第109回国会 農林水産委員会 第1号
本国会召集日(昭和六十二年七月六日)(月曜日
)(午前零時現在)における本委員は、次のとお
りである。
  委員長 玉沢徳一郎君
   理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君
   理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君
   理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君
   理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君
      阿部 文男君    上草 義輝君
      大石 千八君    大原 一三君
      太田 誠一君    木村 守男君
      菊池福治郎君    小坂善太郎君
      佐藤  隆君    田邉 國男君
      谷垣 禎一君    中尾 栄一君
      野呂田芳成君    長谷川 峻君
      森下 元晴君    保岡 興治君
      柳沢 伯夫君    山崎平八郎君
      五十嵐広三君    石橋 大吉君
      田中 恒利君    竹内  猛君
      辻  一彦君    前島 秀行君
      武田 一夫君    玉城 栄一君
      藤原 房雄君    吉浦 忠治君
      佐々木良作君    藤田 スミ君
      山原健二郎君
―――――――――――――――――――――
昭和六十二年七月二十八日(火曜日)
    午前十時三分開議
出席委員
  委員長 玉沢徳一郎君
   理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君
   理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君
   理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君
   理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君
      阿部 文男君    上草 義輝君
      尾形 智矩君    大石 千八君
      大原 一三君    木村 守男君
      菊池福治郎君    小坂善太郎君
      谷垣 禎一君    東   力君
      森下 元晴君    保岡 興治君
      柳沢 伯夫君    山崎平八郎君
      石橋 大吉君    新盛 辰雄君
      田中 恒利君    竹内  猛君
      辻  一彦君    前島 秀行君
      安井 吉典君    武田 一夫君
      玉城 栄一君    藤原 房雄君
      吉浦 忠治君    藤田 スミ君
      山原健二郎君
 出席国務大臣
        農林水産大臣  加藤 六月君
 出席政府委員
        農林水産大臣官
        房長      甕   滋君
        農林水産省経済
        局長      眞木 秀郎君
        農林水産省農蚕
        園芸局長    浜口 義曠君
        農林水産省畜産
        局長      京谷 昭夫君
        水産庁長官   佐竹 五六君
 委員外の出席者
        外務大臣官房審
        議官      赤尾 信敏君
        外務省経済局漁
        業室長     野上 武久君
        文部省体育局学
        校給食課長   石川  晋君
        参  考  人
        (財団法人日本
        捕鯨協会理事
        長)      稲垣 元宣君
        参  考  人
        (全日本海員組
        合組合長)   土井 一清君
        参  考  人
        (北里大学水産
        学部講師)   長崎 福三君
        農林水産委員会
        調査室長    羽多  實君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十日
 辞任         補欠選任
  山原健二郎君     金子 満広君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  上草 義輝君     伊藤宗一郎君
  太田 誠一君     宇野 宗佑君
同日
 辞任         補欠選任
  伊藤宗一郎君     上草 義輝君
  宇野 宗佑君     太田 誠一君
同月十七日
 辞任         補欠選任
  金子 満広君     山原健二郎君
同月二十八日
辞任          補欠選任
  田邉 國男君     尾形 智矩君
  長谷川 峻君     東   力君
  田中 恒利君     安井 吉典君
  前島 秀行君     新盛 辰雄君
同日
 辞任         補欠選任
  尾形 智矩君     田邉 國男君
  東   力君     長谷川 唆君
  新盛 辰雄君     前島 秀行君
  安井 吉典君     田中 恒利君
    ―――――――――――――
七月六日
 流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特
 別措置法案(宮崎茂一君外五名提出、第百七回
 国会衆法第六号)
 本邦漁業者の漁業生産活動の確保に関する法律
 案(安井吉典君外十六名提出、第百八回国会衆
 法第一号)
 食糧管理法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、第百八回国会閣法第六〇号)
 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する
 法律案(内閣提出、第百八回国会閣法第六一号
 )
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国政調査承認要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する
 法律案(内閣提出、第百八回国会閣法第六一号
 )
 農林水産業の振興に関する件(捕鯨問題等)
     ――――◇―――――
○玉沢委員長 これより会議を開きます。
 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 農林水産業の実情を調査し、その振興を図るため
 農林水産業の振興に関する事項
 農林水産物に関する事項
 農林水産業団体に関する事項
 農林水産金融に関する事項
 農林漁業災害補償制度に関する事項
について、本会期中調査をいたしたいと存じます。
 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
○玉沢委員長 第百八回国会内閣提出、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。加藤農林水産大臣。
    ―――――――――――――
 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する
  法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
○加藤国務大臣 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 大豆及びなたねは、植物性たんぱく質資源あるいは油脂資源として国民の食生活上欠かすことのできない重要な農産物であり、また、農業生産面においても、畑作においては輪作体系を構成する基幹作物として、水田作においては地域輪作農法の導入等による水田農業の確立を図る上で重要な農作物であります。
 このような大豆及びなたねにつきましては、昭和三十六年から、大豆なたね交付金暫定措置法に基づき、その生産の確保と農家所得の安定に努めてきたところであります。
 しかしながら、制度発足後四半世紀が経過し、その後の生産事情、需給事情の変化に伴って、現行制度ではこれらの変化に的確に対応し得ない場面が生じております。
 このような情勢に対処するため、大豆及びなたねに係る交付金制度について、生産状況等を的確に反映させるとともに、一層の生産性の向上及び品質の改善に資するよう、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、生産者に保証すべき価格水準として農林水産大臣が定める基準価格の算定に当たっては、大豆またはなたねの生産構造や生産性の向上等を的確に反映したものとするため、これまで行ってきたパリティ価格等を参酌する方式を改め、生産費その他の生産条件、需要及び供給の動向、物価等を参酌する方式とすることとしております。
 第二に、良品質の大豆またはなたねの生産を誘導するため、交付金の金額の算定の基礎となる基準価格等を種類、銘柄または等級の別に応じて定めることができることとしております。
 第三に、生産者団体等による一層の販売努力を促進するため、交付金の算定の基礎となる標準販売価格に最低標準額を設けることとしております。
 第四に、本制度の運営に当たって大豆またはなたねの生産性の向上及び品質の改善に資するように配慮する旨を明確にすることとしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○玉沢委員長 次に、補足説明を聴取いたします。浜口農蚕園芸局長。
○浜口政府委員 大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
 本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。
 第一に、基準価格の算定方法の改正であります。
 基準価格は、これまで大豆の輸入自由化前の販売価格に農業パリティ指数を乗じて算出したいわゆるパリティ価格及び生産事情その他の経済事情を参酌し、大豆またはなたねの再生産を確保することを旨として定めることとされておりましたが、大豆またはなたねの生産構造や生産性の向上等を的確に反映したものとするため、販売することを主たる目的として大豆またはなたねの生産を行っていると認められる生産者の生産費その他の大豆またはなたねの生産条件、大豆またはなたねの需要及び供給の動向並びに物価その他の経済事情を参酌し、大豆またはなたねの再生産を確保することを旨として定めることとしております。
 第二に、良品質の大豆またはなたねの生産を誘導するため、基準価格を種類、銘柄または等級の別に応じて定めた場合には、この種類、銘柄または等級の別に定めた基準価格等を用いて交付金の金額を算定し得ることとしております。
 第三に、輸入大豆またはなたねに比べて品質的にすぐれている国産大豆またはなたねがその品位にふさわしい適正な価格で販売されるよう、標準販売価格に最低標準額を設け、交付金の金額の算定に当たり、標準販売価格が最低標準額を下回る場合にあっては、その最低標準額をもって算定することとしております。
 第四に、農林水産大臣は、基準価格及び交付金の金額の算定に関して農林水産大臣の定める数量を定めるに当たっては、大豆生産またはなたね生産における生産性の向上及び大豆またはなたねの品質の改善に資するように配慮することとしております。
 最後に、この法律の施行期日等でありますが、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとするとともに、この法律による改正後の規定は、大豆については昭和六十二年産のものから、なたねについては昭和六十三年産のものから適用することとしております。
 以上をもちまして、大豆なたね交付金暫定措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
○玉沢委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
○玉沢委員長 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 農林水産業の振興に関する件について、本日、財団法人日本捕鯨協会理事長稲垣元宣君、全日本海員組合組合長土井一清君、北里大学水産学部講師長崎福三君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
○玉沢委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。稲垣参考人、土井参考人、長崎参考人の順序でお一人十五分程度の御意見をお述べいただき、その後委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
 なお念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、稲垣参考人にお願いいたします。
○稲垣参考人 御紹介いただきました日本捕鯨協会理事長の稲垣でございます。
 国会の諸先生方にはかねてから我が国、私どもの捕鯨のために格別の御関心、御支援を賜り、また本日は本委員会におきまして私ども捕鯨業界の考え方、また諸先生に対するお願いを申し述べる機会を賜りましたことを、初めに心から御礼申し上げる次第でございます。
 先生方御承知のように、本年のIWC会議は先月イギリスのボーンマスで開催されました。本年の会議におきましては、議題はたくさんございましたけれども、我が国として関心のある重大な項目が二つございました。一つは、我が国の提案した調査捕鯨の調査捕獲に対する審議の問題でございます。第二点は、日本の沿岸の小型捕鯨業をいわゆる生存捕鯨として認知させるための提案でございました。そのほか幾つかございましたが、この二つが重要な項目でございました。
 既に御承知のように、今回の会議には自由民主党から玉沢先生、菊池先生、東先生の三人の国会議員の方がお出ましいただきました。斉藤IWCコミッショナーを初めといたしまして、我が国政府代表団の格別の御尽力、御奮闘をいただいたわけでございますが、結果的に見ますと、我が国の提案いたしました調査捕獲計画につきましては、例によって例のごとくといいますか、IWCの理不尽な運営によりまして我が国が条約第八条の締約国の主権として実行できる調査捕獲についていろいろの難癖がつけられました。条約上容認できないようなIWCの勧告というものが採択されることになったわけでございます。また、沿岸の小型捕鯨の存続につきましては、生存捕鯨の定義がはっきりしないというようなわけのわからない理由で結局来年回しになるというような結果になったわけでございます。
 私どもの日本捕鯨協会は、このうちの調査捕獲に関係する議題が直接の関係する問題でございます。
 御承知のように、五年前、IWCにおきましていわゆるモラトリアムが採択されました。これにつきましては日本政府が条約に基づきまして異議の申し立てをしたわけでございますが、その後アメリカから異議の撤回をするようにという強い圧力が加わりまして、もし異議の撤回をしないならばアメリカの二百海里内における、いわゆる日米漁業協定のもとにおける漁獲割り当てを半分に減らすとかゼロにするというような経済制裁をちらつかせまして、日本政府に異議の撤回を迫ってきたわけでございます。そういうことで三年ほど前から日米間で日米捕鯨協議が続けられたのでございますが、日本政府としても苦悩の選択をしました結果、二年間だけはアメリカの制裁なしに商業捕鯨が実施できるという合意が成立したわけでございます。また、それに伴いましてモラトリアムに対する異議の申し立ても昨年の七月撤回するという手続がとられたわけでございます。
 その時点におきまして私どもも政府にお願いし、また諸先生にもお願いしたわけでございますが、確かに商業捕鯨ができなくなったのは我々として不本意ではございますが、政府の方でそうお決めになった以上やむを得ない、しかしながら、捕鯨条約を見ますと、第八条に締約国の主権的な権利といたしまして調査捕獲はできるということが明白に書かれております。また、同じ条約の第八条の第四項には、捕鯨産業の健全な発達のためには鯨資源についてその生物学的資料を継続的に採取、収集しなければならないという義務的な表現もございます。そういう点から日本政府が今回のIWCに調査捕獲計画を出したわけでございます。内容は、南氷洋の四区を対象にいたしましてミンククジラ八百二十五頭、マッコウクジラ五十頭というものでございました。これは、日本の科学者が心血を注いでつくり上げた、まさに科学的な合理性を備えたものであり、しかもこの調査計画によって条約附表で定められております一九九〇年までのモラトリアムの見直しに貢献するような内容として、科学的に極めて合理性の高い最高、最善の案として科学者がつくり上げ、そしてまた国会の諸先生初め日本政府全体として正式にお決めになって御提出いただいたわけでございます。
 しかるに、IWCの科学委員会で例によって反捕鯨科学者から理由のないようなクレームがつけられ、また本会議に持ち上げられまして、これもまたここ数年、毎年のことでございますが、数の力の表決によって中止を勧告するというような事態になったわけでございます。中止勧告自体は条約上拘束力がないわけでございますけれども、日本政府としてはIWCの枠内にとどまる限りこれを無視しにくいような御事情はあろうかと思います。これまでもモラトリアム自体科学的な根拠のない無効の決定、我々業界といたしましてはこう思っていたわけでございますが、今回の勧告決議もIWCの条約の趣旨から見て、また目的に照らし、そして手続的に見ましてもまさに違法と断定していい勧告案だと思っております。しかし、日本政府といたしましては、反捕鯨の旗頭であるアメリカの意向をいろいろお考えのことかと思いますが、現在、日本政府が提出した調査捕獲計画をどういうふうに扱うか、いろいろ御検討のことと承っております。私ども業界といたしましては、せっかく日本の科学者がつくり、政府の正式の決定として提案されたこの計画はぜひとも本年度から実施していただかなければならないと強く諸先生方にお願いしたいところでございます。
 アメリカはIWCにおきましてこういった違法の決議あるいは違法の決定をしておりますが、それをまたアメリカの国内法に基づきまして日本をおどかしてIWCにおける違法の決定をさらにしんにゅうをかけたような、国際法的に見て極めて法に反するような行動をとろうとしているわけでございまして、私どもはこれまで十数年来、こういったIWCの違法な行動に対して隠忍自重を重ねてまいりました。これも日本政府のいろいろのお考えを我々なりに十分理解いたしまして、日本の国益のために忍びがたきを忍び、耐えがたきを耐えてきたわけでございますが、今の時点になりますと、いよいよ最後の核心といいますか我々業界の生命線に触れるような事態に立ち至ってきております。もはやこれ以上引き下がるわけにはまいらないと我々業界として考えております。捕鯨問題はいろいろな要素を含んでおります。単に条約論、科学論だけではなくて、文化論、価値論あるいは政治論、そういったものを含んでいるということは私ども十分認識しておりますけれども、現在IWCで行われているような、そしてまたアメリカが実施しようとしているような行動がもしこのまま許されるとしたならば、世界に法と科学は存在し得なくなるでありましょうし、また正義と公平の実現もおぼつかないのではないかとさえ思うわけであります。
 捕鯨は現在、国民経済的に見ますと非常に小さなものとなりましたけれども、私ども業界、捕鯨人の心の中には何百年の歴史にはぐくまれました誇り高い魂がございます。我々はこの魂が理由もない、根拠もない違法な圧力のもとにつぶされることについて最大の怒りを感ぜざるを得ないわけでございます。いろいろ難しい問題はあろうかと存じますが、条約に基づいた正当な事業であり、また国内法的に見ましても完全に適法な事業でございます。諸先生方の御尽力、御配慮によりましてこの調査捕獲計画が本年度から実施に移され、そして鯨資源に対するより精細なデータを提供いたしまして、捕鯨条約の付表で求められている資源の再評価、そしてまた捕鯨の再開へ向けての効率的な調査をぜひともお願い申し上げたい、かように思うわけでございます。私どもといたしましては、いろいろな事情はよく存じておりますので、一〇〇%我々の希望が通らなければどうのこうのというようなことは考えておりません。国会の諸先生初め外交、行政の各担当の方々がしかるべき手続と温かい気持ちを持ってこの捕鯨の存続について御腐心いただいて、御決定いただけるよう心から念願申し上げる次第でございます。
 甚だ簡単でございまして抽象的でございましたが、以上をもちまして私の陳述にかえさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○玉沢委員長 ありがとうございました。
 次に、土井参考人にお願いいたします。
○土井参考人 全日本海員組合の組合長をやっております土井一清でございます。日ごろは各先生方には漁業の問題あるいは最近特に捕鯨の問題、漁業労働者の問題等について大変御配慮を賜っておることに心から感謝を申し上げたいと思います。
 私は、今次三十九回のIWC総会が我が国にとって極めて屈辱的なものであったということで憤りを禁じ得ません。既に先生方御存じのとおり、今次IWCの最終段階におきましては、国際法もあるいは科学的な論拠も、そしてまた国家の主権も無視するような決議が多数の暴力によって決行されたという点であります。
 私どもは、一九八二年にモラトリアムが急遽決定されて以来、これらの捕鯨問題については国際協力の中で話し合いと理解と協調と平和裏に国際世論がIWCの存在意義に着目して、そして各国の捕鯨業とそこに働く労働者と、その恩恵を受ける国民の幸せのためにIWCが健全な国際機関となることを念願しておったわけであります。しかし、IWCのやっていることはまさに科学的な論拠を逸脱し、あえてそれを無視して多数でもって諸決定をするという、この暴挙に対しては断じて容認することができないということで、捕鯨取締条約に規定される当然の権利である異議の申し立てをいたしたわけであります。政府も当然そういう考えに立って我が国の主権のもとに異議申し立てをされたわけであります。
 しかしながら、アメリカという極めて強大な大国がありまして、世界で常に自国はナンバーワンでなくちゃならぬという力を誇示する国がありまして、日本に対して、日本が国際会議の決定を無視するようであるならば日本に対して報復処置をすべきであるという観点から、パックウッド・マグナソン法さらにはペリー修正法といったような日本の水産業に対する決定的な報復法案を成立させ、それをもって日本のモラトリアムに対する異議申し立ての撤回を迫ったわけであります。我々日本の漁業界と漁業労働者と、その漁業によって飯を食っている一般国民は事ここに至って、アメリカの言うとおりに捕鯨を捨てて北洋に生きるのか、北洋を犠牲にして捕鯨に生きるか、その選択を迫られたわけであります。日本は、アメリカはいろいろな面で大事な国である、アメリカとの友好親善のきずなを傷つけたくないというこの国の政策というものは尊重さるべきでありますけれども、遺憾ながらアメリカのごり押しの譲歩に迫られて、日本はモラトリアムに対する異議申し立てを撤回した。そのときにアメリカはじゃ北洋を生かしてくれたかというと、北洋でも大きな犠牲を日本に強いてまいりました。
 今日、概括的に申し上げまして、御存じのとおり捕鯨も大きく捕獲量を削減され、北洋においても漁獲割り当て量が削減されまして、殊に北洋漁業の壊滅的な打撃は目を覆うようなものが今あります。かつてはアメリカの二百海里水域で二百万トン近く魚をとっておりましたが、今日では三十万トンを切るような状況であります。しかも、日本は今や世界一の水産物の輸入国になっております。皆さん方はそれぞれ地元に漁業基地を持っておられたり、あるいはお世話を願っておる方も多かろうと思いますけれども、かつての水産王国日本が今では世界一の水産物輸入国というような形になってまいりました。これは決して捕鯨との絡み合いだけであるとは言いませんけれども、多分に日本がIWCにおいていろいろな面で攻撃される、その攻撃に抵抗すればするほどアメリカの報復法案が発動されるというような極めて残念な状況が日米間にあることは御存じのとおりであると思います。私どもは、どちらかが生きてどちらかが助かるならばと思うこともありますけれども、しかし現実においては、漁業全体が今日極めて厳しく、職場が縮まり、漁業を廃業する業者がふえ、倒産、離職という傾向が一層深刻の度を深めてまいっております。
 かつては、天武天皇以来、西暦六七〇年代から我が国の国民の食文化ということで継承されてまいりまして、戦前、戦後を通じて多くの母船が南氷洋に、あるいは北氷洋に、そして沿岸水域で捕鯨に従事をしてまいりました。なかんずく戦後におきましては、食糧難の真っ最中に、昭和二十一年から昭和三十年の末に至る間におきましては、家庭の食卓の動物性たんぱく食料の二五%は鯨肉で賄ってきたという極めて貴重な事実があるわけであります。
 今日、鯨は国際捕鯨取締条約の中で漸減に漸減を重ねてまいっております。しかし、我々一九八〇年以来資源管理に十分留意し、かつまた科学的な調査を重ね、あるいは生物学的にも鯨資源の育成、培養にも努めてまいっております。
 したがって、グリーンピースを初めとする環境保護団体あるいは動物愛護団体、それらの元締めであると言われるアメリカ、さらにはイギリス等々が鯨は絶滅するということを言っておりますけれどもへ最近のIWCの科学委員会においては、特に南氷洋におけるミンククジラの頭数は増大をしている、今回の三十九回のIWC会議ではミンククジラが二十八万七千百十七頭にふえている、これは昨年に比べれば約二万頭捕獲対象の鯨がふえているわけであります。これは目で見た視認による評価頭数であります。したがって、現実には三十万頭を超えておるだろうと言われるほど資源は大きくなっております。反対者が言うように鯨資源は絶滅どころか大きくふえてきている、その他のナガス等の鯨類においても着実にふえておることが科学的に立証をされております。IWCにおける科学委員会が科学的にそのような鯨資源の増大を評価しておるにもかかわらず、本会議においては数の暴力でこれらが否認されておる、まさに国際会議における民主主義も公正もあったものではないと思います。
 私どもは、そういう状況の中で、この捕鯨をいかに存続するかということにつきましては、商業捕鯨についてはどのような形の会議であったろうと、決議された以上商業捕鯨の一時中断やむを得ないと思います。しかしながら、捕鯨取締条約の八条に規定される調査捕鯨については、締約国の主権事項としてこれは絶対やるべきであるという考え方であります。
 これは、一つには締約国の国際的な主権としての権利である。二つには、我が国の食文化の継承である。さらには捕鯨労働者の雇用と生活を守ることである。さらには、沿岸小型捕鯨のように、地域社会に密着した地域の生活と文化と切っても切れない関係にある小型捕鯨分野における生存捕鯨は、これはまさに地域文化、生活の崩壊につながるものとして絶対途絶えさせてはならないというぐあいに思うわけであります。
 私どもは、昭和五十一年に政府の指導によりまして、従来の三つの捕鯨会社を一本化して共同捕鯨という株式会社をつくりました。言うならば、官労使でつくった国策会社とも言うべき会社であります。この会社において毎年資源を評価しながら、我々で頭数の評価に努めてまいりましたけれども、現実、乗組員の数は、五十一年当時千五百人おりましたのが、その後三年もたたない五十三年には、半分の七百五十人になりました。そして今日には五百二十三人であります。年齢的には四十七歳を超えております。そしてまた、沿岸の大型捕鯨におきましては三百三人おります。地域の沿岸小型捕鯨に至っては九十四名。トータルで捕鯨業に直接従事している船員、砲手、裁割要員等々を含めて九百三十人が今鯨の事業に携わっておるわけでありますが、実はその鯨を食っておる人は何万人、何十万人とおります。そして、それでもって商売をし、なりわいとしておる人たちがまた何十万とおることは御存じのとおりであります。
 私どもは、それらの日本の固有の文化と、日本国の権利を当然主張して対処をいただきたい。特に我々は、調査捕鯨を実施する暁には、当然アメリカがPM法の適用あるいはペリー修正法の適用等で恫喝してくるでしょう。しかし、もうこれ以上アメリカに恫喝されるということがあっては、日本国そのものの主権と自治にかかわると思います。私は、決してそういったことにひるむことなく、堂々と日本の政府として調査捕鯨並びに沿岸捕鯨の生存捕鯨としての当然の国際法に定める権利を主張し、実施をするという決意を国策としてお決めをいただきたいと思います。
 諸先生方の真摯な御協力によりまして、我々の今主張する例題が適正に日の目を見ることを心から期待して、私の参考人としての意見開陳といたします。ありがとうございました。(拍手)
○玉沢委員長 ありがとうございました。
 次に、長崎参考人にお願いいたします。
○長崎参考人 長崎でございます。
 私は、専門が海洋生物利用管理論というのでございまして、数年前から鯨の問題、鯨の管理の問題に従事してきております。四年間ほとんど毎年のように捕鯨委員会の科学談義に参加をしてまいりました。きょうは調査研究という面からこの捕鯨、鯨の管理という問題を少し述べさせていただきたいと思います。
 我々が捕鯨問題を論ずる場合にいろいろな側面があると思いますが、少なくとも科学者あるいは科学小委員会の場でいつでも日本の研究者が行動原理にしております憲法といいますか哲学というのは、ほかでもない捕鯨条約そのものでございます。ですから、捕鯨条約の内容に沿った物の考え方を常にしてきたわけでございます。その点はまさに自負できると考えております。
 先生方、既にお聞き及びのことと思いますが、一九八二年に第三十四回IWCの年次総会で三年間の猶予を持った商業捕鯨のモラトリアムが採択されたわけでございます。この年もそうでございましたが、科学小委員会、科学者の検討の報告書の中にはモラトリアムが必要だとかそういうことをやるべきだという趣旨のことは一言も書かれてないわけでございます。したがって、日本の科学者あるいは日本とほぼ同じような見解を持ってきた外国の科学者もモラトリアムには科学的な根拠がないと言ってまいったわけでございます。
 ただ、それであるにかかわらず、モラトリアムがまかり通ってしまった。そしてそれ以後何となく商業捕鯨を圧迫し続けてきた、科学的な面でもそういう雰囲気が出てきたのは、実は一つは環境生物学者という人たちがいるのですが、そういう人たちの一つの有力な武器は不確実性という言葉でございます。この不確実性というのはある意味で科学調査にはつきものでございます。我々は何も我々のやっている研究を完全に一〇〇%信頼できる、確かなものだというふうに考えている人はだれもいないわけであります。その不確実性を盾にとられてまいりますとなかなか対応の仕方が難しいということがございました。
 ただ、このモラトリアムには、遅くとも一九九〇年までに包括的な資源の見直しをやろうじゃないかという決定の一文が加わっているわけでございます。したがって我々は、一九九〇年時点ですべての捕鯨の資源量についてもう一回正確な基盤に立った再評価をやろう、そこで商業捕獲というのが可能であるかどうかをもう一回検討しようじゃないか、巻き返そうじゃないかという感じをずっと持ってきたわけでございます。それ以来既にもう五年の歳月が流れているわけですが、この五年間日本の科学者は、かなりIWCの科学小委員会の場でお金も使い、努力もし、人力も知力も使ってまいりました。しかし、なかなかそれは効果を上げるまでにいかなかった。それは先ほど申し上げました不確実性にどう対応したらいいかという問題が非常に大きく立ちはだかっていたということかと思います。
 この不確実性というのが出てまいりますと、例えばレポートの中に両論併記というのが出てまいります。これは、どちらが正しくてどちらが悪いんだという書き方ではなくて、こういう意見もこういう意見もあるよという併記をされますと、後はそれを決定する場合に票の力で決定してしまいますので、科学者の力ではいかんともしがたいという非常に厄介な性質を持っていたわけです。
 それでは、なぜそんなに問題になるほど不確実なのか。私たちは我々の研究結果を決してそんなにひどく不確実などとは考えていないわけなんですが、その不確実性が出てまいりますのは、全くないわけではございません。その不確実性はどこから出てくるかと申しますと、大体こういう鯨の利用管理をする場合に最も重要な情報というのは、ある特定の種類の鯨が何頭いるか、全体の数というのがまず推定されるのが常道でございます。その数に対して一年間にどのくらいの割合でふえるかという率を計算いたします。そしてその数に掛けた頭数がほぼ年間利用できる数ということになります。
 ところが、この全体の頭数を推定するという点でも、それからどのくらいの率でふえていくかという率の計算でもこの不確実性がどうしても入ってくることになるわけでございます。ただ、今一番問題になっております南氷洋のミンククジラの場合には、全体の頭数について最近――IDCR調査と我々呼んでおりますが、調査船を使いまして走って群を目視します。そして群を見た割合、密度から全体の群を推定するわけでございますが、これが最近数年間非常に精度を上げてきております。したがって、IWCの委員会でもIDCRの調査は続けようというのが圧倒的な支持を得ているわけでございます。そういう意味では、技術的には問題がございますが、全体の頭数を押さえるということはかなりいい。方向に向かっている。IDCRを続けていく限り、日本の科学者が中心になった目視を続けていく限り、かなりいい結果が出てくるという評価を受けていることは間違いないわけでございます。
 さてそこで、余り時間がございませんのではしょっていかざるを得ないのですが、現在科学的に申しまして我々の目の前に三つの大きな課題があると考えてよろしいかと思います。
 一つは、先ほど申し上げました一九九〇年に包括的評価をやろうということでございますので、いかにしてその包括的評価を達成していくかということでございます。これは大体過半数の仕事が過去の資料をもう一度再検討してみるということでございます。しかし、過去のデータといいますか情報をひっくり返しても、決してそんなに新しい情報が出てくるわけではございませんので、どうしても二番目として、新しい情報をどういうふうにして手に入れるかということが課題になります。これは日本側の科学者としてかなり力を入れたいと考えているところでございます。先ほど申し上げましたようにIDCR、目視調査を続けることによってミンクあるいはそのほかの南氷洋の鯨あるいはそのほかの水域の鯨についても、全体量をつかむ方法には方法論がかなり確立されてきたということを言って差し支えないと思います。したがって、新しい情報は目視調査を続けることによって得られるだろうと思います。
 それから、もう一つの毎年ふえていく率をどうやって計算するかということですが、この点が大変難しい問題でございます。実は、今まで毎年ふえていく率を計算しなかったわけではないのですが、それが不確実性と言われてきてしまった理由の非常に大きな原因の一つは、そういう資料、データを我々が商業捕鯨の結果から得ているということなのです。商業捕鯨というのは、当然のことでございますが大きな鯨を優先してとっていくわけでございます。そういうとり方をしたデータからはそんなに代表的な、統計的に意味のある数字は出てこないよというのが不確実性の原因でございました。したがって、我々は現在、目視の調査とそれから統計的に意味のあるような、つまり商業性を排除した、全く商業的な性格を持たない、つまり大きな鯨をとるのではなしに統計的にランダムなといいますか、全く意思性を持たないような標本を抽出する、標本採集を行おう、これから出てきた情報こそが不確実性に対して最も強い武器であるというふうに考えているわけでございます。したがってどうしてもこの調査はやらなければいけない。この調査から出てくる情報こそが我々の主張を勇気づけてくれる、合理化してくれる唯一のものだというふうに考えております。
 それからもう一つは、鯨の資源の管理方法という技術的な問題がございます。これは関係はございますけれども、時間の関係できょうは割愛させていただきます。
 それでは、一体標本抽出をするような作業をどういうふうに行おうとしているのか。我々は、ことしその計画案をIWCに提出したわけでございます。私の感じとしては、何人かの、そしてかなり多くの科学者たちは日本の計画にかなり好意的な同情と理解を示してくれたわけでございます。しかし、IWCというのは先ほども申し上げましたように数で物を決めてしまいますので、今回のような勧告になってしまったわけでございます。
 どういうことを我々が考えているかということを申し上げますと、例えば南氷洋で一番情報がある四区と五区というのがございます。この四区と五区というのは、日本の捕鯨船団が今まで一番多く鯨をとっておる水域でございます。そこでは科学的な情報が非常に豊富でございますので、まず四区をねらって調査をやろうということでございます。そして四区を対象にして、例えば八七年から八八年の漁期、この次の漁期になりますが、ここで八百二十五頭のミンクをランダムにとります。ランダムにとるということは大変難しいことで、かなり時間と費用のかかることでございますが、あえてランダムにこれをとってみようということでございます。それからその次の八八年−八九年にも同じ四区で同じように八百二十五頭とってみよう。それからその次の二年間はこの四区では捕鯨をいたしません、採集をいたしません。それから二年たった九一年−九二年に再び四区で八百二十五頭のミンクをとってみよう。それからその次の年の九二年−九三年にもう一回八百二十五頭とろう。こういうことを繰り返しやってまいります。そうしますと、年間を通して見ますと延べにすると大体四百数十頭のミンクを間引いたことになります。
 そのくらいの標本で一体何がわかるんだという議論が一方でございます。このことについて簡単に御説明しておきたいと思います。
 八百二十五という数字が一体十分なのか、そんな数字でもって本当に外国の生物学者の言っている不確実性に打ちかてる情報が出てくるのかどうかということでございますが、私はこれは確実に出てくるというふうに考えております。統計的な数字でございますので、多ければ多いほどいいということは当たり前のことでございます。そして八百が千五百あるいは二千とふえていけばいくほどその統計的な精度が上がることはわかり切ったことでございますが、数字をふやしても精度の上がり方には限界があるわけでございます。そしてもっと大事なことは、商業捕鯨で何頭とっても正確な情報がわかりにくいというように、実は頭数そのものよりも八百二十五頭という頭数をどういうふうにしてとるかという内容の問題があるわけでございます。
 そこで、この八百二十五頭をそういう面から検討してみる必要があるわけでございますが、実は我々が問題にしておりますのは、一番知りたがっている情報は、ミンククジラが一年間にどのくらい自然に死亡してしまうかという率を知りたい。これを正確につかみますと、今まで不確実性であったいろいろな問題にかなり明確な答えを与えることができるわけです。ここのところが全く弱いところであったわけですので、どうしてもこの数字をつかみたい。それで日本が提案いたしました現在持っております計画のデザインの根底には、自然死亡率を知るということが非常に大きな基礎にというか、課題になっているわけでございます。
 ところが、この鯨の自然死亡率というのはそんなに大きくはないのです。〇・〇八六とか〇・〇七とか、そんな数字でございます。したがって数字が非常に小さいわけです。それに輪をかけて鯨の年齢組成というのは三十歳、四十歳という年齢が入ってまいりますので、年齢級に分けると非常に数が少なくなってしまうわけです。ですから、我々がこれを知りたい、情報を知りたいと思っております。その情報が出てくる相手の群の頻度というのは非常に小さくなってしまうわけです。しかし、それをカバーするために日本の科学者は幾重にも手だてを講じているわけでございます。二つの点で結ぶような調査をしないで、何点かをばらまいて、そしてそれで回帰線を引くような、そして死亡率を推定するような手法を開発しております。したがって私は、この手法を使えば八百二十五頭、先ほど申し上げました頭数をランダムに採集することによってかなりいい結果が期待できるというふうに考えております。
 この頭数についてはもう少し細かい説明が必要かと思います。我々が書いた資料もございますので、必要でございましたらばその種類のドキュメントなり解説書なりを御参考までにお読みいただけると大変幸いでございます。
 それから、最後に申し上げておかなければならないのは、我々は商業捕鯨でとるわけではございませんので、八百二十五頭をランダムにとるという、そのいかにしてランダムにとるかというのには大変時間と労力がかかります。そして調査船の数が限られております。それから予算が限られているということ、人員が限られているということ、そして南氷洋の漁期というのは非常に短いわけです。その中で果たして八百二十五の理想的なランダムのサンプル、標本がとれるかどうかというのが今問題になっていることでございます。しかし、これはとれないわけはないので、とるつもりではおりますけれども、いかにうまく効果的にそれをランダムにとるかということは、これは一年目に一〇〇%有効なサンプリングができるという確証はまずない。ですから二年目あるいは三回目にはかなりいい標本がとれるというようなかなり長期的な視野でお考えいただきたいというふうに考えているわけです。頭数が多ければ精度が上がるということはまさに確かなことです。しかし、その頭数を非常に理想的な形でとろうとするのには大変な労力が必要だ、そういう意味の限界というのをお考え願わなければいけないということでございます。
 またほかに申し述べたいことがたくさんございますが、時間が参りましたので、以上をもって参考の情報とさせていただきたいと思います。(拍手)
○玉沢委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
○玉沢委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
○安井委員 三参考人から大変貴重な御意見、ありがとうございました。
 時間が限られております関係で意を尽くすことができなかったというふうなお気持ちもあろうと思いますので、私には二十分の時間がありますので、それをひとつ皆様に提供して、足りない点についてお話をいただければと思います。
 その中で特に稲垣参考人については、大洋漁業、日本水産、極洋の捕鯨三社を統合した形で現在の共同捕鯨が設立されたわけです。それは、その間に政府が入って、商業捕鯨というものは大変な状態になっている、だから一本にした形で商業捕鯨を成功させなければいけない、そういう気持ちからの政府の指導であったと思います。したがって、今の事態に至りましても共同捕鯨はみずからの責任がさらに大きくなったのは当然でありますけれども、そこまで持ってきた政府自身も大きな責任があるのではないか、そう思います。そういう私の考え方に対するお考え方。
 また、今勧告が行われましたけれども、条約の固有の権利として調査権があるわけですから、勧告そのものにはそれを覆すだけの法的拘束力はありません。ですから、思い切ってやはり調査捕鯨をやるべきである、こういうことを私どもは主張しているわけであります。その際、何とか早目にやりさえすればいいんじゃないかというふうなことではどうも不十分なので、やはり今漁期においてスタートさせるというような積極的な気持ちがなければ成果は上がらぬのではないか。政府が態度を決めて、それからすぐに飛び出していくといっても、若干の時間的な余裕も必要ですから、だからできるだけ早く決めて、早く今漁期中に出ていくというふうなことの気持ちが私は必要ではないかと思うのですけれども、実際担当される共同捕鯨としてのお気持ちを伺いたいわけであります。
 時間が限られていますので適当に答弁の方は配分していただくことにいたしまして、それじゃ土井参考人の方には、共同捕鯨ができる段階においてかなり人員の整理が行われているわけですね。そこで大変な痛みがある上に今度の事態であります。しかも、私よくはわかりませんけれども、捕鯨乗組員は他の漁船ではなかなかいい働きができないという職能的な事情もあるというふうなことも聞くわけであります。それだけに今度の事態というのは非常に深刻ではないかと思うのですが、その辺のことを伺いたいし、職場の縮小というふうなことになった場合への対策というか、そういうようなことはどんなふうにお考えになるかということでございます。
 それから、長崎参考人の方は、詳しい資料での御説明をいただきましたのでお考えはよくわかりましたけれども、もし今すぐ日本政府が認可をして調査捕鯨をやるということになったら、その目標頭数というのは同じようなことでスタートさるべきであるというふうなお考えなのか、あるいは大変無理したスタートだからもう少し数字を何とかした方がいいというふうなあれがあるのか。これも科学的な調査ですから、私は科学的な良心に立った数字でなければならぬと思うのですが、その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○稲垣参考人 安井先生の初めの二つの御質問にお答えさせていただきたいと存じます。
 共同捕鯨という会社ができ上がりましたのは十年半前の昭和五十一年でございますが、その二年ほど前にIWCで鯨資源の新しい管理方式というものが採択されました。その時点におきまして既に捕獲枠がかなり減少を続けてまいりました。そしてまた、新しい管理方式ができますと、各水産会社が個別に南氷洋あるいは太平洋の母船式操業をやると経済的にも成り立たない、事業的にも効率的ではないということがございまして、農林大臣の指令という形で母船式部門を統合すべきであるというお話がございまして、その結果、五十一年の二月に共同捕鯨株式会社というのが設立されたわけでございます。その考え方は、ただいま先生がおっしゃいましたように、日本の伝統ある捕鯨を何とかして存続させていきたい、特に捕鯨技術というものは一度なくなると復活させるには非常に手間と経費もかかるということで、従来の規模を半分ぐらいにした形で共同捕鯨という一社に統合指令が出されたように私は承っております。その時点から、水産庁初め政府全体といたしまして、共同捕鯨の維持育成につきましては格別の御心配をいただいてきております。無論業界の立場からいえば必ずしも一〇〇%満足できるということではございませんけれども、非常に厳しい財政事情のもとで、またほかの業界とのバランスなどのこともありましたけれども、統合会社の共同捕鯨株式会社に対しましては、水産庁初め外務省、大蔵省、政府の方から格別の御心配をいただいてきております。そのお考えは現在も全く変わらないのではないかと私どもは行政当局を信頼申し上げているところでございます。
 第二点でございますが、確かに先生おっしゃいますように、条約八条で締約国がほかの外国の制約を受けることなく実行できる調査捕獲計画でございますので、堂々と本年から実施に踏み切っていただきたいというのが私ども業界の念願でございます。
 以上でございます。
○土井参考人 安井先生の質問の二つの問題について答えたいと思いますが、最初の分につきましては、約七百名、統合の段階で退職を余儀なくされました。そのうち実質的に海に就職した人間は極めてわずかであります。あとほとんどの人間が結局船に就職できずに、陸上に転職を期待いたしたわけですけれども、この陸上もなかなか思うように就職口がなくて、結局いつの間にか落ちついてしまった。追跡調査を一部やりましたけれども、実際は大概家事、農業等に落ちついたあるいは沿岸漁業等で職を求めたというのが実態でございまして、本来であれば船員としての再就職あるいは陸上にまともな職業に定着を期待するわけですけれども、大体そのとおりいかなかったということであります。
 それから、二番目の問題では、私どもとしては過去、共同捕鯨時代の減船、これは捕鯨の捕獲頭数の減少に伴って減船したわけですが、それらの中でも捕鯨船につきましては、海上保安庁の監視船あるいは水産庁の取り締まり船というような形で転用を願ったわけであります。そういう分野で今日まで細々と雇用は維持されておりますけれども、御存じのとおり、政府の予算の緊縮化でそれらの船についても将来安定的に用船されるかどうか、あるいはそこで雇用されるかどうかということについては非常に危惧するところであります。これは先生方の御配慮によって、職場確保という意味からそういった官庁の御用達という点についてはぜひ御配慮いただきたいというぐあいに思います。
○長崎参考人 安井先生の御質問にお答えいたします。
 先ほども若干触れたのでございますが、ことしから早速調査捕鯨に入るといたしました場合に頭数をどう考えればいいのかという御質問かと思います。
 これは統計的な問題でございますので、多ければ多い方がいいという言い方をすればそれで事が済むのかもしれませんが、先ほども申し上げましたように、その代表的な標本をとるということは、商業捕鯨をやって頭数をふやすなどということとはけた違いなお金のかかる、労力を要する仕事でございまして、現在許されている予算の上でつくったシナリオではミンクを四区で八百二十五頭とるというぎりぎりいっぱいの頭数で計画が組まれております。これ以上ふやすということも、船の隻数をふやせばということがあればできるのかもしれませんが、今の利用できる船の数それから研究者の数などから考えて、私としてはかなり難しい問題ではなかろうか。ただ、一つだけお願いしておきたい、どうしても先生方に御理解いただきたいのは、八百二十五を下げては困るということです。これを下げると全くシナリオが崩れてしまうわけです。シナリオが崩れると、先ほど申し上げましたように、不確実性に対する強力な答えがどうしても出てこないということでございますので、下の方に下げていくということはなるべくないような御努力を願いたいというふうに考えております。
○安井委員 ちょっと時間がおくれているようですから、これで次へ譲ります。
○玉沢委員長 吉浦忠治君。
○吉浦委員 時間がずれ込んでいるようでございますから、なるべく簡潔にお答えをいただければと思います。
 最初に稲垣参考人、大変お忙しいところを本当にありがとうございました。貴重な御意見をいただきまして、大変感謝申し上げる次第でございます。重複する面もあろうと思いますけれども、政党が違いますものですから少しばかりお尋ねをいたしておきたいと思います。
 このたびの調査捕鯨の計画でございますけれども、IWC科学委員会が疑念を解消しない限りこの実施は認めないというふうないわゆる勧告決議が採択されて、事実上の中止に迫る内容であるわけでございますが、本来この調査捕鯨は各国の主張に基づいて実施できる旨の条文が明記されているわけでありますから、これは私は、個人的な見解かもしれませんけれども、条約に対する重大な違反行為であり、また無効であると思うわけであります。したがいまして、この後この委員会で質疑を行いますけれども、政府は諸般の事情を考慮されて調査捕鯨を断念するようなことがあれば重大な結果を招きかねないと私は思うわけでありますが、今漁期出漁できなければ来漁期できるという保証は全くないわけでありまして、こういう点で、今漁期やらないということは永久にやらないということとイコールではないかと思うわけであります。したがいまして、この点どのような見解を持っておられるのか、また調査捕鯨ができない場合実態的にどんな影響が出るとお考えなのか、その二点、簡潔で結構でございますから。
○稲垣参考人 吉浦先生の御質問にお答え申し上げます。
 先生がおっしゃいました勧告決議についての法的な解釈でございますが、学者によりまして、またいろいろな立場でいろいろな解釈があろうかと存じますが、私個人といたしましては、吉浦先生がおっしゃったことと全く同意見でございます。
 第二点でございますが、調査捕鯨をもしことしやらないで来年になったらどういうことになるかという御質問でございますが、私どもは、ことし確実にやっていただけるものと確信しております。先生おっしゃるように、もしことしやれませんと来年のIWCで認められる、あるいはやれる事態になるという可能性は九九%ないと判断してよろしいかと私ども考えております。
 以上でございます。
○吉浦委員 もう一点だけ稲垣先生にお尋ねをいたしますが、商業捕鯨については我が国もIWCのモラトリアムの決定を受け入れておりますし、一九九〇年までは包括的見直しを行うことになっているわけで、調査捕鯨や沿岸の生存捕鯨などができないような状況のもとで商業捕鯨が再開できるという期待を持っていらっしゃるのかどうか、この点お答えをいただきたい。
○稲垣参考人 お答えいたします。
 条約上は一九九〇年までに資源の見直しをいたしまして、ゼロでない捕獲枠の決定を行うと定められております。法律的には捕鯨再開の可能性が明記されているわけでございます。
 事実上そういう方向になるかどうかというお尋ねかと存じますが、少なくとも現在調査捕鯨、調査捕獲の対象となっております南氷洋のミンク資源につきましては、資源の再評価によって捕獲が再開できるだけの資源状態になっているものと私ども確信しておりますし、また、この調査捕鯨がどういうふうに行われるかまだ最終的にはお決めいただいておりませんが、いわゆる臥薪嘗胆の気持ちで将来の事態に備える覚悟をいたしております。
○吉浦委員 土井参考人にもお尋ねをいたしたいと思っておりましたけれども、かなり細かくその実態をお話しいただきましたので、大変強く感銘をいたしました。
 長崎参考人にお尋ねをいたしたいと思います。
 学問的な立場でかなり御披露いただきましたが、IWCの使命というものは、国際捕鯨条約に基づいて鯨族の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展を図ることにある、こうしているわけでありますが、今やIWCは捕鯨産業の安楽死や餓死を図る機関となっていはしないかと私は思うわけです。したがいまして、捕鯨国の主張に基づいて調査捕鯨さえできないというふうなことになりますと、先ほどお話もいただきましたけれども、今後学問的にはどのような事態に相なるという見解を持っていらっしゃるのかどうか。
○長崎参考人 これから商業捕鯨もなくなる、それから調査捕鯨も行わないということになりますと、少なくともIWCが、つまり捕鯨委員会が意図しているような、ただいま先生がおっしゃった資源の有効な管理と利用、利用と保存という本来の条約の趣旨というのは全く生かされないだろう、そして新しい情報、科学的な情報というのはもうほとんどといっていいぐらい入ってこないだろう。つまり、我々と鯨の生活の上での結びつきというのはそういう状態が続く限りはもう切れてしまうだろうというふうに考えております。
○吉浦委員 あと二点ばかりちょっと短い時間でお尋ねをいたしておきたいのですが、現在捕鯨が禁止されているいわゆる鯨類についてはその種々の資源状況について細かな実態が把握されておるのかどうか、この点が第一点。
 もう一つは、先ほども御説明ございましたように、ミンククジラ八百二十五頭等の数字について、あるいはマッコウクジラ五十頭というような数字が出ておりますけれども、マスコミ等の社説で出ておるように、ミンククジラ等については二十六万頭とか三十万頭という、先ほども御説明がございましたが、大きな数字が述べられておりまして、その点私は大した影響じゃないのじゃないかと思うわけでありますけれども、どのような御意見をお持ちなのか、この二点。
○長崎参考人 第一点でございますけれども、現在捕鯨の対象になっていない鯨というのは世界じゅうたくさんございますが、まさにとらなければそれはそれなりにふえていっているはずでございます。そして、南氷洋であの鯨がかなり見え始めたよという情報はぽつんぽつんと入ってはまいりますが、しかし、それは我々は何もそのために科学的な調査をきちんと組んでやっているわけでございませんので、責任のあるような情報というのはなかなか入ってこない、つまり調査を行わなければその程度の情報しか入ってこないということになります。したがって仮に、現在既にふえている鯨がございます、しかしそれが利用できる状態になっているのか、あるいは将来いつになったら利用できるのかというきちんとした情報をとるような調査というのは現在のところ組まれていないわけでございます。ましてやこれから調査捕鯨もなくなってしまうということになりますと、これはまさに絶望的だということになります。
 それから二番目のミンククジラ八百二十五頭を四区でとるという計画でございますが、これは二十六万、三十万という数字が出ております。これは南氷洋全体の二十七フィート以上の、つまり捕獲の対象になるような鯨の頭数でございます。しかし、我々が今ねらっているのは、そんな大きさをねらわないわけで、ランダムにとるわけですから、ほぼ全体の資源に対して八百二十五頭、年間に対して四百五十頭程度の間引きをするわけでございますが、それは例えば四区の場合には全体の資源量が大体六万か七万ぐらいに推定されております。したがって六万か七万に対して年間四百頭ぐらいの間引きになるというのはこれは全く問題にならない。ですから、調査捕鯨をやることによって資源が悪化するという事態は我々は全く考えておりません。
○吉浦委員 どうもありがとうございました。
○玉沢委員長 神田厚君。
○神田委員 参考人の皆さん方には大変貴重な御意見をありがとうございました。非常に限られた時間でありますので、簡単に質問をさせていただきます。
 まず最初に稲垣参考人に。先ほどの質問とちょっと重複しがちでありますが、今漁期にもしも調査捕鯨を実施をしないと、こういう意見もあるわけでありますが、その場合はいわゆる捕鯨船とかそこに従事している船員とかそういうものを一体維持できるような可能性があるのかどうか、また一年後の実施について可能性があるというふうに考えるのかどうかという点が第一点であります。
 第二点は、捕鯨が日本の伝統と文化に深く根づいている、これは私ども農林水産委員会が捕鯨の基地太地等を調査いたしましてよく理解をしているつもりでありますけれども、この点について実例を挙げて、ごく簡単で結構でありますが、御説明をいただきたい。
 さらに三番目には、アメリカの北洋漁業の実態、これは土井参考人からもお話がございましたが、漁獲割り当て等で日本に対しまして非常に厳しい措置がとられ続けております。これらについてどのような御見解をお持ちになっているのか、この三点について簡単に御回答をいただきたいと思います。
○稲垣参考人 お答え申し上げます。
 私どもといたしましては、本年の漁期、つまりことしの冬、南氷洋は逆に夏になるわけでございますが、ことしから実施していただくようにお願いしておりますし、また政府、国会の諸先生方のお力によってそれが実現できるものと確信いたしておりますが、仮定の御質問としてお答え申し上げますれば、一年間何もしないで船と人間を抱えているということは非常に大きなあえてむだな金と申しますか、金を使わざるを得なくなると思っております。計算したことはございませんが、我々の小さな業界、小さな会社で十億あるいは十五億くらいの金をむだに使わざるを得ないのではないか。それだけの金は業界にも会社にもございませんので、政府の方で丸々持っていただけるならば我慢して待たざるを得ないということは仮定の問題としては考えられるのではないかと思っております。
 第二の点でございますが、捕鯨文化を具体的に示せというお尋ねでございますが、古い話をすれば縄文時代の貝塚とか千二百年前の古事記、日本書紀の話まで持ち出さなければならぬわけでございますが、それはさておきまして、現在のことでちょっと申し上げたいと思いますが、現在水産庁には課もたくさんありますし、班あるいは係がどのくらいあるかよく知りませんが、戸とか二百くらいあるのじゃないかと思いますが、この中で特定の業種の名前のついた班といたしましては捕鯨班とかつおまぐろ班の二つじゃないかなと思っております。イワシ班とかウナギ係とかいうのは水産庁にはないのじゃないかと思っております。それと捕鯨班というのは漢字で書けます。カツオ・マグロというのは平仮名で書いてございます。これは先生御承知かと存じますが、現在文部省で定めておりますいわゆる常用漢字というのが約二千近くございます。そして、いわゆる魚をあらわす漢字というのも大きな漢和辞典で勘定してみますと二百以上あるわけでございますが、その二百以上ある魚をあらわす漢字の中で二千手近い常用漢字に入っている漢字は鯨がオンリーワン、唯一の例でございます。そのことから見ましても、鯨あるいは捕鯨が日本の国民一般に浸透している、全部とは申しませんが、一つの証左ではないかと考えております。
○土井参考人 北洋のことしの割り当ては六万トンであります。全く寂しい割り当てであります。来年はゼロになる見込みであります。さらに一つ付言しますと、一九九四年にはベーリング海の公海におけるサケ・マスの漁獲もできなくなるというような見通しが今日のアメリカの対日漁業政策であります。
 以上です。
○神田委員 そこで、一つは日本の水産外交、特にアメリカを中心とした、あるいは捕鯨問題、現在やっておりますが、それについてどういう御意見をお持ちであるのか率直にお聞かせをいただきたいことが第一点。
 第二点は、特に海員組合の組合長さんといたしまして乗務員の問題、漁船員の問題があるわけでありますが、捕鯨の歴史が撤退に撤退を重ねている状況の中で多くの乗組員が捕鯨船からおりたわけでありますが、それらの人たちが現在どのような生活を送っているのか。また、捕鯨船以外のいわゆる海の仲間たちがこの捕鯨問題についてどういうふうな考え方を持っているのか。そんな点についてお聞かせいただきたいと思います。
○土井参考人 最初の点でございますが、率直に申し上げて、我が国の漁業外交は精いっぱい努力はしておるけれども、国の外交として極めて弱い、アメリカに対しては特に弱いということを申し上げたいと思います。いろいろ事情がある、あるいは背景があるということは理解しながらも、日本の立場あるいは日本の国益というような面について、一省庁の問題ではなくて国として、あるいはそれをバックアップする国民もそうですけれども、全体としての外交面の弱さということが特に漁業の分野等においては痛感をさせられております。したがって、これからは漁業の問題につきましても、政府を挙げた取り組み、そして強力な情報活動、あるいは交渉に臨んでの強い姿勢というようなものを期待をいたしたい。我々はそれを全面的にバックアップする。これは単に海員組合とか海の問題だけではありません。国民は全面的にそれをバックアップするであろうというぐらいの確信を持っております。
 さらに二番目の問題として、漁船乗組員の特性として、非常に特殊な技術者であります、あるいは技能を持っております。魚をとるとか、あるいはそのために網を引っ張るとか釣りをするとか、こういった技能とか技術というものは、他の商船とか港内の船舶等々同じ海上舞台にあっても、他の船種の船には就労状態としてなかなかフィットしないという点がございます。同様に、陸上に転職をするというような場合、やはり長い間海上で労働をしておる人たちは足腰が弱い。同時にまた、陸上の社会的な習慣あるいはいろいろな工場等におけるマニュアル、いろいろな問題について承知しておりません。したがって、陸上に職場を求めると言っても簡単ではございません。したがって、現在、漁臨法等々、あるいはその他の法律、行政措置によりまして、陸上の職業安定所との協力とかあるいは諸団体の支援を得て陸上に転職する場合には、陸転教育とか、あるいは特殊な技能の習得講習だとかいろいろな道を開いております。
 しかしながら、それもなかなか応募者が少ない。その一番の大きな問題は、漁船乗組員を中心とする船員の場合には、御存じのとおり、産業のない地方の海岸あるいは山、そういうところから出身している人が多いわけであります。したがって、そういう人たちが一たん離職をすると、自分の生まれ故郷に帰りましてもそこで働くような産業がないというのが実態でございます。したがって、どうしても都市とか都会に出てきて工場等に働く、あるいは第三次産業に働くということになるわけでございますが、そのための前段的な教育研修がどうしても必要である、これについては国の援助がやはり絶対的な要件だろうというぐあいに考えております。
 以上です。
○神田委員 長崎参考人に質問を残しまして失礼でありますが、時間が来ましたので終わります。
○玉沢委員長 藤田スミ君。
○藤田委員 参考人の皆さん、きょうは本当に御苦労さまでございます。
 我が党は、条約の第八条に基づく権利として調査捕鯨の実施を政府は決断するべきであり、IWCが初心に返って、国際反捕鯨委員会ではなく国際捕鯨委員会として民主的に運営されるよう、政府がIWCからの脱退も辞さない覚悟で努力をするべきであるという立場に立っております。
 稲垣参考人もおっしゃいましたが、今のアメリカの行為のもとでは正義と公正は実現しない、私も同感であります。アメリカのこのような不当な圧力、強引な姿勢はもちろん問題ですが、しかしもう一つの問題は、政府の弱腰、その責任にあると考えています。
 モラトリアムの異議申し立てを撤回した理由に漁獲の割り当て量を確保するためとしておりましたけれども、結果は、割り当て量も百万トンから七万トンに減らされ、魚を人質に鯨で譲歩したけれども、その魚も締め出される結果になったわけであります。我が党は国会で、捕鯨業を含む日本漁業へのアメリカの不当な規制に対しては水産物輸入の制限・禁止で対抗するという対米対抗法案を共同提案しておりますが、これも自民党の反対でうやむやになっております。したがって、捕鯨に展望を開くためにも、こうした自民党政府の対米追随の弱腰外交を自主独立の積極外交に転換させることが急務になっていると考えています。
 そこでお伺いをいたしますが、一点は長崎参考人に、アメリカが米国エスキモーに三十五頭の捕獲を認められているというホッキョククジラ、これは資源評価という点からどう考えていいのか、お答えをいただきたいと思います。
 二つ目は稲垣参考人にお伺いをいたしますが、今後、サケ、マス、イカ、マグロなどの刺し網にまじってとられる鯨類の問題をIWCの作業部会が取り上げ、これらの漁業の禁漁問題が起こるおそれが強まるなど、鯨での屈服が我が国の遠洋漁業全体にさらに否定的な影響をもたらすことになりはしないかという意見がありますけれども、この点どうお考えか、お答えをいただきたいと思います。
 最後に土井参考人にお伺いをいたしますが、捕鯨に展望を開くためにずばり政府に何を求められるか。
 この三点お願いいたします。
○長崎参考人 お答えいたします。
 エスキモーが利用しておりますホッキョククジラ、英語でボウヘッドと言うのでございますけれども、来年から、二十六頭から三十五頭にふえたわけでございます。このボウヘッドは、実は一回極端に減ってしまいまして、現在でも捕鯨委員会の中で保護資源というレッテルを張っているその鯨種でございます。ですから、資源状態はまだ完全に回復していない。したがって、商業的な感覚でいえば当然とってはいけない鯨でございます。ただエスキモーという、原住民捕鯨という何かわけのわからぬ特別な意味合いの上で、三十五頭というのが何となく許されてきているという感じでございます。資源的には、やはり依然として危ない保護資源でございます。
○稲垣参考人 先生の最後の方の御質問で、鯨問題がこれからサケ・マスのイルカ混獲の問題とか、あるいはほかのマリーンママル、海産哺乳動物の保護の問題にも波及していくのではないかというお尋ねでございますが、事実そういう方向に動いてきております。私ども直接の担当といいますか関係する業界ではございませんが、いろいろな新聞報道あるいはお役所の方のお話を聞きますと、アメリカはまず捕鯨をつぶし、それからサケ・マスにいろいろクレームをつけ、それからさらにそれ以外のところすべて、動物愛護の基本の、偏見といいますかに基づいて、日本初めアメリカの価値観に合しない諸外国を責め立ててくるのではないかということを心配しておりますが、我々といたしましては、どこかでやはり歯どめをかけなければならないのではないかと思います。その点、政府の方もいろいろ御苦労なさっているかと思います。
 外交についてどうこう言うことは、我々国民の立場ではわかりにくい水面下のいろいろな問題がおありのようなので判断する能力はございません。
 以上でございます。
○土井参考人 捕鯨に何を展望を求めるかという点について、三つ答えたいと思います。
 一つは、結論を申し上げると、調査捕鯨と生存捕鯨を必ず実行してもらうということであります。
 二番目には、それによって失業者を全然出さないということであります。
 三番目は、もしアメリカが我が国の調査捕鯨及び生存捕鯨実行に当たってさらに報復措置を講ずるようなことが考えられるならば、我が国としても、既に皆さん方御検討なさっておると思いますが、対抗立法をとっていただきたい。これは伝家の宝刀として、常に抜くものではありませんが必要な場合には抜けるだけの宝刀を携える対抗立法をぜひ考えてほしい。
 以上、三点であります。
○藤田委員 時間が参りましたので、これで終わります。
 ありがとうございました。
○玉沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。
 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼を申し上げます。
 参考人各位には御退席いただいて結構でございます。
    ―――――――――――――
○玉沢委員長 引き続き、質疑を続行いたします。谷垣禎一君。
○谷垣委員 捕鯨問題について伺いたいと存じます。
 日本国民であるならば、そのだれもが捕鯨問題についてはそれぞれいろいろなかかわりがあるのではないかと存じますが、私自身も大変個人的な経験になりますが、昭和二十年代のいつごろでしたでしょうか、まだ日本が占領下にありますときに、どこかの桟橋へ行きまして捕鯨船団を、日の丸の旗を振ってその出港を見送った記憶がございます。今から考えてみますと、私をそこに連れていった私の父でございますが、やはり四つの島に閉じ込められた、逼ませざるを得なかったあの当時の日本にとって、南氷洋まで鯨をとりにいくというのは日本にとって本当に希望の象徴だったのだな、そういうことを子供に見せようと思ったのじゃないか、そんな気がいたすわけでございます。そしてもちろん食糧難の時代でございましたから、我々は鯨というものを本当に希望を持って、そして学校でもいかにそれを高度に利用するかということを教えられて育ったわけでございます。
 そういう個人的な経験からいたしますと、今日本の捕鯨というものがまさに断崖絶壁に追い詰められているときにこの問題で御質問させていただくということに、感無量のものを覚えるわけでございます。
 そこで、ことしの国際捕鯨委員会でございますけれども、会議に出席された方々の報告を伺いますと、ホスト国の農業食糧大臣が、開会式のあいさつでも反捕鯨の主張を述べられるとか、最初から反捕鯨色が極めて強い会議であったというふうに聞いております。またその運営も、アメリカを初めとする十六カ国が一丸となって、論理の力というよりも数の力でもって捕鯨の完全禁止の方向へ押し切ったということで、国際会議としては全く異常なものであった、このように聞いているわけであります。そしてその結果として、日本が提出しておりました調査捕鯨計画の実施延期を求める決議が採択されてしまった。また、生存捕鯨については、ワーキンググループをつくってさらに検討することとなったわけであります。
 しかし、調査捕鯨は、もう申すまでもありませんけれども、IWC条約第八条に基づく締約国の権利でありますから、採択されました勧告決議は条約を無視する不当なものであると考えざるを得ないわけであります。また、小型捕鯨、生存捕鯨への移行というのは、斉藤コミッショナーの表現をかりますとつめ一本でぶら下がった状態でということでありまして、まことに危うい状況でございます。
 言うまでもありませんけれども、この捕鯨の問題は、単に捕鯨産業一つの問題だけではありません。私どもは長い間鯨というものを貴重な食料としてまいりまして、それでそういうものを食べていいのかどうかというような他民族の価値観を力で押しつけられるということに対しましては、日本文化という点からも私どもは極めて強い憤りを持つわけであります。また、理屈でどうしても首肯することができない理不尽な要求に対しては断固たる姿勢を示すということ、これは外交の基本姿勢にかかわる問題であると思います。
 このようなことで、調査捕鯨を行うかどうかということ自体はそれは小さな問題だという御意見もあるかもしれません。しかし、国としての生き方を問われているような局面に立っているのではないか。そういう意味で、まさしく、すぐれて政治の問題ではなかろうかと私は考えております。このような事の性格から、私ども国会議員は、この問題を行政に任せ切りにしてよいということではない、政治の責任でもって本問題の方向づけをしていかなければならない、このように考えるものであります。
 このような基本的な認識を持ちましてお伺いをしたいわけでありますが、まずIWC委員会のあり方でございます。この委員会には一九八〇年ごろから多くの反捕鯨国が加盟をいたしまして、委員会の議論も科学的とはとても言えない非科学的な、国際機関として極めて異常なものとなってまいりまして、先ほど述べましたようにことしの委員会はさらにそのような反捕鯨的な主張が堂々とかつ巧妙に行われたわけであります。
 そこで、大臣にお伺いしたいわけでありますが、この国際会議としてのIWC委員会の性格、これをどのようにお考えなのか、また、我が国から見て現在のIWC委員会というものにどのような意義を認めるのか、お伺いをいたしたいと存じます。
○加藤国務大臣 谷垣委員の冒頭からの御意見、私は感銘深く承りました。あなたのお父上の谷垣先生は大変教育に熱心であり、また実践的にこれを行われておりました。私もお父上が文部大臣のときの大臣折衝に立ち会うた一人でございます。そのとき、涙をこぼすような場面もあったことを今あなたの御質問を承って想起いたしたわけでございます。そういう中で捕鯨に対するお父さんのあなたに対する実地教育といいますか、そういうことがあったのだなと感銘深く承ったところでございます。
 そこで、御質問の趣旨のことしのIWCのあり方あるいは大臣はどう考えておるのか、単に行政だけではなくして、政治として考えなくてはならないという思いを込めての御質問でございます。
 端的に申させていただきまして、ことしのIWCは、鯨資源の保存と利用という条約の目的を逸脱して鯨の保護のみに偏った決定を行っていることは極めて遺憾である、このように考えております。したがいまして、我が国としましては、従来からかかるIWCの活動の是正に努めているところでありますが、今後ともその正常化のため関係諸国に積極的に働きかけてまいる所存でございます。そして、我が国の長い文化、伝統、食生活、あらゆる問題について我が国の立場というものを強力に訴えていきたいと考えております。
○谷垣委員 今大臣から、今のIWCのあり方が条約目的から逸脱して極めて遺憾であるという御認識を示されました。今までこのIWCあるいは外交面でいかなる努力をされ、またいかなる努力が足りなかったのか、あるいは宣伝面において欠けるところがなかったのか、そういうような面につきましても本当はこの機会に解明をいたしておきたいわけでありますけれども、時間がありませんのでこの問題を省略いたしまして、端的に、捕鯨を継続しなければならぬ、その御決断を私は大臣に促したいわけでございます。
 今の状況というのは、長い伝統を持つ捕鯨と鯨を食べる習慣を放棄するか否か、決断のときに来ているのではないかと思うのです。調査捕鯨に関しましてはもう少し延期したらどうか、あるいは調査捕鯨の継続については慎重に考えるべきだ、こういう考え方も一部あるやに聞いております。しかし、先ほどの同僚議員と参考人との質疑を伺っておりましても、今の日本の捕鯨体制というものが、ことし調査捕鯨を実施しなかったならばもうやっていけなくなるということは明らかなのではないかと思うのです。それで、捕鯨を続けていくためには、ことしどうしても調査捕鯨をやらなければならない。大方の日本人は、牛は殺してもよいけれども鯨はだめだというような理屈にはこっけいなものを感じておます。それは世界の宗教の中には、例えばヒンズー教は牛を食べない、あるいはイスラム教は豚を食べない、大宗教がそういう戒律を持っているわけでありますけれども、一方、豚を食べる、牛肉を食べる文明、国民というものが存在しているわけでありますから、鯨を食べたらおかしいという理屈は全く納得できない。それが野蛮人だということは、私どもからすると非常に人種差別的な発言ではないかという憤りを強く覚えるわけであります。また、自国の領海あるいは二百海里水域で、自国の資源である鯨をとることについてまで云々されるのはどうも納得できないというのが国民の大多数の感覚ではないかと私は思うのです。こういう状況の中で、調査捕鯨というのは八条の権利ですから、外国の圧力に屈して捕鯨をやめてしまうということは国民の不満を買う、これは明らかでありますけれども、単に不満を買うだけではなしに屈辱感や無力感を植えつけて、政府の外交姿勢に対して国民が信をおかなくなるということにつながってくるのではないかと思うのです。
 それからまた、反捕鯨国は何を言っているのか、私もいろいろ勉強してみましたけれども、どうも理屈が通らない。ここで捕鯨を放棄してしまうと他の遠洋漁業、先ほどからもいろいろ御意見がございましたけれども、同じような運命をたどるのじゃないか、あるいは農産物交渉などにも悪い影響を与えるのじゃないか。我々が外国と交渉をいたしますときに、もちろん国際協調も大事なことでありますけれども、それと同時に、やはり主張すべき基本を見失ってはいけない。国際交渉の基本が数の力だけであるというようなことでは私どもは納得できないわけでありまして、私どもは条約と科学と論理にのっとって、それから自分たちの文化的伝統を背景として議論を展開していかなければならないのではないか、このように思います。
 こういうふうに考えますときに、条約上の権利である調査捕鯨、私どもの調査計画というのは、先ほどの参考人のお話にもいろいろありましたけれども、これは十分な科学的な調査、科学的な検討のもとに立てた計画でございまして、私どもが自信を持って主張し得るものだと私は信じております。ですから、調査捕鯨はいろいろの困難があろうと思いますけれども、今度の漁期から毅然として実施すべきではないかと考えますが、大臣いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今日の日本の置かれておる立場、ある面では国際国家日本ということ、そしてまた国際的に協調し協力するという立場はありますけれども、そういう中におきましても我が国の主張すべき点は断固としてこれを主張し、協調すべきものはするという日本の置かれておる大きな問題点はあるわけでございます。もしそういう一連の姿勢において、国民の皆さん方が無力感や失望感を持たれることになっては大変なことであるという一つの基本的考え方をまず申させていただきます。
 それから調査捕鯨そのものに関しましては、先ほど申し上げましたが、我が国としては条約の趣旨からして、延期勧告決議がなされたからといって条約第八条に基づく捕獲調査を断念するわけにはまいらないと考えております。しかし、冒頭申し上げましたが、我が国はこの調査の実施に当たっては無用な国際的な非難を助長することのないような配慮をすることも必要でございまして、そういうもろもろの問題を考えまして、さらに慎重な検討を重ねてまいりたいと考えておるところでございます。
○谷垣委員 今大臣から条約上の権利である調査捕鯨を断念するわけにはいかないという認識を示していただきまして、私は強くその立場を貫いていただきたいと思います。慎重な御検討をなさるのはもちろん結構でありますけれども、これはゆっくりやっておりますと今度の漁期に間に合わない。今度の漁期に間に合わないということは、先ほども申しましたように調査捕鯨を断念する道につながるわけでありますから、早い機会の御決断をお願いしたいと思うのです。
 そしてまた、ことしの漁期の母船式捕鯨の捕獲枠というのは千九百四十一頭でありますので、今私が申しましたように調査捕鯨はぜひともやっていただかなければなりませんが、これは計画どおり実施をするとしても、現在の母船一隻、それからキャッチキーボード四隻、従業者六百人という経営体制は縮小しなければならないわけです。この余剰なキャッチャーボートとかこういったものを政府の監視船として用船するとか、あるいは従業者の転職に政府としてもできる限り手助けをしていかなければならないと思います。また鯨類研究所を設立するというような構想もお持ちのようでありますけれども、これについては特別立法等も含めて税制上の措置などを早急に検討される必要があると思うのです。これらについて水産庁としてのお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
○佐竹政府委員 商業捕鯨の中断は、先生御指摘のとおり当該捕鯨業に依存する漁業者、それからその従事者等に少なからぬ影響を与えるものというふうに認識しているわけでございます。商業捕鯨の中断により現実に損失をこうむる漁業者、乗組員等に対する対策につきましては、その実態を見きわめて、必要に応じて関係省庁とも相談の上遺憾のないようにしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
 さらに、新鯨類研究所の設立を調査捕獲の実施に当たっては私ども予定しているわけでございますが、これに対しては必要な調査経費に対し援助、助成を行うための予算を要求し、これは措置されているわけでございます。
 さらにまた、税制上の援助措置等についても今後さらに関係省庁とも協議し、検討してまいりたい、かように考えております。
○谷垣委員 もう時間が余りありませんので、小型捕鯨業については生存捕鯨への移行が認められるとしても、四月からIWCの開かれる六月までは操業を中断しなければならないことになりますから、その経営体あるいは従事者の救済措置をしっかりやっていただきたい。
 それから、生存捕鯨の移行のためにどういう対策を講ずるのかお聞きしたいのですが、時間がありませんので、これは対策をしっかりやっていただくことをお願いしておきます。
 そして最後に大臣にお伺いしたいのですけれども、私は今までいろんな面から考えて、調査捕鯨は今度の漁期から必ず実施すべきである、こういうふうに述べてまいりました。しかし、これによって犠牲者が出てもよいなどというつもりはございません。自民党といたしましてもあらゆる場合を考えて、これは責任を持って対処すべきだと考えていると思いますが、とにかく独善的なPM法等の圧力、これは漁業関係者だけでなしに、日本国民の中に対米不信の意識を根づかせていく、こういう非常にまずい結果になると私は憂慮しております。これは日米の友好にとって決して好ましい状況ではございませんので、日米間の政治の問題として、このPM法が発動されないように米国政府と折衝していく必要があると思うのです。新聞等の報道によりますと、これは確実かどうかわかりませんけれども、既にそういうことを検討されているような報道がありますけれども、大臣、この問題を閣議でもきちっとお取り上げいただいて、日本政府の意向として米国にきちっと伝えていただく、こういうお考えがあるのかどうか、お考えについてお伺いいたしたいと存じます。
○加藤国務大臣 一昨日、アメリカのボルドリッジ商務長官がああいう事故で亡くなられました。私はワシントン筋へ三カ所電話をしまして、お悔やみとそれからいろいろな情報もとったりなんかいたしたわけでございますけれども、ボルドリッジ長官が亡くなられたということは日本にとってもある面では大変大きなマイナスだな、こういう感じを強く持ったわけでございます。そのときにもいろいろな話をいたしておきましたが、我々が調査を実施した場合に米国が制裁法の発動を行うということは大変懸念されておるところでございます。そのような事態は、漁業関係はもとより、今谷垣委員もおっしゃいましたが、日米両国関係全般にとっても極めて不幸なことになるわけでございまして、かかる事態を招来しないようにあらゆる方法を通じて努めてまいる所存でございます。
○谷垣委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、調査捕鯨、ぜひとも断行していただきますように強く要望して終わらせていただきます。ありがとうございました。
○玉沢委員長 東力君。
○東委員 質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 日本は世界第二位の経済大国、世界第一位の金持ち国と言われておりますけれども、農業、林業、漁業の従事者にとってはその恩恵が十分与えられていると言いがたいところがあります。その理由の一つに、アメリカを中心とする外圧があるわけでありますが、加藤大臣は、リン農務長官、ヤイター通商代表らと堂々と渡り合って言いたいことを主張してくださる。非常に頼もしい限りでありますが、その実績に対しまして評価をしつつ、また期待をいたしまして、次の四点につきまして大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。
 今谷垣先生からも詳しく言われましたけれども、第三十九回IWC総会には私も玉沢先生、菊池先生らと出席をいたしました。
 今日、世界の民族が平和と繁栄を享受するためには、それぞれの民族の文化あるいは歴史、食生活の伝統というものを尊敬し合って生きていかなければならない。しかも、IWCの会議におきましては、スチュワート議長も、コンセンサスを大事にしながら決めていきたいと言っていた。にもかかわらず、最後にはばたばたっとすべて多数決で諸案件を片づけてしまうといういわばペテンのような会議に終わりまして、唖然としたわけでございます。
 そこで、第一点でありますけれども、私たちは、国民の念願であり、またアイスランド等の捕鯨国が勇敢に闘っている中で、堂々とIWC八条にのっとって、世界じゅうの多くの科学者から既に支持を得ている調査捕鯨につきまして、八百七十頭という計画は長い期間、多くのエネルギーと経費を使って組み立てられたわけでありますけれども、これに対しまして大臣は、先ほど断念するわけにはいかないと言われた。そこで、断念するわけにはいかないということは、八条に基づいて特別許可書を与えていただくというふうに解釈いたしたいと思いますが、いかがでありますか。
○加藤国務大臣 そのとおりでございますけれども、先ほど申し上げましたように、それをどういう方法でやっていくかということについて、国際的に日本に対する非難が集中しないような方法を講じてやっていくということを申させていただいたわけでございます。
○東委員 IWC第八条には、この条約のいかなる規定にかかわらずできるとありますから、遵法的な行動でありますし、少々摩擦が起こっても我々が泣き寝入りしないように断固としてやっていただきたいと思います。
 第二点でありますけれども、ニュージーランド、オーストラリアは我が国が輸入するからやっていけているような国でありますが、本当にひきょうな態度に終始した。こういう国に対してふだんからの二カ国交渉等において断固制裁をやって、輸入ストップをやってでも外交的なレバレージ、つまりてこを活用してIWCに臨んでいただきたいと考えるわけでありますが、この点ぜひやっていただきたいと思うのですが、大臣の御意見を聞かしていただきたいと思います。
○加藤国務大臣 この一月、私は豪州、ニュージーランドにも参りまして、それぞれの国の総理、外務大臣、農林水産担当大臣とも協議をやってきたわけでございますが、制裁という言葉は不穏当でございますし、そこら辺誠意を持って話をしたわけでございますけれども、今の時点では東委員のおっしゃるようなことは種々困難な問題があるのではないかとも考えております。諸外国との相互依存関係というものを踏まえてあらゆる方向から努力し、特に豪州、ニュージーランドに対しても、今回の態度はまことに残念に思ったわけでありますが、今後あらゆる方向からこういう国にも理解をしていただくように努めてまいらなくてはならぬと考えております。
○東委員 日ごろからの交渉、あらゆるときに、制裁は不適当という言葉がありましたけれども、我々はたくさんいろいろな形で制裁されておるわけでありますから、堂々とやれるときにはふだんからやっていただきたい。それに関連しまして、アイスランドが非常に激しくアメリカと交渉に入りますので制裁されるかもしれない。そういうときには、アメリカに買ってもらえない魚介類につきまして日本が買う、そういった配慮もしていただけたらありがたいと思います。
 第三点でありますけれども、こういうことで全面的に商業捕鯨が禁止され、特に沿岸捕鯨もできなくなってくるということになりますと、ふだんから赤字体質の構造的不況の業界におきまして、従業員が退職するときの退職金の確保あるいは関連の零細業者の損失補償とか転換資金、こういった財政、金融、税制の措置が本当に真剣に必要となってくるわけでありますが、何百年もとってきた鯨、捕鯨、それがあすからできなくなるということになりますと、政府の温かい措置をぜひ大臣にお願いいたしたいわけでございます。この点につきましてお言葉をちょうだいいたしたいと思います。
○加藤国務大臣 昨年も北洋漁業の減船問題で関係省庁と火花を散らし、関係者の皆さん方の救済対策に農林水産省としましては全力投球をしたわけでございます。したがいまして、今の御質問の趣旨に対しましても、まだやろうとしておるときでございますから、もうできなくなったときのことを余りお答えするのはどうかと思うわけでございますが、ないことをこいねがっておりますけれども、そういうケースになった場合には全力を傾注して御期待に沿うようにいたしたいと考えております。
○東委員 少し大臣が誤解されたと思うのですが、私は調査捕鯨は必ずやってくださいということを言っておりまして、あきらめておるわけではありませんで、沿岸捕鯨の一部あるいは商業捕鯨等ができなくなったことでありますから、そういうものについては適切な措置を十二分にとっていただきたいということでありますので、その趣旨はわかっていただけると思います。
 最後でありますけれども、鯨だけではなくて、米、ミカンあるいは牛肉、林業につきまして、農、林、漁業、大臣の担当されている所掌というのは、冒頭にも申し上げましたように、外圧の中で断固たる決意が政府に必要であるのにもかかわらず、水産庁は少し弱かったのじゃないかなというような感じがいたしますし、また外務省等を十二分に使った総合的な外交的レバレージというのか、ふだんから我が国の農林漁業を守るという点で、今後も強い交渉が必要です。そしてある程度摩擦が起こったってしようがないじゃないですか、向こうがどんどんそういうことを言ってくるわけで、摩擦が起こらないようにしようと思ったら何も言わなければ全然起こらないわけでありますけれども、この点につきまして大臣の、私たちが頼もしいと思うようなお言葉をぜひ聞かせていただきたいと思うわけでございます。
○加藤国務大臣 我が国は世界最大の農産物の輸入国であり、そしてまた世界の農産物貿易に最大の貢献をしておる国であります。また、アメリカの世界農産物貿易におけるシェアは年々急激に落ちてきておる。そういう中で、政府並びに国民の英知と努力によりましてアメリカ農産物は日本にどんどん入ってきておるわけでございます。私はそういう点を、我が国の立場というものを対米折衝のときに強く訴えておるわけでございます。
 日米両国間の親善友好という根底には感謝の気持ちがなくてはならない。戦後四十年、日本が今日こういうようになれたのはアメリカのおかげであるという国民的感謝の気持ちがある。したがって、そういうものに対してアメリカの方も、率直に言うと、少々無理難題を言ってきておっても我々は苦しい中にも血の涙をこぼしながら一つずつ解決し努力してきておる、そのことを考えるときに、アメリカの政府、国会、農民の生産者団体の皆さん方は日本の国民に対して感謝の気持ちを持ってもらいたい。急激にシェアが下がっておる中で、いろいろな面で維持されておるということを基本的に認識してもらうことが一番大切であるということは、正式の会議の席でもまた個人的な場合でも私ははっきり言っておるわけでございますし、ある面では、おまえは閣僚でありながらアメリカ政府に対して十回もノーと言った、おまえはノーテンだと言われましたが、それで結構だ、日本にはノーテンホアイラという中国から来た言葉があるということも言ったりなにかいたしておるわけでございます。
 東委員の御意見をよく胸に秘めて、今後とも農林水産省としてあらゆる努力をして国民に不安なからしめるように、そして農林水産業の安定のために頑張っていかなくてはならないと決意を固めておるところでございます。
○東委員 質問の時間が終了いたしましたのでこれ以上続けられませんが、外務省に対しましても、今農林水産大臣にお願いしたことと同じでありまして、どうかひとつ外務省の持つ人脈、経験、手腕さらには情報というものを総合的に駆使いたしまして、経済大国日本の農業、林業、水産業がいやしくも不安を抱くことのないように、総合的に全力を挙げて支援をしていただきたいとお願いをする次第でございます。
 ありがとうございました。
○加藤国務大臣 農林水産省と外務省は唇歯輔車の関係で、相協力して一生懸命やっておりますということを申させていただきます。
○玉沢委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十三分開議
○玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。安井吉典君。
○安井委員 我が党は引き続いて新盛委員が質問をするという段取りにいたしておりますので、私は主に総括的な部分についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。
 六月一日から二十六日まで、英国のボーンマスで開かれた国際捕鯨委員会第三十九同年次会議、このありようについて私も非常に大きな問題意識を持っているわけであります。大体IWCは、一九九〇年までに資源を再評価して捕鯨再開の是非を決めるという方針であったはずです。そのために調査捕鯨の継続というのは必要でありますし、かつ条約第八条により調査を行う権限というのは締約国固有のものであるわけです。それを、実質的な調査捕鯨を中止せよというような内容の勧告を多数で決めるということは、私ども全く理解に苦しむわけであります。あの会議というのは、あたかも捕鯨国を重大犯罪の被告のように仕立て上げていく、そしてそれをいかにやっつけるかということに終始したような印象を私は受けるわけであります。農林大臣、これについてどのような見解をお持ちかということを伺いたいわけでありますが、大体こういった結果になるという予測が、農林水産省にもあるいは外務省においてもついていたのかどうか。それによって事前にもっと有効な対策を講ずるということ、例えばきょう午前中にもお話がありましたけれども、オーストラリアだとかニュージーランドのような友好国に話をつけるとか、そういうもっと有効な対策があってよかったのではないか、私はそう思うわけであります。どうも政府の捕鯨に対する方針がはっきりしないで理不尽な反捕鯨国の圧力に屈してしまった、そういう思いを深くしているわけでありますが、大臣、どうですか。またこれは外務省からもおいでですから伺っておきたいと思います。
○加藤国務大臣 IWCが鯨資源の保存と利用という条約の目的を逸脱しまして、鯨の保護のみに偏った決定を行っていることは極めて遺憾であると考えております。特に本年の年次会合は、意見の対立のある問題については討議を尽くさずして投票で決定するなど、必ずしも正常な姿とは言いがたいものであったと考えております。そして、これらに対する日本の対策あるいは政府の対策は不十分であったのではないかというような御意見的御質問も今あったと思うわけでございますけれども、我が国は、事前にミッションの派遣やIWCの場のみならず外国関係者の訪日等あらゆる場所をとらえまして、我が国捕鯨に対する理解と支持を求める運動をやってきております。したがいまして、先ほど申し上げましたようなことではございますけれども、その結果というものが、本年のIWCにおける我が国の調査に対する決議に際して、昭和五十七年の商業捕鯨モラトリアムの採決に比べ相当改善が見られた数字が出ております。また、その中身は韓国、アイスランドに対する決議に比べてもある程度評価を得たものと考えております。我が国としましては、今後とも反捕鯨の不当な圧力に屈することなく、粘り強く対処していきたいと考えておるところでございます。
 先ほど申し上げました昭和五十七年商業捕鯨モラトリアムの決定の際には、加盟国三十九カ国で賛成が二十五、反対が七、棄権五、欠席、投票権停止二という数字であったわけでございますが、先般の六十二年における日本に対する調査延期勧告決議は、加盟国四十一カ国、二カ国ふえておるわけでありますが、賛成十六、反対九、棄権六、欠席、投票権停止十という数字になってあらわれておるわけでございますけれども、なお我が方の努力に足りない点があるとするならば、さらに思いを新たにして頑張っていかなくてはならないと考えておるところでございます。
○野上説明員 政府といたしましては、本年のIWC会合が我が国にとりまして非常に厳しい会合になるということが予想されましたので、同会合に向けまして、昨年来、あらゆる機会を利用いたしまして関係国への働きかけを例年以上に精力的にやってきた次第でございます。
 しかしながら、今次IWC会合におきまして、各国の調査の権利を定めた条約八条の趣旨を損なうおそれなしとしないような決議、さらには、我が国の調査計画の実施自粛を求める決議、こういったものが数の力で強行されるという結果になりましたことは、まことに遺憾であると言わざるを得ないわけでございます。しかし、先ほど大臣からも御説明がありましたとおり、日本の調査自粛決議につきましては、賛成十六に対しましてこれを疑問とする国が十五カ国に及びました。また、我が国の計画に対する支持は、アイスランド、韓国等の計画に対する支持よりも多かったわけでございまして、こういったことは、我が国のこれまでの事前の申し入れあるいは会議中の各種の工作の成果の一つであるというふうに考えております。
○安井委員 今大臣並びに外務省の漁業室長からお話がございましたが、私は今度のいろいろな動きを見るにつけて、もっと確固たる漁業外交の姿勢というのが政府に必要ではないか、そう思うわけであります。何しろ捕鯨というのは反倫理的なことである、あるいは鯨を食べるのは野蛮だという基礎概念によって対応してくるというようなのは、これは外国文化を否定して欧米文化を独善的に押しつけるというやり方であり、私どもとしては全く我慢がならないわけであります。公然たる条約無視だとか歪曲、政治的な何か脅迫をするのではないかと思われるようなそういうあり方に対して、政府は条約をしっかり守る、捕鯨を守るという基本的な姿勢に立った外交活動をもっと積極的に展開すべきではなかったかと思うわけです。
 今具体的な問題への対応でベターな姿を得たというふうな御説明でありますけれども、私はもっと高度の政治折衝、外交折衝といったようなものがあってよかったのではないか、そう思うわけです。反捕鯨主張はアメリカが中心なわけですからね。特に最近のアメリカは、貿易摩擦問題だとかあるいは東芝問題で機械をたたいてみたり、俗な言葉で言えばやけのやんぱちという印象を受けるような行動が続いています。ですから、鯨だけを目的にした、それに限定した外交というよりも、もっと幅の広いトータル外交の中で鯨の問題の処理ができないのか、こういう言い方があるんですよ。「日本捕鯨の安楽死の処方せんを書いたと言われる誇り高き我が宰相」、これは私が言うのじゃなしに、京都新聞に出ている京大の河上倫逸教授の文章の中にあるわけですよ。これは中曽根首相が初めから安楽死を考えて皆さん方を問題と取り組ませていたのかということに疑念を持たざるを得ないわけでありますが、この根拠は何で言われているのかわかりませんけれども、こういう記述もございます。だから私は、外務省や農林水産省だけじゃなしに、国の政治の問題として政府を挙げての強い姿勢であってほしい、これは午前中全日本海員組合長の土井さんがそういう言葉を吐きました。どうなんですか。その点についてもっと反省はありませんか。
○加藤国務大臣 我々は捕鯨に対して安楽死云々は毛頭考えておりません。安井委員もお詳しいと思うのでありますが、あるときには我が国の麦があるいは大豆が安楽死論があったわけでございますけれども、今日政府の、そうして農業者の努力によってそこら辺が大変向上してきておるということはあるわけでございます。
 同じように、我が国の歴史と文化と伝統になじみの深い捕鯨並びに食生活、こういう点を考えますときに、安楽死ということが頭の片隅にあっても、それは歴史と文化に対するあるいは日本の食生活に対する冒涜であると考える次第でございます。
○安井委員 これは中曽根首相御本人がここにいるわけじゃないので、その問題についての追及のしようはございませんけれども、こういう疑惑というのかそういうようなものがどこかに出てくるということ自体私は問題だ、そう思うわけであります。やはりそれこそロン・ヤスという関係で、中曽根首相、いつまでロンに対してヤスという立場でおられるのかわかりませんけれども、捕鯨を守らなければいかぬというのなら、アメリカとの対応においても、もっと本当にやりようがあったのじゃないか、私はそう思うわけです。まだこれからもあると思います。もっとも農林水産大臣は、午前中も、アメリカその他の理不尽な要求に対して私はノーと言うものだから、余りノーノーと言うので批判がある、それくらいおれは頑張っているんだというお話で、それはまことに心強い限りだと思います。加藤大臣がノーノーと言っているのは当然なので、あなたはもともとノー林水産大臣ですから。しかも、今まではノー政という言葉があった。それは、ノー林水産省のやるとおりやると間違っちゃうので、それに反対のことをやった方がいいという第一次産業の皆さんの批判だったわけですね。それとは別の本当の農政を――今日、農業も水産も林業も第一次産業も非常に厳しい攻撃の中にあるわけです。これはまさにそういう問題については、あくまで農林水産大臣であっていただきたいということを私はお願いしておきたいと思うのです。
 話はついでですが、今捕鯨の問題と一緒にお米の自由化を要求するアメリカの要求もあります。そういうようなものに対しても、当然大きな声でノーと言っていただけると思うのですが、今までの御答弁もありますけれども、ちょうど話のついでですからこの際伺っておきます。
○加藤国務大臣 米の自由化要求に対してはっきりノーと申し上げておるのは、もう安井委員御存じのとおりだと思います。私がこの農林水産委員会で、我が国の農業の基幹作物であり、また国民の主食であり、そしてまた長い長い歴史と文化と伝統の中に築かれた米というものを大切にしていくためには、当然我々の姿勢、態度というのは決まっておるわけでございます。ただ私は、生産者、農民の皆さんにお願いしておるのは、ある面ではおいしくて安い米をつくるように頑張ってくださいと。やはり消費者である国民もそういう点、内外価格差ということをいろいろ言われます。けさもある会合で、安い米を食べたい、これほど自由化を我々は求めておるのに、加藤、おまえが阻止しておるのはけしからぬというまた逆の立場の強い意見も出てきたわけでございますけれども、私は相当時間をかけて理解をしてもらうような御説明をしておいたわけでございます。
 一連のアメリカの日本に対する要求というものも、率直に申し上げまして、守るべきものは断固として守る、譲るべきものは譲る、そのぎりぎりの限界線をどこに置いて言うかということが非常に大切ではないだろうか。昨日も北海道へ参りまして、十二品目一つを例にとりましても北海道といかに深い関係があり、もしこれが完全自由化された場合にどんな大きな影響があるかということを私はしみじみ味わって帰ってきたところでございまして、きのう札幌市内のあるところで、十二品目だけを例にとっても北海道に新しく十五万人の失業者が出る可能性がある、そこら辺を踏まえて頑張っておるのだということも申し上げたわけでございますので、どうかそういう点につきまして、ひとつ今まで以上の御支援を賜りたいと思う次第でございます。
○安井委員 今、大臣から米の問題あるいは十二品目の問題についてかなり強い御決意が発表されたわけですが、私は、漁業問題、とりわけ捕鯨などの問題についてはどうもそれほど歯切れがよくないのではないかという気がしてならぬのですね。特に今問題になっておるアメリカとの関係についても、漁業関係者には、アメリカは日本にとって友好国だ、しかし漁業関係で検討する限りは非友好国だ、こういう言われ方があるわけであります。
 とりわけ、国際捕鯨取締条約という国際条約を日本はきちっと守って、その上に立って捕鯨をやってきたわけでありますけれども、アメリカは例のパックウッド・マグナソン法、これは後にまた修正法で現在通っているわけでありますけれども、国内法を適用することによって実質的に捕鯨を抑えて、日本政府の方針をここで大きく覆させてしまった、こういう事実があるわけですね。したがいまして、我々は、そのようなアメリカの態度に対してもっときちっとした取り組みを日本政府もやるべきではなかったかと思います。この法律が向こうでできた段階では、むしろ捕鯨業界の方に圧力をかけて商業捕鯨を犠牲にしたということじゃないのですかね、実際上は。もちろんそれによって、日本漁業にアメリカとの関係において大変マイナスが出てくるということの配慮であり、国内でのトラブルももちろんあったことは間違いありませんけれども、しかし、そういうこそくな態度が続いたことによって、ベーリング公海のサケ・マス流し網漁業は捕鯨と全く同じ理由で操業の差しとめを食らっているし、肝心の北洋底びき網漁業も、昨年度の漁獲割り当て量四十五万トンからことしは七万トンまで一挙に落ちたわけですね。来年はひょっとするとゼロになるのではないかということであります。だから、捕鯨問題に対して十分きちっとした態度をやらなかったことで、こちらの本来の漁業を守るというつもりだったのかもしれないが、結局はアブハチ取らず、私はそうなったような気がしてならないわけであります。私は、こういう状態に入った責任の大半は政府にある、こう言わざるを得ないと思うわけでありますが、どうですか。
○加藤国務大臣 御存じのように、アメリカの三権分立、日本の三権分立、同じように三権分立はあるわけでございますけれども、アメリカの場合は毎年二千本近くの法案を議員が出しております。その中で採択され、法律になるのはそうたくさんはございませんが、そういう面で、アメリカ政府の考え方と特定の議員の活動を通じて法律になってくるということにつきましては安井委員御存じのとおりの動きでございます。今回の上院、下院における包括貿易法案の審議を冷静にごらんになってもおわかりのところだと思うわけでございます。したがいまして、詳しくは水産庁長官から御説明いたさせますが、国際的な条約というものと、国内的な二百海里内における漁業の割り当てというそれぞれの国の主権に基づいてやるやり方と、そこら辺に整合性があったりなかったりするという点については私たちもいろいろ考えさせられるところが多いのは事実でございます。
○佐竹政府委員 ただいまの先生の御指摘は、恐らく五十九年十一月時点におきまして、我が国がアメリカとの間においてIWC条約に基づきます異議申し立ての撤回を条件といたしまして、モラトリアム発効後二年間だけは日本側が捕鯨を続けてもパックウッド・マグテソン法を発動しない、こういう約束をしたことを指しての御指摘だろうと理解をいたすわけでございます。その結果につきましては、確かに現在時点で見れば、御指摘のように漁獲割り当ては当時の九十万トンから七万五千トンに減ったわけで、おまえ、水産庁のやり方は結局鯨も底魚も両方失ったではないか、こういう御指摘だろうと思うわけでございますけれども、現在各国が二百海里内の資源をどのように使うかということ、それからまた公海上におきましてもサケ・マスについては母川国主義がほぼ定着しているわけでございまして、アメリカが自国民の漁獲能力が増大したことに伴いまして我が国の割り当てを減らしてきたこと自体を非難することは必ずしもできない。むしろそれを前提にして、どうやって我が国の漁民の利益を守っていくかということが私どもの仕事であろうかというふうに思うわけでございます。したがいまして、五十九年十一月時点でもし違った道を選択したならば、九十万トンの漁獲量は直ちに半減されたわけでございまして、次の年の、つまり六十一年の四十七万五千トンも確保できなかったわけでございまして、そのことを考えればやむを得ない選択ではなかったか、私どもとしてはそのように考えている次第でございます。
○安井委員 これは結果論ですから、私の方も結果で物を言っているし、あなたの方も結果で物を言っているわけで、その経過というのはかなりの先見性を持って取り組んでいかなきゃいけなかったのじゃないか、そういうことを私は申し上げているわけであります。
 そこで、今撤回の話が出ましたけれども、政府は六十年の四月に、条約第五条第三項によってIWCに対する異議の申し立ての閣議決定をしました。それを今言ったような経過の中で撤回をするに至ったわけであります。しかし、あとまだ来年の三月まで日はあるわけでありますので、一たん決定したものを撤回してみたりすることをおやりになるんだから、撤回したものをもう一度撤回する、そうなれば商業捕鯨への日本の意思というものはもっと明確になるわけであります。これは法的に条約上可能なのか、また可能だとしてもそういうような思い切った方向に出るお気持ちはないのかどうか、それを伺います。
○野上説明員 お答えいたします。
 ただいま御指摘の異議の撤回の撤回でございますが、既に我が方が異議を撤回いたしまして効力を生じているものがございますので、法的に撤回の撤回ということは可能とは考えられないというふうに考えております。
○安井委員 もう少し検討していただきたいと思います。
 それからもう一つ、今度の年次総会において、日本もその大きな被害者になったわけでありますが、同じような立場に置かれたアイスランドがIWCの脱退や国際司法裁判所への提訴をほのめかす発言をしているわけであります。そのことについてどんなような情報を得ておられるか、そしてまた日本政府の方も、もう午前中の参考人のお話でも、あるいは政府自身がお感じをいただいていることからいっても、今度の会議のあり方というのは非常に問題があるわけであります。したがって、日本政府として国際司法裁判所に提訴する、そういう意思をお持ちかどうか、それを伺います。
○佐竹政府委員 私どもも、IWCの会議の席上でアイスランドの政府関係者からそのような発言をしているということは承知しております。ただ、その後の私どもに入っている情報では、アイスランドがそのような具体的な行動に移っている、あるいはそういうことを計画しているということは現在は承知しておりません。
 それから国際司法裁判所への提訴でございますが、これは外務省からお答えいただいた方が適当かと思いますが、一応私がお答えいたしますと、これは基本的に多国間の条約上の解釈の問題であり、それは基本的にその条約の枠内で処理すべきというような一種のルールがあるようでございます。それからまた法律技術的に申しましても、この中止勧告はあくまで勧告でございまして、法律的に言えば具体的な締約国の権限を侵害したわけではないのでちょっと訴訟にはなじまないのではないか、このように考えておるわけでございます。
 脱退云々につきましては大臣から。
○加藤国務大臣 いろいろな立場から私も随分脱退問題については考えたのでございますけれども、国際的にも国内的にも大変多くの問題を抱えておるわけでございますし、今日日本の置かれておる立場等を考えまして、慎重に関係方面の意見を聞きながら検討していくべきであると考えておるところでございます。
○安井委員 今の国際司法裁判所の問題ももっと検討をする必要があるのではないかと思います。
 それからまた、さきのいわゆる勧告決議なるものは法的効力がないということを今も明確にされたわけでありますから、それだけにそんな効力のないものに日本政府は従う必要ないじゃないですか。これは後の問題に残しておきます。
 今の脱退問題でありますけれども、このIWCというのは、数ある国際機関の中でも国際機関としての体をなしていないのではないかという感じを我々も受けるわけであります。ですから、もっとこれを改組して、抜本的に国際機関にふさわしいものに改革するというふうなこと、あるいはまたこれがどうしてもだめならこれを見限って、FAOやその他適当な国際機関で扱うようにしたらどうかというふうな意見もあるわけですね。しかし、やはり初めに申し上げた抜本的な改革ということが筋ではないかと思います。大体において加入国の資格要件からいいかげんな扱いにされているわけだし、運営のあり方でも問題だらけなわけです。ですから私はこの際、IWCが今持っているさまざまな問題点、それを日本として、こことここが問題だ、ここをこう変えなければいけないという具体的な指摘をこの際やはりすべきではないかと思います。それを世界じゅうに明らかにして、それが全然どうにもならぬというのなら脱退するというふうな筋道をとるとか、これはもう右顧左べんしている段階ではないのではないかと私は思うわけですね。
 今大臣からも御答弁はございましたけれども、もっと真剣にこの脱退の問題を考えていかなければ、国際的な、それも正常なものと思えないような世論のもとに日本の捕鯨は押しつぶされてしまう、そういう感じを受けるわけです。もう一度御答弁をいただきます。
○加藤国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、IWCの運営あるいはまた存在、これはいろいろな問題があるということはよく存じておるわけでございます。したがいまして、参加資格要件の問題その他につきましては昨年強く主張し、我が国の提案が入れられまして、政府代表の正式の資格があるかないかというような点につきましては、ことしは相当明確になったと思うわけでございます。ただ運営とかあるいはまた水面下における反捕鯨国家の連係動作、そういうものはどう表現しますか、目を覆わしめるものがある。こういった点については、私たちも大変高価な勉強をさせてもらったわけでございます。したがいまして、今後はIWCの健全な運営あるいは参加要件等々の問題を含めた改正に真剣に取り組んでいかなくてはならない。
 それから脱退問題は、先ほどお答えしましたように、内外ともに非常に大きな影響を与える問題でありますし、そしてまた、これからの国際国家日本として生きていく立場というより大きな問題を考えながら、関係方面の御意見を十分に承り慎重に検討していかなくてはならないと考えておるところでございます。
○安井委員 いずれにしても、私が指摘した点についてさらに御検討をいただきたいと思います。
 そして先ほどのアメリカのPM法の問題にさかのぼるわけでありますけれども、大体において国際関係というのは、国際的な条約だとか取り決めを尊重していくということは当然でありますけれども、自国の利益をあくまでも確保していくということが課題なわけです。それが外交だ、私はそう思います。その点アメリカなどは、問題が出たら即発的に議会が対応するというようなことであります。ですからアメリカは国際連合機関の中のユネスコからも脱退しているし、ILOからも脱退しています。これは運営が気に食わぬといって出て、金を払わないわけです。あるいは海洋法条約だって、あれだけやっているものを批准しようとしない。日本はその辺なかなかばか正直で、ちゃんとなけなしの金を払って会費を納めたり、そして何のことはない日本たたきをされている、そんなような状態があるわけであります。だからPM法だって彼らの即発的な立法だ、こういうわけでありますだけに、我々もいつまでも黙ってたたかれているだけではいかぬと思います。そういうような意味で、相手方が理不尽な態度に出た場合には直ちに対抗する措置に出る、そういうあり方を我々自身いつもポケットの中に入れておくことが必要なのではないか。
 そういうことで、これは初めは自民党の方から御提案だったのですけれども、その後御都合で出られなくて、結局社会党、公明党、民社党、共産党野党四党でいわゆる対抗法案をつくって前国会に出して、継続審議で今国会にもこの委員会にかかっているわけであります。ですから、それは法律ができたらすぐ適用するというものであってもなくても、とにかくそういうものを、伝家の宝刀という言葉がさっきありましたけれども、そういうものとしてきちっと持っておくということ、それが必要なのではないでしょうか。これは国会の立法作業でありますから政府に聞くのもおかしいかもしれぬけれども、政府としてもそういうのが欲しいのじゃないですか。その点伺います。
○加藤国務大臣 いろいろ言っていい席と言って悪い席もございますし、どう申し上げますか、まあPM法が理不尽なということは御指摘のとおりでございます。それは先ほど来の御質問並びに我が方のお答えでも申し上げておるとおりであります。ただ、対抗法案につきましては、まず考えなくてはならぬのはガットとの関連問題があります。その他、我が国と諸外国との関係全般に及ぼす影響等を勘案して総合的に判断すべきであり、私としては慎重な対応が必要であると考えておるところでございます。二百海里法ができる前後というのと、二百海里問題が定着して国際的に大変大きな問題になってきておる今日という点についてもいろいろ違いがあるのではないだろうか。私も二百海里法前後のときにはアメリカへ行きまして、議会の上院、下院の皆さんにも随分議論を吹っかけ、今そういう時分のことをいろいろ思い出しておるわけでございますけれども、要は先ほどお答え申し上げましたようにガットとの関係、それから今日我が国の置かれておる国際国家日本としての立場等全般に及ぼす影響というものが非常に大きくなってきておりますので、総合的に判断すべきであり、慎重に対処すべきであるとお答えさせていただく次第でございます。
○安井委員 慎重という言葉も私はきょう何十回となく聞いたのですけれども、そのことが結局どっちつかずでアブハチ取らず、さっき私が申し上げたような結論になっているのではないかと思います。この対抗法案は政府には一応関係なしに、国会の立法作業でありますから、私も提案者の一人としてこの成立のためにはひとつ全力を挙げていくということだけ申し上げておきます。
 きょうの私の質問の時間もあとわずかになりましたので、結論的な部分として調査捕鯨をこれから本当にやるのかどうかということであります。
 今度のIWC総会の決定の結果、日本は非常に難しい選択を迫られているということは間違いありません。勧告には法的な拘束力がないということはあなた方もしばしば繰り返しているわけであります。そしてまた、条約上調査権というのは失われていないわけです。ですから、この勧告を無視して予定どおり調査捕鯨を実施するのかどうか、あるいはもうここで捕鯨から全面撤退をするのか、その二つに一つの選択を迫られている、私はそう思います。斉藤コミッショナーが、会議の後の記者会見で、ぜひとも予定どおり調査を実施するよう政府に要望する、こういうふうに言っていますね。政府はいずれの道をお選びになるのかということです。私どもは当然、法的にも問題のない調査捕鯨を今直ちに実施するということ、それよりほかに日本の捕鯨を継続させる道はない、かように考えるわけでありますが、これは農林水産大臣、外務省も、きょう外務大臣でもお出になれば別ですけれども、なかなかあれだと思いますので、ひとつ政府を代表する形で、この問題についての加藤農林水産大臣のお考えを伺います。
○加藤国務大臣 午前中にもお答えいたしたのでございますけれども、我が国としましては、条約の趣旨からして、延期勧告決議がなされたからといって条約第八条に基づく捕獲調査を断念するわけにはまいりません。しかしながら、我が国は調査の実施に当たって無用な国際的な非難を助長することのないような配慮をする必要があるわけでございまして、またしかられるかわかりませんが、さらに慎重な検討を重ねてまいりたいと考えておるところでございます。
○野上説明員 本件調査捕獲につきましては、先ほど先生も御指摘のとおり、勧告は法的拘束力がないわけでございまして、国際捕鯨取締条約の趣旨に照らしまして、条約八条の規定に基づく我が国の調査の権利、これは制約されるものではないと考えております。が、同時に、本件調査を実施いたしますためには、捕鯨問題をめぐる諸般の状況がございまして、これに留意していく必要があるわけでございます。そういった点で、私どもといたしましても、本件は慎重に検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。
○安井委員 もし調査捕鯨をやるということになれば、もちろんいろいろなことを考えなければいかぬと思いますね。例えばこの間の総会において、日本に対するこの理不尽な勧告案に対して反対をしてくれた国だとか棄権をした国だとか、そういうようなところにはあいさつをするとかいうふうなことも必要だし、その他いろいろな問題への配慮というものは当然必要である。それが要らないという意味じゃありませんよ。要らないという意味ではありませんけれども、今あれも考えこれも考え、そんなこと考えていたら何もやることないですよ、これは。何にもできないですよ。それこそ野たれ死にしてしまうということではないかと思います。さっき大臣は、高価な勉強をさせてもらいました、こう言われました。全くそのとおりでしょうけれども、大臣や農林省や外務省が勉強しているうちに、日本の捕鯨はつぶれてしまいますよ、なくなっちゃいますよ。問題はそこだと思いますね。
 ですから、できる限り早く、しかもその時期というのは、来年やろうといったって来年のまた総会があるわけですから、その前に今の調査捕鯨をやりますよなんて、そんなばかなことをやったってしようがないわけですし、しかもまだ、午前中いろいろ参考人からのお話を聞く中でも、中間的な空間があくと、時間的なインターバルができると問題が多いというお話も我々しっかり聞いております。それだけに、我々が現在の漁期のうちに調査を進めていくということを早く決めなければいけない。ということになると、今月か来月の初めぐらいには閣議で決定するぐらいなところまで早急に持っていかなければならない問題ではないかと思うわけであります。この問題、いずれまた新盛委員から集中的にお話があると思いますから、私はこれ以上詰めませんけれども、そういう問題が重大問題として、当面解決すべき最大の問題であるということを私は申し上げておきたいと思います。もっと内容に入った質問は後で新盛委員からお願いをしておきます。
 それからもう一つ、沿岸捕鯨についても継続審議ということで一応けりがついたわけでありますけれども、しかし、一年待っていたら、黙って来年は存続が決まるなんという生易しい状況にないということは政府も我々もよくわかります。それだけに今のうちから、もっといろいろな根回しやらそれへの主張の根拠やら、そういうようなものをしっかりつくっておかなければいかぬと思うのです。沿岸漁業の問題は地域社会の荒廃にかかわっています。とりわけ今どこも景気が悪くて、第一次産業の地域はどこも大変なんですね。そういう中で今問題が起きているだけに、非常に重大な問題意識をそれぞれの地域で持っておられますので、これに対する周到な対策が必要ではないかと思いますが、どうですか。
○佐竹政府委員 沿岸捕鯨についての御指摘でございますが、現在私ども考えておる沿岸捕鯨の対象地としましては、鮎川、釧路、網走、紋別、四港でございまして、約二百十頭の計画をIWCに提出しているわけでございます。いずれも、御指摘のように大変不況色の強い地域あるいは他に産業のないような地域でございまして、この地域社会を支えるものとしての捕鯨業、御指摘のとおりでございまして、私どもはこれを実現させるためには、IWCの条約の附表を改正しなければならないわけでございまして、四分の三の同意をとらなければいけないわけでございます。大変厳しい状況ではございますけれども、来年の総会に向けて、今御指摘のございましたように、準備に怠りのないように最大限の努力をしてまいりたいと思います。
○安井委員 問題はなおたくさんあるわけでありますが、特に調査捕鯨の早急な実施、このことを強く要望し、あと四、五分あるようですが、これは新盛さんに渡しますから、これで終わります。ありがとうございました。
○玉沢委員長 新盛辰雄君。
○新盛委員 午前中は参考人の方々もお呼びして、本問題について議論がなされたようであります。今安井委員の方から総括的に我が党の考え方を織りまぜながら、その方針を伺いました。私は、具体的に確認をしていきたいと思います。
 確かに、今回の第三十九回IWC年次総会における各国、特にアメリカを中心にした日本に対する今回の処置はまことに理不尽である、これはどなたが出席されても日本の代表の方々はそうおっしゃっておられます。そういう中で我が国は条約八条に基づき、南氷洋でのミンククジラ八百二十五頭、マッコウクジラの五十頭の捕獲調査の計画を提案されました。二つ目には、沿岸小型の捕鯨について生存捕鯨として継続をすることを提起されたわけであります。この提案に対する結論はもう既に昨今議論されているとおりでありまして、この調査捕獲については延期の勧告決議が採択をされた、さらには生存捕鯨については次期開催まで継続審議にさせられた、こういうことであります。勧告決議は実質的には中止を求めている、私はそう理解します。生存捕鯨の問題については、これは先送りをしただけで、結果的には不可能であるということの結論に等しい、こう理解をします。となりますと、この勧告決議、そして先送りのいわゆる生存捕鯨、この事実については日本代表団の方々は御苦労されましたが、大臣としてどう受けとめておられるか、政府の考え方をお聞かせいただきたい。
○加藤国務大臣 本年の国際捕鯨委員会、いわゆるIWCは極めて反捕鯨色の濃い会合であり、特に我が国の捕獲調査計画に対し、実施延期勧告が行われたことは極めて遺憾であると考えております。また、我が国の小型捕鯨業の一部を生存捕鯨として認知することを求めたことにつきましては、厳しい事態ではありましたが、継続審議となり、今回これが全く否定される事態となることは阻止し得たと考えております。
 今後の方針については、非常に厳しい事態であることは認識しておりますが、調査の実施及び生存捕鯨の実現に向けて努力してまいる所存でございます。
○新盛委員 形どおりの御答弁ということになるとそうなるのですが、現に委員長はこのIWCに御出席をされたわけで、委員長から御答弁をいただきたいのでありますけれども、どうも座におられるし、また、ほかの自民党の代議士も行かれたというふうに聞いております。私は、こういう雰囲気の中で日本の立場というのは一体どうすればいいのか、その状況は極めて厳しい、理不尽である、日本たたきである、しかしおれたちは絶対に後ろ暗いことはない、そうも思いながらも、日本の食文化、伝統を守るということにおいては論をまたないわけでありますが、そういう状況を踏まえられて、本当に憤慨をされたろうし、これは多数決ですから、いわゆる数でもって押し切る、どこかの、今いろいろ自民党内部でやっておられるようですけれども、数でどうこうという話じゃないのであります。そういう面で、出席された人から実は中身の濃い、これからの対策をどうしたい、あの雰囲気の中からどうすればいい、そういうのをお聞かせいただきたいという気がするのであります。どなたかその中に出られた方がございますか。もし差し支えなければ委員長、発言されても結構ですよ。
○佐竹政府委員 まことに申しわけございません、現在ここにおる者の中ではIWCの会議に出席している者がおりませんものでございますので、その旨……
○新盛委員 担当の水産庁長官の答えとすれば、あなたも行かれたわけですからいろいろと状況が、それは推移を眺めて政府としてどうするかということになるのでしょうが、どうしても局面の打開を図りたいと言ってこられた方々、しかもニュージーランドだとかオーストラリアだとか、あるいは各国にアタックをして説得をしてこられた方々の気持ちを我々はしっかり受けとめなければこれから先の問題にならないわけであります。だから、そこのところをぜひともお聞かせをいただきたい、深層心理を教えていただきたい、そんな気がするわけです。委員長、これは答えられませんか。あなたも行かれたわけでしょう。
○玉沢委員長 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○玉沢委員長 速記を起こしてください。
 新盛君。
○新盛委員 では、次へ移ります。
 先ほどもお話がございましたが、日本と同じ仕打ちを受けたアイスランドあるいは韓国、こういう関係国の動きをどういうふうに我々は把握をすることができるか。その中で、アイスランドは今回のこの仕打ちに対してIWCを退脱しよう、国際司法裁判所への提訴をやろう、NATOから脱退しよう、こういう強い決意を示しておられるやに聞いております。その意思表明を外務省の方はとらえておられるのか、そうしてアイスランドが態度を硬化したことによってアメリカなどの動きがあればその御報告を願いたい。
○佐竹政府委員 アイスランドの動きにつきましては私どもも情報を入手しております。特に、今先生の御指摘のありましたようなことが、公式、非公式の発言かは正確に確認しておりませんが、あったことは事実のようでございます。それをもとにいたしまして二十一日、二十二日の二日にわたりましてアメリカとアイスランドの間で本件をめぐりまして交渉が行われているというふうに承知しております。
○新盛委員 その交渉を見守るという状況にあるのでしょうけれども、これはアイスランドも反対六、賛成十六、棄権九という中での実施中止勧告を受けたわけですね。日本の場合は反対九、賛成十六、棄権六。日本は、皆さんの御努力で少しは反対の数がふえたということになるわけですけれども、こういう状況を踏まえますと、勧告を含めまして各国々が同情するというか、日本の伝統的食文化であるという理解をやや示しつつあるとか、そういう面では、私は今回皆さんが御努力をされたことについては敬意を表します。そしてアイスランドは、こういう大変な理不尽な仕打ちを受けたので、断固として先ほど申し上げました三項目を中心にしてやろうと決意をしておられるわけです。あの島――失礼しました。島などと言うと怒られますが、アイスランドは東西両陣営の中にあってアメリカだってちょっとばかり困るのじゃないですか。そして、その位置が極めて重要なところであるだけに、アイスランドがこういうふうに出てくればアメリカは少し態度を軟化せざるを得ないではないかという気もするわけであります。そういう状況を踏まえてアイスランドが強行に出たのではないか、そういうことから、局面打開はこの方からほぐしていくことを待っておるならこれは大変な時間がかかると思うのです。だから、日本の場合はでは一体どうするかということになるわけです。そこのやり方、方法によって局面の打開ができると私は思うのでありますが、その面についてはどうですか、外務省も水産庁もこれはいろいろな角度から検討されておると思いますけれども、外務省はどうですか、この把握はどうされますか。
○野上説明員 私どもとしましても、アイスランドの動向につきましては関心を持ってこれを注視しておりますが、現在までのところ、アイスランドがその発言に基づいて具体的な決定をしたというような情報には接しておりません。
○新盛委員 そういう状況把握はしてないと言うのですけれども、そういう動きに出ていることだけは間違いないと私は思うのです。だから、日本の場合は、それに並行してこれからどう対策を立てるかであります。そこで、ここのところだけにとまっておるわけにいきませんから、条約八条の解釈について明確にしておきたいと思うのです。
 国際捕鯨条約第八条第一項は、鯨の調査捕獲はこの条約のほかの規定にかかわらず締約国の判断で行うことができると規定しているわけです。政府の公式見解としてはこれはどうなのですか、そういうことなのだというふうに理解をしますか。どうぞお答えをいただきたい。
○野上説明員 国際捕鯨取締条約第八条一は、科学的研究のための鯨の捕獲等は締約政府の判断で実施し得るということを規定いたしまして、さらにこの捕獲等を同条約の適用から除外するということを定めております。
○新盛委員 そこで明確になってくるわけでありますが、今政府の公式見解が出されました。だとすれば、条約第六条に基づく勧告が第八条を実質的に否定するようなことになるわけでして、無効である、いわゆる今回の勧告というのは無効じゃないか、条約上の整理ですからここのところは明確にしていかなければいけません。どうですか。
○野上説明員 今回の決議でございますが、これは条約第八条一の規定の趣旨を損なうおそれなしとしないものでございますけれども、この決議は勧告でございまして法的拘束力を有しておりません。したがいまして、この決議により条約八条に基づく締約国の捕獲調査の権利が制約を受けることはないと考えております。
○新盛委員 そこではっきりしてきたわけでありますが、第八条によって明確にされている公式見解、またただいま外務省がお答えになった第六条による勧告決議は無効であるということ、拘束力を受けないということにおいて明確になったわけでありますから、このことは確認をしていいでしょうか、大臣、責任者として。
○加藤国務大臣 結構でございます。
○新盛委員 次に、米国との関係でございます。
 我が国が調査捕獲を行う場合は条約上の権利であることは先ほど長官も答弁されたわけでありますが、この勧告決議を無視して調査捕獲を行った場合、先ほど大臣は理不尽なPM法とおっしゃいましたが、PM法の発動あるいは日米漁業協定の破棄、ジョイントベンチャーの中止など、米国はいろいろな制裁措置を考えると思われるのですが、それについてはどうお考えですか、今のところはそういう事象はないのですけれども、お考え方をお伺いしたい。
○佐竹政府委員 今回のIWCにおいて、アメリカはいわゆるキャリオ提案なるものを提案したわけでございます。これにつきましては、要は各国の提案した調査計画は一定の基準を満たしているかどうかをまず科学委員会で審査する、その科学委員会で審査の結果、意見が一致しなかった場合にはそれを総会にかけてその調査計画を提出した政府に対し、調査の中止または許可の発給停止を勧告する、こういうふうな決議でございまして、これを提案したゆえんは、アメリカの国内法でございますパックウッド・マグナソン法及びペリー修正法、前者は一言で言えば、要するに国際捕鯨取締条約の効果を減殺するような漁業活動あるいは貿易、または捕獲を直接あるいは間接に行っている外国についてはその旨を商務長官が証明した場合には、国務長官は商務長官と協力して漁獲割り当てをその時点で半分にする、二年目にはゼロにする、こういう規定がパックウッド・マグナソン法でございます。それから、ペリー修正法の方はやや構成が違っておりまして、商務長官が証明する、大統領に対して証明するわけでありますが、大統領はこれについて当該国からの漁業製品の合衆国への輸入を半分にすることができる、こういう規定がペリー修正法でございまして、これらの法律の発動をしやすくするためにキャリオ提案をやった、つまり勧告をしたにもかかわらずその勧告に反する行為に出たということになれば、まさに両方の要件を充足するということになって証明がしやすい、こういうところからこのキャリオ提案が出されたと推定するわけでございます。
 ただいま先生仮定のことというふうに仰せになりましたが、確かに仮定のことではございますが、恐らく勧告を無視して調査捕獲を実施する場合にはこれらの法律の発動は必至と見るべきであろうかと思います。特に、ペリー修正法の方につきましては大統領に裁量権が残されておるわけでありますが、パックウッド・マグナソン法につきましては、裁量権が国務長官にないわけでございますので、発動は必至というふうに判断するわけでございます。
 それからまた、アメリカとの関係では、今JVについての御指摘もございましたが、JVの根拠になっております日米の漁業協定がことしの末で失効するわけでございまして、現在その改定手続が進行中なわけでございますが、それとこの進行にこれがどう影響するか、これは法律の問題ではございませんので、私がここで見通しを申し上げることはできませんけれども、これはアメリカの国会上下院の承認が必要なことになっておりますので、それとどのようにかかわり合うかということが一つの問題点であろうかというふうに判断しております。
○新盛委員 先ほど安井委員の方からも質問があったわけですが、モラトリアムが決定されてから異議申請を日本がやろうとしたら、それに対して制裁措置をということでいろいろと国内法を含めて議論がありました。そして、アメリカはこの発動回避のために我が国ともいろいろと十数回話をして詰めた結果は、我が国はモラトリアム発効後の漁期、八六年と八七年の漁期をもって商業捕鯨を中止する。それは、日本はこの異議申し立てを撤回するということですね。米国はその間制裁法の発動は行わない、このような日米捕鯨取り決めで来たわけです。結局ベーリング海を中心とする二百海里、アメリカの漁獲割り当てを捨てるのか捕鯨を捨てるのか、二者択一をというのがアメリカの言い分だったろうと思うのですね。しかし、現実はそういうアメリカの制裁措置を恐れて、商業捕鯨を結局は中止してしまったのですね。これが今までの経緯です。
 そうしますと、この米国からの対日割り当てはもう既に先ほどの議論の中でも激減した。六十年の段階で九十万トン、六十一年で四十五万トン、六十二年で七万四千トン、これが現在、来年はゼロ、これはもうはっきりそう言っておられるのですよ。そういう状況で対日の割り当ては激減をした上に、来年はゼロだ。だまされてしまった。日本はこけにされた。これは非常に憤慨にたえないのですね。また、このジョイントベンチャーをとめれば日本だけではなく、米国漁民だって困るのですね。そういう状況が出てきているし、またこのような中で日米漁業協定ももはや我が国にとっては無意味ではないか。無意味であれが何も米国の制裁を恐れる必要なし、こういうことになるわけですが、日本の文化を守る、捕鯨を捨てるべきではない、みんなそう思っているわけですから、ここで万一制裁措置があっても、国内措置で何とかそれをカバーできるような仕組みを、漁業体制を、新しい再編成を考えていく必要があるのじゃないかと思うのでありますが、その一連の関係について大臣の決意のほどをひとつ聞かせていただきたい。
○佐竹政府委員 まず、事務的な御説明をさせていただきます。
 ただいまの御指摘は、客観的にそういう事実があることはこれはだれも否定できないわけでございますが、今後恐らく米国との間にこの問題をめぐって交渉をする必要がある場合が出ようかと思うわけでございまして、ただいま御指摘の点をどう判断するかということは、いわば日本側として交渉の手のうちを出すことになるわけでございまして、その点ただいま御指摘の問題点について水産庁としてどう考えるかということについては、ひとつここでの御答弁は差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
 それから、確かに漁獲割り当ては八七年七万五千トンに減っているわけでございますが、これは別に日本だけが減らされているわけではございませんで、結局米国のマグナソン法、漁業管理法、仕組みは今さら御説明するまでもないかと思いますが、許容漁獲量を出して、それからまず米国の国内の漁業者に充当する漁獲量を引いて外国の割り当て量を出す、簡単に言えばそのような仕組みでございます。結局、国内漁業者の漁獲量がふえてきたために外国への割り当て量が減っているということでございまして、日本のシェアは現在でも七割から八割を確保しているわけでございますので、その点だけは一応申し添えさせていただきたいと思います。
○新盛委員 米国の制裁措置が今後あったとしても、割り当てその他について相当激減していくし、ゼロになるかもしれない。これからやろうとすればはえ縄の処置などが出てくるのだろうと思いますよ。しかし、それは国内の漁業再編成を含めてもう一回――二百海里というこの事態は、結局もみ手をして入漁料を払って、そして漁期に合わせて漁獲量の割り当てを受けて各国がやっていくわけでしょう。それがもうみんな自前で魚はとる。残った分なら、日本のお船もいらっしゃればとらせてあげましょうという仕掛けに、これはいわゆる国際的な規制が続いてきているのですよ、二百海里も十年たったのですから。だから、そういうことを考えれば何も遠慮することないじゃないか。遠慮することがないということは、新しい漁業構造の再編成を日本がやればいいのであって、鯨の問題と一緒くたにするから、それで取引しようとするからこういう問題が出てくるわけであります。だから、この点は明確にどういうふうにするかということをお答えいただかなければ先に進めませんね。
○佐竹政府委員 少ないながらも七万五千トンで、アメリカ海域を唯一の漁場として操業している北洋はえ縄等の漁業があるということは事実でございまして、その割り当て量を確保するため大変な努力をそれらの漁業者はしているわけでございます。七万五千トンになったのだからそれはどうなってもいいのではないかというふうにはなかなかまいらないわけでございまして、そういう点も考えて今後この鯨の問題、調査捕獲の問題については私ども対応してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
○新盛委員 それはまた後で機会を見て議論したいと思います。
 次に、この条約上の権利を行使することに対して、これが気に入らないからと言って条約加盟国が国内法で懲罰を加えるというようなことが出てきているわけで、あらゆる国際条約の存立さえ危うくしているような状況だ。私は、アメリカは理不尽だとよく巷間言われているのはその辺にあるのじゃないかと思うのですね。国際条約で明確にその拘束を受けないという面があるならば、国内の自分たちの法律で懲罰を加えるというのは理不尽ですよ。だから、こうしたことについて毅然たる態度を日本側はとる必要がある。何でもかんでもおんぶにだっこという式は終わったのじゃないですか。いろいろな面で漁業問題で苦労するのは、アメリカの漁業外交といいますか、日本がそれに非常に後ろ向きというか、もみ手式にやっているのかわかりませんが、そういうようなところが今回のような問題に非常に波及したのじゃないか、極論すればそういうようになるような気がしますよ。どうなのですか。
○佐竹政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたとおり、私どもは、このパックウッド・マグナソン法自体大変理不尽な規定であるというふうには思うわけでございまして、その旨は常に主張しているわけであります。しかしながら、二百海里内の資源の管理権は、これは沿岸国にあるということはこれまた国際的にほぼ定立された考え方でございます。したがいまして、アメリカがこのパックウッド・マグナソン法を使って割り当てをするということ自体について、私どもは有効な対抗手段が持てないわけでございまして、そういうことをひとつ御理解いただきたいと思います。
    〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
○新盛委員 その有効な対抗手段を持たないというのがおかしい。少なくとも漁獲枠はどんどん減らされるのですね。それは制裁措置を少なくしてもらおう、少しでも魚をとらせてもらおう、その気持ちはわかりますよ。しかし、これまでのような対米折衝を続けておった日には、これは魚も鯨もなくなってしまう。どっちもだめなんだということになって、この調査捕獲を計画どおりやらなければどうにもならない、もう魚を捨ててもいい、鯨だけとろう、極論すれば北洋の魚の漁獲量が減る、あるいは全くなくなるとなればその補償を国が面倒を見るべきである。それが漁業再建の構造計画をこれから立ててやっていくべき仕事ですよ。手の打ちどころがないというのじゃないのです。どっちかをとればいいのですよ。鯨をやるなら鯨をやるという決意を込めれば、またそれだけの展開がされるのですね。先が広がるのですよ。それはどうなのですか。
○佐竹政府委員 私どもは何とか両方が成り立つ道がないかということを最後まで追い求めてみたいというふうに思っているわけでございます。しかし、その道が果たして可能であるかどうかということについては、先生御指摘のように大変難しい問題でございますが、しかし先ほど御指摘のありましたようなアイスランドの動き等、そういうこともいろいろ考えながら、何とか両方が成り立つ道がないかということを最後まで追い求めていきたい、かように考えているわけでございます。
○新盛委員 長官、あなた担当者だから苦しい胸のほどはよくわかりますよ。だけれども、もうここまで我々は議論してきた。二百海里という厳然たる事実は事実として認めなければならぬでしょう。私も昭和五十二年の二百海里提案がされたときに本会議で代表質問しましたよ。そのときに将来こういうことが起こりはしないか。いわゆる二百海里が設定をされたら、入漁料を払ってとるなどということを考えておったのじゃだめなのだ。それは将来自前で、沿岸漁業の復活を初めとしてやらなければならないわけでしょう。栽培漁業というのもそこから始まったのです。だから、そういうふうな新しい漁業構造の再編成は別途の問題として絶えず開発をし、研究をし、技術を高めて日本の動物性たんぱく質の供給源を明確にしておくというのは大事なことなのですね。この鯨だってこれは食文化なのですから、伝統的な、我々の祖先から伝えられてきた捕鯨なのですから、それを全く根絶やしにする、一九九〇年までにいろいろやって、その後はまた論議をするというのがIWCなのですけれども、ここでやはりどちらかに踏み込まなければいけないというのが私の言っていることなのです。それはひとつ解明をしていかなければいけない時期にもう来ている。
 そこで今後の対応であります。調査捕獲はいつからやるのですか。いわゆる踏み切ったかどうかということについては、先ほど大臣のお答えは、二十数回慎重に慎重にというお話になっていたようでありますが、確かにわかります。しかし、条約の上では何らの支障はない、明確に我が政府としてお答えを、先ほど確認をしたのですから、だれにはばかることもない。この調査捕獲をやれる。今漁期においてやらなければ、時期を失ってしまったら何にもならない。その件について明確なお答えをいただきたいのです。
○佐竹政府委員 私どもといたしましては、今回IWCに提出しました捕獲調査の計画につきましては、まさに科学的に全く非難の余地のない正当なものであるというふうに理解しておるわけでございます。しかしながら、立場を変えて見た場合に果たしてその内容に全く問題がないかどうか。それからまた、そのやり方等について疑似商業捕鯨というような非難を受ける余地がないかどうか。私どもは、条約八条の権利を行使するという以上、一歩引き下がって、さらにその内容について十分な上にも十分な検討をした上で最終的な決断を下したいというふうに考えておるわけでございまして、具体的に申し上げますと、例えば私どもの調査計画の内容について先般の科学委員会では必ずしも議論が尽くされていないようでありますので、FAO等の機関にその審査をお願いして、その正当性について世界の科学者からオーソライズしてもらうとか、これは一つの例でございますけれども、そのようなことを尽くした上で最終的な決断を考えてみたい、かように考えているわけでございます。
 これは確かに今漁期出漁することを私どもは念頭に置いて、それを実現すべく現在最大限に、八方手続を進めているわけでございますけれども、反面今申し上げましたようなところについて仮にも手落ちがあるとすれば条約上の権利行使についてまた非難を受けることになりまして、それがまた、九〇年までに行われますモラトリアムの見直し、あるいは来年のIWCにおける生存捕鯨についての議論に影響することがあってはいけない、私どもさように考えておるわけでございます。そのような観点もひとつ御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
○新盛委員 どっちなんですか、調査捕鯨、やるのですかやらないのですか。
○佐竹政府委員 これは、先ほど来大臣から再三お答えいたしますように、中止勧告があったからといって断念するわけにはまいらないわけでございます。(「やるしかない」と呼ぶ者あり)
○新盛委員 そうしますと、お声がありましたが、やるしかないのですよ。今漁期においてやるのかやらないのかとお聞きしているのです。大臣、これは大事なところですから、当然決議もしなければならない問題でもありますから、ぜひひとつ明確なお答えをいただきたいと思うのです。
○加藤国務大臣 先ほど来お答えいたしておりますような基本的な考え方を持っておるわけでございます。そして、私たちはさまざまな観点からこの問題は検討し、総合的に判断して、そして国際的に日本に対する非難が一層その風圧を増さないような配慮、検討がぎりぎり必要であると考えておるところでございます。
○新盛委員 大臣、それはどうも不満ですね。あなたもいろいろ苦労されていることはわかるのですが、先ほど水産庁長官の、いろいろな検討も加えてと、これは我が国の捕鯨に関する科学的な調査、鯨を研究する国内の科学者の英知を集めた結論が、調査捕獲はミンクが八百二十五頭、マッコウが五十頭、計八百七十五頭でございます。それを一つも下げられない、頭数を下げたら日本の科学者は恥をかく、それぐらい言い切っておられる。これはお名前を申し上げましょう。東京水産大学の田中教授が、この間自民党を初め超党派での捕鯨議員懇話会で明確にお答えになっておられます。それぐらいに責任を持って、頭数を減らすなどということは考えてもいないし、また国際信用にかかわることである。一たんIWCに発表した頭数を減らしてやるなどということになればこれは大変なことになるのですね。だからそんなことはできませんよ。そういうことも含めてこれから先、本漁期に調査捕獲をやる。やるけれども、いろいろ国際世論の関係、次のIWC、来年のアメリカでの第四十次のIWCでどういうふうになるかわからぬからここのところは待ってくれといったらいつできるのですか。やるのですか、やらないのですか。
○加藤国務大臣 先ほどお答えいたしたとおりでございます。
○新盛委員 それは答弁にならないですよ、本当に苦痛はわかるのですが。
 実はここに自民党の政務調査会水産部会の資料がございます。これは捕鯨に関する決議です。「条約上の当然の権利に基づき今漁期から鯨類の捕獲調査の実施に向けて最大限の努力を行うこと」、これは冒頭に「国際的理解を得つつ、」というふうになっていますが、内容的に見てまさしくそのとおりだ、それは最大限の努力をするということ、これは今まさに鯨文化がつぶれるかつぶれないか、調査捕獲ができなくなれば完全にシャットアウトを食らいますよ。そういうことなんですよ。だから、私ども野党も本当に、これは一緒になって日本の捕鯨を守るために全力を挙げようじゃないかというので、恐らく明日の農林水産委員会で特別決議をされるのでしょう。満場一致でなると思います。そういう雰囲気の中ですからぜひひとつ大臣やりましょう。理不尽な条約の面における拘束はもう受けない、また国際法上、先ほど外務省の解釈においても政府の統一見解においても何ら支障はないのですから、ぜひひとつここのところは踏み切っていただきたい。
○加藤国務大臣 午前中来のお答えで申し上げておりますように、政府として最大限の努力をするのは当然のことでございます。しかしながら、国際的ないろいろなことを判断し、あるいはまた我が国の捕鯨そのものの将来のことも十分に考えて打つべき手は打つ、また言うべき点は十分に言わなくてはならないときに来ておるわけでございます。現在も八方手を尽くして努力をいたしておる最中でございますので、私としては先ほど申し上げましたお答えから前へ出ることはできないと考えておるところでございます。
○新盛委員 ちょっと新聞でも見たのですが、きょう、あすの農林水産委員会の決議があれば、この決議を基礎にして政府は調査捕鯨に踏み切る、そういう報道も一部なされているようですが、これはどうなんですか。あなた方は政府としてやりにくい、しかし、農林水産委員会超党派で決議をしました、その上に乗っかればアメリカだって、アメリカの政府の方はまあまあと言うのだけれども、上院、下院はやかましいですね、ココム事件にしても何にしても。議会がどんどんこうして騒いでいるのです。我々だって立法府なんですから、我々がここできちっと態度を超党派で決めよう。その決議をしたらそれに乗っかって皆さんやりやすくなるのではないですか。それも言えないのですか。もし決議をしたら前向きに踏み切る、これはどうですか。
○加藤国務大臣 当農水委員会が独自の見解と立場に立って御決議をされるということは固有の権限でございます。ただ、政府がそれに乗るとかそれに乗らないとかということではなくして、議会の、立法府のそういう決議、意思を体してさらに馬力をかけることは政府として当然のことでございます。
○新盛委員 ようやく先が明るくなりました。それで、決議を台にしていただいてこれから最大限の努力をしていただく。これは今漁期で解決をしなければならない問題ですから、これはひとつ花の大臣として、まさしく鯨が潮を噴いたように、本当に先が見えるようにしていただきたい、これは御要望申し上げます。
 続いて大型捕鯨のことでございますが、小型生存捕鯨あるいは母船式調査捕鯨、こうしたものはもう既に今まで議論しましたが、沿岸の大型捕鯨のことについては陰に隠れて余り議論されておりませんが、今マッコウを二百頭とっているわけであります。この大型捕鯨を今後どういうふうにするのか。これは来年三月で商業捕鯨は終わることになるわけでありますが、このあたりはニタリをとったりいろいろあるようですけれども、このことについてどうお考えか。これもまた調査捕鯨でいくのか、生存捕鯨でいくのかということになってくるのですけれども、政府の考え方をお聞きしたい。
○佐竹政府委員 ただいま御指摘の沿岸大型捕鯨でございますが、これは捕鯨船五隻でございまして、漁期は四月から九月までがニタリクジラ、十月から三月まではマッコウクジラをとります。ニタリ三百十七頭、マッコウ二百頭を捕獲しているわけでございます。
 この操業の実態、それから捕獲しました鯨の処分方法等から見まして、これを生存捕鯨の範疇に属するものとして生存捕鯨を構成することは、現在IWCで認められております生存捕鯨、これはソ連、アメリカ、デンマークでございますが、三カ国に認められております生存捕鯨と余りにも実態がかけ離れることになりますので、生存捕鯨の範疇に属するということは難しゅうございます。したがいまして、残された道としましては、同じような調査捕鯨というふうにその必要性が客観的に認められるかどうかということでございますが、これにつきましては科学者の意見も聞き、それからまた関係者の意向も十分聴取いたしまして今後の対応策を検討してまいりたい、かように考えているわけでございます。
○新盛委員 次に、生存捕鯨への移行と補償についてですが、小型捕鯨については生存捕鯨へ移行するというのが考え方だろうと思います。IWCで引き続き検討することになっておりますけれども、見通しはどうでしょうか。また、今後の努力についてお聞かせいただきたいのです。
○佐竹政府委員 現在IWCの条約上認められているいわゆる生存捕鯨でございますが、これは先ほど申し上げましたような米国、デンマーク、ソ連について認められているわけでございます。今回のIWCの会議上でも問題になったようでございますが、我が国の提起した生存捕鯨と、既に認められた生存捕鯨とが一体どこが違い、どこが共通であるか。結局、定義がはっきりしないことが問題ではないかという意見が中国から出されたわけでございます。そのような意味で、定義をまず明確にすることも含めまして来年度に結論が送られたわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、これは附表の改正が必要でございます。捕獲調査の場合にはまさに八条の権利でございまして、これは先ほど来の御議論で明らかなように、まさに締約国の権利なわけでございますが、この生存捕鯨は附表の改正を四分の三の同意をとって行わなければならないわけでございまして、ことしの会議の雰囲気からいいまして、これは大変難しいことだとは思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、我が国のこの沿岸小型捕鯨の実態等をよく諸外国、加盟国に説明いたしまして、何とか生存捕鯨として認知されることができるよう、来年に向かって最大限の努力を尽くしていきたい、かように考えております。
○新盛委員 お願いします。
 それで、この生存捕鯨の補償の問題ですが、今小型捕鯨の漁期は来年の四月から始まりますね。来年五月にIWCがあります。この生存捕鯨への移行が認められたとしましても、四、五、六、この三カ月間の操業が中断されるのですね、実質的に。この間の休業補償というのは具体的にどういうふうに考えておられるでしょうか。
○佐竹政府委員 生存捕鯨が認知される、私どもはそのように努力するわけでございますが、もし認知されたとすれば漁期をある程度やりくりする、ずらす、おくらせることによって捕獲枠の消化は十分可能であるというふうに考えているわけでございます。しかしながら、来年度のIWCの結果を待ちまして、漁業者、乗組員等の対策についてはその段階でまた検討してまいりたい、かように考えております。
○新盛委員 いよいよ時間がなくなりましたので、最後にこのIWCの条約脱退を我々は考えなければならない、重大決意を持たなければならない。
 先ほど安井委員の質問に対して、慎重に対応したいというお答えがあるわけでありますが、独立国家の尊厳を傷つけられるような、まさに日本の捕鯨、鯨をとるのが悪い。自然保護団体、アメリカあたりは非常に盛んだそうですけれども、非常に悪いイメージを与えているのですね。日本は鯨をとる野蛮な国である、こんなふうなことで引っ込むわけにはいかないわけですが、IWCにおるからそういうイメージダウンがなされていると思うのであります、逆に言えば。だからこんなところは早く脱退をして、これから思い切って科学的な調査を初めとして捕鯨をする国、そしてまた食文化としてもあるいは経済の面においても役立たせる国、そういう国と我々が条約を結んでやれぬことはないじゃないか。何もアメリカ主導だけのIWCじゃないじゃないか、極論すればそこまで来るわけであります。そういうことを真剣に考えていかなければ慎重ということにはならないのでありますが、大臣どうですか。具体的に私はそういうふうにしてだんだんIWCの方から遠ざかっていく、国際条約ですから、我々だって独立国家としてそういう条約を別途つくったっていいじゃありませんか。それぞれの国々が賛成をしてくれるならそれだけだって一つの大きな力になるんじゃないですか。お考えを聞かせてください。
○加藤国務大臣 我々が今後いろいろな模索をし、選択をし、そしてそれに従って決定していくといういろいろな選択の幅はあるわけでございます。新盛委員がおっしゃいましたそういう考え方もあるわけでございますけれども、先ほど来お答えいたしておりますように、脱退ということは内外に与える影響というのも非常に大きいわけでございますし、さらに日本に対する非難、攻撃が強くなる可能性もあるわけでございますので、そういったもろもろの要素を総合的に判断しながら慎重に検討してまいりたいと思います。
○新盛委員 もう大臣の慎重にという話になると、どうもさっとカーテンがおりてきたようなあんばいで暗くなるのですよ。カーテンをあけましょうや。前向きに検討するというのは政府答弁でよくあるのですが、それでも救いようがありますよ。本当に慎重に慎重にというのは、どこまで続くのかわかりませんけれども、ぜひひとつ大臣がおられるときにこうだったという歴史に残る所作を、政策を見せていただきたいと存じます。
 時間があと三分ですが、母船式サケ・マス問題で少し触れさせていただきたいと思います。
 これはもう御承知のように日米加漁業条約によって、日本の母船式サケ・マス漁業が東経百七十五度以西の米国海域では操業できることになってはいるのですが、米国には海獣保護法というのがありまして、ことしの六月に日本船によるオットセイの混獲許可をめぐって裁判を行ったわけでありますね。日本の母船式サケ・マス漁業は、漁期途中の七月十四日に結局は米国地域から撤退せざるを得なくなったのですが、ことしの漁期は何とか乗り切りましたけれども、これから先、一体どうなるのでしょうか。私の方は独航船でもやってもらいたいというようなことも考えるのですけれども、この経過と今後の対策について最後にお聞かせをいただきたい。
○佐竹政府委員 米国の二百海里内で操業いたします母船式サケ・マス漁業でございますが、これにつきましてはアメリカの海産哺乳動物の混獲許可証の保持がアメリカの法制上必要とされておるわけでございまして、本年五月二十二日に、本年の漁期以降三カ年の混獲許可証が漁業者に発給されたわけでございます。ところが、この混獲許可につきましてアラスカの原住民、それから環境団体が、そういう混獲許可は違法であり無効であるということで、米国政府を相手にいたしまして、地裁に対し母船式サケ・マス漁業の操業の差しとめを暫定的に求める訴えを提起したわけでございます。この訴えが地裁で認められまして、法律的には一時我が国の母船式サケ・マス漁業の二百海里内での操業がことしもできなくなるのではないかというおそれが出たわけでございますが、幸いこれにつきましては米国政府と、それから我が国日鮭連から差しとめをまた暫定的に差しとめる訴えを提起いたしました。これが認められて本年の操業ができることとなったわけでございます。しかしながら、これは三年間の許可が争われておるわけでございますので、来年の漁期に向けて、高等裁判所におきましてそもそもその許可の有効性について争われるわけでございますが、私どもといたしましてはINPFCの協力、それからまたアメリカ政府と一緒になりまして、この許可の有効性を主張して来期以降の操業が確保できるように努力してまいる考えでございます。
○新盛委員 質問を終わります。
○保利委員長代理 吉浦忠治君。
○吉浦委員 私、本日の最後でございますので、よろしくお願いいたします。大臣、お疲れのようですけれども、ひとつよろしく。
 最初に、大臣に二、三問食文化についての論議をお願いしたいと思います。
 イギリスのボーンマスで行われましたこのたびの国際捕鯨委員会の会議の内容を伝え聞きますと、もはやIWCは国際機関としての体をなしていないのではないかというふうに強く感ずるわけであります、本来IWCは、国際捕鯨条約に基づきまして鯨類の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展を図るべき機関であるわけであります。にもかかわらず多数の非捕鯨国が不明瞭な形で参加をいたしております。科学的論議をよそに、数の力で捕鯨国の意向を踏みにじる前時代的あるいは感情的運営に陥っているのであります。国際関係は相互に文化を異にすることを認め合いながら問題点について論議を積み上げ、得られた結論を前提としてまた新たなる問題点の論議を重ね、相互信頼を確立していくものであるというふうに私は思うわけであります。そうした当然と思える前提さえもほごにされてしまうようなことが行われていることはまことに遺憾であります。特に、鯨に対する文化の違いがあることが前面に出てきていないのは非常に残念なことでありまして、単に食文化だけでなく、その根底にある哲学が全然違うところに問題があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。今回捕鯨についての集中審議ということで、まずこの点を明らかにして議論を進めてみたい、こう思うわけでございます。
 ここに和歌山県太地町、私ども本年六月に当委員会で視察を行ったところでございますが、太地町の要請書をいただきました。これによりますと、
 太地町は我国捕鯨発祥の地として、約七百年の歴史を有し、その伝統は今日まで継承されるとともに、現在なお町全体の就業人口の約一七・六パーセントが捕鯨産業(関連産業を含む)に従事しております。捕鯨発祥の地として、古くから私達の先人が、幾多の困難をのりこえ築き上げた捕鯨産業は、多くの鯨文化を生むとともにかけがえのない産業として地域社会の発展に数限りなく貢献してきたものと自負するところであります。太地町民の鯨に対する限りない情熱、伝統への誇りは太地町民の力の源泉であります。こういう要請書をいただきました。このことはひとり太地町のみならず、私の地元の和田町もございます。山田あるいは鮎川、釧路、網走、小笠原母島の関係者、従事者にとって等しく伝統への情熱を持つものであります。
 我が国の場合、欧米諸国のように鯨を人間と対立するものと考えてはいないのでありまして、自然と一体の存在ととらえ、自然の摂理等に従って捕鯨をし、自然界の賜物として尊敬を払い、余すところなく利用して、最後にはお墓までつくってその恩恵に感謝をするという伝統に支えられてきたものであります。だから、我が国捕鯨の場合に、乱獲というものは一時期を除いてはなかったのであります。その一時期も決して我々が招いたものではないわけであります。鯨について人と対立するものとしかとらえられない哲学の持ち主だちが、鯨油をとるといったその資源の一部を利用するためにのみ盛んに捕鯨を行ってきたからにほかならないのでありまして、そこには鯨に対する尊敬も感謝もなく、ただ殺しまくったのはその方々ではなかったのか。そうした過去の歴史を顧みると、その責任を現在の捕鯨国になすりつけようとするやり方に私は憤りを感じているわけであります。大臣、この哲学の違いについてどのように考え、今後この交渉に当たってそれを反映させていかれる所存なのか、まずこの点を伺っておきたいと思うのです。
○加藤国務大臣 今回のIWCの会合がある前にも、私は省内において随分議論をいたしたときにも、ただいま吉浦委員がおっしゃったことと実は同じようなことを強く言ったわけでございまして、鯨博物館があり、鯨と人間との絵というのも古いのがたくさんある、あるいはお宮やお墓や社まである。ここら辺のことをIWCにおいては強くはっきり言うべきであるということ等々を言ったわけでございます。
 また反面、ただいま吉浦委員もおっしゃいましたが、我が国は長年にわたり鯨を食用資源として利用してまいりました。西欧は主に鯨油として利用してまいりました。このような鯨とのかかわり合いとの違いというのが、ある面で言いますと、今日鯨を利用しなくなった西欧諸国が鯨を自然保護の対象としてのみ考える、そして捕鯨に対する我が国との倫理観の違いということになっているのではないかと考えられるわけでございます。このような倫理観の違いを他国に押しつけるということは極めて遺憾なことであり、我が国としては、このような問題は先ほど来議論しておりますように、科学的に解決することが重要であると考えております。
 そして食文化という点にもお触れになりましたが、食文化というのは、その国の長い歴史及び自然環境によって形成されてきたものでございまして、我が国において、先ほどのお話にもございましたように、鯨は、地域社会で引き続き根強い食習慣があると理解しております。このような食習慣は、他人に迷惑をかけるものでない限り、他国の倫理で制限されるものではないと考えております。
○吉浦委員 太地が七百年の伝統を誇られておりますけれども、我が国の鯨とのかかわりはさらにさかのぼることができるほど関係が深いわけでありまして、我が国の食文化内に鯨の占める比重というのは非常に高いと言わなければならないと思うわけであります。特に戦後の食糧難時代に鯨なかりせばたんぱく源の補給はおぼつかなかったのでありまして、戦中戦後組はひとしく鯨に感謝し、また郷愁を感じているのであります。鯨カツなりあるいは鯨の南蛮漬けあるいは焼き肉、大和煮等々最近は高価になり、なかなか口に入らなくなった。セーブ・ザ・ホエールということは、こうした我が国の食文化に対する重大なる侵害であります。
 俗に食い物の恨みは恐ろしいという言葉がありますけれども、米国は戦後の進駐時に、よかれあしかれではありますが、種々の施策を行いました。民主主義と基本的人権の尊重等を残しましたけれども、食文化を強制するような野蛮な行為は行わなかったと私は信じております。例えばイスラム教徒に豚肉を強制したらどうなりますか。またヒンズー教徒に牛を食えというふうに強制したら、彼らは多分武器を持って戦うのではないですか。それほど重大なことを彼らはしておるということを、重大な決意を持って私は行動に訴えることも辞さないというふうに訴え続けたいわけであります。多分、他に代替するものが幾らでもあるではないかという意見もなくはないと思います。しかし、他に代替ができないのが食文化の食文化たるゆえんでありまして、大臣、この鯨文化についての見解をもう一度伺っておきたい。
○加藤国務大臣 今吉浦委員のおっしゃいましたのと同じで、私も若いころ鯨ステーキを食べ、あるいは鯨のさらしに酢みそをつけたあのおいしさを今思い出しておるところでございまして、東京都内にも二、三軒そういう店がありまして、そこへ行って食べた。そして我が青春を鯨肉によって培ってもらった思い出を思い出しておるところでございます。また、ヒンズー教徒、イスラム教徒あるいはヒンズー教、イスラム教の外国のそれぞれの国の国賓が我が日本へ来られたとき、あるいはまた私自身が訪問したとき、その戒律の厳しさというもの、そしてまたその戒律に従って食生活を律しておる、そこら辺にはある面ではいろいろな問題を考えさせられるわけでございますが、しかしそれが当たり前であり、また当然であるというような考えのもとに、そういった倫理観の上で生活をされておる方々というものを多く見てきておるわけでございます。先ほどお答えしましたように、他人に迷惑をかけない限り、その国の食生活、その国の倫理観というものは、これは当然尊重し、守っていかなくてはならない問題であると考えます。
○吉浦委員 特に問題なのは、この鯨肉が学校給食の場で使用されなくなってきているということでありまして、福井県のある養護学校の栄養士さんの書かれた本を見ますと、昭和四十年代、安くて栄養価の高い鯨肉は月に一回は使用されましたが、五十年代になると鯨肉の献立は学校給食のメニューから徐々に消えていきました、こういうふうに記されています。義務教育制度を採用している我が国にとって、食文化の中の学校給食の位置は高いと言わなければならないというふうに思います。学校給食はいろいろ批判される面も多々あるとは思いますけれども、それだけまた関心も高いわけでありまして、鯨肉が使用されなくなっている現実をどう考えておられるのか。給食から鯨肉が消えるということは、鯨というものは食べるものではないという教育をしているに等しいのではないかと思うわけでありまして、鯨を食べて育った世代としてはその辺気になるところであります。また、使用したくても鯨肉が高いので使用しないようにという指示も出ているとも聞いているわけでありますけれども、この点、文部省はどう考えておられますか。
○石川説明員 先生今御指摘の点でございますが、学校給食においては、お話のように食習慣の形成ということが教育的な意義として大変重要なことであるというように考えておりまして、このような観点から、我が国の食文化の継承といいますか、広くそういったことができるように十分配慮してきておるところでございます。
 御指摘の鯨の肉ということに関しましても、御承知のように戦後の我が国の大変厳しい食糧事情の中で貴重な動物性のたんぱく源であったというようなことを踏まえまして、学校給食の献立におきましても大変大きく活用してきたという経緯がございます。特に現在、学校給食におきましては食文化というような観点を含めまして御飯の給食というものの普及を大変推進しておるところでございますが、その際参考の献立集というようなものをつくっておるわけでございますが、そういう中でも鯨のお肉を使った献立というものを幾つか含めまして、その使用というようなことは考えてきたという歴史がございます。
 しかしながら、先生もお話しのように、外洋捕鯨の制限というようなことから今日では鯨の肉の供給量そのものが大変少なくなってきた。また価格面でも、従来の低廉お価格というものが維持できなくなってきたというようなことを背景といたしまして、大変残念なことではございますが、御指摘のように年々鯨の献立というものが減少してきておるという実態でございます。
○吉浦委員 文部省、結構でございます。ありがとうございました。
 ところで農水大臣、今子供たちの学校給食から鯨肉が諸般の事情で使われなくなってきている現実がおわかりになったと思うのです。よき伝統というものは親から子供に、あるいは子から孫にというふうに伝えなければならないと思うわけであります。親は鯨の恩恵に浴して育ち、その子は諸般の事情で鯨肉を食べることが少なくなった、次に孫は全然鯨を食べることがないというふうにこれはなりかねないと思うのです。それこそ、鯨は食用として利用すべきではないという反捕鯨団体の思うつぼにはまる結果になりはしないか、こういうように思うわけでありまして、捕鯨に造詣の深いC・W二コル氏は次のように言っておるわけであります。「各国の捕鯨反対者は、日本を標的に据えてのキャンペーンで途方もない成功をおさめた。ただし、鯨を救うことにではない。恐ろしく強大な職業的抗議団体をこしらえ上げることにである」、こういう文章を書いております。こうした反捕鯨団体の強力なるプロパガンダの前には、理と法を持って対処するのみでは我が食文化を守り切れないのではないかと私は思うわけでございまして、このまま手をこまねいていれば、子供たちに、鯨を食べることは悪いことなのだ、野蛮な行為なのだというような観念を植えつけられるし、後世代に禍根を残すことになりはしないかと心配をいたしております。だから、私たちはかようなことに絶対にならないように断固たる決意を持たなければならないというふうに思うわけでございます。学校給食と反捕鯨団体のプロパガンダに対する大臣の感想を伺っておきたいのです。
○加藤国務大臣 先ほど文部省の方からお答えいたしたわけでございますが、鯨肉の供給量が少なくなるということ、あるいはまた高価になるということ、ここら辺の問題は問題としてあると思うわけでございます。私も国務大臣として学校給食には重大なる関心を持っております。また、農林水産大臣としましても、子供に鯨肉の味というもの、感触というものを味わわしてあげたい、こういう気持ちはいっぱいでございますが、またそれに加うるに、米の消費拡大も学校給食でやらなくてはならぬし、牛乳の消費拡大もやらなくてはならない。いろいろな問題点、立場があるわけでございますが、要はおいしくて安いもの、そして日本型食生活の一つのパターンを守りながら学校給食というものを維持発展さしていかなくてはならない。
 また、反捕鯨団体のいろいろな動き、問題、あるいはまた、日本の捕鯨に対して国際的なそういう問題がつくり上げられたことに対する感想をというお話でございます。率直に申し上げまして、いろいろな感想があります。日本の首脳がアメリカへ行きますと、ホワイトハウスの周りに鯨の風船を持ってきてやるという運動をやったり、あるいはまた、オークランドへ行きますとグリーンピースの皆さん方が沈めた船をオークランドの港の一番重要なところへ展示して、これ見よというようにやっておったり、いろいろな感慨があるわけでございます。自然環境の保全ということと反捕鯨ということとは、そういう面でおのずからの相違もあるという気持ちは持っておるわけでございます。先ほど来おっしゃっておられます我が国の食文化あるいは長い歴史と文化と伝統、こういうものを踏まえながら、より国際的に我々の考え方を理解し納得をしていただくように、さらにさらに頑張らなくてはならないという感じを強く持っております。
○吉浦委員 次に、水産外交の姿勢についてお尋ねをいたしておきたいと思いますが、先ほど同僚議員の方からも厳しい追求がございましたけれども、私も変わった点でお願いしたいと思います。
 我が国の外交を見て感じる点は、問題が起こるとその問題点を徹底的に掘り下げて議論するのではなくて、諸般の事情を考慮しつつ押されるがままに譲歩に譲歩を重ねるという傾向が多分にあったのではないかというふうに思うわけであります。これが日本たたきという傾向を助長したのではないかというふうに思うわけでありまして、日本はたたけばたたくほど譲歩するという観念を相手国に持たせたのではないかというふうに思うわけであります。水産外交の歴史が端的にそれを物語っているというふうに私は思うわけであります。例えば日米交渉に当たって、かつては百万トン以上もあった漁獲量が今ではもう限りなくゼロに近い、こういうふうに抑え込まれているわけです。IWCのモラトリアムにしても、米国内法のPM修正法のおどしが異議申し立てを撤回するという形で商業捕鯨からの撤退を余儀なくされているわけでありまして、私はこれはまさに譲歩の歴史であったというふうに思うわけです。これでは我が国のたんぱく源を確保する漁業を発展させることはできないのでありまして、中曽根総理は訪米の前に水産庁長官を呼ばれて、調査捕鯨の頭数はアメリカにアンフェアと思われないような数字にしようというふうに指示されたと巷間言われておるわけでありまして、この話を聞いて私は、総理は我が国捕鯨産業のことを何一つ存じておられないのじゃないかと思うわけであります。
 日米外交とはアメリカの言うことを聞くだけではないはずであります。自民党の二階堂氏、聞くまでもありませんけれども、総理のアメリカ一辺倒に対し批判をして、外国に言うべきことは言わなければならない、こう言われております。ボクシングに例えますと、殴り合いのけんかをして初めて友情が生まれるという言葉もあるわけであります。アメリカはそういう国ではないのか、私はそういう点からすると、ノーはノーというふうにはっきりと言うべきじゃないか、できないことはてこでも動かないという態度が今こそ必要なときではないか、こう思うわけであります。
 先年、イギリスで開催されましたIWC総会の席上で、日本の立場を穏やかに訴えておられた我が国代表が、鯨の血と称する赤いインクを全身に浴びせられた、そういう姿をテレビで拝見をいたしました。これは我が国代表に対する悪らつな侮辱でありまして、我が国政府はこのときどういう態度をとったのか。また、日中国交回復がなされていない当時に、日中貿易交渉を行っているときに、会議が終了したと勘違いした職員が国旗をおろすという誤りがありました。こういう悪意のないケアレスミスでありましたが、この事件のために数年貿易がとまったというふうにも聞いておるわけであります。
 この事例からすると、悪意に満ちた侮辱は、我が国をしてIWCを脱退してもおかしくない事件ではなかったのか。我々はこの事件を絶対に忘れてはならないというふうに考えますし、IWCがこれ以上その持つ本来の使命を忘却するようなことがあれば、相当な決意をしなければならないと考えるわけであります。その点、どういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたい。
    〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
○加藤国務大臣 過去にIWC年次会合におきまして、我が国代表が環境保護団体の者から礼を失する取り扱いを受けたことは、今おっしゃいましたように確かにございました。かかる事件に対しまして、政府といたしましては開催国であるイギリスに対し厳重な抗議を行うとともに、我が国代表団の身辺安全確保に対する要請を行ったところでございます。かかる事態というのは、IWCをめぐる情勢の一端を示すものではありますけれども、我が国といたしましては、国際捕鯨取締条約そのものの問題ではなくして、IWCの運営に問題があると考え、午前中にもお答えしましたが、本年のIWC年次会合でIWC出席者資格要件の強化を提案し、受け入れさせたところでございます。どうぞそこら辺をよろしく御理解いただきたいと思う次第でございます。
 なお、中曽根総理が云々というお話がございましたが、水産庁長官にそういう御指示はなかったわけでございます。あるとするならば私にあるわけでございますが、そういうことはなかったということを、この席をおかりしましてはっきり申し上げておきたいと思う次第でございます。
○吉浦委員 調査捕鯨について若干お尋ねをいたしたいと思います。
 IWCの今回の会議の焦点は、まさにこの調査捕鯨にあったわけでありまして、我が国が提出していた資源把握のための調査捕鯨計画についてIWC科学委員会が疑念を解消しない限り実施は認めない、こういう勧告決議が採択されております。今日のIWCの大勢から見て、事実上の中止を迫る内容となったのでありますが、参加をされました代表の斉藤コミッショナーも、IWC科学委員会は反科学的、反法律的であり、非常に失望したというふうに抗議をされたそうでありますが、私もまさしく同感でありまして、このIWC決定を絶対に容認することができないというふうに考えるわけであります。
 そこで、そもそも調査捕鯨とは一体何であったのか。我々は、IWCに加入しているのは、IWC条約に基づいてIWCが運営されることを保証されているから加盟をしているのであって、条約はいわば憲法であります。憲法に抵触する法律は無効であることは道理であると考えるものでありまして、条約第八条に規定される調査捕鯨は、捕鯨の主権に基づく科学的研究のためと限定してありますが、明確に規定をいたしているところであります。また、一九四六年の国際捕鯨会議において、アメリカは科学調査捕鯨に関する第八条を含む提案を会議に提出し、その結果第八条には二項が挿入され、全会一致で採用されたという経緯があるわけであります。条約の第八条の締結政府の権利は、主としてアメリカが中心となって提案され、作成されていたものであることは明白であります。ところで、いわば憲法と言うべき第八条に抵触する勧告決定というものの効力はいかなるものというふうに政府は考えておられるのか、この点をまずお答えいただきたい。
○佐竹政府委員 八条に基づく調査捕獲の性格については、既に先生から御説明のあったとおりでございます。これはまさに条約上の権利、締約国の権利でございます。
 一方、第六条には、「委員会は、鯨又は捕鯨及びこの条約の目的に関する事項について、締約政府に随時勧告を行うことができる。」こういう規定があるわけでございまして、この六条と八条の関係をめぐりまして、今回のIWCの会議の席上でも日本及びアメリカの意見が分かれたわけでございます。六条の勧告で、特に日本に対する勧告につきましては、ただいま先生も御指摘ございましたように、実質的な中止勧告であるということでございまして、形式上はアンサーティンな部分が解明されるまで延期せよということでございますので、一応六条に基づく勧告として有効であるというような解釈も成り立たないわけではないというふうに考えておるわけでございます。
○吉浦委員 その第六条による勧告権によって第八条の権利を正当に制限し得るかという問題が出るというふうに思いますが、勧告というものは説き勧めることであるわけであります。勧告権者のなす勧告というのは通常尊重して評価され、検討されはするものの、それ自体法的強制力を有するものではないとされているものであります。したがって、その勧告に従わなかったからとして、法的には何らの制裁及び不利益を受けることはないというふうに解されるわけであります。そうした勧告に基づいて八条の調査捕鯨の権利が、相手の自発的受け入れなしに正当に制限されないことは自明の理と言わなければならないというふうに私は思います。勧告という法的強制力を有しない権利に基づいて現に付与されている権利を否定するような自己矛盾は、法の立法趣旨、目的からも容認されないところと確信するのであります。したがって、この条約に反する勧告は条約で認められた勧告と言えないわけでありまして、法的効果は有しないというふうに私は解しますが、政府の見解はどういうふうにお持ちなのか。
○佐竹政府委員 六条の勧告に基づきまして八条の権利の行使が制約されないということは、これはもう先生のおっしゃられるとおりでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたが、それでは六条は無効であるかということになりますと、特に我が国に対する勧告は、その不明確な部分が解明されるまで一時延期せよという勧告でございまして、そのような観点から見ても、六条の勧告としてIWCの条約上全く無効であると言い切れるかどうかということになると、やや問題が残るように考えております。
○吉浦委員 キャリオ提案に基づく調査中止勧告決議は、八条に定める締結政府の権利を否定せんとする内容の決議であります。調査中止勧告決議からは、第八条の締結政府の権利を尊重しようとする姿勢は全く見られないものであると考えているわけでありまして、かかる調査中止勧告決議はIWC条約に違反する決議でありまして無効であります。ここからは締結政府を法的に拘束するようなものは一切ないと解釈するものでありますが、この点、政府はどのような見解を持っていらっしゃいますか。
○佐竹政府委員 確かに一つの御見解だと思うわけでございますけれども、先ほども御説明したような理論構成も可能でございますし、一応IWCの会議の席上正規の手続を経て決められた議決でございますので、これを全く無効である、効果がないというふうに言い切れるかどうかにつきましては、これは条約の解釈の問題でございますので、正確には外務省からお答えいただかなければいけないかと思いますが、水産庁としても、そこまで言い切れるかどうかという点については、先ほど来申し上げましたように問題点が残るのではないかというふうに思うわけでございます。
○吉浦委員 この調査中止勧告決議を提案したイギリス及びこれに賛成した諸国も、当然この条約の遵守義務を負っているわけであります。かかる条約遵守義務に違反する行為が平然と行われることがまかり通っていること自体異常と言わざるを得ないと思うわけでありまして、我が代表はこの点を指摘されたのかどうか。私は、アイスランドのIWC委員で漁業大臣による声明文を読みましたが、非常に明確に指摘をしている態度に感銘を受けた者の一人でありますが、言うべきことははっきり言われたのかどうか、お答えをいただきたい。
○佐竹政府委員 私は斉藤コミッショナーから、その点は明確に指摘したというふうに聞いておるわけでございます。
○吉浦委員 次に、米国内法でありますパックウッド・マグナソン修正法について伺っておきたいと思います。
 この法律があるためにIWC勧告というものを無理やりに導き出して、八条の締結国政府の権利を強引に封じ込めようとしているわけでありますが、この修正法をよく読みますと、「国際捕鯨取締条約の効果を減殺するような漁業活動、貿易または捕獲を直接あるいは間接に行っている外国について、その旨商務長官が証明した場合、国務長官は商務長官と協力して当該外国に与えられた割り当てをその時点で五〇%以上削減する。その後一年間を経過して上記証明が取り消されない場合、残りの割り当ても取り消される。」こうされておりますが、私は、調査中止勧告決議は無効なものでありますから、PM修正法の発動はあり得ないというふうに考えるものであります。仮に米国政府が証明を出し、割り当てを削減するようなことになれば、その時点で米国内法に基づいて行政訴訟を起こして戦うこともできるというふうに考えるわけであります。勝訴は法的意味からも十分に確信できるものではないかというふうに考えますが、この点政府はどのようなお考えをお持ちか。
○佐竹政府委員 キャリオ提案が今IWCの会議に提起されたゆえんは、まさにこのパックウッド・マグナソン法の発動要件を明確にするためというふうに私どもは理解しております。したがいまして、IWCの第六条に基づく勧告がなされたにもかかわらず、ただいま先生が読み上げられたような条文に該当するような行為を行った国に対しては当然これを発動すべし、発動するという解釈にアメリカ側は立っているわけでございまして、もちろんそのような行政運用に対して日本側から訴訟が提起できるかどうかという問題は確かにございます。たしかアメリカの法制ではそのようなことも可能かと思いますが、一応一時的にはアメリカの行政庁に、アメリカの法律でございますからアメリカの商務省に法律の解釈権がございます、後ほどそれは訴訟では争えることはあろうかと思いますが。したがって、彼らは絶対この法律があり、かつキャリオ提案がなされている以上、六条の勧告として日本に対して延期勧告がなされている以上は、このパックウッド・マグナソン法を適用して日本に対する漁獲高割り当てを減らすことは、まさにこの法律の精神に沿うものであるとアメリカの商務省は解釈しているものと考えております。
○吉浦委員 午前中の参考人質疑において、日本捕鯨協会の稲垣理事長、全日海の土井組合長、それから長崎先生等の意見を拝聴いたしたわけでありますが、我が国捕鯨産業の危機まさにきわまれりという感を強くしたわけでありまして、もはやその逡巡は許されない。失うべき何物もないのではないかというふうに思うわけです。米国は自国の二百海里から我が国漁船を追い出す政策を現にとっているわけでありまして、今は以前と比較して限りなくゼロに近い数量を甘んじて受けている状態でありますから、もうまさに失う物は既にないと言ってもよいのではないかというふうに思うわけであります。
 ここで調査捕鯨を政府は諸般の事情を考慮して断念するようなことになれば、重大な結果を招くことは間違いないと思うのです。先ほどから出ておりますように、今漁期できないものがどうして来漁期できるか、その保証はないわけでありますから、今漁期やらないということは永久にやらないということに等しいと思うのです。この点、政府の決意を、これは大臣からお聞きしたい。
○加藤国務大臣 先ほど来お答え申し上げておりますように、我が国としては断念するわけにはいきません。そして、最大限の努力を行いますということを申し上げておるわけでございまして、吉浦委員にもその点を申し上げておく次第でございます。
○吉浦委員 一部から、主権に基づく調査捕鯨ではなくて、IWCかあるいはFAOが行うこととし、その委託を受けて我が国が実施するようにしたらどうかという意見もあるわけでありますが、こういう状況では現実性がないように思うわけでありますが、長官、この点はどういうふうにお考えでいらっしゃるか。
○佐竹政府委員 IWCがみずからその調査を実施するということは、IWCの性格その他から見まして、これは現実性がないものというふうに考えておりますけれども、何らかの意味でFAOにこの調査に関与してもらうということは、日本の調査捕獲が疑似商業捕鯨ではないということを明確にするための一つの手段であろうかと思うわけでございまして、これはFAO側の意向もあるわけでございますが、その可能性については私どもはなお探ってまいりたい、かように考えております。
○吉浦委員 次に、生存捕鯨について伺っておきたいのです。
 これに対して我が国は、我が国小型捕鯨の歴史、実態、また地域における必要性について説明をいたしたわけでありますけれども、あるいはその原住民生存捕鯨にかわる第三の道を提案しなければならないと思うわけであります。中国等による原住民生存捕鯨の定義を明確にすべしとの提案が受け入れられて、門前払いだけは回避することができたというふうに聞いております。科学委員会の中に分科会を設けて来年の総会に報告されることとなっておりますが、小型捕鯨業の和田町でありますとか鮎川でありますとか釧路、網走にとっては存亡の危機となったのであります。次期総会までその結論が保留されることで、来漁期の四月、五月、六月は確実に漁ができないことになったわけでありますが、この点は早急に対策を講じなければならない問題であるというふうに考えます。この点、どう対処されるおつもりなのか。また、斉藤コミッショナーをして指一本ひっかかったというふうに言わしめましたが、私は、次期総会までに外交努力を初め、いろいろとやるべきことがあるのではないかと思うわけであります。政府の特段の努力を期待したいと同時に、どう進められるのか、この点伺っておきたいのです。
○佐竹政府委員 生存捕鯨については、これは条約上明確に認められているわけでございまして、その実例としましては、米国のアラスカ、デンマーク、ソ連でございます。したがいまして、我が国が生存捕鯨として我が国の沿岸捕鯨を認知してもらうためには、既に認められている三つの事例と同じような性格のものとして構成していかなければいけないと思うわけでございまして、例えば捕獲頭数とかその流通の実態とか、あるいはそれによる利益の分配方法とかそういうものを、既に認められている三つの例と同じように構成していかなければいけないわけでございます。私ども現在出している案について、さらにそういう観点から詰めてまいりたいと思うわけでございます。
 それからまた、これが条約上認知されるためには、これは調査捕獲と異なりまして附表の修正が必要になるわけでございまして、そのためには四分の三の同意を獲得しなければならないわけでございます。これは、現在のIWCの雰囲気からいいまして大変難しい問題ではございますけれども、先ほど申し上げましたような作業、つまり既に認められているものと全く同様であるというふうに構成することによって加盟国の理解を深め、正式に認知させるように、来年の総会までの間に努力してまいりたい、かように考えている次第でございます。
○吉浦委員 鯨の輸入について伺っておきたいのですが、我が国は、国際捕鯨取締条約を誠実に遵守する意味から、その規制の外にいる諸国から、一部海賊捕鯨が横行している事実にかんがみて、鯨肉の輸入を禁じているわけであります。昨今、IWC未加盟の台湾から密輸入がなされたという事件は、このIWC条約を遵守している我が国にとって非常に残念なことであります。我が国の捕鯨について悪意を持った反捕鯨団体が多い中、誠実に条約を遵守されていても非難される中での事件だけにその真意が疑われかねないのであって、誠実に外交努力で説明していかなければならないことはもちろんでありますが、事件については国内法に基づいて厳正に捜査をし、処断すべきは処断していかなければならないと考えます。捜査当局の努力に期待するものであります。
 密輸がなされるのは国内における需要に対して供給がなされないため、特に鯨肉価格が異常な高騰を来しているためであると私は思います。鯨肉輸入について、IWC加盟国からの輸入は禁じてはいないのでありますが、米国内法のPM修正法のたががはまっており、IWC加盟の捕鯨国からの輸入も、モラトリアムに異議申し立てをなしている国からの輸入については、国際捕鯨条約の効果を減殺する貿易との理由から、実質的には輸入許可を出せずに保税倉庫に荷が凍結状態になっているという事実があるわけであります。輸入の一件一件につき米国に照会をいたして、許可をできるかどうかを問い合わせているような状態。何ゆえに、我が国内での手続に外国法令のたががはめられていることを許しているのか。こんな理不尽なことが許されていいものかどうか。片方では品物がないために鯨肉が高騰している。どうしても買わなければならない業者はそれでも競って買うわけであります。最終的にそのツケは最終消費者が払うことになるわけであります。この現実を当局はどういうふうに考えておられるのか。
 また、国禁を犯してしまう不心得者も出るわけであります。私は、IWC加盟の捕鯨国であれば、モラトリアムに異議申し立てをしていてもIWC条約の権利として異議申し立てができるのであるから、一概にIWC条約の効果を減殺していると決めつけるのは当を得ていないのではないかというふうに考えるものであります。国内の状況を見ますと、例えば尾の身が一キログラム三万円とか四万円というふうな異常な事態に終止符を打つべく、勇断を持って異議申し立て国からも輸入を許可すべきであるというふうに考えるが、政府の考え方を述べていただきたい。
○佐竹政府委員 経済的に申せばただいま先生から御指摘のあったとおりでございまして、需要のあるところに供給は絞られる、だから価格が上がる、したがって違法に入れようとする不届き者が出てくる、こういうことであろうかと思います。そういう側面は否定できません。しかしながら、我が国も現在IWCに加盟しておりまして、その決議に我々としては大いに異論があるわけではございますけれども、モラトリアムがしかれているわけでございます。したがいまして、これを自由に輸入ができるということになればモラトリアムの決議をした意味がなくなるわけでございまして、我が国としてもIWCにとどまっている以上、我が国が輸入を認めることによってまさにモラトリアムの意味がなくなってしまうというようなことをするわけにはまいらないわけでございます。特に現在、先生の冒頭の御発言にもございましたように、そのようなことが起きる日本が調査捕獲を実施するということは擬似商業捕鯨ではないかという疑惑を招いているわけでございまして、この点につきましては、現在の輸入規制は現在以上にきちっと守っていきたいと考えておるわけでございます。
○吉浦委員 私は、鯨肉の輸入を差しとめる法的根拠は国内的には何もないのではないか、こういうふうに思います。あるというのであればそれを明らかにしていただきたいのですが、当局は今日の高騰している鯨肉の価格を引き下げるべき責任はありますし、放置して高騰価格を維持する権限はないわけでありますから、高騰している鯨肉価格を輸入によって引き下げを行うように行政指導をするのは当局の当然の責任であると思うわけであります。それを何のかんのと理由をつけてやらないのは責任の放棄であると思うわけでありますが、それでは許可しないということの不当を業者が裁判に訴え出たらどうするのか。政府は非常に弱い立場に追い込まれはしないか。裁判の結果が国の負けになるような公算は非常に高いのではないかと思います。そんなことになっても現在のPM修正法への配慮政策を続行するつもりなのかどうか、お答えをいただきたい。
○佐竹政府委員 これは輸出入貿易管理令に基づきまして明確な法律の根拠を持って規制をしているわけでございまして、野生動植物と同様な取り扱いがなされているわけでございます。したがいまして、この取り扱いについて訴訟が起きたとしても、私どもは万が一つ負けることはないと確信している次第でございます。
 それから、不当に価格が騰貴しているものについて行政指導すべきではないかという御意見でございますが、例えば先般来共同捕鯨が南極洋で捕獲したミンククジラについて異常に価格が騰貴したという事実がございまして、これは確かに余り好ましいことではないわけでございます。ただその場合、それではいかなる価格水準が適正であるかというような問題がございます。また、行政としてどこまで追い続けられるか、ある部分だけ統制しましてもまたその次の段階で不当な価格、利益を上げる者が出るというようなことがあっては趣旨が徹底しないわけでございます。そういういろいろな問題点がございますので、現在のところ特段の措置はとってないわけでございますが、特に目に余るような現象が出ているということであれば御指摘いただきまして、私どももまたそれを真剣に検討したいと考えております。
○吉浦委員 現在のIWCの現状を仄聞しますと、これが国際機関としての機能を本当に果たしているのかどうかと疑問でならないわけでありまして、すべからく団体というものは目的とする使命があるわけであります。それを誠実に実現するために存在意義があるのでありまして、一方のみの奉仕者であってはならないわけであります。鯨類の適切な保存と捕鯨産業の秩序ある発展は車の両輪でなければならない、こう思います。
 IWCは多数の非捕鯨国が不明瞭な形で加盟しておりますし、科学的論議をよそに数の力で捕鯨国の意向を踏みにじる前時代的、感情的運営に陥っているのではないかと思うわけであります。かかる団体に我が国がかかわり、しかも誠実に押しつけられた義務を履行しても、しょせん意味のないことではないかと私は思うわけです。IWCに加盟しているメリットは現状では一体何があるのか、それに引きかえて、脱退を選択した場合のデメリットは何があるのかこの際明確にして、国民の選択を求めるのも一つの道かもしれないと私は思うのです。私は決して名誉ある孤立を求めるものではありませんけれども、誠実に捕鯨を産業として振興したいと考える諸国にはかって新たなる国際機関を設立していくのも一つの選択じゃないか、この点、どういうふうにお考えか。
○佐竹政府委員 まず、メリット、デメリットの点について私から御説明申し上げたいと思います。
 メリットでございますが、ここ数年のIWCの運営につきましては、確かに種々御指摘いただきましたように甚だ遺憾なものがございまして、条約本来の目的を達成していないではないかという評価が私どもとしてはあるわけでございますが、過去にさかのぼって、鯨類資源の保全にIWCが果たした役割ということもまた否定できないわけでございまして、恐らくこの機関がなければ鯨資源は絶滅した可能性もないとは言えないわけでございます。したがいまして、私どもとしてはそのような過去の役割、IWCが機能していた正当な役割を復活させるように努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
 他面、脱退ということになりました場合には、先ほど来大臣がお答えいたしましたように、我が国の地位いかんという問題がもちろんございます。それから、水産の面に限ってみれば、アメリカ海域での操業についていろいろ問題点が出てくるわけでございまして、これも既に委員から御指摘がありました点で、細かい答弁は省略させていただきます。
○吉浦委員 捕鯨問題で最後の質問をさせていただきます。
 我が国の捕鯨がここまで追い詰められたのは、二百海里時代を見通して確固たる施策がなかったからじゃないかというふうに思うのです。外交交渉の都度譲歩を強く求められて、それに対抗する手段を何一つ持たなかったためだろう、こう思うのです。対抗手段を持つことが相手国を刺激してはいけないという余計な配慮が我が国の立場を一層弱くしたのじゃないか、こう思うのです。今まで我が国は、相手国のごり押しと思えるような要求に対処する有効な手段を持ち合わせていなかったのでありますから、我々野党は、与党も含めて、こうした我が国水産外交に汚点となるような弱点に配慮して対抗法案を考えてまいりました。議員立法としてぜひ成立をさせたいというふうに考えてきました。この際私はまじめな議論を求めたい、こういうふうに思うわけです。今求められているのは外国に対する配慮ではなしに、我が基盤を固めるときである、私は強く訴えたいわけであります。この点所見を大臣に求めて、捕鯨に関する質問は一応これで終わらせていただきます。お答えいただきたい。
○加藤国務大臣 対抗法案の問題につきましては新盛委員にもお答えいたしたところでございますが、一つはガットとの関連、それからその他我が国と諸外国との関係全般に及ぼす影響等を勘案しまして総合的に判断すべきであり、慎重な対応が必要である、こう考えておるところでございます。
○吉浦委員 一応捕鯨の方はこれで終わらしていただきまして、ぜひ今日聞いておかなければならない点がございますので、養鶏関係で少しばかり質問させていただきたいと思います。
 何回もこの委員会で取り上げている問題でありますけれども、採卵養鶏の現状についてまずお尋ねをいたしたいのです。
 卵は物価の優等生、養鶏は農業の優等生、こう言われております。ところが、今年卵価が急激に下がりまして、養鶏農家は大変な状態になっておるわけであります。
 卵価を調べてまいりますと、この四月、五月の東京市場価格は、四月が平均キロ当たり百四十四円、五月が百四十九円、農水省から統計をいただきました。昭和二十八年から今日までの鶏卵の相場推移表等もいただきましたが、どうやら、昭和二十八年から相場の表がとってございますが、これによりますと恐らく最低ではないか。この卵価は卸売段階の価格で、千葉県の養鶏農家に聞いてまいりますと、農家が受け取る段階での価格は卸売価格より四十円近く低いのでありますから、この四月、五月の農家の手取り価格はキロ百円そこそこ、一個の卵はその重量六十四グラムぐらいですから、一個の値段がわずか六、七円です。戦後今日まで四十年、これほど安い卵はなかったはずであります。全く驚く卵価になっておりますが、これだけ安くても養鶏農家が生活できるというふうにお考えなのかどうか。農家はだれでもやっていけないのが実情でありまして、これはつくればつくるほど借金がふえるという状態。計画生産を国が一生懸命指導されてきている中でこういう問題が起こってきているわけであります。畜産局長も頭が痛いところでありましょうけれども、二部養鶏業者の大規模やみ増羽がたびたび問題になっておりまして、私も再三再四ここでその問題を提起したわけであります。計画生産のもとでどうしてこんな卵価になったのか、これが一点。採卵養鶏の現状はどのような状態なのか、まずこの二つの点を明確にお答えをいただきたい。
○京谷政府委員 卵の価格の状況でございますが、ただいま御指摘ございましたように本年の初めから鶏卵価格が低下をいたしまして、最近におきましても、東京の卸売価格でキログラム当たり百四十円ないし百四十五円というレベルで低迷をしておるわけでございます。
 御承知のとおり鶏卵の価格につきましては毎年の季節変動、それから一定の周期で起こります。期変動とのいわば混合として従来から変動が生じておるわけでございますが、最近におきましては、六十年の夏から昨年の暮れにかけまして比較的好調な状態が持続されておったわけでございます。そしてまたこの時期、御承知のとおり主要な生産資材でございますえさの価格が大変低下をした。円高あるいは輸出市場における相場が低迷をしたということで大変コストが低下をしたわけでございまして、この経過の中で採卵鶏の飼養羽数が大変増加をしたわけでございます。かねてこの採卵鶏の増加を需要の動向に応じて調整をするために御指摘のとおり計画生産を進めておるわけでございますが、申し上げました一昨年来の比較的好調な価格の経過なり、あるいはえさの価格の急速な低下あるいは低位安定ということで計画生産による抑制をいわば超えまして、大変増産意欲が生産者の中に起こったわけでございまして、結果的に私どもの予想を超えた採卵鶏の飼養規模が生じておりまして、その結果本年に入りましていわば過剰生産の状況が生じて今日の大変長期的な、かつまた水準も大変低い低迷の状況が生じております。私どもも大変憂慮をしております。
 このような状況下で私どもまたいろいろな努力をしておりますが、確かに経営状況、現在実現している価格レベルでは大変収益性も低下することは明らかでございます。ただ、やや時間をとって検討してみますと、六十一年の生産費調査、これは六十年の八月から七月にかけての所得状況を見ますと、生産費調査の結果では、百羽当たりの所得が約十一万円強というレベルでございます。昨年の夏場以降今日まで、ちょうど後半部分が相当卵価が低迷した状態でございますが、直近一カ年の期間で所得水準を想定いたしますと、百羽当たり大体七万二千円程度のレベルになっているのではないか。しかしながら、現在の卵価水準がさらに長期に続くことになりますと、さらにこの所得と申しますか収益が悪化してまいりますので、この卵何回復のための努力が私どもとしても緊要の課題になっておると思っておるわけでございます。
 また、この卵価の低迷に対処しまして、御承知のとおり鶏卵価格安定基金制度を準備しておりまして、低迷期に入りましてからこの卵価基金から所要の補てんを行っております。一月から六月までの補てん総額は約二百二十六億円になっておりまして、この補てんによりまして卵価低迷による所得減が価格安定基金への加入者については若干の手助けになっているというふうに考えておるわけでございます。
○吉浦委員 もうちょっと簡潔に答えてください、わかっておりますから。
 私が指摘したいのは、大規模やみ増羽に対する指導が甘いのじゃないかというふうに思うのです。これは、自民党の総合農政調査会会長の丹羽先生が会長を引き受けておられます日本養鶏協会が発行している日鶏情報というのがございますが、その最近号で、この六月末に開かれました養鶏協会の役員会の席上で農水省の担当官が出席をされました。この担当官が、五万羽以上飼養者の七割以上が羽数超過だ、言うなればやみ増羽を七割以上がやっているというふうにお答えですよ。こういう実態を知らないで今のようなことをお話しなさっているわけじゃないと私は思う。
 そこで、この五万羽以上の大型経営のやみ増羽者が一体何人いらっしゃるのか。五万羽以上ですよ。そのやみ増羽の羽数は幾らなのか。第二に、どうしてこの大型経営が計画生産を守ろうとしないのか。この二点、簡潔でいいから御報告いただきたい。
○京谷政府委員 御承知のとおり、この飼養状況については、各都道府県あるいは国で分担をしまして定期的に調査をしております。昨年十一月の調査時点では、五万羽以上の飼養戸数、約三百七十戸弱でございますが、この中の約七割が私どもの調査では超過飼養を行っているものがあるという状況を掌握しております。
 なお、これに対する是正指導を行っておるわけでございますが、さらに六十二年五月での調査、これはまだ仮集計の段階でございまして、最終的にはまだもう一回確認をする必要がございますが、ことし五月の調査結果の仮集計では総体の対象戸数が三百六十戸弱でございまして、そのうち六割弱が超過飼養者であるという状況を掌握しております。
○吉浦委員 ここで自主減羽運動が今問題になって、その提案をされております。七百五十万羽の自主減羽をしたいということで、この八月から実施するようになっております。そこで、今回各県に対して、自主減羽運動を支援する体制をとるべきであると私は思うのですが、この通達をお出しになりますか。出すか出さないか、はっきり答えてください。
○京谷政府委員 先生御指摘のとおり、現在の卵価低迷の状況に対処いたしまして、日本養鶏協会におきまして自主的な減羽運動を展開することにしております。内容は、一斉にえづけ羽数を五%削減をしよう、それから採卵鶏の数につきまして五%ないし一〇%、階層別に若干格差をつけますけれども、八月までにこれを実行すべくえづけ羽数の削減をしよう、こういうことを決定いたしまして、日本養鶏協会の自主運動として展開されることになっております。私どもも、これの実現、実行に向けてできる限りの支援、協力をしていきたいと考えておりまして、通達ということも一つの手段であれば、私どもも考えてまいりたいと思っております。
○吉浦委員 ぜひ通達を出して、その協力方を要請していただきたいんだ。ということは、自主減羽をしてまいりますときに、必ず局長の通達が根回しが効いて、各県にそれがあって初めて効力を発揮しているのです。ただここだけで論議しているだけじゃなくて、そういう誠意のあるところを示さなければ、言葉だけでは何にもなりませんから、行動に移してやっていただきたい。
 時間が参りましたので、もう一点だけ、阪神鶏卵グループの件について私はこの三月ですか、局長に厳しくお願いをいたしたわけでありますが、これがその後どういうふうになっておりますか、この点をひとつお答えをいただきたい。
 それから関連して、名前を挙げて恐縮ですが、青森県木造町でございますか、新潟県、これにやみ増羽の農場ができているのですが、新聞報道によりますと、青森県の場合に農地法に違反するということで大変厳しく県の方から指導があって訴訟になっているようです。どういうふうにとらえていらっしゃるか。この方々を呼び出しても正体不明でありまして、九名の方がいらっしゃるようですけれども、出てくるのは代理人ばかりということで実態がわからない。新潟県でもやはり同じようなことで、養鶏協会が反対をして断固中止させる決議をいたしておりますが、こういう問題についてどのような把握をなさり、これに対する手だてをなさっているのか、簡潔で結構ですからお答えいただきたい。
○京谷政府委員 まず、お尋ねの去る三月に御質問いただきました阪神鶏卵グループの問題でございますが、御指摘のとおり、全国六カ所におきまして一定の計画を持って採卵鶏の経営をしようということで、ひなの育成から成鶏の飼養に至る一連の仕事が準備され、あるいは一部実行されつつあるわけでございます。私ども、こういった構想が現在進めております計画生産のフレームの中で行われていくことが望ましいということで、阪神鶏卵グループの代表者等に、国直接あるいは関係の都道府県のお力もかりて、繰り返し計画生産への協力を呼びかけておりますが、現在のところまだ確たる結果が出ていない面もありますこと、大変残念であります。今後とも引き続きこの計画生産のフレームの中でこういった構想が進められるよう指導してまいりたいと思います。
 それから、二つ目に御指摘のありました青森県とそれから新潟県の案件でございます。私ども情報を得ておりまして、関係の県と連絡をとって対処すべく努力しております。
 まず青森県の問題につきましては、無断増羽という問題ももちろんでありますけれども、この無断増羽のための鶏舎建設が農地法の転用許可あるいは農振法に基づく開発許可を全く受けないで建設されているという事実があるようでございます。したがいまして、農地法の違反案件あるいは農振法の違反案件として厳正な措置がとられるよう青森県当局にも話をしているところでございます。
 それから、新潟県の問題でございますが、これは県内におきまして、経営移転という構想のもとで移転構想が進められつつあるようでございますが、私どもは計画生産の枠組みの中で行われる移転、新築であれば特に問題がないのではないかという考え方で、そういう枠内でこの構想が実現されるように、県を通じまして事実を確認し、必要な指導をするように連絡をとっておるわけでございます。そういった方向で今後とも努力していきたいと思います。
○吉浦委員 時間になりましたので、最後にお願いだけして終わりたいと思います。
 この大規模なやみ増羽に対する抜本的な指導の改善をしなければならぬときに来ていると思うのです。まじめな人たちが減羽をしなければならぬということならば、やみ増羽をやった人を先にやらない限りその協力を求めることはできないのです。もうつぶれるだけであります。負債二百三十億円とか、もう既にきのうの新聞等で大きく報道されている。ばたばた倒れ出してきている。これは新聞に出ない方が問題でありまして、新聞に出るのは大きなところだけしか出ない。だから、そういう面での抜本改善を政府はやらなければならぬ、こう思うのです。
 それから、やみ増羽は行政指導でどうしてもとめることができない、こういう段階ではないかとも思うのです。私は、これはやればできると思うのですよ。政府が甘い考えで今日まで来ているから、私どもが責めるときだけ神妙な顔をして聞いていらっしゃるけれども、それだけで終わっているようではならぬと思うのです。ですから、そういう点をぜひお願いしたい。
 それから最後に、卵価基金等からの除外等も私は何回も申し上げました。飼料基金等からの除外も申し上げました。やみ増羽者に対して断固たる処置をとらなければならぬと思うのです。こういうことがなまぬるいから今日こういう状態を招いたと思うのです。この卵価基金ももう底をついたのではないですか。これは今後どうなさるのか。ちゃんと補助金を出してやってくれますか。この点だけ局長、答えていただきたい。
○京谷政府委員 卵価安定基金の財政状況は、先ほど申し上げましたように本年の一月から六月にかけて相当量の補てんをしておりまして、余裕が乏しくなっていることは事実でございます。私ども残されたこの財源の中で現在の苦境を何とか切り抜けるよう最大限の努力をしたいと考えております。
○吉浦委員 ありがとうございました。
○玉沢委員長 次回は、明二十九日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時四分散会
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