第104回国会 本会議 第28号
昭和六十一年五月十三日(火曜日)
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 議事日程 第二十五号
  昭和六十一年五月十三日
    午後一時開議
 第一 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
 日程第一 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案(内閣提出)
 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)
 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)の趣旨説明及び質疑
 竹下大蔵大臣の昭和五十九年度決算の概要についての発言及び質疑
    午後一時三分開議
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
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 日程第一 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案(内閣提出)
○議長(坂田道太君) 日程第一、特定外航船舶解撤促進臨時措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長山下徳夫君。
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 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔山下徳夫君登壇〕
○山下徳夫君 ただいま議題となりました特定外航船舶解撤促進臨時措置法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、外航海運をめぐる経済的事情の著しい変化にかんがみ、船腹量が過剰となり、かつ老朽、不経済化している特定外航船舶の解撤を促進するための措置を臨時に講ずることにより、外航海運の健全な振興を図り、もって国際経済の発展に寄与することを目的とするものでありまして、
 第一に、特定外航船舶の解撤を促進するため、運輸大臣が解撤促進基本指針を策定することとするとともに、特定外航船舶を事業の用に供している特定海運事業者は、解撤促進基本指針に従って解撤を行うよう努めなければならないこととすること、
 第二に、特定海運事業者は、その所有する特定外航船舶について解撤計画を作成し、運輸大臣の認定を受けることができることとするとともに、特定外航船舶の解撤に必要な資金等について、産業基盤信用基金が債務保証を行うこととするための規定を定めること、
 その他、関係船員の雇用の安定に関する事項、特定外航船舶の解撤を行っていない海運事業者に対する勧告及び本案を三年間の限時法とすること等について所要の措置を講じようとするものであります。
 本案は、去る四月一日本委員会に付託され、二十五日三塚運輸大臣から提案理由の説明を聴取した後、五月九日質疑を行いました。
 その質疑の主な事項を申し上げますと、過剰船腹の実情と総合対策の必要性、本案による解撤促進対策の実効性及び解撤に伴う船員の雇用対策等についてでありますが、その詳細は委員会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、同日質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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○桜井新君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、社会労働委員長提出、社会保険労務士法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略して、この際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
○議長(坂田道太君) 桜井新君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
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 社会保険労務士法の一部を改正する法律案(社会労働委員長提出)
○議長(坂田道太君) 社会保険労務士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。社会労働委員長山崎拓君。
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 社会保険労務士法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔山崎拓君登壇〕
○山崎拓君 ただいま議題となりました社会保険労務士法の一部を改正する法律案について、趣旨弁明を申し上げます。
 近年、社会経済情勢の著しい変化と進展に伴い、労働及び社会保険諸制度についても大幅な整備改善が行われ、その内容は、極めて複雑かつ専門的なものになっております。そのため、これらの業務に熟達した社会保険労務士の活動に対する要請は、量的にも質的にもますます増大しております。
 このような状況の中で、社会保険労務士の行う業務の公共性、専門性及び重要性にかんがみ、その職務内容等を充実するとともに、資質の向上を図ることは、極めて重要な課題となっております。
 また、昭和五十六年の法改正に当たっては、社会労働委員会において、事務代理制度の実施の検討等について、附帯決議のなされているところであります。
 本案は、このような実情を踏まえ、社会保険労務士制度の整備充実を図ろうとするもので、本日の社会労働委員会においてこれを成案とし、全会一致をもって社会労働委員会提出の法律案とすることに決した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、社会保険労務士の職務内容の充実を図るため、社会保険労務士は、労働社会保険諸法令に基づく申請等について、または当該申請等に係る行政機関等に対する主張、陳述について、事務代理ができるものとすることであります。
 第二に、事業所に勤務するいわゆる勤務社会保険労務士について、事業所の名称等の登録を義務づけるとともに、その勤務する事業所の事務処理の適正化等に努めるものとすることであります。
 第三に、社会保険労務士の資質の向上を図るため、社会保険労務士会等の行う研修について、社会保険労務士はその受講に努めるものとするほか、事業主も、勤務社会保険労務士にその受講の機会を与えるように努めるものとすることであります。
 なお、この法律は、昭和六十一年十月一日から施行するものといたしております。
 以上が本案の趣旨及び内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
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 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)の趣旨説明
○議長(坂田道太君) この際、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)について、趣旨の説明を求めます。自治大臣小沢一郎君。
    〔国務大臣小沢一郎君登壇〕
○国務大臣(小沢一郎君) 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
 この法律案は、日本国有鉄道の経営形態の改革及び鉄道事業法の制定に伴い、地方税制について所要の改正を行うものであります。
 以下、その概要について御説明申し上げます。
 第一に、地方税法の改正であります。
 日本国有鉄道の経営形態の改革の円滑な実施に資するため、旅客鉄道株式会社等が日本国有鉄道から承継した固定資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置等を講ずるとともに、日本国有鉄道清算事業団の本来の事業の用に供する不動産に係る不動産取得税の非課税措置等を講ずることとしております。
 第二に、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の改正でありますが、日本国有鉄道有資産所在市町村納付金及び日本国有鉄道有資産所在都道府県納付金に係る制度を廃止することとしております。
 以上が地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
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 地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)の趣旨説明に対する質疑
○議長(坂田道太君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山下八洲夫君。
    〔山下八洲夫君登壇〕
○山下八洲夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 本論に入る前に、私は、この国鉄関連法案の質問をするに当たり、子供のころを思い出すのでありますが、これは私一人ではなく、多くの国民もまた同じ思いだと思います。広く国民に愛され、親しまれてきた鉄道の線路わきで遊びながら、大人になったら国鉄に就職をし、機関士になって汽車を走らせ、大切な旅客や材木を運ぶという夢を持たせ続けてくれた国鉄が、今日、中曽根総理の手によって解体させられようとしているのであります。断じて許すわけにはまいりません。
 まず第一に、本案は、政府が提案している国鉄解体方針である国鉄の分割・民営に伴う地方税に係る改正案でありますが、その内容は、政府の国鉄関連法案の政策体系が矛盾に満ちていることを反映し、根本的な過ちを犯しているのであります。
 政府は、国民共有の財産である国鉄を、現行の公社制度のもとでは、また全国一元の巨大組織のもとでは改革できないという、国鉄再建監理委員会の意見をそのまま政府方針としております。政府の考えを貫く限り、政府案における新事業体は民間企業であり、民営鉄道であります。我が党は、国鉄の公共性を確保し、事業を国民生活に直結させ、経営の健全化を図るという課題の達成のために、国が出資する公企業という性格を持つ新事業体の設立を提案しております。
 すなわち、議題となっております地方税法等の改正案は、分割・民営された会社に対して地方税法上のいろいろな優遇措置を与えるものでありますが、政府の考え方でいくなら、優遇措置は現行の民営鉄道が受けているものと同様同質のものであるべきであり、それを超えた本案は、我が党の政策体系において初めて整合性を持つものであります。政府の言う民営とは何なのか、民間活力の活用に熱心な中曽根総理にお答えをいただくとともに、民営にもかかわらず民営鉄道を超えた扱いをする根拠は何なのかを、運輸大臣並びに自治大臣にお示しいただきたいと存じます。(拍手)
 第二に、国鉄が納付している納付金は、固定資産税にかわる性格を有するものであり、現在、その額は本来の額の二分の一とされております。地方財政の悪化の状況のもとで地方公共団体は、その全額納付を希望しながら、国鉄の財政事情等から二分の一のまま推移してまいりました。しかし、改正案においては、固定資産税体系への移行後八年間、本州の旅客鉄道会社等は現行と同様、本来の額の二分の一、北海道、四国、九州の三島の旅客鉄道会社においては本来の額の四分の一とされております。
 このことは、二つの重大な問題点を含んでいます。その一つは、政府は、政府案によって新会社は黒字となるような宣伝を盛んにしておりますが、その実態は黒字ではなく、国民と地方財政にしわ寄せをしようとしているという点であります。その第二は、本州と三島との間の課税標準に差を設けることは、物税としての固定資産税の性格からして、また、地方団体の課税権の一方的侵害の面からも極めて問題があります。三島の固定資産税を四分の一とするのは、三島の鉄道事業の収益性が低いことによると思われますが、これでは固定資産税の基本的性格をゆがめ、公平課税の原則を根底から覆すばかりか、税の補助金化であると言わざるを得ません。この点については、事業所税についても指摘できます。
 政府は、分割を正当化しようとしていますが、まさに国の根幹をなす税の根本をねじ曲げなくてはつじつまが合わないことを見ても、分割・民営の誤りは明らかであります。政府は、矛盾の極致である分割・民営をやめ、税体系を破壊する邪道はやめ、必要な助成は、地方財政にしわ寄せするようなことなく、公共交通として的確に行うべきと考えますが、総理の所見を伺いたいと存じます。また、なぜ固定資産税の不均一課税が必要なのか、固定資産の価値に基づく担税力を求めて課税するという固定資産税の性格を変更するのはなぜか、自治大臣の明確な御答弁をお願いします。
 第三に、改正案におきましては、清算事業団の持つ固定資産の一部につきまして非課税としておりますが、国の施策の変更により、従来納付金の対象となっていたものを非課税とし、換言すれば、地方財政の減収に追い打ちをかけるというのは、どのような論理に基づくものでありましょうか、自治大臣の所見を伺いたいと思います。
 税制の適用は厳密でなければならず、本案のごとく税制の根幹を揺るがさざるを得ない政府の国鉄分割・民営案は、欠陥法案と言わざるを得ません。政府は、我が党が提案している、国が出資する全国一社の公企業としての国鉄の再建策の正しさを真摯に認めるべきと考えますが、改めて総理の所信をお伺いいたします。(拍手)
 次に、政府が進めている国鉄職員の雇用対策についてお伺いいたします。
 戦後の国鉄は、多くの復員者を迎え、戦後復興に大きな貢献を果たし、また、高度経済成長期における産業基盤投資の支柱として、常に国策のもとに歩いてきております。私は、輸送業務を担い、労働基本権を制限され続け、しかも今、政府によって国鉄を退職する道を余儀なく選択せざるを得ない職員については、政府がその雇用安定に全責任を持つべきであると考えます。その際、私は、国が率先して採用するとともに、現に居住している地域における再就職先の確保については、地方自治体に採用を積極的に求めるべきであり、地方自治体の要望を尊重し、地方交通線の維持、年金を初めとする財政負担、地域経済振興策等について、国及び政府が真剣にその対策を講ずるべきと考えます。
 政府機関における採用と自治体への採用要請について、具体的にどのように進められようとしているのか、中曽根総理の所見を伺います。また、運輸大臣及び自治大臣に、自治体への要請と全国知事会ほか北海道を初めとする自治体から示されている要望事項について、どのように取り組まれているのか、お答えいただきたいと考えます。さらに国土庁長官に、地方交通線と地域経済の関係、現在策定中である四全総における鉄道の位置づけについて所見を伺いたいと存じます。
 さらに、運輸大臣に伺います。鉄道公安業務が都道府県警察に移管されることに伴い、ことし十月一日付で都道府県警察官が、公安官の現員数二千八百八十二人そのまま増員されるとされております。しかし、伺いますと、現在二十九管理局に配置されている公安官数をそのまま最寄りの都道府県警察に配置するのではなく、全国的な再配置を行い、列車警乗本数も大幅に削減するという説もあります。本来、鉄道施設内の問題につきましては、第一次的には職員が当たるべきであります。具体的にどのような業務を移管し、どの業務は企業内のものとして残るのか、また、移管に伴う年金積立金の扱いはどのようになるのか、所見を伺います。
 最後に、交通福祉と地域振興について伺います。
 カナダのバンクーバーで国際交通通信博覧会が開催されております。欧米諸国においては、鉄道の公的一元化、統合が進められつつあります。こうした世界の趨勢の中で、唯一日本が、さきの東京サミットでは議長を務めた中曽根総理自身が、公共交通としての国鉄をばらばらにしようとしていることは、永く日本における交通政策の失敗として後世に残るでありましょう。
 国鉄の分割・民営は、交通経済の立場に立つものであり、経営の効率性の追求でありますが、交通福祉の立場が全く欠落いたしております。国民の足という社会的機能を果たすべき国鉄は、老人や障害者、子供などの社会的弱者であっても、どこでも安全に利用できるという機能を持たなくてはなりません。また、交通の安全の絶対性というものはあり得ないにもかかわらず、政府が進めているホームから駅員をなくすという意味は、飛行場から管制官をなくするということに等しい無謀な行為であり、公共サービスとして根幹的欠陥と言わなければなりません。なお、最近では、東京南管理局では、ホームの職員無人化により安全性に不安を持った車掌が、その旨新聞の投書欄に投書をしたところ、車掌本来の業務を外されるという処分が行われました。今や政府及び国鉄当局は、安全性の無視ばかりか、言論の自由まで奪おうといたしております。総理並びに運輸大臣に、交通福祉と安全性についての所見を伺いたく存じます。
 また、積雪寒冷地における冬季間の交通、山村、過疎地域の交通はどうなるのでしょうか。北海道において、また私の選挙区であります岐阜県においても、高度成長のゆがみのもとで経済が疲弊している地域の町づくり、ふるさとづくりの発展は否定されるのでありましょうか。豪雪や過疎など特別地域の振興に責任を持つ国土庁長官、自治大臣の明快な御答弁をお願いし、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 山下議員にお答えをいたします。
 民営化の趣旨でございますが、今までの国鉄制度というものは、全国的な一元的な公社制度でありましたために、どうしてもむだやロスが多くなってきておるわけです。そこで、民間的経営手法を入れるということ、それから労使関係において、責任体制、独自性を持たして労使にそれぞれの励み、はずみを与える、そういう考えに立ちまして民営・分割化という方向に来たものでございます。私は、この方法が現在の国鉄を直すためには最善であると考えております。なお、今回の地方税制改正においては、基本的には、新しい旅客会社等を民営鉄道事業者並みとして取り扱いますが、当面新体制への移行が円滑に実施できるよう、経過的な負担軽減措置等を講じようとするものであります。
 次に、公共性の問題でございますが、国鉄の事業を効率的な、国民の期待にこたえるような事業に再生するために、今回の法案を提出したものでございます。これによって、経営が活性化され、公共交通の担い手としても、自立した明確な経営意識のもとで、より多くの路線もまた生かされていく、そのように考えておる次第であります。税制についても、経過的に所要の措置を講ずるなど、改革が円滑に実施できるよう措置することは必要なことであると思います。
 社会党案でございますが、社会党案は、今の公社制度とほとんど大差がない実態である、言いかえれば、親方日の丸、赤字垂れ流し、自助努力の不足、これが指摘されておりますが、私も同感であります。やはり政府の提出している方がより効率的であり、また、国民も期待していると考えておるものであります。
 職員の採用の問題でございますが、この点につきましては、昨年末に決められた基本方針に基づいて、各省庁及び地方公共団体あるいは財界に対しても積極的に努力しておりまして、順調に進んでおるところでございます。
 さらに、国鉄による交通福祉と安全の確保の問題でございますが、より効率的な、真に国民の期待にこたえることができる交通体系にしようとするものであります。今後、総合的な交通体系のもとに、安全を確保しつつ、公共性を持った交通機関としての役割もまた適切に果たしていくものと考えます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣小沢一郎君登壇〕
○国務大臣(小沢一郎君) 山下議員にお答えいたします。
 まず、民営化と地方税制上の問題でございますが、国鉄改革によって設立を予定されております旅客鉄道株式会社や貨物鉄道株式会社に対しましては、民間会社としてのその経営形態にかんがみまして、民間の鉄道会社と同様の税負担水準とするのが原則であるという基本的考え方に立ちまして、地方税法の改正を行うこととしたものであります。しかしながら、国鉄改革の目的にかんがみまして、その改革の円滑な実施に資するため、新たな事業主体の性格に応じた負担軽減措置を経過的に講ずること等が必要であるという政策的な判断に立ったものでございます。
 それから、北海道、四国、九州の各旅客鉄道会社の固定資産税の問題でございますが、これは、一定期間の特例措置を講ずることとした理由は、第一には、その厳しい経営環境に配慮し、本州の旅客会社と異なり、長期債務を承継させず、かつ経営安定基金を設けるなど、国においてその経営の安定のための特別の施策を講じていること、それから第二には、国土の均衡ある発展及び地域住民の交通の確保を図る等、関係地方公共団体にとっても大きな意義を有するということ、それから第三に、一定期間は経営を軌道に乗せるためその基盤の安定強化を図る必要があること、そういうような理由によるものでございます。固定資産税は、固定資産自体の価値に着目して課税される物税であることは、先生御指摘のとおりでございますが、従来からも政策的要請等に基づきまして、必要とされる場合には一定の特例措置を講じているところでございまして、今回の措置も、ただいま申し上げました三島旅客会社に対する一定の政策的要請に基づいて講ぜられるものでありまして、これによって固定資産税の性格が変更されるものではないと考えております。
 それから、国鉄清算事業団についてでございますが、これは第一に、新事業体が引き継がない資産、債務等の処理及び余剰人員の再就職のあっせん等を行う極めて公共的性格の強い法人であること、それから第二に、清算業務を行う法人であり、臨時的なものであると考えられること、それから第三には、清算事業団が所有することとなる資産の大部分は、これを処分いたしまして長期債務の返済に充てられる予定のものであります。その処分は、最終的に求められる国民負担と直接かかわり合いを持つものであること等にかんがみまして、清算事業団がその本来の事業の用に供するため所有する一定の固定資産に対しては、固定資産税を非課税とすることといたしたものであります。
 それから、国鉄職員の自治体の採用の問題でございますが、自治省といたしましては、地方公共団体に対して、国が講ずる措置に準じまして、昭和六十一年度から採用者の一部について積極的に国鉄等職員の受け入れに取り組むよう協力要請を行ってまいりました。しかし、地方公共団体の採用の実情や地方行革の推進途上の事情にかんがみますと、地方公共団体が国鉄等職員を多数受け入れることには、困難な問題も予想されておるところでありますが、国鉄改革の成否いかんは、地方の交通体系、住民生活に大きな影響を与えるものでありまして、各地方公共団体に対しても、職員の新陳代謝の範囲内で事情の許す限りの自主的な協力を求めていくことといたしております。
 それから、各地方公共団体の要望につきましてですが、国鉄改革に関していろいろな要望、要請などが出されていることは承知いたしております。自治省としては、国鉄改革が当面する国の重要課題であり、余剰人員の受け入れを含めまして、その円滑な実施を図る観点から地域交通の確保を図るなど、国として十分な配慮をすべきである、そのように考えております。
 それから積雪寒冷地、山村、過疎地域等の地域交通でございますが、国鉄改革の実施に当たりましては、この地域交通の確保につきましては、何といっても最重要課題の一つであると考えております。したがいまして、積雪寒冷地帯、山村、過疎地域につきましても、地域の実情を踏まえた地域交通の確保について、十分な配慮がなされるべきものと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣三塚博君登壇〕
○国務大臣(三塚博君) 山下議員にお答えを申し上げます。
 新会社に対する税制措置につきましては、総理から、また自治大臣から、その基本的な理念を御説明を申し上げたところでございまして、本件は、まさに新しい会社が地域会社としてスタートを切らさせていただきますための経過措置を講じておるわけでございまして、税法上たびたび経過措置は講ぜられておることでもって、違法ではない、こういうことであります。
 次に、地方公共団体の国鉄余剰人員の受け入れ態勢につきましても、小沢自治大臣からこれまた詳しく例説明がございました。地方行革のさなかであり、大変なことはよくわかるのでありますが、国鉄が果たしてまいりました今日までの地域開発に対する役割、さらに今日の分割・民営案は、まさに地域鉄道として地域のためになる鉄道の再生、新生を目指す、こういうところに存するところであるわけでございますから、地域鉄道であります限り、地域の地方公共団体もでき得ます限りの範囲内において御賛同賜りますことはありがたいことであり、そのようにお願いを申し上げておるところであり、そのことによって再生をいたしますことは、地域に大きなプラスをもたらすであろうと信じて疑わないところであります。なお、この余剰人員を受け入れたことにかんがみまして、地方の要請にどう対処するかということでありますが、政治は、地方の問題についても、今日ただいまあらゆる分野において誠実に実行いたしておるところでありまして、今日要請を受けた問題については、関係省庁と十二分に協議をし、善処してまいりたいと考えております。
 次に、鉄道公安業務についてでございますが、列車の警乗、鉄道施設内における治安維持等を鉄道公安業務が担当してまいりましたことは、御案内のとおりであります。都道府県警察に今回引き継ぐことに相なったわけでございますが、都道府県警察が、現在鉄道公安職員によって維持されております鉄道施設内の治安の水準を下げることなくその任務を全うできますように、必要な人員を配置することと承知いたしておるところであります。なお、鉄道公安業務の移管に伴う職員の共済年金の積立金は、国家公務員等共済組合法の規定により、国鉄共済組合から地方公務員共済組合に移管することに相なっております。
 さらに、交通福祉と安全についてでございますが、公共交通を担う輸送機関が、安全の確保を図りつつ、交通弱者についても十分配慮をいたすべきことは、御指摘のとおりであります。この場合、各種交通機関の発達した今日において、公共交通の分野においても、各交通機関がそれぞれの特性に応じ役割を分担することが適切であり、最も効率的に公共輸送を確保する結果と相なるものと考えております。今回の改革では、国鉄の事業を輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送を確保し得る経営形態に変更するものであり、これにより経営が活性化され、鉄道としての特性が生かされることになり、公共輸送機関として真に国民の期待にこたえられることに相なると考えております。なお、輸送の安全は、経営形態のいかんを問わず、最大の原理原則でございまして、経営形態がどう相なりましょうとも、安全の確保については十分に指導してまいりたいと考えておるところであります。(拍手)
    〔国務大臣山崎平八郎君登壇〕
○国務大臣(山崎平八郎君) お答えいたします。
 二問いただいたわけでございますが、第一問の四全総と鉄道の位置づけいかんということでございますが、我が国の交通体系の中で、鉄道の役割はいろいろと変化しつつあるわけでございますけれども、中距離都市間輸送や大都市圏輸送等の面でまことに重要でございます。また、地方交通線は、地域の生活や経済の面で相当の役割を果たしているものも少なくないと認識いたしております。そこで、四全総の策定に当たりましては、このような鉄道の特性を踏まえつつ、国土の均衡ある発展を図る観点から、長期的視点に立って交通体系の整備につきまして検討を進めてまいる所存でございます。
 残る一問は、豪雪地帯あるいは過疎地帯、この辺の交通をどのようにするかという問題でございますが、豪雪地帯、過疎、山村地域等自然的、社会的条件の厳しい地域におきますところの交通の確保ということは、これらの地域の振興を図る上で極めて重要でございますので、当庁といたしましては、関係省庁との連携をとりながら、各般の施策を行ってきたところであります。今後とも、こうした地域の利用者の利便を図るため、国土庁といたしましても、地域の実情に応じまして、鉄道、バス等による交通手段が確保されるよう、関係省庁と協力して努めてまいる所存でございます。(拍手)
○議長(坂田道太君) これにて質疑は終了いたしました。
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 国務大臣の発言(昭和五十九年度決算の概要について)
○議長(坂田道太君) 大蔵大臣から、昭和五十九年度決算の概要について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣竹下登君。
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
○国務大臣(竹下登君) 昭和五十九年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計におきまして、歳入の決算額は五十二兆千八百三十三億円余、歳出の決算額は五十一兆四千八百六億円余でありまして、差し引き七千二十七億円余の剰余を生じました。
 この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計の昭和六十年度の歳入に繰り入れ済みであります。
 なお、昭和五十九年度における財政法第六条の純剰余金は千七百五十四億円余となります。
 以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額五十一兆五千百三十三億円余に比べて六千七百億円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額六千百九十一億円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加瀬は五百九億円余となるのであります。
 その内訳は、租税及び印紙収入、雑収入等における増加額千三百四十六億円余、公債金における減少額八百三十六億円余となっております。
 一方、歳出につきましては、予算額五十一兆五千百三十三億円余に、昭和五十八年度からの繰越額六千百九十一億円余を加えました歳出予算現額五十二兆千三百二十四億円余に対しまして、支出済み歳出額は五十一兆四千八百六億円余でありまして、その差額六千五百十八億円余のうち、昭和六十年度に繰り越しました額は四千九百六十五億円余となっており、不用となりました額は千五百五十二億円余となっております。
 次に、予備費でありますが、昭和五十九年度一般会計における予備費の予算額は千七百億円であり、その使用額は千二百八十七億円余であります。
 次に、昭和五十九年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十九でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。
 次に、昭和五十九年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は三十五兆六千五百七十六億円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は三十五兆六千四百六億円余でありますので、差し引き百七十億円余が昭和五十九年度末の資金残額となります。
 これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。
 次に、昭和五十九年度の政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が昭和五十九年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書の概要であります。
 何とぞ御審議のほどお願いを申し上げます。(拍手)
     ────◇─────
 国務大臣の発言(昭和五十九年度決算の概要について)に対する質疑
○議長(坂田道太君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。林大幹君。
    〔林大幹君登壇〕
○林大幹君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算に対し、その基本的な姿勢について総理にお伺いするものであります。
 申すまでもなく、決算は、国の歳入歳出の実績であり、これによって、予算の執行が適正に行われていたかどうかの判断材料を国民に提供する重要な資料であります。歳入予算の収納実績がどうであったか、歳出予算の執行が正当かつ適法に行われていたかどうか、また、それによって所期の目的が達成されたかどうかなどについて、真実を国民に示すものでなければなりません。もし不当、違法な事項があれば、それを指摘することにより、将来の行財政の適正な運営に資する重要な指針となるものであります。政府は、会計検査院が指摘した決算検査報告を踏まえ、本院における決算審議を尊重して、国政の運営に努められるよう切望するものであります。(拍手)
 次に、当面する財政改革の進め方について、政府の考え方をお伺いいたします。
 我が国の財政事情は、依然として極めて厳しく、六十一年度末における公債残高は百四十兆円を超えることが見込まれ、その利払い等に要する経費も六十一年度予算において十一兆円余を計上するに至り、実に歳出の二〇%を超える実情であります。財政が身動きのつきがたい状況になりつつあります。一方において、我が国を取り巻く国際経済の情勢は引き続き厳しいものがあり、この難局を乗り越えるためにも、行財政の面で果断な対応が迫られております。さらにまた、急速に到来しつつある高齢化社会への財政の対応も急務と言えます。したがって、このような危機的な状況から一刻も早く脱出し、財政の対応力を回復するためには、財政改革は最重点課題の一つであります。
 政府は、財政改革の当面の目標として、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却することを表明しておりますが、しかし、六十一年度予算においてもなお、特例公債の新規発行額は五兆円を超えており、この目標達成は容易なことではありません。このためには、歳出歳入両面にわたって格段の努力が要請されております。さらに、近来、急速な円高は、輸出産業を主体に、当面の景気に陰りをもたらし、六十一年度の税収が果たして予算額を確保できるかどうか、懸念される声も聞かれるところであります。このような中にあって、六十五年度特例公債脱却という政府の努力目標が、歳出の削減のみで果たして可能かどうか、特に歳入の確保について問題はないかを、まずお聞きしたいのであります。(拍手)
 円高は、デメリットとメリットの二つの顔を持っております。円高のデメリットを超克して、メリット分を国民が享受するために、機を失せざる対策について、政府の英断を要望するものであります。
 さらに、政府は、連年にわたって、財政改革推進のために国民に対して協力を求めてきている以上、今後さらに一層の協力を求めるためには、具体的にどのような方策とスケジュールで六十五年度までに特例公債依存体質から脱却しようとするのか、その基本的な考え方を明らかにするとともに、今後の財政改革の中期的見通しもあわせて示すことにより、積極的に国民の理解と協力を求めるべきではないかと思いますが、この点についての総理の御所見をお伺いしたいのであります。(拍手)
 さて、いつの時代にありましても、国民の貴重な血税が、むだ遣いや不当な支出に浪費されることがあってはなりません。いわんや、今日のように財政が極めて厳しい状況にあるときはなおさらであります。しかしながら、五十九年度決算においても、各省庁にわたって、不当事項、あるいは検査院法三十四条によって意見を表示し、または処置を要求した事項等の不適正な点がかなり指摘されております。不適正な経理事項や不当事項等に対して、これを改善するために今後どのような措置をとられるのですか、総理の御所見をお伺いしたいのであります。
 人間は、自己のために努力するとともに、自分以外の他のためにおのれを尽くすところに人の真価があらわれるのであります。その典型は、母の姿でありましょう。公僕たる者は、全体の奉仕者として、国民のために自己を尽くすところにその公僕の本分が存するものであります。「信以って義を行い、義以って命を成す」の教訓のとおり、治政の根本に信義をもって行えば、国民はその政治を信頼し、国の運命はそれによってつくられていくものであります。決算の目指すところも、政治の信頼をいかに確保するかにあるということであります。総理の一層のリーダーシップを発揮されんことを切望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 林議員にお答えをいたします。
 まず、決算に対する政府の基本的姿勢でございますが、予算執行の実績を正しく把握することによりまして、政府部内では、予算の妥当性を判断したり、あるいは次の予算編成に重大なる参考として我々は活用しております。国会におかれましては、予算による事前の監督及び決算審査を通ずる事後の監督が可能でございます。決算制度は、その適切な運用により、初めて予算制度を設けた意義とその制度の目的を全うすることができると思っております。政府としましては、今後とも、予算の適正な執行について努力してまいります。
 六十五年度特例公債、赤字公債依存体質脱却の問題でございますが、財政環境は極めて厳しい状況にございまして、なかなか困難であることは承知しております。しかし、この旗をおろすということは、一遍に今までの成果が水泡に帰するような財政需要あるいは行政需要を生むおそれもございまして、政府としては、全力を振るってこの目的を今も達成すべく努力してまいります。
 円高の定着が経済に及ぼす影響につきましては、プラス、マイナス両面ございますが、余り急激な円高のために、中小企業の皆さんが多大の苦難に見舞われていることをよく承知いたしまして、今緊急政策を用意している最中でございます。なお、円高の効果でございますが、電力、ガスの料金引き下げは、六月一日から一兆八百五十九億円やる予定でございます。標準家庭におきましては、千四百円から千六百円ぐらい毎月電気料、ガス料が減る予定でございます。石油製品につきましては、ガソリンが昨年の九月リッター百三十八円でありましたのが、今百三十円、場所によっては百三十円を切るところも出てまいりました。灯油につきましては、リッター七十五円というのが、四日の統計によりますと六十二円に下がってきております。プロパンガスにつきましては、約一千億円程度の値引きを行う予定であり、これにより、標準家庭において三百円から四百円ぐらいプロパン料が減るという計算になっております。
 さて、六十五年度赤字公債依存体質脱却の方策でございますが、これは今まで、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、それから「財政の中期展望」あわせまして、毎年度国会に提出して御参考に供しておるところでございますが、今後、臨調答申も踏まえ、各方面の御議論を伺いながら、臨調答申を基調として、この円高等に対しましては、臨時緊急の措置を弾力的、機動的に適用しつつ対策を講じてまいりたいと思っております。そして、六十五年度赤字公債依存体質脱却に関する財政その他の政策につきましては、財政政策、金融政策、国有財産の売却あるいは内需の振興等々を総合的に把握いたしまして、予算編成過程においてこれを推進してまいりたいと思っておる次第です。
 次に、不当事項等の問題でございますが、政府としては、従来から、厳正かつ効率的な執行に努めておるところでございますが、不適正使用の事例が生じていることはまことに遺憾であり、申しわけない次第でございます。これらの事項につきましては、その周知徹底を図るとともに、再発防止を図り、綱紀の粛正をさらに一層強めてまいりたいと思っておるところでございます。今後とも、真剣に努力してまいりますので、御了承をお願いいたします。(拍手)
    ─────────────
○議長(坂田道太君) 小川国彦君。
    〔小川国彦君登壇〕
○小川国彦君 私は、日本社会党・護憲共同を代表しまして、昭和五十九年度決算について質問をいたします。私は、この決算の質問に際し、たくさんの問題点の中から、その焦点を海外経済協力の予算とそのあり方一本に絞って、ただしたいと存じます。
 今日、我が国のODA、いわゆる経済協力の予算は、年々拡大の一途をたどり、昭和五十九年度でその実績は一兆二百五十八億円、昭和六十一年度は予算で一兆二千九百二十二億円に達しております。しかし、この内容についての検討は、これまで国会においても会計検査院においても、十分になされていたとは言えない現状であります。
 そこで、質問したい第一点は、中曽根内閣の国会議員の資料請求や国政調査に対する非協力や提出拒否、そして甚だしきは、書類の廃棄、隠ぺいといった悪質きわまりない妨害行為についてであります。
 国会議員が国会で審議をするために、国政調査権に基づき行政府に資料の請求をするのは当然のことであります。しかるに最近、政府各省庁が、各種の口実を設けて資料提出を拒否している事実が目立っていることは、行政府の立法府に対する重大な挑戦だと言わざるを得ません。この妨害、拒否によって、我々が税金の使途について、特に決算委員会の審議の場で、事実を解明することに重大な障害を生じております。ここで私は、まず中曽根総理に対し、なぜ、いかなる立場で、いかなる法的根拠に基づき国政調査に協力しないのか、行政府の長として中曽根総理に真意をただしたいのであります。(拍手)
 具体的な例を挙げますならば、私は決算委員の立場から、外務大臣、外務省に対して、フィリピンに対する有償資金協力、無償資金協力の事業を行ったプロジェクトの着工の時期、完了の時期、実施箇所、予算、実施企業一覧について資料の提出を求めました。ところが、肝心の実施企業一覧について、外務省の有償資金協力課、無償資金協力課の両課は提出を拒否し、担当参事官もまた拒否したのであります。
 そこで、私は、決算審査の必要上、決算委員の立場で、本年三月内閣に質問主意書をもってこれをただしました。これに対して中曽根総理大臣の答弁書は、この「契約は、あくまでも被援助国政府と企業との間の契約であり、契約当事者でない我が国政府として、その内容を公表する立場にない。」と拒否されました。しかし、その答弁書の一方では、実施企業名に関する資料を確実に保存している海外経済協力基金に対し我々の国政調査権は及ぶのかという問いに対し、当然及ぶものであると答えております。それならば、受注を受けた日本企業が、海外経済協力基金の審査を受け、基金に支払いを求める行為は、当然国政調査権の及ぶ範囲に入ってくるのではありませんか。しかも、援助を行う主体は我が国であります。その我が国において、中曽根総理、なぜこのような資料提供を拒むのですか。もしどうしても拒むというのであれば、その法的根拠をお示しいただきたいのであります。
 質問の第二点は、商品借款の問題であります。(発言する者あり)
 政府は、五十九年度で第十二次分として三百五十二億円、さらに昭和六十二年度に、昭和六十年度において――ちょっと演説を間違えますから、もう少し静粛にお願いいたします。第十三次分百六十四億円の商品借款を決めました。ところが、この商品借款の中身が、どういう目的にどのような商品が使われ、フィリピンの国民生活にどのように役立っているのか、全く明らかにされていません。本年一月示された第十二次分の内容も、原料、製品三九%、化学工業製品三六%、機械類及び輸送機一一%、その他一四%といったパーセンテージのみの資料とか、あるいは、医薬品一億五千二百万円、化粧品、洗剤一億八千四百万円、肥料一億三千六百万円と、まことに大ざっぱに三十七項目に分類したりストを提出してきたのみであります。そして、我々が最初から要求いたしております調達品目の単品名、価格、数量、調達者、供給先、供給目的を明らかにした資料を求めましても、これを拒否して提出しないのであります。
 このように国会の審議をごまかすやり方で、どうして商品援助の適正か否かを判断することができましょうか。各省庁の一握りの官僚だけが情報を独占している独善主義、秘密主義、ここから業界と官僚と与党が組んだ政治の腐敗が生まれているのではないですか。それとも、援助の金は女房に渡した小遣いのようなもので、その使い道をただすものではないと言った平泉経済企画庁長官と本音は同じように考えているのでしょうか。総理及び外務大臣に、提出しない理由を伺いたいと存じます。(拍手)
 さらに商品借款に関しての疑惑を指摘するならば、海外経済協力基金が第一次から第七次までの貸付関係証拠書類を勝手に廃棄処分し、証拠隠滅の犯罪的な行為を行ったことであります。すなわち、基金は、発足以来保存されてきたプロジェクトや商品借款の契約に関する証拠資料を、書類の保存が困難だからという理由で文書管理規則を勝手に改正して、永久保存の証拠資料を三年保存に切りかえ、ことごとく重要資料を廃棄してしまったのであります。しかも、このような重大な措置を、総裁も理事もタッチせず、総務部長の権限内で処理したというのであります。他の政府関係金融機関では、このような重要な規則改正は、すべて理事会の承認を経て総裁が決定を下しているのでありますが、基金のやり方はまさに異常な処理の仕方であります。
 さらに重大なことは、契約関係の証拠資料に関する保存期間は、他の金融機関がすべて貸付金返済後三年間保存となっておりますのに、基金の処分は貸し付け後三年間保存という、全くでたらめなものであります。政府機関としてこのような乱脈な処理を許してよいのか、当然責任者の処分を行うべきだと思うが、監督官庁の責任者として、平泉経済企画庁長官の答弁を求めるものであります。(拍手)
 質問の第三点は、輸出保険支払い額の増大と対フィリピン、特に丸紅商社に対するリスケの支払い状況についてであります。
 総合商社丸紅の、疑惑を持たれております砂糖プラントを初めとする対フィリピン輸出の輸出保険の支払いはどうなっているのか、国政調査権に基づき、申請の件数、内容、処理状況について、渡辺通産大臣の答弁を求めるものであります。
 最後に、私は、食糧増産援助の問題についてただしたいと思います。
 我が国は、フィリピンに対し九次にわたり、食糧増産のための肥料、農薬、農機具の無償供与を行い、その総額は百八十五億円に上っております。当初、肥料、農薬は、政府機関によって農民に販売されていたものが、最近においては、すべて肥料会社に売り渡されており、肥料会社が利ざやを稼いで農民に売り渡し、この肥料会社が政治献金のパイプ役になっている事実を確認しております。これでは、日本の援助はだれのために行われているのか。日本の農機具、農薬、肥料メーカーやフィリピンの肥料会社の金もうけのために使われているだけであって、真に食糧増産援助としては使われていないと言わざるを得ません。(拍手)
 また、これら肥料、農薬、農機具の販売代金は、見返り資金特別会計として積み立てられ、食糧生産の増大を含む農業開発の目的のために利用されるとなっておりますが、この積み立ても、昭和五十二年から五十六年の間に八十一億五千万円の積み立てを予定されたものが、七十五億六千万円しか積み立てられず、五億九千万円も不足しており、さらに五十七年には、十八億一千万円積み立てを予定されたものが、十億五千万円しか積み立てられておらず、七億六千万円も不足しているのであります。品物が確かに売られているにもかかわらず、その代金ほどこへ消えてしまったのでありましょうか。
 交換公文においては、「フィリピン政府は、生産物の輸入に関して行われる日本円による払い込みの額の等価格を同国政府の名義でフィリピン中央銀行に積み立てる」と定められております。公文に記された政府間の約束が守られていない事実を放置してきた外務省の怠慢は重大なものであります。外務大臣はこの責任をどう受けとめているのか、その答弁を求めるものであります。
 外国政府の無償援助を見ますと、事前調査から始まって終了後の効果の判定まで、実に綿密な報告が国会に行われているのが現状であります。税金の使途は一銭に至るまで明確でなければならないからであります。さらに、その援助を真に効果があるように、食糧増産に力となるように非常な努力が積み重ねられております。日本のようにやりっ放し、報告なしなどという国は珍しい存在であります。フィリピンを初め開発途上国に出されている食糧増産援助は皆、同様な欠陥と問題点を抱えております。総理は、この点をどのように認識されておりますか。
 私は、ここに援助のごく一部分の問題点を指摘しましたが、総理を初め関係閣僚が今後、日本の援助のあり方を根本的に見直し、真に開発途上国への生きた政策を確立されることを強く要求して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 小川議員にお答えをいたします。
 まず、対比援助関連資料の提出の問題でございますが、国政調査権は、憲法に基づいて国会に認められたものでありまして、政府としてももちろん尊重すべきものと心得ております。政府としても、可能な限り資料の提出のために努力いたしたいと思っておるところでございます。他方、我が国が開発途上国に対して行う資金協力の実施に関連して、被援助国政府が企業との間で締結する契約は、あくまでも被援助国政府と企業との間の契約であります。契約当事者でない我が国政府として、その内容を公表する立場にはないのであります。それは、相手国政府が公表してくれという、そういう話があれば別でございますけれども、それ以外の場合には具体的にないのでございます。まだフィリピン政府から正式にそういう要望はございません。
 次に、事前調査等の問題でございますが、我が国の経済協力の効果的、効率的実施を図る上で、事前調査及び援助後の評価の充実は極めて重要であることは、御指摘のとおりです。今後とも、事前調査及び援助評価の一層の充実に努力してまいります。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
○国務大臣(安倍晋太郎君) 小川議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、プロジェクトに係る受注企業名等の公表の問題についてでございますが、これは今、総理が答弁をいたしましたとおりでございまして、その内容を公表する立場にはありません。なお、御指摘の事項のうち、プロジェクトの着工、完了の時期、所在地、プロジェクトの概要については、既に説明あるいは資料提出済みであると承知しております。
 次に、対比食糧増産援助につき、肥料会社が介入し、利益を得ているのではないかとの御質問につきましては、我が国は、開発途上国における食糧不足問題については、単に食糧を供与するだけでなく、開発途上国による食糧自給のための増産努力に対し、協力を行うべきであるとの考え方に立っております。このような考え方のもとに、昭和五十二年度以降、食糧増産援助を実施してきておるわけです。また、同援助は、食糧増産に必要な外貨を供与するとの意味において、被援助国の負担を軽減するとの重要な役割を果たしております。昭和五十二年以来のフィリピンに対する食糧増産援助も、その食糧増産に貢献するところ極めて大であると評価しております。
 我が国より供与された農業資機材は、もちろん被援助国政府により効果的、効率的に使用されるべきものでありますが、その使用、配付方法は、第一義的に被援助国政府が決定すべきことであります。なお、フィリピンに対し供与された肥料及び農薬については、国家食糧・農業委員会が、配付会社を通じ販売をしておりまして、価格については、フィリピンの政府機関が関与の上決定されているものと承知しております。
 さらに、対比食糧増産援助に係る積み立て等につきましては、我が国では、食糧増産援助に関し、現地通貨の積立制度を設けております。これは、被援助国側において供与資金に見合う内貨を積み立て、これを被援助国自身による農業開発の目的のために活用することが、より効果的であるとの趣旨で設けているものであります。現地通貨の積み立て方式については、かかる趣旨を踏まえ、被援助国との間で決めております。フィリピンの場合には、国立銀行に積み立てるものと、予算計上するものの二本立てになっておりますが、これは、供与品目の利用方法等に関するフィリピン側の事情をも勘案の上、フィリピン側と協議し決定したものであります。フィリピンによる現地通貨積み立て状況については、当方も承知しておりますが、これについては、交換公文の関係規定の趣旨から見ると、妥当なものであると考えております。
 また、食糧増産援助全般の見直しにつきましては、我が国の食糧増産援助は、これまでも被援助国より高い評価を得ておりまして、より効果的な援助とすべく、一層努力してまいりたいと思います。
 次に、対比商品借款の公表につきましては、外務省としましては、対比商品借款につき公表できる資料は公表しておりますが、御指摘の商品の具体的な価格であるとか購入先等につきましては、輸出業者と輸入業者の間の私契約の内容に係る事項でありまして、従来申し上げておりますとおり、契約の当事者でない政府はその内容を公表する立場にはありません。
 次に、経済協力評価報告書の問題についてでありますが、外務省は、援助の効果的、効率的な実施を確保するため、事前調査、事後評価の充実等、可能な限りの諸措置を講じてきております。これらの措置を通じ、我が国の援助はおおむね順調に維持、運営、管理され、所期の目的を達しているものと確信をいたしております。また、外務省では、我が国の援助が相手国の経済社会の開発、民生の安定、福祉の向上にどのように貢献しているか等につき、公正、客観的な評価を行うべく心がけておりまして、特に評価の中立性、客観性の確保の観点から、民間の団体、有識者等の第三者による評価を行っております。さらに、本年四月より、ODA研究会のもとに援助評価検討部会を開催し、政府開発援助に関して外務省が実施している評価のあり方等について、御検討をいただいておるわけでございます。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) フィリピンに輸出した丸紅の保険の引き受けとか保険金支払い内容、それを示せというお話でございますが、全体の問題につきましては、小川議員にはちゃんと申し上げております。フィリピンに対して、例えば、昭和六十年は千九百五十の件数があって、引受保険金額が二百四十九億円である、あるいは六十年の責任残高が千九百三十四億円あるとか、あるいは支払った保険金は百十九件で百六十七億円だというようなことは、ちゃんとお示しをいたしました。しかしながら、その中身について、どこの会社が幾らというようなことは、保険や何かでも、どこのだれそれさんは幾ら加入しているかという発表は、私的な問題でございますので、答弁は差し控えさしていただきたい。
 なお、諸外国の輸出保険機関におきましても、世界じゅうみんなそういうようなことになっておるわけであります。なぜかと申しますと、やはり企業の秘密というものがございまして、具体的内容について全部それを公表するということはいろいろ問題がある、当該企業の経営活動に重大な支障を及ぼすおそれもあるということで、それは私的な問題ですから公表はしないという取り扱いでございますので、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣平泉渉君登壇〕
○国務大臣(平泉渉君) 小川先生にお答えを申し上げます。
 私への御質問の基金のファイリングの要領の問題、文書管理の問題でございますが、基金の文書取り扱いに係る規程は、永久保存、完済後十年保存、貸し付け完了後五年保存など、文書の性格に応じて必要な保存期間を定めておる次第でございます。商品借款についても、借款契約は永久保存、貸付実行稟議書は完済後十年、リインバース請求書に添付される証拠書類は貸し付け完了後三年などと、おのおの所要の保存期間が決められておるものと承知いたしております。このように基金の文書管理要領は、債権保全上あるいは当該事業及び計画の達成を確保する観点から適切な保存期間を定めており、全体として妥当なものと考えておる次第でございます。(拍手)
    ─────────────
○議長(坂田道太君) 春田重昭君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔春田重昭君登壇〕
○春田重昭君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算に関して、現在の政治状況に深くかかわる諸問題を踏まえつつ、総理並びに関係大臣に質問するものであります。
 当面する我が国経済は、急激かつ大幅な円高によって、輸出関連中小企業はもとより、景気の先行き不安も加わり、産業全体が厳しい局面にさらされております。振り返ってみると、現在の円高の背景となっている巨額な経常黒字は、実は昭和五十九年度予算編成に大きくかかわりを持っているのであります。昭和五十九年度の我が国経済の実質成長率は、当初見通しの四・一%を上回り、五・〇%を達成したのであります。この実質経済成長率は、対米輸出の増加を中心とした外需によるものであり、外需寄与度は、当初見通しの〇・五%から一・二%へ、経常黒字は、同じく二百三十億ドルから三百七十億ドルの巨額に達したのであります。
 私どもは、五十九年度予算編成に当たり、五十八年度に急増した経常黒字を縮小するために、大幅所得税減税を軸とした内需の拡大を訴えたことは言うまでもありません。しかし、政府は、所得税減税は実施したものの、その見返りに酒税、物品税等の大衆増税を中心に大増税を実施し、公共料金の引き上げ、福祉施策の後退とあわせ、国民生活を著しく圧迫する予算を編成したのであります。その結果、個人消費は大幅に後退し、内需主導の経済成長を推し進めることができなかったのであります。
 このように、昭和五十九年度予算編成は、今日の円高の淵源であるとも言うことができ、私は、外需依存の経済を野放しにした政府の責任は、まことに重大であると断ぜざるを得ないのであります。東京サミットを経てもなお、円高は騰勢を続け、いわゆる円高不況の猛威を日々濃くしている現状でありますが、中曽根総理は、昭和五十九年度経済を現時点でどう総括され、また評価されようとしているのか、まずお尋ねをいたします。
 ここで、過日開催された東京サミットについて、若干触れておかねばなりません。
 言うまでもなく、サミットの性格から見て、先進主要国の首脳が一堂に会し、当面する世界経済、国際情勢など幅広い諸問題に対し、率直な意見交換が図られたこと自体、評価するにやぶさかではありません。しかしながら、会議の成果をまとめたとされる経済宣言、政治三文書において見る限り、我が国の意見がどの程度反映されたかについては極めて疑問であります。すなわち、今回のサミットでは、急激な円高を防ぐための先進諸国、特に米国、西ドイツからの協力を得ることができなかったのであります。総理、今や国民は、とどまることを知らぬ円高の進行に恐怖し、先行きに深い不安を抱いているのであります。期待をつないだサミットにおいて、何ゆえに国民が強く求める円高是正について、有益であれば介入するとのウィリアムズバーグ宣言を再確認したにとどまり、逆介入等を含む協調体制についての合意を取りつけることができなかったのか、総理並びに大蔵大臣の御所見を賜りたい。
 さらに、円高をこのまま放置すれば、今後の我が国経済は重大な局面を迎えることは必至であります。現在、政府は、こうした騰勢にいかなる有効な歯どめ策を講じようとされるのか、また私は、現在の円レートは明らかに行き過ぎであると考えるものでありますが、政府はどのように認識されておられるのか、あわせて具体的な答弁を求めるものであります。また、このような急激な円高に、我が国産業、とりわけ輸出産業、関連中小企業は自信を喪失し、国内産業全般にわたっても競争力が失われつつある深刻な事態に遭遇しており、救済措置は一刻の猶予も許されません。速やかな対応が強く望まれている今日、政府はいかなる対策を講じようとされているのか、総理並びに通産大臣にお尋ねいたします。
 あえて多言を要するまでもなく、我が国経済が取り組むべき緊急かつ最大の課題は、これまでの外需依存型体質から内需依存型へ脱却を図ることであり、そのプロセスの中で経常収支の黒字減少を図るべきであることは、衆目の一致して認めるところであります。そのためには、今こそ思い切った内需拡大策を講ずるべきであります。所得税、住民税の大幅減税及び住宅減税等の政策減税の断行や公共投資の追加など、財政の裏づけのある景気対策を早急に行うべきであると考えるのでありますが、総理並びに大蔵大臣の御見解を賜りたいのであります。
 さらに総理は、必要なら公共事業などを中心とした補正予算を組みたいと表明されておりますが、どの程度の規模を想定されているのか、時期はいつごろをめどとされているのか、またその財源には、かねて我が党が主張する建設国債を念頭に置いておられるのか、明確な御答弁を求めるものであります。また、この円高基調が続けば、経済成長率は大きく左右されることは必定であります。民間研究機関では、本年度の成長率は一ないし二%台の予測値が示されているのでありますが、総理が訪米時に約束された四%成長は、現時点でも可能と考えておられるのか、可能とすれば何を根拠とされるのか、あわせて総理の御所見をお尋ねいたします。
 次にお尋ねするのは、経済運営と密接なかかわりを持つ財政問題であります。
 昭和五十九年度は、どのように言い繕うとも、大衆課税の実態から見れば、「増税なき財政再建」が事実上放棄された年と言わざるを得ないのであります。政府は、六十年度、六十一年度においても増税を繰り返しながら、依然として「増税なき財政再建」を掲げておりますが、もはやその公約は、全くの実体のないものに成り下がっていることは、あえて言うまでもないのであります。今もって政府は、この公約を堅持されるというのか、そうであれば、大型間接税等の導入は絶対に行わないと確約できるのかどうか、しかと承りたいのであります。
 次に、海外経済協力についてお尋ねいたします。
 言うまでもなく、海外経済協力は、有償、無償にかかわらず、先進国たる我が国が負う当然の責務であり、その拡大を図ることに異論を差し挟むものではありません。しかしながら、遺憾なことに、これまでの経済援助に対し、とかくの風評がまつわりついていたことは事実でありました。その象徴と言えるのが、今回のフィリピン経済援助問題であります。
 政変後に誕生したアキノ政権を支持し、対フィリピン援助を拡大することに異論はないものの、いわゆるマルコス疑惑を放置したままであれば、国民の理解が得られるとは到底思えません。これまでのマルコス疑惑をめぐる質疑の経過から見ても、現段階ではフィリピン政府に対し、関連の資料を要求していないなど、政府の消極的姿勢が目立ち、国民は激しいいら立ちを抑えかねているのであります。政府には、このマルコス疑惑を徹底的に糾明する決意があるのかどうか、確認しておきたい。また、早期解明に向けて、フィリピン政府に対し、積極的に資料要求をする用意があるのか、総理並びに外務大臣にお伺いするものであります。
 さらに、我が国の経済援助全般にわたり、適正かつ効果的、効率的に使われているかを検証するシステムを確立すべきであると考えるのでありますが、御所見を賜りたいのであります。また、こうした問題の再発を防止するため、いかなる対策を講じようとされるのか、明快な答弁を求めるものであります。
 さて、昭和五十九年度決算検査報告を見ると、会計検査院からの指摘事項、批難事項は依然として後を絶たず、事態は改善されないばかりか、むしろ恒常化、悪質化の傾向をたどっているのであります。こうした事実は、国民の血税を預かる政府として強く反省し、襟を正すとともに、予算の適正執行に深く心しなければなりません。したがって、行政上の責任をより明確にすべきは、当然の努力と考えられるのであります。
 五十九年度決算の会計検査院指摘事項は百八十件、税金のむだ遣いは何と二百二十五億円にも達しており、この顔は、前年度に比べ三二%の増加となり、過去三年間では最高の数値を示しているのであります。検査院の検査実施率が九%であることを考えれば、不正、不当の指摘はまさに氷山の一角にすぎず、水面下を考えれば、途方もつかぬ巨額となることは明らかであります。極めて厳しい財政状況にある現在、こうした巨額の税金のむだ遣いが存在することは、政府の歳出削減の方向性を問い直さなければならず、同時に、予算編成に当たっての政府の決算軽視の姿が浮き彫りにされていると言えるのであります。政府は、こうした検査院の数多くの指摘をどう受けとめているのか、また、再発防止にはいかなる努力をされているのか、お伺いしたいのであります。
 以上、昭和五十九年度決算にかかわる諸問題につき、政府の考え方をただしてまいりましたが、政府の誠意ある御答弁を要求するものであります。
 最後に、私は、当面する未曾有の難局を乗り切るために、財政の出動によって、思い切った内需拡大策を実施するよう強く要求し、総理の決意を承り、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 春田議員にお答えをいたします。
 まず、昭和五十九年度の経済の評価でございますが、昭和五十九年度の我が国経済は、景気上昇の二年目でありまして、物価が安定する中で、景気は順調に推移いたしました。これは、ドル高の影響によって輸出が非常に高い伸びを示し始め、設備投資が力強い拡大を示したことにより、個人消費や住宅建設も進んできた、そういうことでございます。
 サミットでの協調の問題でございますが、サミットにおきましては、個別通貨を論ずる場ではないのであります。円とかマルクとかドルとかという個別通貨の価値を論ずる場ではないので、政策協調と各国が分担すべき構造改革について極めて積極的な合意を見ました。私は、これによりまして、世界経済に非常に明るい展望を与え、発展途上国に対しても与えたと思っておるのであります。先進国がばらばらであったならば、世界経済の前途は暗くなります。しかし、景気を上昇せしめ、またおのおのが持っておる問題点を解決する努力をしよう、そういう約束をしたということは、世界経済に対して明るい展望を与えた、分裂しなくてよかった、そういうふうに思っておるのであります。
 この前の七年前のサミットにおきましては、石油問題がありまして、非常に深刻な対立がありまして、日本の議長が知らない間に、ほかの六カ国が、フランス大使館でありましたか、そこに集まって、知らない間に向こうがまとまって、日本の議長にいろいろ押してきたという例があるのです。しかし、今回は、そういうことはもちろんなく、みんな協調して一致して行動がとれたということは、私は大きな歴史的意味がある、そのように考えておるのであります。(拍手)
 そして、通貨の問題につきましても、各国がおのおのの経済指標に基づいてその是正に努力をする、アメリカは財政赤字、日本は膨大なる黒字、ヨーロッパは産業の不活発と労使関係の不活発さ、こういう問題をおのおのが解決し合って、そして世界経済を大きく循環していこう、そういう面において完全な一致を見たのでございます。そして、円ドル関係につきましては、個別通貨の問題でございますから話す筋のものではないのです。しかし、為替の安定については皆関心を持っておりまして、必要あらば各国は協調して介入するのを辞さない、そういうウィリアムズバーグ・サミットの我々の宣言を確認したわけです。
 アメリカのレーガン大統領は、サミットが終わってアメリカへ帰る前に、新聞記者会見において次のように言っております。「我々は他のサミット参加国との経済政策調整の強化につき前進を見た。このことは、」途中略しますが、「また、より安定した為替相場を促進しよう。我々は、さらにこれが日米双方が望むところのより安定した円ドル関係をもたらすと信ずる。」こういうことを言っておるのであります。このことは、アメリカにおきましては今、保護主義法案が議会に出ておりまして、オムニバス法案は下院の本会議を通過したわけです。対日保護貿易法案も今出てきておるというところです。したがいまして、自由貿易論者のアメリカ大統領としては、統制とか介入ということは、議会に対する関係もありまして余り言えないのであります。レーガン大統領が去るについてここまで言った。つまり「日米双方が望むところの」そういうことを、「より安定した為替相場」ということをここで言っておるということは、精いっぱいの表現をしたと私は受け取っておるのであります。
 次に、円高歯どめ策の問題でございますが、これは相場というものは乱高下し、最近の情勢はいろいろ投機的な様相もかなり強くなってきております。まず、相場は相場に聞けとよく言われておるのでありますが、しかしこれも流動していくものでありまして、買いが出れば売りも出る、売りが出れば買いも出る、そういう流動的な変化というものがありますが、ある一定の期間というものを考えますと、両方の経済の現実に沿った相場に安定していくというのが相場の原則でございます。そういう意味におきまして、我々は、日本銀行あるいは大蔵省におきまして緊密な連絡をとりつつ、毎日毎日注目しつつ適切な措置をやるように今検討し、また、いざというときには実行するという構えでおるわけでございます。
 円高対策につきましては、四月八日に決定した中小企業対策を含む総合経済政策を着実に進めます。また、金利も三回にわたって下げました。しかし、今後も、この急激な円高のための中小企業に対する打撃をできるだけ早期に救うために、諸般の政策を今研究させて、できるだけ早期に実施したいと考えておるところでございます。
 景気対策の問題については、今申し上げたとおりでございますが、所得減税、法人減税等については、税調において今審議していただいておるというところであり、住宅減税につきましても、今年度において住宅促進税制を創設する等、かなり思い切ったぎりぎりのことを行っておるのであります。
 補正予算の問題については、先般私は参議院におきまして、公共事業の前倒しを行って、その後、もし必要な場合には、補正予算の検討もあり得る、しかし、最近の物価や利子の下落等によって経済状態がよくなってくると確信している、こういうふうに申し上げており、今も補正予算については、今後の推移を見つつ、必要あらば提出を考えたい、その考えておるところでございます。
 次に、四%成長は可能であるかどうかということでございますが、為替相場の変動も、ある安定点にいずれは落ちつくであろうと財界筋も見ております。我々は今、中小企業等に対する緊急政策を行いまして、応急対策をさらに強めたいと思っております。これらの措置も行い、あるいは公共事業の繰り上げそのほかの先般の経済政策を行うことによりまして、六十一年度の四%は可能であると考えております。しかし、アメリカや各国に四%を約束したということではありません。日本は今こういう状況にあり、円高で非常に苦しんでおる、しかし我々は今一生懸命努力しておる、そういう状況説明をしたということであります。
 次に、「増税なき財政再建」につきましては、先ほど申し上げたとおり、この旗をおろすわけにはいかない、総合的な政策をもって我々は粘り強く追求していきたいと申し上げたところです。
 マルコス疑惑の問題については、政府は、対比援助を正規の手続に従って処理しておりまして、その手続実施は適正に行われていると信じております。いわゆるマルコス文書には、我が国援助との関連でいろいろ指摘もされておりますが、これらの事実関係の調査に可能な限り努力もしております。その結果、改善すべき点があればもちろん改善してまいります。フィリピン政府に対する資料提出要求については、現在、我が国にある資料及び関係企業から聴取した内容等の情報をもとに事実関係の把握に努めておるところであり、現段階において特にフィリピン政府に資料の提出を求める考えはありません。
 経済援助については、事前調査の充実、交換公文における援助資金の適正使用及び施設、機材等の適正な使用、維持の義務づけ、評価活動の充実等の諸措置を講じております。これらの措置を通じまして、我が国の援助はおおむね適切に進行していると考えております。今後さらに検討を行い、改善すべき点があれば改善してまいります。なお、政府は、対外援助のあり方について、本年二月、諮問機関である対外経済協力審議会に対し、今後の経済協力を進めるに当たり留意すべき基本事項について諮問したところでございます。
 さらに、不当事項等の再発防止の問題でございますが、政府は、従来から、厳正かつ効率的な予算執行に努めておりますが、このような不適正使用の事実が出ていることはまことに遺憾であり、申しわけなく思っております。これらの不当事項等については、その周知徹底を図るなど、再発防止に努めると同時に、予算の執行に当たる者のモラルの一層の確立に努め、予算の厳正、効率的な執行に努力してまいります。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
○国務大臣(竹下登君) まず、私に対する御質問、総理からもそれぞれお答えがございましたが、最近の為替相場の動きは急激であって、このことについてサミットで、我が国経済への悪影響、これらについてお互い強く主張し、意見交換をしたことは事実であります。ただ、正確に申し上げますならば、いわゆる通貨調整そのものの話というものは、各国にございますいわゆる中立的な独立機関である中央銀行を外に置いて議論するというわけにはまいりません。したがって、その意味においては、あくまでもサミットにおける通貨問題の議論というのは、原則論ということにとどまるわけであります。
 そこで、現実問題として私どもは、ウィリアムズバーグ・サミット以来の大原則を確認したわけでありますが、今後、いわゆるG5、これが今まではインフォーマルなものでありましたが、これがフォーマルなものになった。さらにG7、こういうところにおきまして政策協調の相互監視を含めた議論の中で、おのずから経済ファンダメンタルズを適正に反映した通貨が決まっていくということが、最も重要なことでございます。さてそこで、この適正相場はいかに、こういうことでございますが、これは通貨当局者として発言を控えるというのが鉄則でございます。
 次の問題は、税制の問題でございます。
 内需依存型、これは事実、御指摘のとおりであります。したがって、三次にわたる内需拡大の策を講じたこと、また公定歩合が引き下げられたこと、そして原油価格を見てみますと、ちょうど二月末の約半分、こういうことに今なっておるわけであります。そういう低下傾向と、そしてもう一つは円高のメリット、これらが企業収益を向上さすに役立つであろうある種のタイムラグを考えて、そして機動的に経済運営をやっていかなければならぬと思います。
 それから、建設国債の増発、この問題については、いわば国債でも、赤字国債は悪で、建設国債は善であるとか、よく議論がなされがちのものであります。一番大事なことは、やはり昭和二十一年以来の財政法の精神に立ち返ることでございます。私は、公債発行政策がことごとく悪であるとは思っておりません。しかし、財政体質を一層悪化させることがないように、ここに適切な対応策が原則として必要である、このように考えるわけであります。
 さて、なお円高によるところのダメージを受ける中小企業等に対する措置、これはそれこそ通産大臣からもお答えがあろうかと思いますが、私どもといたしまして今、総理の指示を受けて、経済企画庁を中心に、鋭意、早急に検討を進めておるというのが今日の段階のお答えでございます。
 それから大型間接税の問題についても、既にお答えがございましたが、いわゆる課税ベースの広い間接税のあり方という問題につきましては、税制調査会では、今後の検討課題としての手順をお決めになっておるというのが現状の段階でございます。それから、会計検査院の指摘でございますが、私がいつでも非常に反省しなければならぬと思いますのは、同じことが翌年また引き続き指摘される、これこそ、私ども行政府にある者として、これが対応には精いっぱい今後とも努めなければならない問題であると考えております。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 中小企業に対する円高対策、これを大いにやりなさいということでございますが、中小企業も、円高で非常に苦しんでいる方、それからまた円高で非常にうけに入っている人、両方あるわけです。
 問題は、プロパンなどは、非常に原料が安くても値段が下がらないというものですから、これはいけませんよ、これは還元しなさいと言って、こういうものは指導をしておる。しかしながら、輸出産業が非常に困っておるというようなこともありまして、それについては、この前の事業転換法で三千億円の特別の低利融質を行って、金利も五%に下げた、保証枠も倍に広げた、その他、今いろいろお話があった内需拡大策をやるということでございますが、そのほかに、総理からもお話がありましたが、電力料金、ガス料金ともに直接還元で一兆一千億円弱下げる。その中で、中小企業向けのものが、大体小口の電力、中小企業が使っている事業の電力、これだけで約三千億円の還元になりますから、これは私は、やはり今までに思いがけない中小企業対策になる、そう思っておるわけであります。さらに、この状況を見て、総理の御指示によって、追加して中小企業対策をどんとやろうと今検討中でございます。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
○国務大臣(安倍晋太郎君) 春田議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、マルコス疑惑糾明の問題についてでございますが、これはもう既に総理からもお答えをいたしましたように、政府は、対比援助を正規の手続に従って処理してきておりまして、その実施は適正に行われておると信じておりますが、いわゆるマルコス文書については、我が国援助との関連でいろいろの指摘もございますから、これらの事実関係の調査に可能な限り努力しているところであります。その結果、改善すべき点があれば今後改善をしていきたいと考えます。フィリピン政府に対する資料提出要求につきましては、現在、我が国にある資料及び関係企業から聴取した内容等の情報をもとに事実関係の把握に努めておるところであり、現段階において特にフィリピン政府に対して資料の提出を求める考えはありません。
 次に、我が国の経済協力の検証システム等の問題につきましては、我が国は、援助の適正かつ効果的、効率的な実施を確保するため、事前調査の充実、交換公文における適正な使用、維持の義務づけ、公正な入札の確保、契約の審査、認証、評価活動の充実等の可能な限りの諸措置を講じてまいっております。これらの措置を通じまして、我が国の援助はおおむね順調に維持、運営、管理され、所期の目的を達しているものと考えておりますが、今後さらに検討を行い、改善すべき点は改善に努める所存であります。(拍手)
    ─────────────
○副議長(勝間田清一君) 玉置一弥君。
    〔玉置一弥君登壇〕
○玉置一弥君 私は、民社党・国民連合を代表し、昭和五十九年度決算及び関連の事項について、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。
 昭和五十九年度予算は、一般会計補正後では五十一兆五千百三十三億円であり、予算執行の実績を見ると、一般会計における収納済み歳入額は五十二兆千八百三十三億円であり、予算額に対して一・三%増加し、支出済み歳出額は五十一兆四千八百六億円で、予算に対して一・二%下回りました。これは、我が国経済が当初の政府の予測、実質経済成長率四・七%を上回り、第一次石油危機以来最も高い成長率の五・七%となったためであります。従来に比べて、内需依存度は外需を上回りましたが、貿易収支黒字基調は変わらず、特に対米貿易黒字三百六十八億ドルを記録し、日米間の経済問題が最大の課題となったのであります。
 五十九年四月に市場開放のための対外経済対策が打ち出され、その十二月には対外経済問題閣僚会議が設置され、貿易関係改善のためのわが国の姿勢は明確になってきましたが、欧米からの日本に対する要望はより具体的に、また、一部では内政干渉とさえ思われるほど強くなってきました。中曽根総理は、さきの日米首脳会談や東京サミットで、この問題の解決に期待されていたようですが、結果は、他の国々の協力は得られず、日本だけが一方的に貿易関係改善の責任を負うことになったのであります。
 国内景気対策、内需拡大政策が貿易改善の特効薬であることは、だれもが認めるところであり、より具体的な政府の取り組みを期待しているところであります。私たちが政府に対し要求している所得減税実施なども、内需拡大政策の実効ある最も具体的な政策であります。五十九年度の所得減税は約一兆二千億円実施されましたが、減税額を上回る約一兆三千億円の増税が行われ、同時に、健保法の改正によって社会保障費の負担が増加しました。国民にとって、わずかな減税のすりかえでしかなく、酒税、物品税の増税により、消費拡大への国民の意欲がそがれたと言えるでしょう。
 政府税制調査会の中間報告によれば、所得税減税は中堅所得者層を中心に行い、住民税と合わせた最高税率を現在の八八%から六割台に引き下げることや実額控除制度の採用など、評価できるものも多々ありますが、具体的な減税総額が明示されておらず、不満であります。具体的な減税額は幾らになるのか、まず総理にお伺いしたいのであります。この所得減税は、六十二年度に実施されると伝えられていますが、国民は、六十一年中に大幅な所得減税を強く切望しております。この国民の声を厳粛に受けとめ、六十一年中に所得減税を実施すべきと考えますが、総理の決意はいかがでありましょうか。五十九年度のような増税との抱き合わせ減税は、結局国民生活の向上に資さないのみか、景気対策上も失敗であったことを如実に示しております。この失敗を再び繰り返してはなりません。国民の不安を取り除くために、増税はしないと公約をしていただきたいが、総理の見解をお伺いいたします。
 次に、円高問題について政府の見解をお伺いいたします。
 最近における急激かつ大幅な円高は、経営努力をし、輸出を担ってきた産業に大きな打撃を与えております。最近の状況では、輸出産業の落ち込みから関連して、国内全体の産業にまで影響が出てきておりますが、総理は円高の影響をどう見ておられるのか、お伺いいたします。また、行き過ぎたこの異常な円高の状況を鎮静化させるためには、東京サミットで我が国が他の国に対して要望した協調介入しかないと思います。大蔵大臣は、東京サミットの時点で、他の国に拒否されてあきらめておられるようでありますが、協調介入をして行き過ぎた内容を修正しなければ、我が国産業にとって致命的な結果になると思います。大蔵大臣は、協調介入を他の国に再び依頼する意思を持っておられるか、それができなければ、せめて日米二カ国間だけの介入を行う意思があるのか、また、そのときはどのような条件が考えられるのか、お尋ねいたします。
 今日の百六十円台の円高が継続するならば、経済成長率は二%弱にとどまり、さらに円が高騰し、百二十円になるならば、一・五%の低成長になるとの予測がなされております。政府の経済見通しは四%でありますが、その目標は達成できないと私は考えるのであります。総理が今なお四%成長が達成できるという根拠をお持ちかどうか、お伺いしたいのであります。
 今日、本年度の補正予算論議が高まっております。私は、円高不況を克服するためにも、公共投資の拡充、所得減税、円高不況対策の強化などを盛り込んだ大型補正予算を早期に編成すべきだと考えておりますが、これに対する総理並びに大蔵大臣の見解をただしたいのであります。
 円高は、輸入物資の下落を通じ、国民生活に資するメリットがあります。電力、ガス料金の国民への還元を決めたことは、我が党の主張に沿うものであり、高く評価をいたします。しかし、一般輸入物資については、必ずしも円高メリットが国民生活を潤しているとは言えません。一般輸入物資の流通機構の見直しを含め、円高メリットが国民生活に還元されるよう、そのあり方を見直すべきだと考えますが、総理より具体的な答弁をいただきたいのであります。
 次に、マルコス疑惑問題と我が国の経済協力のあり方についてお尋ねいたします。
 マルコス疑惑問題は、国民の税金の一部が長期にわたって不当に使用され、それによって我が国の経済協力のあり方に内外の不信感を高めたという意味で、極めて重大な問題であります。もしこの問題の解明を怠り、経済協力のあり方の改善を放置するなら、今後の経済協力についての国民の合意を妨げ、なおかつ、諸外国の不信を高めることは必至であります。国会に特別委員会が設置されたにもかかわらず、この問題解明についての政府の姿勢は極めて消極的であり、避けて通ろうという態度は極めて遺憾であります。疑惑解明のために、以下の質問について具体的にお答えをいただきます。
 第一は、フィリピン政府に資料の提出を依頼し、フィリピン政府が了承すれば、フィリピン側の資料が入手できるとのことですが、外務大臣は国会への資料提出についてどのように考えておられるか、お答え願います。第二は、フィリピン行政規律委員会と日本の疑惑解明に対する協力であります。サロンガ委員長の訪日要請も含め、外務大臣に明快な答弁を求めます。第三は、国内における調査の状況です。関係各省がどのような調査をし、どのようなことが明らかになったのか。以上まとめて外務大臣からお聞かせをください。第四は、今後の海外協力のあり方について、どのような改善をしていくのか、チェック機能を含め、どのような機関でいつまでにまとめていくのか、総理のお考えをお尋ねいたします。
 次に、教育改革の問題についてお尋ねをいたします。
 去る四月二十三日、臨時教育審議会は、二十一世紀へ向けての我が国教育のあり方を示した基本答申とも言うべき性格の第二次答申を総理に提出いたしました。今回の答申の大きな特徴は、生涯学習体系への移行を全編を貫く大きな柱として据えたことであります。もとより人間は、人間としてある以上、常に学び、向上していくべきであり、人間の評価は、学歴ではなく、学習の成果によって行われるべきであります。そのためには、だれでも、いつでも、学びたいときに学ぶことのできる条件整備を進めなければなりません。総理は、現在の学校中心の教育体系を、どのような手順で生涯教育体系に改めていこうとされるのか、お伺いいたします。
 生涯学習体系への移行をなし遂げるためには、大学入試の偏差値信仰を改めていくことが必要であります。総理が臨教審を設置された理由の一つがこれであったはずであります。しかし、共通テストの導入によって偏差値教育が改まるようには思えないのでありますが、総理はどのような入試改革を考えておられるか、お答えをいただきたいのであります。
 最後に、国際化時代を迎え、帰国子女教育の充実を図る見地からお伺いをいたします。
 総理は、第二次答申に示された帰国子女の円滑な受け入れのための対策の諸点を、どのように実行に移されようとしておるのかお伺いをいたし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 玉置議員にお答えをいたします。
 まず、減税の問題でございますが、現在の税制にあるゆがみ、ひずみ、重圧感を除去して、安定的な歳入構造を確保する、そういう税制改革を考えておりますが、これは税収増を目的として行うものではございません。現在は、税調において審議、検討していただいておるところでございます。
 今回の中間報告は、定性的な報告が出されましたので、定量的な数量というものは示されておりません。いずれ秋の総合的な答申がどういうふうになるか、注目しているところでございます。
 それから、急激な円高への対応でございますが、これも先ほど来申し上げましたように、我々は三回にわたって公定歩合を引き下げ、あるいは四月八日には総合的な経済対策、特に中小企業対策を進めておるところでございますが、最近の円高の急激な状況にかんがみ、臨時、緊急の対応策を今検討させておるところであり、できるだけ速やかに実施したいと考えております。
 四%成長の問題は、これは今のような政策を持続的に行い、また、これからもいろいろ内需喚起に関する施策を実行いたしまして、目的どおり四%成長を実現したいと思いますし、そういう見込みでおるわけでございます。
 補正予算については、先ほど申し上げたとおりでございまして、経済の情勢をよく推移を見つつ、もし必要ある場合には補正予算を組むという考え方に立っておるわけでございます。
 それから、円高差益の還元の問題につきましても、今通産省あるいは農林省等督励して、全面的にチェックさせてやらせておるところでございまして、電気やガスや石油やあるいはそのほかについて着実に今進めておるところでございますが、一般消費財につきましても、さらに今チェックをさせておるところでございます。
 経済協力につきましては、事前調査の充実、交換公文における援助資金の適正使用及び施設、機材等の適正な使用、維持の義務づけ、評価活動の充実、これらの措置を推進いたしまして、私は、今までおおむね効果的に、関係国から感謝され、民生と福祉の安定に大きく貢献しておるものと考えておりますが、改善すべき点があれば、積極的に改善に努力してまいりたいと思います。
 生涯学習の問題でございますが、学歴社会の弊害を直して生涯学習に持っていこうというのが今回の臨教審の答申の大きな眼目で、我々は全面的に賛成であり、これを進めていきたい。家庭や地域社会の教育力の活性化、学校教育における自己教育力の育成、生涯にわたるその機会の整備などを進めてまいりたいと思っております。
 大学入試の改革問題につきましては、全くお示しのとおり、やはり受験生の個性、能力、適性を多面的に判断をする個性を生かしたそういう方法で行うべきであると思います。第一次答申を受けまして、新しいテストもこのような方法で今構想されております。お示しのように、偏差値とか輪切りをやめさせるということ、マークシート方式の試験方法を改善すること、さらに複数の受験の機会をつくるということ、受験を非常に多様化するということ、自由選択の幅を広げるということ、こういうような点で、受験生の立場も十分考えた試験制度に改革されなければならない、その点を私たちは推進したいと思います。
 帰国子女の受け入れにつきましても、今までいろいろ改革を行ってまいりましたが、今後もさらに、臨教審の答申等を受け継ぎまして、積極的に努力してまいる所存でございます。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
○国務大臣(安倍晋太郎君) 玉置議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、対比円借款に係る資料公開の問題でございますが、開発途上国に対する我が国の資金協力に係る入札等実施企業の選定及び契約の締結等は、あくまで事業実施主体である先方政府の責任において行われるものでありまして、右入札及び契約の当事者でない我が国政府が、入札の結果及び契約の内容につき公表する立場にはありません。このように、そもそも政府は契約内容を公表する立場にはありませんので、フィリピン側に対して日本政府の公表の可否について照会することは考えておりません。
 また、サロンガ委員長の訪日等についてでありますが、政府といたしましては、現在、我が国にある資料及び関係企業から聴取した内容等の情報をもとに事実関係の把握に努めているところであり、現段階においては、特にフィリピン政府に対し資料の提供を求める考えはありません。また、現時点においては、特にサロンガ委員長の協力を得なければならない理由もございませんので、同委員長の訪日を招請することは考えておりません。
 次に、関係企業よりの事情聴取はどうであったかとの御質問でございますが、今般、四省庁共同により、ソラーズ小委員会公表文書の分析等の事実関係確認作業の一環として、我が国の関係企業に対し、ソラーズ小委員会公表文書において円借款プロジェクトとの関連でコミッションにつき言及のある事項等について、主としてコミッションの支払いについての事実関係及びその後の資金の流れについての認識を中心に調査を実施いたしました。その結果、相当の年月がたち、関係文書の廃棄等により事実確認ができないとの回答もかなりありましたが、約半数近いものについては、ソラーズ小委員会公表文書記載どおりの手数料の支払いがあったとの報告を受け、その資金の使途については、例外なく、代理店の活動に見合う代理店手数料として支払ったものであり、この資金が不明朗な使途に用いられるとの認識はなかったとの報告を受けております。また、各企業は、現地情報の収集及び提供、専門知識の提供及び物品納入業務などの各種の役務に対し、手数料を現地の代理店に支払うことは、通常の商取引の一部を構成するものとの考えを述べたと承知しております。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
○国務大臣(竹下登君) まず、協調介入の問題でございます。
 サミットでは、有益と判断される場合には協調して介入するといういわゆるウィリアムズバーグ・サミットの合意、これが再確認されたところであります。具体的なそういう問題につきましては、元来、国々によって多少の相違はございますが、中立性を基調とする中央銀行、これを抜きで行えるという性格のものではございません。
 そこで、どのような場合にどのような形で介入を行うか、これは、各国の経済情勢、為替相場の状況等そのときどきの状況に応じて、二つ以上の国が協議の上、ケース・バイ・ケースで判断することとなろうと思われるわけでありますが、元来、介入は、このような基準とかあるいはやるかやらぬかわからぬところに本当の介入の効果がある、こういう性格のものでございます。(拍手)
    ─────────────
○副議長(勝間田清一君) 中川利三郎君。
    〔中川利三郎君登壇〕
○中川利三郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和五十九年度決算に関連し、総理並びに関係閣僚に質問するのであります。
 その第一は、フィリピンに対する円借款についてであります。
 中曽根総理自身がその前年五月マニラに出向き、マルコスに援助強化、第十二次借款供与を約束した結果、四百二十五億円という巨額の借款が行われ、その金が今重大な疑惑を持たれているのであります。一五%がマルコスの懐へ入った。日本の大企業の受注価格が異常につり上げられた。そして、つくられた施設はいろいろとその欠陥が問題になっています。その上、日本に巨額の資金がキックバックされたとの現地報道もあります。何よりも真相究明が先決ではありませんか。総理、使い道に重大な疑惑があり、その解明がなされないままでの本決算の承認はあり得ないではありませんか。明確な答弁を求めます。
 しかも政府は、真相解明に必要な資料の提出を今もって拒否し続けているばかりか、フィリピンに対し、これ以上の資料の公表を行わないよう圧力をかけているということさえ言われているではありませんか。日本国民の血税が、日本企業の手によってリベートに化けているのです。フィリピンの内部問題だという逃げ口上は、もはや許されません。円借款にかかわるすべての契約書類を直ちに本院に提出するよう改めて要求し、総理の答弁を求めます。
 国家資金の不正使用は、撚糸工連事件でも明らかとなりました。対米輸出規制、長期不況に苦しむ業者を救済するかのごとく装って無利子資金を引き出し、政治家と業界ボスが山分けしたこの事件で検察当局により起訴されるに至ったのは、元民社党議員であり、自民党中曽根派の幹部であります。総理は、この事態に対してどのように政治責任を負おうとされるのか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 第二に、日本経済と国民生活を根底から揺るがしている異常円高についてであります。
 昨年九月に一ドル二百四十円であった円レートは、G5による協調介入以降、ことし二回にわたる日米首脳会談、そしてさきの東京サミットで連続して弾みがつけられ、今やついに百五十円台という異常な円高に突入しました。輸出商談のストップ、競合輸入の拡大による中小企業、下請企業、非鉄金属鉱山、木材産業などの苦境は今さら言うまでもありません。
 そこで、お伺いしたい。第一点、総理は、今になって、円高是正のための協調介入を各国に要請すべきときに来たなどと言っておられるが、日米会談、サミットを通じて、まさにそのことを真っ正面から要求したのか、それともしなかったのか。したとすれば、だれがどういう理由で拒否したのか。また、異常円高をつくり出している根本原因がアメリカの異常な軍拡と膨大な財政赤字であることは明らかであります。このようなアメリカ側の責任を厳しく追及したのかどうか。
 第二点、事実の経過が示すものは、政府がアメリカに全面的に追随し、円高是正どころか、円高促進のために協調してきたということではありませんか。円が上がるたびに竹下大蔵大臣は、一層の円高を期待すると言い、澄田日銀総裁は、百六十五円という具体的数字さえ挙げて円高をあおってきたのであります。政府としての責任は重大であります。今こそ円高促進政策の転換を行い、妥当なレートに円を引き下げる決意を内外に明らかにし、アメリカに円高是正を迫るべきではありませんか。総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。
 第三点総理は、アメリカから何の言質もとれず、逆に四月の日米会談では、輸入大国への転換、積極的産業調整を名目に中小企業と農業の全面的切り捨てを誓約し、さらに東京サミットでは、相互監視機構なるものの創設により、大幅貿易黒字が出れば各国の要求に従って我が国の経済政策を義務的に変更しなければならないという、恐るべき国際公約に踏み切ったのであります。日本経済を短期的にも中長期的にもアメリカの管理監督のもとに差し出すこの二つの対外誓約と我が国の経済主権がどうして両立し得ますか。主権国家として屈辱的な両公約は直ちに破棄すべきであります。(拍手)
 第四点、異常円高の日本側の原因である巨大企業の輸出ラッシュに抜本的メスを入れる決意があるかどうかということであります。五十九年、トヨタなどランキング上位十社だけで、前年より十兆六千億円も輸出をふやし、我が国全体の三割を占めるに至りました。低賃金、長時間、超過密労働の強制と下請企業の過酷な収奪がその根源であります。内需拡大拡大と言うならば、この分野でこそ実効ある具体的措置を打ち出すべきではありませんか。
 第五点、輸出産地、下請、中小企業への事実上唯一の緊急対策となっている特別融資の改善についてであります。貸出実績が融資枠三千億円のわずか一五%にとどまっている最大原因が、五%という金利にあることは明らかであります。ハイテク開発、YXX開発など大企業への政策融資は無利子にしておきながら、中小企業円高融資をせめて激甚災害並みの三%に引き下げてほしいとの切実な要求になぜこたえられないのですか。
 第六点、既に三回にわたる金利引き下げで、老人世帯を初め国民の預貯金が大きく目減りしているという問題であります。公定歩合が同じ三・五%であった前回円高時の五十三年には、一年物の定期預金金利が四・五%であったのに対し、今回は四・一%と際立って低くしたのは一体なぜですか。
 第七点、差益還元の問題であります。少なくとも二兆円ないし三兆円に及ぶという電力、ガス企業の円高、原油差益のうち、国民に還元するのはわずか一兆円強にすぎないというのは、全く納得できません。なぜ差益の半分以上を電力、ガス企業のもうけとして保障してやる必要があるのですか。今こそ内需拡大の見地から、全額を直ちに国民に還元すべきであります。
 対米追随、大企業本位を脱却しない限り円高問題の解決はあり得ないことを指摘し、以上七点について、総理及び関係大臣の明確な答弁を要求するのであります。
 第三に、サミットにおけるリビア問題での声明についてであります。
 無差別テロが断じて許されないことは、言うまでもありません。しかし、テロ防止とテロを口実にした他国への侵略行動とは全く別の問題であり、正当化することは断じて許されません。レーガン大統領は、リビア爆撃を国際テロに対する自衛の行動と称して各国の支持を求めたのでありますが、総理、一体、西ドイツのディスコ爆破が何ゆえに他国に対する武力攻撃の口実となり得るのか、アメリカの領土、領域がどのように侵されたとおっしゃるのですか、レーガン大統領はどのような説明をしたのか、総理の納得のいく説明を求めるものであります。(拍手)
 レーガン大統領が、東京サミットでは各国が軍事行動を含む共同行動をとることを決意したことが最大の成果だと語っていることは、まことに重大であります。総理、これがサミット合意の真実であり、あなたは軍事行動まで一緒にやると約束したのですか。もしもそのような約束がないとおっしゃるならば、なぜ議長国として公式に抗議しないのですか。あなたがとった態度は、日本でテロ事件が発生してアメリカ人が殺され、アメリカが近隣某国の犯行と断定し、その国に対して日本の基地から武力攻撃をかけるようなことが起きた場合、無条件にそれを支持するということにほかならず、しかも、単なる支持でなくて、アメリカと一緒になって戦争を引き起こすことを意味しているではありませんか。ラングーン事件に際して日米両国政府が明確に特定の国家名を挙げた経過を見れば、これは仮定の問題ではなく、まさに現実にあり得る重大問題であります。はっきりとお答えいただきたいのであります。
 第四に、核兵器廃絶について質問いたします。
 五十九年、日ソ両国共産党が核兵器廃絶を世界政治の緊急課題とするよう呼びかけて以来、米ソ両国外相合意、ゴルバチョフ提案、インドなど非同盟諸国の要請へと続いたその後の情勢の発展は、今こそ日本政府がこの課題を真正面に掲げることを要求しています。そして東京サミットは、その絶好の機会でありました。ところが、合意文書には、廃絶の文言さえ入っていなかったばかりか、核軍拡競争の最悪の論理である均衡論まで盛り込まれました。サミットが終わってから、またもや口先では廃絶を言い始めた中曽根総理は、肝心のサミットの場において核廃絶を緊急課題とするようなぜ主張しなかったのか、この機会にお伺いしておきたいのであります。
 最後に、私は、この前の戦争で四発の弾丸を受け、傷ついた右腕、そうして足腰も今なお季節の変わり目には必ずうずき出し、寝返りするたびに骨がごろごろと鳴ります。このとおりであります。私とともに学業半ばを学徒出陣で戦場へ駆り出された仲間の多くは、あのバシー海峡で、またネグロス島のジャングルで死にました。人間の尊厳と再びない青春をちりあくたのように投げ捨てられた仲間たちの怒りとその慟哭が、今も私の耳にはっきりと残っているのであります。ところが、総理は、四月二十九日の天皇在位六十年式典で、「陛下はこの波乱の時代を一貫してひたすら平和と人々の福祉とを念願してこられました」、「お心ならずして勃発したさきの大戦」などと述べ、天皇の戦争責任を完全に免罪したのであります。天皇に戦争責任がないと言うならば、だれが責任を負うべきとおっしゃるのでしょうか、私のこの腕の痛み、仲間たちの怒りをだれに向けよとおっしゃるのでしょうか、ぜひ明らかにしていただきたいのであります。
 以上、国民の血税の不正使用を断じて許さず、侵略戦争美化のあらゆる企てに断固として反対し、アメリカ一辺倒がもたらした異常円高による国民生活の危機を打開する日本共産党・革新共同のかたい決意を表明して、私の質問を終わるのであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 中川議員にお答えをいたします。
 まず、対外援助の適正実施でございますが、前に申し上げましたように、民生の安定、福祉の向上、これを念願として、十分事前調査その他事後の評価等も行って実施しておるものでございます。
 資料の提出については、先ほど来申し上げたとおりでございます。
 次に、稲村代議士の起訴事件についての責任論でございますが、まことに遺憾な事件でございまして、将来戒めて、再びこのことがないように期しておる次第でございます。
 東京サミットでの円高策でございますが、東京サミットというのは、これは特定の通貨の高下を論ずる場所でなくして、政策協調と構造改革を行う、みんな痛み分けで帰って仕事を分担してやろう、そういう意味でやっておるわけでございます。
 次に、日米高級事務レベルの問題でございますが、首脳会談におきましては、日米構造問題で対話を行うことは確認しました。しかし、これは今までやっておったものの延長線上におきましてやろうというので、今までの日米高級事務レベルの会議の場を利用してこれを行うということなのでございます。いわゆる経構研報告書の検討実施というもの、これは日本政府がみずから責任を持って自主的に政策を練って行うものでございまして、それを取り上げて議論するという性格のものではございません。
 次に、輸出問題でございますが、これにつきましては、日本経済の持っておる非常な大きな生産力あるいは円ドル関係におけるアメリカの高いドル、そういうようなものが背景にありまして輸出が伸びてきておるところでございます。今後、内需主導型の経済成長を図りつつ、輸入輸出産業構造の点検を行いながら、我が国の構造改革を行おうとしておるところでございます。
 電力、ガスの差益還元については、電気事業法及びガス事業法に基づく認可申請が本日行われまして、先ほど申し上げましたように、一兆余円に及ぶ実施を六月一日から行います。
 アメリカのリビア攻撃に関しましては、アメリカからもその後詳細な説明を受けまして、認識を深めたということでございます。とにかく、国際テロというものは、無辜の市民を殺傷する残虐なことでございまして、我々としても、断固として国際的協力によって防圧しなければならぬ、そういう趣旨のものでございます。
 次に、サミットでの核廃絶論でございますが、今度の東京宣言にもありますように、軍備管理交渉に関して、米国の交渉努力を評価するとともに、ソ連もまた積極的に交渉に応ずるように呼びかけておるのであります。私自体も、核兵器の廃絶に向かって具体的に平和と軍縮を前進させるべきであると強く主張したところでございます。
 最後に、天皇の問題でございますが、天皇は一貫して平和主義者であられました。そして、いわゆる戦前の立憲君主制におきましては、君臨すれども統治せずというシステムのもとに、開戦の問題については内閣の決定に従わざるを得なかったわけであります。しかし、終戦に際しましては、内閣が決定を行うことができずに聖断を仰いだために、天皇は聖断を下したと、そういういきさつがあるわけでございます。天皇陛下は今、国民統合の象徴として、日本全国民の敬愛を一身にお受けになっていると思います。どうか共産党も我々のようなこのような自覚に速やかに戻ってもらいたいと念願しておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
○国務大臣(竹下登君) まず、総理から大部分お答えがございましたが、私に対する御質問の中の金利引き下げ、この問題でございます。
 預金金利は、従来から、公定歩合の金利動向とか経済金融情勢、総合的に勘案して決めるものでございます。したがって、五十三年当時に比べますと、物価が極めて安定した状態にあります。また、他の金利も総じて低水準にあります。ただ、老齢福祉年金受給者の経済的、社会的に弱い立場にある預金者に対する配慮、これは福祉定期預金の拡充等の措置も図ってまいってきておるということであります。
 それから、協調介入の問題でございますが、この問題は、いわば基本的には、主要国間の相互監視、これを強化することであります。したがって、有益な場合には為替市場に介入する、これがウィリアムズバーグ合意であります。したがって、協調介入の主張を行ったのであれば各国はどういう主張をしたか、こういうような御質問でありますが、具体的に協調介入を行うかどうかとか、各国がどのような意見であったかとかいうようなことは、これは発表すべきものでもない、これは常識でございます。
 それから次が、円高要因をつくり出しておる米国への責任追及の問題がございました。あくまでも、相互がその責任を追及し合うのではなくして、話し合いの中においてお互いに協調の場を求める、これがサミットのあり方でございます。
 次に、大蔵大臣等が具体的数字を出して円高をあおってきた、こういうことでございますが、通貨当局者が特定の数字を出すなどというほど私も愚か者ではございません。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
○国務大臣(渡辺美智雄君) 中川議員にお答えをします。
 中小企業の緊急融資の利息が高過ぎるということですが、それは安ければ安い方がいいに決まっております。しかしながら、五%という数字は、長期プライムレート、現在六・四でありますから、それよりも一・四%低い。それから、やはりその金利水準で、例えば財投金利、これは六・〇何%と決まっておりますが、それよりも下になっておるのです。ですから、それはもう今のところ一番最低の金利だということを御承知おきを願いたい。
 その次は、電力、ガスの差益還元は、これは結構だが、内部留保けしからぬというお話でございます。しかし、これは一定の想定のもとで下げているわけですから、例えば、電力でもかなり天然ガスをたくさん使っています。天然ガスは今バレル二十七ドルぐらいなんです。下がってないのです。下がってないけれども、これは見込みで、二十三ドルまで下がるであろうという見込みをつけてこれは想定しておるわけですから、下がらなかったら穴があいちゃうわけです。だから、そういうことも考えまして、ある程度の内部留保を持っていないと危なくて値下げができないということで、内部留保を少し持たしてある、当然のことであります。途中でまた電気料金を下げたり上げたりできません。一年間はこれでいきたいと思っていますから、そのためでございます。(拍手)
○副議長(勝間田清一君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(勝間田清一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十四分散会