第101回国会 本会議 第17号
昭和五十九年四月十三日(金曜日)
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  昭和五十九年四月十三日
    午後二時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 日本育英会法案(内閣提出)及び日本体育・学
  校健康センター法案(内閣提出)の趣旨説明
  及び質疑
    午後二時四十三分開議
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。
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 日本育英会法案(内閣提出)及び日本体育・学
  校健康センター法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(福永健司君) この際、内閣提出、日本育英会法案及び日本体育・学校健康センター法案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣森喜朗君。
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 日本育英会法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 昭和十九年日本育英会法施行以来、日本育英会は逐年発展を遂げ、今日まで同会を通じて学資の貸与を受けた学生及び生徒は約三百四十万人に達し、これらの人材は社会の各分野で活躍し、我が国の今日の発展に多大の寄与をいたしてまいりました。
 しかしながら、最近における高等教育等の普及状況を踏まえ、社会経済情勢の変化に対応して日本育英会の学資貸与事業の一層の充実を図るためには、その内容、方法等について抜本的な見直しを行うことが必要であり、このことは、第二次臨時行政調査会の答申等や文部省に置かれた育英奨学事業に関する調査研究会の報告でも指摘されたところであります。
 このような要請にこたえるべく、今般、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与するため、日本育英会の学資貸与事業に関し、無利子貸与制度の整備、有利子貸与制度の創設、その他制度全般にわたる整備改善を行うほか、日本育英会の組織、財務、会計等の全般にわたる規定の整備等を行うこととし、現行の日本育英会法の全部を改正する法律案を提出いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。
 まず第一に、日本育英会は、すぐれた学生及び生徒であって経済的理由により修学に困難があるものに対し、学資の貸与等を行うことにより、国家及び社会に有為な人材の育成に資するとともに、教育の機会均等に寄与することを目的とすることといたしました。
 第二に、日本育英会の組織については、理事は文部大臣の認可を受けて会長が任命することとし、また、法人運営の適正を期するため、会長の諮問機関として評議員会を置くなどの整備を行うことといたしました。
 第三に、日本育英会の業務については、学資貸与事業について次のような改正を行うことといたしました。
 まず、無利子貸与制度について、現行の一般貸与と特別貸与を一本化することといたしました。これに伴い、特別貸与を受けた者が一般貸与相当額の返還を完了したとき、その残額を免除してきた従来の特別貸与返還免除制度を廃止することといたしました。
 次に、現行の無利子貸与制度に加えて、学資貸与事業の量的拡充を図るため、新たに低利の有利子貸与制度を創設することといたしました。この有利子貸与制度には、死亡、心身障害返還免除制度を設けることといたしました。
 なお、無利子貸与にあわせて有利下貸与を受けることができる道を開くことといたしております。
 第四に、日本育英会が債券を発行することができる旨の規定を設け、国の一般会計以外からの資金を導入し得ることといたしました。なお、これにより、政府から資金運用部資金の貸し付けを受けて、有利子貸与事業に対する貸付資金の原資に充てることができるようにしたい考えてあります。
 また、債券発行規定を設けることに伴い、日本育英会の長期借入金または債券に係る債務についての政府保証の規定を整備するほか、日本育英会の財務、会計について所要の規定の整備をいたしております。
 第五に、日本育英会の監督、罰則等に関する規定を整備するとともに、関係法律についても所要の規定を整備することといたしました。
 このほか、この全部改正の機会に、現行の片仮名書き文語体の法文を平仮名書き口語体に改めることとし、法文の平明化を図ることといたしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 次に、日本体育・学校健康センター法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 この法律案は、昭和五十八年三月十四日に臨時行政調査会が行った行政改革に関する第五次答申に沿って、特殊法人の整理合理化を図るため、国立競技場と日本学校健康会を統合し、日本体育・学校健康センターを設立しようとするものであります。その統合の趣旨は、両法人の業務について見ますと、国立競技場はその設置する体育施設の運営に関する業務を、日本学校健康会は学校安全及び学校給食に関する業務をそれぞれ行ってきており、その業務の対象に国民一般と児童、生徒等との違いはありますが、広く国民の体力の向上や健康の保持増進の面で密接な関係を有するものであることにかんがみ、両法人を統合しようとするものであります。
 この法律案におきましては、日本体育・学校健康センターに関し、その目的、組織、業務、財務、会計、監督等につきまして所要の規定を設けるとともに、従来の両法人の解散等につきまして規定することといたしております。
 その内容の概要は次のとおりであります。
 まず第一に、日本体育・学校健康センターは、体育の振興と児童、生徒等の健康の保持増進を図るため、体育施設の運営、児童、生徒等の災害に関する必要な給付、学校給食用物資の供給等を行い、もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とするものであります。
 第二に、日本体育・学校健康センターは、法人といたしますとともに、役員として、理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内並びに非常勤の理事三人以内を置き、理事長及び監事は文部大臣が、理事は文部大臣の認可を受けて理事長がそれぞれ任命することとし、その任期はいずれも二年といたしております。なお、役員数につきましては、行政改革の趣旨に沿って統合の前に比べその数を縮減いたしております。また法人運営の適正を期するため、理事長の諮問機関として運営審議会を置くこととし、業務の運営に関する重要事項について審議することといたしております。
 第三に、日本体育・学校健康センターの業務につきましては、従来の両法人の業務を承継して、
 一 その設置する体育施設及び附属施設の運営並びにこれらの施設を利用しての体育の振興のための必要な業務
 二 義務教育諸学校等の管理下における児童、生徒等の災害に関する災害共済給付
 三 学校給食用物資の買入れ、売渡しその他供給に関する業務
 四 体育、学校安全及び学校給食に関する調査研究並びに資料の収集及び提供その他の体育、学校安全及び学校給食の普及充実に関す業務を行うことといたしております。また、この法人は、以上のほか、文部大臣の認可を受けてその目的を達成するため必要な業務を行うことができることとするとともに、これらの業務の遂行に支障のない限り、その設置する体育施設及び附属施設を一般の利用に供することができることといたしております。
 なお、災害共済給付事業につきましては、災害共済給付契約、共済掛金、給付基準、学校の管理下における児童、生徒等の災害の範囲、学校の設置者の損害賠償責任に関する免責の特約等に関し、また、学校給食用物資の供給に関する業務につきましては、売り渡し価格、供給の制限等に関し、従前と同様の規定を設けることといたしております。
 第四に、日本体育・学校健康センターの財務、会計、監督等につきまして、一般の特殊法人の例に倣い所要の規定を設けることといたしております。
 第五に、従来と同様に保育所の管理下における児童の災害につきましても、災害共済給付を行うことができる規定を設けることといたしております。その他、日本体育・学校健康センターの設立、国立競技場及び日本学校健康会の解散等につきまして、所要の規定を設けることといたしております。
 以上が法律案の趣旨でございます。(拍手)
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 日本育英会法案(内閣提出)及び日本体育・学
  校健康センター法案(内閣提出)の趣旨説明
  に対する質疑
○議長(福永健司君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤徳雄君。
    〔佐藤徳雄君登壇〕
○佐藤徳雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本育英会法の改正案につきまして、中曽根総理並びに各関係大臣に対して質疑を行うものであります。
 総理、今国民は大それたことを考えたり望んだりしているのではありません。それは極めて常識的で、だれもが共通的な問題の解決を望んでいるのであります。
 端的に申し上げますと、暮らしを立てるために、増税ではなく、暮らしに役立つ大幅な減税であります。雇用の不安でなく、安定した暮らしと保障された雇用であります。不況の深まることではなくて、景気の早期回復、内需の拡大で日本の経済を立て直し、とりわけ購買消費の拡大を望んでいるのであります。そしてまた、軍拡ではなくて軍縮であり、戦争への準備態勢ではなくて確かな平和と民主主義の確立なのであります。
 しかしながら、現実の中曽根内閣の進めている実態は、残念ながら国民が求めている常識ではなくて、むしろそれとは逆行する道をひたすら突き進んでいることを厳しく指摘をしておかなければなりません。五十九年度政府予算が明らかにしているように、福祉や教育を犠牲にし、防衛費の異常な突出は、そのすべてを物語っています。P3CやF15戦闘機を削減することによって、お年寄りの望みがかなったり、あるいはまた過大学校は数多く解消でき、四十人学級の実現も可能となるのであります。ましてや、議題として提案されました日本育英会法の改正につきましても、有利子制の導入等をしなくても済むわけであります。
 総理は、本国会の施政方針演説の中で、第三の改革として教育改革を取り上げ強調されました。私は、丹念に聞き、議事録を幾度も読み返しました。それでも、総理の訴えは私の心を素通りしていってしまうのであります。総理、なぜだと思いますか。それは、あなたがおっしゃっていることとやろうとしていることが余りにも相反しており、矛盾が多いからなのであります。(拍手)教育改革は、広く国民的合意を求め、今日の教育の荒廃を断ち切り、創造的、発展的な民主教育を推進することにあります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 そのような観点に立ってお伺いしたい第一の点は、憲法と教育基本法にかかわる教育の機会均等の問題であります。
 憲法第二十六条は、教育を受ける権利、教育の義務について明記されており、これが基本となり、それを受けて教育基本法第三条は教育の機会均等を保障し、特に第二項においては、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」としているのであります。このように、憲法、教育基本法に基づいて日本育英会法も第一条目的の条文で、「教育の機会均等に寄与することを目的とする。」とうたっているのは当然のことでありましょう。いわば教育の機会均等は教育の基本原則であります。
 政府は、本改正法案の中で、世界に類例のない、奨学金に有利子制度を導入しようとしているわけであります。これは、まさに貸与制から給与制へと移行する上での逆噴射であり、憲法、教育基本法の理念に反するものと言わなければなりません。(拍手)教育の機会均等に対する総理並びに文部大臣の所見をお伺いをいたします。
 質問の第二点は、奨学金制度の国際的動向と我が国における奨学金制度のあり方についてであります。
 事業予算、奨学生数、奨学金額等の事業規模を比較しても、我が国の現状は、欧米先進諸国に比べ低位に置かれているのであります。諸外国の比較の中で、例えば率で比べてみますと、アメリカでは五割、イギリスでは九割、西ドイツでは四割、そして日本はわずか一割にしかすぎず、額におきましても、月額にして西ドイツの半分なのであります。そして、外国ではそのほとんどの奨学金は給与制になっている現状から見て、まさに国際的にも奨学金制度は教育の根幹としてとらえているのであります。これら国際的動向からいっても、現行の育英会法の無利子貸与制は最低限であり歯どめであると言わなければなりません。
 本改正法案の成案に当たり、昨年六月二十八日、文部大臣の諮問機関であります育英奨学事業に関する調査研究会から、「今後における育英奨学事業の在り方について」という報告書が提出されましたが、その調査研究会でさえ次のように報告をしています。
 すなわち、「育英奨学事業は教育の機会均等を確保するための基本的な教育施策であり、国の施策として育英奨学事業を実施しなければならないものである以上、先進諸外国の公的育英奨学事業が給与制を基本としていることにも留意し、現行の日本育英会の無利子貸与事業を国による育英奨学事業の根幹として存続させる必要がある。」ということであります。
 中曽根総理の言う「来るべき二十一世紀を展望し、教育全般にわたる改革」とは、まさにこのことが生かされなければなりませんし、国民が納めた税金が福祉や教育といったすべての国民にとって必要な部門に優先的に使われる改革でなければなりません。望ましい育英奨学金のあり方と展望についてどうお考えになっておられるのか、総理並びに文部大臣、大蔵大臣の見解をお伺いをするものであります。
 欧米先進国における奨学金の現状については、先ほど申し述べたとおりでありますが、これは一九七九年に批准されました国際人権規約にも明確に示されております。それだけに、この国際人権規約は大きな重みがあるのであります。特に、この規約第十三条二項(c)は、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」とあります。既に世界六十九カ国では批准をしているのでありますが、人権規約を認めたものの、この二項(c)の中の「無償教育の漸進的な導入」を留保した国は、アフリカのルワンダと我が国の二カ国だけてあります。
 一九七九年の第八十七回国会で、この国際人権規約を全党一致で採択するに当たって、政府は、(c)項についての留保は、法的解釈は別にして、将来留保を解除する方向に努力すると約束をしたはずでありますが、あれから既に四年余を経過しております。これについて改めて政府の見解を求めるものであります。
 質問の第三点は、文部行政の主体性の問題についてであります。
 御承知のように、文部省設置法第四条では、「学校教育、社会教育、学術及び文化の振興及び普及を図ることを任務とする」とあります。奨学制度が国家予算の直接的運用にある以上、大蔵省並びに閣議との協議が必要とされることは理解できます。しかしながら、国家予算全体の見地による協議は、各年度予算の確定の場でなされれば足りるのであって、いわば他の行政官庁にもある一般的制約の一つでしかないと理解するのが至当なのであります。
 ところが、改正案第四十三条では、政令事項として大蔵大臣も含めた閣議決定にゆだねている事項を除いて、奨学制度にかかわる文部行政のすべてについて、文部大臣と大蔵大臣との協議を義務づけているのであります。これは、現行法上に全くない重要な特質の一つであると言わなければなりません。
 さらに改正法案の中には、育英会の業務手続のすべてを規定する業務方法書の作成、変更、記載事項から毎事業年度の事業計画の作成までが含まれていることを見ますと、法律上「協議」とされていることが事実上の制約となることが懸念されるのでありまして、実質的には認可と同等の役割を果たすことになりかねません。文部省は、育英会事業を通じ学校教育、学術の振興の立場から、主体性を持って独自の文部行政を展開すべきだと思いますが、文部大臣の所見をお聞かせいただきたいのであります。
 最後に私は、有利子奨学金に対する政府の見解をお伺いいたします。
 今日、十万円前後の大学卒業者の初任給では、現行の無利子貸与分でも卒業後の返還は大変なのに、利子つきとなればそれを借りた学生の将来負担が大きくなることは言うまでもありません。改正案では、当面の利子つき奨学金が三%の利子であります。しかも、その原資は一般会計ではなく財投資金であることを考えましたときに、財投そのものからいえば利率は七・一%で融資されておりますので、将来的には行革によって三%が七・一%にまで引き上げられるのではないかという心配もされておりますが、三%にしたその根拠と、さらに将来的見通しについてどうお考えになっておられるのか、お伺いをいたします。(拍手)
 なお、将来民間資金の導入もあり得るのではないかと危惧されますが、その点についてもあわせてお答えをいただきたいのであります。
 私は、質問の締めくくりとして申し上げておきたいことは、社会のすべての構成員が自己の能力を最高度に発揮をし、人間性を豊かにすることが可能な社会、それこそが日本の二十一世紀に目指すべきものであり、そのために児童、生徒、学生が持っている無限の可能性を引き出してやらなければなりませんし、そのための教育の振興こそ現代の私どもの任務と責任であると考えるわけであります。
 以上、今回提出されました法案にかかわる質問をいたしましたが、本法案の撤回を求め、誠意のある御答弁を期待をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えをいたします。
 まず、今回の改正案が教育の機会均等の方針に対して教育基本法の理念に反するのではないかという御質問でございます。
 教育の機会均等の理念の実現に努むべきことは当然でありまして、政府としても、施策上重要な課題としてこれを推進しております。このたびの制度の改正は、事業の量的拡充を図ってできるだけ多くの学生にこの機会を与えるという考えに基づくものでありまして、教育の機会均等を拡大するという意味において教育基本法の趣旨に沿っていると考えております。
 次に、育英奨学金制度のあり方について御質問がございました。
 今回の教育改革は、来るべき二十一世紀を展望して、教育全般にわたる改革を断行すべきものであると考えて行っておるものでございます。今度の制度改正は、臨調答申等を踏まえまして、時代の要請にこたえる改革であると考えております。この育英資金制度がさらに有効に活用されまして、その恩沢、恵沢を受けた人たちが社会に対して感謝をし、さらに後輩に対して、その恩沢を拡大して受けられるように、精神的にも物質的にもこれらの先輩たちが協力することが望ましいと私は考えます。したがって、育英奨学事業につきましては、さらにこれを改善し発展させようと考えておるものなのでございます。(拍手)
 国際人権規約第十三条との問題につきましては、我が国におきます高等教育における私学教育の役割というものは極めて重大なのでございます。そして、私学といわゆる国公立学校との均衡という問題も非常に重要な問題でございます。
 したがいまして、私立学校等を含めて全部全面的に無償化を図るということは、現在の財政状況その他から見まして極めて困難な状態にあり、日本の高等教育の根幹にかかわる問題を内包しております。そのような理由から、慎重な検討を行わんとしておるものであります。したがって、今のような状態にかんがみまして、この条約の留保の撤回は考慮しておりませんが、今後さらに諸般の情勢を注視して検討してまいりたいと思っておる次第であります。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 佐藤徳雄議員にお答えをいたします。
 第一に、制度改正と教育の機会均等についてでございますが、今回の育英会法案は、最近における高等教育等の普及にかんがみまして、育英奨学事業の量的拡充のため、現行の無利子貸与制度の単価などの改善を図るとともに、低利の有利子貸与制度を創設するものでございまして、教育基本法の趣旨に沿うものと考えております。今後とも、教育の機会均等を図る観点から事業の充実に努めてまいる所存でございます。
 今後の育英奨学事業のあり方についてお尋ねでございますが、今回の育英奨学制度の改善に当たりまして、諸外国の育英奨学制度が給与制を基本としていることの実態や、奨学事業が教育の機会均等に寄与する基本的な教育施策であること等に留意をいたしまして、無利子貸与制度を根幹として存続させ、改善を行いますとともに、その量的拡充を図るために、新たに財政投融資資金の導入によって低利の有利子貸与制度を創設しようとするものでございます。今後とも制度改正の趣旨に沿って事業の充実に努めてまいります。
 第三に、国際人権規約第十三条第二項(c)項についてでございますが、高等教育について私立学校の占める割合の大きい我が国におきましては、私立学校を含めて無償化を図ることは、我が国高等教育のあり方の根本にかかわることでございます。現時点におきましては、従来の方針を変更して漸進的にいたしましても無償化の方針をとることは適当でないということで、留保いたしております。
 なお、我が国では、本規定の趣旨にありますように、高等教育の機会の確保のため、かねてから私学助成、育英奨学事業等の充実をさらに図ってまいりたいと存じます。
 第四は、法案四十二条の大蔵大臣との協議規定についてでございますが、特殊法人の財務会計に関する重要事項は大蔵大臣と密接な連絡を保つ必要がございます。本改正によりまして、大蔵大臣との協議規定を最近の立法例に倣い整備を行おうとするものでございまして、これにより文部省の主体性が損なわれるものではないと考えております。
 利子を三%にした根拠と将来的見通し、そして民間資金導入についての見解を求められたわけでありますが、有利子貸与制度の貸与利率は、在学中は無利子といたしております。卒業後は、私立大学奨学事業援助の貸与利率等を勘案いたしまして、基本的な貸与額は年利三%といたしました。今後ともできるだけ低利とする必要があると考えております。
 有利子貸与事業の資金といたしましては、国が実施する事業であるということ、長期的、安定的な資金の確保が確実であるということ、比較的低利であることが望ましいこと等を勘案いたしまして、財政投融資資金を導入いたしたところでございますが、民間資金の導入は当面考えてはおりません。このことを申し上げておきます。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
○国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は、育英奨学金のあり方と展望やいかに、こういうことであります。
 育英奨学事業につきましては、今後ともその量的な拡充の要請にこたえることが必要であると思われます。しかし、現下の国の財政事情を勘案いたしますならば、従来のように一般会計のみに依存する制度では、量的拡充は困難であります。こうした事情を踏まえて、臨時行政調査会答申中にも、「外部資金の導入による有利子制度への転換、返還免除制度の廃止を進めて、育英奨学金の量的拡充を図る。」この旨指摘されておるところであります。今回の育英奨学制度の改正は、こうした臨調答申の趣旨等を踏まえて、財政投融資資金を原資とする有利子貸与を創設して、育英奨学金の量的拡充を図ることとしたものであります。なお、無利子貸与についても、対象の重点化を図りながら、貸与月額の引き上げを図ることとしたところであります。(拍手)
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○副議長(勝間田清一君) 田中克彦君。
    〔田中克彦君登壇〕
○田中克彦君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております日本体育・学校健康センター法案に対し、政府の考え方をただしてまいりたいと存じます。
 質問に入るに先立ち、一言申し上げておきたいと存じます。
 言うまでもなく、今国会の一つの大きな課題は、総理の提唱する教育改革であります。青少年の非行化、暴力化をなくすため、知育偏重の教育から徳育、体育をも重視をし、心身ともに健全な人間づくりを目指す教育のあり方が問われているとき、これをめぐって教育改革の正しい方向を求める論議を尽くすことは国会の重大な責任であります。
 政党政治に与野党があり、与野党は意見が異なり、真っ向から議論して渡り合うことはむしろ当然であります。いたずらなやじで終始発言が聞き取れないような国会では、徳育が欠けているなどと言って教育改革を論ずる資格はありません。また、国民の信頼も得られません。国権の最高機関にふさわしい権威と品位を保ってこそ、論戦に重みが出てくるのであります。どうか意見の異なることにも寛容さを持ってしばらく御清聴のほどをまずはお願いを申し上げておきます。(拍手)
 本法案は、昭和五十八年三月十四日財界主導による臨時行政調査会が行った行政改革に関する第五次答申の趣旨を忠実に履行するために、国立競技場及び日本学校健康会を統合し、従来のそれぞれの法人任務を引き継ぎ、日本体育・学校健康センターを新たに設置しようとするものであります。
 そもそも、今回統合の対象となっている日本学校健康会なるものは、日本学校給食会と日本学校安全会とを統合して、日本学校健康会法に基づき誕生したものであります。本法は、昭和五十五年二月十八日第九十一通常国会に提出されましたが、衆議院解散によって廃案となり、同年十月十四日第九十三臨時国会に再提出されて審議未了、そのまま継続審査扱いとなり、第九十四国会に持ち越され、昭和五十六年五月十五日原案修正して可決され、参議院に送付。以後、第九十五国会を挟み、昭和五十七年四月十六日第九十六国会に至って参議院本会議で修正可決、再び衆議院への送付を受けて、ようやく同年六月十五日衆議院本会議において可決成立の運びとなったものであります。
 この長い審査経過が示すとおり、本来学校給食と児童生徒の災害に対する共済給付を任務とする学校安全会という全く異質な法人組織を一体化することの無理がこの論議の対象となって思わぬ審議の長期化を招いたものであります。このような審議の経緯があるにもかかわらず、さらに今回その上に国立競技場と日本学校健康会とを一体化するという発想は、体育の振興と児童生徒の健康保持増進という極めて広義な解釈と理由づけによって行政の減量化のみを先走りさせた無謀な合理化生言わざるを得ません。政府は、日本学校給食会と日本学校安全会統合のための日本学校健康会法の審議経過をどう考えているのか。さらに、この上日本学校健康会と国立競技場とを一体化する理由を見出すことは極めて至難でありますが、その意義と理由また行政上のメリットについて明らかに示していただきたいのであります。
 しかも、この際特にお尋ねしたいことは、長時間審議を重ねた日本学校健康会法は、その可決成立に当たって衆参両院ともそろって附帯決議をつけている点であります。すなわち、
 一 運営審議会の委員の選任に当たって広く関係者の意見を反映する。
 一 学校の施設・設備の安全性、環境衛生の維持向上及び学校給食の普及充実を図るとともに、養護、栄養職員を適正に配置する。
 一 災害給付は、特に重度障害者の不服審査処理を含め改善充実する。
 一 米、小麦粉、牛乳に対する国庫補助の継続、食品、食器等の検査及び関係者に対する必要な情報の提供、研修の充実に努める。
 一 それぞれの職員雇用の継続と労使慣行の継続を図る。
などであります。つまり、今必要なことは、行政の整理統合そのことよりも、これら学校健康会事業が一体化されたことによって一層その内容が充実強化されてこそ行政は生き生きとし、国会の意見は反映されたということができるのであります。
 にもかかわらず、本年度政府予算案では、小中学校給食施設設備の整備費を前年対比十七億一千八百万円も減額をし、また、給食用の牛乳の補助についても一本五円を四円に切り下げるなど内容は大きく後退をしているのでありまして、行革による成果を期待するどころか、実質的には学校給食体制の低下のみが目につくのであります。政府はこのことをどう説明しようとするのか。文部大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 さらに、もう一つの問題点は、日本学校健康会と各都道府県組織との関係であります。
 さきに述べましたとおり、この健康会は日本学校給食会と日本学校安全会とを統合して昭和五十七年六月発足したものでありますが、日本学校安全会は名実ともに一つの組織体として都道府県でそれぞれ支部となっておりますが、学校給食会については今も依然として都道府県単位に法人組織として独立しており、日本学校健康会法によって統合されたとはいいながら、実態は少しも変わっておりません。言いかえれば、各都道府県の学校給食への対応は長年の積み重ねによって十分に定着をし、自立して運営できる状況にあるということであります。
 このような実態にかんがみ、今回の国立競技場を学校健康会と統合することは、重ねて名目だけの組織統合によって法人の数だけを減らせるという臨調答申に忠実に従う行革であることを如実に物語っているのであります。実体の伴わないこのような合併統合を繰り返すことは、議会の良識の名において許すわけにはまいりません。政府の見解を改めて問うものであります。
 一方、国立競技場でありますが、この施設が持っている役割と任務は、申すまでもなく、良好な管理運営によって広く市民に開放され親しまれ利用されるとともに、国民的、国際的スポーツの競技場として国民体育振興に寄与するものでなければなりません。したがって、その運営は、施設の持つ固有の任務と機能が良好な管理のもとにいつでも発揮できる体制が必要であり、真に有効適切に活用できる条件を整えることこそ望ましいのであります。
 昭和三十九年、日本の高度経済成長の夜明けとも言うべき東京オリンピックが華々しく開催をされ、全世界に経済大国日本の国力を誇示する役割を果たした国立競技場に、今は往時をしのぶ影すらもありません。今ここで、いかに収益性が問われるとはいいながら、若い人を集めての歌謡ショーを催し、それによってやりくりされている現状をどう考えているのでありましょうか。本法成立による二法人組織の統合によってこの問題が一気に解決できるとでも思っているのでありましょうか。見解を承りたいのであります。
 最後に私は申し上げたい。中曽根総理は、教育改革に意欲を燃やし、口を開けば教育改革を論じ、施政方針演説においては、いわれるところの教育臨調を打ち出したのであります。その一方で、臨調答申をまともに受けて教育予算に大なたを振るい、本来聖域とさるべき教育を犠牲にし、軍事予算を突出させているのであります。本法による法人組織統合も、安上がり教育行政の一環であり、容認することができません。このように矛盾きわまるポーズの政治こそ中曽根内閣の正体であると断ぜざるを得ません。
 憲法と教育基本法の精神に基づく民主的教育発展のためにこそ、政治と行政はその保障を与えるべきであります。教育臨調構想の再考を促すとともに、総理の見解を改めて問い、本法案の速やかな撤回を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 田中議員にお答えをいたします。
 日本学校健康会と国立競技場の統合はいかなるメリットがあるか、名目的統合にすぎないではないかという御質問でございますが、日本体育・学校健康センターの設立は、臨時行政調査会の第五次答申に基づき特殊法人の整理合理化を行うために実行したものであります。国立競技場と日本学校健康会の統合により、法人の役職員定員の縮減その他組織機構の整理合理化を図るほか、両法人の業務の連携を通じて国民の体力や健康の保持増進に寄与することが期待されるものなのであります。
 残余の答弁は文部大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 田中克彦さんにお答えをいたします。
 御質問の第一点は、日本学校健康会法の審議経過をどのように受けとめているかということでございますが、日本学校健康会法案の審議につきましては、御指摘ございましたように、長時間の御審議をいただいたところでございますが、このたびの臨調答申に沿う統合を図るに当たりましても、その際にいただきました有益な御意見を生かし、児童、生徒等の健康の保持増進のための学校給食及び学校安全がなお一層充実されるように努めてまいる所存でございます。
 第二点は、日本学校健康会と国立競技場の統合の理由ということでございますが、国立競技場と日本学校健康会の両法人が国民の体力向上と健康の増進に共通に資するものであるということにかんがみまして、その統合を図るものでございます。この統合により、両法人の業務の連携を図っていくとともに、法人の役職員定員の縮減その他組織機構の整理合理化を図ってまいりたいと存じます。
 第三点は、学校給食の施設整備費等に対する国庫補助の縮減についてでございましたが、昭和五十九年度におきます学校給食の施設整備費や学校給食用牛乳等に対する国庫補助につきましては、臨調答申の趣旨を踏まえるとともに、現下の厳しい財政事情から縮減したものでございますが、各市町村におきます必要な事業量の確保を図るなど学校給食の円滑な実施に今後とも努めていくところでございます。
 第四点は、両法人の統合は名目だけではないかというお尋ねでございますが、国立競技場は、その設置する体育施設の運営、体育に関する資料の収集及び提供その他体育の振興に関する業務を行っているものであります。また日本学校健康会は、学校安全及び学校給食の普及充実、災害共済給付事業及び学校給食用物資の供給等に関する業務を行っているものでございます。これらの業務は、その対象が国民一般と児童・生徒等との違いはございますが、広く国民の体力の向上や健康の保持増進の面で密接な関係を有するものであることにかんがみまして、両法人を統合することといたしたものでございます。この統合によりまして、法人の役職員定員の縮減その他組織機構の整理合理化が図られるほか、体育、学校安全及び学校総食に関する調査研究など、それらの普及充実に関する業務の連携も期待できるものと考えております。
 第五点は、国立競技場の有効活用についてでございますが、国立競技場は我が国を代表する競技施設として各種の国内または国際的な競技大会の会場として使用されております。今後とも国民的、国際的な体育振興を図る上で重要な役割を果たしていくために、その条件整備に努めている所存でございます。なお、これと同時に、主たる業務であります競技会の開催等に支障のない範囲内で、施設を国民のために種々の面で活用していくことも意義あることと考えておりまして、今後とも適切な利用を図っていくところでございます。(拍手)
○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十四分散会
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