第107回国会 社会労働委員会 第2号
昭和六十一年十月九日(木曜日)
    午前十一時一分開議
 出席委員
   委員長 堀内 光雄君
   理事 稲垣 実男君 理事 戸井田三郎君
   理事 長野 祐也君 理事 丹羽 雄哉君
   理事 浜田卓二郎君 理事 池端 清一君
   理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君
      粟屋 敏信君    伊吹 文明君
      小沢 辰男君    大野  明君
      大野 功統君    片岡 武司君
      木村 義雄君    古賀  誠君
      佐藤 静雄君    自見庄三郎君
      高橋 一郎君    戸沢 政方君
      中山 成彬君    野呂 昭彦君
      三原 朝彦君    箕輪  登君
      持永 和見君    河野  正君
      田邊  誠君    中沢 健次君
      村山 富市君    井上 和久君
      大橋 敏雄君    貝沼 次郎君
      橋本 文彦君    浦井  洋君
      田中美智子君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 斎藤 十朗君
 出席政府委員
        厚生大臣官房総
        務審議官    長尾 立子君
        厚生大臣官房審
        議官      川崎 幸雄君
        厚生省健康政策
        局長      竹中 浩治君
        厚生省保健医療
        局長      仲村 英一君
        厚生省保健医療
        局老人保健部長 黒木 武弘君
        厚生省薬務局長 森  幸男君
        厚生省社会局長 小林 功典君
        厚生省児童家庭
        局長      坂本 龍彦君
        厚生省保険局長 下村  健君
        厚生省年金局長 水田  努君
        厚生省援護局長 木戸  脩君
        社会保険庁医療
        保険部長    内藤  洌君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部生活経済課
        長       上野 治男君
        外務省アジア局
        北東アジア課長 渋谷 治彦君
        文部大臣官房審
        議官      青柳  徹君
        労働省職業安定
        局業務指導課長 矢田貝寛文君
        自治省行政局選
        挙部管理課長  岩崎 忠夫君
        参  考  人
        (日本放送協会
        放送総局副総局
        長)      高橋 雄亮君
        社会労働委員会
        調査室長    石川 正暉君
    ─────────────
十月八日
 学童保育施設の国庫負担等に関する請願(井上一成君紹介)(第三号)
 同(中野寛成君紹介)(第六六号)
 国民健康保険財政に関する請願(佐藤徳雄君紹介)(第三二号)
 建設国民健康保険組合の改善等に関する請願(石橋政嗣君紹介)(第三五号)
 同(坂上富男君紹介)(第三六号)
 同(三野優美君紹介)(第三七号)
 同(岩垂寿喜男君紹介)(第七六号)
 同(岩佐恵美君紹介)(第一三〇号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第一三一号)
 同(中路雅弘君紹介)(第一三二号)
 同(中村茂君紹介)(第一三三号)
 老人医療費の患者負担増大反対等に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第三八号)
 同(大原亨君紹介)(第七七号)
 老人医療の患者一部負担反対等に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第三九号)
 同(伊藤英成君紹介)(第八三号)
 被爆者援護に関する請願(田口健二君紹介)(第四〇号)
 老人医療の自己負担引き上げ反対等に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第五五号)
 老人保健法改悪反対等に関する請願外一件(清水勇君紹介)(第五六号)
 老人保健法等の一部を改正する法律案に関する請願(西村章三君紹介)(第六四号)
 重度戦傷病者と妻の援護に関する請願(三ツ林弥太郎君紹介)(第六五号)
 福祉予算の増額等に関する請願(浦井洋君紹介)(第一二九号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 厚生関係の基本施策に関する件
     ────◇─────
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣。
○斎藤国務大臣 第百七回国会における社会労働委員会の御審議に先立ち、一言ごあいさつを申し上げます。
 人類の長年の夢であった長寿が実現し、人生八十年時代と言われる我々にとって未知の世界を迎えることとなった今日、その長寿を豊かで輝かしいものとするためには、だれもが生きがいを持って暮らすことのできる活力ある福祉社会をつくり上げていくことが必要であります。
 このためには、国民すべてが長寿を全うできるよう、社会保障制度を中心に、社会の仕組みを見直していくことは緊急の課題となっております。
 本来、社会保障制度は、だれもがいつでもどこでも安心して頼れる、公平、公正な制度でなくてはなりません。厚生省としては、社会保障制度を国民に信願され頼りにされる安定したものとするため、これまで老人保健制度の創設、医療保険制度の改革、年金制度の改革等に取り組んでまいりましたが、さらに、二十一世紀を見据えた長期的な展望に立った総合的な厚生行政の展開を図っていくことが必要であると考えております。
 そのうち、主要なものについて申し述べますと、まず、本年六月閣議決定されました「長寿社会対策大綱」に沿って、各般の施策を有機的に連携させ、総合的に展開させる必要があります。在宅サービスの拡充、生涯を通じた健康づくりの推進、痴呆性老人対策の総合的検討等について、積極的に取り組んでまいる所存であります。
 また、次代を担う児童を心身ともに健全に育成し、社会の活力の維持を図る側点から児童健全育成対策を推進するとともに、心身障害者についても、在宅障害者に対するケアを中心にきめ細かな対策を推進していく必要があります。
 さらに、年金財源を確保するため、年金資金の有利運用の推進に一層の努力が必要であります。
 また、科学技術の進展の成果を厚生行政の分野において活用していくため、老化メカニズムの解明等厚生科学技術の振興を一層推進していくことも重要であります。
 以上の重要課題につきましては、六十二年度予算の概算要求に当たっても、所要の計上を行ったところであります。今後の予算編成に向けて、これらの施策の実現に鋭意努力してまいる所存でありますので、皆様方にも御支援のほどよろしくお願いいたします。
 次に、今国会に提出しております厚生省関係の法案について簡単に述べたいと存じます。
 第一に、老人保健法の一部改正であります。
 御高承のとおり、近年、老人医療費の増加は顕著であります。この老人医療費を適正なものとするとともに、国民全体で公平に負担していくことは重要な課題であります。また、年々ふえ続ける寝たきりなどのお年寄りに対する総合的な施策が緊急に求められております。このような課題にこたえ、老人保健制度の長期的安定を図り、安心して老後を託せる制度を確立するため、一部負担の改定、保険者の拠出金算定方法の見直し、老人保健施設の創設等を内容とした改正法案を提出しております。
 次に、国立病院・療養所につきまして、国立医療機関にふさわしい役割を積極的に果たしていくため、政府としては、今後おおむね十年を目途に、相当数の施設の統合または移譲を行うこととしておりますが、再編成の円滑な実施を図るとともに、再編成後における地域医療を確保するため、所要の助成措置等を内容とした法案を提出しております。
 また、地方事務官制度について、臨時行政調査会の答申を受け、現在都道府県において地方事務官が処理している社会保険関係事務を原則として国において処理することとし、それに必要な社会保険庁の地方支分部局を設けること等を内容とした法案を提出しております。
 これら三つの制度改革は、さきに述べた総合的な厚生行政の展開を図っていく上で、避けて通れない課題でありますので、御理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 なお、以上の諸課題のほか、厚生省としては、医療保険制度を初め、年金、社会福祉、保健衛生対策等各般にわたり国民一人一人の生活に直結したひとときもゆるがせにできない課題が山積しております。
 私は、皆様の御支援、御鞭撻を得ながら、このような厚生行政の課題に取り組み、その着実な前進を図ってまいる所存であります。
 何とぞよろしくお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)
○堀内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正君。
○河野(正)委員 御承知のように、中曽根総理は口を開けば「戦後政治の総決算」というふうに強調されておるところでございますが、私どもの社労としても「戦後政治の総決算」をしてもらわなければならぬケースがあるわけです。その一つは、何といっても援護行政だと私は思うのです。この十月十四日には第十三次の中国孤児が来日をいたします。それから、それに関連する例えば遺骨の問題もございますし、また、これは主として東南アジアですけれども、元日本兵がある程度の数残っておるというような問題がございます。恩給その他は逐次改善されつつございますけれども、しかし、今私が申し上げました三つの問題は、やはり時間を急ぐことです。中国孤児の肉親捜しにいたしましても、時間おくれがこの問題の解決に対して非常に大きな支障を来しておることはもう大臣も御承知のとおりです。でございますから、この援護行政は、やはり「戦後政治の総決算」として速やかに解決する努力をしていただかなければならぬと思います。そこで、逐次それらの点について取り上げてまいりたいと思うわけでございます。
 まず第一に、今申し上げましたように、今度十月十四日、肉親捜しの中国孤児、第十三次の訪日がございます。この状況を振り返ってみましても、肉親が高齢化する、あるいは既に亡くなっておるというようなこと等もございまして、時間がたてばたつだけ、せっかく長い間の夢を何とかして生かそうということで、胸を膨らまして訪日した孤児が、失望の奈落に突き落とされて帰る、こういう状況があるわけですが、この肉親捜しに対して、私のところには六十年の厚生白書しか一番最後に来ておりませんからわかりませんが、この六十年の厚生白書によりますれば、六十一年度で大体完了する、完了させたいというようなことが書いてあるのですね。しかし、私は現状はそういう事情ではないんじゃないかという気がするのですね。肉親捜し、中国孤児の来日がいよいよ十三次が十月十四日から第一班が参りますが、これに対して一体どういうふうにお考えになっているのか。この辺は冒頭ですから、大臣の方から一言お答えをいただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 中国残留孤児の問題でございますが、私も就任以来、肉親捜しの皆様方と何回かお目にかかりまして、その重要さを本当に痛感をいたしておるところでございます。訪日調査に来られた皆様方とお話をし、また顔色を見ておりますと、大変長い間における本当に御苦労をされた感じ、また夢にまで見た日本への帰国、そして肉親との出会いということについて長年お気持ちを抱いてこられたその御苦労というものには本当に敬服をいたしておりますし、私自身が今四十六歳でございますので、場合によっては私も孤児になっていたかもしれない、また孤児の皆さんと同じ年齢であるということを考えますときに、この中国残留孤児の問題を、今も既に国民挙げての問題として取り組んでおりますけれども、しかし、一層この充実を図っていかなければならないということを痛感をいたしておるところでございます。
 そして、ただいまお話がございますように、これまで孤児というふうに言われておられる方が全体で二千百三十五名あるわけでございますが、順次訪日肉親捜しを進めてまいりまして、本日以降、残っております方々が約三百名ということになっておりまして、その三百名の方々に本年度中に肉親捜しに来日帰国していただく、こういう予定になっておるわけであります。そういう意味におきましては、六十一年度において肉親捜しが終了というよりも概了する、一通りの肉親捜しが一巡する、こういうようなことになるわけでございます。しかしながら、肉親とのめぐり会いがまだできていない方も非常に多いわけでございますので、本年度で打ち切るということではなく、なお肉親捜しができていない方々に対して最後の一人までという気持ちで引き続きこの肉親捜しに努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○河野(正)委員 あと三百名、今度十三次で参りますのが百名、それにいたしましても、大臣から今御報告ございましたその数からいきましても二百人残るわけですね。ですから一つは、本年度じゅうという話がございましたが、果たして本年度じゅうに終了し得るものかどうか。それと、何といっても、第十二次を見ていましても、実際肉親と会えたのは二七%なんですね。三分の一以下なんですよ。でございますし、今度肉親に会えなかったら、もうそれはそれで終わらせてよろしいのかどうかという問題が一つはありますね。
 それからもう一つ、私は中国に参りまして自分自身も経験しておりますが、中国政府の協力によって、要するに、残留孤児をやっぱりまず捜し出さなければならぬわけですから、そしてそれを把握して、それが訪日しておるわけですから、そういう際に、今の厚生省がやっておられるような努力で十分であるのかどうか、実は私はそこの点について非常に懐疑心を持っているのですよ。
 ですから一つは、今申し上げましたように、残ったのは三百名ということで大臣から御報告ございましたが、十三次では百名ですから、あと二百名残りますね。それと、先ほど申し上げましたように、今回は不幸にして、二週間来たが残念ながら肉親に会うことができなかった、もうそれはそれで終わりというふうに決めつけてよろしいのかどうか。
 それからもう一つは、中国に厚生省からも派遣されておられるようですが、そういう方々、スタッフの努力というのがもう少し不足しておるのじゃなかろうかという感じがしますね。実は二年半前、ちょうど渡部厚生大臣が中日友好病院の落成式でおいでになった。あの当時、私も中国におりまして、いろいろその間の事情を十分状況をお聞きして把握して帰りたいと思っておりましたが、そういう中で、やはりこういう程度でよろしいのかというような気持ちを持ちましたね。非常に年月が過ぎておるわけですからね。そしてあの広い中国大陸ですからね。それはやはり少々の努力をしても、かなり目こぼしというものが出てくるだろうと思うのですね。ですから、この六十年度の厚生白書では、大体六十一年度に完了したい。完了したいということで御努力なさるのは結構です。ですけれども、余りそのことにこだわって、結局たくさんな中国孤児がその肉親捜しの機会を失ったということであれば、これはもう大変なことですから、そういう意味で、今申し上げますように、今後の方針についてもう少ししかとした方針をひとつ承っておかぬと、ちょっとこの問題で引き下がってまいるわけにいかぬ、こう思います。
○木戸政府委員 先生の御質問についてお答えを申し上げます。
 まず第一点の、これでことし概了できるのか、こういう御質問でございます。先ほど先生からも御指摘ありましたように、近年におきましては、中国政府と緊密な協力のもとに、中国政府の方で積極的に孤児という方々をいわば認定をしてもらう、この方々に訪日をしていただくということで、あちかじめいろいろ名簿を送っていただいているわけでございますが、私どもの見込みでは、先ほど大臣が申し上げました残りの三百名の方は、自己都合等で来られない方以外はほぼ調査に参加していただいて、計画は概了できるというふうに考えております。
 それから、先生がおっしゃられました未判明の人たちをどうするか、こういうことでございます。御指摘のように、判明率は最近は下がってまいっているわけでございまして、私どもは、未判明の方々につきましては、やはり今後の追跡調査というものを徹底していく考え方でございます。したがいまして、来年度におきましては、一つは、先ほど大臣からもお答えを申し上げましたように、来年度も引き続き調査というものは実施をするんだ、こういうことで、孤児であると認定された人は、最後の一人に至るまで訪日調査は引き続き続けるという方針で所要の予算の要求もしているわけでございます。
 それから、未判明の方々につきましては、追跡調査を徹底していくわけでございますけれども、私どもいろいろ本年度反省をいたしまして、六十二年度からは、やはり専従の調査班を編成して、関係都道府県の協力を得て、例えば開拓団の消息をもっと掘り下げて追求をする、それに基づいて関係者の情報の掘り起こしを行うというようなきめ細かな措置も講じてまいらなければならないというふうに考えているわけでございます。
 それから、先生の御指摘の中国におきます厚生省側の対応でございます。先ほども申し上げましたように、この孤児の訪日調査、あるいはそれに基づきます定着促進、もろもろの施策については、現在、厚生省は中国政府と非常に緊密な連絡が保たれているわけでございますので、中国側での対応は、第一義的には中国政府にお願いをしているわけでございますが、北京にも日本の大使館がございまして、厚生省からも職員を派遣をしておりますので、その職員等も活用をいたしまして、中国の内部におきます肉親捜しについてもできるだけ厚生省としては努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
○河野(正)委員 今私がお尋ねしたことに、追跡調査あるいはきめの細かい専従職員で掘り起こすというようなお答えがございましたが、非常に抽象的なお答えでした。しかし、私どもいろいろ承ったりあるいは見たり聞いたりしておる中で感じますのは、一つは、今お答えございませんでしたが、幸いにして訪日をして肉親捜しをした、ところが残念ながら肉親に会うことができなかった、そういうケースについては、単に追跡調査ということではなくて、それはもう一遍訪日させて、そしてさらに国内からもひとつそういう肉親の申し出を準備するとか、そういうことも私一つは必要であると思うのですね。
 それから、今お話がございましたが、専従の調査団をつくって、そして今からやるという話ですけれども、最初から、第一次から一〇〇%わかってないんですよ。ですから、これは大変難しいなということですから、当然当初から今おっしゃった専従調査団というようなものをつくってやられるべきだったと私は思うのですよ。今になってやったって、それはなかなか実効を上げることは難しかろうと思います。やはりこれも厚生省の熱意が足らぬと言えば足らぬですね。とにかく力が入っとらぬと言えば入っとらぬですよ。やはりそういう第一回目の、第一次の訪日団から肉親と会えたのが一〇〇%じゃないわけですからね。だからこれはなかなか難しいなということで、やはりその当時からそういう対応というものをなさっておるべきだったと思うのですよ。しかし、それは今さら言ったって始まりませんからね。ですけれども、そういう反省に基づいて、残されたあとの諸問題の解決についてさらにひとつ努力をしていただかなければ、これは本当にわざわざ四十数年ぶりに肉親に会えるんじゃなかろうかと恐らく孤児の皆さん方は胸を膨らましてやってまいったと思うのです。ですから、そういう孤児の期待に沿うためにも、やはり何といっても、これは中曽根さんじゃないけれども、「戦後政治の総決算」の一つですよ。だから総理大臣の方針でもありますから、これはぜひそういう方針でやっていただく。むしろやっていただくというよりか、過去の反省に基づいて、最初から今おっしゃるようなことでやっていただいたら、もっと肉親とめぐり会えるというケースが多かったかもわかりませんよ。そういう意味でひとつ過去の反省に基づいて、今後の対応というものをきちっとやっていただかなければならぬ。
 私は、二年半前に北京に参りましたときに、厚生省の係官に会いました。そっちへ行って会いました。そして私の実感は、これでよろしいのかという実感しか持たないですよ。何か中国政府に頼り切ってしまって、そういうことでは──当初は養父母の扶養の問題等について中国から反対の意見もあったわけです。そういうこともあっておくれてきたという経緯もあるわけなんですよ。ですから、やはり日本政府みずからがもっともっと誠意を尽くさぬといかぬのじゃないかと私は思うのです。それはやられたことは事実でしょうけれども、最初は中国は、とにかくせっかく孤児を大きくして、我々が年をとったら日本に帰してしまう、そういう養父母の扶養問題についての意見等ございまして、必ずしも日本政府と意見が一致しなかったという面もあったわけですね。そういうように中国政府に頼り切ってしまうと、そういう問題もあるわけですから、やはり日本政府は誠心誠意対応するという努力をせぬと、この問題は、完全な解決というのは難しいと思いますけれども、非常に難しいんじゃなかろうかと思います。
 そこで、過去の反省に基づいて、今後こうやる、やるんですという決意を大臣から聞かぬと、これは下がるわけにいかぬですよ。
○斎藤国務大臣 肉親捜しは大変年月がたっておりまして、非常に困難な問題もございます。また孤児の方々とお会いをしてお話を聞いておりますと、最近肉親捜しに見える方については、当初から自分は日本人だということを意識されてなかった方もございます。最近において中国政府から君は日本人孤児だよと言われたというような人もおりました。そういう方においては、この四十年間にみずからの資料をしっかりと蓄えていたということでもないわけでございます。そういうようなことにおいて非常に判明率も低くなっておるという状況でございますが、今、先生の御指摘がございましたように、本年一応現在孤児と認められておる方々については、一わたり肉親捜しを終わるわけでございますけれども、それはあくまでも、先ほどから申し上げておりますように、概了ということでありまして、肉親にめぐり会えなかった方々については、なお引き続き調査を行い、ただいま御答弁いたしましたように、追跡調査をきめ細かくしていくことによって誠心誠意肉親捜しを最後の一人までやるんだという気持ちで一層努力をいたしてまいる覚悟でございます。
○河野(正)委員 そこで、それに関連して、この援護行政の欠陥というものを指摘したいと思うのですが、御承知のように、最近、田中マリ子さんという五十六歳の御婦人が日本国の国籍を取られた。ところが、これが第二号なんですよ。二人目なんですよ。とにかく肉親と会おうと思って訪日したけれども、肉親と会えない。しかし、日本に帰りたい。ところが日本国籍を取るのは非常に難しいという側面があるわけですね。それでやっと今度東京家裁で出たのが第二号目ですね。二人目ですよ。ところが、今日中国に残留する御婦人が大体四千人おられると言われているわけですね。そのうち八百人は日本の国籍がないわけですね。ぜひ日本に永住帰国したい、ですけれども国籍がない、そういうことで今申し上げましたように申請をした、そしてやっと家裁で認められたのが第二号ですね。二人目なんですよね。そういうような問題等についてはどういうふうにお考えになっているのか。訪日をした、肉親捜しをやった、残念ながら肉親とめぐり会うことができなかった、しかし自分は日本人だから日本に帰って日本人として再出発したい、そういうことがなかなか難しいという状況があるわけですね。ですから、こういう点については一体どういうようにお考えになっているのか。援護行政というのは血の通った行政でなければならぬわけですから、そういった意味で、私はそういう問題についても、裁判所が認定するとは言いながら、一体厚生省はどういう御見解でいらっしゃるのか、ひとつこの点も承っておきたいと思います。
○木戸政府委員 先生御指摘の残留婦人の問題でございます。また、今具体的に御指摘がございました田中マリ子さんの件でございますが、私どもはやはり残留孤児の方以外にも残留婦人という援護すべき対象の方がいるのは承知をしているわけでございます。
 それでまず、田中マリ子さんという方は孤児ではないか、孤児と同じような処遇ができないか、こういう問題でございます。私どもは一応は孤児の訪日調査という点につきましては、二十年の八月九日、ソ連が参戦した以後のいわゆる動乱の時期に、両親が日本人である孤児が生別あるいは離別をしたということでございまして、そのときに一応めどとして十二歳という線を引いたわけでございますが、この十二歳は何でも十二歳でなければいけないということではないわけでございまして、現に身元が判明をした結果、その方が十四歳だったというような方もあるわけでございますので、そこは弾力的に対処してまいらなければいけないと思います。
 それから、残留婦人の方がおられて、その方々が日本の国籍がないという点も承知をしているわけでございます。私どもといたしましては、今申し上げました訪日調査あるいは訪日調査の結果を得て、日本に帰国をして所沢の定着促進センターに入っていただく、こういう点は一応孤児という限られた人に目安を立てまして行政を進めているわけでございます。残留婦人の方々につきましても、今の訪日調査とかあるいは定着促進センターへの入所という点を除きますれば、帰国の旅費の支給、あるいは帰ってきた後の生活の自立までの帰還手当の支給、あるいは生活が困られた場合の生活保護の適用等につきましては、必要に応じて孤児と同じように処遇をしてまいるつもりでございます。
 それから、今、先生御指摘の就籍の問題につきましても、実は孤児につきましてもそういう問題があるわけでございます。この就籍の問題は、最終的には家庭裁判所の審判ということでございますので、全部厚生省でというわけにはまいりませんが、帰国をした場合に、一番最初にやはり本人が日本人として定着、自立をするためには、国籍というものが必要だというのは十分厚生省としてもわかっているわけでございますので、最高裁判所の事務当局等にもよく厚生省の意も、援護行政の流れ等も伝えながら、就籍というものができるだけ迅速にできるように努力をしてまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 なかなか答弁はきれいな御答弁ですけれども、現実の問題は必ずしもそうじゃないと思うのですよ。今十二歳線引きの問題が出てきましたけれども、十二歳までは残留孤児としていろんな財政措置が、旅費なら旅費が支給されるとかあるわけです。ところが十三歳以上は、残留婦人とかいう形の方々ですが、これは日本に帰っていこうと思っても、今度の田中さんのケースを見てもそうです、やはり自費で帰ってくる。そして日本に永住したいということで就籍の申請をされて判決が出たわけですね。要するに、中国にとどまっておって、戦争というものがなければ問題はないわけです。十二歳まではよろしいが、十三歳以降は、男であろうが女であろうが戸籍を持っていない方がいらっしゃるわけですから、それが何とかして自分は日本人だからとにかく戸籍を持ちたい、日本国籍を持ちたい、日本人として頑張りたい、しかしそれは全部自費で来なければならない、こういう差別。十二歳で線引きをして、十二歳まではよろしい、一切国が面倒を見ます、十三歳以降は、今特別にどこから下はどうだこうだというようなお話でございましたけれども、そうすると、なぜこの田中さんなんかちゃんと面倒見なかったのですか。おかしいでしょうが。そうやるとおっしゃるならば、なぜおやりにならなかったのですか。これはボランティアの連中が随分お願いしたらしいですが、そういうことが行われなかった。だから中国でいろいろ働いて三カ年間も金をためて日本に来た。そういう事情を承っておるし、新聞でも報道されておるのですね。ですから、特別の場合やるんだとおっしゃるならば、なぜおやりにならなかったのですか。それは答弁がきれいごとであって、決して血の通っておるような答弁ではなかったと私は思うのです。
 というのは、今申し上げますように、残っていらっしゃる方は十三であろうが十五であろうが──この田中さんの場合、十五歳だったということで、日本に帰ってくる場合の旅費なんかは全部自費で来た。だから、そういう十二歳線引きというものはおかしいぞという議論はお聞きになっておるでしょう。それに対しては一体どうするんだ。線引はやめますとおっしゃれば私は納得しますよ。とにかく、先ほど申し上げますように、残留婦人だけで四千人いらっしゃる。八百人ぐらいは戸籍がないということでしょう。しかもそういう方々は自費で来なければならない。十二歳と十三歳以降という違いはあっても、要するに実質的には同じでしょう。戦争のために犠牲になった人であるから当然国が援護しなければならない。それが血の通った行政ではなかろうかと思うのです。特に援護行政というのはそうでなければいかぬでしょう、全く国の犠牲になってそういう辛酸をなめていらっしゃるわけですから。ですから、私はやはり今申し上げますように、この線引きはやめた方がいいと思うのです。この点どうでしょうか。
○木戸政府委員 まず、十二歳という問題につきましては、先ほど申し上げましたように、訪日調査といういわば一つの制度のための一応の目安でございまして、私どもは十二歳以上の人は全くその援護の対象にしないとかいうことではないわけでございます。
 それから、御指摘の田中マリ子さんの件でございますが、正直に申しますと、私どもも、この方がボランティアの方々の努力において就籍に努力をしておられる、その結果就籍されたというのは、昨日あるボランティアの方に伺ったわけでございますけれども、実を申しますと、入国をされたときには私どもの方にはその情報はなかったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、残留婦人につきましても、訪日調査とかあるいは定着促進センターとかいうようなことを除きますと、やはり帰国者に対しましては、旅費の支給とか帰ってきてからの帰還手当というような支給は平等にしていきたいと考えておるわけでございます。
○河野(正)委員 それでは大臣、ここで一つ確認しておきますが、もう十二歳線引きはおやめになる、こう理解してよろしいですか。
○斎藤国務大臣 十二歳の線引きというのは、中国残留孤児の肉親捜しの際の、孤児として当時十二歳ぐらいだったであろう、こういうことで一応の目安としておるもののようでございます。でありますので、その十二歳については柔軟に対応して、孤児の皆さんが肉親捜しができるようにいたしてまいりたいと思います。
○河野(正)委員 大臣、そうじゃないのですよ。十二歳はそれでいいのですよ。ところが十三歳以降はだめなんですよ。これは恐らく自分の意思で残っておったのではないかというようなことが発想としてあろうと思うのですよ。であるけれども、十二歳以下の孤児も、今まだ中国に残留しておるそういった方々も、やはり立場は同じですから、金の出どころは今の制度の中では違うかもわかりませんね、要するに、十二歳までは例の基金ができて基金から金を出したりなんかしていますから。でしょうけれども、この十三歳以上でも、就籍を希望して日本に帰りたい、こういう方々については、旅費を支給するとか、孤児と同じような措置を別途でもできるわけでしょう。先ほど局長はそれはケース・バイ・ケースでやりますと言っている。やるならこの際、私が言っているのは、残留孤児が十二歳までだからそれをということじゃなくて、要するに、そういう財政的な援助を受ければいいわけですから。十三歳以上も残留孤児と同じように、旅費の支給とかその他の経済的な面の面倒を見るということを確約してもらえればいいわけです。そこを言っているわけです。
○斎藤国務大臣 残留婦人等の今お話がございましたが、当時十二歳以上の方々の帰国について、帰国旅費とか帰還手当とかいうものについては支給をいたします。
○河野(正)委員 確約いただきまして、ありがとうございました。恐らくたくさんの方々が喜ばれると思います。
 それから、それに似通った問題ですけれども、敗戦後まだ戦地に残っておる元日本軍人、日本兵、これはかなりの数あると私どもは想定をしておるわけです。各地を回りますと、確かに元日本兵だと思われる方がいらっしゃるのです、大使館なんかで使っていらっしゃるのですから。しかし、いろいろな事情があるわけでしょう。こういうことを言っていいかどうかわかりませんけれども、収容所から脱走したとかあるいは戦線から離脱したとかいう負い目等があっておっしゃらないのかもわかりませんけれども、それは理由はわかりません、いろいろありましょう。でしょうが、そういう方々が今東南アジアに、これは主として東南アジアですね、一体どのくらいいらっしゃるのか、ひとつこの点をお答えいただきたいと思う。
○木戸政府委員 お答え申し上げます。
 在外公館を通じまして、これまで厚生省に通報のあった東南アジアの元日本兵は、軍人が二百九十四名、軍属が六十八名でございます。
○河野(正)委員 そういう元日本兵について、もう六十からなりますね。ですから、望郷の念に駆られて、一度先祖の墓参りをしたいとか、もし会えるならば肉親に会いたいとか、そういうふうな希望等があろうと思うのです。これはやはり戦争がルーツですから、そういった意味においては、残留孤児であろうが残留婦人であろうが、それから今の元日本兵であろうが、中には英雄みたいにして帰ってきた人もいますけれども、とにかくひっそり外地で自分の人生を全うしたい、こういう方がいらっしゃる。しかし、私どもが聞くところによれば、いつ一生を終わるかもわからぬ、やはり一度故国の土を踏みたい、そういう希望の方もたくさんいらっしゃる。たくさんといっても、今の外務省の数字では、軍人が二百九十四、軍属が六十八ということですから、そう多くはございませんけれども、これは多い少ないじゃないですね。戦争処理ですから、戦争終結処理ですから多い少ないじゃない。それらに対して一体どういう配慮をされようとしているのか。これはみんな自費で帰ってくるのですね、ボランティアとか元戦友とかが金を出し合って。ですから、そういう元日本兵についても、そういう温情ある措置が──基本的には同じ立場の人ですね。これらの点について一体どういうふうな御見解であるのか、承りたいと思います。
○木戸政府委員 先生御指摘の東南アジア等の元日本兵の処遇の問題でございますが、南方地域で終戦を迎え、引き続き同地域に居住している元軍人軍属で、一時帰国を希望しながら、その帰国の旅費を負担することができないという者は確かにいるわけでございます。その一時帰国の実現を図るために、昭和五十年に一時帰国の制度、これはいわば法律上の措置ではございません、予算措置でございますが、そういう制度を設けまして、日本に墓参、親族訪問等の目的を持って一時帰国をする人たちに対しましては、往復の航空運賃等を負担するということにしているわけでございます。
 ただ、先生先ほど御指摘のありましたように、最近帰国をされている方を新聞等で見受けますが、大体の方が親族の方あるいは戦友の方がいろいろ援助をして、その戦友の方あるいは親族の方の援護で帰るということで、一時帰国の旅費の申請がないわけでございまして、実際にこの一時帰国の旅費負担の制度を御利用になった方は、今まで厚生省の調査によると十一名ということになっているわけでございます。
 私どもは、この一時帰国制度をつくりましたときには、在外公館を通じましてPRはしたつもりでございますが、まだそういう点が欠ける面があるかと思うわけでございます。したがいまして、具体的ケースで、来るときはいわば戦友のカンパで来た、しかし帰りは持ってやってくれ、こういう話であれば、私どもその用意はあるわけでございます。
○河野(正)委員 お尋ねすると、みんな前向きなお答えがあるわけですけれども、現実には行われてないからそういう声があるわけでしょう。ですから、私は、厚生省の援護行政というものがPRが足らぬというのか、意識が浸透しておらぬというのか、あるいはもうわからぬならわからぬまま、負担が金がかからぬでいい、こういうふうな気持ちでいらっしゃるのかわからぬけれども、こういう問題はたくさんあるわけでしょう。ですから、十一名という話がありましたけれども、恐らくそういう帰国旅費は支給します、往復の旅費は支給しますというふうな方針というものが行政上認められておれば、あるいはそれを──これは国内の人もわからぬわけです。国内の人がわからぬから、国内の人が金をつくって、一遍帰ってきなさい、こう言っているわけです。国内でもわからぬのですから、外地だってわかるはずがない。特にそういう方々は外地でもひっそりとした生活をしておられるのですね。ですから、そういうことがわかるはずかないのです。ですから、やはり外務省なら外務省を通じて、出先公館を通じて、そういう元日本兵がおれば、一遍帰らぬか、旅費も支給されるぞ、そういう温かい指導というものがあってしかるべきじゃないかと私は思うのです。
 ところが、残念ながら今言ったように、外務省の数でも軍人軍属合わせて約三百六、七十でしょう。これは実際はもっと多いと思いますよ。もっと多いと思いますが、それはそれとして、その中から十一名しか旅費をもらって帰ってきておらぬわけですから、そういう制度、行政措置、予算措置が行われていますよ、ですから外務省を通じて、出先公館に対して、もしそういうのがおったら──それはおったらというのは、ある程度わかっておるからこういう統計が出てきておるわけでしょう、わからぬでこの統計が出てくるはずがないですよ。ですから、わかっておるわけだから、どうかと、そういう温かい指導というものが行われてしかるべきではないか。
 最近ビルマから帰ってきた人も、友人たちが企業と相談をして、往復の旅費を弁達して帰ってきておるわけでしょう。ですから、国内でもわからぬのですね。私どももそういう方針があることを知らなかった。今初めて聞いた。ですから、外地におれば、今申し上げるように、山の中、僻地にひっそりと暮らしておられる方が大部分じゃないでしょうか。やはりいろいろな事情があったでしょうけれども、そういういろいろな事情に負い目を感じて、本当を言えば、私も戦争経験がありますけれども、その当時は軍列から離れることはもう大変な罪悪だというふうな教育を受けていますから、今もそういう気持ちでいらっしゃると思うのですよ。それは小野田少尉が帰ってきたときもそう言っているでしょう。
 そういうことで、もしそういう予算措置も行われて、そういう方針でおるというならば、それが実際に実行されるように、外務省からこの三百五、六十名おるという数を聞いて、これでたった十一名じゃ少ないじゃないか、もっとそういう方々を見つけて指導してもらえぬだろうかというぐらいの通達ぐらいお出しになってもいいんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
○斎藤国務大臣 ただいまのお話でございますが、元日本兵等外国にまだおられる方々の中で、今、先生の御指摘のように、戦列から離れたというような方とか、また現在、現地において家庭を持ち幸せにやっているからもういいんだという方とか、いろいろそれぞれのお立場によってお考えもおありだろうというふうに思います。また、まだそのような元日本兵として認められてない方々もおるわけでございますが、そういう中から一時帰国をしたいというお話があった場合には、先ほどから申し上げておりますように、帰国のための旅費等についてはきちっと支給をするようにいたしてまいるということでございます。
 また、最近時々新聞に出まして、私もびっくりして、これは厚生省が知ってたのかということを聞きますと、いや、全然知りませんでしたということが非常に多うございます。お役所仕事でなかなか手続が面倒だとか時間がかかるというようなことで、どうしても民間のボランティアとか知人の方に頼るということが現実に行われているのかというふうにも思うわけでございますが、お申し出がなかったということは、ある意味では大変残念な思いをいたしておるわけでありまして、お申し出がありました場合には、今申し上げたように、きちっとさせていただくように誠心誠意やりたい。そしてまた、そのためには、今お話がございましたように、在外公館等を通じて、そういうシステムになっているんだということを徹底をいたしてまいるようにいたしたいと思います。
○河野(正)委員 申し出があったら実施をするんだということですが、その前にやはり啓蒙が足らぬ、こう言っているわけですから、その啓蒙の方をやってもらわぬと、いつまでたったって申し出がないですよ。私はそういうケースをしばしば見聞しますから、私は戦後政治の援護行政の一環としてなるたけ早くこういう問題を処理していただきたいというふうに思います。
 そこで、これは今言ったようにやっていただくわけですから、そういう制度がありますよと出先の公館を通じて徹底する。大使館なんかで働いていらっしゃる方がいらっしゃるのですよ。聞いてみたら身分を明らかにされない。大使館の方もそっとしておこうということでしょう。ですけれども、そういう方で、もしもこの際一度故国の土を踏みたいという希望があれば、往復の旅費は支給する、そういう制度があるよという啓蒙をぜひひとつやっていただきたい。申し出があればできるんですから、そういうふうにぜひお願いしたいと思います。
 それからもう一つは、それに関連しますけれども、私は具体的な事実は知らぬわけですけれども、新聞に出たのですが、ビルマで大変な戦況だったらしいのですな。私はビルマに行く前に帰ってきたものですから際会しませんでしたけれども、その際、負傷をして捕虜になった、そして日本に帰国をした方で、これはボランティアの方の言い分ですが、本人が負傷してインド軍に収容された、そういう負い目があってなかなかいろんな会合に出てこぬ。それは個人の意思ですから別として、ここで一つ問題でございますのは、軍人恩給の資格者から外された、こういうことが指摘されておりますが、そういう事例がありますか。またあるとすればそれはどういう根拠でしょうか。
○木戸政府委員 先生御指摘の軍人恩給の支給の台帳から外したかどうかという点につきましては、恩給局の所管でございます。私のところには今資料がございませんので、至急調査をして御返事をいたします。
○河野(正)委員 もしそれが事実であれば、これは私ども納得がいきませんので、ひとつ至急調査をして、後ほど御報告をいただきたい。
 それから、きょうは労働省もおいでいただいておると思いますが、中国孤児の就職というものが非常に難しいという状況にあると思います。今は残留孤児が定着促進センターに入って指導を受けられておるわけですが、なかなか日本語は難しいということもあって、それが就職のネックになるというような事情があろうと思います。この定着促進センターが開設されて、二年間で百十世帯、五百二十人を収容した。ところが、その後、言葉の不自由なせいもあって、すぐに就職口が見つかったという例はほとんどない、それはそのとおりだろうと思うのです。そういうことになれば、結果的には生活保護を受給しなければならぬということになるわけですね。ということですから、この定着促進センターの収容期間、実習期間にも研修期間にも、期間をどれだけにするかという問題があろうと思います。でございますけれども、このボランティアに対する協力は当然ですが、ボランティアに頼るのじゃなくて、政府みずからが積極的に職場を開発する努力というものが少し足りぬのじゃないか、こういうふうに言われておるところです。
 そこで、なぜそういう努力が足りぬのか。そういう孤児が就職できないのは基本的に個人的な問題だという受けとめ方ですが、これは政策上の問題ですから、むしろ私どもは政策上の問題として受けとめて、もっと政府が積極的に努力をすべきではないかというふうに思うのです。孤児がとにかく就職できない。それは言葉が不自由だからだということじゃなくて、当然今の定着促進センターの研修期間から見ましても、時間が非常に短いというふうな問題もあります。それから日本語が非常に難しいという問題もあります。ですから、それはそれなりにして、できるだけ市場を開拓して、そして言葉は多少不自由だけれども、相手方に対して理解を持っていただくという働きかけもしながら、雇用の場というものをもっと積極的に開発すべきではないのか。それが足りぬから、定着促進センターを出たけれども、いつまでたっても生活保護で、九四%も生活保護を受給しておるという状況があるわけですからね。これは厚生省もそうですし、労働省もおいでいただいていると思いますが、労働省も、個人の問題として取り上げるのじゃなくて、それは日本語が下手だから、日本語の習得が不十分だからということじゃなくて、政策上の問題として、この問題に対して積極的に取り組むという姿勢というものが私は望ましいと思うのです。これがないと、これから大量帰国しますから大変だと思うのですよ。ですから、そういう意味で厚生省と労働省からひとつそれぞれの立場から御見解を承りたい、こういうふうに思います。
○木戸政府委員 それでは、最初に厚生省から御答弁申し上げます。
 就職の問題というのは、日本へ来て自立、定着をして、一日も早く日本の社会になれて、日本人として社会人として生きていただくというためには、住宅と一緒にやはり一番大切な問題だというふうに位置づけをしておるわけでございます。それで具体的には、これは六十一年度からでございますけれども、労働省の本省、それから所沢の職業安定所の具体的な御協力を受けまして、定着促進センターに入所中に就職に向けて一般的なガイダンスというものをやっていただき、それから個別相談による定着先での就職のあっせんとか職業訓練校への入校指導など、直接所沢の職業安定所の関係の職員の方に来ていただいてやっていただいているということでございます。
 それから、厚生省としても、やはりこれは手をこまねいているわけにはいきませんので、厚生省といたしましては、身元引受人という制度があるわけでございますので、就職の場を提供していただけるような法人の身元引受人をできるだけ多くふやすということで、今関係都道府県あるいはボランティアの方に呼びかけまして、そのような就職の場も提供していただけるような法人の身元引受人を募集しているわけでございます。
 雇用先の確保につきましては、労働省と十分連携をとりながら雇用先の確保に努めてまいりたいと考えております。
○矢田貝説明員 それでは、労働省の関係について御説明を申し上げますが、重複いたします点は省かせていただきます。
 いずれにしましても、私ども、帰国された方々がしっかりした職業につかれて、帰ってきてよかったという状態にしなければいかぬということで、従来から取り組んでおるところですが、特に、先ほども、御説明ございましたように、所沢のセンターに入られた時点から、中国でのいろいろな職業の経験とか御希望とかあるいは帰国後どういった仕事につきたいといったようなことについて御相談する。あわせまして、日本と中国では事業所、工場におきます労働の態様とかいろいろなものも異なりますし、あるいは職業訓練といったものがどうなっているのかということも十分おわかりになりませんので、そういったことにつきましても、センターにおられるころにそういうところを見学していただくとかといった方法等々を講じております。
 あわせまして、御案内のとおり最近雇用環境は非常に厳しいものがございますので、孤児の方々の就職先を何とか確保しなければいかぬということで、先月も全国の主管課長会議におきまして、私の方から残留孤児の方々の就職開拓について最大限の努力をしろというような指示もしたところでございます。
 あわせまして、これは私どもの機関誌でございますけれども、「お帰りなさい!中国帰国孤児の皆さん」というようなことで、機関誌等をつくりまして、全国に六百ばかりあります安定所を通じて事業主なり事業主団体への御協力を要請するといったような方途を講じているところでございまして、今後とも全力を挙げて取り組んでまいりたい、かように考えております。
 以上でございます。
○河野(正)委員 あとの問題がありますので、これ以上続けることは難しいのですが、いずれにしても、厚生省にしようが労働省にしようが、開拓の努力をしなければ、この問題の解決は一向前進しませんよ。政府が努力するかしないかがこの問題の解決のかぎを握っているわけですから、そういう意味ではマスコミなんかでもやはり行政府の努力が足らぬとおっしゃっているのですよ。ですから、これはさらに格段の努力を願わぬと、これからたくさん帰国しますから、これは大変な状況になると思いますから、さらにひとつそういう努力をしていただくことを特に要望いたしておきます。
 それから、あとの問題がたくさんありますから、最後に一言だけ。私が申し上げました戦後政治の援護行政の一環の最後の問題として遺骨の問題があります。
 私が見た厚生白書では、なお百二十万柱、これが残っている、こう言われていますね。家庭にとりましては、遺骨が帰ってきて初めて終戦ですよ。かわいい子供の遺骨が、とうとい自分の父親の遺骨が帰ってきて初めて家庭内の終戦ということですね。そういう意味で、これは早急に全面的な解決をしてもらわなければならぬ。しかし、現状は非常に難しい。それは私どももわかるのです。治安の問題もありますし、それから一体どこにそういう遺骨がたくさんあるのか、地域の問題もあります。特に南方のごときは地形が非常に変わっておりますからね。実は私も厚生省と一緒に、今、運輸大臣をしている橋本君と一緒にニューギニアに行ったのです。そうすると、もう全然地形が変わっているのですね。高温多湿で樹木の大きくなるのが非常に早いものですから、そういう困難さもございます。ですけれども、最近はどうも政府がそれに対応する積極性というのが薄くなったのかどうかわかりませんが、旅行社あたりが盛んに巡礼団とかをつくって、これは半分は商売もありましょうが、そういうケース。それから遺骨収集、これも民間の団体が実施をする。厚生省に協力するという意味であろうけれども、実施をしておるのです。
 私もかつてこの委員会で取り上げたことがあるのです。実際、遺骨を勝手に取り扱っていいのかどうかという質問をしたのです。当時法務省は、遺骨を非常に辱めるとかいうことがなければ、現在の法律では規制のあれはありません、そういう話がありました。そういうことかどうかわかりませんが、そういうことは政府が責任を持ってやらなければならぬ。それが「戦後政治の総決算」の一環ですよ。ところが、今言うように、民間が巡礼団をつくったりあるいは遺骨収集をする。これは勝手にやっておるとは思わぬけれども、恐らく厚生省に協力しておりますというような形でやっていると思いますけれども、そういう実情だと思います。余り時間がございませんから、これは端的に、現在大体どのくらいを想定しておるのか、それからどういう方針で臨んでいくのか、その点だけ、簡潔でよろしいですから、お答えいただきたい。
○木戸政府委員 御指摘のように、この大戦では海外で二百四十万の方が亡くなったわけでございますが、現在、遺骨を収集いたしましたのは約百二十一万柱、こういうことでございまして、約半数の遺骨が旧主要戦域に残されている現状でございます。厚生省といたしましては、戦後処理の重大な施策ということで、毎年遺骨収集団を派遣いたしまして、これにつきましては、ある程度民間の団体の協力も得ているわけでございますが、厚生省の職員がキャップになりまして、遺骨収集団を派遣して収集には参加をしているわけでございます。ただ、先生がおっしゃられましたように、地理的条件あるいは相手方の国の状況によりまして、非常に収集が難しいところもあるわけでございます。したがいまして、今何年までというのは大変申し上げにくいわけでございますが、御遺族の強い要望がございますので、今後とも遺骨収集は引き続き行うとともに、できるだけ早期に、全部というのは難しいけれども、ほぼ完了というところまでいきたいということで積極的に努力をしてまいる所存でございます。
○河野(正)委員 全部完了とまではいかないとおっしゃるけれども、完了するはずないですよ。それは絶対ないですよ。であるけれども、完了するという政治姿勢でやりたいとおっしゃるならそれは別です。軽々に完了させるなんという言葉はちょっと軽率過ぎる。あなた、そんな簡単なものじゃないですよ。難しいですよ。ですから、単に民間の協力も得て今後もやります、そういうことではなくて、やはりどの地域、どの地域ぐらいは──例えば治安の問題がありましょう。それから相手国、例えば中国なんか東北部は許可しないんですよ。そういう問題もありますよ。ですから、どの地域はやれるんだから何年度までぐらいには完了したい、そういう構想は出てくると思いますよ。そのくらいのことはここでおっしゃらないとね。もう遺骨収集を実施いたしましてどれだけの年月がたちましたか。そういう意味の答えをしていただけば結構です。
○木戸政府委員 私どもといたしましては、ここ数年、将来を含めまして、フィリピン、ソロモン諸島、マリアナ諸島、沖縄、硫黄島、こういう地域につきましては、相手国側の理解もございます、物質的に困難な状況もございますが、こういう点に精力を集中いたしまして、できるだけ多くの遺骨を収集してまいりたいというふうに考えております。
○河野(正)委員 ぜひやっていただきたいと思います。
 ただ、今お答えになった中で非常に気になりますのは、フィリピンというところはちょっと難しいですよ。そう簡単にここはできるものじゃないですよ。民情の問題もあります。それから治安の問題もありますね。それから全部山の中に逃げ込んでいるわけですから、これはなかなか難しいですよ。そう簡単にフィリピンをお出しになってもなかなか難しい。認識はそういう認識をしておかなければいかぬですね。おやりになるのは結構ですけれども、そういう認識はしてもらわぬと、やはり対応は違うのですよ。ですから、少し認識が甘い、これは忠告しておきます。
 ちょうど中国孤児が帰ってくるものですから、この機会にと思って援護行政を取り上げてまいりましたら、少し時間を食い過ぎましたが、これからちょっと医療行政についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
 御承知のように、九月十五日、社会保険庁から、政管健保、政府管掌健康保険の六十年度の収支決算が発表されたわけですが、これによっても、単年度の収支が五年連続して黒字決算になった、こういう発表ですね。これは我々が一方的に言うのじゃなくて、政府が御発表になっておるのですかち、そのとおりでしょう。したがって、例えばいずれまあ老人保健法の審議も始まるわけでしょうし、いろいろあると思うのですが、今、日雇い健保を抱え込んだりなんかしましたから累積赤字があることは我々も承知しておりますが、しかし、赤字だ赤字だと言って再三再四料率引き上げで国会が紛糾してまいったという経過があるわけですが、その政管健保が今とにかく単年度約三千十億の黒字ですね。それが五年続いている。老人保健法でも医療費がかさむから老人の負担を増強しよう、それから健保も先般来一割負担、そういう一割負担が実施されたから政管健保の黒字が定着してきたかと思いますが、そういう状況がございます。ですから、今後こういう状況の中で、なぜ、例えば老人保健法で老人の負担を強化したり、あるいは健保も今一割負担ですけれども、保険局長がどこかで講演された要旨を私は医学雑誌で読みましたが、近く二割にしたいというような御発表もございます。だんだん黒字に移行しておるのに、なぜそういうふうに国民に対する医療費の負担を強化しなければならぬのか、私どもそういう意味では疑問を持っておる。黒字ですから、保険料はもう少し下げてもいいじゃないか、給付水準は上げてもいいじゃないか、むしろこういう議論がもっとされるべきではなかろうか、こういうように思うわけですが、この点ひとつお答えをいただきたい。
○下村政府委員 お答えいたします。
 確かに、現在の政府管掌健康保険あるいは健康保険組合の収支状況からいたしますと黒字が出ている、これは事実でございますが、一方で、総体としての医療費の状況を見ますと、ことしの四月以降特に相当大幅な医療費の伸び率が記録されておりまして、現状だけで判断できませんが、総体としての医療費は六%、あるいはもっと高く七%というふうな伸びになるのではないかと考えられるわけでございます。一方、経済と申しますか、賃金上昇率、あるいは保険に直接関連するところで申しますと標準報酬の方になるわけですけれども、これはせいぜい三%台あるいは四%程度ではないかということがことしの状況としては予測されております。今後も医療費適正化というふうなことでいろいろ努力はいたしますけれども、高齢化というふうな条件で考えてみますと、医療費の伸び率はかなり高い、一方で所得の方はそういう状況でございますので、長期的な傾向として考えますと、保険料負担というのはますます上がっていかざるを得ないのではないか、長期の判断としては、私どもこう考えておるわけでございます。しかも、現在の状況からしますと、各保険ごとの高齢者の加入率等も差がございますので、高齢化あるいは医療の高度化に伴う医療費の負担というものは制度によってかなりのアンバランスがますます拡大していく傾向にあるのではないか、こういうことでございます。
 そこで、これから先そういう状況に対応して負担をある程度お願いしていかなければならぬということになると、各制度の加入者ごとの公平化を図っていく、あるいは給付の面でもなるべく公平な形でやっていくということが必要であろうという判断のもとに、医療保険制度の一元化でありますとかいうふうなことを長期の目標として考えておるわけでございます。目下お願いしております老人保健法あるいはこれまでの退職者医療等の健康保険制度の改革というものもそういった考え方に沿いまして、できるだけこれからの高齢化社会に備えて公平な負担と公平な給付を実現していくという観点から考えたわけでございます。
○河野(正)委員 今度の社会保険庁が発表した六十年度で黒字が出たということであれば──それは来年どうなるのか、あるいは高齢化がどんどん進む中だから再来年はどうなるのかという心配があることは私どもわからぬわけではない。ただ、五年連続して黒字に定着しておるわけでしょう。だから、大体今の状況からいけば、もうこれが赤字に転落するということはまずまずないであろう。というのは、今料率も負担も、また老人保健もそうですけれども、いろいろな政策的な問題で医療費抑制をしようという方針が露骨に出ておるでしょう。ですから、これ以上そう金を負担させなくても、赤字だ赤字だと言われてきた政管健保が五年連続して黒字になったわけですから、もう国民に負担させるのじゃなくて、むしろ保険料の引き下げあるいは給付内容の引き上げというものを検討する段階が来ておるのではなかろうか。医療費を抑え込むのじゃなくて、国民に負担させるばかり、そういう発想じゃなくて、赤字だと困った政管健保が五年も続けて黒字ですから、三千億も黒字ですから、この際、保険料率の問題にしても給付の内容についても、当然考えるべき段階が来ておるのではなかろうか、こういうふうに私は思っておる。しかしあなたの方は、将来高齢化する中だからということで老人保健法をお出しになるし、あるいはまた御承知のように、今の健保の一割負担も二割にしたいとか、六十五年をめどに健保の統合というようなことも言われておるようですが、いずれにしても、もう国民の負担が重くなることは事実ですよ、これは。
 ですけれども、今申し上げるように、もう黒字である政管健保、累積赤字は、日雇い健保を吸収しましたから、それは確かにございます。一兆余はございます。ですけれども、今申し上げますように、政管健保が赤字赤字と言われて、これは国会もあの問題で乱闘国会があったりなんかした経過がありますよ。でありますが、それが今五年続けて黒字ですからね。ですから、もう余り国民の負担を増強するということではなくて、むしろやはり給付の内容の改善とかあるいは料率の問題について検討を加える、そういうことを考える時期が来ておるのではなかろうかというように私は思うのです。どうせ、はい、さようでございますという答えがいただけぬことは、これはもう全然立場が違うておるから、ございましょうけれども、しかし検討の段階は来ておると私は思いますよ。この点どうでしょうか、大臣。
○斎藤国務大臣 ただいま保険局長からお答えを申し上げましたように、御指摘のように、政管健保並びに健康保険組合等の財政は黒字基調になっておるわけでございますが、一方、医療費の増高というものはなおまだ予断を許さないところでありますし、本年度からまたなお相当な伸びになるのではないかという予想もされております。その辺のところを見定めながら、また医療保険の将来目指します一元化へ向かって、医療保険制度全体を眺めながらそういった問題について検討をいたしてまいりたいというふうに思っております。
○河野(正)委員 そこで、もう時間が余りないものですから、はしょってやりますので、質問が飛び飛びになるかもわかりませんが、ひとつお許しいただきたいと思います。
 そこで、一つはそういう状況の中で、今大型間接税の導入とか、あるいは医療費についても事業税を課するとか、こういう議論がございますね。そこで、医療経営というのが非常に厳しくなった、医療費抑制政策ですから厳しくなる、これは当然だと思うのです。
 そういう中で、医療の公共性というものですね。とにかくもう点数というのはあてがいぶちですからね。一般の自由主義経済じゃないのですから。盲腸の手術をやりましたら幾らですというわけにはいかぬのですからね。あてがいぶちで我々は医療費をもらっているわけですから。そういう意味ではいわゆる統制経済ですね。そういう中でまた事業税を取るとか取らぬとかいう議論がございますね。これはもう過去何回かこの委員会でも取り上げてまいりました。厚生省は、医療の公共性というものを尊重しなければならぬ、そういう意味で事業税を取ることは営利じゃないか、反対だとおっしゃっておる。
 きょうは自治省を呼ぶことは私は知っておりましたけれども、どうせ自治省を呼べばいただきますとおっしゃるから、この際、自治省はお呼びしないで、厚生省だけにお尋ねをして、厚生省のこの問題に対する姿勢をお伺いしておきたい、こう思っておるところでございますから、これは端的で結構ですから、大臣からひとつお答えいただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 御指摘の社会保険診療報酬にかかわる事業税の問題でございますが、これまで数年の経過はあるわけでございまするけれども、来年度の税制改正へ向けていろいろ今議論がされておるところだと思います。政府、また与党における税調の中で今後議論がされてまいると思いますので、今私が断定的なことを申し上げるのはいかがかとは思いますが、しかし、厚生省の立場といたしましては、今御指摘がありますように、医師の公共性、またこの制度の当初からの沿革等を考えまするときに、現状を維持いたしてまいるために全力を挙げて努力をいたしたい、こう考えております。
○河野(正)委員 大変ありがとうございました。
 そこで、時間かないですから、まとめてお尋ねをするということになりませんが、あれこれ二、三、一般質問の機会がなかなかございませんから、この際、この機会を活用させていただいてお尋ねをしたい、こう思うわけです。
 今、一つ開業医の間で非常に問題になっておりますのに、医療費通知というのがあります。要するに、これだけ医療費がかかりましたということで患者さんの方に通知をする、この医療費通知。これがいろいろな意味があることは我々もわかります。わかりますが、このためにこれが萎縮診療になってはいかぬ、こういうこともこれありでございますが、この医療費通知と並行して、昨年でしたか一昨年でしたか、要するに、千点減点された場合は、それは医療機関が取り過ぎておるのだから、そこで医療機関に請求して返戻を求めなさいという通知を出してよろしいという通達が出ましたね。これが結局また今の医療費通知と関連をして、医療機関と患者さんとの間に人間的な関係が非常に阻害される。とにかく千点というのは一万円でしょう。ところが少し込み入った治療をしますと、例えば輸液、点滴、あれなんか何本か削られたら一万円になりますよ。ところが、それは見解の違うところがあるわけでしょう。とにかく審査委員会の減点する立場と、医師が当然これはやるべきだと思ってやったという行為、その間に見解の相違があるわけですね。ですけれども、一千点減点されれば、それは医師の取り過ぎだから返戻を求めなさい。これが結果的には、今申し上げますように、患者さんと医療機関との人間関係が阻害される。とにかく余計な治療をして取り過ぎたらしいということで、その辺から医療費通知に対するいろいろな不平不満が出ておるわけですね。いろいろな医療に対するスキャンダルがありますよね。ですから、そういう見解が出てくることは、私どもとしては全面的に否定はできぬわけですけれども、しかし、現実には今この減点問題が非常に大きな関心事になっております。
 ところが、審査は別として減点というのは法的根拠がないのですね。減点してよろしいという法的根拠はないのですね。これはどこまでも審査委員と審査される方との関係でしょう。ですから、これはちょいちょい裁判ざたにもなっておるようでございますけれども、そういうことが結果的には、先ほど申し上げますように、厚生省の通達で、あれはいろいろな意見に対しての説明があったのです。そのときに、千点というけれども、その千点の減点というものは、そう初めからやり過ぎだぞということにはならぬですよと。というのは、いろいろ込み入った治療をすれば一万円くらいの治療はすぐ出てきますよ。とにかく今もう点滴がはやりですけれども、点滴しますと、点滴何本か削る。重症になりますと、それこそ十本もそれ以上もするわけでしょう。そのうちの何本か、三、四本削れば一万円になるわけですよ。
 ですから、そう簡単なことじゃないわけですから、そういう通達を出すことについては、私どもはいろいろ意見を言うたのですけれども、残念ながら厚生省はそういう意見は一切無視してお出しになった、こういう経過があるわけです。ですが、現実に減点というのは法的根拠がない。勝手にやっておられるわけだ。要するに、単に医療費を抑制していく、医療費がかかり過ぎる、そのためにのみそういうことが行われるという感じを持つし、大部分の方がそういう感じを持っていらっしゃる。ですけれども、審査というものは、健康保険の尊重、医学、医療の尊重、それと財産権の尊重ですね。要するに、物を出しておって、そしてそれが減点されてしまうわけですからね。物を出しておって、それがパアになるわけです。これは財産権の尊重、そういった問題等を十分考慮に入れながら審査が行われ、そしてまた当然の帰結として、やり過ぎたというようなことで減点されるということについては、それはもうそういうことがあることは私どもは全面的に否定はしません。ですけれども、今申し上げますように、健康保険の尊重とか財産権の尊重とか、そういう問題というのは当然考えなければならぬ。勝手ほうだいに審査委員会が削ってよろしいというものではないですね。そうでしょう。審査をすることについては、健康保険法で認められておっても、しかし減点は認めてないわけですから、法的根拠はないわけです。ですから、これはもう相当慎重にやらなければならぬ。ところがどうも審査委員会に対して医療費抑制という立場から厚生省がいろいろ指導されておるというような状況があると言えば、それはないですよとおっしゃるでしょう。でしょうけれども、私どもがいろいろ仄聞するところによれば、そういうにおいが非常に強い。ですから、やはりオーソドックスな審査、それは結構ですけれども、ただ医療費だけを抑えていこう、点数だけを抑えていこうという形の審査は、審査というのは減点ですね、減点はやはり問題がある。ですから、審査は健保法で認められておるにしても、減点については法的根拠も何もないわけですから、財産権の尊重という問題もあります、健康保険の尊重という問題もあります、ですから、これは相当慎重にやるべきだというふうに思うわけです。いろいろあるわけですけれども、あれもこれもというわけにいきませんから、その点について、まず一つお尋ねをしておきたいと思います。
○下村政府委員 社会保険診療の請求について審査を行って減点をやるということは、先生のおっしゃるような議論もあるわけですけれども、一応適正な審査を行った上で、その結果減点が生ずる場合もあるということについては、これまでの状況としては裁判上でも認められておるわけです。しかし、単に減点すればいいというふうなことであってはいかぬというのは、そのとおりでございまして、私どもとしては適正な審査をやるということで審査支払い機関の方にはお願いしているつもりでございます。審査をやりまして、その結果、医療機関に対しては増減点通知書というような形で一応お知らせをしているわけでございます。さらに、それだけでわからない場合には、医療機関側からのお求めがあれば御説明も申し上げる。さらに、それでもうまくいかない場合には、再審査というふうな段階になっていくということで、形の上では一応医療機関の立場も考慮した審査制度になっているわけでございますが、何分膨大な請求ということでございますので、先生がおっしゃるような点も含みまして、今後も適正な審査が厳正に行われるように私どもとしても十分考えてまいりたいと思います。
    〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
 それから、その結果の医療費通知という問題でございますが、お話しのように、医師と患者との信頼関係を損なう、これはまずいわけでございますから、医療機関側に対しましても、そういうふうなものについては十分中身がわかるようにしておくと同時に、私どもとしても、減額があったものが直ちに不正請求とかなんとかいうふうなことではないんだ、そういうふうな点については患者側にも誤解のないように、私どもとしても十分配慮をしてまいりたいというふうに思います。
○河野(正)委員 局長がいみじくも形の上ではとおっしゃったが、形の上ではそうですよ。問題は実質ですね。中身の問題ですよ。これは医療費通知がいいとか悪いとか我々は議論しているわけじゃない。ただやり方が、先ほど申し上げますように、一千点以上減点された場合には通告をして、そしてそれは返戻を求めなさい、医療機関から。こういうやり方をやられると、今申し上げますように、その一千点減点が正当な減点であるのかどうか、それは議論のあるところでしょう。減点をやられたのが、今もおっしゃったように、みんな過剰診療であるからあるいは不正だからということではないわけですね。それはもちろんケース・バイ・ケースでしょうけれども、そういう正当性が定かでないというような問題等についても、今申し上げますように、あなたのところの診療についてはこれこれ医療費を取り過ぎていますよ、だから医療機関に返戻を求めなさいというような通知を出すことは──これは指導されることはいいですよ。取り過ぎておるから、減点しておるから、ひとつ減点がないように今後は十分配慮してもらいたい、そういう医療機関に対する指導は結構です。それをいきなり患者の方にそういうような通知を出されることについては、やはりいかがなものだろうか。これは医療機関と患者との間の人間関係が損なわれることは事実ですから、そういうことで今この医療費通知の問題が再燃をしておるわけです。ですから、審査委員の皆さん方も、それは立派なお医者さんもいますよ。ですけれども、ある程度有名なお医者さんだから審査が適正であるかどうかというのは別問題ですね。やはりこういう審査委員の任命等についてはできるだけそういう点を配慮して任命をするということにならぬと、私は今のような問題はいつまでも後を絶たぬのじゃないか、こういうふうに思います。
 それから、いずれまた薬価基準の引き下げ等が出てくるでしょう、これは閣議決定ですから。これと関連して医療費の問題ですね。厚生省はそうだとおっしゃるけれども、従来は医療費の引き上げは引き上げ、それから薬価基準の引き下げは引き下げ、こういう二頭立てだった。ところが最近の傾向はそうじゃないですね。まず薬価基準を下げておいて、そこから原資を持ってきて、その原資を医療費引き上げに回す、こういうふうな方向というのが最近は具体的に出てきていますね。ですから、これは私は医療費問題の革命だと言っているんです。やはり薬価基準の引き下げは実勢価格でやるわけです。閣議決定でございます。それをやられることについては私はとやかく言いません。ですけれども、それと医療費の引き上げというものは当然別個にお考えにならなければいかぬのじゃないか。ところが最近の傾向を見ると、そうでしょう。薬価基準を下げておいて、そこから出てきた原資を医療費引き上げに回す、それは幾らかプラスアルファはついておりますけれどもね。しかし、薬価基準の引き下げの原資を医療費の引き上げの方に回すという基本的な方針というものは、最近露骨に出てきておる、これは私は確かに誤りだと思いますよ。薬価基準は実勢価格に応じておやりになるわけです。それは結構ですけれども、それから出てきた原資だけが医療費引き上げという考え方は間違いだと思いますよ。それは従来のように、医療費の引き上げは引き上げ、薬価基準の引き下げは引き下げ、こういう二頭立ての見解でやっていただかぬといかぬのじゃないか。しかし、最近の傾向は、そういう傾向が非常に露骨に出てきました。これはもう答弁の必要はないですよ、そのとおりですから。きょうはもう時間がございませんから多くを申し上げることはできませんが、ぜひ私が申し上げました、指摘した点は、十分ひとつ考慮に入れて今後は配慮していただきたい、こういうふうに思います。
○下村政府委員 お話しのように、薬価そのものの問題は薬価そのものの問題、医療費の問題は医療費の問題ということで、御指摘のように、ここ数年薬価の改定と診療報酬の改定と同時にやってきた、これも事実でございますが、原則はやはり別個の問題としてとらえて、その時点において医療費の問題については総合的な判断のもとに改定を行っていくということでございます。診療報酬の問題については、今後も医療機関の状況その他を総合的に判断して、適正な医療費の水準を保っていくということで対応してまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 失礼な話だけれども、今のはまさしく詭弁であって、私どもそう受け取っておりません。ここ二年連続して医療費は上がりましたよ。薬価基準を下げて、その原資を持ってきて医療費に振りまいているでしょう。これは従来と今日の医療費、薬価基準に対する対応が非常に変わったことは事実ですよ。ですから、私は医療費問題の革命と言っているのですよ。
 厚生大臣、これは初めてですから、そういう見解があるぞということをひとつ頭に入れておいていただきたいと思います。
 それから、いろいろありますけれども、もう時間がございませんから、これは現実の問題として私の方からひとつお願いしておきたいと思うのですが、診療報酬を請求しますね。これは御承知のように省令で「翌月十日までに提出しなければならない。」こういうことですね。ですけれども、現実には十日まで待ってないのですよ。例えば社会保険等については大体六日から七日までに提出させていますね。国保が十日。省令では十日までに出せばよろしいということだけれども、現実はそうじゃないですよ。
 そこで、それは今ずっとそういう慣例で来ていますから、私どもはそれに対してとやかく言いませんが、ただ一月に提出する分、十二月の診療費です。これが年末年始がありますね。これは非常に大変ですよ。ですから、特例としてこの十二月分の請求、一月に提出する分は若干引き延ばしていただいて、例えば十二日にするか十三日にするか十五日にするか別として、これはぜひ配慮していただきたい。事務員も年末年始は休みです。今、休日をとらせるというのは政府の方針ですからね。労働時間短縮ですから、これは大変ですよ。しかもレセプトというのはだんだん込み入ってきました。例えば健保連でも言っているでしょう。今一番多くなっているのは五百万円レセプトと言っている。医事新報に書いてありますよ。一件五百万円ですよ。このレセプトが一番多くなっていると書いてある。そういう状況ですから、これはなかなか大変ですよ。この十二月の診療報酬に対する一月提出、これも今までのように、省令のように、十日まででなくて若干何日か延ばして、一月については特例としてやるということをぜひ配慮していただきたいと思いますが、これはいかがでしょうか。
    〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
○下村政府委員 具体的にどうすればいいかということは、ちょっと私にもわかりませんが、おっしゃる点ごもっともだと思いますので、ちょっと相談をさせていただきたいと思います。
○河野(正)委員 具体的にどうするかわからぬというのではなくて、何日まで猶予するかということ、省令は十日までです。しかし、現実に今までは社保の場合は大体六日か七日ころまで、国保は十日、こういう形で指導をされていますよ。ですから、十二月分については一月に出すわけでしょう。それを六日か七日というわけにはいかぬですよね。特に労働時間短縮で、とにかく政府が休日をふやせと言っておるわけですから、一月分については特例として、どうするかわからぬじゃなくて、何日くらい延ばすか、この問題ですよ。ですから、例えば三日延ばすのか四日延ばすのか、それは局長がここでいろいろお話しできぬでしょうから、言うわけにいきませんけれども、ひとつその点は前向きで検討して結論を出す、こういうふうにお答えいただければ結構だと思います。
○下村政府委員 検討させていただきたいと思います。
○河野(正)委員 検討してあきませんでしたではいかぬわけですよ。ですから、少なくとも前向きで検討しますというくらいおっしゃらぬと、検討しますじゃ、それは検討したがだめでしたとおっしゃれば、何のためにお願いしたかわからぬでしよう。
○下村政府委員 正月の時期については、従来から実際上何らかの処置をとって対処してきていると思うわけでございます。そこら辺を踏まえまして前向きに検討させていただきたいと思います。
○河野(正)委員 そういう詭弁を言われるからいかぬのです。もうそれは対処しているはずだ。だから、そういうことを言われると、もう対処しているんだから検討しても前向きでもそれで終わり。それは今まで県の保険課でいろいろ指導しておるでしょうけれども、全国的にこの声があるわけです。ですから、一県だけが多少一日か二日猶予してもだめです。それは全国的に猶予してもらわなければいかぬ。ですから、現在がどうだこうだじゃなくて、要するに、私が申し上げた趣旨については、十分前向きで検討します、少なくともこういうふうに言うていただかぬと質問はやめられません。
○下村政府委員 できるだけ努力をさせていただきたいと思います。
○河野(正)委員 そういうことをおっしゃるから、それじゃいつまでたったってこの問題を進めざるを得ないと思うのです。だから、趣旨はわかりました、したがってそういう趣旨を踏まえて前向きで検討しますと。きょうここで何日延ばすということは言えぬでしょう。その点は私ども了解しますよ。ですけれども、趣旨を十分尊重して前向きで検討しますということだけ言うてもらわぬと下がれませんよ。
○下村政府委員 御趣旨はよくわかっているつもりでございます。ただ、実際問題として、十日ということについては、支払い期日の問題でありますとか、すべての問題がそれに対応して決められているわけでございます。恐らく先生おっしゃるのは、受け付けの方は何とか考えろ、支払い期日はできれば従来どおり何とかならないかというふうなことではないかと思うのでありますが、その辺の関連も含めますと、関係者それぞれの事情がありますので、この場で直ちに全国一斉にすべておくれた期日を定めることができるかどうか、私はちょっと自信ございません。それで十分御趣旨はわかっておりますので、検討し努力をさせていただきますが、答えが必ず先生のおっしゃるように出せるという自信がございませんので、そこは御猶予をいただきたい、こういうふうにお答えを申し上げたわけでございます。
○河野(正)委員 自信がないというのはもう当てにならぬということですよ。それは提出は猶予してもらっても、金は当然猶予してもらっちゃ困るわけです。そういう無理のあることは私ども重々承知しておりますから、そういうことでぜひひとつ善処をお願いしたい、こういうふうにお願いをしておるわけでしょう。だから、ここで最初から答えの中で自信ありませんなんて言われたら、それは下がれませんよ、あなた。自信があるないは別としても、最善努力しますという答弁ならいいけれども、最初から自信がないというのは、当てにならぬということですよ。
○下村政府委員 最善の努力をいたします。
○河野(正)委員 最善の努力ですから、最善というのは実施していただくというふうに私は理解しますので、よろしくお願いいたします。
 そこで、もう時間がなくなりました。警察庁あたりもお呼びして申しわけないと思うのですが、医療に関連をして私ども何回かこの委員会でも取り上げてまいりました。これが問題が多いのですけれども、もう時間が余りございませんので、それを取り上げるわけにまいりませんが、要するに、医療費を抑えていくという立場、医療費というよりも医業経営といいますか医療機関といいますか、医療機関にとりまして一つの大きな支出は、やはり衛生材、薬、それから食料費とか管理費とか人件費、こういうものが主なものですね。それでだんだん医業経営が厳しくなってきた。そこで薬価をできるだけ抑えようということで始まりましたのが、とにかく安ければよろしい、安い薬があればよろしいということで、とにかく安いものを買おう、そういう傾向が出てきた。それが結果的には安いばかりのにせ薬というのが出てまいりまして、そして年間にかなりにせ薬事件というものが出てきた。薬というのは生命関連商品ですからね。命に関連する商品ですから、安定性がなければいかぬ。安ければよろしいということじゃないですね。安定性がなければいかぬ。ところが、残念ながらそういった点が、安ければよかろうということで、にせ薬事件というものが最近年々歳々増加する傾向にあります。
 警察庁お呼びしておりますから、一応まず警察庁の方からその現況を御報告いただいて、そして後逐次厚生省に御質問を続けてまいりたい、こういうふうに思います。
○上野説明員 お答えいたします。
 医薬品として正規の承認、許可を得ていないにもかかわらず、あたかも薬のように効能、効果があると称して製造、販売されるような、いわゆるにせ薬にかかわる薬事法違反事件というのは、最近の件数でいきますと、昭和五十七年が百三十七件、百五十六名、昭和五十八年二百件、百八十九名、昭和五十九年百六十三件、百七十四名、昭和六十年二百五十件、三百六名と検挙しております。これらを見ますと、にせ薬の関係の薬事法違反事件というのは年々増加の傾向にあると言えるだろうと思っております。
○河野(正)委員 今、警察庁から御報告ございましたように、具体的に年々歳々ふえておるわけです。そして先ほど申し上げましたように、薬というのは生命関連商品ですね。人の命に関連するわけです。それが、そういう事件というものがふえていくということは、これはもう医療の上においても非常に問題があるということで、実はしばしば厚生省に指摘を申し上げてまいりました。
 そこで、そういうことがどうして起こるのかということなんです。ところがマスコミの報道するところによっても、実はこういうふうに言われておるのです。このにせ薬ですね。例えば日本ケミファという会社がある。これはメーカーです。アスコンプというのをつくっている。これは潰瘍の薬でございます。ところがこれが、前回私は、クレスチン、三共から出ております制がん剤、これを取り上げた経験があるわけでございますが、全く同じですね。ですから、それは正規の流通経路ではそういうにせ薬はなかなか買うわけにまいりません。取引するわけにはまいりません。ところが残念ながら薬業界にはメーカーから正規の卸業者とそれから医療機関という一つの流れがある。それからもう一つは、第二市場、現金問屋というのですね、私どもこれはブラックマーケットと言っておりますが、東京でいえばアメ横ですね、ああいうものです。この現金問屋のシェアがかなりあるのですね。
 あと十五分しかございませんから、時間がございませんから多くを申し上げることはできませんが、今申し上げました、例えばアスコンプの問題にしましても、現金問屋を通じて病院へ行っておる。この現金問屋というのが私が今言うブラックマーケットですね。ですから、そこから取引すると安いですね。中には十分の一くらいの価格のやつがあるのですね。ですから、そこと取引する。だから、にせ薬を使わせられる患者さんは迷惑な話ですよ、効きもせぬ薬を高い金出して服用しておるということですから。このにせ薬事件というものは、やはり現金問屋の存在、これがかなりのシェアを占めておるわけです。これが私どもの調査によりましてもかなりなシェアを占めておるわけです。そして先ほど申し上げますように、このにせ薬というものがほとんど現金問屋から病院に流れておる。
 ですから、例えばこれももう既に取り上げましたが、利尿剤のやせ薬ですね。そしてそのやせ薬は、その薬を飲みますとやせますよ。今、肥満体が多いから、これは受けるわけですね。これは南方のユッカという花があるのですが、それのエキスを使ってつくったと書いてある。ところが実際はフロセミドという利尿剤なんですよ。その利尿剤を大量に買い込んでいる。正規の一般のルートから買いますと、何で利尿剤をたくさん買うのだろうかという疑問が出てきます。ですから、現金問屋から買う。利尿剤をどんどん飲むのですからやせますよ、水分がどんどんなくなるわけだから。そういう問題もございました。
 いずれにしても、これは申しわけないけれども、国の薬務行政というものが非常にずさんだ、ずさんな一環としてそういうことが起こってきておる、こういうふうに私は思うのです。
 そこで、そういう現金問屋と取引してはなりませんよということはいろいろな各医療機関に規制するわけにはまいりませんね、現金問屋といっても一応法的にはそういう許可を持っておるわけですから。しかし、そういう疑問のあるところから、少なくとも国の機関はそういう取引は避けたがよろしいじゃないかというのが私の持論なんですね、せめて国の機関は。ところがなかなかそれがそう善処願っておらぬような気がするのですが、私が取り上げてからもうかれこれ二年くらいになりますが、大体どういう方向に向かいつつあるのか、現況をひとつ御報告いただきたいと思う。
○仲村政府委員 お尋ねの現金問屋から国立病院等がどのような取引をしておるかということでございますけれども、前回、ことしの三月でございまして、やはり先生からの御質問ございましたときにもお答えいたしましたが、病院の数といたしましては、前回御報告いたした病院数、四十二病院ということでお答えいたしておりますが、私どももやはり経営努力ということをしなくてはいけませんので、医薬品を購入する際には、薬事法上の許可業者でありまして、会計法上の審査を加えた上で入札参加資格を得た業者から、通常は競争入札で購入しておるわけでございまして、その際にも、今御指摘のございましたような商品がまざらないように、例えば製造番号が著しくふぞろいのものでございますとか、製造後日時が経過して使用期間が短いような薬品が入っておる、そういう医薬品を取り扱う業者からは購入しないというふうなことで指導してまいっておるわけでございます。したがいまして、そういう面からいいますと、一概に国立病院におきまして現金問屋と取引をすることを減らすという方向でいっているというお答えにはならないわけでございます。
○河野(正)委員 さっぱり結論がわかりませんでしたが、もう一度結論……。
○仲村政府委員 そういうことで、私どもといたしましては、良質な薬を確保するという観点と、購入する医薬品が良質である場合には、できるだけ安くということで経営努力もしていかなくてはなりませんということから考えますと、その後調査はしておりませんが、おおむね同程度の病院がやはり一部現金問屋と取引をしているのではないかと考えられます。
○河野(正)委員 私は、薬というものは、一つは安いがいいです。しかし、安いがいいといって安ければよろしいということじゃない。安全性がなければならぬ。それからもう一つは、やはり安定供給ができなければならぬですね。あるときはあったけれども、やみですからその次はなかった。これじゃいかぬ。ですから、私はこれは三原則と言っているのですが、一つは安全性、一つは安価ということ、もう一つは安定供給、この三つがそろわなければいかぬと言っているわけですね。
 大体現金問屋がなぜ安いかといったら、異常な形で流れてくるわけですね。例えば試薬のごときは、メーカーから証紙がないのですよ。これは税金対策で証紙を張ってないのです。それで中身は同じですね。そういう形で流れてくるわけです。
 それから、かつてある医療機関が所得税法違反で摘発されましたけれども、大量に銘柄品を買って、そしてそのままそっくりブラックマーケットに流したわけですね。そうすると、それは病院としては一応買ったことになっていますから支出になるわけですよ。そして実はゾロ商品というのがあるのですね。ゾロゾロという意味ですからゾロ商品。そういう薬を新たに買い込んで、そして不正請求をするわけですね。実際に請求する場合には、銘柄の薬を使ったと言う、そして実際的にはゾロ商品を使っている、そういうことで摘発された。これは一例ですよ。そういうことがありました。とにかくいろんな非常にやましいルートで入ってくるわけですね。
 安くするというのは、これは当たり前のことです。ですけれども、それが本当に安全性があるのかないのかということですね。それからもう一つは、安定供給ができるのかできないのか、そういう問題がある。現実にやはり県立病院とか市立病院とか、実はそういうにせ薬を買うて患者さんに使っているわけでしょう。そして保険料を請求しているわけですから、保険局長、これは一体どうだという質問をしたのですけれども、公的医療機関がそうですよ。だから私ども、市立病院とか県立病院はともかく、少なくとも国の機関だけはできるだけそういう危険性に近寄らないようにした方がよろしくはないか、こういうふうに忠告をしてきたところですね。ところが、とにかく経費を抑えろ、そのためには安ければいいぞ、安いのを買え、こういう指導が行われておるやに聞いております。だから結局、各病院で点数を上げようと思えば、そういうやみ市場から買うて安い薬を使った方が経費をうんと抑えることができるわけですから、そういう傾向まで出てきておる。
 それともう一つは、薬価基準ができるでしょう。ところが薬価基準を決める場合はバルクラインがありまして、厚生大臣初めてでしょうが、それで高いところから安い方に一列に並べて何%で切る。その際に、そういうやみ市から買うてくれば非常に安いですね。そうしますと、それが薬価基準をつくるときの材料になるわけですよ。国が薬価基準をつくっておいて、国自身が薬価基準を破るような行為をやっているわけですね。これはやはり問題ですよ。
 ですから、それを全面的に排除するというわけにはいかぬでしょうけれども、できるだけそういう危険な道は歩まない方がよろしいですよ、こういう指摘はしておるところですけれども、先ほど言うように、局長は、その後調査しておりませんからよくわかりません、私が結論がわからぬと言うたのはそこを言うたのです。国会で質問をしたら、やはりきちっと調査して、調査を続けて、こういう状況に立ち至っております、改善されつつございますというような答弁をするのがしかるべきじゃないでしょうか。それがやはり国会の議論を尊重するということじゃないでしょうかね。といっても、とにかく委員会が済めばよろしい、委員会の間だけとにかく耳に栓をして二時間頑張っておればよろしいぞというような、これでは私どもが一生懸命勉強して、一生懸命ここで主張しても何にもならぬですよ。しかし、それは私ども、点数稼ぎじゃないですよ、国民の命を守るために言っておるのですよ。ところが今のような、局長も医者で私も医者ですから、非常に申しわけないけれども、やはり医者なればそういう命に関連する商品というものについてはもっと慎重に配慮さるべきじゃなかろうかと私は思います。そういう意味で私は局長に期待をしておるわけですよ。
 でございますから、その後調査しておるかわからぬとおっしゃったが、少なくとも今国立関係の医療機関が二百七十ぐらいありますか、そのうちの四十二が取引しているのですよ。そう少ない方じゃないですよ。二百七十のうちの四十二ですから少ないことないですよ。ですから、それをゼロにするということはなかなか難しいでしょう。でしょうけれども、やはり審査を適切にして、とにかく厳正なる審査をして、そしてこれは確かだということで選定をして入札させるというのが今の政府のお答えです。ところがそうなってないからそういうにせ薬が入ってくるわけです。ですから、その原因は、やはり何といってもずさんな薬務行政にある、こういうふうに御指摘──これは警察庁が指摘されたところじゃないが、新聞にそう書いてありますから。そういう意味で私どもは、これはやはり厚生省自身が反省されて、そしてそういう誤りがないようにやられるのにはいいのじゃないか、こういうふうに思うわけですから、もう一度局長、申しわけないが登壇して、ひとつ前向きな──私が言うのは前向きですから、前向きな答弁をひとつお願いしたいと思う。
○仲村政府委員 国立病院等が良質な薬を安価で購入することについて、私どもとしてはこれを妨げる理由はないと考えております。
 それから、今御指摘の安定供給の面でございますが、私ども、例えば国立病院がそのようなルートの医薬品に大半を頼っているとかいうことではございませんので、先ほど申し上げましたようないろいろの条件を加味して、品質が保証されているものであって、より安価なものがあれば、私どもとしては、これを皆無にするということは非常に難しいと考えておりますが、品質という点に着目し、先ほどおっしゃいましたような人命関与商品ということのようでございますので、そういう品質の面に着目して、購入形態についての指導をしてまいりたいと考えております。
○河野(正)委員 残念ながら、指導する指導するというようなことは、今までに過去四回ぐらいこの委員会で承ってまいりました。ところが一向改善されないですね。ですから、指導を聞かない医療機関が悪いのか、言っては悪いが、局長の指導力が薄いのか、どっちかでしょうが。しかし、いずれにしても、これは国の機関ですから、両方とも反省してもらわなければいかぬですね。
 そこで、こういう問題はやはり非常に大きな問題だと思うのですが、薬の通信販売制度というのがあるのですよ。例えば、今テレビで何とかショッピングというて何時までに電話されればこれだけ安くしますよというような番組がありますね。そういうのが薬にあるわけです。これは行政指導上何とかして規制された方がいいのじゃないか、こう私は思うわけです。
 例えば、これは極端な例だけ申し上げますが、一粒飲めばあなたの背丈が伸びます。──ヒト成長ホルモン、今度外国から輸入されるようになったそうですが、入りましてもなかなか量が少ない。しかし、プロポーションがよくなるのが望ましいという女性なんか特に多いわけですから、雑誌等にそういう誇大広告をするわけですね。そして背が伸びる。中身は何かというわけ。ヒト成長ホルモンは遺伝子の組みかえでやるわけですからね。これは牛の骨みたいですね。そしてそれを粉にして売っている。牛の骨ですから、カルシウムですから、それを考えてみると、全然ゼロかといったらそうでもないかもわからぬけれども、そういうのが通信販売をやっているわけですね。そして実際に警察庁が摘発したときには何十億という売り上げをやっているのですね。ですから、これはやはり薬務行政の一環として、こういう状況というものは規制することが望ましいんじゃないかと私は思うが、現実にそういうことが行われておる。こういう通信販売制度という点についてどうお考えになるのか、ぜひひとつ御見解を承っておきたいと思います。
○森(幸)政府委員 お答え申し上げます。
 医薬品は、先生先ほど御指摘のように、国民の健康に直接作用する非常に重要な商品でございます。安全性、有効性、品質の確保というものが守られなければいけない商品であることは御指摘のとおりでございます。
 先ほど来御指摘の現金問屋の問題につきましては、医薬品には、先ほど先生がおっしゃっておられましたようにいろいろな流通経路がございます。しかし、今申しました医薬品の持っております特性にかんがみまして、高度の品質管理ということ、それから安定供給、そういう卸売業者に課せられました社会的な責務を果たしていくということが求められていることは、これはもう事実でございまして、したがって、今御指摘のような現金問屋を通して流通をするということによって、そういう社会的な責務が遂行できないというようなことにならないようにしていく必要があろう。そういう意味で、私ども薬務行政の立場からいたしますれば、そういう医薬品の持っております特性に十分配慮し、その方向に沿って流通が行われるように監視、指導の徹底を図っているというところが現状でございます。
 今お話ございました通信販売の点でございますが、これは医薬品の流通のあり方というものから考えてみますと、例えば通信販売を行って医薬品の情報というのが適切にその取引の相手方に提供されるかどうかという点がございます。それから通信販売ということの過程で適正な品質管理が確保できるかどうかというようなこともございます。それからまた、その取引の相手方が適正な取引相手であるかどうか、そういうことの確認というような問題もあろうかと思います。そういうようなことが十分確保されているかどうかというようなことは、これは私どもの薬事監視の中で今後とも十分その監視をしていくというようなことでやってまいりたい、こう考えております。
○河野(正)委員 時間がなくなりましたから、そこでこの点はまたいずれ別の機会にやってまいりたいと思いますが、最後に一言、私も長年社会労働委員会に所属しておりますけれども、ここでは医科の問題については非常によく取り上げられるけれども、歯科の問題については余り取り上げられぬものですから、今度老人保健法が出てきますからそこでやろうかなと思っておりますが、どういう機会があるかどうかわかりませんから、一言だけ。老人と歯の問題です。
 御承知のように、大体六十五歳以上の約三五%が一本の歯もない。それからある篤志家の歯医者さんが実態調査をしてみたら、六十五歳以上の一般老人の中で、入れ歯のぐあいが悪い、それから歯が痛い、こういうことを訴えていらっしゃる方が約四〇%ということです。ですから、お年寄りと歯の問題ですね。ところがお年寄りも介護者ももう年をとっておるから、歯が痛むのはしようがない、入れ歯がガタガタするのもしようがないというあきらめムードだ。
 その原因の一つは、やはり行政の温かい手が伸びてないということ。例えばお年寄りの治療は時間がかかる。それからお年寄りですから、なかなか仕事が難しいという面もある。時間がかかる、難しい、そういう面もあって、年寄りが歯医者さんから敬遠される。そういうことも手伝って、お年寄りが歯が不自由をしながら──年寄りになったら食べることでしょう、テレビを見ることも楽しみでしょうし、あるいは演劇を見るのも楽しみですけれども、そのほか楽しみといったら食べることですよ。それが歯がない、歯が痛む、入れ歯がガタガタするということで、大変不幸な一日を送っていらっしゃる。
 それで私は、今後、医科もそうですけれども、歯科についてももう少し温かい行政が進められていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思っております。そのために、やはり歯医者からも歓迎されるような技術料ですね、点数というような面についても、この際、当然考慮して、そしてやはり歯医者さんからも年寄りが歓迎される、お年寄りのためにやってやろう、こういう状況が出てくるような温かい処置が今後当然行われていかなければならぬ、こういうように思っているわけです。
 ですから、もうこれは非常に平易な言葉ですから、大臣からで結構ですから、将来、そういった問題については、お年寄りの非常なそういう不自由、それから苦痛、そういうものを除くために、当然──子供たちには歯科医療についても点数の加算があるわけですよ。ですから、お年をとりましても、それはみんなそうではないよという意見もあるいは省内にあるかもしれない、しかし、そういうことで非常に苦痛を味わっていらっしゃるお年寄りが多いわけですから、今後ひとつそういう方面についても十分配慮して、そして十分な検討を進めていこうというようなこと、これは大臣も人情的でしょうから、その辺もひとつ承らせていただいて、適切なお答えがあれば、時間も余りありませんので、きょうはそれで終わりたい、こういうように思っております。
○斎藤国務大臣 ただいまお話がございましたように、お年寄りの歯というものは大変大事でありまして、歯がよければ胃腸がいい、胃腸がよければ長生きができる、こういうことになるわけでございますので、お年寄りの問題を考えるときに、歯科の問題を考えるということは非常に重要であるというふうに考えております。
 各都道府県におきましても、口腔歯科保健センター、またそれぞれの地域におきましても、相当数整備をされてきておる現状でありますし、また、今診療報酬の中においての特別な措置をしたらどうかというお話につきましても、お年寄りの入れ歯などにつきまして、療養上の指導や、また入れ歯の装着時の指導の充実を図るために、診療報酬に特別な点数を設けておるというのも事実でございます。
 また、本年の診療報酬の引き上げの際にも、その指導料の引き上げや、また寝たきり老人に対する加算の新設を行うなどいろいろ努力をいたしておるところでございますが、今後とも、冒頭に申し上げましたように、お年寄りと歯という問題は非常に大事なことでありますので、努力をいたしてまいりたいと思います。
○河野(正)委員 今の大臣の御答弁結構ですが、今特別手当を出しておるとおっしゃったが、そういうことでは足りないからなかなか年寄りが歓迎されないということになっておるわけです。ですから、今やっておるから、私の気持ちはそこに来ておりますよということではなくて、今後お年寄りが歯医者さんからも歓迎される、いらっしゃい、あなたの幸せのために頑張りますよ、そういう努力を今後は診療報酬その他についてもさらにやる、こう言っていただかぬと、今やっておりますとおっしゃれば何も言うことはないのですよ。その点をひとつ、もう時間がないわけですから、よろしく。
○斎藤国務大臣 今もやっておりますが、これからもいろいろと努力をいたしてまいります。
○堀内委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時二十分休憩
     ────◇―────
    午後二時五分開議
○堀内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本放送協会放送総局副総局長高橋雄亮君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○堀内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ─────────────
○堀内委員長 質疑を続行いたします。貝沼次郎君。
○貝沼委員 きょうは、質問の時間をお与えいただきまして、本当にありがとうございました。実は、私、社会労働委員会は今回が初めてになりますので、またいろいろお世話になると思います。皆さんにはよろしくお願いいたします。
 初めに、エイズの問題でちょっとお尋ねをしたいと思います。
 俗に言うエイズでありますが、後天性免疫不全症候群の問題が重大になってまいりました。例えば血友病の人、私の友達にもおりますけれども、大変心配をしております。それから輸入血液に頼っておるところ、米国の発表とか報道によりますと、国内のエイズの患者数は一万人を超えておるというようにも言われております。また病原体のHTLV、つまり成人T細胞白血病ウイルスというのだそうですが、このV型を持続的に保有する潜在患者、いわゆるキャリア、この人たちは約百万人というふうにも言われております。それからアメリカの赤十字社の血液検査でも、採血者千人につき二人あるいは三人がキャリアになっておると言われております。したがって、輸入の凝固因子製剤、これの原料血漿中にHTLVVが紛れ込んでいる可能性があるというので心配があるわけでございます。
 さらにまた、我が国の中でもエイズ患者が見つかっております。しかし、我が国においては、もう私が言うまでもなく法定伝染病ではありませんので、規制はございません。治療法も不明でございます。こういったところを踏まえまして、去る九月十六日、我が党の竹入委員長が国務大臣に対する代表質問で、ついに我が国でも陽性患者が発生し、このまま放置すればエイズ汚染が広がるおそれが強いことから、一つは、すべての献血血液について早急にエイズ抗体検査を実施すべきであるという質問をいたしました。それからもう一点は、予防、治療薬の研究開発、こういうエイズ対策を図るべきではないかと質問したわけでございます。ところがその答弁は、総理大臣の答弁でありますが、「御指摘のエイズの対策は、エイズは極めて死亡率の高い疾病でありまして、細心の注意を行っておるところであります。今般、新たに献血血液の中からエイズ抗体の陽性が確認されたことにかんがみまして、御指摘に沿いまして、全献血血液についてエイズ抗体検査を実施すべく、今体制を確立中でございます。なお、予防、治療薬の研究開発等についてもさらに強化してまいります。」こういう非常に前向きではありますが、具体性を欠いた答弁でございました。したがいまして、私は、この機会にいま一度このエイズ対策について、当局が具体的にどういうふうな取り組みをなさろうとされておるのか、この点について大臣に御答弁をお願いしたいと思います。
○斎藤国務大臣 エイズに対しての問題でございますが、国民の善意によって提供されます献血血液に対しますエイズの抗体調査、ただいまお話がございましたように、これから全血液についての検査を行う体制を今考えておるところでございます。
 これは御承知のように、本年の二月から献血血液中におけるエイズ抗体検査を始めることといたしまして、まず東京と大阪でいわゆる百万人体制ということで進めたわけであります。そして本年の七月からは、これを拡大いたしまして、八つの都府県によりまして三百七十万人体制ということで進めてまいりました。本年八月に至るまで約九十万人の方々の検査を行ったわけでありますが、その中で六名の抗体保持者を発見することになりました。率からいいますると、それほど多いものではないわけでございまするけれども、このエイズという病気の特殊性、すなわち予防や治療が確立されてない、死亡率の非常に高い、非常に恐ろしい病気であるということにかんがみまして、全輸血血液おおむね八百七十万件、こう考えておりますが、これについて全部の検査を行うということに踏み切った次第でございます。これを行いますには、まず検査機器の整備、また検査試薬の確保、またその検査要員の確保等順次やってまいらなければなりませんが、この十月中に全国における日赤血液センターにおいて今のような体制を整備いたしまして、逐次十月中に検査ができる体制を整え、十月中には全量検査ができるようにいたすべく今そのようにいたしておるところでございます。
○貝沼委員 大変具体的に御答弁いただきましてありがとうございました。ぜひひとつこれを積極的に進めていただきたいと思います。
 なお、私は去年の六月、このエイズの問題を決算委員会で質問をさせていただいたことがございますが、このときもはっきりしなかったのですけれども、実はエイズは先ほど申し上げましたように、法定伝染病でもなければ、かといって伝染性があるというようなことで、その扱いというものが法的に非常に難しい面があると思います。しかし、わからないからといってそのままにしておけば大変問題があるし、かといってその方々に対して特別なことをすれば、そこにプライバシーの問題あるいは個人的人権の問題とかあるいはいろいろなそういう人権問題が絡んでまいりますので、当局としてはその追跡調査はいろいろなことをやるのでしょうけれども、ただ協力を求めるだけで、これからそれが進むものなのかどうか、あるいは現在の法制上においてそういう法的措置というものは何か必要なのか、その辺のところは当局はどのようにお考えになっていますか。
    〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
○仲村政府委員 お尋ねのエイズにつきましての法的な措置ということでございますけれども、現在、御承知のように、伝染病の予防には感染源対策、つまり病源体がそこにあるということ、それから感染経路、それが人から人へうつるという経路の問題、それから感受性対策といいまして、ワクチンなどで感染しても発病しないという三つの原則で伝染病対策というのは成り立っているわけでございますが、それにつきまして、私どもエイズに関しましてそれを申し上げますと、エイズの患者については、全国二千の協力医療機関から情報を提供していただきまして、早期発見に努めているわけでございます。これは同時に、入院する患者が多いわけでございますので、そこで感染源対策として、対症療法でございますが、治療を開始する、あるいはその患者さんから次にうつさないというふうなこと、感染経路、二次感染を予防するということで、先ほど大臣からお答えいただきましたような献血血液についても全部チェックをして、一般の人にそれを用いないというふうなことでの二次感染を防止するという対策もとっておるわけでございます。
 それから、一般の方々がエイズに関しまして非常に心配をするということもございますので、相談窓口を設置して、心配があればできるだけそれに対応して検査をしてあげるとか、そういうふうなこともやっていこうと考えておりますし、一般向けにはエイズがどのような形でうつるかというふうな衛生教育も非常に重要でございます。あるいはさらに関係者に対します研修でございますとか、もっと基本的にいいますと、研究の促進とか、こういうようなことでエイズ対策は構成されておるわけでございます。
 先ほどちょっとお話がございましたように、アメリカではもう二万四千人ぐらいの患者数になっておりまして、非常に大変な数が発生しておりますが、日本は幸いにいたしましてまだ二十一名ということでございまして、アメリカほどのいんしん状態ではございませんけれども、この病気につきましては、潜伏期も長いわけでございますので、今後警戒を怠るわけにはいかないわけでございまして、現在、AIDS調査検討委員会という専門家のお集まりの方々にいろいろ御相談をしながら対策を進めておるところでございます。御承知のように、非常に重篤の伝染病でございますので、患者さんが入院された医療機関は扱いが非常に難しいわけでございますが、アメリカ等におきましても、法に指定して隔離をするというようなところまではいっておらないようでございますし、現実、私どもといたしましても、その患者を収容する医療機関につきましては、医療機関におきます取り扱いについての文書を、都道府県を通じましてそこへ配付するようにしておりまして、その取り扱いについて十分慎重を期すようにということで通知を出しておるところでございます。
○貝沼委員 今いろいろと総合的に御説明がございましたが、要するに、エイズ患者本人の取り扱いについては都道府県において慎重にやってくださいということに尽きるわけですね、患者そのものについては。だから、その慎重の中身が相当──慎重と言えばそれ以上の言葉はないのでしょうけれども、私は、法制上あるいは現行法上そういう協力を求めるということは無理ではないのでしょうかということを、疑問があるものですから、ちょっとお尋ねしたわけです。
○仲村政府委員 大変失礼いたしました。
 慎重にというのは、ただ慎重ということではなくて、私どもはエイズ患者の取り扱いにつきましての留意点という文書をお出ししておりまして、例えば医療機関においては、隔離する必要はないけれども、重症の下痢でございますとか失禁でございますとか中枢神経系の行動異常等、病状が重くて身辺を清潔に保ちがたい患者は個室に収容しなさいというふうなことでございますとか、あるいは患者を観血的に処置する場合には、その患者さんの血液で汚染された器具はできるだけ再使用しないようにするとか、そのようなことで細かく指示をしておるわけでございます。
○貝沼委員 それでは、エイズの質問は以上にいたしまして、次にインフルエンザ予防接種の問題で若干お尋ねをさせていただきたいと思います。今年もまた全国の幼稚園とかあるいは保育所や小中学校でインフルエンザの接種が行われることとなったわけでございます。例えばインフルエンザの予防接種については、予防接種実施規則によりますと、「十月から十二月の間に実施することが望ましい」こうなっておりますから、恐らくこれからやることでありましょう。ところが毎年約一千五百万人ぐらいの人がやるのだそうでありますが、またインフルエンザにかかる人は多いときで百万人以上と言われております。そこで、あれだけ一生懸命学校あるいは幼稚園その他でインフルエンザの予防接種をやるわけですけれども、どうして学級閉鎖になるとか学校閉鎖になるとかということで大々的にインフルエンザにかかる人が多いのか、私はその辺でちょっと疑問を持つものでございます。
 それから、よく報道されますように、副作用という問題も随分出ておるようでございます。後にまたその実態などについて当局で調査した分についてお伺いしたいと思いますけれども、安全性の問題から副作用という話が大きくクローズアップされておる。そしてまた、先ほどちょっと学級閉鎖とかという話で申し上げましたように、インフルエンザワクチンの予防接種というものが本当に効果というものはどうなんだろうかということ、それからなぜ小学校、中学校、幼椎園のこういう集団予防接種の必要があるのか、社会防衛という言葉だけで、今の時点でそういうことが言える時代なのかどうかというような疑問が大変出ております。また、問診のあり方でも、相手は子供ですから、子供──私も子供が小さいときに問診の紙に書いたことがありますけれども、子供は何が書いてあるか全然わからない。それをただ先生がこれを持っていらっしゃいと言うから持っていくだけであって、その問診の信憑性あるいはその問診が果たして親が書いたものか書いたものでないのか、これすらもはっきりわからないというような問題で、医師やあるいは父母の間から疑問が投げかけられております。そして例えばいろいろな市民運動の団体がございまして、日本消費者連盟であるとかあるいは練馬インフルエンザ予防接種を考える会とかいろいろな団体がございます。これは明らかに社会問題というふうに受け取っていいだろうと私は思います。
 さらに、ではいろいろな著書あるいは論文、そういったものでこの二、三年でどれぐらいのものが発表されているかと調べてみましたら、やはり十七から二十ぐらいのいろいろな報告なり小論文が発表になっておる。しかし、こういう社会的問題がただそのまま放置されることはないのでありましょうけれども、やはりきちっとするところはきちっとしなければならぬと考えましたので、あえて本日は政治的な問題としてこれを提起しておきたい、こう思って実はこれを議論の的にさせていただいたわけでございます。この実態につきまして厚生省ではどのようにとらまえておられるのか、御説明を願えれば幸いと思います。
○仲村政府委員 インフルエンザの予防接種についてのお尋ねでございますが、幾つか問題点がございましたので、一括してお答えさせていただきたいと思います。
 御承知のように、インフルエンザというのは空気によって伝播する病気でございまして、予防接種以外に有効な方法がないということで、WHOでもその分類に入れておる疾患でございます。私ども、昭和三十二年に御承知のアジア風邪というのが大流行いたしまして、その後から行政指導によりまして、インフルエンザのワクチンについての勧奨によります接種を行ったわけでございますが、五十一年に予防接種法の改正がございまして、その翌年、五十二年から予防接種法に基づく接種として実施するようになったわけでございます。その対象は、ただいまおっしゃいましたように、保育所、幼稚園、小学校、中学校あるいは高等学校の学童生徒ということでございます。これは先ほど申し上げましたように、インフルエンザが予防接種以外に有効な予防手段がないということで、私ども専門の委員会とも御相談した上でそういう選択をしたわけでございます。
 そこで、先ほども御質問の中にもございましたように、現在約千五百万人の学童生徒等に予防接種が実施されておりまして、これは該当年齢の六、七割というふうに計算されております。その効果がどの程度かということのお尋ねもございましたけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたとおり、現在のところ、ワクチンの接種が唯一有効な方法として認められておるということでございますので、ワクチンの接種をいたしたい。特にインフルエンザの流行というのが集団生活をいたします保育園、学校等が場となりまして、その流行が大きく増幅されるという過去の経緯にかんがみまして、対象を先ほど申し上げたようなことにしておるわけでございまして、その点につきましては、流行の伝播を、増幅を抑えるということで、疾病対策の実効を上げたいと考えておるわけでございますが、御承知のように、インフルエンザのワクチンをやっても学級閉鎖が起こるではないかというようなお話もございました。これはインフルエンザのワクチンの中身の問題にもなろうかと思いますが、ワクチンに使われておりますウイルスの株と、実際に流行しております流行株とが必ずしも一致しないときもございますし、それからワクチンそのものが抗原性の非常に変異のしやすいということでございまして、必ずしも疾病の発生を一〇〇%予防するということではございませんけれども、集団免疫という立場から考えますと、多くの調査結果からインフルエンザのワクチンがインフルエンザ罹患の危険性を減ずる効果があるということで御報告があるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、インフルエンザのワクチンを接種することが現在までのところインフルエンザ対策として取り上げる唯一のものであると考えておるわけでございます。
 もちろん、先ほど御指摘ございましたように、いわゆる副反応というのがどうしてもあるわけでございまして、現場のお医者さん等の関係者に過失がない場合でも、極めてまれではございますけれども、不可避的に重篤な副反応が出るという場合もあるわけでございます。したがって、一方におきまして、ワクチンを改良していかなければならないという必要性があるわけでございますが、現在のところ、私どもといたしましては、予防接種行政をこのような形で進めてまいりたいと考えております。
 先ほどお尋ねの副反応の発生の状況でございますが、四十七年前は三百万人に一人という確率でございましたが、それ以降中身が改良されたりいたしまして、現在のところ、千六百万人に一人というふうな発生状況でございます。
    〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
○貝沼委員 現在、厚生省はやっているわけですから、やっていることが悪いなんと言うはずがないので、そういうふうに答弁しなければならないのでしょう。
 そこで、その答弁は私それで聞きますが、先ほどその年の流行するインフルエンザの株とワクチンの株と合わないときがあるので効き目が余りよくないときがあるんだ、こういうふうなお話がございましたね。それがたまにあるなら、たまにはそれはあることでしょうと私は思うのですけれども、例えばこの二十年ぐらいの間で、あるいは十年でもいいですよ、この間で予定したワクチンがその年、その年に流行したインフルエンザと合致したというのはどれぐらいあるのですか。
○仲村政府委員 ただいま手元にございます流行株とワクチンに使われております株の一致率でございますが、五十一年から十年間について申し上げさせていただきますと、五十二年、五十三年、五十四年、五十五年、五十六年、五十八年、六十年ぐらいまでがかなり合っておりますが、実際のところ、この十年間のうち三年は違う株が流行したというデータを持っております。
○貝沼委員 それが本当なら、あんなに学級閉鎖になるはずないのです。合っているのに学級閉鎖しなきゃならないのなら、効果がなかったということですよ。学級閉鎖になったのは、合わない場合もあると言うから、ではしょっちゅう合わないのかなと思って聞いてみたら、いや、大分合っているのですと言うでしょう。そうしたら、ワクチンと流行する株が合っておるのに、それで学級閉鎖が起きるということは、効果がなかったということをあなたはあなた自体の答弁で言ったことになりはしませんか、どうですか。
○仲村政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、ワクチンをやった方が発病しない率というのがございまして、これはワクチンをやったにかかわらず発病する人もいるわけでございます、インフルエンザワクチンというのは。その率が計算がいろいろあるわけでございますが、受けた人と受けない人の罹患率の改善の度合いで調べる効果率という数字がございますが、これが四割ないし八割程度というふうに私ども理解しております。したがって、そういうワクチンの効果、本来のファクターが一つと、それからある集団についてどの程度ワクチンを受けた人がいるかという集団の免疫率との関係と二つあるのではないかと考えますけれども、御指摘のように、実際に合った株をやっておりましても、患者が流行するというインフルエンザワクチンの問題はあるかと私は考えております。
○貝沼委員 どんな数字が出てこようと、事実学校閉鎖になるんですよ。ところが予防注射を受けているのは子供ですよ。一番確実に予防注射を受けている人ですよ。その学校が閉鎖になるのですよ。大人じゃないですよ。大人にかかるのが大変だから子供にやるというのでしょう。実際、インフルエンザにかかった子供というのは死亡率はうんと低いでしょう。インフルエンザでもって死亡率が高いのはほとんど六十五歳以上でしょう。だから、本当ならそういう高齢の方々とか体が弱くてほかの病気が併発しやすいとか、そういう人をむしろ対象にしてこういうワクチンを接種すべきですね。アメリカなんかそうなっているようですね。日本の場合は、子供が集まるから、そこで感染が起こるだろうから、各家庭に持っていくだろうからというので、どうも学校でやる。いわゆる社会防衛になっているのでしょうけれども、しかし、この社会の中で今一番動かないのは子供ですよ。自分の学区以外には動かないし、学区以外にうろうろ出ておったら先生から補導されるんですから、そう簡単には動きません。今一番動いているのは大人なんです。しかも、子供はじゃれ合ったりなんかしてしょっちゅうくっつくから感染率が高い、罹患率が高いと言いますが、そうじゃないのです。大人の方が電車に乗ってよほどくっついているのです。ですから、根本的に、子供を対象にしてインフルエンザを防ぐという発想、この社会防衛の発想、しかもそれがワクチンを打った打たないにかかわらず、全然かからない子供というのが大多数おるわけでしょう。統計の上からそうでしょう。そうして今あなたがおっしゃったほんの六%かそこらの方々のことを考えてやるんでしょうけれども、そのために事故が起こっているわけでしょう。死亡事故だとかあるいは神経系統がやられるとかいろいろなことが起こっている。それはパーセントでは少ないと言うかもしれませんけれども、しかし、パーセントがどうであろうと、我が家の子供が歯を食いしばって、歯が折れるほど苦しんで死んでいったという事実は、その親にとっては一〇〇%なんですよ。なぜそういう危険を冒してまでもあえてそういう方法に固執しなければならないのか。私は、今ここに疑問があるし、大体、社会防衛という立場に立ってやったときと、現在の交通網の発達その他の状況から考えて時代は変わっておる、これは考え直すときではないかというふうに考えますので、きょうは質問をさせていただいておるわけでございますが、あなたがおっしゃるように、このワクチン株と流行株が本当にしょっちゅう一致しておるならそんなことになるはずがないのです。あなたがそう見えないとすれば、それはデータのとり方に問題がある。実態と合わない。これが一つ。
 それからもう一つは、ことしこれから十月、十一月、一月、二月とインフルエンザがはやってくるかもしれませんが、それを予期してワクチンの製造にかかるわけですね。製造にかかるのでしょう。これは大体いつごろから製造されますか。
○仲村政府委員 インフルエンザのワクチン株をいつごろからというお尋ねでございますが、私どもインフルエンザの流行予測事業というのをやっておりまして、これは国立予防衛生研究所、それから各県にございます地方の衛生研究所、そこでネットワークをつくりまして、インフルエンザの患者からウイルスを分離いたしまして、どのような株が現在流行しておるかというのを毎年やっておるわけでございます。
 それから、WHO、世界保健機構では、毎年二月に専門家会議を開きまして、世界各国からの情報を分析いたしまして、来るべきワクチン製造株についての勧告を行っておるわけでございますが、これらの情報を私どもとしては総合判断いたしまして、国立予防衛生研究所にございます日本インフルエンザセンターというところが中心になりまして、おおむね毎年三月に次期の流行株を予測いたしまして、これに基づきワクチン製造株を決定いたしておるところでございます。
○貝沼委員 ですから、いいですか、御答弁によりますと、三月から製造に入る、そのワクチンが使われるのはその年の十月、十一月、そのときに流行するものは予測できるのか。それは合うのがむしろ不思議なんです。合わないのが当たり前です。しかも、それは今まであるインフルエンザについてでしょう。不連続で変異した場合にはワクチンは可能なんですか、どうですか。
○仲村政府委員 そのワクチンの製造技術については、私は細部を承知いたしませんので、今の御質問に直接お答えになるかどうかわかりませんが、いろいろな情報を総合して、できるだけ合うようにということで日本でもやっておりますけれども、御指摘のとおり合わない年もあったわけでございます。
○貝沼委員 ですから、今のあなたの答弁は抜けておりますけれども、合わない年があったのじゃない、合わない方が多いのです。
 それで、今の答弁で抜けておるのは、予測できるのか、不連続、変異のときにワクチンというのは用意できるのか、理論的にできるのかということです。
○仲村政府委員 ワクチンをつくる際には、ワクチンに使用いたします幾つかの株を混合して使う場合が一つございます。それから不連続で変異いたしました場合には、先ほど申し上げましたアジア風邪みたいなときだろうと思いますが、そのときは共通抗原は有効でございますけれども、その株に特有の抗原についてのワクチンを予測するのは恐らく無理ではないかと考えます。
○貝沼委員 無理なんです。それはできないのです。私はできないから聞いておるのです。あなたができないとおっしゃるだろうと思うから聞いておるのです。私は疑問があるから事実を確かめて言っておるのです。ワクチン一つにしてもそういう疑問がある。まだまだたくさんありますよ。だけれども、時間がだんだんたってきてしまったから詳しくできません。
 それからもう一つは、そういうワクチンの問題のほかに、例えば先ほどちょっと申しましたが、事故が起こっておる。副反応あるいはいろいろな事故が起こっておりますが、これの実情はどうなっておりますか。
○仲村政府委員 先ほど一部お答えいたしましたが、四十七年以降の数字で申し上げますと、千六百万人に一人という数字を把握しております。
○貝沼委員 そんな数字じゃなくて、何人の死亡があった、何人は神経系統でやられたという統計があるでしょう。私、持っていますよ、そちらからいただいたのを。そちらで発表してください。
○仲村政府委員 四十七年以降の数字で申し上げますと、後遺症を有する方及び死亡者を足して申し上げますと、十二名でございます。
○貝沼委員 それ、大丈夫ですか。もう一度答弁してください。──わかりました。もう結構です、そちらの方は。
 要するにあるのですよ、資料はそっちからいただいたのだから。僕は議事録に載せようと思ったからわざわざ聞いているのですけれども、そういうところもわかっていないようではだめですよ、実際行政をやる人が。実際自分たちがやっているのがどれだけ事故があったのかなかったのか、それがわからぬようで行政を進めるという法はありません。それはちょっと不謹慎です。それはちゃんとしておいていただきたい。
 それからもう一点は、こういう子供にワクチンを接種しておるところ、これは世界でどこの国がありますか。
○仲村政府委員 私ども把握している限りでは、スウェーデンで五歳未満あるいは五歳以上、十二歳以上、成人という区分でインフルエンザのワクチンをやっているという数字がございます。
 それから、韓国も一部そのようでございますが、日本は、先ほど申し上げましたように、予防接種法に基づいてやっておるというところが外国と違うようでございます。
○貝沼委員 あなた、スウェーデンと今おっしゃいましたが、これは義務としてやっているのですか。
○仲村政府委員 法律によって義務づけておるのは日本だけでありまして、スウェーデンにつきましては、行政機関による勧奨でやっております。そのほかの国もおおむね勧奨でございます。
○貝沼委員 何か質問をすると、諸外国の情勢がこうでありましてと言う。参考に必ず諸外国が出てくる。ところがこのことに関する限りは諸外国と全く違うことをやっておる。これは諸外国のやっておることは参考にならないという判断なのか、それとも日本がこういうふうにやっておることは非常に間違いがないという判断なのか、これはどうなんですか。外国のやっているのがおかしいのですか。
○仲村政府委員 このようなことをやるに至りましたにつきましては、先ほど申し上げましたような公衆衛生審議会等、公的にも審議会にお諮りしておるわけでございますが、今御議論がございましたようないろいろな意見もございますので、私どもといたしましては、昨年の末、公衆衛生審議会の伝染病予防部会の中にインフルエンザ小委員会を設置いたしまして、予防接種の実施方法等につきましての検討を行うということで進めておりますし、今年度は研究班も設けて、さらに必要な治験の整理等を行うようなことをやり始めておるところでございます。
○貝沼委員 ただいまそういうようなことを踏まえた上で厚生省が研究班をつくったという答弁でありますが、これは別の言葉で言うならば、今私が言っているようなことについて、やはりクエスチョンがあるという判断に立ったということですね。
○仲村政府委員 いろいろな御意見がございますし、予防接種につきましても、先ほどございましたように、流行の増幅の場を抑えるという集団免疫の論理と、その病気にかかって、例えば先ほど御指摘のようなお年寄りの場合には非常にハイリスクグループもございまして、その方たちの個別の超過死亡等を守るべきではないかというような御意見等いろいろございまして、そういう意味での再検討をするということでございます。
○貝沼委員 それでは、この点は一点伺っておきたいと思いますが、諸外国において日本のように、早い人は保育所からずっと毎年毎年注射を受けるわけですが、こんなに何十回も接種をされる国はあるのですか。
○仲村政府委員 先ほどお答えいたしましたように、予防接種法による義務づけをしておるのは日本だけでございます。
○貝沼委員 こういう接種というのは何十回重ねても害はないものですか。
○仲村政府委員 それは先ほど副反応のところでも申し上げましたように、接種を受ける個人の免疫状態でございますとかいろいろなことで作用があるようでございまして、何回インフルエンザワクチンを受けても害のない方もおられるわけでございます。
○貝沼委員 ある方とない方とおるということですけれども、ない方を中心にして、副反応のある人は仕方がない、こういうことですか。あなたのおっしゃるのはそういうことでしょう。
○仲村政府委員 先ほど申し上げましたように、予防接種法で、副反応というのは現場のお医者さん等いろいろ注意をしていただいても重篤な副反応が起きるのはやむを得ないということで法律は成り立っておるわけでございまして、それがゆえに予防接種の目的といたしましては、この場合、集団の免疫水準を一定に保つことによって流行を防止する、こういう組み立てになっておるわけでございますが、重篤な副反応を起こされた方については、救済制度を法律の中に設けているという組み立てになっているわけでございます。
○貝沼委員 死亡した人、現実におるのですよ。救済制度といったって、死亡した人をどうやって救済するのですか。何かできる方法があったら教えてください。
○仲村政府委員 死亡された方にはまことに申しわけないわけでございますが、死亡一時金を支給するという制度があるわけでございます。
○貝沼委員 あなた方はそういうふうに、死んでしまったのだからしようがない、じゃお金出しますわ、それが法律です、こう言うのでしょうけれども、そんなお金をもらおうと思って親は子供に接種させているのではないのです。親は、この子が本当に健康で大きくなっていくように、しかも社会のためになるようにと思って一生懸命やっているのでしょう。それが、朝ちょっと熱があるなと思って出ていった、そして帰ってきたら何となくおかしい、それで十時間ぐらいたったら今度はだんだん顔色が変わってくるというようなことで、大騒ぎをして、人工呼吸や何かやっているうちに、自分の歯が折れるほど歯を食いしばって亡くなっていった、そういう例はたくさん出ているでしょう。そのときに、その親を慰める方法は金なんかじゃありませんよ。やはり日本の制度を恨むでしょう。しかも子供はインフルエンザにかかったって死亡率は低い。子供がインフルエンザで亡くなるということじゃない。六十五歳以上の人がかかったら危ないから子供にインフルエンザの予防接種をやるということでしょう。私は、こういう非人道的なやり方は、今回の研究班がそういうことも含めて御検討なさることだろうと思いますので、特に期待したいと思うのですけれども、要するに、子供にやるということは考え直していただきたいと思う。しかも、幼稚園あるいは小学校にしたって、子供に問診をするというでしょう。あるいは問診票を渡してあるから、親が書いてきたのを持ってきて、それをお医者さんが見ているから心配ないというのだけれども、子供はもう医者が注射器を持っただけでもがくがくしているわけですから、そこへ、あなたは卵が嫌いですか、あなたはアレルギー反応がありますか、あなたは熱がありますかとか言っても、そんなことは答えられないですよ。それでも制度としては問診をやったことになっておる。ちゃんと保護者がついているなら話は違いますよ。保護者はいないのです。それで、きょうは文部省の方にも来ていただいていると思うから、時間があれば聞かなければならないと思ったのですけれども、学校はこれに協力しなければならぬ。あそこの学校は何%の児童が注射を終わっている、ここはそのパーセントが悪いと言われたら、先生は、早くお父さん、お母さんから問診票をもらっていらっしゃいというふうに、するかしないかわからないけれども、一生懸命督励をする。子供もお互いに友達から変なことで見られたくないし、学校というのは点数をつけられるところですから、変な感じを持ってはいけないと思って自分でこっそり書いていく人もいる。あるいはいろいろいいかげんなことを書いて、それを書く親そのものが医学に対してどれだけの知識があるか。私なんかないですからよくわからないですよ。そういう教育の現場を考えたら、すべて間違いのないように対応しろと言う方が無理ではないかと私は思う。学校には保健婦さんもいらっしゃるけれども、あれだけ多くの父兄の皆さんに、すべて完璧にやれ、一時間に百人もの人に接種しなさいと言われても、校医だって困ると思う。けれども、制度だからやらなければしようがない。そしていろいろな事故が起こっておるということは、大人の社会を守るために子供を防波堤にして犠牲にしている姿ではないかと思うので、これはどうしても再考していただかなければならないと私は思いますが、大臣、いかがですか。
○斎藤国務大臣 ただいま御答弁申し上げておりますように、インフルエンザの予防接種につきましては、予防接種法に基づく集団接種として現在行っておるわけでございますけれども、ただいま来のいろいろな御指摘、またお聞きをしておりますそういうことに対して検討を加えてまいらなければならないと考えております。同時に、そうかといって何もやらないで大流行になっても困るわけでございますので、その点を考えながら、先ほども申し上げましたように、公衆衛生審議会の中に専門家の方々においでをいただいて、いろいろ御研究、御検討いただき、それに基づき国民の皆様方に納得していただけるような方法をとってまいるようにいたしたいと考えております。
○貝沼委員 せっかく大臣に御答弁をいただきましたからぼつぼつ結論に入らなければなりませんが、とにかく子供を大人の防波堤にしてはいかぬ。したがって、これを義務ではなしに任意にするとか、任意というはっきりしたものでなくても、例えばもっと親たちの意見が通るようにしてもらわなければならぬと思います。自分の子供のことは親が知っているのに、親のいないところで子供がいろいろやって、ふざけているうちに二回注射をされたとかいろいろあるわけでしょう。そういうことのないようにするには、やはり一番よく知っている保護者の意思を最大限尊重する。義務で押しつけてはいけない。任意というのか、そうでないのか、それは検討していただかなければなりません。任意というと、金はだれが持つかという話が出てきますから、これは時間がありませんからやりませんが、とにかく子供を犠牲にするような仕組みは考え直していただきたい。これが一点。
 それから、なぜ学校でやらなければならないのか。昔は何でも学校でやったのですけれども、今学校でやる風潮はだんだんなくなってきているのです。保健所でもいいし、やる場所はいろいろある。学校というのは、子供が騒いで走り回って──大体子供は頭が大きくて体が軽いから走っていなければぶっ倒れてしまうわけです。そういうように、ごみだらけ、ほこりだらけのところが学校なのです。なぜそういうところでわざわざやらなければならないのか、そういうことも含めて、抜本的な見直しをやるというふうにお答えをいただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○斎藤国務大臣 ただいま来先生の御指摘がございましたその趣旨を十分頭に置いて検討をいたし、そして改善をいたしたいと思います。
○貝沼委員 それでは、また次の機会にこのインフルエンザの予防接種の問題は議論をしたいと思います。
 問題を変えまして、原爆被爆者の問題でお伺いをしたいと思います。原爆被爆者の問題は二つございます。
 その一つは、十月一日の報道によりますと、広島市にある放射線影響研究所疫学部の吉本研究員らの追跡調査でわかったことでございますが、広島、長崎に投下された原爆で高線量の放射線を母親の胎内で浴びた被爆者、つまり胎内被爆者、これは被爆後十ヵ月以内に生まれた人、現在四十歳から四十一歳になっているはずでございますが、全国で六千五百四人おるそうでございます。全被爆者の一・八%。この発がん率は、ほとんど放射線を受けていない人に比べて四倍以上も高いということが発表になっております。これを見て、まず大臣は、あるいは厚生省は、これに対してどう対処されようとなさいますか。
○仲村政府委員 お尋ねの学会発表でございますが、六十一年の十月に日本放射線影響学会というところで発表された論文でございます。それによりますと、ただいま御指摘のございました四・四倍というのは、粗累積がん発生率というようなことでございまして、胎内で被爆されましたけれども、放射線の非常に少なかったゼロのラドグループと、五〇以上の被曝をされておりますラドグルーブを、四十年間の累積発生率を粗率で見ますと、四・四倍になるという御発表のようでございます。
○貝沼委員 ですから、四・四倍になるから、どういうふうに取り組みますかということを聞いておる。
○仲村政府委員 そこで、私どももう少しサマリーを拝見いたしますと、学術論文でございまして、胎児期における放射線被曝が成人のがんを増加させるとの明白な結論に至るには、まだ追跡調査を続ける必要があるということで御記載になっておりますので、この実験データにつきましては、私どもの関係しております研究所でございますので、さらに引き続き研究を進めていただきたいと考えております。
○貝沼委員 その引き続き研究はだめなんです。そんなことじゃだめ。引き続いて研究をやらなければならぬのはわかるけれども、悠長ではいけないという意味で言っています。と申しますのは、以前私は、トロトラストの問題を国会で取り上げたことがございます。私、出が原子力畑のものですから、どうしても放射線の話が多くなってくるのですが、とにかくトロトラスト、これは昔、昔と言っても戦時中でございますが、日本軍が負傷された方に対して造影剤として打ったわけでございますね。ただ、それが放射性物質でありますから、現実に現在肝臓等に残っておる。そして肝臓がんが今になって出ておるわけですね、戦後四十年。だれが出ておるか出てないかということは、名前がわかることだけでも本人が非常に問題になりますので、大体伏せてあるわけですけれども、しかし、それらが例えば原子力発電による放射線の影響とか、あるいはいろんな放射線の問題で今後の人間社会において大きく影響する部分のデータでもあるし、どうしても解決しておかなくてはならぬ部分でもあるので、これは厚生省でも相当力を入れて研究したはずです。あとそこから言いませんけれども、とにかくそういうようなことがありますので、ただ悠長にやっていたんじゃだめです。しかも、この方々は今四十歳、そして研究がわかるまでだんだん年とっていくし、またこういうような方々を救済するにも今やっておかなければできない。それで私は、これを救済する、まあ救済を完全にできるかできないかは別といたしまして、とにかく不安を除いてやらなければならないと思うのですね。生活における不安。
 先般も事実、私知っておりますけれども、女性の方で胎内で被爆した人が、今度は自分の子供に出るのではないかというので、もう大変な恐怖を持っています。したがって、こういうような方々に対しての健診、こういうものがもう本当にきめ細かくいつでもしてあげます、できますよというふうになってなければならぬと私は思うんですね。現在この被爆者健康診断というものの一般検査の検査項目の中にがん検診というものは入っておりますか。
○仲村政府委員 被爆者の健康診断というのは、一般検査と精密検査に分かれておりまして、一般検査は理学的所見を検査するものと、その他血液検査、肝機能検査、それから精密検査につきましては、一般検査の結果、さらに必要な検査を必要とする者に行われるということで仕組みが成っておるわけでございまして、がん検診というものがどういう形の臓器がんを対象にするかということで答えは必ずしも一致しないかもしれませんが、被爆者の健康診断については、そういう組み立てでなされておるわけでございます。
○貝沼委員 そうでしょう。ないんですよ。今までこれが国会で何回も議論になってきたんです。入れてくれ、入れてくれと言っているんだけれども入らない。金の出どころが違うからです。いいですか。お金で物を判断してはいけません、人を判断してはいけませんよ、今胎内被爆の問題がここまではっきり出てきたんですから。ただ、その検査項目を入れるだけで、その予算を組むといったって大した金じゃありませんよ、数少ないんですから。したがって、私はぜひとも今回はこの検査項目の中にがん検診という項目を入れていただきたい、こう要望したいわけでありますが、いかがでしょうか。これは事務当局なんですけれども、政治的判断もあるでしょうから、大臣からもお伺いしたいと思います。
○仲村政府委員 がん検診と申しましても、対象となるがんの種類によりまして御承知のように検査方法が違うわけでございまして、例えば白血病のような場合には、白血球の形で見るとか、いろいろの形があるわけでございます。したがいまして、全部のがんについての検診というのはほかの場でも行われておらないわけでございますので、この場合についても、私としては非常に難しいのではないかと考えます。
○貝沼委員 全部のがんとかなんとか言っているけれども、要するに、そういう被爆した人が一番かかる率が高いがんというのは大体わかっているでしょう、今まで四十年間研究してきたんですから。しかも、その専門家があるいは現場の方々ががん検診を入れてやってくれと、こう頼んでおる。ところが、今のあなたの答弁と違って、今まではそうじゃないんですよ。いや、がん検診は老人健診のときにできることですから、そちらの方でやっていただけばいいのでありまして、ここに入れる必要はないと言ってきたんです。だが、私はそんなことを言っているときじゃないということを今言っているんですから、その辺ちゃんとわきまえてひとつ答弁していただかなくてはいけません。こういう新しい事実が出てきたんですから、じゃ、どういうがんなのかわからぬけれども、とにかくがん検診をちゃんと一般検査の中に研究をして入れたいというふうにひとつ示していただかないと、これは納得いきませんね。
○仲村政府委員 例えば白血病の場合ですと、御承知かもしれませんが、先ほど申し上げましたように、白血病の異常を見つけるという早期診断法はあろうかと思いますが、これは私ども、先ほど申し上げます原爆被爆者の健康診査の中でもできるということでお答えになろうかと思いますし、甲状腺がんについては、触診その他からさらに精密検査へ入っていただくというような方法もあろうかと思います。それから胃がん、子宮がんにつきましては、今も御指摘ございましたけれども、老人保健法に基づく保健事業でやっておりますので、私どもとしてはそちらを御活用いただきたい。さらに来年度は、これはまだ予算要求でございますけれども、肺がん、乳がんあるいは子宮体がんについても、その老人保健法の枠ではございますけれども、健診の項目をふやしていきたい、こういうことで努力をしておるところでございます。
○貝沼委員 ですから、今まではそういうふうにやっておりますけれども、今度は四十歳でしょう。当時胎内に入っておって、そして十ヵ月で生まれた人ですから、今四十歳ですよ。四十から四十一歳ですよ。何で老人のところへわざわざ行かなければならぬのですか。これだけ原爆被爆者のための法律をつくってまで一生懸命やっているのですから、項目ぐらい入れてもいいんじゃありませんか。入れてはいけないということはどういう意味ですか。どういうことで入れてはいけないのですか。
○仲村政府委員 老人保健法に基づきます老人健康診査は四十歳以上が対象になりますので、そちらでお受けいただきたいということで申し上げたわけでございます。
○貝沼委員 ですから、それはわかっておると言うのです。だけれども、何でそっちへ行かなければならないのか、原爆被爆者のためのこの法律の中でなぜそういう人たちの健診というものをしてはいけないのかということを聞いておるのです。
○仲村政府委員 原爆被爆者の健康診査につきましては、先ほど申し上げましたようなことで、年二回一般検査をいたしまして、その後精密検査をするというふうな組み立てになっておりますので、私どもとしてはそちらで対応をしたいと考えておるわけでございます。さらに、この場合には必要なエックス線検査も行われるということでございますけれども、健康診査という場では、先ほどもちょっとお話が出ておりましたように、地域ではいろいろな形で健康をチェックする機会が提供されておりますので、老人健診もぜひ御活用願いたい、こういうことでお答えしてきたわけでございます。
○貝沼委員 もうあなたは現在の制度ばかり説明しているが、私はそんなことを聞いているわけじゃありません。これではだめだということを言っている。これは政治的に手を加えて少し手直ししなければなりませんということを言っているわけでありますから、大臣、責任ある答弁をお願いいたします。
○斎藤国務大臣 今、保健医療局長からるるいろいろと答弁をいたしたところでありまして、今、先生の御意見も聞かしていただいておりまして、これまでの被爆者に対する健康診査、また精密検査、そして老人保健医療制度におけるがん検診等で十分賄えているのではないかということを局長が申しておるわけでございますが、それではどうしてもだめなのかどうかという点について、また被爆者に対する健康診断としてこれを取り入れなければならないのかどうかということについて、しばらく時間をかしていただいて検討をさしていただきたいと思います。
○貝沼委員 大臣から前向きの検討の御答弁をいただきましたので、ぜひひとつ実現できるように要望をしたいと思います。
 もう一点、この原爆被爆者の問題で、実は在韓原爆被爆者の渡日治療という問題がございまして、これはもう有名な問題でありますが、大韓民国保健社会部と日本の厚生省との間で締結されておりました在韓原爆被爆者渡日治療実施に関する合意書、これがいよいよ十一月末をもって期限切れとなるわけでございます。したがって、今まで日本に来て治療を受けておられた方々が果たして今後どうなるのかというので大分問題になっております。
 ところがいろいろ説明を聞きましたところ、外相会議その他で、日本も、人道的立場から韓国に対して、今後もそれを続けてまいりたい、ぜひ続けようではないかという話はいろいろしておるようでございますが、報道によりますと、韓国側からはもう打ち切りにしたいというふうなお話も伝わっておるというわけでございますが、これについて我が国としてはどういうふうに対処されようとしておりますか。
○仲村政府委員 御指摘のとおり、渡日治療につきます合意書の期限はことしの十一月末でございます。そこで、たびたびこの委員会でも御指摘がございましたので、今後はどうすべきかということについて、韓国政府の意向を外交ルートを通じて打診しておったわけでございますが、延長を行わないというふうな意向が伝わってきたのは本年六月でございます。
 これを受けまして、厚生省では七月に担当課長を韓国に派遣いたしまして、先ほどお話の出ました保健社会部の医政局長にその真意をただしたところ、比較的重症であると考えられる患者は既に渡日して治療を受けた、それから韓国国内の治療条件が整い、残りの患者について国内において治療を行う計画であるというふうなことで御返事があったわけでございます。その後、御質問の中にもございましたように、厚生大臣に在日韓国大使が表敬訪問をなされた際に、私どもの方から渡日治療について引き続き行いたい旨申し入れてございますし、九月には日韓外相会談の場におきまして、外務大臣から韓国政府に対しまして継承したいという旨の申し入れを行ったところでございます。
○貝沼委員 今までの経過はそういうことでございますが、あと二ヶ月で期限が切れるわけでございます。したがって、今まではこうでしただけでは話は進みませんので、これから何をするのか、これをお尋ねしたいわけでありますが、いかがですか。
○仲村政府委員 私どもといたしましては、当初からこの合意書の延長は可能であれば延長したいという考えで折衝を続けてきたわけでございまして、十一月末まで引き続き韓国政府と協議をしていく考えでございます。
○貝沼委員 どうですか、もう時間的に迫っておりますから、ただ何とかしたい何とかしたい、続けたい続けたいと思っているだけでは、これは伝わらない話ですから、やはり会っていろいろと話をするとか、具体的な交渉をしなければいけないでしょう。日本は人道的立場ということで何とかできることはやりたいという気持ちなんですから、そこで具体的にどういう行動を起こされようと考えておりますか。
○仲村政府委員 先ほど申し上げましたような経過でございまして、韓国へ意向を打診したままで終わっておりますので、私どもといたしましては、外交ルートを通じまして、その返事をお聞きするという手段をとりたいと考えております。
○貝沼委員 それで、外交ルートを通じてということでありますが、窓口はやはり外務省になると思いますが、外務省の方、来ていらっしゃいますか。これからどういう方向でどういうことをやろうと考えておられるか説明願います。
○渋谷説明員 韓国側の説明につきましては、私どもも必ずしも全面的には納得しかねる点もございますので、今後引き続きやっていくつもりでおります。既に外交ルートを通じまして訓令を発しております。これは韓国側の態度の再確認と同時に、近々、恐らく十月の下旬になると思いますけれども、交渉、折衝をやる準備を進めるべく向こう側と話し合いをすることになっております。
○貝沼委員 そうすると、外務省としては十月下旬に話し合いをすることになっておる、こういうふうにはっきり今おっしゃいましたから、具体的にひとつ日本の誠意というものをよく御説明いただきたい、私はこう思っておるわけであります。
 ただ、誠意だけではやはり足りませんから、具体的に日本でできること、やれること、例えば在米被爆者に対する専門医の派遣であったとか、あるいは医療機器の問題もあるかもしれません、あるいは日本におけるノーハウの問題もあるかもしれませんけれども、いろいろな形でこれはやれるようなものがあればやりたいというふうな方向が正しいのではないかと私は考えておりますが、その交渉に当たって外務省はどのようにお考えですか。
○渋谷説明員 仮に韓国側が自分の力で治療をやりたいという決定を下した場合に、不足分につきましては、韓国側も日本に支援を求めたいということを言ってきております。その際、日本が何ができるかという点でございますけれども、今、委員御指摘の巡回医師団あるいは専門家の派遣あるいは関連機材の供与といった点は、従来の政策の枠内でも直ちに行い得るものと思います。
○貝沼委員 ぜひひとつ成功するようにお祈りをいたします。
 では、話題を変えまして、時間が余りありませんので、手話の通訳制度の問題でお尋ねしたいと思います。
 今日、我が国の聴覚障害者はおおよそ四十万人と見込まれておるそうであります。この方々には聴覚障害とそれがもたらす言語障害と相まって社会的不利の問題がたくさんあることは私が言うまでもありません。
 それで、そういうようなことから何と言ってもまずコミュニケーションの手段の確保であるということから、全日本聾唖連盟を中心として、コミュニケーションの保障は手話通訳制度を実現することだということでいろいろ働きかけがございました。そうして五十七年度予算で手話通訳制度調査検討事業というものを計上いたしまして、手話通訳制度調査検討委員会が開かれ、鋭意検討を重ねておるところでございます。こういう委員会から最近中間報告が提出されまして、この通訳制度はつくった方がいい、こういうふうな方向のものが出ておりますが、しかし、それならばどういう資格でだれがどういう認定をし、あるいはどんなことをやるかというような具体的な問題については、この次の中間というふうなことになっておるようでありますが、その辺の事情について簡単に御説明願いたい。
○小林(功)政府委員 ただいま先生からお話がありましたように、手話通訳制度につきましては、昭和五十七年度から五十九年度まで三カ年にわたりまして財団法人全日本聾唖連盟に調査検討を委託しておりまして、昨年の五月にその調査検討報告書が提出されております。この報告書を踏まえまして、昭和六十一年度は手話通訳認定基準などの策定、検討を同じく全日本聾唖連盟に委託をしまして、具体的な方策と実施上の問題点につきまして引き続き検討をしているところでございます。したがいまして、この具体的な方策、実施上の問題点、これが詰まりました段階で手話通訳制度の創設について検討をいたしたい、このように考えております。
○貝沼委員 今、創設について検討いたしたい、その一つの条件として次の報告書、こういうふうになっておりますが、その報告書は急いで結論を出すのでしょうけれども、今一生懸命やっているそうですから、できることならば、当局としても急いで出ることを望んでおるのでしょうねというのが一つ。望んでおるとすれば、それは例えば来年の七月、少なくとも七月ごろまでは何とか出してもらいたいなという希望というものはないのでしょうか。
○小林(功)政府委員 せっかくの検討でございますから、できるだけ早く結論を出していただきたいという気持ちは持っております。持っておりますが、今の段階でいろいろ各関係方面の話を聞いておりますと、あるいは専門家の意見を聞いてみますと、六十一、六十二、二年ぐらいは必要であろう、こういう感じでございます。
○貝沼委員 二年かかってもあるいは二年半かかっても、先ほど創設という言葉がちょっと出ましたので、私は、それをつくる方向で一生懸命皆さん御努力願っておる、こう理解しておりますけれども、それでよろしいですね。
○小林(功)政府委員 何分にもまだ具体的な方策と実施上の問題点が出そろっておりませんので、ここではっきり前向きというのはなかなか難しかろうと思いますが、ただ、手話通訳制度の必要性は十分わかっているつもりでございます。
○貝沼委員 ぜひ早急にひとつつくっていただきたいと思います。
 次の問題は、同じ手話の話でございますが、これは政見放送に関係した問題でございます。今回の衆参同日選挙のときに、たまたまこの政見放送で、聴覚障害者が立候補されたこともありまして、いろいろと問題になったことは御存じのとおりでございます。ただ、この場合二つの立場がございまして、一つは、候補者になった方がテレビでたとえ手話でやっても見る人がわからないという場合が多い。それから、ましてNHKはそのままラジオになりますから、何にも聞こえてこないということです。これは聴覚障害者が候補者になった場合。今度は逆に障害者の方がテレビを見る場合、この場合に幾らしゃべっても、候補者がすばらしい話をしても、これは全くわからない。そこで、両方において手話というような問題、あるいはいろいろなコミュニケーションにおいて方法もあるかもしらぬ、字幕とかいろいろあるかもしらぬけれども、そういうことで何とかひとつ参政権を保障してもらえないかというのがこの主張でございました。
 それに対しまして、いろいろ議論があることは承知しておりますけれども、今から六ヵ月前に、国会においてこの議論があったときに、NHKの方からこういう答弁が来ております。「前にお約束しましたように、大体六ヵ月ぐらいかかった後、その検討結果を御報告したいというふうに思っております。」こうなっておりますので、ちょうど六ヵ月でありますから、NHKの方ではどういう結果になったのか、お教え願いたいと思います。
○高橋参考人 先ごろの国会でNHK側としては調査をしておるということで御報告をしておるわけでございますが、ことしに入りまして、福島県と名古屋と東京の三ヵ所、それに京都を加えまして四ヵ所で、どういう格好の手話が使われておるか、あるいは特定の品物なり国の名前についてどんな方法で表現されておるかというようなことにつきまして、日常生活に関係する易しい言葉あるいはテレビなどでよく出る国の名前、こういったもの約七十語を全日本聾唖連盟の御協力を得まして選択いたしまして調査いたしました。その結果だけで、こういう結果だということを申し上げるわけにいきませんので、引き続き今年度九州と北海道でさらに調査を進めるという前提はございますが、この四ヵ所の調査の結果の傾向といたしましては、手話に地域差は余り見られないということが一つ言えると思います。
 それから、ただ、それとは別に、一つのことにつきまして一つの地域で同義語が多い。例えば三つぐらいの表現の仕方で一つのことが表現されておることがあるということが言えると思います。この点につきましては、私ども放送事業者としましては、できるだけ早く統一された全国的な標準語が欲しいなという感じを抱いておるところでございます。
 それから三点目といたしましては、日常的な会話を中心に手話が使われている部分がやや多い。今の範疇ではその域を出ていないのではないかという印象を強めております。したがいまして、これが政治の話とか経済の話とか外交の話になりますと、その理解の度合いにやや問題があるかなという印象を調査の結果としては受けとめておるというのが現状でございます。
○貝沼委員 参考人の方には大変ありがとうございました。前向きに御検討いただきまして、本当にありがとうございます。
 実はこれは選挙でありますから、NHKが技術的にいろいろなことができたとしても、選挙法でくくられておっては、これは手話ができる人が何ぼわきにおっても、出るわけにいかないわけですから、しょせんは自治省の問題になってくるわけであります。したがいまして、自治省としてはこういうことについてどう対処されようとしておりますか。
○岩崎説明員 お答えいたします。
 選挙は民主主義にかかわる大変重要な問題でございますので、政見放送の実施に当たりましても、基本的にはできるだけ多くの方に候補者の政見が伝わりますように、その便宜を図ることが必要であると考えているのでございます。こうした基本的な考え方に立ちまして、この政見放送への手話通訳の導入の問題につきましても、これまでNHK等の放送事業者等と協議を重ねながらその検討を進めてきたところでございます。
 ただいまの段階におきましては、政見放送の性格上いろいろ検討を要すべき技術上、制作上の問題がございますので、こうした問題を中心にいたしまして、現在放送事業者等と協議を進めているところでございまして、また聾唖者の団体でございます全日本聾唖連盟の方々の御意見等も拝聴いたしているところでございます。今後とも鋭意検討を進めてまいりたいと思っておるところでございます。
○貝沼委員 あと二分ばかりありますので、最後にお願いしておきたいと思います。
 自治省が中心になると思いますが、ただいまのお話で、ただ、自治省に聞けば、NHKができるかどうかわからない、NHKに聞けば、いや、自治省は法律がないからできないのだ、厚生省に行くと、選挙は我々じゃないのだ、こういうふうにばらばらです。ところが、手話の通訳制度の場合は、先ほど申し上げましたように、手話通訳制度調査検討委員会というようなもので検討して、着々と進んできておるわけでありますから、私は、できることならば、どこの省が中心になるか、選挙ですから自治省が中心になるのかもしれませんが、とにかくこういうような検討委員会というようなものをおつくりになって、そして具体的に御相談されることも一つの方法ではないかと考えるわけでありますが、この点についてお答えをいただいて、終わりたいと思います。
○岩崎説明員 ただいまお答え申し上げましたように、技術上、制作上の問題等いろいろ検討すべき問題が確かにあるわけでございます。したがいまして、さらにそうした点につきまして、専門的な検討を加える必要もあろうかと思っております。したがいまして、御提言の趣旨も十分参考にさせていただきまして、学識経験者の研究会を設置すること、こういった点につきましても、今後十分に検討させていただきたい、こういうように思っておるわけでございます。
○貝沼委員 どうもありがとうございました。
○堀内委員長 田中慶秋君。
○田中(慶)委員 私は、民社党・民主連合の立場から、厚生大臣及び関係の皆さん方に厚生行政全般にわたって御質問を申し上げたいと存じます。
 まず一点は、二十一世紀に向かって、今我が国は三つの大きな社会変化の波が押し寄せているということはよく言われているわけであります。その一つには、高齢化社会であり、さらに情報化、技術革新であり、国際化の時代を今迎えられているわけであります。こうした社会変化の波を乗り越えて、新たな福祉社会を築いていく必要があると思うが、厚生省としては、この社会変化に対応して、特に高齢化社会の到来に対応するため、これまで具体的にどんな施策を講じられてきたのか、また、今後これにどう対応していくのか、冒頭に所信の一端をお伺いしたいと思います。
○斎藤国務大臣 今、田中先生御指摘のように、二十一世紀へ向けて高齢化、情報化、そして技術革新、国際化という社会変化の中で、まさに日本が長寿社会をこれから迎えてまいるわけでございまして、言うならば、これまで経験し得なかった未知の世界へ向かってまいるわけでございます。そういう中で、豊かな、そして生きがいのある長寿社会を形成してまいるためには、その中心官庁であります厚生省の負うところは非常に大であるというふうに考えております。
 そこで、まず高齢化時代におきましても、国民生活の基礎的な部分となるべき社会保障制度、医療制度や年金制度等について揺るぎなきものに基盤固めをしてまいらなければならないということを考えております。このため、これまで健康保険制度の改正や、また老人保健制度の創設、退職者医療制度の創設などを続けてまいったわけであります。そしてまた年金制度の大改革も行ってまいりました。これに引き続き、今後ともその基盤づくりのために努力をいたしてまいりたいと考えております。
 第二番目には、それを受けてやはり生きがいのある老後が持てるような福祉サービスというものを充実拡大いたしてまいるということが重要であるというふうに考えております。これまでの在宅福祉というものの推進を中心といたしまして、また寝たきり老人や痴呆性老人の方々に対する対策というものも一層充実をいたしてまいる。また、先ほど未知の世界ということを申しましたけれども、これからの社会システムというものが、今お年寄りが一〇・五%程度、こう言っておりますが、三十五年ないし四十年たちますと、二三・五%、約二五%、四分の一の方々になる、そういう社会全体の中におけるお年寄りの占める割合が四分の一ということでありますので、これまでのような老人福祉という一つの部分をとらえて考えるということだけでなく、社会全体の中における福祉、その非常に大きな部分で老人福祉というものが中心であるということを考えますときに、そういった人生八十年時代における社会的なシステムというものがどうなっていくのか、またどうあらなければならないのかということ等についても、幾つかのプロジェクトをつくり、今から研究を始めていかなければならないというふうに考えます。
 そしてまた、第三点といたしましては、お話のございました情報化、技術革新ということに関連して、これまでの科学という分野を社会保障の面にも積極的に取り入れていけるようなことを考えていかなければならない。そのために長寿科学研究の推進を初めとする科学技術の開発と活用に重点的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
 第四点といたしましては、国際化ということをおっしゃられましたが、国際化への対応といたしまして、社会保障の各分野での国際交流の拡大ということを図るとともに、また保健医療の分野における国際協力というものも、日本の国際的地位の向上に伴って応分の協力を推進をいたしてまいる、こういうこともやっていかなければならないというふうに考えさしていただいております。
○田中(慶)委員 ありがとうございました。
 そこで、お伺いしたいのは、この高齢化社会に備えて、福祉政策は今大臣が述べられたように、着実に実行されてきていることも、これは評価したいと思います。しかし、これからの改革は、個別制度の構築であり、要は、制度と制度あるいはまた政策と政策との整合性あるいは体系化でなければいけないのではないかと思います。
 一つには、法律をつくってしまうと、法律は今まではどちらかというとひとり歩きをするというのが社会通念であるわけであります。したがって、例えば雇用と年金の問題、社会保障と住宅の問題、医療と保健サービスの問題、保健と福祉サービスの問題等々、各制度間及び政策間の統合化が今後改革の重要課題となろうと思います。こうした課題は、厚生省のみの問題だけではなく、各省庁間にわたる部門間の問題であるわけであります。例えば国と地方すべてにまたがる問題なのではないかと思います。難しい問題でありますけれども、ぜひともこれを進めていかなければ、すなわち、これからの時代の変化に対応できるような医療や厚生制度ではないのではないか。同時に、真の行政改革というものは、私はここにあるような気がいたしておるわけであります。厚生省としてこれらの問題についてどのようにお考えになっているのか、お伺いをしたいと思います。
○斎藤国務大臣 ただいま御指摘のとおりだと私も思います。「長寿社会対策大綱」というものをこの六月に政府として閣議決定をいたしましたのも、そのような観点からでございまして、御指摘がございましたように、雇用や所得保障システム、また健康と福祉のシステム、また学習と社会参加システム、そして住宅・生活環境システムなどというようないろいろな分野を総合的に連携さして施策を推進してまいらなければならないという角度から、この「長寿社会対策大綱」というものも政府全体として確立をいたしたわけでございます。
 また、厚生省といたしましても、厚生省内における政策の連携、総合性というものを進めるために、事務次官を長といたします高齢者対策企画推進本部というものを設置をいたしまして対応をいたしておるところでございます。また、各省との間におきましても、いろいろな分野で連携をしていかなければならないと考えておりますが、現在、例えば建設省との間において、福祉的なケア住宅のあり方というようなものについての検討を進めておるというようなことでありまして、今、先生が御指摘の点が、まさに真の意味の行革、また真の意味のよりよき福祉政策推進のために、十分心してやってまいらなければならない問題と考えております。
○田中(慶)委員 私は、きょうは一般質問でありますから、基本的にはこれからの行政の問題を中心として前向きに──個々の問題についてはできるだけ遠慮させていただきたいと思っておりますけれども、例えば各制度の整合性といいますか、その体系化の問題を一つとっても、厚生省の中にもやはり改革をしなければいけない問題が指摘できると思うのです。例えば年金制度と医療保険制度の不均衡の問題をとっても大きな問題であろうし、歴史的な経緯というものがあるにしても、今の行政の中でもっとスピード化が必要じゃないか。大臣、去年の九月とことし、この一年間で日本には大きな社会変化が出ていると思います。例えば円高の問題を一つとっても、産業構造一つとっても、この一年間で大きな社会変化が出ているわけです。ところが、行政の制度の一元化というものは、大変残念なことに、歴史的な経過がある、いろんなことを含めて遅々として進まないのが実態であります。
 こんなことを考えてまいりますと、ぜひ大臣に期待したいのは、この厚生省の中におけるそれぞれのしきたりや長い歴史的な背景はあるにしても、思い切った発想の転換をして、この制度の見直し、例えば今申し上げたような年金制度や医療保険制度の抜本的な見直しにぜひ着手していただきたいと思いますけれども、あなたの決意を述べていただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 今、御指摘のように、また先ほども私お答えを申し上げましたように、保健と医療、そして福祉、こういうものが有機的に連携をとりながら福祉社会の増進のために努めてまいらなければならないということはおっしゃるとおりでございます。医療保険制度につきましても、これまでいろいろと改革を重ねてまいったところでございますが、将来にわたって一元化へ向かってその検討を進めてまいり、たびたび申し上げておるかと思いますが、昭和六十五年の後、できるだけ早い時期に一元化の方向へ向かうように制度間の問題を検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
 また、年金制度につきましては、昨年大改革を行っていただき、本年四月一日から基礎年金というものが発足をいたしたわけでございますが、その上に乗るといいましょうか、報酬比例部分以上の分につきましても、これまでの歴史ある沿革というものの中でいろいろな給付や負担の面でばらつきもあるわけでございますが、こういうものを調整しながら七十年をめどにして一元化へ向かって努力をいたしてまいるというふうに考えておるところでございます。
○田中(慶)委員 ぜひ思い切った見直し、発想の転換を各制度の中でお願いを申し上げたいと思います。特に、日本に今必要なのは、先ほど申し上げたように、各省庁間あるいはまた国と地方の枠を超えた制度の統合化ということが、真の意味での福祉社会を支えることになる考え方だと私どもは考えているわけであります。
 民社党は、この福祉の問題は立党以来少なくとも二十七年間、当初まだ福祉という言葉が余り世に出ないとき以来、福祉国家ということを目指して、その発展に懸命に努力をしてまいりましたけれども、昨今の社会情勢から高度福祉社会づくりという新たな発想の転換を求めているところでありますし、さらに真の福祉は、心の豊かさを大切にする社会、厚生行政が大きなウエートを占めているという、こんなふうに考えているわけであります。
 特に、高齢者や障害者は、まず特別の施設に隔離、収容すべきだという今日までの習慣やしきたり、あるいはこれらの問題を考えて、その発想を転換し、高齢者の人たち、障害者の人たちも若い人や健常者と一緒に生活することがこれからの社会ではないか。すなわち、ノーマリゼーションを進めるべきだと考えております。
 これらの点からすれば、現時点では随分発想の転換は求められているにしても、まだまだ今の時点を考えてみますと、実態はほど遠いものがあるのではないかと思いますけれども、これらについてどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、日本の福祉というものが戦後から社会福祉政策の推進ということに向かって進んでまいります過程の中で、非常に貧困であったということから、まず施設を整備していかなければいけないというようなことで、どちらかといえば施設中心の整備がこれまで行われてまいったと考えております。ようやくある程度の施設整備水準を得てまいった今日であります。これもなお引き続きやってまいらなければなりませんが、同時に、ただいまおっしゃられますように、発想の転換の中で、でき得ればお年寄りや、また障害者の方が御家庭にあって、住みなれた地域にあって、また温かい社会の包みの中で元気に御生活をいただくということが最も望ましいわけでございまして、そういう観点から、ここ数年、在宅福祉の推進ということに力を入れてまいっておるところでございます。
 それぞれの政策等、ここ数年非常に大きく伸ばしておるつもりでございますが、これからもそういう観点に立って、地域にあり、家庭にあり、社会にあって福祉社会の中で謳歌していただける、こういうようなことへ向かって努力をいたしてまいりたいと考えております。
○田中(慶)委員 ぜひ努力をお願い申し上げたいと思いますし、特に私がこの九月十五日、敬老の日を中心として幾つかの施設を訪問させていただき、特別養護老人ホーム等についていろんな形で調査をさせていただいておりますが、入ってまいりますと、入って何日か何ヵ月かはそれぞれ知人や家庭の人も訪問したり見舞いに来たりいろいろなことをしますけれども、何年か過ぎてしまうと全然来なくなってしまう。預けっ放し。何か別社会に置かれているような形であるわけでありまして、それはモラルの問題かもわかりませんけれども、しかし、社会全体がそういう風潮にあるということは、やはり行政として、あるいはまた政治として何らかここに制度間の問題だけではなくして、一つの大きな、ボランティアの人たちが一生懸命やっている、そういう人たちに対しても、何にも私たちは手を差し伸べてやれないというのが非常に残念だと思っておりますけれども、いずれにしても、このノーマリゼーションの政策化というものが必要じゃないか。
 すなわち、家庭や地域やボランティアなどのインフォーマルな部分についての見直し、あるいは活性化、そしまた制度化等々がここに求められているんじゃないかなということを痛切に感じているわけですけれども、この辺はどのようにお考えになっているのでしょうか。
○斎藤国務大臣 御指摘のような点は、私どももちょくちょく耳にすることでありまして、根本的には子供のころからの教育とか、また社会全体の中におけるそういう方々の受けとめとかいうような意識革命、改正とでもいいましょうか、そういうようなものを徐々に進めていかなければならないということが基本だろうとは思いまするけれども、同時にまた、私どもとしてとれることといたしましては、施設をできるだけ地域にオープン化して、地域の方々も施設を使っていただく、地域の方々も施設になじんでいただくというようなことも非常に大事なことではないかというふうに考えて、それぞれの施設のオープン化というようなことも進めておるところでございます。
    〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
 また、ボランティア活動等につきましても、これは元来行政とか公的権力というものが命令をするというようなものではないわけでありまするけれども、そういったボランティア活動の育成というものに力を入れていくということにおいて、そういった全体が福祉的な感覚の中で盛り上がった福祉社会になっていくというようなことに努めてまいらなければならないというふうに思います。
○田中(慶)委員 私は、なぜこういうことを申し上げるかというと、大臣からさっき言われているように、まさしく高齢化が進んでいる、二十一世紀には恐らく五人に一人やそれに近い数字になってくるわけであります。そういうときに、お互いに皆さん方の今までの過去の経験というものを生かす、そういう社会習慣をつくることがボランティアの人たちが多く参加をできる窓口だと思うのです。例えばその人たちだって、まだまだ体が丈夫であれば、過去の経験やそういうことを生かして社会参加をしようという意欲があっても、全体的に閉鎖的な社会の中ではなかなかできない、こういうことがあるわけですから、ぜひ体制づくりというのを、何といいますか、押しつけという形ではなくして、そういう習慣といいますか、そういうことがぜひ必要であろう、それが真の心の通っている福祉じゃないか、こんなふうに考えておりますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。
 特に、この高齢化を初めとする社会変化の波を克服して、新たな福祉社会、すなわち高度福祉社会を築いていくためには、やはり何といっても予算を確保しなければいけない、こういうことが現実になってくるわけであります。そういう点で、今は財政難の時代であって、ばらまき的な福祉はもう許されない。今まではどちらかというと、福祉というと、何かばらまき的発想の福祉というものがあったわけでありますけれども、このばらまき的福祉というものがもう許されない時代に入ってきたと思います。世代間の負担の適正化を図っていかなければならないということがよく言われていますし、後世にツケを残してはいけないということもよく言われるわけでありますから、こういう問題を含めて、この福祉問題が先進国病などと言われることではなくして、公的部門の拡大による非効率的な、社会における活力の喪失などを引き起こしてはならないということも最近よく言われているわけであります。しかし、残念なことに中曽根内閣そのものが、そのときの経済状態によって、この福祉の根幹を揺さぶる切り捨て論がときどき目立つわけであります。特に、お年寄りの年金やいろいろな問題を含めて年寄りいじめと言われていることも事実でありますし、あるいはまた、弱い人に対して、財政が厳しい、そのツケは必ず弱いところにいく、こういうことをよく聞くわけであります。
 そこで大臣、お伺いしたいのですけれども、予算編成に当たって各省一律のゼロシーリングを行うことは合理性があると考えておりますけれども、大臣の考え方を述べていただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 現下の財政再建途上におけるまことに厳しい財政状況の中でございますので、全体としてゼロシーリングとかシーリングをはめられるということについては、全体としては、これはやむを得ないことであるかなというふうに思っております。しかし、そういう中で、急速な高齢化が進む中、厚生省予算というものの当然増というものも非常に高いわけでありまして、そういうことに着目をして、別枠の予算枠をもらって、そしてやっておるわけでありますが、それでもなおなお厳しい状況にあります。
 先ほど御指摘がございましたように、真の福祉政策というものを推進をいたしてまいるために、重点的な予算の配分というようなことに努めて、福祉の後退にならないように努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。
○田中(慶)委員 すなわち、財政再建が必要であるということは論をまたないわけでありますけれども、むだな経費を削って必要であるところには必要な予算をつけるというのが行政改革の精神ではないかと思います。行革イコール財政再建ではない、私はそう思いますけれども、大臣はどう思いますか。
○斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、例えばこれからの長寿社会へ向かって保健、医療、福祉という面が連携をもって充実した総合的な施策を進めてまいる、そういう中においてはある種の行政改革ということもあるのではないか。そういうことを進めることによって、福祉社会の推進というものを進めていくという点があろうかというふうに思っております。行政改革を進めることによって、財政再建というものが結果として生まれてくるという部分もあろうかと思います。
○田中(慶)委員 今の政府、特に大蔵省は、財政再建を優先する余り、取りやすいところから取る式の安易な姿勢がよく見られるし、またよく言われているのではないかと思います。ゼロシーリングもそうであるが、今政府税調で論議をされている年金受給者課税の強化あるいはまた厚生年金基金の課税など、年金に対する課税強化の動きなどもその一つではないかと思います。こうした考え方について、厚生大臣としてこれらについてどのようにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 ただいま政府税調におきまして、抜本的な税制の見直しが行われており、その中において年金所得に対する税制の見直しも検討されているやに聞いております。過日は専門小委員会の考え方というものも私ども見たわけでございますが、今そういう検討をされている段階で私が断定的なことを申し上げるのはいかがかというふうに思っておりまするけれども、専門小委員会で述べられているようなことがそのまま当てはめられるということになっては、まことに憂慮すべき状況であるというふうに私は考えております。そして年金所得者の方々が、今の年金の標準的な公的年金部分においては非課税の状況になっておるという現状をぜひとも維持をし、福祉水準の後退にならないように、各方面に私どもも働きかけておるところでありまして、この年金税制が福祉の後退につながらないように努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
○田中(慶)委員 私は、特にこれは大臣にお願いしておきたいわけでありますけれども、今、大臣から強い決意が述べられておりますので、それに尽きるわけでありますが、要するに、この年金受給時の課税の強化あるいはまた厚生年金基金の課税等がされてまいりますと、年金本来あるいはまた福祉の根幹がこの辺から崩れてくる心配があるのじゃないかと思っております。ですから、特にこれは、今、大臣が述べられているように、全体的なこれからの日本の福祉を守るためにもぜひ頑張って、各方面に働きかけて、取りやすいところから取るという方式はもう捨てて、今、大臣が述べられているような方向でぜひ頑張っていただきたい。これをしないと、日本の福祉というものは日の当たらない福祉になってしまう。あるいはまた声の大きいところだけ恩恵をこうむるような福祉になってしまう。財政があるときだけの福祉になってしまう。こういうことがどうしても今心配をされている時期になってくると思いますので、これは厚生行政を預かる大臣として、これからもぜひ頑張っていただきたいという要望を申し上げておきますけれども、決意を再度述べていただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、最善の努力をいたしてまいりたいと考えておりますが、何分微力でございますので、社労委員の与野党の先生方の絶大なる御協力をお願いいたしたいと思います。
○田中(慶)委員 次に、私は、今いろいろなことを言われておりますけれども、高齢化社会の進展に対応して、財源の確保がどのように考えられているのかなと思います。あるところでは、これからの福祉を支える重要な課題ではないか、また新税として福祉目的税の創設とか社会保障の勘定の創設等検討すべきであるという声も聞かれております。今の時点でこういうことを論ずることは余り適切ではないと私は思いますけれども、やがて来る高齢化社会の進展等々を考えたときに、この問題は避けて通れない問題、大きな財源、こういうことにもなってくる心配があります。これからどのような形で対応できていくのかなというささやかな心配があるわけでありますけれども、この辺はどうでしょうか。
○斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、急速に進行します高齢化に向かって、年々の当然増予算を確保していくために、何か新しいシステムがないものかということについて検討しなければならないと私も考えております。
 ただ、国全体の財政の中で占める割合も非常に大きゅうございますし、これが全体の財政に与える影響も大きい。また厚生省予算の中でどういう部分をどのような形の特別な勘定をつくっていくのがいいのかということについても研究を十分にしていかなければならないと思いますし、またそれに対する財源措置というものが、ただいま福祉目的税というお言葉も出ましたが、そういうものがいいのか、それがどういう形のものになるべきなのか、こういう点についても、将来長い目で見て、これが実現できるような、そしてそれを実現したことによって福祉予算なりが確保されていけるのかどうか、そういった点を十分ひとつ検討いたしてまいらなければならないと考えております。
○田中(慶)委員 医療行政がいろいろな形で検討されている中で、特に最近救命救急センターの問題、救命救急医療というか、この制度の問題等々についていろいろな角度で今日まで進んでまいったと思います。ただ、このばらつきが非常に多いわけであります。私は、この救命救急センターというものがどのような理念で今日進められているのか、この救命救急センターの当初の目的と現実に行われている違いは非常に大きいのではないかと思います。そこにはすべて緊急的な処置あるいは体制も、さらにはまたドクターズカーも含めていろいろな形で救命救急センターの構想というものが進められていたと思います。
    〔長野委員長代理退席、委員長着席〕
その進める中で、私立大学や市民病院等に対して進める行政指導は、比較的その概念や理念に基づいて進め、その目的に向かって進んでおります。ところが、国立病院がこの救命救急センターの指定を受けているにもかかわらず、その概念から全然離れているという実態があるのですけれども、これらについてはどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
○仲村政府委員 国立病院にございます救命救急センターは十二ヵ所でございまして、現在年間約二万件前後の救急患者を受け入れております。年間平均いたしますと千六百件程度でございまして、地域の医療機関と連携をとりながら救急医療の確保に寄与していると考えておりますが、ただいま御指摘の私立病院その他と比較いたしまして、まだ若干数の少ない施設もあろうかと考えております。
○田中(慶)委員 私の申し上げていることはそういうことではないのです。私立病院あるいは大学病院に対して、当初の概念というか理念的な発想に基づいて行政指導して設備やいろいろなことをやらせている。例えばドクターズカーは、この救急の中で国立病院はどういう形になっていますか。
○仲村政府委員 国立病院につきましては、先ほど申し上げたように、十二ヵ所の救命救急センターがございますが、いずれも交通至便なところにあるということから、私どもとしてはドクターズカーを持っておりません。
○田中(慶)委員 スタートの救命救急センターの発想のときには、そういうことが明文になっていることは知っておりますか。
○仲村政府委員 救命救急センターにおきますドクターズカーにつきましては、必要に応じて医師の管理のもとに重篤救急患者を搬送するドクターズカーを設置することになっておりますが、私どもとしては、先ほど申し上げたように、それぞれ国立病院は交通至便なところにあるということで、ドクターズカーを持っておらないということでございます。
○田中(慶)委員 この救急というものは、交通の至便と命とあなたはどちらが大切ですか。交通の至便といっても、少なくとも交通混雑の状態とか、都市の中にあってもいろいろなことを考えてそういうものが必要である。当初のスタートの時点では、現実にそういう発想で進められているにもかかわらず、こういうことが全然されていない。そればかりではない。例えば急患が出ても──いろいろな形の中で今の制度をあるいは見直しをするということもあるでしょう。あるいは二十四時間体制の問題もあるでしょう。それだけではありません。現実に急患が出ても、それに対応できなくてたらい回しをされていることもあるわけであります。こういう実態をどのように考えておりますか。
○仲村政府委員 国立病院におきます救命救急センターにつきまして、運営上の問題でございますとか患者の搬送体制等の問題につきまして、ただいまいろいろ御指摘があったわけでございますが、私どもといたしましては、引き続き当初の趣旨にのっとりまして、国立病院を十分救命救急センターとしてその地域の中で機能いたしますように指導してまいりたいと考えております。
○田中(慶)委員 私がぜひお願いしたいことは、救命救急センターというものがなぜできたかということ、今、現実段階でその理念というものが生かされていないところに問題がある。私立の病院や私学に関しては、その経営主体とかいろいろなことも含めて、評判も含めて、おかしくなってしまうものですから、非常にみずから努力をされる。ところが、国立病院そのものが、最近の傾向としていろいろな形の中で難しい病名、難しい問題に対すると比較的そこで受け入れない、こういう実態が私が何ヵ所か調べた中で現実に出ているわけです。こういうことを含めて、もっとこの当初の目的に沿うた形の中で、この救命救急センターというものが本当にすばらしい発想で生まれてきたわけですから、その理念をこれからも──交通の利便があるからドクターズカーは要らないのだという発想そのものがおかしいと思うのです。そうでしょう。心臓病で苦しむ。もしそこにドクターズカーがいてお医者さんがいたならば、とうとい生命を助けることもできるわけである。その発想が今言ったような形の中で忘れられて運営されているところに大きな問題があるわけですから、これはやはり原点に返ってもらいたい。要望しておきます。
 例えば、地域医療の問題もそうです。これだけ医師が過剰の時代とかいろいろなことを言われておりますけれども、例えば全国的なべッド数を比較対照するときに、それぞれの医療計画に基づいて全国のベッド数を人口で割って、その平均化の中で多いとか少ない、こんなことが今やられて、そのベッド数の問題は検討されているのですよ。例えば国民何人に一つベッドがあればいいのか、百人に一つあればいいのか、百五十人に一つあればいいのか、そういう方程式が現実にないのです。こんな長い日本の厚生医療の中でそういうことがないのです。調べてください大臣、本当ですよ。初期の問題でありますけれども、そういう方程式の問題すら今現実にない。そしてこの医療というものは、時には人の生命まで左右する問題でありますけれども、そういう原点になるものをもっと真剣にやっていただきたいと私は思う。国立病院の統廃合の問題とかいろいろなことを言われております。しかし、どちらかというと画一的にそういう発想があるわけであります。ですから、こういうことを含めて、地域医療という問題についても、今の救命救急センターの問題についても、その基本にかかわる問題をもっともっと真剣に検討していただきたい。
 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わりますけれども、それらに対して見解を明確にしていただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 救命救急センターのお話から始まりましていろいろな御指摘がございました。
 救命救急センターは、二十四時間体制を原則として、脳卒中や心筋梗塞とか、そういう救命救急医療を行う第三次医療機関として全国に配置をいたしておるところであります。国立病院におきましても、今答弁いたしましたように、十二カ所が機能をいたしておるところであり、御指摘のような、その体制に応じ得ないところがあるとするならば、適切な改善をいたしてまいらなければならないというふうに考えております。
 同時にまた、全体の医療の問題として、病床数はどのぐらい必要なのかというようなお話から始まっての御指摘もございましたが、まさに今、医療法の改正に基づきまして、それぞれの地域に合った地域医療というものを地域医療計画としてお考えをいただくということで進めておるわけでございまして、御趣旨のような点を踏まえて、今後も努力をいたしてまいりたいと思います。
○田中(慶)委員 ありがとうございました。
 以上で私の質問を終わります。
○堀内委員長 浦井洋君。
○浦井委員 けさ方厚生大臣、所信表明をお伺いしたわけであります。ペーパーがないので、全体を覚えておるというわけにいかぬわけでありますけれども、たしか、いつでもどこでも公正、公平にいろいろやっていきたい、福祉問題、医療問題、保健問題というようなことを言われたと思うのです。要するに、結論としては、政府がこの間発表した「長寿社会対策大綱」に沿って施策を実施する、一言で言えばそういうことだろうというふうに思うわけでありますが、大臣の言われたような格好では、政府の発表した「長寿社会対策大綱」というのはバラ色ではない。いろいろな人がいろいろな意見を言っておりますけれども、一体だれがそういう施策を実施するのか。特に国が憲法二十五条に沿ってもっと責任を持たなければならぬのではないか。ところが、国の責任の所在が明らかになっておらない、こういう点が第一に指摘されると思う。それに反して、今度はどんどんと仕事を末端の自治体に移していって、そして言うたら市町村にげたを預けるというような格好になっておることも、これは一読すれば明らかであります。
 それと肝心なことは、今もお話があったように、財政的な裏づけを一体どうするのかというような形で、これがはっきりしておらない。しかも、それに見合うような形でいわゆる民間活力、民間論がシルバー産業というような格好で入ってきておるというところが問題点だというふうに私は思うわけであります。だから、政府の出した「長寿社会対策大綱」というものを本当に私が言ったような観点で、これから具体的に施策を大臣進めていかれたら、やはり老後は明るくないのではないか。長寿であるとかいろいろな言葉遣い、美辞麗句は並べられますけれども、実際には年とったら金がかかるんだ、厄介者なんだ、老後は金がかかる、だからそのために年寄りは年寄りなりに自助努力をしなければならぬというふうに言われておるわけです。これはもう高齢者の皆さん方が読んだら非常に不満だし、かえって逆に老後の不安をあおり立てるものではないかというふうに思うわけであります。
 そこで、その前に厚生省の方から責任を持って高齢者対策企画推進本部というものがつくられて、その報告が出ておるわけであります。これは公表されておる。これはこれからの、けさ大臣の言われた所信表明の具体的な施策の基本になるものだというふうに私は思うのでありますが、その点はどうですか。
○長尾政府委員 お答えを申し上げます。
 先ほど先生一番最初におっしゃいました「長寿社会対策大綱」でございますが、これは長寿社会へ向けまして、各行政分野がそれぞれの長寿社会の対策を実施をいたしておるわけでございますが、それらの対策が総合的な観点からお互い有機的な連携を持って実施されることが必要であるという観点から、政府の各分野が合同でこういった計画をつくったという性格のものでございます。
 私どもの行政は長寿社会の中で大きな役割を担っておるわけでございますが、今、先生からお話がございました高齢者対策企画推進本部は、この長寿社会の到来を控えまして、厚生省として、福祉の分野また保健の分野、さまざまな分野にわたっております私どもの行政が総合的な観点からこの社会に対してどういうような対応をとったらいいのか、どういうような構造調整的なものを考えていったらいいのかということを省内のプロジェクトチームとして検討いたしたわけでございます。こういった企画推進本部におきます考え方が、この「長寿社会対策大綱」をつくるに際しまして、私どもの省の基本的なスタンスとなったわけでございます。
○浦井委員 とにかく先にこの推進本部報告が出て、それが大分取り入れられて、各分野から集まって「長寿社会対策大綱」ができ上がった、こういうふうなこと。だから逆に言えば、推進本部報告というのは、厚生省の主管といいますか、厚生省の視野の届く範囲で、その部分の責任を担っておるというふうに理解してよろしいですね。答弁はいいですから、大体そうですね、長尾さん。どうもこれは私不得意でございまして……。答弁は結構でございます。
 そこで、その問題として、今度はその推進本部報告の横書きのものにのっとって質問を続けたいと思うのですが、本文の十ページに医療保険の問題が出てきております。ここでは「医療保険制度の一元化」という格好が出てきておりますけれども、この一元化というのは、日本医師会などでは一本化と言っておりますし、これは一元化と一本化というのはどういうふうに具体的に違うのですかね。
○下村政府委員 それぞれ余り厳密な定義のもとに使われているという感じでもございませんが、一本化という場合には、どちらかといえば統合のような問題も含めた感覚での言葉、一元化の方はそれよりもやや広い、統合を排除するわけではありませんが、やや緩い形での調整的なものという感じで使われているということで考えております。
○浦井委員 そういうことのように保険局長は理解をされておるようでありますが、それでそこの一元化の時期、「六十年代後半のできるだけ早い時期に実施する。」こういうふうにここに明記されておるわけでありますが、これは大体いつごろになるのですか、今が昭和六十一年でありますから。
○下村政府委員 まだ一元化につきましては、これからいろいろ検討を進めていくという段階でございますので、その時期をここで何年というふうに確定してお答えはできませんが、要するに、文字どおり六十年代後半、六十五年以降のできるだけ早い時期に実施をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○浦井委員 六十五年以降のできるだけ早い時期というと、六十六年か六十七年か、そこらぐらいですか。
○下村政府委員 まだ何年とお答えするほど具体的な時期が定まっている問題ではないと御理解いただきたいと思います。
○浦井委員 八年や九年はもうあっという間に過ぎるのですよね、こういうような大きな制度改革をやろうということであれば。だから、もう具体的なタイムスケジュールにのせなければいかぬ時期と違うのですか、そういう点では。そのタイムスケジュールにのせるためにも、やはり今保険局長言われたように、一元化というのは一本化に比べて広い意味ですね、そういうことですね。一元化をやるということのためにはいろいろなことをやらなければいかぬでしょう。厚生省の方で言われておるように、健康保険の自己負担を二割にして給付を八割にするとか、あるいは国保を、後でこれは詳しく議論したいのですけれども、もっとスリムにするとか、変な表現ですけれども、まあ私らの立場からいけば、やはり国保の抜本改悪をやらぬと、なかなかおたくらの発想から、そのハードルを越えなければならぬだろうというふうに思うわけであります。
 それから、この推進本部報告の中で、やはりきょうぜひお聞きしたいのは、国民福祉医療制度というようなものが出てきておるわけであります。こういうようなハードルを越えなければならぬと思う。具体的に健保本人の給付を八割にするのはいつなんですか。
○下村政府委員 これも前回の健康保険法改正の際に、国会の承認を得て実施をするという形で健保の八割についてはそういう修正がなされておるわけでございます。また、それに関連いたしまして、家族の給付率の問題あるいは国保の給付率の問題というふうな点も関連問題として国会での御議論をいただいているわけでございますので、それらを含めて一元化問題のスケジュールとあわせてただいまの問題は検討すべきものというふうに私は理解しております。
○浦井委員 確かに本文でもう八割給付になっていますよね。だから、それをいつ、先にやるのか、それとも国保の財政措置を含めたスリム化を先にやるのか、それはどうなんですか。
○下村政府委員 まだ検討の途上にある問題でございますので、確定的なことは申せませんが、本人の八割はやるというふうなことであれば、その際に家族の給付率の問題、国保の給付率の問題についてもあわせてどういう形で取り組んでいくかというふうな展望が必要であろうと思います。
 それから、その前段階といたしまして、老人保健制度の問題に引き続いて国保の改革問題を検討すべきであろう、これは論理的にはおっしゃるとおりでございます。ただし、国保の問題が先行した後でただいまの給付率の問題、事柄の性質からすると、そういう順番で展開していくことになるのではないかと思います。
○浦井委員 そうすると、まず国保の、私の表現でいけば、この国民福祉医療ですか、こういうものも含めた国保の全面的な改悪をやっておってから、その後で健保の本人八割給付あるいは家族給付の見直し、こういうようなことをやるわけですか。
○下村政府委員 国保制度の財政的な安定を確保するというふうなことがまず必要であろう、論理的にはそうだ、こう申し上げたわけでございます。実際問題として、国保制度の改革がどういう形で行われるのか、これはまだこれからその検討の結果が出ないと何とも言えないわけでございます。
 それから、福祉医療の問題も全く同様でございまして、国保の推移を見た上で福祉医療問題が出るかもしれないという感じの、そういう性質の問題として推進本部報告には書いてある、このように理解いたしております。
○浦井委員 私がしつこく聞きますのは、大体こういうようなペーパーが出まして、そしていろんな各種諮問機関、こういうのをまあ形式的と言えばそこに参加されておられる先生方を軽視するということになって、余り適当な言葉ではないかもわかりませんけれども、それをとにかく上手に、短期間にパスをして、いよいよ本格的な論議を国会でしなければならぬときには、もう全くコンクリート詰めにされて、今度の老健法のようなはしにも棒にもかからぬようなものが出てきて、それが自民党多数の中でどっと通ってしまうのではないかというような疑いを私は持っておるわけなんです、今までの手法がそれですから。だから、もっとやはり国民の前に、どういうようなプログラムでこれを次はやりますよ、これは次こうやりますよというようなことをもっとオープンにすべきではないか、こういうことを要望しておるわけです。
○下村政府委員 医療保険の問題は、いろいろ関係者もございます。国保についてもいろんな関係者の御意見もございますので、これまでも厚生省といたしましては、できるだけ問題をオープンにして、関係者の意見も広く聞きながら問題をまとめていくという方針でまいったつもりでございまして、これからもそういうことについては、そういった方針で努力をしてまいりたいと考えております。
○浦井委員 つもりでありますと言われるけれども、国民の側から見たら、何か知らぬ間に老人保健法ができ、それで按分率というようなややこしいものができ、それから退職者医療制度が健康保険の改悪と一緒にやられ、年金も何か基礎年金、ややこしいということで、これは国民の大部分の方はわからぬわけですよね、どういう仕組みになっているか。だから、そういうことをやらぬようにということを私は注意をしておるわけなんです。
 そこで、この議論をいつまでも続けておってもあれですけれども、要するに、保険局長などの考えておられるようなことは、やはり結局は国の支出を減らし、国民の負担をふやし、あるいはいろんな福祉や医療の水準を下げて、それで平準化するということをねらっておるというふうに言わざるを得ないわけでありまして、特に、先ほど出ました国民福祉医療制度ですか、これはあなた方の発想からいけば当然出てくるだろうと思うのですよ。というのは、保険局長、よろしいですか。国民福祉医療制度というものは、要するに、今国保が国庫負担がふえて仕方がない、だからできるだけ政府管掌健康保険は地域総合健保に移す、そして五人未満の事業所はできるだけ政管健保に入ってもらう、そして国保をスリム化する、こういうことだろうと思うのです。
 そういう中でも、この国保は、所得の高い層と、それから所得の低い層、この方が圧倒的でしょうけれども、二極化している。その所得の比較的高い方のために国保が存在しておって、あとの所得の低い人は、生活保護の方々も含めて、国民福祉医療制度というようなところで、そういう形でくるんでしまおうという考え方から出てきた発想ではないんですか。
○下村政府委員 国保の対象がある意味では二極化していると申しますか、所得の面から見るとそうなっているのではないかという点はある程度事実であろうと思います。これからの国保制度の安定というふうなことを頭に置いてやっていく場合に、単純にスリム化すればいいというほど私どもとしては簡単に考えているわけではございませんので、全体としての制度のバランスあるいはそれぞれの、ただいまお話に出ました五人未満問題をどう解決していくか、それぞれの問題は関連性はもちろんあるわけですけれども、それぞれの問題がうまくバランスをとって解決されるというのが私どもの目標でございますし、単純に国保が小さくなればそれでいいというふうなことを思っているわけではございません。いずれも、これから国保につきましては、都道府県の役割を検討したらどうだとか、今の保険料の方式をどうしたらいいかとか、財政調整が現在の程度で十分かどうかとかいろいろな問題があるわけでして、それらの問題を調和がとれた形で解決をする、それぞれが落ちつきのいい形で答えを出していくということに尽きるわけでございまして、単純に、先生おっしゃるように割り切るわけにもいかないのじゃないかと思います。
○浦井委員 その調和がとれたとかバランスがとれたという、それで私の言い方は単純だというふうな下村さんの御意見でありますけれども、それなら端的にお聞きしますけれども、そういうような国民福祉医療制度というようなものができ上がった場合に、先ほども出てきた話でありますけれども、一体財源をどういう格好でやるわけですか。福祉目的税というようなことを考えておられるのか。それとも、老人保健法そのものが私はあしき財政調整だと思うのですけれども、そこから始まって退職者医療制度、それから基礎年金制度、これは皆、財政調整ですよね。そうすると、国保は確かにスリムになると私は思うのですよ、皆さん方が言われているような格好でずっとよそへ国保の被保険者をとっていけば。そういうところに対する財源はどっちの方でやられるつもりですか。財政調整でやられるのか、それとも福祉目的税みたいな格好でやられるのか。
○下村政府委員 おっしゃるように、国保の被保険者数というのはそう大きくは膨らんでないわけでございまして、いろいろな制度、五人未満の適用というふうなことを続けていった場合に、スリムになる可能性ももちろんあるわけでございます。したがって、そういう状態が起こった場合には、これに合わせて福祉医療制度といったものも解決策の一つのアイデアではないかという意味で検討の必要があるという形で推進本部報告には書いてあるわけでございます。したがって、そこのところは、国保制度の改革あるいは安定化というものがどういう形で行われるか、その答えが出てみないと、福祉医療制度を果たして実行する必要があるかどうかというところは答えが出せない、私はこんなふうに思っているわけでございます。
○浦井委員 そうすると、もちろん国民福祉医療制度というものは、国保のいろいろな改正、改悪といいますか、こういうことをやって、その上で国民福祉医療制度というものが必要かどうか判定するんだ、ましてその財源はと言われてもお答えすることは今はできない、こういうことですか。
○下村政府委員 そのとおりでございます。
○浦井委員 そのとおりでございますと言われても、こっちは困るわけですよ。大体推進本部報告の言うような方向にずっといっているわけなんですよ。それでもうかなり具体化して、おたくらの頭の中かあるいは金庫の中に何かがあるのですよ。それが石か玉かそれはようわからぬですけれどもね。だから、石でもいいから、玉でもよいから出しなさい、それで国民の前に出して議論をしなさい、私はそういうふうに言っているのですよ。石でも玉でも何でもいいから出したらどうです。
○下村政府委員 広く国民に議論をいただけばいいというふうな段階のものができました場合には、できるだけ早くそういたしたい、これはもう先ほど申し上げたとおりでございますが、現在は残念ながらまだその金庫の中にもないわけでございます。
○浦井委員 今までの問答を聞いておられて、大臣に一言。
○斎藤国務大臣 医療保険制度は現在国民皆保険となっておるわけでございますが、しかしながら、それぞれの制度が分立をいたしておりまして、それぞれの制度の歴史的な経過、またそれぞれの制度の特性等々によりまして、負担と給付の面についてもアンバランスがある。本来社会保障制度としての医療保険制度を考えるときに、でき得るならば全国民が一つの制度の中に入って社会保障制度をつくり上げていくということが社会保障の理念であろうというふうに私は思うわけであります。
 そういう観点から、これまで長きにわたって一本化とか一元化とかというような観点からずっと長い議論があったわけでございます。そういう中で老人保健制度というものをつくり、七十歳以上のお年寄りの医療について国民全部が持ち合いの中でこの財政を支えていく方式をひとつつくろう、同時にまた、七十歳を超えてからの医療だけではなく、四十歳以降の保健事業等についてもこの中でやって、そして健やかな老後を送れるようなそういう制度とあわせて考えていこう、こういうことで老人保険制度が創設されたというふうに考えております。そして、その次に七十歳以下の退職者の医療についても、各保険者の持ち寄りというような観点からの制度をつくったわけであります。
 すなわち、老人保健制度に象徴されるようなそういう横断的な一体感のある一つの社会保障制度ができたわけでありまして、それ以降──それ以降というか、その他の部分についても今後一元化をいたしてまいるために努力をしていかなければならない。そういう中で、それぞれの制度にそれぞれの格差があるわけでありますので、そういった格差の是正なり調整というものをこれから進めていかなければならない。その中には、まず国保の財政を中心とした安定的な制度の運営にどうしていったらいいかということについて取り組まなければならない。また社会保険等についても、将来は八割にしていく目標に向かって進めていかなければならないというふうなことで進めておるわけでありまして、これからの医療状況、また経済社会状況等を見定めながら、六十年後半のできるだけ早い時期にそういう検討を進めてまいろう、こういうことでございます。
○浦井委員 大臣、一本化を初めに言われて、それから今度は一元化というようなことでようわからぬのですが、どうも国民全体を一本にまとめるという一本化論者のような印象を初めに受けたのですが、お話を聞いていくうちによくわからぬようになってきたのです。要するに、私が一番言いたいことは、やはり長い間、特に戦争中頑張ってこられた方が今度なんかももろに被害を受けるわけです、この老人保健法なんかでも。だから昭和四十八年ですか、そういうようなせっかくできた老人医療無料化制度、医療費の無料化ですね、こういうものを復活させなければならぬし、この間の健康保険の改悪で本人の給付が一割自己負担になりました。こういうようなことをやめて、全額やはり健康保険で給付をするというようなことにしなければならぬし、それから低所得の方、生活保護を受けなければならぬ層、それよりももっと上の例の地方税の減免の世帯の方、こういう方も含めて国が責任を持ってお金を出す。お金の出し方あるいはお金の入り方、こういうようなところに根本的な間違いがあるんだ、だからそれを正しなさいということを私は言いたいわけであります。だから、それはお答えは要りません。
 そこで、次の問題でありますが、今度は税制の問題、これの五ページであります。推進本部報告の五ページでいきますと、税制の問題でこれは説明をしていただきたいのですけれども、「所得税制における年金課税の適切な位置付けを行うなど公平、公正かつ合理的な税制の確立を図る必要がある。また、老人福祉施策の充実、老後の家庭基盤の安定を図る観点から、福祉税制全般についても同様に検討を行い、その拡充を図る必要がある。」ということでありますが、これは具体的な例示をしていただいて説明していただきたいというふうに思います。
○長尾政府委員 高齢者対策の税制面の問題でございますが、一つは、現在公的年金につきましては、高齢者につきましての特別な控除、公的年金であるための特別な控除がございます。こういうことをとることによりまして、現役の方々との均衡を図って、所得保障の実を上げておるという形になっておるわけでございますが、この今までの制度の仕組みを維持していきたいというのが年金についての基本的な考え方でございます。
 次の福祉税制の問題でございますが、現在税制の中に各種の控除が行われておるわけでございます。例えば老親、お父様たちがお年寄りである方でございますが、同居しておられる方につきましては、老親同居特別控除といった形の控除制度がございます。こういった控除制度というものが、私どもが考えております高齢者の福祉全体の対策の中で、やはり大きな意味づけを持っているのではないか。こういった特別な控除制度の充実ということも、税制は実は私どもの直接の所管ではないわけでございますが、そういった観点からの税制当局に対する私どもの意見の表明をしていきたいということを申しておるわけでございます。
○浦井委員 そうすると、後者の方は主に控除の問題ですか。
○長尾政府委員 大部分はそういうことになろうかと思います。
○浦井委員 そこで、今も質問にあったわけですが、例の政府税調の年金課税に関する専門小委員会が八月五日に年金課税見直しの方向で報告を出した、こういうことでありますが、この報告では必ずしも明確な方針であるとか数字が示されておらないわけでありますが、仮に老年者年金特別控除の七十八万円、それと給与所得控除現行六十五万五千円、こういうものが廃止された場合、しかも、その専門小委員会の後段の部分は代替措置を何か講ずるというような表現でありますけれども、それがとられなかった場合に、現在年金額が年額百八十万円の受給者は、今は非課税ですが、これで所得税や住民税がかかると一体どれだけ年間に税金を払わなければならぬか、数字だけお答え願いたいと思います。
○水田政府委員 先生の仮定のもとで計算をいたしますと、国税で約九万九千円、地方税で約六万一千円、合計約十六万円の課税となります。
○浦井委員 数字はそれで結構です。
 現行では、計算していきますと年額二百二十九万円までが非課税になるわけですね。そこで、きのうお願いしておいたのですが、年額二百二十万──二百二十九万ということでなしに二百二十万ということにいたしまして、今の数字をもう一遍教えていただきたい。
○水田政府委員 国税で十四万八千円、地方税で約九万五千円、合計約二十四万四千円程度となろうかと思います。
○浦井委員 大臣、お話を聞いておられたと思うのですが、政府税調の小委員会で代替措置がないとすれば、こういう無残な数字が出てくるわけですよね。せっかく今まで税金がかからなかった年金に、ぎりぎり限度いっぱいやったら年間二十四万、今のお答えでは二十四万ですか、地方税と所得税と合わしまして。こういうことの絶対起こらぬように、私はこれは大臣に御奮闘願わなければしようがないと思うのですが、今与野党の先生方のというようなことを言われたのですけれども、大臣、どうですか。
○斎藤国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、今回の抜本的な税制改革を御議論いただく中で、現在いろいろな御意見があるようでございます。また、その中で専門小委員会の報告をお聞きをいたしますと、これがそのまま実施されるということになれば大変憂慮すべき状態であるというふうに私も考えております。これまでの標準的な年金に対して非課税措置がとられるよう、そしていわゆる年金の実質的な水準の切り下げにならないよう努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
○浦井委員 この点ではひとつ大臣に頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。
 それで、もう一つ最後に、六十二年度の概算要求を見てみますと、保健所の運営費交付金の一般財源化の問題があるわけであります。それを見ますと、大体九十五億ぐらいを一般財源化するという計算になるわけであります、特定財源から一般財源に。
 二年前に保健所法の改正が行われたときに、私は今日あるを予測いたしまして、今回の措置というのは、一般財源になるステップになるのではないか、第一歩になるのではないか、こういう質問をしたら、当時の局長も「厚生省といたしましては、保健所事業の重要性にかんがみまして、これは一般財源にするのは不適当である」ということをちゃんと言われておるわけなんです。当時の厚生大臣渡部恒三さんは、「保健所で働く皆さんが、自分たちの職場の将来に不安を持つというようなことはあってはならないということで、特定財源で頑張ったわけでございますから、」自由民主党が政権を担当している限り一般財源化はしない、そういうふうに私に約束をされておるわけなんです。
 幸か不幸か今度は、今度はというよりも引き続いて自由民主党が政権を担当されておる。そういう中ですうっと予算措置ということで特定財源の一般財源化というようなこと、これは厚生省が進んでやったわけですか、それとも大蔵省に強要されたわけですか。
○竹中政府委員 昭和六十二年度の予算要求におきまして、今、先生がお話しのとおり、保健所運営費交付金の一部を一般財源化するという要求をいたしております。これにつきましては、私ども当面保健所の拡充が非常に必要でございます。特に第二次の老人保健対策の推進あるいは精神保健対策の充実、医療計画の推進、こういったことをこれから大いに拡充をしていかなきゃならぬ。一方で行政改革の推進ということで、国庫補助金についてそれぞれ厳しく見直すということが要請をされておるわけでございます。
 こういったことに基づきまして、今回、先ほど申し上げました三つの大きな柱、これを中心に重点的な予算要求をしたいということで、今申し上げました三本の柱に直接関係のない一部の経費につきまして、国庫補助の対象から除外をいたしまして、一般財源化をするという要求をいたしておるわけでございます。
○浦井委員 竹中さんの説明によりますと、一方で保健所は重視をし、拡充、充実をさせなければならぬ。一方で行革というような輪っかがかかっておる。そのはざまの中のテクニックとしてこういうようなやり方をとったんだというように理解してよろしいですか、短絡的に。
○竹中政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、行政改革の推進の観点から、補助金の見直しということで、特に既に定着をしておる補助金等につきましては、できるだけ一般財源化するというのが政府の方針でございますので、先ほど申し上げました三本の柱以外のもので、既に定着をしておると考えられるものについて一般財源化をした、一方で重要な事項につきましては、補助金のその部分の増額を要求をしておるということでございます。
○浦井委員 もう時間が迫ってまいりましたけれども、その中でやはり二年前の約束、当時の渡部厚生大臣が約束をしたことを侵しておる、私は明らかにそうだというふうに思うわけでありますが、特に詳しく見てみますと、医療職の(二)というのが一般財源化されておる。これは薬剤師さんであるとかあるいは獣医師さんであるとか、こういうことなんですけれども、これはかなり重要な業務でしょう。どういう業務をやっておられるわけですか。
 それと、もう一つ竹中さんにお聞きしたいのは、本来ヘルスセンターとしての保健所というのはどういうことをやらなければならぬのかという点をもう少し簡潔にお答え願いたい。
○竹中政府委員 第一番目の、保健所において獣医師、薬剤師がどういう業務に従事をしておるか、これは御承知のように、食品衛生、環境衛生といったような部面で非常に活躍をしていただいておるわけでありますが、環境衛生、食品衛生業務につきましては、当初より一般財源化、交付税交付金の中に入っておって補助金にはなっていない。今回、交付金の中から一般財源化をする、それに該当いたします薬剤師、獣医師がどんな仕事をしておられるかということで申し上げてみますと、薬剤師は食品や薬品につきましての試験検査あるいは飲料水、家庭用品に含まれる成分についての試験検査、主として試験検査でございます。それから獣医師につきましては、人畜共通伝染病の予防を図る観点からの家畜家禽の飼育指導それからへい獣処理の指導、こういったことを獣医師が担当していただいておるわけでございます。
 それから、保健所の役割でございますが、時間もあれでございますので一言で申し上げますと、やはり衛生行政の第一線の拠点であるというふうに御理解をいただいていいのではないかと思っております。
○浦井委員 これで終わりますけれども、とにかくそういう格好で片一方の方は特定財源で残り、片一方の方は一般財源で今度は財源化されるというようなことになると、保健所業務の一貫性というものは損なわれるおそれがあるというふうに思いますし、やはり保健所の本来のあり方というものを、これはもう時間がないからやめておきますけれども、きちんと厚生省として時間をかけて皆の意見を聞きながら保健所のあり方を検討すべきだというふうに思います。今は中途半端で、一体これからどんどん保健所というのは軽視されていくのか、それとも今竹中さん言われたような、本当にそういう地域の第一線の保健衛生を守る拠点だという方向に行くのかがはっきりしていないわけなんですよね。そういうことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。──何か答弁ありますか。(「時間、時間」と呼ぶ者あり)
○堀内委員長 それじゃ竹中局長、手短にお願いします。
○竹中政府委員 今後の保健所のあり方につきましていろいろ問題があることは、私どもも考えておりまして、六十二年度予算で、今後の保健所のあり方ということで、市町村を含めました保健所のあり方ということで、地域保険将来構想検討会というものを設置をいたしまして、二年がかりで検討したいと考えております。
○堀内委員長 木村義雄君。
○木村(義)委員 きょうは長野先生を初め先輩の議員さん方の大変な御高配によりまして、このような質問の機会を与えていただき、心から感謝をいたす次第でございまして、本当にありがとうございます。
 厚生大臣は親子二代と承っておりますが、私も銀行出身でございまして、銀行出身の大臣だそうでございまして、大変心強く思っております。きょうは、千代の富士のような大臣の胸をかりるつもりで、幕下の議員でございますけれども、ひとつどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 私も、何といっても今一番国民の関心の的は、老齢者、高齢者の福祉の点でございますので、きょうはたくさんの先輩の方々がいろいろと大変すばらしい質問をされておりまして、私もそれに関しましていろいろと大臣に、また局長の皆さんにお伺いをいたしたいと思うわけでございます。
 元来、水と空気と福祉は無料だ、このように言われておりまして、それゆえに大変に国の負担の方も多く、今多くの先生方が目的税、目的税と言って福祉目的税のことを言っておられましたけれども、やはりだんだん社会のニーズも変わってきております。目的税ばかり考えずに、やはり年金制度も充実してきたことでもありますし、それぞれの所得に見合った福祉のシステムの充実もやはり考えていかなければいけないのではないかと思います。
 その中で、今やはり話題の中心は、こういう分野にも民間サービスの導入を図りまして、そういう国民の需要にきめ細かく、また良質のサービスを提供するようなシステムをつくる必要があるのではないか、かように考えております。と申しますのは、福祉、福祉と言いましても、その福祉の対象になっているのは、国民のまだわずかな部分でございまして、ある意味では所得の高い方々が今度は逆に切り捨てられているという逆差別の点もございます。そういう点もありますけれども、その民間サービスという点に関しまして、ひとつまず大臣の御所見をお伺いしたい、かように思うのであります。
○斎藤国務大臣 これから迎えます長寿社会に向かって、いわゆるこれまで我々が経験したことのなかった未知の世界ともいうべきその長寿社会を、いかに生きがいのあるものとしてつくり上げていくかということは非常に重要なことでありまして、そのためには福祉に対するいろいろなさまざまなニーズというものにこたえていくような福祉政策を進めていかなければならないというふうに考えております。
 これまで社会福祉政策の中で、どちらかといえば社会福祉施設を整備をするということに非常に力を入れてまいったわけでありますけれども、同時にまた、住みなれた地域にあって、また家庭にあって、社会にあって、温かい福祉社会に包まれていくということも非常に重要なことでありまして、そういう意味から、在宅福祉の充実ということに努めてまいらなければならない、こう考えております。
 もう一つは、どちらかといえば、これまで福祉というものは古典的福祉とでも申しましょうか、貧困対策という面から発生してきた部分があると思うわけでございますが、これからはそういった貧困対策に重点を置いた福祉もさることながら、いわゆる所得の多寡にかかわらず公的なサービスも受けられるというような仕組みというものもつくっていかなければならないであろうというふうに思っております。
 そういう中で、民間の活力を利用してというお話でございますが、私は、元来から、この社会福祉サービスというものは、既に民間の方々の積極的な御協力を得てこれまでも進んできているものだ、例えば老人ホーム等についても、社会福祉法人において賄っていただいているという面も非常に多いわけでございます。でありますので、今さら、何か民間活力というはやり言葉の中に乗って行っていくというような観点ではなく、これまでもそうでありましたし、これからも民間の方々の福祉に対する寄与というものを盛り立てていっていただかなければならない、こう考えておるわけであります。そういう中で公的福祉サービスというものが最低必要限の部分、もしくは一定の水準なり基準を示す部分、また先駆的な制度なりサービスを担ってまいる部分、そういう部分において公的サービスというものを強めてまいるということになってまいるのではないかというふうに私も考えております。
○木村(義)委員 今、大臣の御発言を聞いて、非常に冷静なというか、大変安心して厚生行政を任せられる、また福祉行政を任せられるような気がいたしたわけでございますけれども、昨今、高齢化の社会が非常に急速なスピードで進展をいたしております。そしてその大半は、やはりまだまだ健康でこれから長生きをしたいと思っておられる老人方がたくさんいると思うわけでございます。
 私も先般、九月十五日の老人の日に老人会にたくさん行ってまいりました。その中でおじいちゃんおばあちゃん方と話していますと、おじいちゃんおばあちゃんは何がしたいのとか、どれが生きがいですかと聞くと、大抵の人が趣味に生きたい、こう言うのですね。ところが、趣味に生きたい、ああ、そう、じゃ、おばあちゃんはどんな趣味を持っているのと聞くと、いや、そう言われても困る。実際は趣味も何もない。たくさんそういう方々がおられる。理想はあるし、何かおいしいものを食べたいけれども、なかなか食べられないというのと同じように、やはり趣味で生きたいのだけれども、その趣味というものもどんなものかよくわからないという方がたくさんおられるわけでございます。
 そこで、そういう健康老人の生きがい対策というのを厚生省はどのようにお考えであるか、その辺をちょっとお伺いをさせていただきたいと思うのであります。
○小林(功)政府委員 確かに高齢化問題を云々する場合に、ともしますと、寝たきり老人でありますとか痴呆性老人、そういう暗い面に目がいきがちな面がございます。もちろんその面はあるわけでございまして、それ自体重要な問題でありまして、それに必要な施策というのはもちろん立てなければならない、これは言うまでもないことでありますが、先生のお話にありますように、しかし多くの御老人というのは健康で元気な方もいらっしゃるわけであります。そういう方に対する生きがい対策と申しますか、そういうものは今非常に重要な課題である、このように考えております。そのために、高齢者がその地域において各世代の人々と触れ合いの場を持ち、また長年の貴重な体験というものを生かして積極的にボランティア事業などに参加していただく、こういうことが大変望まれるわけでございます。
 そういった面で、私どもは従来から例えば老人クラブ活動への助成でありますとか、あるいは今ちょっと趣味のお話が出ましたけれども、実は生きがいと創造の事業というものがありまして、これは木工とか園芸とか、そういった趣味でやるそういう事業に対して助成をしておりますけれども、そういう格好で、健康で元気な御老人に対する活性化と申しますか、そういう意味の助成を幾つかやっているわけでございます。
○木村(義)委員 ひとつ高齢者の方々が生きがいを持って本当に楽しく余生を過ごされるようなすばらしい施策をどんどんと打ち出していただきたいわけでございます。
 ところで、そういう老人の方々ばかりであればいいわけでございますけれども、それを支える御家庭の方がおられるわけでございまして、実は多くの主婦の方々にお伺いしますと、おじいちゃんおばあちゃんをどこでだれが面倒を見るか、これがいつも家庭争議のもとだそうでございます。兄弟の間でたらい回しにする、そして最後にだれが貧乏くじを引くかというのがひいては夫婦げんかのもとにもなりかねないような家庭が非常に多いわけでございまして、これは逆に言えば、日本という国のすばらしい伝統で、先ほど審議官から出ましたけれども、老親と同居する、そして養うというような扶養システム、そういう精神がまだまだ日本には何といっても残っているのではないかと思います。そういうのは諸外国に比べても日本は非常に高いというふうに承っておりますが、同居とか扶養の実態はどのようなものか、お示しをいただきたいと思います。
○小林(功)政府委員 今、先生おっしゃいましたように、我が国の老人と子供の同居率は世界の中で非常に高いわけでございます。六十年の厚生行政基礎調査によりますと、六五%程度になっております。外国はこれよりずっと低いわけでございますが、寝たきり老人の介護についても、親族で見ている割合が非常に高くて、九割近くが親族で見ている。その親族の中でも同居のお嫁さんがトップでございまして、その次が妻、ここら辺が多いわけでございます。同居の嫁と妻で大体六割ぐらいをカバーしているのではないか、これが現状でございます。
○木村(義)委員 今、同居の妻や寝たきり老人の話が出たのですけれども、今までの厚生行政というのは、大変失礼でございますけれども、さっきも出ましたが、施設偏重主義といいますか、大分施設にかかった。しかし、大臣のお話の中から、これからはやはり在宅福祉の時代であるというようなお話が出ております。何といっても老人の方はお孫さんと一日一緒に暮らせる、そしてそういう家庭の温かい環境の中で最期は畳の上で大往生したい、こう願っておられるのではないかと思います。在宅福祉は何といっても家庭負担も安いし、老人にとりましても非常に温かい時が過ごせるわけでございます。しかし、逆に一方、先ほど言ったような嫁さんやしゅうとめさんの方々の御苦労もあるわけでございます。厚生省、政府は在宅福祉についてこれからどのように進めていこうとしているのか、その辺の理念みたいなものをお示しいただければと思うわけでございます。
○小林(功)政府委員 先ほどもお話が出ておりましたけれども、やはりお年寄りというのは、老後も住みなれた地域社会の中で家族や近隣のお友達と一緒に暮らしていくことが一番幸せなことだと思います。それが一番望んでおられることだと思います。それを可能にするためには、各種の在宅対策の充実ということをやらなければならぬだろう、こういう基本認識を持っております。
 そういうことで、従来からいろいろの施策を講じておりますけれども、特に六十一年度について申しますと、例えば家庭奉仕員の増員、これはヘルパーを家庭に派遣しましていろいろお手伝いする、介護をするという事業でございますが、これの人員をふやしましたし、それからデイサービス、これは特養とか養護老人ホームに付設していますが、そこへ通っていただいて、そこで一日楽しく過ごしていただいて、またお宅へ帰っていただくという事業でありますが、これも大幅に拡充をいたしました。またショートステイといいまして、家庭でいろいろ介護なさっているわけですが、その介護者が例えば病気になった、あるいはちょっとした旅行に行きたいというふうな場合に、一時施設でお預かりして、またお帰しするという事業でございますが、これも大幅にふやしております。なおかつ補助率につきましても、従来三分の一の補助率でありましたのを今年度から二分の一に引き上げております。こういうことで在宅対策の充実を図っているつもりでございます。
○木村(義)委員 その場合、特に問題になるのが、寝ているだけの中で痴呆性老人といいますか、今はやりの言葉で言えばぼけ老人の方々を抱えている家庭が特に大変である。部屋の中に入ると何かごみための中に入ったような、病室というかおじいちゃんの部屋がごみためのような、またもうちょっと変な言葉で言うと、大変悪いのですが、果たして人間がいるような部屋なんだろうかというようなすごい部屋も中にはございます。本当にそういう寝たきりの老人、特にぼけ老人を抱えた御家庭の御苦労というのは私たちの想像を絶するのではないか。また逆に言えば、もし自分の父や母がそうなった場合に一体どうしようかという不安を抱えている御家庭もたくさんおありになると承っておるわけでございまして、かといって特別養護老人ホームは順番があってなかなか入れてくれない、病院は、これから老人保健法の改正もありますけれども、費用負担も大分かかるというようなことになってまいりますと、やはり在宅だということになってくるのではないかと思います。その場合に、特にそういう痴呆性老人や寝たきり老人の方々への在宅福祉に関して何か公的な援助システム等の確立をぜひ推し進める必要があると思うわけでございますけれども、ひとつ大臣の御所見を承れればと思います。
○斎藤国務大臣 ただいま社会局長から答弁申し上げましたように、在宅にあって介護されておられるお年寄りに対して、その介護をする方の御苦労を少しでも軽減いたしてまいるというような観点からの家庭奉仕員制度の拡充とか、またデイサービスやショートステイ等の補助率の引き上げ、また箇所数の増大というようなことを中心にして進めてまいっておるところでございます。
 痴呆性老人対策もこの中で進められてまいるわけでございまするけれども、痴呆性老人という問題そのものについてまだまだ未確定な部分がございまして、このたび厚生省の中に痴呆性老人対策推進本部というものをつくりまして、この痴呆性老人の発生のメカニズム、そしてまたその予防、またその痴呆性老人に対する対策等をいかにしていったらいいかということについて研究を進め、検討を進めてまいろう、こういうことにいたしております。また老人福祉施設、特養等における痴呆性老人の処遇等についても改善をいたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○木村(義)委員 特に痴呆性老人対策、本当に深刻な問題でございますし、場合によっては家庭崩壊のもとにもなりかねない、また現実にそういう御家庭も出ているというふうに承っております。ぜひ一層の進展をしていただきたいわけでございますが、そのような高齢者の在宅福祉を支える公的システムを確立していくには、やはり保健と医療と福祉の連携が必要である。私、地元を回っておりますと、看護婦の方々や保健婦さんの方々やお医者さんの方々から言われるわけでございまして、今その三者がばらばらであるような気がしてならないわけでございます。そこで、ぜひこの三者の連携が必要であると考えるわけでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
○斎藤国務大臣 お話のとおり、保健、医療、福祉のサービスが連携をもって総合的に対策を推進いたしてまいるということは非常に重要なことであるというふうに考えておりまして、在宅福祉の推進につきましても、そういう観点を常に頭に置いて進めさせていただきたい。家庭奉仕員等が巡回していただくについても、保健婦さんと一緒に回っていただくとか、保健所の対策と呼応しながら在宅福祉を進めるとかいうようなことで、それぞれの場においてきめ細かく進められるように特別の配慮をいたしてまいりたいと考えております。
○木村(義)委員 大臣にお伺いしたいのですが、三者の連携について何か具体的な施策等お考えになっておられますか。
○小林(功)政府委員 先ほどもちょっとお答えに出ていましたが、高齢者対策企画推進本部、これの報告が出ておりまして、その中に、例えば市町村に保健、医療、福祉の実務者レベルから成るサービス調整委員会をつくれとか、あるいは各種相談を行う窓口を調整して相談センターを整備しろとかいろいろこういう内容が含まれております。私どもそれをもとにいたしまして予算要求しております。ただ、今概算要求の段階でありまして、これから政府部内で詰める段階でありますから、内容について細部は御勘弁いただきたいと思いますけれども、そういう企画推進本部の報告書の内容の趣旨を踏まえまして、現に予算要求しているし、それについては大いに努力したい、こういう考えでございます。
○木村(義)委員 これはある意味では、高齢者対策、在宅福祉というのも本当に永遠な問題です。私の地元であります香川県は老人比率が一六%でございまして、日本の平均からいうと二○○○年の水準だそうでございます。特に県民の皆さん、また国民の皆さんが一番ある意味では関心を持っておるわけでございますので、ひとつ大臣の勇気ある行動を御期待をいたしまして、一応この問題は閉じさせていただきまして、次に歯科の問題を取り急がせていただきたいと思います。
 今、年寄りの話が出たのですが、やはり歯の健康というのは何といっても食べる楽しみにつながるわけでございまして、老人の方々、先ほどどなたか質問が出ておりましたけれども、その歯の件についてひとつ質問をさせていただきます。
 承るところによりますと、医師の方はインターンの制度があるわけでございますが、歯科医師には現在インターンの制度がないわけでございまして、私もこれは不思議だなと思って、どうしてインターンの制度がないのだろう、こう思っておったわけでございまして、今までの歯科医師が大学を卒業した後の臨床研修については、今、政府としてはどのようにお考えか、お承りしたいと思います。
○竹中政府委員 お話しございましたように、現在医師につきましては、医師法で臨床研修制度が明記をされておりますが、歯科医師については臨床研修制度がないわけでございます。ただ、現在の歯科医療でございますけれども、最近御案内のように、治療技術の高度化あるいは専門分化といったような傾向が非常に強くなっておりまして、一般歯科医師といいますか、ゼネラルプラクティショナーとしての歯科医師というものが育ちにくくなっておるのが現状でございます。
 それからまた、歯科大学あるいは歯学部の附属病院、そういったところの学生の臨床実習でございますが、一つは大学側が医療過誤を恐れまして、学生について見学実習を主体にするというところが多くなっておりますし、また患者さんの側からも、学生に治療を受けるということについて非常に拒否と申しますか、消極的な場面が多うございまして、そういったいろいろな点からいたしまして、歯科大学の中での教育、つまり卒前教育では一般歯科医師としての技能の習得が大変困難になっておるわけでございます。その結果、このために卒業直後の歯科医師を対象といたしまして、適切な指導者のもとで歯科医療全般につきましての基本的な診療能力を習得をしてもらうための臨床研修というのが最近特に必要性が高まっておるのではないかと考えております。
 こういう状況でございますので、今後の我が国の歯科保健医療の水準を確保いたしますために、昭和六十二年度の概算要求におきまして、新規事業といたしまして、卒業直後の歯科医師に対して臨床研修を行う一般歯科医養成研修事業というのを新規事業として現在要求をいたしております。私どもといたしましては、その実現に努力をしてまいりたいと考えております。
○木村(義)委員 特に最近歯科医の先生の開業がふえておるわけでございまして、駅をおりたら銀行の看板と歯科医の看板だというようなところもあるやに承っております。私たちがいい歯医者さん悪い歯医者さんというのを見分けるのがなかなか難しい。これは皆様よく御存じでありますが、私もあるところで歯を抜きましたら、一週間寝込んだことがございます。また逆に、うまい先生のところで抜いてもらいましたら、その日から一杯飲めたというような経験もあるわけでございまして、大分差があるわけでございます。この歯科医の方々の質的向上に大いにこの臨床研修制度が役に立つのではないかと思っておるわけでございますが、具体的にどのように実施することをお考えになっておるのか。また聞くところによりますと、財団をこれからつくるというようなお話も承っております。この財団を通じて各歯科大学に臨床研修を依頼することになっていると言われておりますが、どのようになっているのか。また将来の歯科の質の向上に役立つと私も考えるわけでございますけれども、どのようにお考えか。その辺を具体的にお知らせいただければと思います。
○竹中政府委員 先ほど申しました卒業直後の歯科医師の臨床研修でございますが、昭和六十二年度の概算要求といたしまして五百人分三億九千四百万円の要求をいたしております。
 実施の方法といたしましては、歯科大学の附属病院で適切な指導者のもとに一年間の臨床研修を行うということを考えております。
 それからまた、お話しございましたように、財団を設立をいたしまして、これを通じて一元的な指導監督と効率的な執行を図るということも一つの有力な方法ではなかろうかと考えておるわけでございます。
 今後私ども予算編成の十二月までの過程で本件についての財政当局の理解が得られるよう努力してまいりたいと考えております。
○木村(義)委員 ひとつ御担当の方々の積極的な運営を御希望いたしまして、きょうの私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
○堀内委員長 次回は、来る十四日火曜日午前九時四十五分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十八分散会