第109回国会 法務委員会 第5号
昭和六十二年八月二十一日(金曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 大塚 雄司君
   理事 井出 正一君 理事 今枝 敬雄君
   理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君
   理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君
   理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君
      赤城 宗徳君    新井 将敬君
      石渡 照久君    稻葉  修君
      片岡 武司君    木部 佳昭君
      佐藤 一郎君    佐藤 敬夫君
      塩崎  潤君    谷垣 禎一君
      虎島 和夫君    宮里 松正君
      稲葉 誠一君    小澤 克介君
      山花 貞夫君    橋本 文彦君
      冬柴 鉄三君    安藤  巖君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 遠藤  要君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 根來 泰周君
        法務大臣官房審
        議官      稲葉 威雄君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 清水  湛君
        法務省民事局長 千種 秀夫君
        法務省刑事局長 岡村 泰孝君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局捜
        査第二課長   垣見  隆君
        外務省アジア局
        地域政策課長  小林 秀明君
        外務省経済協力
        局外務参事官  久保田 穰君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  山口  繁君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  櫻井 文夫君
        最高裁判所事務
        総局経理局長  町田  顯君
        最高裁判所事務
        総局民事局長  上谷  清君
        最高裁判所事務
        総局家庭局長  早川 義郎君
        法務委員会調査
        室長      末永 秀夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
八月十九日
 辞任        補欠選任
  冬柴 鉄三君    山田 英介君
同日
 辞任        補欠選任
  山田 英介君    冬柴 鉄三君
同月二十一日
 辞任        補欠選任
  逢沢 一郎君    片岡 武司君
  上村千一郎君    石渡 照久君
  加藤 紘一君    谷垣 禎一君
  佐藤 敬夫君    新井 将敬君
  宮里 松正君    虎島 和夫君
同日
 辞任        補欠選任
  新井 将敬君    佐藤 敬夫君
  石渡 照久君    上村千一郎君
  片岡 武司君    逢沢 一郎君
  谷垣 禎一君    加藤 紘一君
  虎島 和夫君    宮里 松正君
    ―――――――――――――
八月二十日
 中国からの帰国者の国籍に関する請願(粟山明
 君紹介)(第五七〇号)
 刑事施設法案の早期成立に関する請願(加藤紘
 一君紹介)(第五七一号)
 同(今枝敬雄君紹介)(第五九〇号)
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案反対等に関する請願(坂
 上富男君紹介)(第五八九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会申入れに関する件
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出、第百八回国
 会閣法第五二号)
 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第
 百八回国会閣法第八一号)
     ――――◇―――――
○大塚委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所山口総務局長、櫻井人事局長、町田経理局長、上谷民事局長、早川家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○大塚委員長 内閣提出、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
○稲葉(誠)委員 きょうは法案の日なんですが、その前にちょっと時間をいただいて、今問題といいますか、例のロサンゼルスから州の検事が来ているということに関連をして、法律上の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。
 それは、今来ておるのはどういうような法律上の根拠で、どういう目的で来ておるのか。検事が立ち会っているようですけれども、そういう点を含めて概略お話し願いたいと思うのです。
○岡村政府委員 アメリカから我が国に対しまして、いわゆる三浦事件に関しまして捜査共助の要請があったわけでございます。我が国ではこれを受け入れまして、国際捜査共助法に基づきまして我が国の捜査機関が関係者から事情聴取などを行うことといたしておるわけでございますが、そういったことに対しますいろいろな打ち合わせなどの目的で来日されたところであります。
○稲葉(誠)委員 それは共助だから、こちらの検事なりなんなりが調べるという形で、それに向こう側が立ち会うということになっているわけですか、あるいは道なんですか、どうなんですか。
○岡村政府委員 我が国では、捜査共助を受けました場合、取り調べ等は我が国の捜査機関が行うという慣例にいたしておるところでございます。したがいまして、外国の捜査機関は立ち会い、これは事実上認めておるという状況でございます。
○稲葉(誠)委員 それは慣例ですか、法律的にそういうふうになっているのでしたか。どういうふうになっておりますか。
○岡村政府委員 国際捜査共助法には、外国の捜査機関が直接取り調べができるという規定はないわけでございます。したがいまして、国際捜査共助法上、外国の捜査機関に対して日本国内での取り調べ等の権限は与えていないということでございます。
○稲葉(誠)委員 それから、将来の問題となりますか、法律上の問題として身柄の引き渡しの問題がありますね。そういう場合に一つの問題は、犯罪の罪名が違う、こういう場合にそれが引き渡しの対象になるかどうかということですね。アメリカの法律は、例えば共謀と訳しておりますか、コンスピラシーですかね、これが率直に言いますと日本の法律にはないわけですね。ちょっと漠としているように考えられるので、それと日本の刑法上の法律とどういうふうな関係になるわけですか。違うわけですね。アメリカの法体系、日本の法体系、罪名が違うという場合でも引き渡しの対象ということが考えられるのかどうかということですね。
○岡村政府委員 一般的に申し上げますと、引き渡しの犯罪に該当するかどうかという点につきましては、いわゆる双罰性ということが要件とされているところでございまして、この双罰性があるかという判断をしなければいけないわけでございます。
 そこで、その双罰性の判断でございますが、これは罪名といいますか、法的な評価といったようなものを離れまして、生の行為といいますか、自然的、社会的な事実関係そのものにつきまして、双方の法令によりまして処罰ができるのかどうかという判断をいたすわけでございます。したがいまして、罪名という形式的なものから少し離れた事実関係に基づいて、それが双方の国で処罰できるものであるかどうかという判断をいたすことになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 ソウバツ性という字は、どういう字を書くのですか。
○岡村政府委員 ヌという字を二つ書きます。それと罰。双方で罰するという趣旨の双罰性でございます。
○稲葉(誠)委員 そうすると、アメリカで言うコンスピラシーというものは、日本に対比するとどういうふうに考えたらいいわけですか。
○岡村政府委員 カリフォルニア州の刑法によりますと、いわゆるコンスピラシーというものにつきましては、次のように解されるところであります。すなわち、二人以上の者が州法上の罪となる何らかの犯罪を犯すことを合意し、かつ、その共謀者のうち一名以上の者がこの合意に係る目的を実現するべく何らかの明白な行為をなすことということであります。すなわち、具体的な犯罪を犯すことの合意とその合意に基づきます明白な行為ということ、これが要件とされているところでございます。
 そこで、引き渡し犯罪の問題として考えますと、我が国では御承知のように例えば殺人につきましては、共謀それ自体を処罰する規定はないわけでございます。ただ、アメリカのコンスピラシーも、今申し上げましたように合意とそれに基づく明白な行為ということが要件とされておるわけでございまして、そういった具体的な事実関係のもとで、それが日本法のもとで死刑、無期あるいは長期一年を超える拘禁刑に処することと評価できるような行為が含まれているかどうかという観点から双罰性を判断することになるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 もう一つの問題は、こちらで現に裁判中である。一審の場合であれば本人が出廷しなければ法廷は開けないわけですね。控訴審の場合は、日本の場合は出廷しなくとも開ける。だから出廷は義務ではない、しかし本人の権利である。本人が出廷したいということを言えば、それを出廷させなければならないということになるわけですね。そうなってくると、まだ控訴審が係属中は出廷の権利があるということになってくると、その間は身柄の引き渡しというのは法律的にというか、あるいは条約上どういうふうになるわけですか。何か条約と法律は違うのだということを言う人もいるわけですが。
○岡村政府委員 我が国の国内法でございます逃亡犯罪人引渡法によりますと、我が国で裁判中の者については引き渡しを認めていないところであります。しかしながら、その法律上、条約上別段の定めがあるときはこれに従うという規定を置いているところであります。
 ところで、アメリカとの間では犯罪人引渡しに関する条約を締結いたしておるところでございます。その条約によりますと、引き渡しを求められている者が被請求国の領域において引き渡しの請求に係る犯罪以外の犯罪について訴追されている場合には、審判が確定するまでその引き渡しをおくらせることができるというふうになっておるわけでございます。したがいまして、そういうような事案につきまして仮に引き渡しを求められました場合は、ただいま委員御指摘のような審判におきます被告人の権利行使といったような面を十分考慮して、その引き渡しをおくらせるかどうかという判断を我が国において行うということになるわけであります。
○稲葉(誠)委員 その判断は実際にはだれがするわけですか。
○岡村政府委員 これはやはり法務大臣でございます。その辺のところは、裁判をいたしております検察ともいろいろ連絡をとらなければならないわけでございます。また、逃亡犯罪人の引き渡しの場合は、裁判所にその審査請求もしなければいけないわけでございますので、そういう中で判断されていく事柄になるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 結構です。
 それでは、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の質疑に入らせていただきます。
 この法案の中で、この前参考人の方がおいでになりましていろいろ御意見を述べられたことは、私は非常に参考になるというふうに考えるわけですが、問題の一つは、どなたがお答えになるのですか、本来簡易裁判所のあるべき姿というのは、いわゆるアメリカ流の少額裁判所であるというような形であったはずなんだ。ところが、日本の場合にはそれが事実上できなくなっているというところに今問題がある。そして、むしろ地方裁判所の一環的な物の考え方というか、そういう現実の利用がされておるというところに問題があるのだ、私はこう思うわけですが、そうなってくると、本来、当初の理念がアメリカ流のいわゆる少額裁判所というか、そういうふうなものであったかどうか、ちょっと断定はできにくいと思うのです、日本の場合。ちょっと違うかもわかりませんがね。いずれにいたしましても、そういう理想というものが日本の場合どうしてできなかったのかですね。実現できないで、現実には地方裁判所の一環的な行き方をとっているわけですが、その理由は一体どこにあるというふうにお考えになられますか。
○山口最高裁判所長官代理者 裁判所法の制定過程におきまして、当時、臨時司法調査会と申しましたか、いろいろな機関がございまして、議論がなされておりました。
 その際に、最初の発想といたしましては、要するに憲法で令状主義の建前をとった、違警罪即決例は廃止された、したがいまして刑事の軽微な事件を処理する裁判所というものをたくさんつくらなければならない、令状裁判所というものをたくさんつくらなければならない、こういう発想が最初あったわけでございます。そのような裁判所をつくるとすれば、民事もあわせて担当させてはどうであろうか、そのときにアメリカのスモール・クレームズ・コートのような形でやってはどうだろうか、手続は裁判官の自由な裁量にゆだねる、そのかわり上訴審においては覆審制をとるとか、そういうふうなことがいろいろ議論されたようでございます。
 ただ、それにつきましては、それは日本の当時の感覚に従いますと、通常の裁判所にはならないのじゃないだろうか、そういうふうな反論と申しますか、がございました。両方いわばミックスしたようなものとしまして、現在簡易裁判所の特則といたしまして、証人尋問にかえて書面の提出を求めることができるという規定がございます。これも少額裁判所の根底にありますラフジャスティスに基づく発想だろうと思うのです。それから、委員御承知のように調書の省略という規定もございます。これもやはりラフジャスティスの発想に基づく規定であろうかと思うのですが、実はこのような規定が、戦後発足いたしました簡易裁判所におきましては全く活用されなかったわけでございます。それは、やはり裁判所に持ち出す以上は適正手続できちんと調べて黒白をつけてもらいたい、そういう国民の期待と申しますか、国民性と申しますか、そういうふうなものがありまして、少額裁判所のいわゆるラフジャスティスの構想に基づく規定が活用されなかった、こういうことであろうかと思います。
 他方、事物管轄につきましては、地方裁判所と簡易裁判所と、第一審はいわばともに分け合っている面がありまして、基本的な民事訴訟の手続あるいは刑事訴訟の手続と申しますのは、地方裁判所のそれとほとんど変わらない。先ほど申しましたような若干の特則規定はありましたけれども、それが活用されないでその後運用されてくる。したがいまして、学者の方によりますと、小型地裁化というふうな批判があるけれども、やはりそれは本来なるべくしてなったのではないだろうか、こういう御指摘をなさる方もあるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 今、デュープロセスのお話がございましたね。それに関連をして、例えば家庭裁判所の中で少年法の審判といいますか、その中で問題が相当あると思うので、実は私自身もこれは悩んでいるところなんですが、きょう家庭局の局長さんがおいでになっていませんから、別の機会にいたします。これは恐らく民法の特別養子のところで家裁が関係してきますから関連してお聞きしたいと思うのですが、少年法におけるデュープロセスの問題ですね。これは「判例タイムズ」に岐阜の大垣の裁判官が上、中、下書いておられますが、非常な力作です。よく読んで勉強しておいていただきたい、こう思うのです。
 問題は、今おっしゃった中で、それでは地方裁判所と簡易裁判所とはどうなっているのか。どうなっているのかというのは質問がおかしいのですが、地方裁判所の小型化ということがどういう点にあらわれているか。逆な意味で言うと、簡易裁判所の独立性というものが、簡易裁判所の独立性という言葉は――裁判は独立てすよ、これは当たり前な話ですが、司法行政上の独立性というか、そういうふうなものが極めて薄いといいますか、ちょっと漠然とした質問なんですが、地裁と簡裁との関係の中で、裁判自身は独立なのは当たり前な話ですが、簡裁の独立性といいますか、独自性といいますか、そういうふうなものが必ずしも十分でないというところは一体どういうところにあるのか。ちょっと質問は難しいですよ、ちょっとつくった質問もわざとしておりますから。
○山口最高裁判所長官代理者 先ほどもちょっと申し上げましたように、簡易裁判所の地方裁判所に対する独自性と申しますものは、民訴におきましては、簡易裁判所における特則という規定の中にある程度凝集されて出てきているのだろうと思うのです。
 その特則規定の中には、戦前の区裁判所当時に既に存在していたものもございます。例えば口頭受理なんかは、戦前の区裁判所の特則でもあったわけでございます。それを引き継いできておる。戦後発足いたしました簡易裁判所に特に認められた規定と申しますのは、先ほども申しましたように、証人尋問にかえて書面の提出を命ずることができるとか、あるいは調書の省略ができるとか、こういう若干の規定でございまして、これらの規定が非常に活用されますならば、地方裁判所の訴訟手続のありようとは若干変わった訴訟のありようになったであろうというふうに考えられるわけでございますが、それが、先ほど御説明申しましたようなもろもろの原因があろうかと思いますが、活用されないまま今日に至っておる。そういう点からいたしますと、訴訟の運営そのものを見ておりますと、判決書もかなり詳細に書きますし、簡略化の規定はあるのですが、かなり詳細である。それから例えば書証の問題にいたしましても、地裁と同じように、書証の成立を認めるかどうかという認否をして、争われた場合にはその成立を認めるための証拠調べもやらなければならない。全く地裁の訴訟運営と異ならない形で今日に来ておるというところに小型地裁化と言われるゆえんがあるのだろうと思います。
 ただ、他面、簡易裁判所におきましては調停制度がございます。これは無方式で、しかも非公開でやられるわけでございまして、これは日本の司法手続における非常な特徴のある制度だろうと思いますが、民事調停あるいは簡易な債務名義の作成手続でございます支払い命令、即決和解というふうに、国民に比較的親しみやすい事件処理をやっているというところでは、地裁とはまた変わった、国民に比較的親しみやすい裁判所としてそういう特色はやはり発揮してきたのではないだろうか、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 私の質問の意味が率直に言うとおわかり願えなかったというのですか、私もはっきり言わなかったのが悪いのですが、私は、訴訟手続とかそういうふうなことはここで論議すべきことではないという考え方を持っておるのです。これは司法権の独立との関係もありまして国会で論議すべきではないという考え方が私は強いのですが、私が言っているのはそういうことではなくて、例えば予算の面において、簡易裁判所の予算というものは地方裁判所の予算の中に入っているというのでしょう。ちっとも独立していないわけです。そこら辺のところは一体どういうことからきているのかということをお聞きしているわけです。
 この前、この法案が通ることによって、ではどれだけの経費が節減できるかということがだれかから質問がありましたら、経理局長は、それは地裁の予算の中に入っていて独自計算していないからわからない、こういうお答えでしょう。そこら辺のところは、一体どうして簡裁なら簡裁の予算というものは独立に掲載をされないのかということが一つの問題だ、私はそこに従属性というものがあるという見方をしているわけですね。それが一つの疑問なわけです。
 もう一つの疑問は、常置委員会という制度がありますね。そこは地裁で言うと所長と各部長、各支部長ですか、には限らないかもわかりませんが、常置委員が決まっていますね。簡裁の判事は常置委員になれないわけでしょう。そうすると、常置委員会というものは裁判官会議にかわるべきものとして司法行政上重要な役割を果たしておるというふうに私どもは考えておる。それに対して簡裁の判事というものは、オブザーバーとして出られるらしいけれども、全くノータッチみたいなものだ。権限が与えられておらない。だから、予算面においてあるいは司法行政上の面において――簡裁というものが裁判の中で小型地裁という意味ではありません。私はそういうことを言っているのじゃなくて、司法行政上の意味において地裁の支配下というと言葉は悪いかもわかりませんが、そういう形の中に置かれておるということ自身に、簡裁というものを重要視しない最高裁の姿勢があらわれておるのではないか、こういうことを聞いているわけですね。
 だから、予算の面と常置委員会の関係、この二つについてお答えを願いたい、こう思うわけです。
○山口最高裁判所長官代理者 全国に数多く置かれております裁判所に一体司法行政事務をどのように分配するかというのは、すぐれて制度的、政策的な問題であろうかと思います。
 予算の問題につきましても、今御指摘のように、簡易裁判所につきましては独立に予算を分けて計上しているわけではございません。これは地方裁判所の中に簡易裁判所の経費も含められて計上し、かつ示達されるわけでございます。なぜそのようにしたかと申しますと、全国に数多く設けられております簡易裁判所に公平に適正に予算を配分するためには、やはり地裁なら地裁におきまして管内の簡易裁判所の状況を十分掌握しながら適正な予算執行を行っていくのが、全国的な司法行政の適正な執行ということからすると望ましいのではないか、こういうような考え方から、簡易裁判所については独自に予算執行を認めないという制度がとられたのではないかというふうに考えております。
 それから、この点は人事行政におきましてもさようでございまして、例えば勤務裁判所の指定とか補職とか、こういうのは一定レベルの者は地方裁判所、一定レベルの者は高等裁判所、さらには最高裁判所というふうに分配されております。これもやはり全国的に均斉のとれた人事行政を行うためには、それぞれの裁判所にそれぞれの人事権を与えるのではなくて、ある程度集権的な形をとった方がいいのではないか、こういう政策的な配慮に基づくものであったのではないかというように考えております。
 先ほど来御指摘の常置委員会でございますが、これは地方裁判所の場合ですと地方裁判所の裁判官会議を構成するメンバーの中から常置委員が選ばれるわけでございますから、簡易裁判所の裁判官が常置委員会のメンバーになるわけではございません。しかし、常置委員会あるいは裁判官会議におきまして、簡裁を含めました司法行政事務についていろいろ論議をいたします際、そういう簡易裁判所を代表する方が含まれていないということは十分念頭に置きまして、所長、事務局長がそれぞれの簡裁の実情というものを十分把握しました上で、適正な司法行政が行われるように常置委員会にも報告し、常置委員会で議論をしていただいて執行している、こういうことでございまして、常置委員会に出ていないから簡裁は日陰者扱いにされるというようなことはないと考えております。
○稲葉(誠)委員 だれも日陰者扱いしたと言っているわけではないのです。だけれども、今の御答弁だと二つあるわけですね、予算の面と常置委員会の面と。常置委員会の面は司法行政のいろいろな面に当たると思うのですけれども、よく理解できないですね。だから結局、司法行政、司法行政と言われるものは一体何なのか、司法行政がどれだけのウエートを占めているのか。私がいつも疑問に思うのは、所長の権限というか仕事というものは一体何なんだろうか、どうもよくわからない。それによるコントロール、予算とそれから今言った司法行政というか、人事のことも含むのだと思いますが、全体のコントロールを所長がやる。その所長は最高裁の強烈なコントロール、支配下にある。強烈でないかもわかりませんが、だんだん強烈になってくるという話があちこちから聞こえてくるわけですね。
 まあそういうようなことがあるのですが、そこで、私は率直に言うと、一般の人にはどうやって簡易裁判所の裁判官が選ばれてくるのか、選任されるのか、全然わからないですね。一説によると、最高裁判所に功績のあった人が選ばれるのだという話もあるので、功績という意味は、今言った裁判所の司法行政に忠実であった人の中から選ばれるという、独断と偏見に満ちた説もあるのですね。だから、どうもよくわからないですな。具体的にはどうやっておられるのですか。何を模範として、何を基準として、基準という意味は、あるいは外国の制度という意味も含めて、あるいは一つの日本の国内における選考基準といいますか、どういうふうにして行われているのかさっぱりわからない。国民には全然わからない。いつこういうふうな選考が行われたのかも全然わからないですね。どうなっているのですか、これは。これは大臣、知っているのかな。
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事は、委員ただいまの御質問は、裁判所法四十五条の簡易裁判所判事のことをおっしゃっておられるものと考えます。裁判所法の四十五条では、「多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、」選考によって簡易裁判所判事に任命されるということが定められております。その選考につきましては最高裁判所の規則で定めるということになっておりまして、その規定に基づきまして簡易裁判所判事選考規則というのがあって、その規則の中に簡裁判事選考委員会というのが設けられております。さらに、その規則の中では簡易裁判所判事推薦委員会というものが各地方裁判所に置かれるということも定めてございます。
 具体的にはどういうふうに行われるかと申しますと、各地方裁判所にあります簡易裁判所判事推薦委員会が、最高裁判所にあります簡易裁判所判事選考委員会に候補者を推薦してまいります。その推薦された候補者を簡易裁判所判事選考委員会が一定の手続で選考するという定めになっているわけでございます。年に一度、各地方裁判所の推薦委員会からの推薦を受けまして、選考委員会が選考しているということでございます。その選考の方法といたしましては、試験をしているわけでございます。試験の中には筆記試験と口述試験と、この両方がございまして、受験者はその両方を受けて、そして受かった場合には選考に合格したということになるわけでございます。
 ただ、候補者の中には筆記試験を受けないで、口述試験のみで選考を受ける者がございます。これは簡易裁判所判事推薦委員会の推薦を受けないで、簡易裁判所判事選考委員会において候補者の決定をして、そして口述試験のみによってその選考を行うという対象になっているものでございます。この者は、毎年度大体十名程度の者がそのような候補者としての決定を受けているという実情でございます。
○稲葉(誠)委員 高裁の判事や地裁の判事をやっておられて定年でおやめになって、それから簡裁の判事になられる方もおられますね。これはよくわかるのですが、問題は、今おっしゃった推薦委員会というのは具体的に、例えば一番新しい資料でいうと去年ですかな、ことしは別として去年なら去年、何人ぐらい推薦があって、それで何人ぐらい受かったのですか、全部受かったのですか、これはどうもよくわからないのです。
 もう一つは、後者の方ですね。十名ぐらい推薦委員会を経由しないで選考だけでというのは、最高裁に勤めていて、そしていろいろ功績というとおかしいかもわからぬけれども、非常に一生懸命やったというような人の中から選ぶのじゃないですか。前の方は今言ったようなこと、それで後の方の十名というのはどういう方を選んでいるのですか。最高裁に勤務した人がほとんどですか、事務総局にいた人あるいは大法廷、小法廷にいた人がほとんどなんですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 まず、推薦を受けた者の数から申し上げます。
 各地の簡易裁判所判事推薦委員会から推薦されてくる者の数は、年度によってさまざまでございますが、平均いたしますと一年について二百名程度でございます。これは、各地の推薦委員会に簡易裁判所判事への任官を希望する者の申し込みがありまして、それを各地の推薦委員会で面接を行いまして、中には面接に落ちる者もあるかと思いますけれども、そうやって推薦をされてくる者が大体二百名程度であるということでございます。
 それからもう一つの、口述試験のみによって選考を受ける者でございますが、これは最高裁判所に勤務した者だけではございませんで、最高裁判所に勤務した者も毎年一、二名はございますが、それ以外に各地の裁判所に勤務していた者を選考しているわけでございます。これらの者はいずれも、一般職といたしましてはその在官中に非常な能力を実証して、それによって各地で十分な働きをした者であるわけでありまして、その勤務の実績から相当程度の能力があるということが認定されている者でございます。そういった者をごく少数、候補者として選考しているわけでありますが、いずれも各地の裁判所において非常に重要なポストについたりして、簡易裁判所判事としての推薦を受け、そして選考を受けていくという機会がなかった者につきまして、そのような機会を与えているというものでございます。
○稲葉(誠)委員 前の方といいますか、推薦委員会のメンバーはどういう方がメンバーになっているのですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事選考規則の第十八条に、委員会の構成が定めてございます。当該地方裁判所の所長、当該地方裁判所の判事で前号に該当しない者、当該地方裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の所長、当該地方裁判所に対応する地方検察庁の検事正、当該地方裁判所の管轄区域内の弁護士会の会長、学識経験のある者、以上から通常は八名の委員が出まして、それでもって推薦委員会が構成されるということになっております。
○稲葉(誠)委員 私は推薦委員会というものがよくわかりませんから、弁護士会長も入っているというのなら、それじゃ私どもの方の弁護士会長にもよく聞いてみます。それから検事正にもよく聞いてみたいと思っているのですが、具体的にどういうふうに行われているのですか。まさかそうやって推薦されてきた者を、そこでだめだと言うわけにはいかないでしょう、実際問題としてはだから、ほとんどそのまま通っているのじゃないか、こう思うのです。
 率直に言えば、私どもも見ていて、裁判所に勤務している者の中で、ああこの人はよく勉強しているな、そういう方も随分おられますね。そういう方が大体簡易裁判所の判事になっている場合も多いわけです、私どもが見ても。それをかれこれ絶対ほかに言ったりなんかしませんけれども、これは大体見当がつきますね。それはそうなんですが、口述試験だけで受かるというところに、これはどうも何だかおかしいじゃないか。こういう制度をどうしてつくったのですか。ここでどうも情実が入るので、最高裁のお気に入りの人を、最高裁側にいろいろ貢献をしてくれた人を最高裁側の方で積極的に、あなた簡裁の判事にならないかというようなことを勧めてやっているのじゃないですか。俗に言う特訓というのをこれはやっているのじゃないですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 簡易裁判所判事選考委員会で行います選考の方法としての口述試験というのは、これは単純な面接ではございませんで、民事、刑事両方についての実体法と訴訟法についての口頭試問でございます。かなり難しい問題に基づいて、相当高度な質問を委員の方からするわけでございます。そういう意味で、そもそもこの口述試験をパスするということがやはり相当の力の実証であろうというふうに思っているわけでございます。
 それからその候補者に選ばれる者というのは、最高裁判所あるいは各地の裁判所において、それは高等裁判所の首席書記官の場合もございますし、高等裁判所の事務局次長の場合もございますし、各地の裁判所でさまざまな重要ポストを経てきた者でございますが、これらのポストを経てきた者は試験を受けるというようないとまは今までなかったわけであります。しかし、それらのポストをこなしてきたということによって、それはやはり不十分な能力の者ではそのようなポストをこなしていくということはなかなかできないものであろうと思っているわけであります。そういった人たちは、裁判事務をやる場合にもそれ相当の実力を持っているわけでございますし、また、裁判所書記官としていろいろな裁判事務にも関与した経験のある人たちでありますので、決してそんな情実とかなんとかいうようなものではございませんで、そういった能力のベースのある人たちに今申しましたような試験をすることによって、その能力の判定をしているということでございます。
○稲葉(誠)委員 情実とかなんとかというのは、後の方の、試験を受けないで口述だけでパスするという、それがどうも情実の温床みたいになっているのじゃないかという偏見を持っている人もいるわけですね。私はそう思っていないつもりですけれども。よくわからないのですよ、これ。この十名というのがどういう経歴の人だとかなんとか聞くのが本当かもわかりませんけれども、そこまでも余りここでやるのもあれですからあれしませんがね。それから、二百名受けた人のうち何名ぐらい受かるのだということも聞きたいけれども、そこはちょっと遠慮します。
 そこで、今のお話を聞くと、事務局の次長だとか首席書記官でしょう。事務局長になっちゃうと、もうこれは簡裁の判事にならないですわね、大体原則として。これは事務局長の方が待遇がいいからじゃないですか。簡裁の判事になると、待遇が下がってしまうというのでしょう。だからならないと言いますわね、よく。これは下世話で言うのかどうか、よく言うのだけれども。そうすると、事務局長の場合はいろいろな手当がつくのが、簡裁の判事になると下がってしまうのでならないということになるのですか。あるいは、年齢的なあれでならないということになるのですか。これはどうなっているのですか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 改めて申し上げますと、まず、毎年十名程度の者、口述試験のみによって合格する者でございますが、これは試験なしで合格するというのじゃございません。試験の中の口述試験のみによって合格するということを申しておるのでございます。
 それから、それになる候補者でございますが、これは、事務局次長と申し上げましたのは高等裁判所の事務局次長という意味でございまして、そのほか地方裁判所の事務局長である者ももちろん候補者である場合がございます。それから、高等裁判所や地方裁判所の首席書記官であった者も候補者になっております。そういう意味で、事務局長であった者が簡裁判事にならないというわけのものではないわけでございます。
 なお、給与の面につきましては、簡易裁判所判事に任命いたしますときには、大体現給保障と申しますか、一般職であったときの報酬を見まして、それに相応するような、それを下回らないような報酬を考えているわけでございます。したがって、事務局長の場合には報酬が下がるから、だから簡裁の判事にならないというようなことはないわけでございます。
○稲葉(誠)委員 私の疑問は、なぜ簡易裁判所の判事というものをそういうような採り方をするのか、むしろ逆に、それじゃどうして公募しないのか、ちゃんと公明正大に官報で告示して、志望者を募って、そこでちゃんと試験をやって、そして採用したらいいではないか。これだと、全くといいますか、論功行賞というか、そういうような色彩が非常に強いわけですね。そこで情実だとかいろいろなものが入ってくるということも考えられるので、私はどうもその辺がよくわからない。なぜ公募してはいけないのですか。公募して、ちゃんとオープンにして試験をやったらいいじゃないのですか。どうしてそれをやらないのですかね。
○櫻井最高裁判所長官代理者 委員御指摘のように、官報で公募するという形は確かに今までとられてはいないわけでございます。ただ、毎年簡易裁判所判事の選考があるということは、これは随分広く周知されておりまして、裁判所部内の者はもちろんでございます。裁判所部内の者は、もちろんそのような希望のある者はその他の推薦委員会の方に申し出を全部してくるわけでございますし、それ以外に部外から申し出をされる方もございます。毎年三十名程度の者が裁判所外の官庁や民間会社等から申し出をしておられます。これは官報で御存じになるわけではありませんが、いろいろな形で簡易裁判所判事にはこのような任官方法があるということはもうかなり常識のようになっているがために、各地の推薦委員会に問い合わせをされて、そしてそちらへ申し出をしてきておられるわけでございます。
○稲葉(誠)委員 問題を変えたい、こう思うのですが、簡易裁判所を今後人的、物的に充実するということなんでしょう。具体的に、この法案が通ってどういうふうにするのですか。どこをどういうふうにしようという考え方なんですか。
○山口最高裁判所長官代理者 幸いにしてこの法案が可決成立するということになりますと、統合される百一庁におります簡易裁判所の判事さん、これは十一名ございます。それから一般職の方方、書記官、廷吏、事務官の方でございますが、これが約二百数十名いらっしゃいます。
 私ども、まず第一に非常駐庁の解消ということを申してまいりました。百一庁の統合が実現するとなりますと、現在百四十一の非常駐庁がございますが、そのうち九十庁が解消されることになるわけであります。あと五十一庁の非常駐庁が残りますけれども、今申しました簡易裁判所判事十一名の方々はその非常駐庁の解消の方に持っていく。
 それから一般職につきましては、まず受け入れ庁の充実が肝要でございます。したがいまして、書記官、事務官その他の方々は受け入れ庁の充実の方に振り向けたい。それから、簡易裁判所の中に非常に事務量のアンバラが生じております。繁忙な簡易裁判所の充実を図るために、そちらの方にも人を振り向けていきたい。さらには、地家裁の中でも繁忙庁がございますから、一部はそのようなところへ振り向けてまいりまして、全体としての充実を図ってまいりたい。これは人的設備の面でございます。
 それから物的設備の面につきましては、これまで木造庁舎が九十ほどございました。今回統合されることによりましてその数がかなり減ってまいりますが、まだ木造庁舎、不燃庁舎でない分がございますので、これらの方の整備を逐次図っていきたい。
 それから、何よりも、先ほど来御指摘のように、簡易裁判所の運営につきましていろいろの御批判がございます。受け付け態勢の整備でございますとかあるいは口頭受理、準口頭受理の態勢の整備でございますとか、さらには調停の充実でありますとか、そういうふうな手続面、運用面での改善にも力を向けてまいりたい、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 こういうことが言われているのですね。これが通ってしまうと、その後に、甲号支部、乙号支部がありますね、それの統廃合というか見直しといいますか、そういうふうなものをしようとしておるのではないかということを言われていますね。甲号支部をなくすということはなかなか現実問題としてできないし、甲号を乙にするということも、実際に一たんなってしまったものはなかなか難しい、できないと思いますが、いずれにしてもそういうような形のことをどういうふうに考えておられるのかということが第一ですね。
 それから第二は、ちょっと前に戻ってしまって恐縮なんですけれども、簡易裁判所の統廃合といいますか、設立するなり廃止するについては、これは法律事項ですね。なぜ法律事項なのか。それは法律で決まっているのはそうだけれども、そういうことじゃなくて、なぜ法律事項なのか。支部の場合は規則でいいですわね。国会は関係ないでしょう。そこはどういうふうに言ったらいいのでしょうかね。
○山口最高裁判所長官代理者 まず、支部の統廃合、適正配置の問題でございますが、私ども五十九年一月に、日弁連、法務省、最高裁とで組織いたしております三者協議会に、裁判所の適正配置の問題を取り上げてもらいたいということで問題提起をいたしました。その際、理由といたしましては、要するに、戦後二十二年に設置された簡易裁判所を初め支部の配置は四十年間そのままである、にもかかわらずその間に人口分布の変動でございますとか交通事情の好転でございますとか、いろいろ社会事情の変化があった、その結果簡易裁判所あるいは支部の運営上いろいろな問題が生じてきておる、それが、利用される国民の側に立ってもいろいろ問題があるであろう、この際社会事情に相応するように裁判所の適正配置を図りたいのだ、そのときに簡易裁判所の適正配置、それから地家裁の支部の適正配置、それからもう一つは地家裁支部の甲乙の区別の廃止、これらを検討課題としたいのだということでお話しいたしました。
 日弁連におかれましては、いろいろ問題があるので最初は簡易裁判所から入っていこうということで、自来今日まで簡易裁判所の適正配置で御議論を続けてきたわけでございます。幸いにしてこの法案が成立いたしました後には、前々から申しておりますので、支部の適正配置の問題について引き続き協議を進めさせていただきたい、こういうふうに考えております。
 それから第二に御指摘の、簡易裁判所は法律マターであるのに支部は規則マターであるというのはどういうことか。これもつまびらかには承知いたしておりませんけれども、裁判所法で下級裁判所の設立、管轄区域それから廃止については別に法律で定めるというふうにいたしておりまして、その中に簡易裁判所が含まれるわけでございます。簡易裁判所はやはり高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所とは別個な、その当時も現在もさようでございますけれども、特に国民に親しまれると申しますか、特色のある裁判所として位置づけられていた、そういうことから法律事項にしたのではないかと思います。地家裁の支部になりますと、本庁に幾つかある部と似通った面がございます。支部は支部なりに管轄区域というものもございますし、官署としての独立性もございますが、本庁のそれぞれの部といわば対応する関係にある。したがいまして、支部の設置については最高裁規則で定めるようにというふうに法律で委任されたのではないか、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 本来簡易裁判所の設置というものは規則で定められるべきであるけれども、特に法律事項にしたという意味なんですか。あるいは逆に、支部も本来は法律事項であるべきなんだけれども、今言ったような理由からそれを規則にしたというのですか。どっちを中心に考えるべきなんですかね、これは。
 それと、お話がありましたように、独立だ独立だと言うけれども、私が前から質問しているように、第一、予算の面でちっとも独立じゃないでしょう。地裁に一緒になっているのでしょう。それから常置委員会にも入ってないから、人事の面でも司法行政上でもちっとも独立性がないのじゃないですか、全然ないとは言わぬけれども。裁判は独立なのは当たり前の話だけれども。だから、これは実際にはちっとも法律事項であるということの意味がないのじゃないかと私は思うのですがね。だから、そういうふうに特色ある、特色あると言ったって、ちっとも特色がないのじゃないですか。特色を出そうとしないところに問題があるのじゃないかと思いますが、どうなんですかね、これは。
○山口最高裁判所長官代理者 私がお答えするのもいかがかとは思いますけれども、裁判所法で簡易裁判所を含めまして設立、管轄区域、廃止を法律で定めるというふうにしておりますのは、本来規則事項であるけれども特に法律にしたのだという趣旨じゃないだろうと思います。やはり本来的に法律で定めるべきであるというお考えから、そのような法律の規定が設けられているものであろうというふうに考えます。
 支部につきましては、先ほど申しましたように、それぞれ本庁にあります各部と大体同じような単位である。しかも支部につきましては、そのときどきの状況でもう少し弾力的に考えていっていいのではないか、こういうような配慮もありまして規則にゆだねられている面があったのではないか、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、支部の再編成といいますか、そういうふうなものは、最高裁当局としてはこれはもうある程度の基準をつくっておられるのか、ある程度の年次的な計画というようなものを持っておられるのか。これはどうなんでしょうか。
○山口最高裁判所長官代理者 支部の適正配置問題につきましては、三者協議会にまずお諮りをいたしまして、そこで種々御議論をいただかなければなりません。現在の段階において一つの明確な基準を立ててどういうスケジュールでやろうかという具体的な計画を持っているわけではございません。
 支部につきましては、稲葉委員先刻御承知のとおり、戦前は区裁判所が設けられていたわけでございまして、明治二十三年以来裁判所が設置されていたという非常に古い伝統がございます。そういう面もございますし、支部の取り扱います事件も種々雑多でございまして、そういう点からいたしますと、非常に難しい面もあるわけでございます。これもやはり弁護士会あるいは検察庁それから司法書士会、関係の地元の自治体、こういう方々の御意見をいろいろ伺いながら、一体どの程度で考えていくのが最も妥当なのであろうか、これは模索していかなければならないだろうと思います。したがいまして、今の段階ではまだ具体的な基準も用意いたしておりませんし、具体的なスケジュールも立てておりませんが、できる限り速やかに協議を進めさせていただきまして、その後の段階で、規則事項でございますから、規則制定諮問委員会、これは最高裁判所にございますので、それをお開きいただきまして、そこで御審議をいただいて成案を得たい、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 そうすると、この簡易裁判所の場合であっても、今度は統廃合してしまう、しかし人口がどんどんまた変化してきますね。一たん減ったところがまたふえてくるということもなきにしもあらずですね。大都市周辺になりますか、あるいは特別な工業地帯とかなんとか、そういうのがありますね。そういうふうな場合は、一たん廃止したものでもつくるとか、また、それだけの必要性があれば新たに簡裁をつくるというふうなことも考えられてくるわけですか。
○山口最高裁判所長官代理者 やはり裁判所の配置と申しますものは、そのときどきの社会事情に相応するように常に考えていかなければならない性質のものであろうかと思います。したがいまして、ただいま御指摘のように、今回の法案によりまして一たん廃止された地域におきましても、例えば非常に人口が急増するとか事件数が非常にふえてなお増加傾向にあるとか、そういうふうに裁判所の設置を必要とする事情の生じましたときには、また法改正をお願いいたしまして新設というものも考えなければならないのではないか、かように考えております。
○稲葉(誠)委員 これは最初の案のときは百四十九でしたか、またそれ以上、もっと多かったときもあるのですか、ちょっとはっきりしませんが。百四十九が百一になったというのは、どういう理由からなんですか。という意味は、この前参考人の方の御意見をお聞きしますと、それが減ったのが何か御不満であったような意見にもちょっととれたところも私にはあったのですが、あなた方としては、これは国会対策や何かで、法案を通すためには一たんうんと出しておいてそれを減らしたような格好にした方が通りいい、こういうことであったわけですか。そうですとも答えられないかもわからないけれども。
○山口最高裁判所長官代理者 統廃合の規模をどのようにするかにつきましては、いろいろな立場から種々の御意見があろうかと思います。もちろん内部的にいろいろな作業を進めました段階では、百四十九ではございませんで、もっとこれを上回る数値も考えてみたこともないわけではございません。三者協議会なんかでもいろいろ議論をいたしましてその御意見等も承りながら、コンセンサスをいただくためには一体どの程度の規模がしかるべきかということで煮詰めてまいりましたのが、この法律案関係資料にございます法制審でも御議論いただきました相関表でございました。この大枠の中に百四十九が入ったわけでございます。
 これにつきましても、法制審議会の内部でもいろいろな御議論がございました。これは余り削るべきではないという御議論と、片方ではやはり地方の実情というものを十分把握して相当考えていただきたい、こういうさまざまな御意見がございました。法制審議会答申におかれましても、この大枠の中で一律に考えるのではなくて、管内人口動態あるいは事件数の動向、管内の全般の交通事情等々十分勘案して、相関表上の地位を基本としながら存置の必要性を検討しよう、こういう御答申でございますので、その後の作業過程におきまして弁護士会、司法書士会、調停協会あるいは警察、検察庁、さらには地元の自治体等からいろいろ御意見を伺いながら、客観的に見て、例えば今後人口増の傾向があり、事件数の増加が見込まれる地域、それから事件数は比較的少ないけれども管内が非常に広うございまして、市町村が散在しているから管内の全般の交通事情が悪いような地域、陸の孤島のようなところ、これはやはり今回は除外してしかるべきであろう、かように考えまして百一庁にたまたまなったわけでございまして、そのほかの思惑で絞ったわけではございません。
○稲葉(誠)委員 簡易裁判所の事件の統計のとり方が、最高裁側は意識して廃止に持っていくために少なくとっているのではないかという議論をする人もなきにしもあらずですね。だから、例えば大分地方裁判所の中に宇佐簡易裁判所というのがあります。宇佐八幡のあるところかな。そこでとっているものは、あなた方の方は民事通常と刑事通常だけを中心に大体統計はとっているのですか。例えば民事通常、手形小切手、督促、和解、公示催告、過料、仮差し押さえ、仮処分、共助、雑件、民事調停、刑事通常事件、略式、刑事雑件、刑事の雑件というのは何を言うのかちょっとよくわかりませんが、こういうふうな形で統計は全部あるのですか。とっているのですか。この資料の中、どうですか、私よく見ていませんが。例えば今の宇佐の簡易裁判所、あなた方の方の数字はどういうふうになっていますか。
○山口最高裁判所長官代理者 裁判所の事件につきましては、それぞれの統計数字は持っているわけでございます。ただ、私どもが適正配置の基準として事件数を考える場合、裁判所の事務量をはかる物差しだけではなくて当事者の全体の便、地域住民の便というものを推しはかられる尺度である必要があろう、こういうふうに考えたわけでございます。
 例えば支払い命令というのがございます。宇佐の場合、これが六十一年には六百十三件になっておりますけれども、この支払い命令は実はカウントいたしておりません。これは調べました結果、これの九十数%は管外の利用者でございます。いかに事件数が多かろうとも、その裁判所を利用する方が管外の方であるとすれば、その裁判所を現在位置に置いておく必要はないわけでございます。移転するためにはどのような御不便を与えるかという観点からいろいろ基準を立てなければならない。そういうことから、民事訴訟、民事調停、刑事訴訟、これは当事者が裁判所に出頭しなければならない事件でございます。それを主にしたらどうであろうか。しかも、これが簡易裁判所においては基本的な事件になるわけでございますから、基準の場合は相対比較の問題でございますので、基準として民訴、民調、刑訴をとればいいのではないだろうか、かように考えてそういうふうな三種の事件を基準にしたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 督促事件の場合はもちろん相手方の所在地に支払い命令を求めるわけですから、今度は逆に宇佐の人がほかのところに行って支払い命令を求めることもあり得るわけです。だから、結局計算してみれば同じことになるのじゃないですか。だから、あなたの方のとり方がどうもできるだけ統計を少なくしよう、少なくしようというふうにとっているという理解の仕方も私にはできないわけではないように思うわけです。
 雑件なんかは数字に入れないわけですか。それはおかしいのじゃないですか。しかし、民事の雑件というのは宇佐の場合に簡裁に五百何件あるのです、何を言うのかちょっと内容がはっきりしないところがありますけれども。刑事の雑件も相当あるのですが、略式なんかも相当多いですね。略式の場合はどういうふうになるのですか。その地域の人かな。必ずしも地域の人とは限らぬわな。けれども大体地域の人ですね、支払い命令と違うでしょうけれども。そういうようなものも全体に数字を入れて統計をとっていくと、事件数というのはもっとふえてくるのではないのですか。どうもあなたの方は統計のとり方が少なくとろう、少なくとろうという統計のとり方をしているように考えられてならないのですが、どういうわけで今私が言った手形小切手――督促はわかりました、和解、公示催告、過料、仮差し押さえ、仮処分、これも必ずしもその土地の人が来るとは限らないですよ。民事だってその土地の人が来るとは限らない。訴えが起きればそこに来ざるを得ないじゃないかというのだけれども、そんなことを言ったって欠席判決だってあるのだから理屈にはならぬかもわからぬし、いろいろあると思うのです。どうしてそういうようなほかのものを入れないのか、もう少しわかりよく説明願えませんか。
○山口最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、裁判所の再配置を考えます場合には、裁判所をそこに置いておく必要性、存置の必要性がどの程度あるか、これを探らなければならないわけでございます。そういう場合には、例えば今御指摘の仮差し押さえ、仮処分というのは本当に微々たる事件であります。これは多くはございません。雑事件と申しますのは、例えば期日の変更申請とかそういうものでございまして、大体郵送で送られてくるのがかなり多うございます。それから略式命令につきましては、やはり地域住民の方がかなり御出頭になる面もあるだろうと思いますが、かなり多くの部分が交通即日処理になじむ事件でございまして、これらにつきましてはそれぞれ出張処理ということも考えられますので、地域の個別事情で考えていけばいいのではないか、こういう観点からカウントはしてないわけでございます。あくまで当事者が裁判所に出向くという点を考えまして利用の便、不便をはかる必要があるであろう。
 それからいま一つは、絶対的な数値ではございませんで相対比較で考えていくべき性質のものでございますから、過去との時系列的な比較、あるいは横並びの比較を考えます上におきましては、民訴、刑訴、調停という基本的な事件だけで考えてもいいのではないか。これは、決してトータルとしての事務量がこれしかないのだというつもりで御説明しているわけではございません。いろいろ御説明申し上げますときにも、ほかにはこういう事件がございますということも御説明は申し上げておりますし、三者協議会におきましても、法制審議会におきましても、今御指摘のような交通略式命令の事件であるとか支払い命令の事件であるとか、そういう種類の事件の資料は出しております。その上で、この三種の事件を基準とすることについて御検討いただきまして、結果的には三者協議の段階におきましても日弁連はそれについては特に意見を述べないというふうにおっしゃっていただきましたし、法制審議会においてもその三種の事件でとっていいのではないかということで御了承いただいたわけでございます。
○稲葉(誠)委員 それでは、あと二点ぐらいお聞きしたいのですが、この統廃合で、どうも県単位に見ると偏っているのではないかという見方、不公平ではないかという見方があるのですね。
 例えば、この前私が宇都宮に行きましたら、栃木県の簡易裁判所は四つもやめちゃって、群馬県は一つもやめないじゃないですか、そんなのはおかしいじゃないかという意見もあるのですが、これはこれとして、例えば徳島県は三独立簡裁すべてが存続することになっている。高知県は四つの独立簡裁すべてが廃庁になるのだ、こういうのですね。これはどうも弁護士会と相談したら、弁護士会の方の意見をあなた方の方としては相当酌んだのじゃないかというようなことを言っている人もいるのですよ。弁護士会に行って相談すれば、これは議事録にとられると困るかもわからないけれども、独立簡裁へ行って一日つぶれちゃって――余り言うとあれですけれども、弁護士会は廃止に賛成とは言わぬけれども、まあまあというようなことを言いますよ、これは。徳島は三独立簡裁すべてが存続して、高知県の方は四つも、全部やめちゃうのですか。これはどういうことなんでしょうか。これは何か時の弁護士会の考え方によって、参考にし過ぎたのではないかということを言う人もいるので、そこがどういうふうになっているのかということをお聞きしたいわけです。
 それから、例えば高知県の本山簡裁、宿毛簡裁ですか、これらも廃止されると住民の人は地域的に非常に困るということを言っておられるのですね。この点どういうふうになっているのか、経過や何かをお話し願いたいと思うのです。
○山口最高裁判所長官代理者 徳島につきましては、たまたま対象庁といたしまして鳴門、牟岐、徳島池田というものがございまして、それはいずれも今回統合を見送っているわけでございます。これは相関表上の位置をごらんいただきますとおわかりいただけると思いますけれども、鳴門はやはり人口がかなり多うございまして、大橋ができたりいたしまして人口も増加傾向にございますし、事件数もかなりふえている傾向がございます。
 徳島池田になりますと、これは稲葉委員よく御承知のとおり、あそこは管内が非常に奥が漂うございます。その川筋に沿いまして点々と町村が散在しております。最遠の市町村からの時間というのも非常にかかる。最近は若干事件はふえる傾向にもある。したがいまして、こういう交通事情が全般に悪いところはやはり今回は統合を見送るべきではないだろうか。
 それから牟岐も、やはり同じように交通事情が非常に悪いわけでございます。牟岐が属しております相関表上の枠の中には串本、これは和歌山でございますし、高森、これは熊本でございます。これはいずれも客観的に見て統合を見送らざるを得ないであろう、こういう判断になったわけでございます。したがいまして、同様な意味におきましても、牟岐は統合を見送らざるを得ないであろう。
 宿毛につきましては、相関表の位置からいたしますとかなり上の方にあるわけでございます。比較的交通事情もいい、事件数につきましても、三十年当時は三種の事件で百四十六件ございましたのが、五十八年には九十三件でございますが、その後逐次減ってきております。その後、五十九年は五十三件、六十年四十三件、六十一年二十八件、こういうふうに、安定しているかどうかよくわかりませんけれども、非常に事件が減少傾向にある。ここは管内面積は三百八十九平方キロメートルでございますが、宿毛市と大月町の一市一町でございまして、ほとんど宿毛市の住民の方々が利用されておる、こういうような状況にございます。もちろん弁護士会、地元の御意見も伺っておりますが、そういう状況からすると、統合はやむを得ないであろう。
 それから本山は、なるほど交通の不便な点はございます。本山から高知へ参りますのに百五分ほどかかります。この管内には大豊、土佐、本山、大川と、こうあるわけでございますが、人口の一番大きい大豊町はやはり利用者は多うございまして、高知までは八十分のところでございます。そういう状況。それから事件が、これも非常に減ってまいりまして、三十年当時は百九十五件、三種の事件でありましたのが、六十年には二十一件になってしまっておる。六十一年は十四件。こういうふうな状況でございまして、地元の方が、最初御説明に行きましたときは何とか残してもらいたい。第二回目に行きましたときにも、過疎化に拍車をかけるから困るんだ、できれば存続してもらいたい。法制審答申後また二回お伺いいたしておりますけれども、最終的にはやむを得ないな、跡地についてはひとつ考えてもらいたい、町立図書館なり郷土資料館として利用したい、こういうふうに御意向を伺わせていただくようになったわけでございます。
 そういう次第でございまして、弁護士会との間ではいろいろ御意向を伺いましたけれども、それは法制審で御指摘のもろもろの事情を把握するために、一番地域事情に詳しい弁護士会の方々に御意見を伺ったわけでございまして、決して弁護士会の御意向によって左右されたわけではございません。あくまで客観的に地域の諸事情を判断した上で統廃合を決めさせていただいた、こういうことでございます。
○稲葉(誠)委員 最後の質問ですが、最高裁当局にお聞きしたいのですが、今回の法律改正によって、この前も質問が出てお答えはある程度いただいたのですが、裁判所職員の人員削減は行わない、そしてまた職員の勤務条件に不利益が生じないように十分配慮をする、こういうことはお約束をしていただけますか。
○山口最高裁判所長官代理者 私ども、当初から申しておりましたように、適正配置によって司法の機能を縮小するようなことは全く考えていないということを申して進めてまいってきたわけでございます。適正配置によって、そのこと自体によって事件数が変動するわけじゃございません。したがいまして、適正配置によって人員を削減することは考えておりません。
 それから勤務条件につきましても、もちろん先般御質問のございましたように、簡裁の庶務課長さんが異動いたしました場合に庶務課長になれないで主任書記官になるとか、あるいは課長補佐になるとかいうようなポストの異動はあろうかと思いますけれども、そのことによって勤務条件に不利を来さないように考えてまいりたいと思っております。
○大塚委員長 小澤克介君。
○小澤(克)委員 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 既に他の委員から質問があったこととあるいは重複するかもしれませんが、これが最後といいますか、締めくくりの質問になろうかと思いますので、その点はひとつ御了解を願いたいと思います。
 それで、本法案は端的に言って簡裁の統廃合法案ということでございますが、簡裁につきましては少額、軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理するという目的でつくられたものと承知しております。
 そこで、まずその運用の実態についてお尋ねをしたいと思うのですけれども、簡裁につきましては口頭の申し立てが認められているわけでございますが、現実に口頭申し立てというのは例は多いのでしょうか。どの程度の比率なんでしょうか。
○上谷最高裁判所長官代理者 口頭で申し立ててそれを調書にとるというのを御指摘であったと思います。
 これは、純粋に口頭で起訴をしてもらって調書をとるという形で処理しております件数は、民事訴訟事件では非常に少のうございます。比較的新しい統計で申しまして、昭和六十一年、昨年でございますが、この数字を申し上げますと、民事訴訟の事件では全国でわずか六百十七件、パーセントにいたしまして〇・三%程度でございます。調停事件の方は口頭受理はかなり多うございまして、やはり六十一年の統計で申しますと、全国的に四千二百三十二件となっておりまして、全体の約六・五%が口頭受理をいたしております。
 ただ、私どもの方で、口頭受理に準ずるものといたしまして、各簡易裁判所の窓口に定型的な用紙を備えつけておきまして、当事者がそれに記入すればいい。その記入の仕方等を説明するというふうなやり方をやっているのが非常に多うございまして、これが民事訴訟事件では、やはり六十一年の数字で申しまして全国で三万五千九百八十四件ございます。パーセントにいたしまして大体一七%強という数字になっております。それから調停事件にまいりますと、やはり六十一年の数字でございますが、これが全国で三万四千八百六件ということになっておりまして、全体からいいますと約五十数%になっております。
 口頭受理とそれから今申しました定型的な書面を御利用いただいているというのを合計いたしますと、民事訴訟事件では六十一年の数字が全国的に一七・一%、民事調停事件につきましては六一・三%、そういう数字になっておりますので、調停事件についてはかなり利用していただいているというふうに言えるかと思います。
○小澤(克)委員 純粋な口頭申し立ての民事事件がわずか〇・三%というのは、この数字をどう評価するか、いろいろな考え方があろうかと思いますが、かなり少ないのではないかなという印象を受けるのですけれども、実際の運用としては、窓口で、ここに定型用紙がありますからこれに記入してやってくださいよというような指導が行われる、その結果ということになるのでしょうか。
○上谷最高裁判所長官代理者 先ほど申しました数字からおわかりいただけるかと思いますが、訴訟事件と民事調停事件でかなりの数の違いがございます。確かに裁判所の職員の手間ということもないわけじゃございませんが、実は訴訟事件の場合に、当事者から紛争の状況をいろいろ聞きました上で、いわゆる訴訟のために必要な要件事実と申しますか、こういうようなものをより出してつくらなければならないという面がございます。一方、調停の場合ですと、そういうふうな余り技術的な要請がございませんので、従前の紛争の経緯等をある程度取りまとめればそれで十分役に立つというふうなことでございますが、訴訟の場合ですと、裁判所の調書をつくります場合に当事者の言い分をいろいろ取捨選択しなければならない面がございまして、どうしても当事者の方が裁判所にそういうふうにやってもらったということになると、どちらかというとこれで裁判所に信用してもらっているのだというふうな気持ちになることが多うございまして、職員としてやりにくいという面も実はあるわけでございます。
 そういう面もございまして、窓口に置いてある書面、これは記入例等もわかりやすく書いて備えるようにいたしておりますので、できればそれを使っていただきたい。どうしてもそうなりがちというところがあろうかと思います。
○小澤(克)委員 機能から見れば口頭申し立ても、それからそれに準ずる定型書面による申し立ても同じようなものだという言い方もできるかもしれません。しかし、調書はあくまで裁判所の方で作成する公的文書でしょうし、定型用紙によるものは、これはまさに申立人作成名義の文書ということでしょうから、要件事実の記載漏れがあった場合に、それは申し立て側が悪いというのは変ですけれども、要件に欠ける申し立てをしたにすぎなかったというふうに言われてしまいます。
 口頭の場合であれば、その日頭の中に幾ら聞いても要件事実に当たるものを主張しなかった場合はそれはしようがないですけれども、口頭であれば、親切に聞いた上で何とか法的に整理をして調書としてそれを満たした文書を作成するということになろうかと思いますので、この用紙に記入しなさいというのは、法が口頭申し立てを許した趣旨からすればやや問題があるのではないかというふうにも思うわけでございます。この〇・三%というのは、簡裁の簡易な手続という意味から、どうもややそれを満たした運用ではないのではないかなという印象を受けるわけでございますけれども、この点についてはもっと改善すべきだという御認識なんでしょうか。それとも、まあこんなものだろうというような御認識なんでしょうか。
○上谷最高裁判所長官代理者 当事者、原告側の便から考えますと、確かに裁判所の書記官の方で調書をつくって、それで起訴調書をつくるという方が便利といいますか、好都合ということは十分わかります。私どもの方といたしましても、できるだけ客観的な類型化しやすいような事件で、そして要件を落としたりしないような事件、商取引といいますか、そういう余り個人的な感情には絡まないような事件等では比較的処理しやすい面もあろうかと思いますので、今後とも自分で定型訴状等を書くのも非常に難しいという方には、できるだけそういうふうな口頭起訴調書をつくっていくという方向でいろいろ考えていきたいというふうには思っております。
 ただ、先ほど〇・三%という数字を申しましたが、確かに非常に少ないような数字になっておりますが、これは実はここ数年来の傾向でございますが、簡易裁判所の事件が急激に増加いたしまして、そのうちの半数近くがいわゆるクレジット関係の事件という統計面の問題もございます。通常の市民の方がまさに個人的なトラブルで裁判所に出頭して訴えを起こしたいというふうに相談しておいでになってくる事件は実はそう多くはございませんので、そういうのをベースに考えていただきますと、確かに絶対数は少のうございますが、口頭受理等もかなり行われているという見方もできると思います。
 特に先ほど申しました調停事件につきましては。これは件数からいいますと確かに六・五%という形ではございますが、そういうふうな実情をいろいろお考えいただきますと、かなりよく利用されている方である。特に調停の場合は、一番事件が多うございました昭和五十八年から九年にかけまして、これはいわゆるサラ金調停として債務者側から申し立てがなされるという事件が極度にふえた年度でございます。この年度をとってみてまいりますと、全申し立て事件の二〇%くらいが口頭申し立てで受理いたしておりますし、定型用紙を利用していただいたものを含めますと八〇%近くがそういう処理をいたしておりますので、裁判所としてはかなり努力はしているという面は御理解いただきたいと考えております。
 今後適正配置を実現させていただけるならば、そういうふうな簡裁の窓口の充実ということは私ども民事の担当局といたしましては一番重点事項と考えておりますので、今後さらに改善等について検討を重ねていきたいというふうに考えております。
○小澤(克)委員 確かに私の弁護士としての経験などからしましても、本人がいろいろなことをおっしゃる、中には取りとめのないことをいろいろおっしゃる場合が多くて、その中から要件事実を的確に拾い出すというのはなかなか難しいですし、それから本人の強調したいところが実は余り要件にはかかわりがないというようなことで聞き流しますと、一番肝心なことを聞いてくれないといって恨まれてみたりとかいうこともあるわけでございまして、口頭申し立ては裁判所の職員にとってなかなか大変だろうということは理解はできるわけでございますが、しかし簡裁の制度、趣旨が損なわれないように、これは国民の裁判を受ける権利に直結する問題でございますので、今後もぜひ親切な対応をお願いしておきたいと思います。
 それからもう一つは、簡裁においては特に当事者訴訟というのでしょうか、弁護士をつけない件数が多いのではないかなと思うわけでございますが、この点については、もし統計的な数字がございましたら挙げていただきたいわけですが。
○上谷最高裁判所長官代理者 一番新しい数字で、昭和六十一年度の数字で御紹介したいと存じます。
 全国の簡易裁判所の統計でございますが、まず昭和六十一年中に既済になりました訴訟事件は二十一万八千九百三十七件ございますが、そのうちで両方とも本人が出てきたという、いわゆる純粋の本人訴訟が十九万五百六十六件、パーセントにいたしまして八七%という数字になっております。この裏の数字ですが、弁護士がついているという事件が二万八千三百七十一件、一三%という数字になっております。弁護士が双方についた事件ということになりますと、これは非常に少のうございまして六千二百八十四件、二・九%という数字になっております。残りの二万二千八十七件といいますのはどちらか片方に弁護士がついたという事件でございまして、これが全体の事件数の約一割になっております。どちらについているかというと、やはり原告側についている事件が圧倒的に多いようでございます。今申し上げましたのは六十一年の数字でございますが、これも先ほどちょっと申しましたとおり、実は全事件の中で約半数近くがいわゆる立てかえ金請求事件、信販会社等から来ますクレジットの事件でございます。こういう事件が占めておりまして、金銭事件の弁護士選任率が極端に低いわけでございます。
 ちょっと六十一年の細かい数字が出ておりませんので、一年前で恐縮ですが、六十年の数字で申し上げてみますと、例えば金銭債権事件のうち立てかえ金の請求事件は、実は両方とも代理人がついていない純粋の本人訴訟が九三・八%、非常に高い数字になっております。こういう数字が全体の八七%というふうな数字に影響していると思います。
 ちなみに、これも六十年の数字でございますが、例えば建物とか土地をめぐる争いでございます。こういうふうな事件で見てみますと、純粋の本人訴訟というのは建物の事件では四〇%強、土地の事件では二六%強ということでございます。ひっくり返して言いますと、少なくともどちらかに弁護士がついておる事件が建物関係では六〇%近い、土地関係の事件では七三%という数字になっておりますので、やはり難しい紛争ということになりますと弁護士関与率もかなり高くなっている、こういうふうに申し上げて御説明したいと存じます。
○小澤(克)委員 あらかじめいただいていた資料によりますと、年を追うごとに本人訴訟の割合がふえてきているので、どうしてこういう傾向なのかなと大変不審に思っていたのですが、今の御説明で、要するに立てかえ金訴訟が大きな割合を占めていることから、分母が大きくなったためにこうなったということだろうと思います。なるほどという感想でございますが、そういった立てかえ金請求のような、これは金融業者などから大量に行われるだろうと思いますが、そういうものを除いたいわゆる普通の訴訟では、弁護士をつける傾向は定性的にはふえているということになるのでしょうか。
○上谷最高裁判所長官代理者 先ほど例に挙げましたのを建物と土地で典型的にとってみましたので、これを例にして申し上げてみましても、全体として見ると弁護士の関与率はむしろやや減っております。統計のとり方は現在とやや違いますのでぴったり一致しないところがございますが、昭和三十年度の数字を見てみますと、土地、建物を目的とする訴訟では、建物関係の事件では七四%強弁護士さんが関与しておられる。それから、土地関係では七三%強弁護士さんが関与しておられる。裏から申しまして、純粋に本人訴訟というのは建物関係では二五%強、土地関係では二七%強だったわけです。その後、四十年、五十年と中間の数字はとっておりますが、先ほど申し上げました六十年と比較いたしてみますと、建物関係で弁護士さんが関与しているのが五八・五%、土地関係で七三・六%ということでございますので、土地関係はほとんど選任率は変わりませんが、建物関係では弁護士選任率は若干低くなっているというふうな数字になっております。この中間の四十年とかあるいは五十年の数字等を見てみましてもそれほど大きなでこぼこはございませんので、全体から言いますと弁護士関与率がやや低下しているのかなという感じもいたします。
○小澤(克)委員 国民の法律面での生活もだんだん複雑になりますし、権利意識もだんだん強くなっている中で、簡裁事件について弁護士の関与率がふえてはいないというのはどう解釈していいのか、私にもちょっとわかりかねるところがありますが、簡裁のあるようなところには弁護士さんが余りいらっしゃらないという面もあるのでしょうか、どうなんでしょうか。
○上谷最高裁判所長官代理者 この原因というのは、私どもも十分に実態を調査できるわけでもございませんので、なかなか難しいかと思いますが、一つは、弁護士の事務所自体が大都市に集中してきているという現象も確かに影響しているだろうと思います。ただ、先ほど申しました弁護士の選任率を全国的に見てみますと、例えば東京簡裁が多いかというと、必ずしもそうでもないわけでございます。地方の独立簡裁等でも比較的弁護士の関与率の高いところもないわけじゃございません。ただ、そういう裁判所になりますと実は事件数自体が非常に少のうございまして、母数が少ないものですから、例えば弁護士さんのついた事件が二、三件関連事件で起こされるということになりますと、急に選任率が高くなるというふうなことがございまして、統計の数字として果たして一般化できるかどうかという問題もございます。
 そういう点を捨象してみますと、今度統廃合の対象になるような裁判所については、弁護士の選任率は全般的に少ないというふうに言えようかと思います。しかし、これはどうも各裁判所によってかなりばらつきがございまして、しかも今申しましたとおりに、東京、大阪のような大都市の裁判所でありましても裁判所によってかなり選任率が違う。しかも、事件数がそう多くないために統計上の誤差が出ているという面がございますので、余り正確な説明はできないと思いますが、ごく大ざっぱに申しまして、今比較的大都市に選任関連事件が多いようでございますので、やはり弁護士事務所が大都市に集中してきているということが一つの理由になっているのではなかろうかと、推測ではございますが、そういうふうなことが言えようかと思います。
○小澤(克)委員 いずれにいたしましても、簡裁では当事者訴訟の率が相当多いようでございます。率直に申し上げて、当事者訴訟の場合、裁判所の御苦労は大変だろうというのは想像できるところでございます。例えば書証の認否一つでも、こんなものは認められないと言っている趣旨が内容が認められないという意味で、そうじゃないんだ、成立について認めるかという趣旨なんだと幾ら裁判官がおっしゃっても、いや、こんなものはうそが書いてあるから認められないというような押し問答が延々と続くというようなことを目撃することもよくありまして、大変だなというのはよくわかりますけれども、ぜひひとつ親切に対応していただきたいと要望申し上げておきたいと思います。
 それから、今回のこの統廃合なんですけれども、この基準でございますが、これは法制審の答申あるいはその添付資料でしょうか、いわゆる相関表に基づいて作業が進められ、決定されたというふうに聞いておりますが、この相関表をそのまま適用したのではなく、ある程度徴調整をしたのではないかというふうにも聞いております。その辺はいかがなんでしょうか。この相関表の表に従えば廃止されるはずのものが残ったとか、あるいはその道とかいうのはある程度数があるのでしょうか。
○山口最高裁判所長官代理者 この相関表の枠の中には百四十九ございまして、そのうちの四十八につきましては今回統合の対象にいたしておりません。そのようにいたしました理由でございますが、これは相関表をごらんいただきますと、例えば八ページの上の方、事件数が百一件から百二十件、所要時間が六十分以内のところ、例えば石岡、藤岡、桑名とかがこの枠でございますね。新津、玉島、加世田あるいは銚子、東金なんかが入っているところでございます。これは管内人口が比較的多うございまして、管内人口も最近は横ばいか増加傾向にある。事件数も増加傾向を示すか最近急にふえてきたというふうなことがございまして、今後の事件数の動向に累を及ぼす。それから、おおむね各種の地域開発計画がございまして、今後の人口増、事件増というものも予測しなければならない、こういう点から将来の動向を見るために除外した。
 今度は九ページの下の方の、百二十分を超える枠、これは天塩、中頓別、足尾、広尾、松前なんかがございますが、これにつきましては、松前は事件数は民事はほとんどないに等しいのですけれども、略式はやはり四百件以上ある。それから所要時間は函館まで三時間ぐらいが必要でございまして、国道の落石事故等によりまして冬あるいは夏場に交通途絶に至ることが年に数回もあるらしゅうございます。いわば陸の孤島のようなところでございますので、事件数は非常に少のうございますけれども、やはり孤島に準じて除外すべきじゃないか。それから天塩、中頓別につきましても、管内面積が広くて、管内全般の交通事情が悪い。事件数は比較的少のうございますけれども、家裁出張所の事件があったり、あるいは督促、略式が相当数ある、こういうような状況もございまして、やはりここら辺については陸の孤島に準じて今回見送るべきではないだろうか。その隣の足尾、広尾でございますが、足尾は管内人口が五千四百四十七人というふうに非常に減っておりまして、天塩はこれに対しまして二万六百九十五人でございます。略式につきましても、足尾の場合は四十ないし五十件台でございますし、宇都宮まで出向いていただくことを考えましても、足尾につきましてはやはり統合はやむを得ないのではないだろうか。広尾につきましても、これは帯広でございますが、広尾からは所要時間が百四十分でございます。管内人口は二万一千七百人ぐらいございますけれども、広尾が実は一番最遠地でございまして、そのほかの管内人口のほぼ半数を占めております町村からはより短時間で帯広に行けるという点も勘案いたしまして、足尾と広尾は統合することにした。
 それから、その斜め上の方にございます事件数は二十一件から六十件まで、所要時間が七十六分から百二十分、これは田島とか本別とか富良野、久慈あるいは男鹿、静内というのが入っておりますが、ここらは大体管内面積が広いとか管内全般の交通事情が悪いとか、冬場は豪雪地帯であるとか、そういう状況がございますので、件数もそこそこにございますし、家裁出張所も併設されている、こういうような状況を考えまして統合を見送った。
 そのほか個別に申しますと、その上に長門、国東、野辺地、徳島池田とございますが、この中で長門につきましては、近時事件数がかなり伸びたという状況があるというようなこと、野辺地、徳島池田につきましては、管内面積が広うございまして、管内全般の交通事情が悪いということ、これらを考えまして統合は見送るけれども、国東は管内面積が比較的狭うございまして、杵築が統合庁になりますが、管内人口のかなり多くの部分が比較的容易に行ける、こういうような状況もありますので、国東は統合することにした。そのほか細かく申しますといろいろございますけれども、法制審の答申が指摘されております管内人口、動態、事件数の動向、家裁出張所の件数、管内面積、市町村の散在状況、それから全般の交通事情、地域開発計画、こういうものを地元自治体その他の関係機関からいろいろ伺いまして、客観的に判断した上、振り分けを行いまして四十八庁はこの際統合を見送ることにしたわけでございます。
○小澤(克)委員 裁判所として大変な御苦心のだろうとは思うわけでございます。ある方が、ガラス細工のようなものなので一カ所いじると全体が崩れるというようなこともちょっとおっしゃっておられましたが、それはともかくといたしまして、今まであった裁判所がなくなる。特に自治体などではいろいろ抵抗があったのではないか。やはり裁判所があるということはいろいろな意味で自治体にとっての格といいますか、そんなところにも影響があろうかということで、いろいろ抵抗があったのではないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。最終的にはそれぞれ納得が得られたという認識なんでしょうか。
○山口最高裁判所長官代理者 簡裁が設立されましてから四十年間にわたりましてそれぞれの地域に存在してきておりましただけに、地元自治体あるいは地元住民の方々の簡裁に対する思いということもあるわけでございまして、また、住民の簡裁利用の便とも直接関連することでございます。私ども裁判所といたしましては、この問題について地元市町村の意見を十分吸収することが何よりも肝要であると考えまして、五十九年一月にこの問題を三者協議会に提起いたしまして以来、各簡裁につきまして少なくとも三、四回、これは簡裁所在地は少なくとも三、四回でございます、そのほかに数回にわたりまして所在地以外の管内の自治体も回りまして、地裁の所長、事務局長等が自治体の長、議会議長に簡裁の適正配置の趣旨であるとかその簡裁の現状等をるる御説明いたしまして、地元の御意見を伺ってきたわけでございます。こういうふうに数次にわたります説明の結果、適正配置の趣旨、それから簡裁の現状につきましては自治体の御理解は得られたというふうに考えております。
 ただ、この種の問題はどういたしましても、総論的な必要性は理解するけれども具体的な庁の統合という各論的な問題になりますとなかなか御理解を得るのは難しいことが通例でございます。特に自治体の長あるいは議会の議長とされましては、住民に対するお立場もございましょう、統合に全面的に賛成という意見をいただいたところは比較的少のうございます。ただ、私ども裁判所といたしまして、この問題に取り組んできた者といたしましての率直な感想を言わせていただきますと、少数の例外はございますが、それを除きますと大多数の自治体は適正配置の趣旨をよく理解していただきまして、当該簡裁の統合につきまして比較的冷静な対応を示していただいたというように考えております。
 もちろん、中には簡裁の統合について強い消極的姿勢あるいは反対行動を示されるところもございます。私どもの方にわざわざ陳情にお見えになった方々もたくさんございます。そのような自治体に対しましては、私どもあるいは地裁所長等が何回となく足を運びまして御説明いたしました結果、最終段階では統合やむを得ないというふうに御理解いただいていると考えております。
○小澤(克)委員 全然別の問題ですけれども、家庭裁判所、これは簡裁とは全く別の系統の裁判所ですが、この出張所が事実上簡裁と同じ地域といいますか、同じ建物にあるというような例が多いのではないかと思いますが、これについては今回の簡裁統廃合とどのような関係といいますか、影響を受けるのでしょうか。
○早川最高裁判所長官代理者 家庭裁判所の出張所は、主として利用者の地理的な利便のために既存の簡易裁判所の庁舎や人員を活用して出張処理をする、そういう制度でございまして、家庭裁判所出張所独自の建物や人員を擁しているわけではございません。したがいまして、今回の管轄法の改正によりまして、百一庁の簡易裁判所のうち出張所が併置されている簡易裁判所が三十七庁あるわけでございますが、これらの庁につきましては家庭裁判所出張所設置規則を改正して簡裁の統合に合わせて出張所も統合することになる、こういうことでございます。
○小澤(克)委員 結局、三十七庁が出張所がなくなるという話でございました。これは手続的には最高裁の規則改正だけでできるということのようですが、三十七庁で一年間の件数としては相当大きなものがあったのでしょうか。
○早川最高裁判所長官代理者 総数で申しますと、三十七庁で審判事件が三千五百四十四件、それから調停事件が七百二十一件となっております。五十五年から五十九年の平均で、三十七庁の一庁当たりの平均で申しますと、審判事件が約九十二件、調停事件が約二十一件、こういう数字になります。
○小澤(克)委員 その意味では、単に簡裁統廃合だけではなく、家裁の出張所もなくなるということを事実上意味するわけでございますので、家裁の運用等につきましても国民の裁判を受ける権利が損なわれないように、今後の運用について、出張所がなくなるわけですから、本庁の側でしょうか、十分な御配慮をいただきたいわけであります。
 時間がありませんが、今度は法務省に伺います。
 簡裁がなくなりますと、当然それに対応する区検もなくなることになるのだと思いますが、これはどういう影響があるとお考えでしょうか。
○岡村政府委員 検察庁法によりますと、区検察庁は各簡易裁判所に対応して置くものと規定されておるところでございます。したがいまして、簡易裁判所が廃止統合されるに伴いまして、区検察庁も廃止統合されることとなるわけでございます。ただ、事件数自体が減るわけでもございませんので、人員を繁忙の検察庁に集約いたすと申しますか、そういう形で検察の業務をさらに一層効率的かつ充実して遂行できるように対処いたしたいと思っておるところでございます。
○小澤(克)委員 今度の簡裁統廃合によって裁判所職員の人員の整理というようなことはないと、先ほど他の委員に対する答弁で既にお答えいただいているようでございますけれども、例えば今まであった簡裁のその所在地の近辺に住んでいて、そこで採用されてずっと今までそこにおられた、したがって今回廃止に当たって住所まで変えなければならないというような方はございませんでしょうか。
○櫻井最高裁判所長官代理者 今回統合の対象になります簡易裁判所の一般職でございますけれども、裁判所書記官が百名ちょっと出るくらい、それから裁判所事務官、これは廷吏がこの中にいるわけでございますが、これが百数十名ということになっております。裁判所書記官は百名ちょっとと申しましたが、実はこれは庶務課長を務めている人たちでございます。この庶務課長は、大体はよその土地から来てまだ一定期間経過後によそへ移っていくという人が多いであろうと思います。
 今委員が指摘されましたその土地の定着性の非常に強い人というのは、裁判所事務官の中にいると思われるわけでありますが、今まで調査いたしましたところでは、その定着性の非常に強い人は五十名程度というふうに考えられます。この中にもこの機会に転勤を希望するという者もあるようでありますが、転勤と申しますか、転居したくないという人たちにつきましては、できるだけ現在の住居から通勤が可能な庁に移っていただくという方針でおります。例えば、統合される裁判所の受け入れ庁も大体通勤圏内にあるわけでありますし、仮にそうでなくとも、受け入れ庁でない隣の裁判所も考え得るところでありますので、大体通勤範囲内に異動していただくということが可能であろうというふうに思っております。
○小澤(克)委員 時間が参りましたので、あと二点だけ伺っておしまいにしたいと思います。
 一つは、裁判所が廃止になるところが多数あるわけでございますが、この跡地利用について、裁判所として何らかの方針をお持ちでしょうか。これは、そもそもこの跡地というのはどうなんですか、国有財産なんでしょうか。私、不勉強なんですが、大蔵省の所有になるのでしょうか、その辺もちょっと教えていただきたいと思います。
 それからもう一つは、いずれにいたしましても廃止されたその裁判所の管轄の居住者にとっては、裁判を受ける権利が多少とも不便になることは否定できないだろうと思います。このことについて、裁判所としてどういう方針をお持ちだろうか。何らかのアフターケアというのでしょうか、考えておられるかどうか。
 それからもう一点がこの第二条なんですけれども、これは施行がこの法律上は明定されてなくて、別に政令ですかで決めるとかなっておりますけれども、これはどの程度の予定といいますか、見込みをお持ちなんでしょうか。これは予算面あるいは用地確保等いろいろ難しい問題があろうかと思いますけれども、おおむねいつごろには実現できると考えておられるか。
 この二点を伺いまして、おしまいにしたいと思います。
○町田最高裁判所長官代理者 まず最初の跡地の問題でございますけれども、跡地は、若干の庁は借地がございますが、ほとんどの庁は国有地でございます。現在は行政財産ということで裁判所が所管いたしておりますが、当該裁判所が廃止になりますと行政目的を失うことになりますので、用途を廃止するということになります。そういたしますと、これは国有財産法の規定によりまして、用途を廃止した国有地は大蔵大臣に引き継ぐということになりますので、これは当然大蔵大臣の方に引き継ぐということになります。
 ただ、これまで簡易裁判所がそこにございまして、地元市町村から設立を初め種々の便宜や御協力をいただいているわけでございますし、今回の適正配置についても御理解をいただいているところでございます。他方、地元の市町村としましては、簡易裁判所の跡地を利用したいという御希望があるところも相当数ございます。そういうところにつきましては、従前の経過や今回の経過にかんがみまして、私どもとしては、大蔵大臣の所管にはなりますが、大蔵大臣の方にしかるべく働きかけや資料の提供等行いまして、地元の跡地利用の御希望が実現するように側面から御援助したいと考えております。
 それから二条関係、いわゆる大都市裁判所の関係でございますが、結局、入れ物となります裁判所を建てることによって現実の移転が可能になるわけでございます。見通してございますが、見通しを正確な形で申し上げるのはなかなか困難でございますが、まず東京につきましては、これは現在の検察庁が近い将来昔の地方裁判所、高等裁判所の跡地に、法務省と一体とした建物として建築される予定になっております。それが完成し、検察庁が移りました後に、その一部に統合されました簡易裁判所を建てたいと思っております。したがいまして、まず検察庁が移りますのが前提でございますので、期間的に正確なことは申し上げにくいわけでございますが、恐らく七、八年後ぐらいになるのではなかろうか、現実に法律が施行になりますのは。
 それから大阪の関係でございますが、大阪の関係はこの法律案が制定されましたらできるだけ早い機会に、これは大阪の裁判所の構内に新たに増築建物を建築いたしまして、そこに取り込みたいと考えております。これが四、五年以内かというふうに考えております。
 それから名古屋も、現在の名古屋の裁判所の近くに建てたいと思っておりますが、これはまだ土地の手当て等若干の問題がございます。東京と同じ時期ぐらいになるのではなかろうかと考えております。
 なお、そのほかに所沢と町田がございますけれども、これもこの法案が通りましたら早速まず土地の確保から始めないといけないわけでございますけれども、土地の確保に努力いたしまして、でき得る限り早い時期に設置が可能になるようにいたしたいと考えております。
○上谷最高裁判所長官代理者 アフターケアの点でお答えさせていただきますが、確かに統廃合されるということになりますと、廃止される裁判所の地域にお住まいの方についてはやはり御不便があることは間違いございませんので、私どもの方としましては地元の要望等もお伺いしながら、民事の調停それから家事の調停それから家事の審判もあるようでございますが、いずれにつきましても出張処理をできるだけ活用して、なるべく地元の方の不便を少なくしたいというふうに考えております。
 これは事件数あるいは地元の御希望等いろいろございますので、それをよく調べ、また地元の御要望も伺った上で具体的な出張処理方法を詰めていきたいと考えておりまして、いずれにしましても、できるだけ統廃合による不便を少なくするような出張処理ということを当面具体策として考えております。そうして出張しました機会には、たまたま事件の手続、受け付け等について相談に応ずるというふうなこともいろいろ検討いたしておるわけでございます。
 それから、民事の事件の申し立て関係について申しますと、市町村等の地元の御要望がありますれば、例えば先ほど例に申し上げましたような定型用紙等を市町村の役場に備え置くというふうなこともいたしまして、できるだけ地元の方の利用に便宜を図るというふうなことも考えていきたいと思っております。
 いずれにしましても、今後各地方自治体とよく御相談しました上で、できるだけ充実したアフターケアを考えていきたい、それが私どもの考えでございます。
○小澤(克)委員 終わります。
○大塚委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時五十五分開議
○大塚委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 午前中に引き続き、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
○坂上委員 坂上でございますが、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、簡易裁判所設立等に関する法律改正案について、反対の意見を申し上げたいと思います。
 まずその一つは、本件法案は簡易裁判所の理念を放棄したものであると言わなければならないのであります。本来、民事訴訟法三百五十二条によりますと、簡易裁判所は迅速かつ簡易に紛争を処理することを目的とする裁判所でございまして、従前の区裁判所とその性格を異にするのであります。でありまするから、簡易裁判所誕生前の国会の答弁や司法法制審議会の答弁等を聞いておりますと、当時の関係者の皆様方は簡易裁判所の理念を謳歌いたしまして、本当にその夢と希望を、民主主義を簡易裁判所に託しまして、その設立と運営に当たろうとしたのであります。
 ちょっと申し上げますると、例えば司法法制審議会の第五回第一小委員会における畔上幹事の意見でございますが、
 名前の簡易でなく、言葉の響きでは民衆裁判であり、全国津々浦々の民衆が相寄り民衆が裁く、自分達の手で処理すると言うのであり、単に簡単に処理すると言うことになれば従来の区裁判所で賄えるので、要は民衆的色彩に重点があるのだと思います。
こういうようなことがいっぱい各委員から言われておるわけであります。
 そして、衆議院裁判所法案委員会における木村司法大臣の説明は、私たちはこれを銘記すべきであろうと思うのであります。
 簡易裁判所、これは直接民衆に接触する第一線に立っていく裁判所であります。本法の実施後には、五、六百の簡易裁判所ができるのですが、裁判の民主化がほんとうに実現できるかできないかということは、この運用いかんによっておると思うのであります。これらの判事になる人によろしきを得まして、そしてこの制度の完璧を期したいと考えておる次第であります。
 当時の法曹関係者は、簡易裁判所の運営いかんが民主主義の発展につながると確信をいたしまして、簡易裁判所にその精魂を傾けたと言うべきなのであります。でありまするから、私たちは、簡易裁判所は区裁判所と違いまして、まさに民衆のための、駆け込みのための町医者的な裁判所であるというふうに理解をして、その発足を祝ったものなのであります。
 さてそこで、そのようなことであったのでありまするが、先日、竹下参考人の御意見をお聞きをいたしましたところが、このような御意見を開陳をされたわけであります。
  この簡易裁判所の性格あるいは機能というものにつきましては、簡易裁判所は確かに旧制度のもとでの区裁判所というものとは理念を異にしておりますけれども、そうかといって、アメリカの少額裁判所というふうに呼ばれている、そういう裁判所の意味での純然たる少額裁判所という性格を与えられているわけでもない、いわばその双方といいますか、旧制度における区裁判所的な役割とそれから少額裁判所としての役割、この両方の役割を担うように位置づけられているのではないかというのがかねてからの私の考え方でございます。
こう言っているわけであります。
 竹下参考人は、確かに私たちは少額裁判所、民衆裁判所を目指したのであるが、その実態は、半分ぐらいは区裁判所の任務をここに負わせたのではなかろうかということをおっしゃっておるわけであります。まさに少額裁判所と区裁判所の両方の任務をその運営の中に、実態の中に与えていたのであります。
 また、今回の改正に当たりましては、三ケ月参考人が申されているのでありまするけれども、大蔵省の役人が法制審議会の中に入っておられた、こう言っているわけであります。一体なぜ入れたかということについて、こう言っております。
  確かに予算の面というふうなものがかかわりますものですから、それは大蔵省の関係官を抜きにしてやって後でそれが官庁同士の折衝になってつぶされるのはまずいので、あらかじめとにかく大蔵省の方にも引導を渡しておいた方がいいというので入っていただいたというのが本来の趣旨でございましょうし、
こう言っておるわけであります。いかなる理想を言ってもいかなる希望を述べても必ず予算の制約があってどうにもならないので、あらかじめ大蔵省の役人を呼んで、その予算の範囲内でこれを決めたのでございますというような趣旨をおっしゃっておるわけであります。およそ民衆のための、国民のための裁判所としてのいわば理念とは大変なかけ離れなのであります。
 さて、具体的に今度各県にどの程度の廃止が行われていたかということを調べてみますと、特に多い廃止県であります。まず栃木県でございますが、四つ削って二つ生かしておるだけでございます。山梨県でございますが、五つ削って二つ生かしているだけでございます。鳥取県でございますが、五つ削って三つ生かしているだけであります。北海道の釧路地裁管内は、五つ削って四つ生かしております。香川県は三つ削って一つ生かしておる、こういう状態でございます。まさに、東京、名古屋、大阪に一極集中的な裁判所をつくるのと同じような現象がこの地域にも起きておるわけでありまして、特にこの県におきまするところの削減率というのは私は高いと言わなければならないのであります。
 さて、私の県の新潟県の場合は、巻の裁判所が一つ廃止になりますが、新潟へ行くわけでございますが、私は汽車の時間表をけさ起きて調べてみましたら、こういうふうになるわけであります。弥彦の人が新潟へ行くのに、八時二十分に弥彦から汽車に乗るのであります。吉田という町に八時二十八分に着きまして、吉田発が八時三十三分、九時二十分に新潟へ着きまして、駅からバスで裁判所へ行かなければなりません。ようよう十時に間に合います。それから今度は終わりまして裁判所から帰る場合、裁判所から新潟駅までバス、それで十二時四十分の汽車に乗りまして吉田に十三時三十二分、吉田から乗りかえまして十三時三十八分発で弥彦に十三時四十五分。まず時間的にどれぐらいかかるかといいますと、丸一日つぶすということであります。それから汽車の料金でございますが、汽車賃は片道七百円、バス賞が片道千四百円なんです。
 さて、簡易裁判所は九十万までが裁判の限度でございますが、この九十万の裁判をするのにどれぐらい交通費がかかるかといいますると、一日つぶして行くわけであります。訴状を出しに行くわけであります。それから訴状陳述をする日が一日あります。証拠申請もそのときやるかもしれません。証拠調べがあります。そして終結があります。そして判決があります。大体五回ぐらいが平均的な裁判だろうと思うわけであります。一日日当一万円と計算をいたしますと大体どれぐらいになるか、あれこれ十万円ぐらいは出るのだろうと私は思うのです。
 そうだといたしますと、さっき言いましたような民衆のための裁判所あるいは駆け込み裁判所という概念は全く薄れているのではなかろうかと私は思っておるわけであります。まさに覆水盆に返らずでありまして、一たん廃止をいたしますると、復活の見通しは全くありません。しかも、この裁判所を設立するときの地方との協力もあったのだろうと思うのでありますが、裁判所は、地方自治体は御理解をいただいたとおっしゃいました。だけれども、よくよく追及をしてみますと、もうお上に言ってもどうしようもないということで文句を言わないというのが実態なのであります。民衆裁判所であれば、地方自治体の承認というものは、本当に同意というところまで追及して初めて廃止の可能性が立つのではなかろうかと私は思っておるわけであります。
 そこで、自来、発足いたしまして今日に至るまで、家庭裁判所と簡易裁判所の場合を考えてみますると、家庭裁判所の人気というのは結構いいのでございます。簡易裁判所に相談した結果も、家庭裁判所に相談に行ってきた、こう言っておるわけであります。家庭裁判所は、それなりにいわば民衆的な裁判所を心がけたのだろうと思うのであります。遺憾ながら、簡易裁判所はそういうことはとかくできるだけの力と機能を与えなかったのではなかろうかと言われております。予算は地方裁判所の所長さんが握っておる、監督も地方裁判所がなさっておる、簡易裁判所の裁判官は何らの権限も持っておらないわけであります。みずから民衆のための裁判をやろうと思う、すぐ今でもいらっしゃい、今解決してあげますよという体制をとれる態勢ではありません。こんなようなことから、今日までいわば区裁判所的な任務しか刑事も民事もやってこなかったのではなかろうかと私は思っておるわけであります。
 時間がありませんので急ぎますが、さて、今後どうあるべきかという問題でございますけれども、アメリカの少額裁判所制度について次のように竹下さんが言っておるわけでございます。
  夜間に開廷をしたり、あるいは私が実際に見た例では、むしろ朝早く八時半ぐらいから開廷をしたりというようなことで、一般の勤め人等も利用しやすいような形で行われている。
  それから、事件は先ほども例に挙げましたような、本当に一般の国民の日常的な争い事というようなものを持ち出してきて、多くの場合にはその日のうちに両方の当事者から言い分を聞いて、必要な証拠等があればみんな持ってきなさいということを事前に指示をいたしまして、そこで両方の言い分を聞いて、ほとんど即決的に、こちら側の言い分が正当だからあなたの方から何ドル支払えというような形で裁判をする。
 大変興味のあるお話を実はいただいたわけであります。しかし、そういう理想があっても実施する機能というものを簡易裁判所に与えなかったのではなかろうかと私は思っておるわけであります。例えば民事訴訟法の三百五十三条、口頭の訴え、三百五十四条の任意出頭と訴えの提起、あるいは民調法の十七条、調停にかわるべき決定、あるいは民調規則の三条、口頭申し立て、こういうようなことを本当に裁判所にやらせなかった結果が、事件が少なくなった、交通の便利がよくなった、よって廃止をいたしましょうということであります。憲法三十二条は、国民が裁判を受ける権利を盛っているのであります。まさに私はこの基本的人権の侵害だと指摘しなければいけないと思っておるわけであります。
 かかるがゆえに、私たちはこの法案に真っ向から反対の意見の表明をいたしたいと思っております。
 以上でございます。
○大塚委員長 安藤巖君。
○安藤委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 この法律案は、簡易裁判所設立後の社会事情の変化にかんがみ、その配置を適正化するとの提案理由説明がなされております。しかし、法案の実態は、百三十九庁に及ぶ独立簡易裁判所を廃止するといういわば簡裁統廃合法案であり、裁判所の臨調行革版と断ぜざるを得ません。
 簡易裁判所は戦後の司法民主化措置の一つとして設立されたもので、時の司法大臣の趣旨説明では、「全国に数多くこれを設けまして、簡易な手続によって争議の実情に即した裁判をするよう、特に工夫をいたした次第でありまして、この制度は、司法の民衆化にも貢献するところ少なからざるものがあろうかと期待いたしておる次第であります」と、簡裁設立の理念を明快に述べています。すなわち、簡易裁判所は国民の駆け込み寺ともいうべき民衆裁判所として発足したのであります。国民が身近に駆け込める裁判所としての役割を持っているからこそ、現在五百七十五庁の簡易裁判所が設置されているのであり、このうち二百八十三庁の独立簡易裁判所をほぼ半減させてしまう本改正案は、簡裁設立の理念そのものを突き崩してしまうものと言うほかなく、国民の裁判を受ける権利を保障する見地からも断じて容認できません。
 最高裁は、発足後数年を経ずして戦前の区裁判所復活への動きを示し始め、順次事物管轄と科刑権の拡張を図るとともに、一九六四年の臨時司法制度調査会の意見書に基づき、簡裁の小型地裁化への動きをあらわにしてきたのであります。その後、一九八三年三月の臨時行政調査会の第五次答申は、最高裁に自発的という限定つきながらも臨調行革の線に沿った新たな司法機構の簡素化、効率化を提言してきました。翌八四年一月、最高裁は簡裁の統廃合を提起してきたのであります。
 以上の経過からも明らかなように、今回の簡裁の大規模な統廃合は、簡裁設立当時の理念と機能、役割を変質させ、戦前の区裁判所化ないし小型地裁化を進めるものであり、自民党・中曽根内閣の戦後政治の総決算路線の一環であります。我が党は、戦後の民主化措置を突き崩すこのような改悪案に怒りを込めて反対し、法案の撤回を強く求めるものであります。
 続いて、幾つかの主要な論点に絞って反対の理由を述べます。
 第一に、最高裁、政府が、簡易裁判所の拡充強化と国民への啓蒙の努力を怠ってきておきながら、それが原因となって国民に利用されないことを逆手にとって、事件数が少ないから廃止すると言っている点であります。
 最高裁が簡裁の拡充強化を怠ってきた点は、以下の数字からも明白であります。最高裁は、法定されている簡易裁判所のうち八庁を未開設のまま四十年間放置し、さらに関係住民、自治体の強い反対にもかかわらず二十一庁を全部事務移転して、法改正手続を巧みに回避しつつ事実上の廃庁処分をしてきました。また、簡裁判事不在庁が百五十庁内外、職員の一人、二人あるいは三人しかいないという簡裁も百数十庁という、およそ裁判所として正常に機能しない状態を放置してきたのであります。一方で自治体や警察での法律相談件数が急増している実情を見るならば、最高裁の事件数が減少したからという統廃合の理由は、みずからの簡裁充実の怠慢を暴露するだけであって、何ら合理性がないと言わなければなりません。
 今、政府、最高裁がやらねばならないことは、国民の裁判を受ける権利を保障する観点からの簡裁の真の充実強化であって、決して司法行政上の便宜や合理化の観点からの統廃合であってはならないのであります。本案は、まさに本末転倒の論理に基づくものであり、到底認めるわけにはまいりません。
 第二に、統廃合の基準とした諸指標を意図的にごまかして法制審の説明に使い、世論を欺こうとしてきた点であります。
 最高裁は、基準となる事件数について、民訴、刑訴、調停事件だけを指摘し、簡裁が扱っている保全、督促その他の民事事件、通常略式、交通略式その他の刑事事件はすべて除外しています。例えば、実際の全処理事件数が年間三千件弱もある西尾簡裁、宗像簡裁がそれぞれ六十件以内、百二十件以内とされているのであります。また、公共交通機関による簡裁までの所要時間についても、実態とかけ離れた数字を示しております。さらに簡裁の廃庁により自動的に廃止されてしまう、現に独立簡裁に併設されている家庭裁判所出張所の果たしている役割、利用実態なども詳しく説明されていないのであります。これでは、政府、最高裁が簡裁統廃合を手段を選ばず、国民をだまし討ちにして裁判所体系の反国民的改変への第一歩を踏み出すものと批判されても仕方がないではありませんか。このような不公正な手法による法改正を認めるわけにはまいりません。
 第三に、大都市簡裁の一庁化の問題であります。
 人口の集中と住居の高層化、人間関係の複雑化などにより、今後相隣関係、マンション紛争など身近な事件が一層増加することが予想され、本人訴訟と調停を中心とした大都市簡裁が地域に密着して機能する必要が増大している今日、これを統廃合し一庁化しようとするのは時代逆行と言わなければなりません。東京の場合で見ると、現在でさえ霞が関にある東京簡裁は、訴訟事件中の欠席判決の率が十二簡裁中最も高く、他の簡裁が二〇%台であるのに比べて六〇%を占めていますが、本改正によって一庁化が図られるならなお一層欠席率が高まることは必定であり、裁判がますます国民から遠のいていくでありましょう。この構想は、百一の小規模簡裁の廃止と同様、臨調行革の一環として効率化、簡素化の名のもとに今後の司法制度の反動的合理化に道を開くものであり、強く反対するものであります。
 第四に、関係自治体並びに住民、当該弁護士会など国民の意見を尊重していない点であります。
 私が審議の中で明らかにした西尾簡裁管内四市町を初め、現時点でも簡裁の廃止に反対し、存続、拡充を強く訴える自治体、弁護士会、司法書士会などは、最高裁の大方の納得を得たとの強弁にもかかわらず、依然として多く存在するのであります。また、簡裁の統廃合に直接かかわっている全司法労働組合が関係住民らから集めた国会請願署名も既に六十万名分を突破しており、現在も続々と寄せられてきているのであります。中には住民の過半数の署名が寄せられた自治体もあります。法制審議会答申の「関係機関の意見を聴取し、各地の実情の把握に努めること。」に基づいて、数回にわたり関係自治体に赴き説明したと最高裁は釈明しますが、初めに統廃合ありきの説明、説得であったことは、私どもの調査でも、また提出された意見書、陳情書でも明らかであります。
 以上るる述べてきましたとおり、本改正案は、戦後日本の司法民主化の一つとして憲法の人権擁護、国民の裁判を受ける権利保障の精神に基づいて設立された簡易裁判所を変質させ、今後の司法の反動的再編成への突破口となる危険を含んだ改悪案であり、我が党は断固として反対の意思を表明し、法案の撤回を重ねて強く要求いたしまして、日本共産党・革新共同を代表しての反対討論を終わります。
○大塚委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
○大塚委員長 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
○大塚委員長 次に、ただいま可決いたしました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対し、今枝敬雄君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。今枝敬雄君。
○今枝委員 私は、提案者を代表しまして、本案に対する附帯決議案の趣旨について御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府並びに最高裁判所は次の事項について格段の努力をすべきである。
 一 簡易裁判所設立の趣旨にかんがみ、その機能を充実、強化するため、簡易裁判所の人的、物的施設の一層の整備を図ること。
 二 簡易裁判所及び家庭裁判所出張所並びに区検察庁の統廃合された地域に対し、住民の利便を考慮し、その実情に応じ、出張して事件処理を行うなどの適切な措置を講ずること。
 三 簡易裁判所及び家庭裁判所出張所並びに区検察庁の統廃合に伴い、職員の給与等について、不利益が生ずることのないようにするなど、その勤務条件に十分配慮すること。
 四 簡易裁判所の統廃合された地域においても、今後、人口の急増、事件の増加等著しい条件の変化が生じた場合は、簡易裁判所の新設を考慮すること。
 本案の趣旨については、委員会の質問の過程において既に明らかになっておりますので、その説明を省略いたします。何とぞ本附帯決議案に御賛同あらんことをお願いいたします。
○大塚委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 直ちに採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○大塚委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、遠藤法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠藤法務大臣。
○遠藤国務大臣 ただいま法案の成立に御協力をいただいて、心から感謝を申し上げる次第であります。
 なお、ただいま附帯決議が決議されたのでございますが、その趣旨に対しては十分尊重いたしてまいるつもりでございます。
 なお、最高裁判所に対しましてもその趣旨を伝え、遺憾なきを期してまいりたいと思いますので、御了承おきをお願いいたします。
    ―――――――――――――
○大塚委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
○大塚委員長 次に、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。坂上富男君。
○坂上委員 坂上でございますが、私にとりましては待望久しかった特別養子の民法改正案が提案をされておりまして、ようよう審議に入ることのできましたことを大いな喜びといたしておるわけであります。そういう観点に立ちまして、この特別養子制度を指折り数えて待っております子供たちのために、そしてまた真の両親になろうとする皆様方のために、私は問題点を指摘しながら質問をさせていただきたいと思っております。
    〔委員長退席、井出委員長代理着席〕
 その前に、大変恐縮でございますが、関連としてマルコス疑惑についての若干の質問をお許しいただきたいと思っております。本日の朝日新聞それからきのうの共同通信等で、マルコスの不正蓄財が発覚したという形で報道をなされておるわけであります。これに関連をいたしまして、少し質問をさせていただきたいのであります。
 まずその一つは、去年の七月十二日の新聞、読売新聞だと思うのでありますけれども、フィリピン大使公邸の敷地がにせ書類で移転登記申請がなされた、ラウレル署名を偽造したもので、時価三百億円で都内の不動産業者に名義が移っているというような新聞記事があり、ラウレル副大統領にせ署名のある売却証明書というものも書かれておるわけであります。これは昨年の国会で問題にもなったそうでございますが、まず法務局にお聞きをいたしたいのでありまするけれども、この新聞に書いてありまするところの土地の移転登記関係はどのようになっておるか、お聞きをしたいのであります。
○千種政府委員 フィリピン大使公邸の敷地に関する登記でございますが、法務局で調べましたところ、これはそもそも昭和二十年四月二十六日に受け付けられた所有権移転登記、原因は昭和十九年三万三十一日売買ということで、所有者がフィリピン共和国として所有権の移転登記がまずなされております。その後、この登記は現在に至るまで変更はございません。
 ただ、御指摘のような登記申請があったという事実がございます。これは昭和六十一年五月三十一日、原因は六十一年五月二十八日売買ということで、権利者丸藤商事株式会社ということで、嘱託人はフィリピン共和国、名義は外務大臣のサルバドール・ラウレルという所有権移転登記の嘱託がなされた事実がございますが、こういう外国の大公使の公邸の敷地、こういうものは法務局では事実関係がよくわかりませんから、必ずこういうものに対する登記申請につきましては外務省に照会をいたしまして、それが真に権限のある者からなされているかどうかということを確認し、普通は証明書を受けて登記をする建前になっております。この場合もその登記嘱託の適否につきまして、これは同年の六月十六日でございますが、外務省に照会をいたしまして、その結果、翌七月十五日に、この登記嘱託のラウレル外務大臣の署名は偽造であるという回答が得られましたので、同月十八日、この登記嘱託を却下した、こういう経緯になっております。
○坂上委員 警察庁、おられましたらお聞きをいたします。
 今法務省御答弁のとおりでございまして、まさに犯罪に該当するのだろうと思うのであります。有印私文書偽造、同行使あるいは詐欺罪、そういうようないろいろな罪名がつくのだろうと思うのであります。この問題について、捜査当局としてどのような対応をしておられるか、お聞かせをいただきたい。
○垣見説明員 お尋ねの件につきましては、新聞報道等もあり、承知をしておりますが、その後の関係者の動向も含めて、現在事態の推移を見守っているところでございます。
○坂上委員 これはどうでございますか、捜査の上では犯罪という認定はなさっておらないのですか。
○垣見説明員 ただいま申し上げましたように、関係者の動向も含めて、事態の推移を見守っているという段階でございます。
○坂上委員 法務省も外務省も偽造書類であるということ、偽造書類によって移転登記申請がなされたけれども、偽造であるがゆえに却下したと政府が言っているのです。何だって警察はただ見守って、まさか指をくわえて見ているわけではないと思うのでございますが、じゃ今後どうされるおつもりですか。
○垣見説明員 お答えいたします。
 ただいま申し上げましたように、事態の推移を見守っておりまして、また、その過程で犯罪の容疑等ありますれば適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
○坂上委員 ちょっと不満でございますが、時間の都合もありますので。
 それでは今度、これはことしの七月二十九日の新聞記事でございます。今問題になった土地を含めてだと思うのでありますが、東京や神戸にあるフィリピンの国の所有地を売却したり、リースしたりするということが決まった、フィリピン大統領がこれについて署名をした、こういうふうに報じられているわけであります。いわば、フィリピン政府は処分する旨の決定がなされたわけでありますが、この新聞によりますと六カ所あるのでしょうか。外務省、この事実は確認しておられますか。
○小林説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘の、アキノ大統領が去る七月二十五日に署名した大統領令と申しますのは、本邦にあるフィリピン国有地をフィリピン人以外にも処分し得る、できるという趣旨のものでございます。そうした大統領令が署名されたということは承知いたしておりますが、このことが直ちにフィリピン政府がそのような国有地を処分するという方針を決定したことを意味するものであるというふうには考えておらない次第でございます。
○坂上委員 そういう法令に署名した、そして今度はさらにその法令に基づいて意思決定をすればそういう可能性がある、こういうわけですな。
○小林説明員 さように理解しております。
○坂上委員 さてそこで、この物件は日本が賠償のために現物を賠償したのでございませんか、いかがですか。外務省、どうですか。
○小林説明員 先生御指摘の六件の不動産のうち、一つはフィリピン共和国政府が独自に購入したものでございます。そのほか五件につきましては、賠償資金によって購入されたというふうに承知しております。
○坂上委員 日本の賠償金をもって購入をしたという御答弁のようでございます。それはそれで結構なんですが、そういうような法令があり、今東京は国有地の放出等によりまして狂乱価格になっておる。その原因が、国有地の払い下げ等によるところの異常な高騰によるものであるというようなことが言われておるわけであります。外務省、これについて、日本にあるこの土地を、しかも日本の賠償金でもってあかなわれた品物を処分するというようなことでございますから、これについて何らかの対応をしているのでございますか。
○小林説明員 お答えいたします。
 フィリピン政府よりは、この土地、不動産につきまして処分するというような意思決定を伝えてきておらないわけでございますので、私ども事態の推移を注意深く観察しておりますけれども、それ以上の措置はとっておらない状況でございます。
○坂上委員 もう一つ、外務省、さっき言いました偽造署名の土地はこの六件の中に含まれているのでしょうな、どうですか。今わからなければ、後でいいですよ。
○小林説明員 ただいま確たることを申し上げる資料を持っておりませんので、後ほど御説明さしていただきます。
○坂上委員 さて、今度は本日の朝日新聞でございますが、まず、今日までマルコス疑惑と言われるものに対する資料の収集の状態は、警察庁、これについてどの程度収集をしたり対応をしたりしておられるのでございましょうか。
○垣見説明員 お尋ねの問題につきましては、かねてから種々新聞報道等もされておりまして、警察といたしましても関心を持って情報収集に努めているところでございまして、現在も引き続き情報収集をしている段階でございます。
○坂上委員 一部収集もしたのですか。
○垣見説明員 関心を持って情報収集をしてもおりますし、また、今後も引き続き情報収集をしてまいりたいと考えております。
○坂上委員 検察庁、いかがでしょうか。
○岡村政府委員 検察当局といたしましても、関係書類の入手、検討をいたしているところでございます。
○坂上委員 外務省、いかがですか。
○久保田説明員 外務省としましては、このマルコス疑惑の問題の中心は、我が国の援助の実施に関しまして、金銭が比政府高官の手に渡ったのではないかという点であると認識しておりまして、それが違法な犯罪行為または不正な行為になるのではないかということだと考えております。このような問題につきましては、第一義的にはフィリピンの国内法令に照らして違法か否かの判断がなされるべきであると考えております。
 先生御指摘の資料の収集という点につきましては、ソラーズ委員会で公表されました膨大な資料の、文書の精密な調査分析、それからそれの事実関係の確認作業というものを行いました。そうしまして、その一環として、この援助にかかわる四省庁によりまして関係企業から事情聴取等を行いました。その結果につきましては、既に国会に御報告いたしましたとおりでございますが、そのポイントは、手数料等につきまして、この文書に書かれております企業の約半数がそのとおり手数料を払ったということでございましたし、他方、この手数料、資金の使途につきましては、関係日本企業としましては、正当な現地における代理店の活動に伴う手数料として支払ったものであって、不明朗な使途に使われていないという認識でございました。
 以上、調査の結果として御報告申し上げます。
○坂上委員 さて私も、ソラーズ委員会アジア・極東小委員会の所属記者から私の友人がその資料を入手しておりまして、本日ここに持参しておりますが、いささか外務省の御意見と違うのでございまして、今私の持っておりますのは一部でございますが、例えば送金リスト、どこへどういうふうに送ったかということが書かれておるわけでございます。そして、それが香港の銀行にまず入るというような形をとりながら、これが手数料とおっしゃった部分に対するあれなのかどうかわかりませんけれども、何%送りましたから幾ら幾らでございますという送金表、サイン入りがついておるわけでございます。問題は、この手数料がわいろに当たるかどうかということにかかわるのだろうと思うのであります。政治献金だと思ったけれども収賄だなんかいって処罰されることがよくあるわけでございまして、手数料だと言ったけれども贈賄であるかもわからぬわけでございます。
 さてそこで、まず、この新聞に出ておりまするようにスイスのマルコスの銀行口座に日本の企業がリベートとして送った、こうあるわけでございます。日本の法律とフィリピンの法律から見て、このリベートがわいろであると判断された場合は、南国の法律から見てどのようなことになるのでございましょうか。
○岡村政府委員 我が国の法律には、御承知のように、公務員にその職務に関してわいろを贈れば贈賄罪、また、公務員がその職務に関してわいろを収受すれば収賄罪という規定がございます。しかし、これはあくまで日本の公務員に対する犯罪であるわけでございます。したがいまして、もし外国の公務員に対する贈賄あるいは収賄ということになりますと、当該外国におきます法律がどうなっているかということになってくるわけでございます。
 フィリピンにおきましても、我が国におきます贈収賄と同じような規定はあるように承知いたしておるわけでございますが、その具体的適用ということになりますと、これはもちろんフィリピンの問題でございますので、私どもがあれこれ申し上げることはできないわけでございます。
○坂上委員 日本の法律では今のところ贈収賄としての対象にはならない、しかし、フィリピンにはこれと同じような法律があるので、フィリピン政府がこれについてどうするかということが問題であるという御説明のようであります。多分そうだろうと思うのであります。
 いま一つ、これに日本の議員さん等が介在をしているとしたら、これはまたどうなるのでございましょうか。
○岡村政府委員 これも問題は外国におきます贈収賄の問題でございますので、私の口からただいま御質問の点につきましてこういうふうになるということも申し上げがたいところでございます。
○坂上委員 さて、この新聞によりますと、日本の企業が米国の銀行を通じてスイスの銀行にリベートを払い込んだ、その総額は数千万ドルに及ぶ、そしてまたスイスの銀行では銀行秘密が近く解除される見通しとなった、こういうことを報じておるわけであります。いわば検察、警察あるいは外務省がいろいろと資料収集に当たっておられまして、だんだん核心に近づくところのベールがはがれつつあるように私は思っておるわけでございます。あるいはまた、スイス人弁護士がスイスの銀行に入れてあるのだということを言明をいたしまして、それはマルコス前大統領の閣僚が提出した入金リストから言えるのだということを発表しておるわけでございます。そのようなことから、一体今後捜査当局とされまして、また外務省とされまして、これについてどのような対応をなさるのか、お聞きをいたしたいと思います。
○岡村政府委員 検察当局といたしまして、外国にあります資料を入手するためには、いわゆる捜査共助によらざるを得ないわけでございます。捜査共助によります場合は、具体的犯罪事実が明確になり、かつ、それ相応の資料がそろっておるということが前提となるわけでございます。
 ところで、ただいま御指摘をいただいておりますマルコス疑惑と言われます問題につきましては、いまだ具体的な国内におきます犯罪事実が明らかにはなっておらないわけでございまして、そういう意味におきまして、今直ちに外国にあります資料につきまして捜査共助を行えるような段階ではないと思われるわけでございます。したがいまして、検察当局といたしましては、事態の推移を見守りつつ適切に対応することになるものと思っております。
○久保田説明員 我が国の側から見ますと、先ほども資料収集の点に関しましてお答え申し上げましたとおり、現在のところ不正ないしは不適正に支出された、援助資金が使われたという事実は特に認められないと考えているわけですけれども、他方、ただいま先生御指摘のようなニューズにも関連し、フィリピン、相手側においてこのような件をどう考えるか、違法であるかどうか、不正であるかどうかという点に関しての真相究明ということはフィリピン側において行われるべき性格であると思います。この点につきましては、今後の推移を見守ってまいりたいと考えております。
○坂上委員 この問題は、去年そのままふたされたままになってきまして、少しずつベールがはがれようといたしておるものでございますから、本日はこの程度でやめます。今度は一般質問のときじっくりと、また私の資料に基づいて聞かせていただきたいと思いますので、ぜひひとつ誠意ある御答弁を賜りたいと思います。
 それから、今言ったように犯罪のにおいがぷんぷんとしておるわけでございまして、それがゆえに捜査当局はそれなりの資料の収集に努められておると思うのでありまするし、また国民は、その疑惑について徹底的な解明を期待いたしておるわけでございまするから、どうぞ国民の期待にもおこたえいただくように捜査当局の御健闘を期待をいたしまして、一応この問題は本日は終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 さて、刑事局長がおられまするので、特別養子と刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法の関係についてまずお聞かせいただきたいと思っておるわけでございます。
 刑法の中には二百四十四条、二百五十七条、親族相盗例があるわけでございます。これは、親族のものを窃取したり贓物をやったりしても刑を免除するというようなことが書いてあるわけでございます。刑法の中にこういうようなことがあるわけでございますが、特別養子ということになりますと、実父母と全く関係なく、親族関係は絶縁ということなんでしょうか。そうなるのだそうでございますので、実の父母のものをとったとか、あるいは実の父母が養子のものをとったというようなことについて、いわゆる親族相盗例などというのはどういうふうになるものか。
 それから、刑事訴訟法によるところの、百四十七条の証言拒否でございます。血はつながっているけれども親でないんだ、血はつながっているけれども子供でないんだ、こういうような場合、一体証言拒否権がその場合にあるのかどうなのか。
 それからまた、刑事訴訟法に弁護人選任権が親族、直系親族等にあるわけでございますが、一体断絶したこの関係の人たちに弁護人選任権があるのかどうなのか。
 それから今度は再審請求で、帝銀事件の武彦さんがおりますが、彼は養父の汚名を晴らすために養子縁組をなさっているとも聞いておるわけでございますが、これが特別養子ということになりますと実父母の再審をするようなことができないようになるのではなかろうか。そんなようなことが刑事訴訟法に、民事訴訟法も証言拒否の関係において出てくるわけでありますが、これは一体どういうふうに見るのでございましょうか。
 それから、法制審議会等でこの御検討が今まであったのでございましょうか。その辺、お聞きをいたしたいのであります。
○岡村政府委員 まず、刑事法定上一定の身分関係にある場合に刑を重くするとかあるいは軽くするとか、その他いろいろな効果を伴う場合があるわけでございますが、この刑事法上の親族関係の有無につきましては民法の定めるところに従うわけでございます。
 ところで、特別養子の場合は、その縁組が成立いたしますと、民法上、実父母などとの親族関係が消滅するということになるわけでございます。そういたしますと、実父母との関係につきましては親族関係はないというふうに考えられるわけでございます。
 ただ、御指摘のありました幾つかの案件のうち、刑事訴訟法の証言拒絶権につきましては、現に一定の親族関係にある者のほか、「親族関係があった者」というふうに規定されているわけでございます。一定の親族関係があるかどうかといいますのは先ほど申しましたように民法の規定に従うわけでございまして、特別養子縁組が成立いたしておりますと、実父母等につきましては親族関係がないことになります。ただ、「親族関係があった者」という過去形のものにはこれは実父母などは含まれてくることになるわけでございます。
 もう一つ、法制審議会で説明をしたのかどうかということでございますが、この点につきましては、ただいま私がお答えいたしましたような点につきまして刑事局部内におきましても十分検討いたしまして、法制審議会においても御説明をいたしているところでございます。
○坂上委員 そうすると、これは刑法二百四十四条、二百五十七条の親族相盗例、実の親あるいは実の子供の関係においてこういう犯罪があっても免除という規定は受けられない、こういうことですか。
○岡村政府委員 そのとおりでございます。
○坂上委員 そこに人間的なつながりとの関係におきまして、憲法の平等の原則とかなんとかとの関係において果たして一体これはどうなるものでございましょうかね。私もわからないのですが、どうもこの辺がちょっとしっくり落ちないところでございます。
 それからもう一つ、民事訴訟法三十五条で裁判官の除斥、それから刑事訴訟法二十条の裁判官の除斥、裁判官と子供さんと、まさかこういうことはなかろうと思うのでございますが、これも親族に当たらぬ、こういうことになるわけでございまして、こういう場合はどうなるのでございますか。
○岡村政府委員 この除斥の点につきましても、先ほど私が申し上げました証言拒絶権の場合と同様「裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、」というのと並びまして「又はあったとき。」というふうに規定されておるわけでございます。すなわち過去形で規定されておるわけでございますから、過去において親族関係があればそれはやはり除斥の原因になる、こういうことになるのでございます。
○千種政府委員 民事訴訟法におきましても、除斥原因、これは三十五条の二号でございますが、証言拒絶権、これにつきましては二百八十条でございますが、刑事訴訟法と同じように「親族関係アリタル者」という過去のものも入っております。そのために、現在ある者ではございませんが、「アリタル者」として適用になると思います。
○坂上委員 さて、刑法の二百条、尊属殺でございます。「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」、まずこの条文は削除されていないのですか、生きているのですか、どうなんです。
○岡村政府委員 御承知のとおり、この尊属殺の規定につきましては、昭和四十八年四月四日の最高裁判所の大法廷判決におきまして、現行刑法の二百条はその法定刑が死刑または無期懲役のみであって余りにも重く、いかに酌量すべき情状があっても刑の執行を猶予することができないなど、普通殺人との間に著しく不合理な差別的取り扱いをしている点において違憲であるという判断をされたわけでございます。したがいまして、現在の実務の運用といたしましてはこの規定は適用はいたしておらないわけでございます。
 問題は、この規定を削除すべきかどうかという点でございますが、この点につきましては、最高裁判所の判決といたしましても、尊属殺につきまして、一般殺人より重く処罰すること自体直ちに違憲だと言っているわけではないわけでございます。著しく重いという点において不合理な差別がある、こういう言い方をしているわけでございます。
 ところで、問題は国民の意識といたしまして、尊属殺につきまして普通の殺人よりも重く処罰するのが妥当なのかどうかという問題があるわけでございます。この点につきましてはまさに家族関係の基本に関する問題でございまして、尊属殺というものは企面的に廃止すべきだという意見もございますし、逆にまた尊属殺につきましては普通の殺人よりある程度重く処罰するのが相当であるという意見も有力であるわけでございます。そこで、法務省といたしましては、そういった国民の意識といいますか、考え方がどの辺にあるのかということを見きわめました上で、できるだけ早い機会に適切なものに修正すると申しますか、そういう措置を講じたいと考えておるところでございます。
○坂上委員 局長、これは憲法違反の判決が出てからどれぐらいたっているのでございましょうか。どんな検討を、今おっしゃってちょっとわかるのですが、何だってこれをまだ残しておくのか。また、こういう事件があったら今どういう処置をしているのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。
○岡村政府委員 先ほど申し上げましたように、最高裁判所の違憲判決が昭和四十八年でございます。したがいまして、相当の期間が経過しているところでございます。しかし、この最高裁判所の判決がありました後におきましても、国会等の関係においてもいろいろ御議論のあったところでございます。したがいまして、国民の合意というか、全体の考え方がどこにあるのかということを見きわめたい、そしてその線に沿って適切な措置をとりたいと考えている間に、先生御指摘のように確かに相当の期間はたっておりますけれども、そういう状況になったわけでございます。それでは現在尊属殺があった場合はどうしておるかという点でございますが、先ほど申し上げましたように普通の殺人の規定を適用いたしているところでございます。
○坂上委員 特別養子が実父母を殺した場合、この条文を適用していいのでございますか。それとも、もう普通の殺人になるのですか。それから、今度はもちろん今の特別養子の親は尊属になるわけです。今は運用面では普通殺人の条文を適用している、こう言っておるわけであります。実際この条文が生きているとすれば、実父母と養子の関係はどういう使い分けになるのですか。
○岡村政府委員 実父母につきましては、特別養子縁組が成立した段階で親族関係が消滅いたしますので、尊属殺には当たらないということになるわけでございます。もちろん特別養子の養親につきましては尊属ということに当たるわけでございます。
○坂上委員 普通養子の場合は、この条文から見てどうですか。
○岡村政府委員 現在の普通の養子でございますが、この場合は養子縁組をいたしましても実父母との間の親族関係が消滅いたしませんので、普通の養子の場合でございますと実父母も尊属に当たるし、また養親も尊属に当たる、こういうふうに解釈されているところでございます。
○坂上委員 運用面で事実上の解決を図られておるようでございますが、何はともあれこの二百条という問題は、残っておるからこういう議論をしなければならぬわけでございます。私は、憲法違反だという裁判所のお考えはもっともだと思っておるわけでございますが、さりとて何で法務省が未練たらしくこれを残しておくのか、この際この特別養子の際に何とかしてもいいんじゃなかろうかとも思っておるわけでございますが、どうですか、大臣。実務間でそういう問題があるのです。もしお考えなどありましたならば、無理してお答えいただかぬでもいいですが、専門的にはこういう問題があると理解しているのですが、どんな感じを持っておられますか。
○遠藤国務大臣 今先生との質疑応答の中において、このような問題は四十八年に憲法違反だということで指摘を受けているということになれば、年数的にも相当経過しておるのでもう処理すべきときだな、しかし、一般国民の声はどうなのかという点が疑問だという刑事局長の答えのようでございますけれども、そういうような点も何らかの方法で聴取して、残すか残さぬかという決断をする時期に来た、こう理解しております。
○坂上委員 大臣の答弁、大変微妙なんでございまして、国民の声の中にはやはり尊属という保護はある程度すべきじゃなかろうかということになってまいりますと、この特別養子というのもそういう部分において実は問題が残るわけであります。私は、こういうような問題が少し残っているんじゃなかろうかなということが実は気持ちの中にあるのであります。冒頭申し上げましたとおり、特別養子そのものには大賛成でございますが、これらの点をどう克服したらいいのか、ひとつ私も勉強したいなと思っておるわけでございます。
 さて、そこで本論に移りますが、今申しました特別養子縁組は一体どういうものなのか、そしていかなる目的のための制度なのか、お答えいただきたいと思います。
○千種政府委員 特別養子縁組の特徴を申し上げるには、現在の普通の養子制度の問題を若干申し上げた方がよろしいかと存じます。現在の民法で規定しております養子制度は年齢についての区別もございませんので、実際には相当数、届け出の三分の二は成人が養子となっております。ということは、子供が成長していく上において監護、養育が必要であるから、親がそれをできないときにかわってそれをしてやろう、こういった観点からできているのではなくて、家の跡継ぎとか家名を承継するとか祭祀を承継するとか家産あるいは営業を承継するとか、そういった目的のために使われている場合が多いように思われるわけでございます。
    〔井出委員長代理退席、委員長着席〕
 ところが、現在の養子の中におきましても、幼少の子供につきまして、親がいないあるいは家庭が破綻しておるということで小さい子供が監護、養育を必要としているという事例が幾つもございます。こういう事例は昔から少しずつあったのでございますが、日本の社会においては家の制度あるいは親族間の扶養、そういった国民の意識に基づいて何らかの形で消化されてきたものと思われるわけでございます。例えばヨーロッパのように国が戦場に化したところでは、戦災孤児がたくさん出てまいりました。そういう要保護児童の保護ということを社会的にあるいは制度的に考えなければいけないという必要が出てまいりました。そのために最近のヨーロッパの養子制度は、専らここで提案しております特別養子のような、子の利益、子の福祉を目的とする、実の子に類したそういう実態を持つ養子制度でございます。
 我が国も社会情勢がだんだん変化してまいります中にそういう需要が多くなってまいりまして、そこに従来の養子制度では十分でないという声が出てきたわけでございます。そこで出てまいりましたこの特別養子制度というのは、そういった保護を必要とする幼児でございます。幼児というのは、この提案におきましては就学前の六歳未満の子ということに限っておりますが、そういう幼児について実の親と同じような関係の養子制度をつくろうということは、裏返して申しますと、実の親との親族関係を消滅させる、養親と養子との関係は実の親と同じような法律関係にする、こういう制度をこしらえたわけでございます。
 そういたしますと、ただいま先生御指摘のように、血のつながりを切るというのは何とも釈然としないといった問題が残るわけでございまして、それをあえてするというにはそれなりの理由がある。そこでいろいろな要件を厳しくして、その判断は家庭裁判所が専権で判断をし、審判によって成立する。できた以上は、戸籍の上においても養子ではなくて、実の子と同じような体裁、形にする。社会的にも家庭的にも嫡出子と同じような地位を与える、こういう形の養子をつくろうというのがこの特別養子の制度であり、目的であるわけでございます。
○坂上委員 民法八百十七条の二の関係の目的、制度の御説明だろうと思うのでございます。
 それでは今度は八百十七条の五の関係の特別養子縁組については、現行の養子縁組と異なり、家庭裁判所の審判、成立審判というのだそうでありますが、によるとするとしたのはどういうわけでございますか。
 もう一つ、八百十七条の六の関係でございますが、特別養子となられる子を原則として六歳未満の子に限られたのはどういう理由でございますか。
○千種政府委員 特別養子制度の趣旨及び目的が、ただいま申し上げたように幼児について特別に保護を要する必要があり、かつ実の親との関係を絶ってまで養親との関係を安定し、固定していかなければいけないということでございますから、これはどうしても重要な判断でございまして、専門的に国家が関与して判断をするということから家庭裁判所の審判に服せしめ、審判が確定したときに初めて養親子関係が成立する、こういう制度の建前をとったわけでございます。
 それと同時に、その実質でございますが、今一般の養子は成人まで含めているわけでございますが、この趣旨が監護、養育、そういう保護をする、実際は親でございますが、この親がいない恵まれない子に親を与える、家庭を与える、こういう趣旨でございますから、子供が小さいうち特にまたその保護が必要なわけでございまして、大きくなってからは自分もその判断をする意思能力が出てまいります。そういうことから、一応原則として未就学児童であります六歳未満の子、こういうふうにしたわけでございます。
○坂上委員 この六歳という点で、私は二つ要請をしたいのでありますが、この法律の制定を望んで待っておられる親も子供さんも、子供さんは余りそう意思があるわけではございませんが、親がおられる、こう聞いておるわけであります。しかし、ごらんのような国会の運営の状況でございまして、さりとてまた、これは日本にとっては画期的な、どちらかというと保守的な私法関係に大胆に踏み込んだ法律改正だと私は思っているわけです。でありまするから、あるいは来年一月一日現在をもって六歳未満の算定がなされるのでしょうから、それるおそれがある子供さんが出てこないとも限らぬわけであります。でありまするから、そういうような場合、一年ぐらい経過規定でこれを救済をするというようなことをひとつお考えをいただきたいと思っておるわけであります。
 それからいま一つ、できたら十五歳ぐらいまで引き上げてもいいんじゃなかろうかなとも私個人としては考えておるわけでございますが、これはもう提出された法案でございまして、なかなか容易でありませんけれども、事の運営を見てみまして、また法案の成立の関係から見てみまして、何らかの対応ができるということを期待していいか悪いか、その辺もお答えをいただきたいと思っております。
○千種政府委員 ただいま御指摘のような御意見は、法制審議会の審議、あるいは中間試案を出していく経緯においてそういう御意見もございまして、確かにそういう需要は、将来について考えられるところと思います。この法案の中にもそういうことをある程度加味しております点は、現にもう里子として養育をしておる、そういう場合には六歳を八歳まで認めよう、こういうことである程度の緩和措置をとっているところでございます。
 それから、将来に向かって十五歳、あるいはよその国の例をとりますと十八歳という例もあるようでございますが、この制度がだんだんと定着してまいります過程においては、そういうふうに一般の養子制度が特別養子の方に傾いてくるということも十分考えられるところであると思います。現に、これはヨーロッパの話でございますけれども、イタリアの養子に関する改正が、一九八三年でございますから数年前に行われまして、そこでは十八歳まで特別養子を認めるというふうに年齢も上がったようでございます。そういう経緯を見てまいりますと、将来にわたってはそういうことは十分考えられるかなと私どもも考えております。
 ただ、この制度は、ただいま先生御指摘のように我が民法にとりましては非常に画期的な改正の要素がございまして、一遍にそこまで踏み切っていいのかどうかという問題もございまして、まずは幼児に限って提案されている次第でございます。
○坂上委員 法案のおくれの場合についての御配慮もお願いしておきたい、こういうように思います。
 その次に、八百十七条の七の関係でございまして、特別養子の実父母が縁組の成立に反対するときでも特別養子縁組を成立させる必要がある場合もあると思われるのでありますが、これはいかがでございますか。
○千種政府委員 おっしゃるとおりでございます。この特別養子の制度が、何と申しましても子の福祉ということが第一義的な目的になっておりますので、実父母が同意をしない場合に、どちらを優先させるかというぎりぎりの問題は出てくると思うわけでございます。ただ、実父母が特別養子の成立とともに親子関係が消滅してしまいますので、具体的には法律的な利害関係を持っておりまして、この同意ということもあながち無視するわけにはまいりません。その実父母が、結局、子の福祉の観点から見ました場合に、子供を虐待するとか、あるいは悪意の遺棄と申しますが、全然面倒を見ないとか、それで自分の権利ばかりを主張する、こういうような同意をしない理由が非常に権利の乱用的なものになっておる場合には、やはりその同意というものを尊重するよりは、子の福祉を優先させた方がいい、こういうことになろうかと思うわけでございます。
○坂上委員 これがいわゆる特別の事情に当たる場合とそして子供の利益のため特に必要がある、こういう解釈になるわけですか。
○稲葉政府委員 先生の御指摘の父母の同意の点は八百十七条の六のただし書きでございまして、この同意をしないということによりまして養子の利益が害される、むしろ実父母のもとにとどめておきますと十分な養育ができない、殊にここで書いてありますものは積極的に悪をなすというような場合のことになるわけであります。そしてさらに、養親のところへ行った方がいいということが先生が今御指摘になりました八百十七条の七の方でございまして、「子の利益のため特に必要がある」、先ほど局長が答弁申し上げましたように実親との関係を切り、そして実の親子同然の関係を形成するというのが特別養子でございますので、そういう養子関係にすることが本当にふさわしい、そういう状況にあるということを八百十七条の七が考えているわけでございます。
○坂上委員 今度は八百十七条の八の関係でございますが、特別養子縁組の成立につき六カ月以上の監護の状況を考慮しなければならない、こうあるわけですが、これはまたどういう意味を持ちますか。
○千種政府委員 特別養子の制度が子の福祉のために将来安定した親子関係を形成させるということを目的としておりますので、将来にわたってうまくいくかどうかということを確かめませんと、また離縁をして戻してやり直す、こういうようなことは安易にできません。そのためにこの養親と、養親と言っても候補者ですが、その幼児との間に今後実の親と同じような親子関係を形成していくのにうまくいくだろうかということを検証した上で審判を下そう。こういうことから、これはよその国の立法例にもあることでございますが、実際にその子を預けて試験的に養育をさせて、その関係を観察した上で結論を出そう、こういうことから六カ月の試験期間というものができたわけでございます。
○坂上委員 八百十七条の九の関係ですが、特別養子縁組が成立をいたしますとどういう効果が発生をするのか、お答えをいただきましょうか。
○千種政府委員 特別養子制度も養子の一つの類型でございますので、普通の養子と共通な効果というものがやはりございます。それは、例えば養親に対する関係では嫡出子としての身分を取得する。また、養親の氏を称する、養親の親権に服する、あるいは養父母の血族との間には血族関係が生ずる。これは従来の養子の制度についての規定がそのまま適用されて同様の効果を生ずるわけでございますが、特別養子について特に重要なことは、従来の実方の父母及びその血族との親族関係は縁組によって終了いたします。そういう意味では、実方の父母その他親族との間の扶養、相続の権利関係も終了するわけでございます。ただ、優生保護的な見地から近親婚の禁止という規定は適用になります。その点が特に重要な点であろうと思います。
○坂上委員 それでは今度は離縁の関係を聞きますが、八百十七条の十の関係でございますが、特別養子はどのような場合に離縁することができるのか。離縁できる場合を限定してありますが、これはまたどういうわけでございますか。
○千種政府委員 先ほどから申し上げておりますように、特別養子は実の親子と同じ関係を黙示しているものでございますから、これが容易に離縁をしてもとへ戻れるということになりますと、結局は今の養子制度と変わるところがございません。結局、成長過程の幼児につきましては非常に不安定な心情をもたらす、こういうことになるわけでございます。そのために、特別養子の離縁は認めないという意見さえあったわけでございます。ただ、そういうふうにしてしまいますと、これは万一でございますが、いろいろな事態が長い間には生ずると思われますので、安全弁というものもこしらえておかなければいけない。そこで、絞りに絞りまして、ここの八百十七条の十に掲げてある場合に限って離縁を認める、こういうことになったわけでございます。
 それにはもちろん、家庭裁判所が審判をして初めて離縁ができる。その理由といたしましては、とにかく実父母がおりまして、その監護能力があるということがまず前提になっております。これは同条の一項二号にあることでございますが、そして現に養親となっている者がその子供を虐待するとか悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害するというようなことをする、こういう事由がある場合、こういう場合に限って養子または実父母または検察官の請求によって離縁の審判がなされる、こういう形で離縁を許しております。
○坂上委員 今度は八百十七条の十一の関係でございまして、特別養子が離縁をした場合はどのような効果を生ずるのでございましょうか。
○千種政府委員 養親子関係が終了するという点では一般の離縁と同じようなことになりますが、特別養子の場合には、成立したときに実の親との関係が消滅しておりますので、それが復活するというところが重要なポイントでございます。その場合には、要するに終了した実の親、その親族関係が前の状態で復活する、特別養子は実父母の氏に復する、こういうことになってまいります。
○坂上委員 さて、今度は特別養子の戸籍はどういうふうにつくられるのか。また、これが離縁をした場合の戸籍がどういうふうになっているのか。そして問題なのが、近親婚をどう防ごうとしているのか、御答弁をいただきましょうか。
○千種政府委員 特別養子の制度をこしらえる際に一番問題になった問題の一つが、この戸籍でございます。現在の普通の養子の戸籍にはやはり養子であることが一見明瞭でございまして、それがこの養子の精神的な安定性を欠くという欠点であるとも指摘されておりました。特別養子は、先ほど来申し上げておりますように、実の親子と同じようにしたいというのが目的でございますので、戸籍においても、真実を記載しながら、そういった子供の精神的安定の阻害になるような事項をなるべく減らしていこう、こういう配慮から、今度戸籍法を改正しようとしております手続はこういうことになってまいります。
 まず、特別養子の審判が確定いたしますと、確定によって効力を生ずるわけでございますが、養親がその審判の申し立てをするわけでございますから、養親が確定した審判を持って戸籍のところへ届けてまいります。そうすると、実の親の戸籍からその子供だけを独立して新しい戸籍をこしらえるわけでございます。そのときには既に審判によります養親の氏を称する戸籍をこしらえるわけでございまして、それから養親の戸籍にもう一度入籍をする。要するにワンステップ余計に踏んで、そのところに特別養子になったということを明記して二つの戸籍をつなげる、こういう操作をすることにいたします。特別養子の新しい戸籍には、実の親としましては養親の名を書き、その養子につきましても養子という字は使わずに、長男、次男、三男というふうに実の親と同じ表示を使うわけでございます。
 ただ、その身分事項欄には前の、自分一人の養子の戸籍から入籍したということだけは書くわけでございます。ですから、普通の養子の場合とはかなり違いますけれども、実の子供の戸籍とも若干違っておるわけです。要するに、自分一人の戸籍から入籍したという事項だけが入っているわけです。ですから、戸籍の専門家が見ますと、これは特別養子だということはわかるわけでございまして、必要とありますと、その前の戸籍、子供一人の戸籍から実のもとの戸籍が検索できるような仕組みになっておりまして、婚姻障害などはそういう方法によって審査、調査することができることになっておるわけでございます。
 離縁をした場合にどうなるかといいますと、これは先ほどの効果に照らしまして実の親との親子関係が復活するわけでございますので、その戸籍に戻ることになります。戻る戸籍がない場合は、新戸籍が編製されるということになります。
○坂上委員 特別養子になった。それから、その特別養子の親に実子がいる。その実子と特別養子は結婚できるのでございますか。
○千種政府委員 お尋ねの場合は結婚できます。
○坂上委員 結婚できればよろしゅうございましょうが、そうしますと、もちろん今、近親婚を防ぐとおっしゃった。前の兄弟の関係に立つ特別養子、これは近親ですから結婚できない、こういうわけでございます。戸籍を見れば近親婚は防げる、こういうことでございますが、しかし世の中には兄弟が相愛するというような事態もないわけではないのであります。こういうようなことになりまして、確かに戸籍の上で近親婚が防げたといたしましても、自分の実際の兄弟とこの特別養子がこういう戸籍の表面上の影響によってそういう弊が生まれないものだろうかというようなことを漫然と考えるのでございますが、いかがでございますか。
○稲葉政府委員 私どもとしてもそういう懸念があるということは承知しておりますが、本来養子制度の考え方といたしまして、最後まで隠してしまうということはむしろ子のためにはならないという考え方でございまして、物心ついたある一定の時期においては、やはり特別養子であっても養子であるということはきちんと、これはテリングというふうに言われているわけでありますが、それをやるというのがこのごろの社会福祉、児童福祉の心理学的な、それがむしろ子供の福祉のためになるんだという考え方でございまして、欧米各国でもそういう扱いがされておるようでございます。ですから、この制度を運用するに当たりましては、児童相談所等を活用して、その社会福祉機関の協力のもとにこの制度を運用してまいりたいと思いますので、そういうものを十分活用してまいりたい。
 そういうことが適切に行われるならば、その点は問題はないのではないか。しかも、これはほかにもある話でございまして、例えば非嫡出子で認知していないというような場合に、父親を等しくする子供同士が愛し合うということも例としてはないわけではないわけで、そこは手当てがされていないわけでございます。ですから、それはかなり希有な例であるし、そういう事態に陥りそうになれば、周りの者は知っている、特に親は知っているわけでございますから、そういう事実上の防御措置がとられるのではないかというふうに考えているわけでございます。
○坂上委員 この法律の制定によって、まず最初どれくらいの特別養子が縁組されるというふうに見ておられますか。それから、毎年大体どれくらいだろうというふうな大体の見通しはどんななんですか。
○千種政府委員 この実際の必要というもの、需要というものをどのくらい見るかというのはなかなか難しいことでございまして、私どもいろいろな資料を当たってみたのでございますが、当面五百とか千ぐらいのものではなかろうかというふうに見てまいりました。なぜかと申しますと、実際、今養子の縁組の届け出というものを戸籍の所管のところで扱っているのですが、毎年その件数というのが成人もすべて含めまして九万件ぐらいなんでございますが、成人が三分の二ということを申し上げましたが、そのうち未成年で六歳未満ということになってまいりますと千数百人ぐらいの人数になってまいります。ですから、それがすべて特別養子になるといたしましても、千数百人でございます。もっとも、そのほかにも連れ子というのがございまして、それがやはり数千ということになっておりますが、連れ子というのは今度の制度の特別養子の要件としては難しいので、すべてそれが候補者になるということはなかろうと踏んでおります。
 ただ、要保護児童と申しますか、親がない、家庭がない、こういった児童につきましては、児童福祉法に基づきまして、これは厚生省の所管でございますけれども、そうした施設がいろいろな面倒を見ております。こういう施設に入っている六歳未満の子が、最近のものではございませんが、この審議中いろいろな資料を検討いたしまして、昭和五十八年ごろの数字ではございますけれども、これがやはり七、八千いるようでございます。こういうものが候補として考えられると思います。また、里子に出しておる、これもやはり厚生省の所管の問題ではございますが、そういった資料を見てまいりますと、里子の中で、養子縁組でその里子の制度が終わったという終了事件がやはり四百何十件というような数字で出ております。
 あれこれ総合いたしまして、やはり年間にいたしますと、当面のところは千件前後のところで、万の単位にはならないと思っております。しかも、それは千に近い千件台の問題であろうと思っております。
 ただ、これが順調にまいりまして、先ほども申しましたように養子制度の本流というようなことになってまいりますと、それは次第にふえていく可能性もあると思っております。
○坂上委員 それでは今度は、特別養子を一応ここで区切りまして、実子それから養子の質問をさせていただきますが、時間がもう切迫してまいっておりますので、どうしてもこれだけは質問しなければならないという部分からさせていただきたいと思います。
 八百十一条六項の関係でございます。いわば離縁請求権を養親、養子両方に与えたわけでございます。従前の法律は養子のみが離縁請求権を持っていたわけであります。まず、双方にこの請求権を与えたという理由について、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○千種政府委員 今までの養子の現行の制度でございますが、これは冒頭にも申し上げましたが、旧民法の規定の精神と申しますか、趣旨がそのままある程度存続しておったように理解できるわけでございます。ということは、家とは申しませんまでも、家名、家産、家族といったものの承継者として養子を迎えるというような考え方が根底にあるように思われるわけでございます。そのために、親が死んで子が跡を継ぐ、これは当たり前のことでございますから、親が死んで子供が去ってしまっては、何のために承継者を養子に迎えたがわからない、こういうような考え方になってまいります。そういうことから、子供が死んで親が離縁の請求をするというようなことは逆さまであるということであったのではなかろうかと思われるわけでございます。
 養親子関係というものは、法律的なぎりぎりの効果を考えました場合に、年とって子供に扶養をしてもらう、逆に家の資産が残れば子供に引き継がせる、扶養と相続ということがその核心的な効果であろうと思います。そういうことから申しますと、一方的にもらうものをもらうだけというのではいけないので、そこに相互性ということがございまして、家とかそういう制度を一つ取り払ってみますと、親と子も同じように平等に扱うのがよろしいのではないかという意見が最近多くなってきているわけでございます。そういうことから、双方の死亡において一方の生存者から離縁の請求ができる、こういうふうに直したわけでございます。
○稲葉政府委員 この点につきましては、前から立法論的に批判がございまして、片一方だけからの離縁、特に養子からだけの離縁ということを認めるというのは、旧民法以来の伝統でございます。旧民法の思想は、戸主の同意を得て離縁をすることができるという制度であったわけですが、それを新民法になりまして、戸主の同意を家庭裁判所の許可というところに直したというだけの立法をしたわけであります。その当時の考え方は、家に一たん入った者は外へ出さないという思想が非常に強かったわけでございまして、そういう意味で、新憲法で単純にそういうふうに直したということについては非常に批判がある。それとともに、養子が死んで養親だけが残った、そして養子の子供がいる、あるいはそれの親戚がいるというような場合に、その後始末としていろいろな相続関係とか扶養の関係とか、そういうような状況が出てまいるわけであります。
 そういう場合に、例えば養子の子供との間に実質的に裁判離縁に相当するような事由がある。例えば、孫に当たるわけでありますが、孫の方が虐待をするとかあるいはよそへ出ていってしまって悪意の遺棄をする、そういうような問題もあるわけでございます。そういうような状況があったときにも親族関係を解消する道がないということについては批判がございまして、前から一部の学者には、むしろそういう場合には現行法のもとでも養親の方からの離縁ができるんだという考え方があるわけであります。しかし、それは明文の規定に反しますので、今回そういう批判を受けとめ、そして実際の不都合を解消するという趣旨で双方化したわけでございまして、そのことによる当事者間の利益調整は家庭裁判所の許可によって適切に行われるというふうに私どもは期待しております。
○坂上委員 まず御説明を聞きますと、まだ私は納得はいたしかねておるわけでございます。本来、前の条文は戸主制度下におけるところの条文であるし、また改正すべきであるという意見も言われたし、大変不都合な場合もあったんだというお話でもあるわけでございます。しかし、また一面、こうした場合は大変な事態にもなるのじゃなかろうかと思うわけであります。
 いわば養子が死んだわけでございます。そして孫がいる場合、この孫さんがいわば代襲相続者たり得る場合があるわけでございます。この孫に、血がつながっていないからということで、もうやりたくない。そこで、養子が死亡したことであるから離縁をする、こういうことになるわけであります。そういう離縁の申し立てがなされるとすると、孫に当たる人、いわば代襲者という人、この孫さんが大変な不利益を受けるわけであります。だから裁判所の許可ということがあるのです、こういうのでありますが、裁判所の許可ということも、どうした場合に許可をするのか。裁判所のその許可の範囲というものが書いてなくて、ただ「許可」と書いてあるだけでございますから、基準がないわけでございます。一体この許可をどれによって補おうとなさっておるのか、もう少しこの点の御説明をいただきたいと思います。
○稲葉政府委員 これは現行法の養子が離縁をする、養親が死亡した場合に養子が離縁しようとする場合の許可についても同じ問題があるわけでございますが、これについては扶養、特におじいさんがいる、孫の方から離縁するわけでございますから、おじいさんがいるような場合に、それの扶養を免れるためとか、あるいは祭祀の承継をした場合にその承継を免れるというようなことを目的にして、相続はしておきながらその権利だけ主張して義務を免れるというようなことをチェックする趣旨でこういうふうに許可をかけているというふうに解釈されておりまして、家庭裁判所の運用もそういうふうにされております。
 先生御指摘のような場合も、孫ががんぜないというような場合に、おじいさんが扶養を免れるために死後離縁をするとかあるいは相続権を奪うためにするというようなことになりますと、これは相続人につきましては廃除という制度が別にございまして、非常に厳格な要件の上で相続人を廃除するということが認められているわけでございます。それの規定の潜脱にもなりかねないということで、そういう点を重点に置いてチェックをする、つまりその離縁が本当に社会の常識から見て、社会的観念から見て相当であるかどうかということを基準にして判断をするということに、当然解釈としては相なるというふうに考えて、法制審議会でもその点は御異論はなかったわけでございます。
○坂上委員 死後離縁条項の改定についてでございますが、これは私たち連合会の一員であります弁護士先生である福永寧先生が私のところに参られまして、大変まじめに、そしていろいろな角度から御検討をなさって、どうも今言ったような場合は代襲者が存在するときは代襲者を養子とみなして八百八十七条第二項を適用すべきでなかろうかというような私案を私に説明をしていただきました。また家事審判の適用についても、これを民法八百十一条第六項本文の規定による離縁をすることについての許可として、家事審判法九条第一項甲類八号で八百十一条第六項の本文の規定による離縁をすることを許可というふうにすべきでなかろうかという、大変まじめな、またうんちくの深いお話をお聞きをいたしまして、私もその方がいいのでなかろうかというふうにも考え、一応の提案をしておるわけでございますが、法務省とされましてはこの点についての御見解をさらに賜りたいと思います。
○千種政府委員 ただいま御紹介になられましたそういう先生の御意見も直接また先生から承っておるところでございますし、その趣旨につきましては法制審議会におきましてもやはり弁護士先生の委員も来ておられましてそういう提案もなされ、審議をされてきた経緯がございます。そのときに、結局そうしなくても安心できるのではないかということから、今御提案のような特別な措置を講じないままこの案ができたわけでございますが、それと申しますのが、その相手がいないという手続でありましても、裁判所としてはそういう事案につきましては必ず利害関係者の意見を聞くはずでございますし、その場合利害関係者は審判にも参加する手続がございます。そういうことで裁判所の手続が適正を得れば、そういった御心配はその中で十分検討される。したがって養子が死亡しておってその子供がおる場合に、その者がまた養子にかわる、要するに直系の親族でございますから養子にかわる扶養をすることもできるし、またそれに相続権を与えるのが適当である、何ら離縁をする必要がないということになりますと、やはり許可がおりないというふうになるのではないかと私どもは期待しておるわけでございます。
○坂上委員 時間が参ったようでございますから終わりにしたいと思うのでありますが、本当はまだ十問ぐらい御質問を続けたいのでございますが、最後に大臣、要するに特別養子の問題というのは、この小さな人権をどうやって守ってやったらいいかという本当に憲法の基本的人権の擁護からでき上がったものだ、こう思っておるわけであります。しかし、さっき私が簡易裁判所のときに弁舌を振るいましたように、ただ条文をつくっただけでは私はやはりだあだと思うのであります。本当にこういうふうに子供の人権を守り、そして子供の幸せを願うというのであれば、法務省そのものが先頭に立たれまして、こういうものに対する利用、そして子供の福祉、子供の人権を守ってやる、そうして子の親たちに対しても政府ができるだけ御協力を申し上げるということが一番大切なことだろうと私は思っておるわけであります。まさに法務省の任務もそこにあるんじゃなかろうかと思っておるわけでございますが、特別養子施行に当たりましての大臣の御決意を賜りたいと思っております。
○遠藤国務大臣 先生御承知のとおり、この制度は明治三十一年ですか、そして二十二年に憲法が改正されて以来、そのときに当たって家というものに対する一部改正されたのみであった。そういうふうな点で養子縁組、特にその養子に対する人権という点についてもっと近代化すべきだというような点で、今先生の御発言のとおり、私どもとしては子供の人権を守るということを中心としてこの近代化された養子制度をつくり上げ、その魂を入れたいという気持ちでおりますので、私どもとしては制度のみでそれでいいのだということではなく、いかにして子供の人権を守り抜くかということを中心とした制度にしたい、実のあるものにしたい、このような決意を持っております。
○坂上委員 これで終わりますが、私は六月十二日から二十日までバンコクに人権調査に行ってまいりました。五歳から十二歳ぐらいの子供たちが三年間六千円ぐらいで売り飛ばされまして、学校へも行かないで働いておるという実態を目の当たり見たり知ったりしてきたわけでございます。今特別養子の法律ができつつあるわけでございますが、この子供たちの小さな人権を守り、そして幸せを願いながら私は質問を終わるわけでございますが、どうぞ法務当局におかれましては、大臣の決意を決意といたしまして、ぜひこの子供たちの幸せのために御努力賜りますことをお願いをいたしまして、私の本日の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
     ――――◇―――――
○大塚委員長 この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。
 商工委員会において審査中の内閣提出、外国為替及び外国貿易管理法の一部を改正する法律案について、同委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間において協議の上、追って公報をもってお知らせすることといたします。
 次回は、来る二十五日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時一分散会