第101回国会 社会労働委員会 第17号
昭和五十九年六月二十一日(木曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
  委員長 有馬 元治君
  理事  愛知 和男君 理事 稲垣 実男君
  理事  小沢 辰男君 理事 丹羽 雄哉君
  理事  池端 清一君 理事 村山 富市君
  理事 平石磨作太郎君 理事 塩田  晋君
      伊吹 文明君    稲村 利幸君
      古賀  誠君    高村 正彦君
      斉藤滋与史君    自見庄三郎君
      谷垣 禎一君    友納 武人君
      西山敬次郎君    野呂 昭彦君
      浜田卓二郎君    森下 元晴君
      山岡 謙蔵君    渡辺 秀央君
      網岡  雄君    大原  亨君
      河野  正君    多賀谷眞稔君
      竹村 泰子君    永井 孝信君
      森井 忠良君    大橋 敏雄君
      沼川 洋一君    橋本 文彦君
      宮崎 角治君    森本 晃司君
      伊藤 昌弘君    小渕 正義君
      塚田 延充君    浦井  洋君
      田中美智子君    菅  直人君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡部 恒三君
 出席政府委員
        厚生政務次官  湯川  宏君
        厚生大臣官房審
        議官      新田 進治君
        厚生省公衆衛生
        局長      大池 眞澄君
        厚生省公衆衛生 水田  努君
        局老人保健部長
        厚生省環境衛生
        局長      竹中 浩治君
        厚生省医務局長 吉崎 正義君
        厚生省薬務局長 正木  馨君
        厚生省社会局長 持永 和見君
        厚生省保険局長 吉村  仁君
        社会保険庁医療
        保険部長    坂本 龍彦君
 委員外の出席者
        環境庁水質保全 三本木健治君
        局企画課長
        外務省条約局法
        規課長     河村 武和君
        社会労働委員会
        調査室長    石黒 善一君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十一日
 辞任         補欠選任
  今井  勇君     森下 元晴君
  長野 祐也君     山岡 謙蔵君
  藤本 孝雄君     高村 正彦君
  多賀谷眞稔君     大原  亨君
  橋本 文彦君     宮崎 角治君
  小渕 正義君     伊藤 昌弘君
同日
 辞任         補欠選任
  高村 正彦君     藤本 孝雄君
  森下 元晴君     今井  勇君
  山岡 謙蔵君     長野 祐也君
  大原  亨君     多賀谷眞稔君
  宮崎 角治君     橋本 文彦君
  伊藤 昌弘君     小渕 正義君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
 の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)
 原子爆弾被爆者等援護法案(森井忠良君外六名
 提出、衆法第一二号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第二二号)
     ――――◇―――――
○有馬委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外六名提出、原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
○大原委員 原爆二法案につきまして質問をいたしますが、被爆者の中や関係者の中では、政府の原爆二法案については賛否いろいろ議論があるにしても、この問題については国会では今まで一定のルールを確立している。この審議がおくれて実施がおくれますと、そうすると七月から諸手当のスライドがおくれるわけですね。そういうことに影響するんではないかという議論があります。
 これは大体健康保険法案にいたしましても、きょうも理事会で問題になったらしいのですが、政府は案を出しながら、政府の原案についてはだれも賛成とは言わない、大臣を含めて賛成とは言わない、与党もそう言っている。撤回か修正かの議論を実質的には政党レベルではみんなしているわけでしょう。そのためにこの法案の審議がおくれて、そして実施の時期がおくれるということになれば、これは問題ではないか。この問題について、諸手当のスライド等の措置についてどのような措置をとられるか、最初にまず質問をいたします。
○大池政府委員 ただいまの御質問の点についてお答え申し上げますが、被爆者の方々は大変その点について強い関心を持っておられると思います。国会におきまして可決をいただきました暁には、政府原案にお願い申し上げておりますように、六月にさかのぼって適用実施ということでお願いしたいと思っております。
○大原委員 スライドは六月からか。
○大池政府委員 六月ということで御審議をお願いしておるわけでございます。
○大原委員 六月中に衆参両院を通りますか。
○大池政府委員 私どもとしては、国会の御審議のできるだけ速やかならんことをお願いしておるところでございます。
○大原委員 大臣、いかがですか。
○渡部国務大臣 私どもは国会の会期のうちに、私どもが国民のために必要であると考えて出した法案でございますから、それぞれ議了賜るものという前提で本案を出しておったわけでありますが、その後今日のような状態になってしまいましたけれども、できるだけ早く議了をしていただいて、関係の皆さん方にできるだけ迷惑をかけないような処置をとってまいりたいと思います。
○大原委員 余り駆け引きをやり過ぎると思うのです。私はこのことのために時間をとりませんけれども、政府が出しました原爆特措法についての議了がおくれた場合には、二%の諸手当の実施の時期がおくれるわけですね。そのときには現行法でやっておいてさかのぼって当然二%は実施する、そういうふうに考えてよろしいですね。
○大池政府委員 そのように私どもは考えております。
○大原委員 質問を進めてまいりますが、第一は、野党も国家補償の精神による援護法を出しておるわけですが、私も今までしばしば部分的に引用したことはあるのですが、政府全体の見解を聞きたいことがあるのです。というのは、一九四五年八月十日でありますが、日本政府が、当時は東郷外務大臣でありましたが、ジュネーブの加瀬俊一公使を通じまして、アメリカに対しまして抗議文を出しているのですね。全文を私が読み上げたことはありませんから、これは重要な問題ですのでこの際取り上げまして、政府の見解を聞きたいと思います。
 「米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文」、これは申し上げましたように八月十日です。
  本月六日米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し瞬時にして多数の市民を殺傷し、同市の大半を潰滅せしめたり。
  広島市は何ら特殊の軍事的防備乃至施設を施し居らざる普通の一地方都市にして、同市全体として一つの軍事目標たるの性質を有するものに非ず。本件爆撃に関する声明において米国大統領「トルーマン」はわれら船渠工場および交通施設を破壊すべしと言ひをるも、本件爆撃は落下傘を付して投下せられ空中において炸裂し極めて広さ範囲に破壊的効力を及ぼすものなるを以って、これによる攻撃の効果を右の如き特定目標に限定することは技術的に全然不可能なこと明瞭にして、右の如き本件爆撃の性能については米国側においてもすでに承知してをるところなり。また実際の被害状況に徴するも被害地域は広範囲にわたり、右地域内にあるものは交戦者、非交戦者の別なく、また男女老幼を問はず、すべて爆風および輻射熱により無差別に殺傷せられ、その被害範囲の一般的にして、かつ甚大なるのみならず、個々の傷害状況よりみるも未だ見ざる惨虐なるものと言うべきなり。抑々交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものに非ざること、及び不必要の苦病を与うべき兵器・投射物真の他の物質を使用すべからざることは戦時国際法の根本原則にして、それぞれ陸戦の法規慣例に関する条約付属書、陸戦の法規慣例に関する規則第二十二条、及び第二十三条(ホ)号に明定せらるるところなり。米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の輿論により不法とせられをれりとし、相手国側において、まづこれを使用せざる限り、これを使用することなかるべき旨声明したるが、米国が今回使用したる本件爆弾は、その性能の無差別かつ惨虐性において、従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられをる毒ガスその他の兵器を遥かに凌駕しをれり。米国は国際法及び人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたり帝国の諸都市に対して無差別爆撃を実施し来り、多数の老幼婦女子を殺傷し、神社仏閣学校病院一般民家などを倒壊または焼失せしめたり。而して今や新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性惨虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪状なり。帝国政府は自らの名において、かつまた全人類および文明の名において、米国政府を糾弾すると共に、即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す。
これが日本が出した正式の抗議文であります。
 その抗議文に対する日本政府の見解を戦後占領中に変えたのかどうか、変えたとすればいかなる根拠をもって変えたのか、このことについて政府の見解を聞きたいと思います。
○河村説明員 お答え申し上げます。
 本件につきましては、大原先生、昭和三十四年以来ずっと政府に対する見解を聴取してきておられますけれども、昭和五十五年の十月に大原先生の方から質問主意書がございまして、同年の十一月に政府の方からそれに対する答弁書を提出したということもございます。その答弁書の中で政府が述べておりますことは以下のとおりでございます。
 「原子爆弾の投下は、老幼婦女子を含む広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生ぜしめたものであり、国際法上の観点からも問題となり得る点があったので、交戦状態にあつた当時これに強く抗議したものであり、これは当然であったと考えている。」こういうことでございます。
 ただ、世界における各国の認識、これは米国のみならずソ連、中国、フランス等の認識ということでございますが、ほか主要な学者の学説という点から判断をいたしまして、単に純法律的に見ました場合、実定国際法上、当時の原子爆弾の投下が国際法違反であったということを言い切ることができないということは、政府の方から従来答弁しているところでございます。
○大原委員 大臣、これは余り長い時間がありませんから、つまりあなたを含めてそうですが、政府・自民党の皆さんの中には、憲法は占領中に押しつけられた憲法である、だから改正すべきであると言っている。とすれば、これは八月九日ですから、九日から十日にかけてですから、これも自由に、しかも外務省の説明によりますと交戦をしているときの問題だと言っておりますが、これはヘーグの陸戦法規というのは戦時国際法ですから、戦時国際法で守るべきルールを決めておるわけですから、それを引用いたしまして、害敵手段においても軍事目標地区におきましても無差別であり、かつ、毒ガス以上の非人道的な兵器である、そういうことをはっきり言っているわけです。そのことを戦後も引き続いて、唯一の被爆国としてなぜはっきり言えないのかという疑問を我我は持つわけです。だから野党は、国家補償の精神によってこれはちゃんと処理すべきであるということで援護法の提案をしているわけですが、この根本的な認識について、政治家の立場での大臣の見解を簡単に聞きます。
○渡部国務大臣 先生御指摘のように、原爆というものが人類史上にかつてないむごたらしい人類に対する被害を与えたことでありまして、このようなことは人道上、今後の世界の歴史の中に許されてよいことでもありませんし、私どもは、二度とこういう悲しい惨禍がないように努力しなければならないのは当然でございます。この被害も、そういうことから、特に放射線障害という大変な人間の健康に禍根を残しておりますので、私どもは、幅広い立場での国家補償というものを堅持していく中で、今日まで、特別の立法をもってその対策を講じ、またその対策をさらに充実していかなければならない、こう考えております。
○大原委員 最近核軍縮に関する二十二人委員会というのが超党派的につくられております。その中には、鈴木前総理大臣あるいは三木元総理大臣、あるいは与党の中にも野党からも、それぞれ国会議員だけでなしに名前を連ねております。その二十二人委員会が、五月二十八日に「核軍縮と非核三原則堅持に関する提言」というのを出しまして、その第三項目にこういうのがございます。
 被爆者援護法を制定すること。今日、辛うじて
 核戦争を免れ、核廃絶の世論がさらに高まりつ
 つあるのは、広島・長崎の悲惨な体験と教訓に
 その根源をおいた人類の理性によるものであり
 ます。しかし、被爆者の肉体的・精神的苦痛及
 び社会的後遺症は十分に癒されず償われず、す
 でに被爆四十年に及ぼうとしております。非核
 三原則の堅持、核の無い世界の実現、被爆者の
 援護、これは三者にして一体のものと考え、被
 爆者援護法の制定を実現すべきであります。こういうふうに述べておられます。
 これは、直ちに鈴木さんたちが援護法をつくるということではないにいたしましても、国家補償の精神によって援護の完璧を期するべしということが提言の第三項目に提示をされておるわけでありますが、この問題に対しましては、七人委員会も広い意味においては国家補償ということを繰り返しておるわけですから、この提言に対する国務大臣としての渡部厚生大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○渡部国務大臣 これは先生、先ほどもお話しがあり、私が申し上げましたように、原爆被害者というものは人類の歴史上、我々日本民族が初めて体験させられた厳しいものであります。したがって、一般戦災者には見られない特別の犠牲が行われておりますから、こういう方々に対しては、広い意味における国家補償の見地から今日までもその対策を講じてまいりましたし、今後もその施策を講じていかなければならない、私は先生のお考えと気持ちの上では全く同じに考えております。
○大原委員 野党案が出ておるわけですが、それに対する厚生大臣の見解を聞きたいわけですが、これは最後に回します。
 そこで、国家補償の精神による原爆二法案の改善とか、援護法にアプローチをしていく、そういう上で非常に重要な問題について逐次質問をいたします。
 一つは、何といいましても、今話がありましたように、放射能あるいは熱線あるいは爆風による被害、被害の実相を死没者を含めて明らかにする。日本の政府としては唯一の被爆国と言っているのですから、この問題については、来年の被爆四十周年、昭和六十年は大きい国勢調査を行う年であります。今まで政府は、国会の議論を通じまして、毎年調査費を計上しております、あるいは調査研究機関を設けております。ですから、それらの問題を総括をして、死没者についても、今まで警察情報や占領軍の情報や調査あるいは放影研のABCC段階からの調査等がずっとあるわけであります。放射能障害が瞬間的にどのような影響を被爆者に及ぼすか、あるいは順次残留放射能がどういう影響を及ぼすか、あるいは熱線とか爆風がどのような影響を及ぼすかというtとを個別的、総合的、科学的、医学的に究明をして、被爆四十周年の来年までには、国勢調査を踏まえて、死没者を含めて政府は可能な限りの原爆被爆者の実相、実態についての取りまとめをして、言うなれば被災白書、被爆者白書ともいうべきものを政府としてつくるべきであると思いますが、政府の見解をお聞きをいたします。
○大池政府委員 被爆者の実情の把握、また、ただいま御指摘のございました被爆の影響に関する科学的、医学的な解明、大変重要な事柄として、私ども、これまでも関係研究機関、関係医療機関等の協力を得ながらできる限りの取り組みをしてきているところであります。
 その一環といたしまして、これまでに、全国規模におきますところの実態把握のための調査を昭和四十年度、昭和五十年度と実施してまいりまして、その十年目という観点に立って、昭和六十年度に実態調査を行うべく予定をいたし、五十九年度にその準備検討のための予算を計上いたしておるところでございます。
 その実態調査は、これまでの実態調査と有機的に比較のできるような調査でなければならないし、またその後の社会的経済的な変動、また健康状態についての問題の把握というようなことについて、必要なことを実行可能な範囲で極力織り込んでいくべく検討をこれから行っていくわけでございます。その一環として、特に広島、長崎方面におきまして行われております調査と、これまでの蓄積等も十分参考にさせていただきながら、ただいま御指摘のような実態のまとめということについても努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
○大原委員 昭和六十年の国勢調査、大調査なんですが、それを一つのめどにして、本年も予算を計上しているから、今までの総括的なものについてやる。
 大臣、今まで政府は部分的には調査をしておりますけれども、全体的に死没者を含めて可能な限りの推定その他の方式を駆使いたしまして、原爆がどのような被害を人間に与えたかということについて総合的な実態を明らかにしたことがないのです。五十九年の準備期間を通じて、来年も厚生大臣をやっておられると思うのですけれども、四十周年調査には、申し上げましたような死没者を含めて可能な眼力の実態調査を取りまとめる、そして日本の政府が、いろいろな調査、研究、統計、あるいは研究機関は放影研もありますし大学にもあるわけでありますから、それらを総合して、被爆の実相はこのようなものであったということを取りまとめる。それは被災白書と言ってもよろしい、そういうことについて、今の答弁を受けて大臣の決意をひとつ聞かせてもらいたいと思います。
○大池政府委員 ただいまの御設問の点について、先ほどの説明に若干補足させていただきたいと思います。
 一つは、来年は国勢調査の年に当たっているわけでございますが、国勢調査は、御承知のとおり、個別の政策のための調査ということではない観点からの総合的な調査でございまして、被爆者の実態調査というものは、私どもとしては一応独立して検討していく必要があろうかと考えているところでございます。
 また、死没者の調査の件でございますが、四十年を経過する時点におきましての調査は技術的に非常に困難な点もございます。ただ、これまでに各種の調査も行われておるわけでございますし、また現在広島、長崎それぞれの地域におきまして被災状況調査、復元調査等も行われ、また、国もそれにお手伝いをさせていただいておるというような観点もございます。そのようなことも包みまして調査を総合して見るというただいまの御提案の点につきましては、意義が深いことであると認識しまして、今後検討いたしたい、地元ともよく相談をしてみたい、かように考えているところでございます。
○渡部国務大臣 ただいま政府委員から答弁いたしましたが、これは何といっても、我が国は、世界でこのようなむごたらしい体験を初めてした経験国であり、また、今後人類の歴史の中にこういうことを二度と起こらせてはならないという我々の大きな使命もございますから、戦後四十年近くたっていろいろその実態の調査等には困難な点もありましょうが、それの実態をできるだけ詳細に我々は知り、またそれを世界の人々に知っていただく責任もございますし、また、これは極めて難しい医学的な問題もまだまだ今後その対策に残されておるわけでありますから、それらの医学的な研究、その治療方法等を通じてこれもできる限り努力をしていかなければならないもの、こう考えております。
○大原委員 例えば急性的な症状としましては五カ月以内にあらわれておる、あるいは後障害はそれ以降あらわれてまいりまして、例えばケロイドは、ケロイドの盛り上げで何回手術してもまたケロイドが出る、こういう複合的な汚染、あるいは白血病の発生の年、あるいはがんが非常に発生した年、あるいは全体として言うなれば加齢現象、健康管理手当上の対象の加齢現象が起きておる、年齢が非常に何してくる、そういう加齢現象、そういうふうな問題等を含めて、死没者の実態というものや障害の実態を明らかにするということを希望しておきます。
 昭和五十六年の予算案で千三百万円ほど計上いたしまして、五十七年一月一日現在の先般調査いたしました結果を発表しておりませんが、発表いたしますか。いつ発表しますか。
○大池政府委員 ただいま御指摘のございました五十七年二月に実施いたしました被爆者の状況調査につきましては、集計を終わっておる段階でございまして、できるだけ早い機会を見て公表する予定でございます。
○大原委員 いつやりますか。
○大池政府委員 できるだけ速やかに公表をする予定でございます。
○大原委員 第二の問題は、国家補償の精神に基づいて法律案を改善をする措置の一つといたしましては、諸手当に対する所得制限を撤廃することであります。所得制限がないということになりますと、言うなればこれは一つの社会保障としては前進をして国家補償的なものになるわけです。所得制限については今日まで税法上の税額控除をいたしております。今大体健康管理手当その他でどの程度、何%程度所得制限の対象になっておるか、所得制限の改善についてはどう考えておるか、この二つの点について御答弁をいただきます。
○大池政府委員 所得制限の対象としてはおおむね四%程度の方がその所得制限の対象、収入にして標準世帯約八百万を超える前後だったと記憶しておりますが、それに該当するというように推算されております。また所得制限の問題につきましては国会におきます審議経過、国会におきます附帯決議のこともございましてそういったことを十分尊重しながら諸手当の改善に当たってきているところでございます。
○大原委員 例えば今話がありましたように、健康管理手当などは標準世帯で八百万円以上の人が所得制限を受けるわけです。四%程度ですから、これは私は撤廃をして、そして国家補償であるということを実質的に明らかにする必要があるんじゃないか。これはわずかですからね。他の所得制限は強化の方向にありまして、これは横ばいの状況にずっとあるわけですから、これを撤廃をしまして実質的に国家補償にすることが、私は大臣が前段で答弁された趣旨からも当然ではないかと思います。特に、健康管理手当等は十幾つの病気を指定いたしまして、機能障害を指定いたしまして手当を出しておるわけですから、これが国家補償的なものになるということになれば、所得制限を撤廃しまして、この四%程度のものは垣根を取っ払うことが必要ではないか。他は者やっておるわけですから、援護関係はやっておるわけですから、このことについて前向きに取り組んでもらいたい。大臣。
○渡部国務大臣 国家補償の問題、これは非常に難しい問題なのでありますが、先生御承知のように、死没者の場合は他の戦災死没者等への波及の問題というようなこともあり、しかしまた一方、これは他の戦災で受けられた被害とは全く特殊の、後に大きな後遺症を放射線によって残す原爆被害ということで、特別の法律をつくってその対策を講じておるわけでありますが、生存者の皆さん方の放射能被害、これの後遺症、これに対する対策、これは全く特殊のものでございますから、今先生のお話しのとおりなのでございます。私も今先生のお話しの趣旨、そのとおりだなとお聞きしておったのでありますが、財政上の問題やいろいろありますので、できる限り先生の御趣旨に沿うように前向きの方向でこれから対処してまいりたいと思います。
○大原委員 医療特別手当、これは認定患者と言われておったものですが、因果関係がはっきりしているというふうに医学的に言われていたのですが、それはどれだけの根拠があるかということは医学的に議論があるのです。それから原爆小頭症というのがあるのです。これは原爆を受けましたときに胎内で、妊娠をしておった人が、その赤ちゃんが生まれて、言うなれば非常に知能指数の低い人であります。それが今もう三十九歳になっておる。今二十一名ほどおられる。これは所得制限がないわけです。この二つはですね。これは国家補償の精神と言われているのです。
 ですからこの場合に、問題は、この議論は繰り返しませんが、戦後原爆小頭症で、これは胎内で被曝したのですから、その三十九歳の人のお父さん、お母さんはもう大体七十を超えておるわけです。そうすると、その両親が亡くなったならば、その原爆小頭症の子で三十九歳、もう体は大きいのです、その子をどうするかという問題があるわけです。その親の意見等の中には、ぜひ親が死んでも、施設を希望する者は施設に入って、やはり一生を親が心配のないような形で終えるような施設をつくってもらいたい、こういう意見がありますが、いかがですか。
○大池政府委員 ただいまのような具体的な問題。について私、直接は承知しておりませんけれども、現在広島、長崎市に設置されております養護または介護を必要とする患者さんにつきましては、原爆養護ホームへの入所ができることとされておるわけでございます。
 それから、先ほど先生御指摘のとおり、医療特別手当受給者並びに原爆小頭症患者につきましては所得制限が行われていない、それに対して健康管理手当等諸手当につきましては所得制限が行われているという制度の仕組みでございますが、これは今先生御指摘のございましたように、あくまでも原爆の放射線との結びつきのぐあいが、医療特別手当等につきましては、認定された疾病に現にかかっており、また治療も行われておるということに着目して、所得制限をかけていないということでございます。また、健康管理手当の対象となっておりますものは、それに対しましては、放射線障害としての原爆放射線との関連がない、あるいは間接的である、あるいは健康障害にかかってないという状態の方もおるというのが、現在所得制限というふうにこの仕組み上は仕切っておるわけでございまして、障害の実態に即した妥当適切な対策ということが私どもはこの制度を運用していくための重要な点である、こういうことで対処しているわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○大原委員 違うじゃないですか。七人委員会の意見書の中にも、つまり認定被爆者の場合等は明らかに国家補償であるという説明の引用文があるわけですよ。それからもう一つは、議論いたしませんが、健康管理手当の場合には十幾つの疾病を指定しているわけです。申請に基づいて健康管理手当を二万五千百円出しているわけです。ですからこの問題は、認定被爆者と健康管理手当の対象となる人々どの間において健康上、医学上どのような差があるかということについては、明らかに因果関係がある者とそうでない善との差別にすぎないわけです。検証されてないというだけの話であります。この問題については学者内でも議論があるのですから、そういう場合は疑わしい場合も含めてやるということで諸手当があるわけですし、周辺の問題があるわけですから、この問題については大臣が答弁されたことをあなたが勝手に後退させるということはいけませんよ。あなたはお医者さんだろうけれども、専門家だということで非常に狭く狭く考えるが、それはだめなんだ。その点は十分留意して、大臣の答弁を生かしてこの問題は処理してもらいたい。
 それから、養護老人ホームへ入ると言いましたが、四十歳でも入れますか。
○大池政府委員 原爆養護ホームに関しましては特に年齢を定めておりませんので、若い方でも入れると思います。
○大原委員 一般の老人ホームでなしに、原爆の場合は広島、長崎に来なければいかぬということですね。そういう問題があることを指摘しておきます。
 それから、生活保護などの収入認定にこの手当を入れているわけですが、これは国家補償からいいますとやはりおかしいと思うのです。例えば健康管理手当でしたら健康管理のために特別の手当を出しているのですから、生活保護の収入認定の中にそういう手当を入れることはおかしいではないか、こういう地元の市町村長その他の意見も出ておるわけでありますが、いかがでありますか。
○持永政府委員 特別措置法で被爆者に支給されます手当のうちで、生活保護で収入認定をいたしておりますものは、医療特別手当と特別手当でございます。先生御指摘の健康管理手当、そのほか原爆小頭症手当、保健手当につきましては収入認定の対象にいたしておりません。
○大原委員 八省協は、地方の地元の団体はおかしいと言っているのに、生活保護の運用に当たって、医療特別手当及び特別手当については収入認定しているのです。収入認定すると生活保護が下がってきますよ。そういうふうにしているのですか。
○持永政府委員 今申し上げましたように、医療特別手当と特別手当については収入認定の対象にはいたしておりますが、医療特別手当のうちいわゆる医療手当相当分、健康管理手当相当分とこれに二千円を足したものは、収入認定の対象除外にしております。
 なお、そのほかに、手当受給者につきましては放射線、放射能による負傷または疾病の状態にある認定患者の場合には、放射線障害者加算というのを生活保護の中につけております。
 それから特別手当の受給者、いわゆるかつて認定疾病患者であった者につきましても、同じように放射線障害者加算というのをつけておりまして、その分はしたがいまして生活保護の上で加算措置を講ずることにいたしております。この加算措置につきましては、現在この国会でお願いしておりますこの法案によりまして手当の額が引き上げられればそれに応じてこの加算額も引き上げる、こういうことを考えておるところでございます。
○大原委員 医療特別手当の中は、そういう中身を分類するのではなしに、この問題については言うならば制度自体が国家補償の精神の一つの象徴としてあるわけですから、このことはその趣旨に従って処理をすべきではないかということでございますから、そのことを私は強調しておいて、今後の問題として要請をしておきます。
 それから、いつも問題になりますが、これも国家補償の精神で議論になるのですが、つまり老人保健法実施に伴って自治体の負担が非常にふえておるわけです。これは国家補償的なもので、自治体だけで責任を持つべきではない、国がやはり補償する問題であるから、その際に、被爆者にいろいろな老人保健法適用に伴ってそれに対する特別の財政措置をすべきだ、こういうことであります。
 具体的な問題は、五%・五%の地方の県と市町村の間の負担部分でございますが、それに対しまして臨時調整交付金等の制度を設けておるわけですが、去年は十三億円台でことしは十四億円、こういうふうになっておるわけですね。この問題についての範囲の解釈や金額の決定の仕方についてかなり議論があるのですが、これは制度としてこれから法律や政令等できちっと基準を設けてやるべきではないですか。単なる予算上の措置だけでやるということはこの際改めた方がよろしいのではないか。被爆者がたくさんいらっしゃる自治体は、大臣、受診率が上がってくるわけですよ。医療費がふえてくるわけです。そのために自治体の負担もふえてくるのですから、そういう問題については国が補償するという精神からいいまして、その地域の自治体だけが責任を持つということではなしに、国としての措置をすべきであるという精神であると思いますから、これについてはぴしっと制度上の規定を設けるべきではないか。
○大池政府委員 お答えいたします。
 原爆の制度での考え方は、先ほど触れましたように、特別な犠牲である健康障害の実態に即して、それに対応する対策を重点的に実施していくということが一つございますが、その観点から、御承知のとおり、認定されました疾病につきましては御指摘のとおり国が全額その医療費を負担するという仕組みになっておるところでございます。
 それで、御設問にございました老人保健法との絡みの疾病は、一般疾病、つまり認定されてない一般疾病の医療費についてのことでございます。従前は健康保険その他各種保険が適用されました残りの分を原爆の医療法が働きまして負担をする、こういう仕組みで動いておったわけでございます。今般、五十八年の老人保健法の施行に伴いまして、その各種保険が働く部分が、七十歳以上の方については老人保健法で置きかわったわけでございます。したがいまして、御指摘の県あるいは市町村におきまして新たに生じた地方の負担、これは老人保健法の体系の中から生じた事柄でございます。
 そこで、それぞれの五%でございますが、御案内のとおり、全国の市町村におきまして平均いたしまして三%程度老人保健法以前において負担しておったものが、今回の老人保健法の施行に伴いまして五%の負担になった。その差額の二%、これはもう全国押しなべて各地方自治体に住民福祉のためにさらに頑張ってください、こういう部分に当たるわけでございます。したがいまして、原爆医療の面におきましても、その二%相当部分は全国と同様な、押しなべて地方自治体で住民福祉のために頑張ってください、こういう考え方に立っておるわけでございます。そこで五%負担することになったわけでございますが、その二%分は努力をしていただくとして、三%に見合う分、私どもがその激変を緩和するために、特に人口構成として老人の比率の高い、したがって財源措置を講ずるべく地域、変化が極めて急激に大きいそういう地域として、広島及び長崎の両市に対してそういう臨時調整交付金による措置を図っておるところでございます。このような観点に立ちまして、私どもは現在の対応で対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
○大原委員 広島県と長崎県と広島市と長崎市、そういう自治体以外に周辺の市町村があるわけですね。周辺の市町村に対しまして従来から要望が出ておりましたが、どういう基準で調整交付金を分配するのか、こういう問題についてはいろんな意見があるわけです。あるわけですが、単にお年寄りの中の被爆者の比率だけでなしに、人数等も参酌して、一定の比率の水準以上には公平に分配する。例えば広島でも、五日市とかあるいは市内にある海田町とか府中町とかそういうふうな地域も、地域が外れるようなそういう分配をするということは、広島市の近郊や周辺の例えば宮島へぽんと飛んでいくということになりますと、これは自治体から言いましても問題ではないか。ですから、その基準については十分慎重に対処してもらいたい。いかがですか。
○大池政府委員 五十九年度におきます臨調分の交付につきましては、これまでと同様に広島、長崎四県市のほかに、新たに広島市、長崎市周辺の市町村のうちで老人の割合が広島市、長崎市と同等以上である市町村を対象とするということで取り運んでいるところでございます。
○大原委員 その場合に、そういうふうな単なる機械的なことだけでなしに、周辺の一定の町村に対しましては、やはり被爆者の中でそれだけのお年寄りがおるわけですから、そのことを考えでやってもらいたい、こういうことの要望があるということを私はつけ加えておきます。後でまた議論します。
 総合的に考えてみて、被爆者に対する医療保障は、元来から言うなれば特別法優先の原則で大体国が持つべきものなんです。でありますけれども、今は保険の残りをずっと負担をしていったという経過がありますから、国会の議論のような経過がありますから、政府がそういう予算措置にこだわっておるということですから、この問題については、そういう全体の考え方の中でもう一回十分譲諭してもらいたいということを私は要請しておきます。
 それから、手当以外の国家補償という観点で大切なのは総合福祉の関係ですが、医療の制度と言うなればいろんな諸手当の制度があるわけです。被爆者対策としましては、一度にたくさん被爆者が出た、あるいはだんだんと年がたつに従って原爆孤老が非常に多い、あるいは加齢現象が激しい、こういうこと等の特殊事情を考えて政策を進めてきたわけですが、もう一つの大きな問題は、原爆被爆者が在宅で一人暮らしとか寝たきりという形で生活をしたり治療を受けておる人が多いわけですから、そういう人にどうするかという問題が社会問題になるわけであります。その際に、原爆養護老人ホームその他あるわけですが、その運営において、今まで一般的な議論はあるんですけれども、現在の原爆被爆者の養護老人ホーム等に、例えば在宅の被爆者がデーケアとか、ショートステーとか、短日時間そこへ滞在するとかいうふうな、そういうベッドや施設を開放するとか、そういう点は拡大をしていく必要があるのではないか。これはホームヘルパーの増大と一緒に、在宅の一人暮らしや寝たきりの被爆者に対する対策といたしましてこの際洗い直してみる必要があるのではないか。
 例えば広島の場合でしたら、広島の舟入の原爆養護老人ホームというのは市内に近いですから、自宅から朝届けて夜帰るあるいは数日間滞在する、そういうことを、周辺の特別養護老人ホーム等の機能、ベッドの状況等を考えながら運営を改善してもらいたいということを聞くわけでありますが、こういう点についてもどういう考えを持っておられるか、あるいは将来改善についての所見をあわせてお聞きをしたい。
○大池政府委員 在宅の被爆者の方々に対する福祉の向上を図ることにつきましては、私どももつとに重視をしておりまして、御承知のとおり、家庭奉仕員の派遣事業あるいは被爆者相談事業等にも、年々実態に応じた予算上の手当てにも努めてきたところでございます。また、御指摘のございましたいわゆるデーケアあるいはショートステー事業と言われるような福祉の面で行われております事業を原爆の被爆者の方にもという御提案でございますが、一部原爆ホームでそのような試みをされておるというふうに承知しておるわけでございまして、私どもも関心を強く持っております。
 それぞれの地域におきます被爆者の方々の御要望等もよく承りながら、また関係する県、市あるいはその施設等の御意見も徴しながら、御指摘の趣旨のことについては私どもとして検討していきたいと思います。
○大原委員 韓国の被爆者が日本に来まして治療されておる、本年は百名、この五、六年ずっとふえておるわけです。しかし、日本に来てそして向こうに帰られますね。帰ってからどういう治療をするかという問題について、これは公費で負担して来ていますから、全部が日本に来るわけにいかぬわけですから、全部をやるわけにいかぬわけですから、問題は、韓国の側においても受け入れ体制をとる、それから日本の方でも協力する、こういうことについては、今まで自民党からも木野晴夫君が訪韓しまして、いろいろな協定を結んだことがあるというふうに言われております。向こう側の政党レベルとの話をし、公衆衛生局も参加しております。しかし、やはり被爆者の方々がたくさんいるわけですが、いろんな経過その他もあって被爆者に対する対策がおくれておるということで、日本側に対しても意見やその他があるわけです。問題は、申し上げましたように日本に来る人は限られておる。しかしながら非常に感謝して帰られる。そして、その後は十分アフターケアをやってもらいたい、あるいは来られない人の治療を考えてもらいたい、健康管理を考えてもらいたい、検査等を考えてもらいたい、こういう意見があるわけです。
 これは、私も聞いてみますと、行政レベルでやりますと問題が非常に微妙であります。それぞれ独立国の間のメンツもありますし、経過もありますから問題である。しかし、両国の関係者がアプローチしておるわけですから、そこで可能なことは何かといいますと、例えば放影研の所長の重松さんにいたしましても、この方はそういう問題については権威者ですから、研究者のレベルで、あるいはお医者さんのレベルでそれぞれの経験やその治療の改善について意見を交流する、そういう機会を日本においてあるいは韓国において設ける等の研究者レベルの交流を進めることによって、周本で原爆を受けた外国人、韓国における被爆者等の要望にもこたえる、実質的にこたえていくという有効な方法ではないか。研究者レベルについての交流を日本の方から積極的に問題を提起をして、政府が連絡をとりながらこれに対して協力をする、こういうふうにすべきではないか、こういうふうに思いますが、これについてのお考えをお答えいただきたい。
○渡部国務大臣 韓国被爆者の治療の問題、先般も被爆者の代表の方が私のところにいらっしゃって、日本に来ていただいて政府レベル等でその治療をしていただく今回の措置を非常に喜んでいただいたのでありますが、今先生御指摘の今度は民間レベルでのお話し、これも私は非常に大事なことで望ましいことであると考えておりますので、放影研等の専門機関に対してできるだけ働きかけて、その方向に進めるように努めてまいりたいと思います。
○大原委員 あともう時間がありませんから、野党が出しておる案は私は非常に現実的な案だと思うのですよ、野党の援護法案は。政府の予算案にいたしましても一千億円に達したわけですから、野党の案にいたしましても、遺族の補償を含めまして二千億円余りの案でありますので、私は、この問題は時間がたっていつの間にか風化をしていくという問題ではないと思うのです、唯一の被爆国である核時代における人類の悲願としての核の廃絶や軍縮を要求する一つの我々の精神的な支えてありますから、この問題については、臨調でいろいろ財政の切り詰めがあるのですが、しかしやるべきことはやる、こういうことで、やはり取捨選択を誤ってそして政治の方向を、行政の方向を誤るということがあってはならない、こう思いますので、野党案に対して最後に厚生大臣の見解を聞きます。
○渡部国務大臣 御提案の被爆者等援護法案について私も勉強させていただいておるのでありますけれども、ただ、先ほども私が申し上げましたように、これは二つに分かれる問題がありまして、戦災によってお亡くなりになられた、この点では放射線による健康障害という特別の事情ということでなく、これは戦災によってお亡くなりになられた方は全部同じわけでございます。ところが、この原爆被害というものは残された方々が大変に重い将来までの放射能被害というものを受けるので、その立場に対して、これは国家補償的な広い見地から今特別の法律をつくって施行しているわけでありますが、この野党の提案の法案を拝見させていただきますと、放射線による健康障害という特別の事情にない原爆死没者の遺族に対する補償というようなものも規定しておりまして、一般戦災者との均衡上の問題、こういうものを考えますと、行政全体を預かる私どもとしては、やはり現行の原爆二法により、できるだけ先生方の提案されておる法案の趣旨にも沿うように対処してまいりたいと思っております。
○大原委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法で国家補償とは何かという議論もありますから、きょうはこれで終わります。
 以上で質問を終わります。
    〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
○稲垣委員長代理 宮崎角治君。
○宮崎(角)委員 私は、長崎一区選出の公明党の宮崎角治でございます。
 直接被爆いたしました者として、きょうは、渡部大臣初め局長に、るる具体例をひっ提げながら、大小さまざまの問題とあわせまして御質問を進めてみたいと存ずるわけであります。
 御承知のように世界で初めてのウラニウム原爆が投下されたのが広島でありまして、これは人的な死没者が十一万八千とも言われております。また、世界で初のプルトニウム原爆が落ちたのが昭和二十年八月九日、我が長崎市の上空であります。これが人的死没者が七万三千、そして七万四千が傷を受けているという、広島のいわゆる二十万人、長崎のこの十四万人という人類史上未曽有のこういった大惨禍をこうむったものであります。
 御承知のように、この間、国においては、ただいまも大原先生の質問にもございました、あるいはまた大臣の答弁もございましたが、三十二年の原爆被爆者の医療等に関する法律あるいは四十三年の原爆被爆者に対する特別措置に関する法律等等が出されて、今日まで鋭意いろいろな面で措置をしてこられたわけでありますけれども、また今回、原爆二法のこの法によっての措置はまことに十分とは言えない、非常に不十分さが露呈しているわけでございまして、被爆者は今なお、また遺族にしても、福祉面や生活面やあるいはまたこういった精神面において大変に大きな負担と、そしてまた終生これを担っていかねばならないという立場に置かれているのは言をまたないわけでございまして、いわゆる社会的にも医学的にも精神的にも後遺症に悩んで苦しんで闘いながら、今申し上げましたように一生涯これを背負っていくわけでございます。
 今回の七項目の手当の問題でございますが、現行手当そのままで継続、あるいは二年間で初めてアップという案も出てきているし、また二年間で全くゼロである、現行であるという法が出されているわけでございます。つまりゼロ円から二百円、五百円、七百円、二千二百円、こういったランクになっているようでございます。被爆者の高齢化が進む中で、可及的速やかに解決を要する問題が余りにも多いという問題について、被爆者として実際に千メートルの地点で爆弾を受けたこの身の精神的、肉体的ないろいろな面について、大臣ときょうは論議を進めていきたいと私は思うわけであります。忌まわしい原爆を三たび許してはいけない、悲惨な、残酷な戦争というものを一掃するためにも、どうか国としての大きな援護措置についてのステップを踏んでいただきたいと思うわけでありますが、誠意ある答弁を求めたい所存でございます。
 初めに、昭和五十五年秋でありましたか十二月でありましたか、七人の学者、文化人、団体、大使等々も含めましたいわゆる原爆被爆者対策基本問題懇の意見書が出されているわけでございます。大臣の基本懇に対する御所見を伺いたいと思うわけであります。
○渡部国務大臣 先生御指摘の原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見書は、被爆者対策の基本理念、対策の基本的あり方及び対策の内容の改善等について、私どもに貴重な御意見をちょうだいしたものでございます。
 意見書においては、原爆二法による被爆者対策について国としてはそれ相応の配慮をしてきたという評価をいただいております。この趣旨に沿って私どもは、さらに被爆者の抱える障害の実態に即した適切妥当な対策等を重点的に今後実施するように努めてまいりたいと思います。
○宮崎(角)委員 大臣よりこのすばらしい意見書を指針として今後の被爆者援護措置、国の施策の大きな柱といいますか、そういった方向のように進めていきたいというお話でありますが、この中に極めて重要な最高裁の判決もあるわけでありますが、「広い意味における国家補償の見地に立って」こういったくだりがあるわけであります。「広い意味における国家補償の見地」というのは、文法学的にあるいは語源学的に、国文学的にどのようにとらえられているのか、私はこの辺に非常に大きな関心を持っているわけであります。これについて局長の答弁を求めます。
○大池政府委員 原爆被爆者対策が広い意味における国家補償の見地に立って行われるべきであるということは、国の戦争責任を認めるという観点からの意味ではございませんで、原爆被爆者の方方が受けました原爆放射線による健康障害という特別の犠牲に対しまして、結果責任として被害に相応する相当の補償を認めるべきである、こういう趣旨であるというふうに私どもは理解しておるところでございます。
○宮崎(角)委員 その「特別の犠牲」という五つの字がここに大変なウエートを占めるのじゃないかと私は思いますが、「特別の犠牲」という五つの字について、局長に内容的にもう少し具体的に所信をお聞かせいただきたいと思います。「特別の犠牲」というのは何なのか。先ほどの応答からいたしますと、普通の一般の戦争犠牲者との差異は、放射線という非常に特殊なもののために受けた障害だということで答弁なされていたようでありますけれども、そういった意味だけに単純に考えていいのか。その辺についてもう少し定かに答弁を求めたいと思うわけであります。
○大池政府委員 原子爆弾の投下はまさに歴史始まって、人類初めての経験という形で極めて恐しい悲惨な被害を及ぼした、この点につきましては、もう何人も否定されないところでございます。特定の形容詞で表現することはなかなか難しいかと思いますが、とにかく筆舌を超えた被害を受けたということにおいて特別でございます。
 その内容といたしましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、原爆放射線というものによって後々までいろいろな健康障害を残すことが極めて強く懸念される、まだ人類として経験したことのない特殊なそういう放射線を浴びているという点において、科学的医学的な観点からも特別な健康上の障害というふうに認識されるところだと理解しております。
○宮崎(角)委員 昭和五十二年三月三十日の第一小法廷の民集第三十二巻二号四百三十五ページというくだりがありますが、ここで朗読するまでもありませんけれども、「従来国のとってきた原爆被爆者対策は、原爆被害という特殊性の強い戦争損害に着目した一種の戦争損害救済制度と解すべきであり、これを単なる社会保障制度と考えるのは適当でない。また、原爆被爆者の犠牲は、その本質及び程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」である」ということを述べているわけであります。「国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきものと考える。」というわけであります。三十二年、四十三年と原爆二法が今日まで非常に少額ながらアップの方向で来ているわけでありますけれども、この点から考えて、厚生省としては、国家補償の見地に立って適切妥当な措置対策を講じてきたという自信があるのか、あるいは今回出されている手当のアップ等も含めまして今後どのような援護措置の方向を考えていらっしゃるのか。この辺についても局長並びに大臣の御所見をお伺いしたいと思うのでございます。
○大池政府委員 お答えいたします。
 基本的な考え方は、ただいま先生が最高裁の判決を引用されたところにも表現されておるわけでございますが、考え方としては、私どももその考え方を尊重いたしましてこの制度の運用に取り組んできているところであります。繰り返しになりますが、「特別の犠牲」という観点から、「広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策」こういう趣旨で、そのときどきの最善の判断をして、諸手当の改善あるいは新しい手当の創設等々努力をしてきているところでございますし、また、今後ともそういう趣旨に立って、被爆者の方々の福祉の向上に役立つようにできるだけの努力を続けてまいりたい、そういう所存でございます。
○宮崎(角)委員 今後の鋭意努力されていく方向をお示しいただいたわけでありますが、冒頭に申し上げましたように、今回の法律案の中で、二年置きということあるいはまた二年たってもゼロである、そのまま現状維持という項目があるわけでありますが、こういった遅々とした援護措置あるいは金額のアップ、こういったベースで今後もいくのか。本当に物価は上がり、大変な被爆者の精神的な、身体的な問題が大きな苦痛として乗っかっているこの現実の中に、これぐらいで適切なまた妥当な金額だとお考えなのか。全国に散らばっておられます被爆者の方々、特に国に強烈なお願いをしている、陳情をしている長崎、広島のこの八者協等々のいろいろな要望についても御認識だと思うわけでありますが、この辺について、まず、金額の査定、積算の基礎、こういったものについて、あるいはまた今後の局長の御方針、さらには大臣としての御見解等ともあわせて、連動して質問しておきたいと思うわけであります。
○大池政府委員 昭和五十五年の基本懇の報告にも、その一つの柱として指摘せられておりますように「適切妥当な措置対策」というのが、あくまでも障害の実態に即し、また国民的な合意を得られる、そういうものでなければならないということが意見報告に盛り込まれておるわけでございますが、私どももそういう考え方に立って取り組んでおるわけでございます。
 そこで、具体的な方式といたしましては、先生も御承知のとおり、老齢福祉年金等福祉におきますところの公的給付、この状況を勘案しながら、それぞれの障害の程度に応じて妥当と考えられます積算をそれぞれの手当について行いまして、公的給付が引き上げられるそのときには、こちらも即応して引き上げていくというような方式で今日まで取り組んできているところでございます。
○宮崎(角)委員 いろいろと、スライドじゃないですけれども、公的給付印援護措置のアップと言うのですが、それは本当ですか。この二年間、公的給付はアップしていませんか。その辺との関連について再度ひとつ定かに願いたいと思うわけであります。
○大池政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、福祉年金におきましてもこの二年間据え置かれたという経緯があるわけでございます。
○宮崎(角)委員 それでは次に入ります。
 老人保健法の施行に伴いまして、被爆者の医療費の地方負担というのがあるわけでありますが、これについては、御承知のように医療費については、当該の医療費から健康保険その他いわゆる社会保険等の給付額を控除した残りの一部負担額を、相当額を全額国庫によって負担してもらったわけであります。ところが、五十八年の二月一日、老人保健法の施行に伴いまして、七十歳以上の被爆者医療については、一般の老人と同じようにこの老人保健法の適用を受けることになったわけでありますが、そこで、これについては、私は、理念的にも非常に後退しているのじゃないかという感じがするのであります。五%のいわゆる新たな自治体の負担、これは多大な地方の財政負担になっているのじゃないかと思いますけれども、この理念の後退と地方に転嫁しているというこの辺についての解明を、局長から答弁を求めたいと思うわけであります。
○大池政府委員 五十八年二月の老人保健法の発足に当たりまして、地方負担の状況につきましては、ただいま先生が御指摘されたとおりでございます。この地方負担問題につきましては、老人保健法の施行に伴って費用負担区分が変わったという、これは老人保健制度のいわば中での問題でございまして、一般疾病に対する原爆医療法からの負担という関係からは、いささかも変更はないわけでございます。そういう意味におきまして、原爆医療法の考え方が後退したとかそういうことは全くない、かように考えておるところでございます。
○宮崎(角)委員 しかしながら、このことは、六十九歳以下の被爆者は医療機関の窓口での負担がないわけであります。七十歳以上の被爆者には、一時的にも負担せざるを得ないという矛盾を生じさせているわけであります。こういったことで、長崎や広島両県においては、被爆者のいろいろな運動等もありまして、現物給付が行われて負担解消が図られているようであります。しかし、この両県以外の老人被爆者に対しては常に負担が必要でありまして、長崎、広島両県の老人被爆者でも、他県で医療を受けると立てかえ払いですか、これをしなければならないわけであります。被爆者医療というのは、年齢のいかんを問わず、いわゆる国家補償の見地から措置されなければならないと考えるわけでありますが、老人被爆者の一時負担は、長崎あるいは広島両県以外においても現物支給という方式をとるべきではないか、こういうような感じがするわけでありますが、この辺についての所見はいかがでしょうか。
○大池政府委員 老人保健法の仕組みから自己負担を生ずる分については、御指摘のとおりでございまして、私どもの原爆医療をあずかる立場からは、そのような自己負担が新たに生じないように対応措置を直ちにとっておるところでございます。ただ、その方式が、確かに地域によりまして、現物給付的な扱いが適用されている地域と、それから必ずしもそこまでいっていない地域とあることは私どもも承知しております。これは御案内のとおり、いろいろと医療機関窓口におきます問題も関連してくるわけでございまして、関係機関団体との十分な調整が図られる必要があろうかと思いまして、その観点で今鋭意相談をしている最中でございます。その方向で私どもとしては努力をしている、そういうことで御理解をお願いいたします。
○宮崎(角)委員 先般も衆参両院において、「多数の被爆者を抱えているため、新たに相当の医療費負担が発生する地方公共団体については、適切かつ十分な財政措置を講ずること」という附帯決議がなされているわけでありますが、ちなみに国として、どれくらいこういった実態あるいは実績、特にこの老人被爆者医療費の地方負担の問題についてキャッチしていらっしゃるか。
 聞くまでもありませんが、私の手元にあります私が調べた範囲ではこのようになっているわけであります。これは五十八年の二月から五十九年の一月までの範囲でございます。長崎、広島に行きまして、広島の市の方が六億三千百万円ぐらいだと思います。間違っているようであったら、後でそれを発表してください。広島県の方が七億一千九百万程度じゃないですか。長崎市の方が四億八千六百万ぐらいだと思います。長崎県の方が六億二千万程度ぐらい、トータルで二十六億五千六百万ぐらいだと思いますが、間違いありませんか。
○大池政府委員 まだ私どもも試算という段階で、必ずしもオーソライズされた数字が整っている段階ではございません。また、今先生おっしゃいました数字は、私どもの試算ともかなりずれもあるようでございます。迫ってまた調査をして、先生の方に御連絡したいと思っております。
○宮崎(角)委員 先ほどの衆参の附帯決議のように、適切かつ十分な財政措置を講ずるということの一つの資料として、この二十六億五千六百万というのを提示したわけでありますが、それにおきまして、先ほどの国の原爆臨調でしょうか、こういったところの交付金、いわゆる補助金が十三億四千万程度でしたね。これは二分の一なんですね。それで私は、長崎、広島という限定された答弁があったわけでありますが、できれば長崎、広島のその被爆市のより身近な近隣の市町村へも、この原爆臨調の大きな恩典、ホットな行政をしていくべきではないか、このように思うわけでありますが、これは大臣の所見を聞きたいと思います。
○大池政府委員 やや事務的に現在調整している段階でございますので、私の方からお答えをさしていただきます。
 ただいま御指摘の点につきましては、五十九年度予算におきましてそういう観点の若干の財源を上積み確保したところでございます。考え方といたしましては、広島、長崎四県市の同程度の老人比率、そういう観点から医療費が急激に変化するというような市町村についての検討を今行っている最中でございます。
○宮崎(角)委員 現在いろんなドーナツ現象とかあるいはまたベッドタウン化とか、こういうことで生活圏を閑静なかいわいに求めようという国民、住民の心情からいたしまして、例えば長崎では八市七十一カ町ございますけれども、ある市よりも人口が非常に多いという町があるわけであります。長崎市周辺の長与町とか多良見町、時津町、こういったいわゆる近隣の町村にも大きな波及といいますか、ホットな措置をぜひお願いしたいと思うわけでありますけれども、これについてはいかがでしょうか。
○大池政府委員 今ここで即座にちょっとお答えできる段階にはまだ来ておりませんけれども、御要望の趣旨も踏まえて検討したいと思います。原爆老人の比率が長崎市と同程度以上というようなことが重要な指標として私ども考えておるわけであります。
○宮崎(角)委員 それでは次の質問に移ります。
 私は、七つの手当の制度がある中で、矛盾じゃありませんけれども、もう少し格差是正という点ができないのかという問題があるわけでございます。具体的には保健手当ですね。これが一万二千六百円から一万二千八百円という案があるわけであります。これは中心二キロ以内、直爆の人であってもあるいはなくても、疾病がなくてもこの保健手当というのはいただけるという大変恩典があるんじゃないでしょうか。今度病気になりますと健康管理手当に移行していくわけであります。そうしますと、二キロ以内の直爆の人も現在は健康診断を受けるという特例になっているが、その近隣の町村があるわけでありますが、こういった人たちも、直接被爆じゃないけれども、健康診断を受けさせて、そしてその結果、十一の疾病に該当した場合には直ちにいわゆる健康手帳というのが交付されます。そうしますと、この受診票の交付というのは、十一の疾病で手帳がもらえるというこの人たちに対しては非常に恩典になるわけでありますけれども、直爆と近隣被爆者との問題については国としてはどのような見解を持っていらっしゃるのか、定かに具体的に御見解を伺いたいのであります。
○大池政府委員 お答えいたします。
 健康管理手当につきましては、ただいまお話しございました原爆放射線との関連を否定し切れない特定の十一のグループの障害を伴う疾病にかかっている、こういうことに着目して支給されるわけでございます。ところで、保健手当につきましては、同じく御指摘のとおり、距離に着目しまして二キロ以内の直爆ということで、必ずしも疾病にかかっている云々、こういうことではない、御指摘のとおりでございます。
 そこで、健康管理手当につきまして何かもう少し工夫はないかという御設問と理解したわけでございますが、あくまでも健康管理手当の考え方は、そういう関連が間接的かもしれぬ、あるいはないかもしれぬ、あるかもしれぬ、こういう段階ではあるけれども、とにかく関連を否定し切れない十一の疾病についての健康管理をしっかりやっていただきたいという趣旨の手当でございます。そこで、距離によって疾病が重いとか軽いとか、こういう関係に立っておりませんものでございますから、ちょっと健康管理手当の中にさらに距離という考え方を入れるということは困難ではないか、かように考えております。
○宮崎(角)委員 先ほどちょっと申し上げましたけれども、直接被爆でないけれども、いろいろな国のホットな行政のあれで、近くの町村の方々、これも健康診断を受けられるといういわゆる関所を通過する切符をもらったわけであります。これを私は、今地域格差が生じているので、地域是正をお願いしたいのであります。今までは旧市内であった、それが市内に新たに入ってきた、いわゆる市編入の町村、これももらっているところともらっていないところという格差があるわけであります。せめて長崎市あるいは市に編入された地域、新旧を問わずこういった地域に対しては、その健康診断受診者特例といいますか、健康診断の特例の方式というものを導入するお考えはないのか、これについてお願いをするわけでございます。
 もう少し具体的に申しますと、従来、長崎の方は指定区域が南北に十二キロであった、そして東西に六キロの指定をされているのでございます。先ほど申しましたが、ここに私はアンバランスの問題があると今指摘しているわけでありますが、この地域に一部周辺地区が入っているというのは先ほど申し上げたとおりであります。国で指定されている旧長崎市内、長崎市中心について、その地域では、今申し上げましたように大変これを渇望されている。同じ市であり、同じ昔の町であって、そして自分たちはその特例を受けていないという悩み、つらさ、不公平さというものがあるわけであります。もっと具体的に言いますと、土地区画整理の問題ではございませんが、川の真ん中から地域を指定しているというこの実例は、私はまことに頭をかしげる問題ではないかと思うわけです。川の真ん中から地域を指定しているわけです。同じ長崎市であるというこういった件についてなぜなのか。
 私の調べでは、この未指定の本当に該当してほしい人たちが九千九百八十人ぐらいおるわけです。この九千九百人も同じ市内であって、入っている人たちとそう大差ない、こういった現実を踏まえたときに、少し地元に行政指導していただくなり現地踏査をしていただくなり精査を通して、この問題については制度を導入し、範囲に入れていくべきではないかと私は強く思うわけでありますけれども、この辺についての当局のお考えを、方向をただしておきたいと思うのでございます。
○大池政府委員 ただいま先生の方から、かなり具体的に地域の実情についてお話しがあったわけでございますが、そのような実情にかんがみまして、関係される地域住民の方のお気持ちは察することも余りあるわけでございます。しかし、この行政としての制度を適正に運営していく立場からあえて申しますと、やはりこの地域の設定の問題につきましては、あくまでも科学的、合理的な根拠というものをどうしても前提とする必要がございます。
 そのような観点から、これまでのいろいろな線量測定あるいは線量の推定あるいは残留放射能を通じましたそういったものの推定計算、いろいろこれまでのデータを総合しましても、現在指定されております区域というものが、端的に申しまして、かなり部分的には広い部分も包み込んだ区域設定になっておるという実態もございまして、これ以上の地域についてさらに科学的、合理的根拠を求めるということの見通しがちょっと今のところないという意味におきまして、ただいまの点につきましては、なかなか国として制度上取り組むということについての見通しがまだ立たない、こういう状況でございます。
○宮崎(角)委員 頭からそれを否定というのじゃなくて、局長、私は、現地踏査をして、医学的な問題とか健康上の問題とかあるいは精神的ないろいろな問題とか、すぐその目の前にある実態の中にもう少し国として現地と接点を探る、そういうようなお気持ちも何もないのかということで、まことに冷たい答弁は私はちょっと腑に落ちませんよ。
○大池政府委員 国といたしましても、そのような観点に立ちまして、これまで、現地の御意見、御要望を踏まえて昭和五十一年度、昭和五十三年度と、そのような趣旨に立った残留放射能調査を行ったところでございます。そのような調査結果を総合いたしまして、その他の地域について今のところ心配するような調査結果というものが全く出ておりません。そういう観点で、その他の残余の調査ということについて今のところ国は取り組むという考え方を持っておりません。
○宮崎(角)委員 いつ突然変異が起こるかわかりませんからね。残留放射能の調査、さらに、今調査の問題が出ましたが、ひとつそれにあわせまして、長崎の方では昭和五十四年からずっと復元調査とか、先ほど局長もお話しございましたように、いろいろな生存者の問題とか死没者の問題とか、その経過や内容やあるいはまた波紋や、現実に即した調査を今後の大きな糧としてやっているわけでありますが、幸い三キロとかあるいは二キロ、そういったところの十分な調査に入って、もう少し未了の調査部分があるようでございまして、特に来年は国勢調査ということもございますので、この長崎県が考えております、六十年から二、三カ年間ぐらいこういった継続調査というものをしていきたいという考えもございますので、国としてこういった調査に対するバックアップという点について、これは私はお願いでありますけれども、局長の御所信はどうなのか、承っておきたいと思います。
○大池政府委員 国におきましても、広島、長崎で実施されております復元調査ないしは原爆被爆者動態調査につきましては、昭和五十七年度から協力申し上げてきているところでございます。
 今後の取り組みの問題につきましては、予算も伴う話でもございますし、内容的にも十分広島、長崎両市の御意向なり調査の進捗状況なりをよく聞き取り、また相談をいたしまして、適切な対応をするように努力したいと思っております。
○宮崎(角)委員 最後にお尋ねしたいのは、第六番目ですかに介護手当がございますね、具体的な問題でございますが。この介護手当でございますけれども、これは実際どうなんですか。これでいきますと国は一日千百九十円ぐらいにしかならないのじゃないかと思うのですけれども、この介護手当の基本的な問題、介護手当支給に対するいろいろな経過とかお考えをもう少しお尋ねしておきたいと思うわけであります。
 これは後でまた具体的に出したいと思いますけれども、まず局長の方から、この介護手当の内容とこのアップの額、二千二百円、二百五十円のアップですかについて、この点で私がお尋ねしたいポイントは、どうも実態に即していないから今聞いているのであって、この辺についての国の方針なり経過なりをひとつお尋ねしておきたいと思います。
○大池政府委員 介護手当の額につきましては、他の公的給付との均衡という観点で、生活保護の他人介護料というものに従来あわせまして改善を図ってきておるところでございます。五十九年度におきましては、一カ月当たりの支給限度額を、従前三万三千六百円でございましたものを三万五千八百円と引き上げることとしているわけであります。被爆者の方々の高齢化が進んでおるという実情に私どもも注目し、また介護手当に対します需要も高まってきておるということで、介護手当についての重要性は十分私どもも認識して臨んでいるつもりでございまして、今後とも実態を踏まえながら引き続き改善に努めてまいりたいと考えております。
○宮崎(角)委員 この対象人員件数が五千九百八十三件と極めて少ないからこういった金額になったのか、その真意がよくつかめませんが、今度三万五千八百円になったとしても、先ほど申し上げましたように一日千百九十円にしかならないのじゃないかと思うわけであります。私が実際ずっと現地踏査をして、今ございます家政婦協会ですか、家政婦さんのこういった協会については慣行料金としては一日七千七百円でございます。一日七千七百円あるいは八千円になろうとしているそういった方々に対して、この千百九十円というのは何たることかと思っているわけであります。単価にして六千五百十円の差がある。これは極めて不十分です。その不足分をどうしているのかというとやはり個人負担である。そこで、市とか県とかあるいは印とかというのが非常に持ち出しをしているということも考えますときに、これは実態に即してということでございますが、余りにも実態とかけ離れている実情でございますので、どのように今後国として方向づけされていくのかお尋ねしておきたいと思うわけであります。
○大池政府委員 実情もよく踏まえながら、また福祉全般の取り組みもよくそれとの均衡も考えながら、できるだけの努力をしていきたいと思っております。
○宮崎(角)委員 私はこの医療特別手当、また小頭症手当あるいはまた特別手当、健康管理手当、保健手当、介護手当等々非常に所得制限という大きなものを持っているし、収入認定という大きな問題もまたひっかかっているわけでございますけれども、この辺でこういう所得制限を撤廃して、冒頭に申し上げました国家補償の精神にのっとった国の温かいこういう援護措置というものを講じていかねばならぬのではないか。
 私は、まだ具体的な原爆手帳のいわゆる申請の問題、あるいはまた日赤がやっております原爆病院の入院患者のいわゆるベッド待ちの実情等々についてもたくさんの事例を持っているわけでありますが、時間が来ましたから後刻に譲ることにいたしまして、最後に大臣が、この特別の犠牲であった、そして国家補償精神にのっとって適切かつ温かい措置をしていけという、それはつまり野党が共同提案をいたしております原爆援護法の制定こそ今日可及的速やかな問題ではないかと思うわけでありますが、渡部大臣の所信と今後の援護措置に対する御構想と御見解を承っておきたいのであります。
○渡部国務大臣 原爆被爆者対策につきましては、被爆者の受けた原爆放射線による健康障害という特別の犠牲、このために、私どもは、広い立場での国家補償ということによって、我が国が世界で、歴史の中で初めて受けたこのむごたらしい惨害、その犠牲の方に対するできる限りの施策を今日まで講じてまいっておるところでございます。その意味では、先生の今まで御心配をいただいた考え方と私ども一体であると存じておるのでありますが、ただ、野党提案の援護法につきましては、これはお亡くなりになられた方は一般の戦災等でもお亡くなりになっておられるわけでありまして、これらに波及する問題とかいろいろなことがありますので、現行の法律によって、先生の意を体してできる限りその施策を充実するように努めてまいりたいと思います。
○宮崎(角)委員 終わります。
○稲垣委員長代理 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十九分開議
○有馬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、村山富市君から発言を求められておりますので、これを許します。村山富市君。
○村山(富)委員 この国会の最重要法案として扱われながら、与野党が今真剣な議論を繰り返しておりますし、それだけにまた国民も非常な関心を持って注目をしておりますが、そういうこの健保法案の審議の過程に、提出者である大臣が、きょうのある新聞を見ますと、そのインタビューの中で、例えば二割負担については六十一年から実施をすることになっておりますけれども、それは若干考え直してもいいとか、修正含みの発言をされておるわけです。これはもう委員会の審議を無視をするといいますか、極めて不見識な発言ではないかと思いまするし、国会軽視も甚だしい。そういう自信のない、確信の持てないような法案を提出しておるとするならば当然撤回をして出し直すべきではないかというふうに思いますが、この際ひとつ、審議に入る前に大臣の見解を承っておきたいというふうに思います。
○渡部国務大臣 ただいま村山先生から御指摘をいただきましたように、ある新聞とのインタビューに対し、私が国会の御審議に関係する事項について大変軽率な発言をしてしまったことはまことに遺憾でございます。
 今後再びかかることのないように十分自粛自戒してまいりたいと思いますので、御了承をちょうだいしたいと存じます。
○村山(富)委員 今後このようなことが二度とないように十分注意をしていただくように、厳重に警告しておきます。
 終わります。
     ――――◇―――――
○有馬委員長 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので順次これを許します。永井孝信君。
○永井委員 まず最初に、今も大臣発言の問題が我が党の理事から厳しく提起をされたわけでありますが、私からも、これから重要な段階に入る審議でありますから、十分に大臣の職責を認識をして、これからのいろんな発言については留意をいただきたいということを冒頭に強く申し上げておきたいと思います。
 さて、去る五月二十三日に「健保法等改正法案の早期成立の必要性について」という文書が厚生省から配付をされているわけです。この配付をした先ほどこなのか、どこを対象にこの文書を配付したのか、まず冒頭に事務当局からお答えいただきたいと思います。
○吉村政府委員 自民党議員の先生方に配付をいたしました。
○永井委員 この健保法の一部改正案がこの国会に提出されましてから各党の対応はいろいろな形で公表されているわけでありますが、我が党を含めて野党は反対の立場を表明してきているわけですね。法案が提出される前には、そういう庶民の暮らしに大きな影響を及ぼすような法律案は提出すべきでないということも私どもはあらゆる機会をとらえて申し上げてまいりました。ところが、この「健保法等改正法案の早期成立の必要性について」という文書を自民党の先生方にお配りをしたというわけですね。いわば健保法の改正を促進する立場にある与党の議員にこの文書が配付をされて、それと異なる態度を表明している我々の手元にはこれが配付されなかったのですね。
 しかも問題は、この中に書かれておりますことを全部読み上げることは避けますけれども、この健保法の改正法案がもし成立をしなかったら、ことしの五十九年度の予算で四千二百億円の予算の不足が生ずる、毎月五百億円余の国庫負担が追加となる、こういうことが示されているわけですね。
 なるほど昭和五十九年度の予算案は成立をして今もう執行されているわけでありますが、しかし、この個々の法律案についてはその成立が果たしてできるかどうかは国会の審議の結果に係るものなんでしょう。それを成立させないとこれだけの国の財政に穴があくとか負担の追加を必要とするとかいうことを前段に並べて、一番問題なのは、もし成立しなくて補正が行われない場合には、「医療内容への影響をある程度覚悟して、歳出の削減、医療費の削減を更に徹底的に強化する必要があります。」、こういうふうに言っているわけですね。これは大変なことだと思うのですよ。厚生省は、国民の人命を尊重するためには、まず厚生省挙げていろいろな施策を通してそれに対応していかなければいかぬという使命を持ったところなんですね。ところがこの文書で見る限り、この健康保険法の改正案が通らなかったら「医療内容への影響をある程度覚悟して、」ということは、国民の健康状態がどうなっていこうとも、それを無視をしてでも医療内容を低下させて、そうして医療費を節減しなくてはいけないんだということを恫喝している文書になっている。しかもその恫喝している文書が与党の議員に配られたということは、だから与野党の力関係からいって、いわば私の少しはひがみかもしれませんけれども、数で押し切ってしまえということを教唆扇動しているように見えるけれども、一体何の目的を持ってこの文書が配付をされたのか、まず初めに大臣にお聞きをいたしたいと思います。
○渡部国務大臣 これは先生御承知のように、今回私どもが御審議をお願いしておる改正法案は予算関連の法案でございまして、五十九年度予算にこの改正を前提とした予算が組まれておりますので、残念ながら、この法案が予定どおり御審議また成立を賜りませんと予算に欠陥が生じてまいります。一カ月ほぼ五百億円、したがってこの法案が成立しないと五十九年度予算で四千二百億の欠陥が生じてしまいます。したがって、そういうようなことになった場合は、厳しい今日の財政状態の中で四千二百億の増額補正がお願いできるかどうかという非常に難しい問題がありますので、これは私ども政府の立場では、ぜひともこの法案を予定どおり成立させていただきたいということをお願いしておるわけでございます。そういうことから、まず政府・与党であるこの法案を推進していただいておる先生方に、この法案が通過しなかった場合どういうふうになるかということを御説明を申し上げて、これをお願いをいたしたわけでございます。
○永井委員 予算関連法案でありますから、この法案が成立をしなかったりあるいは政府が予定をしている期日までにこの法律の施行ができなかった場合に、予算上いわば穴があくということはこれはだれしもわかっていることなんですね。わかっていることなんだけれども、だから審議をしているんだけれども、事が重要であるだけに慎重審議を我々は求めてきた、あるいは慎重に審議を進めようとしている。しかしその片方で、繰り返して言うようでありますけれども、もし通らなかったら医療の中身を低下させるんだよということをわざわざこの文書で触れるということは、厚生省の本来持つべき任務を放棄したことにならないのですか。その辺はどうですか。
○渡部国務大臣 今回お願いをしております改正法を成立させていただけない場合、残念ながら四千二百億の予算上穴があいてしまいます。これはもちろん私ども増額補正をお願いしなければなりませんが、今日の非常に厳しい財政条件の中でこれが困難な場合には、医療費に対する支払いが四千二百億欠陥を生じてしまうということになります。そういうふうになりますと、私ども行政を執行する立場で国民の健康を守る医療費を支払えないということになっては大変でございますので、私どもはぜひこの法案を成立させていただきたいという願いが一生懸命な余り大変おしかりを受けるような文書になったかと思いますが、この内容はあくまでも、四千二百億の欠陥が生じるようなことになっては我々の行政執行上大変困ることになりますので、ぜひこの法案を予定どおり成立させていただきたいというお願いを申し上げた説明でございます。
○永井委員 多くは触れませんけれども、こういう文書を配付されるのはそれは自由ですよ。私としてはその中身を言っているのであって、強制保険制度を実施している政府の責任をまるで放棄したのではないかと疑わざるを得ないような内容を持っている、そのことを私は問題にしているのであって、冒頭に問題になりましたように、大臣の発言もさることながら、事務当局の対応にいたしましてももっと慎重であるべきだということを私は冒頭に強く注告しておきたいと思うのであります。
 さて、これから具体的な中身について御質問申し上げていくわけでありますが、これまた初めにお伺いいたしますけれども、今度の健保法の改正案に対して、各自治体でも、もちろん自治体にすれば国保を持っていることでありますから、いろいろな角度から検討されまして、私どもが厚生省やその他のところといろいろな折衝を通して知った数字を申し上げてみますと、市町村で千四十六の自治体が、四月の上旬の段階で、既に健保法改正について反対の意見をまとめて意見書を提出したりあるいは陳情をしたりしているわけですね。あるいは都道府県の単位で言いますと三十六もの府県が、これまた反対の意思を明らかにしているわけです。実際に市民と、国民と日ごろから常につながりを持つ自治体であるがゆえに、この健保法の改正がどういう影響を与えるかということについては非常に敏感なものを持っていると思うのです。そういう敏感さを持っている自治体が、これだけの数が四月の上旬段階で既に反対の意思表示をしていることについて、大臣はどのようにお受けとめになりますか。
○渡部国務大臣 今回の私ども御審議をお願いしておる改正案の中に、従来十割給付であった被用者保険の皆さん方に一割御負担をお願いしなければならないという内容が盛り込まれてあります。これらの問題について、今まで十割給付だった方に一割御負担を願うということはこれは大変な問題でございますから、これのみが先行せられたるためにこういう改正はけしからぬという御意見を強くちょうだいするようになりました。
 が、私どもは、現在の我が国の置かれておる経済、財政の情勢、また今日までの健康保険制度のそれぞれの沿革、仕組み、また来るべき高齢化社会に備えて二十一世紀の医療保険制度を揺るぎないものにするためには、また被用者保険の皆さんにあるいは国保の皆さん方にこれ以上保険料の増額による御負担を余りかけないようにするためには、いろいろな中身がありますが、医療費を節減し、適正な医療費を実現し、また負担と給付の公平化を図るというような意味から、この一割の御負担をお願いしなければならないという説明を十分に申し上げれば、私は必ず国民の皆さんの御理解を賜るものと思っておりますが、最初私どものそういう努力が足りなかったためにいろいろ誤解を生じておることと存じます。
○永井委員 かつて昔、佐藤総理でしたかお亡くなりになりましたけれども、声なき声を聞くということをよく言われたことがあるのです。声なき声をどういうふうにして聞くのか私にはわかりませんけれども、しかし声なき声を聞くということが政治の基本的な姿勢を保つ上で非常に大切だということになるとすると、そういう自治体が反対の意見書を出してきたりあるいは反対のための陳情があったりすることについては、むしろ政府は謙虚に耳を傾けるべきだと私は思うのですよ。だから、ただ単にお願いするというのじゃなくて、それほど各自治体で反対の意見がまとまってくるということについては、やはりそれなりの理由があるのですから、このことを、これからの審議を通してでもありますが、もっと十分に耳を傾けて聞くべきところは聞いていく、そういうことを通してこの委員会の結論が出せるようにこれまたお願いをしておきたいと思うのです。
 そこで、今大臣は、もっともっとPRをしなければいけない、もっともっと知ってもらわなければいけない、こういうことを言われるのでありますが、そのためでもありましょうか、この「二十一世紀をめざして」という一応のビジョンが出されました。それに付随してたくさんのバンフも出されているわけです。ですからそういう問題をまず初めに私なりに触れていきたいと思うのであります。
 大臣は、事あるごとに、本会議の趣旨説明でもそうでありましたしこの当委員会でもそうでありましたけれども、二十一世紀を目指す保健医療制度の確立を何よりも重視しているのだ、このように言われてきているわけです。そしてその基本になるべきものは、本格的な高齢化社会の到来に備えて中長期の観点に立っての改革を行うのだ、こう言われているわけです。我が党は従来から、中長期の展望に立って具体的なプロセスを明示するように求めてきたことは御承知のとおりであります。しかし今回示されているこの「二十一世紀をめざして」という政府当局の出した書面を見ますと、その試案の説明では、我が党の求めた内容とは全く異なるものになっているわけです。もちろん政府と我が党とは違うわけでありますから異なっていることが当然だと言えばそれまででありますけれども、しかしせっかく我々が今まで何回も提言をしてきたものがまず生かされていない、明らかになっていない、これは私は極めて残念なことだと思っているのです。
 例えば今回の法改正に、財政的見地からの政策としてはいわゆる医療費の節減という立場で貫かれていると思うのでありますけれども、中長期展望についてはその最も重要な財政上の展望というものが明示されていないわけですよ。さらに医療との関連が不可欠であるこの保健行政、そして福祉行政、こういうものなどが体系的にもっと整備されていかなくてはいけないと思うのでありますが、これの年次計画も明らかにされていない。いわば本当に明らかにしてもらいたいものは雲の中であって、この二十一世紀を目指すというビジョンからすると、財政調整という面だけがぐんぐんと私どもの肌に伝わってくるわけです。したがって、その中で最も大きな問題のこの給付率の引き下げという問題だけがクローズアップされてきた。これは「二十一世紀をめざして」という大臣の言われてきた理念からすると、このビジョンというものは余りにも大臣のその言動と一致していないのではないか。ビジョンならビジョンらしく、そこの到達に向けてのプロセスや財政上の見通しや保健行政、福祉行政などとの関連性を持った、もっと具体的なものが明示をされていくべきだと思うのでありますが、それについてどのようにお考えですか。
○渡部国務大臣 私が今回出しました二十一世紀を目指して我が国の医療政策のあるべき方向、これは、私が大臣就任以来、予算委員会あるいは社会労働委員会等においてそれぞれの政党の先生方から大変貴重な御意見等を賜っております、私はこれに謙虚に耳を傾けて、そういう御意見をかなり取り入れさせていただいて、今後の方向を申し上げさせていただいたわけであります。
 一番大きな問題は、社会保障制度というものの本来の理想から考えれば、これは国民が等しく同じような給付を受けるべきものであります。ところが、現在農家や零細な商工業者の皆さん方は七割給付で三割の御負担をいただいておる、また被用者保険本人の皆さん方は十割給付でございますが、この方々が会社や役所を退職されますとこれは三割負担の国保に入らなければならないとか、いろいろな問題がありますので、保険制度については、今回十割給付の最も恵まれた条件の被用者保険の皆さん方に一割を御負担願いますとともに、将来構想として、これはできるだけ早い時期に三割負担の国保の皆さん方の給付率も上げたいという考えを明示しております。しかも、二十一世紀には大変な高齢化社会がやってまいるわけでありますから、高齢化社会がやってくるということは、医療費が非常に余計かかる老人の皆さん方が余計多くなってくるということでありますから、そういう方向を目指しての財政をきちっとしておくことも、やはり二十一世紀の医療保険制度を揺るぎないものにする、こういう考え方から、私どもは、今被用者保険の皆さん方に一割の御負担をいただき、将来は国民がすべからく平等の給付を受けられる方向を目指してその財政基盤をしっかりとして、国民の皆さん方の健康に不安なからしめるようにしたい、こういう考え方を秘めて今回発表したものでございます。
○永井委員 将来の到達した場合の形はこういうふうにしたいということはそれなりにお持ちなんですよ。それがいいとか悪いとかということではなくて、お持ちなんだけれども、申し上げたように、財政的な見地からいうとこういう見通しになりますとか、その場合に健康保険だけではなくてその他の福祉行政がこのように変わっていきますとか、健康保険制度で足りない分はこのように補完されますとか、いろんなことがこのビジョンの中には明らかにされてこなくてはいけないと私は思うのですよ。それが明らかにされずに、短絡的に二十一世紀を目指してそこへ直接到達をする、そこだけにこのビジョンというものは貫かれているように思えてなりませんので私はあえて申し上げているのでありまして、以下、我が党が、そういう長期ビジョンについての政府の示した資料をもとにいろいろ検討を加えてきましたそれについて、ごく簡単にではありますけれども項目的に触れてみたいと思うのです。
 まず初めに、「国民健康づくり対策の推進」についてということでありますけれども、保健事業による健康づくりを国民運動にまで高めて、十カ年計画で胃がん、子宮がんの死亡率三割減、脳卒中の半減を目指すと言っているわけですね。なるほどこのことだけをとらえればすばらしい、そうあってほしい、さらに成人病は日ごろの健康管理によって相当程度防げるというふうに提起をしているわけですね。しかし、今私が申し上げましたように、そのための具体策というものが余り明示されていない。明示されているとは言えないのです。
 例えば公害防止あるいは環境保護の問題についてのいろんな市民運動があります。あるいは、この前も当委員会で我が党の村山委員から取り上げられた問題でもありますけれども、食品添加物の安全性の問題もある。あるいは農薬などを使わない自然農業に戻ろうという運動もある。そういう広範な国民運動やあるいは科学の進歩してきた中で、後へ戻ることのできないような有害物質をつくり出してしまうというふうなことも現実に存在しておりまして、これらについてはそれぞれ専門学者などが問題提起もしているわけです。それに対して政府は、この国民の健康づくりを進めていくという過程の中でどのようにこたえていこうとしているのか。行政に期待を寄せている国民からすればその意味では全くわからないと言ってもいいのではないかと思うのです。私もあれをかなり細かく読んでみましたけれども、その書かれている資料の中からはそこまで踏み込んだ政府の考え方、政策というものは酌み取ることはできない。あるいは発がん性物質についてもいろいろ言われておりますけれども、研究の評価やデータの公開という問題もまだまだ不十分になっている。そういう問題について具体的にこの国民健康づくりの対策を進めるという立場からすると、どのような見解を持ってこの文書がつくられておるのかお答えをいただきたいと思います。
○水田政府委員 お答え申し上げます。
 高齢化社会の進展に伴いましてがん、脳卒中、心臓病、いわゆる成人病に起因しますところの死因というのが国民の死亡率の三分の二以上を占めるようになったわけでございまして、この成人病というものの対策を積極的に講じてまいりますためには、いわゆる壮年期の入り口、いわゆる四十歳から手を打ってまいりませんと効果を上げることはできないということで、昨年成立いたしました老人保健法の中に、いわゆる七十歳以上の方の医療に関する事業といわば車の両輪として四十歳以上の方の健康管理をするための一連の事業というものを設定し、昨年度から事業を開始しておるわけでございますが、法律にそういう事業を設定したからといって所期の目的を達するわけではございませんので、公衆衛生審議会にそのヘルス事業の具体的な推進の仕方について厚生大臣が諮問し、昨年の暮れに御答申いただいたわけでございます。その中心をなしますものは、老人保健法に基づきますヘルス事業を推進していくためには、やはり一つのきちんとした国民にわかりやすいプロパガンダがあった方がいいのではないかということで、おおよそ十年間で胃がん、子宮がんの死亡率を三割減らし、脳卒中の発生率を半減させる、こういう目標を設定し、この目標というのは住民の方の自覚と協力が得られるならば決して到達することができない目標ではないということで、そういう旨の御答申をいただきまして、私どもその目標に従って今後のヘルス事業の推進を図ってまいりたいということで、先ほどの長期ビジョンの中に具体的に提起したわけでございます。
 その具体的な方法としましては、例えば脳卒中に関して申し上げますと、これは国民の生活病ととも言われるように生活に関連して起因する病気でございまして、特に食生活が大きく関連するわけでございまして、いわゆる食塩を減らしたバランスのとれた食生活をしていくそのきっかけとして、毎年一回定期的に血圧の検診をしまして、そこで問題のある方については健康相談なり、今申し上げました健康教育の徹底を期していく、こういうことが必要だと思います。また、胃がん、子宮がんにつきましては、今日の我が国の医学医術の進歩でまいりますと、自覚症状のない時期に発見すればもうほとんど一〇〇%制圧できるわけでございまして、これも胃がん、子宮がんの定期検診に国民の方を確実にここに引き込めば克服できる問題になってくるわけでございます。
 要は、市町村が実施するこういう一般健診なり胃がん検診、子宮がん検診に、国民の方が自分の健康は自分で守るんだという自覚を持って積極的に参加してもらわないと手の打ちようがないわけでございまして、その積極的に参加させるためのPRと市町村にその事業を本当に根づかせる、定着させるということを当面の目標にし、五十七年度から六十一年度まで私ども一応五カ年計画の目標を立てておりまして、その目標が達成でき、その水準が維持できれば、この長期ビジョンにうたった水準は到達できるものと確信している次第でございます。
○永井委員 同じくこの中で、今、がんの一〇〇%克服できることについても自覚症状がないという段階での発見を中心に言われましたけれども、この「対がん十カ年総合戦略」、「がん制圧は今や国民的課題となっている。」とこう言っているのでありますが、これはまさに共通の認識なんですね。問題はがんの制圧のためにじゃあ何をするのかということでありますけれども、今昔われたように生活の指導あるいは事前の健康診断、それによってかなり制圧の効果は上がると私ども思います。しかし、これだけのたくさんの国民を対象に完全にそれができるような状態になっているだろかというと、残念ながらノーと言わざるを得ない、これが今の実態ではないでしょうか。
 そうして、この資料の中を見ますと「重点研究の推進」とあるのですね。これに非常に大きな期待を私どもは持つわけですが、この「重点研究の推進」というのは何なのかということはこの中でも一切触れられていない。この重点研究とは一体何なのか、これは余り時間をかけずに簡潔にお答えを願いたいと思うのであります。
○吉崎政府委員 お話しにもございましたように、私どももこの「対がん十カ年総合戦略」に非常に大きな期待を持っておるわけでございます。具体的にお尋ねのございました重点項目でございますが、これは六項目設定をいたしております。
 一、ヒトがんの発がん遺伝子に関する研究二、ウイルスによるヒト発がんの研究 三、発がん促進とその抑制に関する研究 四、新しい早期診断技術の開発に関する研究 五、新しい理論による治療法の開発に関する研究 六、免疫の制御機構及び制御物質に関する研究でございます。
○永井委員 せっかく厚生省が目標に定めた重点研究でありますから、一言で言えば、この重点研究を成果あらしめるためには、まあ大臣、予算上大変だと言わずに、むしろ国が積極的に思い切った取り組みをする姿勢がまず大事だと思うのですよ。
 そこで、それに関連をして一つお聞きするのでありますが、例えば制がん剤の開発ということがありますね。この制がん剤の開発について言えば、私ども素人でありますから細かいことはわかりませんけれども、インターフェロンであるとかあるいは丸山ワクチンであるとかあるいは蓮見ワクチンなど、これが効くとかいうことで大変話題になっている期待の薬がたくさんあるわけですね。丸山ワクチン問題はかつてこの委員会でもかなり議論があったことがあります。だから、これらの制がん剤の開発については、国民からすればあるいは患者からすれば、まさに熱いまなざしで見ているわけですよ。ところが、その努力にもかかわらず、これが制がん剤としてすばらしい効果があるというものはまだ発表されていない、そういう現実に今置かれているわけですね。そうして、その制がん剤の今の研究の進展状況とか、どの程度効果がもたらされるかということも国民としては一日も早く知りたい。こうなってくると、そういうデータの公表というものも積極的に推進をしてもらわなければいけないと思うのですね。
 だから、そういう幾つかのワクチンのなにはありますけれども、このインターフェロンについて言えば政府が補助をしているわけですね。このインターフェロンの開発だけには国が補助するけれども、他の制がん剤の開発はまさにメーカー任せだということになっているのじゃないかと私ども思うわけですよ。これについてはどうでございますか。
○正木政府委員 お答え申し上げます。
 薬の開発という問題は産・官・学の協力関係が極めて大事な点であろうと思います。
 国は一体どういうことをやっておるかということでございますが、制がん剤に限らず薬一般の研究開発につきましては、国もかなり力を入れておるつもりでございます。
 これは、薬の製造というのは医薬品メーカーが行い、でき上がったものを国に製造承認をするという形で、企業も研究開発に努力をしておるわけでございますが、その薬の開発というのは非常に長期間にわたる、それからリスクが多い、それから相当大規模なプロジェクトを組まないとできないというようなものにつきましては、企業任せにはなかなかできないわけでございます。そういった面につきましては、いわば基礎研究的なものにつきまして国の試験研究機関等を駆使いたしましていろいろ研究を重ねる、あるいは試験研究費の補助等を行っておるわけでございます。
 ところで、具体的に先生のお話しがございました制がん剤でありますが、これにつきましては、現在薬の生産額が約四兆と言われておりますが、医療用医薬品の売上高の六%ぐらい、二千三百億円ぐらいが今制がん剤として販売されておるという実情でございます。
 なお、具体的な問題でインターフェロンでございますが、インターフェロンというのはビールスに感染した細胞が放出するたんぱくのことでございまして、このインターフェロンにつきましては、バイオテクノロジーなどによる最先端技術を応用してできる新物質であるということで、諸外国とも非常に大がかりな研究を重ねるということで、我が国におきましても科学技術庁を初めといたしましていろいろな研究の援助を行っておるということでございます。
 なお、丸山ワクチン等につきましては、これは詳しくは申し上げませんが、開発された薬につきましてこれは有効性が認められるのではないかということで、国の方に丸山ワクチンにつきましては承認中論がございまして、中央薬事審議会では、データによっては有効性は確認することはできない、ただ無効とも断定できないので、もう一ついろいろ研究を重ねてくれということで、現在関係の申請者におきましてせっかく努力をしている、こういった実情でございます。
○永井委員 今御答弁をいただいたわけでありますけれども、このインターフェロンについて言えば、昭和四十七年度から四十九年度まで基礎的研究として助成した金額は七千六百万円、五十年度から五十九年度まで臨床応用の研究について言えば四千六百万円、年数等制がん剤の一日も早い開発という面からいくと、この程度の予算ではという気が我々はするのですよ。しかも、その他の制がん剤の開発については国は具体的に助成をしていないということになりますと、これからのこの研究というものも「重点研究の推進」という中に入っているのでありますが、もっともっと積極性があってしかるべきではないか、こういう立場で私は申し上げておるのでありまして、これは大胆な取り組みを国が乗り出してやるというくらいのことはぜひひとつ決断をしてもらいたい、こう思うのであります。これは私の強い要望でありますから答弁は要りません。
 その次に、臨調答申で国立病院や療養所についてその機能の見直しと整理統合ということを言っておるわけでありますが、国立がんセンターというのがあります。この国立がんセンターの入院に当たっては、厚生省のお調べいただいた資料を見ますと、待機日数は約一カ月、そして待機患者がことしの四月現在で四百五十七人と報告されているわけです。これは国立がんセンターに入りたい、診てもらいたいけれども遠隔の土地にある、あるいはどうせ狭き門でなかなか入れないだろうということで初めはその他の医療機関にかかる人もおりますから、どうしても国立がんセンターでと希望した人が現在それだけ待機をしておるわけですね。こういう実態から見ると、むしろ国立病院や国立療養所について機能を強化して、そういう負託にこたえるという立場からの見直しでなくてはならぬと私は思うのです。むしろできることなら、お金もかかることでありますけれども、これだけ対がん戦略の十カ年計画を立てるくらいでありますから、せめて各ブロックぐらいに、国が管理をするがんセンター的なものを設置するぐらいの雄大な考えを政策の中に持ってはどうかと思うのでございますが、大臣、これはどうでございましょう。一言で結構でございます。
○渡部国務大臣 私もがんセンターへ行ってまいりまして、すばらしい研究と治療、世界に誇るものが行われておると思います。残念ながら現在のがんセンターでは、一億一千七百万の国民の皆さん全部ががんセンターを活用するというわけにはまいりません。今、私は、先生と同じようにこれを全国のブロックごとに、あのがんセンターが総本家であるとすればそこに分家のようなものができていって、国民の皆さんが、あの非常に進歩しておる、勉強しておる医学というものが活用できるようになればすばらしいなと考えていたわけでございます。現在厳しい財政の中でありますので確たる御返事を申し上げられないのが大変残念でありますが、考え方は先生と全く同様であります。そういう方向に向かって前進してまいりたいと思います。
○永井委員 大臣もそういう強い御希望はお持ちのようでありますから、できれば渡部厚生大臣の時代にそれが緒につくというくらいの決意を持って、ひとつ当たってもらいたいということをこれまた要望しておきます。
 あわせて、がん、脳卒中、心臓病のいわゆる三大死因疾患、これはもちろんのことでありますけれども、精神神経疾患というものが激増しているわけですね。その原因となる生活あるいは環境、こういうものの諸条件というものをもっと積極的に解明して、精神神経疾患の原因となるものを除去するということに政策的に取り組まれていいのではないか、私はこう思うのです。その辺がこのビジョンの中では非常に不鮮明なのですよ。
 したがって、これらの対応については、厚生省だけではなくて、例えば職場という条件からいうと労働省、居住の条件ということからいくと建設省、幼児保育とか教育という問題については文部省、自然環境を守るという立場からすると環境庁、いろいろありますね。こういう関連する各省庁がお互いに総合的に対応するという体制が私は極めて必要だと思うのです。この精神神経疾患の患者というものは、聞くところによると滞在的に十人に一人とか十二人に一人いるとまで言われたことがあるくらいでありますから、これは厚生省がかぶるのではなくて、関係省庁それぞれが、その問題の改革のためにもっと思い切った対応策に取り組んでいくということにしてもらいたいと思うのでございますが、事務当帰、これはどうでございましょうか。
○大池政府委員 御指摘のように、国の社会経済の発展に伴いまして、一面において心の健康づくり、精神障害をめぐる諸問題に対応するためより積極的な対応というものが必要なことは、私どももその重要性、必要性を強く認識しているところでございます。
 厚生省におきましても、その対策を積極的に展開するための基礎資料を得るべく各方面の御理解、御尽力のもとに実態調査も先般実施したところでございます。また、諸般の社会復帰対策の促進についてもいろいろな角度から関係方面とも相談をしているところでございます。
 また、先ほど御指摘のございましたように、地域におきますところの心の健康づくりということも私どもの立場から取り組んでまいるわけでございますが、一方職場におきます精神健康問題につきましては、それぞれの所管の行政においてもっとに積極的に取り組んでいるというふうに承知しているわけでございます。また、学校というような分野もございます。それぞれのいろいろな分野がよく協調関係をとりながら今後とも力強く取り組んでいく、私どももそのように痛感しておるところでございます。
○永井委員 今御答弁があったわけですが、その精神衛生実態調査についていいますと、四十七都道府県のうち三十七都道府県しかこの実態調査は行っていないのです。あとは実施を見合わせている。これで調査の目的は成功したと思っていらっしゃいますか。一言でいいです。
○大池政府委員 ただいま御指摘の三十七の内治体におきましては、関係する調査の客体に当たりました医療機関関係者の皆様に大変御尽力をいただきまして、施設におきます回収率も八七%を超える、また回収されました調査票も、種々困難な調査環境でございましたけれども、七〇%というような水準を維持しております。現在集計中でございますが、実施しました地域に関しましての成果は私どもの行政に十分活用できると考えておるところでございます。
○永井委員 あとの十の府県が実施を見合わせているということはどういうふうに受けとめていらっしゃるのですか。
○大池政府委員 もとより全国四十七の都道府県ということを私どもは強く望んで最後まで努力をしたわけでございますが、それぞれの地域ごとに具体的ないろいろな事情がございまして、端的に申しますといろいろな反対運動があって、そのために残念ながらできなかったという実態にございます。しかし、先ほど申しましたように、三十七の道府県におきます成果は、十年目に行われました実態調査として私どもとしては十分行政的な資料として活用できるものと確信しておるところでございます。
○永井委員 いろいろな事情があって調査ができなかったのだろうというふうに言われているわけでありますが、事は精神衛生実態調査という問題でありますだけに、なぜ実施できない事情が存在したのか、どこに問題があるのかということとあわせて、今調査票の集計で分析を進められているようでありますから、その分析内容、この二つは後ほどで結構ですからひとつ報告をしてもらいたいと思うのですが、どうですか、やってくれますか。
○大池政府委員 集計作業が進展しました段階で、先生のところにまた御報告を申し上げます。
○永井委員 集計だけ言っておるのじゃないですよ。その十の府県が実施をしていなかった、そこにはいろいろな事情が存在するだろうと言われているから、どういう事情があってできなかったのかということを、これからもいろいろなことが調査をされるのでありましょうから、これからの対応のためにもそれは必要だ、そのこともあわせて調査をして報告をしてくださいと言っているのだから、それも答えてください。
○大池政府委員 その趣旨はよく了解いたしました。
○永井委員 それでは次の問題に入りますが、二つ目に、医療の供給体制の整備という問題について申し上げてみたいと思います。
 地域医療計画の施策推進を掲げているわけでありますが、救急医療、僻地対策、あるいは今申し上げましたようにがんセンターの関係、循環器病、こういうものの対策、これもこの項目の中ではうたっているわけです。その一方で、医療需要の伸びを考慮してもなお医師の過剰となることが明らかだから抑制が必要だ、こう言っているわけですね。実はここにかなりの力点が置かれていると私は見ているわけであります。しかし、今後の医療需要が内容的にどう変化していくのか、あるいは現実に今起きている医師の大都市への偏在、あるいは疾病構造の将来の見通しというものも私は重要だと思うのでありますが、これは具体的に示されていない。医師の数については、国民医療費の動向に与える影響はかなり大きいと思われますので、疾病構造の将来見通しと整合性を持たせた医師の需給計画というものが具体的に策定されなくてはいけないと思うのですね。この資料の中で触れておりますように、単に人口比からの推定だけではその根拠は余りにも安易過ぎはしないか、こう思うのですが、これはどうでございましょうか。
○吉崎政府委員 ただいまのお説に同感でございます。
 医師の養成数を検討いたしますのに、今日はちょうどいいときであると考えております。昭和四十五年に立てました目標は、当時医師が非常に不足をしておりまして、少なくともここまで六十年まではと、こういう計画でございまして、これが六十年を待たずに達成されましたことは、国民医療の確保の立場から非常に望ましいことだと思っております。
 さて、そこで将来でございますけれども、このまま推移をいたしますと、二十一世紀に入ると確かにこれは過剰になるのではないかと想像をされます。そのときに、ただいまお話しのございましたように、医学の進歩、疾病構造の変化などに伴う医療需要の動向、それから地域医療の実態その他、多方面から検討をする必要がある、それはお説のとおりだと考えております。
 そこで、そのことをお願いいたしますために、去る五月に、将来の医師の需給に関する検討委員会及び歯科医師のそれを発足させまして、御検討をいただいておるところでございます。
○永井委員 その検討委員会で検討する際に、今申し上げたようなことが具体的に、だれにもわかるような形でその答えというものが出てきて、それに対応できるように、みんなが納得できるようにということでひとつ作業を進めてもらいたい、こう思うわけです。
 さらに、僻地の問題でありますけれども、これは非常に深刻でありまして、僻地における中核病院、いわゆる公立病院ですね、これは九十四カ所あるのですが、この医師の充足率は八六・六%だ、こう言わわれているのですね。しかし、これは単に医療法上の標準医師数に対する現在員を見たものでありまして、僻地における医療需要の実際に求められている質とかそういうものについては、その必要数を設定したことになっていない。いわゆる算術的に、都会も地方も一緒でありますけれども、標準医師数に対する現在員を見ていくということからすると、本当の充足率ということになっていかないのではないか、こう思うのですが、これはどうでございましょうか。
○吉崎政府委員 先ほどお話しのありました救急医療もそうでございますが、いわば医療の原点でございます。ただいまお話しのありました僻地対策でございますが、これはもう最も重点として取り組んでおるところでございます。
 先刻お話しのございました医師数の問題とも関係がありますけれども、医師数がふえたからといって僻地が必ずしも充足されるとは実は限らないわけでございまして、多角的に誘導策を講ずる必要があると考えております。自治医大の卒業生もだんだんふえてまいりましてかなり活躍をいたしておりますし、また各県一医大構想も実現をいたしました。
 私どもでは今日第五次の僻地対策をやっておるところでございますが、御指摘のございましたように、その中心になりますところの中核病院がまだ十分機能を果たしておるとは申せません。それで、今日の五次の計画、かなり時間もたっておりますし、医療に対する需要が一層高まってまいりますので、もう一度しっかりと見直しまして、どうやったら僻地の医療が確保できるか、新しい計画を立てる必要があるのではないかと検討に着手しておるところでございます。
 いずれにいたしましても、そういう諸般の情勢をそれぞれ満足させるのはなかなか難しいのでございますけれども、全体としていろいろな方策、多角的な方策を講じて取り組んでまいる所存でございます。
○永井委員 大分苦慮されている中身はわかるのでありますが、僻地の問題というのは、私どもは単純に僻地と言っていますけれども、医師の不足しているのは僻地だけではなくて、離島あるいは休日・夜間の救急のための医師、あるいは療養所などもありますね、あるいは障害者施設、リハビリ専門の施設などもありますね、こういうところに、例え医師過剰時代だというときが参りましても、この必要数を確保する困難性というのは、今いみじくも局長が言われたように、なかなか簡単に解消するとは思えないのです。
 ですから、私は、一つの提案でありますけれども、健康保険法をこの意味では改正をして、都道府県知事が保険医療機関を指定するに当たっては、医師の不足分野の医療確保を図るための計画に参加をしていただくということを、そのことについての協力を求めるということなども一つの条件として考えてみる必要はないだろうかと思うのですが、これはどうでございましょう。
○吉村政府委員 今の先生御提案の、僻地医療を充足するための一方策として、保険医の指定に当たって僻地勤務というようなものを一つの条件にしてはどうかという御提案であろうかと思います。私ども、一つの貴重な提案であるというようには考えますが、指定の問題と僻地医療の確保というめとは趣旨が少し違う問題であろうと思います。指定をするに当たりまして、保険医の指定の条件というようなものがやはり考えられますし、また、現在全体として自由開業制をとっております関係から、その自由開業制となかなか調整が難しいのではないか、こういうように考えられます。
 私ども、僻地の医療のためにお医者さんが僻地に行かれることを望むものでありますが、現在の指定制度を何か工夫を講じて、僻地における指定あるいは保険医療機関をそちらの方に行っていただいてそちらで指定をする、こういうようなストレートの方策というのはなかなか難しいような感じがいたします。
○永井委員 一つの提案でありますから、何らかの形で、僻地に非常な困難性が今あるわけですから、それを乗り超えられるような方策というものもやはり真剣に検討してもらわなくてはいかぬ、私どももそれについていろいろな意味で知恵を出し合っていく、そういうふうな状態をつくっていきたい、こう思うのでありますが、ひとつそれはぜひ前向きに取り組んでもらいたいと思うのであります。
 その次に、家庭医の普及という問題がこの中に触れられているわけでありますが、それもまた具体策は余り明確でないのですね。項目的にはいいことがあるのですけれども、中身が非常に具体策に欠けているというのが、今度の基本計画の特徴ではないかと私は思っているのです。
 厚生省としては、医師に対する出来高払いの原則を維持しつつその「欠点の是正を図る」、こういうふうに言っているのですね。出来高払いを守りながら、その欠点を是正するというのですから、私はこれは言葉では言えてもそう簡単なものではない、むしろ安易にそのことは書かれたんじゃないかと思うのです。わが党がかつて提起したことがありました。それは地域の医療体制確立のため、現行の診療報酬制度に加えて住民の登録制をつくったらどうか、。それに対して家庭医として主治医にその担当料制というものを人頭割で考える、こういうことを併用してみたらどうか、そして医療機関としてはそのいずれかを選択することができるというふうにすれば、今のこの保健医療行政にも極端な影響を与えないのではないかということで提起をしたことがありました。それが私は手前みそで絶対に最善だとは言いません。言いませんけれども、そういうことも含めてこの際検討すべきではないかと思うのですが、どうでございましょう。これは大臣、一言ちょっと答えてくれますか。
○渡部国務大臣 先生のお話し、大変貴重なこととして承りました。ただ、戦後ずっと我が国の医療というものを見てみますと、自由診療・出来高払いというものが、それぞれいろいろの欠点はございますけれども、しかしやはり全体の中で考えますと、この制度の中で国民の健康増進が大きく、今日人生五十年社会から八十年社会に向かって前進してきたことも事実なのでございます。したがって、その自由診療・出来高払いの制度を堅持しながら、今の先生御指摘のような問題を加味していくというのが今回私どもの提案しておるホームドクターの考え方でありまして、今まで何かちょっとした病気にかかってもすぐ大病院に行ってしまうというようないろんな欠陥がありますので、まずやはり国民の皆さんがそれぞれ日常の健康を相談するホームドクターをお持ちになり、そしてそこからさらに病気の重度等によって二次医療、三次医療というふうに高次的に医療機関にかかっていくのが好ましいということでございますから、私どもの考え方も先生の考え方に相共通するものではないかと考えております。
○永井委員 ひとつ、そういう地域医療体制確立ということは多角的に検討すべき課題であって、これは野党が提起したから無視するとかというような問題ではなくて、国民に対する医療の責任を果たすという立場で、今大臣も言われたように幅広く検討してもらいたいと思うのです。
 その次に、最も根の深い矛盾を抱えている医薬品の問題でありますけれども、有効な改革方針というのもこれまた示されていないのですね。医薬品の市場の透明度を確保するためには、例えば国公立医療機関の共同一括購入制度なども考えてみるべきではないか、あるいは全国をブロック別にして医薬品の取引センター的なものを設けてみたらどうか。改革を思い切ってしていくというのなら、いろんな思い切った施策が出てこなくてはいけないと思う。私は、ここで問題提起をして直ちにそれができるほど単純なものだとは思いません。思わないけれども、そういう思い切った政策というものを検討して、それが実現可能かどうかということも積極的に取り組んでみるという姿勢こそ、この二十一世紀のビジョンに向けてやらなくてはいけない一つの段階ではないかと思うのです。そういう意味で、私はそういう問題もひとつここで提起しておきたいと思うのです。そうして、この医療機関の健全経営ということがうたわれているその資料、基本計画の説明からいきますと、薬価差益に依存することなど考えないで済むようにしていかなくてはいけない、こういうふうにも書かれているわけで、私はそのことは賛成であります、大いに賛成であります。ところが、そのことについてこれまた具体的な問題を提起してみたいと思うのであります、
 大病院はさておいて、一般の開業医ですね。開業医などについては人件費が大変なんです。私もいろいろなお医者さんと意見の交換もしてみました。人件費の保障を行うというシステムが取り入れられないと、なかなか開業医の皆さんが、仮に薬価差益に依存しておるという仮定の上に、立って、仮にそういうことがあったとしても、なかなか医療機関の健全経営につながっていかないのではないか。とりわけ個人の小さい開業医の皆さんは、家族がこぞって診療行為をお手伝いしておるわけです。いろいろな意味で事務の仕事も含めて、いろいろな裏方等も含めてお手伝いをしておるわけです。ところがこの人たちには、家族でありますから給料の支払いをしない、給料の支払いはしないけれども、現実にはそのことによって他の仕事につくこともせずに、自分の家族が経営する病院というよりも診療所で一生懸命勤労しておるわけです。労働力を提供しておるわけです。ところがお医者さんとすれば、お医者さん一人のもうけとしてこれが算定される。これは制度上の大変な矛盾ではないかという御指摘を私も受けたことがありました。そういうお話を聞いてみますと、私はなるほどそうだなと思うのです。そうすると、健全な経営を図っていわゆる不正診療や不正請求を排除しようというのであれば、そのためのそういうシステムを考えてみる時期に来ておるのではないかと思うのですが、これはどうでありましょうか。
○吉村政府委員 確かに診療報酬の問題は難しい問題を抱えております。私どもも、現在の保険医療機関あるいは医療機関が薬の差益でもって経営を辛うじて賄っておる、こういうことが言われておりますが、こういう薬の差益でもって医療機関の経営がやっと成立する、こういうような事態というものは改めるべきである、こういうように考えます。したがって、今後薬価差に依存しないでも十分経営が成り立ち得るように、技術料を重視した診療報酬に切りかえていく、こういうことが必要であろうかと考えております。
 それからまた、今先生御指摘の、診療報酬の中で家族あるいは家族従業員の人件費というものが保障されてないではないか、こういうような御指摘がございましたが、私ども確かに、家族従業員の人件費がこれこれの額だ、こういうような決め方はいたしておりませんで、総体として、医者に対する技術料全体として、その中に含めるような形で現在の診療報酬は算定をしておるわけでありまして、確かに個々の費用をそれぞれ積み上げたような診療報酬にする方がいいのか、あるいは技術料として包括し一まとめにしたような格好で設定した方がいいのか、これは議論のあるところでありますが、私ども、やはり全体として医療機関の経営が成り立つ、そして医師の技術を尊重したような形で医師の所得を保障する、こういうようなことが担保できるような診療報酬を考えていきたいというのが私どもの考え方であります。
○永井委員 それではその次の問題に入りますけれども、これからが一番大きな問題になっていくわけでありますが、「医療保険制度の改革」というところで、今回審議しておる健康保険法の改正案の中身について具体的に触れているわけですね。給付の引き下げについて受診率や医療内容にどのように変化を及ぼすだろうかということについては、この基本計画の資料の中からはつかみ取ることがなかなかできないのです。医療保険各制度の財政見通しも当然明らかにされるべきだろうと思いますが、それも明らかにされていない。そして、一割の本人負担を導入することが受診抑制につながるのではないかといういろいろな各界からの指摘に対して、ここにも厚生省が出したパンフがありますけれども、これを見ますと、受診抑制にならない、たとえ本人負担が導入されても受診率は変わりませんと言い切っているわけですよ。変わらないと思うというのじゃなくて、変わりませんと言い切っているわけだから、その根拠はどこにあるのか私にもわかりませんけれども、そのことを私は、先日、厚生省の担当者にもいろいろなことを聞いてみました。そうすると、厚生省が持ってきましたこの資料で見ますと、年齢別に全部分析をいたしまして、受診率は、たとえ本人の負担が入っている国保であっても家族であってもほとんど変わりませんという資料が私の手元に届いたわけです。この数字が私は偽りだとは思いません。ところが片方で、医師会の周を持つわけじゃないめですけれども、医師会の反論というものの資料を見ますと、これまた大きく本人負担のある場合は受診率が下がるというデータ、資料が出ているわけですね。適用した年月がそれぞれ違いますから、政府のこの資料は五十七年の五月、医師会の資料は五十六年六月とか五十七年の四月でありますから、同じ月じゃないのですよ。同じ月じゃないというところがみそなのかもしれませんけれども、余りにも大きな違いがある。
 しかし、医師会の反論の資料にもあるように、健康保険の被用者本人、これは非常に働き盛りの人が中心でありますから、無理してでも仕事に行かなければいかぬ、普通なら寝込むやつでも寝込まずに、休むわけにいかぬということで出ていかなければいかぬ、そういう働き盛りの人を対象にした被保険者本人、あるいは女性の方とか子供が比較的に比率が高い家族の方、あるいはお年寄りなども多く入っている国保の方、こういうふうに年齢構成やあるいは男女の割合などを含めて、保険の各制度によって、それぞれかなり異質の集団だと私は思うのです。その異質の集団を単に数字だけで単純比較することは現実的でない、私はこう思うのでありますが、これについてお答えいただけますか。できるだけたくさんの質問をしたいと思いますので、質問する方が長くかかって答弁は短くていいというのはぜいたくだけれども、答弁はできるだけ短くしてください。
○吉村政府委員 私どもの挙げました数字は、私どもとしては確信を持った数字でございます。医師会と私どもの見解とを私どもも比較をいたしておりますが、日本医師会の御主張の中には、誤解もございますし不適当な点もある、こういうように私どもは思っております。
 私どもは、医師会のおっしゃるように、年齢構成の違いを無視してやって単純に本人と家族を比較したわけではございません。二十歳から六十九歳までの間につきまして、と申しますのは、やはり二十歳までは被扶養者、あるいは仮に十五歳以上といたしましても学生が多いとかいろいろなことで、実際に働いておる人は少ないのが現在の姿でございますから、二十歳以上にいたしております。
 それからまた、医師会の統計の中には、七十歳以上の老人まで含めまして家族の中にひっくるめて統計をとっておられます。私どもの方は、七十歳以上の老人につきましてはこれは十割給付でございますので、これは除いて、二十歳から六十九歳までの間で比較をしております。そして、二十歳から六十九歳までの間で五歳ごとに本人と家族を比較して、私どもの結論を得ておるわけであります。
    〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
 また、医師会の御主張は、入院と外来を一緒にされて十五歳以上について検討を加えられておりますが、私どもは入院と外来については別々に比較をしております。
 そういうような、いろいろ医師会の主張と私どもの見解との間には差がもちろんございますが、私どもの方が正しい分析の仕方をしておる、こういうように思っておりますし、また、私どもの分析によりますと、このパンフレット等に書いてございますように、受診率につきましては本人と家族の間に差はほとんどございません。年齢階級別に差がございません。どこに差があるかというと、投薬、注射、検査の一部につきましてやはり二、三割方各年齢に応じて本人の方が高い、こういうような分析になっております。
○永井委員 医師会の反論というのが外来も入院も一緒くたにしている、こう言うのですけれども、私の持っている資料は、入院と外来は全部別の資料になっていますよ、どこを読まれたのか知りませんけれども。そうして、反論が全面的に正しいかどうか、まあそれは議論のあるところでしょう、厚生省からすれば。しかし、ここのところはちょっと大事なところですから、この医師会の反論の文章をちょっと引用させてもらいます。
 「外来は厚生省公表資料では本人とその他の格差は二・七%程度であったものが、この標準化した受診率では、本人に対して家族は一五%、国保は二六%低くなっています。 年齢構造を全く同じにした場合にあらわれたこの格差は、明らかに給付率(本人十割と家族・国保七割)の差によるものと考えてよいでしょう。 給付率が低い健保家族や国保被保険者も、医者にかかる回数は十割給付の本人と同じだから、本人の給付率を引き下げても受診率はかわらないという厚生省のPRは、統計上の数字の魔術≠ナす。」、医師会の方はこう言い切っているわけです。しかもこの前段に、十五歳以上の全人口の五歳刻みの構成割合にそれぞれ掛けて求めた加重平均をもってはじいた、こう言っているわけです。このはじき方が間違いかというと、私は間違いじゃないと思うのです。統計のとり方はいろいろありますけれども、あえて受診率が下がらないということを強調するがための資料を意図的にもしもつくったとすると、これは大変なことになる。その辺のところを私は指摘をしているのであります。だから、私は決して医師会の肩を持つわけじゃない、こう言っているわけでありますが、しかしこの論争に関する限り、私は、受診率は下がりませんと言い切っていることには大変な問題があるような気がしてならぬわけであります。
 そこで、端的に一つ関連してお聞きいたしますけれども、老人保健法が去年の二月から施行されました。この老人保健法が施行されて、それ以降とそれ以前の受診率はどうなっているか、お答えいただけますか。
○水田政府委員 お答え申し上げます。
 私どもは、老人保健法に基づきまして一部負担を導入しましたけれども、老人の医療の受け方というものは、やはり受診率と一医療機関当たりの診療日数の総和で評価していくのが正しいのではないかと考えているわけでございます。それで、総体的に見ますと、外来の受診率に関しましては、マル寿の時代と新しい制度になってからとの比較をいたしますと、対前年同月比で見ますと、確かに新制度になって受診率は落ちておりますが、そのかわり一医療機関当たりの診療日数というのは伸びている、一つの医療機関に腰を落ちつけて受診をする、大変いい傾向が出てまいっておると私どもは考えておる次第でございます。特に老人は慢性疾患でございますので、先ほどお話しにも出ましたように、ホームドクター的に一つの医療機関を信頼して十分生活指導を受ける、また、そういう面に着目した新しい診療報酬体系もつくっておるわけでございますが、そういういい受診傾向が出てまいっておる、またそういう方向に私ども積極的に誘導をいたしておるわけでございます。
○永井委員 受診率はそれはいろいろの統計のとり方があるのでしょう。しかし、老人保健法が去年の二月に施行されて、本人の一部負担制が導入されたのですね。傾向としては今度と一緒でしょう。だから私はあえて聞いておるのですが、そのことによって受診率が本当に、変わらなかったのか、下がったのかを端的に答えてもらえばいい。余分なことは言わないでいい。
○水田政府委員 お答え申し上げます。
 医療というのは、単なる受診率だけで老人の場合評価すべきではなくて、受診率については端的には下がっておりますが、一医療機関当たりの診療日数は逆に延びております。
○永井委員 これは私は質問しながらちょっと注告しますけれども、医療論争をするならするということでまたこれは別なんですよ。私は端的に受診率が下がったかどうか聞いているのだから、それに余分なことを加えて、そのことの答えがあいまいになるような答弁の仕方というのは注意してもらいたい、こう思うのです。
○水田政府委員 お答え申し上げます。
 外来の受診率は、新制度になりまして対前年同月比で三・三%減っております。
○永井委員 それに関連することは後で申し上げるとして、確かめておきたいのでありますが、医療費の膨大な伸びが大変だからということが言われているわけですね。だから今回の法改正、こうなっているのでありますが、この医療費というのは、もちろん言わずもがなのことでありますけれども保険料でしょう、保険料が支払われたもの、それから本人の負担部分あるいは因が補助するもの、地方が補助する部分、あるいはいろいろな公害問題などについて言えば、それの責任をとって加害者が全額負担する場合もあるでしょう、それらを全部含めて医療費というふうに考えたらいいのでしょう。どうですか、端的に言ってください。
○吉村政府委員 大体そのとおりでございます。ただ、私どもが医療費と言います場合に、自費診療を入れるかどうか、あるいは労災というように事業主が責任を持つものを入れる方がいいかどうか、それは目的によって少し範囲を変えております。
○永井委員 そこで、この前当委員会で質疑をされた際に、この医療費の伸び問題で、大臣以下各局長がお答えになっている中身からちょっと申し上げてみたいと思うのでありますが、医療費を自然のまま任せると五十九年度は七・二%伸びる、今回の改正による結果は二・五%の伸びにとどまると答弁をしているのです。これは吉村局長ですね、答弁している。金額的に言えば、医療費の総額が十五兆五千六百億円になるはずが十四兆八千八百億円にとどまる、このようにお答えになっていらっしゃるのです。今委員長席に座っていらっしゃる丹羽委員の質問に対してお答えになったものです。薬価基準改定で、これは三月実施済みなんですね、一六・六%薬価基準を引き下げました。これを医療費ベースに直すと五・一%下がります。診療報酬の引き上げによって医療費ベースが二・八%上がります。この差が二・三%、金額にして三千五百億円だ、これも答弁されていらっしゃる。薬剤の使用適正化で千九百億円節減できる、給付の引き下げで千四百億円節減できる、合わせて六千八百億円節減できる、こう答弁されているのです。
 ここに私は議事録を持ってまいりました。それで、パンフでも強調しているのでありますが、十割給付ではむだが多い、薬づけの部分が千九百億円、この答弁の中身からいくとそういうことになる。いわゆる薬剤の使用適正化によって千九百億円節減できると言っておるのだから、これは薬価基準の引き下げじゃないのですよ。適正化です、使用適正化ですからね。これで千九百億円、不必要な受診が千四百億円、こういうことになるのですね。給付率の引き下げによって千四百億円節減できる、こう言っているのですから。合計三千三百億円が、このパンフレットで言ういわゆる十割給付の場合のむだな金額だというふうに、厚生省の場合はお答えになっていらっしゃるのですね。この流れからいくとそういうことになってくる。特に不必要な受診と断定している千四百億円の数字は、私どもが受け取る限りにおいては、受診抑制を意図してあるいは受診抑制を求めているということだと受けとめるのでありますが、そのとおりでございますか。簡単に答えてください。
○吉村政府委員 千四百億の方が料率変更に伴う医療費の減でございます。それで、千九百億の方は、いろいろな指導監査をするとか審査をするとか、それから薬剤の使用の適正化もするとか、従来から行っておりますような適正化対策というものをさらに一層力を入れてやることによりまして千九百億の節減ができる、こういうことでございます。その中には、支払基金における特別審査制、それから指導監査における顧問医師団による指導監査の適正化、そういうようなものによる医療費の節減額も千九百億の方に入っております。したがって、本人給付率の変更に伴う直接の医療費の減は千四百億と私どもは計算をいたしております。
○永井委員 いずれにしても、薬剤の使用適正化千九百億円と給付率の引き下げによって千四百億円、これを合わせて三千三百億円が、この議事録の答弁をずっと読んでいくとむだな分を省くということに該当するのですよ、答弁を読む限りにおいては。
 もう一つつけ加えましょう。大臣が、老人保健法の施行によって、あなたが答弁をされているのですからね、初診料の四百円、わずかこの四百円の負担でも大変な節減効果があった、こう答弁していらっしゃる。医療費から見ての節減でありますから、この四百円で大変な受診抑制ができたということになってくる。だから給付率の引き下げはやらねばならない、こういうふうに答弁をされていらっしゃるわけです。大臣が胸を張ってそうお答えになっていらっしゃる。片方で、十割給付を九割にしても八割にしても受診率は下がりません、こう言いながら、片方で、給付率を引き下げることによってむだを省くことができる、金額的には具体的にこれだけの金額がむだを省くことができる、こういうふうに言われているわけですよ。これは国民の健康と命を守る揺るぎない保健医療制度の確立という立場からいくと、お金がかかるから行くのを遠慮しようとか、今までは病院にかかったけれども、この程度なら本人の負担が入るのだからやめておこうとかということを政府の側は期待をしているとしか言ようがない。そうすると、揺るぎない保健医療制度の確立ということに逆行するのではないか。これについてどうでございますか。
○渡部国務大臣 私が再三申し上げておりますのは、今回の改正案を通していただいても必要な受診を妨げるようにはならない。しかし、やはり一割負担の導入ということで、これはむだな医療費はできるだけ節減していく効果を持っていくということを申し上げておるわけでありまして、老人医療の場合も、今日の我が国の経済状態の中で、現実に福祉年金の最低で我が国の老人の皆さん方は二万五千円の支給を受けておるわけでありますから、初診料四百円の負担によって老人の皆さん方が必要な受診が妨げられるようなことはない。しかし、やはり四百円の御負担を願うことによって不必要な医療行為はなくなるだろうという考え方でございまして、今回の場合もその点を大変心配しておりましたので、いろいろ私は勉強させていただきましたら、三割御負担の国保の皆さん方、また二割あるいは三割御負担の被用者保険の御家族の皆さん方と本人の受診率は変わってないということから、やはり三割御負担の皆さんでも必要な受診はこれは受けるのでありますから、一割御負担をお願いすることによって必要な受診は妨げられるようなことはない。ただ、今までも申し上げておりましたように、やはり全額負担のいわゆる十割給付の皆さん方と二割なり三割負担をしていただいている方では、その一人当たりの方のかかっている医療費というものが若干違っておりますので、必要な受診は妨げられるようなことはないけれども、むだな医療費の節減にはなるという信念で、私ども今回の改革案をお願いしているわけでございます。
○永井委員 受診率が下がらない、こう言うんですけれども、最前もちょっと時間がありませんから深くは議論しませんでしたけれども、厚生省は、十割給付も国保のように七割給付のところも受診率は変わらないとこう言うけれども、その医療に携わっている団体からすると大変な差がある、こう言っている。それを私なりにいろいろ分析してみると、やはり本人負担のある制度の方が受診率が低いことは間違いない、これは断定していいと思うのですよ。具体的な数字をここで専門的に挙げることはしません。だからそこのところが問題になるのであって、受診率は下がりません、変わりませんと言ってみたって、金がかかるんなら行きたいけどやめとこうかというのが、全体ではなくても人情的に出てくる、そのことが健全な医療を受ける機会を失わせてしまうという危険もなしとしない、これがまず一つ。
 もう一つは、今大臣のお答えになっているようなことからいきますと、必要な診療は妨げない、受診は妨げないが、むだな医療費は節減できる、こういうことに端的に言えばなるわけですね。そうすると、もし受診率が仮に百歩譲って変わらないとすると、そのむだとは一体何なのかというと、大臣の言葉やいろんな今までの議論の経過からいくと、診療に当たる医師が、これは極論でありますけれども、千九百億円に相当する医療を過剰に診療したということの裏返しになるんではないか、大臣のそういうお言葉を聞いておりますと。もしそういうことが意識の中にあったとすると、それはもちろんたくさんの医師ですから、摘発されたように不正なことをやった医師もありますし、これは私どももそのことはこの委員会で追及してきました、そういう経過はありますけれども、少なくとも千九百億円に相当するものを仮に過剰診療しておった、それが本人の負担導入によって節約できるということは、本人に直接金をその場で払わせるんだから、余分の診療をすることは問題があるというふうに仮に医師が考えて、その過剰診療をやめるだろうという前提に立つとすると、医師と患者の信頼関係は一体どうなってしまうのだろう。医療行政に対する国民の信頼は一体どうなってしまうんだろう。これは本来あるべき医療行政の立場からするとむしろそういう立場に立つべきではないんではないか、こう思うのですが、これはどうでございますか。
○吉村政府委員 神様のごときお医者さんと神様のごとき患者と相対すという前提に立つならば、おっしゃるとおりだろうと思います。私どもはやはりいろいろな統計から考えまして、また私自身いろいろお医者さんにも話を聞きましたし、個人的にもまた患者の方々からも話をいろいろ聞いてみると、十割給付の場合に、何がむだかというのはいろいろな意見があると私は思いますが、しかしながら、医学常識に照らして適切妥当かどうか、あるいは本当に患者の心身の状態や患者のニードに適確に対応した医療であるかどうか、こういうような観点から眺めますとやはり不適正な部分があるんではないか、こういうように考えますし、また、本人と家族の投薬、注射等につきましては約二、三割の違いがございます。現実に年齢階層別に調べましてもあるのでありますが、それはなぜかということについてなかなか合理的な説明がつかないのでありまして、私どもやはり、十割給付を九割あるいは八割というような給付率にすることによって、少なくともなかなか説明しがたいような部門につきましてはある程度節減効果が生ずるのではないか、こういうように考えるわけでありまして、私ども、先ほど御説明いたしました千九百億円の削減というのは、受診率が下がるために千九百億下がると言っておるわけではございません。投薬なり注射なりの医療費というものもある程度節減されるのではないか、適正化されるのではないか、そういうことも含めまして千四百億の医療費節減効果がある、こういうように説明をしておるわけでございます。
○永井委員 受診率が変わらずに、今言ったように投薬や注射の部面でかなりむだがあるとするならそれが節減できる、こう言われている、あるいは不適正な部分もあるのではないか、こう言われている。しかし、千九百億円の節減できるという数字の裏づけを持たせるためには、いわゆる投薬や注射が抑制されなくてはいけない、不適切と思われる部分がたくさんあってそれが排除されるという前提に立つ、そうなると、一部の悪徳医師がおったとしても、厚生省の立場からいうと、まさに初めから医師不信感を持った上での計算ということにもなりかねない、私はそういう危険性を持っていると思うのです。
 そこで、これに関連をして「薬づけ、検査づけ等不適切な医療は排除する。」とこううたっておりますから、これについて申し上げてみたいと思うのでありますが、もし薬づけ、検査づけが過剰診療を意味しているとして、もしそうだとすると、過剰であるか否か、いわわる適正な診療であったか否かということ、これは一体どこにその判断基準を求めるのですか。あるいは、この医師がこの投薬が必要だ、この注射が必要だということは、その患者を診たその医師が判断をしていくわけでありますが、その医師の裁量権、診断権の保障は一体どう見るのか。長い答弁じゃなくて、私は素人でございますからわかりやすく端的にお答えください。
○吉村政府委員 まず十割の場合とその他の給付率の場合との診療費の違い、その違いの部分がむだということになるのではないか、むだであるとすればそれはどういう判断基準で考えるのか、こういう非常に難しい、これは医療の問題は医師の裁量権、先生の御指摘のように裁量権に伴う問題でございますので、ただ、これが絶対的に正しくてこれが絶対的に間違いであるというのも中にはございますが、一般的になかなか判定の難しい問題でございます。
 しかしながら、私どもが、制度別にあるいは本人、家族別に、年齢階級別に、診療内容あるいは一日当たりの費用額というものを比較してみましたその結果、例えば入院外におきましては、二十歳から六十九蔵まで全体では一七%本人の方が金額が高い、年齢階層別に言いますと二十歳から二十四歳まででは二三%高い、それから五十五歳から五十九歳までは二二%高い、それぞれ年齢階級別に本人が高いわけでございます。これは検査につきましても同じような傾向がうかがえるわけでありますが、なぜ同じぐらいの年齢の人間で本人と家族の注射の費用、検査の費用が二割なり三割違うかというのはなかなか説明がつかないのではないか。確かに個々のケースをとれば、同じ風邪でも注射の数が違うとかあるいは投薬の量が違うとかレントゲンを撮る回数が違うとか、そういうケースは個々の場合にはあると思います。しかしながら、総体としてそういう年齢階層別に考えて、トータルで物事を考えて、なぜ二割なり三割違うのか、それはいろいろな事情はあると思いますが、一つの原因として、十割給付ということから生ずる不合理な点あるいは、ある場合にはむだと言ってもいいかもしれません、あるいは医師の裁量権なんだから裁量の結果そうなったのならしょうがないではないかとは申すものの、やはり医師の裁量が少し間違っておるのではないか、こう断ぜざるを得ないようなケースもあるのではないか、こういうように考えております。
○永井委員 もちろん本人の投薬代や検査料がいわば高くついている、数字が高い、これはいろいろな数字でも私どもは数字は納得ができるのです。しかし、私も最前触れましたように、休みたくとも休めないで仕事に行かなければいかぬとか、あるいは本来もう休養せいと言われていてもあしたから出張だからと無理して行くとか、家族とまた違ったいろいろな根拠というものがあると思うのです。だから、本人だから、家族だからといって果たして医師が必要な治療に差をつけるだろうか、私ども素人が考えて。だとすると、過剰であるかどうか、適正かどうかということを判断する場合の基準というものが一定のものを示されないと問題が残るのではないか、あるいは行政がチェックできる場合はどこまでが可能なのか、こういうことも明らかにしていかないと、不適切な医療の排除ということを言っても実効は上がらないと思うのですね。
 そこで、これに関連をして富士見病院の問題についてちょっと触れてみたいと思うのでありますが、この富士見病院事件というのは随分この委員会で質問がされました。その中で、一つには、保険医の指定機関としての不正があったかどうかあるいは無資格者の医療行為があったかどうか、これがまず一つです。二つ目には、医療行為が傷害事件に該当するか否か、大別するとこの二つだったと思うのです。医療行為が傷害事件だったかどうかということは、これは司法当局が調査をしてきたことでありますからここでは触れません。しかし、厚生省が調査をした対象というのは、いろいろ厚生省に聞いてみると、あるいは委員会の審議の経過を見ると、保険の対象となった医療行為について保険請求上不正があったかどうか、水増し請求があったかどうか、あるいは保険の適用について問題があったかどうか、こういうことが中心に調査をされているわけです。あの場合は健全な卵巣や子宮を摘出したということが問題になったのでありますけれども、そのときに富士見病院の医師の側が、この手術は保険がききませんよ、こう言って、患者の方にすれば、保険がきかないけれども、あなたはこれを手術せぬことには命がないよと言われたら、無理をしてでも、金を出してでも手術をやっていくといったケースが、患者からのいろいろな訴えを聞くと随分あるんです。そこで、一つには、病気の場合に、これは保険がききませんという件名が産婦人科病院においてあるのかどうなのか。
 ところが、厚生省が調べたのは、今言ったように保険を適用したものについて適正であったかどうか、不正診療があったかどうか、不正請求があったかどうかということを調べたのであって、その本人がだまされたりして、いわゆる自由診療の部分として医師と患者の関係で契約をして金を払った分について、それは医療行政をあずかる側からそれが問題があったかどうかということまでは当時調査をされていないという。では、今それを明らかにしてみたらどうかというと、今富士見病院は保険医機関の指定が取り消されているから、保険医機関でないから調査の対象にならぬ。これは一体どういうことなんですか。保険行政をあずかる側として本来保険に該当させなくてはいけないものを、これは保険がききませんとうそをついて患者に自由診療として金を払わせた、これにメスを入れなくて、富士見病院問題については不問に付してしまった。だから被害者は、持っていくところがないから今裁判に訴えているわけです。これで医療行政が全うできたということになりますか。これについて端的にお答えいただけますか、長い説明は要りませんから。
○吉村政府委員 私どもは、富士見産婦人科病院につきましては、保険医療機関の取り消しをいたし、また、院長以下医師三人につきまして保険医の指定の取り消しをしております。
 その指定の取り消しの理由でありますが、監査をいたしまして、無資格者による超音波診断装置の機械操作をして、その診療報酬を不正に請求をしたというのが第一点でございます。
 それから第二点が、健康診断で入院した者につきまして、その健康診断の費用を診療報酬として不正に請求をしたというのが第二点でございます。
 その他、指導もしないのに慢性疾患指導料等について請求をした、こういう事例がございましたので、不正請求を原因に指定の取り消しをしております。
○永井委員 この保険医の指定を取り消したということと、私が今お尋ねしているのは、端的にもう一回申し上げますと、保険がきかないと言って患者をだまして、自由診療を強要したケースがある。これについて私は厚生省に確認を求めました。そうすると、厚生省としては、健康保険の対象とした医療について不正の有無を調査したのであって、その限りにおいては不正はなかったとその当時調査の結果が出た、それ以外は自由診療であって、医師と患者の契約事項であるから調査の対象とならないとの回答だった、私はそこを問題にしている。だから、保険医の指定が取り消されたとか水増し請求があったとか不正請求があったとかということとは違うので、それはそれで問題でありをすけれども、私はここでは、自由診療でありますからこの調査の対象としなかったという回答があったことを問題にしているのです。高額負担の制度はありますけれども、病気で保険のきかないものがあるのか、五万一千円までは本人が負担するにしても、保険がきかないという病気があるのか、保険医でありながら患者にうそをついて自由診療を行って不当に医療費を取得したことが、行政としてなぜチェックする対象外になってまかり通ってしまうのか、あるいは自由診療部分として不当に払った患者の弁償は一体金銭面でもどうしていくのか、さらに事件発覚当時不当に自由診療したことについて確認しなかった、こう言っているのでありまして、確認できなかったというのではないのです、確認しようとしたけれども確認できなかったというのならまた別問題、確認しなかったというのでありますから、そこでは医療に対する行政の権限というもの、これは一体どこへ行ってしまうのか。この辺については不適切な医療をなくしていく、こう言っておるのでありますが、私からすれば、むしろ不適切な行政のあり方こそ早急に排除されなくてはいけないのではないか。ひとつ明確に大臣、簡単に答えてください、ここで論争しようと思いませんから。
○吉村政府委員 自粛診療であるか保険診療であるかというのは、普通の疾病の場合には大体保険診療になるというのが普通でありますが、産婦人科の場合には正常分娩というのは保険の対象になりません。したがって、恐らくその自由診療であるというのは正常分娩の領域の話であったのではないかというように私は思います。そういたしますならばそれは保険の給付外の話でございますので、私ども保険行政の立場からは介入が難しい問題であるというように思います。
 自由診療の部門について本当に何かあったのかというのは、これは医師として医師法に基づいて適確な診断をし治療をしたかどうか、そこに問題が限られるはずでありまして、問題は恐らく刑法の問題になるのではないか、あるいは医師法違反の問題になるのではないかというように考えております。
○永井委員 正常分娩が保険の対象外だ、こんなことはだれしもがわかり切っていることでありまして、私どもが患者から聞いているのは、子宮摘出手術とか卵巣摘出手術が、これは保険がききませんとだまされた患者が現にいるわけですよ。これは私どもは今調査をしておりますから、改めて調査をまとめた上で問題提起しますけれども、私がここで言いたいのは、いわゆる十割給付の場合にむだがある、こう言っている。そのむだが注射や投薬、検査、こういうものについて不必要な分までやられているのではないかという、いわば医師不信の立場で行政側が見ているわけです。果たしてそうなのかどうなのかということは、もちろんこれはきちっとした確証がなければ私もうかつなことは言えませんけれども、しかし少なくとも、十割給付であるからということで医師が常に過剰診療をしているという前提に立っての法案の改正を求めていくことは、医療行政上問題があるのではないか。むしろ実際に起きた事件で、本来医療をあずかる行政としてチェックの機能を果たさなくてはならない部面において、富士見病院で言えばそのチェック機能が働いていないと私たちは断ぜざるを得ない。だから、そういう不適切な行政の部分があるとすると、それをまず排除してもらいたいということを私は強く申し上げているのです。この問題ばかりで時間をとることはできませんので、私は強くそのことを要望して、次に移っていきたいと思うのです。
 その次に、負担の公平化の問題でありますけれども、これもたくさんの問題がありますが、私は時間がなくなりましたから端的に走ります。
 国庫負担ゼロの退職者医療制度がなぜ負担の公平化になるのか私にはわからない、納得ができない。これも医師会はかなり反論しています。十割給付を引き下げることによって、あるいは国保に対する補助金を削減することによって金が浮いてくる、金が浮いてくるから退職者医療制度というものをつくることができるのだ、こういうところに主眼が置かれているのではないか、こういうふうにも分析をしておりますけれども、しかし、この退職者医療制度は国庫の負担がないわけでありますから、そういう中でこれは公平化ということにはならないと私は思うのです。
 さらに具体的な問題でお聞きをいたしますが、例えば日雇い労働者の保険料率が、これは今度政管健保に統合されるのでありますが、千分の三十二から千分の四十二に引き上げられる、事業主は千分の五十、さらに来年の十月には現行の二倍以上という千分の六十八になっていく。政管健保は労使それぞれ千分の四十二でありますから、そういうことから言うと、これは零細事業主に対して逆累進という措置になっていかないか。決して負担の公平になっていかないし、むしろ重症者や長期入院療養者ほど結果として割高の負担を強いられることになっていきはしないかと思うのですが、どうでございますか。
○吉村政府委員 負担の公平というのは、制度ごとに制度全体として公平かどうかということを考える考え方と、もう一つは、個々の保険の中で公平が保たれているかどうか、こういうような二つの考え方があるわけでありますが、今回は、私ども、制度全体として制度ごとに保険の負担の公平を図りたい、こういうことで物事を考えたわけでございます。
 退職者医療につきまして国庫負担を入れなかった理由も、やはり被用者保険サイドとして全体としては国庫負担を入れなくても負担をする力がある、能力がある、こういう考え方で退職者医療制度に対しましては国庫負担を入れなかったということでございます。
 それから、日雇い労働者の保険料の設定の考え方についての御質問でございますが、今度日雇い労働者を健康保険の対象にすることにしたわけでございまして、その場合に、やはり一般の健康保険の被保険者と日雇い労働者の保険料の負担の間では、これは公平を期するのが同一制度の中では考えていかなければならぬ問題であろうということで、日雇い労働者についての特殊性というものが配慮できる限りにおいてはこの特殊性を尊重しながら、その他の面については一般の健康保険の被保険者と日雇い労働者である被保険者との均衡をとろう、こういうことで問題を考えてみたわけでございます。
○永井委員 退職者医療保険制度で言いますと、単純な言い方をするようで恐縮でありますけれども、本来なら国保に入る人が大部分だ、国保なら国の補助金が要る、これを退職者医療制度にして他の保険制度から拠出金を出させる、もちろん本人からも保険料は取りますけれども。そうなると、うまくいくのは国だけだ、端的に言ってそこにあるのじゃないですか。だから私は、この二十一世紀を目指すビジョンの中に貫かれている、非常に端的にわかっているものは、庶民の負担がどうあろうとこうあろうと、国の財政をできるだけ節減するということだけが突出して貫かれているということ、そこで私は申し上げているのでありまして、そのことが結果としていろいろな制度の仕組みの中で、いわゆる低所得者や零細企業の事業主に対して、逆累進という形になっていく可能性が極めて高いと私どもは指摘せざるを得ない。
 この問題についてはここで議論をしておったのでは切りがありませんから、私は厚生省の答弁には納得できません。これは私ども、あくまでも言っているように逆累進にならないように、負担の公平化というのなら本当にみんなが負担の公平化が納得できるような形にしなければいけない、このことを強く申し上げて、次の問題に入ります。
 これも端的にお答えいただきたいのでありますが、去年の五十八年八月十七日に、前の厚生大臣が、医療標準の概念の導入について見解を述べられました。この中で言っていることは、医療標準の設定についてはもちろん専門団体の意見を踏まえるということを言っているのでありますが、「医療標準の範囲を超える医療サービスに対する需要に応えるための民間部門、例えば高額所得者向けの自由診療やこのための民間医療保険など、いわば医療におけるニューフロンティアの育成が急がれなければならない。」、こういうことで、いろいろ前後はありますけれども、言っているのですね。これは下手をすると、いわゆるせっかくなくなった差額診療、差額ベッドの問題もそうでありますけれども、本来保険が強制保険制度、皆保険制度をとる以上、負担と給付の公平化からいって、自由診療の部分が広がっていくということは好ましいことではないし、金を持っている者は自由診療でどんな難病にも対応できるけれども、金のない者は辛抱しなくてはいけない、結果的に治る病気も治せなくなってしまうというようなことになってはかなわぬと思うのでありますが、そういう危険性にもつながりかねないと私は思うのですけれども、今の厚生大臣として、この医療標準制度の概念の導入という問題についてどういうお考えをお持ちですか。端的にお答えください。
○渡部国務大臣 私は、戦後三十九年間の日本を振り返ってみまして、医療の皆保険制度、あらゆる階層のすべての国民の皆さんが保険によって病気を治すことができる、また長期入院もできる、これはすばらしいことだと思います。ですから、二十一世紀の将来にわたってまでこのすばらしい医療保険制度を維持していくために、今皆さん方に改正をお願いをしておるわけでございます。
 ただ、やはり山出経済の中ですから、もちろん保険でどんな難病も長期療養もこれはできなければなりませんけれども、個人の志向として、やはりおれは自分の負担を余計しても個室でぜいたくな療養を受けたいというような人まで全部抑えるというわけにもまいりません。やはり国鉄の列車にも普通車とグリーン車があるわけですから、どんな難しい病気もできる限りこの保険の中で治せる、そういう制度の中で、個人の志向として、やはり自分の負担によってよりぜいたくな医療を受けたいという人の自由をも拒む理由はない、こういうふうに考えております。
○永井委員 この医療標準制度というものは、一歩誤れば、金を持っておる者は難病を治してもらうだけのことはできるけれども、金のない者は保険の範囲内だけでやれ、治るものも治らなくなってもそれは金がないのだからしょうがないという、昔のあってはならぬ時代のそういう医療行政につながっていくおそれがある、私はこう思いますから、単純に医療標準制度の導入などということで軽挙な政策の立案などはしないように、私は強く求めておきたいと思います。よろしゅうございますか。
○渡部国務大臣 全く同感でございますので、そのような考え方で進めてまいります。
○永井委員 その次に、もちろんこのビジョンの中にも触れられているのでありますが、環境をよくしていかぬことには人間の健康は維持できないという問題もあります。そこで、今まで公害問題など人的要因によって環境が破壊されてたくさんの犠牲が出たという問題が随分あります。大きな問題、ちょっと羅列してみましても、水俣病あるいは四日市病、カドミウム汚染、あるいは最近はオキシダントの問題も出てまいりました。オキシダントでしたかね、正確な名前は忘れましたけれども、それからカネミの油症事件、こういう問題もあります。これは過去に起きた問題でありまして、もちろんこれの始末もしていかなければいかぬ。しかし、これからこういうものが二度と起きないようにしていかなければいかぬ。私はこれは行政の大きな責任だと思うのですが、一言で言えばどうですか。
○竹中政府委員 ただいま環境の問題、特にカネミの問題に関連してお話しがございましたが、私どもといたしまして、食品等によって引き起こされる健康被害の未然防止は、御指摘のとおり大変重要であると考えておるわけでございます。今後こういった問題が生じないように監視、指導の徹底を図る、あるいは食品等による健康被害の未然防止をやるということで万全を期してまいりたいと思っております。
○永井委員 そこで、この中から一つ摘出をして、カネミ油症事件に関連をしてお尋ねをしたいと思うのでありますが、このカネミ油症事件というのは昭和四十三年に発生したんですね。四十七年からこの原因となったPCBの回収が開始をされた。これは政府の行政命令によって回収が開始された。この回収をした液状のPCBが五千五百四十一トン、実はその製造元である兵庫県高砂市の鐘化という会社に保存されていることはもう御承知のとおりであります。これを処理するについて今まで何回も何回も問題の提起がありました。しかし現実にいまだに処理されていない。四十八年には高砂でパニック状態が起きたこともあったんですね。そうして、この安全処理を促進すると言いながら、もうこれは地元の市議会の決議などを含めて十回以上にわたってなされて政府に陳情しているけれども、いまだにらちが明かない。この間、兵庫県の山崎地方で震度四の地震が群発をいたしました。ああいう地方でありますから地震は余り経験がないものですから、震度四でびっくり仰天したのは事実ですね。そのときに地元の消防署が何をしたかというと、黙っておっても一番に飛んでいったのは、そのPCBの保管してあるタンクの状態を見に行ったんですよ。海のそばですから、私どもが一番恐れておったのは、地震などでタンクにひびが入ってそのPCBが瀬戸内海に流れ込むと死の海になってしまう。水俣病どころじゃなくなってしまう。ところが、これだって十数年たっていまだに何の解決もできない。これで、片方で、医療費を抑制するためにいろいろな政策が要るとか二十一世紀の国民の健康を守るためのビジョンだと言ってみても、ある意味では、高砂市民にすれば、そんなことを言うんなら早いことPCBを何とか始末してくれ、こういうことになるでしょう。
 環境庁が見えていると思うのでありますが、これは一体どうするのですか。国民の健康を守るという観点からすると、これにどう対処するのですか。
○三本木説明員 お答えを申し上げます。
 御指摘の廃PCBにつきましては、メーカーであります鐘淵化学及び三菱モンサント化成の両社が回収をいたしまして、それぞれ兵庫県高砂市、三重県四日市市に保管がなされております。現在保管されております液状廃PCBは両社で約六千五百トンでございます。その大部分を占めております高砂市方面からは、たびたびにわたりまして、この適正な処理につきまして要望が出されておりますことは十分承知をいたしております。
 環境庁といたしましては、これらの液状廃PCBを適切な方法で早い時期に処理することができるように、関係省庁と、また地方自治体等とも十分連絡をとって対処してまいったわけでございますが、従来、一つのすぐれた方法として洋上焼却処理の実現に努めてまいったわけでございますが、関係方面のコンセンサスが十分に得られていない状況にございます。早急にその実現が望めない状況にございますので、自治体の要望も受けまして、他の適切な処分方法の実施可能性についても検討するようにという要望もございますので、従来の検討の成果も十分尊重いたしながら、関係の省庁及び地方自治体とさらに緊密にその問題の処理に一歩を進めるべく努力をしてまいりたいと思っております。
 なお、ただいま御指摘がありましたように、先般地震があったわけでございますが、その少し前にも、このような地震による不測の事故等によって問題が生じないように、必要な点検などの実施につきまして注意を喚起しておるところでございます。今後も、地元住民の方々の不安のないように十分努力してまいりたいと思っております。
○永井委員 もう言わずもがなのことでありますけれども、このPCBを保管することとあわせて、その製造会社の周囲をしゅんせつするだけでも、地元はもう既に四十数億円の金を使っているわけですよ。そして、たとえこれは企業が払ったとしても、カネミ油症で起きた患者に対して既に治療費として、厚生省の調べによると十一億六千八百万円も支払われておるわけです。これから毎年一億円ずつぐらい要るというので、いろいろなことで莫大な金が使われているわけです。荷億をはるかに超えるのですよ。それだけの金がカネミ油症事件が起きただけで使われるくらいなんだから、環境問題について、冒頭私が申し上げたように、職場の関係では労働省、教育の関係では文部省、環境では環境庁というふうに縦割り行政でありますけれども、よほど厚生箱も横の連携をとりながら、二十一世紀の大臣の好きなビジョンということに向けてこれから政策を進めていかないと、こういうことが起きてからではこれだけのむだな金をそれこそ使うことになるんだから、公害問題が起きないように、あるいは起きている公害問題についてもその解消に積極的に厚生大臣として努力してもらいたい。そしてPCBで言えば、地元ではもう十数年の悲願ですから、高砂市民だけがいつまでもまくらを高くして寝られないということが続いていかないように、これは政府の責任において処理をしてもらいたいということをお願いいたします。よろしいですね。
○渡部国務大臣 先生おっしゃるとおり、国民の健康な生活を守っていくためには、医療とともにやはり健康な生活が守れる環境の保全というのが非常に大事なことだと思います。
 今御指摘の高砂市の問題、私も地元の関係者から陳情をちょうだいしましたが、地方の自治体としては大変迷惑な状態にありますので、これからも関係省庁と緊密な連絡をとりましてできるだけ解決を進めていくように努力してまいりたいと思います。
○永井委員 それでは次に、具体的な健康保険制度の問題について若干質問してみたいと思うのです。
 国保の国庫補助の問題についてお尋ねいたしたいと思います。医療費に対する補助の基準を医療費ベースに置いておったものを、今度は給付費ベースに改める理由は一言で言ってどういうことですか。
○吉村政府委員 二つ理由がございます。
 一つは、高額療養費のウエートが非常に高まってまいりましたために、この高額療養費も補助の対象にする必要があるということでございます。
 第二番目が、医療保険に対する国庫補助は、政府管掌にいたしましてもあるいは日雇健康保険等につきましても、医療給付費に対する補助という格好になっております。したがって、この改正の際に、医療保険全体として給付費に対する補助制度に改めたい、統一をしたいというのが第二の理由でございます。
○永井委員 これは計算をしてみればわかることでありますけれども、医療費ベースから給付費ベースに改めることによってパーセンテージは四五が五〇%に上がっていくわけですけれども、従来の医療費ベースにすると三八・五%に減少していくわけです。いわば補助金のカットと言っていいと思うのです。これは私は、それぞれの自治体が持っている国保の財政に大きな影響を与えると思いますので、このことが保険料の引き上げに直結しないかを非常に心配するわけです。それはどう考えていらっしゃるのですか。
○吉村政府委員 今回の国保の国庫補助の改正は、退職者医療制度を創設したこと、あるいは医療費全般に対する適正化対策を強力に推進する、こういうようなことから市町村国保の財政負担もそれなりに軽減をされるわけでございまして、その財政負担の軽減の度合いに着目いたしまして国庫補助率を変更した、こういうことでございまして、現実にこれがために国保の保険料を上げなければならないという事態は生じないものと私どもは考えております。
○永井委員 この市町村国保に対して、調整交付金が給付費の一〇%と法改正の中で今度は提起をされておるわけです。これは全く調整を必要としない、また今までしてこなかった国保もあるわけですね。例えば東京都なんかの場合は今まで財政調整交付金をもらっていないということになりますと、その必要としないところには出さない、そうすると一〇%の調整交付金だけではどうにも困るというところが出てくる。これはどこまでの幅を持って対応するのですか。
○吉村政府委員 私ども、財政調整交付金の配分に上限を現在まで設けたことはございません。また今回の改正によって調整交付金の配分率に上限を設けてそれを超える場合にはカットする、こういうような措置を講ずるつもりは全くございません。
○永井委員 それでは、同じく補助金といいますか財政調整交付金も含めてそうでありますが、「一部負担金の割合を減じている等の市町村にあっては、政令で定めるところにより算定した額とする。」、こういうことが言われているわけです。これは一体何を意味するのか。ペナルティなのかどうなのか。
 端的にやりとりいたしましょう。私の兵庫県で言いますと、尼崎市では国保は七割給付じゃないのです、八割給付で実施しているわけです、これは国民健康保険法で言うと七割給付になっている。この場合に、例えば調整交付金を含めて政府の負担すべき補助額というのは、一割余分に国保が給付しているわけだから、これに対して私どもの理解では、七割給付だとすると七割給付に相当する分は同じようにするけれども、あとの一割分は見ませんよということだと私は端的にそう受けとめるのですが、それはそのとおりでよろしいですか。
○吉村政府委員 大体そのとおりでございます。給付率を引き上げるかどうかというのは市町村の御自由でございますが、私どもが調整交付金なり補助金を配るに当たりましては、同一の給付水準というものを前提にして波及効果も考慮し、公平に配分をしたいと思っております。したがって、有利にも不利にもならないように配分をするつもりでございます。
○永井委員 それではそれに関連をして、市町村国保の中に財政的な事情もあるでしょう、あるいはそこに住まわれている住民の方々の所得の水準もあるでしょう、大変な格差があるのです。最高のところは兵庫県の氷上町ですが一人当たり五万七千百五十三円、最低は和歌山の北山村で五千八百四十八円、これほど格差があるわけです。こういう大きな格差について私はやはり是正をすべきだと思うのですが、これはどうでございますか。
○吉村政府委員 確かに保険料の負担に今おっしゃいましたような格差があるのは事実でございます。ただ、保険料というのは医療費との関係で決める要素も考えないと不公平ではないか。つまり、現在の国民健康保険の保険料というのは、使う医療費の額と所得、両方の要素を勘案して保険料を決めておるのが現在の実態でございます。したがって、この保険料の水準を同一にすることは、現在の市町村という区域を基盤とした市町村国保におきましては非常に困難な問題がある、こういうように思いますが、私ども、そこの点はなるべく財政調整交付金の配分を通じて少しでも公平になるように、公平に近づくように努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
○永井委員 同じ国民健康保険でも、国保組合の場合、これについて具体的に端的にお聞きをいたしますけれども、これは今までは医療費の二五%プラス政令加算として医療費の一五%、その上に、例えば五十八年度で言うと臨時調整補助金として七十億円が上積みをされておった、これはいろいろな歴史がありますから上積みをされておった、こうなるのでありますが、これが給付費の三二%プラス政令加算として給付費の一五%相当額に改正する、こうなっているわけですね。これは今私が申し上げましたように、今までの医療費の二五%と政令加算として同じく一五%、七十億円の臨時調整補助金、こういうものの経過からいってその水準というものは確保されているのかどうなのか、お答えいただきます。
○吉村政府委員 結論から申しますと確保されておる、こういうことでございます。定率部分、先生の御指摘の二五%を今度給付費ベースに直しますと三二%に相なります。これは医療費ベースの二五%とほぼ同じ率でございます。それから、上乗せ分は今まで一五%というのが最高でございましたが、二%、五%、一〇%、一五%という上乗せ分があったわけでございますが、これを総枠といたしまして私ども一五%ということで予算を確保し、この一五%を全体的に公平に配分をしたい、こう考えておるわけでございます。
 ちなみに五十八年度の国民健康保険組合に対する国庫補助総額は千百九億でございますが、五十九年度におきましては千百七十四億でございまして、五・九%くらいの増額をしております。これは大体医療費の伸びに見合うものであろうと私どもは考えております。
○永井委員 そうすると、この市町村の国保組合もそうでありますけれども、その歴史的な経緯からいって、従来どおりそれぞれの国保組合なりそれぞれの市町村国保が、産業分布の状態もそれぞれで違いますから、その財政状況とか地域的な特徴もありましょう、そういうことから考えて、例えば建設国保について例をとりますと、十割給付を前提条件として当然認めでいろいろな対応策を立てていらっしゃる、このように理解していいのですね。
○吉村政府委員 健康保険の場合には健保組合について附加給付を認める、こういうことにしておりますので、国保組合につきましても、いわゆる建設国保等につきまして附加給付を認めるのはやむを得ない、こう思います。したがって、建設国保が依然として十割給付をやられる、こういうことならそれは認めるつもりでございます。
○永井委員 最後に、一定の負担割合を超えて給付をする場合には政令によって定めるところ云々ということを私が申し上げましたけれども、それはペナルティでないなということを私は確認をいたしましたが、そうではありません、こういうお答えをいただいておるわけでありますが、心配になりますので、もう一つお尋ねをいたします。保険発第一五号、昭和五十九年二月十三日に「昭和五十九年度国民健康保険の保険者の予算編成について」という通達が出ているわけです。その中に、どういうことが触れられているかというと、このように言っているんですね。「国民健康保険組合における取扱い」として、その第四項に「一部負担の割合を減じている国民健康保険組合については、これを実施していない国民健康保険組合との公平を図るため、療養の給付等の波及増分について国庫補助の対象から除外する予定であるので、これを実施している国民健康保険組合にあっては、この点を考慮して保険料の賦課を行うこと。」ということが出ているのです。これは、私がここで確認のために質問しましたように、例えば八割給付をしているところと七割給付でいっているところ、これは一割の部分は自前でおやりなさい、七割給付については差別をつけませんよということだというふうに確認をしたのでありますが、計算方式はいろいろあるんでありましょうけれども、八割給付、一割余分に給付をしているために、結果として逆に国の補助が不公平になって、減額されることなどにはなっていかないでしょうね。これを確認しておきたいと思います。
○吉村政府委員 波及効果をどう算定するかという問題はもちろんあるわけでございますが、私どもは、少なくとも同一給付で算定をしたならば同庫補助金はどういうことになるか、こういうことを基本に今回の国庫補助金の算定をしたいと思っております。したがって、八割給付にしたからといって有利になるとかあるいは不利になる、こういうことはないようにする、こういうことでございます。
○永井委員 それではその次に、医療費に対する審査の関係についてお尋ねしたいと思うのでありますが、被用者保険の場合には支払基金で行っているわけですね。国保の場合には国保団体連合会で行っているわけですね。この両者の間に審査の内容に濃淡があるのではないかというふうにいろいろ私どもは聞くことがあるのです。その実態はお調べになっていらっしゃいますか。
○吉村政府委員 御指摘のようにそれぞれ分かれておりますので、全く同一ということはございません。しかしながら、私ども、審査の基準あるいは審査のやり方等につきましては、両者ともに実質的に統一を保つように行政指導をいろいろやっております。現に総医療費の査定率というようなものを比べてみましても、国保連の方も約一%でございますし、支払基金の方も一%くらいでございまして、大体同じように運営をされておるのではないかと思います。ただ私も先生御指摘のように国保連の方が若干審査が甘いのではないか、そういう声を聞いております。したがって、この辺両者に不統一があるようでは困ることでございますので、今後ともひとつ統一がとれるように指導をしてまいりたいと考えております。
○永井委員 もう一言つけ加えますと、支払基金は全国で一本の組織になっていて、各支部になっているわけですね。だからこれを組織的に見れば中央で統括することができるし、統一基準というものできちっと処理することができる。ところが国保の場合はそれぞれ全く単独でありますから、それぞれの国保においてもそれぞれの審査の違いも出てくる可能性を持っているわけでありますから、せっかく負担と給付の公平という視点をお持ちになるとするなら、この審査の場合でも、そういうことでトラブルが起きないように本来ならやはり一本化すべきではないか、私はこのように考えますので、これをあえてもう一回提起をいたしておきたいと思うのです。支払い方法が二つもあるということは私は異常だと思うのです。これはやはり一つにすべきではないか、実はこのように考えているところであります。これをあえて申し上げておきたいと思います。
 多くの質問は積み残しになってしまいましたが、時間がやってまいりました。しかし、時間をオーバーするわけにいきませんので、最後の方で、もう一点だけお聞きしておきたいと思うのです。
 六月十九日の毎日新聞でありましたけれども、「異常に多い難病高齢者」ということでトップに記事が出ました。ここに切り抜きを持ってきておりますけれども、これは昨年二月の施行以来わずか一年余りしかたってないのですよ。これが厚生省当局にすれば、七十歳以上についても難病者が多いということでびっくりした、これは大変なことだということで、いろいろこれから新たに検討に入られるということなんですね。これ一つとってみても、あれだけけんけんがくがくの議論があった老人保健法の制定に当たって、厚生省が予想していなかったような事態が一年間で出てきているわけです。そうすると、これから最初の話に戻るようで恐縮だけれども、二十一世紀を展望して医療行政をこれから進めていこう、新たなものをつくっていこうという厚生大臣の意欲はわかったとしても、今この一連の質問の中で触れてきましたように、到達点として言っているものはこうだと思っているものはあるのだけれども、それを裏づける具体的なものはまだまだ精査されていない。老人保健法の施行後一年でこうなっていくことから見ると、なかなか厚生省がこのビジョンで言っているようなことにそう簡単にいくものではない、むしろ国民の負担だけがどんどん深まっていくような気がしてならぬわけですよ。だから、私はこれをまとめて申し上げれば、今回の健康保険法の改正案というものは、私流に言えば弱い者いじめであって、国の財政だけは確かに節減できるけれども、それがどこかへ負担が肩がわりされてしまう。退職者医療保険制度のように、国保に入れるべきものを他の保険制度の拠出金にも大きく負担をかけていくという、そして国の負担はゼロになっていくということが端的に示しているように、この健康保険の改正案というものは、全体的に見て、国民の健康を守るための本来の目的から見ると、必ずしもそれに即応したものとは言えない。むしろ、国民の側にとってもあるいは診療する医師の側にとっても、私はこの健康保険法の改正案というものは了解するわけにいかない法律案だ、このことを強く申し上げて、できれば撤回してもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○丹羽(雄)委員長代理 森木晃司君。
○森本委員 けさほど来この委員会の冒頭に大臣からの陳謝がございましたので、深く突っ込んでお尋ねすることはさておきたい、こう思っておるわけですが、最近、大臣の発言があちらこちらで、余りにも雄弁家の大臣でございますので、一言多いのが目立っているように思われるわけでございます。せっかくこの社労委員会も延長国会後初めて開かれる日でございまして、大臣の明るい表情を見たいと思って来たのですけれども、残念ながらきょうの梅雨空のように大臣の顔も曇っているのは、私も非常に残念に思うわけでございます。きのうの発言については、もう一日お待ちして、この委員会で発言していただければ素直に通る発言ではなかったかと思われるわけですが、大臣の真意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
○渡部国務大臣 私は幾たびもこの委員会で申し上げておりますように、これは国会で御審議を賜ったものでありますから、私どもの今回の政策については、これは私どもの考え方がベストのものであると私どもは確信しておりますけれども、しかし、これは国会で審議を賜って成立をさせていただかなければ実現できないわけでありますから、できる限り各党の皆さん方のそれぞれ賜りました御高見、これは謙虚に耳を傾けてまいりたい、こういう考え方に終始いたしておりまして、この考え方には全く変わりございません。
 ただ、今ありがたい御忠言を賜りましたように、何とかこの法案の趣旨を国民のできるだけ多くの皆さんに理解していただきたいという余りに、私の大変軽率な発言が先生方に御心配をおかけしたことを心からおわびするとともに、今後このような御心配をおかけすることのないように自重自戒してまいりたいと思います。
○森本委員 ぜひ今後も、こういった委員会で行えるようにお願いしたいと思うわけでございますが、さらに大臣、もう一つ、私は最近の大臣の院外での発言についてお尋ね申し上げたいことがございます。
 それは新聞報道によりますと、十六日の夕方、大臣が群馬県の伊香保町のホテルで開かれた関東地区歯科医師会連絡協議会に来賓として出席された、こういうことが報道されております。そして、その報道の内容でございますけれども、「好むと好まざるとにかかわらず、足りない医療費をどこでまかなうかとなると、最も恵まれた条件にあるサラリーマンなど被用者保険の人に一部負担を願うしかなかった」、サラリーマンの人にお願いをするしかなかったということを大臣がここでおっしゃっているわけでございますが、この会場は歯科医師会の会場でございます。もし大臣がそういう思いでそういうことをお願いしたいという状況下であれば、私は患者の皆さんにそのことを述べてしかるべきではないだろうかと思います。時がこういう時だけに、しかも場所が場所だけに、そして大臣の発言が発言だけに、要らない誤解を受けるのじゃないだろうがと私は思うのです。
 これは私が言っているのではなくして、この新聞報道によりますと、二つの紙面に書いてあるわけですけれども、「これらは「受診抑制につながる」として同改正案に反対している日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会に対し、事実上の取引条件≠示して譲歩を迫ったものであり、」こういうぐあいに書いてあり、また、あるもう一方の新聞では「この日の厚相発言には、改正案への反対を和らげる狙いがあるとみられ、日本医師会など診療団体がどう反応するか注目される。」、こういうふうに書かれているわけです。そしてまた、けさの新聞にも同じような趣旨の、取引ではないだろうかということが書かれているわけですけれども、私が伺いたいのは、大臣の真意はどこにあったのかという点でございます。診療報酬の引き上げのことをおっしゃるならば、まだことしの三月に二・七九%アップになっただけでございます。私は、診療報酬、技術料の値上げについては反対するものでもございませんし、これについては十分考えていかなければならない問題だと思っているのですけれども、こういった場所で、こういったときに要らぬ勘ぐりを与えられました大臣の真意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
○渡部国務大臣 最初のお尋ねの問題ですが、これは関東歯科医師会の連絡協議会で五十分ほど講演をしてくれということを前の大臣の時代から頼まれておりまして、今私が大臣になりましたので行ってまいりまして、健康保険法の今回の改正に至るまでの経過、また基本的な私どもの考えを申し上げまして、今御指摘ありましたように、財政が非常に厳しいゼロシーリングという予算編成の中で、今日三兆九千億支出しているこの医療費に対する国費の補助をこれ以上増額するということはなかなか大変である、そういうために私どもに迫られておる選択は、被保険者の皆さんの保険料率を上げるか患者に一都御負担をいただくことしかなかった、しかし健康の自己管理にお努めいただいて、医者に全然かからないで保険料だけを納めておる方もございますので、公平負担ということから、いわゆる現在の保険制度の中の給付率という面で最も恵まれた条件にある被用者保険本人の皆さん方に一割の御負担をお願いするようになったということを説明したわけでございますが、このことは私もたびたびこの委員会でも申し上げて、一部御負担をいただく被用者の皆さん方には大変恐縮であるという趣旨は、この社会労働委員会でも先生方の御質問の中で何回となくお答え申し上げたことを、今度の講演の内容の中で申し上げたのでございます。
 それから、診療報酬の問題についてもこの委員会でもいろいろ御指摘がありましたが、残念ながら、現行の診療報酬の中で技術料というものが重く評価されてないために薬づけ、検査づけに偏った医療が行われるのではないかとか、いろいろな御指摘を賜りまして、その際も、今日の厳しい保険財政の中でなかなかできないのでありますけれども、保険財政が許せば皆さんから承っておる御意見を尊重して、医学の進歩というものを前提にし技術料を重点にした診療報酬の改定というものに取り組んでまいりたいという私の考え方を申し上げたわけでございまして、決して新聞に書かれているように取引とか、それによって賛成させるとかいうことはございません。この委員会でこの健康保険法改正案に対して私が常に申し上げておる考え方を講演ということで歯科医師会で申し上げたのでございますので、ぜひ御了承賜りたいと思います。
○森本委員 向こうの会場でも御発言があったようでございますが、成立すれば診療報酬を上げるんだということをそういった会場でおっしゃられますと、やはりどうしても誤解を招くわけでございます。今大臣から御答弁いただいたように、決して取引でないというふうに我々は確信を持たせていただいてよろしゅうございますか。
○渡部国務大臣 はい。
○森本委員 それで、さらに診療報酬の技術料の問題でございますが、これはこの委員会でも非常に論議されてまいりましたし、大変難しい問題だと思います。
 私も、薬屋さんが薬でもうけるのはいいけれども、お医者さんが薬でもうかっていくこと自体はおかしいと思っておるわけでございますし、同時にまた薬価基準を引き下げて正しいようにしなければならぬ、それはそれでやる、そして技術料は技術料でまた別の次元で検討しなければならないと私は思うわけです。技術料の判断につきましては、この間の参考人陳述のときに吉田参考人がおっしゃっているわけですけれども、「技術料の評価でございますが、これは、これが一番よろしいという方法はちょっとないのじゃないか、」と専門のお医者さんがおっしゃっておるわけです。「この点が、技術料の評価というような簡単な表現をいたしましても、我々自身も大変苦慮しているところでございます。」ともおっしゃっていますし、また「技術料の評価というのは、先ほども申し上げましたように正確無比にできるというような第一義的な評価法はないだろう、こういうふうに思っております。」という答弁があるわけです。
 私は、技術料あるいは薬価についてもこれから十分考えていって、国民が安心して治療を受けられるようにしていかなければならないと思いますが、事この技術料という問題になりますと大変難しい問題でございますので、院外で余り軽々に御発言なさらないようにしていただかないと、技術料は中医協で決められていく問題でございますし、そういったこともあわせて大臣に慎んでいただかなければならない、私は苦言を呈する次第でございます。
 それから次に、保険制度の今回の改革でございますが、よく動機が不純ではないだろうかというふうに言われ、また見られるわけでございます。それは保険制度の改革ということよりも、むしろ財政対策の見地から出ているところがあるのでなかなかうまくかみ合わないのだというふうな考え方が数多くありますし、今回の委員会でも、今日までこの点の問題がいろいろと論議されてまいりました。私もそう思うのです。もし保険制度を財政上でいろいろと考えていくならば、もう少し需要と供給の両面から見直していかなければならないのじゃないだろうか、そういうふうに思うわけでございます。
    〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕片一方のサイドだけで今検討されているような感を私は受けるわけです。保険の目的は、大臣も御答弁いただいたし私たちも何度も聞いてまいりましたけれども、真に必要とするものには十分に手が届くようにしていくことが保険制度の基本的な考え方ではないだろうかと思うわけですが、今回の一割負担の導入の動機はそういう面からあるのじゃないだろうかというふうに思われる。さらにまた、健康保険の財政がどうであれ、それが保険の本質に関するような問題であれば、さらにさらに長い期間をかけて十分に審議をしなければならないのじゃないだろうかというふうに私は思うわけです。年金の場合にはもう十分審議を今日まで尽くされながら歩んできたと私も思うのですけれども、健保の場合にはまだそこまでいっていない。ただし、専門家の話によりますと、今日まで非常に論議されてきたのだというように私も何度も聞いております。しかし、私自身も医療については全くの素人でございます。今質問させていただいておりますけれども何にもわかりません。何にもわからない私にとってやはり唐突に起きてきたという観点から見ると、財政上の問題から来たのではないだろうかと言わざるを得ないわけでございますが、いかがでございますか。
○渡部国務大臣 医療費の適正化、節減、こういうことのために受益者である患者の皆さん方に一部医療費の御負担を願えないだろうか、こういう議論は昭和四十年以来、幾たびかこの社会労働委員会でもあるいはそれぞれ各党の政策懇談の場でも行われてきたということを私ども聞いております。したがって、本来であれば、この委員会でも社会健康保険制度の抜本改正ということが何遍か議論になっておったわけでありますから、やはり社会保障本来の方向である給付条件を一つにしていくとか、負担と給付の公平を図るとか、医療費の適正化を求めるとかいう意味での、これは思い切った改革がなされなければならなかったのかもしれません。それが行われない間に今日に参りまして、今非常に財政が厳しいときに今回改正案を出さなければならない状態になったものですから、先生方から、これは金がないから、財政の帳じり合わせのためにやったのだろうというような御批判もいただくわけでありますけれども、政府の立場で、私ども、これは予算、財政というのも極めて重要な問題でございますから、今日の「増税なき財政再建」という路線の中で、社会保障をできるだけ後退させないで、二十一世紀にまで、国民皆医療、皆保険制度というものを進めていくために、今回は患者の皆さん方に一部御負担をお願いしようという改革案を出さなければならなかったということでありまして、これは財政上の理由もございます。しかし、決して財政上の理由だけでない、我々二十一世紀の医療保険の改革を目指しての負担と給付の公平、そういう考え方もあるということを御了承いただきたいと思います。
○森本委員 財政上の理由でないという見地から御理解をいただきたいということでございますが、そういう趣旨をここでも何度か述べてこられました。そして、今また、予算のために何とかこれを通してくださいというふうな資料が与党議員の皆さん方だけに配られている現実がある。大臣、これは財政上の問題じゃない、御理解いただきたいとおっしゃるしりから、また、予算と長期の財政とは違うかもわからないですけれども、その文書が配られています。これは私、数日前にちょっと耳にいたしました。いつ私のところに来るのだろうかと、きのうまで私は楽しみに待っておったわけですけれども、ぎりぎりになってもついに、聞いておりましたけれどもきませんでしたものですから、これは手に入れさせていただいたわけでございます。読んでみて、もし予算上、財政上の問題でないというならば、ここでお願いされることについては、この「予算の根幹をなす重要な法案であり、この法案が成立しないと四、二〇〇億円の予算不足が生ずることから、」云々とか、「一カ月遅れると、約五〇〇億円余の国庫負担の追加となります。」ということがある。どうしてもと言うのであれば、もう少し先にきちっとお書きになった上で、財政上じゃありませんよと、雰囲気を出す意味でそれはもう一番隅の方に小さい文字で、こういうこともあるのでというふうに――そうでなく、これは一面の一番真ん中にどんと書いてある。それから、それに対するこういう「健保法主要質疑応答」という問答集が配られたそうでございます。これも私のところにきのうまで来ませんでした。勉強したいなと思いながらも来なかったわけです。ここは何と一番最初に書いてあるわけですね。一体どこに配られたのか知らぬが、だけれども現実にこういうものがプリントされてあるわけでございます。これは一番最初の段階に書かれておるわけですけれども、財政上の問題じゃない、二十一世紀の医療を考えてなんだというふうな大臣の御答弁を承り、さらにまたこういうのがこの数日前から出ておる、与党議員の方に出ておるということについて、大臣の考え方をお尋ねしたいと思います。
○渡部国務大臣 私がたびたび答弁しておりますのは、決してこれは財政上だけの理由ではございませんと申し上げておるのでございまして、財政上の理由もございます。今度の五十九年度の予算編成に際しては、私どもいろいろ苦慮しましたけれども、国の方向であるゼロシーリングあるいは「増税なき財政再建」という中で、これは我々の厚生省の予算というものの要求にも一定の限度がございます。今回の予算は九兆円を超して、ほぼ我が国の政策予算の二八%程度をちょうだいしておりますが、この辺が限度で、これは厚生大臣としては私はもっと欲しいのでありますが、全体のバランスの中ではこの辺が限度、したがって、これは医療費に出しておる金も三兆九千億、これはこれ以上要求することは、また獲得することも極めて困難な状態でございましたので、したがって、今回の私どもがお願いしておる法改正案、これが通りませんと残念ながら、五十九年度の予算は既に通していただいた、成立しておるのでありますが、この五十九年度の予算に四千二百億もの欠陥を生じてしまいます。これは、今日の厳しい財政の中で新たに四千二百億の増額補正をお願いするということは、大変厳しい状態でございますので、私どもは、まずこの予算を成立させていただいた与党の先生方に厚生省が置かれている苦しい実情というものを知っていただこうということで、厚生省の担当者が与党の先生方にまず説明をして歩いたものだと思います。社労の先生方は、厚生省の者よりこの点についてはもっと十二分な御認識をいただいている先生方でありますので、恐らく厚生省の者も上がらなかったのかと思います。
○森本委員 大臣、今、本当にいろいろと御説明をいただいているわけですけれども、財政が厳しいとかそういう問題についてはみんなもいろいろわかっていることでございます。それをあえてこうしてまた出されるという形、財政面だけで今度見てしまいますとそういう形になってしまう。健康という、また命という大事な問題の視点を横に置いて、この資料だけを見ますとまるで恫喝に近いような感じになってきますし、先ほどの大臣の御答弁を聞いていますと哀願に近い感じになっています。車を買うから金をおくれ、車を買うことに決めたから何とか金を準備してくれというやり方である。あるいはまた、もう少しうがった見方をしますと、このやり方は車を買ったから免許証をくれと言うておるのです。そうじゃないですか。車を買ったから免許証をくれ。いやいや、免許をとるには交通安全法もいろいろと知って、ブレーキとアクセルの使い方も全部わかった上で、ではあなたに免許を出しましょうというのが免許証の出し方です。この文章のいろいろ繰り返されているのを見てみますと、こういうやり方を見てみますと、本当にだだっ子が、もうおかあちゃん、車を買うたがら何とか免許証を警察へ行って無理でももろうてきてくれと、もろうてきてくれへんなら、この軍使われへんと言っているのと同じ、こういう考え方になるのじゃないだろうかと思うのですけれども、大臣、いかがですか。
○渡部国務大臣 今先生御指摘のお話し、私は、これは恫喝では決してございませんで、むしろ先生御指摘のような哀願だと思いますけれども。五十九年度の予算は既に与党の先生方の御賛同で成立しておるわけでございます。この予算の中に、予算関連法案として今度御審議をお願いしておる法案を成立させていただくという前提の予算になっておりますので、この法案を成立させていただかないと、五十九年度既に御理解を賜っておるこの予算執行に穴があくということで、ぜひ御審議、成立をお願いしたいということから言えば、私ども先生方に哀願をしているというふうに御認識をいただくような状態になっておると思います。
    〔委員長退席、丹羽(雄)委員長代理着席〕
○森本委員 どうか大臣、院外でたびたび今申し上げたようなことがありますと、我々はもうまじめな健康保険の論議ができなくなってしまう。どうか今後も、こういった問題について、またそういったやり方について、十分国民が納得できるような手順を踏んでこれからもお願いしたい、やってもらいたいというように思うわけでございます。
 延長国会に入りましてからしばらく国会も休会状態になっておりましたけれども、この間健康保険問題に関する声もさらに大きな声、世論となって今出てきておりますが、地方自治体の反応が数多くございます。四月二十六日の地方自治体決議あるいは意見書、反対の決議や意見書が、四月二十六日現在では、都道府県では三十六、市町村では千四十六というふうにさきの委員会で報告がございましたけれども、その後現在はどのような状況になっているか、お伺いしたいと思います。
○吉村政府委員 私どもは五十九年の六月十九日現在のものを持っておるわけでございますが、三十七都道府県、それから市町村の数にいたしまして千七十二でございます。
○森本委員 今またふえつつございます。このように申し上げますと、カーブが緩くなったとか、あるいはまだ三分の一だけだから三分の二が残っているとかいうお答えになるかもしれませんけれども、要するに一番国民との接点である地方議会が、今都道府県ではほとんどと言ってもいいぐらい、そして、それぞれの地方議会でもこれはまかりならぬというふうに意見がなされ、決議がなされ、意見書が出されてきているわけでございますが、これについて大臣、どのように考えておられるか。先ほども申しましたように、私も医療の専門家でございません。ですから、私も、一番国民の身近な部分で感じるわからない部分の方でございますので、どうか、これほど出てきておるということはまだ国民のコンセンサスを得ることはできていないと思うが、大臣、どうですか。これはちょっとまずかったな、もう一度背広を脱いで考え直そうというような考え方はございませんでしょうか。どうです。
○渡部国務大臣 私どもの努力が足りなかったという御指摘はちょうだいしなければならないと思いますが、今回の改正案のよって来るゆえん、またこの内容、これを国民の皆さん方によく知っていただければ、私は国民の皆さんの幅広い理解をちょうだいすることができると思っておるものでありますが、私どもの努力が足りなかったために、ただ今日まで、十割給付であった被用者保険の皆さん方に一割の御負担をお願いするという点のみが幅広く伝わりまして、負担がふえるということは好ましくないというようなことでこういう趣旨の決議等がなされておると思いますが、私は、この改正案のよって来るゆえん、内容、これを十分理解していただければ御理解を賜るものと思って、一生懸命理解を賜るように頑張っておりますとまたおしかりを受けなければならないということであるわけですが、私はできるだけおしかりを受けないような慎重な配慮の中で、今後もこの改正案の必要なゆえんというものを幅広く国民の皆さん方に理解していただきたいと思っていますが、それにはまず、その国民の皆さんを代表して御審議を賜っておるこの委員会の先生方、特に野党の先生方に御理解を賜りたいと思います。
○森本委員 努力が足りなかったから三十七の都道府県から意見書や決議が出た、それだけじゃないと私は思うのです。努力はされたのだけれども、まだわからないというところで、まだまだ出てきておるのではないでしょうか。一生懸命努力されたと思いますよ。厚生省も今までにないようなりっぱなパンフレットもおつくりになりましたし、努力のあらわれだと思います。何とかこの法案を通そうという努力のあらわれだし、いろいろな医療機関の雑誌を見ますと、大臣がにこやかにスポーツ選手や女優さんと対談しておられる記事が載っておる。大臣も厚生省の皆さんも一生懸命努力されておる。しかしわからないのじゃないでしょうか、考えておられることが。私も非常にわからないのです。それはなぜか。
 私は、同僚の議員が、この委員会が始まってあるいは本会議で大臣が、二十一世紀、二十一世紀と言って医療制度を考えるならば、中長期ビジョンを出してください、このように何回も何回もお願いし、そのことを申し上げ、ほかの先生方もそのことを申し上げてこられたわけでございまして、この文書が二十一世紀ビジョンとして、これは取り急いでかどうか知らぬが、私はけちをつけるつもりはございませんけれども、我々の要望にこたえて「今後の医療政策の基本的方向(厚生省試案)」というものをお出しになった。これをお出しになったわけですけれども、これがわからないから、みんなが、医療は今後国が言っている、政府が言っている方向、やり方に納得していいのかどうかということが国民には理解できないでいる、しかも負担という問題で来ておるものですから、ますます納得させることができないと思うのです。
 しかも、今こうして出していただきました資料でございますけれども、本来ならばこの健保の論議に入る前にこれが出されまして、しかも、柱だけあってその建て方はどないしていくのか、屋根の形はどないなっておるのか、あるいは壁はどんな色になって、隣の音が聞こえぬようになっておるのか、そういう具体的な内容がほとんどないわけです。それで施主さんに、これだけの設計図を見せて、あなた、この家は冬暖かく夏涼しいからここへ入ってくださいよと言っても、施主さんとしてはなかなか納得できないのが今日の健康保険の論議ではないだろうかと思うのです。
 せんだって参考人が陳述に立たれましたが、このときは大臣がおられませんでしたから、岡村参考人が私も思わず拍手したくなるようなことをおっしゃっていましたので、その後読んでいただいたと思いますけれども、もう一度ここで、この「二十一世紀のビジョン」ということについてその人の所感が述べられているので、それを引用し、御報告をさせていただきたいと思うのです。
 「強制する面だけが時期が明記されていて、残りが書かれてない、このようになりますと、いわゆる日暮れて道遠しという感がしないでもありません。また道の遠い中で、ちょうちんは出されてなるほど明るくなるかのように感じますけれども、ろうそくがついてない、マッチがないという」のが、この「二十一世紀ビジョン」についての所感だとおっしゃるわけです。私も本当に拍手したくなるように、これは本当だ、すばらしいのをいただいたけれども、さっき申し上げたように、家の柱はわかったけれども、それがどうして建っていくのかわからない状態で施主に納得せいと言っているのと同じことじゃないかな、このように思うわけですけれども、いかがでございますか。
○渡部国務大臣 確かに先生御指摘のように、私ども、この健保法の抜本改正を提出する際に、総合的な二十一世紀を目指してのビジョンというものをあわせて持つべきであったろうと思います。その点を先生方から数々御指摘を賜りまして、私ももっともだと感じましたので、その後、社会労働委員会あるいは予算委員会の先生方の貴重な御意見を賜りながら、この貴重な御意見をできるだけ取り入れる形で、私どもは今回のビジョンをつくったわけであります。
 具体性が乏しい、あるいは時期的な明示がないというお話してありますが、これは政府という立場でなかなか具体的な数字や何かを明示することは困難でございましたが、しかし、先生方からちょうだいいたしました、例えば医療機関と福祉施設の間の中間施設というようなものは大変貴重な御意見としてこれを取り入れさせていただくとか、また、国保をできるだけ早く今の七〇%の給付を八〇%にすべきであるという貴重な御意見を賜りましたので、これも私ども、六十年代後半のできるだけ早い時期にそういう方向に持っていきたいということを書いておるわけであります。
 先生からおっしゃればこれはなまぬるいということでございますけれども、今日の低成長の中の厳しい財政という中で、私どもにとっては、六十年代後半のできるだけ早い時期にやりたいということを書き込むのにも、これはみんなで相談をいたしまして、まるで清水の舞台から飛びおりるような決意が必要であったということも御了承賜りたいと思います。
○森本委員 せっかく「二十一世紀をめざして」という骨子をおつくりになったのですから、どうかこれをよく充実させていただきたいと思うわけでございまして、我々も保険制度というのは考えなければならないと思っております。思ってはいるけれども、この「二十一世紀のビジョン」が余りにもわからないから、今行われていることも私たちは理解することができないわけです。
 ということは、最初にこれを出せばよかったわけです。私は、最初のボタンのかけ方を間違ったんじゃないだろうかと思うのですね。もう一度ボタンをきちっと、間違ったかけ方を一たん外して、そして一からボタンをかけ直すということ、そんな考え方はいかがでしょうか。もう一度この「二十一世紀のビジョン」から入って、そして国民にもわかっていただきコンセンサスも得ることができて、それでこの問題をもう一回真剣にやろうということはいかがでしょうか。
○渡部国務大臣 先生方から大変ありがたい、これはビジョンもやはり一緒に出すべきでないかという御忠言を賜りまして、私どもも、その御忠言に対し謙虚に素直に、一生懸命頑張ってこれをつくりましてボタンをかけ直しましたので、もうこれで進めていただきたいと思います。
○森本委員 もう一度ボタンをかけ直し服を脱いでやれというのと、いや、もうボタンのとめ直しだけやりましたという論議を幾らやっても前へ進みませんので、それでは、この厚生省試案を立派なものに仕上げていっていただきたい、もう一度見直していただきたいというのが我々の切なる思いでありまして、この試案を今論議すること肉体もおかしいかもわかりませんけれども、論議しなかったならばますます国民にわかりにくくなりますので、この中で私の感じたことを何点かお尋ね申し上げたいわけでございます。
 まず、この厚生省試案――厚生省試案と私もさっきから申し上げておりますが、これは恐らく財政的な裏づけがない、大蔵と話し合いは恐らく詰めていらっしゃらないと思うのです。もう見ますと、今日まで出てきた問題をざっと、さすが有能なる厚生省の皆さんでさっとつくり上げられたものじゃないだろうかと思うのですけれども、さらに突き詰めていきますと、そういう有能な皆さんでありますからもっともっと詰めることができるはずですが、その辺ができなかったがゆえに「厚生省試案」という形になっている。「試案」にするかどうかは随分思案されたと私は思いますが、なぜ「試案」となったのか。
○吉村政府委員 思案の結果「試案」としたのではないかということでございますが、確かに私ども、今回のビジョンというのは、一応私どもの胸の中にあったもの、あるいは大臣が大臣になられてからいろいろ政策的な発言をされた問題等を全部まずまとめてみよう、こういうことでまとめたものでございまして、今後の厚生省の保健あるいは医療に関する政策の基本的な目標みたいなものを示した、こういう性格のものでございます。したがって具体的な肉づけがないではないか、あるいは財政的な裏づけがないではないかという御指摘でございますが、現在の段階では御指摘のとおりなんであります。
 また、本来なら政府部内で全体的にまとめる、こういうことも恐らく必要なときが来るのであろうと思いますし、また財政当局とも十分打ち合わせをして、財政的な裏づけを持った少なくとも計画に近いようなものをつくり上げていく、こういう作業が必要なのであろうかと思いますが、私ども、現在の段階では、厚生省として厚生大臣を初め我々の頭の中にある政策目標をひとつまとめてみょう、こういうことでまとめたものでございまして、「厚生省試案」以上の表題をつけるのはなかなか私どもとしても不適当だ、こう思いますし、「厚生省試案」以外の何物でもございませんし、また以上の何物でもないというのが現在のこの「試案」の中身であろうと思います。
○森本委員 だから、これからどうか年次計画について、年次計画の場合も負担の部分だけが明確になっていまして、給付の部分がほとんど明確になっていない、またそのほかの二十一世紀へ向かっての環境づくりをどうするのかということが明確になっていないわけでございます。我が党は、二十一世紀の中長期ビジョンをと申し続けてまいりましたので、裏づけを今後十分に検討していっていただきたいと思うわけです。
 この中で「給付と負担の公平化措置(一元化)」というのがございますが、この一元化というのは、保険料の一元化でしょうかあるいは制度間財政調整の一元化になるのかという点。それから、六十年代後半というのは六十九年十一月も六十年代後半になります。いつほどのめどなのか。後半としかつけられないのはなぜか。この二点についてお願いしたいと思います。
○吉村政府委員 私ども、医療保険の一元化ということでもって意味する内容は、負担の面だけではございませんで、給付と負担の両面に現在見られます制度間の格差、こういうものを是正いたしまして、すべての国民にとって給付並びに負担の両面にわたって公平な制度になるようにすることを一元化だ、こういうように考えておるわけでございます。
 それから、一元化の時期でございますが、「六十年代後半」こういうように遠慮をして書いておるわけでございます。私どもは給付を将来少なくとも八割給付というものを頭に描いておるわけでございますが、八割給付に持っていくために一番難しいのは国民健康保険制度でございます。例えば私ども計算をざっといたしましても、国民健康保険を仮に五十九年度で七割から八割にしようと思えば二千六百億円の新たな財源が必要なわけでありまして、すぐに給付率を引き上げる、こういうことがなかなか難しいのであります。そして、この難しさというのは六十年度になればできるかというとやはりそれだけの自信がない。いずれにいたしましても、多額の財源を必要とする場合には、やはり今後の医療費の状況なりあるいは退職者医療制度を今度お願いしておりますが、退職者医療制度の実施の状況なりあるいは国民健康保険の財政状態なり、そういうものを総合的に勘案しなければならない。ちなみに、国保を実施しておられる市町村長の中には、七割でいいではないかという議論もございます。八割にすべしという議論もありますが、七割でもいいのではないかというような、国民健康保険の実施主体そのものにもそういう危惧をお持ちの市町村長さんもおられるわけでありまして、これから国民的な合意というものを取りつけていくためにはやはりかなりの時間が要るのではないか、こういうことを予測しておるわけでございまして、私ども「六十年代後半」と書きましたのは、実施時期を明確にすることが現段階ではどうしても自信を持って明示することができない。しかし、六十五年まであと六年あるわけでありますから、六年間の期日をかければ国民的な合意というものを形成するに十分な時間ではないかということで、さしあたって「六十年代後半」という表現を用いたわけでございます。
○森本委員 次に、そのすぐ後に「給付の八割程度」というふうに書いてありますけれども、これは給付を八割へ持っていくプロセスあるいは財源対策が明示されておりませんし、程度というのはどの程度のことでしょう。
○吉村政府委員 私どもは、給付割合を考える場合に、現在も実施しておりますが、高額療養費制度というものを今後も活用していきたいと思っております。したがって、仮にフラット部分を八割といたしまして高額療養費をそれに加味いたしますと、例えばやり方いかんによりますが、八四%ぐらいの給付率になるとか八五%の給付率になるとか、しかし非常に薄い高額療養費を採用するとすれば八二%になるとか、いろいろなパーセンテージになるわけでありますが、少なくともフラット部分八割にプラス高額療養費制度というものを頭に描いて「八割程度」という表現にしたわけでございます。
○森本委員 八割給付率の定義なんですけれども、もう一度定義について。
○吉村政府委員 いかなる場合でも給付をする、それだけの給付はするという法定の給付率を私どもフラット給付率というように考えております。
○森本委員 「八割程度」の「程度」は実質給付率なんですか、フラット給付率なんですか。
○吉村政府委員 「八割程度」といった場合には私どもは実質給付率を頭の中に描いております。それで、フラット八割プラス高額療養費ということで、実質給付率は八割程度になるし、法定給付率ということになりますと八割、こういうことに考えております。
○森本委員 厚生街からいただいた五十九年度の国民医療費の内訳での保険負担が八〇・三%となっています。もう既に今八〇・三%ですから、六十年代後半までいかなくても八割程度というのであればいけるのではないかと思うのですけれども、それとの絡みですね。
○吉村政府委員 八〇・三%というのは、ちょっと数字を持っておりませんが、確かに政府管掌健康保険では改正後には八四・八%の実質給付率になる、こういうように考えております。それから、組合健保におきましては八七・二の実質給付率になります。そうして、国民健康保険では七七・九%の給付率になるわけでございます。したがって、本人について九割給付をして、家族につきましては入院八割、それから外来七割ということで、かつ高額療養費制度を加味するならば、今申し上げましたような実質給付率になるわけでございます。
 そこで、私どもは、政府管掌健康保険、組合管掌健康保険等につきましては九割給付というものを将来は八割に持っていく。同時に、家族につきましては七割を八割に引き上げていく。そして、国民健康保険につきましても八割給付に持っていって、そしてフラット給付率は八割に統一をし、かつ高額療養費の実質給付があるわけでございますから、これをプラスいたしまして八十何・幾らというような実質給付率にしたい。それを「八割程度の給付率」ということで目標にしておるわけでございます。
○森本委員 このビジョンについてはもう少しいろいろお尋ねしたい点もありますが、次へ進めさせていただきたいと思います。
 退職者医療制度を新たに創設することが今回の改正の柱になっております。これも何度か言われてきたことでございますが、国庫負担がゼロである、健保の精神からいくとやはり国庫負担をしなければならないというふうに私は思うわけでございますが、その点をお尋ねしたい。
 それからもう一つ、この財政負担の肩がわりを拠出金によってしていただくわけでございますが、これの歯どめがないということでございます。これも厚生省からいただきました資料でございますが、「任意継続被保険者制度の仕組みと状況」というところでございますが、これからだんだん退職者も、この五十一年から五十六年まで継続被保険者がふえてきておるわけでございます。これは一体どこまでどうなっていくのか、際限ないものなのか、どこで歯どめをするのか。今回そういった歯どめの部分がないわけですが、国庫負担のことと歯どめのこと、御答弁願います。
○吉村政府委員 退職者医療制度に国庫負担を入れるべきかどうかという議論はいろいろとここでも御議論をいただいたわけでありますが、私どもは今回の退職者医療制度というのは被用者保険制度の体系に属する制度だというように考えております。ただ、その実施の便宜のために国民健康保険の窓口を借りて実施をする。したがって性格いかんということになりますと被用者保険だというように考えておるわけでございますが、被用者保険だと考えますと、これにつきましては被用者保険全体としてこの退職者医療制度の費用を負担するわけでございますので、被用者保険グループというのが国庫負担を入れなければならないグループかどうか、こういうことを考えてみますと、退職者医療費を賄うに足る負担能力を十分有しておるグループだというように考えております。非常に比喩的に言いますならば、退職者を相手にした新たな全国的な健康保険組合をつくったみたいなものでございまして、私はこのグループは国庫負担を入れなくても十分運営ができるグループだ、こういうように考えて国庫負担を入れておりません。
 それから、今後退職者医療の費用がどんどんふえて歯どめがない、そのために負担についても底なしの増加をするのではないかという危惧があることはそのとおり、そういう危惧があり得ると思うのでありますが、私ども、今回、退職者医療制度を実施するに当たりまして拠出者のサイドの意見が反映できるような仕組みをつくっております。例えば社会保険審議会で十分この拠出の問題を審議をする、こういうような仕組みもつくりましたし、また、国民健康保険の運営につきまして被用者保険サイドから拠出者側の意見を十分述べることができるような仕掛けもつくりましたし、いろいろなことで歯どめの措置を講じていきたいと思っておりますし、そういう措置を講じておるわけであります。また、非常に長期的に考えましても、退職者医療制度の費用というのはそれほど大きな額にはならないと私ども考えておるわけでありまして、現在五十九年度におきまして退職者医療制度の実施のために必要とする料率は千分の五・七四でございます。これが三十年後にピークになるのでありますが、そのときの料率が千分の九・八でございます。したがって、三十年間で千分の四ふえるぐらいの費用の増加だということで、これぐらいは負担できるのではなかろうか、こういうように予測をしておるところでございます。
○森本委員 退職者医療制度は我々も賛成するものでございますが、問題は、先ほども申し上げましたように、局長からも御回答がございましたように、三十年後が一番ピークになるわけでございます。そのとき拠出金がたえ得るものかどうか、これからも十分によくその成り行きを見守っていかなければならないと私は思う次第でございます。
 同時にもう一つ、退職者医療制度は六十歳から十年間が対象となっておりますけれども、五十五歳定年の場合には任意継続被保険者制度があるというわけでございますが、二年間はつなげますがあと三年間はございません。労働省の雇用管理調査では・六十歳定年制をしいている企業が四五・八%、まだまだ半分以上が五十五歳の定年である、その谷間の人に大臣は任意継続期間延長を検討する、こういうふうに約束をされているようでございますが、どうされるんですか。
○渡部国務大臣 これは先生御指摘のとおり、退職して退職者医療になるまでの空白期間があっては大変気の毒な状態でございますので、これらの点については先生方の強い御指導をちょうだいしながら善処をしてまいりたいと思います。
○森本委員 次に、高額医療制度についてお伺いしたいと思います。
 「所得に応じた仕組みを導入するなど今後その抜本的な見直しを図るべきである。」と制度審が言っておりますが、私はきめ細かな配慮が非常に必要ではないだろうか。また、けさの新聞に戻るわけでございますが、大臣がここでは「一割負担の導入によって、標準的なサラリーマンが重い病気にかかっても、生活が破壊されないようにする。」こういうふうに考えておられる点でございますが、やはり高額医療制度というのは暦月方式、それから一人一レセプトという仕組みの中に問題が数多く起きているのではないだろうか。よく言われていることでございますが、一家族四人おって四人とも病気になる場合もあり得る、その場合に五万円だとしても二十万円かかる、こういう問題に対して家族単位で考えることができないものだろうか。税金の場合等々はそういうふうになっておりますけれども、それができないものだろうか。また暦月方式でございますが、この暦月方式でいきますと、月末に受けてまた今度月初めにその医療がかかりますとそれだけ高くなるということ、これも三十日単位という形でその病気にかかった日から起算して考えることはできないだろうか。また、レセプト方式でございますから、盲腸が悪いということでその人が仮に五万円かかって、同時にまた、咽喉が悪かったのでそちらの科の方へ行きますとまた五万円払わなきゃならない、こういう点について今後高額医療制度についてどうされるのか、お伺いしたいと思います。
○渡部国務大臣 これは政令で私どもが定めるわけでございますが、いずれにしても御心配いただくような問題は、この健康保険法の改正案を通していただくことによって非常に心配な問題が出てくるという問題でございますから、私はこの健康保険法の改正案を通していただくことによって、被用者保険の皆さん方がその負担のために生活破壊が行われるようなことがあってはならないと考えておりますので、これから先生方の御意見を十分に尊重してそういう心配がないという方向で勉強をし、また皆さん方の御意見を聞きながらそういう心配のないような方法を考えていきたいと思っております。
○森本委員 暦月方式とかレセプト方式については、考えるというのじゃなしに、検討されている部分というのは現在あるのですか。実際はどうなんですか。
○吉村政府委員 私ども、たびたび、高額療養費制度につきまして今先生が御指摘になられましたように、一医療機関、一暦月、それから一患者、こういうことで高額療養費制度が現在運用をされておる、その結果今御指摘のような問題が起こるというのは十分承知をしております。なぜそういうようなことになっておるかというのは、やはり現在の制度が月単位に、個人別に、また医療機関ごとにレセプトで高額療養費を算定し、そのレセプトごとに手作業で高額療養費をはじいていかなければならない、こういう現在の制度が基礎になっておるために、そういう仕掛けにならざるを得ないわけでございます。したがって、基本的に根本的にこれを直そうとすれば、現在のレセプト単位方式というものに手をつけなければこれはなかなか完全に問題点の解消ができないわけでございます。私ども将来にわたっては、コンピューターを導入してコンピューター化を進めていきたいと思っておりますが、コンピューター化できれば今先生御指摘のような世帯合算、あるいは疾病が始まってから転帰まで、あるいは一医療機関に限定しないで計算をするというようなことは非常に簡単にできるようになるわけでありますが、それまでの間、現在の事務処理体制というものを前提としながらどういう工夫があるかということで今検討を進めておるわけでございまして、先生御指摘の問題点を全部解消するのはなかなか難しいかもわかりませんが、一部でも前向きにひとつ実施をするつもりで検討を加えておるところでございます。
○森本委員 次に、難病患者の公費負担の現状について質問をさせていただきたいと思いますが、公費負担見直し、これは一月三十一日に、厚生省は、公費負担医療制度を中長期的な観点から見直す方針を定めたというふうにおっしゃっているわけでございますけれども、難病患者は非常に大変でございまして、この難病患者の人々は、一つの病気にかかったならばもうそれにずっと取り組んで、その病気と生涯闘っていかなきゃならない、これは大変な費用負担になるわけです。この公費負担見直しというのは、難病患者への負担は一体どうなっていくのかということを非常に心配しておられるわけでございます。
 一昨日の社労委員会のところでも、私は腎臓患者の皆さん方が私に寄せてくださいましたお手紙を読ましていただきましたけれども、それは雇用促進の角度からお話しさせていただきまして、きょうはそういった方々の医療問題、将来どうなっていくのかということをお尋ねする意味からも、奈良県の腎臓患者の方が私に渡してくださいました手紙を少々読ましていただきたいと思うのです。
 透析は週三回、一日に五時間以上全身の血の入れかえをする、大変な苦痛に耐えていく。「さて週に三回と言うのは簡単ですが、社会生活から考えますと週三回会社に出勤できないわけです。」こういうふうに書いてあります。事情をいろいろ聞きますと、もうほとんどが会社勤めをやめざるを得ない、週に三回透析でございますから。そういう状況下でございます。出勤不足等々があってやめなければならない。透析は夜すればいいじゃないか、そういう設備もあるというふうにも伺っておりますが、広い奈良県においてたった二つしか夜間に透析してくれる病院がないわけでございます。こういう状況から見ると、やはりだんだん会社をやめていかなければならない。生活が大変になってくる。そこでまた戻りますが、「障害年金を受給していても、週三回の通院はやめることはできません。」、障害年金に頼っているわけです。「県下透析施設の偏在するため、人にもよるが、交通費が高額で生活費を圧迫し、」、内臓疾患の人には運賃の割引が適用されておりませんので、交通費が背日額になってくるわけです。「時には、体調不良のときは往復ともタクシー通院の余儀なきに至り、いよいよ生活費に食い込んできます。また、透析療法は機械が毒素を除去するだけでなく、」、「私たちは体内に生理的に生ずる毒素を排せつする機能を失っておりますゆえ、透析医療で自分の血液を体外に取り出し、機械(人工腎臓器)にかけられて洗浄し、体内に返血するという難療法で救命されています。この透析療法は週三回、一回に五時間以上、全身の血の入れかえは生きるための苦痛であり、これに耐えています。さて、週に三回と言うのは簡単ですが、社会生活から考えますと週三回会社に出勤できないわけです。」、このようにもう生活面が大変、栄養もなくなりますからいいものを食べなければならない。したがってそのためのいろいろなお金が要る。ここでも書いておりますけれども、決してぜいたくしているわけじゃないけれども、「当然生きるために、はた目には一見ぜいたくな高たんぱく、高カロリー食事を摂取の必要があり、」というふうに書いて、幼児を抱えたりしたらもう家計は火の車だ。そして「このたび政府は、健康保険制度の改革を実施するようなことになれば、透析医療費は高額ゆえに、例え一割といえども、月十五回以上の回数の医療費を支払うと、年金や少ない稼ぎを全部はたいても支払い得るか大きな疑問で、透析医療は死ぬまで続けねばなりませんが、金の切れ目が命の切れ目につながる」、こういうふうな切実なる訴えでございます。
 透析患者が非常に心配しておられるのはそのことでございまして、一透析患者は一体どうなるのか、具体的にどうなるのか、難病の私たちはどうなるのかというふうな数多くの疑問が私たちのところに寄せられております。これは今回の改正の中にあってもまた大事な問題でございますので、これがどうなっていくのか、御答弁願いたいと思います。
○持永政府委員 今先生お話しの人工透析を受けておられる患者の方々の医療費の自己負担につきましては、現在、身体障害者福祉法に更生医療の規定がございまして、その更生医療に基づきまして一定の費用徴収という規定がございますが、そういった範囲内で更生医療の給付の対象といたしております。
 今回、健保の改正がございまして被用者本人の医療費自己負担についてそういうものが出てきたといたしましても、身障福祉法に基づきます自己負担分、それに新しく出てまいりました自己負担分につきましては、身障福祉法による更生医療の対象ということで考えて、そういった御心配が起きないようなことを考えております。
○森本委員 公費負担の見直しのところではこれは出てまいりませんか。見直しをするということですが……。
○持永政府委員 現在、私が申し上げましたのは公費負担医療の見直しという観点ではなくて、現行の身障福祉法による更生医療が、自己負担分については自動的に給付対象になるということでございますので、保険で自己負担分になった分については更生医療がその分だけ給付される、こういうことでございます。
○森本委員 今後、この難病の方、今挙げました腎臓患者の方ですけれども、今以上に負担が大きくなるということはあり得ないんですか。その辺について伺いたいんです。
○持永政府委員 人工透析を受けておられまして、少なくとも身体障害者福祉法によります更生医療の給付対象となられるような患者の方々については、先生が御心配のようなことはございません。私どもとして、給付はいたすつもりでございます。
○森本委員 この腎臓患者の方々以外にも難病を持っておられる人たちが、今回の健保改正で、もって将来私たちはどうなるんだろうかということを大変今心配されておられるわけでございまして、こういった患者の皆さん方にも一つ一つ、改正する部分の話だけじゃなしに、御心配の大丈夫な部分は大丈夫ですよというふうにいろいろと言ってあげることがまた健康保険を一歩理解させることになっていくんじゃないだろうか、このように私は思う次第でございます。
 時間が参りましたので質問を終えさせていただきますが、大事な保健医療の問題でございますし、何度も申し上げますように、私たちの健康と命にかかわる問題でございます。どうか、さらにさらに慎重に審議していただきまして、よりよきものにしていただきますことを念願いたしまして質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。
    〔丹羽(雄)委員長代理退席、委員長着席〕
○有馬委員長 伊藤昌弘君。
○伊藤(昌)委員 お疲れでしょうが、もうしばらく御辛抱をいただきとう存じます。
 まず、国立病院が問屋から医薬品を買い掛けで購入をしますが、その支払い期間は一体どのくらい、何カ月くらいになっておるか。大臣、御存じでしょうか。
○正木政府委員 この三月に薬価改定がございまして、その後、医療機関との価格調整というのが非常に難航しておったわけでございます。そういうことで、この代金の支払いに当たりまして医療機関側との交渉を続けておるようでございますが、かなり時間を要しておるということで、物によりましては三カ月ないしそれ以上もかかっておるというところがあるわけでございます。
○伊藤(昌)委員 三カ月ぐらいならまだしも、そんなものじゃないでしょう。もう調べておられると思うが、もしそれを知らなかったら私の方から申し上げる。言いましょうか。
○吉崎政府委員 国立病院が購入いたしました医薬品をどれくらいの期間で支払っておるかということでございますが、これは病院によりまして必ずしも一定いたしておりませんけれども、長いのでやはり三、四カ月のものがあろうかと存じます。
○伊藤(昌)委員 大臣、実態調査していないかあるいはうそをついておる。私が調べたところでは、大病院は仕入れてから六カ月、七カ月半、それも納品書に日付を入れないで品物を納めさせる。どうして納品書に日付を入れないのですか。
○吉崎政府委員 ちょっととっさのお尋ねでございますので、ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、国立病院におきましては医薬品は非常に重要な費目でございまして、なるたけ効率的に購入をしようという努力をしておるのでございますが、会計法規を守ることにつきましては常に厳しく指導しておるところでございまして、ちょっとただいまそういうことがあるかどうか、後ほど……。
○伊藤(昌)委員 会計法規は、できるだけ早く払ってやれという内容でしょう。それなのに六カ月も七カ月もおくれるのじゃ。
 ちょっと申し上げますよ。国立医療センターが六カ月、国立小児病院が六カ月、国立東京第二病院が六カ月、国立大蔵六カ月、大阪病院六カ月、大阪南病院七カ月、大阪泉北病院七・五カ月、滋賀県の八日市の病院六カ月。これはどういうことです。病院の放漫経営その極じゃありませんか。幾ら政府が放漫財政で大赤字をつくったからといって、病院は何もまねさせることはありません。病院経営のどこが悪いのですか。相手は中小企業者。一生懸命お医者さんの言うとおりになって物を納めていて、そして大してもうけさせもしないで六カ月、七カ月も引っ張るということはどういうことですか、大臣。
○渡部国務大臣 先生御案内のように、医療費は毎月医療機関に保険で払っておるわけでありますから、当然その時点の中に薬代も含まれているわけですから払えるわけであります。それが六カ月も七カ月もおくれているということは好ましくないことであり、今先生御心配のような中小企業の問題もありますし、よく調査して、適切な指導をしてまいりたいと思います。
○伊藤(昌)委員 どうぞお願いします。支払基金は三カ月でお金をくれるのですからね。何に使っているのです。直ちに調査をして、すぐ改めてください。こんなことではひど過ぎますよ。
 その次に移ります。
 日本医師会の幹部は次のようにおっしゃいます。今の医療は官僚的保険制度のための医療なのか、医療のための保険制度なのかと問われると、制度に医療が従属しており、これでは正しい医療とは言えません、医療は医師や薬剤師のためのものではなくて、医療は国民のためのものであります、国民のためにならない医療ならば国民のためになる医療につくりかえる、こうおっしゃるが、私もそのとおりだと思うのです。
 そこで、お医者さんの中には実に頭の下がる立派なお医者さんは大勢いらっしゃる。保険局長、私は薬剤師ですからお医者さんをたくさん知っております。薬で利益を得ようなどと考えず、処方せんを発行して開局薬剤師たちに生きがいを与えてくださる立派なお医者さんも次第にふえております。これに対して本当に私は真心から感謝の意を表したいのであります。ところが、逆に水増したとか不正診療、過剰診療、こんな内容については、これは古いことですから、今申し上げても時間のむだ、言いません。これはひど過ぎる。いろいろ事例が書いてあるのを持ってまいりましたが、ここで申し上げる必要もないでしょうから申し上げませんけれども、こういうことでは医師会の言われる正しい医療とは言えないと思います。ごまかしのやれる原因というものは一体どこにあるか、こういうでたらめなことが平然と行われておる原因というのは今の医療制度の一体どこにあるか。これは答弁は長くならないで、こことこことここと、ひとつおっしゃっていただけませんか。国民にわかるように、政治というものは国民にわからせなければいかぬ、私に答弁をなさるのではなくて国民にわからせる気持ちで、こことこことここが悪いということでひとつお話をいただきたい。
○吉村政府委員 現在の制度は出来高払い方式でございます。したがって、行った診療行為の量が多ければ多いほど収入がふえる、こういう仕掛けになっております。その診療行為の量を決定するのは医師でございまして、医師の裁量権に基づいてそれが決定をする、こういうことになると思います。
 したがって、一つは、医師の倫理あるいは医学常識というものが診療報酬の多寡を決める、収入の多寡を決める一つのポイントになることは事実であります。
 それから、変な言い方でございますが、利潤率の高い診療行為をやるならば収入がふえ利潤も上がる、これも事実であります。利潤率が高い診療というのは何か、こういうことになりますが、一つは薬の問題であります。先ほど御指摘のような薬価がなかなか決まらない、こういうことでございますが、それはやはり値引き率が決まらないために取引がおくれていくわけでありますが、値引きが非常に多ければ多いほど薬価差益がふえる、そうして薬価差益が大きい薬を使えば収入はふえる、こういうことに相なります。
 それからまた、検査等につきましても、今検査技術というのが発達しておりまして、検査をする項目が例えば二十あるとか三十あるとかという検査機器が発達しております。したがって、その二十なり三十なりの検査項目がその患者にとって全部必要かどうかは別として、自動的に必ず二十なり三十なりの検査をする、こういうような検査になっておる面がございます。そういう場合には不必要な検査が行われておる、こういうことに相なります。
 したがって、私どもは、現在の診療報酬制度の最大の欠陥として指摘されるものを申し上げますならばそういう点ではなかろうか、こういうように考えておるわけであります。
○伊藤(昌)委員 結局、よくこういう言葉を使います、秘密治療。こういう医療制度を続ければ、やはり人間ですから次第次第に欲をかきたくなってしまって、そして、だんだん医師の良心よりもそろばん勘定の方に流れていく惰性というものがつくのではないか、こう考えます。しかし、立派なお医者さんも大勢いらっしゃるのですから、処方せんはどんどんふえておる。この辺のところを医師会とじっくり話し合いをしていくべきではないかと思うのです。
 そこで、本人と家族の薬剤費に二、三割も違いがあるというのはどういうわけですか。本人はよく診て家族はよく診ないということなんでしょうか、薬剤費に違いがあるというのは。
○吉村政府委員 薬剤費が本人と家族で二割ないし三割違うのは事実であります。なぜ違うのか、ここが私どもの思い悩むところでありまして、なかなか説明がつきがたい部門でございます。
 ただ、一つの理由としては、やはりただだからそれだけの過剰な診療が行われるであろう、こういう推測は十分成り立つわけでありまして、今回の一部負担も、やはり自分のかかった医療費がそれによってわかるならば、そこにお医者さんと患者さんとの間に一種のプライスメカニズムみたいなものが働くことによってその二、三割多い部分が少しは縮小するのではないか、こういうように私どもは考えておる次第でございます。
○伊藤(昌)委員 ああ、そう。そういう考え方ですか。
 大阪、京都の医療費は、東京の医療費の何倍と向こうの方が増高しておるということを聞くのですが、これは本当ですか。これはどういう違いがあるのですか。
○吉村政府委員 東京と大阪を比べました場合に、大阪は、本人の外来が千四百六十四点でございます、一カ月の一件当たりの診療費が千四百六十四点ですから一万四千六百四十円、こういうことになると思います。東京は九百七十八点、したがって九千七百八十円ということでございまして、ちょっと計算ができませんが、一・五倍ぐらいにはなっております。これが外来でございます。それから入院につきましては、本人は大阪が二万九千二百七十二点、したがって二十九万二千七百二十円、東京は二万六千六百二十三点、金額に直しますと二十六万六千二百三十円、こういうことでございます。余り差がございません。
 そういうところでございます。
○伊藤(昌)委員 薬の卸屋さんの売り上げを尋ねてみますと、大阪で物を売っていらっしゃる業者ですが、昨年、ことし、一割から二割薬の売り上げが減退をしているという。薬価基準を下げたのは五十六年からでしょうが、そういうものとそう関係なく、昨年、ことしと問屋の売り上げが下がっておるというのはどの辺に原因があるか、お調べになったことはございますか。
○吉村政府委員 詳しく調べておりませんが、医薬品の売上高の伸びが急にとまった、こういう事実は存じ上げております。ただ、その原因というのは、一般的にはレセプト審査が非常に厳しくなったんではないか、こういうような御指摘もありますけれども、私どもはやはり売り上げがそう伸びなくなった理由というのは、薬価基準の改正を、五十六年からことしの五十九年の三月まで三年間の薬価基準の引き下げ率が約四〇%程度になっております。したがって、医薬品を使っても従来のような薬価差益というものを利得することができにくくなっておることは、これはもう事実だと思います。したがってそれが売上高に響いてきておるんではないか、こういうように思います。
○伊藤(昌)委員 日本の医薬品の問屋の数、それから外国の問屋の数、日本、西ドイツ、イギリス、アメリカなど、比較するとどのくらいの数になりますか。
○正木政府委員 ただいまここに外国の卸の数は持ち合わせておりませんが、日本の卸は概数で申しますと二千と言われております。卸連に加入しておりますものが大体大手のもので五百と言われておりますが、中小その他をひっくるめますと二千くらい。外国に比べまして卸の数はかなり多いというのが現状だと思います。
○伊藤(昌)委員 私がせんだって尋ねましたところが、西ドイツは三十一、イギリスが四十、アメリカが百三十、日本が五百十五、そのほかに現金問屋というのがあるそうですが、現金問屋というのは何ですか。
○正木政府委員 現金問屋も薬事法に基づきます卸売一般販売業の許可を受けている業者でございますが、これは比較的汎用される医薬品を主体といたしまして、現金決済で行うということで行われているものが通常現金問屋と言っておるものでございます。
○伊藤(昌)委員 どこから仕入れるのですか。どういうところから。
○正木政府委員 実はその現金問屋の実態というのはなかなかつかみにくいわけでございますが、この現金問屋が購入しますものは、製薬メーカーあるいは一般の正規卸が資金繰り等で現金問屋に流すという場合もございます。そういったものが大体多いわけでございますが、一般に言われておりますのは、逆流と申しまして、医療機関からそれが流れているんじゃないかというようなことも言われるわけでございますが、その実態はなかなかつかみにくいというのが実情でございます。
○伊藤(昌)委員 要するに現金問屋なんというようなおかしなものが繁盛するということは、医薬品の流通にもっと厚生省ががっちりメスを入れていかないからこういう姿になってしまうんだろう。「所得隠し3年で6億」「納税額 医師で1位の病院長」、これは三和病院、これなどはトンネル会社を別につくっておいて、そして大量仕入れをして単価を安くさせておいて、そして自分の病院で使う以外の物は現金問屋へ流す、こういうのが相当あるから、やはり現金問屋が成り立つだろうと思うのですがね。全くこれはひどい日本の医療制度、全部薬づけだもの。どうしてこんなことを許しておいたんでしょうね。立派なお医者さんが大勢いらっしゃるにもかかわらず、立派なお医者さんの方に味方をしないで、おかしなお医者さんばかりに味方をして、そして日本の医療制度をめちゃめちゃにしてしまったのじゃないかと私は考えるのであります。そこで、薬価基準を実勢価格に近づけようとしておるのが厚生省でございましょう。
 そこで、私もその実態を調べてみましたけれども、まず大臣、メーカーが卸に薬を売る場合、伝票は千円で書かれておりますが、支払いのときには五百円値引きして五百円を支払わせる。それから今度、卸が病院に薬を売るときには、伝票は八百五十円にしておいて、実際の入金は五百五十円。何でこんなからくりをやるのでしょうか。こんなごまかしをメーカー、卸の双方が一体なぜやらなければならないのか。なぜやるのか。ずっとこういうことが続いておったのでしょう。これは私の思いまするに、薬価基準が実勢価格より高過ぎるから、実勢価格を高く見せるからくりでこういう伝票操作をずっとしてきた。これを厚生省は今度調査をして全部明らかになさったと私は聞いておりますが、そうですか。
○正木政府委員 薬価調査につきましては毎年一回実施するということで、今回で申しますと、四月取引分について五月に、販売業者については全数、それから病院につきましては十五分の一、診療所につきましては百分の一、薬局については二分の一を抽出しまして購入サイドの調査をいたしたわけでございます。それの実勢をつかんだわけでございます。
 それから、先生のおっしゃいました医薬品の流通問題、これはまさに先生のおっしゃるとおりで、非常に複雑な形態になっているということは事実でございます。そこで、この流通問題についてはかねてから問題とされておりまして、医薬品の流通の現状等につきまして、さきに、五十三年度だったと思いますが、医薬品の流通の産業の実態調査というものも実施いたしたわけでございます。
 そこで、先生のおっしゃいますように、医薬品の価格形成というものが、メーカーから卸に仕切り価格、その仕切り価格をもとにしまして、卸が医療機関に納入いたしますときにはそれを値引きをして納入をする。その差分について値引き補償が行われる、さらに年二回あるいは一回リベートが行われるということで、非常に複雑でわかりにくい形態をとって今日まで来ておるわけでございます。
 そういうことで、医薬品の流通面について明朗化を図るべきではないか、また流通の近代化を図るべきではないかということで、現在関係者も集まりましていろいろ協議をいたしまして、流通近代化協議会というようなところで、取引条件め改善とか流通の近代化というものを今せっかく検討しておるという状況でございます。
○伊藤(昌)委員 今、その実勢価格と薬価基準との差というものをどれだけ厚生省は把握をなされており、そしてそれをどの程度近づけようとしておるのかということについて、これは私、まだ厚生省側から伺っておらないけれども、まだまだ相当ひどいのがあるようですね。塩化リゾチーム、それから消炎酵素剤などはその差益がまだ七〇%、三百円のやつが一千円。それから競合品のたくさんあるもの、これは俗に言うソロ品と言っておるようですが、そういうものも総じて安い。それから抗生物質、内服薬、これもやはり五〇%くらいの違いがある。半値ですね。何で厚生省はこういうものを調べられないんでしょうかね。私のような片手間な者が知っておって、どうしてでしょうかね。
○正木政府委員 先ほど申し上げましたように、薬価調査につきましては、毎年一回販売サイドと購入サイドの調査を行うわけでございますが、これは白計調査ということで、調査対象でみずから記入をしてもらうということで、調査対象月の、今回ので申しますと四月取引分について、五月に四月一カ月分の記入を願う。そしてそれにつきまして、経時的に変動もございます、あるいは中には正確を欠くというものも出てまいりますので、他計調査ということで、流通調査官というものを、これは増員もいたしておるわけでございますが、国の職員と県の職員とが一体となりまして、個々の対象に調査に参りましてチェックをしておるということで、できるだけ正確を期した調査を実施しておるつもりでございます。
○伊藤(昌)委員 私も厚生省と一緒に実地調査をしたことがないから、これは空論になるかもわかりませんが、国立病院とか公立病院をまず調べてみて、それから今度は、つながってそこに納めておる卸屋さんへ行って徹底的に調査してみれば、本当の実態がつかめるのじゃないか。本当にやる気でやっておるのかどうかと疑いたくなるけれども、しかし、このごろは吉村局長になってからかなりやる気でやっておるように私は感ずるのですが、ほかを見ておってそう感じますがね。せいぜいひとつ、お国のためなんだから、お願いをしたいんです。
 さて、そこで、薬価基準を下げると、今問屋とかメーカーが非常に窮地に追い込まれる、こう言っているんですがね。徹底して下げるなら窮地に追い込まれるかもわからぬけれども、今申し上げたようにまだまだ相当な差益があるのに、一五%や一六%下げたからといって問屋が倒産するほど、あるいはメーカーがこれから開発費が捻出でぎなくなるくらい窮地に追い込まれるということは、一体どこに原因があるのでしょうかね。まだこれだけ差益があるのに、一割やそこら下げて何でそんながたがたしなければならぬのでしょうか。またほかに何かからくりがあるんじゃないですか。
○正木政府委員 この三月に一六・六%薬価の引き下げが行われたわけでございますが、過去三年で約四〇%の改定が行われたわけでございます。この改定というのは、実際に取引されている額を把握しまして、実際にメーカーなり卸が購入しておった価格を把握しまして、それによって下げるわけでございますが、実際問題といたしまして、現在のシステムにおきましては、残念ながら医療機関側が薬価差に期待するという現実があるわけでございます。下げたものを土台といたしましてさらに値引き交渉が行われるということで、非常にメーカー、卸が苦しい状況にあるということ、これは現実でございます。
 それと、さらに言わしていだたきますと、メーカー自身もそういうことによって薬価改定による影響というものが非常に大きいわけでございますが、卸はやはりメーカー依存と言うと言葉が悪いかと思いますが、メーカーのもとに卸というものが、メーカーの消長が卸に反映してくるということで、メーカーが財政的に経営的に非常に苦しくなってまいりますと、卸に対する値引き補償であるとかリベートといった面でいろいろ支障が出てくる。現実には卸というものは非常に厳しい環境に置かれておる。要するに、現在の薬の市場環境というものが、これまでのようにどんどん販売量が膨らむということはこれからは期待できないわけでございますから、そういう市場環境の中で非常に経営的に苦しさを増しておるということは、これは現実だというふうに思うわけでございます。
○伊藤(昌)委員 わかった。薬価基準を下げるから、またその分だけ問屋をたたくから、問屋やメーカーは苦しくなると言う。まさに、最も悪質な商取引をずっと悪い慣行で続けてきたということがはっきり出てくる。私もかつては商人でしたが、そこまで欲はかかない。やはり相手の立場というものをよく考えて、双方が立つようにやった。今までの日本の厚生省は、そのくらいいわゆる医療関係者を悪くしましたね。もとはもっと純粋だったはずです。それを薬価基準を下げたら、下がった分だけまた問屋やメーカーをたたくという、まさにこれはひどい、欲張りもその極に達している。そういうのは敢然とメスを入れなければだめですよ。そういうものによってどんどん日本の医療技術だって、逆に進歩を抑えて、そして治療日数を長くして、いいかげんになっているかもわからないのですよ、実際はと私は思うんです。
 そこで、私はある開業医をお訪ねをした。今の診療報酬制度で、薬でももうけようとしない、医薬分業している、それから乱診乱療もしない、そのお医者さんが一体どのくらいの収入しかないかということをお尋ねしてみたんです。そうしましたら、そのA医師の良心による診療によって得た所得は、五十七年度が月の平均収入が九十五万六千八百二十円、経費が六十四万百五十円、家賃十万円を引きますると所得二十一万円。これは実は、五十七年はちょっとほかのことで、一日じゅう休むことはなかったけれども少し手を抜きましたとおっしゃっておられたけれども、それじゃ五十八年はというと、月の平均収入が百十万六千二百九十九円、経費が六十五万三千六百七月、差し引きますと四十五万二千六百九十二円、一日の億者数は二十五・二人。しかし、国民健康保険は何か難しいことを言っておられたから、伊藤さん、二十五人よりももう少し下がるかもわかりません、二十二、三人かもわかりません、こうおっしゃっておられましたけれども、その方の月の収入が四十五万円と言う。正しくやるとこんな程度しか利益が上がらないんです。その方はとても親切なお医者さんで、近所がち随分懐かれておる人、顕微鏡をよく見ながら、そして患者にこういうばい菌がいますよとか、非常に慕われておるお医者さんでありますが、これしか収入がないと言う。となりますると、開業医の一カ月の平均収入、それから病院経営をしておる方の平均収入、あるいは大病院に勤務していらっしゃるお医者さんの収入と比較をしますと、この金額はかなり低いんじゃないかと思うんです。
 局長、大臣、患者に慕われて正しくやって収入が少なくて、そして算術計算でやると二倍も三倍ももうかるという、どうしてこんなおかしな制度をいつまでもほうっておくのですか。ひとつ私も、これからまじめなお医者さんをたくさん知っているから訪問をして、どのくらい利益が上がるんですと伺ってみようと思う。これでは気の毒ですよ。
 そこで、今申し上げた平均収入は、日本のお医者さんはどのくらいになっているんですか、いろいろな病院によって違うでしょうが。
○吉村政府委員 今先生御指摘の四十五万というのは、少し低いではないかというように私どもは思います。私どもの医療経済実態調査によりますと、五十六年におきます開業医の平均年間所得は約二千二百万円でございます。したがって、今先生がおっしゃいました四十万円を十二倍いたしますと五百万円ぐらいにしかならないわけですが、平均と比べると四分の一以下というような感じでございます。
 ただ、今先生御指摘の一日当たりの取り扱い患者が二十五人とおっしゃいましたが、平均をいたしますと、これは診療所でありますが、一日当たりの外来の患者数は五十・五人というのが平均であります。したがって患者数が半分ということですから、患者数が平均どおりだとすればあと倍になるわけで、一千万円ぐらいの所得になられるはずだ。しかしそれにしてもなお低い、こういうような感じがいたします。
○伊藤(昌)委員 したがいまして、算術ということを全然用いないで今の診療報酬でやるとこのぐらいの所得だということをひとつ考えて、もう少し実態調査していただいて、なるほどそうだなとお思いになったら、診療報酬の技術料の改定をしなくちゃいけないと思うのです。大臣、いかがでしょうか。
○渡部国務大臣 今先生から大変貴重なお話しを承りまして、やはり今日の問題を解決する一つの重要な問題は、技術料については適正狂評価をしていかなければ前進しないということを私も痛感いたしまして、今後、中医協における診療報酬の合理化についての審議等も踏まえまして、技術重視の診療報酬体系を確立するように努力してまいりたいと思います。
○伊藤(昌)委員 医師だって薬剤師だってこれは技術で生きていくということはわかっているけれども、そういう方向にならなかった。大臣、あなた様の在任中に思い切ったことをやっていただいて、医師会だって、それをはっきり打ち出してくだされば、そうして説得すればかなりわかっていただけると思う。その方が得ですもの。技術料が今のままだって処方せんをどんどん出してくださるのですから、技術料を上げて差し上げて、そして薬局をきちっと受け入れ体制を整備して、あなた様が中心になって三師会の中できちっとなさればかなりのものができると私は思う。それを、何とか審議会に任せたり医薬分業を何とか会に任せておって、何か同じような会合をしょっちゅうやっておったってそれはだめですよやるときはぴしっと短期間でやってしまわなければ立派なことはでき上がらないと私は考えるのであります。技術と物を分離をして、医師の良心とすぐれた技術を評価する報酬制度に大改革をする、これが医療を公器と考える正しき見識であろうと私は思います。
 ひとつ、薬価基準は完全に実勢価格まで下げる。薬で少々上前をはねようなんていうけちな指導はしなさんな。完全に下げる。そして医者も薬剤師も技術本位で営んでいく。そしてその本分を尽くす。そうすれば卸もメーカーもまた生きると私は考えます。それをやらないで、このたびの政府案、すなわち患者の一部負担と薬価基準だけでこれを糊塗しようとすると、お医者さんもそれから卸もメーカーもみんな何が何だかわからないで、そしてこうやって苦労をした割には何にも成果が上がらなかったということがあったら大変だから、もっと内容を充実して、なるほどなという新しい医療制度を確立してくださいよと私は申し上げたいのです。薬価基準を下げることと、それから患者の一部負担をやり害すよというのは、これは理想がないです。だれでもできること。理想がちっともない。だれだってこんなことぐらいはできる。違いますか。目に見えることをやるだけですもの。問題は内容ですよ。そうして未来永劫その新しい制度がきちっと続いて、技術で生き、問屋もそれからメーカーも正常になり、そして技術で生きればお医者さんだってもっともっと勉強してくださって治療日数も短くなる、国民も患者も得をする、国全体の財政もここで立ち直る。頼むからひとつしっかりしてくださいよ。
 そこで、放漫医療保険制度の中で、メーカーも問屋と同じように今まで薬売りに力を用いてきて、メーカー本来の製品開発に全力を今までは尽くさなかったために、国際競争力が至って弱まり、その上、薬価基準の値下げによってこれからいよいよマイナス影響を与えることになるならば、これは我が国の製薬産業の上からも決して得策なことではないです。こういうことまで大臣、面倒を見ていかなかったらだめですよ、今度の健康保険制度をどうしても通すというのだったら。私はこういう安易な政府案には反対をしますけれども、しかし、こういうことまでよく面倒を見ていかなかったらいけないと私は思うわけであります。
 そこで、先ほど申し上げましたが、このごろ医院が処方せんを出される傾向が非常に多くなりました。技術料を引き上げなくても医薬分業が漸増しております。技術料を引き上げ、医師会と話し合いをしていけば、完全分業に近づけられるのではないかと私は思います。亡くなられました武見太郎先生が日本医師会長のころ、その医薬分業を唱えていろいろ実験までしてくださったわけであります。ひとつ厚生大臣がその三師会の中に入って、そうして医薬分業の方が医師も薬剤師も卸もメーカーも、そして患者も国民も国家財政も、みんなその方が得であるということを説いていただいて、それが本当の医療の姿であろうと私は思います。
 そこで最後に、医師法によりますと、お医者さんの処方せんの発行交付義務が原則になっておりますが、しかし、ただし書きによるのかよらないのかわかりませんが、その処方せんを発行しなくてもそれで黙認をしてしまっている。附則があるのかないのかわかりませんが、いつかはその原則に戻るということが社会常識であろうと私は思うのです。そこで、今の医師法の処方せん交付義務のただし書きの一体どこを使ってお医者さんは処方せんをお出しにならないのでしょうか。ただし書きがありましたね。きょうここに持ってまいりました。どこを使ってお出しにならないのか、ちょっとさっき読んでみたらわからないのです。私はこの法律を盾にとって理屈で物を言うわけじゃございません。言うわけじゃないけれども、こういう問題は余り議論されてないでしょうから、ちょっとお尋ねしてみたいと思うのです。
○正木政府委員 医師法の二十二条に処方せんの交付義務が規定されております。薬剤師法の十九条に、薬剤師でない者は、調剤してはならない。薬剤師法十九条と医師法の二十二条が裏腹になっておるわけでございますが、確かに御質問の医師法第二十二条というものは、医師は処方せんを交付しなければならないということでございますが、ただし書きがございまして、「次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。」、もう一つは、「患者又は現にその看護に当っている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合」はこの限りでない。運用上は後段によって運用されているというのが実情ではないかというふうに思います。
○伊藤(昌)委員 後段のどこですか。(正木政府委員「患者の希望」と呼ぶ)それを使ってお出しにならない、そう考えてみえますね。しかしこのごろは、開業医で処方せんをよかったら出してあげますよという考え方の方がかなりいらっしゃるはずです。したがいまして、その方が本当にお得なんですよという、損得言ってはいけないかもわからないけれども、その方がいいということ、そういう制度にできるだけつくりかえていただいて、そして一気に完全分業に持ち込むようにして、もちろん医師会側から言うと、薬剤師会の受け入れ体制がなってないということの御指摘もあるでしょうけれども、案外薬剤師というのはそういう環境になりますると、小心でまじめですから、借金してでも改造をして、その損得は余り考えないでやるものです。ですから、やれるような体制をしいてあげれば受け入れ体制はそう難しいことではないと思う。これは、厚生大臣が日本医師会と話し合いをじっくりしていただければ医薬分業というものはでき上がると考えます止すなわち、くどいですが、物と技術を分離をして、そしておのおのがその職務に専念をすることによって本分を尽くすという、そして新しい本当の医療制度確立のために何とか御努力をしていただきたいのであります。この機会にやらなかったらまただらだらしてしまいますよ。よいことというものは短期間で勝負をかけなければならないと私は考えまして、質問させていただいた次第でございます。少しきついところがありましたら、御無礼をお許しいただきとう存じます。
 委員長、どうもありがとうございました。(拍手)
○有馬委員長 田中美智子君。
○田中(美)委員 今度の政府の健康保険の改正に対して、国民の声が大変たくさん来ているのは大臣も御存じだと思います。今のところ請願署名も約一千万近いという近来にない反対署名が来ておりますし、先ほどお話しになりましたような地方議会の決議でも、都道府県が三十七県、市町村が千七十二、七八・七%という地方が反対をしている。それでも政府は何が何でもやっていくということは、私はこれは国民に対する大変な挑戦だというぐらいに強く思っております。
 今ここに持ってまいりましたのは、私のところに来ました名古屋勤労市民生活協同組合というところの組合員が、いわゆる印刷になった署名簿に名前だけを書いたのではなくて、一人一人こういうふうに全部鉛筆やペンで書いているのですね。これは涙ぐましいものなんです。ひとつ読んでみますと、例えば、
  病気にならないようならないようにとみんなは気をつけているのです。好きで病院へ行く人はいないはずです。患者負担をふやすなんて、弱り目にたたり目じゃありませんか。自分自分が病気にならないように気をつけるしかありませんね。
というような、非常に絶望的なような感じも書いてあります。
 また、もう一つ読んでみますと、
  毎月高い保険料を払っていても、実際には働いていてなかなか病院にも行けないのに、さらにお金を窓口に払わなければいけないなんて絶対許せません。一家の大黒柱であるお父ちゃんが入院でもしたら、給料はもらえない、病院の支払いはあるでは、とても生活やっていけません。家族の医療費だけでも、子供がいれば、歯医者だ、風邪引いたの……で結構毎月要るのですから、これ以上の負担はとっても大変なことになると思います。
これは、読んでみますとほとんどが、今でさえ家族の医療の負担が大変だ、その上に差額ベッドだとか交通費だとかいろいろな諸経費というのがかかって大変なんだ、それが大黒柱が今度は一割、二割負担しなければならなくなる、こういうことに対する不安がこの中に満ち満ちている。涙ぐましいものだというふうに私は思います。一度大臣にこれを全部読んでもらいたいというぐらいに思っているわけです。
 それで、きょうは時間が十分にありませんので、まずほんの一例を挙げて、国民生活がいかに不安にさらされているかという点について質問したいと思います。
 例えば一家の大黒柱が病気で倒れた場合、入院した場合に、先ほどこれにありましたように収入が減るだけでなく、交通費その他諸経費、いろいろお世話料とか差額ベッドとかいろいろなものがあるわけです。しかしそれはちょっとさておいて、今度の法律の変わる点、この点だけに絞って質問をさせていただきます。
 政管健保の事例でいきますと、標準報酬は一カ月で十八万九千円です。これは政府に伺った数字ですので間違いがないと思います。これで計算しますと、入院しますと、給料がとまった場合に傷病手当金というのが給料の六割出るということですね。そうしますと、十八万九千円に六割を掛けますと十一万三千四万円というお金が来るわけです。入院しておりますと、大体平均は、これも政府に伺ったのですけれども四十万だと言っています。そうすると、一割とした場合には四万円、これは全額払わなければならなくなる。二割ならば八万円。八万円の場合には高額療養費がありますから五万四千円というどころでとまりますけれども、一応五万四千円というものを引かれるとしますと幾ら残るか、これは小学校の計算でできるわけで、五万九千四百円しか残らない。これは標準報酬ですから大体家族がいると見ていいわけで、標準家庭ですと子供が二人ということになれば、約六万円で妻と子供二人が夫の留守に生活していかなければならない。こういうことで一体生活ができるかということなんですね。こういうことになるわけですよ。大臣はお金をたくさん持っていらっしゃるから何でもないかもしれませんけれども、また、母ちゃんも随分稼いでいらっしゃるということですから何でもないかもしれませんけれども、一般の庶民というのはこういう生活になるわけです。
 それからさらに若い人、特に若い単身者が病気になったときは大変なことになる。今盛んに一割、二割という話が非常に大きく伝わっておりますけれども、これは大変なことですけれども、これが結局がかってくるわけです。一カ月入院するような病気になった場合にはどんなになるかということが今でおわかりだと思うのですが、二十歳から二十四歳まで、この方々の平均の標準報酬というのは十三万二千二百十円です。この年齢層というのは独身が非常に多いわけですから、これは独身の方はなかなか病気しないと思って安心しているかもしれませんけれども、病気になったときは大変なんですね。単身者の場合には六割ではなくて四割ですからね。そうしますと、結局傷病手当というのは五万二千八百八十四円しかないんです。そうしますと、高額療養費を払おうとしたらこれは払えないですね。一銭も生活費はないですよ。これでちゃんと計算してみますと千百十六円不足する。マイナスですね。そうしますと入院していてもちり紙一枚も買えない。家賃が払えないから家は全部引き払う。引き払うわけにもいかないと思うのですけれども、仮に引き払ったとしても、それこそ生活保護でもとらなければならない、こういう状態になるんですけれども、これは大臣、どう思われますか、お答えいただきたいと思います。
○渡部国務大臣 先生の御指摘の問題、それぞれ一つ一つ極めて現実的なそれぞれの皆さん方の御心配だろうと思います。ただ御理解をいただきたいのは、サラリーマンの皆さん方と比較して、決してこれは経済的に豊かであるとは断ぜられない農家の皆さんとかあるいは零細な商工業の皆さん方とかは、現実に三割負担という中で健康を守って頑張っていらっしゃるということでございます。私ども、今十割給付を受けておるサラリーマンの皆さんに一割御負担を願わなければならないというのは大変恐縮しておるのでありますけれども、しかし長い目で見ていただきますと、このことによってまず皆さん方の保険料率は二十一世紀の将来にわたるまで上げないでいくようにしよう、また国民の皆さんの税金におんぶすることもできるだけ少なくしようということ、またこのことによって先ほどまでいろいろ御指摘ありました医療費の適正化というものも進めていこうということでございますので、長い目で見ていただければ必ず国民の皆さん方の福祉につながるものであり、これは御理解をいただけるものと思いますが、なお先生の御指摘のような問題は、これは私も非常に大事なものと受け取っておりますので、今後この委員会の審議を通じて先生方の御意見をちょうだいしながら、高額療養費等の問題、これは工夫に工夫を加えまして、やはり平均的なサラリーマンの皆さん方が今回の一割負担の導入によって生活破壊にならないような努力をこれからも一生懸命努めてまいりたいと思いますので、御理解を賜りたいと思います。
○田中(美)委員 長い目だとか二十一世紀ということを言っておられますけれども、きょうの新聞ですね。先ほどから毎日新聞のインタビュー記事が問題になっておりますけれども、その中で一問一答形式の記事が裏側に出ておりました。この中の渡部大臣の言葉に、標準的サラリーマンが重い病気にかかっても、生活が破壊されないように健康保険を改正するんだ、こういうふうに言っているんですね。これは長い目とか二十一世紀じゃないんじゃないですか。今度の改正をするというのは、平均的なサラリーマンが重い病気にかかったときに生活破壊にならないようにと、これはまさに、平均的なサラリーマンが重い病気にかかったときに生活保護を受けなければならなくなる、すぐになるということですね。これは何カ月もたってじゃないですよ、すぐに生活保護を受けなければならなくなる、こういうことですので、そういう詭弁を許すわけにはいかないということを強く申し上げまして、次の質問に移りたいと思います、
 さて、これも先ほどから大変問題になっておりました「健保法等改正法案の早期成立の必要性について」ということで、厚生省名で自民党の国会議員だけに、この国会がストップしている最中にこれが配付されたということを聞いております。この中を見てみましたら、とれはとんでもないものを出しているというふうに思います。
 まず確認いたしますけれども、この中に書いてありますことは、予算が議決されても、法律が変わらなければ現行法どおりにやればいいわけでしょう。予算が議決されても法律が変わら。なければ、一切のすべての法律はなくなるわけじゃないでしょう。現行法どおりにやればいいわけでしょう。それなのに、なぜそれができないということですか。
○渡部国務大臣 先生御承知と思いますが、五十九年度予算、これはおかげさまで成立をさせていただきまして、今執行中でございます。この予算の中で、七月一日までにこの法律を成立させていただくという前提でこれは予算が組まれておりますので、今度の国会でこの法案を成立させていただきませんと五十九年度の予算で四千二百億の欠陥を生じてしまうことになりますから、したがってこれは四千二百億のお金を増額補正をしなければなりません。しかし、増額補正がすぐに大蔵箱と話し合ってこれが認められるような今日財政状態でないこともこれは御承知のとおりでございまして、これが認められないということになりますとその分だけ、私ども社会福祉の大事な務め、これは何一つ手を抜くわけにはいきませんけれども、予算的には大変苦しい状態になってくるということも御理解賜りたいと思うわけであります。
○田中(美)委員 法律が変わらなくても現行法でやるというのは、これは今まで全部やっていることじゃないですか。予算が通りさえすればそれを全部そのままやるというんだったら、こんな国会要らないじゃないですか。金がない、金がないって、年がら年じゅう金がない、金がないって、あなたもうそばかり言いなさんなよ。金がない、金がないなんて、全くもう金がないと言えば、それはもう国会なんて要らないじゃないですか。もう予算が通っちゃえばそれでいいということになるじゃないですか。何を言っていますか。それは国会軽視ですよ。今までだって全部それでやってきているじゃありませんか。そんな答弁はおかしいと思うのですね。国会軽視ですよ。
 それから、その次の質問に進めていきますけれども、この二枚目ですね。今の配付した文書ですね。まさに怪文書ですよ、これは。怪文書と言うより恫喝、インチキ文書と言ってもいいと思うのですけれども、これの(三)のアというところにあります。ここに「政管健保の医療費支払いは、かなり窮屈なものとなります。」、こう書いてあるんですね。これは大うそじゃないですか。政管健保は現在黒字じゃないですか。そうでしょう。それで医療費が、もしこの法律が通らなかったら七・五%医療費が伸びるかもしれないなんて、これは想定でしょう。伸びないかもしれないじゃないですか。これは吉村さんの想定でしょう。もしこれが通っても四・五%伸びるんだ、こう言っているわけですね、そちらは。そちらが言うことも先に言っておかないと時間がなくなりますのでね。国庫負担というのは一六・四%と法律で決まっているわけですからね。今黒字なんですし、伸びるか伸びないかまだわからぬじゃないですか。流感だって起きるかどうかわからないし、それはわからないじゃないですか。わかりもしないうちから、金がない、金がないって。なくなってから言ってください、お金がないって。黒字のうちから、ない、ない、ない。それはもう間違っている。こんなことで、あなた、厚生省が自民党の国会議員をだまかすというのはけしからぬと思うのです。(「だまされていないよ」と呼ぶ者あり)それはだまされているかだまされていないかはわかりません。しかし、だまかすような文書を出しているというのはけしからぬということなんですね。
 その次に、同じ(三)のイとウですね。これを読んでみますと、こういうふうに書いてあります。「国保の医療費支払いは、保険者によっては遅延するものがでできます。」、こう書いてありますね。それからウの方は「老人保健事業に対する拠出金の支払いができない保険者もでてくると予想されるので、老人保健の円滑な運営が困難となります。」こう書いてあるのですね。これはまた大きなインチキじゃないですか、渡部さん。保険者というのはこれは市町村をおどかしているわけですよね。第一、厚生省はどういう指導をしたのですか、保険者に。対して。吉村さん、一番よく御存じでしょう。去年並みに、国保の予算は前年並みに決めなさいというふうにやっているわけでしょう。ですから、今は国保は前年並みにみんな立てているのですね。予算を組んでいるのですね。そうしておいて、この法案が通らなかったら、この法案が通らなかったらじゃない、通ったら――よく大臣、聞いていてくださいよ。通ったらですよ、国庫補助が現行より、現行は四五%でしょう、それが三八・五%に引き下げられるじゃないですか。そうすると金額にして約千七百億円削られるのです、通ったら。そうでしょう。
 それから、退職者医療制度をつくった、だから医療費が軽減される。これは大臣、すぐ言うかもしれないので、言うことは決まっていて、さっきから何遍も同じことを言っているから、私の方が先に言います。時間がどんどん過ぎていきますのでね。これは金額一千億円でしょう。そして、七百億円というのはこの法案が通ったら減るのですよ。通らなかったら国保は助かるのですよ。これは老人医療費もそうです、国保でやるわけですからね。そうすると、この法案が通ったら、国保はもっと困るのですよ。それなのに、ここでは、保険者に払わなくなるかもしれないと言っている。これが恫喝でなくて何でしょう。まさに恫喝だと私は思うのです。こんな怪文書を流すなんということはけしからぬというふうに思うのですよ。
 それからまだあります。これは(四)ですね。これは全部やりたいのですけれども、時間がありませんので、私のはらわたが煮えくり返るところをちょっとやっているのです。(四)のここを見ますと、「また、医療関係者の一部には診療報酬の改定を期待する声もありますが、これに応ずることも全く不可能となります。」、「全く不可能となります。」、一体この言葉は何ですか、大臣。こんなことを知ってて書いているのですか。診療報酬というのは国会が決めるのじゃないでしょう。診療報酬の改定は法改正ではないでしょう、中医協で話し合って、それを省令で決めるのでしょう。ですから、今の医師の技術料がいかに低いかということはこれは今非常に問題になっているのですね。だから医者が薬でもうけるんじゃないかというようなことも言われているのは技術料が低いからと言っているわけですから、この医療保険の改定どこれは関係ないことなんですよ。だから、医者の技術料が低いならばこれはすぐにだってやろうと思えばできることじゃないですか。それを、この法案が通らないとできないのだなんということは、これは医療保険の改悪と取引材料にしている、これは本当にけしからぬね、けしからぬやり方だと思うのです。
 それで、わずかな点だけしかできなかったが、これだけたくさんあるのを全部やって、それこそ大げんかしたいと思いますけれども、卑劣だからですよ。思想、信条が違うのはこれはしょうがないのですよ。あなたと私とは全然思想、信条が違うのですから。だから、それでその法案について堂々と討議するのならいいのですよ。それをこういう卑劣なものを出して、そこらにいる厚生省の人はみんな共犯者ですか。本当にどこでつくったか知りませんけれどもね。どこでつくったかもだれが共犯者かも私にはわかりませんけれども、これは怪文書ですからね。この文書は結局国民と医療関係者を分断し、恫喝して、だまかすものなんですよ。
 もう一度言いますけれども、ですから、厚生省が国民や医者を恫喝する、それだけでないですよ。もし――「もし」と言っておきますよ、懲罰にかかるといけないから「もし」と言っておきます。もし自民党議員がこれに屈したり、ここにいらっしゃる方がこれに屈したり、もしだまされたりして、この採決のときにそれが影響するとすれば、まさに立法府の見識が問われる、そういう重大な問題だと私は思うのです。ですから、先ほどのいろいろな追及はありましたけれども、私は、単なるちょっとけしからぬ怪文書が流れたなどというものではなくて、国会の存立に対する侮辱だというふうに思うのですね。自民党議員に対する侮辱でもあると思うのです。自民党議員は何も知らないからだまかしてやろうという気でしょうか。(発言する者あり)でしょうかと言っているじゃないですか。だまそうとしているのでしょうかと聞いているのです。ですから、この文書というのは直ちに撤回すべきだと思います。撤回してください。
○渡部国務大臣 これはお言葉を返すようですけれども、怪文書というのは、私の常識では差出人不明のものが一般的に怪文書でございまして、これはちゃんと厚生省と銘打っておるものでございますから、これは怪文書ではございません。
 それから、何度も私が申し上げたように、五十九年度の予算は政府がつくりました。その五十九年度の予算編成に当たっては、新しい政策の方向として予算に関連するこうこういう法律、いろいろなものが必要だということで、国会に提案しているわけでございます。したがって、予算関連法案というものはやはり成立させていただかないと、五十九年度の予算に欠陥が生じて、私ども行政を担当する立場としては、その行政の遂行上これは支障が起こるのは当然でございます。したがって、私どもは、国民の健康を守り社会保障制度を守っていく立場でそういう支障が起こっては困りますので、一緒に予算をつくり、一緒に法案をつくった立場にある与党の皆さん方に、ぜひこの法案を成立せしめていただきますように御理解を求めるための参考資料を、これは政府・与党というのはいわば一体でございますから、与党の先生方に参考資料としてこれをお願いしたのでありまして、これは先生、申しわけありませんが、恫喝でもペテンでも何でもございません。正直に今日の我々の困っておる立場を与党の先生に申し上げたので、先ほども質問がありましたが、ある意味でこれは泣訴嘆願しているということならばある程度当たっておるかもしれませんが、決して恫喝というようなものでは全くございませんので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
○田中(美)委員 よくそんなしゃあしゃあと言えたものだと思います、本当に。それは確かに出所は厚生省と書いてありますから、怪文書の概念というのはどういうことかわかりませんが、中身はでたらめであるということ、それから恫喝であるということだけは、私が今まで述べたことで明らかだと思いますので、もう一度議事録をしっかりお読みいただきたいと思います。
 次の質問に移ります。
 さて、六月十八日、つい二、三日前ですけれども、あなたが、というのは渡部厚生大臣が、埼玉県の知事選挙の応援で、浦和駅の西口で午後四時、演説をなさったということは事実ですね。
○渡部国務大臣 事実でございます。
○田中(美)委員 ここまで話しましたら、何を私が話そうとしているか大臣も御存じだと思います、御自分がしゃべったことですから。
 ちょっと、その前に大臣にお伺いしますが、大臣、当年とってお幾つでいらっしゃいますか。
○渡部国務大臣 五十二歳になりました。
○田中(美)委員 ちょうど危険な年齢だと思います。と申しますのは、大臣の演説を私も聞きました。今ここにテープを持ってきておりますので、間違いなくこのテープを起こしたところを読みます。疑うのでしたらここで皆さんにお聞かせしてもいいと思って持ってまいりました。途中から読みますが、これはあなたの言っていることですよ。
  ですから、皆さん、どうしても五十歳で死にたいという方は、共産党と社会党の推す別の候補者を投票していただきたい。しかし、八十歳まで生きるのは嫌でない、八十五歳まで生きてもいいんだよという方は、我々の応援する方を当選させていただかなければならない、これは明瞭な現実であります。
こういうふうに言っているんですね。ということは、この健康保険法に、あなたの言う福祉を大切にする、こうするということに賛成しない者は五十歳で死ぬということでしょうね。今のこれでいきますと、さっき百いましたように標準報酬のこれでいきますと、少なくとも一年入院したらこれはみんな死んでしまいますよ。まさにこれは全くけしからぬ、人間としてけしからぬ発言だというふうに私は思うのです。もっと正々堂々と、この政策がいかにいいかということを言ったらいいじゃないですか。ちっとも言ってないじゃないですか、あなたは。さっきから哀願して、通してもらわなければ困ります、通してもらわなければ困りますと、けさから何百遍も言っていますでしょう。それで、中身がどんなにいいかということはちっとも言ってない。言えないんですよ、あなたは。
 国民が長生きできるようになったということは、これは戦後の国民皆保険が決定的だったと私は思っているんですよ。さらに、医療費を余り心配しないで医者にかかれるようになったこと、これは国民皆保険の成果ですね。それから医療技術が非常に向上した、その他の衛生的な環境も向上した、食べ物も戦後からすればよくなったということが影響していると思う。それともう一つ、あなたが言うように八十歳、八十五歳までも生きたいというなら、こういう人たちは老人医療の無料化というものが長生きになったのだと私は思う。私は、国民皆保険や医療技術が向上したり食べ物がよくなったりしたことは、決して自民党がやったことではないとは言いません。しかし自民党だけではないですよ、それは。しかし、私はすべてを正々堂々とやりますよ、あなたみたいに卑劣じゃないですよ。老人医療の無料化は少なくとも自民党ではないのです、革新自治体から始まったのです。これはもう厳然たる事実ですからね。これは大臣だってだれだって否定することはできないんですよ。だからこそ、みずからの命を守った老人医療発生の地として、岩手県の沢内村に今石碑が建っていますでしょう。なぜ石碑が建つようになったかということは、自民党が、みずから命を守ったこの老人医療の無料化をつぶしてきたからなんですよ。それは普通の流れとして来たものをつぶしてきたから、大変だというのであそこに石碑が建ったんですよ。そして各自治体は次々と、これは革新自治体でなくても、自民党の知事や市長の自治体でさえも、これを見習って老人医療の無料化を進めて、ついにおくれた日本の政府まで老人医療の無料化をやったということで、決定的にあなたの言う八十歳、八十五歳まで生きられるようになったんですよ。
 それを、まるで、共産党を支持したら五十歳で死ぬようなこういう演説をするなんということは、まさに逆戻りをさせ、五十歳で死なそうとするような方策を今あなたがとっている。せっかく確立した老人医療の無料化をぶっつぶそうとしているのは自民党じゃないですか。そしてその先頭に立っているのが渡部厚生大臣なんですよ。だから、まさに自民党の医療制度を支持し、今度の健保の改悪を支持する者は五十歳で死んでも仕方がないのだということですか。私はそういうことになると思うのです。ですから大臣、あなたのやっていることは長生きすることと逆行しているのですよ。ですから、あなたのやっていることは国民の命を縮めていくということ。あなた五十二歳ですからね、こんなことをやっていったら危ないんだぞということになりかねないんじゃないですか。この演説を訂正して謝っていただきたいと思います。
○渡部国務大臣 誤解のないように正確に申し上げさせていただきたいと思うのですが、私が街頭で申し上げた演説は、昭和二十一年、日本人の平均寿命はほぼ五十一歳であった。ところが今日、日本人の平均寿命はまさに八十歳になんなんとしておる。よく野党の皆さんはこういう街頭に立つと、何か自民党の政治がすべて悪いようにおっしゃるけれども、この三十八年間の大部分の期間を国民の皆さんの御信頼を得て政権を担当してきた政党は自民党である。したがって、そんなに自民党の政治が悪いものであったら、五十一歳の平均寿命の方が八十歳まで生きるでございましょうか。それで、その中で保険の話はしておりません。やはり八十、八十五、九十まで長生きしたい方はぜひわが自由民主党が推薦する候補者に応援をしてもらいたい、こういうことを申し上げたので、お互い政党政治家でありますから、選挙演説に自分の政党がよいということを国民の皆さんに訴えるのは、ちょうど先生がこの委員会で、私のことを卑劣だの、ペテンだのとおっしゃっているのと同じことで、これはお許しをいただかなければ。私はペテンでも卑劣でもございません、二十一世紀の日本の社会保障を真剣に憂えて、この改正案をお願いしていることも、御了承いただきたいと思います。
○田中(美)委員 昭和二十一年に寿命が五十一歳だったということは、私は、過去のこの三十九年間が自民党がすべて悪かったなどとも言っていませんし、野党の皆さんのすべてと一緒にしてもらっては困るのです。(発言する者あり)田中美智子が今質問しているのです、そうでしょう。ですから、昭和二十一年五十一歳だったときに今逆戻りするような、健康保険の改悪が進められているということを言っているのです。ですから、そこにこういう怪文書的なものを出すということはまさにペテン師だと言わざるを得ないし、これは時間になりましたので、強く抗議しまして――「共産党に」などということを言う必要はないじゃないですか。自民党がいいということを言うのは勝手です。私が共産党がいいということを、共産党を骨まで愛しているんだと言うことは勝手です。しかし、何もそういううそを言うことはないでしょう。うそを言っているところは、まさにあなたはペテン師だというふうに思うのです。
 これで私の質問を終わります。
○有馬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時五十九分散会