第112回国会 予算委員会 第16号
昭和六十三年三月一日(火曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 奥田 敬和君
   理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君
   理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君
   理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君
   理事 村山 富市君 理事 池田 克也君
   理事 吉田 之久君
      愛野興一郎君    池田 行彦君
      稲村 利幸君    上村千一郎君
     小此木彦三郎君    海部 俊樹君
      倉成  正君    小坂徳三郎君
      後藤田正晴君    鴻池 祥肇君
      左藤  恵君    佐藤 文生君
      斉藤斗志二君    志賀  節君
      鈴木 宗男君    砂田 重民君
      西岡 武夫君    林  大幹君
      林  義郎君    原田  憲君
      細田 吉藏君    松田 九郎君
     三ツ林弥太郎君    村田敬次郎君
      村山 達雄君    井上 一成君
      井上 普方君    上原 康助君
      川崎 寛治君    菅  直人君
      佐藤 敬治君    辻  一彦君
      坂口  力君    竹内 勝彦君
      日笠 勝之君    水谷  弘君
      宮地 正介君    田中 慶秋君
      楢崎弥之助君    安藤  巖君
      浦井  洋君    柴田 睦夫君
      中島 武敏君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 林田悠紀夫君
        外 務 大 臣 宇野 宗佑君
        大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君
        文 部 大 臣 中島源太郎君
        厚 生 大 臣 藤本 孝雄君
        通商産業大臣  田村  元君
        労 働 大 臣 中村 太郎君
        建 設 大 臣 越智 伊平君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長     梶山 静六君
        国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 小渕 恵三君
        国 務 大 臣
        (総務庁長官) 高鳥  修君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 瓦   力君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      中尾 栄一君
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 堀内 俊夫君
        国 務 大 臣
        (国土庁長官) 奥野 誠亮君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      大出 峻郎君
        警察庁交通局長 内田 文夫君
        総務庁行政管理
        局長      佐々木晴夫君
        防衛庁参事官  小野寺龍二君
        防衛庁参事官  福渡  靖君
        防衛庁参事官  児玉 良雄君
        防衛庁参事官  鈴木 輝雄君
        防衛庁長官官房
        長       依田 智治君
        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君
        防衛庁教育訓練
        局長      長谷川 宏君
        防衛庁人事局長 松本 宗和君
        防衛庁経理局長 日吉  章君
        防衛庁装備局長 山本 雅司君
        防衛施設庁長官 友藤 一隆君
        防衛施設庁総務
        部長      弘法堂 忠君
        防衛施設庁施設
        部長      鈴木  杲君
        経済企画庁調整
        局長      横溝 雅夫君
        経済企画庁総合
        計画局長    星野 進保君
        環境庁自然保護
        局長      山内 豊徳君
        国土庁長官官房
        長       清水 達雄君
        国土庁長官官房
        会計課長    佐々木 徹君
        国土庁大都市圏
        整備局長    北村廣太郎君
        法務省民事局長 藤井 正雄君
        外務省北米局長 有馬 龍夫君
        外務省条約局長 斉藤 邦彦君
        外務省情報調査
        局長      山下新太郎君
        大蔵大臣官房審
        議官      瀧島 義光君
        大蔵省主計局長 西垣  昭君
        文部省高等教育
        局長      阿部 充夫君
        文部省体育局長 國分 正明君
        厚生大臣官房総
        務審議官    黒木 武弘君
        厚生省健康政策
        局長      仲村 英一君
        厚生省社会局長 小林 功典君
        厚生省児童家庭
        局長      長尾 立子君
        厚生省年金局長 水田  努君
        通商産業省貿易
        局長      畠山  襄君
        通商産業省産業
        政策局長    杉山  弘君
        工業技術院長  飯塚 幸三君
        特許庁長官   小川 邦夫君
        労働大臣官房長 清水 傳雄君
        労働大臣官房審
        議官      佐藤 仁彦君
        労働省労政局長 臼井晋太郎君
        労働省労働基準
        局長      野見山眞之君
        建設大臣官房会
        計課長     鹿島 尚武君
        建設省河川局長 萩原 兼脩君
        自治省財政局長 津田  正君
 委員外の出席者
        会計検査院事務
        総局第三局長  大沼 嘉章君
        参  考  人
        (医療関係者審
        議会委員)
        (東京大学医学
        部教授)    水野 正彦君
        予算委員会調査
        室長      右田健次郎君
    ─────────────
委員の異動
三月一日
 辞任         補欠選任
  海部 俊樹君     鴻池 祥肇君
  田中 龍夫君     斉藤斗志二君
  浜田 幸一君     松田 九郎君
  林  大幹君     鈴木 宗男君
  大久保直彦君     竹内 勝彦君
  坂口  力君     日笠 勝之君
  柴田 睦夫君     浦井  洋君
  山原健二郎君     安藤  巖君
同日
 辞任         補欠選任
  鴻池 祥肇君     海部 俊樹君
  斉藤斗志二君     田中 龍夫君
  鈴木 宗男君     林  大幹君
  松田 九郎君     浜田 幸一君
  竹内 勝彦君     大久保直彦君
  日笠 勝之君     坂口  力君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 昭和六十三年度一般会計予算
 昭和六十三年度特別会計予算
 昭和六十三年度政府関係機関予算
     ────◇─────
○奥田委員長 これより会議を開きます。
 昭和六十三年度一般会計予算、昭和六十三年度特別会計予算、昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川崎寛治君。
○川崎(寛)委員 聞くところによりますと、きょうから政府税制調査会の所得税部会の中の納税者番号小委員会というのが作業を始める、こういうふうに聞いております。この問題は税制改革の中でも特に不公平税制の是正の一番大きな課題として大変注目をされております。また政府も、これはいろいろと経過があって対応に苦しんできたところの問題でもありますので、私は、税制問題の中で特にそこの点に少し焦点を当てながらお尋ねをしたい、こういうふうに思います。
 まず最初に、これはもういろいろと論議されたことでございますけれども、改めて宮澤大蔵大臣にお尋ねをしたいのは、渡辺自民党政調会長が、キャピタルゲイン課税を「実施すると発表しただけで、株価は大暴落する。日本経済にプラスかどうか。少女趣味やひがみ根性だけでやると、大きなケガをするかもしれない。当面、おとなの世界で勉強し検討してほしい」、こういう発言をいたしたわけであります。渡辺政調会長は大変こうした発言が好きなようでございますけれども、これは要するに政治家としてやはり今何を踏まえておかなければならないか。この間の中国の穴蔵生活の問題もそうでございますが、そういう意味において、私はそういうあれこれをここで問おうとは思いませんが、宮澤大蔵大臣は、この発言、つまり自民党政調会長でございますからこれは決して軽くないわけでありまして、重く見なければならないと思いますので、どう思われるかということが一つ。
 それからもう一つ。政府・与党連絡会議でこの発言はどのように処理をされたのか伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 渡辺政調会長が株式のキャピタルゲイン課税につきましてどのように言われましたか、私は実はつまびらかにいたしておりません。直接に承ったことはございませんのでつまびらかにいたしておりませんが、政府といたしましては、やはり原則としてすべての所得が総合的に累進税率をもって課税されるべきであるというのが所得税の原則であって、株式のキャピタルゲインにつきましては御承知のような事情からそれが実現をいたしておりませんので、実現いたしますためにどのような行政的な仕組みを考えたらいいか。先ほど御指摘のその納税者番号等についての小委員会もそういうことを検討されるために税制調査会で設けられたものでございますが、そのようなまんべんなく間違いなく行われるような行政をどのようにしたら行えるかということを検討する必要があると考えておりまして、それはとりもなおさず、この点は税制の公平感あるいは所得税の本質からいいまして行政は最善の努力をもってこのようなものも課税の対象にすべきであるという考えに基づきまして、そのような努力を税制調査会に御検討をお願いしているところでございます。
○川崎(寛)委員 といたしますと、直接聞いていないのでつまびらかにしない、こう言われました。この間の中国発言は、政府・与党連絡会議で、これは政府・与党でなくて自民党役員会ですかで正式に陳謝があって、一応格好としては取り消し、訂正ということになっております。しかし、今のこの渡辺政調会長の発言は、そうしますと政府・与党連絡会議なりでは正式に取り消されていないというふうに理解をしてよろしいですね。
○宮澤国務大臣 中国の問題につきましては、まさに御本人がそれが真意でなかったということをおっしゃっておられます。
 前段につきましては、私が全部の会議に出ておらないことはあり得ることでございますけれども、たしか話題になってはいないように思っております。
○川崎(寛)委員 そうしますと、渡辺発言というのは一応生きている、こういうふうに私は理解をいたします。すべての会合に出ていないから、こう言われておりますが、何といっても税制の最高の責任者でございますから、その意味においては、大蔵大臣にこのことの訂正とかそういうことが直接ない、こういうふうに理解をしてよろしいですね。そういうふうにいたします。
 そこで、この納税者番号、つまり総合課税に持っていくための納税者番号、キャピタルゲイン課税のための大きな一つの手段としての納税者番号の問題は、政府税調でも繰り返しこれは取り上げられてまいりました。
 シャウプ勧告の原点にも一遍また後ほど返りますけれども、六十一年十月の政府税調の税制の抜本的見直しについての答申、これでは「納税環境の整備」、こういうことで、「これらに関連し、納税者番号制度の導入についても検討を行ったが、この制度の導入にはいまだ国民的合意が得られる状況にないのではないかとの指摘や、広く薄くの理念によりつつ適切に機能するような税制を構築することの方が望ましい」とかあった。しかし一方、「納税者の所得等の正確な把握に資するため、この制度の導入に真剣に取り組むべきであるとする考え方が示された。」こういう両論出されたわけです。
 ところが、六十一年十二月の税制改正に関する六十二年度答申では、はっきりと、「有価証券譲渡益課税等」というところで、「納税者番号制度の導入を含め課税の適正な執行を図るための捕捉手段の改善をも検討することが必要であると考える。」ここは両論でないわけです。抜本見直しのところでは両論になっております。しかし、十二月の答申では、これは検討しなさい、こう来たわけです。政府はどういたしましたか。
○宮澤国務大臣 その間、政府といたしましては、従来課税をいたしておりましたケース、すなわち五十回以上、二十万株というのをさらに強化をすることにいたしまして、三十回、十二万株ということで、間違いなく捕捉できると考えられますような株式のキャピタルゲイン課税につきましては、その措置を強化をいたしたのでございます。
 他方で、このたびの抜本改正に当たりまして税制調査会におかれまして納税者番号問題の小委員会を設けていただくことになった、これもいわば前回からの経緯にかんがみまして、さらに検討を深めていただくという意味合いでそうお願いをいたしておるところでございます。
○川崎(寛)委員 これは事務当局にお尋ねをいたしますが、今大臣がお答えになりました、課税対象とする回数と株数、これを変えましたね。しかし、実際に三十回以上、十二万株以上の株式取引、同一銘柄株式の年十二万株以上の譲渡、特別報告銘柄株式の指定期間内十二万株以上の譲渡、それから買い集めによる株式の譲渡、事業譲渡類似株式の譲渡、これの年間の実際に行われたものが何ぼか、課税されているのはどれだけか、具体的にお答えいただきたいと思います。
○瀧島政府委員 お答えいたします。
 単年度だけでよろしゅうございますか。六十一年度について申し上げますと、継続的取引によるものが百八十六件、買い占めによるものなし、同一銘柄二十万株以上、これが四十二件、特別報告銘柄なし、事業譲渡類似六百八十三件、計九百十一件ということになっております。(川崎(寛)委員「金額」と呼ぶ)金額はちょっと今手元にございませんが……。
○川崎(寛)委員 大蔵大臣が大げさに言うふうなものではないということは、今主税局がお答えになったとおりでありまして、これは全くしり抜けだという実態を今明らかにしたと思います。
 そこで、政府税調の答申に対して今お答えをそらされたわけでありますけれども、私非常に大事だと思いますことは、政府税調がきょうから作業を開始いたしますよね。作業を開始いたしますが、このことと関連をすることでもあるわけですが、六十一年の十二月、同時に自民党税調も税制改正について相前後してやるわけです。十二月のやつは一緒。抜本改正の大綱もあるわけですね。ところが、この自民党税調の税制抜本改正の大綱では納税者番号制については全く記述してない、触れてないということになります。そうでありますから、政府税調と自民党税調の違いというのがここにはっきり出てまいりました。
 そして、それは結局政府税調の方が、「課税の公平・公正の見地から、」云々とこういうことで、納税者番号制度の導入を含め課税の適正な執行を図るための捕捉手段」を検討せい、こういうふうに言ってきているわけです。そういたしますと、つまり六十二年度税制改正あるいは売上税と、こうまいりますけれども、この納税者番号の問題についてはネグレクトした、政府もネグレクトした、こうなるわけであります。
 そうなりますと、これからの政府税調の作業というものに対して、政調会長は少女趣味だ、こう言っておるわけでありますから、当然否定的であるという姿勢は明らかですね。そういうこれまでのいきさつが、経過というのが私は非常に大事になってくる、こういうふうに思います。
 そこで、外国でどうだったのかといいますと、アメリカとかフランスとかイギリスとかそれぞれやってきております。アメリカはいつからこの制度を入れてきたのか、そしてアメリカで、日本で言われているようなプライバシーの侵害あるいは効果、そういうものについて大臣としてどういうふうに御評価になっておるのか、伺いたいと思います。
○瀧島政府委員 お答えいたします。
 アメリカにおきましては、御承知のように、納税者番号の前身といいましょうか、その先駆者として社会保障番号というものがあったわけでございます。これが導入されましたのが一九三六年でございますが、その後、一九六二年に至りまして、この同じ番号を納税者番号として税務においても活用するということになったわけでございます。
 これが執行上どのような効果を持ち、また、これについてプライバシーその他の点においてどんな問題を生じているか、実は、制度を調べるということは簡単でございますが、その実態ということになりますと、だれに聞くかによって答えがちょっと変わってくる。例えば税務当局に聞きますと、うまくいっていると言う。しかし町に出て聞くと、あれは必ずしもうまくいっていないというような答えが返ってきまして、この実態というものについては非常に難しいものがございます。我々が聞いておりますところでは、これによりまして有価証券の取引についての把握が、アメリカのレーガン税制改革、あの報告書によりますと、約五九%程度の把握というものがこれによって可能になっているということが書かれております。その程度のお答えでお許しいただきたいと思います。
○川崎(寛)委員 これは早房という人の「異議あり税制改革」、アメリカの税制改革を非常に詳しく書いておりまして大変参考になると思うのでありますが、大体今のところ九割程度は捕捉できるようになっている、こういうふうに言っております。特にこの中で言われておりますことは、四つの武器だ。つまり、日本の国税庁に当たります内国歳入庁が、税の公平を支える大きな柱として、今言われた社会保障番号、それから二番目に巨大なコンピューターシステム、三番目に株式の売却益などキャピタルゲインに関する銀行や証券会社など第三者の報告義務、そして四番目に厳罰、こういう四つの武器を持っておることがこのキャピタルゲイン課税についても十分機能しておる、こういうふうに言っておるわけです。
 それから、この中で書かれておりますブルッキングズ研究所、宮澤さん御承知のとおりだと思うし友人も多いと思うのでありますが、ブルッキングズ研究所の税の専門家でありますJ・ペックマン氏はこの中でこう言っているのです。「日本の税制にも詳しいジョセフ・ベックマン氏は「厳しい所得の捕捉はループホールつぶしと並ぶ、税の公平の支柱だ。そのためにはIRS(内国歳入庁)の四つの武器は欠かせない。これらの武器があれば所得捕捉はでき、所得税を中心とした税体系で公平を実現できる、という確信の上に米国の税制は成り立っている。四つの武器を備えることもやらないで、」これからが大事だと思いますね。「四つの武器を備えることもやらないで、キャピタル・ゲインの捕捉は困難だ、という日本の税務当局の態度はすなおには受け取れない。まったく不可解だ」」こういうふうに批判をしておるのでありますけれども、宮澤大蔵大臣は、この今のペックマン氏の発言に対してどういうふうにお考えになられますか。
○宮澤国務大臣 まず、米国におきまして最初に社会保障の番号制が取り入れられ、二十五年ほどいたしましてそれが税制にも使われるようになったということをただいま政府委員から申し上げたわけでございますが、直接に関係のないようなという意味で申し上げるつもりではない、大変に関係のあることだと思いまして申し上げるのでありますけれども、やはりアメリカと我が国との風土の違いというものがきっと過去を顧みますとあったのであろう。つまり、アメリカという国は、申し上げるまでもないことでございますが、すべてのお互いが他人でございますので、そのような社会保障の番号とかあるいは一種のそういう制度をとることによって国民が一体であるという統合のシステムができ上がっていったのであろうと思います。そしてまた、自由な伝統がございますから、そのような制度がプライバシーの侵害にあるいは人権の抑圧に用いられることがないという、それだけの仕組みがアメリカという社会にでき上がっておったというふうに考えることもできるかと思います。したがいまして、比較的抵抗なく、それでも納税に移るときにはかなり抵抗があったようですが、受け入れられた。
 それに対して我が国の場合には、国民が一人一人が全部がお互いを知っておるわけでございますから、そこへそのような制度を取り込むことによって、人権が抑圧されるとか、あるいはこれはもう川崎委員もお古うございますので御記憶でございますが、かつてはこの委員会でそのようなことは徴兵制の強化につながる、随分昔でございますけれども議論があったほど、我が国ではやはりそういう過去にいわば暗い思い出があるといったようなこともありまして、アメリカと多少違う受け取り方を国民が今日までしてまいったのではないかと思います。
 そういう背景がございますので、したがいまして、税という目的そのものから申せば、恐らく納税者番号というのは非常にいわば便利である、効率的に徴税ができるということは恐らく間違いないところでございましょう。ただ、アメリカの場合におきましても、これをキャピタルゲインに使いましたときにキャピタルロスはどうするかとか、いろんな問題が起こってはおるようでございます。しかし、ないよりもあった方がよかろうということは、恐らくそのとおりであろう。そういう番号を用いないときの取引は一体無効になるのかどうなるのかといったようないろんな問題がございますが、ないよりもある方が納税に関する限りはきっと効率的であるということは、多分そうではないかと想像いたしますけれども、そういう我が国のいろいろ国民的なこの問題についての受け取り方等々もございます。いろいろなことを考えますと、アメリカとおのずから違った過去の展開をしてきたのではないだろうか。
 このたび税制調査会で御検討をお始めになりますのは、そういう広いこの問題が及ぼす影響ではなくて、仮に税の場合にこれを用いるとどのような方式が可能であるか、その場合起こってくる問題はどういうことであるかといったようなお考えで御検討をお始めになるのでございますけれども、外国との関連で申しますと、ただいま申し上げましたような背景が今日まであったのではないかと思っております。
○川崎(寛)委員 キャピタルロスの問題については、これは当然日本の場合にも議論があるべきだと思いますし、アメリカやイギリスや西ドイツやフランス等においても、キャピタル課税の問題は、ゲインとロスということは当然議論にならなければならないだろう、こういうふうに思いますし、そのことはシャウプ勧告でも明確に指摘をして検討をされてきておる、こういうことだと思います。
 株の譲渡益課税について、これは二十二年に制定されましたけれども、二十八年に今のこの有価証券取引の方に改正をするわけでございます。日本の戦後というのは、独立それから高度成長、こういう経過というのを通りまして、今いろいろと自由化の問題で苦脳する問題もあります。しかし、日本の独立以後というのを見ますと、資本蓄積、輸出促進、こういうことで日本経済全体が走ったわけですね。朝鮮戦争というのが一つの大きな契機にもなっておるわけでございますけれども、資本蓄積、輸出促進。でありますから、資本蓄積のために大変制度がきちっとされた。
 それは、一方におきますと、例えば証券取引委員会の問題も、証券取引委員会は当初は大蔵省の外にありましたね。そして行政委員会としての権能も持っておった、アメリカ的な。つまり、アメリカのSECのような権能も持っておった。しかし、それを独立と同時に大蔵省の中に、内局にしちゃってそういう力というものを奪って、そして緩やかな活動の方向に持っていった。でありますから、資本蓄積、輸出促進で来た今日のいろいろなものが、今改めて問い直されておるというところに来ていると私は思うのですね。だから、アメリカのSEC等の問題は、ロッキード事件やらいろいろな事件の際にもこれは日本と比較されました。でありますから、そうするとシャウプ勧告のときにどうして生きておったか、それは依然として四十年たった今日、私はそのまま当たっていると思うのですね。
 シャウプ勧告の株式の譲渡所得の問題のところを触れてみますと、
 譲渡所得は所有者に対して、利子又は配当が与えると全く同様の経済力の増加を与えるということである。だがそれ以上重要なことは、こうかつな脱税者が、その利益を実現する法的形式を変形することによって、他の形態の所得を譲渡所得に容易に変更することができるという点である。事実、米国における経験に徴して十分明らかであるが、譲渡所得が課税されないかまたは低率課税しか行われていない場合には、多くの富裕な、そして抜目のない投資家が高額所得を得ながら、ほとんど課税されないで巧みにのがれることになるのである。シャウプ勧告はこれだけちゃんと指摘をしているわけです。
 今日の異常な株の値上がりとかあるいは土地の値段の値上がりとかという問題を考えますときに、この問題はまさにこれは指摘をしておる点ではないだろうかと思うし、自由あるいはプライバシーを守る風土という点を言われましたが、私たちもかつてこの点については厳しくプライバシーの面から指摘をした時代もございます。その点は我々自身も私たち自身の問題を反省もしておるわけでありますけれども、しかし、これは今日、税制の不公平を直すというためにはどうしてもやらなければいかぬ問題だ、こういうふうに受けとめるわけでございます。
 でありますから、今政府税制調査会にお願いをしておる、こういうことでございますけれども、このシャウプ勧告の鋭い指摘というものを大蔵大臣は改めてどういうふうに受けとめられるか、それから、それと対比して渡辺政調会長の考え方というものがいかに食い違っているか、時代認識がいかにずれているかということを私は指摘せざるを得ないのですね。でありますから、このシャウプ勧告が指摘をしておるその点についての大蔵大臣の感想を伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 ただいまお述べになりましたシャウプ勧告が行われました時代、そして昭和二十八年でございますか、株式についてのキャピタルゲイン課税が原則として廃止になりまして有価証券取引税が設けられましたような、そういうことは確かに歴史的な事実でございますが、あの当時のことを考えますと、敗戦後に財閥解体等々のことがございまして、相当多くの株式がつまり処理をすべきものとして国民経済に残ったわけでございます。他方で、証券民主化という運動、国民全部が国の、おっしゃいますように経済再建に株主として参画することは非常に好ましいことであるという考え方から、これらの株式を一般に公開をして証券の民主化ということを大いに奨励をいたして行ったわけでございますが、譲渡所得廃止がそのような背景と無関係であったとは私も思っておりません。
 そういうふうにして広く国民に株式を持ってもらおうということと何がしかの社会的な関係があったであろうと思われますが、現実には、しかしあのときに三年間かいたしまして到底行政がその煩にたえない。行政がたえないのみならず、実は金融機関あるいは証券会社、御本人はもとよりでございますが、一々その資料を通報したりチェックしたりすることが大変な煩瑣なことであったということもありまして、その割に税収が入らない、行政をやろうとしますとどうしても行き当たりばったりになるといったようなことから廃止をいたしたという記憶がございます。
 それは今からもう三十何年前のことでございますから、そういうことの上に今日の我が国のいわば経済というと大げさでございますが、証券とか金融とかいうものの一つの全体の秩序が成り立ってきたと申しますか、そういうことで三十何年きた。ここへきて税制改正を行うときに、この問題いかにも不公平ではないかという御指摘がございます。私どもとしては、本来やはり証券のキャピタルゲインも総合課税の対象になるべきものであろう、この原則は政府としては確かにそのように考えております。
 そうであるとすれば、それをまんべんなくどのように行政に取り入れることができるかということを考えるべきであろうということで税制調査会の御検討が行われておるわけでございますから、基本的な物の考えにおいて川崎委員の御指摘になっておられることと私どもは違った考えをしておるわけではない。ただ、具体的にそれを行政にどのようにやるか、どうやればできるかということを詰めていくべきだと思っておるわけでございます。おっしゃいますように、三十何年前の状況というのと今日といろいろな意味で変わってきているではないかと言われますことは、確かにそういうことが申せると思います。
○川崎(寛)委員 先ほどアメリカのIRSの四つの武器について指摘をしましたが、そのうち厳罰というのが一つの武器だ、アメリカの内国歳入庁の武器だ。日本の場合も、確かに税法の改正で更正の期間は五年を七年に延期をいたしました。しかし、時効があるわけですね。ところが、アメリカの場合には、申告書が虚偽または不正に基づき租税負担を回避しようとした場合は無制限となる、こういう大変厳しいものが期間制限に対してあるわけです。つまり、虚偽の申告あるいは不正、租税負担の回避、それが要するに租税というものに対する厳しい制度的な問題だろう、こういうふうに思います。
 でありますから、勤労者などがトーゴーサンとかクロヨンとかこういうふうに言われてもおるわけでありますけれども、それだけにやはりこうした申告書の虚偽とか不正とか租税回避とか、そういうものに対しては私はやはりより厳しくしていくべきだ、こういうふうに思いますが、これは後ほどまた別の機会にも少し触れたい点でもございますけれども、今この問題と関連をして大蔵大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
○宮澤国務大臣 先ほどから申し述べましたような経緯でございますので、昨年、大口取引につきましては重課をいたしたのでありますけれども、一般的な株式のキャピタルゲインについてどのような行政を行っていけばキャピタルロスの問題、あるいは仮に番号を付すことを求めました場合に、番号を付しておらない取引というものをどのように考えていくべきかとか、いろいろ大変に複雑な問題がございましょうと思います。その辺のところを税制調査会の小委員会で十分に御検討を願っておきたいと思っておるところでございます。
○川崎(寛)委員 先ほど冒頭に申しましたようにきょうから小委員会が発足をいたします。そういたしますと、間接税部会の部会長の加藤寛先生は、今自然増収もあることだし、そしてそう急ぐべきではないということで、大変慎重にこの間接税のあり方の問題については御検討のようにたびたび発言をしておられるのを伺っておるわけであります。しかし問題は、政府税調がこれから税制改革について幾つかの案を出すという作業に入ると思いますね。ところが、これは総括質問の際にも竹下総理とも私、税制改革と民主主義という問題で、補正予算の審議また総括質問でも、つまり税制改革と民主主義という、税のあり方というものは政治そのものだし、そして私はやはり改正の手続が大事だ、つまり国民参加のものでなければならない、こういうことを繰り返し主張をいたしてまいったわけであります。ところが、スケジュールありき、こういうことでは私はいけないと思うのです。
 それで、一月の二十六日財務局長会議がございました。新聞の報道によりますと、「経済界を中心に税制改革への理解が昨年より深まっているものの、どんな税制にすべきかをめぐって意見が異なることや、一般国民の理解はまだ不足している、などの分析結果を財務局長が宮沢蔵相に報告した。」こういうふうに財務局長会議の模様が報道をされておるわけですね。
 そうしますと問題は、政府税制調査会が今地方公聴会やっております。しかし、これは意見を聞くのだ、こう言いながらも実際にいろいろと議論百出している。結局、案がないわけですし、議論百出しているわけですね。そういたしますと、「一般国民の理解はまだ不足している、」この不足しておる一般国民の理解に対して、政府としてはこれからどういう方法で理解してもらおうということをお進めになられますか、その方針を伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 政府ということになりますと、国会でこのようなお尋ねがあり、また私どもがお答えを申し上げておるということ、そのこと自身がやはりこの問題についての国民的な関心を引くととになっておる、そういう結果になっておるとは存じますが、他方で、主としてただいまは税制調査会が地方で公聴会を二十回ほど開いていただいて、それによって問題についての認識を国民の中に高めていきたいという努力をしておられるわけでございます。
 財務局長が報告しましたことは確かに、簡単に申しますと川崎委員の言われたようなことなのでございますが、昨年ああいうことがあってあれはあれで済んだ、しかし何かやはりしなければならないんだろうなという認識は国民の間に漠然としてはいるが高まってはおる。しかし他方で、この案でどうだと言ってくれなければ考えようがないではないかという反応、また別に、しかし一つの案を持ってくれば、決まっているのなら押しつけてくるので何も言う必要はないじゃないかというような両方のことがございますので難しいところでございますが、今回はともかく案を持たずに前回の反省あるいは国民のこれについての御意見を聞こうということで、実はこれは少なくともかなりの関心を集めたということは確かであったと思います。
 それで、恐らく税制調査会におかれましては、これからその各委員が地方で直接に耳にし目にしてこられました経験をもとにどういうことを考えれば国民の要望、関心に沿えるであろうかということをお互いに自分の体験されましたことをもとに持ち寄られまして、その上で恐らくはこのような案ならばどうであろうかという、そういったような幾つかの試みの、あるいは私のと申しますか、試案のようなものを中心に皆さんでいろいろな御議論をこれからしばらくの間お進めになる、こういう段階が次の段階ではないだろうかと考えております。
○川崎(寛)委員 そうしますと、これまでの政府税制調査会の公聴会のあり方というものを政府資料で見ますと、ほとんどやっていないのですね。今度初めて地方公聴会というのをやっている。今、売上税の反省のお話もございました。しかし、売上税の反省というのは、私は本当に真剣にされてそれを国民の前に出していただくべきだ。だから、やはりこの間も申し上げましたように、イギリスがグリーンペーパー、ホワイトペーパー、そして国会の論議、こういう国民参加の議論をやってきているわけですから、私はそれがやはり民主主義の原点だと思うし、そしてそういうやり方をしなければ、賛成にしろ反対にしろ国民が参加をした議論にならない、こう思うのです。
 でありますから、政府税制調査会でお願いをしておる、しかし政府税制調査会のお願いの議論はここにはないのですね。そうすると、この予算が一般質問は二日で終わりだ、集中審議だ、分科会だ、採決だ、こうなりますと、衆議院の予算委員会ではことしは税制改革が最大の課題だといいながら、そして秋には成立させたい、こうなりますと、我々は何もその中身を知らぬまま素通りするわけなのです。これが国会の議論で国民がわかるということになるでしょうか。一般消費税に関するあの国会決議がどうのこうのという三百代言のようなやりとりをしておって国民が税制がわかりますかね。わからぬですよ、あれは。これがいけないのだと思うのですね。三百議席がある間に成立させなければいかぬ、だから三百議席ありきという、こういう税制改革の進め方というのは、私は民主的ではないと思いますね。
 でありますから、今一般国民の理解はまだ不足しておるということをあなたの下部機関の方ははっきり全国の報告として出してきているのですから、そうしましたら、その人たちに十分わかるような手続をしてもらわなければならない。ですから、それはやはりグリーンペーパー、ホワイトペーパー、そして国会の論議、こういう民主的な手続を進めるべきだ。少なくともあなたは、自民党さんの中では最も民主的な政治家のお一人だというふうに私は評価をしております。でありますから、その人が今税の責任者なんですから、ひとつそういう点では今からでも遅くないのですから、どうぞそういうプロセスを通るべきだ。税制の関係の最高責任者としての宮澤大蔵大臣の、この民主的な手続をどうするか、国民の理解はまだだと大蔵省の機関が上げてきているのですから、それにどうこたえるか、そして国会では我々はまだ中身はわからぬわけですから、当然その手続をとるべきだという意見を私は持っておるわけですが、大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 それはやはり私どもとしては昨年の出来事の反省に基づくものでございまして、とにかく昨年は具体的な案を具しまして提案をして御審議を願おうと考えたわけでございますけれども、結果としてはそういうことにならなかった。ならなかったことについては、やはり私どもにもいろいろ至らなかったことがあるのではないかと考えておるわけでありまして、その一つは、やはり国民にほとんど御説明をする時間がないままに、いわんや世論を吸収するという十分な努力が結果としては十分でないままに案を御提出いたしましたために、国民の側から理解の不足もあり、あるいは誤解もあったかもしれませんが、いろいろなことで結局国会もそれを御反映になって御審議をいただけなかったというのが昨年起こったことでございます。
 そこで、そういうことは二度起こってはならないと考えておりますから、今度はひとつ御審議をいただけるような案をつくらなければならない。そのためにはまず何よりもこの問題を国民に呼びかけて、そうして国民が何を考えておられるかを十分吸収した上で案をつくる、それが一番大事なことであろう、今そういう過程を経ておるわけでございます。
 そういう過程と並行して国会の御審議がございますから、何をやっているのかというおしかりがございますけれども、政府としてはそういう過程を経てできるだけ早い期間に国会に案をつくりまして御審議をいただきたい、こう思っておるわけでございまして、これは決して国会の御審議をないがしろにしているわけではございません。昨年のいわば非常に深刻な経験に基づきまして反省をいたしておるというのがただいまのところでございまして、できるだけ早く案をまとめまして、ぜひ御審議をお願いしたいと思います。
○川崎(寛)委員 いや、だから国民の皆さんにと、こう言うのだけれども、国民の皆さんもですけれども、国会もわからぬのですよ。国会もわからぬところに、いや案ができましたから、しかもそのときは予算委員会は終わっている、そういう手続は民主的でありません。民主的だとお思いになりますか。
○宮澤国務大臣 昨年の体験にかんがみまして大変にできるだけの民主的な方法をとっておると私は考えておるのでございまして、できるだけ国民の御意見も聞きながら、いわば案を持っていないで意見を聞けるかとおっしゃいますのは一つのお考えでございますけれども、むしろ今回は、第一回は案を持たないままで国民のお話をよく聞き、また昨年についての御批判も受けて、その上で多少まとめました考えで国民がさらにどう考えるかも確かめてみたい、そういう過程にただいまおりますので、その上で国会の御審議を仰ぎたいと思っておるわけでございます。
○川崎(寛)委員 竹下総理は、国民の意思那辺にありや。国民のそれは国会だ。国会には出してない。議論をしてない。わからぬわけですよ。それで国民の意思は、それは政府税調。それはやはりもう税法改正の民主主義、税制改革と民主主義という民主主義の一番の原点が無視をされている。だからその点は金丸元副総理が二、三年かけてと、こういうふうなことを言っておられますけれども、私は正しいと思いますね。だから、そういうあれをきちっとするということが、私はもう宮澤さんの民主的な政治家としての今正念場にあると思うのです。しかし、これを議論しておると、あとの内需拡大の問題と事前協議の問題になかなか入れませんし、これはいずれまた集中審議で、これまた総理も入れて議論をしなきゃならない、こう思っておりますが、私はそういう手続はきちっとすべきであるということを再度要求をしておきたいと思います。
 そこで最後に、税制の問題の最後は、政府税制調査会の小委員会が納税者番号の問題について答申がいずれあると思います。それはこれまでの経過を見ても明らかなように、政府税調は積極的に出してきました。しかし自民党税調が、これをつぶしたという言葉が悪ければネグレクトしたというか、そういうことでつぶしてきました。そこで問題は、その政府税調が答申をされたら政府は必ずそれを受け入れるということについて、私は政府のはっきりした小委員会に対する姿勢というものを明確にしていただきたいと思います。
○宮澤国務大臣 実は、税制調査会の小委員会におきましてどのような検討をなされるかはこれから小委員会自身がお考えになることでございまして、申しようによりましてはかなり広範な、技術的な面を含んでまいると思います。かなり広範な、技術的な面を含んでまいると思いますので、多少の時間もおかげになり、かなりまた、答えそのものも、いわばいろいろな意味での選択肢のようなものを示されることになるかもしれない。ちょっとそこが、全く御自由にお願いをしておりますものでございますから、はっきり私どもとして予測ができないところでございますけれども、いずれにしても、何かの選択肢を含めまして、お答えがあればそれは十分に私どもとしても検討しなければならないと思っております。
○川崎(寛)委員 検討しなければならない、つまり尊重するというふうに受けとめてよろしいですね。答申は尊重する。当然のことですね。
○宮澤国務大臣 そのようなことで、かなり技術的な、また選択肢を含んだ答えになるかもしれませんので、もちろん全体としては大切に考えまして検討しなければならないと思っております。
○川崎(寛)委員 それでは次に移ります。
 消費景気が非常に上がっているわけでございますけれども、今消費の景気拡大というものを見ますと、しかし一方では大変難しい問題がたくさん出てきているなという感じがするわけです。
 現在の内需中心の景気拡大は、ここ一、二年の資産効果に基づく面が非常に大きかったと思います。国民生活の向上に基づく持続的な、内発的なものになっていないのではないか。資産の保有者、高額所得者中心の消費拡大は、資産効果がはげ落ちたり、減速、こういうことになりますと、景気回復もドルの一層の下落の懸念とともに短命に終わる危険があるのではないか。自然増収の問題についても、大蔵大臣も一時的現象だ、こういうふうに言われたりもしましたね。ですから、その点は今の消費景気というものについては内面的にいろいろな問題があると思うのです。
 これまで前川レポート、新前川レポート、あるいは政府の方針としては経済の成長を時間短縮と賃金に反映させる、そして内需拡大を、こういうことを方針としてきておるのでありますけれども、賃上げとか時短は経済発展といたしますと立ちおくれている、だから真の内需拡大のためには積極的な賃上げが不可欠だ、こういうふうに思いますが、これは企画庁長官ひとつ……。
○中尾国務大臣 まさに国際派で名高い川崎委員のお言葉のとおりでございまして、現実の問題としては大変にこの問題は私どもも深刻に受けとめている問題でございます。
 経済発展の成果を賃上げと労働時間の短縮に適切に配分させていくというためには、勤労者の福祉と生活の向上のみならず今日の課題である内需拡大の面から望ましいという点は今の先生御指摘のとおりに解釈しておりますが、具体的な配分のあり方についてはそれぞれの労使が自主的な話し合いを通じまして適切に解決していただくことが基本的な条件だと思うのでございます。労使が産業、企業の実情に応じまして国民経済的な視野に立って合理的な対応を行うように私どもは期待しておるところでございます。
 ただ、政府としましては、このような労使の努力を基本としながらも、なおかつ適度な経済成長の持続、物価の安定等の環境の整備にこれまた努めていかなければならない、このように解釈しておる次第でございます。
○川崎(寛)委員 総務庁の二月二十五日の家計調査報告によりますと、勤労者世帯と一般世帯の消費支出に開きが出てきているのですね。勤労者世帯は実質一 %の増加にとどまっているのに対して、一般世帯は実質四・三%と大変高い増加となっており、勤労者世帯と一般世帯の間で消費支出の伸びに非常な開きが見られるようになってきておる。このことは、ジニ係数の問題きょうはもうやりませんけれども、開いてきているのですね。そしてまた賃金の格差がうんと出てきているし、地域間格差もうんと開いてきておるわけでありますから、そういたしますとこの消費景気、デパートの売れ行きもいい、高級品が売れる、こう言っておりますけれども、それは一般世帯の方の消費がうんと伸びている。賃金はおくれているわけです。春の賃上げでこうくるわけです、ずっとずれているわけですからね。
 きょうは通産省来てもらっておりませんけれども、通産省の鉱工業生産活動分析という六十二年年間回顧のこれを見ましても、労働省も家計調査の分析をしておるわけでありますが、労働省の分析と通産省の分析というのは一致する点もあると思いますけれども、この家計調査を見ましても、収入五分位の階級別の分析を見てみましても、第五段階はがっと伸びているのですね。ところが、第五段階が四%実質増になっているのに対して第四階級はわずかに〇・四。そして逆に第二階級は一・五のマイナス、第三階級は〇・八%のマイナス、そろってマイナスになってきているわけです。今の消費の伸びというのは第五階級、つまり所得の多いところで伸びている。非常に格差が出てきているのです。そうしますと、政府の経済見通しにつきましても内需拡大というものを進めていく、そのための個人消費というものの持続的な発展を進めますためには、どうしても賃金の引き上げということが必要だ。でなければこれは必ず減速してくる、こういうふうに思います。でありますから、その点について改めて伺いたいと思います。
○中尾国務大臣 この間も私も御答弁をさせていただきましたけれども、全く御指摘のとおりのような動向の中にございますから、賃金のある意味における上昇ということは、これは考えていくべきことではないのかな、このように考えておるわけでございます。ただ個人消費は、全体的に見ますると、私どものマンスリーに出しておりまする経済報告書を見ましても、大体景気の回復基調からもう既に拡大発展基調の方に入っておる、こういうふうに申し上げておるわけでございますが、個人消費そのものが国民経済の約六割を占めておるということの内需主導型経済構造への転換、定着を図るためには、その安定的な拡大がこれまた重要である。また、個人消費拡大のためには、物価安定のもとでの経済の持続的成長の継続を図る、維持することなどにより実質可処分所得、自由時間の増加などを図っていくことがこれまた必要である。同時に、今申し上げました川崎委員の御指摘のとおりの賃金の問題も当然絡めて考えていかなければならぬ、このように考えております。
○川崎(寛)委員 これは二月五日の毎日新聞に出ておるのでありますが、経済企画庁の首脳、首脳というのはだれを言うのですか、経済企画庁の首脳が企業の収益を、今景気がいい、しかし、「企業の収益を賃上げよりも企業の設備投資に回した方が景気への波及効果は大きい、」こう言って、これは日銀総裁、この間おいでいただいて、その点通貨当局としては不謹慎でないかという点の慎重な態度をお願いもしたわけでありますけれども、相まって経済企画庁が、今長官はそういうふうに言われました、賃金の上げの問題、ところが経企庁の中に、こういうふうに賃上げよりも企業の設備投資に回すべきだ、こういう議論があるとしたら、それは私は大変遺憾だと思うのです。それは、つまり前川レポート以降の総括というのがございますけれども、それを見ましても時短や賃金という問題は非常に問題があるわけなんですね。ですから、そういう中で経済企画庁の首脳がこういう発言をしておるというのは私は大変遺憾だと思いますが、長官の御見解を伺いたいと思います。
○中尾国務大臣 この問題については、政府委員の方からちょっと答弁願いたいと思います。
○横溝政府委員 先生御指摘の新聞記事を発言した首脳といわれる方の発言内容、必ずしもつまびらかにしておりませんけれども、恐らくそれは、要するに波及効果という観点からだけ言えば、企業収益を設備投資に回すか賃金に回すかと考えれば、企業の方は企業収益プラス恐らく借入金も加えて設備投資をするであろうから、利益を回した分以上に需要の拡大になるだろう。だけれども、賃金に回せば一部は貯蓄に回ってしまうから需要としては賃金に回した分よりも少なくなるだろう、そういういわば非常に効果だけからいえばそういうことがあるだろうということを恐らく指摘したのだと思いますけれども、しかし、実際にどうなるかというのは、今大臣が申しましたように労使が自主的に交渉して決めるものでありますし、現在の経済情勢は企業収益もいいですし、労働需給もある程度改善しておりますし、そういう環境の中では自然に賃金が上がっていく環境もできておりますし、労使が自主的に交渉すれば自然に上がるものであって、企画庁として何か賃上げを犠牲にして企業収益に回すべきだ、そういう政策判断をしているわけでは全くないと存じます。
○川崎(寛)委員 それでは、時間がありませんから、そこの点は結論としてこれは経済企画庁の考え方ではない、個人のあれだ、こういうことで長官の方の答弁を受けておきたいと思います。
○中尾国務大臣 川崎委員の御指摘のとおりでございます。これは先ほどの私の答弁に尽きると思います。
○川崎(寛)委員 大蔵大臣が時間を気にしておられるので、私も大蔵大臣におってもらって議論しなければならぬのがございますので少し急ぎますが、実労働時間当たりの賃金の国際比較というものは、労働省の資料によりますと、八六年は日本を一〇〇といたしますと、アメリカ一三三、それから西ドイツ一二九。イギリス、フランスよりはいいですけれども、そういうような実労働時間当たりの賃金の国際比較です。ですから、日本の労働者が何ぼ日経連が言ってみても豊かになったという実感が持てない、そういう実質の問題があるわけでありまして、これは円高差益の問題やその他いろいろ議論をしなければなりませんけれども、こういう実際の国際的な格差になっておる、比較であるという点はひとつ大蔵大臣もよく頭に入れておいていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで円高差益の問題でございますが、一月二十九日発表の「円高差益の還元状況等について」という報告を見ますと、六十年の十月から六十二年の十月―十二月期までの円高、原油安の差益とその還元状況の試算というものを見ますと、差益総額が二十九兆四千五百億円、還元分が二十兆五千百億円、還元率が六九・六%。私は還元の中身を聞きません。ここを答えないようにしてくださいよ、そこにいきますと議論がこんがらかりますから。そこじゃないのです。
 問題は、大蔵大臣、九兆円、この差益総額と還元分の間に九兆円の差があるわけです。これは私はこの間もちょっと指摘をしました。つまり輸入、工場、それから卸、小売、そういう各段階に滞留しているわけです、含まれているわけですね、還元されてないのですから。これは私は企業の利益だ。つまり、それは今の好景気の一つの大きな柱でもあるし、そしてそれが一般世帯と勤労世帯の間の家計の違いにも出てきているわけです。でありますから、この九兆円の円高益差というものを企業の利益としてはっきり認めるべきだ。そうしますと、それが今税収の伸びにも反映をしてきているわけでありまして、けさの報道によりますと、補正後も見込みを上回る好調さで、トータルにしまして、補正しますと、当初予算に比べ実質的に約三兆七千億円の自然増収を計上したのですけれども、さらにそれを一兆円上回るだろう、自然増収が。そういうことで、「景気回復と消費ブームで法人、物品税が急伸」、こういうことになっておるわけであります。
 そういたしますと、今野党三党が六十三年度予算の修正案を出しておりますね。それで三兆円の減税を要求いたしております。それは一方では、キャピタルゲインの問題であるとかあるいは引当金の問題であるとか、そういうものの整理も含めて所得税の減税と住民税の減税をやるべきだ、今こういう要求をいたしておるわけでございますから、私は非常に現実的な野党三党の要求である、こういうふうに思いますが、その点の大蔵大臣のお答えを伺いたいと思います。
○宮澤国務大臣 前の方の円高差益の問題は、ちょっと私、自分の所管でございませんのですが、今おっしゃったことを伺っておりまして、仮に三十兆の円高差益があって、そのうち七割還元されておる、あとの三割というものについて考えますと、それはやはり一つは時間のおくれというものがあり得るであろうと私は思います。企業の利益、それもあるかもしれませんが、企業がどういう原価計算をやるかによりましてもそこは異なってまいりますから、やはり時間のおくれというものも一つ考えておかないといけないかと思います。
 なお、野党の共同修正につきましては、これは各党間でまた御協議があるようでございますので、政府としてただいま申し上げますことは、一応政府が提出いたしております予算案は最善のものと考えておりますということを申し上げさせていただきます。
○川崎(寛)委員 それは党間でそれぞれございますけれども、大幅減税を実現できる環境にある、すべきだということを要求をしておきたい、こういうふうに思います。
 どうぞ、大蔵大臣、労働大臣、済みませんでした。ありがとうございました。結構です。
 そこで外務大臣にお尋ねをしますが、アメリカは核の存在を示さないということを基本原則としているのだ、こういうふうに一貫をして日本政府はアメリカの核政策を主張してきたわけですね。代弁してきたというか、こう言ってきた。そのことは今日も変わりませんか。
○宇野国務大臣 アメリカは、もう三十年前から核の所在位置に関してはイエスともノーとも言わない、これであります。変わりません。
○川崎(寛)委員 変わらない、こう言う。核の存在を示さないんだ、こういうことでございました。
 それじゃ、米ソはINF全廃条約を締結をしました。これから向こう十三年間検証するわけですね。十三年間検証するのです。検証しなければ撤去したか廃棄したかわからぬわけです。検証する。そうすると、戦略核の五〇%削減の問題についても検証ということが非常に大きな課題になっておるわけです。そういたしますと、それもやはり核の存在をお互いに確認をし合うわけですよ。あなた方は、日米は違うんだ、それは米ソの問題だ、こう言われるかもしれませんが、米ソで核の存在を確認し合うときに、日米の間でアメリカは核の存在を明らかにしないんだという政策を依然としてとられるということはどういうことですか。
○宇野国務大臣 日米間には安保条約という条約がありますから、条約で合意をした、そうした前提がございます。
○川崎(寛)委員 信頼をしておるから核の存在について問わないんだ、信頼をしておるからおまえの方には示さないんだ、最も対立しておるソビエトには示すけれども、最も信頼しているから日本には核の存在は示さないという政策を続けるんだ、こういうことですか。
○宇野国務大臣 その前に、やはり核は抑止力であるということが米ソともに今日まで持っておった最大の趣旨であったろう、こういうふうに解釈いたします。だから、その米ソが、保有国が、今回はひとつ中距離はまず廃止しましょう、こういうことでございますから、まだそのほかにもいっぱい残っておるわけでございますので、我々といたしましても、日米安保条約は抑止でございますから、さような意味合いにおきまして日米間には確固たる信頼関係がある、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
○川崎(寛)委員 信頼関係ということと政策ということは違うのですよ。それをごっちゃにしたら、それはもう要するにアメリカに命預けます、こういうことになるわけですからね。独立国としての、つまり今もう核戦略全体が大きく大変化をしようとしている、そういう時代に、戦後の占領下の状態というものを依然としてそういう核政策については続ける、こういうことになるわけですから、それでは東南アジアの国々もオーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなども、だから日本の姿勢に非常な不安を持ってくるわけなんです。アメリカ一辺倒で、独立をした、つまり経済大国にはなったけれども軍事的にはアメリカに従属している、そういう日本の姿勢というものに非常な不安を持ってくるわけです。だから私は、やはり事前協議の問題をめぐりましても、今そういう大きな変化の中で、きちっとした態度というものが確立をされなけばいけないと思います。
 そこで、それではあなたはそう信じているわけですから、信頼関係だ、こう言うわけだから、アメリカの核政策、つまりアメリカが核の存在を示さないと言ったのは、日本だけではなくて全世界において核の存在を示さない、こう言ってきたのですよ。日本だけに核の存在を示さないと言ってきたのではないのですよ。全世界に対して核の存在を示さないのがアメリカの核政策だ、こう言ってきたのです。それは間違いですか。
○宇野国務大臣 つまり今度は米ソ間におきましてINF、中距離核に関しましては全廃しようということが前提ですから、だから全廃するんだから検証しよう、こういうことでありまして、まだ核は抑止力として働いておるのが今日の世界でございます。数%のものが今度は全廃、だから検証、だから日本間においても検証したらいいじゃないか、発表したらいいじゃないかという議論にはならない、こうお考え賜りたいと思います。
    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
○川崎(寛)委員 それじゃその点は姿勢を改めなさい、こういうことで要求をしておきます。
 事前協議の問題についてお尋ねをいたしますけれども、この間、上田質問に対して総理から見解がございました。
 そこで私お尋ねしますが、当時の大平外務大臣と当時の中川条約局長が三十九年の二月十八日、これは横路質問でございますが、今の北海道の横路知事のお父さんの横路節雄さんが質問をしたことに対しまして、大平外務大臣と中川条約局長が答えているのですぬ。横路さんが、「外務大臣、日本のほうから向こうに、お前のほうは核兵器を積んでおる心配があるから、ひとつ事前協議をやろうじゃないかと申し込む権利はありますか。」こういうふうに聞いているのですね。云々と長いのですが、「大平国務大臣 事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」これが当時の大平さんの答弁です。それからさらに引き続いて、横路さんの質問に対して中川政府委員が、「事前協議を日本側からできるかできないかというお話につきましては、これは事前協議――協議の対象にするということでありますから、協議は双方とも言い出すことができることは当然でございまして、日本側から言い出して協議をするということも当然あり得るわけであります。」これは、この間の竹下総理の回答、そういうものからいたしますと、うそをついたのですか。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)ただいま御指摘の政府側の答弁については、我々も承知しております。この問題につきましては安保国会当時から何度か議論が行われておりまして、昭和三十年代の後半におきましては、ただいま御指摘の答弁も含めまして表現にやや正確さを欠き、誤解を招きかねないような答弁があったという点は御指摘のとおりでございます。しかしながら、その後、昭和四十年代に入りまして政府側の考え方と申しますか説明ぶりは統一されておりまして、その後の累次の答弁を踏まえまして、先日の総理答弁が改めて政府の考え方を端的に示すという形で行われた次第でございます。
○川崎(寛)委員 私は、この大平外務大臣と中川さんはうそをついたのですかとお尋ねしているのです。うそをついたのですか。うそをついたのですか。そのことをはっきりしてください。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)これらの答弁は、表現の正確さを欠いて誤解を招きかねない部分があったというふうに認識しております。
○川崎(寛)委員 表現に適切を欠いたじゃないのです。うそをついたのですか、これはうそですか、うそを言ったのですかどうですかということなんです。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)うそと申しますと意図的に間違えたことを言ったような感じがいたしますけれども、うそということではなくて、誤解を招きかねない表現であったというふうに考えております。
○川崎(寛)委員 じゃ、昭和三十九年当時は、外務大臣は、「事前協議の申し出は、当方からもできると承知いたしております。」条約局長は、「事前協議を日本側からできるかできないかというお話につきましては、これは事前協議――協議の対象にするということでありますから、協議は双方とも言い出すことができることは当然でございまして、日本側から言い出して協議をするということも当然あり得るわけであります。」その当時は、当然と、こう言っているわけですね。また、三木さんはその後に、これを骨抜きにするようなことはいたしませんと言っているわけです。
 これはうそなんですか、間違いなんですか。どこが適切でないのですか。どこが適切でないのですか。どういう情勢の変化で適切でないと言うのですか。この当時はよかったのですか。うそをついているかどうなのか、どこが適切でないのか、明らかにしてください。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)昭和三十五年の安保特別国会におきまして、岸総理及び藤山外務大臣の方から、事前協議というのはアメリカ側から提起されるべきものであるという答弁をしております。その後、ただいま御指摘の答弁を含めまして、非常に誤解を招くような答弁が行われております。
 うそかどうかという点でございますけれども、意図的に事実間違えたことを申し上げたということではないと存じます。ただ、このように誤解を招く答弁がございましたので、その後政府の考え方というのは統一されておりまして、累次それに従って答弁をしております。ただいま御引用のございました三木大臣の答弁、それからその後の累次の政府側の答弁、これはいずれも安保国会当時の考え方に即しまして御答弁申し上げている次第でございます。
○川崎(寛)委員 意図的に間違って、意図的にこういう言い方をしているのですね。そうすると、結果的にそれはうそをついたということですか。
 それから岸さんは、「極東の平和と安全が脅かされるということがあれば、日本の平和と安全にも非常に重大な関係があることであります。従って、日本から協議を求めることもありましょうし、それはどっちから求めるということは、一方的に考えるべきものじゃない、」つまり、交換公文を結んだ責任者が言っているのですよ。交換公文を結んだ責任者が言っておる。この岸さんはその他、「向こうから協議を受けた場合は」ということも言っておりますけれども、この交換公文を結んだ本人がこう言っていることに対して、これもやはり意図的にそういう間違いをしている、こういうことですか。そして、間違っているからこれを改めたんだ、こういうことになるのですか。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)ただいま御引用になりました岸総理の答弁は昭和三十五年の安保国会で行われたものでございますけれども、ただいま御引用の部分は、これは四条協議の質疑をしているときに岸総理が、「一方的に考えるべきものじゃない、」こういう答弁をしている次第でございまして、四条協議については、これは日米いずれからも提起できるということを申し上げている次第でございます。この点は、この議事録の前後の関係からも明らかではないかと考えております。
○川崎(寛)委員 それは、四条協議の答弁もありますよ。しかし、そうしますとやはり大平、中川というこの答弁に、原点に返らなければいかぬと思いますが、意図的にうそを言ったのではない、しかし実質はうそだ、間違っている。じゃ、これはいつの日米協議でできないということにしたのですか。日本側が解釈して整理したのですか。答弁はありますよ。答弁はいろいろありますけれども、答弁じゃなくて、日米間で協議するのですよね、日米間で協議をするのですから。今言われるような大平答弁とか中川答弁というのは、意図的ではないかもしらぬが適切でない、だから整理したんだと。そうしたら、これは三十六年でも言っているわけでありますけれども、中川条約局長も、これは双方からできる、こういうことを言っておりますが、その大平外務大臣なり中川条約局長の答弁というのは意図的ではないにしても間違っておった、適切でなかったと。じゃ、いつ日米間で協議をしてそういうふうに解釈を整理したのですか。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)私の承知する限りにおきまして、日米間でこの問題について協議をしたことはございません。事前協議はアメリカ側から提起されるべきものだという点は、三つの事項は日本政府との協議の主題とするという表現からも明らかでございまして、その点、アメリカとの間に誤解はないと存じます。
 昭和三十九年のただいま御指摘の答弁、これが極めて正確を欠く、誤解を招く表現であったというのは、我々もそのように考えますが、その後、昭和四十年代に入りまして、誤解を避けるべく累次の答弁が行われております。(発言する者あり)
○宮下委員長 代理 答弁中ですから御静粛に願います。
○斉藤(邦彦)政府委員 (外務省)例えば、昭和四十三年二月二十六日の三木国務大臣の答弁は、「おそらく大平君の答弁は、安保条約の事前協議の条項というものではなくして、安保条約第四条の随時協議、これは常に日本からもできますし、むろんアメリカからもできるわけで、双方から申し出られるので、そういうことは可能である、そういう意味のことを答弁されたものと思います。」という答弁をしておられます。
 いずれにいたしましても、昭和四十年以降政府の考え方というのは一貫しておりまして、その考えに基づきまして累次御答弁申し上げている次第でございます。
○川崎(寛)委員 今読んだ三木外務大臣の、それは「アメリカだけが常に一方的にイニシアチブをとっているわけではないのです。」これは四条、六条言っていますよ。アメリカ側だけが常に一方的にイニシアチブをとっているわけではありません、自分自身がエンタープライズのときにやったことも言っておりますけれども、自分としては空洞化をさせないためにやるということを明確にしているわけなんです。ところが、なぜそのできるということに対して変えていくのか。だから、大平さんの答弁と中川さんの答弁はうそなのかどうなのか伺います。外務大臣ひとつ。
○宇野国務大臣 今条約局長がお答えしたとおりでございまして、私も一応ずっといきさつ、一通りもちろん調べてあります。
 はっきり申し上げまして、大先輩のことでございますから、うそだというような表現はいたしたくございません。したがいまして、解釈を間違えられたのではないだろうか、かように思いますので、累次その後政府は、そうではございません、第六条に関しましてはこれはあくまでもアメリカが発議をする義務があるのです、こういうことはもう累次、昭和四十年来申し上げておる、こういうことでございますから、その点も御理解を賜りたいと思います。
○川崎(寛)委員 全世界的に核政策をめぐって、最も対立している米ソが、その核政策を変えてきている。そのときに日米の間においてなおかつ原点に返ろうとしない。なぜ原点に返ろうとしないのか。だから大平さんと中川さんの答弁、これがうそならうそとはっきりしてください。うそを言ったのか、当時は正しかったのだけれども今は違うのだということなのですか。
○宇野国務大臣 今申し上げましたとおり、私は大先輩の、しかも予算委員会における御発言をうそだというようなことは申し上げるわけにはまいりません。したがいまして、条約の解釈をお間違えになったのではなかろうか、こういうふうに思います。岸さんのときには、はっきりと交換公文を交わし、なおかつその交換公文の内容に関しましては口頭了解というのもしておるわけでございますので、さように御理解を賜りたいと思います。だから、私たちといたしましては、従来から今申し上げておるような解釈によって、その解釈を従来からのものを踏まえて、この間竹下総理大臣が端的に六条、四条の関係を申された、こういうふうにお考え賜りたいと思うのであります。
○宮下委員長代理 ちょっと川崎君に申し上げます。
 質問時間が終了しておりますので、取りまとめをお願いいたします。
○川崎(寛)委員 今外務大臣は、先輩だから、こういうふうに言われました。しかし、大平外務大臣、中川条約局長の答弁が間違っておったということについては明確にできないわけですよね。だから私は、見解というものはあくまでも問い直していかなければいかぬと思いますし、さらには今日の大きな世界情勢の変化の中で日本がとるべき姿勢というものを、原点に返るべきであるという点を強く要求をし、これはいずれまた改めて問いますが、外務省のそういう間違った姿勢というものについて厳しく指摘をして、私の質問を終わりたいと思います。
○宮下委員長代理 これにて川崎君 の質疑は終了いたしました。
 次に、竹内勝彦君。
○竹内(勝)委員 私は、経済摩擦のうちの特に日米技術摩擦の面における問題について、この際、政府の確固たる方針をただしておきたいと思います。
 御承知のように、戦後、技術輸出国のリーダーとしてアメリカが技術の面でリードしてまいりました。我が国は名実ともに技術立国を目指し、その技術の間で現在技術摩擦というものが起こりつつある。こういう中で昨年ココム問題等も起きましたのも、これも技術摩擦問題に絡む象徴的なものではないか、こういうように考えるものでございます。特に、知的資本主義あるいは情報資本主義時代の始まりというのでしょうか、知的所有権、こういったものをめぐりましてさまざまな問題が起きて、そして今日、国益をかけ、もっと複雑に、戦略的に発生してきておるのは御承知のとおりでございます。
 そこで、去る二月二十三日、当委員会におきましても、この防衛秘密特許にかかわる新制度創設問題について質疑が行われました。その淵源というのは当然この技術摩擦問題でございますが、特に一九五六年に交わしております防衛目的の特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日米政府間協定及び議定書、こういったもので、その議定書の実施細目として取り決めを行う方向である、このように小川特許庁長官は答弁されております。そしてその中で、特許法の改正はしない、それから今後も防衛秘密特許制度を新設しない、こういうように言っておりますが、日本における特許制度の公開原則というものは今後もこれは堅持していく、こういうように理解してよいか、まず特許庁長官、最初に御答弁いただきたいと思います。
○小川政府委員 御指摘のように、特許制度の根幹としての公開制度というものは引き続き堅持すべきものと考えております。その枠組みの中で、御指摘の一九五六年協定の実施ということで現在日米間で話し合いが行われておりまして、その話し合い、つまり五六年協定の枠組みの中である限りは新たな立法措置は不要と考えております。そして、その枠組みを超えるような話し合いが行われているとは私承知しておりません。
○竹内(勝)委員 外務省に対しても、新たな秘密特許制度をつくるものではない、このように外務省も述べておりますが、同時に、現行法改正や新たな協定取り決めは、そうなりますと当分ない、もちろん近々そういうものは当然ない、こう理解してよろしいでしょうか。
○宇野国務大臣 そのように御理解賜ります。
○竹内(勝)委員 そこで、この防衛目的の特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日米政府間協定及び議定書、この細目を決める方法ですね。そういう中で、アメリカ政府が機密と指定した特許、それが出てきた場合、指定されてきた場合、この中で例えば第三条にございますですね、それは「類似の取扱を受ける」、こういうように三条の中にはございます。特に米国が日本に供与する防衛技術のうち米国内で秘密特許の扱いを受けるものは日本国内でも類似の扱いをする、こういうように三条にございますけれども、これは、「類似の取扱を受ける」というのは何ですか、また何か別の取り扱いをするのか、そういった面を御答弁いただきたい。
○小川政府委員 御指摘の五六年協定第三条では「類似の取扱」と表現しておりますが、その趣旨は、アメリカで秘密保持をされている特許出願でございまして、これが防衛目的で日本に提供される技術である場合、日本では出願なされた場合にはその出願の内容を公にしないということを定めておるわけでございます。
○竹内(勝)委員 そうすると、出願をしてくる、そして公にできない。日本は公開の原則を持っていますが、ここで競合する部分の特許に関してはどのようになりますか。
○小川政府委員 競合という御指摘の趣旨を正しく理解しておるかどうかですが、まず、そのアメリカから秘密出願ということで日本に出願されて、それを秘密保持をする、つまり公にしないということにつきましては、一般の特許制度の公にする原則に対してこの五六年協定という例外取り決め、これは国会で承認願っておる協定でございますので、そのまま国内法としての効力がございますので、特に法律を、新たに立法措置を講ずるということでなくて、そのままその秘密特許部分については非公開の扱いになるわけでございます。
 ただ、御趣旨が、そうではなくて、同じような発明を日本独自で日本の企業が開発しておったようなことがあった場合に、それが網がかかってしまうのかという御趣旨だと理解させていただきますと、日本の企業が独自に開発いたしましてそれを日本で特許出願をした場合には、これはたまたま結果的に内容がそのアメリカから来ておる秘密特許の発明内容と同じであっても、それは通常の出願手続で処理されることになると理解しております。
○竹内(勝)委員 もう一度、くどいようですがお伺いしておきますが、では今のことでいいのですか。アメリカは、日米との間で合意を得ていますか。外務省、それでいいのですか。
○有馬政府委員 今特許庁長官から申し上げたとおりでございます。
○竹内(勝)委員 そうすると、アメリカがこれは秘密特許ですよと指定してきたものでも、日本で特許出願がなされておって決定されておるものは、これがたまたま競合した、例えばレーザー光線なりあるいはセラミックなりあるいは超電導なり新素材なり、いろんなものが今後考えられると思うのですよ。それが競合したというものは、アメリカがどんなに秘密特許ですよと言ってきても、これは秘密特許扱いにならぬということと理解していいですか。
○小川政府委員 五六年協定及びその議定書の定めるところは、まさに今御指摘のように、たまたま秘密特許として日本に持ち込まれて秘密扱いになっているものと発明の内容が同様であっても、それとは別に日本企業が独自に発明をし、そしてみずからが特許出願を日本国内でしておる場合については、全くその分については通常の手続で進められる、したがって公開もされ、審査もされ、特許をするかどうかの判断もなされる、通常の手続で行われるということでございます。
○竹内(勝)委員 常識的に、この軍事秘密を守るには普通は公的な担保が必要というのが、これがアメリカの要請の根っこにあると思うのですよ。そういう意味では、そういう要望、この昭和三十一年のものとは別のそういった公的な担保という形での要望はなかったのですか。
○有馬政府委員 今先生がおっしゃられました担保ということの意味でございますけれども、米国が今、日本に期待しておりますのは、いわゆる五六年協定第三条とその議定書に掲げられていること、すなわち米国におきまして秘密とされている特許の申請の対象となっている発明、それを示す技術上の知識が防衛の目的を持って米国から日本に供与されて、かつその特許の申請が我が国でもなされた場合には、米国で秘密に取り扱われておりますから、それと類似の形でやってくれ、それだけを求めてきているわけでございます。
○竹内(勝)委員 もう一度ちょっと整理しておきたいのですが、類似の形でやってくれということは、秘密特許にしてくれ、こういうことじゃないんですか。したがって公開はできないんだ、競合したものは。こういうことじゃないんですか。その要望をしてきているんじゃないですか。
○小川政府委員 アメリカで秘密扱いになっておる特許出願であって日本へ防衛目的で提供されたものについては、この五六年協定及び議定書によって秘密扱いにされておるということでございまして、先ほど私が答弁いたしました、それと競合する日本企業が独自で開発したものについての出願、これはもう通常の特許手続で処理される。しかし、アメリカから日本に防衛目的で提供された技術であってアメリカで秘密扱いになっておる出願について、これが日本で出願された場合、これは非公開になるということでございます。そういう使い分けで御説明をしておるつもりでございます。
○竹内(勝)委員 そういったものは今までにございましたか。それから今後考えられるものはどんなものを想定しておりますか。
○小川政府委員 そういう秘密特許の扱いは、実は一九五六年にこの協定が成立して以来、実施細目も定めておられませんので、今までは一件もその協定適用を受けての処理はなされておりません。
 今後の問題については今何とも申し上げられません。見通しはわかりませんけれども、いずれにしても、アメリカ側としてはこの五六年協定を実行に移すべく実施細目を早く決めてほしいということを言ってきております。それが実施に至った暁にはいろいろ具体的な動きがあるのであろうと予想しております。
○竹内(勝)委員 だから、ここで外務省さん、はっきりしておいていただきたいのですが、今の特許庁の御答弁によりますと、今後そういうことが、今まではスムーズにいっていた特許出願、日本においてのものが、どんどんアメリカの網をかぶせて、これは防衛特許、防衛秘密特許ですよという形でどんどん出てくることは十分考えられるじゃないですか。そうすると、例えばマイクロエレクトロニクス、コンピューター、新材料、ロボット、通信、航空宇宙、バイオテクノロジー、そういうすべてのものが、日本では確かに民事用ですよ、そういう形で利用していますが、それを、技術を、武器技術の輸出によってアメリカへ持っていったならば、今度はこれが防衛技術となって、そしてこれは秘密特許扱いですよとなってきたならば、今度は日本での、今まで民事で技術が進んでいったものがここでストップしてしまう形じゃないですか。これははっきりさせてください。
○小川政府委員 御質問を二つに分けてお答えすることになると思いますが、まず、アメリカからこの五六年協定の秘密特許という形で持ち込まれたものと同じ発明内容の、日本の民生技術的な形で日本企業による発明がなされて、これが日本企業独自の発明で行われて日本の特許庁に出願されたもの、これはいかに発明内容が同じでありましても、独自で開発されたものは通常の特許手続対象となるわけでございますから、その民間の民生における独自の開発努力を阻害することはないようにこの五六年協定の仕組みはなっておるわけでございます。
 それからもう一つ、それにしても、そういう日本企業が独自に出願したものがアメリカに提供されて向こうで秘密特許になって、回り回って秘密に全部なってしまうことがあるのではないかという御指摘部分があったと理解しますが、その点につきましても、日本企業としてどういう技術政策、経営政策をとるかという判断が自由意思で決められまして、日本企業が独自で開発した技術を日本の特許庁に出願をいたしました場合には、仮にこれがアメリカに武器技術供与等の形で渡されることがあっても、通常どおりの出願手続で進められると理解しております。そういう意味では、回り回ってとめられるということにはならない、こういうケースであればならないと考えております。
○竹内(勝)委員 それも日米合意しておりますね、もう一度確認しておきます。
○有馬政府委員 十分に理解されております。
○竹内(勝)委員 委員長にお断り申し上げまして、資料をちょっとお渡ししたいと思います。
○宮下委員長代理 配ってください。
○竹内(勝)委員 この横ぺらの長いの、それと縦の小さいの、この二種類でございますが、まず横に長いのを見ていただきたいのです。
 これは一月十八日付「ディフェンスニュース」紙、ダニエル・スナイダー記者がこの問題の状況を報告しておりますね。その中でまず、わかりやすいように線を引っ張っておきましたので、こういうように翻訳をしてみました。「秘密特許情報の保護についての秘密取り決めに関する日本との合意がペンディングとなっているため、米政府はいくつかの大規模な防衛取り引きの進展を停止させている。」こういうことを言っておりますね。そのことは下の方に横線を引っ張っておいて、「FSXプロジェクト、SDI契約、日米欧宇宙基地共同計画、それに科学技術協定の全面改定を含む防衛技術関連の防衛業務計画は、この取り決めが調印されるまで停止される。」こういうようになっていますが、この取り決めというのがまだここで明らかにされておりません。
 もう一枚の方の縦長の小さい方を説明させていただきますが、これはかつてMDAの事務局におりました防衛機密問題の専門家が書いております。
 同じく最初のところから、「一九八〇年以来国防総省は、繰り返し日本に対して他の三十ケ国余りとも交渉してきた一種の「軍事情報保護に関する一般協定」(GSOMIA)を締結するよう圧力をかけてきた。しかし、日本政府はGSOMIA条項は、現行法の枠を超えるものであると主張してきた。」それから下の方のところに傍線を引いておきました。「あるいは現行法規の厳密に解釈することではなく、より柔軟な方法をとることで満たされるかは、明らかではない。いずれにせよ、東京が軍事情報保護の問題を解決するよう積極的な行動をとらなければ、この問題は米国との防衛技術協力での一層の進展を図るための阻害要因となって立ち現れることになろう。」
 これは外国の方がこのように書き報道しておることでございますが、このGSOMIAというのはどんなものなんですか、ちょっと御説明ください。
○有馬政府委員 これは米国が同盟諸国と一般に秘密をどのようにお互いに保護するかということで取り決めているものだそうでございますが、詳細は第三国との間の協定でございますので承知いたしておりません。
○竹内(勝)委員 GSOMIAというのは日本語に訳すとどうなるのですか。
○有馬政府委員 GSOMIAと申しますのは、ゼネラル・セキュリティ・オブ・ミリタリー・インフォメーション・アグリーメントという取り決めの略だそうでございますから、これをどのように訳すかと申しますと、実態を存じませんのできちっとした日本語になるかどうかわかりませんけれども、軍事情報についての一般的な保護にかかわる取り決めとでも申すのではないかと思います。
○竹内(勝)委員 外務大臣、これだけはっきりしておるものを、これは本当に今後のこの技術摩擦の中で、日本の経済それから技術の発展、そういったもので、もういよいよアメリカが秘密特許という形で網をかぶせてくる。そうすると、先ほど私が申し上げましたような競合する場面が全部出てきますよ。それはエレクトロニクスの関連、セラミックの関連、バイオテクノロジーの関連、すべてのものが出てくる。そういう中で、ましてやFSX、SDI、すべてのものがそれに関連していく。これほど重要なものがわからぬ。
 大臣もこれは全然知りませんか。ヨーロッパの三十カ国が締結交渉をしてきたのですよ。イギリス、フランス、西独、そういったところは締結していますよ。知りませんか。
○宇野国務大臣 寡聞にいたしまして、この名前、本当に知らないわけであります。
○竹内(勝)委員 それでは、ぜひこれを研究してもらうのと、そして、この問題に関して今後恐らくアメリカとしては、公的な担保と私先ほど申し上げましたが、もう既に三十数カ国と交渉をし十カ国以上締結をしておる、こういうものの中で新たな法的措置というものを要望してくる、こういうように私は考えます。そういった危慎はないでしょうか。そういったものは一切なく、先ほどの昭和三十一年に議定書を交わした、これのみで十分今後の対応ができるのだ、こういうように理解してよろしいでしょうか。どちらでしょうか。
○有馬政府委員 さように御理解いただいてよろしいと思います。
 今お配りになられました資料との関係で一言、御質問もございましたので申し上げますと、このダニエル・スナイダーという人の書いた記事の中に、FSXのプロジェクト、SDI契約その他の話が挙げられておりまして、これといわゆる五六年取り決めに従って今私ども行おうとしていることとの間に関係があるようなことの御言及がございましたけれども、そういうことはございませんので、念のために申し上げます。
○竹内(勝)委員 では通産大臣 、おいでいただきまして恐縮でございます。通産大臣、通産省としては本当に軍事よりも民生技術、経済重視を貫いて、技術革新を国策としてきた我が国の将来を考えると、今三十カ国以上がこういった交渉のテーブルにのっており、既に締結しておるところもある、そういう中で必ずアメリカとしてはこのような公的な、法的措置という形で追ってくるのではないかと私は思いますが、しかしそんなことを断じて受けてはなりません。日本の発展ということから考えますと、民生の技術、高度情報社会の最先端をつかさどっておる通産大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
○飯塚政府委員 技術開発が、我が国の経済を今後とも発展させ続けていくため、また国際経済の進展に寄与してまいるためには必要でございます。したがって、技術開発の推進のために必要な成果の公表等をほかの理由で過度に規制するということは厳に慎むべきであると考えております。このような認識を踏まえて、今後とも通商産業省といたしましては技術開発に努めてまいりたいと考えております。
○竹内(勝)委員 大臣、コメントを。
○田村国務大臣 今工業技術院長が申しましたことで尽きておるわけでございますが、技術開発の進展のための必要な成果、これの公表などは、やはり安全保障を理由に過度に規制することは厳に戒むべきことだろうと思います。戒めねばならないと思います。このようなことを考えますと、日本が、我々の進めておるところでございますが、やはり基礎技術を中心に技術開発にもっともっと熱心になっていくということが必要であろう。この政策は今後強く進めていきたいと思っております。
○竹内(勝)委員 防衛庁長官、お伺いしておきますが、本委員会での今までの論議を見てみましても、防衛問題が焦点でございます。その中でもこの経済、技術、そういったものが非常に重要なものになり、そして防衛技術の秘密特許制度への対応など、この展開というものが非常に微妙なものがあるのじゃないか、私はこういうようにも考えます。この事態は経済、技術、防衛が絡み合った非常に複雑なものですよ。先ほどの第三条の類似事項、こういったことを考えますと、恐らくこれは秘密特許だということでどんどん網をかぶせてきて、今までのような発展を阻害させる。ここでこの記者も危惧を発しておりますし、また国内におきましても多くの人がそういう意見を述べておりますよね。私もそういった危惧を持つものでございます。
 したがいまして、防衛庁長官、現在のFSXの進展状況などから考えてみましても、ぜひこの問題を、どう取り組んでいくのか、それからどのような認識を持っておるのか、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。
○山本(雅)政府委員 長官の答弁に先立ちまして、事実関係だけお答え申し上げたいと思います。
 防衛庁といたしましては、アメリカとの関係で従来から技術情報の交換は活発に行ってきております。これは「資料交換に関する取極」もございますし、あるいは日米の防衛の技術装備の定期協議もございます。したがいまして、技術情報の交換あるいは防衛に関する技術開発というものも、防衛庁といたしましては我が国の防衛を担当いたします立場から今後とも活発に行う必要がある、こういうように考えておるわけでございます。
○瓦国務大臣 ただいま装備局長から答弁をいたしましたが、各種先端技術の装備に占める役割が増大をいたしております。防衛技術の相互交流の一層の円滑化を図ってまいることは防衛分野におきましても日米間の協力を進展させる、かようなことで考えてまいらなければならぬと思っておるわけでございまして、特許を含む技術交流についても種々の意見交換、話し合いを日米間で行っているところでございますが、今委員御指摘のような中で枠組みもあり、私どもは技術の問題につきまして日米双方が円満にいくように努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
○竹内(勝)委員 大蔵大臣、副総理、最後にあなたにお伺いしておきます。
 今のこの答弁の状況を聞いていただいてわかるとおり、また私の心配な点、そういった点もおわかりいただけたと思いますが、私は、この六十三年度予算通過後に日米双方の新たな展開がなされるのではないか、そういった面を危惧するのです。また同時に、先ほどの「ディフェンスニュース」でのダニエル・スナイダー記者も言っているように、日米ともこれは新しい展開になっていくのではないか、こういうように述べております。そういう中で、今通産大臣からもございました、それから防衛庁長官からもございましたとおり、これが今後秘密特許ということで大きく網をかぶせられてきて競合した、こちらは民生用としてどんどん伸ばしていこうというのが競合してそこでストップしてしまう、今までの状況とは大きくさま変わりしてくるやに考えられる。
 したがいまして、こういうようなGSOMIA協定、これは今ヨーロッパで進められておるものでございますが、断じて今までもなかったということを今外務省も申しましたし、それから今後もないことを願いますが、どうかそういうことのなきように確固たる姿勢を政府として鮮明にして、そして今後我が国の科学技術の発展、そして経済、技術、防衛、そういった面でのバランスというものがきちっととれていけるようなそういう姿勢の堅持を再度副総理のあなたにお伺いして、この問題を終わりたいと思います。
○宮澤国務大臣 関係閣僚から既に現在そのような協定を締結する話はないということをお答え申し上げておるところでございますが、今後とも御指摘のような点は十分に注意をしてまいります。
○竹内(勝)委員 それでは次の問題に移らせていただきます。国土庁長官おいででしょうか。
 竹下総理が今国会の施政方針演説で、地価上昇の原因の一つとして東京への人口や諸機能の一極集中があるとして、四全総の推進によりまして政府機関の地方移転、こういったものを進めていくということで取り組んでいく趣旨のことを述べられました。同時に、二月十九日の閣議で、一省庁一機関の地方移転の呼称を今度は政府機関の地方移転ということにしたいと述べられたと伺っておりますが、一月二十二日の閣議決定は移転対象が四分野ございますね。これは最初のときに決めた問題でございますけれども、時間の関係で全部言いませんが、そういったもの、基本は今後ともこの四分野で考えていくのかどうか。
 さらに、今度の新たな呼称の政府関係機関の地方移転というのは、例えば実際に京都の商工会議所からも要望が国土庁長官のところへも出ておりますが、各部署全部に出ております。その中にございます、例えば「東京集中による弊害を是正し、一旦災害時のナショナルセキュリティ確保のためにも、多極分散型国土をつくる必要があり、思い切った政府諸機関の地方移転をはかるべきである。京都へは文部省特に文化庁、さらに最高裁や特許庁の移転が望ましく、また遷都については、平安時代以来千百年間首都として長い歴史のある京都がもっともふさわしいので、これが実現方を強く要望したい。」このように出ておりますが、あわせてこの移転という考え方、どのように今後取り組んでいくのか、御答弁いただきたいと思います。
○奥野国務大臣 御指摘いただきましたように東京一極集中、それがまた地価の異常な高騰というような状態にまでなっておりますので、都市産業機能もできる限り東京から地方に移転してもらいたい、それにはやはり政府も率先してそのような努力をすべきだということから、政府機関の移転を図ろうとしているわけでございます。
 同時に、これまた京都のことで御指摘ございましたが、この際首都機能を一括して移転したらどうかという議論もあるわけでございます。そういうこともございますので、これと矛盾しないように政府関係機関の移転を図ろう、言いかえれば首都機能一括移転の問題が起こっても、それについていく必要のない、言いかえれば独立性が強いといいましょうかそういう関係の四つのカテゴリーに属する機関の二十三区外への移転を図ろう、こういう考え方で一月二十二日に閣議決定をいたしまして、そしてまた二月には、原則として四つのカテゴリーに属するものは移転するのだ、そういうことを事務的に話を進めてまいりますということの閣議の御了解を得て今それが進行しておりまして、三月中に移転機関を決めてもらいたい、こういうことでございます。
○竹内(勝)委員 それでは、もう一問国土庁長官にお伺いしておきます。
 長官は二月十九日の閣議で、政府機関の地方移転は七月末までに進めていきたい旨の発言がございました。それが具体的には今三月ということで、決定するのはそういうことでございました。しかし、今後のスケジュール、それがもし考え方がございましたらそれを述べていただくのと、それから要望でございますが、移転後の跡地の売却についてはどうするのか。現在でも東京の公示価格は高いわけでございますが、これは絶対に公示価格以下で売るべきである、こういうふうに考えますし、それからまた売り先は公共団体に限るべきであり、それがまたこの住宅問題、いろいろなものにちゃんと波及していくようなそういった体制をとるべきであると考えますが、国土庁長官のお考え方をお伺いしておきます。
○奥野国務大臣 三月中に移転機関を決めてほしい、こう言っているわけでございまして、決まってまいりますと、個々の機関ごとに、跡地をどうするか、どういうところへ移転していくか、職員の処遇についてどういう配慮を要するか、もろもろの問題がございますので、そういう問題も含めまして七月中には閣議決定をしたいな、六十四年度予算要求には間に合うように進めていきたいな、こう考えておるところでございます。
 跡地の問題につきましては、これはケース・バィ・ケースになるということでございますけれども、もちろん公用、公共用を優先して考えるべきだろうと思いますし、また地価問題にも十分配慮していかなければならないのは御指摘のとおりだと考えております。
○竹内(勝)委員 じゃ国土庁長官、結構でございます。ありがとうございました。
 それでは労働省並びに厚生省にお伺いしておきます。
 まず体の不自由な人に対しての雇用問題、身体障害者雇用率、こういった問題で若干お伺いしておきますが、身障法第十一条及び第十四条等にも、官公庁、こういったところが非現業は一・九%、それから現業が一・八%、それから特殊法人、これも一・八%、こういうような形で身体障害者の雇用を確保していく、こういうように法律で定められておりますね。そしてまた本年この雇用率をもっと高めていこうというような動きもございますが、その状況を最初に、概略でいいです、時間がございませんので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。
○中村国務大臣 御指摘のように身体障害者雇用促進法におきましては、労働者数に法定雇用率を掛けまして端数を切り捨てる、それ以上の数の雇用をしなければならぬということに相なっておるわけでございまして、御指摘の特殊法人を見てまいりますると、特別な事情があります日本国有鉄道清算事業団を除きますと、全体としては一・八七%でございまして、上回っておるわけでございます。ただ個々に眺めますと、御指摘のような一人ないという不足をしておる法人もあるわけでございます。これらにつきましては、お話しのように本年四月からは〇・一%雇用率が上がりますので、これを機会に積極的に強力な指導を行ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
○竹内(勝)委員 それでは、私資料をいただきましたので、その問題に関して若干申し上げさせていただきますが、一・九%ちゃんと雇用率を達成しているところも、あるいは達成していないところもございます。それから特殊法人では一・八%、これも達成しているところ達成していないところいろいろございまして、いろいろな事情があると思いますが、特に例えば厚生省の年金福祉事業団、これは〇・六三%です。それから通商産業省石油公団一・一一、それから通産省の中小企業事業団一・五八です。石炭鉱害事業団一・四八等になっております。そのほかいろいろございます。運輸省の日本国有鉄道清算事業団〇・一四というような、いろいろな状況はあると思いますが、ぜひこういった問題をきちんとこの法律に定められたとおり、また本年四月にはさらにそれを上げていこうという積極的な考え方があるのにもかかわらず、このような状態ではこれは問題だと思います。
 厚生大臣来ていただいておりますね。厚生大臣、特にこういう体の不自由な人たち、社会的に弱い立場におられる人たちのそういう措置をぜひしっかりとっていただきたいのと、それからもう一つ、労働大臣にももう一度申し上げておきますが、この高齢者、現在高齢化社会へ大きく突入しておるわけでございますし、今後もどんどん進んでいくわけですが、ぜひこの高齢者の雇用の問題も国の機関に率先して行うべきときが来ているのではないか、こういうように考えますので、そのお考えをあわせて労働大臣御答弁いただきたいと思います。
 最初に厚生大臣よろしくお願いします。
○藤本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、厚生省本省では一・九%に対しまして二・一二%で達成しておるわけでございますが、年金福祉事業団につきましては雇用率を下回っておるわけでございまして、これは好ましい状況ではございません。したがいまして、雇用率を達成するように指導してまいるつもりでございます。
○中村国務大臣 我が国の活力ある経済社会を形成するためにも、高年齢者の雇用、就業の場の確保ということは重大な政策課題であると考えております。したがいまして、労働省としましては、今までも強力な努力をしてまいったわけでございますけれども、その一環としまして、仰せのような国の機関の中で雇用、就業の場を提供していただくということも大変大事なことでありますので、これからも積極的に働きかけてまいりたいと考えております。
○竹内(勝)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
○宮下委員長代理 この際、日笠勝之君から関連質疑の申し出があります。竹内君の持ち時間の範囲内でこれを許します。日笠勝之君。
○日笠委員 大蔵大臣にまずお伺いを申し上げたいと思いますが、当予算委員会で二月二十三日に、場合によっては減税先行ということもある、このように答弁されたと広く報道されておりますけれども、この点は間違いないでしょうか、まず確認したいと思います。
○宮澤国務大臣 それは、抜本改正をいたします目的が毎度申し上げておりますように所得、消費、資産の間のバランスのとれた税制をこの際つくりたい、高齢化社会、国際化を控えましてそう考えておりますということを申し上げまして、そういう意味ではいわゆる増収そのものが直接の目的ではないということを申し上げたわけでございます。その点から多少この実施についてずれがあることはあり得る。多少ということを実は申し上げましたので、きょう、あす、すぐに真っすぐ帳じりが合うということを絶対にそうでなければということは申せないかもしれぬ、しかし、それは大変にずれがあったりいたしますと財政の都合がございますものですから、きちんと同じ日からといったような意味で申し上げておるのではありませんという程度のことを申し上げましたので、ごく大きな意味でうんと減税先行何カ月もといったようなことのつもりで申し上げたわけではございませんでした。
○日笠委員 多少のずれがあっても減税先行となれば、これは財源措置をしなければいけないわけですが、何か特別な財源措置ということが頭にあって申されたわけですか。
○宮澤国務大臣 そうではございませんで、そういう財源措置が考えられませんので、それは一日、二日というのも極端でございますけれども、ちょっとのことなら何とかなりましょうけれども、特に財源が考えられませんので、いわゆる大きな意味での減税先行ということは現実の問題として難しいと考えます。
○日笠委員 例えば六十二年度も、きょうあたりの新聞を見ますと税収が好調だ、こういうふうに出ておりますね。ということになりますと、六十二年度において、補正予算を済ませたばかりでございますけれども、いわゆる戻し減税でもよし、税収が好調ならば考えられる、そういうことも含めて減税先行だ、ないしは六十三年度も大幅な自然増収も見込まれるといういわゆる考えもあるわけでございますから、そういうものを財源として減税先行ということは考えられないわけでどざいますか。
○宮澤国務大臣 六十二年度、実はちょっと警戒をしておりますのは、確かにせんだってまで比較的伸びは好調であったわけでございますけれども、一月には伸びが鈍化をいたしておりまして、これはやはり減税が効いてまいりまして、源泉所得でございますと年末調整でございます、これが効いてまいりました。それから、恐らく今度は総合所得でございますと納税申告期に、三月でございますが、ここで効いてくるはずでございますので、減税というものが実は意外にやはり、当然かもしれませんが大きいという感じがこれから先の年度末までの問題としてございます。それからもう一つは、有価証券取引税なんかが伸びが鈍りましたのはこれはやむを得ぬことでございますが、法人税が何といっても最終的には三月期の法人税の税収でございますが、これが昨年意外に各企業がいろいろ財テクとか資産処分とかで決算をまあまあ何とか大きくやってくれておりましたので、その後の景気上昇というもの、その上に乗っけて考えるというわけにいかないという感じがございますので、そういうようなことからどうも今年度の自然増収というのは余り私どもは甘く考えるわけにはいかないなという感じがしております。いわんやこの六十三年度の問題になりますと、これはまだまだそれからのことでございますから、今おっしゃいますように何となく余裕の金があるかということでございますと、そういうふうな楽観はちょっとただいまのところ許されないというふうに思っております。
○日笠委員 そうすると、減税先行なんといういわゆるアドバルーンが上がって、国民もいよいよ先に減税をするのかなという、六十二年度の減税額もそんなに期待をしたほどではなかった。こういうことで、私どもがいわゆるいろいろな議論をする場合、アドバルーンばかり上がって実態がない。報道によりますと、お化けの足をつかむ話ばかりだ、こういうふうなことも言われておるわけでございますが、じゃ一転翻りまして、社会、公明、民社、野党三党が六十三年度政府予算案に対しまして修正の共同要求を行いました。この中で、これは聞くに値するといいましょうか、これは評価すべきものがあるというようなものはございますか。
○宮澤国務大臣 それは天下の公党が御協議の上で御提案になっておることでございますので、私ども謙虚に承らなければならないと思っております。同時に、私どもといたしましても、このたびの予算、いろいろな意味で最善のものと考えまして御審議を願っておりますので、その点もひとつ御勘案をお願いいたしたいと思います。
○日笠委員 以前私は竹下大蔵大臣のころ質問いたしまして、酒税の、お酒の税金の値上げのころでございましたけれども、もう最善、最高の予算案だから、少々税率が上がっても、お酒の税金が上がっても、この二兆円規模の税収は必ず入るとおっしゃいましたけれども、あに図らんや一年後には何と一二%も税収見積もり間違いがあったということもありますから、余り最善なんということをおっしゃらない方がいいんじゃないかと思うのですが、実はきのう自民党と野党との政調・政審会長会談がございまして、その中で自民党の方からは、野党要求九項目のうちキャピタルゲイン、有価証券譲渡益課税の強化等々四項目は大変いいものだということで評価をされたそうでございますが、そのキャピタルゲイン、有価証券の取引譲渡益の課税についてちょっときょうは議論をしてみたいと思うのです。
 こういうことを言いますと、すぐに政府税調に予断を与えちゃいけない。何をやっても、物言えば唇寒し秋の空で何も言えない。これじゃ論議にならないわけでございますから、一般論として結構でございますので、大蔵大臣にキャピタルゲインのことについてお伺いしたいと思いますが、まず御確認を申し上げますが、これは原則課税ということでいいのでしょうか。
○宮澤国務大臣 一般論といたしまして、所得税はあらゆる所得を総合いたしまして累進税率を適用するというのが基本的な考え方でございますから、キャピタルゲインでございましても、その原則の適用を本来受けるはずのものでございます。
○日笠委員 捕捉の問題があるわけでございます。先ほど当委員会でも背番号制度というか納税者番号制度のことで御議論ございましたね。非常に難しいということもあるわけでございますけれども、捕捉をするのに最も望ましいものはどういう制度があるか、これはどうでしょうか。
    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
○瀧島政府委員 お答えいたします。
 捕捉のために最も望ましい手段は何か、私もにわかに答えを用意してございませんけれども、世間で一般に言われておりますのは、例えばアメリカでとられているような納税者番号制度というものが一つの方法ではないかということでございます。その点につきましては、そういった制度を採用することの是非、その他広い角度から御検討をいただくため、政府の税制調査会に納税者番号についての特別の部会が設けられまして御審議をいただくことになっております。
○日笠委員 その税制調査会のことにつきましては、官房長官にも来ていただいておりますので、後ほどまた取り上げますけれども、一般論として、大臣、例えばキャピタルゲイン課税した場合、税収が、試算によりますと数兆円じゃないか。有価証券取引税だけで一兆六千億円とか七千億円ぐらい規模があるわけですが、これは例えばこの一兆六千億、七千億の今の有価証券取引税、流通税でございますが、この規模を保っていくという想定をした上でのキャピタルゲイン課税であり、いわゆる有価証券の譲渡益に対する課税を考えるというのか。いろいろあるわけですね。有価証券取引税を残しながらキャピタルゲイン課税をする。キャピタルゲイン課税を導入したんだから有価証券取引税はなくするとか、こういういろいろな、三つあるわけですね。今までどおりの有価証券取引税のみにやはりする。少々上げようかという説もあるかもしれません。それからもう一つは、もう有価証券取引税はやめちゃってキャピタルゲイン課税のみにする。両方を併用する。こうあるわけですが、大臣がお考えの中で、この一兆六千億、七千億規模の有価証券から上がってくる、流通税でございますが、税収は確保したい、こういうお考えがあるのですか。それとも税収は下がってでも、キャピタルゲインというものは政府税調も原則課税ということでこれから検討するということでございますから、その点をちょっと一遍お聞きをしておきたいと思うのです。
○宮澤国務大臣 仮にまんべんなく公平に捕捉をする方法が発見されたといたしまして、有価証券のキャピタルゲイン課税をいたしましたときにどのくらいの税収があるかということは、実は全くちょっと見当のつかない話でございます。今は株価が上昇過程にございますから、大きな収入があるだろうと一般に受け取られておるかもしれませんが、株価というのは上昇ばかりすると決まっておりませんので、一般的にどのような税収があるだろうかという想定はなかなか難しゅうございます。そのほかに実際、行政についてキャピタルロスをどうするとか、ロスをどこから引くとか、いろいろな問題がございますので、まだまだそれをちょっと申し上げるような見当はついておりません。有価証券取引税との関連は、昭和二十八年のときにああいう経緯はあったわけでございます。流通税として有価証券取引税は一兆七千億とかいうような大きなものに発展いたしました。ですから、片っ方は流通税でございますし、片っ方は所得税でございますので、関係ないというようなものの、そういう経緯あるいは負担になるということの意味では無関係だというわけにもまいりません。
 それから、税収の点で申しますと、当然のことでございますが、大きな税収のロスになるようなことは困ることでございますので、結局どのようなキャピタルゲインの課税の形態が可能であるかということを見きわめませんと、ただいまのお尋ねにきちんとお答えするわけにいきませんで、もう少し経緯を見させていただきたいと思います。
○日笠委員 見きわめないととおっしゃいますけれども、幾らあるか推計できないと先ほどおっしゃったわけですが、推計できないもので見きわめるわけにいかぬわけですね。そういうことで、本当に何を基盤にして何を基準にして我々は考えていいのかという、何もデータもないし、大臣もおっしゃるように、見きわめたいけれども、推計というのもわからない、こういうようなことでございますね。
 ですから、例えば具体的にさらに突っ込んで申し上げますと、キャピタルゲイン課税は総合課税でいった方がいいのか、分離課税の方がいいのか。これはどっちがいいと大臣はお考えなんですか。その辺もみんな税調にお任せするんですか。
○宮澤国務大臣 まさにそこらもこれからの検討の課題でございます。
○日笠委員 じゃその税調のことで、ちょっと官房長官にもお越しいただいておりますので、お聞きをしたいと思います。
 官房長官、閣議了解というものは、内閣への拘束性といいましょうか、どういう性格のものであるか、まずお聞きしたいと思います。
○小渕国務大臣 お答えいたします。
 閣議決定、閣議了解のどちらも内閣の意思決定である点では違いはないわけでございまして、閣議了解は、各省庁の権限に属する事項のうち、特に重要と認められ、かつ他省庁にも関係する等、事案決定の及ぼす影響から見て、閣議において意思決定をしておくことが必要と思料される事項について行われるものでございます。
 なお、閣議了解につきましては、主管大臣から口頭により了解を求めることがあり、これを閣議口頭了解と称しておるわけでございます。
○日笠委員 そうすると、閣議口頭了解、閣議了解、こういうものは内閣として厳粛に守っていくべきものである、このようにお考えですか。
○小渕国務大臣 もとよりと存じております。
○日笠委員 そうしますと、昭和三十八年九月二十日、「各種審議会委員等の人選について」という閣議口頭了解がございますね。私、先日大蔵委員会で質問をしたのですが、そのときには内閣官房からどなたもいらっしゃらなかったので、きょうは再度詰めてみたいと思うのです。
 この「各種審議会委員等の人選について」という四項目にわたっての口頭了解がございますが、これを一々読むと時間がかかりますが、要は、幅広い分野から清新な人材を起用しなさい、そして兼職の多い人とか高齢者の方は極力避けた方がよろしいよ、そして任期も、任期三年のものは三期まで、これを原則とする、こういうふうに明確に出ておるわけでございます。この点はよろしいでしょうか。
○小渕国務大臣 日笠委員御指摘のように、大変古くなってはおりますけれども、昭和三十八年の閣議口頭了解はこのままに遵守しておるところでございます。
○日笠委員 そういたしますと、私は個別、個人的な遺恨はさらさらございませんが、今の政府税調の会長であられる小倉会長は五期目でございますね。それから鹿児島県の県知事さんも四期目でございますね。わずか三十名の委員の中でなぜお二人も原則三期までというのを逸脱して、四期ならまだしもという気もするのですが、五期目というと何かその辺に裏があるのではないか、こういうふうにも考えざるを得ないわけでございます。
 任命したのは、これは内閣総理大臣でございます。余人をもってかえがたい、じゃ一億二千万の国民の中で税制のことについて、これだけの人材がいる中で余人をもってかえがたいなんてことはあり得ぬわけでございます。御本人も昨年は、もう頭がたえがたいとか、限界だ、もうやめるとか、辞任を示唆したというようなことも広く行き渡っているわけでございます。この点は、政府の方でお願いをしてなっていただいているわけでございますから、私は個人的に小倉会長はどうだとか鹿児島の県知事さんがどうだとかというのじゃなくて、こういう閣議口頭了解というものをきちっと守っていかなければならない政府であるわけでございますが、それを四期も五期も、原則でなくて特例、異例ということが続きますと、一体竹下内閣は、この閣議口頭了解というものを本当に守るつもりがあるのか、それとも一つずつ、いわゆる五十四年の財政再建の国会決議、また中曽根総理が申し上げたいわゆる大型間接税の定義の政府統一見解、こういうようなものももう紙を透かして裏を見なければわからないようなことになるわけでございます。原則は原則として、閣議口頭了解のこの物は物としてきちっと守っていくという姿勢がないのじゃないか、もう何となくいつの間にかずるずるずるっとこういうものもなし崩しにしていこうという姿勢があるのではないかと疑わざるを得ないわけでございますが、なぜ五期目の方がいらっしゃるのですか。
○宮澤国務大臣 これはまず、私の方で官房長官にお願いをいたしましたので私から申し上げさせていただきたいと思うのでございますが、確かに小倉会長の場合は、異例だとおっしゃいましたが、まさに異例と申し上げるべきであろうと思います。御本人も実はやめたいと言っておられましたが、私がたってお願いをいたしたいと存じまして、直接お目にかかりまして再任をお願いいたしました。
 私がいたしましたのは、今度の税制改正というのは本当に戦後初めてのことでございますが、しかも昨年提案いたしましたものが廃案になったという大変に異常な経緯がございますものですから、これをさらにどのように後を税調でお願いすべきかということは、ちょっと従来の経緯をよほど御存じいただきませんと、この際の処理は非常に難しい、そういうことを考えましたし、また、当然のことながら税調の委員の中にも、過去の事態にかんがみていろいろな意見をお持ちの方がございますので、それを全体として総括していただくためには、やはり過去における長い間のキャリアを持っていただいておる小倉さんをおいてない、こう考えまして、異例とは存じつつ、まず御本人に再任のことをたってお願いをして、御承諾を得ました上で内閣にお願いをいたしました。
 それから、鎌田さんの問題は、これは四期でございますが、やはり地方を代表されて、地方自治、地方税、これを知っていらっしゃる方は何といっても鎌田さんということがございましたので、まあこれは小倉会長ほどの異例ではございませんですけれども、この際、こういう時期でございましたのでお願いをいたしたわけでございます。
○日笠委員 もう一遍お断りしておきますが、私は小倉会長も鎌田県知事も何の遺恨もございません。原則を守ってもらいたいということを言っておるわけでございます。
 大蔵省の方からそういう人選、推薦が出てきた。チェックされたのですか、これはもう五期目じゃないですかと。五期目です、これは原則に反しますよと一遍くらいは突っ返されたのですか。それとも唯々諾々として、まあ大蔵省さんがそう言うならしゃあないですね、こういうふうな感じのものですか。
○小渕国務大臣 ただいま過去の経緯万端御存じであります大蔵大臣から御答弁いただきましたが、そうしたお考えで御推挙いただきましたので、内閣総理大臣としては御任命申し上げた、こういうことでございますが、さらに加えますと、小倉会長におかれましては、六十一年十月の「税制の抜本的見直しについての答申」というものにつきまして、前の税制調査会のときにおまとめをいただいておりまして、その実施の途上にあることから前体制との継続性が求められるという特別の事由、先ほど委員御指摘の「各種審議会委員等の人選について」の閣議口頭了解の中にも、「委員の長期留任は特別の事由のない限り行なわない。」ということでございますので、特別の事由ということで小倉会長、鎌田委員については引き続いて再任を申し上げてお願いをいたしておるところでございます。
○日笠委員 実施の途上である、継続性ということ、これはもう大型間接税をやるため、こう読めるわけですね、そうなってきますと。だからそういうふうな、もうあくまでもしゃにむに大型間接税をやる布陣を築いた、こういうふうに考えざるを得ない。そういう税調が出した答申、それを最大限尊重して法案になってくるということは、私はよく言うのですが、ゼロ掛ける百万はゼロでございます。この閣議口頭了解を無視してできたような政府税調が答申したものは尊重するに値するかどうかということまで考えていかなければいけない。そもそも閣議口頭了解なんか要らないじゃないですか、特別の事由だ何だと言うて四期ならまだしも五期なんていうと。これはやめますか。辞任させますか。
 そういうことで、ひとつ今後は閣議口頭了解は厳守するということを官房長官からちょっと御返事をいただければと思いますが……。
○小渕国務大臣 閣議の重要性にかんがみまして、ここでの了解をいたしましたことを守っていくことは当然のことでございます。
○日笠委員 それから、竹下内閣のいわゆる行政改革への姿勢ということで、これは臨調、行革審いろいろなところからたびたび指摘をされております国土庁、沖縄開発庁、北海道開発庁の統合問題でございます。
 一々、いつどういう指摘があったか、答申があったかということは言わなくても皆さんの方がよく御存じでございますが、現在行政改革のいわゆる中央省庁の統合ということでの古くて新しい課題であり、象徴、シンボルでございますが、この三庁統合の進捗状況はどうですか、総務庁長官。
○高鳥国務大臣 日笠委員が既に何回もこの問題についてお取り上げになっておられるところでありますが、この統合につきましては、臨調におきまして指摘をされているところであります。
 しかしながら、ただいま閣議決定を尊重しろというお話でございましたが、昭和五十八年五月二十四日に閣議決定がございまして、国土庁等三庁の統合につきましては、「当面、国土庁、北海道開発庁及び沖縄開発庁による協議の場を設けることとし、国土庁等三庁の統合については、当該機関の担当する行政の特殊性にも配意し、各方面の意見を聴取しつつ検討を進めるものとする。」という閣議決定がございますので、この決定の趣旨を踏まえて私どもとしては対処してまいりたいと思っております。
○日笠委員 六十一年六月十日の旧行革審の「今後における行財政改革の基本方向」には、それ以降のですよ、それ以降の基本方向には「臨調答申等の指摘に沿って、社会経済情勢の変化等に即応すべく国土三庁の統合、」云々とあるわけですね。ですから、この国土三庁の統合ということは、これは今後も進めていかなければならない、こういうことでございます。
 ましてや六十年七月二十二日の「行政改革の推進方策に関する答申」にも、「国土三庁の統合は、沖縄の特殊事情に配慮しつつ、臨時行政調査会答申の趣旨に沿って進めることとし、当面、国土庁、北海道開発庁及び沖縄開発庁の各長官は、一国務大臣の兼任とすることが望ましい。」とありますが、今の竹下内閣はこうなっておりますか、官房長官。
○小渕国務大臣 今国土庁長官並びに北海道、沖縄両開発庁長官二人が国務大臣としております。
○日笠委員 そういたしますと、こういう答申が出たり閣議決定があったりいたしましても、自分の都合のいいところだけはつまみ食い、こうよく言いますね、つまみ食い行革である、こう言われております。ですから、ひとつ総務庁長官におかれましても、行政改革の一つのシンボルは、これは御承知のとおり三庁統合である、中央が血を流していく、こういうことにあるかと思います。
 私も、過去中曽根総理以下江崎長官、後藤田長官の時代もこのことについて質問をいたしました。統合というものはあるわけですね、いつかは。こういうことでございますので、この辺をひとつ竹下内閣が行政改革を本気でやっておるという一つの証拠として、ぜひとも大いに進めていただきたい、こう思いますが、長官、いかがですか。
○高鳥国務大臣 臨調、行革審答申は最大限尊重してまいるのは私どもの立場でございますので、今後なお一層検討を深めてまいりたいと存じます。
○日笠委員 官房長官と総務庁長官、結構でございます。
 それでは、文部大臣にお伺いをしたいと思います。
 二十一世紀を担う未来の使者、いわゆる今で言うところの幼児、児童生徒、これは竹下さんの言葉ではございませんが、大事に大事にしなくちゃいかぬわけでございます。
 そこで、実は我が岡山県の県の予防医学協会がモデル校を選びまして、この児童生徒の成人病傾向を調べたわけでございます。それによりますと、これは意外や意外、今の現代っ子は血圧の問題、血液中の総コレステロールの量の問題、要精密検査をしなくちゃいけないというような方が非常に多いということでございます。例えば高血圧だと言われる小学校の男子が二・五%、中学生の女子で二・四%、高校生の男子で一・七%と、案外高血圧で、これは食事療法なりいろいろ精密検査をさせなければいけないんじゃないかという子供さんがふえております。
 それから、総コレステロールの量にまいりますと、いわゆる百CC中二百ミリグラム以上、これも要精密検査しなくちゃいけない方が、小学校の男子で何と三六・三%、中学校の女子で二〇・五%と、いずれも一〇%をオーバーする非常に憂慮すべき結果が出ておるわけでございます。
 そこで、学校保健法がございますね。これに基づいて学校保健法施行規則におきましては、今十一項目の検査を健康診断をするようになっておりますが、やはり成人病予防ということは、もう小さいときから食事療法を中心にやっておかなければ治らない。八〇%は治るのですが、二〇%は治らないというデータもあるわけでございますので、この学校保健法ができてから三十年にもなりますし、ここでひとつ見直しをして、例えば血圧測定も将来考えなくちゃいけないんじゃないか。それから、できれば尿は、これは検査するようになっておりますが、尿の中の糖分、これも糖尿病ということでございますが、これも施行規則を変えましてやっていかなければならないのではないか、かように思うわけでございます。現時点、どういうふうに今検討されておりますか。
○中島国務大臣 日笠委員おっしゃいますように、本来は中高年に多い成人病が、小学校、中学校を含めた生徒諸君にふえておる、この傾向は承知しておりますし、心を痛めております。
 これに対しては、日本学校保健会の中に健康診断調査研究委員会、これを昨年発足をさせました。そして今おっしゃるように十一か十二項目今までの健康診断がございますが、それと確かに糖尿病あるいは高血圧、それから突然死事故が多いものでございますから、心電図あるいは心音図、これをとっていこう。そのかわり簡素化する方は視力とか色覚、この方は一回はかればそう毎年でなくてもいいのじゃないか。ですから、簡素化する方と、これから力を入れていこうという中にまさに入れて今検討を進めておるところでございますが、確かにまた心臓病の原因にもなるものが高血圧でございますから、糖尿あるいは高血圧の一つに血圧をはかれ、こうおっしゃる、この御提案は一つの識見といたしまして取り入れてまいりたい、今検討を進めておりますが、その中に入れてまいりたい、こう思っております。
○日笠委員 それで、今何かベストセラーになっています「教育改革の推進 現状と課題」という本がございますね。文部省教育改革実施本部編集でございます。文部省さんで編集された。これを見ましても、その成人病予防対策というのはどこにも一行も一文字も出てきませんですね。いわゆる喫煙、飲酒、薬物乱用は出てきます。そういうことで、やはり成人病予防ということを今から、学校の保健体育の時間なり家庭への連絡で食事療・法ということでの好ましい食事のあり方とかいうようなことをやっていかなければ、学校保健法第一条の「目的」にも沿わないと思うのですが、ないんですね。
 成人病予防ということにつきまして、高等学校の保健体育の指導要領の解説には明確に「成人病の予防活動が行われていることを知らせる。」とございます。中学校の方は出てきませんですね、中学校の指導要領は。そういうことで、先ほどからデータを申し上げましたように、中学校の保健体育の教科書に明確にそういうことを書くようにしていかなければならないのではないか。この「現状と課題」にないからやらないとおっしゃるのか。やはりないけれども中学校の指導要領にもそういうことを書き加えて、保健体育の教科書に明記して、学校で中学生ぐらいからもう自覚させる、これは大事だと思うのですが、いかがでしょうか。
○中島国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、中学かあるいは小学校にもそういう傾向がふえておりますので、これは学校教育とそれから家庭教育と環境上、三位一体で進めなければならぬことだ、こう思いますが、特に義務教育で、給食をつかさどっておりまして、この面ではいろいろ、栄養価も含めまして、その方の対策も十分計算をしていただいておるわけですけれども、そのほかに間食その他御家庭での食事もございますね。ですから、これからは給食だけでなく、保健というか、生涯を健康に過ごす、そういう健康の一環として、給食と保健を一体化して健康教育というもので高めていこうという点がございまして、実は機構上も健康教育課ということで一元化して健康をチェックし増進するということでひとつ重点を高めていこう、こういう考えで今やっておるところでございまして、特に小中、高めてまいります。そこに書いていなかったということは残念といえば残念ですけれども、そういう面で機構上からも高めていく努力をしておる、こういうことでございまして、具体例がありましたら政府委員からお答えさせます。
○日笠委員 じゃ文部大臣結構です。
 最後に大蔵大臣、酒税、お酒の税金ですね、時間の許す限りちょっとお聞きしたいと思います。
 御存じのとおり、昨年の十一月にガット勧告が出ました。それから昨年の十二月十五日にはECの外相理事会でも四月から実施しないとしかるべき措置をとるとまで言われております。イギリスのハウ外務大臣が先日来られたときも、早くやってくれという要請もあったことも御存じだと思います。昨年の十二月にお酒の税金、酒税については基本方針だけは発表されました。これは定性的な問題でございまして、定量的に税率をどの辺に幾らで持ってくるかというのはないわけでございます。がしかし、六月にカナダのトロントでサミットがございますね。これまでにはやはり定量的な方向づけを持っていかないと、これはまたいろいろと大きな問題になるかと思いますが、この定量的な方向づけですね。
 例えばビールの税金高過ぎるのでどこまで下げるとか、またしょうちゅうは倍にするとか、またウイスキーの場合は全部、特級も二級も一級もなくしちゃって、どの辺に同%ぐらいの税率にするかとか、従量税でございますけれども、キロリットル当たり幾らにするとか、こういうある程度の案を持たないと、このサミット、私が心配することはないのですが心配するのですが、どうなんでしょうか。定量的なものを持っていかないといかぬのじゃないかということです。
○宮澤国務大臣 これは御指摘のように、法案の提出がおくれるわけでございますけれども、それだけでは済みませんので、基本的な方針を決めまして、各国、関係関心国にも示してございますものですから、それでただいまのところ大体の基本は理解をしてもらっておりまして、もし御指摘のようなことが起こりましたら、サミットにはそういうことを考えまして臨みますが、ただいまのところは大体基本を了承してもらっておると思っております。
○日笠委員 最後に総括して申し上げますと、今政府税調の幹部の方も、間に合う、こうおっしゃいましたが、間に合うということは、酒税も抜本改正の一環でございますから、ということは、もうすべて間接税も相続税も全部やっちゃう、こういうふうにとれるわけですが、いかがですか。
○宮澤国務大臣 それは私どもも最善を尽くしまして、できるだけ早く御提案をしたいと思っておりますけれども、先ほども申しましたように、まだまだ税調で検討の段階でございます。
○日笠委員 終わります。
○奥田委員長 これにて竹内君、日笠君の質疑は終了いたしました。
 午後三時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時六分休憩
     ────◇─────
    午後三時三十三分開議
○奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。安藤巖君。
○安藤委員 お願いをして委員長の了承を得ております資料を配付していただきたいと思います。
 まず最初に、交通安全施設の整備について、特に交差点の信号機の整備についてお尋ねをいたします。
 交差点での事故防止対策につきましては、これまで第百八回国会以来、我が党議員が再三再四にわたってその対策の強化を要求してきたところであります。
 まず最初に公安委員長にお尋ねをするわけですが、前の国家公安委員長は第百九回臨時国会の本会議におきまして、昭和六十一年度で交差点及び交差点の近くで全交通事故の四一・五%の交通事故死が発生している、こういうふうに言っておられるし、これは統計上も明らかであります。
 ところで、交通事故の全体のうち信号機のない交差点での事故が昭和六十一年度では三二・五%に上っておる。これはお配りいただきました白い小さい方の下の「信号機のない交差点における交通事故、死亡事故の発生件数」、この上の欄にあるとおりであります。これは昭和五十年度よりも昭和六十一年度の方が一・四倍、二八・九%から三二・五%にふえているということを示すものであります。これは交通安全白書及び警察庁の資料によるものであります。そしてその下の欄を見ていただけばわかるわけですが、死亡事故の数は信号機のない交差点で昭和五十年度一五・三%だったのが昭和六十一年度には一六・九%にふえている、こういうような状況になっているのですが、こういう状況を国家公安委員長は御存じなのかどうか、まず最初にお尋ねします。
○梶山国務大臣 まず、貴党から昨年の十二月二十四日、「安心して渡れる交差点の実現をめざして」という申し入れ書をちょうだいをいたして、読ませていただきました。まさに交通安全は貴党だけではなく世界の願いでもございますので、これから全力を挙げて交通安全の確立のために努力をしてまいる決意でございます。
 警察としては、交差点における交通事故の発生を防止するために、従来から、歩行者用の信号機等の交通安全施設の整備、悪質、危険な違反の取り締まり、歩行者、自転車の保護活動、運転者に対する正しい右左折方法等の指導を行ってきたところであります。今後とも関係機関、団体と協力の上、引き続きこれらの施策をより一層強力に推進して、交通事故の防止を図ってまいりたいと思います。
 具体的な資料については残念ながら承知をいたしておりませんので、政府委員から答弁をさせます。
○内田(文)政府委員 お答えいたします。
 ただいま先生御指摘の数字はそのとおりでございます。
○安藤委員 国家公安委員長は、今私がお示しした数字については具体的には知らぬとおっしゃる。しかし、いろいろ努力はしてきておるのだというふうにおっしゃるわけ。だから、これは今申し上げましたことを、資料を提供しましたからきちっと勉強していただいて、こういうような実態になっているということを認識をしていただきたいと思うわけであります。
 そこで、こういうこともやはり知っていただきたいと思ってお尋ねするわけですけれども、今お聞かせいただいたような御答弁は、これまでの国家公安委員長がいろいろ答弁をしておられることであります。ところが、今申し上げましたような数字として実際は出てきておるわけですから、御努力が本当になされているのかどうだろうかということを疑念に思わざるを得ぬわけであります。
 そこでこれから順次お尋ねをしていくわけでありますけれども、これは「時の動き」というのがあります。これは総理府の編集した雑誌であります。この「政府の窓」、これはもちろん全部は引用はいたしませんけれども、「第四次特定交通安全施設等整備事業五箇年計画を決定」というのがあってずっとあるのですが、この中に交通事故がずっとふえているという指摘があって「このように最近における交通事故の状況が再び悪化した理由としては、自動車保有台数の増加、交通に占める道路交通のシェアの拡大が進む中で、昭和五十年代後半以降公共投資の抑制基調が続いた結果、交通安全施設の事故抑止効果が相対的に低下したことが挙げられる」こういうふうに指摘もなされておるわけなんですね。だから、こういうような指摘、数字は勉強していただくとして、こういうような指摘がなされているということは御存じなのかどうか。
○梶山国務大臣 承知をいたしております。
○安藤委員 そこで、今の指摘にもあるわけですが、これはお配りをいただいた大きい方の紙の上の方の数字でありますけれども、これは自動車保有台数の増加は運輸省、それから舗装道路の延長、これは建設省の資料、それから信号機の数、これは警察庁の資料、これでずっと出したわけでありますけれども、昭和五十年度と五十五年度とを比較しての増加数、それよりも昭和五十五年度と昭和六十年度を比較しての増加数がこれはいずれもずっと少なくなっておる。これは数字ではっきりしているわけでありますが、問題は自動車保有台数及び舗装道路の延長と信号機数との関係であります。
 自動車保有台数の方は前の五年の増加台数に比較して後の方の五年間は九四%の増加、こうなっております。いわゆる伸び率九四%ということですね。そして、舗装道路の方は同じく伸び率八〇%強、こういう状態です。ところが、信号機の方、このふえ方は伸び率はわずかに五〇%以下、こういう状態にあるんです。だから、数字は知らぬとおっしゃるかもしれませんが、こういう点は勉強なさっておられるのかどうか、重ねてお伺いします。
○梶山国務大臣 概要については委員御指摘のとおりに承知をいたしておりますが、具体的な数値については残念ながら承知をいたしておりません。しかし、ただいま予算その他についての御見解があったわけでありますけれども、道路全体の伸びと交差点の比率、これもまた異なる点がございますが、確かに交差点事故が一番問題を起こしているということは私もよく承知をいたしておりますので、特に交通安全の中で交差点の施設、そういうものに重点を置いてこれから整備を図ってまいりたいという気持ちでいっぱいであります。
○安藤委員 整備を図っていきたいというお言葉どおりに実行していただきたいというふうに思うわけであります。
 そこで、今全国的な状況について指摘をしてお尋ねをしたわけでありますけれども、例えば愛知県の事例はどうなっているかというのが大きい方の紙の下の欄なんでありますが、こちらは自動車保有台数それから舗装道路の延長の方はいずれも伸び率一〇〇%以上です。ところが、信号機の数の伸び率の方は逆に五五%弱、こういうような実態にあるわけです。これが交通事故死ワーストツー、これは非常に自慢できる数字ではありませんですけれども、という愛知県の実態なわけなんですね。
 ですから、ごらんいただいておるのかどうかわかりませんが、愛知県では県議会としては意見書を採択しているわけなんです。この意見書、ポイントのところだけ申し上げれば、信号機のない交差点での事故が多いという指摘に続いて「信号交差点における人と車両の完全分離や信号機の大幅増設が求められているが、これらについては、国・地方ともに計画的にすすめているものの、その規模はあまりに小さく、なお国の予算措置の大幅増額が必要な情勢となっている。」こういうふうな指摘をしておるわけです。
 そして、これまた千葉県もワーストワンとかなんとかというふうに交通事故死の多いところですね。だから、やはり千葉県議会も議長が「交通安全対策の充実を求める意見書」これを政府に対して出しているわけです。これも結論は「よって、政府においては、特別の予算措置を講じ、交通環境の整備に力をつくされるよう要望する。」こういうふうに強調をしておられるわけであります。
 こういうような要請に対してどういうふうにして、先ほどはいや努力してきた、これからも努力するんだとおっしゃるのですが、具体的にこういう意見書が出ているわけですが、これに対してどういうふうにこたえていかれるおつもりなのか、お伺いいたします。
○梶山国務大臣 確かに道路やあるいは交通安全施設、そういうものの整合性がとられてない点もあろうかと思います。できるだけの努力を払いながらこれからやってまいろうと思いますけれども、予算のみで事故がなくなるわけでもございません。ぜひひとつ交通マナーや交通道徳をさらに一層周知徹底をさせ、場所によっては交通渋滞等がむしろ信号機の過多のために起こるという批判すらある場合が多いわけでございますので、その辺の整合性を得ながら交通事故が絶滅できるように努力を払ってまいりたいと思います。
○安藤委員 今おっしゃったようなことはもちろんでありますが、やはりこういうような施設が不足している。だから、交通安全のための公共投資の抑制措置がこういう交通事故をふやしているのだと、先ほどの「時の動き」の指摘にもあるわけなんですから、それはしっかり心得ていただきたいと思うのですね。
 ところで、公安委員長の方は一生懸命努力をされるということをおっしゃるのですが、やはりこれは財政的な裏づけがなければできないわけであります。そこで、国の方のそういう交通安全施設、特に信号機の増設等についてきちっと対応をしていただく必要があると思うのです。その関係について大蔵大臣の方の答弁をいただきたいと思います。
○西垣政府委員 ただいま昭和六十一年度を初年度といたしました第四次特定交通安全施設等整備事業五カ年計画に沿いまして整備を進めているところでございまして、大体その計画に沿いまして進めているつもりでございます。
○安藤委員 私が大蔵大臣に特にお尋ねをしたのは、第百九回臨時国会の本会議において我が党の松本議員が質問をいたしましたときに、この重要性は十分認識をしているというふうに大蔵大臣はおっしゃったわけですね。だから、今私が具体的な数字を挙げて、努力するというふうには言っておられるけれども実態はこうなっているではないか、保有台数は伸びている、舗装道路の延長は伸びている、信号機の設置数はもうぐっと減っている、こういうような状態を踏まえて、口でしっかり言うていただいても、お湯ばかりではおなかは膨れませんので、やはりきちっと財政的な措置というのをとっていただく必要があると思ってお尋ねしたわけですので、大蔵大臣にお答えをいただきたいと思うわけであります。
○宮澤国務大臣 ただいま主計局長から申し上げましたとおり、五カ年計画の推進によりまして相当程度整備されてきておりまして、国としても積極的な財政措置を今後とも講じるつもりであります。
○安藤委員 そこで、先ほど交通安全施設等整備事業五カ年計画のお話がありました。第一次、第二次、第三次、第四次と、今第四次が昭和六十一年度からですからずっとあるわけでございます。ところが、第三次計画では第二次計画よりもずっと中身が少なくなっている。第二次の五五・四%になっている。しかも、第三次計画では計画よりも達成率が七一・八%、七四%、こういうふうになっているわけなんですね。これはまさにいわゆる行政改革なる行革が始まってからこういうふうに激減をしているわけなんです。ところが、昭和六十一年度から始まっておる第四次計画はそのまた第三次の五五・二%にしか事業量の計画がないのです。そうなったらこれはさらにさらに減っていく、こういうことになるのです。
 そうしますと、先ほど大蔵大臣は非常な関心を持っておってこれからもやっていくのだ、それから先ほど指摘しましたように、第百九回の本会議場では重大な関心を持っているとおっしゃるのですが、実際関心を持っておられるような運びになっていないではないかということを私は今指摘を申し上げたのですが、そういう実態を踏まえて、もう一遍やるならやるとはっきり言っていただきたいのです。
○宮澤国務大臣 引き続き努力をいたします。
○安藤委員 大蔵大臣は大蔵委員会で忙しいようですから、後でまた来ていただけますな。
 そこで、私は具体的に、実は全国各地を回りたかったのですが、時間的な余裕がありませんので、名古屋市内の一部でありますが、実際に見てまいりました。
 どういうような実態になっているかということを、これは二、三の例でありますが、例えば名古屋の天白区の平針一丁目というところの交差点でありますけれども、私は二、三十分立っておったのですが、これは信号が全然ないのです。相当の車の量でございまして、なかなか横断ができないという実態にあります。ここは、朝の交通量が多く、母親が毎朝交代で立っている。東西の道路にはとまれの標識があるのですけれども、全然信号機がない。だから、相当強い要望が出ております。
 それからさらに、同じく天白区の植田一本松というところも、これは信号のない交差点なんですが、付近に天白高等学校、植田中学校、植田小学校、植田幼稚園、さらに保育園、スイミングスクール、これがずっとあるのですね、すぐ近くに。そして、ここは横断歩道すらない、そういうような状況がほうりっ放しになっているという状態にあります。
 それからさらに、これは名古屋市の中川区の八王子町という交差点でありますが、これは車の方の信号機はあるのでありますけれども、横断歩道の歩行者用の信号機がないわけですね。だから、最近南北の歩行者用信号がついたのですけれども、これも死亡事故があってからついておるのです。東西の歩行者用信号機がまだついてない、こういうようなことで、非常に強い要望があります。
 それで、こういうような問題につきまして、我が党の中路議員あるいは岡崎議員がいろいろ質問をいたしましたところ、先ほど国家公安委員長も、私がまだお尋ねする前から、歩行者用の信号ということもおっしゃったのですが、そういう質問に対して、警察庁の内田交通局長、この人は、歩行者用信号の設置ということは施策を講じてきているというふうにおっしゃっておるけれども、全く講じてきていない。それから、やはり内田交通局長は、地域の方々のいろいろな意見を聞きながら対策を講ずる、そういった面で努力をしていきたいというふうに言っておられるのですが、これもまだ今申し上げましたような実態であるわけです。だから、そういうようなことを十分勘案をしてやっていただきたいというふうに思います。
 そこで、いろいろ努力するというふうにおっしゃるのですから、私は信頼をいたしまして、先ほど財政的な面からも、大蔵大臣も努力をするというふうにおっしゃったのですから、努力をしていただきたいと思うのですが、最後に、こういうふうに人命を尊重するという面で大事な交通安全施設、信号機の設置、これが大分手抜かりである。にもかかわらず、一方で大企業に対して、特に自動車産業に対しては、税制の面でもいろいろな保護がなされている、こういうような実態、やはりバランスが完全に崩れていると思うのですね。そのことを強く指摘をいたしまして、引き続いての御努力を要望しておきます。
 そこで、引き続いて、ダムの建設にかかる問題をやります。
 このダムの名称は、蓮ダムといいます。これは、三重県の松阪に流れてくる櫛田川という川の蓮川、青田川、その合流地点にもう間もなく完成予定のダムであります。これは、治水、利水、それから発電の多目的ダムということになっております。この蓮ダムの建設事業の関係は、二回計画が変更になりまして、総工費六百四十億円ということになっております。このダムを建設するには、普通、作業手順といいますか、まず用地の買収から始まって、計画はその前にあるのですが、それに従って用地の買収から始まって、工事用の道路をつくって、そして用地の買収、補償関係も全部完結をして、それから実際、工事にかかって、本体の打ち込み、こういうふうに作業手順が決まっておるというふうに聞いておりますが、その関係について、それはそのとおり間違いないかどうかを、まず建設大臣にお尋ねします。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 ダムというのは大変大きな構造物でございますので、大変難しい手順がございますが、ごく一般的に、標準的に申しますれば、先生の御指摘の線かと思っております。
○安藤委員 今私が申し上げましたのは「ダム事業の手引」、監修が建設省河川局開発課というのに基づいて申し上げたのですから、そのとおりだというふうにおっしゃるのは当然だというふうに思うのですが、問題は、この蓮ダムの場合は本体の打設工事が始まって、本体のいわゆる水をストップする一番大きいところです、あれがほとんど終わるという状況になったにもかかわらず、水没地域の用地の買収が進んでいなかった、終わっていなかった、こういうような状態。そしてさらには、採石場は確保されたけれども、その採石場から本体のところへ運ぶ工事用道路、これが補償の関係で全部確保されていなかった。ですから、そういう道路ができていないから迂回はしなければならぬ、補償交渉はしりひっぱたかれるわで、大分、労働者の人たちはとんでもない労働強化を強いられたというような実態にあるのです。
 例えば昭和六十年の六、七月の超過勤務時間が百時間を超えるという人たちがざら。それから、ある係長などは最高で百九十九時間、こういうようなとんでもない状況になっておるのですが、これは労働条件のこともあり、後からまたお尋ねしますけれども、今後もまだたくさんのダムを建設されるということを聞いておりますが、こういうような点は今後のこともこれあり、大いに教訓とすべきではないかというふうに思うのですが、どうですか。
○萩原政府委員 超過勤務のことについてお答えをさせていただきます。
 私ども建設省も大変仕事をたくさんいただいておるわけでございますが、やはり職員管理から申しまして、百時間を超える、これは一カ月の時間でございますが、一カ月百時間を超える超勤という状態が長い月数続きますことは、決して好ましいことではないと思っております。そのように職員管理をやっております。
 ただ、ダムのような特別な工事によりますと、やはり一年あるいは二、三年のうちの一カ月二カ月は何人かの人がそういうつらい役をやらなければいけない時期が出てまいりますわけで、そういうことは絶対少なくしようとは思っておりますが、結果として二、三出ることにつきましては御理解をいただければと思っております。ほかのダムにつきましても、そのような職員指導をしてまいろうと思っております。
○安藤委員 時間外労働が長くなる点については一般的な話にすりかえられたわけですが、私が今問題にしたのは、作業手順が狂ったおかげでこういう実態に蓮ダムの場合はあるのだということを指摘しましたので、その点をきちっと踏まえていただきたい、こういうことであります。
 ところで、そういうふうに作業手順が狂ったおかげで、本体の打設工事、これを一時中止をしたという事実を聞いておるのですが、それはあるのですか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 本体の打設工事を長期にわたりまして中断したことはなかったかと思います。
○安藤委員 昭和六十年の九月十日から一カ月近く打設工事を中止したというふうに聞いておるのです。再開が十月三日ですから、もう一カ月近くですね。なぜこの打設工事を一時中止することになったのか。長期にわたって中止したことがないとおっしゃるのですが、今私が申し上げた二十七日間、二十八日間か、中断をしたことはあるのかないのか、そしてその理由はどういうことだったのか、お尋ねします。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 大変申しわけございませんが、当該ダムについてその一カ月間の打設中止があったことは私把握をいたしておりません。ただ、ダムというものはいろいろな事情で、大水が出ますとか、特に暑い時期はコンクリを打つのをやめますとか寒い時期はやめますとかいろいろなことがございますので、お時間をいただきまして調査をさしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○安藤委員 私は、この蓮ダムの工事の進行の経過すべてにわたってお尋ねをするから、きちっと調査をしておいてほしいということを要望しておいたはずであります。ところが、今申し上げましたような一カ月近く打設工事が中止されたという事実も知らないということでは、一体どういうことかと思うのですが、それならそのように私の方から言いますよ。
 昭和六十年九月十日、なぜ中止したかといいますと、この時点でのダムの本体の高さが標高二百七十八・五メートルに達した。で、水没地域にある人たちに対する補償が終わっていなくて、まだ水没地域に高山幸三さん兄弟の家があって、本体の工事が二百七十八・五メートルにまで打設が進んだにもかかわらず、その高山さんの弟の家が二百六十六・六メートルのところにある、兄さんの家は二百七十五メートルのところにある。となると、その本体で支える水がたまってきたときにはこの人たちの家は完全に水没するのですよ。だから、これは大変だというので、打設工事を一時中止した、こういう事実があるのです。知りませんか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 このダムには水没世帯が六十六世帯ございましたが、六十五までは解決をいたしましたが、おっしゃいます高山さんの一世帯だけが残っておられたということは承知しております。
 また、おっしゃいますように、ダムの立ち上がりに伴いまして大きな洪水が来ましたときにつかるおそれがあること、あるいはその他、万一水につかるようなことがありました場合の補償問題等、御本人と、この方は金額の点で反対はしておられましたが、ダムをつくること自身に御反対の方ではなかったようでございまして、御相談をさしていただきまして、了解をとりまして打設を続けさしていただいたことはあったかと思います。しかし、御当人からの了解はきちっととらしていただいておりますので、ひとつよろしく御了解をいただきたいと思います。
○安藤委員 よろしくとおっしゃったって、よろしくにはまいらぬのですよ。結局は、先ほど申し上げましたように、ダムの工事の計画から完成するまでの間の、補償交渉を含め、工事用道路の建設を含め、手順が狂っておったのですよ。補償が完全に妥結をして、そして立ち退きの計画がきちっとできて、いつまでに立ち退くというようなところが終わらないうちに本体工事をやってしまったからこういう状態になって、水没させられる、いわゆる水攻め、こういうようなことになっては大変だというので本体工事の打設工事を一時中止した、これが真相なんですよ。いいですか、きちっとこの辺は調査をしていただく必要があるんです。
 補償交渉が終わらないのに、あなた、まだ家があるのにとにかく本体をつくって、水がたまってきて洪水があったときにはえらいことになる、水攻めだというようなことで補償交渉をやってしまうというようなことになったら、これは国民の財産に対するとんでもないやり方だと思うのですね。だからそういう間違ったことがここで起こりかかったわけです。だから、そういうふうに本体の打設工事を一時中止した、こういう事実があるわけであります。
 そこで、今もおっしゃったんですが、水攻めにしてしまったのではえらいことになるというので水防計画もお立てになり、あるいは、ことは飯高町というところなんですが、その町との間でその高山さんを洪水が来たときにいかにして救い出すかというための水防防災対策要綱までつくって、中身は高山救出作戦、こういうことでもってやっておったというのですよ。だから、これは先ほどのようなとんでもない状況になっておるからこういうことまでやらなくちゃならなかった。もちろんこういうようなことは本省に対して、建設省では本省(ほんせい)と言うらしいですが、本省(ほんせい)に対してきちっと打ち合わせとか稟議とか何かがあったんだろうと思うのですが、そういうのを聞いていないのですか。
○萩原政府委員 お言葉を返すようなことになりますが、万一人命に異状があってはいけないということで、御本人を含めましてそういう非常時の態勢について十分お話をさせていただいたということかと思います。それで、逐一の経過が全部本省へ来ておるかというお話でございますが、本省との間は実際予算的なものの中心の打ち合わせまででございますが、こういう重大な話についてはその都度報告を受けておったわけでございます。
○安藤委員 先ほども言いましたように、防災対策をいろいろおつくりになって予行演習をやったりなんかというのは当然のことなんです。ところが、私が今言いましたように、まさに高山氏兄弟に対する補償がおくれておるものだから、いざというときには彼を救出するという救出作戦まで立てなければならなかったという事態に追い込まれたというのが事実なんです。
 そこで、続いてその関連でお尋ねをするわけですが、ダムの工事では、いわゆるダムを工事するときは水をとめるわけですから、仮排水路というのをつくりますね。それから、ダムの本体工事をやるところに水が入らないように仮の堰堤をつくるわけですね。そして仮設水路をつくって水を流す、こういう工事がつくことは当然なんでありますが、この蓮ダムの建設についてはその仮排水路に並行してもう一本、それを私は第二のトンネルというふうにここでは言いますけれども、第二のトンネルがつくられた。
 これは私、現場へ行って見ましたから、今資料として配付をいたしました中に――これは建設大臣も見てくださいよ。三枚目に写真があります。これは私が行って撮影してきた写真です。これを見ていただくと、右手の方に仮の堰堤があります。そして真ん中に仮排水路、そして左の方にあるのがいわゆる第二トンネルであります。ちょっとずれておるけれども、眼鏡をかけたように、玉が二つ並んでおるような位置にトンネルがあるわけなんです。この第二トンネルをつくった目的、それから、いつ着工していつ完成をしたのかということをお伺いします。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 先生第二仮排水路とおっしゃいましたが、私どもは工事用の道路トンネルということで掘らせていただいておりますが、これを掘りました目的は、先生現地を御視察ということでございますのでよく御存じかと思いますが、ダムサイト、ダムをつくっております上流左岸側のところに大変大きな地すべり地形の場所がございます。この地すべりはダムができました後に滑り出したら大変なことになりますので、工事が終わりますまでにこの地すべりに関する手当てをしなければいけないわけでございます。
 そうしますと、その地すべりの部分を相当長い時間、現在道路は車が通っておりますので、交通を迂回させなければいけません。その迂回をさせますときに、最初につくりました迂回路をそのまま使って、そこにロックシェッドと申しまして、石が落ちてきても大丈夫なものを大げさにつくるか、あるいはトンネルを抜くか、どっちが経済的かということを計算いたしまして、トンネルを抜く方が経済的であり、また一般の道路交通に対して安全であるということの判断から、そこにトンネルを抜かしていただいたわけでございます。トンネルの着工は六十一年の二月十日、完成が六十一年の十一月二十八日、こういう記録になってございます。
○安藤委員 私は現場へ行ってきました。今の地すべりのところというのはいわゆる皿谷の地すべりというところなんです。
 そこで、引き続いてお尋ねをしますが、私は第二排水路と一言も言っていないですよ。あなたの方が先回ってそう言っているだけなんですよ。私は第二トンネルと言っただけですよ。工事用道路だと言いたいために、私が排水路と言ったのに対して違うのだというふうに言ってみえるのですが、私は第二トンネルとしか言っていない。まだ後の方にその問題が出てくるのです。
 そこで、今あなたのおっしゃったその地すべり工事というのは、いつ着工していつ完成したのですか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 地すべり工事は六十一年の九月二日に着工いたしております。で、現在完成に近づいておるところかと思います。
○安藤委員 そうしますと、地すべり工事が六十一年の九月二日から始まって、今ずっと続いて完成間近かだという状況なんですが、第二トンネルが完成したのが先ほどのお話で六十一年の十一月二十八日ですね。そうしますと、その間約三カ月近くというのは、地すべりが危険だから工事はとまっておったのですか、工事用道路を使わなかったのですか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 対策をやっております地すべり工事は十億を超えるような大変大きな工事でございますので、恐らく発注をいたしましてから数カ月の間は、準備工事でございますとか実施のための調査とかいうことで、事実上交通に支障を与えるということはなしに行えたのではないかと考えます。
○安藤委員 そうしますと、地すべり工事をやって地すべりをとめなければその下の工事用道路が使えなかったという状況ではないということですね。ちゃんと工事用道路は使えたというふうに今おっしゃったですからね。そうなると、どうして第二トンネルをつくらなかったら工事用道路として使えない状態になってしまうのかわからないです。地すべり工事をやっておっても、その下の工事用道路は使っておったと。それならどうして必要なのか、こういうことです。
○萩原政府委員 ただいま申し上げましたように、地すべり工事そのものは三カ年に及ぶ大変大きな工事でございます。先生のおっしゃいます、通れたではないかとおっしゃいます迂回路は、ちょうどその斜面の真ん中あたりを通っているわけでございますので、直ちに通れなくなるということはないわけでございますが、工事全体を完了いたしますためには、もしそこをそのまま使うとすれば、ロックシェッドと申しまして、上から落ちてくる岩を十分に防ぐ、トンネルを掘るより高い施設をつくらないとできないわけでございまして、それとの比較においてトンネルを掘りましたので、何といいますか、トンネルは必要だったと私どもは考えておるわけでございます。
 以上でございます。
○安藤委員 その第二トンネルの工費は幾らかかるのですか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 雑費等も入れさせていただいて約四億の工事であったかと思います。
○安藤委員 トンネルをつくっても、これはダムの下のトンネルになりますから、つくっても、後埋め戻ししなきゃいかぬわけです。だから、埋め戻しの工事を含めると六億五千万円になるというふうに聞いておるのですが、違っておれば後で言うてください。
 そこで、がけ崩れがあっても工事ができるような工事用のトンネルだというふうにおっしゃるのですが、私がいろいろ調べたところによると、この工事用道路を迂回させるのなら、百六十六号線というのがずっと上流の方の下の方を回っているわけですね。百六十六号線を回っても、このがけ崩れと全く関係なしに工事用道路として使えるという状況にあったことも私は見てきました。そして、この第二トンネルをつくろうというころは、本体の打設工事はもう九〇%以上できておった状況にあると。
 それで、この第二トンネルの工事、これはどこの会社に契約をしてつくらせたのか、本体工事とは別のあれでやったのかどうかということをお聞きします。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 発注業者につきましては、手元に資料がございませんので、早急に調べさせていただいて御報告をさせていただきます。
○安藤委員 この予算委員会のこの一般質問の審議には間に合わないのですよ。何も知らないじゃないですか。本来、工事用の道路というのは、本体工事はゼネラルベンチャーと言って共同企業体が請け負っておる。――ジョイントベンチャー、共同企業体。だから、日本語で訂正した。共同企業体。ところが、先ほどからお尋ねしておる仮排水路は、本体の工事と一体となっておるからその共同企業体に発注をしている。ところが、この第二トンネルは、本来工事用道路であれば、本体工事とは違う、いわゆる共同企業体ではないほかの工事会社に発注しなければならぬのですが、本体工事をやる共同企業体に発注しておるのじゃないですか。どうですか。
○萩原政府委員 大変申しわけございませんが、発注主体について私どもわきまえておりませんので、わかりましてお答えをさせていただきたいと思います。
○安藤委員 もう一つ、今私が聞きましたように、この第二トンネルの工事の請負会社は共同企業体に発注している。別の、工事用道路を発注する共同企業体以外の会社に発注していない。ということは、仮排水路と同じように、本体工事と一体となるものとして発注している、これが発注の形態からもはっきりするわけなんです。
 それからもう一つは、昭和六十二年度の、中部地方建設局が出しておる多目的ダム建設事業実施計画調書の中の蓮ダム建設工事年度別工事予定表というのがあるのです。これによると、工事用道路というのは昭和五十八年度一月から三月まで、ですから昭和五十九年の三月までで終わっておるのです。これは先ほど申し上げましたように昭和六十二年度につくったものです。それ以後に工事用道路というのは全然ないのです。ということは、この第二トンネルはやはり工事用道路としてではなくて、本体工事の一つである仮排水路の一つとしてつくられたとしか言いようがないわけであります。
 それからもう一つ、先ほどの写真でもこれは示してありますけれども、仮締め切りの上端は標高二百五十五メートル、ところが第二トンネルの底面、底は二百五十三・九メートル、だから仮締め切りでとめようとしている水もこれはとめられない。このトンネルは水が入ってくるんですよ。そして、現場へ行って見てきましたけれどもこの飲み口、上流の方はいわゆる水門として設計するようになっている。ラッパ状に面が円形にとってある。そしてトンネルの勾配が三・三%。これもいろいろ勉強したら、土木工事の学者の人たちが書いた本によると、こういう土木工事のトンネルの工事というのは、車が相当急カーブで上るというようなこともあるので落差は少なくとも〇・三%。これは三・三%もあるのです。
 そういうような工事の仕方、それから仮締め切りの上端よりもその底辺が低い、ラッパ状、先ほどのような工事の発注先が違うということ、工事用道路の建設計画にはないということなどなどからすれば、これは明らかに、だから最初から気にして否定しておられるけれども、第一トンネル、仮排水路と同じように排水路としてつくったとしか言いようがない。これははっきりしておるのですよ。だからそうなると、先ほどから私が申し上げておるように六億五千万円というのは全くのむだ遣い、こう言わざるを得ぬじゃないですか。どうですか、その辺はどういうふうに思いますか。
○萩原政府委員 たくさん御質問をいただきましたので順序が不同になりますが、まず高さの関係でございますが、これは仮に、要するに地すべり工事が終わりますまでの間の迂回路でございますので、何十年も使う道路でございませんのでやはり安くつくる必要がございます。そうしますと、今現にある道路に取りつけるのが一番安いわけでございまして、その現道の高さで上流と下流とを結びましたらおっしゃいますようなエレべーションの、おっしゃいますような勾配のトンネルになったわけでございます。これは工費を一番安くするためにそういたしました。当然、たとえ仮に通りましてもある時期一般通行が通りますので、三重県の道路管理者とも十分打ち合わせをしましたのですが、おっしゃいますように多少仮締め切りより低いことで何年かに一回かは水につかって道路交通に支障が出るかもしれないけれども、それは仮道路なんだから我慢しようということを道路管理者の方の了解をいただいた上で、その高さにいたしておるわけでございます。
 それから、工事実施書に載ってないではないかというお話でございますが、これは地すべりが予想外に大規模でございまして、手をつけ始めましたのが六十一年度でございまして、そういうものに絡んで計画変更いたしまして掘りましたトンネルでございますので、あるいはそれ以前の計画書に載っていなかったのかという感じがいたします。以上でございます。
    〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
○安藤委員 それは説明になっていないのですよ。先ほど言いましたように、昭和六十二年度につくったその中に工事用道路としての建設が全然載ってない。それから、迂回道路だというふうにおっしゃるのですが、がけ崩れのすぐ下のところに立派な工事用道路はあるのです。だからそれを使ってやっておったのです。そういうことも私は先ほどから言っておるのです。そういうような実態があるにもかかわらず、まさに先ほど言いましたように水路としか思えないような構造でもって第二トンネルがつくられている。だから、これは全くむだなことをやったのではないか。
 そして、水防計画の中で、この第二トンネルをつくる前とつくった後では、どこまで水が来たら危険なのかという水位の計算も違ったのが出てきておるのですよ。ということは、まさにこれは水路としてのトンネルとしてつくったのだ、それによって水位計算違ってきておるのですから。そういうような実態も何も調べておられないで、あるいはそこまで知らぬ方がいいと思って知らぬ顔しておられるのかもしれませんが、これは重大問題です。だから、きちっとこれは心していただく必要がある。
 そこで、会計検査院、来ていただいていますな。この問題について会計検査院としてはどういうふうに対処していただくつもりか、お尋ねします。
○大沼会計検査院説明員 先生御指摘の事案につきましては、指摘の点を念頭に置きまして事実関係をよく調査してみたいと考えております。
○安藤委員 それから、最後にお尋ねをしたいのですが、この蓮ダムの建設にかかわる補償金の問題で、補償金を流用したということで、この蓮ダム関係の町である飯高町の元蓮ダム対策室長をしておった人が津地方裁判所に補償金の流用という容疑で起訴をされて、ごく最近の二月二十五日、二年六カ月、執行猶予四年の判決の言い渡しを受けている事件があるのです。この補償金流用事件について、建設省、この工事事務所は何にも関係がないと言えるのかどうか、お尋ねします。
○萩原政府委員 御指摘のございました町の対策室長さんが流用されましたお金は、私どもの方から出ました補償金を一部町がプールしている額を流用されたということのようでございます。そういう意味でのかかわりはございますが、要するに事件としてかかわりがあるかという御質問については、全くございません。
○安藤委員 その刑事被告人になっておられる人が町長あてに書いた申告書というのがあるのです。これをごらんになったかどうか知りませんが、この中には蓮ダム用地課長の依頼により金幾ら幾らを振り込み、こういうような文言もあるのです。こういうのを知っておるのですか。となると、これは普通関与していると思わざるを得ぬじゃないですか。この辺はどうですか。
○萩原政府委員 お答えをいたします。
 私どもがお答えしていいことかどうか、あれでございますが、御本人は起訴をされまして、先生おっしゃいますように先月判決があったわけでございます。おっしゃいますような疑わしいことがございますれば並行して御捜査があったのかと思いますが、なかったわけでございますので、私どもはそういうことに関して関係がなかった、こう信じておるわけでございます。
○安藤委員 だから、申告書があってそこにそういう記載があるという点について知っておるかどうかを聞いたのですが、それは全然お答えにならない。だから、そういうふうに記載がある以上は建設省の内部としてもきちっとこれは調査をすべきではないかというふうにお尋ねしておるのです。
○越智国務大臣 今のお話でございますけれども、本人の申告書があるというお話でありますけれども、それは起訴をされて判決が出ておる。その間には警察なり検察庁が十分調べでおる、かように思いますので、疑惑があるなればそのとき一緒に調査をされておる、こういうふうに解釈をいたします。先生もその点は十分おわかりの上でお話しであろうと思いますが、私はその疑惑があるのなれば司直の手にある間にお話がある、かように思う次第であります。
○安藤委員 しかし、そういう申告書があるということをもし御存じないとすれば、それは刑事事件の捜査は警察あるいは検察庁が専権があるわけですから、ですが、こういうような申告書に記載がある。しかもその中に用地課長云々ということがあれば、やはり姿勢を正す意味できちっと対応をしていただくのが筋ではなかろうかと思ってお尋ねをしておるわけです。
○越智国務大臣 事実関係については政府委員からお答えをいたしました。もう先生御承知のように、ダムといいますのは先生が言われますように用地の買収を全部終わってつけかえ道路をつけまして、それから工事用道路をつくって、それから本体を打っていく、こういうことがいいのであろうと思いますけれども、これは実際問題として並行的にやらなければなかなかできない。でございますから、先ほどもお話がございましたように、六十六戸のうちで一戸だけということになりましたら、やはり御協力をいただいて早く解決をして、できるだけ早く、先生も言われましたように六百何十億という計画でございましたけれども、既にもう八百億以上かかるであろう、こういうことであります。でございますから、私どもは大きいプロジェクトをやりますのは並行的にやりますし、また皆さんの御協力をいただいて期間をなるべく早くやる。これは金の問題だけでもございません。できるだけ水を早くためる、こういうことが大事だ、こういうふうに思います。
 また、技術面につきましていろいろ御論議がございましたが、建設省では今まで随分たくさんのダムをやっております。でございますから、非常に優秀な技術者がたくさんおりますので、今後とも技術の面はお任せいただいて、心配ございませんから。それからつけかえ道路の問題でございますけれども、これはダムでありましょうと道路でありましょうと、こういう公共工事をやりますのはもう第一番は第三者あるいは工事従事者すべてが安全ということでございますから、地滑りで危険であればトンネルを掘って通すというようなことも考えられますので、もうけがをしたり死亡者を出したりすることは絶対許されませんので、安全第一でございますから、普通の道路であろうと工事用道路であろうと、あるいは一般の道路のっけかえであろうと地滑りで危険、こういうことになりますと、やはりトンネルにいたしたい、こういうふうに思います。
 また、労働時間の問題がございましたが、確かに余り超勤をたくさんさしたのではいけない、こう思います。しかし、ダムであろうと道路であろうと用地交渉などにいたしますとやはり日曜とか夜間とかいうことの用地交渉になりますので、自然一時的には多くなる。また、それが非常に切迫いたしますと、設計やそういう面でも期間がございますので多くなることもございますが、これはできるだけ抑えて余り多くの超勤をさせないようにいたしたい、こういうふうに思います。
 全体的に申し上げまして、今やっておりますダム、できるだけ早く供用開始、湛水をいたしたいと思いますので、ぜひともひとつ御協力をいただきますし、今後とも用地にいたしましても、百人のうち九十七、八人までできますと、あとの一人や二人のことは交渉をしながらかかるというようなことでないと公共事業、大きいプロジェクトは進みませんので、ひとつ御協力をいただきたい、かように思う次第であります。
○安藤委員 いや、せっかく大臣からお答えをいただいたのですが、それは一人か二人というふうにおっしゃるけれども、絶対水攻めということになってはいかぬと思うのです、水攻めということは。そういうことになると補償金の額とかということにも影響してきますし、そういう作業手順が狂ったおかげでダムの工事を一時中止したり、私が指摘をしましたようなことで余分な工事をやったりというようなことになってはいけませんので、一つ蓮ダムの事例を引いて具体的に指摘をさせていただいた、こういうわけなんです。
○越智国務大臣 今お話がございましたが、六十六人で六十五人までできてあと一人ということでございましたら、私の方もぜひお願いをいたしますけれども、先生の方からもひとつ御協力をいただいて解決をして、早くダムが完成するように御協力をいただきたい、かように思う次第であります。
○安藤委員 時間がもったいないけれども、一人と二人の違いだけれども、二人あったのです。そして最終的にはその建物の方は円満に妥結がついているわけです。だから、それをもっと早く着手して早く合意を取りつけるという努力が済んでいないうちに本体工事に入ったという一つの問題がある。だから、これは今後そういうようなことがないようにしていただきたいということは改めて要望しておきます。
 そこで、続いて社会福祉施設に対する国の姿勢についてお尋ねをいたします。建設大臣どうもありがとうございました。
○佐藤(信)委員長 代理 自治大臣は……。
○安藤委員 自治大臣はこれからまだお願いしなければなりません。
 社会福祉関係の国の負担金あるいは補助金については、先ほどの衆議院の本会議における地方税法の質問でも我が党の議員が触れたわけでありますが、昭和五十九年度まではいわゆる八割負担というふうに言われておりました。ところが、昭和六十年度に入って一年間だけという時限立法で国の負担が七割というふうに切り下げられた。そして続いて今度は昭和六十一年度から六十三年度まで三年の時限立法だということでいわゆる五割負担というふうにさらに切り下げられておるわけです。
 この国の負担の制度は、当然ですが憲法第二十五条の生存権をもとにしているわけです。ところが、こういうふうに最初一年の時限立法、一年だけだ、今度は一年でだからやめるけれども、引き続いて今度は五割負担だというふうに下げてくるというのはとんでもないことで、そういう憲法に保障された国の社会福祉事業に対する、ほかにもいろいろあるのですが、きょうはその問題だけについてお尋ねするのですけれども、それに対しての国の立場というのを放棄、責任を果たしていないのではないかというふうに思うのですが、この点についてまず厚生大臣と自治大臣にお尋ねしたいと思います。
○藤本国務大臣 確かに国の負担分は減ったわけでございますけれども、それに対応いたしまして地方財政対策として所要の手当てが講ぜられているわけでございますから、福祉の水準の低下であるとか、また事業の実施に支障があるとは考えておりません。
○梶山国務大臣 社会福祉施設の補助金の補助率の、負担率の引き下げでありますけれども、補助金問題検討会の報告の趣旨等を踏まえ、事務事業の見直しに努めながら昭和六十三年度までの暫定措置として行ったものでありますが、これに伴う所要の地方財政対策を講じまして、地方財政の運営に支障がないように対処をいたしておるわけでございますので、その問題と生存権の問題とはおのずから異なる問題ではないかというふうに理解をいたしております。
○安藤委員 福祉事業に支障はないというふうに力んでおられるわけですが、これは本当に支障があるんだということをこれから順次説明をさしていただきながら質問をさしていただきたいと思うのです。
 資料として配付させていただいております「福祉関係施設、措置事業費・人員・財源内訳」こういうのがございます。これは見ていただけばおわかりだと思うのですが、まず最初に、私はきょうは老人ホームと保育所の関係についてお尋ねをしたいと思うのですが、この老人ホームの関係では、まさにいわゆる昭和五十九年度、八割負担だというふうに言われておったときでも国庫負担は七五・三%にしかならない。それから六十年度に七割負担、このときにも六四・七%にしかすぎない。六十一年度から六十三年度まで、これは五割負担と言われておるのですが、実際は四五・四%であり四四・四%にしかなっていない。
 なぜこういうようになっておるかといいますと、それぞれの欄の下のところに費用徴収というのがあります。その費用徴収、これは国民からの負担なんです。国民からの負担がこうやって入ってきておる。それがだんだん増額をされてきておる。だから八割負担、七割負担、五割負担といったって、そのとおりになっていない。こういう実態になっておるのですが、こういう点からすると、地方の持ち出し、それから国民に対する負担、これが多くなっておって本当に支障がないと言い切れるのかどうか。どうなんですか。
○小林(功)政府委員 ただいまの先生おっしゃった率でございますが、これは恐らく費用徴収部分を入れての率だろうと思います。私ども国と地方の関係を論ずる場合には費用徴収部分は除きまして、その部分について国と地方が七、三とか五、五とか、こういうふうに考えるわけでございます。
○安藤委員 今おっしゃったふうに考えるんだとおっしゃるのですが、総事業の中で七割負担といったのは実際七割じゃなくてもっと少ない。五割負担といったのは実際はもっと少ない。それで、よく見てみると費用徴収の分がそれだけ入っている、こういうことですから、まさにこれは国民に対する負担というのをだんだん増加させることによって国と地方自治体の負担金を少なくしている、こういうことで賄われているという実態だと思うのです。それで、この関係はほかに措置人員の関係、それから実際の負担金の額そのものはこの一覧表にずっとありますからいいですが、おわかりいただけると思うのですが、こうなると措置人員の方はだんだんふえていく、ところが国の負担金の額はだんだん減っていく、これはやはりおかしいと思うのです。措置人員の数がふえていく、そうすれば国の負担金もだんだんふえていかなくちゃおかしいと思うのです。これはバランスが崩れていると思いませんか。
○小林(功)政府委員 例えば特別養護老人ホームで申しますと、国の負担は六十一年で千七百五億、六十二年では千八百六十二億、六十三年は千九百三十二億、絶対額としてはふえております。
○安藤委員 負担金の割合がだんだん減っている、それから金額も措置人員の割合からすれば少ないんですよ、これは。措置人員の方がもっとたくさんふえているんですから、そのことを私は言っているんですよ。
 そこで、自治体の負担が増加しているということを先ほど申し上げたのですが、これも名古屋市からいただいた資料に基づいて私は持ってきたのですが、老人ホームの場合でいいますと、昭和五十九年度、国庫負担五〇%、これは八割負担と言っておったときですよ。ところが五〇%ですよ。そして七割負担だと言っていた六十年度が四三%にしかならない。六十一年度、六十二年度、三三%にしかならない。それに反比例して地方負担、名古屋市は政令指定都市ですからあれですが、名古屋市の負担がふえておるわけなんですよ。だから、こういうふうになっておるという点、自治大臣としてはこれはとんでもないことだというふうにお考えいただかなくちゃならぬと思うのですが、どう思われますか。
○津田政府委員 拝見しております資料の五ページの問題とこの四ページの問題の関係でございますが、例えば保育所で見ますと、この四ページの厚生省資料では……(安藤委員「老人ホームを言っておるんだ」と呼ぶ)老人ホームでございますか。いずれにしましても一人当たり徴収額の取り方の問題、先ほど社会局長が申しましたように、国と地方との補助負担率の問題ではなくて、保育所でございますといわゆる保育料と言われるもの、そういうような徴収金の問題でございます。名古屋の場合には受益者負担ともいうべきものを肩がわりしておる、このように理解しております。
○安藤委員 いや、だから名古屋市の方が、国の方の負担割合が低下するに従って名古屋市の地方負担というのをどんどんふやさざるを得ない状況になっている、こういうことを申し上げておるのですね。すると、これは地方自治体の代表として、地方自治体の利益を守る立場におられる自治大臣としては、何とか物を言っていただく必要があるのではないかというふうにお尋ねしているのです。
○津田政府委員 細部の具体的事実は承知しませんが、名古屋市は国の徴収基準に基づく徴収金を取っておらない、これを公費で肩がわりしている、こういうような問題でございまして、国費、地方費の区分の問題とは別の問題でございます。
○安藤委員 名古屋が特別なことをやっているというお話のようなんであります。名古屋市で聞きましたら、国の基準よりも上回ったことをやっておられる、こういうふうに今おっしゃったのですが、法外援助という言葉を使いまして、法律で決められた以上の援助をしているんだ、そうしないと回っていかないんだ、これが自治体の切実な声なんです。だから、名古屋市当局がそういうふうに特別にやっているんだ、だからいいではないか、こういうような言い方はおかしいと私は思うのですよ。その点はきちっと踏まえていただく必要がある。
 先ほど保育所の話もありましたが、この保育所がその次の二つ目の欄にあるのですけれども、これも先ほどのような話でいきますと、昭和五十九年度、国庫負担二一%でしょう。ところが地方負担五八%でしょう。いわゆる七割負担になった昭和六十年度で国庫負担二〇%、地方負担六一%。六十二年度に来ると国庫負担一五%で地方負担六六%。こういうふうなんです。そして、こういうふうに地方が大きな負担をしておるというような状況、これはやはりきちっと踏まえていただく必要があると思うのですよ。
 これでは地方自治というのは、先ほどの本会議の議論でもありますように、これは大臣の方もきっちりおっしゃったと思うのですが、やはり地方自治というのは国民と一番直接に接触しているところだから、民主主義の、国民生活を守る上の大事なところだというふうにおっしゃった。それがこういうふうに、それはもう自治体住民の要求、これにこたえるためにはこういうことをしなければならぬのだ、こういうような状態にして、それでいいんだというわけにはいかぬと思うのです。だから、自治体がやっておるからいいんだ、こういうようなことは言い直していただく必要があると思うのですよ。どうですか、自治大臣と厚生大臣は。
○梶山国務大臣 再三お答えをいたしておりますように、補助率の引き下げという問題は、臨時異例の措置でございますので、その地方負担の増加に対しては毎年必要な補てん措置を講じているところでございますので、この問題とその問題を直接結びつけるのはいかがなものかという感じがいたします。
 ただ、地方税財源を拡充強化をして地方自治の進展を図っていかなければならないという観点に立てば、私も同感でございますし、その問題については、不交付団体でございますから、ある意味で起債措置その他を講じながらやっているわけでございますが、不交付団体が交付団体に転落をすればそれなりの措置を講ずるし、これから先見直しをしてまいりたいという気持ちでございます。
○安藤委員 そこで、自治大臣に重ねてお尋ねをいたしますけれども、前の、いわゆる八割負担と言っておったころ、先ほど来、もう来年度は、これ切れるのです、時限立法ですから昭和六十三年で。六十四年度から切れるのですね。だから六十三年度まで五割負担でいいというわけではありませんが、昭和六十四年度からはもとの八割負担に戻すべきだと思うのですが、その点について自治大臣はどういうふうに考えておられますか。大蔵大臣の前ではっきり言っていただけたら一番いいのです。
○梶山国務大臣 再三申し上げておりますとおり、国庫補助負担率の引き下げは国の極めて厳しい財政事情を背景として、補助金問題検討会等における事務事業や費用負担のあり方の検討などを経て、六十三年度までの暫定的措置として行われているものであることは御承知のとおりであります。
 暫定期間終了後の補助負担率の取り扱いにつきましては、六十四年度の予算編成時までに関係省庁と協議の上定められることとなっておりますが、自治省としては各事業の性格、国庫補助負担制度の意義等を踏まえつつ、国としての責任が全うされるよう、また、地方財政が健全かつ安定的な財政運営の確保が図れるよう、検討を進めてまいる所存でございます。
 いずれにしても、国の財政負担を単に地方に転嫁するような措置は講ずるべきでないと確信をいたしております。
○安藤委員 せいぜい御努力をお願いいたします。
 次に、資料として提供いたしました中の三番目の、身体障害者施設の関係についてお尋ねをしたいのですが、この関係につきまして、徴収金の問題を中心にしてお尋ねをしたいというふうに思います。
 この身体障害者福祉に関する徴収金の問題につきましては、これは当初は補装具だけ、あるいはそれは昭和二十九年度に改正がされたのですが、そのときも「更生医療」といいますから、これはリハビリじゃないかと思うのですが、その関係だけ徴収するというふうになっておったのですが、昭和五十九年のいわゆる改正案で本人あるいはその家族からの負担というような範囲が非常に広げられてきたというような状況にあります。
 そのときの審議では、附帯決議というのもありまして、過大な負担はさせないというふうに、これは昭和五十九年八月一日、いわゆる百一国会の衆議院社会労働委員会における附帯決議がなされておるのですが、これによりますと、「身体障害者更生援護施設に関する費用徴収の実施に当たっては、施設の性格や身体障害者の実情等を勘案の上、過大な負担とならないよう十分配慮すること。」こういうふうな附帯決議もあるわけであります。
 ところが、実際にどういうような実態になっているかといいますと、これは実際に私が調査をしてきたわけでありますが、名古屋のゆたか福祉会というのがありまして、そこのAさんという人がそこへ働きにいく、いわゆる通所施設であります。この人は、例えば昭和六十二年の一月の支給の関係でいいますと、支給合計が三万三千六百円。ところが、差し引きされて、現実に支給されるのは二万七千百四十円。ところが、この人は名古屋市外の武豊というところに住んでおりまして、先ほどいろいろ話がありました名古屋市独自の法外援助とかなんとかというのがないわけです。それで交通費が月に二万円以上かかるということになりますと、これを引かれてしまいますと持ち出しになるわけなんですね。こういうような実態があります。
 それから、これはこの前東京では二月二十一日日本テレビで放映をされた。それから名古屋では中京テレビというのが一月二十一日に放映しました。このときにはやはり高知の麻田さんという人が、この人は週に三日くらいしか働けない人ですが、月六千円の賃金を受け取って徴収金は一万二千五百円だ、これではもう働く意欲がなくなるんだということを言っておられるわけです。
 それから、やはり高知の川崎という人も賃金は一万七千円、それから徴収金が一万二千五百円、これでは楽しみがなくなるというわけです。これで交通費を引いたらマイナスになるんだ、こういうような実態にあるのですね。
 だから、こういうような事実はきちっと認識をしていただいて、特にこれは厚生大臣ですが、先ほど読み上げました附帯決議の趣旨からすると、過度の負担にならないようというのですが、働いて受け取る賃金よりもたくさん徴収金を取られるというのでは、これはもう過度の負担以外の何物でもないと思うのですが、この点についてどういうふうにお考え、どういうふうに是正をしておいきになるつもりか、お尋ねいたします。
○小林(功)政府委員 ただいまの先生の御質問は、徴収金と授産工賃の関係の御質問だと思います。
 そこで、身体障害者の通所授産施設を例にとられましたけれども、これは直ちに一般企業に雇用されることの困難な身障者に対しまして必要な訓練を行うというのが一つ。それから工賃だけではなくて全体の収入をもとにして費用を決めるということでございます。つまり、工賃が安くても年金でかなり多額のものをもらっておれば、それを合算しなければ不公平でございますから、全体の収入で決める、これが大原則でございます。そういった結果、その額を申しますと、措置費に一人当たり大体八万円かかります。それに対して、最高でも月額一万二千五百円。ただし、これは三年以上超えますと二万五千円になりますけれども、そこにとどめているわけであります。
 そこで、今先生おっしゃった授産工賃よりも多額の徴収金を取られる、こういうことをおっしゃいましたけれども、それは先ほど申しましたように授産工賃以外の収入、例えば年金が中心でございましょうけれども、そういうものがかなり、相当多額に上るというケースしか考えられません。
 そこで、私はちなみに計算してみましたら、二人世帯で本人の授産工賃が上限いっぱいの月額一万二千五百円という仮定を置きます。これは一つのモデルでありますが、それを超える額を費用徴収されますのは授産工賃以外の年金等の収入が年額百九十一万四千円、つまり月額十五万九千五百円の方でございます。と申しますのは、この十五万九千五百円に授産工賃の一万二千五百円を足しますと、月額で十七万二千円の方がそういう方に該当する。これはその程度から見て、私は決して御納得のいけない数字ではなかろう、このように思います。
○安藤委員 いろいろ御本人の方が受け取っておられる年金というような話もありました。もちろん私もそういうことは知っております。しかし、現実の問題として、訓練というのももちろんあるでしょう、しかし、いろいろ徴収金をめぐる議論をなされた中で本人の自立意識を高めるというようなことも言われておったと思うのです。ところが、実際に働いて、そしてそこからもらう賃金、年金や何かと総合してとおっしゃるのですが、そうでなくて、実際に働いて得る賃金よりも、あるいは通所施設ですからそこへ通うための交通費もかかる、それを引かなくてはいかぬ。賃金をもらう、それよりもたくさんの徴収金を取られるというのでは、これは自立意識を高めるどころかうちで寝ておった方がええわ、先ほど申し上げたテレビの中でもそういう声が出ているのですよ。これならわしはうちで寝ておった方がええわ、何のために行くのだ、無理してと、こういうことになってくるのです。それから、その施設の責任者の人にも聞きましたけれども、これでは自立心をかえって損なうのだということを痛切に言っておられました。だから、その辺のところをきちっと踏まえていただきたい。
 せっかく大蔵大臣にも来ていただきましたし、最後に大蔵大臣に一言お伺いしたいのですが、大蔵省が出しておられる「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」というのですね。これは昭和六十三年度予算に関してのことです。「今後の財政改革の進め方」という中の「歳出」、ここにいろいろなことがあるのですが、「各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、」だから優先順位をつける。そして「社会保障について、今後の高齢化社会においても制度を安定的に維持していくため、」ずっとあって、「その合理化を強力に推進する。」そして「防衛力の整備、政府開発援助及びエネルギー対策について、他の歳出との調和を図りつつ、真に効率的な経費の計上に努める。」そして補助金等については「整理合理化を推進し、」とこうなるわけですよ。
 そうなりますと大臣、先ほど来私が申し上げましたように、優劣をつけるということ。防衛費の方は「真に効率的な経費の計上に努める。」社会保障については「合理化を強力に推進する。」補助金については「整理合理化を推進し、総額の厳しい抑制を図る。」こうなると、やはりこれはいわゆる防衛費、軍事費、これは優先順位の上では上だ。社会保障費、補助金の方は抑制に努める、こうとしか読めないのですが、こういう基本的な姿勢を改めていただかないと、先ほど来申し上げておりますような社会福祉関係に対する国の責任というものは果たせないのではないか。憲法二十五条に反することをやっているのではないかというふうに思えてならぬのですが、そのことを最後に大蔵大臣にお尋ねをして終わります。
○宮澤国務大臣 それはお言葉ではございますけれども、どの経費につきましても財源の重点的、効率的配分に努めたいということは同じことでございまして、今お挙げになりました社会保障については「合理化を強力に推進する。」と書いてあるが、防衛力の方は「真に効率的な経費の計上に努める。」と書いてあるとおっしゃいましたが、この「真に効率的な経費の計上に努める。」というのは、経費をうんと計上しようということよりは、「真に効率的な」という方に意味がございますので、それは同じことと御了解いただきたいと思います。
○安藤委員 時間が参りましたので、終わります。
○佐藤(信)委員長代理 これにて安藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田哲君。
○上田(哲)委員 ポンカスについてかなり輪郭がはっきりしてまいりましたが、なお答弁が矛盾をするなど、大事な点がずれておりますから二、三しっかりしておきたいと思います。
    〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
 有事立法を避けることができないという点について政府側の答弁は大変矛盾、混乱をしております。私が申し上げた質問に対するお答えと、例えば宮下委員の御質問に対するお答えとは全く次元を異にするのであります。つまり、有事立法は平素から研究しておかなければならないのだという御見解と、有事来援、ポンカスを行うためには有事立法が前提になるのだということとは全然違うのでありまして、私どもは有事立法は全く認めませんけれども、ポンカスをおやりになるというのであれば有事立法を、オンリーアフター、どうしてもその前にやっておかなければならないということになるのだという点をここではっきり区別しておかなければなりません。
 防衛庁長官はかつて、国内法は別問題だからやらないのだと言われた。有事来援、ポンカスをやるのならやらざるを得ないのであります。重要な問題であります。やらないのだということを言い切れますか。
○西廣政府委員 本委員会でたびたびお答えしておりますが、有事法制の研究は別の枠組みの研究でありますからやらないということは当然でありますが、もう一つつけ加えて申し上げますと、有事来援あるいはポンカス、そういったことに絡んで何か国内法制的な整備が必要だというように私どもは考えておりません。今のところ、それに関連した国内法制が必要だということは、実は思いつかない状況でございます。
○上田(哲)委員 こういうふうに詭弁を弄してはいけないですよ。いいですか。有事来援というのを研究するのだとおっしゃる。有事来援の研究には二つあるのです。海上や空輸で武器を運んでくる、兵員を運んでくる研究と、あらかじめプレポジショニングするという研究と二つある。間違いなくポンカスはそこに含まれている。そして、そのためにはWHNSの問題があるということが明言をされ、そうであれば、そこに当然オンリーアフターとしての、有事立法の研究が含まれなければならないということがはっきりしているではありませんか。このことを、全然別な次元の質問を受けて、平時においてもやっておかなければならないのだというふうに言葉をかえられてしまうのは、論理の矛盾ではなくて詭弁であります。全く考えておりませんというのならさらに具体的に追及をいたしますから、もう一遍防衛庁長官、はっきり言ってください。有事来援に関し、ポンカスに関し、有事立法を進める考えはないのですね。
○瓦国務大臣 有事立法につきまして、先ほど防衛局長がお答えいたしましたように、考えておりませんし、さらにポンカスに及ぶ問題につきましても、ガイドラインに沿う研究におきましてそうしたことも含めて研究をなされるであろう。しかし、その研究については立法、予算、行政上の措置にこれは拘束を受けない、かようなこともガイドラインに明記しておるわけでございますから、そういう中で研究をし、さらに総合政策的にどうするかという問題はまた別個の問題になるわけでありまして……(上田(哲)委員「それは有事立法をやらないという……」と呼ぶ)有事立法は行いません。
○上田(哲)委員 とんでもない矛盾です。これはひとつ時間をかけてゆっくりその矛盾を明らかにしていきたいと思います。
 その矛盾の根底にあるところが今一つはっきりしてきた。ガイドラインに基づいてとおっしゃるのであります。まさに、ガイドラインに基づいてというのは、前回の質問でも私は冒頭で確認をしたことであります。まさにガイドラインに基づくのであります。
 ところが、このガイドラインに基づいてということが破れてきている。ガイドラインに明記してあるように、この「研究・協議の結論は、日米安全保障協議委員会に報告し、」ということになっているのです。そしてまさに、「この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」と書いてある。そのとおりであります。いいですか。実はこういうことになっているから、両国の立法、予算ないし行政上の措置にかかわりなくどんなことでもやってよろしいということになっていたから、シーレーンもインターオペラビリティーも日米共同作戦計画も制服だけでやってきた。ちゃんと制服同士が調印、サインまでしておきながら、全然どこにも報告をしない、国会にも報告をしない中で通ってきたのです。それを今回も説明の隠れみのにしようとしているのだが、できないんだ。ここが問題なんです。防衛庁がオウム返しで言っている、ガイドラインには両国政府を拘束しないと言っているんだから大丈夫だと言っているその論理が完全に破綻しているということをどうか皆さん理解していただきたい。
 なぜか。はっきりしているように、アメリカの公文書が言っているように、いや、それ以上の常識としてだれもが認めているように、この問題はアメリカ議会の予算上の議決を必要とするのです。アメリカ議会の予算上の議決を必要とするということは、既に両国政府を拘束しないという範囲を超えているのです。そうはいかなくなっている。しかもアメリカの国防総省の公式文書に明らかなように、協定が必要なんだと言っている。その協定が必要なんだということは、既に前回、前々回の質疑でお認めになっている。さらに三つ目、緊急立法が必要なんだということもおっしゃっているではないか。向こう側の公式文書には「ザパッセージオブエマージェンシーレジスレーションインジャパン」、「エマージェンシーレジスレーション」、緊急立法、有事立法がなければだめだ、そのオンリーアフターだということがはっきりしているではありませんか。
 ガイドラインではできないのですよ。いいですか。ガイドラインではできないのだということが重大な問題であって、ここのところが、ガイドラインに書いてあるから大丈夫だなどという論理をいつまでも言わしている、こんなことではとんでもないことです。いいですか。これははっきり認めなければなりますまい。既にガイドラインの範囲を超えている問題なんだ。これは皆さん方の今までの答弁の中ではっきりしているではありませんか。認めてください。
○西廣政府委員 二つの面から申し上げたいと思いますが、ガイドラインの研究は、先生が今おっしゃいましたようにその研究したこと自体が直ちに政府を拘束するものではない、あるいは立法なり予算なりを義務づけるものではないということで、そういう面で枠組みがはまっているということは確かにそのとおり何度も申し上げているわけでございます。
 それからもう一点、先生は有事立法に必ずなるということは米側も言っておるとおっしゃいますが、米側が申しておるのはHNSの問題、要するに日本側の、受け入れ国の支援に関してそういうものが必要なものがあると言っておることでございまして、有事来援に伴って立法措置が必要だということは米側は一度も言っておりませんし、私どもも現在の法制上、安保条約に基づいてアメリカの支援を受けるについて何らかの法的措置が必要だというようには考えておりません。
○上田(哲)委員 詭弁をただ言い募るだけではこれは議論になりません。
 いいですか、もう一遍端的にお伺いをする。ここでガイドラインに基づいて始められるのはいい。そこで研究成果がまとまったものは、アメリカ政府の議決、協定、まさに日本国内の有事立法がなければ意味を持たない、このことは認めざるを得ないでしょう。
○西廣政府委員 私は、先ほど来お答えしておりますのは有事立法、国内法制のことを申し上げておりますが、協定とは仕分けして申し上げておりますので、その点は御理解いただきたいと思います。
○上田(哲)委員 全然答えになりませんね。おっしゃっていることが全く論理矛盾をしているので、どうぞひとつ委員各位もお聞き取りいただきたいが、ガイドラインでは両国政府を拘束しない。ところが、両国政府、アメリカ議会の承認や、両国間の協定や、それに先立つ国内立法がなければこれは意味を持たないのですよ。協定はなければならないだろうとおっしゃっている、そしてアメリカの国防総省からの公式な言い方も認めていらっしゃる。それでガイドラインの中だから大丈夫だというのは、二重に論理矛盾を犯しているということは明らかでありまして、このこと自体、私は図表でもかいてやりたいくらいでありますが、きょうはこれでとめている時間はありません。もう一遍ひとつ整理をしていただいて、じっくり次の機会に総理その他の御出席の上で詰めていくということを申し上げておきます。ちょっとこの程度の論理では苦し過ぎるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
 これはガイドラインを超えるのであります。ガイドラインの中で制服同士が好き勝手をやってきたことはもうできなくなっていくのでありまして、ガイドラインを超えたのだ、ガイドラインの中ならばいいんだという論理が壊れてしまったのだということを、論理の上と実態の上と、もう一つ諸外国の例の中ではっきり論証しなければなりません。その意味でお伺いをいたしたい。
 アメリカは、NATO十一カ国とWHNS協定を結んでいます。まさに両国政府を拘束しないというのではない、両国政府を拘束するWHNS協定を結んでいます。十一カ国の名前を挙げてください。
○小野寺政府委員 今、委員御質問のWHNS協定という、そういう非常に概括的な協定を必ずしも各国が結んでいるとは限りませんで、アメリカの報告にもございますとおり、非常に国によって多様でございます。ただそれに類すると思われます協定を結んでいる国は、私どもの承知しているところでは、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、イギリス、デンマーク、ノルウェー、西独、トルコ、イタリアの各国でございます。
○上田(哲)委員 そういう資料は全部お持ちですか。
○小野寺政府委員 協定テキストとして持っているものは我々非常に少のうございまして、協定テキストとして今我々が見ておりますのは、二つだけでございます。これはドイツとノルウェーでございます。
○上田(哲)委員 ドイツは大変代表的なものですね。八二年八月のものです。しかもこれは公表されています。そのドイツの資料もなかなか提出をしていただけなかった。イギリスの資料を出してくれと言って、きょうこれをいただきました。この努力は私は外務省がよくやってくれたというふうに率直に言います。訓電を発してワシントン、ロンドン、急いで取り寄せてくれた、この点は評価をいたします。評価はいたしますけれども、今の話を聞いても、それを持ってないのですね。
 これだけ諸外国でアメリカとこうした協定を結んでいる。まさに、WHNSという包括的な言葉では困るとおっしゃるが、アメリカとイギリスの間では、アメリカ合衆国と英国との間の米英兵たん線取り決め、こうなっています。固有な言葉はそれぞれありますけれども、ここに出されている資料は、一九七三年以降存在している協定であり、英国は、「医療の便宜を含む輸送、労働及びその他の便宜に関する要請が考慮されることを、保証することに同意している。」。これは協定本文そのものではなくて、そういうものがあるぞということを表明しているものであります。これ以上のものは今日現在、いや、きのう現在ですか、外務省、政府はお持ちになっておられぬのであります。きょうはその方を省略しますから、この次お目にかけて議論いたしますけれども、この程度しか全然お持ちにもなっておらない。
 こんなことで一体、日本のこれからの防衛政策、あるいは運命をと言ってもいいほどの新段階に入るものを、アメリカへ行って、ぜひ共同研究を二、三年で終わりましょうなどと言ってくる、こういう姿で言を左右にしてガイドラインとの論理すら整合できないということを私は大変問題にいたしたいと思います。防衛庁長官、これでいいと思いますか。
○瓦国務大臣 先ほど委員からもお尋ねがございましたが、ガイドラインの線に沿いまして研究をさせるということは、防衛庁長官の責任においてなすことでありまして、ガイドラインの中で、あるいは軍事専門家、こう申し上げてもよろしいかと思うわけでございますが……(発言する者あり)
○奥田委員長 静かに聞いてください。
○瓦国務大臣 いかなることが必要であり重要であるかということを研究をするということは、予算、立法、そしてまた行政措置にかかわらず、しかしまた憲法というものを踏まえながらやるわけでございますから、私は、この枠組みをしっかり守っていくことはシビリアンコントロールの極めて重要な部分だ、かように考えておりまして、こうした前提の中に立ちまして有事来援について研究をしていただく。そして、その結果いろいろ派生する問題につきましては、今お話しのようにポンカスというものについてまた議論が及びまして、それをどうするかという問題になりますれば、それはまた国会等の――いわゆる仮定の問題についてるる申し上げる必要もないかと思いますが、まず研究をしていただくというそのチャンスをこの機会に与えよう、そのことにつきまして国防長官と話し合い、同意を得たわけでございます。
 なお、先ほどの私の答弁の中で、有事立法はやりません、かように申し上げましたが、舌足らずの部分がありますのでつけ加えさせていただきますが、有事来援の研究において有事法制について研究することは考えていない、かような趣旨でございます。
○上田(哲)委員 完全に論理は矛盾しているので議論になりませんが、最終的には……(発言する者あり)ちょっと、静かにしてくれないか、聞こえないんだよ。最終的にはそれも……(発言する者あり)
○奥田委員長 ちょっと、不規則発言は慎んでください。
○上田(哲)委員 最終的にはそういう段階もあるだろうと否定できないのであれば、これは入り口からそのことを認めていることと五十歩百歩なんでありまして、そのことをすっきりするのが私は当然な答弁であろうと思います。(発言する者あり)ちょっと、静かに聞いてくれませんか。
○奥田委員長 ちょっと、質疑の進行に支障がありますので、不規則発言を慎んでください。
○上田(哲)委員 したがって、そのことを次に持っていきましょう。(発言する者あり)
○奥田委員長 ちょっとしばらく、静かにしてください。
○上田(哲)委員 大変注目すべき新聞記事がございましたので、このことについてひとつ御回答をいただいておきます。
 アメリカのアーミテージ国防次官補が、二十五日に米国防大学で開かれた環太平洋安全保障シンポジウムで講演をいたしました。この際、日本の来年度防衛予算は、英、仏、西独を抜いて世界第三位になる瀬戸際に来ている、こう述べた。この指摘と文脈全体は、その二週間前に来日した米下院軍事委員会防衛負担分担専門部会のパトリシア・シュローダー部会長に西廣防衛局長が話をされたものと全く同じだというので、西廣防衛局長も苦笑した、こういうのであります。したがって、それが同じであるとすれば、来年度防衛予算は英、仏、西独を抜いて世界第三位になる瀬戸際だということをお認めになるわけですか。
○西廣政府委員 シュローダー議員と私、短時間お話をしましたが、その際、日本も、一九四〇年代、五〇年代に比べて米日の経済力の差というものから国際的な役割について変わってくるのじゃないかというお話がありました。それに対して私は、日本の軍事力といいますか防衛力というものについては専守防衛というような憲法上の問題等を申し上げまして、その役割というものは限定的なものである、仮に日本ができることがあるとすれば、それは軍事力以外の分野でであるということを申し上げました。
 その際に、軍事力をさらにふやせと言っても、アメリカ自身日本に何を本当に求めておられるか、具体的な案がおありですかと私自身が聞きたいくらいであります、まさか核を持てとは言われないでしょう、アメリカもそれは御反対でありましょうというようなことを申しましたので、その点がアーミテージの言った点と同じ点であろうということで、私は三位になるとかそういったことを申した覚えはございません。
○上田(哲)委員 第三位というふうにあなたはお考えですか。
○西廣政府委員 現在の各国の防衛費というものはドル表示になっておりますので、円高になりますと実態とはかけ離れてどんどん順位が上がってくるということはあり得ると思いますが、現在円高はもうとまっておりますし、また実態的にも、我々給料も含めて円でもらっておりますので、ドルで倍になったと言われても給料がふえたような気がしないのと同じように、実態はそう変わらないというように考えております。
○上田(哲)委員 例えば「ミリタリー・バランス」はみんなドル表示であります。ドル表示だと世界三位になっているという認識なわけですか。
○日吉政府委員 委員御案内のように、各国の国防費を一つの基準でもって比較をするということは非常に難しい問題でございます。ただし、ただいま委員から御指摘ありましたように「ミリタリー・バランス」という、一つの基準をもって比較したものがございます。それは一九八五年が一番新しいものでございますが、それによりますと八位というような数字になってございます。ただ、それが非常に古い数字でありますのと、その後円高等が進んでおりますものですから、一九八七年あるいは八八年のそれぞれの国の国防予算と我が国の予算を現在のそれぞれの為替レートで換算いたしまして比較いたしましても、委員ただいま御指摘のような世界第三位というふうな計算にはなってまいりません。
○上田(哲)委員 私はこういう議論に時間を使いたくありません。
 このほか、アーミテージは、いわゆる中期防はウラジオストク海域のソ連艦隊が探知されずに太平洋やインド洋に出ることを許さなくするということを言っているのであって、アメリカの対ソ戦略を補完するものだと明確に言っている。これは、我々が防衛庁から説明を受けている、日本の防衛、海上交通路確保のためだというのとは違う。あるいは次期防については、OTHや長距離早期警戒機、空中給油機を導入するとアーミテージは言っている。これも我々が国会で聞いていることとは全く違う。第三位というのもはっきり数字を出して言っているわけですから、ドル換算するのはどうか知らぬが生活実態はついていくかどうかは知らぬなんという話でごまかされてしまうという議論になっては困ります。しかし、残念でありますがアメリカからこういう指摘があるというような中で、私たち国会のシビリアンコントロールが十分な数字の指摘もままならぬということは残念だということを指摘することにきょうはとどめておきたいと思います。
 さて、次の機会にもう少しじっくりやることにいたしまして、きょうは日本産科婦人科学会から水野先生においでいただいておりまして、お忙しいところを大変ありがとうございます。
 私がきょうお伺いいたしたいのは、冷凍受精卵の問題でございます。水野先生は日本産科婦人科学会の副会長であられ、こうした問題について大変御努力をいただいておることに敬意を表しますし、そうした意味で、科学の進歩というものと妊娠の困難な女性に対する福音としての意味合いというものを大変私は高く評価をしたいと思います。ただ同時に、こうした未知の分野に対して大きな不安や疑念があることもまた事実でありまして、この問題は学会だけではなくて、私たち国民を代表する一員として政府当局ともどもにひとつ考えさせていただきたい、こういう立場で御質問申し上げる次第でございます。
 そこで、まず厚生省に聞いておきたいのでありますが、これまで既に行われている体外受精と冷凍卵の受精、この二つには違いがあるのでしょうか。延長線上に同次元としてとらえられるのでしょうか。
○仲村政府委員 体外で受精をさせるということにつきましては同じでございますので、延長線上という言葉がどういう意味でお使いになったかわかりませんが、技術的には延長線上にあるのではないかと考えております。
○上田(哲)委員 私はそう思わないのですね。これは延長線上にあるということで、いわばこれまでの体外受精を冷凍卵の領域まで広げた、こういうふうにおっしゃるのかと思いますが、ここにはやはり大きな幾つかの問題点が派生してくるではないか、そのことを指摘したいのですが、いかがですか。
○仲村政府委員 そういう立場でお尋ねならば、冷凍卵につきましては、いろいろの問題が派生する可能性があるということは事実でございます。
○上田(哲)委員 いろいろな問題があるということの中から、日本産科婦人科学会では去る二十日理事会を開いて、幾つかの何といいましょうか歯どめといいましょうか、お決めになったというふうに伺っております。報道もされているわけですが、水野先生、どのような歯どめといいましょうか、お考えでございましょう。
○水野参考人 国政の場にお呼びいただきまして、私どもの学会の見解をお話しさせていただきます機会を与えていただきまして、大変光栄に存じております。
 学会といたしましては、先ほど御指摘いただきましたように、先ごろ開かれました理事会におきまして、「ヒト胚および卵の凍結保存と移植に関する見解」を理事会で決定いたしました。この見解は、恐らく三月号の学会誌に掲載いたしまして会員の皆さんに周知徹底することになっておる、そういう性質のものでございます。
 それで、内容について申し上げますと、内容は六つに分かれております。
 第一は、この凍結保存や移植を行う卵は、いわゆる体外受精もしくはこれに準ずる配偶子の卵管内移植などを行った場合に得られた卵または胚に限って行うということでございます。
 それから第二点目は、この方法の実施に当たりましては、その方法の内容や予想される成績、あるいは目的を達した後に一部の胚あるいは卵が残りますので、それらの取り扱い、あるいは凍結した場合には、その保存期間を過ぎた場合の処置などについて患者さんの了解を十分にとり、文書でその了解を保管しておくということでどざいます。
 それから三つ目は、胚の保存期間あるいは卵の保存期間に関することでございますが、世界的に幾つかの意見がございます。私どもの学会といたしましては、卵あるいは胚の保存期間は婚姻の継続期間であって、しかも母体の生殖年齢の範囲内である、そのように決めております。それから、当然でございますが、凍結した後解凍いたしますが、解凍して用いる場合には、必ずそれを採取した卵の母親へ戻すことに限るということでございます。
 それから、その次の四つ目でございますが、本法の実施に当たる医師に関しての規定でございまして、これは高度の知識と高度の技術を要する者ということでございます。
 五つ目は、胚あるいは卵の保存に関することでございますが、この保管に当たりましては、それぞれの施設において十分に注意して行うということでどざいます。
 六つ目でございますが、こうした処置を行うに当たりましては、必ず日本産科婦人科学会に登録し、年に一度報告するということでございます。
 以上であります。
○上田(哲)委員 今承りましたが、六項目の中に非常に注目されるところは、受精卵の凍結保存は受精後十四日以内ということも含まれておりますか。
○水野参考人 受精後十四日以内ということ、含まれております。
○上田(哲)委員 このような御見解、非常に注意深くつくられたと私も理解いたしますが、単純に申し上げて、歯どめというのを厚生省はどのように評価されておりますか。
○仲村政府委員 我が国でまだ実施されておられないテクニックでございまして、外国では数十例あるわけですが、それを日本に導入する場合に、先ほどお答えいたしましたように、凍結した卵を使う場合にはいろいろの問題点があるということを御配慮になって、学会としてお決めいただく道筋の上にあるということで理解しておりますので、私どもといたしましては、その慎重な配慮については敬意を払っておるところでございますが、実施面についてはなおいろいろの歯どめというのを考える必要があるのではないかということで考えておりますが、まだ学会とそういう細部についてのお話をしているわけではございません。
○上田(哲)委員 ちょっとよくわかりませんが、敬意を表するがまだ十分でないかもしれない、こういうことですか。
○仲村政府委員 内容が十分でないという意味ではなくて、私どもといたしましては、学会がそういうことをお決めいただいて、これから御質疑があるのかもしれませんが、各病院ではさらに倫理委員会等にお諮りをいただくという手順もありますし、実施されるお医者さんが経験豊かな方でなくてはいけないというふうなこともお考えになっておられるようでございますので、そういう点では先ほどもお答えいたしたとおりでございますが、これが安易に日本じゅうでどんどん行われるかどうかということを含めまして考えますと、厚生省としては、今直ちにこの技術がどのような形で実施されるかについての心配もなくはないということでお答えいたしたわけでございます。
○上田(哲)委員 少し話が飛ぶのですけれども、このままどんどん我が国で行われてはという言葉がありましたが、今水野先生のお話のように、三月号に多分載るわけですね、この御見解が。そうすると、例えば山形大学とか京都大学で既に学内の倫理委員会に話を持っていって協議をしておるわけですから、そこでオーケーとなれば、厚生省はそう言われても実際に実施されていく、この春ぐらいには第一号が始まるんじゃないかということになるのだと理解しているのですが、そうではないかもしれない、あるいはほかの歯どめが要るということでありますか。
○仲村政府委員 各大学でどのような倫理委員会の構成で、どのような討議の結果その手技がその病院で認められるかという内容については私どもまだ承知しておりませんので、直ちにこのまま実施に移されるかどうかはわからないということでお答えいたしたわけでございます。
○上田(哲)委員 ちょっとよくわからない。例えば、実施されるとしたら厚生省は何か言うのですか、それとも、それはそれで、それぞれの研究機関の自主性でやるということになるのですか。
○仲村政府委員 ある新しい医学、医術の手技が医療の現場で導入されることにつきまして、私ども行政庁としては、個々に例えば許可をするとか、そういう立場にはないということで申し上げているわけで乙ざいます。
○上田(哲)委員 わかりました。
 そこで、これはこれからですからね、日本には例がないわけですから、外国の例ということになりますね。外国の例では、一九八四年の三月にオーストラリアで最初の冷凍卵受精の赤ちゃんが産まれた。私どもの聞いているところでは、確実な数字で今まで世界で六十三人というふうに聞いておるのでありますが、厚生省にそれらの数字を調べておいていただくようにお願いをいたしましたから、その数字を発表していただきたいと思います。
○仲村政府委員 専門家である水野先生にお答えいただいた方がいいかもしれませんが、私どもの持っております数字では、第五回の世界体外受精会議で御報告のありました一九八七年四月の数字でございまして、凍結、融解をいたしました受精卵の総数が三千五百七十七例、実際に移植をいたしました胚数と申しますか卵の数は千二百十九例、そのうち妊娠をいたしました例が百六十三例でございますが、そのうち産まれました子供の数は双子三組を含めまして六十三例、それから流産が四十三例、それから妊娠継続中が六十例という数字でどざいます。
○上田(哲)委員 これまで三千五百七十七例の凍結、融解胚総数があって、それを移植したのが千二百十九例で、妊娠は百六十三例、出生六十三人、こういう数字だと承りました。
 水野先生、こういう冷凍卵受精の方式をとるというのは、目的といいましょうか、二つあって、一つは母体の負担軽減、一つは妊娠成功率の向上、こういうことだというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
○水野参考人 よろしいと思います。
○上田(哲)委員 それで、この数字を見ますと、実際に移植したのが千二百十九例で、その中で妊娠したのが百六十三例ですから一三・四%であります。そしてこれまでの体外受精の妊娠成功率、これはいろいろありますけれども、一〇%から三〇%だというような数字が言われております。いずれにしてもそう高いものではないのですが、そうしますと、この方法は、妊娠の可能性の高いときに冷凍しておいた胚を移植するためだということが言われているにしては実際にどうもパーセンテージは大差がないようにも思えるのです。そうしますと、妊娠成功例の数字では今のところ著顕な数字は見られないということになりましょうか。
○水野参考人 数字だけから見ますと御指摘のとおりだと思います。しかしながら、この方法を行う患者さんはこの方法によらない限りは妊娠しない。ですから、相手はゼロということですね、ゼロに対する一〇%ということでございますから、やはりこの一〇%は大変評価しなければいけない一〇%である。そういうことからこの方法が世界的に行われ始めるようになったものでございます。
○上田(哲)委員 非常に心配しますことは、この中に、数は少ないのですけれども出生が六十三例に対して流産が四十三。特に問題は、その中で確認された異常発生胎児数というのが二例あるわけですね。これは大きい数字だとは思いませんけれども、ネグっていいことにはならないケースである。そういたしますと、胚を、卵を凍らせたり解かしたりということは、例えば植物の場合でしたら、あのかたい壁が破れるというぐらいですからかなり荒い作業だ。遺伝子に何らかの損傷を及ぼすことはないかなどということが懸念されると思います。その辺はいかがでございましょうか。
○水野参考人 凍結胚あるいは凍結卵につきましては、動物実験、特に家畜の領域ではもうかなり広く行われているものでございます。
 それから、先生がお話しになっておられますそのデータをもとにしてお話しいたしますと、確かに、凍結した卵の中で使い物になる卵というのが約五〇%ということだと思います。そうすると残りの卵は、この凍結あるいは解凍という操作によって変性をしているというふうに考えられます。変性をするということですから、何らかの影響が卵にあることは当然でございます。しかし、幸いなことにそうした卵は死滅して、変性して、着床し妊娠をするには至らないということでございますね。
 妊娠してお産にまで至るようなケースにつきましては、少なくとも今までの世界のデータの集積では奇形の発生率は一・数%、具体的な数字は今までのところ二例であるということでどざいますね。この二例も流産の胎児において見つかった二例ということでございますから、出生児、出生まで至るものということになりますと、奇形の発生は、十分に慎重でなくてはいけませんが、しかし、この方法を使ったからといって特にふえているという証拠は何も挙がっておりません。
○上田(哲)委員 大変心配し過ぎるのかもしれませんが、今先生がおっしゃるネグリジブルなところにあるというところは理解をいたしますが、慎重に言葉を選んで申し上げますが、体外受精の第一号、東北大学の場合、大変不幸な結果になりましたけれども、そのデータは、プライバシーの問題ということが第一だと思いますが、公表されておりません。私の方はもちろん知るべきでないところにいるわけであって、知る必要もないということになるかもしれませんが、ああした不幸な例と言われておりますものが現存しておる。こうした問題は、今先生のおっしゃった統計的なことだけではなくて、今日の、二十日の決定ということの中には十分に加味されていると理解してよろしいのでしょうか。
○水野参考人 学会といたしましては、こうした方法でございますから、普通の医療とは違う面が多々ある点にかんがみまして、医師の倫理性、それから学会といたしましてもそうした医師の倫理性を支えるようなシステムを考えておりますが、その一つとして報告、登録ということを会員の皆さんにしていただくようにしているわけでございます。これは登録、報告と申しましても学会として公表するという性質のものではあるいはないかと思いますが、学会といたしましては、その成績を評価しながら、この方法全体の安全性につきまして慎重に考えていくという方向でございます。
○上田(哲)委員 言葉を選んで申し上げるのですが、体外受精の第一号、東北大学鈴木教授のところの症例については、私どもは知る必要はありませんが、不幸な結果になりました内容については先生方は十分御検討なすったということでよろしいのですか。
○水野参考人 患者さんのプライバシーがあることでございます。この第一例と申しますのは、いろいろな意味で第一例の問題を抱えていた症例だと思います。そういうことがございますから、やはりこのことにつきましてはプライバシーを守っているという原点から理解し、お察しいただければ幸いだと存じます。
○上田(哲)委員 理解いたします。
 そこで、私は、数点懸念するところを申し上げてぜひ氷解させていただきたいなと思うのであります。
 しょせんこの問題は、さっきもお話がありましたように五〇%ということもありますから、廃棄の問題というのがございますね。この問題は、きちっとした廃棄ということがどうしても最後に残るのでありますが、これはひとつ先に置いておいて、その問題をちょっと別に置きますと、第一の問題が、先ほど先生が六点にわたってお話をしていただいた、厚生省もまたこれはよく勉強しておるということでありますけれども、人間のことですから、いろいろな点を必要以上にでも考えなければならないということから申し上げるのですが、例えば、凍結保存できる受精卵は受精後十四日以内のものに限る、これは非常に考慮された御配慮だというふうに思うのです。思う上でひとつお伺いするのですが、この受精後十四日以内ということは、十四日までは一体何なのかという問題に戻ってくるわけであります。
 これは私の乏しい知識から申し上げると、一九八五年のイギリスのウォーノック勧告、「胚、受精卵の実験培養の許容期限」という勧告の中で十四日以内ということが出ております。同時に、一九八七年三月のローマ法王庁の「起源から見た人間の生命の尊重と生殖の尊厳に関する指針」というのがございまして、これは受精の瞬間から生命が始まる、こういうふうになっております。私ごときの浅学がこのどちらがいいということを申し上げるつもりはさらさらございませんけれども、人間、受精が、どこから生命が始まるかという立場に立つというのは、この問題の倫理的にも非常に大きな、医学と倫理の壁のところにぶつかるのだろうと思うわけでありまして、十四日以内ということは、例えばこのウォーノック勧告というようなものを参考にされたのでありましょうか。
○水野参考人 そのとおりでございます。
 少し予算委員会にふさわしくないかと思いますが、どこから個体が発生したと考えるかというのはいろいろな立場がございます。受精直後という考えも当然ございます。それから、受精直後は生命の芽は生えたけれども、しかしまだ本当の生命と認めることは難しいのだという考えもどざいます。産婦人科の立場では、一般的には着床が成立してから、母体と卵が接着してからというふうに考えております。こういう接着をいたしまして個体が発育していく過程で、最初の二週間ぐらいの間はまだそれが個体としての能力を獲得していない時期と申していいかと思います。個体としての能力を獲得していない時期であるので、体外においてそれを凍結保存しても倫理的によいのではないかという立場でございます。
○上田(哲)委員 医学的には多分私も理解すべきだと思うのです。しかし、ローマ法王庁の言うことだけをとらえるのではありませんけれども、二週間で切るというのは、やはりどうも人間の尊厳とか生命の倫理ということからすると議論は起きるだろう。そうすると、理屈のために理屈を言うようでありますけれども、十四日以内は生命ではない、物である、こういうことになっていくと、生命でないものと生命であるものとの扱いというものが非常に変わってくるのではないか、ここに議論が起きてくるわけでございまして、生命でないものであれば、失礼があったらお許しいただきたいが、例えば遺伝子工学的な対象としてのみ見られるという危険もあるわけであります。当然に将来といいましょうか、近く生命となり人間となっていくんだというものが遺伝子工学的な対象として物になってしまうということになると、その期間は大変無制限、無限な実験対象という場合が出てくる、こういう懸念もあるわけでどざいますね。その辺はいかがでどざいましょうか。
○水野参考人 貴重な時間を使わせていただいて大変恐縮だと思うのですが、産婦人科学会では幾つかの見解をもう既に出しておりますが、その中の一つに、研究に人の精子、卵子、受精卵を取り扱う場合の医師としての心得、そうしたものの見解を出しております。こうした見解で、卵を使う場合には、これはどうしても人の卵を使わなければいけない場合の基礎的な研究、動物の卵を使ってやれるものは人の卵を使う必要はありませんので、人の卵を使わなければ人のことがわからない、そうした場合に限って人の卵を使う研究をしてもよい。それから、不妊症の診断、治療に役立つ研究に関しては卵を使った研究をしてもよいという見解を既に出しております。それから、学会の一番最初の見解はたしか昭和五十八年になりますが、ここのところで体外受精、胚移植などで卵を取り扱う第一の見解を出しましたが、その中に遺伝子操作は決して行わないということがございます。
 学会の見解はそうしたことで、どんどん先を見越して手を打つというほどではありませんが、幾つかの見解をまとめまして、この生命倫理にこたえられるような医学、そんな方向を目指すように考えているわけでございます。
○上田(哲)委員 水野先生のお話はよくわかるのです。わかるのですが、事が生命でありますから非常に気になりますので、例えば、生命でないから物として扱うのだということで捨てるということが確保されると思いますね。もし生命であるということになると、要らなくなったものを捨てるというのは生命を捨てるということになるわけです。これは非常に問題が出てくるわけで、そういう意味では、遺伝子工学的な立場で考えていけば、行き着くところは例えば借り腹、ほかの女性で子供を産ませるとか、あるいは将来は夫以外の精子で受精させるということも出てくるじゃないか。
 これをどう抑えるかということは、生命の尊厳にかかわってくる基本的な問題がここにあるのではないか。先生のおっしゃることはわかるのですが、これはやはりお医者さんのおっしゃることだけではなくて、一体周りとしてはどう考えるかということがなければならないんじゃないか。これはひとつ厚生大臣、どのようにお考えでしょうか。
○藤本国務大臣 冷凍卵による体外受精の問題、これは私は極めて難しい問題だと思います。先ほどから質疑を拝聴しておりまして、ますますこれは難しいなと実感として感じておるようなわけでありますが、先ほどから上田先生言われておられますように、この問題は、医療上の技術の問題と人間の生命の尊厳との調和をどう図っていくかということになってくると思うわけでございまして、やはりこれについては倫理観の形成というものが必要になってくるのではないか。そういう観点からしますと、事は慎重に扱うべき問題だ。また医学界におかれましても、やはりこういう国民の論議といいますか、そういう動向も踏まえまして慎重に対応していただきたいなということを期待をいたしております。
○上田(哲)委員 人間の尊厳ということでありますので、文部大臣、いかがですか。
○中島国務大臣 お話を伺っておりました。冷凍受精卵の体内移植によります方法をお待ちになっていらっしゃる方もあるんでしょうね。そういうかわいい赤ちゃんを欲しいという方にとりましては、母体の負担の軽減という点では福音だと思います。
 ただ一方で、お話を伺っておりまして、これは医学的には私素人でございますが、ただ素人は素人なりに安全性とか、あるいは保管につきましての一応の歯どめというのはさっき水野先生から伺いましたけれども、その保管の保証というものもございましょうし、それから何よりも、それがクリアされたとしても、生命の尊厳とそれから人間の倫理の問題がどざいます。したがいまして、この点は産科婦人科学会でより検討していただくのと同時に、学校の中には倫理委員会、これは医学者以外の学識経験者も入れて委員会をつくっていただいておりますので、そこへたとえ出されても、そこで慎重の上にも慎重に御論議いただきたい、こういう実感を持たしていただきました。
○上田(哲)委員 二番目の問題なんですが、受精卵の権利ということが一つ出てくるのですね。これはもう医学の問題だけじゃないわけですが、受精卵の権利がどこまであるのか。これは世界のどこがどうだからということにならない、日本ではどう考えるかという問題、民法その他にかかわってくると思いますね。非常に顕著な例が一つあります。――どうかちょっと静かに聞いてください。
 南米の夫婦の例がありまして……(発言する者あり)
○奥田委員長 不規則発言の表現に気をつけてください。静かにしてください。
○上田(哲)委員 オーストラリアで南米の夫婦がこの冷凍の受精卵の治療を受けたわけであります。一回目が行われてうまくいかなかった。二回目の受精卵の移植を受ける直前に夫婦が飛行機事故で死んでしまった。死んでしまった後に受精卵が残されまして、アメリカではこの受精卵が死んだ夫婦の相続権を持っているということで訴訟が起きているわけであります。こういうことが起きてくるわけです。法務大臣、日本だったらこれはどうなりますか。
○林田国務大臣 この受精卵の凍結が許容される条件でありまするとかあるいはその限界等に関する論議は、今承っておりましてもまだ流動的な状態でありまするが、事態の推移によりましては、今の御発言のように新たな法的措置を必要とするものも出てまいります。
 例えば民法の七百七十二条におきましては、婚姻成立の日から二百日後あるいは婚姻解消後三百日以内に産まれた子供は嫡出子になる。また七百八十七条によりまして、父または母の死亡後三年経過すれば認知請求はできないというようなことにもなっております。この相続関係につきましてもいろいろ混乱が起きてまいりましょうし、また刑法についても、この凍結卵が生命があるということになりましたならば、それを破壊すれば殺人罪にもなりかねないというような次第でありまして、法律的にもいろいろ検討をしなければならないと思います。各般の情勢をにらみ合わせながら十分検討をしてまいります。
○上田(哲)委員 初めてのことですから、まだ経験のないことですから、法務大臣、非常に御勉強をいただいたのでありますが、これからの問題ですね。いかがですか。
○林田国務大臣 ただいま申しましたように、これからの問題として十分検討してまいります。
○上田(哲)委員 実はアメリカでは、裁判所はこれは相続権なしという判決であります。アメリカでそうなっても、日本ではまた別な法体系や法価値観があるはずでありますから、これは今後の課題として出てこざるを得ない。こういう権利の問題があります。
 三番目に、私はこれはちょっと無理やりにつくり上げる話にもなってくるのですが、もしこれが正当な良識を離れたところで考えられると、こんなことが出てくるという幾つかの例が出てくると思います。例えば非常に独裁者がいて、この独裁者が半永久的にあるいは永久的に独裁を継続しようとすれば、二十年ごとに自分の受精卵を産ましていくと、あくまでも同じ独裁が続くということも話としては出てくるわけであります。あるいはもう少し現実的な話で申し上げると、妊娠できない娘のために母親が自分の卵を提供するということは、これは当然考えられることであります。あるいは日本の法律では、離婚した女性は半年間は結婚できないことになっています。これは、つまり理由はもう明確でありますが、こういう冷凍受精卵ということになってまいりますと、この六カ月の結婚禁止という問題が検討されなければならないことにならざるを得ない。法務大臣、これはいかがでしょうか。
○藤井(正)政府委員 ただいまも大臣がお答え申し上げましたように、婚姻解消、つまり一方の死亡もしくは離婚の後三百日を超えてから産まれた子供は嫡出子ではないわけでございます。したがいまして、そのような子供は夫の子と推定されない――失礼しました。嫡出子でないというのは間違いでございまして、夫の子と推定をされないことと相なります。
 ただいま参考人の示されました基準を拝聴いたしておりますと、婚姻の継続期間内に限るという基準がお示しになられておりました。この婚姻の継続期間内に限るというのが、受精の時期のみならず、それを体内に戻す時期まで含んでおるということになりますと、ただいまのような問題は起こらないことに相なりますので、まことに至当な解決ではないかというふうに考えます。
 それからいま一つ、解凍した後に卵を戻すのは、採取をした母体に戻すという基準もお示しになっていらっしゃいました。こういう基準で行われますと、いわゆる代理母というような問題も起こってこないことになりますので、これも一つの解決ではなかろうかというふうに考える次第でございます。
○上田(哲)委員 そうじゃないのですね。そういうふうにやっていくとこの問題は解けなくなるのです。
 例えばこういうことがありますよ。今両親に限るということは水野先生のところでおつくりになった基準としてしっかりしています。いいことだと思います。いいことだと思うのですが、さっきも申し上げたように、十四日以内というやり方は大変、その十四日間は人間の生命でないものを扱うという奇妙な形になると同じように、例えば愛情の問題というのは法律で規定できない、医学でも縛れないということが出てくることが将来はあるかもしれない。例えば死んだ夫の忘れ形見云々とか、愛する人の子が欲しいというようなことを法律で禁止できますか。そういう問題がこれはいっぱい出てくるのです。愛情の問題ですから、これは私は法律の解釈、医学の解釈だけではならない問題として、問題を後に残すんだろうということは、今の解釈だけでは無理がありますよ。だから私は、今の解釈だけで全部ひっくくってしまえばいいよということにならないから、そういう研究も今後の課題としてほしいというふうに思います。これはいかがですか。
○林田国務大臣 諸般の事態を十分勘案をいたしまして研究をしていきたいと思います。
○上田(哲)委員 これは未知のことですからそういうことで結構ですから、何か今までの感覚で割り切っていくと、新しい時代だということをわかっていただければ、きょうはそれ以上のことは言いません。
 幾つかの例があるのですが、大事なことは、これらはすべて、十個の卵を採取する、三個使った、四個使った、うまくいった、残った五個、六個というものを完全廃棄するかどうか、こういう問題ですね、先生。完全廃棄することができるかどうかということが非常に難しい。例えばトラウンソン博士という方の調査によると、例のビクトリア州で離婚などの理由で冷凍受精卵が不要になった夫婦のうち、廃棄してほしいと願ったのは五%だった、七五%以上の夫婦が不妊で悩むカップルにどうぞ譲ってやってくれ、こういう数字が出ているのですね。だから、こちらからとった、返すのは母親にそのまま返しますよという話になっているけれども、実際問題として不妊の母親に対する福音だということを考えれば、どうぞ廃棄しないでということがそちら側から出てくることもあるのですね。だからそういう問題を考えておかないと、この問題は今のお話だけではくくり切れない。特に、これは学会では有名な話だそうでありますが、イギリスのエドワード・ステップトーという研究者が実際に実験培養をしていたという報告があったはずであります。先生にお伺いするのはいけませんけれども、そういう例もあって、廃棄というのは非常に難しい問題を含むのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○水野参考人 体外受精をするためにとった卵でございますね。たくさんの卵がとれる場合に御指摘の場合が起きるわけですが、最初に使った卵で妊娠するかどうかは、まだ結果が出ないとわからないわけでございます。例えば十とれてその中の三個を使う。残り七個が残りますが、その三個の卵によって妊娠したかどうか、結果を見て次の七個をどうするかを考える。そういう意味で凍結保存を利用できるわけでございますね。ですから患者さんに必ず一定の了解をとって、そしてその卵を処置するわけでございますから、最初に患者さんを診察いたしますときに、とれた卵をどういうふうに使いましょうかということで患者さんと文書の交換をしておきます。
 日本は外国と違いましてそんなにロマンチストでもないのかもしれませんが、自分の卵をぜひほかの人に上げてくださいといったようなことを言う方は、意外に少ないのではないかなという気がいたします。でも、これは気持ちでございますからやってみなければわからない点もございますので、その辺は実施するときに医者と患者さんとの間で卵の取り扱いについて事前に十分な話し合いをして、それを文書に残しておこうということで問題を防ぐ、そんなふうに考えております。
○上田(哲)委員 私はこれはちょっと不安なんですね。つまり、お医者さんがしっかりやるよということ、それから日本ではお母さん方がそんなにロマンチックじゃないだろうよということだけでは、生命体のもとですから、これが、あってはならぬことですけれども、不心得な、本人たちはまじめな研究意欲であっても、人間の卵が業界へ流れていく。反対する人の言葉をかりれば、これで人間の受精卵が流通機構に乗せられる仕組みができ上がるという指摘をする方もいらっしゃる。こういう指摘というものにこたえるしっかりした廃棄の保証といいましょうか、必ずこれは廃棄されるんだということが制度的にといいましょうか、システマチックに行われるということがないと、これは先ほど申し上げた生命の尊厳というところに対するしっかりした歯どめになり切らないのではないかというふうに心配をするわけですが、これは厚生大臣、いかがでしょうか。
○仲村政府委員 おっしゃいますように十分に事前に話し合いをして、取り出しました卵を廃棄するということでやっていただくということを私ども期待するわけですが、今先生おっしゃったようなことが絶対ないかと言われますと、それは起こり得る可能性もゼロではないということで私ども考えておりますので、そういう点につきまして私ども法律でこれをやるというよりは、やはり医の倫理として当然守っていただくということを期待せざるを得ないのではないかと考えております。
○上田(哲)委員 同感であります。私はこれを法律でというようなことを申し上げようとは思っていない。
 きょう申し上げたいこれが結論なんでございますが、クロスチェックということがもっとあってしかるべきではないかということを私は言いたいのであります。人間のやること、科学のやることですから、やはり間違いがあるかもしれない。不可避的な予測せざる間違いは仕方がないとして、より多く人為的な歯どめ、システマチックな障壁というものはよりたくさんつくるべきであって、特に医学、さらにこうした遺伝子の問題等々にすらかかわる、生命の起源にかかわる、しかも新段階ということになると、より多くクロスチェックということがなければならないと思うのであります。
 言うまでもありませんけれども、脳死の問題については、例えば外科学会、外科でありますとか心臓外科でありますとかあるいは腎、そうした関係する学会その他が網羅されて、しかも前東大の加藤一郎先生が座長になられて、医学界のみならずさまざまな分野から有識者が集まって脳死の判定の議論をされておりますし、私は先般その問題について厚生大臣の示された見解は、より慎重であったことを評価をしております。こういう立場からすると、人間の死ぬことと生まれることのこれは両端でありますが、脳死の問題に加えられている慎重な配慮と同じぐらいの配慮は、少なくともこの生命の起源の部分の取り扱いの中になされるべきではないか。そうなってみると、水野先生を初め産科婦人科学会の先生方が長い御議論をなさり、データを集積された分析、さらに六項目の歯どめということを評価いたしますけれども、大変厳しい言い方をお許しいただくが、ひとり日本産科婦人科学会のみの範囲で、あるいはそれぞれの大学の倫理委員会の判定のみでこのことが行われていいのかどうかということは、少し議論のあるべきところではないか、私はそう思うわけであります。この点はひとつ先生からお伺いもし、それぞれの皆さんからも御見解を承りたいところであります。
○水野参考人 御指摘の点を十分に留意いたしまして、また学会にも本日いただきました御質問の趣旨を持ち帰りまして、十分に検討させていただきたいと思います。先生の御指摘を大いに生かさせていただきまして、将来に備えさせていただくつもりでございます。
○上田(哲)委員 大変差し込んだ言い方をして失礼でございますが、私ごときの見解を受け入れていただいて感激をいたします。
 そういう意味で申し上げたいのは、具体的に私は申し上げたつもりでありますのは、人間の生まれるところと死ぬところは少なくとも同じレベルの注意体制が必要だ。そうすると、今回の日本産科婦人科学会の理事会が決定し、三月の上旬にそうしたことがオーソライズされ、さらに医学会誌、学会誌にこのことが発表されると、それぞれの大学、さらには今三十八ですか網羅されておりますから、大学だけではなくて医療機関でもそうした治療行為が始まるであろう。始まるとすれば、これはどこからも、法律的にチェックせよということを言っているつもりはございませんから、そのままいくだろう。ちょっとそれが心配になるということでありますから、それを延べてくれとか繰り延べてくれとかということを申し上げているのではありませんが、今先生がお受け取りいただきましたことを敷衍させていただくと、脳死の場合と同じように、日本産科婦人科学会のみならず各分野の学会の方々の意見、さらには言論界などなど、各界の脳死の問題並みの議論の場をおつくりをいただき、それを吸収して進めていただけるというようなことを期待してよろしいのでしょうか。
○水野参考人 先ほど申し上げましたことを少し、あるいは舌足らずの点があったかもしれませんが、学会といたしましてはいろいろな御意見を承り、学会としての医療のあり方を考えていく、そういう中で先生の貴重な御意見を承ったということでございまして、具体的にしかじかということは、これは学会は学会の主体性がございますので、その主体性に基づきまして先生の御意見を大いに拝聴させていただいたというふうに言わせていただきたいと思います。
○上田(哲)委員 おっしゃるとおりでありまして、学会あるいは研究の自由に私どもが容喙すべきだとは少しも思っておりません。
 したがって、具体的に一つだけ伺いたいのですが、医師の登録、学会に対する医師の登録だけでいいかどうか、この点はいかがでございましょうか。
○水野参考人 現時点では、もう何度もお話しいたしておりますように、登録、報告ということを会員に義務づける見解を出しておりますが、それ以上のことになりますと、学会の性質、学会の機能という面からいくと無理な面もあるいは出てくるかもしれません。例えば、先生が頭に浮かべておられるその他の手段ということ、まあ私の浮かべているイメージと同じかどうかわかりませんが、それぞれの施設に実際に出向いてみるとかいったようなこともあるいはあるかもしれないと思いますが、そうしたことに関しましては、少なくとも現在の学会のシステムとしては機能することが少し難しいのではないかと思います。学会はやはりそれぞれ学問をする者の団体でございまして、お互いに監視し合う団体ではないのですね。ですから監視機構ということを学会自身が考えたこともありませんし、これからも考えた方がいいのかどうかということ、それ自身を慎重に議論しなければいけないと思います。
○上田(哲)委員 わかりました。私ども冒頭に申し上げましたように、学問の自由や進歩を尊重しつつ、また敬意を払いつつ、そして不妊に悩む方々の福音としてのこうした成果も大いに評価しつつ、やはり生命の起源にかかわることでありますから、生命の倫理、医学の倫理という立場からすると、国民の一人として、専門家の方々だけでなく、例えばそうした問題を有識者を加えて議論していただくような場、そしてそれは学問の自由に対する尊重とともに、お手伝いといいましょうか、そういう意味で行政当局もさまざまな配慮というものが必要ではないか。水野先生が非常に心広く意見を受けとめていただきましたので、その上に立って、ぜひそうした制度上の立場から厚生大臣、人間倫理の面から文部大臣、御見解を承りたいと思います。
○藤本国務大臣 先ほど来からの御指摘、私も同感の点が多いわけでございまして、先ほど申し上げましたように、この問題につきましての国民の世論といいますか倫理観というものがまだ形成されてない段階でございますから、なおさらこの問題を取り上げる大学の倫理委員会の人選、また運営、公正に図られていただきたいと心から期待をいたしております。
○中島国務大臣 先生の御趣旨を踏まえたつもりで先ほども基本的考えを申し述べましたけれども、さらに、医学者以外の学識経験者も含めまして、慎重の上にも慎重に論議を続けていただきたいと思っております。
○上田(哲)委員 水野先生にはお忙しいところをおいでいただきまして、大変貴重な御意見を承りました。大変未開な分野でありまして、その先見的な御努力に深く敬意を表するとともに、世論、国民の一人としての疑念や不安を率直にお受け取りいただいたこともあわせてありがたいと思います。そうした立場で、愚見でございましたけれどもお受け取りいただいて、一層ひとつ御発展を、また慎重な御配慮もお願いいたしたいと思います。きょうはありがとうございました。
○奥田委員長 水野参考人におかれましては、御多用中のところありがとうございました。御退席いただいて結構です。
○上田(哲)委員 最後の時間を三宅島に戻して伺いたいと思います。
 三宅島があの四年間の苦しい経過を経て、十四の村会議員選挙のうち反対派十一名の議席を確保した、これは大変な地方自治、住民の意思表示だと思っております。この際、やはり地方自治、国民の意思、住民の意思を尊重するという立場からすれば、私は先般の観測柱のあの不祥な事態を考えても、三宅島へのNLPの計画を断念すべきである、この時期を逸してはならないと思っているわけでありまして、この際その意味での御決断をいただきたいと思うのですが、そうした立場で、四年間あれだけのさまざまな世論工作を行っても住民の意思はいささかも変わらず、強固な反対の意思を示したということについて、どのように防衛庁長官、評価されておりますか。
○瓦国務大臣 三宅村の選挙の結果につきましては、これは事実でございますので、しっかりと受けとめております。
 なお、空母の艦載機の着陸訓練は、委員御案内のとおり、日米安保体制の効果的運用、このためには欠くことのできないものでございまして、三宅島はこのための練習場として立地条件極めてよろしいわけでございますので、他にまた適地を求めましても適地がない、かように判断をいたしまして、地元の方々に誠心誠意また御協力をお願いしてまいりたい、御理解を賜るように最大限の努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
○上田(哲)委員 何の評価もないのですね。防衛庁が六十三年度予算に六十二年度と同じ三億何がしの予算を計上されておる。中身は全くわからぬのです。何遍聞いてもわからないのです。一体これは六十二年度に予定されていた幾つかのFS調査と称するもの、これと同じものであると言われるのですが、これは当然断念されたものだ。六十二年度も間もなく終わるわけであります。予算委員会中にそういうことが行われるとは思いませんし、当然断念されたものである。そうでなければ六十三年度予算に計上された中身は一体何なのか、全く説明がないというのはどういうことなんでしょうか。
○友藤政府委員 お答えいたします。
 六十二年度は、御案内のとおり約三億二千万ばかり、基本調査、環境予備調査、それに現地連絡諸経費等の調査費合わせまして計上いたしております。六十三年度でございますが、総計は今御指摘ございましたように三億三千万でございますが、内容といたしましては、基本調査関係は六十二年度にはございましたが六十三年度には計上いたしておりませんで、環境予備調査関係、これを二億七千七百万、附帯事務費三百万、合わせまして二億八千万お願いをいたしております。そのほか、前年六十二年度と同様に現地連絡事務所の経費、これが調査費でございますが約五千万、合わせまして先ほど申し上げましたように三億三千万、こういう内訳になっております。
○上田(哲)委員 答弁としてはそう言わなければならないのでしょうけれども、実際問題として、私はもうこの計画を遂行することは不可能だという認識が根底にあると思うのです。現実にあの観測柱でもあれだけの事態になりました。ボーリングをやるんだということになれば、その本数からいってもその仕組みからいっても、私は流血の惨、きわみになるだろうと思います。それでもやりますか、長官。
○瓦国務大臣 ただいまもお答えを申し上げましたが、村民の方々に御理解をいただく、そうした努力をいかように積み重ねてまいればいいかということも含めまして、実はNLPの問題につきまして御協力を賜りたい。また当方の問題につきましても話を聞いていただくといいますか、そうした努力も重ねて行いたい、かように考えておるところでございまして、さらに一層の努力をさせていただきたい、かように存じております。
○上田(哲)委員 こんにゃく問答でどうしようもないのですが、ボーリングということになれば、また環境庁にその許可が求められなければならない。前長官も、観測柱という程度のひょろひょろっとした三本の柱ならともかく、ボーリングというやぐらを組むようなことになれば、景観を損なう立場からいっても同じ問題としては考えられない、同じ次元としては考えられないというお話も当時ございました。新長官、そうした御見解はいかがでしょうか。
○堀内国務大臣 現在防衛施設庁から相談を受けておりませんので、その内容については承知していないのでございますけれども、仮にそういう話がございましたら、前稲村環境庁長官のお話のように、慎重に慎重を期さなければいけないなというような認識でございます。
○上田(哲)委員 こんにゃく問答を続けたくありません。前回の観測柱のときあれだけの時間を費やしました。そして機動隊はあれだけの人数を、数百人の人数を送り込んだ。特に後から増派した。暑いときでありましたから、島の暑さになれない機動隊員は日射病で倒れた、脱水症状になった。それを婦人たちが担いで診療所に運び、自分たちが持っていた水で若者たちを一生懸命助け起こした。ところが、それが数人倒れましたという報告だけで、腰払い、足払い、一本背負いまである。肋骨を折られた人たち、重傷で東京の三楽病院まで担ぎ込まれて入院した御婦人まである。重軽傷は実に七十六名であります。
 防衛庁に幾らその数字を示せと言っても、私の方はわからない、機動隊の方はけがしてないのですから。倒れた機動隊員、日射病になって脱水症状になったのを助け起こした、その若者がまた立ち上がって警棒を振るってきた、こういう状況が人々に大変許しがたい気持ちを与えています。これ以上さらに大きな実力を加えるということになれば、うわさではライフル銃を持っていった、実弾を持っていったということにもなっておりまして、こちら側からは十分に確かめるべくもありませんけれども、こうした不幸な形がこれ以上進められていくということは、私たちは到底がえんじがたいところです。
 さっきもお答えになりませんから、もう一遍防衛庁長官に申し上げる。もう実態としては不可能になっているのですから、この計画を直ちに断念されるべきだ、これが一つ。少なくとも観測柱以上の流血の惨をあえて冒し、強行されるということがあってはならない。この点だけは明確に御回答いただきたいと思います。
○友藤政府委員 大臣のお答えの前に一言私どもの段取り等を申し上げたいと思いますが、昨年大変混乱が生じましたことは私どもも残念に思っております。これは反対派の住民の方々によりまして座り込み等の妨害行為がございましたことから生じたことでございまして、私どもといたしましては、今後ボーリング調査等が予定されておるわけでございますが、できる限り平穏に進めていきたい、かように考えております。
 せんだってのような事態が生じないことを私どもとしては願うところでございますが、いずれにいたしましても、先ほど大臣から答弁ございましたように地元の御理解をいただきますよう最大限の努力をいたしていきたい、かように考えておるところでございます。
○瓦国務大臣 流血の惨事を起こすようなことがあってはならないわけでありまして、施設庁といたしましてもいわゆる三宅の発展等も、寄与するところも十分考えながら、実は静かな話し合いといいますか理解を得るような、せめて調査をさせていただくという戸口の問題でもございますから御協力をいただきたいものだ、かように最大の努力をしてまいらなければならぬと思っておるわけでございます。先生御指摘のことも踏まえつつ、私どもはこれから御納得、御理解をいただけるように、しばらくひとつ努力を続けさせていただきたいということを重ねてお答えさせていただきます。こんにゃく問答なんて言わずに、せっかく努力してまいることにひとつお力をかしていただきたいと思うわけでございます。
○上田(哲)委員 あくまでも住民の立場に立って、この計画を断念させるために私たちも力を尽くすことを申し上げ、終わります。
○奥田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時三十九分散会