意と今後の方針についてお尋ねがございました。
 私が行財政改革の断行に政治生命をかけて渾身の努力を払っておりますことは、加藤議員も御承知のとおりであります。私の決意は変わるところがございません。
 今後の方針でありますが、当面の行財政改革を進める上で欠くことのできない行革関連特例法案、前国会からの継続案件となっております公務員二法等の成立に全力を尽くす所存であり、また、昭和五十七年度予算の編成などを通じて、臨時行政調査会の第一次答申及び去る八月二十五日に閣議決定をいたしました「行財政改革に関する当面の基本方針」の内容の実現を図る決意であります。
 さらにまた、今後、臨時行政調査会から順次提出される答申につきましても、その趣旨を尊重し、その内容の実現に努力してまいります。
 次に、わが国経済の安定成長確保の観点から、内需の拡大、業種別、地域別格差の問題についてお尋ねがございました。
 現在、わが国経済は緩やかな回復過程にありますが、その内容は外需中心で、内需拡大の足取りが緩慢であり、業種別、地域別、規模別の跛行性が見られることは、加藤議員御指摘のとおりであります。
 わが国経済を中長期的安定成長路線に定着させ、息の長い成長を持続させるためには、今年度下期の経済運営に当たって、物価の安定を基礎に、業種別、地域別、規模別の跛行性に留意しながら、国内民間需要の着実な拡大を確保することが必要でございます。
 このため、現在、政府部内で物価安定、均衡ある内需回復、不況産業対策、貿易の拡大均衡などに関する諸具体策を検討中であり、明後十月二日の経済対策閣僚会議で決定することとしております。
 御指摘のエネルギーの安定供給の確保と科学技術の振興は、国民経済の発展と国民生活向上の基盤であり、推進力であります。かねてから私は、二十一世紀への展望に立って民族の将来を思えば、この二つを決してゆるがせにしてはならないと強調してまいったところであります。
 このような観点から、エネルギーにつきましては、石油代替エネルギーの開発、導入、省エネルギーの促進に官民挙げて取り組んでいるところでありまして、そのためもあって、昭和五十五年度の石油依存度が十一年ぶりに七割を下回ることになったのは大変勇気づけられておるところであります。
 今後におきましても、右のような成果を踏まえ、昭和六十五年度には石油依存度を五割以下とするよう、原子力、石炭、LNG等、石油代替エネルギーの開発、導入を促進するとともに、産業構造、国民生活など、各般にわたる省エネルギーの一層の徹底などを図り、エネルギー供給基盤を強固にしてまいる所存であります。
 科学技術の振興につきましても、加藤議員御承知のとおり、わが国は、官民それぞれの役割りに応じて、原子力、宇宙の開発から生命科学に及ぶ広範な分野にわたり、基礎から実用化に至る各段階の研究の連携を保ちつつ、精力的に研究開発の推進を図っているところであります。
 今後におきましても、政府といたしましては、科学技術会議の答申などの線に沿い、中長期的観点に立って研究開発資金、人材の充実、産、学、官の連携の強化、国際協力の積極的展開などを図ってまいります。
 次に、福祉政策についての御意見と御質問がございましたが、御高説のとおり、私はかねがね、これからの日本は、すべての国民にひとしく能力を発揮する機会が与えられ、その努力が正しく報われると同時に、恵まれない立場にある人々に対して、きめ細かい配慮の行き届いた、思いやりのある社会を築いていかなければならないと考えております。加藤議員が挙げられた、重点的かつ効率的な公的扶助と、日本人固有の自立自助の精神、細やかな人間関係、相互扶助の仕組みなどを組み合わせた新しい福祉政策という考えは、私の考えと一致するものであり、私は、日本の福祉政策は、今後そのような方向に向かうべきであると考えます。
 なお、老人保健法案は、現在、継続審査になっておりますが、できる限りその早期実施を図る必要がありますので、ぜひとも今国会における成立をお願いしたいと存じます。
 次に、外交問題についてお答えいたします。
 まず、国際情勢に対する基本認識とわが国の外交姿勢についてであります。
 私は、今日の世界の平和と安定の問題を考えるに当たって、加藤議員も御指摘のとおり、次の三点を考慮に入れなければならないと考えております。
 すなわち、第一には、ソ連の一貫した軍備増強及びこれを背景とした第三世界への進出等によって東西関係が不安定化していることであり、第二に、自由主義経済諸国がインフレ、失業等の経済的諸困難に直面しており、これをこのまま放置すれば、西側全体の総合力が低下するおそれがあるということであります。また、第三には、第三世界諸国の政治的、経済的基盤が依然として脆弱であり、これが国内的混乱や地域的紛争、対立をもたらしていることであります。
 他方、このような厳しい情勢のもとで、最近、米ソ両国の間で戦域核制限交渉の開始が合意されるなど、対話を通じる東西関係安定化への努力も行われ始めており、わが国としても、このような努力を評価するとともに、その進展に期待しております。
 このような国際情勢のもとで、わが国としては、米国を初めとする西側先進民主主義諸国との連帯と協調のもとに、世界の平和と安定のため、政治、経済の両面にわたって、その国力、国情にふさわしい役割りを積極的に果たしてまいる所存であります。
 なお、加藤議員御指摘の、国際社会における平和の受動的享受者から積極的創造者への転換ということにつきましては、私も、去る五月の訪米の際、ニューヨークにおける演説において述べたところであります。
 オタワ・サミットにつきましては、私の所信表明でも申し述べたとおり、サミット参加国は、西側経済の諸問題、自由貿易、南北問題、東西問題等について、先進民主主義国としての共通の認識を再確認し、国際社会の平和と繁栄のため、先進民主主義国経済の再活性化と自由貿易体制の維持強化に向かって最大限の努力をし、それぞれその国力、国情に応じ積極的に貢献していくという決意を表明いたしました。私自身、会議に参加した一人として、オタワ・サミットは大きな成果を上げることができたものと確信しております。
 わが国としては、現下の厳しい国際情勢のもとにおいて、西側民主主義国の責任ある一員としての自覚を一層深め、今次サミットの成果をも踏まえつつ、わが国の国際社会における地位にふさわしい貢献を行い、その国際的責任を着実に果たしていかなければならないと、決意を新たにしておるところであります。
 次に、わが国の防衛努力についてお尋ねがありましたが、わが国は、みずからの国を守るための自衛力を整備する以外、軍事的な面における国際的役割りを果たすことができないことは、加藤議員の御意見のとおりであります。
 わが国は、御指摘のように、平和憲法のもと、専守防衛、文民統制、非核三原則などの基本原則を堅持しつつ、最近の厳しい国際情勢を踏まえ、「防衛計画の大綱」に従って、節度ある質の高い防衛力の整備になお一層努力を続けてまいる考えであります。
 他方、御指摘のとおり、核軍拡競争は人類に対する脅威であります。政府といたしましても、国際社会を長期的により安定した基盤の上に置くため、力の均衡を保ちつつ、より低い軍備水準で平和と安全を確保し得るよう、核軍縮を中心とする軍縮推進のための国際的努力を一層強化しなければならないと考えております。また、今次国連総会においても、外務大臣より、かかる考え方に立って特に米ソ両国の核軍縮努力を要請し、各国の共感を得た次第であります。
 経済協力の重要性については、御指摘のとおりであります。特に、石油輸入開発途上国の苦境は深刻と言わざるを得ず、開発途上国がかかる経済困難を克服することは、相互依存関係が著しく進展した今日、世界経済全体の活性化にとって重要な課題であります。
 また、開発途上国の自助努力への支援を通じて、これら諸国がその経済社会開発を推進し、民生の安定、福祉の向上を実現することによって、政治的、経済的、社会的強靱性を強化することは、世界経済の発展及び世界の平和と安定の維持に大きく貢献するものであります。
 わが国は平和国家として、また自由世界第二位の大きな経済力を有する国として、経済協力を通じて世界経済の発展及び世界の平和と安定の維持に貢献していくこととしております。このような考え方に基づき、政府は、去る一月に設定した新中期目標のもとで、政府開発援助の積極的拡充に努めており、このことにつきましては、さきのオタワ・サミットにおいても表明し、各国の高い評価を得たところであります。
 かかる状況において、来る十月末に、開発と協力の問題につき意見交換を行うため、南北二十二カ国の首脳が一堂に会するという、人類史上初めての重要な会議がメキシコのカンクンにおいて開催されることになっておりますが、私も、さきの所信表明で述べたとおり、国会の御了承を得て、この南北サミットに出席し、経済協力に取り組むわが国の積極的な姿勢を明らかにするとともに、特に食糧増産、農業開発などの施策が開発途上国の国づくりの基本として重要であることを訴えるつもりであります。(拍手)
 次に、日中間のプラント問題についてお答えいたします。
 日中両国政府間で話し合われてまいりましたこの問題につきましては、先般、両政府において原則的合意が得られました。その協力の内容は、基本的には、既定の円借款からの転用、輸銀の新規サプライヤーズクレジット、民間銀行シンジケートローンの組み合わせで、総額三千億円程度の資金供与を行うというものであります。
 今後は、政府間事務レベルで資金協力の細部の詰めを早急に行った上で、本件の最終的決着をつけることといたしております。
 韓国に対する経済協力問題についてお答えいたします。
 韓国は、新しい世代が台頭している中で、新たな国づくりに着手しておりますが、その一環として、明年より第五次五カ年計画を発足させる予定と承知しております。政府としましては、隣国の友邦たる韓国が、現在経済的、社会的諸困難に直面しつつ新しい国づくりに努力していることを考慮し、わが国の経済協力の基本方針のもとに、できる限りの協力を行っていきたいと考えております。(拍手)
 今後の取り進め方につきましては、韓国側の要請について具体的な説明を受けつつ、外交経路等を通じて話し合いをいたしてまいります。日韓友好関係の維持発展の見地から、この問題の解決に努めてまいる所存であります。
 最後に、日ソ関係についてお答えをいたします。
 政府は、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することを基本課題として、これまでもソ連側と粘り強く交渉を行ってきております。しかしながら、御承知のとおり、ソ連側は依然として領土問題は存在せずとの姿勢を崩さず、北方領土返還要求が、あたかも一部の者による反ソのためのキャンペーンであるかのごとき主張を行うなど、誠意ある態度を示しておりません。きわめて遺憾であります。
 このような状況の中で、私は去る九月十日、根室を訪れ、北方領土を視察するとともに、関係者の生の声を聞きました。私は、先般の視察により、北方領土問題に対するわれわれの不動の姿勢を内外に示すことができたものと考えております。
 政府といたしましては、この問題の解決が日ソ関係を真の相互理解の上に発展させるために不可欠であるとの認識に立ち、先般の国連における日ソ外相会議において開催の合意を見た日ソ事務レベル協議及び日ソ外相間協議等を通じ、今後ともソ連側に本件の早期解決を働きかけていく所存であります。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福田一君) 鈴木強君。
    〔鈴木強君登壇〕
○鈴木強君 私は、日本社会党を代表して、鈴木総理並びに関係閣僚に対し質問をいたします。質問に先立ち、過般の台風十五号等によってとうとい命を失われた方々に、謹んでお悔やみを申し上げます。また、重軽傷者、その他被害をこうむられました皆さんに心からお見舞いを申し上げ、再起の一日も早からんことをお祈りいたします。(拍手)
 さて、質問の第一は、総理の政治姿勢についてであります。
 鈴木総理、あなたが総理に就任されてから早くも一年三カ月日に入っております。この間、大変な御苦労をされておりますことに対しましては感謝いたします。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
しかし、あなたの率いる自民党は、常任委員長の独占や予算委員会における単独採決の強行など、与野党伯仲時代につくり上げたよき慣行を次々に打ち破り、議会制民主主義に逆行する態度をとられていることは、まことに遺憾にたえません。(拍手)
 今回もまた、政府は、三十六法案を一括して行財政改革特例法案として提出し、しかも新しく特別委員会を設置して一瀉千里に成立を図ろうとしているのでありますが、このようなやり方は、国会における現行の専門担当委員会中心の審議権を否定するきわめて非民主的なものでありまして、きわめて遺憾と言わなければなりません。(拍手)
 これらは、いずれも昨年六月のダブル選挙において安定過半数を確保した鈴木自民党内閣の思い上がったおごりの姿勢、力による対決の姿勢以外の何物でもないと思います。(拍手)
 総理は、就任に際して和の政治を国民に公約されました。しかし、この一年間の国会運営を見る限りにおいて、総理の公約は守られておりません。
 鈴木総理、あなたは最近、故吉田元首相の宰相学を勉強中だと聞きます。また、ある側近に、もう和の政治は口にしないと語ったと新聞紙上に報道されていますが、総理はいつから和の政治姿勢から力と対決の政治姿勢へと軌道修正をなされたのでございましょうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)もしそうでないというならば、今後は、国会の安定勢力を背景にして野党と妥協はせず、強行突破も辞さないというような高圧的態度はとらないことを、ここで約束をしていただきたいのであります。(拍手)総理は恐らく、国会運営のことは各党各会派間で十分相談の上でやってほしいと逃げの答弁をされると思いますが、それは許されません。あなたは自民党の総裁であり、かつ国の総理であります。あなたの政治姿勢の基本にかかわる重大な問題でありますので、責任ある御回答をお願いいたします。
 質問の第二は、仲裁裁定と人事院勧告の完全実施についてであります。
 三公社五現業職員に対する仲裁裁定の実施につきましては、政府がさきの通常国会に一括議決案件として提出したものでありまして、前国会において速やかに議決すべきものであったにもかかわらず、政府・自民党は国会運営の駆け引きの具に供するなどして、ついに継続審査案件となり、今国会に持ち越されたものであります。
 そもそも仲裁裁定は、スト権にかわる重大な労働者の権利でありまして、早期完全実施が強く義務づけられているものであります。その実施が今日まで遷延されていることは、公労法の精神を踏みにじり、労働者の生きる権利を無視するものであることを知らなければなりません。したがって、今国会の冒頭において仲裁裁定の完全実施の議決を行い、実行に移すべきであると思います。この際、満堂の議員各位にもぜひ御協力をちょうだいいたしまして、実現をしていただきたいと思います。労働大臣の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 また、人事院勧告につきましても、三公社五現業職員と同様、国家公務員のスト権を剥奪した代償措置として人事院が設けられ、その勧告は完全に実施されなければならないことになっています。人事院勧告につきましては、紆余曲折はありましたが、昭和四十五年度以降は勧告が完全に実施され、それが定着して今日に至っておるのであります。しかるに政府は、今回、財政再建と臨調答申の名のもとに人事院勧告を抑制しようとしており、いまだに完全実施の方針を決めておらないのでありますが、これは人事院制度の否定であり、労働基本権の無視だと言わなければなりません。
 政府は、速やかに人事院勧告完全実施の態度を決め、その手続をとるべきであると強く要求いたします。総理のお考えをお聞かせ願いたいのであります。(拍手)
 私は、ここで強調しておきたいのは、人事院勧告は民間賃金に準拠して決定されているのでありますが、その資料のとり方については最小限、現状維持を厳守していただきたいのであります。人事院勧告の見直し論などが言われておりますだけに、大切なことでございますから、一言申し添えて総理の御所見をお伺いいたします。
 去る九月十九日、国税庁がまとめた昭和五十五年度分民間賃金の実態調査によりますと、昭和五十五年度は賃金引き上げ率が物価上昇に追いつかず、さらに昭和五十三年度以降のノー減税で実質賃金が大きく減少しており、サラリーマンの生活は確実にレベルダウンしていることが明らかになっているのであります。このことは、三公社五現業職員や国家公務員も全く同様だと思います。実質賃金低下と、依然として続く物価高の中で、仲裁裁定と人事院勧告の実施を待ちわびておる職員のために、一日も早く完全実施の決断をされるよう強く要請いたします。
 先ほどわが党委員長に総理から御答弁がありましたような、そんな悠長なものではございません。どうぞ、総理の理解ある御所見を承りたいのであります。(拍手)
 質問の第三は、行政改革についてであります。
 今回の行政改革は、社会党は総論賛成、各論反対だとか、社会党は官公労の支持を受けているから行革そのものに反対なのだとかいう批判や意見がありますが、これらはいずれも誤りであります。
 社会党は、高度経済成長期における行財政の肥大化の縮減という一般的課題は当然と受けとめております。そして、次のような行財政改革の基本方針を決めておりますので、ここにその内容を明らかにして、国民各位の理解を得たいと思います。(拍手)ちょっと委員長の質問ともダブりますが、御了承いただきたいと思います。
 まず、何よりも平和を守ること、そして福祉を最優先順位に置くこと、さらに、行政ができる限り身近で処理され、住民の参加も可能となるよう、分権、自治の確立と効率化を図ることを目標に据え、この立場に立って、政、財、官の癒着を断ち切り、行財政を大企業奉仕から国民生活優先に大きく転換すること、不公平税制を是正し、国の権限と財源を自治体に大幅に移譲すること、防衛費を抑制すること、情報公開とオンブズマン制度を確立して、真の国民のための行財政を推進することになっているのであります。(拍手)
 今回、第二臨調が答申した内容を見ると、社会党が提起した大型プロジェクトの見直し、特殊法人の役員削減など、若干取り入れられているものもありますが、本質的には、われわれの主張と全く相反するものであることを明らかにしておきます。
 すなわち、臨調答申は、国家財政の赤字をなくするためにという理由のもとに、もっぱら福祉、年金、医療、教育、農業などを切り捨て、住宅金融公庫等の貸付金利の引き上げなどを求めているのであります。その反面、財界の権利は温存され、大企業優遇の不公正税制の是正には全く消極的で、物価調整減税には一言も触れていないのであります。しかも、国が負うべき責任を地方自治体と国民に転嫁して、予算を抑制すべしと言いながら、一方では防衛費だけは聖域化して増加し、軍事大国への道を開いたことはきわめて重大な問題と言わなければなりません。(拍手)また、民間の活力や自立自助を随所で強調することにより、必要欠くべからざる補助金までが切り捨てられているのであります。
 総理は、財政再建のためには、だれもが痛みを公平に分かち合わなければならないと言われていますが、その実は、弱者が手ひどく痛めつけられ、強い者は巧妙に痛みを逃れてしまうことになっております。臨調は、当面の行革ということで、政府の昭和五十七年度予算編成の歳出ゼロシーリングの下請をやらされたにすぎないと言えるのであります。(拍手)
 このような行革にどうして賛成することができましょうか。全国の知事や市町村長がこぞって大きな不満の意を表明し、弱者や老人を中心に、一般庶民大衆が強く憤激して反対行動に立ち上がっているのは、けだし当然でありましょう。(拍手)
 政治は、平和を守り、国民を幸せにするために存在するものであって、国民を苦しめるためのものではありません。(拍手)今回の行政改革は、国民を泣かせ、地方自治体を苦しめるものであって、恐るべき軍事大国への道へ大きく踏み出すことになるものでありまして、とうてい国民のコンセンサスを得られるものではありません。(拍手)
 総理、あなたは政治生命をこのような行革実現のためにかけるとおっしゃっておりますが、政治生命をかけるところをお間違いではございませんか。(拍手)よく考えていただきたいのであります。御所信を承りたいのであります。
 以下、行革に対して、具体的問題点を指摘しつつお尋ねいたします。
 その第一は、現在わが国の国家財政の中に、約八十二兆円にも及ぶ国債発行残高がございます。このうち約三十三兆円は特例公債になっています。このように国の財政に巨額の赤字を生ぜしめた理由は何か、とのことを反省して、再びその轍を踏まないようにすることこそが、財政再建のために最も必要なことだと思います。私は、歴代自民党内閣の経済政策と行財政政策の失敗によるものだと思いますが、総理はどうお考えでしょうか、お伺いいたします。(拍手)
 その二つは、総理は、昭和五十七年度から三年間で財政再建をなし遂げようとし、そのために、初年度の予算節減額として約二兆七千七百億円を予定しているのでありますが、残り二年間の削減額は、それぞれ幾らくらいになるのでしょうか、プロセスを添えてお示しいただきたいのでございます。
 また、今月二十五日のある研究集会で、中曽根行管庁長官は、昭和五十八年度予算編成もゼロシーリングを基準に行うとの考えを明らかにしていますが、総理もそのようにお考えでございましょうか、お伺いします。
 その三は、総理は、今後の課題として税負担の公平化への努力を表明されましたが、早くも大蔵省では、昭和五十八年度中にも大型物品税を導入する方向で検討を進めているとのことであります。
 物品税につきましては、すでに五十六年度に課税対象にライトバン、VTRなど、新しく十二品目が追加され、税率の一部引き上げも含め、約七百七十億円の物品税が増税されているのであります。今後さらに適用範囲を一層拡大して、一般消費税の見返りにしようとされたのではたまったものではありません。
 これでは総理の言われる税負担の公平化の努力の表明に逆行することになります。総理の表明された税負担の公平化とは、具体的にはどのようなもので、いつからやるのか、明らかにしていただきたいのであります。わが党委員長への答弁のような抽象的なものでは納得できません。特に、一般消費税の導入につきましては、従来の総理御答弁のとおり、導入しないと理解してよろしいでしょうか、お答え願います。
 その四は、総理は、今回の行革は、赤字依存体質から脱却して二十一世紀への足固めをするものであると言われていますが、総理がいま頭の中に描かれておられます二十一世紀への足固めとは何か、そのプロセスを示していただきたいのであります。
 総理は御就任直後、国を守るということは、単に自衛力だけでなく、食糧やエネルギーの確保等、総合的な安全体制の確立でなければならないと力説されましたが、その後この御所信の具体化はどうなっているのでしょうか、お伺いいたします。
 その五は、今回政府が提案した行革関連法案によって削減される予算額は約二千四百八十二億円でありまして、その内訳は、厚生年金等に対する国庫負担の引き下げで千九百億円、公的保険事務費の国庫負担停止で六億円、児童手当支給額の国庫負担削減で六十億円、四十人学級の抑制で五十六億円、地域特例の切り下げで四百六十億円、その他となっていますが、いずれも国民に犠牲を押しつけるものであります。今回の行革が国民生活に及ぼす影響を試算してみますと、国民の負担増は約一兆円に達し、地方自治体の負担増は約四千億円となるのであります。
 ところで厚生大臣、厚生年金等の国庫負担を三年間削減することになっておりますが、このことによって、給付水準や保険料の負担には影響はないものと考えてよろしいかどうか、お伺いをいたします。(拍手)
 また、国民健康保険の給付費に対する国庫補助金四〇%のうち五%及び児童扶養手当と特別児童扶養手当の国庫負担分二〇%をそれぞれ都道府県負担に転嫁しようとしています。
 厚生大臣、これらの措置は、財政再建期間中の臨時かつ応急的のものであるかどうか。地方自治体の負担する財源はどのようにして確保するのか、明らかにしていただきたいのであります。
 次に、お年寄りに対する医療問題ですが、政府は今日まで、七十歳以上の方々の医療は無料化の方針をとってこられ、御老人方に喜ばれております。ところが、今度は、老人保健法をつくり、外来者からは月一回五百円、入院者からは一日三百円の入院料を取り上げようとして、そのための法案が提出されています。現在全国では、七十歳以下の御老人に対しても、三十七都道府県と千三百五の市町村では医療の無料化を実施しておりますが、これをやめろというのであります。長年御苦労願った御老人に対し、このような冷酷無慈悲な政治は許されません。厚生大臣の御意見を承りたいのであります。(拍手)
 その六は、いま国民が大変憂えているのは、教育の右傾化と反動化と荒廃であります。そして、最も望んでいるのは、非行をなくす行き届いた教育であると思います。この国民の憂えや願いを無視して、今回の行革では福祉に次いで教育が大きく切り捨てられていることはきわめて残念でございます。したがって、多くの質疑をいたしたいのでありますが、時間の関係で、ここでは教科書問題に限ってお尋ねすることにいたします。
 義務教育教科書の無償制度については、今度の臨調答申は、廃止を含めた検討を打ち出していますが、無償制度はあくまでも堅持すべきであると思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 昨年来、特に自民党などから不当な教科書批判がなされていますが、その結果、検定済みの教科書が書きかえられたり、来年度から使われる高校の「現代社会」に圧力が加えられるなど、教育に対する介入が激しくなっていることは許されません。総理の御所信を承りたいのであります。(拍手)
 その七は、現在わが国の農業は根本的に破壊されており、当然の結果として穀物自給率は三〇%という、先進国には例を見ないほど低下しているのであります。しかるに政府は、食糧自給率の向上を考えるどころか、逆に米の減反政策を続けようとしております。
 今度の答申では、水田利用再編対策奨励金までもなくそうとしておりますが、これでは農民の方々の協力を得ることは絶対にできません。政府は、今後の日本農政についてどのような展望を持たれ、行革を実施しようとするのか。
 また、農産物検査官制度については、人員の削減のみを取り上げていますが、売り渡し後の米の流通段階での検査など、国民の新たなニーズにこたえる制度面の活用についても検討すべきではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 その八は、現在地方自治体は、地方債と借入金で約三十九兆円の赤字を抱えております。その財政はまさに火の車と言わなければなりません。そのため、地域社会の発展と、これに伴う住民の多様化するニーズに十分こたえられぬのが現状であります。
 今回の行革により、各種の補助金は削減され、加うるに国民健康保険、児童扶養手当、特別児童扶養手当等の一部国庫負担金を含め、全体として約四千億円を背負わされることになると、地方財政は深刻な影響をこうむり、地方自治体に課せられた本来の使命達成は非常に困難となるのであります。
 わが党は、このような地方財政いじめの補助金カットと、国の負担を地方自治体に押しつけようとすることには強く反対いたします。
 政府は、この際、長年にわたりわが党が要求しております地方交付税率の引き上げなど、何らかの地方財政措置を講ずべきだと思いますが、総理の御所信をお伺いいたします。(拍手)
 最後に、経済問題についてお伺いいたします。
 わが国の最近の景気の動向は、日銀などの見方によれば、景気は底がたく、緩やかに回復しているとのことです。しかし、中小零細企業の倒産は依然として後を絶たず、その件数は月千五百件の多きに達しており、景気回復は低迷を続けていることを立証しています。また、特に住宅産業の不振が及ぼす影響は広範囲にわたっているのであります。いずれにしても国内景気のばらつきを解消し、景気回復のための対策を立てることは緊急課題ではないかと思います。
 政府は、最近の景気の動向をどう見ているのか、またどのような景気対策を考えているのか、河本経済企画庁長官からお答えをいただきたいのであります。
 以上をもって私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕
○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、私の政治姿勢についてお尋ねがございました。私の政治姿勢が、和の政治から、最近、力の対決による政治に変わってきたのではないか、こういう御質問でございますが、私の政治姿勢は就任以来何ら変わっておりません。
 私は、従来から、国会は話し合いの場であって、対立抗争の場であってはならないと考えており、あくまで論議を尽くし、民意を吸収し、話し合いによって国民の納得する結論を出すことが議会制民主主義の本旨であると考えております。私は、この国会におきましても、この議会制民主主義のルールにのっとり、国民の負託にこたえていく決意であります。(拍手)
 次に、仲裁裁定の取り扱いについてお尋ねがございましたが、この点につきましては、飛鳥田委員長にもお答えを申し上げましたように、現在までのところ、国会に付議した当時の状況に格別の変化が認められませんので、引き続き国会の御判断にゆだねることといたしたいと存じます。
 人事院勧告の取り扱いでございますが、これまで維持されてきた良好な労使関係、現下の厳しい財政事情など、諸般の事情を総合的に勘案をして慎重に判断する必要がありますので、引き続き給与関係閣僚会議において検討を行うこととしております。
 なお、人事院勧告の見直しについてお尋ねがありましたが、現在、政府部内で民間賃金準拠の方式について、その変更が検討されているということはございません。
 次に、行財政改革に関する御質問でありますが、まず、私の政治生命のかけ方が方向が間違っておるのではないかという御指摘でございます。
 私は、行財政改革は、国家百年の大計とも言うべきものと考えておりますが、そのむずかしさはよく承知いたしております。また、各論においての反対意見の中にも、痛いほど理解できるものもございます。しかしながら、なおかつ大筋を通さなければならないというところが行政改革の最も苦しいところであり、しかるがゆえに、政治生命をかけて事に当たる決意をいたしておるのであります。
 耳ざわりのよいことを並べて行財政改革が進められるものであれば、政治生命をかける必要も何もないわけでございます。(拍手)行財政改革は、政府にも国民にも確かに苦痛を伴うものであります。しかし、この苦しみは、国家、民族の未来のため、耐える価値のある痛みであると私は考えるのであります。(拍手)
 国の財政に巨額の赤字を生ぜしめたのは、歴代自民党内閣の経済政策と行財政政策の失敗によるものであるとの御意見がございましたが、今日、日本経済はいち早く石油危機の影響を脱し、全世界がうらやむほど安定と繁栄を享受しているのであります。
 先ほど飛鳥田委員長にも申し上げましたのでありますが、成長率、物価、失業率、国際収支のいずれをとりましても、日本経済は世界の国々から高い評価を受けております。たとえば、八月の消費者物価の対前年同月の上昇率を見ましても、アメリカは一〇・九%、イギリスは一一・五%、西ドイツは六%、フランスは一三・七%、イタリアは二〇・二%となっておりますが、わが国は四・一%と最も安定しております。(拍手)
 また、失業率で見ましても、アメリカが七%台、フランス、イタリーが大体七%から八%程度、イギリスは一〇%台、西ドイツも五%台となっておりますが、日本は二・二%程度でありまして、これまた世界で群を抜いた成績を示しておるのであります。(拍手)
 このようにわが国経済は順調に推移しておりますが、他方、国の財政は深刻な状況に陥っております。行財政改革、特に財政の再建は、このような状況を改善して、財政が新しい時代の要請に的確に応じられるものとするためのものであります。
 五十七年度から三年間で財政再建をなし遂げるに当たり、初年度は二兆七千七百億の歳出削減を図るとともに、次の二年間はどれだけの削減をするかというお尋ねでございました。
 大蔵省が試算をした財政の中期展望をベースにして五十七年度の増税をゼロとした場合、御指摘のとおり二兆七千七百億円の歳出削減が必要となりますが、五十八年度以降どうなるかは、シーリングの扱いも含め、今後幅広い角度から検討を重ね、しかるべき時期に結論を出す問題でありますので、現段階では何とも申し上げられません。(拍手)
 次に、税負担の公平に関する御質問でございましたが、この点は先ほど飛鳥田委員長の御質問にお答えをしたとおりであります。
 なお、一般消費税や大型物品税の導入を検討しているのではないかとの御質問がございましたが、そのような事実はございません。
 次に、私の頭の中に描いている二十一世紀への足固めとは何か、そのプロセスを示せとの御質問でございました。
 私が去る一月二十六日、通常国会における所信表明で申し上げましたとおり、石油を初めとする資源及び環境の面での制約、通商摩擦、人口の高齢化、財政収支の不均衡など、七〇年代に生じた問題の多くが未解決のまま八〇年代に引き継がれておりますが、これらはいずれも、緊急に対処すべき当面の問題であるばかりでなく、未来を切り開くための基本的な課題であります。私は、進んでこれらの課題の解決に当たり、私たちが現在ある八〇年代を二十一世紀への足固めとしたいと申し上げたのでありまして、今日でもそのように考えており、中でも行財政改革は当面緊急の課題であると考えます。
 御質問の総合安全保障政策につきましては、私は、わが国の安全確保は、単に防衛力の整備のみならず、経済協力、エネルギー、科学技術、食糧等、各般の施策を整合性を保って推進していく必要があるという基本的な考え方のもとに、昨年十二月、内閣に総合安全保障関係閣僚会議を設置し、自来積極的な検討を進めてきたところであります。その結果、五十六年度予算におきましても、厳しい財政事情の中にあって、経済協力、エネルギー、科学技術等の各方面で、その考えを反映させたものでございます。
 また、国際的にも、総合安全保障の観点からの努力が必須と考え、オタワ・サミット等の場において、先進民主主義諸国が西側全体の平和と安定を図るためには、それぞれの国情に応じた防衛努力とあわせて、政治、経済等、広範囲にわたる対応を図る必要がある旨強調しましたし、このことは先般の所信表明演説でも申し述べたとおりであります。
 今後とも、総合安全保障政策の積極的な展開を図るため、右の関係閣僚会議等を通じ、内外の諸施策の整合性を確保しつつ、幅広い検討を進めてまいる所存でございます。
 次に、義務教育教科書の無償制度についてお尋ねがありました。
 教科書の無償給与につきましては、昭和五十六年度予算においても存続することといたしておりますが、今回の臨調の答申において、「廃止等を含め検討する。」とされておりますので、さらに各界の意見に耳を傾けるなど、今後のあり方について検討してまいりたいと思います。
 また、教科書について種々の意見がございます。このことは、教科書が学校教育において重要な役割りを果たしており、常に改善が図られていくことが期待されていることのあらわれであると考えております。政府としては、中正な立場から、教科書の改善と充実のため努力を続けてまいる所存でございます。
 次に、行革との関連で農業についての展望をお尋ねがございました。
 食糧の安定的供給の確保は国政の基本でありますから、行財政改革の一環として農業政策の見直しを進める中にあって、長期的な展望に立って、需要の動向に応じて農業生産を再編成するとともに、中核農家の育成、技術の向上、優良農用地の確保等により、総合的な食糧自給力の維持強化を図ってまいりたいと存じます。
 なお、水田利用再編対策につきましても、ただいま申し上げた基本的な考え方に立って、今後計画的に推進してまいりたいと存じます。
 なお、農産物検査の合理化につきましては、これまでもその推進を図ってきたところでありますが、臨調答申でもその必要性が指摘されているところであります。このような事情も踏まえて、検査方式の合理化を推進しつつ、検査官の縮減を図ってまいりたいと考えております。
 最後に、地方財政問題についてでありますが、今回の行財政改革を進めるに当たっては、特定地域に係る国の負担、補助等の特例措置のように、地方団体にも協力をお願いしなければならないものもございます。この点につきましては、対象となる都道府県、指定都市に対し、財政一金融の措置を講じていくことを考えております。
 地方財政については、今後ともその運営に支障を来すことのないよう、地方交付税の所要額の確保を含めて、適切な措置を講じてまいる所存でございます。
 以上、お答えをいたしましたが、残余の問題につきましては、所管大臣から答弁をいたします。(拍手)
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
○国務大臣(村山達雄君) 鈴木議員にお答え申し上げます。
 私に対する質問の第一点は、今度出します臨時特例法案の中の厚生年金の国庫負担三年間減額、それは現在の厚生年金の給付水準なりあるいは負担に関係があるのかないのか、これでございます。
 今度の措置は全く三年間の臨時特例措置として考えておりまして、期間終了後、元本の返還はもとより、積立金の運用利益損失相当額、これも補てんしてもらいまして、年金財政の健全性には支障がないようにいたしておりますので、したがって、給付並びに負担については変更ございません。
 それから第二点は、国民健康保険、それから児童扶養手当、特別児童扶養手当について一部都道府県負担を導入することが言われておるが、これは財政再建期間中の暫定措置であるかどうかという問題、それから、その財源措置は一体どうするのか、こういう質問でございます。
 これはもう臨調の答申で言われておりますように、国保につきましては、国民健康保険の規定の上で都道府県が監督責任を持っており、それから同時に、医療費の監査の権限を持っているわけでございますので、都道府県に一部負担してもらうことはいかがであろう、こういう趣旨で提案しておるのでございます。
 それから、児童扶養手当、特別児童扶養手当の問題は、母子家庭における福祉あるいは障害児に対する福祉でございまして、そして、この点については児童福祉法において地方団体の責任として規定されておるところでございます。そういった意味で、同様の費用でありますところの福祉手当なりあるいは児童福祉への措置費については、すでに十分の二の地方団体の負担が規定されておるところでございますので、同様の趣旨で、その点を求めたらどうか、こういう提案でございます。したがいまして、以上を通じまして、言っております趣旨は、これは暫定期間中の措置ではないということでございます。
 それから、それについての地方に対する財源措置の問題でございますが、これは、臨調でも言っておりますように制度の筋の問題もあるけれども、しかし、現実の財政問題があるのだから、国、地方の財政状況が明らかになる年末までに関係省庁で、政府間でよく詰めて、そして決着をつけるように、こういうことになっているということを御了承願いたいと思います。
 それから第三点は、現在提案いたしております老人保健法案の関係でございますが、これについて一部負担を導入しておる。あるいは従来単独事業でやっておりました七十歳以下の者に対して一体どういうふうにやるのか。こういうお尋ねでございます。
 今度御審議願おうと思っております老人保健法案は、基本的に、高齢化社会を迎えますので、老人の福祉を増進するために健康な老人をつくっていきたい。そのためには、疾病中心、医療中心の対策から、予防とかリハビリテーションを入れた、生涯を通じた一貫した健康管理を実施してまいりたい。それから同時にまた、それらに要する費用を、現在のような各保険が持つのでなくて、国、地方団体それから各保険が、それぞれ経費を公平に持ち寄るということを考えているのでございます。
 そういう意味で、患者でございます老人の方にも、かかりました実費のごく一部でありますが、無理のかからない範囲で負担をしていただきまして、健康に対する自覚あるいは受診の適正化を図ろうとしているものでございます。
 現在の単独事業についてどうするか、こういう問題でございますが、これは、現在提案いたしております法律案の趣旨をよく地方団体から御理解願いまして、そして適切な施策を進めていかれるということをわれわれは希望しているわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣藤尾正行君登壇〕
○国務大臣(藤尾正行君) お答えをいたします。
 私に対しまする御質問は、仲裁裁定に関して、いかなる労働大臣としての見解を持っておるか、こういう御質問でございます。
 これは、すでに内閣総理大臣からお答えをいたしておりまするとおりでございまして、あえて私が申し上げれば、私どもが国会に議決をお願いをいたしました当時の財政事情その他、いろいろこれをめぐります諸条件が一日も早く解決をせられまして、国会におきまして御議決を賜りまするようにお願いをいたしたい、こういうことでございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、経済の現状及びその対策いかん、こういうことでございますが、ことしの政府の経済成長目標は五・三%でありますが、これを五十年指標に最近換算しておりまして、それによりますと四・七%になりますが、おおむねこの五%前後の成長路線をいま進んでおると考えております。
 ただ、内容に問題がございまして、当初は内需中心の成長を考えておりましたが、そのようにはいっておりませんで、外需による成長が中心になっております。そのために、昨年は経常収支が相当大幅な赤字でありましたが、ことしは逆に、非常に大幅な黒字になるであろう、こういう想定ができます。目下、数字を調整中でございます。
 それに引き続いての問題点は、内需の回復力が非常に弱いものですから、いろいろな点でばらつきが目立っております。業種間によるばらつき、あるいは規模によるばらつき、いま中小企業の問題をお出しになりましたが、そのような企業規模によるばらつきもございます。また、地域によるばらつきもございますので、そこで、いま政府として考えておりますことは、黒字幅を減少させるための輸入拡大政策、さらにまた、ばらつきを解消するためのいろいろな対策、これらにつきまして、目下、政府部内で意見を調整中でございます。十月二日までには大体の成案を得まして、経済対策閣僚会議で決定をする予定でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
○鹿野道彦君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十月一日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
○副議長(岡田春夫君) 鹿野道彦君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十四分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  鈴木 善幸君
        法 務 大 臣 奥野 誠亮君
        外 務 大 臣 園田  直君
        大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君
        文 部 大 臣 田中 龍夫君
        厚 生 大 臣 村山 達雄君
        農林水産大臣  亀岡 高夫君
        通商産業大臣  田中 六助君
        運 輸 大 臣 塩川正十郎君
        郵 政 大 臣 山内 一郎君
        労 働 大 臣 藤尾 正行君
        建 設 大 臣 斉藤滋与史君
        自 治 大 臣 安孫子藤吉君
        国 務 大 臣 大村 襄治君
        国 務 大 臣 鯨岡 兵輔君
        国 務 大 臣 河本 敏夫君
        国 務 大 臣 中川 一郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 中山 太郎君
        国 務 大 臣 原 健三郎君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 角田禮次郎君