第098回国会 予算委員会第四分科会 第2号
昭和五十八年三月五日(土曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主 査 上村千一郎君
      大村 襄治君    白川 勝彦君
      小林  進君    土井たか子君
      草野  威君    蓑輪 幸代君
      村上  弘君
   兼務 沢田  広君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 大野  明君
 出席政府委員
        労働大臣官房会
        計課長     高橋 伸治君
        労働省労政局長 関  英夫君
        労働省労働基準
        局長      松井 達郎君
        労働省婦人少年
        局長      赤松 良子君
        労働省職業安定
        局長      谷口 隆志君
        労働省職業訓練
        局長      北村 孝生君
 分科員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      小村  武君
        労働省労働基準
        局監督課長   野崎 和昭君
    ─────────────
分科員の異動
三月五日
 辞任         補欠選任
  小林  進君     土井たか子君
  草野  威君     長田 武士君
  瀬崎 博義君     榊  利夫君
同日
 辞任         補欠選任
  土井たか子君     小林  進君
  長田 武士君     沖本 泰幸君
  榊  利夫君     蓑輪 幸代君
同日
 辞任         補欠選任
  沖本 泰幸君     草野  威君
  蓑輪 幸代君     村上  弘君
同日
 辞任         補欠選任
  村上  弘君     中島 武敏君
同日
 辞任         補欠選任
  中島 武敏君     瀬崎 博義君
同日
 第七分科員沢田広君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
 昭和五十八年度一般会計予算
 昭和五十八年度特別会計予算
 昭和五十八年度政府関係機関予算
 (労働省所管)
     ────◇─────
○上村主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。
 昭和五十八年度一般会計予算、昭和五十八年度特別会計予算及び昭和五十八年度政府関係機関予算中労働省所管について政府から説明を聴取いたします。大野労働大臣。
○大野国務大臣 昭和五十八年度一般会計及び特別会計予算のうち労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。
 労働省の一般会計の歳出予算額は四千九百五十億九千四百万円で、これを前年度当初予算額五千十六億六千五百万円と比較いたしますと、六十五億七千百万円の減額となっております。
 次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。
 この会計は、労災勘定、雇用勘定、徴収勘定に区分されておりますので、勘定ごとに歳入歳出予算額を申し上げます。
 労災勘定は、歳入歳出予算額とも一兆五千七百六十一億九千九百万円で、これを前年度予算額一兆四千八百六十五億二百万円と比較いたしますと、八百九十六億九千七百万円の増加となっております。
 雇用勘定は、歳入歳出予算額とも一兆八千三百六十四億五千九百万円で、これを前年度予算額一兆七千二百五十二億三千七百万円と比較いたしますと、千百十二億二千二百万円の増加となっております。
 徴収勘定は、歳入歳出予算額とも二兆三千四百六十三億四千八百万円で、これを前年度予算額二兆二千四百六十三億五千五百万円と比較いたしますと、九百九十九億九千三百万円の増加となっております。
 最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定のうち当省所管分としては、炭鉱離職者の援護対策等に必要な経費として百八十四億四千九百万円を計上しておりますが、この額は、前年度予算額百八十七億三百万円と比較いたしますと、二億五千四百万円の減額となっております。
 昭和五十八年度の予算につきましては、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、財源の重点配分を行うことにより、最近の雇用失業情勢にも十分配慮しつつ、きめ細かく、かつ効率的な労働施策の実現を図ることといたしております。
 以下、主要な事項につきましては、その概要を御説明申し上げるべきではございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。
 何とぞ、本予算案の成立につきましては格別の御協力をお願いいたす次第でございます。
○上村主査 この際、お諮りいたします。
 労働省所管関係予算の重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上村主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ─────────────
  〔大野国務大臣の説明を省略した部分〕
 次に、その主要な内容について概略御説明申し上げます。
 第一は、雇用失業情勢に即応した雇用対策の推進に必要な経費であります。
 内外の厳しい経済諸情勢や産業構造の転換のもとで雇用失業情勢の先行きには楽観を許さないものがあり、各般の変化に的確に対応し、雇用の安定を図ることが重要な課題であります。とりわけ、構造的に縮小を余儀なくされる業種及びこうした業種が多数集積する地域においては、深刻な雇用問題の発生が懸念されております。
 このため、本年六月に有効期限の到来する特定不況業種離職者臨時措置法及び特定不況地域離職者臨時措置法を統合整備し、失業の予防を中心とした雇用の安定のための施策を充実強化し関係労働者の雇用の安定を図ることとしており、このための法律案を今国会に提出しております。
 また、素材産業等について雇用の見通し及び雇用の安定に関し政労使の意志の疎通を図るため、素材産業等業種別労使会議を設置することとしております。
 このほか、産業雇用情勢を早期的確に把握し、雇用調整助成金制度の機動的活用等により失業の予防を図るとともに、特定求職者雇用開発助成金の積極的な活用等により就職が特に困難な者の早期再就職の促進を図ることとし、また、失業情勢に即応して雇用保険事業の失業給付を行うこととしております。
 さらに、地方における雇用機会を増大し、雇用機会や所得の地域格差の解消を図るため、地域雇用開発推進事業の実施地域の拡大等必要な施策を実施してまいります。
 これらに必要な経費として、一兆二千九百八十四億七千七百万円を計上いたしております。
 第二は、高齢化社会の進展に対応する労働政策の総合的推進に必要な経費であります。
 高齢化社会の進展の中で経済社会の活力を維持発展させていくためには、高年齢者に対し安定した雇用の場や就業機会を確保することが重要であります。
 このため、六十歳定年の一般化を早期に実現するため、新たに創設する定年延長アドバイザーによるきめ細かい相談の実施、高年齢者職場改善資金融資枠の拡大等各種援助措置の充実を図り、これらを活用しつつ、定年延長指導を計画的に推進してまいります。また、今後増加が予想される六十歳台前半層については、高年齢者雇用確保助成金の活用等により、雇用延長の促進を図るほか、シルバー人材センターの拡充等この年齢層の希望、能力に応じた雇用就業機会の確保に積極的に取組んでまいります。
 また、中高齢船労働者の健康を保持増進するため、企業内指導者の養成及びこれによる実践指導を実施するとともに、最近における心の健康問題に対する関心の高まりに対処するため、身体と精神のバランスのとれた総合的健康づくりに関する調査研究等を実施してまいります。
 さらに、中高年齢者については、その職業能力の開発向上を図ることがきわめて重要であります。このため、生涯訓練の基本理念に立って、事業主等が行う中高年齢者等の教育訓練に対する生涯職業訓練促進給付金の活用や公共職業訓練施設における高年齢者向け訓練科の増設を図る等、中高年齢者の職業能力の開発向上の推進に努めてまいります。
 このほか、財形年金貯蓄制度の普及促進等による高年齢者の所得安定対策を推進してまいります。
 これらに必要な経費として、八百二十二億六千九百万円を計上いたしております。
 第三は、産業構造及び就業構造の変化等に対応する施策の総合的推進に必要な経費であります。
 近年、わが国産業界では、産業用ロボット等マイクロエレクトロニクスを利用した技術革新が急速に進展しつつあり、これに伴い雇用を初め労働問題全般に及ぼす影響が生じることが予想されるため、その及ぼす影響、問題点について総合的な調査研究を実施するとともに、マイクロエレクトロニクス機器の普及に対応した職業訓練の充実、産業用ロボット等による労働災害防止の研究の充実を図るための安全研究施設の充実等、マイクロエレクトロニクスを中心とした技術革新への対応を積極的に行うこととしております。
 また、雇用発展分野としての第三次産業の比重の高まりに対応し、第三次産業の多様性と労働問題、関連法制に関する総合的な分析検討を実施し今後の対策に資するとともに、特にパートタイマーの職業紹介体制の充実や雇用労務管理の改善に関する相談指導の充実等を図ることとしております。
 さらに、わが国の社会経済の著しい変化に対応して労働力需給の円滑な結合を図るため、雇用に関する情報提供等の雇用サービス機能を強化することとしております。
 これらに必要な経費として、二十億九百万円を計上いたしております。
 第四は、社会経済の動向に即応した総合的な能力開発の推進に必要な経費であります。
 産業構造の変化、産業技術の高度化等社会経済情勢の変化に伴い職業訓練の果たす役割はますます重要となってきております。特に、高齢化社会への移行の中で、勤労者が生涯を通じて職業能力の開発向上ができるよう訓練体制の整備を図る必要があります。
 このため、民間における能力開発を振興するため、第二で述べたように生涯職業訓練促進給付金の積極的な活用を図るほか、中小企業事業主等の行う認定訓練に対する助成の充実、地域職業訓練センターの増設等を行うこととしております。また、社会経済情勢の変化に即応した公共職業訓練を推進するため、総合高等職業訓練校の技能開発センター等への転換を推進するとともに、職業能力評価体制の整備と技能尊重気運の醸成を図ることといたしております。
 これらに必要な経費として、六百四十八億八千万円を計上いたしております。
 第五は、安全で衛生的な労働環境実現のための施策の推進に必要な経費であります。
 働く人々の生命と健康を守り快適な作業環境を形成することは、労働行政の最重要課題であることにかんがみ、特に五十八年度は第六次労働災害防止計画の初年度であり、目標達成に向けて万全を期することとし、このため機械等の安全確保、建設業における労働災害防止のための施策の充実を図るとともに、振動障害等の職業性疾病対策等を進め、減少に鈍化の見られる労働災害の動向等に対し積極的な対策を推進することとしております。
 不幸にして労働災害をこうむった方々に対しては、適正迅速な労災給付を行うとともに、労災被災者の社会復帰の促進を図ることとしております。
 これらに必要な経費として、九千百四十六億四百万円を計上いたしております。
 第六は、職業生活の向上と労働者福祉の増進に必要な経費であります。
 総合的に労働者の福祉の増進を図るため、週休二日制の普及等労働時間短縮については、従来に引き続きその推進に取り組んでまいります。
 また、勤労者の貯蓄や持ち家などの資産保有について促進を図るため、勤労者財産形成促進制度について、持ち家個人融資に係る利子補給の本格的な実施に伴うその活用促進など、勤労者財産形成のための諸制度の推進を図ることとしております。
 このほか、最低賃金制度の推進、未払い賃金立て替え払い事業の充実等労働条件に関する施策を推進するとともに、中小企業退職金共済制度の普及促進、勤労青少年福祉対策の推進、勤労者のための福祉施設の整備等を行うこととしております。
 これらに必要な経費として、二百五十三億二千九百万円を計上いたしております。
 第七は、心身障害者等の特別の配慮を必要とする人々の職業生活を援助する施策の推進に必要な経費であります。
 心身障害者等の特別の配慮を必要とする人々に対して、雇用機会を確保するための雇用対策を積極的に推進するほか、職業生活を援助するための施策の充実を図る必要があります。
 このため、心身障害者対策については、身体障害者雇用率達成指導を強化するほか、重点公共職業安定所の充実等による職業紹介体制の強化、心身障害者職業センターの機能の充実を図ることとし、特に就職の困難な重度障害者及び精神薄弱者については、地方公共団体の積極的参加のもとに、民間の活力を活かした第三セクター方式による雇用企業の育成を図るなど、雇用の改善を促進するための条件整備を図ることとしております。
 次に、障害者の職業的自立を図るためには、その職業能力の開発向上等が重要であります。このため、障害者の一般の職業訓練校への入校促進、入校者の障害の重度化に対応した身体障害者職業訓練校の整備及び職業訓練大学校に身体障害者に関する職業訓練指導員養成課程の発足を図るほか、身体障害者の社会復帰を促進するため、治療から社会復帰までの一貫した総合リハビリテーション施設の設置計画を推進するとともに、国立職業リハビリテーションセンター等の適正な運営に努めることとします。
 また、漁業離職者、駐留軍離職者については、関係臨時措置法の有効期限をそれぞれ延長し、再就職の援助促進を図ることとしており、このための法律案を今国会に提出しております。このほか、家内労働者、炭鉱離職者、沖縄失業者、同和関係住民、建設労働者、インドシナ難民等のための雇用対策についてもそれぞれ充実を図るほか、季節・出稼ぎ労働者についても、通年雇用奨励金制度の拡充等により季節労働者の通年雇用の促進に努めることとしております。
 さらに、失業対策事業につきましては、失業対策制度調査研究報告の趣旨に沿って、今後も事業の運営改善に努めてまいることとしております。
 これらに必要な経費として、千四百十一億二千六百万円を計上いたしております。
 第八は、雇用における男女の機会と待遇の平等促進と、そのための環境条件の整備に必要な経費であります。
 国連婦人の十年国内行動計画後期重点目標の達成のための啓発活動の強化等、雇用における男女の機会と待遇の平等促進とそのための環境条件の整備に努めてまいります。
 特に、婦人差別撤廃条約の批准に向けての条件整備を図るため、雇用における男女の機会と待遇の平等を確保するための法的整備について検討を進める一方、男女別定年制の解消に向けての行政指導を強化するとともに、女子雇用管理ハンドブックを作成する等企業の自主的な雇用管理改善を推進するために必要な施策を実施してまいります。
 また、育児休業制度の普及を促進するため、育児休業奨励金等の拡充を図るとともに、育児休業に関する法的整備について検討するほか、婦人に対する再就職援助対策の推進、勤労婦人の母性健康管理対策の推進等に努めることとしております。
 これらに必要な経費として、十一億九千三百万円を計上いたしております。
 第九は、労使の相互理解と信頼を強化するための環境づくりの推進に必要な経費であります。
 今後の社会経済の大きな変化に対応するためには、労使が広い視野から自主的に話し合うことによって、問題の合理的、平和的解決を図る必要があります。このため、今後とも産業労働懇話会等の場を通じ、政労使間の理解を一層深めることに努めるとともに、労使関係の実情に関する調査研究等を行い、これらの成果の普及を通じて、安定した労使関係の形成を促進することとしております。
 これらに必要な経費として、七億千二百万円を計上いたしております。
 第十は、国際社会における我が国の役割りにふさわしい労働外交の推進に必要な経費であります。
 開発途上国の経済社会開発に対する援助協力を進めるに当たっては、特に人材開発への積極的協力が望まれております。
 このため、民間企業の行う海外職業訓練を援助するための施設として海外職業訓練協力センターの設置の推進、国際技能開発計画の充実等民間の活力を生かした海外技術協力を推進するとともに、国際機関の行うアジア・太平洋地域技能開発計画への協力等、開発途上国労働者の労働能力の開発その他、多角的な技術協力の推進を図ることとしております。
 また、貿易摩擦等変動する国際労働問題への迅速な対応を図るほか、今後ともILO、OECD等の国際機関の諸活動に積極的に参加協力するとともに、労働関係者の国際交流の促進等の施策を通じて積極的な労働外交を展開してまいることとしております。
 これらに必要な経費として、五十億二千万円を計上いたしております。
 以上のほか、行政需要の変化に対応する行政体制の整備と充実及び一般行政事務費等に必要な経費を計上いたしております。
 以上、昭和五十八年度労働省所管一般会計及び特別会計の予算について概略御説明申し上げました。
 何とぞ、本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げます。
    ─────────────
○上村主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。
    ─────────────
○上村主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いをいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
○土井分科員 きょう私は、男女雇用平等の問題についてお尋ねをさせていただくことにいたします。
 大臣には、ずいぶん連日の御過労でお疲れのところ非常に御苦労さまに存じますが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
    〔主査退席、白川主査代理着席〕
 労働基準法の三条を見ますと、御承知のとおり性別による差別の禁止がここでは明記をされておりません。それではここに性別のこの禁止ということを織り込めばそれでよいかというと、それではただいまから問題にする雇用平等の問題にはなり得ないと思うのです。労働基準法というのは、採用後の差別について適用されるということになってまいりますから、採用の段階で女性に対して、雇うことは雇うけれども男性とは全く違う仕事ですよとか、昇進昇格はしませんよとか、それから賃金体系も全く別ですよとか、そういう条件を付して、それでもいいなら雇いましょうという形で雇われる場合であるとか、あるいはもっと初めから、女性であるがゆえに男性とは全く違って、こういう条件を満たしていない限りは問題になりませんというきめつけ方といいますか、決め方をされてしまうということになってまいりますと、これ自身は労基法の三条では対象たり得ないわけでありまして、何とかこういう問題についても考えていかなければならないという側面が当然のことながら出てまいります。
 婦人少年局長御承知のとおりに、局長自身も大変な御努力をなすった八〇年の婦人に対するあらゆる形態における差別撤廃条約を、日本が署名をいたしまして批准に向かって努力をしているという立場からいたしましても、いまこの問題は問いただされていることだと思いますが、町中ではよく男子のみ募集とか、正社員は男子のみとか、幹部職員は男子のみとか、女子はパートとかいうふうなことが、あたかも公然とまかり通っているような募集広告というのがまだまだ目につくわけであります。しかしこの雇用について、募集、採用のときから定年退職に至るあらゆる女性差別というものを禁止するということは、いままでも行政指導というふうな形態を通じ、行政措置としていろいろ御努力を願ってきたということが私は多々あるかと存じますが、やはり男女雇用平等法というものの存在が必要であるというふうに考えられているのは、いまやもう世界の趨勢と申し上げてもいいと思うのです。各国によってその呼び名は違っているかもしれませんが、採用段階からの差別を禁止するという法律がつくられて運用されていっているということが、これは世界の趨勢と申し上げていいと思うのです。
 ところで、七八年の十一月に、労働大臣の私的諮問機関である労働基準法研究会が、この平等法は必要だということを認められて、いままでのように裁判に任せるとか行政指導で賄うとかというふうなことではなくて、職場での男女平等ということを、採用の段階から差別を禁止する平等法を持つことによって具体的に考えていくことが必要だということを言われた点は、この点は私は至って当然のことであり、そうして、必要視されていることに対してやはりそれだけの認識を持ってこういう報告をされているというふうにその点は受けとめているわけですが、これは労働省としては現時点でどのようなお考えでこういう問題には接していらっしゃいますか。
○赤松政府委員 先生の御指摘のように、労働基準法三条で採用時の差別を救えないというのは全くそのとおりでございます。
 そして、差別撤廃条約がもっと広く差別の撤廃について指摘をしていることもおっしゃるとおりでございます。
 それから、私ども行政指導をいろいろと、特に解雇についてあるいは定年退職の基準等につきましては非常に強力に指導もいたしております。そういたしておりますが、なかなか法律的な根拠のないことでもございまして、十分にいかないということもまたそのとおりでございます。
 そこで、今後の方法といたしまして、先生の御指摘のような差別を禁止する法律、各国でいろいろと、いろいろな形でいろいろな名前ですでにできておりますので、そういうことも十分検討をいたしているところでございます。
 それにつきまして、労働基準法研究会の指摘その他、いろいろな研究の成果も踏まえまして、現在、このような問題全般につきまして婦人少年問題審議会で御検討をお願いしているところでございます。その成果を承りまして対処をいたしたい、このように考えているところでございます。
○土井分科員 いまの局長の御答弁からしますと、男女雇用平等法というものがつくられることが期待されるという趣旨の御答弁であるように私は承るわけでありますけれども、現実の問題はまだその法律がない段階であります。しかし、日本国憲法の十四条からいたしますと、性別によって差別されてはならない、それは経済的にも社会的にも政治的関係においても差別されてはならないということが明記されておりますから、したがって憲法の立場からいたしますと、雇用の段階で女性であるからといって差別されるような状況は許せない、こういうことになるかと思うのです。
 さらに、もう御案内のとおり局長も大変御努力をただいまも願っております婦人に対するあらゆる形態における差別撤廃条約、この批准に向けての行政サイドでの努力というものが非常に問われるという部面でもこの問題はございますから、したがいまして、企業内で雇用の段階で女性に対する差別が歴然として考えられているという場合には、行政指導なり行政措置なりそれなりの措置をおとりになるであろうと私は考えるわけでございますが、この点はどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
○赤松政府委員 先生が御指摘の憲法十四条があるということは全くそのとおりでございますが、同時に、憲法十四条が私人間の契約について直接に触れるということにつきましてはいろいろ解釈も分かれているようでございまして、直接憲法に性別による差別を禁止しているからといってすべての契約が無効になるということも必ずしも言えない、それが公序良俗に反するというようなことになりますと契約が無効ということになって、差別定年、結婚退職とかいうような場合に無効になるというようなのは、判例もほぼ確立してきているようでございます。
 その前に、労働省といたしましては、基準法には違反ということは言えないけれどもそういう差別は好ましくないということで、行政指導をしているわけでございます。
 それからもう一つの、条約の批准についての政府の取り組みについてでございますが、条約を批准するということにつきましては、先生御存じの、一九八〇年の日本政府の署名によってその意思表示をしたわけでございます。またその後、婦人問題企画推進本部の申し合わせによりまして、この批准ということを国内行動計画の後期重点目標の重点課題として取り組むという申し合わせもいたしたわけでございます。したがって、この申し合わせは、労働省は企画推進本部の重要なメンバーでございまして、当然その申し合わせを尊重して、批准のために必要な法的整備ということを考えていく必要があろうかと存じているわけでございます。
○土井分科員 法整備について精力的にお取り組みになっている段階で、具体的な事例で好ましくないものが出たときには、行政をお預かりになっていらっしゃる立場からすると、これは全く無関心ではおれない問題であろうと思われるのでありますが、どのように措置をお取り扱い願えるかということは、この問題を申し上げた後でひとつ承らせていただきたいと思います。
 すでに一部新聞紙上でも出ましたが、書店でございますから文化を売るということが仕事の内容になってまいります。文化の最先端と申し上げてもいいような仕事だと思うのですが、この名前を具体的に申し上げますと、紀伊国屋書店の中で、実はこれは内部で出されておりますマル秘の判こがついている資料がここにございます。一つは「女子社員採用にあたって留意すべきこと」というものでございます。あと一つは「パートタイマー採用面接に際しての注意事項」というものでございます。この二つに分かれております文書、私がこれを口頭で申し上げるに先立って、ひとつ現物をごらんいただいて、それをごらんになっていらっしゃる途次、私はそれをさらに御説明申し上げることが適当かと思われます。
 主査、ここでこの文書を大臣並びに局長に御提示したいと思いますが、よろしゅうございますか。
○白川主査代理 どうぞ、許します。
○土井分科員 これをごらんいただきまして、まず1のところをおあけいただきますと「女子社員採用にあたって留意すべきこと」「企業は人なり。そして採用は高価な買物である。良いもの、良く育つもの、適正に長もちするものを選び、粗悪品、欠陥品を掴まされてはならない。」と書いてあるのですが、(「全くひどいや」と呼ぶ者あり)粗悪品、欠陥品という表現からいたしますと、採用を希望して来られる方々について、どうも品物呼ばわりをすでにされているようなことでございますが、これは好ましいか好ましくないかという問題じゃもはやございませんで、こういうことが許されていいか悪いかの範疇に入る問題であろうかと私は思うのです。
 さらに「採用不可の女子」というのが(8)項目ここにございますが、「(1)ブス、絶対に避けること。(2)チビ、身長百四十センチ以下は全く不可。(3)カッペ、田舎っぺ。(4)メガネ、(5)バカ、(6)弁が立つ、新聞部に属していたものはよく観察すべし。(7)法律に興味をもつ、 前職・専攻課目・関心事に注意。(8)慢性の既往症、再発の怖れだけでなく、疲労し易いので不満を抱き易い。」こう書いてあるのです。
 これは(8)項目にわたるのですが、それはごらんいただいたらおわかりになるように、明らかに女性に対しての差別感というものが背後になければ、採用不可の女子の中にこういう(8)項目というのは考えられないだろうと思うのです。
 さらに「要注意の女子」という大きな項目で言うところの二は、全体がこれは(9)項目からなっておりまして、その中の(1)は「革新政党支持」と書いてあるのです。「その理由を質問し、その答え方の口調に注意」と書いてあるのですね。(2)は「政治・宗教団体に関係、頭のきりかえのきかないのが多い」と書いてあるのです。(3)は「本籍が日本国籍でないもの、特に家が飲食店の場合は不可」と書いてあるのですね。(4)は「職を二つ以上変っているもの、流れ者であり即戦力になるように思えても長つゞきしない」と書いてあるのです。(5)は「四年制大学中退者」、(6)は「家庭事情の複雑なもの」、(7)は「父が大学教授」これはだめだというのです。(「では、おれも資格がないな」と呼ぶ者あり)(8)は「尊敬する人物が情熱的芸術家の場合」これもだめだと言われるのですから、文化を売られる仕事からいたしますとどういうことに相なるかと思うのですが、「ゴッホ、林芙美子、石川啄木」というのが例として挙げてあるのです。(9)は「尊敬する人物が学校の先生の場合、 どういう点を尊敬するか質問すること」こう書いてあるのです。
 ここまでの段階でもうすでにはっきりおわかりいただけますように、言うまでもなく女性差別というのがあると同時に、憲法十四条ではさらに認めることのできない、憲法十九条からしても認めることのできない思想差別についての問題もやはり出てまいります。それからさらに、民族差別についての問題も出てまいります。
 こういうことが相重なりておりますけれども、基本的には、「採用不可の女子」というので、女性に対しての採用を問題にする場合に留意すべき事項として掲げられている中身でございますから、こういうことが歴然とマル秘文書として社内にあるということはいかがかと思うのです。こういうことが白昼堂々とまかり通っているということは黙って看適すべき問題ではございません。局長、これをどのようにお考えになりますか。
○赤松政府委員 このことにつきましては、当該会社の労働組合の方からのアピールもございまして、拝見させていただいております。
 現在こういうことが本当に基準になっているのかということにつきましては、先生おっしゃいましたように非常に関心を持つわけでございますので、会社の方に実情を聴取したわけでございます。ところが会社の方では、そういうことは現在は絶対に行われてないというふうなお答えでございました。そういうことでございますので、いまないものをどうするかということは、やめろと言ってもないというわけでございますから、ここの文言自体についてどう思うかということでございますならば、これ自体につきましては全くあきれ返るほかはないという感想でございます。
○土井分科員 それはあきれ返ってばかりもおられないわけでありまして、あきれた結果、一体それに対して――これは、これによって採用するかどうかという問題はさらにございますよ。そして、現在はそれはしていないと会社側はそれはおっしゃるでしょう。しかし、こういう文書が厳然としてあったという事実は否めない事実なんですね。それに対してはどういうふうな対応をなさるのですか。
○赤松政府委員 とにかく現在ないと言っておりますので、やめろということを言っても意味がないことでございます。前にあったということになりますと、これは感想ということになってしまいまして、感想を申し上げるならば……(「感想だけじゃだめだ、何をするのか」と呼ぶ者あり)本当に全くあきれるほかはないということでございますが、いまから何をするかということになりますと、先ほど申し上げましたように、現在ないものについてはこれをやめろと言っても意味がないわけでございますので、これからはそういうことはないようにということを言うということはできるかと思います。
○土井分科員 これは大臣、大事な問題でございまして、そろそろお疲れですけれども大臣に一言お聞かせをいただかなければならないなと思うのです。
 先ほど局長がおっしゃったとおりに、雇用平等法という法律がまだございません。どんなものがつくられるかもわかりません。しかし、現実における差別取り扱いが歴然としてある場合には、行政措置なり行政指導なりをなさるということは当然であるということも、先ほど来の質問に対する御答弁で出ております。
 この問題については、ただあきれ返るというふうなことも先ほどおっしゃいましたし、感想としてはこういうことだという御感想も聞かしていただきましたが、現実にこれはマル秘文書として紀伊国屋書店の方の会社側は持っているのです。これによって採用しているかしていないかということは別の問題でございますよ。しかし、こういうものを持っているということに対しての何らかの行政措置なり処分なりというものがあろうかと私は思うのです。今後はということで、言おうとしたら言えなくはないという非常に歯切れの悪い局長の御答弁ですが、これはそんなものじゃないだろうと思うのですが、大臣、いかがでございますか。
○大野国務大臣 ただいま土井先生のお尋ねでございますが、いずれにしてもまことに前近代的な文書であって、局長のあきれ果てたという感想もむべなるかなという感じがいたします。
 現在これが使われておらぬということもあるようでございますから、現時点の問題としては、これから先どうするということについては私も申し上げようがないのですが、ただ先生おっしゃるように、こういうものを現実にいまもマル秘文書として持っておるということ、こういうことについてもっと強い行政処分をしてもいいじゃないかということのように思うのです。しかし、現実にそういうことがないものをそういうわけにはいかないし、これからより一層啓蒙することと同時に、先生のおっしゃられんとすることは、きっと男女雇用の機会均等であるとか待遇の問題とかという問題に発展していくんだろうと思います。それは国際婦人年を契機として、先ほども局長が署名した話も出ておりましたが、先週の土曜日に10チャンネルで「あまから問答」というのがございまして、私がテレビに出たわけです。そこでも申し上げてきましたけれども、日本においてもそういうような時代が来たから、これをやっていくようにしたいというような話もしてございます。そういう中での一環としてこの問題を取り上げられた。しかし、現実に使われておらぬのですから、その点はひとつ御理解賜って、こちらももう一度調査をし直すなりして、こういうことが再び起こらないようにさせたい、こう思っております。
○土井分科員 最後に言われましたように、再びこういうことが起こらないようにしていくためには、こういう問題に相当強く注目をし、喚起を促し、そして事実問題がある場合にはそれを具体的に指摘して、労働省から、こういうことはまかりならぬということを厳しくおっしゃっていただく行政措置が必要なのです。それなくして、今後のことに対して期待したいとかなんとかということではこれを期すことはできないだろうと思うのです。何か昼間のあんどんみたいなことを答弁でおっしゃっていて事足るとは私は全く思いません。この文書を見れば見るほど、あきれ返るのを通り越しまして、よくもこういうことをあたりまえの顔をして書けたものだと言いたくなるような中身でございます。したがいまして、そういうことからいたしますと、今後の問題に対しては、こういうやり方はまかりならぬ、こういうことは認めるわけには絶対ならぬということを強力に行政指導としてしていただく必要があるように思いますが、大臣、その点はやっていただけますね。
○大野国務大臣 この件につきましては、問題提起としてたまたま紀伊関屋書店のことでおっしゃられたわけですが、こういうようなものがほかにあるかどうかも調査した上で、そういう事例がどの程度あるかもわかりませんけれども、厳重にこれからはこういうことはさせないようにしていく努力をしたいと思っております。
○土井分科員 ほかの事例があるかどうかというお調べは大事だろうと思いますが、具体的にこれはもう出ておるわけでございますから、避けて通るわけにはいかない問題にすでになっております。したがいまして、これは労働大臣が、この責任者に対して具体的に、こういうことがあってはならぬということを、行政責任者の立場としてはっきり示しをつけていただくことが、いま問われている問題にすでになっていると思われますが、大臣、やっていただけますね。
○赤松政府委員 御指摘の点は、こういうことが起こらないようにますます啓発指導に努めてまいりたいと思います。
○土井分科員 それも、それでは私がいま申しましたことに対しての具体的なお答えになってないのです。大臣、どうぞお願いします。
○大野国務大臣 先ほど私がこれをも含めてほかにもあるかもしれぬと申し上げましたけれども、これは具体的に出ておるじゃないか、――ですから、紀伊国屋書店の責任者なり何なり呼んで、私から一度話をするということにいたします。
○土井分科員 さて、こういうことが従来ずっとあった会社でございますから、そういう会社の中で、こういうマル秘文書が実は採用時の問題としてあったということを摘発をして、こういうことは許せないということを社会に対しても問い、みずからの問題としても運動を続けられている労働組合の数少ない方があるんですが、こういう運動をやっていることがさらにけしからぬということにもなりかねないのです、こういう会社の姿勢からいたしますと。したがいまして、こういうことを理由にして処分をするとか不利な取り扱いをするとかいうふうなことも出てこないとは限らない。そういうことが断じてあってはならないと私は思うのですが、そういうことに対しても会社側にひとつくぎを刺しておいていただくということもこの節必要かと思われますが、それもよろしゅうございますね。
○赤松政府委員 労働条件等につきまして内部で問題がある場合に、それを官庁に言うあるいは公表するということを理由にして不利益な取り扱いが起こることのないようにいたしたいと思います。
○土井分科員 局長、それは一般論のようなお答えの仕方でございますけれども、私が申し上げたことは、具体的な例についてただいま申し上げているのです。一般論は言うまでもありませんよ。しかし、きょうは具体的なことを私は提示しているわけでございますから、こういうことが国会で取り上げられて問題にされたということになりますと、会社側も態度を硬化されたり、さらに、そういう会社側のいろいろな今後の取り扱いの中で、関係の労働組合員の方々に対して不利益な取り扱いとか不当な処遇をなさるという場合がなきにしもあらずでございます。そのことを私はきょうはここで申し上げているということを御理解いただいて、具体的にお答えをいただきたいと思うのですが、局長、よろしゅうございますか。
○赤松政府委員 そのようなことが起こらないように十分注意いたしたいと思います。
○土井分科員 大臣、きょうこういう質問をさせていただきました。これはやはり、男女雇用平等法というものをお考えになる節にも、何か女性には雇用の機会を保障するだけでそれでよいという単なる認識ではなかなか十分にはならないということも、こういう事例に当たれば当たるほど私は思うわけであります。長い長い歴史の中でつくられてまいりました女性差別というのは、一挙にしてこれはなくなりませんが、しかし必ず努力の積み重ねによってそのことも改革をしていかなければならない。そうなりますと、男女雇用平等ということの物の考え方としては、やはり女性に対して一定の枠を設けて必ず採用するということを大前提に置いて考える姿勢で取り組まないと、雇用の機会というものを平等に認めているからどうぞがんばってやってくださいというだけの話では、不十分のまま終わってしまうというきらいがございます。こういうことについて最後に御所信をひとつお聞かせいただいて、私はきょうの質問を終えたいと思います。
○大野国務大臣 いまの御指摘の点につきましては、女子労働者というものがどの程度が適切かというようなパーセンテージについては、直ちにというわけにはまいりませんけれども、いずれにしても雇用の条件であるとか待遇であるとか、いろいろなことについて男女がスタートラインを一緒にするというような考え方は私はもっともだと思っておりまするし、ただその後について、枠の問題もさることながら、その後いろいろなことで、それはその人その人の能力もあることでということも考えたりいろいろなことを思うと、ここで、枠の問題も幾らがいいとか、あるいはまた女子の方々の能力がいまあるとかないとかということじゃなく、もう本当にすべてが平等であるという物の原点に立って、ひとつ将来法制化なり何なりするときに考えていこう、こういうふうに思っております。
○土井分科員 何かよくわかったようなわからないような御答弁になりましたが、時間が参りましたので、ひとつ改めてまたやるということで、終わります。
○白川主査代理 これにて土井たか子君の質疑は終了いたしました。
 次に、沢田広君。
○沢田分科員 おはようございます。大臣、大分ぐあいが悪いようですから大事にしてください。これから大いにやらなくちゃならないわけでありますから。
 最初に、われわれも大蔵委員会で週休二日制を、もう何年越しになりますか、七、八年経過をするような間に、どうやら実現のめどがつきかけてきたわけであります。これは実際にそうなるだろうと思いますが、七月なり八月なりに週休二日制のまず第一歩が進められる。これは、貿易摩擦などを背景として日本の働き過ぎということが大変世界からも、ECその他からも特に問われてきて、働きバチだなどと言われてきた経緯もあるわけです。労働省はその担当にあるわけですから、何もこれは銀行法の改正だけにとどまらず、他の一般の企業も二日制へ進めていく、そういう指導をしなければならぬ義務を背負りているものだと思うのであります。でありますから、せめて二千時間を割る、当面は千九百五十時間ぐらいにとにかく落とすというような目標がどうしても必要になってくるのではないかと思うのでありますが、第一は週休二日制に対する指導、特に中小企業の抵抗が非常に強いわけでありますから、そういう意味においての徹底の仕方及びどうやったらこれから千九百時間、千八百時間を確保するようにできるかどうか、そういうような方向についてお答えをいただきたいと思います。
○松井(達)政府委員 お答えいたします。
 先生おっしゃいましたとおり、金融機関の週休二日制につきましては、いろいろな関係の方々の御努力により、また衆議院の大蔵委員会の先生方の御努力によりまして、先月の末に八月から実施に移すということが決まったわけでございまして、私どもとしましても非常に喜んでおるところでございます。
 ところで、先生御質問の労働時間全体の問題でございます。これは労働省といたしましては、五十五年の十二月に週休二日制等労働時間対策推進計画というものをつくりまして労働時間短縮のための行政指導を進めるということで、その中身といたしましては、週休二日制の問題あるいは長過ぎる残業時間の規制の問題あるいは有給休暇を完全にとるというような問題、こういうようなことを目標に掲げましてやってきておるわけでございます。
 このような週休二日の問題とかあるいは年休完全消化問題とか、こういうような点は、実は先生御存じだと思いますが、新経済社会七カ年計画におきましても実はそのとおりうたわれておったわけでございます。ところがこの経済計画では、御存じのとおり成長率を五・五%ぐらいに見ておったわけでございますけれども、現在三%台の成長ということで非常に苦しい状況でございまして、こういうような状況とかあるいは昨今の厳しい経済情勢というものを反映いたしまして、実は労働時間そのものの短縮の状況というのは必ずしも順調にいってないということでございます。五十五年、計画策定当時の労働者一人当たりの平均実労働時間を見ますと二千百八時間でございますが、五十七年、去年は二千九十六時間でございまして、十二時間減った程度というような状況でございます。
 こういうような客観情勢でございますけれども、私どもとしましては、先ほど申し上げました週休二日制の推進とかあるいは長過ぎる残業時間の規制の問題とか、こういうものにつきましては着実にやってまいりたいというふうに思っているところでございます。
○沢田分科員 まず銀行が週休二日制で、CDもとにかくやめるということですが、これもなかなか抵抗が多いわけであります。まだこれは普及されてないから不均衡が起きてはいかぬということで、自動支払機も一応とめるという状況でスタートするわけでありますから、若干これには抵抗が出てくるだろうということが予想されるわけであります。特に中小企業その他の人たちから出てくるおそれがある。これは通産省なりあるいはその他の省が、商工会議所なりがそれぞれ努力してもらわなければならぬのでありますが、これがもし破られますと週休二日制はさらにまた後退をしてしまう、こういうことになるわけなんで、何とかその辺は中小企業も含めて週休二日制にする。これは標語としてはよくないのですが、横断歩道も大ぜいで渡ればこわくはないという言葉もあるくらいでありまして、やはり一斉にやれば不可能ではないが、おれのところだけ休むのではどうも負けるのではないか、してやられるのではないか、こういう中小企業の本来持つ危惧感というものをぬぐい切れないでいるわけです。だから、何とかそれを銀行法と合わせながらともかく一歩進めていく、一斉に休むということにする。極端に言えば、われわれの聞いている範囲内では、大手の週休二日制があるとその前の日はこの二日間でやれ、そして次の日には納品をしろ、仕事がスムーズにいくようにしろと言われる。大手が二日制になったために、下請は、何もその日だけが深夜残業じゃないけれども、十時、十一時の残業で月曜日は納品をする、こういうシステムに置かれているのが現状だと思うのです。それは御承知だと思います。そういう過酷なといいますか、その間にとにかく仕上げさせてそして納品をさせるという、そういう企業形態の組織に労働省がメスを入れる。そうでないと外されてしまうんですから。下請業者は外されたのでは困ってしまいますから、何とかその日に残業して仕上げるわけです。これを解決しなければ、下請なり中小企業ではこれはなかなか実行できないだろうと思うのです。これは通産なりその他にも言いにくいことを言って、何とかその辺はきちんと線をそろえるということが必要ではないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
○松井(達)政府委員 確かに中小企業における週休二日制の普及はおくれております。これを数字で見てみますと、週休二日制を採用しております企業は、三十人以上の規模で見てみますと大体二つの会社に一つ、それから労働者の割合でいきますと大体四人に三人が適用されておるわけでございます。ところがこれを規模別に見てみますと、千人以上の規模では九二%という普及率ですが、三十人から九十九人の規模では四〇%ということで、週休二日制格差とでも称すべきものが存在しておるわけでございます。
 それで、この状況につきましては、あるいはその原因につきましては、先生も御指摘のように中小企業の経営が非常にむずかしい、しかも現在の厳しい情勢のもとで新たに進めることができないというようなことが客観的にもあるのではなかろうかと思います。そしてまた、週休二日制をどうしたら採用できるか、採用できないのはどういうわけかと私ども中小企業の調査で聞いてみますと、同業他社がやっていないとかあるいは取引先がやっていないとかあるいは金融機関がやっていないとか、こういうような理由を挙げているところもあるわけでございます。一方、経済的な点を見てみますと、現在は経済情勢が悪いので生産性を上げることができないというような理由を挙げているところもあります。逆に申しますと、意欲はかなりあるのではなかろうかと思います。そういう意味で、一つは経済情勢が好転すればこの点についても明るくなってくるのではないかと思いますし、また同業の関係がやることになればやるというふうな点も出てきます。したがって、今回金融機関がやるということになりますれば、金融機関がやってないのでという理由の一つは解消することになるわけでございますから、そういう意味ではきっかけになるのではなかろうかと思います。
 それで、先ほど先生がCD、現金自動取扱機の問題をお出しになりました。結局これは、全金融機関が一斉にやるために、CDを持っていない小さな金融機関と格差がついては困るからとめましょうということになってきたわけでございますが、私どもとしましては、こういうCDあるいはATMの普及ということにつきましてひとつ大いに努力してもらいたい、また利用という点についても大いに考えてもらいたいと思っているわけでございます。
 さらに、先生御指摘の中小企業の格差についてどうするかということでございますが、ほかの役所の分野もございますけれども、先ほどの実施できない理由を見ますと、同業がやってないからというような理由もございますので、たとえば工場団地とか同業組合というようなものをベースに週休二日制のメリットについて御説明し、できれば一遍にと言わずに段階的にやってもらいたいということで私ども現在指導をしているところでございます。
 現今の情勢なかなかむずかしいわけでございますけれども、私どもとしましても着実にやっていきたいというふうに思っております。
○沢田分科員 大臣には恐縮ですが、これはほかの方で結構ですけれども、いまの景気の回復を民力の活用に頼るという中曽根内閣の方針ですが、中小企業を抑えれば抑えるほど景気の回復はかえって後退してしまう。だから思い切って中小企業を含めて週休二日制にして労働時間を短縮する。余暇利用の実態調査その他を見ますと、寝転んでいるというのも相当あることは事実でありますが、やはり一般消費に転化するものもなくはないのでありますから、労働時間を全体的に減らしながらその余暇をどうやって有意義に利用していくか、それが言うならば購買力の増大をもたらすということにもなって、働きバチであり貯金ばかりしている日本、ウサギ小屋と言われている状況から脱するのには、景気の回復はまず週休二日制からだと私は思っているくらいなんです。なければないなりの遊び方といいますか、物を考えるわけなんですから、あり余る金がある人は何もそんな週休二日制でなくてもいいのですから、そういうところに一般消費の向上も期せられるのではないか。これは労働大臣の方がこの景気回復のキーポイントを握っているのだろうと私は思っているくらいです。これは当面政府では金がかからないのですから。財政再建に金がかからない。とりあえず一斉に週休二日制を進めれば自然に景気がよくなるし、税金も入ってくる、こういうことになるわけなんですから、その辺は労働省はひとつ思い切って週休二日制を、ILOじゃありませんけれども、これはもう国際的な義務なんだということを徹底をして全体的に実行してもらう。それには基準監督署も経営者寄りに寄らないでもっともっと労働者側に寄って、あなたのところは二日制にしなければいかぬよと、先ほど秘密文書を言われたけれども、どうせ秘密文書を出すのならあなたのところは二日制にしなければ困るのじゃないですかというふうに、そういうものをきちんと出すぐらいな気構えになってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
○松井(達)政府委員 確かに週休二日制になってまいりますと、趣味を生かすとかスポーツをやるというようなことが出てきますれば、そういうことで、レジャー産業という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、そういうようなサービス産業を中心にしました業種の拡大ということも、マクロ的には十分考え得ることではなかろうかと思います。ただ、労働時間短縮を各個別の企業で考えてみます場合に、労働時間短縮をやりまして、そして今度はさらにその分の雇用をふやしていくというようなことを考えてみますと、やはり賃金がそのままということでは、新しく雇用をふやす分は新規にコストがかかるわけでございますから、各企業にとってはこれはなかなか大変なことだと思うわけでございますので、ミクロベースで考えてみますとなかなかむずかしい面もあるのではなかろうかと思います。
 ただ、私どもとしましては、ミクロベースでの指導ということは、行政指導で先ほど申しましたような着実な方法でやらざるを得ないと思いますが、将来の意義というふうに考えてみますと、いま先生の御指摘の点とかあるいはワークシェアリングということも言われておりますけれども、雇用の維持確保を図るということも重要でございますので、そういう観点から意義づけて、そして労使の方にも考えていただく、あるいは国民一般の意識もそういうふうに持っていっていただくということも必要ではなかろうかと思います。
○沢田分科員 話は横道にそれるかもしれませんが、いまのこの状況で財政再建を進めていけばいくほど、下請企業みたいなところは低賃金に低賃金にと追い込まれていきますね。大手は大手なりに、官庁も金額を減らすのに、なるべく自分のところは減らさないで下請に出している分野を減らしていこうという形をとる。一時、大手は中小企業に一割ダウンをさせてそれによって年末手当を全部賄うというシステムをとった時代がありましたね。いわゆる下請価格を一割下げまして、その分で年末手当を大手の企業はそのままもらえるような形をとった。いまがまたそれに近づいてきているわけですよ。やはり官庁もそうなんだ。官庁も財政再建で予算が減らされた分を下請企業に押しつけていっている。いまビルメンとかなんかをやっているところの下請金額、一人当たりの人件費がどの程度に入札されているか、おわかりになりますか。大体勘でいいから言ってみてください、どの程度に当たるか。
○松井(達)政府委員 恐縮でございますが、残念ながら存じておりません。
○沢田分科員 見当もつかないですか。では、一般の公務員の年間の人件費の総額は大体どの程度と考えていますか。自分のことだから、まずそこから聞いていこう。
○松井(達)政府委員 見当で非常に恐縮でございますが、まず四百万前後ではなかろうかと思っております。
○沢田分科員 とんでもない、五百十万なんです。それは全然違う。一人当たりというものは、年金も退職金もみんな入ってくるわけですから。ところが、下請に落とせば退職金も要らなくなるし、年金の支払い義務も要らなくなる。労災分もなくなる。その分だけでも大変助かるから、下請が自治体を初めどんどん進んでいるわけです。それでいま年間二百二十万ですよ、一人当たりの請負金額の単価というものは。一般の公務員の半額に落とされてくる。これから財政再建が進めばさらにこれは厳しくなる。それでも仕事をとらなければやっていけなくなるという状況がいまの現状なんです。その辺も、労働省としては認識不足というか、そういう実態をもう少しつかんでおいてほしい。
 そこで、それにはどうしても抑えていかなくてはならないものがある。歯どめをきかせなければならぬものがある。それが最低賃金なんですよ。だから、最低賃金を現状に合わせながらダンピング、ダンピングをしていくということに対する歯どめはある程度きかせませんと、格差ばかり広がっていって、中央の痛さを下へ下へと持っていく傾向ができて、将来は爆発してしまう、こういうかっこうが起きてくるわけです。その点は改めて認識を深めたと思うので、ひとつ是正をしてもらうように特に要請をしておきたいと思うのですが、いかがですか。
○松井(達)政府委員 先生の御指摘の最低賃金の問題につきましては、これは私ども聞いていますと、最低賃金が上がると下請の企業では実際になかなかむずかしい面も出てくるぞというようなことでございますので、問題は、そういう厳しさが最低賃金の決定をめぐっても出てきておるのではないかと思います。
 実際に、昨年の中央最低賃金審議会におきましても、五十七年の最低賃金額の決定に当たりましてはほとんど徹夜みたいな状況で議論がございましたし、さらに地方の最低賃金審議会へ参りますと、何日も何日もかかる、ところによっては二月もかかるというようなところも出てきておりまして、非常にいま厳しい状況ではなかろうかと思いますが、私はやはり、最低賃金の決定に当たりましては、関係の委員さん方がこの点も踏まえられながら大いに努力をされまして決められたということで、関係の皆さん方にもこの辺の事態の認識の浸透というのは十分行き渡っているのではなかろうかと存じます。
○沢田分科員 この問題だけで終わってしまいそうなのであとの問題にかかれませんけれども、労働省がその程度の認識ではちょっと心もとない。だから、いま言ったようにこれから財政再建を迎えれば迎えるほどその傾向が強まる。けさも若干パートの問題が出て、基準監督局長はテレビか何かに出てにこにこ笑いながら言っていたじゃないの。そこでパートの問題を言っていた。このパートもそのとおりなんです。パートの地位というものは企業主から見れば一番ごまかしやすい。税務署の調べに遭っても一番ごまかしやすい。追跡がきかない。適当に交代していっていれば絶対これはつかまらない。十日間来たものを二十日間来たといって出しても、年じゅうかわってしまうので税務署の調査も絶対本人追跡がない。しかも、九時出勤の四時帰りとか三時帰りでやっていくのですから。これはもう退職金もなければ保険もない。せめて保険ぐらいはパートであっても掛けさせる義務を与える必要があるのじゃないのかという気がするのですが、この点はいかがですか。そうすると把握が楽になるんですよね、厚生年金なり健康保険なりに加入をすれば。特に病院に勤めている人なんかについて、これは健康保険に入れてないのですよ。自分のところでただでやるからという気持ちでいるのかどうかわからぬけれども、案外入れてない。それも医師優遇税制との関係があるからなんですが、余り保険に入れてない。国民健康保険に入れさしている。そういうところの調査はやられていますか。
○谷口政府委員 保険の関係で、厚生省の社会保険については私どもちょっと存じておりませんけれども、私どもの方の雇用保険につきましては、パートタイマーという形でそういう名前で雇用されている者につきましても、通常の労働者と同様な就労実態のある方々につきましては、一定の基準を設けておりますけれども被保険者として取り扱うことにしております。
 と申しますのは、基準と申しますのは、その人の労働時間とか賃金その他の労働条件が就業規則等において明確に定められておることとか、一週の労働時間がその事業所において同種の業務に従事している通常の労働者の労働時間のおおむね四分の三以上である、それからまた反復継続して就労している、そういうふうに実態として通常の労働者に準ずるような方々につきましては、雇用保険の適用はいたしておるところでございます。
○沢田分科員 時間が来ましたからひとつ省略しまして、皆さんが一月一日から三日まで、十二月二十九日から三十一日まで休んでいる、これは何によって休んでいると思っていられますか。――まあ、いい。専門でないからという口実をつけておきましょう。これは明治六年一月七日の太政官布告第二号なんです。「自今休暇左ノ通被定候事」、こういうふうに決められている。それから「官員父母ノ祭日ニ休暇ヲ賜フノ件」、これも明治六年九月十四日太政官達第三一八号、こういうことで祭日が設けられている。これは労働省が直接法案を取り扱うわけじゃないけれども、いまだに太政官布告で休暇をとっているというのは、これは労働省も、この休暇を正当化するなら正当化するようにやはり他の諸官庁とあわせて、これをそろえる、そしてそのことがもし全国民的な休日にすればこれもまた一歩前進をすることになる。いまや公務員だけの太政官達でありますから、そのことをいま法制化すればこれは全国的な一つの問題に普及する。そのことが千八百時間へ近づけていくワンテンポにもなっていくというように思いますから、この点はひとつ他官庁にそれぞれ働きかけて実現をするように――いまさら太政官達で休んでいるといったら皆さんも恥ずかしいでしょう。そういうことも考えて、労働省がまず率先してそれの実現を図る、実現を図るというのは、これを法制化するということに努力をすることを求めたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
○松井(達)政府委員 年末年始の休暇につきましては、御存じのとおり、私ども民間の方を所管しておりますので、直接所管ではないわけでございますけれども、いまのお話の件につきましては担当省庁ともまたよく話してみたいと存じます。
○沢田分科員 もう時間があと二、三分でありますから、これで終わります。もっと詰めたいのですけれども、がんにあれぐらい熱を入れたのだったら、きのうも厚生省にちょっと言ったのだが、こういうものにももっと国民的な立場で入れなければ、がんだけを何か鉄砲のように言っていたんじゃ――これは日本語と英語で両方とも同じく「ガン」というようにつづるから、一生懸命がんと言っているのだろうと私は思いますけれども、やはり休暇の方にあれぐらい力を入れてもらうことが必要なんだと思いますから、労働省も腹を据えてかかってもらうことを強く要望して、終わりたいと思います。
○白川主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。
 次に、蓑輪幸代君。
○蓑輪分科員 私はきょう大臣に、いろいろ地元の繊維産業に絡むいろいろな問題がございますので、何点かお伺いしたいと思っております。
 御存じのとおり、昨年度の平均完全失業数が総理府の調査によりますと百三十六万人にも上っており、戦後最悪の事態となっております。失業あるいは雇用問題というのはとても深刻な事態でございまして、岐阜における地場産業、主な産業である繊維関係業種についても、消費不況によって大きな打撃を受けているところでございます。そこで、繊維関係労働者の離職や失業の防止といった観点からお伺いをしたいと思います。
 大臣もよく御承知のように、労働者の人生にとって失業ほど不幸なことはないと思います。そこで、何としてもこの失業を防止するということが労働行政の重要な課題になってくると思いますけれども、現在雇用保険法に基づいて失業防止のための雇用調整助成金等が支給されてきております。不況の深刻化の中で実態をいろいろ考えてみますと、少し改善していただく点があるのではないかと思っておるわけです。現行では三百人以上の大企業には二分の一の助成、それから三百人未満の中小企業には三分の二の助成というふうになっておりますけれども、三百人未満というのが一つの枠にくくって一律な扱いになっておるということにいろいろ問題があるように思います。
 岐阜県の実態で見てみますと、ファッション産業、アパレル産業にかかわる衣服等繊維製品製造業というところで見ますと、従業者が三十人未満というところが事業所数で五十五年度四千四百二十九カ所、三十人以上は百二十五カ所というふうに圧倒的に三十人未満の事業所が多いわけです。中でも従業者九人以下という事業所が三千九百五十五と全体の八七%を占めるといった零細業者が多いところでございます。
 ここの中で、さらにそこから外注先とか内職とか関連産業に携っている人々は十万人から十二万人もいるというふうにも言われているわけで、私どもの地元のいろいろな生活相談の中でも、零細業者の方からの切実なものが相次いでいるわけでございます。
    〔白川主査代理退席、主査着席〕
資金繰りがつかないために子供たちの学校、たとえば高校を中退させてしまったとか、やりくりがつかずにサラ金に手を出して離婚に至るとかあるいは一家離散に至るとか、そういう深刻な事態も生まれております。家屋敷を押さえられて蒸発してしまったというようなことも聞いております。こんな深刻な状況から見てみますと、三百人未満は一律三分の二の助成というふうではちょっと実情にそぐわないのではないか。資金力の乏しい零細企業では三分の一の自己負担というのも非常に困難という実情から見て、三十人未満の零細企業については助成率を五分の四程度ぐらいまでに引き上げていただく措置が必要ではなかろうかと思っておるわけです。そこで、こうした地元の実情を大変よく御存じの大臣のことでございますので、この際、実態にそぐわない現状を改めて、ぜひ前向きな検討をお願いしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○谷口政府委員 雇用調整助成金の御指摘でございますが、御案内のとおり雇用調整助成金は、経済的な理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が休業とか教育訓練というような適切な雇用調整を行うことによって余剰労働者の解雇を回避して雇用の維持のために努力を行われる、そういう場合に助成しようとする仕組みでございます。
 そういう仕組みでございますから、企業に雇用されている労働者の賃金に対する助成であります以上、事業主としても第一次的な責任もありますので、やはりその賃金については相当な負担をしていただかなければならぬということがあろうかと思うわけでございます。
 そういう前提に立って考えました場合、この雇用調整助成金につきましては、いま御指摘のありましたように、中小企業については負担能力が弱いということで三分の二の助成を行うことにしておるわけでございますが、この三分の二の助成自体が他のいろいろな助成金あるいは労働省で行っております雇用関係の各種給付金の中でもかなり高い助成率でございます。三百人未満の中小企業にもいろいろあるということでございますけれども、この率自体が先ほど言いましたような非常に高い助成率でもございますし、この決めることについても私どもの方の中央職業安定審議会でも議論をいたして決めたことでもございまして、現状でこの助成率をさらに引き上げるというようなことは、はなはだむずかしいというふうに考えておるわけでございます。
○蓑輪分科員 しかし、私がいま申し上げましたように、三百人という規模のところと三十人というところではかなり実態の違いというものもございますので、そういうものを具体的な事例に合わせて、それにふさわしい措置をとっていくという方向をどうしてもとっていただかないと、これはいかにも冷たい労働行政になってしまうのではないか。せっかく三分の二という大幅な助成をしていただいておりますけれども、検討の余地というのは全くないものなのだろうか。いかにもそれでは納得できないと私は思うのですけれども、そういう方向での検討の余地すらもないということでございましょうか。
○谷口政府委員 先ほども申し上げましたように、これらの雇用関係の各種給付金の助成の率を含めまして、いろいろな仕組みなり基準等につきましては、公益、労使三者構成の職業安定審議会におきまして御審議をいただいて決めているところでございますが、すでに、この助成率につきましてもそういう指摘も一部ございまして、いろいろ検討をいたしました結果こういう形で決めて施行いたしておるわけでございまして、現状ではこれを改めるというようなことは非常にむずかしいことだろうと存じます。
○蓑輪分科員 いま局長さん大変冷たい答弁をいただきましたけれども、私は、せっかくここに大臣がいらっしゃいますので、大臣にこの際重ねてお願いをしておきたいと思うのです。
 実情は十分御承知のことと思いますし、いま大変困難だという御答弁をいただきましたけれども、今後の状況を考えるに当たりましてぜひその点を深く心にとめていただいて、今後の対応の際にはそういう前向きの検討を心がけていただくように、あえて大臣に一言お願いしたいのです。
○大野国務大臣 蓑輪先生からお話がございましたように、私も同一選挙区でございますから、よく実態はわかっております。
 ただ、幾ら実態がわかっても、いまも局長から答弁があったような現況でございますので、私もそういう点について話はいたしておりますが、やはり審議会等の審議も経なければならぬとかいろいろな手続等もございますから、これは私が在任中に少しでもそういうようなことがそういう方々にわかっていただけるように持っていく努力はしたいと思います。
○蓑輪分科員 大臣御努力いただくという御答弁をいただきましたので、期待しております。
 ところで、特定不況業種離職者臨時措置法というのがことしの六月で切れるわけですけれども、新しい立法が予定されているやに伺っておりますが、その立法の中で、繊維関連の諸産業に対して、構造的不況ということでぜひ引き続き業種指定をしていただきたいと思っているわけです。現在の状況で、新法の中でこういうふうな指定の可能性等につきましての状況をお聞かせいただきたいと思っております。
○谷口政府委員 構造的な不況に陥っております業種に対します雇用対策につきまして、先生も十分御案内のとおりでございますが、いまお話しございましたように、ことしの六月三十日で期限が切れますので、これを機会に、最近の経済情勢、雇用情勢を背景といたしまして、新しく業種に対する離職者法と地域に対する離職者法を統合いたしまして、業種とか地域の指定も機動的に行うとか、あるいは今後の雇用の動向に向けまして失業の予防に重点を置いた施策を充実するとか、そういうようなものを内容とする新しい法律を提案いたしておりまして、御審議をお願いいたしておるところでございます。
 この法律に基づきます業種指定は、形式的には旧法はそこで廃止されまして、新しい法律でございますから、新しい法律をもとにどういう業種を指定するかとか地域を指定するかとか、そういう基準は先ほど申し上げました中央職業安定審議会の議を経て決めることになるわけでございます。
 現在の法律のもとでは、繊維産業に属します九業種が特定不況業種として指定をされておりまして、これを新法でどうするかの問題につきましては、いま申し上げました、法律が通った後での基準に基づいて決めるわけでございますので、現在のところは確定的なことは申し上げられないわけでございますが、繊維産業におきます雇用の動向とかあるいはいままでの経緯等を勘案して考えていかなければならぬというふうに思っているわけでございます。
○蓑輪分科員 非常に形式的な御答弁で、それはよくわかるのですけれども、実態が急に変わるわけではない今日、やはり引き続き業種指定をしていただかなければならぬというふうに思います。そして、その点でもあわせて大臣の御尽力をお願いしておきたいと思っております。
○大野国務大臣 日本を愛し、郷土を愛することに人後に落ちない大野明だということだけ御理解いただければ結構だと思います。
○蓑輪分科員 郷土を愛してぜひこの指定のために御尽力いただけるというふうに私は伺いました。
 そこで実はいろんな制度が労働者のために、あるいは業者のために設けられておるわけですけれども、それがそういう制度の存在とかその内容とかについて十分承知されていないというケースも間々聞くわけです。やはりせっかくの制度でございますので、すべての業者、労働者にそういう制度が存在するということが周知徹底されるように労働省が御努力いただかなければならないのではないか。私は、商工会などを通じて少しも漏れのないようにそれが徹底されるという努力をしていただきたいというふうに思っています。現実にはうんと小さな企業といいますか業者の中には、全くそういう存在を知らないという人たちもあります。実際には雇用保険法による給付が受けられるという事態にありながら、そういう手続すらもとらずに困っているという人も間々あったりします。そういうことのないようにぜひ御尽力をお願いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○谷口政府委員 制度の周知徹底につきましては、私どもたとえばパンフレットの作製配布とか、あるいは各業種別団体を通じて周知を図るとか、また事業主とか事業主団体の会議を開きまして周知を図るとか、いろんな方法でやってきておるわけでございます。
 実は、前回の五十二、三年ごろの不況のときにも、こういう雇用関係の各種給付金というのは非常に活用されて、それなりの成果を上げたと思いますけれども、そのときにおきましても周知が不徹底だということを指摘されておりまして、その後私どもも十分努力をしてきたつもりでございますが、いま御指摘のような事実があるとすれば、今後ともこういうことにつきましてはさらに周知徹底を図りまして、この制度が活用されて、失業の予防とか雇用の安定が図られることを進めてまいりたいというように思います。
○蓑輪分科員 大きいところは徹底しやすいのですけれども、小さいところというのはとかく生まれてすぐ消えていくような企業もあったりしまして、徹底がむずかしい場合もあるかと思いますけれども、一層の御尽力をお願いしたいというふうに思います。
 ところで、不況の中で失業とか就職難とかということで職安の業務も非常に多忙をきわめているという状態でございますが、職安業務に関連する委託相談員の問題についてお伺いしたいと思います。
 実は、岐阜県の実情で見てみますと、職安の定数が四十三年には二百六十六名だったのですけれども、五十七年には二百三十三名ということで、三十三名削減されております。逆に、人口の方はこの間二十四万五千人も増大しているわけですので、業務と人員とのバランスという点から言えば非常に厳しい状態に立ち至っております。この業務を進めていくに当たって、人員の確保、増員ということがぜひとも望まれておりますけれども、こういう行政改革の折からいろいろな問題があるかと思いますけれども、現実に業務がふえ、そして増員が必要になっている職場の実態に合わせて増員をしていく部分、その職場ごとに検討しながら進めていかなければならないと思います。職安については特にその必要性が高いというふうに思いますが、ふやす方向ということを労働省の方として進めていただけるお気持ちがあるやいなや、お伺いしたいと思います。
○谷口政府委員 第二臨調に基づきます行政改革等を進めるという大方針のもとに行われておるところでもございますし、政府全体として公務員の定員については非常に厳しい状況の中にあるわけでございます。そういう中で、私ども行政需要に対応してどういうふうに増員を図っていくかということでございますが、特に最近のような厳しい雇用失業情勢のもとにおきまして、職業紹介とか職業指導あるいは雇用保険の給付とかいろいろな面での職業安定行政を進めていく場合につきましては、やはり体制の強化なり増員も必要だということで最大限の努力をいたしておるつもりでございます。しかし、冒頭申し上げましたような、一方での削減という非常に厳しい条件もございまして、御指摘のありましたような全体として減員になっておるというような状況はあるわけでございますけれども、そういう中でも事務処理の合理化とか効率化も図りながら、またその業務業務によりましてより手を尽くさなければならぬようなところにつきましては人員を充実するとかいうような内部の操作等もあわせ考えまして、実際に求められております行政需要に対応していきたい、最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
○蓑輪分科員 実際は増員をしなければならない、そうでなければ仕事が処理できないという事態があるにもかかわらず人員がふやせない、あるいは減らされてしまっているという中でのどう仕事を処理していくかという問題で、結局のところ不足を補うために委託相談員というような形で切り抜けているというのが実態だろうと思うのですね。事実二百三十三名の職員に対して委託相談員というのが岐阜の職安で言いますと六十二名いるわけで、四分の一強に相当するわけです。恒常的に仕事があって、その処理のために必要である職員は減らされているわけですから、一方で委託相談員はどうなっているかと見てみますと、何の身分保障もないわけで、社会保険や雇用保険、有給休暇というものの保障はなし、ボーナス、交通費もなし、一年契約で五年を限度として採用される、朝九時から夕方の五時まで働いて、一カ月十五日就労、約七万円の謝金を支給するというようなやり方でこれを切り抜けているわけですね。
 実際上、労働省、職安に働きながら労働基準法の適用も受けない形での委託相談員という人がたくさん働いている、こういう実態があるわけですけれども、御存じでいらっしゃいましょうか。
○谷口政府委員 現実に公共職業安定所において業務を実施いたします場合、職業紹介、就職指導その他につきましては職業指導官とか就職促進指導官とかこういう職員が当たっておるわけでございますけれども、高年齢者の方とか心身障害者の方々あるいは同和関係住民の方々とか、そういう方々につきまして、より専門的な立場で相談にあずかり指導をするというような観点から、いま御指摘のありましたような職業相談員という方々、そういう問題に熱意と識見を有しておられる方々にお願いをして、安定所の職員の補完的な役割りを果たしてもらっているという事実はございますし、当然そういうことは承知をいたしております。
○蓑輪分科員 いろいろな問題に対応した独自の識見のある方というよりは、実際は女性が多いわけです。岐阜で見ますと、独身者十四人、三十歳から四十五歳が三十八人、四十五歳から五十歳が四人という形で普通のパートタイマーと同じような感じになっているわけです。パートタイマーの問題では、たとえパートであろうとも労働基準法の適用はありますと労働省が御指導いただいているわけでございますけれども、その労働者の権利を守るべき労働省のおひざ元におきましてこういう実態のもとで労働基準法の適用がない、無権利状態で働いている職員がいるということは非常に問題があろうかと思います。そこで労働行政自体が真に法にかない公正で親切な行政が行われることが期待できるだろうかと私は思うわけなんです。ですから、これはこのような不安定状態のまま放置しておくのではなく、きちんと正しく改善の方向で対処をされなければならないと思いますが、その点大臣いかがでいらっしゃいましょうか。
○谷口政府委員 私からあらかじめちょっとお答えいたしたいと思いますが、いま御指摘ありましたような配置の個々の事例までは私承知いたしておりませんけれども、職業相談員といいますものは、先ほどお答えいたしましたように、よりきめの細かいあるいは専門的な相談、指導を要するような面について熱意と識見のある方をお願いをする、そういうことを前提にした制度でございますし、その限りにおきまして、必要な業務に関して委託をして仕事を進めていただく、補完的な役割りをしていただくという形で運用いたしておるわけでございまして、そういう意味で一般の職員とは役割りとか業務が異なりますので、これにつきましてはいまの仕組みの中で考えていかざるを得ないと私ども考えております。
○蓑輪分科員 いま局長はそうおっしゃいましたけれども、現実はそうでなくて、人手不足をパートタイマーで補っているのが実態なんですよ。だから、たてまえはそういうふうにお答えにならざるを得ないということかもしれませんけれども、そこのところは実態を正しく踏まえて改善の方向をとっていただかないと、労働省の信頼がなくなってくるのじゃないかと私は思うのです。
 そこで大臣、一言感想だけで結構です、お聞かせください。
○大野国務大臣 私もいま初めて聞いたというようなことでございまして、局長からその中身については答弁がございましたが、ひとつ、どういう経緯でそういうことになったかということも考えた上でしかるべき考え方をまとめてみたいとは思います。
○蓑輪分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 昨日、ILOで人事院勧告の問題について一定の結論が出されました。この問題については、私どもはかねてから消費不況を克服し、日本の経済の発展を図るためには所得税減税、そして人事院勧告の完全実施が必要だということを強く主張し、要求してまいりましたところでございますけれども、こういうふうなILOの結社の自由委員会が日本に向けて勧告をしたという事態を受けまして、今日の段階での労働大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○関(英)政府委員 私からあらかじめ御答弁申し上げたいと思いますが、本年度の人事院勧告につきまして、関係の組合からILOに申し立てがございまして、政府といたしましては、人事院勧告制度尊重という従来からの方針に立ちつつ、種々検討いたしましたが、国家財政の危機的状況のもとでその実施を見送らざるを得なかった事情などを十分ILOに説明いたしまして、ILO結社の自由委員会としては、こういった政府の見解を十分理解した上で今回の結論を出されたものと考えておるわけでございます。
 いろいろな経緯はございましたが、政府としては、ILOが繰り返し述べておる原則、つまり争議権が禁止されるような場合における代償措置が非常に尊重されなければならない、そういったILOの原則は理解もいたしてきておりますし、これからも尊重していく考えのもとに、今後におきます人事院勧告が行われました場合の考え方というものは、そういったILOの原則を踏まえた上で、今回のような措置が繰り返されることのないように最善の努力を払っていかなければならないものと考えておるところでございます。
○蓑輪分科員 それはそれとしまして、私どもは人事院勧告というのが労働者の方々の切実な要求であると同時に、年金生活者の方、老後を一体どうやっていったらいいだろうかということで、本当に切実な訴えを私、昨日もまたいただきましたばかりでございますので、重ねて申し上げたいわけですけれども、ぜひ、こういう機会があるならば、大臣にもくれぐれも頼んでくれと、私、地元の方々からも再々言われておりまして、それでこの機会を利用いたしまして、大臣に重ねて、かねてから減税の必要性等についても御理解いただいているというふうに伺っておりますので、人事院勧告の実施、そのための大臣の御尽力を何としてもお願いしたいということで、一言だけお聞かせいただきたいと思います。
○大野国務大臣 ILOの政府見解についていま局長から答弁がございましたとおりでございます。それと同時に、いま年金か何かのお話、御要望があったということでございますので、あったことを承っておきたいと思います。
○蓑輪分科員 時間がなくなりましたので、本当に最後に一言だけお伺いしたいのですけれども、労働省の方で昨年の十二月十七日に「パートタイマーに係る「雇入通知書」のモデル様式について」というものの中で、有給休暇の問題についての基準が示されておりまして、「一年間継続勤務し、かつ、所定労働日数が週五日以上」というようなことで、そういう者には年次有給休暇を認める、四日については有給を与えるのが望ましいというふうにしております。そのために、所定労働日数を五日というふうにせずに、四日という形で、有給休暇を与えなければならないという義務を免れるというような企業の問題も出ておるわけですね。そういう問題についての実態を御承知いただいて、関連するこの部分についてはぜひ撤回をしていただきたい、検討していただきたいと思いますが、その点だけお聞かせください。
○松井(達)政府委員 結論から申しますと、撤回は困難ではなかろうかというふうに思います。と申しますのは、やはり現在の労働基準法の年次有給休暇制度というのは、週六日労働制のいわばフルタイマーを前提にしておりまして、現在、週休二日制も普及しておりますので、私どもとしましては、この適用を見ている労働者もかなりあるところから、週五日以上の者についてこういう措置を決めたわけでございます。
 四日以下ということで、仮に四日ということになってみますと、じゃ週休三日制というのはあるのかといえば少のうございますので、私どもとしましては全体のバランスを考えて、この点につきましては、五日以上の者については所定の年休を付与すべきだけれども、四日については、バランスを考えて、望ましいというのが限度ではなかろうかというふうに思っておるから、このように、先ほど申し上げたような結論になるのではなかろうかというふうに思っております。
○蓑輪分科員 御答弁は承服できませんので、また別の機会に引き続き問題点を明らかにしていきたいというふうに思っております。
 本日はこれでありがとうございました。
○上村主査 これにて蓑輪幸代君の質疑は終了いたしました。
 次に、小林進君。
○小林(進)分科員 きのう、おととい等から大分新聞にやかましく報道されておりますけれども、ILOの結社の自由委員会の日本向け勧告文を一部削除するという問題、この問題は、四日の日の午後のILOの理事会で自由委員会の申し立てどおり修正されて満場一致で採択されたということが、けさの新聞に報道されているわけでございます。非常に結構だと思うのでございますが、このように自由委員会の報告が理事会の場で訂正されたということは、これはILOの場合では初めてじゃないかということが一つ。
 それから、五十七年度の人事院勧告見送りについて政府決定に再考を求めるのは有益ではない、これは自由委員会の原文でしたが、これが完全に理事会で削除されてしまった。だからこれはどうしてもひとつ原案どおりやりなさいということだと思う。これは二番目。
 第三番目は、この理事会の決定は、改めて日本政府に人勧の凍結を解除しなさい、そして五十七年度分から完全かつ迅速に実施をしなさいということを日本政府に向かって決定したものだ、私はこういうふうに解釈するのですが、以上の三点についていかがでございましょう。余りごまかしの答弁だめですよ。
○関(英)政府委員 まず、結社の自由委員会の理事会に対します報告文書が修正されたのはかつてないことではないかということでございますが、私も実は余り詳しくございませんが、恐らく余り例のない、異例のことだろうと思いますが、それはスポークスマンの説明によりますと、事務的なケアレスミスという、要するに不注意で削除すべき文章が残っておったのでそれを訂正したいと、こういう説明であったというふうに聞いております。
 ただ、何分にもまだ代表が帰ってきておりませんので、電話などでの連絡でございますので、正確を欠いておる点がありましたらお許しをいただきたいと思いますが、現在のところ、そういうふうに理解しておるところでございます。
 それから、採択されました結社の自由委員会の報告、その中の結論部分とそれから勧告の部分、委員会の結論あるいは委員会の勧告の部分等いろいろあるわけでございますが、その勧告の部分で、当初ございました文章、「委員会は、上記百六十六項に示した理由により、本件人事院勧告に関する政府の態度を再検討するよう政府に対して要請することは、有益な目的にかなうものではないであろうと考える。」というところが削除されたから、五十七年度の人事院勧告について、いま五十七年度から実施するようにという勧告ではないかという御指摘でございますが、この委員会の報告の結論部分の百六十六項におきましては同様の言葉がそのまま残っておりまして、「本件において、委員会は、一九八二年における給与引上げに係る人事院勧告の実施を見送る政府の決定は、本件人事院勧告の実施のための措置を含んでいない補正予算が一九八二年十二月二十五日に採択されたときに、国会によって承認されたことに留意する。したがって、本件人事院勧告に関する政府の態度を再検討するよう政府に対し要請することは、有益な目的にかなうものではないであろうと思われる。」というような結論部分の記述はそのまま残っておるわけでございます。そういう結論になった上で勧告がなされたわけでございまして、勧告の部分では先ほどの文章が落ちましたが、委員会は人事院勧告が実施されなかったことを残念とし、「今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、団体交渉に関する労働組合権及びストライキ権に関し課せられた制限の代償措置を関係公務員に確保すようにとの強い希望を表明する。」、こういうふうになっておりますので、この勧告だけから五十七年度から人事院勧告を実施せいというように勧告したものではないというふうに私ども考えておるところでございます。
○小林(進)分科員 そこが問題なので、それはひとつ詰めてみましょう。
 ただ、自由委員会あるいは理事会において、政府の代表や労働代表が激しくそこで運動なり論陣を張ったということも私どもはそれは非公式でニュースをとっておりますし、そして、理事会の勧告の中にはそれは即時完全実施せよという言葉は明確に示されていないけれども、日本政府の態度は遺憾であるという文面はあるのだから、それを裏から解釈すればやはりこれは完全に実施せよというふうに受け取ることは素直だと思うのだが、それでは先へ行きましょう。
 その意味でまず政府にお伺いするのは、政府はこの理事会の採択を見て今朝未明ですか、これはあなたがやった仕事かどうかわからないけれども、今朝未明こういうことを言っているんだな。政府の見解を十分理解し作成されたものと評価をしておる、この理事会の採択を評価しているとの見解を発表し、また続いて、自由委員会の報告を一部削除した問題についても、削除によっても勧告は五十七年度人勧実施を求めているわけではなく、政府としては何の実質的な変更はないものと理解する。いまあなたちょっとがちゃがちゃ言われたけれども、詰めればこの見解発表にあるのと同じことを言われたのだと思うのだけれども、これが私はわからないんだ。それは、五十七年度の国の予算の中にはもう入っていないから、ここで勧告をしても見込みもないだろうから、むだだからやめようという形が一応自由委員会に出たが、それがそっくり削除されてしまって、やはり本文の勧告へ戻ったということはだれが見ても明らかだ。だから、けさの各新聞を見てもみんなそのとおりです。これは政府は敗北だ、労働省側の見解がやはり筋が通っているとみんな言っているが、ただ労働省だけだ、あなただけがちっとも変わりがない。これくらい明らかな文章を、これは小学生だってこの二つの文章を見せればああ変わりましたと言うよ。それを変わりがないと言うのだから、その変わりがないという解釈が一体どこから出てくるのか、私はいま一回打ち合わせ願いたいと思う。
○関(英)政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、この結社の自由委員会の報告の委員会の結論部分の第百六十六項におきまして、すでにこの人勧実施のための措置を含んでいない補正予算が採択された、したがって「本件人事院勧告に関する政府の態度を再検討するよう政府に対し要請することは、有益な目的にかなうものではないであろうと思われる。」という結論を委員会として一応出した部分が第百六十六項というところにあるわけでございます。それはそのまま残っているわけでございます。これは削除されたわけではございません。
 その百六十六項の結論、あと百六十七、百六十八というところがございますが、それを省略いたしまして、そして委員会の勧告という部分になるわけでございます。その勧告の部分の最後の百六十九項になりますが、百六十九項の(C)項で、前半部分がなくなりました。そして結局、委員会としては今年度の人事院勧告が実施されなかったことを残念に思う――まあ仮の訳ですから遺憾という訳をされる方もおりますし、政府として別に正式の訳が決まったわけじゃございませんが、残念と思うが「今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、」云々、こういうふうに勧告しているわけでございます。
 そういう意味で、この百六十九項(C)項の前半部分が削除されましても、全体の勧告の内容あるいは委員会の結論、そういったものに実質的に変化はないと私どもは考えておるわけでございます。
○小林(進)分科員 それはもうあなたの解釈と私の解釈は真っ正面から対立する、あなたの言うことに賛成できない。なおかつと言われれば、第一項から第百六十九項まで私は読んだわけじゃないから、帰って読み直さなければならぬと思うけれども、いずれにしてもあなたの言うのは、それらの項目の中の百六十六項目の中で、いま予算的措置がないからそれは認めてもよろしい、政府がやらないことを認めてもよろしいくらいの政府側に有利な文章が百六十六項にあるという、あなたはおっ取り刀のようにそれを振りかざして、だから内容においては変わりはないと言っている。ところがそれは経過なんだ。僕らに言わせれば、百六十六から六十七、六十八まで結論があって、そして百六十九の勧告の(C)項には、そういうのは有益なものとは考えないという文章が削られて、ひとつ五十七年度から迅速かつ完全に凍結を解除し実施せよというふうに来ていると私は解釈するわけだ。前段と後半ということになれば、こっちは後だ。後の方からだんだん結論に近づいてくるのはあたりまえじゃないか。それをあなたは、百六十九項の(C)なるものがそういう一番重要なところ、これはもう前回から論じられた問題だ。だからきのう、おとといあたりの新聞紙全部、これはいわゆる再考を求めるのは有益とは考えないということ、これは労働者側の敗北で政府側の見解が通ったということできのうあたり各紙全部が流した、その解釈は正しいです。ところがそれが理事会においてそういう最もポイントであるべき文章が削られたということで、きょうあたり各紙がずっと、五十七年度からも日本政府は完全迅速にこれは実施すべきであるという解釈に変わった、ILOの態度が変わった、こういうことを全部言っている。これは実に素直な解釈です。こういう素直な解釈も、いわゆる官僚の三百代言的な、そういうことではくるりくるりと詭弁を弄する、これが一番悪い。特に労働省はそのくせがある、これが一番悪い。だからそんなことは私は了承できません、この問題は。厳重に再考を促しておきます、ここで議論していると次に行けませんから。関君、これは重大だよ、君。君はいま関ケ原に立っている。君の将来を決する重大問題だ。
 次に行きますが、勧告の結論部分だ。もし全体の中で問題を取り上げるとすれば、勧告の中でその削られている部分。これは時間の範囲で参考までにちょっと読み上げますが、ILO勧告の結論部分で一番重要な点が三つありますよ。
 まず一つは、本件のように「公務において団交権又はストライキ権のような基本的権利が禁止」されている場合は、「その利益を守るための必須の手段を奪われている労働者の利益を十分保護するため、迅速かつ公平な調停及び仲裁の手続のような適切な保障が確保されるべきであり、その手続においては、当事者があらゆる段階に参画することができ、かつ、裁定が一たん下されたときには完全かつ迅速に実施されるべきであるとの原則を想起する。」これがILOの文章の中心です。
 それから次の部分ですが、「政府が人事院勧告を尊重するとの基本方針を堅持し、」、政府がですよ。「将来においては人事院勧告を尊重するよう最善をつくす意向であるとの政府の保証」、政府はこういうことをILOに通告しているのだ、あなた方は。これに対しILOは「留意する。」、これは一番重要な問題として取り上げてこれに「留意する。」と言っている。これをあなた方はやっていないじゃないですか。欺いているじゃないですか。
 三番目の重点としては、「一九八二年において人事院勧告が実施されなかったことを遺憾に思い、」、この「遺憾に思い、」がちゃんといまの文章の中に残っているのですよ。「遺憾に思い、今後の人事院勧告が完全かつ迅速に実施され、団体交渉権、ストライキ権の制限の代償措置を関係公務員に確保するようにとの強い希望を表明する。」、これが今度の理事会で採択された文章の中にも入っておる。これまでもあなた方は否定することはできないでしょう。だから、「確保する」、迅速かつ完全にこれを実施されることを強く希望するというのが最後の結論ですよ。
 私は以上の趣旨から言えば、政府が人事院勧告を実施しないことは、確かに何と言ってもあなたの言葉は詭弁で、ILOに対して完全な拒否の姿勢を日本政府はいま示しておるではないか。したがって、同盟や全官公労はこの問題について、日本政府がILOに対してとった行為について「国際的な常識を逸脱するもので強く抗議する」と言っている。この見解発表はこっちの方が正しいですよ。これは素直です。非常に正当です。一体政府はこの国内における労働団体の声明をどうお考えになりますか。関さん、あなたに聞いているんだよ。労働大臣は病気でせつなそうだからちょっと休ませておいて、あなた労働大臣になったつもりで答弁しなさいよ。
○関(英)政府委員 理事会で最終的に採択されました結社の自由委員会の勧告の最後の三つの点について先生が朗読されましたが、第一がストライキ権等の労働基本権が制約された場合の代償措置についてのILOの原則を述べたものでございまして、政府としても従来からその精神を尊重し、そうしてきたところでございます。それから次の(B)項は、政府としては今回の措置はまことに危機的状況の財政状況においてとられた異例の措置でありまして、こういうものを繰り返すことのないよう最善の努力をするといった政府の見解にILOが留意するということを第二点で述べておるものでございます。第三点は、先ほど来繰り返しておりますが、ことしについては「残念」あるいは「遺憾」、これは翻訳の問題でございますが、残念に思い、今後の人事院勧告が完全、迅速に実施されるという強い希望を述べたものでございます。
 私どもとしては、権威ある国際機関のこういった結論を十分に尊重し、労働団体とも話し合いをしてまいりたいと思っております。
○小林(進)分科員 なかなかあなたは怪弁を弄するよ。自分たちに都合のいいことだけをちょっと部分を持ち寄って全体の理論に構成してくる。ひきょうだよ。ひきょう千万だよ、君。そういう解釈を私は了承できない。総体的に物を素直に解釈するのが本当であって、部分をもって全体を覆い隠してしまうなんというのはひきょう未練だ。昔の言葉で女郎の手練手管と言っているんだ、そんなのは。許すべからざる詭弁であります。
 そこで、改めてお聞きするが、いま日本はILOの理事国ですか。
○関(英)政府委員 そうでございます。
○小林(進)分科員 理事国というと、日本を代表する者は政府と労使、三者構成だが、三人が全部代表としてこの理事会に出席するのですか。ちょっと言ってください。
○関(英)政府委員 そのとおりでございます。
○小林(進)分科員 その理事会に政府代表、資本家代表、まあ企業代表でもいいですが、労働者代表、三人が出ている。その理事会において、今朝の新聞によれば自由委員会の報告の一部を改正して、五十七年度はやむを得ないという文章を削除した。そういう、ぼくらに言わせれば大改革、修正に対して、満場一致で採決していることになっている。満場一致で採決したということは、政府の代表も双手を挙げて賛成したということだ。日本の資本家代表も賛成したということになる。これが私はどうもおかしくてしようがない。先ほどから読み上げられているように、このILOの勧告を日本政府は留意せよ、実施せよ、迅速にやれとちゃんと勧告をしていられるものを、いま日本の政府は実施してない。その日本政府を代表する――日本政府の代表の名前は何というの。
○関(英)政府委員 森総務審議官でございます。
○小林(進)分科員 労働省の総務審議官というと、課長と同格くらいか、課長よりちょっと上くらいか、労働省の構成はわからないけれども、ちょっと言ってみてください。
○関(英)政府委員 どういうふうに申し上げていいかわかりませんが、英語で言えば次官補ということになるかと思います。
○小林(進)分科員 参考までにちょっと聞くのだけれども、何年の入省ですか。
○関(英)政府委員 二十八年入省でございます。
○小林(進)分科員 それじゃもう労働省でも古つわものだ。君と比較してそう新しくはない。負けないくらいだ。君だって二十八年くらいか。そんなものだ。
 そうすると、大変重要なポストが行っている。それは政府代表たるに足る。それが理事会で賛成している。本国においては日本政府がそれを実施しないと言ってILOの勧告を拒否している。出先の機関はそういう国際場裏において双手を挙げて賛成している。これは一体どういうことなんですか。これは国際場裏における一つの欺瞞じゃないか。国際場裏では日本政府はこのように労働者のことは考えます、公労協のことは考えます、官公労を大切にいたします、ILOのおっしゃるとおり全部賛成いたしますと両手を挙げて世界の方には調子のいい顔をしておきながら、本国に帰ってくるとこれを実施しないなんということは大変な矛盾じゃないかと私は思うが、どうか。そう考えないか。こういう二枚舌というか二枚腰というか二律背反みたいなことをやることは、政府として正しい行為じゃないと私は思う。ひきょう者のやることだと思うが、これはどうですか。
○関(英)政府委員 先ほど来申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、委員会の結論部分において削除されたと同様の文書が委員会の結論ということで残っておりますし、勧告の三つの点、原則、今後政府としてはこのような措置を繰り返さないように最善の努力をするという政府見解への留意、そうして第三項の今後の人事院勧告についてのILOの見解、こういったものについて政府としてはこれを十分受けとめ、尊重していく考えでございますので、現地政府代表も賛成し、われわれもそういう意味で権威ある国際機関の見解として評価しているわけでございます。
○小林(進)分科員 あなたのそんなぐだぐだした説明なんか私は聞いてない。こっちからこっちに皆逃がしちゃっているんだ。ただ、一つ聞くけれども、賛成すべきか反対すべきかというのは、もちろん森君の方から本省の方に、どういう態度をとるべきか具体的に請訓があっただろう、そうして本国としては賛成しなさいと指示したのでしょう。本国の指示に従って彼は賛成に回ったと思うが、これはいかがですか。
○関(英)政府委員 本国政府と十分意思疎通を交わした上での政府代表の態度であると考えております。
○小林(進)分科員 それでだんだん明確になりましたが、賛成をされたのは本国の指示だ。そういう指示は国際場裏における日本政府の本来的な姿勢をごまかすいわゆる官僚の小手先の態度だ。むしろ、こういう場合のわれわれ政治家の態度としては、まことに勧告はあなたの言うとおり三つの原則を守りたいが、財政その他の事情で日本政府としては実施することはできませんから、残念ながら反対の方へ回るぐらいの堂々たる姿勢があってこそ、大国日本の日本らしい姿勢ですよ。そんなような片言隻句をとらえて、これならばわれわれの趣旨と同じだから賛成に回りますと賛成しておいて何も実行しないというのは、一部分でも実行したというならいいが、五十七年度の三月分だけでもちょぴっと出したというならいいが、毛ほどもやらないじゃないか。においもかがせないじゃないか。そうしておいて形だけ賛成に回るというようなひきょうな態度ではだめなんだ。そんなことは許されない。あなたの言うのはへ理屈だ。
 そこで、私が今度お伺いするのは、これは労働大臣にお伺いすればいいのだけれども、非常に苦しそうですから、ひとつ聞いておいてもらいたいと思うのです。この理事会の決定をともかく迅速かつ完全に実施しなかったことに対する結果がどうなるかという、その結果論をひとつお聞きしたい。及ぼす影響といってもよろしい。労働省は、これをどういうふうに解釈しておられるか。
○関(英)政府委員 御質問の趣旨を取り違えておったらお許しいただきたいと思いますが、理事会で採択されました結社の自由委員会の報告、これは労働関係において権威ある国際機関である結社の自由委員会の見解でございます。政府としては、これを十分尊重していく考えでございます。そういうものと非常に相反することが行われていくということは、私は、国際的に見ても非常に好ましくないことであろうというふうに考えます。
○小林(進)分科員 あなたの抽象的な言葉はそれでいい。私も賛成ですよ。
 ただ、もっと具体的に聞きますと、いわゆる採択なり決定なりに従わなかったことは従わなかった。私は従っていないと言うんだ。まだ実施していないんだ。しかし、従わなかったからといって、これは法律的拘束力はありませんな。ILOの拘束力はない。しかし、これを国際的な条約あるいは協定あるいは何々宣言という、国際問題では宣言という形で意思を発表する場合もある、あるいは共同声明などという形で一つの協定その他条約に準ずべきものが出てくる場合もある。いま、このILOの勧告だとか決議だとか採択だとかいろいろありますが、このたびのILOで行われたことは、この条約や協定や宣言や声明などに比較して、その持つ重さは一体どんなものか、政府はどのように考えているのか、ひとつお聞きしておきたいと思います。
○関(英)政府委員 重さというものを比較するということは非常にむずかしいことでございまして、条約に比べてどちらが重いかとか軽いかとかいうようなたぐいの比較がどういう意味を持つか、私十分理解できませんが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げたとおり、権威ある国際機関の見解でございます。日本政府としては、十分それを尊重していかなければならないし、それと大きく背馳するような政府の行為というものは、国際的に非常に大きな悪影響を及ぼす結果になるだろうというふうに思います。
○小林(進)分科員 抽象的にはそのとおりですが、これは一番重大な問題ですから、いまひとつ私は詰めておきたいと思うのです。
 日本の経済は、言わずもがな、世界で三番目だ。自由主義国では二番目だ。まあ自由主義国全体の生産力の一〇%以上を日本が負担し得るくらい大きな経済大国になった。一方、貿易輸出というのは世界の経済を荒らしまくっているということで、EC、アメリカその他の国々から非難攻撃を受けている。貿易問題では、まさに日本は世界で孤立の道を歩まんとするような非常な危険な状態にある。
 こういう中にあって、現在はないけれども、これは近年ですよ、数年前までは、日本が経済大国になる、あるいは輸出でもって伸びていくということに対しては、日本は低賃金国ではないか、労働者を搾取し過ぎているのではないかという非難がずいぶん一時出た。いやそうでないということで、やれヨーロッパの賃金と比較してどうだとか、ドイツに近いとかイタリーに近いとかということで、私どもが社労などをやっているときには、そういう問題の論争で終始した。それが、だんだん日本の賃金が上がってきて、この賃金問題はようやくヨーロッパと比較して少ないものでないということで悪評を消していった。その後に出てきたのがいわゆるダンピング論だ。これは前後して一緒に出てきたときもあったけれども、日本は、どうも輸出品に対してダンピングをやって世界の市場を荒らしまくっているという非難が出た。これをまた打ち消すために日本はずいぶん苦労してきたわけだ。
 今日、ダンピング論や低賃金論は鎮静しました。いま鎮静しているが、しかし根が絶えたわけじゃありませんよ。ダンピング体質があるから、部分的にぽっぽっと出てくる。まだそうした根絶したわけじゃないときは、この日本が、労働者からストライキ権や団交権を剥奪しておきながら、その代償機関として正当に与えられた人事院の勧告まで受け入れない。ILOの言うことも聞かないで賃金を凍結した。そして、このままで日を過ごそうとしていることが、一体将来国際社会で素直に受け入れられるとあなた方はお考えになっておりますか。この事実が世界各国に浸透していったら、日本はいまこういうことをやっているのだといった場合に、予想もしないようなあらゆる部分から、日本に対する排撃や非難の声が巻き起こってくるのではないかということを私は非常に心配しているが、この点をあなた方はどういうふうに考えていられるか。
○関(英)政府委員 ILOの結社の自由委員会の勧告、こういったものに大きく反するような行為を日本がとり続ける場合には、ただいま先生がおっしゃいましたような貿易摩擦、そういう面からいたしましても、また、それ以外にいろいろな面があろうかと思いますが、国際的に非常に悪影響を及ぼすことになろう、こういう意味で先ほども申し上げたつもりでございます。
○小林(進)分科員 労働大臣、ちょっとお疲れでしょうけれども、あと一言でいいですから、これで終わりですから。
 これは仮に、日本の各種の労働団体、総評、同盟その他の団体、官公労、公労協、そういう団体が、日本政府のこの理不尽な行為に対する反省を促すという意味で、世界各国の労働団体、あるいは自由労連だとかあるいは各種の鉄鋼労連だとか自動車労連だとか、あらゆる労連にこの事実を訴えて、これは日本の政府に対して反省を促すようにしてもらいたいというような国際的な運動を巻き起こしたという場合に、これは私は、こういう日本の労働団体の国際的な呼びかけには、おれたちはすぐ立ち上がるのだという余地は、国際状況によってはあると見ているのだが、そうなったときに、日本の政府はそれに対して一体どう処置する考えであるか、私はいまから十分考えておいてもらいたい。これが大臣たる者の先見の明です。官僚と政治家たる大臣の違いです。
 その意味において、労働大臣、そういうような世界的な大きな反撃の波が起こり得る可能性があるということも考慮に入れて、あるいは閣議の中等でもこの問題はきちっと発言をしておいて、頑迷な総理大臣あるいは閣僚の認識を深めるように、ひとつ御努力をしていただきたいと私は思う。ひとつ御所見を承っておきたいと思います。
○大野国務大臣 何と申しましても、日本時間で言えばけさの真夜中に初めてあの最終的なものが出たので、私も現在そこまで考えが及んでおりませんが、むしろ先生の御忠告と受けとめて、ひとつよく考えていきたい。きょうちょっと本当にからだのぐあいが悪いので失礼しましたが、頭のすっきりしたところで考えていこう、こう思っております。
○小林(進)分科員 お大事にひとつ。これで終わります。
○上村主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。
 次に、村上弘君。
○村上(弘)分科員 私は、パート労働者の労働条件、特にこの一月から試行されております雇入通知書の問題に主にしぼってお聞きしたいのであります。
 パート労働者の九十数%が婦人であるわけですが、労働条件がきわめて劣悪である。賃金が低い、格差はフルタイマーと比べて広がっておる、有給休暇はないし、いつ首になるかわからぬというような状況にあるわけです。大体、雇用されるときにどういう労働条件であるのかすらわからない、こういう状況が多いわけですが、そういう点で言えば、この一月から労働条件を明示するための雇入通知書ということが試行されておるということは一歩前進ではないかと思うのです。これは大きな社会問題でもありますし、けさもNHKで「くらしの経済セミナー」ですか、「ふえるパートタイマーのトラブル」というようなことでやられていましたけれども、何事も初めが肝心であって、この雇入通知書を出すに当たっての大前提になっておる考え方は、一体どういうものであろうかということですね。何のために出すのか。この通知書の前書きでは、トラブル防止ということが主に言われているような気がするのですが、それは単にその範囲にとどまるならば、マイナスに作用することすらあり得るのじゃないかと私は思うのです。
 この大前提は、少なくとも基発七百九十号の前文には「パートタイマーの労働条件確保対策の一環として」ということが述べられておる。それから、このモデル様式の「趣旨」のところでは「パートタイマーであっても、労働基準法の適用があります。」こうあるわけです。労働基準法といえば、この第一条に、これ以下であってはならぬという最低の基準を示すと同時に、「その向上を図るように努めなければならない。」ということがあるわけです。したがって、この雇入通知書を出す大前提には、こういう労働条件を確保する、しかもそれは労働基準法に示すそれを最低基準とするものであって、その基準法の精神から言うならば向上を図るものだ、こういう見地でこの雇入通知書というものは行うものだ、こういうふうに受けとめて当然いいのだろうと思うのです。その点をまず最初に確認をしておきたいと思うのですが、どうでしょう。
○松井(達)政府委員 ことしの一月から、いま先生が申されました雇入通知書制度の試行に入ったわけでございます。その考え方でございますけれども、私どもとしましては、まず最初に、パートタイム労働者につきまして一体労働基準法が適用があるのかないのかということの認識も薄い、あるいはないのではないかという誤った認識があるいうことをまず払拭していただかなければならぬということを考えたわけでございます。
 それから第二に、やはりいろいろなトラブルがあるということでございます。先生申されましたが、私ども見ましても、たとえば昇給、賞与、退職金というような点につきまして、どうもはっきりしていないということです。それから労働時間につきましても、パートですから本当は労働時間の管理というものははっきりさせていなければいかぬのですけれども、その辺もあいまいな点があるというようなことで、私どもとしましては、まず労働基準法が適用があるんだということをしっかりと知ってもらいたいということで、その周知徹底を図っておるわけでございますが、御存じのとおり、十人未満ということになりますと、就業規則の制定につきましてもやらなくてもいいということでもありますし、また、そもそもパートにつきまして、それ以上になれば就業規則について整備しなければならぬということも知られてないということから、こういうことで周知徹底を図ってきたわけでございますが、やはり雇入通知書という制度をつくった方がいいのではないか。御存じのとおり、賃金については文書でもって明示するということですが、それ以外のものにつきましては基準法上単に明示ということになっておりまして、口頭でもいいということですが、いま申し上げました点につきまして、明示でやった方がいいのではないかということで、この雇入通知書のモデル様式をつくりまして、一月一日からその普及に入ったというところでございます。
    〔主査退席、白川主査代理着席〕
○村上(弘)分科員 トラブル防止ということはそれ自体必要だけれども、いわば単に消極的なにおいのするそういう感じだけじゃなくて、大前提は、労働条件を確保し、その向上を図るという見地であるというお考えを私確認しておきたいと思うのです。
 ついでに言うならば、よく言われる婦発五号ですね、パートタイマーというのは身分的な区分ではない、短時間労働という一つの雇用形態であって、労働時間以外においてはフルタイム労働者と何ら異なるものでないんだという見地は当然その前提にあるということも、これは当然であると思いますが、確認していいですか。
○松井(達)政府委員 私どもとしましては、労働基準法の適用につきましては、先ほど申し上げましたとおり、パートであろうとフルタイマーであろうと変わりはないということで考えております。もちろん具体的な事項につきましては、それぞれ基準法の適用の問題をめぐりまして、いろいろな制度につきましては条件がついておるわけでございます。したがって、パートとフルタイマーで違いが出てくる面もございますけれども、労働基準法が適用される、そして労働基準法の適用の各条文に照らしてその制度の適用を図っていくことが基本であるということは、私どもとしましても全く異論のあるところではございません。
○村上(弘)分科員 婦発五号というものは、当然前提になっておるというように考えていいですか。
○松井(達)政府委員 ちょっといま先生のおっしゃいました婦発五号の実際の文章につきましては、私いまここで具体的に承知しておりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、パートタイマーであろうとフルタイマーであろうと、労働基準法の適用につきましては、基本的な点においては変わりはないという認識でございます。
○村上(弘)分科員 それは当然婦発五号を確認することになると思うのですが、それでは具体的な内容の問題について聞いていきたいわけですが、けさもテレビを見ていますと、これは試行でありまして、いろいろ改善すべき点があったら改善するつもりですというように言っておられましたが、その点はそうですか。
○松井(達)政府委員 基本的にはそのとおりでございます。何しろ新しい制度でございますので、これにつきましては私どもモデル様式を示しておりますけれども、それにつきましても、私ども自身十分であるかどうかにつきましても、まだ今後改善の余地もあるのではないかということも考えておりますので、現在のところ、いわば普及の試行と申しますかテスト段階と申しますか、そういうふうに考えておるわけでございます。
 どういう考え方でテストをしておるかと申しますと、パートタイム雇用が多い……(村上(弘)分科員「聞いたことだけ答えてください、改善するときはするということかどうか」と呼ぶ)問題がありまして、そして試行の結果が出てまいりますれば、その結果を踏まえまして、必要な見直しはやっていきたいと思っております。
○村上(弘)分科員 そういうことが前提でありますから、現在試行中でありますけれども、現在の過程においても考えてみてほしいし、将来必ず検討してほしいと思う幾つかの点を聞いてみたいのです。
 モデル様式の中にいろいろあるわけですが、この中で、もっとこれはこういう項目を入れた方がいいのじゃないかというような点ですね。たとえばこれは休憩時間の問題も入っていますが、大阪の「働く婦人の悩み一一〇番」というところから労働省に要望書が出ておりますね。ごらんになったと思いますが、そこでは、休憩時間の問題については、ただ何時間とか何分とかいうのじゃなくて、何時から何時まで何分間、こういうふうに記入できるようにしてほしい、そうでないと、書いてあっても実際上はとれないことが多いということを述べているんですね。
 それから、賞与や退職金の問題も、これは時期についてはありますけれども、計算の方法ですね、これが、もらった者はさっぱりわからぬ。私、大阪のパートの婦人労働者に聞いたら、たとえば賞与というような言葉も使わないのですね。寸志と書いてある。何が基準でどうなっているのかさっぱりわからぬというようなこともあるのですが、そういう項目も入れるようにしたらどうでしょう。
○野崎説明員 お尋ねの点でございますけれども、この雇入通知書は、就業規則あるいは労働契約書、そういったものが現在整備されていない事業場を主として対象としているわけでございます。そういたしますと、非常に規模の小さいところということになりまして、余り複雑な内容ということになりますと、かえって普及に障害が出るんではないかということで、なるべく簡単に、そして実際に問題の起こっている事項を中心にということでこの案が、このモデルができているわけでございます。
 したがいまして、いろいろと内容を多くしますこと、そのことは望ましいかと思いますけれども、一面また普及に障害が出るおそれもあるということで、こういう案になっておるわけでございます。
○村上(弘)分科員 いや、項目をふやしなさいということを言っているんじゃなくて、現に示してある項目について、ちょっとした書き方の問題ですからね。ただ休憩時間何分というのじゃなくて、何時から何時まで何分というようにしてほしいこと、これは書きようはそうむずかしくないと思うのですが、その項目にちょっとそれをつけ加えればいいわけだし。それから、賞与についてはその計算基準というんですかね、それ一つつければいいんですからね。ない項目を入れろというんじゃないんで、それぐらい考えるようにしてみたらどうですか。改善すべきものは改善するという点ではどうですか。
○野崎説明員 パートタイマーは非常に複雑なと申しますか多様な実態があるようでございまして、このモデル様式をつくりますときに労使の方の御意見も伺ったのでございますけれども、製造業の方は大体これでいいのではないか、製造業の場合には形が決まっておりますのでいいだろう。ただ、商業、サービス業の場合にはいろいろな態様があって、なかなかこの様式ではこのまま書き切れないかもしれないという御意見もございました。
 そこで、内容につきまして、それぞれの事業場の実態に応じてお使いになるときに改善をしていただく点は構いませんということでお願いしているわけでございます。そうした改善も含めましたような試行の結果というのがいずれ上がってまいると思いますので、そういったものを見まして、もう一度必要ならば見直しをしたいというふうに思っております。
○村上(弘)分科員 労働条件を確保し、向上を図るという先ほどの大前提からいうと、やはりちょっと消極的な感じがするのですね。改善の努力をしてほしい。
 それから、とりわけ婦人労働者が多いのですが、安全や衛生に関する問題、こういう項目、労災問題ですね。これはないんですね。こういうのは非常に大事じゃないか。たとえば私、大阪で聞いたときには、就労するに当たっては指を落とさぬように気をつけよと言われて、それだけでしたというようなことなんですね。全然安全教育あるいは訓練というものを受けていないのが多いのですね。パート労働者の労働災害は、全労働省労働組合の調査では、労働災害に遭ったと答えた人が一〇・二%、一九八一年の労災給付率が〇・一八%から見ても、これは非常に率が高いわけですね。また、この調査によりますと、訓練や教育を受けたというものは四三%しかない。この問題は安全、ときには命にもかかわる問題ですから、当然主要な労働条件ということで項目に入れるべきではないか。通知書に安全教育などの項目を入れる、あるいは説明のところにそういうことを述べるということぐらいはやったらどうかと思うのですが、どうですか。
○野崎説明員 先生のお話のように、そういった問題まで含めて規定されれば望ましいと思いますけれども、結局そういたしますと、パートタイマーのためにそういった問題を全部網羅した就業規則をつくっていただくということとほとんど同じ結果になるのじゃないかと思います。そして、この雇入通知書につきまして、これを交付したからといって、常時十人以上の労働者を使用する就業規則作成義務のある使用者の場合には、就業規則作成義務を免れるものではないということで、別途そういう方には就業規則作成の指導も今後続けていくつもりにしております。
 問題は、そういう就業規則を作成する義務を負わない、結局は事業主が一人で、人事担当者もいないというようなところで、口約束だけであいまいな、労働条件が不明確なまま働き、問題が起こるということでございます。したがいまして、望ましいとは思いますけれども、そういうところでも実行可能なものという見地は、やはりどうしても考慮せざるを得ないというふうに思います。
○村上(弘)分科員 何か、何もかも全部入れろとこちらが言っているかのように受けとっておられるように思うのですが、どうしてもこういうのは大事じゃないか、本来ならすべてということであるべきなんですが、しかし、せめてというようなことを言っているわけでしょう。だから、そういう見地でどうかなというように思うのです。
 それから、就業規則をつくらせるという指導はやさしくないですよ。むしろこういう様式の中に入っておれば、うんとそういう点では、全項目を含む就業規則をつくることのいわば入り口にもなるわけですから、そういう角度から考えても、どうしても大事なことは入れるということで、ぜひいま言ったようなことは検討されたい。
 それから、特に婦人労働者という見地から言うならば、特に母性保護の問題ですね。この項目はぜひとも入れるべきじゃないかというように思うのです。労基法六十五条の産休、六十六条の育児時間、六十七条の生休ですね。特に六十五条の、妊娠中には、要請があれば「軽易な業務に転換させなければならない。」けさも何か、冷凍職場で働けと言われて、そのために、その人は冷え症な人でやめなくちゃならぬというような問題が出てきたり、もう妊娠中であればとりわけ立ち作業とかいうのは大きな問題ですね。ですから、そういうことを考えますと、こういう項目についてはぜひとも入れるということを私は強調したいと思うのですが、どうですか。
○野崎説明員 先ほど来申し上げておりますような考え方で、なるべく使いやすいという見地で考えておりますけれども、絶対にこの項目を今後直す予定はないということではございません。地方でテストの結果が上がってまいりまして、見直しが必要だということであれば、必要な項目は見直すという考え方でやってまいりたいわけであります。
○村上(弘)分科員 その際には、私がいま言いました幾つかの点、特に母性保護の問題などについてはぜひ入れるべきじゃないかということを強調しておきたいと思うのです。
 それから、この雇入通知書には、なるべく簡単にしたいのだとさっき言われながら、労基法では必ずしも明示項目になっていないことが入っているのですね。その一つは、雇用期間の問題です。これは労基法十五条だとか施行規則五条ですね、労働条件として明示すべきということの条件の中には入ってないと思うのですが、どうですか。
○野崎説明員 ただいま御指摘のように、雇用期間というものは明示事項に入ってないと思いますけれども、その点は、この雇入通知書のもう一つのねらいは、過去にいろいろ現実にトラブルが起こった、そういう問題は、若干労働基準法十五条の明示の範囲を超えておりましても、あえて含めたということでございまして、雇用期間とか、それからもう少し下の方に労働時間のところで時間外労働があるかないかとか、そういうような問題もあえて含めているわけでございます。この辺はパートタイマーの方も非常に関心の強い問題でございますので、後で問題を起こすということが過去幾つもございましたので、そういうものをあえて加えたということでございます。
○村上(弘)分科員 そうしますと、最初の基本前提、基本精神といいますか、そういうことから見まして、雇入通知書を出すのがトラブル防止、悪く言えば労働基準監督署が現場であれこれ起こるのになるべく手間を省きたいというような考え方が前提にあるような感じがするのです。そういうような問題意識であれば、いま言ったような労基法に明示されてないものをあえて入れてくる、どうしても入れるべきものはなるべく簡単にということで入れない、こういうことにならざるを得ないわけですね。
 とにかく、一般に労働者が就職するときには雇用期間は定めないわけですね。ところが、実際にはパートの労働者に対しては雇用期間を限定している企業が非常に多い。調査によると、三七・六%がそういう状況にあるわけです。しかも、大企業になるほど雇用期間を限定している企業が多い。五千人以上の職場だったら、八割が期間を限定している。つまり、これはいつでもパート労働者を解雇できるようにするということにねらいがあるということは言えるわけですね。また、実際に企業の側も雇用されておる側も、パート労働者というのは、何かいつでも解雇されるものであるかのように思われている。とにかく、そこから身分の不安定ということが一番パート労働者の悩みの中に多いわけです。しかし、最初に言ったように、これは身分の問題じゃないのだ、労働時間に関して全く雇用形態が違うだけだという点から言うと、大変問題だと思うのです。
 そういう状況で、労働省が雇用期間を限定した不安定雇用を何か奨励するかのような印象を与える、こういうものを通知書という形態の中で出してくるということは大変問題じゃないか。労働条件を向上させるという見地から言うならば、これはあってはならぬものだ、そう思うのです。むしろ、たとえば神奈川県の労働部が「女子パートタイマーの労働条件の改善のために」というものを出していますが、そこにはこういう文書がついています。「パートタイマーについては、解雇が容易であると考えている事業主が多くみられますが、一般の労働者と同じように、解雇に関する法理が適用されますから、パートタイマーだからといって安易な解雇はしないよう十分な配慮が必要です。」こういう言葉がついているのです。たとえば、こういう言葉を趣旨の中なり前文なりに入れるべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
○野崎説明員 まず、この雇用契約の期間の問題でございますけれども、雇用契約の期間を定めることの当否は別といたしまして、これを違法と言うわけにはまいらないわけでございます。そうして、いま先生言われましたように、相当多数の場合、現実に期間がついている。それを口約束で済ませるということは、雇用契約の期間というのが現実にある場合に非常に重要なことでございますので、やはり口約束では困るということで、この項目を加えているわけでございます。
 なお、雇用期間の定めがございましても、繰り返し更新されている、そして実質上期間の定めがないような実態の場合には、解雇をする場合と申しますか、契約を打ち切る場合にはやはり解雇とみなされる場合があるということで、注意していただくようにという指導は別途行っているわけでございます。
○村上(弘)分科員 別途行うということですけれども、せっかくこういう雇入通知書を出すのでしょう。私は、非常に大事な手段だと思うのですよ、労働条件の確保だとか向上だとかいう場合。ですから、労働基準法の解雇に関する条項を適用するのだということをやはり明示していくということをやるべきじゃないかと思うのですね。
 このパート労働者には、労働基準法の適用は一般労働者と同じようにこの問題に関しても行われるのだということは確認できますか。
○野崎説明員 パート労働者にも労働基準法が適用があるというのは疑問の余地がないと思います。
 ただ、適用に当たりまして、労働時間が短いとか、いま申しましたように期間の定めがあるとか、そういうような点で通常の常用労働者と違った解釈適用があり得るということであろうと思います。
○村上(弘)分科員 違った解釈の適用があるというのはどういうことですか。
○野崎説明員 ただいまのように期間の定めがある場合に、その期間満了ということで契約を打ち切るということでございますと、これは通常は解雇ではないわけでございます。しかし、先生おっしゃいますように、それが繰り返し更新されているということで期間の定めがない状態になっている、実質的に見てそういう状態になっているという場合には、労働基準法の解雇に関する規定が適用になる。そういうような問題があるということでございます。
○村上(弘)分科員 だから、繰り返し継続している場合のことを当然前提にして聞いているのであって、ですから、労働基準法のその問題に関する適用があるということはあたりまえのことであって、それは確認しておきますが、それがさらに明示されるような工夫はぜひやっていただきたい、こう思います。
    〔白川主査代理退席、主査着席〕
 それから、同じようにここで明示されている中で、年次有給休暇の問題、これがあるのですが、この年次有給休暇の問題、これは非常に大きな問題であって、いままでこれをパート労働者の場合に実態に即してどうするかというのはいろいろな論議もあったようですが、こういう問題について、今度の通知書によれば、五日の場合どうだとか四日の場合どうだとか、こういうことが出されておるのですね。いままでは、こういう問題については労働基準法そのものを適用するということが全体の見地であったと思うのですが、この五日だとか四日だとかいうような考え方を、これ以前に公に出したことはありますか。
○野崎説明員 その問題につきましては、十年ほど前から実は労働省内部でいろいろ検討してまいったわけでございます。しかしながら、正式な見解というのは今回まで出しておりません。
○村上(弘)分科員 そうすると、非常に重要な見解についての論議がある問題について、今度、雇入通知書の説明書の中にちょこっと出してきたというようなことで、きわめて意外な気がするのですね。
 いままでは基発七百九十号通達、これの前提になる通達ですが、その半年前に労働基準局監督課の名前で「労働基準」という雑誌に「就業規則作成の手引 パートタイマーを使用する事業場を中心に」というところでは、明確に「一年間継続勤務し、全労働日数の八割以上出勤した者には継続し、又は分割した六労働日の有給休暇を与える。」こういうように書いておるわけですね。これはおたくが出したものですね。ですから、就業規則をつくるに当たっては、現場ではこの立場で指導しているわけです。
 それから「パートタイマーの職業紹介業務について」という職発四百九十一号通達というものが五十六年九月に出されていますが、ここでも「求人の受理に際して」というところで「労働基準法第三十九条の要件を満たしている者については年次有給休暇を与える」としてあるわけですね。そうすると、これはいま生きているんですか、どうなんですか。
○野崎説明員 先ほど申し上げましたように、労働省の正式の考え方というのは、今回初めて出したものでございますので、それ以前には、そのときそのときのある程度個人的な考え方も含めまして、具体的な処理ということでいろいろな取り扱いがなされてきたのではないかと思います。しかしながら、今回ここにお示ししたような考え方に統一したというものでございます。
○村上(弘)分科員 いや、そのときそのときの個人的な見解のことを言っているのじゃないのですよ。たとえば、いま言った職発四百九十一号通達ですね。これは、労働省そのものが出している公式の見解ですよ。それから、先ほど言いました雑誌に載せた手引きも、基準局監督課の名で出ているんですよ。個人的な見解じゃない。それは、明白に労働基準法第三十九条に基づいてやります、こうなっておるのですね。今度は、それとは違ったものがモデル様式でちょろっと出てきているわけですね。そうすると、これは矛盾するわけですよ。今度新しく出たと言うけれども、じゃ、前のものと矛盾しているけれども、前のものは生きているのか、死んでいるのかということです。
○野崎説明員 先ほどの職業安定局の通達でございますけれども、この文章を見てみますと、「労働基準法第三十九条の要件を満たしている者については年次有給休暇を与えること。」ということになっているわけでございます。
 それで、問題は、どういう場合に労働基準法三十九条の要件を満たしているかという問題でございまして、一般的に労働基準法の要件を満たせば、パートタイマーといえども年休を与えなければならないということは、従来から一貫して変わらないのでございますけれども、たとえば所定労働日数が非常に少ない場合に、この三十九条をどう適用するかという問題につきましては、内部で議論はずっと続けておりましたけれども、今日まで結論を出してこなかったということでございます。
○村上(弘)分科員 要件を満たしているというのは、もうきわめて単純なことです。労働基準法の八割以上働いた者というわけですから、それには適用するというこの大前提を何か低めるような、薄めるようなものであってはならないし、その大前提とは絶対に矛盾しないということをはっきり確認しておきたいと私は思うのです。
 時間が参りましたから、この通知書の一歩前進の面を実効あるものにしていく上で、若干のことを要望もし、聞きもしておきたいわけです。
 この雇入通知書については、雇用者の側の要望意見は聞くということになっているのですが、雇用される側の、あるいはそういう集団といいますか、者の意見を聞くということになっていないのですね。これはぜひとも改善すべきじゃないか、聞くべきじゃないかというように思うのですね。
 それから、こういうものが改善され、そしていいものができた場合に、それをどれだけ実行していくかという点では、去年の社労委での質問では、全体の企業にこれを全部送るというようなことになっていますが、試行期間中も、いまは試行中ですけれども、こういうものを目下試行していますということで、全企業に周知する努力も必要じゃないかというように思うのです。そういうことについてお聞きしたい。
 それから最後に、労働大臣に全体のいままでの問題についてお聞きしておきたいのです。
 御承知のように、いま貿易摩擦が深刻ですが、この貿易摩擦が深刻になる大きな理由の一つに、日本の劣悪な労働条件といいますか、低賃金だとか長時間労働だとか労働密度が高いとか、そういう問題について、特にパート労働者がきわめて無権利で劣悪な状態にあるというようなことが日本のいわば競争力が強い大きな理由の一つにもなり、国際的にも問題になっているわけですね。
 そういうことから言うと、今度の雇入通知書を出す大前提の考え方が、労働基準法の最低の労働条件を確保し、同時にその向上を目指すものだという大前提を大臣としてしっかり確認して仕事に当たってほしいということと、それから内容の改善については、私がいま幾つか挙げましたが、そういう点については前向きに大いに努力するという立場に立ってほしいということと、これを実効あるものにしていく上では、PRの問題とあわせて、やはり労働基準行政における人の問題ですね。人がきわめて少ないですね。けさも、十年かかってやっと一企業の実態がわかるというような状況にありますが、こういう面での充実を図る。
 この三点についての大臣の考え方と、あわせて、よく問題になる課税最低限七十九万ですね、これが低賃金の一つの前提にもなっているわけです。これは大きな問題で、労働省だけでということにいかぬ問題ですけれども、前回の労働大臣のここでの答弁を見ますと、そういう問題について積極的に打開するための努力をしたいというようなことが言われていますが、大臣としては、それを受け継いで検討されたか、どういう努力をされるか、それもお聞きしたいと思うのです。
 両方にお聞きしましたが、時間かないので、まとめてひとつお願いします。
○松井(達)政府委員 最初に、労働組合に対する周知の問題について答えさせていただきます。
 この雇入通知書を決めるに当たりましては、労働組合の四団体の方にも、こういうことをやるんだということを話して、その意見は伺っております。それで、今後試行の結果を踏まえて見直しを行う際にも、やはり労働組合の意見も事業主側と同様に聞いてまいりたいというふうに思っております。
○大野国務大臣 パートタイマーの問題につきましては、何といっても近年大変増加しており、それだけに重要であります。しかしながら、それだけにまた複雑ないろいろな問題がございます。きょう議論なさっておったところの雇入通知書等は一歩前進であるというふうに私は思っておりますが、いずれにしても、そういうような将来的な問題もございますので、現在省内でプロジェクトチームをつくりまして、パートタイマーの問題についてあらゆる角度から勉強しておる段階でございます。近い将来その結果もだんだんと出てくるとは思います。
 最後に、税制の問題が出ましたが、これはやはり労働省だけというわけにはまいりませんので、当局とも話し合いをしなければなりませんが、それだけをとってという議論になると、なかなかむずかしいと思っております。
○村上(弘)分科員 終わります。
○上村主査 これにて村上弘君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして、労働省所管についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明後七日月曜日午前九時三十分から開会し、厚生省所管について審査を行うことといたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十分散会