第096回国会 法務委員会 第6号
昭和五十七年三月二十四日(水曜日)
    午前十時二十二分開議
 出席委員
   委員長 羽田野忠文君
   理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君
   理事 高鳥  修君 理事 稲葉 誠一君
   理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君
   理事 岡田 正勝君
      井出一太郎君    今枝 敬雄君
      上村千一郎君    大西 正男君
      亀井 静香君    木村武千代君
      高村 正彦君    佐野 嘉吉君
      鍛冶  清君    安藤  巖君
      田中伊三次君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 坂田 道太君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 筧  榮一君
        法務省民事局長 中島 一郎君
        法務省刑事局長 前田  宏君
        法務省人権擁護
        局長      鈴木  弘君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局捜
        査第一課長   仁平 圀雄君
        警察庁刑事局捜
        査第二課長   森広 英一君
        文部省体育局ス
        ポーツ課長   戸村 敏雄君
        農林水産省畜産
        局競馬監督課長 篠浦  光君
        建設省計画局不
        動産業課長   末吉 興一君
        法務委員会調査
        室長      藤岡  晋君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 法務行政及び人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○羽田野委員長 これより会議を開きます。
 法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
○横山委員 これは私ばかりでなくて、国会議員のところへ手紙が行っておる人がかなりあるのではないかと思うのですけれども、信用身元保証協会会長推薦委員会なるところから手紙が出ておるわけであります。封書でありますが、これを見ますと、「このたびあなたに信用身元保証協会会長の権利を取得していただきます。」こうありまして、「保証人である証券を五券(一件百万円で五百万円)贈呈さしていただき、保証の重圧から解放されますようお勧め申し上げます。御利用の向きは裏面御記入の上御注文ください。」とあります。そして、この印刷物を見ますと、株式会社北国銀行初め百社になんなんとする会社がこの信用身元保証協会の保証を受けておるという状況であり、手紙の推薦状には「此の度、博識経験豊かな貴殿を地域の信用身元保証協会会長に推薦申し上げることに決しました。故にご通知申し上げる次第です。」と、私に協会会長に推薦してやるから御通知するという勝手な文章であります。
 要するに、この仕事は身元保証ニ関スル法律に起因をしておるわけであります。身元保証ニ関スル法律は法務省所管でありますが、きわめて簡潔な六条から成り立っておりまして、「身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス」を第一条として、五年を超えることはいかぬが、五年を更新してもよろしいとか、使用者は身元保証人に対して被用者が何か問題を起こすおそれがあるときには知らせろ、あるいはまた、任地、任務を変更して責任を加重するときには知らせろと言い、身元保証人の契約解除権を認め、第五条に裁判所が損害賠償の責任及び金額を定むるのときは一切の事情をしんしゃくせよとかいう身元保証ニ関スル法律であります。
 今日、国家公務員系統ではこの身元保証書という制度を実行していないのであります。また、国会職員においても、私の調査したところでは、いわゆる身元保証書というものをとっていないわけであります。恐らく役所はみんなそうではないかと思うのですが、問題は、民間関係にいまなお残っておるのが身元保証書であります。
 身元保証というのはそもそも一体何であるか。私は、身元保証というのは、結局人間的に監督責任を持ってくれという意味と、悪いことをしたら賠償責任を持ってくれという意味と、両方あると思うのであります。ある大学の教授に聞きましたら、大学でもみんな身元保証書をとるけれども、実際問題としてそれは賠償責任ということでないでしょう、授業料を払わなかった場合には通学停止とかそういう処分がありまして、大学ではそういう意味の身元保証書は、法律的には賠償責任があるかもしれませんけれども、実際問題としてはそういう賠償責任まで言及していない、こう言っております。
 要するに、身元というのはきわめて日本的なものでありまして、採用したあるいは入学を認めたという経営者なりあるいは大学なり、そういう雇用者が自分の監督責任、指導責任を果たし得ないときに他に責任を転嫁しようということであって、まことに日本的な、封建的な遺制だと思われるわけであります。ましてや、使用者が身元保証人に対して、どうもあいつはこのごろサボっておる、どうも使い込みをするおそれがあるから、あなた、注意してくれ、それから、長崎へ転勤させるけれども、あるいは仕事を変えさせて現金を扱わせるようにしたからあなたは責任があるよ。身元保証ニ関スル法律第三条によって責任があるから十分注意してくれということを通知すべき義務があるけれども、使用者が本当にその通知義務を果たしておるなんということは考えられない。ゆえなくして、おそれがあるときに、あなたが身元保証をやっているけれども、横山がどうもおかしい、飲んだり食ったりばかりしている、おまえさんも責任を惹起するおそれがあるから注意してくれなんということを言うはずがない。
 そういうことを考えてみますと、この法律の実効を担保することが困難であり、かつまた裁判所にしたところで、賠償責任の金額を定めるについて「被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無、身元保証人が身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度、被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス」、こんなもの例示列挙なんでありますから、「一切ノ事情ヲ斟酌ス」といったって、裁判所も五条がどういう意味だかよくわからない。
 だから、もうこの法律はやめたらどうか。こういうことは使用者の責任を転嫁するようなもので、やめたらどうか。こういうものがあるからこそ、いま――私は、信用身元保証協会会長推薦委員会なるものがどういうものであるかよくわかりませんよ。わかりませんけれども、麗々しくこういうものを国会議員やいろいろなところへ送ってやっておるという新しい商売だと思うのですけれども、こういうものが横行する一つのゆえんではないかということを考えるのでありますが、いかがでございますか。
○中島政府委員 いわゆる身元保証は、ただいま御指摘ございましたように、いわば江戸時代の封建的な制度から続いておる制度だということが言えるかと思うわけであります。しかし、現在の法体系のもとにおきますと、これはやはり一種の保証契約であるということになるわけであります。保証契約でありますけれども、それが雇用というような継続的な契約関係から生ずる不確定な債務を保証するものであるということにおいて、非常に特色があると言われております。
 そこで、この身元保証に関する契約というものがないとどうなるかということになるわけでありますけれども、そうなりますと、保証人としては非常に広範、無限の責任を負わなければならないというのが実態であろうかと思います。現在の身元保証契約をいろいろ見てみますと、保証人は被用者が使用者に与えた損害の一切を保証し、一切の迷惑をかけませんというような文言になっておりますので、その責任の範囲は非常に広範かつ無限のものになるということになるわけであります。
 それでは保証人に対して非常に酷であるということで、明治以来裁判所は、具体的な事件を処理する場合におきまして、その責任を制限するという方向に非常に努力をしてまいりました。保証人と使用者との間の契約の意思解釈はこういうことであろう、そう十年も二十年もにわたって身元を保証するという趣旨ではなかったはずだとか、あるいは思いがけないような損害が使用者に起きたときには保証人は保証する意思はなかったんだということでいろいろと制限をして、具体的妥当な結論を得るために努力をしてきたわけありますけれども、意思解釈ということになりますと、これには限度があるわけであります。
 たとえばこの身元保証ニ関スル法律では、先ほど申し上げましたように、期間は三年なり五年なりということが決まっておりますけれども、これはこの法律があって初めて言えることであります。この法律がないのに、当事者が十年でも二十年でも保証しますという契約を結んでおりますのに、裁判所がそれを三年に制限したり五年に制限したりということはできない話であります。そこに意思解釈の限度というものがありまして、身元保証に関する法律の必要性というものが非常に強く要望されておったわけであります。
 そこで、昭和八年にこの身元保証ニ関スル法律というものができたわけであります。従来からの裁判例の蓄積の上に立って、しかも新しい理論を盛り込んで、保証人の責任の限度というものを妥当なものに制限をするということにおいて非常に大きな働きをした法律であると言うことができるかと思うわけであります。
 先ほどおっしゃいました被用者の身分の変更があった場合、転任があった場合、あるいは一般の社員として入社したはずの者が会計主任になって責任が重くなったというような事情の変更があった場合には、使用者は保証人に通知しなければならないということになっておりますけれども、その通知を怠っておった場合には、裁判所が後日損害が発生した場合の損害額を算定する上において、あるいは損害の有無を判断する上においてその事実をもしんしゃくすることができる。第五条が一般条項ということになりまして、これを適用する裁判所としては非常に苦労も多いけれども、非常にまたこのために事件の処理がやりやすくなったという一面もあるわけであります。
 そういうことを考えますと、この身元保証に関する契約は現在でも非常に大きな働きを果たしておる、こういうことが言えようかと思うわけであります。
○横山委員 私も、この身元保証ニ関スル法律が、ある意味では賠償責任の保護的役割りをしておることを認めるにやぶさかではないわけです。けれども、翻って考えてみて、大体身元保証という言葉が気に食わぬのですね。雇用者の賠償責任に関する法律というようなことならわかりやすい。身元とは一体何だ。身元の保証というのは、きわめて封建的、日本的な、旧時代の遺物のような考えであって、本人がやったことは金にしろ何にしろ全部おまえに責任があるぞ、こういうことですね。この内容を読みますと、主として金銭的な問題になると思うのです。金銭的な問題なら金銭的な問題のようにこの法律の体系を変える必要がある。
 それからまた、大体雇用するに当たって雇用責任というものがあるはずですね。監督責任というものがあるはずですね。たとえば長崎から東京へ就職するについて、東京に知り合いがないから長崎の自分の恩人に保証人になってもらう。頼まれた人はそういうときに断りようがないですよ。そういうときに、長崎から東京に働いておる横山利秋はどうやって働いておるのか、どうしておるのか、わかるはずがないですよ。保証責任を全うする、監督義務なんていったって、長崎の人にわかるはずがない。朝から晩まで、雇用して、指導して、監督して、教育しておる人間が自分のそういう責任を棚に上げて、身元保証人に責任を追及するシステムが大体おかしいではないかというわけです。
 しかも三年だという。商工業見習い者は五年だという。何で商工業見習い者だけが五年になっておるのか。五年がさらに五年延ばしてもいいという。十年にしてもいい、二十年にしてもいい、こういうわけですね。そんな十五年も二十年もたった人間をどうやって一体保証するのか。会社が更新してもらってくれと言った場合、郵便をして長崎まで飛んでいって、菓子でも持っていって、えらい済みません、またひとつお願いしますと言えば、断り切れないです。まじめにやっておるかだけの話ですね。有名無実ですよ、そんなことは。
 私は、これをなくせばいいと言っているわけではないわけですよ。少なくとも、そういう雇用者が被用者の不慮の事故で損害があるなら、保険会社と契約すればいい。雇用者が保険会社と直接契約して、そして保険システムでも考えればいい。そういうものなら、こういう商売も堂々と素直にわかりやすくできるわけです。
 これは、もう横山利秋に身元保証協会会長の権利を取得させる。一体どういうことですか、これは。私はここへきのう電話をかけてみたのです。そうしたら、出てきた人が、私がかつて十年ぐらい前にこの関係の人と対談したことがある。その十年ぐらい前の対談を、恐らく二、三年前だと思うのですけれども、麗々しく横山利秋、それから自民党の名前もついておった、四人ばかりの名前を引用して、大きな活字で横山利秋、衆議院議員の何のたれがし、自民党も含めて、宣伝に使っておるわけです。私はきのう、いまはそういうことはありませんかと言ったら、ありませんと言っていました。言っていましたけれども、そういうことを勝手に引用している。
 それから、おたくは保証協会ということですから社団法人ですねと言いましたら、株式会社だと言うんですね。ほうと言ってお聞きしました。株式会社だったら、いま審議中の商業登記法によって登記しなければいかぬわけですね。株式会社という名前を使わなければいかぬはずです。保証協会という名前を使ってはいかぬわけです。これは私の電話のやりとりでございますから、私も追及するのを避けましたけれども、そういうことだとすればますます問題がおかしくなる。これは明らかに商業登記法、商法違反です。これが信用身元保証株式会社となればきわめて理路整然、明白、保険会社の一種として、百社になんなんとするこの契約があるということですが、これが本当ならわかりやすいシステムだと私は思うのです。それなら、なぜ身元保証協会という名前を使うかというと、身元保証ニ関スル法律があるから、いま就職しようとする人たちの雰囲気も手伝って、これがちゃんとマッチするわけですね。
 それで、私はこの五百万円券をもらって一体どうするのですかと言ったら、一万円券五枚上げるから、先生はお知り合いから頼まれたら保証券、一万円券のものを渡してください、もらった人は会社へ届けてください、そうすると会社はわが信用身元保証協会へ送ってくださる。そうすると百万円までを限度として保証するということになるのでしょうかね。だから、私はもらっただけでどうするのと言ったら、会長におなりいただくのです、こう言うのです。何のために私が会長になるかわけがわからぬが、要するに、私が身元保証人になるということによって私の心理的な経済的な将来あるかもしれない負担を除去するために保証券を差し上げて、その保証券で私どもが肩がわりをいたします、こういうことらしいのですね。
 まことに、この法律がいま生きておって、そして会社へ就職するときに、身元保証人というものをいつも低所得層の中では心配する。だから国会議員でも身元保証人になってもらえば、会社も信用するだろう。そういう苦労を、この法律があるから、役所はいま恐らくどこもみんな身元保証書をとっていないのですよ、民間がそういうようなことをやっておるために、法律があるためにそうなると私は思うのであります。ですから、この際、この身元保証ニ関スル法律について再検討をする必要があると私は思うのであります。
 私も、ただ廃止をすればいいと言っているわけじゃないのです。雇用者の賠償責任に関する法律を別に定めるとか、あるいはこの身元保証という意味の契約は無効であるというふうに定めるとか、いま何らかの別な近代的な手段をとるべき必要があるのではないかということを考えるのでありますが、いかがでしょう。
○中島政府委員 まず、身元という言葉につきまといます一種のイメージというものがどうも現代の社会にそぐわないのじゃないかという点につきましては、確かに御指摘のような一面もあろうかというふうに考えるわけでありますが、身元保証ニ関スル法律の一条に定めておりますように、「引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ」ということでありまして、「期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニ因リ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約」、こうなっておりまして、この法律で対象としております契約の内容というものは、ただいま申し上げたような内容になろうかというふうに思うわけであります。
 先ほども申しましたように、この法律は、被用者の行為によって生じた損害を一方的に保証人にだけ負担させることは相当でない、それは使用者と保証人とが分担をすべきものであるという思想のもとに、その分担の割合は一切の事情を勘案して定めるんだ。その一切の事情というのは、先ほども御指摘ございましたように、たとえば、雇用から期間がどれくらいたっておるのか、雇用したばかりの被用者が何か事故を起こしたのか、あるいはもう五年も十年もたった被用者が事故を起こしたのかとか、あるいは保証するときのいきさつはどういうことであったのか、ただ頼まれて断り切れずに保証人になったのか、それとも父親であるとかおじであるとかというような身分関係に基づいて、自分が身分を保証するからぜひ雇ってやってくれというようなことで雇用が行われたのかというような一切の事情を考えて、そして使用者と保証人とがその損害を分担するんだ。その割合はあるいは半分半分というようなこともありましょうし、あるいは使用者のみが負担をして保証人は負担しないというような場合もありましょうし、それはさまざまでありますが、具体的に妥当な結論を得るというための法律であろうかというふうに思うわけであります。
 ただ、根本的なことということになりますれば、それは世の中に身元保証ということがなくなるということは、私も一面において望ましい方向であろうというふうに考えます。それはあるいは保険というようなことでかわりを果たすべきものであろうかと思います。現在におきましても身元信用保険というような保険が設けられておるようでありますが、そういう方向に進むべきものであろうかと思います。
 それから、信用身元保証協会の点についても御質問があったわけでありますが、そういうことになりますと、信用身元保証協会、この名称は別といたしまして、こういった業態の企業が発生をしてくる余地があるというふうに思うわけであります。
 これについて私ども、何かいままで法務省民事局として関与したことがないかということで調べてみましたところが、ある法務局から、この信用身元保証協会という名称の商号の登記を受理してよいかどうかという照会が参ったことがございます。この照会庁の意見も、受理すべきものではないと思うがいささか疑義があるということで照会してまいりまして、私どもの方でも、信用保証協会法との関係でこれは受理すべきものでないという回答をいたしておりますので、これは株式会社でやるのかあるいは商号の登記でやるのかわかりませんけれども、登記はしていないというふうに私どもは思っておりますが、現在まだその辺のところは調査ができておりません。
○横山委員 大臣、これを見ますと、これは宣伝ビラですが、利益の例として、十万人の保証の場合、総代理店が四五%として五億四千万円の収入があるという総代理店の宣伝ですね。
 一方では、古い話ですけれども、足利銀行の女子行員が二億一千万円の詐欺事件を起こした有名な問題であります。「足利銀行(本店・宇都宮市)が、身元保証をタテに早々と、この女子行員の父親から土地、家屋を担保として出させ、伯父からは損害賠償に応ずるとの念書を取っていた」、身元保証をしておった。それで銀行側は返せと言う。いまさら何を言っているの、何年もたったいまごろ、監督責任もいいかげんにしておいて、それで自分たちの不始末を棚に上げておいて、この親から、おじから土地、担保も出せ、損害賠償も出せとは何事かと新聞にたたかれまして、銀行側としては恐れ入って何とか示談に応ずるということで決着をしたわけでありますが、これが一つのいい例であります。
 この宣伝ビラもこういうことは言っております。「日本人と言へども、誰も保証は引き受けたくありません。しかし生活必需制度であるためやむを得ず、徳川時代より今日迄、同じ方法でたのまれ、たのみ、しているのであります。近代化された今日、誠に不可思議な遺制が残存しています。」この宣伝ビラでもそう言っているわけです。しかし、そう言いながら、それじゃ私がかわってやるというわけで、この種のものが台頭している。
 私は、この種のものが、それこそ本当に近代的な方法で雇用者の賠償責任の担保をいたしますということを明白にして、株式会社なら株式会社らしく登記をして、保険会社的な方法でやるならばとやかく言うものではありません。それが合理的な手段だと思うのであります。しかしながら、私どもにまでこういう証券を五枚、五百万円分まで贈呈して、あなたに身元保証協会長になってくれというようなことでは、何か将来の発展についていやなものを私は感ぜざるを得ないのであります。
 ですから、民事局長には、お手元へこのコピーを差し上げてありますから、身元保証協会なるものがどういうシステムでどういう運営をしているか、本当に株式会社なのか、全国的組織らしいのだけれども、それならどうなっているのか、現行法の実施状況とも相まって、一遍調査を確実にしてもらいたい。大臣には、私が先ほどから申し上げておるように、もうこの身元保証ニ関スル法律というものを再検討して、近代的な法律が必要ならばそういうものをつくったらどうかと思うのでありますが、どうお考えになりますか。
○坂田国務大臣 ただいまの御指摘は、民事局長から御答弁申し上げましたように、ただいま調査した限りでは登記もしていないということでございますが、もう少し精密に調査をいたさせたい、かように考える次第でございます。
 それから、この法律をやめてしまったらどうかということでございますけれども、日本の社会に徳川時代から存在する身元保証という慣行が国民の間にある程度定着しておるというふうに私は思うわけでございまして、これがこの法律としてその当時近代化されたものとしてつくられ、現存しておるということかと思います。しかし、いま御指摘になりましたような、この法律があるがためにいろいろ問題も起こしておるというような御指摘でもございますので、ひとつこれは慎重に検討すべき課題ではないだろうか。いますぐ、私がここで、この法律をなくしてしまうということに賛成と言うわけにはまいりません。
○横山委員 私は、この法律を廃止しろとだけ言っているわけではないのですよ。廃止をするかわりに、身元保証という言葉を取って、被用者の起こした行為による賠償責任に関する法律というような、もっとわかりやすいものに変えたらどうか、こう言っているわけでありますから、単純にやめてしまえと言っているわけではないのです。それから、身元保証に関する現在の法律の中にも、商工業見習い者は五年だとか、五年を継続してもいいとか、まかり間違えば何十年やってもいいとか、そういうことはおかしい、少なくとも、就職する際に損害賠償の責任を負うとしたならば、五年なら五年で打ち切りにしてしまうべきだ、後は監督者、使用者の責任に任せるべきだ、こう言っているわけでありますから、そのつもりでひとつ御検討願いたいと思いますが、重ねて御答弁をいただきたい。
○中島政府委員 現在の身元保証ニ関スル法律も、時代の変遷に従いましてまた検討の必要が生じてくるわけでありまして、ただいま御指摘のような点も含めまして、慎重に将来の研究課題とさせていただきたいと思います。
○横山委員 次は、東京都下に戸別配布されましたこのビラであります。これは「不動産経営管理士認定講座」とあります。これを見ますと、要約いたしますと、三月九日、三月十日、二日間、午後一時から五時まで、一万円持ってこの講座を受ければ全日本不動産管理経営大学講座の修了証書を授与する、それから、入会登録手続をした方には、登録料をもらえば全国共通不動産経営管理士登録証書を差し上げる、額もついておる、それから身分証明書もお渡しする、また、営業用金看板掲示の資格、看板をかける資格を上げますということだそうであります。全日本不動産管理経営協会がやっておるわけであります。
 これによりますと、全国的に支所を八つか九つ持っておりまして、第九十四国会衆議院公報八十六号、第九十四国会参議院公報八十六号で請願が受理された、したがって、不動産経営管理士制度の立法化に備えて早くこの講座を受けることは非常によろしい。不動産経営管理士は土地の管理、建物の管理をするのだというて、約十五項目、地代、境界線、区域、面積、災害、地面師、紛争の相談、解決だとか契約書の作成だとか、万般にわたって書いてあります。「類似団体には充分にご注意下さい。」とまで御親切に書いてあるわけでございます。
 建設省にお伺いしますが、不動産経営管理士というものは、建設省としては立法化をなさる予定があるのですか。
○末吉説明員 お答えいたします。
 いま先生が御指摘になりました同協会は、広告に引用されておりますように、九十四国会の衆参両院における請願で不動産経営管理士の資格認定に関するものでございますが、建設省といたしましては、これらの請願につきましては、法律事務に関しましては弁護士なり、税務に関しましては税理士なり、あるいは鑑定評価に関しましては不動産鑑定士など、すでにそれぞれの資格制度がございますので、不動産経営または管理に関する業務につきまして特例の資格制度を設ける必要性は特にない、その請願のときには特にないと御意見を申し上げたところでございます。建設省では、その請願のときに申し上げた意見のとおりでございます。
○横山委員 大臣、これをちょっと見てください。これは一流新聞の広告なのでありますが、「目標のある人生を歩もう!!通信教育生募集」として、これだけのものが宣伝をされておる。そこに私がチェックしました中には、法律に基づいた士職と法律に基づかざる士職がごっちゃになっておるわけであります。
 先年来物議を醸しましたのが、交通損害保険士など五種であります。国会でも問題に取り上げました。国会で取り上げました理由は、やはり交通損害保険士立法化に備えて、請願が受理された、だから早く資格を取得した方がいいということで、それは一体何だ、弁護士法にも違反するおそれがあるのではないかとかなんとかいう議論がありましたら、私の聞くところによりますと、この協会から、質問をした国会議員にある意味では脅迫の電話があったそうであります。脅迫するところは、おれのところはきちんとやっておる、きちんとやっておるのに何でそういう営業妨害をするのかというような脅迫電話であったという話であります。本人はそれで非常に怒り心頭に発したのであります。
 要するに、士のつく資格者というのは、弁護士から不動産鑑定士等に至るまで、士のつく法律に基づくものが一つのパターンといたしますと、法律に基づかないけれども、政令や省令あるいは通達に基づくものがあるわけです。
 驚いたことに、警察庁と通産省とが奪い合いいたしましたのが自転車屋の若い衆。それに警察庁は自転車保安士とさせたい、通産省は自転車組立士としたい。自転車屋だって小僧が二人か三人しかおらぬですよ、それを取り合いをしたわけです。両方とも顔を立てて、一人の自転車屋の若い衆が、わしは自転車組立士だ、わしは自転車保安士だ、こういうことになったわけです。これは通産大臣も知らなければ、警察庁長官も知らない話ですよ。しかし、通達なり何なりでそれができたというのであります。それを受験するのに一人千円か二千円要るわけです。それで試験場はといったら、一緒にやるというわけです。それこそ両省が仲よくやるということです。まことにばかげたことで、そういう全国の自転車屋の小僧から千円、二千円取って、そうして恐らく何か協会があるのでしょう、その協会へ古手役人が天下りしてのうのうと暮らしているのではないかと私は思うのです。これが二つ目のパターンであります。
 三つ目が、いま例示をいたしましたような法律、規定、通達、何にもよらないでこの種の士がいま横行をいたしておるわけであります。
 かつて経営管理士というのでしたか、名古屋で新聞に宣伝しまして、一日一万円かそこら持ってくれば、この管理士と同じような認定講座を受けられる。その中に斎藤栄三郎さんや政治家の名前がついておるわけです。一日で額も上げましょう、免状も上げましょう、金看板の掲示の資格も上げましょう、一万円持っていらっしゃい。名前は定かではありませんが、経営管理士であったと思うのでありますが、そういうものに斎藤栄三郎さんが利用されているのではないかといって、私は委員会を通じて注意をしたことがある。たしかおやめになったと思います。おやめになったと思いますけれども、この種のものが横行をしておる。
 この間また、建設省は建設業経理士というものを、役所の指導で、建設業か何かの団体が全国共通の講座か何かやるというので、建設委員会で問題になりました。税理士会はもちろん反対だ、公認会計士会は反対だ。こんな建設業経理士なんというものは役所が指導していること自身がけしからぬということになりまして、結局、建設省は、建設業経理事務士として勘弁願いたい、もう始まっているから勘弁願いたい、こういうことになったわけなんであります。
 かくのごとく士職というものが、何か法律に根拠を置き、それが非常に商売にもなるような見せかけによって、この不動産経営管理士のような、東京都内に全戸に配布されて、そして一万円持ってくればといったところで、一万円のほかに登録料は別納だ、それから金看板掲示資格、金看板を買えば、それでまた銭が要る。
 こういうような状況について、私はまず第一に、士の名称を使うことについて制限する一つの法律が必要ではないか。いままでの国会の記録を見ますと、この種の問題は軽犯罪法から不当な広告、景品等の法律に触れるのではないかということが国会の議論の焦点になっておりますが、この点についてどうお考えでございますか。
○前田(宏)政府委員 御指摘のような士とつくものがはんらんしているといいますか、多くあることは承知しているわけでございますが、現行法のもとでは、改めて申すまでもないと思いますが、先ほども御指摘のございましたような軽犯罪法であるとかということの取り締まりも可能であろうと思います。また、極端な場合には詐欺ということもあり得るのではないかと思いますが、そういうことではなくて、御提案のように士という名称を使うことについて何らかの立法措置が必要ではないかということでございますが、果たしてそこまでの必要がいまあるかどうかということにつきましては、なお考えさせていただきたいと思います。
○横山委員 軽犯罪法の一条三十四号、虚偽広告の罪というものがあります。「通常、人を錯誤におちいらせ、それが虚偽であるのに、真実と誤認させることとなるような事実であり、人を誤解させるような事実とは、社会通念からいって、通常の場合、他人が錯誤におちいるおそれのある事実であるということができる。」これが軽犯罪法の解説として公にされておるものでありますが、少なくともこのような法律規定に基づかざるものがずいぶん多い。
 それによって被害を受けた人たちというのは、年をとってからも何か人の役に立ちたいと思って講座を受け、書物代なども含めて十何万も払ったのにとか、すぐにでも公的資格に切りかわるような説明をされ、その際に自動的に振りかえができるようにと試験まで受けさせられたとか、あるいは受講料三万払う、教材、指導問題、そういうものを含んでいるわけだが、その受講料三万円で通信教育を受けて、それを終了すると資格審査委員会より交通事故管理士資格認定通知書というものをもらう、その審査を受けるために一万円というようなあり方や、一級交通事故管理士というものが設けられているわけですが、二級の場合には入会金が一万円、登録料が二万円、会費が二万四千円、合計五万四千円、一級の場合は入会金が三万円、登録料が三万円、会費が二万四千円、合計八万四千円、この金を出して特別の資格をもらうことだとか、これが全部法律によらざるものですよ。
 こういうことが横行しておるわけであります。この新聞の広告を見ましても、各省にわたって法律によらざる士の問題が随所にある。これがまだ犯罪に当たるかどうかわからぬというようなことを言っておってはいかぬのではないのですか。法務大臣、何かいい知恵はありませんか。
○坂田国務大臣 ただいま刑事局長から御答弁申し上げたようなことでございまして、もうしばらくひとつ検討させていただきたいと思います。
○横山委員 これはそう言っておる間にどんどんと町へこの種の広告が蔓延をし、そして国会に請願が出てくれば、国会議員の中には、たとえば参議院の安井謙さん等を含めて、請願の受理というものはなるべく大目に見て受理をするものですから、請願が受理されたということをまた誇大宣伝して、そして町でこれで不必要な金を払って、いかにも法的資格があるようなことで宣伝され、被害が続出しておるのですから、もう少し法務省もこの種の問題について十分考えてもらいたいと思うのです。この種の問題に政府部内で責任を持ってまじめに検討してくれるセクションは、一体どこになりますか。
○前田(宏)政府委員 どういう規制をするかということによりまして所管も決まってくるのじゃないかと思います。それぞれの法律によりまして、いわゆる類似名称というものを禁止している法律もあるわけでございますが、それぞれのいわゆる士のつく業務といいますか、その内容に応じて省庁も各省庁にまたがることになろうかと思います。
○横山委員 これは法務大臣、あなたひとつ号令をかけてくださいよ。号令をかけて、この種の問題が庶民の間で非常に多大の問題を起こしておるということこそ、大きなこともさることながら、庶民的な問題ですから、もう少し熱意を持って、刑事局長は人ごとみたいなことを言っておるので、少したしなめて、まじめにやれと言ってくださいよ。
○坂田国務大臣 まじめに検討いたしたいと思います。
○横山委員 ここに最近の週刊誌をこれだけ持ってきたわけですが、これだけではございません。もう週刊誌でプロボクシングの問題を取り上げない週刊誌はない、新聞でプロボクシングの問題を取り上げない新聞もない状況であります。申すまでもありませんが、このプロボクシングの問題、私もボクシングは好きでありますからよくテレビで見ています。また行ったこともあるわけです。このプロボクシングが日本で非常な発展を見せて、見にいかないでも、テレビになると視聴率が非常に高い。そのことは、国民の中にプロボクシングというものが非常に浸透しておる。そしてまた、青少年の中では、一時問題があったことはありますが、いまとなってはプロボクシングのいいところを見て、まじめに――ほかの何かのスポーツの例示を挙げると問題がありますから言いませんけれども、八百長的な、あるいはあそこでやればいいものをやらないというものと違って、相撲とかプロボクシングというのは本当に真剣勝負だという印象を今日まで与えてきておるわけです。それに、何ぞはからん世界チャンピオンの試合にまで実は黒い霧がかかったということで、全く衝撃的な話題になっておるわけであります。
 先ほども理事会で私もいろいろと意見を言い、理事の諸君と意見交換をしたわけでありますが、このプロボクシングに関する問題については、実に何ということをしているのだろうか、事実関係は一体何だろうか。また一説によりますと、いやこれは派閥争いなんだからどっちもどっちだという意見もある。真実は一体何だろうか。それは本当に薬物が混入されたとすれば犯罪なんですけれども、その真実が何であったかということと同時に、ボクシング協会にとってはもうぬぐうべからざる汚点を残した問題だと私は思います。
 したがいまして、まず三月八日に警視庁に協会の有志が捜査願を出して、それが告発と見て警視庁は事情聴取を始めたそうでありますが、現状はどういう状況でありますか。
○仁平説明員 三月八日に警視庁に出されました捜査願の内容は、金平氏が薬物を仕掛けたという報道があるので捜査していただきたいというものでございまして、犯罪事実が特定されているとは言えないわけでございます。御承知のように、告訴、告発と見るためには犯罪事実の親告がなされ、犯人の処罰を求める意思表示がなければならないわけでございますが、ただいま申し上げました捜査願はそういう内容ではないということで、現在警視庁におきましては、関心を持って事態の推移を見守っているという状況でございます。
○横山委員 後でまたお伺いをいたします。
 文部省にお伺いしますが、日本プロボク協会はどういう法的性格を持ち、文部省としてどういう扱いをしており、そして今回の問題について文部省としてはどういうふうな見方なり調査をしておるのですか。
○戸村説明員 財団法人の日本ボクシングコミッションについては、五十三年の十月に認可をいたしたわけでございます。この法人は、プロボクシングに関します規則の制定とかあるいはプロボクシング試合の管理、プロボクシングに関します紛争の処理というような事業を主としてしておるわけでございます。
 今回の問題につきましては、コミッションの方では去る十八日に健全化対策委員会を設置いたしまして、この委員会においてこの問題の取り扱いあるいは今後の改善策、こういうものについて検討を始めたというところでございます。私どもといたしましては、この検討委員会におきます種々の審議、こういうものの動向を見まして、しかるべく対応を考えてまいりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
○横山委員 警視庁にお伺いをいたしますが、捜査願というものの性格がはっきりしないということなんですね。しかしこれだけの、これは今週号なんでありますが、連日連夜と言っていいほど新聞、週刊誌が取り上げておる。共通の問題は、金平前会長が薬物工作をしたということにポイントがあるわけです。そのことは一つ、二つの新聞記事、週刊誌が言っているわけではなくて、すべてのマスコミの記事が総合的に共通点として指摘しておることです。しかも、きわめて確定的な証言がある。ホテルのコックとかあるいはジムの退職した社員だとか、いろいろなところで確定的な証言がある。そのことについて、警察庁としては形式的に捜査願だけでは意味がないと言うておるわけではないでしょう。どうなんですか。
○仁平説明員 いろいろ報道がなされておることは私どももよく承知いたしておるところでございますが、やはり警察が捜査に着手するためには、もう少し犯罪の事実が具体化してこなければならないというふうに見ておるわけでございます。
○横山委員 何かお話を承ると、警察庁、非常に慎重なような気がするのです。それはこういう席上だから具体的に言いにくいということはあるかもしれぬけれども、いまのあなたの答弁が仮にマスコミに載れば、何だ、警察庁が非常に逡巡しているのは何か別な意味があるのではないかという誤解を持たれますよ。それは非常に残念だと私は思うのです。
 一つや二つの話題であればともかくとして、これだけ各社各紙が取り上げて、だれが考えてもその問題について共通性がある。金平前会長が薬物工作をした。問題は、相手の選手が本当に飲んだのであるか、それから、その薬物をオレンジなりあるいは何かの中に本当に混入をさせたのであるか、あるいはまた、混入させた結果効果があったのであるかどうか、効果があったとしても試合に影響したのであるかどうかという問題はなるほど残る。けれども、薬物を工作をして飲ませるような指示をしたという点については、本人は否定しておるけれども、客観的な証言、客観的な人の記者会見――客観的と言えるか、その人がいろいろな問題があるかどうかわかりませんけれども、少なくとも総合的に見れば、薬物工作をしたと見られる節がある。そのことだけに限って共通の問題がある。もしそれが事実としたならば、何法に違反しますか。
○仁平説明員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、警視庁においても強い関心を持って事態を見守っておるわけでございますので、具体的に犯罪の容疑が明らかになれば、当然積極的な捜査に着手するということになるわけでございまして、現段階においては情勢を見守っておる、こういうことでございます。
○横山委員 別な角度で聞きますけれども、金平前会長は、薬物工作をした覚えはない、それは自分に対する侮辱である、それから、こういうことを言うのは自分のところの社員である某が使い込みをやったことに対する反発である、したがってこの際、刑事、民事両面から逆告発をすると言っておりましたが、逆告発はされましたか。
○森広説明員 お答えします。
 いま御質問のような逆告発といいますか、名誉棄損の告訴と申しますか、そのような告訴は現在までのところ受理していないという報告を受けております。
○横山委員 それならば、なぜ金平氏は日本プロボクコミッションにクラブオーナー、プロモーターのライセンスというものを返上したのでありましょう。自分にやましいところがないならば逆告発をし、かつ自分がこの種の役職を返上する必要はないと思われるのでありますが、その点は文部省、どうお考えになりますか。
○戸村説明員 御質問の答えにはならないのかとも思いますが、金平さんは個人の判断としてそれをなされたというふうに聞いておるわけでございます。ただ、いまコミッションの方では、一応永久追放その他処置というもの、あるいは今後の改善策、そういうものを中心にし、コミッションルールを強化するとかいうような改善策を検討しておるようでございます。おっしゃる点につきましては、そういうような考え方が一面にはあろうかと思うわけでございます。
○横山委員 文部省にもう一つ、これはあなたに聞いて適当であるかどうかわかりませんけれども。
 具志堅選手の名誉を傷つけるということはなるべく避けたいと私は思うのでありますが、具志堅選手を含めてチャンピオンの共通の意見として、おかしなことだと私は思うのでありますけれども、日本人として三人目の世界王者になった海老原氏の発言として、
  十回戦をやっていたころ、こんな経験をした。
  「テレビ局の人に『こんどのファイトマネーは二百二十万円だよ』と、それとなく聞かされていたんですが、クラブオーナーには百万円と言われた。それでも、まあ仕方ないと思っていたんですが、そこからまた三三%をひかれたんですよ」。実際に手にしたのはわずか六十七万円だった。若かったときだけに二十年以上たった現在でも、苦い思い出として残っている。
  ハードパンチャーで、重量級の世界王者になったAさんのケース。最初は数百万円だったファイトマネーが、二回、三回と防衛を重ねるうちに、二千万円程度に上がったが、最後の防衛戦では“雑費”と称する合宿費など約二百万円が差し引かれていた。もちろんマネジャー料三三%はちゃんと引いた上にである。「ジムの方で、選手からそれだけ取らなければ(商売が)やっていけないというなら、飲まざるを得ないでしょう。それがガラス張りで、興行収入がいくら、そのうち選手の取り分がどの程度かくらいでも教えてくれれば、額の多い少ないに文句は言いません。一方的に言い渡されるところに不明朗さが感じられるのです」。
  「クリーンな金銭関係」は、世界戦を経験した選手が口をそろえて、ジム経営者に望む声である。十年前に「きちんとした契約書の作成と、ギャラ(ファイトマネー)の明確化」を求めて“選手会”を結成しようという動きがあったが、結局つぶれてしまった。よく言えば“家族的”、悪く言えば“徒弟制度”のボクシング界の体質が、こうした動きを封じたといえるだろう。
  ボクサーの利益が守られにくい理由の一つに、マネジャーであるジム経営者がプロモーターまでを事実上”兼任”していることがあげられる。
  マネジャーは、本来、契約下にあるボクサーのあらゆる利益を守る義務がある。適正な試合相手、報酬の確保から健康管理まで、仕事の幅は広い。そのために三三%という高率のマネジャー料が認められているのだ。
  一方、プロモーターは、主催する興行からの利益追求が目的だ。経費を切り詰め、売り上げを伸ばせば収入は上がる。ボクサーのファイトマネーは少ない方がいい立場にある。
  ところが、日本の場合、ジム経営者の妻や身内がプロモーター・ライセンスを取っているのが、全ジムの八〇%を占めているのが実情だ。アメリカに範を取った日本ボクシング・コミッション・ルールでは禁止している“二足のわらじ”を、表向きは”はかぬ”振りをし、実際にはちゃっかり”はいて”いる。こうして、日本のマネジャーは、選手を保護する立場にありながら、あらゆる口実を設けて選手から利益を吐き出させている。
こういうプロボクシング界の裏面を、各選手がこの機会に物語っておるわけであります。
 確かにこういうことが事実だろうと私も思う。二足のわらじをはいてはいかぬと言いながら、妻や親類が法律上の立場をとっておれば、二足のわらじでないという言い分は、法律上はなるほどそうかと思うけれども、実際上は、世界のルールの中で、日本プロボクシングコミッションルールの中でも、禁止していることが実質上守られていないということなんだと思うのであります。こういう点について、文部省としてプロボク協会に対して何か改善策を求める必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
○戸村説明員 今回の問題を契機といたしまして、改善をお願いしたいと考えております事柄が三つほど実はあると思います。
 一つは、ただいま先生がおっしゃいましたような二足のわらじ、中には三足のわらじもございまして、いわゆるプロモーターとクラブオーナー、マネジャー、これが同一人物というようなケースもあるやに聞いております。こういう問題が一つあろうかと思います。もう一つは、選手とマネジャーの契約関係が明確になされていない。したがってファイトマネー等の金銭の配分が明確でなかったというようなケースが過去にあった。さらに、今回の問題の焦点でございます薬物使用。オリンピックではドーピング検査などが実施されておるわけですが、こういうものが試合を開始する前に実施できないかどうか。こういうような事柄を今後改善対策委員会で検討をお願いしたいと考えているわけでございます。
○横山委員 お話しのように、健全化対策特別委員会は健全化対策小委員会と薬物投与防止特別小委員会、二つの小委員会をも新しく設けることを決めたそうでありますね。健全化対策小委員会についてはいまお話しのようなことでいいのですが、薬物投与防止特別小委員会というのは一体どんなことをするのでしょう。今回の経験をどう考えているのでしょうか。
○戸村説明員 いわゆるオリンピックとかアジア大会の際に、選手が興奮剤を飲みまして競技に出るというようなことを防止するために、ドーピング検査というものを実施しているわけです。これはいわゆる薬物検査と言われているわけですが、これと同じような性格の検査をプロボクシング界にも導入しようということであるわけでございます。ただ、この実施に当たっては大変むずかしい問題がいろいろとあるようでございまして、今後実施できるかどうか、その面の専門家たちのグループで検討するというのが、ただいま先生の御質問の小委員会であると承知しております。
○横山委員 マネジャーにとって、チャンピオンになるのはまさに金のなる木だ。先ほどリングの裏舞台のチャンピオンの話を御披露したわけでありますが、だから何としても勝たせなければいかぬ。それには今回の事件のように、なりふり構わずにとにかくチャンピオンの座をねらう。それがスポーツ精神においてのオーソドックスなやり方ならばいいけれども、オレンジに注射するとかあるいは食物の中にまぜるとか、あるいは場合によっては先方のマネジャーと何らかの話し合いをするとかいうようなことがあってはまさに言語道断でありますけれども、そういうような業界の体質というものが、このプロボクシング協会における派閥争い、そういう傾向があると指摘をされる向きがあります。現に、このプロボクの会長になるために先般すごい決選をしてわずかの差で就任が決まった、こういうようなことが言われておるわけであります。
 この派閥争いというものがプロボクシング業界に対するバックグラウンドで、会長になれば、あるいはまたマネジャーになれば、もう選手に対しては適当にあれも使ったこれも使ったと言って、ファイトマネーの金額も教えずに、そしてどんどん自分がポケットに入れる、選手よりもそのマネジャーや会長、役員職の方が莫大な利益が上がるということについても、きわめて遺憾な現状であると思いますが、その点はどうお考えになりますか。
○戸村説明員 ただいまの先生の御質問の役員の問題につきましては、全日本ボクシング協会の関係の問題ではないかと思います。全日本ボクシング協会は任意組織でございまして、ジムのオーナーによって構成されている組織体でございます。この会則なるものを取り寄せましていろいろと見ておるわけですが、会員相互でいろいろと規律を正していこうとかというようなことなどを決めまして、運営をされておるようでございます。ただ、この組織は、あくまでもジムオーナーによる親睦団体で、この組織そのものが実質的にプロボクシングの管理運営というものには関係はないというふうに私どもは承知しております。
○横山委員 本来、このJBCルールの総則で、「コミッションは不正破壊の行為に対しては、たとえ法規において合法と解釈されることであっても、フェアプレーと誠実の精神を犯す場合はこれを排斥する」とし、また、ルール第九条では、「ライセンス交付されたものが、ルールに違反し、日本国法律に抵触し、その他ライセンスを交付される資格に欠けると裁定された場合には、コミッションからライセンスの取り消し、一定期間サスペンド(停止)、その他の処分をされる」。ルールだけは厳格と思われるほどのルールを決めておるのにかかわらず、その舞台裏でかくも世界チャンピオンの王座戦にまで疑いが生ずる、世間の信用を失墜する、青少年の心理状態に多大の影響を与えるということがあったのでは、ボクシング界に対してぬぐうべからざる問題を生じたと私は思います。
 重ねて警察庁に聞きますけれども、十分な関心を持っておるというお話を再三承っておりますけれども、もしもその薬物投与等のことがあった場合、事実が認定された場合には、厳正な処置を追及されるつもりでありますか。また、法務省としても放置できない問題だと思いますが、いかがお考えですか。
○仁平説明員 将来具体的に犯罪があると思量されますならば、厳正に捜査する方針でございます。
○前田(宏)政府委員 いろいろと疑惑と申しますか、そういうことが指摘されておるわけでございますが、その解明というものは、犯罪行為に当たる場合には当然捜査手続において解明がなされるわけでございますが、犯罪に当たらない場合には、当然のことながら、刑事手続による解明の対象にはならないわけでございます。その点の限界があることは申すまでもないところでございますが、仮に犯罪に当たる行為があるということであれば、警察当局とも十分連絡をとりまして適切に対処すべきものと考えております。
○横山委員 慎重な二人の話でございますが、私は、この種の問題が何か業界の自主的な「疑わしきは罰する」という立場で金平会長に対する措置が決まった。そして、薬物が実際投与されたのかどうかという真相があいまいなままにこれが終わってしまうおそれというものを大変心配するわけであります。その意味では、現実にあった問題を一遍列挙して、これまで警察庁が一体どういう措置をなさったのか、伺っておきたいと思います。
 協栄ジムの元社員が、十三日までに、東京都内のホテルで共同通信記者と会い、「金平前会長の指示で、私が具志堅用高、渡嘉敷勝男両選手の対戦相手への薬物工作を手伝った。工作にはいつも金平前会長が加わっていた」と証言。さらに、「金平前会長の指示は絶対で、逆らえなかった」。
 薬物工作を証言したのは、元同ジム、ビジネスマネジャー、金本安男氏。金本氏は昨年九月、同ジムを退社するまで約十二年間、主に外人選手の入国手続事務などを担当。
 証言によると、金本氏が薬物工作に加わったのは五十三年五月七日、広島県立体育館で行われた具志堅対ハイメ・リオスの世界タイトルマッチと五十六年六月二日、後楽園ホールでの渡嘉敷対金竜鉉の二試合。金本氏は金平前会長の指示で、リオスが泊まっていた広島市中区のホテルのコック長、Aさんと接触。試合二日前の夜、ホテル近くのスナックで、金本氏が金平前会長から受け取った白い薬包二袋をAさんに渡した。渡嘉敷対金戦では、金選手の宿舎だった東京水道橋のホテルサトーの部屋で、試合前の二日間、金平前会長と協栄ジム社員、金本氏の三人で、レモン三個とオレンジ六個に薬物を注射器で注入、金選手側に渡すようホテル側に依頼した。
 日本側世話人で薬剤師でもある西出兵一元トレーナーは、十九日にサンケイ新聞記者とのインタビューに応じ、「相手選手に対する薬物投与を金平会長から九回にわたって頼まれ、このうち三回は、直接、金平会長から薬包を手渡された」と証言。また、金平前会長からは、その都度「やったか」と問い合わせがあり、西出氏は「やりました」と答えた。しかし「実際には投与していなかったので相手選手に実害はないし、黙っていればすむ話と思った」と語った。金平氏からは「遠征に伴う諸経費として現金七十万円を受け取ったが、薬物投与に関する謝礼はもらっていない」。
 ホテルのコック長。五十三年五月七日、広島市中区の広島体育館で行われたりオス戦で、このとき、リオス一行と協栄ジムのスタッフが同市のビジネスホテルに宿泊。スタッフの一人がホテルのコック長を二度にわたってスナックなどに誘って、金平氏がコック長に薬物を渡し、減量苦もなく食欲も旺盛だったリオスの食物に薬物混入を依頼。コック長は、同誌の取材に対し「リオスのステーキに薬物をふりかけ、十万円もらった」と証言している。
 このコック長は、十日午後、広島市内の勤務先のホテルで新聞記者のインタビューに応じ、次のように証言。「タイトル戦の数日前、協栄ジム関係者から“睡眠薬だ”といって紙に包んだ白い粉を手渡されたが、男はそのさい、リオスは試合前に眠れない性格なので、料理のステーキにふりかけて欲しいと“薬物注入”を依頼した。だが、ホテルの調理室は地下にあり、料理は一階にリフトであげるため、どの料理がリオスの部屋に届くかわからないし、調理師としてそんなことはできない。また自然に眠った方がいいと思って、その夜、(睡眠薬)をホテル前のゴミ箱に捨てた。そして試合終了後“チップ”といって十万円渡された。“薬物注入工作”を依頼した人物は、四十歳くらいで、背が高く、“金本”と名乗っていたように思う」。
 この辺の、「ステーキを焼きながら上からふりかけた」という部分で、週刊誌によって、新聞によって多少食い違いがあります。しかし、もらった、工作を依頼されたことは事実等々、枚挙にいとまがない証言ですね。これはあなたが慎重に言っているから、私はわざと問題の証言と名前を列挙したんですが、枚挙にいとまがないですね。
 こういう客観的な新聞記者との会見で、名前も明かし、時間も場所も言い、きわめて具体的な問題について、警察庁として何か割り切れない答弁を先ほどからいただいておるのですけれども、この点はあなた方も、告発がなければ手をつけないということではないでしょう。これだけの問題がありながら、一体どういうお考えだったか、私は真意の捕捉に苦しむんですがね。国民にもっとわかりやすく、本件に対する警察庁の基本方針を再度伺いたいと思います。
○仁平説明員 ただいま先生がるる御指摘なさいました報道の関係につきましては、私どもも大体承知いたしておるわけでございまして、関心を持って検討はいたしておるわけでございますけれども、現段階においては、捜査に着手するまでに具体的な犯罪の要因があると思量されない、こういうことでございます。
○横山委員 どういうことなんですか。この記事がうそであるとか、信憑性が乏しいということなのか、それとも、内偵をしておる段階だからまだ確証が得られないということなのか、その辺どうなんですか。
○仁平説明員 警察としては、まだ具体的に捜査活動に着手はいたしておりません。しかし、情報等はいろいろあるわけでございまして、そういったものにつきましては関心を持って検討をいたしておる、こういうことでございます。
○横山委員 まだいろいろございますけれども、時間になりましたので……。
 私としては、いまの答弁で非常に不思議なことがたくさんあるわけであります。一体真実は何であったかということと、それから、プロボクシング協会が社会的な責任を感じて、健全化委員会において一つの方式を決められたそうでありますけれども、業界の体質改善というものについて、私どもとしてもいろいろ意見がありますし、業界の幹部の実態の状況についても聴取をして、体質改善に資したいと私どもは思っています。きょうは役所側が、まあお気持ちはわかるんですけれども、言葉としては慎重なことでございますから、この際、理事会にもお話をいたしておりますが、金平前会長、プロボクの現会長、その他関係者に参考人として当法務委員会に出頭をされるよう、委員長として善処をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
○羽田野委員長 後刻理事会にお諮りいたします。
○横山委員 法務大臣、質疑応答お聞きのとおりであります。私は、きょうは残念なことに競馬の馬に薬物注射をした事件、その事件を取り上げることが時間がなくてできませんでした。競馬も同様なことなんですね。人間に薬物をオレンジに入れて飲ませる、馬に薬物を投与させて勝たせる、負けさせるというようなことがあったのでは、これはもうボクシングも競馬も、また競輪もそうでありますけれども、そういう黒い霧が覆っておったのでは日本のスポーツは伸びませんよ。また後日改めて競馬界の問題を取り上げますけれども、こういうことについて司直の手というものは厳正でなければならぬ。この厳正によって、悪いものは悪いという一罰百戒をすることによって、健全化の舞台が軌道に乗ると私は思うのであります。
 なるほど、自主的解決も望ましいことではあるけれども、しかしながら、それが伝えられるような派閥争いが顕在しておったり、あるいはあいつはおれの金を使い込んだからああいう嫌がらせをやっているのだというようなことが横行したのでは、真実というものもはっきりしません。他の批判を、他の忠言をやはり業界の中に注入させなければなりませんし、悪いことは悪いという司直の手が厳正に働かなければ健全化にも役に立たない。プロボクシングの業界にとって、今回のことは不名誉きわまる歴史的な問題なんであります。うみを十分出させなければ健全化に資さないと思います。こういう点では、法務省も警察庁も慎重であることはいいのですけれども、事態の真相を解明するのに回避的であってはならぬ、こう考えるのですが、法務大臣はいかがお考えですか。
○坂田国務大臣 もしそのような犯罪があった場合におきましては、厳正に対処すべきはもちろんだと思います。プロボクシング界におきましてこのようなことが起こるということになれば、もうこれを見る人たちが全く信頼を失ってしまう。単に日本におけるボクシング界だけでなくて、世界的に信用を失墜するというふうに私は思うのです。スポーツはまさにフェアプレイなんで、そのフェアネスが失われたら意味がないのじゃないかというふうに思います。それが最近においてはお金が絡んで、まあプロボクシング界でございますから興行は認められておるところでございますけれども、余りにもそれが極端になりますると、何が何でも勝たせなければならぬ、その場合には薬物でもということがなきにしもあらずということなんで、スポーツというものは、アマチュアであれあるいはプロであれ、やはり一般の観客というもの、観衆というものがあるわけでございますから、この人たちに信用を失うようなことは絶対やるべきではないと私は思います。
○横山委員 終わります。
○羽田野委員長 安藤巖君。
○安藤委員 私もプロボクシングの問題についてお尋ねをいたします。
 まず最初に、大臣にお尋ねしたいのですが、大臣はプロボクシングを見るのはお好きな方ですか。
○坂田国務大臣 テレビで見るぐらいでございまして、現場で見たことはございません。しかし、好きでございます。
○安藤委員 結構です。大体私と同じ程度だなというふうにいま思いました。
 先ほどからも問題になっております金平問題というのは、まじめな選手にとっては大変迷惑なことだというふうに思っております。それで、大臣も好きな方ですし、私も見るのは好きな方ですが、多くの愛好者はやはりいい試合を見たい、そして選手の方でも生き生きとして見てもらえる試合をしたいというふうに一生懸命努力しておられると思うのですね。だから、そういうボクシング界の一層の健全な発展を願っていろいろお尋ねをしたい、そして意見も申し上げたいというふうに思うのです。
 まず、文部省にお尋ねしたいのですが、先ほど、この金平問題を一つの契機にしてボクシング協会の方で健全化対策委員会をつくっていろいろ検討を重ねておる、そこでその議論に任せる趣旨のような、ただこういうことを議論してもらいたいという注文はおっしゃったのですが、それに対してはどういう期待を持っておられるわけでしょうか。
○戸村説明員 健全化対策の特別委員会は、十一人のメンバーで構成をされております。川本信正さんと申しますスポーツ評論家の方が委員長で、そのほか委員十名によって構成しておるわけですが、前回の十八日の会合では三つの議題を検討しております。一つは金平問題でございます。もう一つは薬物投与に関しますこと、さらにもう一つはボクシングの今後の健全化対策をどうするか、こういうようなことをやっておるわけでございます。
 一応私どもとしましては、現在のスタンスは、やはりその健全化対策特別委員会の審議経過を見まして、その上で必要な問題について助言をしてまいりたい。ただ、コミッションルールとかそういう面について強化したらというような考え方も、その委員会の中にあるように聞いております。そこら辺、今後の動きを見ながらその対応策は考えていくという考えでございます。
○安藤委員 先ほどからもお話がありまして、二足のわらじじゃなくて三足のわらじというお話がありましたが、やはりこれはコミッションルールでも、まずプロモーターとマネジャーを兼ねることはできない、これははっきりあるわけですね。ところが、さらにこれに加えてジムのオーナーまでも一人で兼任されているというようなこと、あるいは、ルールを免れるためにいわゆるファミリーで、おやじさんがジムのオーナーなら、マネジャーがその子供だとかあるいは奥さんがそのプロモーターになったり、こういうファミリーでいろいろ独占をしているというようなのはやはり問題だと思うのです。
 金平さんの問題でいきますと、これは協栄ジムが金平さんがオーナーだ。それから金平さんはそのほかに協栄プロモーションのプロモーター。いまは返上されましたけれども、プロモーターのライセンスを持っておられた。そしてマネジャーがこれまた協栄プロモーションの社員で、金平さんの使用人というかっこうになって、これは独立してないわけですね。だから、ファイトマネーの三三%はマネジャーが受け取るということになって、これが問題かどうかは一応別にして、あの具志堅選手の試合のときなんかでも、これはマネジャーは高橋という人ですか、この人が本当に三三%のマネジャー料を受け取っているのかどうかということも、私は問題じゃないかなという気がするのです。だから、その辺のところもこういうところに問題が出てきておるというふうに思います。
 いまおっしゃったような健全化対策特別委員会でいろいろ議論されるのを期待しているというお話ですが、たとえば、百八十一もジムがあるようなんですね。先ほど、八〇%ぐらいですか、ほとんど二足、三足のわらじだというような話ですが、私どもは具体的にも聞いているのですが、たとえば笹崎ジムとかあるいは協栄河合ジム、日東ジム、これはたとえばですが、ここなんかも典型的に父親、妻、息子、きょうだい、おいということでプロモーター、マネジャー、ジムのオーナーというのを兼ねている。ここのところがやはり問題だと思うのですね。
 とにかく、プロモーターというのはいわば興行主ですから、興行利益を上げるということに専念するわけでしょう、マネジャーは選手の側に立つ人でしょう、それが全く同一人物というのは全くおかしな話だと思うのです。だから、テレビの契約料だとか入場料だとか、あるいはマネジャーに入る三三%の分だとか、これを全部一人占めにする。だから、試合に勝つということになれば相当大きな収入になってくるわけですね。だから、これはどうしても勝たなければならぬというようなことになって、いま問題になっているようなことも出てくるおそれがある。この辺のところが問題解決のもとじゃないか。
 ですから、いまの二足のわらじか、私どもは二枚鑑札だと思うのです、あるいは三枚鑑札、この辺のところをしっかりと踏まえていく必要があると思うのです。この辺のところが第二、第三の金平問題というのが出てくる一つの基礎じゃないかというふうに思うのですが、大臣の御感想をお聞きしたいと思うのです。
○坂田国務大臣 私、具体的に事実関係を承知いたしておりませんけれども、いま先生御指摘になりましたように、常識的に、一般的に考えますと、やはり二足のわらじとか三足のわらじだというようなことではいけないんじゃないかと思います。そういうようなことが独立してあるというところ、つまりチェック・アンド・バランスの考え方が事実上導入されておらなければ公正に行われないというふうに私は思います。しかし、これは全く常識の、一般論でございますから。
○安藤委員 そのほかに、これは文部省の方にお尋ねしたいと思うのですが、ボクシングの試合のチケット、これはお客さんに買ってもらって、そしてお客さんはそのチケットを持って見にくる。ところが、欧米諸国では、選手に入るいわゆるファイトマネー、これは現金かもしくは小切手で支払うということにきちっとなっておって、それが実行されておるようですけれども、残念ながら日本の場合は、現金や小切手で支払われないで――日本で試合する場合ですよ、その試合のチケットを選手に渡して、たとえば仮にファイトマネーが十万円だとすれば二十万円分のチケットを渡して、これを売ってこいというような事態が行われているようなんですね。そういうような実態を知っておりますか。
○戸村説明員 その事実につきましては、一応承知はしております。
○安藤委員 これが本当に問題になっておりまして、私は具体的にいまそのチケットを五枚持っておるのですが、これはあるジムにいる選手が試合のチケットを渡された、なかなか売れなくて困ってしまって、結局そのジムのトレーナーが気の毒がって一万円渡した、そうしたらこれをくれた、二万七千円分です。それがたまたま私の手に入っておるのですが、事ほどさように選手は非常に苦労するわけですね。だから、収入は本当に微々たるものになってしまうわけです、それが売れなかったら現金収入はないわけですから。こういうひどい状態になっているわけです。
 このことはボクシング業界だけだと思うのです。お相撲さんの場合、お相撲さんが入場券を売って歩くかといえば、そんなことはありませんから。だから、これもやはり健全化対策特別委員会の方でも御検討いただかなければならぬ問題じゃないかと思うのです。やはりそれを売るについては、売りさばきは親戚とか友人とか限度がありますから、どうしてももっと売ろうと思うと、いわゆる組関係とか暴力団関係とか、そういうところへ行って頼むとか、よし、おれが一手に引き受けてやるというようなことでその方面との縁が切れないばかりか、だんだん深まっていく、こういうような事態になっているのではないかと思うのですね。だから、この辺のところも改善しなければならぬところじゃないかなと思っております。
 ある選手の奥さんが、その選手が家にほとんど金を入れてくれない、あれだけ何遍も試合をやっている、大ぜいお客さんも入っている、一体どうなっているのだというのでコミッショナーに直訴をしたこともあるそうですね。ところが、その問題についてはうやむやになってしまったというようなことがありまして、その選手は、試合前に売ってこいと言われたチケットをロッカーの上に置いて、試合が終わったらそのまま姿を隠してしまった、そういう悲惨な例だってあるわけなんですね。
 たとえば、これは昭和二十六、七年から三十年ごろですか、たしか世界フライ級チャンピオン白井義男という人が見えたですね。この人が、有名な話があるのですが、聞いておられるかと思うのですけれども、日本ではそういう状態なわけなんですが、ハワイで試合があって行った、そうしたらプロモーターから、マネジャーのカーン博士という人の分と自分の分と小切手をちゃんと渡された、それで本当に非常に感激したという言葉を言っているのですね。日本はそういうところから見るとまだまだおくれているなとつくづく思ったということを言っております。
 この関係もありまして、先ほどもちょっと話が出ましたが、ファイトマネーというのは、選手に対して口頭で、おまえ今度の試合は幾らだと言うだけ、それでチケットを渡されるだけ、これでは選手の方は、そんなチケットでもらったファイトマネーじゃファイトが出てこぬと思うのですね。だから、これはきちっと書面で契約するというようなことをやはり考えなければいかぬのじゃないかと思うのですね。書面で契約をしろということは、いまのところルールにはないようです。だから、これもきちっとやる必要があると思うのですね。外国じゃ、特に欧米じゃそんなことはきちっと書面で契約をして、全部ガラス張りにして、あなたの取り分はこうだよということで、現金で手渡されるというようなことですね。これは、この場をおかりいたしまして、その辺の問題点の指摘をするにとどめておきます。
 そこでもう一つ、選手の人権問題について、これは人権擁護局の局長さん来ていただいておりますので、これは関心を持っていただきたいという趣旨で申し上げるわけですが、ほかのところはあるのかどうかよくわかりませんが、プロボクシングの場合、選手の人権、特に移籍のときの人権問題です。これが相当ひどい状態になっているということを聞いているのです。
 たとえば、これは昨年の十月九日の報知新聞、これは亀田という選手が、中央大学卒業でアマで相当鳴らして、有名な選手だったのですね。「亀田引退のピンチ」という題ですが、亀田昭雄選手が「世界挑戦を前にして“引退”の危機に追い込まれている。これまで所属していたミカド・ジムがこの一日に閉鎖され、系列の協栄ジム」、これは金平さんのところですが、「に吸収合併されることになったが、これに伴う移籍に不満を持っている亀田は「場合によっては、ボクシングをやめる」というもの。」という記事があるのです。
 このときにミカド・ジムには亀田選手のほかにまだ七人の人たちが選手としておって、いろいろ練習に励んでおった。先ほど読み上げました記事のように、ミカドというのは何か大きなキャバレーですか、キャバレー・ミカドの経営者と一緒らしいです。そちらの方の経営が悪くなってしまったものだからジムを閉鎖する、こういうことになって、金平さんの協栄ジムに移籍させよう、こういうことになったわけですね。移籍というと非常に調子はいいのですが、全くこれは身売り、売り飛ばしですね。そういうようなことで、結局亀田選手には一言の相談も何にもないわけです。いきなり協栄ジムと話をしてしまって、そしてこれを引き受けてくれ、こういう調子ですね。
 そこで先ほどのような、読み上げました記事のような問題があるのですが、そのときに亀田選手は、ミカドが閉鎖された、だからもう自分はフリーになったのだ、だから、これからどこのジムへ所属するかは、今度は自分の自由に決められるのだ、こういうようなことを言っておられたのですが、とにかくどこかのジムに所属していないと選手として試合ができない、こういう仕組みになっておるので、金平氏の方でも、どこかのジムに所属しなければだめだ、試合には出られないぞ、やはりおれのところにいなければだめだ。
 コミッショナーの方にいろいろ話をしたのですが、コミッション側もこれに対してあいまいな態度をとって、とにかくこの新聞の談話によりましても、こういうことを言っておるわけです。これは小島茂日本ボクシングコミッション事務局次長、これは移籍するときには、ルールとしては、選手個人とそれから移籍する相手のジムのマネジャーとの間に契約書が必要だ。ところが、そういう契約書が来たということは、「コミッションには、そうした報告はまだ届いていない。選手がジムを変わる時は、前マネジャーの承認が必要となっており、亀田君らの協栄以外のジムへという希望を実現するのは難しい」ということで、ルールでは、先ほど言いましたように選手とマネジャーとの間の契約が必要だ、こうなっているわけですが、それがないままに勝手に移籍されてしまったわけです。だからこういうような問題が出てくるわけです。
 こうなりますと、選手の意向とか人権というのは全く無視されて売り飛ばされる、こういうのが現実として行われているようなんです。だから、私はいま、人権擁護局に対してすぐどうこうせいというようなことを言うわけじゃないのですが、こういうようなことがプロボクシング界で行われているという問題について相当大きな関心を持っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○鈴木(弘)政府委員 お答え申し上げます。
 詳しいことは存じませんが、したがいましていまの段階では何とも申し上げるわけにはまいりませんが、事情いかんによりましては、人権上問題がある場合もあろうかと思われます。協会あるいは関係機関の方でも、そういう点についてもいろいろお考えになっていかれることと思いますので、私の方といたしましても関心を持って見守ってまいりたい、かように思っております。
○安藤委員 文部省の方は、いま私が言いましたように、選手個人と移籍する方のジムのマネジャーとの間の契約書が移籍するときは必要だというルールがあるかどうか、知っておられますか。
○戸村説明員 申しわけございませんが、承知しておりません。
○安藤委員 おかしいな。ちゃんと勉強しておいてくださいね。
 それで、まだ後日談がちょっとあるのです。結局うやむやのままで、亀田選手の意思は全く尊重されないで、踏みにじられたままで、しかし試合には出たいしということで、彼は協栄ジムに所属することになったのです。そうしたら協栄ジムは、多くの選手を一挙に抱えることになったからかどうか知りませんが、ミカド・ジムから来た亀田選手を含めて八人ですが、亀田選手だけは残しておいて、あとの七人を今度は角海老ジムというところへまた売りに出そうとしたというようなことまであるのです。だから、選手の全く知らぬうちにそういうようなことまで現実に行われているということについて、擁護局としても関心を持っておっていただきたいということを要望しておきます。
 それから、いわゆるつぶしにかけるとか、肥やしにする、これはプロボクシング界の隠語だそうですが、文部省は知っておりますか。
○戸村説明員 承知しておりません。
○安藤委員 何も知らないんだね、あなたは。知らないのが多過ぎますよ。常識なんだよ、これは。
 これはジムの会長あるいはプロモーターあるいはマネジャー、これが同一人格であるときは一人ですが、あるいはファミリーらがいろいろ判断をし、相談をすると思うのですが、あの選手は将来見込みがないというときは、将来見込みがありそうな選手を育てるためにそのけいこ台にして、とにかく練習台にさせてしまうということです。それで結局はつぶしてしまうわけですよ。とにかく、練習台に殴られっぱなしです。試合に出る機会も奪われてしまう。こういうようなことが行われているんですね。だから、この辺のところも、その選手にとっての選手生活の将来、それから選手生活を離れての、人間としての将来にとってもこれは大きな問題です。だから、この辺も私は問題点として指摘をしておきたいと思います。
 それから、トレーナーの人たちの職域が日本の場合はっきりと確立されていない、こういう問題があるのです。トレーナーとしての専門職に基づく収入を得て、そして生計を立て、トレーナーとしての仕事に専念をしておるというような人は非常に少ないというふうに私は聞いておるのですが、文部省はその辺のところ、知っておりますか。
○戸村説明員 現在、トレーナーが約百五十人程度おいでになるということだけは承知しています。
○安藤委員 だけは承知だから、いま私が言いましたようなことは全く御存じないようですね。これはジムの会長が、オーナーが、ほとんどの場合そうらしいですが、さっきのミカドの場合でも、レストランとか何かやっておるわけです。あるいはトルコぶろをやっておるとか、そういう事業をやっておって、その会社の従業員というかっこうでトレーナーが雇われておる。夜の仕事を主にやっておって、昼間時間があるのでトレーナーの仕事をやるとか、こういうようなことで、社長の自宅のガードマンをやったり、あるいはレストランのホステスの食堂のコックをやったり、そういうようなことで、そこからその仕事の給料をもらって、そしてトレーナーをやっておる、こういう実態があるのですが、この点も文部省は全くお知りにならぬというのはどうかと思うのですけれども、欧米の場合は、これははっきりと独立して、トレーナーはトレーナーとして専門職としてちゃんと尊重され、そしてトレーナーとしてちゃんと収入があってやっておるわけです。だからその辺も、これは大きな問題だ。だから、トレーナーとしての技術が全く認められていないわけなんですね。だから、その辺のところも関心を持っておいていただきたいということを指摘しておきます。
 ほかにもまだ幾つかあるのですけれども、こういうのはいわゆるプロボクシング業界でいろいろ問題が出てくる、現在の金平問題が出てくる一つの基礎になっているんじゃないかという気がいたします。だから、本来ボクシングの試合といいますのは、選手が主人公なんですね、あくまでも。ところが日本の場合は、主人公たるべき選手が主人公ではなくて、プロモーターとかマネジャーとかあるいはオーナーとかが全部それを仕切って、そして選手というのはそこで踊らされている。これは語弊があるかもしれませんが、極端に言えばピエロみたいな役割りを果たしている場合もなきにしもあらずだろうというふうに思うのです。だから、そういうようなことがずっと続けられていくということになりますと、せっかく愛好者がたくさんいるわけですが、そういう人たちからもそっぽを向かれるということにもなりかねぬと思うのですね。私はそれは非常に残念だというふうに思います。
 これは先ほど最初にもお尋ねいたしましたけれども、プロボクシング業界の方で健全化対策特別委員会というのができて、自主的に先ほど文部省がおっしゃったような問題について検討をして改善をしていこうというふうにしておられるわけですから、私はその自主的な努力というものをこれから期待して見守っていきたいというふうに思っておるのですが、それに対して文部省の方は、全然知らぬ、適当にやってくれということではないと思うのですが、どういうような形でその改善の方策を、あるいは今後の処置を見守り、そして支援していこうとしておられるのか、それをお尋ねしたいと思います。
○戸村説明員 ただいまのところは、その健全化対策委員会の審議の経過を見てまいりたいというふうに考えておるわけですが、特に今後の健全化の問題としては、いま先生だんだんの御指摘ございましたような問題をそれぞれ委員会の方でも承知しておりますので、どういうような検討結果を出してまいりますか、そこら辺の点を見きわめた上で、必要があれば指導をしてまいりたい、こういう考え方でおるわけでございます。
○安藤委員 終わります。ありがとうございました。
○羽田野委員長 次回は、明後二十六日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十五分散会