第112回国会 本会議 第17号
昭和六十三年四月十九日(火曜日)
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  昭和六十三年四月十九日
    午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
 無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案(物価問題等に関する特別委員長提出)
 教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
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○自見庄三郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 物価問題等に関する特別委員長提出、無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(原健三郎君) 自見庄三郎君の動議に御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。
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 無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案(物価問題等に関する特別委員長提出)
○議長(原健三郎君) 無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の趣旨弁明を許します。物価問題等に関する特別委員長村山喜一君。
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 無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
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    〔村山喜一君登壇〕
○村山喜一君 ただいま議題となりました無限連鎖講の防止に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨弁明を申し上げます。
 この法律案は、本日物価問題等に関する特別委員会において全会一致をもって起草、提出をいたしたものであります。
 御承知のとおり、無限連鎖講の防止に関する法律は、多数の市民を巻き込んで社会問題化していたいわゆるネズミ講をその対象として制定されたものでありまして、ネズミ講に関与する行為を禁止し、罰則を設けるとともに、その防止に関する調査及び啓蒙活動に関する規定を設けることにより、ネズミ講のもたらす社会的害悪を防止することを目的としたものであります。
 この法律は所期の目的を達成し、ネズミ講の活動は一応の鎮静化を見るに至っていたところであります。
 ところが、近時、現行法がネズミ講を金銭の配当組織と規定していることを奇貨といたしまして、国債あるいは商品券を用いたいわば新しいネズミ講とでもいうべきものが出現し、再び社会問題化しております。
 この新しいネズミ講は、その配当の対象を金銭ではなく国債あるいは商品券に置きかえただけで、「終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与える」という本質において、今までのネズミ講と何ら変わるところのないものであります。
 現行法の制定当時におきましては、金銭の配当組織をその対象とすれば必要にして十分であると考えられましたが、このような新しいネズミ講の出現に見られまするように、その後の社会経済事情の変化は立法当時予想もしなかったものを用いたネズミ講を生み出しているのが実情であります。したがいまして、このような事態に対応するため、国債、商品券等を用いた脱法的なネズミ講につきまして法の網をかぶせ、これに関与する行為を禁止するなどの措置を講ずることができるよう現行法を改正することが必要であり、これがこの法律案提出の理由であります。
 次に、本案の主な内容につきまして申し上げます。
 無限連鎖講の定義規定を改正いたしまして、無限連鎖講として規制する配当組織の配当の対象を金銭、有価証券、貴金属その他の金品に拡大し、これに関与する行為を罰則をもって禁止することなどといたしました。
 なお、本案は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとしております。
 以上が本案の趣旨及び内容であります。
 何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
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 教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(原健三郎君) この際、内閣提出、教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部大臣中島源太郎君。
    〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
○国務大臣(中島源太郎君) 教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 学校教育の成否は、これを担当する教員の資質能力に負うところが極めて大きく、今後の社会の進展や学校教育の内容の変化等に応じた教育を展開していくに当たり、教員みずからがその自覚を高め、教育力の向上を図ることが必要不可欠であります。
 現下の教育課題を解決し、また教育の質的向上を図るため、教員には、従来にも増して教育者としての使命感、幼児、児童生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、そしてこれらを基盤とした実践的指導力などが求められております。
 このような教員としての資質能力は、教員の養成教育のみならず、教職生活を通じて次第に形成されていくものであります。その場合、教員自身が研さんを重ねることによってその資質能力を高めていくことが基本となることは、もとよりでありますが、これとともに、教員の任命権者が教職生活の全体にわたって適切な研修の機会を提供することが必要であります。
 とりわけ、初任者の時期は、教職への自覚を高めるとともに、円滑に教育活動に入り、可能な限り自立して教育活動を展開していく素地をつくる上で極めて大切な時期であります。この時期に現職研修の第一段階として、組織的、計画的な研修を実施し、実践的指導力や教員としての使命感を深めさせ、また幅広い知見を得させることは、この時期における初任者にとって、また、その後の教員としての職能成長にとっても、欠くことのできないものであります。
 そのため、今般、臨時教育審議会の答申及び教育職員養成審議会の答申を受けて、教員の初任者研修を制度化することを内容とする法律案を提案するものであります。
 以下、この法律案の概要について申し上げます。
 第一は、初任者研修を制度化することについてであります。
 まず、任命権者に対し、国立及び公立の小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園の教諭、助教諭及び講師に対する採用の日から一年間の初任者研修の実施を義務づけることとしております。この場合、初任者研修は、教職経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとして位置づけることとし、初任者に対して一年間にわたり、教諭の職務を遂行する上で必要な事項について実践的な研修を実施するものであります。
 初任者研修は、教育現場における実践的な研修であり、初任者は、学校において学級や教科、科目の担当その他の教育活動に従事しながら、学校内における研修と学校外における研修を受けるものであります。このように初任者は、日常の実務に即してその立場に立った系統的な研修を受けるものでありますから、校内における研修について、指導者を特定することとしております。任命権者は、初任者が所属する学校の教頭、教諭または講師のうちから指導教員を命じることとし、指導教員は、初任者に対して具体的な指導及び助言を行うこととしております。
 初任者研修の実施に伴い、また、教員の職務の特殊性にかんがみ、初任者研修の対象となる教諭、助教諭及び講師の条件つき採用期間を一年とすることとしております。
 第二は、初任者研修制度の円滑な実施を図るための措置であります。
 これは、市町村立の小学校、中学校等において初任者研修が行われ、各学校に指導教員等として非常勤講師を配置する必要がある場合には、市町村教育委員会が都道府県教育委員会に非常勤講師の派遣を求めることができることとするものであります。また、その場合の非常勤講師の報酬等については、都道府県の負担とすることとしております。これは、市町村立小学校、中学校等の教員に対する研修については、都道府県教育委員会が実施者であることから、非常勤講師について都道府県が責任を持って対処することとするものであります。
 第三は、初任者研修の制度化についての経過的な措置であります。
 幼稚園の教諭、助教諭及び講師に対する初任者研修については、幼稚園の実態等を考慮し、当分の間、これを実施しないこととし、初任者研修とは異なる研修を行うことといたしております。
 また、幼稚園を除く学校の教諭等に対する初任者研修については、教員の採用者数の推移その他の事情を考慮し、昭和六十四年度から段階的に実施することとし、昭和六十七年度までにはすべての校種についてこれを実施することとしております。そこで、昭和六十六年度までの間は、初任者研修を実施しない学校種を政令で指定することができることとしております。
 このような初任者研修の実施に当たっての経過的な措置に伴い、初任者研修の対象とならない教員については、その条件つき採用期間は、従前の六カ月とすることとしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)
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 教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(原健三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐藤徳雄君。
    〔佐藤徳雄君登壇〕
○佐藤徳雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、総理並びに文部大臣に質問をいたします。
 総理、思い起こしてください。教育基本法が公布された当時、あなたは青年時代に地元の中学校で教員をされたと聞き及んでいます。先般、当時の教え子たちと総理がお会いになったことを新聞で拝見をいたしました。総理、あなたは戦後荒廃した中でひたすら民主教育に情熱を傾けられ、子供たちとともに生き生きと教育実践に励まれ、信頼された教師であったでありましょう。新任教師のだれもが経験することは、子供たちとともに学び、そして遊ぶ中で児童生徒との人間的触れ合い、相互の信頼関係を深める教育実践活動を積み上げてきたという経験なのであります。そしてまた、先輩教員からの指導も受け、教材研究や学問研究等を積み重ね、それらを授業の中に生かしていく、そういう貴重な体験から教育の創造性が身につき、教師としての喜びを実感として受けとめるというすばらしさを新任教員の皆さんは経験をしてくるのであります。このようなすばらしい教育実践は、決して管理体制のもとでは生まれてこないことは言うまでもありません。子供たちとともに歩む教師、それは子供も教師も伸び伸びとした学校環境の中でこそ力量は発揮され、そのことが子供たちに伝わり、教師と子供たちの信頼関係はより増してくるものなのであります。私自身の体験もそうでありました。総理、いかがでしょうか、あなたの体験からの御感想をお聞かせいただきたいと存じます。(拍手)
 臨教審第二次答申は、次のように述べております。「我が国の学校教育の画一的・硬直的・閉鎖的な体質、学歴偏重、極端な管理教育などが豊かな人間形成を妨げ、子どもの心理的重圧感と欲求不満を高めている」と述べており、そしてまた、「過熱した受験競争や偏差値偏重の進路指導にみられる教育の現状は、人間形成の基礎を培うべき重要な段階において、何よりも児童・生徒の心と体の健全な育成を阻害する要因となっている。」ということを臨教審でさえ指摘をしているのであります。しかし、現実は依然として受験競争は激しく、教育現場からは悲鳴の声が聞こえてくるのです。総理、あなたにはこの悲鳴が聞こえないのでしょうか。今こそ、子供たちを受験地獄から救い出すために、思い切った高校入試の改善を図るべきであると考えます。それはまさに国民の共通した願いであり、そのことは、画一的な初任者研修制度で教師の創造性の芽を摘み、研修の自由を縛るよりも何よりも優先する政治課題であると思いますが、総理並びに文部大臣の御見解を承りたいと存じます。(拍手)
 さて、本法案は、臨教審第二次答申に基づくものであります。しかし、答申全体を通して感じられるものは、臨教審のスタンスが児童生徒や学生青年の立場に立ってなされなかったという点であります。それは、新保守主義のイデオロギーに基づく競争原理の教育への導入、新国家主義が背景にあったからではないでしょうか。教育の原点は、すべては子供たちのためにということを忘れてはなりませんし、教育は子供の側に立ったものでなければならないはずであります。必要以上の規則の中で自分たちが管理されている子供、悩む父母、戸惑う教師に対しこたえるものでなければなりません。教育に対する視点を変えていたとすれば、臨教審の答申ももっと違った結論になったでありましょう。臨教審答申は個性重視の原則と言うものの、子供一人一人の個性をどのように重視していくのか、具体的提言とこの原則は少しも結びついていません。これは、ただいま提案のありました教員への初任者研修制度の導入にも端的にあらわれています。教職員の多くが反対をし、危惧の念を表明している本制度を強行したとしても、教育荒廃の原因は除去されず、かえって悪化するとの疑念はぬぐい去れないものであります。
 以下、私は具体的に質問をいたします。
 まず、研修のあり方についてであります。
 文部大臣は、学校教育の成否はこれを担当する教員の資質能力に負うところが極めて大きいことを指摘されています。同感であります。また、そのためには研修の重要性についても触れられています。二十一世紀を前にして不透明な視界の中にある今日、将来の主権者である子供の教育に携わる教員にとって、研修はますます重要性を増しています。問題は、いかなる研修かなのであります。教育公務員特例法は、その二十条で、教員は「研修を受ける機会が与えられなければならない。」とし、「授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。」としています。これは、教員の研修が権利であることをうたっているにほかなりません。ところが、行政研修の押しつけに示されるように、権利と義務が取り違えられていることは極めて重大であります。教員にとっての研修は、教特法十九条にあるように、教員がその職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めるための権利であると考えますが、明確な答弁を求めます。
 第二に、教員としての資質能力は教職生活を通じて次第に形成されていくという論は、全く正しいと思います。ところが、新任教員に一年間の研修を義務づけることは、このことと全く矛盾をするのではないでしょうか。確かに教える技術はベテラン教師に比べて劣るかもしれません。しかし、子供たちにとって、そのことは必ずしも新任教員に対する評価に直結しないということであります。新任教員は、フレッシュな感覚、若さの特権であるエネルギー、年齢からくる親しみやすさなど、教育技術を補って余りある魅力を持っているからであります。一年間の初任者研修は、こうした新任教員の魅力を失わせる結果となるのは火を見るよりも明らかであると考えるものですが、いかがでしょうか。長期研修を行うのであれば、初任者研修としてではなく、先進諸国で行われている一年間の休暇や長期休暇という長期有給休暇の中で、希望する教員にひとしく大学院などで研修を保障する制度をつくることこそ国民合意の研修のあり方だと考えるものでありますが、こうした制度について検討する意思があるかどうかお伺いをいたします。
 第三に、指導教員による指導の問題であります。
 指導教員のもとで授業を行うことは、絶えず指導教員の目を意識し、子供との心の通いを失わせることになる危険性は極めて大きいと考えられます。指導教員は一体何を指導するのか。監視にならないと言うなら、その根拠は何かを具体的に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 第四に、以上のことから、臨教審の個性重視の原則との関連の問題についてであります。一年間もの間、子供との触れ合いを軽視し、指導教員のもとで指導を受けることは、新任教員を一定の鋳型にはまった教員につくり上げる結果となることは明らかであります。臨教審の言う個性重視の原則を教育改革の原則としてとらえるとしたら、新任教員の個性を押しつぶすこうした研修は臨教審の原則とも矛盾することとなりますが、いかがでしょうか。
 第五に、このことは、鋳型にはまった物言わぬ教員、国定教員づくりにつながるのではないかということであります。
 教育委員会による行政研修と、特に文部省の洋上研修は、国や行政側の一方的な見解を教員に注入することになるのではないかということであります。このことは、昨年行われた洋上研修での文部省助成局長による不当労働行為ともいうべき教職員団体への誹謗、中傷に満ちたことでも明らかであると言わなければなりません。もしそれが杞憂だとするなら、その根拠を明確にしていただきたいのであります。
 第六に、教員だけが他の公務員と異なり、条件つき採用期間が一年となり、公務員法制上の公平の原則に反することになるという点であります。また、未実施校の学校は従来どおり六カ月というのも公平の原則からいって問題であります。見解を明らかにしてください。
 最後に、国民的合意を欠いた本制度の導入に巨額の財政支出がなされるという点であります。
 御承知のように、臨調行革路線のもとで文教予算が大幅に削減をされ、文部省予算の国の予算に占める割合は七六年度の一一・三六%をピークに減り続け、本年度は八・四五%にすぎなくなっています。政府は、文教予算を削減しながら、国民的合意を欠くこのような制度の導入に多額の支出をすることは断じて容認することができません。四十人学級の早期実現など、先進諸国に著しく立ちおくれている施策を推進することこそが国民合意の教育改革ではないでしょうか。初任者研修制度導入によって財政支出は総額幾らになるのか、明示をしていただきたいと存じます。
 以上の理由から、本法案は撤回されるべきであることを強く指摘をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) 私の教師体験から来る感想等をお求めになりました。
 私は、昭和二十二年十二月から昭和二十六年三月まで三年三カ月の体験しか持ち合わせておりません。しかしながら、その三年三カ月ではございましたけれども、当時、言ってみれば教材も不足し給食もなく、黒板と机といすというものの中に先生である私と子供たちとが対談をしておったと思います。そうして、教研集会等に出かけまして先輩の先生の指導をお受けした経験も持っております。しかし、そういう環境でございましたものの、今おっしゃいました心の通い合いというものがあり、そして人間的触れ合いというものが私と生徒の信頼関係というものを組み立てておったではなかろうか、このような反省をいたしておるところであります。
 したがって、まずは教育者としての使命感を持ち、そうして児童生徒に対する教育的な愛情、それからやはり教科等に関する専門的知識、さらには実践的指導力、これが重要であると考えておるところであります。したがって、こういう国民の要望にこたえていくためにはさらに一層の資質向上を図ることが重要な政策課題である、このように認識をいたしておるところであります。(拍手)
 次の問題は、高校入試の改善についてでございました。
 高校入試につきましては、従来から文部省において面接の実施その他選抜方法の多様化などその改善について各都道府県を指導しているところであると承知しております。各都道府県におかれましても、それぞれの地域の実情を踏まえ高校入試の改善について真剣に取り組んでおられるところであるというふうに承知をいたしておる次第であります。いずれにせよ、高校入試の改善に今後とも努力していくというのは当然のことでありますが、やはり初任者研修制度、これは極めて大事なことである、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
○国務大臣(中島源太郎君) まず、高等学校の入学者選抜方法の改善については、総理からもお答えがございましたが、従来から各都道府県において努力をいたしておりますが、文部省としては、昭和五十九年に各都道府県教育委員会等に対しまして、推薦入学や面接の積極的な利用など多様な選抜方法を実施すること、また、学力のみではなくて生徒の多様な能力を積極的に評価するための選抜尺度を多元化すること等について通知をいたしておるわけでございまして、今後とも一層その指導に努力をいたすと同時に、初任者研修制度をもちまして教員の資質の向上に努めてまいりたい、こう考えております。
 次に、教員と研修についてお尋ねでございました。
 教育公務員特例法第十九条の一項では、教員は、「その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」として、職務遂行に不可欠のものとして研修が考えられております。また、教育公務員特例法第二十条の第一項は、職務として行われる研修と自発的な研修とを問わず研修の機会の確保についての基本方針を定めまして、これを受けて第二十条第二項等におきましてこれを具体化したものと理解をいたしておりまして、したがって、教特法は教員にとりまして研修は権利であるということを規定したものと解することはできない、このように考えております。
 次に、初任者研修制度は、現職研修の第一段階として一年間の組織的、計画的な研修を行うものでございまして、その実施に当たりましては初任者の意欲を大切にし、その自主性を育てるように配慮することが肝要であると考えておりまして、先生御指摘のようなフレッシュさを失わせるものではございません。
 次に、一年間の休暇や長期休暇についてお尋ねでございました。
 教員が自発的に研修する機会が得られるように配慮することは大切である、このように考えます。しかし、長期有給休暇制度につきましては、他の職種との均衡など公務員制度との関連もございまして、慎重に検討する必要のある問題であると考えております。
 次に、指導教員のあり方についてお尋ねでございました。
 指導教員は、申すまでもなく、初任者の実態に応じまして、その立場に立って初任者の力量を育てるために初任者の校務全般にわたって指導するものでございまして、その場合、むしろ授業前の計画段階ですとかあるいは授業後に助言するなど適切な配慮が必要と考えておりますし、また指導は、初任者の意欲を大切にし、その自主性を育てるような形で行うことが重要であり、決して初任者の監視に当たるものでないことはもちろんでありますし、個性重視の原則に合致するものと考えております。
 次に、洋上研修についてお尋ねでございました。
 初任者研修制度におきましては、先ほども申したように、校内と同時に校外において教育センター等における研修を受けるものであります。特に洋上研修は、船上における研修及び寄港地における視察等を通じましてまさに初任者の知見を広めることに役立ちます。同時にまた、各県から来ておられます教員の方々の相互交流を深めることを期待するものでございまして、いずれも初任者が円滑に教育活動に入り、可能な限り自立して教育活動を展開していく素地をつくることを目的とするものでありまして、決して御指摘のような鋳型にはめるようなことには相ならないものでございます。
 次に、教員についてのみ条件つき採用期間を一年とするのは法の公平の原則に反するのではないか、こういう御質問でございましたので、やや細かくなりますが、まず憲法第十四条の法のもとの平等、国家公務員法二十七条または地方公務員法十三条の平等取扱の原則等によって禁じられておりますのは、差別すべき合理的な理由なくして差別することであります。今回、教員の条件つき採用期間を一年といたしますのは、初任者研修の実施に伴う勤務形態の特殊性及び教員の職務の特殊性とそれに伴う職務遂行能力の実証の困難性等に伴うものでありまして、他の公務員と区別する合理的な理由があると考えております。また、初任者研修を段階実施する間の未実施校の教員につきましては、初任者研修制度の創設に伴う勤務形態の特殊性が生じないため現行どおりの条件つき採用期間とするものでございます。これは勤務形態の差に基づく合理的な取り扱いと考えておりまして、決して公平の原則に反するものではないと考えております。
 最後に、四十人学級の早期実現と初任者研修の財政上の経費についてお尋ねでございました。
 申すまでもなく四十人学級の着実な推進等に努めているところでございます。また、初任者研修の実施に当たりまして、その実施方法のいかんによって異なりますので一概にお答えできないところでありますが、仮に昭和六十二年度から実施している初任者研修の試行と同様の方法において、すべての校種の初任者、約三万人でございますが、これを対象に実施することとした場合、その場合の所要額は人件費ベースで総経費が約八百億円、うち国庫負担額が約二百八十億円と推計される次第でございます。
 以上であります。
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○議長(原健三郎君) 鍛冶清君。
    〔鍛冶清君登壇〕
○鍛冶清君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま文部大臣より提案されました教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に関し、竹下総理並びに中島文部大臣に対し質問申し上げますので、明快で誠意ある答弁をお願いをいたします。
 教育とは一人一人の可能性を開き、人間としての成長を支え、促進する営みであると思います。また、教育の事業については、当面の効果と大きな展望が必要となります。したがって、どのような社会、どのような時代におきましても、この教育の事業は百年の大計でなくてはなりません。この百年の大計は、当然のことながら歴史的基盤に支えられたものでなくてはなりませんし、また最近における身近な教育状況はもとよりのこと、現今の地球規模の諸情勢の認識と洞察に基づき、またその上に立っての未来展望を土台としたものでなくてはなりません。翻って、我が国の今日の教育のあり方を見るとき、果たして百年の大計に立ってのものといってよいのでありましょうか。まずこの点について総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 今、学校教育の荒廃が叫ばれ、国民の間にその改善を求める声は極めて強いものがあります。子供たちの無気力、無責任、無感動等の四無主義が言われ、この十年間、校内暴力、非行問題が全国の学校に吹き荒れた観がありました。最近では、学校嫌いや登校拒否、さらにはいじめや中途退学の問題などが顕著となり、子供の問題行動が質的に変化してきているようであります。こうした問題の起こる原因が学歴偏重社会にあるとか、いや受験地獄にある、あるいは政府の文教政策に原因があるとか、いや管理教育を強化した結果である等々、さまざまな意見が噴出しており、臨時教育審議会においてもこの問題が論議されてきました。これらさまざまな意見に言われていることが、直接的にかかわって起きている問題もあるかもしれません。しかし、私たちはこれらの原因が複合的にかかわって起こっていると見るのが正しいのではないかと思うのであります。そしてその根底には、これまでの行政主導の教育が進められる中で、人間という視点、生命の尊厳を見据えた心の教育をなおざりにしてきたことが一番大きな原因であると思うものでありますが、総理の御所見を伺いたいのであります。
 二十一世紀を担う主人公は、紛れもなく現代の青少年であります。その彼らを教え、はぐくみ、個性を伸ばし、心の扉を開いていく主体者は、何といっても青少年と直接かかわり合いのある親であり、教師であると思います。
 親のことはここでひとまずおくとして、教師の問題でありますが、私どもは学校教育の成否は、その制度やカリキュラムなど枠組みをどう変えようとも、最終的な決め手は一つ一つの教室で行われる授業であり、それを担当する教師にあるといっても過言ではないと考えております。古来、教育は人なりの言葉があります。学校の施設や設備等々、充実しなければならないことは当然のことでありますが、それよりもさらに大切であり大事なことは、教師そのものの人格、識見、指導の力量ではないでしょうか。総理は、青年時代教師をされた経験がおありであると伺っております。今私が申し上げた内容について十分理解していただけるのではないかと思いますが、このことについての総理の基本的な哲学なりお考えを承りたいと思います。
 ここで一つ総理について言わせていただきたいことがあります。今申し上げたように、過去、教師をなさった御経験があるにもかかわらず、マスコミの記事を初め巷間伝わっている話を聞きますと、意外や意外、竹下総理は教育に弱く、教育改革にも熱意がないようだという評価が伝わってまいります。もしこれが事実とすれば、国民にとって、また日本の将来にとってこれほど残念なことはありません。人の話に耳を傾け、十分に根回しをして合意を取りつけ、事を仕上げていくことについては芸術的であると定評のある竹下総理です。税制問題だけにこの力をお使いになるのではなく、教育の問題で、教育現場の方々や父母の方々の声に耳を傾け、十分な話し合いの中に、私どもが言い続けてまいりました国民合意の教育改革をぜひとも進めていただきたいと心から念願するものでありますが、総理の率直なお考えを聞かせていただきたいと思います。(拍手)
 十三年前、人材確保法ができました。これは教員に人材を得る上で極めて重要な法律であったと思います。しかしその後、一部ではありますが、教師として不適格で、使命感に欠ける人が多くなったとか、勉強はできるが子供の心をつかめない教師が多くなったとの声が聞かれるようになりました。そこで私たちは、この人材確保法に匹敵する教員の資質向上のための抜本的な対策を総合的に考えるときが来ていると思いますが、いかがでありましょうか。
 これについては、今国会で、確かに初任者研修を義務づける本法案や教員養成制度とも関連した教員免許法の改正の法案が出されてはいます。本法案については、どうも教員の資質向上についての対応が教員養成、免許取得、採用、研修等々、総合的に考えているのではなく、矮小化され、初任者研修さえやればすべてうまくいくといった感じで、単品としてそれぞれ提案されているように思えてなりません。このことは安易に考えて取り組んでもらっては困るのであります。昭和六十一年、我が党で行いました全国の小中学校の父母に対する意識調査において、教員の資質を向上するにはどうしたらよいと思われますかとの問いに、第一に挙げられたのが、現職の教員、新任教員の再教育や研修を充実するという答えで、五〇・一%もございました。こうした父母の意識を軽視することはできません。教員の教育的力量などの向上が強く期待されていることを真剣に受けとめていく必要があると思うのであります。この意味で、総理に、これに取り組む総合的な考えと政策体系を、さらには取り組む姿勢を含めてそのビジョンを示していただきたいと思うのであります。
 これからの質問は、文部大臣にお答えをいただきたいと思います。
 本法案の通過により初任者研修が実施されることになりますが、この研修を通じて、百万余の小中高の教師が使命に目覚め、自覚を持ち、学校現場を変えていく一助となるとの認識のもとに、初任者研修のみではなく、教員の資質向上に対する取り組みが必要であると思いますが、いかがでありましょうか。
 また、本法案によりますと、初任者研修制度の実施に関し、条件つき採用期間を一年間に延長することとしているのでありますが、他の公務員との差が生ずることについてどのようなお考えなのか、お伺いをいたします。
 また、当制度が、いわゆる試補制度とどう異なっているのでありましょうか。試補制度の導入については、明治以来多くの答申や建議の中でその実施が提言されてきました。今回、これを初任者研修制度として本法案が提出されていますが、これを試補制度としなかった理由はどこにあったのか、お伺いいたしたいと思います。
 今、初任者研修が義務化されることにより、一年間の研修の後一人一人の評価がなされ、その結果、教員として正規に採用される者と不採用の者と厳しく振り分けられるのではないかという身分上の不安が大きな問題として提起されています。そこで、これまでの半年間の条件つき採用期間において免職された事例があれば、伺っておきたいと思います。また、一年間という長い期間では、病気にかかり交通事故に遭う率が他の公務員と比べて高くなることは明らかであり、病気等による欠勤はマイナス要因となるのでありますが、こうした事例についての対応をどうなさるのか。私どもは原則として解雇すべきではないと思いますが、その対応についてお聞かせ願いたいと思います。
 次に、初任者研修について、官製研修であり、管理主義的な押しつけ研修であるという声が強くあります。研修は本来自発的なものであり、教職に伴う責任や使命感に基づいて行われるものであるにもかかわらず、初任者研修を義務化することによってこの自主研修を無視するものであるとの批判が強いのでありますが、これについてどう考えておられるのか、お聞かせをいただきたい。
 そこで、教員の要求に応じた資料や情報の提供、自由な研究あるいは研修に参加できる体制を整備する中で、初任者研修や現職研修の体系化等が計画、実施されるようにする必要があると思いますが、文部大臣の所見をお伺いしたいと思います。
 文部省では初任者研修の試行を昭和六十二年度と六十三年度に行うこととしていますが、既に六十二年度の試行の結果が報道されています。試行対象教員の大方は、研修してよかったとの声が強いようでありますが、その中でさまざまな課題が提起されております。ここで、提起されている中から二つの点についてその対応を伺っておきたいと思います。
 試行対象教員は、年三十五日間程度の教育センター等における研修と、指導教員による指導を年七十日程度受けることが義務づけられるとともに、学級担任をいたします。この中で子供との人間関係を早期につくらねばなりません。しかし、四月から出張研修が行われ、子供との接触が他のクラスと比較しどうしても希薄になることは避けられないようであります。また、学校行事との重なりが多く、どちらに出席すればよいのか、その判断に苦しむことも多いようであります。これは、地方の実情を考慮し、校外研修三十五日と指導教員による研修七十日を、程度という言葉に幅を持たせ研修を行うようにするなど、弾力的に考えてもいいのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
 さらに、試行対象教員に対する指導体制は、マン・ツー・マンあるいはグループ方式など、さまざまな形態が行われているようでありますが、それぞれに長所、短所があると思うのであります。私は、研修の責任の所在をマン・ツー・マンによる指導教員にあると明確にした上で、校長のリーダーシップのもと、学校全体としての指導体制を確立し、指導教員をバックアップし、先輩教員が適宜指導に当たれるようにすることが、学校を経営する上からも、また指導教員が自分の学級を担任しながら指導に当たることの負担を軽減する上からも、よりベターなあり方ではないかと思うのであります。このことについては各教育委員会、各学校で十分工夫し、実施できるよう柔軟に取り組んでもよいのではないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 最後に一つ、総理に提案をしたいと思います。それは、新しく「教師の日」を設けてはどうかということです。この日は、国民皆で教師に感謝し、尊敬の気持ちを新たにする、教師はみずからその使命を思い起こし、子供を預かる専門職という立場をかみしめて、新たに気力を充実させ、子供を育てていただくという決意の日にしてはどうかということであります。教師の資質向上の上からもぜひ実現していただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず、今日の教育のあり方についてであります。
 今日の教育はこれまで長年にわたって国民の熱意と努力に支えられながら発展してきたものである、このようにまずは認識しております。今後さらにその発展を期するためには、我が国の歴史や伝統を踏まえながら、未来に対する深い洞察のもとに取り組む必要がある、このことは御指摘のとおりであると思います。一人一人の可能性を開くというお言葉もお使いになりました。私は、いつの時代にあっても百年の大計であるべきものである、このようにまさしく同感の意を表したいと思います。
 次が、教育荒廃の根底についてお触れになりました。
 学校教育をめぐります諸問題の原因、背景は、おっしゃったとおり学校、家庭、社会それぞれの要素が複雑に絡み合ってきておるというふうに私も思っております。学校教育においては従来から、個人の価値と尊厳との認識に基づきまして、生命を尊重する心の育成などに配慮して人間性豊かな児童生徒の育成に努力すべきものである、このように考えます。今後とも昨年末の教育課程審議会の答申を踏まえまして、心豊かな、たくましく生きる人間形成を目指す教育に努めてまいりたい、このように考えます。
 それから、教員に求められる資質能力についての御意見もございました。
 制度、カリキュラムももとよりさることながらでございますが、やはり教員みずからがその自覚を高め、教育力の向上を図ることが必要であると認識いたしております。そのためには、従来にも増して使命感、児童生徒に対する教育的愛情、そして教科等に対する専門的知識、これらを基礎とした実践的指導力などが重要であると思っておるところであります。今後ともこの資質能力の一層の向上に努めてまいりたい、このように考えております。
 それから、教育改革に対する熱意という問題にお触れになりました。
 私個人に対する評価は絶えず謙虚に耳を傾け、それに対して反論をしようなどと思ったことは一回もございません。が、十三年前の人材確保法、これらに対して評価をされた前提の上に立った御意見の御開陳がございました。教育は人づくりを通じてあすの国づくりを目指すものでありまして、その充実発展を図ることは政治の重要な責務であると認識しております。この認識のもとに、臨教審答申に基づきます教育改革の実現に全力を挙げて取り組む所存であります。
 それから、総合的な教員の資質向上、これにもお触れになりました。
 教員の資質能力については、養成、採用、研修、この各段階を通じて豊かな人間性と深い専門性、それを基礎とする実践的指導力を総合的に培う必要があるというふうに考えております。そのため、教員養成、免許制度、これらの改善を図りますとともに、新任教員の時期における組織的かつ計画的な研修としての初任者研修制度の創設を図る、こういうことにしたものでございます。初任者研修以後の現職研修の充実を図ること等をつけ加えまして資質向上に一層努力してまいりたい、このように考えます。
 それから、「教師の日」の御提言でございました。
 先生方に一層の自覚を促しますとともに、国民が先生方を尊敬し感謝する気風を育てる上で示唆に富んだ御提言であると思料いたしております。こうした制度は、保護者を初めとする国民の理解が大切でございますので、今後慎重に検討していくべき課題である、このように認識をいたしております。(拍手)
    〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
○国務大臣(中島源太郎君) まず、初任者研修につきまして、その初任者研修の意義でございますが、初任者の実践的指導力と使命感を養うとともに、幅広い知見を得させることを目的といたしておることはもちろんであります。ただ、それがまた、初任者研修を契機といたしまして他の教職員の方々の研修意欲が刺激され、初任者の指導を通じまして学年間や教科間の協力体制が確立されるなど、学校全体の活性化が図られることも期待をいたしておるところでございます。
 それから、条件つき採用期間を一年間にすることによって他の公務員との差が生ずるのではないかというお尋ねでございました。
 これは、今回教員につきまして条件つき採用期間を一年といたしますのは、初任者研修制度の導入に伴いまして教員の勤務形態が特殊なものとなります。そして、教員の職務の特殊性等に由来する職務遂行能力の実証の困難性がさらに深まるということがございまして、公務員としての適格性の判断をするのに一年を必要とするということでございまして、そういう理由からいたしまして、他の公務員との取り扱いの差には十分な合理性がある、このように考えております。
 次に、一年間の試補制度とどう違うのか、それからまた、なぜ試補制度にしなかったのかというお尋ねでございます。
 試補制度の意義というのは必ずしも明確ではございませんけれども、昭和四十六年の中教審の答申では「特別な身分において一年程度の期間、任命権者の計画のもとに実地修練を行なわせ、その成績によって教諭に採用する制度」とされております。これに対して初任者研修制度は、教員に採用後、教員の身分で研修を行うものでありまして、その点が試補制度とは異なっております。
 なぜ試補制度にしなかったかという御質問でありますが、これは、特別な身分の導入というものが現行公務員制度の基本にかかわることであることはもちろんであります。そういう意味で検討すべき問題が多いということが一つ。それからもう一つは、新任教員の身分が不安定であることによって、すぐれた人材が教職につきにくくなる、入りにくくなる、希望者が少なくなるというおそれがあるためでありまして、そういう意味からその導入に至らなかったものでございます。
 次に、初任者研修の結果で初任者一人一人が評価され採用が決められるのではないか、これは今申し上げたことで尽きておると思いますが、初任者研修の過程で得られました初任者についての資料は、あくまでも初任者の指導の参考に供されるものでありまして、正式採用になるか否かとは全く関係がないものと承知をいたしております。
 次に、条件つき採用期間中に教員としての適格性を欠くと判断される場合の条件は何なのか、そしてその免職された事例があったとすればどのようなものか、こういうお尋ねでございました。
 ちょっと具体例が難しいのでございますけれども、いろいろな理由がございますが、その職に引き続き任用しておくことが適当でない場合と書かれてありまして、一概には言いにくいのでございますが、例えば、児童生徒に対する過酷な体罰、あるいは教科経営の計画性が欠如している、あるいは教育活動における非常識な言動が多いとか、協調性が欠如しておるとか、PTA会長への暴行などとか、こういう原因が幾つか重なり合いまして免職処分が認容された例が一つございます。
 次に、病気による欠勤に対する対応はどうか、こういうことでございます。
 条件つき採用期間が一年とされましても、その免職等の判断基準は現行の場合と変わりません。したがって、心身に故障のあることによってその官職に引き続き任用しておくことが適当でない場合には、やはり免職される可能性があると言わざるを得ませんけれども、しかし、教員の病気欠勤の場合には、それを病気休暇の取り扱いとするのかあるいは免職、休職等の処分を行うのかは、任命権者において客観的な基準に照らしまして適切に判断されるべきものと考えております。
 次に、本来自発的な研修を義務化するのはいかがなものか、こういうことでございますが、教員の自発的な研修ももちろん重要でございます。しかし、それのみでは教員の職責を全うする資質能力の涵養には十分でない場合がございますので、そこで、教員の主観的な判断を離れて公教育を実施していくのに必要な研修が存在することはもちろんでございまして、教育行政機関が一定の方針に基づいて適切な研修の機会を提供し、教員が必要な研修を受けることは極めて大切なことと考えております。
 次に、そのような研修体制を整備する中で、初任者研修や現職研修の体系化等が計画、実施されるようにする必要があるのではないか、これは大変ごもっともな御提案でございまして、私どもも、教員が教職生活の全体にわたってそのときどきに応じて研修の機会が得られるようにすることはもちろん重要でございますし、その点で、教員が自発的な研修を進める中で初任者研修や現職研修の体系化を進めてまいりたい。まさに先生御指摘のとおり、今後体系化を進めてまいるつもりでございます。
 次に、研修三十五日あるいは七十日、こういう固定化して決めてしまうのはどうであろうか、もう少しそれに幅を持たせたらどうかということでございます。
 これもまたそのとおりでございまして、私どもは、初任者の資質能力の向上を図るために全国的に一定の水準が確保されるということは、これは必要でございますので、一応研修方法や研修日数等の基本的な事項については、国としての基準を示す必要はあると考えております。しかし、その実施に当たりましては、地域の実情ですとか学校の実態等に応じて、ある程度弾力的な取り扱いをしていただくことを認めていく必要があるものと考えております。
 次に、マン・ツー・マンの指導教員の中で、指導教員、先輩教員が全体でバックアップして適宜指導に当たれるようにすることがベターではないか、これも大変貴重な御指摘でございまして、私どもも、初任者の研修指導に当たりましては、学校全体として協同的な指導体制を整備することが必要でありますし、校長のリーダーシップのもとに指導教員が中核となり、かつ、他の教員の協力を得ながら全体として初任者に対して効果的な指導を行っていくべきもの、このように考えてもおりますし、望んでおるところでございます。
 最後に、全国的に一定の水準が確保されつつ、なお各都道府県、指定都市が地域の実情等に応じて工夫し、そして実施していくべきものではないか、その柔軟な取り組み方をお尋ねでございますが、まさに私どもも同じように考え、そのように進めたいと考えております。
 以上であります。(拍手)
    ─────────────
○議長(原健三郎君) 青山丘君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔青山丘君登壇〕
○青山丘君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま提案されました教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、総理並びに文部大臣に質問いたします。
 申すまでもなく、教育のかなめは教師であります。子供たちを愛し、教育に情熱を持つすぐれた教師を確保することは教育改革の重要な課題であります。また、教師には児童生徒の心身の発達についての正しい理解を初め教科の内容や指導法について正しい知識など、専門職としての資質が要求されております。そのための研修の機会を得ることは教育行政に課せられた大きな責任であります。とりわけ、大学、短大での養成段階を終えて初めて教壇に立つ新採用の時期は、教師としての使命感に目覚め、将来よき教師に育っていく上で決定的に重要な時期であります。この時期に集中的な研修の機会を与えることは極めて重要であり、かつ、新採用教員が順調に教育現場に対応できるようにすることであり、教員の資質の向上に資するところ、極めて大きいと言わなければなりません。およそどのような職業でも、新採用あるいは新人の時期には、先輩の指導のもとにその職業について必要な知識を身につけ、職業意識を形成するため、厳しい研修の時期を経るものであります。ましてや、次の時代を担う子供たちを預かる教師に対して初任者研修を課すことは、当然なことであると言えましょう。その意味で、我々は、今回の改正案によって、いわゆる初任者研修が実施に移されることを率直に評価するものであります。(拍手)
 私は、初任者研修制度の内容の一層の充実と円滑な実施を求める立場から、本改正案について若干の質問を行うものであります。
 今回の初任者研修法案は、御承知のとおり、昨年八月に解散いたしました臨時教育審議会の第二次答申における提言をもとにしたものであります。今百十二回通常国会には教育改革関連法案が合計六法案提出されており、本年はまさしく教育改革元年とも言えるのであります。
 まず、初任者研修を含む教育改革の推進にどう取り組まれるのか、総理並びに文部大臣の御見解をお伺いいたします。
 初任者研修の実施に当たって、一部の教職員団体は激しい反対運動を展開しております。これまで学校現場で、文部省や教育委員会と一部の教職員団体は、たびたび父母や子供たちをそっちのけにして不毛な対立を繰り返してまいりました。また、先生たちが校長、教頭をつるし上げるとか、卒業式、入学式での国旗掲揚や国歌の斉唱を拒否するとか、学校現場の混乱は目を覆いたくなるものもありました。このようなことが子供たちの心によい影響を与えるはずがありません。初任者研修の実施に当たっても、再びそのような反対運動による混乱が生じたり、研修の形骸化などがあっては、教育改革はますます遠ざかるばかりであります。初任者研修の実施に当たって、不当な介入や形骸化をねらう動きに安易に妥協してはなりません。父兄、国民の期待にこたえて、不退転の決意で臨むことを示していただきたいのであります。総理並びに文部大臣の初任者研修実施に対する決意をお伺いいたします。(拍手)
 次に、初任者研修が円滑にかつ強力に実施されますよう、その施策について質問いたします。
 初任者研修を円滑にかつ強力に実施していくためには、直接、新採用教員の指導に当たる指導教員のみならず、学校全体の協力が不可欠でありましょう。校長、教頭など管理職を中心に、指導教員を直接の責任者として、学校全体で新採用教員の研修をバックアップしていかなければなりません。このような学校内での協力体制をつくるためには、管理職がリーダーシップを発揮できるようその能力向上のための施策を進めていただきたい。どのような具体的施策あるいは指導をしていかれるのか、その方針をお尋ねいたします。
 次に、指導教員への支援策についてお尋ねいたします。
 新任教員をマン・ツー・マンで指導する指導教員は、教頭、教諭、講師の中から都道府県教育委員会、市町村教育委員会が任命することになっております。当然、指導教員に任命された先生にとって新採用教員の指導は大きな負担になってくるでありましょう。指導に当たる先生が新採用教員の指導に当たって困難を生じることのないようにしていかなければなりません。国並びに教育委員会は、指導教員に対する適切な支援策を講じていく必要があります。また、指導教員が若い新人教師を指導していくために必要な知識や情報を得られるよう、指導教員自身の研修の機会をも十分に確保しておかなければならないでありましょう。これらの問題についてどのような具体的措置を講じるお考えか、お答え願いたい。
 次に、初任者研修の実施に伴う児童生徒、父母への影響についてお尋ねいたしたい。
 初任者研修を円滑に実施するためには、父母の理解と協力も不可欠ではありますが、新採用教員が校外研修などで研修出張する際に、児童生徒への学習指導の面、生活指導面での十分な配慮を行うことで父母の不安を解消しなければなりません。そのための具体策についてはどのように考えておられるのか、お尋ねいたしたい。
 次に、指導教員への非常勤講師の任命についてお尋ねいたします。
 指導教員の任命に当たっては、退職された教職員などを積極的に採用すべきでありましょう。それは、すぐれた指導教員を確保することにもなり、かつ、高齢者対策としても退職教員の活用は極めて有益であります。退職教員を非常勤講師として指導教員に任命する方途について、そのための報酬等の財政措置も含めて政府の見解を求めます。
 初任者研修制度の創設によって、新採用教員の条件つき採用期間は、これまでの六カ月から一年間に延長されることとなります。教師としての資質を高め、能力を見きわめ、適切な研修を行うためには、どうしても一年間ぐらいは必要であります。また、この間に問題のある教師をチェックすることもできるでありましょう。御承知のように、教師としての資質に明らかに欠けている者が、一たん採用されると公務員としての身分保障から簡単にはやめさせられず、生徒や父母に多大な被害を与えていた例が最近も報道されました。このような教師は、本来採用の際にチェックされていて当然であります。もちろん、臨教審答申にも述べられているように、条件つき採用期間の延長がいたずらに教員希望者や新任教員に対して不安感を与えることがあってはならないことは言うまでもありません。しかし、条件つき採用制度の運用に際しては、適切、慎重な配慮を加えつつ、問題のある教師のチェックを厳正に行っていくべきでありましょう。この点について御見解をお伺いいたしたい。
 次に、幼稚園教員の初任者研修についてお尋ねいたします。
 幼児期は人間の一生の中で極めて重要な時期であります。その時期に幼児の教育、保育に当たる幼稚園教員の初任者研修も、できるだけ速やかに実施に移すべきであります。当面は都道府県教育委員会が研修を実施することになりますが、国はこれに対してどのような具体的な奨励策を、あるいは指導を行っていかれるのでありますか。また、幼稚園における初任者研修の本格実施は、いつごろ、どのような条件が整った段階で行うのか、御見解を伺いたい。
 続いて、私立の学校の初任者研修について質問いたします。
 私学が我が国の教育に果たしてきた役割は極めて大きなものがあります。私立学校もまた公の教育の一翼を担うものであり、その教育条件において公立学校と基本的に格差があってはなりません。初任者研修についても私学の独自性、主体性を尊重しつつ、私立学校における実施を求めていく必要があります。また、私学がその実施を進める際には、国と都道府県教育委員会は十分な協力と援助を行うべきであります。初任者研修を行おうとする私学に対してどのような協力を行おうとされるのか、支援措置をとられるのか、お伺いいたします。
 次に、現職教員の研修について質問いたします。
 教員は、専門職として社会の期待と負託にこたえるため、新任の時期のみならず、その教職生活を通じて不断に研さんを積まなければなりません。教員の現職研修については、臨教審答申においてもその体系化が求められております。また、研修を奨励するため、研修助成などの方策や表彰、顕彰制度などの充実が提言されております。これらの提言を踏まえて、現職研修の強化拡充にどう取り組まれるのか、御所見を伺いたい。
 最後に、試補制度の導入についてお尋ねいたします。
 今回の初任者研修は、教員の資質の向上という観点から評価するものではありますが、我々は一歩進んで試補制度の導入も大いに検討に値すると考えております。確かに、我が国の雇用慣行の中では試補制度の導入は必ずしも容易ではありません。しかし、教員の資質の向上と教員としての適格性を見る上では、一年間の研修の後採用試験を行い教員として採用する試補制度がより望ましいことであります。試補制度の検討についてどのような御見解をお持ちか、お尋ねいたします。
 私は、初任者研修の強力な実施に向けて断固たる決意を持って臨まれることを再度要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず、基本的に教育改革元年と本年を位置づけて、そして初任者研修を評価する立場に立っての御意見を交えた御質問でありました。
 時代の進展に対応し、創造的で多様な教育の実現を目指して教育改革を進めることは、おっしゃるとおり、まさに国民の強く期待するところであります。そして、国政の最重要課題の一つであると認識をいたしております。このためには、今後とも、臨教審答申に示された広範多岐にわたる提言を踏まえながら、初任者研修制度の創設を初めとする教育改革の積極的な推進に努めていかなければならない、このように考えております。
 そうして、この研修実施につきましては、いろいろ御心配の向きもございました。不当な干渉あるいは形骸化、そういうことがないようにという強い御要請でありました。
 教育は国の大本であり、初任者研修制度はこのような考え方のもとに構築されたものであるというふうに理解をしております。新任教員の実践的な指導力や使命感、幅広い知見を養う上で、初任者研修制度は極めて重要な制度であると問題意識をまさに同じくいたしておるところであります。政府としては、教育公務員特例法等の改正法案の速やかな成立を図りまして、初任者研修制度の円滑かつ効果的な実施に万全を期してまいりたい、そして、最後につけ加えられました御要請にこたえなければならない、このように考えております。(拍手)
    〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
○国務大臣(中島源太郎君) 青山議員から、初任者研修を含む教育改革に臨む決意をお尋ねでございました。
 まさに教育改革は人づくりでございまして、国家百年の大計でございます。また、人づくりをする教員もまさに人でございまして、教育は人なりと言われるところでございますので、人が人を育て、人が人を教える、この教員の資質向上が一番重要なことであると思いまして、その資質向上のために初任者研修を導入をしようとするものでございますが、この点について不退転の決意で臨めという御激励でございまして、まさにその言葉を胸に刻みまして頑張ってまいるつもりでございます。
 それから、管理職がリーダーシップを発揮できるようその能力向上のための施策が必要ではないか、こういうことでございまして、まさに指導教員を中核とした指導を円滑に行いますためには、校長を初めとする管理職のリーダーシップのもとに学校全体が協同的な指導体制をもってこれに臨む必要がございますし、これは初任者にとっても有効であり、学校全体の活性化のためにも重要なことである、こう考えております。まさに管理職研修等を通じまして、管理者そのものが管理者にふさわしい資質の涵養に努めてまいれるように努力をいたしたいと思います。
 同時にまた、指導教員自身が研修を続けるべきではないか、これはまさにおっしゃいますように、教員というのは常に自分の資質の向上のために努めるべきことでございまして、教える指導教員みずからが自分の経験や情報を交換し合いながら、さらに協議する機会を設けるなどの配慮を行ってまいりたい、このように考えております。
 次に、父母の側の御理解がぜひ必要ではないかということは私も痛切に考えております。
 例えば初任者が校外研修に出ておる間の授業につきましては、指導教員がこれを行うことはもちろんでありますが、教員全体でこれをカバーをいたしまして、初任者の受け持つ学級が自習になったりすることのないよう、その児童生徒の教育に万全を期すことはもちろんでありますし、また保護者に対しましても、初任者研修制度の趣旨や実施方法等を十分に御理解をいただき、円滑な実施を図ってまいりたいと考えております。
 次に、退職教員を非常勤講師として指導教員に任命する方法についてお尋ねでございました。
 先生もこれに対して賛意を表しておられますが、まさに退職教員といえども長い間教鞭をとられておりまして、円熟をされた教育指導方法を御存じの方でございますので、その経験それから知識を初任者の方々にじかに受け継いでいただくという機会を持つことは大変貴重なことと存じておりまして、現在も退職教員の方々のお力をかりておりますが、今後ともそのような適切に活用していく道を開いていこうと考えておりますし、それに関する所要の財政措置を講じておりますが、今後も講じてまいりたいと存じます。
 次に、条件つき採用制度の運用につきまして、教師のチェックを厳正に行うべきではないか、こういうお尋ねでございました。
 条件つき採用制度は、その期間が六カ月から一年になった場合でも、客観的に職務遂行能力を判断することに変わりはございません。したがって、今後とも制度の趣旨にのっとった適切な運用がなされますように、都道府県教育委員会を指導してまいりたいと存じております。
 次に、幼稚園の教員についてお尋ねでございました。
 幼稚園の教諭等につきましても、幼児の教育をつかさどる重要な職務でございますから、他の校種の教諭等と基本的に異なるものではございませんので、初任者研修の対象とするものでございますが、ただ、幼稚園の場合には、学校の所属教員が他の校種と比べて少ないことが事実でございますので、指導教員を特定した指導を行うことは、現段階ではなかなか困難でございます。このことから、今回の改正案におきましては、公立幼稚園の教諭等に対しましては、当分の間、都道府県教育委員会が初任者研修とは異なる研修を実施しなければならないとしておりまして、例えばどのようなことかと申しますと、昨年十二月の教育職員養成審議会答申において、年間二十日間程度の研修を実施すべきことが提言されておりまして、文部省としても当面それを踏まえて対処してまいりたいと考えております。
 さて、その幼稚園の初任者研修の本格実施はいつごろか、こういうことでございますが、教員の配置状況が改善されまして、それぞれの幼稚園において指導教員を確保できるようになった場合には、初任者研修を実施すべきと考えております。今直ちにお答えできないのは残念でございますが、環境を整備してまいりたいと思っております。
 次に、私立学校においても初任者研修の実施は必要ではないかとお尋ねでございまして、まさにおっしゃいますように、私立学校の教員につきましても、その資質能力の向上を図ることは重要な課題であります。しかし、私立学校には独自の建学の精神あるいは教育方針がございますので、私立学校における初任者研修については,国が一律に制度化するというものではないと考えておりまして、設置者がそれぞれの学校の実情に応じて、公立学校の初任者の場合を参考にしながら自主的に判断し、実施していただくことが望ましいと考えております。その場合、都道府県がそのノーハウをどのような形で御提示し、協力していくかについては、関係団体の意見を聞きながら検討してまいりたいと考えております。
 次に、教員の現職研修については、その体系化、研修助成などの方策や顕彰制度の充実が必要ではないかというお尋ねでございます。
 これもおっしゃるとおりでございまして、昨年十二月の教育職員養成審議会の答申におきましても、初任者研修に引き続き、現職経験五年程度、十年程度及び二十年程度の時期における研修の実施など、現職研修の体系化をさらに進めるべきことが提言をされておるわけでございます。文部省としても、今後とも現職研修の改善充実に努め、現職教員の資質の向上を図ってまいりたいと考えております。
 最後に、試補制度との関係のお尋ねがございました。
 これにつきましては、試補制度の意義は先ほど申しましたが、任命権者の計画のもとに、教諭という身分がなくて実地研修を一年程度の期間行わせまして、その成績によって教諭に採用する制度、これを試補制度と言って間違いないんだと思いますが、その試補制度につきましては、特別なそのような身分の導入が現行公務員制度の基本にかかわることでもありますし、検討すべきことが多いということ、新任教員の身分が一方で不安定になるためによき人材がほかへ行ってしまって、教員によき人材が集まらなくなる危険があるということも考えまして、その実施が見送られてきたものと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
○副議長(多賀谷真稔君) 石井郁子君。
    〔石井郁子君登壇〕
○石井郁子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、教育公務員特例法の改正案について質問いたします。
 今国会には臨教審関連六法案が提出されています。これら六法案は、いずれも憲法と教育基本法の民主的精神を踏みにじる重大な内容を持っています。教師を研修の名のもとに国家統制する教育公務員特例法、学歴で教員間に差別をつくる教員免許法、教育長の権限を強め学校と教育内容の統制を図る地方教育行政法、財界の大学支配を確立して学問の自由と大学の自治を破壊する総合研究大学院の設置や、高校教育をゆがめ大学の格差を拡大して受験競争を激化させる新テスト導入のための国立学校設置法、定時制と通信制の課程を三年にし、安上がりの高校教育をねらう学校教育法、そして臨教審教育改革を強力に推進するための臨時教育改革推進会議設置法、まさにこれらは戦後打ち立てられた国民の教育という法体系を大転換するものであり、到底認めることはできません。(拍手)
 戦後の民主教育は、戦前、天皇のため国家のために命を捨てよと教え、野蛮な侵略戦争に国民を駆り立てるために教育が最大の武器として利用されたという痛苦の反省から出発しました。国家のための教育にかわって、個人の尊厳と国民のための教育の確立にどれほど希望と期待が込められたことでしょうか。新生日本の学校はまさに楽しいところに変わりつつあったのです。私もこの新しい息吹に触れ、戦後民主教育で育った世代の一人です。
 ところが、こうした国民の希望の灯もつかの間、再び国家のための教育に逆戻りさせようとしてきたのが歴代自民党政府の文教政策なのです。本来国がなすべき仕事である教育条件整備については、臨調行革によって一層なおざりにされ、先進諸外国では二十五人から三十人学級が常識なのに、いまだに四十人学級さえ完成していません。その上、四千二百四十四校に上る非教育的なマンモス校が放置されています。教育費の父母負担は大変重く、低所得者は進学をあきらめるなど、教育の機会均等の原則がじゅうりんされています。国の一般会計に占める文教予算の割合も低下の一途をたどり、ピーク時の一四%から八%にまで落ち込んでしまいました。その一方で、国がしてはならないはずの教育の不当な支配には執念を燃やし、学校と教師の活動の自由と自主性を抑圧し、君が代の押しつけを初め学習指導要領や教科書検定などを通じて教育内容に介入するなど、国家統制を強めてきました。差別、選別の教育体制がつくられ、子供たちは偏差値と管理主義教育の中でどんなに傷ついているでしょう。教育荒廃と言われる今日の深刻な教育危機をつくり出したのは、このように歴代自民党政府の反動的で貧困な教育行政にあることは明らかであります。総理、あなたは戦後民主教育の制度と理念をどのようにお考えなのか、具体的にお答えください。(拍手)
 大学入試の改革は焦眉の課題ですが、ここ数年、政府・自民党は大学に圧力を加え、入試制度を猫の目のようにくるくる変えて受験生を混乱させ、国民の強い批判を浴びています。総理はどう反省しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
 その上問題なのは、入試の安定化を求める受験生や国民の声を無視して、高校間と大学間の格差を広げ、高校教育をゆがめる新テストを来年十二月に実施しようとしていることです。このテストが、受験地獄を解消するどころか、ますます激化させることになることは明らかです。このような国民的合意のない新テストの導入は直ちに中止すべきではありませんか。総理の決断を求めます。
 総理、あなたが中曽根前内閣から継承すると言われる臨教審教育改革は、個性化、多様化、世界の中の日本人を強調し、教育荒廃を口実にして一層差別、選別体制を強め、国家主義的道徳を押しつけるものとなっています。これでは、一人一人かけがえのない子供たちの可能性を伸ばすことができず、教育とは言えません。学校教育の目的は、すべての子供たちに未来の主権者たるにふさわしい基礎学力、民主的市民道徳、豊かな情操、体力などをしっかり育てることにあります。それこそが教育基本法の目指すものですが、そのようにはお考えになりませんか。
 総理、あなたのふるさと島根県には、毎朝全校の教職員、生徒が、皇居遥拝の号令で東の方を向いて深々と頭を下げ、教育勅語を直立不動で合唱するという戦時中そのものの学校があるのを御存じですか。また、臨教審の影響を受けて、公立高校の卒業式で憲法否定の式辞を述べるというとんでもない校長も出てきました。憲法と教育基本法に反した時代錯誤の例ですが、これが臨教審教育改革の行き着く先ではないと言い切れるでしょうか。総理、あなたは、このような教育の姿を見て、よいことだと思われますか、お答えください。
 次に、教育公務員特例法の改正案について具体的にお聞きします。
 今日の複雑で深刻な教育危機の克服に当たって教師の果たす役割は重要であり、そのため教育の専門家としての力量発揮が求められていることは言うまでもありません。教員の専門的力量の向上は、みずからの主体的な研究努力とともに、子供たちとの日常的な人格的触れ合いを通じ、教職員相互の切磋琢磨の過程を通してこそ真に培われるものです。現行の教育公務員特例法が、他の公務員と違って、その第十九条において「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と規定し、特別に教員の自主研修の努力義務とその機会の保障をうたっているのは、まさにそのためなのであります。また、このことはILO、ユネスコ共同の、教師の地位に関する勧告を指摘するまでもなく、国際的にも常識のことです。
 ところが、今回の改正案は、この基本原則を根本から否定しようとする反動的、反教育的なものにほかなりません。政府が義務づけようとしている初任者研修や現職研修なるものは、研修という体裁こそとってはいますが、およそ本来の自主的研修とは異質のものであり、行政がそれこそ権力的に、文部省や教育委員会の一方的な方針や思想を注入する場なのです。現に、初任者研修の試行では、文部省主催の洋上研修で、日の丸、君が代で一日が始まり、規則ずくめの生活が強いられ、学校現場では四六時中、指導という名の監視下に置かれるなど、新任教員にとっては何よりも大切な子供たちとの接触の機会が奪われているのが実態ではありませんか。既に、研修を受けた新任教員の一割以上がやめる県さえ出るなど、初任者研修に対する批判が強まっています。子供に目が向かず、戦々恐々として指導教員や校長の顔色をうかがうような状況で、どうして教師が育ち、真の教育が成り立つでしょうか。(拍手)
 政府が教員の資質向上を真剣に考えているというのなら、このような画一化された行政研修の強要をきっぱりとやめ、教育公務員特例法の趣旨を尊重して、教員だれもが望んでいる自主研修の機会と条件を最大限に保障すべきではありませんか。文部大臣、お答えください。
 次に、初任者研修制度の問題です。
 この最大の問題点は、教員の条件つき採用期間を六カ月から一年に延長することと、行政研修とをセットにしていることにあります。研修が本来の目的であるとするならば、現行のままでも何の不都合もないはずであり、延長などは必要ありません。このことは、条件つき採用という不安定な身分に置いたままの方が管理、統制しやすいからであり、時の権力に都合のよい、自主性を持たない教員の育成を図ることができるからです。同時に、政府・自民党の意向に沿わない教師を学校現場から排除していこうとする極めて政治的なものと言わなければなりません。新任教員の新鮮な意欲と情熱を奪い、時の権力に都合のよい型に流し込もうとするこのような初任者研修制度の導入と、それを前提にした試行は、どうしても認めることができません。文部大臣の決断ある答弁を求めます。
 さらに重大なことは、教職員や国民の批判を抑えつけるために文部省通知を出して、初任者研修試行に反対する集会や署名を禁止しようとしていることです。まさに国民に挑戦する言語道断のことだと言わねばなりません。今、全国の教師が切実に望んでいるのは、行政研修の強化でも管理主義の教育でもありません。子供たちの発達を促し育てるために、自由で創意のある多彩な教育活動に全力で打ち込むことです。行政がなすべきことは、こうした教師の活動を激励し、その条件を整えることなのです。教員の教育上の自主的権限を保障し、四十人以下学級の実現やマンモス校の解消など、行き届いた教育の条件を整備すべきです。初年度二百億円と言われる初任者研修予算を、教職員と父母が願っている要求にこそ回すべきではありませんか。文部大臣の明快な答弁を求めます。
 以上、教育公務員特例法の改正案並びに臨教審関連法案の持つ問題点について質問してきました。
 今、なぜこのような教育改革を急ぐのでしょうか。その根源に触れないわけにはいきません。今国会は、新大型間接税導入をめぐる税制国会でもあります。政府は、新大型間接税を導入することによって大軍拡予算を確保し、西側同盟の一員として軍事的にもアメリカの核戦略体制を積極的に担っていこうとしています。その日米軍事同盟体制国家を支える人づくりこそが臨教審教育改革であり、それを法制的に実現するのが教育反動化六法案にほかなりません。税制改革も、そして教育改革も、農産物輸入自由化も、根は一つ、それは日米安保条約が存在するからであります。
 日本共産党・革新共同は、アメリカと財界のための、そして戦前の教育へと逆戻りさせる反動的教育改革を絶対に許すことはできません。広範な国民とともに法案阻止のため全力を挙げるとともに、国民が今日求めている真の教育改革を実現するために奮闘することをここに表明し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣竹下登君登壇〕
○内閣総理大臣(竹下登君) まず、基礎的な見解を異にする前提に基づく御質問でございました。
 戦後教育の理念、これは教育基本法に示されております目的を達成するために、基本原則を踏まえてきちんとこれからもやっていかなければならぬ。したがって、今国会にお願いしております教育改革関連法案も、まさに憲法、教育基本法の精神にのっとったものである、このように考えております。
 それから、入試改革の問題がございました。
 これは臨時教育審議会の第一次答申のテストについては昭和六十五年度実施をめどとしておる。したがって、各大学の創意工夫ある多様な利活用を通じて大学入試の改善のより一層の進展に寄与するもの、このように考えます。
 それから、学校教育のあり方、人格の完成を目指すものであります。その中で、また、児童生徒の人間としての調和的な発展を図って、次代を担う、心身ともに健全な国民を育成することが大切である、このように考えております。
 それから、島根県での反憲法の問題でございましたが、具体的例を知っておるわけではございませんが、同じ主義主張、演説の鋳型の中に流し込むようなやり方をやる考えは全くございません。(拍手)
    〔国務大臣中島源太郎君登壇〕
○国務大臣(中島源太郎君) 初任者研修に対しまして、この初任者研修の責務と、それから自主的な研修との点でお尋ねでございました。
 この点については、教育は人なりでございまして、まさに教育公務員特例法第十九条で、教職にある者は「絶えず研究と修養に努めなければならない。」こう書いてあるわけでありまして、そのためには、自主的な研修と同時に、やはり任命権者の研修についての責務も積極的に規定しておるわけでございます。そこで、自主的な研修と同時に、教員の職責を全うする資質能力の涵養にはそれだけでは十分でない点を、教員の主観的な判断を離れて、公教育を実施していくのに必要な研修等が存在することはもちろんでありまして、教育行政機関が一定の方針に基づいて適切な研修の機会を提供すること、それがまさに初任者研修でございますので、さように御理解をいただきたいのでございます。
 それから、行政研修と条件つき採用期間をセットにしている、こうおっしゃいますが、セットにしているのではなくて、初任者研修制度そのものが重要でありますので、教員の勤務形態が特殊なものであること及び教員の職務の特殊性とそれに伴う職務遂行能力の実証の困難性にかんがみて、一年としておるわけでございまして、他の公務員と同じように、客観的な判断基準に照らしてその職務遂行能力は判定されるものでございます。
 以上のように、初任者研修制度は、おっしゃるように初任者を一定の型にはめようとするものではなく、まさに個性を伸ばす研修を実施しようとしているものでありますことを御理解いただきたいのであります。(拍手)
 最後に、子供たちの発達を促すために自由で創意のある教育活動、それと教育条件の整備、これをお尋ねでございます。
 まさに私どももそのとおりでございますが、教員の資質能力の向上を図ることは、教員自体が生涯を通じて意欲を持って御自分の研修にいそしんでいただく、それで、ある一定水準の研修を、まさに生涯の研修の第一段階として初任者研修を一年間研修していただくということが必要でありまして、同時にまた、教育条件の整備を図ることも当然重要である。この両施策が相まって学校教育の充実を図ることができるものと考えております。
 以上であります。(拍手)
○副議長(多賀谷真稔君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(多賀谷真稔君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十四分散会