第101回国会 法務委員会 第10号
昭和五十九年四月十七日(火曜日)
    午前十時二分開議
出席委員
  委員長 宮崎 茂一君
   理事 太田 誠一君 理事 亀井 静香君
   理事 高村 正彦君 理事 森   清君
   理事 天野  等君 理事 稲葉 誠一君
   理事 石田幸四郎君 理事 三浦  隆君
      井出一太郎君    上村千一郎君
      大西 正男君    加藤 紘一君
      高鳥  修君    谷垣 禎一君
      上原 康助君    小澤 克介君
      佐藤 観樹君    神崎 武法君
      中村  巖君    伊藤 昌弘君
      野間 友一君    簑輪 幸代君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 住  栄作君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 根岸 重治君
        法務省民事局長 枇杷田泰助君
 委員外の出席者
        外務省北米局安
        全保障課長   加藤 良三君
        法務委員会調査
        室長      藤岡  晋君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十七日
 辞任         補欠選任
  山口 鶴男君     上原 康助君
  林  百郎君     簑輪 幸代君
同日
 辞任         補欠選任
  上原 康助君     山口 鶴男君
  簑輪 幸代君     林  百郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法案(内閣
 提出第五六号)
     ――――◇―――――
○宮崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。
○神崎委員 初めに、国籍法改正の基本的な考え方に関連いたしましてお伺いをいたします。
 我が国の憲法は、日本国民たる要件を法律に委任しまして、それを受けて現行の国籍法で日本国民の範囲を規定しているわけでございます。日本国民の範囲いかんというものは将来の日本の基盤を決めるものでありますから、将来の日本のあるべき姿、将来の国際社会における日本の位置づけ、特に周辺諸国との関係を念頭に置きつつ国民の範囲を確定すべきものと思われるのであります。
 二重国籍の解消といった問題一つとってみましても、ヨーロッパ諸国でこの点について積極的な解消策をとっていない。その理由として、例えば出生率の低下がある。一定の国民というものを確保するのには、二重国籍の解消についてやや消極的になっている。あるいはアラブの労働者が大量にヨーロッパ諸国に入っている。実際に向こうに行きまして、朝起きて外を見ますと、アラブの労働者が大体清掃作業等に従事しているわけで、ヨーロッパにおいては完全にヨーロッパ人とアラブ人という二重構造になっているようにも思われるわけであります。そういった点も微妙に関係しているのではなかろうかと思うわけでありますけれども、法務当局といたしましては、今回の改正に当たりましてどのような将来の展望の上に立って改正しようとしておられるのか、その点についてまずお伺いいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 難しいお尋ねでございますけれども、将来の日本は国際的にかなり交流が深まっていくであろう、また、そういうことの中で日本の平和と繁栄というものを見出していかなければならない国柄ではないだろうかということを一つ考えておるわけでございます。そういう関係で人の交流も多くなってまいります。日本の国民が外国へ行く、あるいは外国の人が日本へ来る、そしてそこで国際結婚が多くなるというふうなことが生ずるであろう。そういう場合に、そういう国際結婚の中で生まれた子供さんに一応日本の国籍を与える道を開くということが必要であろうというような観点も、このたびの父母両系血統主義に改めた一つの背景であろうと思います。
 しかし、そうではありますけれども、世界が常に平和で秩序が保たれていればそれにこしたことはないのでありますが、常に国家間の利害というものは衝突をし、これからもその衝突が激しくなるということもなくはないであろう。そういうふうなことの緊張が生じた場合に、日本の国がその当事者そのものにはならないにしても、何らかの影響を受ける、そのように日本は国際的ないろいろな関係の中にすぐ影響を受ける立場にあるであろう、そういうふうなことも考え合わせますと、二重国籍というような状態は解消していく必要があるであろう。
 それからまた、日本の国が現在までの繁栄を来してきたということの一つの要素に、日本人としての単一民族意識というものも、これは国際化とはまた別の傾向かもしれませんけれども、そういうものもある。そういう意識も、それはそれとしてまた尊重していかなければならないだろう。したがって、またそういう面から血統主義というものをやはり国籍法の基礎に置かなければならないだろう、そういうふうな考え方が今度の改正法の中で、法制審議会でも正面切って議論はされませんでしたけれども、皆さんの頭の中に置かれて検討されたものではなかろうかというふうに考えております。
○神崎委員 現行の国籍法は、基本的原則といたしまして親子国籍独立主義、それから夫婦国籍独立主義を採用するとともに、国籍唯一の原則、いわゆる重国籍の発生防止という考え方をできるだけ貫こうとしていると言われているわけであります。ところで、改正法を見ますと、この親子国籍独立主義につきましてやや修正いたしまして、親子国籍同一主義的な要素を取り入れているようにも思われるわけであります。夫婦国籍独立主義についてはよくわかりませんけれども、国籍唯一の原則につきましては、国際社会における我が国の位置づけや将来の展望からいたしますと、現行法より緩和するならともかく、国籍選択制度を導入するなど、より徹底しているというふうに考えられるわけであります。
 そこで、改正法は、現行法のこれらの基本原則につきましてどういう立場をおとりになっているのか、お伺いをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 まず最初の夫婦国籍同一主義でございますが、これは今度の改正案でもとっておらない、独立主義を貫いておるところでございます。しかし、その夫婦国籍同一主義ではありませんけれども、夫婦の国籍が同一であった方がいいということまでも否定するものではありませんので、そういう面では簡易帰化のところで一般の帰化よりは一つの要件をやわらかくしておる。これは生活実態そのものが簡易帰化になじむという面もありますけれども、ある側面では夫婦の国籍が同一であった方がいいという考え方も否定できないだろうと思います。これは従来と変わっておらないわけです。
 親子国籍独立主義は、今度の改正案でも貫いております。この独立主義とか同一主義とかといいますのは、実は親の国籍の変動が直ちに子供の国籍の変動につながるということを意味する言葉として私どもは理解しておるわけで、そういう意味では親子国籍同一主義というのはとっておらない、今度のでも独立主義であります。しかしながら、その親子の国籍が同一であることが望ましいという考え方は、これは否定するものではありません。したがいまして、一定条件のもとに国籍の取得を認める。例えば準正などの場合にも、そういうふうな気持ちが少しあらわれていないとも言えないと思います。それから、附則の関係なんかでもあらわれていないとは言えないと思います。しかしながら、親の国籍の変動が子に及ぶということを否定する意味での独立主義は、今度の改正案につきましても貫いておると思います。
 それから国籍唯一の原則でございますが、これは今度の改正案におきましても各所に貫いておるつもりでございますが、その扱い方が大分変わってまいりました。現行法の場合におきましては、まず二重国籍が発生しないようにというところに国籍唯一の原則の基本を置いたわけです。したがいまして、父系血統主義をとるということによって二重国籍が血統主義の抵触といいますか、そういうものによって起こることを防いだ、要するに予防といいますか発生の防止というところに力点が置かれたのが現行法でございます。ところが、改正法では父母両系血統主義を採用するということを基本にいたしました。したがいまして、その点では発生の防止という点では国籍唯一の原則が後退をしておるわけです。しかしながら、その反面、今度はある一定の年齢に達するときまでにそれを解消するという事後の解消策というものが新たに出てきたわけでございます。そういう面で解消策だけをごらんになりますと、あるいは国籍唯一の原則が強く強調されたというふうな印象を与えるかもしれませんけれども、発生防止の父系血統主義をやめたということと総合的に考えますと、むしろどちらかといいますと現行法よりは二重国籍の解消全体が強まったということはないのではないかというのが私どもの感想でございます。
○神崎委員 親子国籍同一主義につきましては、憲法の保障いたします個人の尊重を理由といたしまして旧国籍法の採用しておりました親子国籍同一主義から親子国籍独立主義に改められたという経緯があるわけでございます。他方、未成年の子供に関する限り親と子の国籍が同一であることが望ましいという親子国籍同一主義を採用している国が多く、世界的にはこちらの方が主流である、このようにも言われているのであります。我が国が親子国籍独立主義をとり、世界の趨勢が親子国籍同一主義をとっているといたしますと、我が国の制度と各国の制度との間に整合性を欠くわけでございますから、いろいろな問題が生ずるのではないかと思われるわけでございます。どういう問題が生じるのか、また、これに対する改正法の対処の仕方につきましてお尋ねいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 親子国籍同一主義を採用している国は多いわけでございますけれども、今後そういう主義が世界各国の国籍法改正の動向の中でどうなるかということは必ずしも明らかではございませんけれども、個人の尊重というふうなことが一般的な傾向であることからいたしますと、次第に親子国籍独立主義の方が将来としてはふえていくのではなかろうかと思います。
 それにいたしましても、現在では同一主義をとっているところもございますので、したがいまして日本とは違うということになりますけれども、これが夫婦等の関係と違いまして、親子の関係の場合には比較的縦の関係でございまして、横の関係がないためにそれが日本の国籍との関係での衝突で具体的な混乱を生ずるというふうなことは余り予想されない。現在でもそれはある問題でございますけれども、余りそのことが混乱になっているとかというふうなことは聞いておりません。
○神崎委員 次に、準正についてお尋ねをいたします。
 改正法は、準正によりまして日本国民の嫡出子たる身分を取得した外国人たる子につきまして一定の要件のもとに届け出による国籍取得の制度を新設したわけでございます。これはそれについては大変評価されるわけでございます。
 しかしながら、提案理由説明によりますと、改正法は父母両系血統主義を採用すると明言しているのであります。血統主義という観点からいたしますと、日本国民から認知された子も、準正によって日本国民の嫡出子としての身分を取得した者も同じ親子に異ならないわけであります。それにもかかわらず、認知の場合を改正において除外した理由は一体どういう点にあるのかという点であります。確かに、嫡出子と嫡出でない子との間に、我が国の身分法上、親権、氏、相続の関係で異なった取り扱いをしているとか、外国の立法例では、認知によって国籍を取得するという国よりも、準正の場合に限っている国が多い、こういうことも言われているようでございますので、これらの点も考慮したものとは思われるのでありますけれども、この点に関する法務当局の見解をお伺いいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 単純な血統ということになりますと、おっしゃったとおり認知も一つの血統を示すものでございます。しかしながら、血統主義と申しましても単に血がつながっていさえすればというふうなことではなくて、やはり血統がつながっていることが、一つは日本の国に対する帰属関係が濃いということを明確ならしめる一つの重要な要素としてとらえられていることだろうと思います。そういう面から考えますと、認知というだけでは、これは母親が日本人である場合でありますから、生活実態といたしますと嫡出子の場合とはかなり違うのではないか、民法におきましても嫡出子と非嫡出子ではいろいろな扱いが違います。その扱いの違う根拠は、認知した者とその子との間には生活の一体化がまずないであろうということが一つの前提になっていると思います。
 そういうことからいたしますと、なるほど片親の血はつながっておったにしても、当然に日本の国と結びつきが強いという意味で国籍が取得されるというふうにすることは適当でないだろう。これが準正になりますと、そこでは両親の間に婚姻関係があるわけで、生活の一体化というものが出てまいりますから、そういう場合は意思表示によって日本の国籍を取得させてもいいだろうけれども、認知だけではそうはいかないのではないか、そういう考えから現在のような案にしておるわけでございます。
○神崎委員 次に配偶者の帰化条件についてお尋ねをいたします。
 日本国民の配偶者の帰化条件につきまして、現行の国籍法は日本国民の夫については国内居住三年を要件といたしておりますけれども、日本国民の妻につきましては国内居住を要件としていなかったのであります。しかしながら、改正法は日本国民の配偶者が夫であるか妻であるかを問わず同一の条件を定めることにいたしておるわけであります。妻にとりましては、国内居住三年あるいは婚姻三年と一年以上国内居住の要件を課されることになったわけでありまして、これだけを取り上げますと、従来より帰化条件が厳しくなったとも見られるわけであります。男女平等の原則の徹底からこのようになったとも思われますけれども、国内居住を要件から外すことにどのような支障があるのか、この点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 これは先ほど認知のところで申し上げましたけれども、ある外国人が日本の国籍を取得するためには、日本人と婚姻関係にあるということだけではなくて、生活実態が日本との結びつきが強くなる、そういう帰属性というものが出てきて初めて日本の国籍を与える要件が加わってくるのではないかということが基本的な考え方でございます。従来は、日本人の男性を夫とする外国人の妻の場合については、国内における居住要件というものがなかったわけでございますけれども、これは従来の考え方が、妻は夫に従うといいますか、妻は夫の生活環境の中に全く入ってしまうというふうな考え方、それからまた、先ほども話が出ましたけれども、夫婦国籍同一主義的な考え方、むしろ妻の国籍が夫の国籍に従うべきだというような考え方も若干あったのではないかと思います。そういうふうなことで、日本人の男性の妻となれば非常に日本との結びつきが強くなるという発想がその根底にあると思うのです。
 そういうこと自体が、今度の法改正の一つの理念であるところの両性の平等、それから婦人差別撤廃条約の考え方というものに反することになりますので、そういう妻は夫に従うというようなことを取り外して物を考えてみますと、先ほど申し上げました日本の国との強い結びつきという一つの要素を考えていく場合には、単に婚姻関係があるということだけではなくて、一定の、日本に住んでいるという日本の土地との結びつきというものがあって初めて帰化できるという要件にすべきであるという考え方になったわけでございます。
○神崎委員 そうしますと、具体的には仮装婚姻を懸念しているためなのではないかと言われていますが、その点についてはどうなんでしょうか。
○枇杷田政府委員 理論的には、ただいま御説明申し上げたとおりでございますが、仮装婚姻によって日本に入国して帰化をして、直後に離婚するというようなケースもときどき指摘されております。そういうことも横目にはにらんで、考慮に入れなかったと言えばうそになりますけれども、しかし、それだからといって本来あるべき理念を曲げて考えたということはございません。
○神崎委員 現在は、日本国民の妻につきましては国内居住を要件としておりませんので、国外在住のままに帰化している日本国民の妻がいるものと思われるのであります。それは大体年間何名ぐらいであるか、またどういう人たちであるのか。さらに、今後はこれらの者は国外にいる限り帰化できないことになるわけでございますけれども、これらの者に不利益を与えることにならないかどうか。この点についてお尋ねをしたいと思います。
○枇杷田政府委員 国外にあって日本人の妻であるということで帰化いたしました数は、昭和五十六年が十一名、五十七年が九名、五十八年が十六名となっております。
 その人たちがどういう関係の人かということは、はっきりした数字はつかまえておりませんけれども、半数は外交官、外務公務員で、その他は、民間企業の海外派遣職員というような人が現地で結婚をいたしまして、そして帰化の申請をするというケースがほとんどだというふうに承知いたしております。
 こういうふうな事情の方が今後不利になるのではないかという面では、なるほどそういう面がございますけれども、外務公務員につきましては、従来、現行の外務公務員法の七条の関係を改正しようというふうなことを外務省でも考えておられるようでございます。それからまた、その他の民間の方につきましては、不利と言えば不利でございますけれども、主にそういう方はいずれ国内に戻ってこられる方がほとんどだろうと思いますので、戻ってこられましたら、一年間おられれば、その間に婚姻歴が三年以上たてば帰化申請ができますので、それほど大きな影響があるものではないのではないかというふうに考えております。
○神崎委員 次に、改正法が採用いたしました父母両系主義につきまして、もう一度もとに戻って基本的なことからちょっと考えてみたいと思うわけであります。それに関連しまして、同じく改正法が現行法を踏襲しております血統主義という点についても考えてみたいわけであります。
 国によって、この血統主義と生地主義という問題につきましては、いろいろな国の国籍法を見ておりますと、必然的に血統主義の国はいつまでも血統主義を続けるとか、生地主義の国はいつまでも生地主義を続けるというのじゃなくて、アメリカでも独立当初は血統主義であったが、その後、生地主義になった、あるいは当初は生地主義であったけれども、その後、血統主義に変わったという国もありますし、必然的にそれを維持しなければいけないというものでもないように思うわけであります。要するに、日本という国家の基盤をどう決めるか、こういう角度からこの問題についても考えればいいのではなかろうかと思うわけであります。
 そして、今改正法は婦人差別撤廃条約批准のために父母両系主義を採用している。この父母両系主義の採用が当然の前提ということで議論がなされているように思うわけでありますけれども、条約を批准し、父母のいずれが日本国民かによって子の国籍に差異を設けない、これがこの婦人差別撤廃条約の批准の要件を満たすだろうと思うわけでありますけれども、そうした場合に、この父母両系主義をとるほかに、例えばアメリカやカナダのように生地主義を採用するという考え方、あるいはイギリスの一九八一年の改正法のように自国内で出生した自国民の子に国籍を付与するものとする、血統主義と生地主義の重複を認めるというような考え方、あるいは一九八二年のビルマの改正法のように、父母が自国民のときに国籍を付与して、父母の一方のみを自国民とする子の国籍の取得には一定の条件を付する、こういったことも考えられるのではないかと思うわけであります。
 そこでお伺いいたしたいのでありますけれども、今回の改正で父母両系主義を採用された政策的根拠というものは一体どういうものであるか、こういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 おっしゃるとおり、いわば両性の平等的なふうに改めるという場合には、生地主義に切りかえてしまうということも一つの案だろうと思います。それから父母両系血統主義にするということも一つの案だろうと思います。それからもう一つは、純血血統主義といいますか、両親ともに日本人である場合にのみ日本国籍を与えるというのも一つの方法だろうと思います。そのほか、それらのものを若干組み合わせるという方策もあろうかと思いますが、基本的にはその三類型だろうと思います。
 法制審議会におきましても、現在血統主義をとっておりますし、日本の国民感情としましても非常に民族的な考え方が強いというふうなこともあって、そう大きな議論をしたわけではございませんけれども、生地主義の場合にはどうなる、夫婦ともにという純血血統主義の場合にはどうなるということは一応検討し、我々も検討したわけでございます。
 その点から申しますと、生地主義をとりますと、これは現在の、要するに血統主義的な考え方からしますと百八十度の転換でございます。これは国民感情としてもまず受け入れられないであろうということがあります。それから実際問題としても混乱を生じます。それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、重国籍の問題というのはやはり避けなければいけないという考え方があります。そういうことを考えますと、生地主義をとりますと、日本にも国際化が進みますと外国人の方が大ぜい来られる、そこで生まれた子供はみんな日本国籍を取得するということになりますと、生地主義をとることによって重国籍の問題がかなりふえていくということが考えられるわけでございます。そういうことはどうだろうかというようなことで生地主義は適当でないという結論でございます。
 それから純粋血統主義につきましては、現在は父親が日本人であれば母親が外国人であっても日本国籍を取得するというのを狭めてしまうということになるわけです。そういうふうなことが妥当だろうかといいますと、いろいろな層からの声からいたしましても、母親を日本人とする子供にも日本国籍を与えるという声は強いけれども、父親だけが日本人の子について日本国籍を与えるのはまずいという声は全くないのでございます。それから先ほど申しましたけれども、これから国際交流が盛んになってくるということから考えますと、純粋血統主義というのは現実に妥当しないのではないか。そういうふうなことをあれこれ勘案して結局婦人差別撤廃条約の思想に乗るならば、我が国としては現実に選択できる方法は父母両系血統主義しかないという結論になったわけでございます。
○神崎委員 現行法の父系血統主義につきましては、従来から憲法との関係で問題を指摘する意見があるわけでございますけれども、現行法と憲法との関係につきまして法制審議会でどのような議論がなされたのか、お伺いいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 法制審議会におきましても憲法との関係が議論され、検討されたわけでございます。その中で、現在時点においても憲法に違反するものではないという意見もあります。それから、現時点では憲法に違反しているのではないか、あるいは違反の疑いが濃くなってきたのではないかという意見があります。そういう違憲論的な考えの方も、それでは現行法が昭和二十五年制定当時から憲法違反であったかということになりますと、そういうふうな議論をされる方は実は一人もおられなかったわけでございます。
 現行法制定当時は憲法違反ではなかった、しかし、その後の国際情勢というものがだんだん変わってきた、殊に違憲でないということの一つの論拠になります二重国籍の防止策としての父系血統主義というものがほかの国が父母両系主義をとることによって実際上機能しなくなってきつつあるというようなことからしますと、憲法違反の疑いが濃くなる、そういうような考え方をされるわけでございます。
 それからもう一つは、両性の平等という意識が昭和二十五年当時と現在とでは違う、そういう両性平等の意識というものが日本国内においてもだんだん成熟してきた、そういう度合いに絡んで憲法違反の疑いが濃くなってきた、そういう議論をされるわけでございます。
 では、いつからかということになりますけれども、これはどなたも御指摘になる方はないのでありますけれども、少なくとも昭和二十五年当時から憲法違反であったという議論は法制審議会においては出なかった次第でございます。
○神崎委員 次に、無国籍児の問題についてお尋ねをいたします。
 附則五条の国籍取得の特例との関係で、沖縄の無国籍児の問題が指摘されているところであります。その発生原因といたしまして、日米の国籍法の差異によるもののほか、ほかの原因によるものもあるというふうに伺っておりますけれども、どのような事情で無国籍児が生ずるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 沖縄の無国籍児は、三類型に分類されるというふうに言われております。
 第一番目がいわゆる純粋無国籍児と言われる方たちでありまして、これは日本の国籍法とアメリカの国籍法との消極的抵触という関係から出てくる無国籍児であります。これらの方々は、数とすればそれほど多くはないように聞いております。
 それから第二類型が未就籍無国籍児と言われる方々でありまして、これは概念的には米国籍がある、父親が国籍を取得しておるということではあるのだけれども、その父親が行方不明であるとかあるいは戦死してしまったというふうなことで米国官憲から米国籍の証明書が得られないということから事実上就籍手続がとれないということでの未就籍無国籍児と言われる方々であります。
 それから第三類型が婚姻外無国籍児と言われる方々でありまして、これは正規の婚姻をアメリカ人とした日本女性がいる。ところが、その夫の方はアメリカに帰国したとかというようなことで行方不明になっていて実際上の婚姻関係はないという状態のときに、離婚手続をとらないままで日本のといいますか、日本人でなくてもいいのですけれども、ほかの男性と事実上の婚姻関係に入って、そこで子供が生まれるという方々、これは法律上は嫡出推定を受ける形になっておるわけでございますが、血統的にはその母親の夫とは関係がない人という方でございます。
 そういうふうな三類型になっているというふうに一般に言われております。
○神崎委員 法務省は、成人を超えました無国籍児につきましては簡易帰化で対応できるんだということを言われているわけであります。ところが、帰化については手続的にも大変複雑である、帰化されない場合もあるという声も耳にするわけでありますが、従来どのような考えでこの問題に対処してこられたのか、また今後どのような方針で運用をされるお考えなのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 従来から沖縄の無国籍児につきましては、国籍法の許す限度きりぎりまで簡易的な措置をとろうではないかということで来ております。最近、三年間五人ずつ帰化の申請があり、いずれもそれは全員帰化が許可されております。提出書類などについても非常に複雑であるというようなことが言われておりますが、私どもとすれば、本人が原則として書くこと、作成することができたり、あるいは通常の戸籍謄本とか住民票、そういう程度のものだけ集めていただいて、あとはなるべく手間がかからないで済むというような措置も講じております。そういうようなことでございますけれども、またさらに複雑だとか、もっと相談に乗ってくれというような声もありますので、今後ともそういう方針は貫いて、現地の窓口でも円滑にいくようにしてまいりたいと思っているところでございます。
○神崎委員 次に、国籍選択制度についてお尋ねをいたします。
 二重国籍の問題につきましては、一部に重国籍であることの権利を保障すべきだ、こういう意見もあり、当委員会でもそういう議論もなされたわけでありますけれども、今回の改正案では、二重国籍を減少させるためとして、一つは新たに選択制度を導入した、さらに現行の留保制度というものの適用範囲を国外で出生した血統による二重国籍者にも適用するように拡大をしているわけであります。ヨーロッパと我が国とではその置かれました国際環境も異なりますし、国の伝統も異なりますから、必ずしもヨーロッパと我が国とを同じように考えることはできないだろうと思うわけでありますけれども、同じく父母両系主義を採用いたしましたヨーロッパ諸国では、イタリアを除いて国籍選択制度を導入していない、このように伺っております。その理由は一体どういう点にあるのでありましょうか。
○枇杷田政府委員 ヨーロッパ各国で国籍法の改正に際しましていろいろ検討がなされたようでありますが、その結果としてヨーロッパ理事会での閣僚評議会の決議のとおりに選択制度を設けたのはイタリア一国であります。今後ふえるかもしれませんけれども、目下のところ一国であります。ほかの国々はどうしたかということは必ずしもはっきりはいたしませんで、推測する面もあるわけでございますけれども、各国の国籍法改正の際の理由書等を読んでみますと、国籍唯一の原則を貫きたい、したがって選択の制度を導入するのがいいのではないか、それが導入できるかどうかという面は検討されているようであります。
 しかしながら、実質的には、そういう選択の制度をとりますと、今度の我が国の改正案と同じでございますけれども、催告をしてそして国籍の選択の後始末をするということが当然必要でございます。そのためには重国籍者というものを把握しておかなければできないわけであります。あるいは把握する資料がなければできないわけであります。しかしながら、ヨーロッパ各国におきましてはそういう関係での資料が現行制度では整っていない。したがって、選択制度を採用するためにはそういう資料を収集しておく新たな機関が要る。そういうふうなことをしても果たしてどこまでできるかわからないというようなことから、実効上それは大変困難であるということが北欧三国あるいはイギリスなどにおいても選択制度を採用しなかった理由に挙げられているようであります。そのかわり、各国間での協定で二重国籍についての解消あるいは二重国籍である場合の問題である兵役などについての抵触問題を解決していくということの措置でその点は我慢しようというような考え方で選択制度は結果的には採用されなかったというふうに承知いたしております。
○神崎委員 国籍選択の期限の問題につきましては、これを引き下げるという議論と、それから二十五歳ぐらいに引き上げたらどうか、こういった両方の議論がなされているわけでありますけれども、改めてお尋ねをいたしますが、この期限を二十二歳にした根拠というものはどういう点にあるのでありましょうか。
○枇杷田政府委員 二十二歳と申しますのは、実は二十歳から二年の間にというところに意味があるわけでございまして、基本点は要するに二十歳であります。成年に達したときを基準にいたしております。国籍の選択ということは自分の帰属する国を最終的に決めるといいますか、そういう重大な事柄であるので、それを自分で判断して処理できるというのは一体何歳が適当であろうかという要素が一つございます。それからもう一つは、二重国籍というものはいろいろな弊害があるのでこれを解消したいというのが選択の制度でございますが、二重国籍の弊害というものは年を重ねれば重ねるほど実はその弊害が出てくる可能性が強くなる。そういう意味合いで、どれぐらいのところでやってもらった方がいいのかという観点が一つあるわけでございます。
 そういうふうな両方から見ますと、まず自分の判断能力というふうな点から考えますと、我が国の法制度では満二十歳が独立して判断できるそういう年齢であるということで基本的には貫かれておるわけであります。そういう面から二十歳ということが適当だということが一つ言えます。それからもう一つは、二重国籍の弊害的なことを考えますと、その一つの大きなものに兵役義務もあるわけで、各国の兵役の関係の年齢を見ますと、これまた十八歳とか二十一歳とかいろいろありますけれども、大体二十歳くらいのところがめどであるというふうなことを総合勘案いたしますと、二十歳が基準点である。で、二十歳に達してから二年間の熟慮期間といいますか手続期間というものも置いて、その間に選択をしてもらおうということを考えた次第でございます。
○神崎委員 これまでの当委員会の議論を伺っておりますと、国籍選択の期限につきましては、国籍選択の判断をするのに二十二歳が適当であるかという角度からの議論と、もう一つは兵役義務との関係で議論がなされているわけであります。兵役義務のある国には兵役義務中には自国の国籍の離脱ができない、そういうふうにしている国がある。そこで、兵役義務年限との関係で国籍選択の期限を二十二歳とするのは妥当か、こういう角度からの議論がなされているわけであります。外国で二十二歳を超える年齢まで兵役義務があるときでも日本の国籍の選択に支障はないように思うわけでありますけれども、その点についてどうかという点です。さらに、その場合、外交上問題は生じないか、こういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 二重国籍の他国の方の兵役義務の年限内に入っている場合に日本の国籍の選択の宣言をするということは、これは我が国としては別に支障がない、それを禁止すべき何らのいわれも規定もございませんので、それは当然日本国籍の選択の宣言をすることができます。それが他国に対して影響があるのではないかという御質問でございますけれども、これは、我が国に対しまして日本の国籍の方を自分としてはとるんだ、したがって外国の国籍はなくすようにするんだということを日本の国に対して宣言をするだけでございまして、他国については別に法的な効果は何もないわけでございます。したがいまして、それをしたからといって日本の国と当該外国との間に外交上のトラブルが起こるということは予想できないところでございます。
○神崎委員 次に、留保制度についてお尋ねをいたしますけれども、留保制度つきましては、血統主義を絶対視する考え方、それから旧国籍法が大正十三年の改正で留保の規定を新設した理由がアメリカへの日系移民の困難を救済する、こういった理由であったことなどから見まして、留保制度を廃止すべきだ、こういう考え方もあるのであります。今回の改正に当たりまして、この留保制度を廃止しないでむしろ適用範囲を拡大したという点が挙げられると思いますが、これはどのようなお考えによるものかお伺いいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 現行の留保制度ができないきさつにつきましてはいろいろなことが言われておるわけでございますが、そのできないきさつはともかくといたしまして、現在の国籍制度の中で留保制度が果たしております機能というのは、二重国籍を取得する場合において形骸的な国籍をしょったままの二重国籍はなくすという作用といいますか機能は十分に果たしていると思います。そういうふうな面からいたしますと、留保制度というのは子供の将来を考えて親が留保するかしないかを決定するわけでございますけれども、そういうことによって重国籍がいわば出生の時点で解消できるということは非常に大きなメリットであろうと思います。そういう意味で二重国籍の防止策という面での留保制度はなお存続したい。
 それからもう一つ、その留保制度を拡大したということは、外国で生まれて重国籍という場合には、生まれたところが外国で、しかも親の片一方が外国人だということであります。そういうふうな状況にある方は、日本に対する帰属関係といいますか結びつきというものがかなり弱いという場合がかなりあるだろう。二重国籍者の場合に二重国籍の各国に対する帰属度合いといいますか、そういうものがフィフティー・フィフティーであるということもあるでありましょうけれども、おおむねはどちらかに偏っていると考えられるわけであります。そういうふうな偏りのことからしますと、外国で生まれて、しかも片親が外国人であるという場合には、日本の国籍への偏りが、もちろん実生活としては強い場合もあるかもわかりませんけれども、弱いということがかなりの傾向としては言えるのではないか。そういう方々については、もちろん日本国籍は与えないというわけじゃないので、与えるけれども留保していただきたい。そのことによって、反面、形骸的な日本国籍は取得しないでおくということができるのではないかということから、留保制度を少し拡大してなお存置をするということにいたしたわけであります。
 なお、これは正確な数字ではございませんけれども、ブラジルなどでは、日本の国籍を取得する法律関係にある者の中で留保届を出すのは約三分の一ではないかというふうに言われておるわけであります。現行法でそうでありますが、そういうことからいたしましても、やはりそういうことで形骸的な日本国籍を持つ二重国籍者を排除したいということは、かなり実効の上がる制度として今後も考えられるということが予測されるわけでございます。
○神崎委員 次にお尋ねいたしますけれども、国外出生児の国籍取得を制限する各国の立法例としてどのようなものがあるか、御紹介をいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 これはいろいろな形のものがございます。大体、社会主義の国におきましては国外出生児の国籍取得については制限するのが一般的でございまして、中国の国籍法によりますと、中国の公民である者でも外国で定住しているというような場合には中国の国籍を取得しないというようなことにもなっておりますし、ソビエトの場合には、外国で生まれた場合で二重国籍となる場合には両親の合意によってどっちかに決めるというふうなことにしているものもあります。
 それから国外で生まれた子供が一定の期間内に、一定の期間内というのは、一定の年齢までに一定期間国内に居住しないときには、原則として自国の国籍を失わしめるというふうな形のものでは、スウェーデンとかデンマークとかがあります。それからまた、一定の年齢までに一定の手続をしなければ自国籍を喪失するというような国といたしましては、スイスとかベルギーとかというようなものがあるわけであります。
 それから生地主義の国におきましては、これは、もともと生地主義というのは自国の領土内で生まれた子供に国籍を与えるという考え方でございますので、その領土外、国外で生まれた子供については、むしろある一定の条件がある場合、血統的な条件があって居住要件的なものが加わった場合に自国の国籍を与えるというふうなことでございまして、そのことはアメリカなんかもとっておるところで、沖縄の無国籍児を生む一つの原因になっているところでございます。
 まだほかにもいろいろな類型がございますけれども、大体今申し上げましたようなことで、各国それぞれの考え方で国外出生児については国籍取得についての何らかの制限を設けておる、あるいは後になっての喪失事由としておるというようなところが多いように承知いたしております。
○神崎委員 改正法は留保制度と選択制度と二つの制度をとっているわけでありますけれども、重国籍解消の機能としては、この二つの制度というものは重複することになるのではないでしょうか。その点について御意見を伺いたいと思います。
○枇杷田政府委員 確かに、重国籍解消の策としては重複と言えば重複でございます。いずれも重国籍解消策であるという面において共通するものがございますから、重複と言えば重複でございますけれども、しかしながら、そのおのおのがそれぞれ機能を別にするわけでありまして、留保届制度というのは、出生の時点で国外で生まれたということからくる日本国籍の形骸的なものを防止するということで整理ができるわけでございます。それから選択制度というのは、留保した者も含めて重国籍である者が、みずからの意思によってみずからの将来の生活を考えた上で国籍を選択するということによって国籍唯一の原則を貫いていこうということでございます。
 趣旨が違うわけでございますが、その留保制度をやめにしてしまって選択制度一本にしたらというふうな御意見も実はなかったわけではございませんけれども、それはそれぞれの機能すべき場面が違うばかりでなくて、留保制度の場合には少なくとも出生の時点で二重国籍が解消するという利益があります。早く申しますと、国籍唯一の原則だけの立場から申しますと、選択制度というのは二重国籍の状態の解消を二十二歳まで待つという感じでございますけれども、それを待たなくて済むということが一つのメリットであろうということが言えるわけであります。
 それから、今度採用いたしました国籍選択の宣言の制度というのは、これはその一定の期限までに宣言をしなければ当然に日本国籍を喪失するという制度ではございません。そういう制度にするということも、それは立法論としては考えられたわけでありますけれども、それでは当該本人にとっては酷であろうということから、法務大臣の催告手続を設け、その催告に対しても何らの応答がない者について日本国籍を喪失させる、そういう手続にしておるわけでございます。そうしますと、催告をするというためには、日本の国とすれば、日本国籍を有している者を把握していなければならないということになりますが、留保制度を前提に置きませんと、国外の出生児については日本の国としては把握できないという者が生ずるわけであります。
 出生届イコール留保届というふうに考えていただいてもいいわけで、現行法でも、留保届を出さない方は出生届もお出しにならないわけです。したがって、在外公館でも、それから日本の本籍市町村でも把握できないわけです。そうしますと、そういうことをいわばそのまま放置した上で選択宣言についての催告制度というものを設けますと、いわば出生屈も何も出さない、留保制度があっても留保しないような人についてむしろ催告ができなくて日本国籍が残る、そうでないきちんとしている人については催告で云々ということになって、実際が逆転するわけです。そういうふうなことも考えますと、留保制度というものは選択制度と決して矛盾するものでもないし、それぞれの時点においてそれぞれの機能を果たす合理的な制度として考えられるんじゃないかということで、私どもはこの二つの制度を置くことにいたしたわけでございます。
○神崎委員 次に、戸籍の問題について簡単にお尋ねをいたしますけれども、父母両系血統主義の採用によりまして、日本人の母の子供も出生によって日本国籍を取得することになったわけでありますけれども、その場合の戸籍の処理はどうなるのか、この点についてお尋ねいたします。
○枇杷田政府委員 新法のもとにおきましては、日本人母から生まれた子供も日本国籍を取得いたします。したがいまして、それについての戸籍を考えなければならぬわけでありますけれども、まず民法的な面から申しますと、その子供の氏は当該母親の氏を名のるということになろうかと思います。したがいまして、母親と同じ氏でございますので、これは母親の戸籍に入ることが当然できるし、またそうすべきであるという考え方でございます。現在でも、国際結婚いたしました日本男性について子供ができますと、これは父親の氏を称するということで父親の戸籍に入る、それと同じことになるわけでございます。
○神崎委員 二十条の二第一項によりまして新戸籍が編製された場合に、従前の戸籍にあった子供は新しい戸籍に入籍することができないのかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
○枇杷田政府委員 二十条の二というのは、例えば既に結婚をして子供さんがある、それが自分の戸籍に入っているという日本の女性が外国人と結婚をしまして、そしてその夫の方の外国姓を名のるというケースということになろうかと思いますが、そういう場合には当然にその日本女性の子供の氏が母親が変えた外国姓に変わるわけではありません。したがいまして、母親がその戸籍から出まして別の戸籍が編製されるというのが二十条の二の考え方でございます。
 その子供が母親と同じ氏を名のりたくてそこに入りたいという場合にどうするかというのは、これはまだ完全に私ども詰めているわけではない面があるのですけれども、これは親の新戸籍に対する入籍屈があれば、その届け出によって親の新戸籍の方に入ることができる取り扱いを考えてもいいのではないかということで、今検討をいたしております。
○神崎委員 以上で終わります。
○宮崎委員長 簑輪幸代君。
○簑輪委員  一九八〇年の七月に、国連婦人の十年世界会議において婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約というものが署名されまして、これを契機に国籍法の父系優先血統主義が見直されて今回改正されるという運びになったわけでございますけれども、私は今回の改正は、ようやく男女平等が国籍法の中で取り入れられるということで、遅きに失したとはいえ非常に前進だというふうに評価するわけです。しかし、この国籍法の改正については、一定の原則的な前進とは思いながらもいろいろ問題がありますので、諸点についてお伺いしていきたいというふうに思います。
 これがいろいろ論議されてまいりました中で、憲法との関係がどうかということが再三言われておりますけれども、先ほど来の質疑の中で国際情勢の変化ということが言われたりもしておりますけれども、私は国際情勢の変化ということで憲法違反というのを制定当初から免れるということはできないのではないかというふうに考えるものです。といいますのは、憲法の条文は制定当初からその意味は明らかでありましたし、また国籍法が父系優先血統主義が条文上記載されていることも明らかであって、これが問題であるということは現行国籍法制定当時から論議はされていたわけですね。つくった以上、それが違憲であるということはぐあいが悪いので合憲という形をとって今日まで運用されてきたわけですけれども、問題点は明らかだったというふうに思うのです。
 その点から考えますと、今回の改正の際に、差別撤廃条約の批准のためにということが言われておりますけれども、あわせて現行憲法の平等の原則に照らしてこれが改正されるんだということを何としても明確にしなければならないというふうに思うのです。その点についてはいかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 婦人差別撤廃条約の批准のためというのは、現実的に今の時点でそれまでにという意味合いを持っております。しかし、もう一つの面は、それに盛られている精神は私ども十分に受けとめていかなければならない実質を持っておるという意味でも考えておるわけでございまして、国際情勢の変化といいますか、今おっしゃった国際情勢とは違うかもしれませんけれども、日本国民がいろいろ海外との交流が多くなって、そこに国際結婚が多くなって、そこから出てくる問題が具体的に国籍の問題でも提起されるようになった、それを解決する一つの理念として男女平等ということの理念をこの改正の中に盛り込んでどうなるかということが検討された結果の改正案であるということはおっしゃるとおりでございます。
○簑輪委員 なお、あわせて、先ほどの御答弁の中で国民の平等意識の成熟というようなこともおっしゃいましたけれども、平等意識が成熟していようと、していまいと、憲法違反の法律という意味で考えた場合には、意識の成熟にかかわらせるというのは法解釈としてはおかしいのではないかというふうに私は考えるわけです。それで、憲法との関連というのを当然念頭に置いて今回の改正が行われるということを踏まえて、私は次の論議に移りたいと思います。
 今回の改正案の附則の五条で二十年間ということに限った措置になっておりますけれども、やはり憲法の施行時までさかのぼって適用しなければこの問題は解決しないのではないか。特に沖縄の無国籍児の救済ということがかねてから強く言われておりました関係から見ましても、何としても少なくとも憲法施行時までさかのぼってこれが適用されるというふうにすべきだと考えますけれども、そこまでさかのぼると何か不都合なことがございますでしょうか。
○枇杷田政府委員 二十年間さかのぼるというふうにいたしましたのは、国籍法の一つの考え方といたしまして、未成年の間はいわば国籍がまだ安定してない時代として考えてもいいのではないかということが一つ、それから、ある年数がたちますといろいろな社会的な実態が外国人として定着しているということになりますので、それを単なる意思表示でするということには問題があるだろう。もう一つ、経過措置の場合に、実は前に議員立法で出された案などでは無国籍であることを要件にしておる案もあるわけですね。ところが、今度は無国籍であることを要件にしないということになりますと、二重国籍であるということをもあえて無視してやるということになりますと、今申し上げたような観点から二十年、二十歳、未成年者が限度であろうという考え方になるわけでございます。
 したがいまして、それを超えて長くいたしますと、今申し上げましたような問題がいろいろ出てくるわけでございます。これも年数をさかのぼらせればさかのぼらせるほど問題が出てくる。しかも、その間に歴史的にいろいろなことがあるわけでございます。極端に随分長くしますと、これは戦争中のこともある、それから憲法のこともあるでしょう。それからもう一つは、平和条約発効によって朝鮮籍、台湾籍の方が日本国籍を喪失したという時点もある。そういうような問題が理論的にもいろいろ出てまいります。それから、先ほど申しましたように、長年外国人として生活をしているという実態、しかも重国籍であることを否定しないという立場に立ちますと、いろいろな問題が出てくることは想像することは容易だと思いますけれども、そういう意味で二十年に切ったのであります。
 それを超える方については、個別の問題として帰化で処理をしたらいいだろう。二十歳を超えれば日本の国籍を取得させないというわけではないのでありまして、個別にいろいろな状況を判断してやるのが適当であろう。その場合にも、例えば沖縄の無国籍児の話が出ましたけれども、そういうような境遇の方、これは沖縄に限らないと思いますけれども、そういう生活環境などは帰化の許可の際に十分考慮できることであるし、また、それによって解決できるであろうということで、全体としては理論も通し、そして救済さるべき方は救済されるということがそれによって可能であるというふうに考えて二十歳にいたしたわけであります。
○簑輪委員 平和条約発効以前までさかのぼると大変問題があるだろうというようなことも含めておっしゃいましたけれども、案外そんなところが本音かなとも思ったりもしますけれども。
 いずれにしても日本人の子供であり、そして日本人として生きたい、そういう人たちが、たまたま法改正がおくれたことによって未成年の時期を過ぎ成人に達したというだけで、簡易帰化という手続もあるのだから帰化の方でやりなさいというふうにされることについては、非常に問題があろうかというふうに思います。といいますのは、この届け出というのは三年の期間を限って届け出をしなさいということを言っているわけですから、その三年の間にこうした過去にさかのぼった人たちも一気に届け出をさせれば事は解決するのではないかというふうに思うわけです。その上に、簡易帰化といいましても、後にまた論議をしたいと思いますけれども、決して簡易なものではなくて、法的にも届け出の場合と帰化の場合とでは異なる扱いがされるということから見ましても、これは非常に問題だろうというふうに私は思います。
 私は、やはり新憲法が施行されたと同時にこういう男女不平等の扱い、それによって日本国籍を本来取得すべきであったにもかかわらず不当に奪われていた人たちは、この際一気に解決するというのが当然ではなかろうかというふうに思うわけです。
 附則の五条であわせてお聞きしますけれども、「母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に母が日本国民であったとき」という要件が付されていますけれども、なぜこの要件が必要なのでしょうか。これをなしにした場合はどんな不都合があるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 これは先ほどもちょっと話が出ましたけれども、親子国籍同一主義ではありませんけれども、親子というものは元来同一の生活をしているわけだから国籍が同一の方がいいというような思想があるわけです。それを正面から出しているわけではございませんが、単に血統だけではなくて、日本との帰属性が強いという生活実態がある場合に、意思表示によって日本国籍を取得する道を開いてもいいことになるのではないかという考え方によるものであります。
 したがいまして、既に母親が外国へ帰化してしまっているとか、そしてその子供ももちろん外国籍を持っているわけですね、そういう者までただ単純な意思表示で日本国籍を取得させていい実体と言えるだろうかということから外しているわけであります。これは別にどういう弊害があるかということよりも、国籍を付与する場合の物の考え方がそこに出ているわけでございます。
○簑輪委員 日本人母の子であるという厳然たる事実に着目して、経過規定を設けて届け出によって日本国籍を取得するという道を開いているわけですから、そういう前提から考えますと、母親の何らかの都合で再婚したり母親が別の国籍になったとしても、子供が日本国籍を取得したいと願っている場合に、子供の権利を母親の都合と母親の身分関係によって左右するのは極めて不当であるというふうに私は考えるわけです。このようなケースというのは、一体どれくらいあるものと予想しておられますでしょうか。
○枇杷田政府委員 これはちょっと数は何とも想像がつかないわけでございますけれども、一万人を超える数がいるだろう、その中で取得の意思表示をされる方がどれくらいの割合になるかはちょっと想像がつきません。ふたをあけてみないと実はわからないというのが本音でございます。
○簑輪委員 母が現に日本国民でない、死亡時に日本国民でない、しかし生まれた時に母は日本人であったというケースですね。
○枇杷田政府委員 それは全くわかりません。先ほど申しましたのは、この要件に当たる方の数字でございます。
○簑輪委員 全くわからないということですけれども、そんなにめちゃくちゃにたくさんあるというふうにも思えないのですね。それで、先ほども申し上げましたように、この経過規定で措置されるものは三年の期間を区切っているわけですから、その限りにおいて日本人として日本国籍を取得したいという子供の意思があれば、母親が現に日本国籍でなくてもよろしいのではないかというふうに思うので、重ねて申し上げておきたいというふうに思います。
 それから、直接国籍法ということではありませんけれども、関連する諸法についてちょっとお伺いしたいと思います。
 差別撤廃条約を批准するために改正をしなければならない国内法について民事局でもいろいろ論議をされたと思いますけれども、この国籍法のほかにどのような法律についてどのような論議が行われ、そしてどんな結論になったのか、簡単に、わかれば教えていただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 私どもの方で一応問題に挙げましたのが民法の婚姻適齢の問題、それからもう一つは、待婚期間といいますか、待婚制度の問題でございます。
 この婚姻年齢の関係につきましては、婦人差別の問題である、まあ形の上では、年齢に相違があるという面では違いがあるということは言えますけれども、これは差別の問題と評価はできないのではないかということで、婦人差別の問題とは別に、現在の社会情勢、それから男女の身体的、精神的な成熟の度合い、それから実際の婚姻の実情とかというものを勘案して、民法それ自体の分野で検討するということはあってもいいけれども、婦人差別の問題として取り上げるべき問題ではないだろうというのが一応の結論でございます。
 それからもう一つの待婚制度でございますけれども、これも婦人差別と言えば差別かもしれません。別れた夫婦の夫と妻とを比べますと、夫の方が早く再婚できるという意味では差別であるかもしれないけれども、その相手の男性、女性にしてみれば、これはまた逆転するわけでございます。そういうふうな差別の問題ではなくて、むしろ嫡出推定の制度というものがどうしても親子関係の制度としては基本的に置かれざるを得ないだろう、そういうことをどう処理するかということの一環としてある問題なので、差別から出てくる問題ではないということでございますので、現在の待婚制度それ自体が、先ほど婚姻年齢のところで申し上げましたように、民法の考え方として、破綻しておる夫婦についてなお待婚期間というのは実情に合わないではないかというような実際論の面からの改正検討の余地はもちろんあるだろう、それは考えてみよう。しかしながら、婦人差別の問題として考えるのはちょっと食い違うのではないかというのが結論でございます。
○簑輪委員 この民法の問題についてはまた別の機会に論議をさせていただきたいと思いますけれども、法例について論議をされたことはございますでしょうか。
○枇杷田政府委員 法例にも「夫ノ本国法ニ依ル」というのがありまして、妻の本国法によるというのがないというようなことで、差別ではないかといいますか平等ではないではないかというふうな議論――議論といいますか問題の提起もなかったわけではありません。しかしながら、法例の場合には準拠法を決定する要素として考えているわけでありまして、実質的には夫の本国法を選んだ場合に適用される法律が差別であればそれは問題であろう。それから妻の法を選んだ場合にどうかというふうなことで、実質関係ははっきりしない。それから、その場合に、どっちかにしないと法例の決め方としては父母両系主義のように両方適用主義というのがとりがたい面があります。そういうことから、これも婦人差別撤廃条約との絡みで考えるべき事柄ではなくて、法例全体の中でその連結点として何をとるのが一番合理的かという面で検討することは必要だろうけれども、これをあの条約の関係だとして取り上げた場合には、それはちょっと平面が違うといいますか、そういう部分があるものですから収拾がつかないことにもなるので、これは別の問題だと考えておるところでございます。
○簑輪委員 夫の本国法、妻の本国法ということもありますけれども、父の本国法という規定の仕方もございますね。この場合、子供の準拠法を決める場合に、子の住所地の法という考え方もあるわけです。そういうことも含めて考えてみて、法例について全く全部差別がないというふうに断ずることもできないと思うのです。したがって、諸外国などで、この法例は国際私法の問題でもございますので、諸外国等の動きということが関連するとは思いますけれども、どんな動きがあって、どんな方向へ進んでいるというふうに認識していらっしゃるでしょうか。
○枇杷田政府委員 私どもとしてはまだはっきりした動向をつかんでおりませんけれども、どんな連結点を考えたらいいかということについては、各国もいろいろな分野についてそれぞれ違うので、原則として、夫とか男とかというものでとらえるべきかとか、そういう発想は現在のところないように思います。適用範囲については住所地がいいとか、そういうふうなことになってこようかと思いますが、どちらかと言えば住所地とかそういうところの法を連結点に多く用いようという傾向はあろうと思います。
○簑輪委員 法例の問題については、また今後論議をさせていただきたいと思います。
 続いて国籍選択の問題ですけれども、二重国籍のままでよいではないか、無理に選択をしなくてもよいという論議もあるわけです。そうした中で、少なくとも国籍選択をいや応なしに強制されるということがあってはならないし、また本人の意思に反して不当に国籍を剥奪されてはならないというふうに私は思うわけです。
 そこで、改正法十四条で選択の規定があり、「選択の宣言」ということも定められておりますけれども、未成年者といいますか十五歳未満の国籍選択については法定代理人によってするというふうにも別になっておりまして、それで私どもとしては、出生のときから同時に国籍選択を強制されるのではないか、あるいはまた暗に強制されるのではないかという懸念をぬぐい切れないわけですけれども、そういった心配はどのように解消されていくのでしょうか。
○枇杷田政府委員 この法律案全体をごらんになればおわかりいただけると思いますけれども、国籍選択については、本人あるいは法定代理人も含めてでございますが、その意思を尊重してそれによって決めていく、選択ということはまさにそこにあるわけです。そういうことでございますので、政府なりあるいは実際の事務を取り扱います市町村の窓口などでどちらかの方向に導くというふうなことは、この法律の制度、趣旨に反することは明らかでございます。また、そういうことを理解して実務に臨むと思いますので、出生届を出すときに、日本の国籍の方の選択届を出しておきなさいよと言うようなことは、まずやらないと思います。やってはいけないことだと思います。
 しかし、そういうことでもし誤解があってはいけませんので、そういう全く本人の自由意思を尊重するというのが今度の国籍法の精神なんだということは、法務局、市町村あるいは在外公館の方々にも十分に認識してもらうように、その点は周知徹底に努めるつもりでおります。
○簑輪委員 選択を強制するようなことはやらないと思いますとおっしゃいますけれども、やらないように担保する仕組みですね、それは今、周知徹底するようにとおっしゃいましたけれども、それは、出生の際に選択を強制することはまかりならぬという通達か何かできちんとされると伺ってよろしいのでしょうか。
○枇杷田政府委員 それは、どういう形式でどういう言葉を使うかはまだはっきり考えておりませんけれども、そこはもうともかく最前線にまでよくわかるように徹底させたいと思います。
○簑輪委員 十五条で、十四条の選択をしない者に対して「書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。」というふうに書かれております。この「できる。」というのは、法務大臣に権限が与えられたものであって、選択すべきことを催告するという、法務大臣が催告するというふうに理解すべきであるように前に論議をされたと思いますけれども、この催告は、いつから、どのような形でなされるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 いつから……(簑輪委員「二十二歳に達して後いつから」と呼ぶ)これは新法施行になりましてすぐにはないわけですけれども、新法施行二年から後にはそういうケースが起きてまいります。二十二歳までにいわゆる国籍の選択をしなかった方につきましては、一斉に毎日毎日というか、あるいは一定の日を決めて一斉に市町村長に戸籍簿を点検してもらうということは、私どもは期待をいたしておりません。何か戸籍関係の事件が出てきた都度、それによって、そういう要するに期限を徒過しておるということがわかれば、その都度法務局の方に知らせてもらうということにしたいと思います。したがいまして、何にも戸籍関係が動かない、あるいは戸籍全体としても――戸籍全体と申しますのは、一つの帳簿などにとじ込んでいる場合に、その帳簿自体が一つも事件が出てこないという場合には発見されないこともあるだろうと思いますけれども、そういうことでありますので、たまたま謄抄本だとかあるいは何かの事件が出てくるときにわかって通知をいたしますので、何年先になるか、あるいは二十二歳を過ぎて三カ月後に出るか、そこのところは画一的にいかないという面は出てこようかと思います。
○簑輪委員 催告の形ですね、どんなふうにされるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 催告は、法務大臣の方から書面で出すわけでございます。その催告は、届いたということがわかりませんと後で国籍喪失の効果にまで結びつきませんので、これは配達ができたというふうな形での送付の仕方をすることになろうと思います。
○簑輪委員 さっき、謄抄本などの請求等が戸籍関係の一定の出来事の中で例として挙げられましたけれども、実際上は謄抄本の請求というのは戸籍の窓口てほぼ自動的に流れ作業で行って、そこで戸籍の係の方が一々、二重国籍で選択の宣言をしなければならない方であるかどうかということをなさる状況に今、私、戸籍の窓口を見ていてないと思うのです。
 そうしますと、そういうふうに何かの事情で発見された場合には法務省に通知がある。しかし、ほとんどは、よほどでなければ発見されないまま経過されていく。そうすると、二重国籍のまま残っていくという問題もあって、市町村の運用次第ではかなり不平等、不公平が出てくるのではないかという問題が一つあると思います。
 それから送達の方法ですけれども、これは訴訟法の送達という関係で見ましたときに、どんな形になるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 まず最初の不平等の方でございますけれども、これは市町村によって実務のやり方もいろいろ違いますので、完全に画一的にということは私も自信を持っておりません。ただ、事柄の性質上、不平等になってはいけないということがありますので、これはしょっちゅう法務局の職員と戸籍の担当職員とが交流をいたしておりますので、その際にいろいろ話し合ったり指導したりするということによって、その不平等性はなくしていきたい、そういうように努めたいと思います。ある程度できると思います。
 その次に、送達の関係でございますけれども、民訴の関係でどうかというお話でございますが、これは国籍法自体では別に送達の方法を書いておりません。ただ、書面ということは出ておる、条文にはいたしております。しかも本人に対する催告でありますから、本人にその書面が届くということを前提に置いているわけであります。
○簑輪委員 戸籍法の百四条の三で、市町村長は、国籍の選択をすべき者が期限内にその選択をしていないと思料するときは、通知しなければならないというふうに書いてありますけれども、これを具体的にどう担保するのかというのは非常に微妙な問題だというふうに思うのですね。市町村が現実にこれをやろうと思いますと、そういう対象者名簿というものがつくられて常時きちんと管理をされていなければ、それは果たしてできるであろうかという疑問も出されておるわけです。そういう意味からいいますと、そう厳密に全部漏れなくやらなければ市町村長が戸籍法違反ということになるわけではなくて、戸籍の異動の際に市町村長が発見した場合には通知をしなければならないということにとどまるということで理解してよろしいのかどうか。
○枇杷田政府委員 従来から申し上げておるところでございますけれども、市町村あるいは法務局等で二重国籍者名簿をつくるということは全く予定をしておらない。催告の端緒といたしましては、今御指摘の百四条の三の条文を設けまして、そして戸籍事務を処理するに際してやればいいんだということはそのことを示しておるわけでございます。しかし、また一方では、そうかといって不公平になってはいけないという問題もありますので、実際の運用については常時法務局と市町村との間で意見交換をしながらやっていくということになろうかと思います。
○簑輪委員 不公平をなくすために常時連絡をとってということですが、それが一層管理強化につながらないように厳に注意をしていただきたいというふうに思います。
 それから送達の問題ですけれども、これは非常に重要な身分関係の得喪にかかわることでございますので、必ず本人に送達をするということを担保されなければならないというふうに思います。今、具体的にはどんな方法でということはまだ決まっていないのでしょうか。例えばそれこそ民訴法の本人送達に限るとか、そういうことはきちっと決められているわけではないのでしょうか。
○枇杷田政府委員 もちろん本人に届くようにという意味では本人送達でございますけれども、民訴のようなきちんとした送達の手続を考えているわけではなくて、実際問題といたしますと、多分、配達証明で郵送する、そして受け取ったという書面がこちらの方に返ってくるようにするというふうなことで処理をすることになると思います。
○簑輪委員 いわゆる特別送達の本人送達ということになるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 いわゆる民訴の場合の千何百円かの特別送達ではなくて、通常の配達証明というふうなもので考えております。まだ具体的にはっきり決めたわけではありませんけれども、私どもの構想としてはそういうことでございます。
○簑輪委員 その送達というのが非常に重要だと思いますのは、送達が本人にされなかった場合は、仮に本人が国内にいるではあろうけれども行方不明であるというような場合にはどうしようもありませんので、結果として官報催告という形になりそうに思います。そうしますと、官報で催告されるということになれば、これは送達をしたものとみなすわけであって、現実には全然送達されていない、にもかかわらず結局国籍は喪失をしてしまうということで非常に危険だというふうに思うのですね。結局、国籍選択の意思表示のチャンスと、それから意思表示が現実に行われない者について国籍喪失という結果だけは負わせるわけなんで、ひょっとしたらこれは喪失ではなくて、本人の意思は日本国籍を選択したものと考えても不都合はないのではないかというふうにすら思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 今の御提案の、何も言ってこないといいますか、住所がわからなくて催告ができない者については選択したものとみなすということになりますと、実体的には私は逆なことになってしまうのではないかという気がいたします。住所が最終的にわからないというのは――ともかく原則としては二十二歳までの方でございますので、国内で普通の生活をしておられる場合には住民票の関係だとか、それは戸籍の附票からたどっていくわけですけれども、そういうものからまずわかるはずでございます。わからないというのは、国外におるとかいうような形の方だと思います。そういう方について、送達ができないからということで選択をしたとみなすというふうにすると、日本の国籍の方が形骸化するような状況にある人に対してむしろ日本の国籍を固めてしまうということになるだろうという気がいたします。したがいまして、今のようなお話には賛同いたしかねるわけであります。
 ただ、官報によって催告するということは安易にやってはいけないということは当然でございますので、私どもは、与えられた手段の限りを尽くして調べた上でやるというようなことにはしてまいりたいと思います。
○簑輪委員 官報催告で国籍喪失をされるということは大変なので、十分な手だてを尽くしてということでございますが、具体的にはどの程度の手だてまで考えておられるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 これは、戸籍の附票にまず住所が書いてありますので、それから手繰ります。それでも住民登録のところにいないということもあるわけでございますが、その場合には、住民登録を最終的にしている市町村の方にわかる限りの情報は得るようにいたします。それから外国にいる場合も、市町村の扱いによっては、一番先に行く外国の行き先を書いてあるところもあります、これは全部ではないですけれども、そういうところも一つ捜す根拠になるわけです。
 それから、一番問題なのは国外におられる方だと思いますが、そういう関係につきましては、留保届を出すことによって重国籍となる方がおられますが、この場合には、出生の時点での住所は留保届のその届け書の中に書いてありますから、それが一つの手がかりになります。そこあてに手紙を一応出してみるというようなこともいたします。それから、戸籍によりまして親族関係がわかるわけでございます。そういう親族関係の方に照会をいたしまして、この方は今どこにおられるかというようなことを尋ねるということもして捜してみたいと思います。ただ、犯罪者を捜すわけではもちろんありませんから、警察とかそういうような関係を使うということは私どもは考えておりません。普通の民事的な感覚でわかる範囲でつかまえたいということであります。
 それからまた、仮に何か戸籍の事務の処理に際してわかるということの場合には、その謄抄本の本人が請求してくる場合もあります。そうすると、送り返す住所地も書いてある場合もある。それから婚姻届とか転籍とかというのならもちろんわかりますし、そういうことも、むしろそういう重国籍者で期限を徒過している者を発見するきっかけ自体から住所がわかるということの可能性も多いのではないかということを期待している次第でございます。
○簑輪委員 さっき、行方がわからないというのは国外に多いというふうに局長さんおっしゃいましたけれども、それは統計的に明確になっている、数字ではないと思うのですね。それで何ら根拠がないことでもございますし、二重国籍者そのものは、国内と国外と比較してみると国内の方が多いだろうし、それから現在の日本の状況から見ますと、諸情勢が変化して蒸発する人も多いし、いろいろな事情で行方がわからない人というのは複雑な社会関係になればなるほど出てきているということもありますと、必ずしも国内は比較的わかりやすいというふうに簡単には言い切れないのではないか。わかる場合は問題がないわけで、わからない場合に決定的に不当な結果をしょわせることのないようにしなければならないという意味では、意思表示のない者については、そうしたらこの際、そのままにしておくというのも一つの手だと思いますね。ただ、それはこの立法の趣旨から外れてくるというようなこともおっしゃるかもしれませんが、不当に国籍を奪うことよりも、二重国籍者が何らかの形で残るということは予想されている法体系でもございますので、そういう場合には、ケースとしては少ないのであるから、そのままでもいいのではないかというふうに私は思ったりもするわけです。
 もう一つ、十七条の二項で、実は一たん国籍がなくなってしまったら、十七条の二項ではとても救済されないという仕組みになっているわけですね。そういう点から見ましても、回復措置がないだけに厳格にやらなければならないだろうというふうに思うわけです。
 その点と、それから関連して十七条の一項の方では「日本に住所を有するとき」というふうに規定してありますけれども、この住所要件を課すのは酷ではないかと。いう意見もありまして、私もそう思うのですけれども、この条件を外して規定をしても差し支えなかろうというふうに思いますが、その点もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 まず、その官報告示によって国籍を喪失した方の回復が十分ではないのではないかということでありますが、ある一定の条件のもとには回復の意思表示の規定があるわけです。それからもう一つは、それに当たらない場合でも、これは元日本人であったということは同じでございますので、帰化の申請をされれば、一般の外国人よりは有利な条件で帰化が許可されるということにはなるわけでございます。
 その国籍回復の要件として、日本の住所が必要ないのではないかということでございますけれども、こういう方たちは原則として国外におる方が多いだろう、国内に絶対ないというわけではありませんけれども。要するに、一つには、まず催告を受ける前に、二十二歳までに国籍選択の意思表示をしなければならないということが法律上の義務として規定されておるわけです。ですから、本来は二十二歳までに全部しなければならない、それを徒過をしておるということがあるわけでございまして、そして、しかも、これはこちらの捜し方が悪い面がある場合があるじゃないかと言われるかもしれませんけれども、要するに通常の手だてでも住所が判明しないという状況にある方、そういう方がなおかつ外国におって、そして日本の国籍を当然にまた回復したいというのは、これはそこまで考える必要はないのじゃないか。むしろ日本に住んでいて、要するに国内にいて、そして日本の国で生活をしているのに、ただ住所の関係で官報でされてしまったというのは救済してもいいかもしれない。ですから、そういう面で住所要件というものがこの場合にも必要だという考えに立ったわけでございます。
○簑輪委員 お話を聞いても、やはり住所要件はどうしても必要だというふうにはちょっと理解できないのですけれども、時間もありませんので、ちょっと関連して、附則の三条の問題ですけれども、附則の三条の方では、これは現在二重国籍を持っている人が国籍の選択をしないときには、期限到来時に「選択の宣言をしたものとみなす。」というふうになっておりますけれども、この問題に関して、ちょっと私どもの方にも、これはおかしいのではないか、ギリシャ人と結婚してギリシャで生活している日本女性グループの方々の御意見では、こうやって一方的に日本国籍を選択したものというふうにみなされてしまうと、本人の意思とは全くかかわりなくギリシャ国籍がなくなってしまう。それで改正を知らずにいた人は、国からの知らせが十分ないままに日本国籍を選んでしまったということにされてしまうというのは、本人意思が尊重されないという問題点を指摘しているのと、それから日弁連の意見書でも、ここの問題点で「当該外国に本拠をおいて生活している場合、その経済的、社会的活動が当該外国の国籍保有を条件としている場合には、深刻な打撃を受けることになろう。」という指摘もありまして、「現に外国国籍を有する日本国民については権利として国籍選択宣言を行いうる旨の規定をおくに止めるべきである。」というふうに述べています。
 経過規定として考える場合には、このような従来の経過から二重国籍を持っている人の既得権といいますか、ある権利を一方的に剥奪してしまうというやり方をせずに、こういうふうな日弁連の意見書の見解のように、選択宣言を行い得るというだけでよろしいのではないか、そうすべきではないかというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどの官報告示の場合の国籍再取得のところで私、ちょっと勘違いをいたしまして、間違った答弁をいたしましたので、訂正をさせていただきたいと思います。
 留保制度の、要するに不留保の場合の再取得の場合には日本の住所要件がありますけれども、官報告示の場合には、住所要件は最終的には外しました。途中でそういうさっき申し上げました議論があったもので、私ちょっと議論を間違えましたので、訂正させていただきたいと思います。
 それから今の御質問でございますけれども、附則三条の関係は、立法趣旨といたしますと、新法の考え方の国籍唯一の原則というものは、既に重国籍者になっている方々にも原則的には適用したい、したがって、この際、国籍の選択をしていただきたいという気持ちはあらわしておるわけでありますが、ただ、それを何にもされなかった場合に日本の国籍を喪失させるという方向に行くのは問題であろう。だから、既に重国籍者の方々については、何らの措置もとらなかった場合には、むしろ日本の国籍を従来どおりずっと保持しておりたいという気持ちがあるものと推定をして処理したらいい。したがって催告もしない、したがって当然喪失ということにもしないということをそこであらわしたものでございます。
 したがいまして、各国で、例えば日本の国籍を選択した者とか、あるいは自分の志望により日本の国籍を選んだとかという場合に当該国籍を喪失させるという法制のあるところもあるようでありますけれども、これは別に自分の意思で積極的にやったというものでもありませんし、ここでは、したと同じ効果をその人に認めるという趣旨でございますので、したがいまして、他国において、ギリシャでも恐らくそれによってギリシャ籍の方を失わせるという効果はないものと思います。しかし、字面を読み違えましてそういう解釈をする方もなくはないとも思いますが、多くの場合には、そういうことを政府がするときには当該他国においてどういうふうな考え方で取り扱っているかということを照会してやるのが常でございますから、ギリシャからこれはどういう意味だと聞かれれば、私どもとしてはそういう立法の趣旨は十分に説明するつもりでおります。そうすれば誤解は多分生じないだろうということを期待しておるわけです。
○簑輪委員 ギリシャの方がどのような措置をとられるかということについて我が国で勝手に決めてしまうということはできないわけですので、そういう懸念がギリシャで生活している日本婦人から出されているわけです。その際に、だからギリシャにとどまらず、ギリシャと同様なケースの場合に積極的にそういうことはないんだということを言われましても、外国の方が日本国籍を選択したということでみなされるのならば、それはその外国籍の方はなくすんだという法制がつくられても文句は言えませんし、またそのことについて心配が絶対にないとは言えないと思うのですね。そういうことから見ますと、現状のままにしておくべきではないか、あえてここで選択をしたことにしなくても、二重国籍のままでも何ら不都合はないのではないかというふうに思いますけれども、重ねてその点をお尋ねします。
○枇杷田政府委員 現在のままにしておくという意味でございますけれども、法律的には附則で何らの規定も置かなければ新法の規定が適用になりますから、したがって選択の宣言を一定の期限までにしなければ法務大臣が催告をして、そして日本の国籍を失ってしまうというところまでいくわけでございます。それではいけないというので、新法の状態になってから新法の上ではどういう地位に立つかということを経過措置で決めなければならないということで、今おっしゃっているような趣旨を結果的には招来するような規定として附則三条は置いたつもりでございます。
○簑輪委員 このギリシャにおける日本婦人の懸念を全く払拭できますように、法務省当局で最大限の御尽力をお願いしたいというふうに思います。
 それから、時間がありませんので進みますけれども、十六条で外国の公務員の職に就任した場合の規定がございますけれども、この「日本の国籍を選択した趣旨」という中身、これをお聞かせいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 「日本の国籍を選択した趣旨」というのは、その宣言のところにもありますように、要するに、日本の国籍を自分のいわば唯一の国籍とするつもりである、そしてその反面、外国の国籍の方は放棄するということ、すなわちこれはなくするというのが自分の気持ちであるというのが選択の趣旨なわけですね。そういうことに反するということ。したがって、十六条にも書いてありますように、自分の志望によって当該外国の国籍を有する者でなければならないその公務につくということは、自分はもう日本の国というものだけに帰属するつもりだということに反するわけですね。そういう意味合いでございます。
○簑輪委員 何かこれは国に対する忠誠義務のようなことではないかというふうに心配されてもおりますけれども、本来、国に対する忠誠義務などというようなことは、私ら別にそんな義務を持って生まれてきたわけでもございませんし、日本人であるという点についてはみんな平等で、日本人であるということだけでよろしいわけだと思うのです。だから、その辺のところが非常に問題になりそうな心配がありますけれども、そういうことのないような運用を厳格にお願いしたいと思います。
 それから、時間がだんだんなくなりました。帰化について何点か伺いたいと思います。
 帰化について、現行法では五条で「日本国民の夫」、六条で「日本国民の妻」という規定の仕方をしておりますけれども、夫とか妻とかというような形の規定ではなくて、今回の改正法では同一に「配偶者」という規定をしているわけですね。こういうふうに変えられたのは、男女平等、それから差別撤廃条約の趣旨、憲法の趣旨等々を考え合わせてみるとこういうふうにしなければ違反するという認識の上で「配偶者」という形にされたのでしょうか。
○枇杷田政府委員 差別撤廃条約の解釈は、私どもちょっとわからないところがありますけれども、その精神としては、少なくともその帰化条件について男女を異にするということは精神に反するということは当然だろう。それから男女平等の考え方からしても問題があるのは当然だろう。
 それからもう一つ、実は生活実態として恐らく現行法が置いておりますのは、夫中心の生活実態というのが基本だというふうに考えておるんだろうと思います。それが社会の生活実態としても変わってきたということですね。そういうことを総合しまして、要するに、ただ理念的にそぐわないというだけではなくて、実際上の妥当性からいってもそういうことをあわせて平等に同じにする方が正しいという結論で改正案のようにした次第でございます。
○簑輪委員 夫中心の物の考え方あるいは夫中心の実態というものがどんどん変化してきて夫婦は平等である、そういう点で実態の面でも進んできているという認識のもとでこういう改正案がつくられたということは当然のことだというふうに私は思います。民法でも夫、妻という規定の仕方ではなくて「配偶者」という規定の仕方をしておりますし、国籍法が遅きに失したと思いますけれども、こういう精神に照らして運用の面でもいつまでも過去の夫中心の運用を引きずることのないようにしていただきたいと思います。
 それから、沖縄の無国籍児について簡易帰化という方法もあるのでということですけれども、附則の五条における届け出というものと帰化というものとでは手続も違いますし、また法的にも全く異なった判断がされる余地があるわけですね。届け出の方は、判断の余地なくそれは日本人であるということになるわけですけれども、簡易帰化の場合には、いろいろな手続を経てそこで一定の判断が加えられて帰化ということになるわけで、簡易帰化といいましても実情はなかなか困難だという訴えが沖縄からもございます。そういう点から見ましても、先ほど申し上げたように未成年の者に限るということについての問題点を指摘しておきたいと思います。
 それから、帰化申請の際に「素行が善良であること。」という要件がございます。それとの関連で素行調査ということが行われたり、あるいはまた指紋という問題がございます。
 素行調査についてだれがどのような方法でするのかということとか、それから指紋について両手十指の指紋をとるということは申請者を犯罪者扱いにするものであって、身分確認、同一性の確認ということであるならば私どももいろいろな場所で身分証明書等によって確認をされている部分が幾多ございますし、それで何ら不都合がないわけですので、十指の指紋採取というのはやめるべきでないかというふうに考えますが、この二点についてお伺いします。
○枇杷田政府委員 まず附則五条との絡みでの帰化の話でございますけれども、沖縄の無国籍児につきましては、従来から超簡易帰化と言ってやっております。今度の改正の場合にも、経過措置の五条にのらない人がどれぐらい沖縄であるだろうかということを問題にしたわけでございますが、この間参考人がおいでになったときのお話では、沖縄の国際福祉相談所の方は、そういう成人に達する方は把握しておられないというお話でございました。したがいまして、おられないのかもしれませんが、おられた場合には当然そういう事情を考慮してやってまいりたいと思います。
 それから、もう一点の素行調査の関係については、一般の帰化事件共通のことで申し上げますけれども、これは法務局の職員が近隣だとか、場合によっては勤め先だとかへ行って事情をお伺いする。なお、勤め先などについては、なるべく秘匿してほしいという場合は、そういうことも考慮してやります。前科や何かの関係について、必要があれば警察に照会をするということもあります。
 それから指紋の関係につきましては、これは本人の同一性確認が主たる目的で、その次に前科照会などに使うということがあるわけです。これはあってはならないことなのですけれども、よく他人の名前をかたってといいますか、その戸籍を利用して帰化の申請をされておる。したがって、官報の告示には、もとの韓国名なら韓国名、中国名なら中国名で出ますが、その人は、いや、私は帰化なんか関係ないんだというようなケースがあるわけですね。だれの帰化の許可をしたかということを最終的に確かめるのには指紋で確定する以外にない。現に、そういうことで他人に成り済ました人について、確かにこの人について日本人と許可したのだということをやったケースもあります。また、そういうことが問題になったのも、それはそう多くはありませんけれども、二、三、例がないわけではございません。
 そういう意味で、生来の日本人のような戸籍制度だとか、あるいは地縁だとか血縁だというような関係で把握できるものはいいのですけれども、そうでない外国人については、そういう指紋をとることによって同一性を確認したい。それから、場合によっては前科の照会のために使いたいということでしているわけでございます。その場合でも、十指全部必要かどうかということになれば、これはまた問題があろうかと思いますが、その点はそういう趣旨でやっていることだということだけは御理解をいただきまして、あと、その目的のために、最小限どの程度か、最小限の条件にすべきじゃないかということについては、これは研究課題として私ども考えておるところでございます。
○簑輪委員 指紋についていろいろとまだ論議も申し上げたいのですけれども、時間がなくなりました。
 最後に、大臣に一点だけお伺いしたいと思いますけれども、今回の法改正については、基本的に前進方向でございますけれども、ただいま質疑させていただきましたように、いろいろ問題点もございます。運用次第によっては不公平とかあるいは人権侵害にわたる心配も多々ありますので、そういうことのないように厳に慎重な、そして基本的人権尊重の立場に立って運用を行っていただきたいというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺って終わります。
○住国務大臣 どの国籍を選ぶかということは大変重大な問題でございます。そういうことで、今度の新しい法案の趣旨、これは御説明も申し上げましたように、婦人差別撤廃条約の関係とかあるいは憲法との関係あるいは今後の国際化の進展の状況、こういうことを考えて、そういう事態に対応するように今までの国籍法を見直す、こういうことでございます。そういうことで、従来と手続を変えたところも、ごらんのとおり、あるわけでございます。これがその立法の趣旨とたがえないように関係者の間に徹底していく。もちろん行政側といたしましては、人権尊重とかあるいは公平な扱い、どういうことを旨といたしまして、これは外国にもよく徹底せぬといかぬ問題でございますので、そういう点を十分配慮して今おっしゃいましたような点を徹底させる、こういうようにしてやってまいりたいと思っております。
○簑輪委員 終わります。
○宮崎委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時二十六分開議
○宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。上原康助君。
○上原委員 私は、本委員会のレギュラーのメンバーじゃないのですが、今御審議をいただいております国籍法の一部改正につきまして非常な関心を持っておりますので、委員長初め各党の理事のお計らいで発言をさしていただく機会を与えてくださったことにまず敬意を表しておきたいと思います。
 そこで、もう既に参考人の方々からもいろいろと本法案に関しての意見陳述といいますか考え方が述べられて、また御専門の先生方がいろいろと御質問もしておられるし、大分重複をする面もあって、素人で御無礼になる面もあるいはあるかと思うのですが、その点お含みの上で大臣初め関係者の誠意ある御答弁を願いたいと思います。
 最初にお尋ねしたいことは、法案提出の趣旨説明でも述べられていることではございますが、まずこの国籍法を改正せざるを得なかった社会的要因というか背景というか、目的というのは一体どう御認識をしておられるのか、その点について御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
○枇杷田政府委員 現在の国籍法は昭和二十五年に制定されたものでございますが、その制定後国際情勢が変化をいたしまして、日本人が海外に出ていく、あるいは外国人が日本に来る、またそれに伴いまして国際結婚が多くなるというような状況の変化が一つございます。それからもう一つ、両性の平等という考え方もだんだんと高まってまいりまして、昭和五十五年に婦人差別撤廃条約ができましてそれに日本政府も署名をいたしたわけでございます。その批准に備えるというふうなこともございまして、現在の国籍法を全面的に見直す必要があったわけでございます。
 その中で一番問題なのは、現行の国籍法の中心になっておりますのが父系血統主義でありますが、これを父母両系血統主義に改める必要があるのではないか。それから、帰化の条件について男女不平等といいますか、男女の扱いが違っておる面がございますが、そこを直すべきではないかということ。それからもう一つは、父母両系血統主義をとりますと重国籍が飛躍的にふえるということになるので、それに対する重国籍の解消策をどうしたらいいかというようなことが国籍法の改正の骨子になっておるということでございます。
○上原委員 確かに、今お答えがありましたように、外的要因というか、あるいは国際的、国内的な条件、情勢の変化がいろいろあったということは私も理解をしている一人ですが、今お答えにならなかった点で、我々から見ると憲法との関係、例えば十四条とか、二十四条、さらにはお述べになったように婦人差別撤廃条約、あるいは国際結婚が年々ふえてきているという点等々あると思うのですが、国籍法の改正が強く国会でも、あるいは国民世論というか政治的課題、社会的問題として持ち上がった大きな理由の根拠には、復帰後、一九七五年、昭和五十年ごろからとみに出たと思うのですが、沖縄における無国籍児の問題が大きく影響というか、国籍法は今のままでいけない、父系血統主義ではどうも無国籍児は救えない、こういう国民世論というか、この問題に関心を持った人々の政府に対する働きかけ、これは日弁連の報告書その他いろいろな意見を見るまでもないと思うのですが、この点についての御認識はいかがなんですか。
○枇杷田政府委員 先ほどは抽象的な言葉で申し上げましたけれども、そういうことが具体的な問題としてあらわれておりますのが沖縄の無国籍児の問題であることは御指摘のとおりでございます。そういう具体的な問題が復帰後クローズアップされまして、まさに身近な問題といいますか、そういうふうなことで一般が認識をされたということが今度の法改正の一つの原動力と申しますか力になっておるということは私どもも十分認識をいたしております。
○上原委員 余り法律上の専門的なことはわかりませんので、ある程度具体的なケースを申し上げつつ、また、この法案について私なりにちょっと勉強した点に触れながら逐次お尋ねをしてまいります。
 今、沖縄における無国籍児問題が法改正をしなければいけない大きな理由の一つである、私もそういうふうに理解をしておりますが、そうであるとするならば、この法改正によって万般関係者の期待に沿うような改正でなければならないと思うのです。そのことをまず強く指摘をし、また大臣初め関係者が御理解を一層深めるように御要望も申し上げておきたいと思うのです。
 そこで、既にいろいろ議論されたやに聞いておるわけですが、第二点目として、法改正後の国籍取得の問題で、特に特例措置のあり方が議論をされているようであります。要綱では第七でしたか、改正案ではたしか附則第五条になっているかと思うのです。現在、日本全体で無国籍の数がどうなっているのか、あるいは沖縄ではどういう分布になっているのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 外国人登録の面から見ました数字でございますけれども、昭和五十八年末で、全国では無国籍者の数が千九百六十二名、それから沖縄県で六十九名ということになっておりますが、また、ごく最近私どもの方で特に調べました数字によりますと、沖縄県では現在四十九名のようでございます。
○上原委員 全国で千九百六十二名、沖縄で四十九名、これは国籍別はおわかりですか。
○枇杷田政府委員 今のは無国籍者でございますので、もとの国籍はどこであったかということは、あるいは一番近い国籍はどこであったかということは、調査すればわかるのかもしれませんが、そこまでの調査はできておりません。
○上原委員 そうすると、親権者はわからないとなると、どうなるんですか。この種の調査はどこでやるのか。
○枇杷田政府委員 無国籍者でございますので、したがいまして、親権者ということになりますと、無国籍の場合には日本法でいくということになるわけでございます。したがいまして、今の親権者の問題というのは、法律的には特に問題になるようには思いません。
○上原委員 後でまた具体的に四十九人のことについてお尋ねします。
 そこで、改正法案によりますと、要するに二十歳未満、二十歳までは一方の親が、母親が日本人ならば日本国籍を有することができると特例措置でなっているようでありますが、しかし二十歳以上になる者、成人に達している者については、帰化手続でやるということになっておるようです。この特例措置については、制限をせずに、例えば一例として憲法制定時に遡及していくとか、そういう措置をとるべきだという主張がなされておるわけです。この法律が改正されて六十年一月一日から適用されるにしても、二十歳未満に限っては法務大臣に届け出ることによって国籍の取得ができる。
 しかし、これでは、昭和三十九年十二月ですか、これは要綱のときのものかとも思っているのですが、兄弟同士も一方は取得できるが、一方は取得できなくなる可能性がある。今、実際に四十九人というあれでしたが、実数はそれだけではないと私は思うのです。もっと該当者はいるような感じがするわけです。そういう面で、この特例措置については、線引きはやはり法律ですから必要性もわかるわけですが、この点に限っては、仮に二十歳以上であっても特例措置を適用していくという特例の特例を設けるとか、このことが今関係者から非常に期待、要望が出されているわけですが、この点はいかがなんですか。
○枇杷田政府委員 未成年者に限りましたのは、既に外国人として長い間生活をして成人に達してそれなりの社会生活をしておられる方については、単純な意思表示だけではなくて、やはり国籍法の一般の考え方から、個別の調査といいますか、帰化手続によって処理をするのが適当であろうということで線を引いておるわけでございます。その場合に、先ほども申し上げましたように、沖縄問題というものは法改正の際には常に考慮に入れておるところでございますので、沖縄関係ではどうなるかということは常に関心を持っておったところでございます。
 私どもの調査した結果によりますと、四十九名の無国籍者のうち日本人を母とする方は二十一名おられます。そのうち二十名の方は十六歳未満であります。残る一人の方が二十歳を超えておられるわけであります。したがいまして、それも厳密な調査をしたわけではございませんけれども、もしその数字が正しいとすれば、一人の方は日本国籍を取得しようと思っても届け出によることはできないことになるわけでございます。
 それからまた、先日当委員会で参考人の意見聴取が行われましたけれども、そのときの沖縄の国際福祉相談所の方のお話によりますと、そのところでは成年に達しておられる方は把握しておられないというお話でございました。しかし、成人に達している方がおられるかもしれないということではございましたが、はっきりしない面はございます。いずれにいたしましても、そう多くはないだろうという感じはいたします。
 そういう方々につきましては、従来からも申し上げておりますし、実際もそのとおり行っておると思っておるのですが、帰化の申請の場合に、ともかく日本人の子供である、日本人を母とする子供であるということに違いがないわけでありまして、帰化手続でも一番簡単な帰化手続が許される範囲の方々でございます。それにまた、沖縄のいろいろな状況のもとで無国籍になっておるということも私どもも十分理解ができますので、そういう事情をも考慮して、言葉は適切であるかどうかは知りませんけれども、超簡易帰化ということで、余り手間もかからないようにということで帰化手続を今までも進めてまいりまして、過去三年間におきましても沖縄の無国籍児につきましては五人ずつ帰化の申請があり、いずれも帰化が許可されておるということでございます。そういうことで、成人の方でもし日本の国籍を取得したいという方がおられた場合には、そういうことで処理をすることによって妥当な解決を図りたいという考え方をしているわけでございます。
○上原委員 確かに数の上では非常に少ない。今おっしゃるように、現時点でわかるのは、二十一人のうち二十名が十六歳以下で一人が二十歳以上になる。しかし、ほかにもいないとは限らぬわけですね。それははっきり法務省もつかんでいるわけじゃないでしょう。そこはどうなんですか。
○枇杷田政府委員 それは、私どもとしては一人一人事情を調べたわけではございませんので、公の機関に出てきた数字でそう申し上げているわけでありまして、ほかにもおられるという可能性を否定するものではございません。
○上原委員 そうであればなおさら、大臣、ここは大事なところなんで、やはりこれは数の問題じゃないと思うのですね。一人だから、あるいは二人ぐらいだからさほど影響、支障を及ぼすものじゃない、帰化手続をとればいいというのは――あるいは、後で聞きますが、帰化と簡易帰化、どう違うのか、超簡易帰化にするとか。しかし、数じゃなくて、人権にかかわる問題なんですね。個人の尊厳、市民権にかかわる問題なんです。そういう面からすると、この特例措置というものは、線引きをするということは私はいかがかと思うのですね。それと、瀧岡さんの陳述の中でも最も主張しておられるのは、この経過措置に当たって二十歳で線引きすることはどうかと思うということなんですね。
 線引させずして、憲法施行時、例えばそういうことにやるとか、要するに届け出をすることだけによってみんなが日本国籍を取得できるように何らかの便宜を図ってくれ、これがこの法律改正の最もポイントじゃないかという主張をなされているのであって、お一人だから、あるいはまたその後二人だったのが一人は帰化できたからということで、決してその点を軽く見ていらっしゃるわけじゃないんですね。主張のポイントは、この特例措置の制限をなくしてもらいたいということが瀧岡さんの意見開陳の要点なんです。そういう面からも、私は、この点についてはやはりもっと政治判断なり加えていただいて、検討すべきだと思うのですが、いかがですか。
○住国務大臣 一人だから二人だから、こういうことでとやかく言っておるわけじゃないのでございまして、一人は一人でもその立場というものを尊重していかなければならない、こう思っておるわけでございますけれども、現実問題としてはやはりそういう実態がある。結局、無国籍者といえども登録をしていただいておるわけでございますから、そうでないと、これは登録しないで十年も二十年も生活できるかというようなこともありますので、私どもは、外国人登録の観点からそういう調査をいたしておるわけでございます。そういうところから判断して、現実問題としては二十一歳の方が一人おられるだけだ、こういう実態を把握しておるわけでございます。それは実態の問題でございます。
 もう一つは、どこまでさかのぼるかという問題があると思うのでございますけれども、これは、本法の方で、本則の方で国籍の選択制度というものを二十歳というような観点でとらえておりますので、それとのバランスで附則の方もそういうことを考えておるわけでございまして、法全体としては一つのバランスのもとにおいて考えておるんだ、こういうことをひとつ御理解いただきたいと思っておるわけでございます。それはそういうことでございますけれども、実際の取り扱いとしては、これは特殊な事情がございますので、そしてまた従来も帰化が申請されれば、これは最近の例を先生御承知のことだと思うのでございますけれども、例外なく帰化の許可をしておる、こういうことでもございますので、ひとつそこらあたりの事情はおわかりいただけたらと思っております。
○上原委員 おっしゃることはわからぬわけでもありませんが、しかし、それはかえって、ある意味では、一人取り残されるというのは余計差別感を与えることにもなるわけです、せっかく法律が改正されるのに。その本人の受けるショックというもの、人間の、個人の立場ということもやはり私はもっと考えていただきたいと思うのです。
 それと、さっき、午前中でしたか、説明の場合も、いろいろ実際上の運用面で配慮する、仮に兄弟がおって、二人はできたけれども、一人のお兄ちゃんあるいはお姉ちゃんはできないという場合は、家族の面からもあれなんで、超簡易的にやるとか、いろいろ言っていましたが、これまで帰化申請をやって、今、大臣は、ほとんど許可されているとおっしゃるのですが、不許可になった事例はあるのじゃないですか。
○枇杷田政府委員 私の承知している限りでは、帰化の申請がありましたケースについては全部許可になって、不許可にした例は承知しておりません。
○上原委員 私のちょっと調べた記録では、七五年から八〇年までに六件くらいあると聞いている。これは四、五年前のことです。それでは、私は、特例措置は、全部救済できるというか、全部に該当するようにぜひ御配慮いただきたいということを強く改めて要望しておきたいと思うのです。
 そこで、帰化する場合の必要条件ですが、これはこれまでの例からしても、書類提出に当たって相当悪戦苦闘なさっているわけです。この瀧岡さんの陳述を見ましても、一人で大体十二、三万から十五万くらいかかる、これは一般的にどうか知りませんが、そうおっしゃっているわけですから、かかるわけでしょう。そうすると、一人じゃない二、三名いる人は大変ですね、母子家庭とか、ただでさえ生活にそう楽じゃないと思われる方々がいらっしゃる。そういうことと、さらに窓口に提出をしなければいけない書類は現在どういうものがあるのですか。
○枇杷田政府委員 書類といたしますと、まず帰化をしたいという申請書を出していただくことは基本になります。それに写真を添付していただくわけです。それから、これは一般の帰化事件共通でございますけれども、どういう動機で日本国籍を取得したいかということを簡単に書いていただくという動機書、それから出生関係を証する書面でございます。これは母親が日本人であるということで簡易帰化が認められるわけでございますので、日本人である母親から生まれた子供であるということを証明する意味での出生証明書というものを出していただく、これは不可欠なものだと思います。そのほかは、親族関係をあらわす親族概略書とか、そういったような程度のものでございます。なお、学校に行っていらっしゃる方は、場合によっては在学証明書などを出していただくということもありますけれども、それは必ずしも必要ではないというふうに思っております。
○上原委員 今おっしゃるのは簡易帰化の場合ですか。例えば「帰化許可申請の手続」というのがありますね。これにいろいろ書いてある。「帰化許可申請に必要な書類」、一つは帰化許可申請書、帰化の動機書、この帰化の動機書は簡易帰化の場合も要るわけですか。履歴書、宣誓書も要るのですか、どうなのですか。親族の概要を記載した書面、生計の概要記載、生活要件も要るのですか。そうなると、ここに書いてあるの全部というと何も簡易じゃないじゃないですか。どれだけ免除というか、簡略されるのですか、この中に書いてあるもののうち、逆にお尋ねしますよ。
○枇杷田政府委員 一般の帰化の場合の必要書類を今ごらんになっておられると思いますけれども、その中で沖縄の無国籍児についての簡易帰化の場合については、必ずしも必要としないのが履歴書、最終卒業証明書、それから在学証明書も必ずしも要りません。技能資格を証する書面も要りません。在勤及び給与証明書も要りません。
 それから身分関係をあらわすものとしては、事案によって異なりますけれども、まず外国人登録をしている場合には外国人登録証、それから母親の関係の戸籍謄本、そういうものは要りますが、それ以外のものは要らないということになります。それから宣誓書は、日本人になる以上は日本の法律を守ってきちんと生活をしますという意味の宣誓書、これは出していただくことになります。生計関係の書類は必要ございません。源泉徴収票も要りません。事業概要の関係、税金関係のものも一切要らないということでございます。したがいまして、沖縄の無国籍児についての超簡易帰化で必要になるという書面はこの中でもごくわずかということになろうかと思います。
○上原委員 そうしますと、そんなに一般の帰化許可申請書と変わらないのですね。今おっしゃったように簡易帰化の場合、そうだ。超簡易帰化という場合はどうなるのですか。非常に簡略にするのだから、そんなに不便は与えないというようなことを強調しておられるように受け取れるわけですよ。ただ、実際には今までだって書類にしても翻訳しなければいけないもの、司法書士、代書を頼まなければいけないということで、さっき言ったような費用がかさむということははっきり該当者は言っているわけです。窓口といっても、那覇法務局に持っていったって、書類の用紙はあげるけれども、それ以上のお手伝い、窓口サービスは、ある程度の助言はやっていただけるけれども、書き込みとか、そういうものは一切自分でやらなければいけない。法務省関係係の皆さんに言うと、いや、ちょっと読めば自分で書き込めますよとおっしゃるけれども、しかし素人にはなかなかそうもいかないですね。
 これにもどういうふうに書きなさいとか、書く場合は右も左もどのくらいの間隔であけなさいとか、いろいろな型式があるわけでしょう。やはりまだ非常に煩雑さ、複雑さがある。手間暇かけなければいけないことがこれまでも問題になったし、今まで我々がいろいろ指摘をして、改善はされているけれども、今回の法改正によって、特例措置で全面救済できないとするならば、この手続面の簡素化は、あなた方が超簡易でやるということであるなら、超というなら新幹線みたいにずっと速いわけでしょう。期間ももっと短縮しなければいかぬですね。期間もどのくらいかかるのか、そういう煩雑さをもっと簡略化するということでなければ、簡易帰化制に変えますよ、あるいは超簡易でやりますよと言ったって、なかなか該当者あるいは関係者の理解等は得られない、また不安を除去できないと私は思うのです。
 そういう面はもう少し明確にしていただきたいということと、それに加えて、帰化の場合、これまで読み書きのテストをしているようなんですね。これは事人権にかかわる問題ですから、どさくさの中でそういう立場に置かれて無国籍になった、帰化をしたいというときに、読み書きまでさせるということはある程度わからないわけでもないけれども、そういったことを強要するとか、テストをして、それにパスしなければ帰化を許可しない。だから、不許可事例がないじゃなくして、そういう該当者は、一定の基準に達しない者は申請受理をしないわけです。受理しないから不許可という事例が最近なくなっているのが実態じゃないですかね。したがって、さっきの書類面で、期間の問題を含めてどれだけ簡素化していくか、テスト制度がもしあるとするならば全面的に廃止をすべきだ、本当に簡易帰化とか超簡易でやるということならば。その三点、いかがでしょう。
○枇杷田政府委員 書類の関係につきましては、申請書を出していただいて、写真は張っていただく、それから、さっきもちょっと申し上げましたけれども、出生関係、それがわかることが基礎になりますので、これだけは病院なり何なりの証明書を出していただくということは最低限必要だろうと思います。それ以上のことはもし出していただければそれにこしたことはございませんけれども、それ以上強くは要求しないで処理できるだろうと思います。
 それからなお、そのテストの関係でございますが、本人に面接をいたしますので、本人が普通に日本語をしゃべれる場合には特に読み書きのテストをする必要はないわけでございます。念のために、どれくらい字を書けますかというようなことでやることはありますけれども、沖縄の場合にはそういう事情で母親が日本人であるという場合には、そんなに強く求める必要もありませんし、現にそういう読み書きの関係については、できないからといってそれを必ず不許可にするという扱いには一般の場合でもしておらないわけです。したがいまして、沖縄の場合にはそういう点は、超簡易という意味はそういう場合の調査とかなんとかも一般の場合とは違って省略をするというふうなつもりでおります。
 それにしても、どんな手続が要るのかということは、何も御存じない方については不安だろうと思いますので、窓口でも十分御相談に応じてやるように従来からも指導しております。したがって、最近は前から比べると大分改善されたという御意見も聞いておりますが、なお一層親切に対応するように指導してまいりたいと思います。そういうことでございますと、十数万円かかるような司法書士とか行政書士とかに頼まなくてもできるというふうに私どもの方では考えておりますが、なおまた窓口で誤解がありませんようにさらに徹底をしてまいりたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
 期間の関係につきましては、従来からも沖縄である程度の、先ほど申しました程度の書類がそろえば、あと法律的な問題も若干ございますが、それは直ちに本省の方に進達をして早期にするというふうな考え方でおりますので、何カ月ということでお約束することはできませんけれども、普通の帰化にかかる日数の半分以下ぐらいでやるようにはぜひ努めたいと思っております。
○上原委員 普通の日数の半分くらいというと、量的に表現するとどうなのか、それは後でお答えください。一年なのか、六カ月なのか、四カ月なのか。一番早いので大体四カ月くらいのようですね。普通は一年から一年半以上かかっている。
 そうしますと、もう一度念を押しますが、特例措置が全面的に該当者に適用できるという方途が講じられないとするならば、簡易帰化に当たっては書類面あるいは手続面の煩雑さをできるだけ縮小する、読み書きとかそういうテストは基本的にはやらない、期間もできるだけ短縮した形で実現できるようにやる、こういうふうに理解していいかどうか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
○枇杷田政府委員 今言われましたような線で私どもやるというふうに御理解いただいて結構でございます。
○上原委員 そこで、もう一つは、今度の改正で母親が日本人の場合日本国籍を取得する方途が講じられることになるわけですが、十五歳未満の方は、両方の了解というか同意がなければいかない、こういうふうになるようですね。だが、いろいろ聞いてみますと、正式な離婚もなかなか難しい、夫が行方不明であるのかあるいは生存しているのかわからないという事例もあるわけですね。一方、何とか手を尽くして、夫の所在はアメリカにいるならアメリカ、これはアメリカ人と日本人の結婚で、母親、女性が日本人の場合に、やっとわかったけれども、国籍を取得する意味で手続をとりたいとしてもなかなか同意を与えないという向きもあるというわけですね。だから、この一方というか母親の同意だけ、夫の同意がなくても――これは十五歳未満であっても、いろいろな面で無国籍にしておくわけにいかぬわけだから。今度の改正の中身というものはそういうことではないようですね。それ以後は自分の選択でできるということのようですが、これもやはり父母の一方が同意しないときでも国籍を取得をする方向にきっぱりやった方がいいのではないかという感じが私はするのですが、この点はどのようにお考えですか。
○枇杷田政府委員 無国籍が生じますのは、その母親が法律上婚姻関係にある、あるいは離婚している場合もありますけれども、かつて婚姻関係にあったというケースになるわけでございますが、そういう場合にはおおむね法律的には共同親権ということになりますので、十五歳未満の人が国籍取得の意思表示をするなりあるいは帰化の申請をするなりには原則としては法定代理人は父母が共同してやるといったてまえになるわけでございます。しかしながら、沖縄で見られますような特殊な事例の場合には、行方不明である場合には当然でございますが、どうも父親が幾ら連絡をとってもなしのつぶてであるというふうなこともあるわけでございます。そういう場合には厳格に証明を求めますと意思表示それ自体が大変難しくなるという面がございます。したがいまして、私どもは、そのような場合にはあえて根拠といいますと法例の三十条になろうかと思いますが、そういうような考え方から条理に基づいて、いわば我が国の民法に共同親権者の片方が親権を行使することができないような場合には片方の親権者で親権の行使ができるという規定がございますが、そういう規定が条理上適用されるということで、母親だけのいわば代理行為でそれを届け出なり、あるいは帰化の申請を受理をするということは十分にできようかと思います。
○上原委員 ぜひこの点も十分御配慮いただいて、日弁連の意見書、これにもこのことについてはありますね、法定代現今後見人あるいは父母の一方が同意しなくても、他方の同意のみで帰化を認めたらどうか。これはもちろんケースにもよると思うのですが、行方不明になった、あるいは音信不通であるとか、いろいろな事例があると思うのですが、中には正式な離婚ももちろんやらない、住所は突きとめたけれども同意を与えない、ちょっと意地悪じいさんみたいなケースもしばしばあると聞かされておりますので、今それは民法ですかの適用によってほかの方途でできるということですが、ぜひその面も、ケースによっては十分に解決できるように特に要望をしておきたいと思います。
 それと、ちょっと前後するのですが、今度の改正の第五条の一項三号ですか、「素行が善良であること。」とかありますね。素行が善良であるとは一体どういう基準、規定、概念を言うのか、ちょっと聞いておきたいと思いますし、もう一つ、第六号では「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。」ちょっと物騒ですね、法務大臣、人権上。一体どういうことを具体的には言うのか、ここいら私は関心があるのでちょっと聞いておきたいと思うのです。
○枇杷田政府委員 まず素行の点でございますけれども、素行善良だという意味は、これは外国人の帰化の話でございますので、一般に期待されるような善良さといいますか、平均的な日本人の素行の状態ということを基準にして考えておるわけでございます。したがいまして、仮にかつて前科があったからといって当然にだめだというふうな扱いにはいたしておりません。
 それから六号の方の憲法云々のことでございます。これは、こういう条項によって却下したという事例はございませんので、具体的な事実でお答えすることはできないのでありますけれども、これは文字どおり暴力をもって日本の国の基本を揺るがすような行為をする者ということで、日本人であれば当然しない、いわばこれから帰化して入っていこうとする日本の国民の全体の運命共同体みたいなものを根本的に揺さぶろうというようなことでございますので、そういう者は日本人として帰化するわけにはいかないという趣旨でございます。
○上原委員 一般的な規定というか法律の置き方としてはこの種のものはありますね。あるのは私もわかりますが、しかし、こういうのが乱用されるのは困るわけですよね。何も日本人とアメリカ人との関係ではなくして、外国人というのはその他たくさんいるわけですね。朝鮮関係も中国も、あるいはアジア関係も、たくさんいる。だから、確かに日本国籍を取得する、帰化なんだから日本の法律を守るということは一つの規定ではあるけれども、どうもこの種のものが置かれて、これがややもすると人種差別なり思想、信条の侵害とか、そういう面の思想性のチェックということになる可能性もないわけじゃないんだが、これは乱用のないように大臣の方からもひとつ今の点について御見解を……。
○住国務大臣 今までの帰化についてそれに該当するという例はないわけでございます。乱用するとかしないとかという問題じゃなくて、やはり日本人になっていただくためには日本の憲法を踏みにじるようなことがあっては困るのでありますし、そこらあたりの一つの歯どめと言ったらあれでございますけれども、そういう基準を置いておる。どこの国でも大体そういうような考え方でやっておるのだろうと私は思います。もちろん、そういう趣旨でございますから、乱用ということはあってはならないことだと思います。
○上原委員 憲法を踏みにじっているか踏みにじっていないかという話になるとまたややこしくなりますので、大臣の御見識として聞く程度にとどめておきましょう。ぜひひとつ十分な配慮をたとえ外国人であってもする必要があると思いますので、申し上げたわけであります。
 それともう一点ですが、これは外務省も来ていただいたんですが、日本国籍を取りたいという人は圧倒的に多いわけですね、沖縄の事例からしても、対米関係では。正式な婚姻届をしてその関係で生まれた子の国籍問題が一番うるさいうるさいというか無国籍その他の事例になっているわけで、今度は逆にアメリカの国籍を一たん取って、ずっとアメリカの国籍を持ちたい、取得しておきたいという人もいるわけですね、沖縄には。しかし、一方においては、アメリカ合衆国の移民及び国籍法によってこれまた条件がありますね。その必要条件を満たさなければいけない。それを満たすには大変な負担というかいろいろな手続面が要る。そのことについてはもちろん当事者なり本人たちの行為で原則的にはなさるべきだと思うのですが、今少しこういうことについても日本政府なり、沖縄なら総領事館あるいは大使館等々通してアメリカ側にももっと国籍問題では理解を求めるような働きかけをやるべきだ。
 さっきのようにせっかく所在が明らかになっても同意をしないとか、あるいは音信不通とか、いろいろな、嫌がらせ的ではないかもしれませんが、なかなかコミュニケーションがうまくつかないという事例がしばしばあるわけですよ、大臣。だから、アメリカは、日本もそうでしょうが、プライバシーについては非常に厳格な国なんで、なかなか第三者なりが言えない。法定代理人を立てれば別なんだがというようなことで、結局、女性の方が泣き寝入りをせざるを得ない。子供を抱えて、国籍もうまく取得できない、経済的にも弱い。かといってアメリカに行って生活をさせて必要条件を満たすことはできない、こういう事例もあるわけですから、こういうことについても、ひとつ法務省なり外務省あたりももっとアメリカ側ともこの種のことについてはコミュニケーションなり、時には問題提起をしていただいて、事実を把握してやられたらいかがかと思うのですが、この点どうでしょうか。
○加藤説明員 私の所掌が日米の防衛関係ということになっておりまして、その関連で例えば先生が御指摘になられました米人というものが米軍人であるというような場合を想定して申し上げますと、米軍人の個人としての行動、米軍の構成員の個人としての行動というものについては日本の国内法が適用になるということになっているわけでございます。したがいまして、今先生が御指摘になられました件は、米軍人であろうと米軍人ではない米国籍を持った米人という者との結婚なり内縁関係ということについての問題ということになりますが、この間に質的な差異はない、またはそこら辺をどのように処理していくかということになりますと、大変恐縮でございますが、これは第一義的には私法的な当事者間の話し合いによって処理されるべきものであろうということになるんだろうと思います。
 もちろん、私たちが、米軍人の場合であれば、米軍に施設、区域を提供しまする以上は、米軍においてその構成員の行動等をも含めて地元社会との調整ということを十分にやるべきだということは常々注意喚起をしているわけでございますが、問題点の本質ということになりますと、これは先ほど来の御議論にございましたような手続に従って解決されるほかはないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
○上原委員 紋切り型じゃいかぬですよ、この種のものは。安保条約の解釈も紋切り型だが、これも紋切り型だな。そういういろいろな事例があるから、助言、指導するなり何らかの形で具体的なあれではなくして、もう少し日米間でコミュニケーションをとることが必要だということを申し上げているのであって、その程度もやらないということになると、また何をか言わぬやだ。ともかくそういうことについてはもう少し両方とも関心を持っていただきたいということを申し上げておきます。
 そこで、あと二点だけお尋ねしますが、今回の法改正と戸籍法の関係、戸籍法は、よくわかりませんが、例えば帰化手続をとって戸籍抄本ないし戸籍謄本に登載をしたときに、括弧書きで原国籍がどこどこだった、氏名何々と必ず載っているわけですね。これが就職とかあるいは学校とか、履歴書を出さなければいけないような場合に本人のプライバシーその他が公にされて大変困るということがあって、何とか原国籍を抹消することも今回の戸籍法改正をする場合にやるべきだ。何か再編製するとか移転をするとかいう場合は消えるということをさっき説明を受けたのですが、このあたりの関係はどういうふうに改善なさるおつもりですか。
○枇杷田政府委員 帰化された方につきましては、御指摘のとおり戸籍に帰化する前の国籍がどこであったか、無国籍であった場合には無国籍ということを書くことにいたしております。これは、帰化する前のいろいろな身分行為につきましては準拠法としては帰化前の外国の法律によるということがあるわけでございますので、そこら辺を明確にしておきませんと身分関係が法律的にわからないという必要から書かざるを得ないわけでございます。
 ただ、転籍をいたしますと、それはもう最初に書いてあったことをすべて書く必要もないので、必要があればもとの戸籍から手繰っていけるという場合にはそれでも済むものですから、転籍をいたしますと原国籍の記載は省略をするという扱いになっております。何といいますか、それを消すために転籍をするというのは本来筋が違うわけでございますけれども、そういう手続になっておるということをお考えになって転籍をされて、現在の戸籍としてはもとの帰化する前の国籍の記載がない戸籍にするということをされる方もあるように聞いております。
○上原委員 ですから、それは非常に災いになる場合があるので、できるだけそういうことは、新戸籍というか、編製をする段階においては配慮するような助言、指導を法務省本省としても法改正の段階ではやっていただきたい、そのことを強く要望しておきます。
 最後に、窓口業務の改善の件についてです。
 さっきの帰化書類の問題もありますが、法務省の窓口へ行ってもなかなか色よい助言なりサービスをやっていただけないということをしばしば聞かされるわけですね。翻訳は、もちろん訳して持って来い、これに書き入れて来い、大変窓口がおかたい、敷居が高いということは、私だって法務委員会に来ることだけでもびくびくしているぐらいだから、大変なんですよ。そういう印象を与えている面があるので、今回の法改正において、そういった戸籍の問題等を含めて、そういう面をもっと改善をしていただきたい。また陣容の面においても、確かに行革時代ですから翻訳官を置くというのはなかなか容易じゃないかもしらぬが、できるだけそこまでもっていくような将来展望を考えていただきたい。
 いま一つは、これは大臣にぜひお聞き取りいただきたいわけですが、いわゆる沖縄での国籍問題がこれだけいい方向というか改善されてきたことは、やはり国際福祉相談所の役割が大きいわけですね。これはある意味じゃ那覇法務局の窓口業務の三分の二ぐらいやっているようなものですよ、対米人関係の国籍問題では。こういう機関に対してはたしか八〇年、昭和五十五年ごろから県から助成措置をある程度やっているのですね。しかし、今、国から何もないですよ。ほとんどボランティアか福祉関係のいわゆる篤志家の拠出によってできていることなんですね。したがって、私はどういう便法があるかわかりませんが、いろいろこれだけ社会に貢献をし、難しい国籍問題をやっていることについては、もう少し政府としてお考えになっていただいたらどうか。国際協力事業団ですか、そういう国際交流機関というものもあるわけで、そこにはそれなりの政府の助成措置がなされている。幾ら行革時代とはいっても、やるべきことはやらなければいけない。したがって、このことは法務省の窓口業務の改善の問題と、この福祉相談所のやっている役割というものに対して政府の御理解と何らかの手だてができるならば、そういう面も将来お考えになっていただきたい。この二点について、この件は最後ですから、大臣の御所見を聞かせていただきたいと思います。
○住国務大臣 今後の取り扱いにつきまして、先ほど来私は聞いておってちょっと意外に思うのでございますが、何か手続するのに十何万円かかるなんというのは一体どういうことになっておるんだろうか、こういう実情を実は私よく知らないわけでございます。それで、先ほど帰化の手続にいたしましても簡易の上での簡易の手続等も考えておりますし、一つは窓口で最大限のサービスをする、こういうことで沖縄問題については徹底をしてまいりたいと思っております。
 それから、国際福祉相談所の問題でございますけれども、これは社会福祉法人だそうでございますが、実は私よく性格は知りませんが、そういう活動等の面についてもう少し実情を私聞きまして、どこでどうやればいいのか、そういうようなことも十分考えて対処してまいりたいと思います。
○上原委員 終わります。
○宮崎委員長 小澤克介君。
○小澤(克)委員 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案につきまして順次お尋ねいたします。
 まず最初に、国籍法改正案、新国籍法の第三条の準正による国籍の取得でございますが、ここで準正、すなわち嫡出性を要件としているのはなぜでしょうか。特に新法第二条ではそういう嫡出性を何ら要件としてないわけでございますので、その理由についてお尋ねいたします。
○枇杷田政府委員 二条の場合は、出生のときに父または母が法律上の父子関係にある、あるいは母子関係にあるということを前提にいたしておるわけでございまして、法律的に出生のときに父母どちらかが日本国民であれば、その子は日本国籍を取得するという考え方でございます。
 三条の方は、出生のときには、これは主に父子関係になりますけれども、父との間には法律上の関係はないということでございます。そういうふうな形態の場合には、生活環境といたしまして父と子との間に、何と申しますか実質的な結びつきが非常に薄いであろう、これは民法でもそういうことを前提としたいろいろな規定がございますけれども、そういうふうなことから、後になって準正で、要するに父母が婚姻をしてそこで一つの生活の共同体ができれば、これはまさに一体のものとして、法律上の父子関係が出生のときからあったと同じように評価をしてもいいだろうというようなことで、三条の関係については準正ということで嫡出性を要件といたしておりますが、二条の方は要するに法律上の父子関係があるということに着目した一般原則でございますので、そこに差異が出てくるのはやむを得ないと思います。
○小澤(克)委員 第二条につきましては、いわゆる日本人の未婚の母が子供を産んだ場合には、これは母親による認知ということはほとんど実際にはありませんので、当然に母子関係が認められてその子は日本の国籍を取得するわけです。そうしますと、二条と三条との間でいかにも権衡を失する感じがするわけでございますが、その点いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 二条の方は、先ほど申し上げましたように、出生のときに父または母が法律上の父または母であるということを一つの基準にして国籍を付与するという原則でございます。三条の方は、そういう二条の原則を立てた場合に、父子関係につきましては、今も御指摘ございましたように、母親との関係について若干差異が出てくるような面にも着目をいたしまして、したがいまして、出生のときに法律上の父子関係でなくても、それは父の方からの国籍取得といいますか、そういう関係で日本国籍を与える道をつけてもいいだろうという、法律上の親子関係を基礎とする血統主義の補完として三条の規定が設けられたわけでございます。
 その場合に、単に後になっても出生後に認知をしただけでいいかといいますと、それは母子関係とは違いまして、生活実態としてはその父親との関係では当然に結びつく、そういうことが言えないのではないか。したがって、そこで正規の準正ということになっていますと、いわばそれは出生のときから法律上の父というふうな関係に近い状態が生まれるはずでありますから、したがって、準正ということによって出生のときに父との間で法律上の親子関係があったということと同評価し得べき関係に立つということが初めて言えるであろうということで、三条の場合には父の方に着目をして嫡出性を必要としておるということでございます。
○小澤(克)委員 胎児認知の場合は三条になりますか、二条になりますか。
○枇杷田政府委員 胎児認知の場合は二条になります。
○小澤(克)委員 そうすると、胎児認知と出生後の認知とで変わってくる。これは父親による認知の場合ですけれども、これも権衡を失すると思われるわけです。生活実態というお話がありましたが、例えば胎児認知の場合に、必ずしも実質的父子関係の生活実態が生ずるという必然性もないわけでございます。どうしてこういう差がつくのか、どうしてもわからないのです。
○枇杷田政府委員 胎児認知というのは例も少なくて、また胎児認知を認めている国は少ないのでありますけれども、それはともかくといたしまして、二条は、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、出生による国籍の取得関係は、その子供が出生をした時点で法律上の親子関係があるというものを基準にして置いたわけでございます。その結果、胎児認知も二条に該当して、出生と同時に日本国籍を取得するという関係に立つわけでございます。
 三条はそういう場合ではないのだけれども、後になって、出生のときにいわば法律上の父子関係があったと同視できるような、そういう法律関係の場合には二条に準じてもいい関係に立つだろう、それは準正であるという発想に立つわけです。後になって認知しただけということではなくて、準正ということになりますと、これは生まれたときから嫡出子という扱いにもいろいろな面でされるわけでございますので、したがって、それは法律的には評価をしてもいいだろうということになる。ただ認知だけではいけないだろう。言いかえますと、二条の方は、そういう三条との関係を先に考えるのではなくて、出生時に法律的に父子関係があるという点に着目した結果のことでございます。
    〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
○小澤(克)委員 どうも嫡出子と非嫡出子との間に新たな差別が生ずるという感じが免れないわけであります。また、同じ非嫡出子の間でも母親が日本人であった場合と父親が日本人であった場合とでも明らかな差別が生じますし、またさらに父親が日本人の非嫡出子の場合にも、胎児認知とそうでないものの間にまた差がつく。どうも合理的な差別とは考えられないわけです。
 ついでに伺いますが、認知のみによって国籍の取得を認める国、これは資料によりますと、インドネシア、ギリシャ、韓国、さらにフランス、こういった国がある。しかも、フランスにおいては未成年の間の認知に限定しない、全く限定なし、こういうことになっているようですが、こういう立法例からしても、認知で十分なんじゃないかという感じがいたしますが、いかがでしょう。
○枇杷田政府委員 そのような立法例もございますが、また他方では準正に限るという立法例もかなりあるわけでございます。
○小澤(克)委員 次に移りまして、新国籍法の十一条の二項、ここで初めて国籍の選択という用語が登場するわけですが、これは外国の法令による国籍の選択ですから、いろいろ千差万別の制度があり得るかと思います。それで、この十一条二項に言う国籍の選択とは、どのような要件、必要十分条件を満たしていれば国籍の選択制度であると認めるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 これは我が国の方の選択制度もあわせて考えることになりますけれども、要するに、二つの国籍がある場合に、その一つの方を取るということが単純な国籍の選択の意味でございます。それは内容的に考えてみますと、ある国の国籍の方を自分の国籍として、片一方の国籍は自分の国籍とはしない、そういう意思内容を含むことでございます。ただ、それを具体的にどういう表現でどういう手続でやるかということは各国の法制が違いますけれども、内容的にはそういうことになろうかと思います。
○小澤(克)委員 そうすると、ここに言う最低必要限度の要素というのは、複数の国籍のうち一つに特定――集中する、こういう概念、これで十分なわけでございますね。
○枇杷田政府委員 そういうことになろうと思います。
○小澤(克)委員 ヨーロッパ理事会閣僚評議会の協定がございますね。これでは「帰化、選択、又は国籍回復の手段によって他の締約国の国籍を取得したときは」という訳文になっているのですが、選択によって国籍を取得するという観念がどうもあるようです。ここで言う選択というのとは必ずしも一致する概念じゃないのでしょうか。
○枇杷田政府委員 これはいろいろな場合を想定しておりますけれども、結局、ある国の国籍の方を取るということが外部的に評価できるようなものを挙げているのではないかと思いますが、概念としてはどういう言葉であらわすかというのは一概に評価できないものがあろうと思いますが、私どもの方では要するに二つの国籍のうちの一つということで、そういう概念に当たるかどうかで評価をすべきではないかと思います。
○小澤(克)委員 それで、この十一条二項の、この法に言う国籍の選択、これを満たす制度を備えている国は具体的に現在どういうところがございますでしょう。
○枇杷田政府委員 これは今わかっているところではイタリア、メキシコ、ブラジル、インドネシア、シンガポール、それからパプアニューギニアとかパキスタンなどにそういうような制度があるように承知いたしております。
○小澤(克)委員 それでは次に十四条に移りますが、十四条の二項を読みますと、「日本の国籍の選択」という言葉の中には、外国の国籍を離脱する方法と、いま一つは選択宣言と、この二つが概念内容となっているようですが、そのように理解していいのでしょうか。
○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
○小澤(克)委員 そうしますと、十五条の解釈に混乱が生じないだろうかという感じがしてしょうがないのです。なぜかと申しますと、十五条三項によれば、法務大臣の催告を受けた者が「一月以内に日本の国籍の選択をしなければ、」結局国籍を失うという規定になっているわけです。ここに言う「日本の国籍の選択」というのは外国籍の離脱と選択宣言と、この二つの手続があることになりますから、法務大臣の催告を受けた人が外国籍離脱の手続をとったといたします。そうしますと、日本国に対しては何ら特段の手続はとらないわけですね。そうしますと、一カ月後には日本国籍を喪失してしまう。一方、外国籍についても離脱の手続をしているわけですから、それが認められれば離脱してしまう、結果としては無国籍になる、こういうことが生じないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 御指摘のとおり十五条三項の「一月以内に日本の国籍の選択をしなければこという日本国籍の選択の内容は十四条の二項で言っておるものと同内容だというふうに解するほかないと思いますが、そうしますと、外国の国籍を離脱するか、日本に対して選択の宣言をするか、どちらかをしなければ日本の国籍を失うというふうになるわけです。したがいまして、外国の国籍を離脱するという方法を選択し――選択と言うとまた混乱が起きますからあれですが、外国籍の離脱の方法をとろうとした方が、一カ月以内にそれが思ったとおり離脱の効果が生ずるまでに至らなかったという場合には確かに問題が生じようかと思います。
 この規定それ自体は確かに催告を受けた日から一カ月以内にどちらかでなければいけないわけですが、ただ御本人が一カ月以内に離脱が完了すると、それによってこの十五条の三項の要件が満たされる、逆になるかもしれませんが、十五条三項の規定によって日本の国籍を失うことはないというふうに思って手続をされていた場合に、相手の役所の関係もあって、それが一カ月以内にできないというような場合は、これは本人の意思を全体から見ますと、日本の国籍の方を選択する意思に基づいて行動を起こしているということは言えるわけでございましょう。しかも、ある一定の期間内に外国の国籍の方の離脱の手続を進めていたのだけれども、それが予期に反してできなかったという場合には、この十五条の三項のただし書きに該当するというふうに解する余地が十分にあるし、また、そう解した方が極めて妥当であるということもあろうと思います。そういう場合には、この十五条の三項の本文によって日本の国籍を失うことなく、そして外国の国籍を離脱すれば、そこで離脱が完了すれば日本の国籍を唯一の国籍として保持するという結果になるというふうに解せられると思います。
○小澤(克)委員 一カ月以内に国籍の離脱ができた場合はどうなりますか。
○枇杷田政府委員 できた場合には、当然日本国籍が唯一のものにその瞬間になるわけでございます。したがいまして、日本の国籍を喪失するということはあり得ないわけであります。少なくとも実体的にはそういうことになります。
○小澤(克)委員 実体的にはそうなんですよ。先に外国籍の離脱が完成すれば、まさにここにいう十五条三項の「一月以内に日本の国籍の選択をしなければこというところに当たらなくなってしまう。選択をしたことになりますから、国籍を失うわけはないわけです、実体的といいますか観念的にはですね。しかし、手続的には失ったというふうに扱われますね、国内には何らの手続をとらないわけですから。そうすると、その場合どうなりますか。
○枇杷田政府委員 実務的に考えますと、法務大臣の方では外国の国籍を離脱したということがわからないことが多かろう、ほとんどだろうと思います。したがいまして、その本籍地の市町村の方に連絡をしまして、日本の国籍は喪失したということを通知しますと、市町村の方ではその戸籍を消除してしまうという手続に進んでいく可能性はあるわけです。ところが、一方外国の国籍を離脱いたしますと、そのことがまた戸籍の届け出事項に今度はなるわけでございます。したがいまして、外国の場合に外国に住所を有する方の場合には三カ月以内ということでございますが、ともかくそれが本籍地の市町村に外国の国籍を離脱したということが証明書つきで届くわけでございます。
 その場合に離脱の方の届け出が先に来れば、そしてその日付を見れば、要するに催告の関係よりも前に離脱したことがわかれば、市町村は当然にそれは離脱を記載して催告による喪失の方の手続はしないということになります。ところが、離脱の方の届け出が遅くなって、もう戸籍の方を消除してしまった後に届いたという場合には、これは間違いであることが後で市町村でわかる。その場合には法務局の方に連絡して、そして誤りであることになりますので、これは職権ででももとへ戻す、あるいは職権といいますか、そういう場合には法務省の方に連絡をして、そういう事実関係からその喪失の通知というものを取り消して、そしてもとへ戻すというふうな措置が十分にとれるわけでございます。
○小澤(克)委員 戸籍法についてはまだ後でお尋ねする予定ですが、実際には戸籍法百三条の国籍喪失の届け出というのは一カ月以内、それから外国にあるときは三カ月以内ということですから、その方が早く届けが行くということはまずめったにないだろうと思いますし、それから届けは事実上なされない場合もいろいろ実際問題としてはあるかと思います。そうしますと、本人は、この催告を受けた人はまさに催告の内容に従った行動をし、しかも一カ月以内に選択をやり遂げているわけです。何ら落ち度はない。まさに大臣の催告の内容どおりのことを実現しているわけです。それにもかかわらず手続的には一たん戸籍が抹消されて、やはり間違いだったといってまた戻る。これは法制度として欠陥じゃないか、私こう思うのですが、いかがでしょう。
○枇杷田政府委員 それは確かに前後すると、戸籍の処理の上でわからないために実体に合わない処理をしてしまうということが発生する可能性は残っていると思います。しかし、制度全体からいたしますと、それではそういうことのないようにするためにはどうしたらいいかということになりますと、要するに、そういう催告をやった場合の戸籍の消除については少なくとも百六条の外国の国籍離脱の届け出が来るまでは待つようにするかとかいうようなことでの運用は考える余地はあろうかと思いますけれども、しかし制度としては、一カ月という期間内にどちらかの方法をとらない限りは日本の国籍を喪失する、そういう実体規定そのものは制度としては置かざるを得ないといいますか、そういうことで不合理とは言えない。あとは手続的にそれを幾らかでも混乱がないように処理するということが工夫さるべきだということは言えようかと思いますけれども、国籍法の十五条の規定から言えば、そんなに不合理なものというふうには私どもは考えておりません。
○小澤(克)委員 先ほど私、戸籍法百三条と言ったかもしれません。これは百六条の間違いです。
 それで、私はそうは思わないのですね。今おっしゃったのは、一方で選択宣言がないがゆえに国籍の喪失という手続が進む、他方で外国籍の離脱ということがこれと無関係に進む。そのことはいわばどういう法制であろうとやむを得ないのだ、立法技術的にどうしようとそれはあり得るのだというお話だったと思うのですが、問題になっているのはそうじゃないんですよ。この十五条の一項による法務大臣の催告の内容それ自体が、外国籍の離脱ということも含めてこれをしなさい、もちろんそれに限るわけじゃありませんけれども、国籍の選択一般をしなさいという催告なんですよ。その中には外国籍の離脱という手続が当然に含まれるわけです。大臣の催告と無関係にたまたまその人が他方で外国籍の離脱という手続を進めていた、こういうことは技術的にどういう立法をしようとそれは防げないと思います、先ほど局長おっしゃったとおりだと思いますが。この十五条一項の大臣の催告そのものに従った行動をまさにして、しかもそれをやり遂げた、一カ月以内に外国籍の離脱をやった、どこからも非難の余地がないわけです。催告された内容そのままをやって、一カ月以内に離脱をした。それにもかかわらず何か国籍をいつの間にか抹消されたり、やはり間違いだったということでまた復活したり、そういうことがあり得る。これは法制度のまさに欠陥だと思います。そう思いませんか。
○枇杷田政府委員 法制度と申しましても二つあろうかと思います。
 一つは、国籍法の面でとらえた場合にどうかということになりますと、これは先ほども申し上げましたように、外国の国籍を一カ月以内に離脱した場合には、まさに法の命ずるところに従ってやったわけですから、したがって日本の国籍を喪失しない、そういうことは確定するわけですね。ですから、それは決して制度として不合理ではないわけです。ですから、国籍法の面でとらえる限り、私は制度は不合理ではないと思います。
 ただ、それを戸籍の面で処理をするときに、片方は法務大臣の方から、何もわからないものだから喪失の通知が市町村の方に行く。それから、片方は本人の方から外国籍の離脱の届け出が百六条で出てくる。その関係の前後関係で、場合によっては戸籍が消されちゃうということがあり得る。それを実体に合っていないからもとへ戻すということは、本人にしてみれば気持ちの悪いことが戸籍の上にあらわれてくるということになって、それは不都合な面ではある。したがいまして、それは戸籍の処理の上でそういうものを合理的に処理をするということが工夫さるべきであるということは、一つの御提言としては私も十分に理解できるわけであります。
 それは何カ月の間に法務大臣の方から戸籍の消除に関する通知をするとかというふうなことはこの戸籍法の改正自体でも出ておりません。したがいまして、それを実務的にどのように処理をするかという面で解決する余地は十分にあろうと思いますので、この法律の面の上からいったときには、そんなに私は不合理なものだというふうには考えておらない次第でございます。
○小澤(克)委員 実体法のレベルで、確かに二つの国籍喪失原因が両方有効になるということはない。その意味で、制度的には間違いないとおっしゃったのは、それはそうだと思いますが、戸籍法との関連で言いますと、先ほどから私が指摘しているような事態が起こるわけです。これはやはり制度的欠陥と言わざるを得ないと思います。
 なぜそんなことになるか。その原因はこういうことなんですよ。要するに、先ほど指摘しましたように、日本国籍の選択という概念の中に外国籍の離脱と選択宣言という二つの別々の手続――これは手続の方向が全く違うわけです。外国籍の離脱は、外国政府に対して手続をするわけです。選択宣言は日本の政府に対してやるわけです。全然別の手続を日本国籍の選択という概念にひっくるめてしまって、そしてそれについて一カ月の期間であるとか、あるいはこれも後で触れようと思いますが、ただし書きの責めに帰することができない事由によってできないときというような要件を定めるということの、これは全く法技術の無理といいますか、法技術的な立法技術のミスではないか、こう思うわけです。
 これは技術的には簡単なんですよ、先ほどから指摘しているような問題を解決することは。こうすればいいのです。
 第十四条の「外国の国籍を有する日本国民はこというこの後に続けて、いずれかの国籍の離脱をしないときはという文言を挿入する。そして十四条二項の「外国の国籍を離脱することによるほかはこという文言を削除する。これだけでさっき言ったような混乱は全部なくなるわけです。しかも概念的にも国籍の選択と国籍の離脱というのをはっきり区別することができる。どうしてそうしなかったのか。逆に言うと、そうすると何かまずいことが起こるのか、教えていただきたいのですが。
○枇杷田政府委員 ただいまの御提言のような書き方もそれはあろうかと思いますけれども、私どもの方の考え方は、結局選択の宣言をしたからといって客観的に単一の国籍になるわけじゃありませんけれども、単一の国籍になるような方向に行くということがこの選択制度のねらいであります。したがいまして、法務大臣が催告をする際も、どちらかの国籍を離脱していない場合だけに限るわけじゃなくて、要するに催告を受けて、それから外国籍を離脱してもらっても、日本の国籍を離脱してもらっても、それによっても目的が遂げられるわけです。したがいまして、その催告の内容の中には、国籍の選択として、選択の宣言が外国にあることを前提に置いて申しますと、どちらかの選択の宣言をするか、あるいはどちらかの国籍を離脱するか、その方法を選んでほしいということがあくまでも残るだろうという感じがするわけです。
 ですから、十四条の一項の中で最初から外国の国籍の離脱をしなかった場合だけに限定して出発をいたしますと、最後の法務大臣の催告の内容の中には、どちらかの国籍を離脱するということによっても解決し得べき道をそこでは内容として含まないことになるのじゃないかという考えがあるわけです。したがいまして、あくまでも最後まで、離脱の方法か、あるいは選択の宣言が、それをしてもらうということを催告の内容としてどうしてもとどめておかざるを得ないだろうということがこのような規定になった根拠でございます。
○小澤(克)委員 それはおかしいと思いますよ。そういうふうに催告の内容を欲張るから、いろいろな手続を全部含めてしまうから、十五条三項の解釈がおかしくなってくるわけです。並行的にとれるいろいろな手続、その方向も違えば全部違います。それをひっくるめて、一カ月の期間が経過したときというような要件で考えようとすると、どれについて考えるのか、全部について考えるのか、どうしてもそういう混乱が起こるわけですよ。何も法務大臣の催告の中に離脱という手続も含めなければならぬという必然性はないわけです。離脱をしない者は二十二歳までに選択しなさいという規定を置き、そしてそれをしない者に選択しなさいと言えば、間接的には離脱という方法によっても国籍の特定は――集中はするわけですから、それをどうしても含めなければまずいということにはならないわけです。少なくとも間接的にはそのことも含めて義務づけられているわけですから。こういう犠牲を払ってまで国籍の選択という概念の中に離脱を含めてしまう、概念の混交をしてまでこういうふうにしなければならない理由もわかりませんし、現実に十五条三項の解釈に混乱が生ずるわけです。
 もう一つ指摘すると、先ほどもちょっと言いかけましたが、十五条三項のただし書きです。「その者が天災その他その責めに帰することができない事由によってその期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合」、こういう要件が書いてあります。ある人が外国籍の離脱をやろうとした、ところが通信の途絶等があってなかなかできなかった、それで途絶がやんだときから二週間以内に早速やって、そして離脱に成功した。その場合に、選択宣言の方をとればよかったじゃないか、何の障害もなかったじゃないか、だからここの要件は満たしてない、こういう解釈もあり得るわけですよ。全然別の手続を含んでいるために、どっちの手続についてこういうことを判断するのか、混乱が生じませんか。今の点、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 後の点でございますけれども、これは、この案で申しますと、外国籍の離脱とそれから選択の宣言と二つの方法があるわけでございますので、そのどちらかはやろうと思えばやむを得ない事由がなくてできたという場合にどうかという問題になろうかと思いますが、御本人がある一つの方法を選びたい、殊に、外国籍の離脱をする方が日本の国籍の選択の宣言をするよりは国籍唯一の原則の線からいいますとむしろ歓迎すべき状態であります。そういう状態のものを選ぶということは、日本の国籍法からいいますと責められないわけです。そういう方策をとるのに一生懸命やっておったということがあれば、それは全体としてやむを得ない事情があるという評価をすることは十分できると思います。
 それを本人の意図と違って、もう少し、若干あいまい性の残る選択の宣言の方をすればよかったじゃないかということは、本人にとっても酷なことであろうと思いますので、制度全体の趣旨からしては余り言えない。それは、全体として評価すれば外国籍の離脱の手続をしようという意思があり、それをするについてやむを得ない事由があったという場合には、最終的にその離脱の手続が済めばそれによって結果的には日本の国籍を選択したことになるのだということで、前の形式的な、法務大臣の方では、ここに届くかもしれないと思って待っていた選択の宣言がないことによる喪失の効果は、これは発生しないというふうに考えます。
 それからもう一つ、前の問題についてお答えしてよろしいかと思いますが、これは確かに十四条の一項の方に、国籍の離脱をしていない者についてというところで要件を絞ることも一つの方法だろうとは思います。しかしながら、それをやりますと、後で催告する内容は一体何になるのか。選択の宣言だけが、いわば日本の国籍を選ぶという場合には日本の国籍の選択の宣言だけがその場合に選ばれる方法であって、外国籍の離脱ということは、その催告の内容とかあるいはその催告に従う履行行為としては含まれないかという問題は結局残ると思うのです。ただ、書き方としては前の方に書くのも一つの考え方と思いますけれども、私ども、結局は同じようなことになるような気もいたしますので、そう御指摘にあるような根本的な違いは出てくるようには思いません。
○小澤(克)委員 いや、そうはなりませんよ。十五条で国籍の選択をまさに催告する、ここで言うのは純粋に、離脱という観念を含めない狭義の国籍の選択だけになります。ですから、日本国籍の選択、すなわち選択宣言があるいは外国籍の選択をしなさい、この催告で十分なんです。
 それからもう一点、では逆に、当該外国にその人がいたとします。家族はみんな日本にいるとかいうような状況から、外国で生活しているにもかかわらず日本国籍を選択するということで選択宣言をしようとした、ところが通信の途絶等でおくれた、その場合に、先ほどのただし書きの判断で、外国にいたのだから外国で離脱の手続をすればすぐできたじゃないか、だからこの要件に当たらない、そういうふうに判断される余地も生じますよ。いかがですか。
○枇杷田政府委員 そういう問題も出てこようかと思いますけれども、これはどちらでもいいわけで、今の御趣旨によりますと、御本人が選択の宣言によってこの催告にこたえようとしたという意図があるわけでございますね。そういう意図を実現されるためにはやむを得ない事情があるという場合には、それはそれなりに評価をしてもいいのではないかと思います。したがって、外国の国籍法で離脱する方が国籍の立場からすればそれはより望ましいことではありますけれども、その方法があるからといって、その方法に限って事を判断する必要はない。したがって、御本人が選択の宣言の方をしたいという意図であって、それをするのにやりがたいやむを得ない事情があれば、これはこのただし書きに当たるというふうに解すべきだと思います。
○小澤(克)委員 そうすると、今のお話二つ合わせますと、結局本人が選んだ方の手続についてのみやむを得ない事情があったかどうか、二週間以内にやったかということを考える、もう一つの方の手続については考えない、こういうことになろうかと思うのですけれども、そうすると、この明文に反するのですよ。「日本の国籍の選択をすることができない」と書いてあるわけですから、そのうちの一方だけできないで、片方はできたわけです。こういう混乱が起こると先ほどから指摘しているわけです。これは率直に言いまして立法技術の欠陥です。
 では、こういう場合はどうですか。これはむしろ一番最初に言ったのですけれども、国籍離脱の手続をとった、一カ月以内に着手した、しかし相手といいますか、外国の政府の手続があることですから、結局、離脱が完了するのがおくれた、一月を過ぎてしまった、こういう場合にはこの法による催告の効果としての国籍の喪失は適法になるわけです。まず、そうですね。一カ月以内に選択をしなければの意味が着手なのか完了なのか、それをまず確認させてください。
○枇杷田政府委員 これは完了のつもりでおります。
○小澤(克)委員 そうしますと、今言いましたように、外国籍の離脱に早速着手したわけですが、それが完了するのは一月を過ぎてしまった、その間に日本国籍の喪失はします。これは適法なのです。先ほどの例とは違いまして、間違いじゃないのです。その後に外国籍の離脱が完了するわけですから、結局、手続的には無国籍になってしまいますね。その場合には恐らく外国籍の離脱の手続の方が途中から不適法になったのでしょう、これは外国の法制がどうなっているかに結局はかかるわけですけれども。そうすると、さっきのような戸籍の訂正で足りるという問題にはならなくて、外国の国籍離脱が間違いだったということで、その外国の政府に対して国籍存在確認の訴えか何かをしなければならなくなる、離脱しようとした国に対して存在することを確認するというような手続をとらざるを得なくなる、こういうことも起こるわけです。しかも一カ月以内に離脱ができるということはむしろ少ないと思いますから、その方が多いわけです。これは立法技術の欠陥だと思いますよ。いかがでしょう。
○枇杷田政府委員 離脱は、日本のように届け出をすればすぐ効力を生ずる、今度の法律はそうするわけでございますが、そういうふうにそんなに期間を要しないところももちろんあるわけですね。そうでないところもいろいろあります。しかし、今の設例のような場合には、催告を受けて遅滞なく外国の国籍の方の離脱手続をした、ところが相手方があるわけですから、その関係でおくれたという場合には、本人の責めに帰せないような事由で徒過をした場合には救済をするといいますか、債務不履行的な措置はとらないというのがただし書きの立法趣旨でございますから、そういう意味でやむを得ない事由等があったということで、ただし書きによって一カ月を経過したその日に日本の国籍を喪失するという効果は生まないと解すべきだと思います。
○小澤(克)委員 そうならぬですよ。だって「選択をすることができるに至った時から二週間以内にこれをしたときは」ということになっているのですよ。つまり障害がとれてから二週間以内に行うという規定になっているのですよ。私がさっき指摘したような例だとこの規定に当てはまらないでしょう。早速外国籍離脱に着手したのです。申請書類をぽんと外国政府に出したのです。後は外国政府の内部の手続でごちゃごちゃして二カ月ぐらいたってから離脱、結構です、オーケーですと完了した。この場合に、どうして「選択をすることができるに至った時から二週間以内にこれをした」というふうに判断できますか、こういう障害がとれてから二週間以内に行ったというような観念の入る余地がないでしょう。いかがですか。
○枇杷田政府委員 これは外国の役所側の方が手続的におくれているということ自体が、本人の責めに帰せない状態が続いているのだというふうに評価できると思います。
○小澤(克)委員 そうすると、どうなるのですか。二カ月たって離脱、結構です、ぽんと手続が来ました。この場合に「二週間以内にこれをしたとき」ということに当たるというのですか、そんな解釈は無理ですよ。障害がとれてから二週間以内にやったときはオーケーというのがこの規定ですよ。どうしてそうなるのですか。
○枇杷田政府委員 この規定の文言を形式的に当てはめれば今おっしゃったような事柄が問題になろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、このただし書きは、本人がこの催告に従って国籍の選択をしようということの努力をするのに、それの実際上妨げになるような本人の責めに帰せられないものがあればそれは猶予するといいますか、救済しようというのが趣旨でございますから、今のような文言上の形式に当たらないような場合でもそれは当然解釈として運用されるべき性質のものだと思います。
    〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
○小澤(克)委員 それは全く無理な拡大解釈です。障害がとれて二週間以内にやったときはこの限りでないというこの規定に当てはまらないですよ、私がさっきから言っているような場合は。そういう文言を無視した拡張解釈をしなければならないこと自体、先ほどから再三指摘しているように、全然別の手続を一つの要件でくくるからこういうことになるのです。これは立法技術の欠陥ですよ。
 では、また蒸し返しになりますが、一カ月以内に外国籍の離脱ができたとします。それにもかかわらず日本国籍の方が抹消されたとします。それであれは間違いだったということになりますと、法務省の戸籍官吏の方で認めて早速戻してくれればいいですけれども、外国籍の離脱ができたかどうかということについて証明するのはそう簡単でない場合だってあると思います。
 そうすると、結局、国籍存在確認の訴訟か何かを起こさなければならない。そういう場合だって生ずるわけです。本人には何の責めもないのですよ。まさに催告の内容に従った行為をきちんとやっているわけです。何でこんな場合の生ずるような規定の仕方をしなければいけないのか、先ほど私が言ったような手直し、ごく簡単なんです、それをすれば全部今言ったような問題は解決してしまうのです。いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 ただいまの戸籍の方から消除された場合のことでございますが、これは戸籍法の百六条の規定に従いまして外国籍の離脱の届け出をしていただけば、多くの場合にはそういうことがないように私どもの方では実務的に処理をいたしたいと思っておりますが、そういうことがもし起きた場合には、これはいずれにいたしましても百六条の外国籍の離脱の届け出をする際に必要であるところの外国籍離脱の証明書というものは、これは当然出るわけでございますので、それを法務局あるいは法務本省などにお出しいただければ、それに基づきまして市町村の方には、その消除の旨の通知は取り消してもとへ戻すという措置は十分にとれるわけでございます。
 それからまた、そういうふうな問題も生ずるから、立法技術の欠陥ではないか、そう改めたらどうかという点につきましては、一つの御指摘の御意見としては、私どもも、それは特に否定するわけではございませんけれども、私どもの方の立法の仕方がそう間違っているとは思っておらないわけでございます。
○小澤(克)委員 この問題はもうやめたいのですけれども、先ほどから言っているように、何ら本人に責められるべきことはない、法務大臣の催告に従った行動をしている、それにもかかわらず戸籍を消されて、あれは間違いだったからまた戻すというようなことが起こり得るようなこういう規定の仕方をしなければならぬ、それだけの理由があるのですか。先ほど私が指摘したような簡単な手直しをすれば、こういう問題は全部解消するわけです。それにもかかわらず、どうしてもこういう規定の仕方を維持しなければならない何か積極的な理由があるのでしょうか。それを教えていただければ、もうこの質問はやめます。
○枇杷田政府委員 もう既に繰り返しになりますけれども、私どもとすれば、選択の催告の中身とすれば、外国籍を離脱することによって日本の国籍に単一にする、そういう方法も中身として含まれるべきであろうということがこの趣旨でございます。
 したがいまして、そういうことでなくても全体に調整がとれるような立法の仕方があるじゃないかと言われれば、それはまた別でございますけれども、ただ、今の戸籍の関係につきましては、その御提案のような考え方をとりましても、法務大臣が催告をする一カ月のぎりぎり直前に外国籍の離脱をすれば、それも一つの解消策になることは、小澤委員の御提案でも同じだと思います。その場合でも、外国籍の離脱の届け出がおくれれば同じような問題が生ずるということは避けがたいわけでございます。
○小澤(克)委員 いや、それは大臣の催告の内容に従った行動をまさにしている場合と、催告の内容とは全く別の行動をした場合と、それを一緒くたに論ずることはできないでしょう。この催告の内容をまさに狭義の国籍の選択だけに限ったとしても、その催告とは全く無関係にその人が離脱の手続をするということはあり得ます。そうすれば戸籍が消されたり、また戻ったりということはあり得ます。しかし、それは大臣の催告とは別の行動をたまたましただけなんです。ところが、この規定の仕方によると、まさに大臣の催告の内容に従って行動し、何ら本人にとががないにもかかわらず戸籍が消されたり、間違いだったといってまた戻ったりということになるわけですよ。この差は大きいと思いますよ。
○枇杷田政府委員 それは確かに催告の内容を履行するという評価ができるかどうかという点については差異がございますけれども、御提案のような形で十四条の一項に書いた場合におきましても、法務大臣の催告の前提になる、そしてまた、国籍法が選択制度というものを設けている趣旨であるところの単一国籍に持っていくための方法として外国籍を離脱するということには変わりないわけでありますから、その場合で混乱をするのはいいのだけれども、こちらの場合にはおかしいのだということは、確かにそれは催告の内容であるという点において違いがありますけれども、私は、そう本質的なものではないという気がいたします。
○小澤(克)委員 それは全く牽強付会だと思いますよ。法務大臣の催告に従って行動した人が不利益を受けるというようなそんなことがあり得る法制というのは基本的におかしいですよ。戸籍が混乱するというようなことはおかしいですよ。それでも、そういう混乱をさせてまでもこういう規定の仕方を維持しなければならない積極的な理由があったら教えてくださいと先ほど聞いたのですが、いかがですか。
○枇杷田政府委員 何遍も繰り返しになりますが、そういう二重国籍のままで期間を徒過しているような方については、ともかくもし日本の国籍を維持したいというならば、外国の国籍を離脱するか、あるいは日本の国籍の選択の宣言をしたらいかがですかという内容が、むしろ催告の内容としては、この選択の制度に一番適していると考えるからその内容にしているわけでございます。
○小澤(克)委員 まあこれ以上言っても水かけ論になりますので、もうやめます。これだけで一時間たってしまったのでやめますけれども、私は、法務大臣の催告の内容に従った行動をしたにもかかわらず戸籍が抹消されたり、それがまた間違いだということで回復したりというようなことが考えられる法律というのは欠陥法律だと思います。
 次に移ります。
 十四条二項の選択宣言、これをなしたことによって自国籍を失わせる国というのは、前回、天野委員の同様の質問に対して、パキスタン、インドネシア、フィリピンがあるというふうにお答えがあったと思いますが、このとおりでしょうか。
○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。フィリピン、インドネシア、マレーシア、パキスタンなどがそういうことになるように承知いたしております。I
○小澤(克)委員 ほかには現在ないのでしょうか。あるいは現在立法を検討中というようなことも含めまして、諸外国の立法の趨勢というようなものももしわかりましたら教えてください。
○枇杷田政府委員 現在のところ、国籍法の改正を検討している国はあるようでございますけれども、その内容は、こちらの方ではつかんでおりませんので、ちょっと趨勢についても明確な御答弁をする材料を持ち合わせておりません。
○小澤(克)委員 附則の三条でございますか、みなし選択宣言というようなのがございますね。これによって自国籍を失わせる、こういう国というのは考えられますでしょうか。先ほど午前中に他の委員の御質問で、ギリシャとの重国籍の方が心配しているというお話がありましたが、そのときは、そういうことはなかろうというお答えでしたが、他に失うことになる国がありますでしょうか。
○枇杷田政府委員 私どもとしては、そういうことになる国はないと思います。ただ、何分にも外国の国籍法の関係でございますので、どんな立法をするかわからないではないかと言われますと、それはこちらでは何ともしょうがない面がございますが、私どもといたしますと、これは先ほどの十五条の法務大臣の催告を不要のものにするということをねらったその効果をあらわしている規定でございますので、したがって本人の意思でそういうことになったわけでもございませんので、このような規定があるからといって、いわば他国籍の方をむしろ捨てるというようなニュアンスでとられるということはないのではないかというふうに思います。
○小澤(克)委員 結局、選択宣言によっては国籍を失わせる国はあるけれども、みなし選択宣言によっては失わせるところはないだろうというこの判断の根拠は、それが自己の意思によっているか否か、そういう違いだ、こういうことになるわけですね。――うなずいておられるから、そうだということで次の質問に進みます。
 私は、外国の方が必ずしもそういうふうに理解してくれるとは限らぬと思いますよ。というのは、附則三条の方ですけれども、「期限内に国籍の選択をしないときはここうこうこういう法律効果が生じるという意味ですから、本人には国籍の選択をするかしないかという機会が与えられているわけです。だから、やはり本人の意思が何らか関与しているというふうにも解釈される余地がありはしないか、そういう危惧を持つわけですが、いかがでしょう。
○枇杷田政府委員 そういうことは多分ないと思いますけれども、非常によく日本の附則の条文を見られて、そういう疑問を持つというところはあるいはあるかもしれません。ただ、何分にいたしましても、自国の国籍を失わせるということはどこの国でも重要視するでございましょうから、そういう疑問があった場合には、当該国の方にその解釈とか性質とかというものについての照会をして、それに基づいてするというのが普通の国のやり方だろうと思います。我が国でも、もしそういう疑義があれば当該の国の関係当局の意見を聞くということになるわけでございますので、したがいまして、そういう面からも誤解は避けられるのではないかと思います。
○小澤(克)委員 附則三条については、結局その意図するところは十五条の適用を排除することだ、こういうことだろうと思います。だとすれば、これはむしろ親切な規定だと私は思うのですよ。だとすれば、親切ついでに先ほど局長がおっしゃっているような趣旨をより明確にすればいいと思うのです。これもまた技術的には非常に簡単なんですよ。附則三条のこれこれの「期限内に国籍の選択をしないときはこの次に、新国籍法第十五条の適用については宣言をしたものとみなすと、この第十五条の適用についてはという文言を挿入するだけで極めて明確になるのですけれども、そう思われませんか。
○枇杷田政府委員 そういう面もあろうかと思いますけれども、規定の趣旨全体から要するに国籍法全体としてそういう地位に立っているものだということ。
 それからもう一つ、これは国籍法自体ではおっしゃるとおりかもしれませんけれども、一つ配慮した点は、これからほかの立法で二重国籍者について何かの立法があり得る可能性もあるわけですね。電波関係とかなんとかで外国籍を持っている者は認可が受けられないというような法制が現在でもあります。そういうことでどういうふうな対応をするか知りませんけれども、十五条だけではないというニュアンスですね。要するに、二重国籍者の中でも一つの選択の宣言をした者というグループの中に入るとっかかりがむしろあった方がいい。これは少し余分なことなんですけれども、そういうことも実は頭の片隅にはあったわけでございます。
○小澤(克)委員 附則の三条のこの「みなす」というのは非常におさまりが悪いんですね。なぜかというと、この選択宣言というのは非常に意思的な要素が強いわけです。これは大分前の当委員会での枇杷田局長のお答えにもありましたけれども、決意表明だというような言葉も使っておられます。こういう非常に意思を宣言するという要素の強い事柄について、本人の意思にかかわらず「みなす」というのは極めて落ちつきが悪いんですよ。だから、むしろ選択宣言の効果のすべてじゃなくて、ただ十五条排除だけなんだというふうに明確にすればその落ちつきの悪さが全部払拭されると思うのですけれども、そういう提案をしておきます。
 それから十四条二項の選択宣言の文言ですけれども、これは何でこういう強い表現をしなければいけないのか、どうしてもわからない。局長の前からの御説明を聞いていますと、この選択宣言をすることによって国籍が失われる国、手続はなお残るわけですけれども、少なくとも、観念的といいますか実体的には失われる国は、現在、パキスタン、インドネシア、フィリピン、三つしかない。そのほかの国との重国籍者についてはほとんど十五条の適用を排除する効果しかない。強いて言えば十六条の訓示規定がある程度、こういうことになるわけですよ。
 その程度の法的効果しかないにもかかわらず「国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言」というような、こういう非常に強い表現を要求するというのは、私は法的効果を超えた行為を要求するということで一国の法として適当でないと思います。現実に現在、重国籍者の間で非常に不安、動揺が起こっている。いろいろな文書などが私のところに届いておりますけれども、これは一にかかってこういう法的効果を超えた強い表現を要求しているところにあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 何度も申し上げますとおり、この国籍選択制度というのは、国籍唯一の原則を貫きたいということから来ているわけでございます。そういう意味から申しますと、この「選択の宣言」というのは、国籍唯一ということが明らかになる、要するに国籍唯一にするという自分の気持ちがあるんだ、意思があるんだということを明らかにするということだろうと思いますので、したがいまして日本の国を唯一の国籍とし、反面、外国の国籍の方はなくすという内容でなければならない。それを「放棄」という言葉は少し強過ぎるのではないかという御指摘でございますけれども、外国の国籍法の中でも、こういう宣言ということではなくて、国籍の放棄という言葉を使っているところはかなりございますし、したがいまして、一方では日本の国籍の方を確保し、片っ方の国籍の方はなくすということを日本の国に対して宣言をするという内容が一番この選択制度の趣旨に合致しているのではないかということでこういう言葉を使ったわけでございます。
○小澤(克)委員 仮に「外国の国籍を放棄する旨」という部分を除いたとしますと、先ほど挙げられましたパキスタン、インドネシア、フィリピンについて効果が変わってくるということがありますか。単なる選択だけではこれらの国との重国籍者についてこれらの国の国籍が喪失しないというようなことがありますか。
○枇杷田政府委員 それは各国の国籍法の解釈の問題だろうと思いますが、内容的に、自国の方から見ますと、自国の国籍を放棄するという意思を外国で表明したというところに重きを置くという受け取り方もあろうと思うのです。そういうところでは放棄ということが非常に強く評価をされる可能性もあろうと思います。ただ、性質は、ある国の方を選択するということは同時に片っ方は選択しないということをあらわしておるわけであります。だから、それをそういうものとして了解すれば、それは別に放棄という言葉がなくても同じ効果としてとらえられるだろうと思います。
 私どもの方としても、もちろん内容的には日本の国籍を選択するというだけでもそれは足りるといえば足りるのでありますけれども、そういう宣言という意味内容が国民ということの内容としても片っ方の面からとらえる表現があった方が余計に理解ができる、それで宣言の性質もよく理解してもらえるだろうということから、日本の国籍を選択して外国の方を放棄するという両面で明確に書くというふうにしておるわけでございます。
○小澤(克)委員 それで、質問のパキスタン、インドネシア、フィリピンについてはどうなるんでしょうか。
○枇杷田政府委員 これらの国につきましては、この法案を示してどうかという意見を聞いておりますので、それを放棄するというのを削った場合にどうかということは、また聞いてみないとわからないことでございます。
○小澤(克)委員 私はこれはこういう問題が生ずると思うのです。この三国を除いたその余の国との重国籍者については、要領のいい人は、これはどうせ十五条の適用排除の効果しかないのだから、いわば第二の国籍留保にすぎないのだからということでぽんと選択宣言をする、そして十六条の訓示規定についてはこれを無視して知らぬ顔をしておく、さらに言えば、このパキスタン、インドネシア、フィリピン国籍との重国籍者であっても、この選択宣言は日本政府に対してはするけれども、しかし、そのことをパキスタン、インドネシア、フィリピン政府に対して通告するというようなことは一切しないでとぼけておく。そうすると、実体的にはこれらの国の国籍は喪失するわけですけれども、手続的にはなおそのまま残っている、そういうことをするだろうと思います。
 それからむしろ律儀な人はこれを見て悩んで、しょうがないということで選択宣言をしない、その結果、日本国籍を十五条によって失う、そういうことになると思うのです。要するに、信心深い人が踏み絵を踏まずひどい目に遭う、はりつけに遭う、信心深くない人はこんなものを踏んだってどうってことないと言って平然と免れる、それと同じことが生ずる。律儀な人が、正直者が損をする、そういうことになりかねないと思うのです。そうだとすれば、法律として適当でないと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 法律というのは国民がその法律を守ってくださるという期待を込めておるわけで、それを守らなかったときに罰則でするというのも、これは相当その程度がひどい場合に限られるわけで、法は守られるべきものだということが原則になっておると思います。
 そういう中で、確かに国籍の選択の宣言をした後、片っ方の国籍をなくすという努力もしないでいるというふうなことは望ましいことではないわけで、ずるい者が得をするじゃないかということもあろうかと思います。ただ、そうであるならそういうふうなずるい考えでやっている者を何かやるような方策をまた別途に考えるべきかということになりますと、そこまでするということも一つの問題であろう。ですから、ここら辺は国民の良識ある行動を待つ、そしてそこで本当に真剣になって選択をしていただいて、その法律の考えているとおりの行動を私どもは期待する、それによって重国籍というものの解消を図りたいという念願でございまして、それをしなかった者をごしごしした形で整理するというところまで踏み込むことは差し控えるべきだというのがこの案の考え方になるわけでございます。
○小澤(克)委員 誤解のないように。私は何も十六条の訓示規定を履行しない人を罰しろとか、そんなことを言っているわけではありませんで、逆に、十四条二項の表現がきつ過ぎるがために、無用の不安、動揺を招いているということです。
 先ほど踏み絵に例えましたが、私はむしろこれはオオカミの皮をかぶった羊だと思います。よく考えれば、その効果は大したことがないのです。しかし、表現が非常に厳しい。重国籍者が非常に不安、動揺におののいているわけです。中身が羊だということを知っている人にとってはどうということはないのですけれども、毛皮がオオカミですから、びくびくしている。これはまずいのじゃないかと私は思いますね。
 それで、百歩譲っても、こういう表現で十分だと思うのです。日本国籍を選択し、かつ、外国の国籍の離脱に努める旨の宣言という十六条の訓示規定をそのまま使ったような、この程度の表現で十分なんじゃないかという気がしますが、どうですか。
○枇杷田政府委員 そういうお考えもあろうかと思いますが、国籍の選択というのは、私はオオカミだとは思いませんけれども、実際は厳しいものだと思います。そういう厳しいものとして受けとめていただく必要はあろうと思います。
 そういう意味で、先生が中身が羊だというふうに余りおっしゃらないでいただきたいとも思うわけでございますけれども、そういうふうな感覚で国籍問題、二重国籍問題というものは対処すべきものだと考えておりますので、私どもはそういう他国籍の離脱に努めるというような、本来そういう内容のものでは性質上ないのじゃないかという気もいたすわけであります。
○小澤(克)委員 どうもオオカミをもってよしとする考え方となるべく羊である方がよいという考え方が基本的に違いがあるようですので、かみ合わないのですが、次に移ります。
 これは午前中に他の委員からの質問に出ておりますから、重複して質問することを避けます。十四条一項が原則は二十二歳まで選択が猶予されているというこの法の趣旨に違った扱いが戸籍事務担当者によってなされることのないように、つまり早目に選択することを事実上強制する、出生届や何かのときに、どうせ後で法務大臣から内容証明つきの催告が来たりしますから早目に選択をしたらどうですかとか、あるいは外国籍を離脱したらどうですかというような指導がなされることのないように、二十二歳までは猶予されているのだから、その間十分熟慮しなさいという方向で窓口の方が対処されるように、十分な指導をしていただきたいと思います。先ほどそういうふうにもおっしゃられていましたから、特に質問いたしません。そういう要望をしておきたいと思います。
 次に、十六条の二項でございますが、選択宣言の「趣旨に著しく反する」というこの「著しく」という言葉が私はどうしても理解できないのです。例えば選択宣言の中に、国家に忠誠を誓いますというような、何かそういう表現があれば、忠誠というようなものには幅があります。著しく忠誠を尽くす場合と多少忠誠を尽くす場合と、そういう幅のある観念だと思います。ところが、日本国籍を選択する、私は日本国籍を選びますというこの観念には、著しく選ぶとか多少選ぶとかいうような幅の入る余地がない、そういう観念だと思うのですよ。選ぶか選ばないか、どちらかだと思うのです。だから、その逆として、裏側として、著しくこの宣言に反するとか多少反するということは、どうしても私には理解できない。それはちょうど著しく日本人であるとか多少日本人であるというように観念できないのと同じだと思うのです。ですから、この「著しく」という言葉が入っていることは、一見要件を絞っているようで実は要件を絞る機能を果たしていないのではないか。結局どうにでも解釈できるし、法務大臣の処分について後に裁判所がこれを判断しようという場合にも、単に「著しく」と書いてあるだけでは判断の基準が見出せないと思います。
 これまでの局長のお話を聞いていますと、例えば行政(一)と行政(二)程度で、行政職(二)ならオーケーで行政職(一)ならひっかかるのではないかというふうなお話がありました。国会でそういうことが議論されていること自体、今後の解釈の一つの基準をつくっていくかと思いますので、それはそれなりに結構だと思いますが、そうであれば、むしろ外国にはいろいろな官職があるでしょうから立法は技術的に難しいかと思いますけれども、例示列挙程度に、例えば立法府の議員、それから裁判官、あるいは公の意思の決定に関与する公務員というような何か決まり文句があるようですけれども、そういうふうなもう少しきめ細かな決め方をしておいた方が判断基準としていいのではないかという気がするのですけれども、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 確かに著しく違反するという言葉は抽象的でありますので、具体的な判断基準になるようなものを掲げておくのも一つの考え方だと思います。私どもも実はそういうふうな基準になるようなものが例示的に挙げられないだろうかということも検討いたしたのでありますけれども、外国が相手でございますので、いろいろな形態がある。それで、妙な例示をいたしますとかえって解釈がまたそれに偏ってしまうということもあり得るだろう。したがって、抽象的であるということは好ましいことではありませんけれども、この「著しく」というのはむしろ日本の国に対する、先ほどの言葉をかりますと、忠誠とかということよりも外国の国籍の方を放棄するということですね、そういう宣言をしていながら、自分の志望によって外国の国籍を持っている者でなければならない公務についておるということは、それ自体その宣言の趣旨に反しているわけであります。
 ただ、反しているのだけれども、それにも公務のつき方、その地位とかというものによって、やはりおのずから差があるのではないか。要するに、著しいということが具体的なケースによって判断される基準が先例、判例等でだんだんと固まっていくだろう、むしろそういうことで任せておいた方が実際感覚としては合うのではないかというようなつもりで、あえて例示をとることを避けたわけでございます。ただ、その反面、確かにあいまい性は残ると言えば残るわけでございますが、制度全体の趣旨からおのずから解釈上一つの線が出てくることを期待しておるところでございます。
○小澤(克)委員 それでその解釈の線ということでございますが、先ほど私が挙げたような立法府の議員であるとか裁判官であるとか、あるいは公の意思の決定に関与する公務員、こういったあたりがひっかかるというような理解でよろしいのでしょうか。
 それで、もう一つついでにお尋ねしますが、学校の先生などの場合、国公立の大学の教授とか、そういうものになる場合はほとんど問題がないと考えてよろしいのでしょうか、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 最初に挙げられました例示は、これは著しく違反するグループには入ると思います。ただ、その例示だけでしてしまいますと、そういうものにむしろ限定されてしまうということではちょっと私どもも疑問はあるわけでございますが、おっしゃったものは私どもの感覚としては入るところに属すると思います。それから大学の先生――先生にもいろいろあると思いますが、教職というのは比較的公権力の行使という場面からは遠いわけでございます。それから公的な意思決定ということにも遠いところで、いわば教育研究という純粋なそういう場面でとらえますと、著しく違反するとは言えない、そういう判断を得る余地があるグループではないかと思います。
○小澤(克)委員 それから十六条に関して。この法案によりますと、聴聞などを経て結局法務大臣が喪失宣告をした、その場合に、だったら、むしろ公務員の方を辞任して日本国籍の方を残す、そういう人だっていると思うのです。ですから、そういう機会を与える方がよりいいのではないか。いきなり国籍喪失の宣告ではなくて、選択宣言の失効の宣告程度にとどめて、そこから一カ月間ぐらいの間にやめないときは国籍を喪失させますよというようなことは考えられないのでしょうかね。
○枇杷田政府委員 確かに日本の国籍を喪失するくらいなら当該公務員の職を去りたいという方もあるかもしれません。そういう場合の措置といたしましては、聴聞の機会を設けて、その主張、それからそれを立証すべきものがあるなら資料を提出していただくという手続を設けております。その中で自分はもし喪失ということになるのだったならば、むしろ公務員の方をやめたいというふうな意思を表明していただけば、その手続の中で推移を見て、そして自分の意思によって公務についたということ自体は宣告の趣旨に反しているわけでございますけれども、ただ全体の評価として、喪失の宣告をしないでおくということも、法務大臣の裁量としてはあり得ることではないかと思います。そういうことで処理すれば足りる範疇のことのように考えております。
○小澤(克)委員 それは私は非常に日本人的な発想だと思うのです。二重国籍を持っておるような方の場合、今言った聴聞の中で、どうもこれは危ないというときには、じゃ事前にやめるというようなそういう発想をとらないで、自分の主張をとことんやる、そして結論が出れば率直にそれに従うというような考え方の人というのはむしろ多いし、これから多くなっていくと思います。例えば裁判なんかの中でも、とにかく自分の主張を徹底的にする、その上で判断を仰ぐ、出た判断には素直に従う、そういう新しいタイプの方がふえていくでしょうし、重国籍者の中にはむしろそういう感覚の方が多いのじゃないかという気がするのですよね。だから、とことんやるだけやって、結論が出たら、じゃ公務員の方を辞任しますよという人もいるんじゃないかという気がするのですけれども、これもひとつ御検討ください。
 附則の、五条、これの要件にいろいろ無用な要件があるのではないかという議論は、もう他の委員からもさんざん出ておりますので、重複を避けたいと思います。それで、私としても他の委員と同様、成人者を除いたり、現に日本国民であるということを要件に加えたり、さらに日本国民であった者を除くというような要件を加える、果たしてそれだけの必然性があるのかについては疑問を持っているということはここで表明しておきたいと思いますけれども、その点はもう重複を避けまして、一つだけお尋ねしておきたいのは、この附則五条に言う法務大臣に対する届け出、これがためにもう一つの外国籍を失うという場合がありますでしょうか。具体的にどこかの国で法制上そういうことがあるのでしょうか。
○枇杷田政府委員 附則五条の届け出をすることによって片っ方の国籍といいますか、現に有している国籍を喪失するということになりそうな国は韓国、それから中国の場合には、要するに中国外に、居住している者に限るだろうと思いますけれども、失われます。それからスウェーデン、デンマーク、リビア、それから西ドイツも国外に住所がある場合には西ドイツの国籍を失うということになるようでございます。
○小澤(克)委員 出生によって国籍を取得したのと同じに扱うというのが附則の五条の規定なんですけれども、やはり自己の意思によって日本国籍を取得したからだ、出生によって出然に取得したときとは違ってくる、こういうことになるわけですね。
○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。
○小澤(克)委員 戸籍法の方に移らしていただきます。
 戸籍法の改正案の百二条の二項、ここに届け出事項が列挙されているわけですけれども、これがすべて戸籍に記載されるという趣旨なのかどうか。あるいはそうでないとすれば、記載事項はどれなのかを教えてください。
○枇杷田政府委員 新百二条の二項に記載されております各事項が全部戸籍の記載事項になるわけではございません。
 戸籍の記載事項になりますのは、一号は全部記載事項になります。二号も記載事項になります。三号は、父母の氏名は記載事項になりますが、本籍とか、外国人である場合のその国籍とかは記載事項になりません。それから四号は、配偶者の氏名及び本籍、または国籍、これは記載事項になります。五号は「その他命令で定める事項」でございますが、これは予定しているものは養子関係ですね、養子縁組関係のことがあればそれを書いてほしいということを予定しておりますので、そのようなことは当然戸籍の記載事項になるということでございます。
○小澤(克)委員 百二条の二の帰化、これも同様になりましょうか。違いがあれば指摘してください。
○枇杷田政府委員 同じでございます。
○小澤(克)委員 次に、百四条、留保、それから百四条の二、選択宣言、これについては戸籍への記載事項はどういうことになりますでしょうか。
○枇杷田政府委員 百四条の留保の場合には、その留保があった旨が戸籍の記載事項になります。
 それから百四条の二の選択宣言の場合には、その選択宣言の届け出があった旨が記載事項となるわけであります。
○小澤(克)委員 選択宣言の場合には日付なども入りますか。
○枇杷田政府委員 届け出の年月日は入ります。
○小澤(克)委員 百六条、外国籍の喪失、これについては何が記載事項になりますでしょうか。
○枇杷田政府委員 これは、いつ、どこの国籍を、どういう理由で失ったか、その届け出がいつ出されたかということが記載事項になります。
○小澤(克)委員 そこで、留保、選択宣言、外国籍喪失、この三つについてひっくるめてお尋ねしますけれども、この三つはいずれも身分行為そのものでもありませんし、それから国籍の再取得や帰化のように、いわば新たに戸籍を起こす場合でもございません。留保に関しては、出生が新たに戸籍を起こす理由だと思いますので、留保についてもそうだと思います。したがって、どうしてこういうことを戸籍に記載しなければならないのか、その理由がわからないのですけれども、どうなんでしょうか。
○枇杷田政府委員 戸籍というのは、日本国籍を有する者について編製をするということでございます。そういう意味で戸籍というのは国籍簿としての機能をも営んでおるわけであります。したがいまして、日本国籍の存続とかあるいは確定とかいうような事柄は戸籍制度の根本にかかわることでございますので、そのようなことを戸籍に明らかにしておくことが必要であるということがあります。
 それからもう一つは、その後の国籍法の処理につきましても、留保とか選択の届け出とかというようなものは戸籍の上で明示しておくということが今後の手続の上においても非常に役に立つという両側面、主たる理由は最初の理由でございますけれども、そういうところから戸籍の記載事項ということにいたしておるわけであります。
○小澤(克)委員 国籍簿でもあるということですけれども、私はこれは納得できないのです。日本国籍を持つからこそ戸籍に記載される。日本の戸籍に記載されている人はすなわち日本国籍を持っている人だというだけのことですから、それだけで十分ですね。そのほかにさらに、留保したとか選択宣言をいつ幾日やったとか、いつ幾日他の外国籍を喪失したとかいうようなことを記載する理由は全くない。しかも、これは参考人の意見にもありましたけれども、やはり社会的な差別の一つの足がかりになる可能性が非常に強いわけです。したがって、これは記載する必要はないし、もう一つの理由の方の法務大臣の催告等の資料として必要だということですけれども、それだったら戸籍本体に記載する必要はないので、ちょうど今附票という制度があって住所などはこれに記載しておりますけれども、戸籍本体とは別のものに記載すれば十分だ、こう思うのですけれども、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 日本の国籍がある者について戸籍を編製するということであるわけでありますから、戸籍があるということが日本国籍があるということの一種の証明機能も果たしている実態があるわけです。そういう意味で国籍簿的な役割も一面持っておるというふうに申し上げたわけです。
 したがいまして、留保につきましては、現行でもある制度でございますが、現在でも戸籍の届け出事項として戸籍に記載されておるということでございます。ただ、ほかの帳簿でかえられないかと言われますと、それは絶対にかえられないということはないと思います。しかしながら、では適当な方法があるかといいますと、それは問題でございまして、ただいまの一つの御提案としての附票にどうだろうかというお話でございますけれども、その附票は実は戸籍法に基づいてできているものではなくて、住民登録制度とのつながりをつけるために住民基本台帳法で決められているものでございます。したがいまして、役割が非常に限定されておるということから、附票に書くということは適当でないだろうと思います。
○小澤(克)委員 現行の附票そのものに書くことは無理だろうというのは私も同感ですけれども、戸籍本体に書かずとも、それに付随した書類を新たにつくってそこに書いておく。そして就職だの結婚だののときに戸籍謄本を要求されるときには入らないようなところに記載しておく、そういう工夫があってしかるべきだと思うのです。
 それから留保については、これまでだって記載されているではないかというお話がありましたけれども、私は、留保の範囲が拡大したということから、これまでどおりだとは言えないと思います。なぜかといいますと、これまでの留保は出生地主義を採用している国に限っていたわけですから、例えばアメリカ生まれであるとかカナダ生まれであるというようなことは必ずしも両親が日本人であるか、あるいは片っ方が外国人であるかというようなこととは結びつかない、したがって、それだけでは余り社会的差別の理由には、これまでならなかったと思います。
 しかし、今回は出生地主義に限らず血統主義であっても、とにかく外国で生まれた場合は留保になるわけですから、非常に範囲が拡大したということで、留保も新たな社会的差別の足がかりにされかねない。そういう意味で、今回の改正を機会に、留保も含めて選択宣言も外国籍喪失も、先ほどから言いましたように、これは身分行為たる本質を持ちませんので、かつ、国籍簿だということは、そこに記載されて編さんされているということが日本国籍を持つという意味しかありませんので、留保も含めて何か別の扱いをする、どうしても何らか公的な帳簿に記載する必要があれば、戸籍の各人の身分行為の記載事項からは少なくとも外す、記載の場所から外すというような工夫があってしかるべきかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○枇杷田政府委員 立法政策としてはいろんな方法が考えられると思います。ただ、現実問題といたしますと、戸籍制度で把握するか、あるいは重国籍者だけを把握するための重国籍者名簿というものでもつくるかというようなことになってしまうのではないかという気がするわけです、いろいろ内部的に議論した結果。その重国籍者名簿をつくるということは、またそれなりに一つの問題を提起いたします。そして戸籍の関係につきましては、それは若干見解の相違があるかもしれませんけれども、国籍簿としての性格をもともと持っているし、これからはますますそれを進めていってもいいのではないかという感じがあるわけで、そこに書くことが一番合理的でもあるし、制度としては一番スムーズにのっていくであろうということで、政策選択といたしましては戸籍の記載にする。それもそうだからといって戸籍制度全体と調和しないものでもないという感じを持っております。
 ただ、そういうことを書くことが差別につながるということなんであります。重国籍者とか、あるいはそうでないとかということが差別になるかどうかというのは、これはまた問題だと思いますけれども、しかし世間の実態としてはあるということも否定しがたい面もあります。ただ戸籍というのは大なり小なりプライバシーに立ち入っている面があるわけです。認知というのが書いてあるのもまずい、父親の欄が空欄になっているのもまずい、あるいは離婚が書いてあるのもまずい、言い出しますと切りがない面があります。そういうことであるから、最小限度にしておけという御見解もあろうかと思いますけれども、そういう面で戸籍全体については余りみだりに人には見せもしないし、謄本も出さないという制度も現在とっておりますので、制度全体といたしますと、そういう面も一応の工夫措置がなされておりますので、留保したとか日本国籍を選択したということは、むしろ書いてもいいことではないか、場合によっては戸籍の記載自体からは二重国籍だという推定が働くケースが多いわけです。
 父母の欄を見ますと、母親が日本人の場合には父親の戸籍がないわけですね。そして母親の欄にはどこそこ国籍の何がしという人と婚姻したということが書いてあり、当該子供の父の欄には外国人らしい名前が書いてあるということになりますと、それ自体で重国籍だということがわかるわけです。それがむしろ日本国籍の選択の宣言をしたのだということが書いてあれば、その人は重国籍なんだけれども日本の国籍を取るという腹を決めてその宣言をしているんだということが、本人にとって証明してもらいたいという問題も逆にあることも予想されるわけでありまして、私はマイナスばかりではないと思います。そういうことをあれこれ勘案いたしまして、戸籍の記載事項としても差し支えないという結論になったわけでございます。
○小澤(克)委員 どうせ父母の名前を見れば外国人らしい名前でわかるじゃないかということでしたけれども、例えば韓国籍を持っておられる方のような場合、日本人と同じような姓名の方だって幾らでもいらっしゃるわけです。それから、積極的に証明したいというときにはさらにさかのぼって、分籍している場合でも父母の戸籍等をとればいいわけですから、余り理由にならないと思うのですね。国籍簿たる性格もあるとおっしゃるのですけれども、それだったら身分行為の欄とは別の欄に書いて、戸籍謄本や抄本をとったときには、当然一体のものとしては出てこないような、物理的に紙を分離するというようなことはどうにでもできると思うのですけれども、その辺一工夫していただきたいと思うのです。
 おっしゃるように、二重国籍者名簿を別につくるというのは絶対にあってはならぬと私は思います。しかし、先ほど附票というのは思いつきで言ったのですが、附票そのものは問題にならないと思いますけれども、これに類似した紙をくっつけておいて、謄本請求のときには、そっちは普通は出さぬというような扱いをすればいいのじゃないかという気がするのですけれども、これもぜひ御検討いただきたいと思います。
 時間が来ましたので、最後に、留保、選択宣言、外国籍喪失については転籍した場合はどうなりますか。ついて回るのでしょうか。それを教えてください。
○枇杷田政府委員 これは、転籍後の新本籍地の市町村におきましても直接に把握しておくべき事柄だと考えますので、目下のところは、転籍によってもその分は消さないで、記載事項として残すという考えておりますが、ただいま御指摘のあったような点が将来どのようになるかということが予測つかない面もございますので、そういう事柄も問題になった場合には検討する余地が全くないと言うつもりではございません。
○小澤(克)委員 終わります。
○宮崎委員長 次回は、明十八日水曜日正午理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十三分散会