第101回国会 本会議 第23号
昭和五十九年五月八日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程第二十号
  昭和五十九年五月八日
    午後一時開議
 第一 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源
    の確保を図るための特別措置等に関する
    法律案(内閣提出)
 第二 民間航空機貿易に関する協定附属書の改
    正の受諾について承認を求めるの件
 第三 著作権法の一部を改正する法律案(内閣
    提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 昭和五十九年度の財政運営に必要な
  財源の確保を図るための特別措置等に関する
  法律案(内閣提出)
 日程第二 民間航空機貿易に関する協定附属書
  の改正の受諾について承認を求めるの件
 北西太平洋における千九百八十四年の日本国の
  さけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議
  定書の締結について承認を求めるの件
 日程第三 著作権法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 教育職員免許法等の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
○議長(福永健司君) これより会議を開きます。
     ―――――・―――――
 日程第一 昭和五十九年度の財政運営に必要
  な財源の確保を図るための特別措置等に関
  する法律案(内閣提出)
○議長(福永健司君) 日程第一、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長瓦力君。
    ―――――――――――――
 昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保
  を図るための特別措置等に関する法律案及び
  同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔瓦力君登壇〕
○瓦力君 ただいま議題となりました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源を確保するため、所要の特別措置を定めるとともに、特例公債の償還のための起債の特例を定めようとするもので、その主な内容を申し上げますと、
 第一に、特例公債の発行についてであります。
 政府は、昭和五十九年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債を発行することができることとしております。
 第二に、国債費定率繰り入れ等の停止についてであります。
 昭和五十九年度における国債の元金の償還に充てるべき資金の一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額の繰り入れ等は行わないこととしております。
 第三に、特殊法人からの一般会計への納付についてであります。
 日本電信電話公社及び日本専売公社は、昭和五十八事業年度の利益のうち、それぞれ二千億円、三百億円に相当する金額を、昭和六十年三月三十一日までに国庫に納付しなければならないこととしております。
 第四に、特例公債の償還のための起債の特例についてであります。
 すなわち、従来、特例公債について定められておりました借りかえ禁止規定にかえて、政府は、昭和五十九年度以前の各年度において発行した特例公債については、財政状況を勘案しつつ、できる限り借換債の発行を行わないよう努めるとともに、借換債の発行を行った場合においては、その速やかな減債に努めるものとする旨の規定を設けることとしております。
 以上がこの法律案の概要であります。
 本案につきましては、去る四月十三日竹下大蔵大臣から提案理由の説明を聴取し、十七日から質疑に入り、参考人から意見を聴取する等慎重に審査を行い、二十七日質疑を終了いたしましたところ、越智伊平君外三名から、自由民主党・新自由国民連合提案に係る施行期日を公布の日に改めることとする修正案が提出されました。
 次いで、原案及び修正案を一括して討論を行い、討論終局後、採決いたしました結果、修正案及び修正部分を除く原案は、いずれも多数をもって可決され、よって本案は修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しましては附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福永健司君) 討論の通告があります。順次これを許します。浜西鉄雄君。
    〔浜西鉄雄君登壇〕
○浜西鉄雄君 ただいま委員長から報告がありました昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案について、私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、反対の立場から討論を行います。(拍手)
 一口で言えば、この法律案は、借金のやりくりをするためさらに借金を重ねようとする内容のものであります。
 政府は、赤字国債発行はやむを得なかったとする言いわけにオイルショックを一つの理由づけにいたしておりますが、同じようにオイルショックを受けました先進諸国との比較を見るに、我が国の場合はけた外れの国債発行額となっており、今や世界の経済学者にとって最も興味ある対象になっているのであります。すなわち、日本の場合は、軍備費の割合が小さいのに、戦時中の国債依存率とほぼ同じ水準の国債を出しており、百兆円を超す残高を抱えても、一向に慌てた様子が見えないと不思議がっているのであります。日本だけで、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスの四カ国の国債発行額とほぼ同額に近く、アメリカは日本の半分以下で、国債依存度は四・七%と日本の約八分の一であり、しかもこの四カ国は、いずれも第一次オイルショックの後、毎年少しずつ国債発行額を減らしておるのであります。しかし、我が国はその逆をいっているのであります。
 ちなみに、大蔵省の国債整理基金の資金繰り状況についての試算を見るに、六十年度から赤字国債の償還財源として借換債を発行した場合、五十九年度末の発行残高は、御案内のように百二十二兆二千億円であり、六十一年度末には百四十二兆四千億円となり、六十七年度末には百七十四兆九千億円とふえ続け、七十二年度末には何と二百兆円に迫るという恐るべき借金地獄に落ち込むのであります。償還額だけでも六十七年度には二十二兆二千億円となり、七十二年度には本年度の四・六倍の二十九兆九百億円に達するのであります。まさに壮大なる試行錯誤、返すめどなきサラ金財政の行き着くところ、そのツケは、つまるところ国民の借金として世々代々にわたり負担を強いられることになるのであります。国民の負託にこたえるべき国会が負託にこたえ得ず、逆に国民を裏切り、子々孫々にツケを残していく政治のあり方を、私は何としても許すことはできないのであります。
 振り返れば、昭和四十年十二月の予算委員会で、政府は、赤字公債を出すのは財政法第四条の例外であり特例であるので、もう重ねてかようなことはしないと約束します、このようにくどいほど繰り返しております。四十一年度に発行する公債は、その根拠を財政法第四条に基づくもので、この借金は需要を喚起するための借金である、このように強調しておるのであります。つまり、不況時には積極的に対応するが、好況時には圧縮するという考え方で出発したものでありますが、十年先の手形であるという気楽さから、その後の予算編成に当たり、要求を抑えることよりも、借金をしてその場をしのぐという安易な道をとり続けた結果が、このような世界一の国債大量発行の国となってしまったのであります。
 そして十年後、つまり昭和五十年十月の七十六国会、補正予算審議の際においては、昭和四十五年当時の公債火種論議を反省し、財政にもう一度彫りの深い見直しを加えて、公債依存の度合いを可及的に小さくしていくことを政府は約束しておるのであります。にもかかわらず、その後も赤字国債はふえ続けてきたのであります。それからまた、鈴木内閣のとき約束をした、昭和五十九年を赤字国債脱却の年とするという、このことも完全にうそに終わったのであり、そして今日、中曽根内閣は、具体性も見通しもない、昭和六十五年を脱却の年にするという無責任な提案を行っているのであります。(拍手)
 今回提出されたこの法案は、一時しのぎの便法というには余りにも常道を逸しており、国債費定率繰り入れさえも停止をし、おまけに借換債の発行は行わないという従来の国会決議を破り、ついに歯どめを外す暴挙を行おうとしているのであります。
 そして、片や、財政失敗の穴埋めの一環として、なりふり構わず日本電信電話公社及び日本専売公社から国庫納金の形で取り上げるといういびつな手段を講じようとしておるのであります。本来、公社の性格からして受益者負担に基づく独立した会計を持っているところから、たとえ公社が利益を上げたとしても、それは国民共有の財産として利用者へのサービスの還元あるいは新時代に対応した事業運営に充てるべき性質のもので、いたずらに国庫納付させるべきでないと思うのであります。取れるところから取るといういわば場当たり的な、そして企業努力の上にあぐらをかいてする財政運営はやってはいけないことであって、財政立て直しの基本は、言うまでもなく、税収入につながる景気浮揚策を基本に、個人所得の増加、個人消費の拡大など内需拡大政策を進める中で増収を図っていく本来の姿に戻さなければならないと思うのであります。
 ここ数年来の政府の対応を見るに、オイルショックを契機に消費、産業構造が質的に変化したにもかかわらず、財政運営だけが高度成長時代の仕組みのままで継続しているところが問題であると言わざるを得ないのであります。一度サラ金に手を出し、借金は恥という哲学を捨てた人間には借金の歯どめはかからないと言われております。一度麻薬の味を知った人間はその魔力から抜けることはできないとも言われております。今や歴代の自民党政治によってつくり上げられたサラ金財政は破綻の寸前にあると言っても過言ではありません。わかっていながらまたもや手を出す麻薬のように、歯どめを失った借換債という名で借金を返すために新しくまた借金をする、抜き差しできないところに落ち込んでいこうとしているのであります。このような状態をつくってきた関係者は、だれ一人国債の大量発行の責任者は自分だと言う人間はいないのであって、あのときはやむを得なかった、あれしかなかったと言うのであります。しかし、ツケというものは、いずれいろいろの形で回ってくるところの国民にとってみれば、やむを得なかったでは済まされないのであります。きょう生まれた赤ん坊も寝たきりのお年寄りも含め国民一人当たり百万円の借金を背負っているのであって、いや、背負わされたと言うべきであり、直接税、間接税を問わず大増税の道を選ぶか、あるいは国債そのものを紙くず同然にするインフレか、いずれにしても赤字国債発行という名の税金の先取りのツケ払いの日は、遅いか早いか、確実にやってくるのであります。
○議長(福永健司君) 浜西君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○浜西鉄雄君(続) 私は、国民の負託にこたえるべき国会議員の一人として、また、日本社会党の政策綱領の立場から、本法案に強く反対するものであることを表明して、討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) 塩島大君。
    〔塩島大君登壇〕
○塩島大君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表し、昭和五十九年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置等に関する法律案に賛成の意見を述べるものであります。
 本法律案は、先般成立いたしました昭和五十九年度予算と一体不可分の重要な財源確保等に関する法案でありまして、現今の国の財政状況等から考えて、いずれも必要かつやむを得ない措置であると思います。
 すなわち、第一に、特例公債の発行でありますが、昭和五十九年度予算においては、歳出歳入両面の厳しい見直し等の政府の努力にもかかわらず、なお財源が不足するため、特例公債を発行することはやむを得ないものであります。
 第二に、国債費定率繰り入れ等の停止でありますが、この措置をとることにより、さらに特例公債が増発されることを避けようとするものであります。また、このような措置をとっても五十九年度における公債の償還には支障を生じないものと見込まれ、やむを得ない措置であると考えます。
 第三に、電電公社、専売公社からの一般会計への納付であります。
 五十九年度予算において、異例に厳しい財政状況のもと、歳入面についても、所得税の大幅減税等所要の税制改正が行われるとともに、税外収入につき、特別会計及び特殊法人からの一般会計納付等の措置を講ずるなと思い切った増収が図られております。本法律案に盛り込まれている特殊法人からの一般会計への納付措置はその一環であり、いずれも五十九年度限りの特別措置であります。これらの措置は、公社の事業の遂行に支障が生じない範囲で、かつ、利用者等への配慮を加えた上でとられているものであり、やむを得ないものと考えます。
 第四に、特例公債の借りかえであります。
 特例公債の残高についてはできるだけ早く減少させていくべきでありますが、今後の厳しい財政事情を考えれば、我が国の経済や国民生活への影響を考慮しつつ財政改革を進めていくためには、特例公債について借換債の発行を考えざるを得ません。したがって、今回、従来の借りかえ禁止規定にかえてできる限り借りかえないよう努めるものとする旨の努力規定を置くことはやむを得ないものと考えます。
 以上、私は、政府は国民のコンセンサスを得て今後一層財政改革を推進されることを切に希望いたしまして、本案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○議長(福永健司君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ―――――・―――――
○古賀誠君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、日程第二とともに、北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件を追加して、両件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
○議長(福永健司君) 古賀誠君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ―――――――――――――
 日程第二 民間航空機貿易に関する協定附属
  書の改正の受諾について承認を求めるの件
 北西太平洋における千九百八十四年の日本国
  のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関す
  る議定書の締結について承認を求めるの件
○議長(福永健司君) 日程第二、民間航空機貿易に関する協定附属書の改正の受諾について承認を求めるの件、北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。外務委員長中島源太郎君。
    ―――――――――――――
 民間航空機貿易に関する協定附属書の改正の受諾について承認を求めるの件及び同報告書
 北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔中島源太郎君登壇〕
○中島源太郎君 ただいま議題となりました二件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、民間航空機貿易協定附属書の改正について申し上げます。
 現行協定は、民間航空機及びその部品等に係る世界貿易の最大限の自由化を図ることを目的として、昭和五十四年四月に東京ラウンドの一環として作成されたものでありまして、この協定附属書において、無税または免税の対象となる産品の表を掲げております。
 本附属書の改正は、昭和五十九年三月二十二日民間航空機貿易委員会において決定されたものでありまして、その主な内容は、関税協力理事会品目表におきまして、熱交換器、蓄電池及び光学用品等九品目を追加し、原動機、ポンプ及び自動データ処理機械等十三品目の対象範囲を拡大しようとするものであります。
 本件は、四月二十日外務委員会に付託され、同日安倍外務大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二十七日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、多数をもって承認すべきものと議決いたしました。
 次に、日ソさけ・ます議定書について申し上げます。
 政府は、昭和五十三年四月二十一日に署名された日ソ漁業協力協定に基づき、北西太平洋における本年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件を定める議定書を締結するため、本年四月二十日以来モスクワにおいて、ソ連邦政府と交渉を行ってまいりましたが、合意に達し、昨七日本議定書の署名が行われました。
 本議定書は、北西太平洋の二百海里水域の外側の水域における本年の日本国のさけ・ますの漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まりの手続等について規定しております。
 なお、本年の総漁獲割り当て量は四万トンとなっております。
 本件は、本人日外務委員会に付託され、委員会におきましては、安倍外務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福永健司君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
 次に、北西太平洋における千九百八十四年の日本国のさけ・ますの漁獲の手続及び条件に関する議定書の締結について承認を求めるの件につき採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ―――――・―――――
 日程第三 著作権法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
○議長(福永健司君) 日程第三、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。文教委員長愛野興一郎君。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔愛野興一郎君登壇〕
○愛野興一郎君 ただいま議題となりました著作権法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、貸しレコード業、音楽テープの高速ダビング業など著作物のレンタル業、コピー業が急速に普及している事態に対処して、著作物等の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図ろうとするものであります。
 その主な内容の第一は、貸与権の創設等であります。
 著作者に新たに貸与権を認め、貸しレコードのように著作物をその複製物の貸与により公衆に提供することについては、著作者の許諾を得なければ貸与できないこととするものであります。ただし、図書館、視聴覚ライブラリーなど、営利を目的とせず、無料で貸与する場合には、許諾を要しないこととし、また、貸し本業などの書籍、雑誌については、当分の間、適用を除外しております。
 次に、貸しレコードについて、実演家及びレコード製作者に新たに貸与権を認め、商業用レコード発売後一月以上十二カ月の範囲内で政令で定める期間内は、これらの者の許諾を得なければ公衆に貸与できないこととし、この期間の経過後は、報酬請求権のみを認めることとするものであります。
 第二は、公衆の利用に供される複製機器を使用する複製の規制であります。
 音楽テープの高速ダビング機など、公衆に利用させることを目的として設置されている自動複製機器を使って複製する場合には、私的使用のためであっても、著作者、実演家等関係権利者の許諾を得なければならないこととし、一方、営利目的でこのような自動複製機器を著作権等の侵害となるような複製に使用させた者については、罰則を適用することにしております。
 なお、文献複写機については、当分の間、これらの規定の適用を除外することにしております。
 第三に、この法律は、昭和六十年一月一日から施行すること、昨年十一月、本院の議員立法により成立した商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法は、その趣旨が本法に包括されることになるため、これを廃止すること等といたしております。
 本案は、四月三日文教委員会に付託され、同月二十日森文部大臣から提案理由の説明を聴取し、二十五日、二十七日の両日質疑を行い、その間、日本音楽著作権協会等関係団体の代表者五名の参考人から意見を聴取するなど、慎重に審査を行いました。四月二十七日質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○議長(福永健司君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ―――――・―――――
 教育職員免許法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明
○議長(福永健司君) この際、内閣提出、教育職員免許法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣森喜朗君。
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 教育職員免許法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 教育の成果は、これを担当する教員に負うところが極めて大きく、このため、すぐれた教員を確保し、その資質能力の絶えざる向上を図ることは、教育の基本的な課題であります。
 今日、学校教育が抱えている種々の複雑な問題に適切に対処するため、また社会の急激な変化のもとで、幼児、児童、生徒一人一人の能力、適性等を見定めつつ、豊かな人間性の育成を目指して、教育の充実発展を図るためには、これに直接携わる教員の資質能力の一層の向上が不可欠であり、より充実した指導力とより強い教育的情熱とを培うようにすることが強く求められているところであります。他方、高等教育の普及につれて、免許状取得希望者が著しく増大し、そのため、教員養成にとって特に重要な教育実習その他の実践的な指導力を養うための教育に不十分な点があらわれてきております。
 これらを改善するための方策は、教員の養成の段階ばかりでなく、その後の採用、研修の過程までを通じて総合的に講じる必要があり、文部省におきましても、これまでに国立の教員養成大学・学部の整備充実、新教育大学の創設及び教員養成大学の大学院の増設並びに教員の採用方法及び研修の改善充実などに努めてまいりましたが、これらの方策の一環として、教職の専門性を確保するため、時代に適合した教員養成・免許制度を確立することは極めて重要な課題であると考えます。
 このため、昨年十一月の教育職員養成審議会の答申を初め関係各方面からの要望等の趣旨を考慮して、普通免許状の種類を三種類にするとともに、教員の免許状を取得する場合の免許基準を引き上げるなど、すぐれた教員の養成確保を図るための所要の改善措置を講じたいと考え、この法律案を提出いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。
 第一は、普通免許状を特修免許状、標準免許状及び初級免許状の三種類に改めることであります。
 まず、大学院修士課程修了程度の高度の専門的能力を備えた者を教員に迎えるため、すべての学校の教員について、修士課程修了程度を基礎資格とする免許状を設け、大学学部及び修士課程の六年の課程を通じて所定の単位を修得した場合に授与することといたしております。この免許状の名称については、学部卒業を基礎資格とする免許状の基準の上にさらに修士課程等で特定の専攻分野を修め、高度の能力を備えていることを明らかにする意味で特修免許状としております。
 また、学部卒業を基礎資格とする免許状は、すべての学校の教員について、その水準をもって新任の教員に期待される資質能力の標準的なレベルと考え、標準免許状とするとともに、短期大学卒業を基礎資格とする免許状は、これを有する者に一層の研さんを期待する意味で初級免許状としております。
 そして、普通免許状の種類については、高等学校以外の学校の教員にあっては特修免許状、標準免許状及び初級免許状の三種類、高等学校の教員にあっては特修免許状及び標準免許状の二種類としております。
 第二は、免許状の授与を受ける場合に大学等において修得することが必要な専門教育科目の単位数の引き上げであります。
 特に実践的指導力の向上を図るため、教育実習、生徒指導、特別活動等の教職専門教育科目を中心として改善を図ることといたしました。また、特修免許状及び標準免許状については、新たに教科または教職に関する専門教育科目の区分を設け、各大学の創意工夫により教科及び教職に関する科目を有機的に関連させた専門教育科目を開設することができるようにいたしております。
    〔議長退席、副議長着席〕
 第三は、標準免許状を有する者が教育職員検定により特修免許状の授与を受ける場合の要件を定めること等であります。
 現行制度では、現職教員の自発的な研修の意欲を助長するため、現に教員の免許状を有する者が、一定の教職経験を積み、その間において所定の単位を修得した場合には、教育職員検定により上級の免許状を授与する仕組みを設けておりますが、標準免許状を有する者が、この方法により特修免許状の授与を受ける場合の要件については、現行の高等学校の二級普通免許状を有する者が一級普通免許状の授与を受ける場合の例に倣い、三年の在職年数と十五単位の修得を必要とすることといたしております。
 また、一の免許状を有する者が上級の免許状の授与を受ける場合に、一定以上の在職年数に応じ、修得すべき単位数を逓減する措置については、その見直しを図り、より適切な基準とすることといたしております。なお、現行の二級普通免許状を有する者が一級普通免許状の授与を受けようとする場合に、十五年の在職年数があれば単位修得を要しないとしている特例は、現職教育の重要性にかんがみ廃止することといたしております。
 第四は、中学校、高等学校において新しい教科が設けられた場合に、それに対応する免許教科とその取得要件を文部省令で定めることができるようにするものであります。この措置は、中学校または高等学校においては、今後ますます生徒の進路や特性等に応じて教育課程を柔軟に編成し、生徒の個性に適合した教育を展開していく必要性が高まってまいりますが、これに適切に対応しようとするものであります。
 なお、これらの文部省令を定めるに当たっては、教育職員養成審議会の意見を聞いて慎重に対処することといたしております。
 第五は、中学校の免許状の教科の種類、罰則等に関する規定を整備するとともに、関係法律についても所要の規定を整備することといたしております。
 この法律は、昭和六十年四月一日から施行することとしておりますが、大学等に対する新しい免許基準の適用は、昭和六十一年四月一日からとしております。なお、既に授与を受けている免許状は、それぞれ新しい免許状とみなすこととするほか、以上の制度改正に伴う円滑な移行を図るため、所要の経過措置を講じることとしております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ―――――・―――――
 教育職員免許法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○副議長(勝間田清一君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤誼君。
    〔佐藤誼君登壇〕
○佐藤誼君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題になりました教育職員免許法の一部を改正する法律案について質疑を行うものであります。
 まず私は、冒頭次の二点につきまして中曽根総理大臣に質問をいたします。
 その第一は、今中曽根総理のもとで進めている教育改革のねらいについてであります。
 今日、国民は教育の荒廃を憂え、その克服と今後の教育改革をひとしく求めているのであります。しかし、中曽根内閣が進めようとしている教育改革は、この国民の教育改革の要求を逆手にとって国民の期待を裏切り、教育の権力支配と戦前回帰の教育をねらっているのではないかということであります。あなたは、新聞報道になったある集会で、「まず行政改革、次は教育改革、これが進まなければ防衛問題もだめ、憲法改正もだめになる」と述べているのであります。つまり、あなたの言う教育改革は、戦後政治の総決算の一こまであり、防衛問題や憲法改正問題と同一線上にあると言えるのであります。
 また、一方、今日の臨時教育審議会法案の中身を見れば、臨時教育審議会は総理大臣の直属の機関であり、その委員及び会長は総理大臣の任命及び指名になっているのであります。しかも会議は非公開とされています。まさしく教育改革の論議は、権力の集中する内閣総理大臣のもとで、その首相の権限の射程の中で、しかも密室で審議されるのであります。これでは、国民がひとしく憂慮するように、教育に対する行政権介入、そして権力支配に大きく道を開くものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 総理、このたびの教育改革が、あなたの言う戦後政治の総決算とどのようなかかわり合いを持つのか、また今後の教育改革の審議の中で、教育の権力支配に対しどのような歯どめと保証があるのか、総理大臣の見解を求めるものであります。
 第二は、今日の教育の荒廃に対し、長年の文教政策を担当してきた自民党として、どのように責任を感じておるのかということであります。
 まず、今日の教育の荒廃が、家庭、学校、社会など広い分野にまたがる複合的要因によることは論をまちません。その中にあって、今日の教育荒廃の最大の要因は、何といっても人間の値打ちを点数でえり分けるいわゆる偏差値教育、それに学歴社会と結びついた受験地獄にあることは申すまでもありません。
 さて、その背景をなすものは何でありましょうか。振り返ってみれば、昭和三十五年ごろからの高度経済成長政策とともに、経済界そして財界は、教育に対し、経済成長に役立つ人的能力の開発、つまり人材開発を求めてきたのであります。一方、それを受けた文部省そして自民党文教行政は、有名大学を助長する一握りのハイタレントの養成、能力主義に基づく早期選別の教育政策を進めてきたのであります。それは、昭和三十五年以降の所得倍増計画、その後のマンパワーポリシーを見れば明らかであります。つまり、今日の大学格差と学歴社会、そして過酷な受験競争と差別、選別の偏差値教育、これを助長してきたものは、ほかならぬ自民党政府の文教政策それ自体ではなかったのか。この点について総理大臣はどのように考えるのか。今日の教育荒廃に対する自民党政府としての責任について、その見解を求めるものであります。(拍手)
 さて、次は、提案された法案に関連し、総理大臣並びに文部大臣に質問してまいります。
 第一は、この法案の背景についてであります。
 この法案は、昨年五月二十六日自民党の免許法改正に関する提言に始まり、文部省の教員養成審議会に対する諮問、そしてその答申を経てつくられたものであります。しかし、審議会の答申を経てつくられたにもかかわらず、この法案は、昨年五月二十六日自民党が提言した内容とほとんど変わっていないのであります。なぜそうなったのか。そこで問題になるのは次の点であります。
 すなわち、文部省は教養審に諮問するに当たって、自民党の提言とほぼ同様なものを試案として示し、その答申を求めていることであります。そして答申は、六カ月にも満たない短期間の審議で、大筋文部省の試案どおり報告されているのであります。これでは何のための審議会なのか。自主性、中立性を標榜する審議会とは実は文部省の隠れみのであり、一方、自民党の原案を国民合意の名のもとに法案化するマジック機関にすぎないということをみずから暴露したものにほかなりません。この意味で、この法案は国民の合意とはほど遠く、自民党主導による審議会不在の法案と言わなければなりません。文部大臣の所見を求めるものであります。
 第二は、免許状を三種別にするということに対する疑問であります。
 つまり、大学院修士課程修了者は特修免許、大学学部修了者は標準免許、短大卒業者は初級免許とするということであります。これは、学歴によって免許状に差をつけるということであります。この三種別免許の導入は、学歴と免許によって教員に上下の身分関係を持ち込み、職場に教員の序列化を生むということは明らかであります。同じ学年の中で、あるクラスの先生は初級免許の先生、他のクラスの先生は特修免許の先生、このことについて子供や父兄はどのような感じを抱くでしょう。また、自分のクラスの先生が一番偉いと思っている子供心に、いたずらな不安を与える結果になりはしまいか。そしてこの制度は、ひとしく教育を施すという教育現場に果たしてなじむ制度であるのかどうか。総理大臣と文部大臣に所見を求めるものであります。
 また、この制度の導入は、教員の序列化とともに、特修免許取得による管理職志向の傾向を強め、教育現場の管理と統制をさらに強めるものと見なければなりません。今荒廃する教育現場で求めているものは、管理と統制の強化か、それとも自由と創造の息吹なのか。教育は、人間の可能性を引き出し、その人格を完成し、個性を伸ばしていく創造的営みであることを忘れてはなりません。その意味で、本来、教育現場には管理と統制はなじまないのであります。今、教育現場は、多彩な個性を持った教師集団の協力、そして職場の信頼の厚い校長のもとで、教育の荒廃に対してもよりよい成果を上げているのであります。このことに思いをいたすとき、今回の免許状の種別強化は、教育現場が求めている方向に逆行するのではないかと考えますが、文部大臣の所見を求めるものであります。(拍手)
 第二は、免許基準の引き上げに対する疑問であります。
 このたびの法改正は、免許基準の大幅引き上げと教職科目及び教育実習の単位を大幅にふやすということであります。このことは、教員養成以外の一般大学では教員免許の取得が極めて困難になるということであります。これは、すべての大学で教員免許を与えることができるという戦後の開放制度に制約を加え、戦前の閉鎖的な教員養成制度に逆戻りするという点で極めて重大であります。
 思えば戦前の教育は、富国強兵、戦争遂行といった国家目標を達成する手段とされ、そのための人づくりを担ったのが戦前の教師であります。そして、その教員養成制度は、師範学校教育に代表されるように、為政者の意のままになる教師づくりとして閉鎖的な制度であったのであります。戦後は、その反省に立ち、広く人材を求め、多彩な個性を教育界に送るというねらいで開放制にしたのであります。今再び閉鎖制教員養成制度に道を開くということは、戦前の教育に逆戻りするいわゆる戦前回帰の教育改革と言わなければなりません。これは、最初から教員養成コースに乗った者だけを教員として採用するということであり、そのねらいは、閉鎖的な教員養成制度の中で為政者の意のままになる教師づくり、やがては国定の教師、国定の教科書づくりにつながる危険なものと見なければなりません。もし政府が、今のペーパーティーチャーを問題にし、そのことによって閉鎖性を持ち込むとするならば、教員養成制度の基本的な点で大きな過ちを犯すものと言わなければなりません。
 以上述べた免許基準の引き上げに伴う教員養成の閉鎖性について、文部大臣の所見を求めるものであります。(拍手)
 最後に、中曽根総理大臣に質問いたします。
 今、政府は、今後重要な教育改革の問題を審議するとして臨時教育審議会法案を提案しながら、一方で、総理自身も認めている重要な教育改革の中心である教員養成制度、すなわち教免法改正案だけを特に取り出して審議しようとするのはなぜなのか、まさに自己矛盾と言わなければなりません。この点、国民もひとしく理解に苦しむところであります。
 また、今の教員免許は、六・三制を前提にして学校別の免許に分かれております。もし臨教審が発足し、今の六・三制の学校の区切りが変わったとすれば、それより先に新しい免許法によって出発した教員養成制度はどのようになるのか、それでも教育職員免許法の改正は今どうしてもやらなければならないのか。私は、政府の立場からいっても、免許法の改正を急ぐのは自己矛盾と考えるのであります。したがって、私は、本法案は直ちに撤回すべきものと考えますが、中曽根総理大臣の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 佐藤議員にお答えをいたします。
 まず、教育改革のねらいは何であるかということでございますが、これは前から申し上げますように、二十一世紀を目指す世界的日本人をつくる、これが我々の教育改革であり、教育の権力支配や戦前回帰を意図するものではありません。
 行政改革あるいは憲法問題との関係につきまして御質問がありましたが、行政改革や教育改革は自主自律、自由民主の民族精神に発するものでありまして、これは憲法を守り、あるいは憲法をつくり、あるいは憲法を改正する国民主権の精神に通ずるという趣旨で申し上げたのであります。
 次に、文教政策に対する御質問がございました。
 文教行政は、中教審の答申の趣旨に沿いつつ、今まで歴代内閣が努力してきたところでございます。しかし、時代の大きな変化、進展に対応し得るように教育も見直す必要があるのでございます。現在の教育制度の欠陥は、言いかえれば、時代のこの大きな変化あるいは進展に従来のやり方がやや硬直にあり過ぎて、対応し適応する能力が失われた、そういう観点から、総合的、全面的に見直す必要があるという国民的要請にこたえて、これを行わんとするものでありまして、政府の責任であると考えておる次第でございます。
 次に、三種別の免許制度は、これは教育現場になじむかという御質問でございますけれども、最近の教育の普及あるいは学歴の向上、そういういろんな面からも考えまして、特に教員に広く人材を求める、そういう趣旨から大学院あるいは学部あるいは短期大学、それぞれの段階から教員になる道を開いてすぐれた人材を求め、その質的向上を求める、さらに教員の自主的な勉学や研修を奨励する、そういうことを目的としたものでありまして、教員の序列化を意図したものではございません。
 次に、免許法の改正と臨教審との関係でございますけれども、教育の改革は、長期的展望に立ちまして、非常に幅広い観点から制度、仕組みあるいは内容等について十分見直す必要があり、その項目については、臨教審の委員にみずからお考え願うべき問題であると思っております。しかし、このたびの免許法の改正は、現在の教員の資質の向上というものを中心に考えまして、昨年、教育職員養成審議会の議を経ましてこれを行わんとするものでございまして、臨教審設置の趣旨と何ら矛盾するものではないと考え、本法案を撤回する考えはございません。
 残余の答弁は文部大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 佐藤誼さんにお答えを申し上げます。
 御質問の第一点は、法案の背景について、教養審は文部省の隠れみので、自由民主党主導による法案でないかとのお尋ねでございますが、教育職員養成審議会は、教育職員の免許・養成制度等に関する事項を調査審議することを目的とし、文部大臣の諮問機関として設置されている審議会でございます。小中高の学校を代表する者、大学で教員養成を担当する教官その他の学識経験者から構成されております。今回の答申に当たりましても、例えば関係団体二十七団体の意見を聞くなど慎重な審議を経て取りまとめられたものでございます。
 昨年十一月の教養審の答申と、昨年五月の自民党の教員の養成・免許等に関する提言の内容との間には、同じ趣旨の部分もあるが、それはそれぞれが独自の立場から、教員の資質向上策を早急に講じる必要があるという見地に立ち、昭和四十七年の教育職員養成審議会の建議などを踏まえ、関係団体の提案や意見を十分に聞きながら検討した結果であると承知をいたしております。本法案は、教養審の答申の趣旨の実現を図るため提案したものでございまして、自由民主党主導による法案ということは当たらないと考えております。
 御質問の第二点は、免許状を三種別にすることは、教育現場に学歴主義を持ち込み、教員の序列化を図り、管理、統制を強めるものではないかというお尋ねでございますが、このたびの改正は、現在の大学院教育の拡充の状況を考慮し、また教員に広く人材を求めるという趣旨から、大学院、学部、短期大学のそれぞれの段階から教員になる道を開いたものでございます。さらに、これらの免許状の間には、現職教員の自発的な研修を奨励するために、教職経験と認定講習により上級の免許状を取得し得る方法を取り入れておりまして、当初取得した免許状がそのまま固定してしまうものではございません。したがいまして、教育現場に学歴主義を持ち込むという非難は当たらないと考えております。このたびの改正は、教員に広くすぐれた人材を求めるとともに、現職教員の自発的な研修を奨励することを目的としたものであり、学校の管理、統制の強化を意図するものではございません。
 第三点は、一般大学では免許状の取得が困難になり、閉鎖性を持ち込むものではないかとのお尋ねでございますが、現下の学校教育の状況を改善するためには、実践的な指導力や使命感などを身につけた教員が望まれているところであります。今回の改正は、そのために不可欠な教育実習、生徒指導などの教職専門教育科目を中心とする免許基準の引き上げを図ろうとするものでございまして、一般大学においても、若干努力していただければ免許取得は可能であると考えられます。したがいまして、このたびの改正によって教員養成制度が閉鎖的になるものではないと考えております。
 第四点は、臨時教育審議会法案との関係についてでございますが、先ほど総理からもお答え申し上げましたように、教員にすぐれた人材を得、その資質能力の絶えざる向上を図ることは、我が国教育の発展のための重要な課題であり、このたびの改正案の内容は、現下の急務たる教員の資質向上に必要なものとして十分な検討を経て提案しているものでございます。先ほど総理からもお答えをいたしましたが、教育改革は長期的展望に立って幅広い論議を行うことが必要でございますが、このことと教員の資質能力の向上を図るための免許法の改正を行おうとすることは、矛盾するものではないと考えております。
 なお、臨教審におきまして六・三制の改革について議論された場合は、それにおいて教員免許制度についても必要な改善を図ることはあり得ることであると考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
○副議長(勝間田清一君) 駒谷明君。
    〔駒谷明君登壇〕
○駒谷明君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております教育職員免許法等の一部を改正する法律案の提案に対し、総理並びに文部大臣に若干の質疑を行うものであります。
 今日の教育改革に関しては、臨時教育審議会設置法案を焦点として国民の重大な関心事となっております。昨年の三月、総理府において発表されました教育に関する世論調査において、学校教育に関する要望の中で一番大きなものは教員の資質向上であり、四五%と極めて高い結果が報告されているのであります。父母の間においても、自分の子供の担任教師について当たり外れが話題となっているのであります。このように、教育改革における最大の問題は、教育は人なりと言われるごとく、まさに教員の養成、採用、研修のあり方にあります。
 そこで、総理にお尋ねをいたします。
 既に臨教審設置法案が提案され、これに対する質疑が行われましたが、この教員の資質向上について臨教審ではどのようになるのか。当然、審議検討事項であると思うのであります。それならば、なぜ今免許法の改正なのか、改正の内容から見て大きな疑問がありますが、まずこの点を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、総理の私的諮問機関であります文化と教育に関する懇談会の所見報告が提出されていますが、その中に「教職課程における教育実習を始め教員養成教育の改善、充実が必要であるが、教員に適格者を求めるためには、養成や資格の改善だけではなく、正式採用前に一定期間のインターンシップ制を導入することが必要である。」と指摘しているのであります。このことは教員採用制度の大改革であり、この制度が導入されるならば、さらに教員の免許基準も大きく改めなければならないと思うのであります。いわゆるこの試補制度について総理はどのように考えておられますか、また臨教審に諮問するお考えかどうか、方針をお伺いいたします。
 また、教員の適格者とは、具体的にはどのような人を指すとお考えでおられますか。さらに、今日の時代の変化、社会的変化に対応するには、特に多様な人材を必要とするとき、画一的な人格像を教師に求めることは矛盾するものではないかと考えますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、教師の教育に対する理念についてお伺いいたします。
 学校現場における落ちこぼれや登校拒否、校内暴力等教育の荒廃が叫ばれている今日、その要因として教師の態度、姿勢のあり方や資質の問題が問われているのでありますが、その背景にあるものは、教職課程を取れば免許状が与えられ、教職の専門家として子供たちを教育することが保障されている教師が、みずから教育への情熱とそれを支える使命感を持たず、ただ就職としての考えから教師となった人々があり、一方、子供たちに学ぶことの大切さを教えながら、みずから学ぶ意欲を失っている教師等も現に存在しています。そこには、豊かな教育環境を創造し発展させることは不可能でありましょう。そして、子供たちは教師の言動を通じてその本質を見抜き、権威を疑い、不信感を強め、結局、教師と子供たちとの信頼関係の欠如がいろいろな問題を引き起こす結果となっていると思うのであります。
 私は、これからの複雑、多様化する社会情勢を考えるとき、教育者たる教師こそ使命職であるとの自覚に立つことが最も重要なことではないかと思うのであります。そして、自己の情熱を教育に傾ける意欲を持ち、教育的力量を身につけた人間性豊かな教師こそ今求められていると考えますが、総理の御所見をお伺いしたいのであります。(拍手)
 次に、文部大臣に数点お伺いいたします。
 教育改革は、国民合意の形成を図りつつ進めなければなりません。このことは教員養成等についても同様であり、少なくとも学校現場、教員養成を行う大学、そして教育委員会等が連携し、協力し合う中で行われるべきであります。
 今回の免許法の改正案は、策定される前段階である教育職員養成審議会が諮問を受け、わずか五カ月余りで答申されたものでありますが、その間、大学の主体的取り組みに大きく依存して教員養成が行われてきた事実から、これら各大学に対する配慮を欠いていたのではないか。例えば全国私立大学教職課程研究連絡協議会等の取り組みを無視した形で改正案が提出されたとすれば、まことに遺憾であります。このことは大学の自主的な取り組みを阻害することになり、文部行政との対立、不信感を増大させることになると強く懸念するものでありますが、大学等関係者のコンセンサスを十分得られているのかどうか、お伺いをいたします。
 私は教員養成のためのカリキュラムの開発、教員採用にかかわる課題あるいは教員研修等について調査検討し実践するために、現在の教育実習地域連絡協議会を発展させ、教員養成地域連絡協議会なるものをこの際設置すべきであると考えますが、御所見をお伺いいたします。
 次に、免許基準の引き上げについてであります。
 教員の養成に関して、開放制の原則を維持しながら、免許基準を引き上げることにより、免許取得者が教員養成系大学・学部の卒業生に偏り、閉鎖的な傾向にならないよう配慮し、文部省としては、自由なる開放制から節度ある開放制への転換を目的としているようであります。つまり、ペーパーティーチャーに対する批判、安易に免許状が授与される状況を改めるという意味があろうと考えるのであります。
 ちなみに、昭和五十八年三月卒業者の免許状取得状況と教員就職状況資料によると、その対比は四倍ないし五倍の差があり、教育実習にも大きな影響があることは十分推察されるところであります。しかし、五十九年度におきます教員の採用試験受験者数は二十万六千人であり、免許状取得者数は二十六万八千人となっており、大きな差のないことを示しており、その実態から、免許状取得者の教師志向は多いことを示していると思うのであります。
 そこで、文部省の言う節度ある開放制の意義を考えますと、広く資質ある人材を求める観点から見るならば、つまるところ、教育課程を修得する学生の門戸を狭めることを目的とする以外に考えられないと思うのであります。また、各大学では教員採用試験のために業者による通信添削や模擬試験が行われているのが現状でありますが、教職専門科目の単位増が学生にとって大きな負担となり、学校現場において真に必要な人間性あふれる学生よりも、むしろペーパー試験に強い学生が教員として選抜されるおそれのあることが考えられるのでありますが、教員の資質向上の観点からどのように認識されておられますか、御所見をお伺いしたいのであります。
 次に、教員免許状の初級、標準、特修の三段階種別化についてであります。
 本改正案では、新たに修士課程レベルの免許として特修免許を設けることになっていますが、そのねらいは、現職教育を充実させ学校内に切蹉琢磨する雰囲気が出てくることを期待しているようであります。しかしながら、その特修免許が高度の資質を備えているとしていることから、今日の批判されている学歴偏重主義を持ち込み、大学、学部間の序列化を生む危険性があること、教員相互間の対立を生むおそれがあること、また父母の側からいえば当たり外れということがさらに助長することになると言わなければなりません。これらの問題点をどのように解決しようとされるのか、特に特修免許を取得した教員の位置づけ、処遇についてもお伺いをいたします。
 最後に、現職教育や研修体制の整備充実についてであります。
 教師は、教員養成課程を経て免許状を取得すれば教師として完成されたものではないと思います。したがって、教員養成課程は教師になるための基礎教育であるとの認識に立たなければなりません。そして、採用時またその後の現職教育、研修を通じて、いわば生涯教育、継続教育という観点からの教員の資質向上を図るべきと考えます。
 昭和五十二年六月、中教審が教員の資質能力の向上について答申されていますが、その中に、教員が年齢、経験に応じた研修を受けられるような体系的な整備と、国、都道府県、市町村などが実施する研修について相互調整を図るべきであると指摘されていますが、どのような研修体系が今検討されているのか明らかにしていただきたいのであります。
 以上、総理並びに文部大臣の明確な答弁を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 駒谷議員にお答えをいたします。
 まず、臨教審において教員の資質向上を審議事項に取り上げるかという御質問でございます。
 教育改革は、長期的展望に立って幅広い論議が必要でございまして、この諮問内容は、今後内閣としては十分幅広く検討いたしますが、具体的審議事項は臨教審自身においてお決め願うのが適当であると考えております。しかし、教員の資質向上は常に教育の改善充実を図る上で不可欠の課題であります。今回の法改正は、現下の教育課題たる教員の資質向上に必要なものとして十分な検討を経た上で行おうとしておるものであり、昨年の教育職員養成審議会の議を経、かつまた従来中教審の累次にわたる答申におきましても基本的に示された線に沿って行っておるものでございます。
 次に、文化教育懇談会で言うインターンシップについて臨教審に諮問するかという御質問でございますが、この文教懇の提言は非常に貴重な参考資料と考えますが、諮問内容は今後十分検討さしていただきたいと思います。私は、原則的にはこのようなインターンシップを強化することには賛成でございます。
 次に、文教懇で言う教員の適格者いかんという御質問でございます。
 「教育問題は教師の心構えと資質を抜きにしては語れない。」このように文教懇で報告されておるところでございまして、私も、教育は人なり、このように考えておりまして、教員の資質能力いかんにかかっており、教員につきましては、高い専門的学力のみならず、深い教育的愛情、教育者としての使命感などを兼ね備えることが重要であると考えております。
 教師を使命職と考えるが、所見いかん、そういう御質問でございます。
 やはり教員は深い教育的愛情あるいは教育者としての高い使命感を持つことが大事であると思っております。職名は別といたしまして、内容として、そのようなお考えにつきましては、私もおおむね同感でございます。
 他の点は文部大臣から御答弁いたします。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
○国務大臣(森喜朗君) 駒谷さんにお答えをいたします。
 御質問の第一点、試補制度の導入の問題でございますが、試補制度とは、特別の身分において一年程度の期間任命権者の計画のもとに実地訓練を行わせ、その成績によって教員に採用する制度を言うものと考えられますが、ただいま基本的な考えとしては総理がお答えになりましたが、この制度につきましては、現行の公務員制度との関係や財政面の問題もございますので、諸般の事情を考慮しつつ、慎重に検討していく必要があると考えます。
 文部省といたしましては、教員の資質の向上について、いわゆる人材確保法に基づく優秀な教員の確保、新任教員研修を初めとする各種研修の充実、教員としてふさわしい者を選抜するための採用方法の改善などの施策を講じてきたところでございます。今後とも教員の資質向上の問題には積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 第二点は、今回の改正について関係大学等のコンセンサスが得られていないのではないかというお尋ねでございます。
 今回の改正の基礎となっている教養審答申の審議過程におきまして、関係団体から意見を十分に聴取をいたしております。例えば教職専門教育科目を中心とする修得すべき単位数については私学団体の意見を反映し、諮問当初の試案で示した単位数が手直しされているところでございます。この改正は関係団体の意見を反映した内容となっており、大方の理解を得られたものと考えております。
 御質問の第三点は、教員養成地域連絡協議会の設置についてでございますが、御提案は、大学と教育委員会等が共同して教員養成のためのカリキュラムの研究開発、採用にかかわる問題等の検討等を行うべきだという御趣旨だと思います。そのことは傾聴に値することと考えておりますので、現行の教育実習地域連絡協議会の場で議題として取り上げてもらえるよう積極的に指導してまいりたいと考えております。
 御質問の第四点は、節度ある開放制についてのお尋ねでございますが、このたびの改正は、免許状取得希望者が著しく増大し、安易に免許状を取得する風潮があらわれてきているので、より充実した教員養成が行われるよう免許基準を引き上げようとするものでありますが、その内容は実践的指導力や使命感を身につけさせようとするものであって、そのことによって情熱あるすぐれた人材を養成しようと考えているものでございます。
 御質問の第五点は、特修免許状についてのお尋ねでございますが、今回の改正で特修免許状を設けることといたしておりますのは、大学院教育の拡充の状況を考慮し、教員に広く人材を求めるとともに、現職教員の自発的な研修を奨励することを目的といたしたものであり、学歴偏重主義を持ち込むものではございません。特修免許状は、学部卒業を基礎資格とする免許状の基準の上に、さらに修士課程等で特定の専攻分野を修め、高度の能力を備えていることを明らかにするものであり、特修免許状の取得者は学校の中で指導性を発揮してくれるものと考えております。特修免許状の取得と給与の格付とは直接結びつくものではございません。
 御質問の第六点は、教員の研修体系の整備等についてのお尋ねでありますが、教員の資質能力の向上については、御指摘のように教員の養成、採用、研修の各段階にわたり適切な施策を総合的に推進していく必要があると考えております。特に研修については、その体系的整備の重要性にかんがみ、各教育委員会に対して昭和五十七年五月に文書で指導を行ったところであります。文部省といたしましても、今後ともこうした指導を徹底することにより、各教員が教職の全期間を通じて必要な研修に参加することができる機会を確保するとともに、国、都道府県、市町村の各段階で行われる研修の実施時期、内容等について調整を図り、関係機関等の協力体制を確立して、これら各段階における研修が相互に関連を持って行われるよう研修の体系化を推進してまいりたいと存じます。(拍手)
○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十六分散会