第112回国会 運輸委員会 第6号
昭和六十三年四月一日(金曜日)
    午前十時五分開議
 出席委員
   委員長 関谷 勝嗣君
   理事 小里 貞利君 理事 柿澤 弘治君
   理事 亀井 静香君 理事 亀井 善之君
   理事 二階 俊博君 理事 吉原 米治君
   理事 長田 武士君 理事 河村  勝君
      岡島 正之君    加藤 六月君
      鹿野 道彦君    北川 正恭君
      鴻池 祥肇君    杉山 憲夫君
      田中 直紀君    津島 雄二君
      平林 鴻三君    増岡 博之君
      山村新治郎君    若林 正俊君
      小林 恒人君    左近 正男君
      新盛 辰雄君    戸田 菊雄君
      浅井 美幸君    西中  清君
      中村 正雄君    中路 雅弘君
      藤原ひろ子君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 石原慎太郎君
 出席政府委員
        運輸省国際運
        輸・観光局長  中村  徹君
        運輸省貨物流通
        局長      中島 眞二君
        運輸省海上技術
        安全局船員部長 野尻  豊君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      田谷 廣明君
        大蔵省主税局税
        制第一課長   杉崎 重光君
        大蔵省銀行局銀
        行課長     高橋 厚男君
        大蔵省銀行局特
        別金融課長   浅見 敏彦君
        労働省労働基準
        局監督課主任中
        央労働基準監察
        監督官     石川 勝美君
        参  考  人
        (社団法人日本
        船主協会理事
        長)      山元伊佐久君
        参  考  人
        (全日本海員組
        合組合長)   土井 一清君
        運輸委員会調査
        室長      荒尾  正君
    ─────────────
委員の異動
三月三十日
 辞任         補欠選任
  魚住 汎英君     柳沢 伯夫君
同日
 辞任         補欠選任
  柳沢 伯夫君     魚住 汎英君
四月一日
 辞任         補欠選任
  魚住 汎英君     杉山 憲夫君
  山村新治郎君     岡島 正之君
  村上  弘君     藤原ひろ子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡島 正之君     山村新治郎君
  杉山 憲夫君     魚住 汎英君
  藤原ひろ子君     村上  弘君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)
 船員法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)
     ────◇─────
○関谷委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び船員法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として社団法人日本船主協会理事長山元伊佐久君及び全日本海員組合組合長土井一清君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○関谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ─────────────
○関谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
○新盛委員 船員法改正法案、船員雇用促進特別措置法一部改正法案にかかわる審議に入る前に、本日、大変お忙しいところを本委員会に御出席をいただきました山元伊佐久日本船主協会理事長、土井一清全日本海員組合組合長のお二方には、大変ありがとうございます。
 当面しております、危機的状況を醸し出しております海運業全般にわたる大事な問題だけに、きょうは十分に経営者側いわゆる使用者側、そして船員の立場で、これらの問題に取り組んでおられる皆さん方に率直な御意見を賜りたいと存じます。時間の都合もございますので、参考人の方から冒頭にお願いをしたいと存じます。
 船主側の方にまずお聞きしますが、最近の北米航路海運業を初め、全く海運の危機というのはここ数年、まさに業界も再建の視界はゼロと言われるぐらいに大変厳しい現状であります。さらには、空洞化現象が最もはっきりしてきております海運業界の中で、安い労賃に頼る仕組み船にシフトされた海運業界、こういうことなど、当面するこの環境について、船主協会としてどういう御理解をされているでしょうか、お聞かせをいただきたいと存じます。
○山元参考人 御説明申し上げます。
 本日、主として外航海運の立場で御説明申し上げたいと存じますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。
 日本海運は、オイルショック後、国際的な情勢のもとでございますけれどもタンカー、続いて不定期船、そして定期船と、三部門同時不況に見舞われてまいりました。そのために、海運各社は体力が相当弱ってまいっておりました。そのやさきに、一昨年の秋以来、大幅かつ急激な円高に見舞われまして、経営は危機的な局面に立ち至った次第でございます。
 ちなみに、大手主要海運各社の決算状況を見ますと、六十一年度におきましては前年度に比べまして九百六十億円ばかり損益が一挙に悪化いたしております。そういう状態のもとでさらに円高が進んでおりますので、六十二年度決算はより損益が悪化するというように見込まれている次第でございます。
 それと同時に、日本船の国際競争力という立場から見てまいりますと、従来からも日本船の人件費は、東南アジア船員が乗り組んでおります船に比べましてコストが約三倍程度高かったわけでございますけれども、この円高によりまして六倍ないしは七倍というような状況になっておりまして、とても競争ができないというような状況に立ち至っているわけでございます。このようなことから日本船の海外流出が増加いたしまして、五十八年当時には日本船は千百四十隻、三千四百十万総トンあったわけでございますけれども、六十二年には八百十六隻、二千八百二十万トンということで、隻数におきまして三〇%近く減少いたしております。この円高はさらに進行をいたすと思われますので、今後さらに日本船が減少するのではないかということで、強く危惧の念を持っている次第でございます。
○新盛委員 そういう厳しい環境にありますだけに、日本船員を確保されるという面でも大変だろうと思いますが、巷間言われております便宜置籍船、FOCでございますが、このあり方について船主側としてはどういう御理解をしていらっしゃいますか。
○山元参考人 御説明申し上げます。
 海運各社におきましては、経営上何とか日本船を保有していきたい。その優秀な日本人船員の乗った日本船というのは、各産業界、荷主の方々から大変な信頼を得ているわけでございます。しかし一方におきまして、先ほど申し上げましたように日本船が減少してきますと、船員の雇用の問題に大変な影響を及ぼすわけでございまして、一定の日本船を保有しておく必要性は十分認識しているわけでございますけれども、現実はなかなかそうはいかないという状況でございます。
 海運各社は、こうした未曾有の危機に対処するために、あらゆる緊急対策を打ちつつあるわけでございますけれども、その生き残り策の一つといたしまして、既存の日本船をFOCにするとか、あるいは仕組み船を建造するというようなことで対応していかざるを得ない状況でございます。このように、企業が生き残っていくためと一定数の日本人船員の雇用の確保という立場から、ぎりぎりの選択といたしまして、日本船の国際競争力を高めるために日本船への混乗というものを何とか実現して、この危機を乗り切っていきたいというように考えている次第でございます。
○新盛委員 今出されました混乗の問題ですけれども、これからそうした厳しい要員対策を含めて、あるいはコスト減のために、結論が出ているかどうかわかりませんが、混乗体制ということについてはもう具体的に仕組み船を初めとして進められているんでしょうか、結論が出ているんでしょうか。
○山元参考人 御説明申し上げます。
 現在、運輸省におかれまして、一つは海上安全船員教育審議会の中に船舶職員部会がございまして、その中に船舶職員法第二十条問題小委員会というのがございます。そこで先生御承知のとおり、五年前にマルシップに関する特例措置が設けられましたが、それが今月の二十九日に期限切れとなるわけでございます。そこで、ただいま申し上げました小委員会で、期限切れとなるマルシップの特例措置をどうするのかということを御審議しておられまして、それに関連しまして、我々船主サイドといたしましては、単に従来認められておりました特例措置だけでなくて、その措置を外航一般につきましても適用範囲を拡大するとか、あるいは乗組員定数をさらに極力少数化してほしいというようなお願いを申し上げて、御審議をいただいております。ただ、これは緊急避難的な問題の解決でございまして、それはそれとして経過措置的な意味で何とか実現していただきたい。
 一方におきまして、本格的な新しい船舶登録制度をヨーロッパと同じようにひとつ何とか御検討をいただきたいということを、やはり運輸大臣の諮問機関でございます海運造船合理化審議会、そこの海運対策部会の中にフラッギングアウト・ワーキンググループがございまして、昨年の末から基本的な、根本的な改革につきまして御審議をいただいております。
 両方ともまだ結論が出ておりませんけれども、私どもとしては、船主の立場からぜひこうしていただきたいというようなことをお願い申し上げている次第でございます。
○新盛委員 新造船建造の意欲がどうしてもわいてこないという最近の環境は確かにそうですが、このことでお伺いしますけれども、金利が横並びで五・二%という安い金利ということにはなっているんですけれども、昨年四十三次の造船計画で七百億ぐらい一応つけられていたのですが、一隻だけ建造された。六十三年度も四百二十億、金としてはこういうふうに融資の状況が出されておるのですが、この建造、これは船主側の方がどうしても建造することに対する理解といいますか積極性といいますか、そうした面がなければならないわけですが、この件についてはどういうふうにお考えでしょうか。
○山元参考人 御説明申し上げます。
 官公労使が協力いたしまして、五十四年からいわゆる近代化船というものを進めております。従来、一隻について二十三、四人乗っておりました乗組員を十八名にするというところからスタートいたしまして、現在は既に十四名体制の実験を行っております。十八名につきましては既に実用化いたしておりまして、これは一つ完結いたしているわけでございますが、パイオニアシップという形で十一名の乗組員の体制を目指して、労使協力しましてその実験を進めようとしているわけでございます。
 それはやはり、技術の革新に対応いたしまして日本人船員を維持していくという一つの大きな試みでございますけれども、この十一名の乗り組み体制でありましても、東南アジアの船員が乗り組む船から見ますとコストが大体四倍近く高くなるわけでございます。しかし、それはそれとして、やはりそういう技術革新に対応した乗り組み体制が必要でございますので、今後進めてまいりたいとは思っておりますけれども、先ほど来申し上げましたように、一般的に申し上げまして船員のコストが東南アジア船員の乗り組む船に比べまして大変な割高な状況でございます。計画造船の形で何とかつくりたいとは思うのですけれども、現実はなかなかそうはいかない、そういう事情がございまして、やはり先ほど申し上げましたように日本籍船への混乗というものが認められますれば、日本船の建造ということも復活し、優秀な日本人船員を確保していくという我々の希望もかなえられるかと思うのでございますが、よろしく御理解、御支援をいただきたいと存じます。
○新盛委員 続いて、きょうこれから論議をいたします船員法の一部改正の中で、労働時間短縮の問題が当面の急務でございますが、前川レポートでも示されていることでございますし、船中労で使用者側あるいは労働者側の御意見が出されている内容も十分承知しておりますし、公益側のそれに対する発言の内容もよく存じているわけです。
 今回、四十年ぶりにこの労働時間問題で改正をすることになったわけですが、率直に申し上げて、七百総トン未満の小型船舶にかかわる労働時間問題、小労則と言っておりますけれども、こうしたものに対しては除外をされて特別な変形勤務的なものをされている。この際、一挙に直すというのはなかなかかもしれませんが、本法に位置づけられるということは、これは労働時間もですが、あるいは適用範囲、休日、そして有給休暇、こういうことに対して使用者側としてはどういう御理解をしていらっしゃるでしょうか、総括的にお願いします。
○山元参考人 御説明申し上げます。
 日本海運の現状は先ほど来申し上げたとおりでございますけれども、労働時間の短縮あるいは休日・休暇の増加ということにつきましては、社会的な要請もございますので、その方向につきましては異論がないところでございます。しかしながら、海上労働というのは陸上の労働と違った実情にございますので、これは一般論としてでございますけれども、この海上労働の特殊性というものを十分にごしんしゃくいただきまして、弾力的な運営をお考えいただきたいと存じます。
 個々の問題について申し上げますと、まず法定労働時間でございますけれども、労働時間の短縮、その結果生じます休日の大幅な増加というのはコストの増大につながりますので、外航、内航、旅客船、フェリー等、各関係業界がこの法改正に円滑に対応できるように、経過措置を設けていただきたいというのがお願いでございます。
 それから、補償休日の問題でございますけれども、休日の与え方につきましては船員中央労働委員会の場で今後具体的に検討されるというぐあいに聞いておりますけれども、この休日がすべて陸上で付与されるということではなくて、休日の事前の付与とか乗船中の付与とか半日休日の付与とか、そうした制度を取り入れていただきたいというぐあいに考えているわけでございます。考えとして申し上げますれば、日本人船員が直面いたしております国際競争力の低下に拍車をかけるようなことのないように配慮をいただき、また船舶運航の実態に即した弾力的な方法によって休日をとりやすくするように御配慮いただきたい、こういう考えでございます。
○新盛委員 最後に、またもとに返って恐縮ですが、FOCは先ほどの御説明でよくわかりましたが、日本人船員の一定の職域という認識の上に立ちまして、日本船員をある程度行政的に定数、定員を決めてそれを義務づけするような、いわゆる日本船員がFOCに乗れる、乗せるための義務づけ、そんな拘束をもってすることについてはどうお考えですか。
○山元参考人 御説明を申し上げます。
 船主サイドといたしましては、先ほど来、日本船の国際競争力が国際的に見まして禁止的なレベルに達しておりますので、基本的には混乗の日本船あるいは近代化の実験・実証船、それから仕組み船、外国用船、こういうものを適宜組み合わせまして、そして全体として日本商船隊の競争力を維持していくというのが我々の希望であるわけでございます。
 その点をもう少し補説いたしますと、日本の海運が置かれております状況というのは、先進海運国もやはり同じく国際競争力の低下と自国船の海外流出ということに悩まされているわけでございます。欧米におきましては、ここ数年の間に自国船がおよそ半分に減っていることもございまして、国防上の見地も含めまして、その対策が講ぜられているかもしくは真剣に検討が行われているという状況でございます。
 例えば、ノルウェーでは新しい船舶登録制度が導入されまして、ノルウェー人は船長だけでいいというような制度まで踏み切りまして、船員費のコストの引き下げが可能となっております。一方、アメリカにおきましては、国防上の見地が強いとは思われますけれども、従来から特定の航路につきまして運航費差額補助というような形で、船員費の格差を埋めるべく年間三億ドルの補助金が交付されているという状況でございます。また、ほかのヨーロッパ諸国では、特定の分野で既に適用されております所得税の減免措置が船員にも適用され、船主、船員の負担の軽減を図ろうという国もございます。こうしたことで、欧米の国におきましては船舶の登録制度を新しく改革する、アメリカは従来どおり運航費差額補助を出すというような形で、それぞれ国の実情に応じた措置がとられて、自国船の競争力の回復あるいは自国船の維持という法則がとられているわけでございます。
 日本におきましても、先ほど申し上げました二つの審議会で今御議論をいただいておりまして、ぜひ私どもが期待する結論が出ることを念願している次第でございます。その場合に、FOCの位置づけでございますけれども、さっき基本的な立場を申し上げましたように、あらゆるタイプの船を適宜組み合わせてやっていくという柔軟な対応が我々の望むところでございまして、FOCに日本船員は何名乗せなければならないという義務づけは、この非常に厳しい状況のもとでは現実に即さないかと思いますので、ひとつ弾力的な施策というものをおとりいただきたいというぐあいに私どもは念願している次第でございます。
○新盛委員 山元参考人には、大変お忙しいところありがとうございました。貴重な御意見を聞かしていただきまして、これからまた審議の中でも十分活用させていただきます。お引き取りいただいても結構でございます。ありがとうございました。
 次に、今船主側の方をお聞きしましたが、船員さんの立場に立って土井組合長にお聞きしたいと思います。
 船員の雇用について労使で設立しました外航船員雇用開発機構、こうしたことで積極的に労使の間で取り組んでいらっしゃるわけでありますが、最近の長引く海運不況下で、船員の雇用にも大きな影響が出ているわけですけれども、船員の立場から見た現況、そしてこうしたことの背景についていかがお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいと存じます。
○土井参考人 海員組合の土井でございます。
 平素は、委員長初め各委員の皆さんには大変お世話になっておりますことを、心からお礼を申し上げておきたいと思います。
 今日、我が国の外航海運で、極めて厳しい状況の中で生き残り策として相当大幅な合理化対策をとってまいりました。その中で一番大きいのは、何といっても船舶の不経済船の処理、それから過剰になった船員の雇用調整、こういった問題が大きな対応でございました。これらの諸対策を精力的に進めてみましたけれども、今日なお円高あるいはアメリカの新海運法の発動等々の影響で、それらの合理化努力がほとんど実を結んでいないというのが実態でございます。
 その実を結ばないという背景の一つの大きな問題は、依然として過剰船腹であるという点であろうと思います。既に御承知と思いますが、今日、タンカーにおいても二九%、一般貨物船において二〇%、これが過剰だと言われております。海運造船合理化審議会で、これらの過剰船腹の解撤促進ということについて答申がなされ、鋭意海運、造船両業界において解徹作業が進められております。しかしながら、海運市況の波動の中で、係船するものあるいは解撤するものが一時市況に出て、それらの動きが鈍ってしまったというような点等もありまして、現実には過剰船腹が依然として重く海運経営を圧迫しておる状況にございます。
 特に、日本は世界一の海運国、世界一の造船国ということで、五十八年当時大変な不況でございましたけれども、当時の造船の発注規模というものは、それ以前の十年間の建造量を上回るほどの大量の建造をいたしました。しかも、その建造をいたした中で、計画造船とかあるいは自己資金による造船とかいろいろな形があるわけですけれども、やはり一番大きな問題は、商社、金融あるいはリース会社等々による大量の自己資金建造が行われました。それらの影響が今日までずっと続いているというのが実態でございまして、この過剰船腹を解消しない限り、海運経営の再建というものはまずおぼつかないという点が一点であります。
 二番目には、円高・ドル安でございます。円高によって我が国外航海運の経営が極めて圧迫されたことは、もう既に御承知のとおりだと思います。外航海運三十八社が計画造船等による政府の助成を受けておる会社でございますが、この外航海運三十八社を見ましても、円高・ドル安の差損というものは膨大なものでございまして、七百億円ぐらいに達すると言われております。しかも、一円の円高で差損は大体十四億円と言われておりますから、今日のように百二十円という円高・ドル安の状況の中では、この差損の大きさというものは膨大なものだろうと推測されるわけであります。特に外航海運は、御存じのとおり約六割がドル収入でありまして、支払いはほとんどが円で支払われるというようなこの状況が改善されない限りは、ドル安・円高というものは外航海運にのしかかってくる大変な重荷であると思います。
 今日、世間では、ドル安・円高は外航海運だけではない、陸上の諸産業においても同じだということで、我々の真意を十分見ていただけない空気が支配的でございますけれども、このようにドルが安く、円が高くなった現状において、各委員、諸経済指標を見られたらおわかりのとおり、今日の景気拡大傾向は、恐らく昭和六十四年の決算期まで続いていくだろうと言われている好況ブームがもう既に起こっておるわけであります。
 ところが、その中で外航海運だけが三角印であります。御存じのとおり、収益状況は外航海運だけ造船分野においても極めて不況を強いられておるわけでございますけれども、中小造船も同じだと思いますが、大手の造船の場合はまだ陸上の内需部門に相当転換をいたしておるわけです。したがって、収益状態も外航海運よりは改善されておる。ましてや、鉄鋼においても不況産業と言われましたが、今日では海運、造船、鉄鋼という不況の陣営の中から、鉄鋼はもう抜け出しておるんではないかと思います。ひとり外航海運だけが、もろに円高・ドル安の一番大きなしわ寄せを受けておるんではないかというぐあいに思います。
 私ども組合側といたしましても、経営側に対して多角経営をやるべきだということを強く主張いたし、この内需拡大傾向、前川レポートに基づく経済構造の改革の方向に向けて経営努力をすべきだという主張をいたしておりますけれども、いかんせん今日まで長い間、外航海運は外航海運を専門としてやってきたという、言うならば純血主義的な経営をやってきたという体質が、今日の状況の中でにわかに多角化するというようなノーハウも力もないというのが実態だろうと思います。こういう状況で、円高・ドル安の重圧というものは、外航海運にとってきわめて大きな問題であるという点が第二番目の問題であります。
 第三番目の問題は、北米定航の問題でございます。御存じのとおり、アメリカの新しい海運法が施行されて以来、インデペンデントアクションとかサービスコントラクトとかいうような独自な手段で運賃競争が行われる。そういう状況の中で、日本の船社はアメリカの船社あるいは昨今のアジアNICS諸国の新興海運諸国との競争の中であえいでおります。これも既に御承知のとおり、外航大手六社の北米における赤字は約六百億円、最近に至りまして大体五百億円ぐらいの赤字に、多少縮小傾向にはありますけれども、依然として膨大な赤字を抱えております。
 そういう状況の中で、北米における日本商船隊の競争力をつけるため、私どもは大手船社の協調体制というものを強く求めてきたわけでありますけれども、先般の海運造船合理化審議会では、これまた前川レポートあるいは国際的な規則緩和の動向に連動をいたしまして集約体制を解除いたしまして、それ以来この数年間、各定航会社が独自の経営努力で北米航路の安定的な維持発展に努力をしたわけでありますけれども、いかんせん集約体制を解除した直後に円高・ドル安というこのG5の影響をもろに受けまして、今日、先生方御承知のとおり外航海運大手六社のうちもう三社が金融の特別な支援を受けて、事実上倒産状態に陥ってしまいました。
 しからば、残った大手三社は健全かといいましても、これまた御存じのとおり、今日の段階で配当会社は一社だけでありまして、他の二社においてはもちろん無配であるというような経営状態でございます。また、配当会社の一社についても、海運業によって収益を上げているということではありません。これは海運業以外の収益によって辛うじて配当を維持しておるという状況でありまして、北米航路における海運業の経営実態は、すべてが赤字たれ流しで今あえいでおるという状況でございます。特に昨今、極東地域における荷物は増大傾向にあります。そういう中で、日本の船社と極東NICS諸国の船社との競合が一層激しくなっております。そういう状況下での北米航路というものが、我が国の外航海運の経営を大きく圧迫している三番目の要因だというぐあいに思います。
 そういう中で、船員の雇用問題ということが極めてシビアな形であらわれてまいりまして、私どもも政府が適切な助成政策を講じてくれれば、今日のような海運の苦境と船員の雇用というものがある程度確保できたと思いますけれども、既に五十九年来の海造審で答申をしてまいっております中身に書いてありますように、政府の適切な財政的あるいは政策的助成への期待というものがあったわけでありますけれども、それが今日までほとんど手つかずであるというようなこと等から、労使やむなく緊急雇用対策ということで、船員の自主選択による退職を含む雇用調整に着手をいたしました。
 労働組合といたしまして、労働者の雇用調整をみずからの手でやるということは耐えられないことでございます。しかしながら、依頼するところがない、頼るところがないという状況の中で、あるいは政治経済状況の中では、やはりみずからその道を選ばざるを得ないという判断をいたしまして緊急雇用調整をいたしました。これはもう暫定的な処置ではございますけれども、昨年来約一年の間に、その結果、日本の海運助成会社三十八社のうちほとんどの会社で実施をいたしまして、今日、船員が海上を離れたのが平均して四二%程度になります。
 したがって、五十四年当時、外航海運の船員が三万三千ぐらいおりましたが、今日では一万二千名になっております。しかし、これは労使関係を持っておる外航海運でございますので、その他の労使関係のないところはわかりませんけれども、労使関係のある分野で既に半分以上の船員が海上を去ったという現実でございます。しかも、今日なおこの雇用調整は進行中の会社もございます。私どもはみずから血を流しながら、外航海運の生き延びる策として雇用調整に取っ組んだという現状を、どうかひとつ御理解をいただきたいと思います。
 以上です。
○新盛委員 海運及び船員の厳しい現状が理解できました。これから先の展望も決して明るくないというふうに思われます。そのことを思えば、船員及び家族の悲痛な声が聞こえてくるような気もするわけであります。
 今、お話ございましたように、労使の自助努力で雇用調整を初めとしてあらゆる手だてをされる、あるいは海造審の中間報告に沿って対策を立ててこられた。こうした一貫の政策も、結果的には今おっしゃいましたように自助努力を超えて政策支援が必要だ。具体的に、近代化船の問題にしてもFOCの問題にしてもそうだと存じますが、国がどうしてくれれば立ち直れるのだ、もっと積極的な対策をというそのことについて、何か御要望ございますか。
○土井参考人 一つは、税制の問題でございます。先ほどの参考人からも話がありましたように、諸外国ではいろいろ施策を講じておるところであります。私ども率直に申し上げて、日本の場合、アメリカと似たような形で直接政府の助成をお願いできれば一番いいというぐあいに思っております。アメリカの場合は極めて厳しいレーガン経済の中で、ほかの分野を縮めながらも価格差補給だけはふやしております。八七年度経済教書によると、二千七百万ドルふやしておるというようなことで、そういう姿勢が我が国の政府にも必要ではなかろうかというぐあいに思っております。
 二番目には、近代化船の建造を容易にするような政府の必要な施策を求めたいと思います。
 三番目には、FOCが約千五百隻あるわけですけれども、この日本の船社が支配をしておるFOCを日本人船員の職場としてもらいたい、そのためには必要な政策手当てをしてほしいというぐあいに思います。
 こういったことを通じて、雇用の安定へ結びつけていただきたい。再び緊急雇用対策のような船員の雇用に手をつけるようなことは、絶対やってはならない。そのことは、我が国の基幹的な輸送機関としての外航海運を維持存続する上からも、これ以上の船員数を削減することによっての海運経営の再建策をとることは、絶対反対であるということだけは申し上げておきたいと思います。
○新盛委員 大変ありがとうございました。
 きょうはお忙しいところ、お二方には十分な御意見をいただきまして、これからの審議の中に生かしてまいりたいと存じます。本当にありがとうございました。
 さて、そうした背景を中心にして、船員法の改正の部分から入らさせていただきます。
 冒頭に、労働基準法が四十年間にいろいろな変遷を繰り返しながら、そして改正案が先ごろ国会で成立をしました。その横並びあるいは同等、準じて、いろいろな手法がございますが、現行船員法は戦後、昭和二十二年九月に制定されて以来、四十年の間に基本的な改正はほとんどなされませんでした。船舶の構造や港湾荷役等に関する技術的革新の進展があったにもかかわらず、また船員労働の実態も大きく変化をしてきた、それに対応するものでなかったことは、御案内のとおりです。労働時間短縮の趨勢というのは、週休二日制あるいは四十時間労働への前川レポートが示しましたように、労働者の福祉増進、雇用機会の確保、こうした面から、今や経済構造調整、内需拡大等に大きな役割を果たすことは論をまちません。
 今回の四十年ぶりの船員法改正に伴う内容については、船中労でも議論されてきた経緯もございます。私どもにとっては非常に不満でございます。法定労働時間短縮、適用範囲、補償休暇、あるいはそれらに伴う、これからまだ論議をしなければならない問題もあります。さらには、一番問題になりますのは、小労則と言われ、漁労則と言われています省令によって定められている七百トン未満の小型船舶に対する勤務が極めて、ある意味では我々が労働時間短縮と全体的に言うこれからの目標にそぐわない、適用除外されている。そういうこと等もありまして、先ほど使用者側の方からもお話がございましたように、段階的に経過措置でというお気持ちはわからぬわけではありませんが、ここでまだ、ある人ではありませんが、日暮れてなお道遠しという感のする今回の労働時間の取り扱いであるようであります。
 こうした全体的内容について、運輸大臣としてはどういう御感想をお持ちでしょうか、お聞かせをいただきたい。
○石原国務大臣 労働時間の短縮は、近年、労働者の福祉や長期的に見た雇用機会の確保という観点だけではなくて、国際経済情勢を背景としての内需拡大、御指摘のように経済構造調整の観点からも、国家的な政策課題となっております。いわゆる前川レポートを受けまして、去る百九回の国会では労働基準法の改正案が成立をいたしました。
 一方、現行の船員の労働時間に関する規定は、航行中、停泊中等の別に応じて細かく定められてもおりますが、昭和二十二年の法制定後、四十年がもう経過いたしまして、その間、技術革新の進展を背景とする船舶の運航形態の変化、船内の就労体制の変化等によって、これらの規定と実態との間でかなりの乖離を生じている面もございます。このため、今回の制度改正に当たっては、船舶を下船した後あるいは停泊中の休日を中心として、航行の状況に応じて一定期間での休日給付を義務づける補償休日制度を設ける等により、航海中は連続労働を認めざるを得ない海上労働の実態との調和を図りながら、労働時間の短縮を図ろうとしておるわけでございます。
 労働時間短縮は重要な国家的政策課題であり、新しい人材を集め、海運界の活力を維持するという点から見ましてもその意義は大きいと考えております。私としましては、経済審議会の建議を念頭に置きまして、大体西暦二〇〇〇年くらいに向けて、できる限り早期に四十時間体制を達成するように努力したいと思っております。
 なお、労働時間の短縮スケジュールにつきましては、労働基準法改正案の審議の際に焦点となりましたことは十分承知しておりますが、船員法の場合には、その審議の際に示されましたように、確定的な目標年度を約束するというのはいろいろ困難もございまして、この問題が重要な課題であるとの認識のもとに、積極的に対応してまいりたいと思っております。また、七百トン未満の船舶に関しましても、これはまた違ったなかなか困難な細かい事情がございますので、それを配慮しながら対処していきたいと思っております。
○新盛委員 労働省、来ていらっしゃいますか。陸上勤務労働者と海上船員労働者の違いを、労働省が把握をするとすればどういう理解をしていらっしゃいますか。
○石川説明員 お答え申し上げます。
 労働基準法は、一般に労働者の労働条件の最低基準を定めたものでございまして、船員につきましては、その労働の特殊性にかんがみまして、特別法である船員法によって労働条件の最低基準が定められているものと理解いたしております。
 船員法に定めてあります労働時間等の労働条件の基準につきましては、船員が航行中は船舶上で生活するといったような特殊性があることから、労働基準法で定める各種の基準とは異なる面があるものと思っております。しかしながら、いずれにしましても、基本的な線で今回の船員法改正法律案におきましても、週四十時間労働制を目標に段階的に短縮していくという点では、改正労働基準法と同じであると理解しております。
○新盛委員 船員の諸条件の特殊性というのは、今もお話ございますように長期間の労働力の売買である、拘束時間が非常に長い、これは陸上と完全に違ったところであります。したがって、船員法の労働時間は原則として労働基準法と同等と考える、こう理解してよろしゅうございますか。
○石川説明員 先ほども申し上げましたように、特別法としての船員法で規定されているところでございますが、基本的な考え方なり大枠のところでは同じものであろうかと思いますし、あるいはその特殊な勤務の実態にかんがみて、いろいろな細部では異なる面が多々あるのではないか、こういうふうに思っております。
○新盛委員 陸上という表現ではちょっとなんですが、労働基準法改正がさきの国会で成立したわけでありますが、四十時間を一九九〇年前半までに、社労委員会ではこの内容では一九九三年ごろが目安という目標値が一応確認されたように聞いております。そして当面四十六時間、これは法定労働時間の推移であります。そして、それに近づけていくための「可及的速やかに」という文言を参議院の段階で修正として入れました。また衆議院の方でも、三年以内に変形勤務を初めとする全体的な見直しを行うということも修正をいたしました。船員法改正では当面四十八時間ということになるわけでありますが、同じように理解をするのはこれは当然でありまして、そのことについてどうお考えでしょうか。これは運輸省、ひとつお願いします。
○野尻政府委員 労働基準法と船員法との基本的な違いは、労働基準法は現在、改正前の段階で四十八時間からスタートしまして、四十時間に向けて段階的に短縮するということでございます。しかしながら、船員法に関しましては、昭和二十二年に制定されて以来、今日まで四十年間手をつけなかったということもありまして、現在の法体制は船の運航実態に合わせて労働時間を決めているわけでございます。したがいまして、船で当直している人、あるいは当直に立たない人、あるいは航行中、停泊中、こういうようないろいろな船舶の類型別に労働時間を決めているわけでありまして、例えば船舶の航行中で当直に立つ人は、一週間五十六時間というような定め方をしているわけでございます。
 先ほど大臣からも答弁がありましたように、この四十年間にわたりまして、船舶の就航実態あるいは労働実態が大きく変わりまして、昔は停泊時間が長くあったわけでありますけれども、最近は停泊時間も短くなってきているということで、実質的には五十六時間労働という状況になっているわけでございます。そういった五十六時間労働の中で四十時間労働に持っていくことにつきましては、労働基準法と比較すれば、端的に言っていわば八時間のハンディキャップがあると我々は考えているわけでありまして、そういう面からも労働基準法と同一歩調で短縮スケジュールを組むというのはなかなか困難ではないだろうかと考えております。
 それからもう一つ、後ほどまた恐らく御議論になろうかと思いますけれども、今回労働時間の短縮に当たりまして私どもが一番頭を痛めましたのは、船の運航というのは四六時中、二十四時間運航しているわけでございまして、その中でどのようにして労働時間を短縮していったらいいかということで、いわゆる補償休日という新しい概念を導入したわけでございます。こういう新しい概念の補償休日がこれから定着するということについても見きわめなければならないと考えておりまして、そういう各般の立場から見ますと、今先生がおっしゃいました、労働基準法の審議過程において一九九三年にというお話があったことは私ども十分承知しておりますけれども、船員法に関しましては五十六時間からスタートすること、あるいはまた補償休日制度という新しい概念を導入したというようなこと、こういうことから考えてみますと、船員法として独自の立場で順次段階的に労働時間の短縮に取り組まざるを得ないであろう。そういう観点から、「可及的速やかに」という文言を外しまして御提案申し上げた次第でございます。
○新盛委員 労働省の方は労働基準法、船員法は同等という理解の上に立つ、こういうことをおっしゃっているのですが、あなたは、運輸省としては、ある意味では五十六時間というのは四階だ、四十八時間というのは二階だ、清水の舞台から飛びおりるような話で、八時間のハンディキャップがあるから、可及的速やかといってもこれは四十時間を達成させるためにはなかなか時間がかかります、だから補償休暇の問題も新しく考えているんだという話もございますけれども、それは私は非常に矛盾をしていると思うのですよ。四十年ぶりに船員法を改正するのでしょう。だから、ここできちっとしておかないと将来に禍根を残しますよ。
 今言われておりますことは、それは技術的にも大変だ。船主側の雇用の問題もいろいろございますから、大変だと思う。しかし現実は、時の流れという現象の上では、こうしてどんどん時間短縮という方向に向かっていることは間違いないのです。だから、後ほど議論します小労則の問題についてもそうでございますけれども、全体の労働時間を縮めていくわけですから、最低の労働時間をどう確保していくかという、その保証というのは当然あるべきでございます。
 そこで、提案の際になぜ「可及的速やか」を外したか、今御説明ございましたけれども、これは納得できませんよ。これは出すのですか出さないのですか、省令を。今、私どもに提案されました今度の労働時間短縮の中では、基準法の論議の過程を通じて修正が可能であったわけですね。成立しました。今回のこの船員法改正では、そのことはできないのですか、できるのですか、どっちですか。はっきりさしてください。
○野尻政府委員 週四十時間労働制ということが国家的政策目標であることを私ども十分承知しておりますし、そういう観点から労働基準法の今回の改正と基本的理念は全く同一の立場に立っております。ただ、問題になりましたのは、労働基準法と同じテンポで、船員法につきましても基本目標である四十時間労働制へ到着できるかどうかということでございます。私どもは、もちろん四十時間労働制ということを目標にして掲げているわけでありますから、できるだけ早くその時期に達すべきことは当然であろうと思っております。ただ、先ほど申し上げました事情がありますので、労働基準法で短縮されるようなそのスケジュールと同じテンポで船員法について短縮していくのは、なかなか困難であろうということを御説明申し上げたわけでございます。
 なお、ちなみに、いわゆる新前川レポートにおきましては二〇〇〇年に向けて週四十時間、いわば年間総労働時間を千八百時間に近づける、こういうような御提言もあるわけでございまして、私どもとしましてはこういった新前川レポートを念頭に置きながら、今後の短縮スケジュールについて検討してまいりたいというように考えておるわけでございます。
○新盛委員 労働の特殊性、船員の福祉、船員の労働時間、これは週四十時間労働制ということで、可及的速やかにということは段階的にというお話もございますが、そこで、小型船等に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令、一般的には小労則と言われております。これは本法に適用させるように再検討をということになっているようでありますが、廃止をして七百トン未満も全部この船員法で適用させるというお気持ちございませんか。
○野尻政府委員 ただいま先生が御指摘になられましたことは、本案につきまして船員中央労働委員会で審議の際に大きな議論の焦点となったものでございます。特に問題とされておりますのは、先生おっしゃいますように、七百トン未満の小型船舶については省令で定めている、この省令を法律規制に引き上げるべきではないかということが労働側委員から特に主張されました。私どもがお答え申し上げましたのは、基本的な方向として法律で規制をするということ自体については私どもは異論を申し上げているのではなくて、問題は、現在省令で定めておりますことは、法律でないことにかなりの部分がわたっております。例えば、一週間五十六時間であれば一日の労働時間は八時間を超えてもいいとかいうような、いろいろ法律にない規定が省令にあるわけでございます。
 そういう省令に基づいて現に労働時間というものが定着しているという現状の中で、そういう実態をどういうように把握し、また今後どういう方向に直すべきかという議論を抜きにして、ただ単純に省令を法律に持ってくるのか、あるいは省令をいじらずにそのまま法律に持ってくるのか、そういう議論はなかなか難しいのではないか。まず、現在あります省令の規定ぶりにつきましてどういうように手を加えるべきか、そして法律に持っていくとする場合にはどういう形で法律に持ってきたらいいか、そういった基本的なことについてまず審議をすべきであろうということを申し上げたわけでございまして、最終的には船員中央労働委員会から、三年以内をめどにもう一度審議をして適用拡大について今後審議を進めていこうという御答申をいただいておりますので、私どもはその御答申に沿って今後も検討してまいりたいというように考えております。
○新盛委員 ここの小労則に適用される船員というのは何名ですか。
○野尻政府委員 小労則で定めている規定ぶりと同じような形での統計を私どもしておりませんので、一応商船で七百トン以上の船舶というようなとり方をいたしますと、乗組員で三万五千百六十人になります。ただ、そのほかに予備員という制度がございます。予備員の数は二万一千百八十一名ございますけれども、この中のほとんどの者が七百トン以上に関係している船員だと考えられます。私ども、推定値としますと一万七千人ぐらいではないかと思います。したがいまして、七百トン以上の船舶に関連しております船員の数は、今申し上げました三万五千人余りと一万七千人余りを加えた五万二千人程度ではないかというように考えております。
○新盛委員 それと、指定漁船に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令、漁労則と言っておるわけでありますが、法の改正の水準に見合った内容で格差を圧縮すべきである、そう考えるのですが、考え方をお聞かせいただきたいと存じます。
○野尻政府委員 漁船については、先生もよく御存じのように非常に労働実態が違うわけでございまして、操業中は労働時間という問題よりはむしろ泳いでいる魚を追いかけていくということになってくるわけでありまして、漁労則におきましても、そういう観点から船員法本則あるいは小労則とは違った規定ぶりをしております。したがいまして、今回の法律改正によりまして、当然小労則については何らかの手当てをしなければいけないだろうと思いますし、また漁労則についても手当てをする必要が生じるかと思いますけれども、ただ、今申し上げましたように漁業につきましては、普通の商船とは運航実態あるいは労働実態が大きく違っているという点については御理解いただきたいと思っております。
○新盛委員 次に、未組織の船員に対する黄犬契約の強要というのがあるわけでありますが、この実態は把握しておられますか。また、これについての指導監督はどういうふうにされておられますか。
○野尻政府委員 黄犬契約というお話についてうわさとしてはお伺いしておりますけれども、具体的な事案として私どもの耳に達したことはございません。ただ、巷間言われる黄犬契約というのは、一般的な事例として申し上げれば、多分不当労働行為に該当するであろうと考えられます。不当労働行為に該当すれば、当然関係者から申し立てがあれば労働委員会でしかるべき調査をし、場合によっては救済命令を発するということになろうかと思うわけでありますが、残念ながら私ども、今の段階で黄犬契約の実態、あるいはまたそういった正確な事実に基づく情報には接していないというのが現状でございます。
○新盛委員 小労則あるいは漁労則あるいは黄犬契約、いずれをとりましても全く労働時間短縮の恩恵を受けないという方が正しいでしょう。そういう形のもの、運輸省、行政措置としてこれからどういうように指導されるのですか。
 小労則の場合は、私どもはもうこんなのは廃止して、七百トン未満といったって、大抵形は六百九十九トンとか四百九十九トンとか二百九十九トンとかいっておりますけれども、七百トン超えれば六人の甲板船員が乗っかる、それ以下はだめ、そして時間の短縮の恩恵を受けるというのも、七百トン以上はこうですと船員法でぴしっとやる。以下の方は小労則、いわゆる省令で指導するということになっているから、こういうものはひとつ外してしまって、適用除外というようなのはつくらないで、省令で決めないでもっと近づける方法はないか。漁労則だって、これは変形勤務その他把握は非常に難しい。しかしこれは指導とすれば、画期的な四十年ぶりの改正なんだから、それだけにやはり船員法に対応する内容にしてほしい。
 さらには黄犬契約だって、これは不当労働行為にかかわる。申請がないから実態はわからぬというわけですけれども、それこそ行政指導が必要になるのじゃないか。その面の把握ができないでおって、日本のこの経済基盤あるいは内需拡大をということにはつながらないでしょう。前川レポートが泣きますよ。どうお考えですか。
○野尻政府委員 まず小型船舶に対する適用問題、これは先ほど私から御説明申し上げましたように、船員中央労働委員会での審議の際には、現在の法体制の違いから即座に適用拡大に踏み切ることはできないという結論から、三年以内をめどに改めて審議し直して結論を得るというような船中労からの答申をいただいておるわけでございまして、私どもといたしましては、この船中労の答申に基づきまして、今後鋭意検討させていただこうと思っております。
 それから黄犬契約の問題でありますけれども、今私も御答弁申し上げましたように、私どもの方で具体的な事実に基づく情報に接していないという段階で、今後行政指導をどうするかということはなかなか言いにくい問題であります。ただ、そういう黄犬契約が望ましくないことは当然のことでありますので、私どもこれから折に触れて使用者等に啓蒙をしていかなければいかぬというように考えております。
○新盛委員 小労則にかかわる問題でありますが、休日の買い上げについてどう思いますか。そして、定員については小労則に定められていないわけでありますし、具体的な実態がつかめないという話がありますけれども、一体どうお考えですか。運輸省は振りかえ休日の買い上げを考慮しているように聞いているのですけれども、それこそ時代に逆行することじゃないか。休日を与えるなら休日をぴしっと与える。これを買い上げるなどということは、世間でも言われているのですが、まさしく時代に逆行じゃないか、こういうこともございますので、お答えいただきたいと思います。
○野尻政府委員 基本的には先生のおっしゃるとおりであります。休日というのはあくまでも休日でありますから、その休日は職から離れてゆっくり休まる、それによって新たな活力を生むと私ども考えております。
 ただ問題は、船舶の運航というのは、荷主からあるいはそのほかのいろいろな事情から、きちんとしたスケジュールに基づいて運航できないという実態にあるわけでありまして、そういった事態の場合に、きょうは休みだからもう船を動かさないというわけにはいかないという事実がございます。そういう観点から、ある日数の範囲内において、時間外労働となりますけれども、いわゆる休日の買い上げというものはやむを得ないのではないかというように考えております。また、現に全日本海員組合と船主団体とで結ばれております労働協約の中でも、休日の買い上げという制度が導入されておるわけでございまして、いわば労働慣行の一つとして休日の買い上げという制度があるということも念頭に置きますと、一定の日数を限度とした買い上げ制度は制度としてやむを得ないものとして、私ども今回の改正案に盛り込まさせていただいたわけでございます。
○新盛委員 この七百トンという基準ですね。あなた、もう実態に合わないのじゃないですか。実際は、七百トンといいましても重量トンでしますと恐らく二千五百ぐらい、全くもう昔の木造船じゃないのですから、鉄鋼船になって状況が変わったのですね。四十二年にこの小労則ができたのですけれども、それから以降も随分変わっているのですよね。どうお考えですか。
○野尻政府委員 船員法七十条で、総トン数七百トン以上の船につきましては甲板部員六人以上を乗せなければいけないという規定がございます。実は、今回の船員中央労働委員会の審議の際に使用者側委員から、この七十条の規定は陳腐化しているから撤廃すべきだという強い意向が出されました。また一方、労働側委員からは逆に、定員規制を強化すべきだという趣旨のお話がありました。
 いずれにしましても、この問題はある意味ではもう長年にわたる懸案事項ということで、労働委員会におきましても短時間のうちで結論を出すことはできないということで、先ほど申し上げました小労則の検討とあわせまして、今後三年以内をめどに検討していこうという御答申をいただいておりますので、私どももその線に沿って今後検討してまいりたいというふうに考えております。
○新盛委員 最後に、この労働時間短縮の問題は、基準法改正に伴って船員法改正の場面でもより積極的に目標値が達成できるように、段階的にということをおっしゃいますけれども――我々は法の手続上、これは後ほど修正案も出るそうですからその方向で見守ってまいりますけれども、ただ現実問題としてこれからの船員法、これが一つの基準になるわけですから、ぜひひとつ積極的に、小労則の基準をつくり省令をつくるにしても、来年の四月からということになれば早く取り組まなければならないでしょう。その審議も早急にやらなければならないでしょう。そういうことを含めて、ぜひとも本法に近づけられ得る最大限の御努力を要望しておきます。
 さて、次の船員雇用促進特別措置法の一部改正の内容に入っていきたいと存じますが、先ほどから経営者側さらには組合の代表からいろいろと御提言もございました。大臣もよくお聞きになったと思います。
 そこで、この深刻な海運状況の中で、最近は海離れが始まっている。それは、商船大学、専門学校卒業生の船舶への希望者が減少しているという、まさに憂えるべき状況であります。六十二年の商船大学卒業者は百二十九名おりました。そして、この求人の方は六百四十二名と殺到しているわけであります。ところが、海運事業を希望された、現に決まったと言われている人はわずか三十五名。高等専門学校卒業者は三百四十八名、その求人の方は大変な数でございまして千八百六十八名、しかし海運事業の方に行かれた方は七十三名しかいない。
 この状況から見ますと、今の海運事業にはもう魅力がない。これから十年後、二十年後は一体どうなるのだろうか。後継者が不足をしてくることは当然でありますが、同時に心配されるのは年齢構成の偏りであります。いわゆる要員構成が大変なことになりはしないかと思うのであります。このままでいったら壊滅するのじゃないか。要員構成がちょうちん型の状況ならいいんですが、逆ピラミッド型ですね。この方々が退職された後、一体日本商船隊の維持というのができるのかどうか。外航路、内航路また海運事業全体にわたる深刻な問題だと思うのでありますが、どう理解をしておられるでしょうか。大臣、どんなふうに思われますか。
○石原国務大臣 御指摘の点、確かに私たち本当に深く憂慮しております。海運は非常に今苦しい状況にございますけれども、何といっても海運というのは日本のような国家にとっては欠かすことのできない手段でございまして、それを支える同胞の専門家が減少していくということは、国家にとっても非常に大きな不安だと思います。何とかこの確保に努力をしたいと思っております。
○新盛委員 そうした現状認識の上に立って、対策を立てていただく当面の課題でありますが、先ほど出ましたFOC、便宜置籍船を日本人船員の一定の職場に定めてほしい、行政措置として日本人船員を定数を決めて配乗させることはできないか義務づけてほしい、こういう悲痛な御提言もございました。私が試算しますと、千五百隻くらいいるのだそうでどざいますが、日本人船員が定員の五名から六名乗るというふうにしますと、約七千人から八千人の雇用創出になるわけですね。雇用対策上もいいのであります。このことをどうお考えになっているのか、大臣ぜひひとつお聞かせいただきたいと思います。
○石原国務大臣 御指摘の点は確かに有効な手段であるとは思いますが、何といっても便宜置籍船は外国の法人の所有船舶でございまして、雇用関係について日本の行政府が直接行政指導するということは事実上難しいと思います。そのために、外国船に乗船するのに必要な訓練の実施あるいは助成金の支給等で、日本人の船員がこういった外国船に乗りやすくなるような環境の整備を、これからも整えていきたいと思っております。
○新盛委員 運輸省としてはこの問題、今大臣お答えになったのですが、外国の船であるからと。しかし、ある意味ではコストをどう見るかで決まるわけですね。日本の船員は五倍だとか六倍だとかという話がありますが、外国の船員さんというのは、東南アジアとかそうしたところから連れてきて乗っけるわけですから、海上保安あるいは運航上のそうした緻密な技術を持つわけではございませんから、私どもも非常に不安であります。
 しかし、こういう事態に対してどういうふつにすればいいかとなると、今海員組合長がおっしゃいましたように、便宜置籍船に乗っける義務づけをしてほしい、そうおっしゃっているわけです。具体的に船主側の意見もございます。船主の方は、やはり混乗を初めとして全体的な中で随時考えていかなければならないが、結論はなかなか出しにくいというふうなお話もございましたけれども、行政の側として具体的に、もう今当面の課題ですから、どうお考えですか。
○野尻政府委員 今、大臣からお答え申し上げましたように、基本的な考え方といたしまして、便宜置籍船といえども外国の法律に基づいて設立されております会社が運営している船でございますから、日本の行政権限によりまして、FOCに対しまして日本人船員を乗せることを強制することはできないということになるわけであります。
 ただ、私ども、外国船に対しまして日本人船員が少しでも多く乗れるような環境整備はしなければいけないということで、かねてから各般の施策を講じているわけでございます。例えば、離職船員が外国船に乗る場合に、就職奨励金というものを交付しておりますけれども、従来十二万円でありましたのを六十三年度からは五割増しの十八万円にするとか、あるいは厚生省では船員保険特別会計から、雇用船員を外国船に派遣した場合に派遣助成金という賃金助成をしておりますけれども、これも六十一年度までは月二万円限度でありましたのを、六十二年度から三万円にするとかいうような施策を講じております。また、税制面におきましては、外国用船にかかります源泉徴収課税を減免措置にするということを今回の六十三年度の税制改革で決めた、とかいうような対策を講じているわけであります。
 ただ、そういうような形で外国船へ日本人船員を乗船させるという施策についてもいろいろな限界があるわけでありまして、基本的にはやはり何といっても日本船が外国船にならないように、いわゆる海外流出にならないような措置を講ずるということが重要なことであろうかと思うわけであります。そういう意味では、ただいま海運造船合理化審議会におきまして、海外流出問題について御検討いただいているところでございますので、私どもその海造審の審議状況を踏まえながら、今後対応を考えていきたいというふうに考えております。
○新盛委員 それと、老朽化したFOCの解徹促進という関係での行政指導といいますか、そんなのがありますか。
○中村(徹)政府委員 我が国に対する船につきましては、六十一年六月に施行されました特定外航船舶解徹促進臨時措置法という法律に基づきまして、解徹のための債務保証制度等が設けられておるわけでございますが、外国法人の所有にかかります外国置籍船であります便宜置籍船については、これを適用することはできないというふうに考えております。
○新盛委員 大蔵省、来ていらっしゃると思いますが、第四十三次計画造船の際に七百億の財投で新造船計画をされたんですが、わずか一隻しか建造されなかった経緯がございます。その理由は金利が五・二%、先ほどから御提言もあるわけでございますが、このことについてどういうようにお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
○浅見説明員 日本開発銀行から海運業者に対します融資条件についてのお尋ねでございますが、この点につきましては既に過日も当委員会におきまして新盛先生から熱心な御質疑がございまして、運輸省御当局から御答弁があったと承知いたしておりますが、お尋ねでございますので、改めて御説明させていただきたく存じます。
 まず、開発銀行の海運融資制度でございますけれども、新盛先生御高承のとおり、昭和二十八年に制度創設以来、貿易物資の安定輸送確保という見地から、外航船舶の新船建造あるいは既存船の改造を融資対象としてまいったわけでございます。特に近年では、オイルショック以降のエネルギー多様化に伴いまして、LNG船でございますとかLPG船等に対する融資、あるいは我が国海運業の国際競争力を確保するという観点から、高度合理化船等に対する融資というようなことを進めてきておるわけでございまして、大変歴史のある制度である、かように理解をいたしております。
 お尋ねは、この融資条件についてでございますけれども、貸付金利は開発銀行の最優遇金利で、私ども特利五と呼んでおりますが、六十三年三月末、昨日現在では五・〇%となっております。これは、御承知のように日本開発銀行は収支相債の原則ということをとっておりますので、この原則のもとにおきます可能なぎりぎりの条件である、私どもかように理解しております。また、融資比率につきましても御疑問がおありかと思いますが、これは原則五〇%程度となっておりまして、特に超省力化船及びLNG船等につきましては六〇%程度ということで、この融資比率も他の融資制度に比べますと最も優遇された制度となっているわけでございます。
 このように、海運融資制度につきましては、日本開発銀行のもろもろの融資制度の中でその重要性にかんがみまして最大限の配慮を払ってきておる、かように私どもとしては理解し、運営をしてきておる次第でございます。
○新盛委員 中小船社の倒産が非常に多いわけでありますが、これを回避するためにも、今御説明がございましたけれども、確かに金利を安くしていくというのは望ましいことだけれども、全体的な横並びの関係もあってというお話もございます。金利を三%程度引き下げるとか、あるいは無担保低利融資借入金の返済の繰り延べを若干行政的に金融支援をする、こういうことはやはり海運不況を助けていく一助になると思うのですが、いかがお考えですか。
○高橋説明員 ただいまの先生の御質問、民間金融機関の中小船舶業者に対する貸し付けについての御指摘かと存じますので、その観点からお答えをさせていただきます。
 当然でございますが、民間金融機関が貸し付けを行う際の条件等につきましては、貸し付け先の信用力等を勘案いたしまして金融機関の自主的判断によって決められるものでございます。今、先生御指摘の中小船舶業者でございますが、中小船舶業者も含めました中小企業金融につきましても、基本的には金融機関の自主的判断に基づいて対応するということでございます。他方、資金仲介機関としての公共性という立場がございますので、金融機関の公共性にかんがみまして、そのときどきの経済金融情勢等を踏まえまして、中小企業者の個別具体的実情に応じまして弾力的に対処する等、中小企業金融の円滑化ということにつきましては、金融機関といたしましても十分配慮することが求められているというふうにも考えるわけでございます。
 私どもといたしましても、日ごろからこうした趣旨の徹底ということに努めているところでございまして、今後とも中小企業金融の動向というものにつきましては、十分注視してまいりたいというふうに考えております。
○新盛委員 大蔵省らしい御答弁で、やはり金は出したくないのでしょうけれども、現実問題として非常に厳しい環境なんです。だから、ぜひひとつ前向きにこうした処置をとっていただくように希望しておきます。
 それで、こういう海運不況の中で助成措置というのは考えられないか。ほかの国がやっているから日本はそれに倣ってということを申し上げているわけではありませんが、先ほども土井組合長の方から出ました、米国では一九三六年制定の船員法に根拠を置いて運航差額補助金というのをつくっているのであります。これは、米国籍の船が運航費用を外国の競争の中で均衡を図っていくために、コスト差額を政府が補償するという内容のものであります。例えば昨年、この会計年度予算教書で見ましても、運輸関係の予算が前年度対比六%削減をされている中でも、運航差額補助金は三億二千万ドル計上されている。そして、前年度対比では二千五十万ドルも上回っている。それほど心がけて海運業進展のために米国は考えている。
 さらには一九八四年、OECDの通運委員会でも加盟諸国の海運税制調査の年次報告をしております。この中で、租税目的あるいは社会保障の保険料その他、賃金の強制控除ができるような措置をと、船員はほかの職場と違うという意味で諮問をした経緯がございますね。日本はそれにイエスかノーか与えたかどうかわかりませんが、そういう国際的な動きもあります。さらにノルウェーでは、船員は毎月定額の雑損控除と大幅な免税がされている。スウェーデンでも、船員の特殊性を考慮して税率が決定されている。こういう国際的な環境の推移にかんがみて、日本でも特殊な労働環境だということから、将来の職場確保だとか雇用の維持の点から、日本人船員の現行課税制度は抜本的に考えられないかどうか、これが一つ。
 それから、現在の所得税法は、第五条で居住者を納税義務者として指定してありますね。居住者とは国内に限られているというのが第二条でもあるわけですが、同法の施行令第十五条では、国内に住所を有しないと推定される場合、「その者が国外において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。」そういうことになりますと、この観点から船員にも拡大をして、一年以上二年かかって外航路を回っておられる船員の方々もいらっしゃるわけですから、船の中を居住区というふうにしている規定はどこもないですね。所得税、地方税が免除されるべきではないかと思うのでありますが、そういう具体的な問題で御検討されたことがあるかどうか、第二点目にお答えいただきたいと思います。
○田谷説明員 最初、私の方から、商船に対する運航補助についてお答えを申し上げたいと思います。
 御指摘のございましたアメリカの制度について私どもつまびらかにしておりませんが、運輸省から聞いたところによりますと、米国の制度は国防上の配慮からの助成措置であると聞いておりまして、これを参考として我が国の商船について議論することはどうかなと考えております。
 それから、一般的に申し上げますと、私どもも我が国の外航海運が現在非常に厳しい環境にあることはよく承知しておりますが、いわば構造的な不況要因に対する対応が先決ではないかと考えておりまして、財政援助によって打開できるような状況にはないと考えております。なお、厳しい財政事情の中ではございますが、海運不況に伴う離職船員対策等につきましては、所要の予算をできる限り計上いたしているところでございまして、よろしく御理解を願いたいと存じます。
○杉崎説明員 税制の問題でございますけれども、これは税制調査会でいろいろ御審議いただいておりますが、基本的な考え方というのは、同じ所得をもらった場合には同じような課税を受けるという考え方に立ちまして、特定の控除等はなるべく考えないという方向になっておるものですから、そういう船員ということに着目して特例をつくるのはなかなか難しいわけでございます。
 しかしながら、最近給与所得者を中心にいたしまして税の重税感、不公平感があるというようなことから、所得税について中堅所得者層を中心に思い切った負担の軽減を図るということで、昨年の九月にもそうした減税を行わせていただいたわけでございます。その後、税制調査会において、さらに総理の諮問を受けまして、所得税について中堅所得者層あるいは低所得者層を中心に、一層の負担軽減を図ることを現在検討している段階でございます。
○新盛委員 検討していただいていることもわかりますが、国際的な状況変化あるいは国内のこうした海運業界における危機的な状況、そして将来の日本の経済活動の展望に依拠すれば、何としても政策的に船員の確保とか、あるいはこれからのこうした税制の措置でもってカバーしてやる以外に雇用の確立はできないだろう、そういう面のとらえ方もあるわけですから、これは御検討いただいている上にさらに加えて、今申し上げました諸点について十分な御配慮をいただきたい。
 今、税制改革問題が議論されているわけですから、下手に間接税などに踏み込んだ議論はしたくありませんが、我々はいかなる場合といえども、船員関係の間接税問題となると厄介なことになるのですから、なお壊滅的な打撃を与えることにもつながりますから、心してこの面も含めて今後の税制のあり方を、この船員の場合、優遇措置ということじゃなくて、現実的に諸外国で取り扱われている諸点あるいは所得税法上の矛盾、そうしたことをとらえて処置をしてほしい、こう言っているわけですから、ぜひとも大蔵省の方でも御検討いただきたいと存じます。
 しつこいようですが、運輸省に近代化船の建造促進について、いま一度考え方をお聞かせをいただきたい。というのは、一つは、外航海運政策の根幹として、戦後一貫して今日まで、新造船を初めとする計画造船がなされたわけであります。六十三年度も四百五十億計上されている。しかし、昨年は一隻しか建造されなかった。このような状況で、今後もこの計画は存続をされるお考えであるかどうか、お聞かせいただきたい。
○中村(徹)政府委員 運輸省といたしましては、計画造船制度は日本海運の柱となっていくべきものと思っておりますので、計画造船制度は今後とも維持していくべきものと考えております。
○新盛委員 これを存続していきたい、制度活用をやっていきたい、こういうことでありますが、こうした日本商船隊の中核として近代化船を活用するという、これは変わらないとおっしゃっているわけですが、実際に昨年が一隻、ことしはどうなるかわかりません。だから、先ほど融資の問題、金利を引き下げる問題を質問したわけであります。現在、二百数十隻いるんだと思いますが、新造船にかかわる今度は船員の新しい技術の養成、そういうものもされて、七千人、八千人近くいらっしゃるわけですね。だから、今後こういうような計画を具体的にどう継続していくかということは、全体とかかわり合いがありますから、運輸省としてはどうされようとするのか、お聞かせいただきたい。
○中村(徹)政府委員 計画造船制度の中で近代化船をこれからどう整備していくかということは、まず現在の近代化船というのが国際競争力のある船として、実際に海運事業者が建造意欲を持つかどうかということが問題になるわけでございますが、ただいまの制度の中での近代化船では、建造意欲を生じさせてないという現実があるのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、これをいかに国際競争力を有するようにするか、そこが今後検討すべき課題だというふうに考えておりまして、国際競争力のある邦船というものを中核とした商船隊をつくるべく、計画造船制度もその中に組み入れましてこれから海運政策を検討していきたい、かように考えておるところでございます。
○新盛委員 さきの運輸大臣の所信表明でも「船員制度の近代化を一層推進する」こう述べていらっしゃるわけでありますから、換言すれば、ただいまの近代化船の建造を促進をしていくんだ、こういうふうに確認をしてよろしいわけでございますね。
○中村(徹)政府委員 近代化船を中核としてこれまで日本船の整備を考えてきたわけでございますが、建造意欲等がないために近代化船の整備が行われていないという現実もあるわけでございまして、これは国際競争力が近代化船についても著しく低下しているという状況を背景としているわけでございます。したがいまして、今後、国際競争力のある邦船というものをいかに整備していくかということは、ここで検討していかなければいけないし、そういう国際競争力のある邦船を中核として日本商船隊を整備していかなければならないということは、認識しているわけでございます。
○新盛委員 これもまたくどいようなんですが、便宜置籍船、FOCへの日本人船員配乗の問題で、これまた所信表明で運輸大臣は「緊急雇用対策として、外国船への配乗等海上職域の確保」を積極的に推進をすると述べておられるわけであります。六十三年度の雇用対策費で新設されたもの、再就職あっせん受け入れ助成金、雇用調整執行給付金、いずれも陸上職域開拓費であるわけでありますが、どのような手段で海上職域を確保されようと考えておられるのですか、お聞かせをいただきたい、大臣もしくは局長。
○野尻政府委員 現在の厳しい船員雇用情勢のもとで日本人船員の海上職域を確保するためには、外国船への配乗を促進する必要があるという点につきましては、先生と同感でございます。
 外国船への配乗の促進策につきましては、従来から船員福利雇用促進センターで、外国船を開拓するあるいは部員の職員化訓練を行う、就職奨励金の交付といったような対策を講じてきたわけでございます。昭和六十三年におきましては、最近の厳しい船員の雇用情勢にかんがみまして、就職奨励金の単価を先ほど御答弁申し上げましたように十二万円から十八万円に増額する、あるいは外国船の裸用船料に係る源泉徴収課税の不適用措置を実施する、あるいは部員の職員化訓練の充実を図るといったような、各般の施策を講ずることにしております。また、国内の海上職域の開拓を促進するために、船員職業安定所にテレホンサービスあるいはファクシミリを設置する等、その機能の充実強化を図ることにしております。
○新盛委員 さらに、離職船員の外国船就職奨励金、先ほど御説明ございましたように十二万円から十八万円というふうに増額をしましたよということでございますが、これによって何人ぐらいが海上職域の確保の場面で可能なんでしょうか。
○野尻政府委員 予算上は、約四百人と想定しております。
○新盛委員 だとすれば、六十一年から六十二年の間、もう既に集計できていると思いますが、一年間の船員職業安定所による海上職域あっせん件数はどれぐらいになっているんでしょうか。
○野尻政府委員 昭和六十二年におきます海上労働求職者に対します船員職業安定所の紹介による就職成立数は、延べ三千七百六十六件となっております。
○新盛委員 こうした現状から見ますと、巷間四万名の船員の失業といいますか、ある意味では職を失ってしまった、そう言われているわけですが、これは海運産業全体にかかわる問題でありますから、政府の方で積極的にお取り組みいただいているわけですが、数の面でも余り出てこないというのはどういうことか、お考えになっていらっしゃいますか、あるいは調査しておられるのですか。
○野尻政府委員 申しわけございませんでした。今、質問の趣旨を十分理解できませんでした。もう一度お願いいたします。
○新盛委員 今、説明ございましたように、こうした外国船就職奨励金が増額をして海上職域確保ができたとか、船員の職業安定所を通じて新しく職域開拓をしたりしてやって、いろいろな努力をされているわけですが、それでも実際的にはもっとたくさん出てこなければならないわけですね、失業船員というのは非常に多いわけですから。そうした面の具体的な指導というのを、数字を言うと大蔵省がちょっと妙な目で見るかわかりませんけれども、現実の仕組みとして救済の措置という面で、何かそこに状況がいろいろあるのだろうと思うのです。その辺どう理解をして指導されているか、お聞かせをいただきたいと思います。
○野尻政府委員 今まで船員であった方々が、先ほど土井組合長のお話の中にも相当数の船員の方が職を失うというようなお話がありました。そういう方々は、やはり今まで自分が持っておりました技能を中心として生きていきたいという希望に燃えているわけでありまして、私どもとしましては、できる限り海上職域の開拓という点に重点を置きたいというように考えておるわけであります。
 しかしながら、海上職域につきましては、昨今の海運業界の状況から見まして、そう簡単に開拓できるものではないということになりますと、陸上職域への転換も図らなければならないというように考えているわけであります。陸上職域への転換につきましては、従来から職業訓練等によりまして、陸上で就職した場合に就職しやすくするような措置を講じてまいりましたが、さらに六十三年度におきましては、例えば離職船員につきましては受け入れされる陸上事業主に対して、国と関係船主との共同によりまして賃金の一部を補助するとか、船員保険特別会計からは出向という形で、陸上の事業主に派遣される海運事業主に対して賃金の一部助成をするとかいうような形で職域開拓をしていく、いわば海上職域、陸上職域全般にわたって職域開拓について万全の措置を講じていきたいというように考えているわけでございます。
○新盛委員 海運労使が血のにじむよう自助努力をして、外航船員雇用開発促進機構をおつくりになって積極的に雇用調整をやっておられる。本来あるべき姿じゃないと土井組合長も強調しておられました。全くそのとおりだと思うのです。そういう努力をされているわけでありますが、この陸転の場面を含めまして極めて厳しい状況だ。また、陸の方でも、円高不況によって起こっている失業者群、こうした中で、とりわけ海の関係では厳しい環境にある。この求職登録をした者が海上職域を希望する、そういう場合、どうしても自分の技術を生かして海上に残りたい、それでも船はいない、そういう深刻な状況ですから、今、財団法人であります日本船員福利雇用促進センター、SECOJと言っておりますが、この実施する技能訓練の対象者など、どういう推移になっているか。こうした面からも、やはり全体的雇用の保障あるいは雇用の創出、雇用のこれからの安定した状況をどうつくっていかなければならないのか、大前提ですね、これを最後にぜひお聞かせをいただいて、この二法にかかわる問題の締めくくりにしたいと存じます。
○野尻政府委員 今、先生御指摘になられました日本船員福利雇用促進センターにおきましては、いろいろな技能訓練を実施しております。
 二、三例示を申し上げますと、外国船に乗船させるために必要な知識、技能を習得することを目的とするもの、部員の研修あるいは海事英語研修、タンカー研修、こういったような研修、あるいはまた雇用船員の技能、能力の開発を目的としまして船舶職員の養成訓練、STCW条約適用訓練あるいは外国語教育訓練、特殊無線技士研修あるいは中高年船員等職業訓練というような、いろいろな訓練を実施しているわけであります。ちなみに、今申し上げました訓練につきまして、第一のジャンルに属する受講生は五百四十九人、それから第二のジャンルに属する者は一千七百四十九人、合わせて二千二百九十八人というような実績を残しているわけでございます。
 今後も、こういった形で技能訓練を施すことによりまして、離職された船員が新たな世界で生きていけるように、私どもも万全の努力を尽くしたいというふうに考えております。
○新盛委員 終わります。
○関谷委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ────◇─────
    午後一時開議
○関谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。長田武士君。
○長田委員 それでは、船員法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。
 今回の船員法の改正は、海で働く皆さんの今後の生活環境を大きく左右する法律案だけに、関係者の方々は本委員会の審議を非常に重要視しておるわけであります。海の労働基準法と呼ばれております本法は、ともすると閉鎖的になりがちな労働環境をより安全に、より効果的に維持発展させるためには欠くことのできない法律であることは論をまたないわけであります。
 今回の審議では、こうした今までの枠を乗り越えまして、より人間的な職場づくりを行う観点から種々の点についてお伺いをしたいと思っております。そういう意味でありますから、大臣初め関係当局の誠意ある御答弁をまずお願いするわけであります。
 では、まず初めに、週四十時間の導入についてお尋ねをいたします。
 六十四年四月に改正法が施行されるといたしまして、この四十時間実施の第一段階といたしまして、条文に当分の間四十八時間とする事項がありますけれども、この「当分の間」というのはどのぐらいの時間を考えておるのか、まずお尋ねをいたします。
○野尻政府委員 四十時間に向けての労働時間の短縮につきましては、提案理由説明でも御説明申し上げておりますように「船員労働の特殊性、船員の福祉、船員の労働時間の動向等の事情を考慮して、段階的に短縮を図る」というように決められております。
 「当分の間」というのは今、四十八時間から四十時間の間で政令で定める時間というようになっておりまして、段階的に四十八時間から四十時間に向けて短縮していくというスケジュールになっておるわけでございます。そうした事情から見まして、現段階で将来を見通すことができないということでこの「当分の間」という言葉を使っておるわけでございますが、船員の福祉を図るという観点から、この四十時間の目標をできるだけ早く達成できるように今後努めていくべきであると考えております。
○長田委員 昨年五月にいわゆる新前川レポートが発表されました。それによりますと、西暦二〇〇〇年に向けましてできるだけ早い時期に年間総労働時間を今の二千百時間から千八百時間に短縮する点が提言されておるわけであります。これを実施するには当然ある程度の段階を踏まえて短縮しなければならない、私はその点はよく理解するわけでありますが、今回の船員法につきましても、週四十時間の導入に当たりまして今後の段階的スケジュールについてはお考えですか。
○石原国務大臣 労働基準法は一九九三年までに四十八時間を四十時間に短縮するということをうたっておりますけれども、船員法の場合には、先ほど部長も申し上げましたが、その倍の、つまり十六時間を短縮するという非常に難工事でもございます。
 同時に、航海の実態が陸上の業務とかなり違っておりまして、それに応じて制度も改め、補償休日という新しい制度も導入しますし、またその定着状況を見きわめる必要もございますし、その時間短縮に伴う要員の確保の問題もどざいまして、陸の労働基準法とは状況がかなり異なっております。そういう点からも明確なスケジュールを今から設定することはかなり難しいと思いますので、ともかくできるだけ早期に、午前中申し上げましたけれども、目途とすれば西暦二〇〇〇年を目指してできるだけ早期に週四十時間の制度を達成するように努力してまいるつもりでございます。
○長田委員 週四十時間の実施時期につきましては、昨年の労働基準法の改正のときに、新前川レポートのできるだけ早い時期の解釈が問題になりました。今、運輸大臣が言われたとおりに、当初労働大臣は一九九〇年代の半ばをめどにしたい、この実施を考えている、このように答弁をいたしました。
 ところが、再三にわたる実施時期についての具体的な答弁の要求に対しまして、労働大臣からは一九九三年を目標にする旨に見解が明らかになりました。こうして一応の目標が設定された経緯がありますから、私は、今回の船員法につきましてもある程度の具体的なめどを立てるべきである。本来ならば、私は一九九三年同時実施というのが一番正しいと思っております。この点については、大臣、もう一度はっきりと答弁していただけませんか。
○石原国務大臣 今申し上げました海運という業務の特殊性にもかんがみまして、また経済審議会の建議を念頭に置きまして、西暦二〇〇〇年に向けてできるだけ早く実現をするつもりで努力いたします。
○長田委員 二〇〇〇年に向けてということでありますけれども、一九九三年で、船員の方は二〇〇〇年だということになりますと、七年も格差があるのですか。運輸大臣、そういう甘い考え方で海で働く人たちの労働条件の改善ということが本当にできるのでしょうか。
○石原国務大臣 二〇〇〇年までだめだということでなくて、それをタイムリミットと心得て、その事前にできるだけ早期に目的を達成するように努力をするつもりでございます。
○長田委員 今回の改正で週四十時間を最終目標として順次労働時間を短縮していくわけでありますが、週四十八時間以降の短縮スケジュールがどうも明確になっていない、その点私は非常に気がかりであります。
 運輸省の説明によりますと、そのときどきの社会情勢を勘案して、必要があればその都度船員中央労働委員会に諮問をし、出された答申に基づいて労働時間を四十六時間そして四十四時間と段階的に短縮したいという考え方であるようであります。しかし、これは船中労依存の極めて消極的な態度であると言わざるを得ないわけであります。加えて、委員会に諮問する以上そのたたき台というのはあくまでも運輸省でつくるのでしょう。ただ審議をお願いする、諮問するということでなくて、ある程度のたたき台というのは運輸省で作成するわけでありますから、大まかでもある程度のスケジュールができてしかるべきである、私はこのように考えております。
 そこで、運輸省として今後どのような決意でこの問題に取り組もうとされておるのか、くどいようでありますけれども、大事な問題ですからもう一度御答弁いただきたい。
○野尻政府委員 一言御説明申し上げますと、労働基準法と船員法との違いでございますが、労働基準法は現行四十八時間を段階的に四十時間に短縮していく、一九九三年まで六年間あるわけですけれども、その間に八時間短縮するということになるわけであります。ところが、船員法の現行規定は、航海中あるいは停泊中、当直者、非当直者の別に労働時間を決めておりまして、航行中、当直者につきましては週五十六時間、つまり毎日毎日八時間ずつ働いて一週間ずっと働きづめということを前提にした労働時間の決め方をしておるわけでございます。そういう決め方をしましてこの四十年来参ったわけでございますが、そういう規定ぶりについては昨今の労働時間短縮という世の中の流れに即してないのではないかということから今回私どもこれを見直しいたしまして、補償休日制という新しい制度を導入することによって週四十時間労働制というものが実現できるような仕組みを考えたわけでございます。
 そこで、まず今申し上げました五十六時間がスタートであるわけでありますけれども、そうしますと、十六時間を順次短縮していくということになりますと時間がかかり過ぎてしまうだろうということで、私どもといたしましては、まずスタートを四十八時間に一挙に短縮してしまう、つまり現行五十六時間を、来年四月一日からもしこの法律が施行になりました場合には、まず一挙に八時間短縮してしまうということでありまして、そういう意味ではこれは大英断ではないかと思うわけであります。したがいまして、八時間短縮した後にこの労働時間規制が今後一体どういう状況になっていくだろうか、あるいはまた先ほど大臣が御答弁申し上げました補償休日制度というものがうまく円滑に進んでいくのかどうか、あるいはまた補償休日制度を導入することによって必要になってくるであろう要員確保の問題はどうかといったいろいろな面につきまして検討を加えなければいけないわけでございまして、この時点で具体的なスケジュールということはなかなか申し上げにくい状況について御理解賜りたいと思います。
○長田委員 労基法と比べまして一年おくれて船員法の改正がスタートする、こういうことになりますと、働く者の立場から考えますと、どうも海の方は劣悪な条件で過酷な労働を強いられておる。今までは相当厳しい状況であったからそう簡単に短縮できませんよというような、どうもそういう思想が運輸省にあるような感じがするのですね。働く者は同一です。同一条件で働かなくてはならないというのは当たり前じゃありませんか。今までが今までだからこれも簡単にはいきませんよという思想というのは、運輸省、間違いじゃないですか。
○野尻政府委員 私ども今回労働時間短縮に当たりまして労働委員会にお諮りする段階で、原案を一応用意いたしましてお諮りしたわけでございます。
 今回私どもが一番頭を痛めましたのは、先ほど申し上げましたように、現行の船員法は実労働時間と申しまして、実際に働いている時間を前提にした労働時間の決め方をしているわけでございます。これは労働基準法も全く同じ考えであります。しかし、そういう考え方でまいりますと、船が四六時中運航しているということを前提にして労働時間を決めるということになりますと、いつまでたっても労働時間の短縮は図れないという問題があるわけでございます。
 そこで、そういう船舶の運航実態を前提にして、なおかつ労働時間の短縮を図るという道はないだろうかということにつきまして内部で検討したわけでございます。特に問題になりましたのは、補償休日制度という制度が一体労働時間の短縮スケジュールの一環としてなじむものであるかどうかということでありまして、これは労働基準法にない新しい制度、概念であるわけであります。したがって、法律上の観点からの検討も必要だということで、実は船員中央労働委員会にお諮りする前に、私ども昨年の三月から半年かけまして労働界の学者先生方にお集まりいただきまして、法律上問題がないかどうか、こういうことについて各般の御議論をいただいた上で、ようやくこの制度であれば問題ないだろうということで労働委員会にお諮りしたという経緯があるわけでございまして、私どもは労働時間の短縮にそういう意味で真摯な努力を重ねているということについて御理解いただきたいと思うのであります。
○長田委員 そこで、運輸大臣、陸と海では施行が一年ずれますね。労働基準法では一九九三年を目途に四十時間を実施したい、実現したいということでありますけれども、当然海においても一九九三年を目標にするという努力は必要じゃないのでしょうか、労基法との整合性の問題においても。どうでしょうか。
○石原国務大臣 労基法の改正案のときに労働時間短縮スケジュールが、つまり一九九三年という目的の時間設定について、それが審議の焦点になったと聞いておりますけれども、ただ、繰り返して申しますが、船員の業務という特殊性からしましてもちょっと確定的な目標年度を今から約束することは大変難しい。それからまた、短縮時間も倍ということになるわけでございますから、いろいろな困難もございますし、それから補償休日制度の定着の度合い、そのために生じます要員の確保、いろいろな難しい問題がございますので、九三年はまず無理。しかし、何年かかるかということは非常に形容しにくいわけでありますが、繰り返して申しますけれども、西暦二〇〇〇年を目途に、しかしできるだけその以前に早く事を実現したいというのが本音でございます。
○長田委員 大臣の二〇〇〇年までにやるみたいな答弁ではちょっと納得できませんね。
 大臣、どうでしょうか、一九九三年の実施は無理のように私も思いますけれども、少なくとも一年や二年おくれて何とかしようというような前向きなお考えはございませんか。
○石原国務大臣 それはでき得れば一九九三年にあわせて事が実現するのが日本の労働界全体にとって非常に好ましいと思います。ですけれども、それがまず非常に技術的にも困難だということでございますから、とりあえず二〇〇〇年という目標を設定いたしましたけれども、一年でも二年でも三年でも早く事が実現して、その一九九三年との実現の時間的な差が縮まる努力をしたいと思っております。
○長田委員 次に、時間外及び補償休日の労働についてお尋ねをいたします。
 改正案の六十四条第一項関係の中に、「船長は、臨時の必要があるときは、」「労働時間の制限を超えて」、または「補償休日において海員を作業に従事させることができる。」という事項がございます。これは二項と違いまして、あくまでも予期、すなわち予定されていない事柄が発生した場合のみに限定した範囲で船長が命令をするものだという解釈のようですね。
 そこでお伺いしますけれども、「臨時の必要があるとき」というのはどういう場合を指すのでしょうか。
○野尻政府委員 改正法六十四条第一項は現行の六十七条を踏襲したものでございまして、六十七条の「臨時の必要」というのは、従来から船舶航行の安全を図るために必要な業務が含まれることはもちろんであるが、その他船舶の運航の確保を図るために必要な業務を排除するものではないといった解釈、運用が確立しておりまして、今回の改正に当たりましてもその考え方は変わっておりません。
 どういうような場合があるのかという御質問でありますが、例えば、具体的な例として考えられますのは、濃霧の発生によりまして航海当直に立つ海員の数を増加しなければいけないというような場合、あるいは機器等に故障が生じまして修理をしなければいけないといったようなとき、あるいは乗組員の病気等によりまして欠員が生じたといったようなときにかわりに作業を行うといったようないろいろな事情の変更による運航スケジュールの変更、こういうようないろいろな場合が想定されるというように考えております。
○長田委員 こうした事項は、ともすると船長の職権乱用によって、労働時間や補償休日等の定められた時間、日数の行使が不可能になるというふうに私は懸念をするわけであります。せっかく海員の皆さんの労働環境の改善を目指して船員法の改正を行うわけでありますから、逆に海員の皆さんを拘束するようなことになっては絶対相ならぬ、このように考えております。
 そうした意味から、「臨時の必要」についての具体例を少しでも条項に盛り込んだらどうだろうか、私はこのように考えております。
 また、船主、船長に対しては、本条項を決して乱用しないように、そういう行政指導、監督というものが必要ではないか、このように考えておりますが、どうでしょうか。
○野尻政府委員 今御指摘の六十四条第一項の「臨時の必要があるとき」における船長の命令による時間外労働については、先ほど申し上げましたように、現行の六十七条第一項と同一の趣旨に立つものでございます。
 先生御指摘のように、今回の改正に当たりまして船員中央労働委員会で議論した際に、「臨時の必要」という定義をもう少し明確にする意味で何らかの修飾語をつけるということはどうかという議論もあったわけでありますけれども、既にこの「臨時の必要」に関するくだりの条文につきましては運用が定着しているということもありまして、規定ぶりを改めて変更する必要はないということが労使双方で合意されまして、今回の改正ではその点について触れなかったものでございます。
 なお、先生が今御指摘されました指導監督を徹底させるべきではないかという趣旨の御質問でございますけれども、改正後の六十四条第一項による時間外労働は「臨時の必要があるとき」ということに限られているところでありまして、恒常的な時間外労働を認めるものではないことは言うまでもないわけであります。この規定が遵守されるように、今後とも船員労務官の監査等を通じて指導監督を行ってまいりたいと考えております。
○長田委員 今回の労使協定による補償休日労働、これは六十五条で新しく定められることになったわけでありますが、今回なぜこの六十五条の項を起こしたのでしょうか。
○野尻政府委員 船員の福祉という観点から申し上げますと、補償休日は必ず休ませるということが望ましいことは言うまでもありません。これはけさの新盛先生の御質問に対しても同じお答えを申し上げたわけでありますが、ただ、船舶の運航というのは荷主側の要請によりましてスケジュールが決まってくるという面があります。運航スケジュールの都合等によりまして補償休日においても働かさなければいけないといったケースも生じ得るわけであります。定められた休日において就労する、いわば休日出勤というようなことになるわけでありますけれども、こういうことにつきましては実は一つの労働慣行として定着しておりまして、現行の労働協約でもこういった趣旨の規定が認められているところでございます。船舶運航の実態との調和を図るという観点から補償休日労働はある程度の範囲内で認めることが至当であろうと考えております。ただ、船主の恣意的な都合で働かせるということになってはなりませんので、そういう意味で労使協定の締結といったことを要件としているわけであります。また、先ほども触れましたが、補償休日の趣旨が生かされるように、たとえ労使協定であろうとも無制限であってはなりませんので、労働させることができる日数の限度については命令で定めて、しっかり守らせようと考えております。
○長田委員 この六十五条は労使協定による補償休日労働を定めたものですね。これはよく読んでみますと、私はどうも労使協調が船舶所有者側に有利に働くような感じがしてなりません。と申しますのは、この協定を結ばないと、船員は恐らく乗船できないのじゃないかという感じがするのですね、拒否されてしまう。そうしますと、この六十五条は、今まで健全な労使関係にあったところにもどうも余計な摩擦を生じさせる原因にならないか、そういう点を私は心配するのですが、その点、どうでしょうか。
○野尻政府委員 今お話しの労使協定というのは、船舶所有者と、その使用する船員の過半数で組織する労働組合との協定またはそういう労働組合がない場合船員の過半数を代表する者との間で結ばれる協定でありまして、個々の船員と船舶所有者との間の採用における雇用の問題など個別の問題が生じることは考えがたいと考えております。また、労働条件の問題につきましては、例えば就業規則を定める場合にはこういった人たちの意見を聞くことを義務づけられているといったようなことになっておりまして、今回の補償休日労働だけではなくて、そういった制度があるということをお含みおき願いたいと思います。
 なお、陸上の労働基準法におきましては、従来から第三十六条に基づく時間外労働あるいは休日の労働、さらにまた今回改正法によって新しく導入されましたフレックスタイム制を初めとする変形労働時間制、こういった多くの制度におきまして今申し上げました労使協定という制度が適用され、運用されているという実態にあります。
○長田委員 次に、この六十五条の労使協定を結ぶ場合、船舶所有者の一方的な協定内容となることを未然に防ぐ意味からも、補償休日労働を行う際の条件としまして、あくまでも本人の希望に限定した協定となるような条項を盛り込んだらどうだろうか、こう私は考えるのでありますけれども、この点、運輸大臣、どうでしょうか。
○野尻政府委員 ちょっと私の方から御説明させていただきますが、一般的に労使協定を要件としますのは、労働基準法でもそうでありますが、一方の当事者である労働者代表が個々の船員の希望を総体として具現しているという考えに立つものであります。労働基準法でもそのような定めはありませんで、その意味から第六十五条に本人の希望を要件とするような条項を盛り込む必要はないと考えております。ただ、労使の合意に基づきまして個々の船員の意思が反映し得るように定めるということは妨げるものではないと考えております。
○長田委員 船員部長、ちょっと甘いのじゃないですか。労使の間でいろいろ決めるわけでありますけれども、そういう中で私はこういうふうな希望がありますなんて言った場合は、じゃ、あなたはもう船に乗らなくて結構ですと断られる場合が往々にしてあるのじゃないですか。現実は、簡単に希望を取り入れて、はい、そうなりましたかというほどそんなに甘くないですよ。
○野尻政府委員 この六十五条の規定は、先ほども申し上げましたが、まず補償休日制度ということで、いわばまとめて働いてまとめて休みをとらせるということで、休みをとらせる部分を補償休日と称しておるわけでございますが、その補償休日の一部についてある程度の限界を設けて働かせることができるようにしようということでありますが、ただ、それを船主の、船会社側の恣意に任せておくということでは、今先生がおっしゃっているような事態になりはしないかということで、船主側のそういった恣意を防ぐために労使協定ということを持ってきたわけでございます。
 なお、この労使協定という問題につきましては、私も先ほどちょっと申し上げましたが、例えば労働基準法の第三十六条で、先生よく御存じだと思いますが、時間外労働あるいは休日労働の規定がございます。船員法につきましては、労働基準法に定めておりますような一般的な時間外労働規定というのはございませんけれども、補償休日労働については労働基準法に言ういわば時間外労働に相当する制度であるわけでありますが、その労働基準法の第三十六条におきましても今申し上げました労使協定を一つの要件としているわけでありまして、今回の六十五条はそういう意味では労働基準法に倣った制度でありますので、私どもとしましては、個々の本人の希望ということではなくて、労使協定という形で要件をかぶせれば万全を期することができるのではないかと考えております。
○長田委員 今回の法改正に伴いまして、今後さらに重要な立場に立つのは船員労務官ではないかと考えております。この船員労務官制度は昭和三十九年六月に発足いたしておりまして、どうも一般的にはなじみの薄い制度ではないかと思います。船員の皆さんの労働環境向上の推進役とでも言われるような重要な立場に立っている人たちでございます。そこで、この船員労務官の具体的な職務内容並びに人数の推移、また年間の違反件数の状況についてお尋ねいたします。
○野尻政府委員 船員労務官は、船員法、労働基準法、賃金の支払の確保等に関する法律、船員災害防止活動の促進に関する法律及び最低賃金法の施行に関する事項をつかさどるということになっておりまして、必要があると認めるときには船舶所有者あるいは船員に対しましてこれらの法令の遵守に関する注意喚起を行うとか勧告あるいは船舶そのほかの事業場へ臨検しまして、船舶所有者に対しましてあるいは船員に対して出頭命令等を行うことができるようになっております。また、これらの法令に違反する罪につきましては、刑事訴訟法に基づく規定によりまして船員労務官は司法警察員という職務も行い得るようになっておるわけでありまして、いわばかなり大きな権限を持っております。したがいまして、船員労務官というのは一般の我々のような事務官とは違いまして、いわば警察官並みの権限を行使できるというような立場になるわけであります。
 船員労務官につきましては、昭和三十九年までは我々一般職員と兼務という形で両方の仕事をするということで来たわけでありますが、やはり船員労務官の本来の職務を全うするためにはそういった兼任制ではなくて専任制が望ましいということで、三十九年以降専任制に改めております。当初は八十名でありましたが、その後五十九名の増員を図りまして、ことしの三月現在でありますけれども、百三十九名を全国の運輸局及び海運支局に配置しております。
 なお、どういうような違反事件等の取り締まりを行っているかというような御質問でありますが、昭和六十一年におきまして、船員労務官は、一万二千九百五十六の船舶及び船舶所有者の事業場に入りまして監査を行っております。そして百九十七件の違反、四百二十一件の指導事項を発見いたしまして、これらについて所要の措置を講じているといったところでございます。
○長田委員 最近の違反件数はおおむね四百件を突破しておるようですね。今御答弁のとおりであります。しかし、船舶数が毎年減少している状況におきましては、言いかえれば実質的には件数はふえておるという状況ではないかと考えます。せっかく法改正を行いましても、現場では実際隅々まで目が行き届かない、こういうことになったのではどうも片手落ちになるのじゃないか、このように私は考えております。労務官の人数にいたしましても、年に一、二名の増員だそうでありますけれども、これではどうも対応できないようであります。そこで、この労務官の増員については具体的なスケジュールを持っていらっしゃるのでしょうか。
○野尻政府委員 今お答えする前に、私、違反の指導事項についてちょっと言い間違えたようでありますが、四千二百一件ということでございますので訂正させていただきます。
 さて、今御質問の件でありますが、船員労務官の配置につきましては、的確かつ十分な情報収集あるいはまたきめ細かで効率的な監査を実施するためには状況に応じて複数の、つまり二人以上の船員労務官による監査が必要となります。災害の発生あるいは船員からの申告に対して即時即応に対処する必要があるという観点から、今申し上げました二人以上の配置、複数配置ということで順次増員を行っているところでございます。六十三年度の増員を含めまして、現在六十七の海運支局のうち三十三の海運支局が一人配置となっております。つまり、三十三は今私が申し上げました複数配置という計画に反してまだ一人しか配置されていないという状況であります。これらの海運支局の管轄する区域の状況だとか、あるいは船員労務官が行っております業務の状況などを勘案いたしまして、今後こういった三十三の残された一人配置局につきまして複数化に向けて努力してまいりたいと考えております。
○長田委員 どうかひとつ前向きに増員の検討をしていただきたいと思っております。
 大臣、今お聞きのとおり労務官が非常に人手が足らないという状況でございまして、その点については大臣もひとつ増員についての御検討をよろしくお願いいたします。
 では実際に労務官が臨検監査をした結果、その違反内容について、ワーストスリーを内航と外航に分けて御説明いただけましょうか。
○野尻政府委員 船員労務官が昭和五十九年から六十一年までの三年間に船舶及び事業場における監査で発見しました違反件数千百十三件のうちで、最も多いものは船員の安全及び衛生に関するものでございまして、これが六百三十五件ということになっております。次いで船員の雇い入れ契約等に関するものが二百八件、それから船長の職務に関するものが七十件といったような順になっておりまして、これがワーストスリーということになるわけであります。
 統計上はあえて内航、外航の区別を行っておりませんが、内航船がほとんどすべてを占めております機船の七百トン未満とそれ以外の七百トン以上の船舶を取り出して比較してみますと、七百トン未満の船については、四百十四件のうちで船員の安全及び衛生に関するものが二百九十七件と最も多くなっております。また、船員の雇い入れ契約等に関するものが三十七件、船員の職務に関するものが三十五件といった順になっております。それから七百トン以上のものにつきましては、合計三百七件のうちで船員の雇い入れ契約等に関するものが百二十一件と最も多く、次いで船員の安全及び衛生に関するものが八十二件、労働時間あるいは休日、定員に関するものが三十六件といったような状況になっております。
○長田委員 非常に数が多いようですね。この労務官は、現在は人員不足から船とかあるいは事業場のすべてを臨検できない状況のようであります。いわゆるサンプリング方式をとっておりまして、違反の内容全体の正確な把握という点ではちょっと不可能であろうと考えております。にもかかわらず、こうした現状ではどうしてもきめ細かな行政監督をやろうというのは大変な状況だろうと私は考えております。
 そこで、少なくともサンプリングされてきた内容については十分に検討、分析をする、そして違反を未然に防ぐ、こういう措置が必要だろうと私は思いますが、具体的にはどうなんでしょうか。
○野尻政府委員 全国に配置しております船員労務官の業務の遂行に当たりましては、地万運輸局を通じまして逐次情報交換を行っているところでありますし、毎年、各所におきまして船員労務官会議を開いて、情報交換を密にするという努力を図っているところでございます。船員労務官が取り扱いました個々の事案につきましては、必要なものにつきましては本省にまで報告させているところでございます。今後ともこういった情報の収集、分析に努めると同時に、またいろいろな会議等を通じて適切な監査体制をとり行うことができますように指導してまいりたいと考えております。
○長田委員 次に七百総トン未満のいわゆる小型船についてお尋ねをいたします。
 今回の船員法が仮に施行された場合、小労則、漁労則で決められております法定労働時間の週五十六時間との間に八時間もの格差が出ておりますわね。総トン数では七百トン未満でも重量トンでは七百トン以上の積載量を有する近代化船が多い今日、例えば百九十九総トン型は六百五十から七百重量トン、それから四百九十九トン型では千五百から千六百重量トン、六百九十九総トン型では二千トンから二千百重量トンまで実際はあるわけですね。総トン数だけで労働条件に一つの線引きをするというのは非常に無理があるのじゃないか、そういうふうに考えております。
 そこで、今回の船員法改正に伴いまして小労則、漁労則についても労働条件の改正に踏み切る考えはあるのかどうか、この点はどうでしょうか。
○野尻政府委員 現行船員法におきましては、先生御指摘のとおり、七百総トン未満の船については小労則、漁労則という省令で定めておりまして、七百総トン以上は本法で定めているということでありまして、御質問の趣旨は、そうした省令で定めているものについて、これを省令をやめて法律で定めるようにすべきではないかという趣旨であろうかと思います。この点につきましては、船員中央労働委員会にお諮りして審議した過程におきましても大変議論が集中したところでございます。もちろん労働側委員からは先生の御指摘のような御意見を賜りました。
 ただ、現行の小労則におきましては、船員法の本則にないいろいろな規定がございます。例えば、週五十六時間であれば一日の労働時間が八時間を超えてもいいとかいったような、本法にないいろいろな規定が省令にあります。そうした省令に基づいて既に労働の実態が定着しているというところで、わずか半年ぐらいの審議で一挙にそうした省令を廃止してしまうのは少し性急ではないだろうかという意見もありまして、今後三年をめどに審議いたしまして、三年以内には結論を得るように努力すべきだという趣旨の答申をいただいております。私どもといたしましてはそうした小型船舶の労働実態等を勘案しながら慎重に検討し、かつ労働委員会の答申の精神に合わせてしかるべき時期に労働委員会にお諮りして御審議していただこうというふうに考えております。
○長田委員 今御答弁のありましたとおり仮に三年後に結論が出たと仮定をいたしましても、改正法施行後三年をめどにさらに労働時間が短縮されるわけです。というのは、労働基準法では三年後ですから既に四十四時間を実施しておるわけであります。そうなりますと、実際十二時間も格差が出てくるわけです。したがいまして、こうなる前に有効な手だてというものを当然講ずるべきだというふうに私は考えております。そこで、この問題について具体的にいつごろまでどのような方法で検討されるのでしょうか。
○野尻政府委員 今申し上げましたように省令で定められております七百総トン未満の船舶について、本法を適用し得るように適用拡大することにつきましては、労働実態を見ながら検討しなければいけない部分もありますし、さらにまた法律的にそういうことが法律事項になじむのかどうかといったような法律的な観点からの検討も必要であります。そういう意味では三年という期間が必要だろうと思いますが、それとは別に現在あります小型船に関する省令、その改正がされるまでの間どうするかという問題が別途あろうかと思います。今回はまず法律を御審議いただきまして、私どもの政府原案どおり成立いたしますと、来年の四月一日から施行するということに相なるわけでございます。私どもといたしましては、そういった適用拡大問題は適用拡大問題として別途審議することにいたしますが、それまでの間小労則をほっておいていいというわけではありませんので、今回の法律改正の状況を見ながら小労則の改正については別途検討いたしまして、願わくは来年の四月一日同時施行ということを目指して、労働委員会にお諮りしたいというふうに考えております。
○長田委員 この間も船員法改正についてある海運業界が発刊しております雑誌の三月号に労働基準課長さんが投稿いたしておりました。その中でこの問題を取り上げまして、来年四月一日の施行をターゲットとして二省令の見直しについて結論を出す必要がある、このように発言をしております。そのとおり受け取って四月一日から実施でいいのですか。
○野尻政府委員 その方向で最大限努力をいたします。
○長田委員 今私が一番心配していることは未組織船員の問題でございます。組合に加入している場合はある程度幅のある話し合いを行うことは容易であります。ところが、未組織船員はそのときどきによりまして労使協定の内容が変わってくるのは当然なんですね。どうも変わってきているようであります。勢い生活のためならと、多少条件が悪くても個々に協定を結びまして劣悪な労働環境にさらされておる、したがって体を壊してまでもそれに従事しなくてはいけない、そういうせっぱ詰まった思いで仕事をしている方も大勢いらっしゃいます。こうした労働環境は特に若年層に嫌われまして、若者の定着率は他の業種に比べて非常に低下しておるということが現状であろうかと考えております。このまま放置しますと船員の高齢化が進みまして、あすを担う若者の海離れに一層の拍車がかかるような気がいたしてなりません。今現場で働く船員の皆さんに、安心してしかも夢と希望を持って仕事に従事できる環境づくりに本腰を入れて取り組む必要がある、私はこのように考えておるわけであります。こうした未組織船員の皆さんに対して今後運輸省はどのような姿勢で臨まれようとしておるのか、ひとつ具体的にお聞かせ願いたいと思います。
○野尻政府委員 確かに先生御指摘のように、未組織船員というのは労使交渉の場合でも非常に弱い立場であることは否定できないだろうと考えております。しかし、おっしゃるように未組織船員の労働条件が劣悪であってはいけないわけでありまして、私ども、先ほど先生の御指摘がありました船員労務官の監査等を通じまして、労働条件適正化について十分指導監督してまいりたいと考えております。
○長田委員 次に、便宜置籍船問題についてお尋ねをいたします。
 近年急激な円高傾向の中で日本の外航海運業界は深刻な経営危機に陥っております。加えまして便宜置籍船の過剰船腹は経営悪化にさらに拍車をかけておる状況でございます。特に十一万人の中の約四万人を超える日本人船員は乗る船もない、完全失業者も非常に多いということを聞いております。したがいまして、残された方々も日々失業の危機にさらされておる、そういう状況でございます。したがいまして、こうした人たちの一日も早い救済策を講じなくてはならないと考えておるわけであります。そこで、この便宜置籍船の現状について運輸省としてはどのような認識をされておるのでしょうか。
○中村(徹)政府委員 便宜置籍船の隻数トンにつきましては今これを正確に把握することは難しいかと思いますけれども、日本の商船隊の中に入っております便宜置籍船を推定いたしますと、おおむね千隻、二千万総トン程度ではないか。総トン数にすると我が国商船隊の三分の一程度を占めているというふうに見ております。このように我が国の商船隊は事実上便宜置籍船に相当程度依存しているわけでございますが、これは海外の主要海運国においても便宜置籍船がその商船隊の相当な部分を構成しているということから見て特異な状況ではないというふうに思っております。我が国といたしましてもこうした海外の海運諸国と競争していくためには、国際競争力のある日本籍船を中核としながら便宜置籍船も適宜組み合わせて商船隊を維持していくことが必要である、かように考えております。
○長田委員 この便宜置籍船については国連貿易開発会議、UNCTADでありますけれども、各国別の受益船主国を調査した結果、一九八七年の七月現在日本は重量トンでは世界第三位ですね。ところが、船隻数では第二位のギリシャの一千三百十一隻をはるかに超えておりまして一千五百九十一隻を保有している現状であるわけであります。これは世界全体の二二%を占めることになりまして、いわば五隻のうち一隻強の割合で日本の便宜置籍船が世界の海を航行しておるということが明らかであります。こうした便宜置籍船の実態について運輸省はこれまで公表を避けておったようでありますけれども、そろそろ実態の公表を行うべきではないか、このように考えておりますけれども、どうでしょうか。
○中村(徹)政府委員 UNCTADの資料につきましては先生のお話のような数字が出ておると思います。しかし、その内容が本当に正確かどうかにつきましては私どもも若干わからないところがございまして、正確な数を確定することは難しいというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、私どもの推定では約一千隻ではないかというふうに考えております。UNCTADでは千五百隻程度と言っておりますので、そこに若干差が出てきていることは事実でございます。
 私どもの方で便宜置籍船を国籍別に見てみますと、パナマ籍が一番多くて約八百隻、千二百六十万総トン、次にリベリア籍が約二百隻、六百六十万総トン、キプロス籍が約三十隻、四十万総トン、あとバハマ籍が十隻程度というような状況になっていると推定いたしております。
○長田委員 これは、UNCTADの資料というのは余り正確でないという意味ですか。
○中村(徹)政府委員 UNCTADの資料が正確でないということを申し上げているわけではございませんけれども、どういう形でとっておるかというとり方の問題、日本の実質的な船主としてどういうものを取り上げるかというそのとり方の問題だろうと思いまして、いわば外国法人が実質的な日本の所有に属しているかどうかという判断の違い等があると思うわけであります。私どもで一応推定しておるのは先ほど大体千隻程度ではないかというふうに考えておるということを申し上げたわけでございます。その内訳は先ほど申し上げたような内容になっております。
○長田委員 今後、運輸省として便宜置籍船の公表をするお考えはありますか。
○中村(徹)政府委員 私どもは内容を正確には把握できないわけでございますが、私どもの把握できるあるいは推定できる範囲の内容については、もちろん申し上げるつもりでございます。
○長田委員 UNCTADの資料によりますとそういう状況でございまして、大体一隻当たり二十人から三十人乗組員が乗るわけでありますから、数からいきますと、大体二万人から三万人の外国人船員が現在乗り組んでおるということのようであります。
 いろいろ午前中も論議したわけでありますけれども、日本の四万人の船員の皆さんが失業されて困っておる、こういう状況を考えますと、こういう手だてをもう一度考え直す必要があるのではないか。例えば、何人かをきちっと乗員させる義務づけを行うとか、ある程度そういう施策というか、そういう点も考えることができないかどうか。この点、どうでしょうか。
○野尻政府委員 便宜置籍船等外国船に対して、日本人船員の乗り組みを行政指導あるいは何らかの措置で義務づけることができないかという御趣旨の御質問であります。
 ただ、便宜置籍船といえどもやはりこれは外国船であることには違いないわけでありまして、外国の法律に基づいて設立された会社が持っている船に対しまして私どもの方で乗船を義務づけるということは、なかなか限界があるというように考えております。私どもといたしましては、別途財政上の措置によりまして、何とか日本人船員が外国船に乗れるようなそういう手だてをしたいということで各般の施策を講じているところであります。
 二、三例を申し上げますと、一つは、離職船員につきまして就職奨励金と称しまして、外国船に乗るときには一回当たり十二万円支給するという制度がございます。実は、これは六十二年度まで十二万円でありましたが、昨今の情勢、特に便宜置籍船に対して日本人船員が乗りやすくしろという御要望を踏まえまして、六十三年度からはそれの五割増しの十八万円に増額ということで政府原案に計上しているところでございます。
 あるいはまた、厚生省が所管しております船員保険特別会計からは、海運会社が外国船に雇用船員を派遣した場合には、賃金差額の一部を助成する派遣助成金という制度がございます。これは従来はその限度額が月二万円ということになっておりましたけれども、昨年から、つまり六十二年度からこれを三万円に引き上げるというようなことで、いわば財政上の措置を講じておるわけであります。
 さらにまた、外国用船をした場合に、従来は源泉徴収課税がされておりましたけれども、六十三年度の税制改革によりまして、この源泉徴収課税を不適用にするといったような措置も講じているわけであります。
 直接的に便宜置籍船に対して行政上の措置で乗船を義務づけるということは、なかなか現行の法域の中で処理が難しいかと思いますが、今申し上げましたいろいろな対策によりまして、一人でも多く外国船で日本の船員の方が働くことができるように、私どももこれからも万全を期していきたいというように考えております。
○長田委員 それでは、時間がなくなりましたので、次に、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案についてお尋ねをいたします。
 ここ最近における海運業界、特に外航部門での経営悪化は著しいものがあります。合理化の問題は後ほどお伺いいたすわけでありますけれども、合理化に伴う離職者数は年々増加の一途をたどっておるという現状でございます。こうした時期に就職促進給付金の給付期限を現在の五年から七年に延長されることは船員の皆さんにとっては朗報でございます。
 そこで何点かお尋ねするわけでありますけれども、給付金の予算額を見てまいりますと、今年度は五千六百万円、来年度は三億五千四百万円と大幅な増額となっております。来年度は何人程度の離職者を見込んでおられるのか、まずお尋ねをいたします。
○野尻政府委員 六十三年度におきましては就職促進給付金の支給対象者は、六十二年度末までの継続分が約干人、六十三年度に新たに発生する者約千四百人ということで、合わせて二千四百人を見込んでおります。
○長田委員 離職者への給付状況を見てまいりますと、外航部門の指定がなかった昭和六十年度では十人だったのですね。ところが、外航部門が指定された六十一年度では四百六十人、六十二年度は、ことしの一月末までに八百九十二人と、急激な増加の傾向を示しておるわけであります。こうした状況を見てまいりますと、外航関係の不況ぶりはこの数字で一目瞭然であります。そうして、今後もさらに離職者がふえるものと予想されます。トータルで二千四百人を見込んでおる、こういう状況であるようでありますけれども、恐らくこれでは予算が足りないのじゃないかなという感じが私はするのですが、その点は大丈夫ですか。
○野尻政府委員 先生先ほど御指摘がありましたように、六十三年度の予算額は三億五千万円余りであります。
 六十三年度に新しく発生する離職船員につきましては、まず離職後に船員保険特別会計から失業保険金が支給されることになっております。したがいまして、私どもの就職促進給付金というものはその失業保険金が切れた後ということになるわけでありまして、そういう意味で本予算で十分に対応できるというように考えております。
○長田委員 この給付金制度は、海で離職した人が海に復職した場合にだけ適用されるわけですね。したがいまして、陸に復職する場合においては労働省の所管となりまして、別の給付金が支給される、こういうことです。私もいろいろ調べてみましたけれども、海で一たん離職して陸で働く、それでまた海へ戻りたい、こういう人たちがいましても、そういう場合にはこの給付金制度というのは適用されません。
 現在の海運業界は確かに厳しい状況ではありますけれども、私は、将来展望は必ず開けてくるだろう、このように考えております。そうした意味で、陸で働いていた人がいずれはまた海に戻るケースというのは当然出てくるような感じが私はいたしております。こうしたときにすぐ対応できるように、私は柔軟な制度の拡充を図った方がいいのではないかというふうに考えますが、どうでしょうか。
○野尻政府委員 確かに先生おっしゃるとおりであります。
 御指摘のようなケースにつきましては、個々のケースごとに求職者の希望に沿いまして、所要の職業紹介をするとか就職指導を行うとか職業訓練を行うといったような援助措置を弾力的に行うようにしてまいりたいというように考えております。
○長田委員 それでは、当面の船員雇用対策は、現実をよく見据えて、どうかひとつしっかり行っていただきたい、このように考えております。
 とりわけ、日本は島国でありまして、海運は不可欠であります。しかも、長引く海運不況で若手船員の採用もなく船員の高齢化が進んでいる中で、大臣は将来に向けまして日本の船員の確保についてどのように考えていらっしゃるか、最後にこの点だけお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○石原国務大臣 日本のような島国にとりまして海運というのはまさに不可欠の業務でございまして、それをだれが担当してもいいじゃないかという人もいるかもしれませんけれども、私は決してそうは思いません。やはり、こういう国家社会にとって致命的な仕事を同胞が担当してくれることで私たちも安心もできるわけでございまして、この間も河村委員からもナショナルミニマムについての御質問もありましたが、そういうことももう一回考え直しながら、若い船員、要するに後継者といいましょうか、これから長い将来、日本のために日本の海運を支えてくれる日本人の船員の確保のために多角的な努力をしていかなければならないと思っております。
○長田委員 終わります。
○関谷委員長 河村勝君。
○河村委員 けさから主として船員法改正案についてずっと審議が続いております。私もそれについて質問いたします。なるべく重複を避けて質問するつもりですけれども、非常に基本的な大事なことでもありますので多少は重複をすることがありますが、その点はお許しをいただきたいと思います。
 まず、大臣にお伺いをいたします。
 この法律案改正に伴って週四十時間労働制への移行をするわけでありますが、いつ四十時間に到達をするかというその道筋について先ほどから大臣、船員部長から話がありました。船員部長に至っては、今まで五十六時間を一遍にやるのだから、一遍に四十八時間に持っていくのですら大英断であるなんという厚かましいことを言っております。しかし、陸上が早くから四十八時間になっているのに船員だけが五十六時間であったということ自体が運輸省の大怠慢であって、それを逆用して四十八時間が大英断なんて言っている精神ではとてもこの労働時間短縮がスムーズに運ばれるとは思わない。
 大臣もどこまで実態を承知して言っておられるのかわかりませんが、海運の労働条件の特殊性を強調されてなかなか一遍にはいかないんだというようなことを言っておられますけれども、実際陸上と比べてそんなに違うのだろうか。先ほど船員部長は、一日二十四時間ぶっ通しで働かなければならぬこともあるというようなことを言っているけれども、これは陸上だって、鉄道は二十四時間動いているので、二十四時間、一昼夜交代勤務なんという勤務時間もあるけれども、やはり八時間労働であり、今度四十時間に移行することに全然特別の条件は与えられていない。若干運輸関係について道程に多少の段階はあるかもしれないけれども、おおよそ同じような条件で扱われている。二十四時間じゃないかもしれないけれども、長距離トラックのようなものでもやはり労働基準法の適用になっているわけですね。
 だから要は、運輸省が頑張っておるというのは、内航海運が非常におくれた条件にある、運輸省の、国の許可事業である内航海運がおくれた条件にあることを当然のことのようにして、それを理由になかなか勤務時間短縮が進行しないんだ、こういうように聞こえるのですよね。ところが実際は、海運全体を見れば、外航は既に労使間の協約によって四十時間ができ上がっているのですね。内航でも労使関係の確立しているところは既に四十二時間体制に移行している。残るところは内航の小型船ですよね。これは確かに劣悪な条件にある。だけれども、こんなものはほっておいた運輸省の責任なんですよ。それを考えたら、今までのいきさつを理由にしてそれで他の陸上よりもおくれてもいいということが当たり前であるかのように話をされるというのは不見識だと私は思うのです。ですからこの際、当面二〇〇〇年を目途とするとおっしゃるけれども、陸上の方では三年間で四十四時間、四十時間までは一九九三年という確認がされているようでありますが、一九九三年と言わないまでも、少なくとも二〇〇〇年目標などと言わずに一九九〇年代のなるべく早い時期に実現しましょうというぐらいのことは言ってしかるべきだと思いますが、運輸大臣いかがですか。
○石原国務大臣 過去のいきさつを私必ずしもつまびらかにいたしませんが、例えば補償休日の制度なども別に画期的などと私必ずしも思いません。海運という業務の特殊性を考えればこういう思いつきというのはもっと早く出てきてしかるべきだったのではないかという気もしないでもございませんが、いずれにしろこの時点で改正をして、時代のニーズもございまして労働時間を海運においても短縮しようという決心をしたわけでどざいまして、これはできるだけ、一日でも早く、早期に実現されればこれにこしたことはないわけで、二〇〇〇年と申しましたけれども、一九九〇年代のできるだけ早い時点にでも完成したいと思いますし、またその努力を一生懸命しようと思います。
○河村委員 二〇〇〇年目標は取っ払って、一九九〇年代なるべく早い時期ということで進めていただきたい、それをぜひともお願いをいたします。
 先ほどから船員部長が、補償休日を運用することによってスムーズに時間短縮をやっていくんだということをしきりに強調されるものですから、これが非常に気になる。補償休日を使って、補償休日もなるべく休ませないで、それで人員の増加を防いでいこうという魂胆が見え見えでありまして、そうであれば大変危険なことで、それでは何のために休日を与えたかわからない。
 補償休日について伺います。改正法の六十二条四項に、「補償休日の付与に関し必要な事項」を命令で定めると書いてありますが、大体どういうことを予定していますか。
○野尻政府委員 第四項の「補償休日の付与に関し必要な事項」ということでありますが、これについては、付与されるべき補償休日の形態につきまして、例えば停泊中に休ませるとかあるいは下船中に休ませるとかいろいろな休ませ方があるわけでありますが、そういった補償休日のとり万についてまず定めたいというふうに考えております。私どもといたしましては、乗船中に休日をとるというのはやはり拘束時間内における休日でありますから余り望ましいことじゃないということで、労働協約によって定める場合に限るというようにしたいと思っております。そのほか、補償休日のとり方につきましては今申し上げました下船中あるいは停泊中ということを原則にするというような規定、あるいは、補償休日を与える場合に必要な手続、そういったものについてここで定めたいというふうに考えております。
○河村委員 六十五条の方の、補償休日に作業に従事させることのできる日数。補償休日の日数を命令で定めると書いてありますが、これは何日を考えていますか。
○野尻政府委員 補償休日はあくまでも休日、いわば振りかえ休日に相当するわけでありますから、なるたけ働かさせないというのが原則であり、ゆっくり休んでいただくことが望ましいことは言うまでもありません。しかしながら、船舶運航の実態から見ますと、多少の休日出勤という形での労働はやむを得ないであろうというふうに考えて六十五条を設定したものであります。ただ、今先生御指摘のように、ルーズにやりますと、いつまでも働かせるという心配がありますので、日数制限をしたわけであります。
 どの程度にまでするかということにつきましては、これから船員中央労働委員会で御審議いただくわけでありまして、今私のところで確定的な日数ということについては申し上げにくいわけでありますけれども、例えば労働協約で言いますと、百十八日の休日のうちでたしか三十八日就労をさせることができるというような規定があったと記憶しております。そういう労働慣行といいますか労働実態、こういうようなことを勘案しながら今後検討してまいりたいと考えております。
○河村委員 六十四条の「時間外及び補償休日の労働」に規定している補償休日労働と、六十五条の協定で定める補償休日、これとの関係はどうなるのですか。これは、協定で定めたもの以外に、臨時に必要がある場合には船長の判断によってさらに補償休日に働かせることができる、プラスになる、こういうふうに理解してよろしいですね。
○野尻政府委員 六十四条の規定によります補償休日の労働というのは、乗船中において補償休日が与えられた場合でありまして、臨時の必要がある特別の場合に限られるのに対しまして、六十五条の労使協定による補償休日の労働というのは、乗船中の補償休日に限らず、下船しての補償休日が含まれております。また、臨時の必要があるとかないとかいうことにかかわらず行い得るというものでございます。
 労使協定を締結し、行政官庁に届け出ること、あるいは命令で定める日数を限度とするといった制約がございます。
○河村委員 しかし、要するに協定で定められた補償休日を超えて、臨時必要のあるときには休日に働かせることができる、こういうことになるわけでしょう、六十四条を適用した場合には。
○野尻政府委員 そのとおりでどざいます。
○河村委員 だから、もしこれを乱用すれば、補償休日は決めたけれども、結局みんな休暇を買い上げしてしまって、それで休日ゼロにすることも可能になってしまうわけです。だから、これは一般の時間外労働と補償休日の労働とを同じ項目に書いているけれども、特にこの「臨時の必要があるとき」というのは厳格に解釈をすべきである、こう考えますが、いかがですか。
○野尻政府委員 新法といいますか、改正後の第六十四条第一項というのは、現行法の六十七条を踏襲したものでどざいます。
 現行の六十七条の「臨時の必要」ということにつきましては、従来から船舶航行の安全を図るために必要な業務が含まれることはもちろんであるが、そのほか船舶の運航を確保するために必要な業務を排除するものではないといった解釈、運用が確立しているわけでありまして、今回の改正に当たりましても、こういった考えは変えておりません。
○河村委員 この時間外労働をどんな場合にできるかということについては、過去にも随分論議をした経緯がありまして、十年余り前に私もこの問題について議論をしたことがあるのです。どうもその当時においてもこれが非常に拡大解釈されて、相当幅広く運用されている実態があったものですから、これを限定しようと思って、その船舶の安全運航のために必要があるときは当然として、そのほかについても項目を列記して限定的に扱おう、そういう約束がされていたと思うのですけれども、さっきの答弁だと、その他船舶の運航を確保するために必要な場合は排除するものではないというようなことで、必ずしも限定的な表現でないように思われるけれども、その点は一体どうなんですか。
○野尻政府委員 先生の以前の議論というのは、ちょっと今資料を捜しておったのですが見当たらないのです。たしか四十八年の運輸委員会での御議論だと思います。私も十分その議事録を読んでおります。その質疑を通じて今後通達を出してはっきりさせるということで五十年に通達を出しました、これも先生御承知のとおりだと思います。
 そういう観点から今日まで来ておるわけでありまして、この十年来いわば「臨時の必要」ということの解釈については固まっている、定着しているというように考えております。
 じゃ、具体的にどんな例かという御質問でありますが、考えられる事態としましては、例えば濃霧の発生によりまして航海当直に立つ海員の員数を増加する場合とか、あるいは機器の故障が生じて修理する場合とか、乗組員の傷病などによって欠員が生じてそのかわりに作業を行う場合とか、あるいは何らかの事情の変更に対応するために、急遽運航スケジュールを変更せざるを得ない場合といったような事態が考えられると思います。
○河村委員 私が心配しているのは、内航の小型船舶のことで、こういうところでは労使関係が必ずしも対等の立場にないものですから、補償休日の運用が恣意的に行われても抵抗力が乏しい。だからそれをチェックする方法はないかということであって、補償休日の協定届け出の際によくチェックするとか、そういうような方法を運輸省としても考えるべきだと思うのですけれども、その点の配慮をどう考えていますか。
○野尻政府委員 私どもといたしましても、先生御指摘のとおりにしたいと思っております。
○河村委員 くれぐれも、この補償休日の運用いかんによってはどんどん休日の買い上げがふえてしまって、事実上勤務時間短縮の目的からは完全に外れるようになってしまいますから、特に念を入れて今後取り扱ってほしい、それを要望しておきます。
 次に、内航全般の問題についてお尋ねをいたします。
 これがやはりこれからの船員法改正案の適用について一番問題になるのだと思いますが、この船員中労委の公益委員の見解の中に、趣旨としては要するに本法をなるべく早く適用しろということにあると思うのですが、一体今七百トン未満の、本法を適用除外になっている船員の数というのは船員全体の中の何%になっていますか。
○野尻政府委員 七百総トンで切った場合に、実は統計のとり方でございますのでかっちりした数字がなかなかとりにくいのでございますが、商船につきまして七百総トン以上の船員数が、乗組員として三万五千人余り、それから七百トン未満、今先生は七百トン未満の船員は何人か、こういう御質問だったと思いますが、それが四万二千九百名余りということになっておりまして、これに若干の予備員の数、ざっと四千名ぐらいであろうと思いますが、加えたものが七百トン未満の商船に乗り組んでいる船員の数ということになります。
○河村委員 これに漁業関係を入れるとこれは膨大なものになりますから、結局全体の船員の八割ぐらいが労働時間、休日、定員については船員法の適用除外になってしまう。せっかく法律があるのに適用除外する方が圧倒的に多いなんという法律はめったにないのです。だから、もう極力早く本法適用に踏み切るべきだと思うのですけれども、漁業関係はともかくとして、商船に関する限り本法を適用して支障になることというのは現在もう余りないのではないですか、いかがですか。
○野尻政府委員 現在七百総トン以上の船舶については船員法本則で定めておりまして、七百トン未満の商船、小型船については省令で定めているということになっております。しかし、本法と省令とでは規定の内容がかなり違っております。細かい規定を言い出すと切りがないので二、三例を申し上げますと、例えば七百トン未満の船につきましては変形労働時間制がしかれております。一週間の航行時間五十六時間、停泊時間四十八時間の範囲内であれば一日の制限労働時間八時間を超えることができるとか、あるいはまた四週間を平均いたしまして一週間五十二時間の範囲内であれば一日または一週間の制限を超えて労働させることができるとかというような規定がございます。そのほか小型の旅客船等についてもいろいろな本法にない規定があるわけでございます。
 今先生御指摘の点はこういった小型船につきましては省令をやめて本法に移したらいいではないか、こういうお話だろうと思います。確かにそういう議論もあったわけでありますけれども、先ほど申し上げました、たくさんの船員の皆さん方はこの小労則に基づいて労働時間が決められているという実態にあるわけでございます。そういう実態を無視して、直ちにこの省令を廃止して本法に持っていくというには時期が早過ぎるのではないか、もう少し実態を踏まえつつ、この小労則をどういうような形で変えて、仮に本法に持ってくるとすれば本法をどういうような法律体系にするかというような地道な議論が必要であろうという観点から、船員中央労働委員会で一応三年という期限を付してもう一度審議し直そうという御答申をいただいているわけでありまして、私どもといたしましては、この労働委員会の答申の趣旨に従いまして今後鋭意検討し、しかるべき時期に改めて労働委員会にお諮りして審議していただこうというふうに考えているわけでございます。
○河村委員 内航の労働条件が特に悪いというのは結局経営内容が悪いということとの裏表になるわけですね。かつては、昭和二十二年、船員法制定当時はこの内航海運というのはほとんど小型の機帆船だったわけです。それがその間に急速に変わって今では、さっきも話が出ましたけれども、六百九十九総トンといっても実力は積載トン数、重量トンでは二千トンぐらい運べる。四百九十九トンというのでも千五百トンから千六百トンぐらい運べるという、非常に大型鋼船化してしまっているのですね。だから企業の実態、中身は変わってきているのです。ところが内航海運業法というものをつくって、運輸省の許可事業になっているにもかかわらず、どうも経営内容の改善ということには運輸省は一つも関心を払ってなくて、今もって荷主支配、荷主が非常に強く、それで荷主に対して対等に口をきけないような企業ばかりがある。それが経営内容を悪くし、かつそれが当然労働条件の悪化にも影響を及ぼしているという状態が続いているわけです。陸の長距離トラックと対比されるのですけれども、陸の長距離トラックだって随分成長して大きな長距離トラックの会社もできて対抗力ができているのに、海の方はさっぱり進歩しないで相変わらず荷主に隷属しているような状態が続いている。これを運輸省は一体どう見て、これをどう改善しようとしているのかをお尋ねします。
○中島(眞)政府委員 貨物流通事業一般を所管しております立場から申し上げます。
 内航海運にしろトラックにしろ、ただいま御指摘のとおり我が国の産業経済なり国民生活にとって大切な役割を果たしているわけでどざいます。ただいま内航海運について御指摘がございましたが、内航海運についてもお話しのように機帆船の時代から今日に至るまで法規制としてもいろいろな変遷がございました。
 昭和二十七年の木船運送法に始まりまして、三十七年に小型船海運業法ということで五百総トン未満のものを鋼船も含めて対象にいたしました。さらに三十九年には五百総トン以上のものも対象にいたしました内航海運業法を制定いたしております。当初は登録制でございましたけれども、四十一年にこれを許可制に移行させまして、需給についても著しく過剰な場合には調整を行うという原則にいたしました。
 それから、内航海運については宿命的な課題でございますけれども、慢性的な船腹過剰の状態にありまして競争が非常に激しい。そういうことで、御指摘のように荷主に対しても弱い立場にある。そういうことから、運賃等についてもかなり低目に抑えられるという制約があるわけでございます。しかしその点については、現在の制度で申しますと内航海運業法に基づいて許可制度がとられておりますが、一方この法律に基づいて船腹量調整の一つの目安にするために適正船腹量の制度がございます。これによりまして毎年度、それから五年間の各年度ことの適正船腹量、産業経済の動向とかそういうものを踏まえまして、内航全体として、これも一般貨物船とかタンカーとか特殊タンク船とか、それぞれの船の種類別に適正船腹量というものを策定いたしておりまして、これを一つの目安にいたしております。
 それから最高限度量という制度もございます。著しく供給過剰になる場合については、許可制度によります許可をストップするというような制度もございます。そういうことで、現に昭和五十八年から六十二年にかけましては、この最高限度量を策定いたしましてストップした時期もあったわけでございます。
 そういうことで運用も行っておりますし、また内航海運組合法というものがございます。これによりまして内航総連合会を中心にいたしました調整事業を行っております。ほとんどの内航船主はこの組合に加入しているわけでございまして、ことで船腹調整事業を行っており、いわゆるスクラップ・アンド・ビルド制度を実施いたしております。現在は一般貨物船については一の船腹を新造する場合には一・三のものをスクラップしなければいけないということでいたしておりますが、これも時代時代に応じてこの比率を変えてまいっております。
 そういうことで逐次船腹量の調整は進んでまいっておりまして、ちょっと今数字は持ち合わせておりませんけれども、ひところに比べればかなりその船腹量の調整も進んでまいってきておる状況でございます。
 今後、内航海運についていえば、我が国産業構造の変化に伴いまして、内航海運は何といいましても重厚長大型の貨物を運送するわけでございまして、我が国の素材型の産業が次第に加工型に変わっていく、あるいは経済のソフト化、サービス化が進んでいくという中では将来的にはやはり貨物輸送量はどうしても減ってくるということが見込まれるわけでございます。昨年の九月に策定いたしました適正船腹量におきましても、五年間についてそれぞれの船腹量を策定いたしまして、これを目安にしてこの船腹調整を実施していこうとしているところでございます。そういうことで、我々としても現在の制度をいろいろ活用しながら、この内航海運が我が国産業にとって大変大切な機能を果たしているわけでございますので、的確に事業が遂行できるようにいろいろと努力をしてまいりたいと考えております。
○河村委員 いろいろおやりになっているようであるけれども、実態がちっとも改善をされていないように思われる。
 そこで、運賃。陸上のトラックは認可料金制をとっていますね。それ以上に大きなウエートを持っている内航海運について、運賃は標準運賃というものをつくって、業界で調整運賃というようなものをつくった例があるように思いますが、今どうなっているのか。どうしてこれは、ここまで荷主の圧力で運賃がダンピングに近い状態にされることが多いにかかわらず、認可運賃制度がとれないのか。許可事業でなければいいですよ。もう野放しにしてほっておくというなら別だけれども、役所が法律で許可制をとってやっている以上、そのくらいのことはやらなければおかしいのじゃないかと思うけれども、どうなんですか。
○中島(眞)政府委員 御指摘のとおり、トラックについて運賃は認可制度をとっておるわけでありますが、内航海運については標準運賃制度ということでございまして、いわゆる強制力を持ったものではない制度になっております。また、内航海運組合法によります組合の調整事業の一環としての調整運賃というのがございますが、これに違反した場合もその組合の内部規律によるということでありまして、いわゆる法律に基づいての罰則を伴った強制運賃ではないという点が違うわけでございます。
 なぜそういうことになっているかという点でございますが、内航海運の場合におきましては、船の種類、船種と私ども言っておりますが、それから船型、船の型でございますね、それから船齢、あるいは船価というようなものが非常にばらばらでございまして、大きな幅がございます。また、港湾の荷役能力といったものも非常に区々でございまして、運送原価というものが非常に差が著しいわけでございまして、トラックのようなほかの輸送機関のように画一的なあるいは類型的な運賃や料金が決定しにくいという特殊性がございます。そういうことで標準運賃制度を現在法律で用意しておりますけれども、この標準運賃制度も過去に昭和四十一年と四十六年の二回設定されたことがございますが、この場合におきましても特定の航路、貨物、停泊日数、船型というものを前提としました一つのサンプルとしての運賃を算出しているわけでございまして、すべてのケースについて適用できるというものではございません。そういうことで、非常に一般的あるいは類型的な運賃料金というものを技術的に設定できない、それが非常に困難である、こういうところから現行の制度になっているわけでございます。
 一方、先ほど申し上げましたように、内航海運組合総連合会を法律に基づいて設置されておりまして、そのほか幾つかの海運組合がございますけれども、そういうところの組織的活動によりまして、御指摘のとおりまだ十分ではないかもしれませんけれども、体質の強化ということも図られてまいっております。運賃につきましても、例えば鉄鋼とか石油とかというものにつきましては、関係の荷主業界との間で話し合いの場が確立されておりまして、あるいはまた専用船などにおきましては、個別の船社と荷主との間で具体的な運賃交渉が行われるというようなルールがかなりできてまいってきております。そんなことで、この標準運賃制度も制度としては現在法律上ございますけれども、設定されたものが五十年の五月には廃止されたという経緯がございます。また、調整運賃につきましても、これは昭和四十二年に内航タンカー組合、内航輸送組合、大型船輸送組合などの鉄鋼、石油、石炭のその三品目について航路そのほかの運送条件を特定いたしまして実施したわけでございますけれども、先ほど申し上げたような経過によりましていずれも昭和四十八年から四十九年にかけて廃止されたという経緯がございます。
○河村委員 どうも私はその説明は納得しがたい。船種、船型、その他の条件がばらばらだから同一の運賃がつくれないというのでは、それは運賃そのものの法律から外れてしまうのじゃないのですか。運賃というのはやはり同一のものを同量、同じ距離を運んだら幾らというふうに決めて、その運賃を目安にしてそれで船種、船型、商売のやり方、そういうものをお互いに競争して企業をやっていく、そういう性質のものでなければいけないので、相手の競争条件がばらばらだから運賃は同一ではならないというのでは運賃というのはそもそも決まらないのじゃないですか。
○中島(眞)政府委員 ただいま申し上げましたように、船種とか船型とか船齢とか船価とかそういうものが船によってばらばらである、つまり提供するサービスそのものがばらばらでございまして、運送事業者サイドの方の原価の差が非常に著しいということから画一的なあるいは類型的な運質や料金の設定が困難であるということを申し上げたわけでございます。
○河村委員 きょうは船員法の問題ですから、運賃論をここでもっていつまでもやる気はないけれども、相手の競争条件が同一でないから同一の、均一の運賃は決められないという理屈はないので、運賃の方が先におおよそのところで決まって、それを条件としてお互いに競争してほかの条件をあわせていくということになるはずで、どうもちょっとそれは私には大変おかしいと思う。もう一遍これは考え直す必要があるのじゃないですか。運輸大臣はこういう議論だけではちょっと答弁は無理ですか。
○石原国務大臣 議論を拝聴していて、それぞれ言われることに互いに理があるような気がしました。大変難しい問題だと思います。しかし、業界の発展安定のためにもこれから鋭意検討していきたいと思います。
○河村委員 運賃と密接に関連する用船料が非常に値切られて、これが船舶経費を賄うに足りないようなものができているものだからこれが経営を圧迫するということも非常に大きいようでありますが、用船料については役所としてのコントロールは考えていないのですか。
○中島(眞)政府委員 用船料につきましても、今申し上げたのと同じ理由によりまして、画一的、類型的なものにしがたいというようなことがございまして、今日まで用船料についても、調整の用船料ということは制度的には可能でございますけれども、これまでも設定されたことがないわけでございます。業界の中では、そういうことについての議論も行われておりますが、なかなか技術的にも難しい面があるようでございます。ただいまの先生のお話も踏まえながら、私ども今後業界の方ともよく相談してまいりたいと思います。
○河村委員 運賃も用船料も結局はコントロールできない、適正船腹量なんといっても、一応数字を出すだけでもって、これまたどうにもならぬということになれば、何のための許可事業にしているんだかわからない。非常にその点は不満でありますが、これはまた日を改めてお尋ねをしたいと思います。
 そこで、船員関係に戻りますが、そうしたもろもろの要件も加わって、内航の小型船舶の船員は、確かにすべての面で悪い労働条件下に置かれていることは事実でありましょう。そこで、運輸省の方で「小型内航船員の労働時間等に関する監査指導の強化について」という通達を六十一年の四月に出しておりますね。これでもって労働時間、休日、休暇等についての監査をおやりになったそうだけれども、実際そこで出てきた結果は一体どうだったのです。
○野尻政府委員 本通達の趣旨は、七百トン未満の小型内航船の労働時間等については、昭和四十二年に制定されました小型船等に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令により規定されているものの、その労働実態については、長時間労働が目立つといったようなことで問題が多いということにかんがみまして、船員労務官が船舶を臨検しまして、航海日誌、時間外手当簿、海員名簿あるいは船員手帳など、書類のチェックを行いまして、省令の運用について問題があると認める場合には所要の措置を講ずるというものでございます。船員労務官は昭和六十一年には七百トン未満の船舶七千六百十七隻を臨検いたしまして、労働時間につきましても時間外手当簿を中心としまして指導を行ったところでございます。今後も引き続き労働時間の適正化を図るために船員労務官等による監督指導を強力に実施してまいりたいというふうに考えております。
○河村委員 実際調べてもその範囲というのは非常に小さいでしょうから、なかなかわからないかもしれないけれども、いかに規則が守られておらないかという実態が明らかになったと思うのです。さっき船員部長は、いわゆる黄犬契約の存在は風の便りには聞いているけれども、見たことないとおっしゃいましたね、本当ですか。組合活動は絶対にいたしません、もし組合活動をやっていることがばれたら直ちに首になっても全く異存はありませんというような種類の誓約書を雇用に際して出している現物を私は見たことがあるけれども、私どもが見たことがあるものを船員部長が知らないというのはどうも大変わかりにくいけれども、どうなんです。
○野尻政府委員 内航海運の事業者の数というのは、昨年の三月末現在で八千社以上あるわけでございまして、その大多数が小規模企業であります。これらの企業に雇用されている船員はざっと四万人だと言われているわけであります。しかもそのうちの七〇%が未組織船員だという状況の中にありまして、労働協約がないということから、その就労実態が把握しにくいという状況にあることは事実であります。そういう観点から、今お話にありました黄犬契約につきましても、そういううわさがあるということは聞いておりますけれども、事実として黄犬契約が存在しているということについての確認をしたことがないという意味でお答え申し上げました。
○河村委員 あるのですよ、実際。だから、ないなんて言わないで、もうちょっと本当のところをつかんでやってもらわないと困ります。これは細かいことだけれども、業者の中に、自分ところの保有船を裸貸し渡しをしてチャーターバックして使うことによって、所有を別の企業に移して、それぞれの企業が十人未満になるようにして、十人未満になると就業規則をつくらなくてもよろしい、そういうことによってこういう労働規則の違反をやっておるという事実があるように聞いていますが、それはあなた、知っていますか。また、知っているとすれば、就業規則を十人未満でもつくらせるとか、あるいはそういうものも見せかけの分割は認めないとかなんとか、どちらかの方法をとらないとだんだん抜け穴が大きくなると思うのですが、いかがですか。
○野尻政府委員 就業規則を免れるという目的で、今御指摘のような形態がとられるというような事実については私ども聞いておりません。
○河村委員 検討してみてください。
 次に、小労則の改正について伺います。
 この改正法案が成立をしたら小労則の改正には速やかに取りかかるということに相なっておりますが、どういう段取りになりますか。
○野尻政府委員 七百トン未満の小型内航船につきましては、小労則で労働時間が定められているところであります。この省令につきましては、船員法の定めに準じた規定となっている部分もあります。したがいまして、補償休日制の創設等、本法の改正に伴いまして当然その見直しが必要になると考えております。
 この省令の改正につきましては船員中央労働委員会の審議を経ることとなっておりますので、具体的内容について今ここで申し上げるという段階ではありませんけれども、本改正の趣旨が省令に反映されるように最善の努力をしてまいりたいというように考えております。
○河村委員 今まででも小労則には定員の規定はありませんね。定員については、法の条文をちょっと忘れたけれども、要するに七百トン未満の船に対しては六人以上の甲板部員を乗せるという規定が適用除外になっておりますので、そのためにわざわざ六百九十九トンなどという船ができて、それが大勢を占めているということであって、要するに定員の規定を外されることによって非常に小人数で船を運航する、それで内航海運が成り立っていると言ってもいいかもしれない。しかし、その程度がひど過ぎて、現実に内航船舶においては船長以下三人配置、多くても四人ないし五人配置で、一人が一日十二時間当直をして走っておるというのが実態になっておりますね。こういう実態があるからこそ勤務時間短縮がなかなか難しいという話になっていくわけで、こういう実態を改善をしていくためには、やはり定員を決めていかないと、三人や四人でやっておればこれはどうやってみても休憩時間なんかとれるわけがないので、自然と労働時間は長くなりますね。それから、当直を十二時間継続しておれば当然眠くなる、居眠りをして事故を起こすという例も間々あるわけです。だから、この際、六人以上ということを特に私は言うわけではないけれども、小労則改正に当たって適当な定員を決めてそれを守らせるということを考えないと、勤務時間短縮の目的も達せられないし、いつまでも安全上の欠陥を抱えたまま動いているということになるであろうと思うので、その点は一体どう考えていますか。
○野尻政府委員 現行におきましては、小型船舶については就航する航路が短いものもありますし、航海の態様も多種多様であるということから、一律に定員を定めることが難しいということで定員制度が定められていないわけであります。ただ、先ほど申し上げました船員中央労働委員会の答申の中では、小労則に関しまして法律への適用を拡大すべきだということとあわせて定員についても見直しをすべきだ、それを三年以内をめどに結論を用意しなさいというような御答申をいただいておるわけでございます。この見直しについての労働委員会からの御指摘に合わせまして、私ども今後小型内航船の定員の問題についてもあわせて検討してまいりたいと考えております。
○河村委員 この船員中労委の答申で公益委員の見解としてある中に、本法の「適用範囲、小労則の扱い等について」という見出しの前半の方で、「適用範囲の拡大については、三年以内を目途に結論を得るよう当委員会の審議を求めるべきものと考える。」と書いて、その次に「その際、時間的余裕がないため今回審議しなかった定員に関する規定の見直し等についてもあわせて議論を行うべきであると考える。」これは読んだとおりであって、書いておる内容というものは、小型船舶について、本法適用について三年以内に結論を出せ、同時にその中に定員の規定を入れるということを言って、小型船舶に定員の規定を入れることについて、入れるとは書いてないけれども、議論をなすべきであるということを言っているわけです。そう理解してよろしいですね。
○野尻政府委員 このくだりについて、公益委員見解が出された経緯について私の承知している限りで御説明申し上げますと、まず二の表題については「適用範囲、小労則の扱い等について」と「等」というのをつけて、なぜ「等」をつけたかと申しますと、労働委員会で船員法改正について審議している際にいろいろな問題が起きました。今問題になっております小労則を廃止して本法へ持っていくという適用範囲拡大の問題、それと同時に使用者側からは、現在の船員法七十条で甲板部員六人以上を乗り込ませなければならないという規定はもう陳腐化しているので、これを改めるあるいは撤廃すべきだというような御意見もあったわけであります。しかし、いずれもそういう審議をしていく時間的余裕がないので、この際は労働時間についてのみ答申をしまして、今申し上げました適用範囲の拡大の問題あるいは七十条見直しという問題についてはまた改めて審議しようというようなお話になりまして、表現としてはなお書きで、こういう形に入ったと承知しております。したがいまして、ここで言っているなお書きは、先生が御指摘になられたような意味でも解釈できますが、一方使用者側からは、七十条の規定が現在の運航実態に合っていないという面からの見直しも含まれるべきだというふうに解釈されているとも考えております。
○河村委員 どうもその議論は日本語の読み方としては正しくないですね。「適用範囲、小労則の扱い等について」と書いて、七百トン未満の小型船舶に対する問題をここで取り扱っているわけでしょう。「等」というのは、「等」なら何でも入るというけれども、それはその前に書いてある字句につながって、それとの脈絡のある「等」でしょう。だから、それが突如として七百トン以上の船舶の定員の見直しまでこれに入っているんだというのは、どう歪曲してもとてもそうは読めないように思うのですけれども、一体だれがそういう解釈をしているのです。
○野尻政府委員 この公益委員見解というのは船員中央労働委員会からの答申でございますから、当然船員中央労働委員会がこの解釈についての第一義的な解釈権限があるということになりますが、私が申し上げましたのは、この公益委員見解が出るいきさつ及び審議の過程における議論等を踏まえて考えると、このなお書きについてはそのような解釈になるというふうに申し上げたわけでございます。
○河村委員 ここで水かけ論をしてもしようがないから、一遍船員中労委の見解を公式にとってください。
 それはともかくとして、本法適用範囲と小労則の取り扱いについて「三年以内を目途に結論を得るよう当委員会の審議を求める」というふうになっておりますが、これは日程的にはどのようにやっていくつもりですか。
○野尻政府委員 まず第一に、私どもといたしましては当面の問題は、今御審議いただいております船員法改正案が成立いたしますと直ちに政省令の作成に取りかからなければなりません。同時にまた、本法の改正に伴って必然的に直さなければならない小労則の改正にも取りかからなければいけないということで、私ども非常にこれから作業スケジュールがいっぱいというところでございます。しかし一方で、先ほど申し上げました小労則の適用範囲拡大の問題については、法律上の問題あるいは実態面からの検討問題、いろいろな問題を抱えておりますので、私どもはいろいろな観点からの検討をあわせて行うつもりでありますが、いずれにいたしましても、労働委員会では三年以内をめどに結論を出すように審議しろということでございますので、その審議に合わせることができるようなしかるべき時期に労働委員会にお諮りをするようにしたいと考えております。
○河村委員 時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますが、運輸大臣、これまで議論しておりまして、労働時間の問題について海運のガンは内航の小型船舶であることはおわかりだと思います。だから、これを単に労働条件だけの問題としてあるいは船員だけの問題としてとらえるのではなくて、内航海運業全体をこれからどういうふうに改善をし近代化していくかというのが最大のかぎになるわけですから、ぜひともこの問題について、これを契機に一遍見直しをして今後の方策をつくってほしい、こう要請をしたいと思いますので、最後にそれに対する決意を伺って質問を終わりたいと思います。
○石原国務大臣 御趣旨を体しまして、日本の海運の大事な部分を占めております内航の問題に関しましても、その近代化に精いっぱい努力をしたいと思います。
○河村委員 終わります。
○関谷委員長 中路雅弘君。
○中路委員 船員法の改正法案を中心に御質問したいと思いますが、最初に今回のこの改正法案が出てきた背景といいますか、提出された根拠についてお尋ねしたいと思います。
○野尻政府委員 今回の法律案を提案させていただきました背景につきましては、先日大臣から提案理由説明で申し上げたところに掲げてあるとおりでございまして、まず、労働時間の短縮が、国民生活の向上あるいは労働者の福祉の増進の観点のみならず、国際経済情勢を背景としまして、経済構造調整、内需拡大の観点からも重要な課題となっているというのが第一の理由であります。
 それから第二の理由としまして、船員法の労働時間に関する規定は航海中あるいは停泊中といった別に細かく定められております。しかし、この船員法という法律は、昭和二十二年に制定されまして既に四十年を経過しておりますけれども、その間にこの労働時間に関する規定は改正されていないということで、一方、その間に技術革新の進展によりまして船舶の運航形態が変わってまいりました。その端的な例が、いわゆる停泊時間の減少という形になってきているわけであります。あるいはまた、船舶の技術革新の進展によりまして就労体制も変わってきているということで、四十年前の労働時間法制と労働実態とが変わってきているという面がございます。こういうようなことを背景にいたしまして、今回この法案を提出するに至ったわけであります。
○中路委員 直接は労基法の改正を機会にこの法案の検討を開始されたと思うのですが、八七年九月に運輸省が船員中央労働委員会に諮問された、そういう形で、運輸省の側から提起をされて検討されてきたというふうに理解していいわけですね。
○野尻政府委員 そのとおりでございます。
○中路委員 この船員法の改正の法律案を提出するに当たって、運輸省として、現在の船員の労働実態、労働時間あるいは休日・休暇等をどのように把握されていたのか、あるいは調査をされたのか、調査されたとすればどういうふうに実態を理解されているのか、簡潔に。
○野尻政府委員 私ども、もちろんその労働の実態を、つぶさにというわけにはまいりませんけれども、できる範囲で調査をし、さらにまたいろいろな統計等を通じて船員労働の実態がどうであるかということを検討した上で今回の法案提出に至ったものでございます。
○中路委員 六十一年九月から、運輸省の船員部の労働基準課長等も参加されていますけれども、船主協会あるいは海員組合等も入って、財団法人海上労働科学研究所で船員の実態調査というのをされたわけです。この結果が「六十二年度船員労働実態調査」ということでまとめられているとお聞きしていたのですが、運輸省へこの実態調査書を資料で出していただきたいというお願いをしていたのですが、提出いただけないのです。これは理由があるのですか。
○野尻政府委員 今、職員に聞きましたところ、そういう形での要望を受けていなかったということでございますが……。
○中路委員 それは全く違うのですよ。レクに来られたときも要請したのですよ。そうしたら、こういう回答なんですよ。調査が、把握数も少ないし、実態を正確にあらわしていないという点もあるので、あえて正式に出すことはしないのだといぅ話なんですよ。わかりませんか、事情は。
○野尻政府委員 私どもは別に故意にこれを隠そうというわけではございませんが、先生が今御指摘になられた、つまり私どもの職員が説明をいたしましたように、あの実態調査に当たりましては、いわゆる全数調査といいましょうか、すべての労働実態を反映した形で調査結果が出ているかというと必ずしもそうではない面がございまして、これをもとに議論されますと誤解されはしないかという配慮を私どもはしております。
○中路委員 海上労働科学研究所で直接いただきましたから持っているのですけれども、この実態調査、それは全般の実態を正確に詳細に調査をすることは容易ではありませんね。しかし、この実態調査書は、調査の委員に海員組合の役員の方も入っておられますし、もちろん船主協会から各関係業界、組合、それから船員部の労働基準課長を初め関係の皆さんが参加して調査をされているわけですけれども、それなりに一応、今の船員の労働実態の一部を統計的にあらわしているものだと私は思うのですね。そういう観点で二、三これを読んでみて、本当に労働実態、特に長時間労働等がひどい状況にあるということを痛感するわけです。
 例えば労働時間は、これは一週間でとらえているわけですけれども、一週間の総労働時間で四十八時間以上が圧倒的に多いのです。例えば外航船の五千トン以上でとってみますと、四十八時間以上は七四・一%ですが、特に今の五十六時間を超えているのでも合計しますと三四・八%になります。この中には一週間に九十六時間から百時間、百四時間というのもあるのですね。内航船になるとさらにひどくて、四十八時間以上ですと八六・二%、五十六時間以上になっても半分以上ですね。今の五十六時間、これを半分以上が超えて、一週間の労働時間ですから、年間にすると三千時間というのもこれを読むと出てくるわけです。現在の船員法さえ守られていない。また、小さい船ほどひどい実態にあるというのがこの統計の一部でもわかるのです。これは確かに抽出でやっていますから全体の実態というのは出ていませんけれども、労働省も加わった調査の実態ですから、一応それなりにこういう事実があるということはお認めになるでしょう。
○野尻政府委員 今突然の御質問でございますので、私のお答えが場合によっては誤りがあるかと思います。その点はお許しいただきたいと思います。
 今御指摘の労働時間の調査は、一週間の労働時間の調査であります。労働時間は、通常、陸上の作業の場合ですと一週間タームで決められると思いますが、海上の場合には航行の実態に合わせて労働時間を把握しなければならないわけであります。つまり、一週間ずっと船が動いている場合には労働時間は当然五十六時間ということになってしまうわけであります。したがって、年間ならして総労働時間は一体どのくらいであるか、逆に言えば、年間、休日を付与されているわけでありますから、付与される休日は幾らかという観点からもやはり検討しなければならないだろうと思います。ただ、いずれにしましてもかなり現実において、特に小さな船について労働時間が多いということは多分事実であろうと私も思っております。
○中路委員 今休日のお話が出ましたけれども、統計を見てみますと、例えば一カ月の休日・休暇の取得状況を例にとりますと、航行中は、外航船五千トン以上で一・三、一カ月一日の休日がやっと、小さな船で見ますと、例えば五百トンになりますとゼロですね、七百トンで〇・一、航行中は休みがないというのが実態調査で出ている状況だと思うのです。
 このたびの改正で、航海、停泊及び職種の区別なく、経過措置はありますけれども労働時間を一日八時間、週四十時間にしていこうと六十条でなっていますし、休日制度の導入、それから振りかえですか補償休日制度が入ってきているわけです。それなりに大きな改善なわけですが、こうした休日が保障され、あるいは時間短縮が法制上保障されても、実際に実行できるのかといえば、やはりそれなりの裏づけが必要でありますし、その中で定員の問題というのが大変大きいのじゃないかと私は思うのです。船員労働に週休制を導入しようとすれば、予備員を乗船させない限りこれは航行中は無理があるわけですし、そういう点で補償休日を本当に確保するためには、船員の定員を定めるようにしなければなりませんし、せっかく基準労働期間を定めても、実効性という点でこうした裏づけかないと難しいと思うのです。労基法には定員は定めてないのですが、そもそも労基法で船員の労働条件が担保できませんから船員法という制度があるわけですから、今度のこうした改正を実際に実効あるものにしていくという点では、予備要員の確保ということが絶対必要条件だと思いますが、この点はいかがでしょう。
○野尻政府委員 船舶所有者ごとに企業規模あるいは使用する船舶の大きさ、就航する航路、就労形態がさまざまであります。これらすべての要素を考慮しつつ予備船員も含めて船舶所有者単位での要員の基準を設定する、そしてこれを法律で定めるというのは技術的に困難であると考えております。そういうことでございます。
○中路委員 実際に現状は今言ったような実態ですから、今度は法文上それが改善されても、そういう裏づけがはっきりと担保されない限りこれは実効あるものにならないと私は思うのですね。また、そういうことが守られているかどうかということをチェックしていく。例えば船員労務官の問題もついでにお聞きしておきますが、今船員労務官は全体で何名おられるわけですか。
○野尻政府委員 全体で百三十九名でございます。
○中路委員 配置ですけれども、本局、支局、どういう配置になっていますか。
○野尻政府委員 百三十九名の内訳を御説明申し上げますと、本局では四十五名、支局に九十二名、合わせて百三十七名でございまして、そのほかに沖縄に二名を配置しておりまして、合計百三十九名と相なります。
○中路委員 船員労務官が一人もいないという支局も五カ所ぐらいあると聞いているのですが、どこですか。
○野尻政府委員 今の無配置局は五カ所でありまして、調べるのにちょっと時間がかかりますので二、三例示いたしますと、苅田、相生、三崎といったところでございます。
○中路委員 一人しか配置されていないというのが圧倒的に多いのですね。私がいただいた資料ですと三十四の支局が一名の配置になっていますが、間違いございませんか。
○野尻政府委員 そのとおりでございます。
○中路委員 陸の方の労働基準監督署はよく行くのですけれども、企業等へ立入調査に行く場合は必ず二名で行っていますね。大きな船の船内で一人で臨検するのもいろいろ大変だと思うのですね。そういう点で船員労務官は、少なくとも一人のところは増員して二人、複数配置すべきではないか。船員労働行政のこれからの一層の充実が必要になってきているわけですし、労働実態からいっても、その改善のためにもぜひ必要なわけですが、この労務官――その前に、例えば今まで扱った申告、苦情件数ですね、受理した件数がどれぐらいになっているのか、あるいは立入検査といいますか臨検の件数はどれぐらい扱われていますか。
○野尻政府委員 御質問の趣旨は船員労務官の監査実績はどうかということだろうと思いますので、御説明申し上げます。
 監査のために船舶、事業場に入った件数は、六十一年の数字でございますけれども、一万二千九百五十六カ所、違反した船舶等で指摘しましたのが九十七カ所、違反件数が百九十七件、指導件数が四千二百一件といったところでございます。
○中路委員 船員労務官は大変な仕事なんですよね。先ほど私ちょっと質問しかけたのですが、少なくとも支局に二名、複数配置という方向を基本にして増員の体制を検討する必要があると思うのですが、いかがですか。
○野尻政府委員 私どもとしましても、先生御指摘のとおり、従来から複数配置にすべきものということを前提にいたしまして増員計画を組み、最近のような情勢でございますのでなかなか思うようにはまいりませんけれども、逐年少しずつではありますけれども増員がされているという現状でございます。
○中路委員 努力はされているのですが、実際は三十四支局が一名配置ということで圧例的に多いのですね。そして一名も配置されていないのが五支局もあるということですから、ぜひこれは一日も早く増員を、特に二名配置を実現しなくてはならない、強く要請しておきたいと思います。
 次に、船員法の適用船舶の数、船員等の関係ですけれども、まず船舶なんですが、七百総トン以上の船舶、そして七百総トン未満の船舶、それぞれ何隻ありますか。
○野尻政府委員 商船について御説明申し上げますと、七百総トン以上の船舶は六十一年十月現在で二千四十二隻、七百総トン未満の船舶は一万一千九十三隻ということになっております。
○中路委員 合計しますとこれで一万三千百三十五隻になるのですが、指定漁船はどのぐらいありますか。
○野尻政府委員 漁船は九千七百四十六隻であります。
○中路委員 今お話しのものを合計しますと二万二千八百八十一隻になるわけですけれども、結局総トン数七百トン未満及び指定漁船、これは労働時間、休日、定員等の適用対象外のままになっていますね。七百トン以上の対象の船は、これで見ますと、ちょっと今計算しますと一八・七%、二割ないですね。法の適用対象が二割の船だということが言えるわけですね。
 七百トン以上の乗組員数あるいは未満を含めて船員数はどのぐらいの数字になりますか。
○野尻政府委員 船員数について御説明申し上げますと、まず七百総トン以上の商船に乗っております乗組員の数は三万五千百六十人、七百総トン未満の商船に乗っている船員数は四万二千九百二十三名でございます。ただ、このほかに会社ではそれぞれ予備員を抱えているわけでありまして、予備員の数を加えなければなりません。予備員総数は二万一千百八十一名でありまして、これを七百総トン以上と七百総トン未満とに振り分けをすることになるわけですが、これまでのいろいろの経験値等から考えてみますと、おおよそ二万一千のうち一万七千人程度は七百総トン以上の商船に属するものと考えております。したがいまして、それで計算いたしますと、ざっと、七百総トン以上の商船に関係しております船員は五万二千人余り、七百総トン未満につきましては四万六千余りといったところであろうかと思います。
○中路委員 先ほど船舶のあれで聞きましたから、漁船の方の乗組員数は幾らになりますか。
○野尻政府委員 漁船の方の船員数は、乗組員数が八万六千百八十三名、予備員数が二千二百八十三名ですので、これを加えますとざっと八万八千余りということになろうかと思います。
○中路委員 今、船舶数それから船員数等でお聞きしましたけれども、船舶数では法律の対象になるのが二割――一割ですね。八・九%。船員ではさっきの予備船員がありますから少し変わりますけれども、いずれにしてもこの適用対象外が圧倒的に多いわけです。そういう点で、こういう状況のままでこれが本当に労働者の保護になるのだろうかという疑問さえ持つわけです。これは先ほども御質問がありましたけれども、特に内航海運、小型、こうした分野は省令でやられているわけですから、これを見直す、さらに本法に一本化していくということがぜひとも法の適用からいって重要だと思いますけれども、改めてお聞きしておきたい。
○野尻政府委員 船員中央労働委員会からは、今御指摘の点について三年以内をめどに審議をし結論を得るべきであるという答申をいただいておりまして、私どもはこの答申に従いまして今後対応していきたいと考えております。
○中路委員 本法案はいわゆる省令、命令で定める箇所が非常に多くなってきているわけです。改正部分で、改正以前と以後ではいわゆる命令で定める箇所数はどうなっていますか。数ですね。わかりますか。
○野尻政府委員 多少ふえておるのかもしれませんが、数まで私どもまだ検証しておりません。
○中路委員 多少じゃないのですね。私ちょっと見ましたら、今度の改正部分で二カ所が十九カ所あるのですね。圧倒的に命令、省令になっているということなのです。だから、実際に審議してくれといっても中身はこれから――恐らく聞いてもおっしゃらないでしょうが、中央の労働委員会で審議を経てというお話でしょうから、実際の労働条件の中身が示されないまま論議をするということにもなってくるわけです。
 就業規則、または船舶所有者が船員の過半数を代表する者との協定で定める部分、これはどのくらいありますか。これもわかりませんか。
○野尻政府委員 今資料を手持ちで持っておりませんので、御勘弁願いたいと思います。
○中路委員 労働協約に定める部分の箇所もあるわけですし、船員労働の最低基準を定めるこの法案が命令や就業規則、労働協約に多くをよりどころとすることになっているわけですね。これはどういう経過からそうなっておるのですか。
○野尻政府委員 基本的な考えといたしまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、今回の労働時間に関する規定の改正は、単に労働時間を四十時間にするということではなくて、従来の航行中あるいは停泊中、あるいは当直者、非当直者別といったような決め方をやめてしまいまして、一律に労働時間法制に切りかえようということになったわけでございます。その過程において補償休日という概念を導入したわけですが、補償休日の計算をするに当たりましては、非常にきめ細かな技術的な事項が多岐にわたるわけでございます。したがいまして、基本的な考え方につきましては法律の本文ではっきり定めておりますが、それを具体的に計算するという段階あるいは補償休日を付与する仕方といったような、いわば技術的な問題につきましては命令で定めさせていただこうという考えでございます。
○中路委員 考え方として、今の船員の労働実態に船員法を合わせるという考えが基礎にあると思うのですね。国の責任として今の船員の労働条件改善のために船員法をどのように適用していくのかという姿勢でこの問題と取り組んでいかないと、今の長時間労働や休日も付与されない実態を根本的に改善することができないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
○野尻政府委員 今回の改正に当たりましては、ある一定期間を通じて、将来目標になりますが、週四十時間労働制ということに移行できるような仕組みを考えているわけでありまして、そこでは一定の基準期間と書いてありますが、基準労働期間について週平均四十時間になるように労働時間を定める。したがいまして、個々の一週間をとらえてみます場合によっては五十六時間労働をする場合もありますが、超過労働時間については別途休日という形で補償する、あるいはまた一週間当たり一日の休日は保障するという形で大幅な改善がされていると私どもは考えております。
○中路委員 この問題は、私が強調するのは、御存じのように憲法二十七条で勤労者の権利義務、勤労条件の基準の項がありますが、その二のところに「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」となっているのですね。労働条件の基本は法律で定めるということになっているわけです。だから、何から何まで法律で定めるということはもちろん不可能ですけれども、国の責任で船員労働を改善していくというならば、やはり労働条件の法定主義を守って、できるだけ省令等にゆだねる、落としてしまうというのでなくて、こういう省令等にゆだねる部分が少なくなっていくということが船員法の権威を高めることにもなるわけですね。それが今回の場合、逆にどんどんみんな命令で落としてしまうという、中身もわからないという状況なのですね。これは労働条件、賃金、就労時間、休息その他の勤労条件、いわゆる基準は法律で定める、こういう法定主義を後退させてしまうということになるのじゃないかと思うのですが、いかがです。
○野尻政府委員 私どもといたしましては、今回の改正は何といいましても労働者の保護という観点から労働時間を短縮すべきであるというように考えておるわけであります。ただ、労働時間の短縮につきましては、先ほど来申し上げておりますように、労働基準法のように週の労働時間というものを決めまして、それで時間を短縮するということが船の場合は事実上不可能だ。そこで考え出しましたのが補償休日制度ということでございます。
 ただ、補償休日制度の場合は、一週間働いた場合に、例えば四十時間なら四十時間とした場合に、四十時間を超えて働いた分については別途の振りかえ休日という形で補償するとか、あるいはまた一週間当たり一日は休日として必ず保障しなければいけないとかというような、非常に技術的な内容にわたる規定が盛り込まれているわけでございます。したがいまして、そういう基本的な考え方については、すべて法文で書かれておりますけれども、その補償休日について具体的にどういう形で計算をし、どういう形で付与していくかということになりますと、これをすべて法律では書き切れないということで、必要最小限の範囲内で命令で定めるようにさせていただいているわけでございます。
○中路委員 いや、その命令の部分が少なくなるのじゃなくて、どんどんそれをふやす、しかも対象の範囲もまた非常にわずかですからね。だから本当に労働条件をこういう法律で決めていくということになれば、もっとそういう意味では国会で論議が――省令ということになれば、法律事項でありませんから、こういった改正案等の論議の対象に直接はならないわけですね。そうでなくて、やはり国会で十分その中身についても論議していける、そういう立場での法定主義を基本的には守っていくということを強く要請しておきたいと思います。
 時間もそうありませんから、あと一、二お聞きしたいのです。個別の問題ですが、特定船舶に対する変形労働時間制、七十二条の二で残されているわけですが、これまでは旧国鉄の青函、宇高連絡船ですか、これが廃止をされたわけですから、この特例は必要がないと思うのですが、これを廃止しなかったのはどうしてですか。
○野尻政府委員 今回は旧法を大幅に改正をいたしまして、いわば労働時間、休日に関する規定は全面改正に近いというように考えられます。今御指摘の点につきましては、旧法にあって新法にない規定がかなりあります。例えば端的な例で言いますと、旧法では旅客船の事務部の部員につきましては十二時間労働も許されるような規定になっておりました。それが今回は一律八時間労働に移すとかいうような形で大幅な改正をしているわけでございます。そうしますと、今後例えばクルーズ船とかいうような形で新しく出てくるであろう船の場合に、旧来の法律であれば対応できたものが新法では対応できなくなってしまうというような事態になりかねないわけであります。そういう意味もありまして、今御指摘の条文が残っているというように御理解いただきたいと思います。
○中路委員 使用者の皆さんのいろいろ書いた意見等を見ますと、フェリーだとか旅客船だとかそういうものもこの中の対象に挙げているのですね、今石油掘削の船の話が出ましたけれども。私はこうした特例は必要ないと思いますが、適用する場合に当たっては極めて限定して対処をしていかないと、これが規則緩和の道をあけることになりはしないかという心配もするわけです。その点はいかがですか。
○野尻政府委員 具体的な船舶あるいはその類型としての船舶、そういうような指定基準につきましてはこれから労働委員会で十分審議していただいて決めていこうというように考えております。
○中路委員 もう一つ。時間外労働は、船長の必要、労使協定、船員の過半数を代表する者との書面による協定ですか、これを届け出る場合定められることになるわけですけれども、この場合の基準をどうするわけですか。労使双方の合意があればいいということでは、時間外労働の事実上の延長が可能となるのではないかと思うのですが。
○野尻政府委員 今の御質問は、補償休日における時間外労働のことだと思います。
 補償休日につきましては、先ほど申し上げましたように、船舶運航の実態から見ますと、一週間に一日とか二日とか休日を与えることは難しいということから、ある一定期間はまとめて働いて、そのかわり休日をある意味ではまとめて取得するというようなことを考えたわけでございます。ただ、船舶というのは、荷主サイドからいろいろな要請もありましょうし、あるいは船舶の運航のスケジュール等もありましょうから、画一的に補償休日には絶対に働いてはいけないと言うわけにはいかないだろうということで、ある程度の補償休日における時間外労働というものは認めざるを得ないであろうということでそういうことにしたわけであります。
 ただ、それを船主の恣意のままにしてしまいますと、せっかく補償休日という制度を設けたにもかかわらず休みがとれないという事態が考えられます。したがいまして、いろいろな要件を課しているわけでありまして、一つは日数制限を課そうと思っております。命令で定めるということになりますが、これからどの程度の範囲がいいか、いろいろ考えます。例えば、現在労働組合と船主団体とで外航関係で結んでおります労働協約によりますと、年間休日百十八日に対して、私の記憶ではたしか三十八日間は就労することができるというような決めになっていると思いますが、そういうようなことも一つの参考になろうかと思います。そういった労働慣行あるいは労働の実態において定着しつつあることを踏まえて日数制限を考えなければいかぬと思いますし、さらにまた、労使間の協定でその点についても十分制約できるというように考えております。
○中路委員 そろそろ時間ですので、終わりに私は、この改正案について二、三見解を述べておきたいと思います。
 補償休日の法定化あるいは有給休暇の取得の条件の緩和など、労働条件を改善する一定の面がありますけれども、やはり労働諸法規の規制緩和の一環となるものですし、船員法の緩和といいますか、既に船主の方では甲板六名の定員も外す論議も出ているわけですし、こうした方向に道を開くという心配もあるわけです。また、先ほど指摘しましたが、命令によってどんどん定めるということが多くなってきて、労働条件の法定主義があいまいにされてくるということも指摘しておきたいと思います。船員労働の特殊性と言われる変形労働が一層促進されて、船員の人減らし等に新たに根拠になるということを強く感じるわけです。
 法案についての意見を述べて、質疑を終わりたいと思います。
○関谷委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
    ─────────────
○関谷委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
 船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○関谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ─────────────
○関谷委員長 ただいま議決いたしました船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、柿澤弘治君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。柿澤弘治君。
○柿澤委員 ただいま議題となりました船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。
 一 深刻な外航海運不況等に伴う厳しい船員雇用情勢に対処するため、新たな職域の確保に努めるなど積極的な対策を講ずること。
 二 我が国貿易物資の安定輸送の確保を図るため、国際競争力のある我が国商船隊の整備に努めること。
以上であります。
 本附帯決議は、当委員会における法案審査の過程におきまして、委員各位からの御意見及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、政府において特に留意して措置すべきところを明らかにし、船員雇用の安定に万全を期そうとするものであります。
 以上をもって本動議の説明を終わります。
○関谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 柿澤弘治君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○関谷委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
    ─────────────
○関谷委員長 次に、船員法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 この際、本案に対し、亀井静香君から修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。亀井静香君。
    ─────────────
 船員法の一部を改正する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
○亀井(静)委員 私は、自由民主党を代表して、本法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の案文はお手元に配付してありますので、その朗読を省略させていただきます。
 修正案の内容は、
 一 海員の一週間当たりの労働時間を定める政令は、週平均四十時間労働制に可及的速やかに移行するため、制定され、及び改正されるものである旨を明らかにすること。
 二 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。
 何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
○関谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 修正案につきましては、別に発言の申し出もありません。
    ─────────────
○関谷委員長 これより原案及び修正案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
 これより船員法の一部を改正する法律案及び修正案について採決いたします。
 まず、亀井静香君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○関谷委員長 起立多数。よって、亀井静香君提出の修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○関谷委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
    ─────────────
○関谷委員長 ただいま議決いたしました船員法の一部を改正する法律案に対し、柿澤弘治君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。吉原米治君。
○吉原委員 ただいま議題となりました船員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    船員法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。
 一 省令により労働時間等が規制されている小型船等に乗り組む船員に対する船員法の労働時間等の規定の適用に関して、できる限り早期に検討すること。
 二「小型船等に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令」及び「指定漁船に乗り組む海員の労働時間及び休日に関する省令」については、法改正の内容を十分考慮して、その改正について速やかに検討すること。
 三 漁船船員に対する有給休暇制度については、当面漁船分野の実態の正確な把握に努めること。
 四 労働時間に関する規定の適正な履行確保に配慮しつつ、第七十条を初めとする定員制に関する規定の見直しをできる限り早期に検討すること。
 五 時間外労働については、船員労働の特殊性にかんがみ、改正法第六十四条の規定が適正に運用されるよう十分な指導監督を行うこと。
   また、補償休日の労働に関しては、可能な限り休日を確保するように努め、その運用に当たって十分な指導監督を行うこと。
 六 各種労使協定の締結当事者である労働者代表の選出については、労働者の意思を適正に反映した選出が行われるよう指導すること。
 七 十人未満の船員を使用する船舶所有者についても、就業規則の整備が行われるよう、適切な指導を行うこと。
 八 内航海運における船員の労働時間短縮を促進し、併せて労働条件の改善・向上を図るため、内航海運業の一層の健全化を図るよう適切な指導監督を行うこと。
 九 船員法の履行確保、労働時間短縮の一層の促進を図るため、船員労務監査業務の徹底、必要に応じた船員労務官等の増員など船員労働行政体制の一層の充実強化を図ること。
以上であります。
 本附帯決議は、当委員会における法案審査の過程におきまして、委員各位からの御意見及び御指摘のありました問題点を取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、政府において特に留意して措置すべきところを明らかにし、我が国船員の労働条件のより一層の改善に資そうとするものであります。
 以上をもって本動議の説明を終わります。
○関谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 柿澤弘治君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○関谷委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。石原運輸大臣。
○石原国務大臣 ただいまは、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び船員法の一部を改正する法律案につきまして、慎重審議の結果御可決いただき、まことにありがとうございました。
 また、それぞれの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、政府として十分の努力をしてまいる所存であります。
 どうもありがとうございました。
    ─────────────
○関谷委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○関谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ─────────────
    〔報告書は附録に掲載〕
    ─────────────
○関谷委員長 次回は、来る十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十分散会