第112回国会 社会労働委員会 第6号
昭和六十三年四月五日(火曜日)
    午後一時七分開議
 出席委員
   委員長 稲垣 実男君
   理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君
   理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君
   理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君
   理事 田中 慶秋君
      相沢 英之君    粟屋 敏信君
      大野 功統君    片岡 武司君
      木村 義雄君    近藤 鉄雄君
      佐藤 静雄君    自見庄三郎君
      高橋 一郎君    堀内 光雄君
      三原 朝彦君    箕輪  登君
      持永 和見君    伊藤 忠治君
      大原  亨君    川俣健二郎君
      河野  正君    田邊  誠君
      新井 彬之君    大橋 敏雄君
     平石磨作太郎君    吉井 光照君
      塚田 延充君    児玉 健次君
      田中美智子君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (全日本自治団
        体労働組合衛生
        医療評議会事務
        局長)     朝日 俊弘君
        参  考  人
        (国民健康保険
        中央会理事長) 加地 夏雄君
        参  考  人
        (全国市長会国
        民健康保険対策
        特別委員会委員
        長)
        (気仙沼市長) 菅原  雅君
        参  考  人
        (慶應義塾大学
        商学部教授)  庭田 範秋君
        参  考  人
        (医事評論家) 水野  肇君
        社会労働委員会
        調査室長    石川 正暉君
    ─────────────
委員の異動
四月一日
 辞任         補欠選任
  塚田 延充君     塚本 三郎君
同日
 辞任         補欠選任
  塚本 三郎君     塚田 延充君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 国民健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)
     ────◇─────
○稲垣委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしております。
 御出席を願っております参考人の方々は、全日本自治団体労働組合衛生医療評議会事務局長朝日俊弘君、国民健康保険中央会理事長加地夏雄君、全国市長会国民健康保険対策特別委員会委員長菅原雅君、慶應義塾大学商学部教授庭田範秋君、医事評論家水野肇君、以上でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の順序は、初めに参考人の方々から御意見を十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、まず朝日参考人にお願いいたします。
○朝日参考人 ただいま御紹介いただきました自治労の衛生医療評議会、保健所あるいは病院などの職場でつくっております労働組合の事務局長をしています朝日と申します。よろしくお願いをしたいと思います。
 冒頭に、今回このような機会を与えていただいたことについて、まずお礼を申し上げたいというふうに思います。
 私は、先ほども紹介いたしましたように、自治体の窓口あるいは自治体の病院、そういう職場において地域の住民の皆さんと直接に接する自治体労働者を代表して、今回の国民健康保険法の改正案に対して、これに反対をする立場から意見を述べたいと思います。
 ところで、本論に入る前に一つだけ触れておきたいことがございます。
 つい先日、四月三日付の新聞で、これは朝日新聞の「記者席」という欄に、厚生省の下村保険局長名で最近通知が出された、「国民健康保険の保険料引き下げをしてはいけない。安易に引き下げたら、補助金の配分を見合わせることもありうる」というような内容の通知が出されていたということであります。
 実は、こういう趣旨の指導は昨年老人保健法の改正直後にもなされていたわけですが、こういう形で厚生省の側が一方的に自治体にいわばおどしをかけるような通知を出していくということについて、大変残念に思います。実際、自治体の窓口では、年々に高くなる一方の保険料を納入していただくに当たって、精いっぱいのお願いをし、何とか御理解をいただいているという状況にございます。あるいは俗に夜討ち朝駆けの徴収とさえ言われるような状況にございます。住民の皆さんに保険料を納入していただくことに大変困難を生じているような現実がございます。このような状況がございますだけに、今回のような厚生省の態度は、何とも非常に高飛車で、自治体だけではなくて住民感情を逆なでするものだというふうに考えざるを得ません。冒頭にこんなことを申し上げて大変失礼なんですが、つい先日報道されていたことですので、ぜひ皆さんに訴えておきたいというふうに思いました。
 さて、本論に入ります。私は、今回の改正案に対して、まず基本的な考え方として、この国保制度の改革については、老人保健制度の根本的な再検討を前提として、国保の給付率の改善を含めて、より抜本的な改革が求められているのだという点を改めて強調しておかなければいけません。なぜなら、今回の改正案は、本来検討すべき重要課題を避けております。全く暫定的な改正にとどまっていると言わざるを得ません。それだけではなくて、国保財政に関する国庫負担を削減をし、これを都道府県や市町村に押しつけようとする、つまり一言で申せば、昭和六十三年度予算編成上のつじつま合わせ的な改正案にすぎないというふうに考えざるを得ないからであります。
 さて、財政問題についてさまざまな論議が既になされておりますので、私は、とりわけ、今回の改正案の中でも、指定市町村の安定化計画と関連して幾つか問題と思われる点を指摘しておきたいと思います。
 時間に限りがございますので、早速お手元に配付させていただいております資料をごらんいただきたいというふうに思います。お手元に二枚の資料を配付していただいていると思いますが、これは現在各県において策定されつつあります地域医療計画の概要を私なりに数字を拾い上げて整理をしてみたものであります。まだデータのすべてが記入できていませんので、未完成な資料で大変申しわけありませんが、それでもこの中から幾つかの特徴を読み取ることができると思います。
 例えば、最初のページ、地域医療計画の概要その(1)の@のところ、神奈川県の欄をずっと横に追っていただきたいと思うのですが、神奈川県の場合は、神奈川県下を八つの二次保健医療圏域に分けました。そして公式に従って計算をした結果、この八圏域全域において病床過剰という結果が出ました。全県合計すれば、一般病床について見ますと、約四千ベッドの過剰、こういうことになっています。ところで、F、人口十万対病床数を見ますと、一般病床では七百四十七という数字になっております。
 一番の神奈川県と比較をしながら十一番の徳島県の医療計画のところを横に見ていただきたいと思います。徳島県の場合は医療圏域が三つ。そしてこの三つの医療圏域とも病床不足でありまして、病床過剰とされた圏域はゼロであります。全県を合計しても、一般病床について言えば六百四十一の不足ということになっています。ところで、このFの同様に人口十万対病床数を見ますと、徳島の場合は千三百六十八となっております。つまり神奈川では病床過剰、徳島では病床不足となっているわけですが、人口十万対病床数で見ますと、徳島は神奈川の倍近い数値になっているわけです。
 次に、二枚目の資料にグラフをつけておきました。これは既に御存じだと思います。厚生省の方が示しております都道府県人口一万対病床数と老人一人当たりの入院医療費の相関を示すグラフです。ここでこのグラフを示しましたのは、病床数と入院医療費との間にはかなり強い相関関係があって、そういう意味で、先ほど示しました各県の病床数を読み取るときに、このような関係があるということを踏まえながらぜひ見ていただきたいという意味でこのグラフを添付いたしました。
 さて、結論を急ぎたいと思います。私がこの表に基づいて指摘したかったことは、まず第一点に、これほどまでに我が国の病院のベッド数は地域、都道府県によって異なっております。このような実態一つを考えてみても、今回の改正案のように、全国一律に基準医療費というものを定め、超過費用額を指定市町村及び都道府県に負担させようとする考え方そのものにどうしても無理があるのだと考えざるを得ないということであります。
 なお、付言すれば、このような医療機関の地域的偏在については、国の医療制度の基本的な柱として自由開業医制度という制度がとられておりますが、この制度がとり続けられている限りいわば当然に起こり得る現象でありまして、もちろん医療機関の開設を承認する権限は都道府県知事にございますが、しかし、だからといって、その偏在の責任のすべてを都道府県知事に帰することはできないというふうに考えています。
 第二に申し上げたかったことは、このような医療機関、病院、病床数の地域的偏在を是正していくための切り札として、厚生省は地域医療計画の問題をしきりに強調しております。しかし、先ほどごらんいただいたように、病床の適正な配置の基準あるいは目標値とされる必要病床数そのものが実は現在の地域的偏在を後追い的に認める形で算定される仕組みになっております。したがって、これでは幾ら計画を推進しても、医療機関の偏り、現在の地域的偏在は是正されそうにもないということがこの表を見ていただくことによっておわかりになるのではないかと思います。以上が、この表から幾つか指摘をした問題であります。
 次に、視点を変えて、最近しきりに問題とされています長期入院、とりわけ老人のいわゆる社会的入院の問題について触れておきたいと思います。
 といいますのは、この長期入院あるいは社会的入院という問題の取り上げられ方あるいは焦点の当て方が大変気になるからであります。どういうことかといいますと、最近の論議は、長期入院は医療費、とりわけ老人医療費を増大させる最大の要因となっている、したがって、この問題を早く解決をしないと、費用負担がますます耐えられなくなるではないか、こういう論調が非常に強く横行しているというふうに思います。例えば今回の国保問題に関する審議の中でも、入院の給付については保険者が、国保の場合は市町村長ということになりますから、市町村長が入院の給付については承認することを必要とする。したがって、いわゆる社会的入院については承認しなければいいではないかなどという乱暴な議論が堂々となされています。
 しかし、考えてみていただきたいのですが、本当にこういうことができるというふうに皆さんお考えなのでしょうか。もちろん、ここで誤解のないように申し上げておきますが、私自身も長期入院そのものに賛成しているわけではありません。ですから、家族と相談をしたり、あるいは訪問看護、在宅介護サービスの提供を検討したり、あるいはその他の社会福祉資源の活用など、さまざまな可能性を検討し、何とかして退院できる条件づくりを進めながら努力をしているわけです。
 したがって、ここで私が申し上げたいことは、この長期入院あるいは社会的入院と言われることに対しての最近の論議の立て方あるいは論議の進め方がどうも逆転、逆立ちしているのではないかというふうに思うからです。例えば長期入院は困る、入院の給付を承認しなければよいではないか、あるいは長期入院は困る、だから社会保険診療報酬の点数を下げて、入院日数が長引けば長引くほど医学管理料や基準看護料の点数を画一的に逓減することによって長期入院を避けるように持っていこう、こういうことがつい最近の診療報酬改定でも行われているわけですが、こういう問題の立て方あるいは解決の進め方は、患者さん自身やその家族が置かれている状況を無視したものだと言わざるを得ませんし、しかも下手をすれば、お年寄りの存在あるいはお年寄りの長期入院患者さんの存在を厄介者扱いするという極めて危険な発想と言わざるを得ません。
 私たちは、長期入院あるいは社会的入院と言われるような実態を解決するためには、まずもって早期に退院できるようにするための社会的条件づくりに取り組むことが必要なのだというふうに思います。ましてや、今回の改正案のように、市町村に医療費適正化の努力を義務づけ、その上二年後にその成果が上がらなければペナルティーを科す、超過費用額を負担せよ、いわばむちでしりをたたくに等しいような方策を打ち出すことはどうしても賛成できません。むしろ今厚生省が提起すべきことは、財政面においても保健医療政策面においても、国が国としての責任をきちんと果たすとともに、国がリーダーシップをとって都道府県及び市町村と共同して保健事業をさらに充実強化すること、とりわけ国保直営医療機関の役割を強化し、この国保直営医療機関を地域医療を担う拠点として積極的に位置づけること、そしてさらに、それぞれの地域事情を踏まえた社会的条件づくりを具体的に進めること、それはいわば高齢化社会に対応するための地域づくりあるいは町づくりということだと思います。そしてその実現に向けたプログラム、できるだけ多様なメニューの提示とそのための予算をきっちり確保していくことが何よりも求められているのだというふうに思います。
 最後に、以上幾つか申し上げた視点から、私は、今回提案をされております国保制度改正案についてはぜひとも撤回をされて、その上でより抜本的な制度改革に向けた検討作業に改めて着手していただきたいということを強く要望いたしまして、私の意見陳述といたします。ありがとうございました。(拍手)
○稲垣委員長 ありがとうございました。
 次に、加地参考人にお願いいたします。
○加地参考人 御紹介をいただきました国民健康保険中央会理事長の加地でございます。
 社会労働委員会の諸先生方におかれましては、日ごろ国民福祉の充実向上のために格段の御努力を賜っておりますことに対しまして、衷心より敬意と謝意を表するものであります。
 また、本日は、当委員会が大変貴重な時間を割いていただきまして、国民健康保険法の一部を改正する法律案について、私どもの意見を申し述べる機会を与えられましたことに対しまして、心から感謝を申し上げたいと存じます。
 私は、今回の改正法案に賛成の立場から若干の意見を申し上げたいと思います。
 今回の改正法案は、かねてから国保の構造問題の一つとして解決を迫られておりました低所得者の対策につきまして、いわゆる保険基盤安定制度を創設するとともに、医療の地域格差問題の対応策として、医療費の高い市町村に対して、その計画的な解消措置を講ずるための仕組みをつくることを主軸とされまして、都道府県に対しましては、国保事業に対する新たな費用負担を求めるとともに、市町村に対する積極的な指導、関与を行うことを内容としたものでありまして、今日依然として厳しい財政運営を余儀なくされておる国保の保険者にとりましては、この改正案は当面の改善策として評価すべきものであり、ぜひともこの法案が早期に成立されるようお願い申し上げたいと思うのであります。
 次に、改正法案の内容につきまして二、三申し上げたいと思います。
 その一つは、いわゆる保険基盤安定制度についてであります。国保の財政運営の実態につきましては、改めて申し上げるまでもないところでありますけれども、特にここ三年ないし四年間、国保財政は急速に悪化をいたしまして、まさに崩壊の危機にさらされたのであります。ある著名な財政学者が、特定の市における監査委員としての経験を通して、国保事業はまさに財政的に完全に破綻している、こういう指摘をされたのを思い起こすのでありますが、このような事態の中で、さきの老人保健法の改正や退職者医療の見込み違いに対する財政的補てん措置などをお願いしながら、市町村におきましては、一般会計からの繰り入れをふやすとかあるいは基金の取り崩しを行うのは当然のことながら、保険料を大幅に引き上げるといったやりくりを繰り返しまして、何とか今日まで国保事業を支えてまいったのであります。
 特に、保険料の引き上げについて申し上げますと、昭和五十九年から六十一年の三年間、この時期は御承知のとおりデフレに近い経済環境でございましたが、この三年を通して全国平均で三六%という高率の引き上げを行わざるを得なかったのであります。このような保険料の引き上げについては、当然のことながら全被保険者の中で二三%を占める保険料軽減世帯にはほとんど及ばないわけでありまして、結局一般の被保険者が負担することになるわけであります。住民の保険料負担についての重圧感が最近急速に拡大してまいっておるのであります。例えば今の国保の保険料の最高限である三十九万円を負担しておる世帯所得の下限が三百万円という例が最近珍しくなくなってきておるわけであります。この負担率は被用者保険の場合に比べましても相当過重なものになっているのであります。そういう意味で今回の保険基盤安定制度は、このような被保険者の保険料負担の緩和に役立つものと我々は大きな期待をしておるわけであります。
 いま一つの問題は、国保の医療費の伸びが老人、一般の被保険者を含めて被用者保険よりも相当高いという問題であります。しかもこの傾向はここ数年来定着してまいっておりまして、今日の国保財政の大きな課題になっております。今回の改正法案においては、高医療費の市町村に対する運営の安定策として、計画的な解決策を講ずることとされておりますが、いずれにいたしましても、国、地方が一体となって医療費の適正化対策に真剣に取り組まざるを得ない事態に置かれているのであります。
 次に、今回の主要改正事項がなぜ二年間の暫定措置にされたかという点につきましては、いささか私も疑義が残っておるのでありますが、私としては、さきの老人保健法の改正の際の見直し規定とあわせ考えまして、結果として六十五年度の老人保健、国保を中心にした医療保険全体の改革のスケジュールがまさにこの法律によって法定化されようとする趣旨である、こういうふうに受けとめたいと考えます。
 申し上げるまでもありませんが、高齢化社会の急速な進展、これは我が国社会が直面している最大の社会的変化の一つでありまして、その矢面に立っておるのが年金、医療を中心とした福祉政策であります。私は、国保が特にそうでありますけれども、広く医療保険全体にとってもこれからの最大の課題は老人医療費の問題であり、そのような意味で六十五年の改革には長期的な構想に立って、この問題の抜本的な改革を期待申し上げたいと思うわけであります。
 以上、まことに簡単でございましたが、今回の改正法案に賛同する立場から意見を申し上げました。重ねて今回の改正法案の早期成立に格別の御高配を賜りますようお願い申し上げ、意見の陳述を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)
○稲垣委員長 ありがとうございました。
 次に、菅原参考人にお願いいたします。
○菅原参考人 ただいま御紹介をいただきました全国市長会国民健康保険対策特別委員会の委員長を務めております宮城県気仙沼市長の菅原でございます。
 社会労働委員会の諸先生方におかれましては、日ごろ社会福祉の充実向上のために格段の御尽力をいただいておりますことに対しまして、衷心より敬意と感謝を申し上げるものであります。
 本日は、当委員会におきまして御審議をいただいております国民健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、意見を申し述べる機会をお与えをいただきましたことを心から感謝をいたしております。私は、国保の運営に携わります保険者の立場から、また同法案の趣旨に賛同をしている者の一人といたしまして、率直に意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 国保の現状につきましては、諸先生方におかれましては、十分御理解をいただいておることとは存じますけれども、初めに簡単に説明をさせていただきます。
 我が国の医療保険制度は、健康保険、共済組合等数種の制度に分立する形になっておりますが、その一つであります国民健康保険は、地域保険としての役割を担い、地域住民の健康の保持あるいは増進に大きく貢献をしてまいってきたところであります。御承知のとおり、我が国の医療保険制度は、皆保険体制が確立されておりまして、国保が最終の受け皿となっておるのであります。すなわち、他の制度に加入することのできない者はすべて国保で引き受けるという仕組みになっておるのであります。このことは高齢者やいわゆる低所得者が必然的に集積する構造上の問題が生ずるところとなり、これまで極めて厳しい運営を余儀なくされてきたのであります。
 この構造上の問題の解消を図りながら、制度間における給付と負担の公平を図るために、老人保健制度の創設あるいは退職者医療制度の創設等の改革が順次進められてきたのでありますが、これら改革が進められる中で、退職者医療制度創設時におきましては、同制度の大幅な見込み違いの発生により国保財政に重大な影響を与える結果を招いたのであります。さらに国保の構造上の大きな問題点であります老人加入率の是正を図るため、老人保健法の改正が行われ、老人の加入者按分率一〇〇%が将来的に確立されることとなり、高齢者の構造上の問題に関する限り医療保険制度間における公平化が大幅に促進をされ、一定の財政効果が得られるところとなったのであります。しかしながら、この法改正時においても、法律の成立、施行のおくれから三百億円弱の影響を国保に与えたのであります。
 さきに申し述べました退職者医療制度の見込み違いによる国保への影響額は、三分の二程度の額は昭和六十年度補正予算におきまして補てんをされたのでございますが、その未補てん額と改正老人保健法の施行おくれによる影響額は総額で一千八億円になるわけでありますが、これが常々要望申し上げておりました政府の約束不履行分というわけでございます。この一千八億円につきましては、今回の改正と並行いたしまして昭和六十二年度補正予算におきまして完全に補てんされたところでありますが、これもひとえに諸先生方の格別の御尽力のたまものと深謝申し上げる次第でございます。
 さて、改正老人保健法が昭和六十二年一月から施行され、老人の加入者按分率が昭和六十一年度は八〇%、昭和六十二年度から九〇%となり、昭和六十五年度以降は一〇〇%が制度的に確立されたことは、国保の最大の問題点でありました構造上の矛盾の解消に寄与し、国保運営上においても展望が開けるのではないかと期待いたしたところであります。
 しかし、最近の医療費の動向を見ますと、改正老人保健法施行後の昭和六十二年一月から七月までの医療費の伸びは、対前年度同月比でもって、一般分が八・八%、老人分が一〇%、合計、平均でもつて九・二%と大幅に伸びてきていることから、国保の財政運営は依然として厳しく、好転の糸口さえつかめぬ状況が続いております。
 御参考までに、昭和六十一年度の決算状況について簡単に申し上げますと、歳入総額が五兆二千四百五十九億円に対しまして、歳出総額は五兆二千三百四十四億円であり、歳入歳出差し引き額は百十五億円の黒字となっております。しかし内容を見ますと、黒字額も前年度の六百五十九億円から大幅に減少いたしており、保険料は前年度対比でもって一三・三%と著しく伸びを示しており、また一般会計からの繰入額につきましても、五百億円増の二千二百六十七億円に達しておるのでございます。
 さらに、赤字団体の状況を見ますと、赤字団体数は三百三十七団体で若干減少はいたしましたけれども、赤字額は昭和五十九年度には四百九十八億円だったものが、昭和六十年度には九百三十二億円、昭和六十一年度では千二百四十五億円と大幅に拡大してきており、憂慮にたえない次第であります。
 国保の財政基盤は、医療給付費の五〇%の保険料と五〇%の国庫負担金で賄っているわけでありますが、医療費が毎年大幅に伸びてきておりますために、保険料負担が限界に達しております。特に国保は、さきにも述べましたとおり、構造的に低所得者層の割合が高いために、保険料の負担能力が総体的に弱く、このことも国保運営が困難な要因の一つでもあるわけであります。
 一応、国保の現況を御報告を申し上げましたので、次に、御審議いただいております国民健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、所見を述べさせていただきます。
 本法案が提出されるに当たりましては、昨年国保問題懇談会におきまして、国保の現状を勘案して、国保の安定した運営が確保されるよう、医療保険制度全体の中における制度のあり方について、国と地方の役割分担等を含め、幅広く基本的な検討が進められてまいったのであります。昨年十二月十九日には「国保問題懇談会報告書」が提出され、この懇談会報告を基本として、今回の改正法案が提出されたものと理解をいたしております。国保問題懇談会におきましては、いろいろな議論がございましたけれども、特に医療費の適正化問題について、大変厳しい議論が行われたところであります。すなわち、医療費の伸びを国民所得の伸び等、社会経済の実情に見合ったものにしない限り、国保はもとより我が国の医療保険制度の崩壊は明らかであるというものでございます。このことにつきましては、厚生省におきましても所要の対策を強力に講ずることといたしておりますので、期待いたしますとともに、私どもも十分留意しつつ対応してまいる所存でありますが、諸先生方におかれましても、医療費適正化のさらなる推進に格段の御尽力を賜りますよう切にお願いを申し上げる次第であります。
 医療費の適正化につきましては、継続的に努力していく必要がありますが、現下の国保の実態は極めて厳しい状況に置かれ、当面何らかの対策を講じる必要があるとともに、国保制度のもう一つの構造上の問題点であります低所得者層に対する対策が強く望まれ、こうした状況を踏まえて、本会におきましても要請活動を続けてまいったところであります。
 低所得者層に対する対策あるいは低所得者層の概念をどういうふうにとらえるかということ等につきましては、いろいろ議論のあるところでございまするけれども、現行制度上の保険料軽減世帯を低所得者としてとらえた場合に、六割軽減世帯一七・六%と四割軽減世帯五・三%、合計で二三%にも及んでおるということになるわけであります。この低所得者の保険料軽減額に対しましては、現行制度では保険料軽減交付金によりその八〇%が補てんされておりますが、残りの二〇%は他の一般被保険者の負担となっているのであります。したがいまして、保険料負担の上で重大な影響があるわけでございます。
 全国市長会といたしましては、昨年十月「医療保険制度の一元化と国保制度のあり方」について提言をいたしましたが、この中におきましても「一定所得以下の者について能力に応じた保険料負担を前提としつつ、併せて、何らかの援護的な措置を講じることが必要である。」といたしておるのであります。
 今回の制度改正は、このような国保の現況を踏まえつつ、医療保険制度の一元化を目指した当面の措置であると認識をいたしておりますので、十分評価できるものと存じております。もちろん今後も健全な制度の構築に向けて、幅広く検討を続けていく必要があると存じますが、全国市長会におきましては、次の点を総合的に勘案をいたし、本制度改革に賛同いたした次第であります。
 まず第一は、単なる地方への負担転嫁は回避されたこと。第二は、改革を行うに当たって、本会がかねてから強く要望してまいりました退職者医療制度創設等による影響額の未措置額が昭和六十二年度補正予算において完全に補てんされたこと。第三は、引き続き厳しい現況の中で、構造上の問題点である低所得者層について何らかの援護的措置を講じる必要があったこと。第四は、制度改革に伴う新たな地方負担の増額については、地方財政の運営に支障を来さないよう地方交付税の特例加算等により補てんされることとなったこと。第五は、国保の安定した運営を確保するとともに、高齢社会の到来に備えた医療保険制度の一元化を目指して改革を進めていく必要があること。
 以上でございますが、また今日に至りましては、各市町村におきまして既に制度改革を前提に予算が組まれておりますので、その運営に支障を来さないよう、何とぞ同改正法案の早期成立につきまして格別の御配慮を賜りますようお願いをいたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○稲垣委員長 ありがとうございました。
 次に、庭田参考人にお願いいたします。
○庭田参考人 御紹介をいただきました庭田と申します。
 時間が限られておりますので、早速自分の意見を述べたいと思います。
 今回の法改正を考えますときに、先般の昭和五十九年度の改正と言われておりますあの健康保険法の改正の基本原則というものをもう一度見直してみるべきではないかと思います。
 一つには医療費の適正化ということでありまして、これは予防の問題も込めて考える。それから地域医療というような地域という問題の中で医療の費用節減を図る、こういうことであったろうと思います。
 二番目は、給付内容の見直しということでございまして、その根底には、保険料のこれ以上の引き上げというのはなかなか困難である、そういう見通しのもとで被用者保険、被保険者本人の十割給付を九割に一割削った、こういうことになろうかと思います。
 三番目が負担の公平ということでございまして、一つにはライフサイクルに応じた医療体制というようなものを考えながら、同時に高齢者を多量に抱えております国保の財政を救わなければならぬ。つまり負担と給付の公平に向けて努力をいたそう、こういうわけでございまして、国保を救済しなければならぬ、このようなことが当時言われたのではないかと思います。この健保法改正の原則というものを踏まえまして、今回の国保改革の問題が提案されたのではないか、私はそのように理解をいたしております。
 事の順序といたしまして、今回の国保改正のごく概要といいますか、問題点を、私なりにはこの三つであるというふうに把握した、その三つをひとつお聞きいただきたいと思います。
 一つは、高医療費市町村における経営の安定化ということでございまして、医療費の高い地域というのがございますけれどもこれを何とかしなければならぬ。今までは国の負担と市町村の負担ということで対応してまいりましたけれども、今度は都道府県も参画をいたしまして、国と地方、こういうものが提携をいたしまして、この高医療費市町村における運営の安定化の道を模索しておる、このような点が重大な一部ではないかと思います。
 二番目といたしましては、保険基盤安定制度というものでございまして、この法案の出ます前に、実は福祉医療制度といったような名前で素案のようなものが出ておりましたが、今回はそれが引っ込みまして、保険基盤安定制度ということになったわけであります。結局、これは低所得者の保険料負担軽減措置というようなことでございまして、ここで低所得者の問題というのが全面的に取り上げられたのではないか、このように思うわけであります。ここでも、実は事業規模一千億円というようなところで、国、都道府県、それから市町村というようなところ、後者二つが四分の一ずつというような分担をして何とか考えようではないか、こうなっていると見たわけでございます。
 三番目は、高額医療費共同事業の強化ということでございまして、よく世間では再保険的事業などと言われておりまして、組合健保、政管健保、そういったようなところでも、この言葉が出ておりましたが、国保でもこれを現在の倍ぐらいに強化するといったようなことになるのではないか、このようにとらえられております。そして国が十億、都道府県が百九十億の助成をいたしまして、高額医療費の共同事業を強化する中で、ひとつ全体としての財政の安定を図りたい。
 たくさんございますけれども、恐らくこの三つが今回の国保改革の最も重要な点ではないかと私は見たわけであります。
 このような認識に立ちまして、今回の国保改革の内容をとらえてみるとどういうことになろうかということでございますが、小規模保険者では、保険の原則、給付と反対給付ですが、これをバランスをとりながら永続を図るということでございますが、保険財政というのはどうも一定以下の小規模の保険者のもとでは成り立たないのではないか、この認識がどうしても必要かと思います。各保険者ごとに財政をやりくるということでは、もう国保の改革はできない。そしてここで、保険機関相互間におきまして資金を融通し合って全体として財政の安定を図る、こういうふうに一歩前進したのではないか、このように考えるわけであります。そのような見方をいたしてみますと、例えば高額医療費共同事業の強化というのは、まさにその一つの代表になろうか、こう考えるわけであります。
 それから、市町村という規模では保険はもう成り立たない。小規模ですから、なかなか成り立たないと言っては語弊がございますが、成り立たせるのに大変な困難が伴うであろう、このことはどうも事実のようであります。そこで都道府県というやや大きな基盤というものを考えまして、地域規模というような立場から財政対策を今回は考えているのではないか、こう把握したわけであります。これは高医療費市町村における運営の安定化というところで、市町村六分の一、都道府県六分の一を出す、こういったようなわけでありまして、都道府県というものの大きな役割分担を願っているのではないか。そのように思いまして法案を見ますと、都道府県は百九十億円の助成をする、こういうことになっておりますので、このような小規模の保険では成り立たないものをやや大きな規模に拡大して財政の安定化を求めているのではないか、こう把握したわけであります。
 そして、このように財政面でやや規模を大きくして考える。同時に、給付面では地域医療の見直しあるいは地域医療の強化というようなことで、一方におきましては地域医療体制、一方におきましては財政面の都道府県も取り込んだ大きな規模への拡大的対応、こういうようなことが今回の法案の中にはありまして、大変な考え方の進歩ではないか、そのように拝見いたしております。
 各健康保険制度の財政事情というものをこのたび考えてみますと、その地域の老人の含まれている率、これが財政事情を動かすことは事実でありまして、これが老健法ということになりまして、加入者按分率の見直しというようなことになろうかと思います。もう一つは、その地域の特殊事情ということでございまして、これが医療費が異常に高くかかるところもあるし低いところもある。俗世間的には西高東低と言われますけれども、これに対応するのが本来ですと医療費按分率ということでありましたが、これは加入者按分率ということで、老健法の中ではこちらの見方はやや後退をした、こう考えます。
 もう一つ、保険者の財政を動かすのが低所得者層がどれだけいるかいないか、こういったようなわけでありまして、これに対します対策というのが、先ほど述べた今回の法案の中に一つあるのではないか、このように思ったわけであります。
 経営の安定化努力というものを引き出す、これにも今回の法案は市町村それから都道府県が財政的に参画するということで、努力をすればこの負担が減るというようなこともありまして、とにかく地域医療の適正化を引き出すといったような効用もここには見ることができるのではないか、こう思うわけであります。
 共同事業の強化とか基盤安定制度といったようなものも、これまた医療費適正化にはつながっていくだろう、こう考えられます。
 医療費の地域差につきましては、これはどうも国保の努力だけでは不可能ではないか、何か一つの慣行といいますか傾向というようなものがありまして、西高東低が悪いからといいまして、あすからそれが直るというものではありませんで、長年の一つの傾向のようなものでございますから、そう簡単にはなかなか直らないだろう、こういうような感じもいたします。そうしますと、この問題も直す、あるいはもろもろのしがらみを持っております保険財政を根本的に改革するといいますと、これが医療保険の一元化計画というようなことになるのではなかろうか、こう考えます。
 このことの一つといたしまして、例えば五人未満の事業所というようなものを組合健保の方に取り込む、こういったようなことになってまいりますと、だんだんと国民を被用者という立場でとらえていきまして、そして被用者保険というものを拡大していく。これは職域保険になります。それから国保の健全化を図る、これは地域保険の健全化。両方を強化いたしていきまして、そして根本のところで一元化をして、あとのところでは、例えば職域の事情、それから付加給付といったような地域の事情、そういったようなもので上に足していって一元化を達成する。このようなラインというのが今回の改革案の中には見えるのではないか、そしてこのラインに対しましては、世間では大いに賛成をするのではないか、こう考えられます。
 ただ、言うような抜本改正といったような問題が、問題の一つ一つを解決して、それを全部足すと抜本改正になるというものなのか、あるいは抜本改正というのはそういうのじゃなくて、もっと大英断を必要とするようなことを言うのか、この辺の認識というのが大変微妙なところではないかと思います。どちらをとるかといいますと、法案の内容からいきますと、恐らく一つ一つを丹念に改革していって、全部足したら改正の抜本的な結果が出たというような方ではないかと思いますが、いかんせん六十五年あるいは七十年、この辺のところで医療保険の一元化を図るというときに、一つ一つをつぶしていく方法が抜本改革というものにつながるのかどうかという点はひとつ検討を要するのではなかろうか、こう考えられます。
 そして、ここでどうしても問題になりますのは、今回は地方の分担を大いに期待する、こういうふうにはありますけれども、その費用は完全補てんなんていう言葉を使われておりまして、結局地方が全部負うというようなものでもなさそうである。どうも国を通じて補てんされるような、そのようにとれるわけであります。そうなりますと、それは結局は国民の税金ということになりまして、税金で一番割を食っているのはサラリーマンということになりまして、そしてサラリーマンの方の持ち出し分がふえて、サラリーマンがまた一肌脱ぎながら国保の改革に向かう、このようなことになるのではなかろうか。それも結構であります。
 と申しますのは、確かに費用負担の点ではそう言えます。地域医療ということになりますと、サラリーマンも地域住民ということで、そういう面では結構受益をするわけでありますから、費用負担に異議を唱えるわけではありませんが、同時にこの辺の被用者保険側の負担強化という点を十分に認識し、かつ評価されまして、国保側においてもひとつ自助努力といいますか自浄努力といいますか、例えば保険料の悪質な滞納といったものを整理していくとか、正確に被保険者の数を把握してきちんと運営をしてもらいたいとか、医療費適正化には一段と努力をしてもらいたいとか、そういうわけで、国保側の努力というものがあっての上のサラリーマン側の、つまり被用者保険側の協力になるのではなかろうか。といいますのは、老健法その他の負担強化で組合健保、政管健保もだんだんと経営が悪化してきておる。さらにそれに対して協力を求めるのであるならば、どうしても国保側の思い切った経営努力の実が示されなければ、これはなかなかコンセンサスは得られないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
 とは申しながら、弱者の切り捨てとか落ちこぼれの無視とか、そういう形で改革がなされては大変でございます。まして国保の側には、所得の低いお方というようなものも多いというわけでありますので、どうしてもこういう点は慎重に願いたいということは、国民共通の願いになるのではなかろうか、こう考えるわけであります。地域全体の中での弱者の抱え上げといったようなことになるのかと思います。その限りにおきましては、国の応分の協力、助成というものは、今後も欠かせないであろう、こう考えられます。
 同時に、医療の量から質への転換ということでありまして、ただ薬をたくさん飲むとか検査をたくさんされるとかという量の医療の進歩でなくて、質の医療の進歩というようなことも大切ではなかろうか。そしてこれがなされるためにはどうしてもマンパワーの拡充強化ということが必要なんでありますが、どうも今回の案の中にはそういう点が必ずしも明確でない、こういうふうに言えるのではないかと思います。
 そのほか、厚生省その他政府で出しましたいろいろな案の中には、例えば病院とか診療所の諸機関の適正配分というようなこともちゃんと出てはおるのですけれども、財政の問題を考えるときには、やはりこういった幅の広い医療政策の中で今回の法案の位置づけというようなものが明確にされることが特に大切であろう、このように考えるわけであります。
 そして、最終的なねらいである一元化というものの内容、これはなかなか正確につかまえにくいのですけれども、例えば給付と負担の結局は公平ではないか。そうなりますと、標準保険料とか標準給付とかいろいろ標準という言葉が出ますが、どうもこの標準というものの概念が私たちにははっきりいたしません。この辺のところもひとつ何らかの方法で御明示をいただきたい、こう思うわけであります。
 そのほか、いろいろの計画というのは、これことごとく一元化に向けての一歩一歩であろう、そういうことでありまして、今回の改正案というのも、結局は一元化に向けてのワンステップである、このように私たちは位置づけて把握してよろしいのではなかろうか、こう思うわけであります。
 ところで、そろそろ時間でございますのでまとめたいと思いますけれども、やはりどのような案でありましても、いろいろ問題点とか意見というものは出るわけでありまして、それが一朝一夕に解決がつくとも思いませんけれども、なお耳をかしていただきたいとお願いするわけであります。
 一つは、今回のは、一元化に向けての大筋においては随分評価も高いのではないか、そして賛成意見が大方ではないのだろうか、こう考えますけれども、いかんせん細部におきましては不明な点、それから少しずつ立場の相違に基づきまして反対意見もあろうか、こういうように考えられるわけであります。結局、地方の分担、こう申しましても、その割に地方の分担ではなくて、とにかく見たところではどうもそうでないというような感じがいたします。やはり地域医療時代には、財政面でも地方の大いなる活躍ということが期待されますので、本当の意味で地方の分担になるような、そういう点が一つ望まれるのではなかろうか、こう思います。
 それから、今回の案の一つ前に出ました福祉医療制度というのでありますが、これは低所得者というものの医療費を別勘定にして処理しようというわけであります。これは一種の差別になるというようなことで反対意見もありましたけれども、これですと三千億ぐらいのところが何とか別途処理がきくわけでありますが、今回は保険料だけの負担で低所得者の医療を賄うということでありますと千億ぐらいというわけで、何かどうも三千から千に減ってしまったような、前の案の方がこの点はよかったのではないかというような見方もできるわけであります。
 それからもう一つは、国保に応能性、応益性という二つの方法で費用分担がありまして、現在では応能性が盛んであります。もし応能性をとるなら、これは所得把握というものがしっかりとなされなければならない。仮に所得把握が、俗世間で言うクロヨンとかトーゴーサンとかというようなことが早急に解決できないのですと、今度は応益性ということを考えざるを得ないのではないか。そしてこういうことが考えられるところに、国保には国保なりの犠牲をがえんじてほしいといったような願いも出てくるんではなかろうか、このように考えられてまいります。
 とにかく大きな問題でございまして、まだたくさん幾つも問題点はございます。例えば今回は経営主体論というのが出ておりまして、市町村が経営主体がいいのか、あるいは都道府県、県の役割、こういうのが経営主体にだんだんなっていくのか。その場合には実務はそれじゃ今までどおり市町村がやるのか。そうなりますと、市町村は実務の出先機関のような役割に落ちてしまいますが、この辺のところはどう考えたらよろしいのであろうか、こういうことにもなります。
 また、調整交付金というようなものの出し方を見ますと、どうも医療費の高いところに国庫負担のようなものがたくさん出そうでありまして、もしそのようなことが世間に知れ渡ったり印象として出ますと、努力をして下げるよりは、じっとしている方が事によると国庫負担がもらえて楽かもしれない、そのような風潮につながったら大変ではなかろうか。つまり国保の経営努力のようなものをもっと正確に反映して、努力をすればするほどやはりいいことがあるんだ、そういったような仕組みのところをひとつ手をつけていただいたら、さらに皆さんが賛成しやすくなるのではなかろうか、こういったような問題も出てまいります。
 いずれにしろ、国保サイドの努力、それから国保を周囲から支えて医療問題を地域全体で考える、そしてそうやっていく中で一元化への道をさらに推し進めていく、こう考えるべきでありましょう。このような見解から見ますと、間違いなしに、これは一元化への一里塚という点では大変評価ができます。さらに細部の点で細かく調整がつきましたならば結構なのではなかろうか。しかし、細かい点を無視いたしますと、それはそれで後日の問題につながりますので、必ずしも手放しで賛成し切れるというものでもあるまい、このような見解を持っております。
 失礼しました。(拍手)
○稲垣委員長 ありがとうございました。
 次に、水野参考人にお願いいたします。
○水野参考人 御紹介いただきました水野でございます。
 もう諸先生からいろいろと陳述があったわけでございまして、私は若干視点の違うところから今度の国民健康保険の改正案を考えてみたいと思うわけでございます。
 私は国保だけではなくて、この社労にいつもかかる保険絡みの法律の改正案というのは、すべてそれ単独で物を見ていたのでは、ほとんど問題の解決にはつながらないんではないかという印象をかねがね強く持っておるわけでございます。
 かつて、今から十年くらい前には、そういう医療問題というのは、健康保険の拡充ともう一つは医療サイドの拡充と申しますか、そういうものの二つが車の両輪だと言われたわけでございます。やはりそれは今でもそうなんでございまして、医療の供給体制をどうするかということ、これはすなわち医療費にダイレクトにつながるわけでございます。一方、健康保険というのは、ごくごく財政的なとらえられ方をしがちではございますけれども、必ずしもそれだけで物が解決するのではないのではないか。したがって、今度の国民健康保険の問題にいたしましても、医療全体の最近の流れの中でどうとらえるかということが、私は一番重要なのではないかというふうに思っております。
 その流れをどうとらえるかというのは、個人によっていろいろ違うんだと思いますけれども、私は基本的にはまず現在の医療というのがこれでいいのかという問題が、やはり根本的にはあると思うわけであります。これは十年くらい前、社労でしばしば問題になりました医療そのもののあり方、これが非常に批判もされた時期もございました。今でもやはりそれが完全に改まっておるとは思いませんけれども、若干変わってきている面はある。例えば検査づけとか薬づけとか言われた問題なんかはそうではないかと思います。
 しかし私は、今一番医療問題で重要なのは、やはり老人医療であるというふうに考えざるを得ないわけであります。それは金を食うから重要だということだけではございませんで、世界で例を見ない高齢化社会をこれから迎えていくわけでございまして、ほかのヨーロッパの先進国の高齢化社会というのは大体一九九〇年ごろがピークで、後はちょっと平行状態でだんだん減っていくという状態で、今が一番苦しいそうでありますが、日本はこれからが苦しくなる。学者によって意見が違いますけれども、どうかすれば二〇二三年まで日本の平均寿命は延びるのではないかという意見もあります。そうすれば二〇二三年までやはりピークは続く、従来言われていた二〇一八年ではないという意見も出るかもしれないわけであります。
 そういうのを見ていった場合、どういう医療が一番効率的で、かつまた医療費の節減にもつながるか。私は医療費を節減することが悪いとは決して思っておりません。ちゃんと効率のいい医療が提供されるのなら節減できるところは節減する、これが当然のことではないかと思うわけでございまして、そういう意味での問題というのは、ある意味においては国保の問題以上に大きな問題なのではないかと思います。
 それから、給付と負担の公平というのをしばしば厚生省もおっしゃるわけでございまして、私もそれは基本的には賛成でございますけれども、給付と負担の公平をどういう形で図るかというのはなかなか知恵の要るところでございます。とかく昔から、抜本改革というのはいつも言われるわけでございますが、抜本というのは、戦争とか革命とかそういうものでもない限りは、そう簡単にできるものではないのではないか、私は基本的にはそう思います。だから細かくいろいろと改定していって、そうして十年なら十年たってみたら、うん大分改革されたなというのが民主主義社会のもとにおける改革というものなのではないだろうか。その意味においては、この三十年間の医療というものは非常に進歩もしましたし、国民もその利益を得ている部分も非常に大きいのではないかというふうな点においては、やはりそれなりに改革も行われてきたんだ、こう言えると思うわけでございます。
 さて、そこで国民健康保険の問題でございますが、もしも昭和六十五年に保険の一元化ということをお考えになっておられるのだとすれば、どうしても国保をほっておいてはできないということは、私も常識的に賛成であるわけであります。
 国保は何が一番問題かというのは、しばしば先ほど来お話の出ておりますように、要するに国保財政というものが市町村単位で持つところと持たぬところとあるということが一つと、それからもう一つは、地域差というのは歴然とした事実として存在しておる。この地域差の理由は何かというのはいろいろ議論はあるわけでございますけれども、私は一つは、やはり病床数の多いところに地域差があるということは歴然とした事実なのではないかと思うわけであります。もう一点は、そこの地域に住んでいる住民の考え方というものも、やはり非常に影響があるのではないだろうかというふうに僕は思っております。
 そこで、今度の国保の改正では主にその二点、あとは県にも御努力いただこうという趣旨が出ておる、その三点が大きな改革点ではないか。これは皆さんお述べになりましたので、私はここで法案の解説をする必要はないわけでございますけれども。そういう意味において、僕は、この案そのものはじゃベストかと言われると、それはいろんな考え方が世の中にあると思いますから、ベストだとはよう言い切れませんけれども、それではこれじゃだめなのかと言われても、だめだとも言えない。まあこんなところじゃないかというのが率直な印象でございます。
 私は国保問題懇談会で委員の末席に連なって皆さんの御意見を拝聴しておりましたけれども、大変やりにくい問題は何かというと、国保問題懇談会のようなところでは、社労と違いましてほかの問題は余り議論できない。つまりどうやって医療費を減らすかとかどうやって負担をしていくのかという長期的展望みたいなものについては、余り議論ができないわけであります。したがって、国保という非常に狭いところで議論をされる。そうなると、どうしても押し入れでなぎなたを振り回すようなことにならぬわけでもない。そういうようなことがずっと積み重なって議論されてきたわけでございますが、そういう制約というものを考えれば、国保に限ればこういうことしかやりようがないのではないだろうかという気が私はするわけであります。
 ただ、強いて言えば、これが抜本改革と言われる昭和六十五年の問題にどうつながるのかということについては、やはりいま一つ明確ではない面がないではない。それは明確にされた方がより賛同も得やすいと思いますし、反対論も明快になるのではないか。そこのところがはっきりしないということは、やはりこの国保の問題の場合には非常にいろいろなことがあるのではないかと思います。今後、国保の財政基盤を曲がりなりにも整備しておきませんと、この一元化というものはほとんどやれないだろうということは、私も非常によく理解のできるところでございまして、その範囲内において、今度の改革案というのは、それなりに評価できる点もあるし、御苦労の跡も僕はあるのではないかと思います。
 なお、非常に乱暴なことを言いましたら、国保の改革案というのは、もうあらゆる保険を全部やめてしまって国保一本にしてみたらどうかとか、政管健保みたいに国が全部国保を管掌したらどうだ、そういう議論もあると思うのです。しかし私は今やっていられる国保のメリットというものもやはりあると思うのです。例えば地域医療活動というふうなものは、実際には保健婦さんがやっている要素が非常に多いわけなんですね。これは市町村単位でやっているからこそ、そういうことが発揮できるというメリットもありますので、今の制度は今の制度のままとして、できるだけみんなでサポートしてやっていく、こういうふうなことにならざるを得ないのではないだろうか、そう思います。医療費をどう節減するかというのは、後から御質問が出ればお答えするといたしまして、国保そのものについては、私は大体そういうふうな感じで受けとめております。そこら辺が僕のこの問題についての基本的な感想というか考え方でございます。
 その次に、私ども国民としてはぜひとも考えなければならないのは、よしんばGNPの範囲内の医療費の伸びであっても、将来を考えると物すごい数字になるということについて、やはり考えておく必要がこういう機会にはあるのではないかという気が私は非常にするわけなんです。厚生省のかつて参議院にお出しになりました予測というものが絶対的に正しいのかどうかについては、私も若干の疑問はありますけれども、それによりますと、一九九九年には日本の国民医療費は四十四兆円になるということになっているわけであります。四十四兆円というのは、口で言うのは簡単ですけれども、それは大変な数字であるわけでございまして、たとえ国が持つにせよ、だれが持つにしても、要は国民が持つわけでございまして、これをどうやっていくのかなという基本的な問題があります。それから四十四兆円にしてもいいのかという問題もあるのじゃないかと私は思うのです。
 今の医療費の伸びというのは、いろいろな検討の仕方はあるわけでございますけれども、その中の一つに、全体の四分の一を老人医療費が占めておるという問題は無視できないのではないかと思うのです。老人医療費というものは、それは老人は御承知のようにみんな成人病になる。成人病は、非常に早く見つけましたときには、がんなら早期発見、心臓、血管系の病気であれば一病息災に持ち込むということは可能でございますけれども、そのチャンスを失して手おくれになった場合には、結局は治療はしますけれども、いずれは死ぬわけであります。人間というのは結局そういうふうにできておるのだろうというふうにも考えられるわけでございますけれども、だから当然老人医療費は要るんだということに一応はなると私は思うのです。一応はなると思うのですけれども、手おくれの患者ばかりが病院に行って、治るか治らぬかよくわからぬけれども、大体治らないわけですが、そういうことにどんどん治療していくことだけが医療の姿なんだろうかというふうな点については、若干の疑問もなしとしないわけでございます。
 先ほどもちょっとそういう話が参考人の先生から出ましたけれども、私が去年の夏スウェーデンに行って見てきたので非常になるほどと思いましたことは、スウェーデンでは二〇〇一年には、つまり二十一世紀には、今の病院というのは救急患者と放射線治療の患者だけを入院させる、あとは全部在宅医療にするという方針を決めておるわけであります。それは日本とスウェーデンは一遍に比較はできませんけれども、住宅問題とか何かそういうものもあるというのもよく存じ上げておりますが、それにしても世界の流れというのは、病院治療から在宅医療へという流れにあるということだけは僕は間違いないと思うのです。
 大体日本の医療というのは、アメリカに十年おくれてやってくるわけでありまして、今アメリカでは、ファミリードクター制度というのが非常に強く前面に出ている時期であるわけであります。これが十年たって来るとしますと、一九九三年ごろにはそういう問題が日本にも上陸してくるのではないかと思いますし、それは一つの世界的な医療の流れなのではないだろうかと思うのです。
 そういうふうに考えていきますと、国民健康保険の中で相当大きな部分を占めております老人医療費というものも、今のままではなくて、何かもっと上手な対処の仕方があるのではないか。そういうことをやっていって医療費をある程度セーブしながら、全体としては給付と負担の公平ということを実現していく、そういう体制をとらないと、保険の財政サイドからだけで一元化を考えてみても、それは限度のある話なのではないかと私は思うのです。もちろん、それも必要だと思いますけれども、そういうふうなところで物事を考えていく。つまりこの医療問題というのは、全体の流れの中でこの問題はどういう位置を占めておるか、そしてそれはどうつながっていくのかということが議論の焦点になるべきだと思いますし、私はそういう受けとめ方をしているわけでございます。
 いろいろ申し上げることは幾らでもありますけれども、十五分になりましたので、これで失礼します。どうもありがとうございました。(拍手)
○稲垣委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ─────────────
○稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋一郎君。
○高橋(一)委員 本日は、参考人の方々には御多忙のところをお出ましをいただき、ただいま貴重な御意見を拝聴させていただきまして、厚く御礼を申し上げます。
 国民健康保険制度は、我が国の国民皆保険体制の基盤となる制度として、地域住民の健康と生命を守るため重要な役割を果たしておりますが、経済社会が大きく変化し、人口の高齢化等を背景に医療費が増高する中で、運営上さまざまな問題を抱えてきており、その解決を図ることが重大な課題となっております。
 これまで、老人保健制度の創設や改革あるいは退職者医療制度の創設により、高齢者の医療費の過重な負担の問題については公平化が図られ、国民健康保険制度の安定化に大きく寄与してきたところでございますが、今回の国民健康保険法の改正案は、低所得者問題や医療費の地域差問題等の残された構造問題に、国と地方自治体が一体となって取り組む仕組みをつくり、長期的安定を図ろうとするものであり、地域住民の健康と福祉の向上に資するものと評価しているわけであります。
 そういう前提に立って、これから若干の質疑をさせていただきたいと思いますが、時間の制約もありますので、端的にお尋ねを申し上げます。
 まず、加地参考人と菅原参考人にお尋ねいたしますが、国民健康保険については、これまで制度的には国と市町村がその運営に責任を持つ形でありましたが、今回の改正案では、都道府県にも低所得者問題や高額医療費共同事業あるいは医療費の地域差について、一定の役割と責任分担のもとに積極的に参加願うことになっておりますが、この点についてどのようにお考えになっておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
○加地参考人 御質問の点でございますが、先ほども申し上げましたように、私はかねてから、今日の国民保険の実情、いわゆる地域医療としての国保の役割、そういう点からいきまして、少なくとも大変大きな問題を持っておるこの国保の解決のためには、従来のように、国と保険者である市町村が中心になっていくというよりも、お話のように、国と地方公共団体、都道府県を含めたそれぞれの持てる力で協力してこの国保の運営を見ていただくべきではないか、こういうことをかねがね考えておったわけでありまして、御質問の点につきましては、私は、大変結構なことである、もっと都道府県が積極的にこの国保の問題に、持てる力として指導力を発揮されるとか、積極的に御関与をしていただくべきではないか、こう考えておるわけであります。
○菅原参考人 地域住民の医療確保をし、守っていくということのためには、国、都道府県、市町村が一体となって取り組んでいく必要があると私は思っておるわけであります。
 直接的に財政をどうするかというふうなことについていろいろ議論があろうかと思いまするけれども、何と申しましても、住民の三割以上が国保に加入をしておるというふうな点から申しますと、やはり国、都道府県、市町村一体の中で医療を確保していく、このことのために都道府県の参加ということがぜひとも必要だ、そういうふうに私は考えております。
○高橋(一)委員 次に、医療費の地域差問題について、水野参考人と朝日参考人にお尋ねいたしたいと思います。
 高医療費市町村におきます安定化計画につきましては、地方自治体には医療費適正化の十分な権限がないという御意見がございますけれども、例えば国保医療費においては老人医療費が大きなウエートを占めており、お年寄りについては、単に入院ばかりでなく、それぞれのお年寄りの状態に応じた適切な処遇を行うことによって、結果的に老人医療費の適正化にも資するものと考えられています。
 このようなきめ細かな施策は、地域住民と直接にかかわって総合的な行政サービスを展開できる地方公共団体の施策にふさわしいもので、従来の監督権限による適正化対策ばかりでなく、国と地方自治体が一体となって、ヘルス事業の充実や老人に対する在宅福祉の充実等、地域の実情に即した幅広い適正化対策を推進することが重要ではないかと考えますが、この点についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○朝日参考人 お尋ねの件ですが、私自身も、幅広い意味での医療費適正化対策として、市町村や都道府県が国と協力をして積極的に行っていくということについては、ぜひとも必要なことだし、やらなければいけないと思っております。ただ、それを全部市町村でやりなさいというふうに言われますと、大変財政的にも苦しい状況にございます。
 例えば、先ほど私は、国保直営医療機関を地域医療の拠点として積極的に位置づけてほしい、こういうことを申し上げました。幾つかの自治体病院では、そのような努力をしております。しかしその一方で、大変財政が苦しくて病院自体が病床数を減らさなければいけない、あるいは病院を診療所に格下げをしなければいけないというような形で、病院財政を維持する観点からの合理化がかなりされていまして、自治体が自治体病院や国保直営医療機関を拠点として地域医療を展開しようにも、その拠点となるべき自治体病院の運営がこれまた極めて困難な状況になっている。その辺に対して、何らかの国なりあるいは都道府県なりの手だてを用意しないと、これを全部自治体の方で中心になってやったらどうかと言われても大変苦しい状態にある、こういう点だけは申し上げておきたいと思います。
○水野参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、私は、一部の御意見で、地方にやれ、やれと言うけれども、地方には権限がないということをおっしゃる方が確かにいらっしゃるのですが、それは何をおっしゃっていられるかというと、地方では健康保険の点数を決める権限がないということを主におっしゃっておるわけなんで、これはもういたし方がないので、私は中医協で決める以外にはそれは方法がないのではないかと思います。
 それから、もう一点のことでございますが、医療の原点というのは、やはりファミリードクターとか地域医療とか、あるいは救急とかいうところに医療の原点があるのでございまして、医療の原点が心臓移植にあるとは私は思っておらぬわけであります。
 したがいまして、地域というのは今でも結構いろいろとやっていただいているわけでして、一例を挙げますと、例えば老人医療費が、長野県ではよその県に比べて一人当たり十万円以上安いわけであります。これはいろいろ事情があると思うのですが、とにかく長野というのは日本の屋根みたいなところで、そう言うと長野選出の方は怒られるかもわかりませんけれども、非常に寒冷地であるわけですね。にもかかわらず平均寿命は、大体いつ調査をしましても、日本では、男は上から二番目か三番目におるわけです。平均寿命も長い、それから医療費も安いということは、イコール、健康な人が多いということになるのだろうと思うのです。それは食べておる物がどうとか、いろいろ意見もありますけれども、私は長野県には用があって割合よく行くのですが、私の感じでは、やっぱりほかの県よりも約十年早くから年一回の健診をやっているわけですね。それが実を結んできたという面も、何割かのファクターになっておるのではないかと思う。これはまさに医療の原点で行われたことでございまして、さっきの先生の御指摘では、まさにヘルス事業という分野に入るわけでございます。
 したがいまして、今のようなシステムでも十分にやっていける。ただ、ばらつきがあるということは事実であります。余りそういうことはできないというところ、例えば東京みたいなところもあるわけであります。これは人間が多過ぎるという問題もあるのですけれども、しかし、そういうふうに一部の県では非常にうまくやっているところもございますので、現行のままでそうはやれないということにはならないのではないか。
 それから、病院がいろいろとそういうことに協力いただいておるのも、やはり長野では非常にそういう傾向が強い。例えば五・三・二ということが長野では言われておる。それは何かというと、病院の仕事の中で、五が入院患者の治療、三が外来、それから二が地域医療の健診とか相談とか、そういうウエートでずっとやってきているという病院もありまして、それは病院によってそれぞれ違う。もっとはっきり言えば、院長のオピニオンがどうあるかということで左右されている要素の多い問題ではないかと私は思います。
○高橋(一)委員 時間が余りありませんが、最後に私は、老人保健制度のあり方は国民健康保険制度の上で大きな影響があるのですけれども、この老人保健制度について健康保険組合連合会から、「老人保健制度は、医療保険制度から切り離し、間接税による新税制により、全国民が公平に財源を負担する仕組み」にすべきであるとの提言があったそうですが、これについて時間の許す限り、加地参考人と水野参考人にお尋ねをしたいと思います。
○加地参考人 健康保険組合のこの前の提案につきましては、私は基本的には同じ考え方を持っておるのであります。先ほど来、参考人のお話にもございましたし、いろいろ話は出ておりますが、確かに、医療保険の問題というのは、医療費という財政だけの問題でないということは、私どもも重々承知をしております。あの健康保険組合の考え方は、一つは前回の老人保健法の改正の結果、加入者按分率の上昇によって相当負担が重くなった、こういうことを前提にお話がございますが、おっしゃっている中身というのはこういうことではないかと思うのであります。つまり国保の場合は非常にそれが象徴的に出ているのでありますけれども、医療保険とはいいながら、その中で例えば国保の例で申しますと、全国平均で老人医療費のシフトが今四〇%を超えておるわけであります。老人保健法の適用の被保険者が一三・五%で五〇%近いシフトを持っておる。それは御案内のとおり、一般の被保険者に比べて老人一人当たりの医療費が五倍を超えておるわけであります。そういう点を考えますと、長年の伝統的な社会保険の仕組みという中でそういう医療費を賄うのか、こういうことであります。
 たまたま、今大変な政治課題であります新しい税制改正の問題がございますけれども、私どもは、これからさらに老人がふえていく、こういう時代を考えますときに、通常の社会保険という仕組み、相扶共済という仕組みの中でこの老人医療費は賄えていけるのであろうか、こういう観点から、やはり老人については、それなりの国民に対する説得力もあるわけでありますから、そういう形の負担に切りかえていくべきではないか、こういう主張を非常に強くおっしゃっている中身であります。しかし、現実に医療保険という制度があり、改革の具体的なやり方についてはいろいろ考え方があると思いますけれども、私どももできればそういう方向に持っていっていただきたいと考えておるわけであります。
○水野参考人 今先生のおっしゃいました、老人保健部分については国民全部で持てというのは、一つの考え方ではあるであろうと私も思います。しかし、それがいいのかどうかということについては、私は若干疑問を持っておりまして、その点はちょっと加地さんとは違うのですが、私は医療費というものは、財源が物すごく裕福に確保されたらそれだけ全部使うという傾向のものだろうと思うのです。つまり医療費というのは、ある程度いろいろとそんなに使うなという制限をしょっちゅう加えていて初めて歯どめがかかるのであって、いや財源ありますよ、何か特定財源がこれだけありますよと言っちゃったら、それは大変なことになるのではないかと思うのです。
 私は、現在の老人医療の問題では、それを国民全部で持てということの前に、老人医療はどうあるべきかということの議論の方が先ではないかと思うのです。つまり毎日のごとく病院に行って、そして病院の方は病院の方でお見えになりましたからということで、一回来れば三十種類の検査をして、何ぞエックス線かなにか撮る、時にはCTとかエコーとか撮るというふうなのが老人に対する医療なんだろうか。私は本当は違うというふうに思っておるのです。老人というのはやはりハンディがあるわけです。だから、残存能力をどう開発して社会に適応させるかという哲学で老人医療というものは行われなければならないというのが私の個人的な考えでございまして、それをやられた後でみんなで持てとおっしゃるんなら、それも結構でしょう。ただし、それをお決めになるのは先生方ですから、僕が決めるわけではないのでございますけれども、そういうふうな、つまり順番としてはそうなんではないか、そんなふうに理解しております。
○高橋(一)委員 各参考人から貴重な御意見を賜りましたことを心から御礼申し上げまして、質問を終わります。
○稲垣委員長 池端清一君。
○池端委員 日本社会党の池端清一でございます。
 参考人の皆様におかれましては、大変御多用中のところ、本日御出席を賜り、貴重な御意見をいただきましたことを厚くお礼を申し上げる次第でございます。
 時間の関係もございますので、参考人の皆さんに若干の点についてお尋ねをいたします。まず最初に、朝日参考人にお尋ねをいたします。
 朝日さんは、先ほど国は国の責任として、都道府県や市町村と共同して保健事業をさらに充実強化することが当面極めて重要である、とりわけ国保直営医療機関の役割を強化して、地域医療を担う拠点として位置づけることが緊急の課題である、このような趣旨のことをお述べになったと思うのでありますが、現場の第一線で御苦労をいただいている衛生医療労働者の代表者として、今日、保健事業なり国保直営医療機関の現状はどうなっているか、その実態についてまずお聞きをしたいと思うのであります。
○朝日参考人 まず、保健事業の問題について言いますと、保健所と市町村の保健従事者の二つが問題になろうかと思います。
 しかし、例えば保健所の問題で言いますと、昨年、昭和六十二年度に保健所運営費交付金の一部約五十八億円ですが、一般財源化されました。このようなことと相まって、今各都道府県では保健所の廃止あるいは統合が進んでいます。例えば、この三月三十一日には山形県の南陽保健所が廃止になりました。さらに新潟県では四つの保健所が廃止されようとしています。つまり国の予算編成方針あるいは地方行革の推進の方針に基づいて、自治体レベルでは残念ながら保健事業の拠点たるべき保健所の統廃合が進んできている。
 一方、市町村の場合、第二次老人保健事業基盤整備五カ年計画などに基づきまして徐々に保健婦さんなどの確保が進んできているわけですが、市町村保健婦さんといいますと、従来は国保の直属の保健婦さん、こういう方が多く市町村保健婦さんに身分移管をされていったわけですが、昭和六十一年十二月現在で見ても、保健婦さんが一人もいない市町村が百六十九市町村、いてもたった一人の保健婦さんが八百十四市町村、そして二人のところが九百八十三となっています。私は、保健婦さんが一人ないし二人では、とても市町村の保健事業を積極的に担うということはできかねる状況だというふうに思いますが、現実はそういうことになっています。したがって、保健所の問題もあるいは市町村の保健スタッフの問題も、市町村を基盤に保健事業を充実強化しようといっても、その条件が極めて乏しいという状況にあると言わざるを得ません。
 さらに、国保直営医療機関約千三百ございますが、その大半がいわゆる自治体の病院、医療機関という形になっているわけです。しかし、先ほども御質問がありましたように、病院は病院で財政の問題が大変苦しい状況にございます。病院財政が極めて苦しい中で、自治体の病院が今幾つか縮小あるいは診療所への格下げ、さらには廃止という提案を受けているところも少なくございません。大まかに言って約四割の自治体病院が赤字だというふうに言われています。これに対する自治体の一般会計からの繰り入れも大変重い負担になってきているわけです。
 もちろん、国は自治体病院に対して一定の交付金等の措置をしていますけれども、今のままでは大変困った事態になるんではないか。とりわけ、先ほどちょっと紹介をしました地域医療計画の推進の過程で、自治体病院をもっと縮小していこうという流れが幾つかの県でつくり出されてきています。そういう意味では、市町村の医療機関、国保直営医療機関を地域医療の拠点にといいましても、現実はなかなかそうはいかない、こういう状況にあるということをお答えしておきます。
○池端委員 これも、先ほど高齢化社会に対応する地域づくり、町づくりを急がなければならない、こういうお話がございました。具体的にはこれはどういうことをお考えでございましょうか。これに関連して、現在国保の財政調整交付金の中でヘルス・パイオニア・タウン事業という項目がございますが、この事業について参考人はどういうふうなお考えをお持ちか、それを承りたいと思います。
○朝日参考人 今御指摘のヘルス・パイオニア・タウン計画というものが実施されていることについては、私自身も承知をしておりますし、つい先日諏訪中央病院の方にも行きまして、いろいろ今井院長からもお話を伺ってまいりました。幾つかのところで積極的な取り組みがなされているわけですが、残念ながらそれを行っている機関、地域が非常に少ない。と同時に、先生も言っておられましたけれども、その予算額が極めて少ないので、どうしても実施をしていく事業に制約がある、自治体からの相当の繰り入れ負担をしていただかないと実施ができない、こういう状況にあるということをおっしゃっていました。したがって私は、例えば今あるヘルス・パイオニア・タウン事業についてもっと積極的に予算をふやし、積極的に市町村で実施ができるように拡大をされるということが、当面ぜひ必要なことだろうというふうに思います。
 二番目に、しかしやはり保健医療の分野だけではなかなか、とりわけ総合的な高齢化対策にはならないというふうに思いますから、福祉サイドのより総合的なサービスの提供できる行政の機構とその仕組みをぜひつくっていく必要があるのではないか、こんなふうに思っています。厚生省の方もことしの七月には老人保健福祉部という形で一定の機構改革をされるようですが、やはり自治体においても保健、医療、福祉の総合的なサービスの提供できるような行政のあり方を求めていく必要があるし、そのことを国がより積極的に推進する、こういう方向を打ち出す必要があるのではないかというふうに考えています。
○池端委員 重ねて朝日さんにお尋ねをいたしますが、先ほど配付いただきましたこの地域医療計画でございますが、この三月三十一日で二十五の県で策定が終わったようでございます。その他都道府県においては、現在策定の作業が進められておるようでありますが、この地域医療計画の策定に当たって果たして問題はないのかどうか、その点について問題ありとすればどういう点にあるのか、その点を承りたいと思います。
○朝日参考人 大変幾つかの問題があるわけですが、関連して三つほど指摘をしておきたいと思います。
 まず一つは、地域医療計画を策定するに当たっての厚生省からの標準及びガイドラインが示されています。そのガイドラインあるいは標準そのものにかなり問題が含まれているというふうに思います。この問題については、各県の地域医療計画が一通り出そろったところで、ぜひ改めて見直しをしていく必要があるのではないかというふうに思います。具体的な点については省略をします。
 二つ目は、計画策定に当たって都道府県は市町村の意見を聞かなければならないということになっています。したがって、市町村の意見を十分に聞いた形でこの地域医療計画が策定されているのならいいわけですが、残念ながら多くの都道府県では、例えば計画案を示して一週間以内に意見を寄せろ、こういうような形でかなり形式的に行われています。したがって、現在つくられている地域医療計画が十分には市町村の意見を聴取できていない、むしろ行政当局と地域の三師会の意見を中心につくられてしまっていて、市町村やとりわけ住民の意見が十分に反映されていないという中身になっているということを指摘せざるを得ません。
 三つ目に、今度の地域医療計画では、病院の病床数だけがその規制の対象となっていまして、診療所の問題については一切取り上げられていません。したがって、診療所のあり方について今後どうしていくのか、現在の地域医療計画では、例えば診療所の適正な配置等々ができないということになりますので、今後の重要な課題だろうというふうに思います。
○池端委員 ありがとうございました。
 次に、加地参考人にお尋ねをいたします。
 実は、北海道の国保連合会では、老人の在宅療養にかかわる被保険者教育事業というものを全道二百十二の市町村において実施をいたしておるわけでございます。その内容は、同一医療機関に六カ月間継続入院している者のうち、その医療費が全国の老人医療費の前々年度一件当たり平均額以下で請求された月が三カ月以上あった入院患者をリストアップいたしまして、それぞれの市町村に連絡をしておる。その連絡を受けた市町村が主治医との相談や対象者の在宅移行の可能性についても調査を行った上で家族への教育を進める、こういうものでございます。
 この被保険者教育事業の中身を読みますと、プライバシーには十分留意しなさいということが再三書かれておるわけでございます。しかし、いろいろ見ますると、そうは言っているけれども、調査の対象として、例えば家庭内のトラブルはどうなっているか、そういうようなことも調査する、あるいは在宅療養に適する専用の部屋があるかどうか、こういうようなものも調査することになっているということで、現在北海道ではこれが大きな社会問題になっておるわけでございますし、市町村の国保担当者あるいは保健婦さんの方々も大変困惑をしておる。プライバシーの侵害につながるのではないか、あるいはこれはいわば老人の追い出し事業ではないかといったような批判も実は出ているわけでございます。御案内のように、北海道の医療費が高いということはもう周知の事実でございます。したがって、北海道の国保連としても、こういう事業の実施ということを行ったと思うのでありますが、まかり間違うと、これは国民の生命と健康に重大な影響を与える、あるいはプライバシーの侵害につながる、こういうような危惧を私は持つわけでございますが、この点についての理事長の御見解を承りたいと思います。
○加地参考人 北海道におきます具体的な問題については、実は今初めて先生のお話を承るわけでありますが、北海道のこの問題は非常に根深い問題でございまして、御承知のように、全国平均でずば抜けて北海道の医療費が高い、こういう事実がございます。地理的な条件等々を考えまして、まことにむべなる事情もあろうかと思いますが、先ほどお話ございましたように、例えば長野県の例で申しますと、これが全国平均より相当下回っておる、こういう実態もあるわけであります。そういう中で、何とか市町村の国保財政の健全化、安定化を図っていかなければいけない、恐らくこれが背景にある問題ではないかと思います。
 特に、これは先生方御承知のとおり、前回の老人保健法の改正におきまして加入者按分率が九〇、あるいはいずれ最終的に一〇〇%、こういうふうに変えていただいたわけでありますが、その際に、いわゆる調整対象外医療費という制度が法律に入っておりまして、全国平均の五割以上を超えた市町村については、せっかくできましたこの按分率が適用にならない、あるいはその按分率の効果が上がらない、こういうことが法律で実施になったわけであります。
 私は個人としては、北海道の実情を考えまして、昨年からのこの問題につきましては、そういう法理の趣旨からいっても、確かに急激な適用については地元にとっては大変困る問題であろう。なぜ医療費が高いかという問題でありますから、これはいろいろ難しい問題がございまして、単にそれは市町村あるいは医療機関、被保険者、こういうどこに特定をする問題でもございません。そういう意味で、もう一つは受け皿を整備しながらやっていく問題であって、北海道のそういう問題につきましては、北海道バッシングにならないように国保の補助金の面で考えていただきたい、こういうことで今続いておるわけであります。
 しかし、全国平均の二倍近い医療費の市町村の問題でありまして、今承りますと、一番大事なのはもちろんプライバシーの問題でございましょうし、受け皿が整備されるかどうかという問題であります。お話にございましたように、家族にそういうお話をしておるというのは、まさに受け皿を確認している措置ではないかと思いますし、これは北海道あるいは市町村、国保連合会を含めて頭の痛い問題でありますが、十二分にそういう環境整備をしながら、またよく話し合いをしながら解決をしていかなければいけない問題であろう。連合会も、大変その意味においては気配りをしながら何とか改善をしていきたい、こういう努力をしておるのではないかというふうに考えております。
○池端委員 ありがとうございました。
 それでは次に、菅原参考人にお尋ねをいたします。
 菅原参考人は気仙沼の市長さんとしても日ごろ大変厳しい国保財政の中で大変な御苦労をいただいておるということに、私も心から敬意を表する次第でございます。
 実は、ここに昨年十一月九日付の「国保制度にかかる厚生省改革案に対する決議」、これは全国知事会を初め全国市長会など地方六団体の地方自治確立対策協議会の決議を持ってまいりました。この決議の中で「地域差調整システムの導入は、厚生省の責任を放棄するものに外ならない。」また「老人保健医療費拠出金の見直しは、国庫負担率の引下げという単なる地方への負担転嫁に過ぎない。」という立場から絶対に反対である、こういう強い調子で態度を表明されておるわけでございます。また十二月七日の決議というのもございまして、ここでもいろいろありますが、特に「国保制度のあり方については、その安定運営を確保するため、医療費の適正化を強力に推進するとともに、今後、医療保険制度の一元化のなかで幅広く基本的な検討を行うこと。」こういう決議を上げられておるわけであります。
 しかしその後、御案内のように、十二月二十一日の三大臣合意によりまして、懸案でありました退職者医療制度の創設による未措置分一千八億が措置をされました。この間の補正予算でこれが通ったわけでありますし、六十三年、六十四年両年度につきましては、地方交付税の特例加算、そのほか幾つかの修正がなされました。しかし、修正があったとはいえ、基本的には当初の案の問題点はなお残っているのではないか。例えば地域差調整システムというのは、地域医療費適正化プログラムと名前を変えたにすぎないのではないか。あるいはまた老人保健医療費拠出金にかかわる国庫負担も、御案内のように大幅に縮減をされておるわけでございます。したがって、今回の改革案については、先ほどいろいろな立場からの御意見はございましたけれども、これは苦肉の折衷案ではないか、いわば国保改革の先送り、あるいは単なるびほう策にすぎない、こういうような御批判もあるわけでございます。絶対反対の立場を表明されておった全国市長会が、先ほどのように、法案の早期成立という態度をおとりになった、この辺の経過についてもう少し詳しくお知らせを願いたい、こう思うのであります。
○菅原参考人 昨年の厚生省案が出されました折には、私もその案に対しましては全面的に反対をいたした者の一人でございます。何となれば、福祉医療制度の創設あるいは老人保健の拠出金の見直し、それから地域差調整、こういうことによりまして二千二百億国が得をする、国の国庫支出金を減ずるということであります。その肩がわりといたしまして、都道府県に対しまして一千五百五十億、市町村に対しましても同じく一千五百五十億を加算する、そして保険料が八百五十億減ぜられる、こういうふうなことでございまして、国が本来やるべき保健事業を放棄して都道府県、市町村に対します負担金を増額するということは相ならぬ、こういう立場から私どもは反対をいたしたのであります。なおまた地域差調整の問題に関しましても、やはり国がみずからの責任で行うべきものを放棄して、地方自治体に地域差調整の責任を課することは相ならぬということで反対をいたしたわけであります。
 それに対しまして、政府はその制度を撤回いたしました。新たに保険制度の安定化という制度を持ってまいりました。私どもといたしましては、それが一応前の案は撤回されたものと認識をいたしております。厚生、大蔵、自治三大臣もこれに対してのコメントを与えておりますので、私どもとしては、前の反対というものを取り下げまして、今回提示されました制度なら、これならいける、こういうことで賛意を表しておるわけであります。
 なかなかこれからの地方自治体の運営も容易ではございません。私どもとしてはいかなる国庫の補助率の削減ということについても反対はしなければならぬわけでありますが、今回の老人拠出金に関します限りにおきましては、ただいま申し上げましたように、退職者医療制度の見直しにおける見込み違いの一千八億、これはおかげさまで全額補てんをされた、こういうこと、それからまた保険、医療の安定化の対策によりまして、一応の財源的な措置がなされ、そしてなおかつ不足財源につきましては、地方交付税の特例加算によって国が全面的に責任を持つということになりましたので、私どもとしては、今回の制度改正については、全面的な賛意を表しておるということであります。
 なお、一元化について、委員長は、国保の全面的な問題としてとらえるべきであって、今回のようなびほう的なことは相ならぬと言ったではないかということでございまするけれども、なかなか一元化と申しますのは、先ほど来各参考人お話しのとおり、一朝一夕にできる問題ではないと思います。国保の抱えております問題は、一つには年齢格差という問題がございますし、一つには所得格差の問題、そして地域格差というものがあるわけであります。こういう三つの問題が解決されて初めて一元化の方向が完全に打ち出されるわけでございますので、私どもといたしましては、一応老人保健法の見直しによって年齢格差は是正されてきた、所得格差につきましても、低所得者を対象にいたしました今回の制度によって一応の決着を見ることができるのではないか、まだ残っておる問題はありますが、そういうように一つ一つ一元化の方向に向かって制度が改革されてきておる、こういうふうなことをとらえまして、今回、私どもとしては政府が出しております一元化の方向を評価をいたしておる、こういうことでございますので、どうぞ昨年の私の発言と今回の発言の間の乖離につきましては誤解のないようにお願いを申し上げたいと思う次第であります。
○池端委員 ありがとうございました。
 それでは最後に、庭田参考人並びに水野参考人にお尋ねを申し上げます。
 さっき高橋委員もお取り上げになりましたが、本年二月に健康保険組合連合会が「医療保険制度改革の提言」というものをお出しになりました。その中で、出来高払い方式を改革すべきである、こういう提言があるわけでございます。特に、「老人の疾患は、長期化、慢性化しやすく、身心の機能回復、生活指導に重点をおいた医療を必要とするものが多い特性があり、診療報酬の現行出来高払をそのまま適用することは適正でない。」したがって定額支払い方式に移行すべきであるという具体的な提言、私はこれは傾聴に値するものがあると思うのでありますが、この診療報酬の改革の問題について両先生はどのようにお考えになっておられるか、御意見を承りたいと思います。
○庭田参考人 出来高払いの問題、診療報酬の支払い方式の問題の中の一つでございますけれども、これは老人医療の問題をめぐってだけ出たわけではございませんで、世界各国で、出来高払いといったようなものが果たして医療費節減にどういうマイナスの影響を与えるか、また出来高払いをとることが果たして医療保障の完全なる効果を発揮するのに適切であるかどうか、例えば薬づけとか検査づけとかというのが逆に病人の病状にショックを与えるようなこともあり得るのではないか、そのような幅広い見地から出来高払いの問題は論じられたことはございます。また現在も盛んに論じられているのではないかと思います。
 原則的に申しますと、あらゆる経済的な活動で、出来高払いというような方式をとれば必ず費用はかさむものであろう。あるいは過当競争のような状態になりまして、それに対する費用、出費というものはどんどんかさんでいくということは、これはもう経済法則でございまして、どうにも避けられないのではなかろうか、こういうふうには思えます。ただ、その出来高払いの問題を医療という特殊な、我々の生活にとって最も密接で、そして最も深刻な問題と絡めて論ずるときは、例えて言いますと、保険のセールスの人が出来高払いであらゆる手段を用いて保険をたくさん売りにかかって手数料を得たがるというような問題と医療の問題は、同じ出来高払いでもちょっと同日に論じてはいけないのではないか、こういうような気がいたします。
 出来高払いというものにも、それなりのメリットはあります。というのは、例えばまじめなお医者さん、研究熱心なお医者さんがおりまして、何とかしたいというときに、費用とか出費の問題は余り考えないで、ありとあらゆる知恵と技術とそれから経験を投入いたしまして治そうというような努力を展開するときには、出来高払いというのは、そのお医者さんなり病院なりに対しまして大変心強い一つの制度になる、こういうことにはなろうかと思います。しかしながら、それを裏返しますと、とにかくやたらに検査づけ、薬づけというような現象がないとも言えない。そして仮に薬づけ、検査づけで病人が治るならいいけれども、ほかの病気を誘発したり、決して治るようないい方向にも行かなかったというような現象でもありますと、出来高払いそのものも検討されなければならない、こういうことであります。したがいまして、出来高払いその他のいろいろの診療報酬の体系を我々は学理的に、かつ諸外国の経験を踏まえて検討しなければならない。
 ただ、とにかく費用がかさむ。そしてどうしてもお年寄りですから、手を抜いたり何かすると、それがもっと病気の深刻化、そういうものにつながりがちである。つまり自力をもって治癒する力のないお年寄りの病気のところで出来高払いの問題を後退させまして、ほかの方法でやってみるというようなテストをするのは大変危険ではないか。仮にやるならば、もっとほかのところでまず最初に考えるべきではなかろうか。出来高払いの改正の論議は、間違いなしにそれなりに学理的に意味がありますが、老人医療のところでまずそれを適用してみるということには、これはこれなりに大変な危険がある、そういうような気がいたしますので、軽率な出来高払いの後退ということを老人保健制度のところで試してみるような形のことには私はどうも簡単には応じ切れない、こういうような気がいたします。
○水野参考人 財政ということだけが至上だという見地に立てば、それは出来高払いはやめた方が医療費が安くなることはほぼ間違いはないと思いますけれども、私も、今直ちに出来高払いを廃止するといってみても、まずできるのかという問題は基本的にあると思うのです。これはお医者さんの方からいえば三十何年やっているわけでして、三十何年やっているのを、おまえ、あしたからだめだというのは、やはり政治の常識としてもなかなかラジカル過ぎてやれないのじゃないかという気がまず一つします。
 それから二番目には、私は、出来高払いを残しても、いろいろなやり方は現在の保険の点数表であると思うのです。むしろ私どもが非常に感じておりますことは、今の保険の点数の決め方というのは必ずしも合理的ではない面がある。保険局長がおられるから嫌な顔をされるかもわかりませんけれども、私は可及的速やかに一遍点数表の全面見直しをやっていただきたいという希望を持っております。それで方向としてはもう少し丸めてもいいところは丸める。これは現に厚生省でもやっているわけでして、臨床検査なんかはかなり丸めている。今のところは臨床検査を丸めるということと薬価基準を下げるということで医療費を下げるという方向で進んできているわけですけれども、例えばごく一部分何か取り入れるということは僕は可能だと思うのです。例えば初診の患者が最初に来たときは、いかなることがあっても、この範囲の診療をした場合には幾らという決め方は私はあると思うのです。しかし、それにプラス、レントゲンを一枚撮ったから幾らというふうに加算していくという方式だってとることは不可能ではないと思います。ただ、今直ちに出来高払いを全部やめて、西ドイツみたいに医師会と支払い側で話をして、ことしは幾らといって、風邪が多かったら医者が損をして、風邪が少なかったら支払い側が損をするというものに持っていくのは無理があるのじゃないかというのが私の感想でございますが、考え方としてあるということは十分承知しております。
○池端委員 貴重な御意見、どうもありがとうございました。以上で終わります。
○稲垣委員長 吉井光照君。
○吉井委員 本日は、参考人の皆様方には、大変御多忙な中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきましたことを厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 それではまず最初に、庭田参考人に三点についてお尋ねしたいと思います。
 まず最初は、医療保険制度の抜本改革についてでありますが、今回の改革案は、国保財政の危機的状態を脱するためのいわば緊急避難措置でありまして、抜本改革ではないわけです。ここ一連の政府改革案を見ましても、我が国の医療保険制度をどのような姿にするのか、どうもはっきりした姿が見えてまいりません。そこで、抜本的改革論議は一本化論、一元化論、また健保連の改革論と多様でありますが、真に国民が要望するのは安くて早くて安心できる医療ではないかと思います。こうした観点から、医療費保障制度としての保険制度についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、まず一点目にお尋ねしたいと思います。
 次は、医療保障システムについてでありますが、二十一世紀の本格的な高齢化社会に向かっての医療費保障システムづくりは重大かつ緊急課題であります。論議も、社会保険方式でよいとか、また税方式にすべきであるとか、いろいろと意見が出ておりますが、このシステムづくりについてどのような御意見をお持ちなのか、これが第二点目であります。
 それから三点目は、シルバー産業のあり方についてでありますが、今後増加傾向にあります老人医療費を抑制するためには、病気にかからないということ、すなわち健康な老人づくりということが非常に大事な問題ではないかと思います。それには、自助努力はもとより、官民一体となって取り組んでいかなければならない時代になってきておるわけですが、問題は、営利を目的とする民間の活力をどう取り入れていくか、また国の保障とどうかかわっていくのか、このシルバー産業のあり方についてのお考え、以上、三点についてお聞かせを願いたいと思います。
○庭田参考人 お答えいたします。
 まず第一番目の問題でございますが、医療保険制度の抜本改革につきまして、今回の国保改革の位置づけといったものになるのではなかろうかと思います。この位置づけを通しまして一元化論というようなものとどのように我々はつなげて考えたらよろしいのか、こういうようなことになるのではないかと思います。
 一元化と申しましても、人によりましていろいろの見方がございます。また一本化と一元化の相違といったようなものもありまして、かつて医師会が主張いたしましたような全部の医療保険制度を溶かしてまとめて一つの塊にする、これが一本化だろうと思いますが、どうもそれを述べるお方は徐々に減ってきた、このように思われます。つきましては、一元化ということになるわけでありますが、これの本当のねらいは、給付と負担の公平を求めながら増大してやまない医療費に歯どめをかける、こういうことになるのではないかと思うわけであります。そういたしますと、どのようなことになるかと申しますと、標準的な給付のための費用というのは、加入者数と所得に応じてこれを負担し合うということになるのではなかろうか。それでは標準的な給付というのは何かといいますと、これは国保がやっておる給付ということになるのではないかと思います。そういたしますと、現行の枠組みは維持いたしまして、地域保険と職域保険の二本立てにいたします。そしてそれぞれに例えば職域加算とか付加給付をつけるとか、そこが工夫と努力のあらわれということになろうかと思いますが、標準的な給付につきましては、これを一つにまとめていく、そして場合によっては、その地域保険と職域保険の間で合理的な方法と合理的な理由に基づきまして制度間財調というようなものを行っていく、どうもこの辺のところが言われるところの一元化ということになるのではなかろうかと思うわけであります。そして例えば老人保健法、それから退職者医療制度、それから今回の低所得者対策、それから地域差の調整の問題、そして共同事業、確かにこういうものを一つにつなげていきますと、これを限りなく推し進めていけば一元化にはなるであろう、こういうふうな感じはいたします。
 ただ、だからといって、これを推し進めていくと、一元化がある日おのずから浮かび上がってきてでき上がるというふうなものであろうかといいますと、やはりこういう努力を積み重ねていきながら、ある段階では相当思い切った飛躍的な措置が必要になるのではなかろうか。そしてそれが行われたときに抜本改正という言葉が本当に生きてくるのではないか、こんなふうに私は考えております。しかしながら、そうあるためにも、今言いましたような諸制度、諸改革を丹念に取り落としなく徐々に推し進めていく、そういう努力は絶対に欠かせないのではないか、こう思うわけであります。そしておっしゃるとおりの安くて早くて安心のできる医療、これが理想でございますけれども、一方におきましては、必ずしも安くなくてもいいんじゃないか、ということは、適正な価格で国民が医療保険を活用できればよろしいんではないか、こう考えますと、ここに負担の問題とそれから財源の調達の問題といったようなものが生きてくるんではなかろうか、安くしたために質の悪い医療になってはこれは大変ではなかろうか、こう考えるところであります。
 ところで、それでは一元化ということに関しましてどんなことがかつて言われてきたか。スケジュールというわけでありますが、できるだけ各医療保険の加入者の給付率をそろえていかなければならない。そのためには、つい先ごろも言われましたけれども、全国民一律八割給付というような提案も結構生かされてくるんではなかろうか。それから本人と被扶養者の間の給付の格差、こういうものもやはり徐々に狭められてこなければ一元化ということはできないのではなかろうかと思います。そして仮にも被用者と名のつく人は、五人未満であろうともどんどん被用者という保険の中に組み込み、そしてそういうものを吐き出しながら、吐き出すというのは語弊があるかもしれません、移していきながら、国保はスリムになって純度を高めていかなければならない。国保の方が純化してスリムになっていって、それから被用者保険の方はおよそ被用者と名のつく者を取り込んで、そして被用者であろうと被扶養者であろうと給付率を接近させ、同時に地域保険も職域保険も給付率をなるべく狭めていって、そして条件をつくっていく、こうなるわけでありますが、どうもそれだけでもなかなかいきそうもない。そうなりますと、民間の医療保険制度というようなものの活用というものも考えられてよろしいのではなかろうか。これが保険側の財政措置ということになります。
 一方、医療供給側の、今度は地域医療の問題。地域医療体制の問題。それに対しますボランティアの協力とか地域行政の積極的な援助とか、そういうものができまして、財政問題が解決されながら供給体制が整備されていく、そうなりますと一元化ができる。確かに今回の医療保険の国保の改革案というのは、そのうちのワンステップにはなっておる。これを失敗いたしますと、もう一元化はとても六十五年とか七十年では無理であろう、こういうように考えられるわけであります。
 それから、社会保険方式か税方式かというような問題を例にとりまして、保障システムづくりはどうなるのか、こういうことでございますけれども、まず税方式とか、これを拡充いたしますと福祉目的税なんというものにもなるわけであります。もちろん税方式にもそれなりのメリットはありますし、むしろ直截的でやりやすいかもしれないというような気もしないでもありませんが、どうしても税方式ということになりますと、努力は怠るんじゃないか。医療費適正化努力とか保険者の経営努力というようなものが二の次になるんではないか。そうなりますと、社会保険方式というものがありまして、概して給付と負担のバランスが緩くとられながら各保険者のところでまず収支の相等を図る努力をする、そして保険者の手に余る部分は財政調整あるいは国の補てんというようなことで協力、助力をする、こういうことになりますと、財政の健全化を図りながら、同時にそれぞれの保険者とその保険者を取り巻く周囲の者の経営努力、適正化努力というものが引き出せて比較的うまく事態が展開するのではないか、このようには考えられるわけであります。
 それから、シルバー産業ということでありますが、早く言えば、政府もやりますが同時に民間活力も導入する、こういうことになるわけでありまして、これを自助努力の展開、しかもこの自助努力を民間活力をもって行う、こういうことになろうかと思うわけであります。どうもシルバー産業というものを自助努力というものに大きくウエートをかけて展開することは、まだ今の段階では危険なのではなかろうか、こう考えるわけであります。諸般の金融事情その他が大変変動的でありますし、それから地価問題と都市問題というようなものも流動的である、こういう中におきまして、シルバー産業という大変難しい問題、しかもこのシルバー産業の収支というのは、高齢化の程度が進むに従いまして大きく動いてまいります。しかも、この高齢化の傾向というのが正確に把握されているかといいますと、相当変動的であります。こういうときに民間資本に大きく偏ったシルバー産業の展開というようなものはどうもまだちょっと早いのではないか。そうなりますと、まず一つには、国が手本的な先導をする、手本として国が行いまして、そのあり方をみんながまねてシルバー産業をその方向で振興していく、そういう意味におきましては、国、行政がこの方面に積極的になられて、かつ立派な成果を上げてくださることが第一の条件であろう、こうなります。
 次に、では国がやれば必ずうまくいって成功していいかというと、そうでもないのじゃなかろうか。国鉄なんというのも国がやったけれども、必ずしもうまくいかなかったという前例を見ますと、国だけでもだめなんではないか。そうなりますと、国が一方で手本的なものを展開しながら、同時に、それとある意味では競争、競合、競り合うというような関係での民間資本のシルバー産業展開というのが一番合理的なのじゃなかろうか。ですから、この際は国もやっていただきたい、同時に国が民間資本がこの方面でいよいよ本格的に乗り出すようになるべく指導、誘導をしていただきたい。それも早くいたしませんとなかなか間に合いません。こういうわけで、国にも大変期待をするところが大きい。くれぐれも民間資本というものの動きにのみ大いに偏ったシルバー産業の展開ということにはならないようにお願いをいたしたいと思います。
○吉井委員 ありがとうございました。
 次に、水野参考人にお尋ねをしたいと思いますが、医療費適正化対策についてでございます。
 厚生省は、先月都道府県に対しまして国保に関する六十三年度の指導監査方針を通知したわけですが、その中で、基本方針の最重点事項の一つとして、この「医療費適正化対策の徹底的推進」を挙げているわけでございます。先日私も山口県下の市の国保に関する実態調査をしたわけですが、やはり問題点として医療費増加という問題が非常に多かったわけですが、こうしたいわゆる安い医療が受けられるためには、医療費抑制策はどうあるべきなのか、その処方せんをひとつお聞かせ願いたいと思います。
○水野参考人 今の御質問は大変難しくて、何でも処方せんが書けるのなら申し分ないわけでございますけれども、医療費適正化対策というのは、今厚生省がやっておりますのは余りにも目に余るというのをやっておるわけですね。今まで一番ひどいのは、一カ月のレセプト五千万円というのがある医科大学から出てきた。そういうところから医療費適正化対策というのは本気でやらなくちゃいけないという姿勢に厚生省もなったというふうに僕は理解していますけれども、元来日本の医師法にしましても医療法にしましても、これは昔中医協の会長をしていられた東畑先生が、すべての医者はヒポクラテス、すべての患者はソクラテスという前提から成り立っておる、だからいろいろな問題が起きてくるのは当たり前だということをいみじくもおっしゃったことがありますが、そういう要素が確かにある。だからある程度適正化対策というのを片側ではやらなければならない。だけれども、新聞の見出しに出てくるようなすごいのだけを問題にするということでいいのか。そうじゃなくて、そもそも医療費というのはいかに使われていくべきものだという根本的な問題を考えなければならないのか。私はその両方なのじゃないかと思うのです。そんなに額は大きくなくても、明らかにむだではないかと思われるのは、それは実際にはあるわけですね。例えばもう治療してもどうにもならない、家に帰っていただく以外に方法がないというのがいっぱい入っているということが老人保健で非常に問題になった。御承知のいわゆる社会的入院というものですね。これは受け皿として老人保健施設をつくる以外に方法がないということで、老人保健施設をつくって、今それをやりつつあるわけでございますけれども、そういうこともやりながら幅広く医療費というものをとらえていくという姿勢がまず基本的に必要なのじゃないかと思います。
 それから、個々のお医者さんについてどうかという問題というのは大変難しい問題でございまして、これはあらゆる社会について全部言えるわけでして、倫理とかなんとかいうのは全部そういうところへひっかかってくるわけでございます。ただ、私は、現在の社会ではこれだけは医師として治療上最低知らなければならないということは生涯教育として取り入れて、そして各先生方の常識に基づいてちゃんと診療していただいて、その結果を診療支払い請求をするという格好にきっちりした形で持っていかないとなかなかうまくいかないのじゃないかと思う。ただ医療費というのを一面的に取り上げるのではなくて、それによって救われた患者もそれは確かにおりますし、それから患者は救われたけれども、先生の方は支払基金で削られたという例もあることはあるわけです。だから、そこら辺をもうちょっとマクロ的に見て、この辺じゃないか。ただ、これはガイドラインのようなものをつくるとまたいろいろ難しい問題が起きるわけでございまして、ガイドラインというのはちょっと無理かもわからないのですけれども、しかし適正化というのは、患者がどれだけうまくいったかということの効果判定みたいなものも厳重に言えば要るわけでして、そこらは非常に難しいところがあるんですね。薬をようけ出したから必ず悪くなるかといったら、それは個人差がありましてよくわからないわけですよね。というようなこともあってデッドロックへ乗り上げる可能性もあるわけです。ただ、今言われているやたらに請求の高いというものだけに目を向けるということ以外にも、やはり医療費というものはこうあるべきだということを少し考える必要はあるような気はいたしております。
○吉井委員 ありがとうございました。
 次に、朝日参考人にお尋ねをしたいと思うのですが、自治体病院の経営改善策についてでございます。
 自治体病院の経営状態は、他の公的病院に比べて非常に悪化しやすい傾向にある、このように聞いておるわけですが、このほど全国自治体病院協議会がまとめられた六十二年度決算見込み額調査によりますと、赤字病院が四九・三%、このように見込まれて、特に都道府県立の病院は五九・四%の赤字が見込まれているようでございます。自治体病院の財政が悪化していることがこれによって明らかにされたわけでございます。こうした中で今回の診療報酬改定の影響が注目をされるわけですが、今後自治体病院の経営改善策はどうあるべきであるとお考えなのか、この点について御意見をお尋ねしたいと思います。
○朝日参考人 大変難しい問題で、むしろ厚生省や自治省にお聞きしたいぐらいの問題なんですが、ただ、私自身今考えていることを幾つか申し上げます。
 現在の診療報酬体系は、自治体病院の医療を必ずしも適正に評価をしていない、基本的にそういうふうに考えています。
 具体的に言いますと、例えば僻地医療が典型的ですが、かなりのスタッフ、最低限必要なスタッフは確保しなければいけない、しかし患者さんは少ない、こういう状況ではどうしたって不採算という形になります。例えば精神医療についてもそうであります。今社会保険診療報酬点数では、精神医療、結核医療については一般医療と比べてより低くしか評価されていません。そういう点でいけば、精神病棟、精神病院を運営しているところについても収入としては大変苦しいという状況になっています。
 そこで、どういうふうに改善していくべきかということなんですが、一つは、診療報酬で適正に評価されていない部分について、国が、きちんと僻地医療対策なり救急医療対策なり精神医療対策、そういうところで一定の補助を制度化していくべきであると思いますし、一応現在でも不十分ながらされているのですが、そこのところをもう少し手厚くしていく必要があると思っています。
 二つ目は、自治省から自治体病院に対して交付金が出されています。普通交付税と特別交付税の二種類に分けて、自治体病院を経営する自治体に対して一床当たり幾らというふうに出されているわけです。ところが、これはなかなか困った問題があります。つまり国から交付されているにもかかわらず、とりわけ普通交付税の分については、その分を必ずしも自治体が病院会計にきちんと入れていない、そういう事態が幾つかございます。したがって、国が一定の措置をしていながら、自治体がその分をきちんと病院事業会計に手当てをしていないということからくる幾つかの財政上の困難もあるかと思いますから、この辺のルール化といいますか、負担区分の明確化とそれをきちんと行うような自治体に対する指導が必要だろうと思います。その上で、自治体病院としての一定の経営努力といいますか、運営を充実するための取り組みも必要だろうと思います。そこで特にこれから必要になってくることは、市町村の保健事業と自治体病院とのより密接な連携、この点が非常に重要になってくるのではないかと思っています。
 さらに言えば、先ほどからも話が出ていますように、これから老人保健施設というものもできてくるわけですから、保健と医療、そして福祉サービスを自治体病院がより積極的にかつ有効に機能するような形で結びつけていく、こういうことの中で改めて自治体病院の活性化あるいは活発化をしていくことが、病院自身としてもあるいは自治体自身としても求められるだろう、こんなふうに思っています。
 以上です。
○吉井委員 参考人の皆様方の貴重な御意見、どうもありがとうございました。以上で終わります。
○稲垣委員長 田中慶秋君。
○田中(慶)委員 私は民社党の立場で参考人の皆さんに御質問させていただきたいと思います。
 参考人の皆さんには、大変お忙しいところ、貴重な意見をちょうだいし、まことにありがとうございました。
 さて、過去に健康保険の改正の問題あるいは退職者医療制度の問題、さらには老健法の問題、そしてまた国民保険の改正の問題等々含めて、そのときにいつも言われてまいりましたのが一本化、一元化という問題です。その立場に立って水野先生にお伺いしたいわけでありますけれども、政府が国会答弁を含めて、昭和六十年代後半にこの保険医療制度の一元化、一本化をする、こういう意向を述べられておりますけれども、この辺について具体的にどのようなお考えをとられているかということが一つ。
 もう一つは、医療制度の一元化といっても幾つか問題が考えられると思います。被用者保険と地域保険の二本立て方式、あるいはまた全国一本の保険者とする方式や地域単位での保険者とする方式、年金のように基礎給付の部分を統合する方式、あるいはまた税財政によって公営化する方式、いろいろなやり方があろうかと思いますけれども、先生のお考えをお聞かせいただきたい、こう思います。
    〔委員長退席、野呂委員長代理着席〕
○水野参考人 お答えいたします。
 一元化というのと一本化というのとは厚生省の扱いではどうも違うようなんです。一本化というのは、日本医師会がおっしゃっておられる、要するにずばり言えば、国民健康保険一本でほかの保険は全部なくする、それが一本化。一元化というのは、今の幾つかに分かれている制度は大体制度として残しておいて、多少のあれはあるかもしれませんけれども、財政をできるだけプールする方向に持っていく、これが一元化なんです。
 理想論だけ言えと言われたら、私は一本化という方がいいというふうには思いますけれども、これは多分できないと思うのです。それはなぜかというと、とにかく組合健保というのは六十年やっておるわけです。さっき私は出来高払いで三十年やっているのをすぐには変えられぬと申し上げたばかりのところですが、六十年やってきたのをあしたから組合健保はないぞというわけには多分いかないのではないか。それが現実の政治というものなのではないだろうか。あるいは行政もそうだと思います。
 そこで、結局一本化は多分できないだろう。したがってやれるのは一元化である。一元化では一体どういう条件が要るかというのは、先ほど庭田先生がおっしゃいましたとおりで、給付の問題とかいろいろあるわけでございますけれども、そういうものが整備されればいいのではないか。
 それから、第三の考え方というのは、これはできるのかできないのか僕もよくわかりませんけれども、年金のような仕掛けにできないかということです。御承知のように、基礎年金というものが年金の場合にはございまして、この基礎年金構想というのを編み出したのが亡くなった山口新一郎さんですけれども、ああいう考え方を保険に導入できるか。つまり基礎保険構想、一定のある範囲まではどの保険に入っていても全部見ましょう、そこから先は企業年金とかなんとかを加算していくというやり方ですよね。しかし、どうも年金と医療というのは基本的に違うものでして、いや、それは厚生省所管事項ということについては同じかもしれませんけれども、やはり年金というのは長期保険であるわけです。それに対して医療保険というのは短期、一年ずつのものだろうというふうに考えますと、年金のようなぐあいに処理をしていくというのは若干無理もあるし、思想的に整合性みたいなものがいろいろ言われるだろうと思うのです。そうしますと、結局現実に出てくるのは何かというと、やはり一元化というものしか多分ないのではないか。
 それをどう思うかと言われますと、私は今の状態よりは一元化した方がいいのではないかと思うのです。それはなぜかといいますと、日本の保険で諸外国と比べてとりわけ大きな差がありますのは、本人と家族に給付の差があるわけです。そういう国は世界じゅうにないわけでして、これはやはりおかしいのではないかと僕は思うわけです。だから、今の給付率、本人の給付率を下げてでも家族を上げるというふうな処置は、僕は要るのではないかと思います。それから、国保に入っている人と組合健保に入っている人と政管健保とか皆掛金も違えば給付内容も違うわけなんです。それはやはり不合理なことなのではないか。だから、給付と負担の公平と役所がおっしゃっておられますが、最小限そういうものはおつくりいただいて、あとのシステムそのものは、一本化というのはちょっと難しいので、結局は一元化しかできないのではないか。しかし、それでも大変努力が要るのではないかというふうに考えておりますが、厚生省の方では六十五年をめどに頑張るとおっしゃっておられるので、我々もそれを期待しておる、こういう状態でございます。
○田中(慶)委員 どうもありがとうございました。
 時間の関係がありますので、朝日参考人には、国保の保険者である市町村の医療費適正化の努力をしておる現場を見ながら、診療報酬の点数などについては国が決め、あるいはまた医師の数あるいは地域医療計画に基づいたベッド数は県が決めております。こういう一連のものを考えてみますと、市町村の努力は限られているのではないか、こんなふうに考えておりますけれども、それぞれの立場での見解をお伺いしたいと思います。
 また、菅原参考人には、国保は低所得者が対象なので医療保障的な色彩が強いわけであります。市町村を保険者としてこれに任せるのではなく、国が何らかの形でナショナルミニマムとしての保障をすべきではないか、こんなふうに考えますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
 最後になりますけれども、加地参考人にお伺いしたいのは、先般国保の中央会で、老人医療財源は間接税、こんなお話を聞かされておるわけでありますけれども、これらについての考え方を述べられているわけでございますので、端的にお答えをいただきたいと思います。
○朝日参考人 おっしゃったように、市町村ができることということについて言えば非常に限られています。それにもかかわらず、市町村が行わなければいけないこともたくさんあることは事実です。そういう意味では、もしこの改正案のような形で市町村が地域の医療費適正化対策にもっと本腰を入れろというのであれば、もっと市町村は、財政面においても、あるいは保健医療政策面においても、お金も含めて力と権限が必要なのではないか、こんなふうに考えています。
○菅原参考人 被保険者と最も関連があり、かつまた税の徴収、賦課というふうなことをつかさどっております市町村が総合的にこの問題解決のために当たっていくという立場からいいますと、この国民健康保険の経営は、やはり市町村が主体となってなされるべきであると私は考えております。ただ、財政基盤が脆弱でございますので、その点については国のいろいろな施策が必要である、こういうふうに考えておるわけであります。
○加地参考人 先ほど申し上げましたが、健康保険組合が恐らく六十五年の改革をにらんで今日の老健法の実態をベースに考え方を打ち出したことであろうかと思います。老健法の実態の問題は別にいたしまして、あの健康保険組合の基本的な考え方、私は大変理解ができるのであります。むしろ賛成であります。それは、これからの日本の医療保険を考えます場合に、いろいろお話が出てまいりましたけれども、やはり老人医療というのが一番大きな問題であります。非常に端的に申し上げれば、老人医療を除いた一般の被保険者が運営するいわゆる社会保険システム、これは相当長期間大丈夫であろうと私は思っておる。ただ、老人医療費の負担を、現状においてもいろいろ問題がございますが、これから将来に向かって考えた場合に、どうしてもこれは公費負担へのシフトというものを強めていかざるを得ないのではないか。理想としては、健保連がおっしゃるように、だれも納得する老人を対象にした公費負担制度をつくる。これは理想でございますが、しかし、現実には伝統のある社会保険というのはあるわけでありますし、現に老人保健法では公費負担は三割であります。そういう実情からいきまして、将来の方向としては、私はまことに賛成でありますし、特に国保の構造問題を考えますときに、一番この老人医療費の負担をもろにかぶってくるのは国保であります。そういう意味で、私は、先ほども申し上げましたように、財政に着目して老人医療の問題あるいは医療保険全体の問題を余り申し上げたくないのでありますけれども、やはり医療保険が持たなければいけない、こういう観点を重視をいたしますと、将来の方向としてはそうあるべきではないか。むしろ、健保連と同じように、六十五年の改革の際には、この問題をぜひお取り上げいただいて御検討いただきたい、私はこう考えておるわけであります。
○田中(慶)委員 水野参考人にお伺いしたいわけでありますけれども、今老人医療の問題は、医療費がかさむという形なので、予防医療という観点からもっと政策的にシルバー対策といいましょうか、スポーツというものをもっと厚生省が制度的にあるいは政策的にこれを実施すべきではないか。最近お年寄りがゲートボールを初めいろいろな形で始められておりますが、健康づくり対策というものが少し置き去りにされているような気がいたすわけであります。そういう点では、医療費の結果論だけを見て、膨大になるとか、あるいは医療費がこうなったからという形でいつも論じられるわけでありますけれども、その前段で、健康づくり、予防医療、予防医学、こういうことについて、もっと国あるいはまたそれぞれ地方自治体を含めて財政的な基盤を確立をして社会投資をしなければいかぬではないか、これは私がいつも持論としているわけでありますけれども、先生の御見解をお伺いさせていただきたいと思います。
○水野参考人 全く先生のおっしゃるとおりでして、今の医療で何が足らないのかといったら、四十歳以上の人が必ず年に一回健康診断を受ける、これはなぜ受けるかというのは、要するにだれでも老化現象で成人病になる、ほとんどの人がなるわけですから、だから、なった場合に早く見つける、そして抑え込む、これがまず一つ必要なんです。それで生きていくための最低の能力というものを保持しながら、今先生の言われた、例えばスポーツだとか、あるいは食生活、休養も僕はそうだと思いますが、運動、食事、休養という三つをうまくかみ合わせてやっていく。そうしませんと、もうどうにもならぬようになった人は、今度はスポーツも何もできないわけですから、そういう意味において、今の医療で非常に重要だと思うのは早期発見なのではないだろうか。
 ところが、実際に今の病院というのは、悪口を言うわけではありませんけれども、とにかくそういう努力は病院は余りしなくて、ただ手おくれの患者ばかりがたくさん来て、それは医療費も要るかもしれませんけれども、やはりそういうことを放置してはいけない。病院だってこれからは五つのことをやれという時代になっているのです。今までは治療だけやっていた。やはり予防も、健康管理も、リハビリテーションも、ターミナルケアも、全部やるのがこれからの病院だというふうにヨーロッパではなりつつあるわけですね。だから、そういうふうな対応姿勢もとっていただきたいし、そういう格好で行政もやっていく。私はヘルス事業の委員もやっていますけれども、言ってもなかなか出てこぬという話にえてしてなりがちなんです。これは意識改革等も含めてやらないと、ただ来い来いと言っただけではちょっと難しい。運動もそうだろうと私は思うのですよ。運動をやったらいいですよと言ってもなかなか集まってこないというふうな問題もありはせぬかと思いますので、国民の意識改革も含めて先生のおっしゃるようにやっていけば、これは最終的には医療費の節減につながるというふうに僕は考えております。
○田中(慶)委員 時間が参りましたので、終わります。
 参考人の先生方、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
○野呂委員長代理 児玉健次君。
○児玉委員 本日は、御出席いただきましてありがとうございます。共産党の児玉と申します。
 最初に菅原参考人にお伺いをしたいのですが、先ほどの御意見をいただきましたときに、参考人は、保険者の立場から述べる、そういうふうに最初におっしゃいました。そして国民健康保険制度が高齢者、低所得者が増加する構造的な要因を含んでいる、私の聞いたことですから、そのとおり正確でないかもしれませんが、その上で、保険料負担が今加入者にとって限度に近づいているというふうにお話があったわけです。
 そこで、まずお伺いしたい点です。
 今度の改正案がもし実施に移されたら、都道府県の負担が四百四十億、市町村の負担が二百五十億、計六百九十億。これは六十三年度、六十四年度について言えば国が一定の措置をする、こういうふうには述べておりますが、そういった自治体負担が法律によって加わることになる。そうなると、例えば昨年度における市町村の一般会計から国保への繰り入れ、全国で二千二百六十七億円に及ぶというふうに伺っているのですが、この繰り入れがこの後どのように推移していくだろうか、この点について菅原参考人の御意見を承りたい、こう思います。
○菅原参考人 今回の制度の改正によりまして、地方負担のふえることは、ただいま先生お話しのとおりでございますが、この点に関しましては、先ほど来申し上げておりますように、地方交付税の特例加算等によりまして財源的な措置がなされる。六十三、六十四の二カ年の措置でございまするけれども、このことが手当てをされるということによりまして、地方負担はないものと私どもは認識をいたしております。
 ただ、こういうふうな手当てがされたからといって、地方自治体いわゆる保険者が安穏としておりまするというと、一般からの繰り入れとかそういうふうなものがふえてくることは事実であります。
 そこで、私どもといたしましては、収納率をまず高めて自助の努力をしていこう、それから医療費の適正化、これはレセプトの点検を初め医療費の通知の制度等を活用しながら、自治体のあとう限りの努力でもって適正化に努めていこう、もう一つは、保健施設関係に対しましても力を入れて予防体制に力をいたしていこう、こういうようなことで自助の努力をする中で、今後ともこの国保制度の安定化に向かって努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
 医療費が増高する中で国保運営というものは極めて厳しいわけでございますが、その厳しさを乗り切っても私どもはこの保険の継続的な安定的な維持を図っていきたい、こういう願いでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
    〔野呂委員長代理退席、委員長着席〕
○児玉委員 菅原参考人は、気仙沼の市長さんでいらっしゃるだけでなく、全国市長会のこの分野の担当の委員長をなさっておりますね。それで大変な御努力もおありだし、今国保としての自助努力ということで、そこにアクセントを置いてお話をなさった、こういうふうに承るのですが、現在の国保制度が出発したそもそも昭和三十三年の段階、あそこのところで、国は非常に意気込み高く、国民皆保険体制の確立のために国の責任を明確にする、こういうふうに述べまして、この社会労働委員会の論議の中でも、それまでの制度では国の補助というそういう制度であったが、今度新しい法律、現行の国保のことですが、新しい法律が出てくるということに際して国庫負担の制度に改めるというふうにも当時の保険局長は言い切りました。その精神についてどのようなお考えがおありか、重ねてお伺いしたいと思います。
○菅原参考人 たしか昭和十三年に国保制度が発足をいたして、昭和三十三年に改正になっておると思うのでございますが、その当時より国民健康保険の抱えております内包的な問題と申しますのは、いわゆる低所得者というものとお年寄り、そういうふうな方々の問題というものを内包しておったわけであります。なればこそ国保に対しましては、国庫負担、補助というものを多く盛ってこれに充てて制度の安定化を図ってきた、こういうことであります。我々自治体、保険者といたしましても、やはりその制度は、精神というもの、哲学というものは維持していただきたい、こういう願いであるわけであります。ですから、国庫の補助率の引き下げ、削減ということにつきましては、私どもはできるだけこれは避けていただきたい、こういう願いでいっぱいであります。
 ただ、今回のことに限りますというと、保険基盤制度の安定化の問題あるいは退職医療制度の創設における見誤りの補てんというふうなことで財政的な措置がなされたわけでございますので、私どもとしては、国が国保を見ていくんだ、その考え方は捨てていただきたくない、こういうふうに考えておるものであります。
○児玉委員 次に、朝日参考人にお伺いしたいと思います。
 今度の改正案の中で、厚生省がある市町村を指定する指定市町村、そこにおける国保事業の運営の安定化に関する計画、これが打ち出されております。いわゆる安定化計画です。先ほど朝日参考人は、長期入院の年寄りが厄介視されることにならないだろうかという懸念をお述べになって、ペナルティーに反対だ、こういう御意見をいただきました。
 そこで、医療の第一線のことをよく御承知の参考人に私はお伺いしたいのですが、いわゆる基準超過費用額、この負担が自治体に持ち込まれる、先日来の社会労働委員会の論議の中では、全国で百二十市町村程度、私のおります北海道はその中の七十を占めるだろう、こういうふうな見通しも出されましたし、そして市町村のペナルティーの積み上げは十億ないし二十億のオーダーになるだろう、こういうことも厚生省からお答えがありました。
 そこで、早く言ってこのペナルティーですね、ペナルティーが実施される医療現場というか自治体にそれが科せられて、そこから安定計画なるものが病院の現場に持ち込まれる、そうなった場合にどのような事態が生まれることが予想されるだろうか、この点で朝日参考人の御意見をいただきたいと思います。
○朝日参考人 一番私が恐れておりますのは、長期入院の患者さんあるいはいわゆる社会的入院の患者さん、それぞれにそれぞれの困難な状況があってそういうふうになっている方が多いと思うわけです。中にはそうでない人もあるかもしれませんが、全体としてはそうだと思います。とすると、例えば住宅事情なりあるいは老人保健施設なりあるいは特別養護老人ホームなりあるいは在宅へのサービスの改善なり、言葉は余りよくありませんが、そういう受け皿あるいは受け入れ態勢がないところで、あたかも早く退院をしてほしいというような形になった場合に、一番恐れますのは本人及び家族の自殺の問題です。私自身いろいろ経験をしましたけれども、よほどその辺は丁寧に十分過ぎるほどつないであげないと、一気に不安感が増して自殺に追いやりかねないということが起こると思います。その辺はぜひ現場の方々と十分な協議なりをしていただかないといけないと思います。
 先ほど国保連合会、北海道の方がある調査を始めたということがありましたけれども、この調査のやり方によっても、下手をすればそういうことを起こしかねないというふうに思います。
○児玉委員 基準超過費用額の言ってみれば基準になります平均医療給付費は、その年その年で設定されることになりますが、各市町村がこの安定化計画なるもので猛烈な自己規制といいますか病院に対する締めつけを強化していく、そうなると、平均医療給付費も固定したものでなくて相対的には下がってまいります。そういう状態の中で、この基準超過費用額の負担、今朝日参考人からもお話がありましたが、国民健康保険、皆保険制度の重要な一環である国民健康保険にすがっている人々に医療給付を縮小するという事態を招かないだろうか、この点を恐れるものですが、最後にその点について加地参考人の御意見を承って、終わりたいと思います。
○加地参考人 全国平均で見まして異常に高い市町村に対する計画的な解消策の問題でありますが、先ほども申し上げましたように、これは北海道の場合もそうでございますし、非常に苦労しておりますけれども、それは一つはプライバシーの問題、それから同時に、長期入院、社会的入院がなぜ起こっているかという今日の日本を取り巻く社会環境の問題もございます。要するに、これは受け皿なしでどなたがおやりになっても不可能な話であります。広い意味の受け皿整備をしながら、そういったもろもろの問題に配慮しながらやっていくべき問題である、こう考えております。
○児玉委員 時間で、参考人の諸先生皆さんの御意見を伺えなかったことをおわびしまして、終わります。ありがとうございました。
○稲垣委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十九分散会