第108回国会 法務委員会 第3号
昭和六十二年五月十五日(金曜日)
    午前十時六分開議
出席委員
  委員長 大塚 雄司君
   理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君
   理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君
   理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君
   理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君
      逢沢 一郎君    赤城 宗徳君
      上村千一郎君    木部 佳昭君
      佐藤 敬夫君    小澤 克介君
      坂上 富男君    山花 貞夫君
      橋本 文彦君    冬柴 鉄三君
      安藤  巖君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 遠藤  要君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      関   守君
        法務大臣官房長 根來 泰周君
        法務大臣官房会
        計課長     則定  衛君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 清水  湛君
        法務省民事局長 千種 秀夫君
        法務省刑事局長 岡村 泰孝君
        法務省矯正局長 敷田  稔君
        法務省保護局長 俵谷 利幸君
        法務省人権擁護
        局長      野崎 幸雄君
        法務省入国管理
        局長      小林 俊二君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局捜
        査第一課長   小杉 修二君
        警察庁刑事局捜
        査第二課長   古川 定昭君
        警察庁刑事局保
        安部生活経済課
        長       上野 治男君
        警察庁警備局公
        安第二課長   鹿嶋 正之君
        総務庁行政管理
        局管理官    伊原 正躬君
        経済企画庁国民
        生活局消費者行
        政第二課長   吉田  博君
        科学技術庁原子
        力安全局原子炉
        規制課長    岡崎 俊雄君
        外務省アジア局
        中国課長    槇田 邦彦君
        国税庁直税部法
        人税課長    瀧川 哲男君
        厚生省保健医療
        局感染症対策室
        長       伊藤 雅治君
        厚生省保健医療
        局精神保健課長 小林 秀資君
        資源エネルギー
        庁公益事業部原
        子力発電安全審
        査課長     山本 欣市君
        郵政省電気通信
        局電気通信事業
        部電気通信技術
        システム課長  小嶋  弘君
        建設省建設経済
        総務課長    丸田 哲司君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  山口  繁君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  上谷  清君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  吉丸  眞君
        法務委員会調査
        室長      末永 秀夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月二十五日
 辞任         補欠選任
  坂上 富男君     関山 信之君
同日
 辞任         補欠選任
  関山 信之君     坂上 富男君
四月十四日
 辞任         補欠選任
  冬柴 鉄三君     大久保直彦君
同日
 辞任         補欠選任
  大久保直彦君     冬柴 鉄三君
同月十五日
 辞任         補欠選任
  冬柴 鉄三君     坂口  力君
同日
 辞任         補欠選任
  坂口  力君     冬柴 鉄三君
    ―――――――――――――
三月二十六日
 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八
 一号)
 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八
 二号)
 刑事確定訴訟記録法案(内閣提出第八七号)(
 予)
五月六日
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
同月十三日
 外国人登録法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第六二号)
三月二十七日
 外国人登録法の改正に関する請願(稲葉誠一君
 紹介)(第一二九七号)
四月十五日
 外国人登録法の改正に関する請願(井上一成君
 紹介)(第一六六七号)
同月十六日
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
 に関する請願(五十嵐広三君紹介)(第一八三
 六号)
 同(井上一成君紹介)(第一八三七号)
 同外一件(伊藤茂君紹介)(第一八三八号)
 同(池端清一君紹介)(第一八三九号)
 同(佐藤徳雄君紹介)(第一八四〇号)
 同(田口健二君紹介)(第一八四一号)
 同外一件(山花貞夫君紹介)(第一八四二号)
同月二十日
 外国人登録法の抜本的改正に関する請願(山花
 貞夫君紹介)(第一九六二号)
 同外一件(坂上富男君紹介)(第二〇三九号)
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
 に関する請願(沢藤礼次郎君紹介)(第一九六
 三号)
 同(嶋崎譲君紹介)(第一九六四号)
 同(安藤巖君紹介)(第二〇一八号)
 同(石井郁子君紹介)(第二〇一九号)
 同(浦井洋君紹介)(第二〇二〇号)
 同(金子みつ君紹介)(第二〇二一号)
 同外一件(金子満広君紹介)(第二〇二二号)
 同(経塚幸夫君紹介)(第二〇二三号)
 同(工藤晃君紹介)(第二〇二四号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇二五号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第二〇二六号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第二〇二七号)
 同(城地豊司君紹介)(第二〇二八号)
 同外一件(坂上富男君紹介)(第二〇二九号)
 同(田中美智子君紹介)(第二〇三〇号)
 同(辻第一君紹介)(第二〇三一号)
 同(中島武敏君紹介)(第二〇三二号)
 同(野間友一君紹介)(第二〇三三号)
 同(東中光雄君紹介)(第二〇三四号)
 同(藤田スミ君紹介)(第二〇三五号)
 同(村上弘君紹介)(第二〇三六号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第二〇三七号)
 同(山原健二郎君紹介)(第二〇三八号)
 外国人登録法の抜本改正に関する請願(山花貞
 夫君紹介)(第二〇一七号)
同月二十四日
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
 に関する請願(竹内猛君紹介)(第二一三六号
 )
 同(大原亨君紹介)(第二一九二号)
 同(田中恒利君紹介)(第二一九三号)
 同(稲葉誠一君紹介)(第二二一九号)
 同外一件(小澤克介君紹介)(第二二二〇号)
 同(緒方克陽君紹介)(第二二二一号)
 同(寺前巖君紹介)(第二二二二号)
 同(三野優美君紹介)(第二二二三号)
 同(川崎寛治君紹介)(第二二七三号)
 外国人登録法の改正に関する請願(稲葉誠一君
 紹介)(第二二一八号)
 外国人登録法の抜本的改正に関する請願外一件
 (伊藤茂君紹介)(第二二二四号)
 同(稲葉誠一君紹介)(第二二二五号)
同月二十七日
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
 に関する請願(高沢寅男君紹介)(第二三八三
 号)
五月八日
 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員
 に関する請願(岡田利春君紹介)(第二七〇二
 号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
四月八日
 司法制度の近代化に関する陳情書(水戸市河和
 田三の二四一六の二飯田端)(第七六号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八
 二号)
 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内
 治安及び人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
○大塚委員長 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所山口総務局長、上谷民事局長、吉丸刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○大塚委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。
 この際、法務行政等の当面する諸問題について、遠藤法務大臣から説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
○遠藤国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。
 この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 昨年、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民の権利がよく保全されていることが極めて肝要であると存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民に親しまれ、真に国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じております。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。
 最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、犯罪発生件数が漸増の傾向を示しているだけでなく、内容的にも、保険金目当ての殺人・放火事件、身の代金目的の誘拐事件、流通過程にある食品への毒物混入や組織暴力団の対立抗争に起因する銃器による殺傷事件などの凶悪事犯が多発しているほか、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事件、地方公共団体の首長による汚職事件、大規模かつ巧妙な租税逋脱事件その他の不正事犯もその後を絶たず、また、覚せい剤を初めとする薬物の乱用が引き続き一般国民の間に拡散しつつあると認められるのであります。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を呼号し、過般の東京サミットの際における迎賓館等に対する手製弾発射事件に見られるように、悪質なゲリラ事犯を相次いで敢行しており、他方、右翼諸団体による不法越軌行動も一段と尖鋭化の度を強めている状況にあります。特に、このたびの朝日新聞社阪神支局員に対する殺傷事件は、現に警察当局において厳正な捜査を行っていると承知しておりますが、これは、まれに見る凶悪な事件であり、もしそれが言論封殺を企図したものであるとするならば、それは民主主義の根幹を破壊しかねない重大な事件と言わなければなりません。加えて、次代を担うべき少年の非行は、依然高水準を維持しているのでありまして、今後における犯罪の動向には、引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。
 私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいりたいと存じております。
 なお、刑法の全面改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますので、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進めてまいりたいと存じておりますが、一方で、最近におけるコンピューターによる情報処理組織の著しい発展及び普及に伴い、刑法等従来の罰則によっては的確な対応の困難なコンピューター関連の反社会的行為の発生を見るようになり、この種反社会的な行為は今後増加することが予想されますので、緊急にこれらに対処するための立法措置を講ずる必要があり、また、最近の国際的なテロ活動を反映して、我が国としても国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する国際条約を早急に締結することが国際的にも要請されるに至っており、これらの条約の義務の履行の上で必要とされる国外犯処罰規定の新設等の刑法その他の関係法規の整備を行うことが必要と認められることから、これらの点について、法制審議会の調査審議を願い、本年二月二十六日答申を受け、これに基づいて刑法等の一部を改正する法律案を取りまとめ、今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 また、一昨年の第百二回国会において刑事の確定訴訟記録の保管に関する法律の制定を求める請願が採択されましたことにもかんがみ、その立案作業を行ってまいりましたが、これについても、今国会に刑事確定訴訟記録法案として提出したところでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護活動についてであります。
 犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、広く国民の理解と協力を得つつ、刑務所、少年院等における施設内処遇と保護観察等の社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいりたいと存じております。
 そのためには、まず施設内処遇につき、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努めるとともに、仮釈放のより適正妥当な運用を図り、また、保護観察等の社会内処遇において、保護観察官と保護司との協働態勢及び更生保護会における処遇態勢を一層充実強化し、関係機関・団体との連携をさらに緊密にするなど、現下の情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。
 また、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出しましたところ、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となったのでありますが、その後、法務省では、同法律案の修正を求める動きのあった日本弁護士連合会と合計二十六回の会議を持って、意見の交換を行うとともに、留置施設法案を所管する警察庁と意見調整を図り、必要な修正を加えた上、去る四月三十日、今国会に同法律案を再提出したものであります。
 同法律案は、もはや時代に適合しなくなった現行監獄法を全面的に改めるもので、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善を行おうとするものでありますので、十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第三は、一般民事関係事務の処理、人権擁護活動及び訟務事件の処理についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、我が国経済の発展に伴って逐年増加を続けている登記事務の関係では、昭和六十年度に創設された登記特別会計の趣旨に即して、事務処理の適正円滑な遂行を図るため、登記事務のコンピューター化を初めとする登記事務処理体制の抜本的改善に努めてまいりたいと存じます。
 なお、民事関係の立法につきましては、養子制度の改善合理化を図るための民法等の改正及びそれに伴う戸籍法の改正について、それぞれ法制審議会及び民事行政審議会の答申を得、その趣旨に沿って民法等の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 次に、人権擁護活動につきましては、国民の基本的人権の保障をより確かなものとするため、各種の広報活動によって、国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めるとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じ、関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいりたいと存じます。特にいじめの問題及び教職員による体罰の問題、さらには重大な社会問題となっております部落差別を初めとするあらゆる差別事象の問題につきましては、その根絶に寄与してまいりたいと考えております。
 さらに、訟務事件の処理につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、複雑多様化した今日の社会経済情勢と国民の権利意識の変化を反映して、例えば、選挙訴訟、環境関係訴訟、原子力関係訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られるように、社会的にも法律的にも新たな問題を内包する重要かつ複雑な事件が増加しており、その結果いかんが直ちに国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくありませんので、今後とも事務処理体制の充実強化を図り、事件の適正円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。
 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
 国際交流の活発化に伴い、我が国に出入国する内外人の数は逐年増大し、我が国に在留する外国人の活動の範囲や内容も一層複雑多様化しております。同時に不法入国、資格外活動、不法残留等の外国人による法違反行為、特に周辺アジア諸国から短期査証で入国した者による不法就労事犯は著しく増加している状況にあります。出入国管理事務は、このような情勢に適切に対応するとともに、国際協調の一層の進展に即応する責務を担っているのであり、その重要性はますます高まっておりますので、このような情勢を踏まえ、今後引き続き出入国及び在留外国人の管理に関する事務の迅速適正な処理及び組織・体制の充実強化に努めてまいりたいと存じます。
 なお、かねて懸案となっておりました外国人登録法の見直しにつきましては、指紋押捺義務の緩和を含む外国人登録法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 第五は、簡易裁判所の配置の適正化についてであります。
 簡易裁判所は、昭和二十二年に少額軽微な事件を簡易迅速に処理することを目的として設立され、現在全国に五百七十五庁設置されております。簡易裁判所の配置は、創立以来約四十年の間、基本的な変更が加えられないまま現在に至っておりますが、その間の経済の発展等に伴い、人口の都市集中、交通事情の発達等、簡易裁判所の配置に関連する諸事情は大きく変動しております。その結果、一方ではほとんど利用されていない簡易裁判所がある反面、事件が激増し、非常に忙しい簡易裁判所もあるといった事件数の両極化現象が生じる等、裁判所の運営上種々の問題が生じ、もはや放置することができない状況となっております。
 簡易裁判所の配置の見直しの問題は、国民の裁判を受ける利便に直接関係し、また、裁判所の配置という司法制度の基盤にかかわる問題でありますので、昭和六十一年二月、法制審議会に対し本問題の審議を求めましたところ、同審議会は、慎重な調査審議を経た上、同年九月十九日、全会一致で簡易裁判所の適正配置に関する答申をいたしました。
 答申では、簡易裁判所の配置が社会の実情にそぐわなくなっているため裁判所全体の合理的な運営が困難になっているとし、現在の交通事情の改善等を考慮すると、事件数の少ない小規模な簡易裁判所については、答申に示された基準に従い、その相当数を統合し、また、事件の激増している大都市の簡易裁判所についてもできる限り統合することにより、簡易裁判所全体の充実強化を図るべきであるとしております。
 法務省といたしましては、この答申の趣旨を尊重して最高裁判所とも十分協議をした上、簡易裁判所の適正配置の具体案を確定し、今国会に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案として提案したところであります。十分な御審議を経て、速やかに成立に至るようお願いする次第であります。
 最後に、法務省の施設につきましては、昨年に引き続き整備を促進するとともに、事務処理の適正化と執務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策について所信の一端を述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
○大塚委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冬柴鉄三君。
    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
○冬柴委員 終戦後四十年、灰じんの中から我が国は驚異の再建を遂げ、今日本国民は、人類がかつて手中にしたことのない豊かさと、そして平和と自由とを享受していると思います。それは、民主、人権、平和の三原理に立脚した日本国憲法を戦後一貫して厳護してきた国民の不断の努力に淵源するところが大であると信じております。
 本年五月三日は、このような日本国憲法施行四十年の佳節を刻む意義深い祝日でありました。その夕刻、朝日新聞社西宮支局に覆面の暴漢が押し入り、談笑する記者二名の背後から、誰何するなどしてその何人かを確認することもなく、突然猟銃二発を発射し、一名を殺害、一名に瀕死の重傷を負わせるという重大事件が発生しました。本日は、この事件に巻き込まれて逝去された小尻知博記者の朝日新聞社社葬の日であると伺っています。この際、私は、小尻記者の御冥福をお祈りして弔意を表するとともに、御遺族に対し心よりお悔やみを申し上げたい、そのように存ずる次第でございます。
 この事件が憲法記念日における言論機関に対する問答無用の凶行であるだけに、私は、日本国憲法秩序そのものに対する公然たる挑戦であると考え、強い衝撃とともに込み上げる怒りを抑えることができない気持ちなのでございます。このような狂気の犯行によって言論の自由がいささかの制肘も受けてはならない、筆は曲げられてはならない、このように強く願うものでありますが、この事件に対する法務大臣の所見を伺いたいのでございます。
○遠藤国務大臣 ただいま先生お尋ねの件にお答えする前に、凶弾によってとうとい生命を失われた朝日新聞社員に対して、私からも心から御冥福をお祈りいたし、かつまた、この真相の究明と犯人検挙に捜査当局とともに努力してまいることをまずもってお誓い申し上げたいと思います。
 お尋ねの事件については、現在捜査当局において捜査中と承知をいたしております。この真相が明らかではございませんけれども、犯行の手段方法がどこから見ても凶悪な事件であることは申し上げるまでもないと思っております。この種の暴力事犯は目的のいかんを問わず許されないところでございますけれども、もしそれが先生のお話のように報道機関、言論封殺を意図されたものであるということになりますれば、それは民主主義の根幹を破壊しかねない、極めて重大な事件であると私は思います。そのような点で速やかな真相の解明を期待しておるところでございますが、検察としても厳正に対処していきたい。そうしてこそ初めて民主主義社会の保持ができ、平和な国家が形成される、こう信じております。
○冬柴委員 話は変わりますが、近年大胆不敵な犯行を敢行した上で、犯行後、犯行声明やあるいは脅迫状を送りつけてくるという異常な事件が多発している、このような点が憂慮されるのでございます。朝日新聞西宮支局襲撃事件もその範疇に入らなければいいが、このようにも思いますが、何といってもその典型はグリコ・森永脅迫事件であろうかと思います。このような事件が未解決のまま経過する場合、国民の法秩序に対する信頼感が損なわれることは言うまでもございませんが、これを模倣し、あるいは便乗する新たな犯罪を生ずる、そのようなことが危惧されるわけでございます。
 ちなみに、グリコ事件は発生以来ことしの三月で三年目を迎えたようでございますが、これを模倣した食品企業に対する恐喝事件の認知立件状況、そのようなものについて御説明をいただきたい、このように思います。
○小杉説明員 お答えをいたします。
 御指摘のように、重大犯罪の犯人が検挙されませんと治安上多様な問題点が生ずることともなりかねないことは、過去にも幾多の例があるところであります。グリコ・森永事件を世上模倣したとされているところの食品企業に対する恐喝事件につきましては、大変多発をいたしまして、昭和五十九年、これはグリコ事件が発生した年でありますが、五十一件、昭和六十年に至りまして百一件、昭和六十一年は二百二十二件と倍増をいたしたところでありまして、警察といたしましても、この事件の社会的な悪影響等を十分認識をいたしまして厳正に対処いたしてまいりまして、多数の事件を検挙、解決したこともございまして、この事件は本年に入りましては大変ペースダウンをいたしまして、五月十五日現在、きょう現在で二十一件と非常に少なくなっている状況でございます。
○冬柴委員 ちなみに、これに対する検挙の状況はどんなものでしょうか。
○小杉説明員 検挙の状況を年次別に御参考に申し上げますと、昭和五十九年中の五十一件に対しては三十一件検挙しております。六十年は百一件に対して七十二件、六十一年が二百二十二件に対して百十九件、本年が二十一件に対して十三件という状況でありますが、この中身をよく検討してまいりますと、未検挙の事件のうち七割ぐらいはいたずらと見られるものがある。たった一回こっきりの脅迫で後動きがないとか、あるいは大変荒唐無稽な要求を掲げる。ビルの屋上から金をばらまけとか、そういったような点を判断いたしますと、未検挙の七割ぐらいはいたずらではなかったかというふうに見ておりますので、ただいま申し上げた検挙の状況は実質的に非常に高いと私どもは見ているところであります。
○冬柴委員 このように凶悪事件につきましても、それを検挙することによって次の犯罪の発生を防圧することができる、そういうことは言うまでもないわけでございまして、今回の朝日新聞社の事件につきましても、このような事件こそ一日も早く犯人を逮捕してその背後関係を明らかにすることによって再犯を防止し、そして模倣犯を防圧する、そのようなことができる、このように思うわけでございまして、捜査当局からもこの朝日新聞社事件についての決意を伺いたい、このように思います。
○小杉説明員 本件につきましては、先生御指摘のように社会的な重要性あるいは凶悪性というものを私ども十分認識をいたしまして、地元兵庫県警のみならず全国警察の所要の捜査力を結集して鋭意捜査に当たっているところであります。私どもとしても一日も早い検挙とその事案の全容の解明に努めてまいる所存であります。
○冬柴委員 また話は変わりますが、首都東京のど真ん中、有楽町で早朝衆人環視のもとで行われた有楽町三億円強奪事件、こういうものも、かつて昭和四十三年府中市で行われた、そしてまた起訴時効が完成したと言われる三億円の強奪事件の模倣でなければいいが、このような考えを持つものではありますけれども、このような事件の共通する点と申しますか、それは高速で移動する、自動車の利用ということでございます。ひっきょう都道府県境を越えた捜査を必要とするのでございます。そのように考えてまいりますと、今の犯罪地を所管する警察署に捜査本部を置く、そして都道府県境界を越えた場所に、その関連した事件の犯罪、犯人あるいはその犯罪に供せられたブツ等がそういうところで出た場合には、管外は共助事件として捜査をしておられるのではないか、このように思うわけでございますが、現在の犯罪が凶悪化し、そして広域化し、ついには国際化している、このような時代にこのような犯罪捜査に対する警察の対処、その辺はどのようなものになっているのか、その点について具体的に伺っておきたいと思います。
○小杉説明員 お答えをいたします。
 お尋ねのように重要事件の発生に際しましては、捜査本部体制として発生地を管轄する警察署に設置をするのが通例ではございますが、その活動は単に当該警察署の管轄区域だけに限られるものではないのでありまして、その当該府県内で捜査をし得ることはもちろんでありますが、事件の内容あるいは態様に応じて他の都道府県警察と十分な連携協力のもとに捜査を推進することができるような仕掛けになっているわけであります。
 また、御指摘のように現在犯罪の広域化あるいは国際化、スピード化、多様化、こういったことが叫ばれているわけでありますが、これに対する対応については、刑事警察としては極めて重要な今日的課題と認識しておりまして、例えば昨年十月に、今後の刑事警察運営上の指針として刑事警察充実強化対策要綱というものを定めまして、広域捜査力の充実あるいは科学捜査力の強化あるいは国際捜査力の強化、こういったことを図るために、体制の整備充実あるいは捜査用の装備、食器材の充実等、いろいろの対策を目下鋭意進めているところでございます。したがいまして、今や御指摘のような捜査に関して警察署の壁であるとかあるいは都道府県警察の壁であるとか、そういったことは一切ないものと私どもは認識をしているところであります。
○冬柴委員 次の質問に移りますが、五月十日に帝銀事件の死刑囚である平沢貞通元被告が死亡いたしました。判決確定から三十二年、逮捕から実に三十八年余という異例の長期拘置であったと認識しております。私は、先哲が「命と申すものは一切の財の中に第一の財なり。三千大千世界に満てて候財も命にはかえぬことに候なり。」このようにおっしゃっていられること、あるいは我が日本国憲法第十三条にも生命は「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」このように宣言していること等に照らしまして、死刑制度というのは、いつの日にか国民の広範なコンセンサスを得て廃止すべきものである、このように私は考えているのでございます。しかし、現行法上死刑という制度が現存して、かつ最終有権判断としての最高裁判所判決において死刑が確定した以上、三十二年間という長期間なぜその執行がなされなかったのか、この点について強く疑問に感ずるのでございます。
 これに関連いたしまして、死刑というものを考える上から若干答弁をいただきたいのですが、昭和三十年、四十年、五十年、この三十年間に死刑が確定した判決は一体何件あったのか、そしてその確定判決によって三十年代、四十年代、五十年代にそれぞれ何件が執行されたのか、多少どぎつい質問ではございますけれども、この点についてまずお答えいただきたいと思います。
○岡村政府委員 死刑につきましては、これを執行いたしますとそのもたらす結果が重大でございますので、死刑の執行につきましては、個別の案件に応じましていろいろ慎重な配慮をいたしておるところでございます。
 平沢につきましては、既に御承知のことと思いますが、再審請求を十八回、恩赦の出願を五回行っていたところでございます。ほとんど切れ目なくこれらの請求や出願が行われておったというような事情もございまして、諸般の事情を慎重に検討を続けていた結果といたしましてその執行に至らなかったということでございます。
 次に、死刑判決の確定件数とその執行件数について御説明いたします。
 昭和三十年代の十年間に死刑の裁判が確定した者は、百九十四名でございます。その間の執行人員が二百二名。昭和四十年代の十年間に確定いたしました者九十名、その間の執行人員百六名。昭和五十年代の十年間の確定人員が三十名、執行人員が四十二名ということでございます。
○冬柴委員 十年ごとにすごく減っているということは非常に喜ばしいことですが、しかし、数を聞きますとまだ相当な数があるということの感を深くするわけでございます。このような、通算しますと三百数十名の執行が片やなされているわけですが、その間、事情はあったとはいえ平沢元被告については執行がなされなかった。そのような、ある場合は執行が確定後間もなく行われ、またある場合は行われないということについて、何か合理的な、あるいは国民が理解できるような説明が欲しいわけでございますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
 再審十八回、恩赦五回というのは確かに異常ですけれども、この三十年間に執行された死刑囚たちも、再審あるいは恩赦を再三出している事例を私も知っております。私の記憶によれば手続中に執行された例もあったわけでありますが、このような死刑執行についての何らかの内部規律といいますか、あれば差し支えない範囲で答えていただきたいと思います。
○岡村政府委員 裁判の執行は、一般的に申しまして、裁判が確定いたしますれば速やかにこれを行うということが原則であるわけでございます。しかしながら、死刑の執行につきましては、やはりそれがもたらします結果の重大性というものを考えますと慎重な配慮が必要であるというふうに考えているところでございます。
 裁判が確定いたしましてから死刑が執行されるまでの期間でございますが、これはやはり個々の案件に応じまして、諸般の事情を検討しつつ慎重にその時期を選定するということで対処をしてきたところでございまして、恩赦の出願あるいは再審の請求といったものがなされました場合は、やはりその推移を見守る等の配慮もなしてきたところでございます。ただ、そういった再審の請求なり恩赦の出願がなされているということも一つの事情として、諸般の事情を検討するということで対処をしてきたところであるわけでございます。死刑の執行につきましては、刑訴法上、裁判確定後六カ月以内にこれを執行せよという趣旨の規定がございますが、それ以上に具体的な基準と申しますか、そういったものは特にないわけでございます。
○遠藤国務大臣 先生のお尋ね、これは、先生のみならず一般の国民の皆さん方がそういうふうな疑問を持たれておるのではないかなと、こう思っております。私も率直に、当委員会でこんなお話を申し上げるということは軽率かもしれませんけれども、私自身法務大臣を拝命する前は先生と同じような疑問を実は持っておったわけです。それで大臣に就任直後に、法務省の首脳部を招致して、一体どうなのかということで改めてただしたという経緯がございます。その結果、一つは、平沢死刑囚はやはり間違いなく真犯人であるということを私は再確認をいたしたということが一つと、なぜこんなに、今先生のお話しのように三十数年判決を行った後に放置しておったか、これは役所の怠慢ではないかというような考えも私自身持っておったわけでございますけれども、いろいろ調査をしてみると、今刑事局長のお話しのとおり、再審請求、そして恩赦ということで十八回、五回、二十三回ということになりますると、大体一つの再審に二年かかったとしても、先生御承知のように三十何年はたっぷりかかるという点がございます。
 きのうも実は参議院の法務委員会で私の心境を率直に申し上げ、マスコミからもお褒めか御批判かわかりませんけれども御指摘を受けておるというような状態ですが、やはり長く刑の執行を行わないと何が不信感が持たれるということで、役所の怠慢のそしりを受けるということになると思います。一般の自由刑とか財産刑とか、そういうような問題は直ちに執行されますけれども、死刑執行は最終的に法務大臣によって決するということは、やはり当初に先生のお話しのとおり、人命尊重と申しましょうか、人の命というのはいかにとうとく重いものかというので、慎重に慎重を期せということが、そのような状態に法が定めておるのではないかなと、こう思っております。
 一部マスコミや何かでは、法務大臣はその決裁をすることを回避しているというような話もございますけれども、私の立場から言うと、各大臣とも同じ心境だろうと思いますけれども、法務大臣として就任した限りは、やはり皆さん方にも常に強調しておるように、法の秩序保持ということを言うたら、法は皆さん方に守ってもらいたいと言うとき、大臣自身が法を守っていくということは当然なことで、法に私情を絡ませるというようなことは考えてはいかぬと、こういうような点は私は持っておるわけでございます。
 平沢問題について、やはり再審請求が何回も時間を待たずしてすぐすぐということで出されると、途中でそれを打ち切った例も先生のお話のとおりございますけれども、もしもこれを打ち切って執行したということになると、一体国民の皆さん方からどういうふうな反応が、あれは口をふさぐために早くやったんだというようなことで一つの疑問を残すということも、やはり法のこれからの秩序保持のためには遺憾なことでもあるという点を考え、また怠慢のそしりとか、どうも判決に対して法務省自体が疑義を持っているんじゃないかというようにもとられるということになると、一体どうすればいいのかというようなことで、再審請求の制限などということも考えてみなければならぬのかなというようなことを、きのう法務委員会で実は率直に私の心境を申し上げたわけです。それが法務省で今検討中のような報道をされましたけれども、これは私だけの、そのときの質疑応答の中で、早くやれという、早くやって軽率、何か問題があるのを口ふさぎのために執行したというようなそしりを受けてもいかぬし、余り引き延ばして怠慢のそしりと判決に対する疑問を持たせてもいかぬというようなジレンマがあったということで、そのようなお話をきのう申し上げたというわけでございます。
 私自身として、この死刑の執行ということは、これは繰り返すことのできない問題でございますし、それだけに慎重を期していかなければならぬと、こう思っておるわけでございますので、その点大変愚鈍な私でございますので、それをすぱっとどっちにするかと、右をとるか左をとるかと言われても、何とも申し上げかねる心境だということを御理解をちょうだいいたしておけば幸いだと思います。
○冬柴委員 このような死刑を考える上において非常に重要なことがここで起こりました。そこでお尋ねをしたいのですけれども、死刑制度の存廃ということは常に議論されるところでございますが、死刑制度の存続の根拠とされるところにいろいろな要素がありますけれども、その素朴で最も強い意見と申しますか、大方の支持を受けている論拠の中に、死刑というものは存在することによって一般的に威嚇をして、そして犯罪の抑止というものに役立つ、このような考え方があると思われますが、その点についてはどのようなお考えを持たれるのか、お答えいただきたいと思います。
○岡村政府委員 一般的に申し上げまして、刑罰は犯罪に対しまして一般的、特別的な予防効果を持っているものであるというふうに考えられているところでございまして、刑罰の一つであり、最高の刑罰でありますところの死刑につきましてもまたその例外ではないというふうに考えているのであります。このことは人類の長い歴史におきまして法的確信と言えるほどまでに広く認識されているところでございまして、現在の我が国の国民の多くもまたそのような確信を抱いているものであると思うのでございます。いろいろ死刑制度につきましては調査が行われているところでありまして、その調査結果を見ましても、死刑を廃止する必要がないという意見が過半数を占めている。時には七〇%を超えている場合もあるわけでございます。こういうような点から見まして、やはり死刑につきましては、犯罪に対します抑止力があるということ、そして現在の我が国におきましては死刑制度の存続が必要であるというふうに国民が理解しているというふうに私どもは考えているのでございます。
 もっとも、いろいろこれに対しましては御意見もございまして、死刑の抑止力を否定するような意見があることは私どもも承知しているところでございまして、今後とも、国民の死刑に対します法的確信の動向などにつきましても十分留意してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○冬柴委員 今刑事局長触れられましたけれども、国民が全部見ていられるわけですから、このような考え方、死刑が刑罰として犯罪抑止力を持つか否かという点についてでありますが、御承知のとおり、アメリカ合衆国では死刑を廃止した州、それから死刑を存置している州、そのようなものがあるわけでございますけれども、その廃止した州が一般に存置した川よりも、殺人率というものを見ましたときにそこに有意な差がない。むしろ、文献では廃止したところは低いと言われているところもあります。そしてまた、ヨーロッパにおいても死刑を廃止した国は平均して低い、このようにも言われている。
 そしてそういうような凶悪犯、死刑相当のような犯罪が行われるという要素は、そこに死刑という制度があるかないかということよりも、むしろその国の経済的、社会的環境の差異とか人口構成とか教育程度、文化程度、そのような面がはるかに重要な役割を果たしている、このように言われている。また、一九六七年の国連の死刑に関する報告書によりましても、死刑の廃止によって凶悪犯罪が増加したり、あるいはその復活によって減少するような事実は認められない、このようなことの報告もなされていることは御承知のとおりでございます。そのようなことにかんがみまして、死刑制度の存廃ということを国民全体で常に考えていく。今刑事局長からは、いろいろな統計で、あるいは七〇%までが死刑を存置すべきだ、このような考えを示されたということをおっしゃいましたけれども、時代によって随分変わっている。例えば、この死刑の確定判決の数が十年間ごとに半分あるいは三分の一も違うというようなことに照らしましても、死刑というものに対する国民あるいは法曹の見方、考え方というものがそこに大きな変化をしているのではないか。
 犯罪件数は、先ほどの法務大臣の所信表明によりますと漸増の傾向にある、このように言われましたし、またそれだけじゃなしに、その犯罪の内容も凶悪化している、このようにおっしゃいましたとおりでございますけれども、三十年代の死刑の判決の確定数が先ほど言われたように百九十四人、四十年代は九十人、五十年代は三十人、こういうことで減っているということは、裁判官においても死刑を選択するということに相当慎重になっていらっしゃるのではないか、また社会がそれを是認しているのではないか、このようなことを考えるわけでございます。
 そこで法務大臣に、いわゆる死刑制度の存廃ということにつきまして法制審議会に諮問する、このようなことのお考えについてお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○遠藤国務大臣 先生御承知のとおり、一般犯罪の判決というのは、死刑を除いては罪の償いをして社会復帰するというようなことでございますけれども、私からそんな話を申し上げてどうかと思いますけれども、死刑執行されて社会復帰は不可能であることは改めて申し上げるまでもないと思います。そのような点を考えると、一体死刑執行というのはどうかというこの疑問点は、確かに先生のお話のように一般国民の中においてもささやかれていることも私は承知をいたしております。しかし、この死刑という制度があって凶悪犯罪が抑止されればなということもあるわけで、よその国でいろいろ死刑というのを廃止して、逆に凶悪犯が減ったという国もあるように承知をいたしておりますけれども、それはやっぱりその国の国民性といったらいいか、人柄といったらいいか、それにも伴うのではないかなと、こう思っております。
 そういうふうな点を考えると、また、今の現況では日本が、御承知のとおり、今先生からもお話のあったとおり、私の当初のあいさつの中にも申し上げておるように、凶悪犯が数が減らない、むしろ逆にふえている、そういうような点を考えると、やっぱりそういうふうな制度もあることがいいのではないかなという感じも持っております。そういうような点がございますけれども、いろいろこの世の中の情勢といいましょうか、社会の大勢といいましょうか、それ相応に、やはり社会に同じように法自体も同化していかなければならぬということは考えております。それで、私として今どうかといってお尋ねを受けると、今のところ、法制審議会にこの問題を諮問するという考えは現在はないということで御理解をちょうだいいたしておぎたいと思います。
○冬柴委員 終わります。ありがとうございました。
○井出委員長代理 中村巖君。
○中村(巖)委員 ただいま法務大臣の所信表明を伺ったわけでありますけれども、私は率直に申し上げて、この法務大臣の所信表明というものは余り感心しない、こういうふうに思っているのでございます。
 と申し上げるのは、私も当委員会に長くおりまして、前の鈴木法務大臣、さらにその前の嶋崎法務大臣、さらにその前の住法務大臣のいずれも所信の表明を伺ったわけでありますけれども、それらを対比をしてみますると、これは全くほとんど同じであるということでありまして、その骨格において全く同じであるのみならず、文章の大部分においてもそのとおり踏襲をされている、こういうことであります。ただ、一部、今国会に提案されております法案の中身について趣旨を説明をしている部分、これはそれぞれの国会において違うわけでありますから、違うわけですけれども、その他の部分については全く同じである。
 例えて言うならば、一々読み上げませんけれども、「以下、当面の重要施策について申し述べます。 第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。 最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、犯罪発生件数が漸増の傾向を示しているだけでなく、」云々、このくだりの文章は全く同じで、最後に来て「過激派集団は、」云々というところで、前の鈴木大臣は「国鉄関係施設に対する同時多発ゲリラ」ということを挙げるのに対して、遠藤大臣は「過般の東京サミットの際における迎賓館等に対する手製弾発射事件に見られるように、」そういうふうに変えるというだけでございまして、さらには「第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護活動についてであります。」ここのところでは、第一のパラグラフの中で鈴木大臣が「所存であります。」というのを「存じております。」と、こういうふうに変えたというにすぎない、こういうことでございます。
 その他、最後に至りますまでそんな調子でございまして、こういうのは、それは確かに法務行政というものが朝令暮改であってはいかぬということは事実であって、継続性を持っていなければならぬということは事実でありましょうけれども、こういうような形で所信の表明がなされるということは極めて適切でないと私は考えております。それはそれなりに、それぞれの大臣が大臣に就任をされて、そして国会に臨む姿勢としてはいろいろなお考え方があり、それぞれの年度における重点施策というものがなければならない、こういうことだろうと思うわけでありますけれども、そういうふうになっておらない。確かにその年にこういう法案を出した、それがその年の施策であると言えばそれもそうでありましょうけれども、やはりそれぞれの大臣の個性というものもなければいかぬのじゃないか、このような気がいたしておるわけでありますけれども、その点について大臣としてはどういうふうにお考えになるのか。
 それから、本年度特に大臣がおやりになりたい施策というのは何なのか、またどういう姿勢でもって法務行政に、他の法務大臣と違う姿勢でどういうふうに臨むのかということについてお考えを承りたいと存ずるものでございます。
○遠藤国務大臣 大変所信表明が型どおりだというお話をちょうだいいたして、非常に、何と申し上げたらいいか、全く自分ながらも先生御指摘のとおりだ、こう正直に申し上げてもいいと思いますが、ただ、法務省として先生方に報告する点は報告し、お願いする点はお願いしなくてはいけないということになるとああいうふうな文章になってしまったということをひとつ御理解をちょうだいいたしたい、こう思います。それで、言葉なり文章においてはそのとおりかもしれませんけれども、例えば朝おはようございますと、こういうのはだれにでもすることだけれども、先生におはようと言うときは本当に心を込めて言っているんだということを、これまた御理解をちょうだいすればおわかり願えるのじゃないかな、こう思っております。
 それで、法務大臣が特に推進したい施策は何かということになりますると、今先生のお話しのとおり、提出法案をぜひ、委員長にもお願いしなければならぬことですけれども、一つだの二つだのと言わないで、ひとつ何とか成立を皆さんのお力でしていただきたいということをまずお願いし、さらに、私としてこれからの法務行政を推進していくに当たって何とかしてこれを改善していきたいというのは、やはり検事に対する、何と言ったらいいか、志望率が非常に低下している、これをもっと何とか高めるような方途を講じたい。
 これには先生方にもいろいろの面で御協力をお願いしなければなりませんけれども、今懇談会をつくらせていただいて、いろいろ学識経験者からの御意見をちょうだいいたしておりますけれども、毎年検事が減少するようでは、一体将来の日本というのが私は心配されるわけでございまして、改めて先生方に申し上げるまでもないのですけれども、検事の立場、使命というのはいかに重大かということをやはり国民の皆さん方に改めて認識をちょうだいいたしたい。よしそれではということで希望が高まってくるというような方法を何とかやったいということが、私のさしあたって、突然そういうふうな質問をちょうだいするとそういうふうな答えになるが、いろいろ欲はございますけれども、まずさしあたっては法案の成立、これはぜひ先生、法案の成立、聞き逃さないでひとつお聞き取りをちょうだいいたし、そしてやはり検事に対する希望を高めていくようなことをやらせていただきたいというようなことを申し上げておきたいと思います。
○中村(巖)委員 所信表明の中で前大臣と違う点というのを見ますと、冒頭のところで法務行政の使命ということについて述べられているわけでありますけれども、その中で前大臣は、「法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がよく保全されていることが肝要と存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたい」、こういうふうに言われているのに対し、やはり遠藤法務大臣もこういうことが肝要だと同じことを述べて、その上で「私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民に親しまれ、真に国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたい」。前大臣と違うところは「国民に親しまれ」という、この七文字を挿入したというところが違うわけでありますけれども、この特に「全力を傾注して国民に親しまれ、」と「国民に親しまれ」という七文字を挿入したということに何かの意味があるのか、どういうことをそれによってお考えになっておられるのか、それをお伺いをいたします。
    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
○遠藤国務大臣 特に親しまれるということはと改めてお尋ねを受けると、何とお答えしたらいいか、答弁に窮するようなことでございますけれども、やはり私は法に対して国民の皆さん方の理解を深めたい。そして、楽しい平和な国家形成をするには、お互いに法というのを身につけておく。例えば野球であろうとマージャンであろうと、ルールがあるわけです。それがあってこそおもしろみも出てくるというような点で、やはり国民生活の中において法というのを身近に感じていただくというようなことだということで御理解をちょうだいできれば大変結構だと思います。
○中村(巖)委員 それはちょっとよくわかりませんが、それで終えまして、次に、先ほど来申し上げておるように、法務省がこれからどういう方向でどういうことをしていくのかというのは、大変国民にとって大事でございます。
 そこで、当委員会に、あるいは国会に提出をされております法案についてはわかっておりますけれども、今後どのような法案を提出をされて法制度の整備を図って、いこうと考えておられるのか、その方向性ないしはその内容について御説明をいただきたいと思います。
○千種政府委員 法務省の所管の法律はいろいろございますけれども、まず民事局について御説明申し上げます。
 民事局では民事に関する基本法を所管しているわけでございまして、その範囲もまた広いのでございますが、まず民法につきましては、身分法につきましてただいま当委員会において御審議をお願いしておりますところの養子、特別養子の制度中心とした改正法が一つございまして、これは御承知のとおりでございますが、そのほか財産法の分野につきましては、借地・借家の法改正について検討を進めております。これはもう最近の土地の需給に関するいろいろな利害の調整ということもございまして各界から意見が出ておるところでございますが、法制審議会におきまして昭和六十年の六月から審議を始め、いろいろな問題点を整理して、各意見を徴しまして、さらにこれを審議しているわけでございます。ただ、これは利害の調整ということがいろいろと多岐にわたり難しい面もございまして、なお若干の年月を要すると思われます。
 それから、もう一つ大きな問題としまして商法の改正について審議を進めております。特に会社法でございますが、この改正はもう既に四十年代から進めているものの一環でございますが、今問題になっておりますのは、昭和五十年十月から審議をしておりますところの大小会社の区分を中心とした会社法の改正問題でございます。これも各界の意見を聞き、またそれを整理したものについてさらに意見を聞くというような手続を踏みまして、現在その整理をしておるところでございますが、これもいろいろ多岐にわたる問題がございまして、なお若干の年月を要すると思われます。
 次に、これはもう少し早く結論が期待されますが、民事訴訟法の改正でございまして、これは民事訴訟法のうち特に最近問題になっております保全処分、仮処分、仮差し押さえ、こういった分野の法改正、全面的な見直しを今検討しております。これは五十八年の十月から審議を開始しておりますけれども、各界の意見を聞きまして六十一年十二月に試案の公表をいたしまして、先月、今年の四月末までに各界の意見を徴しておりまして、その意見をまとめてさらにこれを法案の形にしたいと今考えておるわけでございます。これは、早ければ六十三年度中に法案として提出したいと考えております。
 次に、法例、これは国際私法の法例でございますが、法例の改正の問題がございます。これは男女平等に関する条約を批准した関係で、例えば国籍法を改正いたしましたが、特に身分関係につきましての準拠法は、今の法例によりますと伝統的な考え方に基づきまして夫の本国法というような規定になっております。これを男女平等に改める場合どうしたらいいかという問題がございまして、これも昭和五十九年五月から審議を開始しておるところでございますが、昨年、六十一年の八月に中間報告を公表いたしまして、昨年の暮れあたりに各界の意見をいただいております。これも、早ければ六十三年度中に法案を出したいという考えで仕事を進めております。
 もう一つ、法務行政に関する問題でございますが、今登記を初めとして民事法務行政が非常に多忙であり、合理化が要請されておりますので、とりわけ不動産登記につきましてコンピューター化を今進めておるところでございます。その場合には、コンピューター化に伴って現在の不動産登記法あるいは商業登記法を改正しなければならなくなってまいりまして、これは目下担当の課におきまして鋭意検討を進めておりまして、できれば本年度に法改正をしたいと考えておりましたが、これはなかなか困難な情勢にございますので、来年度はぜひ法改正をしたい、こう考えております。
 大体以上のとおりでございます。
○岡村政府委員 刑事局といたしましては、現在刑法等の一部改正案と刑事確定訴訟記録法案を提出して御審議を願っているところでございます。
 その後の問題でございますが、引き続き社会情勢の変化に的確に対応するために必要な立法措置というものを検討いたしたいと思っているところでございますが、今の時点で具体的にこういう内容のものであるということを申し上げる段階には至っておらないところでございます。
 なお、刑法の全面改正につきましては、今後とも国民各層の意見をも聞きつつ関係諸機関との意見の調整を図ることとしたいというふうに思っておるところでございます。
○中村(巖)委員 甚だ一面においては、法務省が何を重点政策にして、何をしようとしていらっしゃるのかということは予算によっても判明をするわけでございまして、今年度予算は近々参議院で成立を見る、こういうような状況でありますけれども、今年度法務省としては、予算を重点項目をどこに置いてつくられておるのかということについて概略を御説明をいただきたいと存じます。
○則定政府委員 お答えいたします。
 先生御案内のとおり、法務省はいわゆる事務官庁でございますから、しかも人に対する業務が主体でございますし、それらの業務が年々増加し、かつまた質的にも複雑、困難化しておるわけでございます。
 それらの事務を全国津々浦々に散在しております施設で処理しておるわけでございますから、このような状況を見ますと、予算担当者といたしましては、まずもって職員の数をふやし、業務の処理を迅速適正に行うということになるわけでございます。したがいまして、これは毎年の重点事項の一つという指摘もなされる可能性がございますけれども、まずもって増員の実現ということでございます。本年度は四百七十六名の増員を認めていただいておるわけでございまして、ただ、これが政府の第七次定員削減計画等によりまして反面減員がございます。これらを差し引きますと、純増三十名という状況になっておるわけでございます。
 それからさらに施設の整備、これは国民の、利用される方々の利便を図るということにもつながるわけでございますが、一般会計で百八億、それから登記特別会計の関係で六十二億、合わせて百七十億程度の予算をちょうだいいたしたいと考えておるわけでございます。
 さらに、業務の複雑化、困難化に対処しますために、単に人の問題のみならず業務の近代化ということも推し進める必要がございまして、特に本年度におきましては登記のコンピューター化の事業を進めるための経費及び入国管理業務の通信関係、情報伝達装置等の整備ということを重点事項の一つに置きまして、合わせてこれらの経費として二十億を要求さしていただいておるわけでございます。
 以上でございます。
○中村(巖)委員 いろいろお聞きをしたいのですが、時間の関係上この問題にこれ以上深く入ることはやめまして、次の問題に移らしていただきます。
 法務省は直接法務行政と関係がない問題についてもいろいろかかわりがないわけではないということでございまして、その関係で、法務省に関連のある問題について二、三お尋ねをしておきたいと思うのでございます。
 第一は、いわゆる光華寮事件の判決のことでありますけれども、去る本年二月二十六日、大阪高等裁判所におきまして、京都に所在します光華寮というものについての明け渡し請求事件の控訴審判決があったわけでございます。この判決は、いわゆる台湾の当事者適格を認めて、訴訟能力を認めて、そしてそこに居住している中華人民共和国の方々に対して明け渡しを命ずる、こういう判決になったわけでございます。
 これに対しましては、新聞紙上報ぜられておりますように、中国筋からこういう判決はけしからぬではないか、こういう批判があるようでありまして、このことについてまず外務省に、どういうような中国側の反応があり、それに対して外務省としてはどういうことで臨んでおられるのか、御説明を承りたいと思います。
○槇田説明員 お答えいたします。
 今委員御指摘の、二月二十六日に大阪高等裁判所において控訴審の判決がおりました後、中国政府は外交ルートを通じまして我が国政府に対しまして、かつまた中国の外務省のスポークスマンの発言、あるいは日本から中国を訪問した方々への中国要人の発言というふうないろいろな形での意思の表明というのをやっておるわけでございますけれども、それは要するに、要点から申しますと、今回の大阪高裁の判決というのは間違った判決である、日中共同声明等に反するものである、かつ、この問題は中国側等では政治問題であるというような立場に立ちまして、日本政府が何とかこの問題を善処してほしい、場合によればいろいろの影響力を行使してうまく解決をしてほしい、こういうことを言っておるわけでございます。
 これらの中国側の立場表明に対しまして、外務省といたしましては、これまた多くの場合外交ルートでございますけれども、中国側に伝えておりますことは、要するに、本件は日本の国内司法上の裁判ということであって、その審理が続いていたものである。現在もまた上告手続がとられておるようでございますから、日本の国内の裁判手続によって審理が行われていく問題である。かつまた、我が国においては三権分立のもとにおける司法権の独立というものがございますので、これはまさにこういうものによって日本の自由、民主主義あるいは国民の権利というものが守られていく、そういう我が国の基本的原理であるということをよく説明をいたしまして、先方の理解が深まることを期待しておるわけでございます。
○中村(巖)委員 中国からいろいろ問題提起というか、批判がある、こういうことでありますけれども、今お話しのように、日本には三権分立という法原理がありまして、この裁判の中身について行政から干渉をすることはなかなかできない、こういうことであります。しかしながら、一方におきましてはやはり日中友好ということは極めて重要なことでありまして、日中関係がこれによって揺らいでくるというようなことがあったらばこれはゆゆしき大事である。そういう意味で日本政府、日本国民自体も大変苦悩の中にあると言わざるを得ない状況にあるわけでありますけれども、やはりこの問題、何らかの決着を見ないと日中関係の将来にとっても問題があるというふうに思われるわけでございます。法務大臣は内閣の一員でございまして非常に苦しいお立場にはあるというふうに思いますけれども、この問題について何らかの解決の方策というものがあるのだろうかということと、解決の方策がないといたしましても、どういう態度で内閣としては臨まなくちゃならぬのか、その辺についての大臣の所感をお伺いをしたいと思います。
○遠藤国務大臣 先生からもお話のあるとおり、司法権の独立、これは憲法上保障されている極めて重要な問題です。その点を考えますると、政府側が裁判の内容について何かに口を入れるということは適当ではない、こう私は思っております。そのような点で、中国政府に対して政府自体が日本の三権分立の国柄ということの御理解を十分ちょうだいして、より以上日中間の信頼感を深めていくということに努力をすべきである、こう私は思っておりまして、この裁判の云々で変な格好にはさせたくない、司法権の独立は何としても守っていかなければならぬという建前で進めていきたい、こう思っておりますので、御理解をちょうだいいたしたいと思います。
○中村(巖)委員 重ねて一点だけ伺っておきますけれども、それはおっしゃるとおり司法権の独立は守らなくちゃならぬのですけれども、ただ、日中友好という観点からすると何か解決の方法というものを中曽根内閣としてはお考えになっておられるのかどうかということはいかがですか。
○遠藤国務大臣 私もその点で総理なり何かにただしたことはございませんが、やはり何らかの解決策は講じなければならぬということであると思いますけれども、とにかく裁判だけは政府が口を入れるなという思想で努力してほしいなということを念願しております。
○中村(巖)委員 では、次の問題に進みます。
 厚生省は今回、精神衛生法の改正ということでやっておられるようでございまして、まだこれが社会労働委員会に付託というところにはなっていないようでありますけれども、この精神衛生法につきましては従来から大変に問題があるということで、改正前の現行法というものが大変人権に対して侵害的であるというか、そういうようなことが言われてきておったわけでございます。今回、改正の作業をされてその点についての修正がかなりの部分なされる、こういうようなことでございますけれども、この人権という側面から見て、今回の精神衛生法改正について厚生省はどういう配慮をしておられるのか、この改正案の内容の人権にかかわりのある部分について御説明をいただきたいと思います。
○小林説明員 お答えを申し上げます。
 今回の精神衛生法の改正案は大きな二つのポイントにまずねらいを置いておりまして、一つは精神障害者の入院患者の人権を守るということ、それからもう一つは精神障害者の社会復帰を進めるということを大きな二本の柱といたしまして、改正案を国会に出させていただきました。
 その中で特に人権にかかわるところということでございますが、まず最初に精神保健指定医制度というのを新たに設けまして、精神障害者の入院医療で身柄の拘束等、そういう人身拘束に絡むところについては指定医に関与をさせるという考え方で、従来ですとただお医者さんであればいい、こうであったのですが、これからは指定医というそれだけの専門性を持ったお医者さんでなければ身柄の拘束ということもできないというような形で、指定医制度をまず導入いたしております。
 次に入院では、従来自由入院というのは規定がございませんでしたが、それは患者さんの意思に基づくいわゆる任意入院制度というのを新たに設けたということ。それから、従来から大変批判がございました同意入院制度ということでございますが、この同意入院制度についても、先ほど申しました指定医の診察を要件とするということを入れております。また、措置入院、それから従来の同意入院は今度医療保護入院と名前を変えたのですが、そういう強制的な入院制度については定期的な報告を義務づけをいたしまして、それをチェックするというようなことを制度といたしておりますし、特に従来の同意入院でありました医療保護入院については、入院時の診察の結果も報告をしていただいてチェックをするということを加えております。
 また、患者の処遇につきましては、入院に際して患者に対する告知義務をつけでおりますし、それから都道府県には精神医療審査会というのを設けまして、先ほどの入院患者の病状報告のチェック、それからすべての入院患者さんからのいわゆる調査請求権に対して審査をするというようなこと、それから入院患者の行動制限については、特に人権上重要な問題については指定医でなければできない、このようにするなど、人権面については配慮をいたしたところでございます。
○中村(巖)委員 今回の改正案は人権面に配慮された、こういうことでありますけれども、この改正案についてもなお、我が国も批准しております国際人権規約のB規約の九条一項あるいは四項に違反をするのではないか、こういう議論もあるわけであります。第九条の一項におきましては、拘禁をするということについては法律によって定められた理由と手続を必要とするということ、さらには四項におきましては、拘禁によって自由を剥奪された者は、裁判所が速やかにその者の拘禁が合法的であるかどうかを決定し、拘禁が合法的でない場合には釈放を命じることができるように、裁判所においてそのための手続をとる権利を有する、こういうふうになっておりまして、精神病院への拘禁もまた拘禁であるとすれば、その点の疑いと、裁判所の手続が欠如しているではないかという疑いというものが残らざるを得ないわけでありまして、この点について、厚生省並びに法務省はこの人権規約B規約を今回の改正法がクリアをしているというふうに考えておられるのかどうか、お尋ねを申し上げます。
○小林説明員 今回提出いたしました精神衛生法の改正では、身体的拘束を伴う入院措置に関して精神障害者に対する人権侵害を生じないように種々の規定を設けまして、また人身保護法、行政事件訴訟法等の法令においても人権救済の道が担保されていることから、国際人権B規約に違反をしているとは考えておりません。考えておりませんけれども、従来よりもいろいろ言われておりますので人権の確保のためにより一層の改善を図った、このように思っているところでございます。
○野崎(幸)政府委員 現行の精神衛生法につきましては、いろいろ人権上の問題があるのではないかということで、当委員会におきましてもいろいろな角度から議論をされてきたところでございます。このたび厚生省が作成されました改正案は、こういった議論というものを踏まえて、精神障害者の処遇につきまして、ただいま厚生省から御説明がありましたように、人権擁護の点についても十分の配慮をした上で作成されたものであると私どもは考えております。これから国会の場においていろいろ御審議があるわけでございますけれども、私どもはこの点、つまり人権擁護の観点からも十分な議論がなされまして、立派な改正案が成立することを期待しているものであります。
○中村(巖)委員 今法務省の方から人権規約との関係についての的確な御答弁がなかったわけでありますけれども、時間がなくなりますので、最後に一点、後天性免疫不全症候群、いわゆるエイズの関係についてお尋ねをしておきます。
 エイズの予防法については、人権上の問題、プライバシーの侵害とか、いろいろな問題が生じてこようかと思います。しかし、この点について細かく議論をするいとまがございませんので、ただ、このエイズの法案の中には出入国管理の関係での条文がございまして、エイズを他に感染させるおそれがあるような者については入国を拒絶することができるということになっております。この点は果たして人権上考えていかがなものかということについて、厚生省並びに法務省の御見解を承っておきたいと思います。
○小林(俊)政府委員 今回のエイズ予防法案による入管法改正は、エイズという病気が発病した場合に死亡率が極めて高い病気であるという事実に照らしまして、これに感染している者であって、かつ多数の者にその病原体を感染させるおそれがあるものに限って公衆衛生上の観点から上陸の規制を行うことを目的としたものでございます。また、その手続におきましては、入国審査官が上陸拒否事由に該当するという判断をする前に法務大臣または厚生大臣の指定する医師、指定医の診断を求めさせるということを条件、要件といたしておりますし、通常の上陸拒否事由に該当する場合と同様、入国審査官の判断に不服がある場合には最終的には法務大臣に対して当該外国人から異議の申し出を行うことができるという、手続面での配慮も適用されることになっておるわけでございます。また、公衆衛生上の理由によって外国人の上陸の規制を行うということは、エイズのみならず既に現行法におきましても、伝染病予防法の適用を受ける患者といったような事例もございます。また、我が国内ではなくて国外の状況を一べついたしますと、多数の先進諸国におきましても、エイズについて上陸の拒否ができるような法令上あるいは行政上の措置が既にとられておるというふうに承知いたしております。
 以上申し上げましたように、この予防法に基づく外国人の入国規制の問題は、まずその背後に合理的な理由があり、その対象が合理的な範囲に限られておること、また慎重な手続が適用されるということ、他の伝染病にも既にその例があるということ、さらに諸外国にもエイズに関してその規制の例があるといったはうなことから、人権上の基本的な問題は存しないものというふうに私どもは判断いたしております。
○中村(巖)委員 厚生省から特につけ加えることがなければ、時間もございませんので、これで終わりたいと思います。よろしいですか。――それじゃ、私の質問はこれで終わります。
○大塚委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時五十分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十八分開議
○大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。安倍基雄君。
○安倍(基)委員 同僚議員もあるいは既にお聞きしたかもしれませんが、一番最近の問題で、朝日新聞の記者襲撃事件がございます。これは私も非常に重大な問題である。戦前いろいろそれに似たようなこともございましたが、美濃部達吉さんの襲撃事件、大分年配の方は御存じでしょうけれども、戦前は非常にテロが横行した。それが一つは日本が悲劇的な戦争に突っ込んでいった大きな原因になった。その背景には非常な不況といろいろの社会不安が底流にありまして、それが左翼、右翼のテロということで軍の台頭になったわけでございますが、何か日本のこれからを見ますと、非常に経済も落ち込んできて、私は恐らくこの数年間のうちに相当の失業者が出てくるだろう。そうなると、社会不安というのが増幅していく。そのときにやはりテロというのがどうしても出てくるというぐあいに考えております。
 特に今回の事件は、言論に対する、犬養本堂さんが殺されるときに話せばわかると言って殺されたといいますけれども、言論機関に対する挑戦というわけでございまして、これは放置しておくと非常に大変なことになると私は思います。その面で、まず第一に犯人に対する捜査見通しはどうなんだ、いろいろ何とか声明というのが出ているようでございますけれども、そういった団体との関連はどう見ていらっしゃるのか、その辺をまず警察の方からお聞きしたいと思います。
○小杉説明員 お答えをいたします。
 お尋ねの事件については、目下初期的な基礎捜査の段階でございます。したがいまして、今後捜査がどういうふうに進展、進捗するかということについては、見通しをただいま申し上げる限りではございません。ただ、今御指摘のように私どもは本件について極めて社会性の強い、しかも悪質な犯罪であるという認識のもとに、兵庫県警はもとよりのこと、全国の所要の捜査力を結集して鋭意捜査を進めているところで、ぜひ一日も早く犯人を検挙して事案の全貌を解明してまいりたいと存じておるところであります。
○安倍(基)委員 犯行声明をしたような団体がございますね。それはどういうものだと見ていらっしゃるのか、どういうつながりがあると判断していらっしゃるのか。
○小杉説明員 お答えをいたします。
 御案内のように、五月六日に至りまして日本民族独立義勇軍別動赤報隊なるものの、犯行声明もどきと私ども申し上げているわけでございますが、声明みたいなものが一部報道機関に送付されました。しかしながら、現在のところこの赤報隊なるものの存在、組織の実態といったものは把握していないところでありまして、しかもこの犯行声明ごときものを名のっているものが本件犯人であるということもはっきりしないわけで、しかしそれらの関連については私ども十分な関心を持って、これらも含めて捜査を進めているところであります。
○安倍(基)委員 戦前のあれを見ますと、戦前というのは大分古い話でしょうけれども、先に左翼的なテロがありまして、その後に右翼的なテロが出てきた経緯がございます。今の革マルとか革同、いろいろございますけれども、それらとはまた別に右翼的なテロというのがこれから出てくる可能性も十分ございます。その面で、やはり法治国家ですから、左右ともによく下調べしておくということが、下調べという言い方はまずいかもしれませんけれども、よく中身を把握していただきたいなと思っております。
 次に、法務大臣でございますけれども、これについてどうお考えになりますか、理解あるいは決意なりをお聞きしたいと思います。
○遠藤国務大臣 先生御指摘の事件に関しては、先ほども申し上げておるとおり、言論抑圧の意図であったというようなことになりますと、今日の民主主義社会に対する挑戦ともとれる全く凶悪な事件である、こういうふうに考えられるわけでございます。さような点で、法務省自体としても、この真相把握にそして犯人検挙に、警察庁が今必死になって捜査を進めていただいておりますが、できる限りの協力をして、社会不安の一掃と、さらにそのような悪質な意図があったということになりますと、先ほどの先生のお話のような、今後類似犯罪が頻発しないとも限りませんので、この際、根幹から根を絶やしておくような方向にいくべきである、こう考えておる次第でございます。
○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、これははしりというか、これからこういったことも十分あり得ることでございますから、その段階できちっとした、いわば捕まえるときの処断も必要でございましょうし、捜査も十分期していただきたいと思います。
 もう一つ、あるいは同僚議員も既に指摘したかもしれませんけれども、平沢貞通氏ですか、あれが捕まったまま、一体死刑にするのかしないのか、何十年もたった。これは、恐らくは再審請求がちょこちょこ出たとか恩赦のあれが出たとか、いろいろな話がありましょうけれども、どうも法治国家として右とも左とも決まらないままこうなってきたというのは非常におかしな状況かと思います。それについての法務大臣の御認識なり御所見なりを承りたいと思います。
○遠藤国務大臣 ただいまの問題について、先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、私自身、法務大臣に就任前は、役所の怠慢か、それとも裁判所の判決に対して疑義を持っておるのかという疑問も多少は感じたわけでございます。そのような点で、就任直後に法務省関係首脳にいろいろただしましたところ、平沢は間違いなく真犯人であるということを私も承知いたしたわけでございまして、それによって死刑の執行というのがなぜ長期間放置されておったかというようなことで、これは役所の怠慢ではないかという点もただしたわけでございますけれども、先ほどもお話を申し上げたとおり、死刑の執行ということは二度と繰り返すことのできない最も重要な問題でございまして、そのような点で、一般の自由刑とか財産刑とかいうような問題については法務大臣の指示を仰がなくとも執行ができるようになっておりますけれども、死刑執行は先生御承知のとおり法務大臣の命令を得てということは、慎重に慎重を期せということが法自体にあらわれておるという点もございましたし、さらに再審請求が休みなく提出されておった。そういうふうな点で、再審においても、これは途中で再審を打ち切って刑の執行をやるということも可能ではあるかもしれぬけれども、そうなると何となく口をふさぐためにというような疑惑を持たれてはという心配も多少あったようでございます。そういうふうな点で慎重に慎重を重ねた結果が今日のような経過になった、こう申し上げる以外にないのではないか、こう思います。
 これから一体それでもいいのかということになると、これは私はきのうも、これは法務省が検討している問題でございませんけれども、そんなことを繰り返しておったのでは死刑の執行というのはやれないのではないかというような問題も出てくるということになると、再審もある程度制限せざるを得ないのかなとも感じられ、これは私だけの感じでございます。しかし、考えてみると、引き延ばしのための再審と本当に自分はそうじゃないということでの再審の選択というのが非常に困難な状態もございますので、一層この問題については私なりに検討してまいり、そして皆さん方の疑惑なりいろいろの問題を解明しておきたい、こう思っておりますので、御了承をちょうだいいたしたいと思います。
○安倍(基)委員 裁判というものは、古い案件になると本当にどっちだったのかというような疑問は往々にして起こるかと思いますけれども、ただ、今お話がございましたように、再審請求を続けていれば執行できないというのもおかしな話で、本当に正しいのか正しくないのかという問題とは別に、本当に無実をもって再審請求しているのか、あるいは再審請求し続けていけばどうにか命が助かるのか、非常に微妙な問題でございますけれども、今度の一つの例というものは、今まではそういった例がないようでございますけれども、一つの参考として、これからどうすべきなのか。今法務大臣は自分の私見を言われましたけれども、その私見が公の見解として言えるかどうかというのはちょっと問題だと思いますけれども、十分法務省の方でも御検討願いたいと思います。
 次に、私はちょっと今まで余り皆さんが取り上げてないんじゃないかというような問題を取り上げたいと思うのでございますけれども、法務委員会というと大体権利を守るという、国民の権利を守るというのが中心となる。これはまさに正しいわけでございますけれども、ある一部の者の権利を非常に強く守るとほかの者が困るという話もあるわけですね。最近、いわば内需拡大というのが随分言われておる。内需拡大には何が大切かというと、我々今一番考えていますのは、住宅建設などが一番日本でおくれている。では何でその住宅建設がおくれているかというと、一つは、大きなものは土地問題がございます。
 土地問題というのは非常に複雑でございまして、今税法で短期譲渡所得に課税するとかいろいろなことを言っておりますけれども、結局は需要。土地が高くなるというのは、限られた土地が非常に高くなる。需給にアンバランスがあるということでございますね。考えてみますと、都会のど真ん中なんか随分高いけれども、もっともっと有効利用ができる。だから、確かに今まで住んでいる連中の権利も害してはいけないけれども、ただ、退職金を全部はたいても遠くの土地しか買えない、そうすると通うだけでも大変だ、そういう不便というものを非常に庶民は感じている。土地政策の抜本的ないわば変更なくしては、幾ら内需を拡大しろ拡大しろと言っても、家を持て持てと言っても、土地が高くてはどうにもならないということでございますね。そうすると、郊外の土地が安くなるためにはどうしたらいいんだ。それは交通機関が発達して、道路もよくなり、通常のパブリックトランスポーテーションもあるとなれば、ちょっとぐらい遠くへ行っても住める。いわば土地の価格というのは公共投資との関数というか、それによって左右されるわけでございますね。
 その意味からいきますと、例えば道路をつくるときに一人が頑張る、どうしてもそのために道路はできないというような場合もあるわけでございますね。だから、そういう個人の権利をどのくらい守るべきか。そのある個人の権利を守るためにほかの者がとても困るというような問題が、これから大きくクローズアップしてくるわけでございますね。かつては美濃部さんが一人でも反対がいるうちは橋をつくらぬとか、そういうばかみたいなことを言っておったから東京都はあんな赤字財政になってしまった。また、そういう公共投資とか言ったって本当に内需拡大になるのか。そういう規制問題を解決しないで単に金をつぎ込んでみてもしようがない。例えば公共投資を五兆円やってみても、土地取得費にその何分の一ががかかってしまう、波及効果も大したことはないということでございまして、それぞれの委員会で論議するべきかもしれませんけれども、法務委員会として、単に権利を保護するという立場だけではなくて、ではその法によって保護されない連中はどうなるんだ。要するにようやくちょっぴりした土地を遠くに買って、毎日毎日通わなければいかぬ、そういった連中の権利は一体どうなるんだと考えますと、これは借地・借家法にいたしましても、あるいは土地収用法にいたしましても、もう一遍よく見直す必要があるのじゃないかという気がいたします。これは法務委員会の議論として適当かどうかはそれぞれの判断でございましょうけれども、私は法務委員会としての判断も必要なんじゃないかと思っております。
 そこで、一つ問題は、借地・借家法、これはどういうぐあいになっておって、ほかの国と比べてどうなんだ。若干改正の動きがあるかとも聞いておりますけれども、ほかの国との横並びを見たときに借地・借家法はどうなっているか。これがいわば日本の土地問題についてある程度の影響を与えているのではないか。地価高騰というのはございますが、ちょっとお説教めきますが、例えば譲渡所得に幾ら課税しても、需要があるうちは必ずその裏をくくった取引があるわけで、結局需給のバランスをとらなければいかぬ。私は、土地保有税というか固定資産税に目を向けるということを今主張し始めているのですけれども、その辺は大蔵委員会で論議しようと思っておりますけれども、この借地・借家法はほかの国と比べてどういうぐあいになっておるか。それが土地供給というか、土地問題にある程度足かせになっているのではないかというような問題について、ちょっと法務省と建設省の御見解を承りたい。
○千種政府委員 御質問の趣旨は大変範囲が広うございまして、私どもの所管の範囲内では答え切れないことも多いと思いますが、借地・借家法の改正動向について若干申し上げますと、六十年からこういう問題がいろいろと議論されてきまして、ただいま法制審議会の財産法小委員会で借地・借家の問題を議論しております。
 外国との比較ということになりますと、これまた私ども十分な知識をまだ持っておりませんので、改めて調べないとお答えできませんが、例えばイギリスなんかは土地信託なんというのはかなり発達しておりますから、日本のような借地・借家という法律の面での問題はないように思いますが、住宅の必要ということは同じようにあるはずでございます。やはりそれなりの保護をしておるようでございますし、ドイツなんかも借地・借家という法律、特に借地について、住宅については似たような問題がございますが、事業についての土地の賃貸は自由のようでございますし、国情によって同じではないようでございます。
 最近、特に土地の需要あるいは地価の高騰というようなことから、借地・借家法の改正が議論されておりますけれども、借地・借家法というのは貸す方と借りる方の利害の調整が主眼になっておりますものですから、地価の高騰あるいは土地の供給ということと必ずしも結びつけては議論になっておりません。また、その面を強調しますと、借りる方の利益をまた縮小するというような面で反対の議論も出てくるわけでございまして、私ども現在審議しております立場は、貸す方、借りる方のそれぞれの利益というものを整理いたしまして、現在の社会経済情勢の中でどこまでそれを保護するか、その調整という立場からこれを検討しているわけでございます。
 御指摘のように、現在特に都市生活の中で新規の供給が十分でない。それは貸す方の、要するに地主側の利益を十分に保護しないから貸す人が少ないのではないか、こういう御指摘もあります。そういう御議論もあるわけでございますが、そういう面があるとしても、土地供給が借地・借家法だけが足かせであるということも言えないと思うわけでございます。地価が非常に高騰してまいりますとうっかり貸せない。貸すとすれば相当の対価を取らなければいけない。その対価を支払う方の、今度は借りる方の需要というものもそれと相関関係にあるわけでございますから、地主側の権利だけを大きく保護すれば供給が十分になるかといっても、そうなるかどうかはちょっとわからないところもございます。
 そういうようなことで、私どもの立場は、いろいろな場面につきまして、例えば地主でございますと必ず期限が来たら返してもらえるとか、期限については長期、短期を問わず多様な需要に応じられるようなふうに考えるとか、その場合の契約の付随条項をどういうふうに決めておいたらいいかとか、そういうような形で議論を進めているわけでございます。
 とりあえずそれだけ申し上げておきます。
○安倍(基)委員 まだ私の勉強不足かもしれませんけれども、海外の場合には往々にして借地というよりはもう土地、建物一体として借家みたいな形でとらえているケースが多いようでございますね。そうすると、借家の場合にはどちらかというと借地よりは動きやすいというか、借りている人間の権利という要素が弱まってくる。日本の場合に、一遍建物を建ててしまうとちょっと取り壊すのが大変だとか、いろいろな要素から借地権の保護みたいな形で来ている。
 私は今どういうぐあいに審議会で審議しているのかわからないのですけれども、比較的そういう権利義務関係の法務委員会的な立場から見ているのが強いのではないか。そこには、さっき冒頭に言いましたように、法によって保護されない、つまり土地が買えなくて遠くまで行って高い値段で買わなくちゃいけない。そういったところから毎日毎日通わなければいかぬ。そういう本当に法から外れている連中の苦しみというものも考えていかなければいけないわけでございますから、単に貸し手、借り手の権利関係ということだけでいくのはどうか。もちろんその借り手の中には弱者もいましょうけれども、また強者もいるわけですから、私はその辺をもっと法務委員会、あるいは法務省だけの考えでなくていわば土地供給、土地をどうみんな利用していくのかという立場からの検討が要るのじゃないかと思います。
 建設省にこの話は直接聞いてなかったのですが、現在の借地・借家法をどう理解しているかということについて、私は担当者を呼んでいなかったかもしれませんが、建設省のどなたか知っておられるはずでございますから。――もしいなければ、それはいいです。どうですか。
○大塚委員長 いないです。
○安倍(基)委員 これはまた改めて私は建設省の御意見も承りたいと思いますけれども、借地・借家法の問題は、日本の場合には内需拡大と言っておきながら非常に方々でそういうボトルネックがある。ボトルネックの大きなところはそういう法規制だというぐあいに理解しております。
 日照権の問題もちょっと私は提起しておりますけれども、確かにみんなが平家のところにぽこんと大きなものが建っちゃってみんな陰になってしまうという場合には、今まで日に照らされていた連中にとっては非常に嫌だという気持ちはあると思います。その意味でいえば日照権を主張するのはいいけれども、例えばニューヨークあたりに行けばそんなことは言ってはいられない。暖房設備もろくにないような時代ならば日照権日照権ということはあるかもしれませんけれども、都会のど真ん中あたりで日照権を余り主張するのもおかしい。やはりすべて物事は全体の立場から考えていかなければいかぬと思います。
 日照権の問題、いろいろ日本じゅうの問題になっております。私は、決して日照権を奪っていいというわけではないけれども、それは場所場所によるので、現実問題として東京のど真ん中あたりは日照権なんて言わないでおりますね。ところが、往々にしてこれが余り強く押し出されると、それこそさっき言ったように高層建築ができなかったから遠くから通わなくちゃいけない連中がたくさんいるわけですから、この辺のバランスの問題があるかと思いますけれども、私も勉強不足ですが、日照権の問題について諸外国はどういうぐあいに扱っているのか。日本の場合にはいわば憲法の解釈みたいな格好でやっているんじゃないかと思いますけれども、それの実情をちょっと御説明願えませんか。
○千種政府委員 日照権というものは、諸外国に比べまして日本は割合にやかましいといいますか、非常に神経を使って議論をしておりまして、外国では日照権という言葉自身も余り聞いたことがございませんし、余り権利として議論されている様子はございません。これは日本人の生活の仕様あるいは日本の風土、湿度とか、そういう日光を必要とする生活条件というようなもので歴史的にそういう利益を大事にするという慣行ができたのではないかと思いますけれども、昔から、例えば都会の中での長屋といいますか、奥行きの深いうちなんというものは日が当たらないような生活をしておりましたし、都会地においては相隣関係におきましても隔てずに密着して建物を建てるという慣習も現にあるわけでございまして、そういう中で日照権を主張しましてもこれは無理な話でございます。今まであったものを奪われるというようなことから日照権という問題が特に議論されてきたようでございますが、長い歴史の中で見ますと、都市化していけば必ずそういうものはおのずから制約されて、もっと利用の面が強調されてくるものだと思いますので、その内容は時代によって変わっていくだろう、先生御指摘のようになると思っております。
 ただ、法律ということになりますと、これは明文で規定したものはないわけでございまして、民法の解釈の中で、例えば不法行為の中で、日常享受している社会的に認められる利益を不法に奪えば不法行為になる。日照権もそういう利益であるというふうに考えられて、人の家の前に日を遮るようなものを建てると損害賠償が取れるかどうか、それが不法行為になる場合には仮処分で建築禁止が、差しとめの命令が出せるかどうかという形で議論されてきたわけでございまして、現在、日照権をめぐる法律問題は全部判例によってできておるわけでございます。そこで、こういうものは先ほど申しましたように時代によって変わるわけでございますし、非常に定義のしにくいものでございますから、法律で特に規定をするということは今考えておりませんで、実務の成り行きを見守っているというのが現状でございます。
○安倍(基)委員 それなら、私も今お答えがあったと同じように一時それが非常に強く表へ出たけれども、暖房だって簡単にいくような時代になってきて、日に当たらないと体に悪いということがあるかもしれませんが、繰り返すようですけれども、もうちょっと法で守られない連中の権利というものを考えてやらないとこういった土地問題は解決できないだろう。単に直接的に被害を受けるということを強く主張する者が大勢いますと、ほかの者が土地利用を阻害されるという可能性も出てくると思うのです。これは時代の変遷によっておのずから常識的な線に落ちつくと思いますけれども、これは判例でございますからやはり裁判所の立場というものが全部響いていくわけでございますから、その点はよく留意して考えていただけないかと思います。法務委員会でこういった、いかにも権利を制限しろというような議論は余りされないわけですけれども、あえて特にこういう土地問題なんかが問題となってきているときには、係争者だけの権利じゃなくてサイレントマジョリティーというか、そういう連中のことを考えてみなければいかぬと私は思います。
 次に、これとの関連で土地収用法ですが、ほかの国と比べて日本の土地収用法というのはどういう位置にあるのか。私は、何も今急に強制収用をどんどんしろということまでジャンプはしてないのですけれども、土地の供給と需要というバランスの面からいって、簡単に地価地価と言いますけれども、ある程度公共投資によって土地が非常に有効にもなって、供給がふえたり減ったりするわけですよ。例えば非常にいい道路があってさっと簡単に通えるということであれば、相当郊外の土地だって有効供給になれるわけですね。ところが、例えば道一本つくるにしても、だれかが頑張ってあくまでごねればべらぼうな値段になる。ということになると、結局はそういう有効供給が出てこない。日本は戦前が余りにも個人の権利を無視するという要素が強かったものだから、戦後は個人の権利ということを非常に強く打ち出した。それはある意味からいうと民主政治の一つの原点だったかもしれませんけれども、ごく少数の個人の権利が強く守られ過ぎるとほかの連中が本当に困る泥土地収用などというのは一つの典型ではないかと実は思うのです。これはあるいは建設委員会での議論かもしれませんが、私の今の法というものの考え方から見て私は御質問しているので、諸外国と比較した土地収用法の状況はどうかということと、建設当局として、あるいは法務当局として何かその辺を考えておられるのかどうか。
○丸田説明員 最初の、諸外国と比べて土地収用制度がどうか、こういうお尋ねでございますが、アメリカなんかはそれぞれ州法でやっておるようでございまして、幾らか州によって違う、こういうことでございます。我が国は明治二十二年に最初はプロシアを参考にして収用法制をつくったようでございますが、その後、終戦後の二十六年に土地収用法、それから昭和三十六年に特別措置法をつくりました。包括的に申し上げまして、ヨーロッパのうち比較的我が国と国土の面積とか人口規模等が近いと思われますイギリス、西ドイツ、フランスなどと比べてみますと、おおむね我が国の現行の制度と似たようなものだというふうに認識してよかろうかと考えております。
 それからもう一つは、はっきり先生おっしゃいませんでしたが、土地収用法の強化といいますか、何か制度の改正みたいなことを考えておるのかということでございますが、これにつきましては、私どもの基本認識といたしましては、現行憲法の個人の私有財産権の尊重と公益の調和ということで、今申しましたように土地収用法と特借法という二本の法律がございますが、年間七百件から八百件の適用事例を持っておりまして、それ相応に機能をしておるのではないか。事業認定は建設大臣あるいは都道府県知事、それから収用裁決は四十七都道府県の収用委員会が独立して機能を行使しておりますが、その実務者の間からも特段今の法制度について不便があるからこう直せとかというようなこともございませんで、まずまず動いておるのではないかというふうに考えておるところでございます。
○安倍(基)委員 この問題は非常にもろ刃のやいばの問題でございますけれども、本当に今の日本で例えば道路一本つくるにもべらぼうな時間がかかるのですね。頑張っているうちにだんだん補償金が上がってきてそいつは得をするというようなことを繰り返していますと、幾ら公共投資公共投資と言ってみても、私は五兆円の公共投資ということでまた大蔵委員会でつつこうと思っていますけれども、全く非効率的な、意味のないような公共投資ではしようがないのですよ。私は何も私権を制限しろ、戦前に返れと言うのではもちろんないけれども、戦前と比べて戦後というのは非常にそちらの方に傾いた。その傾きをある程度是正していかぬと、日本という国は非常に経済も困る、デッドロックになってきておる。今まではともかくどんどん高度成長してきたからよかったけれども、こうやって当たるを幸いいろいろなことが起こってきますと、結局はその辺を考えていかないといかぬのじゃないか。借地・借家法にしてもこういった収用の問題にしても、法務的な見解だけでなくてもう少し広い視野に立った審議ということが行われてしかるべきではないかと思います。
 もっといろいろほかのことも聞きたかったのですが、時間も来ましたから一言ちょっと。
 実は私は、この前の本会議の委員長や内閣の閣僚の不信任決議のときに、法務大臣の不信任決議の趣旨弁明の役割を得まして、いざとなれば私が聞こうと思ったことがだあっとあるのですよ。幸い途中で終わっちゃったからよかったのですけれども、私がそこで言おうとしたのは、大体民主政治というものは、リーダーに選ばれたら何をしてもいいのではないのです。こういったことをやると言ったリーダーを選ぶのだ。だから、イギリスではマンデートという思想があるわけですね。国民からマンデートを与えられたかどうか。与えられていない場合あるいは別のことをやる場合には、もう一遍国民に意思を問わなければいけないという思想があるのです。そういった面で私は今度の売上税についても、これは廃案になりましたけれども、いわば法の番人としての法務大臣というものは公約に基づいて民主政治をやるのだという法の精神からいって態度がおかしいではないか、こういう趣旨だったわけでございます。民主政治というものが公約を掲げてそれで選ばれて、その範囲内でやる、その意味からいえば、この売上税問題は法務大臣の職責としても公約違反を強行しようとしたことはまずかったと私は思います。その点一言お答えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。
○遠藤国務大臣 幸い不信任が回避されて、本当にありがとうございました。それで、その一身上の弁明を不信任が出ないところで申し上げるような結果になったわけでございますけれども、私は率直に申し上げると、中曽根総理が公約違反だという御指摘、各党からお話が来ております。ところが、総理自身も自分はこういうふうなことを公約として発表しているということを税制調査会や何かに何回かお話をされていることも委員長も御承知だろう、こう思うわけです。そういうふうな点で、それを回避してくれということでやったのがあのようになった。ところが税調自体、総理からそういうふうな話を受けてやったんだという、党内も税調も総理に対して案外冷たく、総理からこういうふうな公約をしているからそれを避けてくれと言われてこうつくったんだということが党内からも税調からも一言も出ないで、税調の幹部さん方まで一緒になって話を進めていったというような点は先生も御承知だろうと思います。
 そういうような点で、私はやはり中曽根内閣の閣僚の一員として、公約だけは違反にならないようにやってほしいという総理の気持ちが十分あらわれておったというように理解をいたしておりますので、どうぞその点で、不信任問題は撤回していただいたと私は承知をいたしていますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
○安倍(基)委員 もうオーバーしていますからあれですけれども、ちょっといろいろお伺いというか、基本的には本当に公約違反であったかどうかということがわからない総理であったからこうなったわけです。もう一遍議論したいところですけれども、それはここでやめておきます。
 では、終わります。
○大塚委員長 坂上富男君。
○坂上委員 坂上でございますが、午前中は建設委員会の審議がございまして、そこで質問をしなければなりませんで、欠席をして大変恐縮でございます。したがいまして、午前中の他の委員の質問とダブることがあろうかと思いまするが、ちょっと聞いたわけでございますので、できるだけはしょります。それからまた、午前中答弁がありましたら、これは答弁したからこうだと言って簡略にお答えいただいて結構でございますので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
 まず平沢貞通氏の問題でございますが、これも午前中相当お聞きがあったようでございますが、私は単純な御質問をしたいと思っているのです。
 死刑の確定者が刑務所にいて病気になった。俗に言うと、まだ刑の執行ができないという状態で危篤状態に陥ったというような、世間では俗に死に目に会えるとか会えないとか、こう言っているわけでございますが、これはどうなんですか。危篤状態にあったとき、遺族は会えないということになっているのですか。どうなっているのですか。
○敷田政府委員 現に御指摘の死刑確定者の平沢の場合、遺族は何回も会っております。
○坂上委員 面会ということを言っているんじゃないのです。危篤ということを言っているのです。危篤のときというのは、何事をおいてもみんな飛んでいくわけでございます。こういうことができないのか、こう聞いているのです。
○敷田政府委員 本件の場合に危篤状態がやや長く続きましたわけでございますが、その長く続きました中で、私の承知しているところでは少なくとも二回、三回は面会いたしております。危篤のいよいよという時期におきましても、直ちに連絡をいたしております。
○坂上委員 午前中死亡時の状況についてお話があったようでございますが、私は聞いていないのです。直ちに連絡をなさったと言いますけれども、俗に言うと死に目に間に合わなかったのでしょう。どうです。
○敷田政府委員 厳格に言いますと、死に目に間に合ってはおりません。
○坂上委員 死に目に間に合ってもらいたいという御配慮があったのですか。
○敷田政府委員 間に合うことができるような形で連絡はいたしてありました。
○坂上委員 間に合わなかっただけですか。
 それはまあその程度にとどめまして、死刑が執行されないで長期間にわたりまして獄中におられて獄死をなさった。それによって、いろいろの法律上の問題点やいろいろの意見が出されておるわけでございます。私は平沢氏が無念のうちに亡くなったと思っておるわけでございますが、再審、恩赦、執行停止等の申し出がいろいろあったわけでございます。
 私も、この法務委員会で二度ばかり発言をさせていただいたわけでございます。特に歴代大臣の中で、新聞でございますが、西郷法務大臣のときは、終戦後間もない期間の死刑判決についてはもう一度検討したいという答弁があったやに聞いておるわけであります。それから古井法務大臣の時代に古井さんが、再審類似の問題についても、そしてそれによるところの恩赦についても相当突っ込んだ検討をなさったと聞いておるわけでございます。また事実新聞の報ずるところによりますと、被害者や被害者の遺族にいろいろと意見をお聞きになったということがあるそうでございます。そのほかの大臣さんのお話については、新聞には出ておりません。あるいはそういうような再審、恩赦――再審の方は裁判所の方でございます。恩赦にかかわることでございましょうが、それに関連をいたしまして法務当局はどのような御検討をどこまで踏み込んでなされたことがあるのか。
 あるいは秘密かもしれません。だけれども、この問題は日本にとりまして、国民にとりましても大変注目をしておる問題でございまして、後から大臣にもお聞きをいたしますが、再審という問題に絡まる発言がきのうもあったそうでございますが、そういうようなことから考えまして、一体本当に、私がこの間の法務委員会で申し上げたとおり、私の学生のころに起きた事件、私が司法修習生の時代に捜査が行われた事件と申し上げたわけでありまするが、平沢は犯人でない、しかし平沢を犠牲者にして死刑の宣告をして、獄死をさせてこの問題の解決を図るんだということが町の中にまことしやかに流布されたわけであります。
 私は研修所のいろいろの雑談の中でお聞きをいたしたわけです、捜査検事の高木一検事に。いや、間違いない、こう言う。捜査検事でございますから、立会検事ですからそうでしょう。別の教官にお聞きをしたら、そういうことはないというようなお話があったわけです。しかし、私はいまだもって脳裏から去らない問題でございまして、そういうふうなやはり国民的な非常に大きな関心を持つ問題でございまするので、お話ができるならば、恩赦や執行停止等にどの程度法務省が突っ込まれたのか、それから中更審でどの程度の審議がなされたのか、まあ書類だけは受け取っておくけれどもそれっきりだというふうになったものなのか、お聞かせをいただきたいな。ぜひひとつ誠実にお答えいただきたいと思います。
○俵谷政府委員 お尋ねの件でありますが、御案内のように、中央更生保護審査会は法務省の附属機関でございますけれども、委員長初め各委員の先生方は両議院の同意を得まして任命されておる、そしてそのすぐれた識見に基づきまして公正な立場から職務を行う、独立して審査すべきもの、こう解されているわけでございます。したがいまして、法務大臣が具体的な事件に関しまして中更審に指揮ないし指示をすることは差し控えるべきものと解釈されておりますし、またそのように運用がされているところでございます。しかしながら、事務当局といたしましては、この審査会に対しまして事件に関します必要な資料あるいは情報等の提供に努めまして、また審査会の審議の状況につきましては、その状況を随時法務大臣にも御連絡を申し上げて、審査が適正に行われるように心がけているところでございます。
 この平沢貞通に係ります事件につきましても、既に御承知のように過去五回の恩赦の上申がございまして、前三回の特赦の上申につきましては、いずれも審査会におきまして不相当の議決がなされてきたところでございます。そして、その後の五十六年一月十六日付で受理されました第四回の特赦の上申、それから六十年二月二十五日付で受理されました第五回の刑の執行免除の恩赦の上申につきましては、この審査会で継続的に慎重な審査を行ってきたというところでございます。特に昭和六十一年の九月十日には、第十七回の再審請求が東京高裁で棄却されております。その後この再審に関します記録も取り寄せまして、この状況についても綿密な検討を加えたということでございます。
 審査会としましては、昨年の末ごろには、審査会といたしまして恩赦をすべき理由が見出しがたい、こういう結論を得たもののようでございますが、昨年末から本年二月以後最近に至りますまでの本人の健康状態、病状等を考えまして、正式な結論を出すまでには至らなかった、これを差し控えてきた、こういう状況にあったわけでございます。したがいまして、法務大臣に対しましても恩赦の申し出はされなかったということでございます。この間、私どもといたしましても、その状況につきましては、審議につきましては必要な情報あるいは資料等も審査会に提供してまいった、こういうことでございます。その間、私どもでも内部的にも十分検討しながら、あるいはいろいろ資料の整理等に当たるということはいたしておったわけでございます。
 以上でございます。
○坂上委員 そういう抽象的な答えだったら、答えられませんで結構なんです。私は、西郷法務大臣のときのあの発言、どの程度のことをなさったのか、こう聞いているわけ。古井法務大臣が相当努力をなさったと聞いている。どのような努力をなさったかと、こう聞いているわけであります。中更審の中でいろいろと議論があったそうでございますが、わかるならば、お聞かせいただけるならばお聞かせいただきたい、こういう質問なんでございます。このことはきちっと答えていただき、答えられないなら言わないんだ。なぜならばこうだ、こう言ってもらいたいのです。
 しかも、この間の私の質問ときょうは食い違いがあるのです。というのは、法務当局にお聞きしたのです。これも新聞以上に出ないんだけれども、養子の方のお話によると、恩赦について結論は出たそうだ、だけれどもこれを聞かせると病状から見てがっくりすると悪いから聞かせないというのがどうも実態のようだ、こうおっしゃったから、まだ審議中ですか、もう結論が出たそうでございますがいかがですかと、この間の法務委員会で私はお聞きをした。そんなことはございませんという答弁なんです。こういうのを食言というんじゃないですか、どうなんですか。三点、お答えいただきたいと思います。
○俵谷政府委員 お答えいたします。
 前回の委員会で、この平沢氏の恩赦は棄却になっておるかどうか、新聞ではそうなっておるがどうか、こういうお尋ねがございましたので、それは審査会としては棄却の決定はいたしておりません、まだ継続中でございます、かようにお答え申し上げました。それは、ただいま申し上げましたように、審査会といたしましては内部的な検討は十分尽くしておる、一応の結論といいましょうか、内部的な判断はできておるようだ、かように承知しております、こういうことでございます。したがいまして、その審査会の正式な議決はなかったということでございます。その点御承知願いたいというのが一点であります。
 それから、古井法務大臣の場合に大変検討がなされた、こういうお話でございますが、その関係の新聞報道が昭和五十四年の六月十五日に読売新聞になされております。恐らくこのことが問題になったのではないかと思いますが、昭和五十四年の十二月十一日の参議院法務委員会におきまして、当時の保護局長がこの問題についてお答えをしております。その要旨を御紹介申し上げますと、「読売新聞の六月十五日付の朝刊によりますと、その見出しを見ます限り、古井前法務大臣が平沢につきまして特赦の意向を固めたというような記事が出ておりますが、私、当時も保護局長をいたしておりましたが、大臣から直接そのような意向を固めたというふうな御指示をいただいたことはございません。」こういう答弁が記録に残っております。したがいまして、その古井法務大臣のそういうことがあったのかなかったのか、私どもはこれ以上には存じておりません。問題は、具体的な事件の恩赦をすべきかどうかということでございますから、これは最初に申し上げましたように中央更生保護審査会というところで慎重に御審議を願う、むしろこれには法務当局といたしましてもタッチしないのがその立場である、かように考えて対処しておるわけでございます。
 西郷法務大臣の場合の発言の内容はつぶさには承知いたしておりませんけれども、終戦後の混乱期に確定した事件については慎重に検討をしようということであったかと思いますが、これは要するにその判決自体に問題があるとか、そういうことではなかろうと思います。
 本件につきましては、御案内のように十七回にわたりまして裁判所で審理がされておる、こういう問題でございます。したがいまして、事実関係あるいは再審の当否ということについて裁判所で審査がされておる、したがって法務当局といたしましてはその審理の状況を見ておるということにならざるを得なかった、かように考えております。
○坂上委員 時間がないから余り言いたくもありませんが、話を聞いておりますと、西郷さんは何か言ったらしい、古井さんは何か言ったらしいけれども、それ以上のことはありませんという答弁だ。それからまた、この間の私の質問に対しても、正式決定であります、内部的にはもう決まっておりますと何で答えられないのですか。だから死ぬ前にまた再審の申し立てを出したのでしょう。委員会の答弁ですからね。法務省が法をつかさどって、まさに社会正義の実現、人権擁護の場なんだから、やはりきちっと答えていただかぬといけないと私は思うのです。実は、この間言ったのは正式の棄却をしておりませんと言ったのであります、実際は内部的に決まっておったのです。それだったら、そのようにお答えができるならそう言っていただきたい。もう結論は出ておりますけれども、いましばらくお待ちくださいと言うのならまだわかるのでございます。これ以上問答してもしようがありません。国民は法務省を一番信頼しているのだろうと思うのです。私は、もう少しきちっと間違いのない御答弁を賜りたいと思います。
 さて、法務大臣、きのうの参議院の御答弁で、何か再審の申し立て回数を制限しなければならぬような御発言がきのうの夕刊に出ておるわけでございますが、これは重大な権利の制限でございますが、どのような御意思なのか、そしてまた、これは誤り伝えられておるのか、そういうことは非常に重要な国民に対する、しかも無実だと言う人に対する回数制限なんてとんでもない発言でございまして、先般も申しましたとおり、温厚篤実であるということを申し上げましたら自信を持ってお答えになったわけでありますが、法の執行上平沢さんに対しまして恩赦の特典が大臣のときになされなくて、しかも大臣のとき獄死なさるという状態で、それは本当にお気の毒だと私は思います。しかもまたそういう御答弁をいただいたわけでございますが、法務省の内部としても大臣のお言葉としては余りいただけないのだみたいな話もちょっと内部であったそうでございますが、そういう人間的なことはあったっていいと思う。それがやはり法に対する信頼だと私は思っている。これはこれでやめますので、どうぞひとつきちっとした御答弁をいただいて、時間をかけないようにお願いしたいと思います。
○遠藤国務大臣 平沢問題については、三十数年ということで、大変長期的に皆さん方にも国民の皆さん方にもいろいろの点で疑いなり疑問なりを残したということは、まことに遺憾だと承知をいたしております。
 きのうの参議院の法務委員会においての話は、率直に申し上げますると、やはり三十二年間というのを放置しておったということに対しての質疑でございまして、何か裁判の判決に対して法務当局は疑念を持っておったために今日まで延引させたのではないかというような話、しかし我々としては、法務省自体としては、先生御承知のとおり、死刑の執行ということは最大の重大な問題でございまして、事人命尊重の時世にそれを執行するということになりますとやはり相当重大な決意を持たなければならぬことは、あえて私から申し上げるまでもございません。
 そういうふうな点で、再審さなかにおいて執行することも今日までの間にあったようでございますけれども、やはり再審請求のさなかにそれを行うということはこれからの面においても問題がある。むしろ国民に、あれは再審さなかに死刑執行したということになると何か口封じのような印象、疑いを持たれる懸念もある。それかといって怠慢だとおしかりを受けるということになりますと、一体どうすればいいか、自分として今先生のお話にひょいと頭に感じたのは、それでは再審の回数を減らす、制限するというようなことも考えることがいいかどうかというような点で、新聞紙上では法務省で検討するとか検討させておるような印象のニュースが出ておったようでございますけれども、これは私なりにその質問に対してお答えをしたというようなことでございまして、死刑の執行というのはやはり再審請求のあった場合には慎重にそれを調査して、そして最終的な決断を下すべきであるということでございます。
 さらにまた、このたびの平沢のような問題が今後一体どうなるかというようなお尋ねもございましたけれども、そういうふうな点で人命尊重のときに当たってというようなお話もございましたが、いろいろ私なりに頭を痛めており、国民の皆さん方の疑惑も解きたい、さような点で、私が法務大臣就任当初にこの問題でやはり先生と同じような考えで法務省の首脳部と話をしたことがございます。年齢が九十五歳、御承知のとおり三十数年というあの生活、そろそろ一体どうなのだろうというような話を持ちかけてもみました。しかし、事件が事件だけに事慎重に扱うべきであるというようないろいろの点から考えると、平沢が真犯人であることは私も法務省の内部に行ってみて改めて再認識をした、今日の日本の犯罪史上全くまれに見る事犯だ、そういうような点を考えると、ほとんど罪の償いは九十五歳まで獄舎においてやったとも考えられるし、高齢者でもある、再犯の心配もない、そういうような点で何らか方法がないのかなというのは自分なりに考え、話をしてみた記憶もございますけれども、最終的にこのような結果になったということを御理解をちょうだいいたしたいと思います。そういうような点で、いろいろあたりに法務省といいましょうか、私自体のいろいろのあれから懸念を持たせたということはまことに遺憾でございますが、今後はそのようなことのないような方途を講じたい、こう思っておりますので、よろしく御理解をちょうだいいたしたいと思います。
○坂上委員 一言ですが、再審申し立ての制限はなさるという気持ちはないのですね。
○遠藤国務大臣 そのような気持ちはございません。
○坂上委員 結構です。ありがとうございました。では、平沢問題はこれで終わります。
 それから、他の省庁もお見えでございますので、そちらの方をちょっとさせてもらいます。
 俗に言う霊感商法ということの手口と実態について、関係省庁から簡単で結構でございますから御答弁を。
○吉田説明員 御説明いたします。
 国民生活センターで六十年度に受けました件数二十一件、それから六十一年度に受けました件数七十五件となっております。
 手口といたしましては、例えば悪霊を取り除くとか不幸になるとか病気になるというような心理的不安に陥れまして、不当に高額な印鑑とかつぼとか多宝塔のようなものを販売するという手口になっております。
○上野説明員 お答えいたします。
 最近、私どもの都道府県の警察の相談の窓口等へ、先祖のたたりがあるとか、そういったことでもってそのたたりを解消するためと称して高価なものを売りつけるということで相談のあるケースがかなりございます。昨年は、一年間に二百件ほど相談が来ております。それからそういったものに対しまして、従来から各種の悪質商法について私ども取り締まりをしておるわけでございますが、その取り締まりの中でもこの種の商法というのは人の弱みといいますか、人の不安につけ込むというもので、悪質商法の中でも最も悪質なものの一つということで、全国の警察に繰り返し厳しく取り締まるように指示をしておるところでございます。その結果、この数年間で十三件検挙した事例が出ております。各種の法令を適用して検挙しておる実態でございます。
○坂上委員 これは五月九日の共同通信の新聞でございますが、「三年で相談七千件 総額九十六億 ひとり八千万円の例も」という表示で出ているわけです。今おっしゃいますとおり「悪霊がつき家系が絶える。これを買えば霊を慰めることができる」というようなことで高額の印鑑、つぼ、多宝塔、高麗ニンジン濃縮液、こういうので都道府県の消費者センターに寄せられた苦情、被害相談件数は五十九年から六十一年の三年間で計七千二百十九件、計九十六億円に上っていることが大体わかった、こう言っているわけであります。しかも被害者の大半は女性で、あなたのところは短命の家系であるとか、色情因縁があるとか、先祖が武士で人を殺した、水子の霊がついているというようなことを言いながら不安がらせて印鑑を買わせる、あるいは大理石のつぼや多宝塔、そういうものを次々に売りつける、こういうことなんでございます。警察の方ではこの取り締まりを精いっぱい今やっておられることは間違いないのでありますが、後から豊田商事のお話をお聞きいたしますが、やはりこういうものは迅速果敢にしていただきませんと、どうもとかく民事くさいというようなことから警察の方では慎重な対応になっているのではなかろうか。検挙されたときはもう被害の救済ができないんじゃなかろうかというような状態があるわけであります。
 これは、うちらの日弁連の弁護士先生方が出した「霊感商法に関する報告と提言」と題する四月二十四日付の文書でございますが、詐欺罪、恐喝罪、薬事法違反、訪問販売法違反、こういうものでいろいろとやれるんじゃなかろうか、ひとつ早急に関係官庁で取り上げて被害者の救済に当たってくれ、こういう申し出が来ておるわけでございまして、どうぞひとつ豊田商事の二の舞にならぬように、早急に、迅速に、かつ確実にこれが救済に当たっていただきたいということを要望しておきたいと思います。回答はよろしゅうございます。
 さて、その次に行政不服審査法と行政訴訟の関係についてお聞きをしたいと思っておるのでございます。
 行政不服審査法に基づく異議申し立て、こういうものは同法の第一条によりますと、「簡易迅速な手続」がこの行政不服審査法である、こう言っておるわけであります。この審査を経るか、あるいは申し立てをして六カ月たたなければ行政訴訟を起こせないということになっておるわけであります。こんなところから見ますと、大体六カ月を基準にいたしまして裁決がなされるというのが普通なんだろうと思うのでございますが、行政不服審査法の第一条に基づきまするところの簡易迅速というのはどの程度のことをこう言っておるのか、おわかりであればお答えをいただきたいと思っておるのであります。
○伊原説明員 審査法についてのお尋ねにつきまして御説明さしていただきます。
 行政不服審査法に基づく不服申し立ては、国民の利便を図るため訴訟手続によらずに一方の当事者である行政庁みずからが簡易迅速な手続によって争いの解決を図るということを目的につくられた制度でございますが、お尋ねの一条にございます簡易迅速ということについての期間がいかほどかという点ですが、これは行政不服審査法上これについての一般的な裁決期間といいますか、これについての規定は何日間というのは置かれておりません。これは個々の事案に応じて決定されるべきものでございまして、一概にこの審査法で定められるという性質のものではないためでございます。この不服審査法と申しますのは、不服審査に関します一般法であり、また手続法であるということから、そういった一律の期間をここで定めるのは適当でないという、法の限界と申しますか、そういったことに基づいて一律の期間は定めていない、このように理解しております。
○坂上委員 迅速というのはどういう意味かとも聞いているのです。裁決だけが迅速じゃないのでしょう。手続の開始も迅速なんでしょう。どうですか。それほど、期間を求めるほどの期間でないところで審理の結論を出せというのがこの不服審査法なんでしょう。だから期間を定めてないのです。
 あなた、それではおわかりですか。行政訴訟提起の期間はここから見て何日間必要とするのです。
○伊原説明員 行政訴訟の提起期間は、審査請求があった日から三カ月ということです。
○坂上委員 九十日でしょう。
○伊原説明員 そうです。
○坂上委員 そこです。迅速という意味はどういうことかと聞いているんだ。裁決をいつまでかというのと同時に、開始はいつからということを聞いているのですよ。迅速という意味の中には、審理開始というのもあるでしょう。それは一体いつごろから始めればいいか、こう聞いているのですよ。迅速な手続と書いてあるんだから、いつから始めればいいのかと聞いているのです。
○伊原説明員 お尋ねの審査開始につきましては、審査の提出された後、直ちに開始していくものというふうに考えております。
○坂上委員 そうでしょう。
 さてそこで、柏崎原子力発電所の第一号機の設置許可に対する異議申し立てですが、いつ出されたのか、そして何名ぐらいで出たのか。科学技術庁が当時担当なのでございますが、申し立て書全部ここへ持ってきてくれとお願いしたわけでございます。これもどうなりました。国民が申し立てをしたのは目で見てもらわなければわからぬと思うから、ひとつこの上に並べておいてくれとお願いしたのです。どうですか。
○岡崎説明員 柏崎原子力発電所の設置許可につきましては、昭和五十二年九月に内閣総理大臣が設置許可をなしたわけでございます。その設置許可に対しまして、昭和五十二年十月に内閣総理大臣に対し異議申し立てがなされました。その後、先生も御承知のとおり昭和五十四年一月に原子炉等規制法の改正に伴いまして、本件の処理も含めましてその所管が通商産業省に移管されたわけでございます。この間約一年三カ月でございますけれども、科学技術庁におきましてこの中し立て書に対する補正措置でございますとか、あるいは代表である総代の互選等のいわゆる事務的な審理の手続を進めてまいったわけでございますが、五十四年の一月に至りましてその間の審理状況も含めて通産省にその所管を移管したものでございます。
○坂上委員 入数も聞いているわけです。これは後でまた一緒に答えてください。
 一年数カ月もあるわけでしょう。それで、選定当事者といいましたか、決めてもらうようにというようなことを言っておる。これは決まりましたか。一年半もこうやって科学技術庁は放置していた。ちっとも開始しないのです。私たちはどういう申し立てをしたか、わかりますか。原発は危険だ、やめてくれと言っているわけです。我々の不服の理由はこうだと言っているわけですね。申立人を全部呼んでいただいていろいろと手続してくれればいいのですが、たくさんの人が来るのは大変だから現地へ来てやってくれないか、こう言っているわけです。現地を見てくれないかと言っているわけです。うんもすんもない。私たちのところに選定当事者を選定してくれという文書が来ましたか。何も来やしない。一年半の責任、今いろいろなことを言ったけれども、何にもしないわけです。もっと腹を割った話をしてくださいよ。
 原発は内閣総理大臣が推進しているからあなたたちではどうにもならぬことぐらい知っているのです。だけれども、私たちは国民の命を守らなければならぬから、必死になってあらゆる闘いを展開しているわけです。しかも、法の許された範囲において異議申し立てを出しているわけです。しかも、今言ったように簡易迅速に手続をして国民の期待にこたえますと書いてあるのに、何にもしてないわけであります。通産省にこの次に聞きますが、科学技術庁、もうちょっと責任ある答弁をしてくださいよ。
○岡崎説明員 この異議申し立ての中身につきましては、先生御指摘のとおり安全性、あるいは経理的な問題、あるいは災害の問題と大変幅広い問題の御指摘があったと私も記憶しておるところでございます。さらに、申し立ての人数につきましても約七千名近くの大変たくさんの方の申し立てがあったと承知しております。ただし、その中には一部重複されておられるとか、手続上補正をお願いしなければならない点も含まれておりましたし、御指摘の口頭による意見陳述の問題につきましても、その開催の方法についてもいろいろと検討すべき問題があったと承知しております。
 いずれにしましても、科学技術庁におきましてその間補正の手続等いろいろな手続について審理を開始しておった、このように承知しておるわけでございます。
○坂上委員 通産省どうぞ、今質問したのと同じことについて。
○山本説明員 先生からお話がございました申し立て書でございますが、先ほども申し上げましたように異議申し立ての総数が約七千を超えるというようなことで、その一部をここに持参させていただいてございます。それから申し立ての居住地でございますが、柏崎市を中心といたしまして新潟市、小千谷市など約三十を超えます市町村というようなことでございまして、申し立ての理由につきましても非常に多岐にわたっておるというようなことで、現在まだ慎重に審理を行っているというようなことでございます。
 なお、ちょっとつけ加えさせていただきますと、本件につきましては、通産省に移管をされました五十四年の七月に訴訟が提起されておりまして、現在第一審におきまして審理中というようなことで、そういうものとの整合性も含めて慎重に審理をしておるというところでございます。
○坂上委員 あなた方の方から補正の要請なんか何もありません。科学技術庁の言葉とまた矛盾しているのじゃないですか。科学技術庁はもうそれは終わったような答弁なんだ。あと、選定当事者はだれにするかということをしようとしたところへ法律改正があってあなたの方へ移った、こう言っているのです。一体、僕らが出した異議申し立て書は本当にあるかね。――それは一部だ。本当に全部あるの。今どこに置いてあるの。本当に持っているんだね。まずそれを前提にして聞きますから。
 どうです、総務庁。申し立てが出てもう十年間何一つしていない。審理、審理だ。審理した経過は話した、こんな程度だ。これが行政不服審査法の実態なんだ。こんな行政というのがあるのですかね。
 さて、その上に立って二号機、三号機、もう何号機か忘れましたけれども、私たちの異議申し立てを無視いたしましてこれを許可しているわけです。ここに欠陥がある、ここに問題があるということを指摘して、そこで却下をして二号機、三号機を許可したならまだわかるのです。審査もしないで、どこにあるのか私はわかりませんけれども、本当に申し立て書はあるのだそうでございますが、ばったばったと原発の設置許可をしているわけでございます。裁判が出たからその整合性だという。何が整合性なんですか。行政官庁の独自性はないのですか。これじゃ都合の悪いものはそのままにして、都合のいいものだけばっぱばっぱと却下していく。さっきの平沢さんの話と同じだ。ぐあいが悪いから審査しないのでしょう。それでもさっきの答弁を聞くと、まだ平沢さんについてはいろいろ審査をなさったようだ。通産は原発については十年何もなさっていない。平沢さんは三十何年だからこれから三十何年かかって皆さんはまだやられるかもしれませんけれども、こういう行政不服審査法の趣旨を全く間違ってやって、簡易とか迅速な手続なんというものではないわけで、これが原発行政の実態なんです。これが国民の異議申し立てに対する権利保護の実態なんでございます。総務庁どうですか、御答弁。
○伊原説明員 お答え申し上げます。
 先ほど私がお答え申し上げましたように審査法は手続法であり、不服審査の一般法でございます。したがいまして、それぞれの事案の中身については各省庁において御判断いただくところでございまして、総務庁としては、一般法としてあるいは手続法として第一条において簡易迅速という趣旨をうたっており、それに従って各省庁が対応されるであろうということを願っているところでございます。
○坂上委員 原発問題の最後に、柏崎の異議申し立て、これから何をしますか。いつ、どうします。それをまずお答え願います。
 それから、こういう異議申し立てが出されたまま寝ているのがどことどことどこの原発で何件ぐらいあるか、お答えください。
○山本説明員 異議申し立てで申し述べられております内容につきましては、同じく柏崎・刈羽一号機の訴訟におきまして審理されております内容と同様でございますので、その推移を見守って判断をしていきたいというふうに考えております。
 それから、そのほかの異議申し立ての受理状況でございますが、現在六つの原子力発電所、これは柏崎・刈羽も含めまして六つの発電所について異議申し立てを受理いたしております。
○坂上委員 何年間放置してあるかというのです。
○山本説明員 柏崎・刈羽が五十二年十月でございますから、約十年というようなことでございますが……(坂上委員「ほかのところ」と呼ぶ)ちょっとお待ちいただきたいと思います。――東京電力福島第二発電所の三、四号機につきましては、提訴を受理いたしましたのは五十五年の十月です。それから、九州電力の川内二号につきましては五十六年の二月ということでございます。それから、東京電力の柏崎・刈羽二、五号でございますが、これにつきましては、五十八年の六月から七月にかけてでございます。それから、中部電力の浜岡三号機でございますが、五十七年でございます。それから、四国電力の伊方三号でございますが、昨年、六十一年の七月ということでございます。
 以上でございます。
○坂上委員 結局、原発の異議申し立てなんてしても、何もしないということなんです。こんなことで国民の権利を守ることができるのかね。ひとつ御検討してください、したってだめかもしれませんが……。
    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
 時間がありませんから、豊田商事についてお聞きをいたしますが、六十二年、ことしの四月三十日、大阪地裁で、不当利得返還請求で、いわゆる報酬でない、給料でない、こういう判決が出て、不当利得であるから返還せいといって二十名に出た。この間私は、豊田商事また豊田商事の関連の銀河計画、鹿島商事の従業員の納付した源泉所得税は幾らあるのか、こうお聞きをいたしましたら、大蔵省というのでしょうか、国税当局は、守秘義務があるから公表はできません、こう言っているわけです。裁判所は、これは賃金でない、報酬でないと判決したわけであります。したがいまして、人の納税についての守秘義務なんてなくなると思うのでございますが、どうですか、法的な見解。
○瀧川説明員 お答え申し上げます。
 おっしゃるとおり、四月三十日に豊田商事株式会社の外交員報酬につきまして、不当利得返還請求訴訟でございますが、判決がおりております。これによりますれば、その訴えの対象となりました外交員二十人の訴えの対象となりました期間、これは五十九年十二月から六十年四月分でございますが、その外交員報酬に対する源泉所得税は約五千二百万でございまして、この点につきましてはいわゆる守秘義務とか、そういう問題は生じないわけでございます。私の方があるいは受けとめ方を間違えたのかもわかりませんが、私どもの方はその他の方々、つまり訴訟の外におられる方々の外交員報酬等につきましておっしゃられたというふうに認識しまして、それにつきましては個別の事項でございますので、私どもはその御答弁をすることは差し控えさしていただきたいというふうに御返事したわけでございます。
 ただ、その後いろいろ考えまして、豊田商事株式会社が納付した源泉所得税は約七十四億円だというふうに新聞等で出ておることがございます。この金額が仮に新聞等で報道されているいわゆる豊田商事グループ、これも相当の数があるわけですが、そういったグループと言われている法人の源泉所得税の納付額の合計額であるという意味でもし言われているといたしますと、その新聞等で言われているグループの範囲は非常に明確ではございませんが、その数字につきまして我々がそれほどの違和感は持っていないというようにお答えさしていただきたいと思うわけでございます。あくまでも現実の数字というものを申し上げるのは、やはり個別の問題ということでなかなか言えない状況に我々あるわけでございますけれども、今申し上げましたようにそのグループとして七十四億円という報道につきまして、我々数字的にそれほど違和感は持たないということで御勘弁をいただければありがたいと思う次第でございます。
○坂上委員 裁判所、おられますか。――今破産手続がなされているのでございますが、お年寄りが多いのでございます。この間も国会に来られた。本当につえをついて陳情に回っておられる。どれくらいの配当の見通しなんです。
○上谷最高裁判所長官代理者 現在まだ手続が進行中でございまして、この後管財人がどの程度財団を収集できるかということにもかかっておりますので、今の段階で見通しを申し上げるのは大変難しいわけでございますが、今までに出ております、私どもが大阪地裁から報告を受けております客観的な数字だけを申し上げておきたいと思います。
 今まで豊田商事関係の債権の届け出がなされておりますが、その総額のうちで管財人が異議を述べなかったもの、つまりその債権を認めたものの総額で約千百五十七億余りの数字になっております。これに対しまして、豊田商事関係で確保されております、収集いたしております財団の総額、評価額がざっと三十二億三千万程度というふうになっております。それからもう一つ、別の会社で銀河計画という会社がございまして、ここの債権者は、最も大口で大部分の金額を占めておりますのが豊田商事でございますが、この銀河計画の関係で収集できた財団の評価額が今のところ大体三十三億余りということでございますので、両方の財団金額を合わせまして、本年の三月現在でございますが、約六十六億余りということでございます。この財団を配当資源といたしまして先ほどの千百五十億の債権に分配するということになりますので、現在のところは余り高い配当額は見込めないというふうなことになろうかと思います。この後、例えば今度の判決等を基礎にしてどの程度管財人が財団を収集し、ふやしていくことができるかという点は、ちょっと今のところまだ見通しがつかない状況でございます。
○坂上委員 さすが裁判所の御答弁、ありがとうございます。
 さてそこで、今言ったような配当の程度なんで、国税庁、ひとつお願いです。この源泉所得税の還付の問題について、六十年の十一月二十七日の法務委員会で国税庁の方から御答弁があるわけでございます。おわかりですか。わかっていますね。これによりますと「私ども国税局といたしましては、この従業員報酬の民事上の効力、これがあるのかどうか、その判断を裁判の結果を待ちまして、そこで確定いたしました権利義務あるいは経済的事実、そういうものに基づきまして適切な対処、対応をしてまいりたいというのが私どもの立場でございます。」そこで、大阪地裁は被害者、管財人の言い分を認めて、これは報酬でない、賃金でない、公序良俗に反する不当利得であるということを判示をしたわけでございます。この判例にのっとって税金の還付を管財人の方にいたしますれば、総額七十四億になるのか、あるいはその前後になるのでございましょうが、生きてくるわけでございます。いろいろ被害者の方が大臣以下に陳情なさっているけれども、どうもあいまいな御答弁のようでございまして、お年寄りたちは泣くに泣けないという状況で国会の周りを陳情に回っておられるわけでございます、お気の毒に。どうぞひとつどのような対応をなさっているか、お答えをいただきたいと思います。
○瀧川説明員 お答え申し上げます。
 今回の判決は、先ほども申し上げましたように、特定の外交員の特定の期間に受けました極めて高額な外交員報酬というものにつきまして判示されたものであるということがまず一つでございます。それから、裁判の過程におきましては、個々の外交員の勤務期間であるとかあるいは社内の経歴であるとか、それからその個々の外交員がどのようなセールス方法をしたのか、あるいはどれだけ支給されているのか、そういうようなことから違法性を基礎づける、そういう主要な事実というものにつきましての認識の有無とか、そういうものを個別に認識した上で、その歩合報酬契約が公序良俗に違反し無効であるから、したがって不当利得に当たる、こういうように常に個々の外交員の立場でみんな裁判官が物を見ているというところがポイントでございます。
 一方、税務上の処理と申しますのは、これは釈迦に説法になりますけれども、租税を徴収する場合でもあるいは還付する場合でも、法律の規定に従って適正にやっていかなければならないというのが我々の責務でございます。当然のことだと思います。したがって、これはまた一般論で言わしていただきますと、既に徴収されている源泉所得税というものを還付できるのは、例えば源泉徴収の対象となりました所得の支払いが誤りであったというような場合、そしてそれが返還されたような場合、あるいはその所得が源泉徴収の対象とならないことが法的に明確にされた場合というような場合に限られるものと考えておる次第でございます。また、これも一般論として言わしていただきますと、先ほど申し上げましたような判決が出た場合におきます支払い済みの給料であるとか、あるいは訴外の外交員の報酬であるとか、あるいは当該被告にかかわりまする返還の対象とされた期間以前の報酬、そういうものにつきましてはこの判決の影響は受けられないというように考えておるわけでございます。
 ただ、いずれにしましても、判決に示されました権利義務関係あるいは事実関係、前回の答弁にございますが、そういうものにつきましては、何せ百八十余ページにわたります非常に膨大な判決でございますので、現在詳細に検討する必要があると考えておりますので、またその作業を現在進めておりますので、できるだけ早く結論を出したいというように頑張っておる次第でございます。
○坂上委員 さて、最後でございますが、御意見を申し上げます。
 今言ったように、どうもお話を聞いていますと、全員について裁判を起こして勝ってもらわなければ返さないというような対応では困るのでございます。こういう被害者救済でこの判例があるのでございますから、できるだけこの趣旨にのっとってひとつ被害者救済のために御協力いただきたい、こう思っておるわけでございます。
 それから、これは答弁は要りませんが、警察庁おられますかな。――役員はこの間立件なさったようでございますが、従業員について全国各地に詐欺なりで告訴があるそうでございます。これはどの程度になっておるか、一言だけお答えいただきたいと思います。
○古川説明員 本年の三月二十一日に幹部従業員等五人を逮捕して捜査を継続中でございますが、昭和五十八年七月から六十一年四月までの間に、この豊田商事に関連しまして十八府県警察におきまして三十二件の詐欺等の告訴を受理しておりまして、その事件等について関係警察において捜査をして、所要の捜査を遂げましたら検察庁に送付するということで現在処理を進めておる最中でございます。
○坂上委員 ありがとうございました。
○井出委員長代理 稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 私も、今質問がありました豊田商事の被害者の救済ということで、大阪地裁の昭和六十年(ワ)の第六〇六二号、不当利得金返還請求事件、これは判決があったわけです。国税庁の方、これは四月三十日ですから、送達が二、三日おくれるでしょうから、ちょうどきょうあたりに判決が確定したかしないかの日だと私は思うのですが、この判決が要旨なものですから、仮執行がついているのかつかないのか、これは判決要旨に載っていないものですから、ちょっと私もそこら辺のところがはっきりしないのです。恐らくついていると思うのですが、そうなってくると、この二十名に対して判決が確定しておれば、その段階で国税庁としてはどういう態度をとるということになるわけですか。
○瀧川説明員 お答え申し上げます。
 二十名の控訴の有無でございますけれども、三十日に出頭されまして交付を受けた方々、これが十四日に確定するということで、あとは、例えば出頭されなかった方々はこれは公示送達でございますが、最終的に全体が確定するのは今月の二十日になるということでございますので、まだ一部しか確定していないというようにお考えいただけばと思います。
 判決が出まして私どもの方にすぐ送っていただきまして勉強はしておるのですけれども、先ほど申し上げましたように、ともかく個々の外交員の方々の個々のあり方というものを非常に詳細に判事さんが勉強されまして、その上でその人たちが、これは申し上げていいのかどうかわかりませんが、いわゆる豊田商法というものに加担していたかどうかというような形で論理構成をしておられるようなんです。そうしますと、やはり非常に細かく我々も勉強させていただかなければいけないということで、現在鋭意勉強させていただいているという状況なのでございます。
○稲葉(誠)委員 だから問題は、この二十名の人に対して、確定したときに国税庁としてはどういうふうなやり方をするかということですね。これは公示送達ならば大体確定するに決まっていますから、だからどういう態度をとるのかということですね。公示送達ならこれは欠席判決になっているはずだと思うのですがね、その部分については。これが一つの問題でしょう。
 それからもう一つは、これは民事訴訟法の関係にもなるわけですけれども、日本の場合にはアメリカ流のクラスアクションという制度がないわけですよね。また、これは選定当事者というやり方もとっていないようですから、そういう制度がとられていればほかの人に対しても法律上の効力が及ぶわけですけれども、その法律的な効力が及ばないとしても、これに対して、ほかの人に対してもこれは行政上の処分について――税法上の処分であるかどうか、これはちょっとすぐには難しいところだと思うのです、ほかの方に対してですよ。これはできないわけはないと思うのです。六十年十一月二十七日、さっきの法務委員会の議事録、これの中で、これは熊澤さんですね、当時の法人税課長ですか、答弁されておられるのです。
  豊田商事が従業員に払っております外交員報酬などにつきましては、現在公序良俗に反し無効であるという訴えが破産管財人から提起されております。そこで、私ども国税局といたしましては、この従業員報酬の民事上の効力、これがあるのかどうか、その判断を裁判の結果を待ちまして、そこで確定いたしました権利義務あるいは経済的事実、そういうものに基づきまして適切な対処、対応をしてまいりたいというのが私どもの立場でございます。
ということを言っておるわけです。だから「適切な対処、対応」というのが、二十人の人に対するものをまず最初にやって、その後に同じような状況の人に判決の効力が、日本の裁判の中では、裁判を起こしていませんから、選定当事者とかクラスアクションというか何というか、いろいろなあれがない以上は効力が及ばないですね。ですけれども、それは法律の問題であって、税法上もそれが強権力を持ってはほかの人に対してはやれないにしても、しかしそれは行政上の配慮として適切な対応という中でやろうと思えばやれないことはない。これは相手が応じなければだめですよ。恐らく相手が応じなければだめだと思いますけれども、やれないことはないのではないかと。これは説得するなり何なり、ほかの方法なりをしてやっていかなければいけないのじゃないか。あるいは別の方法があるのですかね。これはちょっと私も考えておるのですが、破産管財人が原告になる以外に方法はないのかなと思ってはいるのです。いずれにいたしましても、分けて、どういうふうにするのかもう一遍お答え願いたい。
○瀧川説明員 勉強中でございますので非常にお答えしにくいわけでございますけれども、先ほどもちょっと坂上先生にもお答え申し上げた部分があるわけですが、今回の裁判は、先ほど先生にも申し上げましたけれども、ある商法というものが一つあって、これは非常に違法性、不当性が強いというようなことを一つ置きまして、それから今度の外交員というものがその違法なものに加担しているかどうかということでその外交員の報酬というものについての判断をする、言うなればブリッジをかける方法をとっておられるわけですが、そのブリッジの内容がその外交員の勤務期間であるとか、社内の経歴であるとか、あるいはその人がやったセールスの方法であるとか、それから支給額、そういうことからその違法性を基礎づけまする主要な事実につきましてその外交員の認識があったかどうかということを別個に、個別に判断した上で判決が出ているというのが私の今までの勉強の感じでございます。もしそういたしますと、この問題は我々にとっても非常に難しいなという感じを持っておるわけでございます。これは一般的な話でございます。
 例の二十名のこれでございますけれども、いずれにせよまだ最終的に全部確定しておるわけでもございませんし、また我々も今申し上げたように勉強中でございますので、確たることは申し上げられないのでまことに申しわけないと思いますけれども、ただ一般論で申し上げさせていただきますと、その報酬というものが所得税法第二百四条に言いまするいわゆる外交員報酬に当たらないということになれば、その報酬について既に徴収されておりまする源泉徴収税というものはおのずから還付することになるのではなかろうかというように、現在のところは勉強成果として思っております。
○稲葉(誠)委員 この問題に対しては十分な対応を、純法律的な対応はもちろん同時に必要ですけれども、それをまた何と申しますか、いろいろな温かい配慮をしながらの対応をぜひしていっていただきたい、こういうふうに考えております。
 そこで、もう一つの問題は、これはこの前も大臣に質問したのですけれども、霊感商法の問題なんです。
 実は、私は二、三日前に、栃木県にあります消費経済生活センター、あそこへ行っていろいろな事情をよく聞いてきまして、資料ももらってきたわけなんですが、新聞社や何かが非常に強く警告を発してくれた関係や何かがありまして、金額においては大分減ってきたというのですね。前は大体一千万円ぐらいが多かった。このごろは三百万、四百万円ぐらいになってきたので金額は少し減ってきた。それから事件も多少減ってきたようなことも言っておったのですが、それが全国的なものかどうか、ちょっとわからないのですね。
 これはいろいろな例があるのですが、一つは、長時間勧誘する。霊場ですか、そこへ連れていって五時間ぐらい勧誘されて、つぼと念珠を買わされてしまったというようなことなどもありますし、いろいろなことがあるのですね。激しいのになると、何か水行をしたばかりというような髪のぬれた女性があらわれて、先祖には色情狂の因縁がある、全財産を投げ出すか出家しないと三代で家系が絶えるなんて言って、何か六百万円の多宝塔を買わされたとかいう話があるのです。
 これは警察にお聞きするのですけれども、青森地裁の弘前支部で、これと同じような事案で恐喝で判決があったでしょう。これはこの前も質問していてお話ししておるわけなんですが、判決があったわけですね。そうすると、それと同じような事案が各地に出ているわけですから、当然これは害悪を告知しているわけです。他人が畏怖するような害悪を告知しているわけです。畏怖驚愕というか、心配するようなことを告知しているのですから、これはもう典型的な恐喝ですよ。これは簡単なんですがね、どうして警察はこういうのをやらないのかな。どういうふうに事実を認識しているわけですか。
○上野説明員 お答えいたします。
 最近の霊感商法と言われるこの悪質商法というのは、悪質商法の中でも最も悪質なものの一つと考えております。まさに人の弱み、人の不安をかき立てておどし取るということでございますけれども、現実に捜査をしてまいりますと、実は私ども過去に警察で扱った事件を数えてみますと全部で十三件ございますが、この種の商法、ほかの業者も同じなんですが、組織的に法令を研究しているといいますか、法すれすれの行為をやるものですから、なかなかしっぽを出さないということが一つございます。それからもう一つは、捜査に着手した場合、警察が情報を入手した場合、いずれの場合も非常に短い時間に示談に入ってしまう。被害届はあるのですが、最近この一年間ほどは、ほぼ例外なしに近いくらいに被害届が撤回されてしまう、そういうことがございまして事件になりにくいという面がございます。
 しかし、そういうことがございますが、今十三件と申しましたが、それに適用しました法令といいますと、詐欺、恐喝、脅迫、薬事法、訪問販売法、迷惑防止条例等七つの法令を使っております。今までいろいろな法律を適用しておりますし、今先生御指摘の青森県警で扱った事件というのは、三人のセールスマンがやってきて、寄ってたかって、これは恐喝で挙げましたのは、ある未亡人の方が被害者であったわけですが、セールスマンの一人が、その方の御主人の霊が移ったと称して殴りかかってきたということをとらえて事件に立てております。
 こういう形のものが要するに事件としてなりやすいものであったわけでございますが、平素の場合なかなかそう簡単にいかないといいますか、特に被害者が、相手側が巧妙だからということもあるのですが、最後まで被害者としての意思を持って継続する被害の防止のために頑張ってもらうということがなかなかしにくいというか、示談で解決するのはある意味では当然でございますが、そういうことで事件にならないという面も御理解いただきたいと思っております。
○稲葉(誠)委員 あなたの方としてはいかに難しいか、いかにやりにくいかという話ばかりしておるのではないですか。全然やろうという意識はないんじゃないのですか。だめだな、そんなことでは。これは消費経済生活センターへ行ってごらんなさいよ。これは各地にあるのですから、そこで幾らでも資料が集まっているのです。みんな、いろいろなことを言ってはおどかすというのか、困惑させるというのか、畏怖させているというか、そういう状況のものです。それで、お年寄りが中心ですが、若い方にもありますけれども。典型的な恐喝なので、こういうのをやらなければ警察に対する信頼というのは本当に落ちできますよ。豊田商事でもそうなので、これは警察が手をつける前に各県の防犯でいろいろ動いたのですよ、私も知っておりますがね。なかなか難しいということでやらなかったのですが、後になってみれば難しくないので、難しい難しいとばかり言っていたのでは結局だめなので、もっとぴしっとやらなければいけませんよ。だから、いろいろな捜査の端緒は幾らでもあるのですから、やろうと思えばやれるのですから、難しい難しいと言っていてやらないのではだめなんだよ。そんなことを言うと、警察の信頼はどんどん失われてしまうというように私は考えます。もっとしっかりやってください。どうですか。
○上野説明員 ただいま先生に御指摘いただいたことでございますが、そういうことがございますので、警察独自としてではなくて、関係の行政機関あるいは消費者団体、マスコミ等と私どもも繰り返し連携を強化しております。特に各府県に対しましては、今先生の御指摘の消費者センター、消費生活センター等々とも綿密な連絡をとり、その種の情報があった場合は必ず警察の立場から点検をするように、事件に立てられるものは可能な限り事件に立てるということを強く指示している次第でございます。特に最近、この二、三カ月のケースを見ますと、いずれのケースも警察あるいは消費生活センターあるいは国民生活センター等が出ていかれると示談等で逃げてしまうといいますか、事件になりにくいというケースがありました。将来同じような被害が出るのを防ぐためにも、被害者がぜひ最後まで頑張っていただきたい、そういうふうに強く思っておる次第でございます。
○稲葉(誠)委員 法務大臣、この前このことについて質問したときに、あなたは警察当局というか捜査当局に、こういうふうなことを十分協議してやるように言うということを言われたわけですね。きょう、ちょっと議事録を持ってきておりませんけれども、言われたのを覚えています。その後、ちゃんとしてそういうふうな点についてもやられたのですかな。どうなんですか。一体どうしたらいいと思っているのだ。こういうのは本当に多いのですよ。これは特に宮城県にも多いというわけでもないけれども、多いのですよね。
○遠藤国務大臣 やはり相当被害者も多いようでございます。それでこの問題は、国家公安委員長とたまたま同席した際に、この問題をお話し申し上げ、相互に緊密な連絡をとって進めていこうというようなお話し合いをいたしたわけでございますが、今先生のお話しのように、最近はある程度少なくなったような感じで、先生ごらんになったかどうかわかりませんけれども、先月だと思うのです、「必殺仕事人」というのですか、あれで霊感商法のようなことがそのままテレビに出て、それを最後にはというようなので、今いろいろそういうふうな点でPRもしていただいておるし、マスコミ関係の人たちもその問題については大きく取り上げていただいておるという点がございますので、取り締まりと、反面、やはりそういうふうなものにひっかからないような啓発をもっとしていかなければならぬなという感を深めております。また改めてお会いする機会がしょっちゅうございますので、一体となってこのような弱者に対する被害というのを最小限度にとどめるような方法を講じたいと思いますので、御了承をお願いします。
    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
○稲葉(誠)委員 今言ったような問題はまた新しいものが次から出てきまして、よくないですね。こういう点はしっかりとした対策を立てて対処をしていただきたい、こういうふうに私は考えております。今大臣が言われましたので、そうした立場に立ってしっかりやっていただきたい、こう思います。
 今のに関連しまして、経済企画庁においで願っておりますので、私も行って聞きましたら、確かに何か金額も減ってきたということも言うのですけれども、ただ、つかまえてというか、捕捉しておるものが十分にそこへ来るわけではありませんから、全体として少なくなったような印象を受けるのかもわかりませんが、経済企画庁の国民生活センター、あそこにありますね、品川の降りたところ、高輪ですか、ありますが、そこではこうした問題に対してどういうように事実関係をつかんでどういう対処をしておられるのか、企画庁においで願っておりますので、お答え願いたいと思います。
○吉田説明員 御説明いたします。
 国民生活センター及び消費生活センターに寄せられましたいわゆる霊感商法につきましての苦情件数でございますが、六十年度千九十五件、六十一年度が、これは暫定集計でございますが、二千七百四十九件になっております。本年度に入りまして若干減っているというふうには聞いておりますが、正確な数字はまだ出ておりません。
 国民生活センターあるいは消費生活センターがどういう対応をしておるかということでございますが、クーリングオフによる解約の助言であるとか、クーリングオフの制度の対象外のものにつきましても無条件の解約等につきまして助言なり情報提供ということをいたしております。
○稲葉(誠)委員 国民生活センターなんかが扱う中でまだあるのは、先物取引なんかのあれがあるのですよね。あそこに専門の人がいますね、よくやっていてくださるようですが、とにかくいろいろな形で、今金が余っているという関係もあるのかもわかりませんが、それを利用しようとしているのがいっぱいいますから、こういう点については企画庁としても十分お骨折りのほどをお願いをいたしたいということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、きょうは矯正局長においで願っておりますので、矯正局関係で現在矯正行政の中で一体どういう特徴があって、どういう問題点が近来あるのか、こういうふうなことをひとつ御説明をお願いをいたしたいと思います。
○敷田政府委員 矯正行政の抱える問題は何であるかとのお尋ねでございますが、いろいろの問題を抱え、それを克服しながら矯正行政が進められているところでございますが、二、三挙げますと、まず、暴力団関係者などが収容者の中に占める割合というものが非常に高くなってきております。統計で見ますと、昭和五十一年が二一%でございますが、六十一年は三〇%になっております。一言に三〇%と申しましても、先生御承知のとおり、一応初犯者と犯罪傾向が相当進んだ者と別個に分類して置いておきますので、暴力団関係者の場合には当然犯罪傾向が進んだ者の方の部類に入る、いわゆるB級刑務所に入ります。そうしますと、B級刑務所の方には暴力団関係者が非常に多くなりまして、ひどいところでは七〇%を超すものが暴力団関係者であるというようなことになっておりまして、その相互の外における対立抗争を施設の中に持ち込むというようなこと、あるいは必ずしも規律、秩序を守らないということ、それやこれやでいろいろ問題を抱えております。
 それから第二といたしまして、一応一般的に終戦直後のように施設の過度に極端な過剰収容というものはなくなりましたが、この数年間収容数がずっとふえてきておりまして、これもまた昭和五十一年と対比いたしますと、収容率、つまり収容定員に対する受刑者の数でございますが、これが八二%から昭和六十一年では九七%にふえております。九七%といいますのは、中には使えない房もございますので、ぎりぎり入っているという状況でございます。そうしますと、中にはまた少ない、比較的平穏な地方は少なく、非常に犯罪の多いところは収容率が一〇〇%を超えているところがございまして、そういう点でこれの解決に頭を痛めております。
 また第三に、世代交代が進みましていわゆる若年職員の割合がふえてきておりますが、現在、二十九歳以下の職員が全体の三〇%を占めるということでございます。二十九歳以下と申しますと、刑務所で勤務する経験は比較的短いわけでございまして、受刑者自体非常に長く受刑している者がおりますと、受刑者の方が刑務所における経験は職員よりもはるかに長いというようなことがございまして、それからまた、勤務条件が非常に厳しい点もございますので、そういう点で、いかにして若手の職員を矯正を背負って立つにふさわしい立派な職員に育て上げていくかという研修の問題がございます。
 それから第四について言わせていただきますれば、刑務作業の問題でございますが、現在職員の必死の努力によりまして、何とか刑法に定めます「懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス」という、その定役の提供につきましてやっと水準を保っておりますが、このまま円高不況というような不況が仮に続くといたしますと、十分な有用な刑務作業を受刑者のために提供することが困難になろうかと思います。
 一応感じておりますものは以上のような点でございます。
○稲葉(誠)委員 今のお話を聞いておりまして、だから刑事施設法を早く通してほしいという話が出るのかと思ったら、それが出てこないですね。
 それはそれとして、今の暴力団関係、これは困っているのですよ。というのは、対立しているのが入っているでしょう。それで、看守の人も弱り切っているわけですね。だから、それが一つあるでしょう。
 それから、過剰拘禁なんです。大臣、宮城刑務所がありますけれども、収容定員と収容者のパーセンテージ、どのくらいが一番矯正にいいかと言ったら七割程度、八割の間がな、そこら辺のところなんで、九十何%いっちゃうとこれは非常にやりにくいのです。アメリカその他は百二、三十%、もっといっているのじゃないですか。二〇〇%ぐらいいっているのかな。だから、座って寝ないというのがあるでしょう、アメリカなんかでは。立って寝るという話があるのですが、これもうそか本当か知りませんけれども、そういう話も伝わっているくらいなんで、それで看守との間で絶えず紛争が起きて、機関銃であれしたりなんかしているのがよく出てきますよ。だから、こういうようなことについてどういうふうに対処するかとか、たくさんの問題を抱えておるのです。
 それから、若い職員の考え方と古い職員の考え方が違うのです。これはなかなか難しいところなんです。それからもう一つは、若い職員は転勤が嫌なんです。若い職員そのものよりも家族が転勤するのが嫌なものですから、だから看守から看守部長までなるのですよ。看守部長から上へ試験を受けていくと転勤になるものですから、だから試験は受けないのです。それでずっとそれがたまっちゃう。大学を出て看守になって、看守部長までいってそのままとまっちゃうというか、ほかにいかないのです。そういうのも大分あるのです。いろいろな状況があるのです。
 それから作業も、作業収入のやり方を今度直接でなくて矯正協会のような形、安原さんのあれに変えたわけでしょう。いろいろあるのです。
 たくさんの問題を抱えておるのですが、その一つの問題は、刑務所の職員、それから少年院、少年鑑別所、皆違うのですけれども、これは宿直が物すごく多いのですよ。おとといだか鑑別所に行ってきたら、鑑別所は五日に一遍だと言っていましたね。それから少年院の方と比べてみると、場所によって違うかもわかりませんが、少年院は六日に一遍ぐらいかな、ちょっと違うのですけれども、とにかく宿直が多いのです。
 それと、なかなか仕事が大変なんですね。神経を使うのと、それからまだあるのは、これは私は知らないですよ、拘置所が火事になったらだれかが責任を負わなければならないですよ。拘置所が古くて木造の建物で風が吹くと音がしたりして、所長なんかに会って聞くと、官舎にいても公用電話が鳴ると風の吹く晩なんかぴりぴりするというのですね、これは火事になったら大変だというので。火事になったらぐうっと燃えてしまうようなところがあって、そのときに収容者の人権というか、もし事故があったら大変な騒ぎだというので頭を痛めているところが大分あるのですよ。今酒田なんかどうなったのですか。酒田だとか白河だとか、宮城県にもどこかあると思ったな、何かそういうのが多いですよ。そういうところなんか火事でもあったら大変ですよ。だれが責任を負うのですか。矯正局長が責任を負うのかな、どうするのですか。
○敷田政府委員 まず私が責任を負うべきことと思います。したがいまして、財政当局の御理解も得ましてできるだけ古い拘置所の建て直しということに努めているわけでございますが、少なくとも全国の十数カ所の場合につきましては、財政当局の御理解はありましても、付近住民の反対あるいはその他によりまして必ずしも建てかえのゴーサインをちょうだいできないという点もございます。それがいわゆる拘置所の実態でございますので、できるだけそのことがないように、それから先ほど私どもが御説明申し上げまして、私どもより以上によく中を御存じである先生の御指摘の多くの問題、やはり新しく刑事施設法が仮に成立いたしました場合にはその多くの問題がその成立自体によって解決されるということで、できるだけ早い機会の成立をお願い申し上げている次第でございます。
○稲葉(誠)委員 大臣、営繕課長が検事出身でしょう。僕は、どうして営繕課長が検事でなければならないかということに疑問を持っているのですよ。わかりますか。今の拘置所や刑務所の建てかえとか移転のときに検事の人が行って頭を下げて、ぜひお願いしますと言って近所の人や何かに謝ると何とかそこでうまくいくという話なので、それで営繕課長は検事にしておくのだという説もあるのですよ。これは本当のような話です。大体本当だな。そういうような話がありまして、たくさんの問題があるのです。
 そこで、この前も前の大臣にも言ったのですけれども、こういうところの刑務所なり鑑別所なり拘置所なり少年院なりあるでしょう、法務省関係の職員というのは休暇が非常に少ないのですよ。年次有給休暇なんかとっていないのです。夏休みもほとんどとれないのです。そういうことがあるから、法務省がたくさん法案を出したって僕の方もなかなか上げようという気にならないのですよ。ちゃんとやらなければだめなんだ、ちゃんと約束して。どのくらいだか、実態を知っていますか。それはどのくらい知っていますか。
○敷田政府委員 大臣には時折その実態を御報告申し上げているところでございますが、例えば府中刑務所の場合に、昨年で夏休みをとれた者は三日を超していないという程度の非常に厳しい状況でございまして、大臣の御示唆によりまして公安職の職員の問題、待遇を改善するためにはもう少し考えていいのではないかということで、現在そういう問題の検討会もできておりまして、いずれまた財政当局の御理解も得まして改善されるものと期待いたしております。
○稲葉(誠)委員 今言ったように、夏休みなんかほとんどとれないのですよ。多くて三日ですよ。これは裁判所の人はここにいないから、裁判所と比較するとまたちょっと語弊があるのですが、裁判所の場合は、裁判官の場合が夏休み二十日間ですね、それから普通のあれでも一週間以上とるわけです。よく研究してくださいよ。裁判所の給与体系と法務省関係の給与体系と、どこがどういうふうに違うかということについては、これは絶対に本当のことを教えないのです。こういうところで聞いたって本当のことを教えないわけですから、あなたの方で議事録をとらない形でいろいろ聞いてみて対処してごらんなさい。法務省関係の方が待遇が落ちるのです。そういう関係もありまして、裁判所関係がこれでいいという意味じゃないのですよ。ではないのですけれども、法務省関係は落ちます。それから待遇、昇給なんかもずっと落ちる。夏休みも非常に少ないとか宿直が多いとか、いろいろな面がありますから、これは十分対処していただきたい、こういうふうに思うのです。だから、ことしの夏休みをどういうふうにとらせるかということを大臣の方でどういうふうに対処していきますか。そのことによって臨時国会の中の対応も違ってくるわけです。だから、それはどうします。
○遠藤国務大臣 大変法務行政に対していろいろ好意的な御発言をちょうだいいたして、本当に感謝にたえない次第でございます。法務関係の予算の問題とか人員の問題については、役所自体が御承知のような役所でございますので、どうしてもよその省庁のようなはったりがないという点もやはり大きく影響しているのじゃないかな、こう僕には感ぜられます。さような点で、今先生から御指摘のとおり、例えば休暇の問題といい、それから転勤の問題といい、私はきのうもお話し申し上げているのですが、検事の志望者が少ないということも同じような原因だと思うのです。せっかく検事にはなったが、検事さんを信頼しないせいかどうか、すごく転勤が早いのです。そうなると、両親とか子供を抱えていて、しょっちゅういつでもそれこそ佐川急便を用意しておかなければならないようなことであってはなかなか落ちつきがないというような点もあると思うし、刑務所の職員も全く同じような状態になっているというような点もよく先生御指摘のとおりでございますので、私として努力をして先生から次の――来年は法務大臣ではないかもしれませんけれども、よくやったと言われるような努力をしてみたいと思いますので、御了承をちょうだいいたします。
○稲葉(誠)委員 刑務行政というのは非常に難しいのですが、理想を持ってやっている方も非常に多いわけですよ。私がちょっと問題だと思うのは、もう一つは矯正局の局長なり課長が一体なぜ検事でなければならないのかというのですよ。これもよくわからないのです、あなたを前に置いて悪いけれども。どうもそういうふうなことを感じまして、もっといい人がいるでしょう、大学の心理学なんかを出た人で御婦人でもいい人はいらっしゃいますし、もっともっとそういう方が将来伸びるようなそういう道をぜひとっていただきたい、こう思っております。矯正行政の問題についてはいずれまた別な機会に審議する時間があるか、あるいはないかもわからぬですが、いずれにいたしましてもきょうはこの程度にさせていただきたいと思います。
 そこで、私が常々問題に思っておりますことの一つは、きょうも後で刑法の一部改正の趣旨説明があるわけですね。ところが、刑法はばらばらといいますか、いろいろな形で出てくるけれども、刑事訴訟法というものが約四十年はたちませんけれども、たって、それに対する見直しが検討されたということを聞いたことがほとんどないわけですね。それは刑事訴訟法ができたときの経過とかその後の運用とか、いろいろな問題があると思うのですが、これを私はもっともっと見直す必要があるのではないかと思うのです。例えば今の刑事施設の問題でも捜査との全体の絡みがあるわけですから、そこで私は既決の拘禁と未決の拘禁とは別だと考えるのですが、それと同時に、それに伴って刑事訴訟法の全般的な検討というものが、見直すとかなんとかという意味じゃないのですよ、検討そのものが必要であろう、私はこういうふうに考えるわけです。
 そこで、ジュリストの八五二号、一九八六年一月一日−十五日号に「刑事法の課題と展望」というので、今札幌の検事正ですか、亀山継夫さんが「刑事関係立法の将来」というものを書いておられる。その前に立教の田宮さんも書いておられるし、それから松尾先生がいろいろ講演もされておられる。それから団藤先生の祝賀論文集の中で、平野さんが「現行刑事訴訟の診断」というものを書いておられるわけですね。
 私は平野先生のほかの論文を読みましたけれども、この論文を読んでないのであれですが、こういうふうなことの中で一つのもの、例えば亀山さんの書いたものの中にこういうのがあるのです。この人は立法にもずっと関係しておられた方だったように聞いておりますが、例えば「立法の希望」というところを見ますと、「現行刑事訴訟法が施行後四〇年近くを経ながら、なおその運用と理論とにおいて何となくすわりが悪い感があるとすれば、」というのですが、「その主たる原因は、新刑訴法は、本来陪審を本質的構成要素とする手続を導入したものであるのに、陪審制度自体は採用されなかったため、」こういうふうにあるのです。
 ここのところが私にはよくわからないのです。よくじゃなくてほとんどわからないのですが、「主たる原因は、新刑訴法は、本来陪審を本質的構成要素とする手続を導入したものである」、こうありますね。これは一体どこを指してこう言っておられるというふうにとられますか、ここのところ。
○岡村政府委員 具体的なことになりますと執筆者に確かめないといけないわけでございますが、この記載からいたしますと、まず起訴状一本主義を採用しておるということ、あるいは伝聞証拠排除の原則を設けておる、こういったようなことを指しているものと理解されるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 だから、それが「本来陪審を本質的構成要素とする手続」ということにこれはなるのですか。それとの結びつきがよくわからないのですよ。
○岡村政府委員 起訴状一本主義ということで予断を排除するというような原則、あるいは伝聞証拠を排除する、直接口頭による証拠で審判していくというようなこと、これはやはり基本的には陪審制度というものと結びついてくるものであろうかと思うのでございます。ただここの箇所は、私といたしましてはそういう制度を、起訴状一本主義なり伝聞証拠排除の原則を新刑訴法はとっておりますけれども、それは直ちに陪審制度の採用を前提としたのであろうかという点には、私自身は若干疑問を感ずるわけでございます。そういうふうに言えるのであろうかということについては、疑問を感ずるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 私も今局長の言われたのと同じ疑問を持っているわけです。だから聞いているわけなんですよ。そうすると、直ちにこういうふうに言えるのかなという点については、ちょっと飛躍があるような感じが私にはするのです。
 それで刑事局長なり、あるいは矯正局長にお聞きをしたら悪いのかな、それは刑事局長のメンツをあれするようになるからあれですが、今アメリカの陪審制度が当面しておる問題点というのはどういう点があるのですか。そして現況、今アメリカでは陪審制度というものはどうなっているのですか。俗に言う言葉でうまくいっているのかうまくいってないのかとか、どういう問題を抱えているかという点については、これはどうなんですか。――刑事局長がいるのに矯正局長が答えたら失礼だよ。
○敷田政府委員 たまたま知っておることにつきまして申し上げますが、ほとんど破綻をしているのではないかと考えられます。
 私の前書きました論文の中に出ておりますが、例えばニューヨークのマンハッタンにおきまして年間五千件程度が陪審に親しむ、いわゆる憲法上の陪審を受けるべき権利を当然充足されるべき事件でございますが、ニューヨークの司法当局、裁判所がこれに対して対処できるのはせいぜい百八十件から多くて二百件でございます。そうすると、あとの四千八百件というものは対処できない。ではその事件がどうなっているかといいますと、実際には弁護人と検察官との取引、バーゲンジャスティスと言われておりますが、この取引によって有罪の答弁、つまり訴答をすることによって、証拠手続をすることなしに直ちに判決手続に至り得るという、アレーンメントの利点を極度に活用いたしまして処理されております。
 どうしてそうなるかといいますと、陪審制度が理由を示さず忌避できるのが殺人事件で、何件、何人分は理由を示さずに陪審員を忌避できまして、そしてそれ以外に理由を示せばほとんど無制限に忌避できるということによって陪審員が構成されるのに相当長期の時間がかかる、これの時間的、経済的な問題が大きなものではなかろうか、このように考えております。
○稲葉(誠)委員 いろいろな問題があるというふうに思うのですが、今の刑事訴訟法の改正ということについて、昭和二十八年かな、改正があって、そのときには分量的には大きなあれではなかったけれども、「検察官の捜査に対する監督を強め、黙秘権の制約を試み、勾留期間の延長をはかろうとするなど、重大な論点を抱えこんでいた。」これは立教の田宮さんの書いたものですが、「しかし、さいわいにして妥協的な小修正でこれを乗り切ることができたのである。」というようなことを書いて、「そして、これを乗り切ってしまうと、その後は法典の当否について基本的な批判は、もはやみられなくなったのであった。これは、不思議といえば不思議な現象である。現行法は、司法省の内部的な準備作業をいれても二年余という短時間のうちに立案・成立をみたもので、決して周到、完べきな法典であるわけではない。」云々と、こう言われているのです。
 周到、完璧なものはどこにもあるわけないのですが、このときの改正というのは、ここにあるように重大な論点を抱え込んでいたのだけれども妥協的な小修正で乗り切ることができたという、この意味がよくわからないのですが、具体的にどういう点を改正しようとしてどういうふうになってしまったのですか。それが「さいわいにして」、どこにとって幸いだったのか、ちょっとよくわからないのですが。
○岡村政府委員 昭和二十八年の改正では、簡易公判手続を新設いたしまして審理の迅速化を図るということ、勾留に関する規定の整備あるいは控訴審において事実の取り調べ範囲を拡張する、こういったようなことがその改正点であったわけでございます。
○稲葉(誠)委員 僕の聞いているのは、幸いにして云々というのはどういう意味なんでしょうかと聞いているのです。どっちに幸いだったのですか、これは。
○岡村政府委員 これもひとつ執筆者の方に確かめていただきませんと、私、何とも申し上げかねるのでございますが……。
○稲葉(誠)委員 これは大学の先生ですから、だから立場からいえば幸いにしてという意味がどちらにとって幸いにしてという意味なのか、ちょっとよくわからないのですが、じゃ何かの機会にお聞きをしてまいりたいというふうに思っております。
 これもよくわからないのは、ここにある「刑事訴訟法の場合、短期の産物にしてはかなりの出来ばえではあるが、「第一審」(第二編)のなかに「捜査」(同第一章)が入りこんだり、二二二条のように準用関係が煩雑になりすぎるなど、」云々と書いてありますね。「準用関係が煩雑」は別として、前のところはどういうことを言っているのですか。
○岡村政府委員 第一審という裁判所の手続と申しますか、そういう中に捜査が入り込んできている点が問題があるという御趣旨ではなかろうかと思います。また、二百二十二条は非常に準用関係を規定しておるわけでございます。それが煩雑だ、こういう趣旨ではなかろうかと思いますが、この点もひとつ正確なところは筆者の方にお確かめいただきたしと思います
○稲葉(誠)委員 私は前にも質問をし、ずっと疑問に思っておりますのは、現在の裁判制度が検察官の供述調書、もう一つ前は司法警察官なり司法警察員の供述調書というものを基礎にしてできておる場合が多い。実際にはそこでとられる供述調書というものが結局問題だというふうに思っておるのですよ。この点もっともっと解明をしないと、正しい捜査というか、正しい人権というか、全体として公正なものが保たれないというのが私の理解の仕方で、安原さんのときにそのことを聞いたことがあるのです。安原さんはそのために法律は担保がされているのだというようなことであれしましたが、問題になってくるのは、例えば供述調書の場合に、署名捺印しろと言います。書いて読んで聞かせるでしょう。署名捺印しろと言います。署名捺印しろと言ったときに、本来ならば、ちゃんとこれができてそして契印も押してあって、検事なら検事が、取り調べ官が署名したものを読んで、本人にコピーを要求があれば渡して、そこで署名したものを読んで聞かせてそれで相違ないというなら話はわかるけれども、あるいはできたものをちゃんと契印までして、そして渡して読んで相違ないというならそこで署名するならわかるけれども、そこまでやってないわけでしょう。やってなくて、ずっと午前中ぐらい調べて、午後作文のように苦渋して、それで事務官が書いて読んで聞かせて相違ないかと。みんな相違ないと言います。相違ないと言うと、今度はでは署名捺印しろ。署名捺印します。それでまあいいというわけでしょう。
 そうすると、それがどうやって正式にできてどうやってちゃんと契印が押されているのか、全然わからない段階で現在はやられているのじゃないですか。そこまで疑うな、そこまでは取り調べ官を信用しろというのかもわからぬけれども、こんなのはおかしいのじゃないかと私は思うのですよ。どこかのだれに聞いたか、今僕は調べているのですけれども、そういう場合に署名捺印しろと言ったときには、ちゃんと調べたものをコピーをつくって、コピーを本人に渡して本人が読んでそれで結構だというので、そこで署名したものを渡すのか。そこですぐちゃんと書類をつくる。日本の場合、そうじゃないでしょう。後からこれをつくるのでしょう。だから、ちょっと字句の訂正なんか重要な点についてしたって、率直な話わからないですよ。こういう点なんか、どうも非常におかしいのです。
 そこで一番争いになってくるのは、任意の自白をしたか、供述をしたかどうかということで、信用性のある供述をしたかどうかといったって、任意であるかどうかということは眼光紙背に徹しなければなかなかわからないわけですよ。そこで問題になって出てくるのはテープレコーディングの問題ですよ。これは私はずっと前に質問したことがあるので、前から疑問に思っているところなんです。ただ弁護人の立ち会い権を被疑者の場合に認めると言ったところで、そんなことをしたら選挙違反に弁護人の立い会い権を認めた、あるいは贈収賄罪に認めたとなれば、率直な話、なかなか捜査というものはできない。だから、そうなってくれば弁護士倫理の問題も出てくるし、それに背いた場合のいろいろな規定も出てくるということになって、それはいいか悪いかは別なんですけれども、どうも私はそういう点について疑問が非常に前からあるのです。
 ところが、このごろになりまして、松尾浩也先生がいろいろ講演なんかされておられる。あるいは、札幌高裁で梅田事件の裁判長をやられた渡部保夫さんがやめられて北海道大学の教授になられた。あの人がずっといろいろ言っておられるものなどを読んでみると、私の思っていた疑問をそのままぶつけておられるわけですね。梅田事件の特に最後のところの判決なんか非常にいい。再審決定のあれですが、非常にいいように思うのですが、再審開始決定があるいは無罪の判決が。
 そこで、一体こういうことはどうだったのかということをお聞きしたいのですが、一つは、イギリスにおいて一九八一年の一月に王立委員会がテープレコーダーを尋問にはつけろということで、これはクリミナル・ロー・レビューに掲載されたというのですが、「王立委員会がこの制度の実現可能性を肯定する報告書を発表し、一九八三年一月内務大臣の決定により、実験的方法によってこの制度をめぐる諸問題を検討する運営委員会を設置し、五警察区において実際の被疑者の取調べにテープレコーダーを用い、その効果、得失、経済性などに関する本格的な調査を開始した。委員会のメンバーは判事、弁護士、下級裁判所判事、書記官、訴追担当ソリシター、警察官のほか、」いろいろとこういうのによって、「おそらく数年内にこの制度が実現され、英国の刑事司法制度に画期的な改善をもたらすであろうことは間違いないようである。」こういうふうに言われておるのが六十年十二月一日付の判例タイムズです。
 これは大分日にちはたっていますが、どうなったか私知りたいのですよ。このイギリスの制度の改革が行われたのか行われなかったのか、どういうふうになったのか。たしか私が二、三年前にロンドンの空港であそこのアタッシェ、某検事に会ったときには、何か問題があるようなことは言っておられたのですけれども、主にこれは検事と警察官の関係が問題があるようなことを言っておられたのですが。今私が読んだように渡部さんが問題としているところはどういうふうになってしまったのですか。
○岡村政府委員 取り調べの際に録音テープを採用するようになったというふうに承知いたしておるところでございます。
○稲葉(誠)委員 そうなってくると、それがどういうふうに利用されて、どういう法律上の根拠によって行われ、現在どういうふうな状況になっておるか、その及ぼす効果というものが捜査の上でどういうふうになっておるか、人権の配慮の中でどういうプラスになっておるか、いろいろ見方が出てくる、こう思うのです。そういう点についてはきょうはあれですから、この次に刑事記録の確定のあれがありますが、あれは再審の問題が中心ですし、殊にそれは捜査のときの供述調書のあり方に全部問題がなってくるわけですからその問題をお聞きをしたいと思いますし、きょうは時間の関係でこれ以上のことはお聞きをいたしません。そういう点については十分調べておいていただきたい、こういうふうに思うのです。
 いろいろありますけれども、大臣、刑法の一部改正は後から趣旨説明されるのですけれども、同時に、刑事訴訟法は約四十年たって、その間運用されてきてどこにどういうふうな問題が起きているか。それに対して学者や実務家はどういうふうに考えているか。どこに問題があるか。殊に今イギリスで制度が採用になりましたね。これは非常に大きな問題なんですよ。私も実はイギリスに行ってよく調べてきたいというふうに思っているのですが、幸い法務省から大使館にアタッシェが行っているわけですから、よく調べていただいて、刑事記録のときに間に合わないとすればまた別の機会でもいいのですが、じっくりお聞きをしたい、こういうふうに思います。刑事訴訟法の改正ということについては、改正するとかなんとかということではなくて検討をする時期に一応来ているのではないか、こういうふうに考えますので、その点については十分な勉強をしておいていただきたい、若手で大変優秀な人がいっぱいいるわけですから、ゆっくり勉強をしておいていただきたい、こういうことを申し上げまして、きょうの私の質問を終わります。
○大塚委員長 安藤巖君。
○安藤委員 午前中にもいろいろ質問がありましたけれども、五月三日の朝日新聞の阪神支局襲撃事件に関連してお尋ねをしたいと思います。
 まず、この事件につきましては、言論報道関係からはもちろんのことでございますけれども、幅広い多くの国民から言論報道に対する圧殺行為だ、特に朝日新聞社の言論報道の内容及びその姿勢に対する封殺をねらったものである、民主主義に対する重大な挑戦行為であるというような指摘がなされております。私もそのように考えているわけですが、きょうの大臣の所信を伺いますと、この関係につきましては、「もしそれが言論封殺を企図したものであるとするならば、」というふうになっておるわけですね。だから、もしこういうことであるならばというのは、やはりちょっと甘いのじゃないのかなという気がするのです。私は今申し上げましたようにまさにそのものだというふうに思っておるのですが、大臣はそういうふうにはお考えになりませんか。あるいは少なくとも言論報道に対する封殺行為である疑いがあるというところまでもお考えになっておられないのかどうか、まずその認識をお伺いしたいと思います。
○遠藤国務大臣 この事件は御承知のとおり今捜査のさなかでございますので、私の所信表明の中においてそれを決めつけるということもどうか、こう思いましたのでそのような言葉を使っておりますけれども、私としては疑いは濃厚であるということでございます。
○安藤委員 それで、警察庁の方から捜査一課長さんお見えになっていただいて、先ほどの同僚議員の質問に対しましても社会性の強い悪質な犯罪だというふうに答弁をしておられるのですが、今大臣がおっしゃったようなそういう疑いが極めて濃厚だというようなお考えに立って捜査をしておられるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
○小杉説明員 お答えをいたします。
 ただいま大臣の御答弁にもございましたように、捜査の過程、まだ言うならば捜査初期の段階でございますので、事件の内容、全貌というものがわかっておりませんだけに、何とも申し上げかねるわけでありますけれども、少なくとも報道機関の取材の拠点である支局を襲って殺傷をするというような事案は大変な社会的な問題であり、凶悪性の強い犯罪で、そういうことで、御案内のように五月六日に日本民族独立義勇軍別動赤報隊なる挑戦状もどき、あるいは声明文もどきの文書が一部の報道機関に送達されたことも含めて、十分な関心を持ちながら捜査をしているところでございます。
○安藤委員 赤報隊云々の話はまたすぐ後でお尋ねしますけれども、新聞の報道によりますと、この事件に関連をしまして五月五日の午後、これはゴム印を押したような文字でルーズリーフノート一枚の「とういつきょうかいの わるくちをいうやつはみなごろしだ」という紙を同封して、薬きょう二個を入れたものが朝日新聞本社に届いたというのがあるわけですが、襲撃事件とは一応別にしても、こういうような行為もこれは言論報道機関に対する重大な脅迫行為じゃないかと思うのですが、大臣どうですか。薬きょうを送ってきて皆殺しだ、こういうふうに言ってきた行為、これはどういうふうに思ってみえますか。
○岡村政府委員 事案の実態を解明いたしませんと、どういうことであるか正確には申し上げかねるところでございます。ただ、報道機関に対しましてそういう行為をするということ、もしそれが脅迫に当たるというような事実関係があるのであれば、これは悪質な犯行であると考えられるところでございます。
○安藤委員 悪質な犯行だということをおっしゃったのですが、もちろんこれは新聞の報道ですけれども、こういう事実があるということになれば、今おっしゃったような言論報道機関に対する悪質な行為だということになると思うのですが、この点については、これも犯罪捜査のための本件の襲撃事件についての重大な資料の一つだと思うのです。これは何か捜査に入っておられるのですか、それは具体的にどういう方向で調べておられるのですか。
○小杉説明員 おっしゃられたような事案も含めて捜査中でございます。
○安藤委員 これは仮名で「とういつきょうかいのわるくちを」云々というふうに書いてあるようですが、しかし統一協会というと、これは申し上げるまでもなく韓国生まれの、韓国製といいますか、の謀略機関で、先ほどからいろいろ問題になりました霊感商法をやっておる、あるいは原理運動と称してそういうこともやっているという世界基督教統一神霊協会あるいは国際勝共連合のことと思われるわけです。そういうような点についての捜査ということもやっておられますか。
○小杉説明員 御質問の送達された文書が何者によって投函されたのか、送達されたのか、内容は今先生御指摘のとおりでありますけれども、だれがやった行為であるかということについてはいまだ何もわかっておりません。したがいまして、その文書の内容からすれば、先ほど御答弁ございましたように、直ちに脅迫には当たるわけでございますので、犯罪ありと主張して捜査中でございます。
○安藤委員 もう一つ、この朝日新聞社に対する襲撃事件の関連で、時事通信社あるいは共同通信社に対して先ほどお話があった日本民族独立義勇軍別動赤報隊なる、これは右翼団体だと思うのですが、先ほどの捜査一課長の話によると犯行声明もどきだというふうにおっしゃったのですが、これも重大な資料になると思うのです。これは当然のことだと思うのですが、先ほどの御答弁によると、この別動赤報隊なるものの実態は把握していない、しかし関心を持って捜査しておるという御答弁でありました。
 そこで、私お尋ねしたいのですが、この日本民族独立義勇軍という名前が出てくる、言論報道機関ばかりではなくて幾つかあるという話を聞いておるのですが、これまで過去にそういう名前の出てくる襲撃事件あるいは嫌がらせ、そういうものはどんなものがあったのか、主なものでいいですからお知らせいただきたいと思います。
○鹿嶋説明員 お答えいたします。
 過去に日本民族独立義勇軍名下で犯したと思われる事案はどのくらいあるのか、こういった御質問でございますが、私ども承知いたしておりますところでは、五十六年に一件、五十七年に一件、五十八年に三件、合計五件の事実を確認いたしております。
○安藤委員 その中身ももちろんわかっておりますね。それを簡単に、いつ、どこに対してというのを言っていただけますか。
○鹿嶋説明員 五十六年でございますが、これはたしか八月だと思います。これは神戸市所在のアメリカの総領事館がございますが、そこへ火炎瓶を投てきしたという事案でございます。それから五十七年でございますが、これは多分五月ではなかったかと思います。横浜にございます米軍の元住宅、これは空き家でございますけれども、そこへ多分火をつけたのだろうと思いますが、そういった事案が一つございます。それから五十八年、これも五月であったと思いますが、大阪の豊中市にありますソ連の領事館へ火炎瓶を投てきしたということであります。それから、同じく五十八年でございますが、八月に名古屋市の朝日新聞名古屋本社、これと同じ日でございますけれども、同じ朝日新聞の東京本社へ時限式可燃物をセットいたしまして発火させたという事案でございます。
○安藤委員 そうしますと、日本民族独立義勇軍の名前を出して行われたのが、昭和五十六年から合計五件あるわけですね。となると、今回はこれがやったのかどうかはもちろんわかりませんけれども、六件目です。もう六年になっておるわけです。だから、先ほど答弁がありましたように、この間実態を把握していないということだと、これは警察当局は一体どうなっておるのだと思わざるを得ぬのです。そういうような右翼団体の行動に対してしっかりとした監視の目を光らせないで野放しにしておるのじゃないかということをよく言われるのも、無理からぬところがあるのじゃないかなと思われてならぬわけです。ですから、もう六年間何もわからぬというのじゃ責任重大じゃないかと思いますが、どういうようにしてこの日本民族独立義勇軍なるもの、あるいはその別動赤報隊なるものをこれから捕まえようとしておられるのか。これは、捕まえなければいけませんよ。それは捜査の秘密で、ここまで言ったらよけい逃げられてしまうからだめだというのはわかりますが、これは本気になってやる気があるのかどうか、こういうふうにしてやっていきたいのだということをお聞かせいただきたいと思います。
○小杉説明員 今御指摘の問題につきましては、なるほど日本民族独立義勇軍なる名前を犯行声明等で名のってはおりますけれども、果たしてその日本民族独立義勇軍なるものがやったのかどうか。今は悪乗りの時代でございますので、一つの事案があるとあたかもおれがやったというような声明みたいなものが随分出てくるわけでございます。したがって、果たしてそれを名のったものがそれぞれの犯行をやったかどうかという証拠がなかなかつかめないということ、それから所管外のことでありますが、先ほど申しましたように、日本民族独立義勇軍なるものの存在、実態がいろいろ捜査をしてみてもどうもわからないというような状況で、捜査が大変難渋しておるということは事実でありますけれども、しかし、警察としてはそういった発生事件に対して手をこまねいておるわけではございませんで、いろいろ手だてを尽くしておるのでありますが、大変残念ながらまだ実態解明それから事案の検挙ということが行われていないわけで、その点については残念だと申し上げるより仕方がないということであります。あくまでも本件、朝日新聞襲撃事件も含めて捜査を一生懸命やっておるということで御理解をいただく以外に方法がないということであります。
○安藤委員 御理解いただくよりしようがないとおっしゃるのですが、引き続き鋭意御努力をお願いしたいということを強く要望しておきます。
 そこで、脅迫、嫌がらせの問題につきましては、今回の襲撃事件との関連で、これも新聞の報道ですが、受話器をとっても無言のままという、そういうような電話あるいは嫌がらせの電話、これが朝日新聞の本社に、これは七日の記事ですから六日までですか、四十件もあった、そういう嫌がらせだけでですよ、こういうような報道もあるわけなんです。こういうような行動も、襲撃事件との関連なんですが、やはり言論報道機関に対する嫌がらせの行為なんですね。だから、これなんかもきちっとそういうような位置づけで調査をしていただきたいと思うのですが、こういう関係はどういうふうにして捜査しておられるのですか。
○小杉説明員 もちろん、関連すると見られるような嫌がらせについても、我々は情報といたしましてこれを含めて捜査の一つの資料としてまいりたい。そういう意味では、特に被害者の報道機関の方々からも本当のところ、実際の実態というものを率直に御協力をいただいて、私どもの捜査の資料にしてまいりたいと考えておるわけであります。
○安藤委員 そこで具体的にお尋ねしたいと思うのですが、今資料を、これは委員長の承諾を得まして配らせていただきます。大臣も見ていただきたいと思うのですが、これは統一協会、国際勝共連合会員らの朝日新聞本社への嫌がらせ電話の回数、その数字が載っておるものです。これは私が入手したものですが、まず、その中身は後で言いますけれども、これは回数が載っておるのですが、全部は申し上げません。
 真ん中辺の、四月一日月曜日というのを見ていただきたいと思います。この一つの升が一時間です。だから、四月一日月曜日ですと、例えば多いところは十時から十一時までですね、これが一時間に二千九百十回。それから十一時から十二時までの一時間が四千七百八十四回。そしてもう一つ多いところでは十七時から十八時までですね、この一時間に四千五百九十一回。こういう調子で、四月一日午前零時から二十四時まで一昼夜、三万五千百四十八回、こういうふうに電話がかかってきておるわけです。
 こうなりますと、これはまさに業務妨害、そして中身が嫌がらせなら嫌がらせ行為、それから脅迫的なら脅迫行為、こういうことになると思うのです。これは恐らく朝日新聞の本社は電話はパンクしているのじゃないか、全然外へ使えないみたいな状況ではないかというふうに思われる状況です。もちろん三月三十一日も、それから四月二日にもこういうような状況でかかってきておるわけです。
 そこで、私はこういう関連もあってほかにもいろいろ調べさせていただいたのですが、郵政省の方からも来ていただいておりますね。郵政省の方に、これは私がいただいた資料があるのですが、今申し上げましたこの一覧表は昭和六十年の三月二十九日から四月四日までのものです。そして昭和六十年の四月一日前後の五日間で、朝日新聞社が所在する築地五丁目の電話局、これは五四五局の電話局だということですが、ここでいわゆる電話線がパンクというような、専門用語ではふくそうというふうに言うらしいのですが、昔の難しい言葉で車馬がふくそうするという、ふくそうという状態になったという話を聞いておるのですが、それはどういうような状況だったのか、いつだったのか、何時だったのかということを話していただきたいと思います。
○小嶋説明員 お答え申し上げます。
 電話回線につきましては、電話局に設置されております交換機は通常想定されます電話の使用状況に基づきまして設計されておりますので、それ以上の電話が集中的にかかってきた場合には、一時的に電話がかかりにくくなるという現象が生ずるわけでございます。
 そこで、今般の先生の御質問でございますけれども、ちょっと調べましたところ、確かに昭和六十年の四月ころに東銀座電話局におきまして使用されておる築地地区におきまして一時電話がかかりにくくなったということをNTTより聞いておるところでございます。
○安藤委員 その状態、日にち、そして時間帯、これはどうですか。
○小嶋説明員 四月一日の件についてでございますが、午前十時三分から十二時ころまで、それから十三時から十四時ころまでの間、東銀座電話局の六台の交換機のうちの一台がふくそうによって断続的に使えなくなったということをNTTより聞いておるところでございます。
○安藤委員 それと関連して、ではその前後の三月三十日、三十一日あるいは四月二日、三日の状況はどうだったですか。
○小嶋説明員 お答え申し上げます。
 非常にふくそうした日が四月一日ということをお聞きしてございまして、その前後の間のデータにつきましては現在持ち合わせておりません。あしからずよろしくお願いいたします。
○安藤委員 私の方は四月一日前後の五日間でこういう状況はなかったかというふうにお尋ねをして、四月一日にこういう状況があったというのをお知らせいただいたわけですが、今のお答えいただいた四月一日の十時三分から十二時までというのが、先ほどお示ししたこの回数の表、十時から十一時まで二千九百十回、十一時から十二時まで四千七百八十四回、こういうような状況で使われておって、電話回線が不通になって支障が生じてきておったというようなことがNTTの方からの話として裏づけられておるわけなんです。
 そこで、私がこの資料を入手する過程で聞いたところによりますと、無音、受話器をとっても全然しゃべらないというのも三月三十日にあるのですが、あとはほとんどしゃべっているのです。そのしゃべっている中身は、朝日新聞社が発行している朝日ジャーナル、この記事がけしからぬ。先ほど言いました統一協会、それから勝共連合の活動、さらには原理運動に関する報道がけしからぬ、やめろというような内容のものであったというふうに聞いておるわけです。
 そこで私も調べてみましたら、これは朝日ジャーナルの一九八五年四月五日ですから、昭和六十年の四月五日号です。これは週刊誌ですから、実際には発行日の一週間ほど前に発売されるわけです。これには「原理運動 追及第七弾」というのがあって、その前に一弾から六弾まであったと思うのですが、これは原理運動の実態、反社会的な行為の実態を報道したものですね。そしてこの「追及第七弾」といいますと、統一協会の元会員、そういう人たちからの赤裸々な告白が載っておるわけです。だから、これはけしからぬということを言ってきたのだろうと思うのです。
 それからもう一つは、これは朝日新聞社が発行しておりますブックレット、朝日ジャーナル編の昭和六十年三月十五日発行のものです。つまり、その直前ですね。だから、こういうようなことで、朝日新聞社に対して先ほど申し上げましたような電話局の電話回線がパンクするというような事態になるほど嫌がらせの行為が行われてきておるわけですね。こういうような実態も、まさにこれも言論報道機関に対する重大な侵害行為や脅迫行為、威力業務妨害にもなるんじゃないかと思うのですが、こういうような実態は警察庁の刑事局か警備局の方は把握しておられるのかどうか、あるいはそれに対して捜査を開始しておられるのかどうか。どうですか。
○小杉説明員 初めてお聞きすることでありまして、把握いたしておりません。
○安藤委員 今も申し上げましたけれども、これは朝日ジャーナルの記事に限定した話を申し上げておるのですが、やはり報道の中身に対して、報道姿勢に対してけしからぬと脅迫なり嫌がらせなりというのが行われておる、これは重大な行為だと思うのですね。だから、これはそういうような面からきちっと対処をして、捜査をして、そういうような行為をやめさせる、犯罪行為がはっきりすれば処罰をするというようなことをきちっとやらなければいかぬと思うのですね。大臣、どうですか。こういうようなものを野放しにしておくわけにはいかぬと思うのですが、いかがですか。
○遠藤国務大臣 全く先生のおっしゃるとおり、同感でございます。
 ただ、マスコミにおいてそういうふうな被害を受けたということを報道して一般国民にもその世論を喚起せしめるというような方法をとっていただけないかどうか、また法務省なり警察庁なりにも連絡があってほしい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
○安藤委員 それは私の方もつまびらかにしておりませんが、いろいろ事情があるのかもしれません。しかし、こういうような事実は朝日新聞社当局としても見逃すことのできない、きっちり対処してもらわなくてはいかぬというふうに考えておられると思うのですね。
 ただ、捜査当局と新聞社、報道機関がどうのというのまでは知りませんが、案外そういうふうなこともあるのかなというふうな感じ以外にはありませんけれども、そこで、そういうようなことであればきちっと捜査をして、糾弾すべきものは糾弾する、処罰すべきものは処罰する、そういうようなことでやっていただけるということは間違いないですか。
○小杉説明員 私どもは、民主主義の世の中で、言論報道機関に対するいわれなき卑劣な嫌がらせあるいは犯罪行為等については、特にこれは厳正に対処すべきものだというふうに考えているわけであります。
 ただ、こちらが具体的な実態を認知し、また被害をこうむった側から積極的な協力を得られませんと、なかなか捜査というものは進まないわけであります。ですから、そういうふうな場合にはぜひ御協力をいただき、また実態をつまびらかに私どもの方に教えていただき、協力をして捜査をしていくということであろうかというふうに考えております。
○安藤委員 先ほどの電話のかけぐあいからしますと、これはまさに相当な人たち、人数による組織的な行動じゃないかなというふうにも思われるわけですね。しかし、電話の向こうの顔は見えないわけですからね。だから、先ほどの脅迫状あるいは犯行声明もどきのそういうものが来ても、赤報隊のように捜したってその実態はわからへん、あるいはそういうふうに名のっているけれども、そういう実態にあるのかどうかもわからぬ、本当にそれなのかもわからぬ、こういうようないろいろな問題があるから、朝日新聞社の方もいろいろ考えておられるのじゃないのかなという気もするのです。しかし、これはいろいろ専門の人もおられるわけですし、いろいろの人数あるいは機械というものもあるわけですから、御努力をお願いしたいと思うのです。
 そこで、念のために申し上げておきたいと思いますのは、これは朝日新聞社ばかりではないのですが、例えばこれは朝日のものですが、先ほどからいろいろ問題になった霊感商法ですね、つぼ、多宝塔、朝鮮ニンジン濃縮液を売ったその手口がけしからぬという被害者の声だとかいうのを、朝日新聞社は、ことしの二月二十五日もそうだし、三月六日もそうだし、「被害深刻 霊感商法」、これはやはり糾弾していただかなくちゃいかぬわけです。それから三月十七日、「「霊感商法」こんな手口」、これも朝日ですね。細かいのは全部言いませんけれども、これは三月二十日の毎日新聞です。これも「霊感商法 被害五十七億円」、こういうふうに報道しているわけです。
 それから、今国会に再提出するのかせぬのか、私どもももちろん再提出は許さないということでやっております国家秘密法、スパイ防止法とも国家秘密法とも言われておりますけれども、これに対しても朝日新聞は相当強い、これは言論機関だから当然のことだと思うのですが、反対のキャンペーンをやっておる。そして、例えばスパイ防止法三多摩会議というスパイ防止法推進の方と勝共連合とが同一のところにあった、事務局長も一緒だというようなことで、中央段階でも勝共連合が国家秘密法制定のスポンサーになっていることがはっきりしたばかりであるにもかかわらず、これは事務担当も同一人だ、こういうような報道もやっているわけ。それで、その一面、これも評論といえば評論ですが、「世界日報」、これは国際勝共連合の機関誌です。ここに、朝日新聞がスパイ防止法反対の大キャンペーンをやっているのはけしからぬ、こういう論評があるわけ。
 霊感商法の問題にしても、あるいはこういう民主主義の根幹にかかわる言論報道の自由の問題、国民の知る権利の問題についても、きちっと言論報道機関は報道してもらいたいし、そういうことをやっていく必要があるし、そして朝日新聞ばかりではなくて他の報道機関も、先ほど来いろいろ申し上げておりますようなそういう嫌がらせとか脅迫とかいうものにも負けずにしっかり頑張っていただいておるわけ。しかし、先ほど来申し上げておるようなこういう嫌がらせの電話、脅迫めいた電話、そう大したことないじゃないか、そんなのに負けないでやればいいじゃないかということも言えるのですが、そういう小さなものも見逃してはいかぬと思うのです。やはりこれはきちっと対応していかなくちゃいかぬと思うのです。
 そこで、先ほど来聞いておりまして、大臣もなかなかいい答弁をしていただいておるなあというふうに私は思っておるのですが、これは朝日の支局に対する襲撃事件との関連でおっしゃっておるのですが、この際根幹から根絶やしにするようにしなければならぬというようなことを言ってみえておる。やはりそれをしっかり貫いていただくということであれば、こういうようなささいなところも、先ほどの電話のかけ方からすれば決してささいではないと思うのですが、こういうようなのも含めて、ささいなことも全部これはきちっと対応していくということがどうしても必要だというふうに思うわけです。だから、その関係についてきちっとやっていただくという姿勢を確立してやっていただけるのかどうか、改めて大臣の御答弁をいただいて、ちょっと時間がありますけれども、終わりたいと思います。
○遠藤国務大臣 先ほどもお話を申し上げたとおり、そのような悪質な事犯については捜査当局と緊密な連携をとって、私自身としてはその悪の根を絶ちたい、そういうふうな考えを持っておるわけでございますので、皆さん方にもこんなささいなことということでなく、その都度周知をさせていただき、そして役所だけで犯罪防止というような姿勢でなく、やはり国民総がかりで民主主義社会を守っていくというような面にもひとつ先生からもかけ声をお願いいたしたい、こう思います。
○安藤委員 では、これで終わります。ありがとうございました。
○大塚委員長 熊川次男君。
○熊川委員 かねてから問題になっておりました豊田商事株式会社役員に関する犯罪の捜査というものは、事件の性質上大変困難をきわめるものであったかと思いますが、大阪府警による先般の役員の検挙ということがありました。全国で大変な数に上るいわゆる被害者並びに被害総額があるやに聞いております。特に、私の地元群馬などでは全国一被害者が多い、あるいは被害額が大きい、こういうことで、地元弁護士会などでもいろいろ救済のための機関を設けて対処しておるわけであります。
 これに関連しまして、警察庁関係でさらにこれに取り組む姿勢というようなものがありましたらお伺いさせていただきたいと思います。
○古川説明員 申し上げます。
 お尋ねの件につきましては、大阪府警察におきまして、大阪地検と協力の上、本年三月二十一日、全国各地を舞台にして純金地金売買を仮装し、老人や主婦等多数の被害者から多額の現金をだまし取っておりました組織的な詐欺事件につきまして、豊田商事株式会社社長ら幹部五人を詐欺罪で逮捕いたし、同社の組織的犯行の全容を解明すべく現在鋭意捜査中でございます。
 本件につきましては、昭和五十八年七月から六十一年四月までの間、全国の十八府県警察におきまして三十二件の詐欺等の告訴を受理しております。これら告訴におきます被告人の数でございますが、延べ人員で六百八十五人に上っておるわけであります。これらの告訴事件につきましては、大阪府警察等関係警察におきまして現在捜査しておりますが、所要の捜査を遂げて検察庁に送付する方針で現在捜査を進めておるところでございます。
○熊川委員 事件の特異性などを考えてみたときに、警察御当局の御努力も大変なものだと思っております。法務大臣の指導監督、督励のよろしきを得たものと考えております。感謝いたすわけですが、他面において、刑事事件の解決だけでなしに、発生した被害の回復ということも一つ問題がなと、こんなふうに考えておるわけです。事後救済の一つとして、先般豊田商事の旧セールスマンに関連して大阪地裁におけるいわゆる不当利得返還請求訴訟における判決がございました。
 この被害者は、先ほども述べるとおり、中には高齢者で老後の唯一の頼りにしていたような金、あるいは婦人、非常にセールスマンの話に乗りやすい、こういった方を対象としたり、時には公務員の奥さんであってなかなか表には述べられないというような方も多々あるやに聞いております。また、私の地元の例をとってみても、被害額は届け出済みのものだけでも三十五億円、最高は一人でも七千万円もの人もあると聞いておりますし、被害者数も六百七十名。しかし、未届け者の中には百万円を下回るような人が圧倒的に多い、こう聞きますし、事情があって届けられない方も多数あることを考えますと、やはり被害額はおよそ倍ではないだろうか。言うならば一県でも七十億円にも相当しやしないだろうか。また、一人平均の届け出だけでも五百二十二万円の被害額、これも全国一の多額ということになっております。
 そんなやさきでありますが、先般大阪地裁で出されたこの判決は、これまた民事事件としても非常に特異なケースというか、特異な請求の原因に基づくものではないかと思います。この判決のもたらす効果もいろいろ検討に値しようかと思っておりますが、この事件の被告の返還を全面的に認めておるこの判決は、違法な行為に基づく歩合報酬ということによる返還義務を認めているようであります。当然関連して源泉徴収税、こういったものにも相当関係してくると思いますが、豊田商事の破産財団の額が少ないというようなこと、漏れ聞けば一割にも当たらないんじゃないか、こういうふうに聞いております。
 事情はいろいろあると思いますし、難しい事情もありましょうが、このケースが弱い者、お年寄りあるいは交渉を打てない人、こういう方々が被害者であった特異なケースであるというようなことをあわせ考えて、特段の温かい手を差し伸べて破産財団の確保、ひいては被害者への配当の増加に少しでも配慮していただけないだろうか、こんな法を超えた気がするわけであります。戦後変わったもので国民に最も親しみやすいものの一つに、税務署の窓口がございます。国税庁の努力もさることながら、国民に親しまれる国税庁であり税務署になった、こういうこともあわせ考えて、この麗しい伝統をさらに積み上げていっていただきたい、こんなふうに考えますので、国税当局の御意見を承れたらと存じます。
○瀧川説明員 お答え申し上げます。
 親しまれる税務署の方は、これからも一生懸命やらしていただきたいと思っております。
 先生もう既に御案内のとおりでございまして、本判決というのは非常に特定の、限られた外交員二十名、それからその方々が特定の期間、つまり五十九年十二月から六十年四月に得た歩合報酬につきまして、公序良俗違反ということで、そういう観点から判示されたものでございます。本件の税務上の処理につきましては、判決で示されました権利義務関係であるとか経済的事実というものにつきまして非常に詳細に検討する必要がございますので、現在その作業を進めているところでございます。今先生御指摘の点も参考にしながら、できるだけ早く結論を出したいと頑張っているところでございます。
○熊川委員 法務大臣にお願いやら御感想を賜れたらと存じます。
 この種、特殊のケースでございます。刑事面においてもあるいは民事面においても大変困難を伴うことは私たちも想像にかたくないわけでありますが、先ほどの両答弁にありますとおり、今後の鋭意捜査への努力、そしてまたただいまの国税当局の温かい御答弁といい、この前進を期待しておるわけでありますが、何といっても、高齢者の財産権あるいは生活を守ってくださるのに最も心を砕いておられる温かいスタンスをお持ちの遠藤大臣に対し、今後の捜査並びにこの被害者の、民事的な意味の、経済的な意味の救済についての各省庁間あるいは関係者に対する御努力の意見調整あるいは取り組みの姿勢、スタンスなどもお聞かせいただけたらありがたいと思います。
○遠藤国務大臣 この事件は先生御承知のとおり、人間の弱みにつけ入るといったらいいか、そのような事犯で、悪質、巧妙な事犯だ、こう承知をいたしております。
 検察当局としては引き続き警察当局と緊密な連絡をとりつつ、警察から追送致があった場合には適正な処理をいたすことと承知いたしておりますけれども、とにかく何としても、弱い者に対しての助けと申しましょうか、援助というものは十分検討していかなければならぬ、こう思っております。
 なおまた、先生のお話の中にもございましたが、私は、この問題について救済の一つとして、先生のお話のとおり国民の権利の保全、人権擁護の職責を持っておる法務大臣としては、犯罪等による被害者の救済ということの意味から、その救済をするということは私たちの職務だと思っております。
 さような点で、豊田商事にかかわる国税の還付が大きな問題となっているようですから、ただいま国税庁からもそれぞれ御答弁がございましたけれども、私からも大蔵大臣なり国税当局に十分検討をお願いし、少しでも被害者救済の実が上がるように要請をしたい、還付等さもなければ何らかの方法というような二段構えで大臣なり国税当局と話し合いをしてみたい、こう思っておりますので、御了承をいただきたいと思います。
○熊川委員 ありがとうございました。
 大臣の温かい御配慮とまた人権尊重、被害者救済あるいは弱い者や御婦人、御高齢者に対する思いやり、情熱のほとばしりを感じ取りまして心から感謝すると同時に、期待をさせていただき、質問を閉じさせていただきます。
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○大塚委員長 内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
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 刑法等の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
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○遠藤国務大臣 刑法等の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
 第一は、電子情報処理組織に関連する不正行為に対処するための刑法の改正であります。
 電子情報処理組織の普及の結果、各般の事務の処理が電子計算機によって行われるようになり、その形態が大きく変化しつつあることに伴い、このような新たな事務処理の形態にかかわる不正行為が少なからず発生するとともに、今後その増加が懸念されるところ、これらの不正行為の中には、現行刑法により的確な対応が可能な従来の事務処理形態のもとにおける不正行為と同様の行為でありながら、現行の諸規定ではこれを的確に処罰することが困難なものあるいはその被害の重大さにかんがみ現行の法定刑では必ずしも適切に対応しがたいものがあるものと認められるのであります。
 そこで、このような状況にかんがみ、電子情報処理組織において用いられる電磁的記録について、その不正作出及び供用並びに毀棄を処罰する規定を設けること、電子情報処理組織による大量迅速な情報処理によって行われる業務を妨害する行為を処罰する規定を設けること、債権、債務の決済等が電磁的記録を用いて自動的に行われる事務処理の形態を利用して財産上不法の利益を得る行為を処罰する規定を設けることの三点につき、緊急に刑法の整備を行う必要があると考えたものであります。
 これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
 その一は、人の事務処理を誤らせる目的をもって権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作出する行為並びに不正に作出された権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を供用する行為及びその未遂を五年以下の懲役または千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により二十万円)以下の罰金に処するものとし、不正作出に係る電磁的記録が公務所または公務員により作出されるべきものである場合については十年以下の懲役または二千円(同法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するほか、権利、義務に関する公正証書の原本たるべき電磁的記録に不実の記録をさせる行為及びこれを供用する行為を現行刑法の公正証書原本不実記載及びその行使と同様に処罰するものとし、また、公務所の用に供する電磁的記録及び権利、義務に関する他人の電磁的記録を毀棄する行為を現行刑法の文書毀棄と同様に処罰するものとする点であります。
 その二は、人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、もしくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与え、またはその他の方法で、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、または使用目的にたがう動作をさせて人の業務を妨害する行為を五年以下の懲役または二千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するものとする点であります。
 その三は、電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作出し、または財産権の得喪、変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して財産上不法の利益を得る行為及びその未遂を十年以下の懲役に処するものとする点であります。
 第二は、近年、外交官等の殺害、在外公館の占拠、人質をとる行為等の事犯に対処するための国際的な協力体制の確立が国際的課題となっていることにかんがみ、政府は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する国際条約を締結することとし、今国会にその承認を求める案件を提出しておりますが、これらの条約のうち、前者は国際的に保護される者に対する殺人、誘拐等を、後者は人質をとって第三者に不法な要求をする行為を、それぞれ一定の場合にはその国外犯をも含め、これを処罰し得るようにすることを主な内容とするものでありますので、これらの条約の実施上必要な刑法等の整備を行おうとするものであります。
 これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
 その一は、刑法を改正して、刑法第二条から第四条までの場合のほか、同法第二編の罪につき条約の要請に従ってその国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、主として国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罪に関する条約の実施のための措置であります。すなわち、同条約は国際的に保護される者の身体または自由を侵害する行為等を犯罪とすべき旨定めておりますが、これらの行為の処罰については国外犯の処罰の点を除き既存の罪で対応することにより同条約の要請を満たすことができますので、国外犯に関して条約の要請の範囲内でこれを処罰することを可能とする措置をとり、条約上の義務を履行しようとするものであります。なお、この改正は、一般に、条約上要請される範囲で刑法各則の罪の国外犯を処罰し得ることとすることにより、将来、国外犯の処罰義務を定める条約の締結が必要となる場合に、その早期締結に資する効果をも有するものであります。
 その二は、人質強要行為等の処罰に関する法律を改正して、人を逮捕し、または監禁し、これを人質にして、第三者に対し不法な要求を行った者を六月以上十年以下の懲役に処するほか、人質強要目的による逮捕、監禁及びその未遂を処罰するものとし、さらに、これらの罪について、国民の国外犯を処罰するとともに、条約の要請に応じてその一の例に従って国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、人質をとる行為に関する国際条約の実施のための措置であります。
 その他、暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第一項及び第二項の銃刀を用いる傷害に関する罪についても、国民の国外犯に加え、その一の例に従ってその国外犯を処罰する趣旨の改正を行うこととしております。
 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○大塚委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十六分散会
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